赤羽ともう1人のプロデューサー (雨天)
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熱い情熱の焦れるハートを持つ少女達

赤羽から新しいプロダクションを立てると言われた日俺は嫌な予感はしていた

 

「俊哉お前もプロデューサーをやって欲しい」

 

そう言われた。765のアイドル達とも大して会話をしない俺をなぜプロデューサーにしようと思ったのか。俺は相手に気遣いなどすることは出来ぬ。大した実力がある訳でもない。才能が存在する訳でもない。しがない赤羽のアシスタントをやっていただけ。あのぱっとしない赤羽の、頼りなさそうに見える奴のアシスタントをやっていただけだ。しかし赤羽はアイドルとよく喋っているのを見る。まるで先生と生徒のようだ。

俺は赤羽のようにそんなに人と喋るのが得意ではない。どうしても威圧的な感じになってしまう。そんなやつがアイドルとコミュニケーションを交わせるのか……

 

 

とプロデューサーをやる前はそんな不安もあった

しかし39プロダクション発足からある程度経ちプロデューサー業も慣れてくると、このプロダクションは人数がわりといるのでアイドル達と会話しなくてもほかの子と会話してるのを盗み聞きして様々な要望や悩みを察し、仕事を与えることも出来るようになった。

でもアイドル達とろくな会話をしてない。そんなんではダメだ。ダメとはわかってるが俺は口下手でどうしたらいいのかわからない。どうすればいいのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方アイドル達は

 

 

「赤羽プロデューサーさん」

 

「どうした琴葉〜?」

 

赤羽の名前を呼んだのは田中琴葉。真面目でしっかりものだ。むっつりスケベというアイドル達から噂を聞いたがどうなのだろうか。

赤羽になにか相談してるみたいだがここからでは聞き取れない。書類、スケジュール纏めとくか。

 

「その……榎南プロデューサーとまだ1度もちゃんとした会話をしたことなくて……」

 

「そうなんだよね〜榎南プロデューサーさ〜話しかけづらいしなんかいつも怖い顔して近寄り難くてさ〜」

 

そんな軽い感じで話すのは所恵美。高校生なりのお洒落をしているファッションセンスはある子である。

 

「あ〜俊哉のことか……最近アイドル達俊哉に関する相談多いんだよな」

 

「ムー、ワタシ榎南プロデューサーの事知りたいのにこの前車の中で好きな食べ物きいたら「特にない」って流されたよー!」

 

そう騒ぎ立てるのはサンバの洋装が似合う雰囲気の明るい女子。島原エレナである。

 

「あー俊哉の好きな食べものは玉子焼きと煮物だぞ」

 

「玉子焼き……あの様相で玉子焼き好きなのは意外でした」

 

「あいつは小さいころから必ず弁当に玉子焼きは10個入ってたからな。ちなみに砂糖入りでも玉子焼きなら全て好きだぞ」

 

「す、すごい食べるね……榎南プロデューサー……」

 

恵美はひきつった顔しながら言った

 

「お、もうそろそろ昼だな。あいつの弁当箱覗けば本当だってわかるぞ」

 

もうすぐ12時。昼ごはんの時間である

 

「でもワタシ達が行ってお邪魔にはならないカナ……」

 

とエレナが心配そうに言うと赤羽は少し笑って

 

「俺も負けはしないけどあいつほど君たちアイドルのことを大切にしてるプロデューサーは中々居ないよ。大丈夫、誘ってみてごらん。断らないから」

 

「……そうなのですか?……」

 

「保証しよう」

 

そういうと3人はそれぞれのバックへ向かいお弁当を取り出そうとする

 

「……あの子達は健気だなぁ……俊哉も頑張って関わろうとはしてるけど中々出来ないみたいだしちょうどいい機会かもね。頑張れよ俊哉」

 

赤羽はそう思いながら春香達の元へお弁当を持って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

黙々と仕事をしている俊哉の元へ

3人の少女がやってきた

俊哉は気づいて様子を伺っているがいつも一緒にいるエレナという少女が咄嗟に話しかけてこない。おかしい。そう感じ時計を見ると昼だ。そろそろ弁当だロッカーに閉まっておいた弁当を取りに行こう

俺は颯爽とロッカーに行くと後ろから三人も一緒についてくる。なんだ?どうしたのだろうか。

そう思いながらロッカーから弁当を取り出し元の場所へ戻ろうとすると

 

「か、榎南プロデューサー……」

 

と琴葉が呼びかけてきた実際は田中と呼んでいるが心では琴葉と呼んでいる。何故って?恥ずかしいじゃん?

 

「……どうした田中何か用か」

 

「っ!……」

 

(ここで引いてはダメよ田中琴葉。今日こそ榎南プロデューサーを丸裸にするんだから!……て裸!?何を言ってるのかしら私!!……)

 

1人頭をふるふるしてる琴葉に

 

「?」

 

となっている俊哉。

 

「か、榎南プロデューサー!!!!」

 

「??」

 

「一緒にお弁当食べてください!!!!!」

 

反響する声。息を呑む横の2人、静まる部屋。疼く右手、それは厨二病だ。

 

「…………」

 

(やっぱり駄目かな……)

 

「いいぞ」

 

「やはりダメですよね……え?今なんて」

 

「ほらそこで突っ立ってないで行くぞ。飯を食うんだろ??」

 

(よっしゃァァァアイドル達と弁当一緒に食える。可愛い子達と食うのは夢だったんだうぉおおおお)

よし、早く一緒に行こう。ここは行くよと声を掛けるのが適切のはず落ち着け俺落ち着け俺。

よし!

 

「こい」

 

命令口調やっちまったァァァァ

 

「っ!?……は、はい!!!」

 

「やったよ琴葉!!!」

 

と恵美が涙ぐんでる琴葉に抱きつく。俺も抱きつきたい。いやその間に入れてくれ

 

「よかったヨ!!ほんとに琴葉!!」

 

と琴葉の手をブンブン上下に振るエレナ。その手握りたい(欲望)

 

よしここはしっかりとした優しい一声をかけよう

 

「何している置いていくぞ」

 

だからなんでそんなに硬くて命令口調になるんだ俺ぇぇえええ!!!!!

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

何やかんやでソファーに座るのだが3人がジャンケンをしている。可愛い

 

「今度はあたしが隣だからね!!」

 

「その次はワタシだからネ!!」

 

と恨めしそうに対面に座る

可愛いというかこんなにもおれは好かれてたっけ

 

「か、榎南プロデューサーお隣いいでしょうか……」

 

上目遣いは反則。可愛い愛してる

 

違う、そうじゃない

 

ここは「構わないよ」という場面落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺

 

「勝手にしろ」

 

はぁぁぁぁ???違う違うちがァァァう

なんで喧嘩腰なんだよ!!???

 

「で、では失礼します……」

 

緊張しちゃってるじゃねえか!!アンパンマン助けて!!

新しい顔??いらねえよボケ!!

 

緊張が走る雰囲気になってるじゃん!!アニョハセヨシリアスな空気

というか今日のお弁当やばい……玉子焼きしか入れてない……琴葉はたしか健康とか気を使うタイプだった気がする……バレたらやばい

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「「「「……」」」」

 

「なにあの空気」

 

と伊織が言った

 

「あーもしかして俊哉今日はあれだったのか……なら琴葉にはまずいな」

 

「にーちゃんあれって何??」

 

「まぁ見ればわかる」

 

 

 

(赤羽ねぇ!!!謀ったな!?俺がこの日この弁当だって分かってただろてめえ!!!)

 

心の中であいつだけは必ずぶっ飛ばすと誓った

 

「……」

 

パカッ

 

「ほ、ほんとに……」

 

「玉子焼きオンリーダヨ……」

 

「……」

 

慌てて琴葉の顔色を伺う

あれ?顔色が見えない!!なぜだ!!

 

「榎南プロデューサー」

 

「な、なんだ」

 

「これ毎日なんですか??」

 

「し、週に4日くらいだが」

 

「……」

 

琴葉が怖い…………

 

「榎南プロデューサー私達アイドルお弁当作れる組がお弁当今度から作ってきますねいいですよね榎南プロデューサーちゃんとアイドル達がやりたいって言う人にやらせますからいいですよねあと週に2日にしますけどほの時もお弁当作ってきますけどいいですよね」

 

「あ、あぁ……」

 

捲し立てるようにつらつらと言葉を重ねる琴葉怖い……

 

後日玉子焼きオンリーな日が週に2日になり毎日誰かしらお弁当を作ってきてくれるようになった。アイドル達との距離縮まったというのかこれ……



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繊細で怖がりな少女達

琴葉に週に2日に減らされた後(1話参照)

Escapeのユニットの撮影があった。けして〜から逃げるなのくだりでつけた訳では無い。まあ似たようなものだが

そのために事務所から撮影現場に行く必要がある。その為に行こうとしているのだが……

 

「私が助手席に座るので紬さんは後ろでいいですよ」

 

「いいえ北沢さんこそ後ろでいいですようちが前に乗りますので」

 

(もろ紬出てるのに笑いそうになったがなんなんだこれは……)

 

「榎南プロデューサーさん……どうしましょう……」

 

と言う顔をしてる感じに困り果ててるまかべーと目が合った。どうしようか

あ、この案良さそうだな

よし柔らかく柔らかく

 

「おいお前ら」

 

「「っ!?」」

 

覇気剥き出しにしてどうすんねーんびっくりしてるじゃないか。紬なんて慌ててるぞ。可愛い

 

「行き帰りで分ければいい話だろ。早く行くぞ」

 

そう告げると2人は互いに顔を合わせじゃんけんをした。どうやらうちの事務所は最終的にジャンケンで物事を決めるようだ。

俺はスーツを片手にバッグを持ち劇場から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局行きは紬が隣にいた。こちらをチラチラと見ていたが信号待ちの時に「なんだ?」と尋ねると「い、いえなんでもありません……」と言われた。悲しい

俺はなんでこんなに口下手なのかを恨めしく感じる。

後ろではまかべーと志保が座っているが2人は2人でこちらの様子を伺っているようだ。いつも車内ではこんな感じなんだが今日は違う。

よし、話しかけよう

 

「おいお前ら」

 

「「「は、はい……」」」

 

もうなんか辛い……めげるな俊哉!

 

この瞬間時が止まったように静かになった気がした。だいたい俺からアイドル達へ仕事のこと以外で話しかけるのは珍しいことでそのせいなのか紬の顔が強ばっている。可愛い

 

「飯は今日は弁当屋から取寄せではないからな」

 

と一言告げた。違う今日は俺が弁当作ってきたから食べる?と伝えたかったのになんなん!?あ、紬が移った()

 

「「「は、はい……」」」

 

………………それ以後会話は無かった。

 

やっちまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

撮影現場に着いた。今日は先程も言ったがEscapeも撮影。

内容は「悲惨な少女達の終宴」だ

これは俺が考えたものでそしてこの3人でないと無理だと考えたものだ

衣装は藍色を基調とした悲哀の感情を想起させる色どりだ

 

「本当に君のチョイスは凄いよ。私たちの1歩も2歩も上に行くね」

 

「ありがとうございます。しかしこれくらい当然にやらないとアイドル達を輝かせることはできませんので」

 

「本当に君は真面目だな。しかしそれをアイドル達にしすぎると君が損するぞ??時にはアイドル達と馴れ合いをするのも一興だぞ」

 

「善処します」

 

「君ほどその言葉が信用ならない人間はいないね。全くアイドル達が不憫だよ……」

 

そんな感じでため息を吐く監督。

765時代からお世話になってる監督だが彼は俺のことをわかっているから会話せずとも意図をくみ取ってくれる数少ない人間だ。

馴れ合いしたいのは山々だが馴れ合いというものの限度や仕方などをわかるはずもない。赤羽は論外。あいつは性格上できる事だからな。

 

「しかし彼女達が「納得するまでやらせてください」と言われるとは思わなかったな」

 

「彼女達は真面目ですからね。特に北沢志保はかなりの努力家です。ギリギリまでレッスンしてますしそれに釣られて白石紬、真壁瑞希や最上静香達も一緒にやってますから。特に静香と志保はライバルです。お互い刺激しあってて良いと思いますよ」

 

と言うと監督は目を丸くし驚いた様子をしている

 

「結構君は見てるのだな」

 

「会話しない分だけ彼女達の見えない努力を見てますから」

 

「それで会話してたら素晴らしいんだけどなぁ……やれやれ」

 

再度ため息をつく監督。コミュ障なめんな

 

と会話をしていると

少し紬の衣装が崩れてるのを発見する

 

「監督少しいいか」

 

「いいぞ、皆一旦ストップだ」

 

そうかけると止まるそこで俺は急いで紬の元へ向かう

 

「か、榎南プロデューサーさん、うち何かやらかしましたか?……」

 

と不安そうにこちらを見る紬。ほんと可愛い馬鹿野郎

 

違う、そうじゃない

 

「動くな」

 

そう言って紬の頭に手を伸ばす

紬は目を瞑る

悲しいかなあ。ぶたれると思ってるのかと考えると辛い……

そして髪留めを正位置に戻す

手を頭から離すと少し涙目な紬がこちらを見ている

こみ上げるこの可愛さ。

ぽんこつ可愛いなぁおい畜生

 

「衣装が少しズレてただけだ。北沢、真壁も確認するからじっとしてろ」

 

キョトンとする紬。今日だけで何回可愛いと思ったのか。さすがアイドル。

そして俺は志保の元へ行く

 

「しh、北沢もすこしズレてるな直すぞ」

 

「今プロデューサーさん、志保って……」

 

「言ってない、真壁次はお前だ」

 

ボロが出そうになってるのを何とか誤魔化しながら衣装を直してく

志保が不思議そうな顔してる。当たり前だいつもはやらないからな。そして可愛い愛してる

そして真壁に移る

 

「うーん衣装担当さん来てくれ」

 

「はい、どうしましたか??」

 

「真壁の髪留めを変えたい。もう少し暗めの髪留めあるか??」

 

「はい、用意してますよこちらになります」

 

流石熟練の衣装担当さん。察してくれて持ってきてくれたのか

ありがたい

 

「真壁少し弄るぞ」

 

「はい、どうぞ榎南プロデューサーさん」

 

と頭をだす真壁。いい匂い

違う、変態じゃないか

 

「よし付けた。あとお前ら」

 

「「「??」」」

 

「似合ってるんだからもっと自信を持て」

 

????

 

会場がざわめく

 

あのプロデューサーが褒めた???

祟りじゃ!!祟が起きたんじゃ

大丈夫かな??頭打ったのかな??

悪いものでも食ったんだと思う

 

おいお前ら言いたい放題言いすぎだろ。あと祟りはやめろぼけ

 

「本心を言ったまでだ昼まで頑張れ」

 

翻して監督の元へ戻る榎南プロデューサー

 

アイドル達は何を思うのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼になり撮影が終わった。この会場で昼飯を食べることになっているが3人は先程車の中で言われたことを思い出し、着替え終わってプロデューサーの元へ向かう途中

 

「ねぇ北沢さん今日の榎南プロデューサーさんおかしくないですか?」

 

「えぇ私もそう思います紬はどう思う??」

 

「私もそう思います。きゅ、急にこちらに来た時はびっくりしました……」

 

「紬、瑞希わたしの聞き間違いかもしれないのだけれど榎南プロデューサー私の衣装整えてる時私の下の名前を呼んだ気がしたのよ」

 

と言うと2人は驚いた顔をしている。

 

「ほ、ほんとなのですか???」

 

「それは大事件ですね」

 

誰一人と下の名前を呼ばれたことがないのに突然呼ばれたことに困惑を隠せない志保だった。

 

「榎南プロデューサーは何者なんでしょうか……」

 

ふと紬は零した

 

「確かに私たちは榎南プロデューサーさんのことを全く知りませんね」

 

「この前琴葉達お弁当食べてるのを見たのだけれどなんか琴葉に怒られてたわ」

 

あの時は何が起こったのかと思った。寡黙で怖い雰囲気の何も語らずしかし私達のことを見ているあのプロデューサーを叱責するなど心臓が止まりそうだった。

止めさせようとも思ったが榎南プロデューサーがこちらをちらっと見て何も言うなとばかりに目配せしてきたので何もしなかったが

 

「ところで今日の昼ごはんは何なんでしょうか」

 

と紬がぽつりとつぶやく

そう言えばプロデューサーが今日は取寄せではないと言っていたからどういうわけなのかをずっと考えていた

 

「なんでしょうかすごくいい予感がするんですけど」

 

と瑞希が言う。探偵まかべーの感はよく当たるのだ

 

「良い事とは??」

 

志保が尋ねる

 

「分かりません。とりあえず榎南プロデューサーさんの元へ行きましょう」

 

そう言って3人はプロデューサーの元へ向かっていった

 

 

 

この後3人にお弁当を持ってきた旨を伝え渡して一緒に食べてる最中志保達から「負けた……」という声が聞こえた

何に負けたのだろうか



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