バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語 (ソーナ)
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EXストーリー
召集


 

 

 

「!?こ、ここは!?」

 

「学校にいたはずなのに・・・・・・」

 

「兄様、姉様。これはいったい」

 

明久と恵衣菜、零華は辺りを見渡してそう呟く。

すると、

 

「な、なに、今のは!」

 

「どこかしらここは?」

 

新たに人が現れた。

出てきたのは、

 

「ほ、穂乃果!?」

 

「ツバサちゃんも!?」

 

「穂乃果ちゃんとツバサちゃんだけじゃないです兄様、姉様!μ'sとAーRISEの全員です!」

 

スクールアイドルμ'sとAーRISEのメンバーだ。

 

「あ、明久くん!?」

 

「恵衣菜ちゃんに零華ちゃんも!?」

 

「三人ともどうしてここにいるの~!?」

 

「ことり、いまはそれどころじゃないですよ。ここは一体どこなんです!?」

 

「穂乃果とツバサたちはどうやってここに?」

 

「実はアイドル研究部の部室に手紙があったのよ。それを開けて読もうとしたら、光に包まれて次の瞬間にはここにいたのよ」

 

「それは私たちもおなじだよ。なぁ、あんじゅ」

 

「ええ」

 

明久の質問に絵里と英玲奈が答えた。

 

「μ'sとAーRISEのみんなにも僕らと同じ手紙が来ていたということは・・・・・・・」

 

明久があることを予想していると・・・・・・。

 

「おーい、明久!」

 

そんな声が何処から発せられた。

明久が声の発生元に視線を向けると、

 

「雄二!秀吉に康太も!」

 

「俺たちもいるぜ吉井」

 

「須川くん、横溝くんも」

 

「明久くん、いるのは彼らだけではないですよ」

 

「葵姉さん!」

 

葵がそういうと明久は確認した。

 

「美子ちゃんに宏美ちゃん、平賀くん、ミキちゃんに・・・・・」

 

「愛子ちゃん、優子ちゃん、久保くんに、美穂ちゃん・・・・・」

 

「霧島さんと優香さん、恭二も」

 

恵衣菜と零華、明久はその場にいる友達の人数を数えた。

 

「あと、姫路と島田もいるな。まあ、特に問題は起こさねぇと思うし気にすることはないだろう」

 

「あ、ホントだ。葉月ちゃんもいるね」

 

明久が雄二の視線の方を見ると、葉月と仲良くしている島田と姫路の姿があった。

 

「雄二たちもやはりあの手紙で?」

 

「ああ。どうやらここにいる俺たち全員に、その手紙は送られていたみたいだな」

 

「でも、なんのために?」

 

「さあな。だが、手紙には招待状と書かれてあったしなんかのパーティーの招待状なんじゃねぇか?」

 

「そういえばそんなこと書かれてあったような」

 

「まあ、それは置いといて、だ。明久」

 

「ん、なに雄二?」

 

「あの扉ってなんだ?」

 

雄二の視線の先には虹色に輝く大きな扉があった。

 

「僕らが来たときからあるけど、試してみたけど開かなかったよ」

 

「ってことは、呼び出した本人しか開けられないってことか」

 

「多分ね。まあ、取り敢えず、開くまで待ってようか」

 

「それもそうだな」

 

明久たちは扉が開くまで待つため、それぞれ各自に時間を潰していた。

そして、15分後。

 

 

"キィー――――――ガタン!"

 

 

虹色の扉が音を立てて左右に開いた。

 

「開いたな」

 

「開いたね」

 

明久と雄二は開いて光が溢れる扉を見てそう呟く。

 

 

『お集まりの皆様、お待たせいたしました。扉の奥へとお進みください』

 

 

すると、何処からかそんなアナウンスが流れた。

 

「呼び出した本人がこの先にいるみたいだな」

 

「じゃあ、行く?」

 

「そうだな」

 

明久と雄二は光が溢れる扉の前に立ち、後ろを振り向いて、

 

「それじゃあみんな行こう!」

 

そう言うと、光の中へと入っていった。

そしてそのあとを恵衣菜や零華、穂乃果、ことり、海未たちが入っていった。



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HAPPY NEW YEAR!

新年最初の投稿です。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
それではどうぞ!


 

明久たちが扉の奥に進むと、

 

「すごい場所ですね兄様、姉様」

 

「うん。扉の奥がこうなっているなんて・・・・・・」

 

「フフフ。零華ちゃん眼が輝いているよ――――――って、それはことりちゃんたちもだね」

 

 

その光景に明久たちはそう呟いた。

すると。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ~、綺麗な場所だね」

 

「ああ」

 

「キリトくん、かなり広いね」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

「広いホールだね。何人入れるんだろう?」

 

「《星武祭(フェスタ)》のメインステージの観客席ぐらいじゃないかな?」

 

「・・・・・・幻想的な場所ね」

 

 

 

 

「広い場所ねサトシ・・・・・・」

 

「ああ。前に行ったことのあるオルドラン城の広間ににているな」

 

「ピーカチュー」

 

 

 

ホールの四隅からそんな声が明久たちの耳にはいる。

明久たちは声が聞こえてきた場所をみる。

そこには自分達と同年代と思わしき少年少女たちがいた。

明久たちから目の前にいる一団はどこかの学校の白の制服や黒の制服、臼ピンクの制服を着て。

左前側の一団は統一感がなくそれぞれ歴戦の防具らしきものを着ていた。

そして、左側の一団は私服らしい。そして一番前の少年の肩には黄色い鼠?らしきものがいた。

すると。

 

 

 

「ヤッホー、みんな~!」

 

『『『『『『『『ソーナ(さん)!!?』』』』』』』』

 

「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」

 

「いや、それは構わないんだが。いや、まあ、構わなくわないが・・・・・・・・。それよりここは何処なんだソーナ?」

 

「ここは、私の居城≪クランテュネス・アルファニスト≫の中だよ。キリト」

 

「なら、ここは・・・・・・・」

 

「うん。ここは私の住んでいる異空間だよ、明久」

 

「ソーナ、それじゃあ彼らは?」

 

「ここにいるのは私が呼んだ、各小説の登場人物だよ、綾斗」

 

「登場人物、ってことは何組いるんだソーナ?」

 

「私が投稿しているのは―――――《ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い》と《バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語》、《学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語》そして《ポケットモンスターXY&サン・ムーン 二人の紡ぐ物語》の4作品だよサトシ」

 

「つまりここにいるのはソーナが投稿している小説の登場人物ってことか?」

 

「正解だよ、キリト」

 

「えーと、ソーナはなんで私たちを呼んだの?」

 

「あれ?キリトたちにはアリスとユージオが手伝ってくれたはずだけど・・・・・・そう言えば秘密にしといてって言ったんだったけ」

 

「それで一体・・・・・・」

 

「フッフッフッ。実はみんなを呼んだのは・・・・・・」

 

『『『『『『『『『呼んだのは・・・・・・』』』』』』』』

 

「みんなで、楽しく!仲良く!新年の始まりを過ごすためだよ!!」

 

「あー、そう言えばそろそろ今年も終わりなんだったね」

 

「そうだよ明久!それで、どうせならみんなと過ごしたいなって思ってね。言っとくけどリアルに友達が居ないからって訳じゃないからね。――――――――――まあ、友達なんてもの必要ないし要らないから、いないんだけどさ」

 

『『『『『『『『・・・・・・・・・・・・・・』』』』』』』』

 

「とまあ、そんなことよりみんな楽しくワイワイ過ごそう!」

 

『『『『『『『『オオォーーーーー!』』』』』』』』

 

ソーナの掛け声により楽しいパーティーが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティーが始まり、ホール内には様々な食べ物や飲み物が置かれ、各自それぞれ他の登場人物たちと話していた。

ある場所では――――――

 

 

 

 

 

 

 

「凄いわねあなたたち」

 

「うん。学校の廃校を阻止するためにそんなことするなんて、生半可な気持ちじゃできないよ」

 

「ホントだよ~」

 

「えへへ、そんなことないよ」

 

「そうです。私たちは自分達のためだけではなく、音ノ木坂学院全員のためにしているのですから」

 

「やれやれ、海未ちはほんと固いな~」

 

「なっ!?そ、それはどういう意味ですか希」

 

「そのまんまの意味やんよ。なあ、エリチ」

 

「え、ええ。そうね」

 

「まあ、海未が堅いのはいつものことだしね」

 

「まあ、それは確かに言えるわね」

 

「凛もそうおもうにゃ~」

 

「真姫に、にこ、凛もですか!?」

 

「わ、わたしはそんなことないと、思うよ」

 

「かよちんはやさしいにゃ~」

 

「そう言えば絵里ちゃんはロシアに住んでいたんだよね」

 

「ええ。もしかしてレインとセブンもかしら?」

 

「ええ、そうよ。と、いってもお姉ちゃんが7歳、私が1歳の頃に両親が離婚して私はアメリカに、お姉ちゃんは日本に行くことになったのよ」

 

「そうだったの。ごめんなさい、辛いこと言わせてしまって」

 

「気にしないでいいわよ。それに今はこうしてお姉ちゃんと会えるんだから、平気よ」

 

「アハハッ♪。全く、セブンはほんと甘えん坊だな~」

 

「別にいいでしょお姉ちゃん」

 

「はいはい」

 

「セブンちゃんかわいい~♪」

 

「ま、まあ当然よ」

 

「それでなんだけどセブンちゃん」

 

「なにかしら?」

 

「これ着てくれないかな~?」

 

「な、ななな、なにそれ!?」

 

「え?これはことりが作った服だよ~」

 

「あ、あなたが作ったの!?じゃなくてなんで幼稚園の服なのよ!」

 

「似合うかな~って思ったの~♪」

 

「わ、わたしはもう12歳よ!」

 

「まあまあ、早く着替えよう~♪」

 

「いやーーァ!た、助けて、お姉ちゃーん!」

 

「え、ええ・・・・・」

 

「ことりちゃんの悪い癖が出ちゃったね」

 

「全くことりは・・・・・・。可愛いものに眼がないんですから」

 

「へぇー。そうなんだ」

 

「あ、戻ってきたみたいね」

 

「お待たせ~♪セブンちゃんを更に可愛くしてみたよ♪」

 

「せ、セブン?」

 

「ど、どうかな、お姉ちゃん?」

 

「うん!超かわいいよ七色!」

 

「お、お姉ちゃん!?それリアルネームよ!」

 

「ありゃ~、レインちゃんも変なのが出ちゃったよ」

 

「もしかしてレインってエリチと同じでシスコンなのかな?」

 

「う~ん、見た限りそうみたい」

 

「ちょっと希、シルヴィアさん。私は別にシスコンじゃないわよ。それにシスコンならあそこにいるわ」

 

「綾斗くんと話してる明久くん?」

 

「まあ、確かに絵里の言うとおりだと思いますよ」

 

「そうだねぇ。明久くんは昔から零華ちゃんのこと大切にしてたからねぇ~」

 

「アハハ。過保護過ぎってほどだけどね」

 

「それもそうね」

 

「あ、でも綾斗くんもかなりのシスコンだよ」

 

「そうなのかい?」

 

「うん。綾斗、子供の頃なんて遥お姉ちゃんの後ばっかり追いかけていたんだから」

 

「それはかなりのシスコンだな」

 

「でも、ちょっと可愛いかも♪」

 

「やれやれ。英玲奈はともかくあんじゅもことりと似たような慣性の持ち主だったわね」

 

『『『『『『ハハハハハ』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

アイドル同士、音楽関係などを話していたり。

また、あるところでは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「遥さん、免許皆伝なんですか!」

 

「ええ。リーファちゃんとラムくんはどうなの?」

 

「私のところは免許皆伝とかはない、ですね。剣道なので」

 

「はい、俺のところもリーファさんと同じですね。もっとも剣道をやっていたのは中学生までなんですけどね」

 

「ラム君、そうだったの?」

 

「はい。一回中学の全国大会で優勝しましたよ」

 

「すごいねラムくん。私のところは剣術だからなぁ。剣道もするはするけど大会とかには出ないんだよね」

 

「じゃあ、今度試合しませんか!」

 

「え、リーファちゃんと?」

 

「はい。あ、でも遥さんがよろしければですけど」

 

「私はもちろんいいよ!ラムくんもどうかな?」

 

「俺もいいんですか?」

 

「もちろん」

 

「もちろんだよ」

 

「では、お言葉に甘えて俺も参加させていただきますね」

 

 

 

 

 

 

 

三人の男女が剣について話していて、

またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、お前さんはかなり料理できるんだな」

 

「まあな。おれのところは兄妹が多くてな、親が不在勝ちなもんでおれが面倒見ているんだ」

 

「ほえー。その年で主夫みたいとはすげぇな」

 

「今はポケモンドクター見習いでな、家庭の方は弟たちが手伝ってくれてるよ」

 

「いい家族だな」

 

「全くだ」

 

「そう言うエギルだって嫁さんがいるだろうが」

 

「まあ、俺がいない間も支えてくれていたからな。自慢の嫁だ」

 

「くぅ~、羨ましいぜ紺畜生!」

 

「それについては同意するぞクライン!」

 

「タケシ!我が同士よ!」

 

「やれやれだな」

 

 

 

 

 

 

 

男三人が盛り上がっていて、

またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあオーフェリアさんは綾斗さんにいつもそうやってもらっているんですか?」

 

「・・・・・・ええ。シルヴィアもだけど。恵衣菜や翔子、セレナは?」

 

「私は明久くんにいつも甘えてるかな。明久くんの膝の上で頭を撫で撫でしてもらうと気持ちよくて眠っちゃうだよ」

 

「・・・・・・私は雄二によく料理を作ってもらってる。家事もだけど雄二は吉井と同じくらい家事レベルが高い」

 

「私はよくサトシにお菓子を作ってるかな?お菓子を食べたときのサトシの嬉しそうな表情がかわいいというか、癒されるんだよね~」

 

「・・・・・・なるほど。私も今度綾斗にやってもらおうかしら?」

 

「膝枕を?」

 

「ええ」

 

「・・・・・・なら私も雄二にやってもらう」

 

「じゃ、じゃあ私もサトシに今度してもらおう、かな?」

 

 

 

 

 

 

 

と、結婚している女子の恋バナ?らしき、情報交換などをして――――――

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『まだ、俺(僕)たちは結婚してないぞ(よ)!!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

いま、なんか五ヶ所から同時に同じ言葉が聞こえた気がしたのですが・・・・・・・気にしないでおきましょうか。

そして、またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、お前さんは忍者かよ」

 

「・・・・・・そんなことはない。一般」

 

「いやいや、それはさすがのオレっちもヤーちゃんに同意するゾ」

 

「や、ヤーちゃんっておれの事かよ、アルゴの姉さん」

 

「ニャハハ。いいネーミングだロ?」

 

「そ、そうかぁ?なら土屋はなんだ?」

 

「・・・・・・俺は別にいい」

 

「ン?ツッチーだゾ」

 

「プッ・・・・・!つ、ツッチー・・・・・以外にかわいい名前だな」

 

「ダロ?」

 

「・・・・・・あまり嬉しくない」

 

 

 

 

 

 

 

情報屋同士、情報入手についてを語っていたり。

またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、そっちの世界も面白そうだな」

 

「ああ。俺たちの世界も面白いがキリトたちの世界も面白そうだな。VRMMOだったか?是非やってみたいな」

 

「俺もサトシたちの世界でいろんなポケモンと触れ合ってみたいな。ピカチュウみたいなポケモンが沢山いるんだろ」

 

「ああ。それぞれの地方によって出るポケモンも異なるんだぜ」

 

「そりゃ行ってみたいな」

 

「それ、僕も行きたいな」

 

「俺も、かな」

 

「明久と綾斗もか」

 

「あー、でも俺は明久の世界が気になるな」

 

「召喚システム、だっけ?」

 

「うん」

 

「どんなものなんだ?」

 

「え~と、テストの点数がその召喚獣の力になって、操作は自分でやるんだ」

 

「ウゲー、テスト受けないといけないのか」

 

「俺たちのところもテストはあるけど、確か明久のところは違うんだっけ?」

 

「点数の上限がないからね。自分の能力次第ではどんどん点数が増えていくよ」

 

「うわー。大変そうだな」

 

「まあね。あ、でも綾斗のところも大変じゃないかな?」

 

「ん~。まあ、ね」

 

「アハハ、私としてはみんなの世界に行ってみたいけど」

 

「ソーナも?」

 

「それはそうだよ~。面白いじゃん」

 

「「「「アハハハ」」」」

 

「ところでみんなはなんで彼女たちが好きになったの?」

 

「ん~、俺は第一層からずっと一緒にいて、レインがいると何て言うのかな・・・・・・・・こう、安心するんだよ」

 

「僕は恵衣菜と小さい頃から一緒にいて、気心が知れているし一緒にいたいからかな」

 

「俺はシルヴィとオーフェリアと一緒にいると楽しいからかな。二人を俺は必ず守りたいって思うんだ」

 

「俺はセレナから様々なことを教えてもらったりしたし、セレナと一緒にいると安心するからと、夢を持っているからかな」

 

「なるほどね~」

 

「ソーナはいないのか?」

 

「え?なにが?」

 

「好きな人だよ」

 

「ええっ!?」

 

「そう言えばソーナはいないの?」

 

「気になるな」

 

「え、ええ・・・・・・。私は別にいないよ。それに友達とかいないから、そう言うのがわからないんだよね」

 

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

「あの~、哀れむよいな目で見ないでほしいんだけどな~。ちょっと虚しくなるよ」

 

「アハハ・・・・・・」

 

「なんて返したらいいかな・・・・・・」

 

「ごめん、ソーナ」

 

「聞いちゃいけないことだったかな・・・・・・」

 

「ちょ、ちょっとー!べ、別にこの世界だったら幾らでも友達はいるよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

主人公同士で話していたりした。

そして時は進み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、今年も残り時間が少なくなってきたね」

 

ソーナはパーティー会場の時計を見てそう言う。

 

「ホントだな」

 

「ん~。みんなはなにかやりたいことあるかな?」

 

ソーナは会場の全員を見て言う。

 

「ん~。あ、じゃあソーナ、僕と試験召喚バトルしない?」

 

「え?」

 

「あ、明久くん!?」

 

「に、兄様!?」

 

「お、いいなそれ!じゃあ俺もソーナとデュエルしたいな」

 

「き、キリトくんも!?」

 

「じゃあ、俺もソーナと闘ってみたいな」

 

「綾斗くんまで!?」

 

「・・・・・・ハルお姉ちゃんどうにかして」

 

「アハハハ、無理だよオーフェリアちゃん」

 

「はいはい~!なら俺もソーナとバトルしたい!」

 

「サトシ!?」

 

なんと明久、キリト、綾斗、サトシからバトルの申請をソーナは受けた。

 

「って、ちょっと待ってよ!私は明久たちのように召喚獣持ってないし、キリトたちのように剣や防具も無いんだよ!更に言うと綾斗たちのように星脈世代でもないし煌式武装も装備してないよ!サトシのようにポケモンは持ってないんだよ!」

 

ソーナはそう言うが。

 

「その辺りはソーナの力で」

 

「作者の権限だね」

 

「ちょっとーー!!そんなのに使いたくないよ!」

 

ソーナはツッコミに疲れたのか呼吸が荒くなっていた。

他のみんなは苦笑や笑いを堪えているものが多かった。

 

「ハァー。―――――――いいよ。闘ってあげるよ」

 

「「「「よしっ!」」」」

 

「なんでそこで4人は嬉しそうにサムズアップするのさ!」

 

ソーナは更に落胆した。

 

「じゃあ、最初に綾斗、次にサトシ、で明久、キリト。でいい?」

 

「俺は構わないぜ」

 

「僕も」

 

「俺も大丈夫だよ」

 

「俺もだぜ」

 

「じゃあ、移動しようか」

 

『『『『『『『『『『移動?』』』』』』』』』』

 

「うん、移動。ハイッ、と」

 

ソーナが指をならすと次の瞬間、パーティー会場からバトルフィールドに来ていた。

 

「それじゃあ早速闘おうか、綾斗」

 

「そうだね」

 

フィールドにはソーナと綾斗だけ。残りは観客席に座っている。

 

「それじゃあ――――」

 

綾斗はそう言うと自身の純星煌式武装《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を展開した。

 

「いくよ、セレス」

 

『了解です、綾斗』

 

「はぁ、――――――おいで《虹の銀河(ガラクスィアス=イリス)》」

 

ソーナがそう言うと何もない虚空から、虹色に輝く双剣が出てきた。

 

「じゃあ、いくよ!」

 

綾斗はそう言うと否や凄まじい速さでソーナに《黒炉の魔剣》を振り下ろしてきた。

 

「よっ、と」

 

ソーナはそれを双剣をクロスして受け止める。

 

「せいっ!」

 

そして、《黒炉の魔剣》の軸をずらして綾斗の校章を右手の剣で切りつける。

 

「ん?」

 

ソーナは切りつけた箇所に手応えが感じられず眉を潜めた。

切った場所には青いガラスのようなものがでるが、それはすぐに虚空へと消えた。

 

「そう言えば綾斗の星辰力は膨大だっけ」

 

「まあ、オーフェリアには及ばないけど」

 

「そりゃそうでしょう――――――よっ!」

 

「ふっ!」

 

「セアッ!」

 

「ハアアッ!」

 

気合の入った声が周囲に響響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして8分後。

 

「ゼアッ!」

 

「ッ!」

 

 

戦闘終了(エンド・オブ・デュエル)!Draw!』

 

 

綾斗の攻撃を受け流し、カウンターでソーナの放った斬撃と綾斗の放った斬撃が二人の校章を同時に真っ二つに切り裂き、デュエルが終了した。

 

「引き分けか。強いなソーナは」

 

「綾斗こそ、強すぎるよ」

 

「謙遜しないでよ。ソーナの武器もだけど力量も凄かったよ」

 

「綾斗と比べるとまだまだだけどね」

 

ソーナら自虐的に肩をすくめながら言う。

 

「さて、次はサトシか」

 

「じゃあ俺は観客席にいくよ。頑張ってねソーナ」

 

「ハハ、善処するよ。ありがとう綾斗」

 

綾斗はそう言うと、観客席に向かって歩き去った。

綾斗が立ち去ると、代わりにサトシが来た。

 

「綾斗に勝利おめでとう、ソーナ」

 

「ありがとう、サトシ」

 

「バトルは一対一のシングルでいい?」

 

「いいけどひとつ問題があるんだよ」

 

「問題?」

 

「・・・・・・私がポケモン持ってないこと」

 

「あ」

 

「もしかして今さら?それに私言ったはずだけど・・・・・・」

 

「あー、じゃあ、また今度でいいか」

 

「ごめん、そうしてくれると助かるよ」

 

「じゃあ、この試合はバトルは無しと言うことで。次は明久か」

 

「そうだね」

 

「まあ、頑張れよソーナ」

 

「ありがとうサトシ」

 

サトシとのポケモンバトルはソーナがポケモンを持っていないと言うことで先に見送りで、次は明久とのバトルになった。

 

「早速だけど試合しようソーナ」

 

「うん。科目は日本史でいい?」

 

「僕はいいよ」

 

「オッケー、じゃあセットするね」

 

ソーナはそう言うと、召喚システムのフィールドを張り、明久から距離をとった。

 

「いいよ、明久」

 

「うん、じゃあ――――」

 

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 

 

 日本史

 

 2年Fクラス 吉井明久 978点

 

 VS

 

        ソーナ  814点

 

 

「ソーナも日本史得意なの?」

 

「まあ、ね。5科目の中で私は国語と社会が得意だから」

 

「なるほどね。それじゃあいくよ!」

 

「参ります!」

 

ソーナの召喚獣は虹色のコートを着ているというなんとも派手な衣装だった。

そして、武器は双剣だ。

 

「ゼアッ!」

 

「ヤアッ!」

 

金属音が二人の召喚獣の武器から響く。

 

「やるね。もっと早くしていくよ!」

 

「それは私もだよ。それじゃあ早速!」

 

ソーナの召喚獣は明久の召喚獣から距離をとると、双剣を前に構えた。

すると、その双剣は一つに合わさった。

 

「!?それは、弓!?」

 

「いくよ!」

 

ソーナは弓を連続で射ち放ち明久の召喚獣を攻撃する。

明久は召喚獣を巧みに操作してかわしたり弾いたりする。

 

「更に!」

 

ソーナは弓を両手に持ち、分割した。すると、それは黒金と白銀の拳銃へと変わっていった。

 

「今度は銃!?」

 

「いっけー!」

 

「ちょ、ちょっとー!」

 

明久は素早くかわすがソーナはどんどん弾を撃つ。

 

「そして!」

 

「今度はスナイパーライフル!?」

 

そして、ソーナは二丁銃を結合し、黒銀のスナイパーライフルを構え、連続で撃つ。

そしてそれを明久は同じように構えた二丁銃で弾を撃ち落としていく。

弾撃ち(ビリヤード撃ち)だ。

 

「でもって今度は!」

 

ソーナはスナイパーライフルを片手で持ち横に構える。

その途端、スナイパーライフルは光輝き細身の剣、細剣に変わった。

 

「今度は細剣!?もしかして腕輪!?」

 

「え?腕輪じゃないよ。というより腕輪持ってないよ」

 

「え?じゃあそれは?」

 

「あ、これ?イメージをすることによって様々な武器に出来るんだ」

 

「うわー、チート?」

 

「いやいや、明久の《事象改変(オーバーライド)》の方が一番のチートだからね」

 

「あ、それは確かに」

 

「ね。それじゃあ、どんどんいくよ明久!」

 

「ええーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから10分後

 

 

 2年Fクラス 吉井明久 36点

 

 VS

 

        ソーナ  25点

 

 

 

ソーナと明久の点数は、あと一撃で戦闘不能という状態にまでなっていた。

 

「これで決めるよ」

 

「もちろん!」

 

「ハアアァァァァァァァアッ!」

 

「ゼリャァァァァァァァアッ!」

 

ソーナの召喚獣と明久の召喚獣の双剣がそれぞれの召喚獣を切り裂き、互いの位置を交換して背を向けて立つ。

そして、

 

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久 0点

 

 VS

 

        ソーナ  0点

 

 

 

同時に召喚獣は虚空へと消えていった。

 

「引き分けかぁ~」

 

「つ、疲れた~」

 

「いやぁ、さすが明久だね」

 

「ソーナこそ、さすがだよ」

 

「アハハ、ありがとう明久」

 

「さてと、最後は―――――」

 

「俺の番だな」

 

明久の言葉を引き継いで、出てきたキリトが答えた。

 

「そうだね、キリト」

 

「じゃあ僕はみんなのところにいるよ。二人ともいい試合をね」

 

明久はそう言うと、キリトが出てきたところから観客席に向かって歩き去った。

 

「さてと―――――」

 

「うん」

 

ソーナはキリトの言葉に頷き、ウインドウを表示させデュエル申請画面を開きデュエルを申請する。

 

「全損決着でいいよなソーナ?」

 

「もちろんだよキリト」

 

モードを全損決着にしてデュエルを双方とも受諾する。

キリトとソーナは互いに距離を取り、向かい合う。

そして、キリトは背中に装備している双剣の柄を握り、抜刀する。

それぞれ剣の色は黒と白だ。

 

「『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』、だね」

 

「ああ。俺の最もな愛剣だ」

 

「それじゃあ私も――――」

 

ソーナは目を閉じ集中する。

すると、ソーナの衣装がキリトの防具と似たような感じになった。だが、その色はキリトが黒に対してソーナは虹色のような七色の派手だが落ち着いた装飾だった。

そして、両手を広げ何かを掴むような動作をする。

 

「――――――来て、『ティング・トゥー・テル』、『スターライト・ナイト』」

 

そしてソーナの手元に白銀に輝く剣と虹色に輝く剣が現れ、それを握った。

 

「へぇー、それがソーナの剣か。俺やレインと同じで二刀流なんだな」

 

「まあ、二刀流の方がやり易いんだよ」

 

「じゃあ、始めようぜソーナ」

 

「了解」

 

キリトは左手を前に、右手を後ろに、腰を少し落として構える。

ソーナは右手を前に、左手を少し下げて構える。

そして、両者の中央に浮かぶウインドウが0になりデュエルが始まった。

 

「ふっ!」

 

「はあっ!」

 

キリトは始めに右手の剣を突きだしてきた。それをソーナは左の剣で反らす、そのコンマ一秒後左の剣が迫ってくる。だが、それはそに当たる直前にソーナは右手の剣で防ぐ。

 

「やるな!」

 

「≪二刀流≫ソードスキル《ダブルサーキュラー》だよね」

 

「ああ」

 

「それじゃあ今度はこっちの番だよ!」

 

ソーナはそう言うと否や、キリトの剣を弾き、左の剣でキリトの胴を薙ごうとする。

 

「ッ!?」

 

しかし、それはキリトがバックステップしてコートのボタンが取れただけだった。

だか、ソーナはさらに攻撃をする。右手の剣を振り上げ右斜めから振り下ろした。

 

「くっ!」

 

さらにそれをキリトは防ぐ。が、さらにソーナは左の剣で攻撃する。

 

「セアッ!」

 

「ッ!」

 

「ハアッ!」

 

ソーナは右手の剣にライトエフェクトを纏わせ、キリトを攻撃する。

 

「片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》か」

 

「どうせなら私も使おうかなって、ね」

 

「なるほどな。じゃあどんどんいこうか」

 

「そうだね!」

 

「「ハアアッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーナとキリトは、幾つものソードスキルを放ち剣戟を与える。

そして、互いのHPがレッドゲージにまで入り、残り一撃で戦闘不能となるところまで削れていた。

 

「これで決めるか」

 

「そうだね」

 

ソーナとキリトはそう言うと、同じ構えをした。

右手を肩の高さまで上げカタパルトのようにし、剣の切っ先を相手に向け、左手を前にし構える。

 

「「ハアアァァァァァァァアッ!!!」」

 

右手の剣にクリムゾンレッドのライトエフェクトが付き、ジェットエンジンのような轟音が響く。

そして、剣を突きだしたような体勢で互いの位置を交換して止まった。

 

 

『Draw』

 

 

空中に浮かぶウインドウにはそう表示された。

どうやら二人のHPが同時に0になったらしい。

 

「はあ、はあ、はあ。さすがキリト」

 

「ソーナこそ。さすがだな」

 

「ありがとうキリト」

 

キリトは剣を背中の鞘に戻し、ソーナは剣を取り出したように虚空の中へとしまった。

 

「さてと、これで終わったし戻ろうか」

 

ソーナはそう言い指をならした。

ソーナが指をならすと、次の瞬間には元のパーティー会場に戻っていた。

 

「おっと、そろそろ新年だね」

 

ソーナは時計を見ていう。

 

「ホントだな」

 

「今年は色々あったけど、みんなのお陰でなんとかいけたよ。ありがとう」

 

ソーナはみんなを見てそう言う。

 

「あ、みんなカウントダウンを始めるよ」

 

 

 

 

『『『『『『『『『『10』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『9』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『8』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『7』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『6』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『5』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『4』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『3』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『2』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『1』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

そして、会場に鐘の音が響き渡った。

 

 

「ハッピー・ニューイヤー!!みんな今年もよろしくね!!」

 

 

『『『『『『『『『『こちらこそよろしく(お願いします)ソーナ(さん)』』』』』』』』』』

 

 

 

 

「みんな!今年も応援をよろしく!」

 

 

 

 




私の投稿作品4作品とのコラボどうでしたか?
少し疲れましたが、新年の初めとしては良かったなと思います。
これからも≪バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語≫をよろしくお願い致します!!


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第0章
キャラ設定


吉井明久 (よしい あきひさ)

 

所属:Fクラス

 

備考:文月学園第2学年序列第一位

 

容姿 性格:原作通り+シスコン

 

成績:Aクラス主席クラス

 

得意科目:日本史、古典、地学、世界史、現代国語、現代社会、保健体育、家庭科

 

苦手科目:数学、物理、化学、生物、英語

 

以上に加え〈総合科目〉を含め全14科目

 

腕輪:事象改変(オーバーライド)

  :属性付与(エンチャント)

 

能力:事象改変(オーバーライド)/発動に300点消費。自身の点数は変化させられないが自分の思った攻撃や防御、移動が可能。但し相手に何もしないで点数を0にしたり防御不可、自身無敵のような反則じみた行動は出来ない。脳の処理及び召喚獣を上手く操作できなければ使えない物。任意でON、OFFの切り替えが可能。召喚獣を出している間はON、OFFの切り替えをしても点数消費は無し。10秒使うごとに点数が10点減っていく。属性付与と同時に使うことにより更に変化する。

 

属性付与(エンチャント)/自身の武器に属性。炎、風、水、地、光、闇、雷、氷の8つを付与させることが出来る。他人に譲渡も可能。それぞれ炎では相手に火傷を、風では束縛、水は鈍足、地は行動阻害、雷は麻痺、氷は凍結、の効果を与えることが出来る。光及び闇は不明。

発動に100点消費。1回付与する度に15点消費。最大で8つを自身に付与することが可能。

 

詳細:原作と同じく今作の主人公。性格や口調、容姿は原作通りだが重度シスコン。現在は妹の零華と恋人の姫宮恵衣菜と暮らしている。学園では観察処分者の称号を持つがこれは自ら志願したことによりつけられた。また、第2学年序列第一位の称号を持つ。一年時の振り分け試験の際、恵衣菜の為に退室。Fクラスに配属になった。

妹の零華いわく『明久と恵衣菜はラブラブ過ぎる』らしい。

 

 

 

姫宮恵衣菜 (ひめみや えいな)

 

所属:Fクラス

 

備考:文月学園第2学年序列第二位

 

容姿:腰まで届く長さの黒髪に明久より約10㎝背が低い。スタイルが良く、何処ぞの令嬢かと思われるほど

 

性格:基本的に誰にでも敬語で話す。(明久や零華、家族以外)明久や零華に危害を加えようとするものなら容赦しない。

 

成績:Aクラス主席クラス

 

得意科目:数学、英語、日本史、世界史、古典、現代国語、保健体育、現代社会、家庭科

 

苦手科目:科学、生物、物理、地学

 

腕輪:閃光(せんこう)

  :多弾攻撃(マルチプル)

 

能力:閃光(せんこう)/光の速さと同じ速度で動き攻撃する。≪加速≫の腕輪より速い。発動に200点消費。

 

多弾攻撃(マルチプル)/1回の攻撃で複数の敵を殲滅。又は1回で同じ敵を複数回攻撃することが可能。発動に100点。攻撃する対象が多いほど点数の消費が増える。同じ敵に攻撃する際には点数は100点のみ。

明久の属性付与により、追加効果を与えることが可能。

 

詳細:今作のヒロインにしてオリジナルキャラクター。

恋人の明久とは幼馴染みであり近所。文月学園第2学年序列第二位の称号を持つ。一年時の振り分け試験の際体調を崩し退席。Fクラス配属となる。

明久のことが好きで彼に害をもたらすものを許さない。

怒らせると明久にしか手が出せないらしい。

零華とは仲が良く姉妹のようだと明久から言われている。

明久の妹、零華いわく『明久と恵衣菜はラブラブ過ぎる』らしい。

 

 

 

吉井零華(よしいれいか)

 

所属:Aクラス

 

備考:文月学園第2学年序列第三位

 

容姿:長いクリーム色の髪で身長は恵衣菜と同じ。

スタイルが良く姉とは違う雰囲気を持つ。

 

性格:基本的ホンワカとしているが、明久の事や恵衣菜の事になると人一倍敏感で、明久や恵衣菜に危害をもたらすものを許さない。

 

成績:Aクラス最上位クラス

 

得意科目:現代国語、世界史、日本史、家庭科、、地学、英語、数学

 

苦手科目:物理、化学、生物、古典

 

腕輪:ミストルティンの槍

  :千の魔法(サウザンド・マギア)

 

能力:ミストルティンの槍/貫くことに特化しほぼ防御不可の技(相殺することも可能)。一撃必殺の腕輪。発動に250点消費する。

 

千の魔法(サウザンド・マギア)/様々な魔法を行使することが可能。魔法の威力により点数の消費が変わる。自身に魔法を付与や味方に付与する事が出来る。

 

詳細:今作のオリジナルキャラクター。明久の双子の妹。文月学園第2学年序列第三位の称号を持つ。兄と恵衣菜が振り分け試験の際途中退席したためAクラスの主席となった。兄である明久の事が好きでブラコン。明久や恵衣菜に危害を加えるものは許さない。特に明久のためとなれば周りに目が入らない。恵衣菜とは仲が良く姉妹のようだと明久から言われている。



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順序:プロローグ

こんにちはソーナです。
今回からバカとテストと召喚獣を書いていきます。
なにかと不備がございますでしょうがご了承下さいませ


ここ『文月学園』は世界初、ある特殊なシステムを採用した進学校である。

そのひとつは試験召喚戦争。最先端の技術で実現されたクラス間戦争である。

そしてもうひとつは成績による教室の設備である。

1年の終わりに振り分け試験を行い、その成績により上のAクラスから下のFクラスまで6段階にクラス分けされる。

『試験召喚システム』とは科学とオカルトの偶然により出来た物だ。テストの点数がそのまま自分の分身、『試験召喚獣』の体力や攻撃力、防御力、素早さなどになる。

文月学園が点数上限を無くしたのが今から4年前。様々なスポンサーや世間から注目を集めている学校である。

そして振り分け試験当日。一人の男子学生と一人の女子学生が振り分け試験を受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「これが振り分け試験か。難しいって噂だけど・・・・・・解ける。二人とも問題なく解けるだろう」

 

僕の名前は吉井明久。年齢は16歳。ここ文月学園に通っている。

そして今、2年次のクラス分けの為の振り分け試験を受けている。

辺りからはカリカリと鉛筆やシャーペンが走る音が聞こえてくる。

その音の中隣から、

 

「はあ・・・・・・はあ・・・・・」

 

苦しそうな吐息が聞こえてくる。

隣に座っているのは一人の女子学生。

名前は姫宮 恵衣菜。僕の幼馴染みであり大切な人だ。

 

"恵衣菜大丈夫かな?なんか無理してる気がする"

 

僕の思ったことはその十数秒後、実際に起きるものとなった。

 

ガタンッ!

 

「なっ!?」

 

僕は思わず絶句をした。

恵衣菜の体がふらっ、と傾くと此方に倒れてきたのだ。

 

「恵衣菜!」

 

僕は恵衣菜が床と衝突する寸前のところで、恵衣菜を受け止めた。

椅子が倒れる音と僕の声で辺りの人は僕たちの方を見てきた。

 

「恵衣菜大丈夫!?恵衣菜!」

 

「あ・・・・・・・あき・・・・・・ひ・・・・さ・・・・・・くん」

 

「良かった、意識はある」

 

僕は恵衣菜の意識があることを確認すると少し安堵した。

恵衣菜のおでこを触るとものすごく熱かった。

ただの熱じゃないことは確かだ。

 

「恵衣菜、すごい熱。どうして」

 

「ご・・・・・・・めん・・・・・・黙っ・・・・・・てて」

 

「とにかく今は早く保健室に連れていかないと!」

 

僕がそう思っていると、足音をカツカツと立たせて一人の男性教師が来た。このクラスの振り分け試験の担当教師だ。

 

「吉井!さっさと席に座れ!・・・・・姫宮、体調が悪いなら保健室に行くか?但し、途中退席は無得点扱いとなるがそれでもいいか?」

 

僕はこの教師の物言いにカチンと来た。

第一今はそんなこと言ってる場合じゃないのに。

 

「今はそんなこと言ってる場合じゃないと思いますけど!早く保健室に連れていかないと」

 

「吉井、お前には聞いていない。黙ってなさい」

 

「なっ!?」

 

「どうする姫宮」

 

「・・・・・・・たい・・・・・せき・・・・・します」

 

恵衣菜は苦しそうになんとか答える。

 

「恵衣菜」

 

「それではさっさと行きなさい」

 

「はっ!?」

 

僕は今この教師の言った言葉に対して聞き返した。

 

「まさか恵衣菜をこのまま一人で行かせるんですか!?」

 

「当然だろ」

 

「ふざけないで下さい!恵衣菜は体調を崩しているんですよ!一人で行けるはずが無いでしょう!誰か手を貸さないと」

 

「くどいぞ吉井!お前は早く席に着け!」

 

「大・・・・・・・丈夫・・・・・だよ・・・・明久・・・・・くん・・・・・・だから・・・・・明久くん・・・・・は・・・・・・席に・・・・・着いて・・・・」

 

「でも恵衣菜!」

 

「大丈夫・・・・・・・なんとか・・・・・なると思う・・・・・・から・・・・・」

 

「!?危ない!?」

 

一人で保健室に行こうとした恵衣菜は立ち上がると、足元が覚束無いのかフラフラとしていた。

 

「恵衣菜、僕も一緒に行くからね!」

 

「吉井、いい加減にしろ!お前も無得点にするぞ!」

 

僕はこの教師の言葉にいい加減に頭にきていたのか、

 

「なら僕のも無得点にしたらどうです?僕は無得点か恵衣菜だったら恵衣菜の方を選びます。それに・・・・・・・・貴方のような最低な教師は教師ではない!」

 

低く目の前にいる教師に軽く殺気を込めた目で睨み言った。

 

「くっ・・・・・・・」

 

僕の殺気で怯んだのか目の前の教師は何も言えなかった。

 

「吉井明久退席します!」

 

僕は恵衣菜を抱っこ。正確にはお姫様抱っこで抱え保健室に校則に触れない速度で向かった。

 

~明久side out~

 

 

~雄二side~

 

俺の名は坂本雄二。文月学園に通っている高校生だ。

今は振り分け試験の最中なんだが同じクラスで受けていた生徒が倒れたみたいだな。

チラリと後ろを見ると、そこには教師と言い争っている男子生徒がいた。そしてその男子生徒の腕の中には顔を真っ赤にしていかにも体調が悪そうな女子生徒がいた。

 

『まさか恵衣菜をこのまま一人で行かせるんですか!?』

 

俺は言い争っている男子せいとを見た。

 

「ん。明久じゃないか。・・・・・・・なるほどな」

 

俺は親友・・・・・・と言うよりか悪友の一人である明久の腕の中にいる女子生徒を見た。

その中には明久の幼馴染みの姫宮恵衣菜がいた。

 

『当然だろ』

 

俺はあの教師の言ったことにはっ?、と思った。

それでも教師かよ。普通体調が悪い生徒を一人で行かせるか?

 

『ふざけないで下さい!恵衣菜は体調を崩しているんですよ!一人で行けるはずが無いでしょう!誰か手を貸さないと』

 

明久は教師に反発している。

その場の誰もが明久の事が正しいと思っているだろう。

ただ一人、あの教師を除いては。

姫宮が一人で出ていこうとするが足元が覚束無いのかフラフラとし、やがてバランスを取れずに倒れてしまった。

 

『恵衣菜、僕も一緒に行くからね!』

 

『吉井、いい加減にしろ!お前も無得点にするぞ!』

 

『なら僕のも無得点にしたらどうです?僕は無得点か恵衣菜だったら恵衣菜の方を選びます。それに・・・・・・・・貴方のような最低な教師は教師ではない!』

 

明久の言葉に俺は一瞬すごい寒気が襲った。

言動から明久はかなり怒っていたのだろう。

 

『吉井明久退席します!』

 

そう言うと明久は姫宮を抱えて出ていった。

後には明久の殺気で動けないものがいくばかりかいた。

 

『くっ。あの学園のハジめ』

 

はっ?おい、あの教師今なんて言った。明久の事を学園のハジって言ったか?

俺は教師が言った台詞を聞き逃さなかった。

 

『観察処分者の分際でこの私に・・・・・ああ、あのバカのせいで私の担当クラスから二人も退席者が出てしまったではないか』

 

教師の物言いに俺はかなりムカついていた。

だが、ここで手を出すと明久と姫宮が苦労すると判断し、多少ムカついて震えている拳を納めた。

 

「あの二人のために俺も協力してやるか」

 

俺は机の上にある振り分け試験用紙を見て点数を調節することにした。

あの二人は無得点扱いでFクラスに配属になるだろう。だから俺はFクラスの代表レベルの点数に調節し、答案用紙を提出した。

 

~雄二side out~

 

 




初めはここまで、ではまた次回にお会いしましょう


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1st Season 第Ⅰ章 試験召喚戦争編
第Ⅰ問 クラス分け


自分で書いていてやっぱバカテスは面白いなあ~、と思ってしまいした。
これから頑張って書いていきますのでよろしくお願いいたします。


振り分け試験から数週間後。

僕は幼馴染みであり大切な人である恵衣菜と、妹の吉井零華と一緒に文月学園へ向かう坂道を登っていた。

 

「今日から新学期か~」

 

「兄様は本当のんきですね」

 

「そう言う零華だって楽しみで仕方ないんじゃない?」

 

「そ、そんなことはありません」

 

「ふふふ、呂律が上手く回ってないよ零華ちゃん」

 

「そんな恵衣菜さんはどうなのですか?」

 

「え?私?私はちょっと、ね」

 

「そう言えば僕も恵衣菜も無得点扱いだからFクラスなんだっけ」

 

「うっ・・・・・・・・・ごめんね明久くん」

 

「いいって。それにテストの点数よりも恵衣菜の方が大事だから」

 

「明久くん///////」

 

「恵衣菜////////」

 

「あー。あのお二人さん出来ればこんな場所で桃色空間出すの止めてくれませんか?」

 

「「はうっ!////////」」

 

「やれやれ」

 

零華に呆れられながらも僕たちは歩いていく。

しばらく歩いていく目的地の学校。文月学園に着いた。

校門には鉄人こと西村先生が立っていた。

 

「おはようございます、鉄じ・・・・・・・・西村先生」

 

「「おはようございます西村先生」」

 

「おう。おはよう吉井兄妹、姫宮。ところで吉井兄」

 

「なんですか西村先生?」

 

「さっき俺のことを鉄人と言わなかったか」

 

「気のせいですよ」

 

「そうか。まあ、そう言うことにしておこう」

 

「ところで西村先生はなんでここに立っているんですか?」

 

「む?ああ、これを渡すためだ吉井妹」

 

そう言うと西村先生は僕たちに一通ずつ封筒を渡した。

 

「これって確かクラス分けの結果が入ってるやつですよね」

 

「ああ、その通りだ」

 

「でもなんでこんなめんどくさいことするんです?」

 

「まあ、本来なら大きな紙に提示するんだがな、ここは世間から注目を集めている試験校だから仕方ないとしか言えないな」

 

「へぇー」

 

僕たちは封筒の中身を開けた。

中には一枚の折り畳まれた紙が入っていた。

 

「やったAクラスだ!」

 

「え!零華ほんとう!」

 

「うん、ほら!」

 

僕と恵衣菜が確認すると確かに紙には、

 

『吉井零華 Aクラス 主席』

 

と書かれていた。

 

「しかも代表って」

 

「頑張ったね零華ちゃん」

 

「うん」

 

「おめでとう吉井妹。代表としてこれから頑張れ」

 

「はい。ありがとうございます西村先生」

 

「あと吉井兄、姫宮。すまないな」

 

「え?」

 

「西村先生なんで謝るんですか?」

 

「本来なら、お前たち二人がそのクラスに配属されるべきじゃないのだが・・・・・・俺たちも学園長に掛け合ったが学園長も至極難しい顔をして変えられないと言ったんだ」

 

僕と恵衣菜は封筒の中の紙を取り出して見た。

 

『吉井明久 Fクラス』

 

『姫宮恵衣菜 Fクラス』

 

「大丈夫ですよ西村先生。こうなることが分かって退席したんですから」

 

「そうか・・・・・・すまないな二人とも」

 

「いえ。それでは私たちはこれで失礼します」

 

「ああ」

 

「あ。西村先生、学園長は今いますか?」

 

「ん?学園長なら学園長室にいると思うが?」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

僕たちは西村先生に挨拶をして昇降口に向かい履いていた靴から上履きに履き替えた。

 

「それじゃあ先に学園長室に行くか」

 

僕たちはそのまま学園長室に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

"コンコン"

 

「入りな」

 

扉をノックすると部屋の中から返事が返ってきた。

 

「失礼します」

 

僕を先頭に恵衣菜、零華が学園長室に入った。

 

「来たね。3人とも」

 

目の前にいるのはこの学園の長である藤堂カヲル学園長だ。初対面の人からしたら妖怪だと思われるが決してそんなことはない。

 

「さてとまずは吉井兄と姫宮。すまなかったね。ほんとうなら二人にはもう一度振り分け試験を受けてほしいがそうもいかなくてね」

 

「いえ。それは十分承知しています」

 

「ええ。体調を崩して退席してしまったのは私ですから」

 

「ほんとにすまないね。後、吉井妹」

 

「はい」

 

「吉井夫婦がいないが大丈夫かい?」

 

「ちょっと待ってください学園長!夫婦ってなんですか!?」

 

「ん?いや、吉井兄と姫宮はどう見ても夫婦だろう」

 

「ふ、夫婦///////」

 

「あはははは・・・・・・」

 

「まだ、僕と恵衣菜は結婚してませんよ!」

 

「アハハ、そうかいそうかい。でもいずれは結婚するんだろう?」

 

「そ、それはそうですけど・・・・・」

 

「ならいいさね。それで吉井妹大丈夫かい?」

 

「はい。兄様と恵衣菜さんは少々心配ですが頑張ります」

 

「うむ。あー、そうだ、吉井兄」

 

「はい、なんですか?」

 

「お前さんの召喚獣のことなんだがね」

 

「もしかしてまだ装備が出来てないとか?」

 

「ああ。まあ、そうなんだがね。下手したら武器の方が壊れちまいそうでね」

 

「「ああ~」」

 

「なんで恵衣菜も零華も納得したかのように首を振るのさ!」

 

「それで、お前さんの召喚獣をちょっと特別製にしてみたさね」

 

「特別製、ですか?」

 

「そうさね。いや、正確にはここにいる3人。吉井兄妹と姫宮の召喚獣さね」

 

「どういう意味ですか学園長」

 

「いや、お前さんたちの点数があまりにも高すぎてシステムがオーバーヒートしそうなのさ」

 

「なるほど、それですこしでも処理を軽くしようと」

 

「大体合ってるさね。一応3人のには本来あり得ないんだが、腕輪が2つ、武器が二種類つくことになっているさね」

 

「分かりました。武器は此方で考えてもいいですか?」

 

「もちろん構わないさね」

 

「ありがとうございます」

 

学校に早く来たため幸いにもHRまではまだ余裕がある。

恵衣菜と零華と話し合い相談した結果。

僕は双剣と二丁銃と、恵衣菜は細剣と弓、零華は槍と魔導書を選択し学園長に伝えた。

 

「これでよし。今から3人の召喚獣の調整に入るからもし試召戦争が行うようなら真っ先に伝えな」

 

「分かりました」

 

「それじゃあ吉井兄以外は退室して構わないよ。吉井兄には後少し伝えることがあるさね」

 

学園長がそう言うと恵衣菜と零華が部屋から退室した。

 

「さてと、吉井。お前さん、大丈夫なのかい?Fクラスで」

 

「僕が望んだことですから。それに恵衣菜一人だけFクラスに行かせるよりは良いです」

 

「そうかい。それとあの時の教師は退職させたから安心しな。それとなんかあったらすぐに西村先生とかに伝えな」

 

「分かりました。あの二人にも伝えておきます」

 

「ああ。頼んだよ、第2学年序列第一位」

 

「はい!失礼しました」

 

僕は元気よく返事をすると学園長室から退室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

~学園長side~

 

「さてと、それじゃ始めようとするさね」

 

私は机の上に置いてあるパソコンの電源を入れ、試験召喚システムに入り操作した。

 

「にしても今年の2年生はスゴいやつばかりさね。序列第一位と第二位の吉井夫婦に三位の吉井妹。四位の霧島に五位の坂本、でもま、坂本は何故かFクラスに行っちまったがね。理由はなんとなくわかるさね」

 

私は呟きながらパソコンを操作する。

 

「よし。これで完了さね。腕輪は召喚してみないと分からないが、あの3人なら大丈夫だろう。頑張るんさね3人とも」

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室を出ると恵衣菜と零華が待っていた。

 

「お待たせ二人とも。行こうか」

 

僕たちは階段を上がり二年生フロアの三階に来た。

そして目の前に広がる光景に呆気に取られていた。

 

「え~と・・・・・・・・」

 

「これがAクラス・・・・・・・・?」

 

「なんか無駄にお金使ってるような・・・・・・・」

 

上から零華、僕、恵衣菜の順に目の前に広がるAクラスを見てそう言った。

Aクラスの面積は普通のクラスの4倍はあるだろうと言う広さだ。これを見て固まるなって言われてもそれは無理だろう。

 

「広すぎだろ・・・・・・・・」

 

「それじゃあ放課後迎えに来るね」

 

「うん。兄様と恵衣菜さんも気をつけてください」

 

「ありがとう零華ちゃん」

 

零華は僕と恵衣菜に手を振って言うとAクラスに入っていった。

 

「それじゃあ僕らもFクラスに行こうか」

 

「ええ」

 

そのまましばらく歩いていくとFクラスの掛札が見えた。

そして、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

Fクラスを見て僕たちは言葉を失った。

 

「ねえ、恵衣菜。僕たちはまっすぐここに来たよね?」

 

「ええ」

 

「なのになんでここにこんな古ぼけた山小屋があるのかな?」

 

「さあ?でもFクラスって書いてあるよ」

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

「取り敢えず入ってみようか」

 

「そうね」

 

そして僕は扉の取っ手に手をかけ扉を開けた。

これから僕と恵衣菜が1年間学ぶ教室に。




どうでしたか?
よろしければ感想などお願いします。


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第Ⅱ問 自己紹介Aクラス編

今回はAクラスでの自己紹介です。


~零華side~

 

兄様と恵衣菜さんと別れると私は目の前の教室。Aクラスに入った。

 

「ここはどこのホテルよ・・・・・・」

 

私は教室の中に入ると咄嗟にそう口走った。

まあ、それもそのはずである。何故なら中はまるで高級ホテルのロビーのような感じだったからだ。

 

「ええ~と、私の席は・・・・・・・あそこね」

 

私は自分の机を見つけ椅子に座った。

 

「うわっ。これリクライニングシート?普通の学校にはないわよね」

 

Aクラスの設備はリクライニングシートに巨大プラズマディスプレイ(しかも新型)個人冷暖房設備、冷蔵庫完備等々普通はあり得ない物ばかりです。

私が一人このクラスを見て呆気に取られていると、

 

「・・・・・・・おはよう、零華」

 

「あ、翔子ちゃん。おはよう」

 

友達の霧島翔子ちゃんが話し掛けてきた。

 

「・・・・・・・うん。あれ、明久と恵衣菜は?」

 

「あー、兄様と恵衣菜さんはFクラスだよ」

 

「・・・・・・・Fクラス?雄二と同じ?」

 

「え!?坂本くんFクラスなの?」

 

「・・・・・・うん。やりたいことがあるからって」

 

「へえ。・・・・・・もしかして兄様と恵衣菜さんと関係あるのかな?」

 

「・・・・・・・?・・・・・・明久と恵衣菜と?」

 

「うん。実は・・・・・・・・・」

 

坂本くんがFクラスに行ったであろう理由を翔子ちゃんに説明した。

 

「・・・・・・だから明久も恵衣菜もFクラスなんだ」

 

「うん。学園長先生もどうにかしたかったみたいだけど、出来なかったんだって」

 

「・・・・・・・なるほどね」

 

と、翔子ちゃんと会話していると。

 

「おはよう、代表、零華」

 

同じく友達の木下優子ちゃんが声を掛けてきた。

 

「あ、優子ちゃん。おはよう」

 

「・・・・・・おはよう優子。あと、代表は私じゃない、零華」

 

「あ、やっぱそうだったんだ」

 

「・・・・・・?」

 

「いや、明久くんと恵衣菜がいないから二人のどっちかと思ったから、なんとなく」

 

「・・・・・・なるほど」

 

3人でそのあとも会話しているとあっという間に時間が過ぎ、

 

「HRを始めます。席に着いてください」

 

Aクラス担任の高橋女史が入ってきた。

私たちはそれぞれの席に着席し高橋先生の方を見た。

 

「皆さん進級おめでとうございます。Aクラスを受け持ちます高橋洋子です」

 

そう言うと高橋先生は後ろの巨大プラズマディスプレイに自分の名前を写した。

 

「設備の確認をします。リクライニングシート、ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫。その他不備のある方は挙手してください」

 

 

いやいや高橋先生、流石にこれで不十分って言う人いないと思いますけど。

 

 

「それでは自己紹介をしてもらいます。そうですね、出席番号順にお願いします」

 

高橋先生の声で出席番号順に自己紹介が始まりました。

 

「・・・・・霧島翔子です。よろしくお願いします」

 

みじかっ!翔子ちゃん短いよ!

 

「木下優子です。これから1年間よろしくお願いします」

 

う~ん、優子ちゃんも相変わらずね。

 

「1年の終わりに転入してきた工藤愛子です。好きな食べ物はシュークリームで特技はパンチラです。スリーサイズは上から・・・・・・「愛子ストップ!」・・・・・・やっぱなんでもないで~す。よろしくお願いします」

 

ぶほっ!誰、こんな変な人!?自己紹介でこんなこと言う人初めて見ました。

 

「久保利光です。よろしくお願いします」

 

あ、久保くんもAクラスだったんだ。

 

とそんな感じで自己紹介が進んでいき、残りは私一人になりました。

 

「最後に吉井零華さん。お願いします」

 

「はい」

 

「吉井さんはAクラスのクラス代表でしたね」

 

「ええ~と・・・・・はい、一応」

 

本当なら主席は兄様か恵衣菜さんなんですけどね。

 

「え~と、Aクラスの代表になりました吉井零華です。クラス代表になったからには精一杯頑張るつもりです。これからよろしくお願いいたします」

 

私は自己紹介を終えると席に着席しました。

 

兄様と恵衣菜さん大丈夫でしょうか?坂本くんがいるみたいですけど。ちょっと心配ですね。

 

そんなこと思いながら前を見ていると、

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

『えー、2年Fクラス対2年Eクラスの試召戦争が行われます。全教員は至急職員室に集合してください。 繰り返します。2年Fクラス対2年Eクラスの試召戦争が行われます。全教員は至急職員室に集合してください』

 

"ピンポンパンポーン"

 

「えー、と言うことらしいので今日は自習にします。何かありましたら職員室に来てください」

 

そう言うと高橋先生はAクラスから出ていった。

 

「始まったね・・・・・・」

 

私は放送で流れた試召戦争にそう口ずさんだ。

 

「・・・・・零華、これって」

 

「うん。恐らく坂本の狙いこれだね」

 

「・・・・・雄二らしい」

 

自習になると分かると私のところに翔子ちゃんがやって来た。その後ろには優子ちゃんと久保くん、佐藤美穂ちゃんと変な自己紹介をした工藤愛子さんがいる。

 

「え~と、あなたは確か工藤愛子さん。ですよね」

 

「そうだよ~。あ、ボクのことは気軽に愛子でいいよ~」

 

「じゃあ、愛子ちゃんで」

 

「うん。よろしくね零華」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「それにしても坂本くんだけじゃなくて吉井くん、姫宮さんまでFクラスとわね」

 

「ええ。久保くんの言う通り驚きました」

 

「ううん。あと一人いるよFクラスにAクラス並みの人」

 

「・・・・・零華それって?」

 

「うん。翔子ちゃんの思っている通り、もう一人は姫路瑞希だよ」

 

「え!?姫路さんもFクラスなのかい?」

 

「恐らくね。Aクラスに姫路瑞希がいないと言うことはさっき確認したから。多分振り分け試験の時出られなかったんじゃないかな」

 

「なるほど。ところで零華さんはなんで姫路さんの事を姫路瑞希とフルネームで言ってるんですか?」

 

「あー。美穂それにはちょっと色々あるのよ」

 

「?」

 

「大丈夫よ優子ちゃん。私が説明するわ。・・・・・・・美穂ちゃん、私の兄様のことは知ってる?」

 

「零華さんのお兄さんと言うと明久さんのことですね」

 

「うん。そして兄様を虐めていたのが姫路瑞希よ」

 

「え!?」

 

「あとは確か帰国子女の島田美波とFFF団って名乗っている集団ね」

 

「そんな・・・・・」

 

「ごめんなさい。一応、翔子ちゃんや優子ちゃん、久保くんは知っているわ」

 

「そうだったんですか・・・・」

 

「・・・・・うん。明久は私と雄二の恩人。それに明久の恋人の恵衣菜は私たちの親友だから」

 

「わたしも弟の秀吉から聞いていたからね」

 

「僕も聞かされていたからね。吉井くんが危ないときは助けようと誓ったんだ。彼には色々助けてもらっているからね」

 

「ボクは初めて聞いたけど、それは許せないな。零華、ボクも協力するよ!」

 

「わ、私も協力します!明久さんや恵衣菜さんには一杯助けてもらってますから」

 

「ありがとう、愛子ちゃん、美穂ちゃん」

 

兄様。兄様の行動がこんなに沢山の人を動かしているんですね。流石私の兄様です!恵衣菜さん、兄様のことお願いします。

 

~零華side out~




次回、自己紹介Fクラス編

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第Ⅲ門 自己紹介Fクラス編

今回は自己紹介Fクラス編です。
そして試召戦争へ繋がる話。

それではどうぞ!


"ガラッ!"

 

古ぼけた扉を開け教室の中に入ると、

 

「よお、明久」

 

目の前の教卓に一人の男子生徒が立っていた。

赤髪でツンツン立っている髪の毛の持ち主だ。

 

「・・・・・・・雄二、何やってんの?」

 

そして僕たちの友人でもある。

教卓に立っている男子生徒の名は坂本雄二。まあ、僕の悪友だ。そして第二学年序列第五位の成績の持ち主でもある。

 

「ん?一応、俺がこのクラスの代表らしいからな」

 

「へぇー」

 

「あれ、坂本くん?どうしてここにいるの?Aクラスじゃないの?」

 

「おお、姫宮か。風邪はもう治ったのか?」

 

「ええ。明久くんに看病して貰ったから」

 

「ほーう。明久に、ねー」

 

「うっ//////」

 

「あはは・・・・・・」

 

「それより雄二、霧島さんには話したの?」

 

「ああ。翔子には、やりたいことがある、って言って納得してもらった」

 

「え?それだけ」

 

「ああ。だけど後で慰めたりするのが大変だったけどな」

 

「あー・・・・・・・・お疲れ様」

 

「サンキュー明久」

 

「ところで坂本くん。私たちは何処に座ったら良いのかな?」

 

「ん。ああ。別に席は決まってないから好きなところに座っていいみたいだぞ」

 

「そうなんだ。ありがとう坂本くん」

 

僕と恵衣菜はまだ人の少ない教室に入り後ろの窓際近くに座った。恵衣菜が窓際で僕がその右隣だ。

 

「おお、明久。お主もFクラスじゃったのじゃな」

 

席に着くと前の席の生徒が振り返って見てきた。

 

「あ、秀吉おはよう」

 

振り返って見てきた生徒は雄二と同じく僕たちの友人。木下秀吉だった。

双子の姉に木下優子さんがいるが、二人は鏡に写したかのようにそっくりだ。

そして秀吉は男子である。よく女子と間違われるが間違いなく男子だ。

 

「木下くんおはようございます」

 

「うむ。おはようじゃ姫宮」

 

「秀吉もFクラスだったんだね」

 

「うむ。演劇ばかりやっておったからの。勉学の方は余りしておらんかったのが仇となったの」

 

「ふふ。木下くんらしいですね」

 

「ところで何故お主らはFクラスなのじゃ?」

 

「ああ、実は・・・・・・」

 

僕は振り分け試験での事を説明した。

 

「なるほどのう。それでFクラス」

 

「うん。そういうわけなんだ」

 

「二人は災難じゃったの。特に姫宮はそうじゃろうな」

 

「ううん。私より明久くんの方が災難だよ。私のせいでAクラスにいけなかったんだから」

 

「もお。恵衣菜はまたそれを言って。恵衣菜、僕は恵衣菜一人でFクラスに行くなら僕もついて行くからね」

 

「明久くん」

 

「・・・・・・おほん。二人ともここでそういうのはちょっとやめてほしいのじゃ」

 

「ご、ごめん」

 

「ごめんなさい」

 

その後秀吉を交えて話しているとあっという間に時間が過ぎHRの時間になった。

 

「えー、HRを始めます。設備を確認します。茶舞台と座布団。その他不備がある際は申し出てください」

 

「先生、俺の座布団に棉が入って無いんですけど?」

 

「我慢してください」

 

「先生、隙間風が吹いて寒いんですけど?」

 

「我慢してください」

 

「先生、卓袱台の足が折れたんですけど?」

 

「我慢してください」

 

「「いや、無理でしょ!」」

 

他生徒が不備を申し出るなか「我慢してください」の連続の先生の言葉につい、恵衣菜と突っ込んでしまった。

 

「ハハハ、冗談ですよ、後で木工用ボンドを支給しますので自分で直しといて下さい」

 

「さ、流石Fクラスだね。明久くん」

 

「う、うん。学園長、流石にこれは酷すぎますよ」

 

後でFクラスについて聞いておこう。

 

「えー、私がFクラス担任の・・・・・・・福原慎です、これからよろしく」

 

チョークすらないのかよ!

 

そう突っ込むと、

 

"バキィッ バラバラバラ・・・・・・"

 

教卓が崩れ壊れた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「替えを持ってきます。それまでの間みなさん自習をしていてください」

 

そう言うと福原先生は教室から出ていった。

 

「ここは学校だよね、恵衣菜」

 

「明久くん、現実から目を背けたい気もわかるけど・・・・・ここは学校よ」

 

「「ハァー・・・・・・不安だ(ね)」」

 

僕と恵衣菜がそう思っていると福原先生が新たな教卓を持って戻ってきた。

 

「えー、それでは廊下側から自己紹介をお願いします」

 

廊下側からどんどん自己紹介が始まって言った。

クラスメイトの中には須川くんや横溝くんの姿があった。あの二人とは中学からの知り合いだ。

 

「・・・・・・・土屋康太」

 

今度も僕の友人の1人、土屋康太だ。

彼はムッツリーニと言う二つなで有名だ。

 

「ーーーーーです。趣味は・・・・・・」

 

ん?こ、この声は・・・・

 

「趣味は吉井明久を殴ることです☆」

 

声の発生元を見ると一人の女子生徒がいた。

 

やっぱり島田さんか。彼女の名は島田美波、ドイツ帰りの帰国子女だ。1年時仲はそれなりに良かったがいつの頃からか僕によく暴力をして来るようになり、僕が苦手な人の一人だ。正直余り話したくない。

隣を見ると恵衣菜がやや殺気を出していた。

 

「ハロハロー吉井♪」

 

「・・・・・・・・」

 

「ちょ、吉井!無視するな!」

 

何か言っているが今は恵衣菜を宥めるのが先だ。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。よろしく頼むぞい。言っておくがワシは男じゃ!」

 

あ、このパターンは・・・・・

 

「恵衣菜、耳塞いだほうがいいよ」

 

「わかった」

 

僕と恵衣菜が同時に耳を塞ぐと、その瞬間。

 

『『『『な、なに~~~!?』』』』

 

クラスメイトたちが騒いだ。

よく見ると雄二や康太、須川くん、横溝くんも耳を塞いでいた。

その後何か言っているが耳を塞いでいるために聞こえない。と言うか大体言っていることが分かるので無視をしている。

そして恵衣菜の番がやって来た。

 

「姫宮恵衣菜です。よろしくお願いします。後、明久くんに何かしたら・・・・・・・・本気で叩き潰すのでそのつもりで♪」

 

「ちょ、恵衣菜!」

 

何故か恵衣菜はクラスメイトの連中に(一部を除く)殺気を軽く飛ばして言った。

 

「だって・・・・・」

 

「っ・・・・・わ、わかったから。ありがとう恵衣菜」

 

「えへへへへ//////」

 

「ちょっと吉井!なんでそんな女の頭なんか撫でてるのよ!」

 

島田さんが騒ぎ立てるがこれもまた無視する。

恵衣菜が終わり次は僕の番だ。

 

「吉井明久です、よろしくお願いします。後、僕の身内に何か手を出したら・・・・・・・・全力で潰すから」

 

と、僕もクラスメイト(一部を除く)に殺気を飛ばして挨拶した。

これじゃあ僕も恵衣菜の事言えないね。

 

「ありがとうございます。それでは次に・・・・・・・「あの、すいま、せん、遅れ、ました」・・・・・・・ちょうどいい所に来ましたね。貴女もそのまま自己紹介をしてください」

 

「は、はい」

 

突如入ってきた女子生徒もこれまた僕の知ってる人で苦手な人だ。

 

「姫路瑞希です。よろしくお願いします」

 

そう、彼女の名は姫路瑞希。僕が苦手としている人の一人だ。理由は、よく僕に島田さんとともにオシオキと称して暴力を振ってきたりするからだ。昔はそこまで苦手では無かったんだけどね。

 

「あのー、質問いいですか?」

 

「あ、はいなんでしょうか?」

 

「何でここにいるんんですか?」

 

「えっと、試験の日に熱が出てしまって・・・・・」

 

クラスメイトからの当然の質問に彼女は普通に返した。

熱が出てしまいテストに受けられなかった=無得点=Fクラス配属。となったらしい。

 

「ハアー、鬱だ」

 

「だ、大丈夫明久くん?」

 

「うん。なんとか」

 

「無理しないでね」

 

「ありがとう恵衣菜」

 

若干鬱になっていた僕に恵衣菜が気遣いをしてくれたお陰でなんとか治った。

正直恵衣菜がいなかったら倒れていたかもしれない。

ちなみに今はまた自己紹介が止まっている。

何故なら、また教卓が壊れたためだ。

教卓壊れるの速すぎでしょ!としか言えない。

その間、秀吉と康太は廊下で雄二と話していた。

そしてまたまた新しい教卓を持って戻ってきた福原先生と同時に教室に入ってきた。

 

「それでは坂本くん、君が最後です。確か坂本くんはFクラス代表でしたね」

 

そう言うと福原先生は雄二に教卓の前で挨拶するように言った。

 

「クラス代表の坂本雄二だ。まあ好きなように呼んでくれ。ところで諸君、AクラスとFクラスを比べた上で質問だが・・・・・・・不満はないか?」

 

あ、また嫌な予感。

 

「恵衣菜、また耳塞いだほうがいいよ」

 

「え?わかった」

 

そして耳を塞ぐと同時に。

 

『『『『『『『『『おおありじゃあ!!!!』』』』』』』』』

 

クラスメイトの絶叫が響き渡った。

絶叫が響き終わると、僕と恵衣菜は手で塞いでいた耳を離した。

 

「だろう。俺も代表として問題視している」

 

「そうだそうだ!」

 

「いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する!」

 

「そもそもAクラスだって同じ学費だろ?あまりに差が大きすぎる」

 

堰を切ったかのように次々と不満の声が上がる。

まあ、僕もこの設備はどうかなと思うけどね。

 

「みんなの意見はもっともだ。そこで・・・・・・・我らFクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う!」

 

雄二の言葉にクラスメイトの殆どが、

 

『勝てるわけない』

 

『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』

 

『姫路さんや姫宮さんがいたら何もいらない』

 

『愛してます姫宮さん』

 

と予想通りの反応を返していた。

て言うか誰だ最後の台詞言ったの!見つけたら後でしばく!

 

 

 

ここで『試験召喚戦争』通称『試召戦争』について説明しよう。

 

『試験召喚戦争』とは『召喚獣』を用いたクラス単位の戦争だ。科目は数学、英語、化学、物理、古典、現代国語、保健体育、現代社会、家庭科、日本史、生物、世界史、地学そして総合科目の全14科目によって行われ、テストの点数に応じた強さを持つ『召喚獣』を教師の立ち会いのもと呼び出すことが出来る。

点数の補充は回復試験を受けることにより可能。ただし点数が0点になった場合は戦死とし補修室にて戦争終結まで補修を受ける義務がある。

なお、戦争勝利クラスは互いの設備を交換することが出来る。ただし、逆に負ければ3ヶ月間の『試召戦争』の申し込み権の剥奪、上位クラスに負けた場合これに加え設備が1ランク下がる。下位クラスに負けた場合は設備を交換させられる。ただし設備交換は勝利クラスの任意で行われる。

 

以上がざっと説明した『試召戦争』のルールだね。

 

 

 

と、話を戻そう。

 

「落ち着け、俺が勝たせてみせる」

 

『何を馬鹿なことを』

 

『出来るわけないだろう』

 

『何の根拠があってそんなことを』

 

「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことの出来る要素が揃っている。その勝算を今から説明してやる。・・・・・・・・・おい康太、姫路と姫宮のスカートを覗いてないでこっちにこい」

 

「・・・・・・!!(ブンブン)」

 

「は、はわっ」

 

「え、ちょっ」

 

ほうほう。康太は恵衣菜のスカートの中を覗いていたんだ。

 

「康太、お話があるんだけどいいかな?」

 

「・・・・・・・・!!(ブンブン)」

 

「これに懲りたらあまり人のスカートの中を覗かないようにね」

 

「・・・・・・・・!!(コクコク)」

 

取り敢えず分かったようなので今日は見逃しておくことにしてあげた。

 

「あ、明久くんになら別に私は・・・・・」

 

「ケホッ!え、恵衣菜!?いきなり何言ってるの!?」

 

「よーーーしーーーい!!」

 

「吉井くん!!」

 

何処ぞの二人が騒いでいるが無視する。

 

「さてと、こいつがかの有名なムッツリーニだ。そして保健体育ではトップクラスの点数の持ち主だ」

 

「・・・・・・・!!(ブンブン)」

 

『ムッツリーニだと・・・・・・?』

 

『馬鹿な、ヤツがそうだと言うのか・・・・・・?』

 

『だか見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ・・・・・・』

 

『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ・・・・・・』

 

見ているこっちが突っ込み疲れた。

 

「姫路については言うまでもないだろう」

 

「えっ?わ、私ですかっ?」

 

「ああ、うちの主戦力だ。期待している」

 

『そうだ、俺達には姫路さんがついてる』

 

『彼女ならAクラスにも引けを取らない』

 

「さらに姫宮もいる!」

 

「わ、私ですか?」

 

「ああ。姫宮の実力はAクラスレベルだ」

 

『おおー』

 

『すごい、これなら』

 

『姫宮さん愛してます』

 

だから誰だ!さっきから恵衣菜にそんなこと言ってるヤツは!

 

「木下秀吉だっているし島田美波もだ。秀吉は演劇部のホープだ。そして島田は数学に関してはBクラス並のレベルを持つ」

 

『おおー』

 

『これなら行けるかもしれない』

 

『ああ。行けるぜ』

 

「当然俺も全力をだす」

 

『坂本って確か小学校のころ神童って呼ばれてたよな?』

 

『ってことはAクラスレベルの人が結構いるってことかよ』

 

『スゲー』

 

「それに吉井明久だっている!」

 

・・・・・・・シン――――

 

雄二の言葉にクラス全体の時が停滞した。

 

『誰だ吉井って?』

 

『そんなやついたかこのクラスに?』

 

先ほど自己紹介したばかりなのにもう忘れるとは。ある意味すごい、としか言えない。

クラスメイトの言葉にまたしても恵衣菜が暴走しそうになったため僕は恵衣菜の手を繋ぎ落ち着かせてあげた。

端から見たらいちゃつくカップルに見えるだろう。

実際姫路さんと島田さんはすごい顔で僕を睨んでいた。

 

「いいか、吉井明久は『観察処分者』だ。そのため明久の操作技術は教師と同レベル。いや、それ以上の強さを持っている!」

 

『おおー。これは行けるぞ!絶対にいける!』

 

『ああ。もしかしたらAクラスに勝てるかもしれない』

 

「そうだ!これだけの戦力が揃っているんだ、Aクラスを倒すぞ!」

 

『『『『『『おおーーっ!!』』』』』』

 

「我々は馬鹿だ!学年の最低位だ!」

 

『『『『『『おおーーっ!!』』』』』』

 

「とんでもないクズの集まりだ!」

 

『『『『『『おおーーっ!!』』』』』』

 

「つまりそれは、もう何も失うものは無いと言うことだ!」

 

『『『『『『おおーーっ』』』』』』

 

「全員筆を執れ!出陣の準備だ!」

 

『『『『『『おおーーっ!!』』』』』』

 

「俺達に必要なのは卓袱台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!」

 

『『『『『『うおおーーっ!!』』』』』』

 

「お、おー」

 

姫路さんもこれのノリになんとかついていってるみたいだ。

正直雄二の統率力はすさまじいと思う。

 

「やれやれ」

 

「アハハ」

 

「まず手始めに1つ上のEクラスを倒す。明久、Fクラス大使としてEクラスに宣戦布告を頼む」

 

「ん。わかった」

 

「あ、明久くん。私も一緒に行きます」

 

僕と恵衣菜は宣戦布告の為隣のEクラスに向かった。

幸いにも雄二の話に夢中になっているのかあの二人から特に言われることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Eクラス

 

「失礼します。Fクラスからの大使としてEクラス代表に伝えることがある。Eクラス代表はいるかな?」

 

「代表はわたしよ」

 

Eクラスの生徒の中から1人の女子生徒が出てきた。

 

「あ、 中林さんだったんだ」

 

「宏美ちゃん、Eクラスだったんだね」

 

「ん?って、明久君に恵衣菜じゃない。どうしたの?・・・・・って、ちょっと待って、今Fクラスって言った?」

 

「「うん」」

 

「二人ともなんでFクラスなの!?」

 

「あー、実は・・・・・・・」

 

 

 

 

〈事情説明中〉

 

 

 

 

「なるほどね。それでFクラスに」

 

「うん」

 

「それでFクラス大使として来たって言ったけど、何か用だったの?」

 

「えーと、じゃあ改めて。・・・・・・・我々FクラスはEクラスに『試験召喚戦争』を申し込む!」

 

「・・・・・・・・・マジかしら?」

 

「マジでだよ宏美ちゃん」

 

「・・・・・・・わかったわ。開戦時刻は何時からかしら?」

 

「午後1時からでいいかな?」

 

「わかったわ。お互い正々堂々と戦いましょ」

 

「もちろん」

 

「うん」

 

宣戦布告を終えFクラスに帰ろうとしたとき、

 

「おい待て!」

 

Eクラスの生徒に呼び止められた。

 

「え~と、何かな?」

 

「下位クラスの癖に調子にのるんじゃねぇ!」

 

どうやらFクラス=馬鹿の癖に試験召喚戦争を申し込まれたことがうざいらしい。

 

「・・・・・・ごめんなさい明久君。ちょっと相手してあげて」

 

「まあ、予想していたことだしね」

 

僕は中林さんに苦笑いを浮かべて返し恵衣菜を守るようにして立つ。

取り敢えず手っ取り早く終わらせて戻るとしますか。

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「戻ったか明久」

 

「うん。まあ、色々あったけどね」

 

「まあ、お疲れ様。それで、開戦時刻は何時にした?」

 

「今日の午後1時から。その方がいいでしょ?」

 

「まあな。よぉし、おい、お前達!Eクラス戦は午後1時からだ!それまでの時間それぞれ思うように過ごしてくれ!以上!」

 

雄二はそう言うと教卓から降り自分の席でノートに何か書き込み始めた。

 

「あ。後で学園長のところに行かないと。恵衣菜も行く?」

 

「そうね。明久くんのこと心配だし、私も着いていくよ」

 

「うん」

 

こうして新学期早々第2学年の試験召喚戦争が始まった。




次回:Fクラス対Eクラス

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第Ⅳ門 Fクラス対Eクラス

今回は遂に試召戦争勃発!
勝つのはどっちかな?


西村)遂にFクラス対Eクラスの試召戦争が開戦される。勝つのはどちらか・・・・・・・

 

 

 

~明久side~

 

 

学園長室

 

"コンコン"

 

「入りな」

 

「失礼します」

 

僕は一緒に来た恵衣菜とともに学園長室に来ていた。

学園長室にはAクラス担任であり学年主任の高橋先生がいた。

 

「来たね。吉井夫妻」

 

「ですから学園長、まだ僕と恵衣菜は結婚してません!」

 

「アハハ。それで用件はなんだい?」

 

「試験召喚獣の事とFクラスのことで来ました」

 

「ん?Fクラスのことで?」

 

「はい。あの学園長、Fクラスは元々どのような設備なのでしょうか?」

 

「ん。Fクラスの設備は確か畳に座布団、卓袱台の筈だよ。それがどうかしたさね?」

 

「では、教室の壁に皹が入っていたり窓ガラスが割れていたり教卓や支給品がボロボロなのは学園長の指示でしょうか?」

 

「「はい?」」

 

僕の言葉に学園長と高橋先生は同じ言葉を発した。

 

「それはつまり、Fクラス設備がそのような物だと」

 

「そうです高橋先生。まず、あれは教室とは考えられません」

 

「おかしいね。設備はともかく教室や支給品はちゃんとしたものを出しているはずさね」

 

「では、学園長の指示ではないと」

 

「当たり前さね。いくらアタシでも親から子供を預かっているんだ。生徒のことがまず第一に考えて当然だろう」

 

「ですが、学園長。序列第一位と第二位の吉井夫妻が嘘を言うとも限りませんし。ここは一回調べてみては」

 

高橋先生が僕と恵衣菜の事を『吉井夫妻』と言ったがもうツッコミ疲れたためあえて言わずにした。

ちなみに恵衣菜は夫妻と言われて待たしてもトリップしていた。

 

「そうさね。後で西村先生と一緒に調べてみるとするさね」

 

「ありがとうございます、学園長」

 

「構わないさ」

 

「あの、ところで高橋先生はどうしてここに?」

 

ようやくトリップから回復した恵衣菜が高橋先生に聞いていた。

 

「私はこれの許可を貰いに来たんです」

 

「それは・・・・・・・試召戦争の許可証」

 

「ええ。では学園長」

 

「ああ。まあ、新学期そうそう試召戦争を仕掛けるとはね。何時もなら呆れるところだが・・・・・・・今回はあんたたちがいるんだ、面白くなってきたよ」

 

学園長は机の引き出しから大きなハンコを持って、

 

「承認するよ」

 

高橋先生が渡した許可証にハンコを押し付けた。

許可証には大きく『承認』と赤い字で押されていた。

 

「ありがとうございます。それでは私はこれで失礼します」

 

そう言うと高橋先生は学園長室から出ていった。

 

「それで二人は召喚獣のことだろう?」

 

「「はい」」

 

「そう言うと思っていたさね。あんたたちと吉井妹の召喚獣の調整はバッチし出来ているさね」

 

「ありがとうございます。学園長」

 

「学園長、ありがとうございます」

 

「それじゃあ、二人とも頑張るんさね」

 

「「はいっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ

 

 

       キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

       試召戦争開始30分前

 

 

Fクラス

 

 

教卓で雄二がEクラス戦の説明をしている。

 

「さてEクラス戦の作戦会議をする。まず五時間目の授業に向う長谷川先生の確保だ。これは柴崎、近藤の二人がやってくれ」

 

『『了解』』

 

「雄二。長谷川先生ってことは、科目は数学ってこと?」

 

「数学ならウチが得意よ」

 

「そうだ。島田の得意な数学を主力として戦う」

 

「姫路さん、数学は得意?」

 

「苦手では無いです」

 

「なら姫路さんも一緒に戦えるわね♪」

 

「いや、駄目だ」

 

「どうしてよ坂本?」

 

「島田。一番最後に受けたテストが召喚獣の強さになる、そして俺達が最後に受けたテストは・・・・・」

 

「そうか、振り分け試験・・・・・」

 

「そうだ。試験に出ていない姫路を始めとして、明久と姫宮は途中退席で点数が無い。だが開戦すれば回復試験を受けることができる。まず明久、姫宮、姫路の3人は試召戦争が開始されたらすぐにこの、回復試験を受けてくれ」

 

「わかった」

 

「「分かりました」」

 

 

 

 

 

 

         開戦1分前

 

『『長谷川先生確保~!』』

 

そう告げる声が聞こえてきた。

そして、

 

 

       キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

開戦の鐘の音が鳴った。

 

「開戦だ!総員戦闘開始!」

 

「「「「「「「「「「おおぉぉ~~っ!!」」」」」」」」」」

 

開戦と同時に僕、恵衣菜、姫路さんは回復試験を受けるため別教室に向かった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

Eクラス

 

~中林side~

 

「まったく、新学期そうそう試召戦争とはね。でもあの二人がいる以上油断は出来ないわ・・・・・・・・総員出撃よ!Fクラスなんかとっちめてやりなさい!」

 

「「「「「「「「「「おおぉぉ~~っ!!」」」」」」」」」」

 

士気は上々あの二人が出てくる前に早く倒す。

私はそう考えた。

 

~中林side out~

 

 

 

 

回復試験会場

 

~明久side~

 

僕たちは点数を回復させるため回復試験の教室でテストを受けていた。

とは言っても、教室からでる際僕と恵衣菜は雄二からこう言われていた。

 

『明久は適当にテストを受けたらすぐ戻ってきてくれ。姫宮はテストを受けたら参戦しないでほしい』

 

と、だが、Eクラスの中林さんは既に僕と恵衣菜がいることを知っているはずなのだが。

僕は軽くテストを受けある程度書くと、試験監督の高橋先生に提出した。

姫路さんの方は物凄い速さで問題を解いている姿が見えた。

恵衣菜の方はそれより速く解いていた。

 

「吉井くん。終わりました」

 

「ありがとうございます、高橋先生」

 

高橋先生は何か言いたそうだったがここにはまだテストを受けている人がいるため何も言わないでくれた。

僕はそのまま補充試験会場を後にし、Fクラスへと向かった。

 

~明久side out~

 

 

 

西村)その頃、FクラスとEクラスの戦闘場所では

 

 

 

Fクラス、Eクラス前廊下

 

 

~秀吉side~

 

儂らが教室を出るのと同時にEクラスの連中も教室を出おった。

互いが相対した場所は、儂らのクラスメイトに縛られている長谷川先生を挟んだ両側じゃ。

 

「島田美波、行きます!」

 

「木下秀吉、参戦いたす!」

 

「・・・・土屋康太、同じく・・・・・!」

 

「承認します!」

 

いつの間に長谷川先生の縄が外れておったのじゃろうか?長谷川先生は承認すると長谷川先生を中心にフィールドが形成された。

 

「試験召喚獣召喚!試獣召喚(サモン)!」

 

島田の召喚で小さい島田が出てきた。

 

「・・・・・試獣召喚(サモン)!」

 

そして康太。ムッツリーニの召喚獣も現れる。

 

試獣召喚(サモン)

 

そして儂の召喚獣も現れるのじゃが・・・・・・

 

「何故儂だけ変身するのじゃ?」

 

何故か儂も変身した。ホント何故なのじゃ?

そして何故ムッツリーニはカメラを儂に向けてシャッターを切っているのじゃ?。

 

「行くわよ!」

 

島田の声に召喚獣を構える。

Eクラスの連中はそのまま突っ込んできたが召喚獣に阻まれ行けない。

 

「気を付けてください。生身の人間は通れませんよ」

 

それはつまり生身の人間ではなかったら通れると言うことなのじゃろうか?

 

「ここを通りたければウチらを倒していくことね」

 

「くっ・・・・・・・三上美子、受けます!試獣召喚(サモン)!」

 

Fクラス 土屋康太 25点

 

VS

 

Eクラス 三上美子 81点

 

「コイツ・・・・」

 

ムッツリーニに今しがた召喚した三上が攻撃を仕掛ける。

それによりムッツリーニの点数は5点引かれていた。

 

Fクラス 土屋康太 20点

 

VS

 

Eクラス 三上美子 81点

 

「そうはさせないわよ!」

 

Fクラス 島田美波 87点

 

VS

 

Eクラス 三上美子 81点

 

ムッツリーニと交代した島田が連続で攻撃し三上の点数を0にした。

 

Fクラス 島田美波 87点

 

VS

 

Eクラス 三上美子 0点 戦死

 

「そんなぁ~」

 

「数学だったらEクラスなんかに負けないんだから」

 

「戦死者は補修室に集合!」

 

と西村先生こと鉄人が何処からか現れた。

 

「あ、あれは・・・・」

 

「鉄人!」

 

「試召戦争のルールにのっとり点数が0になった生徒は補修を行う!」

 

「助けてぇぇ~、鬼の補修はイヤあぁぁぁ~・・・・」

 

鉄人は三上を担ぐとフィールドから立ち去っていった。

 

「ここを通りたければワシらを倒して行くのじゃ!」

 

儂がそう言うと、

 

「そう。ならそうさせてもらうわ」

 

確かEクラス代表の中林宏美が前に出てきて召喚獣を召喚した。

それにつられて後ろのEクラスも全員召喚したのじゃ。

 

~秀吉side out~

 

 

 

~明久side~

 

「雄二、戻ったけど大丈夫なの?」

 

「明久か。戦況は以下の通りだ」

 

「え~と、何々・・・・・・・・なるほど」

 

「わかったか?」

 

「まあね。でもこれ押しきられたらヤバイんじゃないの?」

 

「まあ、そのときは姫路が戻ってくるまで明久。お前が時間を稼いでくれ」

 

「はいはい・・・・・・「大変!押しきられる~!」・・・・・・ってええー!」

 

廊下から聞こえた島田さんの悲鳴に僕は驚いてしまった。

幾らなんでも早すぎない!?

 

 

F、Eクラス廊下前

 

~秀吉side~

 

まずいの。徐々に押され始めたのじゃ。島田も点数が少なくなってきておるし。

儂らも本気ではないとはいえこの点数の差はさすがに・・・・・

 

「くっ、点数が・・・・・」

 

「お主は下がって回復試験を受けるのじゃ!」

 

「わかったわ!」

 

島田が儂と交代し回復試験を受けに行った。

 

「ムッツリーニ、まだ行けるか?」

 

「・・・・・なんとか」

 

「うむ。ここは何としても死守するぞい」

 

「・・・・・・わかってる」

 

さて何時まで持つことが出来るかのう?

 

~秀吉side out~

 

 

~明久side~

 

「どうやら島田は回復試験に向かったようだな」

 

「そうみたいだね」

 

「そろそろEクラスの連中も来るか」

 

「・・・・・・ところで雄二」

 

「なんだ明久?」

 

「どうして恵衣菜を出さなかったの?」

 

「ああ。姫宮を出さなかった理由は単純にまだ他クラスに知られたく無いからだ。と言ってもEクラスとAクラスにはバレてるけどな」

 

そりゃそうだろう。Eクラスには僕と一緒に宣戦布告しに行ったしAクラスには零華がいるしね。雄二には零華がAクラス代表だと言うことは伝えてない。

何故伝えてないかと言うと・・・・・・・・・・・その方が面白いからだ。

 

「ん?僕はいいの?」

 

「お前は『観察処分者』としての方が有名だからな」

 

「なるほどね・・・・・・」

 

そんな会話をしていると、防衛線が破られEクラスの人達がFクラスになだれ込んで来た。

どうやら秀吉たちはやられてしまったようだ。

 

「来たみたいだよ雄二」

 

「・・・・・・みたいだな」

 

「どうもFクラス代表さん。・・・・・・って、明久君もいるの!?」

 

「や、中林さん」

 

「Eクラス代表自らお出ましとは、随分余裕じゃないか」

 

「新学期そうそう試召戦争を仕掛けるなんてバカなの?いくら明久君や恵衣菜がいるからって言っても無理じゃないかしら?」

 

「さて、どうだろうな?」

 

「やれやれ・・・・・明久頼むぞ」

 

「えっ?」

 

「はいはい。それじゃあ・・・・・試獣召喚(サモン)!」

 

Fクラス 吉井明久 50点

 

召喚により僕の召喚獣が姿を現す。

僕の召喚獣は某アニメの黒の剣士と似たような装備の黒いロングコートに背中に2本の長剣を、懐に2丁拳銃を装備していた。

だが2丁拳銃はコートの内側に隠れているため見えない。

この中でこれを知っているのは僕だけだ。

 

「それが明久君の召喚獣・・・・・・・・ところでその点数は?」

 

「あー・・・・・・まあ、僕にも色々あるんだよ中林さん」

 

僕はそう中林さんに説明した。

中林さんは僕の本当の実力を知っているため疑問に思ったのだろう。

 

「まあ、明久君がいいなら構わないわ。総員戦闘開始!」

 

中林さんの号令で、中林さん以外の召喚獣が僕に迫る。

 

Fクラス 吉井明久 50点

 

VS

 

Eクラス 生徒×25人 平均76点

 

僕は召喚獣を操作し、Eクラスの召喚獣をいなし、避ける。

 

Fクラス 吉井明久 50点

 

VS

 

Eクラス 生徒×25人 平均76点

 

「くそっ、全然当たらない!」

 

「こんな大人数で攻めてるのにどうして!」

 

Eクラスの間からそ言う声が聞こえてきた。

 

「ふ。なら、教えてやろう!ここにいる吉井明久は『観察処分者』だ」

 

雄二がその場にいる全員に言った。

 

「か、観察処分者だと!?」

 

「まさか、アイツがそうだと言うのか」

 

「学園一のバカの代名詞の」

 

ああ、ここに恵衣菜がいなくてよかったぁ~。いたら血みどろになっていたかも。

中林さんもそう考えたのか頭に手を当て、僕の方を見てゴメン、と口を動かして声を発さず言ってきた。

別に僕は自分から『観察処分者』になっただけなんだけどなぁ~

取り敢えず姫路さんか来るまで時間を稼げばいいか。

 

「くらえぇーー!」

 

「おっと」

 

「さっさと倒れろ!」

 

「よっ」

 

一応少しだけ僕も反撃する。本気でやってもいいけどそれだと面白味がないし、雄二の作戦が無駄になっちゃうからね。

そしてそのまま時間が過ぎていく。

中々僕を倒せないEクラスに中林が前に出てきた。

 

「やれやれ。いいわ、私が直接倒す!Eクラス中林宏美、Fクラス代表坂本雄二に・・・・・「待ってください!」・・・・・え?」

 

そして遂に姫路さんがきた。

 

「その勝負受けます!召喚獣召喚!試獣召喚(サモン)!」

 

そして姫路さんの召喚獣は現れると同時にEクラス代表の中林さん以外の召喚獣を消し飛ばした。

 

Fクラス 姫路瑞希 412点

 

VS

 

Eクラス 中林宏美 95点

     生徒×25人 0点 戦死

 

「なっ!?もう一人、Aクラス並の実力者がいたって言うの!?」

 

姫路さんの登場にEクラスは慌てているようだね。

まあ、それもそうだけど。

 

「さすがAクラス候補なだけはあるな」

 

「そうだね」

 

「明久君と恵衣菜以外にAクラスレベルがいるなんて!」

 

「それじゃあ、行きます、ごめんなさい!」

 

「そ、そんな・・・・・・・」

 

Fクラス 姫路瑞希 412点

 

VS

 

Eクラス 中林宏美 0点 戦死

 

姫路さんの召喚獣の前に中林さんは何も出来ずに一刀の元に経ちきられた。

 

 

 

『戦争終結!勝者Fクラス!』

 

 

 

西村)かくして、この試験召喚戦争はFクラスの勝利で幕を閉じた。

 

 

「さてと、試召戦争も終わったし戦後対談といくか」

 

「・・・・・わかったわ、FクラスとEクラスの設備を取り替え・・・・・・「いや、変える必要はない」・・・・・・は?」

 

「ちょ、坂本なんで変えないのよ!」

 

「なるほどね、雄二の考えがわかったよ」

 

「さすがだな明久」

 

「・・・・・・・私たちとしてはそれはありがたいけど・・・・・・いいのかしら?」

 

「ああ。元よりEクラスの設備は奪うつもりなかったしな」

 

「・・・・・・そう。ありがとう・・・・・」

 

「おし!全員お疲れさん。今日はもう帰ってゆっくり休め」

 

雄二が言うとFクラスの面々は帰宅していった。

 

「ゴメンね、中林さん」

 

「明久君が謝る必要はないわよ。私がFクラスを見誤っていただけ」

 

「あー、それとゴメン。さっきのちょっと遊んでた」

 

「だと思ったわ。あれ、貴方にしては全然強くなかったもの」

 

中林さんとそんな会話していると、

 

「明久く~ん、終わった~?」

 

「あ、恵衣菜。終わったよ」

 

「宏美ちゃんもお疲れ様」

 

「ありがとう恵衣菜。貴女は参戦しなかったのね」

 

「うん。坂本くんから今回は出るなって言われていたから」

 

「そうなんだ」

 

「多分雄二はEクラスとAクラス以外に知られたく無かったんだと思うよ」

 

「ふふ。なるほど、坂本らしいわ」

 

3人で放課後の教室でそんな会話していると、

 

「吉井~!」

 

「吉井くん!」

 

「へっ?・・・・・って、いたぁ!えっ!?何!?いきなりなんなの!?」

 

腕がとんでもなく痛くなった。

よく見たら後で島田さんが僕に関節技を掛けていた。

 

「明久くん!」

 

「貴女たち今すぐ明久君を放しなさい!」

 

「なんでアンタにそんなこと言われなきゃならないのよ!」

 

「そうです!吉井くんは私たち以外の他の女子と会話しちゃいけないんです!」

 

「は?何言ってるの?・・・・・・(ブルッ)」

 

島田さんに関節技をかけられながら中林さんを見ると、中林さんは寒気がしたように両腕を擦り会わせていた。

ま、まさか・・・・・・

 

「アンタたちさっさと私の明久くんから離れろ」

 

やっぱりー!恵衣菜が怒ってる。まずい、これはチョーまずい。

中林さんも顔を青ざめていた。

 

「な、なんで姫宮に言われなきゃならないわけ!」

 

「そうです!貴女には関係ありません!」

 

「あっそう・・・・・・なら」

 

恵衣菜は一瞬で島田さんと姫路さんの背後に立つと手刀で二人の首筋を叩いた。

その結果二人は眠ったように気絶した。

 

「明久くん大丈夫!?」

 

「う、うん。僕はなんとか大丈夫」

 

「よかった~」

 

「それより恵衣菜、手加減した・・・・・・よね」

 

「え?うん。一応は」

 

「一応って恵衣菜貴女ね・・・・・」

 

「宏美ちゃ~ん。だって明久くんを虐めてたんだよ」

 

「はいはい。わかっているわよ」

 

「アハハ。取り敢えず3人とも帰ろう。零華も待たせちゃってるし」

 

「あ、そうだね」

 

「それもそうね」

 

僕たちは荷物を取り、零華のいるAクラスに向かったあと、校門で中林さんと別れ、僕と恵衣菜と零華の3人で帰っていった。

え?あの二人はどうしたかって?そんなの知らないな~




うん。書くの大変だ~



次回 『対Dクラス戦!』 ここテストに出ます。


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第Ⅴ門 対Dクラス戦!

アニメ版と小説を混ぜていますのでご注意下さい。
遂に2戦目、対Dクラス。開戦です!


~零華side~

 

 

 

 

『戦争終結!勝者Fクラス!』

 

 

 

 

Aクラスで自習しているなか、私の耳に西村先生のそんな声が聞こえてきた。

 

「終わりましたね。さすがです兄様、恵衣菜さん」

 

「・・・・零華」

 

「どうかしたの、翔子ちゃん?」

 

「・・・・・零華。私たちは仕掛けなくていいの?」

 

「試召戦争を?」

 

「・・・・・(コク)」

 

「私たちが仕掛けなくても向こうには坂本くんがいるから絶対彼は私たちに仕掛けてくるよ」

 

「・・・・・確かに。雄二ならやりかねない」

 

「ね」

 

「なるほどね」

 

「あ、優子ちゃん」

 

「アハハ、ボクたちもいるよ」

 

「愛子ちゃんに、美穂ちゃん、久保くん」

 

「吉井さんがそう言うなら僕たちはそれに従うよ」

 

「ありがとうみんな」

 

私は放課後の教室でクラスメイトたちと楽しく会話していると、兄様と恵衣菜さん、宏美ちゃんがAクラスにやって来た。

何故か兄様は腕を抑えていたため宏美ちゃんに聞くと、あのバカ2人。姫路瑞希と島田美波が兄様に関節技をかけたようだ。

 

「・・・・・・!」

 

私はそのままバカ2人にO☆HA☆NA☆SHIをするためにAクラスを飛び出そうとした。

だが、

 

「零華、どこに行くつもり?」

 

兄様に腕を掴まれて行くことが出来なかった。

 

「もちろん、あの2人のところにです兄様!」

 

「え~と、なんで?」

 

「決まってます!兄様を虐めたからに決まってます!」

 

私は自信をもって言う。周りからブラコンと言われようと私は断言する。

 

「私は兄様に害をもたらす者を駆除します!これは私の中で最優先事項です!」

 

私は兄様が好きだから。兄様を虐めるものは絶対に許さない!

 

「・・・・・・・・なんか凄いデジャビュを感じるよ」

 

「?」

 

「取り敢えず零華。あの2人はもう恵衣菜がやったから大丈夫だよ」

 

「恵衣菜さんが!?」

 

「そりゃそうだよ、零華ちゃん。私だって明久くんのこと好きだもん!明久くんを虐める人は絶対に許さないもん!」

 

「アハハ・・・・・・」

 

「恵衣菜さん!」

 

「零華ちゃん!」

 

私は恵衣菜さんの手を握り固く握り締めた。

その光景に周りの人・・・・・・翔子ちゃんたちは苦笑いを浮かべていた。なんでだろう?

 

「取り敢えず帰ろうか零華」

 

「はい!兄様♪」

 

私は翔子ちゃんたちに別れを告げ兄様、恵衣菜さん、宏美ちゃんと一緒に学校をあとにし、校門前で宏美ちゃんと別れ、3人で家に帰っていった。

もちろん兄様の両端は私と恵衣菜さんで抱き付き、占領している。そして、そのまま家に帰ったのだ。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

         時は過ぎ翌日

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

文月学園に着いた僕と恵衣菜、零華は自分達の教室に向かうため昇降口で別れそれぞれの教室に行った。

Fクラスに着いた僕と恵衣菜は昨日と同じように教室に入った。

中にはクラスメイトは少ししかいなかった。

恵衣菜と一緒に自分達の席(?)に着くと。

 

「よお、明久、姫宮さんも」

 

「須川くん!横溝くんも!」

 

友達の須川くんと横溝くんが話し掛けてきた。

 

「おはよう。早いね2人とも」

 

「まあな。俺はアイツに起こされちまってよ」

 

「ああ、須川もか。俺も同じだ」

 

「そうなんだ」

 

「そう言えば、2人は彼女たちになんか説明したの?」

 

「いや、したはしたんだかな・・・・・・」

 

「説明して、宥めるのが大変だったと言うかなんと言うか・・・・・」

 

「あーーー・・・・・・雄二と同じってこと」

 

「まあ、そんな感じだ」

 

須川くんと横溝くんの2人は幼馴染みで、僕たちとは中学の時からの知り合いだ。2人とも幼馴染みの彼女と付き合っている。僕と恵衣菜の関係も須川くんと横溝くんの2人はもちろん知っている。2人の彼女たちは確かAクラスに振り分けられた筈だ。

 

「そう言えば2人はなんでFクラスになったの?」

 

僕は昨日から不思議に思っていたことを聞いた。

須川くんと横溝くんの成績は、僕や恵衣菜、零華や霧島さん、雄二には及ばないが、少なくともAクラスの中位くらいの成績を持っている。

 

「それは、横溝と相談してだな」

 

「振り分け試験の前に須川と話し合ったんだ。俺たちが何処まで通用するかって」

 

「それであえてFクラスに行くことにしたって訳だ」

 

「なるほどね。いかにも2人らしいよ」

 

「ほんとね。じゃあ私たちがFクラスになることは知らなかったのね?」

 

「まあな。でも、あの時の振り分け試験の事は聞いていたからな」

 

「2人はFクラスになるだろうと、思ったんだ」

 

「そんなに広まっていたの?」

 

「そりゃそうだろう」

 

「なんたって片方は学園初めての『観察処分者』吉井明久、そして片方は学園で『彼女にしたいランキング、トップ3』の姫宮恵衣菜だからな」

 

うん?今横溝くんの言葉ちょっと気になる単語があったような・・・・・・

 

「ん?ちょっと待って、横溝君、もう一度今の言ってくれない?」

 

「?学園初めての『観察処分者』吉井明久?」

 

「その次」

 

「片方は学園で『彼女にしたいランキング、トップ3』姫宮恵衣菜?」

 

うん。やっぱり聞き間違いじゃなかった。

 

「へぇー。そんなのあるんだ。初めて知ったよ~」

 

「まあ、俺も横溝もそれを知ったのはつい最近なんだがな」

 

「へぇ・・・・・・・ところでそのランキングの主催者って誰か知ってる、2人とも?」

 

「よ、吉井?」

 

「い、いや、知らん。だ、だが土屋なら知ってると思うが・・・・・・」

 

「言っとくが主催者は、土屋じゃないからな!」

 

「うん。わかった」

 

僕はとにかく康太からこのランキングの主催者を探してもらうことにした。

 

「ところで残りの2人って?」

 

「確か、吉井零華と霧島翔子・・・・・・だったか?」

 

「ああ。何故かアイツらの名前もあったが」

 

「そう言えばそうだったな」

 

うん。主催者さんには見つけた際にはO☆HA☆NA☆SHIが必要だね。

 

「あーーー。姫宮すまん、吉井をどうにかしてくれ」

 

「え?ああーー。うん」

 

主催者を見つけた際の事を考えていると。

 

「よっと」

 

「へっ!?」

 

「気持ちいい明久くん?」

 

何故か恵衣菜に膝枕された。

あー、恵衣菜の膝枕暖かくて気持ちいなぁ~。

じゃなくてなんでいきなり!?

 

「恵衣菜、いきなりどうしたの!?」

 

「吉井が変なことしそうだったから姫宮に停めてもらったんだよ」

 

「須川くん・・・・・」

 

「けど、あんまりするなよ2人とも。今は幸いにそんなにいないからいいが」

 

「わかってるよ」

 

「ハァーイ」

 

「それじゃあ、俺たちは席に戻るな」

 

「うん」

 

「ありがとう2人とも」

 

そう言うと須川くんと横溝くんは自身の席に向かった。

で、僕はというと・・・・・・

 

「あー、さすがに家じゃないので恥ずかしいんですけど」

 

まだ恵衣菜に膝枕されていた。

 

「それもそうだね。じゃあ今はこれで」

 

恵衣菜は僕の頭をナデナデしてくれる。

 

「子供じゃないんだけどな~」

 

「明久くんが余計なこと考えていたからだよ」

 

「だって、勝手にランキングにされてんだよ?」

 

「別に私は気にしないから。多分零華ちゃんも翔子ちゃんも気にしないと思うよ」

 

「ああ。確かに」

 

「ね」

 

「まあ、恵衣菜がそう言うなら・・・・・」

 

取り敢えずランキングの主催者のことは忘れることにした。

 

「うん」

 

『『やれやれ』』

 

視界の端で、自分の席に座った須川くんと横溝くんが呆れた顔を浮かべて首を横に振っている姿が見えた。

なんでだろう?

 

 

 

 

 

 

そして、時は過ぎ昼休み

 

 

 

 

 

 

屋上でFクラス現幹部の作戦会議が催された。

参加者は、代表の雄二を初めとして僕、恵衣菜、康太、秀吉、須川くん、横溝くん、姫路さん、島田さんの9人だ。

雄二は姫路さんと島田さんを話し合いに参加させたく無かったようだが、試召戦争の事なのでそんなことも言ってられない。

 

「次はDクラスを攻める」

 

「Dクラス?」

 

「Aクラスじゃないのか坂本?」

 

「ああ。まず試召戦争の目的は最大の目的はAクラスが一番だが、あと二つある」

 

「あと二つじゃと?」

 

「ああ。それは召喚獣の操作を慣れるためだ」

 

「そしてもう一つは、クラスメイトの成績上昇。でしょ、雄二」

 

「正解だ、明久」

 

「どういうことですか坂本くん?」

 

「いいか。まず召喚獣の操作を理解するのは至難だ。いくら一年の時に練習したからと言っても、誰しも明久のように操れる訳じゃない」

 

「・・・・・それは確かに」

 

「じゃあもう一つの目的は?」

 

「それは設備を交換しなかったのと関係がある」

 

「設備を交換すると、それで満足してしまい学習は愚か、もうどうでもよくなってしまうからだろ坂本」

 

「正解だ、横溝。横溝が言ったように、設備を交換しなかったのはこれで満足させないため。そして、自分たちも頑張れば目標に辿り着けるかもしれない、と思わせるためだ」

 

「なるほどね」

 

「それで坂本くんは敢えて昨日、Eクラスのとの設備を変えなかったんですね」

 

「そうだ」

 

「じゃあDクラスを攻める理由は?」

 

「Dクラスとの試召戦争で更に操作を上げさせるためだ。昨日の試召戦争は隣のクラスだったからな。すぐに決着がついた。だが、Dクラスは新校舎側にあるのに加え成績がEクラスとは違う」

 

「つまり坂本くんは、長期戦の訓練やこれから必要になるためにDクラスに仕掛ける。と言うことね」

 

「ああ。それでDクラスへの使者だが、島田お前が行ってくれ」

 

「ええー。大抵下位クラスの使者って酷い目にあわされるじゃん」

 

「そんなわけないだろう。昨日の明久は怪我ひとつせずに帰ってきたじゃないか」

 

「それもそうだけど・・・・・・・わかったわよ。開戦時刻は明日の午前10時からでいいわね?」

 

「ああ。それじゃあ頼むぞ。俺たちは先に教室に戻っているからな」

 

「わかったわよ」

 

雄二の言葉通り、島田さんはDクラスに行き、僕たちはFクラスに帰った。

あれ、Dクラスって確か・・・・・・

教室に戻りしばらくすると。

 

『騙したわね坂本ーーー!!』

 

と叫ぶ声が何処からか聞こえた。

 

「・・・・・・雄二」

 

「なんだ明久?」

 

「酷い目にあうわけじゃ無いんじゃなかった?」

 

「まあな。だが、ある特定の人物からの動きは酷い目には、入らない。だろ」

 

「まあ、そうだけど」

 

雄二と会話していると、ドタドタと廊下を走る音が響き、扉が勢いよく開いた。

 

「ゼェー、ゼェー。よくも騙してくれたわね、坂本!」

 

「おいおい、俺は騙してなんかいないぜ。現に昨日、明久は無傷で帰ってきたじゃないか」

 

「そ、それはそうだけど。それよりもなんであの子がいるところに行かせたのよ。お陰で酷い目にあったわ」

 

「だが、特定の人物からの動きはしらんがな」

 

「さ、坂本ーーー!!」

 

島田さんの声に雄二は、軽く無視しスルーした。

 

「さて。みんな聞いてくれ、明日の10時からDクラス戦を始める。全員、自分の持ち点を紙に書いて持ってきてくれ」

 

雄二が言うとクラスメイト全員、紙に自分の持ち点を書き込み、雄二のもとに持ってきた。

 

「よし。作戦は明日伝える。明日の9時半にもう一度こう集まってくれ」

 

雄二はそう言うと自分の席に戻った。

僕らは、と言うと普通に勉強していた。

そして、今日も平穏(?)なのか、という日常が過ぎ、遂に僕たちの2戦目となるDクラスとの試召戦争が始まった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

学園長室

 

~学園長side~

 

「以上、FクラスはDクラスに試召戦争を申し込みました」

 

「ほう。Eクラスの次はDクラスかい。ほんと、今年の第2学年は面白いさね」

 

「それでは、学園長」

 

「ああ、承認してやりな」

 

「承知しました」

 

「さぁて、お前たちが何処までやるのか見させてもらおうとするさね」

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

Dクラスとの試召戦争開戦10分前

 

 

~明久side~

 

 

 

「―――――以上が今回の作戦だ。何か質問はあるか?」

 

雄二が教壇に立ちクラス全体を見渡した。

 

「それじゃあ、各自準備してくれ」

 

僕たちはそれぞれ、試召戦争の準備をする。

僕は今回、前線部隊の秀吉たちの援護の、中堅部隊隊長に任されている。そして副隊長として島田さんが配属されている。

恵衣菜は雄二の護衛としてFクラスにいる。

そして。

 

 

      キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

「開戦だ!総員戦闘開始!!」

 

「「「「「「「「「「おおぉぉ~~っ!!」」」」」」」」」」

 

開戦の鐘の音とともに雄叫びが上がる。

それと同時に秀吉が率いる前線部隊がDクラスに向かった。

 

「さてと、僕は僕で任されたことをしないとね」

 

僕はFクラスの廊下前で立ちそう呟いた。

しばらくすると、

 

「吉井!木下たちが押され始めたぞ!」

 

同じ部隊の須川くんがそう言って戻ってきた。

 

「オーケー須川くん。それじゃあ、みんな。行くよ!」

 

「「「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」」」

 

こう言う時にはちゃんと従ってくれるから便利だ。

 

「秀吉!」

 

「明久。すまぬ、鷲らはこれ以上は無理じゃ」

 

「わかった。秀吉たちは1回下がって補充試験を受けてくるんだ」

 

「了解じゃ」

 

「みんな!秀吉たちが下がるまで援護するんだ!島田さんは右側の、須川くんは左側の援護を!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「わかったわ!」

 

「まかせろ!」

 

「そうはさせるかDクラス、石崎が・・・・・「Fクラス、近藤が受ける!試獣召喚(サモン)!」・・・・・くっ。試獣召喚(サモン)!」

 

 

科目 科学

 

Fクラス 近藤吉宗 67点

 

VS

 

Dクラス 石崎昭太 60点

 

互いの召喚獣がぶつかり勝ったのは。

 

Fクラス 近藤吉宗 67点

 

VS

 

Dクラス 石崎昭太 0点 戦死

 

近藤くんだった。

相手の点数が低かったから勝てたのだろう。近藤くんがDクラスの1人石崎くんを打ち倒し、それに他のメンバーは勢いが上がる。

数分してそれぞれの点数が減り始めた。

 

「島田さんは1回下がって補充試験に!代わりに柴崎くん入って!」

 

「了解!」

 

消耗した島田さんに代わり、柴崎くんが入った。

島田さんはそのまま本陣に向かい補充試験を受けに行った。

だが、僕はこのあと起こる事を予想してなかった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

~美波side~

 

「吉井のやつ!ウチはまだやれるってのに!それにあの女とイチャイチャしてるだけでもイラつくってのに。アアーッ!」

 

ウチはFクラスに向かいながらそう言う。

 

「ほんとどうにかしてあの女から吉井を引き離さないと」

 

ウチがそう考えていると。

 

「ん?福村じゃない。なんでこんなところにいんの?」

 

同じクラスの福村が走ってきた。

 

「坂本からの指示だ。なんでもいいから放送で船越先生を別の場所に呼び出してほしいそうだ」

 

「へぇー」

 

ウチは福村の話を聞いてあることを思い付いた。

 

「福村。吉井を使って船越先生を呼び出しなさい」

 

「?ああ。わかった」

 

そう言うと福村は走り去っていった。

 

「吉井。あんたはウチの物なんだから」

 

~美波side out~

 

 

 

 

~明久side~

 

島田さんが補充に向かってしばらくして。

 

『塚本このままじゃ、らちが明かない!』

 

『待ってろ、今数学の船越先生を呼んでいる!』

 

Dクラスのそんな声が聞こえてきた。

 

「船越先生か。吉井、Dクラスの奴ら短期決戦にするつもりだ」

 

「うん。場合によっては僕も出るから」

 

「わかった」

 

僕は下がってきた須川くんとそう会話した。

 

『おい!Fクラスのやつら、世界史の田中を捕まえてるらしいぞ!』

 

『なっ!世界史の田中だと。Fクラスの連中、長期戦に持ち込むつもりか!』

 

世界史の田中先生がFクラスにいることを、Dクラスに知られたようだ。

これで船越先生まで来られたらマズイ。

僕がそう思ったその時。

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

1本の放送が入った。

 

『えー。船越先生、船越先生』

 

この声は確か福村くん、だったかな?

 

『2年Fクラス吉井明久君が体育館裏で待ってます』

 

は?

 

『生徒と教師の垣根を越えた。男と女の大事な話があるそうです』

 

「・・・・・・・は?」

 

「よ、吉井、これヤバくないか?」

 

「うん。ヤバいこれは真面目にちょうヤバい・・・・・」

 

船越先生ってあの船越先生だよね!

船越先生と言えば婚期を逃して遂には学園の生徒にまで単位を盾に交際を迫る様になった教師だ。

確かに絶対体育館裏に行ってくれると思うけど・・・・・

 

『繰り返します。船越先生、吉井明久君が体育館裏で待ってます。教師と生徒の垣根を越えた・・・・・・"ドガンッ!!"『『アンタ、なにやってんのぉぉーーーー!!』』・・・・・・えっ!?なに!?なんで姫宮と吉井が!?ああぁぁーーー』

 

え?なんで恵衣菜と零華の声が?

 

『船越先生、船越先生今の放送はこの生徒(バカ)の照れ隠しです。至急婚姻届を持って放送室に来てください。この生徒(バカ)を縛って転がしておくので好きにしても構いません』

 

『あと、Dクラス所属清水美春さん。Fクラス廊下前に島田美波がいます。邪魔しないので好きにしても構いません。ちなみに保健室は現在誰もいません』

 

"ピンポンパンポーン"

 

今の放送に驚いたのか、誰も身動き出来なかった。

それは教師もD、Fクラスの生徒全員だ。

その中。

 

「吉井」

 

近くにいた須川くんが声を掛けてきた。

 

「よかったな」

 

「うん」

 

そのまましばらく沈黙がその場を覆った。

そしてその後放送室とFクラス廊下前から悲鳴が上がったのは気のせいだろう。




バカテストをやろうか悩んでます。





次回 『決着、Dクラス戦』 ここテストに出ます


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第Ⅵ門 決着、Dクラス戦

バカテスト

問題:『本校で採用している学習意欲向上のための独特のカリキュラムをなんと言うでしょうか?』

解答
A~Eクラス全員及び吉井明久、姫宮恵衣菜、坂本雄二、須川亮、横溝浩二、木下秀吉、土屋康太、姫路瑞希、島田美波

『試験召喚戦争又は試召戦争』


教師コメント
『正解です。普通この学校に在籍しているものなら知っていて当然ですね』

解答
Fクラス生徒

『授業』

教師コメント
『それは何処の学校もやっていることです。この学校の事を調べてみましょう』


~零華side~

 

「暇だな~」

 

「・・・・・・授業がないから仕方ない」

 

「そうなんだけど~」

 

「でも、自習のプリントがあるわよ?」

 

「・・・・・・・・終わっちゃった」

 

「へ?零華、もう終わったの?」

 

「うん」

 

「す、スゴいね、吉井さん」

 

「そうかな?」

 

「ええ。でも自習のお陰でこうしてみなさんと話せるんだから良いじゃないですか」

 

私たち、Aクラスの全員はFクラスとDクラスの試召戦争のため今日の授業は全て自習となっていた。

そして、私は紅茶を飲みながら翔子ちゃんたちとFクラスとDクラスの試召戦争の行方を見守っていた。

 

「今回はどっちが勝つかな~♪」

 

「「Fクラス」」

 

私と翔子ちゃんは同時に、愛子ちゃんの質問を答えた。

 

「答えが速いね二人とも」

 

「・・・・・(コク)当然。雄二がいるから」

 

「うん。兄様に恵衣菜さんもいるからFクラスが勝つと思うよ。絶対」

 

「アハハ。零華ちゃんの答えはわかるけど、翔子ちゃんも即答なんてね」

 

そのまま、時間が過ぎていくと。

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

不意に放送が流れた。

 

「ん?なんだろう?」

 

「さあ?」

 

スピーカーから流れて来た放送は、

 

『えー。船越先生、船越先生』

 

と船越先生を呼ぶものだった。

私たちが放送に耳を傾けていると。

 

『2年Fクラス吉井明久君が体育館裏で待ってます』

 

「はい?」

 

今気のせいかな?兄様の名前が聞こえた気が・・・・・・

 

『生徒と教師の垣根を越えた。男と女の大事な話があるそうです』

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・今の何?」

 

「船越先生って、あの船越先生よね?」

 

「ああ。多分あの船越先生だと思う」

 

「・・・・・・・・マズくない?」

 

「うん・・・・・・かなりマズイ」

 

え~と、なんだろう今の放送?多分Fクラスの生徒だと思うけどなんで兄様を?

しかもあの船越先生に兄様を?

うん。これは兄様に危害を加えようとしているね。

 

「・・・・・・・零華?」

 

「ナニかな翔子ちゃん?」

 

「「「「「「ヒッ・・・・・(ビクッ)!」」」」」」

 

「・・・・・・・な、なんでもない」

 

「そう?それじゃあ私は行くところが出来たから、高橋先生が来たら言っといてくれない?」

 

「・・・・・・・な、何て?」

 

「この放送を流した生徒(バカ)を始末してきます。って」

 

「「「「「「コクコク」」」」」」

 

「じゃあ、ヨロシク」

 

私はそう言うと瞬時にAクラスを飛び出し放送の元である、放送室に走った。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

私は今回のDクラス戦で、坂本くんの警護・・・・・・・と言うより前線に出ないようにしている。

それは私が今回の作戦の切り札だからだ。

姫路瑞希はこの間のEクラス戦で、Fクラス所属が露見したため、Dクラスは警戒しているだろう。だが、Dクラスも噂程度では私がFクラスにいることを知っていると思うが確証が無いため分からない。

そして、教室で待機している間。

 

「明久くん、大丈夫かな?」

 

廊下から聞こえる騒音に耳を傾けながら、私の恋人を思った。

 

「ん?心配か姫宮」

 

「坂本くん。まあね」

 

「明久なら大丈夫だろう。アイツは俺に続いてこう言うのが得意だからな」

 

「そうなんだけどね。なんか嫌な予感がするんだ」

 

「嫌な予感?」

 

「う~ん。なんて言ったら言いかな、なんか明久くんが大変な事になるような。そんな予感」

 

「はは。ほんと、アイツは幸せ者だなこんなにも思ってくれる人がいるんだからな」

 

「そんなことないよ~。それにそれを言うなら坂本くんと翔子ちゃんもでしょ?」

 

「・・・・・・・まあな」

 

私は坂本くんと話ながら戦況の行方を見ていた。

やがて、木下くんたちの部隊が補充のために戻ってきた。今は明久くんが率いる中堅部隊が交戦しているみたいだ。

木下くんが戻ってきたのと同時に坂本くんが、教室にいた福村くんに何か話して戻ってきた。

福村くんは、坂本くんの話を聞くと、教室から出ていった。どうやら、坂本くんが何か指示を出したみたいだ。

そして、木下くんたちが戻ってから数分後島田美波が戻ってきた。

え?何故、姫路瑞希と島田美波をフルネームで言うかって?それは、あの二人が明久くんに危害加えるからに決まってるよ。それに、私自身。あの二人は好きじゃないからね。

戻ってきた島田美波の表情は、何故か口角が上がっていた。

私が不思議に思うなか、

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

1本の放送が流れた。

 

『えー。船越先生、船越先生』

 

この声は福村くん。かな?

 

『2年Fクラス吉井明久君が体育館裏で待ってます』

 

はい?

 

『生徒と教師の垣根を越えた。男と女の大事な話があるそうです』

 

今、なんて流れた?確か、『生徒と教師の垣根を越えた。男と女の大事な話があるそう』って流れた?

しかもあの船越先生だよね?

船越先生って確か婚期を逃して遂には学園の生徒にまで単位を盾に交際を迫る様になった教師だよね?

その人に明久くんを?

 

「な、なんだっ!?この放送は!?」

 

「なんじゃこれは!?」

 

「・・・・・・・これは一体!?」

 

坂本くんを見ると彼は驚愕の表情を出していた。

良く見ると、教室にいた木下くんや土屋くんも驚愕の表情を浮かべている。

そんな中島田美波だけ、何故か驚愕の表情を浮かべておらず、ニヤッって笑っていた。

その瞬間私は分かった。島田美波が船越先生に明久くんを売ったことに。恐らく坂本くんは福村くんに、なんでも良いから放送で先生を別の場所に来させろ、って指示したのだろう。

どうやって呼び出すか悩んだまま行き、そこで島田美波に何かを言われたのだろう。

けど、同情はしないよ福村くん。明久くんを売るってことがどんな事なのか。オモイシラセテアゲル。

 

「坂本くん」

 

「な、なんだ姫宮」

 

「ちょっと、そこのバカをよろしく」

 

「あ、ああ」

 

「・・・・・・・・」

 

私はそれだけ言うと教室を飛び出し放送室に向かった。

全速力で走り風を受けながら放送室に向かう。

その放送室の前でこちらに向かってくる、人影が見えた。

 

「零華ちゃん」

 

走ってきたのは零華ちゃんだった。

 

「恵衣菜さん。この放送の主犯は?」

 

「多分島田美波。流してるのは同じクラスの福村くん、だけど、同情の余地はナイヨネ?」

 

「モチロンデス。兄様に危害を加えたこと後悔させましょう」

 

そう言うと私と零華ちゃんは、放送室の扉をおもいっきり開けた。

 

「繰り返します。船越先生、吉井明久君が体育館裏で待ってます。教師と生徒の垣根を越えた・・・・・・"ドガンッ!!「「アンタ、なにやってんのぉぉーーーー!!」」・・・・・・えっ!?なに!?なんで姫宮と吉井が!?ああぁぁーーー」

 

私と零華ちゃんは、放送室に入ると放送を流していた福村くんを拘束。気絶させた。

そして

 

「船越先生、船越先生今の放送はこの生徒(バカ)の照れ隠しです。至急婚姻届を持って放送室に来てください。この生徒(バカ)を縛って転がしておくので好きにしても構いません」

 

「あと、Dクラス所属清水美春さん。Fクラス廊下前に島田美波がいます。邪魔しないので好きにしても構いません。ちなみに保健室は現在誰もいません」

 

零華ちゃんが先に、私が後で放送でこれを流したバカに返した。

 

 

 

 

~雄二side~

 

俺はいきなり流れた放送に戸惑っていた。

そして、その放送を聞くと姫宮はものすごい速さで何処かに行ってしまった。

そしてその数十秒後。

 

『繰り返します。船越先生、吉井明久君が体育館裏で待ってます。教師と生徒の垣根を越えた・・・・・・"ドガンッ!!『『アンタ、なにやってんのぉぉーーーー!!』』・・・・・・えっ!?なに!?なんで姫宮と吉井が!?ああぁぁーーー』

 

「「「・・・・・・・・・・・・・」」」

 

いきなり出た姫宮と吉井の妹の声に声を失った。

そしてその数秒後。

 

『船越先生、船越先生今の放送はこの生徒(バカ)の照れ隠しです。至急婚姻届を持って放送室に来てください。この生徒(バカ)を縛って転がしておくので好きにしても構いません』

 

『あと、Dクラス所属清水美春さん。Fクラス廊下前に島田美波がいます。邪魔しないので好きにしても構いません。ちなみに保健室は現在誰もいません』

 

と言う放送が流れた。

最後に流れた放送を聞き俺は頭の中で、この放送の主犯が誰かわかった。

 

「康太」

 

「・・・・わかってる」

 

「頼む。終わったら縛って廊下に転がしといてくれ」

 

「・・・・了解」

 

康太の気配が消えると。

島田がいきなり悲鳴も上げずに倒れた。

姫路は放送に困惑してあたふたしているが無視する。特に必要な事はないからだ。

しばらくすると康太が戻ってきた。

 

「お疲れさん」

 

「・・・・・かまわない」

 

その数秒後、

 

『見つけましたわお姉様!さあ!美春と一緒に行きましょう!』

 

『イヤァァァァァァァァァ!!!』

 

廊下からそんな声が聞こえてきたが聞こえないふりをする。

自業自得だ、島田。

 

~雄二side out~

 

 

 

~???side~

 

 

『えー。船越先生、船越先生。2年Fクラス吉井明久君が体育館裏で待ってます』

 

わたくしは急に流れたこの放送に驚愕を見せています。

よりにもよって、あの船越先生にわたくしの従弟である明久くんを売り渡すとは。

2年Fクラスの噂はわたくしたちのところにまで届いています。それ以前にわたくしは明久くんや零華ちゃん、恵衣菜ちゃんから聞いていたので特に驚きません。

幸い今は自習中でわたくしの周りには誰もいないので、わたくしの驚愕の表情を見られてません。

クラスにいる人たちはこの放送に動きを止めていました。

そんな中、わたくしがこの放送の発信者にどうしようかと考えていると。

 

『繰り返します。船越先生、吉井明久君が体育館裏で待ってます。教師と生徒の垣根を越えた・・・・・・"ドガンッ!!『『アンタ、なにやってんのぉぉーーーー!!』』・・・・・・えっ!?なに!?なんで姫宮と吉井が!?ああぁぁーーー』

 

スピーカーからわたくしの従妹と明久くんの恋人の声が響いてきました。

速いですわね、二人とも。わたくしが出る幕は無いようですね。

そんなこと考えていると。

 

『船越先生、船越先生今の放送はこの生徒(バカ)の照れ隠しです。至急婚姻届を持って放送室に来てください。この生徒(バカ)を縛って転がしておくので好きにしても構いません』

 

『あと、Dクラス所属清水美春さん。Fクラス廊下前に島田美波がいます。邪魔しないので好きにしても構いません。ちなみに保健室は現在誰もいません』

 

この従妹たちが放送でそんな事を言った。

わたくしは疑問に思っていましたがその疑問は、すぐに解決しました。何故なら、その数分後、旧校舎と放送室から悲鳴が聞こえたのですから。

 

「あらあら。自業自得ですわね」

 

わたくしは周りに聞こえないように小声でそう口走った。

 

「今日か明日にでも明久くんたちに会いましょうか」

 

わたくしは従弟たちに会える楽しみでそのあとを過ごしました。

え?2年の試召戦争の結果ですか?そんなのFクラスが勝つに決まってますわよ。

 

~???side out~

 

 

 

 

~零華side~

 

放送室である生徒(バカ)を縛り放置したあと私は、恵衣菜さんと別れAクラスに戻っていた。

教室に戻ると、何故かクラスメイト全員が私の方を見ていた。なんでだろう?

 

「ただいま~」

 

「お、お疲れさま吉井さん」

 

「ありがとう久保くん。高橋先生とか来たかな?」

 

「・・・・・(フルフル)来てない」

 

「そう?なら良かった~」

 

私はそう言うと自分の机に向かい、テーブルに置いてある紅茶を一口のみ、喉を潤わせた。

その中、Aクラスの人たちの間に『代表ってかなりのブラコン?怒らせるとヤバい』と言う疑問と確定が走ったらしい。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

私が福村くんと島田美波に報復を零華ちゃんと与えたあと、零華ちゃんはAクラスに私はFクラスに戻った。

 

「ただいま~」

 

「お、お帰りじゃ姫宮」

 

「も、戻ったか姫宮」

 

「・・・・・・・お疲れ」

 

「3人ともただいま~。ところであのバカな島田美波は?」

 

「・・・・・・それなら俺がアイツを気絶させて縛って廊下に転がしといた。今頃Dクラスの清水といると思う」

 

「ありがとう、土屋くん」

 

「・・・・・・かまわない。明久に危害を加えようとしたんだ、当然の事」

 

「にしても、よく島田が犯人だって分かったな」

 

「そりゃね。だって坂本くんが明久くんを売るはずないから。それに島田美波の表情が他の人と違って笑っていたからね」

 

「なるほどな。明久はいい恋人と妹をもったな」

 

「アハハ。それで今どんな状況?」

 

「渡り廊下での戦闘はほぼ終了している。明久が出たからな」

 

「なるほどね。それじゃあ後は・・・・・・」

 

「ああ。Dクラス代表の首を取りに行くぞ」

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

~明久side~

 

あの放送のあと、何故かその場にいた全員(教師含む)から同情とも言える、なんとも言えない表情で哀れまれた僕は疲れ、さっさと終わらせるためその場にいたDクラス生徒、6人と一人で戦い、無傷で勝った。

その後、指揮を臨時副隊長の須川くんに任せ僕はFクラスに戻った。

 

「ただいま」

 

「お、戻ったな明久」

 

「雄二。うん。ところで雄二」

 

「なんだ?」

 

「恵衣菜は?」

 

「姫宮ならそこに・・・・・」

 

雄二は僕の後ろを指差した。

僕が後ろを向こうとすると。

 

「だ~れだ?」

 

後ろから手で目を隠された。

 

「恵衣菜でしょ」

 

僕は恵衣菜の髪の匂いと背中に伝わる感触にドキマキしながら答えた。

 

「せいかーい♪」

 

後ろを振り向くと恵衣菜が笑顔で立っていた。

 

「お疲れさま明久くん」

 

「うん。恵衣菜も零華と色々やったみたいだね」

 

「それは、まあね」

 

「ありがとう、恵衣菜」

 

「エヘヘヘ」

 

「あーー。すまんが二人ともイチャつくのは後でお願いしていいか?」

 

「あ、ごめん」

 

「ごめんね坂本くん」

 

「よし。それじゃあ。お前ら!Dクラス代表の首を取りに行くぞ」

 

「「「「「「「「「「「おおーーっ!!」」」」」」」」」」」」

 

雄二の声にクラスにいた全員の士気が上がった。

全員クラスから出たあと雄二が、僕と恵衣菜の方にやって来た。

 

「明久。お前はDクラス代表、平賀源二の気を逸らせ。その隙に姫宮。お前が平賀を討ち取るんだ」

 

「オッケー」

 

「はい」

 

「行こう、恵衣菜」

 

「うん」

 

僕たちはDクラスとの最終決戦に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新校舎廊下

 

新校舎では、クラスメイトたちが人混みに紛れてDクラスに近づき片っ端から戦闘を繰り広げていた。

放課後の為、先生を捕まえやすいからだろう。

そして、どうやらDクラス本隊が出てきたみたいだ。

 

「Fクラスは、人混みに紛れて一回退却しろ!」

 

「逃がすな追え!」

 

雄二と平賀くんの声が聴こえてきた。

僕と恵衣菜は今、近くの階段に身を潜めている。

 

「それじゃあ行ってくるね」

 

「うん。気を付けてね」

 

「もちろんだよ。恵衣菜も予定通りにね」

 

そう言うと僕は階段から飛び出し平賀くんの近くに向かった。

 

「なっ!?明久!?」

 

「榎本先生!Fクラス、吉井明久がDクラス代表、平賀くんに国語で・・・・・「「「「させるか(ません)試獣召喚(サモン)!」」」」・・・・・訂正します。近衛部隊に勝負を仕掛けます!試獣召喚(サモン)!」

 

国語

 

Fクラス 吉井明久 79点

 

VS

 

Dクラス 香川希  102点

     仁見慎吾 98点

     稲盛大河 115点

     玉野美紀 105点

 

僕は予定通り近衛部隊を引き付けた。

 

「危なかった。さすがだな明久」

 

「くっ!平賀くんにまで行けなかった。兎に角この人たちを倒す!」

 

僕は召喚獣を操作し攻撃する。

 

「このっ!」

 

「ぜあっ!」

 

「せいっ!」

 

「てやっ!」

 

僕は相手の攻撃を片手剣でいなし避ける。

 

「そろそろいいかな」

 

「?明久何言ってるんだ?」

 

「すぐにわかるよ。恵衣菜、あとよろしくね」

 

「はっ?姫宮?」

 

「平賀くん」

 

「あれ?姫宮?なんでこんなところに?」

 

「それは・・・・・私がFクラスだからだよ!先生!Fクラス姫宮恵衣菜がDクラス代表、平賀源二くんに勝負を申し込みます!試獣召喚(サモン)!」

 

「なっ!?試獣召喚(サモン)!」

 

国語

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 579点

 

VS

 

Dクラス代表 平賀源二 157点

 

「いきます!せあっ!」

 

「くっ!しまっ!」

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 579点

 

VS

 

Dクラス代表 平賀源二 0点 戦死

 

勝負は一瞬で片付いた。

恵衣菜の召喚獣が構えた細剣の連続攻撃をくらい、平賀くんの召喚獣はあっという間に点数が0になった。

0になるのを確認すると西村先生が何処からか現れ、

 

「戦争終結!勝者Fクラス!」

 

と言った。

 

 




バカテスト書いてみたけどこんなので良いのかな?です。



次回 『Bクラスへの宣戦布告』 ここテストにでます。


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第Ⅶ門 Bクラスへの宣戦布告

バカテスト

問題:『試召戦争により敗北したクラスが与えられるペナルティを2つ全て答えなさい』

解答
吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華、小暮葵、根本恭二、小山友香

『クラス設備の1ランク低下、3ヶ月間の試召戦争宣戦布告権剥奪』

教師コメント

『正解です。設備を下げられないようにこれからも勉強し頑張ってください』

Fクラス生徒

『悔しい』

教師コメント

『そう思うなら勉強してください』

姫路瑞希、島田美波

『明久君(アキ)へのオシオキ』

教師コメント

『貴女たちは一体何を言っているんですか?』


~明久side~

 

 

「戦争終結!勝者Fクラス!」

 

『『『『『うおおぉぉぉぉぉぉっ!!』』』』』

 

西村先生の台詞にFクラスからは喜びの、Dクラスから感嘆の声があちこちから上がった。

 

「まさか、姫宮までFクラスだったなんて・・・・・」

 

たった今討ち取られたDクラス代表の平賀くんは、唖然としていた。

 

「ごめんね、平賀くん」

 

「いや、情報をよく確認しなかった俺たちの不覚だ。明久の気にすることじゃないさ」

 

平賀くんは首を横に振り、自分の責任だと言った。

 

「さてと。それじゃあ坂本。早速戦後対談と言ってもいいか?」

 

「ああ」

 

「ルールに従ってDクラスはFクラスに設備を明け渡すよ。だが、その作業は明日でいいかな?時間も時間だし」

 

「いや、その必要はない」

 

雄二の言葉にFクラスとDクラスから動揺が走る。

 

「どう言うことだ坂本?」

 

「俺たちはDクラスの設備を奪う訳じゃないってことだ」

 

「おい、どう言うことだよ坂本!」

 

「そうだぜ。こんなに苦労したのになんにも無しかよ!」

 

雄二の言葉にFクラスの面々が文句を言う。

 

「落ち着け。前にも言ったはずだ。俺たちの最終目標はあくまでもAクラスだ。それを忘れるな」

 

雄二の言葉にFクラスの面々は押し黙ったように静かになった。

自分達の目標を思い出したのだろう。

 

「それは、俺達にはありがたいがそれでいいのか?」

 

「ああ。あ、一つだけあった」

 

「なんだ?」

 

「俺が指示を出したらBクラスの室外機を止めてほしい」

 

「Bクラスのだと?何をするつもりだ?」

 

「それは言えない。だが、次のBクラス戦で必要になる」

 

「・・・・・・・わかった。その任は俺が受ける」

 

平賀くんの言葉に今度はDクラスから動揺の声が流れる。

 

「みんな落ち着いてくれ。これは、代表である俺がするべき事なんだ」

 

平賀くんが言うとDクラスの人たちは静かになった。

 

「それじゃあ頼むぞ」

 

「分かった。お前たちがBクラスに勝てることを祈ってる」

 

「サンキュー。よし、お前ら!全員今日は帰って体を休めろ!明日は補充試験をするからな!」

 

雄二の声でその場にいたFクラス生徒は帰っていった。

そしてその場にはFクラスからは僕、恵衣菜、雄二、康太、秀吉、須川くん、横溝くんが、Dクラスから平賀くんと玉野さんがいた。

 

「さっきはごめんなさい、平賀くん」

 

「いや、気にしないでくれ。噂で聞いてはいたが確証がなかったもんだから気にしなかったんだ。俺の不覚だよ」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

「ああ。ところで、なんでそんなにFクラスにはAクラス並の人が多いんだ?」

 

「あー。僕と恵衣菜は振り分け試験で・・・・・・」

 

「俺はやりたいことがあったからだ」

 

「俺と横溝は試してみたかったからだ」

 

「・・・・・・なるほどな」

 

秀吉と康太も真面目に勉強すればAクラス並の成績はとれるのだが・・・・・

ちなみに今、恵衣菜は玉野さんと楽しく話していた。

時々、僕の方を向いてアキちゃん、や女装、ゴスロリなど不穏な単語が出てくるが聞かないことにした。

その時、

 

「よぉぉぉぉぉしぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!!!」

 

僕の背後から物凄い怒声とともに何かの衝撃が放たれた。

 

「ぐはっ!」

 

僕はいきなりの不意打ちに反応できず、廊下に倒れた。

 

「吉井!アンタのせいでウチがどんなに大変だったかわかるかしらぁぁーーーー!!」

 

「いっ、痛い痛い!何!?両腕が捩じ切れるように物凄く痛いぃぃぃ!!」

 

僕はどうにかして首を後ろに向けるとそこには凄い形相の島田さんがいた。

 

「おい、島田!明久に何やってんだ!」

 

「うるさい!坂本には関係ないわ!黙っていて!」

 

更に身体中が痛くなってきた。

どうやら、関節技に加え色々な肉体攻撃をしているみたいだ。

 

「ちょ!?貴女、明久くんになにしてるの!?」

 

「姫宮、アンタには関係ないわ!口出ししないで!」

 

「関係なくない!いいから早く明久くんを放して!」

 

「イヤよ。今オシオキしている最中だもの。そもそもアンタに関係ないわ!」

 

あ、ヤバい。意識が・・・・・・・

 

「兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」

 

・・・・・・・・・途切れる。

 

"バタンッ"

 

そこで僕の意識は途切れた。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

「明久くん!」

 

明久くんは島田美波の攻撃により意識が無くなってしまったようだ。

 

「さあて、まだあるからね吉井!」

 

「これ以上は止めろ島田!」

 

「やめるのじゃ島田!」

 

「・・・・・・止めろ。今すぐ」

 

「島田、早く吉井を放せ!」

 

「それ以上は危険だ!」

 

「あぁー、もぉ!うっさい!アンタたちは黙ってなさい!」

 

島田美波は更に明久くんに関節技をしている。

私は明久くんを取り戻そうとしているがこちらにも攻撃を仕掛けてくるため上手く近づけない。

その時。

 

「兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」

 

廊下の向こう側から零華ちゃんが急いで走ってくる姿が見えた。

島田美波の意識が一瞬、零華ちゃんの方に向かった。

 

「今!」

 

私は瞬時に明久くんに近づき、島田美波の関節技から外し島田美波から距離をとる。

 

「あっ!姫宮、吉井を返しなさい!」

 

「ふざけないで!これ以上明久くんになにするつもりなの!それにあの放送も貴女の指示で福村くんにやらせたんでしょ!」

 

「ふんっ!それがなに?吉井はウチと瑞希の所有物なんだから当たり前でしょ」

 

"ブチッ"

 

今、この女何て言った?

明久くんが、この女の所有物?

ふざけるな。

 

「・・・・・・けるな・・・・・ざけるな・・・・ふざけるな!!」

 

私は今まで以上ないほど怒っていた。

 

「明久くんがアンタの所有物?ふざけるんじゃない!」

 

島田美波が私の殺気にたじろくが後ろには零華ちゃんもいる。

 

「おい。今、私の兄様を所有物扱いしたか?ふざけるな。兄様はアンタの所有物じゃないわ!」

 

「なによ。なんなのよアンタら!」

 

私と零華ちゃんの怒気に島田美波は逃げるようにして去っていった。

本来なら追い掛けてやるんだが、今は明久くんの介抱が最優先だ。

 

「恵衣菜さん、兄様は?」

 

零華ちゃんがオロオロしながら明久くんの様子を聞く。

 

「零華ちゃん。アキちゃんは気絶してるわ」

 

私に近寄って玉野さんが明久くんの容態を見てくれた。

 

「ありがとう美紀ちゃん」

 

「ううん。私は何も出来なかったから。アキちゃんの友達なのに・・・・・」

 

「そんなこと無いですよ、美紀ちゃん」

 

「零華ちゃん」

 

「ええ。美紀ちゃんが明久くんの容態を見てくれなかったら分からなかったよ」

 

「そんなことないよ。でも、アキちゃん大丈夫かな?」

 

「一応、私たちがここで看病しているからみんなは先に帰っていて。時間も時間だし」

 

「そうですね。兄様ならそう言うと思います」

 

「・・・・・分かった。明久に何かあったらすぐに連絡してくれ」

 

「うん。わかったよ坂本くん」

 

坂本くんは、しぶしぶみんなに帰るように言った。

その場にいた全員は、納得してはいない様子で明久くんを心配そうにしながら、仕方なく帰っていった。

そして、その場には私と零華ちゃんだけが残った。

 

「兄様はほんと、良い友達を持ちましたね」

 

「うん。私たちもだけどね」

 

「フフ。そうですね」

 

私は明久くんを私の膝の上に頭を乗せていた。膝枕をしながら私は明久くんの頭を優しく撫でる。

 

「ところで零華ちゃんはなんで此方に?」

 

「私は兄様と恵衣菜さんと一緒に帰ろうと。そしたらあの女が兄様に何かしているのが見えて、急いで来たわけですよ」

 

「なるほどね」

 

私と零華ちゃんがその場で留まり続けて時間がしばらく過ぎる。

窓から降り注ぐ夕日の陽射しが少し暗くなった時。

 

「あら?零華ちゃんに恵衣菜ちゃんじゃないですか?」

 

「「えっ?」」

 

階段側から聞こえた声に驚いた。

 

「どうしたんですか二人とも?それに、明久くんがなんで恵衣菜ちゃんの膝の上に?」

 

声をかけてきた人物は私たちの知っている人だった。

 

「葵さん!」

 

「葵お姉ちゃん!」

 

それはこの学校の3年Aクラスに所属する、明久くんと零華ちゃんの従姉、小暮葵さんだった。

 

「二人とも久しぶりですね。ところでこれは一体?」

 

「葵お姉ちゃん、実は・・・・・・・」

 

「・・・・なるほど。そんなことが」

 

零華ちゃんの説明で葵さんは事情を察したようだ。

 

「それで、明久くんをこんな目に遭わせた人は何処ですか?」

 

「島田美波ならたぶんもういないと思うよ、葵お姉ちゃん」

 

「そうですか・・・・・・・取り敢えず二人とも、帰りましょう。明久くんはわたくしが背負って行きますわ」

 

「お願い葵お姉ちゃん」

 

「お願いします葵さん」

 

「いえ。お姉さんとしてはこれくらいしないと」

 

葵さんは明久くんを優しく撫で、背中に背負った。

私は自分のと明久くんの鞄を。零華ちゃんは葵さんの鞄を持ち、私たちは帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉井家

 

私たちが今、暮らしている場所に帰ってきた。

私の家は別にあるんだけど、私の両親は一年のほとんど海外を飛び回っているため、同じ境遇で幼馴染みの吉井家で暮らすことになっている。

ちなみに、私の両親と明久くんと零華ちゃんの両親は親友同士で私たちは家族ぐるみの付き合いをしていた。

それは葵さんにも言えるが。

 

「零華ちゃん、明久くんは何処に寝かせれば?」

 

「葵お姉ちゃん、兄様の部屋のベットに兄様を寝かせてくれる?」

 

「分かりましたわ」

 

葵さんはそう言うと明久くんを明久くんの部屋に寝かせにいった。

 

「寝かせてきましたよ」

 

「ありがとう葵お姉ちゃん」

 

「今は身内だけなのでいつも通りで良いですよ」

 

「じゃあお姉ちゃん」

 

「葵ちゃん」

 

「はい♪それで良いですよ」

 

零華ちゃんが入れてきてくれた紅茶を飲みながら3人で話す。

 

「恵衣菜ちゃんは試召戦争お疲れ様です」

 

「ううん。明久くんたちのお陰だよ」

 

「それにしても今日のあの放送は驚きましたけど」

 

「「あーー」」

 

「二人の行動の早さには相変わらずと思いましたけど」

 

葵ちゃんはフフッと笑って言う。

私と零華ちゃんは少し顔を赤くした。何故かって?ちょっと恥ずかしいから。

 

「でも、私たちが動かなかったらお姉ちゃんが動いたんじゃない?」

 

「あら?それは確かにあるわね」

 

そのまま3人で話すこと数分。

明久くんの部屋から物音が聞こえてきた。

 

「明久くん、気付いたかな?」

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「ん・・・・・・ここは・・・・・僕の部屋・・・・・・?」

 

僕は目を開けるとまず眼に入ったのは見慣れた部屋の天井だった。

 

「あれ、どうして僕ベットに横になってんだろ?学校にいた事はおぼえてるんだけど・・・・・・」

 

僕は身体を起こしベットから降りリビングに向かった。

 

「あ、兄様!」

 

「明久くん、大丈夫?」

 

リビングには恵衣菜と零華がいた。

そしてもう一人。

 

「明久くん、気分はどうですか?」

 

「え!?な、なんで葵さんが!?」

 

「お姉ちゃんが兄様を学校からここまで運んでくれたんだよ」

 

「そ、そうだったんですか。ありがとうございます葵さん」

 

「いえいえ。それに明久くん。ここはわたくしたちだけなので何時も通りで良いですよ」

 

「そ、それじゃあ。ありがとう、葵姉さん」

 

「構いませんよ。丁度わたしくしも明久くんたちの家に来ようと思っていたところなので」

 

いたのは僕と零華の従姉の小暮葵姉さんだ。

葵姉さんは、僕と零華の母の妹の娘で、僕たちと歳が1つしか離れていないためよく4人で遊んだのだ。

そのため、葵姉さんにはよく勉強を見てもらっている。

ちなみに葵姉さんの家が近所なのは偶然である。

 

「ところで、学校で何があったの?余り思い出せないんだけど」

 

「兄様はあのバカに虐められていたんです」

 

「あのバカ?」

 

「島田美波の事だよ、明久くん」

 

「あーー。確かそんなこともあったような・・・・・・」

 

僕は起きたばかりだからなのか記憶が曖昧になっていた。

 

「次、その島田美波って人に出会ったらわたくし直々にO☆HA☆NA☆SHIを致しますわ」

 

「お手柔らかにね葵姉さん」

 

「それは無理ですわ」

 

「アハハ・・・・・ところで葵姉さん、夕飯はどうするつもり?良かったら僕たちと一緒に食べない?」

 

「いいのですか?」

 

「うん。僕はもちろん良いよ」

 

「私も」

 

「私は大歓迎だよ!一緒にご飯食べよ、お姉ちゃん♪」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきますわね」

 

「ヤッタァー♪」

 

零華は特に葵姉さんに懐いていたので、一緒にご飯が食べられるのが嬉しいのだろう。

 

「それじゃあ、早速作っちゃうね。何かリクエストはある?」

 

「明久くんは休んでいてください。私と零華ちゃんが作りますよ」

 

「ううん。ちょっと身体を動かしたいから。良かったら恵衣菜手伝ってくれる?」

 

「もちろんです!」

 

「じゃあ、零華と葵姉さんはゆっくりしていて」

 

僕はそう言うと、恵衣菜と一緒に台所で夕飯を作り始めた。

その間に葵姉さんは自宅に連絡していた。

連絡が終わると葵姉さんは零華と一緒に楽しく談笑していた。その光景に僕は思わず嬉しい気分になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして夕飯が出来上がった。

 

「お待たせ~」

 

僕と恵衣菜は作った料理を持ってリビングに行った。

リビングにあるテーブルは既にセッティングされていた。

 

「うわぁ~。兄様の料理美味しそう♪」

 

「ほんと何度見ても美味しそうですわね」

 

「ハハッ。さあ、食べよう」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

僕たちは号令すると食べ始めた。

今日の夕飯はカルボナーラにコンソメスープ、シーザーサラダとカルパッチョと言う感じだ。

恵衣菜が手伝ってくれたお陰で少し早く終わることが出来た。

 

「美味しいよ兄様♪」

 

「うん。いつ食べても美味しい」

 

「ほんとですわ。でもこれはちょっと女子としてはプライドが砕かれた気分ですわね」

 

「お姉ちゃんと同じく」

 

「私もです」

 

「?どう言うこと?」

 

女子3人は何故か落胆したように溜め息をついた。

ほんとなんでだろう?女子ってこう言うところがわからない。

そのまま、楽しい時間が過ぎていく。

夜も遅くなり葵姉さんは自宅に、僕たちはお風呂に入り明日の準備をして眠りに落ちた。

そして・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後

 

 

 

Fクラス教室

 

二日前、学校に着くと雄二や須川くんたちが真っ先に僕駆け寄り、心配してくれた。事前に恵衣菜か零華から連絡があったと思うがそれでもこの目で確認するまで不安だったのだろう。僕は本当良い友達を持ったなぁ~、と実感した。

そして、Dクラス戦で消耗した点数を僕たちは二日かけて回復した。今回はBクラスが相手と言うことでちょっとだけ点数を上げた。

 

「みんな、回復試験ご苦労!俺たちはこれよりBクラスに宣戦布告を行う!」

 

『『『『うおおぉぉぉぉぉぉ!!!』』』』

 

「明久。Bクラスに宣戦布告を頼む」

 

「了解。行く?恵衣菜」

 

「ええ」

 

「吉井!なんでその女と一緒に行くのよ!」

 

「吉井君!なんでその人と一緒なんですか!」

 

島田さんと姫路さんが騒ぐが無視。と言うより無視が一番。

 

「雄二、開戦時刻は?」

 

「午後1時からだ」

 

「オッケー」

 

雄二から聞くと僕は恵衣菜と一緒にBクラスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Bクラス前

 

「確かBクラス代表って恭二だっけ?」

 

「うん。友香ちゃんはCクラス代表みたいだよ」

 

「そうなんだ。・・・・・・・・よし、行こう!」

 

"ガラッ!"

 

「失礼するよ。Bクラス代表、根本くんはいるかな?」

 

「ん?明久に姫宮じゃねぇか。どうした?Bクラスになにか用があるのか」

 

「あ、恭二。恭二・・・・・僕たちFクラスは、Bクラスに試召戦争を申し込みます!」

 

「遂に俺たちにも来たか。いいぜ!開戦時刻は何時からだ?」

 

「開戦時刻は今日の午後1時からでいいかな?」

 

「もちろんだ」

 

「じゃあお願いね、恭二」

 

「ああ。全力を出しきるぜ!」

 

僕と恭二は右手を握り締め拳と拳を合わせた。

 

「それじゃあ僕たちはこれで」

 

「ああ」

 

僕たちが教室から出ると教室から声が聞こえた。

 

『よし。いいか!いくら下位クラスとはいえ油断するな!相手はEクラスとDクラスを倒したFクラスだ!全力を出しきれ!』

 

『『『『『おおぉぉぉぉぉぉっ!!!』』』』』

 

根本くんが、今回の試召戦争の作戦会議をしているみたいだ。

 

「変わったね、恭二」

 

「ええ。友香ちゃんと付き合ってから変わり始めたわ」

 

「それはそうよ。そんな恭二に私は惚れたんだから」

 

「ハハ。そうだった・・・・・・ね、ってあれ?」

 

「え?」

 

僕と恵衣菜はいきなり会話に入ってきた声に驚いた。

慌てて後ろを振り向くと。

 

「こんにちは、明久君、恵衣菜」

 

Cクラス代表、小山友香さんがいた。

ちなみに小山さんと恭二は中学から付き合っている。それは同じ中学だったため僕と恵衣菜、零華は知っている。昔は荒れていた恭二が今の性格になったのは小山さんの尽力があったからと恭二の努力のたわものからだ。

 

「小山さん」

 

「こんにちは、友香ちゃん。何時からいたの?」

 

「今来たところよ」

 

「そうなんだ。友香ちゃん、Cクラスは試召戦争しないの?」

 

「う~ん。一応Aクラスと今度模擬試召戦争しようかなって思ってるわ」

 

模擬試召戦争とは試召戦争の練習のような感じだ。模擬試召戦争に負けたからと言ってクラスの設備は下げられないのが模擬と試召戦争の違いだ。

 

「それじゃあ、私は行くわね」

 

「うん」

 

「FクラスとBクラスとの試召戦争に手は出さないわ。安心して」

 

「わかってるよ♪」

 

「それと・・・・」

 

小山さんは、僕に近付いて小声で言った。

 

「気を付けて。Bクラスにはあの根岸がいるわ」

 

「!!根岸ってあの根岸くん!?」

 

「ええ。彼は何をするかわからないわ。よく恭二がぼやいていたの」

 

「わかった。ありがとう小山さん」

 

「ええ。それと私は友香で構わないわ」

 

「じゃあ友香さん。でいいかな?」

 

「ええ。それじゃあ気を付けて」

 

友香さんはそう言うとCクラスへと戻っていった。

 

「明久くん。友香ちゃんになんて言われたの?」

 

「友香さんには頑張ってって、言われたのだけだよ」

 

「そう?ところでなんで友香さん、なの?」

 

「あ、それはさっき友香さんが、友香でいいって、言ったから」

 

「そうなんだ」

 

「うん」

 

「じゃあ、戻ろう♪」

 

「そうだね」

 

僕と恵衣菜はFクラスに戻った。

あの根岸くんがBクラスに。イヤな予感がする。何もなければ良いんだけど。

僕はそう思いながらFクラスに戻っていった。




次回もお楽しみに。感想などお待ちしてます。




次回 『Fクラス対Bクラス』 ここテストに出ます


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第Ⅷ門 Fクラス対Bクラス

バカテスト

問題:『本校で学期末に行われ次年時のクラスを決める試験をなんと言うか答えなさい』

解答
吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華

『振り分け試験』

教師コメント

『正解です。吉井くんと姫宮さんは次回の振り分け試験、頑張ってください。応援してます』


根岸洋介

『学年末試験』

教師コメント

『違います。文章をきちんと読みましょう』

Fクラス生徒(一部)

『定期試験』

教師コメント

『あなた方にはこの後補習を行いますので補習室に来るように』


~明久side~

 

 

午後1時

 

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

"ドンッ!"

 

「開戦だ!総員戦闘開始!!」

 

「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーっ!!!」」」」」」」」」」」」

 

鐘の音とともにBクラス戦が始まった。

 

「吉井!Bクラスの奴ら数学教師を連れてるぞ!」

 

「オッケー須川くん!左翼を島田さんの部隊で、右翼を秀吉の部隊で足止めするんだ!中央は須川くんの部隊で!」

 

「「了解!」」

 

「わかったわ」

 

何故僕が指示を出しているのかと言うと、僕がこの部隊の司令だからだ。恵衣菜は、Fクラス本陣で待機中だ。

現在、戦闘は渡り廊下で行われている。

左翼が数学、右翼は古典、中央は総合科目で戦闘している。

 

「「「「「「試獣召喚(サモン)!!」」」」」」

 

 

 

 

数学

 

Fクラス 島田美波 197点

 

VS

 

Bクラス 鈴木二郎 202点

 

 

古典

 

Fクラス 木下秀吉 252点

 

VS

 

Bクラス 里井真由子 213点

 

 

総合科目

 

Fクラス 須川亮 3206点

 

VS

 

Bクラス 吉田卓夫 2854点

 

「「「「「「なんじゃそりゃーーーーー!!??」」」」」」

 

秀吉と須川くんの点数を見てFクラスとBクラスから絶叫が上がった。

 

「な、何よその点数」

 

「これでもまだ手を抜いている方かな?須川くんと秀吉は」

 

「う~む、少々手を抜きすぎたかの?」

 

「木下、それなら次のAクラス戦で本気の点数を出せばいいだけだ」

 

「ふむ。それもそうじゃの」

 

「取り敢えずさっさと片付けようぜ」

 

秀吉と須川くんがそれぞれの相手に攻撃し点数を減らす。

 

 

古典

 

Fクラス 木下秀吉 252点

 

VS

 

Bクラス 里井真由子 133点

 

 

総合科目

 

Fクラス 須川亮 3206点

 

VS

 

Bクラス 吉田卓夫 2306点

 

更にFクラスとBクラスの両陣営から召喚獣が召喚される。

すると。

 

「お、お待たせ、しま、した」

 

呼吸を落ち着かせながら遅れて姫路さんが来た。

 

「姫路さん、来たところ悪いけど早速お願いね」

 

「は、はい。わかり、ました」

 

フラフラに歩いて前線に出る。

 

「先生、Bクラス岩下律子がFクラス姫路さんに勝負を申し込みます!試獣召喚(サモン)!」

 

「あ、はい。姫路瑞希受けます!試獣召喚(サモン)!」

 

「律子、手伝うよ。試獣召喚(サモン)!」

 

 

数学

 

Fクラス 姫路瑞希 432点

 

VS

 

Bクラス 岩下律子 233点

     菊入真由美 240点

 

 

「あれ、瑞希召喚獣にアクセサリーがついてるわよ?」

 

互いの召喚獣が現れるなか、島田さんが姫路さんの召喚獣を見てそう言った。

 

「あ、はい!今回の数学は結構解けたので」

 

「そ、それって!」

 

「そんなの勝てるわけないじゃん!」

 

姫路さんの召喚獣が装備している腕輪を見て、Bクラスの岩下さんと菊入さんが狼狽する姿が見えた。

 

「それじゃあ行きますね!」

 

姫路さんの召喚獣は右手を前に出し、グッと握り掌を二人の召喚獣に向けた。

 

「ま、まずいよ真由美」

 

「と、とにかく避けるのよ律子」

 

二人の召喚獣は避ける動作をするが時既に遅し。

 

"キュボッ!"

 

そんな音を出して姫路さんの召喚獣から赤いビーム≪熱線≫が放たれた。

 

「キャアァァァ!」

 

「り、律子!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

一瞬にして勝負がついた。

1体は熱線に焼かれ、もう1体は断ちきられて終わった。

 

 

Fクラス 姫路瑞希 362点

 

VS

 

Bクラス 岩下律子 0点 戦死

     菊入真由美 0点 戦死

 

姫路さんの点数が減っているのは腕輪を使った代償だ。

 

「戦死者は補習~~!!!」

 

と、何処からか鉄人・・・・・・・西村先生が現れ戦死者を運んでいった。

ほんと何処から出てきたんだろう?

 

「えっと。それじゃあお願いしますね!」

 

姫路さんが振り返ってFクラスの面々に言う。

それだけでFクラスの士気は上昇した。

 

「姫路さんは下がって補充試験に、他のみんなは連携してBクラスを撃破」

 

僕はみんなにそう指示を出す。

姫路さんのお陰もあってみんな指示を聞いてくれた。

そして上手く戦闘の立合がいっているなか僕は下がった秀吉と話していた。

話す内容は根岸くんの事だ。

根岸くんの事は事前に雄二と秀吉、康太に言って今康太に調査してもらってる。

 

「秀吉、一回Fクラスに戻るよ」

 

「・・・・・・・根岸のことじゃな?」

 

「うん。彼の事だから何か企んでると思うんだ」

 

「じゃろうな。昔の根本じゃったらやりそうじゃが今の彼は違うからの」

 

「うん」

 

「わかった。一回戻るとしようかの」

 

「須川くん、一旦指揮権を渡すからお願い!」

 

「了解だ!」

 

僕は須川くんに指揮権を一時的に渡し、秀吉とFクラスに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「うわっ・・・・・」

 

「これは・・・・・」

 

Fクラスの中は備品が滅茶苦茶にされていた。

卓袱台は壊れており、シャーペンや消しゴムはバラバラにされている。

 

「正直ここまでするなんて思わなかったよ」

 

「儂もじゃ」

 

僕と秀吉はFクラスの惨状に呆れしか出なかった。

 

「ん?どうした、お前ら?」

 

秀吉と教室の中にいると雄二と恵衣菜が戻ってきた。

 

「明久くんと木下くん?どうした・・・・・・ってこれは・・・・・」

 

「スゴいなこれは・・・・・・」

 

恵衣菜と雄二も僕と秀吉が思ったことを言った。

 

「ところで雄二と恵衣菜は何処に行っていたの?」

 

「ああ、Bクラスから提案があってな午後4時になっても決着がつかなかった場合、翌日の午前9時に持ち越しはどうだ?、と言われてその調印をしてきた」

 

「何故明日に持ち越しなのじゃ?」

 

「体力の関係。でしょ雄二」

 

「ああ。俺たちは体力があるからいいけど、姫宮と姫路は、な」

 

そう、姫路さんは体育関係。体が弱く体力が他の人より少し劣っている。だが何故か僕に攻撃してくるときは他の人よりスゴい。ほんとなんでだろう?

恵衣菜は運動神経も良いのだが万全の状態で戦闘に参加するためには必要だ。

 

「取り敢えず鉛筆と消しゴムは補充しておこう」

 

「わかった」

 

雄二と話していると、

 

「吉井隊長大変だ!」

 

Fクラスの1人確か朝倉くん?だっけ

 

「どうしたの?」

 

「島田が人質に捕られた!お陰で残り3人なのに見ているしか出来ない!」

 

「「「「はっ?」」」」

 

朝倉くんの言葉に僕たちは呆気にとられた。

 

「・・・・・雄二、どうしたらいいかな?」

 

「取り敢えず行って、下らない理由だったら戦死させても構わない」

 

「了解。恵衣菜もつれてっていい?」

 

「姫宮か?まあ、良いだろう」

 

「サンキュー。恵衣菜行くよ」

 

「うん」

 

僕は恵衣菜と朝倉くんと戦闘が行われている渡り廊下に向かった。

 

「ところで須川くんは?」

 

「須川も迷っている状態だ」

 

「そう。ところでいつ島田さんは部隊から消えたの?」

 

「わからん。いつの間にかいなくなっていた」

 

朝倉くんから事情説明を聞きながら向かっていると渡り廊下に着いた。

 

「吉井!」

 

「須川くん!どんな状況」

 

「朝倉から聞いたと思うがそのまんまだ。まず島田がいつ部隊からいなくなったのかわからない」

 

「そう。ありがとう須川くん」

 

僕と恵衣菜は他のクラスメイトより前に出て確認した。

 

「アキッ!」

 

「動くな!それより前に動けばこの女の召喚獣を戦死させて補習室に送るぞ!」

 

はて?何時から島田さんは僕の事を下の名前で呼ぶようになったんだろう?恵衣菜は島田さんに僕の名前を言われちょっと怒っている感じだった。

その場にいるBクラスの男子生徒が自身の召喚獣の武器を倒れている島田さんの召喚獣の首に当て言う。

その近くには西村先生が待機していた。

 

「島田美波、聞きたいことがあるけどいいかしら?」

 

恵衣菜が島田さんに聞く。

 

「何よ?」

 

「どうして貴女はBクラスに捕まっているの?部隊の指揮官ではないにしろ今は戦争中。安易に何処かに行くことは出来ないはずよ?それなのに貴女は部隊から離れた。貴女は一体何処に行っていたの?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「何故、こいつが捕まっているか教えてやろうか?」

 

「ええ。教えてくれる?」

 

「こいつ、吉井の偽情報を流したら1人部隊を離れ保健室に向かったんだよ」

 

「保健室?島田美波、貴女は明久くんが一回教室に戻ると言うことを聞いてなかったの?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「島田さん、ちなみになんで保健室に向かったの?」

 

「だって、アキが瑞希のパンツ見て鼻血が止まらないって言われたからよ!!」

 

「「はっ?」」

 

島田さんの言葉に僕と恵衣菜はなんとも言えなかった。

姫路さんのパンツを見て鼻血が止まらない?あり得ないでしょ。いや、恵衣菜のだったらもしかしたら・・・・・・・じゃなかった。うん、これは・・・・・

 

「同情の余地無しだね」

 

「ええ。ありませんね」

 

「恵衣菜、よろしく」

 

「うん。試獣召喚(サモン)

 

僕は島田さんとBクラス3人を恵衣菜に任せた。

 

「島田美波、貴女に慈悲はありませんよ」

 

 

数学

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 673点

 

VS

 

Fクラス 島田美波 0点 戦死

Bクラス 生徒×3人 0点 戦死

 

勝負は一瞬で着いた。

恵衣菜の召喚獣の突進技を喰らい4人の召喚獣は点数が0になり戦死した。

 

「戦死者は補習~~!!」

 

「「「「いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」」」

 

西村先生に連れられて4人の戦死者は補習室に連行されていった。

 

「お疲れ恵衣菜」

 

「うん」

 

「みんな!点数が危ない人は補充試験に向かって!まだ、余点がある人はここで防衛戦をお願い!」

 

そう僕はみんなに指示を出し恵衣菜と須川くんと教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「戻ったよ雄二」

 

「お疲れさん。島田はどうした?」

 

「島田美波は補習室送りにしたよ、坂本くん」

 

「って事はどうでもいい理由で離れたのか。バカかアイツは」

 

「今さらだと思うよ坂本くん」

 

「まあな」

 

現時刻は午後3時45分。あと15分もすれば一旦試召戦争は中止だ。翌日に持ち越される。

 

「それで雄二。明日はどうするの?」

 

「明日は古典や日本史・・・・・文系で攻めていくつもりだ」

 

「なるほど」

 

「明日も明久には指揮官として行ってもらう。恵衣菜はその補佐として頼む」

 

「オッケー」

 

「了解だよ」

 

 

"キ~ンコ~ンカンコ~ン♪"

 

 

午後4時のチャイムが鳴った。

 

「今日はここまでだな。みんな、今日はこれで終わりだ!明日に備えてゆっくり休んでくれ!」

 

チャイムと同時にクラスに戻ってきたクラスメイトに雄二がそう言う。

雄二の言葉に各自帰宅の準備をするとそれぞれ教室から出ていった。

 

「・・・・・明久」

 

クラスメイトの大半が出て行ったその時、僕の背後から僕を呼ぶ声が聞こえた。

 

「あ、康太。お疲れ、それでどうだった?」

 

「・・・・・(コク)情報通り根岸はBクラスにいる」

 

「そうか」

 

「・・・・・それとBクラスで根岸が1人で何か言っていた」

 

「それって聞こえた?」

 

「・・・・・・(コク)もちろん。確か姫宮を動けなくさせることが出来た、と言っていた」

 

「恵衣菜を?」

 

「・・・・・(コク)でも確証はない」

 

「そう・・・・・・・ありがとう康太」

 

「・・・・・(フルフル)構わない」

 

そう言うと康太も帰っていった。

秀吉は演劇部へ、雄二はAクラスに霧島さんを迎えに行ったのだろう。ああ、見えて雄二は霧島さんの事をとても大切にしている。

 

「僕たちも帰るか・・・・・・恵衣菜、帰ろうか」

 

「えっ、う、うん。そうね」

 

「どうかしたの?」

 

「う、ううん。なんでもないよ明久くん」

 

「そう?」

 

この時、恵衣菜の様子がおかしいのを聞いていれば良かったのかも知れない。この時の僕にはまだ、それがわからなかった。

まさか、あの時に恵衣菜の大切なものが無くなっていたなんて・・・・・・・

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

なんで、なんでないの!?鞄の中に大切に、何時も入れてるのに!?

あれ。これは?

 

「!?」

 

明日の朝・・・・・・行くしかないわね。

明久くん。ゴメンね。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

~明久side~

 

午前8時55分

 

Fクラス

 

昨日から恵衣菜の様子がおかしい。何処かに行っていたのか、さっき教室に戻ってきた。

昨日、零華も心配して聞いたが、なんでもないよ、の一点張りだった。けど、夜零華と恵衣菜二人の時に何かあったのか、零華の顔に怒りの表情が見えた。

不思議に思い僕も聞いてみたがやっぱり、なんでもないよ、と返された。

 

「恵衣菜、何かあったの?」

 

「明久くん。ううん、なんでもないよ、気にしないで」

 

「そう?何かあったら言ってね」

 

「うん」

 

"・・・・・・ゴメンね明久くん"

 

恵衣菜が何か言ったみたいだが小声で言ったため聞き取れなかった。

 

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

Bクラス戦二日目の開始の鐘の音が鳴り響いた。

それと同時にクラスからクラスメイトたちが勢いよく飛び出す。

雄二が出した作戦はこうだ。

 

『今回の作戦はBクラスの両扉を攻める』

 

と。つまり徹底的に攻撃し殲滅させると言うことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bクラス前廊下

 

「扉を上手く使って相手を防ぐのじゃ!」

 

もうひとつの扉から秀吉の声が聞こえた。

 

「どうも向こうの戦況は芳しくないようだな」

 

「どういう事、須川くん?」

 

「・・・・・・・・・・姫宮の様子がおかしい」

 

「恵衣菜の?」

 

「ああ。何度か助けに入ろうとするんだが、Bクラス内を見ると何故か立ち止まるんだ」

 

「Bクラス・・・・・教室の中・・・・・?」

 

僕は須川くんからの情報にBクラスを見た。

中には代表の恭二を含め十数人がいる。その中にはあの根岸くんもいた。

ただ彼は何故か恵衣菜と秀吉たちがいる扉の方にいた。

 

「戦闘に参加するわけでもないのに何故・・・?」

 

『すまん、誰か入ってくれ!』

 

『私が行きます!・・・・・・・あっ』

 

『くっ。横田代わりに入るのじゃ!』

 

『了解!』

 

『どうしたのじゃ姫宮?』

 

『木下くん・・・・・・なんでも、ないの・・・』

 

恵衣菜を見ると須川くんの情報通り、Bクラスを見て立ち止まっていた。その表情は悲しげだった。

 

「Bクラスの中に何が・・・・・?」

 

僕はクラスメイトたちが戦闘するなかBクラスを見た。

 

「!!あ、あれは・・・・・・・・!!」

 

僕は根岸くんを見て、彼が手に持っている物を凝視した。

彼が持っている物は僕が恵衣菜にプレゼントした、指輪とペンダントだったからだ。

 

「・・・・・・・・なるほどね・・・・・・そう言うことか」

 

「吉井?」

 

僕は昨日からの疑問がわかった。そして恵衣菜が泣きそうな顔をしていた理由が。

 

「須川くん」

 

「な、なんだ?」

 

「指揮権を君に渡す。須川くんがこの後指揮して」

 

「わ、わかった」

 

「それじゃあ、僕は行くところがあるから」

 

「あ、ああ」

 

僕は指揮権を須川くんに譲渡し恵衣菜と秀吉に寄った。

 

「秀吉、恵衣菜を下げて」

 

「あ、明久?」

 

「恵衣菜を前に出さないで、いいね」

 

「明久くん・・・・・」

 

「大丈夫だよ恵衣菜」

 

僕は恵衣菜の頭を軽く撫でその場を離れた。

行き場所はFクラス本陣。雄二に頼むためだ。

 

「根岸くん。僕は君を絶対に許さないっ!!」

 

 




遅くなりごめんなさい、速く投稿出来るようにします

感想などお願いします!



次回 『明久の怒り、決着Bクラス』 ここテストに出ます


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第Ⅸ門 明久の怒り、決着Bクラス

バカテスト

問題:『試召戦争で点数が0点。戦死者になると行われる義務は何?』

解答
吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華、根元恭二

『補習』


教師コメント

『正解です。戦死者になると西村先生の補習が行われるのでしっかりと勉強し、補習にならないようにしましょう』


根岸洋介

『鉄人の補習』


教師コメント(西村先生)

『いい度胸してるな!お前には補習の時間を増やしてやろう』


Fクラス生徒(一部除く)

『鬼の補習は勘弁してください!』


教師コメント

『補習になりたくなければ勉強してください』


西村)前回のあらすじ

   吉井の怒りに触れた根岸。大切なものを取り返すために吉井は駆ける。FクラスVSBクラス戦勝者はどちらか・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「根岸くん。僕は君を絶対に許さないっ!!」

 

僕は根岸くんの持っている物を見て、かなり怒っていた。けど頭は落ち着いている。

ああ、こんなにも冷静でいられるなんて・・・・・・本気で叩き潰す。

僕はFクラス本陣へ、雄二に許可を得るため向かう。

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「雄二」

 

僕はFクラスの自席で作戦を考えていた雄二に近づいた。

 

「ん。な、なんだ明久?」

 

「本気で殺ってもいい?」

 

「ちょっと待て。やっての地文が殺ってになってるぞ!」

 

「間違えた。ヤってもいい?」

 

「なんかまた違う気がするが・・・・・・・何があった」

 

「根岸くん。と、言えばわかる?」

 

「ああ・・・・・・・なるほどな。それじゃあ姫宮は下がらせた方が良いってことか」

 

「うん。後、西村先生を連れていく」

 

「何?鉄人をか?」

 

「うん」

 

「・・・・・・・わかった。フィールドはアレだな」

 

「そう。僕の一番の得意科目」

 

「わかった。いいぜ、本気でやんな明久」

 

「ありがとう雄二」

 

そう言うと僕は次に学園長室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

「学園長、失礼します」

 

ドアをノックして僕は学園長室に入った。

 

「どうしたんだい吉井。今はBクラスとの試召戦争の最中さね」

 

「学園長、お願いがあります」

 

「・・・・・・何かあったのさね」

 

「はい」

 

「・・・・・・わかった。それで、お願いとはなんだい?」

 

「Bクラス所属、根岸洋介くんの召喚獣を僕と同じように、今回だけフィードバックが来るようにしてください」

 

「理由は・・・・・・聞かなくてもなんとなくわかったさね。ソイツはお前さんがこんなことを頼みに来るほどの事を仕出かしたようだね。・・・・・・・わかった。調整に10分かかるがいいさね?」

 

「はい。ありがとうございます学園長」

 

僕は学園長にお願いすると学園長室を退出し、西村先生を探しに行った。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

~学園長side~

 

「全く、吉井を彼処まで怒らせるとは一体根岸とやらは何をしたさね。取り敢えず西村先生に連絡をしとくとするさね」

 

あたしは机にあった電話機を取り内線で西村先生に言った。

 

「さて、後は召喚獣の調整さね」

 

あたしはノートパソコンを開き試験召喚システムにアクセスし調整を始めた。

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

職員室

 

「失礼します。2年Fクラス吉井明久です。西村先生はいますか?」

 

僕は手っ取り早く職員室にいた。西村先生がなんとなくいるような気がしたからだ。

すると。

 

「なんだ、吉井?」

 

案の定、西村先生がいた。

 

「西村先生。試召戦争の科目でお願いがあります」

 

「わかってる。先程学園長から通達があった。それで科目はなんだ?」

 

「日本史でお願いします」

 

「うむ。では行くとするか」

 

「はい」

 

僕は西村先生とBクラスへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bクラス前

 

Bクラスに着くと、FクラスのみんなとBクラスの生徒の戦闘が行われていた。

 

「はっ。お前らじゃ俺たちには勝てねぇよ!Fクラスのようなバカどもが!」

 

その中でも戦闘に参加してないのにも関わらず大きな口を叩く生徒がいた。

根岸くんだ。

彼は安全な教室の中で騒いでいた。

恭二も困っているのか額に手を当て頭痛がするかのようにしていた。

 

「西村先生、お願いします」

 

「わかった。承認する!」

 

西村先生が張ったフィールドが形成される。

 

「行くよ。試獣召喚(サモン)!」

 

僕は自身の分身である召喚獣を喚び出す。

 

「全員下がって。僕がやる」

 

僕がそう言うと、クラスのみんな僕の気迫に怯んだのか素直に大人しく下がった。

そして、学園長が言っていた10分が過ぎた。

これで根岸くんの召喚獣は僕と同じようにフィードバックが来る。

 

「Fクラス吉井明久、Bクラス生徒全員に勝負を挑む!」

 

前に出てその場の全員に聴こえるように言う。

 

「明久?」

 

その中、恭二は怪訝な表情を浮かべていた。

 

「はっ!『観察処分者』の癖に何言ってんだ、このバカは。あー、そうか。バカだから分かんないんだ!」

 

そして根岸くんが一番騒いでいた。

 

「ご託はいいからさっさと掛かってきなよ」

 

「「「「「「「「「「試獣召喚(サモン)!」」」」」」」」」」

 

Bクラスの生徒10人が同時に召喚する。

 

 

日本史

 

Fクラス 吉井明久 982点

 

VS

 

Bクラス生徒×10人 平均254点

 

 

「「「「「「「「「「な、なにーーーーっ!!!」」」」」」」」」」

 

その場にいる、恭二や、秀吉等僕の本当の実力を知っている人以外驚愕の声を上げた。

 

「ゴメンね」

 

そう一言い、召喚獣を操作する。

結果。

 

 

Fクラス 吉井明久 982点

 

VS

 

Bクラス生徒×10人 0点 戦死

 

 

あっという間に決着が着いた。

 

「戦死者は補習室に集合!」

 

そしてあっという間に西村先生が戦死者を補習室に連行し戻ってきた。

ほんと速すぎでしょ?

 

「次は君だよ。根岸くん」

 

「な、なんなんだよその点数!どうせカンニングでもしたんだろうが!」

 

「いいから早く召喚獣を出しなよ」

 

「うっせぇ!試獣召喚(サモン)!」

 

根岸くんの召喚獣は侍のような格好に片手剣と盾を装備していた。

 

 

Bクラス 根岸洋介 285点

 

 

「くらえっ!」

 

根岸くんの召喚獣が突進してくる。

 

「・・・・・・・・」

 

僕は余裕を持って躱す。

 

「くっ。このっ!このっ!」

 

余裕を持って根岸くんの召喚獣の攻撃を躱し続ける。

 

「はあ~。こんなもの?」

 

「うるせぇ!」

 

「次は僕からいくよ」

 

僕は召喚獣を操作し一瞬で根岸くんの召喚獣に肉薄し左手を右手の剣で斬り落とす。

 

 

Fクラス 吉井明久 982点

 

VS

 

Bクラス 根岸洋介 253点

 

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!痛ってぇぇぇぇぇえ!」

 

根岸くんは左手を押さえて転げる。

 

「てめえ、何しやがった!」

 

「何って、別になにもしてないよ」

 

「嘘つくんじゃねぇぞ、ゴルァ!」

 

「よっと」

 

「なんで当たらねぇんだよ!」

 

「君の操作が下手だからじゃない?」

 

「調子に・・・・・のるなぁ!」

 

根岸くんの召喚獣の攻撃を余裕で躱し、いなしていく。

 

「じゃあ次はこっちね」

 

もう一度僕の召喚獣を根岸くんの召喚獣に肉薄させ、今度は右足を斬る。

 

 

Fクラス 吉井明久 982点

 

VS

 

Bクラス 根岸洋介 221点

 

 

「ぎゃあああああああああ!!」

 

周りで見ている生徒も引いて見ていた。

 

「根岸くん、その痛み何か知りたい?」

 

「さっさと・・・・・教え・・・・・ろ・・・・・・」

 

根岸くんは痛みからか言葉に間があった。

 

「じゃあ教えてあげるよ。根岸くんの召喚獣には僕と同じようにフィードバック機能をつけてもらったんだよ。学園長にお願いしてね。その痛みを見る限りフィードバックの設定は40%かな?慣れてないとキツいよ」

 

「ふ、フィードバック、だと?」

 

「そうだよ」

 

「なんで、俺の召喚獣にフィードバックなんかついてんだよ!」

 

「理由を知りたい?理由はね・・・・・・・」

 

僕は間をあけ、冷たい眼をして怒気と殺気を出して言う。

 

「お前は、僕を怒らせた。ただそれだけだよ」

 

「ひっ!」

 

「それに昨日の教室のだってお前がやったんでしょ?」

 

「そ、それがなんだよ」

 

「そして君は恵衣菜の鞄から恵衣菜の大切な物を取ったよね?」

 

「そ、それは・・・・・・・」

 

「どうしたのかな?言い訳でもするつもり?」

 

僕は召喚獣をいまだに倒れている根岸くんの召喚獣に近づける。

 

「な、なんだよ」

 

「僕が言いたいことはねただ一つ・・・・・・」

 

根岸くんの召喚獣を蹴り上げ空中に浮かばせる。

 

「恵衣菜を泣かせたお前を絶対に僕は許さないって事だ!」

 

そして召喚獣を操作し、

 

属性付与(エンチャント)発動!」

 

腕輪を発動させた。

 

属性付与(エンチャント)六属性(アスタリスク)!」

 

六属性(アスタリスク)の効果は光と闇以外の属性を付与することだ。

 

「いくよ!」

 

僕は六属性を付与された双剣を振り抜き根岸くんの召喚獣を四肢から切り裂いた。

 

「ぎゃあああああああああ!痛い!熱い!冷たい!痺れる!」

 

 

Fクラス 吉井明久 867点

 

VS

 

Bクラス 根岸洋介 0点 戦死

 

 

体のあちこちから痛みや熱が来るのだろう、根岸くんはその場に倒れた。

 

 

「ふぅ~」

 

「吉井・・・・やりすぎだ」

 

後ろから西村先生がそんなことを言った。

それと同時に周りの人たちも首を縦に振っていた。

そんなにやり過ぎたかな?恵衣菜を泣かせたんだから当然の報いだと思うけどなぁ~

 

「明久、いくらなんでもやりすぎじゃないか?」

 

「そうかな」

 

目の前の恭二までも言ってきた。

 

「恭二だって友香さんを泣かされたりしたら怒るでしょ?」

 

「いや、まぁ、それはそうなんだがな・・・・・・」

 

ちなみにこの会話は小声でやっているため後ろのFクラスの連中に聞かれる事はない。

これのせいでFクラスのFFF団に目をつけられたら友香さんも恭二も可哀想だからだ。さらに僕の親友をそんな目にあわせたくない。

 

「それで恭二はどうする?闘う?」

 

「いや、俺たちの負けでいい」

 

「うん。それじゃあ西村先生」

 

「ああ、わかった。戦争終結!勝者Fクラス!」

 

Bクラス戦は僕たちFクラスの勝利で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15分後

 

「さてとそれじゃあ根本、戦後対談といくとしようか」

 

「わかっている坂本。ルール通り俺たちBクラスはFクラスに・・・・・・・「その必要はないよ恭二」・・・・・設備を、って、はい!?」

 

「いや、だからFクラスとBクラスの設備を取り替えなくても良いって」

 

「え、いや、いいのか坂本?」

 

「ああ。元から奪う気ないからな」

 

「そ、そうか」

 

「代わりに頼みがあるんだが・・・・・・」

 

「ああ、構わない。負けたのは俺たちだからな」

 

「そうか。それじゃあ明久」

 

「うん」

 

僕はいまだに倒れている根岸くんに近づき軽く蹴り飛ばした。

 

「うっ、うう・・・・・」

 

「やあ、根岸くん。試召戦争終わったよ、勝ったのは僕たちFクラスだからね」

 

「な、なんだと!?」

 

「それと、そろそろ返してくれないかな?」

 

「な、なんのことだ」

 

「まだ惚けるつもり?」

 

「と、惚けるもなにも・・・・・・・・」

 

「じゃあ言うよ。さっさと僕が恵衣菜にあげた大切な指輪とペンダントを返せ!」

 

「なにっ!?明久それは本当か!?」

 

「そうだよ恭二。もしかして恭二はFクラスの設備が破壊された事も知らなかったの?」

 

「あ、ああ。知ったのはさっきだ。明久とそこのバカの戦闘の際に明久か言って知った」

 

「そうなんだ。それで根岸くん、いい加減早く返して。僕が優しく言ってる内にね」

 

「わ、わかった」

 

根岸くんは制服のブレザーの内ポケットから恵衣菜の指輪とペンダントを取り出した。

 

「ほ、ほらよ」

 

「うん。あ、あとまだあるからね」

 

「ま、まだあるのか!?」

 

「当たり前でしょ。恵衣菜を泣かせたんだから当然だ。雄二、あれお願い」

 

「おう。これだろ」

 

雄二は何処からか制服を取り出した。

この学園の。女子の制服を。

 

「ああ・・・・・なるほどな」

 

「恭二、わかった?」

 

「ああ」

 

「そ、それをどうするつもりだ」

 

「もちろん君が着るんだよ根岸くん」

 

「なに!?」

 

「それを着て1ヶ月過ごしてね。それさえやってくれれば僕はなにも言わないよ」

 

「な、なんで俺がそんなことを!」

 

「当然だよ。ね、零華」

 

「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

 

僕はこの場にいないはずの妹の名前を口に出した。

その場にいた全員は、何言ってんだと言う顔をしているだろう。一部を除いて。

答えは。

 

「もちろんその通りですね、兄様」

 

もちろん返ってきた。

 

「な、な、よ、吉井零華!?」

 

「どうも根岸洋介くん。よくも恵衣菜姉様を泣かせてくれたね」

 

「ひっ!」

 

「それに私の兄様の事も散々バカにしてくれたようね?本当なら今この場でやってもいいんだけど・・・・・・・・今回は特別にこれを着て1ヶ月過ごすなら見逃してあげるわ」

 

「・・・・・・」

 

根岸くんは零華の殺気に当てられ声も出ないようだ。

 

「それじゃあ恭二。これ明日からBクラス全員でやってもらっていいかな?」

 

「ああ。構わないぜ。俺もコイツの行動にはいい加減うんざりしていたからな」

 

「それじゃあお願いね。あ、西村先生、根岸くんのことお願いします」

 

「ああ、わかった。・・・・・・さて、根岸。まさかクラスの設備を破壊するだけじゃなく人の物まで取るとは、いい度胸してるな。道徳の授業が必要なようだな!お前にはこれから放課後みっちりと補習をしてやる!」

 

そう言うと西村先生は根岸くんを連れて補習室に行った。

 

「ふぅ~。さて。まずは明久、坂本、すまなかった。知らなかったとは言えクラスの設備を壊してしまって」

 

「別に謝らなくてもいいぜ。明久と吉井妹ので済々したからな」

 

「そう言ってくれると助かる」

 

「おーし!それじゃあFクラスは全員クラスに戻れ!」

 

「それじゃあお願いね恭二」

 

「ああ。任せとけ明久。だがまあ、土台が既に腐っているから難しいと思うが」

 

恭二の言葉にBクラス全員コクコクと首を縦に降り頷いた。

 

「ハハ。確かにね」

 

「お前たちのAクラス勝利を応援してるよ」

 

「ありがとう恭二」

 

僕は恭二と拳を軽く合わせ、僕はBクラスを出た。

 

「明久」

 

「兄様」

 

「雄二、零華」

 

Bクラスを出ると雄二と零華が壁にもたれ掛かって待っていた。

 

「ありがとう、雄二。お陰で助かったよ」

 

「何良いってことさ。俺は先に戻ってるからな」

 

「うん。わかったよ」

 

雄二はそう言うとFクラスへと戻っていった。

 

「兄様、お疲れ様です」

 

「ありがとう零華。ところで零華はいつから気付いていたの?」

 

「兄様も想像していると思いますけど、昨日の夜からですよ。兄様がお風呂に入っている間に恵衣菜姉様から聞かされたんです」

 

「そうだったんだ。恵衣菜も僕に言ってくれたら良かったのに」

 

「言いたくても言えなかったんですよ兄様」

 

「どう言うこと?」

 

「恵衣菜姉様に根岸から手紙が来ていました。内容は『明日の朝中央階段屋上前で待つ。吉井明久に話したら戻らないと思え』、と」

 

「そうだったのか・・・・・・・」

 

「ええ。ですから兄様ではなく私に話したんだと思います」

 

「そうか。ありがとう零華。零華は自慢の僕の妹だよ」

 

「//////ありがとうございます兄様」

 

「うん」

 

「兄様、恵衣菜姉様なら多分屋上にいると思います。早く行ってあげてください」

 

「わかった。ありがとうね零華」

 

僕は零華に礼を言い屋上へと向かった。

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

「昨日恵衣菜姉様から聞いたときはすぐさま根岸に問い詰めて返させようとしたのですが、恵衣菜姉様に止められてしまいましたからね・・・・・・・本来なら許さないのですが兄様に免じて今回はこれで無しにしましょう。私も明日のCクラスとの模擬試召戦争の準備をしなくては」

 

私は一人そう呟くとAクラスに戻っていった。

Aクラスに戻ると何故か、翔子ちゃんたち以外苦笑いを浮かべていた。しかも若干呆れ部分が。なんでかしら?

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

私は今1人屋上にいる。

Bクラスとの試召戦争はFクラスの勝利で終わったみたい。

私は今日は参加出来ずに下がっているだけしか出来なかった。理由、単純に根岸君から脅されていたから。

昨日、明久くんから貰った大切な指輪とペンダントを奪われ、今日の朝、中央階段屋上前で待つ。吉井明久に話したら戻らないと思え。と書かれていた。

そして今朝、中央階段屋上前で、戦闘に参加するな、と言われ結局何も出来なかった。

 

「うっ、うっ・・・・・・・グスッ・・・・・」

 

私は誰もいない屋上で泣いていた。

その時。

 

「恵衣菜!」

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「恵衣菜!」

 

僕は屋上に1人いる恵衣菜を呼んだ。

 

「明久・・・・・・くん」

 

泣いていたのか、恵衣菜の顔は赤く、涙を浮かべていた。

 

「恵衣菜、これ」

 

僕は手に持っていた指輪とペンダントを恵衣菜に渡す。

 

「こ、これって」

 

「根岸くんから取り返してきた」

 

「明久くん/////」

 

僕はペンダントを恵衣菜の首に、指輪を左手に着ける。

 

「ありがとう、明久くん!」

 

そう言うと恵衣菜は思いっきり僕に抱き付いてきた。

 

「ちょ、恵衣菜!?」

 

「私、どうしようかずっと悩んでたの。零華ちゃんには話したけど、どうしようって」

 

「・・・・・・」

 

「それに今朝、脅されて戦闘出来なかった。クラスのみんなに迷惑かけちゃった」

 

「大丈夫だよ、恵衣菜」

 

「え?」

 

「恵衣菜の様子がおかしいって昨日から分かっていたから。僕もゴメンね。恵衣菜の悲しみに気づいてあげれてなかった、彼氏失格だね」

 

「そ、そんなことないよ!明久くんは私の立派な彼氏だよ!何処を、ううん。世界中探しても明久くんの代わりの人なんていない!明久くんは明久くんなんだから!私の彼氏なんだから」

 

「恵衣菜・・・・・・ありがとう」

 

「うん」

 

「さ、クラスに戻ろ。雄二たちも心配してるよ」

 

「うん」

 

僕は屋上の扉へ歩を進めた。

 

「明久くん!」

 

「ん?どうした・・・・・・「んっ」・・・・・!?」

 

呼ばれて振り返ると恵衣菜からキスをされた。

 

「んっ・・・・・・・・プハッ・・・・え、恵衣菜!?いきなりなにを!?」

 

「そ、その。ありがとう明久くん。大好きだよ!」

 

そう言うと恵衣菜は顔をさっきとは違う意味で赤くして屋上から降りていった。

 

「え、恵衣菜!」

 

僕も顔を赤くして恵衣菜のあとを追い掛けた。

恵衣菜は途中で待っていてくれたため、一緒にFクラスへと戻った。

Fクラスに戻ると、雄二や秀吉、康太に須川くん、横溝くんが顔をにやけて待っていた。

その一方でクラスメイトや姫路さん、補習が終わった島田さんから殺されそうになったが、逆に返り討ちにして気絶させた。

ちなみにほとんど康太のスタンガンで気絶させられた。

そして簡単なHRをして、零華と一緒に帰路に着いた。

だが、僕の夜はまだ終わりじゃなかった。

 

~明久side out~




バカテスト考えたり文考えたり大変だ~
感想などお願いします。



次回 『終らない夜とAクラス戦』 ここテストに出ます。


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第Ⅹ門 終らない夜とAクラス戦

バカテスト

問題:『文月学園に今回から作られた試召戦争の為の施設の名前は何?』

解答
吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華

『文月学園スタジアム』


教師コメント

『正解です。今回はここでFクラスとAクラスの試召戦争を行いますね。頑張ってください』


Fクラス生徒(一部除く)

『コロシアム』

教師コメント

『一応あってはいるのですが正式名称が違うので三角とします』


姫路瑞希、島田美波

『『明久君(アキ)のお仕置き場』』

教師コメント

『・・・・・・・・はい?』


~明久side~

 

 

みなさんこんにちは。主人公の吉井明久です。

さて僕は今とんでもなく、大変な場面にいます。

それは・・・・・・・

 

 

「明久くん・・・・・お願い・・・・・・して・・・・・」

 

僕の恋人。姫宮恵衣菜に自室で押し倒されているからです。

 

「ちょ、恵衣菜!?」

 

「はやく・・・・・」

 

なんでこうなったのかは時間を数刻前に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前

 

 

 

 

 

「あの、恵衣菜さん?」

 

「なに、明久くん♪」

 

「歩きにくいのですが・・・・・」

 

「ええー。ダメ?」

 

「そうじゃないんだけど・・・・・」

 

「じゃあいいじゃん♪ギュー♪」

 

「恵衣菜姉様・・・・・・」

 

学校の屋上でキスされた後、教室でHRとひと悶着があったもののそれをいなし、Aクラスに零華を迎えに行き、今は帰路についている。

そして、今恵衣菜がベッタリと僕の左腕に抱き付いている。零華は零華でなんとも言えない表情をしている。

 

「あらあら・・・・・ウフフフ」

 

ちなみに、ついさっき偶然出会った葵姉さんも一緒にいる。

 

「葵姉さん、見てないでなんとかしてほしいんだけどなー」

 

「それは無理ですよ、明久くん」

 

「ですよね~」

 

結局、僕は恵衣菜に抱き付かれたまま帰ることになった。まあ、僕も僕でうれしいからいいんだけど・・・・・・せめて人の目を気にしてほしい。先程からスゴく注目されているから。

 

「でも、まあいいかな・・・・・・」

 

僕は1人そんなことを呟いた。

 

 

 

 

 

 

自宅

 

葵姉さんと自宅近くで別れ、僕と恵衣菜、零華は自宅に帰ってきた。

 

「それじゃあ、今日の夜ご飯は私が作るので兄様と恵衣菜姉様はゆっくりしていてください」

 

「うん、お願いね零華」

 

「ありがとう、零華ちゃん」

 

僕たちはそれぞれ自室で制服から部屋着に着替えた後、零華は台所に、僕と恵衣菜はリビングのソファーに座り夕方のニュースを見ていた。この時も勿論恵衣菜は僕に抱き付いてきた。左腕から伝わる恵衣菜の胸の感触にドキドキしながらも、僕は昨日から辛かったであろう恵衣菜の頭を優しく撫でた。

この時、零華が台所で僕と恵衣菜を見ながら誰かに連絡をしていることに、僕は気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に時間が過ぎ今は夜の11時近くだ。

零華の作った夜ご飯を食べ、お風呂に入り自室で読書をしているとあっという間に時間が過ぎていった。

 

「そろそろ寝ようかな」

 

僕は読んでいた本に栞を挟みベッドに横になった。

部屋の明かりをナイトモードにすると余程疲れていたのかすぐさま眠りに落ちた。

そして、僕が眠りに落ちてしばらくして。

 

「・・・・・・・くん・・・・・・久くん・・・・・明久くん・・・・」

 

「んん」

 

僕は誰かに呼ばれ起こされた。

眠たい瞼を少し開けて部屋を見る。

声の主はすぐ見つかった。

何故なら。

 

「ん・・・・・・・恵衣菜・・・・・?」

 

僕の目の前。正確には僕に跨がって恵衣菜がいた。

 

「おきましたか明久くん」

 

「って、なんで恵衣菜が、ふぐっ!!」

 

言葉が変になった理由は恵衣菜が自分の口で僕の口を押さえたからだ。

 

「かはっ・・・・・・どうしたの恵衣菜?」

 

僕は恵衣菜が口を離すと小さな声で聞いた。

 

「明久くん、お願いがあるの」

 

「お願い?」

 

「うん」

 

恵衣菜は頷くと僕に近づき・・・・・・って、ちょっとぉ!!??

 

「なんで服をはだけるのさ!?」

 

恵衣菜がいきなりパジャマのボタンを外し始めたのだ。

僕は驚きで少し大きな声で言ってしまった。

 

「シーーッ。零華ちゃんが起きちゃう」

 

「い、いや、だから!」

 

僕ははだけた服から覗く恵衣菜の白い肌を極力見ないように顔を反らして聞いた。

 

「こっち見て明久くん」

 

「え、恵衣菜!?」

 

顔を反らしていたがえが強引に視線を自分に向けた。

時間はまだ午後11時半辺りだろう。

窓から降り注ぐ月明かりに照られ、恵衣菜の肌がよく見える。

雪のような白い肌に上下お揃いの純白の下着が恵衣菜の体を覆う。

恵衣菜の長い黒髪と半裸の状態が絶妙にあっていたため、僕はその姿に見とれていた。

 

「明久くん・・・・・お願い・・・・・・して・・・・・」

 

「ちょ、恵衣菜!?」

 

「はやく・・・・・」

 

「れ、零華は起きないの!?」

 

「零華ちゃんなら・・・・・・ぐっすり寝てるから」

 

「そ、そう言う事じゃなくて!」

 

どう考えても恵衣菜は夜這いに来たみたいに見える。

 

「明久くんに夜這いしに来たの」

 

考えていたことを恵衣菜がはっきり言ったぁー!!

まじで夜這いですか!?あれ、普通夜這いって男女逆じゃあ?

僕がそう思っていると。

 

「なんで僕の服を脱がそうとするのさ!」

 

恵衣菜が僕の服を脱がそうとしてきた。

 

「お願い・・・・・・私の事、抱いて・・・・・」

 

恵衣菜のこの表情を見て断れる人がいたら是非とも会ってみたい。と言っても会わせるつもりは無いけど。

 

「・・・・・・わ、分かったよ」

 

「ありがとう明久くん」

 

この日僕の部屋で、月明かりに照られながら僕と恵衣菜は互いの体を重ね合わせ1つとなった。

その翌日、僕を起こしに来た零華によると、僕と恵衣菜は一緒に抱き合って寝ていたらしい。

その光景を見た零華は顔を赤くして慌てていたのを僕と恵衣菜は零華より顔を赤くして見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通学路

 

朝の出来事があったため僕と恵衣菜、零華は互いの顔をまともに見られずに登校していた。

 

「おはようございます、明久くん、恵衣菜ちゃん、零華ちゃん」

 

「お、おはよう葵姉さん」

 

「お、おはよう、葵ちゃん」

 

「お、おはよう、葵お姉ちゃん」

 

通学路の途中で葵姉さんと出会った。

そして三者三様の挨拶を返す。

 

「?3人ともどうかしたのですか。様子がおかしいですよ?」

 

「な、なんでもないよ葵姉さん!」

 

「う、うん、そうだよ!」

 

「い、いや、その・・・・・」

 

「ふむ。何故か明久くんはやつれていて、逆に恵衣菜ちゃんはいきいきしていて、零華ちゃんは顔が赤い。・・・・・・ああ、なるほどそう言うことですか」

 

「「「・・・・・・・・・・(ギクッ)!」」」

 

「明久くん、恵衣菜ちゃんおめでとうございます!零華ちゃん、今夜は赤飯ですね!」

 

葵姉さんは僕たちの様子すぐさま分かったらしく一人盛り上がっていた。

伊達に長年僕たちといる訳じゃないと言うことだ。もしくはお姉さんとしての勘か。

 

「ちょ、葵姉さん。こんな人が多いところで言わないでよ!」

 

「あら、ごめんなさい」

 

葵姉さんは、テヘペロという感じで返してきた。

そんな感じで4人で学校を向かった。

道中、葵姉さんは恵衣菜と零華と一緒に話していたが僕には聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園

 

 

葵姉さんとは昇降口で別れ、僕たちはそれぞれの教室に向かう。

 

「今日はAクラスとCクラスの模擬試召戦争だけどどっちが勝つかな」

 

「友香ちゃんには悪いけど多分Aクラスが勝つと思うよ」

 

「そうだろうね。あ、恵衣菜先に教室に行っといてくれない?僕行くところがあるから」

 

「うん。わかった。じゃあ鞄を持って先に行ってるね」

 

「お願いね」

 

僕は恵衣菜とFクラスに向かう途中の廊下で別れ学園長室に向かった。理由は昨日の事でだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

"コンコン"

 

「学園長、吉井明久です」

 

「入りな」

 

「失礼します」

 

学園長からの返事を受け取り僕は学園長室に入った。

 

「さてと、吉井昨日はお疲れ様だったね」

 

「いえ。学園長、昨日はありがとうございました」

 

「なに、構わないさね。あたしとしてもあんたたちには色々協力してもらってるからね」

 

「はい」

 

「協力で思い出したんだが吉井。Fクラスは確か打倒Aクラスを掲げているんだったね」

 

「はい、そうですが。何かありましたか?」

 

「いんや。実はそのAクラス戦の時に新しい腕輪を試してほしいさね」

 

そう言うと学園長は机の引き出しからブレスレットの形の腕輪を3つ出した。

 

「3つともですか?」

 

「ああ。吉井妹と姫宮にも頼む予定さね」

 

「分かりました、受けます」

 

「すまないね、これがこの腕輪らの説明書さね」

 

「はい」

 

僕は学園長から三枚の紙の挟まったクリアファイルと腕輪を3つ受け取った。

 

「それとFクラスの設備について調べたさね」

 

「学園長、それで・・・・・」

 

「ああ。教頭の竹原によるものみたいだね。一応、Fクラスの設備はキチンとしたものに交換済みだよ」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ吉井、頼むよ」

 

「分かりました」

 

僕はクリアファイルと腕輪を持って学園長室を出て教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「えー。今日はAクラスとCクラスの模擬試召戦争があるので自習とします」

 

担任である福原先生はHRで今日の予定を伝えるとFクラスから出ていった。学園長が言っていた通り、Fクラスの設備はどれも新品でボロボロでは無くなっていた。

壁の傷や割れた窓ガラスもちゃんとしたものに変わっている。

 

「自習か~大体予想通りだったね」

 

「フフ。そうだね」

 

「なんだ、明久と姫宮は知っていたのか・・・・・・って、そりゃ当然か」

 

「ハハ、雄二だって霧島さんから聞いていたんでしょ」

 

「まあな。ところで二人ともAクラスの代表って誰か知っているか?」

 

「え?なんで?」

 

「いや、それがまだAクラスの代表が誰なのか分からないんだよ。翔子に聞いてもはぐらかされちまうし」

 

「へぇー。僕も分からないな~零華に聞いてもはぐらかされちゃうと思うし」

 

これはウソだ。僕と恵衣菜は零華がAクラス代表だということを知っている。これを雄二にまだ言わないのには理由がある。その理由は・・・・・・・言わない方が面白いのと僕が零華と闘いたいからだ。恵衣菜にはキチンと説明してある。

 

「それで雄二、Aクラス戦はどうするのさ」

 

「ああ。Aクラス戦は両クラス代表の選抜で闘う一対一の闘いにしようと思ってる」

 

「つまり、勝ち数が多いクラスの勝ちってこと?」

 

「そうだ。詳しいことは後でアイツらを交えて話す」

 

「了解。あ、雄二お願いがあるんだけどいいかな?」

 

「お願い?」

 

「うん。Aクラス戦で僕を零華と戦わせてほしい」

 

「・・・・・・わかった」

 

「ありがとう雄二」

 

雄二は頷くと何処かに行ってしまった。

僕と恵衣菜は取り敢えず配られた自習のプリント全てを一時間以内に終わらせるとのんびりと過ごした。

模擬試召戦争の結果は予想通りAクラスが勝った。

だが模擬試召戦争は模擬――練習みたいなもののためクラス間設備交換や設備ダウンは受けない。

 

 

そのまま、時間が過ぎ放課後

 

 

「我々AクラスはFクラスに試召戦争を申し込みます!」

 

HRの後すぐにAクラスからの大使、木下優子さんがそう言った。

 

「試召戦争の細かなルールは明日。午前9時にAクラスで行うわ」

 

「わかった」

 

木下さんはそれだけ言うとFクラスから出ていった。

 

「さて、雄二これは予想外だったんじゃない?」

 

「ああ。まさか向こうから仕掛けてくるとは・・・・」

 

「・・・・・だがお陰で俺たちが宣戦布告する必要が無くなった」

 

「そうじゃな」

 

明日の日程を雄二に聞いた後、僕と恵衣菜は昇降口に向かう。

 

「そう言えば今日はなんともなかったような・・・・」

 

僕は階段を降りている最中、ふと呟いた。

 

「そう言えばそうだったね。なんでだろうね?」

 

「さあ?何時もなら必ず2回は彼らが来るのに・・・・・」

 

「ん~。無駄だと思ったんじゃないかな?」

 

「いやいや、恵衣菜。そう思えるからまだいいけどあの連中だよ?」

 

「・・・・・あ~」

 

「無駄だと思うわけないでしょ」

 

「確かに」

 

「恵衣菜姉様に同感ですね」

 

「「えっ?」」

 

不意に聞こえた零華の声に隣を見るといつの間にか零華がいた。

どうやらいつの間にか靴を履き替え校門のところに来ていたみたいだ。

 

「零華何時からいたの!?」

 

「いえ、つい先程から。兄様と恵衣菜姉様が仲良く話していたのでお邪魔する気は無かったのですが、あのバカたちの事のようだから・・・・・」

 

「な、なるほど~」

 

零華の説明に恵衣菜は若干引いていたが理解したようだ。

 

「じゃあ零華も来たことだし帰ろうか」

 

「「ええ」」

 

僕たちはそのまま帰路についた。

道中、零華がCクラス戦の事を話したり恵衣菜がFクラスであったことを仲良く話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅

 

「「「ただいま~」」」

 

家に着くと、僕らはそう言いながらリビングに向かった。

リビングに着くと、

 

「あら、おかえりなさい3人とも」

 

何故か制服にエプロンをした葵姉さんがいた。

 

「「「葵姉さん(お姉ちゃん)(ちゃん)!!??」」」

 

「はい、葵お姉ちゃんですよ~」

 

「なんでここに!?」

 

「朝言ったじゃないですか、今日は赤飯ですね、と」

 

「まさか本気だったの!?」

 

「はい」

 

僕らはその場で唖然としながら料理する葵姉さんを見た。

この中で料理が上手い人を順に言おう。

まず僕、恵衣菜、葵姉さん、そして零華だ。

女子3人曰く、僕の料理はこの3人の中でも別だそうだ。曰く、女子としてのプライドが砕け散るほど、らしい。

ちなみに一番料理が出来ないのは僕と零華の姉さんだ。

今日はそのまま葵姉さんと一緒に葵姉さんが作った夕飯を食べた。夕飯では様々な話題が出た。特に何故か僕の話題が多かった気がするが・・・・・多分気のせいだろう。

中でも葵姉さんと零華が僕と恵衣菜に昨夜の事を聞いた際は僕たちは顔を真っ赤になった。

ちなみに夕飯のご飯は、葵姉さんの宣言した通りお赤飯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

午前9時

 

文月学園 Aクラス

 

「――――――つまり、試召戦争は5日後、両クラスから選抜の9人で戦う勝ち抜き戦にしたいってこと?」

 

「ああ、そうだ」

 

僕たちは予定通りAクラスで試召戦争について両クラスで話し合っていた。

今この場にいるのは、Fクラスの幹部9人とAクラス生徒だ。え?他のFクラス勢はどうしたかって?彼らは多分今頃、夢の世界にいるんじゃないかな~(惚けた感じ)

 

「どうする?」

 

雄二からの提案に木下さんが霧島さんや零華に聞く。

 

「・・・・・・私は雄二の案で構わない」

 

「うん。こっちも同じことを提案しようと思っていたところだしね~。坂本君の提案を飲むよ」

 

「決まりだな」

 

「ハァー。全くこの二人は・・・・・」

 

「お疲れ様、木下さん」

 

「全くよ、明久くんがいないせいで大変よ。こっち」

 

「アハハ・・・・・」

 

どうやら相当お疲れらしい。こんどお礼しなくちゃね。

 

「零華~、あんまり木下さんに迷惑かけちゃダメだよ」

 

「大丈夫だよ、兄様~」

 

「やれやれ」

 

「ア、ハハハ・・・・・」

 

「あー、話を戻していいか・・・・・の前に、翔子頼むから今抱きつかないでくれ」

 

「・・・・・わかった。なら後で抱き付く」

 

「いや、そういう意味じゃないからな!」

 

雄二も雄二で霧島さんに抱き付かれていた。

 

「・・・・・・・頭痛いわ」

 

「あー、すまん。こっち助けてくれ」

 

「同じく」

 

木下さんは額に右手を当て頭痛がするような動作をし、少し離れたところでは須川くんと横溝くんが何故か正座していた。ちなみにその前には二人の女生徒・・・・・もとい二人の彼女が腕を組んで立っていた。

それぞれ、須川くんの前に立っている女生徒が須川くんの彼女、桜咲綾香さん、横溝くんの前に立っている女生徒が横溝くんの彼女、エレン・A・リューゼンハイムさんだ。

 

「リョーちゃん!聞いてる!」

 

「浩二もですよ!」

 

「「は、はいっ!聞いてます、聞いてます!」」

 

「わたくしもエレンちゃんも二人に対して怒っている理由わかりますか?」

 

「「い、いえ」」

 

「私たちが怒っている理由もわからないんですか!?」

 

「「は、はい」」

 

「私たちが怒っている理由は・・・・・・」

 

「「・・・・・(ゴクッ)」」

 

「「二人が自分勝手だからです!」」

 

「大体今回の振り分け試験だって幼馴染のわたくしにもエレンちゃんにも相談なしで、勝手に決めたようじゃない!」

 

「そ、それは説明しただろ」

 

「確かに説明は聞いたわ。でもわたくしたちが怒っているのはそこじゃないの」

 

「浩二と亮は私たちの事をもう少し考えてください!二人がいなくてどれだけ私も綾香ちゃんも寂しいかわかりますか?」

 

「「はい・・・・・」」

 

「そう思うなら今度リョーちゃんはわたくしと、浩二くんはエレンちゃんとデートして!」

 

「「で、デート!?」」

 

「あと、今回のAクラス戦で私たちと戦ってください」

 

「「ちなみに拒否権は・・・・・・・「「ないです(ありません)!!」」・・・・・・ですよね。分かりました」」

 

4人の会話がここまで聴こえてきたため内容は筒抜けだった。

 

「あの4人は相変わらすだね明久くん」

 

「ああ、うん。そうだね」

 

「・・・・・・・雄二、今度私ともデートするべき」

 

「ああ、もお、わかったからとにかく離れてくれ!話が進まない!」

 

雄二と霧島さんはまだやっていたようだ。

 

「コホン・・・・・・・え~と、優子ちゃん、科目の選択はどうするの?」

 

「そうね。こっちが4つ、そっちが5つ選択出来るで良いかしら?」

 

「ああ。構わない」

 

「坂本くんようやくおわったんだ」

 

「ああ・・・・・」

 

何故か雄二は遠い目をしていた。

あー、これはご苦労様としか言えないなー。

ちなみに秀吉たちは余りの光景に呆気と言うより愕然としていた。

 

「ところで兄様、坂本くんたちにはもう言ったんですか?」

 

「ん?吉井どう言うことだ?」

 

「その反応を見る限り兄様はまだ言ってなかったようですね」

 

「明久、なんのことだ?」

 

「・・・・・・・・零華、いいの?」

 

「うん。え~と、では。・・・・・コホン。坂本くん、Aクラスの代表はこの私、吉井零華です」

 

「「「「「「「なにーーーーっ!!??」」」」」」」

 

零華が言葉に僕と恵衣菜以外驚きの声をあげる。

 

「なんとなく想像していたが・・・・やはり翔子ではなく吉井が代表だったか・・・・」

 

「ええ。でも、本当の代表は・・・・・」

 

「ああ、わかってるって」

 

零華と雄二は今の会話で互いに言いたいことが伝わったのか頷いていた。

 

「それじゃあ勝負は5日後。時間は午前9時半からでいいか?」

 

「ええ」

 

「よし。それじゃあ失礼する」

 

会談も終わり教室に戻ろうとしてその時。

 

「その話ちょっと待つさね」

 

「「「学園長!?」」」

 

Aクラスに学園長先生が入ってきた。

突如現れた学園長先生に僕、恵衣菜、零華は驚きの声を漏らした。

 

「学園長、待つとはどう言うことですか?」

 

「今回の試召戦争。聞いたけど勝ち抜き戦をするみたいさね」

 

「はい」

 

「それで、学園としてその戦いの場。バトルフィールドを提供してやろうと思うのさ」

 

「学園長、この学園にそんなバトルフィールドありましたっけ?」

 

「確かにまだないさね姫宮。けど、前々から準備だけはしていたからね。まず始めにあんたたちに使ってほしいのさ。それに昨日渡したあれのテストもあるからね」

 

「なるほど・・・・・・・。わかりました。雄二もそれでいい?」

 

「あ、ああ。バトルフィールドを提供してくれるなら此方としても喜ばしいからな」

 

「私たちも同じです」

 

「決まりさね。それじゃあバトルフィールドが出来るのは今日から約1週間後。それまで各クラスで点数補充などをするといいさね。教師たちには言っておくよ」

 

学園長は伝えることは伝えたのかすぐさまAクラスから出ていった。

僕ら3人以外は未だに呆然としていた。

 

「それじゃあ僕らはFクラスに戻ろうか雄二」

 

「そ、そうだな。よし、お前ら帰るぞ」

 

「・・・・・雄二、試合楽しみにしてる」

 

「ああ、本気でやってやるぜ翔子!」

 

「・・・・・・・うん」

 

「リョーちゃん、手抜いたりしたら許さないからね!」

 

「浩二も本気でやってくださいね!」

 

「わかってるって」

 

「俺も亮も本気でやるに決まってるだろ」

 

僕らは会談を終えAクラスから退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「さて、今回のAクラス戦は両クラス代表9名による勝ち抜き戦だ」

 

Fクラスに戻ると雄二が教壇に立ちクラスメイトに話していた。

 

「代表は俺、姫路、島田、秀吉、康太、須川、横溝、姫宮、そして明久の9名だ。試合順は始めに島田、次に秀吉、康太、横溝、須川、姫路、俺、姫宮、明久の順で行く」

 

「「「「「「「「「「「「おおーーーー」」」」」」」」」」」」

 

「今言った8人は必ず全科目補充試験を受けてくれ」

 

「了解」

 

「わかったわ」

 

「・・・・・・承知」

 

「うむ」

 

「はい!」

 

「ええ」

 

「ああ」

 

「了解だ」

 

「以上でAクラス戦の説明は終了だ。なにか質問のあるやつはいるか?」

 

雄二はクラスを見渡すが誰一人として質問をしない。

 

「無いようならこれで終わりだ。各自テスト勉強しといてくれ。明日から補充試験に入る!」

 

雄二の言った通り、翌日から全科目の補充試験が行われた。

僕は西村先生にお願いして1人別室でテストを受けさせてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後

 

 

 

 

「大きい・・・・・・」

 

「大きいわね・・・・・・・」

 

「大きいですね・・・・・・」

 

僕たちは文月学園の敷地内にある、ある一角にいた。

目の前には1週間前には無かった、スタジアムが建設されていた。

 

「学園長、無駄にお金使いすぎじゃないかな・・・・・・」

 

「今更だと思うよ、明久くん」

 

「アハハ・・・・」

 

「そう言うんじゃないよ吉井兄」

 

「あ、学園長」

 

「「おはようございます、学園長」」

 

「おはようさね。さて3人とも、この間渡した腕輪は用意してあるさね?」

 

「はい」

 

「ここに」

 

「大丈夫です」

 

「うむ。じゃああたしは学園長室で観戦するさね。3人ともしっかりとね」

 

そう言うた学園長は校舎へ歩いていった。

 

「さ、入ろう」

 

「「うん(ええ)!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園スタジアム

 

スタジアムの中に入りAクラスの零華は自クラスの僕と恵衣菜はFクラスの待機場所へ向かった。

ルームないではすでに他の7人が揃っていた。

 

「来たな明久、姫宮」

 

「雄二こそ」

 

「それより聞いたか、今日AクラスとFクラスの試合、全学年が観戦するんだとよ」

 

「へぇー」

 

僕はスタジアムを見てなんとなく予想ついていたことを雄二から聞いた。

15分後。

 

『2年AクラスVS2年Fクラスによる試召戦争、開幕です!』

 

スピーカーからそんな実況が聞こえてきた。

 

「じゃあ行ってくるわね」

 

島田さんがそう言うとルームから出ていった。

ルームには巨大なスクリーンがあるためリアルタイムで試合が分かる。

 

『今回の試召戦争は両クラス代表9名による勝ち抜き戦です!勝ち数が多いクラスの勝利となります!解説は第2学年学年主任の高橋洋子先生が行います。高橋先生よろしくお願いします』

 

『こちらこそよろしくお願いします』

 

『なお、実況は放送部2年、新野すみれが行います。よろしくお願いします』

 

何故か放送席にCクラスの新野さんと高橋先生が座っていた。

暇なのかな、高橋先生?

 

『高橋先生、今回の試召戦争どう思われますか?』

 

『そうですね。今年の2年FクラスはAクラス上位、序列持ちの人が数人います。それに加え彼らは2年CクラスとAクラス以外のクラスに全て勝っていますからね。結果は分からないでしょう』

 

『なるほど。オオーッと!出場選手が来たみたいです!では登場していただきましょう!』

 

選手入場口にスタジアムのスポットが当たる。

 

『まず2年Aクラスから!Aクラス1人目は第2学年序列第8位木下優子さん!』

 

『『『『『おおーーーーー!!』』』』』

 

『2年Fクラスからは島田美波さん!』

 

『『『『『おおーーーーー!!』』』』』

 

『お姉さまぁーーーー!』

 

二人の登場にスタジアム内から声が上がる。

1人変な人がいたけど。

 

『科目は何するのでしょうか?』

 

『数学でお願いします』

 

実況の新野さんに木下さんが答える。

 

『承認する!』

 

バトルフィールドの脇に西村先生が待機しており、西村先生がフィールドを張った。

 

『『試獣召喚(サモン)!!』』

 

木下さんと島田さんが召喚獣を呼び出す。

 

『まず第1戦目は数学での勝負です!では・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

遂にFクラスVSAクラスの試召戦争が幕を開けた。




書いていてなんか疲れました。
こんな学生生活を送ってみたいです!
それでは次回もよろしくお願い致します。



次回 『開幕、FクラスVSAクラス』 ここテストに出ます。


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第ⅩⅠ門 開幕、FクラスVSAクラス

バカテスト

問題:『当校――文月学園にて成績最低者、学習意欲に欠け、問題児に与えられる称号は』


解答
吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華、小暮葵

『観察処分者』


教師コメント

『正解です。吉井くんは自ら立候補して観察処分者になりましたけど、本来は違いますね。吉井くんの優しさに教師を代表してお礼します。ありがとうございます』


Fクラス生徒(一部除き)

『バカの代名詞――吉井明久』


教師コメント

『吉井くんは自ら立候補して観察処分者になりました。そこを間違えないでください』

姫宮恵衣菜、吉井零華、小暮葵コメント

『『『後でO☆HA☆NA☆SHIがあります。逃げようとは思わないでください!』』』

3人のコメントを見た吉井明久のコメント

『アハハ。3人ともやり過ぎないようにね』

Fクラス生徒コメント

『『『『『『『『『『ゴメンナサイ!許してください!』』』』』』』』』』

Fクラス生徒コメントを見た姫宮恵衣菜、吉井零華、小暮葵のコメント

『『『却下です』』』




~明久side~

 

目の前のスクリーンにはこれから始まる試合が映し出されている。

 

『第1試合は数学での勝負です!では・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

 

数学

 

Fクラス 島田美波 294点

 

 

『どお?ウチは数学ならBクラス並の学力なんだから』

 

『へぇ、スゴいのね。でも・・・・・』

 

 

Aクラス 木下優子 405点

 

 

『私は勿論Aクラス並みだけどね』

 

『くっ・・・・・・・それでも負けるわけにはいかない!』

 

『いいわ、掛かってきなさい!』

 

『『ハアアアアアアアッ!』』

 

島田さんの召喚獣の構える曲刀のような剣、サーベルと木下さんの召喚獣の構えるランスがフィールドの中央でぶつかる。

 

「始まったか」

 

「うん」

 

「坂本くんはどっちが勝つと思う?」

 

「十中八九、木下だろうな」

 

「僕も同じ」

 

ルーム内にある椅子に腰掛けながら僕らはスクリーンに映し出されている試合を見ている。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~優子side~

 

「このっ!」

 

「せいっ!」

 

 

Fクラス 島田美波 234点

 

VS

 

Aクラス 木下優子 353点

 

 

私は鍔迫り合い状態のまま向かい側にいる島田さんに聞く。

聞きたいことはただひとつだけ。

 

「ねえ、島田さん。聞きたいことがあるのだけど良いかしら?」

 

「なに?」

 

「何故、貴女は明久くんを苛めているのかしら?」

 

そう、私は島田さんに何故明久くんを苛めるの聞きたかった。

零華や恵衣菜から聞いていたが、何故明久くんを苛めるのかわからなかったから。

 

「あんたになんか関係あるの」

 

「いいから、答えてくれない」

 

「アキがウチと瑞希の所有物だからに決まってるからでしょ!」

 

「・・・・・・そう。・・・・・・わかったわ、ありがとう。やっぱり貴女を私は許さない」

 

私は島田さんの言葉に情状酌量の余地は無いと判断した。

 

「ふっ!」

 

私は召喚獣の力を少し緩ませ横にずれた。

だが、島田さんの召喚獣はバランスを崩し倒れた。

 

「このっ!」

 

「これで決めるわ」

 

私はバランスを崩した島田さんの召喚獣に自身の召喚獣のランスで攻撃する。

 

「止めよ!」

 

最後にランスで島田さんの召喚獣を貫く。

 

 

Fクラス 島田美波 0点 LOOSE

 

VS

 

Aクラス 木下優子 322点 WINNER

 

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者、Aクラス木下優子』

 

真上に浮かぶ画面に試合結果がでると、システムアナウンスが聞こえてきた。

すると同時に西村先生がフィールドを消した。

 

『試合終了~!第1回戦はAクラスの勝利です!』

 

『『『『『『『『『『わあああああああああああああ!!』』』』』』』』』』

 

私はその歓声を背にAクラスのルームに戻った。

 

~優子side out~

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者、Aクラス木下優子』

 

『『『『『『『『『『わあああああああああああああ!!』』』』』』』』』』

 

「やはり木下が勝ったか」

 

「うん。まあ、予想通りだね」

 

「ああ」

 

「では行ってくるとしようかの」

 

「頼むぞ秀吉」

 

「頑張ってください木下くん」

 

「うむ。まあ、やってみるのじゃ」

 

秀吉はそう言うとルームから出ていった。

秀吉がルームから出ていった後、島田さんがルームに戻ってきた。

島田さんがルームに戻ると姫路さんが駆け寄り一緒に何か話していた。

僕がスクリーンに視線を戻すと。

 

『では続いて第2試合を始めましょう!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

『まずはAクラスから。Aクラス2人目は第2学年序列第16位天野麗子さん!』

 

『『『『『おおーーーーー!!』』』』』

 

『Fクラスからは第2学年序列第20位木下秀吉くん!』

 

『『『『『おおーーーーー!!』』』』』

 

天野さんと秀吉がステージに上がると歓声が上がった。

 

「あれ、天野さんって確か演劇部じゃなかった?」

 

「そう言えばそうだったね」

 

「ってことは秀吉と同じ部活ってことか」

 

『科目は何にしますか?』

 

『古典でお願いするのじゃ』

 

『承認する!』

 

『『試獣召喚(サモン)!』』

 

西村先生が張った古典のフィールドに二人の召喚獣が現れる。

 

 

古典

 

Fクラス 木下秀吉 467点

 

VS

 

Aクラス 天野麗子 450点

 

 

「二人とも点数が近いね」

 

「うん。どっちが勝つかわからないね」

 

『第2試合フィールドは古典です!それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

~秀吉side~

 

儂はAクラスから出場した天野に視線を向けた。

 

「よりにもよって木下くんとやることになるなんてね」

 

「それは儂も同じじゃ。じゃが負けるわけにはいかん」

 

「それは私も同じよ。じゃあ始めましょう」

 

「うむ。同じ演劇部と言えど手加減の必要はないぞ」

 

「ええ・・・・・」

 

「では・・・・・」

 

「「行くよ!(のじゃ!)」」

 

ガキンッ!

 

儂の召喚獣の薙刀と天野の刀がぶつかる。

 

「てあっ!」

 

「せいっあ!」

 

『両者の武器がぶつかり合っています!解説の高橋先生、どちらが勝つと思われますか?』

 

『木下くんと天野さんは同じ演劇部に所属してますからね、互いがライバル関係なのでしょう。正直どちらが勝つかわかりません』

 

『どちらも敗けられない・・・・・とゆうことでしょうか?』

 

「敗けられない、か。確かに木下くんには敗けられないわね」

 

「それは儂もじゃ。勉強ではお主に負けておるからの」

 

「逆に私は演劇で貴方に負けているわ」

 

「儂らは似たような境遇じゃからの」

 

「そうね。でも、手加減はしないわよ!」

 

「望むところじゃ!」

 

ガキンッ!

 

キンッ!

 

互いの刃がぶつかり金属音が鳴る。

 

 

Fクラス 木下秀吉 403点

 

VS

 

Aクラス 天野麗子 400点

 

 

『すごい!これはすごいっ!両者一歩も引かず、真っ向面から勝負しています!』

 

『これはどちらが勝ってもおかしくないですね』

 

「流石じゃな、天野」

 

「木下くんこそ」

 

キンッ! キンッ!

 

「ねえ、木下くん提案があるんだけどいいかな?」

 

「む?なんじゃ?」

 

「これ、勝った方が負けた方に好きなように命令出来るってのはどうかしら?」

 

「ふむ・・・・・・・まあ、良いじゃろう」

 

「うん。じゃあ、本気で行くよ!」

 

「むっ。攻撃パターンが変わったか」

 

天野は足払いや打撃、切り裂きなど、連続で仕掛けてきた。

儂の方は防戦一方になってしまった。

 

『オオーッと!これは、いったいどう言うことだ!木下選手の召喚獣が押され始めているぞ!』

 

『天野さんの先程とは違う攻撃に手間取っているみたいですね。しかも相手に攻撃する暇を与えてません」

 

「これは、儂も全力でやるのじゃ」

 

儂は薙刀の持ち方を換え片手で持った。

 

「ん?」

 

「ぜあっ」

 

「あまいわよ!」

 

片手で握った薙刀の突きを天野は刀で見事に受け止めた。

 

「それはどうかの?」

 

「え?」

 

儂は片手で握ったお陰でもう片方の手は空いている。

 

「せあっ!」

 

「なっ!?」

 

片方の手で天野の召喚獣に触れ、衝撃で吹き飛ばす。

そして、吹き飛ばすのと同時に薙刀を両手に持ち換えて攻撃する。

 

「くっ」

 

吹き飛ばされた影響でバランスが上手く取れない天野の召喚獣は防御する間もなく儂の攻撃を受けた。

 

 

Fクラス 木下秀吉 311点

 

VS

 

Aクラス 天野麗子 283点

 

 

「こうなったら腕輪を使うわ!」

 

「なら儂も使わせてもらうのじゃ!」

 

儂と天野は互いの召喚獣から距離をとった。

 

「「腕輪発動(じゃ)!!」」

 

『オオーッと!両者腕輪を使うようです!』

 

『二人ともこれで決めるようですね』

 

「行くよ、木下くん!」

 

「天野、行くのじゃ!」

 

儂は薙刀を召喚獣の体の前に構え腰を落とす。

天野の召喚獣の方は刀を両手で正中線にし左足を前に、右足を後ろにしている。

 

「「ハアアアアアアアッ!!」」

 

儂と天野の召喚獣が同時に飛び出し、フィールドの中央でぶつかった。

互いの召喚獣は位置を入れ換えて止まった。

 

 

Fクラス 木下秀吉 0点

 

VS

 

Aクラス 天野麗子 0点

 

 

試合終了(エンドオブバトル) 両者戦闘不能 引き分け』

 

 

『試合終了~!第2回戦は引き分けと言う形で終わりました~!』

 

『これは、予想外でしたね』

 

『高橋先生、二人が使った腕輪と言うのはどう言うものなのでしょうか?』

 

『そうですね・・・・・・・まず、木下くんが使った腕輪は素早く相手に飛び込み一撃で数回攻撃するものです。そして、天野さんの腕輪は相手に瞬時に飛び込み振り抜き様に一刀を浴びせるものですね』

 

『なるほど~』

 

「あ~あ、引き分けか~」

 

「うむ。引き分けでも悔しいものじゃな」

 

「そうかもね」

 

「それで天野よ。提案と言うのはどうするのじゃ?」

 

「そうね・・・・・・互いに1回ずつ命令できる、でどうかしら?」

 

「うむ」

 

「じゃあ、それね。でも次は負けないわよ」

 

「無論、それは儂もじゃ天野」

 

『会場の皆様!惜しみ無い拍手を両者にお願いします!』

 

実況の新野の放送に観客席から溢れんばかりの拍手が鳴り響いた。

 

 

~秀吉side out~

 

 

 

 

 

~明久side~

 

『会場の皆様!惜しみ無い拍手を両者にお願いします!』

 

スクリーンでは会場のあちこちから拍手が鳴り響いていた。

 

「引き分けか~」

 

「う~ん、木下くんが負けるとは思わなかったからね」

 

「いや、恵衣菜負けてないからね」

 

「これで一敗一分け、か残りは7戦、か」

 

「・・・・・・・(スク)行ってくる」

 

「頼むぞムッツリーニ」

 

「・・・・・・(コク)任された」

 

康太が試合会場に向かい、秀吉が戻ってきた。

 

「すまぬ、引き分けになってしもうた」

 

「気にするな、後7戦ある」

 

「そうだよ、秀吉」

 

「ええ」

 

「む。そうかの」

 

戻ってきた秀吉を労っていると。

 

『続いて第3試合。Aクラスからは第2学年序列第10位工藤愛子さん。Fクラスからは第2学年序列第32位土屋康太くんです!』

 

スクリーンに康太と工藤さんが映った。

 

「これは保健体育かな?」

 

「だろうな」

 

「と言う事はムッツリーニの勝ちじゃな」

 

「多分ね」

 

スクリーンでは二人が召喚獣を呼び出している所だった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~康太side~

 

 

「キミが土屋くん?」

 

「・・・・・・お前は?」

 

「ボク?ボクは1年の終わりに転校してきた工藤愛子だよ。よろしくね~」

 

「・・・・・・(コク)」

 

「それと、零華ちゃんと恵衣菜ちゃんから聞いたんだけど、キミ。保健体育が得意なんだって?」

 

「・・・・・・それがどうした?」

 

「実はボクも得意なんだよ、保健体育。特に・・・・・実技がね」

 

「・・・・・・実技(ブシャアァァァ!)」

 

『オオーッと、土屋康太選手鼻血が物凄い勢いで出ております!』

 

『出血多量で倒れないか心配ですね』

 

『いえ、高橋先生。今、心配するところそこじゃない気がするのですが・・・・・・・』

 

「・・・・・・・なんのこれしき」

 

「凄い勢いで鼻血が出てたけど、大丈夫?」

 

「・・・・・・問題ない」

 

「そう?」

 

『では科目を決めてください!』

 

「・・・・・・・・保健体育」

 

『承認する!』

 

「いくよ、試獣召喚(サモン)!」

 

「・・・・・・・試獣召喚(サモン)!」

 

~康太side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

『・・・・・実技(ブシャアァァァ!)』

 

スクリーンでは康太が鼻血を出しているところが映し出されている。

 

「だ、大丈夫かな康太?」

 

「大丈夫だろ、多分」

 

「いやいや、二人とも。今は土屋くんが出血多量で倒れないかが心配するところでしょ!?」

 

『オオーッと、土屋康太選手鼻血が物凄い勢いで出ております!』

 

『出血多量で倒れないか心配ですね』

 

『いえ、高橋先生。今、心配するところそこじゃない気がするのですが・・・・・・・』

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・」」」」

 

「なあ、吉井」

 

「何、須川くん」

 

「たまに思うんだが高橋先生ってもしかして・・・・天然なのか?」

 

「・・・・・・・・多分」

 

なんだろう、高橋先生のイメージがどんどん崩れていくような気がする。

 

『いくよ、試獣召喚(サモン)!』

 

『・・・・・・・試獣召喚((サモン)!』

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

~康太side~

 

『第3試合、フィールドは保健体育です!それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!』

 

 

保健体育

 

 

Aクラス 工藤愛子 542点

 

 

「理論派と実技派どちらが強いか教えてあげる!」

 

工藤はそう言うと召喚獣に腕輪の能力。雷を付与して迫ってきた。

 

「バイバイ、ムッツリーニくん!」

 

「・・・・・・・・加速」

 

ガキンッ!

 

「・・・・・・・加速終了」

 

勝負は一瞬で着いた。

 

「え?」

 

そして遅れて俺の点数が表示される。

 

 

Fクラス 土屋康太 786点 WINNER

 

VS

 

Aクラス 工藤愛子 0点 LOOSE

 

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者、Fクラス土屋康太』

 

『な、ななな、なんと試合開幕早々決着!土屋選手が一瞬で工藤選手の召喚獣を戦闘不能にさせました!』

 

『驚きましたね。解説する間もありませんでした』

 

『そうですね。まさに瞬殺です』

 

「そんな、ボクが負けた・・・・・」

 

工藤は自分が負けたことが信じられないようでその場に崩れ落ちていた。

そんな工藤に俺は近づいた。

 

「・・・・・・・工藤、お前の敗因はなんだと思う?」

 

「ボクの敗因?」

 

「・・・・・・・それは、自分を加担しすぎているからだ」

 

「え」

 

「・・・・・・・・・保健体育に理論派も実技派も関係ない。お前はそれに気付かなかった。それがこの勝負の結果だ」

 

「ムッツリーニくん・・・・・・・」

 

「・・・・・・・だが、お前ならすぐに俺に追い付くだろう」

 

「え?」

 

 

「・・・・・・工藤、俺は俺に匹敵する保健体育の点数を保有しているヤツをあの3人以外知らない」

 

「あの3人って吉井くんと零華ちゃん、恵衣菜ちゃんのこと?」

 

「・・・・・・(コク)だから俺とお前なら互いに高めあっていける」

 

「そうか・・・・・・そうだよね。ありがとうムッツリーニくん」

 

「・・・・・・康太」

 

「え?」

 

「・・・・・・康太でいい」

 

「うん。じゃあボクも愛子でいいよ」

 

「・・・・・・わかった。これからよろしく頼む愛子」

 

「うん。こちらこそ康太くん」

 

俺は工藤・・・・・・・いや、愛子に手を差し出し立たせる。

すると。

 

『会場の皆様!惜しみ無い拍手を両者にお願いします!』

 

新野の声に俺と工藤に溢れんばかりの拍手が届いてきた。

 

~康太side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

スクリーンには互いの手を握り合う康太と工藤さんが映し出されている。

 

「これで、一勝一敗一分け、か」

 

「うん。残りは6戦・・・・・・負けられないね」

 

「ああ」

 

「さてと、そんじゃ行ってくるわ」

 

「頑張って横溝くん」

 

「しっかりな横溝」

 

「ああ!」

 

僕と須川くんは横溝くんとハイタッチをして横溝くんを見送る。

横溝くんが出て暫くして康太が戻ってきた。

 

「お帰り康太」

 

「・・・・・・ただいま」

 

「やったな土屋」

 

「・・・・・・(コク)当然」

 

『さあ、更に続いていきましょう!第4試合、Aクラスからは第2学年序列第13位エレン・アナスタシア・リューゼンハイムさん。Fクラスからは第2学年序列第14位横溝浩二くんです!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

『浩二、本気で行くからね!』

 

『分かってる!全力で行くぜエレン!』

 

『科目は何にしますか?』

 

『科目は家庭科でお願いします』

 

『承認する!』

 

『『試獣召喚(サモン)!!』』

 

 

家庭科

 

Fクラス 横溝浩二 462点

 

VS

 

Aクラス エレン・A・リューゼンハイム 478点

 

 

『第4試合フィールドは家庭科です。それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!』

 

 




残り5戦、大変だ
感想などお願いします!



次回 『FクラスVSAクラス、第Ⅱ幕』 ここテストに出ます


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第ⅩⅡ門 FクラスVSAクラス、第Ⅱ幕

バカテスト

問題:『大型の魔法を発動するときには〇〇が必要。〇〇の中に入る漢字を2字で答えなさい』

解答
吉井明久、姫宮恵衣菜、エレン・A・リューゼンハイム、横溝浩二

『詠唱』


教師コメント

『正解です。少々中二病ぽいですが、学園長の趣味などが重なりそうなりました』


Fクラス生徒(一部除き)

『異端者の処刑』


教師コメント

『あなたたちは一体何をするつもりですか!?』


~明久side~

 

『浩二、本気で行くからね!』

 

『分かってる!全力で行くぜエレン!』

 

『科目は何にしますか?』

 

『科目は家庭科でお願いします』

 

『承認する!』

 

『『試獣召喚(サモン)!!』』

 

 

家庭科

 

 

Fクラス 横溝浩二 462点

 

 

VS

 

 

Aクラス エレン・A・リューゼンハイム 478点

 

 

 

『第4試合フィールドは家庭科です。それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!』

 

 

「横溝とエレンの戦いか、吉井的にはどっちが勝つと思う?」

 

横溝くんとエレンさんの戦いを映したスクリーンを見ながら右隣から須川くんが聞いてきた。

 

「そうだね・・・・・・・・正直どっちが勝つかわからないよ」

 

「だよな、点数は然程離れてないし・・・・・」

 

「二人の差と言うなら召喚獣の操作だね」

 

「ああ」

 

「けど、一応Aクラスも模擬試召戦争をしてるから、操作出来ると思うよ恵衣菜?」

 

「うん。でも、私たちのクラス程やってないから」

 

「まあな」

 

僕らは視線をスクリーンに向け試合の行方を見守った。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~浩二side~

 

『第4試合フィールドは家庭科です。それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!』

 

「私から行くよ!」

 

エレンはそう言うと遠距離から攻撃してきた。

エレンの召喚獣は近接戦闘か遠距離戦闘のどちらかと言うと遠距離戦闘がメインだ。

エレンの召喚獣の格好は紫色のローブを身に着け杖(ワンド)を装備していた。いかにも魔女、と言う感じだ。

 

「くっ!」

 

エレンの魔法攻撃に俺は慌てて避ける。

 

「今度はこっちの番だな。行くぜ!」

 

俺は召喚獣の武器。大剣を構え迫る。

俺の召喚獣の姿は銀色の軽装の鎧に大剣。いかにも近接戦闘向きだ。

 

「そうはいかないよ!くらいなさい!」

 

「うおおおおおおおおぉ!」

 

俺は大剣の面部分で放たれた魔法を防ぎ接近する。

 

「ぜりゃあ!」

 

「・・・・・・っと」

 

「ちっ、掠った程度か」

 

「危ない危ない」

 

 

Fクラス 横溝浩二 411点

 

VS

 

Aクラス エレン・A・リューゼンハイム 442点

 

 

『エレン選手は遠距離からの魔法による集中攻撃で横溝選手を近づけさせない作戦のようですね』

 

『そのようですね。現に先程、横溝くんは接近するのにエレンさんの魔法を大剣の面部分を使い接近していました。これは相性が悪いですね』

 

『なるほど~』

 

「くっ、言ってくれるぜ」

 

「浩二、私はAクラスからの代表として負けないわ!浩二も全力で来て!私も全力でいく!だから・・・・・・・」

 

エレンは杖を構えた。

 

「これは耐えてよね」

 

「なに!?」

 

「とく来たれ、炎の精、氷の精、二精よ相重なりて螺旋を築け。万物を戒め敵を煉獄の業火と凍てつく氷霹の渦へと閉じ込めよ!」

 

『こ、これは、詠唱!?』

 

『どうやら大型の魔法を使うようですね。大型の魔法を発動するには使用者の詠唱が必要ですから』

 

「ま、マズイ!」

 

俺は大剣を担ぎ慌てて距離を取ろうとした。だが、

 

「もう遅いよ!・・・・・吹き荒べ!炎氷地獄(インフェルノ)!」

 

俺の召喚獣の足元に複雑な紋様が書かれた魔方陣が現れた。

次の瞬間。

 

ゴウッ!

 

「くっ!」

 

俺の召喚獣を中心に炎の渦と氷の渦が現れた。

 

『キャアアアアアアアァ!!』

 

解説席から悲鳴が上がった。

よく見ると周囲の観客席からも悲鳴が上がっている。

目の前の光景に驚いているようだ。

炎と氷の渦は10秒後に収まった。

 

『な、な、なんと言う魔法だぁー!凄まじい威力の魔法です!これでは横溝選手の召喚獣は・・・・・・』

 

『いえ、新野さん。あれを見てください』

 

収まった場所にはあちこち傷ついてはいるものの大剣を盾にした俺の召喚獣がいた。

 

『なんと!凄まじい威力の魔法を受けたのにも関わらず横溝選手の召喚獣は無事です!』

 

『恐らく、大剣を盾にしてあの魔法を凌いだのでしょう。ですが、完全には防げなかったようですね』

 

 

Fクラス 横溝浩二 152点

 

VS

 

Aクラス エレン・A・リューゼンハイム 401点

 

「やるね、浩二。まさか耐えきるなんて思わなかったよ」

 

「いや、正直やられるところだったぜ」

 

『横溝選手とエレン選手の点数はかなり欠け離れています!さぁ、横溝選手、これをどう覆すのでしょうか!』

 

くっ!なんとかあの魔法は凌いだがまだ、エレンは腕輪を使ってない。それに引き換えこっちの点数は250点ほど削られた。やはり腕輪を使うしかないか・・・・・・・

 

「どうする浩二?まだ、やる?」

 

「当たり前だぜ!俺はどんな状況でも決して諦めねぇ!」

 

「フフ、浩二らしいね。・・・・・・・・(でも、そんな浩二のところが好きなんだよね)」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「ううん。何でもないよ」

 

エレンとの差は250オーバー。一か八かやるしかないな!

 

「行くぞっ、エレン!」

 

『オオーっと、横溝選手召喚獣をエレン選手の方へと走らせ初めました!』

 

『なにか策でもあるのでしょうか』

 

「真っ正面から来るんだ。じゃあ、いくよ!」

 

エレンは通常の魔法を放ってくる。

 

「・・・・・・・」

 

俺は放たれた魔法をギリギリのところで避していく。

 

「やるね浩二。なら、これはどう?」

 

『オオーっと、エレン選手、またしても横溝選手の召喚獣から距離を取りました!』

 

「とく来たれ、炎の精、氷の精、二精よ相重なりて螺旋を築け。万物を戒め敵を煉獄の業火と凍てつく氷霹の渦へと閉じ込めよ!」

 

『この詠唱は!どうやらまたあの魔法を放つようです!ですが横溝選手それをお構いなしにエレン選手へと突っ込んで行きます!』

 

「何を企んでいるの浩二?・・・・・・・でも、これで終わりよ!吹き荒べ!炎氷地獄(インフェルノ)!」

 

ゴウッ!

 

『出たァ!またしても炎氷地獄(インフェルノ)が放たれました!』

 

『横溝くん、それに真っ正面から突っ込んで行きましたが、どうするつもりなのでしょうか。・・・・・・・ん?』

 

解説の高橋女史が目を見開かせ驚きをしているのが見えた。しかもそれはエレンにも周りの観客席からも見えた。

何故なら。

 

「なんで炎氷地獄(インフェルノ)が消えるの!?」

 

そうエレンの放った炎氷地獄(インフェルノ)が突如消えたからだ。

 

『こ、これはどう言うことでしょう!エレン選手の炎氷地獄(インフェルノ)が消えてしまいました!』

 

『勝負の決着がついたわけでは無いようですね』

 

『では、一体どう言うことでしょうか?あ!あれは!』

 

「な、なんで浩二の召喚獣無事なの!?」

 

そこには蒼白く光輝く大剣を構えた俺の召喚獣の姿があった。

 

「これが俺の腕輪の能力!魔法無効化剣(アンチ・マギアソード)だ!」

 

「あ、魔法無効化剣(アンチ・マギアソード)ですって!?」

 

「この腕輪の能力はその名の通り魔法無効化能力を剣に付与して切り裂く事が出来る事だ!これで、今の炎氷地獄(インフェルノ)を切り裂いたんだ!」

 

『ななな、なんと!横溝選手、腕輪の能力、魔法無効化能力(アンチ・マギアソード)を使いエレン選手の炎氷地獄(インフェルノ)を防ぎましたぁー!』

 

『これは驚きましたね。まさか魔法無効化の能力の腕輪とは・・・・・・・これで、勝負の行方はわからなくなりました』

 

「くっ!なら、私も!」

 

エレンはバックステップで下がり杖を構えた。

 

「そうはさせるか!」

 

俺は魔法無効化を付与した大剣を構えエレンに迫る。

 

「いと来たれ、灼熱業火の旋風、咲き誇れる終焉の裂氷、全て終わりにしたりて汝、終焉を呼び起こせ!己は足れど黄昏時に迫る宵闇の。天からの槍、突き貫け!」

 

『エレン選手も腕輪を使うようです!』

 

『先程とは比べ物にならないくらいの威力の魔法が来るでしょう。恐らくこれで勝負がつくのかと』

 

「いくよ!浩二!」

 

「行くぞ!エレン!」

 

「「勝負(よ)!!」」

 

「はあああああああああぁあ!!」

 

灼氷の堕ち来る天槍(ミーティア・スピアフォール)!!」

 

エレンの腕輪で上空に幾つもの魔方陣が現れそこから雨のように槍のような形のした砲撃が来る。

そしてそれに当たるのと同時に俺の大剣はエレンを斬り裂いた。

 

ドカンッ!!!

 

「うっ!」

 

「きゃあ!」

 

互いの攻撃が当たり爆発が起こり、それにより爆風と爆煙が起こった。

爆煙が晴れ、頭上の電光板に。

 

 

Fクラス 横溝浩二 0点

 

VS

 

Aクラス エレン・A・リューゼンハイム 0点

 

 

 

戦闘終了(エンドオブバトル) 両者戦闘不能 引き分け』

 

 

 

俺とエレンの召喚獣は倒れていた。

そして、空気に溶けるかのようにして消えていった。

 

『し、試合終了~!第4試合、結果は引き分けで終わりましたー!』

 

『これまた、予想外ですね』

 

『えー、たった今届いた情報によると、エレン選手と横溝選手の攻撃の当たった瞬間はほぼ同時だと言うことだそうです!』

 

『どうやら、あの魔法無効化能力も万能ではないようですね』

 

「ハハッ、引き分けか~。強いね浩二」

 

「いや、俺なんてまだまだだよ」

 

「フフ。そうだね~私もまだまだかな」

 

「ああ。そうだな」

 

「浩二、これが終わったら一緒に出掛けよう」

 

「ああ。良いぜ!」

 

俺とエレンはバトルフィールドの中央で互いに右手を出して握手する。

流石にここでは抱き締めたりはしない。ホントはメチャクチャしたいけどな。

 

『激闘を終えた両選手に惜しみ無い拍手をお願いします!』

 

そんな声とともに会場から溢れんばかりの拍手が届いてきた。

俺とエレンは少し顔を赤くしてルームに戻った。

 

~浩二side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

『激闘を終えた両選手に惜しみ無い拍手をお願いします!』

 

スクリーンからは横溝くんとエレンさん二人を称える拍手が届いてきた。

 

「すごい戦いだったね、明久くん」

 

「うん。まさか横溝くんが魔法無効化の腕輪を持っているなんて思わなかったよ」

 

「ああ。俺も驚いたぜ」

 

「私は横溝君の腕輪にも驚いたけどエレンちゃんの腕輪にも驚いたな~」

 

「うん。それは僕も思った。灼氷の堕ち来る天槍(ミーティア・スピアフォール)だっけ?凄い威力だった」

 

「あれ、私の腕輪より強力かも」

 

そんな会話をしていると須川くんが立ち上がった。

 

「行ってくる」

 

「須川くん、頑張ってね」

 

「ああ、もちろんだ!」

 

須川くんは雄二たちとも少し話すとルームから出ていった。

須川くんがルームから出ると横溝くんが戻ってきた。

 

「すまん、坂本。引き分けで終わっちまった」

 

「気にするな横溝。まだ、勝負は終わってないからな」

 

「そうだよ、横溝くん」

 

「坂本、吉井・・・・ありがとう」

 

横溝くんが席に着くと同時に。

 

『この試召戦争もついに中盤!第5回戦を戦うのはこの二人です!Aクラスからは第2学年序列第12位桜咲綾香さん!Fクラスからは第2学年序列第11位須川亮くん!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

『リョーちゃん、ついに来たね』

 

『あぁ』

 

『リョーちゃん、わたくしは手加減しませんからね』

 

『わかってるさ綾香。だから俺も本気でいかせてもらう!』

 

『それでは科目を決めてください!』

 

『科目は家庭科で』

 

『承認する!』

 

『『試獣召喚(サモン)!!』』

 

 

家庭科

 

Fクラス 須川亮 514点

 

VS

 

Aクラス 桜咲綾香 473点

 

 

『第4試合に引き続き第5試合もフィールドは家庭科です!それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~亮side~

 

ついに綾香と戦える日が来た。

今の俺の実力を綾香見せてやる!

 

『第4試合に引き続き第5試合もフィールドは家庭科です!それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

「いくぜっ!」

 

俺の召喚獣は武器の片手剣2本。双剣を構えて突っ込んでいく。

 

『オオーっと!開幕早々、須川選手が桜咲選手に迫っていく!』

 

「スゥー、ハァー・・・・・・桜咲綾香、参ります!」

 

ガキンッ!

 

綾香の召喚獣の格好は巫女服に華美の装飾のついた薙刀。木下の薙刀よりリーチが長いのが特徴だ。

対して俺の召喚獣の姿は蒼と白の混ざりあった制服のような服に腰に蒼色と紅色に輝く片手剣だ。

 

「はあっ!」

 

「せあっ!」

 

ガキンッ!ガキンッ!

 

キンッ!キンキンキン!

 

『両者互いに譲らない!真っ向勝負だー!』

 

『二人ともあちこちに動きながらしているためか解説が追い付きません』

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

 

俺と綾香は自分が動いているわけではないのに疲れていた。

綾香は油断できない相手だ。一瞬の隙が命取りになる。

 

「やるね、リョーちゃん」

 

「綾香こそ、さすがだぜ」

 

「えへへ。リョーちゃんに誉められちゃった」

 

『あー、なんか両選手惚気けているのですがどうしたらいいのでしょうか』

 

『さて、私としてはどうはんにょうしちゃらいいのかわかりませんね』

 

『高橋先生、今噛みませんでした?』

 

『いえ、きにょせいですよ。新野さん』

 

『いえ、今も噛みましたよね!動揺してませんか?』

 

『そんなことはありましぇん』

 

高橋女史の噛みまくりの解説に俺と綾香はどう反応していいのか悩んだ。

正確にはその場の全員が驚愕の視線を放送席に向けていた。

 

「高橋女史ってやっぱり天然なのか?」

 

「リョーちゃん、それは言わない方がいいと思うわ」

 

「だな」

 

ガキンッ!

 

意識を召喚獣に戻し勝負を続ける。

 

「ふぅ~、やっぱりキツいね、リョーちゃんが相手だと」

 

「俺もだ。綾香相手だとキツいな」

 

どちらも互いの事を知っているからこそやりにくい物だ。

 

 

Fクラス 須川亮 391点

 

VS

 

Aクラス 桜咲綾香 345点

 

 

幾度となく剣をぶつけ合わせクリティカルとは言えなくとも斬撃の余波や掠り傷で二人とも点数を減らしていた。

 

「ここまでとは・・・・・・」

 

「予想外ですわね・・・・・・」

 

「よしっ!」

 

俺は腕輪の能力を使用することに決めた。

綾香に勝つためにはそれしかないと判断したからだ。

 

「行くぞ綾香!」

 

「おいで!リョーちゃん!」

 

「腕輪発動!」

 

俺は武器の双剣を構えた。

双剣には、腕輪の能力により蒼と紅にそれぞれ白と黒のエフェクトが纏わり付いていた。

 

「はあっ!」

 

「!?マズイ!」

 

俺はその場で双剣をクロスさせて振りかぶる。

本来ならば届くないはずの斬撃が・・・・・・

 

「うそ・・・・・・でしょ・・・・・」

 

綾香の召喚獣を通りすぎてその後ろの壁に当たる。

ギリギリ綾香は避けたようだ。

これが俺の腕輪の能力、絶対切断(ワールドエンド)だ。

この腕輪の能力により、俺は遠距離からでも斬撃を跳ばせることが出来、攻撃することが可能だ。

 

「リョーちゃんの腕輪、随分と厄介な物ね。なら、こちらも」

 

綾香は召喚獣の立ちずまいを直し俺に向かってきた。

 

「はあっ!」

 

俺はもう一度斬撃を放った。

放った斬撃が綾香に当たるかと思われた瞬間。

 

キンッ!

 

「なにっ!?」

 

綾香は薙刀をうまく使い防いだのだ。

 

「なら、接近戦で」

 

キンッ!ガキンッ!キンキンキン!

 

「これで!」

 

「腕輪発動ですわ・・・・・・!」

 

「なっ!?」

 

俺が放った剣が綾香に当たるその瞬間。

 

キン!

 

剣が何かに辺り跳ね返されたのだ、しかもダメージまで受けた。

 

「どう言うことだ?確かに当たったはず」

 

「これが、わたくしの腕輪の腕輪、反射(リフレクト)ですわ!」

 

反射(リフレクト)・・・・・・まさか!」

 

「リョーちゃんが思ってるその通り、この能力は受けたダメージを跳ね返す事が出来るの!」

 

「ま、マジかよ・・・・・」

 

反射(リフレクト)とは思わなかった。つまり攻撃する度に俺にダメージが来るってことか、ヤバイなこれは。

俺は綾香さんの腕輪の能力について考えていた。

 

 

Fクラス 須川亮 131点

 

VS

 

Aクラス 桜咲綾香 254点

 

 

跳ね返されたお陰で俺にダメージが反映されていた。

 

「くっ!ならば」

 

俺は双剣を使い絶え間なく攻撃する。

 

「その手を使ってきますか・・・・・・・でも」

 

「なっ!」

 

俺が連続で綾香に攻撃しても対して点数が減ることは無かった。

 

「くっ!」

 

「これで、終わりだよリョーちゃん!」

 

綾香は薙刀を振りかぶり俺の召喚獣を斬り裂いた。

なす統べなく俺は綾香の攻撃を受けた。

結果。

 

 

Fクラス 須川亮 0点 LOOSE

 

VS

 

Aクラス 桜咲綾香 193点 WINNER

 

 

戦闘終了(エンドオブバトル) 勝者、Aクラス桜咲綾香』

 

『試合終了~!第5試合の勝者はAクラス、桜咲綾香選手だ~!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

「くそっ、負けたか」

 

俺は綾香に負け顔を俯かせていた。

 

「リョーちゃん」

 

そのまま下を向いているといつの間にか綾香が目の前にいた。

 

「綾香」

 

「ありがとうリョーちゃん。楽しかったわよ」

 

「でも、俺はお前に負けた」

 

「勝ち負けの問題じゃないわよ。楽しむことが大切なんだから。だから、ね」

 

「綾香」

 

「全く、リョーちゃんは昔から変わらずに泣き虫さんだね」

 

「な、泣いてなんかねぇよ!」

 

「フフ」

 

「けど、まあ・・・・・・ありがとうな綾香。負けたけど楽しかったわ」

 

「うん。こちらこそ、どうもありがとうリョーちゃん」

 

俺と綾香は互いに手を取り合い握手をした。

 

『激闘を終えた両選手に惜しみ無い拍手をお願いします!』

 

横溝の時と同じように俺たちにも溢れんばかりの拍手の雨が届いた。

勝負には負けたが俺的にはいい。全力を出せた試合だったと思う。

俺は口に出さずに心でそう言った。

 

~亮side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「亮が負けたか・・・・・・」

 

「うん。まさか綾香さんが反射(リフレクト)の腕輪を持っているなんて」

 

「流石にあれは須川君には相性が難しいからね」

 

「確かにな」

 

「これで、一勝二敗二分け、か」

 

「次は姫路さんだけど、どう思う雄二?」

 

「姫路なら相手によるが勝てるだろう。だが問題は科目選択だな」

 

「では行ってきますね」

 

姫路さんはそう言うとルームから出ていった。

そのあと須川くんが戻ってきた。

 

「すまない!負けた!」

 

「いや、反射(リフレクト)が相手ではよくやったと思うぞ」

 

「そうだぜ亮!綾香を彼処まで追い詰めたんだからな!お前の腕輪の能力にも驚いたが」

 

「ハハ。そうだよ、須川くん。まだ、僕らが残ってるから大丈夫だよ」

 

僕は項垂れる須川くんにそう優しく言った。

するとそのとき。

 

『続いて第6試合!Aクラスから第2学年序列第9位佐藤美穂さん!Fクラスからは第2学年序列第7位姫路瑞希さんです!』

 

スクリーンに佐藤さんと姫路さんが映った。

 

『それでは、科目を選択してください!』

 

『物理でお願いします』

 

『承認する!』

 

佐藤さんの科目選択で物理のフィールドが張られた。

 

『『試獣召喚(サモン)!!』』

 

 

物理

 

Fクラス 姫路瑞希 384点

 

VS

 

Aクラス 佐藤美穂 416点

 

 

『第6試合フィールドは物理です!それでは第6試合・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

 




感想とかが来ない。
これはどう反応していいかわからない。

では、また次回、Don't miss it.!



次回 『敗けられない戦い』 ここテストに出ます。


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第ⅩⅢ門 敗けられない戦い

バカテスト

問題:『一部の召喚獣に与えられる腕輪は何点以上取った生徒に与えられるでしょうか』


解答

吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華、坂本雄二、霧島翔子

『単科目で400点、総合科目で4000点以上の生徒』


教師コメント

『正解です。あなた方五人は序列トップ5なのでその心配はありませんね。これからも頑張って下さい』


Fクラス生徒(一部除き)

『誰にでも与えられる!』


教師コメント

『問題文をキチンと読みましょう。あと、腕輪は誰にでも与えられるわけではありません。あなた方には後で特別補修を行うことにします』



~明久side~

 

『第6試合フィールドは物理です!それでは第6試合・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

「・・・・・・明久くんはどっちが勝つと思う?」

 

ルーム内のスクリーンを見ながら隣の恵衣菜が聞く。

 

「姫路さんには悪いけど、これは佐藤さんの勝ちだね」

 

「私も同じだね」

 

「零華が姫路さんに勝ちを与えるとは思えないからね」

 

「ええ。そうね」

 

スクリーンには姫路さんの召喚獣の攻撃を余裕をもって躱し攻撃を与える佐藤さんの召喚獣の姿が映っていた。

 

~明久side~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

「美穂ちゃん、流石ね」

 

「・・・・・うん。美穂はやるときはやる女」

 

「翔子ちゃん、なんか違くないそれ?」

 

「・・・・・そう?」

 

「うん」

 

「そう言えば吉井さん、さっき佐藤さんに何を言ったんだい?」

 

「え、ああ。思いっきり、全力で叩き潰してきて、ってお願いしたんです」

 

「ぜ、全力で叩き潰してきてって・・・・・・」

 

「あー、久保くん。零華、明久くんの事になると回りに目が入らないのよ」

 

「そ、そうなんだ・・・・・なんか、前にもこんなやり取りがあったような・・・・・・」

 

「気のせいだと思うわよ」

 

「まあ、木下さんがそう言うなら・・・・・」

 

「そろそろ、決着が着きますね」

 

私はルーム内のスクリーンを見てそう言った。

すると次の瞬間。

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者 Aクラス佐藤美穂』

 

と画面に出た。

 

『試合終了~!第6試合、一方的な試合でしたね。解説の高橋先生はいかがでしたか?』

 

『そうですね、姫路さんは召喚獣を余り扱いなれてないような感じでした。それに対して佐藤さんは試召戦争回数が少ないにも関わらず見事な操作技術でした』

 

『なるほどー』

 

「やったね」

 

「・・・・・うん。じゃあ、行ってくる」

 

「次は坂本くんとの試合でしょ、頑張って翔子ちゃん」

 

「・・・・・うん」

 

翔子ちゃんはそう言うと静かにルームを出ていった。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「それじゃあ、雄二。次は頼むよ!」

 

「ああ!相手はあの翔子だからな。全力でやってやる!」

 

「熱くなるのも構わぬが、それで空回りせぬようにな雄二よ」

 

「おうよ!んじゃ、いっちょ行ってくる」

 

雄二は張り切ってルームから出ていった。

僕たちは雄二を見送ると椅子に座り、スクリーンを見た。

 

 

『続いて第7試合!Aクラスからは第二学年序列第4位霧島翔子さん!Fクラスからは第二学年序列第5位坂本雄二くん!』

 

 

『・・・・・・雄二、全力でいく』

 

『俺もだ翔子。全力でいかせてもらうぜ!』

 

『それでは科目を選択してください』

 

『科目は日本史で頼む!』

 

『承認する!』

 

試獣召喚(サモン)!』

 

『・・・・・試獣召喚(サモン)

 

 

日本史

 

Fクラス 坂本雄二 526点

 

VS

 

Aクラス 霧島翔子 512点

 

 

『第7試合フィールドは日本史です!それでは第7試合・・・・・・試合開始(バトル・スタート)!!』

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~雄二side~

 

ついにここまで来た。俺は絶対に負けねぇ。

 

『第7試合フィールドは日本史です!それでは第7試合・・・・・・試合開始(バトル・スタート)!!』

 

「先手必勝!」

 

俺は召喚獣に指示を出し翔子の召喚獣に接近させた。

 

『坂本選手、開幕早々霧島選手に攻撃を仕掛けに出ました!』

 

『坂本くんの召喚獣は軽装備の為動きが速いですね。あっという間に霧島さんに近づきました』

 

「いくぜっ!」

 

俺の召喚獣の装備は意図してなったのか改造学生服にメリケンサックと、打撃戦と素早さに特化した召喚獣だった。対して翔子の召喚獣は軽装備の鎧と刀だ。

 

「くらえっ!」

 

「・・・・・!」

 

『霧島選手、坂本選手の右ストレートを刀でいなしました!』

 

「ちっ!やるじゃねぇか翔子!」

 

「・・・・・・当然。雄二と戦うなら本気でやるのは当たり前」

 

「言ってくれるぜ。じゃあ、開幕早々使わせてもらうぜ!」

 

俺は召喚獣を翔子の召喚獣から少し距離を取った。

 

「いくぜっ!『炎煌拳舞』!」

 

俺は自分の召喚獣に与えられた腕輪の能力を発動させた。

 

『坂本選手、いきなり腕輪を発動させたー!』

 

この腕輪の能力は『炎煌拳舞』と書いてある通り炎を自身の両手に付与し攻撃力を上げる腕輪だ。

 

『坂本選手の両手には炎のような煌めく燐光が現れています!』

 

『あの腕輪の能力は恐らく自身の攻撃力を上げる能力かと』

 

『なるほど・・・・・』

 

「・・・・・・雄二が使うなら私も・・・・・『氷蒼刀舞』発動!」

 

翔子が言うのと同時に翔子の召喚獣の刀に氷のような蒼い光が集まっていた。

 

『坂本選手に続いて霧島選手までもが腕輪を発動させました!』

 

「・・・・・行く」

 

「っ!? 」

 

俺は滑るかのようにして近づいて来た翔子の召喚獣に驚いた。

それと同時に回避行動をとった。

 

「あぶねぇ・・・・・」

 

「・・・・外れた」

 

翔子の召喚獣が切りつけた場所は微かに凍っていた。

 

「なるほどな、翔子の腕輪の能力は氷か」

 

「・・・・・あたり。雄二の腕輪の能力は炎、でしょ?」

 

「・・・・あたってるぜ」

 

「・・・・・当たって当然。私は雄二の妻だから。夫の事を詳しく知るのは当たり前」

 

「それを今ここで言うか!?て言うかまだ結婚してねぇだろうが!!?」

 

『・・・・・・・高椅先生』

 

『なんでしょう、新野さん?』

 

『今、妻や夫と言う単語が聞こえた気がするのですが』

 

『はい、聞こえましたね』

 

『痴話喧嘩でしょうか?』

 

『痴話喧嘩ですかね』

 

「うおーーぃ!ちょっと待てやそこの二人!何言ってんだ!?」

 

「・・・・・・/////(ポッ)痴話喧嘩」

 

「翔子も照れるな!」

 

俺は一人であちこちに突っ込んだためこの瞬間だけで疲れていた。

 

「ああーっ!もお!勝負に集中しろ!」

 

俺は照れている翔子にそう言う。

そうでも言わなければ俺自身が恥ずかしいからだ。

 

「・・・・・雄二の照れ隠し」

 

「違ぁぁーーーう!!」

 

『高椅先生、私帰って良いですか?』

 

『新野さん、帰らないでください』

 

「たっく、いいからやるぞ!」

 

「・・・・・わかった」

 

ガキンッ!

 

俺の召喚獣の拳と翔子の召喚獣の刀がぶつかる。

 

「ぜあっ!」

 

「・・・・・せいっ」

 

 

Fクラス 坂本雄二 403点

 

VS

 

Aクラス 霧島翔子 384点

 

 

「くっ・・・・・」

 

俺と翔子の点数の差はそんなに離れてない。だが、翔子ならすぐに俺を追い越す。ヤバイな。

 

「はあっ!」

 

俺の攻撃を翔子は見切ったかのように躱した。

 

「・・・・・雄二の動きはもう見切った」

 

「なら、これはどうだ!」

 

「・・・・・それもお見通し」

 

ガキンッ! キンッ!

 

翔子は俺の攻撃を見切りカウンターや振り抜き様に攻撃をしてくる。

 

「・・・・・やってみるか」

 

「・・・・・雄二?」

 

俺を見た翔子は怪訝そうな顔をして見てくる。

 

「いくぜっ!」

 

俺は再度、召喚獣を翔子の召喚獣に接近させた。

 

「・・・・・その動きはもう見切ってる」

 

「なら、これはどうだ!」

 

俺は攻撃をするのではなく翔子の視界から消え去った。

 

「・・・・・どこに?はっ!」

 

「後ろだぜ、翔子!」

 

そう消え去ったのではなく、物凄い速さで翔子の召喚獣の背後に回ったのだ。

正面に集中していた人間は急に消え去るとあちこちを探す。その間は無防備。俺はそれをついたのだ。

 

「・・・・・くっ。なんとか体勢を」

 

「そうはいかないぜ!」

 

俺は攻撃を止めることなく攻撃した。

翔子に反撃のチャンスを生ませないためだ。

離れたらすぐに近くにより接近戦で。だが、さすが翔子かなんとかバランスを取り戻し刀で斬りつけてくる。

 

 

Fクラス 坂本雄二 359点

 

VS

 

Aクラス 霧島翔子 196点

 

 

新たに更新された点数が表示される。

 

「・・・・・やる。さすが雄二」

 

「そっちこそ」

 

「・・・・・じゃあ今度はこっちの番」

 

そう言うやいなや翔子は召喚獣を俺に接近させてきた。

 

ガキンッ!

 

刀と拳がぶつかり衝撃波が生まれる。

 

「ヤべッ!」

 

俺は翔子の意図を察しすぐさま足払いをしてバックステップで翔子から距離を取る。

 

「・・・・・・」

 

「危なかったぜ」

 

俺が立ち退いた場所には氷があった。

恐らく翔子は腕輪の能力を刀だけでなく周囲、自分の近くなら多少離れていようが出来るのだろう。

 

「さっさと決めないとマズイなこれは・・・・・」

 

翔子の記憶力や判断力は俺より一歩上を行っており特に、俺の行動とかは全て読まれているのだ。勝機があるとするならば短期決戦のみ。長期戦はこっちが不利だ。

ここまで、やってくれたアイツらのためにも、そして残り2戦を明久たちに繋ぐためにも。

 

「・・・・・絶テェに負けられねぇ!これで決めてやる!」

 

俺は重心と体勢を整え翔子の召喚獣を見やる。

 

「・・・・・なら私もこれで決める」

 

翔子がそう言うのと同時に辺りが静かになった。

どちらも動かずに相手を見る。

やがて、一陣の風とともに動いた。

先に動いたのはどちらだろうか、俺と翔子はほぼ同時に動いた。

 

ドンッ!

 

バトルフィールドの中央で両召喚獣がぶつかり衝撃波と爆発が起こる。

それにともない白い煙が上がった。

恐らく俺の『炎煌拳舞』と翔子の『氷蒼刀舞』で生じた煙だろう。

やがて、煙が晴れると

 

 

Fクラス 坂本雄二 25点 WINNER

 

VS

 

Aクラス 霧島翔子 0点 LOOSE

 

 

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者 Fクラス坂本雄二』

 

 

俺の召喚獣は片腕を失っているが立っており、翔子の召喚獣は倒れている姿があった。

そしてシステムのアナウンスとともに翔子の召喚獣が消えた。

 

『試合終了~!第7試合、勝者はFクラス代表坂本雄二選手だー!』

 

『『『『『『『『『『うおぉぉぉーーーーーーーーお!!』』』』』』』』』』

 

「ふぅー、ギリギリだったか」

 

「・・・・・おめでとう雄二」

 

「サンキュー、翔子」

 

「・・・・・(コク)私としてもいい戦いだった」

 

「ああ」

 

「・・・・・それはそれとして雄二」

 

「ん?なんだ?」

 

「・・・・・今度、私ともデートする」

 

騒がしかったドーム内がシーンと静かになった。

 

「はっ・・・・・・・はあぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

『おおーっと、霧島選手今大胆にも坂本選手にデートの約束を取り付けました!』

 

「ちょ、それ今言うことか!?後で言えば良いだろうが!」

 

「・・・・・だって、エレンや綾香がここで取り付ければ絶対に拒否らないって、言ってたから」

 

翔子は首をコテンと横にして言った。

 

「あ、ああ、あの二人は!」

 

「・・・・・それで雄二。デート」

 

「わ、わかったからそれを今ここで連呼するな!」

 

今、俺の顔は赤くなっているだろう。怒りと言うよりも恥ずかしさで。こんな公衆の面前で堂々とデートの約束をさせられたのだ、当然と言うものだろう。

俺はドーム内から逃げ去るかのようにして出ていった。

だが、この時俺は失念していた。ルーム内にもバッチリ、リアルタイムで流されていることに。

 

~雄二side out~

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

『・・・・・・それで雄二。デート』

 

『わ、わかったからそれをここで連呼するな!』

 

僕たちはスクリーンに映っている光景に、ニヤケが止まらなかった。

 

「わあ、翔子ちゃん大胆だね」

 

「う、うん(雄二、気持ち察するよ)」

 

画面の中では雄二が逃げ去るかのようにして出ていく姿があった。

 

「次は私の番だね」

 

「気をつけてよ恵衣菜」

 

「わかってるよ」

 

僕は恵衣菜を頑張らせるため頭を優しく撫でることにした。

ほんとは抱きついたりして頑張らせたかったのだが他の人もいるので我慢した。

すると。

 

「家で、思う存分抱きついたりしてね♪」

 

小声で恵衣菜がそう言った。

 

「う、うん」

 

僕も小声で返す。

 

「じゃあ、行ってきます」

 

そう言うと恵衣菜はルームから出ていった。

恵衣菜がルームから出て暫くして雄二が戻ってきた。

 

「雄二、お疲れ」

 

「ああ。明久」

 

「すまん、坂本」

 

「後であの二人には言っておく。正直聞いていた俺たちまで恥ずかしかった」

 

「ああっ、言うな!頼むから今言わないでくれそれ!」

 

余程恥ずかしかったのか雄二は俯いたまま顔を手で覆った。

そんなやり取りをしていると。

 

『お待たせしました!続いて第8試合、Aクラスからは第2学年序列第6位 久保利光くん。Fクラスからは第2学年序列第2位 姫宮恵衣菜さんです』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

『この試召戦争も残り2戦となりました。解説の高橋先生、どう思われますか?』

 

『正直、ここまでやるとは思ってませんでした。今年のFクラスはイレギュラー要素が多数ありますね』

 

『そうですね。では試合科目を決めてください!』

 

『総合科目でお願いします』

 

『承認する!』

 

『いくよ、試獣召喚(サモン)!』

 

『いきます!試獣召喚(サモン)!』

 

 

総合科目

 

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 9876点

 

VS

 

Aクラス 久保利光 4462点

 

 

『て、点数差5000点オーバー!?た、高橋先生。こ、これは!?』

 

『姫宮さんが、ここまで高めるとは思いませんでしたね。ですが彼女以上の点数の持ち主がいます』

 

『ハハ。予想していていたとはいえ流石にここまでとはね。予想を遥かに越えているよ』

 

『久保君こそかなり努力しているんだね。短時間でここまで点数を上げるなんて』

 

『まあね。でも、君や吉井くんにはまだ遠く及ばないよ』

 

『フフ。私もまだ明久くんには及ばないからね~』

 

 

『第8試合フィールドは総合科目です。それでは・・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

『第8試合フィールドは総合科目です。それでは・・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

「それじゃあいくよ!」

 

私の召喚獣は細剣(レイピア)を構えて久保君の召喚獣に迫る。

 

「速い!」

 

「せいっ!」

 

「くっ・・・・・」

 

私の突進を久保君はギリギリのところで躱した。

 

『速い!これが序列第2位の召喚獣の力なのでしょうか!』

 

『彼女はまだ腕輪の能力を使ってませんが・・・・・速いとしか言えません』

 

「距離をとって・・・・・」

 

久保君の召喚獣は私の召喚獣から距離を取るため大きく後ろに飛び退いた。

 

「じゃあ、次はこれかな」

 

私は細剣を腰の鞘にしまい、背中隠しに装備していた弓へと武装を変えた。

 

「なにっ!?」

 

そして弓の弦を引き矢を放つ。

 

シュッ!

 

矢が風を切る音がなり久保君の召喚獣に突き刺さる。

 

 

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 9876点

 

VS

 

Aクラス 久保利光 4211点

 

 

 

私は続けて弓の弦を引き、矢を連続で放つ。

 

『な、どう言うことだ~!?姫宮選手、武装を細剣から弓へと変えました!まさか武装を2つ持っているのか!?これは一体どういうことなんでしょうか!?』

 

『姫宮さんの召喚獣は特例として武装を2つ装備しています。ちなみにこれは学園長からの要望です』

 

『な、なるほど』

 

「まさか、2つ武装を持っているなんて」

 

「新学期初日に学園長先生から相談されてね。私の他にも後2人いるよ」

 

「なるほど、それはあの2人か」

 

「うん」

 

久保君は私の言った残り2人って言葉に明久くんと零華ちゃんだとわかったようだ。

 

「じゃあ、いくよ久保君!腕輪発動!」

 

私は弓を構えて照準を久保君に合わせる。

久保君は縦横無尽に召喚獣を動かし躱そうとしている。

だが、私はその照準を久保君から上空に向けた。

 

「発動、多弾攻撃(マルチプル)!」

 

そして弓を上空に放つ。

 

「なっ・・・・・!」

 

私の放った矢は上空にいくと分裂し久保君の周囲を攻撃した。

 

『こ、これは!なんと矢の雨です!』

 

 

「んー。やっぱりまだ、使い勝手が悪いかな~?まあ、元々一対多のだからね」

 

矢の雨が収まるとその中心に久保君の召喚獣が自身の武器、鎌を盾にして立っている姿があった。

 

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 9776点

 

VS

 

Aクラス 久保利光 2154点

 

 

『凄まじい攻撃です!久保選手の召喚獣は2000点程削られました』

 

『対して姫宮さんは腕輪の能力を発動して100点減っただけですからね。2人の点数差が約4.5倍ですね』

 

「まさか、ここまでとはね」

 

「うん。私もそう思うよ」

 

「じゃあ、今度はこっちから行かせてもらうよ!」

 

久保君はそう言うやいなや召喚獣に攻撃を仕掛けてきた。

私は弓をしまい細剣に切り替え、鎌を受け止める。

 

ガキンッ!

 

重い・・・・・鎌だから重いな。でも・・・・・

 

ガキッ!

 

私は召喚獣の軸を少し横にずらし鎌を受け流す。

 

「それじゃ、学園長から頼まれている事もしないとね」

 

私は自身の左腕に着けてある腕輪を露にした。

明久くんからこの間渡された空色の腕輪を。

 

「姫宮さん、君が着けているその腕輪は」

 

「学園長からお願いされてね。これのテストをしないといけないんだ。え~と、確か起動ワードは・・・・」

 

そして私は腕輪を顔の前にまで持って来て言う。

 

吹き荒れろ(テンペスト)――疾風よ(アネモイ)!」

 

私が起動ワードを言うと召喚獣に風が纏わりついた。

だが、それは纏わりつくというよりもベールのように衣のよう優しい風だった。

 

「こ、これは・・・・・」

 

『た、高橋先生これは一体?』

 

『姫宮さんが使った腕輪は、学園長が彼女にテストとして渡した物です。その腕輪の能力は召喚獣に風を纏わせることです』

 

「さあ、行くよ!」

 

私は細剣を胸の前で構えて突進した。

 

「ぐわっ!」

 

久保君は躱そうとするが、私の召喚獣の纏った風により出来なかった・・・・・と言うより無理だった。

風を纏った私の召喚獣は疾風や一陣の風の如くの速さで久保君に接近し攻撃した。

土屋君の『加速』を越え、私の召喚獣の『閃光』よりも速かった。

これに『閃光』の能力を使ったらどうなるのか正直私でもわからないな。

 

「ゴメンね久保君!」

 

その後は私の一方的な攻撃となった。

久保君の鎌は小回りが出来ないため私は最小の動きで躱し連撃を与える。

そして。

 

「はああああぁぁあ!」

 

 

Fクラス 姫宮恵衣菜 9524点 WINNER

 

VS

 

Aクラス 久保利光 0点 LOOSE

 

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者 Fクラス 姫宮恵衣菜』

 

『試合終了~!第8試合、勝者はFクラス、姫宮選手です!』

 

『『『『『『『『『『うおぉぉぉーーーーーーーーお!!』』』』』』』』』』

 

「負けたか・・・・・ありがとう、姫宮さん。いい経験になったよ」

 

「こちらこそ、ありがとう久保君」

 

「でも、次はこうはいかないよ」

 

「もちろん。私もだよ」

 

私と久保君はそう言うと互いに背を向けルームに戻った。

その背後では。

 

『激闘を終えた両選手に惜しみ無い拍手をお願いします』

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「勝ったね」

 

「ああ。明久は恵衣菜勝つとわかっていたのか?」

 

「当然でしょ?だって、恵衣菜だよ?」

 

僕はなに当たり前のことを言っているのかと雄二に聞いた。

すると。

 

「ああ、そうだな・・・・・」

 

「吉井、頼むからここで惚気けないでくれ」

 

「正直呆れるぞ」

 

「・・・・・・同じく」

 

「全くじゃな」

 

「???」

 

別に惚気けているつもりは無いんだけどな~

そう思っていると時間になった。

 

「それじゃあ雄二、行ってくるよ」

 

「ああ。頼むぞ明久」

 

「うん」

 

僕は雄二とハイタッチをしてルームから出た。

ルームから出て試合会場に歩いていくと、反対側から恵衣菜が歩いてきた。

 

「明久くん♪」

 

「お疲れ恵衣菜。いい戦いだったよ」

 

「ありがとう、明久くん。次は明久くんの番だね」

 

「うん。任せて、絶対に勝ってくるから」

 

「分かったよ。応援してるね♪」

 

「うん!」

 

恵衣菜と分かれて僕はバトルフィールドへの入り口についた。

入り口には何故か学園長先生がいた。

 

「学園長」

 

「渡した腕輪を見るために来たんだが。吉井、ここまで来たんだ、頑張りな」

 

「はいっ!」

 

そう言うと学園長先生は観客席の方に歩いていった。

そして。

 

『会場の皆様!ついにこれでAクラス対Fクラスの試召戦争も決着です!』

 

『両クラスともこれまでの戦績は3勝3敗2分けです。これで全ての決着がつくことでしょう』

 

『それでは最後の戦いの選手に登場して頂きましょう!まずはAクラスから。Aクラスからは第2学年主席にして序列第3位 吉井零華さん!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

『そしてFクラスからは第2学年序列第1位 吉井明久さん!』

 

『『『『『『『『『『おおーーーーーーーー!!』』』』』』』』』』

 

『兄妹対決ですね。2人の成績は近くまさに最終決戦に相応しい闘いでしょう』

 

『そうですね』

 

「兄様」

 

「零華」

 

「兄様、私はAクラス代表として戦います。そして兄様を倒します!」

 

「僕もだよ零華。僕もFクラス代表として戦う。最初から全力でいくよ」

 

「もちろんです、兄様!」

 

『それでは最終決戦の科目を決めてください!』

 

「科目は総合科目でお願いします!」

 

『承認する!』

 

西村先生が総合科目のフィールドを張ったのを確認して僕と零華は同時に召喚する。

 

「いきます兄様!試獣召喚(サモン)!!」

 

「いくよ零華!試獣召喚(サモン)!!」

 

 

 

総合科目

 

 

Fクラス 吉井明久 10952点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 9563点

 

 

『ちょ、ちょっと待ったァー!何ですかあの点数!?10000点超えなんて!?』

 

『あれが吉井くんの実力です。序列第1位と言われている通り本来ならば彼が第2学年の主席です。それと彼のテストの際、試験監督は私と西村先生が行いましたのでカンニングはありません』

 

『な、なるほど』

 

『それと、彼は『観察処分者』=『バカ』と言われていますがそれは大きな間違いです』

 

『どう言うことですか?』

 

『吉井くんは自ら立候補して『観察処分者』になりました。ですので彼がバカ、と言うことはありません』

 

高橋先生の説明に僕は少し照れた。

 

「ふふ。兄様、私は嬉しいです。兄様の事を大切に思ってくれる人たちがいて」

 

「そうだね。うん、僕もそう思うよ」

 

『それではAクラス対Fクラス、最終決戦フィールドは総合科目です。それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 




ちょっと、時間かかってしまいました。
ついに次回FクラスVSAクラスも決着!勝つのはどっちのクラスだ!?


次回 『ついに決着 零華VS明久!』 ここテストに出ます。

それではまた次回、Don't miss it.!


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第ⅩⅣ門 ついに決着 零華VS明久!

バカテスト

問題:『文月学園、学園長の名前を答えなさい』


解答

吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華

『藤堂カヲル学園長』


教師コメント

『正解です。3人はよく学園長の実験に協力してくれるので助かると学園長がおっしゃっていましたよ』


Fクラス生徒(一部除く)

『妖怪』

教師コメント

『・・・・・・・・・・・・・・』


~明久side~

 

『それではAクラス対Fクラス、最終決戦フィールドは総合科目です。それでは・・・・・・・試合開始(バトルスタート)!!』

 

新野さんのアナウンスと同時に試合開始のブザーが鳴った。

 

「行くよっ、零華!」

 

「行きます、兄様!」

 

「「勝負!」」

 

ブザーが鳴り響くと同時に僕と零華の召喚獣はそれぞれ双剣と槍を握りフィールドの中央ぶつかる。

 

ドガンッ!

 

『キャアアアアア』

 

『くっ・・・・・・』

 

僕と零華の召喚獣の双剣と槍がぶつかり衝撃波と爆発が生まれる。それによりあちこちで悲鳴があがった。

 

『す、凄まじい威力です。これでまだ、腕輪を使ってないのですから二人とも一体どんな能力を持っているのでしょうか?・・・・・・・って、あれ?二人の召喚獣の姿が見当たりません、どこへ行ったのでしょうか?』

 

『かなり速く動いているため見えないのだと思います。現にフィールドのあちこちで金属音が聞こえます』

 

『確かに聞こえます。にしても二人とも速すぎませんかね?』

 

解説席で新野さんと高橋女史が説明した通り、あの爆発と衝撃波の後、僕と零華はフィールドのあちこちを動き回り攻撃していた。しかも、かなりの速度で。

 

キンッ!キンキンッ!

 

そのためフィールドのあちこちで金属音が鳴り響いている。

 

「はあっ!」

 

「せいっ!」

 

『は、速すぎてどんな戦闘が行われているのか全くわかりません!』

 

『確かにこの速度は信じられないくらいの速度ですね。解説する間もありません』

 

そのまま暫く打ち合って元の場所に僕と零華の召喚獣を戻した。

 

 

Fクラス 吉井明久 10457点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 9026点

 

 

「さすが兄様ですね」

 

「うん。零華もね」

 

「では、私は使わせてもらいますね」

 

そう言うと零華は槍をしまい懐から魔導書を取り出した。零華の召喚獣の格好は僕と似たような格好で、僕が黒に対して零華は白と碧、ピンクの3色を合わせた色だった。違うのは僕がズボンなのに対して零華のはスカートだった。

 

「じゃあ、僕も」

 

僕は左手の片手剣を背中の鞘にしまい(腰でも良かったんだけどね)懐から拳銃を取り戻し構える。

拳銃は2丁あるが今は左手に白銀の銃、右手に黒金色の片手剣と言う出で立ちをしている。

 

『な、なんと、両選手とも姫宮選手と同じように二つ目の武器を取り出しました!』

 

『特例として姫宮さん、吉井兄妹の3人には武装が二つ与えられています。これは学園長からの要望ですので』

 

「じゃあ、早速いきます!腕輪発動!千の魔法(サウザンド・マギア)!」

 

零華は魔導書を装備すると早速腕輪を発動してきた。

 

「兄様、いきますよ!」

 

「うっ・・・・・!」

 

僕は零華の召喚獣の周囲に展開された魔方陣を見て驚いた。

数が十数あったからだ。

そして、零華はその魔方陣から光の矢をだした。魔法の射手だ。その数、約30。

僕は慌てて召喚獣に指示をだし右手の片手剣を背中の鞘に戻し、もう一丁の黒の銃を取り出し装備する。

 

ドンッ!バンッ!バンッ!

 

30の光の矢を2丁拳銃を構えて、躱し零華に向かって撃つ。

 

「やりますね、兄様」

 

僕が放った銃弾は零華の目の前で何かに阻まれたかのように空中に止まり床に落ちた。

 

「へぇー、風の衣(ウインド・ベール)かな?」

 

「そうですよ兄様」

 

「じゃあ、僕もいくよ。腕輪発動!属性付与(エンチャント)!属性付与、六属性(アスタリスク)!」

 

僕は腕輪の能力を2丁拳に付与した。

2丁拳は属性付与の影響を受け6色のオーラに包まれていた。

 

「いくよ!(イグニス)!」

 

僕は属性付与で付与した炎の弾丸を零華の召喚獣に向けて撃つ。属性を言えばその属性を付与した弾丸が放たれる。

 

「そうはいきません!」

 

零華の召喚獣は今度は水の矢で弾丸を落とした。

 

「続けていくよ!(グラキアーリス)(フルグラーリス)!」

 

僕は続けて属性付与を施した弾丸を放つ。

それに対応して零華も魔法で撃ち落としてくる。

 

「来たれ、風の精霊、雷の精霊よ。集い来たりて2精よ迸れ。相重なりて、鋭き槍となりて敵を突き破れ!風雷の精槍(アニマトルトリス)!」

 

「属性付与!全属性(オールエレメント)!」

 

ドガンッ!

 

僕の放った全属性を付与した弾丸と零華の魔法の槍が中央でぶつかり爆発が起こる。

僕と零華はそれぞれの攻撃を遠距離から撃ち落として攻撃する。僕はあちこち移動しながら、零華は動かずに守備は防御魔法で対抗している。

 

 

Fクラス 吉井明久 9816点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 8646点

 

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・ここまでは互角。さすが零華だね」

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・そんなことないですよ、兄様。点数差は1000点以上離れてるんですから」

 

「そうだね。それじゃ、この腕輪使おうかな」

 

「ええ。私も使おうと思っていました兄様」

 

僕と零華は同時に自身の右手に着けている腕輪を見せた。

 

『試合開始から早くも10分が経とうとしています』

 

『ここまで、長いのは初めてですね。さらに二人とも学園長から頼まれている腕輪を使うようですね』

 

解説席から新野さんと高橋女史の会話が聞こえる。

 

「では、私からいきます!天使の翼(エンジェル・ウイング)!」

 

零華が右手の手首に着けた純白の腕輪を見せ、起動ワードを言うと零華の召喚獣の背中から左右二対の純白の羽が現れた。

 

『な、な、なんだでしょうかこれは!?いきなり吉井零華選手の召喚獣から純白の翼が生えたー!まるで天使が降臨したようです!』

 

『学園長、ああゆうのまで開発していたんですね』

 

「可愛いよ、零華の召喚獣。うん。て言うか、まるでじゃなくて、天使だね」

 

「ありがとうございます、兄様」

 

僕が誉めると零華は照れたように顔を赤くして、俯きながら答えた。

 

「じゃあ、僕も・・・・・・・・」

 

僕は右手を横に突き出し手首に着けた虹色の腕輪を見せ、起動ワードを言う。

 

終わりと始まりの双翼(ゼロ・ウイング)!」

 

起動ワードを紡ぐと僕の召喚獣にも左右二対の翼が現れる。

零華の召喚獣の翼が純白に対して、僕の召喚獣の双翼は虹色に輝いていた。

 

『吉井明久選手も翼を生やしました!高橋先生、これも学園長先生がですか?」

 

『見たいですね。姫宮さんのも合わせると、どれも始めてみる物です』

 

「格好いいです、兄様」

 

「そうかな?ありがとう零華。それじゃあ・・・・・・」

 

「ええ・・・・・」

 

「「続けて闘りましょう(るよ)!」」

 

僕と零華の召喚獣は互いに宙に浮き飛び上がる。

 

『な、なんと、両選手の召喚獣が宙に浮いています!?』

 

『浮いていると言うより、飛んでいる。と言ったほうがあってるかもしれませんね』

 

僕は右手の黒の銃をしまい、黒金色の片手剣を取り出す。

 

「いくよ!」

 

「いきます!」

 

そして同時に動いた。

 

「来たれ、光の精、雷の精。集い来たりて我に従え。天視たり駆け抜けよ。百乗の矢となりて敵を突き穿て。雷光の矢(ライトニング・アロー)!」

 

零華の放った魔法は全て僕のほうにやってくる。その数約100。

さすが零華だね。だけど、僕も負けるわけにはいかないんだ!

僕は迫ってくる雷光の矢を弾丸でいくつか相殺し、片手剣で斬り裂く。

 

「はあぁああああああ!」

 

そのまま僕は零華に突っ込み零華に攻撃を与える。

だが、当たる直前。

 

キィン!

 

「くっ・・・・・」

 

零華は槍でそれを防いだ。

 

「まさか、魔法を斬り裂くなんて・・・・・思ってませんでした」

 

「うん。正直僕も始めてやったからね。出来るか不安だったよ」

 

僕はそう言うと左手の白銀の銃をしまい、蒼銀色の片手剣を抜き放つ。

 

「ここからは双剣だけでいくよ」

 

そう言うやいなや僕は召喚獣に突撃の指示を出す。

 

「速い!?」

 

空中全てを使う3次元の戦闘にまだ慣れないが出来ないことはない。

僕は双翼をフルに生かし零華の召喚獣に攻撃を仕掛ける。

 

キンッ!キィン!

 

『遠距離からの攻撃が終わると今度は超高速の接近戦、こんなの見たことありません!』

 

『そうですね。私もこんな試召戦争の決着は見たことありません。両者一歩も引かず凄まじいです』

 

 

Fクラス 吉井明久 5816点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 5159点

 

 

僕と零華の点数は徐々に減っていっている。

それに加えここまでの長時間の戦闘はまだ、経験したこと無いため、何時集中力が切れるかわからない。

 

キィン!キンキィン!

 

僕も零華も決定的なダメージを与えられずに試合時間はすでに18分を超えていた。

 

「これならどうですか、兄様!」

 

零華はそう言うと僕から距離を取り、槍を下方。僕の方に向ける。

 

「いきます!発動、ミストルティンの槍!」

 

零華はそう言うと上空から僕目掛けて突っ込んできた。

 

「マズイっ!事象改変(オーバーライド)発動!」

 

僕は咄嗟にもう一つの腕輪を使った。

 

ドゴーンッ!!

 

「うっ・・・・!」

 

「キャッ・・・・・!」

 

僕と零華の召喚獣がぶつかり爆発と衝撃波が起き爆煙が生じた。

僕らは顔を手で覆い爆風を凌ぐ。

 

「危なかった~」

 

「やっぱり防ぎましたか」

 

爆煙が消え去るとそこには双剣と槍で鍔迫り合いしている、僕と零華の召喚獣があった。

 

「事象改変を使わなかったら危なかったよ」

 

 

Fクラス 吉井明久 4910点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 4542点

 

 

今の攻撃で僕の点数は大幅に削られていた。

腕輪を使った分も差し引いてはあるが、完全には相殺出来なかったようだ。

 

『な、な、な、なんて威力!一撃で吉井明久選手の点数を大幅に削らせました!』

 

『吉井さんの腕輪を吉井くんは相殺して中和したのでしょう。ですが、完全には相殺出来なかったようですね』

 

「続けていきます!」

 

零華はそう言うと魔導書を左手で持ち飛び上がった。

 

「我、天を視たりて紡ぎ奏でる者なり。素は足れど慈しめ慈愛を持って奏でよ。8つの精霊よ集え、灼熱業火の旋風、咲き誇れる終演の黒白の花園、荒れ狂える雷地。黄昏時に終わりをもたらすものよ、今その時なり。現祖へと帰せ、宇宙からの天象」

 

「そうはさせない!」

 

僕は瞬時に零華に接近するが、近づく一歩手前で零華の詠唱が終わった。

僕の周り、いや、周囲に複雑怪奇な魔方陣が描かれる。

 

宇宙より降りせくる神々の黄昏(トワイライトコスモス・エンプレシオエデン)

 

零華の詠唱の終により、僕は空中から地面に引き落とされた。

そして、地面には同じく複雑怪奇な魔方陣が描かれている。

 

「マズイっ!」

 

そう思った瞬間、魔方陣から様々な八属性の魔法攻撃が仕掛けられた。

魔方陣の円外には炎の壁がありそれは上で重なっている。

逃げ道を塞ぐつもりらしい。

 

『吉井明久選手、ピンチ!このままやられてしまうのでしょうか!?』

 

『吉井さんの放った魔法はエレンさんの放った魔法より強力です。これで終わってしまうかもしれません』

 

「これで終わりです兄様」

 

「それはどうかな零華」

 

「え?」

 

「さっきどうやって零華の攻撃を凌いだか教えてあげようか。あれは同威力の攻撃をぶつけて相殺したんだよ。もっとも完全に相殺は出来なかったけど・・・・・」

 

「ま、まさか・・・・・・」

 

「うん、零華の考えている通りだよ・・・・・」

 

そう言うと零華の召喚獣が放った魔法が消えていった。

 

「僕のもう一つの腕輪。この能力は事象改変。今、零華の攻撃を無かったってことに上書きしたのさ」

 

そう言うといなや完全に零華の放った魔法が消えた。いや、書き消された。

僕の召喚獣の足元には複雑怪奇な魔方陣が掛かれていた。

 

「僕の腕輪、事象改変はあったことを無かったことに、無かったことをあったことに、書き変える能力だよ」

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

「そして、属性付与を使えばこんなことも出来るよ」

 

僕は双剣に虹色に輝くオーラを纏わせ振り払う。

振り払った場所からは光の矢数十本が存在していた。

 

「それは、魔法!?」

 

「うん。無かったことをあったことにしたからね。でも、これにも欠点があるんだ」

 

「欠点?」

 

「うん。相手に何もしないで点数を0にしたり防御不可能、自身無敵のような反則じみた行動は出来ないんだよ」

 

「なるほど。では・・・・・・」

 

「うん。ここからは・・・・・・・・本気の本気で相手するよ零華!」

 

「わかりました兄様。では私も・・・・・・・・いきます!」

 

僕は待機させていた光の矢を零華に、向けて放つ。

だが、それは零華も魔法で撃ち落としてくる。

時間は既に20分を切ろうとしている。早めに決めなくては。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

 

 

そしてそのまま5分後

 

 

 

 

Fクラス 吉井明久 364点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 287点

 

 

「次で決着をつけようか零華」

 

「そうですね、兄様」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

僕と零華の闘いにスタジアム全体が盛り上がるが既にそんなのは耳に入ってこない。集中しないと勝てない相手だからこそだ。

そして同時に動いた。

 

「発動!ミストルティンの槍!」

 

「属性付与!全属性!」

 

僕と零華の召喚獣は最初と同じようにフィールドの中央でぶつかりあった。

 

ドゴーンッ!!

 

またしても爆発が起こり衝撃波と爆煙が現れる。

 

「「くっ・・・・・・」」

 

爆発が収まり爆煙が消え去ると立っていたのは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス 吉井明久 1点

 

VS

 

Aクラス 吉井零華 0点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の召喚獣だった。

 

 

 

試合終了(エンドオブバトル) 勝者 Fクラス吉井明久』

 

 

 

固唾を飲んで静まり返っていたスタジアムに勝者を告げる、システムからのアナウンスが流れた。

 

『つ、つ、ついに決着~!!試合時間25分の戦いの中で勝ち星を上げたのは、Fクラス、吉井明久選手!!よって今回のAクラス対Fクラスの試召戦争は―――――4勝3敗2分けでFクラスの勝利です!!』

 

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

解説席の新野さんの放送によりスタジアム中から歓声の声が上がる。

 

「はあ、はあ、はあ。・・・・・・・・なんとか、勝てた」

 

「はあ、はあ、はあ。・・・・・・・・負けちゃいましたね」

 

僕と零華はその場で静かに崩れ落ちた。

さすがに長時間の召喚獣の操作はやったこと無いため疲れた。

僕と零華は息を整えフィールドの中央に向かった。

 

「お疲れさま零華。いい試合だったよ」

 

「私もです兄様。次闘うときは私が勝ちます」

 

「うん。楽しみにしてるよ零華」

 

僕と零華はその場で手を握った。

今は兄妹とか関係ない。激闘を繰り広げた相手、だ。

 

『会場のみなさま!激闘を繰り広げた両選手に盛大な拍手をお願いします!』

 

新野さんの放送に会場全体から盛大な拍手が響いてきた。

 

『以上を持ちましてAクラス対Fクラスの試召戦争を終了致します。解説は第2年学年主任、高橋洋子と』

 

『実況は私2年放送部、新野すみれがお送りいたしました』

 

そう放送してこの場は閉められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後

 

観客がいなくなりこの場にはAクラスとFクラスの生徒全員と高橋先生、西村先生、福原先生、学園長先生がいた。

 

「両クラスともお疲れさん。いい闘いだったさね。さて、Fクラスからの要望を聞こうか」

 

「ああ。俺たちFクラスの要望はAクラスとの良好な関係だ」

 

「そんなんでもいいのかい?実際、あんたらはAクラスとは良好な関係さね」

 

「ああ。本当ならもう一回振り分け試験をお願いしたかったんだが・・・・・・・」

 

「僕たちは今年度はこのままFクラスで行きます」

 

「兄様!?」

 

「ふむ。ちなみにどうしてだい?」

 

零華や霧島さん、Fクラスのみんなが驚くなか僕は言った。

 

「僕らがAクラスになったら、またAクラスと試召戦争が出来ないからです」

 

「ああ。俺たちも今度Aクラスとやるときは団体戦ではなく普通に試召戦争をやって勝ちたいからな」

 

「ふっ。ハハハ」

 

「学園長?」

 

僕はいきなり笑い出した学園長に尋ねた。

 

「すまないね。なるほど、そんなこと言ったのはあんたたちが初めてだよ。そうじゃないかね、西村先生、高橋先生、福原先生」

 

「そうですね。今回の試召戦争を見たとしても今年のFクラスは中々面白いと思います。Aクラス並の実力者が数人いるため当然と言えばそうですが」

 

「ですな。今までそんな事を言ったクラスはありませんでした」

 

「私も高橋先生と西村先生と同じです」

 

「そうさね。ふむ。それじゃあ、Fクラスの設備を少し上げるとするさかいね。今まで他クラスから設備は交換してないんだ、それくらいならば良しとするさね」

 

「ありがとうございます、学園長」

 

「感謝する」

 

「Aクラスの連中もいいさね?」

 

学園長は零華たちAクラスをみて言う。

 

「はい。私たちも異論はありません」

 

「・・・・・・私もです」

 

「それじゃあ、後は先生に任せるとするよ。ああ、そうだ。吉井兄妹と姫宮はアタシと一緒についてきな」

 

「は、はい。わかりました」

 

学園長に呼び出され僕と恵衣菜、零華はクラスのみんなから抜け出し学園長の後を着いていった。

抜け出す際、雄二に、この場で何か伝えられたら後で教えてほしいと、言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

僕らは学園長先導のもと学園長室に来ていた。

 

「さて。3人とも腕輪の実験どうもさね。お陰で見直すべき点が見つかったよ」

 

「いえ。僕らも他の腕輪とは違うことが体験できましたから良かったと思います」

 

「私もです」

 

「私も」

 

僕らは手首に着けていた腕輪を外し言った。

 

「ところで学園長、これはどうしたら良いでしょうか?」

 

「ふむ。その腕輪はあんたたち3人が管理しておいてくれて構わないよ」

 

「え?いいんですか?」

 

「ああ。但し通常の試召戦争での使用は禁止だよ。使うとするならAクラスだけだね」

 

「わかりました」

 

僕らは学園長からそう言われ腕輪を無くさないように、再び手首に着け袖で隠す。

 

「それより、吉井兄。あんた平気なのかい?」

 

「?どう言うことですか学園長先生?」

 

「いや、さっきから吉井兄の顔色が悪い気がするんさね」

 

「「えっ!?」」

 

恵衣菜と零華は慌てて僕を見る

 

「うっ・・・・・・」

 

「明久くん!」

 

「兄様!」

 

僕はさすがに限界だったのかその場に倒れるとまではいかなくとも膝をついた。

その僕に恵衣菜と零華が慌てて駆け寄った。

 

「やっぱりね」

 

「学園長、気づいてたんですね」

 

「当たり前さね。これでもここの長さね。生徒一人の体調くらいすぐにわかるよ。二人には上手く隠していたつもりだったようだがね」

 

「アハハ・・・・・・」

 

僕は学園長の言葉に苦笑いで返した。

実際、フィードバックや事象改変の腕輪の影響で僕の体は限界に近かったのだ。

 

「明久くん、大丈夫?」

 

「ありがとう恵衣菜。大丈夫」

 

「兄様、無茶しすぎです」

 

「ごめんね零華」

 

「吉井兄はこの後保健室で休んで来るといいさね。付き添いとして姫宮を随伴させるよ。吉井妹には悪いけど」

 

「ええ、わかってます。Aクラス代表が行かないわけにはいきませんから」

 

「すまないさね」

 

「いえ。それでは私はこれで失礼します」

 

零華はそう言うと学園長室から出てAクラスへと向かった。

 

「さてと。姫宮、保健室の校医にはアタシから連絡しとくさね」

 

「ありがとうございます、学園長先生」

 

「それじゃあ、吉井のこと頼むさね」

 

「はい」

 

「それでは失礼します、学園長」

 

「失礼します、学園長先生」

 

学園長にそう言い僕は恵衣菜に助けられて保健室に向かった。

保健室に着くと既に連絡が来ていたのか保健室校医の小暮翠先生がいた。

 

「連絡は来ているよ。明久君をベットに寝かせてあげて恵衣菜ちゃん」

 

「はい」

 

保健室校医の小暮翠さんは葵姉さんの実姉だ。

二人の年の差は確か5歳・・・・・・だったかな?

その為、僕や恵衣菜も面識がある。

昔、幼い頃よく翠姉さんに怒られていたのを覚えている。

 

「全く、明久君は相変わらずね」

 

「ご、ゴメンなさい翠姉さん」

 

「今は私ら3人だけだからいいけど、他の人がいるところでは先生って呼びなよ」

 

「うん」

 

「それじゃあしばらく寝ていれば治るだろうから恵衣菜ちゃん、付いていてあげて」

 

「うん」

 

「私はちょっと職員室に行くから何かあったら職員室に来て」

 

「はーい」

 

そう言うと翠姉さんは保健室から出ていった。

そして、保健室には僕と恵衣菜の二人だけとなった。

 




やっと終わった~
次回から新しい章に入ります。



次回 『デート』 ここテストに出ます。


それではまた次回、Don't miss it.!


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第ⅩⅤ門 デート


バカテスト

問題:『以下の意味を持つことわざを答えなさい』
Ⅰ:『得意なことでも失敗してしまうこと』
Ⅱ:『悪いことがあった上に更に悪いことが起きる喩え』

解答

吉井明久

Ⅰ:『弘法も筆の誤り』
Ⅱ:『弱り目に祟り目』

教師コメント

『正解です。さすが吉井くんですね』


姫宮恵衣菜

Ⅰ:『河童の川流れ』
Ⅱ:『泣きっ面に蜂』

教師コメント

『正解です。この辺りは知っていましたね。さすがです』


吉井零華

Ⅰ:『猿も木から落ちる』
Ⅱ:『踏んだり蹴ったり』

教師コメント

『お見事、正解です』


福村幸平

Ⅰ:『弘法の川流れ』


教師コメント

『シュールな光景で驚きました』


島田美波

Ⅱ:『アキに折檻』


教師コメント

『島田さんは何をしようとしているのですか』



 

~明久side~

 

「まったく、なんで無茶したのよ明久くん」

 

僕は今保健室のベットに横になりながら、隣で椅子に座る恵衣菜に軽くお説教されていた

理由は、僕が無茶をしたからだ。

 

「ご、ごめん恵衣菜」

 

「まあ、確かに零華ちゃん相手に出し惜しみしてる場合じゃないのはわかるけど」

 

「う、うん」

 

「だからって倒れるまでやりますか普通?」

 

「うっ・・・・・・・ごめんなさい」

 

「もう無茶しないって約束してくれる?」

 

「えっ、そ、それは・・・・・・」

 

恵衣菜の無茶をしない、という言葉に僕は口を濁した。

絶対また、無茶するだろうからだ。僕が。

 

「明久くん」

 

僕が目を逸しすと恵衣菜が僕の両頬を両手で挟み、視線を恵衣菜の顔へと向けさせた。

 

「お願い・・・・・・」

 

こ、これはマズイ。

何がマズイのかと言うと、恵衣菜が目茶苦茶可愛すぎる。目をウルウルさせ本気で僕の身を案じていることがわかる。これを見て断れる人がいたらその人は人間じゃない。

正直、今の僕には効果抜群だ。

 

「わ、わかったよ。約束するよ」

 

「うん♪」

 

あ、ヤバい。今この場で抱き締めたい。

僕は恵衣菜を見て咄嗟にそう思ってしまった。

 

「けど、あの時のようじゃなくて良かったよ」

 

「あの時?」

 

「覚えてないの?」

 

「?」

 

「去年の秋頃の事だよ?」

 

「去年の秋頃・・・・・・・・あ、僕が入院した時の事?」

 

「思い出した?」

 

「うろ覚えだけどね」

 

「あの時、私や零華ちゃん、葵ちゃんもかなり心配したんだからね」

 

「ゴメンね」

 

「大丈夫よ。けど、もう絶対に自分一人で突っ走ろうとしないでね」

 

「わかってるよ。フアァア・・・・・・・ごめん恵衣菜、ちょっと寝るね」

 

「うん。後で起こして上げるからゆっくり休んでね」

 

「ありがとう恵衣菜」

 

僕はそう言うと瞼を閉じ眠りに付いた。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

私はすぐ横のベッドで安らかに眠っている明久くんの寝顔を堪能していた。

 

「明久くんの寝顔は何回見ても飽きないのよね~それに零華ちゃんに似て可愛いし。ミキちゃんがアキちゃんって言ってることもわかるわ~」

 

眠っている明久くんの髪をそっと優しく撫でながら私は言う。

 

「去年の事、明久くん覚えてないのね・・・・・・・」

 

去年の明久くんの入院の原因は精神の疲労と肉体の疲労、そして心のダメージが原因だ。

そして明久くんをそこまでしたのはFFF団と姫路瑞希、島田美波だ。幸いにもこれを知っているのは、身内では私と、零華ちゃん、葵ちゃん、翠さん。学園だと学園長と西村先生のみだ。

明久くんは何故自分が入院したのか知らない。ただ、疲労で倒れた、としか言ってない。

 

「今年はあの人たちと同じクラスだから気を付けないと。去年のような事は起こさせないわ、絶対に。明久くんは私が守ってみせる」

 

私はそう決心しながら明久くんの寝姿を見守る。

明久くんが起きたのは昼休みが始まる前だった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「お、戻ったか明久に姫宮」

 

恵衣菜と一緒に教室に戻ると雄二たちが昼食を食べている姿があった。

 

「心配かけてごめん」

 

「気にするな、事前に鉄人から聞かされていたからな」

 

どうやら学園長経由で西村先生が話したそうだ。

 

「ところでクラスのみんなから何か言われなかった?」

 

「特には無かったな。Aクラスとの良好な関係ってのがきいたんじゃねぇか?」

 

「・・・・・・・だが、油断は出来ない」

 

「それもそうじゃのう」

 

「アハハ・・・・・だね。それじゃあ僕もお昼食べてくるよ。行こうか恵衣菜」

 

「うん」

 

「おうよ。時間までには戻れよ」

 

「分かってるって」

 

僕は雄二にそう言うと、恵衣菜と一緒に屋上へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上

 

「はい、明久くん」

 

「ありがとう、恵衣菜」

 

屋上の一角で僕と恵衣菜は仲良くお昼を食べていた。

零華も誘ったが今日は翔子ちゃんたちと食べるみたいだ。

 

「さっきまで試召戦争があったなんて思えないね」

 

「ほんとだね。でも、勝てて良かったよ」

 

「そうね」

 

屋上には今、僕と恵衣菜の二人だけしかいないため存分に、その・・・・・・・恵衣菜と甘えることができる。

そして、思う存分二人でイチャイチャしたあと予鈴がなり僕たちは教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後

 

「諸君!!ここはどこだ!!」

 

「「「「「「「「「「最後の審判を下す法廷!!」」」」」」」」」」

 

「異端者には?」 

 

「「「「「「「「「「死の鉄槌を!!」」」」」」」」」」

 

「男とは!!」

 

「「「「「「「「「「愛を捨て、哀に生きるもの!!」」」」」」」」」」

 

「よろしい!これより異端審問を始める。被告、吉井明久、何か言い残すことはあるか」

 

「いきなり最後の言葉!?」

 

「よし、言ったな。では、とっとと死刑!」

 

「なんでさ!?」

 

僕は何故かFFF団から異端審問を掛けられていた。

ちなみに今恵衣菜は職員室にいる。西村先生が手伝ってほしいことがあるみたいだ。

雄二は職員室に行って、康太は何処かわからない。秀吉は部活、須川くんと横溝くんはトイレと、誰もいないときにこんなことになっていた。

 

「ちょっと、福村くん、これ外してくれない」

 

「断る。それと俺は福村ではない。異端審問会FFF団の会長だ」

 

「あー・・・・・・・そう答えると思ったよ」

 

前回、聞いたときもこう返されたからなんとなく予想していたが、こうも予想が的中するとは。

 

「で、なんで僕が異端審問に掛けられてるのさ」

 

「黙れ、この異端者め。諸君に改めて問おう。男とはなんだ」

 

「「「「「「「「「「愛を捨て哀に生きるもの!!」」」」」」」」」」

 

「よろしい!それでは諸君。これより一級戦犯、吉井明久の処刑を執り行う!」

 

「「「「「「「「「「イエェェェェェェェェェェェェェッ!!!」」」」」」」」」」

 

「だから、なんで僕が処刑されないといけないのさ!」

 

「理由か?理由など、決まってるだろう」

 

あー、なんとなく想像ついた。耳を塞ぎたいけど両手は縛られてるし。

そう思っていると。

 

「女子とイチャイチャしているからだ!」

 

「それだけ・・・・・・・・」

 

想像通りの台詞だった。

流石にこれは僕も落胆するしかない。

 

「学園で、『彼女にしたい女子』トップ3の姫宮と仲良く話してるだけで憎たらしいんじゃこらぁ!」

 

『彼女にしたい女子』・・・・・・・ああ、前に横溝くんが言っていたランキングか。

 

「しかも、同じくトップ3の吉井零華とまでも仲良く話しているしまつ!」

 

いや、零華は僕の双子の妹だし、恵衣菜は僕の彼女だし、仲良く話して当たり前じゃないかな?

 

「えー・・・・・・・・それだけ?」

 

「それ以外に何がある!」

 

暇だね、彼らは。

僕は咄嗟にそう思うしかなかった。

 

「さて、諸君。吉井明久の処刑、火炙りにするか、紐無しバンジージャンプをさせるか、それともジャーマンスープレックスリレーにするか。どれに処するか」

 

それは、確実に死ぬ。

僕の処刑を議論している中、僕はそんな事を考えながら何とか脱出できないか試みていた。

その時。

 

「・・・・・・何やってるの」

 

「・・・・・・お前ら何やってんだ」

 

教室の出入りから恵衣菜と雄二が教室の中を見てそう言った。

 

「って、なんで明久くん縛られてるの!?」

 

恵衣菜は僕の姿を確認すると直ぐ様僕に駆け寄ってきた。

 

「大丈夫、明久くん!?何もされてない!?」

 

「う、うん。大丈夫、助かったよ恵衣菜」

 

「よ、良かった~」

 

恵衣菜は僕に縛られていた縄を解きながら安堵の表情を浮かべる。

 

「姫宮、勝手に吉井の縄を解かないでくれたまえ。これより吉井の処刑を執り行うのだから」

 

「なんで、明久くんが処刑されないといけないの?」

 

「理由は、女子と仲良くしてるからだ!」

 

「・・・・・・・・明久くん、帰ろ」

 

「うん。雄二も帰ろう」

 

「だな」

 

「無視をするな!」

 

「・・・・・・・・・・はあ。折角見逃してあげようかな~って思ったのに・・・・・・・・明久くん、殺っちゃっていいかな?」

 

「恵衣菜、地文が違う気がするけど?」

 

「そんなことないよ~」

 

「・・・・・・・・姫宮、今鉄人を呼んでる。後、少しで来るはずだ」

 

「んー、それなら気絶させるぐらいでいいかな?」

 

恵衣菜はそう言うと、鉄人という言葉に逃げようとしていたクラスメイトを次々と気絶させていった。

 

「・・・・・・・明久、姫宮ってお前の事になると変わるよな」

 

「・・・・・・・まあね。でも、霧島さんもでしょ」

 

「・・・・・・・まあな」

 

僕と雄二は恵衣菜が次々と気絶させていくのを見ながら会話していた。

約1分後

 

「坂本に呼ばれて来てみたがこれは・・・・・・」

 

「あ、西村先生」

 

「・・・・・・・・吉井、簡潔に説明を頼む」

 

「え~と、僕が縛られているのを恵衣菜が見て、恵衣菜が全員気絶させました」

 

「・・・・・・・なるほど。では、コイツらは補修室に連れていくか。それと姫宮」

 

「何でしょうか西村先生?」

 

「いくら吉井が大切だからといってもやり過ぎないように」

 

「はい!わかりました」

 

西村先生はそう言うと、気絶していたクラスメイトを担いで補修室に向かっていった。

あの人数を一人で・・・・・・しかも一辺に持っていくなんて・・・・・え?地文が違うって?いやいや、持っていくであってるよ。

 

「それじゃあ帰ろうか。明日は幸いにも土曜で休みだし、ゆっくりできるかも」

 

「だな。じゃあ、俺は翔子を迎えに行くからまた月曜な二人とも」

 

「うん。またね雄二」

 

「また月曜日に坂本くん」

 

雄二は僕と恵衣菜にそう言うと、足早にAクラスの方に向かっていった。

 

「僕らも帰ろうか」

 

「そうね」

 

零華とは校門前で待ち合わせをしている為、僕たちは昇降口に行き、靴を履き替えると待ち合わせ場所の校門に向かった。

校門では零華と葵姉さんの二人が揃って待っていた。

 

「お疲れ様です、兄様、恵衣菜姉様」

 

「二人とも、お疲れ様です」

 

「お待たせ、零華、葵姉さん」

 

「お待たせしました、零華ちゃん、葵ちゃん」

 

「そんなに待ってませんよ、私は今来たところですから」

 

「私もさっき来たので待ってませんよ」

 

「それじゃあ帰ろうか」

 

「ええ」

 

「はい」

 

「そうですね」

 

僕は、恵衣菜、零華、葵姉さんとともに帰路についた。

帰路の間、話題はやはり今日の試召戦争の事だった。

FクラスがAクラスに勝ったのを間近で見たのだ、話題に出ない方がおかしいだろう。

帰路の途中で葵姉さんと別れ、僕たち3人は家に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅

 

「「「ただいまぁ~」」」

 

誰もいないが僕らは何時も通り言う。

 

「今日は私が作るね」

 

各自部屋に戻り部屋着に着替え終わった後恵衣菜が言った。

 

「恵衣菜、僕も手伝おうか?」

 

「ううん。また、倒れたら大変だからゆっくり休んでね、明久くん」

 

「じゃあ、私が手伝いますね恵衣菜姉様」

 

「ありがとう、零華ちゃん」

 

恵衣菜と零華の二人で夕飯を作っている間、僕は自室から昨日読んでいた本を持ってソファーに座って読んだ。

一応、テレビはつけておく。明日の天気やニュース等が丁度流れるからだ。

 

 

 

 

 

それから30分後。

二人が作った夕飯を一緒に食べた後、順にお風呂に入り僕は自室で寝っ転がってのんびりしていた。

流石に今日は疲れたのだ。

 

「明日、何してようかな~たまには恵衣菜と出掛けような」

 

そう考えていると。

 

「明久くん、いいかな?」

 

部屋の外から恵衣菜の声が聞こえた。

 

「いいよ、恵衣菜」

 

「おじゃましま~す」

 

「別に普通に入ってきてもいいのに」

 

「そ、そう?なら、次からそうするね」

 

「そうしてくれていいよ。それで、どうしたの?」

 

「うん。実は明日私と一緒にお出かけ。と言うより、デートしない?」

 

「デート?」

 

「うん」

 

「もちろん、いいよ。丁度、僕も明日恵衣菜と出掛けようかな~って考えていたんだよ」

 

「そうなの?良かった~それと、お願いがあるんだけど・・・・・」

 

「お願い?」

 

「うん。今日、一緒に寝てくれない、かな?」

 

「え、一緒に、ってここで?」

 

「うん。・・・・・・・ダメ、かな?」

 

「ううん。そんなことないよ」

 

「じゃあ、一緒に寝てもいい?」

 

「僕はいいよ」

 

「ありがとう、明久くん」

 

恵衣菜は表情を嬉しそうにすると僕に飛び込んできた。

 

「うわっ。おっとと」

 

僕は何とかバランスを取り倒れないようにした。

 

「ご、ごめんなさい、明久くん」

 

「大丈夫だよ。それより、もう時間も遅いしもう寝る?」

 

「それもそうね。明日は早いからね」

 

「そうだね」

 

時間は11時を指しているのが目に入った。

僕は恵衣菜とともにベットに入り、互いに向き合った。

 

「フフ。なんか、懐かしいね。こんな風に寝るのって」

 

「そうかな?この間もあったような気がするけど」

 

「う~ん、そうじゃないよ。最初から向き合って寝ること、かな」

 

「ああ。確かにそれは懐かしいかもね」

 

「でしょ♪」

 

「それで、明日はどこ行くの?」

 

「ショッピングモールに行きましょうよ」

 

「ショッピングモールか~たまにはいいかな」

 

「決まりね」

 

明日のデートの予定を決めると、恵衣菜が布団の中で僕の身体に抱き付いているのが感じ取れた。

 

「言ったでしょ。家で好きなだけ抱き付いていい、って」

 

「そういえば言っていたね」

 

「だから、ね」

 

「恵衣菜」

 

僕は恵衣菜が僕にしているように、恵衣菜に抱き付くようにした。

互いが抱き付いているため、僕と恵衣菜の顔が至近距離に。すぐ目の前にあった。

 

「んッ・・・・・・・・」

 

「ん・・・・・・・・・・」

 

僕と恵衣菜はそのままキスをする。

キスの時間は1分を越えただろう。

 

「フフ。明久くん」

 

「恵衣菜」

 

僕と恵衣菜はそのまま、互いに抱き付いたまま静かに寝た。互いの温もりを感じるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「早すぎたかな?」

 

僕は今、文月ショッピングモール近くの時計塔の前にいた。

理由は恵衣菜を待っているからだ。

何時もは一緒に出るのだが、今日はそれぞれ別々に家を出ることにしたのだ。

今は待ち合わせ時間の15分ほど前だ。

腕時計を見てそう思っていると。

 

「明久く~ん」

 

恵衣菜の声が聞こえた。

恵衣菜の声がした方を見ると、こっちに歩いてくる恵衣菜がいた。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「明久くん?」

 

「あ。ご、ゴメン」

 

「大丈夫?昨日の疲れがまだ残ってるんじゃ・・・・・・」

 

「ち、違うよ。恵衣菜があまりにも可愛かったから・・・・・・」

 

「/////あ、ありがとう明久くん」

 

「/////う、うん」

 

暫く顔を赤くして俯く僕と恵衣菜の間を沈黙が走った。

 

「そ、それじゃあ行こうか」

 

「う、うん」

 

恵衣菜は僕に近寄ると腕に抱き付いてきた。

抱き付いて来たため恵衣菜の感触が服越しに伝わってきた。

 

「え、恵衣菜/////」

 

「さあ、行こうよ明久くん♪」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜は腕を絡めたまま、文月ショッピングモールの中へと入っていった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~outer side~

 

 

 

その頃、同時刻 少し離れた場所で

 

 

 

「・・・・・・・雄二、お待たせ」

 

「いや、俺も今来たところだ」

 

「・・・・・・雄二、私の格好どう?」

 

「ん。似合っているぞ翔子」

 

「・・・・・・ありがとう//////」

 

「///////さ、さあ、行くぞ」

 

「・・・・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、亮ちゃん」

 

「いや、俺もさっき来たばかりだ。そんなに待ってないよ、綾香」

 

「そうですか?」

 

「ああ」

 

「亮ちゃん、わたくしの服装、変じゃないですか?」

 

「いや、充分似合ってるぞ。どこも変じゃないぜ」

 

「ありがとうございます、亮ちゃん////////。それじゃあ、行きましょうか」

 

「ああ。そうだな。行こうぜ綾香」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、エレン」

 

「浩二。待たせちゃったかな?」

 

「俺も今さっき来たばかりだがら気にするな」

 

「それなら良かった。それと浩二、私を見てなんとも思いませんか?」

 

「いや・・・・・・・その服装、似合ってるぞエレン。スッゴく可愛い」

 

「か、可愛いだなんて////////ありがとう、浩二」

 

「あ、ああ」

 

「さあ、行きましょうか」

 

「だな。行くとするか」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他、3組のカップルが同時刻、同じ場所でデートをしていることを彼らはまだ知らなかった。

 




バカテスト、考えるの大変。
感想など、受付中です。何かありましたらどうぞお気軽に送ってください。



次回 『まさかの4組(クワドルプル)デート!?』 ここテストに出ます。



それではまた次回、Don't miss it.!


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第ⅩⅥ門 まさかの4組(クワドルプル)デート!?

バカテスト

問題:『5月に行われる文化祭はなんという名前でしょうか』


解答

吉井明久 姫宮恵衣菜

『清涼祭』


教師コメント

『正解です。清涼祭でどんな出し物をするのか楽しみですね』






~零華side~

 

私は今、文月ショッピングモールにいます。

ちなみに私1人ではありません。隣には葵お姉ちゃんがいます。そして、私の視線の先には一組のカップルの姿があります。

 

「あの、お姉ちゃん?」

 

「どうしました、零華ちゃん?」

 

「私たち、なんで兄様と恵衣菜姉様の後をつけているんですか?」

 

そう、私と葵お姉ちゃんの視線の先には兄様と恵衣菜姉様。2人の姿があります。

2人とも何時もとは違う私服姿で、すぐにデートだと分かります。

現に昨夜、恵衣菜姉様が今日来ていくための私服姿のコーディネートを恵衣菜姉様と一緒に考えました。

 

「なんでと言われても、気になりませんか?」

 

「それは気になりますけど・・・・・・」

 

「でしたら問題ありませんね」

 

「いやいやいや、 だからってこの格好は・・・・・・」

 

葵お姉ちゃんの格好は目深にかぶった薄ピンク色の帽子に紫色のフレームの眼鏡を付け、私は、葵お姉ちゃんと似たような紫色の帽子を目深にかぶり、ブラックフレームのオーソドックスな眼鏡を付けている。

正直、すぐにバレると思う。

 

「あ、2人が移動しましたね。わたくしたちも行きましょう」

 

「あ、はい・・・・・・・ん?あれは?」

 

私は視界の端に捉えた2人の姿を見た。

 

「零華ちゃん、どうかしましたか?」

 

「う~ん、あそこにいるの、私の見間違いじゃなかったら坂本くんと翔子ちゃんのような」

 

「え?」

 

私の視線の先を葵お姉ちゃんも見る。

その視線の先には、見間違いではなく坂本くんと翔子ちゃんのカップル姿があった。

 

「・・・・・・デート?」

 

「デートみたいですね・・・・・・」

 

「中で、兄様と恵衣菜姉様と鉢合わせたらダブルデート?」

 

「恐らくは・・・・・・」

 

「とにかく、兄様と恵衣菜姉様後を追いましょう、お姉ちゃん」

 

「ですね」

 

私と葵お姉ちゃんはそのまま、兄様と恵衣菜姉様の後を追い掛けショッピングモールに入っていった。

だが、私たちはまだ知らなかった。今日デートするのがもう二組いることを。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「ん?」

 

「明久くん?どうかしたの?」

 

「いや、今そこに零華と葵姉さんがいたような・・・・・・」

 

「ええっ!?」

 

僕は後ろを振り返り、先程までいた時計塔を見る。

けど、そこには零華や葵姉さんはいなかった。

 

「気のせいかな~」

 

「う~ん、多分、零華ちゃんと葵ちゃんも何か用事があって此処に居るんじゃないかな?」

 

「そうかな~」

 

僕は隣――――と言うより僕の左腕に抱き付いている恵衣菜とともに前を向き歩き出した。

僕と恵衣菜が今日、ここに来たのは久しぶりのデートをするためだ。

 

「明久くんとデートなんて随分久しぶりな気がするな~」

 

「うん。僕もそう思うよ。最後にデートしたのって新学期が始まる前だったからね」

 

「ウフフ、そう言えばそうだったね。あの時、明久くんは落ち込んでいた私を元気付けるために誘ってくれたんでしょ?」

 

「えっ!?いや、その、それは」

 

「ウフフ。もう、可愛いなぁ~明久くんは」

 

「//////もう、恵衣菜ったら!」

 

「アハハ、ゴメンゴメン。でも、実際明久くんは可愛いよ」

 

「嬉しくないよ!」

 

僕は子供の頃、恵衣菜や零華、葵姉さんと翠姉さんからよく女装をさせられたのだ。

正直、この歳で女装は勘弁してもらいたい。

 

「そ、それを言うなら恵衣菜の方が可愛いよ!」

 

「えっ!?」

 

「どうかしたの恵衣菜?」

 

「・・・・・・・反則だよ・・・・・そんなの言われたら・・・・・・抑えが効かなくなっちゃうじゃない・・・・・//////」

 

「恵衣菜?」

 

「な、なんでもないよ明久くんっ。は、早く行こうよ!//////」

 

「ひ、引っ張らないでよ恵衣菜~」

 

僕を引っ張ってショッピングモール内を歩く恵衣菜の顔は赤くなっているのを僕は一瞬だけ見た。

正直、僕も勢いで言っちゃったが恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセサリーショップ

 

「これはどうかな、明久くん」

 

「う~ん、こっちの方が似合ってるかな?」

 

「ほんと?え~と、じゃあ・・・・・・どうかな?」

 

「うん、似合ってるよ恵衣菜」

 

「ほんと!ありがとう明久くん♪」

 

僕と恵衣菜は最初に文月ショッピングモール3階にあるアクセサリーショップに来ていた。

店内には様々なアクセサリーがあり女子が大勢いた。

その中でも一際僕らは目立っていた。

 

「・・・・・・ねえ、恵衣菜」

 

「・・・・・・うん、明久くん」

 

「・・・・・・僕ら物凄く目立ってない?」

 

「・・・・・・やっぱりそう思う?」

 

「・・・・・・うん」

 

辺りを見ると近くにいる女子。恐らく中高生だろう。が、僕と恵衣菜を見て赤くなっているのが見てとれた。

 

「なんでだろうね?」

 

「さあ。恵衣菜が可愛いからじゃない?」

 

「それを言うなら明久くんだって、カッコいいよ」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

「明久くん・・・・・・」

 

と、まあ、いつも通りイチャついていると周囲から歓喜の悲鳴が上がる。

そんな中・・・

 

「あれ、吉井と姫宮?」

 

「ほんと。おはよう吉井君、恵衣菜」

 

前から声をかけてきた2人がいた。

 

「あ、横溝くん」

 

「こんにちは、エレンちゃん」

 

声をかけてきたのは横溝くんとエレンさんだった。

 

「2人はもしかしてデートの最中だった?」

 

「うん。もしかして、エレンちゃんたちも?」

 

「ええ。あの時の約束のデートです」

 

「へぇー。にしても奇遇だね」

 

「ああ。まさか、吉井と姫宮のデートと被るとはな」

 

「ホントだねー」

 

「そう言えば2人は何か買ったんですか?」

 

「ブレスレットを買おうかなって思ってるよ」

 

「ブレスレットですか。いいですね・・・・・・浩二、私たちもペアで何か買いませんか?」

 

「俺は別にいいぜ。どれにする?」

 

「そうですね・・・・・・指輪なんてどうでしょうか?」

 

「ケホッ!コホッ!ゆ、ゆゆゆ、指輪!?」

 

「はい」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。ペアで指輪なんだよな?」

 

「ええ。私としては婚約指輪をプレゼントしてほしいですね」

 

「そ、それはせめて高校卒業してからな!」

 

「分かってますよ」

 

僕と恵衣菜は目の前で起こった横溝くんとエレンさんの会話に呆気にとっていた。

 

「明久くん、私たちはペアで指輪持ってるよね?」

 

「え。うん。お揃いのペンダントと一緒に贈ったからね」

 

僕は、首にかけている虹色のペンダントと右手の指に付けている白銀の指輪を出して見る。

恵衣菜の方も、首から下げている虹色のペンダントと、僕と同じ右手の指に付けている指輪を見せる。

本当なら、左手の薬指につける指輪を渡したいのだが、今はまだ高校生。学生のため、中学の時に買った、思い出の指輪を付けている。

 

「2人とも相変わらずだな」

 

「ホントね。見ているこっちが恥ずかしいよ」

 

見せあっていると横溝くんとエレンさんが暖かい目で見ている姿が見えた。

そして、それと同時に店内の温度が幾度か上がった気がした。

 

「それじゃあ、私たちはこれで失礼するね」

 

「ええ。また、学校でね」

 

「うん。またね2人とも」

 

「ああ、また学校でな吉井、姫宮」

 

「横溝とエレンさんもね」

 

僕と恵衣菜は横溝くんとエレンさんのカップルから離れ、手に持って購入予定だった、ブレスレットをレジにて購入し、アクセサリーショップを後にした。

ちなみにそれぞれ購入したブレスレットの色は、僕は蒼と紫、黒を基調にした物。恵衣菜はピンクと紅、白を基調にした物だ。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

「う~ん、まさか、エレンちゃんと横溝くんも今日デートだったとは・・・・・・」

 

「驚きましたね・・・・・・」

 

私と葵お姉ちゃんは物陰からアクセサリーショップを観察していた。

中では兄様と恵衣菜姉様、横溝くんとエレンちゃんが話している姿が見える。

 

「あ、出てしまいました」

 

私は、お揃いの紙袋を持って出てきた兄様と恵衣菜姉様を確認した。

 

「次はどこに行くんでしょう?」

 

「う~ん・・・・・多分、ブティック店じゃないかな」

 

「とにかく、後をつけましょう」

 

「はい」

 

私と葵お姉ちゃんは2人に見つからないようにコソコソと後をつけた。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

アクセサリーショップで僕らと同じくデートしていた横溝くんとエレンさんと分かれた後、ショップでブレスレットを購入し紙袋に入れてもらい、アクセサリーショップを後にした僕らは次に行くお店を相談していた。

 

「次は何処に行く、恵衣菜?」

 

「そうねぇ~・・・・・・明久くんは行きたいところってある?」

 

「僕は特には無いかな」

 

「じゃあ、次、ブティックショップに行ってもいいかな?」

 

「うん。僕はいいよ」

 

「ありがとう、明久くん♪新しい夏服でも買おうかなって思ってたの」

 

「へぇー。ついでたから僕も新しい服買おうかな・・・・・・」

 

「うん!明久くんも新しい服買おうよ」

 

「・・・・・・そうだね。じゃあ、コーディネートは恵衣菜に任せてもいいかな?」

 

「もちろん♪」

 

「お願いね」

 

「うん!」

 

次に行くお店が決まり、僕らは2階にあるブティックショップに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブティックショップ

 

ブティックショップについた僕らはまず最初に、恵衣菜の服を見た。

 

「へぇー、今年はこんなのがあるんだ」

 

「明久くん、どう?」

 

恵衣菜は早速、ワンピースを自身が着ている前の服にあて僕に見せる。

 

「うん。明るい色と恵衣菜の黒髪がよく似合ってるよ」

 

「ありがとう、明久くん♪」

 

「それ、試着してみるの?」

 

「うん」

 

「他にはある?」

 

「もちろん。試着して見せるから待っててね」

 

そう言うと、恵衣菜は幾つかの服を持って試着室に入った。

 

 

 

 

 

 

試着室の前に立って待つこと数分

 

「じゃーん!どうかな?」

 

恵衣菜はさっき宛がったワンピースを試着してみたようだ。

恵衣菜が着たワンピースは、水色と薄桃そして僅かに白を合わせた色合いだ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「明久くん?」

 

「あ。ご、ごめん」

 

「着てみたけど・・・・・・ど、どうかな?」

 

「うん。似合ってるよ。恵衣菜によく合ってる」

 

「~//////あ、ありがとう」

 

その後、ワンピースの後に様々な服を試着していた。

正直、恵衣菜はなんにでも似合うため甲乙つけがたい状態だった。

ちなみに試着したものの中に、何故かゴスロリや浴衣、などがあったのだが・・・・・・・いつの間に取ったんだろう?

恵衣菜の購入する服が決まると、今度は僕の服を見に行った。

すると、その道中・・・

 

「よっ!吉井、姫宮」

 

「須川くん!」

 

「須川くん、お出かけですか?」

 

「いや」

 

「え?じゃあ・・・・・」

 

恵衣菜が訪ねると同時に、少し離れたところから声が聞こえた。

 

「おーい、リョーちゃ~ん」

 

「なるほど、綾香ちゃんとデートだったんだね」

 

「まあな/////」

 

須川くんが顔を赤くしながらそう言うと、カゴに服を入れて綾香さんがきた。

 

「あれ?吉井くんと恵衣菜ちゃん。こんにちは」

 

「こんにちは、綾香ちゃん」

 

「2人はデートかしら?」

 

「そうだよー綾香ちゃんも須川くんとデートでしょ」

 

「ええ。この間の約束ですから」

 

「なるほどね~」

 

女子は女子で仲良く話すなか、僕は須川くんと会話していた。

 

「そう言えばさっき横溝くんとエレンさんを見たよ」

 

「あの二人もいるのか?」

 

「うん。ここに来る前に立ち寄ったアクセサリーショップでね」

 

「なるほどな・・・・・・って、事は3組デート・・・・・トリプルデートって事になるのか?」

 

「う~ん、どうだろう」

 

僕と須川くんで話していると、話終わったのか恵衣菜と桜咲さんはこっちに声を掛けてきた。

 

「それでは、わたくしたちはこれで。また、学校で会いましょう」

 

「うん。またね、綾香ちゃん」

 

「じゃあな、吉井。また、学校で」

 

「うん。須川くんもね」

 

僕と恵衣菜は須川くんと桜咲さんと分かれると、僕らは目的の僕の服を見に行った。

結果、着せ替え人形的なようになった。

とここに記しておく。恵衣菜はまだまだ足りないと言っていたがさすがにお店では勘弁してほしい。

それを聞いた恵衣菜はお店を出たあと。

 

「家でなら着せ替え人形にしても良いってこと?」

 

と言ったため絶句し、後日恵衣菜に本当に着せ替え人形にされたのは、また後日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はどこに行こうか?」

 

ブティックショップで服を購入し、店の外に出たあと恵衣菜が聞いてきた。

 

「んー。そろそろお昼の時間だし、混む前に早めに食べに行く?」

 

「私はいいよ」

 

「それじゃあ、フードコートでいいかな?」

 

「うん」

 

僕らは4階のフードコートエリアに行くため、近くのエスカレーターに乗って4階に目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フードコートエリア

 

「まだ、空いてるね」

 

「時間を早めにしたからね。席は・・・・・・・・あそこでいいかな?」

 

「ええ」

 

僕は、窓際の近くにある対面型の座席に腰かけた。

 

「ふぅ~・・・・・・」

 

荷物を横に置いた僕は、軽く毛延びをして体を解す。

 

「ゴメンね、明久くん。私の荷物まで持ってもらっちゃって」

 

「気にしないで恵衣菜。いつも、恵衣菜に助けられてるから、今日くらいはカッコつけさせてよ」

 

「明久くん//////」

 

自分でもかなりキザな台詞を言ったなと自覚したのは、恵衣菜が顔を赤くしてうつ向いて30秒後の事だった。

僕は、自分の分と恵衣菜の分のお昼を買って席に戻った。

 

「お待たせ、これでよかったかな?」

 

「あ、ありがとう明久くん」

 

「気にしないで恵衣菜」

 

買ってきた物は、僕は醤油ラーメンを恵衣菜はボロネーゼだ。

 

「ん。美味しい」

 

「うん。今度、ボロネーゼ作ってみようかな」

 

「その時は手伝うよ」

 

「お願いね」

 

「もちろんだよ」

 

「明久くん。明久くんの醤油ラーメン、少しもらってもいいかな?」

 

「え。うん、いいよ」

 

「ありがとう♪」

 

僕はラーメンのどんぶりを恵衣菜に渡した。

 

「ふぅ~、ふぅ~・・・・・・・・うん。美味しいね」

 

「おきに召したようで良かったよ」

 

「え~と、はい、明久くん」

 

「え?」

 

恵衣菜はボロネーゼをフォークに絡め左手を添えて僕に持ってきた。いわゆる、あーん、と言うやつだ。

 

「はい、明久くん。あーん」

 

「え、え~と・・・・あーん」

 

僕は少し恥ずかしかったが、あーんをして恵衣菜のボロネーゼを食べた。

 

「どうかな?」

 

「ん。美味しいよ、これ」

 

「明久くんにあって良かったよ~」

 

「でも、ちょっと恥ずかしいかも」

 

「!///////」

 

恵衣菜も今の行為が恥ずかしかったのか顔を真っ赤にした。すると。

 

「・・・・・・雄二、あーん」

 

「ちょっと、まて翔子。ここは外だぞ!?」

 

「・・・・・・?」

 

「何故、不思議そうに首をかしげるんだ!?」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

後ろを見ると・・・・・

 

「ゆ、雄二!?」

 

「な!?あ、明久!?」

 

悪友の雄二と雄二の彼女、霧島さんがいた。

 

「あれ?翔子ちゃん?」

 

「・・・・・・恵衣菜?」

 

「もしかして坂本君とデート、だったりして?」

 

「・・・・・・(コクリ)恵衣菜も吉井と?」

 

「う、うん。そうだけど・・・・・・」

 

僕の後ろの席には雄二がいて、その奥には霧島さんがいる。

 

「・・・・・・あ、明久。いつからそこにいた」

 

「さっきからいたけど・・・・・・」

 

「・・・・・・(コクリ)さっき、恵衣菜が吉井にあーんしてた」

 

「ケホッ!コホッ、コホッ!」

 

「しょ、翔子ちゃん!?見てたの!?」

 

「・・・・・・(コクリ)バッチリ見てた」

 

「///////」

 

「お、おい、翔子。まさか、姫宮のあーんを見てやったのか?」

 

「・・・・・・そう」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

雄二は呆気と驚きで声が出ない感じだった。

と言うよりフリーズしていた。

 

「・・・・・・相席してもいい?」

 

「う、うん。いいよね、明久くん?」

 

「僕はいいけど・・・・・・」

 

僕は未だにフリーズしている雄二を見た。

 

「雄二?」

 

「・・・・・・・・・・はっ!」

 

「気が付いた?」

 

「あ、ああ」

 

「それより、雄二もこっちに来たら。霧島さんもういるよ」

 

「ん、ああ」

 

雄二は自分の目の前にあったカレーを持ってやって来た。

僕の方に恵衣菜が来て、恵衣菜がいた方は霧島さんと雄二が座っている。

 

「2人はどこ回ったの?」

 

隣にいる恵衣菜が早速霧島さんに聞いた。

 

「・・・・・・アクセサリーショップや雄二の提案でゲームセンターや服を見に行った」

 

「へぇー」

 

「・・・・・・恵衣菜たちは」

 

「私たちもアクセサリーショップやブティックショップに行ったよ」

 

恵衣菜と霧島さんが仲良く話す中、僕と雄二は学校の事を話していた。

 

「ところで雄二、Aクラスとの試召戦争、終わったけどどうするの、これから?」

 

「一応、次のイベントの学園祭に向けて計画を経ててるつもりだ。しばらく試召戦争はしないつもりだな」

 

「そうなんだ。それにしても、あと1ヶ月で学園祭、清涼祭の季節なんだね」

 

「そうだな」

 

その後も他愛ない話をしたりしてお昼を食べた。

その後、雄二と霧島さんとわかれた僕と恵衣菜はゲームセンターへと向かった。

 




遅くなりごめんなさい。
次回は早く更新できるようにしますね。



次回 『まさかの4組(クワドルプル)デート!?Ⅱ』 ここテストに出ます


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第ⅩⅦ門 まさかの4組(クワドルプル)デート!?Ⅱ

バカテスト 

問題:『休日にあった事を書いてください』


解答


吉井明久

『恵衣菜とデートに行きました。久し振りのデートで楽しかったです。途中色々とあったけど楽しい一日でした』


教師コメント

『吉井君は姫宮さんとデートに行ったんですね。お二人の仲の良さは学園で有名ですからね。ですが、あまり学園でハメをはずさないでください』


姫宮恵衣菜

『明久くんとデートに行きました。久し振りのデートで楽しかったです。お揃いのブレスレットを買ったりしていい思い出になりました』


教師コメント

『姫宮さんも吉井君と同じような解答で驚きました。ハメをはずさないように気をつけてください。応援してます』


坂本雄二、霧島翔子

『『翔子(雄二)とデート』』


教師コメント

『お二人もですか。驚きました。がんばってください』


横溝浩二、エレン・A・リューゼンハイム

『『エレン(浩二)とデート』』


教師コメント

『・・・・・・・・・・・』


須川亮、桜咲綾香

『『綾香(亮ちゃん)とデート』』


教師コメント

『一日でどれだけデートしてるカップルがいるんですか!?そっちの方に驚きですよ!』





~明久side~

 

雄二と霧島さんと一緒に昼食を食べた僕と恵衣菜は、二人とわかれゲームセンターに向かっていた。

 

「ゲームセンターに着いたは良いけど、何して遊ぶ?」

 

「う~ん・・・・・・まずは、リズムゲームはどうかな?」

 

恵衣菜は目の前にあるダンス型リズムゲームを見て言った。

 

「いいよ」

 

「負けないよ、明久くん」

 

「こっちだって、負けないからね恵衣菜」

 

僕は左側に、恵衣菜は右側にたちお金を入れ、音楽を選択する。

 

「恵衣菜が選んでいいよ」

 

「うん。え~と、じゃあ・・・・・・・・これにしようっと」

 

恵衣菜が選曲したのは、最近あちこちで聴くスクールアイドル、μ'sの〈僕らのLIVE 君とのLIFE〉だ。

 

「へぇー、μ'sの音楽入ってるんだね」

 

「うん。明久くんもμ'sの曲は好きでしょ?」

 

「そりゃね」

 

μ'sのメンバーの中には僕と恵衣菜の幼馴染がいるため、必然的に好きになった。

僕と恵衣菜は難易度を同じくEXTRAにする。

そして、曲がスピーカーから流れる。

 

『~~♪~~~~♪♪♪~~~~~~♪♪♪♪確かな今よりも新しい夢つかまえたい 大胆に飛び出せばO.K.マイライフ ~~~♪♪♪』

 

曲に合わせて、僕と恵衣菜はリズムを取り踊る。

曲の時間は長くて約2分。僕の記憶が正しければこれは1分40秒程のはずだ。

曲が流れるにつれスピードが上がり集中する。

 

『~~~♪♪』

 

そして音楽がなり終わると点数が表示された。

画面にはそれぞれ。

 

 

〈僕らのLIVE 君とのLIFE〉 EXTRA

 

[95.25]SSSランク [97.11]SSSランク

 

 

と表示されていた。

 

「あー、また負けた」

 

「ふふーん、こう言うのは負けないよ」

 

「でも、次は勝つからね」

 

「何時でもかかってくるといいよ、明久くん」

 

そう言うと互いに笑った。

 

「フッ、フフフフフフフ」

 

「ハハハハハハ」

 

「もう一曲は明久くんが選んでね」

 

「んー、わかった」

 

そして僕はもう一曲を選択するため機械に入っている音楽をスクロールする。

 

「じゃあ、僕はこれにするよ」

 

僕は選んだのは、麻生夏子の〈恋愛向上committee〉だ。

 

「恵衣菜、これデュエットにしない?」

 

僕は恵衣菜に聞いた。

このゲームはソロ、デュエル、デュエットのモードがある。ソロはそのまま一人で。デュエルは対戦形式。そしてデュエットは二人でやることだ。

 

「いいよ♪私も久しぶりに明久くんとデュエットしたかったから」

 

そう言うと、恵衣菜は設定をデュエットにした。

続いて僕も設定をデュエットにし決定ボタンを押す。

難易度はEXTRAに設定する。

数秒後曲が流れた。

 

 

『~~♪こんがらがった赤い糸は いっそ強引だってチョウチョ結び きゅ。胸にはずむキミとの未来 ほどいちゃダメ!約束ね ~~~♪♪♪』

 

 

歌詞と音にそってリズムを取り踊る。

デュエットの為、お互いが一緒に合わせないといけないところがあるが、僕と恵衣菜なら問題ない。

互いの手を取り合い踊り、離しそれぞれのパートを踊る。

そして、曲は終盤になる。

 

 

『~♪ハート筋トレ 案外タフに今日も盲目っ ~~♪♪』

 

 

最後に同時に周りポーズを取る。

 

「ふぅ~」

 

「お疲れ様、明久くん」

 

「恵衣菜もね」

 

そう言うと僕と恵衣菜はハイタッチをする。

そして、評価を見た。

 

 

〈恋愛向上committee〉 EXTRA デュエット 

 

[100.00] パーフェクト SSSランク

 

 

と表示されていた。

すると。

 

『おい、デュエットでパーフェクトだってよ』

 

『しかもEXTRAだぜ』

 

『すごい。あの曲でEXTRA、しかもデュエットでパーフェクト取るやつなんて初めて見た』

 

後ろからそんな声が聞こえてきた。

振り返ると、僕らの周りにギャラリーが大勢いた。

 

「あ、あれ」

 

「もしかして注目を集めちゃったかな」

 

「そうみたいだね」

 

僕らは素早く荷物を取るとその場から立ち去ることにした。

ちなみに一曲目は恵衣菜が新たにハイスコアとして1位に、僕のは2位に。二曲目のは当然のごとくランキングが1位になった。しかも、2位と圧倒的にスコアを離して、だ。

後に僕らは《完璧二重奏(パーフェクト・デュオ)》と呼ばれ噂されることをまだ知らない。

リズムゲームの後、僕らはクレーンゲームでお揃いのストラップを取り、恵衣菜の要望で相性占いとプリクラを撮った。相性占いでは、高評価で恵衣菜が嬉しそうに喜んでいた。なんたってそれに、≪離れたくても離れられない、永遠の絆で結ばれし者≫と書かれていたからだ。

これにはもちろん、僕も嬉しかった。それ以前に、恵衣菜と別れるなんてまず、絶対にあり得ないしね。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

「・・・・・・ねえ、お姉ちゃん」

 

「・・・・・・なんでしょうか、零華ちゃん」

 

「あれ、パーフェクトって表示されてない?」

 

「表示されてますね」

 

「EXTRAでデュエットでパーフェクト取った人初めて見たんだけど」

 

「ええ。初めて見ましたね」

 

私と隣にいる葵お姉ちゃんは、目前にいる兄様と姉様を見て唖然とした。

 

「さすが、兄様と姉様ですね」

 

「さすが、と言うより相変わらずなのでは・・・・・・」

 

「確かに」

 

その後、兄様たちはクレーンゲームでお揃いのストラップを取り、占いゲームでは占ってもらった結果が良かったのか姉様が兄様に抱きついているのが見えた。

それを見た周囲の人が、頭を柱にぶつけたり嫉妬をしていたりしている姿が目に入ったが気にしないことにした。

まあ、流石にお姉ちゃんも私もその光景には、肩を竦めるしかなかったけど。

ゲームセンターを出た後、2人は書店に行った。

そして、ものすごく面倒な人たちが現れた。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「見つけました、明久君!」

 

「見つけたわよ、アキっ!」

 

ゲームセンターから出た後、書店で本を購入した後しばらく歩くと目の前にとてつもなく面倒な人が現れた。

姫路さんと島田さんだ。

僕は咄嗟に、恵衣菜を庇うようにして立ち位置を変え恵衣菜を背中に隠すようにする。

 

「なんでその女と一緒に買い物なんかしてるのよ!」

 

「そうですっ!明久君は私か美波ちゃん以外とお買い物しちゃ駄目なんです!」

 

と、意味わかんない事を言っている。

 

「恵衣菜、ここでキレないでね」

 

「うん。大丈夫よ。私は冷静、落ち着いてるよ」

 

目が落ち着いてないとは言えなかった。

 

「聞いてるのアキっ!」

 

「聞いてるんですか明久君!」

 

このままではこのショッピングモールに迷惑がかかる。

僕は咄嗟にそう判断し。

 

「恵衣菜、ちょっとごめんね」

 

「え?明久くん?」

 

そう言うと、来た道を引き返すように、背を向けて走った。

恵衣菜の手を握って。

 

「ちょ、待ちなさいアキ!」

 

「待ってください明久君!」

 

背後からそんなことを言う声が聞こえるが、とにかく今はショッピングモールを出るのを優先する。

 

「待ちなさいーーーっ!」

 

「逃がしませんよ!」

 

「もう、なんでこうなるのかなー!」

 

僕は走りながらそう言うしかなかった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

兄様が姉様の手を握って走り去っていくのを見た私は咄嗟に携帯電話に手を伸ばした。

ある場所に電話するためだ。

 

「もしもし。2ーAクラスの吉井零華です。西村先生はいますか?」

 

電話をかけた場所は文月学園だ。

 

「西村先生、休日にすみません。実はお願いしたいことがありまして――――はい、実は今、兄様と姉様が姫路瑞希と島田美波に追い掛けられていて――――はい、その通りです。――――ええ、恐らく学園に行くと思うのでお願いします――――はい、すみませんがお願いします――――はい、では」

 

「零華ちゃん、西村先生はなんですって?」

 

「兄様と姉様が着き次第、保護してくれるそうです」

 

「わかりました。わたくしたちも急ぎましょう」

 

「ええ」

 

私とお姉ちゃんは4人を追いかけるようにしてショッピングモールから出て、文月学園に向かった。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「あ、明久くん、どこに向かうの?」

 

「とにかく文月学園に向かってるよ」

 

僕は走りながら恵衣菜にそう言う。

 

「了解」

 

僕と恵衣菜はショッピングモールから出て早くも10分程走っていた。

 

『待ちなさい!』

 

『逃がしませんよ!』

 

「しつこいなー」

 

「今さらだけどね」

 

更に走り続けて8分後文月学園の門が見えてきた。

門には西村先生が立っていた。

 

「吉井!姫宮!こっちだ」

 

「に、西村先生!?」

 

「西村先生、どうして僕らが来ることが?」

 

「吉井妹から連絡をもらってな。それで2人が追い掛けられてここに来るだろうと言っていた」

 

「零華が!?」

 

僕は西村先生の言葉に驚きを出した。

すると。

 

「もう、逃がさないわよ!」

 

「見つけました!観念して私と美波ちゃんのオシオキを受けてください!」

 

「西村先生、召喚許可をください!」

 

「わかった!承認する!」

 

校庭に西村先生を中心にフィールドが展開された。

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

 

「ひ、卑怯よ!召喚獣なんて!」

 

「そうです!卑怯です!」

 

「いいから早く召喚したら?」

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

 

日本史

 

Fクラス 吉井明久 782点

     姫宮恵衣菜 731点

 

VS

 

Fクラス 姫路瑞希 408点

     島田美波 73点

 

 

「恵衣菜!」

 

「うん!」

 

僕と恵衣菜は同時に2人の召喚獣に肉薄し双剣と細剣で攻撃する。

2人の召喚獣が消えたのは5秒後のことだった。

 

 

Fクラス 姫路瑞希 0点 戦死

     島田美波 0点 戦死

 

 

「戦死者は補習ーーっ!」

 

「「イヤーーーー!」」

 

西村先生は島田さんと姫路さんを連れて補習室に向かった。

 

「つ、疲れた~」

 

「うん。疲れたね」

 

僕と恵衣菜は息を整えて言った。

すると。

 

「兄様!姉様!」

 

「明久くん!恵衣菜ちゃん!大丈夫ですか」

 

零華と葵姉さんが走ってくるのが見えた。

 

「零華!葵姉さん!」

 

「2人ともどうしてここに!?」

 

「ショッピングモールでお2人があの2人に追いかけられてるのが見えたからですよ」

 

「・・・・・・・・・ところで、零華、葵姉さん。聞きたい事があるんだけど」

 

「な、なにかな兄様」

 

「なんでしょうか明久くん」

 

「2人とも、もしかして今日ずっと僕らの後つけていた?」

 

「そ、そそそ、そんなことないですよ!」

 

「え、ええ、つけてませんよ」

 

はっきり言って丸分かりである。

だが、まあ、2人のお陰で助かったんだし良しとすることにした。

 

「それじゃあ、僕と恵衣菜は行くね」

 

「ええ。気を付けてくださいね」

 

「何かあったら連絡してね、兄様、姉様~」

 

「うん。わかったよ~」

 

僕らは一騒動を終え、学園を後にした。

後日、西村先生には助けてくれたことにお礼をした。僕の手製のお菓子を持って。

その際、西村先生は少し驚いていたが、気にするなと言ってくれた。

 

「ふぅ~、なんか色々あった一日だったよ」

 

「そうだね~。でも、こんな風にデートしたのは久しぶりだったから楽しかったかな。明久くんは?」

 

「僕ももちろん楽しかったよ」

 

僕らは文月学園から出た後、近くにある公園で休んでいた。

 

「あ、そうだ。恵衣菜、クレープ食べない?」

 

「え?うん」

 

「ちょっと、買ってくるね」

 

そう言うと、僕は近くにあったクレープを売っている販売車に行き、クレープを2つ買った。

 

「お待たせ。確か、ストロベリーで良かったよね?」

 

「うん。ありがとう、明久くん」

 

僕は買ってきたストロベリーを恵衣菜に手渡し、僕は僕のブルーベリーを恵衣菜の横に座って食べる。

 

「ん。美味しい」

 

「ホント、美味しいね。明久くん、ちょっと貰ってもいいかな?」

 

「いいよ。はい」

 

「そうじゃなくて、その・・・・・・食べさせてほしいな」

 

「う、うん。わかった。はい、あーん」

 

「あーん」

 

僕は恵衣菜の口元にブルーベリーのクレープを持っていった。少し恥ずかしかった気がする。

 

「ん。・・・・・・明久くんのブルーベリーも美味しいね。それじゃあ今度はこっちから・・・・・・・はい、あーん」

 

「あ、あーん」

 

恵衣菜もお返しに、あーんをしてきたが断るわけにもいかず、あーんをした。

 

「うん。恵衣菜のも美味しいよ」

 

「ホント。良かった~」

 

「ところで、恵衣菜。今、僕たち間接キスをしたのかな」

 

「え?」

 

恵衣菜は食べるのを一旦止め、しばらく考えると、ポッ、と言う音が聞こえるかのように顔が真っ赤になった。

 

「///////」

 

「ハハハ」

 

「もう、笑わないでよ~」

 

「ごめんごめん」

 

「もう~」

 

少し不貞腐れる恵衣菜の頭を優しく撫でて機嫌を直してもらう。

 

「次もまた一緒にデート出来たらいいな」

 

「出来るよ。何時でも出来るさ」

 

夕日に照らされながら、僕と恵衣菜はクレープを食べながら互いに言う。

時間は16時半を指していた。

クレープを食べ終わった後、僕と恵衣菜は家に帰るため帰路についた。

自宅に向かってしばらく歩いていると、前から見知った顔ぶれと出会った。

 

「あれ、ツバサ?」

 

「明久くんと恵衣菜ちゃん?奇遇ね。こんなところで会うなんて。2人とも元気だった?」

 

「うん。ツバサちゃんも元気そうで何よりだよ」

 

僕らが出会ったのは、幼馴染であり、あのスクールアイドルの頂点であるA-RISEのリーダー、綺羅ツバサだ。

ツバサは僕らより一学年上だが、それは誕生月が僕らより少し早かっただけで、実質僕らと同い年だ。

 

「2人はもしかしてデートの帰り?」

 

「まあね」

 

「いいわね~。どうせ2人のことだから学校でもイチャイチャしてるんでしょ」

 

「う~ん、どうだろう。確かに周りの人たちが頭を壁にぶつけたり、怨嗟の恨み言とか言っている、っての聞いたことがあるけど・・・・・・・」

 

「ちょ、ちょっと待って。もう一回言ってくれないかしら」

 

「え?頭を壁にぶつけたり、怨嗟の恨み言とか言っている?」

 

「うん。聞き間違いじゃなかったわね」

 

ツバサは何故か唖然とするように言った。

まあ、確かにあの学校の人達は普通?じゃないからな~

 

「ところで、ツバサちゃんはどうしてここに?」

 

「A-RISEの皆とお買い物よ」

 

そう言うと、ツバサは後ろを振り向いた。

そこにはA-RISEの残り2人。優木あんじゅと統堂英玲奈がいた。

 

「あんじゅ!英玲奈!久し振り!」

 

「久し振りだね、明久。恵衣菜も」

 

「うん。ツバサちゃんもだけど、2人も元気そうで良かったよ」

 

A-RISEの残り2人。あんじゅと英玲奈はツバサの紹介で知り合った。

 

「3人はラブライブに出場するの?」

 

「もちろんよ♪」

 

「当然。私たちが目指すのは優勝のみだよ」

 

「ところで穂乃果ちゃんたちも出るのかな?明久くんたちは何か聞いてる?」

 

「う~ん、多分出ると思うよ。確か穂乃果たちが、通っている音ノ木坂学院が統廃合の危機だって言っていたから」

 

「統廃合ね・・・・・・・ここ最近、合併する学校や廃校の学校が多いわよね。私たちが通っていた小学校も1年後には他校と統合するみたいだし」

 

「うん。少子化が進んでいるからね」

 

統廃合の言葉でその場が少し暗くなった気がした。

 

「そう言えば、今度明久くんと恵衣菜の学校で文化祭があるんだよね♪」

 

あんじゅがそう聞いてきた。

 

「え?うん。あるけど」

 

「その文化祭私たちも行くからね♪」

 

「うん。楽しみにしてるよ。けど、大丈夫かなー」

 

「確かに」

 

僕と恵衣菜はあんじゅの言葉に思案顔をした。

 

「え、大丈夫って?」

 

「A-RISEが来るって知ったら多分僕らのクラスメイトが暴走すると思うから」

 

「「「は?暴走?」」」

 

「あり得るね。あのクラスならあり得る」

 

「えーー。2人ともよくそのクラスで無事だね」

 

「「慣れたから」」

 

「・・・・・慣れと言う問題じゃないと思うんだが」

 

「アハハハ・・・・・」

 

ツバサたち3人は引き気味にそう言う。

だが、事実のため僕と恵衣菜は言い返せなかった。

 

「それじゃあ、僕らはこれで」

 

「うん。またね」

 

互いに言葉をかわし、ツバサたちとわかれた。

帰路についてる最中恵衣菜がある話題を出した。

 

「明久くん、穂乃果ちゃんたちに文化祭で歌ってもらうことって出来るかな?」

 

「う~ん、その辺りは学園長が考えることだし・・・・・・今度、提案してみるよ」

 

「そうだね」

 

そのまま家に着き、僕と恵衣菜の色々あったデートは終了した。




ラブライブのキャラを時々入れます



次回 『清涼祭準備』 ここテストに出ます。


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第Ⅱ章 清涼祭編
第Ⅰ門 清涼祭準備


「みなさんこんにちは。ソーナです。今回はバカテストはないです。まずは朗報を。第二章《清涼祭》編開幕です」

「ついに《清涼祭》編だね」

「ちょっと長かったような気がしますけどね」

「明久、恵衣菜。来ていたんですね」

「うん。今来たばかりだけどね」

「ソーナさん、お疲れ様です」

「いえいえ」

「にしても、まさかラブライブとクロスするなんて思わなかったよ」

「そうだね。少し驚きました」

「アハハ。まあ、確かにね」

「これからも頑張って僕たちを書いてください、ソーナ」

「了解、明久。あ、だけど、あまり人前でイチャイチャしないようにね、二人とも」

「うっ・・・・・ど、努力します」

「アハハ・・・・・」

「それではみなさん、これからも『バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語』を―――」

「「「よろしくお願いします!」」」



ご覧の放送は、文月学園放送部よりお送り致しました。


 

~明久side~

 

「あー・・・・・・一ヶ月後に控えた学園祭。《清涼祭》の話し合いをしたいんだが・・・・・・・」

 

登壇に立つ雄二がクラスを見回す。

 

「・・・・残りの連中はどこ行った!」

 

2年Fクラスには僕、恵衣菜、雄二、秀吉、康太、須川くん、横溝くん、島田さん、姫路さんの9人以外姿が見えなかった。

 

「雄二、外」

 

「外?」

 

僕の視線の先、窓から覗くと

 

『場外まで飛ばしてやるぜ!』

 

『飛ばせるものなら飛ばせてみな!』

 

野球をやっているクラスメイト、41人の姿があった。

 

「あ、あいつら・・・・・・・」

 

さすがに雄二もなんとも言えないようだ。

すると。

 

『なにをしてるかキサマらーーっ!!』

 

『『『『『ゲェ!鉄人!』』』』』

 

『西村先生と呼ばんか!いいから、さっさと教室に戻れっ!!』

 

僕らの担任となった西村先生がクラスメイトたちを連れ戻しているのが見えた。

 

「アハハハハ・・・・・」

 

しばらくすると、鉄人とともにクラスメイトが戻ってきた。

 

「さて、これで全員揃ったな。それじゃあ、《清涼祭》の話をするぞ」

 

 

《清涼祭》とは僕らの通う文月学園で行う学園祭だ。

各クラスが出し物をし、2日間に渡って行われる。

更に、《清涼祭》には試験召喚大会と言うものがある。

 

 

ざっと、説明するとこんな感じかな。

 

「まず、実行委員を選出したいんだが・・・・・・誰かいないか?」

 

どうやら雄二はこの実行委員と言うのがやりたくないらしい。そのため、他の人に押し付けて、自分は楽をしたいのだろう。まあ、試召戦争ではないので気合いが入らないのはわかるけど。

 

「じゃあ、私がやるよ」

 

すると、隣に座っている恵衣菜が手を上げた。

 

「姫宮がやってくれるか。なら・・・・・・・・明久」

 

「ん?」

 

「お前は姫宮の補佐をしてくれないか?」

 

「いいよ」

 

「サンキュー。それじゃあ、姫宮と明久は前に出てきてくれ」

 

「了解」

 

「はい」

 

僕と恵衣菜は雄二と変わって教壇に立った。

 

「それでは、まず最初に何かやりたい事はありますか?」

 

恵衣菜が聞き、僕が板書するためチョークを右手に持ち書く用意をする。

 

「・・・・・・」

 

「はい、土屋くん」

 

「・・・・・・写真館」

 

「康太の提案する写真館って・・・・・・」

 

この時、僕と恵衣菜は絶対盗撮写真とわかった。

 

「う~ん・・・・・・明久くん。一応、候補として上げといて」

 

「わかった」

 

僕は黒板に

 

候補Ⅰ ≪写真館 秘密の覗き部屋≫

 

と、書いた。

 

「はい。ほかあるかな?」

 

「メイド喫茶は古いから、ウエディング喫茶はどうだ?」

 

立ち上がってそういったのは福村くんだ。

 

「ウエディング喫茶?」

 

「ああ。ウェイトレスがウエディングドレスを着て接客をするんだ」

 

『斬新ではあるな』

 

『憧れる女子も多そうだ』

 

『だが、女子は良いとして、男子は嫌がらないか?人生の墓場、とか言うくらいだしな』

 

福村くんの案に辺りから反応が出る。

僕はまず第一に思ったことを福村くんに聞いた。

それは――――

 

「それ、衣装はどこから用意するのさ」

 

「あ、それは考えてなかったな」

 

「それにコストが高すぎて利益が出ないよ」

 

「うっ・・・・・!」

 

僕の指摘に福村くんは間の抜けたの用に答えた。

と言うか、他の人に恵衣菜のウエディングドレス姿を見せたくない、と言うのが本音だ。

 

「え~と、ウエディング喫茶は無しとして・・・・・・はい、須川くん」

 

「俺は中華喫茶を提案する」

 

「中華喫茶?」

 

そう言えば須川くんの家は中華料理屋を経営していたっけ。

何度か、食べに行ったから覚えている。

 

「ああ。まず、俺の提案する中華喫茶は本格的なウーロン茶と簡単な飲茶を出す店だ。別にチャイナドレスを着た格好で稼ごうってワケじゃない。(と言うか、これがアイツに伝わったら絶対搾り取られる)」

 

ん?今、最後の方ものすごく小声で聞き取れなかったけどなんか誰かを恐れているような感じがする。

 

「そもそも、食の起源は中国にあると言う言葉がある事からもわかるように、こと『食べる』という文化に対しては中華ほど奥の深いジャンルはない。近年、ヨーロピアン文化による中華料理の淘汰が世間では見られるが、本来食というものは―――――」

 

な、なんかよくわからないけど須川くんが珍しく熱弁を振るってる。

横溝くんを見ると、彼は額に手を当て、また始まったか、とでも言うような表情をしていた。

 

「そう言えば綾香ちゃんから聞いたんだけど、須川くん。家が中華料理屋さんを営んでるからか、中華料理に関してはものすごく調べて詳しいんだって。そして、その話を一度したら軽く三時間は話すとかなんとか」

 

「す、スゴいね」

 

僕は恵衣菜からの言葉に須川くんの熱弁をスゴいと思った。

だが、三時間は話しすぎじゃ・・・・・・

と、しばらくすると話終えたのか須川くんが席に座った。

どうやら、簡単には軽くまとめてくれたらしく彼は5分ほどで話終えた。

 

「明久くん。須川くんの意見、黒板に書いといて」

 

「うん」

 

候補Ⅱ ≪中華喫茶『ヨーロピアン』≫

 

「他にある人いるかな?」

 

 

そのあとはお化け屋敷や、カジノ、たこ焼き屋等々様々出たが多数決の結果、僕たちの出し物は須川くんの提案した≪中華喫茶『ヨーロピアン』≫に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

《清涼祭》での出し物を決めた日の放課後、帰る準備をしていると・・・・・・

 

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

『2年Fクラス、吉井明久くん、同じくFクラス姫宮恵衣菜さん。学園長がお呼びです。至急、学園長室に来てください』

 

"ピンポンパンポーン"

 

 

「学園長?なんの用だろう。取り敢えず学園長室に行くとしようか」

 

「そうだね」

 

僕と恵衣菜は放送連絡が入ると、学園長室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

学園長室前に着き中に入ろうとすると、中から学園長が誰かと言い争っている声が聞こえてきた。

 

「誰だろう」

 

「さあ。とにかく中に入ろう」

 

"コンコン"

 

僕は扉をノックした。

 

「入りな」

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

中に入ると学園長の他にもう一人、教頭の竹原先生がいた。

 

「やれやれ。取り込み中だと言うのに、とんだ来客ですね。これでは、話を続けることも出来ません。・・・・・・まさか、貴女の差し金ですか?」

 

「何言ってるんだい。二人はさっきの放送でアタシが呼んだのさ。それに、とんだ来客ってのは急に来たそっちの方じゃないか」

 

「・・・・・・・まあ、良いでしょう。それでは、この場は失礼させていただきます」

 

竹原先生は一瞬視線を部屋の隅に送り、踵を返して学園長室から出ていった。

 

"ん?あそこに何かあるのかな?"

 

僕は学園長室を出ていった竹原先生が視線を送ったところを見た。

そこには、観葉植物があるだけだった。

 

"もしかして・・・・・・"

 

僕は1つのある予想が立った。

 

「来たね。二人とも」

 

「学園長、何かありましたか?」

 

「実は二人にお願いしたいことがあるさね・・・・・・・「学園長」・・・・・・ん?なんだい、吉井?」

 

「明久くん?」

 

僕は不思議そうに見る学園長と恵衣菜に手振りで静かにするように言うと、観葉植物に近づき、植木鉢の土を穿り返した。

 

「・・・・・・・・・やっぱりあった」

 

僕の予想した通り、土の中にはビニール袋に入った小さな機械――――盗聴機があった。

 

「吉井、それは・・・・・・」

 

「恐らく、盗聴機だと思います。仕掛けたのは十中八九教頭の竹原先生でしょう」

 

「あ、だからさっき竹原先生、そこに視線を送っていたんだ」

 

どうやら恵衣菜も竹原先生が観葉植物に視線を送ったことを気づいていたみたいだ。

 

「うん。学園長、この盗聴機僕らの方で調べても構いませんか?」

 

「ああ、構わないさね。土屋にでも頼むのだろう」

 

「はい。盗聴機関連なら土屋が詳しいと思いますので」

 

「それならその件は、あんたらに任せるさね」

 

「分かりました」

 

僕は盗聴機を厳重に、音が入らないようにし制服の内ポケットにしまった。

 

「さて、二人に来てもらったのは他でもない。二人には試験召喚大会に出てもらいたい」

 

「試験召喚大会・・・・・ですか?」

 

「ああ、そうさね」

 

「ちなみに、理由は聞いても」

 

「本来なら余り言いたくないんだけど・・・・・実はその大会で出す商品の白銀の腕輪にはまだ欠陥があるのさ」

 

学園長は苦虫を潰したような顔をして説明した。

 

「白銀の腕輪、ですか・・・・・・・・・しかし、学園長。確か白銀の腕輪はまだ未完成のはずです。何故今回は未完成の欠巻がある腕輪を?」

 

「教頭の竹原が独断で進めちまったのさ。お陰で気づいたときにはすでに・・・・・」

 

「そうですか」

 

学園長は学園の経営方針に関しては基本関わらなく、試験召喚システムの調整等をしている。つまり、科学者とも言える。そのため、学園の経営事項に関しては全て教頭の竹原先生が仕切ってると聞いた覚えがある。

 

「それで、二人には試験召喚大会に優勝してこれを回収してほしいのさ」

 

「わかりました。その件、引き受けます」

 

「私も引き受けます」

 

「何時もすまないね」

 

「いえ。僕らも色々助けてもらってますから」

 

「そうかい・・・・・・・ああ、それと。実は《清涼祭》で近隣の学校のスクールアイドルによるライブも企画しているんだがね」

 

学園長は1つの書類を出して言った。

 

「スクールアイドルの、ライブ・・・・・・ですか?」

 

「そうさね」

 

「そのライブをしてもらえる学校の候補は?」

 

「音ノ木坂学院とUTX学院に頼もうと思っているさね」

 

学園長が言った学校はどちらも僕と恵衣菜が知っている学校だった。

 

「音ノ木坂学院とUTX学院ですか!?」

 

「ということは、音ノ木坂学院ではμ's。UTX学院ではA-RISE、ですね」

 

「そうさね」

 

「二校には連絡したんですか?」

 

「UTX学院には既にして、了承してもらっているさね。音ノ木坂学院の方は、あんたら二人に任せてもいいかい?」

 

「はい」

 

「すまないね」

 

「いえ」

 

「それと、音ノ木坂学院の理事長にこれを渡しといてくれないさね」

 

そう言うと、学園長はクリアファイルに挟まったプリントを渡してきた。

軽く見ると、《清涼祭》の案内らしい。

 

「それでは、僕らはこれで」

 

「それじゃあ、頼むよ二人とも」

 

「「はい!」」

 

僕と恵衣菜は踵を返し学園長室から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校門

 

学園長を出た僕と恵衣菜はクラスに戻り、鞄を持つと、昇降口に行き、靴を履き替え校門にいた。

当然だが、ここに来るまでFFF団の連中に追いかけ回されたのは言うまでもない。

恵衣菜にまで、手を出してきたので手を出してきたクラスメイトには、何時もよりキツイやり方で眠らせた。え

殺してないかって?大丈夫・・・・・・・・殺してないから。

その間は何かって?アハハハ、別に何でもないから気にしないでね。

 

「取り敢えずこのまま音ノ木坂学院に向かう?」

 

「そうだね。零華には遅くなるかもしれないってメールしといたから大丈夫だよ」

 

「了解。それじゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜は音ノ木坂学院に向かうため文月駅に行き、そこから電車で音ノ木坂学院に向かった。

 

 






次回 『音ノ木坂学院』 ここテストに出ます。


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第Ⅱ門 音ノ木坂学院

姫宮恵衣菜のバカテスト

問:以下の英文を訳してください。
 『This is tha bookshelf that my grandmother had used regularly.』


解答

吉井明久

『これは私の祖母が愛用していた本棚です。』


恵衣菜コメント

『さすが明久くんだね♪』


南ことり

『これは私の祖母が愛用していた本棚です。』


恵衣菜コメント

『正解。さすがことりちゃん』


園田海未

『これは私の祖母が愛用していた本棚です。』


恵衣菜コメント

『海未ちゃん、さすが』


高坂穂乃果

『これは         』


恵衣菜コメント

『穂乃果ちゃん。ちゃんと勉強しようね』


~明久side~

 

文月学園から移動して約40分後、僕と恵衣菜は音ノ木坂学院の前に来ていた。

 

「て言うかこのまま僕が入っていったらアウトなんじゃない?」

 

僕は音ノ木坂学院を前にして今更ながらのことを言った。

何を隠そう音ノ木坂学院は創立115年の歴史を持つ、女子高なのだ。

まあ、その理事長は僕らの幼なじみの1人の母親なんだが。

 

「大丈夫だよ明久くん。さっき、ことりちゃんに連絡して迎えに来てもらえるよう頼んだから」

 

「それならいいんだけど・・・・・・・・」

 

丁度、下校時間だからかちらほらと下校する音ノ木坂の生徒がいる。

そして、その視線は僕と恵衣菜に向かっていた。

 

「なんか異様に目立ってない?」

 

「う~ん・・・・・・確かに」

 

僕らが珍しいのかとてつもなく目立っていた。

僕と恵衣菜が疑問に思いながら話していると――――

 

「そりゃ目立つよ、二人とも~」

 

馴染みのある声が聞こえてきた。

声のした方を見るとそこには幼馴染がいた。

 

「ことり!」

 

「ことりちゃん!」

 

「久しぶり~。明久くん、恵衣菜ちゃん」

 

幼なじみの1人、南ことりがいた。

 

「ところでなんで僕らが目立っているの?」

 

「だって二人とも桃色空間出してるんだもん」

 

「「え?」」

 

僕と恵衣菜は同時に首をかしげた。

 

「そんなの出してないけど?」

 

「うん。出してないよ?」

 

「・・・・・・・・・・もしかして無自覚なの~・・・・・・」

 

ことりは呆れたように僕と恵衣菜を見た。

 

「あー。それよりことり、悪いんだけど理事長のところに案内してくれるかな?」

 

「あ、うん。こっちだよ、二人とも」

 

ことりはそう言うと、僕と恵衣菜についてくるように促した。僕と恵衣菜はことりの後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院 理事長室

 

"コンコン"

 

「お母さん、いい?」

 

「どうぞ~」

 

「「失礼します」」

 

僕らはことりに続いて、理事長室に入った。

室内の執務席には音ノ木坂学院の理事長にして、ことりの母親、南かおりさんだ。

 

「久しぶりね、明久くん、恵衣菜ちゃん。元気そうね」

 

「お久しぶりです、かおりさん」

 

「かおりさんも元気そうでよかったです」

 

ことりの母のかおりさんは僕と恵衣菜の母親と幼馴染で親友なのだ。

 

「とこらで二人は今日どうして音ノ木坂に?」

 

「僕らの学校。文月学園、藤堂カヲル学園長から音ノ木坂学院理事長に頼みがあります」

 

「藤堂カヲル学園長から?」

 

「はい。今度の学園祭《清涼祭》でμ'sにライブをお願いしたいそうです。詳しくはこれに」

 

僕がそう言うと、恵衣菜が鞄から学園長に渡された書類の入ったクリアファイルをかおりさんに渡した。

 

「どれどれ・・・・・・・なるほど・・・・・・・ことり、μ'sのみんなを呼んできてくれるかしら?」

 

「うん。わかったぁ~」

 

ことりはかおりさんに頼まれると、μ'sのみんなを呼びに理事長室から出た。

 

「さてと。明久くんと恵衣菜ちゃんの二人は相変わらずようね」

 

ことりがμ'sのみんなを呼びにいっている間、唐突にかおりさんがそう言ってきた。

 

「そうですか?」

 

「そうよ。二人は昔から仲が良すぎだとは思ってはいたのだけど、こうも桃色空間を出されちゃうとね」

 

「それさっき、ことりにも言われたんですけど、 別に僕ら桃色空間なんて出してませんよ?」

 

「あらら・・・・・まさかの無自覚・・・・・・」

 

「「?」」

 

「ところで、二人は学校どうかしら?」

 

「はい。結構充実してますよ」

 

「ええ。進学校なので勉強は大変ですけどね」

 

「さすが文月学園ね」

 

「ところでかおりさん。音ノ木坂学院が廃校になるかもしれないと聞いたんですけど・・・・・・」

 

「ええ。・・・・・今は、ことりたちμ'sに頑張ってもらうしかないわ。もちろん私たちも頑張るけど」

 

「もし、僕らに協力出来ることがあったらなんでもいってください。お手伝いします」

 

「私も、手伝います!」

 

「ありがとう、二人とも」

 

会話が途切れると・・・

 

"コンコン"

 

『お母さん、みんなを連れてきたよ』

 

扉の外からことりの声が聞こえた。

 

「入ってちょうだい」

 

かおりさんがそう言うと、扉が開きことりの後に8人の女の子が入ってきた。 

 

「練習中にごめんなさいね。あなたたちに話しておくことがあって呼んだの」

 

「話・・・・・ですか?」

 

「ええ。そうよ」

 

「ところで理事長。この二人は・・・・?見たところ他校の生徒見たいですけど」

 

金髪のロングヘアーをポニーテールで纏めた女生徒が聞いてくる。

すると。

 

「あれ?明久くんと恵衣菜ちゃん?」

 

「二人とも、どうして音ノ木坂にいるんですか?」

 

二人の女生徒が聞いてきた。

片方の女子は、左側の髪の一部を黄色のリボンで結んでセミロングヘアの子で、もう片方の女子は、腰まで伸ばした、青みがかかった黒のロングヘアの子だ。

 

「久しぶり、穂乃果、海未」

 

「ヤッホー、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」

 

セミロングヘアの女子が高坂穂乃果、黒のロングヘアの女子が園田海未だ。ことりと同じく、僕らの幼なじみである。

 

「穂乃果と海未の知り合い?」

 

赤いセミロングヘアの女の子が穂乃果に尋ねた。

 

「うん。穂乃果と海未ちゃん、ことりちゃんの幼なじみだよ」

 

「「「「「「幼なじみ!?」」」」」」

 

穂乃果の言葉に、穂乃果、ことり、海未以外のμ'sの6人の驚きの声が上がる。

 

「二人とも自己紹介してあげてくれる」

 

すると、かおりさんがそう言ってきた。

 

「そうですね」

 

「じゃあ、まず私からね。え~と・・・・・・・・文月学園2年Fクラス、姫宮恵衣菜です。よろしくね、μ'sのみんな」

 

「同じく、文月学園2年Fクラス、吉井明久です。よろしく」

 

僕と恵衣菜は順に自己紹介をした。

 

「文月学園って、あの試験召喚システムを取り入れてる、あの文月学園?」

 

「そうですよ」

 

「コホン・・・・・・綾瀬さん、こちらも自己紹介した方がいいんじゃない?」

 

「そ、そうですね。私は、音ノ木坂学院3年、生徒会長綾瀬絵里です。どうぞよろしくお願いします」

 

「同じくウチは3年、東條希やよ。よろしゅうな」

 

「にっこにっこにー♪みんなのアイドル。同じく3年、矢澤にこだよー。よろしく!」

 

「「に、にっこにっこにー?」」

 

僕と恵衣菜は矢澤さんの一番最初の言葉に首をかしげた。

 

「あはは・・・・にこちゃんのは何時もの事だから気にしないで二人とも」

 

穂乃果が苦笑いをしながらそう言ってきた。

 

「えーと、花陽は1年、小泉花陽、です。よろしくお願いします」

 

「同じく1年、星空凛にゃー。よろしくにゃー!」

 

「同じく1年、西木野真姫よ。よろしくお願いするわ」

 

「一応、私たちも言っておきましょうか」

 

「そうだね、海未ちゃん」

 

「音ノ木坂学院2年、園田海未です。よろしくお願いいたします」

 

「同じく2年、南ことりです。よろしくね」

 

「同じく2年!μ'sのリーダー高坂穂乃果です。よろしくお願いします!」

 

「彼女らがμ'sよ二人とも」

 

自己紹介の後、かおりさんがそう言った。

 

「質問いいですか?」

 

すると、綾瀬さんが僕と恵衣菜に再び聞いてきた。

 

「文月学園のFクラスと言うことは成績最底辺ですよね?どうして、その方たちが音ノ木坂学院に?」

 

「あはは・・・・・・まあ、Fクラスだからそう思われても仕方無いよね」

 

「う~ん、まあね。まあ、明久くんがFクラスになったのは私のせいだし」

 

「いやいや、前にも言ったでしょ。僕は恵衣菜を見捨てないって」

 

「明久くん」

 

「恵衣菜」

 

「・・・・・・・・あのー、二人とも。二人の世界に入らないでくれる?」

 

すると、かおりさんが苦笑しながら僕と恵衣菜にそう言ってきた。

よく見ると、幼なじみ3人は苦笑していて、残り6人は唖然としていた。

それを見た僕と恵衣菜は顔を少し赤くさせた。

 

「穂乃果、あの二人ってどういう関係なのかしら?」

 

「あーー・・・・・・・・言ってもいいのかな?」

 

「いいんじゃないかな?」

 

「ええ。言っても言いと思いますよ」

 

「えっとね。明久くんと恵衣菜ちゃんは恋人同士だよ」

 

「「「「「「恋人!?」」」」」」

 

「うん」

 

「あ、あの、吉井さん?」

 

「な、なにかな。えっと・・・・・・西木野さん?」

 

「真姫でいいわ」

 

「じゃあ、僕も明久でいいよ。他の人たちもそう呼んでくれてもいいよ」

 

「ええ。えっと、明久さんはそこの姫宮さんと恋人だと穂乃果から聞いたんですけど・・・・・・・本当ですか?」

 

「え?うん。そうだよ」

 

「うん。あ、私のことは恵衣菜でいいよ。他のみんなもそう呼んでくれると嬉しいな」

 

「は、はい。あ、あと。さっき、Fクラスだからそう思われても仕方無いよね、って言ってましたけどあれってどういう意味ですか?」

 

小泉さんが聞いてきた。

 

「えっと、かおりさんいいですか?」

 

「ええ。いいわよ」

 

かおりさんから許可をもらい僕はμ'sのみんなに質問した。

 

「みんなは僕らの学校。文月学園のことをどのくらい知ってるかな?」

 

「確か、最先端の技術を使った進学校、と聞いてるやね」

 

「ええ。あとは1年時の振り分け試験という試験で、2年時のクラスが決まると」

 

「うん。あってるよ。それじゃあ、軽く説明するね。文月学園は東條さんの言った通り、最先端の技術を使った進学校だよ」

 

「そして、その最先端の技術というのは試験召喚システムのことだね。試験召喚獣と言うのは知ってる?」

 

「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」

 

恵衣菜の問いに全員首を縦に振りうなずく。

 

「試験召喚獣はテストの点数によって召喚される自分の分身」

 

「綾瀬さんが言ったように、僕らの学校は学期末に振り分け試験と言うのがあるんだけど、そこから次学期のクラスを振り分けるんだ。上からAクラス、Bクラス、Cクラスと続いて最後にFクラスの6クラスに分けられる」

 

「で、実はその振り分け試験で私が熱で倒れちゃって、助けてくれた明久くんも同時に巻き込まれる形でFクラスに配属になっちゃったんだ」

 

「その振り分け試験で退席しただけでなんで、Fクラスに配属されたの?」

 

矢澤さんが今度は聞いてきた。

 

「僕らの学校は進学校、と言うこともあってテストの途中退席は無得点扱いになるんだ」

 

「そうなの。その、ごめん。嫌なこと聞いちゃて」

 

「ううん。私は大丈夫だよ、矢澤さん」

 

「にこでいいわよ」

 

「うん。にこちゃん」

 

「それじゃあ、あなたたち二人は本来なら何クラスに入るはずだったの?」

 

真姫さんの質問に僕と恵衣菜はどう答えていいか口迷った。

 

「「・・・・・・・・」」

 

その質問に答えたのは――――

 

「二人は文月学園2年生の首席と次席ですよ」

 

「本来ならAクラスだったんだよね」

 

海未とことりだった。

 

「なんで二人とも知ってるの!?」

 

「もしかしなくても、零華から聞いた?」

 

「ええ。この間」

 

「零華・・・・・・」

 

「零華ちゃん・・・・・・」

 

僕と恵衣菜は零華の行動の早さに頭痛がした。

 

「し、首席と次席!?明久さんと恵衣菜さんが!?」

 

「これは驚きやね」

 

「まあ、あの学校じゃそうみたいだね」

 

「先程はすみませんでした。事情があったとは知らずに聞いてしまって」

 

「綾瀬さん、僕らは気にしてないから大丈夫だよ」

 

「で、ですが・・・・・・」

 

「まあまあ、エリチ。二人が気にしないでって言ってるなら、気にしちゃアカンよ」

 

「希・・・・・・」

 

「それにや、文月学園の明久くんと恵衣菜ちゃんが理事長室にいて、理事長がウチらを呼び出したということはや。ウチらに文月学園に関係するなにかをやってほしいって、事なんやろ」

 

東條さんの発言に僕と恵衣菜は驚いた。

まさか、この短時間で呼ばれた理由を察しているとは思わなかったのだ。

 

「かおりさん・・・・・・」

 

「ええ。さて、あなたたちには来月、文月学園で行われる学園祭《清涼祭》でμ'sとしてライブをしてほしいの。二人は今日そのために来たのよ」

 

「「「「「「「「「ライブ!?」」」」」」」」」

 

「ええ。スクールアイドルとして、ゲストで歌ってほしいと文月学園の学園長から頼まれました」

 

「そ、それって穂乃果たちが文月学園の学園祭でライブをするって事ですか!?」

 

「ええ」

 

「「「「「「「「「ええェェェェェェぇ!!!!」」」」」」」」」

 

「文月学園は試験校として注目されているからいいと思うのだけど・・・・・どうかしら?やってくれる?」

 

かおりさんの問いにμ'sの面々は。

 

「もちろん、やります!」

 

「私もやります!」

 

「ことりも!」

 

「凛もにゃ!」

 

「私も!」

 

「にこも当然参加よ!」

 

「ウチはもちろんやるよ~」

 

「私もやるわ」

 

「それで、この学校の廃校を防げることが出来るならやります」

 

「決まりね♪」

 

かおりさんが僕と恵衣菜に軽くうなずいた。

これで、μ'sも参加決定だ。

 

「文月学園って事は世間から注目されているんだよね?って事はテレビカメラとか来たりして」

 

「う~ん・・・・・・どうだろう。ライブなら来るとは思うけど・・・・・・ちょっと、わからないかな」

 

「それと、もう一組のスクールアイドルも来るよ」

 

「もう一組のスクールアイドル?」

 

「UTX学院」

 

「UTX学院!?」

 

「と言うことはA-RISE!?」

 

「こ、これは私たちも、うかうかしていられませんね」

 

「そうね・・・・・」

 

「一刻も早く練習しなくては・・・・・・!」

 

μ'sの面々はA-RISEも来るとわかってか気合いが入っていた。

見る人によってはその光景が炎を燃えて見えるかも知れない。

 

「それじゃあ、μ'sのみなさんよろしくお願いします」

 

「ええ。こちらも出来る限りのライブをします」

 

そう言うと、μ'sのみんなは一刻も早く練習するためか理事長室から出ていった。

 

「す、スゴいね。μ'sのみんなって・・・・・・」

 

「うん。穂乃果ちゃんたちが生き生きとしてるの久しぶりに見たよ」

 

「フフフ。でしょ」

 

「ええ」

 

「はい」

 

「ところで、この《清涼祭》2日間やるみたいだけど、1日目にライブをするみたいね」

 

「はい。2日目は試験召喚大会がありますので」

 

「なるほど・・・・・・見に行っても良いかしら?」

 

「「えっ?」」

 

僕と恵衣菜はかおりさんの発言に変な声で聞いてしまった。

 

「か、かおりさんが、ですが?」

 

「ええ」

 

「ま、まあ、良いですけど」

 

「じゃあ、決定ね♪」

 

かおりさんのこの反応を見ると本当にことりの母親なのかと何時も思う。

正直、姉妹で通ると思う。

 

「あら、うれしいこと思ってくれるわね」

 

「な、なんでわかったんですか!?」

 

「だって、明久くんって顔に出やすいもの」

 

「確かに、明久くんは顔に出やすいよね」

 

「ちょ、恵衣菜!?」

 

僕は、そこまで顔に表情が出やすいと言われ落胆し床に膝を着いた。

 

「あはは・・・・・・」

 

その後、僕と恵衣菜はかおりさんに色々聞かれた。主に、僕らの事を聞かれたが、顔を赤くしたりすると、その都度かおりさんが笑い、更に僕らは顔を赤くしたのは言うまでもなかった。

そう言えばかおりさんは、ことりに似てかなりの天然だと母親から聞いていたことを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、久し振りだね。この5人で帰るの」

 

「そう言えばそうだね」

 

あれから、時間が立ち僕と恵衣菜は今、穂乃果、ことり、海未の3人と一緒に帰路についていた。

 

「昔は零華ちゃんも交えてよく遊んだよね」

 

「うん。葵ちゃんも一緒に遊んだりして楽しかったよね」

 

「うんうん。にしても、ことりたちμ'sが文月学園でライブ出来るなんて思わなかったよ~」

 

「始めに学園長に聞いたときは僕も驚いたよ」

 

「それに、私も明久くんもお母さんの母校の音ノ木坂学院は無くなってほしくないからね」

 

「そうだね」

 

僕と恵衣菜の母親は音ノ木坂学院の出身だ。

ちなみに、穂乃果とことり、海未の母親も音ノ木坂学院の出身の筈だ。

 

「それじゃあ、穂乃果たちはこっちだから。またね、明久くん、恵衣菜ちゃん」

 

「うん。またね、穂乃果、ことり、海未」

 

「またね、3人とも」

 

「ええ。また、会いましょう二人とも」

 

「またね~、明久くん、恵衣菜ちゃん~」

 

交差点で僕と恵衣菜は駅の方に、穂乃果たちは反対側の方に向かって歩いて行った。

 




感想などお願いします!




次回 『清涼祭開催』 ここテストに出ます。


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第Ⅲ門 清涼祭開催


バカテスト

門:以下の問いに答えなさい。
 『バルト三国と呼ばれる国名を全て挙げてください』


解答

吉井明久、姫宮恵衣菜

『リトアニア、エストニア、ラトビア』


教師コメント

『その通りです』


島田美波

『ドイツ、イタリア、日本』


教師コメント

『それは日独伊三国同盟です』


高坂穂乃果

『リトアニア、エストニア、ラトビア』


教師コメント

『よく出来ました』


~明久side~

 

音ノ木坂学院でμ'sとの会合の後の1ヶ月はあっという間に立った。

僕と恵衣菜は《清涼祭》でFクラスの実行委員になったため平日はあちこちを駆け回り《清涼祭》の準備を。

それは、Aクラスの代表である零華もしかり。

休日は穂乃果たちμ'sの練習に付き添ったりした。

ちなみにツバサたちA-RISEの練習にももちろん付き添った。

その時、持っていったお昼などは僕らが作ったのを持っていったのだが、それを食べた穂乃果たちμ'sとツバサたちA-RISEが何故か落ち込んだ表情をしていたのだが何故だろう?恵衣菜と零華は穂乃果やツバサたちに同情していたが・・・・・・

そんな事もあって1か月後、ついに《清涼祭》1日目の日となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《清涼祭》 1日目 午前8時 Fクラス

 

「よし。これで終わり、っと」

 

「明久」

 

「明久くん」

 

「あ、雄二、恵衣菜」

 

「そっち準備はどうだ明久?」

 

「僕の方は終わったよ。雄二と恵衣菜は?」

 

「俺の方も終わったぜ」

 

「私も終わったよ」

 

「・・・・・・こちらも完了」

 

僕の準備場所は調理、恵衣菜はクラスの装飾、雄二は代表として全体の、康太は服飾のそれぞれリーダーについている。

ちなみに服飾に関してだが、男子はYシャツとズボンに首もとにリボンタイを着けるのだが、女子と秀吉はチャイナドレスだ。何故、秀吉もチャイナドレスを着るのかと言うと康太曰く「・・・・・・女子が圧倒的に足りない。だから秀吉に頼む」とのことらしい。

ちなみにチャイナドレスの色はだが、秀吉は緑、島田さんは紫、姫路さんは濃赤、恵衣菜は白と黒を織り混ぜた色って感じだ。

恵衣菜のチャイナドレスを見たとき、その姿に僕は鼻血が出たのだが・・・・・・・・それは仕方無いとしかいえない。

むしろ恵衣菜のチャイナドレス姿を誰にも見せたくなくて雄二に恵衣菜を裏方にと言ったのだが、雄二は呆れた表情で却下した。

だって、誰にも見せたくないしね。恵衣菜のチャイナドレス姿は。似合いすぎて可愛いから。

それを見た雄二たちは何故か目を背け疲れた表情を出していたのだが何故なのだろう?

ちなみに、何故雄二が全体なのかと言うと僕と恵衣菜は調理とホールを交互にするため、全体の指揮は雄二に任せたのだ。

 

「開場まで後一時間ちょいか・・・・・・」

 

「そうだね」

 

クラスの設備はAクラスに勝利したため、学園長や西村先生の計らいで《清涼祭》の間だけは応接室や会議室に使われるテーブルを使用しても良いと、許可をもらった。

ちなみに、今もFクラスの設備は茶舞台だ。まあ、床が畳だからいきなり机と椅子と言うのはなんだかなと言うわけだ。その分、設備はしっかりとしたものになっている。

 

「吉井、ちょっといいか?」

 

「ん?須川くん?どうしたの?」

 

「試作品でごま団子と飲茶を作ってみた。食べてみてくれ」

 

須川くんの持っているお盆には飲茶とごま団子の乗ったお皿があった。

須川くんは調理班の副リーダーだ。家が中華料理屋を経営していることもあって、須川くんの中華料理の技術は高い。その他にも、康太も調理班だ。

 

「おっ!どれどれ」

 

雄二が須川くんから飲茶とごま団子をもらい食べる。

それに続いて、僕や恵衣菜、秀吉に康太、横溝くんも手を伸ばして食す。

 

「うむ。結構うまいの。甘すぎないところもよいのう」

 

「ああ。亮、またしても中華料理の腕を上げたな」

 

「・・・・・・美味」

 

「美味しいね。このごま団子、表面はカリカリで中はモチモチであんことの相性があっているよ」

 

「飲茶も旨いな。なんつうか、ホッとリラックスできる感じだな」

 

みんなそれぞれ食べた感想を言う。

 

「じゃあ、僕も・・・・・・・」

 

僕は手に持ったごま団子を一口だけ頬張る。

 

「ふむふむ。表面はゴリゴリでありながら中はネバネバ。甘すぎず、辛すぎる味わいがとっても―――んゴパっ」

 

僕の口からあり得ない音が出た。

 

「吉井!?」

 

「明久くん!?」

 

「明久!?」

 

恵衣菜たちが驚いた顔をしながら僕を見る。

そして僕の目に映るのは、これまでの人生の軌跡。いわゆる走馬灯だ。

って、走馬灯!?

 

「明久くん!明久くん!」

 

「ん・・・・・・・恵衣菜・・・・・・?」

 

恵衣菜の声に僕は走馬灯から現実に戻った。

目の前には心配そうな表情で僕を見る恵衣菜の顔があった。正直、キスが出来るくらい近い。

 

「大丈夫!?明久くん」

 

「う、うん。なんとか・・・・・・それより、あのごま団子は・・・・・」

 

「はい。とにかく、この飲茶とごま団子を食べて」

 

「ありがとう恵衣菜」

 

僕は恵衣菜から受け取った飲茶とごま団子を食べる。

今度のごま団子は恵衣菜が言っていたように、表面はカリカリで中はモチモチで美味しかった。また、飲茶も落ち着く、幸せになれる感じだ。

お陰で口の中に僅かに残る、最初に食べたごま団子の味が消えていった。

 

「大丈夫?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

恵衣菜の顔は少し赤かったのだが何かあったのだろうか?

 

「明久!よかった、意識が戻ったか」

 

「うん。大丈夫だよ雄二。ところでそのAED何に使うつもりだったの?」

 

僕は雄二が持っているAEDについて聞いた。

 

「姫宮の人工呼吸とかで戻らなかったら使うつもりだったんだ。だが、意識が戻ってよかったぜ」

 

どうやら僕はかなり危ういところにいたらしい。

ところで人工呼吸ってことは、恵衣菜と、その・・・・・・・

それを思うと顔が赤くなった。

 

「ちなみにあのごま団子って・・・・・・」

 

「ああ、あれはな・・・・・・」

 

「姫路瑞希が作った物なんだって。須川くんが目を離した隙に作ったみたい。だから須川くんも分からなかったみたい」

 

「そうなんだ。にしてもどうやったあんなごま団子が出来るんだろう?」

 

「「・・・・・・・」」

 

「二人とも?」

 

「あ、いや、その・・・・・なんだ。明久、お前、よく戻ってこれたな・・・・・・」

 

「え?」

 

「うん。姫路瑞希から何入れたのか聞いたとき、入れたものの内容を聞いて私気絶しかけたもの」

 

「な、何が入っていたの」

 

「「王水入りのあんこ」」

 

「お、王水!?」

 

 

王水とは硫酸・塩酸よりも強力な、人体に対して極めて有害な酸。骨髄まで溶かしてしまう危険な薬品である。

 

 

そんな危険なものを食べたなんて・・・・・・

 

「恵衣菜、姫路さんはどこ?」

 

「え、え~と・・・・・・」

 

「・・・・・雄二」

 

「あー、実はだな。お前が王水入りのあんこ入りのごま団子を姫路から聞いた際、姫宮が物凄く怒ってな・・・・・・」

 

「ああーー・・・・・なるほど」

 

つまり姫路さんは恵衣菜にO☆HA☆NA☆SHI☆と言う名の会話をしたと言うわけだ。

相変わらず早いというか何と言うか。取り敢えず、恵衣菜が僕の代わりに姫路さんにやってくれたみたいなので、この件はこれで終わりにする。

時間を見ると、時間は8時45分だった。

どうやら30分近く走馬灯を見ていたらしい。

 

「よっ・・・・・・・と」

 

僕は倒れていた体を起こし、立ち上がる。

 

「あと、少しで開演時間だね」

 

「うん」

 

《清涼祭》1日目は午前9時半から午後16時まで。

2日目は午前9時半から午後17時までだ。

2日目が少し長い理由は主に試験召喚大会の都合だ。

 

「え~と、午前にシフトが入ってる人は準備を、午後の人は手が空いていたら午前の人を手伝ってあげて。調理班は須川くんに、装飾は木下くんに、ホールは坂本くんのところに集まって」

 

「む?明久と姫宮はどうするのじゃ?」

 

「僕らはライブの・・・・・・ね」

 

「なるほどの・・・・・・」

 

そう。僕と恵衣菜はμ'sとA-RISEのライブ担当にもなっているのだ。

なんでもμ'sとA-RISEからの要望らしい。

その事を学園長から聞いたときに僕と恵衣菜はちょっと・・・・・・・ではなくかなり驚いた。

 

「行こうか恵衣菜」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜はFクラスを雄二に任して、ライブが行われる文月学園スタジアムへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園スタジアム

 

「うわっ!ライブ会場が出来てる」

 

文月学園スタジアム内に入った僕はまずそう呟いた。

スタジアムの中はFクラスVSAクラス戦とは違い、選手が出る扉を端に、奥には広い舞台がある

 

「明日には元通りのスタジアムになるんだよね」

 

「うん。学園長、これにどのくらいお金使ったんだろう」

 

「さあ?」

 

これを見て、僕と恵衣菜はそう思ってしまった。

 

「さてと、それじゃあ舞台の最終チェックをしちゃおうか」

 

「そうね」

 

僕と恵衣菜は舞台に上り、業者の人たちとチェックを行った。

ちなみにライブの開演時間は午後13時からだ。

そんなこんなで作業に没頭していると、あっという間に《清涼祭》開幕、5分前だった。

 

「明久くん。そろそろ戻らないと」

 

「そうだね」

 

僕は、あとの機材などの細かいチェックは業者さんに任せ僕らはFクラスに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス

 

「戻ったか」

 

「うん」

 

「ただいま」

 

「そろそろ始まる。二人も準備してくれ」

 

「了解」

 

「ええ」

 

僕と恵衣菜はホールスタッフの服装をする。

そして。

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

 

『ただ今より、文月学園学園祭《清涼祭》を開催いたします。生徒のみなさん、楽しみ、張り切っていきましょう』

 

 

"ピンポンパンポーン"

 

《清涼祭》開催のアナウンスが流れた。

 

「よし。やるよみんな!」

 

「「「「「「「「「「おおーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」

 

僕の掛け声にFクラス、クラスメイトの声が1つとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

 

「ご注文をお伺いいたします」

 

「ありがとうございました!」

 

辺りからクラスメイトの声が聞こえてくる。

全員、真面目に取り組んでいるみたいだ。・・・・・・・今は

 

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしてます」

 

僕は出ていったお客さんにそう言い、食器を片付け次のお客さんの接客に移る。

店内はお客さんで賑わっているから大忙しだ。

 

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

 

「二人です」

 

「かしこまりました。ご案内いたします。こちらへどうぞ」

 

僕は今入ってきた女性二名を空いている席に誘導する。

 

「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください。あと、よろしければこちらのアンケートにご協力ください。アンケートの回収は出口で行っております」

 

僕は一礼をしその場から立ち去る。

 

「一応体裁取れてるな。明久」

 

「そうだね雄二」

 

その後に、恵衣菜がお水の入ったコップを2つ、トレーに乗せて先程のお客さんのところに向かった。

時間は午前10時半。ここまでは順調だった。

ここまでは・・・・・・・

 

「おいっ!何時まで待たせるつもりだよ!」

 

「もう少々お待ちください」

 

「結構待ってるぞ!それにそれさっきも聞いたぞ!」

 

「申し訳ありません!すぐに伺いますのでもう少しお待ちください」

 

「ったく。このタコが!」

 

奥のテーブルで問題が起こったみたいだ。

まあ、ホールスタッフはいるはいるがお客さんの人数もしかり、配膳などしているため手が回らないのは事実だ。結果としてあのように遅くなってしまうのは仕方ないのだが・・・・・・

他のお客さんから注文を受けていた島田さんや恵衣菜は困ったようにしている。

 

「3年生か・・・・・・ちっ、めんどくさい客だな」

 

「そうかもだけど・・・・・・」

 

僕と雄二はカーテンの仕切りから見る。

 

「たっく・・・・・まっ、Fクラスだし仕方ねぇか」

 

「あぁ。バカの集まりだからな。頭が回らねぇんだろうぜ」

 

どうやら騒いでいるのはウチの3年生のようだ。

 

「おっ!こんなところにいいのがあるぜ」

 

騒いでいるの3年生の片割れが端にラップでくるんで置いてあったごま団子を見つけ、ラップを外す。

 

あ、あのごま団子って確か・・・・・・・・!

 

僕はそのごま団子を見て愕然とする。

何故なら、

 

「お、お客様、そのごま団子は試供品としてあるので食べないでいただきたいのですが・・・・・・」

 

「は?なんでだよ・・・・・あむ・・・・」

 

「別にいいだろ?・・・・・あむ・・・・」

 

「表面はゴリゴリでありながら中はネバネバ」

 

「甘すぎず、辛すぎる味わいがとっても―――」

 

「「んゴパっ!」」

 

何て言うか、物凄くデジャビュを感じる。

そう、あの試供品のごま団子は姫路さんの作った、王水入りのあんこが入ったごま団子、なのだ。

あれからさらに探すと3つほどそのごま団子が見つかり、試供品としてラップをして置いといたのだ。

と言うよりまさか、試供品を食べる人がいるとは思わなかった。

 

「ってヤバッ!ムッツリーニ!」

 

「・・・・・・承知」

 

康太を呼ぶと、どこからかAEDを持って康太がやって来た。

 

「300重!チャージ!」

 

「・・・・・・300、了解!」

 

康太と僕は必死の蘇生を行った。

結果。

 

「・・・・・・3、2、1」

 

「「アババババババババババ」」

 

奇怪な声を出して生き返った。

こうしてまた尊い生命が息を吹き返したのでした。

 

「ふぅ。助かった」

 

「・・・・・・(コクコク)」

 

僕と康太はAEDをしまいながらそう声を洩らした。

すると、雄二が。

 

「手慣れたもんだな」

 

「・・・・・・いつも死線を彷徨ってるから」

 

「ええー・・・・・・」

 

「「・・・・・・・・・って、おい!」」

 

「はい?」

 

「はい?じゃねえよ!」

 

「何てもの食わせてんだよ、おい!」

 

「いや、勝手に試供品を食べたのは先輩方なのですが・・・・・・」

 

「・・・・・・(コク)文句を言われる筋合いはない」

 

「全くだな。まさか試供品を食べる人がいるとわな」

 

「そうじゃねぇよ!」

 

「殺す気かぁ!洒落じゃすまねぇぞコルァ!」

 

「なんなんだここは!まともな料理は無いのかよ」

 

「こんな店営業できなくしてやろうかぁ!」

 

「そうだ!責任者を・・・・・「おりゃ」・・・・・・ぶぎゃ」

 

何故最後台詞が途切れたのかと言うと――――

 

「私が代表の坂本雄二です。何かご不満な点はございましたでしょうか?」

 

「いや、ございましたでしょうかも何も、今俺の連れの夏川がぶっ飛ばされたんだが・・・・・・・」

 

「それは私の、パンチから始まる交渉術です」

 

「ふざけんなコノヤロォー!・・・・・・・「ふん!」・・・・・・ぐはっ」

 

「そして、キックで繋ぐ交渉術でございます」

 

二人の先輩は雄二にやられ、二人仲良く奥の壁にまで吹っ飛ばされた。

 

「イテテテテ・・・・・・・常村!?」

 

雄二は気がついた夏川と呼ばれた先輩に近づく。

 

「あっ、ははは・・・・・・」

 

「そして最後にプロレス技で占める交渉術がございますが?」

 

「い、いや。もう十分だ・・・・・・」

 

「そうか。それなら・・・・・・・・!」

 

雄二は夏川先輩の胴を掴むと、プロレス技で占めた。

具体的に言うと、夏川先輩の頭が雄二の後ろの床に叩き付けられた。あれは痛そう。

僕は、苦笑いしか出来なかった。

 

「グハァッ!」

 

「これにて交渉終了」

 

「しっかり固めてるね・・・・・・」

 

「アハハハハ・・・・・・・カール・ゴッチ式だね」

 

隣で恵衣菜が伝票を持ってそう言う。

ちなみに、恵衣菜の伝票にはカール・ゴッチなど、雄二のパンチとキックが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうもありがとうございました」

 

あの迷惑先輩が出ていき30分後。

僕らの教室はお客が誰もいなかった。

 

「おかしいですね。お昼時ですのに」

 

「そうね。瑞希」

 

「んー。と言うことは他クラスで何かあったのかもしれないな。Fクラスの不況を言われているとか」

 

「でも、お客さん満足して出ていったはずよ?」

 

「二人を除いてな」

 

「あぁ、常夏コンビじゃな」

 

「「常夏コンビ?」」

 

「常村と夏川で合わせて常夏じゃ」

 

「なるほど」

 

すると。

 

"ガラッ"

 

扉が開いた。

 

「「「「いらっしゃいませ!」」」」

 

来てくれたお客さんは小さな小学生くらいの女の子だった。

 

「来たよ、お姉ちゃん♪」

 

「葉月!?どうして」

 

「「お姉ちゃん?」」

 

島田さんに向かっていった女の子の言葉に僕と恵衣菜は首をかしげた。

って、あれ?あの女の子よく見ると何処かであった気が・・・・・・

 

「美波ちゃん。その女の子は美波ちゃんの知り合いですか?」

 

「え?ああ、そうよ。妹の葉月よ」

 

「はじめまして島田葉月です!いつもお姉ちゃんがお世話になってます」

 

「島田、お前妹がいたのか」

 

「そうよ」

 

「「葉月?」」

 

「明久くん、私葉月ちゃんにあった気がするんだけど・・・・・・・」

 

「うん。僕も」

 

僕と恵衣菜の悩みはすぐに解決した。

 

「あ!あの時の優しいお兄ちゃんとお姉ちゃん!」

 

「「あ!思い出した!」」

 

葉月ちゃんとは去年、確かお姉ちゃんにあげるぬいぐるみを買うのを手伝ってあげたのだ。

色々とあったからすっかり忘れていた。

 

「アキと姫宮って葉月と知り合いなの?」

 

島田さんがいぶかしそうに聞く。

 

「ええ。去年、葉月ちゃんをお手伝いしたことがあるの」

 

「お手伝い?葉月、二人に何をお手伝いしてもらったの?」

 

「ぬいぐるみです」

 

「ぬいぐるみ?・・・・・・・・・・って、もしかして去年葉月がくれたぬいぐるみのこと!?」

 

「そうです!」

 

島田さんが驚いた表情で葉月ちゃんを見る。

 

「そうだったの・・・・・・・その節はありがとう、アキ、姫宮」

 

「別に、葉月ちゃんのためだから。気にしないで」

 

「あははは。全く、恵衣菜は素直じゃないね」

 

「べ、別にそんなことないわよ」

 

恵衣菜は島田さんにお礼を言われたのが驚いたのか素っ気なくいい、視線をずらす。

その際、顔を赤くしていたのを僕は見逃さなかった。

 

「にしても、これは一体」

 

雄二が教室の惨状を見て呟く。

 

「もしかしたら葉月がここに来る途中で聞いた噂のせいかもしれないです」

 

「噂?」

 

「葉月、それどんな噂?」

 

「え~と。Fクラスは汚くて、料理も不味いし、接客も良くないから行かないほうがいい、って言ってたです」

 

「雄二」

 

「あぁ。十中八九常夏コンビの仕業だな。ところで、その噂はどこで聞いたんだチビッ子」

 

「チビッ子じゃないです!葉月です!噂を聞いたのは確かAクラスの辺りだったはずです」

 

「ふむ・・・・・・・明久、姫宮、島田、姫路、付いてきてくれ。島田は妹も一緒にな」

 

「わかりました」

 

「ええ。葉月、お姉ちゃんと一緒に行こうか」

 

「はいです!」

 

「了解」

 

「うん」

 

「それに明久と姫宮はそろそろあれの準備の時間だろ」

 

現時刻は午前11時を過ぎていて、後1時間もしたらライブ会場に僕と恵衣菜は行かなければならない。

 

「そうだね」

 

「秀吉とムッツリーニは教室で待機していてくれ」

 

「・・・・・・承知」

 

「うむ」

 

噂の出所を潰すため僕たちはAクラスに向かった。




感想とか来ないからつまらないのでしょうか、と疑問に思います。
出来ればどんどん感想を送ってください。






次回 『スクールアイドルライブ』 ここテストに出ます。


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第Ⅳ門 スクールアイドルライブ


バカテスト 清涼祭編

問題『あなたが今一番欲しいものはなんですか?』


解答


吉井明久

『恵衣菜や親友たちとの思い出』


教師コメント

『良いですね。思い出は一生の宝物になると思いますよ。大切にしてください』


姫宮恵衣菜

『明久くんや友達との思い出』


教師コメント

『忘れることのない、大切な思い出を築いてください』


吉井零華

『みんなとの思い出』


教師コメント

『思い出は自分の一生の宝物なので、沢山思い出を作ってください』


 

~明久side~

 

 

Aクラス  メイド喫茶

 

「ねぇ、明久くん。Aクラス、メイド喫茶って書いてあるんだけど」

 

「うん。僕もそう見える」

 

僕と恵衣菜はAクラスの出し物に呆然としていた。

まさか、メイド喫茶とは思わなかったのだ。

中に入ると。

 

「「おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様」」

 

妹の零華と霧島さんがメイド服を着て立っていた。

 

「「「・・・・・・・・・・・」」」

 

僕と恵衣菜は絶句して声が出なかった。

よく見ると雄二も同様だ。

 

「わぁ!お姉ちゃんたち綺麗です!」

 

「ありがとう♪」

 

「・・・・・・嬉しい」

 

「はいはい、葉月。吉井と霧島にあまり迷惑かけないようにね」

 

「島田美波、この子はあなたの妹?」

 

「ええ、そうよ。名前は葉月よ」

 

「・・・・・・驚いた」

 

「うん。私もちょっと驚いたよ。まさか島田美波にこんな可愛い妹さんがいるなんて・・・・・・・よろしくね葉月ちゃん」

 

「・・・・・・よろしく」

 

「よろしくです!綺麗なお姉ちゃんたち!」

 

葉月ちゃんは零華と霧島さんにペコリと可愛らしく頭を下げる。

正直、葉月ちゃんが島田さんの妹だと言うことが未だに信じられない僕であった。

 

「あのさ、零華。そろそろ席に案内してくれてもいいかな?」

 

「あ、ご、ごめんなさい兄様。え~と・・・・・・・・・では、こちらへどうぞ」

 

僕らは零華の後をついていった。

 

「こちらへお掛けください」

 

6つある椅子にそれぞれ、右から僕、恵衣菜、雄二、姫路さん、島田さん、葉月ちゃんの順に座った。

椅子に座った僕らは、手元にあるメニュー表をみる。

メニュー表には『ふわふわシフォンケーキ』や『モンブラン』を初め『ミルクレープ』や『サンドイッチ』の軽食。『ナポリタン』や『オムライス』などが少しだけあった。飲み物も『アールグレイ』や『ロイヤルミルクティー』『ローズヒップ』があった。

 

「色々あるね」

 

「明久くんはどれにする?」

 

「ん~。僕は『ミルクレープ』と『コーヒー』にしようかな」

 

「じゃあ、私はこの『ふわふわシフォンケーキ』と『ロイヤルミルクティー』」

 

「あ、私も『ふわふわシフォンケーキ』をお願いします。飲み物は『アールグレイ』で」

 

「ウチも『ふわふわシフォンケーキ』をお願い。葉月はどうする?」

 

「葉月もお姉ちゃんと同じのがいいです!」

 

「うん。えっと、『ふわふわシフォンケーキ』をもう1つと、『アールグレイ』と『オレンジジュース』をお願い」

 

「んじゃ、俺は・・・・・・「・・・・・・ご注文を繰り返します。『ミルクレープ』が1つ、『ふわふわシフォンケーキ』が4つ、『コーヒー』が1つ、『ロイヤルミルクティー』が1つ、『アールグレイ』が2つ、『オレンジジュース』が1つ、『メイドとの新婚生活』が1つ。以上でよろしいでしょうか」・・・・・・よろしくねぇよ!」

 

霧島さんが雄二の台詞を遮り、僕らのオーダーを繰り返す。

それを雄二はつっこんで霧島さんに反論する。

 

「しかも翔子、なんで俺のだけメニューが違うんだ!?」

 

「・・・・・・雄二のは特別製」

 

「頼むから普通のにしてくれ!」

 

「・・・・・・わかった」

 

「はぁ・・・・・・俺のは『サンドイッチ』と『コーヒー』で頼む」

 

「・・・・・・畏まりました」

 

霧島さんは雄二のオーダーも聞き終えると、伝票を持って厨房があるらしき方へ行った。

 

「坂本。あんた、苦労してるのね」

 

「頼む島田。その同情的な視線は止めてくれ。むなしくなる」

 

「アハハハハ・・・・・・・」

 

「やれやれ」

 

「坂本くんは将来、翔子ちゃんの尻に引かれると思うな~」

 

島田さんの同情的な視線は雄二を見て、それに、姫路さんと僕は苦笑し、恵衣菜は何か予知的な事を言った。

しばらくして、零華と霧島さんが僕らの頼んだ品を持ってやって来た。

 

「お待たせしました」

 

二人がそれぞれの目の前に食べ物を置いていく。

 

「それでは失礼します」

 

「あ、零華」

 

僕は、立ち去って行こうとする零華を呼び止めた。

 

「どうかしましたか兄様?」

 

「うん。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「うん。あ、でも後10分待ってくれる?その後は、私も翔子ちゃんも暇だから」

 

「うん。わかったよ」

 

零華はそう言うと、次の注文を取りに向かった。

 

「さてと、食べようよ」

 

「ええ」

 

「そうだな」

 

「はいです!」

 

「はい」

 

「そうね」

 

僕らは頼んだ品を一口食べる。

 

「あ。美味しい」

 

「ああ・・・・・このサンドイッチ、レタスは水気が拭き取られてシャキシャキしているし、こっちのタマゴサンドはピリッと胡椒が効いていて旨い」

 

「ええ。シフォンケーキも甘過ぎなくていいです」

 

「ホント、いくらでも食べれるくらいね」

 

「はい。作ってる人が余程上手なのでしょう」

 

「とっても美味しいです!」

 

僕らはそれぞれ食べた感想を言う。

姫路さんや島田さんも好評みたいだ。

葉月ちゃんが喜んでくれて嬉しいと思う。

 

「ところで。葉月ちゃんが噂を聞いた場所ってここであってる?」

 

「はい!大きな二人の男の人が大声で話していたです」

 

「大きな二人の男・・・・・・・」

 

「確定だな・・・・・・」

 

僕と雄二が葉月ちゃんの言葉を聞きそう口走ると。

 

『いらっしゃいませ。何名様でしょうか?』

 

『おう。二人だ』

 

そんな声が聞こえた。

 

『ここは綺麗で良いなぁ!』

 

『全くだな!さっき行った2年Fクラスなんて汚かったからな』

 

『ああ!教室はボロボロ、料理は不味いし、接客態度も悪いからな!』

 

『『ギャハハハハ!!』』

 

そして、とてつもなく嫌な声とともに、Fクラスをバカにする大声で喋る声が聞こえた。

 

「あ!あの人たちです」

 

そして、葉月ちゃんの確証も得た。

 

「どうするの坂本?」

 

島田さんが葉月ちゃんを心配そうに見ながら雄二に聞く。

すると。

 

「お待たせ兄様」

 

「・・・・・・お待たせ」

 

零華と霧島さんが来た。

メイド服を着たまま。

 

「二人とも・・・・・・それで回るの?」

 

「うん」

 

「・・・・・・(コクリ)」

 

「そ、そう」

 

「ところで零華ちゃん。あの二人ってここ何回目?」

 

「もう、五回くらい繰り返しよ。話す内容も同じで、わざと大きな声で言うものだから私たちとしても困っているわ」

 

「・・・・・・ホント迷惑」

 

零華はともかく、霧島さんがそこまで言うと言うことは、余程Aクラスとしても好ましいお客。先輩ではないのだろう。

 

「そうだ。吉井、翔子。予備か余っているメイド服はないか?」

 

「え?一応ありますよ」

 

「なら1着持ってきてくれないか?」

 

「・・・・・・わかった」

 

霧島さんが、メイド服?を取りにどこかに行った。

 

「姫宮、姫路、島田。化粧道具を持ってないか?」

 

「?持っているよ」

 

「はい。持っていますけど」

 

「ウチも」

 

3人は荷物からポーチを取り出し、テーブルの上に置く。

 

「すまない。ちょっと借りるぞ」

 

「・・・・・・雄二、持ってきた」

 

「サンキュー翔子」

 

「・・・・・・貸し1つ」

 

「あー。今度の休み出掛けるでいいか?」

 

「・・・・・・(コク)」

 

「ところで雄二。メイド服なんか何に使うの?」

 

「ん?決まってんだろ明久。あいつらをしばくのに使うんだよ」

 

「なるほど」

 

「んな訳で・・・・・・・・・明久、頼むぞ」

 

「はい・・・・・・?」

 

「秀吉にも応援を頼むか」

 

「ちょ。ちょっと待って雄二。なんで僕がメイド服着ることになってるの!?」

 

「お前しか適任者がいないんだ仕方無いだろ」

 

「他にもいるじゃん!」

 

「そうか?じゃあ、姫宮・・・・・・・「却下!僕が殺るから!」・・・・・・地文がなんか違う気がするが。早いな」

 

恵衣菜が着てあいつらに何かをするくらいなら、僕が着てやる。

恵衣菜のメイド服姿が見たいのは本音だけど、それ以前に、恵衣菜にそんなことはさせない。と言うか、他の人に恵衣菜のメイド服姿を見せるものか!」

 

「明久くん///////」

 

「兄様・・・・・・・・」

 

「あ、あれ?」

 

周りの空気がなんかおかしいのに気付き見てみると、恵衣菜は顔を赤くして、零華は頭に手を当てていて、雄二は呆れた眼差しを、姫路と島田さんに限っては何とも言えない、怒っているとも言えないなんと言うか、よくわからない表情をしていた。その中で霧島さんが雄二を見て頬を赤くしていた。そんな中、葉月ちゃんは首を横に傾げていた。

 

「明久、お前よく公衆の面前で言えるな」

 

「え、えっ?」

 

「兄様、聞いていて恥ずかしいです」

 

「ゴメン、ウチも恥ずかしいわ」

 

「私もです」

 

「・・・・・・さすが吉井」

 

「も、もしかして・・・・・・」

 

「あ、あの、明久くん。明久くんの言ったこと丸聞こえだったよ」

 

「ど、どこから・・・・・・?」

 

「その・・・・・・私のメイド服姿が見たいのは本音だけど、のところから」

 

保々全部じゃないか!!?!

嘘、声に出して、しかも雄二たちに聞かれた・・・・・・ヤバい、ちょう恥ずかしい!

 

「べ、別に私はき、気にしないよ」

 

「////////恵衣菜~」

 

「はいはい」

 

僕はこの恥ずかしい気持ちを恵衣菜に落ち着かせてもらった。

 

「あーー。明久、早速で悪いが頼む」

 

「わ、わかった」

 

僕は秀吉がいると思われる、Aクラスの隣の教室に雄二とともに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ。よい出来じゃ」

 

「秀吉、やりすぎじゃないかな?」

 

「そんなことないぞ。・・・・・・・よし。これで思う存分悪党を倒してくるのじゃ」

 

「う、うん」

 

僕は一足先に雄二が戻っている、Aクラスに入る。

僕が入ると、周囲からざわめきが起こる。

 

『なに、あの子』

 

『メチャクチャ可愛くないか?』

 

『スゲー、あんな子始めてみたぜ』

 

『髪の毛長いわね』

 

『あんな子がこのクラスにいるのね』

 

と、様々な声が聞こえる。

そう、僕は今女装をしている。しかもメイド服を着て。

腰まで届くほどの栗色の長い髪はカツラを被っている。

そして、僕は予め雄二に言われていたこと実行する。

それは―――――

 

「―――――マジであのクラスヤバいんじゃねぇか」

 

「―――――食中毒が出たらFクラスが原因だな」

 

「すみません、足元を掃除したいのですがよろしいでしょうか?」

 

僕は声のトーンを上げて、男だとバレないようにする。

 

「あ?ほら、さっさと掃除しろよ」

 

「失礼します。それでは――――」

 

「な、なんだ。俺にほれ・・・・・・「くたばれぇぇっ!」・・・・・ごばぁぁっ!」

 

この常夏コンビへの制裁だ。

僕は夏川?先輩の胴に手を回し、バックドロップで夏川先輩の頭を地面に叩きつける。

夏川先輩は本日二回目の脳天痛打だ。だが、同情はしない。

 

「なっ!?」

 

「き、キサマはFクラスのよし・・・・・「キャァーーー。この人、今私の胸を触りました!」・・・・・・・って、ちょっと待てぇ!」

 

「なっ!?なんだ!?」

 

「バックドロップをするために当ててきたのはそっちだし、まず第一にお前はおと・・・・・・「ふんっ!」・・・・・・ぐぶぁっ!」

 

未だに戸惑う常村先輩は僕と、吹き飛ばされた夏川先輩、そして夏川先輩を吹っ飛ばした雄二を見た。

 

「公衆の面前で痴漢行為とは、このゲス野郎が!」

 

「な!?なに言ってんだ!?どう考えても被害者はこっちだろう!」

 

「黙れ!つい先程コイツはウエイトレスの胸を揉みしだいていただろうが!俺の目は節穴では無いぞ!」

 

いや、節穴だと思うけど、言わないでおこう。

とにかくこの二人から話を聞くのが先だ。

 

「そこのウエイトレス!」

 

「は、はいっ!」

 

「そこで倒れている男を頼む!」

 

「え?あ、はい、わかりましたっ!」

 

さて、僕はどうしようか?

目の前で延びてる夏川先輩を見て考える。

あ。秀吉から渡されたこれ、頭に着けようかな。夏川先輩の頭に。瞬間接着剤で。

 

「さて、痴漢行為の取り調べのため、ちょっと来てもらおうか先輩方」

 

「くっ・・・・・・」

 

「イテテ・・・・・」

 

「キャァーーー!この人変態です!」

 

「な、夏川・・・・・お前、それ・・・・・」

 

「ん。なんだ、これ・・・・・・」

 

夏川先輩の頭には秀吉から渡され、僕が取り付けた女性の下着、白のブラジャーがあった。

そしてそれを、夏川先輩は揉みしだいている。

 

「誰がどう見ても変態だな」

 

「すまん夏川・・・・・それを見ていると否定したくてもできねぇ」

 

「はぁっ!?」

 

「行くぞ夏川!」

 

周囲の人が自分達を見て形勢不利と判断した常村先輩は夏川先輩にそう言う。

 

「お、おぼえてろよ!」

 

夏川先輩はそう言い、先に出た常村先輩の後を追いかける。

 

「逃がすか!」

 

「了解!・・・・・・・って、あれ?」

 

「秋菜ちゃん、悪いんだけどそろそろ時間だよ」

 

「え!?もうそんな時間!?」

 

恵衣菜の言う通り時間は12時15分を指していた。

 

「雄二、悪いけど・・・・・・」

 

「ああ、わかってる。お前は、お前のやることをしろ。こっちは俺たちで何とかする」

 

「お願い」

 

「ああ。行くぞ、秀吉!」

 

「うむ。心得た」

 

いつの間にかいたのか、雄二は秀吉とともに出ていった先輩、もとい変態を追いかけていった。

 

「私たちも早く行かないと」

 

「そうだね。それじゃあ零華、あとお願い。あ、料金はここに置いておくから払っといて」

 

「了解です兄様。姉様も気を付けていってきてください」

 

零華の声を背に、僕と恵衣菜はAクラスから出て、ライブを行う文月学園スタジアムに向かった。

女装して、メイド服を着たまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園スタジアム

 

「ごめんなさい、遅れました」

 

「あ、恵衣菜ちゃん。と・・・・・・・・そっちの女の子は誰?」

 

「え?」

 

スタジアムの控え室に入ると、中にいたμ'sの1人、ことりが声をかけてきた。

控え室の中にはμ'sの全員がいる。ちなみに、ツバサたちA-RISEもこの控え室だ。

そして、ことりの言葉で、僕は今自分が女装していることを気付いた。

 

「あれ~。恵衣菜ちゃん、その子って?」

 

「なんかどこかで見た気がするのですが・・・・・・」

 

ことりに続いて、穂乃果と海未が見てくる。

 

「そう言えばこのままの格好で来ちゃった」

 

「どういう意味?」

 

僕の独り言にツバサが首をかしげる。

 

「この女の子は明久くんだよ」

 

「「「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」」」

 

「ちょ、恵衣菜!?」

 

「あれ、秋菜ちゃんのほうが良かった?」

 

「そう言う意味じゃないよ!?はっ・・・・・・・!なんか悪寒が・・・・・・・」

 

「明久く~ん、じゃなくて秋菜ちゃん。ちょっとこっちに来て~」

 

悪寒の正体はことりだった。

とてつもなく嫌な予感がする。

 

「こ、ことり・・・・・・?」

 

「秋菜ちゃん、これ着てみてくれる~?」

 

そう言って取り出したのは――――

 

「あ。似合いそうだね、その服」

 

「イヤイヤイヤ!!なんで、μ'sの服を着ることになるのさ?!」

 

ことりが取り出したのは、今自分が着ているのと同じμ'sの服だった。

 

「はっ!え~と、この人は明久くんで合ってるの?」

 

「そうだよ穂乃果ちゃん」

 

「へぇーそうなんだ。なるほどなるほど・・・・・・・」

 

「「「「「「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇえっ!!?」」」」」」」」」」」

 

そして、ことり以外のμ'sとA-RISEの声が響いた。

 

「ほ、ほんとに明久さんなんですか?」

 

「そうだよ、凛さん」

 

「こ、これは・・・・・・」

 

「にこもさすがに驚いたわ・・・・・・・」

 

「本当の女子みたいだにャー」

 

「意外に似合っているよ、明久」

 

「英玲奈!お願いだから言わないで!」

 

「ウチも驚いたわー」

 

「希さん!?なんで両手をワシワシするかのように寄ってくるの!?」

 

「ええやんよ」

 

「え、恵衣菜~助けて~!」

 

「じゃあ私も明久くんをこちょこちょしようかな♪」

 

「あんじゅまで!?」

 

「なんか昔もこんなのあった気がするよ」

 

「ええ」

 

「それで恵衣菜さん、なんで明久くんは女装。しかもメイド服を着ているんです?」

 

「アハハハハハ・・・・・・実はね・・・・・・・」

 

恵衣菜はみんなに僕が女装、メイド服を着ている理由を話した。

 

「なるほどね。それにしても、なんていうのかしら・・・・・・」

 

「そこら辺の女子より可愛いよ明久くん♪」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

僕はその言葉に心臓を射たれた、気がした。

 

「アハハハハハ・・・・・・・とにかく着替えてこようよ明久くん」

 

「うん。そうする」

 

僕は着替えるため、隣の控え室を使用することにした。

着替えは何故か恵衣菜がちゃんと持ってきていた。

さすが僕の恋人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~着替えたよ」

 

僕が普通の制服に着替え、控え室に戻ると時間は12時45分だった。

 

「おかえりなさい」

 

「うん。みんなには伝えた?」

 

「もちろん。最初にツバサちゃんたちA-RISEで最後に穂乃果ちゃんたちμ'sだよね」

 

「そして、待っている間は舞台袖で待機だよね」

 

「合ってるよ。それと今回はテレビカメラも入るみたいだよ」

 

「そうなの!?」

 

「うん。だからと言って、緊張してミスらないようにね穂乃果ちゃん」

 

「う、うん。大丈夫」

 

穂乃果の大丈夫は心配しかないのだけど、と言うのはやめといた。

 

「それじゃあみんな、ライブ頑張って!」

 

「うん」

 

「もちろん♪」

 

「練習の成果を見せるときですね」

 

「頑張るにゃ」

 

「が、頑張ります」

 

「全力を出しきるわ」

 

「にこの可愛さを会場のお客さんに見せてあげる」

 

「精一杯やるやね」

 

「気を抜かずにいくわよ」

 

μ'sのみんなが自己を昂らせる。

A-RISEも無言で頷く。

 

「それじゃあみんな、着いてきて」

 

僕と恵衣菜は控え室からみんなを舞台袖まで誘導する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後12時55分 舞台袖

 

「うわぁー。お客さん沢山いるね」

 

「うん。スタジアム満席だよ」

 

僕と恵衣菜は舞台袖から観客席を見てそう口走る。

観客席は大勢の人で満席になり埋まっていた。

 

「さて、やるわよ」

 

「もちろんだ」

 

「うん♪」

 

衣装に小型のマイクを取り付け終わったA-RISEの3人がそう言う。μ'sのみんなも小型マイクの取り付けは終わったみたいだ。

そして時間になった。

 

 

『ご来場の皆様、本日は文月学園学園祭《清涼祭》にお越しいただき誠にありがとうございます。これより、UTX学院【A-RISE】と音ノ木坂学院【μ's】のスクールアイドルによるライブを開演いたします』

 

 

放送が終わると、スタジアム内に歓喜の声が響いた。

 

 

『それではまず始めにUTX学院【A-RISE】です!』

 

 

「行くよ、二人とも」

 

「ああ」

 

「うん♪」

 

会場が暗くなり、ツバサたちが舞台へ上がっていく。

そして今始まった。

文月学園スタジアムでスクールアイドル、A-RISEとμ'sのライブが。




なんかたまにキャラの口調を忘れてしまいます。
感想や評価お願いします!






次回 『A-RISEとμ's』 ここテストに出ます。


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第Ⅴ門 A-RISEとμ's

姫宮恵衣菜のバカテスト

問題『ギリシア神話で文芸を司る女神たちの事を古代ギリシア語ではムーサ、複数形ではムーサイ。では英語とフランス語ではなんと言う?』


解答

吉井明久

『ミューズ又はミューゼス』


恵衣菜コメント

『さすが明久くん。μ'sの元になった女神だからね』



東條希

『ミューズ、ミューゼス』


恵衣菜コメント

『正解。さすがμ'sの名付け親です』


綺羅つばさ

『ミューズ』


恵衣菜コメント

『正解だよ。つばさちゃんも知っていたんだね』


高坂穂乃果

『ミューズ=μ's』


恵衣菜コメント

『あってはいるけど[ミューズ=μ's]は要らない気がするような・・・・・・・けどまあ、正解だね」




~明久side~

 

 

『『『Can I do? I take it,baby!

   Can I do? I make it,baby!

   Can I do? I take it,baby!

   Can I do? I make it,baby!』』』

 

『そう、行っちゃうの? 追いかけないけど』

 

『基本だね 群れるのキライよ』

 

『孤独の切なさ わかる人だけど 時々言葉を交わし合って』

 

『お互いの場所で』

 

『お互いの想い』

 

『高める each other’s day』

 

『『『What’cha do what’cha do? I do “Private Wars”

   ほら正義と狡さ手にして

   What’cha do what’cha do? I do “Private Wars”

   ほら人生ちょっとの勇気と情熱でしょう?』』』

 

『『『Can I do? I take it,baby!

   Can I do? I make it,baby!

   Can I do? I take it,baby!

   Can I do? I make it,baby!』』』

 

 

 

 

 

 

「さすがだね、つばさたち」

 

「うん。相変わらずキレがいいよ」

 

僕と恵衣菜は舞台袖からステージで歌いながら踊っている、スクールアイドルAーRISE、つばさ、英玲奈、あんじゅの3人を見てそう呟いた。

彼女たちが今、歌っている曲名は《Private Wars》

。前より更に鍛練を積んだのだろう、3人とも舞台で輝いていた。

 

「すごい・・・・・・これがつばさちゃんたち・・・・・・AーRISEのパフォーマンス・・・・・・」

 

「正直、圧倒的ね・・・・・・」

 

「ええ。私たちも相当練習したつもりですが・・・・・・」

 

「彼女たちにはまだまだ届かないわね・・・・・・」

 

穂乃果たちは自分達と比べているのかそう言う。

つばさたちの練習もたまに手伝ったりしていたが、ここまでとは思わなかった。

 

今ので最後の曲だ。

そして、AーRISEのライブが終わった。

ライブは各それぞれ約15分。

AーRISEのライブが終わると、会場は大いに盛り上がり歓声の声や拍手が鳴り響く。

次は穂乃果たちμ'sの番だ。

 

「うう~・・・・・緊張してきた」

 

「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん。いつも通り、練習と同じようにやれば大丈夫。ほら、肩の力を抜いて」

 

「ありがとう、恵衣菜ちゃん」

 

「どういたしまして」

 

恵衣菜は穂乃果の力身を取り除いてあげてる。恵衣菜のお陰で穂乃果もリラックス出来たようだ。

 

「みんな、頑張って」

 

僕もみんなに声援を送る。

 

 

『続いては音ノ木坂学院【μ's】です』

 

 

「行くよ、みんな!ミューーーーズッ!!」

 

「「「「「「「「「ミュージック・・・・・・・・スターートーー!!」」」」」」」」」

 

穂乃果たちは円陣を組んでそう言うと、舞台へ上がっていった。

そして始まった。

 

 

 

 

『『『『『『『『『♪~~~♪♪♪~~~♪~~~~♪♪♪』』』』』』』』』

 

 

『『『真っ直ぐな想いがみんなを結ぶ

   本気でも不器用 ぶつかり合うこころ』』』

 

『『『それでも見たいよ大きな夢は

   ここにあるよ 始まったばかり』』』

 

 

『『『わかってる』』』

 

『『『楽しいだけじゃない 試されるだろう』』』

 

『『『わかってる』』』

 

『『『だってその苦しさもミライ』』』

 

『『『行くんだよ』』』

 

『『『集まったら強い自分になってくよ』』』

 

『『『きっとね』』』

 

『『『変わり続けて』』』

 

『『『We'll be star!』』』

 

 

『『『『『『『『『それぞれが好きなことで頑張れるなら

 新しい『『『場所が』』』ゴールだね

 それぞれの好きなことを信じていれば

 ときめきを『『『抱いて』』』進めるだろう』』』』』』』』』

 

 

『『『恐がる癖は捨てちゃえ』』』

 

『『『『『『『『『とびきりの笑顔で』』』』』』』』』

 

『『『跳んで跳んで高く』』』

 

『『『『『『『『『僕らは今のなかで』』』』』』』』』

 

 

 

僕らは舞台袖に戻ってきたつばさたちと穂乃果たちμ'sのライブを見守る。

今流れている曲は《僕らは今のなかで》だ

 

「うん。みんな上手くやれてるね」

 

「ええ。あんなに練習したんだもん当然だよ」

 

「つばさたち、AーRISEから見て穂乃果たち、μ'sはどうかな?」

 

「そうね・・・・・・ まだまだだけど、かなり上手よ。基礎鍛練もしっかりこなしているようね」

 

「まぁ、そりゃあそこを往復で登ってるからね」

 

「あれはキツいよね」

 

「うん」

 

μ'sの基礎鍛練の体力作りは練習場所のひとつである、神田明神のながーい、急な階段だ。

正直あれはキツいと思う。

 

「彼女たちはたぶん私たちの強敵になるかもしれないな」

 

「そうね。私たちも頑張らないといけないわね」

 

「AーRISEにとっての強敵か~」

 

「穂乃果ちゃんたちは何処まで能力を伸ばせるかな」

 

僕たちはライブをしているμ'sを見てそう呟く。

 

 

 

 

『『『恐がる癖は捨てちゃえ』』』

 

『『『『『『『『『とびきりの笑顔で』』』』』』』』』

 

『『『跳んで跳んで高く』』』

 

『『『『『『『『『僕らと今を』』』』』』』』』

 

『『『弱気な僕にさよなら』』』

 

『『『『『『『『『消さないで笑顔で』』』』』』』』』

 

『『『跳んで跳んで高く』』』

 

『『『『『『『『『僕らは今のなかで』』』』』』』』』

 

『『『『『『『『『輝きを待ってた』』』』』』』』』

 

 

 

一曲目が終わり、会場から歓声の声や拍手が鳴り響く。

そして、歓声や拍手が収まると、会場は暗くなった。

暗くなると、スピーカーから新たな曲が流れてきた。

それと同時に明かりがμ'sを照らす。

 

 

 

 

『『『『『『『『『~~♪~~~~♪♪♪~~~~~~♪♪♪♪』』』』』』』』』

 

 

『『『『『『『『確かな今よりも新しい夢つかまえたい

 大胆に飛び出せば O.K.マイライフ

 望みは大きくね

 背のびだってば 高く遠く

 まぶしいあした抱きしめに行こう

 全部叶えよう』』』』』』』』』

 

『『そうだよ 信じるだけで』』

 

『ぐんぐん前に進むよ、』

 

『『『『『『『『『君が!』』』』』』』』』

 

 

『『『『『『『『『答えなくていいんだわかるから

 胸にえがく場所は同じ』』』』』』』』』

 

『何度でも諦めずに 探すことが僕らの挑戦』

 

『『『『『『『『『元気の温度は下がらない

 熱いままで羽ばたいてく

 あこがれを語る君の

 ゆずらない瞳がだいすき・・・・・・』』』』』』』』』

 

『ダイスキ!』

 

 

二曲目に流れたのは《僕らのLIVE 君とのLIFE》だ。

その後も二曲歌い、μ'sのライブは終了した。

会場が暗くなり、歓声と拍手の音が鳴り響く中、穂乃果たちは舞台袖へ帰ってきた。

 

「お疲れみんな」

 

「すっごくいいライブだったよ」

 

僕と恵衣菜は帰ってきたみんなに労いの言葉をかける。

 

「ありがとう~、二人とも~」

 

「き、緊張しました~・・・・・・」

 

「やっぱり大勢の人がいると緊張するわね」

 

みんなかなり緊張したみたいでホッとついていた。

 

 

『これにてスクールアイドルによるライブを終了いたします。ご来場皆様、誠にありがとうございました。引き続き《清涼祭》をお楽しみください』

 

 

そんな放送が流れると、会場から観客が立上がり出ていく姿が見えた。

 

「今回のライブは成功だね」

 

「うん。そうだね」

 

「みんな、今日は手伝ってくれてありがとう。本当に助かったよ」

 

僕はμ'sとAーRISEのみんなにお礼を言う。

 

「私たちは楽しかったしいい経験ができたし良かったわ」

 

「穂乃果たちもこんな大きな会場でライブさせてくれてありがとう」

 

AーRISEからはつばさが、μ'sから穂乃果が答える。

 

「みんなはこのあと周るの?」

 

「私たちは3人で周るつもりよ」

 

「穂乃果たちも周るよ♪せっかくのお祭りなんだから楽しまなきゃ損だよ」

 

「あははは・・・・・・」

 

「穂乃果ちゃんらしいね」

 

僕は一足先にクラスに戻る為、後の事は恵衣菜に任せることにした。

と言っても、会場の設営の撤収作業は今日が終わってからだから何もないけどね。

この時、僕はまだ気付かなかった。

恵衣菜たちにこのあと悲劇が起こると言うことを―――

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

明久くんが先に教室に戻るのを見たあと、私は穂乃果ちゃんたちと控え室に戻った。

 

「お疲れ様みんな。とってもいいライブだったよ」

 

私はライブ衣装から私服に着替えたみんなに言う。

 

「ありがとう、恵衣菜ちゃん」

 

「参加したかいがあったわ」

 

「うん♪それじゃあ、校内を案内するよ」

 

「恵衣菜さん、お願いします」

 

「うん」

 

私たちは控え室から出て、校舎の方に移動し始めた。

その道中。

 

「おい」

 

1人の男の人に声をかけられた。

 

「どうかしましたか?」

 

「お前、姫宮恵衣菜だな」

 

「え?あの・・・・・・どちら様ですか?」

 

「いいから質問に答えろ。でないと――――」

 

「きゃぁ!?」

 

「凛ちゃん!」

 

凛ちゃんの悲鳴が聞こえ、凛ちゃんを見ると後ろに男の人がいて凛ちゃんの首元にナイフを当たるか当たらないかの間にあてていた。

 

「凛!」

 

「かよちん!」

 

「騒ぐな!」

 

真姫ちゃんと花陽ちゃんが声を出すと、目の前にいる男の人が大きな声で言った。

すると、複数の男の人が現れ、私たちを囲んだ。

 

「もう一度聞く。お前が姫宮恵衣菜だな」

 

「・・・・・・ええ。そうですよ」

 

「ふっ。そうか」

 

「凛ちゃんを今すぐ解放してください」

 

「それは無理だな。お前らには一緒に来てもらう。こいつらと一緒にな」

 

男の人の視線の先には

 

「姉様!」

 

「姫宮さん!」

 

「姫宮!」

 

「・・・・・・恵衣菜!」

 

零華ちゃんと姫路瑞希、島田美波、翔子ちゃんが捕まっていた。しかも葉月ちゃんも一緒だ。

 

「なっ!?あなたたち葉月ちゃんに・・・・ー・小学生相手になんてことを!」

 

私は小学生の葉月ちゃんも捕まえていることに怒りを出した。

島田美波は葉月ちゃんを人質に取られ、相手取ることが出来なかったのだろう。

 

「わかったか?お前は俺らに従うしかないんだよ」

 

「くっ・・・・・・!」

 

男の人の数は目の前にいる人と零華ちゃんたちを捕まえている人たちあわせて約20人程。

 

「わかったわ。但し、彼女たちは解放しなさい。あなたたちの狙いは私ですよね」

 

「言ったはずだぜ。お前は俺らに従うしかないんだよ、ってな」

 

私は誰か1人でも逃がしてこの事を誰かに伝えさせるため、私は周囲を視線だけで見る。

 

「(一番逃げられる可能性が高いのは・・・・・絵里ちゃんだね)」

 

私は瞬時に判断し絵里ちゃんにこの事を伝えさせるための行動をする事にした。

 

「大人しくついてきな。他の連中もな」

 

私は目の前の男が視線を外すのと同時に行動する。

 

「なっ!ぐはっ!?」

 

「絵里ちゃん!早くこの事を明久くんたちに伝えて!」

 

「だ、だけど・・・・・・」

 

「いいから、早く!」

 

「っ・・・・・・・・」

 

絵里ちゃんを逃がすため、絵里ちゃんの近くにいた男の人を倒す。

 

「この女っ!よくも!」

 

「っ!」

 

私は向かってくる男の人の拳を捌くがいかんせん人数が多い。

しかも。

 

「動くなっ!」

 

「っ!」

 

「動いたらこいつらがどうなっても知らねぇぞ」

 

葉月ちゃんや凛ちゃんを人質にしてきたのだ。

 

「うっ!・・・・・かはっ・・・・!」

 

抵抗できなくなった私は、指示を出した男の人から、お腹に拳を叩き込まれた。

 

「明久・・・・・・くん・・・・・・」

 

私は痛みで意識が遠退く中、明久くんが私たちに気づくことを願い気を失った。。

 

 

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回 『Untouchable』 ここテストに出ます。


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第Ⅵ門 Untouchable


バカテスト

門:以下の問いに答えなさい
 『人が生きていく上で必要となる五大栄養素をすべて答えなさい』


吉井明久

『脂質 炭水化物 タンパク質 ビタミン ミネラル』


教師コメント

『さすが吉井くんです』


姫宮恵衣菜

『脂質 炭水化物 タンパク質 ビタミン ミネラル』


教師コメント

『正解です。さすがですね』





 

~明久side~

 

 

廊下

 

 

僕はクラスの出し物でやることを終わらせるため、自分のクラスに戻っていた。

その道中。

 

「あ。明久君」

 

「む。明久ではないか」

 

「秀吉。優子さんも」

 

「お疲れ明久君。ライブは大成功らしいわよ」

 

「うむ。儂も見ておったがよかったぞ」

 

「うん。上手くいって良かったよ。ところで秀吉と優子さんはここで何してるの?」

 

「あ、そうだった。明久君、翔子と零華を見てない?」

 

「零華と霧島さん?見てないよ」

 

「どこ行ったのかしら。携帯も繋がらないのよ」

 

「え?」

 

僕は優子さんの言葉を聞き、スマホを取り出し零華に電話をかける。

 

「繋がらない。おかしいな、こんなこと一度も無かったのに」

 

「それにさっきから二人の姿が見えないのよ」

 

「儂も探しておるのじゃが・・・・・」

 

「どこ行ったんだろう?」

 

3人で思案していると。

 

「あ!明久!」

 

「雄二!どうしたの、血相を抱えて?」

 

「明久、翔子を見なかったか!」

 

「僕らも今探している最中なんだよ。零華もいないみたいだし」

 

「なんだと?秀吉、姫路と島田を見なかったか?」

 

「む?姫路と島田じゃと?儂は見とらんぞ」

 

「私も」

 

「僕も見てないよ」

 

「あの二人、教室にまだ戻っていないらしい。どこに行ったんだ」

 

こうも立て続けに人が。僕の知り合いがいなくなることに僕は疑問を浮かべた。

 

「(嫌な予感がする)」

 

そう思っていると。

 

「あ、明久、くん!」

 

後ろから声がかけられた。

後ろを向くと。

 

「絵里さん?」

 

息も絶え絶えの絵里さんがいた。

 

「どうしたの、絵里さん?恵衣菜は一緒じゃないの?」

 

「明久くん・・・・・恵衣菜さんが、拐われ、ました・・・・・他のμ'sのメンバーと、AーRISEのメンバー、そして、零華さんの他4人も、です」

 

「「「「なっ!?拐われた(じゃと)!?」」」」

 

「ええ。恵衣菜さんは私を逃がすために・・・・・」

 

呼吸が落ち着いたのか絵里さんは何時もと同じように話すが、涙声で体が振るえている。

 

「恵衣菜、零華・・・・・・!」

 

「まさか、その中に翔子や姫路、島田もいるんじゃねえか!?」

 

「あと、葉月ちゃんと言う女の子が捕まってるわ」

 

「葉月ちゃんも!?」

 

「どうするつもり明久君」

 

「もちろん決まってるよ。恵衣菜たちを助け出す」

 

「だな。おい!ムッツリーニ!」

 

「・・・・・・事態は把握済み。姫宮たちが連れていかれたのはここから歩いて10分程離れた場所にあるカラオケボックスの中」

 

「流石だなムッツリーニ。秀吉、一旦クラスの事を任せる。木下はAクラスを頼む」

 

「了解じゃ」

 

「わかったわ」

 

「ムッツリーニは俺たちに着いてきてくれ」

 

「・・・・・・承知」

 

「よし、行くぞ明――――ってもういねぇのかよ!?」

 

雄二がそこまで言うのを聞くと、僕はそのあとを聞くまでもなく疾風を纏っているかのように駆け抜けていく。

目指す場所は《文月カラオケボックス》店だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラオケボックス

 

 

「すみません、今大人数で使用しているパーティールームってありますか?」

 

僕はカラオケボックスに着くなり、カウンターの店員に聞いた。

 

「え?あ、はい。一部屋だけ使われております」

 

「場所は何号室ですか?」

 

「に、201号室です」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

僕はカラオケのルームがある方へ足を進める。

すると、

 

「明久」

 

「雄二、やっと来たね」

 

「お前が速いんだよ。それで・・・・・・・何号室だ?」

 

「201」

 

「そうか。ムッツリーニ、準備を頼む」

 

「・・・・・・了解」

 

康太がいつの間にか現れ、またしてもいつの間にかいなくなった。

 

「201号室まで行くぞ」

 

「わかってる」

 

僕と雄二は201号室へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・・・・・・・・殺ろうか雄二」

 

「あぁ。そうだな・・・・・・・・・・殺るか、明久」

 

僕と雄二は201号室手前扉まで来ると頷きあい扉に手をかける。

 

"バンッ!"

 

そして思いっきり扉を開けた。

 

「失礼しまーす」

 

「邪魔するぞ」

 

「あ?なんだお前ら」

 

「兄様!」

 

「・・・・・・雄二」

 

「明久くん!」

 

中に入ると、女子は全員端の方に座っていた。

ただ、一人。恵衣菜だけは零華たちとは反対側に横に縄で縛られて寝かされていた。しかも意識が無いようだ。更に、恵衣菜に数人の男が触れていた。髪や顔、しかも服にまで。

その姿を見た僕は、何かが弾けとんだ。

 

「てめぇら・・・・・・・・よくも・・・・よくも恵衣菜に手を出してくれたな!」

 

僕は近くにいた男の手首を取ると関節を外す。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

男は痛みのあまり悲鳴をあげる。

 

「うるさい、黙れ」

 

僕は悲鳴をあげている男の腹を殴り気絶させる。

 

「お前ら、覚悟は出来ているんだろうな」

 

「こ、コイツ吉井明久だ!」

 

「おい。しかもあそこにいるのは悪鬼羅刹の坂本だぞ!」

 

どうやら僕だけじゃなくて雄二の事も知っているみたいだね。雄二の中学時代の異名は悪鬼羅刹。それは今でも噂されている。

 

「さてと・・・・・・・よくも翔子を拐ったな。お前たちに慈悲はねぇな」

 

雄二はそう言うやいなや近くにいた二人の頭部を壁にぶつけ気絶させる。

 

「零華!みんな!無事!」

 

僕はそのあと三人気絶させ零華たちの前に立つ。

 

「兄様・・・・・姉様が」

 

「うん。任せて。雄二!零華たちをお願い!」

 

「ああ!」

 

「余裕かましてんじゃねぇぞゴルァ!」

 

「遅い!」

 

チンピラ男の向かってくる拳を軽く避け、カウンターを喰らわせる。

 

「ゴファ・・・・・!」

 

「たった二人で何が出来るってんだ!」

 

「二人?何言ってんの?」

 

「何?」

 

「康太!」

 

「・・・・・・承知」

 

暗殺者の如く男の背後に回った影は首筋に何かを当てると、その男を気絶させた。

影の正体は康太だ。そして、手に持っているのはスタンガン。

どこでそれ手に入れたんだろう?

そんなことを思っていると、康太は立て続けに3人気絶させていた。

康太の役割は背後から近づき、葉月ちゃんを救出することだ。

 

「康太、ナイス」

 

「・・・・・・(グッ)」

 

救出した葉月ちゃんは泣きながら姉の島田さんに抱き付いていた。島田さんも葉月ちゃんの背に手を回し、優しく撫でていた。こういうところはちゃんとお姉さんらしく優しいみたいだ。これで、僕になにもしなかったら高評価なんだけどな~

そんなこんなで残りは5人まで減った。チンピラ共が。

 

「動くな!それ以上動いたらこの女がどうなっても知らねぇぞ」

 

残っていた5人は未だに気を失っている恵衣菜を人質にとった。

 

「くっ・・・・・」

 

「・・・・・・このゲス共が」

 

康太と雄二は恵衣菜を人質に取られ動けない。

 

「動くなよ、吉井明久。それ以上動いたらお前の恋人がどうなるかな?」

 

男はそう言いながら恵衣菜の身体を掴み盾にした。

それを見て僕の中でさっきとは違う何かが弾けとんだ。

 

「てめぇら・・・・・・それ以上恵衣菜に触れるな・・・・・・!!」

 

「「「「「・・・・・・!」」」」」

 

僕はかなり本気の殺気を飛ばす。

 

「や、ヤバい。兄様が本気で怒ってる」

 

「や、ヤバイわよ、これ」

 

「ヤベェ、明久のヤツ完全にキレてる。さっきとは桁違いだぞ」

 

零華とつばさ、雄二のそんな声が耳にはいる。

僕の殺気に当てられないように、零華と雄二、康太がみんなを守るように前に出るのが見えた。

 

「な、なんなんだよ、お前!」

 

「く、来るなっ!」

 

男たちが怖じ気づいたかのように引く。

僕は普通・・・・・・・・・とは、言えないのかな?。男たちに向かって歩く。まあ、ほんの5歩で着くけど。

 

「こ、このっ!」

 

「死ねやゴルァ!」

 

4人男が拳を振りかざして来るが僕は、順に拳をいなしカウンターで男たちの鳩尾や顔面を殴り、数秒で殲滅する。

 

「ひっ・・・・・!」

 

恵衣菜を掴んでいる男の前に立つと、僕は男の右手を左手で掴んだ。

 

「さっさと恵衣菜から離れろ」

 

男の右手を強く握り、右手が当分動かせないようにし、恵衣菜から離す。

離れた恵衣菜を、僕は右手で支える。幸いにも目立った外傷は無いようだ。

 

「このガキがぁぁぁあ!!」

 

「だから遅いって」

 

男は小型のナイフを左手で握り、僕に振り下ろしてくる。左手は恵衣菜わ支えているから使えないが、右手だけで充分だ。

僕は恵衣菜を引き寄せ、離さないようにし、向かってくるナイフを握った左腕を右手でいなし軌道をずらす。相手の懐に入ると、鳩尾にひじ打ち、顎に掌底を喰らわせ意識を混濁させる。そして右回し蹴りで相手を壁に蹴り飛ば・・・・・・・ではなく吹き飛ばした。

 

「ふぅ~」

 

「あ、明久。死んでないよなソイツ?」

 

「多分死んでないと思うよ?あ、でも骨の何本かはいってるかもだけど」

 

「おいおい・・・・・・」

 

僕は恵衣菜を縛っている縄を解き、零華たちの方を見る。

 

「と・・・・・・・みんな、大丈夫?怪我とかしてない?」

 

「いえ兄様。怪我とかよりさっきの兄様にみんな怖がっているんですが・・・・・・」

 

「え?」

 

零華たちの方を見ると全員が首を縦に振っていた。

 

「あのなぁ、明久。いくら俺と康太、吉井で幾分かお前の殺気を防いだとは言え、あれは怖えよ」

 

「・・・・・・雄二に同感」

 

「え、え~と・・・・・・その、ご、ごめんみんな」

 

「だ、大丈夫だよ明久くん」

 

「ええ。明久は私たちを助けてくれたんですから」

 

ことりと海未の言葉に穂乃果たちは頷いた。

 

「取り敢えず・・・・・翔子、姫路、島田、全員を連れて先に文月学園に戻っていてくれ」

 

「は、はい」

 

「わかったわ。坂本たちはどうするの?」

 

「俺はこいつらに聞きたいことがあるからな・・・・・・」

 

「そう。わかったわ、クラスの方は任せてちょうだい」

 

「頼む」

 

「ええ。それと、アキ、坂本、土屋、葉月を助けてくれてありがとう」

 

「気にしないで島田さん」

 

「ああ」

 

「・・・・・・同じく」

 

「零華もみんなと一緒に文月学園に戻っていて」

 

「わかりました、兄様。姉様は・・・・・・」

 

「恵衣菜も連れていってあげてくれる?」

 

「わかりました」

 

僕は眠っている恵衣菜を零華に託し、みんながルームから出ていったのを確認すると、

 

「雄二、先に言うけど多分今回のこれ、教頭が絡んでいるはず」

 

雄二にそう告げる。

康太は護衛として零華たちと一緒に文月学園に帰っていった。

 

「なに?教頭って、あの竹原か?」

 

「うん。実は僕と恵衣菜は学園長にある依頼を頼まれているんだ」

 

「その依頼。今回のこれと教頭が関与しているってことは、学園規模ってことだな」

 

「それもあるけど、教頭の狙いは学園長を失脚させること。詳しくは後で話すよ。とにかくコイツらから話を聞かないと」

 

「だな」

 

雄二は、リーダーと思わしき男を見つけると叩き起こした。と言ってもまあ、僕が最後に気絶させた男なんだが。

 

「おい」

 

「うっ・・・・・・・うう・・・・・」

 

チンピラはどうやら目が覚めたらしく辺りを見ていた。

そして、僕と雄二を見るとお化けでもみたかのように後ろに後ずさった。まあ、すぐ後ろは壁なんだけど。

 

「質問に答えろ。なぜ、あいつらを拐った」

 

「お、お前らの学校の教頭だとか言うヤツに、た、頼まれたんだよ」

 

「その教頭の名前は」

 

「た、竹原って言っていった」

 

「頼まれたって言ったが誰を拐うように頼まれた」

 

「よ、吉井明久。もしくは恋人の姫宮恵衣菜を拐うように頼まれた」

 

「何故、拐うか言っていたか」

 

「あ、ああ。計画の邪魔になるとか言っていた。他のやつらもついでに拐ったのは、ふ、複数いた方がいいって言われたからだ」

 

「そうか・・・・・・・明久」

 

「うん・・・・・・さて、あんたたちが行ったことは録音済みだ」

 

「・・・・・・」

 

「別にこれを警察に届けてもいい。けど、今後二度と僕らの目の前に現れないのならば警察には届けない」

 

「!」

 

「いいのか明久?」

 

「うん。自分の行なったことを改めて悔いるんだな」

 

僕はそう言うとその場から立ち去った。

雄二は僕のあとをついて出る。

カラオケボックスから出て暫く歩いたところで、僕は止まる。

 

「ごめん、雄二」

 

「気にするな。翔子たちが無事ならそれでいい。それより・・・・・・」

 

「うん」

 

僕はポケットからスマホを取り出し電話をかける。

相手は―――――

 

「学園長」

 

『なんかあったのさね吉井?』

 

「教頭からの妨害で恵衣菜たちが拐われました」

 

『なっ!竹原め、とうとう実力行使に出てきたってのかい』

 

「恐らくそうだと思います」

 

『それで、姫宮たちは』

 

「恵衣菜たちはすでに救出済みです。それでなんですが・・・・・」

 

『ああ。わかってるさね』

 

「それと坂本雄二に話しました」

 

『そうかい・・・・・・・・。今日の17時半、学園長室に坂本と一緒に来な』

 

「わかりました。それとそこに南かおりさんを同伴させても構いませんか?」

 

『音ノ木坂学院の理事長さね・・・・・・いいさね。姫宮はどうするんだい?』

 

「恵衣菜には後で僕から伝えます」

 

『そうかい』

 

「はい。では失礼します」

 

僕はそう言うと通話を切り、スマホをしまった。

 

「雄二、今日の放課後僕と一緒に学園長室に来て」

 

「ああ。わかった」

 

僕はそう言うと、雄二と学園に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園

 

 

「明久、お前は保健室に行って姫宮と一緒にいたらだうだ?」

 

「ごめん雄二、そうさせてもらうよ」

 

雄二の提案に、僕は恵衣菜がいるであろう保健室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室

 

「失礼しま~す」

 

「おっ!恵衣菜ちゃんの旦那が来た」

 

「誰が旦那ですか!?僕と恵衣菜はまだ結婚してないよ!!」

 

「あっはっはっは!ナイスツッコミだよ明久くん!」

 

「翠姉さん、ここ保健室だよ」

 

「うん。知ってる。だってここの保険医だもん」

 

「ハァー。それで、翠姉さん恵衣菜は・・・・・・」

 

僕が翠姉さんに訪ねると、翠姉さんは立ちあがり奥の窓近く、カーテンが覆われたところに立ち、中に入った。それに続いて僕も入る。

 

「零華ちゃんから聞いたわ。災難だったわね。しかも恵衣菜ちゃん、相手の男からお腹に拳を入れられたみたいよ」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

僕はベットで安らかに眠る恵衣菜の脇に立ち、恵衣菜の左手を握る。

 

「恵衣菜ちゃんは気絶してるだけみたいね。多分、辺りどころが悪かったんだと思うわ」

 

「そう・・・・・・・・・・・・」

 

「大丈夫よ、明久くん。恵衣菜ちゃんは貴方の彼女。恋人、でしょ。もう少ししたら目を覚ますと思うわよ」

 

「うん・・・・・・そうだね。ありがとう、翠姉さん」

 

「明久くんは恵衣菜ちゃんが起きるまで一緒にいてあげなさい。と、言ってもまあ、私が言うことじゃなかったわね」

 

翠姉さんは苦笑してカーテンから出ると、少しして一脚の椅子と飲み物を持って戻ってきた。

 

「私も教師としてそろそろ周らないと行けないのよ。何かあったら連絡してちょうだいね」

 

「うん。ありがとう、翠姉さん」

 

僕は翠姉さんが持ってきてくれた椅子に腰掛け恵衣菜の寝顔を見守る。

暫くすると、ドアの開閉音が聞こえた。翠姉さんが出ていったようだ。

僕は椅子に腰掛けながらスマホを取り出し電話をかける。

 

「かおりさん、明久です」

 

かけた相手はことりの母親で音ノ木坂学院の理事長、かおりさんだ。

 

『あら、明久くん。どうしたのかしら?』

 

「かおりさん、まず謝罪させてください」

 

『え?謝罪?何故、明久くんが謝罪する必要があるのかしら?』

 

「ことりたち・・・・・・μ'sを僕らの騒動に巻き込ませてしまったからです」

 

『どう言うことかしら?』

 

「恵衣菜を標的とした拐いにことりたちを巻き込ませてしまいました。その結果、ことりたちも拐われました」

 

『そうなの・・・・・・・それで、みんなは?』

 

「ことりたちはすでに救出しました。今は恐らく零華たちと一緒にいると思います」

 

『そう・・・・・・まずは、ありがとう明久くん。みんなを助けてくれて』

 

「いえ。元を辿れば僕らが関係してますから」

 

『いいえ。それでもお礼を言わせてちょうだい。ありがとう』

 

「かおりさん・・・・・・」

 

『明久くんは無事なのかしら?』

 

「僕は無事です。けど恵衣菜がまだ目を覚まさないんです」

 

『そうなの・・・・・・』

 

「それでなんですけど、かおりさん。今日の17時半時間は大丈夫ですか?」

 

『ええ。元々今日と明日は特に予定はないわよ』

 

「でしたら今日の17時20分に文月学園の校門にいてもらってもいいですか?」

 

『ええ』

 

「ありがとうございます」

 

『それじゃあ17時20分に校門で待っていますね』

 

「お願いします。では」

 

『ええ』

 

「失礼します」

 

僕はそう言うと通話を切りスマホをしまう。

安らかに寝息をたてる恵衣菜を見る。

 

「ごめんね、恵衣菜。痛かったよね」

 

僕は優しく恵衣菜の頭を撫でる。

そのまま時間が経ち、いつの間にか僕も寝てしまったのか起きたときには時刻16時20分だった。

 

「いつの間にか寝ちゃってたんだね」

 

僕は時間を見てそう苦笑して呟く。

すると。

 

「可愛かったわよ、明久くんの寝顔」

 

「え・・・・・?」

 

「おはよう、明久くん」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

「うん。恵衣菜だよ」

 

「恵衣菜!恵衣菜!」

 

「苦しいよ明久くん//////」

 

僕は嬉しさのあまり泣きながら恵衣菜を抱き締めた。

 

「うっ・・・・・・うう・・・・・・・良かった、目が覚めて」

 

「大袈裟だよ明久くん//////」

 

「大袈裟なもんか。心配したんだからね」

 

「うん・・・・・・明久くん、ありがとう助けてくれて」

 

「ううん。僕も・・・・・・助けるのが遅くなってごめんね」

 

「明久くん・・・・・・・・」

 

「恵衣菜・・・・・・・」

 

僕と恵衣菜は互いの顔を見つめ合った。

そして、自然と顔が近くなった。

 

「明久くん・・・・・・」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

そして、僕と恵衣菜は唇を合わせキスをする。

僕と恵衣菜は、火照った体を密着させて、互いの五本の指を交互に絡め合う。

 

「んちゅ・・・・・・は・・・・・・るちゅ・・・・・・明久くん・・・・・」

 

「ん・・・・・・恵衣菜・・・・・・」

 

「っっ、んんっ・・・・・・ふぁ、ちゅ・・・・・・」

 

「んあ・・・・・・恵衣菜・・・・・」

 

口の中で僕は恵衣菜の舌を絡め唾液を交換する。

キスをしていた時間は1分を越えるだろう。

そっと唇を放した僕は恵衣菜を見る。

 

「続きは夜・・・・・・部屋、でね」

 

「うん・・・・・・・」

 

僕は恵衣菜にそう言うと、軽く抱きしめ、このあとの事をいい、椅子に腰掛けた。

 

「じゃあ、終わるまで待ってるね」

 

「うん。待たせてごめんね」

 

「ううん。平気だよ」

 

僕はかおりさんわ迎えに行くため校門に向かう。

時間は17時10分になっていた。











次回 『渦巻く陰謀』 ここテストに出ます。


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第Ⅶ門 渦巻く陰謀


バカテスト清涼祭編

問:学園祭の出し物を決めるためのアンケートにご協力ください。
『喫茶店を経営する場合、ウェイトレスのリーダーはどのように選ぶべきですか?
【Ⅰ:可愛らしさ Ⅱ:統率力 Ⅲ:行動力 Ⅳ:能力 Ⅴ:その他 また、その時のリーダーの候補も上げてください』


解答

吉井明久

『Ⅰ:可愛らしさ 候補・・・・・・姫宮恵衣菜、吉井零華、南ことり、小泉花陽、優木あんじゅ
 Ⅱ:統率力   候補・・・・・・坂本雄二、園田海未、綾瀬絵里、西木野真姫、統堂英玲奈
 Ⅲ:行動力   候補・・・・・・土屋康太、横溝浩平、高坂穂乃果、矢澤にこ、星空凛
 Ⅳ:能力    候補・・・・・・須川亮、木下秀吉、東條希、綺羅ツバサ
 Ⅴ:その他   候補・・・ ・・不明     』


教師コメント

『まさか全て書くとは思いませんでした。それぞれの長所に振られていますね。さすが吉井くん。全体を見てますね。ですが、何故μ'sやAーRISEまで書かれているのでしょう?』


姫宮恵衣菜

『Ⅰ:可愛らしさ 候補・・・・・・宵宮秋菜、吉井零華、南ことり、小泉花陽、優木あんじゅ
 Ⅱ:統率力   候補・・・・・・吉井明久、坂本雄二、園田海未、綾瀬絵里、西木野真姫、統堂英玲奈
 Ⅲ:行動力   候補・・・・・・土屋康太、横溝浩平、高坂穂乃果、矢澤にこ、星空凛
 Ⅳ:能力    候補・・・・・・須川亮、木下秀吉、東條希、綺羅ツバサ
 Ⅴ:その他   候補・・・ ・・不明     』

教師コメント

『吉井くんのほぼ似ている感じがしますね。ところで、Ⅰ:の可愛らしさの宵宮秋菜って誰ですか?』



吉井零華


『Ⅰ:可愛らしさ 候補・・・・・・宵宮秋菜、姫宮恵衣菜、佐藤美穂、南ことり、小泉花陽、優木あんじゅ
 Ⅱ:統率力   候補・・・・・・吉井明久、霧島翔子、木下優子、園田海未、綾瀬絵里、西木野真姫、統堂英玲奈
 Ⅲ:行動力   候補・・・・・・工藤愛子、高坂穂乃果、矢澤にこ、星空凛
 Ⅳ:能力    候補・・・・・・久保利光、東條希、綺羅ツバサ
 Ⅴ:その他   候補・・・ ・・不明     』


教師コメント

『さすがAクラス代表です。クラスメイトをよく見てますね。ところで、姫宮さんにも書いたのですが宵宮秋菜って誰ですか?』




 

~明久side~

 

「お待たせしました。待たせてしまってすみません」

 

「いえ、私も今来たところだから大丈夫よ、明久くん」

 

保健室から出た僕は、一日目の文化祭が終わりあまり人のいない昇降口から、校門へ来ていた。

そこにいたのは、音ノ木坂学院理事長南かおりさんだ。

 

「では、こちらへ」

 

僕はかおりさんを連れて新校舎のある場所へ向かう。

その場所は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"コンコン"

 

「学園長、音ノ木坂学院理事長をお連れしました」

 

『入りな』

 

「失礼します」

 

 

そう、学園長室だ。

室内には学園長とすでに来ていた雄二がいた。

 

「失礼いたします。音ノ木坂学院理事長南かおりです」

 

「ご丁寧にどうも。アタシは文月学園学園長藤堂カヲルだよ」

 

学園長とかおりさんが社交辞令として挨拶をかわす。

 

「俺は、明久と同じクラスの坂本雄二だ。よろしく頼む」

 

「南かおりです。よろしくお願いします」

 

さらに雄二とも挨拶をかわした。

 

「それでは学園長、お願いします」

 

「ああ」

 

かおりさんは反対側の雄二と僕が応接用のソファーに、学園長が執務机の椅子に腰掛けるのを確認し話す。

 

「まず、南さん。今日のライブの出演協力ありがとうさね」

 

「いえ、あの子達も張り切っていましたので、成功して良かったです」

 

かおりさんと学園長が話すなか、僕は雄二から小声で話していた。

 

「雄二、クラスの方はどうだった?」

 

「あの後は特に何もなかったな。Aクラスの方も同様だ」

 

「そう。よかった」

 

「ところで明久」

 

「なに?」

 

「お前、音ノ木坂の理事長と知り合いなのか?」

 

「え?うん、まあね」

 

僕は雄二に軽く言った。

そう話終え、僕らは学園長の方を向く。

 

「吉井。姫宮の容態はどうだい?」

 

「恵衣菜はついさっき起きました。保険医の翠先生の診断では特に後遺症は無いようです」

 

「そうかい・・・・・・」

 

学園長は安堵したように答えた。

かおりさんもホッとしている。

 

「それより答えてくれないか? 学園長、あんたは明久と姫宮に何を依頼したんだ?」

 

「・・・・・・あまり言いたくないんだけどねぇ・・・・・・。まあ、あんたと南さんには迷惑かけたし仕方無いさね。だが、これは他言無用で頼むよ」

 

「ああ」

 

「わかりました」

 

「アタシが吉井と姫宮に依頼したのは、明日、試験召喚大会で優勝して、その優勝商品である白銀の腕輪を回収することさ」

 

「回収、だと?」

 

「藤堂学園長。何故、回収が必要なのですか?」

 

「その腕輪はまだ欠陥品なのさ」

 

「欠陥品、ですか?」

 

「かおりさん、その腕輪は下手したら暴走する可能性があるんです」

 

「暴走する可能性?」

 

「どういうことだ?」

 

「つまりね雄二。白銀の腕輪はまだ開発途中の段階で、実用化はまだ無理ってこと。もし、その欠陥品が大会の優勝商品として優勝者が手にし暴走したらどうなると思う?」

 

「・・・・・・なるほどな。だがそれなら商品から外せば・・・・・・・は無理か」

 

「うん。デモンストレーションも無しにしたらその腕輪の新技術存在そのものが問われるからね」

 

「というとこさね」

 

「ちなみにその腕輪は、どれくらいの点数ならば使用できるんですか?」

 

「白銀の腕輪には二種類あるんだが、《召喚フィールド作成》の方は問題ないんだが・・・・・・・。もう1つの《同時召喚》の方がちと問題でね。吉井兄妹や姫宮みたいな高得点じゃないと使用できないのさ。それに《同時召喚》は使用がかなりややこしくてね。加えていうならばこれはある意味吉井専用だね」

 

「ってことは《同時召喚》は明久にしか使えない、ってことか」

 

「そういうことさね」

 

雄二の確認に学園長は苦虫を潰したように言う。

僕もさすがにここまでとはと思ってなかったので驚いた。

 

「なるほどな、納得がいったぜ。ってことは教頭の竹原の奴学園長の失脚を狙ってやった、ってことか」

 

「そういうことになるさね」

 

「くっ・・・・・・!ふざけんじゃねぇぞ。そんなことで翔子たちは拐われたって言うのかよ!」

 

「その点についてはすまないね。まさかアタシも竹原があんな実力行使をしてくるとは思わなかったのさ。南さんも申し訳ない。貴校の生徒を我が校の問題に巻き込んでしまった」

 

学園長は立ち上り雄二とかおりさんに頭を下げた。

教育機関の長としてこれは看過できないのだろう。しかも、他校の生徒を巻き込んでしまったのだから。

 

「頭を上げてください藤堂学園長。確かに問題ですが、私は生徒たちが無事ならそれで構いません」

 

「ああ。俺も翔子たちを助けられたからな、それに関してはこれ以上どうのこうの言うつもりはない」

 

「すまないね」

 

学園長は二人からそう言われると頭を上げ、執務机の椅子に座る。

 

「それで、学園長お願いがあるんですが」

 

「なんだい吉井?」

 

「明日の試験召喚大会であの腕輪の使用許可を下さい」

 

僕は学園長に真剣な眼差しで向かって言う。

 

「・・・・・・・いいさね。許可するよ。但し、使用する前に必ずアタシに連絡しな」

 

「わかりました」

 

僕は恵衣菜とタッグで試験召喚大会に出場登録しているのだ。

 

「かおりさん、明日穂乃果たちも来ますよね?」

 

「ええ。ことりがμ'sのみんなで行く、っていたから行くと思うわよ」

 

「学園長、確かスタジアムにはVIPルームがありましたよね」

 

「なるほどさね・・・・・・・。明日の試験召喚大会の観戦はそこで出来るように計らえばいいのさね」

 

「はい。出来ますか?」

 

「当然ね。南さんもそれでいいかい?」

 

「はい。ご配慮ありがとうございます藤堂学園長」

 

これで明日、召喚大会の間の穂乃果たちの安全は考慮された。

 

「これで終わりさね。何か質問はあるかい?」

 

「いや、俺は特にない」

 

「私も大丈夫です」

 

「そうかい」

 

「ああ。では、俺はこれで失礼する」

 

雄二はそう言うと学園長室から出ていった。

恐らく霧島さんを迎えに行ったのだろう。

 

「吉井、姫宮は明日出られるのかい?」

 

雄二が出ていくと学園長がそう僕に聞いてきた。

恵衣菜の事を配慮して聞いたのだろう。

 

「恐らくは出られるはずです。万が一の場合は僕一人で闘います」

 

「そうかい・・・・・・南さん、そちらの生徒の様子は大丈夫かい?」

 

「ええ。あの子達は特に何かされたと言うわけではないそうなので」

 

「そうかい・・・・・・・」

 

「あ、ですが一応このあと西木野病院で診てもらうことになってます」

 

「西木野病院と言うとあの西木野かい?」

 

「ええ」

 

西木野病院の院長である西木野先生はμ'sの1年生メンバー西木野真姫の親だ。

そして、僕が去年入院したのも西木野病院だったりする。

 

「では、藤堂学園長、私はこれで失礼します」

 

「あ、僕もこれで失礼します。学園長」

 

「ええ。では、明日の事は後程送るさね。それと吉井にはあと一点確認したいことがあるさね」

 

「わかりました」

 

「じゃあ、私はそこで待ってるわね明久くん」

 

「すみませんかおりさん」

 

かおりさんはそう言うとハンドバックを手に取り学園長室から出ていった。

 

「学園長、話と言うのは例の件、ですね」

 

「ああ。それで、どうなんだい?」

 

「十中八九、竹原が仕掛けた物です」

 

僕は朝、康太から渡されたあの時仕掛けられていた盗聴機を取り出す。

盗聴機は厳重に袋に入っている。

 

「わかったさね。土屋に礼を言っといてくれ」

 

「わかりました。それと、腕輪ですが恐らく使うのは一戦だけだと思います」

 

「そうかい。それじゃあ明日は頼むよ吉井。いや、文月学園第2学年序列一位吉井明久」

 

「はい。任せてください」

 

僕は学園長に一礼し盗聴機をうちポケットにしまい、部屋から出た。

 

「失礼しました」

 

学園長室から出ると目の前の壁にかおりさんが寄り掛かっている姿があった。

 

「早かったわね」

 

「簡単にお願いされていたことを話しただけなので」

 

「明久くんは本当に信用されているのね」

 

「そんなことないですよ。一応僕は観察処分者ですし」

 

「それも自分からなったのでしょ?なら、それは誇るべきものよ明久くん」

 

「そうですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

かおりさんが歩きながらそう言うが、あまり実感がわかない。

 

「ところで、明久くんは問題ないの?」

 

「え?何がですか?」

 

「ことりから聞いたのだけど明久くん、恵衣菜ちゃんを盾にされてかなり本気で怒ったのよね?それで、去年の事を思い出したりは・・・・・・?」

 

「いいえ。確かにあの後立ち眩みや頭痛がしましたけど、特に問題はないですよ。それに、去年の事も覚えてないですね」

 

「そう・・・・・・なのね」

 

かおりさんが言ったように僕は、本気で怒ったとき何故か頭が痛くなる。原因は分からないが貧血のような物だからあまり気にしてはいない。

さらに言うならば、僕は去年の入院した原因の記憶がないのだ。僕の担当医は西木野先生だったのだが、真姫が西木野先生の娘だと言うのはμ'sの練習過程で知った。

 

「それじゃあ、明日頑張ってね明久くん」

 

「はい」

 

かおりさんは僕にそう言うと学園から出ていった。

 

「さてと、僕も恵衣菜を迎えに行かないと」

 

零華は葵姉さんと帰っているはずなので、僕は恵衣菜と帰ることになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、恵衣菜」

 

「あ、お帰りなさい明久くん」

 

保健室に入ると、室内のソファーに腰掛けている恵衣菜の姿があった。

恵衣菜の側には鞄が二つあった。どうやら、僕と恵衣菜の鞄を誰かが持ってきてくれたみたいだ。

 

「それじゃあ帰ろうか」

 

「うん♪」

 

僕と恵衣菜は保健室を後にし、昇降口から自宅への帰路についた。

家に着くと、零華と葵姉さん、翠姉さんが家にいて驚き夕飯を5人で食べ、葵姉さんと翠姉さんは自宅に帰り、僕らはお風呂に入り自室でのんびりしていたのだが、学園長室に行く前に恵衣菜が言った通り、恵衣菜が何時もより際どい服装で来てそのあとは、まあ、存分にイチャイチャした、とここに記しておくことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

清涼祭二日目 午前9時 Fクラス

 

 

「さて、二日目も張り切っていくよー!」

 

「「「「「「「「「「おぉーーーーーー!!!」」」」」」」」」」

 

僕の掛け声にクラスから張り切る声が聞こえる。

 

「それじゃあみんな。各自持ち場に就いて準備をして!」

 

恵衣菜の言葉にみんなは役割分担のために動いた。

こう言うときは統率力があって使いやすい。

 

「私たちは召喚大会の準備をしないとだね」

 

「うん。にしてもまさか零華と葵姉さんも出るなんてね」

 

「そうだね。昨日聞いたときは驚いたわ」

 

そう今回の召喚大会に零華と葵姉さんはタッグパートナーとして参加するらしいのだ。他には、雄二と霧島さんペア、恭二と友香さんペア、平賀くんと三上さんペア、などなどが出るらしい。さらに、そこには姫路さんと島田さんペアも入っていた。

 

「明久くん、昨日はゆっくり出来た?」

 

「う~ん。まあ、ゆっくり出来たかな?恵衣菜と一緒に寝たから」

 

「私も。明久くんと一緒に寝たからかな、何時もよりゆっくり出来たよ」

 

ちなみにこの会話は小声で行われているため、周囲の姫路さんや島田さんたちには聞こえない。

昨日、あんなことがあったのだ、僕は何時も以上に恵衣菜を気遣って見ているがその心配は杞憂みたいだ。

あの後、穂乃果たちは西木野病院で検査してもらったようだが特に異常もなく健康体だそうだ。

そんなわけで今日も穂乃果たちμ'sとツバサたちAーRISEは来るらしい。まあ、かおりさんたちも来るみたいだけど。

そんなこんなで準備し時刻が9時半丁度。

 

 

"ピンポンパンポーン♪"

 

 

 

『ただ今より、文月学園学園祭《清涼祭》二日目を開催いたします。生徒のみなさん、一日目同様、楽しみ、張り切っていきましょう。なお、本日は文月学園スタジアムにて試験召喚大会が行われます。ご来場の皆様、よろしければこちらも是非お楽しみください』

 

 

 

"ピンポンパンポーン"

 

 

二日目開催のアナウンスが流れ始まった。

 

「さてと、それじゃあ行こうか恵衣菜」

 

「うん」

 

「須川くん、僕らは召喚大会に行ってくるからね」

 

「おうよ。きっちり勝ってこいよ」

 

須川くんの激励を元に僕と恵衣菜は教室から出て、文月学園スタジアムへと向かった。

試験召喚大会の1回戦目の時間は9時45分からだ。

対戦相手はその時までわからないみたいので、その場でのお楽しみだったりする。

 

「行くよ恵衣菜!」

 

「うん!行こう、明久くん!」





宵宮秋菜は彼の女装したときの名前です。
今作を読んでくださっていらっしゃる人はすぐわかると思いますよ。






次回 『試験召喚大会開幕』 ここテストに出ます。


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第Ⅷ門 試験召喚大会開幕

バカテスト清涼祭編

学園祭のアンケートにご協力ください。
『喫茶店を経営する場合、制服はどんなものが良いですか』


解答


吉井明久

『その場にあう、華美でなく自分が着てもいいと思うもの』


姫宮恵衣菜

『コストのかからず学園祭らしいもの』


吉井零華

『家庭用のエプロン』


南ことり

『メイド服やかわいい服』


高坂穂乃果

『私服』


園田海未

『学園らしいもの』




~明久side~

 

 

 

『ご来場の皆さま。お待たせいたしました。只今より、《清涼祭》2日目のメインイベント。試験召喚大会を始めさせていただきます』

 

 

 

文月スタジアムに来ると、スタジアムは昨日のライブ風景から一変し、スタジアム本来の姿になっていた。

 

「始まったね~」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜はスタジアムの控え室でそんなことを言った。

控え室にあるスクリーンには開会セレモニーが行われている映像がリアルタイムで映し出されていた。

 

 

 

『実況は文月学園放送部2年新野すみれが。解説は学年主任高橋洋子先生がお送りいたします』

 

『よろしくお願いします』

 

 

 

「・・・・・・また、新野さんと高橋先生なんだ・・・・・・」

 

「そうみたいだね・・・・・・」

 

 

 

『解説の高橋先生、今回の試験召喚大会どう思われますか?』

 

『生徒たちの奮闘に期待したいところです』

 

 

 

「それじゃあ、行こうか」

 

「そうだね」

 

僕と恵衣菜は時計を見て、控え室から出てバトルフィールドへ向かう通路を歩く。

僕らの試合は第一試合だ。つまり初戦と言うわけだ。

 

 

 

『それでは、これより試験召喚大会第一試合を始めさせていただきます!』

 

 

 

新野さんの放送が聞こえ、僕と恵衣菜は通路から入場口で止まる。

 

 

 

『第一試合。赤コーナー。2年Bクラス、岩下律子!菊入真由美!』

 

 

 

「行くわよ真由美!」

 

「ええ!」

 

 

 

『青コーナー。2年Fクラス、吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

「「ええーーーーっ!!」」

 

既に呼ばれてスタジアムにいるBクラスの菊入さんと岩下さんの驚愕の声が聞こえた。何でだろう?

ところで今の声って西村先生かな?

あ、そう言えば審判とフィールド構築者が西村先生だった気がする。

 

 

「行こう恵衣菜!」

 

「うん!明久くん!」

 

僕と恵衣菜は軽くハイタッチをしてバトルフィールドに入った。

スタジアム内に入ると一瞬外光で眩しく、目を細めるがすぐに視界が広がる。

 

「うわぁー」

 

「満席だね」

 

スタジアム内の席はどこも満席で人が溢れかえっていた。

僕と恵衣菜は歓声の声が響くなか手を軽く上げて、僕らの立ち位置まで進む。

周囲を見渡すと、他の人より一段高い場所―――――VIPルームで僕らに手を振るμ'sやAーRISEの皆がいた。側には、かおりさんや真姫の親の西木野先生や穂乃果の親、更に穂乃果の妹の雪穂ちゃんや絵里の妹の亜里沙ちゃんもその場にいた。

 

「って・・・・・・どんだけいるのよ!」

 

僕はVIPルームを見てそう言わずにいられなかった。

恵衣菜は苦笑いをしている。

 

 

 

『この試合はどう思われますか高橋先生』

 

『吉井、姫宮ペアは第二学年序列1位、2位ですからこれは岩下、菊入ペアには厳しいかもしれません』

 

 

 

 

『対戦科目―――――――数学!始めっ!!』

 

 

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

西村先生が電光掲示板に映し出された対戦科目のフィールドを展開すると、菊入さんと岩下さんは同時に召喚獣を呼び出した。

 

 

 

 数学

 

 2年Bクラス 菊入真由美 176点

        岩下律子  163点

 

 

 

 

「すごいね、恵衣菜。彼女たち」

 

「そうね。じゃあ私たちも―――」

 

「うん」

 

「「試獣召喚(サモン)」」

 

 

 

 数学

 

 2年Fクラス 吉井明久  648点

        姫宮恵衣菜 645点

 

 

 

 

「「600点オーバー!!?」」

 

対面の菊入さんと岩下さんが驚愕の声を出す。

 

「アハハ。よろしくね菊入さん、岩下さん」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「よろしくです」

 

「これも勝負だから真剣に闘おう」

 

「はいっ!」

 

「ええっ!」

 

「真由美!」

 

「律子!」

 

「「行くわよ!」」

 

軽く挨拶をすると、菊入さんと岩下さんが仕掛けてきた。二人はかなり仲が良いのだろう、コンビネーションが上手い。

 

「うん。いいコンビネーションだよ菊入さん、岩下さん」

 

僕はハンマーで攻撃してくる菊入さんの攻撃を剣で反らし恵衣菜は岩下さんの片手棍を細剣で受け止める。

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

「お礼はいいよ。菊入さんと岩下さんは、この間の試験戦争で姫路さんにやられた人・・・・・・・だよね?」

 

「は、はい」

 

「え、ええ」

 

「それで、このコンビネーションはすごいよ。二人が互いを信じあってないと出来ないよ」

 

会話をしている最中も僕と恵衣菜は菊入さんと岩下さんの攻撃を防ぎ、かわしている。

 

「恵衣菜、そっちは大丈夫?」

 

「ええ。ステップ攻撃や死角からの攻撃が上手いよ岩下さん」

 

「ありがとうございます姫宮さん」

 

「アハハ・・・・・・別に恵衣菜でいいよ。同じ学年なんだし。それに敬語もいらないよ」

 

「わかったわ恵衣菜さん」

 

「うん。菊入さんも私のことは恵衣菜でいいからね」

 

「は、はい!」

 

「じゃあ、ちょっとだけ僕らを見してあげる。今度はこっちから行かせてもらうよ!恵衣菜!」

 

「うんっ!明久くん!」

 

僕と恵衣菜は距離を一旦大きく措き、同時に接近する。

 

「くっ・・・・・・・!」

 

「は、早いっ!」

 

菊入さんと岩下さんは武器でうまく凌いではいる。

ちなみに今の僕の召喚獣は双剣ではなく片手剣だ。

だが、その凌ぎは長くは続かなかった。

 

「り、律子!?」

 

「え!?ま、真由美!?」

 

そう二人は離れていたがいつの間にか互いに背中をあわせられる距離にまで来ていたのだ。

そして、互いがもみくちゃになってバランスが取れずに転ぶ。

 

「二人とも。ペアを組むときは相手との位置も把握しないとダメだよ。そうじゃないとこういう風にぶつかったりして危ないから」

 

僕は剣を寸止めして言う。

 

「もぉ、明久くんってこう言うところがお人好しだよね」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ~。葉月ちゃんのときとか色々あるよ~」

 

「そ、そう言われてみれば確かに色々あったような気が・・・・・・・」

 

「それで、他の女の子から好感度上げてるんだから」

 

「え!?そ、そうだったの!?」

 

「・・・・・・もしかして自覚なかったの・・・・・・?」

 

恵衣菜の言葉に僕はガクッと床に膝を着いた。

まさか無自覚で女子の好感度を上げていたとは・・・・・・。

 

「い、いや、でも、僕は恵衣菜一筋だからね!」

 

「そ、それは私もで嬉しいんだけど・・・・・・・。明久今、戦闘中だよ?」

 

「あ・・・・・・」

 

対面の菊入さんと岩下さんを見ると、二人とも顔を赤くして視線を俯かせていた。

しかもよく見ると呆れているというより恥ずかしがっている気がする。

 

 

 

『あー・・・・・・・高橋先生、後で一緒にブラックコーヒーでも飲みませんか?』

 

『いい提案ですね新野さん。ついでに西村先生と菊入さん、岩下さんもどうでしょう?』

 

 

 

「「ぜひ、参加します!!」」

 

 

 

『ハァー・・・・・・・』

 

 

 

放送席で新野さんと高橋先生がそんな会話をすると、菊入さんと岩下さんは全力で、しかも即答で高橋先生のお誘いに乗り、西村先生は額に手を当てていた。

 

「なんだろう、この雰囲気・・・・・・」

 

「ハァー・・・・・・。明久くんって、たまにバカになるよね?」

 

「えっ!?ちょ!恵衣菜!?」

 

恵衣菜からのいきなりの罵倒に驚いた。

 

「と、とにかく勝負を続けよう!」

 

僕はそういうと菊入さんに接近した。

 

「ごめんね、菊入さん、岩下さん。そういうことだから・・・・・・・すぐに決めさせてもらうね」

 

同様に恵衣菜も細剣を腰だめに構えて迫る。

そして、十秒後。

 

 

 

 数学

 

 2年Fクラス 吉井明久  648点

        姫宮恵衣菜 645点

 

 VS

 

 2年Bクラス 菊入真由美 0点

        岩下律子  0点

 

 

 

『勝者、青コーナー――――――吉井、姫宮ペア!』

 

 

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

 

『第一試合、勝者は2年Fクラス、吉井明久、姫宮恵衣菜ペアとなりました』

 

『試合の最中、吉井君たちは岩下さん、菊入さんに操作の指導をしていたみたいですね』

 

『試合の最中にですか!?』

 

『ええ。現に岩下さんと菊入さんの操作技術は始まったときよりよい動きでした』

 

『ほぇー、すごいですね』

 

 

 

「お疲れ様菊入さん、岩下さん」

 

「いい試合だったよ二人とも」

 

「こっちこそいい経験になりました」

 

「あの、出来たら時間がある時操作の指導をしてもらってもいい、かな?」

 

「もちろんいいよ」

 

「うん。私もいいよ」

 

「ありがとう、吉井君、恵衣菜さん」

 

僕と恵衣菜は菊入さんと岩下さんに召喚獣の操作の練習をする約束をすると、軽く手をあげフィールドから控え室へと向かった。

 

「ふぅ。お疲れ恵衣菜」

 

「明久くんもね」

 

「次は30分後・・・・・・だっけ?」

 

「スケジュール通りだとね」

 

「じゃあ一回クラスに戻る?」

 

「そうしよっか」

 

僕らは一旦Fクラスに戻るため旧校舎の方へ脚を進め――――――

 

「あ!二人ともいたぁ~」

 

――――――ようとした。

 

「ことり!?」

 

「ことりちゃん!?」

 

「試合お疲れ~。明久くん、恵衣菜ちゃん」

 

横のVIPルームへ続く道からことりが声をかけてきたのだ。

 

「どうしたのこんなところで?」

 

「うん。ことりは二人を探しに来たんだよ~」

 

「僕と恵衣菜を?」

 

「うん♪さっ、こっちこっち」

 

「こ、ことり引っ張らないでー」

 

「こ、ことりちゃん~」

 

僕と恵衣菜はことりに手を捕まれてVIPルームへと連れていかれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VIPルーム

 

「みんな~、連れてきたよぉ~」

 

ことりに連れられてVIPルームに来た僕と恵衣菜は、ことりの後ろからルームに入った。

 

「お帰りことりちゃん」

 

「お帰りなさいことり」

 

中に入るとかなりの人数、AーRISEの3人とμ'sの関係者がほぼ全員いた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「ほら二人とも。そんなところで立ってないで座ってよ」

 

穂乃果に言われ、僕と恵衣菜はあまりの人数の多さに絶句しながらも近くの椅子に座った。

 

「はい。初戦勝利おめでとう明久、恵衣菜」

 

「あ、ありがとう真姫」

 

「ありがとう真姫ちゃん」

 

真姫から飲み物を受け取ると、軽く喉を潤わせた。

 

「で――――――なんでこんなにいるんですか!?」

 

僕はまず最初に言いたかったことを言った。

 

「ごめんない、明久君。予想外に来てしまったの」

 

「見ればわかりますよ、かおりさん!」

 

「ちなみに藤堂学園長には許可をもらってるわよ」

 

「あ、そうなんですか・・・・・・」

 

まあ、確かに一般席より安全だろうけど。

 

「あはははは・・・・・・」

 

さすがに恵衣菜も苦笑を浮かべるしかないようだ。

 

「ほら、恵衣菜ちゃん。こっちに来てお話ししようよ」

 

「ことりちゃん」

 

「いってきたら恵衣菜」

 

「うん」

 

恵衣菜は飲み物を片手に穂乃果やことりたち女子の方へ向かった。

その間に僕は雄二と須川くんにメールを打った。

内容は『何かあったらすぐに教えて』と勝利報告だ。

まあ、試験召喚大会は全クラスに生ライブで映像が送られるのだが。

メールを送り終えると。

 

「久しぶりだね明久君。元気にしてたかい?」

 

「ご無沙汰してます西木野先生」

 

真姫の父親にして僕の主治医だった西木野真吾先生が声をかけてきた。

 

「そうかい。よかったよかった。明久君が元気なら僕も安心だよ」

 

「そうですね真吾さん」

 

「あ、朱梨さん。お久しぶりです」

 

いつの間にか西木野先生の横には真姫の母親の朱梨さんがいた。

 

「お久しぶりですね明久君。また、無茶をしているのでは?」

 

「うぐっ・・・・・・・!た、多分大丈夫です」

 

「あらら、その反応だとまたまた無茶しているようですね」

 

朱梨さんは何故かとてつもなく勘が鋭い。

僕が朱梨さんの言葉にたじろいていると西木野先生が居住まいを但し、頭を下げてきた。

 

「明久君、昨日は真姫たちを助けてくれて本当にありがとう」

 

「そんな、お礼なんていいですよ西木野先生。僕も去年はお世話になりましたから。それに真姫たちを巻き込んだのは僕たちなんですから。批難をいわれともお礼をしてもらうなんて」

 

「だ、だが・・・・・・・」

 

「いいんです。ところで昨日かおりさんから聞いたんですけど、昨日あの後みんなの様子はどうでしたか?」

 

「あ、ああ。全員特に外傷も無かったよ」

 

「そうですか、よかった」

 

西木野先生の言葉に僕は昨日から気にしていたことに安堵した。

 

「明久君たちが早く助けてくれたからよ」

 

「朱梨さん・・・・・・・」

 

「ところで明久君」

 

「は、はい」

 

「記憶はまだ戻らないかい?」

 

「そうですね・・・・・・僕が何故入院したのかもそれ以前のことが未だに思い出せないですね。特にあの秋頃のことが・・・・・・・それ以外は覚えているんですけど」

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

僕がそう答えると、西木野夫妻は神妙な顔付きになった。

 

「もし、何かあった僕らのところに来なさい」

 

「わかりました」

 

僕は西木野先生からの言葉に瞬時に答えた。

すると、

 

「明久く~ん」

 

恵衣菜が僕の方に手を振って呼んでいるのが見えた。

 

「恵衣菜・・・・・・・」

 

「行ってあげなさい」

 

「恵衣菜ちゃんたちを泣かせたらダメよ、明久君」

 

「はい。もちろんです」

 

僕は二人にそう言うと恵衣菜たちの方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~outer side~

 

「やはり、思い出してないようだね」

 

「そうね・・・・・・・。去年、あの子の体を見たときは驚いたわ。あそこまでされるなんて」

 

明久が恵衣菜たちの方に向かったのを見ると西木野夫妻がそんなことを話していた。

 

「今は特に問題ないようですけど、ね」

 

「かおりっち・・・・・・・」

 

その場に南かおりが会話に入り朱梨がかおりを見て言う。

 

「かおりさんから見て明久君はどう見る?」

 

「そうですね。今の明久君は水が満タンに入ったバケツのようなものでしょうね。なんらかの拍子にあふれでてしまうほどの」

 

「・・・・・・」

 

「でも、それは彼女たちがいる限り大丈夫だと思うよ、かおりちゃん」

 

「そうですね、彼女たちがいる限り明久君は心配ないと思いますよ」

 

「美穂乃ちゃん・・・・・・瑞那ちゃん・・・・・・」

 

声をかけてきたのは穂乃果と雪穂の母親、高坂美穂乃と海未の母親、園田瑞那だ。

 

「・・・・・・・そうかもしれないわね」

 

かおりは二人の言葉に相槌を打って返す。

そして、その視線は娘たちと楽しそうに談笑している明久たちに向けられていた。

 

~outer side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も順調に召喚大会は進んでいき、試合は2回戦へとなった。

 

 

 

 

『赤コーナー。2年Bクラス、根本恭二!2年Cクラス、小山友香!』

 

 

 

西村先生が対戦者名を呼び、恭二と友香さんが立ち位置まで出てきた。

 

 

 

『青コーナー。2年Fクラス、吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

「さて、2回戦といこうか」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜は互いに頷き、召喚者の立ち位置まで出る。

 

「よっ、明久」

 

「やぁ、恭二。言っとくけど手加減しないからね」

 

「いやいや、せめて少しは手加減してくれ。明久が本気でやったら俺たち瞬殺だぞ」

 

「まあ、それはそれで」

 

「おいおい・・・・・・」

 

 

 

『対戦科目―――――――英語!始めっ!!』

 

 

 

西村先生が試合科目のフィールドを形成した。

そしてキーワードを叫ぶ。

 

「「「「試獣召喚(サモン)!」」」」

 

 

 

 英語

 

 2年Bクラス 根本恭二  199点

 2年Cクラス 小山友香  165点

 

 VS

 

 2年Fクラス 吉井明久  482点

 2年Fクラス 姫宮恵衣菜 534点

 

 

 

僕らの点数が上のスクリーンと召喚獣に表示された。

 

「行くぞ、明久っ!」

 

「こいっ!恭二!」

 

「「ハアァァァァァアアアアア!!」」

 

友香さんを恵衣菜に任せて、僕は恭二と戦闘を繰り広げた。

 

「恭二・・・・・・」

 

「明久くん・・・・・・」

 

恵衣菜の友香さんが呆れた顔で見ているが気にしない。今は恭二とのバトルを思う存分楽しむんだ!

 

「ハアッ!」

 

ガキンッ!

 

「ゼアッ!」

 

キンッ!

 

恭二の召喚獣の持つ片刃の片手剣と僕の召喚獣の片手剣がフィールドでぶつかり鍔迫り合いを繰り広げた。

ちなみに僕は今双剣ではない。

 

「じゃあ、私たちも闘おうか友香ちゃん」

 

「そうね、恵衣菜」

 

その隣では、恵衣菜の召喚獣の細剣と友香さんの召喚獣の短剣がぶつかっていた。

 

「この前は闘えなかったからな。今回は全力でいかせてもらうぜ明久!」

 

「うん!僕もだよ恭二!」

 

圧倒的な点数差があるにも関わらず恭二はその覇気を微塵たりとも揺るがせていない。

昔の恭二だったら卑怯な手を使って来たはずだが、今の彼はそんなことはしない。

 

「変わったね、恭二――――っと!」

 

「ああ。お前と姫宮のお陰だ―――――やあっ!お前たちが俺を光のある場所に、そして友香と出会わせてくれたんだからな」

 

「僕らは切っ掛けを与えただけだよ。そこまで来たのは恭二。君が曲げずに自分の信念と友香さんがいたからだよ」

 

ガキンッ!

 

「そうかもな・・・・・・。今はまだお前たちには追い付けないかもしれないが、俺と友香は必ずお前たちと同じ場所にたって見せる!―――――りゃあ!」

 

キンッ!キンッ!

 

「そのいきだよ!恭二!―――――せえーぃ!」

 

ガキンッ!

 

僕と恭二は会話をしながらも召喚獣を操る事を止めない。僕は普通にできるが、恭二も出来るとは驚いた。これはかなりの集中が必要なのだ。

 

ガキンッ!ガキンッ!

 

キンッ!キンッ!

 

辺りから剣と剣がぶつかり合う金属音が鳴り響く。

恭二の召喚獣は左手に盾を装備している。そのため、攻撃がよく防がれる。さすが、恭二。けど――――

 

「もっと、ギアを上げていくよ恭二。ついてこれるかな」

 

僕はさらに思考を速める。

右切り上げからの袈裟斬り。足で薙ぎはらって左で貫く。

 

「くっ・・・・・・・!」

 

ガンッ!

 

「さすが明久。観察処分者として長く操作していただけのことあるな」

 

「まあね。―――――って、恵衣菜の方は終わったみたいだね」

 

「ああ。友香がやられたな」

 

「ごめん恭二。負けたわ」

 

「気にするなよ友香。俺だって多分負ける。だからって、ここで諦めるわけにはいかないさ」

 

「ええ。頑張って恭二」

 

「おう!」

 

恭二は友香さんと話し、

 

「お疲れ、恵衣菜」

 

「うん。友香ちゃん、点数差があったけど強かったよ」

 

「そうなんだ。さすがだよ友香さんも」

 

「・・・・・・・私は手は出さないから恭二くんと思う存分闘って」

 

「ありがとう、恵衣菜」

 

僕は恵衣菜と話す。

そして、互いに話し終えると互いの顔を見る。

 

「ハアッ!」

 

「テリャ!」

 

ガキンッ!

 

フィールドの中央で鍔迫り合いをし、押し込むと同時に大きく距離を取る。

 

「これで決める!」

 

「ならこちらも」

 

僕は右手の片手剣を肩の高さ、正中線に構え切っ先を恭二の召喚獣に向ける。

対して恭二の召喚獣も片刃の片手剣を腰だめに構え切っ先を床に下げている。

 

「いくぞ明久!」

 

「こいっ、恭二!」

 

「白虎衝破斬!」

 

「ヴォーパル・ストライク!」

 

「「――――って、なんでソードスキルと必殺ファンクションなの!!?」」

 

恵衣菜と友香さんが全力でツッコんできた。

ちなみに恭二の《白虎衝破斬》はダンボール戦機の必殺ファンクションで僕の《ヴォーパル・ストライク》はSAOのソードスキルだ。

恭二の召喚獣の攻撃と僕の召喚獣の攻撃がフィールドの中央でぶつかった。

僕と恭二が何故言ったのかと言うと――――

 

「「折角だし、ラストだから盛り上げたいから(だ)!」」

 

「「本音は?」」

 

「「一度やってみたかったから(だ)!」」

 

というわけだ。

ちなみにどちらが勝ったのかと言うと。

 

 

 

 

 

 英語

 

 2年Fクラス 吉井明久  314点

        姫宮恵衣菜 402点

 

 VS

 

 2年Bクラス 根本恭二  0点

 2年Cクラス 小山友香  0点

 

 

 

もちろん僕たちが勝った。

 

 

 

『勝者、青コーナー――――――吉井、姫宮ペア!』

 

 

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

 

『第二試合、勝者は2年Fクラス、吉井明久、姫宮恵衣菜ペアとなりました』

 

『両者いい試合だったと思います』

 

 

 

「あー。負けたか」

 

「ええ」

 

「でも、いい試合だったな」

 

「そうね、恭二」

 

「ありがとう恭二。いい試合だったよ」

 

「友香ちゃんもありがとう」

 

「明久、姫宮。絶対優勝しろよ」

 

「もちろんだよ恭二」

 

「うん。わかってるよ恭二くん」

 

僕らは軽く言葉を交わすと、踵を返して控え室の方へと戻っていった。

 

 

 

 




前回の宵宮秋菜が誰か分かりましたか?
わかった方は教えて下さい。
感想でも構いません。評価も含めてお待ちしてます。







次回 『召喚大会』 ここテストに出ます。


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第Ⅸ門 召喚大会

バカテスト 清涼祭編


問題『清涼祭二日目に行われるメインイベントはなんでしょう?』


解答

吉井明久、姫宮恵衣菜

『試験召喚大会又は召喚大会』


教師コメント

『正解です。二人は召喚大会に出てましたね、優勝目指して頑張ってください』




~明久side~

 

 

 

『それでは試験召喚大会三回戦、第六試合を行います!』

 

 

 

放送席の新野さんの実況がアナウンスされた。

 

 

 

『赤コーナー。2年Fクラス、姫路瑞希!島田美波!』

 

 

 

三回戦の相手は姫路さんと島田さんみたいだ。

まあ、それはいいんだけど問題は―――――

 

「へぇー、あの二人が相手か~」

 

「え、恵衣菜?だ、大丈夫?」

 

「え~、なにが~?」

 

「目が笑ってないんだけど・・・・・・」

 

そう、隣にいる恵衣菜だった。

恵衣菜は二人の名前を聞くと薄気味悪く口角を上げ笑った。しかも、目が笑ってない。

 

「そんなことないよ~」

 

「そ、そう?」

 

 

 

『青コーナー。2年Fクラス、吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

「それじゃ行こうか明久くん」

 

「う、うん」

 

僕は恵衣菜とともに選手会入場口からフィールドの立ち位置まで歩く。

立ち位置に立つと、対面して姫路さんと島田さんの姿があった。

 

「相手がアキとはね・・・・・・。でもこれで、心置きなく出来るわね、瑞希」

 

「そうですね美波ちゃん」

 

どうやら二人の狙いは僕だけみたいだ。

 

「昨日、ウチや葉月たちを助けてくれたことはお礼を言うわ。ありがとう。でも、それとこれは別よ」

 

「だってよ明久くん」

 

「ええーと、ごめん恵衣菜。こんなときどう返したらいいかな」

 

「あー、う~ん・・・・・・なんだろうね」

 

僕と恵衣菜は対面する二人に微妙な表情を浮かべながらそう互いに言った。

 

 

 

『対戦科目―――――――古典!始めっ!!』

 

 

 

「「「「試獣召喚(サモン)!」」」」

 

西村先生が古典のフィールドを張り、僕らは四人同時にキーワードを言う。

 

 

 

 古典

 

 2年Fクラス 吉井明久  674点

        姫宮恵衣菜 637点

 

 VS

 

 2年Fクラス 姫路瑞希  398点

        島田美波  9点

 

 

 

僕ら四人の召喚獣が姿を現し、点数を表示した。

 

「明久くん、この試合私一人でやるね」

 

「え、う、うん。了解」

 

僕は恵衣菜の言葉を聞き、大きくバックステップをして恵衣菜から距離を取った。

正直今の恵衣菜は少し恐かった。

 

「姫宮、あんた一人で闘うつもりなの」

 

「ええ、そうよ島田美波。なにか不満かしら?」

 

「無いという訳じゃないわ。まあ、いいわやるわよ瑞希!」

 

「はい!美波ちゃん!」

 

「「行きなさいっ!!」」

 

姫路さんと島田さんの召喚獣はそのまま恵衣菜の召喚獣に向かって行った。

左右からの同時攻撃だ。

 

「ふぅん・・・・・・」

 

恵衣菜の召喚獣はのんびりとしていてその場を動かない。

 

「余裕なのかしら、瑞希!」

 

「はい、美波ちゃん!」

 

「「やあァァァァァァあ!」」

 

二人の召喚獣が恵衣菜の召喚獣に当たる。

 

「――――――閃光、発動」

 

その直前、恵衣菜の召喚獣は一瞬でその場から消え去った。

 

「なっ!?」

 

「き、消えた!?い、一体どこに!?」

 

二人は驚愕し、恵衣菜の召喚獣を探す。

 

「私はここだよ」

 

恵衣菜はいつの間にか姫路さんと島田さんの召喚獣から遠く離れた場所にいた。

 

「ど、どうやってそこに」

 

「さてね。それより、攻撃しなくていいのかな?」

 

「くっ!」

 

「美波ちゃん、私の後に続いてください!」

 

「わかったわ瑞希!」

 

今度は時間差での攻撃みたいだ。

だが、姫路さんの召喚獣の持つ大剣と島田さんの召喚獣の持つサーベルは恵衣菜に当たることなく地面にぶつかった。

 

「も、もしかして、腕輪の能力!?」

 

姫路さんが恵衣菜の召喚獣の腕に巻かれている腕輪を見て言う。

恵衣菜の持つ腕輪の能力≪閃光≫はその名の通り閃光のような速さで動く、移動系拡張能力タイプだ。

その速さは康太の持つ腕輪≪加速≫を遥かにしのぐ。

 

「どうだろうね?」

 

「おーい、恵衣菜~?」

 

呼び掛けても恵衣菜は返事をせずただもくもくと、自身の召喚獣を操作していた。

 

「来ないの?それじゃ、終わらせようかしら」

 

恵衣菜はそういうと否や、先程まで避けていただけなのに攻撃に転じた。

 

「はっ、速すぎでしょ!!?」

 

「避けられません!」

 

恵衣菜は≪閃光≫の能力をフルに発揮し瞬く間に二人の召喚獣に自身の召喚獣を肉薄させ細剣を、オーバーキルの如く叩き込んだ―――――ではなく、刺し貫かせた。

 

 

 

 古典

 

 2年Fクラス 吉井明久  674点

        姫宮恵衣菜 437点

 

 VS

 

 2年Fクラス 姫路瑞希  0点

        島田美波  0点

 

 

 

『あー、勝者、青コーナー。吉井、姫宮ペア』

 

 

 

 

西村先生が唖然というより淡々と放送した。その声には何時ものような覇気はなかった。

まあ、僕自身恵衣菜のオーバーキルになんとも言えないんだけどね。しかも、攻撃を一回も喰らってない。点数が減っているのは腕輪を使ったからで実質、恵衣菜はノーダメだ。

更に最後の連撃、あれは速すぎて見えないほどだった。

 

 

 

『えー、勝者は吉井、姫宮ペアとなりました』

 

『予想通りなのですが・・・・・・・何故でしょうか姫宮さんの眼から光が無いように見えます』

 

 

 

「え?」

 

僕は放送席にいる高橋先生の台詞で恵衣菜の目を見た。

 

「あちゃー」

 

眼を見た僕は額を手で押さえ頭痛がするかのような態勢を取った。なぜなら、恵衣菜の眼からは高橋先生が言ったように光が無かったからだ。

 

「え、恵衣菜、戻るよ」

 

僕は恵衣菜の右手を掴んですぐさまその場を後にした。

一方、姫路さんと島田さんの二人はその場で呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恵衣菜を連れてスタジアムから出た僕は取り敢えず誰もいない空き教室に入り込んだ。

 

「恵衣菜?」

 

恵衣菜が本気で怒ると眼にハイライトが無い状態になるのだが、幸いにも今はそこまでの状態ではないので少しだけ光が戻ってる。

恵衣菜が本気で怒ると零華いわく、僕にしかどうにか出来ないらしい。というわけなので手っ取り早く恵衣菜を正気に戻すため誰もいない空き教室に連れ込んだ。

 

「仕方無いか・・・・・・・」

 

僕は恵衣菜を抱き締め、軽くキスをする。

ちなみにこれを教えたのは零華と葵姉さんと翠姉さんだ。何故かわからないがこれをすると、恵衣菜はすぐにもとに戻る。まあ、恥ずかしくて顔が赤くなるのだが。

 

「ほぇ・・・・・・あ、明久くん?」

 

「あ、戻った。恵衣菜、大丈夫?」

 

「え、うん。ところでなんで私抱き締められてるの?」

 

「嫌だったかな?」

 

「う、ううん!そんなことないよ!でも、家の中じゃないからちょっと恥ずかしい・・・・・・////」

 

「ま、まあね////」

 

恵衣菜がもとに戻ったのを確認すると、僕は抱き締めていた両手を離した。

恵衣菜はどこか名残惜しそうだったけど今はちょっと勘弁してほしい。何故なのかは恥ずかしいから。

 

「え、え~と、その、ごめん明久くん」

 

「い、いや、気にしてないから気にしないで」

 

色々思い出したのか恵衣菜は肩を縮ませて謝った。

僕は恵衣菜の頭を優しく撫でながらそう答える。

 

「それじゃ、四回戦まで校内を回ろうか?」

 

「うん♪」

 

空き教室を出た僕と恵衣菜は手を繋いで一年生のフロアから回ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫恵衣菜?」

 

「う、うん。だ、大丈夫大丈夫」

 

全然大丈夫そうに見えない。

何故恵衣菜がこうなっているのかは、3年Aクラス、葵姉さんのいるクラスの出し物、お化け屋敷に入ったからだ。

恵衣菜はこういうのが苦手なのだが、葵姉さんにお膳立てされて入ることになった結果、今の状態の恵衣菜が出来たというわけだ。

 

「恵衣菜ちゃん、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫です葵さん。ええ、大丈夫ですとも、はい」

 

葵姉さんもこれは想定外だったみたいで、出てきた恵衣菜を心配していた。

 

「いやいやいや、全然大丈夫そうに見えないよ恵衣菜ちゃん」

 

「うんうん。海未ちゃんもだけど、海未ちゃんよりも恵衣菜ちゃん顔真っ青だよ」

 

「そ、そんなことないよ、穂乃果ちゃん、ことりちゃん」

 

「・・・・・・」

 

「あー、海未。大丈夫?」

 

「大丈夫です明久。恵衣菜よりは無事です」

 

「全然無事に見えないのは気のせい・・・・・・?」

 

ちなみに、お化け屋敷には偶然あった穂乃果、ことり、海未と一緒に入った。が、お化けが出てくる度に恵衣菜と海未がしがみついてくるので歩きにくかった。

幸いにも、穂乃果とことりはそれほど怖がってなかったのが幸いだった。これで、真姫や絵里、花陽、ツバサ、あんじゅまでいたら大変だった事に違いないの前に、この場で血みどろの闘いが繰り広げられるところだった。その時の敵はFFF団だが。なぜか彼らはこういうのに敏感というより俊敏だ。監視カメラでもあるのではというほどの速さなのだ。

 

「ところで、穂乃果たちはこの後どこに行くの?」

 

「う~ん、この後は2年生のフロアに行こうかなって思ってるよ」

 

「そうなんだ・・・・・・」

 

「?どうかしましたか明久?」

 

「いや、もしFクラスに行くなら気を付けて」

 

「どうしてです?」

 

「多分だけど、穂乃果たちが行ったらクラスの連中が暴走する可能性がある」

 

「え?」

 

「はい?」

 

「そうなの?」

 

上から穂乃果、海未、ことりの順で返ってきた。

 

「あー、確かにあり得るね」

 

「ありえますわね」

 

「え、恵衣菜ちゃんと葵ちゃんがそこまで言うなんて・・・・・・」

 

「流石にそれは無いと思いますけど・・・・・・」

 

「いやいや、ことり、海未事実だから。行くならとにかく気を付けて」

 

「う、うん」

 

「わ、わかった」

 

「わ、わかりました」

 

「あ、それならわたくしが一緒に行きますわ」

 

「え?葵姉さんが?」

 

「ええ。丁度わたくしのシフトタイムは終わりですから」

 

「でも葵姉さんも召喚大会に出てなかった?」

 

「それなら問題ありませんわよ。準決勝へ駒は進めましたので」

 

「「えっ!?」」

 

「四回戦、零華ちゃんがいなかったら危なかったですわ」

 

葵姉さんは淡々と普通に言っていた。

流石にそれは僕らは唖然とするしかなかった。まあ、葵姉さんのこの性格は今に始まったことじゃないからな~。

 

「じゃあ、僕らは四回戦に行ってくるね」

 

「はい。行ってらっしゃい二人とも」

 

「頑張ってね明久くん、恵衣菜ちゃん」

 

「頑張って二人とも♪」

 

「頑張ってください明久、恵衣菜」

 

「うん。行ってくるね」

 

僕と恵衣菜は四人とからの声援を承けスタジアムへと歩を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただいまより召喚大会四回戦、最終試合を行います』

 

 

 

スピーカーから実況の新野さんの声が聞こえてきた。

それと同時に観客の歓声も響いてくる。

 

 

 

『赤コーナー。2年Fクラス、坂本雄二!2年Aクラス、霧島翔子!』

 

 

 

「よっしゃ、行くぜ翔子!」

 

「・・・・・・うん。必ず勝つ」

 

 

 

『青コーナー。2年Fクラス吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

「雄二が相手か・・・・・・行こう恵衣菜!」

 

「うん!」

 

僕と恵衣菜、雄二と翔子さんは立ち位置まで歩き、相対する。

 

「まさか、ここで明久と当たるとはな」

 

「それは僕もだよ雄二。だからって手加減はしないよ!」

 

「もちろんだ明久!俺は本気のお前と闘いたいんだからな!」

 

 

 

 

『対戦科目―――――――保健体育!始めっ!!』

 

 

 

「「「「試獣召喚(サモン)!」」」」

 

西村先生が保健体育のフィールドを張ると、僕らは同時に召喚獣を召喚した。

 

 

 

 保健体育

 

 2年Fクラス 吉井明久  764点

        姫宮恵衣菜 729点

 

 VS

 

 2年Fクラス 坂本雄二  586点

 2年Aクラス 霧島翔子  563点

 

 

 

「予想していたとはいえ200点も差があるのかよ・・・・・・」

 

「・・・・・・さすが序列一位と二位の称号は伊達じゃない」

 

「全くだな」

 

「う~ん、でも、保健体育だといつかあの二人に抜かされそうなんだよね」

 

「あー、それはあり得るな。あの二人、保健体育に関しては明久たちに次ぐ実力だからな」

 

僕と雄二が言っているあの二人とは、康太と工藤さんの事だ。以前康太からよく二人で勉強していると聞いたのだ。あの二人ならいつか僕らを保健体育で越すかもしれない。

 

「それじゃ、闘ろうか雄二」

 

「そうだな、明久」

 

「じゃあ私は翔子ちゃんだね」

 

「・・・・・・手加減しない、恵衣菜」

 

「「いざ――――!」」

 

「「「「――――勝負!!」」」」

 

僕らは同時に召喚獣を相手へと向けて走らせた。

 

「喰らえっ!」

 

「りゃあ!」

 

ガキンッ!

 

僕と雄二の召喚獣がフィールド中央で拳と双剣をぶつけている。雄二の召喚獣の拳を僕は双剣をクロスさせて剣の腹で受け止める。

 

「はあっ!」

 

「しっ!」

 

続けて足払いをジャンプで避け、雄二の拳の威力の反動を利用して後方に宙返りして立つ。

 

「ちっ、さすが明久だな。召喚獣の操作が上手すぎるぜ」

 

「まあね。一年の頃から観察処分者として召喚獣を操作していたから」

 

「ったく、ほんとスゲーよお前は」

 

「雄二も凄いと思うよ」

 

会話をしている間も僕と雄二は互いに拳と剣を合わせる。

 

「早速だが使うとするか」

 

「それなら僕も」

 

互いに離れ、大きく距離を取る。

 

「燃え盛れ!――――炎煌拳舞、発動!」

 

「行くよ!――――属性付与(エンチャント)発動!全属性(オールエレメント)!」

 

雄二の召喚獣が両拳を紅く輝く焔がベールのように纏った。

僕の方は虹色に輝く衣を薄く纏っているような感じだ。

 

「行くぜ!」

 

「行くよ!右剣属性付与(デクストラ・エンチャント)(グラキアーリス)左剣属性付与(シニストラ・エンチャント)(フルグラーリス)!」

 

全属性から個別に、両剣に属性を纏わせて僕は雄二の召喚獣に剣を向ける。双剣にはそれぞれ付与されている属性がライトエフェクトを輝かせている。右の剣には薄い蒼、左の剣には目映い黄色の輝きが。

 

ガンッ!

 

ドンッ!ドンッ!

 

「右剣属性付与、(オブスクーリ)!左剣属性付与、(ルーキス)!」

 

拳と剣がぶつかるなか、僕は更に属性を付与させる。

黒と白の輝きが剣に新たに現れる。

 

「2属性を片方ずつかよ・・・・・・。こりゃ、参るな」

 

雄二がそう呟くのが聞こえてきた。

 

「・・・・・・ちょっとやってみるか・・・・・・」

 

ん?今なんて言ったんだろう?

雄二の最後の呟きを僕は聞き取ることができなかった。

 

「せりゃ!」

 

僕はまず右の剣で突きを放つ、そこに渙発して左の剣が下から雄二に迫る。

だが、さすがの運動神経で雄二は召喚獣を操作し、突き身体を横にずらしてかわし、下からの剣を拳をぶつけて止める。

 

「くっ!」

 

「まだだ!」

 

雄二の召喚獣は右の拳で僕の左の剣を抑え、左の拳をストレートに放ってくる。

 

ガキンッ!

 

だが、それは僕の顔に当たる直前に逆手持ちにした右手の剣で直前に止められる。

 

「ここだ!」

 

「っ!?」

 

僕は雄二の言葉に嫌な予感がして瞬時にかわそうとするが刻すでに遅し。

 

「くらえっ!」

 

雄二は右回し蹴りを放ってきた。

双剣で拳を止めている僕に止めたりさせたりする暇もなく。

 

「ぐっ!」

 

横腹に雄二の召喚獣の放った回し蹴りが当たり、横に吹き飛ばされる。僕は横腹に微かなフィードバックを感じて顔をしかめる。

 

「まだまだぁ!」

 

雄二は空中で上手くバランスの録れない僕の召喚獣に接近し連続で拳を放ってくる。

 

「これでどうだ!」

 

「なっ!?」

 

雄二は僕から離れて右に纏っている焔を打ち出してきた。

 

「うそっ!?遠距離攻撃もできるの!?」

 

そう雄二 は遠距離から焔の纏った拳――――――拳擊を放ってきた。

 

「くっ!?」

 

僕はなんとかバランスを整えて地に足を付いて、クロスガードで防ぐ。

 

「うっ・・・・・・」

 

拳擊をなんとか受け止めるが、僕の両手には若干の痺れが走った。

 

「さすが雄二。悪鬼羅刹の異名は伊達じゃない」

 

「そいつはどうも」

 

僕と雄二は一定の距離を取って相対する。

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久  511点

 

 VS

 

 2年Fクラス 坂本雄二  378点

 

 

 

僕と雄二の途中経過の点数が更新される。

 

「結構減ったな~」

 

「ったく、これだけやっても150点差かよ」

 

「いやいや、腕輪を使ったからと言ってもこんなに減るとは思わなかったよ」

 

僕と雄二は表示されている点数を見て言う。

 

「恵衣菜。恵衣菜の方はどう?」

 

「う~ん、五分五分かな~?」

 

隣の恵衣菜は苦笑ぎみに言う。

表示されている点数は――――――

 

 

 

 2年Fクラス 姫宮恵衣菜 435点

 

 VS

 

 2年Aクラス 霧島翔子  318点

 

 

 

と、なっていた。

 

「腕輪使ってるんだけどさすが翔子ちゃん・・・・・・こっちの攻撃を全て詠んでるような感じだよ」

 

「うーん、さすが霧島さん」

 

「ねえ明久くん。提案があるんだけど」

 

「?」

 

「一対一じゃなくて二対二・・・・・・コンビでやってみない?」

 

「なるほどね・・・・・・いいよ、やろう恵衣菜」

 

「うん」

 

「そっちはもういいのか?」

 

「うん!雄二の方は?」

 

「ああ、俺たちも構わん」

 

「じゃあ、行くよ!」

 

僕の声を合図に、恵衣菜の召喚獣が先攻して雄の召喚獣に向かう。その後を、僕の召喚獣が追随する。

 

「一対一じゃなくて二対二か・・・・・・」

 

「・・・・・雄二、私たちも・・・・・」

 

「ああ、そうだな・・・・・・。行くぞ翔子!」

 

「・・・・・うん」

 

先攻した恵衣菜の召喚獣が握る細剣が霧島さんの刀に阻まれる。そのすぐ後を雄二の召喚獣が恵衣菜に拳を振るう。だが、それを僕の片手剣で阻み、雄二と恵衣菜の間に立つ。そして、続けて双剣で連擊を放つ。

 

「くっ!」

 

「・・・・・・うっ」

 

雄二と霧島さんの召喚獣はバックステップで下がろうとするが―――――。

 

「そうは行かないよ!」

 

恵衣菜が≪閃光≫の能力で先回りし逃げ道を防ぐ。

そして、振り抜きざまに細剣を霧島さんの召喚獣に叩き込んだ。

 

「明久くん!」

 

「うん!はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

僕は恵衣菜の連続でバランスがとれない霧島さんの召喚獣に双剣の連続斬りを高速で切り裂く。

 

「させるかっ!」

 

「行かせないよ坂本くん!」

 

「くっ、姫宮・・・・・・」

 

雄二が霧島さんを助けようと向かってくるが、恵衣菜が阻む。

 

「・・・・・・このまま殺られるわけにはいかない!氷蒼刀舞!」

 

「やばっ!」

 

僕は慌ててその場を跳び去り霧島さんの攻撃をかわす。

 

「危なかった~」

 

召喚獣が跳びずさった所には氷の塊、氷塊があった。

あれは以前、Fクラス対Aクラスで雄二に使った技だ。

属性付与の(イグニス)を使えば溶かせられると思うが・・・・・・。

恵衣菜は≪閃光≫の能力を上手く活用して、高速で雄二の召喚獣を攻撃しているが、いかんせん雄二も雄二で立ち回り方が上手い。相手に弱点を狙わせないようにしている。

事象改変(オーバーライド)を使えばもっと楽に勝てるが、使うなら零華や葵姉さんとの試合に使いたい。とにかく全力でやるまで。

 

「属性付与、(アエール)

 

僕は属性付与で風を自身に纏わせて雄二に向かう。

 

「恵衣菜、避けて!」

 

「了解!」

 

「明久ァ!」

 

「雄二ィ!」

 

ドガンッ!

 

「恵衣菜!一気に決める力を貸して!」

 

「うん!いくよ明久くん!」

 

「属性付与、六属性(アスタリスク)!」

 

僕の召喚獣は恵衣菜の召喚獣の手を握り、属性付与を恵衣菜に付与する。

恵衣菜の召喚獣の握る細剣から六つの輝きが照らされていた。

 

「恵衣菜、お願い!」

 

「任せて!しっかり掴まってて!」

 

僕は召喚獣に恵衣菜の召喚獣に掴まるように指示する。

 

「いくよ、坂本くん!翔子ちゃん!≪閃光≫発動!」

 

ザンッ!

 

恵衣菜がそう言うと光の速さで雄二と霧島さんの召喚獣に迫り、

 

「恵衣菜!」

 

「うん!」

 

六属性の付与された細剣で霧島さんの召喚獣は貫かれ倒れる。

 

「翔子!」

 

「僕もいるよ雄二!」

 

「わかってる明久!」

 

そして、僕は右手の剣を肩の高さまで上げ、限界まで引き絞り、恵衣菜の≪閃光≫のアシストを糧に雄二の召喚獣に右手の剣を届かせる。

 

「「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」

 

ドガーンッ!!

 

雄二召喚獣の拳と僕の召喚獣の剣がぶつかり爆発が起きる。

 

「「貫けぇーーーーーー!!」」

 

僕と雄二は同時にそういうと、爆風が一気に払われた。

僕らは咄嗟に顔を両手で覆う。

 

「どっちが――――」

 

「――――勝った」

 

僕と雄二がフィールドを見て言う。

フィールドの中央には2体の召喚獣が居場所を違えて立っていた。僕と雄二の召喚獣だ。

霧島さんの召喚獣は恵衣菜の攻撃で点数が0に消えている。恵衣菜の召喚獣は僕の召喚獣から離れた場所で細剣を杖に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久  141点

        姫宮恵衣菜 114点

 

 VS

 

 2年Fクラス 坂本雄二  0点

 2年Aクラス 霧島翔子  0点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電光掲示板に点数が表示されると、雄二の召喚獣は倒れるようにして虚空に消えていった。

 

 

 

『勝者、青コーナー――――――吉井、姫宮ペア!』

 

 

 

『決着ー!準決勝へ駒を進めたのは吉井、姫宮ペアだーーー!』

 

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

 

西村先生の宣言と新野さんの実況で、観客席から歓声があふれでた。

 

「ギリギリだったね」

 

「うん。私たちの腕輪は消耗点数が大きいから仕方ないけど、坂本くんと翔子ちゃん強かった」

 

「ほんと。さすが幼馴染と恋人だね」

 

「ほんどだね。けど、幼馴染で恋人って点なら私と明久くんもでしょ」

 

「確かに」

 

僕と恵衣菜は互いに微笑し雄二と霧島さんを見る。

 

「やれやれ。負けたぜ明久、姫宮」

 

「・・・・・・最後の攻撃。あれは予想できなかった」

 

「いやー、僕らも試したばかりだから成功できて良かったよ」

 

「おいおい・・・・・・。ん、ってことは成功してなかったらどうなったんだ?」

 

「んー、多分自滅、かな?」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

僕の言葉に雄二と霧島さんはどこか呆れたような驚き半分呆れ半分な感じな表情だった。

 

「もぉー、明久くんってばほんと無茶苦茶なんだから」

 

「ご、ごめん」

 

「ハッハハハハハ。相変わらず面白いなお前は」

 

「・・・・・・明久のような発想を思い浮かぶような人はいないと思う」

 

「まあ、いいわ。取り敢えず・・・・・・明久、俺たちに勝ったんだから絶対優勝しろよ!」

 

「わかってるよ雄二」

 

僕と雄二は互いに右手を上げて親指を立ててグッとする。

 

 

 

『次の準決勝第一試合は午後14時から行います。準決勝へ進まれた選手は遅れないようにお願い致します』

 

 

 

 

スピーカーからそんなアナウンスが聞こえ、僕たちは選手入場口へ歩を進めた。

残り二戦、かならず優勝してみせる!

 

 

 

 

 

 




評価ありがとうございます!
感想がこないので読者さんの声がわかりません。一言でもいいので、アドバイスや感想などお願いします。






次回 『準決勝の双璧(ふたり)』 ここテストに出ます。


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第Ⅹ門 準決勝の双璧(ふたり)

バカテスト

問 以下の問いに答えなさい。

『(1)4sinX+3cos 3X=2の方程式を満たし、かつ第一象限に存在するXの値を一つ答えなさい。
 (2)sin(A+B)と等しい式を示すのは次のどれか、①~④の中から選びなさい。
 ①sinA+cosB    ②sin4-cosB
 ③sinAcosB     ④sinAcosB+cosAsinB』


解答

吉井明久

『(1) X=π/6
 (2) ④      』


教師コメント

『正解です。角度を『゜』ではなく『π』で書いてありますね。さすが吉井くんです』


姫宮恵衣菜

『(1) X=π/6
 (2) ④      』


教師コメント

『正解です。両方とも完璧ですね』


福村幸平

『(2) およそ②』


教師コメント

『選択問題でおよそをつける生徒は始めてみました』


島田美波

『(1) X=      』


教師コメント

『数式は分かるみたいなので、日本語や漢字をもっと勉強しわかれば更に点数が上がると思いますよ』




~明久side~

 

 

 

 

 

『お待たせしました、只今より準決勝第2試合を行います』

 

 

 

 

「まさかここで当たることになるなんてね」

 

「そうだね、でもなんとなく想像していたかな?」

 

「だね」

 

 

 

 

 

『青コーナー。2年Fクラス、吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

 

 

僕と恵衣菜は西村先生のアナウンスで立ち位置まで進み止まる。

 

 

 

 

『赤コーナー。2年Aクラス、吉井零華!3年Aクラス、小暮葵!』

 

 

 

 

 

続いて対面するように反対側の立ち位置に零華と葵姉さんが現れる。

 

「負けませんからね兄様、姉様」

 

「わたくしも全力でお相手しますわよ、明久くん、恵衣菜ちゃん」

 

「それは私もですよ、零華ちゃん、葵さん」

 

「はい、僕と恵衣菜は絶対に二人を倒します」

 

 

 

 

 

『両者、準備はいいか?』

 

 

 

 

「はい!」

 

「ええ!」

 

「大丈夫です!」

 

「問題ありませんわ!」

 

兄様先生の確認に、上から僕、恵衣菜、零華、葵姉さんの順に答えた。

 

 

 

 

『ついに注目の準決勝第2試合です。解説の高橋先生この試合どう思われますか?』

 

『そうですね、2年生の3人はそれぞれ序列1位、2位、3位ですからね。それに加え吉井さんのパートナーは3年の序列2位です。これはどちらが勝つか分からないでしょう』

 

 

 

 

「葵姉さん、3年の序列2位だったの!?」

 

僕は葵姉さんの急の肩書きカミングアウトに驚いた。

 

「ええ、そうですよ。ふふっ、驚いていますわね」

 

「そりゃ、まあ。だって言ってくれなかったし」

 

「あら?恵衣菜ちゃんと零華ちゃんには言いましたわよ?」

 

「え?」

 

僕は隣の恵衣菜と正面の零華を見る。

 

「そういえば明久くんは知らなかったっけ?」

 

「そういえばそうでしたね」

 

恵衣菜と零華は苦笑をしながらそういう。

 

 

 

 

『対戦科目――――――総合科目!始めっ!!』

 

 

 

 

「「「「試獣召喚(サモン)!」」」」

 

西村先生がフィールドを張り、僕らは召喚獣を喚び出す。

 

 

 

 

 総合科目

 

 2年Fクラス 吉井明久  10416点

        姫宮恵衣菜 9974点

 

 VS

 

 2年Aクラス 吉井零華  9657点

 3年Aクラス 小暮葵   6722点

 

 

 

 

「ほんと明久くんはすごいですわね」

 

「ほんとだよ~」

 

「私たちも頑張ってますけど中々兄様には追い付きませんね」

 

「そ、そうかな~」

 

僕らは同時に召喚獣を召喚し武器を構えさせる。

 

 

 

 

『何時見ても2年の3人は常識はずれな点数ですね』

 

『そうですね』

 

『そう言えば高橋先生も常識はずれの点数を取っていたような・・・・・・?』

 

『そんなことないですよ。普通ですよ』

 

『ちなみに高橋先生の今の総合科目の点数は・・・・・?』

 

『12768点です』

 

『・・・・・・・・・・』

 

『新野さん?どうかしましたか』

 

『・・・・・・これで普通って・・・・・・やっぱり高橋先生も常識はずれです』

 

『???』

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・12768点・・・・・・」

 

「人間じゃないですね・・・・・・」

 

「ノーコメント、と致しますわ・・・・・・」

 

僕らは高橋先生の総合科目の点数になんとも言えない表情をしてコメントした。

なんだろう廻りの空気が・・・・・・。

 

「取り敢えず始めようか」

 

「そうだね」

 

「そうですね」

 

「そうしましょうか」

 

僕は意識を召喚獣と零華と葵姉さんにし集中力を高める。

 

「それじゃあ・・・・・・」

 

「「「「行くよ(ます)(ますわ)」」」」

 

僕らは同時に召喚獣をフィールド中央に走らせた。

 

「行きますわよ、明久くん」

 

「行きます、葵姉さん」

 

ガキンッ!

 

僕の召喚獣と葵姉さんの召喚獣がフィールド中央でぶつかり金属音が響いた。

葵姉さんの召喚獣の姿は、碧いコート状の服装に蒼白のスカートを着た姿だ。そして葵姉さんの武器は僕と同じ双剣だった。だがその剣はやや細身があり恵衣菜の細剣に似たような剣だった。そしてその色は召喚獣が着ている服装と同じ碧と蒼白の色をしていた。

 

ガキンッ!キンッキンッ!

 

右の剣で薙ぎ払って、左の剣で上段斬り。そして足払いを。

僕は次の攻撃を思考し実行する。

右の剣での薙ぎ払いは、葵姉さんの右の剣で受け止められ、左の剣からの上段斬りは斬り下ろす寸前で止められる。足払いは出来ない。

 

「やるね葵さん」

 

「当然ですわ」

 

鍔迫り合いから同時に後ろに飛び退る。

 

「明久くん、相手に出し惜しみは出来ませんわね」

 

葵姉さんは近くで槍と細剣で戦闘している零華と恵衣菜を見る。

 

「零華ちゃん!」

 

「はい!」

 

零華は葵姉さんの呼び声に恵衣菜の攻撃を槍でいなして葵姉さんの隣に召喚獣を立たせた。

 

「何をするつもりだろう?」

 

零華の召喚獣に追撃をせず、僕のとなりに細剣を構えさせた召喚獣を立たせながら恵衣菜が言った。

 

「それでは腕輪を発動ですわ!」

 

「私もいくよ!」

 

葵姉さんと零華は同時に腕輪を発動させた。

 

「零華の腕輪は恐らく《千の魔法(サウザンド・マギア)》だと思うけど・・・・・」

 

「葵さんの腕輪ってなんだろう?」

 

僕と恵衣菜は注意深く葵姉さんの召喚獣を観察する。

 

「いきますわよ二人とも。《吹き荒れる千嵐剣(サウザンド・テンペスト)》!」

 

葵姉さんがそう言うのと同時に葵姉さんの召喚獣の回りに幾つかの剣が現れた。その数は十を越える。

だが、その剣は蒼白のエフェクトを纏っていた。

 

「行きなさい!」

 

僕と恵衣菜が驚いているなか、葵姉さんはその剣を僕らに向けて飛ばしてきた。

 

「うそっ!」

 

「明久くん掴まって!《閃光》発動!」

 

僕は召喚獣を咄嗟に恵衣菜の召喚獣に掴まらせ、その場から離れた。

恵衣菜の召喚獣に掴まり《閃光》で少し気持ち悪いがすぐに治った。

 

「あっぶないね~。あれって剣だよね?」

 

「うん。恐らく葵姉さんの腕輪の能力は物質化した剣を浮かばせ、相手に飛ばして攻撃する物だと思う」

 

「つまりどう言うこと?」

 

「葵姉さんの腕輪の能力は遠近物質移動攻撃拡張能力型、つまり・・・・・・万能」

 

「万能?」

 

「うん。あれは遠距離からでも、近距離からでも使える腕輪ってこと」

 

「それってヤバくない?」

 

「うん、かなりヤバイ能力。多分だけと、自分で操作して追尾機能も付けられるんじゃないかな?」

 

「ええ~・・・・・・」

 

僕と恵衣菜は、葵姉さんの腕輪の能力に驚愕した。

 

「続けていきますよ!」

 

葵姉さんはそう言うと更に蒼白の剣を飛ばしてきた。

 

「おわっ!」

 

「ちょっ!」

 

僕と恵衣菜はギリギリかわす。

 

「私もいるよ二人とも!――――――吹き荒れろ!氷炎地獄(インフェルノ)!」

 

かわすと零華が炎氷地獄を放って来た。

炎氷地獄は設置型の魔法だ。属性は炎と氷。

 

「こうなったら――――――《事象改変(オーバーライド)》発動!」

 

僕は召喚獣を操作して、恵衣菜の召喚獣を引き寄せ僕の後ろに移動させる。

 

「明久くん!」

 

「大丈夫!」

 

僕は零華の氷炎地獄を《事象改変》で"無かったこと"に改変し、

 

「《属性付与(エンチャント)》発動!属性付与、全属性(オールエレメント)!」

 

自身と双剣に虹色のオーラを纏わせ、迫ってきた蒼白の剣を斬り落とす。

 

カンッ!キンッキンッ!

 

ザンッ!ガキンッ!

 

そして、

 

「お返しだよ!燃え尽きて――――――黒炎(ブラックゲヘナ)!」

 

属性付与と事象改変で、魔法を"あったこと"に改変し、黒炎を発動させ零華と葵姉さんに返す。

 

ドカンッ!

 

零華と葵姉さんに黒炎が当たり爆発が起きた。

 

「・・・・・・あ。やり過ぎた」

 

爆発を見て僕はそう呟く。

 

「あー、でも大丈夫だと思うよ?」

 

恵衣菜の言う通り、爆発が収まり黒煙が収まると、爆心地に白水色のシールドが零華と葵姉さんを守るかのようにドーム状に覆われていた。

 

「やりすぎです兄様!」

 

「危なかったですわ」

 

「ご、ごめん」

 

「兄様の《事象改変》ってほんとチートですよね」

 

「その分消費は激しいけどね」

 

「さて、どんどんいきますよ!葵お姉ちゃん!」

 

「ええ!」

 

零華の言葉に葵姉さんが自身の召喚獣の周囲に蒼白の剣を幾つかの浮かび上がらせて、双剣を構えて迫ってきた。

 

「ここは私が!明久くんは零華ちゃんを!」

 

「了解!任せて恵衣菜!それと、譲渡(トランスファー)、属性付与、全属性」

 

恵衣菜の手を握り、恵衣菜に属性付与による全属性を付与して、僕は後ろに下がり事象改変で"あること"にするため、詠唱をする。

対する零華も詠唱をしていた。

 

「契約に従い、我に従え、高殿の王、永氷の女王。相重なりて螺旋を、築け。黒白の理、混沌を見いだし、来たれ、巨人をも燃えり裁つ雷霆、永極氷華の終わりなき、夜を保ちて、汝を、終わりなき雷氷へと誘おう!」

 

「異図来たれ、私は蒼空を見下ろすものなり。ああ、この世の理を保ちて、新たに創めたもうか。汝を、我の創り給うた、永遠なる永久へと誘おう。終われ、終われ、終われ。止まれ、止まれ、止まれ。終焉への幕開け、今始まらん!」

 

「―――――閃雷駆け巡る氷華の華園(アステリオン・アントス・エンプレシオ)!」

 

「―――――永久の終焉への幕門の日食(エヴァーティング・ラストオブ・イクリプス)!」

 

そして同時に終わり、僕と零華の魔法が放たれた。

僕の放った魔法と零華の放った魔法が互いの魔法を壊していく。

僕の放った魔法はその名の通り、閃雷のように駆け巡り、僕の周囲にはしていた氷雷の華園が広がっていた。そしてその閃雷は薔薇の蔦のように延びていく。

零華の魔法は黒い球体を蔦のように延びていく閃雷にぶつけ相殺している。そして、零華の周囲には日食のよ》うな暗き輝きを出していた。

僕の魔法の属性は雷と氷、そして光。零華の魔法の属性は光、炎、闇だ。

 

「くっ!さすがだね零華」

 

「兄様もです。まさか腕輪の能力でこんな魔法が使えるなんて思いませんでした」

 

「《属性付与》と《事象改変》を同時に使ってるだけだよ」

 

僕は苦笑しながら零華にそう言う。

正直《事象改変》は脳にかなりの負荷が掛かるが、かなりと言っても少しぼおっ、とするだけなので問題ない。

 

「つづけていくよ!」

 

「ええ!」

 

「契約に従い、我に従え、高殿の王。来たれ、巨人を滅ぼす燃え立つ雷霆。百重千重と重なりて、走れよ稲妻!」

 

「契約に従い、我に従え、炎の覇王。来たれ、浄化の炎、燃え盛る大剣。ほとばしれよ、ソドムを焼きし火と硫黄。罪ありし者を死の塵に!」

 

「―――――千の雷(キーリプル・アストラペー)!」

 

「―――――燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス)!」

 

「二人とも。なんで、ネギま!?、の魔法なの?」

 

「え?」

 

「だって、ねえ」

 

「はい」

 

「「自然と何となく思い浮かんだから、と使ってみたかった(ので)」」

 

「・・・・・・さすが兄妹。考えることが同じですのね」

 

僕と零華が放った某魔法先生に出てくる最上位魔法に関して、恵衣菜と葵姉さんは呆れた眼差しで、戦闘の手を止めて僕と零華を見た。

だってこのマンガ持ってるし、どうせだからやってみたかったし。ちょっと中二臭いけどそこは気にしないでほしい。

僕の放った『千の雷』は広範囲雷撃殲滅魔法。雷撃を広範囲に発生させ攻撃する魔法だ。

そして零華の放った魔法『燃える天空』は一定空間内に超高温の炎を発生させ攻撃する広範囲焚焼殲滅魔法だ。

そんなどちらも強力な魔法がぶつかったらどうなるか、それは―――――

 

 

 

ドォーン!

 

 

 

雷撃と焚焼がぶつかり中央でプラズマが発生した。そのプラズマは他に発生したプラズマと結合し、大気中の気体と合わさり、

 

 

ドガンッ!

 

 

次の瞬間大爆発を引き起こした。

 

「うっ!」

 

「きゃぁ!」

 

「くっ!」

 

「うっ!」

 

爆風が吹き荒れ、僕らは顔を両腕で覆う。

 

『『『『『キャアアアアアアアアアア!!!』』』』』

 

観客席からも悲鳴が上がった。

爆風が納まり、爆煙が納まりフィールドを見た。

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

フィールドを見た僕らはあんぐりとした。何故なら―――――

 

 

 

 

『ふ、フィールドがほぼ半壊状態となっています!』

 

『どうも、フィールドが吉井兄妹の極大魔法の連発に耐えられなかったそうですね』

 

『ま、マジですか・・・・・・?』

 

『マジです。本来ならフィールドが半壊することなんてあり得ないのですが・・・・・・』

 

 

『ええぇぇーー・・・・・・』

 

 

 

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

高橋先生の言葉に僕と零華は気まずそうに視線をそらした。

フィールドはほぼ半壊状態で地面は罅が入っていたりとしていた。今頃学園長は学園長室で唖然としているだろう。正直僕もこれは予想外だった。

 

「えっと・・・・・・極大魔法は止めた方が良さそうだよ」

 

「だね・・・・・・」

 

「ですね・・・・・・」

 

「それじゃ、再開しましょうか」

 

「「「・・・・・・」」」

 

僕らは葵姉さんの言葉に無言で頷き、集中力を召喚獣へと移す。

 

チャキ

 

剣を構えた音が響く。

 

「行けっ!」

 

僕は召喚獣を零華と葵姉さんの召喚獣に向けて駆け出させた。

 

ガキンッ!

 

「くっ!はあっ!」

 

僕は葵姉さんの召喚獣と斬り結ぶ。

 

「ぜあっ!」

 

「やあっ!」

 

掛け声と共に召喚獣を更に速く操作して斬り結んでいく。

高速で動いているからかあちこちから金属がぶつかる、金属音と火花が散らす。

 

「私も行くよ、零華ちゃん!多弾攻撃(マルチプル)発動!」

 

恵衣菜は細剣から弓へ武器を変え、零華に弓を放つ。

 

光弓の矢(シャイニング・アロー)雷光の矢(ライトニング・アロー)!」

 

零華も魔法の矢を放ち、恵衣菜の放った矢を落とす。

 

「舞い踊りなさい!《吹き荒れる千嵐剣》!」

 

葵姉さんは自身の召喚獣の周りに蒼白の剣を現出させた。

 

「いきますわよ!」

 

「くっ!」

 

僕は葵姉さんの召喚獣の周囲に滞空する剣を、《事象改変》で防ぎ破壊していく。

 

「まだまだ行きますわ!」

 

だが、破壊しても更に増えてくる。

 

「ちょっ、一体いくつまで増えるの!?」

 

僕は増えていく剣にそう言わざるを得なかった。

 

「更にこんなことも出来ますわよ!」

 

葵姉さんはそう言うと幾つかの剣を、離れさせ恵衣菜に向かって飛ばしていった。

 

「恵衣菜!」

 

「えっ!?」

 

僕は瞬時に召喚獣を恵衣菜の前に移動させ、高速で斬り落としていった。

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久  3872点

        姫宮恵衣菜 3319点

 

 VS

 

 2年Aクラス 吉井零華  2902点

 3年Aクラス 小暮葵   960点

 

 

 

 

 

「速めに決着をつけないと」

 

上の電光掲示板に表示されている点数を見て僕はそう言う。

 

「こうなったら・・・・・・負荷はかなりかかるけど、やるしかないかな」

 

僕はそう呟くと召喚獣を葵姉さんの召喚獣から離れさせる。

 

「《事象改変》―――――封印解放(リミッター・リリース)

 

そう呟くと召喚獣に白銀と虹が合わさったオーラが現れた。

 

「解放?明久くん、なにを?」

 

「属性付与、全属性・・・・・・」

 

恵衣菜がなにかを呟くが、気にせず再度召喚獣に属性付与を掛ける。

 

「っ!!?」

 

一瞬の内に、葵姉さんの召喚獣の周囲に滞空する剣を破壊し、距離を詰め葵姉さんの召喚獣を切り裂いた。

だが、斬る寸前にかわされ、浅く斬る感じだった。

 

「速いっ!」

 

「なんですのあの速さは!?」

 

零華と葵姉さんが驚愕に満ちて言う。

 

「うぐっ!」

 

頭に痛みを感じ僕は少しだけ顔をしかめる。

 

「やっぱり短時間だけだな、これは」

 

召喚獣を更に速くし、零華と葵姉さんを斬りつけていく。

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久  3300点

 

 

 

 

時間が立つにつれ、点数が減っていく。

 

「兄様!」

 

零華の召喚獣が僕の召喚獣の前に立ちふさがり、斬り結ぶ。

 

ザンッ!ガキンッ!

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

 

「更に速くなっている!?」

 

ガンッ!ガンッガンッガンッ!

 

「くっ!精霊の盾(エレメンタル・シールド)!」

 

零華の召喚獣は魔法の盾で斬撃を防ぎ、後方に下がった。

追撃しようにも、葵姉さんの召喚獣の周囲に滞空する蒼白の剣の牽制で追撃出来ない。

 

「そろそろか・・・・・・《事象改変》――――――解放封印(リリース・ケーラ)

 

僕がそう呟くと、召喚獣が纏っていた白銀と虹のオーラが消えた。

 

「ぐっ!」

 

一瞬、頭に強烈な頭痛がくる。

それに顔をしかめるが周りに気づかれないようにする。

まあ、学園長には気づかれるだろうけど。

《事象改変》はあまりにも脳に負荷がかかるため基本的には制限が掛けられている。だが、それを解放すると制限の倍以上のの能力を発動出来る。まあ、負荷は強くなるけど。これが、僕の腕輪が最強だといわれる由縁だ。まあ、学園長がそう言っているだけなのだが。

 

 

 

 

 2年Aクラス 吉井零華  1507点

 3年Aクラス 小暮葵   520点

 

 

 

「削りきれなかったか」

 

「明久くん、大丈夫?辛そうだけど?」

 

「大丈夫だよ恵衣菜。でも、早く終わらせたいかな」

 

「了解~。じゃあいくよ」

 

「うん」

 

「《閃光》!」

 

恵衣菜は召喚獣を葵姉さんの召喚獣に向け、走らせる。

 

キンッ!

 

「ハアッ!」

 

シュッ!シュッ!

 

ザンッ!

 

恵衣菜は《閃光》の速度で、葵姉さんの召喚獣を翻弄し攻撃していっていた。

葵姉さんも、腕輪の能力で滞空させている蒼白の剣を操り、攻撃するが、《閃光》の速度をとらえられず恵衣菜は楽々とかわしていく、がいかんせん数が多い。

だが、それでもギリギリのところをすり抜けて攻撃していっていた。

 

「いきます兄様!《ミストルティンの槍》!」

 

零華の召喚獣は飛び上がると、上空から槍を僕の召喚獣に向け、一気に墜ちてきた。

 

「ハッアァァァァァァア!!」

 

双剣を高速で連発し零華の《ミストルティンの槍》の威力を落とす。

 

「スターバースト・ストリーム!」

 

「なんでまたソードスキルなの!?」

 

恵衣菜がツッコんできたがその返答は後にして。

連続十六回、交互に高速で攻撃して《ミストルティンの槍》を防いでいき、零華の召喚獣を斬る。

 

「ハアァァァァァア!」

 

「セリャァァァァァア!」

 

ドカンッ!

 

大きな衝撃音が鳴り響き、互いの位置を交換して斬り終わった。

それと同時に、恵衣菜も葵姉さんとの戦闘も終わったようだ。

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久  1114点

        姫宮恵衣菜 1904点

 

 VS

 

 2年Aクラス 吉井零華  0点

 3年Aクラス 小暮葵   0点

 

 

 

 

 

『勝者、青コーナー――――――吉井、姫宮ペア!』

 

 

 

 

『決着!準決勝を制し、決勝へと駒を進めたのは吉井、姫宮ペアです!』

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

 

 

西村先生の宣言と新野さんの実況で、観客席から歓声があふれでた。

 

「あら、負けてしまいましたわ」

 

「また、負けちゃったね。さすがに強いな~、兄様と姉様は」

 

「いやいや、こっちはかなりギリギリだったよ」

 

「うんうん。葵姉さんはかなり厄介だったよ」

 

「さすが葵姉さんだよ」

 

「あら、それは嬉しいですわ」

 

「兄様、姉様、必ず優勝してくださいね!」

 

「もちろんだよ零華」

 

「頑張ってくださいね二人とも」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

『えー・・・・・・フィールドの修復のため、決勝戦は16時から行います。ご来場の皆様にはフィールドの修復のため一旦スタジアムから退出していただくことになります。誠に申し訳ありませんがご配慮頂きますようお願い致します』

 

 

 

 

 

スピーカーからそんなアナウンスが聞こえ、僕たちは選手入場口へ歩を進めた。

 

 

 




感想やアドバイスが全く来ない・・・・・・・・
せめて面白いか面白くないかは知りたいです。






次回 『召喚大会決勝』 ここテストに出ます。



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第ⅩⅠ門 召喚大会決勝

「みなさん――――」

「「「あけましておめでとうございます!」」」

「いやー、ついに新年だね」

「そうだね~。前回のコラボでそうだったけど今年はどんな年になるのかな?」

「ソーナさんの今年の抱負はありますか?」

「え?私の?私の今年の抱負は『自分』かな?」

「自分?なんで?」

「うーん、今年からさらに忙しくなるし、自分のやりたいことを見つけないといけないから」

「へぇー」

「大変ですね」

「明久と恵衣菜は?」

「僕は『諦めないこと』かな」

「私は『逃げないこと』だね」

「なるほどね~。二人とも今年も頑張ろうね!

「はい!」

「ええ!」

「では、みなさん。今年も≪バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語≫をどうぞ――――」


「「「よろしくお願いします!!!」」」









この放送は文月学園放送部よりお送りいたしました。


 

~学園長side~

 

「やれやれ。まさかスタジアムの床をあそこまで破壊するとはねー。まったく、我が孫とその婚約者には呆れるとしか言いようがないさね」

 

アタシは目の間の画面に映る文月スタジアムのフィールド状態にそうため息を漏らしながらいう。

そう簡単に壊れたりはするはずがないのだが、目の前の映像に映るフィールドは半壊状態だった。

 

「それにしても《事象改変》の限定解除をするとはね。さすが明久と零華というだけのことはあるさね」

 

アタシがそういうと。

 

「それはそうだよ~。私の子供とその婚約者と従姉なんだから」

 

室内にいたもう一人が笑いながら言う。

 

「そこは威張ることじゃないさね。はぁ・・・・・・。それで今日はどうしたんだい、麻奈美」

 

アタシはソファーに座って同じように文月スタジアムのフィールド状態を見た吉井明久と、零華の母親にしてアタシの娘、吉井麻奈美が笑いながらいう。

 

「音ノ木坂が廃校の危機とかおりちゃんから聞いたから、私もどうにかしないと、って思ってね」

 

「まあ、音ノ木坂はアタシにしても母校だしね。廃校というのは卒業生としては阻止したいものさ」

 

「だよね。今、かおりちゃんや美穂乃ちゃん、瑞那ちゃんの娘のことりちゃんや穂乃果ちゃん、海未ちゃんたちがスクールアイドルとして頑張っているみたいだけど」

 

「そうさねぇ。後何か一つほしいさね」

 

「それでなんだけど」

 

「ン?」

 

「文月学園と音ノ木坂学院を姉妹校にしたらどうかな?」

 

「つまり、系列校にするということさね?」

 

「うん。世界に文月学園にしかない試験召喚システムを音ノ木坂学院にも使ったらどうかなって」

 

「ふむ・・・・・・・・・・。いい案かも知れないね」

 

「でしょ。あ、かおりちゃんにはこの話、どうかなって聞いてあるよ」

 

「・・・・・・ホントに早いさね麻奈美。やれやれ、誰に似たのやら」

 

「アハハハ♪多分、お母さん似じゃないかな?」

 

美穂乃がほんわかに笑うのを見て、アタシは苦笑する。

元々、麻奈美の提案はアタシ自身考えていたものだ。さすが親子としかいえない。

 

「それで、かおりちゃんはなんだって?」

 

「かおりちゃんは喜んで受けさせていただきます。だって」

 

「そうかい。それじゃあ、今日中にその話を締結しとかないとね」

 

アタシはそう言うと執務机の引き出しを開けた。

 

「ん?」

 

「どうしたのお母さん?」

 

「いや、ここにあった腕輪がないさね」

 

「え?」

 

アタシは他の机も開けるがやはり無かった。

 

「お母さん、その腕輪って召喚大会の賞品とは別の腕輪?」

 

「ああ。だが、あれはかなり危険さね。もしこれが明久や恵衣菜、相手に使われたら・・・・・・」

 

「ど、どういうこと!?」

 

「ここに入っていた腕輪はフィードバックを限界にまで引き上げる効果とフィードバックが無い相手にもフィードバックを与える事が出来るさね」

 

「つ、つまり、明久君と恵衣菜ちゃんがこれを着けた相手と闘ってダメージを負ったら・・・・・・」

 

「フィードバックの限界、100パーセントのフィードバックとフィードバックの無い恵衣菜にもフィードバックが来るさね。これは元々、教師用として造ってたんだが、あまりにも危険ということで公表せずに封印したのさ」

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

「かなり不味いさね。この期間に封印中のこの腕輪が無くなったとすると首謀者は当然竹原さね」

 

「竹原って、教頭の?」

 

「ああ。ったく、こんなことならさっさとガサ入れをしとけば良かったさね」

 

「明久君と恵衣菜ちゃんにこの事は・・・・・・」

 

「もちろん伝えるさね・・・・・・・と言いたいところなんだけど」

 

アタシは苦虫を咬み潰したような顔をする。

 

「今伝えて、これで昨日みたいな事があったら余計ヤバイさね」

 

「それじゃあ・・・・・・」

 

「ああ、伝えるとしたら決勝直前さね」

 

「そう・・・・・・。わかったわ」

 

アタシは、その下にある文月学園と音ノ木坂学院系列校案の紙を出す。

 

「麻奈美、すまないがかおりちゃんを呼んでくれるさね?」

 

「うん。わかった」

 

アタシは麻奈美に呼び出しをお願いし、今するべきことに傾ける。兎に角、一刻も早く終わらせなければならない。

アタシは念のため、タイマーセットしたメールを準備し送信状態にする。これで何かあっても明久たちに伝わるはずさね。

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室でそんな会話がされている時

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「ことり?どうしたの?」

 

僕は校舎裏にことりに呼び出され、ことりと会っていた。

 

「明久くん。今度ちょっとことりと付き合ってくれるかな?」

 

「別にいいけど・・・・・・。穂乃果や海未。恵衣菜とかじゃなくて?」

 

「うん。明久くんじゃないとダメなの」

 

「・・・・・・いいよ。待ち合わせ場所と日時は?」

 

「今度の土曜の9時に秋葉原駅前でいいかな?」

 

「うん」

 

「それとね・・・・・・。誰にも言わないで来てくれる、かな?」

 

ことりの言葉に僕は何かあるのだろうと感じ取った。

僕だけにと言うことは、何か恵衣菜たちに言えないことがあるのだろう。長年の付き合いだからこそ分かることだ。

 

「いいよ。じゃあ、今度の土曜、9時に秋葉原駅前ね」

 

「うん。ありがとう、明久くん」

 

「別にいいよことり。幼馴染なんだから」

 

「うん」

 

「それじゃあ行こうか」

 

「そうだね~」

 

先程から、ことりの何時もの感じがないのを感じていたが、あえて聞かなかった。

理由は、僕と話終えると何時ものほんわかなことりに戻ったからだ。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ことりside~

 

「そうだね~」

 

私は、明久くんの言葉にうなずき、そのまま明久くんとともに穂乃果ちゃんや恵衣菜ちゃんがいる場所へと向かった。

けど、私の頭のなかはお母さんが話したことで一杯だった。これを相談できるのは幼馴染の明久くんしかいない。

私はそんなことを思考しながら明久くんとともに戻っていった。

 

~ことりside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

 

 

『会場のみなさま!お待たせいたしました!!遂に清涼祭二日目のメインイベント≪試験召喚大会≫の決勝が行われます!』

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

「ついにここまで来たね、恵衣菜」

 

「うん」

 

選手入場口で待っていると、不意に僕のスマホにメールが届いたアラームがなった。

 

「ん?・・・・・・お祖母ちゃんから?」

 

「お祖母ちゃんって、学園長先生?」

 

「うん。えーと・・・・・・なっ!」

 

僕はメールに記載された文に驚愕した。

 

「どうしたの明久くん?」

 

「う、ううん。なんでもないよ」

 

「ホント?」

 

「うん。あ、それじゃあ行こうか」

 

「うん!」

 

僕と恵衣菜は選手入場口からスタジアムに歩いていった。僕はその前に、例の腕輪を使うことを返信しスマホをしまう。

 

 

 

 

『青コーナー。2年Fクラス、吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

 

『まず始めに、青コーナーから出てきた選手は我が文月学園でも有名なバカップルにして、序列第一位、二位の称号を持つ吉井明久くんと姫宮恵衣菜さんです!』

 

 

 

 

「「僕ら(私たち)はバカップルじゃないよ!!」」

 

僕と恵衣菜は新野さんの放送に瞬時にツッコミ返した。

 

 

 

 

『息のあったツッコミですね』

 

『ホントですね。まさにバカップルの名は伊達じゃありませんね』

 

 

 

 

 

「「そんな名前いらないよ(いりません)!!」」

 

 

 

 

 

『赤コーナー。3年Aクラス、常村勇作!夏川俊平!』

 

 

 

 

 

『続いて出てきたのは出場者の数少ない3年生コンビです!』

 

 

 

 

 

「いよぉ」

 

「またあったな」

 

出てきた常夏コンビが僕と恵衣菜にそう挨拶する。

 

「なんですか常夏コンビ先輩?」

 

「ダメだよ明久くん。常夏センパイって呼ばないと」

 

「あ、そうだった。それで、なんですか常夏センパイ?」

 

「てめぇら俺らに喧嘩売ってんのか!」

 

「年上を敬えよコラァ!」

 

「えー、だって、ねぇ」

 

「うん。葵お姉ちゃんと比べたら・・・・・・」

 

「なんだとてめぇ!」

 

僕は、目の前の常夏先輩に訪ねた。

 

「先輩方、聞きたいことがあります」

 

「なんだよ」

 

「教頭に協力している理由はなんですか?」

 

僕の質問に夏川先輩が少し驚いた表情を浮かべたが、すぐにもとに戻った。

 

「へっ、こちらの事情は知ってるってことか。進学だよ進学」

 

「進学?」

 

「ああ。上手くいったら進学の推薦書を書いてくれるっていうんでな」

 

「・・・・・・そっちの常村先輩もですか?」

 

「まあ、な」

 

常村先輩は視線をずらしてこたえた。

 

 

 

 

 

『両者用意はいいか?』

 

 

 

 

西村先生のアナウンスが聞こえ、僕らは準備をする。

 

 

 

 

『対戦科目―――――日本史!始めっ!!』

 

 

 

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

西村先生が日本史のフィールドを展開し、対面する常夏先輩が召喚する。

夏川先輩の召喚獣はアメリカの先住民のような服装に片刃の剣と盾を装備して、常村先輩の召喚獣は着物姿に胸当てなどの軽少の金属鎧と両刃の大剣だった。

 

 

 日本史

 

 3年Aクラス 常村勇作  209点

        夏川俊平  197点

 

 

「ほら、お前らもさっさと召喚しろよ。そしてお前らの貧相な点数を衆目に見せつけろよ!」

 

夏川先輩が僕らをバカにしたように言い、常村先輩はなにも言わずに僕らを見る。

 

「日本史か~」

 

「うふふ。明久くん、見せようか。私たちの全力を」

 

「そうだね」

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

 

 日本史

 

 2年Fクラス 吉井明久  1114点

        姫宮恵衣菜 931点

 

 

「「なっ!?」」

 

僕らの点数を見て、先輩方が息を飲むのが伝わった。

 

 

 

 

『せ、1000点オーバー!!?』

 

『単一教科で1000点超えとは凄いですね。これまでの最高得点は西村先生の945点でしのでそれを大きく凌駕してます』

 

 

 

 

「な、なんだよその点数!!」

 

「これが僕と恵衣菜の全力です」

 

「私たちの得意科目は色々あるけど、その中でも特に得意なのが日本史です」

 

「それでは始めましょうか先輩?」

 

「くっ!」

 

僕と恵衣菜は召喚獣を先輩方に向けて走らせた。

 

「っ!」

 

僕らの攻撃を常夏先輩は紙一重でかわす。

 

「くらえっ!」

 

反撃してきた夏川先輩の攻撃を僕は余裕をもってかわす。

 

「ちっ!うぜぇ!」

 

「・・・・・・」

 

「2年相手に少し大人気ねぇが仕方ねぇ」

 

そう言うのが聞こえると、夏川先輩はポケットに手を突っ込みなにかを掴む動作をしたのが見えた。

 

「なにをするつもりなんだろう」

 

「油断できないね」

 

僕は召喚獣を夏川先輩の召喚獣に向けて走らせるが、

 

「行かせねぇよ!」

 

相方の常村先輩に妨害された。

 

「くっ!」

 

避けて行こうとするがついてきて妨害してくる。

 

「ふっ!好きアリだぜ!」

 

夏川先輩がそう言うのと、常村先輩の召喚獣が僕の召喚獣の目の前から退くのと同時だった。

そして、その瞬間。

 

「!?」

 

僕の召喚獣の眼に異物が入り込んだのを感じた。

それに併用して僕の眼にもフィードバックがくる。

一瞬視界が瞑れた。

 

「ぐっ!!」

 

その瞬間、僕の脇腹と両腕に鋭い激痛が走った。

 

「グアアァァァァァァァァア!」

 

通常のフィードバックよ尋常じゃない痛みに僕は脇腹をと両腕を抑えながら悲鳴をあげる。

 

「明久くん!?」

 

「余所見していいのか?」

 

「なっ!キャアアアアアア!」

 

僕の心配をした恵衣菜が目を少し召喚獣から話した瞬間に常村先輩の召喚獣の剣が恵衣菜の召喚獣の右腕を斬りつけた。

斬りつけられた瞬間、恵衣菜の召喚獣が常村先輩の召喚獣に斬りつけられた右腕を抑えながら悲鳴を上げた。

 

「恵衣菜!」

 

僕は夏川先輩と常村先輩をみる。

そして気がついた。二人の右腕に血のような色をした腕輪と濃い赤色の腕輪があるのを。

 

「な、なんで血金の腕輪と赤金の腕輪を先輩方が持っているんですか!」

 

そしてそのときは僕は気がついた。

学園長から送られたきたメールに竹原が封印した腕輪を盗まれたと書かれていたことを。

そして、先輩方は竹原と協力関係。そこから持たされる意味は――――

 

「竹原からその腕輪を受け取ったんですね!」

 

「ああ。そうだぜ。これで俺らはてめぇらを打ちのめせる!」

 

「くっ!恵衣菜、下がって!」

 

「う、うん。明久くん、あの腕輪は」

 

「あれは封印指定の腕輪だよ。随分前に学園長が封印したんだけど竹原に盗まれたみたい」

 

「そんな」

 

「あれの腕輪は血金がフィードバックを100パーセントまで引き上げるで、赤金はフィードバックを発生させること」

 

「なっ!」

 

「だから恵衣菜は遠距離からお願い。僕はこれを使う」

 

そう言うと僕は袖を巻くってそこに着けている腕輪。虹金の腕輪を見せる。

 

 

「いくよ―――――終わりと始まりの双翼(ゼロ・ウイング)!」

 

僕のキーワードを聞き取り左右二対の虹色の翼が僕の召喚獣の背中から現れる。

 

「もう出し惜しみをしてる場合じゃない。うっ!」

 

僕は脇腹に痛みを感じ手を当てる。手を当てた箇所には血が出ていた。

 

「あ、明久くん。血が!」

 

「だ、大丈夫。恵衣菜は弓でサポートして」

 

「う、うん」

 

僕は両足で踏ん張りながら意識が途切れないようにする。

 

「はっ!威勢がいいな。だが、いつまで持つかな」

 

「《事象改変(オーバーライド)》――――――全解放(フルバースト・ゼロ)!」

 

「ふっ、潰れろ!」

 

夏川先輩の召喚獣が僕の召喚獣に刃を向けてくる。

そして当たる直前。

 

 

 

 

ザンッ!

 

 

 

 

 

「は?」

 

僕の召喚獣は夏川先輩の召喚獣の腕を斬り消していた。

 

「な!?」

 

「《属性付与 (エンチャント)》―――――全属性(オールエレメント)。《事象改変》、全属性、掌握(コンプレクシオー)

 

僕は二つの腕輪のリミッターを解除し、虹色のオーラを纏わせた。そして――――――

 

「終われ、そして儚く散るがいい」

 

次の瞬間には常夏コンビの召喚獣は幾重にも切り刻まれ、虚空へと消えていった。

 

 

 日本史

 

 2年Fクラス 吉井明久  574点

        姫宮恵衣菜 714点

 

 VS

 

 3年Aクラス 常村勇作  0点

        夏川俊平  0点

 

 

 

 

 

 

『試合終了!勝者青コーナー!2年Fクラス、吉井明久!姫宮恵衣菜!』

 

 

 

 

『『『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 

 

 

『ついに決着!勝者は吉井、姫宮ペアとなりましたぁ!!』

 

 

 

 

 

新野さんが放送するが、正直今の僕は意識を保つだけで精一杯だった。

恵衣菜の方は右腕を抑えているけど大丈夫そうだ。

僕はそう安心すると、僕らは早々にその場から立ち去った。

 

「明久くん」

 

スタジアムから選手入場口近くの廊下を歩いていると恵衣菜が心配そうに聞いてきた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ。だ、大丈夫。恵衣菜は無事?」

 

「う、うん」

 

「そ、そう。よかっ・・・・・・た・・・・・・」

 

僕は恵衣菜にそう言うとその場に倒れた。

 

「明久くん!あ・・・・・き・・・さ・・・・・・・・くん!・・・・・ひ・・・・・・・ん!」

 

意識が無くなる前に聞こえたのは恵衣菜が倒れた僕に寄り添って泣きながら、僕を呼ぶ声だった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~学園長side~

 

「アタシさね。―――――なに!?――――――それで吉井と姫宮は!?――――――わかったさね。後はこちらに任せな」

 

アタシは不意にかかった電話からの用件に身体を硬直させた。

 

「くそっ!やっぱり使ってきたのかい竹原!」

 

アタシは腹立ちを少しでも納めるため、目の前の執務机を叩きつける。

執務机を叩きつけると、ガンッ!と鈍い音がなる。

 

「絶対に許さないよ竹原!」

 

可愛い孫とその婚約者を傷つけられ、さすがのアタシも我慢の限界だった。

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

「明久くん!しっかりして明久くん!明久くんってば!!」

 

私は召喚大会の決勝が終わり通路で倒れた明久くんの身体を揺する。右腕の痛みなど忘れて明久くんを呼び続ける。

明久くんの両腕と脇腹からは血が出ていた。さっき夏川先輩の召喚獣に明久くんの召喚獣が斬られたところだ。

両腕はそんなに血は出てないが脇腹はかなりの出血だった。

 

「明久くん!明久くん!!」

 

私は両手で止血しながら明久くんの名を呼ぶ。

 

「恵衣菜ちゃん!」

 

不意に私の名を呼ぶ声がした。

 

「お、お義母さん!」

 

そこには慌てたように明久くんと零華ちゃんのお母さん。吉井麻奈美さんがいた。

そしてその後ろには明久くんの主治医、西木野真吾さんがいた。

 

「大丈夫よ恵衣菜ちゃん。真吾くん!」

 

「うむ!」

 

真吾さんは持っていた大きな布で明久くんの脇腹の出血と両腕の血を止める。

 

「これで一応応急処置はした。このまま僕の病院に連れていこう」

 

「お願いね真吾くん」

 

「もちろんだ。明久くんは絶対に死なせない。僕の命を懸けて誓おう」

 

西木野さんはそう言うと明久くんを抱き抱えて走っていった。

 

「お、お義母さん、その・・・・・・」

 

「大丈夫よ恵衣菜ちゃん。明久君が貴女を残して死ぬはずがないわ。今は明久君の無事を願いましょう」

 

「グスッ。はい!」

 

私は麻奈美さんに抱き抱えられながら立ち、麻奈美さんと学園の保健室に向かった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

「はい、もしもし。―――――あれ、お母さん?どうしたの?――――――え。に、兄様と姉様が・・・・・・・。―――――そ、そんな兄様が・・・・・・。―――――――う、うん。わかった。―――――うん。はい、じゃあ」

 

「どうかしたんですか零華ちゃん?」

 

私は電話の掛かってきたスマホをブレザーのポケットにしまい、隣の葵お姉ちゃんにを見る。

そのそばには穂乃果ちゃんやことりちゃんたち、つばさちゃんもいた。

 

「零華ちゃん?」

 

「お、お姉ちゃん・・・・・・」

 

「どうしたの?」

 

「に、兄様と姉様が・・・・・・」

 

「明久くんと恵衣菜ちゃんが?」

 

「召喚大会で怪我をして兄様が意識不明だって」

 

「「「「「!!」」」」」

 

私の言葉にその場にいた私の関係者が息を飲んだ。

 

「恵衣菜ちゃんは無事なの?」

 

「うん。今は保健室にいるってお母さんが」

 

「・・・・・・保健室に向かいましょう」

 

「葵お姉ちゃん・・・・・・」

 

「大丈夫ですよ零華ちゃん。明久くんが零華ちゃんと恵衣菜ちゃんを残して死ぬわけ無いですから」

 

葵お姉ちゃんの言葉に私は少し元気が出た。

 

「うん」

 

「では行きましょう」

 

私たちは葵お姉ちゃんのあとに続いて保健室へと向かった。私は絵里ちゃんとつばさちゃんの肩を借りて歩いていく。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『終わりと花火』 ここテストに出ます。


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第ⅩⅡ門 終わりと花火


バカテスト

問 以下の文章の( )に正しい言葉を入れなさい。
 
 『光は波であって、( )である』


解答

姫宮恵衣菜

『粒子』


教師コメント

『よくできました』


園田海未

『粒子』


教師コメント

『正解です』


南ことり

『粒子』


教師コメント

『さすがです』


高坂穂乃果

『わかりません』


教師コメント

『せめて何か書いてください』




~雄二side~

 

「どうしたのじゃ雄二よ?」

 

「・・・・・・なにかあった?」

 

「すまん。お前たち。明久と姫宮の代わりに召喚大会の表彰式に出てくれないか」

 

俺は呼んだ、秀吉と康太を前にいう。その手にはスマホが握られている。

 

「別に構わんぞ?」

 

「・・・・・・俺も」

 

「じゃが、何故儂らなのじゃ?明久と姫宮はどうしたのじゃ?」

 

「・・・・・・・・・・秀吉、他言無用で頼むぞ」

 

「む?」

 

「明久と姫宮は決勝での怪我で出られない」

 

「なんじゃと?」

 

「・・・・・・どういう意味?」

 

「明久たちの対戦相手の常夏コンビが封印指定の腕輪を使って明久たちを怪我させた。それで怪我をして明久は今病院だ。姫宮は保健室で手当てを受けている」

 

俺は先程届いた学園長からのメールを二人に伝える。

 

「ふむ。須川や横溝には伝えんでよいのか?」

 

「あの二人には後で伝える。今あの二人に抜けられるとちょいと厳しい」

 

時刻は午後16時20分。表彰式は30分からだ。

今この時間帯はラストオーダーを取っているため店内はかなり混んでいる。

 

「了解じゃ、まかせとくのじゃ」

 

「・・・・・・承知した」

 

「すまん」

 

秀吉と康太は頷き、一言そういうと、表彰式のある文月スタジアムへむかった。

 

「さてと。これで終わりとは思えねぇよな。何せあの竹原が黒幕だ。昨日の件といい気を引き締めとくか」

 

俺はそう呟くと、周囲を警戒するようにしてホールへと戻った。

 

~雄二side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

「っ~!」

 

「大丈夫恵衣菜ちゃん」

 

「え。あ、はい。大丈夫です翠さん」

 

私は今、保健室で翠さんによる手当てを受けていた。

一回右腕をフィードバックで斬られたとはいえ、そのフィードバックは通常より高く、右腕が痺れて感覚が麻痺していた。

 

「それにしても封印指定の腕輪を使うなんて・・・・・・」

 

「そうね。翠ちゃん、恵衣菜ちゃんの右腕はどうかしから?」

 

「しばらくこのまましておけば治りますよ、麻奈美さん」

 

「よかったわ~」

 

「とこらで麻奈美さん。いつ日本に帰ってきたんですか?」

 

翠さんの質問で私はそう言えばと思い出した。

明久くんと零華ちゃんから聞いた話では、確かフランスにいるはず、だ。

 

「今朝よ」

 

「え!?今朝ですか!?」

 

「ええ。そのままここに直行したのよ♪」

 

ホント、子供を三人産んでいるとは思えない。私は麻奈美さんを見てそう思わざるを得なかった。最近の母親には若作りでも流行っているのだろうか?

 

「それにしても明久くんは大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫よ。だって真吾くんが昔からあの子の主治医よ?彼に任せておけば大丈夫よ」

 

麻奈美さんがそう言い終えると。

 

「姉様!大丈夫ですか!!」

 

「恵衣菜ちゃん、大丈夫!?」

 

「無事だよね恵衣菜ちゃん!!」

 

「無事ですか恵衣菜!?」

 

保健室の扉が開き、零華ちゃんを先頭に穂乃果ちゃんやことりちゃん、海未ちゃんたちが入ってきた。

 

「うわっ!」

 

「あらら!?」

 

翠さんも麻奈美さんも驚いて目を見開いていた。

 

「れ、零華ちゃん、みんな。私は大丈夫だよ。ちょっと右腕の感覚が麻痺しているだけだから」

 

「それは大丈夫と言えない気がするよ?」

 

「ことりに同感です」

 

「ホントに大丈夫なの恵衣菜ちゃん?」

 

「恵衣菜。このあと私の病院で検査を受けた方がいいわよ」

 

「真姫に同意よ。念のため恵衣菜は病院で検査してもらった方がいいと思うわ」

 

「お、大袈裟だよ~。真姫ちゃん絵里ちゃん」

 

「翠姉さんはどうですか?保険医から見て」

 

「そうね・・・・・・・。一応、検査だけはしといた方がいいかもしれないわね。何らかの後遺症が残ったりしたら大変だし」

 

葵ちゃんの質問に翠さんが答えた。

 

「翠さんがいうなら・・・・・・」

 

「じゃあ私がパパに電話して言っておくわ」

 

真姫ちゃんはそう言うとスマホを取りだし、電話を掛け三言四言話すとスマホをしまった。

 

「準備はしておくみたいよ」

 

「ありがとう真姫ちゃん」

 

「別にいいわよ」

 

「真姫はホント素直じゃないわね」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!」

 

「アハハハ・・・・・・」

 

絵里ちゃんの言葉に真姫ちゃんは、顔を赤くして突っ込み返した。

真姫ちゃんの反応に、周囲からは少し笑いが生まれた。

 

「あ。それじゃあ私はクラスの方に行きますね。代表がいないと大変でしょうし」

 

「それではわたくしもクラスの方に戻りますわ」

 

零華ちゃんと葵ちゃんはそう言うと保健室から出ていった。自分のクラスへと向かったのだろう。

 

「それにし・て・も~・・・・・・・・・・」

 

零華ちゃんと葵ちゃんが出ていくと麻奈美さんが穂乃果ちゃんたちを見た。

そしてその目を見てなんとなくこのあと起こる展開を予想した。そして無言で隣の翠さんを見る。

翠さんも苦笑い気味の表情で私と同じように見てきた。

つまりは翠さんも同じ予想についたのだろう。

 

「穂乃果ちゃんもことりちゃんも海未ちゃんもつばさちゃんも可愛くなったわ~♪」

 

そう言うと否や、麻奈美さんは穂乃果ちゃんたちに抱き付いた。

 

「うわっ!」

 

「ちょっ!」

 

「ま、麻奈美さん!?」

 

「んん~。四人ともホント可愛くなったわね~。で、そっち女の子が真吾くんと朱梨ちゃんの娘の真姫ちゃんね?」

 

「え。あ、はい」

 

「朱梨ちゃんの高校時代そっくりね♪」

 

「え!?あ、明久のお母さんは――――「私のことは麻奈美でいいわよ♪」――――は、はい。麻奈美さんはママとパパの事知ってるんですか?」

 

「ええ。朱梨ちゃんは私の中学時代からの同級生だし、真吾くんは大学時代からの友達よ♪」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「ええ。あとは・・・・・・そっちの子が、にこちゃんでしょ。で、花陽ちゃんに凛ちゃん。希ちゃんに絵里ちゃん、あんじゅちゃんに英玲奈ちゃんよね」

 

麻奈美さんがみんなの名前を言い当てたことに驚いた。

 

「いやー。ホント時が過ぎるのって速いわね~。あのときの子達がこんなに大きくなって可愛くなってるんだもん」

 

「あのときの?」

 

「あれ?もしかして聞いてなかったりする?」

 

麻奈美さんは私の疑問にそう答え、麻奈美さんの疑問に絵里ちゃんたちは首をかしげた。

 

「アララ。話してなかったのね~」

 

「「「「「?????」」」」」

 

「私、みんなの親と知り合い・・・・・・と言うより友達よ」

 

「え・・・・・・・」

 

「「「「「えええーーーーーっ!!!?」」」」」

 

「ホントなんですか!?」

 

「ええ。ホント懐かしいわ~。私もみんなと同じくらいの頃があったのよ」

 

『『『『『(とてもそうは見えない)』』』』』

 

麻奈美さんの発言に私たちは同時に心の中で、麻奈美さんを見ながらそう思った。

と言うより未だに子供を3人産んでいるとは思えないんだけど。

 

「それでね、みんなが産まれたとき母親どうしで集まってみんなの事を話したのよ。確かそのあとだったかしら、絵里ちゃんたちがロシアへ引っ越しちゃったのは」

 

麻奈美さんは懐かしむようにして口にする。

まさかこんなところで親交があるとは思わなかった。

 

「さてと。それじゃあみんなで明久くんの様子を見に行きますか」

 

「え?」

 

「場所は西木野病院よ」

 

『『『『『えええーーーーーっ!!』』』』』

 

そんなこんなで私たちは明久くんが治療を受けている西木野病院へ行くこととなった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恵衣菜たちが保健室にいるとき。

 

 

 

 

 

 

 

 

~竹原side~

 

「くそっ!役立たず共め!せっかくあの腕輪を与えてやったっていうのにあっさり負けやがって。昨日といい今日といい、やはり吉井明久は邪魔だな」

 

私は窓から見える校庭を見てほくそ笑む。

 

「だがまあいい。フィードバック100%で身体にダメージを負ったんだ、暫くは動けるはずがあるまい」

 

そう呟くと。

 

 

 

"ドガン!"

 

 

 

「なっ?なんだ!?扉がいきなり!?」

 

立ちあがり戸惑っていると。

 

「こんにちは竹原教頭先生」

 

破壊された扉から人影が現れた。

 

「だ、誰だ!」

 

「わかりませんか?」

 

人影はそう言うと姿を表した。

 

「き、貴様は!」

 

~竹原side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「こんにちは竹原教頭先生」

 

扉を破壊し、そう言う。

 

「だ、誰だ!」

 

「わかりませんか?」

 

僕は戸惑いの声を挙げている竹原に姿を見せた。

 

「き、貴様は!」

 

「昨日の件と今日の件のお礼に参りました」

 

「――――――吉井明久!」

 

竹原は驚愕の表情を露にしていう。

 

「貴様、何故ここにいる!」

 

「決まってますよ。――――――竹原、あんたを捕らえるためだ」

 

「なに!?」

 

「僕だけならまだいい。だが貴様は僕だけじゃなくこの文月学園やライブに協力してくれたUTX学院、音ノ木坂学院のみんな、親友や幼馴染、最愛の妹。そして、恵衣菜に手を出した。それだけじゃない」

 

「ッ!?」

 

僕のかなり強めの殺気に竹原は後ずさりをする。

 

「貴様は封印指定の血金の腕輪と赤金の腕輪を使って恵衣菜を傷つけた。貴様の目的のためにな。あの先輩二人にも色々言いたいがアイツらは貴様に従っていたようだからな、そこはお婆ちゃんいや、学園長にお願いしよう」

 

「お、お婆ちゃんだと!?」

 

「その様子じゃ知らなかったんだ。藤堂カヲル学園長は僕と零華のお婆ちゃんなんだよ。お婆ちゃんが築き上げた学園を壊そうとするなら僕は貴様を許さない。まあ、それ以前に恵衣菜に手を出した時点で貴様はすでに詰んでいる」

 

「なっ、ちょっ、まっ、やめっ」

 

竹原は腰を地面につき後ずさるが後ろはすでに壁があるだけだ。

 

「さあ。許しを請いて祈るがいい。もっとも許しを請いても赦しはしないけどな!」

 

「あ、あああああああああぁぁぁっ!!!」

 

僕は竹原の胸元を掴み上げ、今までのお返しにと全力で殺る。まあ、実際はボコすだけなんだけど。

竹原を恐怖で震え上がらせ、気絶させた僕は竹原を近くにあった紐で手足を縛り放置する。

 

「これで終わったね。・・・・・・・・うっ!がはっ!」

 

僕は突如走った脇腹と両腕の激痛にその場に倒れた。

 

「しっかりしろ明久くん!」

 

「せん、せい・・・・・・・」

 

「全く、いくら応急手当をしているとはいえその体で、やったんだ。暫くは動けないよ」

 

「すみません。西木野先生にまで手伝ってもらって」

 

僕はスタジアムの廊下で倒れたあと、少しして目を覚まし、西木野先生に事情を説明して手伝ってもらった。

当初は当然、医者の立場としてもあるのだろうが西木野先生は、僕を手伝うことに否定だった。すぐにでも治療を受けなければならないのだろう。だが、僕が必死に頼み込み、5分だけ猶予をもらってここの惨状を引き起こした。

 

「なに、構わないさ。僕もこの人にはかなりイラッてきていたんだ。己の目的のために、娘の真姫や明久くんたちを傷つけたんだ、当然だよ。まあ、ぶっちゃけ僕がボコしたかったけど」

 

西木野先生は自供気味に苦笑しながら言う。

 

「アハハハ」

 

「よっと。立てるかい?」

 

「は、はい。なんとか」

 

僕は西木野先生に肩を貸してもらってなんとか立ち上がる。するとそこへ。

 

「無事かい明久!」

 

「お婆ちゃん・・・・・・」

 

お婆ちゃんの藤堂カヲル学園長が血相を抱えて来た。

 

「まったく、西木野先生から電話を貰ったときは生きた心地がしなかったよ」

 

「ごめんお婆ちゃん」

 

「ホント、また無茶して。頼んだあたしも悪かったけど。明久が無事で良かったよ」

 

「ありがとうお婆ちゃん」

 

「さて。後はあたしらに任せて明久は病院で治療を受けてくるさね」

 

「うん。わかった」

 

「気になることは後で伝えるさね」

 

「うん。お願いね、お婆・・・・・・・ちゃん」

 

僕はそこで意識が途絶え眠りに落ちてしまった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~学園長side~

 

「まったくこの子は」

 

「明久くんらしいといえばらしいですけどね」

 

「まあそれはあるさね」

 

「ええ。医者の立場としてはあまり喜ばしくないですけど、僕個人としては明久くんは誇らしいですよ」

 

「そうさね」

 

「それでは僕はこれで」

 

「ああ。西木野先生、明久のことお願いするさね」

 

「ええ。任せてください」

 

「それとここでのことは・・・・・・」

 

「わかってます、他言無用ですね」

 

「ええ」

 

「では」

 

西木野先生は明久を抱き抱えて教頭室から退室していった。

 

「さてと、それじゃああたしはガサ入れでもしようかね」

 

あたしは未だに気絶している竹原を一瞬目に入れてから、教頭室のガサ入れをし始めた。

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

麻奈美さんとともに私たちは明久くんがいる西木野病院へとやって来た。

 

「さてと。まずは恵衣菜ちゃんの治療ね」

 

「は、はい」

 

「じゃあお願いね朱梨ちゃん」

 

「了解よ、麻奈美」

 

いつの間に近くにいたのだろう。すぐそばに真姫ちゃんの母親がいた。

 

「ま、ママ!?」

 

真姫ちゃんは目を丸くして驚いていた。

 

「ここだと目立つわね・・・・・・。あ、じゃああそこでいいわね」

 

そう言い、付いてきて、と言われ私たちは真姫ちゃんの母親のあとについていった。

案内されたのは、ある部屋の一角だった。

 

「ここ?」

 

「ええ。さ、入って」

 

中にはいると、中は広く個室のようで、ベットが一つ。そのベットの上には寝ている人がいた。

 

「明久くん・・・・・・」

 

そこで寝ていたのは明久くんだった。

 

「ここなら他の人の邪魔にならないで治療できるわね」

 

そう言うと朱梨さんは持っていた治療セットを出して、私の右腕を見た。

 

「痛みはある?」

 

「いえ。感覚が少し・・・・・・」

 

「ふむ。・・・・・・・次は手をグーパーグーパーしてくれる」

 

「こ、こうですか?」

 

私は朱梨さんのいった通り、掌を握ったり開いたりする。

 

「うん。暫く右腕を動かなさなければ直ぐ治るわね。一応、氷で冷やしておきましょう」

 

そう言うと、保冷剤を取り出し右腕にハンカチでくるんだ保冷剤をあて、軽く布で押さえる。

 

「これで大丈夫よ」

 

「ありがとうございます、朱梨さん」

 

「ありがとう、朱梨ちゃん」

 

「いいのよ。気にしないで恵衣菜ちゃん、麻奈美」

 

「・・・・・・・明久くん。いつ目を覚ますかな」

 

「すぐ目覚めるわよ・・・・・・・」

 

私の呟きに麻奈美は明久くんを見て言う。

すると。

 

「あら?」

 

麻奈美さんのスマホにメールが届いたことを知らせるバイブレーションが無音で鳴った。

 

「ちょっとごめんね」

 

「それじゃあ私も失礼するわね。真姫、みんなもあまり遅くならないようにね」

 

麻奈美さんと朱梨さんは、そう言うと明久くんの病室から出ていった。

 

「明久くん、安らかに眠ってるね」

 

「ホントね」

 

「明久くんはホント無茶ばかりしてるんですから」

 

私は寝ている明久くんの右側の椅子に座り、左手で優しく頭を撫でる。

するとそこへ。

 

「お兄ちゃん!」

 

扉を開けて、零華ちゃんが入ってきた。

 

「しぃー。明久くん寝てるから静かにね」

 

「あ、ご、ごめんなさい姉様」

 

「そう言えば零華ちゃんが明久くんにお兄ちゃんじゃなくて兄様、って言うようになったのって高校入ってからだっけ?」

 

「そう言えばそうですね」

 

「うん。ずっと疑問に思ってたんだ~。ねえ、零華ちゃん」

 

「ことりちゃんどうかしましたか?」

 

「零華ちゃん、なんで明久くんのことをお兄ちゃんから兄様で、恵衣菜ちゃんを姉様なの~?」

 

「え、え~と。中学まではお兄ちゃんで良かったんですけど、高校入ってからはお兄ちゃんって変かな~って、それで兄様にしたんですよ」

 

「じゃあ恵衣菜ちゃんは?」

 

「姉様はお兄ちゃんの恋人ですし、まだお義姉ちゃんって言えなくて」

 

零華ちゃんの説明に、その場にいた全員が納得したようにうなずいた。

私は姉様でもお義姉ちゃんでも名前でもいいんだけどな~。

 

「私としてはもう早く籍を入れて、結婚してほしいですね」

 

「ケホッ!コホッコホッ!」

 

いきなりの爆弾発言に私はむせた。

 

「けっ、けけけ、結婚//////明久くんと・・・・・・結婚・・・・・・・♪//////」

 

「あらら、恵衣菜が零華の結婚って言葉にトリップしちゃってるわよ」

 

「う~ん。海未ちゃん、ことりちゃん。なんか前にも見たことないこの光景?」

 

「奇遇ですね穂乃果。私も見たことある気がします」

 

「恵衣菜ちゃんは純情だからね~。うらやましいよ~」

 

「純情にも程がある気がするわよ」

 

「う~ん。ここまでの純情乙女は音ノ木坂にもそうそういないヤネ」

 

「いたらいたらで大変だと思うわよ希」

 

「純情ならここにもいるじゃない」

 

「にこっち、誰やそれ?」

 

「花陽に海未に絵里でしょ」

 

「「「はいっ!?」」」

 

「あー、確かに海未ちゃん、って純情だよね~。特に明久くんの前だと」

 

「花陽も同じだと思うわ」

 

「エリチは一目でわかるやね」

 

「ちょ、待ってください!それを言うならことりだって明久の前だと恵衣菜のようになるじゃないですか!」

 

「そ、そんなことないよ~」

 

「そ、それなら真姫ちゃんだって同じ、だと思うよ」

 

「ちょ、花陽!?」

 

「希、私はそんなに分かりやすいの!?」

 

「まあ、それはな。だってエリチ、よくポンコツ発揮するやん」

 

「うっ・・・・・・!そ、それならにこはどうなのよ」

 

「わ、私!?」

 

「にこっちは・・・・・・どうなんやろ」

 

「ちょっと希!そこは冗談でもなにか答えなさいよ!」

 

「ふむ。つばさは明久を前にすると分かりやすいように赤くなるよね」

 

「え、英玲奈!?」

 

「ホントホント。見ているこっちまで恥ずかしくなるわよ」

 

「あんじゅまで!?」

 

「あの~。みんな、お兄ちゃん起きちゃうよ」

 

『『『『『あ』』』』』

 

「それと誰か姉様を元に戻してあげて」

 

「あ、うん」

 

「ウフフフ・・・・・・明久くんと結婚・・・・・・・//////子供は・・・・・・」

 

「恵衣菜ちゃんが壊れた!?」

 

「あらら」

 

「姉様」

 

「・・・・・・・・・・・・・・ハッ!」

 

私は零華ちゃんの声にトリップ状態から元に戻った。

 

「わ、私は何を」

 

「あ、戻った」

 

「う、うん、私は何を・・・・・・・って、今時間は?」

 

時計を見ると時間は午後18時ジャストだった。

そしてその時。

 

 

 

 ヒューーン     ドーーンッ!!

 

 

 

 

「あ、花火!」

 

窓から文月学園から打ち上げられている花火が見えた。

病院の最上階だからか花火がよく見える。

 

「あ、写真とっておかないと」

 

私は明久くんが起きたときに見せるため、花火を素早くスマホのカメラ機能で撮る。

 

「そう言えば零華ちゃんはクラスの打ち上げ大丈夫なの?」

 

「ええ。翔子ちゃんたちが気を遣ってくれて明日、やるそうです」

 

「そうなんだ」

 

「はい」

 

零華ちゃんたちはそのまま、打ち上げ花火を目を煌かせて見る。

私は写真を撮りながら、花火の灯りで照らされる明久くんの顔を見て。

花火が終わると、時間も時間なのでそれぞれ帰路についた。

私としてはずっと明久くんの隣に居たいけど、明日の朝早くに来ることにして、零華ちゃんと麻奈美さんと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久くんが目を覚ましたと連絡を受けたのは翌々日の早朝のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 














次回 『事後と提案』 ここテストに出ます。


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第ⅩⅢ門 事後と提案

バカテスト

問:以下の問いに答えなさい。
 『ベンゼンの化学式を書きなさい』



解答

吉井明久

『C6H6』


教師コメント

『簡単でしたか』


姫宮恵衣菜

『C6H6』


教師コメント

『さすがです』




~明久side~

 

「それで明久くん。なにか言い分はある?」

 

「えー、えーと、その・・・・・・」

 

「なに明久くん?」

 

「あのさ恵衣菜、怒ってる、よね?」

 

「そんなことないよ明久くん~。ええ、私は別に、明久くんがまた無茶をしたことに全然っ!怒ってませんからねっ!」

 

「いやいや、怒ってるよね」

 

「そんなことないです!!」

 

僕はベットで正座しながら恵衣菜のお説教を聞いていた。

何故こうなったかは数刻前に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前

 

「大丈夫、明久くん!?私が誰か分かる!?この指は何本に見える!?痛いところない!?」

 

「だ、大丈夫だよ恵衣菜!それとその指は5本で、痛いところは・・・・・・・・・・・:少しだけあるけど、大丈夫だよ」

 

僕は朝早くから来て、僕の心配をする恋人、恵衣菜を見ていた。

というか恵衣菜の顔がかなり近い。あと30センチほどでキスができるほどに。

 

「よ、よかった~。ホントによかったよ明久くん」

 

恵衣菜は眼に涙を浮かべ、僕に抱き付いてそう言う。

 

「ちょ、恵衣菜、ここは病院なんだよ!?」

 

「そうだけどぉ・・・・・・・」

 

「まあまあ、お兄ちゃん。いいじゃない。恵衣菜お姉ちゃん我慢してたんだから」

 

「い、いや、だけどね零華・・・・・・」

 

僕は零華にさらに言おうとしたが止めた。

そのかわり、僕は抱き付いて泣いている恵衣菜の体に両手を回し抱き締め、右手で頭を優しく撫でる。

 

「あらあら。朝からイチャイチャしてるのね明久くんは」

 

「こ、この声は・・・・・」

 

僕は声のした方。扉へと視線を向ける。そこにいたのは――――

 

「か、母さん!?」

 

「調子はどう明久くん」

 

僕と零華の母親、吉井麻奈美がいた。

 

「うん、問題ないよ。少し体が痛いけど・・・・・・・じゃなくて!なんで母さんが!?確か父さんとフランスにいるんじゃなかったっけ!?」

 

「私がここにいる理由はズバリ!明久くんたちの文化祭と召喚大会を見るためよ!」

 

「それだけ!?」

 

「他にもいろいろあるけど、私の中でのメインは明久くんと零華ちゃんたちと一緒にいることよ!」

 

「他にもってなに!?確かに母さんと一緒なのは久しぶりで嬉しいけど、他は放ったらかしなの!?」

 

「うんうん。ナイスツッコミね明久くん」

 

「嬉しくないよ!」

 

僕は朝から母さんにツッコミをしていた。

零華と恵衣菜は苦笑いで助けてくれなかったりする。

 

「やれやれ。あんたたちはもう少し静かに出来ないのかい」

 

「あ、お祖母ちゃん」

 

「元気そうだね明久」

 

「うん。お祖母ちゃんは学校の方はいいの?」

 

「今日やることはすでに昨日中に終わっているさね。まあ、明久がやった後始末が大変だっただけさね」

 

お祖母ちゃんが肩を竦めて答えた。

 

「ご、ごめん・・・・・・・・・!?」

 

僕は突如とんでもない寒気に体を竦ませた。

寒気のもとは・・・・・・。

 

「明久くん、カヲルお祖母ちゃんの言っていることってどういう意味かな?」

 

抱き付いている恵衣菜からだった。

 

「え、えーと、それは・・・・・・」

 

僕が返答に口を濁らせていると、

 

「なんだい明久。伝えてなかったのかい?」

 

お祖母ちゃんが言った。

 

「お祖母ちゃん、お兄ちゃん何したの?」

 

「明久があのあと竹原を半殺し・・・・・・とまではいかないさね。とにかく、明久が竹原をブッ飛ばした、と言っておくよ」

 

「竹原教頭を・・・・・・?あの後明久くんが・・・・・・?」

 

「え、恵衣菜?」

 

恵衣菜はボソボソとなにか言う。正直少し怖い。

 

「あ・き・ひ・さ・く・ん♪」

 

「な、なに?」

 

「せ・い・ざ♪」

 

「え?」

 

「せ・い・ざ♪」

 

「え、いや、でも、あの・・・・・」

 

「せ・い・ざ♪♪」

 

「はい・・・・・・」

 

僕はベットに正座をして立った恵衣菜を見る。

恵衣菜の顔は笑っているが目は笑ってないと言う、恵衣菜がかなり本気で怒っていることを表していた。

こうなった恵衣菜は僕以外手がつけられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ時間はもとに戻して、今。

僕は正座をして恵衣菜のお話と言う名の、お説教を聞いていました。

 

 

「それで明久くん。なにか言い分はある?」

 

「えー、えーと、その・・・・・・」

 

「なに明久くん?」

 

「あのさ恵衣菜、怒ってる、よね?」

 

「そんなことないよ明久くん~。ええ、私は別に、明久くんがまた無茶をしたことに全然っ!怒ってませんからねっ!」

 

「いやいや、怒ってるよね」

 

「そんなことないです!!」

 

零華は恵衣菜に協力的で母さんと葵姉さんは声には出さずに笑いながら面白そうににこやかに僕たちを見て、お祖母ちゃんはやや呆れた感じだった。

 

「ハイハイ。そこまでそこまで」

 

「お義母さん・・・・・・」

 

「お母さん・・・・・・」

 

「二人とも、ここは病院よ。もう少し静かにね」

 

「「ごめんなさい・・・・・・」」

 

「よろしい♪二人とも、明久くんへのお説教は退院したあとからでも遅くないと思うよ」

 

「「!」」

 

「ちょっ、母さん!?」

 

「それもそうですね」

 

「そうだね零華ちゃん。そう言う訳だから明久くん、退院したら、ね?」

 

「・・・・・・・はい」

 

「さて、そろそろいいかい?」

 

僕が項垂れるように恵衣菜に返すと、お祖母ちゃんが言ってきた。

 

「?」

 

「お祖母ちゃん、何かあったの?」

 

「いやなに、まず竹原たちの処遇について話しておこうと思ったのさ」

 

お祖母ちゃんは僕、恵衣菜、零華、葵姉さんを見て言った。

 

「まず、竹原だがアイツは文月学園から解雇したよ。そして、竹原に協力した3年Aクラスの常夏コンビ、だったかい?その二人には厳重注意をしたよ。封印指定の腕輪を使った時点で本来なら常夏コンビは停学なんだが、竹原に協力していただけみたいだしね、厳重注意処分としたよ」

 

お祖母ちゃんは腕を組ながら言った。

 

「そう・・・・・・・」

 

僕はお祖母ちゃんな言葉にそう呟いただけだった。

 

「まあ。常夏コンビを捕まえたのはアタシらじゃなくて、坂本らなんだけどね」

 

「雄二が?」

 

「ああ。さすが元神童さね。アイツらの動きを予測して捕らえていたさね」

 

お祖母ちゃんは頷きながらそういった。

雄二も常夏コンビを監視していたみたいだ。恐らく康太や須川くんたちも手伝ってくれたのだろう。

 

「ああ、それとここから先は全く関係ない話なんだが・・・・・・」

 

「ん?」

 

「明久、恵衣菜ちゃん。二人には再来週の強化合宿が終了した後、夏休み前まで音ノ木坂学院に行ってもらいたいさね」

 

「「・・・・・・・・はい?」」

 

僕と恵衣菜はお祖母ちゃんの言葉にすっとんきょうな声で返した。

 

「え?どう言うこと?」

 

「つまり、二人には夏休み前まで音ノ木坂学院の生徒として通ってほしいということさね」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!?」」

 

僕と恵衣菜の声が病室全体に響き渡った。

 

「え!?ちょっ、お祖母ちゃんどう言うこと!?」

 

「実は音ノ木坂学院と文月学園は姉妹校になったのさ。それで、音ノ木坂学院にウチの試験召喚システムを提供したさね」

 

「うん、始めからツッコミがしたいけどそれはおいといて。僕と恵衣菜が音ノ木坂学院に行ってなにするの?」

 

「二人には試験召喚システムの使い方と召喚獣の操作を教えてきてほしいさね」

 

「なるほど・・・・・・。ってことは音ノ木坂の校舎にはもう召喚獣が立てるようになってるの?」

 

「いや、それはまださね。だが、校舎のコーティングはすぐに終わるさね。後はシステムを届け起動させるだけさね。ま、それも既に終わっているさね」

 

「へ、へぇー・・・・・・・。どうする恵衣菜?」

 

話を聞いた僕は恵衣菜を見て訪ねる。

 

「私はいいけど、零華ちゃんは行かないのかな?」

 

「零華は2年Aクラスの代表で学年首席さね。つまり、零華は代表しての役割もあるため行けないのさ。ま、明久と恵衣菜ちゃんが振り分け試験で万全だったら変わっていたかもしれないがね」

 

お祖母ちゃんは後半部分を苦笑して言った。

 

「・・・・・・・・・・・わかったよお祖母ちゃん。それ、受けるよ」

 

「私も」

 

「助かるさね」

 

「ところで、家から音ノ木坂学院まで通うの?」

 

「まあ、そうなるさね」

 

「了解」

 

「あー、ちなみに制服は文月ので構わないからね」

 

「オッケー」

 

「言っとくけどこの話は外部に漏らさずに頼むさね」

 

「わかった」

 

「じゃあ、アタシは向こうと連絡とったりするからこれで帰るよ」

 

「もう帰るの?」

 

「アタシにもいろいろあるのさ。余り無理するんじゃないよ明久」

 

「うん」

 

お祖母ちゃんはそう言うと、病室から出ていった。

 

「音ノ木坂学院、か~」

 

「お兄ちゃん、女子高だからってハメ外さないで下さいね」

 

「わ、わかってるよ。それに恵衣菜も一緒に行くんだから」

 

「明久くん。私がいなかったらハメ外すつもりだったの?」

 

「んな訳ないでしょうが!」

 

「うん知ってるよ。今のは冗談だから♪」

 

「恵衣菜のは余り冗談に聞こえないんだよ!」

 

実際さっき、恵衣菜の眼からはハイライトが消えていた。

そんなこんなで話していると・・・・・・。

 

「無事か明久」

 

「雄二!」

 

雄二たちが病室に入ってきた。

 

「元気そうじゃな」

 

「・・・・・・(コクコク)予想よりも元気だった」

 

「だな」

 

「まったく、坂本から聞いたときは驚いたぜ」

 

「だが、元気そうで安心したぜ」

 

「私も恭二も心配してたしね」

 

「・・・・・・吉井、元気そうでなにより」

 

「ホントね。あのときの零華ったら生気が抜けてるようだったもの」

 

「それほど心配だった事さ」

 

「だね~。代表のブラコンは他より凄いからね~」

 

「あ、愛子ちゃんそんな大声で言わなくてもいいと思いますよ・・・・・・」

 

「うわー、大人数だね」

 

「ホントだね~」

 

入ってきた僕の友達の数はかなりいた。

雄二、秀吉、康太、霧島さん、木下さん、久保くん、工藤さん、須川くん、横溝くん、エレンさん、桜咲さん、恭二、友香さん、三上さん、中林さん、平賀くん、玉野さん、天野さん、佐藤さんと大所帯だ。

 

「にしてもよくここがわかったね?」

 

「いや、姫宮と吉井妹から連絡をもらってな、ここに着くまでにはこんな大所帯になってたというわけだ。すまん」

 

「いや、いいよ雄二。それとありがとうね、あの常夏コンビを捕まえといてくれて」

 

「構わねぇよ。俺もあの二人には喫茶店を妨害されてイラついていたからな。丁度いい返しになったぜ」

 

「あははは」

 

雄二と僕が学園祭のことを話していると。

 

「良かったわ明久くんと零華ちゃんにこんなに友達がいて」

 

母さんが涙を流していた。

なんで!?

 

「ちょっ、母さん!?なんで泣いてるのさ!?」

 

「お母さん!?なんで泣いてるの!?」

 

「だって明久くんと零華ちゃんがこんなに友達に巡られいるなんて・・・・・・。これを喜ばずにしてなんと言うのかしら」

 

「「親バカ過ぎだよ!」」

 

僕と零華は同時に母さんにツッコミを入れる。

 

「あら失礼ね。私は親バカじゃないわよ」

 

「「そうなの?」」

 

「ええ。息子と娘がとても大好きで過保護なだけの親よ」

 

「「それを親バカっていうの!!」」

 

「ちなみにかおりちゃんたちも娘が大好きで過保護なだけの親だからね」

 

「「かおりさんたちも親バカだったの!?なんとなく分かってはいたけどさ!!」」

 

母さんの発言に僕と零華はツッコミで返す。

さすがに疲れた。

この光景に恵衣菜と葵姉さんは苦笑いしていたが、雄二たちは呆気に取られていた。

 

「・・・・・・おい、明久」

 

「なに雄二?」

 

「今お前、この人を母さんって言ったか?」

 

「そうだけど?」

 

「どうも~、吉井明久と吉井零華の母で~す」

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『・・・・・・・・・・・・・ええぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!?』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

雄二たちの驚きの絶叫が響き渡った。

その事を予測していた僕らは同時に耳を両手で塞いだ。

そのとき、雄二たちの声で窓ガラスが震えたことに驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんの言葉で一悶着あり、それを落ち着かせて改めて。

 

「え~と。コホン・・・・・・。では、改めて。初めまして、私は吉井明久と零華の母親、吉井麻奈美です。みなさん、明久くんと零華ちゃんと仲良くしていただきありがとうございます」

 

母さんがみんなに挨拶をした。

 

「ど、どうも。俺は坂本雄二です」

 

「・・・・・・土屋康太です」

 

「儂は木下秀吉じゃ。あと儂は男なのでよろしく頼む」

 

「須川亮です。明久とは中学の頃から友達です」

 

「横溝浩二です。須川と同じく中学の頃から明久とは友達です」

 

「・・・・・・坂本翔子――――「いや、違うだろ!」――――霧島翔子です」

 

「木下優子です。秀吉とは双子です」

 

「久保俊光です」

 

「工藤愛子です。よろしくお願いします」

 

「佐藤美穂、です」

 

「天野麗子です」

 

「わたくしは桜咲綾香と申しますわ」

 

「エレン・アナスタシア・リューゼンハイムです」

 

「根本恭二です。明久たちには中学の頃助けられ、それ以来友達です」

 

「小山友香です。恭二と同じように明久くんたちに助けられて、それ以来友達です」

 

「平賀源二です。明久とは中学の頃クラスメイトで仲良くさせてもらっています」

 

「玉野美紀です」

 

「中林宏美です。よろしくお願いします」

 

「三上美子です」

 

雄二たちも順に、母さんに挨拶をする。

 

「みなさん、これからも明久くんと零華ちゃんをよろしくお願いしますね」

 

それに対して母さんもみんなにそう言った。

 

「それじゃあ俺らはここらで帰るな、明久」

 

「あ、うん。ありがとう、みんな」

 

雄二たちは僕らに一言言うと、雄二のあとに続いて病室から出ていった。

 

「よかったわ~。あの子達なら明久くんと零華ちゃんも安心ね」

 

「「あははは・・・・・・」」

 

母さんの相変わらずの親バカっぷりに僕と零華は顔を見合わせて苦笑した。

そして雄二たちが帰ってからしばらくして・・・・・・・。

 

「お邪魔しまーす」

 

「大丈夫明久くん?」

 

「無事ですか明久」

 

穂乃果たちが来た。

 

「やあ、みんな」

 

「あれ、穂乃果ちゃんたち学校は?」

 

今日は火曜日、そして今の時間は午後12時過ぎ。本来ならまだ、学校があるはずだ。雄二たちが来たのは今日が清涼祭の振り替え休日だからだ。

 

「今日は午前授業だったのよ。それで真姫から明久が目覚めたと聞いて、みんなで来たの。迷惑、だったかしら?」

 

「ううん。迷惑なんかじゃないよ絵里。ありがとうみんな」

 

「ま、明久が無事に起きて良かったわ」

 

「そうやね~。みんな、特に穂乃果、海未、ことりの3人は心配そうだったやんね」

 

「そ、そんなの当然じゃないですか!」

 

「海未ちゃん、ここ病院だから落ち着いて落ち着いて」

 

「ハッ。ごめんなさいことり」

 

「ううん。ことりも明久くんが起きてくれて嬉しいから海未ちゃんの気持ちわかるもん♪」

 

「ことり・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・。あ、明久くん、来週の土曜日って明久くんたち空いてる?」

 

「え?確か空いてると思うけど?」

 

「うん。再来週の火曜日からは強化合宿だけど来週の土曜日なら大丈夫だよ」

 

「音ノ木坂の文化祭がその日にあるから出来たら来れないかな~って思ったの。どうかな?」

 

「え?音ノ木坂の文化祭に行っても大丈夫なの?」

 

「ええ、特に問題ないわよ」

 

「そうやね」

 

僕の疑問に音ノ木坂の生徒会二人、絵里と希が即答で答えた。

 

「どうする恵衣菜、零華、葵姉さん」

 

僕は恵衣菜たちに聞いた。

 

「わたくしは構いませんわよ」

 

「うん。私も大丈夫だよ明久くん」

 

「私もだよお兄ちゃん♪」

 

「じゃあ音ノ木坂の文化祭に行ってもいいかな?」

 

「うん」

 

「了解よ。当日は誰か迎えを行かせた方が良いかしら?」

 

「なら穂乃果が迎えに行くよ!」

 

「穂乃果ちゃんで大丈夫かな?」

 

「かよちんの言うとおり心配だニャー」

 

「花陽と凛と同じで心配ね。それにお昼からは屋上でライブがあるのよ?」

 

「うっ。そう言えばそうだったー」

 

「ライブ?」

 

僕は真姫の言ったライブ、という言葉に疑問を持った。

 

「文化祭に屋上で野外ライブを行うのよ」

 

僕の疑問にすぐに真姫が答えてくれた。

 

「へぇー」

 

「う~ん・・・・・・。あ、ならお母さんに迎えに行ってもらえばいいかも♪」

 

「「「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」」」」

 

ことりの発言に僕らは同時にことりの方を向いて同じ発言をした。

 

「いやいやことり。かおりさんも忙しいんじゃないの?」

 

僕の疑問に答えたのはことりではなく――――――

 

「それなら問題ないわよ」

 

「え?なんで母さん?」

 

母さんだった。

 

「だってその日私も行くからよ」

 

「はい?」

 

「ちなみにかおりちゃんにはもう言ってあるわ」

 

「はやっ!」

 

母さんの相変わらずの早行動に僕はついツッコミを入れてしまった。

 

「あー・・・・・・・・ってことみたいだけど、いいかな絵里?」

 

「え、ええ」

 

どうやら絵里も驚いていたようだ。

よく見ると、全員母さんの早行動に驚いていた。

ちなみに僕と零華はもう見慣れた。

その後、そんなこんなで他愛無い話をして穂乃果たちは帰っていった。

 

「それじゃあ私たちも帰るわね明久くん」

 

「あ、うん。わかったよ母さん」

 

「お兄ちゃん、退院日まで無理しちゃダメだからね」

 

「わかってるよ零華」

 

「フニャ~/////」

 

零華の頭を撫でると、零華は猫のようにとろけた顔つきで言った。

 

「いいな~、零華ちゃん」

 

「あはは・・・・・・」

 

1分程零華の頭をナデナデすると、零華は満足そうに離れた。

 

「これで2日分のお兄ちゃん成分が補充できました♪」

 

「お兄ちゃん成分って・・・・・・」

 

「まあ、僕も2日分の妹分を補充できたよ」

 

「明久くんまで・・・・・・。もお、このシスコン、ブラコン双子兄妹は・・・・・・」

 

「零華は可愛いし、僕の大切な妹だよ?普通だと思うけど」

 

「うん。お兄ちゃんは私の大切で大好きなお兄ちゃんで兄様なのです。私はお兄ちゃんがいないと生きていけないのですよ」

 

「そ、そこまで言うのですね・・・・・・」

 

「あははは・・・・・・。誰に似たのかしら明久くんと零華ちゃんの性格って」

 

葵姉さんは若干引きながら、母さんは苦笑いをしながら自問するように呟いた。

 

「じゃあまたねお兄ちゃん。無理しちゃダメだからね。絶対だよ!無理したら真姫ちゃんに教えてもらうように言ったからね」

 

「わかってるよ零華」

 

零華はそう言うとスキップでもしそうな足ぶみで母さんたちを連れて帰っていった。

そして、室内にいるのは僕と恵衣菜だけとなった。

 

「恵衣菜はまだ帰らなくていいの?」

 

「むっ。明久くんは私に帰ってほしいの?」

 

「う、ううん。そうじゃないよ。というか逆に一緒にいて・・・・・・ほしい」

 

「明久くん//////」

 

僕が顔を赤くして視線を少しずらしながら本音を言う。

すると。

 

「え、恵衣菜?」

 

ベットに腰かけ、僕の横に来た恵衣菜が僕の頭を両手で抱きしめ、自身の胸元へと頭を持っていった。

恵衣菜の年相応な、同年代な女の子より豊満な双丘の柔らかさに僕は気恥ずかしさを感じた。

抱き締められたりするのはなれているが、こういう風のはなれてなく、恵衣菜の豊満な胸を感じられずにはいられなかった。

すると。

 

「明久くん。私はね、怒っているんだよ」

 

「うん・・・・・・」

 

「でもね、それは明久くんにじゃなくて、私自身にたいして、なの」

 

「え・・・・・・?」

 

「あのあと思ったの。私がもう少ししっかりしていれば一日目の事や召喚大会でのことも上手く立ち回れたんじゃないかなって?」

 

恵衣菜は僕を抱き締めたまま優しい声で言う。

 

「そうすれば一日目で穂乃果ちゃんや零華ちゃんたちも拐われることは無かったんだろうし。召喚大会でも、常夏コンビ先輩の攻撃で明久くんが流血沙汰になるまでは無かったんじゃないかなって」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

「それに明久くんの代わりに私がフィードバック100%を受ければ、明久くんが入院することはなかったんだし」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「それでね、思ったの。明久くんにとって私は邪魔なんじゃないかって」

 

「そ、そんなこと・・・・・・」

 

「振り分け試験もBクラス戦の時も、清涼祭でのことも私が全部足を引っ張ってるなって」

 

「恵衣菜・・・・・・・僕は・・・・・・」

 

「だから私が明久くんの隣にいて、彼女で、恋人でいいのかなって―――――」

 

「恵衣菜!」

 

「あ、明久――――――「んっ」――――――んっ!?」

 

僕は恵衣菜の言葉を自身の口で塞いだ。

 

「んっ・・・・・・あっ・・・・・・・んん」

 

僕は舌を恵衣菜の舌と絡ませ唾液を交換する。

昼間の病室でこんなことをする背徳感が若干生まれるが、僕はそんなことよりも恵衣菜を抱き寄せる。

 

「ん・・・・・・・ぷは・・・・・・・」

 

恵衣菜とのキスは数分に渡った。

互いの唇からは唾液の糸がツゥー、と垂れ落ちた。

 

「あ、ああ、明久くん!?//////」

 

恵衣菜は頬をリンゴのように赤くして戸惑いの声をあげる。

 

「恵衣菜。自分のことを悪く言わないでよ・・・・・・」

 

「で、でも・・・・・・実際そうだよ・・・・・・」

 

「恵衣菜、僕は君の何?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「答えて!僕は恵衣菜、君の何!」

 

「明久くんは私の幼馴染みで大切な人!そして私の彼氏で恋人!」

 

恵衣菜は顔をさらに真っ赤にして告げる。

 

「うん。だからね恵衣菜」

 

僕は恵衣菜さらに抱き寄せ抱き締める。

 

「恵衣菜はもっと僕を頼ってよ。僕は恵衣菜の幼馴染みで彼氏で恋人、なんだから」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「前にも言ったでしょ。抱え込まないで。僕は恵衣菜の味方なんだから」

 

「で、でも・・・・・・」

 

「それにね恵衣菜。僕はもうずっと昔から恵衣菜のことを零華と同じで家族だって思ってるんだから」

 

「家族・・・・・・・?」

 

「うん。穂乃果たちもだけど零華は大切な妹として、恵衣菜は僕の大好きでとっても大切な、特別な存在。零華風に言うなら、僕は恵衣菜無しじゃ生きていけない、かな」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「それに昔誓ったでしょ」

 

僕は右手の薬指に嵌めてある恵衣菜とお揃いの白銀の指輪と光の入手角度によっては七色に輝くペンダントを取り出して見せた。

 

「僕は恵衣菜を幸せにするって。ずっと一緒だって。あの時の夕陽とこの指輪とペンダントに誓った想いは決して揺るがない。絶対に」

 

「うん・・・・・・」

 

「だから、ね。恵衣菜は僕とずっと一緒にいて」

 

「うん・・・・・・!うん!私も!明久くんとずっと!ずっーと一緒にいる!絶対に離れないから!」

 

「うん」

 

僕は恵衣菜の言葉に恵衣菜を抱き締めたまま、恵衣菜の髪の毛を撫で答える。

しばらくずっとそのままでいてから、抱擁を解いた。

 

「そう言えば明久くん、今週の日曜って空いてる?」

 

「え?うん、空いてるよ。土曜は無理だけど日曜なら」

 

「なら、私と一緒にここに行かないかな?」

 

そういって恵衣菜が取り出したのは。

 

「これって『如月グランドパーク』のプレミアムチケット?」

 

「うん」

 

「あ、そう言えば召喚大会の副賞にこれがついていたっけ?」

 

僕は召喚大会での優勝商品を思い出した。

優勝商品は腕輪と副賞で『如月グランドパーク』プレミアムチケットなのだ。

 

「うん。だからどうかな?」

 

「いいよ。それじゃあその日は如月ハイランドにデートに行こうか」

 

「うん♪」

 

僕と恵衣菜はそのあとも面会終了時間まで話し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二日後、僕は無事退院日することが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想などが全く来ないです。
せめな面白かったか面白くなかったか知りたいです。







次回 『ことりの相談』 ここテストに出ます。


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AFTER STORY ⅠStory
第Ⅰ門 ことりの相談



バカテスト

問 次の( )に正しい年号を記入しなさい。
 『(    )年 キリスト教伝来』


解答

吉井明久

『1549年』


教師コメント

『特にコメントはありません』


南ことり

『1549年』


教師コメント

『さすがですね』




~明久side~

 

 

秋葉原駅 午前8時45分

 

 

「ちょっと早すぎたかな?」

 

僕は腕時計を見ながらそう呟く。

 

「それにしてもことりが相談したいことってやっぱり、この前真姫から聞いたことと関係あるのかな」

 

僕は退院前日の夜、病室で真姫から聞いたことを脳裏に思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―退院前日―

 

 

「明日が退院か~。ちょっと暇だったかな?」

 

時刻は午後9時半。

僕は星明かりに照らされる暗闇の病室のベットから窓の外を眺めていた。

今日は満月なのか、星々が明るく照らしていた。

すると。

 

"コンコン"

 

扉をノックする音が聞こえた。

 

「ん?誰だろこんな時間に・・・・・・。先生かな?はーい、どうぞ~」

 

僕はノックした人物を考えながら入室を許可する。

入ってきたのは――――――

 

「夜遅くにごめんなさい明久」

 

「真姫?」

 

真姫だった。

服装は私服姿なのかいつもと違う服を着ていた。

 

「こんな夜遅くにどうしたの真姫?先生や朱梨さんは?」

 

「明久に聞きたいことと相談したいことがあったの。それとパパとママには一応言ってあるわ」

 

「そうなの?」

 

「ええ」

 

暫しの間無言の空気が続いた。

 

「明日、退院だそうね」

 

「うん」

 

「あまり無理しないでよ」

 

「もしかして心配してくれてるの?」

 

「い、いいでしょ。明久には練習に付き合ってもらったりで感謝してるし・・・・・・」

 

「フフフ・・・・・」

 

「な、なによ・・・・・!」

 

「ううん、なんでも。それで、聞きたいことと相談したいことって?」

 

僕は起こしていた上体を直し、真姫の方を見る。

 

「明久は去年のこと、覚えているのかしら?」

 

「去年の、こと・・・・・・?」

 

真姫は僕の近くの椅子に座って聞いてきた。

 

「ええ。あなたが入院した秋頃のことよ」

 

「・・・・・・・・・・・・ごめん。僕、その当時の記憶が全くないんだ」

 

「そう・・・・・・なの・・・・・・。ごめんなさい、嫌なこと聞いてしまったわね」

 

「ううん、気にしないで。それより真姫も僕が入院した時のこと知っているの?」

 

「ええ、まあ。と言ってもあなたとはあのとき話さなかったから分からないのは当然だと思うわ。あなたが寝ている時に私はあなたを見てたのだから」

 

「はは。なるほど、道理で僕に見覚えが無いわけだ」

 

「そうね。だからあのとき自己紹介したのよ。まさか明久が音ノ木坂にくるなんて思わなかったわ」

 

「あはは。まあ、以前から穂乃果たちの手伝いはしていたけどね」

 

「それは幼馴染みとしてかしら?」

 

「う~ん・・・・・・。それもそうかもだけど、何よりお祖母ちゃんと母さんの母校の音ノ木坂を廃校にさせたくないのと、必死に頑張っている穂乃果たちを手伝いたいと思ったからだよ」

 

「なるほどね・・・・・・・」

 

「そう言えば相談したいことって?」

 

「相談したいことってのは・・・・・・ことりについてなの」

 

「ことり?」

 

「ええ」

 

「もしかしてことりに何かあったの?」

 

「ここ最近ことりの様子がおかしいのよ。話しかけてもボーッとしてるし、何か考えているみたいなんだけど・・・・・・」

 

「あのことりが?」

 

「ええ。あのことりが、よ」

 

ことりは僕ら幼馴染みの中でもものすごい天然だ。そして、ことりが考えことでボーッとしてることなんて聞いたことなかった。僕ら幼馴染みは天真爛漫の穂乃果、大和撫子の海未、天然天使のことり、即日実行のつばさ、しっかり者の恵衣菜、まとめ役の零華。僕は・・・・・・・なんだろう?以前聞いたとき決まらなかったんだよなぁ~。

ちなみに恵衣菜も若干天然が入っていたりする。

 

「う~ん。もしかしたら何かあったのかな」

 

「わからないわ。今日の練習も意識此処に在らずっていう感じだったもの」

 

僕は不意に脳裏に清涼祭でことりからの付き合いのことを思い出した。

 

「真姫、ことりの様子がおかしくなったのって何時ぐらいから?」

 

「え、え~と。確か文月学園でライブする一週間ぐらい前からかしら」

 

「なるほどね・・・・・・・」

 

「もしかして何かわかったの?」

 

「僕の予想が正しければだけど、ね。でも、ごめん真姫。今は話せないかも」

 

「どうして?」

 

「恐らくこれはことり自身が決めないといけないことかもしれないから。僕らが手を出したらダメだと思う」

 

「そう・・・・・・」

 

「多分ことりから話してくれると思うよ。それまで待ってて」

 

「わかったわ・・・・・・」

 

軽く項垂れる真姫に、僕は零華にするときと同じように真姫の頭を撫でた。

 

「な、なに・・・・・・!?」

 

「あ、ごめん。嫌だったかな?」

 

「い、嫌って訳じゃないんだけど・・・・・・。パパ以外の男の人に頭を撫でられたのって初めてだったから・・・・・・」

 

「そうなんだ。零華が真姫みたいなとき、小さい頃から僕がこうして撫でていたんだ。だからかな、ついクセで」

 

「そうなのね」

 

「うん」

 

「・・・・・・・もう少しだけ撫でてくれる?」

 

「うん。いいよ」

 

僕は真姫の気が済むまで頭を撫でることにした。

 

「//////その、ありがとう相談に乗ってくれて」

 

頬を少し赤くして真姫が照れ隠しなのか若干視線をずらして言った。

 

「気にしないで」

 

僕は笑みを浮かべ真姫にそう答える。

 

「ことりのことだけど・・・・・・」

 

「ええ・・・・・・」

 

「僕に任せてくれるかな?」

 

「明久に?」

 

「うん」

 

「・・・・・・・・そうね。お願いするわ明久」

 

「任せて」

 

僕と真姫はその後、μ's結成の出来事などを真姫から聞いたりして、話終えたのは11時を前にしたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思考を元に戻し、僕は再び腕時計を見る。

すると。

 

「はぁ、はぁ、はぁ。明久くんお待たせ~」

 

走ってきたのか息が上がり、息を整えてることりが来た。

 

「大丈夫だよことり。僕も来たばかりだから」

 

「う、うん//////」

 

「?顔が赤いけど大丈夫?風邪でもあるんじゃない?」

 

「えっ!?そ、そんなことないよ!うん!」

 

「そ、そう?でも気を付けてね」

 

「うん♪ありがとう明久くん♪」

 

「それで今日はどこ行くの?」

 

「えっとね~。今度の学園祭で着る服の材料を買いに行くんだよ♪」

 

「そう言えばμ'sの衣装はことりが作ってるんだっけ?」

 

「うん♪」

 

「じゃあその場所まで連れていってくれる?」

 

「もちろん♪こっちだよ♪」

 

僕はことりが伸ばした左手を握って一緒に歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうして手を繋いで歩くのって久しぶりだね♪」

 

道中、ことりが楽しそうに言ってきた。

 

「そうかもしれないね。昔はよくみんなで手を繋いでいたけど」

 

「でも、今は恵衣菜ちゃんとよく手を繋いでいるんでしょ♪」

 

「うっ・・・・・!」

 

「零華ちゃんから聞いたよ~。学校でもイチャイチャしてるって」

 

「そ、それはその~・・・・・・・」

 

「ウフフフ」

 

「な、なに」

 

「ううん。明久くんは明久くんなんだなぁ~って」

 

「え?」

 

「なんでもないよ♪あ!ここだよ♪」

 

僕らの目の前には服飾の店があり、材料が豊富に揃えてあった。

 

「へぇー。こんなところにこんな店があるんだ」

 

「うん。生地も充実してるし素材がいいから前から利用してるの♪」

 

ことりはそういうと、僕の手を引っ張って店の中へと入っていった。

 

「うわぁ・・・・・・・」

 

店内は様々な生地や服につけるアクセサリーが多数あった。

生地だけで軽く百種類は超え、リボンの数と色だけで数十種類ある。

 

「すごいなぁ。ことりがよく利用するのもわかる気がするよ」

 

僕は早速生地とアクセサリーを見ていることりを見ながらそう呟いた。

 

「ね♪すごいでしょ~」

 

「うん」

 

「それじゃあ選んじゃうね♪」

 

ことりはそういうと真剣な眼差しで生地やアクセサリーを見比べた。

その姿に僕はつい苦笑いが出てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ず、随分買ったね・・・・・・」

 

「うん♪滅多に手に入らない生地が売っていたからつい。えへへ♪」

 

「誉めてないんだけど・・・・・・」

 

服飾店に入ってから2時間後、僕とことりはあるメイド喫茶で休憩していた。

ちなみにことりの椅子の横の紙袋には大量の生地とアクセサリー類が入っていたりする。

まあ、僕も書店で本を買ったりしたけど。

 

「ここって確かことりがアルバイトしているお店だっけ?」

 

「うん♪前に明久くんたちが来たときは驚いたよ~」

 

「僕たちのほうが驚いたけどね。まさかことりがメイド喫茶に。しかも秋葉で有名なメイド・・・・・・ミナリンスキーだったなんてね」

 

「でも、予想はしていたんじゃないかな?」

 

「んー。まあ、3割ぐらいはことりかな~って思っていたよ」

 

僕はメニューを見てことりにそう答える。

 

「アハハ・・・・・・。明久くんは何を頼むか決めた?」

 

「うん、決めたよ。ことりは?」

 

「ことりも決めたよ。すみませ~ん」

 

ことりは手をあげて店員さんを呼んだ。

 

「ハイ。ご注文はお決まりですかご主人さま、お嬢さま」

 

するとメイド服を来た店員さんがやって来た。

 

「この『たっぷりチーズカルボナーラ』を1つ」

 

「私は、『色取り取りサンドイッチ』で」

 

「あと、飲み物で『アールグレイ』を2つお願いします」

 

「かしこまりました。ご注文を確認いたします。『たっぷりチーズカルボナーラ』がお1つ。『色取り取りサンドイッチ』がお1つ。『アールグレイ』がお2つ。以上でよろしいでしょうか?」

 

「はい。大丈夫です」

 

「かしこまりました。それでは少々お待ちくださいませ。失礼いたします」

 

店員さんは優雅にお辞儀をすると厨房へと歩いていった。

え?何故僕が厨房のある場所を知っているか?その理由は――――――。

 

「明久くんまたやってみる?♪」

 

「お願いだから勘弁してことり」

 

「え~♪だって可愛かったよ~あのときの明久くん。・・・・・・・じゃなくてアキナちゃん♪」

 

「勘弁して~」

 

そう、僕は何故かミナリンスキーと同格の幻のメイド、アキナとして有名なのだ。

何故有名なのかと言うと、理由は前に一度ことりとここの店長さんに頼まれて恵衣菜と零華がここでアルバイトしたとき、僕も巻き込まれると言う形で女装して、メイド服を着て、アキナというメイドネームで接客したからだ。その時から幻のメイド、アキナとしてこの秋葉で有名になってしまったのだ。

 

「僕、男なのに・・・・・・」

 

僕はあのときのことを思い出して泣きたくなった。

だって、男から可愛いって言われるんだよ!女子からもお人形さんみたいって言われるのに。しかも何で誰も僕が男だって気付かないんだよ!

ちなみに、恵衣菜はヤエナ。零華はレッカとしてこの店で有名になっている。ミナリンスキーこと、ことりと同等なのだ。

 

「でも、文月の文化祭で見たときは可愛かったよ♪」

 

「やめて!もう僕のHPはゼロに近いよ!」

 

僕は悲痛の声をあげていった。

すると。

 

「ことりちゃん。今日は彼氏と一緒なの~?」

 

「あ!店長さん♪」

 

この店の店長さんがやって来た。

 

「おや?アキナちゃんじゃない!」

 

「うわぁーーー!!やっ、辞めてください、店長さん!!」

 

僕は周りに聞かれないように声をあげて店長さんに言う。

 

「丁度良かった。ことりちゃん、お願いがあるんだけどこのあと一時間だけ入ってくれないかしら?」

 

「え?このあと、ですか?」

 

「ええ。あ、もちろんタダじゃないわ。さっき注文した品の無料と一時間だけのお代、なんだけどどうかしら?」

 

「え~と・・・・・・」

 

「僕のことは気にしないでいいよことり」

 

僕はこっちを向いてきたことりにそう答える。

 

「明久くんがそういうなら~。それじゃあ一時間だけやらせていただきます」

 

「ありがとうことりちゃん。助かるわ~。あ、どうせなら貴方もどうかしら?」

 

「へっ?」

 

「いいかも♪明久くんもやろうよ~♪」

 

「ほらほら、ことりちゃんも言ってるんだしさぁ~」

 

「え、えーっと・・・・・・」

 

「明久くん」

 

「な、なにことり」

 

「お願~い、明久くん♪」

 

「ウグッ・・・・・・」

 

さすがにこれは断れる気がしない。

というよりこのお願いは反則でしょ。

僕はことりのお願いに苦笑するしかなかった。そして、

 

「じゃあ、僕も一時間だけなら・・・・・・」

 

「ありがとう~。もう少しで品が届くはずだからちょっと待っててね」

 

そういうと店長さんは厨房へと歩きさっていった。

 

「ハァー。また、女装してメイド服・・・・・・鬱だよ」

 

「まあまあ、頑張ろ明久くん♪」

 

落ち込む僕に、ことりは笑顔で答えた。

その笑顔に僕はかすれた声で、

 

「ダレカタスケテ~・・・・・・」

 

花陽の口癖を言わずには入られなかったたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れたぁ~」

 

一時間半後、僕は来たときに座っていた席でぐったりとしていた。

 

「お疲れ様~明久くん♪可愛かったよ~♪」

 

目の前の席にはことりが座っていた。

 

「まさか、 前に着た僕のメイド服があるなんて・・・・・・」

 

「いやー、助かったよ二人とも。急な手伝いお願いしちゃってごめんね」

 

ちなみに飲み物を持ってきた店長さんもそこにいる。

 

「なんで・・・・・・なんで、僕のロッカーがあるんですか店長さん!?」

 

そう、ルームの中に何故か僕のロッカーがあったのだ。ちなみに零華や恵衣菜のもあったりする。

 

「え?いやー、なんとなく」

 

「うんうん。なんとなくだよなんとなく♪」

 

二人の発言に、僕はガクリと肩を落とした。

 

「それじゃあことりたちはこれで~」

 

「ええ。ありがとうね~二人とも~」

 

店を出た僕とことりに店長さんたちが入り口で手を振って見送ってくれた。

いや、見送るのはいいんだけど店の中はいいんですか?

 

「明久くん、このあと時間はあるかな~」

 

「え?うん、今日は元々ことりとの出掛けだから予定は入れてないよ」

 

「じゃあ・・・・・・ことりの家に来てくれる?」

 

「え。あ、うん」

 

僕はことりとともにことりの家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南家

 

 

「お、おじゃましまーす」

 

南家へと来た僕は、ことりの案内のもとことりの部屋に来ていた。

 

「ちょっと待ってて、飲み物を持ってくるから♪」

 

「あ、うん」

 

僕はことりの声に答えるが、さっきからことりに元気がないのに気がついていた。

 

「やっぱり。ことり、なにか抱えてる。話してくれると嬉しいけど・・・・・・」

 

僕がそう呟いてからしばらくして、ことりが飲み物を持って戻ってきた。

 

「お待たせ~」

 

「あ、ありがとうことり」

 

「うん♪」

 

僕とことりは、ことりの出したアルバムなどを見た。

 

「懐かしいね。僕らが初めて会ってもう十年以上経つんだね」

 

「ホントだね~。あ、海未ちゃんと穂乃果ちゃんだ♪」

 

目の前の写真には穂乃果と海未が肩を寄り添って寝ている姿が写っていた。

 

「あ、こっちにはことりと恵衣菜とつばさだよ」

 

「ホントだ~。こっちは零華ちゃんと明久くんだね~」

 

「こっちは幼稚園の卒園式の写真だね♪」

 

「こっちは小学校の入学式だね。懐かしいよ」

 

「そうだね~♪ほんと、あっという間にもう高校生なんだね♪」

 

「だね」

 

ことりは表情を懐かしそうにして持ってきた紅茶の入ったカップに口をつけた。

 

「・・・・・・・あのね、明久くん。実は・・・・・・・」

 

「――――――悩んでることがあるんでしょ」

 

「え」

 

僕はことりの言葉を遮り言った。ことりは驚きを見せていた。

 

「ど、どうして・・・・・・?」

 

「ことりの表情が暗いから」

 

「表情が・・・・・・?」

 

「うん。昔からことりが何か悩んでいるときって表情が暗くなるんだよ。知らなかった?」

 

「う、うん」

 

「あ、でも海未なら気付いているかも」

 

「海未ちゃん?」

 

「うん。実際、真姫にも気付かれているよ」

 

「ええ!?そうなの!?」

 

「ハハ。それで、ことりが悩んでいることってなに?」

 

「実は・・・・・・・・・・・」

 

 

 

僕はこの時ことりから聞くことがことりの運命を、そして僕らの運命を左右するものだとわからなかった。

そして、それによってμ'sがあんなことになるなんて、今の僕は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明久くん」

 

帰路に帰る途中、僕は不意に呼ばれ声のした方に視線を向けた。

 

「かおりさん」

 

そこにはことりの母親、かおりさんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――そう。ことりから聞いたのね」

 

「はい・・・・・・」

 

僕とかおりさんは近くの公園のベンチに座って話していた。

 

「かおりさん、あの件はどうにかならないんですか」

 

「残念だけど、私にはどうにも出来ないわ」

 

「そうですか・・・・・・」

 

「ねぇ。明久くんだったらどうしたい?」

 

「僕だったらですか?」

 

「そう。もし、今回の件がことりじゃなくて貴方だったら」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・僕だったら断るかもしれません」

 

「それが自分の運命を左右することになっても?」

 

「はい・・・・・・。今のことりの気持ち、なんとなくわかるんです。僕もことりとは別れたくないですから」

 

「そう・・・・・・。やっぱり、明久くんも真奈美と同じなのね」

 

「母さんと?」

 

「ええ。真奈美はね、昔から寂しがり屋なの。いつも私や美穂乃ちゃん、瑞那ちゃんにべったりだったから。その成か小、中学生のときあまり友達はいなかったのよ。変わったのは・・・・・・音ノ木坂に入ったときからね」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。真奈美のあの性格、昔からじゃなくて音ノ木坂に入ってからなの。私にもことりと似たような話が来たのよ、その時の真奈美ったら、フフフ」

 

「母さん、何て言ったんです?」

 

「真奈美はね、『かおりちゃんが行くなら私も一緒に行く!離れたくないよ!』って涙目で言ったの。しかも美穂乃ちゃんたちがいるのに」

 

かおりさんは目尻にほんの少し涙を出して軽く笑った。

 

「あの母さんが、学生時代にそんなことを」

 

「ええ。私も、真奈美たちと離れたくなかったからお母さんに言って、無しにしてもらったの」

 

「そうだったんですね」

 

「ええ。だから今回、ことりに来たのだってことりに選ばせてあげたいの」

 

「・・・・・・僕も、さっき自分の気持ちを言ってきました。それ含めてことりには決めてほしいです。でも、本音は・・・・・・・・・・僕はことりと離れたくないんです。それは零華や恵衣菜も穂乃果も海未もつばさも同じだと思います。それは僕らだけじゃなくてμ'sのみんなも同じだと思います」

 

「明久くんはあの子・・・・・・・ことりのこと好き?」

 

「もちろん。ことりの事は好きです」

 

「それは異性として、かしら?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ごめんなさい、明久くんには恵衣菜ちゃんがいるものね・・・・・・」

 

「・・・・・・僕は・・・・・・異性としてもことりは大好きです」

 

「え」

 

「幼馴染だからとかじゃなくて、一人の異性として、僕はことりのこと好きですよ」

 

「フフフ。明久くんは欲張りね」

 

「ええ!?」

 

「でも、ありがとう。それが聞けただけでも嬉しいわ」

 

「かおりさん」

 

「来週の学園祭待ってるわね。そう真奈美にも伝えてくれるかしら?」

 

「はい、わかりました」

 

「お願いね」

 

僕とかおりさんは公園をあとにし、かおりさんは南家へ、僕は自分の家へと向かった。

 

「明日は恵衣菜と『如月グランドパーク』か・・・・・・。ことり、大丈夫なのかな」

 

僕は月が昇る黄昏時の空を下に自宅へと帰っていった。

 

 

 










次回 『如月ハイランド』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅱ門 如月ハイランド

バカテスト

問題:『色や形などの特徴が親から子へ伝わるという遺伝の法則を発見した人を答えなさい』


解答

吉井明久

『メンデル』


教師コメント

『正解です。さすがですね』


園田海未

『メンデル』


教師コメント

『お見事です』


矢澤にこ

『メンタル』


教師コメント

『違います。メンタルは人ではありません。精神面のことです』




~outer side~

 

「明日の準備はいいかしら?」

 

「もちろんですわ」

 

「みんなも準備出来てるみたいだよ」

 

「やれやれ、あんたたちは一体誰に似たのかね~」

 

「そういうお祖母ちゃんだって手伝う気満々じゃん」

 

「そりゃそうさね。この日のために今日中に明日のこと全て終わらせたのさね」

 

「さすがお母さん~」

 

「これって遺伝なのかなお姉ちゃん?」

 

「多分そうかと思いますわ」

 

「明日の午前7時に例の場所集合ってことでいいわね?」

 

「うん。みんなにもそう伝えてあるよ」

 

「ええ」

 

「じゃあ明日は二人のサポートを思いっきりするわよ~♪題して!」

 

「「二人でイチャイチャ、パーフェクトデート!サポート!!」」

 

「イエーイ!!」

 

「やれやれ」

 

明久と恵衣菜が知らぬ間に大人数での何らかの作戦が行われていることに、明久と恵衣菜はまだ気づいていない。

 

~outer side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

ブルッ!

 

 

「い、今なんか寒気がしたんだけど・・・・・・気のせい・・・かな・・・・・・?」

 

南家から帰ってきた僕は自室のベットに横になっていた。

 

「ハァー・・・・・・。僕はどうしたらいいんだろう・・・・・・」

 

南家でことりから聞いた僕は、途中で会ったかおりさんと別れたあと、家に帰ってからも終始この状態だ。

 

「穂乃果と海未には言ってないって言ってたっけ。多分恵衣菜と零華、つばさにも話してないよね・・・・・・」

 

僕は呆然とただ独り言を呟く。

 

「僕の予想より遥か上の相談だったよ・・・・・・」

 

寝返りをうち、僕はスマホの画面を開いて写真フォルダを開く。そして、ある写真フォルダを開封し中身を見る。その中身は僕ら幼馴染7人で撮った様々な写真が入っていた。その中には今日撮った写真もある。

 

「ハァー・・・・・・」

 

僕はまた、溜め息をつく。

すると。

 

「どうしたの明久くん?スマホ視ながら溜め息ついちゃって」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

いつの間にか恵衣菜がベットの横にちょこんと座っていた。

 

「ことりちゃんと何かあったの?」

 

「ううん。なんでもないよ恵衣菜」

 

「そう?ならいいけど・・・・・・」

 

「うん。明日は8時半に文月駅前でいいかな?」

 

「うん♪それじゃあ明日ね。楽しみだね♪」

 

「うん」

 

恵衣菜はそう言うと自分の家へと帰っていった。

明日の準備をするみたいだ。

 

「今はとにかく明日のことを考えないと・・・」

 

そして、時間は過ぎていき―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日

 

 

文月駅前 午前8時20分

 

 

「お待たせ明久くん」

 

「僕も今来たばかりだよ恵衣菜」

 

僕は時計塔前で恵衣菜と合流した。

 

「その服似合ってるよ」

 

「ありがとう明久くん♪」

 

「それじゃあ行こうか」

 

「うん♪」

 

僕は恵衣菜に左手を差し出し、恵衣菜は右手を出して手を繋いだ。

そして僕らは文月駅から電車に乗り、如月ハイランド前駅に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその二人を見守る影が二つ―――――

 

「こちらY・SとS・K。対象二人は文月駅から電車に乗って如月ハイランド前駅に移動した」

 

『こちらR・Y。Y・S、S・K了解。引き続き尾行をお願いします』

 

「了解した」

 

「・・・・・・行こう」

 

「ああ。・・・・・・・・・・・って、近すぎないか?」

 

「・・・・・・そんなことない」

 

「そうか?まあ、お前がいいなら構わんが・・・・・・」

 

 

そんな会話をして明久と恵衣菜を物陰から見ていた二人は移動した。明久と恵衣菜の二人を追いかけるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

如月ハイランド

 

 

「「ついた~!」」

 

時間は9時半を過ぎた頃。

駅から徒歩数分のところにある如月ハイランドはプレオープン中の為か人は余りいなかったが、それなりに人はいた。

 

「さっそく入ろう明久くん♪」

 

「そうだね――――って、引っ張らないでよ恵衣菜~」

 

僕は恵衣菜に引っ張られる形で入場口に立った。

そして入場口で僕は茫然としていた。何故ならそこにいたのは―――――

 

「いらっしゃいマセ!ヨウコソ如月ハイランドへ!本日はプレオープンなのデスが、チケットはお持ちデスカ?」

 

「・・・・・・・・・・何やってるの穂乃果?」

 

幼馴染の1人にして、μ'sのリーダー高坂穂乃果だった。

 

「穂乃果?それは一体ダレデスカ~?わたしは穂乃果、という人じゃアリマセンヨ?」

 

そして、何故かエセ外国人を演じていたりしている。

 

「・・・・・・・・・・まあ、いいけど。チケットだよね、はい。これでいいかな?」

 

僕は自分と恵衣菜のプレミアムチケットを取り出し、エセ外国人穂乃果に渡した。

 

「拝見しマ~ス」

 

エセ外国人穂乃果はチケットを受けとると、笑顔をしたまま固まった。

 

「そのチケット使えないの?」

 

「イエイエ、そんなことないですよ?ですが、チョットお待ちくだサーイ」

 

すると、エセ外国人穂乃果は僕らに背を向けた。

 

「―――こちらH・K。対象二人が来たよ。作戦開始用意を」

 

何処からか取り出したスマホを持って電話をし始めた。

 

「って、何処に電話してるの」

 

「なんでもないですよ。ハイ!確認イタシマシタ。お客様のチケットはプレミアムチケットなので、あるトクテンがツキマ~ス。ですので、少々お待ちクダサーイ」

 

「は、はい」

 

僕らはエセ外国人穂乃果の言う通り待つことにした。作戦というのが気になるが。

そして待つこと3分後―――――

 

「お待たせしましたー。こちらカメラになります」

 

「ありがとうございまーす」

 

穂乃果と同じ如月グランドパークの従業員の服を着た、つばさがカメラを持ってきた。

 

「・・・・・・・・・・何してるのつばさ」

 

「つばさ?それは誰でしょう?私はつばさという名の人ではないのですが」

 

「そ、そう・・・・・・」

 

僕は穂乃果にも返された言葉にそう答えるしかなかった。ちなみに恵衣菜は気付いてなかったりする。さすがことりと同じ天然。

 

「それではお写真を撮らせていただきます」

 

「写真?」

 

「はい。プレミアムチケットの方には当社がお送りするあるイベントに参加してもらいマ~ス」

 

「い、イベント?」

 

僕は穂乃果とつばさの言った、イベントというものに疑問を抱いた。

 

「恵衣菜は知ってる?」

 

「ううん、しらないよ。でもいいじゃん♪なんか楽しそうだよ」

 

「アハハ・・・・・・」

 

相変わらずの恵衣菜に僕は苦笑する。

 

「では撮らせていただきます。お二人はもう少し近付いてください」

 

つばさがカメラを構えて、レンズに僕と恵衣菜を視界に捕らえた。

 

「はい、チーズ」

 

そしてカシャッ、という音ともにカメラからフラッシュが発生した。

 

「ありがとうございます。すぐ現像して参りますので少々お待ちを」

 

つばさはそう言うとカメラを持って何処かへ行ってしまった。

 

「て言うかつばさ、AーRISEの練習はいいの?穂乃果もだけど・・・・・・」

 

僕は唖然とそう呟いた。

 

「ん?」

 

僕はそして見知った気配がかなりあることに気付いた。

 

「これは・・・・・・うわ、かなりいる。って、ちょっと待って、穂乃果とつばさがいるということは・・・・・・」

 

そう思っていると。

 

「お待たせしました。こちら先程のお写真となります」

 

「あ、ありがとう」

 

つばさが何かを渡してきた。

 

「なんだろう?」

 

渡された物を開けるとそこには――――――

 

「これってさっきの写真だね。しかも可愛らしくされている」

 

「・・・・・・・・・・」

 

中身はさっき撮った写真が入っており、その写真の回りに小さな天使が浮かんでいるのが描かれていた。そして、写真の上には何故か、結婚しました、の文字が書かれてあった。

 

「あのさ、これって・・・・」

 

「はい。こちらで加工してみました」

 

「そ、そう。じゃなくてこれじゃなくて普通のでお願いしたいんだけど」

 

「でしたらこちらをどうぞ」

 

普通のあるのね!

僕はそこに驚いた。

普通のには特に加工されていない、写真が張られていた。あるとすれば枠斑が花々に囲まれているところだ。

 

「これって貰ってもいいの?」

 

「ハイ」

 

「ホント♪やったー!」

 

恵衣菜は嬉しそうに二つの写真を抱き締めた。

 

「アハハ・・・・・・」

 

僕はつい苦笑いする。見てみると、穂乃果とつばさは必死に笑いを耐えているのが見えた。

 

「では、イベント時間になりましたらお呼び致しますので、どうぞ御ゆっくり園内をお回りください」

 

そういうとエセ外国人穂乃果とカメラマンつばさはどっかへ行ってしまった。

 

「じゃあ回ろうか恵衣菜」

 

「うん♪」

 

僕らは園内を周り始めるため歩き出した。ちゃんと手を繋いで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらT・KとH・K。対象二人は、メリーゴーランドの方に移動したわ」

 

『こちらR・Y。T・K、H・K了解』

 

「行くよつばさちゃん」

 

「ええ。行きましょう穂乃果」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何処から回る?」

 

「う~ん・・・・。じゃあ―――――」

 

恵衣菜と相談して何処から回るか決めようとしていると―――

 

『お兄さん、お兄さん♪』

 

「?僕のこと?」

 

『うん♪お兄さんたちもしかして何処に行くか迷ってるのかな?』

 

「(なんかどこかで聞いた声なような・・・・・・)」

 

僕は目の前に現れたキツネの着ぐるみを着た人に思った。

 

『お兄さんたち?』

 

一応試しておこう。

 

「あぁ!あそこにアメリカ限定ベイクドチーズケーキがある!」

 

『えぇっ!チーズケーキ!?どこどこ!?』

 

「アメリカ限定のベイクドチーズケーキ!?どこどこ!?」

 

「って恵衣菜も!?」

 

とまあ、それはおいといて。確信確定。このピンク色のキツネの着ぐるみ着た人の中身は・・・・・・

 

「揃いも揃って何してるのさことり」

 

『あ・・・・・・っ!ち、違うよっ!こと――――じゃなくてフィーはことりなんて人じゃないよ♪見ての通りキツネの女の子ですよっ♪』

 

「そ、そうですか・・・・・・」

 

ことりの気迫に僕はちょっと引きながら答えた。

ちなみに恵衣菜は。

 

「このキツネ、かわいいよ明久くん♪声がことりちゃんに似ていて目茶苦茶かわいい~」

 

目を輝かせてことり(INキツネの着ぐるみ)を見ていた。

 

「恵衣菜ってそんな性格だったけ?」

 

僕はそんな恵衣菜についそう呟いた。

 

「まあ、それはおいといて。フィーちゃんがオススメのアトラクションを教えてくれるの?」

 

『そうだよ~♪』

 

「ちなみにそのオススメの場所は?」

 

『えっとね~。あそこにある~、古い病院を改造したお化け屋敷だよ~♪』

 

ことり(INキツネの着ぐるみ)が指差した場所には、病院のような建物があった。

 

「(そう言えば如月ハイランドには目玉のお化け屋敷があったけ?)」

 

「お、お化け屋敷か~。た、楽しそうだね~」

 

「あ、恵衣菜ってお化け―――――「ふにゃぁーーーーーー!!!」――――うわっ!」

 

「言わないで言わないでぇ!」

 

「う、うん。わかった」

 

『他にも色々あるよ♪』

 

「例えば?」

 

『そこから先はわた―――――ではなく、このノインちゃんにおまかせあれ~♪』

 

「(またもや聞いたことのある声の気が・・・・・・。これも気にしたら敗けと言うやつなのかな)」

 

「アッ!ノインちゃんだ!」

 

『こんにちわ~。僕はノインだよ』

 

「(うん。確定。ノインの中身ってあんじゅだ。っていうかまさか英玲奈もいるんじゃ・・・・・・。いや、まさか、ね。あの英玲奈に限って・・・・・・・・・・・・・・・・・ありえるかも)」

 

「明久くん、明久くん!」

 

「ん。なに恵衣菜?」

 

「写真撮ろうよ♪」

 

「うん。いいよ」

 

僕はスマホをカメラ機能にして、近くにいた従業員さんに渡して、ノイン、僕、恵衣菜、フィーの順に並んで撮ってもらった。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、では私はこれで」

 

従業員さんはそう言うと何処かへ去っていった。

 

「え~と、ノインさん。お化け屋敷の他のオススメのアトラクションを教えて貰ってもいいですか?」

 

『はーい。えっとね、まずはあそこにあるジェットコースターだよ。 速いけどかなり面白いんだ~。あとは夕方のパレードかな~。あっ、あと一番乗って欲しいアトラクションはね、あの観覧車だよ。特に夕方から夜になる頃にかけて乗った方がいいよ』

 

「ありがとうございます」

 

『いえいえ~。それでは僕らはこの辺でね~。二人とも楽しんでね~』

 

『またね~』

 

ことり(INフィー)とあんじゅ(INノイン)は仲良く僕らとは反対側に歩いていった。

 

「それじゃあ。お化け屋敷から行く?」

 

「う、うん」

 

僕らはまず始めにお化け屋敷に向かうため、アトラクションの場所の廃病院へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらK・MとA・Yだよ~。二人は最初にお化け屋敷に行くみたいだよ~」

 

『こちらU・Sです。K・M、A・Yわかりました。何かありましたら連絡してください』

 

「りょうかーい」

 

「ことりちゃん、私たちはどうする~」

 

「そうですね~。取り敢えず、ことりたちの役割をしましょうかあんじゅちゃん~」

 

「そうだね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

如月ハイランド お化け屋敷

 

 

「ここがお化け屋敷・・・・・・」

 

「わ、わぁー・・・すごい迫力・・・・・・」

 

僕らは今、目的地のお化け屋敷の前にいる。

 

「いらっしゃいませ、2名様でよろしいですか?」

 

「・・・・・・はい」

 

もうツッコミたくないんだけど、あえて言う。

 

「なんでここにいるの須川くん?」

 

「ではどうぞ奥へお進みください」

 

須川くん?は僕の言葉をスルーして僕らを奥へと案内した。

ああ、もうなれてしまった自分が怖い。

僕と恵衣菜は須川くん(受付)に案内されて奥へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらR・S。二人がお化け屋敷に入った」

 

『こちらA・Kですわ。R・S、了解致しました。第一作戦開始いたしますわ』

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷内

 

 

「ひうっ!」

 

「あ、あの恵衣菜?歩きづらいんですけど・・・・・・」

 

「い、いいからこのままにして!お願い!」

 

「う、うん」

 

お化け屋敷に入り、暫くして色々なお化け?らしきものが出てきて、その度に恵衣菜は可愛らしく悲鳴を上げて、僕にしがみついてくる。

まあ、しがみついてくるのはいいんだけど・・・・・・・。

 

「(やばい、恵衣菜が密着してるからか匂いと感触が・・・・・・)」

 

襲わないか理性がもつか大変だった。

 

「う~ん。そろそろ恵衣菜にはお化け屋敷、馴れて欲しいんだけど」

 

「そ、それは無理だよ」

 

「ですよね~」

 

僕は学園祭でもこんなんだったのを思いだし苦笑する。

 

「むぅぅ。笑わないでよ~」

 

「別に笑ってないよ。ただ、恵衣菜が可愛いなって」

 

「か、かわ、かわっ、可愛い//////」

 

「あー、恵衣菜がショートしたかも」

 

顔を赤くして、プシューと頭から蒸気が出ているような状態の恵衣菜に僕はそう呟いた。

そして、そのままお化け屋敷を巡りゴールへとたどり着いた。

 

「ついたよ、恵衣菜」

 

「ほ、ホントだ~。わーい、お日様の光だ~」

 

「幼児退行してないかな・・・・・・?」

 

隣の恵衣菜を見て僕はつい、くすりと笑いそう呟いた。

すると。

 

「吉井明久さまと姫宮恵衣菜さまですね」

 

後ろから声がかけられた。

というよりこれも聞いた覚えのある声の気が・・・・・・

僕はゆっくりと背後を振り向いた。

そこにいたのは――――――

 

「・・・・・・・・・・・」

 

顔を真っ赤にして如月ハイランドの従業員服を着てメガネをつけて立っている海未がいた。海ではなく海未である。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

僕はつい海未に同情してしまった。

幾らスクールアイドルμ'sとして注目されていているとはいえ、海未は昔からこう言うのが苦手なのだ。特に、スカートの裾丈が短いものや、派手なものは。まあ、穂乃果や恵衣菜たちがしらない海未の秘密を僕は何度か見てしまっているのだが・・・・・・。

 

「お二人には当園がご用意いたしました昼食がございますのでご案内に参りました」

 

「え!?そうなんですか!」

 

「はい。ご案内いたします」

 

「海未・・・・・・」

 

僕はブルブルと振るえながら歩く海未を見てなんとも言えない表情を出していた。

 

「行こう、明久くん」

 

「う、うん」

 

いつの間にか幼児退行から戻っていたのか、恵衣菜は楽しげな足取りで海未の後について行った。

 

「って、あれ?恵衣菜、お弁当持ってきていたような・・・・・・」

 

「うん。持ってきているよ」

 

「そっちはどうするの?」

 

「後でゆっくりと落ち着いたところで食べようよ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらU・Sです。二人を昼食会場に案内します」

 

『こちらK・M。了解だよ~』

 

「あ、あと、この服どうにかなりませんか?」

 

『えー、似合ってるよ~海未ちゃん』

 

「ちょ、K・Mじゃなくてことり!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらになります」

 

お化け屋敷から徒歩5分程のところに僕らは案内された。

途中康太が写真を撮っていたり、にこがにこにーをしていたり、凛が猫の着ぐるみを着てニャーをしていたり、木下さんが放送をしていたりと、色々ツッコミたい。

て言うか何人いるのさ!?

 

「わぁ・・・・・・」

 

「すごい・・・・・・」

 

昼食会場に案内され、会場内に入った僕と恵衣菜は感嘆にそう呟いた。

内部は中央の天井にシャンデリアがあり、壁にはタペストリーや絵が飾られていた。

 

「お待ちしておりました。吉井さま、姫宮さま」

 

「秀吉・・・?」

 

ウエイターとして現れたのは、何故か執事服姿の秀吉だった。

 

「秀吉?それは誰のことでしょう?」

 

「(あ、これ完全に役者モードに入ってるわ)」

 

「お席へご案内します。こちらへどうぞ」

 

僕らが案内された席は窓際の日当たりがいい場所だ。

中央には小さな噴水があり、何故か正面にはクイズ会場のようなクイズ解答台があった。

そして、クイズ台のすぐ近くのグランドピアノでは真姫がピアノを弾いていた。

 

「ん?」

 

もう一度よく見てみよう。噴水、クイズ解答台、グランドピアノを弾いてる真姫

 

「ゲホッコホッ!(ま、真姫もいるの!?)」

 

そしてさらによく見てみると、ウエイターのほとんどが知り合いだった。

 

「(秀吉に天野さん、英玲奈に横溝くん、エレンさん、桜咲さん、希、恭二に友香さんまで!?)」

 

幾らなんでもいすぎな気がする。

ていうかこれお祖母ちゃんと母さんも絡んでる気がする。

僕は頭痛がするかのような気分だった。

 

「豪華な場所だね~」

 

「そ、そうだね」

 

恵衣菜にそう言いつつ僕は頭の中で母さんとお祖母ちゃん。そして恐らく関わっているであろう零華と葵姉さんを問い詰めることにした。

 

 

 

 

 

それから食事が始まり、今は食後のチーズケーキと紅茶を飲んでいた。

 

「美味しかったね」

 

「うん。あのカルパッチョのソース。今度作ってみたいな・・・・・・」

 

「私は煮込みハンバーグの工程かな。どうやったらあそこまで中まで味が通るのか試してみたいかも。他にも色々あったよ」

 

「じゃあ、今度一緒にやろうか」

 

「いいね♪」

 

恵衣菜とそんなこと話していると・・・・・・・

 

「あれ?」

 

「停電かな?」

 

突如部屋の電気が消え、辺りが暗くなった。

窓にはいつの間にかカーテンが閉められていて、中はあっという間に暗くなる。

すると。

 

《みなさま、本日は如月ハイランドプレオープンに、ようこそお越しくださいました》

 

クイズ解答台の横の司会者席にスポットライトが当たり、そこにメガネを掛けた絵里と零華がいた。

ってなにしてるのさ二人とも!!?

そんな僕の心情を無視して二人は司会を進めていっていた。

 

《プレオープンに連なり、本日当園ではイベントとしてお客様の中から一組、抽選で当如月グループがお贈りする、ウエディング体験をプレゼントいたします》

 

《ですが抽選で一組選ばれましても、こちらの出題する問題に全問正解していただけなければプレゼントすることができません》

 

《では、見事抽選に当選したお客様は・・・・・・・・・・・》

 

何処からかドラムロールの音が聞こえてきた。

そして。

 

「えっ?」

 

「わ、私たち!?」

 

何故か僕と恵衣菜のテーブルにスポットライトが降り照らされた。

 

《おめでとうございます!あそこのお客様が見事当選いたしました~!》

 

「え、ええ?」

 

「あ、あわわわ」

 

もしかして僕たち?

 

《それではそこの高校生お二人様、どうぞこちらへ!》

 

 

 

 










次回 『ウエディング体験 そして・・・・・・』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅲ門 ウエディング体験 そして・・・・・・


バカテスト

問題:『夏の大三角を構成する3つの一等星は何でしょう?』


解答

吉井明久

『アルタイル、ベガ、デネブ』


教師コメント

『吉井くんは星座にもくわしいのですね』


姫宮恵衣菜

『アルタイル、ベガ、デネブ』


教師コメント

『さすがです。博識ですね』


西木野真姫

『アルタイル、ベガ、デネブ』


教師コメント

『詳しいですね。さすがです』


 

~明久side~

 

 

《それではそこの高校生お二人様、どうぞこちらへ!》

 

 

突然の当選に、理解できないまま僕と恵衣菜は案内されるがままにステージに上がり、クイズ回答席に座った。

 

「明久くん、これはどういう状況なんだろう」

 

「う~んと・・・・・・ごめん、僕にも分からない」

 

「でも、司会の人このクイズに答えればウェディングイベント体験が出来るんだよね」

 

「うん、そう言っていたね」

 

「なら、私頑張る!」

 

「おぉ・・・・・・恵衣菜が燃えてる」

 

僕らが小声でそんなやり取りをしていると、

 

 

《それではルールを説明いたします!ルールは簡単、こちらの出題する問題、5問全てに答えていただき、全て正解でございましたらウェディング体験をプレゼントいたします》

 

 

司会者席にいる絵里が説明した。

 

 

《それでは早速参りましょう》

 

 

そして零華が続けていった。

どうやら問題が出るみたいだ。どんな問題なんだろう?

 

 

《第一門!お二人のご出身の小学校はどこですかっ!》

 

 

「はい?」

 

僕は零華の出した問題に情けないすっとんきょうな声を発した。

そこへ。

 

 

―――ピンポーン!

 

 

机の台の真ん中に置かれているボタンを恵衣菜が押した。

 

 

《はいっ!答えをどうぞっ!》

 

 

「水音文小学校」

 

 

《正解です!》

 

 

「(ちょっとぉーー!!??)」

 

ツッコミを入れてる僕を無視してさらに続いた。

 

 

《続けて第二問!お二人の高校での肩書きはなんですかっ!》

 

 

「(それって質問なの!?)」

 

 

―――ピンポーン!

 

「第二学年序列1位と序列2位」

 

 

《正解です!》

 

 

僕はこれまた呆気に取られて零華と絵里の方を見た。すると、僕の視線に気がついたのか絵里は苦笑いを浮かべ、零華は冊子で隠して僕だけに見えるようにして、右手の親指を上げてサムズアップした。

 

「(これは・・・・・・まあ、いいかな)」

 

僕は半ば諦めになり、残り3問答えることにした。

 

 

《ではでは、第三門!お二人の出会いは何処でしょうかっ?》

 

 

―――ピンポーン!

 

 

「「幼稚園」」

 

 

《正解です!》

 

 

《ではお次。第四問!お二人がお揃いで身に付けているものはなんですかっ!》

 

 

―――ピンポーン!

 

「「約束の指輪とペンダント」」

 

 

《正解ですっ!》

 

 

「(ところでこれ。完璧に出来レースだと思うんだけど・・・・・・。恵衣菜はなぜか気づいてない)」

 

残り一問のところで僕は苦笑気味にそう思った。

 

 

《さあ、残り一問です!これに正解することができたらウェディングイベントがプレゼントとなります!》

 

 

「ラスト一問・・・絶対に答える・・・・・・!」

 

「だね」

 

「うん・・・・・・!」

 

 

《では第五も―――――『おい、ちょっと待てよ』―――――はい?》

 

 

突如、絵里の言葉を遮って声が聞こえた。

 

 

『ちょっとおかしくな~い?アタシラも結婚する予定なのに、どうしてそんなコーコーセーだけがトクベツ扱いなワケ~?』

 

 

声の発生元を探ると、その声の主はすぐに見つかった。

その声の主の男女は立ち上り、ステージのすぐ横の司会者席の近くにまで来ていた。

男の方は茶髪で顔中にピアスをつけ、絵里と零華を威嚇するように大声をだし、女の方は小太りで厚化粧をしている、まさに絵に描いたようなチンピラカップルだ。

 

 

『あのー、お客様?申し訳ありません、イベントの最中ですので、どうかお静かに――――』

 

『あぁっ!?グダグダとうるせーんだよ!オレたちゃオキャクサマだぞコルァ!』

 

『アタシらもウェディング体験ってヤツ、やってみたいんだけど~?』

 

『いえ、ですから――――』

 

『ゴチャゴチャ抜かすなってんだコルァ!オレたちもクイズに参加してやるって言ってんだボケがっ!』

 

『うんうんっ!じゃあ、こうしよーよ!アタシらがあの二人に問題出すから、答えられたらあの二人の勝ち、間違えたらアタシらの勝ちってコトで!』

 

『『そ、そんな―――』』

 

 

零華と絵里が説得するなかチンピラカップルはズカズカと壇上に上がり、零華からマイクをひったくった。

 

 

『きゃ・・・・・っ!』

 

 

無理矢理マイクをひったくられ突き飛ばされた零華はバランスを崩し、その後ろの絵里に背中から倒れこんだ。

 

「あ・・・っ!」

 

だが、零華は絵里に支えられるようにして倒れずにすんだ。

それを見た僕はホッと胸を撫で下ろした。

 

「(さてと、僕の可愛い大切な妹の零華を傷付けた礼はどう返そうかなぁ・・・・・・)」

 

僕が心中でそう考えるなか零華がアイコンタクトでこう言った。

 

 

『(私の方は大丈夫だから、お兄ちゃんはそっちに集中して)』

 

 

そう言ってきた零華に僕は小さくうなずき、壇上に上がったチンピラカップルを見る。

 

「あ、明久くん。どうしよう・・・・・・」

 

「大丈夫、心配しないで恵衣菜」

 

「明久くん・・・うん」

 

隣に座っている恵衣菜の不安そうな表情に、僕は優しく微笑み台下の右手を左手で優しく重ねた。

 

 

『じゃあ、問題だ』

 

 

チンピラの男がわざわざ巻き舌の聞き取りにくい発音で言った。

そして――――――

 

 

『ヨーロッパの首都はどこだか答えろっ!』

 

 

僕らは言葉を失った。

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

『オラ、答えろよ。わかんねぇのか?』

 

 

チンピラ男がバカにしたように言う中、僕と恵衣菜は小声で。

 

「ね、ねえ、明久くん」

 

「なに、恵衣菜」

 

「ヨーロッパって・・・・・・首都あったかな?」

 

「ううん、ないよ。と言うより、ヨーロッパは国というカテゴリーに属したことは一度もないから」

 

「だよね」

 

「うん。だからヨーロッパの首都はどこか、聞かれても答えることなんて不可能だよ」

 

「・・・・・・あの人、もしかしてバカなのかな?」

 

「うん。・・・・・・多分バカだと思う。それもFクラスの彼らより相当のバカ」

 

「だよね。さすがのFクラスでもヨーロッパは国というカテゴリーじゃないし首都がないことは知ってるはずだよね」

 

「う~ん・・・多分・・・・・・・」

 

そう会話していた。

そして同時に、問題を出したチンピラ男に哀れみの視線を向けた。

ちなみにその視線は僕らだけじゃなく、チンピラカップルのすぐ近くの絵里や零華。グランドピアノ近くの真姫、接客を中断してステージを見ている秀吉、恭二、希たちからもだった。というよりその場の全員(チンピラ女は除く)が向けていた。

 

 

《ハァー・・・・・・。え~と、吉井明久さま、姫宮恵衣菜さま、おめでとうございます。如月ハイランドウェディング体験をプレゼントいたします》

 

 

零華が絵里の持っていたマイクを借りてそうアナウンスした。

 

 

『ちょっと待てよ!アイツら答えられなかったじゃねーかよ!』

 

『そうよそうよ!なんであのコーコーセーたちにプレゼントするわけ!』

 

 

絵里と零華にガミガミ文句を言うチンピラカップルに、僕は軽~く殺気を出して静まらせようとしたが、当の絵里と零華が淡々と次の準備をしているのを見て、苦笑しながらも無視することにした。うん、チンピラは無視が一番だね。

 

 

《吉井さまと姫宮さまは係の者がご案内いたしますので今しばらくお待ちください》

 

 

絵里のアナウンスでしばらく待つこと数分、係の者が来て、僕と恵衣菜は如月ハイランドホテルへと向かった。

 

「それでは、姫宮さまはあちらのスタッフの後に付いていってください」

 

「あ、はい、わかりました。それじゃあ明久くん、また後でね」

 

「うん。楽しみに待ってるよ」

 

「うん♪」

 

恵衣菜が女性スタッフとともに離れていくのを見た僕は、案内役の人を見た。

と言うか。

 

「なんとなくわかっていたけど・・・・・・・なにしてるの葵姉さん?」

 

案内役のスタッフは葵姉さんだった。

 

「あらあら、さすがにバレてしまいましたか」

 

「うん。はじめから気づいていたから」

 

「あら、そうなんですの?」

 

「むしろあれで気付かれないとでも?」

 

「まあ、そうですわね。取り敢えず付いてきてくださいな」

 

「了解」

 

僕は葵姉さんの後に付いていって控え室まで来た。

中に入ると、

 

 

 

「ヤッホー、来たね明久くん♪」

 

 

 

中にいる人を見て僕はすぐさま扉を閉めた。

 

「・・・・・・」

 

「中に入らないんですの?」

 

「いや、入るんだけど・・・・・・」

 

「はい」

 

僕は再度扉を開き、

 

「なんで母さんがいるのさ!?」

 

中にいる人――――――母さんを見てツッコミをいれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約1時間後

 

 

「お兄ちゃんのタキシード姿・・・・・・。もう、私死んでもいいかも」

 

「れ、零華!?ちょっ、零華ぁああああ!!」

 

「あらあら、零華ちゃん明久くんのタキシード姿に興奮しちゃったみたいですね」

 

「わかるわ~。さすが、彼と私の子供よ~」

 

「それより零華の鼻血を止めてぇええ!」

 

 

ステージ横でそんなことが行われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー、思いっきり疲れた・・・・・・」

 

「まあまあ、これが終わったら自由だからね♪」

 

「そうだけどさ・・・・・・なんでことりがここに?」

 

ステージ横での騒動から数分、零華と母さんたちは観客席に移動し、ことりが代わりにやって来た。

 

「・・・・・・話したいことがあったから」

 

「それは・・・昨日の事。だよね」

 

「うん・・・・・・」

 

「海未たちには話さないの?」

 

「海未ちゃんとつばさちゃんには明日話そうと思うよ。でも、穂乃果ちゃんには・・・・・・」

 

「文化祭を張り切っている穂乃果には話せない 、か」

 

「うん・・・・・・」

 

「ことりは・・・・・・どうしたい?」

 

「わ、私は・・・・・・」

 

「焦らないでゆっくりと考えよ・・・僕はことりの味方だから」

 

「明久くん・・・・・・・」

 

「ほら、笑って。何時ものことりじゃないと僕は嫌だよ?」

 

「うん♪夜また連絡するね」

 

「わかったよ」

 

「うん。それと、似合ってるよ明久くん♪」

 

「ありがとう、ことり」

 

ことりがそう言い出ていくのを確認した僕は、表情に影を作った。自分でもどうすればいいか分からないからだ。

そして、その数分後―――――――

 

 

《それでは本日のメインイベント、ウェディング体験です!皆様、まずは新郎の入場を拍手でお迎えください!》

 

 

葵姉さんの声が聞こえてきた。

そして、それと同時に園内全てに響き渡るのではないかと思われる程の拍手が聞こえてきた。どうやら周囲の熱気に押されて一般入場客もいるみたいだ。

 

「それじゃあ行きますか」

 

僕は舞台袖からステージへと上がった。

ステージに上がった僕はあまりの明るさに手で光を遮った。

光になれた頃、ステージを見た僕はビックリした。

そこはまさに本物の結婚式のようなセットだったからだ。

 

「(うわー、すごいなぁこれ。イベントにしてはかなり大がかりな設備だなぁ)」

 

 

《それでは新郎のプロフィールの紹介を――――――》

 

 

「(え!?僕のプロフィール紹介するの!?プライバシーは!葵姉さん!!)」

 

 

《プライバシーなので控えさせていただきます》

 

 

葵姉さんの放送に僕はホッと胸を撫で下ろした。

すると。

 

 

『ま、紹介なんていらねぇよな』

 

『興味ナシ~』

 

『ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな』

 

『だよね~』

 

 

最前列に座っている連中からそんな声が聞こえてきた。

 

「(また、あのチンピラ)」

 

声の主は先ほど騒いだチンピラカップルだった。

しかもどうやら外観に相応しいマナーの持ち主らしい。

 

 

《申し訳ございません。他のお客様のご迷惑となりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願い致します》

 

 

『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』

 

『違ぇだろ。俺らはなんたってオキャクサマだぜ?』

 

『だよね~っ』

 

『ま、俺たちの事だとしても気にすんなよ。要は俺たちの気分が良いか悪いかってのが問題だろ?な、これ重要じゃない?』

 

『うんうん!リュータ、イイコト言うね!』

 

 

調子に乗った下卑た笑い声が一層大きく響き渡った。

チンピラカップルの周囲のお客さんは迷惑そうに眉をしかめている。

 

 

 

『お、お兄ちゃんのこと悪く言ってぇぇ。マジで許さない。あの人たちに絶望を見せてあげる・・・・・・!』

 

『れ、零華ちゃん落ち着いて落ち着いて~。ことりちゃん、海未ちゃん、手伝ってぇ』

 

『零華、落ち着いて下さい。このままでは出来なくなってしまいますから』

 

『落ち着こうよ零華ちゃん~』

 

 

 

そんな声が僕の耳に入ってきた。

 

「(あはは)」

 

 

《続きまして新婦の入場です。皆様、拍手でお迎えください!》

 

 

葵姉さんのアナウンスに再び拍手が鳴り響いた。

それと併用して、心なしか音量の上がったBGMとアナウンスが流れ、同時に会場の電気が全て消えた。スモークが僕の時と同じように足元に立ち込め、否応なしに雰囲気が盛り上がった。

 

 

《本イベントの主役、姫宮恵衣菜さんです!》

 

 

葵姉さんのアナウンスと同時に幾筋ものスポットライトが壇上の一点のみを照らした。暗闇から一転して輝き出す壇上で、僕は思わず目を瞑った。

そして、再び目を開けた時に視界に入ってきた姿に僕は言葉を失う。

 

 

『・・・・・・・・・・綺麗』

 

『・・・・・・・・・・可憐』

 

 

静まり返った会場から溜め息とともに漏れ出た、誰のものともわからない台詞が静かな会場に伝わる。

余程入念に製作したのか、純白のドレスは皺一つ浮かべることなく着こなされていた。僅かに銀が煌めくスカートの裾は床に擦らない限界ギリギリの長さに設定されていた。

 

「・・・・・・明久くん・・・・・・」

 

「恵衣菜・・・・・・?」

 

白銀のティアラとヴェールの下に素顔を隠し、シルクの衣のような衣装に身を包む、幼馴染で恋人が綺麗な瞳で見てきた。

 

「うん。そうだよ」

 

僕は恵衣菜の姿に動揺した。

すると、そんな動揺する僕に、恵衣菜が恥ずかしげに問いかけてきた。

 

「・・・・・・どう・・・かな・・・・・・?似合ってる・・・かな・・・・・・?」

 

「―――うん。似合ってるよ。とても」

 

「ありがとう明久くん/////とってもうれしいよ♪私の昔からの夢が一つ叶った♪」

 

「夢?」

 

「うん。明久くんのお嫁さんになること。それが私の昔からの夢。だから、今ではこうして明久くんと一緒にいられてとっても嬉しい♪」

 

恵衣菜は満面の笑顔を浮かべて、僕に向けた。

 

「!恵衣菜//////」

 

恵衣菜の満面の笑顔に僕は自分の顔が赤くなったのを感じ、少し視線をずらした。

 

 

《見ている私にもお二方の喜びが伝わってきますね。泣けてきます》

 

 

葵姉さんが相変わらずのアナウンスで言った。だが、その声に嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

『恵衣菜姉様、綺麗です、素敵です~』

 

『綺麗だね、恵衣菜ちゃん』

 

『ええ』

 

『ホントだね~』

 

 

零華たちの声が耳に聞こえてきた。

すると。

 

 

『あーあ、つまんなーい!』

 

 

観客席から大きな声が上がった。

 

 

『マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?』

 

『だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての』

 

 

発言者はまたしてもあのチンピラカップルらしい。

 

 

『ってかナニ、このオンナ?ちょっとどころかかなりキモいんだけど』

 

『言えてる、言えてる。昔からの夢があんなオトコと一緒にいることって、バカみてぇ』

 

『だよね!あのオンナ歳いくつ?あ、もしかしてキャラ作り?ここのスタッフの脚本?』

 

『どうでもよくねぇ~。言えることはあのオンナ、マジでアタマおかしいってことだろ?ギャグにしか思えないんだケドぉ』

 

『だよねぇ~』

 

『そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんていねぇもんな!』

 

『え~っ!?コレってコントなのぉ?だとしたら、超ウケるんだケドぉ~!』

 

『動画に撮ってネットに流したら面白くねぇ~?』

 

『そうかもぉ』

 

 

口々に文句を言っているチンピラカップルは、恵衣菜を指差して笑っていた。

するとそこへ、

 

 

『今度という今度は許せないっ!いますぐあの人たち半殺しにする!』

 

『私もかな?さすがにこれは幼馴染として、友達として許せないね!』

 

『同感です!絶対に許せません!今回ばかりは私も止めません!』

 

『だね~。私も今回はかなりイラーってきたよ~!絶対に許さない!』

 

『れ、零華落ち着いて!』

 

『穂乃果、海未、ことり、落ち着いて!ステージが台無しになるわ!真姫、希、手伝ってちょうだい!』

 

 

零華、穂乃果、海未、ことりの怒気の声と、それを宥めるつばさと絵里の声が聞こえた。

そしてそんな短い、一分にも満たない時間の間に、

 

 

《は、花嫁さん?花嫁さんはどこにいかれたのですかっ?》

 

 

「えっ!?」

 

恵衣菜は僕の前から消えていた。

恵衣菜の立っていた場所には、手に持っていたブーケ、白銀のティアラとヴェールだけが残されていた。

 

「恵衣菜どこへ・・・・・・・」

 

僕は落ちていたブーケと白銀のティアラとヴェールを拾う。ヴェールは、羽根のように軽いはずなのに、恵衣菜の流した涙で湿り、僅かに重くなっていた。

 

 

《姫宮さん?姫宮恵衣菜さーんっ!皆さん、花嫁を捜してください!》

 

 

僕は葵姉さんのアナウンスが流れている間にステージ脇に移動していた。

そして、

 

「恵衣菜を捜してくる。皆には悪いけど、このあとのイベントはいいよ」

 

そこにいた母さんにいった。

 

「わかったわ・・・・・・ちゃんと恵衣菜ちゃんを捜してきなさい」

 

何時もの雰囲気ではなくシャキッとした雰囲気と口調で母さんは言った。

 

「もちろんだよ。ごめん、母さん」

 

「いいのよ。私もあそこにいる人たちには激怒してるの。明久くんに任せてもいいかしら?」

 

「言われずとも初めからそのつもりだよ母さん。彼らは恵衣菜を泣かした。それに零華にも手をかけた。僕は・・・・・・それを許さない・・・・・・!」

 

「そう・・・・・・。ここの人には連絡を入れとくわ、すきになさい」

 

「ありがとう母さん。それと、これ・・・お願いしてもいいかな?」

 

「ええ。任せときなさい」

 

「ありがとう」

 

僕は持っていたブーケと白銀のティアラ、ヴェールを母さんに預け、その場から駆け出した。

目的地は5分もたたずに見えた。

いやー、あまり遠くなくて助かったよ~(棒読)。

 

 

『いや、マジでさっきのウケたな!』

 

『うんうん!私・・・・・・結婚して一緒にいるのが夢なんです・・・・・・。どう?似てる?かわいい?』

 

『ああ、似てる!けど――――キモいに決まってんだろ!』

 

『だよね~!』

 

『動画にでも撮っておけばよかったな!』

 

『うんうん!それでネットに流したら面白かったかもね~!』

 

 

さてと。それじゃあ、始めようか。

あの人たちにO☆HA☆NA☆SHI☆をしようか。

 

「ねぇ、そこの人たち」

 

『ぁあ?ぁんだよ?』

 

二人組が真っ茶色な顔をこっちに向けてきた。

正直あまり長く見たくないね。

 

『リュータ。コイツ、さっきのキモいオンナのオトコじゃない?』

 

『みてぇだな。んで、その新郎サマがオレたちになんか用か、あァ!?』

 

なんか威嚇してきたみたいだけど全然怖くないね。

 

「うーん、大した用じゃないんだけどね――――――」

 

僕は言葉を区切り対面した。

 

「――――――ちょっとそこまで来てもらって良いかなぁ?」

 

『ぁんだよ?』

 

チンピラカップルは僕のあとを疑いもせずについてきた。

そして、人気のない場所に来た僕は振り返り、

 

 

ガンッ!

 

 

『ヒッ!』

 

チンピラカップルの男の顔を掴んで持ち上げた。

 

『な、なにすんだテメェ!』

 

「・・・・・・・・・・」

 

男が何か言うが本気でキレてる僕には聞こえない。

まあ、言ってることはわかるけどね。あえて無視をする。

そして、男を地面に放る。

 

『おいっ!なんかいえよガキッ!』

 

『そ、そうよ!何か言いなさいよっ!』

 

「ハァ・・・・・・うっさい、黙れ」

 

『ヒッ!』

 

僕の眼と表情を見たチンピラカップルは情けない上ずった声をあげた。

 

「あのさ、キミたち僕の恋人に散々好き勝手言ってくれたよね?」

 

『そ、それがなんだよ!しょーじきキメェんだよ、あのオンナ!』

 

ゴスッ!ゴスッ!

 

『ガフッ!』

 

『り、リュータ!』

 

「この状況でも僕の大切な人を好き勝手言うんだ。・・・・・・ふざけんなよ」

 

僕は男の腹を殴り続けて鳩尾を殴り倒す。

 

「あんたらからしたらどうでも良いことかもしれないけどね、彼女にとっては大切なことなんだよ。それを、あんたらにバカにする権利はないよね?あんたたち何様のつもりなの?クイズの時もそうだけどさ、あんたらの行動でどんだけ他人が迷惑してるか、わかる?それにあんたら僕の妹にも手をだしたよね?幸いにも後ろに友達がいてくれたから怪我をせずにすんだけど。もしこれで怪我とかしたらどうするつもりだったの?責任とれるの?とれないよね?更に言うけどあんたらの方が頭悪いから。ヨーロッパは国というカテゴリーに入ったこと一度もないから首都なんかないんだよね。それなのにヨーロッパの首都はどこか答えろ、なんてあんたらの方がバカなんだよ」

 

チンピラどもはもう何も言えずにいた。

表情は恐ろしいものを見たような顔をして、その汚い顔を涙で濡らしていた。

 

「次僕らの前に出たらその時は――――――」

 

僕はチンピラから背を向けて歩き、途中で立ち止まり顔だけを振り向かせて言う。

 

「――――――これだけじゃ済まさないから。覚悟しとけ!」

 

そう言うとチンピラにはもう振り向かず立ち去った。

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

「うっ、うっ・・・・・・・グスッ・・・・・」

 

ステージから飛び出した私は如月ハイランドホテルの屋上にいた。

 

「グスッ・・・・・ヒッグ・・・・・・うっ・・・・・・」

 

あのチンピラの人たちに私の夢をバカにされていてもたってもいられなくなり人気のない場所、屋上に来たのだ。

時間は夕刻で黄昏時に近く、茜色の空には微かに月が出ていた。

 

「明久くん・・・・・・明久ぐん・・・・・・」

 

私は一人屋上の端で縮こまって泣いていた。

そこへ、

 

 

「捜したよ・・・・・・恵衣菜」

 

優しい、私の大切な人の声が聞こえてきた。

そして、顔をあげるとそこには

 

「明久・・・ぐん・・・・・・」

 

「泣かないで恵衣菜」

 

大好きな明久くんの姿があった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「捜したよ・・・・・・恵衣菜」

 

「明久・・・ぐん・・・・・・」

 

「泣かないで恵衣菜」

 

僕の予想した通り屋上にいた恵衣菜を僕はタキシード姿のまま優しく恵衣菜を抱き締め、頭を撫でる。

恵衣菜はしばらく僕の胸の中で小さな泣き声を出して泣いた。僕はそれをただ静かに聞き、優しく撫でる。

 

「僕は恵衣菜の味方だよ、どんなときも。世界中が恵衣菜を否定しても僕は絶対に否定しないから。まあ、零華や穂乃果、海未、ことり、つばさも恵衣菜を否定しないと思うよ」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「だから、恵衣菜、ね」

 

「・・・・・・うん、うん♪」

 

僕はウェディングドレス姿のまま恵衣菜をお姫様抱っこで抱き上げる。

 

「明久くん・・・・・・//////私、重くない・・・・・・?」

 

「重くないよ。むしろ、軽い方、かな?」

 

「そ、そう//////」

 

「うん。あ、写真を撮らない?」

 

「写真を?」

 

「うん。恵衣菜のウェディングドレス姿って貴重だから、今日のメモリアルとして、ね♪」

 

「うん♪そうだね」

 

僕は持っていたスマホを近くの物に立て掛け、タイマーをセットして写真を撮った。

 

「さっ、まだ時間はあるんだから行こうよ」

 

「うん!そうだね!」

 

僕は恵衣菜とともに階下に行き、スタッフの人たちの協力もあり着替えたあとエントランスで待ち合わせをした。その際、スタッフの人たちに謝罪をしたのだが、逆にこちらが謝られた。なんでもこちらが用意したイベントなのに台無しにさせてしまったかららしい。

ちなみに母さんたちはもう帰ったみたいだ。つい先程、メールがあった。

 

「お待たせ」

 

数十分後、元の私服に着替えた僕と恵衣菜は合流し、まず最初に観覧車に向かった。

その際、僕らの手にはタキシードとウェディングドレスの入った袋があった。

それは今回のお詫びとして渡されたものだ。

観覧車に乗った僕らは黄昏に染まり、夜の闇へと移り変わる風景を眺めた。

 

「わぁー、綺麗だね」

 

「うん。周囲の町並みだけじゃなくて星空も見えるよ」

 

「ホント~」

 

僕らは窓から周囲の風景を眺めた。

そして、沈黙が流れた。

 

「あ、明久くん、その・・・・・・」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

僕と恵衣菜は眼を閉じ、唇と唇を合わせキスをする。互いの口の中で舌を絡め合わせる。

キスをした時間は何秒、何分だろう?分からないほどしていた。そして気づいたときには、観覧車が頂点に達していた。

 

「ふ、フフフフ」

 

「は、ハハハハ」

 

僕らはクスリと笑い、笑い声をあげた。

そして一周し地上に戻った僕らは、夕飯と少し遅くなったが恵衣菜のお弁当を食べ、パレードと花火を見たあと帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰路についている最中、恵衣菜が、

 

「ねぇ、明久くん」

 

「なに?」

 

「私の夢っておかしいのかな?」

 

そんなことを不意に言ってきた。

 

「ううん。そんなことないよ」

 

「そう、かな?」

 

「少なくとも僕はそう思わない。多分だけど雄二も霧島さんにそう言うと思うよ」

 

「フフ、確かに坂本くんなら翔子ちゃんに言うかもね」

 

「ね。僕は恵衣菜の夢はおかしくなんかないよ」

 

「・・・・・・ありがとう、明久くん」

 

「どういたしまして、かな?」

 

僕は恵衣菜と手を繋いで月明かりに照らされ、星々が明るく煌めくなかを帰っていった。

家についた際、僕は家にいた母さんと零華、葵姉さん、翠姉さん、お祖母ちゃんにお礼を言うと、

 

「今日は恵衣菜ちゃんの家で寝たらどう?」

 

と母さんに言われ、僕は恵衣菜の家に行き恵衣菜に事情を話、お風呂に入り、一緒に寝た。

その際、母さんから持っていくものを取り出したのだがそれを見た僕らは顔を赤面した。

何故なら、母さんが持たせたのは、その、夜の営みに使うゴムだったからである。

 

「あ、明久くんがしたいなら・・・・・・」

 

「え、恵衣菜・・・僕は・・・・・・」

 

そして、僕と恵衣菜は互いの身体を合わせ、一つとなった。

 

 

 











次回 『音ノ木坂学院文化祭』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅳ門 音ノ木坂学院文化祭


バカテスト

問題『核や染色体を観察する際に使われる溶液は?』


解答


吉井明久

『酢酸カーミン溶液、酢酸オルセイン』


教師コメント

『何も言うことはありません』


綺羅つばさ

『酢酸カーミン溶液、酢酸オルセイン』


教師コメント

『おみごとです』


南ことり

『     』


教師コメント

『南さんが解答しないとは珍しいですね。何かありましたか?』





 

~明久side~

 

「どうしたの海未、こんな時間に電話するなんて?海未にしては珍しいね?」

 

音ノ木坂学院の文化祭を明日に控えた夜。僕が自室でゲームしていると、幼なじみの一人の海未から電話がかかってきた。

ちなみに現時刻は夜の10時を少し過ぎたあたりである。

 

『明久』

 

「ん?」

 

『ことりのこと、知っていたんですか?』

 

「っ!」

 

僕は海未からの発言に息を呑んだ。

 

『その反応は知っていたみたいですね』

 

「うん。先週、ことりから聞いた」

 

『そうですか。・・・・・・私はつい先程聞きました』

 

「え?」

 

僕は海未の先程という単語に疑問を抱いたがすぐにわかった。多分、ことりは月曜言おうしたが言えなかったのだ。だから今日話したのだろう。

 

「そう・・・・・・」

 

『驚かないんですね』

 

「うん。ことりから話すって聞いていたから」

 

『明久はどうしたらいいと思いますか?』

 

「どうしたらいいって?」

 

『ことりをこのまま行かせても良いのか、と言うことです』

 

「・・・・・・・・・・穂乃果には」

 

『いえ・・・・・・言ってません。というより言えません、今はまだ・・・』

 

「だよね・・・・・・。穂乃果、明日の文化祭張り切ってるし。今、ことりのこと聞いたら・・・・・・」

 

『ええ・・・・・・』

 

僕は自室から窓の外を見る。

外はかなりの雨が降っていた。

 

「恵衣菜と零華、つばさには?」

 

『話すみたいです。私の後に話すと言っていましたから』

 

「そう・・・・・・」

 

『明久・・・私は・・・・・・どうしたらいいのでしょう』

 

「海未・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音ノ木坂学院文化祭当日

 

 

 

「僕を呼んだ理由はことりの件でしょ――――つばさ」

 

僕は、海未との電話の翌日。音ノ木坂学院文化祭当日の早朝(と言っても時間は8時なのだが)つばさに呼ばれ音ノ木坂学院近くのファーストフード店に来ていた。

 

「ええ」

 

つばさは珍しく私服姿に眼鏡をかけて僕の前に座っている。

 

「明久くんはことりちゃんのこと、どう思う?」

 

「どう思うって?」

 

「このまま行かせても良いのかと言うことよ」

 

「海未にも聞かれたよ、それ・・・・・・。どうしたらいいと思うのかって」

 

「それで?」

 

「僕は出来ることならことりの意見を尊重したい。けど、本音は・・・・・・」

 

「本音は?」

 

「ことりと、離れたくないかな。それはことりだけじゃなくて穂乃果や海未、つばさにも言えることだけど」

 

「そう・・・・・・。私も同じよ。出来るならことりちゃんとは別れたくないわ」

 

「・・・・・・つばさ、このこと穂乃果には言った?」

 

「・・・・・・いえ、言ってないわ。あの子のことだもの、この話を聞いたら絶対今日の音ノ木坂の文化祭に気が入らなくなる」

 

つばさは席の横の窓を見て、音ノ木坂学院の方向を見る。

外の天気は生憎の空模様で雨が降っていた。

 

「穂乃果のことだからそうなるよね・・・・・・」

 

「ええ・・・・・・」

 

僕とつばさはテーブルに置いてあるコーヒーを口に含み喉を潤わせる。

 

「恵衣菜ちゃんと零華ちゃんは・・・・・・?」

 

「恵衣菜と零華には昨日、海未から電話があった後に話したよ。ことりから聞いたみたい」

 

「そう・・・・・・」

 

そのまましばらく無言の状態が続いた。

 

「・・・・・・・・・・つばさは音ノ木坂学院の文化祭、見なくていいの?」

 

「私も穂乃果たちのライブ見てみたいけど、生憎このあと予定が入っちゃったのよね」

 

つばさは肩をすくめて苦笑いぎみに答えた。

僕はその返答に軽く苦笑を浮かべる。

 

「やっぱりAーRISEともなると大変なんだね」

 

「まあ、ね。でも、こうしてプライベートの時とそうでない時とではちゃんとスイッチのオン/オフは切り替えてるから、安心して」

 

「ほんとかな~」

 

「ええ」

 

「でも、つばさっておっちょこちょいのところあるよね?」

 

「そうかしら?」

 

「うん」

 

「まあ、いいじゃないの。明久くんたちに見せる私と他の人たちに見せる私は違うんだから」

 

「まあね」

 

僕らは顔を見合わせてクスリと声を大きくせずに笑った。

 

「さてと、それじゃあ私はもう行くわね」

 

「僕も行くよ、そろそろ合流しないと。あ、忘れるところだった、はい、これ」

 

「これは?」

 

「僕が作ったチーズケーキ。英玲奈とあんじゅの分も入ってるから休憩のときにでも食べて」

 

「あ、ありがとう//////」

 

「どういたしまして」

 

僕とつばさは一緒にお店を出て、音ノ木坂学院に繋がる階段付近の交差点で分かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音ノ木坂学院 校門前

 

 

「お待たせ」

 

「遅いよ明久くん」

 

「遅いですよ兄様」

 

「アハハ、ごめん恵衣菜、零華」

 

「まあ、いいですけど。つばさちゃんはやっぱり来れないと?」

 

「うん。残念がっていたけどこのあと予定が入っちゃったみたい」

 

「そうなんだ」

 

「うん。ところで母さんは?」

 

「あ~、お母さんならもうかおりさんと一緒に中に」

 

「はやっ!!」

 

僕は一緒にいない母さんを聞いて、零華の言葉にツッコンだ。相変わらずの早さだと思う。

 

「あれ、葵姉さんは?」

 

「葵お姉ちゃんは家の用事みたいですよ」

 

「そうなんだ」

 

「じゃあ行こうよ明久くん、零華ちゃん」

 

「うん」

 

「はい」

 

僕らはこうして音ノ木坂学院の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎内

 

 

 

「ねえ、なんか目立ってない僕」

 

「そう?」

 

「そうですか兄様?」

 

「うん、なんかさっきから異様に視線が・・・・・・」

 

校舎内に入ったのはいいんだが何故か周りは女子、女子、女子だらけという、男子が僕だけなのだ。

文化祭なのに何故保護者の親がいないのか疑問だが。

 

「それよりここだよね、〈アイドル研究部〉の部室って?」

 

「うん」

 

「いるかなみんな?」

 

僕らは〈アイドル研究部〉の扉を前にして話す。

 

 

"コンコン"

 

 

『はーい』

 

「お邪魔しまーす」

 

僕は扉をノックし、中から返事が帰ってきたことを確認すると、扉を開けた。

 

「明久。恵衣菜に零華も」

 

「差し入れに来たよ」

 

「あら、ありがとう明久」

 

中に入ると絵里たちがいた。

 

「はい、差し入れ。ライブが上手くいくように願掛けしといたよ」

 

「願掛けって、それなら希がもういるじゃない」

 

「あー、確かに」

 

「ちょっとー真姫ちゃん、それってどういう意味や?」

 

「だって希のタロット占いってかなりの確率で当たるんだもの」

 

「確かに当たるね。それも高い確率で」

 

「ええ」

 

「ちょっ、明久君、エリチ。も~」

 

そんなやり取りに部屋の中は笑いに包まれた。

 

「あれ、穂乃果は?」

 

そんな中、僕はただ一人、穂乃果がいないことに気付いた。

 

「そう言えばいないね」

 

「何時もなら張り切ってテンション高くいるのに」

 

「そう言えば穂乃果を見てないわ。誰か聞いてる?」

 

絵里の言葉に海未たちは首を横に振って答えた。

 

「まあ、まだ開演まで時間はありますから大丈夫だとは思いますけど・・・・・・」

 

「なら、いいけど」

 

そんなとき。

 

「明久君、ちょっとウチに付いてきてもらっていいかな?」

 

「?」

 

希に小声で言われ、僕は部室から出た。

希に連れられて部室から出た僕は、廊下の端に連れてこられた。

 

「どうしたの希?」

 

「実はさっきライブについて占ったらこれが出たんよ」

 

対面した希から渡されたのは一枚のカード。

それは希がよく使うタロット占いのタロットカードだった。

 

「これって」

 

差し出されたカードは、塔の逆位置。

 

「確か塔の逆位置って・・・・・・」

 

「そうや、塔の逆位置の意味は、崩壊目前、トラブル、不安や」

 

「嫌な予感がするってこと?」

 

「ウチも思いたくはないんやけど」

 

塔の逆位置が出たということは近い内に何か起こるということだろう。それも今日を起点として。正直信じたくはない。だが、希のタロット占いの的中率はかなり高い、僕自身も希には何かスピリチュアル的なものがあると思っているのだ。

 

「せめて何もなければいいんだけど」

 

僕は窓から見えるそとの風景を見て不安げにそう呟いた。

そんな僕らを無視するかのように雨はさらに強くなっていった。

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~outer side~

 

「明久くん、また料理の腕あげたんじゃない、真奈美」

 

「ほんとね~。ことりちゃんのチーズケーキも美味しいけど、明久くんの作ったチーズケーキも美味しいわね~」

 

明久たちが〈アイドル研究部〉にいる頃、音ノ木坂学院の理事長室では二人の大人がお茶をしていた。

 

「ところでかおりちゃん」

 

「なにかしら?」

 

「かおりちゃん、ここで見ているだけでいいの?」

 

「そうね~。回りたいは回りたいのだけどこっちも仕事がね~」

 

「なるほどね~」

 

「真奈美は次何処に行くのだったかしら?」

 

「えっと、明後日に日本を発って次はイギリスね」

 

「ホント大変ね~、女優兼モデルは」

 

「ホントよ~。お陰でかおりちゃんや明久くんに零華ちゃんと離れ離れなんだからぁ~」

 

「まだ治らないの、その寂しがりは?」

 

「無理だよ~」

 

「即答なのね・・・・・・」

 

「もう、どうせだからそろそろ引退しようかしら~」

 

「ちなみに理由は?」

 

「明久くんと零華ちゃんたちと離れ離れだから」

 

「親バカすぎないかしら真奈美・・・・・・?」

 

「うぅぅ、かおりちゃんが苛めるよ~」

 

「はいはい、よしよし」

 

親友同士の会話?なのかと思う。

もしこの場に明久と零華とことりがいたら絶句することに間違いないだろう。

 

「ところでかおりちゃん?」

 

「ん?」

 

「ことりちゃんなんだけど・・・・・・」

 

「ことりがどうかしたの?」

 

「ことりちゃん、明久くんのこと好きだよね」

 

「そうね・・・・・・。この間も明久君の話ばかりしてたし」

 

「でも、明久くんには恵衣菜ちゃんがいるんだよね~」

 

「そうなのよね」

 

「あ!でも、一つだけ解決策があると言えばある」

 

「なにかしら・・・・・・・・と言いたいところなのだけど、なんとなく予想できたわ」

 

「さすがかおりちゃん♪」

 

「真奈美が言いたいことってこれでしょ」

 

「「一夫多妻制にすればいい」」

 

「そうだよ」

 

「まあ、私もことりがいいなら文句は言わないのだけど・・・・・」

 

「だよねぇ。でも、明久くん、ことりちゃんだけじゃなくていろんな人落としてるんだよね~。特に幼馴染の穂乃果ちゃんと海未ちゃんとことりちゃんとつばさちゃん」

 

「そうなのよね・・・・・・」

 

「「ハァー・・・・・・」」

 

この場に自分の子供がいたら赤面することまず間違いないのだが、ツッコミ役の明久がいないせいか、二人の大人の会話はさらに続いていくのだった。

 

~outer side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「くしゅん!」

 

「大丈夫ですか明久?」

 

「大丈夫、明久くん?」

 

「うん・・・大丈夫。風邪かな・・・・・・」

 

屋上へ続く階段で僕らはいた。

 

「ああ~!すごい雨!」

 

「お客さん全然いない」

 

「この雨だもの。しょうがないわ」

 

「私たちの歌声でお客さんを集めるしかないわ」

 

「~っ!そう言われると燃えてくるわね!にっこにっこに~!」

 

屋上への扉付近では凛、花陽、絵里、にこ、が外を見て話していた。

そんな中階段の半ばにいる僕、ことり、海未の雰囲気は暗かった。

 

「ことり、ほんとにいいんですか?」

 

「うん・・・・・・」

 

「でも・・・」

 

「本番直前にこんなこと言ったら、穂乃果ちゃんにも、みんなにも悪いよ」

 

「けどことり、今日がリミットなんでしょ」

 

「うん。だからライブが終わったら私から話す。みんなにも・・・・・・穂乃果ちゃんにも・・・・・・」

 

「ことり・・・・・・」

 

ことりはそう言うと階段から降りていった。

 

「明久、私はどうしたら・・・・・・」

 

「僕は、何もできないのか・・・・・・」

 

僕と海未は降りていくことりの背中を見ながら自虐ぎみにそう呟いた。

僕と海未はそのあと、ライブ時間まで分かれ、僕は恵衣菜と零華と音ノ木坂文化祭を周り、海未は部室へと戻っていった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~海未side~

 

明久と分かれた私は、部室でライブ衣裳に着替え、未だに来ない穂乃果をみんなで待っていました。

 

「穂乃果、遅いですね」

 

「ええ。そろそろ開演時間なのだけど・・・・・・」

 

絵里がそう言うと、

 

「おはよう」

 

穂乃果が部室に来ました。

 

「穂乃果」

 

「遅いわよー」

 

「ごめんごめん。当日に寝坊しちゃうなんて、おろろろろ・・・・・・」

 

「穂乃果ちゃん、大丈夫?」

 

「ごめんごめん。うっ・・・・・・」

 

「穂乃果?声がちょっと変じゃない?」

 

「えっ!?そ、そうかな!?のど飴舐めとくよ、へへ・・・・・・」

 

 

 

 

明久がこの時いたら穂乃果の様子がおかしいのに気付いたのかもしれません。この時、私は穂乃果の様子がおかしいということに気づきませんでした。そして、それがあんなことになるなんて・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全然止まないわね」

 

「ていうかさっきより強くなってない!?」

 

「これじゃあ、例えお客さんが来てくれたとしても・・・・・・」

 

外の天気を見て絵里たちに不安げになるのが感じ取れました。

そこへ。

 

「やろう!」

 

「穂乃果・・・・・・」

 

「ファーストライブの時もそうだった。あそこで諦めずにやって来られたから、今のμ'sがあると思うの。だからみんな・・・行こう!」

 

「そうだよね。そのためにずっと頑張って来たんだもん」

 

「後悔だけはしたくないにゃー」

 

「泣いても笑ってもこのライブのあとに結果が出る」

 

「なら思いっきりやるしかないやん」

 

「進化した私たちを見せるわよ!」

 

「やってやるわ!」

 

穂乃果の言葉に全員に活気が戻ったのが感じ取れました。

そして、私は隣のことりに。

 

「ことり・・・」

 

「あ、ごめん」

 

「とにかく今はライブに集中しましょう。せっかくここまで来たんですから」

 

「うん・・・」

 

「それに、明久たちもいるんですから頑張らないと」

 

「そうだね・・・」

 

 

私たちはやる気を出して、部室から出てライブ会場の屋上へ向かいました。

 

~海未side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 音ノ木坂学院屋上 野外ステージ

 

 

「亜里沙ぁ~~!」

 

「雪穂ちゃん、こっちだよ」

 

「明久さん!」

 

僕たちは、絵里の妹の亜里沙ちゃんと一緒にいると穂乃果の妹の雪穂ちゃんが傘を持って走ってくるのが見えた。

 

「間に合いましたか?」

 

「まだ始まってないから大丈夫だよ」

 

「うん!今始まるとこ」

 

「よかった~」

 

野外ステージ前には雨が降っているため、全員傘をさしていた。

そして、ライブ開演時間になり穂乃果たちμ'sがステージに出てきた。

彼女たちの後ろのスポットライトが彼女たちを照らしだす。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~穂乃果side~

 

「(大丈夫。いける。できる)」

 

雨が降り、濡れながらステージに立つ私は目を閉じ集中しながら声に出さずに言う。

 

「(今までだってそうやって来たんだから。出来ると思えばなんだってやってこられた)」

 

目を開け、お客さんを見てさらに自問する。

 

「(大丈夫!)」

 

~穂乃果side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

僕はステージに立つ彼女たちμ'sの表情から決意の顔を感じた。

だが、そんななか穂乃果の様子が少し妙なのが気になった。

そして、ライブが始まった。

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『Oh yeah! Oh yeah! Oh yeah!

   一進一跳!

   Oh yeah! Oh yeah! Oh yeah!』』』』』』』』』

 

『ほら負けないよね?』

 

『悔しいなまだ No brand』

 

『知られてないよ No brand』

 

『なにもかもこれから 熱い気分』

 

『楽しいよでも No brand』

 

『『『『『『『『『Do you know?)』』』』』』』』』

 

『張りきってるんだ No brand』

 

『(Do you know?)』

 

『だから』

 

『(おいで)』

 

『ここで出会うために』

 

『Yes,I know!』

 

『目指す場所は』

 

『(高い)』

 

『いまより高く』

 

『(どこまで?)』

 

『チャンスの前髪を』

 

『(持って)』

 

『はなさないから』

 

『(ぎゅっと)』

 

『はなさないから』

 

『『(Oh yeah!)』』

 

『奇跡の虹を』

 

『『『『『『『『『渡るんだ』』』』』』』』』

 

『『『『『『『『『壁は Hi Hi Hi 壊せるものさ Hi Hi Hi

 倒せるものさ

 自分からもっとチカラを出してよ

 Hi Hi Hi 壊せるものさ Hi Hi Hi 倒せるものさ

 勇気で未来を見せて

 (Oh yeah! Oh yeah! Oh yeah!うん負けないから!)

 (Oh yeah! Oh yeah! Oh yeah! Oh yeah!)』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・・」

 

「穂乃果!」

 

「穂乃果ちゃん!」

 

曲が流れ終わりスポットライトが消えた途端、穂乃果が横に倒れたのだ。

 

「穂乃果!」

 

僕は傘を放り出して穂乃果へ向かって走った。

 

「穂乃果、しっかりして!」

 

ステージに上がり穂乃果に駆け寄った僕は、穂乃果の額に手を当てた。

 

「っ!すごい熱!」

 

「熱!」

 

僕の言葉に絵里は驚いたように同じように穂乃果に触り確かめた。

 

「すごい熱よ!」

 

「お姉ちゃん」

 

亜里沙ちゃんと一緒にいた雪穂ちゃんも熱と聞いて傘を放り出して駆けつけてステージにきた。

 

「穂乃果!」

 

「「「穂乃果ちゃん!」」」

 

「・・・・・・つ・・・次の曲・・・・・・」

 

海未とことり、恵衣菜、零華も心配そうに声をかけるなか穂乃果はギリギリ聞こえるかどうかの声でそう言った。

 

「・・・・・・せっかく、ここまで来たんだから・・・・・・」

 

「穂乃果ちゃんっ!」

 

そう言うと穂乃果は意識を失ったように動かなくなった。

 

「零華、すぐに母さんたちに!」

 

「うん!」

 

「恵衣菜は保険医をお願い!」

 

「わかったよ!」

 

僕はすぐさま二人に指示し、零華と恵衣菜は走って屋上から出ていった。

 

「絵里、穂乃果はこれ以上は・・・・・・」

 

「ええ・・・。穂乃果を頼むわ明久」

 

「任せて」

 

僕は絵里にお客さんに聞こえないように言った。

客席からは様々な不安気の声が耳に入ってくる。

 

「すみません!メンバーにアクシデントが発生しました。少々お待ちください!」

 

絵里がお客さんにそう言う後で、僕は穂乃果を抱き抱える。

 

「お姉ちゃん」

 

僕が穂乃果を抱え、ステージから離れるなか後ろから雪穂ちゃんがついてくる。

そして、海未とことりも穂乃果を運ぶのに手伝ってくれた。

屋上から出た僕たちは急いで保健室に向かった。

僕は保健室に向かうなか希が占ったタロットカードを思い出した。

 

「(塔の逆位置の意味はこれのことだったのか。 いや、多分、これが起点なんだ)」

 

僕はこれから起こることに不安になりながらも保健室へと向かっていった。

 

 

 












次回 『強化合宿』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅲ章 強化合宿編
第Ⅰ門 強化合宿


バカテスト

問題:『学力強化合宿先は何処ですか?』


解答


吉井明久、姫宮恵衣菜、吉井零華

『卯月高原』


教師コメント

『正解です。強化合宿しおりにちゃんと書かれているので知っていて当然ですね』





~明久side~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果!」

 

「穂乃果ちゃん!」

 

「・・・・・・つ・・・次の曲・・・・・・。・・・・・・せっかく、ここまで来たんだから・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「零華、すぐに母さんたちに!」

 

「うん!」

 

「恵衣菜は保険医をお願い!」

 

「わかったよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「絵里、穂乃果はこれ以上は・・・・・・」

 

「ええ・・・。穂乃果を頼むわ明久」

 

「任せて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ん、・・・・・・くん、・・・・・・おきて・・・さ・・・・くん」

 

「ん、んんっ~・・・・・・」

 

「起きた?明久くん?」

 

「ん・・・・・・恵衣菜?」

 

僕は眠たい瞼をこすり、周囲を見渡す。

 

「恵衣菜ちゃん、お兄ちゃん起きましたか?」

 

「あ、零華ちゃん。明久くん起きたよ」

 

「あれ、零華?」

 

「おはよう、お兄ちゃん。もう少しで着くみたいだよ」

 

僕は今自分が車に乗って、学力強化合宿先である卯月高原にある合宿所へ移動していることにようやく思い出した。

 

「ん~・・・・・・!結構掛かったね」

 

「途中で渋滞に引っ掛かったみたいですよ?」

 

「まあ、私も零華ちゃんもついさっき起きたばかりなんだけどね」

 

「そうなんだ」

 

僕はスマホを取り出し時間を確認する。

確かに予定到着時刻より大幅に遅れている。

 

「先生たちには?」

 

「運転手さんが連絡してくれたみたい」

 

「そう、よかった~」

 

僕は恵衣菜の言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「明久くん、やっぱり心配?穂乃果ちゃんたちのこと」

 

「うん・・・・・・」

 

僕はさっき夢で見た光景。

三日前の出来事、音ノ木坂学院文化祭のμ'sのライブでのアクシデントが脳裏に浮かんだ。

 

「穂乃果、まだ熱が下がらないみたいだし」

 

「雪穂ちゃんから聞いたときは驚いたね。まさか、前日の夜も自主練習するなんて。しかも、あの雨の中を」

 

「だね、穂乃果らしいと言えばそうだけど・・・・・・」

 

文化祭でのライブで穂乃果が倒れ、結局μ'sのライブはそのまま中止に。文化祭のライブは最悪の形で幕を閉じた。

保健室に穂乃果を運んだあと、母さんが穂乃果の母に連絡して迎えに来てもらい、俺たちはその後の作業を手伝ったりした。

 

「そういえば母さん、次イギリスだっけ?」

 

「うん、今日出発のはず・・・・・・」

 

「・・・・・・確認してみるね」

 

「お願いお兄ちゃん」

 

僕はスマホを操作して母さんに連絡を取る。

 

『は~い、こちら真奈美で~す!なになに、どうしたの明久くん?連絡なんかしてきちゃって?あ!もしかしてお母さんに会いたくなっちゃった~♪』

 

ちなみにスピーカーモードなので僕だけでなく、零華と恵衣菜にも聞こえてる。

あ、運転手には聞こえないよ。運転席と僕らのいる場所で区切り防音がされているから。

 

「切ってもいいかな?」

 

電話して会口一番の母さんの言葉に僕はそう言った。

 

『だめー!切っちゃダメ、明久くん!』

 

「お母さん、聞きたいことあるんだけど?」

 

『その声は零華ちゃん!なになに?お母さんに聞きたいことってなにかな?』

 

「お母さん、今日からイギリスだよね?」

 

『え・・・・・?』

 

「母さん、まさか・・・・・・?」

 

「もしかして忘れていた、なんてことないよね?」

 

『い、嫌だな~。忘れてないわよ~』

 

「「ほんとに?」」

 

『そんなに信用ないの私?』

 

「だって母さんだし」

 

「だってお母さんだから」

 

『ひ、酷くない?二人とも~!?』

 

「アハハ・・・・・・」

 

『その声は恵衣菜ちゃんね!恵衣菜ちゃんも明久くんと零華ちゃんに何か言ってよ~!』

 

「言わなくていいからね恵衣菜」

 

「言わなくていいですよ恵衣菜ちゃん」

 

「・・・・・・みたいです。ごめんなさいお義母さん」

 

『そ、そんな~』

 

母さんは落ち込んだように声を落とした。

 

「で、母さん今どこにいるの?」

 

『何処って、今空港よ』

 

「ならいいや」

 

『えぇ~』

 

「まあ、母さんお仕事頑張って」

 

『了解よ!明久くんに言われたなら張り切っちゃうわ!』

 

「アハハ・・・・・。ちなみに次いつ帰ってくる予定?」

 

『そうね~・・・・・・。一ヶ月以内には終わると思うからそっちの夏休みに入る前には帰れるわよ~』

 

「わかったよ。お母さん頑張ってね」

 

『任せてちょうだい~。三人も頑張ってね。何かあったらすぐ連絡ちょうだいね♪すぐに飛んで帰えるわ』

 

「わ、わかった」

 

僕は母さんからそう聞き、電話の通話を終了した。

 

「母さんも大変だな~」

 

「そうですね~」

 

「お義母さんか~。私のお母さんとお父さん、元気かな・・・・・・?」

 

僕らはそれぞれの親のことを思って窓の外を見て、茜色に染まっている空を見あげる。

 

「それより、零華ありがとうね。僕と恵衣菜も乗せてくれて」

 

「ううん。私は始めからお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんと一緒に行くつもりだったから。大丈夫だよ」

 

「ありがとう零華ちゃん。そう言えば坂本くんたちも翔子ちゃんたちと一緒に行くって言ってなかったかな?」

 

僕は先週の金曜のHRの時に鉄人から言われたことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5日前 HR

 

 

「来週の火曜から、学力強化合宿だが、Fクラスは現地集合だからな」

 

『『『『『案内すらないのかよっ!?』』』』』

 

クラスに鉄人の発言に対してクラスメイトの絶叫が響き渡った。

 

「西村先生」

 

「なんだ吉井?」

 

「妹から一緒に行こうと誘われているんですが、どうすればいいですか?」

 

「その場合は双方の同意があるなら構わん。一応聞いておくが現段階で他クラスから誘われているのは誰だ?」

 

鉄人の問いに、僕、恵衣菜、雄二、康太、秀吉、須川くん、横溝くんが手を上げた。

 

「ふむ。お前たち7人なら別に構わんぞ」

 

と、僕らを見てすぐさま言った。

早いね、判断。

 

「わかりました」

 

僕は昨日、零華かから一緒に行くことを誘われていることが許可され嬉しかった。

まあ、その際何処ぞのバカ(Fクラスメイト)が騒いだが鉄人の一括により静まった。

そのあと、零華にメールを送り許可が出たことを伝える。雄二たちを見ると、雄二たちもメールを送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在 車移動中

 

 

「雄二たちは霧島さんたちと一緒に行ったのかな?」

 

「多分そうだと思いますよ?」

 

「ところで、なんで私たちだけリムジンなのかな?」

 

「それが、高橋先生に話したら何故か手配してくれたみたいで」

 

「へぇ」

 

僕たちは疑問に思いながらも、僕らだけの空間を用意してくれた学園に感謝する。

まあ、多分お祖母ちゃんが絡んでるんだろうけど、職権乱用じゃないかな、これ?

ちなみに後日聞いてみると、僕らの桃色空間に巻き込まれたくないから、とのことらしい。

そうこうしていると――――――

 

「あ、着いたみたいです」

 

窓の外にはホテルのような建物があった。

 

「確か、ここ元はホテルだったんだよね?」

 

「うん。それをウチの学園が買い取って合宿所に作り替えたみたい」

 

「ってことは召喚獣が喚べるってことかな?」

 

「多分ね」

 

僕らは運転手さんにお礼を言って荷物を取り出してリムジンから降りる。

エントランスに入ると。

 

「来たか、吉井兄妹、姫宮」

 

「あ、鉄―――西村先生」

 

「あのな吉井。お前また俺を鉄人って言おうとしなかったか?」

 

「気のせいです、西村先生」

 

「はあ、まあいいか」

 

「遅れてすみません西村先生」

 

「なに構わん、俺たちの方に連絡は来ていたからな。ちなみにお前らで最後だ」

 

「あ、そうなんですか?」

 

どうやらFクラスの生徒は迷わずこれたらしい。

 

「ああ。それとお前たち三人の部屋は一緒だからな」

 

「はい!?」

 

僕は西村先生の発言にすっとんきょうな声を出した。

今一緒の部屋って聞こえたような・・・・・・。

 

「あの、西村先生。今なんと?」

 

「お前たち吉井兄妹、姫宮の部屋は一緒だ」

 

うん。聞き間違いじゃなかった。

 

「ちなみに理由を聞いても・・・・・・?」

 

「実は部屋はクラス別に分かれるんだが、Fクラスの女子は姫宮、姫路、島田の三人だろ?それと、Aクラスでも吉井妹が余ったみたいでな。姫宮と吉井妹なら相部屋は構わないだろうと言うことで一緒にした。丁度部屋は余っていたからな」

 

「なるほど。それで僕は何故に?」

 

「あー、言いにくいんだが、姫宮と吉井妹が相部屋になった瞬間に俺ら教師が満場一致で吉井兄をそこへ入れることが確定した。すまん」

 

「なんでぇえええええ!!!?」

 

西村先生の言葉に僕はつい絶叫してしまった。

何!?満場一致でってなんでさ!?そんなんでいいの先生たち!?

 

「まあ、お前たちの部屋は他より少し広いらしいから、我慢してくれ」

 

西村先生は珍しく疲れた表情をしていた。

 

「あ、はい。なんかすみません」

 

「構わん、というより、これは俺たちの問題だ」

 

「あー、お疲れ様です」

 

「すまん・・・・・・」

 

僕は鞄から来る最中のお菓子にと思っていたクッキーの入った袋を西村先生に渡した。

 

「甘さ控えめで疲れた体に効くかと思うので、良かったらどうぞ」

 

「すまんな吉井・・・・・・」

 

僕は西村先生から部屋の番号を聞いて、鍵を貰いエントランスを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿所 4F

 

 

「え~と、401号室と・・・・・・」

 

僕らは荷物をもって、最上階の4階に来ていた。

 

「あ、ここみたいです」

 

零華がどうやら部屋を見つけたみたいだ。

 

「4階って僕ら以外だと、後は先生たちの部屋みたいだね」

 

この合宿所は4階、地下1階建ての施設だ。

地下1階は男女別の大浴場。1階は、A、Bクラスの部屋と食堂、指導室。2階はC、Dクラスの部屋と学習室。3階も2階と同じくE、Fクラスの部屋と学習室だ。そして、4階が僕らの部屋と先生方の部屋。まあ、先生方は基本1階にいるみたいなので、実質的僕らの3人の貸しきり状態だ。

 

「開けるね」

 

西村先生から渡された鍵を使い、部屋の扉を開ける。

 

「うわぁ」

 

「広いね~」

 

「はい。和室ですね。風情があっていいですね」

 

「うん。これは先生たちに感謝かな?」

 

「ですね」

 

「今度何か作って持っていこうかな?」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

僕の言葉に何故か恵衣菜と零華は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。

 

「あのね、お兄ちゃん」

 

「明久くんの手作りお菓子食べたら多分だけど、先生たち落ち込むんじゃないかな?特に女の先生が」

 

「え?なんで?」

 

「いやー、あの、その~・・・・・・」

 

「明久くんの料理はその・・・・・・女の子のプライドをその・・・・・・ね」

 

「???」

 

恵衣菜と零華の言った意味が分からなかった僕は疑問符を浮かばせながら首をかしげた。

そう言えば前に差し入れを持っていったとき高橋先生や遠藤先生を始めとするほぼ全員の女の先生から料理を教えてくれと言われたような・・・・・・。

 

「さて、今日はこのあと特にないし、恵衣菜と零華はどうする?」

 

「私は一度Aクラスの方に顔をだしに行きます」

 

「私も零華ちゃんに付いていこうかな?」

 

「了解。僕は雄二たちの部屋にいるから何かあったらメールか電話で」

 

「うん」

 

「わかったよお兄ちゃん」

 

僕らは部屋を出て鍵を閉め、僕は1階下の雄二たちの部屋に、零華と恵衣菜は3階下のAクラスへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄二たちの部屋

 

 

"コンコン"

 

雄二たちの部屋の前に来た僕は、ノックをして雄二たちに知らせる。

 

「む、どちら様じゃ・・・・・明久ではないか」

 

「やっ、秀吉」

 

「待っておったぞ明久よ。ささ、中に入るのじゃ」

 

「うん。お邪魔しまーす」

 

秀吉の案内で僕は、室内に入った。

 

「おっ!来たな明久」

 

「・・・・・・待っていた」

 

「遅かったな吉井」

 

「まあ、無事について良かったぜ吉井」

 

室内では雄二、康太、須川くん、横溝くんがトランプをしていた。

 

「ちょっと、渋滞に引っ掛かっちゃってね。ついさっき着いたんだよ」

 

「なるほどな」

 

「ところで雄二、なにやってんの?」

 

「ん?ああ、ババ抜きだ」

 

「へぇ。今誰が優勢?」

 

「秀吉がさっき上がってな、今は横溝が優勢だな」

 

須川くんの言う通り、横溝くんの手札は3枚、康太は6枚、雄二と須川くんは4枚だ。

ちなみにババ抜きをしながら会話していたりする。

 

「ところで明久。お主の部屋は何処じゃ?」

 

「あ、僕の部屋は上の4階だよ」

 

「ほう」

 

「ちなみに零華と恵衣菜も一緒」

 

「それはそれは、また・・・・・・。教師陣もようやるの」

 

「うん。西村先生から聞いたときこんなんでいいのって思ったほど」

 

「お主がそこまで言うとはの」

 

秀吉がひきつった笑いでそう言うが、誰だってさっきの西村先生の言った理由を聞いたら、絶対こんなんでいいのって思うと思うんだけど。

そんなこんなで秀吉と話していると・・・・・・。

 

「終わったぜ」

 

「・・・・・・終わった」

 

「ふぅ。危なかったぜ。ギリギリ勝てた」

 

「くぅ、負けた」

 

雄二たちの勝負もついたようだ。

どうやら須川くんが負けたみたい。

すると、そこへ――――――。

 

 

"ドドドドドドドドッ!!"

 

 

「な、なんの音?」

 

「んあ?なんだこの音は」

 

廊下を走る音が聞こえ僕と雄二が視線を廊下に向けるた。

そのとき――――――

 

 

"バタンッ!"

 

 

「そこまでよ!観念なさい!」

 

突然ドアが開いたかと思いきや、島田さんと姫路さんを先頭に、大人数の女子が部屋になだれ込んできた。

 

 









次回 『覗き騒動』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅱ門 覗き騒動

バカテスト

『強化合宿一日目の日誌を書きなさい』


吉井明久の日誌

『途中で渋滞に巻き込まれ遅れましたが無事に着いて良かったです。都会とは違い森の香りなどこの地域の匂いが感じれました。悩み事があるけど恵衣菜と零華と解決しようと思います』


教師コメント

『無事に着いて良かったです。都会とは違った空気が味わえて良かったですね。悩み事があるのなら私たちにも出来れば相談してください。アドバイスが出来ると思いますよ』



姫宮恵衣菜

『明久くんと零華ちゃんと一緒に来れてよかったです。卯月高原の風景に見惚れました。合宿所についてもなにかと大変でした。明日からが不安です』


教師コメント

『先生も卯月高原の風景には見惚れてしまいました。姫宮さんもそうだったんですね。合宿所について大変でしたねお疲れ様です。明日も頑張っていきましょう』


吉井零華

『お兄ちゃんと恵衣菜ちゃんと来れてよかったです。周りの景色が綺麗で凄かったです。合宿所についても、問題があったりと、移動中に睡眠できて良かったです』


教師コメント

『卯月高原は避暑地ですからね、景色が綺麗です。問題があったりとに関してはお疲れ様です。移動中に睡眠できたということは吉井君と姫宮さんと寝たのでしょうか?ゆっくりできて良かったです』





~明久side~

 

 

 

"バタンッ!"

 

 

 

「そこまでよ!観念なさい!」

 

 

 

雄二たちといたところに突如として、島田さんを筆頭に女子たちが部屋に流れ込んできた。

え、これ、なに?

 

「全員両手を挙げて跪きなさい!」

 

島田さんが命令口調で怒鳴っていった。

何故殺気立ってるんだろ?

 

「たく、いきなりなんだぞろぞろと」

 

雄二が僕らを代表して、思っていたことを言ってくれた。

 

「よくもしらばっくれるわね。あんたたちが犯人だって事ぐらい知ってるんだから!」

 

「犯人?一体なんのじゃ?」

 

「惚けるつもり?脱衣場にカメラを仕掛けたでしょ!」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

島田さんの言葉に僕らは頭に疑問符を浮かべながら意味がわからないように首をかしげた。

 

「なんのことだ?」

 

「カメラ?意味がわからんぞ?」

「・・・・・・同じく」

 

「島田よ、お主はなにを言っておるのじゃ?」

 

「これを見てもまだそんなこと言えるの?」

 

島田さんが見せてきたのは高性能の小型カメラだった。

 

「それがなに?」

 

「これが脱衣場に仕掛けられていたのよ!こんなのするのってどう考えてもあんたたちだけじゃない!」

 

「・・・・・・・・・・それ、僕たちが仕掛けた証拠でもあるの?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

僕の問いに島田さんは淀んだように退く。

 

「ないよね?」

 

「う、うるさいわね!いいからさっさとお仕置きを受けなさい!瑞希!みんな!」

 

「はい!美波ちゃん!」

 

「了解!」

 

よく見ると、島田さんのとなりには姫路さんがいて、その後ろには様々なクラスの女子がいた。しかも全員殺気だっている。

 

「さぁ、アキ。お仕置きの時間よ!」

 

「へ?いや、意味がよくわからないんだけど?」

 

「うるさいわね、とりあえず黙ってなさい!」

 

島田さんはそう言うといつの間にか近づき、

 

「グアッ!」

 

僕の関節を外した。

 

「明久!」

 

「しっかりしろ吉井!」

 

「島田、それ以上やめろ!」

 

「ゴミがうるさいわね。みんな殺ってしまいなさい!」

 

たちまち体の至るところが関節が外れる音がした。

その痛みにより、僕は――――

 

「なにしてるんです貴女たち―――――――って、兄様!」

 

「明久くん!」

 

「れい・・・・・・か・・・・・・え・・・・・・いな・・・・・・」

 

「明久くん!!」

 

――――――電源がプツリと切れたように、意識を失った。

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

「なんか騒がしいですね」

 

「うん」

 

私と零華ちゃんは翔子ちゃんたちの部屋から帰る最中、3階から聞こえてきた声に疑問符を浮かべた。

騒ぎの場所へと向かう途中、

 

「なんだこの騒ぎは?」

 

「あ、西村先生」

 

顔をしかめた西村先生が来た。

かなりお疲れみたいだけど、大丈夫なのかな?

 

「おぉ、吉井妹、姫宮。この騒ぎはなんだ?」

 

「それがわからなくて・・・・・・」

 

「聞こえてくる限り女子が話してるみたいですけど・・・・・・・」

 

「あれ、でも、ここって男子の部屋だよね?」

 

「そう言えば・・・・・・・」

 

「はぁ、取り合えず行ってみるか」

 

私と零華ちゃん、西村先生は騒ぎの元凶の場所へと向かった。

少し歩くと部屋の前に大人数の女子がいるのがわかった。

 

「あれは・・・・・・・DクラスとEクラスの女子?」

 

「Cクラスの女子もいますね」

 

「なにをしてるんだ?」

 

そんなことを言った私達の耳に、

 

『グアッ!』

 

そんな声が聞こえてきた。

 

「今の声って明久くん?」

 

「西村先生、あの部屋は?」

 

「あの部屋は坂本、木下、土屋、須川、横溝の部屋だな」

 

「取り合えず行きましょう」

 

私たちはよくわからず部屋へと近づいたすると、

 

『明久!』

 

『しっかりしろ吉井!』

 

『島田、それ以上やめろ!』

 

『ゴミがうるさいわね。みんな殺ってしまいなさい!』

 

次第にそんな声が聞こえてきた。

嫌な予感がしながらも私たちは部屋の前へとたどり着いた。

 

「なにしてるんです貴女たち―――――――って、兄様!」

 

「明久くん!」

 

部屋の中を扉から見た私と零華ちゃんは驚愕した。

部屋の中には島田美波と姫路瑞希が明久くんの体を今まさに折檻してる最中の姿が見えたから。

 

「明久くん!」

 

私は瞬時に部屋の中に入り明久くんの側による。

途中で他クラスの女子が何か言うが無視。そして、島田美波と姫路瑞希から明久くんを離れさせる。

 

「れい・・・・・・か・・・・・・え・・・・・・いな・・・・・・」

 

「しっかりして明久くん!」

 

明久くんは小さな声で言って、目を閉じた。どうやら気絶したみたい。

 

「おい、これは一体どういう状況だ」

 

するとそこへ西村先生が入ってきた。

西村先生を見た島田美波と姫路瑞希を始めとする女子は僅かに後ずさった。何人かは逃げようとしたが。

 

「逃がすと思いますか?」

 

入り口を零華ちゃんが塞ぎ、逃げ場をなくした。

 

「姫宮、吉井兄の様子は?」

 

「恐らく気絶しているだけかと思いますか」

 

「そうか。次に坂本」

 

「なんだ?」

 

「状況説明を頼む」

 

「わかった。明久と俺たちでトランプしている最中、島田を先頭に女子がなだれ込んできた。そして、脱衣場にカメラがあっただとかで濡れ衣をきせられた。で、明久に島田と姫路がお仕置きと称して関節を外した。そこへ、姫宮たちが来た。ざっと説明するとこんな感じだ」

 

坂本君は簡潔に分かりやすく言ってくれた。

つまり、明久くんと坂本君たちが遊んでいるところに島田美波たちが現れ、脱衣場にあったカメラを明久くんたちが仕掛けたと言って濡れ衣をきせ、明久くんに関節技をかけた。と言うことかな?

 

「なるほどな。さて・・・・・・」

 

腕を組ながら島田美波たちを西村先生は振り向いた。

 

「まず始めに、俺は脱衣場にカメラがあったなんて報告聞いてないが?どういうことだ島田」

 

「カメラを仕掛けて盗撮しようとするなんてアキたちに決まってます!だから、お仕置きしたんです!」

 

「そうです!私たちは悪くありません!」

 

「は?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

島田美波と姫路瑞希は悪くない、とさも当然のように言った。

と言うか、先生に報告しないで、勝手に決めつけて来たわけ?

 

「と言うことみたいだが吉井妹、姫宮、坂本。お前たちの意見を聞きたい」

 

「わかりました。まず貴女たちに聞きます」

 

「な、なにかしら?」

 

零華ちゃんが近くにいた女子生徒に尋ねた。

 

「始めに、どうして先生に報告せずに来たんです?」

 

「それは、島田さんと姫路さんが犯人は吉井君たちだって言うから」

 

「なるほど。では次に、何故兄様たちだと?」

 

「こんなことするのは吉井君たちしかいないって島田さんが」

 

「そうですか」

 

「なあ、聞きたいんだがそのカメラどこにあったんだ?」

 

「え、えっと、脱衣場の籠の中に隠されていたわ」

 

「そうか、ありがとう」

 

零華ちゃんと坂本くんは聞きたいことが聞けたみたいだ。

私は後で聞こうっと。

 

「西村先生、島田美波、姫路瑞希以外の女子たちは返しても構わないかと思います。まあ、後程話を聞く必要があると思いますけど」

 

「そうだな。では、島田と姫路を除いた女子は全員部屋に戻れ。後で話を聞くと思うがそれまで待機だ」

 

西村先生がそう言うと島田美波と姫路瑞希を除いた女子はぞろぞろと帰っていった。

 

「さて、後は・・・・・・・」

 

「なんでウチらだけ残されたのよ!」

 

「そうですよ!」

 

「無罪の明久くんに関節技をかけて何もなしで帰れるわけないじゃない?」

 

「全くですね恵衣菜ちゃん」

 

「なんでよ!ウチらは悪いことしてないじゃない!」

 

「そうです!全部明久くんたちが悪いんです!」

 

「西村先生」

 

「なんだ姫宮」

 

「私たちがついたのは何時ごろでしたか?」

 

「姫宮たちが着いたのは17時過ぎだな」

 

「はい。そのあと明久くんは私と零華ちゃん、後は坂本くんたちと一緒にいたんです。なので、脱衣場にカメラを仕掛ける暇なんて無いんですよね~」

 

私はかなり頭に来ているため、冷たい眼差しで島田美波と姫路瑞希を見て言う。

 

「うるさいわね!いいからさっさとアキを渡しなさい!」

 

「はぁ。零華ちゃん」

 

「うん」

 

私が零華ちゃんを呼ぶと、零華ちゃんはうなずいて島田美波と姫路瑞希の首筋に手刀を当て気絶させた。

手刀が何時もより強かったのは零華ちゃんも頭に来ていたからだと思う。

 

「では、西村先生、この二人お願いします」

 

「わかった」

 

西村先生は気絶した島田美波と姫路瑞希を連れて部屋から出ていった。

 

「ふぅ。助かったぜ、サンキュー姫宮、吉井妹」

 

「ううん、気にしないでください坂本君」

 

「明久の容態はどうだ?」

 

「気絶しているだけだから問題ないと思うけど・・・・・・」

 

「肉体と精神面は別、だからなぁ」

 

「ええ」

 

私は膝に頭を乗せている明久くんを見て言う。

肉体より精神が心配だ。まあ、肉体も心配だけど。

 

「ところで、土屋くんあのカメラどう思いました?」

 

「・・・・・・あれは高性能の小型カメラ。録画時間は短いが精度がかなりいい。それは置いといて、あの話は幾つか腑に落ちない点があった」

 

「それはなんじゃ康太?」

 

「カメラが見つかったことだろ」

 

「・・・・・・(コクリ)その通り。盗撮するのに籠の中に隠されていたというのはおかしい」

 

「確かにそう言われてみればそうだな。もし、俺が盗撮するなら絶対に見つからない場所に置くはずだ」

 

「俺もそう思う」

 

「ということはこれはフェイクってことか」

 

「・・・・・・多分。恐らくだが後一つか二つは隠しカメラがあると思う」

 

「私たちが対処するしかないね」

 

「けど、隠し場所が分からないと」

 

「・・・・・・俺なら10秒もあれば見つけられる。だが、俺は脱衣場に入れない。そうなると愛子に頼むしかない」

 

「だね」

 

私たちは除き騒動について話合い、時間のため一回部屋に戻り後で話すことにした。

 

「よっと」

 

「大丈夫か姫宮?俺が明久を運んだ方がいいんじゃ」

 

「ううん、大丈夫だよ。ありがとう坂本君」

 

「そうか?」

 

「うん。何かあったら連絡して」

 

「わかった」

 

私は零華ちゃんと協力して、明久くんを4階の部屋へと運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4階 401号室

 

 

「よいしょ、と」

 

明久くんを運んだ私は、明久くんを零華ちゃんに引いてもらった布団の上にゆっくり置いた。

 

「さて、恵衣菜ちゃん、この後なにが起こると思います?」

 

明久くんを横にテーブルを挟んでお茶を飲む私と零華ちゃんに、零華ちゃんが聞いていきた。

 

「多分だけど、Fクラスの男子が覗き騒動を起こすんじゃないかな?」

 

「ですよね」

 

私と零華ちゃんは、はぁとため息をつく。

すると。

 

「あれ・・・・・・?ここは・・・・・・」

 

明久くんが起きたみたい。良かった~

 

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「あれ・・・・・・?ここは・・・・・・」

 

目を覚ました僕は、目の前に天井が見えそう呟いた。

 

「よっ、と」

 

上体を起こすと、身体中に痛みが走った。

 

「アイタッ!」

 

すると。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「明久くん、大丈夫?」

 

「あれ、零華?恵衣菜?ってことはここは僕らの泊まる部屋?」

 

「うん。身体大丈夫、お兄ちゃん?痛くない?」

 

「ちょっと痛みが走るけど・・・・・・」

 

「そう」

 

僕は軽く延びをして恵衣菜と零華のいるテーブルへと向かい、座った。

 

「はい、明久くん」

 

「あ、ありがとう恵衣菜」

 

僕は恵衣菜から渡されたお茶を飲んだ。

 

「それで、あの後どうなったの?」

 

「えっとですね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

〈事情説明中〉

 

 

 

 

 

 

「というわけです」

 

「なるほどね」

 

零華と恵衣菜から聞き終えた僕はそう一言言った。

 

「にしてもよく二人とも怒らなかったね」

 

「?なに言ってるのお兄ちゃん、私たちかなり頭にきてましたから」

 

「ホントだよ」

 

「いや、僕が言いたいことはそういうことじゃなくて・・・・・・」

 

僕が苦笑いぎみで言ったその途端。

 

"ピピピ、ピピピ"

 

タイマーの音が鳴った。

 

「あ、お風呂の時間ですね」

 

「ホントだ」

 

現時刻は20時ジャストだ。

 

「じゃあ行きましょう恵衣菜ちゃん」

 

「うん」

 

「あ、僕も行くよ」

 

「え!?明久くん、もしかして私と入りたいの?」

 

「え?恵衣菜となら入り・・・・・・・・・じゃなくて!違うから!」

 

「お兄ちゃん、じゃあ私と?」

 

「零華とか~・・・・・・・・・・そうじゃなくて!僕もお風呂に行こうかなって思ってるの!」

 

「「な~んだ」」

 

「なんでそこで落胆するのさ?!」

 

僕は恵衣菜と零華にツッコミを入れて着替えを持って部屋を後にした。

 

「ところで夕食って?」

 

「あ、私たちはこの後みたいです」

 

「そうなんだ」

 

会話をしながら大浴場へと続く階段付近にまで来た。

 

「じゃあまた後でね」

 

「うん」

 

「行ってくるねお兄ちゃん」

 

恵衣菜と零華は仲良く姉妹のように一緒に階下へと降りていった。

するとそこへ。

 

「お、目を覚ましたのか明久」

 

「雄二!みんなも!」

 

雄二たちが着替えを持ってやって来た。

さらにそこへ。

 

「よっ、明久」

 

「やぁ、吉井くん」

 

恭二と久保くんも来た。

 

「恭二、久保くん」

 

「明久、これから風呂か?」

 

「まあね。ちなみに夕飯もまだなんだ」

 

「そうなのか?」

 

「うん。ここに着くのが遅れちゃってね。後で食べることになったんだよ」

 

「へぇ。大変だな」

 

「まあね。それより恭二、ここ最近友香さんとなんかあった?」

 

「えっ!?いや、それは、まあ・・・・・・」

 

「もしかして友香さんの家に泊まりに行ったとか」

 

「なんでわかったんだ!?」

 

「え?そうなの」

 

「あ」

 

「そうかそうか、遂に恭二と友香さんがそこまで行ったんだね」

 

「や、やめてくれ明久!恥ずかしくて死んじまうから」

 

「あははは」

 

僕と恭二は中学生の頃と同じ様に笑いあって仲良く話していた。

そこへ。

 

"ドドドドドド!!!"

 

「なんだ?」

 

「この音、もしかして」

 

地鳴りのような音が僕らの耳に入ってきた。

そして。

 

 

『おおおおおっ!障害は排除だーっ!』

 

『邪魔するヤツは誰であれブチ殺せーっ!』

 

『サーチ&デェース!』

 

『いざ楽園へーっ!』

 

 

そんな声が上から聞こえてきた。

 

「ねぇ、雄二。この声って・・・・・・まさか?」

 

「あぁ、あのバカどもだな」

 

「どうする?」

 

「ハッ、決まってるだろ明久」

 

「だな」

 

「じゃあ」

 

「ああ。―――ここでヤツラを食い止める!」

 

するとそこへ。

 

「ん?吉井、坂本か?なにしてんだ?」

 

「あ、西村先生」

 

「西村先生、実はFクラスの連中が――――」

 

「ハァー。なるほどな。よし、お前らこっち来てくれ」

 

「「「「「「「「「???」」」」」」」」」

 

僕らは西村先生につれられて恵衣菜と零華が降りた女子風呂の方へと向かった。

西村先生の後に続いていくとそこには。

 

「あれ、恵衣菜、零華?」

 

「明久くん?」

 

「兄様?どうしてここに?」

 

恵衣菜と零華がいた。

いや、他にも霧島さんに工藤さん、天野さん、エレンさん、桜咲さん、木下さん、友香さん、三上さん、中林さん、玉野さん等々、女子が大勢いた。

 

「西村先生、これはどう言った状況なんですか?」

 

「あー、実はだな。あのカメラ騒動のあと絶対Fクラスの連中が何かすると思って女子生徒による防衛部隊を作成した」

 

「なるほど。では、僕らも連れてこられたということは、降りてきた彼らを相手にすればいいんですね?」

 

「そう言うことだ。全体の指揮は吉井兄、お前に任せる」

 

「わかりました」

 

僕は西村先生から手早く聞き恵衣菜たち女子と、雄二、康太、秀吉、須川くん、横溝くん、恭二、久保くん、平賀くんを見る。

 

「みんな!あと少しで覗きに来る男子が着く!誰一人として通さないで!」

 

『『『『『『『『『『了解!』』』』』』』』』』

 

僕の声にその場の全員が息のあった返事をした。

 

「雄二、霧島さん、部隊の指揮を!木下さんは霧島さんのフォローを!恭二は雄二をお願い!康太と工藤さんは前線をお願い!」

 

「任せとけ」

 

「・・・・・・わかった」

 

「任せて」

 

「わかったぜ」

 

「・・・・・・(コクリ)」

 

「了解だよ」

 

そして。

 

 

『うおおおおおっ!桃源郷!!』

 

『女子の裸ーっ!!』

 

『姫宮さんと吉井さんの裸。ハアハアハア』

 

 

バカが来た。

 

「全員召喚獣召喚!試獣召喚(サモン)!」

 

『『『『『『『『『『試獣召喚(サモン)!』』』』』』』』』』

 

僕らは同時に召喚獣を召喚して構える。

 

「そこまでだ!」

 

『なっ!?吉井?!』

 

『バカな!何故吉井がここに!』

 

『吉井だけじゃねぇ!坂本や久保、他にも女子が大勢いるぞ!どういうことだ!』

 

「君たちの進行はここまでだよ。おとなしく投降したら?」

 

『ふざけるなっ!ここまで来て引き返せるか!試獣召喚(サモン)!』

 

『『『『『試獣召喚(サモン)!』』』』』

 

一人が召喚獣を召喚したのに続いて他のクラスメイトも召喚獣を召喚した。

 

「全員、敵を撃破せよ!撃破した相手は須川くんと横溝くん、秀吉動けないように縛って!」

 

「了解だ」

 

「任せろ」

 

「わかったのじゃ」

 

僕ら防衛部隊の人数に対して、Fクラスメイトは40人以下、結果はすぐに出た。

5分と経たずに全員撃破されたのだ。こちらの被害は0。

 

「西村先生、あとお願いします!」

 

「わかった」

 

何処からともなく現れた西村先生は縛られているクラスメイト全員を一気に連れてそのばから離れた。

 

「ふぅ。みんなお疲れ様。あとは日程通りにね」

 

僕はそう言うと着替えを持って雄二たちと隣の男子風呂へと移動し、お風呂に入った。

ちなみにお風呂には露天風呂もあるらしく中は広くとても満喫できた。ガールズトークならぬ、ボーイズトークに華が咲いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 

お風呂と夕飯が終わった俺たちは部屋でのんびりとしていた。

零華はお茶を、恵衣菜は僕の隣で読書、で僕は窓の外の星を見ていた。

そのとき。

 

"コンコン"

 

「ん?誰だろう」

 

僕はノック音が聞こえた扉へと向かった。

 

「はーい。ってあれ?」

 

扉を開けるとそこには誰もいなかった。

 

「あれ、いない?」

 

僕は周りを見渡すが誰もいなかった。

 

「ん?」

 

扉を閉めようとしたとき、床に何かが落ちているのに気がついた。

 

「これは・・・・・・手紙?」

 

落ちていた手紙らしきものを手に、扉を閉め僕は部屋に戻った。

 

「お兄ちゃん、何方でしたか?」

 

「いや、それが、誰もいなかったんだ」

 

「そうなの?」

 

「うん。あったのは落ちていたこれだけ」

 

「手紙?」

 

「手紙、ですか?」

 

右手に持っていた手紙を見せた僕は手紙を確認する。

 

「差出人はなし。宛先もないね」

 

「一応中身を確認しましょうか」

 

「そうだね」

 

手紙はのり付けされておらずすぐ開いた。

そして中には一枚の紙が入っていた。

紙にはこう書かれていた。

 

 

【貴方の秘密を握っています。周りにバラされたくなかったら貴方の傍にいる女子にこれ以上近づかないこと。及び、今後の試召戦争に参加しないこと。この忠告が聞き入れない場合、同封されている写真やその他を公表します】

 

 

と。

 

「はい?」

 

「これって・・・・・・」

 

「脅迫状・・・・・・・?」

 

「だね・・・・・・」

 

 

「「「ええぇぇえええええええ!!」」」

 








次回 『合宿二日目』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅲ門 合宿二日目

バカテスト

『強化合宿二日目の日誌を書きなさい』


解答


吉井明久

『昨日の夜送られた手紙で大変だった。今朝も今朝でいろいろなことがあった。学習時間帯は普段できないところや、Aクラスの人たちと意見交換できたりできたので良かったです。妹がAクラスの人たちと仲が良いのが観れて嬉しかったです』


教師コメント

『一体昨夜何が送られたのですか?吉井くんは何かと波乱の日々をおくってますね。次年度はAクラスになれるよう頑張ってください。あと、吉井くんはもしかしてシスコンなのですか?』



吉井零華

『昨日の夜兄様に大変なものが送られて大変でした。今日の朝も恵衣菜ちゃんと兄様で色々ありました。学習時間帯は普段はAクラスのクラスメイトと勉強してますが、兄様や恵衣菜ちゃんと勉強出来てよかったです。
特に、兄様の隣で一緒に勉強出来たのが嬉しかったです』


教師コメント

『一体昨夜何が送られたのですか?とても気になります。吉井さんも波乱の日々をおくってますね。さすが首席ですね、これからも頑張ってください。それと、吉井さんってもしかしてブラコンですか?』


姫宮恵衣菜

『昨日の夜明久くん宛に送られたものが大変だったです。今朝も明久くんと色々あったけど約束ごとができて良かったです。学習時間帯は、明久くんと零華ちゃん、だけじゃなくて翔子ちゃんたちとも勉強できていい経験になりました。明久くんと零華ちゃんの変わらない兄妹姿にホッとしました』


教師コメント

『いや、ホントに昨夜何が送られてきたんですか?約束ごとができて良かったですね。今回の合宿は姫宮さんにとっていい出来事になるかもしれないですね』





~明久side~

 

 

「ん、んん~~」

 

小鳥の囀りが静かな部屋に響くなか僕は目を覚まし、軽く伸びをした。

時間は6時半。

起床時刻の7時より30分はやく起きたようだ。

 

「あれ、零華と恵衣菜、どこ行ったんだろう?」

 

僕は昨日の夜、両脇で眠ったはずの恵衣菜と零華がいないことに怪訝に思い首をかしげた。

 

「取り敢えず顔でも洗ってから着替えようかな」

 

僕は布団から立ち上り、洗面所へと向かった。

そして、洗面所への扉を開けるとそこには―――。

 

 

 

 

 

 

 

「――――え?」

 

「あ、明久・・・くん・・・・・・?」

 

「お兄・・・ちゃん・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

バスタオルを巻いただけの恵衣菜と零華がいた。

二人の長い髪が濡れ、身体が火照ってるところをみるとどうやら二人はお風呂に入っていたみたいだ。

二人とも年相応の身体つきをしているのがバスタオル越しだがわかる。

うん。二人とも可愛い――――――じゃない!!

 

「ふ、二人ともどうしてここに・・・・・・?!」

 

「お、お風呂に入っていたからだよ・・・明久くん・・・」

 

「お兄ちゃんが寝ていたから恵衣菜ちゃんと入ろうと・・・・・・」

 

「ちょっと待って零華。僕が起きていたらどうするつもりだったの?」

 

「それはもちろんお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ろう、と」

 

「ええぇ・・・・・・」

 

僕は零華の躊躇いのない発言にちょっと驚いた。

 

「と、取り敢えず扉を閉めて貰ってもいい、かな?わ、私は別にいてもいいんだけど・・・・・・・」

 

「~っ!!///ご、ご、ごめんなさぁぁあああいっ!!」

 

僕は急いで扉を閉め布団の上に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから10分後

 

 

「ごめんなさい!ホントごめんなさい!!」

 

僕は着替え、布団を片付けた畳の上で目の前で座っている恵衣菜と零華に土下座をしていた。

 

「あ、謝らなくてもいいから明久くん」

 

「そ、そうだよお兄ちゃん。鍵を掛けなかった私たちも悪いんだし」

 

「だ、だけど・・・・・・」

 

「じゃ、じゃあ今日の夜、明久くんが私と零華ちゃんと一緒にお風呂に入ってくれたら許してあげる。どう・・・かな・・・・・・?」

 

「え、恵衣菜?!それはちょっと・・・・・・れ、零華もなんか言って」

 

「え?!そ、その、わ、私もお兄ちゃんと一緒にお風呂に入りたい、かな」

 

「れ、零華まで?!」

 

「ど、どうかな明久くん」

 

「お兄ちゃん」

 

「うっ・・・・・・」

 

恵衣菜と零華のお願い?に僕は少々戸惑ったが、自分の不注意のせいだから二人の提案に乗ることにした。

と言うのは建前で、ことり程ではないが二人のウルウルとした瞳で見られては断れないのが本音だ。

 

「ふ、二人がそれでいいなら・・・・・・・」

 

「うん♪」

 

「はい♪」

 

こうして今日の夜、僕は妹と恋人と一緒にお風呂に入ることが確定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3時間後 2階 A・Fクラス合同学習室

 

 

「んー・・・・・・」

 

「どうしたの明久くん?」

 

「兄様?どうかしたんですか?」

 

「いや、昨日の脅迫状についてちょっとね」

 

朝食を食べ終えたあと、僕らはAクラスと合同で学習室で自習をしていた。

今回の合宿は全て自習だ。先生に聞いてもよし、誰かに聞いてもよし、とにかく、学力を上げるのが目的なため、授業は行わないのだ。

まあ、ちゃんと自習してるのはAクラスと僕や恵衣菜、雄二たちぐらいだけど。一応Fクラスも勉強はしてる。

そして僕たちは学習室の一角に恵衣菜と零華と座って問題集を解いていた。で、ある段階終わったので小声で、回りに迷惑にならない程度の声量で昨日のことについて話す。

 

「先生には言った方がよくない?」

 

「う~ん、一応康太には話して依頼してるんだけど。そうして方がいいかな・・・・・・?」

 

「少なくとも西村先生には言ったらどうかな」

 

「・・・・・・そうしようかな?」

 

「ですね。何せ兄様と私たちの写真が入っていたんだから」

 

「そうだね。それよりあの写真、何時撮ったんだろう?」

 

「ホントだよ・・・・・・」

 

昨日脅迫状とともに入っていた写真は合計5枚。

一枚目は僕の文化祭の時の女装写真(メイド服ver)。二枚目は文化祭での恵衣菜とのキスしてる写真。三枚目は零華と恵衣菜とで出掛けた時の写真。四枚目はことりと秋葉原に出掛けた時の写真。そして五枚目が音ノ木坂の文化祭の前につばさと会っていたときの写真。

しかもどの写真も盗撮されたものだった。

 

「てか、三枚目はまだいいけど、四、五枚目はアウト、か?」

 

「一番アウトなのは二枚目でしょ」

 

「僕的にはそれもなんだけど一枚目もアウトだよ・・・・・・」

 

僕は肩を落として一枚目の写真を思い出した。

 

「ま、まあ、いいじゃん。よく似合ってるよ」

 

「そうですよ兄様。さすが私の双子の兄様です」

 

「嬉しくないよ二人とも」

 

僕は気落ちしたように気分が暗くなった。

するとそこへ。

 

「お~い、あきひ・・・・・・うぉっ!?な、なんだ?!どうして明久が椅子に体育座りで座っていて、さらに暗いんだ?!そこだけ夜みたいだぞ?!」

 

「・・・・・・なにがあったの?」

 

雄二と霧島さんが来た。

 

「あ、坂本君、翔子ちゃん」

 

「なにがあったのかと聞かれると、ね」

 

「アハハ・・・」

 

「「???」」

 

僕は未だに暗い中、恵衣菜と零華が雄二と霧島さんの対応をしていた。あぁ、鬱だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なるほどな。そりゃ明久が鬱になるわけだ」

 

「・・・・・・吉井、大丈夫?」

 

恵衣菜と零華が雄二と霧島さんに写真のことは伏せて説明し、僕はなんとか鬱状態から脱却した。

 

「うん・・・なんとか・・・・・・」

 

「アハハ・・・・・・。ところで二人はどうしたの?」

 

「ああ、今日の夜の事なんだが」

 

「あー、もしかして昨日と同じになるかもってこと?」

 

「多分な」

 

僕と雄二は、はぁと溜め息を吐き相変わらずのFクラス行動に頭が痛くなった。

 

「まあ、その時は昨日みたいに返り討ちにするだけだけど」

 

「だな」

 

ちなみに勉強しながら話していたりする。

そこへ。

 

「零華~」

 

「愛子ちゃん」

 

工藤さんが来た。

 

「もしかして昨日頼んだことがわかったの?」

 

「もちろんだよ」

 

「?零華、工藤さんになにをお願いしたの?」

 

「隠しカメラのことです兄様」

 

零華は工藤さんにうなずき、工藤さんが小声で話始めた。

僕らは工藤さんの話を聞くため身を工藤さんに近づける。

 

「隠しカメラは脱衣場に後3つあったよ」

 

「3つも!?」

 

「うん。しかも巧妙に隠されていたから見付けるのに手間取っちゃったよ」

 

「それで場所はわかったの?」

 

「もちろん。一つは植木の影。もう一つは洗面台のライトの上。最後のは掃除用具入れの上、だよ」

 

「マジで?」

 

「うん、マジだよ」

 

僕らは工藤さんの言った場所に呆気に取られた。

 

「どうする?破壊する?」

 

思案するなか、恵衣菜がそう提案してきた。

 

「いや・・・・・・。破壊したりするのは止めておこう」

 

「暫く盗撮犯を游がせるつもりだな明久」

 

「うん」

 

僕が雄二の言葉に同意してうなずき返すと。

 

「・・・・・・明久、頼まれていたこと、調べ終わった」

 

康太がやって来た。

 

「ありがとう康太。それで・・・・・・どうだった?」

 

「明久くん、土屋くんに何を頼んだの?」

 

「ん。あれを撮った犯人」

 

「「え?」」

 

「康太」

 

「・・・・・・(コク)明久から頼まれたことは3つ。一つは昨日の覗き騒ぎの原因の小型カメラ。二つ目は学園内の隠しカメラとの照合。三つ目は、明久に送られた脅迫状の送り主」

 

「それで」

 

「・・・・・・(コクリ)昨日の小型カメラと学園内で以前回収した小型カメラとの照合の結果は一致。同一犯の犯行」

 

「そう・・・。もう一つは?」

 

「あれの送り主は女子。それ以外はわからなかった」

 

「そう・・・・・・。ありがとう康太」

 

「・・・・・・(フルフル)構わない。明久には借りがある。それに愛子のことを覗こうとしたヤツをおれは許さない」

 

「こ、康太くん・・・・・・///」

 

そう、康太と工藤さんはいつの間にか付き合っていたりする。なんでも保健体育で互いに切磋琢磨してるうちにそうなったみたい。

さらに言うと、秀吉は天野さんと平賀くんは三上さんと久保くんは中林さんといい感じになってきてたりする。

 

「さて、そうなるとやることは三つだね」

 

「ああ。バカどもの進行の阻止」

 

「・・・・・・脱衣場の盗撮犯の確保」

 

「そして、脅迫犯の確保」

 

僕の言葉の後に雄二、康太、零華がやることを言う。まあ、三つ目は僕の問題だけど。

 

「それじゃあ今日もよろしくねみんな」

 

僕がそう言うと、恵衣菜たちは無言でうなずき返した。

 

「さて、僕は・・・・・・」

 

僕は席から立ち上がり西村先生を探した。

 

「いた」

 

西村先生を見つけた僕は恵衣菜と零華に視線を向けて軽くうなずき西村先生に向けてあるいた。

 

「西村先生」

 

「ん?吉井、どうした」

 

「西村先生、ちょっとお話が・・・・・・」

 

「・・・・・・わかった」

 

僕の真剣な表情に、何かを感じたのか西村先生は一言言うと僕と共に自習室を出た。

そして、誰もいない部屋へと入り西村先生に話した。

 

「西村先生、実は―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――です」

 

「はぁ・・・・・・。覗き騒ぎだけでも頭が痛いって言うのに、今度は脅迫状か」

 

「ええ」

 

僕の話を聞き終えると、西村先生は溜め息を漏らした。

そりゃ、覗き騒ぎに加え、Fクラスのバカ等々の問題があり、さらにそこに脅迫状の件も入れたら誰でもこうなるよ。

 

「わかった。出来る限りのことはしよう」

 

「お願いします」

 

「構わん。それと、今日の夜も昨日と同じように頼むぞ」

 

「わかりました。任せてください」

 

「うむ」

 

西村先生はそう言って空き部屋から出ようとした。

 

「そう言えば吉井」

 

「はい?」

 

が、西村先生は入り口で何かを思い出したかのように言って振り向いてきた。

 

「お前と姫宮、来週から音ノ木坂に行くんだったな」

 

「え?あ、はい。ところで、何故、西村先生がそのことを?」

 

「学園長から聞いた。俺はお前たち二人の担任だぞ?」

 

「あ、なるほど」

 

お祖母ちゃんはどうやら事前に担任の西村先生に言ったみたいだ。

 

「音ノ木坂に行ってる間は観察処分者としての仕事は無いからな」

 

「わかりました」

 

「あとはそうだな・・・・・・あまり無茶をするなよ?お前は無茶ばかりするからな。以前、姫宮やお前の妹がお前のことが心配で相談しに来たぞ」

 

「あ、はい」

 

僕は恵衣菜と零華の行動になんとも言えなかった。

 

「俺からは以上だ」

 

「はい」

 

僕と西村先生は空き部屋から出て、僕は元の学習室に。西村先生はA・Fクラスの学習室に向かわず別の学習室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数時間が過ぎ

 

 

 

 19時55分  地下一階

 

 

「今日も来るのかな?」

 

「来るだろうな」

 

「来ると思うぞ明久」

 

昨日と同じように、覗きに来るであろうバカたちを迎え討つため、僕らは防衛部隊の女子と、フィールドを構築する先生と待機していた。

そして、僕の横には雄二と恭二が立っていた。

 

「なんで、こう言うのに彼らは集中するんだろう」

 

「全くだ。あの集中力を普段にでも活かしてくれれば試召戦争はもっと楽なんだがな」

 

「苦労してるんだな、坂本」

 

「お前もだろ、根本」

 

「まあな」

 

僕らは前の女子部隊を見ながら疲れたように言う。

女子部隊はそれぞれ、恵衣菜、零華、霧島さんが指揮を執る形だ。

そんな中、僕、雄二、恭二は後で。久保くん、秀吉、須川くん、横溝くん、平賀くんは男子を拘束するために女子から少し離れた場所にいる。康太は僕が依頼したことをやってもらってる。ちなみに西村先生と高橋先生には通達済みだ。

 

そして8分後

 

 

 

 

"ドドドドドドド!!"

 

 

 

 

『いざ楽園へー!』

 

『邪魔するやつは殺せぇーッ!』

 

『今度こそは到達してやるーッ!』

 

 

 

 

 

上から掛け降りてくる足音と、懲りずに来た男子の声が聞こえた。

聞こえたのはいいのだが・・・・・・。

 

「なあ、明久」

 

「なに雄二」

 

「俺の気のせいかもしれないが」

 

「うん」

 

「・・・・・・人数増えてないか?」

 

「坂本もそう思ったか?」

 

「ああ」

 

そう、何故かFクラスのバカだけではなく他クラスの男子生徒の声も聞こえるのだ。しかも大勢。

 

「もしかして彼らが他クラスの男子生徒になにか言ったのかな?」

 

「十中八九そうだろ」

 

僕ら三人は呆れたように溜息をついた。

 

「さてと」

 

僕は二人より一歩前に出ると、よく通る声で言った。

 

「みんな準備はいい?!」

 

『『『『『ハイッ!』』』』』

 

「うん!全員召喚獣召喚!」

 

『『『『『試獣召喚(サモン)!!』』』』』

 

僕の号令と共に女子は男子を迎え討つため召喚獣を召喚した。

そして。

 

 

『お前たち召喚獣を召喚しろ!』

 

『『『『『了解』』』』』

 

『いたぞ!吉井だ!』

 

『『『『『殺せぇーっ!!』』』』』

 

 

男子が来た。

 

「恵衣菜!零華!霧島さん!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

「・・・・・・(コクリ)!」

 

「じゃあいくよ。―――戦闘開始!」

 

僕の声と共に男子と女子の召喚獣がぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあぁぁああああッ!」

 

『クソーッ!』

 

「点数が無くなりそうな人は下がって!」

 

『ハイッ!』

 

「・・・・・・一人で無理なら連携して!」

 

『『了解!』』

 

 

 

 

 

 

「さすがあの三人だね」

 

僕と雄二、恭二は女子風呂に続く最終防衛ラインとして、女子を越えてくる男子を撃破していた。

まあ、大抵の男子は恵衣菜たちに殺られるんだけど。

召喚獣が殺られた男子は秀吉たちがすぐに拘束に入る。

 

「ああ。だが・・・・・・」

 

「ああ、何故こんなにも男子がいるんだ?」

 

そう、今日覗きに来た男子の数は昨日の3倍はいたのだ。

 

「しかも俺のクラスからも何人かいるぞ?」

 

「他にもCクラス、Dクラス、Eクラスまでいるな」

 

「Aクラスはいないね」

 

「そりゃAクラスはいないだろ」

 

「だな。何せ明久の妹のクラスだからな」

 

「どう言うこと?」

 

僕は雄二と恭二の言葉に疑問が浮かび尋ねた。

 

「もしかして知らないのか?」

 

「なにを?」

 

「Aクラスには暗黙の掟なのか分からんが吉井零華を怒らせることだけはしてはならない、という不文律があるらしい。以前翔子から聞いてな」

 

「へ?」

 

「俺もそれ聞いたな。学園でも噂程度で流れてるみたいだぞ」

 

「まあ、他にもあるがな」

 

「ど、どんな?」

 

「姫宮恵衣菜と吉井明久の間を壊してはならない、とか」

 

「姫宮恵衣菜と吉井零華を敵に回すことだけはしては成らない、とか」

 

「吉井零華に告白してはならない、とか」

 

「ああ、他にも吉井零華と姫宮恵衣菜に手を出してはならない、とかあったな」

 

「ほ、ホントに?」

 

「ああ」

 

「マジだ明久」

 

「えぇー」

 

僕は雄二と恭二が言った言葉にガクリと地面に膝をついた。

僕らがそんなことしていると。

 

 

「これで最後!」

 

『クッソーッ!』

 

 

どうやら恵衣菜が最後の生徒を仕留めたみたいだ。

 

「終わりみたいだね」

 

「だな」

 

「やっとか」

 

僕らは恵衣菜たちが指揮を執っている前線に向かった。

前線には覗きに来た男子が秀吉たちに縛られている姿があった。

 

「お疲れ秀吉」

 

「うむ。覗きに来たバカは儂が縛って動けなくしといたのじゃ」

 

「うん」

 

秀吉と話しているとそこへ。

 

「さて、男子諸君。今日も楽しい夜の学習と行こうか」

 

『『『『『て、鉄人!!?』』』』』

 

「西村先生と呼べ!」

 

『『『『『だ、誰か助けてくれぇぇぇええええええ!!』』』』』

 

 

西村先生が現れ、縛られている男子を連れていった。

さっすが、速いな~。

男子が次々と連れていかれる姿を見ながらそう思っていると。

 

「・・・・・・明久」

 

「康太」

 

康太がいつの間にかいた。

 

「・・・・・・一致した」

 

「そう。誰?」

 

「・・・・・・―――クラス――――――」

 

「そう」

 

「・・・・・・それと、これも一致した」

 

「同じってこと?」

 

「・・・・・・(コクリ)」

 

「そう。ありがとう康太」

 

「・・・・・・(フルフル)当然のこと」

 

「ありがとう。あ、康太、ひとつお願いしてもいい?」

 

「・・・・・・?」

 

「――――――先生を呼んでくれる?」

 

「・・・・・・わかった。場所は?」

 

「―――階の――――――部屋。――――――さんを呼んで話を聞くから、頃合いを見て入ってきてくださいって、言ってくれるかな?」

 

「・・・・・・承知した。それとこれを」

 

康太は小さくうなずき、僕になにかを渡した。

 

「これは・・・・・・」

 

「・・・・・・偽物とすり替えた」

 

「なるほどね。ありがとう康太」

 

「・・・・・・(コクリ)」

 

つぎの瞬間、康太は一瞬で消えた。

て言うか康太って忍者なのかな?

絵里と亜里沙が見たら、ハラショーっていいそう。

 

「さてと、僕は・・・・・・彼女に話を聞かないとね」

 

僕はスマホを取り出し、恵衣菜と零華を呼び、玉野さんにあるメールを送った。

 

「これで完了ッと。さぁ、じっくりとO☆HA☆NA☆SHIしようか。――――――さん」

 

そう呟いて僕は―――階の――――――部屋に向かった。そこにはすでに恵衣菜と零華を呼んで待機させてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間後 ―――階――――――部屋

 

 

"ガラッ"

 

 

「よく来てくれたね。―――――――さん」

 

「なんのようですか?――――は眠いんですけど」

 

「すぐに済むよ―――さん」

 

「じゃあ早くしてください」

 

「わかったよ。さてと、単刀直入に聞くけど、―――さん。僕にこれを送ったの。キミだよね?――――――さん?」

 

僕は懐から一通の手紙を取り出して目の前の人に見せた。

さあ、僕を怒らせたらどうなるかじっくりとO☆HA☆NA☆SHIで教えてあげるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『脅迫犯と盗撮犯』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅳ門 脅迫犯と盗撮犯

バカテスト

次の言葉を正しい英語に直しなさい。

『ハートフル ラブストーリー』


解答

吉井明久

『heart full love story』


教師コメント

『正解です、流石ですね』


霧島翔子

『hurt full rough story』


教師コメント

hurt・・・・・・怪我
full・・・・・・一杯の
rough・・・・・・荒っぽい
story・・・・・・物語

すごい感じに間違ってますね。さすがの私も驚きました。


姫宮恵衣菜

『heart full love story』


教師コメント

正解です。日本語訳は『愛に満ちた恋物語』となります。是非、そのような青春を謳歌してください。




~明久side~

 

 

―――階――――――部屋

 

 

"ガラッ"

 

 

「よく来てくれたね。―――――――さん」

 

「なんのようですか?――――は眠いんですけど」 

 

「すぐに済むよ―――さん」

 

「じゃあ早くしてください」

 

「わかったよ。さてと、単刀直入に聞くけど、―――さん。僕にこれを送ったの。キミだよね?――――――さん?」

 

僕は懐から一通の手紙を取り出して目の前の人に見せた。

 

さあ、僕を怒らせたらどうなるかじっくりとO☆HA☆NA☆SHIで教えてあげるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分前 

 

 1階 空き部屋

 

 

――――――さんを呼び出す30分前、一階の空き部屋で僕は恵衣菜と零華と盗撮犯と脅迫犯について話していた。

 

「お兄ちゃん、それ本当なの?」

 

「うん、康太が調べてくれた」

 

「なるほどね。―――さんなら納得だよ」

 

「ええ。―――さんには色々と噂がありましたからね」

 

「それでなんだけど、―――さんを玉野さんに手伝ってもらって今呼んでるんだ。あと30分後にここに来ると思う」

 

「ってことは私たちはその辺の影に隠れて、明久くんと―――さんの会話を録音しておけばいいの?」

 

「うん。さすが恵衣菜だね。西村先生を呼んで、タイミングを見計らって入ってきてくださいって、康太に呼んできてもらっているからね」

 

「なるほど、それで一気にけりを付けてしまおうと」

 

「そういうこと」

 

「わかったよ」

 

「はい、もちろん手伝うよお兄ちゃん」

 

「ありがとう、恵衣菜、零華」

 

僕はそのあと、零華と恵衣菜に隠れているように言い、康太から事前に借りておいたカメラを録画モードにし、ボイスレコーダーをセットする。

 

 

 

 

そして、30分後

 

 

 

 

"ガラッ"

 

 

 

玉野さんを通じて呼んだ人が来た。

 

 

 

 

「よく来てくれたね。清水美春さん」

 

「なんのようですか?美春は眠いんですけど」

 

「すぐに済むよ清水さん」

 

「じゃあ早くしてください」

 

「わかったよ。さてと、単刀直入に聞くけど、清水さん。僕にこれを送ったの。キミだよね?清水美春さん?」

 

そう言いながら僕は懐から一通の手紙を取り出して目の前の清水さんに見せた。

さてどうでる?

 

「なんのことですか?美春はそんな知らないんですけど」

 

案の定清水さんは惚けた。

 

「そう?」

 

「ええ。だいたいなんで美春があなたのような豚に脅迫状を送らなければならないんですか?」

 

「清水さん、僕は一言もこれが脅迫状なんて言ってないよ」

 

「ッ!」

 

僕の耳は清水さんの言った、脅迫状、という単語を聞き逃さなかった。

 

「なんで脅迫状だと思ったの?他にもあるよね、先生からの手紙とか誰かからの手紙とか色々・・・」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「なのにどうして清水さんはこれをみてすぐに脅迫状って出たの?僕はキミにこれを送ったのはキミだよね、としか言ってないよ」

 

「・・・・・・・・・・!」

 

「そして僕が脅迫状を受け取ったと知っているのは、恵衣菜、零華、雄二、霧島さん、工藤さん、康太そして西村先生だけなんだよね。清水さん、キミはどこから僕が脅迫状を受け取ったと聞いたのかな?」

 

「そ、それは・・・・・・・そ、そうです、あなたたち豚が話しているのをたまたま聞いたんです」

 

「たまたまってどこで?」

 

「そ、それは・・・・・・今日の自習の時間帯に廊下を通ったときに・・・・・・」

 

清水さんは見え透いた嘘をついた。

何故なら、あの時僕は周囲に聞こえないように最低限声を落として話していたし、僕らのいた席は廊下から離れているのだ、聞こえるはずがない。

 

「へぇー。でもね、それおかしいんだよね」

 

「お、おかしい・・・・・・?」

 

「うん。だって・・・・・・僕らのいた席、廊下から離れていたんだから」

 

「ッ!」

 

「それに今清水さん、自習の時間帯に廊下を通ったとき、って言ってたけど、自習の時間帯に廊下でなにしてたのかな?自習の時間帯は基本部屋の外に出ちゃいけないはずだけど」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

清水さんは視線を泳がして明後日の方向を向いた。

 

「まあ、一旦これは置いておこうか」

 

僕は肩をすくめて脅迫状を僕の立っている横のテーブルに置く。

 

「さて、次の問いだよ」

 

「な、なんですか。これ以上美春になんのようですか」

 

「清水さん、女子の脱衣場にカメラが仕掛けられていたことって知っている?」

 

そして僕は二つ目のことを聞いた。

 

「そ、それがなんです。あなたたち豚どもがやったことですよね!」

 

「残念だけど僕らじゃないんだよね」

 

「なら、誰だというのです?」

 

「キミ」

 

「はい?」

 

「盗撮犯はキミだってことだよ、清水さん」

 

僕は清水さんにハッキリと言った。

僕の声に清水さんは少し動揺しているのが見て取れた。

 

「・・・・・・は?美春が盗撮犯?なに言ってやがるんですかこの豚は?美春が犯人だという証拠でもあるという・・・・・・」

 

「これを見ても?」

 

僕は清水さんの言葉を遮り、康太から渡された小型カメラを取り出して見せた。

 

「そ、そんな!全部回収したはず・・・・・・ハッ!」

 

うん、今自爆した。自分で犯人ですって言った今。

口を慌てて押さえるが時すでに遅しだ。

バッチリと聞いたし録音されている。

 

「何が全部回収したはず、なのかな清水さん?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「今自分で自供したよね、自分が盗撮犯ですって」

 

「この豚が・・・・・・!」

 

「さて、さっきの脅迫状の方に少し戻そうか」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「この脅迫状に入っていた写真、どれも盗撮されているんだけど・・・・・・」

 

「そ、それがなんですか、美春には関係ありません」

 

「まだしらばっくれるの?」

 

「しらばっくれるもなにも美春はそんな写真知りません!女装してメイド服着ている豚野郎の写真や、誰かと出掛けていたりしている豚野郎とかの写真なんて見たことも撮ったこともありません」

 

「ハァ・・・・・・」

 

僕は清水さんのバカらしさに思わず溜め息が出た。

 

「な、なんですか」

 

「いや、清水さんがあまりにも自分で自供するものだからさ」

 

「自供?なんのことです・・・・・・」

 

「なんで写真の内容知ってるの?」

 

「ッ!」

 

「僕、一度も写真の内容言ってないよね、なのにどうして何が写っている写真か分かるのかな?」

 

「こ、この・・・・・・!」

 

「改めて言うよ、今回の脅迫状の犯人と盗撮犯はキミだよ!清水美春さん!」

 

僕は右手の指を突きつけて、探偵が犯人を指差すようにして清水さんに突きつける。

清水さんは足を半歩退いて右手をポケットに仕込ませていた。

 

「今ここで豚野郎を始末すれば・・・・・・」

 

僕の耳にそんなことを言う清水さんの声が聞こえてきた。

 

「死になさい、豚野郎!」

 

「ふっ!」

 

ポケットから抜き出して、僕に向けるスタンガンと折り畳みナイフを紙一重でかわす。

 

「このっ!」

 

「ふっ!ほっ!っと!」

 

「豚野郎の分際で!」

 

「よっと!」

 

清水さんの攻撃はあまりにも遅い。

海未のお父さんの攻撃はもっと速く鋭い。

海未のお父さんは園田流の師範代だから当然と言えばそうだが。それと比べて清水さんの攻撃はあまりにも遅い。

僕はまず突きつけてきたスタンガンを横に避けてからはたき落とし、斬りつけてくるナイフの握る左手首を抑え、ナイフを奪い取る。

 

「は、離しなさい!この豚野郎!誰か!誰か来てください!」

 

スタンガンとナイフを奪い、清水さんの両手を背中に持ってこさせ動けないよう両手首をきつく握る。すると、清水さんがそう叫んだ。

清水さんの叫び声を聞いてかそこへ。

 

「なにをしている!」

 

呼んでおいた西村先生が部屋に入ってきた。

タイミングを見計らって入ってきてくださいとは言ったが、ナイスタイミングだ。

 

「に、西村先生!た、助けてください!この人に襲われました!」

 

「なに?どう言うことだ吉井、説明しろ」

 

「はい。西村先生、今回の盗撮犯及び僕への脅迫状の送り主は清水さんです。そして、清水さんにそこのスタンガンと折り畳みナイフで襲われましたので、取り押さえました」

 

僕は清水さんの両手首を離して、西村先生に話す。

 

「ほう。その証拠は?清水が二つの犯人だと言う証拠は」

 

西村先生が腕を組ながら僕に聞いてきた。

僕は西村先生を見てから、部屋中に聞こえるように呼んだ。

 

「もういいよ、恵衣菜、零華。出てきて」

 

「は~い」

 

「うん」

 

「なっ!?」

 

僕の声に、今まで隠れていた恵衣菜と零華が録画モードのカメラとボイスレコーダーを持って、僕の隣にやって来た。

 

「西村先生、明久くんの言うことは真実です。今回の脅迫犯と盗撮犯は清水三春さんで間違いありません。そして、明久くんは清水さんに襲われました」

 

「証拠はこのカメラとボイスレコーダーです。確認してください」

 

恵衣菜と零華はそれぞれ手にするカメラとボイスレコーダーを西村先生に手渡す。

 

「うむ」

 

西村先生は頷きながら受け取り、すぐさま確認した。

カメラとボイスレコーダーには僕と清水さんのやり取りが全て映って、録音されていた。

それを確認した西村先生は顔を険しくして清水さんを見た。

 

「確認した。吉井妹と姫宮の言う通りみたいだな。大丈夫か吉井兄」

 

「はい、問題ありません」

 

「そうか。さて、清水」

 

西村先生に名を呼ばれ、清水さんは身体をビクッと震え上がらせた。

 

「このカメラとボイスレコーダーを確認したが・・・・・・何か言い分はあるか?」

 

「それは、そこの豚野郎に脅されて言われたんです!美春はなにもしてません!」

 

往生際が悪いことこの上ない。

清水さんは全てを僕のせいだとするみたいだ。

けど、そろそろ僕を豚野郎って言うの止めといた方がいいと思うけど。だって、隣の恵衣菜と零華からすごい怒りのオーラが見えるから。

 

「これだけの物的証拠があるのにもか?」

 

「はい!」

 

「ハァ・・・・・・清水、おまえいい加減にしろよ?」

 

「っ!」

 

「盗撮だけでも悪いというのに、さらに脅迫、無関係の人への盗撮行為、そして吉井兄への殺人未遂・・・・・おまえのやっていることは明確な犯罪だ!それでもまだシラを切るか!恥を知れ!」

 

西村先生はかなりお怒りみたいで、いつも以上に声が大きい。するとそこへ。

 

「西村先生?どうかしましたか?」

 

「高橋先生か」

 

零華のクラスの担任で学年主任でもある高橋先生が入ってきた。手に書類を持っていることから何かの作業をするためにここを通ったのだろう。

西村先生は高橋先生に何があったのか事情説明をした。

 

「なるほど、そういうことですか」

 

「ええ」

 

「吉井くん、怪我はありませんか?」

 

「大丈夫ですよ高橋先生」

 

「そうですか、良かったです。さて、清水さん、貴女にはこれから話を聞かせてもらいます。よろしいですね」

 

「・・・・・・・・・・」

 

さすがの清水さんも教師二人には不利だとわかったのか大人しく頷いた。

 

「では、西村先生あとは・・・・・・」

 

「ちょっと待ってくれますか高橋先生、西村先生」

 

「ん?どうし・・・た・・・・・?姫宮、吉井妹・・・・・?」

 

「ど、どうかしましたか?」

 

西村先生と高橋先生の声に怯えが入っているのを感じた僕は、すぐさま恵衣菜と零華を見る。

すると、案の定二人の眼はハイライトが灯ってなかった。表情は笑っているが眼は笑ってない。

 

「少し清水さんとO☆HA☆NA☆SHIさせてください」

 

「恵衣菜ちゃんの言う通り、少しだけお願いします」

 

「あ、ああ、わかった」

 

「わ、わかりました」

 

教師である西村先生と高橋先生を脅えさせるとは、よほど本気で怒ってるみたいだ。

その二人へ僕は一言。

 

「二人ともやり過ぎないようにね」

 

そう言って西村先生と高橋先生とともに空き部屋から出た。

そしてその数十秒後――――――

 

 

 

 

 

 

『キャァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

 

 

 

 

館内中に清水さんの悲鳴が響き渡った。

だが僕は清水さんに同情をしなかった。自業自得だからね。

その数分後

 

「お待たせしました西村先生、高橋先生。あとお願いします」

 

恵衣菜と零華がスッキリしたような顔付きで出てきた。

中を西村先生と高橋先生と見ると、中には白くなった清水さんが横たわっていた。まるで屍のようだ。

 

「お、おう。了解した二人とも」

 

「で、では、吉井くんたちは部屋に戻っていてください。お風呂は時間がありませんのですみませんが部屋のを、使ってください」

 

「わかりました。では私たちはこれで」

 

「失礼します」

 

西村先生と高橋先生が言い終えると、二人は仲良く上に繋がる階段へと歩いていった。

 

「おい吉井」

 

「はい」

 

「死んでないよな?」

 

「た、多分」

 

西村先生が白くなって横たわっている清水さんをみて僕にそう聞いてきた。

 

「と、とりあえず清水さんを指導室に運びましょう、西村先生お願いします」

 

「ああ」

 

「じゃあ僕はこれで」

 

「うむ。件のことは明日話すがいいか?」

 

「わかりました」

 

「あ、吉井くん、明日学園長が来るらしいんですが、その時学園長が吉井くんと姫宮さんに話があるみたいです」

 

「学園長が?」

 

「はい」

 

「わかりました。恵衣菜にも伝えておきます」

 

「お願いします」

 

僕は西村先生と高橋先生に挨拶をし、恵衣菜と零華の後を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4階 401号室

 

 

「ごめん遅くなった」

 

西村先生と高橋先生と話していたからか少し遅くなった僕は、部屋に入ると二人にそういった。

 

「ううん、私たちも今部屋に着いたばかりだよ」

 

「そうだよお兄ちゃん」

 

「恵衣菜、零華。二人ともありがとう助かったよ」

 

「いいよ、私もかなり怒っていたし」

 

「私もだよ。だから気にしないでお兄ちゃん」

 

「うん。あ、恵衣菜、明日お祖母ちゃんが来るんだけど、僕と恵衣菜に話があるみたい」

 

「え?カヲルお祖母ちゃんが?」

 

「うん」

 

「わかったよ」

 

僕は高橋先生に伝えられたことを恵衣菜に伝えた。

恵衣菜と零華は少し驚いていたがそう返してきた。

 

「さて、お風呂だけど僕は後から入るから二人とも先にどうぞ」

 

僕が二人にそう言うと。

 

「え?明久くんも一緒に入るんだよ?」

 

「そうだよお兄ちゃん。朝そう言ったじゃん」

 

「ほ、本気だったんだ」

 

朝の事を忘れてなかった二人はすぐに着替えの準備をしてお風呂場へと、僕も連れて行った。ちなみに僕の着替えは零華がいつの間にか用意していた。

さすが僕の最愛の妹、用意が早いことだ。

さすがに服を脱ぐのは一緒ではなく恵衣菜と零華が先で、僕は二人が終わってから脱いだ。

恵衣菜と零華が少し残念がっていたけどどうしてだろう?

 

「うわぁ~」

 

お風呂場は広くもなく狭くもなく丁度いい大きさだ。

そして、奥には小さいが露天風呂へと続く扉があった。

お風呂場で手早く髪と身体を洗い終え、僕は露天風呂へと向かった。

途中零華から洗ってあげようか、と言われた。さすがに僕もそれはと、引いたが結局零華に背中を洗ってもらうことになった。昔はよく二人で洗いっこしていたためなんか懐かしかった。

 

「うわぁ~、きれいだね」

 

露天風呂へ来た僕は露天風呂を見てそう呟いた。

露天風呂は屋根がなく、星が見えた。

 

「朝も綺麗だけど夜はもっと綺麗だね」

 

「うん。都会とは違って星がよく見えるよ」

 

そこへ、恵衣菜と零華が僕の隣に入り言った。

 

「あの、二人とも近くない?」

 

「お風呂なんだから当然だよお兄ちゃん♪」

 

零華はそう言うとさらに近づき、僕の肩に頭をコテンと乗っけた。

 

「あ、零華ちゃんズルい。じゃあ私も~」

 

零華に続いて恵衣菜も僕の肩に頭をコテンと乗せた。

そんな二人に僕は苦笑しながらも気恥ずかしさに頬を赤らめた。二人はそんな僕をよそに笑顔で僕に抱き付いてくる。

 

「あのね二人とも、ここ家じゃないんだけど?」

 

「んー、そうだけど、お兄ちゃんとこうしてお風呂入るのって久しぶりだから」

 

「だね~。昔はよく穂乃果ちゃんたちも交えて入ったね~。その度に明久くん紅くなっていたね」

 

「そ、それはそうでしょうが」

 

僕は視線をずらして二人にそう答えた。

 

「・・・・・・ずっとこのままの生活が続けばいいな」

 

「そうだね・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

僕は右手を空に伸ばしてそう呟いた。

願わくば僕らの何気ないこの日常が、ずっと続きますように。そう星々に願いを込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恵衣菜と零華と久しぶりに一緒に入り終えた僕は、余りの気恥ずかしさにテラスに面する椅子に座って星を眺めていた。

ただ何もしないでお茶を飲みながら星を見上げている。

するとそこへ。

 

「ん?電話?」

 

カップとソーサーの置いてあるテーブルから、僕の携帯に着信音が鳴った。

手に取って発信者を見ると。

 

「絵里から?」

 

掛けてきたのは絵里だった。

 

「もしもし?」

 

僕は椅子から立ちあがり腕をテラスの冊子に乗せて電話を繋いだ。

 

『もしもし、明久?私だけど、今ちょっといいかしら』

 

「どうしたの、こんな時間に?」

 

『明久にちょっと相談があるのよ』

 

「相談?僕に?」

 

『ええ』

 

「相談ってなに?」

 

『実は・・・・・・μ'sはラブライブ出場を止めにしようと思うの』

 

「ラブライブの出場を?」

 

『ええ。学園祭のあと理事長に言われたの。無理しすぎたんじゃないか、って。こんな事態を招くためにアイドル活動をしていたのか、って』

 

「なるほどね」

 

かおりさんなら言いそうだ。

かおりさんは母さんと同じで子供が大切だからね。それも学園の理事長ならさらにその責務は大きくなる。

 

「穂乃果にこの事は?」

 

『まだよ。明日か明後日に伝えようと思うの。熱が下がったみたいだから』

 

「そう。よかった」

 

『・・・・・・どうしたらいいと思う?』

 

「・・・・・・ごめん、絵里。それについて僕は何も言えない。それを決めるのは絵里たちだから」

 

『・・・・・・そう、ね。ごめんなさい、いつもあなたに頼ってしまって』

 

「ううん、気にしないで。僕や恵衣菜、零華はμ'sのマネージャーみたいなものなんだから」

 

『フフッ。もう、マネージャーでいいんじゃないかしら?』

 

「ハハッ。それについてはまた今度ね」

 

『ええ。明日海未たちと相談して決めたらまた連絡するわ』

 

「うん、わかった」

 

『それじゃあ、お休みなさい』

 

「うん、おやすみ」

 

僕は絵里にそう言うと、スマホの通話を切り画面を見た。スマホの画面に映る時間は23時を少し過ぎていた。

 

「あと、二日・・・・・・か」

 

僕はそう呟いて部家に入り、恵衣菜と零華と一緒に寝た。というか、右から零華、僕、恵衣菜なのだが、いつの間にか零華と恵衣菜が僕の布団に潜り込んでいた。

そして強化合宿二日目が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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次回 『強化合宿三日目』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅴ門 強化合宿三日目

バカテスト

『強化合宿三日目の日誌を書きなさい』


解答


吉井明久

『昨日に引き続き大変な一日だったです。でも、リラックスできたりもしたので良かったなと思います』


教師コメント

『ほんと大変な日ばかりですね。リラックス出来るのは良いことです、これからもリラックスをよくしてください』


姫宮恵衣菜

『三日連続で大変とは思わなかったです。けど、夜は明久くんや零華ちゃんといられるのでゆっくりできて良かったです』


教師コメント

『大変な三日間でしたね。夜は自分の時間が取れて良かったですね』


吉井零華

『三日連続で大変でした。リラックスできたのは良いですが強化合宿本来の目的があまり出来なかった気がします』


教師コメント

『私も吉井さんの文に同意します。ほんと大変な三日間でしたね』




~明久side~

 

 

 

 

「くたばりなさい豚野郎!」

 

「さっさと死にやがれや吉井ィ!!」

 

「死になさい!」

 

「殺す殺す殺す!」

 

 

 

「はぁ。なんでこうなったんだっけ、零華」

 

「清水美春を擁護する男子からの暴動です」

 

「あと、嫉妬とかからだね」

 

「はぁ、学園長もよく考えたな~」

 

 

清水さんをはじめとしたAクラスと特定の男子生徒を除いた男子の召喚獣から、僕、恵衣菜、零華は攻撃されていた。

 

「ほんと、なんでこうなったんだろ?」

 

 

僕は半日前の事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学園長、なにかありましたか?」

 

「明久、ここは完全防音だから何時ものでかまないさね」

 

「わかったよお祖母ちゃん」

 

朝食のあと、零華と分かれた僕と恵衣菜は西村先生に言われ、学園長・・・・・お祖母ちゃんがいる、4階の会議室らしき部屋に来ていた。

 

「来週からの音ノ木坂のことなんだがね」

 

「うん」

 

「二人には向こうにいる間は召喚獣の操作などの授業が入った際は率先してやってほしいさね」

 

「別にいいけど、それだと授業は?」

 

「授業はもちろん受けてもらうさね。但し、今の音ノ木坂のクラス編成は三年が3クラス、二年が2クラス、一年が1クラスという現状さね」

 

お祖母ちゃんはクリアファイルに入った資料を取り出して僕らに渡して言った。

 

「でも、夏休み前ってことは約一ヶ月半で召喚獣の操作を教えるってこと?」

 

「そうさね」

 

「カヲルお祖母ちゃん、そうなると一学年全クラスを同時に教えるの?」

 

「そうなるね。一応二人には向こうにいる間は教師と同じ召喚許可が出来るさね」

 

「う~ん、でも僕と恵衣菜二人でか~」

 

「音ノ木坂の先生にも教えてもらったら良いけど・・・・・・」

 

「まぁ、なんとかなるかな?」

 

「やるだけやってみようか」

 

「すまないね。それとかおり理事長から前日の日曜に来てほしいのと、初日の挨拶と召喚獣の模擬戦をお願いしたいって連絡があったさね」

 

「了解だよ」

 

「はい」

 

「本当なら土曜辺りに話そうと思ったんだけど生憎その日は予定が入ってしまってね」

 

「大丈夫だよお祖母ちゃん」

 

「そうですよ」

 

「そうかね?なら助かるさね」

 

そのあと事細かに話し、来週からの音ノ木坂について話終えた、そのときだった。

 

 

"コンコン"

 

 

『学園長、西村です』

 

 

「入りな」

 

「失礼します」

 

西村先生がやってきた。

 

「どうしたさね西村先生?」

 

「それが、清水美春を始めとする一部の男子生徒が暴動を起こしました」

 

「はい?」

 

「へっ?」

 

「えっ?」

 

僕らは同時に間の抜けたような返事をしてしまった。

 

「もしかして昨夜のことですか西村先生?」

 

「ああ。自分は無実だと清水が言い、それに便乗してFクラスの男子生徒、一部を除き、他クラス、Aクラス以外、の男子生徒と暴動を起こした。まあ、一部を除いてだが」

 

「・・・・・・どうします学園長?」

 

僕は口調を直してお祖母ちゃん・・・・・・学園長に聞く。

 

「はぁ。西村先生放送室は使えるさね?」

 

「できます」

 

「なら、いいさね」

 

学園長はそう言うと西村先生を連れて部屋から出ていった。

出ていくときに見た学園長の表情が何かを企んでいることを僕は見逃さなかった。

 

「ねぇ、明久くん」

 

「なに恵衣菜?」

 

「私なんとなく嫌な予感がするんだけど」

 

「うん、同感。お祖母ちゃん、何か企んでいるような顔してた」

 

恵衣菜とそんな会話していると。

 

 

"ピンポンパンポーン"

 

 

『あー、ごほん。全生徒に告げるよ。今すぐ一階の食堂に集まりな。以上さね』

 

 

"ピンポンパンポン"

 

 

 

スピーカーから学園長の声が聞こえてきた。

 

「取り敢えず食堂に行こうか」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜は受け取った資料を部屋に置いてから、一階の食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一階 食堂

 

 

「全員集まったさね」

 

食堂に着くと、学園長が整列して並んでいる生徒を前にそう言っていた。

 

「さて、集まってもらったのは他でもない。お前たちにはこれからチーム対抗試験召喚戦争をやってもらうよ!」

 

「チーム対抗試験召喚戦争!?」

 

僕は学園長のその発言についツッコんだ。

よく見ると、他の人も驚きの表情を出している。

 

「学園長」

 

「なにさね吉井兄」

 

「チーム対抗試験召喚戦争とは何をするのですか?」

 

「それを今から説明するさね。この試験召喚戦争はそれぞれ二チームにわかれて行うさね。それぞれ、リーダーは、二年Fクラス吉井明久と二年Dクラス清水美春がやるさね、これについては異論は認めないよ」

 

「なっ!?」

 

学園長の言葉に清水さんは驚愕の表情を出した。

周囲ではざわめきが起きてる。

 

「両チームとも人数の制限はないさね。付きたいと思う側に付きな。それとルールは通常の試験召喚戦争と変わらないよ。どちらかのリーダーが討ち取られたらそのチームの負けさね」

 

学園長はそう言うと僕らを見渡し、

 

「何か質問はあるかい」

 

そう言った。

周囲を見ると誰も手を上げずにいた。

それを見た学園長はうなずき、

 

「なら、今から二時間後の午後13時から始めるよ。それぞれ自陣の本陣は、吉井明久のところはこの食堂、清水美春の方は三階の自習室が本陣さね。それまでにどちらかの陣地にいな」

 

学園長はそう言うと西村先生と変わった。

 

「学園長からあったように今から二時間後の13時から始める。それぞれ移動しろ。あと、それぞれの陣地にいる教師には加入する自身の名前を言うように。では、各自行動に移れ!」

 

西村先生の締めで清水さんは食堂から出ていった。

そして相次いで人が食堂から出ていった。

 

「え~と、僕のところに残ったのは、恵衣菜に零華、雄二、霧島さん、恭二、秀吉、康太、友香さん、久保くん、須川くん、横溝くん、エレンさん、桜咲さん、木下さん、天野さん、工藤さん、佐藤さん、玉野さん、岩下さん、菊入さん、平賀くん、三上さん、中林さんたちだね」

 

僕は食堂に残った人たちを見て言う。

大抵の男子生徒が出ていったに対し、こっちはほぼ全ての女子生徒と一部の男子がいる。

姫路さんと島田さんは向こう側に付いたみたいだ。

 

「どういう風に戦う?」

 

「う~ん・・・・・・雄二、なんかある?」

 

「あー、そうだな・・・・・・・。相手の戦力にもよるがある程度の人数に分けて攻略するか、もしくは・・・・・・・」

 

「もしくは?」

 

「明久たちが一気に殲滅させる」

 

雄二が真顔で僕と恵衣菜、零華を見ていった。

 

「え?」

 

「なるほど~」

 

「確かに」

 

恵衣菜と零華は納得したようにうなずき、他の人たちもあぁ~、という感じだった。

なんか不服。

 

「じゃ、班ごとに分かれて闘おう」

 

「そうするか」

 

そのあと僕らは班分けについて話し合い、15分後それぞれ班ごとに分かれた。

 

「僕、恵衣菜、零華はこの場で待機で・・・・・・」

 

「俺のところは秀吉や久保を初めとした男子の部隊だな」

 

「・・・・・・私のところはBクラスとEクラスの混成」

 

「わたしのところはCクラスとDクラスね」

 

「Aクラスは各それぞれに分かれてだね」

 

それぞれの部隊長は雄二、霧島さん、木下さんの三人だ。三人の副官は雄二のところは恭二が、霧島さんのところは友香さんが、木下さんのところは中林さんがとることになっている。Aクラスは各三部隊に混成して入れてる。そして、

 

「・・・・・・俺のところは諜報だな」

 

康太が部隊長で副官が工藤さんの率いる十人程の部隊は諜報部隊だ。

 

「さてと、それじゃ時間十分前まで各自自由にしていて」

 

僕が締めにそう言うと、その場の全員がうなずいたり返事を返したりして食堂から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開始時間十分前 食堂

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「なあ、明久」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「明久くん」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「兄様」

 

「・・・・・・・・・・あ、ごめん三人とも。どうしたの?」

 

「その、もうすぐ始まるよね」

 

「え?うん、そうだね」

 

「けど・・・・・・」

 

零華たちは食堂に集まった人たちを見渡す。

 

「人数少くないか?」

 

「そう言えば・・・・・・」

 

雄二の言う通り、女子は全員いるみたいだが男子は数が少なかった。

 

「どうしたんだろ」

 

僕は心配して言うなか思考では、まさか妨害?、と思っていた。

するとそこへ。

 

「・・・・・・明久、緊急事態」

 

血相を抱えた康太が焦ったようにきた。

 

「どうしたの康太」

 

「・・・・・・相手側の妨害でこっちの男子の6割が行動不能になった」

 

「えぇっ!?」

 

「やっぱりか」

 

「・・・・・・あと、脅されたりして参加できない女子も多数いる」

 

「これはさすがに・・・・・・」

 

「冗談じゃすまされないね」

 

「ああ。どうする明久」

 

康太の報告にその場の全員が僕に視線を移した。

 

「・・・・・・・・・・僕が出て闘うよ」

 

僕は周囲を見て、少し考えてから言った。

 

「今の時点で参加できない人はどのくらい?」

 

僕は全員に聞こえるように言った。

すると、手を挙げたのは全体の7割。男子も女子も半々だった。

 

「ありがとう。みんなはここの防衛して待機していて」

 

「ってことは明久、おまえ・・・・・・」

 

「うん・・・・・・。僕が全員相手する」

 

「明久くん、私も手伝うよ」

 

「兄様、私もです」

 

「お願い恵衣菜、零華。雄二はここの指揮をお願い」

 

「わかった。教師にも伝えておく」

 

「お願い」

 

雄二にこの場のことをお願いすると、戦争開始の鐘の音がなった。

 

「行こうか恵衣菜、零華」

 

「はい」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜は雄二たちに残りを任せて、三階の敵本陣へと進行を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3階

 

 

「さてと、始めようか恵衣菜、零華」

 

開始時間して5分後、僕は高橋先生と共に3階の敵本陣に来ていた。

 

「そうだね明久くん」

 

「そうしましょう兄様」

 

「高橋先生召喚許可を」

 

「は、はい。承認します」

 

僕の言葉に、どこか怯えた感じの声で高橋先生が許可を出した。

そして高橋先生を中心にフィールドが展開される。

展開されたフィールドの科目は―――

 

「「「試獣召喚(サモン)」」」

 

 

 

 総合科目

 

 

Fクラス 吉井明久  10174点

 

     姫宮恵衣菜 9986点

 

Aクラス 吉井零華  9871点

 

 

 

 

 

 

"バタン!"

 

 

 

 

扉を開け、中に入った僕らは―――

 

 

「さあ、始めようか僕らの・・・・・・」

 

「始めましょう私たちの・・・・・・」

 

「始めようか私たちの・・・・・・」

 

 

「「「―――試召戦争という名の"戦争(戦闘)"を!」」」

 

 

召喚獣を前に出して部屋の全員に聞こえるように言い放った。

 

 

 

「くっ!こうなったら・・・・・・全員召喚してそこの豚野郎を殺しなさい!」

 

 

 

『『『『『試獣召喚(サモン)』』』』』

 

 

 

 

 

Fクラス 男子×41 平均 980点

 

Eクラス 男子    平均 1570点

 

Dクラス 男子    平均 2200点

 

Cクラス 男子    平均 2860点

 

Bクラス 男子    平均 3310点

 

Dクラス 清水美春     2371点

 

Fクラス 島田美波     2084点

 

     姫路瑞希     4446点

 

 

 

 

僕らの声のあとにその場にいた全員が召喚獣を召喚した。そんな中、島田さんと姫路さんの召喚が他の人たちより遅かったのが気になり二人を見ると、二人とも何故か困惑したような表情で、清水さんと僕らを見ていた。

 

 

「いくよ二人とも」

 

「うん」

 

「はい」

 

すでに僕らの周囲を多くの召喚獣が囲んでいる。

僕らは互いの背を守るように三角の陣形を取っている。

そして僕らは同時に腕輪を1つ発動させた。

 

属性付与(エンチャント)発動!属性付与、全属性(オールエレメント)!」

 

多弾攻撃(マルチプル)起動!」

 

千の魔法(サウザンド・マギア)発動!」

 

僕は右に剣、左に銃を。恵衣菜は弓を。零華は槍を。

それぞれ遠距離戦闘タイプに武器を持ちかえる。

 

「総員!あの豚野郎を殺しなさい!」

 

『『『『『うおおおおおおおおおおお!』』』』』

 

 

「くたばりなさい豚野郎!」

 

「さっさと死にやがれや吉井ィ!!」

 

「死になさい!」

 

「殺す殺す殺す!」

 

清水さんの声に召喚獣が僕らに武器を構え殺到してきた。

 

「くらいなさい!」

 

恵衣菜の召喚獣が弓を上に向け、矢を上空に放った。放たれた矢は天に昇り、そこから分裂して雨のように周囲の召喚獣に降り注いだ。

そしてさらに、

 

「天かけ抜き煌めきたる星々よ、散りばめし穹から降り注ぎたれ、罪有りし者に鉄槌を。審判の刻、いま来たれり!―――星屑の審判(スターダスト・ジャッジ)!」

 

零華の詠唱魔法でさらに召喚獣を攻撃する。

恵衣菜の矢は属性付与してないため普通の矢だが、数は多い。これで動けない召喚獣が出来たところに零華の魔法攻撃による上空からの追撃。

どっちも広範囲に渡って放たれる攻撃だ。

 

 

『『『『『うわああああああああああ!!』』』』』

 

 

 

「はぁ。なんでこうなったんだっけ、零華」

 

「清水美春を擁護する男子からの暴動です」

 

「あと、嫉妬とかからだね」

 

「はぁ、学園長もよく考えたな~」

 

 

僕はいまの攻撃した惨状跡地を見て呟く。

 

 

 

Fクラス 男子×10 戦死

 

Eクラス 男子×18 戦死

 

Dクラス 男子×15 戦死

 

Cクラス 男子×7  戦死

 

 

 

 

二人の攻撃でかなりの人数が戦死した。

 

 

「戦死者は補習~~!!」

 

そしてそこに西村先生が来た。

 

「あ、西村先生、10分以内に終わるので戦死者はその場にいさせてください。聞きたいことがありますので」

 

「お、おう、吉井兄がそう言うなら・・・・・・」

 

西村先生は何故か高橋先生と同じように怯えた感じで僕の言葉にうなずき、高橋先生の隣に立った。

すると。

 

「高橋先生」

 

「なんでしょう西村先生」

 

「吉井兄なんか怒ってませんか?」

 

「奇遇ですね、私もそう思います」

 

そんなことをいっている声が耳に入った。

別に怒ってるつもりはないんだけどな~。

 

「さてと、そろそろ僕も闘おうかな」

 

右手に片手剣、左手に銃を持ち、突っ込んできた召喚獣の1体に銃を撃って戦闘不能にさせ、左右から攻撃してきた召喚獣を防ぐ。右からのハンマーの攻撃を片手剣の腹で受け止め、左からの短剣を銃の柄部分で受け止める。そして銃の持ち手の力を緩め、短剣の軌道をずらさせるのと同時に銃を上空に放り投げ、すぐさま背中からもう1つの片手剣を抜き召喚獣の胴体を二分割にし、右の召喚獣も同時に斬り払う。召喚獣二体を戦死させ、双剣を地面に突き刺し、懐からもう一丁の白銀の銃を取り出し、上空に放り投げた黒金の銃をジャンプして左手に掴み、空中で回転連続で撃ちまくる。

 

 

『『『ぐわぁぁあああああああ!!』』』

 

 

「―――降り注ぐ弾丸の雨(レインフォール・バレット)

 

着地した召喚獣に僕は小声でボソッと呟いた。

僕が考えた範囲殲滅攻撃だ。

弾丸の補充 (リチャージ)自動弾丸補充()オートリロード》で瞬時に補充する。弾丸補充一回につき、点数を10点減るが問題ない。ちなみに僕の拳銃はリボルバー型ではなくオートマチック型だ。

 

 

 

Eクラス 男子×15 戦死

 

Cクラス 男子×7  戦死

 

Bクラス 男子×9  戦死

 

 

 

これで20人以上戦死させた。

残りはリーダーの清水さんや姫路さん、島田さんを合わせて全体の三分の一。

 

「これも使おうかな。―――事象改変(オーバーライド)起動(アクティベーション)!」

 

僕はもう1つの腕輪を発動させ、右手の白銀の銃を敵の召喚獣に向けて構える。

 

「属性付与、解放(バースト)!」

 

僕の声に続いて白銀の拳銃の砲口に複雑怪奇なピンク色の魔方陣が現れる。その魔方陣は徐々に大きくなっていき、銃の砲口の三倍ほどの大きさで止まった。

 

「恵衣菜、零華、そこ避けて!」

 

「「!!」」

 

「いくよ。―――撃ち放て―――スターライト・ブレイカーー!!」

 

僕の声とともに恵衣菜と零華の召喚獣は左右に避け、僕の召喚獣は白銀の拳銃のトリガーを引いた。そこから出たのた銃弾ではなく、ピンク色ビームだ。僕は事象改変で銃弾をエネルギー弾にし、それを増幅。属性付与で付与し事象改変で"ある"ということにしてそれを撃ち放つ。それがいま出たピンク色のビームレーザーだ。まあ、電磁射出砲(レールガン)を魔法攻撃に変えた感じだ。ちなみにこれの欠点があるとすれば、それは一方にしか攻撃出来ないことと、攻撃してる間は無防備になるということだね。

 

 

『『『な、なんだとぉおおおおおお!』』』

 

これによりさらに数を減らし残りは全体の四分の一。約30人以下にまで減った。

 

「っく!」

 

僕の右手に一瞬鋭い反動が静電気のように走った。リバウンドが来たみたいだ。

 

「うわぁ・・・さすがにこれは」

 

「兄様、あの魔法ってもしかして・・・・・・あれ、ですか?」

 

「ん?あ、うん、そうだよ。さてと続けていこうかなって言いたいけど・・・・・・」

 

残りは殆んどがFクラスだ。

BからEクラスまではさっきの『スターライト・ブレイカー』や『降り注ぐ弾丸の雨』や恵衣菜、零華の攻撃で全滅していた。

 

「この豚野郎の分際で・・・・・・あなたたちあの豚野郎を殺しなさい!」

 

『『『『うおおおおおおおおおおお!』』』』

 

清水さんの声で残りのFクラス全員が僕に向かって召喚獣を突っ込ませてきた。

 

「明久くん、あと任せてもいい?」

 

「うん、あとは任せて二人は後ろに下がってて」

 

「はーい」

 

「兄様、気をつけてくださいね」

 

「任せて♪」

 

僕は恵衣菜と零華を下がらせ、召喚獣に指示を出す。

召喚獣は二丁拳銃を懐にしまい、左右横に突き刺していた双剣を抜き構える。

 

「くたばれ吉井!」

 

「死ねやコラァ!」

 

「殺す!」

 

「ヤッチャウヨー!」

 

一部変な人がいるが気にしない。

僕は双剣を構え迫ってきたFクラスの召喚獣を見据える。そして・・・・・・・

 

「―――ハッ!」

 

一瞬で残りのFクラス全員の召喚獣を幾重にも斬り裂いた。事象改変を使って、数秒を一瞬に凝縮して攻撃したのだ。具体的にいうならば、時間が止まり、自分だけが動けるなか幾重にも斬り、時間が動き出したのと同時に斬られたと言うことが認識されるということだ。

まあ、僕がしたのは時間停止ではなく高速移動による連続斬りなのだが。

すると、清水さんが騒ぎ出した。

 

「そ、そんなありえません!たった三人なのに百人以上いるわたしたちを10分もかからずに倒すなんて!ひ、卑怯です!しかもその点数カンニングしたに決まってます!」

 

「卑怯?それって僕たちのチームの人を行動不能にしたり、脅したりして参加させたりしないことじゃないかな?」

 

「そ、それを美春たちがやったという証拠はあるんですか!」

 

「脅された人たちに聞けばわかると思うけど?まあ、とにかくさっさと終わらせようと・・・・・・ねっ!」

 

「なっ!?」

 

「これで―――終わり!」

 

僕は一瞬で召喚獣を清水さんの召喚獣に肉薄させ、次の瞬間には四肢を断ち切り点数を0にした。

 

 

「そこまで!この試召戦争吉井明久側の勝ちだ!」

 

 

清水さんの召喚獣が点数が0になり消えたのを見て西村先生が言った。

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

清水さんはその場に膝をつき、信じられないという風に顔をうつむかせた。

 

「ところで姫路さんと島田さんの二人は参加しなかったみたいだけど・・・・・・なんで?」

 

僕は疑問に思っていた事を隅っこで佇む二人に聞いた。

 

「あ、そ、その・・・・・・」

 

「う、ウチらは、その、別に・・・・・・」

 

「まあ、僕にはどうでもいいけど。さて、清水さん」

 

「な、なんですか豚野郎」

 

僕はうなだれたままの清水さんに視線を向ける。

 

「聞きたいことがあるんだけど・・・・・・」

 

そういうと僕は西村先生に視線を向ける。

 

「西村先生」

 

「なんだ吉井兄」

 

「雄二から聞いたかと思いますが、僕らの方のチームメンバーを行動不能にしたり脅したりしたのは誰か聞きましたか?」

 

「ああ、聞いたぞ」

 

西村先生は僕の言葉に重々しくうなずいた。

 

「どういうことです?」

 

「高橋先生、実は・・・・・・・・・・」

 

僕は手早く事細かに高橋先生に話した。

 

「と言うわけです。それで西村先生」

 

「ああ。清水、全員お前に脅されたと言っていたぞ。行動不能に関してはFクラスの男子を使ったみたいだがな」

 

「っ!」

 

「さて清水さん?これでもまだ言い訳するのかな?」

 

僕はにこやかに清水さんに聞く。

そんな中視界の端に写った姫路さんと島田さんが怯えているのが見えた。

 

「そ、それは・・・・・・!」

 

「し・み・ず・さ・ん?」

 

「ヒィッ!」

 

「さあ、言ってくれるよね?清水さん?」

 

「あ、あぁぁぁあああ・・・・・・」

 

清水さんは僕の顔をみて怯えたように後ずさった。

 

「言っとくけどキミたちもだからね?」

 

僕は知らん顔しているFクラス男子ににこやかに言った。

 

「西村先生、高橋先生」

 

「あ、ああ」

 

「は、はい」

 

「後の事よろしくお願いしますね。僕らは戻りますので。あぁ、それとそこにいる二人は部屋に戻しても構わないかと、特になにもしませんでしたし」

 

「わ、わかった」

 

「わ、わかりました」

 

「それじゃ恵衣菜、零華、戻ろうか」

 

「うん」

 

「ですね」

 

僕らは後の事を先生方に任せ、一階の食堂に戻ることにした。

その際、西村先生も高橋先生も含めてその場にいた全員が僕らを見て怯えていた。なんでかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 

あの後、その場にいたFクラス男子は先生方に連れられて補習室に連行された。清水さんに関しては特別補習室に連れて行かれたそうだ。

あの試召戦争で今日の日程はすべて終わりで、そのため

残りの時間は自由に過ごしていていいとのことだ。

もちろん召喚獣の操作練習や、決闘も先生に申請し許可さえもらえれば可能だ。もちろん合宿内の敷地内ならば外に出てもいいと学園長から全員に通達済みだ。なんでも清水さんの処遇に関して会議しなければならないとか。

 

「ん~、今日で合宿も終わりか~」

 

僕は部屋の中で伸びをして言った。

あのあと僕は雄二たちに話し、学園長や先生方から通達され自由時間になったあと、僕は恵衣菜と零華と敷地内の外に出て草地で横になって時間を過ごした。

そして夕食食べ、お風呂に入り終わり部屋で二人とのんびりと過ごしていた。

 

「だね~」

 

「ですね。色々とあって疲れました~」

 

「アハハ」

 

「お兄ちゃん、頭撫でてくれる?」

 

「うん、いいよ」

 

膝の上に乗った零華の頭を、僕は優しく撫でた。

 

「ふにゃ~。気持ちいいです~」

 

「相変わらずのブラコンだね零華ちゃん」

 

そんな零華に恵衣菜は苦笑しながら言う。

すると、そこへ。

 

「あれ?明久くん、電話来てるよ」

 

「え?あ、ホントだ。ごめん零華、ちょっといい」

 

「はーい」

 

僕は立ちあがりテラスの方に移動した。

テラスから見える夜の星空は満天に輝いていた。

スマホを見ると掛けてきたのは昨日と同じ絵里だった。

 

「もしもし?どうしたの絵里?」

 

『こんばんわ明久。今いいかしら?』

 

「大丈夫だよ。もしかして・・・・・・昨日の件?」

 

『ええ・・・・・・』

 

「それで、話し合った結果は」

 

『話し合った結果・・・・・・今回、私たちはラブライブを・・・・・』

 

「うん・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――出場しないことに決めたわ・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『強化合宿最終日』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅵ門 強化合宿最終日

バカテスト

『強化合宿の総日誌を書いてください』


解答


吉井明久

『一日目から覗き騒ぎの冤罪や覗きの阻止、脅迫状などなど様々なことがあり、色々思い出に残る強化合宿になりました。特に、零華がクラスの人と仲が良いのがみれて嬉しかったです』


教師コメント

『一日目から大変な強化合宿でしたね。さすがに吉井くんのシスコンにはもう見慣れました。色々と思い出が残ったみたいで良かったです』


姫宮恵衣菜

『一日目から大変な強化合宿だったと思います。明久くんと零華ちゃんとほぼ丸々1日一緒に過ごせて良かったです。今回の強化合宿は色々といい思い出に残ることとなったと思います』


教師コメント

『思い出に残るような強化合宿で良かったと思います。日誌でも相変わらずのバカップルぶりありがとうございます、もう見慣れてしまいました』


吉井零華

『強化合宿一日目から大変な日でした。兄様たちが覗き犯と疑われるや脅迫状が届くなど大変な強化合宿でしたが、兄様と恵衣菜ちゃんと一緒に入れたので良かったです。特に兄様と一緒に入れたのが嬉しかったです』

教師コメント

『大変な強化合宿でしたね。吉井くんと同様に吉井さんのブラコンぶりももう見慣れてしまいました。色々と大変でしたがいい思い出残ったと思います』





~明久side~

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし?どうしたの絵里?」

 

『こんばんわ明久。今いいかしら?』

 

「大丈夫だよ。もしかして・・・・・・昨日の件?」

 

『ええ・・・・・・』

 

「それで、話し合った結果は」

 

『話し合った結果・・・・・・今回、私たちはラブライブを・・・・・』

 

「うん・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――出場しないことに決めたわ・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄様」

 

「明久くん」

 

零華と恵衣菜に呼ばれた僕は、昨日の夜の出来事から意識をもとに戻した。

 

「あ、ごめん。ちょっと考え事してたよ」

 

今は食堂で朝食を、何時ものメンバー・・・・・・・(より何名か多くいるが)と食べていた。

 

「ん?明久、なんかあったのか?」

 

「なんでもないよ雄二」

 

「そうか?」

 

「うん。今日で強化合宿も終わりなんだな~、って思ったんだよ」

 

「なるほどな。まあ、色々合ったからな、覗き騒ぎとか」

 

「そうだね~」

 

僕らは遠い目をして語った。

 

「アハハ・・・・・・」

 

「男子の目が遠いよ・・・・・・」

 

工藤さんと木下さんは苦笑いして言う。

 

「・・・・・・この後の予定ってなんだっけ」

 

「この後は帰るだけですよ。来た時と同じですね」

 

「・・・・・・ありがとう、美穂」

 

「ってことは僕と恵衣菜と零華は来た時と同じリムジンなんだ」

 

「リムジンで来たのかよ明久たち」

 

「なんか先生たちが用意してくれたみたいだよ恭二」

 

「ああ~なるほど。先生たちの考えがわかったぞ」

 

「・・・・・・・なるほど」

 

「なるほどのぉ~」

 

「え?どう言うこと須川くん、康太、秀吉」

 

「それはまあ・・・あ、あれだよ。明久たちの何時ものことだ」

 

「???」

 

「アハハ・・・・・」

 

僕の問いに横溝くんが苦笑ぎみでいい、女子勢は納得してように首を縦に振って頷いていた。

うん、ここで言う言葉はこれだけだね。

イミワカンナイ、っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 

朝食の後、軽く集会があり学園長や学年主任の高橋先生、西村先生から話があり、その場で全体のHRをしそれぞれバスに乗ったりして帰っていった。

そんな中、Fクラスの男子、雄二たちを除く、と姫路さん、島田さん、清水さんは纏まって帰った。もちろん、西村先生が監視役として付いてだ。

聞いたところによると、お風呂の覗き騒動に加担した男子生徒は一週間の停学。Fクラス男子は二週間の停学。姫路さんと島田さんに関しては特にないが来週から一週間、平日1日二時間の西村先生の補習が付けられた。

そして清水さんに関しては・・・・・・

 

「疲れたよお兄ちゃん~」

 

「はいはい、お疲れ様零華」

 

「えへへへ~~♪」

 

「それにしても彼らの処分甘くないかな?」

 

「うーん、まあ、重罪の清水さんよりは摘罪だと思うけど」

 

「まあ、たしかにそうだけど・・・・・・」

 

「清水美春の処分って確か、一ヶ月間の停学と指定観察処分者ですよね」

 

「うん」

 

「ところでこの指定観察処分者ってなに明久くん?」

 

「え~と、確かお祖母ちゃんが言うには、僕の《観察処分者》と似てるけどフィードバックが僕より強く、物理召喚は出来ないんだって。後、1日二時間の西村先生の補習が義務付けられる、って言ってたよ」

 

「へぇー。お祖母ちゃん、明日から大変そう」

 

「だよねぇ」

 

今回の強化合宿では問題が多くあった。

まず始めに、女子脱衣所の盗撮、Fクラス男子先導の覗き騒動。そして脅迫、盗撮、盗聴、殺人未遂と色々あったのだ。

全てを処理するのにはかかる時間はかなり掛かり大変だと思う。

 

「これ穂乃果ちゃんたちに言ったらみんな驚くだろうね~」

 

「アハハ、確かに。でも、今言ってもなぁ・・・・・・」

 

「そっか、μ'sは・・・・・・」

 

「うん。来週から忙しくなるね」

 

僕の膝の上に乗って甘えてくる零華の頭を撫でて外の景色を見ながら言う。

窓から見る外の風景は、行きとは違った感じだった。

 

「とにかく、来週からお兄ちゃんと恵衣菜ちゃん頑張ってください」

 

「アハハ・・・・・・まあ、やるだけやってみるよ」

 

「そうだね明久くん」

 

零華の無邪気な笑顔と声に僕と恵衣菜は苦笑を浮かべて答えた。

 

「家に帰ったらまず服とかを洗濯しないとね」

 

「そうね」

 

「お兄ちゃんそれ私がやっておくね」

 

「お願いね零華」

 

「うん♪まかせて♪」

 

「じゃあ私は食材を買ってきた方がいいかな?」

 

「あー、う~ん。一応冷蔵庫の中身を見ないと分からないね。無かったら僕が買ってくるから、恵衣菜は掃除機を掛けといてくれる?」

 

「了解だよ」

 

「あ、お兄ちゃん」

 

「なに零華?」

 

「今日一緒にお風呂入らない?」

 

「零華と?僕はいいけど・・・・・・・・・・じゃない!なんで、お風呂に一緒に入るの!?」

 

つい何時もの癖で返事してしまうところで気づき、膝の上に座ってる零華にツッコむ。

 

「ダメ、かな・・・?」

 

「うっ・・・・・・」

 

零華のウルウルと煌めく瞳で見られた僕は少し視線をずらした。正直これは卑怯だ。

だって可愛い妹にこんな瞳で見られたら断れるわけないじゃん!!

あ、今シスコンって思った人、一つ言っておくね。

この世は可愛いが正義!!

そして妹は世界で一番可愛いのだ!!

ちなみに僕がこの世で可愛いと思うのは零華だけじゃないぞ。妹だけの点で世間から見たら零華が一番可愛い!

この点に関してはシスコン同盟を組んでいる絵里もそうしているからね。

 

「お兄ちゃん、お願い」

 

「うっ・・・・・・うん、いいよ・・・・・・」

 

「やったー♪」

 

「相変わらずのシスコンだね、明久くん・・・・・・」

 

僕の声に恵衣菜は乾いた笑みを出して言った。

あ、もちろん恵衣菜も可愛いからね。

そんなこんなで、家に着いてからの予定を立て、そのあとは二人が僕に寄り掛かって寝てきて、それに釣られて僕も寝たりと、三人で静かな家に着くまでの時間を過ごした。

家に着いてからは明日が土曜なのもあって、時間を掛けて洗濯したりして三人で夕飯を食べて、僕は零華とお風呂に入った。途中、恵衣菜も入ってきそうになったがそれは全力で止めた。

浴場が狭いとかではなくて、妹の零華だけじゃなくて恵衣菜も入ってきたらさすがの僕も理性が崩壊するよ。

だって、強化合宿の時だってギリギリ我慢していたんだから。ここが家となると多分・・・・・・いや、絶対僕は理性が保てなくなるよ。というか零華でさえ理性がギリギリなんだから。さすがに実の妹に理性が崩壊したところを見られた暁には多分、いや、絶対に凹む、僕が。鬱状態になること間違いなし。

とまあ、こんな理性を保つお風呂が終わったあとは久しぶりに三人でゲーム大会を開いた。

順位はまあ、なんというか・・・・・・決着が付かなかったと言っておこう。

そのあとは三人で川の字?のような形で恵衣菜、僕、零華という形で寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二日後 

 

 

 

 日曜  音ノ木坂学院理事長室

 

 

 

「―――試獣召喚(サモン)

 

「え~と、試獣召喚。で良いのかしら・・・・・・?」

 

「はい、あってます」

 

強化合宿から二日後の日曜。僕と恵衣菜は音ノ木坂学院の理事長室でかおりさんに試験召喚システムを起動していた。

 

 

 

 

 日本史

 

 

 吉井明久 947点

 

 VS

 

 南かおり 578点

 

 

 

 

「これが召喚獣なのね。可愛いわね」

 

召喚した自身の召喚獣を見てかおりさんはそう言う。

予め音ノ木坂学院の全教師には文月学園と同様点数上限無しのテストを受けてもらっている。その為、文月学園と同様に点数が表示される。

 

「それにしても、明久くんの点数って常識はずれなのね」

 

「そ、そうですか?」

 

「ええ」

 

かおりさんは僕の召喚獣を見て、少し引き気味に言った。

これで異常なら、高橋先生や西村先生はどうなんだろう?と思ってしまったりする。

 

「無事に召喚できるみたいだね明久くん」

 

「うん。召喚フィールドは学園のと同じ、範囲十メートルでいいかな」

 

僕と恵衣菜は手元のタブレット端末で軽く操作して、音ノ木坂学院の地下一階に置かれている試験召喚システムのサーバーにアクセスして調整する。

 

「範囲はこれくらいで・・・・・・」

 

「あとは学年とクラスを入れないとね」

 

一応サーバーには文月学園のメインサーバーにも搭載されている、オートメーションシステムが搭載されている。これにより自動で最新の点数などが更新される。

 

「・・・・・・っと、このくらいでいいかな?」

 

「こっちは大丈夫だよ」

 

「オッケー。それじゃ、かおりさん他の教職員方にも説明したいので良いですか?」

 

「ええ。職員室に行きましょうか」

 

僕と恵衣菜はかおりさんの案内のもと職員室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 職員室

 

 

 

「今日集まってもらったのは他でもありません。当校は明日より、事前通達したように姉妹校となった文月学園の試験召喚システムを開放します。其にともない、明日より夏休みに入るまでの一ヶ月半、文月学園から二名、当校で召喚獣の操作をレクチャーしてもらいます。では、二人とも入って来てください」

 

「「はい」」

 

職員室で音ノ木坂の教職員全員に話していたかおりさんからの呼びに、僕と恵衣菜は職員室に入った。

 

「彼は吉井明久くん、文月学園の二年生序列一位です。そして彼女は姫宮恵衣菜さん、吉井くんと同じく二年生序列二位です。二人とも自己紹介をお願いします」

 

「はい。理事長より、ご紹介に上がりました、吉井明久です」

 

「同じく、姫宮恵衣菜です」

 

「それではこのあとの司会進行は二人に任せますのでよろしくお願いします」

 

かおりさんはそう言うと、僕と恵衣菜にその場を渡し、近くの椅子に座った。

 

「それでは試験召喚システムについて説明させていただきます」

 

僕がそう言うと、恵衣菜が説明が書かれた書類を教職員方に渡して回った。

渡し回り終えると僕は説明を始めた。

恵衣菜はプロジェクターに資料を映した。

 

「お手元の書類、1ページ目の一番上をご覧ください」

 

僕の声にあちこちから紙を捲る音が聞こえる。

 

「まず、試験召喚システムとは――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《説明中》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでで何かご不明な点はございますでしょうか?」

 

僕が一旦説明を止め質問を受ける。

 

『はい』

 

すると、奥の方から手が上がった。

 

「どうぞ」

 

「この『点数が0になったら補習』と書かれている文に関して質問なのですが、点数が0になった場合当校ではどうするのでしょう」

 

手をあげた女の先生は立上がり質問をした。

 

「その点に関して説明させていただきます。理事長と相談して、音ノ木坂学院では点数が0になりましたら別室にて待機となります。これは生存者と戦死者を分けるためであり、この別室ではもちろん補習のような勉強を受けることが可能です」

 

「なるほど、ありがとうございます」

 

女の先生はそう言うと椅子に座った。

 

「いえ。他に質問はございますか?」

 

僕はそう言い回りを見渡す。

 

「では、再度説明に入らせていただきます」

 

質問者がいないのを確認して僕は次の説明に進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《再度 説明中》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上となります。質問がある方はいらっしゃいますか?」

 

残りの説明が終わり再度聞くと何人かの教職員が手をあげた。

 

「では、そちらの先生」

 

僕は窓側の先生の一人を指した。

僕の指した先生は立上がり質問をした。

 

「はい。試召戦争に関してなのですが、現時点で三年は三クラス。二年は二クラス。一年は一クラスだけなのですが、この点はどうするのでしょうか?」

 

「はい、説明させていただきます。現時点では各学年事に試召戦争は不可能です。その為、他学年への試召戦争申し込みが可能となります」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

「他に質問はございますか?」

 

その後も何人かの先生の質問に答え、説明が終わったのは説明してから約2時間後だった。

 

「以上で試験召喚システムについての説明を終わらせていただきます。ありがとうございました」

 

僕と恵衣菜は資料類を閉じ、頭を下げる。

すると、何故か拍手の音が響く。

 

「二人とも説明ありがとう」

 

拍手が終わるとかおりさんが立っていった。

 

「二人は明日から二年一組に入ってもらいます。山田先生よろしくお願いしますね」

 

「はいよ~」

 

かおりさんの声に近くにいた青いジャージを着た女の先生が手をあげて返事した。

 

「本日の会議は以上となります。なお、明日の全校集会で二人の説明をしますのでそれまで生徒には漏らさないように」

 

かおりさんの言葉に教職員全員うなずいて返した。

 

「では、明日からお願いします」

 

そう言うとかおりさんは僕と恵衣菜を連れて職員室を出て理事長室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理事長室

 

 

「お疲れ様二人とも」

 

「つ、疲れました~」

 

「うん。疲れたね」

 

理事長室のソファーに座った僕と恵衣菜はついそう溜め息をついた。

 

「あらあら、ウフフ」

 

僕と恵衣菜のその姿にかおりさんは自分で淹れた紅茶を飲んで微笑んだ。

 

「それじゃ、明日からお願いね二人とも」

 

「は~い」

 

「わかりました~」

 

そうして1日が過ぎていき・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日

 

 

 

「さあ、行こうか恵衣菜」

 

「うん!」

 

僕と恵衣菜はスポットライトの照らす、ステージへと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『音ノ木坂学院での始まり』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅳ章 音ノ木坂学院編
第Ⅰ門 音ノ木坂学院での始まり


「みなさんこんにちはソーナです」

「こんにちは明久です」

「恵衣菜だよ」

「穂乃果だよ~」

「ことりです」

「海未です」

「今章からオリジナル章開始だよ!」

「うわぁ~、ついに穂乃果たちも召喚獣を操作できるんだね」

「楽しみぃ~」

「ですね」

「僕らもしばらくは音ノ木坂にいるよ」

「穂乃果ちゃんたちと学校生活送れるね」

「あー、でも、零華が心配かも。というかイモウトブンが足りないかも」

「あはは、相変わらずのシスコンだね」

「絵里ちゃんでもここまでじゃない気が」

「さてさて、これからどうなるんだろうね」

「楽しみだよ」

「そうだね。それではみなさん、今章から始まる『音ノ木坂学院編』をどうぞ!そしてこれからも《バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語》をどうぞ・・・」


「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」










*この放送は音ノ木坂学院放送部よりお送りいたしました。










「あ、ところで明久のヒロイン増やそうかな~って思うんだけどどうかな?」

「「「「ぜひ増やしてください!!」」」」

「恵衣菜も!!?」

「あはは・・・・・・考えてみるね」

「「「「お願いします!」」」」






~穂乃果side~

 

 

 

「はぁ~~・・・・・」

 

学校に向かう途中の階段を前に、私は二日前絵里ちゃんたちから告げられた事で頭がいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日前

 

 

穂むら屋 穂乃果の部屋

 

 

 

 

「穂乃果」

 

私が部屋で三つ目のプリンを食べていると扉の前から声が聞こえ、声の主が入ってきた。

 

「海未ちゃん!ことりちゃん!」

 

入ってきたのは海未ちゃんとことりちゃん、絵里ちゃん、希ちゃんににこちゃんだった。

 

「良かった~。起きられるようになったんだ」

 

「うん。風邪だからプリン三個食べてもいいって」

 

「プリン三個って・・・・・・」

 

「心配して損したわ」

 

「お母さんの言うとおりやね」

 

「それで、足の方はどうなの?」

 

「ああ、うん」

 

私は布団の中の右足をにこちゃんに見せる。

右足は包帯で足首を固定していた。

 

「軽く挫いただけだから、腫れが引いたら大丈夫だって」

 

私はにこちゃんに見せた右足を布団のなかに戻して絵里ちゃんたちを見た。

 

「・・・・・・本当に今回はごめんね。せっかく最高のライブになりそうだったのに・・・・・・」

 

「穂乃果のせいじゃないわ・・・・・・私たちのせい・・・」

 

「でも・・・・・・」

 

絵里ちゃんの言葉に反論しようとすると、絵里ちゃんが何かを私の目の前に出してきた。

 

「はい」

 

「え?」

 

それは一つのCDだった。

 

「真姫がピアノでリラックス出来る曲を弾いてくれたわ。これ聞いてゆっくり休んで」

 

「わぁ~~」

 

私はとっさに窓の方に出て外にいた真姫ちゃんに手を振った。外には真姫ちゃんのほか、凛ちゃんと花陽ちゃんもいた。

 

「真姫ちゃん!ありがとう~~~!」

 

真姫ちゃんにお礼を言うと、両側をにこちゃんと絵里ちゃんに押さえられた。

 

「ちょっと!なにやってんの!風邪引いてるのよ!」

 

「うわぁ!ゴホッ!ゴホッ!」

 

中に入り海未ちゃんが窓を閉めてくれた。

 

「ほら。病み上がりなんだから無理しないで」

 

「ありがとう。でも、来週からは学校に行けると思うんだ」

 

「ほんと?」

 

「うん。だからね・・・・・・短いのでいいからもう一度ライブ出来ないかなって。ほら、ラブライブへの出場グループ決定まで、まだ少しあるでしょ。なんていうか埋め合わせって言うか・・・・・・なんかできないかな~って」

 

無理した笑みを浮かべてみんなに提案する。

けど、海未ちゃんやことりちゃんの表情は暗かった。

その理由が絵里ちゃんから告げられた。

 

「穂乃果」

 

「ん」

 

「ラブライブには出場しません」

 

「え・・・・・・」

 

一瞬、私の耳がおかしくなったのかと思った。

けど、絵里ちゃんの顔を見てすぐにわかった。

本当なんだって。

 

「理事長にも言われたの。無理しすぎたんじゃないか、って。こういう事態をまねくためにアイドル活動をしていたのかって。それで、この間の夜、明久に電話して相談したの。でも、それは私たちが決めることだって・・・・・・。だから、この前みんなで相談してエントリーを辞めたの。もうランキングにμ'sの名前は・・・・・・どこにもないわ・・・・・・」

 

「そっか・・・・・・そんな・・・・・・」

 

「私たちがいけなかったんです。穂乃果に無理をさせすぎたから」

 

「ううん。違う・・・私が調子にのって・・・・・・」

 

「穂乃果ちゃん」

 

「誰が悪いかなんて話してもしょうがないでしょ。あれは全員の責任よ。体調管理を怠って無理をした穂乃果もそうだけど・・・・・それに気付かなかった私たちも悪い。最も明久は穂乃果の様子がどこかおかしいことには気付いてたみたいだけど・・・・・・」

 

「さすがに明久が悪い訳じゃない。にこたち全員の責任よ」

 

「エリチとにこっちの言うとおりやね。ウチらは明久に少し頼りすぎてたんやと思う」

 

「ええ。私たちは文月学園の文化祭のときから明久や恵衣菜、零華には頼りっぱなしだったのよ」

 

「うん・・・・・・。そうかも・・・・・・」

 

 

海未ちゃんとことりちゃんたちが帰ってからしばらくして私はノートパソコンでラブライブの公式サイトを開いた。そして、そこのラブライブ出場ランキングページを見た。そこには、絵里ちゃんの言った通り、どこにも《μ's》の文字がなかった。一番上から一番下までどこを見ても。もうどこにも《μ's》は無かった。

悔しかった。私のせいで全てが・・・・・・・今までやって来たことが・・・・・・みんなの想いを不意にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在

 

 

 

原因は分かってる。私のせいだ。私があの時、倒れたりしなければ・・・・・・。ううん、前日の夜、雨の日に無茶な走り込みをしなければこんなことにならなかった。自分のことや皆のことを考えてなかった。

今にして思えば、後悔ばかり出てくる。ううん、ランキングを見たあのときから後悔ばかり脳裏に浮かぶ。

 

「穂乃果ちゃん・・・・・・・」

 

「ことりちゃん」

 

「大丈夫ですか穂乃果。まだ体調が悪いんじゃ」

 

「ううん、大丈夫」

 

一緒に登校している海未ちゃんとことりちゃんに心配された。私は二人に少し無理して笑みを浮かべて答えた。

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「あんま無理しないでよ」

 

「うん。ありがとう絵里ちゃん、にこちゃん」

 

後ろには絵里ちゃんたちがいた。

 

「そう言えば今日全校集会があるって言われたんですけど、なにか聞いてますか絵里?」

 

「確か姉妹校がどうのって、じゃなかったかしら」

 

「姉妹校?」

 

「ええ。音ノ木坂学院は文月学園と姉妹校になったみたいなの」

 

「そうなの!?ことりちゃんはなにか聞いてる?」

 

「ううん。でも、お母さんが楽しみにしてて、って言ってたよ」

 

「へぇ」

 

そう会話しているとあっという間に昇降口についた。

 

「じゃ。穂乃果は集会中に寝ないようにね」

 

「ね、寝ないよ絵里ちゃん~!」

 

絵里たちと分かれた私は海未ちゃんとことりちゃんと二年一組に入った。中にはいるとビテコ、フミコ、ミカたちクラスメイトから大丈夫だったなど、心配の声を掛けられた。そして、HRが終わり講堂に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 講堂

 

 

『それでは全校集会を始めさせて頂きます。理事長、お願いします』

 

 

司会の先生がそう言うと理事長がステージに出てきた。

 

 

『みなさん、すでにお聞きしていると思いますが、この度我が音ノ木坂学院は文月学園と姉妹校となります。それにより、文月学園から、我が音ノ木坂学院に試験召喚システムを提供していただくことになりました』

 

 

理事長の試験召喚システムに周囲がざわめき始めた。

私も驚いて両隣の海未ちゃんとことりちゃんを見る。二人も驚きの表情を浮かべていた。

 

 

『それに伴い、今日から夏休み前。一学期が終わるまで文月学園より二名、生徒が音ノ木坂学院に来ることになります』

 

 

理事長の言った、生徒、という言葉にさらにざわめきが走った。

 

 

『今からその二人を紹介したいと思います。二人ともこちらへ』

 

 

理事長がステージ袖に視線をずらして言うと、ステージ袖から足音が二つ聞こえた。

ステージ袖から出てきたのは一人の男子と一人の女子だった。その二人を見て私たちは驚きの声を出した。

 

「え!?」

 

「うそ!?」

 

「まさか!?」

 

何故なら出てきて理事長の横に立ったのは・・・・・・。

 

 

 

『こちらの男子生徒は吉井明久くん。そして、女子生徒は姫宮恵衣菜さんです』

 

 

私たちの幼馴染だったのだから。

 

 

~穂乃果side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

 音ノ木坂学院 午前8時

 

 

他の音ノ木坂学院生がいない時間、僕と恵衣菜は音ノ木坂学院に来ていた。

今日から夏休み前までの期間、僕と恵衣菜が音ノ木坂学院の生徒に召喚獣の操作などを教えるからだ。

 

「どう恵衣菜?そっちは?」

 

「うん、一応全員分の点数はシステムに保存されてるよ。何時でも召喚可能だね」

 

「了解。あとは僕と恵衣菜の召喚獣のデータをこっちに、と」

 

僕と恵衣菜は地下一階に置かれた召喚システムのサーバーにタブレットでアクセスし最終調整を行っていた。

一応昨日も確認したが念のためだ。

もちろん、システムへのアクセス権は理事長のかおりさんも所有している。僕らがいなくなってもマニュアルを渡してあるし、システムのオートメーションシステムでそんなに手入れは必要ないとは思うが、念のため。

そして、最終調整を終えたのは30分が過ぎてからだった。調整を終えた僕らは理事長室に足を運んでいた。

 

「それじゃあ今日からしばらくお願いね二人とも」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

「集会まではまだ時間があるからここで待っていてちょうだい。全生徒が講堂に移動してから私たちも行くから」

 

理事長室でかおりさんと話ながら過ごすこと、さらに一時間が過ぎ・・・・・・

僕らは講堂の舞台袖にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 講堂

 

 

『それでは全校集会を初めさせて頂きます。理事長、お願いします』

 

 

ステージの方から聞こえてくる司会の先生の声に耳を傾けながら僕は恵衣菜を見る。

 

「そういえば明久くん」

 

「なに?」

 

「模擬戦をしてほしいって言っていたけどどこでするのかな?」

 

「多分ステージじゃないかな?」

 

「う~ん、でも、その都度言ってくれると思うからいいかな」

 

「だね」

 

僕と恵衣菜の右腕には虹色に輝く腕輪と空色に輝く腕輪があった。

そして。

 

 

『今からその二人を紹介したいと思います。二人ともこちらへ』

 

 

 

「さあ、行こうか恵衣菜」

 

「うん!」

 

僕と恵衣菜はスポットライトの照らす、ステージへと歩いていった。

ステージに出た僕と恵衣菜はかおりさんの横に立ち止まり、前を向いた。

 

 

「こちらの男子生徒は吉井明久くん。そして、女子生徒は姫宮恵衣菜さんです」

 

 

かおりさんは僕と恵衣菜の名前を言うと、マイクを渡してきた。

それを受け取って僕と恵衣菜は、右手にマイクを持ち言う。

 

「はじめまして音ノ木坂学院生のみなさん。只今理事長からご紹介されました、文月学園より参りました、吉井明久です」

 

「同じく姫宮恵衣菜です」

 

「吉井くんと姫宮さんの二人は文月学園二学年で序列一位と二位の成績保持者です。そして、召喚獣の操作は他の生徒より群を抜いているため文月学園の学園長に依頼され我が音ノ木坂学院に来ました。二人ともここから先はお願いします」

 

かおりさんから場所を譲られ、僕は登壇に、恵衣菜は昨日と同じようにパソコンに開いて後ろのスクリーンに写す。

その間に先生たちは生徒に昨日の縮小改訂版のプリントを二枚配っていた。

配り終えたのを確認すると、僕は恵衣菜に視線を向け軽くうなずいて説明を始めた。

 

「では、試験召喚システムについて説明させていただきます。試験召喚システムは文月学園学園長、藤堂カヲル学園長が学生の学習意欲向上のために開発したものです。この中にも当校の学園祭やオープンキャンパスに来ていただいたかたもいらっしゃると思います」

 

そこまで言うとスクリーンには人が写し出された。

 

「スクリーンに注目してください。こちらは僕たち人間です。そして・・・・・・」

 

次に人の隣に小さい人、召喚獣が写し出される。

 

「こちらの60センチ程が召喚獣です」

 

そして、次に様々な召喚獣が写し出される。

 

「召喚獣には幾万と装備や服装があります。そして、召喚獣の強さは自身のテストの点数により決められます。

例えば・・・・・・」

 

スクリーンにはAクラスからFクラスまでの召喚獣が一体ずつ並べ写される。

 

「こちらの召喚獣Aとこちらの召喚獣B。どちらが強いかと言われるとこちらのAが強いです。自身の保有する点数は召喚獣の頭上に表示されます。Aの召喚獣が100、Bの召喚獣が80と、このように、表示されます。こちらの点数は召喚獣の攻撃力や速さ、防御力となります。自分の点数が高ければ高いほど強くなっていく仕組みですね」

 

そして次に写したのは腕輪だ。

 

「そして、高得点保持者の召喚獣にはこのような腕輪が付きます。腕輪の力は強力ですが、代償として点数が減ります。腕輪にも幾つかありますが何が現れるかはその人によります」

 

次は点数とテストが写される。

 

「召喚獣の頭上に表示されてる点数が0になるとその人は戦闘不能。戦死と言うことになりますので、戦うことは出来ません。しかし、戦死する前。つまり、点数が0にならなければ補充試験、再度テストを受けていただくことで点数の補充が可能です。ですが、もう一度テストを受けると、前のテストの結果が白紙になりその時受けたテストの点数がその人の点数になりますので注意してください」

 

そしてスクリーンに次のことが写し出される。

 

「試験召喚戦争のルールは・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《説明中》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・以上が試験召喚システムについてとなります」

 

それからさらに試召戦争のルールや召喚範囲などを説明した。

 

「なにかご不明な点はありましたか?」

 

僕は周囲を見渡して聞く。

 

「では、僕からは以上となります。ありがとうございました」

 

質問者がいなかったため僕は説明を終了することにした。

説明を終えるとステージ袖からかおりさんが出てきた。

 

「二人とも説明ありがとう」

 

「いえ」

 

「このあとは実際に吉井くんと姫宮さんの召喚獣とその操作を観てもらいます。生徒のみなさんは先生方の指示にしたがってグラウンドに集合してください」

 

「「え!?」」

 

僕と恵衣菜はかおりさんの声に小さく声を漏らした。

まさか講堂ではなくグラウンドでするとは思わなかったのだ。

 

「それでは先生方お願いします」

 

かおりさんはそう言うと僕と恵衣菜を連れてステージ袖に向かった。

 

「二人ともいい説明だったわ」

 

「ありがとうございますかおりさん」

 

「ありがとうございます」

 

「それでこのあとは二人に闘ってもらうんだけど・・・・・・」

 

「はい、準備は大丈夫ですよ」

 

「私も大丈夫です」

 

「そう?ならよかったわ」

 

「あ、かおりさん」

 

「なにかしら?」

 

「フィールドの構築かおりさんにお願いしてもいいですか?」

 

「ええ、いいわよ」

 

「ありがとうございます」

 

フィールドの構築をかおりさんにお願いして、僕らはかおりさんとともにグラウンドへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラウンド

 

 

グラウンドに来て対面する僕らは、周囲を生徒と先生に囲まれていた。

 

「それじゃあ二人ともいいわね?」

 

「はい!」

 

「大丈夫です!」

 

「では・・・・・・承認します!」

 

かおりさんを中心に召喚フィールドが構築された。

フィールドの範囲は十メートルではなく三十メートルだ。かおりさんにからの要望で、僕が端末で変更したのだ。フィールドの周りを生徒と先生たちが興味深そうに見守る。

 

「はじめようか恵衣菜」

 

「ですね明久くん」

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年 吉井明久  10245点

 

VS

 

 二年 姫宮恵衣菜 10057点

 

 

 

 

 

 

 

「それでは・・・・・・・・・・始め!」

 

 

 

「いくよ!」

 

「いきます!」

 

 

かおりさんの始めの声が掛かると僕と恵衣菜の召喚獣はそれぞれ双剣と細剣を構えて、フィールド中央に向かって駆け、同時にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第Ⅱ門 明久VS恵衣菜

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

明久)文月学園と姉妹校になった音ノ木坂学院に来た僕と恵衣菜。初日の挨拶や試験召喚獣について説明とかで大変。そして、理事長であるかおりさんからの頼みで恵衣菜と模擬戦することになったんだけど・・・・・・。もちろん手加減なんかしないよ恵衣菜。最初から全力勝負だからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「それでは・・・・・・・・・・始め!」

 

 

 

 

「いくよ!」

 

「いきます!」

 

 

 

かおりさんの始めの声が掛かると僕と恵衣菜の召喚獣はそれぞれ双剣と細剣を構えて、フィールド中央に向かって駆け、同時にぶつかった。

 

 

ガキンッ!

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年 吉井明久  10245点

 

VS

 

 二年 姫宮恵衣菜 10057点

 

 

 

双剣と細剣がフィールドの中央でぶつかり、甲高い金属音と衝撃波が起こった。

僕と恵衣菜の召喚獣の頭上には互いの点数が表示されている。

 

「恵衣菜も一万点越えたんだね」

 

「うん。少しでも明久くんに追い付くために零華ちゃんと合宿中に勉強したんだ」

 

「なるほどね」

 

鍔迫り合いが拮抗するなか僕と恵衣菜は話す。

 

キンッ!

 

甲高い金属音がなり、僕と恵衣菜の召喚獣は地面を後退るように下がる。

 

「くっ!」

 

「うっ!」

 

互いに体勢を取り直して武器を遠距離に変え、同時に腕輪を発動させた。

 

属性付与(エンチャント)発動!全属性(オールエレメント)!」

 

多弾攻撃(マルチプル)発動!」

 

僕の召喚獣が銃のトリガーを引くのと、恵衣菜の召喚獣が弓を放つのはほぼ同時だった。

一発の弾丸と一筋の矢が中央でぶつかり、カン!と音を立てて軌道が反れて飛んでいく。

 

(イグニス)!」

 

僕は両の銃に炎属性を付与して弾丸を放つ。

そして続けて。

 

(グラキアーリス)(フルグラーリス)!」

 

氷と雷を付与した弾丸を放った。

 

「せいっ!」

 

だがそれを恵衣菜の召喚獣は弓で的確に弾丸の中心点を射ち、軌道をずらしてかわす。

 

「さすが恵衣菜。油断できないね」

 

「明久くんこそ・・・・・・。さすがだね」

 

僕と恵衣菜は目配せをして召喚獣の攻撃を止めた。

 

「理事長」

 

僕はフィールドを構築しているかおりさんに声をかける。

 

「なにかしら明久君?」

 

「本気で恵衣菜と闘ってもいいですか?」

 

「え?」

 

かおりさんは少し驚きの表情を出していた。

僕と恵衣菜の右腕にはキラリと腕輪が輝いた。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~穂乃果side~

 

 

「明久くんと恵衣菜ちゃんの闘いか~」

 

「二人がここにいるとは思いませんでしたね」

 

「うん。ことりもビックリだよ」

 

穂乃果たちは先生たちの指示のもとグラウンドに来ていた。そして、明久くんと恵衣菜ちゃんを囲むように音ノ木坂生と教師の面々が立っていた。

その中、穂乃果たちはグラウンドの中央で観戦していて、隣の海未ちゃんとことりちゃんがそう言う。

するとグラウンドの中央に立った理事長が二人に聞く。

 

 

「それじゃあ二人ともいいわね?」

 

「はい!」

 

「大丈夫です!」

 

「では・・・・・・承認します!」

 

理事長を中心に、文月学園の学園祭で見たのと同じ召喚フィールドが張られた。

その光景に私の周囲の人たちが、わっ、っと驚きの声をあげるのが聞こえた。

 

「はじめようか恵衣菜」

 

「ですね明久くん」

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

そして二人の召喚獣が召喚された。

召喚された召喚獣は学園祭で見たものと同じ召喚獣だった。そして表示された点数は・・・・・・。

 

 

 

 

総合科目

 

 

 二年 吉井明久  10245点

 

VS

 

 二年 姫宮恵衣菜 10057点

 

 

 

 

 

『『『『『ええぇぇぇええええええええええええええっ!!!?』』』』』

 

周囲の人たちが、と言うか先生まで驚愕の悲鳴をあげていた。

そしてもちろんそれは穂乃果たちもで。

 

「ふ、二人とも、一万点オーバー・・・・・・」

 

「さ、さすが明久と恵衣菜、なのでしょうか・・・・・・」

 

「言葉が出ないよ・・・・・・」

 

そして二人の対決が始まった。

 

 

 

「それでは・・・・・・・・・・始め!」

 

 

 

「いくよ!」

 

「いきます!」

 

 

 

明久くんと恵衣菜ちゃんの召喚獣がグラウンドに形成されたフィールドの中央でぶつかり衝撃波と甲高い金属音が響いた。

 

「速い」

 

「ええ。二人とも速すぎます」

 

「動きが見えないよ~」

 

観るための模擬戦のはずなのに、正直速すぎる。二人の召喚獣が。

今は遠距離からの攻撃をしている。明久くんが二丁拳銃で、恵衣菜ちゃんが弓だね。

そしてしばらく撃ち合って明久くんが理事長に声をかけた。

 

「理事長」

 

「なにかしら明久君?」

 

「本気で恵衣菜と闘ってもいいですか?」

 

「え?」

 

明久くんの言葉に私たちも、えっ?とつい言ってしまった。

 

「あ、あれで本気じゃないの?」

 

「ま、まさか、そんなはずは・・・・・・」

 

「で、でも、二人とも眼が・・・・・・」

 

ことりちゃんが言うとおり、明久くんと恵衣菜ちゃんの眼は冗談を言っている感じじゃなかった。

あれだけでも凄いのにまだ本気じゃないの二人とも!?

 

~穂乃果side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「本気で恵衣菜と闘ってもいいですか?」

 

「え?」

 

僕はかおりさんに聞いた。

本気で恵衣菜と闘っていいかと。

 

「それは構わないのだけど・・・・・・まだ本気じゃなかったの?」

 

「いえ、十分本気ですよ。まあ、周囲に広がらないよう加減はしてますけど。それに恵衣菜相手に手加減は出来ませんから」

 

「うん。私も、明久くん相手に手加減は出来ないね」

 

「え~と、つまり、どう言うことかしら」

 

「えっとですね。これを使いたいのですが」

 

僕はそう言うと右手を出して、手首に付けている腕輪を見せた。

 

「ああ、なるほど・・・・・・。いいわよ二人とも」

 

「ありがとうございます」

 

僕はかおりさんに礼を言うと、再び恵衣菜に向き直る。

 

「じゃあ許可も得たことだし・・・・・・」

 

「うん」

 

「いくよ、恵衣菜」

 

「もちろんだよ、明久くん」

 

僕と恵衣菜は同時に腕輪の起動ワードを言う。

 

 

終わりと始まりの双翼(ゼロ・ウイング)!」

 

 

吹き荒れろ(テンペスト)――疾風よ(アネモイ)!」

 

 

腕輪の起動ワードを言うと、僕の召喚獣の背には虹色の双翼が。恵衣菜の召喚獣には風が衣のように恵衣菜の召喚獣の周囲を吹き舞っていた。

 

「さあ、始めようか恵衣菜」

 

「そうだね明久くん」

 

「僕との・・・・・・」

 

「私との・・・・・・」

 

「「――――――闘いを!」」

 

そう言うのとほぼ同時に攻撃を始めた。

遠距離からの攻撃に加え近接戦闘へのシフト。それも宙を翔びながら闘う。

 

事象改変(オーバーライド)起動(アクティベーション)!」

 

「閃光、発動!」

 

そして僕らは二つ目の腕輪を起動させる。

 

「はあっ!」

 

「せいっ!」

 

恵衣菜の分裂して降り注がれる矢を弾丸で落とし、剣で切り裂く。

僕の放つ弾丸は恵衣菜の矢で落とされ、細剣で二つに弾丸を裂かれる。

 

「くっ!これはどう!」

 

僕は自身の召喚獣の周囲に魔方陣を出現させ、そこから出る光弾を恵衣菜の召喚獣に向けて放つ。

 

「させないよ!」

 

その光弾を恵衣菜の召喚獣は多弾攻撃の矢で相殺する。

恵衣菜の召喚獣が放つ矢には恵衣菜の召喚獣が纏ってる風が付与されていた。

 

「次はこっちの番!貫いて!」

 

「なっ!?」

 

恵衣菜の召喚獣から放たれた矢は、通常の矢より太く大きかった。そして何より速い。

 

「くうっ!」

 

僕はそれをギリギリのところで回避する。

 

「まだだよ!」

 

しかも連射してきた。

恐らく、《多弾攻撃》を一点に凝縮して更にそこに《閃光》と纏ってる風で付与して放ったのだろう。速さで言うなら、あの攻撃は今までで一番の速さだ。

それなら僕は。

 

「バインド!」

 

僕は弾丸を追尾式の拘束型にして恵衣菜の召喚獣を拘束する。

 

「うそっ!?動けない!」

 

四肢を光の輪で拘束され恵衣菜の召喚獣はしばらく動けない。

僕はその間に弾丸を呪式弾に事象改変し、恵衣菜の召喚獣ではなく、周囲に撃つ。

そしてそれを4発、恵衣菜の召喚獣の四方を囲む形にする。

 

「これなら避けられないよね、いくよ恵衣菜!」

 

銃の砲口を上に向ける。

すると、召喚獣の足元に複雑怪奇な蒼の魔方陣が描かれ、同時に右手の白銀の銃の砲口にも純白の魔方陣が描かれる。それと同時に、呪式弾を放った場所に砲口と似たような小型の魔方陣が現出する。

 

「くっ!」

 

恵衣菜の召喚獣は必死に脱け出そうとするが、バインドで上手く動けない。まあ、後数秒でバインドが解けるだろうけど。だからその前に攻撃する。

 

「―――突き穿て!―――ライトニング・バスター!」

 

砲口を恵衣菜の召喚獣に向け白銀の銃のトリガーを引いた。白銀の銃からは純白のレーザー光線が放たれた。

それと同時に四方からもレーザーが放たれ恵衣菜の召喚獣に迫った。

 

 

ドガンッ!

 

 

五つの場所から放たれたレーザーが恵衣菜の召喚獣に当たり爆発を起こした。

爆発が起こり、爆風と爆煙が起こる。そして、晴れるとそこには・・・・・・

 

「えっ!?」

 

なにもなかった。

恵衣菜の召喚獣もいなかった。ってことは。

 

「っ!」

 

僕は瞬時に召喚獣をその場から退避させた。

召喚獣が待避した一秒後、召喚獣がいた場所を大きな光矢が降り注いだ。

光矢が放たれた場所、上空を見るとそこにはほぼ無傷の恵衣菜の召喚獣矢をつがえてる姿があった。

 

「当たる直前にバインドから脱け出したの!?」

 

バインドが解けて『ライトニング・バスター』が当たるまでは一秒もなかったはずだ。だが、恵衣菜の召喚獣はその一秒の間にその場から離れ上空に上がった。凄まじい速さだ。

 

「危なかった~。ギリギリだったよ」

 

「まさか避けられるなんて思わなかったよ」

 

「いや~、結構ギリギリだったからね。イチかバチかだったよ」

 

この時点での僕と恵衣菜の点数は。

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年 吉井明久  7869点

 

VS

 

 二年 姫宮恵衣菜 7791点

 

 

 

 

 

となっていた。

 

「やっぱり恵衣菜が相手だからかな?何時もと違うな~」

 

今まで闘ってきた中で零華と同じくらい、恵衣菜はすごい。ここまで互角に戦えるのはそういないからね。

 

「そうだね。さあ、続けようよ明久くん」

 

「わかってるよ」

 

話ながらも僕と恵衣菜の召喚獣は近接戦闘をしていた。

空中という三次元をフルに活用して攻撃する。

右斬り上げからの左突き。左突きから回し蹴り、等々接近戦闘を繰り広げる。

 

キンッ!キンッキンッ!

 

「ぜあっ!」

 

「やあっ!」

 

離れたら遠距離武器で、近距離は近接戦闘武器で行う。

 

「いけっ!」

 

「こちらも!」

 

恵衣菜の召喚獣の《多弾攻撃》による幾数の矢を、事象改変で"ある"ことにした魔法で相殺して打ち落とす。

恵衣菜の召喚獣は魔法攻撃がない、純粋な物理戦闘タイプ。対して僕は事象改変で魔法をある、と言うことに出来るためほぼ万能タイプ。

どちらが有利かと言われると、僕が有利に見えるだろう。だが、実際はそうでもない。何故なら、恵衣菜の召喚獣は僕の召喚獣より速さが桁違いだ。

事象改変でなんとか追い付いているほどだ。

 

「くっ!さすが恵衣菜速いし的確だね」

 

「明久くんこそ。よく私の速度に追い付いて来られるね」

 

油断できない。

集中しないと殺られる。僕は恵衣菜の、恵衣菜は僕の、互いのクセや動きを熟知しているからこそ分かる。

呼吸を整えて、恵衣菜の召喚獣との戦闘に集中する。

 

「動きが速いなら!」

 

僕は恵衣菜との召喚獣との鍔迫り合いを、双翼でバランスをわざと崩させ、離れて再び呪式弾を撃つ。

 

「くっ!」

 

恵衣菜の召喚獣は迫り来る呪式弾を撃ち落とす。

けど、それはフェイク。本命は・・・・・・

 

「ぜぇぇりゃああ!!」

 

呪式弾ではなく双剣による振り抜き様による一閃の切り裂き。

呪式弾を囮として、その間に出せる限りのスピードで恵衣菜の召喚獣に迫って攻撃したのだ。

 

「っ!?やるね明久くん!」

 

「まあね」

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年 吉井明久  5681点

 

VS

 

 二年 姫宮恵衣菜 5347点

 

 

 

 

 

「ようやく最初の半分かな」

 

「うん」

 

「ところで恵衣菜さ、気付いてる?」

 

「うん・・・・・・なんとなくだけど」

 

僕と恵衣菜は召喚獣の操作を一旦止め、召喚フィールドの外を見る。

 

「「なんでみんな落ち込んでるの!?」」

 

そうなんでか知らないが教師も含めたほとんどの人が地面に膝をついて鬱状態になっていた。

 

「それは多分、二人の点数に驚いたからじゃないかしら」

 

するとかおりさんが苦笑いをしながらいってきた。

 

「「えぇ!?」」

 

僕と恵衣菜はかおりさんの言葉にすっとんきょうな声を出す。

 

「ど、どうする恵衣菜、最後までやる?」

 

「ど、どうしようか」

 

僕と恵衣菜は同時にかおりさんに視線を向ける。

 

「どうせなら最後までやってほしいのだけど・・・・・・それはまた次回でいいかしら?さすがにこの状況では・・・・・・ね」

 

「ですね」

 

「そうした方が良さそうだね」

 

僕と恵衣菜は不完全燃焼ながらも周りの状況になんとも言えなく、勝負はお預けという形となって終わった。

なんか納得いかない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年一組 

 

 

「今日から夏休み前までウチのクラスに入ることになった吉井と姫宮だ。みんな、仲良くしなよ~」

 

「え~と、吉井明久です。しばらくの間お世話になります?かな。よろしくお願いします」

 

「姫宮恵衣菜です、明久くん同様、しばらくの間よろしくお願いします」

 

あの後、その場でかおりさんの話があって解散。

各クラス毎に教室に戻ったのを確認すると、僕と恵衣菜は一度かおりさんと理事長に行き、今後の予定を確認して、二年一組の担任の山田先生と共に二年一組に行った。そして今に至る。

 

「二人の席は一番後ろのあそこや」

 

山田先生の指差したところは窓際の席だった。

 

「「はい」」

 

クラスの女子から興味深そうな視線を当てられながらも恵衣菜とともに一番後ろの席に行き座る。

 

「ほんじゃまあ、午前はこれで終わりやな。午後からは授業があるから忘れるなよー」

 

そう言うとチャイムが鳴り、山田先生は教室から出ていった。

そしてそれと同時に。

 

「「明久くん!」」

 

「明久!」

 

三人の女子・・・・・・というか幼馴染みが来た。

そう、このクラス二年一組はなんと穂乃果、海未、ことりの在籍してるクラスだったのだ。

このクラスを見たときに一番それが驚いた。

 

「な、なに三人とも」

 

「「「詳しく話を聞かせてくれる(ますか)?!」」」

 

「え、あ、うん」

 

三人の気迫に僕はやや引きながらも答えた。

恵衣菜は若干引きつった笑みを浮かべていたのが記憶に新しかったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









次回 『召喚獣操作(レクチャー)』 GO to The Next LoveLive!


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第Ⅲ門 召喚獣操作(レクチャー)

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

恵衣菜)明久くんとの模擬戦が終わって音ノ木坂学院で過ごす最初の昼休み!まさか同じクラスに穂乃果ちゃんたちがいるとは思わなかった私は明久くんと、穂乃果ちゃんたちがいる姿に驚いちゃったよ。そして始まる音ノ木坂学院での召喚獣操作訓練。私も明久くんも教えることは少し苦手だけど、頑張らないとね。一緒に頑張ろうね明久くん♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

「「明久くん!」」

 

「明久!」

 

「な、なに三人とも」

 

「「「詳しく話を聞かせてくれる(ますか)?!」」」

 

「え、あ、うん」

 

 

 

同じクラスの幼馴染三人に至近距離から言われた僕は恵衣菜と一緒に中庭でお昼を食べながら説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――と言うわけで僕と恵衣菜は夏休み前まで音ノ木坂学院に通うことになったんだよ」

 

手早く、簡潔に説明した僕は恵衣菜から渡されたお茶を飲んで喉を潤わせた。

 

「なるほど・・・・・・そういうことですか」

 

「なるほどね~」

 

「え?えっと、どういう意味?」

 

海未とことりが理解できるなか穂乃果は理解できてないみたいだった。

 

「えっとね、文月学園と音ノ木坂学院が姉妹校になって、音ノ木坂学院に文月学園の試験召喚システムを提供したんだけど、音ノ木坂学院には試験召喚システムを知ってる人や召喚獣を教えることができないでしょ」

 

「うん」

 

「それで、僕と恵衣菜が文月学園から派遣されてしばらく音ノ木坂学院に通って、システムと召喚獣の操作を音ノ木坂の人に教えるということ」

 

恵衣菜と僕は苦笑しながら穂乃果に分かりやすく説明する。

 

「なるほど。そういうことか~」

 

「わかった?」

 

「うん」

 

「ですが、何故教えてくれなかったのですか?」

 

「あー、えっと、学園長・・・・・・お祖母ちゃんから言わないようにって言われてたから」

 

僕は海未の不機嫌そうな声にそう言う。

 

「はぁ。まあ、明久と恵衣菜と一緒にしばらく通えますからね。良しとしますか」

 

「「あはは・・・・・・」」

 

僕と恵衣菜は海未の言葉に苦笑いし、穂乃果たちと会話しながらお昼を過ごした。

そして午後の授業が終わり、帰りのHRで明日は召喚獣操作の練習があることを伝えられ各々帰宅となったのだが。

 

「つ、疲れたぁ~~~~」

 

僕と恵衣菜はHRが終わり、〈アイドル研究部〉に来ていた。そして僕は〈アイドル研究部〉の中にあった椅子に座り身体をテーブルに伸ばしていた。

 

「だ、大丈夫明久?」

 

「大丈夫かしら?」

 

「一体なにがあったのよ」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

真姫と絵里が心配そうにするなか、にこは僕のこの状態に恵衣菜たちに聞いていた。

そもそも何故僕がこの状態になっているのかというと・・・・・・。

 

「休み時間の度にあんなに観られたり質問されたら誰でもこうなりますよ」

 

「た、確かに・・・・・・」

 

「明久くん、大丈夫・・・・・・?生きてる、よね・・・・・・」

 

そう。某IS学園の主人公のような扱いを受けたのだ。

いや、まあ、学生寮がなく学院でしか会わないため、それよりはまだマシなのだが・・・・・・。

 

「うぅぅ・・・・・・零華ぁ~~」

 

「明久くんが壊れ始めちゃってる!?」

 

「妹分が足りないです・・・・・・」

 

僕は机に突っ伏しながらそう言う。

正直、妹分。通称、零華成分。略して妹分。が不足しているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃文月学園では

 

 

 

 

「に、兄様ぁ~~」

 

「だ、代表!?しっかりしてください!」

 

「うぉい!ちょっ!これどうなってるんだぁ!!?」

 

「・・・・・・零華が変になった!?」

 

「れ、零華が壊れちゃった!?」

 

「に、兄様成分が不足しています!兄様ぁ~~~!」

 

『『『『『兄様成分ってなに!!?』』』』』

 

「あらあら。これは思っていた以上に重症ですわね・・・・・・。この様子では恐らく明久君の方も・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

放課後のAクラスでそんなことが起きていたりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音ノ木坂学院 アイドル研究部

 

 

 

「こ、これは思った以上に重症ね」

 

「明久くんがこうなっているところを見ると多分零華ちゃんもなってるんじゃないかなぁ」

 

「なんなのよこの兄妹・・・・・・」

 

絵里が引き攣った笑みを浮かべながらいい、ことりは予測をいい、にこは呆れた感じで言い放つ。

 

「あはは。と、取り敢えず私たちは先に帰るね」

 

「え、ええ。というより練習は水曜までないから平気よ」

 

「じゃ、じゃあ帰ろうか」

 

絵里の言葉にみんな帰り支度をし、僕は右側を恵衣菜に左側を絵里に支えてもらって昇降口に移動した。

 

「大丈夫なの明久」

 

「うん、大丈夫。心配掛けてごめん絵里」

 

「あまり無理しないでよ明久くん」

 

「うん。ありがとう恵衣菜」

 

正門を出た僕は恵衣菜に支えてもらって歩き、そのまま恵衣菜に手伝ってもらって家まで帰った。

途中ことりや海未が助けてくれた。さすがに穂乃果は足を怪我してるからやらない。というか、この一日で状態になるってことは明日から大丈夫かな?まあ、なるようになれだしね。頑張りますか。

僕は家に向かって歩くなかそう考えていた。

家についた僕は、すでに帰宅していた零華を抱き締め妹分を補充した。

ちなみにその光景を葵姉さんと、恵衣菜が引き攣った笑みで見ていたのを視界の端で捉えていた。

そして、今日は零華と一緒にベットで寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日

 

 

 音ノ木坂学院 グラウンド

 

 

 

 

 

 

翌日、僕は穂乃果たち2年生二クラスと2年の先生とグラウンドにいた。

僕と恵衣菜は前に出て挨拶していた。

 

「え~と、それでは今から試験召喚獣の操作をします。分からない所は僕や恵衣菜に聞いてください」

 

僕と恵衣菜の前にはクラス毎に4列に並んでいる。

 

「では、始めたいと思いますので体操体系と同じように距離をとってください」

 

『『『『『はい!』』』』』

 

僕の言葉に元気よく返事して体操体系をとった。

みんながある程度離れたのを確認した僕と恵衣菜は目配せをして、

 

「それじゃあ・・・・・・」

 

右手を上に上げ唱える。

 

「「―――承認!」」

 

僕と恵衣菜を中心に召喚フィールドが形成される。

フィールドはグラウンド全てを覆うように展開された。

フィールドが何時もより広いのは、端末で僕と恵衣菜のフィールド展開範囲を広くしたからだ。

 

「「―――試獣召喚(サモン)」」

 

さらに僕と恵衣菜は召喚獣を召喚する。

表示されている科目は総合科目。

そして僕らの点数は。

 

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 2年一組 吉井明久  5681点

 

 2年一組 姫宮恵衣菜 5347点

 

 

 

 

 

昨日の最後の点数が表示されていた。

そして僕と恵衣菜のあとにみんなも召喚した。

 

 

『『『『『試獣召喚(サモン)』』』』』

 

 

「それでは自分の身体を動かすようにして召喚獣を、このように少し動かしてください」

 

僕はお手本で召喚獣をその場で手を上げたりジャンプをして見せた。

 

『『『『『はい!』』』』』

 

僕の召喚獣の動作を真似するようにみんなの召喚獣も手を上げたりジャンプしたりした。

 

「はい、ストップです。次は歩く動作をします」

 

僕は召喚獣を僕の周囲を歩かせる。

 

「基本的には僕たちが日常通りに、いつも通り歩くのと同じです」

 

召喚獣を歩かせる動作のコツを教える。

思い返せば去年、僕らもこんなことしたんだっけ。

僕は去年、一年生の時に体験した召喚獣操作の練習を思い出した。

歩く動作は難しいのか転んだりふらついたりする召喚獣がいる。

その人には僕と恵衣菜が近づき手助けする。

その行動をして15分後。

なんとか全員歩けるようになった。そして、上達が早い人はすでに走ることも出来ていた。

そのあと一時間ほど掛けて召喚獣の動作のレクチャーをして全員召喚獣が走れたり、装備している武器を扱えるほどにまでいった。

そして今は軽く模擬戦のようなものをしている。

 

「いくよ明久くん!」

 

「いきますよ明久!」

 

「いくからね明久くん!」

 

僕は今、穂乃果、海未、ことりを相手していた。

 

「いいよ三人とも」

 

僕は召喚獣の装備を片手剣一本のみで相手する。

 

「やああああっ!」

 

「せええええいっ!」

 

「てやああああっ!」

 

穂乃果の召喚獣は実家の穂むら屋の時の似たような動きやすい服装に細身の片手剣。海未は弓道着に似た武士のような服装に弓。ことりはメイド服のような服装に魔導士の使うような錫杖を持っていた。

三人の声に合わせてことりが魔法の弾を放ち、穂乃果がそれを追い掛けるように片手剣を構えて、その後ろから海未が援護するように弓を射つ。

 

「なるほど・・・・・・」

 

僕はことりの魔法を弾いて、穂乃果の片手剣を受け止め、海未の放つ矢を穂乃果の片手剣を反らして避ける。

 

「うそぉ!?」

 

「ええっ!?」

 

「そんなのありですか!?」

 

僕の召喚獣の行動に穂乃果たちは驚きの声を上げた。

 

「ほら、召喚獣の動きが止まってるよ三人とも。それじゃあ・・・・・・・!」

 

「「「っ!」」」

 

僕は一瞬で距離を詰め右手の片手剣を寸止めで止め、

 

「攻撃を受けちゃうよ?」

 

僕は少しおちゃけたように三人に言う。

 

「強いよ明久くん~!」

 

「ほんとだよぉ~」

 

「さすがですね明久」

 

「あははは。でも、さっきの連携は良かったよ。ことりの魔法で先攻して、その後に穂乃果が近接で攻撃。そしてそれを海未が弓で援護。連携は良かったんだけど、戦略がまだ足りないかな?」

 

「戦略、ですか?」

 

「うん。試召戦争のときはこうして相手はまってくれないから、次々に戦略や作戦を出さないと。そうじゃないとすぐに殺られちゃうよ?」

 

「う~ん、そう言われても・・・・・・」

 

「あはは、まあ、まだ始めたばかりだし、僕と恵衣菜が戻るまでまだ時間があるからそれまでに考えようよ、ね」

 

「はーい」

 

「うん」

 

「わかりました」

 

「うん。さてと、恵衣菜の方は・・・・・・」

 

恵衣菜の方を見ると、恵衣菜の方は問題なく、5人ずつのチームとチーム戦をしていたり、一人一人の操作を見ていた。

 

「良かった、大丈夫みたいだね」

 

僕が恵衣菜の方を見て安堵し、回りを見てそうも思っていると。

 

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

 

授業終了のチャイムがなった。

どうやら練習時間の二時間を過ぎたみたいだ。

 

「みんな!動きを止めて!」

 

僕は前に出てみんなにそう言う。

 

「時間になったから今日はここまでです」

 

僕はそう言うと恵衣菜と目配せし、召喚フィールドの展開を解除する。

 

「次の授業に遅れないように移動してください。今日は、ありがとうございました」

 

僕と恵衣菜はみんなに頭を下げて言い、みんなを見る。

頭を上げると、拍手が聞こえてきた。

その拍手に僕と恵衣菜はクスッと笑みを互いに浮かべ、穂乃果たち二年生が校舎内に戻っていくのを見る。

そこへ。

 

「吉井と姫宮はこのまま一年生の召喚獣操作訓練になるんだっけな?」

 

山田先生が何時ものジャージ姿できた。

 

「あ、はい」

 

「そうなりますね」

 

「大変なもんだな」

 

「まあ、慣れてますから」

 

山田先生の言葉に僕と恵衣菜は苦笑いを浮かべて答える。

大変なのは文月学園で慣れてるからね。

 

「そんじゃ、あんま無理すんなよお二人さん」

 

山田先生は手を振りながら校舎内に向かった。

召喚獣の操作訓練がある時間帯は基本的にそっちが優先的になるため、操作訓練の時間の授業は後で渡されるプリントを書いて提出すれば出席として判定されるのだ。まあ、僕と恵衣菜だからみたいだけど。

そんなこんなで三、四限目は絵里や希、にこたち三年生の召喚獣操作訓練を、五、六限目は真姫や花陽、凛たち一年生の召喚獣操作訓練で今日一日が過ぎた。

 

「まさか、全時間召喚獣の操作訓練だとは思わなかったよ」

 

「ほんとだね」

 

2年一組で帰りのHRが終わったあと、今日も穂乃果たちμ'sの練習が無いため、穂乃果たちと帰っている最中そう呟いていた。

 

「だ、大丈夫?明久くん、恵衣菜ちゃん」

 

「うん。なんとかね」

 

「教えるのがこんなにキツいなんて・・・・・・」

 

「さすがに六時間連続で全学年に教えたらそうなるわよ」

 

「でも、明日からは一学年ずつになるみたいですから、少しは楽になるのではないでしょうか?」

 

そう、海未の言った通り明日から召喚獣操作訓練は一学年ずつあるのだ。つまり、全学年召喚獣操作訓練は今日だけだったりする。

 

「まあ、ね」

 

「それにしてもみんなの召喚獣、よく似合っていたね」

 

「そう言えばそうやね。ウチが巫女服に刀でエリチが騎士服に細剣やろ」

 

「にこはアイドル服に槍で、花陽は魔女みたいなローブと魔導書でしょ」

 

「真姫ちゃんは音ノ木坂じゃない制服と二丁銃で、凛ちゃんはローブと短剣で動きやすい姿だったね」

 

僕らはみんなの召喚獣の装備を思い出していた。

 

「それにしても意外に召喚獣の操作って難しいのね」

 

「まあ、僕らも去年は同じことしたからね」

 

「そう言えばそうだね~。でも、今は明久くん以上の召喚獣操作者はいないよ」

 

「そうかな?」

 

「先生たちの間で噂になってるみたいだよ」

 

「ええぇ・・・・・・」

 

まさか文月学園の先生方の間でそんな噂が流れているとは・・・・・・思いもよらなかった。

そのあと穂乃果たちと他愛ない話をしたりして時間を過ごし、みんなと分かれ家に恵衣菜と帰宅し、一日が終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんななか今のμ'sの崩壊が始まろうとしていることに、僕を含め、誰も誰一人として気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









次回 『崩壊の欠片』 GO to The Next LoveLive!


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第Ⅳ門 崩壊の欠片

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

穂乃果)ついに始まった召喚獣の操作訓練!明久くんと恵衣菜ちゃんと一緒に音ノ木坂学院に通えるのは嬉しいけど、召喚獣の操作って意外に難しいんだね。

そんな中始まったμ'sの練習、あの時の事がもう二度と起きないように、みんなと叶えたい、この願いを!けど、そんな所に不穏な空気が。一体どうなるμ's!?

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「慣れない・・・・・・」

 

「アハハ・・・そりゃ、私たちだけ制服違うからね」

 

音ノ木坂学院に向かう通学路の階段を上っている僕は、つい隣にいる恵衣菜にそう漏らした。

 

「ところで・・・・・・」

 

「うん・・・・・・穂乃果、元気ないね」

 

僕らは前にいる穂乃果に視線を向けた。

ことりが穂乃果に話しかけようとしているが穂乃果は放心状態で金網に掛かってるLoveLiveのポスターを見ている。ポスターにはつばさたちA-RISEが描かれていた。

恵衣菜と話していると後ろにいる、希たちが

 

「そうやね」

 

「明久と恵衣菜もそう見える?」

 

「学校復帰してからずっとあんな感じじゃない。希」

 

「任せといて!」

 

僕たちと一緒に登校している絵里、にこ、希も同じようにいい、にこが希の名を言う。

希が手をワシワシさせ・・・

 

「わしっ!」

 

「にょわああああああああああ!!!」

 

穂乃果の背後に回り思いっきり穂乃果の胸を鷲掴みした。

 

「あ、明久くん見ちゃダメ!」

 

「おわっ!」

 

僕は恵衣菜の手で目隠しをされた。

目隠しをされたんだけど。

 

「え、恵衣菜、あ、あたってるよ!」

 

「え?~っ///!と、とにかく見ちゃダメだからね!」

 

「う、うん」

 

恵衣菜にそう返していると。

 

「希ちゃん!?」

 

穂乃果が腕を前で交差してガードするようにして振り向いた。

 

「ぼんやりしてたら次はアグレッシブなの行くよ~」

 

「い、いえ、結構ですぅ・・・・・・」

 

ワシワシと手を動かす希に穂乃果は脅えたように答えた。

 

「あんたも諦め悪いわね。いつまでそのポスター見てるつもりよ」

 

僕らと上がったにこが呆れたように穂乃果に言った。

 

「うん。分かってはいるんだけど・・・・・・」

 

「けど?」

 

「けど・・・・・・」

 

「希!」

 

「わぁー!!結構です~!」

 

またしてと穂乃果にワシワシをしようとする希に僕は若干目を反らした。

 

「そうやって元気にしていればみんな気にしないわよ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「それともみんなに気を使ってほしい?」

 

「そういうわけじゃ・・・・・・」

 

「今日からまた練習やるんでしょ。そんなテンションで来られたら迷惑なんだけど」

 

「・・・・・・そうだね。何時までも気にしてもしょうがないよね!」

 

「そうよ。それに私たちの目的は・・・・・・」

 

一旦言葉を区切り絵里は目の前の音ノ木坂学院の校舎に視線を向ける。

 

「この学校をこの学校を存続させること、でしょ!」

 

「うん!」

 

「穂乃果~!」

 

声のした先を見るとそこにはクラスメイトのヒフミトリオがいた。

 

「ん?」

 

「昨日メールしたノートは~?」

 

「あっ!今渡す~。じゃあちょっと行ってくるね」

 

「大丈夫そうやね」

 

元気よくヒフミたちのところに行く穂乃果を見て絵里たちは安堵したような表情になった。

けど、ことりだけは表情が暗かった。

 

「ことり・・・・・・」

 

僕は横にいることりを見て小声で呟いた。

 

「あ、ところで希」

 

「なんや?」

 

「僕がいる前ではあまりああ言うことしないでほしいなぁ~、って、あの、希さん?」

 

「んん~、なんや明久くん?」

 

「なんで手をワシワシさせながら躙り寄ってくるんですか?!」

 

僕は顔をひきつらせて後退りながら希に恐る恐る聞いた。

 

「それは~・・・・・・」

 

「こうするためや!」

 

「ふにゃああああああああああああ!!!」

 

あっという間に後ろに回り込んだかと思いきや、さっき穂乃果にしたのと同じことをしてきた。

あまりの驚きと背中に伝わる希の豊かな感触に僕は女子みたいな悲鳴をあげた。

 

「ほれほれ~!」

 

「の、希、お願い止めてぇぇえええええ!!」

 

「どうしようかな~」

 

「え、恵衣菜、ことり、にこ、絵里お願い助けて~!」

 

「え、え~と・・・・・・・」

 

「アハハハ・・・・・・」

 

「はぁ~・・・・・・」

 

「ど、どうたらいいのかしら・・・・・・」

 

「ホラホラもっと行くでぇ~」

 

「だ、ダレカタスケテェ~~~!!」

 

僕の悲鳴は校舎の方にまで響き渡ったらしく、理事長のかおりさんがかなり心配した顔で大丈夫?と聞いてきた。かおりさんの問いに僕は息も絶え絶えに大丈夫と伝えるしかなかった。そしてそれを横で見ていた恵衣菜とことりは苦笑いを浮かべていたのを僕は視界の端で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後 屋上

 

 

今後の予定について話し合っていたところに一年生組の真姫、凛、花陽が慌てたように屋上に転がり込んできた。

 

「ど、どうしたの三人とも」

 

僕は三人の尋常じゃない焦りが気になり聞いた。

すると凛から。

 

「た・・・」

 

「た・・・」

 

「た、たすけて」

 

凛、真姫、花陽の順にそう言ってきた。

 

「はあ~?」

 

「た、たすけて?」

 

にこは何言ってるのかわからない表情を恵衣菜は首を傾げて言った。

そして三人に案内されて来たのは廊下の踊り場の案内掲示板前だった。

そして目の前には一枚の案内紙が張り出されていた。

紙の一番上には。

 

「え~と、"来年度入学者受付のお知らせ"・・・・・・」

 

と書かれていた。

 

「「「「「「「これって・・・」」」」」」」

 

僕たちは一斉に後ろにいる真姫たちに振り替えって聞いた。

 

「中学生の希望校アンケートの結果が出たんだけど・・・」

 

「去年よりも志願する人がずっと多いらしくて・・・」

 

花陽と真姫の嬉しそうな表情で言う説明に僕らは顔を見合わせた。

 

「と言うことは・・・」

 

「ってことは・・・」

 

「学校は・・・」

 

「音ノ木坂学院は・・・」

 

「・・・存続するってことやん!」

 

僕、穂乃果、海未、恵衣菜、希の順に紙に書いてあることを嬉しそうに言う。

 

「さ、再来年はわからないけどね・・・!」

 

「後輩が出来るの?!」

 

「うん!」

 

「ヤッタァー!」

 

後輩が出来ることに嬉しそうに燥ぐ真姫、凛、花陽に僕は少し笑みを作って視線を右の廊下に移す。

するとそこから練習着の姿で顔を俯かせてトボトボと歩いてくることりの姿があった。

するとことりの姿に気づいた穂乃果が。

 

「あ!ことりちゃ~ん!」

 

「わあっ!」

 

ことりに思いっきり抱きついた。

さすがのことりも驚いた声をあげた。

 

「え、え?」

 

「ことり、これ」

 

戸惑いの声を出すことりに、僕は掲示板に張られていた紙を海未たちと一緒に見せる。

 

「へ?へ?」

 

「やった、やったよ!学校続くんだって。私たちやったんだよ!」

 

「うそ、じゃないんだ・・・」

 

「うん!」

 

嬉しそうに涙目のことりと抱き合う穂乃果に絵里が、

 

「ハラショー」

 

と小さく呟いた。

 

「良かったね明久くん」

 

「うん。再来年は分からないけど、ずっと音ノ木坂学院が存校出来るようにしないとね恵衣菜」

 

「うん、そうだね」

 

その光景に僕は隣の恵衣菜に小さな声で話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校門前

 

 

「本当に?」

 

「ええ!」

 

練習後、校門の側でお姉ちゃんの絵里を待っていたであろう亜里沙ちゃんに絵里がさっきの来年度入学者受付のお知らせを伝えた。

亜里沙ちゃんは無邪気な子供のように喜び燥いでいた。

 

「うれしい!やった、やった!」

 

「よかったね!」

 

「よかったね亜里沙ちゃん」

 

「うん!来年から、よろしくお願いします!」

 

「それには・・・・・・入試で合格しないとダメね」

 

「うん、頑張る!」

 

「あ~あ。うちの雪穂も受験するって言わないかな~」

 

「あ、この前話したらちょっと迷ってました」

 

「本当!?よしっ!」

 

雪穂ちゃんが迷っていると聞いた穂乃果はガッツポーズを取っていた。

不意に思い出したかのように穂乃果は絵里に聞いた。

 

「あ、でも次のライブどうしよう?」

 

「そうね、急ぎでやる必要はなくなってしまったわね」

 

「そうだね~・・・・・・」

 

「あ、あのっ!私ちょっと買い物があるからここで・・・・・・」

 

「え、何買いに行くの?」

 

「ちょっと・・・・・・」

 

「付き合おうか?」

 

「ううん、明久くんに頼んであるから大丈夫。じゃ・・・・・・」

 

僕はことりのその言葉に少しギョッとしたがうなずき、

 

「ごめん、恵衣菜。先に帰ってて」

 

「うん。気を付けてね」

 

恵衣菜と分かれことりの後について行く。

しばらく歩き学院から離れた住宅街でことりが僕の横に並んだ。

 

「ごめんね明久くん」

 

「気にしないでことり」

 

「でも・・・・・・」

 

「恵衣菜には後で説明するから、ね」

 

「うん、ありがとう明久くん」

 

僕とことりはそのまま歩いた。

少し行くと海未が壁に寄りかかって待っていた。

 

「海未・・・」

 

「明久・・・」

 

僕とことりはそのまま海未も一緒に歩き僕らが昔よく遊んでいた公園のベンチに腰かけた。

 

「遅らせれば遅らせるほど辛いだけですよ」

 

「うん」

 

「もう決めたのでしょう?」

 

「うん」

 

「でも、決める前に穂乃果ちゃんに相談できていたら何て言ってくれたのかなって。それを思うと、上手く言えなくて」

 

「ことり・・・」

 

「明久くん、どうしたらいいと思う・・・・・・?」

 

「それは・・・・・・」

 

僕はことりの質問に答えられなかった。一番辛いのはことりだと分かっているからだ。それはもちろん僕や海未もだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土曜 音ノ木坂学院 アイドル研究部

 

 

週末の土曜。僕、恵衣菜、零華は音ノ木坂学院のアイドル研究部にいた。

理由は音ノ木坂学院存続決定のパーティーに呼ばれたからだ。

 

「では、とりあえず~。にっこにっこにー!みんな~、グラスは持ったかな~?学校存続が決まったと言うことで、部長のにこにーから一言、挨拶させていただきたいと思いま~す!」

 

『『『わぁ~~~!』』』

 

前に立ったにこの台詞に穂乃果たちが拍手をならした。けどその中で僕と恵衣菜、零華、ことり、海未の表情は暗かった。

 

「「「「「「かんぱーい!」」」」」」

 

「ちょっと待ちなさ~い!」

 

にこが演説するのを遮って、穂乃果たちがグラス。と言うか紙コップを掲げて乾杯した。にこも慌てて乾杯する。

 

「とりあえず、乾杯かな?」

 

「うん」

 

「そうだねお兄ちゃん」

 

僕らもあそこまではしゃぎはしないが乾杯をする。

ちなみに部室にある食べ物の幾つかは僕が作ったのものだ。手ぶらで行くのもどうかと思い作ってみた。

やっとこれで一つ肩の荷が降りた感じだ。いや、まだあるかな?

僕は海未とことりの方を向いて思う。

零華と恵衣菜は絵里たちの方に行って会話をしていて、僕は壁際にいた。

 

「ことり・・・海未・・・」

 

「明久くん・・・」

 

「明久・・・」

 

「みんなに話すけどいい・・・?」

 

「でも、今は・・・」

 

「ことり。・・・明久」

 

「うん・・・」

 

僕と海未はうなずきあい、立ち上がってみんなの方を向いた。

 

「ごめん、みんな」

 

「ごめんなさい。みんなにちょっと話があるんです」

 

『『『???』』』

 

僕と海未の言葉に恵衣菜と零華以外は疑問顔を浮かべた。

 

「聞いてる?」

 

「ううん」

 

「実は・・・・・・」

 

「みんな、突然だけど。ことりが留学することになったんだ。二週間後に日本を発つそうなんだ」

 

海未の言葉を引き継ぎ僕がみんなに言う。

すると予想していた通り、さっきまで賑やかだった空気がシンッ、と静かになった。

 

「なに・・・?」

 

「うそ・・・」

 

「ちょっとどういうこと・・・?」

 

戸惑いの声を出す真姫たちにことりが俯いたまま話した。

 

「前から服飾の勉強したいって思ってて、そしたらお母さんの知り合いの学校の人が来てみないか、って。ごめんね、もっと前に話そうと思ってたんだけど」

 

「学園祭のライブで纏まっているときに言うのは良くないと、ことりは気を使っていたんです」

 

「それで最近・・・」

 

「行ったきり戻ってこないのね?」

 

絵里の問いにことりは静かに小さくうなずいた。

 

「高校を卒業するまでは、多分・・・・・・」

 

ことりがそう言うと暫しの沈黙が走った。

それを破ったのは立ち上がった穂乃果だった。

 

「・・・・・・どうして言ってくれなかったの?」

 

「だから学園祭があったから」

 

「海未ちゃんは知ってたんだ。明久くんと恵衣菜ちゃんも零華ちゃんも知っていたんでしょ?」

 

「それは・・・・・・」

 

「うん・・・・・・。ことりに一番に相談されたから。恵衣菜と零華も電話で聞いたから。つばさも知ってるよ」

 

「何時から知ってたの?」

 

「清涼祭が終わった翌週の土曜日」

 

「そんな前から・・・・・・」

 

僕の言葉に絵里がそう漏らしたのが耳に入った。

穂乃果は僕と海未の横を通りすぎことりに目線を合わせるようにしゃがみこんだ。

 

「どうして言ってくれなかったの?ライブが合ったからってのもわかるよ。でも、私と明久くん、海未ちゃん、ことりちゃん、恵衣菜ちゃん、零華ちゃん、つばさちゃんはずっと・・・・・・」

 

「穂乃果」

 

「ことりちゃんの気持ちもわかってあげないと」

 

「わからないよ!だって居なくなっちゃうんだよ!ずっと一緒だったのに、離ればなれになっちゃうんだよ?!そんなの・・・・・・」

 

絵里と希の声に穂乃果は感情を露にして声を荒げて言う。そこへことりが弱々しく涙声で言った。

 

「何度も、言おうとしたよ。でも穂乃果ちゃんライブをやるのに夢中で。ラブライブに夢中で。だからライブが終わったらすぐ言おうと思ってた。相談に乗って貰おうと思ってた。でも、あんなことになって・・・・・・。聞いてほしかったよ穂乃果ちゃんにも!穂乃果ちゃんにも相談したかった!穂乃果ちゃんはずっと側にいてくれた友達だよ!そんなの・・・そんなの当たり前だよ!」

 

「ことりちゃん!」

 

ことりは泣きながら涙を流して部室から走って出ていった。

 

「ずっと、行くかどうか迷っていたみたいです。いえ、寧ろ行きたがってないように見えました。ずっと穂乃果を気にしてて。穂乃果に相談したら何て言うかってそればかり。黙っているつもりはなかったんです。本当にライブが終わったらすぐ相談するつもりだったんです。分かってあげてください」

 

「僕もことりは穂乃果のこと心配してたよ。海未の言う通り留学のことより穂乃果のこと・・・・・・僕たちのことをずっと気にかけていた。当然だよ、僕たちは幼馴染みで友達なんだから・・・・・・」

 

僕はことりを追い掛けるため部室の扉の前にたって背を向けて言う。

 

「お願いわかってあげて穂乃果」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・海未、後の事お願い」

 

「ええ、分かってます」

 

僕は海未にあとのことお願いするとことりを追い掛けに向かった。

ことりを探しに校舎を駆け回りしばらくして見つけた。ことりがいたのは屋上の日陰部分で、ことりはそこで体育座りで膝に顔を埋もれさせていた。

 

「ことり」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「隣、いい・・・?」

 

「うん・・・・・・」

 

ことりの右隣に同じ様に体育座りで座る。

 

「・・・・・・明久くん」

 

「なに」

 

「間違ってたのかな・・・・・・?」

 

「今伝えたこと?」

 

「うん・・・・・・」

 

「間違ってはいないと思う・・・・・・。でも、言ったのは僕と海未だから、ことりが自分を責める必要は・・・・・・」

 

「ううん。私が何時までも言わなかったから・・・穂乃果ちゃんに相談しなかったから・・・ずっと言い出せなかったから・・・・・・」

 

「ことり・・・」

 

「私が何時までもウジウジしていたから・・・」

 

「そんな事無いよ」

 

「え・・・?」

 

「ことりはみんなの事想って言えなかったんでしょ?穂乃果のライブへの集中を無くさないために」

 

「・・・・・・」

 

「僕がことりの立場だったら多分、ことりと同じ事をしたと思うから」

 

「明久くん・・・ありがとう明久くん・・・・・・」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことりの留学の話の翌週、まさかこんなことになるなんて思わなかった。

 

 

 

 

 

 

「辞めます・・・・・・私、スクールアイドル、辞めます」

 

 

 

 

「あなたがそんな人だとは思いませんでした。あなたは・・・あなたは最低です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

μ'sが解散になろうとしていたことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『崩壊(終わり)と解散』 GO to The Next LoveLive!


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第Ⅴ門 崩壊(終わり)と解散

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

海未)ことりの留学すると言う話で嬉しいはずの音ノ木坂学院存続パーティーが暗いものになってしまいました。私の判断は間違っていたのでしょうか・・・・・・。そしてそこから始まったμ'sの異変。明久、私たちはどうしたらいいのでしょうか・・・・・・。お願いします、明久。また私たちに力を貸してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「やっぱり今日言ったのは失敗だった・・・のかな・・・・・・?」

 

音ノ木坂学院から家に帰る最中、僕は両隣を歩く恵衣菜と零華だけに聞こえるように小さな声で言った。

 

「ううん。失敗じゃなかったと思うよ。私もたぶん海未ちゃんと同じ行動したと思うから・・・」

 

「私もだよ、お兄ちゃん」

 

「恵衣菜・・・零華・・・」

 

そのあと僕らは帰り道の途中にあるスーパーに寄って食材を買って家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

週明け

 

 

音ノ木坂学院

 

 

 

「朝早くにごめんなさい明久、恵衣菜」

 

何時もより早めに登校してきた僕と恵衣菜は絵里に呼ばれて屋上に来ていた。

 

「気にしないでよ絵里。なんとなく予想していたから。ね、恵衣菜」

 

「うん!だから気にしないで絵里ちゃん」

 

「ありがとう、二人とも・・・」

 

「それで・・・・・・」

 

周囲を見ると、留学準備で休んでいることりと穂乃果以外の海未たち7人がいた。

 

「どうしたの?ことりはともかく穂乃果がいないけど?」

 

「そう言えばそうだね」

 

「・・・・・・穂乃果に言う前にみんなで相談したいことがあるんです。明久と恵衣菜にも意見を聞きたいと思いまして」

 

「相談?」

 

僕と恵衣菜は海未の言葉に首をかしげる。

 

「実は・・・・・・ことりのためにライブをしないかと思うの」

 

「ライブ?ことりのために?」

 

「ええ。ことりが留学して向こうに行ったらもうμ'sは全員揃うことないでしょ?少なくとも私たちの在学中は」

 

「そうだね」

 

「それでよ。ことりの留学の応援もかねて最後に思いっきりやろうって思うのよ」

 

「どうかしら?」

 

絵里、真姫、にこの説明に僕は少し悩んだ。

 

「私はいいと思うよ。明久くんはどうかな?」

 

恵衣菜は海未たちの提案に賛成らしい。

 

「う~ん。僕もいいとは思うんだけど・・・」

 

「だけど?」

 

「穂乃果が、ね・・・・・・」

 

僕は正直、穂乃果がこのライブをするかどうか悩んだ。今の穂乃果にライブが出来るとは思えないから。たぶんだけど、ことりの留学も自分のせいにしてると思う。

 

「取り敢えず穂乃果にも話してみよう。それで穂乃果が賛成したらライブをしてもいいんじゃないかな?」

 

「そうね。そうするわ、じゃあ私、穂乃果呼んでくるわね。さすがにこの時間にならいると思うし」

 

「あ、僕も行くよ絵里。みんなはちょっと待ってて」

 

僕は絵里と一緒に屋上から僕らの今の教室、二年一組に向かった。

その道中。

 

「いつもごめんなさい明久」

 

絵里が不意にそんなこと言ってきた。

 

「え?なにが?」

 

僕は絵里の言った意味が分からず聞き返した。

 

「明久たちに私たちの・・・・・・μ'sのことで色々と頼ってしまって」

 

「あー・・・・・・」

 

絵里の言葉に僕はなんとなくわかった。

詰まるところ僕や恵衣菜にいつも頼ってしまっているのが情けない、とかそんなところだろう。

 

「気にしないでよ絵里。僕が好きでやってる事なんだから。それは恵衣菜も零華もだよ。そうじゃなかったらここまでやらないと僕は思うな」

 

「でも、これは私たちの学校の問題でいくら姉妹校になったとはいえ、他校の生徒に頼るのは生徒会長としては・・・・・・」

 

絵里のその言葉に僕は軽くかたをすくめて。

 

「絵里」

 

「なに?」

 

足を止め絵里の方を向く。それに連れて絵里も僕の方を向いた。僕はそのまま絵里に近づいて。

 

「あ、明久!?ここは校舎の中よ!?し、しかも、明久には恵衣菜がいるでしょ!?」

 

「テイッ!」

 

なんか変なこと言ってる絵里の額の前に右手を置き、思いっきりデコピンをした。

 

「イタッ!」

 

いきなりで驚いたのと少し痛かったのか額を押さえる絵里に僕は言う。

 

「あのさ絵里」

 

「な、なによ」

 

「絵里は確かにこの学校、音ノ木坂学院の生徒会長だけどさ、もう少し他の人を頼ってもいいんじゃないかな?少なくとも僕は生徒会長としての綾瀬絵里じゃなくて、音ノ木坂学院に通う一人の女子生徒、綾瀬絵里の方が好きだよ?」

 

「す、好きっ!?」

 

「うん」

 

「そ、そんなこと言われたって・・・・・・///」

 

そこまでデコピンが痛かったのか顔をトマト見たいに真っ赤にした絵里は僕から視線を慌ててずらした。

 

「?どうかしたの絵里?あ、も、もしかしてデコピン強くしすぎちゃった!?大丈夫絵里・・・?」

 

僕が慌ててそう言うと。

 

「うぅぅ。明久のバカ・・・」

 

「なんで急に罵倒されるの!?」

 

顔を赤くしながら絵里がそう言った。

 

「ご、ごめん絵里!強くしすぎちゃったみたい」

 

「そうじゃないわよ!この鈍感バカ!」

 

「いや、だからなんで僕は罵倒されるの!?」

 

「知らないわ!後で恵衣菜に聞いたら!?」

 

「な、なんで!?って、置いてかないでよ!」

 

速歩きで廊下を歩く絵里を僕は慌てて追いかける。

 

「そ、それにさ絵里」

 

「なによ」

 

「僕は、文月学園から派遣されて音ノ木坂学院に来ているけど、今はちゃんとしたここの。音ノ木坂学院の一生徒だよ。まあ、夏休み前までだけどね」

 

絵里の横に並んで僕は苦笑いを浮かべてそう言う。

 

「だからさ、他校の生徒とかじゃなくて。一人の女子の綾瀬絵里として頼ってほしいな。僕はそう思うよ」

 

「そう・・・・・・ありがとう明久」

 

「うん」

 

僕と絵里はそのまま穂乃果がいると思う二年一組へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年一組

 

 

「穂乃果は・・・・・・あ、いた」

 

二年一組に来た僕と絵里は扉の所からクラスを覗いた。

クラスにはまだHR前だからかクラスメイトはまばらに来ていた。そして穂乃果は自分の机に上体を伸ばしていた。そしてその側をヒデコ、フミコ、ミカの三人。通称ヒフミトリオがいた。ちなみにヒフミたちにはことりが留学するということは既に伝えてある。穂乃果の友達の三人には穂乃果が何かあったときのために手を貸してほしいからだ。

僕はそれを絵里に伝えると絵里は前に出て穂乃果を呼んだ。

 

「穂乃果!」

 

机に突っ伏していた穂乃果がこっちを向いた。

その穂乃果へ絵里は手招きして、僕は軽く挨拶をする。

そして穂乃果を連れて僕と絵里はみんなのいる屋上に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上

 

 

 

「ライブ?」

 

「そう、みんなで話したの。ことりが居なくなる前に全員でライブをやろうって」

 

穂乃果の聞き返しに絵里が答える。

 

「来たらことりちゃんにも言うつもりよ」

 

「思いっきり賑やかにして門出を祝うにゃ!」

 

「燥ぎ過ぎないの!」

 

何時ものリアクションの凜ににこが冷静に凜の頭を軽く叩いて落ち着かせる。

 

「もう、にこちゃんなにするの~!」

 

「手加減してあげたわよ」

 

「シャアー!」

 

凜の猫の威嚇声に少し苦笑して穂乃果を見る。

 

「穂乃果ちゃん・・・」

 

「・・・・・・まだ落ち込んでいるのですか?」

 

恵衣菜と海未が心配そうに穂乃果に聞く。

 

「明るくいきましょ。これが9人の、最後のライブになるんだから」

 

絵里が明るく言うなか穂乃果の表情は対照的に暗かった。

 

「・・・・・・私がもう少し周りを見ていればこんなことにはならなかった」

 

「穂乃果そんな・・・」

 

「そ、そんなに自分を責めなくても!」

 

僕と花陽の声にもさらに強く自分を責めるように言う。

 

「自分があんな事しなければこんな事にはならなかった!」

 

「あんたねえ!」

 

「そうやってすべて自分のせいにするのは傲慢よ」

 

「でも!」

 

「穂乃果、絵里の言う通り傲慢すぎるよ。過ぎたことを言っても仕方ないよ」

 

「明久の言う通りよ。それを今ここで言ってなんになるの?なにも始まらないし、誰もいい思いもしない」

 

穂乃果に僕と絵里が答える。

 

「ラブライブだって次があるわ」

 

「そう、今度こそ出場するんだから落ち込んでいる暇なんてないわよ」

 

真姫とにこがこの場の空気を何とかしようと明るく元気よく言う。だが。

 

「出場してどうするの?」

 

「え?」

 

穂乃果は表情を暗くしてにこに聞いた。

 

「もう学校は存続できたんだから、出たってしょうがないよ」

 

「穂乃果ちゃん」

 

「穂乃果?」

 

僕と花陽は穂乃果の言った言葉が信じれず穂乃果の名前を呼んだ。

 

「それに無理だよ。つばさちゃんたちAーRISEみたいになんて、いくら練習したってなれっこない」

 

「あんたそれ、本気で言ってる?」

 

「穂乃果、それ本気で言ってるの?」

 

穂乃果の言葉がにこと僕は声を低くして聞く。

さすがにこれはいくら穂乃果でも許せない。そしてそれはにこも同じで。

 

「本気だったら許さないわよ・・・・・・」

 

「僕もにこと同じだよ穂乃果」

 

「・・・・・・・・・・」

 

にこと僕の言葉に穂乃果は顔を地面にうつむかせながら黙ったままなにも答えない。

 

「許さないって言ってるでしょ!」

 

「ダメ!」

 

「にこちゃんダメだよ!」

 

穂乃果に突っ掛かろうとするにこを真姫と恵衣菜が慌てて取り押さえる。

 

「離しなさいよ!にこはね、あんたが本気だと思ったから!本気でアイドルやりたいと思ったからμ'sに入ったのよ!ここに掛けようって思ったのよ!それを・・・こんな事くらいで諦めるの?!こんな事でやる気を無くすの?!」

 

それはにこの本心の言葉だった。

この中でアイドルというのがなんなのか知ってるにこだからこそ言える言葉だ。そしてそれは以前μ'sに入る前の自分のこともそうだったように言っているのだろう。

 

「じゃあ穂乃果はどうすればいいと思うの?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「どうしたいの?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「答えて」

 

「穂乃果」

 

絵里の問いに穂乃果はしばらく無言だった。

やがて、口を開くと穂乃果の口から出てきたのは信じられない言葉だった。

 

「・・・・・・辞めます」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

「私、スクールアイドル、辞めます」

 

穂乃果のスクールアイドル辞めます、という台詞に恵衣菜たちは驚愕の表情で穂乃果を見る。

そのまま穂乃果はその場から立ち去ろうと屋上の扉へと向かった。

誰も動かないまま穂乃果を見る中そこへ。

 

 

パンッ!

 

 

海未が穂乃果の右腕を掴んで穂乃果の頬を叩いた。

 

「あなたがそんな人だとは思いませんでした」

 

「海未・・・」

 

「最低です!あなたは・・・あなたは最低です!」

 

海未のその言葉が屋上に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 










次回 『これから・・・・・・』 GO to The Next LoveLive!


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第Ⅵ門 これから・・・・・・

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

 

絵里)穂乃果のまさかのμ's脱退申告!?。ことりが留学することを聞いた私たちは、ことりを送るためにμ's9人、最後のライブをしようと考え付いた。けど、穂乃果の答えはμ'sを、スクールアイドルを辞めるという言葉だった。それにより、私たちμ'sは活動休止に。私たちはこれからどうしたらいいのかしら・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

穂乃果のスクールアイドルを・・・・・・μ'sを辞める宣言。

そして、海未の涙と怒りのあった日の朝から数日後の放課後。海未は穂乃果に声もかけずに一度穂乃果を見ただけで、そのまま弓道部に行ってしまった。そして、穂乃果はただ黙々と帰る支度をしていた。

その姿を見ながら僕と恵衣菜は穂乃果の友達のヒデコ、フミコ、ミカと話していた。

 

「まだ穂乃果落ち込んでるの?明久君、恵衣菜ちゃん」

 

「うん・・・・・・」

 

「そうみたい・・・・・・・」

 

「なんかスクールアイドル辞めたのって海未ちゃんたちとケンカしたのが原因らしくて・・・・・・」

 

「そうなの?」

 

「まあ・・・そんなところかな・・・・・・」

 

「ことりちゃんも留学の準備でずっと休んでるしね」

 

「それで、海未ちゃんたちと全然話してないのか・・・」

 

「実はそれでヒデコたちにお願いがあるんだ」

 

「なに」

 

「穂乃果を元気付けてほしいんだ。さすがに僕らじゃ穂乃果を元気付けられないから・・・・・・」

 

「私たちが・・・?」

 

「うん・・・。頼めるかな・・・・・・?」

 

「もちろんよ。こういう時こそ私たちがやらないとね」

 

「そうだね」

 

「うん」

 

「ありがとう、ヒデコ、フミコ、ミカ」

 

「ありがとう、3人とも」

 

穂乃果のことをヒデコたちにお願いし、僕と恵衣菜は理事長室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室

 

 

「失礼します」

 

ノックをして僕と恵衣菜は理事長室に入った。

 

「呼び出しちゃってごめんなさいね二人とも」

 

「大丈夫ですよ、かおりさん」

 

「はい」

 

「それで何かありましたか?」

 

理事長室に入った僕と恵衣菜はかおりさんに呼ばれた理由を聞いた。

 

「二人から見て生徒たちの召喚獣操作はどうかしら?」

 

かおりさんはティーカップに紅茶を淹れて、僕と恵衣菜の前に出すとそう聞いてきた。

 

「そうですね・・・みんな集中力が高くて熱心に取り組んでいますよ」

 

「はい。文月学園でもあそこまで熱心に取り組んでいる生徒は一部だけなので、音ノ木坂の生徒はすごいです」

 

「なるほどね~。まぁ、召喚獣なんて操作したこともなかったから新鮮で楽しいみたいね。もしくは・・・・・・」

 

「?」

 

紅茶を飲みながら片目を瞑って僕を見るかおりさんに僕は同じく紅茶を飲んで疑問符を浮かべた。

 

「今、この学校唯一の男子生徒の明久君を意識しているのかしらね」

 

「へ?」

 

「あー・・・・・・確かに。ありえるかもです」

 

「でしょ?」

 

「はい」

 

「???」

 

かおりさんと恵衣菜の言っている意味が分からず僕はさらに疑問符を浮かべるのを増やした。

そんな僕に恵衣菜とかおりさんは苦笑していた。

 

「なら、再来週辺りから試験召喚戦争解禁しても問題ないかしらね?」

 

「はい、大丈夫かと」

 

「私も大丈夫だと思います」

 

「ええ。それじゃ再来週から召喚戦争を行いましょうか。その際なんだけど・・・・・・」

 

「はい」

 

「明久君と恵衣菜ちゃんは出来れば参加しないでほしいのだけど・・・・・・」

 

かおりさんの言葉を瞬時に理解した僕と恵衣菜は納得したように「あ~・・・・・・」と声を出した。

まあ、予想していた通りなんだけど。

だって僕と恵衣菜が出たら10分以内に戦争終了だし、悪かったら校舎内が半壊ぐらいする可能性がある。まあ、さすがに全壊となるような事は無いと思うけど・・・・・・・。

 

「そうなると僕と恵衣菜は教師陣に回った方が良いですか?」

 

「出来ればそうしてくれると助かるわ。あと、両クラスのサポートもお願いしたいの」

 

「わかりました。恵衣菜もいい?」

 

「うん。もちろん」

 

「ありがとう、二人とも」

 

かおりさんと試召戦争(音ノ木坂学院Ver)を相談してしばらくして。

 

「―――そう言えば・・・・・・来週、ですよね」

 

「ええ・・・」

 

「ことりちゃんの様子は・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

僕と恵衣菜の声にかおりさんはうつむいて首を横に振る。

そのあと、15分くらい相談して僕と恵衣菜は理事長室を後にした。

 

「それじゃ明久くん、私寄るところがあるから先に帰ってるね」

 

「え。あ、うん。わかった。何かあったら連絡して」

 

「うん。それじゃあ後でね」

 

そう言うと恵衣菜は走って校門の方に向かっていった。

 

「・・・・・・海未のところに行こうかな・・・・・・」

 

僕は部活の張り切る声が聞こえてくる校舎内でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓道場

 

 

「いるかな海未・・・・・・」

 

僕は弓道場の側に来ていた。

すると。

 

「あら?君は・・・・・」

 

「え?」

 

「吉井君・・・だよね?」

 

声のした方を見ると弓道着を着た女子がタオルで汗を拭いながらこっちを見ていた。

 

「え~と・・・確か3年の紫原 弓美奈(しはら ゆみな)先輩・・・ですよね?」

 

「そうよ」

 

紫原先輩は絵里と同じクラスの女子生徒で理数系の点数が高かった女子だ。

 

「紫原先輩って弓道部に所属してるんですか?」

 

「ええ、一応部長よ」

 

「部長なんですか!?」

 

「ええ。それより、こんな所でどうしたのかしら?誰かを探しているみたいだったけど」

 

「あ、紫原先輩、海未を見ませんでしたか?」

 

「園田さん?園田さんならまだ一人で練習してるわよ?」

 

「一人で?」

 

「ええ。一応部活はもう終わりなのだけど園田さん、まだやるみたいだから。まあ、完全下校時間までに出るのならいいのだけど・・・・・・」

 

「海未・・・・・・」

 

僕が海未のいるであろう弓道場に視線を向けると、紫原先輩が何故かニヤけた顔をしていた。

 

「フ~ン」

 

「あ、あの、紫原先輩?」

 

「なにかしら?吉井君」

 

「どうして僕をじっと見ているんですか?」

 

「いやね、前に絵里が顔を赤くなっているのを見たから、あの絵里が赤面する程なんてどんなのなのかな~って思ったのよ」

 

「へ?」

 

「あらら・・・無自覚・・・」

 

紫原先輩は溜め息をついて僕を見た。

 

「あ、園田さんの事吉井君に任せてもいいかしら?」

 

「あ、はい。いいですよ」

 

「ありがとう~。これが弓道場の鍵だから閉めたら職員室に返却してね」

 

「わかりました」

 

「じゃあよろしくね」

 

鍵を渡すと紫原先輩は手を振って立ち去っていった。

 

「海未は中に居るみたいだね」

 

弓道場の扉を開け中に入ると、そこには弓道着を着た海未が弓の玄を引いて矢をつがえている姿があった。

集中している海未の邪魔にならないよう、静かに中に入り扉を閉める。

 

 

ヒュ!

 

 

海未の構える弓から放たれた矢は奥の的の中心点から少しずれた場所に命中した。

 

「ふぅ~・・・・・・」

 

「お疲れ様、海未」

 

僕は汗を手の甲で拭い息を整える海未に声をかける。

 

「あ、明久!?何時から居たんですか?!」

 

「今さっきだよ。そこで部長の紫原先輩から鍵を受け取ってね」

 

「部長からですか?」

 

「うん。元々海未の様子を見に来たんだし」

 

「私の?」

 

「うん」

 

「そうですか・・・・・・」

 

そう言うと海未は次の矢を取り出し、矢を引き絞り放つ。

放たれた矢は的からずれた場所に突き刺さった。

 

「・・・やっぱり穂乃果のこと?」

 

「ッ!」

 

「図星だね」

 

僕は近くに置いてあった弓と矢を一本持って海未の隣に立ち、弓を引き矢をつがえる。

 

「ヨッ・・・・・・!」

 

僕は引き絞った矢を放つ。放たれた矢は的の中央ではなく端の方に命中した。

 

「やっぱり難しいね」

 

僕は苦笑しながら海未を見る。

 

「いえ、的に当てるだけでもすごいと思いますよ」

 

「ありがとう海未」

 

僕は弓を元の場所に戻して海未に礼を言う。

 

「ちょっと・・・話そうか・・・。たまには二人だけで・・・」

 

「・・・そう・・・・・・ですね・・・・・・」

 

海未も目線を床に落としながら喋る。

海未と一緒に矢を片付けた僕と海未は弓道場の壁に寄り掛かりながら座って話す。

 

「私は間違っていたんでしょうか・・・・・・穂乃果の事も、ことりの事も・・・」

 

「海未・・・・・・」

 

「明久。私は最初、スクールアイドルをやりたくありませんでした。これは前に話しましたっけ?」

 

「うん。僕も最初聞いたときは驚きで一杯だったよ。だってあの超堅物の海未がスクールアイドルなんて。フフ・・・ちょっと笑いが・・・・・・」

 

「わ、笑わないでください!て言うか超堅物ってなんですか!?私そんな風に視られてたんですか!?そ、それに、わ、私だってまだ慣れた訳じゃないんですからね!」

 

「ハハ・・・ゴメン、ゴメン。でも、僕はスクールアイドルの海未も今さっきも弓道着を着ていた海未も、普通の女子高生の海未も全部好きだよ」

 

「す、好きって・・・///!あ、明久はよくそんなこと恥ずかしげもなく言えますね!」

 

「何で僕怒られてるの・・・・・・?」

 

怒られている理由がわからない僕は頭上に疑問符を浮かべながら頬を軽く欠いた。

 

「はぁ~。明久のこの鈍感ぶりは相変わらずですね。恵衣菜も大変でしたね。・・・・・・まぁ、そんな明久が私は好きなんですけど、ね・・・・・・」

 

「???」

 

最後の方が聞き取れなかった僕は首をかしげた。

 

「なんでもありません。女子同士の秘密の会話です」

 

「そうなの?」

 

「そうなんです」

 

海未は何故か少しだけ笑いながら言った。

と言うか幼馴染み7人の中で僕だけ男なんだよなぁ~。

僕は海未の女子同士の秘密の会話で不意にそう思った。

 

「話を戻しましょうか。私がスクールアイドルをしたのは穂乃果のお陰なんですよ」

 

「何となくだけど分かるよ。穂乃果の無茶ぶりには何時も引きずり回されていたからね」

 

「そう言えばそうでしたね。その度に私やつばさ、明久が止めたり色々して・・・ほんと懐かしいです」

 

「うん」

 

僕と海未は子供の頃を懐かしむように語る。

 

「海未は穂乃果がスクールアイドルを辞めた、ってのが許せないんだよね」

 

「ええ・・・・・・。まさか、ことりが居なくなるというだけで穂乃果があそこまでなるなんて予想していませんでした」

 

「海未は・・・?」

 

「え・・・・・・?」

 

「海未の気持ちは?海未はことりが留学して離ればなれになってもいいの?」

 

「私は・・・・・・」

 

僕は海未を優しく抱き締め自分の胸に海未の頭を乗せる。

 

「誰もいないから。僕だけだから。海未の本当の気持ちは・・・?」

 

「わ、私は・・・・・・。私だってことりと離れたくありません!出来ることならずっと・・・・・・!ずっと私たち7人と一緒にいたいです!」

 

海未は今まで溜めていた、自分の気持ちを水を流すように吐き出した。嗚咽と涙を流しながら。

僕は静かに海未の本音を聞いて、優しく海未の頭を撫でる。海未は昔からよく我慢して本音を出さない。と言うよりためる趣向があるのだ。けどその点、何故か海未は僕だけにはこうして本音を言ってくれる。今のように。

海未が本音を吐き出して涙が止まったのは15分後のことだった。

 

「す、すみません明久。私、また・・・・・・」

 

眼が泣き腫れて少し赤くなっている海未は気まずそうに僕に謝ってくる。

 

「大丈夫だよ。気にしないで。それに僕は海未が本音を吐き出してくれて嬉しいよ」

 

「~~ッ!!///」

 

「イタイ、イタイ。イタイから海未」

 

ポコポコと叩いてくるのだが、海未のそれはちょっと痛い。理由は、海未が武術を嗜んでいるからだ。

 

「それじゃあ帰りましょうか」

 

海未は壁に架けられた時計を見て言った。

壁に架けられた時計は最終下校時刻20分前だった。

 

「その前に海未は着替えてこようね」

 

「~っ///!わ、わかってます!校門で待っていてください。鍵締めは私がしときますので」

 

「うん、わかった」

 

僕と海未は軽く弓道場の片付けをして、僕は荷物をもって校門へ、海未は部室の方へ向かった。

それからしばらくして着替えて制服姿の海未と僕は音ノ木坂学院をあとにして帰路に付いた。

その道中。

 

「明久」

 

「なに?」

 

「明日帰り、ことりの家に行ってきます」

 

「そう・・・・・・」

 

「はい・・・多分、何も言えないと思いますけど、それでも行ってこようかと・・・」

 

「うん。そうした方がいいよ」

 

そんな会話をして僕らは帰っていった。

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

 

南家

 

 

「お邪魔します」

 

「そう畏まらなくてもいいよ~」

 

「アハハ・・・ごめんねことりちゃん」

 

私は明久くんと分かれたあとことりちゃんの家、南家を訪ねていた。

部屋の中は留学準備中のためか服や私物がバックなどにしまわれていた。

 

「留学の準備中だった・・・・・・かな・・・?」

 

「うん・・・・・・」

 

ことりちゃんは静かにそう言ってベットの端に座った。

 

「本当に・・・いいの・・・・・・?」

 

「え・・・・・・?」

 

「このまま明久くんに何も言わなくて」

 

「・・・・・・やっぱり恵衣菜ちゃんには誤魔化せないか~」

 

私の言葉にことりちゃんはハニカミ笑いを浮かべて私の方を向いた。

 

「ことりちゃんだって明久くんのこと・・・・・・」

 

「うん・・・私も、恵衣菜ちゃんと同じだよ。でも、明久くん・・・恵衣菜ちゃんのこと大切にしてるから・・・・・・」

 

「ことりちゃん・・・・・・」

 

「明久くんは私の大切な人で初恋の人・・・。恵衣菜ちゃんには秘密だったけどね」

 

「ご、ごめんね」

 

「ううん。それに恵衣菜ちゃんが明久くんに告白して明久くんが承けたとき、私ね、あ~あ、やっぱりそうなんだね。って思っちゃったの。恵衣菜ちゃんの前に言っていたらどうだったのかなって今でも思ってるんだ」

 

「ことりちゃん」

 

「だから明久くんにこの気持ちは言わないことにしてるんだ。私だけの秘密。でも、今恵衣菜ちゃんに言っちゃったから私と恵衣菜ちゃんの秘密かな」

 

「ことりちゃん、私はね別に明久くんを独占する気はないよ」

 

「え・・・?」

 

「確かに私の初恋の人は明久くんだよ。そして、私の大好きな人は明久くんただ一人だけ。もちろん、穂乃果ちゃんたちも好きだよ。でも、異性で好きなのは明久くんだけ。だから、私はことりちゃんたちが明久くんに告白してもいいと思ってるの。それにね、どうせなら私たち幼馴染み6人で明久くんのお嫁さんになっちゃえばいいんじゃないかな?って思ってたりするんだよ?」

 

「ろ、6人!?そ、それは流石に・・・・・・」

 

「だからね」

 

私はことりちゃんに近付いてその両の手を優しく握り眼を合わせる。

 

「ことりちゃんの気持ち、明久くんに伝えよう」

 

「でも・・・私はもう居なくなっちゃうんだよ?今更留学を取り消すなんて無理だよそんなの」

 

「それはことりちゃん次第でしょ?自分で決めないと。きっとかおりさんも留学先の人も分かってくれると思うよ」

 

「恵衣菜ちゃん・・・・・・」

 

「それに私だってことりちゃんが居なくなるなんて寂しいよ。悲しいよ」

 

「恵衣菜ちゃん・・・私は・・・・・・」

 

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことりの留学日まで残り6日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第Ⅶ門 伝えたい気持ち!

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

ことり)私のせいでバラバラになってしまったμ's。メンバーがバラバラなそんな中、穂乃果ちゃんにはヒデコちゃんたちが、海未ちゃんには明久くんがそれぞれ声をかける。そして私には恵衣菜ちゃんが・・・・・・。そこで恵衣菜ちゃんが私にある事を言った。私は・・・どうしたらいいのかな・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

色々な事があったここ数日。僕たちはそれぞれの事をした。絵里と希は生徒会の、にこ、凛、花陽はアイドルの、真姫は曲を、海未は弓道部と自身の、僕と恵衣菜は試験召喚戦争の、ことりは留学の、そして穂乃果は自分の気持ちと。

そんな数日があっという間に過ぎ、週末の土曜。今日、ことりが日本を発つ。そうしたら、数年はことりとは会えない事になる。もちろん、電話やメールでやり取りは出来る。だが、それは生身の身体を相手を見て、交えたものじゃない。

そして・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院 講堂 

 

 

午前6時15分

 

 

 

 

「ごめんね。急に呼び出したりして」

 

講堂に入ると、ステージには穂乃果が立っていた。

何故朝早くからここにいるのかと言うと、僕と恵衣菜、零華、海未は昨日の夜、穂乃果に今日、朝早く講堂に来てと、呼び出されたのだ。つばさも呼ばれていたが流石に今日つばさは予定があったらしく来れなかった。恐らくAーRISE関連だと思う。まあ、穂乃果があとで言うみたいだけど。

 

「いえ」

 

「大丈夫だよ。ところで話って?」

 

「・・・ことりちゃんは・・・・・・?」

 

「・・・今日、日本を発つそうだよ」

 

「そうなんだ・・・」

 

「「穂乃果・・・」」

 

「「穂乃果ちゃん・・・」」

 

静かに俯く穂乃果に僕たちは穂乃果の名を呼ぶ。

 

「私ね、ここでファーストライブやって、ことりちゃんと海未ちゃんと歌ったとき思った・・・。"もっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたい"って・・・。辞めるって言ったけど、気持ちは変わらなかった。学校のためやラブライブのためとかじゃなくて、私好きなの、歌うのが。それだけは譲れない。だから・・・ごめんなさい!」

 

「「「「・・・・・・!」」」」

 

「これからも迷惑をきっとかける。夢中になっちゃって、誰かが悩んでいるのに気づかないかもしれない。やり込みすぎて空回りしちゃうかもしれない。だって私不器用だもん!でも、追い掛けていたいの!我儘だってのはわかってる・・・けど、私・・・」

 

「「「・・・・・・プ・・・フフフ・・・」」」

 

「・・・・・・ハ・・・ハハハ・・・」

 

穂乃果の本音の言葉に僕たちはつい笑いが漏れ出てしまった。

 

「ちょ、明久くん!?恵衣菜ちゃんも零華ちゃんも海未ちゃんも何で笑うの?!私真剣なのに」

 

「フフ・・・ごめんなさい」

 

「ハハ・・・ごめん穂乃果」

 

「フフ・・・ごめんね穂乃果ちゃん」

 

「フフ・・・ごめんなさい穂乃果ちゃん」

 

穂乃果の戸惑いの声に僕らは見合って笑いを押さえて穂乃果に謝る。

 

「でもね」

 

「穂乃果、はっきり言うけどね」

 

「「「「穂乃果(ちゃん)には昔からずっと迷惑掛けられぱなっしですよ(だよ)(だからね)」」」」

 

僕らは顔を見合って同時に同じ台詞を発する。

穂乃果が僕らに迷惑をかけるなんて今更だしね。

 

「ええっ!?」

 

「みんなでよく話していたんだよ。穂乃果と一緒にいるといつも大変な事になるって。ねっ」

 

「ええ。全くです」

 

「うん」

 

「否定したいけど出来ないんだよね、穂乃果ちゃんには・・・」

 

「どんなに止めても夢中になったら他の事なんて目に入らなくて」

 

「でも・・・そこが穂乃果ちゃんの良い所なんだよね」

 

「大体、スクールアイドルだってそうです。私は本気で嫌だったんですよ?」

 

「明久くん・・・海未ちゃん・・・恵衣菜ちゃん・・・零華ちゃん・・・」

 

「ハハ、海未から散々愚痴を聞かされていたからね」

 

「うん。穂乃果ちゃんとことりちゃんが~って」

 

「あ、明久!?零華!?それは言わなくてもいいじゃないですか!た、確かに私は最初、どうにかして辞めようと思いました。穂乃果のことを恨んだりもしました。全然気付いてなかったみたいですけど」

 

「うっ・・・・・・ごめん・・・」

 

「ですが、穂乃果は連れて行ってくれるんです。私たちでは勇気が無くて届かない、行けない凄い所へ」

 

「そうだね。昔から、穂乃果は僕らが行けない所へ連れて行ってくれる」

 

「私が怒ったのは、穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからではなく、穂乃果が自分の気持ちに嘘を着いているのが分かったからです。穂乃果に振り回されるのにはもう慣れっこなんです。ですよね?」

 

海未は同意を促すように僕らの方を見てそう聞いてきた。僕らは海未の問いに若干苦笑いを含みながらも同意する。

 

「うん」

 

「そうだよ」

 

「そうだね」

 

「だからね穂乃果、代わりに僕らを連れて行ってくれる?」

 

僕たちはステージに立つ穂乃果の目の前に立って同時に笑顔で言う。

 

「「「「僕たちの(私たちの)知らない世界へ!」」」」

 

「それが穂乃果ちゃんの凄い所なんだよ」

 

「ええ。私もことりも、明久も恵衣菜も零華も、つばさも、そして、μ'sのみんなもそう思っています」

 

そう言うと海未は穂乃果の右隣に、恵衣菜と零華は左に立った。

海未が目を閉じ深呼吸し口を開いて言う。

 

「だって、可能性感じたんだ、そうだ進め~」

 

「・・・・・・後悔したくない目の前に」

 

「「僕らの道がある~・・・・・・」」

 

海未に続いて穂乃果、恵衣菜と零華がμ'sの『ススメ→トゥモロー』の最初の歌詞フレーズを奏でる。

 

「さっ、ことりが待ってます。迎えに行ってきてください!」

 

「ええっ?!でも、ことりちゃんは・・・」

 

「私と一緒ですよ。ことりも引っ張ってほしいんです。我が儘言ってもらいたいんです」

 

「我が儘?!」

 

「そうだよ。だって、有名なデザイナーに見込まれたのに残るなんて。そんなの普通じゃないでしょ?」

 

「でも、そんな我が儘が僕らの中で言えるのは・・・・・・!」

 

「「「「穂乃果(ちゃん)だけ!」」」」

 

「さあ、行こう穂乃果。ことりを・・・・・・僕らの幼馴染みで・・・大切な友達を迎えに!」

 

「明久くん・・・海未ちゃん・・・恵衣菜ちゃん・・・零華ちゃん・・・・・・・・・・・・・うん・・・!行ってくる!」

 

差し出す僕の手を取った穂乃果は何時もの元気に満ち溢れた表情で講堂を音ノ木坂学院を飛び出して行った。

ことりを迎えに。

 

「やっと何時もの穂乃果ちゃんに戻ったね」

 

「ですね」

 

「うん」

 

「そうだね」

 

穂乃果の飛び出して行った講堂で僕らは、さっきの穂乃果を見て言う。

 

「けど、明久くんも行かなくて良かったの?」

 

穂乃果の飛び出して行った扉を見る僕に恵衣菜が聞いてきた。

 

「うん。今回は僕じゃなくて穂乃果が行かないと、ね?」

 

「フフ。明久くんらしいね」

 

「全く、明久らしいと言えばらしいですね」

 

「それがお兄ちゃんの格好いい所なんだよ♪」

 

「アハハ。さて・・・・・・居るんでしょ?みんな」

 

恵衣菜たちの言葉に苦笑いを出す僕は穂乃果の出ていった扉ではない別の扉に視線を向けてそう言う。

すると、中央の両扉が開き右の扉から絵里、希、真姫が。左の扉からはにこ、花陽、凛が残りのμ's、6人が入ってきた。

 

「あらら、バレてたみたいね」

 

「まあね」

 

絵里の言葉に肩を竦めて返す。

 

「みんな、ライブの用意は良い?」

 

「もちろんよ」

 

「大丈夫やで」

 

「当然でしょ!」

 

「問題無いわ」

 

「はい!」

 

「もっちろんだにゃ~」

 

僕の問いに絵里たちは予想通りの答えを返してきた。

残りは海未だけ。

 

「海未・・・」

 

海未に視線を向けて無言で聞く。

すると、海未は笑いながら答えた。

 

「ええ。やりましょう、私たちの・・・・・・μ'sのライブを!」

 

「じゃあ・・・・・・やるよ!みんな、音ノ木坂学院スクールアイドル研究部。μ'sのライブを!」

 

「「「「「「「「「オー!」」」」」」」」」

 

僕らはすぐにライブの準備に取りかかる。

音響設備はヒデコたちが協力してやってくれた。

裏方の設営は僕たちが、前もって穂乃果たちには知らせずに、絵里たちと内緒で進めていたのだ。ちなみにライブのことはもう音ノ木坂学院教職員生徒全員に知らせ済みだ。もちろん、理事長のかおりさんにも協力してもらっている。そして、今日今この時間からラブライブのネットにμ'sのライブ告知を発表した。

すべては今日この日のために。そして、僕らの・・・いや、穂乃果たちμ'sの再結成のために。

全てをやり終え、観客席が音ノ木坂学院生徒全員で満員になるなか、僕の携帯につばさから電話が掛かってきた。

 

「どうしたの、つばさ」

 

『見たわよラブライブのホームページで』

 

「ハハ、早いね」

 

『そりゃ当然よ。・・・・・・穂乃果はふっ切れたみたいね』

 

「うん」

 

『私も英玲奈もあんじゅもパソコンから中継を観るわ』

 

「了解。どうだったか後で穂乃果に言ってあげてね」

 

『それは難しいと思うわよ?だって、私たちAーRISEとμ'sはライバルでしょ?』

 

「ハハ。そう言えばそうだったね」

 

『ええ。だから、応援してるわ』

 

「ありがとう、つばさ」

 

『いいのよ。それと、今度時間ある日あるかしら?』

 

「え?」

 

『たまには一緒に出掛けないかしら?』

 

「別にいいけど」

 

『フフ。ありがとう明久くん。楽しみにしてるわ。日程が決まったら連絡するわね』

 

「了解」

 

『じゃあ、またね明久くん』

 

「うん」

 

つばさとの電話を切った僕はスマホをしまい舞台袖で恵衣菜たちと、穂乃果とことりが来るのを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~穂乃果side~

 

 

 

学校を出て大急ぎで空港まで来た私はことりちゃんを見つけると、ことりちゃんの腕をつかむ。

 

「ことりちゃん!」

 

「あ・・・」

 

「ことりちゃん!」

 

息を整えて私は自分の気持ちを。本当の気持ちをことりちゃんに言う。

 

「ことりちゃん、ごめん。私、スクールアイドルやりたいの!ことりちゃんと一緒にやりたいの!いつか、別の夢に向かうときが来るとしても!」

 

そう言うと私はことりちゃんの前に回って、ことりちゃんを抱き締める。

 

「行かないで!」

 

「ううん。私の方こそごめんね。私、自分の気持ち分かってたのに」

 

涙声で言うことりちゃんに私は抱き締めて返す。

私の本当の気持ち、それは・・・・・・・

 

"みんなとスクールアイドルをやりたい!"

 

それは1人欠けてもダメ。μ's全員。明久くんと恵衣菜ちゃん、零華ちゃんも入れた12人がμ'sなんだから!

 

「戻ろう、ことりちゃん。みんなが待ってる!」

 

「うん!穂乃果ちゃん!」

 

私とことりちゃんはそのまま空港を後にして急いで音ノ木坂学院に戻る。

何故なら・・・・・・

 

 

 

 

『ライブをやるよ!』

 

 

 

 

と、明久くんからメールが来たから。

それは私たちμ'sの新たなる始まりのライブ。全員で、もう一度やるライブだから!

 

 

 

 

 

 

~穂乃果side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ライブ開始まで残り・・・・・・45分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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次回 『μ's、ミュージックスタート!』 GO to The Next LoveLive!


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第Ⅷ門 μ's、ミュージックスタート!

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

 

穂乃果)私の本当の気持ちを明久くんたちに伝えて、留学に行くことりちゃんにも言った。ことりちゃんが戻ってきて音ノ木坂学院に戻る私とことりちゃんのスマホには明久くんからライブ開催の告知が。さあ、始めよう!私たちの・・・明久くんたちも入れたμ's、12人で奏でる私たちの歌を!届けよう!新たなμ'sを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

「明久君、照明設備は完了したよ!」

 

「こっちの音響もバッチリだよ!」

 

「お兄ちゃん、ステージも出来てるよ!」

 

ヒデコ、恵衣菜、零華からそれぞれ聞いた僕は、チェックリストの記入欄に表記する。

 

「オッケー!あと30分で開演だからお願い!」

 

「任せて!」

 

「もちろんよ!」

 

「うん!」

 

サポートしてくれてるヒデコ、フミコ、ミカに言って、僕は恵衣菜と零華と一緒に舞台袖に移動する。

 

「穂乃果とことりは・・・」

 

「まだです」

 

舞台袖には穂乃果とことりを除いたμ's7人が制服姿でいた。

 

「あと30分よ、間に合うの・・・?」

 

「大丈夫、穂乃果とことりなら・・・・・・」

 

僕は心配そうに言う絵里に自信満々に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

23分後

 

 

 

 

開演7分前になってもまだ穂乃果とことりは来ていなかった。すでに講堂は生徒や教師で一杯だ。その中には亜里沙ちゃんや雪穂ちゃん。穂乃果や真姫たちの親も来ていた。

 

「うぅ・・・緊張する~」

 

「それより、凛たち制服のままだよ」

 

「まっ、スクールアイドルらしくていいんじゃない?」

 

舞台袖では花陽の緊張した声と凛の戸惑いの声が上がり、真姫が凛に普段通りに答えた。

 

「穂乃果とことりは間に合うの?」

 

「絶対来ます。必ず」

 

にこの問いに海未はハッキリと、確固たる自身を持って答えて僕たちを見る。

 

「来るよ、穂乃果とことりは」

 

「うん。あの二人なら絶対に・・・!」

 

「大丈夫だよ・・・!」

 

海未の言葉に後付けするように僕と恵衣菜、零華が言う。

 

「って言ってる間にそろそろ時間やけど・・・」

 

「お客さんを待たせるわけにはいかないわ」

 

希と絵里の戸惑いの声が上がるが、僕、恵衣菜、零華、海未の幼馴染は必ず来ると言うことを胸に、舞台袖の扉に目を向ける。

そして、その1分後。

 

「うわぁぁあ!・・・痛ぁ~い」

 

「穂乃果ちゃん!?」

 

「だ、大丈夫、穂乃果ちゃん!?」

 

なんというか穂乃果らしい登場の仕方でパッとしない感じで穂乃果が入って来た。というか、慌てて入って来たのか転けて尻餅をついていた。尻餅をついた穂乃果を花陽と零華が心配する。

そして、穂乃果が入って来た扉からもう一人・・・

 

「ことり!」

 

「ことりちゃん!」

 

音ノ木坂学院の制服を着たことりがいつもの笑顔で入って来た。入って来たことりに絵里と恵衣菜が声を出す。

 

「くぅ~・・・お待たせー」

 

「全く~、ハラハラしたにャ~」

 

「ちょっとパッとしないけどね」

 

穂乃果の言葉に凛と僕が答え、希がにこに声をかける。

 

「じゃあ全員揃った所で部長、一言」

 

「ええっ!・・・なーんてね。ここは考えてあるわ」

 

希の言葉に自信満々のにこは右手の中指と人差し指をVの字にして前に出す。

 

「今日みんなを、一番の笑顔にするわよ!」

 

にこに続いて穂乃果たちもVの字を出して繋げる。

 

「1!」

 

穂乃果からの掛け声が始まり。

 

「2!」

 

ことり。

 

「3!」

 

海未。

 

「4!」

 

真姫。

 

「5!」

 

凛。

 

「6!」

 

花陽。

 

「7!」

 

にこ。

 

「8!」

 

希。

 

「9!」

 

絵里が番号を言う。

何時もならこれで終わりなはずなんだけど・・・。

 

「ほら、明久くんたちも!」

 

「ぼ、僕たちも!?」

 

穂乃果の声と穂乃果たち全員の視線に僕、恵衣菜、零華は戸惑う。

 

「うん!」

 

「そうよ」

 

「明久と恵衣菜、零華はもう私たちの・・・μ'sのメンバーなんです」

 

「例え学校は違うかもしれないけど、明久たちは私たちの仲間よ。そうでしょ」

 

「そうにゃ!」

 

「は、はいっ!」

 

「当たり前でしょ」

 

「カードもそう出てるで」

 

ことり、真姫、海未、絵里、凛、花陽、にこ、希の言葉に僕たちは顔を見合わせ、穂乃果たちに加わって。

 

「10!」

 

零華、

 

「11!」

 

恵衣菜、

 

「12!」

 

そして最後、僕が声を出した。

 

「よォーし。行こう!」

 

穂乃果の言葉で僕、恵衣菜、零華を除く、9人がステージに上がった。

穂乃果たちがステージの立ち位置に立つと、幕が開き音楽が流れる。

このライブで歌う曲は、穂乃果とことり、海未が、μ'sが最初に歌った曲。『START:DASH!!』だ。

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『I say...

Hey,hey,hey,START:DASH!!

Hey,hey,hey,START:DASH!!』』』』』』』』』

 

『うぶ毛の小鳥たちも』

 

『いつか空に羽ばたく』

 

『大きな強い翼で飛ぶ』

 

『諦めちゃダメなんだ』

 

『その日が絶対来る』

 

『君も感じてるよね。始まりの鼓動』

 

『明日よ変われ!』

 

『希望に変われ!』

 

『眩しい光に照らされて変われ』

 

『『『『『『『『『START!!』』』』』』』』』

 

 

 

 

「私たちのファーストライブはこの講堂でした。その時、私は思ったんです。"いつかここを満員にして見せるって"。一生懸命頑張って、今私たちがここにいる。この思いを、いつか皆に届けるって。その夢が今日、叶いました。だから、私たちはまた、駆け出します。新しい夢に向かって!」

 

 

 

 

『『『『『『『『『悲しみに閉ざされて

泣くだけの君じゃない

熱い胸 きっと未来を切り開く筈さ

悲しみに閉ざされて

泣くだけじゃつまらない』』』』』』』』』

 

『『『きっと』』』

 

『『『(きっと)』』』

 

『『『君の』』』

 

『『『(夢の)』』』

 

『『『チカラ』』』

 

『『『(いまを)』』』

 

『『『動かすチカラ』』』

 

『『『『『『『『『信じてるよ…だから START!!』』』』』』』』』

 

 

『またひとつ 夢が生まれ…』

 

 

『悲しみに閉ざされて』

 

『泣くだけの君じゃない』

 

『熱い胸 きっと未来を切り開く筈さ』

 

『『『『『『『『『喜びを受けとめて

君と僕つながろう

迷い道 やっと外へ抜けだした筈さ

喜びを受けとめて

君と僕 進むだろう』』』』』』』』』

 

『それは』

 

『(それは)』

 

『遠い』

 

『(夢の)』

 

『カケラ』

 

『(だけど)』

 

『愛しいカケラ』

 

『『『『『『『『『彼方へと…僕は DASH!!』』』』』』』』』

 

『『『『『『『『『Hey,hey,hey,START:DASH!!

Hey,hey,hey,START:DASH!!』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

ライブの曲、『START:DASH!!』が終わると、観客席から歓声と拍手の嵐が巻き起こった。

僕たちも舞台袖で拍手をしている。

途中で、穂乃果の言葉があったがそれも含めて、最高の、新しいμ'sの駆け出しに相応しいと思った。

観客席の拍手と歓声に、穂乃果たちもステージ上でそれぞれ喜びを表していた。

 

「穂乃果!」

 

「穂乃果ちゃん!」

 

海未とことりが穂乃果の横に嬉しそうに立った。

 

「みなさん、今日は本当にありがとうございました!」

 

穂乃果は笑顔のまま観客席の皆に聞こえるように言った。

 

「ここで、私たちの新しい仲間を紹介します!」

 

「「「えっ!?」」」

 

穂乃果の急な言葉に僕と恵衣菜、零華は驚いたが、ステージ上の希や真姫たちは穂乃果の横に並び立って予め相談していた感じだった。

すると、

 

「さ、明久、恵衣菜、零華」

 

「う、海未?どういうこと?」

 

「フフ。まあ、まあ」

 

「ほら、こっちだよ」

 

海未、絵里、ことりに連れられて僕たちは舞台袖からステージに上がった。

 

「紹介します!私たちμ'sの新しいメンバー!左から、姫宮恵衣菜ちゃん!吉井零華ちゃん!そして、吉井明久くんです!」

 

穂乃果の紹介に更に観客席の歓声が上がった感じがした。

 

「ほ、穂乃果!?ど、どう言うこと!?」

 

「穂乃果ちゃん!?」

 

「えっ!?穂乃果ちゃん!?」

 

「言ったでしょ。明久たちは学校が違っても、もう私たちμ'sのメンバーだって」

 

「い、いや、絵里そうだけど。僕は男なんだよ?」

 

「大丈夫よ。例えステージに立ってなくても、明久たちはもうμ'sのメンバーなんだから」

 

僕たちの戸惑いに絵里と真姫がそう答えた。

 

「三人は学校は違いますけど、何時も私たちを助けてくれました。励ましてくれました。例え、違う学校でも、三人は私たちμ'sのメンバーの一員です!」

 

穂乃果の僕たちへのことを伝えると、歓声が更に高くなりこの講堂が壊れるのではないかと思うくらい声が反響した。

 

「あ、そうだ。それととっても、大事なこといい忘れてました」

 

穂乃果が思い出したかの様に言い海未と僕が穂乃果の名を呼び、恵衣菜たちは首をかしげた。

 

「「「「「「「「「?」」」」」」」」」

 

「「穂乃果?」」

 

僕らの視線に穂乃果はアイコンタクトで答え、その意味が分かった僕らは列を直して、

 

「さあ、みなさん。ご一緒に!」

 

穂乃果の声を合図に、講堂にいる全員が発した。

それは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『『『μ's、ミュージック・・・・・・スタート!!』』』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちの、μ'sの始まりの言葉。

 

 

 

 

 

 




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第Ⅸ門 音ノ木坂学院での日常

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

明久)ついに復活?・・・・・・というより、新しくなったμ's!その中に何故か僕や恵衣菜、零華もいて、μ'sは総勢12人となった!まさか、僕たちまでμ'sのメンバーになるとは思わなかったよ。今回は、新生μ'sのライブ後の僕たちの音ノ木坂学院の日常。どうぞ、ご堪能あれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

μ'sの再スタートライブから数日。

μ'sは、僕たちも入れて12人で活動していた。ライブの最中に他校の生徒の僕たちをメンバーに入れることに関しては音ノ木坂学院の生徒は全員賛同的だった。

もちろん、ことりの留学もなし・・・・・・というより、延期?なのかな?高校を卒業するまでに決めるみたいで、相手の方も、かおりさんだけでなくどうやら母さんの知り合いらしくて、母さんも口添えしてくれてそうなった。決めるのはことり次第ということだ。つまり、卒業するまでことりは音ノ木坂学院に通うということだ。

そのことを報告した際、穂乃果が大泣きしてことりに抱き付いたのを今でも覚えている。まあ、海未や零華、恵衣菜もなんだったけどね。

僕?僕は逆にことりに抱き付かれたよ。もちろん、泣きながらね、ことりが。

とまあ、そんなこんなで数日経って。

 

 

 

 

 

 

「それでは、今から二年一組と三年一組の試召戦争を始めます。両クラスとも、正々堂々戦ってください。それでは、始め!」

 

 

『『『『『試獣召喚(サモン)!』』』』』

 

 

僕の開始宣言により両クラスの生徒が召喚獣を召喚した。

 

「始まったね」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜は教職員方と同じようにフィールドの構築と両クラスのフォローをしながら言った。

何故、今試験召喚戦争が起きているのかと言うと、発端は昨日の放送だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日

 

 

 

「えー。音ノ木坂学院生徒のみなさん、吉井明久です。今回はみなさんにお知らせがあります」

 

お昼休みが始まった音ノ木坂学院の校舎内に僕の声が響き渡った。

僕は今放送室にいた。もちろん、隣には恵衣菜もいる。

何故、僕たちが放送室にいるのかと言うと。

 

「理事長と相談して、明日より試験召喚戦争を解禁することにしました」

 

この間かおりさんと相談して決めた試験召喚戦争の解禁宣言のためだ。

 

「試験召喚戦争を行うクラスは、代表が相手クラスと教職員、または僕か姫宮さんの何方かに宣告してください。なお、僕たち二人は試験召喚戦争に参加せず、教員と同じ立場になります。みなさんのフォローに回りますので分からない事があったら聞いてください」

 

僕は予めかおりさんと決めていた事を放送で全生徒に通達する。

 

「僕からの放送は以上になります。みなさん、今までの召喚獣操作の授業で習った事と、自分の能力を思う存分発揮してください。以上、吉井明久でした」

 

そう締め括り、僕は全校放送のスイッチを切る。

スイッチを切り、放送席から立ち上がると右手の親指を立てて笑顔の恵衣菜が、僕と自分の分のお弁当を持っていた。

 

「これで明日から音ノ木坂学院も試験召喚戦争が始まるね」

 

「うん。穂乃果や絵里、真姫たちみんながどういう風に闘うのか楽しみだよ」

 

「そうだね」

 

僕と恵衣菜は放送室を後にし、何時もの中庭の樹の側で待っていた穂乃果たちと合流した。

 

「明久くん!恵衣菜ちゃん!試験召喚戦争解禁ってどういうこと!?」

 

「どういうことですか明久!恵衣菜!」

 

「明久くん!恵衣菜ちゃん!」

 

「なんか前にもこんな展開があったような・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・」

 

合流した途端、近寄ってきた幼馴染み3人の反応に僕と恵衣菜はどこかデジャビュを感じた。

そんなこんなで、説明してお昼を食べていた。

 

「なるほど~」

 

「だからお母さん、明日すごい告知が来るわよ、って言っていたんだ」

 

穂乃果は相変わらずパンを、ことりは自分のお弁当食べながら言ってきた。

 

「そういえばなぜ明久と恵衣菜は参加しないのですか?」

 

「あー。あのね、海未。僕と恵衣菜の点数は知ってるでしょ」

 

「なるほど、そう言うことですか」

 

「そう言うこと」

 

「え?どういうこと?」

 

「僕たちが参加したらすぐに戦闘が終わっちゃうでしょ?それに、僕と恵衣菜は今は音ノ木坂学院生徒だけど、元々文月学園の生徒だから、音ノ木坂学院の試験召喚戦争に参加は出来ないんだ。まあ、逆に先生たちと同じ感じになってるけどね」

 

「なるほど~」

 

「穂乃果、ちゃんと理解しているのですか?」

 

「理解してるよ海未ちゃん」

 

海未の質問に自信満々に答える穂乃果。そこに海未が。

 

「では、明久と恵衣菜の試験召喚戦争での立場は?」

 

僕の言った言葉を確かめるために穂乃果に聞いてきた。

 

「えーと・・・・・・」

 

だけど、穂乃果は視線を泳がしていた。

 

「はぁ。やっぱり理解してないじゃないですか」

 

「ちょ、ちょっと忘れただけだよー」

 

「ところで明久、各クラスの代表は誰でしたっけ?」

 

「まさかの無視っ!?」

 

穂乃果を無視して聞く海未に僕は苦笑しながら、事前に設定した各クラスの代表を思い出す。

 

「え~と、三年一組は絵里で、二組が希、三組が南川沙也加(なみかわさやか)先輩で、二年生は一組が穂乃果で、二組が常和舞柚梨(ときざわまゆり)さんで、一年は真姫だね」

 

そう、何故か二年一組の代表は何故か穂乃果なのだ。海未でも、ことりでも、ヒデコたちでもなく、穂乃果なのだ。

 

「そう言えば穂乃果ちゃんがうちのクラスの代表だったね」

 

「不安しかしないのは気のせいかな」

 

「私も同じです。穂乃果が代表で大丈夫なんでしょうか」

 

恵衣菜と海未が不安げに言うと。

 

「ちょっと~。皆ひどくない?穂乃果だってやる時はやるよ?」

 

穂乃果が、心外だな~って言う風に言ってきた。

そこに海未かジト目で穂乃果を見据えて言った。

 

「何時も夏休みの宿題ギリギリで終わらせるのは誰でしたか?」

 

「うっ・・・!」

 

「他にも、テストがあるごとに毎回勉強を教わってるのは誰ですか?」

 

「ぐっ・・・!」

 

「更に、何時も寝坊しているのは誰でしたっけ?」

 

「ぐはっ!」

 

まるで吐血したかのような反応の穂乃果はその身に海未からの矢・・・・・・と言うより否定できない言葉の槍を受けたようだった。

 

「う、海未ちゃん、そこまでにしてあげたら」

 

「穂乃果ちゃんもう倒れてるよ」

 

「え?」

 

「わ、私だってやればできるもん。ここ最近穂乃果、寝坊してないもん」

 

「あはは・・・・・・」

 

実際、隅っこに移動して体育座りをしながら地面にのの字を書く穂乃果に苦笑いを浮かべた。というかフォローが出来なかった。

とまあこんな感じで何時もの?なのかな。音ノ木坂学院でのお昼休みが過ぎていき、放課後。

 

「明日、絵里ちゃんたちのクラスと試験召喚戦争するよ!」

 

HR前に突如穂乃果がそんなこと言った。

 

『『『『『はい?』』』』』

 

もちろん、いきなりそんなこといわれた僕らはそう返すしかなく。

そこへ。

 

「そんじゃ帰りのホームルーム始めるぞ。それと、明日うちのクラスは三年一組と試験召喚戦争するからな~」

 

担任の山田先生がそう言ってきた。

 

『『『『『はいぃぃぃぃいいいいいいいい!!?』』』』』

 

突然のことに僕らは驚きを通り越して絶叫した。

 

「穂ぉぉ乃ぉぉ果ぁぁ!!」

 

「うわっ!?」

 

そこに海未が鬼のような・・・・・・

 

「明久、今何か失礼な事思いませんでしたか?」

 

「き、気のせいです」

 

ではなく、怒った顔付きで穂乃果に迫った。

さっきの海未が少し怖く背筋に寒気が走ったのは気のせいだと思いたい。

 

「いきなり試験召喚戦争なんて申し込んで何してるんですか貴女は!」

 

「う、海未ちゃん、落ち着いて、ね」

 

「これが落ち着けますか!」

 

海未はいつも穂乃果を怒るときとは違う・・・・・・というかどう考えても全く違う。凄まじい勢いで穂乃果に迫り、

 

「お、おい、園田、す、少し落ち着け、な」

 

「山田先生、ちょっと穂乃果とお話(O☆HA☆NA☆SHI☆)してきます!」

 

「あ、ああ」

 

止めに入ろうとした山田先生も、若干引きつった笑いを浮かべながら海未を止めようとするが、今の海未に効果はなかった。

 

「え、ちょっ!?あ、明久くん、助けて!」

 

「えっと・・・・・・ごめん、ムリ」

 

「恵衣菜ちゃん!」

 

「あはは・・・・・・頑張って穂乃果ちゃん」

 

「こ、ことりちゃん!」

 

「え、え~と・・・・・・ゴメン」

 

「さあ、行きましょうか穂乃果?」

 

「いやぁぁぁああ!ダレカタスケテー!!」

 

『『『『『・・・・・・・・・・』』』』』

 

悲鳴を上げて連れていかれた穂乃果を僕らは無言で見た。もちろん、山田先生も僕ら同様だった。

そしてその数十秒後。

 

 

 

 

『ゴメンナサアァァァァァァァァァアアアアアアイ!!!!』

 

 

 

 

穂乃果のそんな声が音ノ木坂学院全体に響き渡った。

後に聞いた話だと、一年生や三年生のフロアはもちろんのこと、理事長室のかおりさんの所にまで響いていたみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後

 

〈スクールアイドル研究部〉

 

 

HRで明日試験召喚戦争をやることになった僕らは・・・・・・というか僕と恵衣菜はでないけど。僕たち二年一組はあのあと戻ってきた穂乃果を見てなんとも言えなかった。何故なら。

 

「ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません。ごめんなさいもうしません」

 

教室に戻ってきた穂乃果は今も変わらずこの状態だったからだ。海未を見ると、海未はやりきったような顔をしていたため何も言えなかった。現に山田先生もかなり退いていた。穂乃果を見て。

 

「なるほどね。あの悲鳴はそう言う事だったの」

 

「まさか校舎全体に響き渡るなんて・・・・・・」

 

「す、すみません」

 

「海未が謝ることじゃないでしょ?今回は穂乃果が悪いと思うわ」

 

「え、えっと、穂乃果ちゃん大丈夫?」

 

「さっきより白くなってる気がするにゃ」

 

「まるで屍みたいね。生きてるのに・・・・・・」

 

「自業自得やね」

 

「あはは・・・・・・」

 

〈スクールアイドル研究部〉の部室にやって来た僕たちは穂乃果を見て驚いた絵里たちに説明すると、絵里たちは納得したように以上の反応をしたのだ。

というか穂乃果がどんどん白くなっているような・・・・・・海未、君は一体なにを穂乃果にしたんだい?

 

「取り敢えず穂乃果がこんな状態じゃとても練習は無理ね」

 

「す、すみません。ちょっとやりすぎました」

 

『『『『『これでちょっとって』』』』』

 

海未の言葉に僕らは同時に穂乃果を見てそんなことを思ったそうだ。

 

「絵里のクラスは試召戦争大丈夫なの?」

 

「私のところは大丈夫よ。まあ、いきなり先生に明日試召戦争があるって言われて驚いたけどね」

 

絵里ははにかみ笑いで答えた。

とまあ、穂乃果のとてもじゃないが練習できる感じでは無かったので、今日はそのまま帰ることになり、翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、今から二年一組と三年一組の試召戦争を始めます。両クラスとも、正々堂々戦ってください。それでは、始め!」

 

 

『『『『『試獣召喚(サモン)!』』』』』

 

 

午前9時半、二年一組と三年一組の試召戦争が開戦した。

 

「二年一組佐野 美琴(さの みこと)、三年一組、南條 咲希(なんじょう さき)先輩に勝負を申し込みます!」

 

「三年一組南條咲希、二年一組佐野美琴さんの申し出を受けます!」

 

「承認します!」

 

『『試獣召喚!』』

 

承認した僕はフィールドを構築する。両クラスの先陣がそれぞれ勝負を仕掛け、両者は召喚獣を呼び出した。

 

 

数学

 

 

二年一組 佐野 美琴 211点

 

 

VS

 

 

三年一組 南條 咲希 224点

 

 

 

二人の召喚獣の頭上に、自分の保有する科目の点数が表記する。

 

「いきます!」

 

佐野さんの召喚獣の武器は短剣。南條先輩の武器は刀だ。

 

 

ガキンッ!

 

 

佐野さんの召喚獣が南條先輩の召喚獣と鍔迫り合いをし、金属音が響く。

 

「これが本物の試験召喚戦争・・・・・・練習と違って難しい」

 

「周りに気を付けないといけないなんて・・・・・・」

 

佐野さんと南條さんは実際に体験する試験召喚戦争が練習と違って戸惑いながらも召喚獣を操作する。

周囲の人たちも少し不安感を醸し出していた。

 

「みんな、落ち着いて」

 

「吉井さん・・・」

 

「吉井くん・・・」

 

僕の声に周囲入学のみんなは僕を見た。

 

「操作の練習で僕や姫宮さんと練習した時のことを思い出して。そうすれば大丈夫だから」

 

「吉井さんと姫宮さんと練習した時の事・・・・・・」

 

「・・・なるほど・・・・・・分かりました!」

 

「分かったよ吉井くん!」

 

僕のこの一言により、周りのみんなは練習を思い出したかのように操作した。

 

「細かい操作は今は余りしないで。ただ、相手と周りを見渡すんだ」

 

『『『『『はい!』』』』』

 

アドバイスにも相手と闘いながら返事を返してくれた。

 

「これでどうですか!」

 

佐野さんの召喚獣は短剣の特徴である小回りの利きやすさを十分に利用して南條先輩の召喚獣を攻撃していく。そして南條先輩は刀のリーチを活かして防ぎ、カウンターで攻撃する。

周囲も。

 

 

数学

 

二年一組 羽澤 胡桃(はざわ くるみ)   171点

     七瀬 愛莉(ななせ あいり)   204点

     霜崎 氷果(しもざき ひょうか)   259点

     与那沢 花怜(よなさわ かれん)  314点

 

 

VS

 

 

三年一組 日暮 真那華(ひぐら まなか)  231点

     西條 紫織(さいじょう しおり)   384点

     久々利 美香(くくり みか)  241点

     湯河 美鈴(ゆかわ みすず)   202点

 

 

 

それぞれ自分の召喚獣の武器を上手く活用していた。

 

「(それにしても全員点数が文月学園のBクラス以上って凄いんだけど・・・・・・しかも、Aクラス並みの人もいるし)」

 

僕はフィールドを見ながらそう思っていたのだった。

 

「(恵衣菜の方はどうなんだろ)」

 

両クラスの戦闘を見ながら、別の場所でフィールドを構築しているであろう恵衣菜のことを僕は思った。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

音ノ木坂学院最初の、二年一組VS三年一組の試験召喚戦争が始まって一時間、私の構築しているフィールドの中ではある意味凄いことが起こっていた。それは・・・。

 

「せいやっ!」

 

「遅いです!」

 

 

 

国語

 

 

二年一組 雪澤 日陽(ゆきさわ ひよ) 0点

 

 

VS

 

 

三年一組 十条 日向(じゅうじょう ひなた) 378点

 

 

 

三年生の十条先輩が二年一組の召喚獣を一人で四人も倒したからだ。

負けて点数が0点になった雪澤さんはルール通り、別室での待機となる。文月学園だと西村先生が戦死者を補習室に連れて行くんだけど、ここでは試験召喚システムに自動的に戦死者か生存者が記録される。つまり、ここで離れて別の所で対戦を仕掛けても召喚獣を出せないから闘えないのだ。文月学園でもこのシステムを入れたら良いと思うんだけど。

 

「(西村先生が居るからその必要は無いかな?)」

 

直ぐに私はそのシステムの案を止めた。なにせ、我が文月学園には西村宗一という補習教師が居るのだから。

未だかつて、試験召喚戦争で戦死者となった生徒を逃がした事は無いと言われる西村先生。一部の生徒からは鉄人や鬼の西村、補習の鬼等々と呼ばれている。この中で最も生徒に広まっているのが鉄人という名前だ。

西村先生の趣味はトライアスロンらしく、そのためか文月学園の生徒達からは鉄人と呼ばれている。もっとも、鉄人と呼んでいるのはFFF団のような人達だけなのだが・・・・・・。

 

「(ってあれ?私たちは呼んでないけど確か殆どの生徒が呼んでるって聞いた気が・・・・・・)」

 

私は前に聞いた噂を思い出してそんな事を思い浮かんだ。

 

「(というか前々から思ってたけど西村先生ってほんとに人間なのかな?)」

 

文月学園での西村先生を思い出して私はついそんな事を思ってしまった。

なにせどんなところにでも瞬時に走ってくる行動力、十数人の人を一片に運んでいく、さらに高橋先生並みの学力、正直こんな人間っているのかなと思ってしまう。

そんなこと思っていると。

 

「あの、姫宮さん?」

 

「あ、はい。どうかしました十条先輩」

 

十条先輩たち三年生が心配そうに見てきた。

 

「いえ、ここにいた二年一組の人達全員倒しましたけど?」

 

「へ?」

 

十条さんに言われた通り、見てみるといつの間にかその場には私と、三年一組だけしかいなかった。

 

「それで、移動したいんですけど・・・・・・」

 

「あ、分かりました」

 

私はフィールドの構築を解き、召喚フィールドを消す。

 

「それでは行きましょう」

 

私は十条先輩たち三年一組の後を着いていった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

時は過ぎてお昼休み。

 

「うぅぅ・・・・・・試験召喚戦争がこんなにも大変だったなんて~」

 

「あはは・・・・・・大丈夫、穂乃果?」

 

「穂乃果ちゃん、生きてる?」

 

「生きてるよ恵衣菜ちゃん~」

 

「あはは・・・・・・穂乃果ちゃん大丈夫?」

 

「まったく、穂乃果は何もしてないじゃないですか。殆ど私とことりやヒデコたちが言った事を伝えたり指示しただけじゃないですか」

 

「海未ちゃんがいじめるよー」

 

「まあ、代表ってのは大変だからね。相手の戦略と自分達の戦略の考えに自陣の戦力の把握、相手の配置や自陣の戦力分配、斥候部隊や諜報、護衛、後方支援、などなどかなり頭を使うからね」

 

「そうだね。文月学園ではそれが大変だよね」

 

「さすが明久くんと恵衣菜ちゃんだね」

 

「まったくです。穂乃果も見習ってほしいものです」

 

「さ、流石に穂乃果には無理だよ~」

 

お昼時は試験召喚戦争は一旦取り止めになり各自で昼食を取り、午後からの開戦では最後に自分がいた場所から開始となる。

そして僕と恵衣菜は屋上で穂乃果、海未、ことりと一緒にお昼ご飯を食べていた。そのときの話題は試験召喚戦争の大変さだった。主に穂乃果が。

もちろん僕と恵衣菜は試験召喚戦争での情報は漏らしてはならないから、一切この試験召喚戦争に関しては何も言わないようにしている。まあ、さっきの話の試験召喚戦争の大変さ位は教えてもいいと思う。

 

「僕からはとにかく頑張ってとしか言えないよ」

 

「私も。立場が先生と同じだからね」

 

「二人も大変そうですね」

 

「まあね。でも、文月学園よりは疲れないと思うよ?ね、恵衣菜」

 

「あー、う~ん、まあ、少しはね」

 

「ん?なにかあったの?」

 

「ううん、なにかあったのというか、西村先生ってほんとに人間なのかなって思ってて」

 

「あー、確かに」

 

恵衣菜の言った意味が分かり思わず遠い目をしてしまった。

 

「どういうこと?」

 

「いや、文月学園には補習教師の西村先生って人がいるんだけど」

 

「西村先生がほんとに人間なのかなって思ったの」

 

「???」

 

僕と恵衣菜の言葉に穂乃果、海未、ことりは首をかしげた。

 

「いや。だって、一人で十数人の人を一片に運んで行くんだよ?」

 

「はい?」

 

「しかも、どんな場所にでも試験召喚戦争で戦死者が出たら補習室に連れて行くし」

 

「え?」

 

「西村先生の名言が、趣味は勉強、尊敬する人は二宮金次郎、なんだもん」

 

「それって洗脳じゃ・・・・・・?」

 

「他にも生徒から鉄人とかって呼ばれてるし」

 

「ほ、ほんとに人間なんですか?」

 

穂乃果、海未、ことりが僕と恵衣菜の言った西村先生に対して、驚きの反応を見せた。

そりゃ、誰でもこの話を聞いたらそうなるよね。

僕と恵衣菜は三人の予想通りの反応に苦笑して返した。

そんな感じの昼休みが過ぎ、僕たちはそれぞれ分かれ、恵衣菜は3階の廊下に、僕は2階の廊下付近を、穂乃果、海未、ことりは教室に戻り、午後1時15分。午後の試験召喚戦争が開幕した。

 

 

 

 










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第Ⅹ門 試験召喚戦争

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

希)ついに始まった音ノ木坂学院の試験召喚戦争。戦争解禁初日から穂乃果ちゃんのクラスとエリチのクラスが戦うみたいや。ウチとしてはどっちも頑張ってもらいたいんやけど・・・・・・。さあて、女神はどっちに微笑むんやろな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

午後一時十五分。音ノ木坂学院最初の試験召喚戦争、二年一組対三年一組の午後の試召戦争が開始された。

僕は二階廊下でフィールドを構築しながら両クラスの戦況状況を確認していた。

 

「(二年生の戦死者は10人。三年生は9人・・・・・・か)」

 

 

音ノ木坂学院は一クラス約30人だ。この戦況状況から分かる事はどちらも五分五分だということだ。

ここまで人数が少ない理由は、どっちのクラスも試験召喚戦争に慣れてないため、操作がぎこちないからだ。

絵里は生徒会長としてこういう戦況分析が得意なのだろう。穂乃果の場合は海未が参謀として作戦を練っているからだと思う。

 

「これは穂乃果、完全に海未に任せっきりかも・・・・・・あ、今に始まった事じゃないか」

 

僕は常に海未に頼りっきりの穂乃果を脳裏に浮かび出した。

 

「(さて、穂乃果はどう戦うかな?)」

 

僕は穂乃果たちの戦いに少しワクワクしながらフィールドで召喚戦争の行方を見守った。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~穂乃果side~

 

 

え~と、二年一組の代表の高坂穂乃果です。一応、私が代表なんだけど・・・・・・。

 

「園田さん、三階廊下から応援だって!」

 

「海未ちゃん、残りクラスメイト16人!」

 

「わかりました。若宮(わかみや)さん、桐原(きりはら)さん三階廊下をお願いします」

 

「「はい!」」

 

「ことり、3年生の残り人数は?」

 

「16・・・・・・あ、14人!こっちは残り13人に減ったよ!」

 

「さすが絵里ですね。戦略の仕方が上手いです」

 

「あ、あの海未ちゃん、私は・・・・・・?」

 

「穂乃果はそこでジッとしていてください」

 

「はい・・・・・・・」

 

すべて海未ちゃんやことりちゃんたちがやってくれているため完全置物状態です。

 

「時間は13時40分ですね・・・・・・」

 

海未ちゃんが時計を見て言った。

 

「どうしたの?海未ちゃん」

 

「いえ、そろそろ決着をつけようかなと。何処かの誰かさんが始めたこの試験召喚戦争(闘い)を」

 

「うっ。ご、ごめんなさい」

 

昨日海未ちゃんにお話(O☆HA☆NA☆SHI)をされた私は何も言えなかった。昨日のことを思い出すだけで身体が震えるよ。

 

「ことり、全部隊に通達です」

 

「わかったぁ。なんて伝えるの?」

 

「そのまま現状を維持、危なくなったら退いて他の部隊と合流。それと、一階を放棄、撤退して最終防衛ラインを死守、です」

 

「了解!」

 

ことりちゃんは海未ちゃんからの伝令を三人のクラスメイトに伝えるとそれぞれの部隊に伝えにいった。

 

「海未ちゃん、なんで一階を放棄?したの?」

 

私は疑問に思ったことを海未ちゃんに聞いた。

 

「一階は人数が五人と多いので残り三人の私たちでは死守できません。なので、一階は放棄して最終防衛ラインで他の人と迎え撃つことにしたんです」

 

「な、なるほど・・・・・・」

 

いまいちよく分からなかったけど、私は分かったように頷いた。

 

「本来ならこういう作戦立案は穂乃果の仕事なんですよ?」

 

「うっ!」

 

「まあ、穂乃果に任せたら午前中で負ける事になっていましたけど」

 

「ひ、酷いよ海未ちゃん!穂乃果だって・・・・・・多分・・・・・・」

 

「はぁ」

 

「あはは・・・・・・・」

 

海未ちゃんのため息にいつの間にか戻っていたことりちゃんが苦笑いを浮かべていた。

 

「それで、ことり戦況は?」

 

「うん。海未ちゃんの指示通りにしたから多分少しの間は大丈夫だと思うよ」

 

「そうですか・・・・・・。では、これから総攻撃を仕掛けましょう」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

海未ちゃんの言葉に穂乃果はもちろん、ヒデコたちも驚いていた。

 

「園田さん、総攻撃で大丈夫なの?」

 

「私たちが勝つには現状、総攻撃で絵里の所に辿り着かなければなりません」

 

「確かに人が少なくなっているけど・・・」

 

「だからこそです。このまま人数が少ないと私たちの勝つ勝率はどんどん無くなります。絵里のいる4階の三年一組に行くにはその防衛ラインを突破しなければいけません」

 

「なるほど。敵を誘導して警備が手薄な場所から攻めるってことね」

 

「その通りです。一階は放棄したので最終防衛ラインの中央階段踊り場に戦力を集中しているはずです」

 

海未ちゃんの言っている事、穂乃果にはちんぷんかんぷんすぎるんだけど、ヒデコたちは分かっているみたい。

 

「それでは行きますよ!穂乃果も着いてきてください」

 

「う、うん」

 

こうして私たちは残ったクラスメイト全員による総攻撃を始めた。

 

~穂乃果side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「二年生は一階を放棄。最終防衛ラインの中央階段踊り場まで下がったんだ」

 

ただいま一人で二年生の廊下にいた僕は戦況を見てそう呟いた。

この音ノ木坂学院の校舎の階段は幾つかあるが、屋上に繋がる中央階段は広く、他の階段より激戦区となっている。

 

「ってことは多分そろそろ穂乃果たちは総攻撃を仕掛けるかな?」

 

僕は海未の作戦構想を雄二が考えそうなことと同一化させて思った。まあ、雄二ならもう少し上手く考えるだろうけど。僕もさすがに雄二ほど頭の回転は早くないからね。

そんなこと思っていると・・・

 

「明久!」

 

「ん?」

 

後ろから声が聞こえた。

振り向くとそこには海未たちがいた。

 

「どうしたの海未?・・・・・・って、聞かなくても分かるかな」

 

どうやら僕の予想通り総攻撃を仕掛けるみたいだ。

 

「さすが明久ですね。なので、召喚許可をお願いします」

 

「了解」

 

フィールドを構築し、海未たちの後に着いて行く。

そのまま歩くことしばらくして三年生との戦闘が行われているフィールドがあった。そして奥からは増援が来ている。

 

「「「「「「試獣召喚(サモン)」」」」」

 

相手三人に対し、二年生側も三人前に出た。

 

「三人ともここはお願いします。私たちは先へ」

 

「「「了解!」」」

 

「(うん。完全に海未が代表になってるよ)」

 

的確に指示を出す海未にそう思ってしまったのは当然だと思う。ていうか海未がなんかかっこよく見える。

あれ、女の子にかっこよく見えるってのはおかしいかな?

そう考えてながら海未たちの後に着いて行くと・・・

 

「あ、明久くん」

 

「恵衣菜?」

 

反対側の方から恵衣菜がフィールドを構築してやって来るのが見えた。

 

「ストップ恵衣菜」

 

「え?あ、そっか、干渉・・・・・・」

 

「そういうこと。恵衣菜、フィールドの科目は?」

 

同じ科目フィールドなら干渉がおきないため恵衣菜にフィールド科目を聞いた。

フィールドの科目は担当の先生によって異なるんだけど、僕と恵衣菜だけは特別で全科目が承認できる。

 

「え~と、総合科目だよ」

 

「あ、同じなんだ」

 

ちなみに僕が展開しているフィールド科目も総合科目だ。

 

「ってことは明久くんも?」

 

「うん。なら、問題ないね」

 

「そうだね」

 

恵衣菜に近付き、恵衣菜の構築している総合科目のフィールドと僕の構築した総合科目のフィールドが合わさり二つが一つのフィールドとなった。これで三年一組を含む辺り一体のフィールド科目は総合科目だ。

その間に既にこの試召戦争は終盤に近付いていた。

海未たち率いる二年一組が絵里たち三年一組に入り込んでいるのだ。

見てみると、穂乃果の護衛として側にことりが。近衛部隊をヒデコたち3人が。そして、絵里と海未が一騎討ちをしていた。

 

「明久くんはどっちが勝つと思う?」

 

三年一組の教室に入り、勝負の行方を見守っていると恵衣菜が小声で聞いてきた。

 

「う~ん、現状二年生が押してるみたいだけどそれも時間の問題かな?」

 

僕はここに来るまでの戦況を思い出して言った。

 

「なんていうか、海未の作戦構想が雄二と似ているんだよね」

 

「ははは。なるほどね」

 

僕の言いたいことがわかったのか恵衣菜はくすりと笑った。

 

 

 

総合科目

 

 

二年一組 高坂 穂乃果 1671点

     園田 海未  4203点

     南 ことり  4056点

 

VS

 

 

三年一組 綾瀬 絵里  4378点

 

 

 

視界の先には穂乃果たちの点数が表示されている。

実際戦闘しているのは海未だが、その後ろにいることりと穂乃果も召喚獣を召喚していた。

 

「それにしても海未ちゃんとことりちゃん、絵里ちゃん点数高いね」

 

「うん。文月学園(うち)だとAクラスレベルだね。しかもかなり上位クラスの。もし文月にいたら序列持ちだったかも」

 

文月学園には各学年ごとに序列がある。

序列は50位まであり、その序列はテストの総合科目点数によって着けられ、序列は進級時の試験や全期末考査や期末考査などの試験ごとに変わる。

そして、現在の文月学園第二学年の序列は1位が僕、2位が恵衣菜、3位が零華、4位が霧島さん、5位が雄二、6位が久保くん、7位が姫路さん、8位が木下さん、9位が佐藤さん、10位が工藤さん、11位が須川くん、12位が桜咲さんとなっている。他にも横溝くんとリューゼンハイムさんが14位と13位。秀吉や天野さん、康太、恭二、岩下さん、菊入さんが序列持ちだ。

 

「まあ、穂乃果ちゃんもDクラスレベルだね」

 

「あー、多分その点は海未が教えたんだと思うよ」

 

穂乃果の点数が1000点を越えてる事に関しては恐らく海未が勉強を教えたんだと思う。まあ、いくら穂乃果が少し・・・・・・?頭が悪くても、さすがにFクラスの人みたいな点数は取らないと思う。・・・・・・・・・・多分。と言うか取らないと信じたい。

 

「海未と絵里の点数は五角」

 

「あとは操作次第だね」

 

「うん。二人とも一応腕輪は装備してるけどね」

 

僕と恵衣菜は海未と絵里の闘いを見てそう話す。

海未の武装は弓。絵里は細剣。遠距離武器と近接武器。どちらが有利で言うならばこの状況下では海未の方が有利だ。現に、海未の召喚獣は絵里の召喚獣を近寄らせずにしている。絵里も細剣で海未の召喚獣の放つ矢を斬り裂いたり、躱したりしているが決定打となるような攻撃を与えられてない。与えられてないというか与えられないの方が正しいかもしれない。

 

「明久くんだったら海未ちゃんの召喚獣の矢を全部、撃ち落とすか、斬って接近するよね」

 

「まあね。恵衣菜だったら矢と矢をぶつからせて軌道をずらして、細剣で一気に接近するんじゃない?」

 

「まあ、対策としたらそうなんだけどね」

 

互いに相手ならどうするかの話をしながら行方を見守ること数分。

 

「あ、腕輪を使うみたい」

 

「うん。なんの能力なんだろ?」

 

僕と恵衣菜は海未たちと腕輪の能力を楽しそうに見る。すると。

 

「翔け抜けなさい!ラブアローシュート!」

 

「貫きなさい!シャイニングスター!」

 

海未が顔を真っ赤にして言い、絵里は特に変わらずに言う

え、ラブアローシュートって・・・・・・もしかして・・・・・・?海未を見ると羞恥心なのかプルプルと震えて俯いていた。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~海未side~

 

 

「絵里!勝負です!」

 

私は三年一組に入るとすぐさま絵里に勝負を申し込んだ。だが、その手前で三人の近衛部隊が私の行く手を阻みます。そこへ。

 

「あなたたちの相手は!」

 

「私たちよ!」

 

「いざ尋常に!」

 

「「「勝負!」」」

 

ヒデコ、フミコ、ミカが近衛部隊の相手をしてくれました。

 

「いいわ。掛かってきなさい海未!」

 

「「試獣召喚!」」

 

同時に召喚獣を呼び出し、互いの点数が表示されます。

 

 

 

総合科目

 

 

二年一組 高坂 穂乃果 1671点

     園田 海未  4203点

     南 ことり  4056点

 

VS

 

 

三年一組 綾瀬 絵里  4378点

 

 

 

一応、ことりと穂乃果の点数も表示されてますがことりは穂乃果の護衛です。

 

「4000点オーバー・・・・・・さすが絵里ですね」

 

「フフ。海未こそ。ことりもそうだけど、穂乃果はもう少し勉強した方がいいかもしれないわね」

 

「ええ~っ!穂乃果これでもすっごく頑張ったんだよ!」

 

「では、今月末に行われる定期テストではその上を目指しましょう」

 

「ええぇっ!ことりちゃん、海未ちゃんがいじめるよ~!」

 

「はいはい♪穂乃果ちゃんも後少し頑張ろうね」

 

後ろでは相変わらずのやり取りが行われていますね。

私は呆れたようにため息を吐き、絵里を見据える。

絵里の召喚獣の武装は細剣。対して私の召喚獣の武装は弓です。相性ならこっちが有利かもしれませんね。まあ、明久たちならそんなことお構い無しなのかもしれませんが。

私はそんなことをおもいながら意識を集中する。

 

「いきます!」

 

まずは第一射を絵里の召喚獣に向けてストレートに直線に放ちます。

 

「はあっ!」

 

しかしその矢は当たる直前で細剣によって防がれてしまいました。

 

「まだです!」

 

防がれたのを見ると瞬時に次の矢をつがえて放つ。それを立て続けに行い、攻撃します。操作訓練のときと同じやり方の穂乃果の近接攻撃とことりの支援魔法の連携が使えればいいんですけど、もしこれで穂乃果が負けたら私たちの敗けですから、この戦法は使えません。そうなるとやはり・・・・・・・。

 

「私一人で闘うしかないですね・・・・・・・」

 

幸いにも私の召喚獣には腕輪が着いていますからなんとかなるかもしれません。場合によってはことりに助けを頼むかもしれませんね。

 

「その程度かしら海未!」

 

「くっ!まだまだです!これからが本番です絵里!」

 

一進一退の攻防が繰り広げるなか、私は明久と恵衣菜に教わったことを思い出しました。

 

 

『たった一人で遠距離の武器で相手を攻撃する時は基本、一ヶ所に留まらずに、常に動くこと。ペアの場合は片方が敵を引き付けて、援護射撃を行う事が重要だよ。けど、この援護射撃で味方に被弾したら本末転倒でしょ?だから、タイミングと味方と敵の動きを把握する。これが遠距離武器所持者にとって大切な事だよ』

 

 

『遠距離武器には弓や銃、魔法があるんだけど、弓は銃や魔法とは違って、止まって、矢をつがえて、狙いを定めて、射つ、の四工程があって。慣れれば、止まってと狙いを定めるを省略出来て、つがえて、射つの二工程でできるんだ。もちろん、動きながら矢をつがえて、狙いを定めて、射つということも出来るよ。銃は照準を定めてトリガーを引くの二工程で、魔法は詠唱して魔方陣の構築、術式名称、発動の四工程。けど、魔法も動きながら詠唱する並列詠唱をしながら魔方陣の構築、術式名称からの発動をすれば四工程だけど起動時間が減るよ。遠距離武器に必要なのは行動力と空間把握能力だね。今の時点だと省略や並列詠唱は無理かもしれないけど、いずれ出来る様になると思うから頑張ってね、みんな』

 

 

明久と恵衣菜から聞いたことを思い出して私は動き変えました。

立ち止まって射つのではなく。

 

「っ!?くっ!近寄れない・・・・・・っ!」

 

走りながら連続で矢を放つ。確かにこれはキツいですね。明久たちはこんな事が出来るなんて・・・・・・。

さらに私は遠距離から近距離での射撃もします。

 

「早い!さすが海未ね。明久と恵衣菜から聞いた事を実践しようなんて」

 

「勝つためです!ですが、今はそんなことより絵里に勝ちたいという気持ちで一杯です!」

 

「それは、私も同じよ!」

 

絵里の召喚獣の細剣による連撃をギリギリのところでかわしバックステップで下がって矢を三本同時に放つ。

 

「その程度!」

 

絵里は飛んでいく三本の矢を、一射目はかわし、二射目と三射目を斬り裂く。

 

「くっ!これで決めます!」

 

「受けて立つわ!」

 

私と絵里の召喚獣は互いに距離を取り、私は矢を限界まで引き絞って、絵里は細剣を握った右手を肩の高さにまであげ肘を折り畳む。

正直腕輪の名前を言うのはかなり・・・・・・もの凄くとっても恥ずかしいのですが。前に明久に見られた時と同じくらい恥ずかしいです。けど、そんな事言ってられません。

私は心を無にして言います。

 

「翔け抜けなさい!ラブアローシュート!」

 

「貫きなさい!シャイニングスター!」

 

私は腕輪の能力で槍のような形になった赤い、焔を纏っているような矢を。いえ、槍を放つ。

対する絵里は細剣に光を纏わせて素早く一直線に迫ってきます。

私の槍と絵里の細剣がぶつかり、衝撃波が生まれ目映い光が辺りを照らしたかと思うと。

 

 

 

 

 

総合科目

 

二年一組 園田海未 378点

 

VS

 

三年一組 綾瀬絵里 0点

 

 

 

 

 

次の瞬間そう表示され、絵里の召喚獣が虚空へと消えていきました。

 

~海未side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「そこまで!今回の試験召喚戦争、勝者二年一組!」

 

海未と絵里の勝負の決着が着いたのを確認した僕は全体に聞こえる様に宣言し、フィールドの構築を解除した。

フィールドを解除すると、二年一組からは勝利の歓声が、三年一組からは気落ちの声が聞こえてきた。

 

「はいはい。みんな、落ち着いて」

 

僕の声に辺りからの声がシンと静かになった。

 

「まずは二年一組のみんな、勝利おめでとう。みんな初めての試召戦争なのによく頑張っていたよ」

 

僕の声に二年一組からは喜びがあがった。

 

「そして三年一組のみんな。負けちゃったけど、とてもいい試召戦争だったよ。正直、どっちが勝つか分からなかった」

 

「けど、みんな動きは良かったよ。だからそう気落ちしないで。今日負けた事を次回に活かしたら良いんだから」

 

僕と恵衣菜の声に三年一組からは頷きが返ってきた。

 

「それじゃ、両クラスとも自分のクラスで待機していて。先生から連絡が来ると思うから」

 

僕のその言葉を締めに、二年一組は下の自分のクラスへ、三年一組は席を直して自席に着き、僕と恵衣菜は職員室に向かった。

戦争終結の報告をして、各クラスの担任の先生に伝えたあと、僕と恵衣菜は理事長室に行き、今回の戦争の成果を報告。お祖母ちゃんにも伝えるためのレポートを書き上げ提出し、こうして音ノ木坂学院、最初の試験召喚戦争の一日が終わった。

 

 

 




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第ⅩⅠ門 お兄ちゃんのいない学校

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

 

零華)ついに始まった音ノ木坂学院での試験召喚戦争。穂乃果ちゃんと絵里ちゃんのクラスの戦いは穂乃果ちゃんのクラスが勝ったみたいだね。海未ちゃんやことりちゃんが苦労したんじゃないかな~?ひとまずそれは置いといて、今回はお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんのいない、強化合宿からの私たちの学園生活を話します。さて、一体どんな生活なのか・・・・・・楽しみだね、お兄ちゃん♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

 

学力強化合宿が終わった翌週。私は一人で文月学園に登校していました。

 

「うぅ・・・。やっぱり、お兄ちゃんが居ないと寂しいですね」

 

私は誰も居ない通学路でそう声に出した。

お兄ちゃんと恵衣菜ちゃんはお祖母ちゃんのお願いで幼馴染の穂乃果ちゃんと海未ちゃん、ことりちゃんの通ってる音ノ木坂学院に一学期終了まで通うそうです。

何でも姉妹校となった音ノ木坂に試験召喚システムを提供した為、その講師として二年生の序列一位、二位のお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんが選ばれたそうです。私は二年Aクラスの代表。牽いては第二学年の主席だから行けませんでした。本当の主席はお兄ちゃん何ですけどね。

そのまま一人で登校し、自分のクラスであるAクラスに着きました。中に入ると既に何人かのクラスメイトが登校していました。

その中には友達の翔子ちゃんや優子ちゃんも居ました。

 

「おはよう、翔子ちゃん、優子ちゃん」

 

「・・・・・・おはよう零華」

 

「おはよう代表」

 

「二人とも来るの早いね~」

 

「・・・・・・そう?」

 

「わたしはいつも通りだと思うわよ?」

 

私はそんな日常的な会話をかわす。

 

「そう言えば今日、全校集会があるみたいよ?」

 

「全校集会?」

 

私は優子ちゃんの唐突な話題に首をかしげた。

 

「ええ。なんでも、告知することがあるとかで」

 

「へぇー」

 

私がそう答えると、不意にポケットに入っていたスマホがバイブレーションとともに震えた。

 

「?メール?誰からだろう」

 

送られたのはメールだった。

送られてきたメールを開くと、送ってきたのはお祖母ちゃんだった。

 

「(お祖母ちゃんから?学校にいるときにお祖母ちゃんからメールなんて珍しいな~)」

 

学校の人にはお祖母ちゃんとの関係を隠している為、学園内で基本的には、私やお兄ちゃん、恵衣菜ちゃんは学園長と呼んでいる。お祖母ちゃんも、私たちのことを吉井兄、吉井妹、姫宮、と呼んでいるのだ。

少し不思議に思いながらメールを開くと、今日の全校集会についてだった。それと、今すぐ学園長室に来てほしいとの旨だった。

 

「ごめん、二人とも。私ちょっと行くところができちゃった。HRまでには戻るから安心して」

 

「・・・・・・分かった」

 

「分かったわ」

 

翔子ちゃんと優子ちゃんにそう言って、私は教室を出て学園長室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

 

"コンコン"

 

 

『入りな』

 

 

扉をノックすると、部屋の中からお祖母ちゃんの声が聞こえた。

 

「失礼します」

 

私は声が聞こえると学園長室に入った。

中には私とお祖母ちゃんの他いなかった。

 

「呼び出して悪かったさね零華」

 

学園内で私のことを吉井妹、ではなく零華と呼んだと言う事はプライベートの話なのだろう。

 

「ううん。今日はお兄ちゃんたちと同じ時間に出たから大丈夫だよお祖母ちゃん」

 

「そうかい」

 

そう言うとお祖母ちゃんはホッとした表情をだした。

 

「それでどうかしたの?メールに今日の全校集会の内容が書いてあったけど」

 

「ああ。実はちょっと困った事になってね」

 

「困った事・・・・・?」

 

「そうさね」

 

私は話が長くなる事を感じ取り、ソファに座っていいか訊ねた。

お祖母ちゃんはコクリと頷き返してきた。

 

「実は、Fクラスの坂本たちをAクラスでしばらくの間、在籍させてほしいのさね」

 

「坂本君たちを?」

 

「強化合宿のあと、覗きに加担した男子生徒と姫路瑞希、島田美波、清水美春を罰則をしたのは知っているさね?」

 

「うん。確かFクラス男子生徒たちは二週間の停学、他の男子生徒は一週間停学、で、姫路瑞希と島田美波の二人は西村先生の特別補習で、清水美春は一ヶ月の停学と特別観察処分者・・・・・・だったよね?」

 

「そうさね。その件についてもこの後の全校集会で言うつもりさね」

 

「え・・・・・・。それ、大丈夫なの?」

 

私はお祖母ちゃんがその事を全校集会で伝える事に心配した。唯でさえ、彼女たちのせいで文月学園の看板が危ういのだ。特に問題なのは殺人未遂事件が起きた事だ。

 

「全然大丈夫じゃないさね」

 

お祖母ちゃんは気疲れした様にため息を吐いて答えた。

 

「けど、流石に全校集会で伝えないといけない件だからね。まったく、面倒な事をしてくれたもんさね」

 

「ホントだよ」

 

「それで、西村先生がしばらく坂本たちをAクラスに置いて欲しいとの事なのさ」

 

「なるほどね。私は良いよ。あ、高橋先生は?」

 

「高橋女史にも聞いてあるさね。流石に、この移籍の件に関しては担任と、クラス代表の承諾を得る必要があるからね」

 

「そうなんだ」

 

「それじゃ、少なくとも今学期が終わるまでは頼むさね」

 

「うん。翔子ちゃんたちも喜ぶんじゃないかな」

 

私はAクラスにいる翔子ちゃんたちを思い出して言う。

 

「ん?ああ、そう言えば坂本たちと霧島たちは恋仲の関係だったさね」

 

「うん」

 

お祖母ちゃんは、青春は良いものさね、と言いたげに窓の外を見てそういった。

 

「ああ、それと・・・・・・」

 

「?」

 

「来学期から生徒会執行部を創ろうと思っているんさね・・・・・・」

 

「生徒会を?あ、そう言えば文月学園って生徒会無かったっけ」

 

「そうさね。音ノ木坂学院と姉妹校になったからね生徒会から学校交流をしようと思うさね」

 

「なるほど。そうなると、役員は誰になるの?三年生は受験だし・・・・・・一年生はまだ無理でしょ・・・・・・となると、二年生の中から選ぶことになるけど?」

 

「初期の生徒会メンバーは決まっているさね」

 

「はやっ!?流石お母さんのお母さん・・・・・・」

 

私はお祖母ちゃんの余りの手際の早さについ突っ込んでしまった。やはり血筋と言うことか・・・・・・。つい、そう思ってしまうのだった。

 

「それで、役員って?」

 

「この5人さね」

 

そう言うとお祖母ちゃんは机の引き出しから三枚の紙を渡してきた。それを受け取り、中身を確認すると初期の生徒会役員の名前が書かれてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会執行部 初期役員

 

 

 

会計   二年Aクラス 霧島翔子

 

 

庶務   二年Fクラス 坂本雄二

 

 

書記   二年Fクラス 姫宮恵衣菜

 

 

副会長  二年Aクラス 吉井零華

 

 

生徒会長 二年Fクラス 吉井明久

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第二学年の序列一位から五位の5人を初期役員にしたさね。この件については他の先生方も承認しているさね」

 

私が役員の名前を見終わると、お祖母ちゃんがそう言ってきた。

と言いますか、他の先生も承認してるんですか!?

私は少し驚いた。

んですけど、私はそんなことより今は・・・・・・。

 

「お兄ちゃんが生徒会長・・・・・・」

 

お兄ちゃんが生徒会長になっていると言う事が嬉しいです。

余りの嬉しさに飛び上がりたい気分です。まあ、流石にしませんけど。

そんな私を見てか、お祖母ちゃんは苦笑の笑みを浮かべて私の方を見ていました。

 

「アハハ・・・・・・。さすが、文月学園でも有名なブラコンっぷりさね。明久はやっぱりシスコンさね」

 

そんな苦笑紛れの声が耳に入ってきました。

その時私は心の中で、シスコンのなにが悪いのかな?と思っていました。

お兄ちゃんは私の大好きなお兄ちゃんだし。

そう思っていながら生徒会執行部の創設の紙をお祖母ちゃんに返す。

 

「私は良いと思うよお祖母ちゃん」

 

「そうさね?なら、このまま進めるさね。ああ、言っておくがこの件はまだ他言無用さね」

 

「はーい」

 

「それじゃ、明久と恵衣菜ちゃんが居ないが頼むよ零華」

 

「任せてお祖母ちゃん♪」

 

私はそう言うと、学園長室から出てAクラスに戻った。

Aクラスに戻ると、既にほぼ全員登校完了して席に座ったりクラスメイトと楽しく談笑していた。

なぜ私のAクラスが全員登校しているかは、強化合宿で誰一人として覗きに加担しなかったからだ。もちろん、他クラスにも数名ほど覗きに加担しなかった男子生徒はいる。

自席に着き、HRが始まるまで待っているとチャイムと同時に高橋先生が入ってきて、軽くHRをし体育館で全校集会があること伝え、私たちは体育館に向かった。

 

 

 

『これより全校集会を始めます』

 

 

舞台下の司会者席で高橋先生がそう言った。

 

 

『学園長お願いします』

 

 

高橋先生がそう言うとお祖母ちゃんが壇上に出てきた。

 

 

『さて、いきなりの全校集会に全員困惑しているさね。すでに耳に入っていると思うが、今回の二年生の学力強化合宿で、一部の生徒が覗きや障害事件を起こしたのが原因さね』

 

 

お祖母ちゃんのその言葉で、二年生を除く一年生と三年生からどよめきの声が上がる。

 

 

『静かにしな!・・・・・・と、言いたいところだが無理もないさね。既に気付いていると思うが原因となった覗きに加担した生徒は処罰済みさね。そして、今回の合宿で一番の問題を起こした生徒は処罰の上、特別観察処分者に認定しているさね』

 

 

お祖母ちゃんの特別観察処分者という言葉にさらにどよめきが走る。

どよめきが落ち着くとお祖母ちゃんは話を続けた。

 

 

『アタシとしてはこの学園に、障害。ましてや殺人未遂を起こそうとする生徒がいたことに驚いているさね。今回、アタシが全校集会でこの話をしたのはある生徒への虐めが原因さね』

 

 

お祖母ちゃんのある生徒への虐め、という言葉に私はビクンッ、軽く動いた。

 

 

『その生徒は去年から、今に至るまで同クラスの生徒から多数の虐めを受けているさね。それこそ、去年入院するほどさね!』

 

 

私は何故お祖母ちゃんが、今日全校集会を開いたのか分かった気がした。

この話の生徒は間違いなくお兄ちゃんだ。

お祖母ちゃんはお兄ちゃんがこの事でまた入院する事になるのを危惧したんだと思う。だから、お兄ちゃんが安全な音ノ木坂学院に行っている間に話しているのだ。

 

 

『もう何人かの教職員及び生徒は分かったはずさね。そして、中にはその生徒が虐められているのを見たという生徒もいるはずさね』

 

 

周囲の生徒たちはお祖母ちゃんの言葉に思い出したかのようになったり、考えたりと千差万別だった。

そのとき、後ろにいる翔子ちゃんたちから声がかけられた。

 

「・・・・・・零華、この話の生徒って」

 

「うん・・・・・。兄様のことだと思う」

 

「さすがに、合宿でのことは度が過ぎてるからな」

 

「まったくじゃ」

 

「・・・・・・同じく」

 

 

 

『生徒の名前は吉井明久。第二学年序列一位さね。そして、吉井のことを観察処分者だからバカだと思っている生徒に言っておくさね。吉井は自ら進んで観察処分者になったのさね!だから吉井がバカだというのはお門違いさ!中には吉井に助けられたりした生徒も居るはずさね。吉井は優しいと。そんな吉井が今の今までこんな苦痛を受けていたさね。アタシとしてはそれが何よりも辛い!学園の長としてではなく一人の人間としてさね!』

 

 

私はお祖母ちゃんの言葉に顔を俯かせた。

今までお兄ちゃんが受けてきた、苦痛などを自分が助けられなかった事が悲しくて辛い。双子のお兄ちゃんなのに、何も出来なかった自分が何よりも許せない。

 

 

 

『吉井は今、姉妹校となった音ノ木坂学院に姫宮と一緒に試験召喚システムの講師として通ってもらっているさね』

 

 

 

お祖母ちゃんの姉妹校と音ノ木坂学院に少しざわめきが走る。坂本君たちはなんでお兄ちゃんが居ないのか納得したように頷いていた。

 

 

『アタシが吉井を音ノ木坂学院に派遣したのはもうひとつ理由があるさね。これは教職員全員から賛同されたさね』

 

 

お祖母ちゃんの言葉に私は顔をあげ、壇上に立つお祖母ちゃんを見る。

 

 

『今の吉井の心はバケツに入った水が今にも溢れだしそうな程さね。何らかの衝撃で崩壊してしまう。この学園の長として、親御さんからあんたら生徒を預かっているアタシとしてはそれをなんとしても食い止めなくてはならないさね。だからアタシは吉井に音ノ木坂学院に行ってもらったのさ。姫宮は吉井の精神安定剤のような役割も担ってもらってるさね』

 

 

私はお祖母ちゃんの言葉を聞きながらお兄ちゃんのことを思う。

今の時間帯だと、丁度音ノ木坂学院で試験召喚システムについて説明している頃だと思う。恵衣菜ちゃんには、何かあった際、直ぐに電話をして欲しいと伝えてある。それは音ノ木坂学院の理事長のかおりさんも聞いている。

お兄ちゃんは、私の大切なたった一人のお兄ちゃんだから。

私はそう胸に刻みながらお祖母ちゃんの話を聞いた。

そのあとは音ノ木坂学院との姉妹校についてを話したりして全校集会は終わった。

そしてAクラスに戻る際、私は高橋先生と一緒に、坂本君、木下君、土屋君、須川君、横溝君を連れていた。

 

「みんなに聞いて欲しい事があるの。ちょっといいかな?」

 

私はクラスに戻ると前に立ち、クラスメイトに坂本君たちのことを話す。

 

「みんなも知っていると思うけど、現在Fクラスの大半は停学中。そこで学園長先生からの提案で坂本君たち5人を今学期終了まで我がAクラスに在籍させることになりました。この件に関してはFクラス担任の西村先生と高橋先生、そしてクラス代表の私と学園長先生が承認しています。なので、短い期間ですけど坂本君たちをクラスメイトとして見てあげてはくれないでしょうか」

 

私がそう言い終わると、すぐさまクラスメイトたちから賛同の声が上がった。

 

「ありがとうみんな。坂本君たちの席はそれぞれ、坂本君は翔子ちゃんの隣、土屋君は愛子ちゃんの、木下君は麗子ちゃんの、須川君と横溝君はエレンちゃんと綾香ちゃんの隣に座ってください」

 

「ああ」

 

「・・・・・・わかった」

 

「うむ」

 

「了解だ」

 

「了解」

 

私がそれぞれの席を教えると、坂本君たちはそれぞれ恋人の隣に座った。

ちなみにこの席順にしたのは私が高橋先生と相談して決めたことだ。

 

「私から以上です。高橋先生お願いします」

 

私は高橋先生に後を任せ、窓際にある自分の席に座った。

そして時は進み放課後。

 

「に、兄様ぁ~~」

 

私は絶賛、お兄ちゃん成分不足だった。

 

「だ、代表!?しっかりしてください!」

 

そこへ木下さんが心配する声をかけてくる。 

 

「うぉい!ちょっ!これどうなってるんだぁ!!?」

 

私の様子を見てお手洗いから戻って来た坂本君が驚きの声を出す。

 

「・・・・・・零華が変になった!?」 

 

「れ、零華が壊れちゃった!?」

 

翔子ちゃんと愛子ちゃんのそんな声が聞こえてくるが、今はそんなことより一刻も早くお兄ちゃんに会いたい。

会ってお兄ちゃん成分を補充したいです。 

 

「に、兄様成分が不足しています!兄様ぁ~~~!」

 

『『『『『兄様成分ってなに!!?』』』』』

 

残っていたAクラスのクラスメイト全員からそんなツッコミが出た。

そしてその光景を、Aクラスの扉から葵お姉ちゃんが引き攣り笑いを浮かべて見ていた。

 

「あらあら。これは思っていた以上に重症ですわね・・・・・・。この様子では恐らく明久君の方も・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃、音ノ木坂学院でも

 

 

 

「うぅぅ・・・・・・零華ぁ~~」

 

「明久くんが壊れ始めちゃってる!?」

 

「妹分が足りないです・・・・・・」

 

『『『『『妹分って一体何!!?』』』』』

 

 

幼馴染以外のμ'sメンバーが同時に突っ込んだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後葵お姉ちゃんと一緒に家に帰り、お兄ちゃんが帰って来るのを待った。

お兄ちゃんが帰って来るなり、私はお兄ちゃんに駆け寄りギュッと抱きしめてお兄ちゃん成分を補充させた。

もちろんお兄ちゃんも抱き締め返してくれました。

そしてその姿を恵衣菜ちゃんと葵お姉ちゃんが引き攣った笑みで眺めていたのを視界の端で見ていました。

そのあと、葵お姉ちゃんと夕御飯を食べ、お兄ちゃんとお風呂に入り、お兄ちゃんと一緒にお兄ちゃんの部屋で寝ました。とっても気持ち良かったです。これで、あとしばらくは保ちそうかもです。

 

 

 




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第ⅩⅡ問 Aクラスでの日々

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

 

真姫)前回は私たちではなく明久の妹、零華のストーリーだったんだけど、見ていて私たちも流石にイラッと来たわ。明久が入院した理由も分かったし流石に友達としてムカつくわ。まあ、そんなこんなで、今回も零華主役のストーリー、さて、今回はどんな話なのかしら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

 

 

全校集会でお兄ちゃんの事が知れ渡った翌日。私は普段通り登校し、坂本君たちも入れたAクラスで勉強し、お昼休みはお兄ちゃんとの電話でお兄ちゃん成分の補充とお昼を食べて午後の授業を受けて放課後、帰宅というサイクルをしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――はずなんですけど!

 

 

 

「あ、あの、よ、吉井さん!好きです!つ、付き合ってください!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

私はなぜか他校の生徒らしき人から告白されていました。

というかこれで何度目ですか?!!

 

「あの、え~と、その、ごめんなさい!」

 

私はそう言うと走ってその場を立ち去りました。

走って離れたところで息を整え、さっき告白してきた人のことを思い出します。

さっきの人、私から見ても部活系爽やか男子で、女の子からもかなりモテてると思うんですけど。

 

「う、うーん、私の中で一番カッコいいのってお兄ちゃんだからなぁ」

 

そんな人よりお兄ちゃんの方が何倍も何億万倍もカッコいいのです!

 

「ていうか、私の初恋がお兄ちゃんだし」

 

思い出すだけで顔が熱くなるのを自覚する。

その状態で家に帰ると、ちょうどお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんが一緒に帰ってきました。

恵衣菜ちゃんの家の姫宮家は吉井家と直ぐ隣で私たちは小さい頃からの付き合いです。互いの親が留守がちなため、恵衣菜ちゃんは基本吉井家で生活しているのです。

一応吉井家は二階建てのかなり大きいお家です。まあ、それはお隣の姫宮家もなんですけどね。

ここ最近は無いですが、中学生くらいまで幼馴染みの穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃん、つばさちゃんたちとよくお泊まりをしていました。

 

「零華、お帰り!」

 

「お帰りなさい零華ちゃん」

 

「お兄ちゃん!零華ちゃんもお帰りなさいです」

 

私はお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんにお帰りを言い、家の中に入りました。

そして夕食のときに、今日あったことを話しました。

 

「それでね、土屋君と愛子ちゃんがまた保健体育談義で、愛子ちゃんが土屋君にパンチラしたら土屋君が鼻血を吹いちゃって辺り一面鼻血だらけになっちゃったよ」

 

「あはは!康太は相変わらずそういうのに弱いんだね」

 

「将来、愛子ちゃんが大変そうだね。あ、でも明久くんも人のこと言えないんじゃない?」

 

「え?どういうこと恵衣菜?」

 

「だって明久くん、私や零華ちゃん、穂乃果ちゃんやことりちゃん、海未ちゃんたちが抱き付いても顔赤くするじゃん」

 

「そ、それは仕方にゃいよ!」

 

「あ、噛んだ」

 

「噛んだねお兄ちゃん」

 

「っ~!///」

 

噛んで恥ずかしいのか顔を赤くしたお兄ちゃんが可愛くて、つい恵衣菜ちゃんと笑ってしまった。

 

「わ、笑わないでよ!」

 

「ごめん。お兄ちゃんが可愛かったからつい」

 

「ついじゃないよ零華ー」

 

「ウフフ。本当に明久くんと零華ちゃんは仲良しだね」

 

恵衣菜ちゃんが笑みを浮かべて、私とお兄ちゃんのやり取りを眺めた。

 

「(まあ、双子だし、兄妹だからね)」

 

私は瞬時にそう脳裏に出す。

正直、私の全てはお兄ちゃんの物なんだから。えーと、こう言うの近親相姦って言うんだっけ?

私は不意にそんな事を思いながら、お兄ちゃんと恵衣菜ちゃんと話を続ける。

そこで私は放課後にあった事を思い出して言った。

 

「あ、そう言えば今日の帰りね、他校の男子生徒から告白されたんだけど・・・・・・」

 

「よし、今すぐそいつを半殺しにしよう!」

 

「あ、明久くん!?」

 

「お、お兄ちゃん!?待って!」

 

私が言い終える前にお兄ちゃんが急に立ち上がってハイライトの無くした眼で言った。

ハイライトさん仕事してー!

私と恵衣菜ちゃんはお兄ちゃんの行動に驚きながら止める。

だが、どこからそんな力が出てくるのかいつも以上に力が凄かった。

 

「あ、もしもし母さん。零華がね、他校の男子生徒から告白されたんだって。どうする?殺るよね?」

 

「なんでお母さんに電話してるの!?」

 

「いつの間にスマホ出したの!?」

 

でもっていつの間にかスマホを取り出してお母さんに電話していた。

 

『なんですって!?私の零華ちゃんに告白?!今すぐ帰るわ!明久くん、一緒にその生徒を殺るわよ!』

 

「わかった母さん!」

 

「ちょっ!?お兄ちゃん!?お母さん!?落ち着いて話を聞いてぇ!!」

 

「あはは・・・・・・さすが吉井家」

 

「恵衣菜ちゃんも手伝ってぇー!」

 

呑気に言う恵衣菜ちゃんに私は助けを求めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はお母さんを、恵衣菜ちゃんが明久くんをなんとかして、告白は断ったという事を伝えると二人とも安堵して元通りになった。

その間、所要時間約20分。

 

「もう!お兄ちゃん!お母さんも!二人ともほんとセッカチなんだから!」

 

「だ、だって零華が・・・・・・」

 

『だって私の零華ちゃんが・・・・・・』

 

「だってもなんでもかんでもじゃないよ!」

 

「『はい・・・・・・・』」

 

そんな訳で私はお兄ちゃんとお母さんをお説教してました。

 

「あはは・・・・・・流石に今回は私も擁護できないかも・・・・・・」

 

恵衣菜ちゃんは正座中のお兄ちゃんとテレビ電話越しで正座しているお母さんをみて苦笑していた。

そのあと私のお説教は15分続きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日 文月学園二年Aクラス 放課後

 

 

 

「―――それで大変だったよ」

 

「相変わらずなのかよ明久・・・・・・」

 

「なんか更にシスコンに磨き掛かっている様に思えるのは俺の気のせいか・・・・・・?」

 

「安心しろ須川。ここにいる全員同じ事思っているはずだ」

 

『『『『うんうん』』』』

 

翔子ちゃんや坂本君たちと昨日のことを話していると、何故か全員が横溝君の言葉に頷いていました。

ちなみに根本君や友香ちゃんや美紀ちゃんなど私の友達が勢揃いしています。

 

「だが、まあ、明久が元気そうなら良かったぜ」

 

坂本君が安堵したように言うと木下君が続けて言う。

 

「そうじゃの。文月には西村教諭が見張ってはいるがあやつらがいるからのぉ」

 

「姫路と島田か・・・・・・」

 

木下君の言葉に須川君が険しい表情で言う。

 

「今のところ真面目に受けてるみたいだが・・・・・・問題は清水か?」

 

「・・・・・・ああ」

 

「確かに。清水の事だ、明久の事を恨んでいそうだな」

 

「しかし彼女は今停学中だ。現状は問題無いと思うが・・・・・・」

 

根元君の言葉に久保君が答えるが私は根元君の言葉通りだと思う。

 

「無いとは言いきれないわ」

 

「うん。私たちのクラスでも清水さんは一番目立っていたもの」

 

「そうだな。清水さんは島田さんがああなったのは明久のせいだと思っていると思う」

 

清水美春と同じクラスの美紀ちゃんと平賀君が思い出すように語った。

 

「・・・・・・でも、吉井の側には誰かしらがいるはずだからそう簡単に襲ったりはしないはず」

 

「ならいいんだけどね・・・・・・」

 

「・・・・・・零華はなにか思う事があるの?」

 

「うん」

 

私は翔子ちゃんの言葉に重々しく頷き土屋君と愛子ちゃんに視線を向けた。

 

「土屋君、学園内にある清水美春の隠しカメラは」

 

「・・・・・・月曜日のうちにすべて見つけてある。俺が入れないところは愛子に手伝ってもらった」

 

「うん、手伝ったボクも驚いたよ。まさか全部の女子更衣室に隠しカメラがあるなんて・・・・・・。しかも一つや二つじゃ無くて少なくても五つはあったよ」

 

「そんなに!?」

 

愛子ちゃんの言葉に木下さんは驚愕の声をあげる。

けどそれは私も同じだ。まさかすべての女子更衣室に隠しカメラがあるなんて思わなかったのだ。

 

「この事先生には?」

 

「・・・・・・まだ伝えてない」

 

「だよね」

 

流石に私もこれに関してはどうしたらいいのか分からない。

 

「・・・・・・西村先生や高橋女史には報告した方が良いと思う」

 

「翔子ちゃんもそう思う?」

 

「・・・・・・(コク)」

 

私たちはその後どうするべきか話し合い、更に調べてから翌日、先生に報告する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日 早朝 文月学園 会議室

 

 

 

「学園長、西村先生、高橋先生、これを見てください」

 

私は会議室のスクリーンに隠しカメラの映像を流した。

 

「これは・・・・・・更衣室の映像か?」

 

「ですね。しかもいろんな角度から見れますね」

 

「吉井妹、それはどこの更衣室なんだい?」

 

映像を見て西村先生、高橋先生、学園長がそう言う。

 

「この映像は当校の女子更衣室の映像です」

 

「なんだって?!」

 

「仕掛けた犯人も特定済みです」

 

「誰だい?」

 

「二年Dクラス所属、清水美春です」

 

「「「なっ!」」」

 

私の言葉に学園長たちは言葉を無くしたように驚愕の表情を浮かばせた。

 

「これはリアルタイムではなく、隠しカメラによって撮影されたものです。土屋君と工藤さんが見つけ、清水美春が仕掛けたと思わしき隠しカメラはすべて撤去、確保済みです」

 

「つまり他にもあったということか?」

 

「はい。校舎の至るところに仕掛けられてました」

 

私は袋に入れた隠しカメラを取り出す。

 

「学園長、これは一大事です」

 

「ああ。直ぐに緊急の職員会議を開くさね!高橋先生は全教員をこの会議室に召集するさね」

 

「分かりました」

 

「西村先生はこの映像の解析を土屋、工藤、両名と共に直ぐにするさね。恐らくAクラスに居るはずさね」

 

「了解しました」

 

学園長が西村先生と高橋先生にそう指示すると二人は直ぐ様会議室から出ていった。

 

「はあー。にしても吉井妹、よくこんなに隠しカメラを見つけたさね」

 

「見付けたのは土屋君と工藤さんです。私はただ二人に依頼しただけです」

 

「そうかい。・・・・・・零華」

 

私の事を零華と呼んだと言うことは、私個人の事を聞きたいのだろう。この映像の。

 

「ん?」

 

「零華から見てこれはどう思うさね」

 

「はっきり言っても大丈夫?」

 

「ああ」

 

「うん・・・・・・。流石に情状酌量の余地は無いと思う」

 

「やはりかい」

 

「うん」

 

私はハッキリと言った。

土屋君は撮影する人に許可を取って撮影しているから許せる。けど、清水美春のは流石に許容範囲を越えていた。到底許せる事では無い。

 

「お祖母ちゃん的には?」

 

「私情なら今すぐ退学さね。けど、学園の長としては他の教員と話し合わないといけないさね」

 

「お兄ちゃんが音ノ木坂に行っていて良かったよ」

 

「アタシもそう思うさね」

 

お兄ちゃんがいたら恐らくかなり・・・・・・いや、目茶苦茶本気で怒る。

 

「取り敢えず、この事はアタシらで処理しておくさね。土屋と工藤は西村先生に手伝ってもらうさね」

 

「わかった」

 

私はお祖母ちゃんにそう言うとみんなのいるAクラスに向かった。

Aクラスにはかなりの人数がいた。

 

「・・・・・・零華」

 

「うん」

 

私と翔子ちゃんはアイコンタクトで話し頷いた。

その事には全員理解しており、坂本君たちも無言で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日。お兄ちゃんと恵衣菜さんは音ノ木坂学院で生徒兼講師として。私たちは期末テストに向けて勉強していた。その際、μ'sが解散の危機になったり、ことりちゃんが留学に行ったり(穂乃果ちゃんのお陰で行かなかった)と多忙の日々だった。清水美春以外の生徒が登校しそれぞれの日々を送る。

Fクラスは坂本君たち以外は西村先生が監督のもと授業をしている。そして、停学中の清水美春には隠しカメラの件の処罰はまだ議論が行われている。隠しカメラ発覚の二日後、お祖母ちゃんは清水美春の両親を呼んで話したらしい。その後どうなったのかは知らないが、復学してもこの学園に彼女の居場所はないと思う。

 

「ふぅ~。やっと落ち着いた日常が戻ったね」

 

「・・・・・・そうね」

 

「そうだな」

 

試験召喚戦争もなく、授業を受けみんなとお昼を過ごしたりする毎日。私は解き終わった問題集を閉じて、紅茶を飲んだ。

 

「来学期はすぐに体育祭があるから楽しみだなあ」

 

「・・・・・・ええ」

 

「その前にはこの期末テストで良い成績を残さないとね」

 

「わかってるよ優子ちゃん」

 

「なあ、ところで明久と姫宮は期末テストどうするんだ?」

 

「確か、期末テストの日に音ノ木坂学院で受けるっていっていたかな?」

 

「なるほどな。にしてもこうも喧騒のない日々を過ごしたのは久し振りだな」

 

「儂らのクラスはいつも喧騒があるからの」

 

「・・・・・・迷惑極まりない」

 

「ホントだぜ」

 

「同じく」

 

「坂本君たちも苦労していたのね」

 

遠い目をして言う坂本君たちに、優子ちゃんが声を掛けるが私は何も言えなかった。というか同情する。

そんなこんなでお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんが居ない日々が過ぎていきました。お兄ちゃんが居ないのは寂しいですが心配を掛けない様に無茶しないでいこうと思ってます!

 

「(お兄ちゃんと恵衣菜ちゃんも頑張って)」

 

青空の広がる空を見上げて私はそんな事を声に出さずに言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零華たちが楽しい日常を過ごしている中―――

 

 

 

 

 

 

 

「あの豚野郎のせいで・・・・・・!絶対に許さないのです。絶望を味合わせて殺してやります!あの雌豚共も同じ様にしてやるですよ・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の怨嗟の憎悪が明久たちに向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第ⅩⅢ問 迫り来る憎悪

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

 

つばさ)明久くんのいない間の零華の学校生活。相変わらずのシスコンとブラコンの二人に呆れるしかないわ。それにしても、零華の学園はかなり大変みたいね。それにしても、明久くんをあんな目に遭わせた人たち社会的に抹殺しようかしら。さて、今回は明久くんたちの話みたいだけど・・・・・・。なにか嫌な予感がするわ。気を付けてね明久くん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「んんー・・・・・・っと。やっと終わったあ」

 

「終わったねぇ」

 

僕と恵衣菜は音ノ木坂学院の〈アイドル研究部〉の部室で疲れを癒していた。

 

「お疲れさま二人とも」

 

「ありがとう、絵里」

 

「ありがとう絵里ちゃん」

 

そこに冷たいお茶を淹れたコップを持った絵里が、そのコップを渡してくれた。

 

「ウチらもやっと終わったし、これで一安心やね」

 

「そうですね。・・・・・・そこの三人はわかりませんが」

 

「「「うっ!」」」

 

希の言葉に海未が安堵したようにいい、ジト目で三人。穂乃果、凜、にこの三人を見る。

 

「だ、大丈夫だよ海未ちゃん」

 

「そ、そうよ。問題ないわ」

 

「そ、そうにゃ」

 

「ならいいんだけどね」

 

「あはは・・・・・・」

 

三人に真姫が半眼で見て言い、花陽は苦笑いを浮かべて。

僕らがなんの話をしているのかと言うと、それは―――。

 

「一先ず、全員が無事に"前期末テスト"を終えられて良かったよ」

 

「そうだねえ~」

 

そう、僕らはつい先程まで前期末テストを受けていたのだ。もちろん、それは僕と恵衣菜も例外ではない。

 

「明日はどうしようかなぁ」

 

「そう言えば明日は再テストの関係で、すべてのテストを受けた人は休みだったわね」

 

「零華のほうも、明日は学校が休みだそうですよ」

 

「なら、たまにはみんなでどっかに遊びに行かない?!」

 

「遊びに行かないって、穂乃果・・・・・・。どこに遊びに行くんですか」

 

「え~とね・・・・・・」

 

「と、言ってるけど絵里?」

 

「そうね~。たまにはいいんじゃないかしら。テスト期間中は練習もできなかったし、リラックスもかねて、ね」

 

穂乃果を見て僕と絵里は微笑ましそうにして話す。

 

「取り敢えず帰りましょうか。下校時刻にもなってますし」

 

「それもそうだね」

 

〈アイドル研究部〉の部室から出た僕らは、そのまま昇降口に行き靴を履き替えて校舎から出た。

校舎から門までは一直線でそのまま、門を出ようとしたその時。

 

「お兄ちゃ~ん♪」

 

「うわっ!」

 

待ち伏せていたのか、零華が抱き付いてきた。

というかいつの間に!?

 

「れ、零華!?」

 

「うん!お疲れさまお兄ちゃん!」

 

文月学園内じゃないからか、零華は僕のことをお兄ちゃんって呼んでいる。

 

「じゃなくて!ここだとかなり目立つんだけど!?」

 

僕は今いる場所を思い出した。

 

「れ、零華ちゃん!?」

 

「零華いつの間に!?」

 

「うわぁ~。校門前なのにすごいわね」

 

そう、にこが言ったように僕らのいる場所は学院敷地内から出ているとはいえ、まだ音ノ木坂学院生がちらほらと見えるように、校門前なのだ。

 

「れ、零華、ここ校門前だからちょっと離れてくれるかな」

 

「あ、ご、ごめんなさいお兄ちゃん」

 

僕が言うと零華は素直に離してくれた。

離れてくれたのはいいんだけど、いまだに周囲の視線がすごい。

 

「それで零華、なんで音ノ木坂に?」

 

「あ、今日はテストで早く終わったからお兄ちゃんと一緒にかえろうかなぁ、って」

 

「それで僕を迎えに来てくれたの?」

 

「うん。・・・・・・・ダメ、だったかな・・・・・・?」

 

不安げに上目遣いで見てくる零華に、僕は零華の頭を撫でながら否定する。

 

「そんなことないよ零華」

 

「お兄ちゃん・・・・・・・」

 

嬉しそうに言いながら喜ぶ零華の頭をさらに優しく撫でる。なんかいつもだけど小動物みたいで本当、可愛い。いや、可愛すぎる!

零華を撫でながら僕も癒されているところに。

 

「あ~・・・・・・明久くん、零華ちゃん」

 

「二人ともお願いですから」

 

「イチャイチャ空間出さないでほしいかな~」

 

「あはは・・・・・・・」

 

言いづらそうに恵衣菜、海未、穂乃果、ことりが申し訳なさそうに言ってきた。

 

「え?イチャイチャなんかしてないよ?」

 

「うん。これが私とお兄ちゃんの日常」

 

『『『『『どんだけシスコン、ブラコンなんですか(なの)(なのよ)!!!』』』』』

 

僕と零華の言葉に恵衣菜、穂乃果、ことり、海未の幼馴染を除く、その場にいた全員が同時にそう発した。

って、なんか校舎の方からも聞こえてきたような・・・・・・・。

 

「あはは・・・・・・・はぁ・・・・・・・」

 

「見慣れてきたつもりでしたけど」

 

「なんか年々二人のシスコン、ブラコン度が」

 

「どんどん上がってきている気がするよ~」

 

そこに恵衣菜たちは呆れ半分疲れ半分の表情でそう言ってきた。

 

「「そんなことないと思うけど(思いますけど)?」」

 

『『『『『無自覚(ですか)(なの)!?』』』』』

 

僕と零華の言葉にまたしてもツッコミが返ってきた。

とまあそんなこんなでいろいろあって、零華も交えて近くのファーストフード店で明日の予定を立て僕らは帰路に付いていた。

 

「明日から三連休のお休み楽しみだね!」

 

「そうだね~。零華ちゃんテストの方はどうだった?」

 

「私はバッチリだよ。穂乃果ちゃんは?」

 

「うっ!わ、私は・・・・・・ちょっと・・・・・・・」

 

「事前にみんなでテスト勉強したにも関わらずですか?」

 

「だ、だってぇー」

 

「まあまあ、海未ちゃん。結果は戻ってきてみないとわかんないよ」

 

「それはそうですが」

 

「僕と恵衣菜の方は大丈夫だと思うよ」

 

「う~ん、ならいいんだけどね」

 

絵里たちと分かれた僕らは二年生組だけとなっていた。

そんな僕らの話題はテストの話で持ちきりだった。

 

「明日はカラオケとボウリング、だっけ?」

 

「うん!楽しみだね!」

 

「う、う~ん。私、あんまり歌って得意じゃないんだけどなぁ」

 

「私はボウリングが少し苦手」

 

「ちょっと緊張しますね」

 

「そう言えば海未は昔から人前で歌うのって苦手だっけ?」

 

「だって恥ずかしいじゃないですか・・・・・・・!」

 

「ことりはボウリングが不安かも」

 

「そんなことないと思うよことりちゃん」

 

そんなこんなで楽しく話していて住宅街に入ったその時。

 

「ッ!?」

 

「明久くん?」

 

「明久?」

 

「どうしたのお兄ちゃん?」

 

僕は凄まじい殺気を感じた。

この感じはFFF団の連中と同じ気配だ。

辺りを見渡してその殺気の発生元を警戒していると。

 

 

 

『見付けました豚野郎・・・・・・・』

 

 

 

横の路地からそんな声がきこえてきた。

 

「誰だ!」

 

僕が警戒して大きな声で尋ねると、声の主が暗闇の路地から姿を表した。

 

「どうやら雌豚もいるみたいですね・・・・・・。ちょうどいいです・・・・・・・」

 

声の主は僕らと同じ文月学園の女子の制服を着ていた。

 

「清水さん?」

 

僕はその女子に向かって名前を呼ぶ。

目の前にいる清水さんは、いつもの整えられたツインテールではなく無造作にボサボサの髪を縛ったツインテールだが、間違いようはなかった。そしてその瞳は暗く闇に包まれているようだった。

その清水さんに零華が驚いた声で言った。

 

「なっ・・・・・・!あなたは今自宅謹慎の停学中のはずです!なんでこんなところにいるんですか!」

 

「え?どういうこと零華?」

 

僕の記憶が正しければ清水さんの停学中期間はとっくに過ぎてるはずだ。だが、零華が嘘を言うとは思えない。

 

「清水三春は文月学園内で盗撮をしていたんです。それの証拠の隠しカメラを私や坂本君たちが見付けて、学園長に報告した結果、清水三春は停学の期間が延びたんです。詳しい処分はわかりませんが、彼女は現在、自宅謹慎、停学中のはずなんです!」

 

「なっ!」

 

「なんだって!?」

 

零華の言葉に恵衣菜と僕は驚愕する。それは穂乃果とことり、海未もだった。

そんな僕らに清水さんは、静かにまるで呪詛のように言ってきた。

 

「豚野郎のせいでお姉さまがあんなふうになったんです、死になさい。死になさい、豚野郎!」

 

そう言うと、どこかに隠し持っていたらしきナイフで僕らに襲い掛かってきた。

 

「下がって!誰か呼んできて!」

 

「死になさい豚野郎!」

 

僕は恵衣菜たちを庇うように前に出て突き出されてくるナイフを右手の鞄で防ぐ。

 

「殺す殺す殺す!死になさい豚野郎!」

 

「ぐっ!」

 

「明久くん!」

 

防戦一方の僕に恵衣菜が心配するように声をかけてくる。

 

「ああ、雌豚も殺さないといけませんね・・・・・・。豚野郎を絶望させて殺すには・・・・・・」

 

そう言うや否や清水さんは光のない瞳で恵衣菜たちを見てナイフを持って迫っていった。

 

「逃げてみんな!」

 

僕も追い掛けるように清水さんを追う。

その脳裏にはある一つのビジョンが浮かんでいた。

 

「(恵衣菜や零華、穂乃果、海未、ことりが死ぬ・・・・・・?)」

 

それは僕の大切な人達が血を流して倒れる姿だった。

 

「(そんなこと絶対にさせない・・・・・・!僕がみんなを・・・・・・絶対に守る・・・・・・!)」

 

僕はそう思うのと同時に清水さんを追い掛ける脚の早さを速くした。

その時僕の目にはすべてが止まっているように見えた。

やがて追い抜き恵衣菜たちの前に辿り着くのと同時に。

 

 

 

 

 

グサッ!

 

 

 

 

 

なにかが刺さる音が聞こえた。

 

「明久・・・・・・くん」

 

「よかった・・・無事で」

 

後ろを見て恵衣菜たちが無事なのを確認した僕は、さっきから身体に走る痛みの場所を見る。

 

「(あはは・・・・・・失敗・・・しちゃったな・・・・・・)」

 

僕のお腹には清水さんの持っていたナイフが突き刺さっていた。そう認識すると同時に"ズルッ!"とナイフが僕から抜かれた。

その瞬間、痛みがさらに走り制服のYシャツが血で染まり始めた。

 

「い、いや・・・いやあああああああああああ!!!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「昭久くん!」

 

「明久!」

 

「明久くん!」

 

恵衣菜の悲鳴から、零華、穂乃果、海未、ことりの絶叫の声が響く。

 

「(あ・・・ヤバい・・・・・・・意識が・・・・・・)」

 

僕は五人の声を意識の片隅で朧気に聞きながら意識をどうにかして保たせる。

 

「ちっ!まだ生きてやがるんですか豚野郎?さっさと死にやがれです」

 

そんなことを言う清水さんに海未が。

 

「あなた、自分が明久になにしたか分かっているんですか!」

 

「うるさい雌豚ですね。お前も死になさい」

 

「っ!」

 

そう言って清水さんは僕の血で濡れたナイフを海未に向かって振り下ろした。

 

「させ・・・・・・ない・・・・・・っ!」

 

「あ、明久」

 

「まだそれだけの余力があるんですか豚野郎・・・・・・くっ!」

 

だが、振り下ろされる前に僕が清水さんの腕を掴み、握り締めて振り下ろそうとしているナイフを奪い、地面に放る。

 

「みんなは・・・・・・傷つけ・・・させない・・・・・・!」

 

「離しなさい豚野郎!」

 

「眠れ・・・・・・」

 

「グハッ!」

 

僕は最後の力を振り絞って、清水さんの鳩尾を殴り気絶させた。鳩尾を殴られた清水さんは身体をくの字にして崩れ落ちるようにして倒れた。

 

「終わった・・・・・・かな・・・・・・」

 

僕は清水さんを見てそう言い、恵衣菜たちの方を見て、

 

 

ドサッ

 

 

「明久くん!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「え・・・い・・・な・・・・・・れい・・・・・・か・・・・・・」

 

僕は血相をかかえて近寄ってくるみんなを朧気の視界に見て。

そこから先の僕の記憶はなかった。

 

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

明久くんが刺された。

私はううん。私たちはそう認識するのに幾秒かかかった。認識したのは明久くんの制服のYシャツのお腹の部分が真っ赤に染まったのを視たからだ。

 

「い、いや・・・いやあああああああああああ!!!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「明久くん!」

 

「明久!」

 

「明久くん!」

 

私は絶叫を上げ、零華ちゃんたちは顔を真っ青にして明久くんの名前を呼ぶ。

そこから先のことは覚えてない。けど、一つだけ。明久くんが清水三春を気絶させてから地面に倒れたことだけは鮮明に覚えてる。

 

「お兄ちゃん!しっかりしてお兄ちゃん!」

 

「明久くん!しっかりしてよ明久くん!」

 

「明久!しっかりしてください明久!」

 

「明久くん!」

 

零華ちゃんたちが明久くんの血を止めようと止血しているなか、私はただ呆然となにもできずに明久くんを見ていた。

 

「嘘・・・・・・だよね、明久くん。起きてよ、明久くん」

 

私は明久くんに呼び掛けるが手からはヌメッと、明久くんの血の感触が伝わった来る。そして、倒れる明久くんの側には流れ出た血があった。

 

「あ・・・ああ・・・・・・あああーーーーーっ!」

 

悲鳴を上げる私のそこから先の記憶は無かった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

 

「お兄ちゃん!目を覚ましてお兄ちゃん!」

 

「零華、今救急車を呼んでいます!」

 

懸命に止血するがお兄ちゃんから流れ出る血は、私の止血しているハンカチをどんどん真っ赤に染めていく。

 

「ことりちゃん、穂乃果ちゃん!恵衣菜ちゃんをお願い!」

 

恵衣菜ちゃんは焦点を無くした瞳で呆然としていました。

 

「恵衣菜ちゃん!」

 

「しっかりして恵衣菜ちゃん!」

 

穂乃果ちゃんとことりちゃんの声にも恵衣菜ちゃんは反応しません。魂ここに在らずと言う感じです。

その2分後、サイレンを鳴らして来た救急車がお兄ちゃんを病院に搬送し、私たちも付いていきます。

清水三春は同時に来た警察の人に引き渡して、お兄ちゃんがストレッチャーに乗せられている間に大まかな説明をしてあります。

病院。西木野病院に運ばれたお兄ちゃんはそのまま緊急手術を受けています。

執刀医はお兄ちゃんの主治医の西木野先生がやっています。

私たちは手術室の側の椅子に座って、オペが終わるのを待っています。

そんな私たちのところに。

 

「みんな!」

 

「真姫ちゃん・・・・・・・」

 

真姫ちゃんが血相をかかえて来ました。

 

「明久は」

 

「西木野先生が手術しているよ」

 

私は真姫ちゃんに抱きより言った。

そしてさらにそこに。

 

「零華!」

 

「みんな・・・・・・・」

 

数時間前に分かれた絵里や希、にこ、花陽、凛が走ってきた。

 

「明久は!」

 

「パパが今、明久の手術をしているわ」

 

絵里ちゃんの問いに真姫ちゃんが答えた。

 

「手術、って・・・・・・」

 

「そんな・・・・・・」

 

「だ、大丈夫、だよね・・・・・・」

 

「当たり前よ!明久がこんなところで死ぬはずないでしょ!」

 

絵里ちゃん、希ちゃん、花陽ちゃん、にこちゃんがそれぞれ言う。

そんなとき。

 

「零華!」

 

「お祖母ちゃん」

 

絵里ちゃんたちが来た方向と同じところからお祖母ちゃんが来た。

 

「明久の容態は」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

お祖母ちゃんの言葉に私は首を横に振って、わからないと答えた。

 

「そうかい・・・・・・。恵衣菜ちゃんは」

 

「ずっとあの状態・・・・・・」

 

恵衣菜ちゃんを見ると、恵衣菜ちゃんは虚空をただ見詰めるだけで正気に戻ってなかった。

そのまま恵衣菜ちゃんを見ていると、お祖母ちゃんが抱き締めてきた。

 

「我慢しなくていいさね零華。アタシが・・・・・・・お祖母ちゃんがいるから」

 

「お祖母・・・ちゃん・・・・・・」

 

お祖母ちゃんの声に、私は今まで張り詰めていた筋肉を解してお祖母ちゃんに思いっきり抱き締めて、涙を流した。

 

「お兄ちゃん・・・・・・うわあああああああああああん。お祖母ちゃん、お兄ちゃんが!お兄ちゃんがぁ!」

 

「うん。よく頑張ったさね零華」

 

私はそのまま、お祖母ちゃんに抱き締められながら泣いた。ずっと我慢していた涙を流した。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~絵里side~

 

 

「それじゃアタシは連絡したりしてくるから、すまないがみんな、零華と恵衣菜ちゃんのこと頼むさね」

 

「はい。わかりました」

 

泣き付かれて眠ってしまった零華を、明久と零華のお祖母ちゃん、藤堂カヲルさんに任され私はそう返事を返した。

すると藤堂カヲルさんが。

 

「あんたはもしかして、綾瀬クロニカのお孫さんかい?」

 

私を見てそう言ってきた。

 

「え、確かに綾瀬クロニカは私のお婆様ですが・・・・・・」

 

「やはりそうかい。クロニカは元気かい?」

 

「あ、はい。お婆様は元気です」

 

「そうかい。それはよかった。それじゃ頼むさね」

 

そう言うと藤堂カヲルさんはどこかに行ってしまった。

 

「エリチ、今のどういう意味なん?」

 

「さ、さあ。お婆様に聞いてみないと」

 

希の質問に私はそう返した。

するとそこに。

 

「真姫、みんなを家にご案内して」

 

「ママ!」

 

「みんな、今日は家に止まっていきなさい。みんなの親御さんには連絡してあるわ」

 

真姫のお母さんがそう言ってきた。

 

「それに、恵衣菜ちゃんと零華ちゃんを寝かせないと」

 

真姫のお母さんの言う通り、恵衣菜はずっと意識がここにない感じだし、零華は泣き付かれて眠ってしまっている。

 

「(確か、明久と零華、恵衣菜は一緒に住んでいるのよね。二人だけじゃ心配だし、穂乃果たちも心配だわ)」

 

私は穂乃果、海未、ことりも見てそう考え、

 

「それじゃすみませんがおじゃまします」

 

私は真姫のお母さんにそう言った。

そのあと、私たちは真姫の案内のもと西木野家を訪れ、恵衣菜と零華を同じ部屋に寝かせて、私たちもそれぞれ親に連絡して、亜里沙には穂乃果の家、高坂家にお泊まりしてもらうように言い、穂乃果のご両親に亜里沙をお願いして、私たちは明久の手術が無事に終わる報告を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第ⅩⅣ問 目覚めた明久

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

零華)お兄ちゃんが清水美春に刺された。みんなと遊びに行ける楽しい前の日にそんな絶望が訪れた。恵衣菜ちゃんは心神喪失状態、私は今にも心が折れそう。穂乃果ちゃんたちも恵衣菜ちゃんほどではないが私に近い絶望感を出していた。私は絶対に清水美春を許さない。けど、今はそんなことより、お兄ちゃん、お願い。目を覚まして。そして、私たちにいつもの笑顔を見せて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~零華side~

 

 

お兄ちゃんが清水美春に刺された翌日。

 

「零華、大丈夫・・・・・・じゃないわね」

 

私は一人閉じ籠もっていた。

 

「ここって真姫ちゃんの家?」

 

「ええ。恵衣菜は・・・・・・」

 

「ずっと寝ているよ」

 

同じ部屋にいる恵衣菜ちゃんはずっと、死んでいるかのように眠っていた。

部屋の中には私と眠っている恵衣菜ちゃんと真姫ちゃんと絵里ちゃんがいる。

 

「お祖母ちゃんは・・・・・・?」

 

「藤堂さんなら零華の親に連絡したり、学校のことやってるわ。こんな事態だもの大変よ」

 

「そう・・・・・・お兄ちゃん・・・は・・・・・・?」

 

恐る恐る私は二人に聞いた。

淡い願いではあるけど、お兄ちゃんが目を覚ましていてほしい。私はそんな思いを胸に聞いた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

答えは絵里ちゃんと真姫ちゃんは無言の沈黙と首を横に振って返ってきた。

 

「そう・・・・・・・なんだ・・・・・・・・」

 

部屋のベットで上体を起こしながら聞いた私は顔をうつむかせる。

 

「ここ。朝食置いておくわね」

 

「ありがとう、絵里ちゃん、真姫ちゃん」

 

真姫ちゃんは部屋の中にあったテーブルに二人分の朝食の乗ったトレーを置いた。

 

「私たち下にいるから、なにかあったら呼んでね」

 

「うん・・・・・・」

 

乾いた声で私は二人にそう言った。

しばらくして絵里ちゃんの真姫ちゃんが部屋から出ていき、部屋には眠っている恵衣菜ちゃんと私だけになった。

トレーの朝食にはラップが掛けられていたが、今の私にはなにも要らなかった。あるのはただお兄ちゃんが目を覚ましてほしい、そんな思いだけ。

 

「うっ・・・ううっ・・・お兄ちゃん・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・」

 

部屋の中を私の泣き声と嗚咽が広がった。

そして私の声を聞いているのは誰もいなかった。

 

~零華side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~絵里side~

 

 

『うっ・・・ううっ・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・』

 

 

部屋の中から聞こえる零華の声を扉越しに私と真姫は静かに聞いていた。

 

「絵里・・・・・・」

 

「行きましょう・・・・・・」

 

私は真姫と一緒に一階の、みんながいるリビングに戻った。リビングに戻ると穂乃果たちが神妙な表情で座っていた。

リビングに入ると海未が聞いてきた。

 

「絵里、真姫。零華の様子は・・・・・・」

 

「私と真姫の前ではなんでもなさそうに取り繕ってたけど・・・・・・」

 

「そうですか・・・・・・。明久の容態は・・・・・・・」

 

「言ってないわ。というより言えないわよ、今の零華に・・・・・・・。明久が生死の境を彷徨ってる、なんて・・・・・・・」

 

「そうよね」

 

明久の緊急手術が終わった知らせを受けたのは今日の午前0時を過ぎた辺りだった。そこで私たちは真姫のお父さんから今の明久の容態について聞かされた。それを聞いた私たちは余りの現状に穂乃果やことりは泣き崩れ、海未は絶句して床に倒れた。私たちも倒れそうになったほどだ。

 

「絵里ちゃん、恵衣菜ちゃんは・・・・・・」

 

「ずっと眠っているわ」

 

穂乃果の質問には真姫が答えた。

その言葉に沈黙が私たちを包んだ。

そこに真姫のお母さんが。

 

「みんな、一度お家に帰って親御さんに伝えてきたら。恵衣菜ちゃんと零華ちゃんのことは私が見てるわ」

 

そう言ってきた。

確かに一度帰らないと亜里沙が心配する。穂乃果たちに関しても両親が心配しているはずだ。

 

「そうね、みんな一度家に帰りましょう」

 

私はそう穂乃果たちに提案して、私たちは家に帰った。

ただ、私たちの胸には虚しさが出来ていた。なにもできないという虚しさが。

 

~絵里side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~学園長side~

 

 

アタシは明久が刺されたことに連絡を受けると直ぐ様西木野病院に向かい、明久の入院手続きなど諸々のことをした。まさかクロニカのお孫さんに会えるとは思わなかったが、零華と恵衣菜ちゃんたちが一番心配だった。

入院手続きに関しては西木野さんがすでに大抵のことをしてもらったためすぐに終わった。そのあとは真奈美たちに連絡をして、学園に帰って全職員に今日の緊急職員会議を執り行った。そして今、学園の会議室では緊急職員会議が行われていた。

 

「あのバカがこうも強行手段に出るとは・・・さすがのアタシも予想外だったさね・・・・・・・!」

 

「学園長、吉井の容態は」

 

「生死の境を彷徨っている状態さね」

 

『『『『!!』』』』

 

西村先生の質問にアタシは今朝、西木野先生に言われた明久の容態を答えた。

 

「学園長、今回の事件は学園始まって以来の事件です。なにか手は」

 

「アタシとしても殺傷事件は予想外だったさね。安全のために吉井を音ノ木坂に派遣したが・・・・・・」

 

「学園長、清水美春についてはどうするおつもりですか?」

 

「言わなくてもわかっているんじゃないさね?」

 

「では・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・。清水美春は退学処分さね」

 

満場一致で清水美春の退学処分が決められ、アタシたち教員は今回のことについて話し合い、今後のことについて決めた。

そして。

 

「お母さん!」

 

「お祖母ちゃん!」

 

「お義母さん!」

 

「全員一緒かい。なら丁度いいさね」

 

海外にいた真奈美と明久と零華の姉、玲、そして真奈美の旦那の吉井和輝(かずき)が学園長室に入ってきた。

 

「お母さん、明久は!」

 

「生死の境を彷徨ってる状態さね」

 

「そ、そんな・・・・・・!」

 

「これから明久をあんな目に合わせたヤツの両親と話す予定さね」

 

「お母さん、それ私も行く」

 

「お祖母ちゃん、私もいきます」

 

「お義母さん、僕も」

 

「ふっ、元からそのつもりさね」

 

アタシは不敵な笑みを浮かべて真奈美たちに言う。

そして30分後。

 

「さて、それじゃあ始めようさね」

 

アタシたちの前に清水美春の両親が対面するように座っていた。

アタシの側には真奈美、玲、和輝、そして学園内でアタシと明久、零華の関係を知っている高橋女史と西村先生がいる。

 

「今回の殺傷事件、あんたらはどう思ってるんだい?」

 

アタシは目付きを鋭くして清水美春の両親に聞いた。

 

「こ、この度は私たちの娘が多大の迷惑を・・・・・・・」

 

答えたのは母親の方だった。

母親は顔を青くしてそう答えた。

 

「多大の迷惑を・・・・・・さね。今回のこれが多大の迷惑で済むと、アンタらは本当に思っているつもりさね?」

 

「そ、そんなつもりは・・・・・・」

 

「あんたはどうなんだい」

 

アタシは母親を無視して黙っている父親の方に視線を向けて聞く。

 

「わたしは娘がそんなことしたとは到底思えない」

 

「ほう・・・・・・っ!?」

 

父親の言葉を聞き呆れつつそう答えると、急に寒気が走った。

寒気のもとをチラリと見ると。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

無言で微笑みを浮かべているが目が笑ってない真奈美がいた。側の和輝と玲、そして高橋女史と西村先生は顔を真っ青にしていた。

 

「(さ、さすが明久の母親さね。あの子のマジ切れの殺気と同レベルさね)」

 

アタシは冷や汗を流しながらそう感じた。

そこにさらに火に油を注ぐように目の前のバカな父親が言った。

 

「そもそも、わたしたちの娘がそんなことをする理由はなんだね。それに、お宅らは先日隠しカメラの事についてもわたしたちの娘のことにした。それについてもお聞かせ願いたい」

 

この時点でアタシたちはこの父親に心底呆れていた。この父親アリにしてあの娘アリだとわかったのだ。

 

「あ、あなたそんなこと・・・・・・」

 

「君は黙っていなさい。娘が濡れ衣を着せられてるんだ当然だ」

 

「はぁ・・・・・・」

 

アタシは正直この父親相手だと話にならないとわかった。

故にアタシは、確実的な証拠。言い逃れのできない物的証拠をだすことにした。

 

「西村先生、例の映像・・・・・・準備は出来ているさね?」

 

「はい。強化合宿のと合わせて、隠しカメラの映像も協力者のもと編集が完了しています」

 

「うむ」

 

「例の映像・・・・・・?」

 

「これであんたらの娘が今まで何をしたのか分かるさね。西村先生」

 

「はっ」

 

アタシは西村先生に清水美春が今まで行った、強化合宿でのことや隠しカメラの映像などをプロジェクターに流すよう指示を出した。

まず最初に強化合宿でのことを流した。

スクリーンには恵衣菜ちゃんと零華が録音した明久と清水美春の会話が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「よく来てくれたね。清水美春さん」

 

「なんのようですか?美春は眠いんですけど」

 

「すぐに済むよ清水さん」

 

「じゃあ早くしてください」

 

「わかったよ。さてと、単刀直入に聞くけど、清水さん。僕にこれを送ったの。キミだよね?清水美春さん?」

 

「なんのことですか?美春はそんな知らないんですけど」

 

「そう?」

 

「ええ。だいたいなんで美春があなたのような豚に脅迫状を送らなければならないんですか?」

 

「清水さん、僕は一言もこれが脅迫状なんて言ってないよ」

 

「ッ!」

 

「なんで脅迫状だと思ったの?他にもあるよね、先生からの手紙とか誰かからの手紙とか色々・・・」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「なのにどうして清水さんはこれをみてすぐに脅迫状って出たの?僕はキミにこれを送ったのはキミだよね、としか言ってないよ」

 

「・・・・・・・・・・!」

 

「そして僕が脅迫状を受け取ったと知っているのは、恵衣菜、零華、雄二、霧島さん、工藤さん、康太そして西村先生だけなんだよね。清水さん、キミはどこから僕が脅迫状を受け取ったと聞いたのかな?」

 

「そ、それは・・・・・・・そ、そうです、あなたたち豚が話しているのをたまたま聞いたんです」

 

「たまたまってどこで?」

 

「そ、それは・・・・・・今日の自習の時間帯に廊下を通ったときに・・・・・・」

 

「へぇー。でもね、それおかしいんだよね」

 

「お、おかしい・・・・・・?」

 

「うん。だって・・・・・・僕らのいた席、廊下から離れていたんだから」

 

「ッ!」

 

「それに今清水さん、自習の時間帯に廊下を通ったとき、って言ってたけど、自習の時間帯に廊下でなにしてたのかな?自習の時間帯は基本部屋の外に出ちゃいけないはずだけど」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「まあ、一旦これは置いておこうか。さて、次の問いだよ」

 

「な、なんですか。これ以上美春になんのようですか」

 

「清水さん、女子の脱衣場にカメラが仕掛けられていたことって知っている?」

 

「そ、それがなんです。あなたたち豚どもがやったことですよね!」

 

「残念だけど僕らじゃないんだよね」

 

「なら、誰だというのです?」

 

「キミ」

 

「はい?」

 

「盗撮犯はキミだってことだよ、清水さん」

 

「・・・・・・は?美春が盗撮犯?なに言ってやがるんですかこの豚は?美春が犯人だという証拠でもあるという・・・・・・」

 

「これを見ても?」

 

「そ、そんな!全部回収したはず・・・・・・ハッ!」

 

「何が全部回収したはず、なのかな清水さん?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「今自分で自供したよね、自分が盗撮犯ですって」

 

「この豚が・・・・・・!」

 

「さて、さっきの脅迫状の方に少し戻そうか」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「この脅迫状に入っていた写真、どれも盗撮されているんだけど・・・・・・」

 

「そ、それがなんですか、美春には関係ありません」

 

「まだしらばっくれるの?」

 

「しらばっくれるもなにも美春はそんな写真知りません!女装してメイド服着ている豚野郎の写真や、誰かと出掛けていたりしている豚野郎とかの写真なんて見たことも撮ったこともありません」

 

「ハァ・・・・・・」

 

「な、なんですか」

 

「いや、清水さんがあまりにも自分で自供するものだからさ」

 

「自供?なんのことです・・・・・・」

 

「なんで写真の内容知ってるの?」

 

「ッ!」

 

「僕、一度も写真の内容言ってないよね、なのにどうして何が写っている写真か分かるのかな?」

 

「こ、この・・・・・・!」

 

「改めて言うよ、今回の脅迫状の犯人と盗撮犯はキミだよ!清水美春さん!」

 

「今ここで豚野郎を始末すれば・・・・・・死になさい、豚野郎!」

 

「ふっ!」

 

「このっ!」

 

「ふっ!ほっ!っと!」

 

「豚野郎の分際で!」

 

「よっと!」

 

「は、離しなさい!この豚野郎!誰か!誰か来てください!」

 

「なにをしている!」

 

「に、西村先生!た、助けてください!この人に襲われました!」

 

「なに?どう言うことだ吉井、説明しろ」

 

「はい。西村先生、今回の盗撮犯及び僕への脅迫状の送り主は清水さんです。そして、清水さんにそこのスタンガンと折り畳みナイフで襲われましたので、取り押さえました」

 

「ほう。その証拠は?清水が二つの犯人だと言う証拠は」

 

「もういいよ、恵衣菜、零華。出てきて」

 

「は~い」

 

「うん」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

映像はそこで終わり、スクリーンをブラックアウトした。

 

「これが強化合宿での出来事です」

 

西村先生がパソコンを操作してそう言う。

アタシと高橋女史、西村先生がこれを観るのは二度目だけど他は違うさね。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

案の定、真奈美はともかく和輝と玲まで能面のような表情さね。

アタシがそう思っていると。

 

「で、でっち上げだ!どうせ合成した映像に決まっている!」

 

バカな父親がそう声を荒げた。

 

「この映像は合成ではないさね。そもそも何故合成する必要があるさね」

 

「お宅のこの吉井明久とかいう生徒は観察処分者というバカじゃないか。この映像でこの吉井とかいうバカ生徒が呼んだ生徒も同じじゃないのか!?」

 

「(あー、もう限界かもしれないさね)」

 

アタシはこの父親の耳障りな声に顔をしかめてそう思った。するとそこに。

 

「まさか私たちの前で、息子と娘、その恋人がこうも罵られるとはね・・・・・・」

 

「ですね。アキくんとレイちゃんは私の大切な弟、妹。そして恵衣菜ちゃんも妹同然」

 

「さすがの俺も今回ばかりは堪忍袋の緒が切れたな」

 

真奈美、玲、和輝の声が静かに伝わった。

和輝の声を聞いたアタシは完全にこのバカな父親は終わったなと感じたさね。

理由は、本来は温厚な和輝の一人称が僕、ではなく、俺、だからだ。

 

「さて、他にも色々あるさね。あんたらが信じようが信じなかろうがアタシらは関係ないさね。だが、これは事実さね。西村先生、すべて流すさね」

 

「わかりました」

 

その後は西村先生が流したこれまでの清水美春の悪行とも言える行動と被害の数々を流した。

さすがにこれを見せられてはこのバカな父親もなにも言い返せないのかどんどん顔を真っ青にしていった。

 

「さて、今回のことでアタシら学園側はアンタの娘の清水美春を退学処分及び除籍、放校処分にすることにしたさね。それと同時に損害賠償など諸々をアンタらに請求するさね」

 

「そして、私たちの息子への慰謝料と入院費などすべてを全額あなた方に払ってもらいます。まさか文句は言いませんよね」

 

アタシと真奈美の絶対零度を彷彿させる瞳で言われ清水美春の両親は生気を失くしたようにうなずいた。

その後は清水美春の退学の手続きなど諸々を行いバカな清水美春の両親は帰っていった。

その翌週、全校集会で今回の事件のことを話し、保護者にお便りを配りアタシらは業務に没頭した。

そして、清水美春の両親との話し合いが終わって五日後、アタシらのもとに明久が目を覚ましたと連絡が来た。

 

~学園長side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

「ここは・・・・・・・」

 

目を覚ますと辺りはなにもなく、ただ真っ暗闇に閉ざされていた。

 

「確か僕は刺されて・・・・・・・」

 

覚えてることを思い出していると、

 

「やっと目を覚ましたんだね」

 

後ろからそんな声が聞こえてきた。

 

「誰!?」

 

「そんなに警戒しないでよ」

 

後ろを向くとそこには・・・・・・・

 

「僕・・・・・・・?」

 

もう一人の自分がいた。

 

「うん、僕はもう一人の君かな」

 

「それでもう一人の僕がなんでここに?」

 

「君は刺されて生死の境を彷徨っていたんだよ」

 

「生死の境!?」

 

「うん、あの世とこの世の狭間」

 

「え!?じゃ、じゃあここはあの世ってこと!?」

 

「そんなわけないでしょ。まったく、我ながらほんとバカだね」

 

「ば、バカじゃないよ!」

 

「いやいや、妹を溺愛し過ぎるシスコンだわ、恋人と人目を憚らずイチャイチャするわ、幼馴染みやその友達を口説くわ。あー、自分で言っておきながら恥ずかしいわ」

 

「なんで僕はもう一人の自分にそんなこと言われてるんだろ・・・・・・・」

 

僕は脱力感が襲ってきた感じで目の前の自分にツッコんだ。

 

「まあ、取り敢えず僕が言いたいのは」

 

すると目の前の僕は目付きをただして言った。

 

「彼女たちを泣かせるな、ってこと」

 

「え?」

 

彼女たちって言葉の意味があやふやだが僕はうなずいた。

 

「それと彼女たちを幸せにしてあげて。僕から言えるのはこれだけだよ」

 

「え?ど、どう意味!?」

 

「答えは自分で切り開くものだよ」

 

すると、僕の身体が白く光り始めた。

 

「うわっ!こ、これは!?」

 

「微睡みの時間はもう終わりってことだよ」

 

「ど、どういうこと!?」

 

「んー、もうじき君は目を覚ますってことかな?」

 

「そ、そうなの!?」

 

「うん。まあ、もう僕と話すことはないだろうけど、僕は君の心の中から見守ってるから」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「それじゃあねもう一人の僕。零華や恵衣菜、穂乃果たちにもよろしくね。そして君に幸せが訪れますように」

 

その言葉を最後に僕はなにかに引っ張られるようにその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んん・・・・・・・」

 

目を覚ますとまず視界に映ったのは白い天井だった。

 

「ここは・・・・・・・」

 

少し身体が痛いがどうにかして起き上がり部屋を見渡した。

 

「ここは・・・・・・・病室?」

 

部屋の右側には窓があり、窓からは彼方に沈みかけている夕陽と、月の姿が見えた。

それは僕が刺されて六日目の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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第ⅩⅤ門 夕日の彼方へ

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

恵衣菜)明久くんが清水美春に刺されたことにショックを受け、私はずっと眠っていた。その間、現実では色々あったみたい。明久くんが早く目を覚ましてくれると嬉しいな。そして、私に・・・・・・ううん、私たちに何時ものように光を照らして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~雄二side~

 

「・・・・・・・・・・」

 

『『『・・・・・・・・・・』』』

 

週明けの月曜、俺は一時的に在籍しているAクラスに登校して朝のHRを待つなか、吉井妹の方を見ていた。いや、吉井を見ているのは俺だけでなく翔子や秀吉、ちょうど来ていた根本たちもだ。

 

「なあ翔子、吉井どうしたんだ?」

 

「・・・・・・わかんない。ずっとあの様子」

 

俺は隣にいる翔子に尋ねた。

翔子もさすがに吉井の様子に戸惑っている感じだった。そこに工藤が。

 

「零華、三年の小暮先輩と一緒に来たんだけど・・・・・・」

 

「来たんだけど?」

 

「なんていうか、小暮先輩が零華を連れてきた感じだった」

 

「は?どういう意味だ」

 

意味が理解できず目を丸くして聞いた。

三年の小暮先輩と言えば、≪清涼祭≫の試験召喚大会で吉井のパートナーだった人物だ。確か、明久と吉井の従姉だったか?

 

「えっとね・・・・・・」

 

「・・・・・・・吉井はまるで正気じゃなかった」

 

言い淀む工藤に変わって康太が答えた。

 

「正気じゃない?」

 

「・・・・・・・(コク)」

 

「一体この三連休に何があったんだ・・・・・・・」

 

俺は目の焦点の合っていない、ただ呆然と座っている吉井を見てそう言わざるをえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館

 

 

 

『これより緊急の全校集会を始めます。学園長お願いします』

 

 

 

時は進んで、俺たちは体育館に来ていた。

 

「緊急の全校集会って何かあったのかしら?」

 

「わからぬ。だが、嫌な予感はする」

 

「・・・・・・同じく」

 

一応Aクラスに在籍している為、俺と康太、秀吉、須川、横溝はAクラスの列に並んでいる。端のほうにはFクラスの面々が見える。そんな中、俺は朝のHRで言われたこの緊急の全校集会について考えていた。

 

「(おかしい・・・・・・。ついこの間、一ヶ月前に全校集会があったばかりなのに、こうも立て続けに全校集会を開くか・・・・・・?それに緊急の全校集会・・・・・・嫌な予感しかしねえ)」

 

そう思考し、俺は体育館の隅で三年の小暮先輩と保険医の小暮教諭と一緒にいる吉井を見た。

確か保険医の小暮教諭と三年の小暮先輩は姉妹なんだったか?

 

「(吉井のあの様子にこの緊急の全校集会・・・・・・まさか明久の身になにかあったのか?!)」

 

今は音ノ木坂学院に通っている悪友にして親友を思い出しそう考える。

 

「(前回も明久の件で全校集会が開かれたな・・・・・・それに先週までいつも通りだった吉井が今日、突然あんな感じになるということは・・・・・・。間違いねえ、この緊急の全校集会は明久絡みだ・・・・・・!)」

 

そう判断するのと同時に、壇上に学園長が登壇した。

 

 

『あー、先月に引き続き何故こうも全校集会を開くのか疑問に思っている生徒が大勢いると思うさね。今回の緊急の全校集会は先週の木曜のある出来事が原因さね』

 

 

学園長の声に周囲からどよめきが起こる。

だが、それを無視して学園長は話を続けた。

 

 

『さて、二年の男子の殆どはしらないと思うが、他の生徒は先月の全校集会の内容を覚えているさね?』

 

 

学園長のさらなるその言葉に事情を知らない二年男子はクラスメイトから内容を聞いたりしていた。

 

 

『今回の全校集会はそれに関係するものさね』

 

 

学園長の声に小さなざわめきが起きるがすぐに静かになった。

 

 

『――――――吉井明久が二年Dクラス、清水美春に刺されたさね』

 

 

「っ!」

 

学園長の言葉にざわめきがさらに上がった。

そんな中俺は、やはりそうかと学園長を見ながら思考した。

 

 

『現在、吉井明久は意識不明の重体さね』

 

 

学園長が重々しくそう言うと。

 

 

「零華ちゃん!」

 

 

体育館の隅からそんな声が響いてきた。

声の発生場所を見ると、吉井がぐったりと倒れている姿が見えた。

遠目だが顔も青ざめて誰がどう見ても様子がおかしいのは明白だった。

 

 

『小暮先生、急いで吉井妹を保健室に!』

 

 

「はい!」

 

 

学園長の早急の指示に吉井を小暮先生が抱き抱え、小暮先輩と一緒に体育館から出ていった。

 

 

『・・・・・・・話を戻すさね。先週の木曜、下校している最中に吉井明久は清水美春に刺され、現在は入院中さね。アタシは生徒が殺傷事件を起こすことが嘆かわしいさね。といっても、そこの二年Fクラスの面々は常日頃から吉井に怪我を負わせているらしいがね』

 

 

学園長の言葉に一斉にFクラスに向けて視線が飛んだ。

 

「な、なによ!」

 

「なんですか!」

 

一斉に向けられた視線に島田と姫路がなにか言うが無視。

 

 

『他にも、清水美春は盗撮していたらしいさね。この事についてはAクラスの生徒と一部の他クラスの協力のお陰ではっきりしてるさね。とまあ、当校始まって以来の大事件になったわけさね。教室に戻ったら親御さん宛に便りがあるさね、各教員は戻り次第それを配布するように』

 

 

学園長の言葉にどよめき生徒間で走る。そんななか俺は学園長に聞いた。

 

「学園長、清水美春に関してはどうなったんだ」

 

俺の問いに一斉にどよめきが静まり学園長のほうに視線が向いた。

 

 

『清水美春に関しては退学処分及び除籍、放校処分にしたさね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Aクラス

 

 

緊急の全校集会が終わり、Aクラスに戻ってきた俺たちは学園長が言った内容が頭から離れなかった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・雄二」

 

静まり返る教室で、隣の席の翔子が心配そうに見てきた。

 

「ああ、すまん」

 

「・・・・・・吉井のこと?」

 

「ああ・・・・・・」

 

俺は翔子に一言そう答えた。

そこに、高橋先生が書類を持って教室に入ってきた。

 

「えー、吉井さんは体調不良のため早退しました。無理もありません」

 

高橋先生は前に立つとそう最後に悲痛の感じを含めて言った。

 

「なお、学園長と相談し、しばらくの間Aクラスの代表は霧島さんが務めてください。また、坂本くんには霧島さんの補佐をお願いします」

 

「・・・・・・わかりました」

 

「わかった」

 

「ではいまから集会の中にあった保護者への便りを配ります。自宅に着き次第、かならず保護者に渡してください」

 

前から送られてくる便りを見ながら俺は姫宮のことが心配だった。妹の吉井がああなのだから恋人の姫宮の心情は計り知れないだろう。

 

「(昼休みにでも学園長に聞いて放課後は明久のお見舞いに行かねえとな)」

 

配られた便りを後ろに回して俺はそう思考した。

 

~雄二side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~穂乃果side~

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「穂乃果」

 

「絵里ちゃん・・・・・・」

 

週明けの月曜の放課後、私は海未ちゃんとことりちゃんと〈アイドル研究部〉にいた。室内には、明久くんと恵衣菜ちゃん以外のμ's全員が揃っていた。

 

「さすがにこの状態じゃ練習は・・・・・・」

 

「できないやね・・・・・・」

 

絵里ちゃんと希ちゃんが私たちを見てそう言った。

 

「穂乃果たちがここまでなんてね・・・・・・」

 

「無理もないわよ。間近で見たんだもの」

 

にこちゃんと真姫ちゃんがそういうなか私と海未ちゃん、ことりちゃんは椅子に座ってただ呆然としていた。

 

「真姫」

 

「なに?」

 

「明久のお見舞いは行ってもいいのよね?」

 

「ええ。問題ないわ」

 

「穂乃果、明久のお見舞いに行くわよ」

 

絵里ちゃんが真姫ちゃんに確認するとそう言ってきた。

 

「うん・・・・・・」

 

その日は練習はせず、明久くんのお見舞いに行くことになった。

 

~穂乃果side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~絵里side~

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

「大丈夫、エリチ?」

 

「大丈夫なの絵里?」

 

「希・・・にこ・・・」

 

明久のお見舞いに病院に向かっている最中、希とにこが心配そうに声をかけてきた。

 

「穂乃果たちの様子を見たら頑張らなきゃ、って思うんだけど・・・・・・」

 

「明久がいないだけでこうも変わるなんてね」

 

「せやね」

 

私は明久がいないだけで学校生活がこうも変わるとは思ってなかった。

 

「聞いた話だと、もう学校中噂になってるみたいよ」

 

「そう・・・・・・」

 

どうやら明久が入院したということはすでに音ノ木坂学院全体に広まっているらしい。この事を知っているのは私たちと理事長そして、先生方のみの筈だがさすがに情報統制はままならないらしい。

 

「まあ、明日理事長が話すらしいわ」

 

「そうなんだ」

 

昼休みに理事長に伝えられたことをにこに伝える。

 

「それより・・・・・・」

 

「どうしたんエリチ」

 

「ちょっと零華と恵衣菜のことが・・・・・・・ね・・・・・・」

 

恵衣菜は現在自宅療養中。真姫の家に恵衣菜のご両親が迎えに来て、自宅に運んでいったのだ。今も恵衣菜は眠っている。真姫のお母さんによると、あまりのショックで精神に。心に異常がきたして意識を失っているのだとか。零華は目覚めているのだけど、明久のことを聞くと体調が悪くなってしまっていた。学校では従姉の小暮葵さんとそのお姉さんの翠さんが零華のお世話をしてるとか。

 

「そうやね・・・・・・」

 

「でも、今回は明久だったけど、もしも私や亜里沙、お母さんやお父さん、希やにこたちだったらとしたら・・・・・・」

 

「エリチ・・・・・・」

 

「絵里・・・・・・」

 

正直、私は怖い。しっかりしなきゃいけないのはわかるけど、もし自分や家族、友達が明久と同じことになったらと思うと怖いのだ。

例え自分じゃなくても、目の前で友達や家族、恋人が刺されたら零華や恵衣菜のようになるのは間違いない。

私は病院に行く道を歩きながらそう思考したのだった。

 

~絵里side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~真奈美side~

 

 

「―――ええ。そういうわけだからしばらくこっちにいることになるのだけど大丈夫かしら?―――そう?ごめんね。―――うん―――うん。―――ええ、なにかあったら連絡して―――うん―――それじゃあ」

 

関係者さんとマネージャーに電話して、事情を話ししばらく休むことの旨を伝えると、関係者さんとマネージャーからお大事にと言われた。まあ、マネージャーは明久くんのこと知ってるし、関係者さんも一部は面識がある。それぞれ各所に連絡しスマホを閉じると。

 

「しばらく休むの真奈美ちゃん?」

 

目の前に座っている人に聞かれた。

 

「うん。そっちは大丈夫なの、花音(かのん)ちゃん?」

 

私は目の前に座っている恵衣菜ちゃんの母親にして私の古くからの友達、姫宮花音にきいた。

 

「私のほうは秀夜(しゅうや)くんがやってくれてるから」

 

「そうなんだ~」

 

私の夫、和輝くんの親友の秀夜くんは花音ちゃんの旦那だ。花音ちゃんと秀夜くんは姫宮財団の本社で秀夜くんが代表取締役兼社長、花音ちゃんは副社長兼ファッションデザイナーとして、あちこち飛び回っている。まあ、吉井財閥の本社代表取締役である和輝くんもそうなんだけど。ちなみに玲ちゃんは和輝くんのサポートをしていたりする。

 

「花音ちゃん、恵衣菜ちゃんは・・・・・・?」

 

私の質問に花音ちゃんはふるふると首を横に振った。

 

「もう四日も眠りっぱなしなのね・・・・・・」

 

「仕方ないよ。目の前で明久君が刺されたんだもの。たぶん私も同じ立場だったらそうなると思うよ・・・・・・」

 

「そうね・・・・・・」

 

「零華ちゃんは?」

 

「さっき翠ちゃんからメールがあったの。どうやら零華ちゃん、倒れちゃったみたいなの」

 

「そっか・・・・・・。かおりちゃんたちには?」

 

「美穂乃ちゃんと瑞那ちゃんにも聞いたけど、やっぱりショックが大きいらしいわ」

 

(そら)ちゃんはなんて?」

 

「・・・・・・・つばさちゃんも穂乃果ちゃんたちと同じよ」

 

颯ちゃんはつばさちゃんのお母さんで、私たちの親友だ。

 

「はぁ~・・・・・・ほんと、明久くんはいろんな子から好意を持たされてるよね」

 

「まあ、それが明久君の人徳なんだと思うわよ?私からしてみればさすが真奈美ちゃんと和輝君の子供ってことはあるわ」

 

「それほめてるの?」

 

「ん?褒めてるよ~」

 

少し言ってる意味が気になるが、朗らかに笑いながら言う花音ちゃんの前ではその考えも捨てた。

 

「それで?」

 

「ん?」

 

「真奈美ちゃんが言いたいことってそれだけじゃないでしょ?」

 

「うっ・・・・・」

 

「真奈美って解りやすいのよ?まあ、瑞那ちゃんほどじゃないけど」

 

「瑞那ちゃんとだけは一緒にされたくないんだけどなぁ~」

 

私は昔を思い出して苦笑しながら答えた。

 

「ねえ、花音ちゃん。一つ聞きたいんだけど」

 

「なに?」

 

「一夫多妻ってどう思う?」

 

「ケホッ!一夫多妻!?」

 

私の言葉に花音ちゃんは噎せたように咳き込み聞いてきた。

 

「なんで一夫多妻なの・・・・・・・・・・あー、なるほど・・・・・・そういうことね」

 

花音ちゃんは理解したようにうなずき言った。

 

「いいんじゃないかしら」

 

「あ、いいのね」

 

「ええ。だって、これ、明久くんと恵衣菜たちのことでしょ?」

 

「さすが花音ちゃん!話が早いね」

 

「何年の付き合いだと思うのよ・・・・・・。それくらいわかるわよ」

 

「あはは・・・・・・」

 

「まっ、私は恵衣菜がいいならいいわよ?まあ、あの娘なら真っ先に賛成すると思うのだけど」

 

「ふふふ。花音ちゃんも親バカだね」

 

「いや、真奈美ちゃんだけには言われたくないよそれ」

 

「え~~!」

 

呆れた視線で視てくる花音ちゃんに私は心外だよ~、という風に返したが、花音ちゃんはクスリと笑って来ただけだった。

というかかおりちゃんたちも親バカだと思うんだけどなあ。そんなことを思いながら私は花音ちゃんを見たのだった。

 

~真奈美side~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~つばさside~

 

 

「どうしたのよつばさ。元気ないみたいだけど?」

 

「そう?」

 

「ああ。あんじゅのいう通り元気がないように見えるよ。なにかあったのか?」

 

「なにかあった・・・・・・ね・・・・・・・。あったのは私じゃないけど・・・・・」

 

あんじゅと英玲奈に心配されながら、私は二日前、お母さんに聞かされたことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日前

 

 

「お、お母さん、今なんて・・・・・・」

 

「・・・・・・明久くんが刺されたわ」

 

「じょ、冗談だよねお母さん。エイプリルフールはもうとっくのとうに過ぎたよ」

 

私の言葉にお母さんは首を横に振った。

 

「・・・・・・ほんと・・・・・・なの・・・・・・?」

 

「・・・・・・ええ」

 

お母さんの言葉に私は目の前が真っ暗になった。

 

「つばさ?」

 

「・・・・・・れが・・・・・・・・・たの・・・・・・」

 

「え・・・・・・・・・」

 

「誰が・・・・・・・誰が明久くんを刺したの!」

 

テーブルにバンッ!と大きな音を立てて立ち上がった私は目の前のお母さんに大きな声で聞いた。

 

「お、落ち着いてつばさ」

 

「これが落ち着いていられるわけないよ!明久くんが刺されたんでしょ!私の大切な人が刺されたんだよ!落ち着いていられるわけないじゃん!」

 

お母さんの言葉に私は泣きながら言う。

 

「明久くんを刺した人はもう警察に捕まってるわ。真奈美から連絡が来たの」

 

「そう・・・・・・」

 

私はそう呟くように言うと部屋から出て自室に戻り、扉の鍵を閉めベットに倒れるようにして入り、傍にあった淡黄柄のスマホを持ち画面を開いた。

そこには通知で葵からのLINEが来ていた。中身を見ると、そこにはお母さんが言っていたのと同じ内容と、明久くんの現在の様子が書かれてた。

私はそれを一通り確認すると、LINEから写真のフォルダに画面を変える。そのフォルダには様々な写真や動画が記録されていた。中にはあんじゅや英玲奈たちと撮ったAーRISEの写真や葵との写真など。そして、フォルダの一番上には明久くんの名前が。その下には幼馴染みたちで撮った写真など千差万別が記録されていた。

私はフォルダ名が明久くんと書かれているフォルダと幼馴染みと書かれているフォルダを開いた。その中には私たち幼馴染みの姿があり、明久くんと書かれているフォルダには明久くんの写真がたくさんある。

その写真を一通り見終えるとスマホの画面をブラックアウトして、枕に顔を埋める。

 

「明久くん・・・・・・」

 

枕に顔を埋め明久くんの名前をただ呟くように言った。その声に嗚咽が混じり、願っているようにも聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

 

「ごめん、私このあと行くところあるから」

 

「そうなの?」

 

「ええ」

 

「じゃあまた明日つばさ」

 

「そうね」

 

私はあんじゅと英玲奈にそう言うと、明久くんが入院してる病院へと走っていった。

 

~つばさside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~あんじゅside~

 

 

つばさが走って出ていったのを見たわたしは横にいた英玲奈に訪ねた。

 

「ねえ、英玲奈。今日のつばさ、どこかおかしくなかったかしら?」

 

「あんじゅもそう思うかい?」

 

「も、ってことは英玲奈も?」

 

「ああ。授業中もさっきも上の空って感じだった。それにいつもの元気が無かったのにも気になる」

 

「そうね・・・・・・つばさがあんな風になるなんて今まであったかしら?」

 

「いや・・・・・・・・ないな」

 

「そうよね・・・・・・」

 

「そう言えば、休み時間の最中つばさ、明久がどうのこうのって言っていたような・・・・・・」

 

「明久くん?」

 

「ああ。どこか心配している感じだった」

 

「・・・・・・・・もしかして明久くんの身に何かあったんじゃないかしら?」

 

「有り得るな・・・・・・明久が関係しているならつばさのあの様子も納得だ」

 

「ええ。そうと決まったら、葵に効きましょう」

 

わたしは英玲奈にそう言うと、スマホのLINEを開いて葵に連絡を取った。

そして、返ってきたメッセージを見たわたしと英玲奈はあまりの悲痛に口を覆ったのだった。

 

~あんじゅside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その二日後の水曜。それぞれのもとに、明久が目を覚ましたと連絡が入ったのだった。

それは血のように赤く、燃えるような夕陽が彼方へと沈む黄昏時の時間帯の事だった。

 

 

 

 

 

 









次回 『Regeneration』 GO to The Next LoveLive!


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第ⅩⅥ門 Regeneration

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

 

明久)僕が昏睡状態の間にどうやら現実では色々と大変なことが起こっていたみたいだね。起きたら零華たちの好きなようにさせて上げようかな。それに、眠っているときにもう一人の僕から言われたからね。それじゃ、早く目覚めないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・うん、大丈夫だね」

 

「ホッ・・・・・・よかった。ありがとうございます先生」

 

「いや、なに。明久君が目を覚ましてくれてよかったよ」

 

「あはは。まあ、聞いたときは驚きましたけど・・・・・・」

 

僕は今、病室で西木野先生から触診などの検査を受けていた。

僕が刺されて五日目・・・・・・らしい、黄昏時の時間。目を覚まして30分後の僕は主治医の西木野先生から検査を受けながらこの五日間のことを聞かされた。聞かされたあと僕は思わず顔を青くしたほどだ。理由は、零華たちのこの後のことが予測できたからだ。ちなみに僕が目を覚ましたという連絡はもうすでに行き渡っているらしい。

 

「刺されたところは痛むかい?」

 

「う~ん・・・・・・特に痛みはないですね」

 

西木野先生にそう返すと。

 

 

 

"ドドドドドドドドッ!!"

 

 

 

地面が震えるような音がした。

 

「・・・・・・先生、ここって病院ですよね」

 

「あ、ああ。まさか院内で走るような人はいないと思うが・・・・・・」

 

「でもこの音って・・・・・・」

 

「明久君もそう思うかい・・・・・・」

 

「はい・・・・・・恐らく・・・・・・・」

 

僕と先生が病室のドアを見ながら話していると―――。

 

 

"バンッ!"

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

「明久くん!」

 

「明久!」

 

「明久くん!」

 

「明久くん!」

 

上から零華、穂乃果、海未、ことり、つばさの五人が扉を勢いよく開けて病室に入ってきた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

余りの勢いに僕と先生は呆気に取られて、ポカンとしていた。そんなところに。

 

「あなた、たち、院内で、走ったら、ダメでしょう!」

 

「イタッ!」

 

「アタッ!」

 

「ウッ!」

 

「キャッ!」

 

「ニャッ!」

 

ひきつり笑いを浮かべながら病室に入ってきた母さんが零華たちの頭を順にポン、ポン叩いた。

 

「やれやれ。気持ちは分かるけど、それで周りに迷惑かけたら元も子もないでしょうが」

 

母さんははぁ、とため息をつくと頭を押さえている零華たちを見て言った。

その光景に僕と西木野先生は呆然とするだけだった。

とまあ、母さんの軽いお説教が終わって零華たちが僕の方を見たのを見て、僕は上体を起こしながら零華たちに微笑みながら声をかけた。

 

「あー・・・・・・えっと、零華、穂乃果、海未、ことり、つばさ、心配かけてごめん」

 

「いきなりそれはないと思うよ明久君・・・・・・」

 

「えぇっ!?」

 

西木野先生の苦笑しながら小声で言った言葉に僕はすっとんきょうな声をあげた。視界の端に見える母さんも苦笑を浮かべていた。

 

「あ、あのー、零華?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「穂乃果?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「海未?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ことり?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「つばさ?」

 

さっきから俯いたまま黙っている五人に恐る恐る声をかけたが全く返事が返ってこなかった。

 

「あ、あのー・・・・・・」

 

冷や汗を流しながら再度呼び掛けると。

 

「・・・・・・・・・」

 

「れ、零華?」

 

零華が無言で近寄ってくると、僕を抱き締めて顔を胸に埋めてきた。

 

「・・・・・・たよ・・・・・・・ゃん」

 

「零華?」

 

小声で何か言う零華に僕は戸惑いながら呼ぶと。

 

「よかった・・・・・・よかったよ、お兄ちゃん」

 

僕の胸に顔を埋めながら涙を流して涙声で言う零華の声が聞こえてきた。

 

「よがったよー、お兄ぢゃーん!」

 

「・・・・・・・・・」

 

泣きながら言う零華に、僕は零華を抱き締めて、そのまま頭を優しく撫でた。

すると。

 

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

穂乃果は腰に手を回し、ことりは背中に回って体を預けてきて、海未は服の裾を握りしめて、つばさはベットの裾部分に手を当てて僕を見てきた。

 

「よかった・・・・・・明久くんが目を覚ましてくれてよかった」

 

「明久くん」

 

「よかったです、明久」

 

「よかった、明久くん」

 

涙声で言う四人に、僕はみんなにかなり心配を掛けさせてしまったことを感じた。僕はそのまま零華たちを拒絶せず、好きなようにさせることにした。・・・・・・のは、いいんだけど、西木野先生と母さんがニヤニヤ見てくるのが不思議だった。ナゼ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零華たちに好きなようにさせて10分後、顔を赤くしながらもじもじとしている零華が。

 

「ご、ごめんねお兄ちゃん。病み上がりで起きたばかりなのに・・・・・・」

 

「ううん、僕こそごめんね。みんなに心配かけちゃったね」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

「そうだよ!」

 

「そうです!明久は私たちを守ってくれたんですから!」

 

「そうよ明久くん!」

 

「そうだよお兄ちゃん!心配かけちゃったなんてことないよ!」

 

僕の言葉に穂乃果たちは猛烈に言い返してきた。

 

「でも・・・・・・」

 

零華たちの言葉に言いよどんでいるそこへ。

 

「まったく・・・・・・なんでお前はそこで素直に受け取らないんだ」

 

「え」

 

聞き慣れた、クラスメイトにして悪友の声が聞こえてきた。

声のした方を向くと、そこには扉を開けて呆れた眼差しをしている雄二がいた。

 

「雄二!?」

 

「よっ、明久。目が覚めたようだな」

 

「え、なんでここに?!」

 

「なんでもなにも、お前が目を覚ましたと聞いてやってたんだよ。ちなみに、来たのは俺だけじゃないぜ」

 

「へ?」

 

ニヤリと口角を上げて言う雄二の言葉にすっとんきょうな声をあげると。

 

「やれやれ、お主は相変わらずじゃのう」

 

「・・・・・・まったく」

 

「まあ、そこが吉井だしな」

 

「確かに」

 

そんな声が耳に入ってきた。

それと同時に、秀吉、康太、須川くん、横溝くんに続いて恭二や友香さん、霧島さん、木下さん、工藤さん、久保くん、エレンさん、桜咲さんなどなど、文月学園での僕の友達たちが。さらに。

 

「穂乃果、早すぎよ・・・・・・って、あら?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・ちょっ、いくらなんでも学校から走っていくなんて・・・・・・って、え?」

 

「つ、つばさ、いくらなんでも荷物ぐらいは持っていってよ~・・・・・・あら?」

 

息をきらせた絵里と真姫、つばさの鞄らしきものを持っているあんじゅもが扉を開けて入ってきた。

 

「絵里!?真姫とあんじゅも!ってことは・・・・・・・」

 

絵里たちが入ってきたのを見て、このあとのことが予想できたのと同時に。

 

「「「「「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」」」」」

 

希、にこ、花陽、凛、英玲奈が息を切らして入ってきた。

 

「なに、この予想外の展開みたいな感じ」

 

このカオスらしき空間に僕は思わずそう言わずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオス空間が過ぎて、雄二と絵里たちが帰り、零華たちは絵里たちと帰って行き、今は母さんと二人きりになっていた。

 

「一気に疲れた・・・・・・」

 

「まぁまぁ。さすがに全員勢揃いってのは私も驚いたけど良かったじゃない。あんなにお見舞いに来てくれて」

 

「まぁね」

 

口ではこう言うが、内心は嬉しく思っていたりしている。母さんや姉さんにいったらツンデレね、って言われる。ていうか絶対言われる。

と、脳裏でそんな会話を一人でし、母さんに聞きたかったことを聞いた。

 

「母さん」

 

「ん~?」

 

「恵衣菜は・・・・・・?」

 

そう、それは恵衣菜の姿が見えないことだった。

何時もなら零華たちと一緒に来るのに、今日に限ってはいなかった。それどころか誰も恵衣菜のことを言わなかった。何かあったとしか言いようがない。

 

「恵衣菜ちゃんは自宅で眠ってるわ・・・・・・」

 

「?自宅?どういうこと?」

 

「・・・・・・5日前から恵衣菜ちゃんはずっと眠ってるの。一応意識はあるらしいんだけど」

 

「そんな・・・・・・!」

 

母さんから聞かされた恵衣菜の今の状態に声を失った。僕のせいで恵衣菜がそうなっているなんて考えたくもなかった。

 

「うっ・・・・・・」

 

「あ、明久くん?!どこに行くつもりなの!?」

 

「恵衣菜のとこ・・・・・・っ!」

 

寝たきりだった身体に鞭打って、僕はベットから降りる。

 

「だ、ダメだよ!まだ安静にしてないと!」

 

「それでも・・・・・・行かなくちゃいけないんだ・・・・・・・!」

 

窓の冊子に手を掛けて産まれたての小鹿のように震える足で立つ。母さんは慌てて止めるが、僕はその手を払って立ち上がる。

そこに。

 

「予想していた通りだね」

 

「先生!」

 

西木野先生が入ってきた。

 

「先生お願いします!僕を恵衣菜の所に行かせてください!」

 

「どうしても行くのかい?」

 

「はい!」

 

僕の返答に先生はジッと僕を見た。

そしてしばしの時間が過ぎて。

 

「・・・・・・・真奈美さん」

 

「・・・・・・いいの真吾くん?」

 

「ええ。僕が特別に許可します」

 

「わかったわ」

 

「母さん?」

 

「行くわよ明久くん。恵衣菜ちゃんのところに」

 

「うん!」

 

母さんは先生から渡された車椅子に僕を座らせて、車椅子を押して病室から出た。

そこから駐車場の車に乗り、恵衣菜の家。姫宮家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫宮家

 

 

「あらら。明久君来ても大丈夫なの真奈美?」

 

姫宮家に着いて、母さんがインターホンを鳴らすと、恵衣菜の母親、姫宮花音さんが僕を見て驚いたように言った。

 

「あ~、それは明久くんが望んだことだから~・・・・・・・」

 

「あぁ。なるほどね・・・・・・。とにかく上がって、真奈美は明久君を恵衣菜の部屋に連れていってあげて」

 

「うん」

 

僕が唖然としているなか、坦々と会話が進み僕は何時の間にか恵衣菜の部屋にいた。

 

「それじゃあ、私は下にいるから何かあったら呼んでね」

 

「あ、うん。わかった母さん」

 

そう言うと母さんは僕を一人、ベットで寝ている恵衣菜とともに残して下に降りていった。

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

恵衣菜の部屋は何時もの明るさがなく、暗く、真っ暗闇だった。カーテンも締め切られていて明かりはカーテンから入るほんの少しの光源だけだった。

僕は部屋の電気を付けて、ベットに横たわる恵衣菜の側に車椅子を操作して近寄る。

恵衣菜の眠るベット脇に寄ると、僕は恵衣菜の長い黒髪

に触れる。

 

「ごめんね恵衣菜・・・・・・心配かけたよね・・・・・・。僕はここにいるから」

 

そう静かに呟くように言うと、恵衣菜の手を優しく握る。

恵衣菜の手は仄かな温かみがあるが、すこし肌が冷たく感じられた。

そう感じ取っていると。

 

「・・・・・・・・・・ん」

 

「恵衣菜?」

 

恵衣菜の身体がピクンと、すこし動いた気がした。

恵衣菜を見ると、恵衣菜は安らかな寝息を立てて、布団越しでも分かる豊かな双丘が上下に動いていた。

気のせいかと思ったその瞬間。

 

「・・・・・・・・・・」

 

握っていた恵衣菜の手が動いたのだ。

それと同時に、恵衣菜の眼から一筋の涙が垂れてきた。

 

「恵衣菜!僕だよ!」

 

呼び掛けると、さらに反応が返ってくる。

やがて、閉じられていた瞼がゆっくりと開き、眠け眼の瞳をして恵衣菜が目を覚ました。

パチリと、瞼を閉じたり開けたりしてゆっくりと、恵衣菜は僕の方を見てきた。

僕を見た恵衣菜は仄かな温もりの微笑みを浮かべて言った。

 

「明久・・・くん・・・・・・?」

 

「うん。そうだよ、僕だよ、恵衣菜」

 

僕を認識したのか恵衣菜は右手を上げて、僕の頬に手を当てた。

 

「よかった・・・・・・明久くん・・・・・・・生きてるよね」

 

「うん。生きてるよ、恵衣菜」

 

「うん・・・・・・感じるよ、明久くんの温かさ・・・・・・。明久くんが生きてる証・・・・・・だね・・・・・・」

 

「恵衣菜」

 

恵衣菜は上体を起こすと、そのまま車椅子に座る僕の胸元に抱き付いてきた。

 

「よかった・・・・・・よかった、明久くんが生きていてくれて・・・・・・嬉しい」

 

「うん、僕も恵衣菜が目を覚ましてくれてよかったよ」

 

僕も恵衣菜に優しく抱き締め返した。

そしてその空間は眠り姫(恵衣菜)の目覚めによって、闇から光へと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

 

 

「ねぇ真奈美・・・・・・」

 

「なにかしら花音ちゃん」

 

「これどんな白雪姫、って言いたいのだけど」

 

「奇遇ね。私もそう思っていたところよ」

 

恵衣菜の部屋に入ってきた母さんと花音さんが僕と、真姫の母親、朱梨さんに見てもらっている恵衣菜を見てそう言った。というか、母さんたちの言っている意味がわからない。僕は母さんと花音さんの話を耳に疑問符を浮かべていた。

僕がそんな考えをしていると。

 

「朱梨ちゃん、どう?」

 

「特に異常はないわね。意識もハッキリしているし、後遺症もないわ」

 

「そう。よかった。ありがとうね朱梨」

 

「気にしないで花音」

 

母さんたちがそんな会話をしていた。

 

「ところで、さっき花音が言ったこれどんな白雪姫、なんだけど・・・・・・ある意味その通りかもしれないわね」

 

「だよね」

 

「うん」

 

母さんたちがなんか落胆したように話してるけどどうかしたのかな?僕は視界の端に見える母さんたちを見てそう思った。

 

「恵衣菜、大丈夫?」

 

「うん。大丈夫だよ。それより明久くん、ここにいてもいいの?」

 

「あー、西木野先生から一応許可は貰っているんだけど・・・・・・」

 

「そうなの?でも、聞いた話だと明久くんも数時間前に目覚めたばかりじゃないの?」

 

「うっ・・・・・・そ、それはそうですが」

 

「もぉ、とにかく・・・・・・・私は大丈夫だから、明久くんは病院に戻ってゆっくりして」

 

「でも・・・・・・」

 

「大丈夫だよ。お母さんもいるし、それに隣には零華ちゃんもいるから」

 

「うぅ・・・・・・」

 

「明日病院に行くから、ね♪」

 

「うん・・・・・・」

 

僕はしぶしぶ、恵衣菜にそう返事をした。

すると、恵衣菜が小悪魔めいた笑みを浮かべながら僕の耳元に近寄ると。

 

「元気になったら、またヤろうね」

 

そう小声で言ってきた。

 

「え?!ちょっ!え、恵衣菜さん!?な、なにを言っているんですか?!」

 

「フフフ」

 

慌て狼狽える僕に、恵衣菜は面白そうにクスクスと笑った。

そして、それを見ていた母さんたちはなぜか遠い眼をしていた。何故!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

あのあと姫宮家から西木野病院の僕の病室に戻った僕は、西木野先生から簡易的な検査を受け、明日の予定を聞かされ、五日ぶりに食べる夕飯を食べ床についた。

午前中はMRI検査やら運動検査、知能検査やらをして終わり、午後は病室でゆっくりと過ごしていた。

その時間も過ぎ、午後16時近くになると、零華や恵衣菜、穂乃果、海未、ことり、つばさが制服姿でお見舞いに来てくれた。恵衣菜は今日は学校は休み私服だ。だが、明日からは普通に登校するそうだ。

そんなこんなで楽しく今日あったことやらを話しているその最中。

 

"トントン"

 

病室の扉がノックされた。

 

「誰だろう?」

 

「坂本くんたちは今日は来れないって言っていたけど・・・・・・」

 

「じゃあ絵里たちでしょうか?ですが絵里たちなら私たちと来るはずですが・・・・・・・」

 

「あんじゅと英玲奈は予定あるって言っていたわよ?」

 

西木野先生やこの病院の関係者ならノックしてなにか言ってくるはずだが、今されたノックのあとにはなにも聞こえない。母さんたちならノックしたら普通に入ってくるし、零華たちも思い当たる人物がないそうだ。

考えていると、再度扉がノックされた。

僕は少し考えたあと。

 

「どうぞ」

 

入室を許可した。

 

「失礼します」

 

声とともに入ってきたのは一組の大人の男女だった。

思い当たる人物がなく悩みながら恵衣菜たちを見ると、恵衣菜たちも首をかしげていた。

どうやら恵衣菜たちの知り合いではなさそうだ。

入ってきた男女に警戒心を出しながら尋ねた。

 

「あなた方はどちら様ですか?ここの病院関係者・・・・・・ではないですよね」

 

警戒しながら聞くと。

 

「私たちは清水三春の・・・・・・母と父です」

 

女の人がそう畏まったように言ってきた。

 

「は?」

 

今言った言葉に僕はつい声に出してしまった。

恵衣菜たちも、は?って感じだった。唯一つ、つばさは清水三春がどんな人間なのか知らないため首をかしげていた。

 

「それでその清水さんのご両親がなんのようでしょうか?」

 

「此度のことについて謝罪に参りました」

 

「謝罪?」

 

「はい」

 

「謝罪の前に聞きたいことがあるんだけど」

 

「な、なんでしょうか」

 

「なんで僕が入院している病院が分かったんです?」

 

「そ、それは、聞いたので」

 

「誰から?」

 

「そ、その、文月学園の学園長から」

 

「・・・・・・零華、お祖母ちゃんに電話して」

 

「うん」

 

僕は零華にお祖母ちゃんに裏付け確認を取るため、連絡をするように言った。

その5分後、零華は僕にお祖母ちゃんから聞いたことを教えてくれた。

 

「ふうん。ありがとう、零華」

 

「ううん、大丈夫だよお兄ちゃん」

 

「さて、今学園長に確認をとりましたが、あなた方には教えてない、そうらしいですけど。どういうことですか」

 

「そ、その、それは・・・・・・」

 

おどおどしている清水三春の母親は顔を青ざめていた。そこに、母親の隣に立ちさっきから腕を組んで黙っていた清水三春の父親が喋った。

 

「ふん、貴様が吉井明久か・・・・・・・なるほど、観察処分者らしいバカなヤツだな」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

「・・・・・・・・・・どういう意味ですか」

 

「ふ。言葉の意味通りだ。貴様はバカだなと言うことだ」

 

汚物を視るような視線で清水三春の父親は僕をみてきた。やがて、その視線は恵衣菜たちに向いた。

 

「なんですか、人をジロジロと見てきて」

 

僕は嫌悪感を示しながら聞く。

 

「貴様に答える義理はない」

 

「は?」

 

清水三春の父親の言葉に僕は冷たい声を発した。

恵衣菜たちも清水三春の父親を睨み付けていた。

 

「そもそも、わたしたちの娘がああなったのは貴様らのせいだろ。それはどうするつもりだ?」

 

「なにをいってるんです?」

 

正直この人がなにを言っているのかわからない。

それは僕もだし恵衣菜たちもだ。つばさも理解できないって感じだ。

 

「貴様のせいで三春はああなってしまったんだ、貴様さえいなければな!」

 

「あ、あなた、それは・・・・・・・」

 

隣にいる清水三春の母親が宥めるが清水三春の父親は聞く耳を持たない。

 

「なぜ、わたしたちが貴様のために医療費などを出さねばならないのだ。むしろこっちが被害者だろう」

 

もうなに言ってるのかわからない。というか迷惑極まりないんだけど。そう思っていると。

 

「ちょっと待ってください」

 

「なんだ」

 

海未が険しい顔をしていた。

っていうか、海未だけじゃなくて零華に恵衣菜も穂乃果もことり、つばさもしているし。

 

「なにあなた方が被害者ぶってるんですか?被害者は明久ですよ」

 

「しるかそんなの。自業自得ではないか」

 

そう言う清水三春の父親。

そんなところへ。

 

「へぇー。明久くんが刺されたのは自業自得なんだ~」

 

冷たい、よく響く声が扉から聞こえてきた。

 

「母さん?」

 

そこには母さんが能面のような顔をして立っていた。そしてその後ろには西木野先生がいつもの優しい顔ではなく、険しくきびしい表情をして立っていた。

 

「お母さんから聞いたときはなんの冗談かと思ったけど、まさか本当にいるなんてね~。しかも、私がいないのをいい気に子供たちを罵倒するなんて・・・・・・随分なことだね~~」

 

「「っ!」」

 

その瞬間、母さんから清水三春の両親に向かって絶対零度や地獄の最下層コキュートスを彷彿させる、純粋な氷の殺気が送られたのを感じた。

 

「あんたたちの会話はすべて録音済みです。僕は明久君の主治医として今言わせてもらいますけど、明久君は刺された場所があと数ミリ外れていたら死んでいたかも知れなかったんですよ?それを自業自得とは・・・・・・あなたは最低ですね」

 

今聞かされた衝撃の言葉に、僕たちは言葉を失った。ただ、母さんは知っていたらしく、さらに表情を怖くした。

 

「さて、今回のことで私たちはあなた方を訴えます。まあ、あなた方に勝ち目はありませんけど無駄な足掻きをしたらどうですか?言っときますけど、あなた方の娘のことも含まれてますから。私たちを怒らせてこれで済むとは思わないことね」

 

母さんは般若の面を被ったかのようにニコォ、と笑った。その姿に西木野先生は苦笑いを浮かべ、清水三春の両親はガタガタと震えていた。

けど、これで僕は許せるほど人間できてないんだよね。

 

「母さん、ちょっといい?」

 

「なあに明久くん?」

 

「この人たちに言いたいことあってね。最初は謝罪に来たとか言ってたけど、謝罪もなにもないし。それにこの人たち、零華たちを侮辱した」

 

そう言うと同時に、僕は母さんが出した殺気に劣らないほど濃密な殺気を出した。

 

「僕の大切な妹と幼馴染みを・・・・・・大好きなみんなを侮辱して、許せると思う?」

 

雰囲気の違う感じに気付いたのか清水三春の父親は脂汗を掻いていた。

 

「しかも人のことジロジロと見てきて・・・・・・正直、鬱陶しいんだよね。それに、どうせ零華たちの後を着けてここに来たんでしょ?それに、清水三春に関しては僕は全く関係ないんだよね。向こうからやって来たんだし。それで被害者ぶるなんて・・・・・・・・・・調子に乗るなよテメェら」

 

口調が荒くなるほど僕は今ぶちギレていた。

 

「いい大人がこうも醜いとはね。子は親に似るって言うけど本当だね。まあ、僕から言いたいのは・・・・・・さっさと出ていけ。二度と顔を見せに来るなし僕らに関わるな」

 

そう言うと僕は殺気を収め、母さんに視線を見やる。

 

「あとのことお願い母さん」

 

「ええ。それじゃ、真吾くんお願いしてもいいかしら?」

 

「ええ。それに丁度来たようですしね」

 

病室の外から来た男性職員が清水三春の両親を囲むと、そのまま引っ張って連れていった。

 

「じゃあ私たちは失礼するわね。みんなも遅くならないうちに帰るのよ」

 

そう言うと母さんは先生と一緒に病室から出ていった。

 

「ふぅ。あれが清水三春の両親なら清水三春のあの性格も納得できるかな?」

 

母さんたちが出ていったあと、僕は今の人たちのことを思い出してそう呟いた。

そう思っていると恵衣菜が声をかけてきた。

 

「あ、あのね、明久くん」

 

「なに恵衣菜?」

 

なんだろう、恵衣菜だけじゃなくて穂乃果たちも顔が赤いけど?

 

「あ、明久くん、い、今から言うことちゃんと聞いてね」

 

「あ、うん」

 

なんだろうと首をかしげていると。

 

「えっと、私、高坂穂乃果は明久くんのことが異性として大好きです!」

 

穂乃果が急にそう言ってきた。

 

「へ?」

 

理解できずについ間抜けな声を出していると。

 

「お、同じく、わ、私、園田海未も明久のことが異性として、だ、だだだ、大好きです!」

 

「私も!南ことりも異性として明久くんのこと大好きです!」

 

「わ、私も。綺羅つばさもみんなと同じで異性として明久くんのこと大好きよ!」

 

立て続けに海未、ことり、つばさがそう言ってきた。

え、これって告白?一体どういう状況!?

そう脳裏に思い悩ましていると。

 

「あ、あのねお兄ちゃん。私も異性としてお兄ちゃんのこと大好きです!」

 

零華かまでも言ってきた。

 

「へ?え?えっ!?えええっ!?」

 

恵衣菜を見てようやく理解できた僕は、院内中に響き渡るのではないかと言うほどの驚きの声を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『変わらない日常へ』 GO to The Next LoveLive!


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第ⅩⅦ問 変わらない日常へ

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

明久)ついに目覚めた僕!まさか五日も経っているなんて驚いたよ。まあ、みんながお見舞いに来てくれたのは嬉しかったね。けど、まさかあの清水三春の両親もああなんて・・・・・・母さんがいてくれて助かったよ。それに、零華、穂乃果、海未、ことり、つばさに告白されるなんて・・・・・・。いったいどうすればいいの!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「おーい、明久?」

 

「もしも~し、起きてますか~?」

 

「ハッ!あ、ごめん絵里、希。ちょっともの更けていたよ」

 

絵里と希の心配する声に、ようやく僕は自分が音ノ木坂学院の生徒会室に二人といることを思い出した。

 

「大丈夫なの?まだ無理しない方が・・・・・・」

 

「大丈夫だよ。それにあと少ししかここに通えないからね。残りの時間を無駄にはできないよ」

 

そう、僕と恵衣菜は本来は文月学園所属。音ノ木坂学院には限定的で、今学期が終わるまでという条件で通っているのだ。そしてその期限終了までもう二週間を切っていた。

 

「それにしても今日は大変だったわね」

 

「あはは、大変ごとは慣れているつもりだったんだけどね・・・・・・」

 

目覚めてから僅か3日で退院し、その翌週の月曜。今日から再び登校したのだが、学校につくなりクラスメイトだけでなく音ノ木坂学院の生徒ほぼ全員から心配されたのだ。今は放課後で一息つけるが、放課後になるまではそれは大変だったのだ。

 

「それだけ明久くんがみんなから心配されてるって事やん」

 

「あはは。まさか一ヶ月ちょっとしかここで過ごしてないのにみんなから心配されるって思わなかったからね」

 

「まあ、明久はμ'sの一員、ってことで音ノ木坂の生徒間で有名だから」

 

「それに文月学園の二年生序列一位やし、恵衣菜ちゃんや零華ちゃんで目立ってるしなぁ」

 

「そ、それを言われると何も言い返せないよ」

 

希の面白そうなものを見つけた表情で言う言葉に苦笑を浮かべながら返した。

 

「それにしても復帰して早々大変ね」

 

僕の手元にある書類を見て絵里は同情するように言った。

 

「まあ、お祖母ちゃん・・・学園長から頼まれたことだし。これやらないと音ノ木坂学院で学んだことにならないからね」

 

僕の手元にある書類は音ノ木坂学院での試験召喚システムに対するレポートなどだ。これにより、僕と恵衣菜の音ノ木坂学院での生活が文月学園に単位として認定されるのだ。あとは、これからのシステム面についても兼ねてある。

 

「藤堂カヲル学園長先生ね・・・・・・」

 

「そう言えばエリチ、藤堂学園長に何か言われてへんかった?」

 

「え?・・・・・・ああ、あれね」

 

「?お祖母ちゃんになにか言われたの?」

 

「なにか言われたの、って言うか聞かれた、って言った方が良いかしらね」

 

「?聞かれた?」

 

「ええ。どうやら藤堂学園長は私のお祖母様とお知り合いらしいの」

 

「えっ!?そうなの!?」

 

「ええ。私も気になってお祖母様に聞いてみたの。そしたらお祖母様が音ノ木坂学院に通っていた頃の古くからの友人だって仰ってたわ」

 

絵里の言葉に驚きながらお祖母ちゃんが音ノ木坂学院出身だと言うことを思い出す。

そう思い出していると。

 

「それで、明久くんはなにを悩んでるん?」

 

「え?」

 

希がタロットカードの背を見せて言ってきた。

 

「カードが告げてるんや。明久くんはなにか悩んでる、ってな」

 

「さ、さすが希と希のスピリチュアルパワー・・・・・・」

 

希の的確な悩んでいるという言葉に唖然としながら返す。

 

「もしかして穂乃果たちの様子がおかしいのもなにか関係あるのかしら」

 

「あ~、え~と、その~・・・・・・」

 

僕は絵里の言葉に穂乃果たちに告白されたと言うことを二人に相談するべきか否か悩んでいた。

 

「まぁ、明久くんがはなしとおないのやら無理には聞かんよ」

 

「それもそうね」

 

さすがμ'sのお姉さん係二人だと思った。

 

「さすがμ'sのお姉さん係二人・・・・・・」

 

「お、お姉さん・・・・・・!?///」

 

「きゅ、急にそんなこと言われても・・・・・・///」

 

「あ、あれ・・・・・・?」

 

希と絵里の顔が赤いことに疑問を持ちながら見て、思い返す。

 

「も、もしかして声に出していた・・・・・・?」

 

「「・・・・・・」」

 

恐る恐る二人に聞くと、二人はコクりとうなずいた。

 

「~~っ///!」

 

絵里と希の返しに思いっきり気恥ずかしくなった僕は、無言の悶絶状態になった。

するとそこへ。

 

「明久くん、提出する書類の方終わりそう・・・・・・・って、どうしたの?」

 

「あ、恵衣菜ちゃん」

 

書類を片手に恵衣菜が部屋に入ってきた。

 

「希ちゃん絵里ちゃん、これ一体どういう状況?」

 

「あー、なんていうか」

 

「あはは」

 

「???」

 

一人悶絶している僕に恵衣菜は不思議そうに見て、絵里と希に尋ねた。

 

「ところで恵衣菜は明久が何悩んでるか知ってるのかしら?」

 

「え、ええと、一応知っているよ」

 

「あ、やっぱり恵衣菜に関係することなのね」

 

「いや~、私だけじゃなくて、穂乃果ちゃんたちもなんだよね」

 

「どういうことなん?」

 

「いや~、なんといいますか~、まあいろいろあるんだよ」

 

恵衣菜は僕の隣に座りながら、僕の背中を擦って苦笑いを浮かべて返した。

 

「「???」」

 

絵里と希は相変わらず頭にハテナを浮かべて僕と恵衣菜を見てきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恵衣菜~、どうしたらいいの~」

 

今は音ノ木坂学院から穂乃果たちを家まで送ったあと恵衣菜と二人、家に帰ってる最中だ。二人だけなか僕は恵衣菜にそう聞いていた。

 

「いやいや、私に聞かないでよ明久くん」

 

「だって僕は恵衣菜と付き合ってるんだよ。それに零華のあれはアウト過ぎる気がするよ!」

 

「愛に兄妹とか関係無くないかな」

 

「そうじゃないよ~!」

 

僕は絶賛、穂乃果、海未、ことり、つばさ、そして零華からの告白に悩んでいたのだった。

 

「明久くんは零華ちゃんや穂乃果ちゃんたちのこと好きじゃないの?」

 

「いや、好きだけどさ。穂乃果たちも付き合うとなると六股になっちゃうじゃん!」

 

「私は別にいいよ?」

 

「いいの?!」

 

恵衣菜の即答に僕はついすっとんきょうな声で返した。

まさか恵衣菜公認とは思わなかったのだ。

 

「いや恵衣菜が良くても、母さんたちが何て言うか」

 

「あー、お母さんたちなら多分だけどオッケー、ってノリで言うんじゃないかな・・・・・・」

 

「な、なんだろう、母さんたちなら確かに言いそうかも・・・・・・」

 

母さんたちの性格を思い出して、僕は冷や汗を出しながら恵衣菜の言葉に肯定した。

というか絶対言いそう。

 

「あー、いや、でも・・・・・・あーー!僕はどうしたらいいの!」

 

僕は堪らず声を荒げた。正直こんな予測不能なこと処理できないよ。

 

「もう、いっそのことみんなと付き合っちゃえば?」

 

「え、恵衣菜がそれでいいならいいけど・・・・・・」

 

「って、それは私じゃなくて明久くん自身が決めないとダメだよ?ちゃんと、自分の意思で。もしかしたら絵里ちゃんや希ちゃん、真姫ちゃんも明久くんのこと好きかもしれないよ?」

 

「いや、さすがにそれは無いんじゃないかな?」

 

恵衣菜の言葉に真顔で答えると。

 

「はぁ。この天然フラグ落としで鈍感、朴念仁の明久くんめ・・・・・・」

 

恵衣菜が小さな声でボソボソ言っていた。

何か失礼なこと言われた気がするけど気のせいかな?

 

「ねえ、明久くん」

 

「なに恵衣菜?」

 

「明久くんは私が明久くんに告白した時のこと覚えてる?」

 

「そりゃあ、あんな告白忘れるということの方が無理だよ」

 

「あはは。そうだよね」

 

「うん。あのときは驚いたよ」

 

そう言って僕は過去を。恵衣菜が僕に告白してきた時の事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四年前 冬

 

 

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

「だ、大丈夫、明久くん!?」

 

「うん、なんとかね」

 

冬の休日のある日。僕は妹の零華と一緒におらず途中で出会った恵衣菜と公園にいた。そして僕は恵衣菜の膝を借りて横になっていた。

 

「恵衣菜は大丈夫?怪我してない?」

 

「私は大丈夫だよ。明久くんが助けてくれたから」

 

「よかった」

 

僕が横になっている理由は、恵衣菜が複数の男からナンパ?されていたのを助けた際、男の攻撃を喰らったからだ。

 

「ごめんなさい明久くん。私のせいで・・・・・・」

 

「恵衣菜のせいじゃないよ。悪いのは向こうなんだから」

 

「でも・・・・・・。明久くんから貰ったこれも壊れちゃったし」

 

恵衣菜が恐る恐る見せたのは白銀と黒金の二色が交差する腕に着けるアクセサリー。リング型のブレスレットだった。だが、それは簡単には壊れないはずなのだが目の前にあるそれは所々歪んでいたり傷があったりした。そして、それは付け根の部分から二つに裂けていた。

 

「ホントだ・・・・・・」

 

「ごめんね。明久くんから貰った大切なブレスレットなのに」

 

僕はこのブレスレットを恵衣菜だけでなくて零華や穂乃果、海未、ことり、ツバサの幼馴染みたちにも渡していた。正確には幼馴染みの。僕たちの絆の証しとして、小学校のころに写真が入るペンダントと一緒にあげたものだ。まあ、母さんに協力してもらったものだけど。

 

「大丈夫だよ」

 

僕はそう言うと利き手の左腕に着けていた亜麻色と銀の入った恵衣菜たちと同じブレスレットを外し、それを恵衣菜の右腕に着けた。

 

「あ、明久くん?!これは明久くんの・・・!」

 

「うん。でも、恵衣菜に持っていてほしいんだ」

 

「わ、私に?」

 

「うん」

 

そう言うと僕は恵衣菜の膝の上から起き上がり、横に座り並ぶ。

 

「僕たちの絆はこんな風になっても絶対に直せる。まあ、こんな風に。僕たちがバラバラになるなんてこと絶対にないんだけどね」

 

僕は恵衣菜のブレスレットをハンカチで優しく包み込んで苦笑いに浮かべながら言った。

 

「そう・・・・・・だね・・・・・・」

 

「うん」

 

僕はそう言うとベンチから立ち上がり軽く伸びをした。

 

「行こう恵衣菜。今日はお泊まり会の日でしょ?」

 

そう言うと僕は恵衣菜に手を差し出した。

 

「うん!」

 

恵衣菜は僕の差し出した右手を掴むとベンチから立ち上がった。

 

「急がないと海未に怒られるかも・・・・・・。今回はことりのおやつにされないといいな~」

 

そう苦笑ぎみに言いながら恵衣菜の手を握り歩きだそうとすると。

 

「明久くん」

 

「ん?なに?」

 

恵衣菜に呼ばれて振り返った。その瞬間。

 

「ん・・・・・・」

 

「んん・・・・・っ!!??」

 

恵衣菜が僕の口にキスをしてきた。

とっさのことに驚いていると。

 

「・・・・・・・・・・あのね明久くん。私、明久くんのことが好き!異性として・・・・・・一人の女の子として明久くんのことが大好きです!そ、その私で良かったから付き合ってくれるかな・・・・・・・・・・」

 

恵衣菜が顔を夕陽のように赤くして告白して。

 

「え、恵衣菜・・・・・・」

 

「あ、明久くんの迷惑だったら断ってくれても・・・・・・・・・・」

 

「ん・・・・・・」

 

「んっ・・・!」

 

恵衣菜の言葉を遮って、今度は僕から恵衣菜にキスをした。

 

「あ、明久くん・・・・・・」

 

「そ、その、恵衣菜が僕でいいなら・・・・・・」

 

「そんなことないよ、明久くんじゃないとダメなの・・・・・・!」

 

「えっと、その・・・・・・。僕も恵衣菜のこと好きです。僕で良かったら付き合ってくれませんか・・・・・・?」

 

「~///!はい!喜んで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時から僕と恵衣菜は恋人になったんだよね」

 

4年前の冬の出来事を思い出してそう呟いた。

あの時の壊れたブレスレットは大半は僕が直したけど、フレームとかは母さんと父さんが直してくれたお陰で今は僕の部屋の机の上に置いてある。幼馴染みで出掛けるときに付けていっている。

 

「うん。あの時明久くんが承けてくれるか不安だったんだ。私のこと嫌いじゃないか心配で・・・・・・。女の子として見てくれてないんじゃないかって思ってたんだ」

 

「僕が恵衣菜のこと嫌いなわけないじゃないか。幼い頃からずっと一緒に居たんだから」

 

「そう言ってくれると嬉しいな。それにね、あの時明久くんに告白したのにはねもう一つ理由があったんだ」

 

「理由?」

 

「うん。明久くんが周りの人に盗られないようにするためなんだ」

 

「?どういう意味?」

 

「ふふ。明久くんを私は独占する気はないって言ったでしょ?」

 

「うん」

 

「だから、私がいれば穂乃果ちゃんたちも一緒にいられるから。私は自分の意思で明久くんのことを好きになったし、自分の意思で穂乃果ちゃんたちにも明久くんと付き合ってほしいんだ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「もしかして怒っちゃったかな」

 

「ううん。恵衣菜の考えに驚いただけだよ。そんなので怒らないよ」

 

少し驚きはしたが、恵衣菜の瞳が真剣だったから僕は微笑んで返した。

 

「だから、私個人としてはみんなと付き合ってもいいよ。むしろ、付き合ってほしい。みんな私と同じくらい明久くんの事が好きだから」

 

「恵衣菜・・・・・・」

 

「決めるのは・・・・・・」

 

そう言うと恵衣菜は僕の前に立ち止まって言った。

 

「―――明久くん自身だよ」

 

「僕自身・・・・・・」

 

「そう。私の意見や周りの人の意見じゃなくて明久くん自身の意思」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「周りの人がなんだって言うの?法律とかそんなのに人を・・・・・・大好きな人を愛するのにルールなんて。規則なんて知らない。どうだっていい!すべてを無視しても、信じるのはただ一つ、自分の想いだけ。それだけには嘘をつかないでほしい・・・・・・。私はそう思うんだ」

 

恵衣菜の言葉に返す言葉もなく、僕はただ呆然と立ち尽くす。

頭の中で思い出すのは、零華、穂乃果、海未、ことり、ツバサ。僕にまっすぐに告白してきた妹と幼馴染みだ。

今までの時間が走馬灯のように思い上がってくる。そして、それと同時に自分の気持ちも。

 

「ああ・・・・・・そっか。そうだよね」

 

「明久くん?」

 

「ありがとう恵衣菜。決めたよ。僕の・・・・・・僕自身の出した零華たちへの答えを」

 

「そっか・・・・・・」

 

「うん。もう僕は自分に嘘をつかないし抑えない。僕は恵衣菜も・・・・・・零華も穂乃果も海未もことりもツバサもみんな好きなんだ。この気持ちの好きはLIKEじゃない、LOVE・・・・・・。恵衣菜と同じことなんだ」

 

そう静かに呟くと、僕は目の前に立つ恵衣菜を見る。

 

「ありがとう恵衣菜。恵衣菜に言われなかったらずっと答えを見いだせなかった。本心になれなかった」

 

「どういたしましてかな?決めたのは私じゃなくて明久くんなんだから」

 

「そうだね」

 

僕は恵衣菜の目を見てそう返すと、今までの揺らいだ瞳じゃなく決意の。今までの瞳に戻した。

 

「帰ろ恵衣菜。今は僕たちの家に」

 

「ええ!」

 

そう言って僕は恵衣菜と手を繋いで、夕陽を背中に頭上にはチラチラと星が覗く空の中家に帰った。

その夜、僕は零華、穂乃果、海未、ことり、ツバサにメールを送った。一緒に住んでいる零華にも口頭ではなくメールで伝えたのはその方がいいと思ったからだ。

メールにはこう書いて送信した。

 

 

 

 

『明日の放課後、僕らの思い出の公園に来てほしい。みんなへの答えを決めたから』

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 










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第ⅩⅧ問 The Answer

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

恵衣菜)学校に復帰した明久くん!零華ちゃんと穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃん、ツバサちゃんに告白されて悩んでいたみたいだけど吹っ切れたみたいだね。まあ、私は一夫多妻大歓迎なんだけどね♪さあ、明久くん、明久くんの決めたことをハッキリ言ってあげてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

穂乃果たちにメールした翌日。いつもと変わらない日常・・・・・・?を過ごしたはず・・・・・・。

いや、すでにおかしい日常だけど。昨日の時点で。

とまあ、そんなこんなで時間が過ぎて放課後。

僕たち幼馴染み7人は昔よく一緒に遊び、友達にもなった思い出の公園に来ていた。

辺りは夕陽が差し込み、空にはうっすらと三日月が輝いていた。時間も時間な為、広い公園内には遊具と僕ら以外誰もいない。

 

「えーと・・・・・・」

 

そんな中、僕は零華、穂乃果、ことり、海未、ツバサの五人の前に立っていた。恵衣菜はすぐ近くで見守っている。

 

「お兄ちゃん、私たちに対する答え・・・・・・出たの?」

 

「出たよ零華」

 

零華の問いに僕は、零華の目を見て返した。

それから順に、零華、穂乃果、ことり、海未、ツバサの顔を見る。

 

「明久、聞かせてくれますか。あなたの出した答えを」

 

「うん」

 

海未の言葉に心を落ち着かせるために深呼吸をして、改めて五人を見る。

 

「零華は僕の双子の妹でずっと一緒にいたけど、恵衣菜や穂乃果たちとは幼稚園やここで出会ったんだよね」

 

思い懐かしむように公園内を見渡して言う。

 

「それから色々なことがあった。小学校から中学校。そして学校は分かれちゃったけど今・・・・・・。正直なところ言うと、みんなから告白されるなんて思ってもみなかったんだ。零華は妹だしね」

 

最後の部分を苦笑い気味に言って零華を見る。

零華は顔を真っ赤にして視線を下に移した。

 

「本音を言うとね、僕がみんなのところに居て良いのかなって、思ってたんだ」

 

「どういうこと?」

 

「だって僕は男の子で、みんなは女の子だから、なんて言うか居づらいと言うかなんて言うか・・・・・・」

 

昔から一緒に居たからからか、昔はそんなに違和感はなかったけど中学に入ってからは男が僕だけのなか、残りはみんな女の子って言うのに違和感があったのだ。場違いとでも言うべきなのか、みんなの輪に僕が、自分がいても。入っていても良いのかと。零華を始め、恵衣菜や穂乃果、ことり、海未、ツバサのみんなは美人と言うより可愛いに対して、平凡な僕が居ても良いのか思ったのだ。

 

「みんな可愛いし美少女って言うのかな、そんななか僕は平凡で、特に遜色がないからさ居ても良いのかなって」

 

「いやいや、明久くんが平凡ならほとんどの人がそれ以下だよ」

 

「自分で平凡で、特に遜色がないって言わないわよ普通」

 

僕の言葉にええー、って感じにことりとツバサがツッコんできた。

 

「そ、そう言われてもなぁ」

 

ことりとツバサのツッコみに僕はどう返して良いのかわからず頬を掻いた。

 

「僕は何時からか分からないけど、みんなのことを好きになっていたんだと思う。零華はさすがに、だけど」

 

「え、どうしてお兄ちゃん?」

 

「いや、零華は妹だからね。近親相姦になっちゃうよ」

 

「私は全くの問題なし。むしろ、お兄ちゃんのお嫁さんに憧れてる」

 

「ほえっ!?」

 

零華の真顔で言う台詞にすっとんきょうな声をあげた。

するとそこにことりが。

 

「あはは、零華ちゃん小学生の作文でタイトルがお兄ちゃんのお嫁さん、って書いてあったからね」

 

「あ~、ありましたねそんなこと」

 

「私たちが慌てて書き直させたんだよね」

 

「穂乃果のあれよりは良いと思いますけどね」

 

「ちょっと!穂乃果のあれは零華ちゃんより良いでしょ!?」

 

「だって穂乃果ちゃん、あの時、『おまんじゅう、ウグイス団子、もう飽きた』って言ったじゃん」

 

僕の知らないところで女子だけのなかでなにやらあったみたいだ。まあ、穂乃果の『おまんじゅう、ウグイス団子、もう飽きた』は小学二年の頃に穂乃果が実際に発表したヤツだし。というか零華の作文のタイトル始めて聞いたんですけど?!

 

「あの~」

 

気まずそうに零華たちに言うと、零華たちは、あ、と思い出したかのように僕の方を見た。その間恵衣菜は笑いを必死に耐えていた。

 

「あ、ごめん明久くん」

 

「いや、いいんだけど・・・・・・なんか不穏な言葉が聞こえた気がする」

 

「あはは」

 

引きつり笑いを浮かべて、僕はもとの話に戻した。

 

「とまあ、前前提とか全部吹っ飛ばすと、僕はみんなのことが好きだと言うことだね」

 

「うん、見事に吹っ飛ばしたね~」

 

僕の言葉に恵衣菜は微笑みを浮かべてツッコんだ。

 

「えっと、つまり?」

 

「その、みんなが良ければなんだけど、僕で良ければみんなの彼氏になってもいいかな・・・・・・?」

 

僕は恐る恐るそういった。

正直なところ、これはさすがに世間から見たらアウトもアウト、超激ヤバアウト。六股なんて周囲に知られたら何て言われるかわからない。それにツバサはAーRISE、穂乃果、ことり、海未はμ'sとして、スクールアイドルなのだ。これが知られたら彼女たちも非難を受けることになる。

故に恐る恐る聞いたのだ。

僕が言って10秒後。

 

「お兄ちゃん」

 

「明久くん」

 

「明久」

 

「明久くん」

 

「明久くん」

 

上から零華、穂乃果、海未、ことり、ツバサが呼んだ。

 

「お兄ちゃん、私たちの答えは決まってるよ」

 

「そうだよ」

 

「うん♪」

 

「というより、私たちの好きな人は明久以外いません」

 

「ていうか明久くん以外あり得ないわね」

 

「零華、穂乃果、ことり、海未、ツバサ」

 

「だからお兄ちゃん」

 

「「「「「―――私たちもお兄ちゃん(明久くん)(明久)の彼女にしてください」」」」」

 

零華たちが声を合わせて言ってきた。

それに対する僕の答えは決まってる。

 

「僕でいいなら、喜んで」

 

「「「「「!///」」」」」

 

そう言うと、零華たちは顔を赤くしながら喜んだ表情を浮かべながら、僕に飛び込んできた。

そこに。

 

「おめでとう明久くん。よかったねみんな」

 

恵衣菜の嬉しそうな声が耳に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

音ノ木坂学院屋上

 

 

「1、2、3、4、1、2、3、4・・・・・・」

 

「はい、そこまで!」

 

「つ、疲れたぁ~」

 

「お疲れ様穂乃果」

 

「ありがとう明久くん~」

 

絵里の号令で床に崩れ落ちた穂乃果に、労いながら飲み物を渡す。

 

「はい、ことりと海未の分。で、こっちが絵里のやつ」

 

「あ、ありがとう明久くん」

 

「ありがとうございます明久」

 

「ありがとう明久」

 

僕はことりたちに飲み物を渡しながら穂乃果たちを見る。

 

「みんな結構、動きにキレが出てきたね」

 

絵里と海未の指導によるトレーニングを見た僕は、飲み物を飲みながら首から下げているタオルで汗を拭う絵里にそう言う。

 

「ええ。正直、私も驚いてるわ。最初の頃とは見違えたわね」

 

「ふふ。さすが、バレエ経験者だね」

 

「昔のことよ。亜里沙に聞いたのかしら?」

 

「まあね」

 

くすり、と微笑んで絵里は言った。

 

「絵里も変わったんだね」

 

「え?」

 

「穂乃果の、いや、μ'sに入ってから前のツンツンした感じが柔らかくなってるって穂乃果が言ってたから」

 

「穂乃果が?」

 

「うん。僕はみんながどういう経緯でμ'sに入ったのか、自分の目で視たわけじゃなくて穂乃果たちの言葉でしか聞いてないから分かんないけど、穂乃果たちの様子からなんとなく分かるからね」

 

「明久たちが私たちに関わり始めたのは文月学園の文化祭での出演以来の時からだものね」

 

「まあ、穂乃果たち3人だけの頃は少し手伝ったけどね」

 

「そうなのね」

 

思い懐かしむ様に言いながら穂乃果たちの方を見る。

するとそこに。

 

「うふふ、うちとしては明久くんが穂乃果ちゃんたちになにかした、ってことが気になるやんね」

 

「ウグッ!」

 

「あ、やっぱり明久が穂乃果と海未、ことりに何か言ったのね。どうりで3人とも何時もより凄かったわけだわ」

 

まさか絵里と希に気付かれているとは思わなかった僕は、不意を突かれ口を淀んだ。

昨日のあのあと、僕は穂乃果、ことり、海未、ツバサ、そして零華と恋人。彼氏、彼女の関係になった。まあ、周囲には言えないことだが。何せ僕は恵衣菜と付き合っているのだから。その恵衣菜も零華たちが僕の彼女になることに大歓迎してたけど。

とまあ、そんなこんなで今に至る。

僕が希と絵里に言い淀んでいると。

 

「なに話してるのよ」

 

「凛たちだけ仲間外れにゃ!?」

 

「ちょっ、り、凛ちゃん・・・・・・!」

 

真姫、凛、花陽の一年生組がやって来た。

そしてその後ろには。

 

「なあに話してるのよ明久、絵里、希」

 

「明久くん、絵里ちゃんと希ちゃんとなに話してるの?」

 

「なに話してるのか穂乃果気になるなあ~」

 

「ですね。私も気になります」

 

「あはは。私も気になるかなあ~」

 

にこと恵衣菜、穂乃果、海未、ことりが興味深そうに見てきた。

 

「は、はは、ははは。ねえ、絵里、希」

 

「なに?」

 

「???」

 

「今の僕ら、最初の頃よりかなり絆が深まってるんじゃないかな」

 

「ふふ、それもそうね♪」

 

「そうやね♪」

 

僕と絵里、希の会話に恵衣菜たちはただ怪訝そうに不思議な顔を浮かべるだけだった。

そんな恵衣菜たちに、僕は絵里と希と話していたことを言った。

 

「穂乃果たちのことを話していたんだよ」

 

「私たちの?」

 

「うん。穂乃果とことり、海未だけしかいなかった最初のμ'sの頃と今の穂乃果たちμ'sのことをね」

 

「なるほどね~。てっきり昨日のことかな~って思ったけど」

 

「ほ、穂乃果?!」

 

穂乃果の言葉に僕とことり、海未はギョッとした趣で穂乃果を見た。

すぐに穂乃果の口を塞ごうとしたが。

 

「昨日のこと?」

 

時すでに遅し、穂乃果の言葉をバッチリ聞いてきたらしい真姫が怪訝そうに眉を寄せて言った。

 

「あ・・・・・・」

 

穂乃果も自分が何を口走ったのか思い出したらしくとっさに両手で口を押さえるが。

 

「ねえ、穂乃果昨日何があったのかしら?」

 

「え、え~と・・・・・・」

 

穂乃果に詰め寄る絵里の姿を脇目に、僕は気配を消してそろりそろりと屋上から立ち去ろうとしたが。

 

「どこ行こうとしたん明久くん?」

 

希に捕まってしまい逃亡が失敗に終わった。

 

「の、希?」

 

「んん?なんや~?」

 

「い、いえ、あの、その手は一体なんでしょうか・・・・・・?」

 

「ふっふっふ。逃げようとした明久くんにはワシワシMAXの刑やな~」

 

「ヒエッ!?」

 

上ずった高い声をあげた瞬間に、希の両手が僕の胸に来て。

 

「ほれ、行くで~!ワシワシMAXや~!」

 

「ひょわああああああああああ!」

 

希のワシワシMAXが発動した。

その10分後

 

「あ~、その~、実はかくかくしかじかでして・・・・・・」

 

僕は息を整えながら目の前にいる絵里たちに昨日の事を説明した。

 

「なるほどね。だから穂乃果たちの動きが良かったのね」

 

「え、それだけ?」

 

絵里の声に僕はついそう訪ねた。

 

「?ええ」

 

「いやいや、絵里。なんでそこで終わらせるの?!さすがにアウトじゃないの!?」

 

絵里に、当事者である僕が慌ててそう言うと。

 

「ま、当人たちが良いって言ってるならいいんじゃない?私たちが口出しすることでもないでしょ」

 

にこが呆れたように言ってきた。

 

「それと当然、この事は周囲に広めないようにしなさいよ。アイドルに恋愛なんてご法度なんだから」

 

「りょ、了解」

 

にこのアイドル魂に僕は問答無用で返したのだった。

そんな僕の耳に、後ろから恵衣菜の声が少し耳に入ってきた。

 

「ふむ。これは一度嫁会議かな?議題は絵里ちゃんたちのことだね」

 

「???」

 

余りにも小さな声だったため全部は聞こえなかったが、なにか不穏な言葉を発していたのはなんとなく聞こえたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











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第ⅩⅨ問 SurpriseEvent

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

真姫)相も変わらずイチャイチャしている明久と恵衣菜の中に今度は穂乃果たちも入るなんて。しかも零華は実妹なのに・・・・・・・それで良いのかしら。これで頭が痛くなることまず間違いないわね。それより恵衣菜だけじゃなくて穂乃果たちもいいならもしかしたら私も・・・・・・・・・・な、ナンデモナイワ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

どうもこんにちは。今作の主人公にして絶賛六股している吉井明久です。・・・・・・って、六股言うなあぁぁぁぁぁっ!!

と、ツッコんでいる場合じゃなかった。急いで逃げないと!

何故なら今、後ろから。

 

 

「明久くん待てぇぇぇぇ!」

 

「逃がさないよ明久くん♪!」

 

「待ってください明久!」

 

 

幼馴染みの穂乃果、ことり、海未を筆頭に数人の音ノ木坂生が追い掛けてきているからです。

 

「ちょっ、だ、ダレカタスケテぇ~~~!!」

 

花陽の口癖をつい言ってしまうほど、今の僕は切羽詰まっていたのだった。

事の発端は今から1時間半前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間半前

 

音ノ木坂学院講堂

 

 

 

『え~、今学期も残り僅かになりました。そして、文月学園から来てくれてる吉井くんと姫宮さんがいられるのも僅かです』

 

 

朝、僕たちは講堂で理事長のかおりさんの話を聞いていた。かおりさんの言葉に所々から、え~、という声が聞こえてくる。まあ、僕や恵衣菜としても元々今学期の終わりまで、って条件だったからね。

思い出しながらかおりさんの言葉に耳を傾ける。

 

 

『そこで、私と文月学園の学園長、藤堂カヲル学園長の提案で今から吉井くん対音ノ木坂学院生徒全員+姫宮さんで試験召喚戦争を行いたいと思います♪』

 

 

「はい?」

 

いきなり予測してなかった言葉が聞こえ、つい小声で聞き返してしまった。

理解が追い付かない中、壇上にかおりさんともう一人、文月学園の学園長の藤堂カヲル。僕のお祖母ちゃんがいつの間にかいた。

あれ、僕は夢でも見ているのかな?

 

 

『あ~、ごほん。音ノ木坂の生徒は始めましてだね。文月学園学園長藤堂カヲルさね』

 

 

うん、どうやら夢じゃなかったみたいだ。

 

「(なんでお祖母ちゃんここにいるの?!)」

 

現実(リアル)だということを認識した僕は声に出さないでツッコんだ。

そんな僕の気持ちを他所に、お祖母ちゃんは話し続けた。

 

 

『まずはこの学院が存続することにうれしく思っているさね。音ノ木坂学院の試験召喚については吉井と姫宮からのレポートで知っている。レポートを見て、1技術者として生徒らの熱意には驚いたよ。たが、先程南理事長が言ったように吉井と姫宮は今学期一杯で音ノ木坂学院から文月学園に戻るさね。そこで、南理事長と相談して音ノ木坂の生徒たちの召喚獣の操作がどれくらいなのか観てみようと言うことになったさね』

 

 

お祖母ちゃんの話を聞いた僕は脳内で今の話を整理した。

僕と恵衣菜が音ノ木坂から文月に帰る→レポートを見てうれしい→どうせならこの目で音ノ木坂生徒の召喚獣の操作を見よう→僕との試験召喚戦争。

うん、なんで!?

 

 

『相手に吉井を選んだのは』

 

 

お祖母ちゃんが僕を選んだ理由を溜めて言った。

 

 

『その方が盛り上がるからさね!』

 

 

「(予想通りだよぉぉぉぉ!!?)」

 

予想していた言葉が聞こえ僕は項垂れた。

 

 

『さらに、これで吉井に勝てたら吉井を1日好きにすることが出来る権利をあげるさね!』

 

 

お祖母ちゃんの言葉に周囲から歓喜の声が上がった。

んだけど―――

 

「ちょっと待ったあああああああ!!!」

 

さすがにこれは僕もツッコミを入れざるをいられなかった。僕の声に周りのみんなはビクッとなっているけど、隣に座っている穂乃果とことり、海未、恵衣菜は苦笑いを浮かべていた。

 

 

『なんだい吉井?』

 

 

「学園長!僕が景品って何も聞いてないんですけど!?」

 

 

『そりゃ今言ったからね。ちなみに南理事長も承諾済みさね』

 

 

「What!?」

 

お祖母ちゃんの言葉に気が動転して英語で言いながら、かおりさんに瞬時に視線を向けると、かおりさんはとてもいい笑顔でサムズアップしていた。

 

「(そう言えばことりもこういうサプライズ的なもの好きだったけ?さすが親子、子は親に似るってホントなんだなぁ~)」

 

かおりさんを見ながら僕は思い出したかのように思った。

 

 

『それでは今から1時間後に吉井くん対音ノ木坂学院生徒全員+姫宮さんの試験召喚戦争を始めます。召喚範囲はこの音ノ木坂学院すべて。吉井くんの勝利条件は姫宮さんを撃破すること、生徒のみなさんと姫宮さんの勝利条件は吉井くんを撃破することです』

 

 

こうして僕は音ノ木坂学院生徒全員と恵衣菜を相手にするという超無理ゲー試験召喚戦争をすることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

 

「幾らなんでも数が多すぎない!?」

 

僕は召喚フィールドの形成されている音ノ木坂学院の校舎内を全力で駆けていた。ちなみにフィールドの科目はすべて総合科目で統一している。本来校舎内を走るのはダメなんだけどそうゆうちょな事言ってられない。何せ後ろには―――

 

「待って明久くん!」

 

「待ちなさい明久!」

 

「待つにゃ~!」

 

「なんで凛とにこまでいるの!?ことりと海未はどこ行ったの~?!」

 

μ'sの3バカこと、穂乃果と凛、にこの率いる一年、二年、三年の連合部隊がいるからだ。

そのまま走って階段付近に行くと。

 

「みんな見つけたよ!」

 

「者共であえであえ!」

 

「挟み撃ちにするわよ!」

 

クラスメイトのヒフミトリオが部隊を引き連れて待ち伏せしていた。

 

「「「ヒフミ言うな!!」」」

 

彼女たちはいつの間に読心術を得たんだろう!?

そんな驚きはさておき。

 

「何時からここは武家屋敷になったのさ!!」

 

そんなツッコミをして僕は二階から一階へと避難した。

あ、召喚獣は勿論出してるよ。けど。

 

「さすがにこの人数を一人で相手にするのは無理!」

 

なにせ前から10人。後ろから20人強と合計約30人近い生徒がいるのだ。こんな狭い場所で闘ったらあっという間に袋叩きにされかねない。

 

「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

一階から校庭に出た僕はとある不幸少年の口癖を響き渡らせたのだった。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

『ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

「明久くん?」

 

明久くんの絶叫が聞こえたような気がした私は、グラウンドの方の窓ガラスを見た。

そんなところに。

 

「今明久の声が聞こえたような気がしたのですが」

 

「ええ。気のせいかしら?」

 

海未ちゃんと絵里ちゃんが疑問符を浮かばせてやって来た。

 

「海未ちゃん、絵里ちゃん。どうしたの?」

 

「いえ、恵衣菜に状況報告をと」

 

「ああ」

 

海未ちゃんの言葉に今音ノ木坂学院生徒全員の総大将を勤めていることに思い出した。

 

「うぅ。前に出て戦いたい」

 

海未ちゃんから各地の戦況報告。と言っても明久くんの動きと戦闘状況について聞き終えた私はそう愚痴を吐いた。そこに絵里ちゃんが。

 

「ダメよ、恵衣菜。あなたが出ていったら意味ないじゃない」

 

そう言ってきた。

 

「え、なんで?」

 

「だって恵衣菜が前線に出たら指揮はともかく、誰も明久と戦えないわよ」

 

「ていうか、うちらが援護出来へんやね」

 

「あら希」

 

「希ちゃんまで・・・・・・」

 

「というか明久に対抗できるのは恵衣菜や零華など一握りの人だけじゃないですか?」

 

「あ~、う~ん」

 

海未ちゃんの言葉に私は少し考え込んだ。

 

「(明久くんに召喚獣で対抗できる人物・・・・・・文月でソロだと私と零華ちゃんに葵ちゃんに坂本君、翔子ちゃん、久保くんぐらい?タッグなら優子ちゃんと美穂ちゃん、根本君と友香ちゃん、横溝君とエレンちゃん、須川くんと綾香ちゃん・・・・・・かな?単一教科で保健体育だと愛子ちゃんと土屋君で古文なら木下君と麗子ちゃんかな?音ノ木坂だと可能性があるのは・・・・・・)」

 

私は室内にいる絵里ちゃん、希ちゃん、真姫ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃんたちを見た。

 

「(今のところだと海未ちゃんとことりちゃんのタッグと絵里ちゃんと希ちゃんのタッグかな?あ、真姫ちゃんもかな?あとは紫原(しはら)先輩や3年3組のクラス代表南川(なみかわ)先輩や2年2組のクラス代表の常和(ときざわ)さんとかかな?)」

 

私は明久くんに辛うじて対抗できるであろう人を頭でリストに載せた。まあ、まだ経験が浅いから上手くはいかないと思うけど。

そう考えていると。

 

 

『ダレカタスケテェ~~~!!』

 

 

どこからかそんな声が聞こえてきた。

 

「今のって花陽ちゃん?」

 

「え?!わ、私じゃないです」

 

真姫ちゃんと一緒にいた花陽ちゃんに視線を向けて聞くと、花陽ちゃんは首を横に降って否定した。

 

「花陽ちゃんじゃないってことは・・・・・・・・・・」

 

私は声が聞こえてきた方向に視線を向けた。

その方向はグラウンドで、上からグラウンドを見下ろす形になるが、視界の先には明久くんが何人かの音ノ木坂生と戦いながら逃げまとっている姿が見えた。

 

「て言うかよく考えてみたらこれって、完全に明久がアウェーじゃないかしら?」

 

「どうして真姫ちゃん?」

 

「だって花陽、花陽だったら一人であの人数相手に出来る?」

 

「・・・・・・ムリです」

 

「でしょ?どう考えても圧倒的に明久が不利よ」

 

「あー、たぶん明久くんが苦労するのは私との戦いだと思うよ?」

 

私は苦笑して真姫ちゃんと花陽ちゃんに言った。

 

「言っちゃあなんなんだけど、余程のことがない限り明久くんって倒せないんだよね」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。前の強化合宿の時なんて一人で30人相手して無傷だったから。まあ、それは相手が単調でFクラスだったから、ってのもあるけどね」

 

強化合宿の時の出来事を思い出して私は苦笑しながら言う。

私の言葉に、対する海未ちゃんたちは呆気にとられていた。そんなところに。

 

「伝令!前線部隊の第一分隊、7割が戦闘不能!至急応援頼む、だそうです!」

 

伝令係の女の子が慌てたように言ってきた。

 

「な、7割!?」

 

「この短時間で!?」

 

海未ちゃんと絵里ちゃんが驚いたように言う。

 

「あらら。第二分隊は第一分隊のフォローに入って!第三分隊は後方支援!戦闘不能になる前に出来る限り離脱して補充試験を受けるように通達!」

 

「了解!」

 

一応分隊は五分隊あり、第一分隊と第二分隊は前線、第三分隊は支援、第四分隊は後方。そして第五分隊は私の護衛?やらなんやらで各クラスの代表クラスがいる。ちなみに第一分隊のリーダーはヒデコちゃんで、第二分隊は紫原先輩が。第三分隊はことりちゃん、第四分隊は海未ちゃんがリーダーとなっている。まあ、私は一人でいいんだけど・・・・・・。

伝令係の女の子にすぐさま作戦立案を通達して私は次の手を考える。

 

「ことりちゃん。ことりちゃんたちは第一分隊と第二分隊のフォローをお願いね。あ、でも決してムリしないでね」

 

「うん♪まかせて恵衣菜ちゃん!」

 

ことりちゃんはそう言うと、自分の部隊を率いて教室から出ていった。

 

「海未ちゃん」

 

ことりが出ていって、私は海未ちゃんを呼んだ。

 

「はい。なんですか?」

 

「海未ちゃんの部隊から何人かことりちゃんたちのフォローに行ってあげてくれる?」

 

「いいですけど・・・・・・どうしてですか?」

 

「明久くんがもし腕輪の《事象改変(オーバーライド)》を使っていたらことりちゃんたちの方も危ないから。だから、撤退が容易に出来るようにしてほしいの」

 

「わかりました。8人ほどでいいですか?」

 

「うん」

 

そう言うと海未ちゃんは自分の部隊の方に行って、そこにいた人たちと話した。

 

「(あと少しで昼休み・・・・・・昼休みが終わって英気を補充したら全員で攻撃を仕掛けようかな?あ、でもこれは明久くんも読んでるかも・・・・・・。う~ん、(スリー)マンセルで部隊形成もいいけど、連携できるかな・・・・・・一応、連携の訓練はしたけどその時って大抵(ファイブ)マンセルや(ツー)マンセルなんだよね。まあ、3マンセルもやったけど)」

 

私は時計を見ながらこのあとの行動を考える。

 

「大丈夫恵衣菜?」

 

「難しい顔してるで」

 

「大丈夫だよ絵里ちゃん、希ちゃん。午後からの作戦を考えていただけだから」

 

「ならいいけど・・・・・・」

 

「あんま無理したらあかんよ?」

 

「そのつもりだよ」

 

私は二人に淡い笑みを少しだけ見せて言った。

そこで気がついたように二人に聞いた。

 

「ところで二人とも」

 

「なに?」

 

「ん?」

 

「穂乃果ちゃんたちが熱中するのは分かるんだけど、なんで他の生徒たちもあんなに乗り気なの?」

 

私は音ノ木坂生たちの熱気に若干引きながらも尋ねた。私から見てもみんなの行動がすごい。と言うか、熱意が凄まじい。業火に包まれているぐらいに眼が輝いているのだ。

 

「あら、恵衣菜は知らなかったの?」

 

「え?なにが?」

 

絵里ちゃんの言葉に私は目を丸くして首をかしげた。

その動作に、絵里ちゃんは私が理解してないと判断したのか答えてくれた。

 

「今明久って音ノ木坂学院でかなり話題になってるのよ」

 

「へぇ~・・・・・・はい?!」

 

「恵衣菜ちゃん、もしかして知らへんの?」

 

「な、なにが希ちゃん?」

 

「恵衣菜ちゃんが知らへんなんて・・・・・・」

 

私が戸惑っていると。

 

「なに話してるのよ」

 

「恵衣菜、なぜ動揺しているのですか?」

 

真姫ちゃんと海未ちゃんが不思議そうに聞いてきた。

 

「あ、二人とも」

 

「あのな恵衣菜ちゃん、どうやら"あれ"の存在知らんらしいよ」

 

「"あれ"?」

 

「"あれ"ってまさか、"あれ"のことですか?」

 

「ええ」

 

「???」

 

どうやら絵里ちゃんたちは知ってるみたいだけど・・・・・・。私の疑問に海未ちゃんが教えてくれた。

 

「恵衣菜、実は音ノ木坂学院には非公式の明久のファンクラブがあるんです」

 

「はい?」

 

海未ちゃんの言葉に私は安直に返してしまった。

 

「ファンクラブって・・・・・・同好会みたいなものだったよね・・・・・・。え、明久くんのファンクラブ?」

 

「はい」

 

「え、え~と、いつから・・・・・・・・・?」

 

「確か、μ'sがもう一度起動した後からですかね?」

 

「・・・・・・・・・・マジなの?」

 

「はい。マジです」

 

海未ちゃんの真顔で言ったマジです、に私は衝撃より驚きが走った。まさか明久くんのファンクラブがこの音ノ木坂学院にあるなんて思わなかったのだ。

 

「ちなみに零華ちゃんはこの事知ってるの?」

 

恐る恐る聞いてみると。

 

「零華は音ノ木坂明久ファンクラブ。通称OAFCの名誉会長です」

 

海未ちゃんがそう答えた。

 

「はいぃぃぃぃぃい!!?」

 

海未ちゃんの言葉に私はすっとんきょうな悲鳴を上げてしまった。

ちなみにその時、グラウンドで対戦していた明久くんがくしゃみをしたとかなんとか。

 

「ちなみにだけど、音ノ木坂学院の生徒の約9割がこのOAFCに参加してるわよ」

 

「エリチも入ってるもんな」

 

「ちょっ、希!」

 

絵里ちゃんと希ちゃんの会話を聞きながら、真姫ちゃんと海未ちゃんに視線を向ける。

 

「わ、私は入って・・・・・・・・・・ないわよ」

 

真姫ちゃんは入ってのところを区切っていっていた。

 

「(真姫ちゃん絶対入ってるよ)」

 

顔が少し赤い真姫ちゃんを見ながら私はそう呟いた。

 

「私ですか?私はもちろん入ってますよ。あ、穂乃果とことりももちろん入ってますね」

 

海未ちゃんの方は予想していた通りだった。

昔の海未ちゃんだったら顔を真っ赤にして破廉恥です、って言っていたと思う。まあ、今も大抵なことは初心で赤面するんだけどね。

 

「い、いつの間に・・・・・私全然知らなかった」

 

そのまま私はガクッと床に膝を付いたのだった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「ちょっ!わっ!ええーっ!」

 

どうも絶賛ピンチの明久です。

なんてノリで言ってる場合じゃない!!

 

「てりゃあー!」

 

「せいやぁー!」

 

「やああーっ!」

 

「ちょっ!多すぎでしょぉぉぉぉぉお!!!」

 

迫り来る短刀と槍、槍斧(ハルバール)をステップで避けたり、双剣で防いだり、攻撃の軌道をずらしたりしていた。そしてその後ろからは魔法攻撃や銃弾、弓などが飛んできた。

僕はそれを召喚獣を巧みに操作して、魔法攻撃をギリギリのところで避け、銃弾と弓を切り裂く。

 

「せあっ!」

 

右手の片手剣を思いっきり目の前に投げ、銃を取り出して横からの刀を銃身で防いで左の片手剣で薙ぎ払って後ろの召喚獣もろとも吹き飛ばす。そしてそこに銃弾を叩き込む。その直後。

 

「もらったわ!」

 

「もらったよ吉井君!」

 

背後から短剣と細剣を構えた召喚獣が僕の召喚獣を貫いて来た。

が。

 

起動(アクティベート)―――事象改変(オーバーライド)!」

 

腕輪を発動させて自身の周囲に障壁を張って防ぐ。

 

「えっ!」

 

「うそ!」

 

動揺する彼女たちに、僕は一瞬で接近して点数をゼロにする。

 

「ごめんね!」

 

そう一言言うと、意識を極限にまで集中させ、召喚獣の動作をシステムが許容する限界にまで上げ、周囲にいる召喚獣を一瞬で消し飛ばして点数をゼロに。戦闘不能にした。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

 

攻撃範囲(レンジ)内に敵がいないのを確認して僕は、召喚獣の動きを元に戻して《事象改変》をOFFにする。さすがに極限にまで意識を集中して一瞬で十数人の召喚獣を消し飛ばすのはきつかった。

 

「こ、これが吉井君の・・・・・・」

 

「文月学園二学年序列一位の実力・・・・・・」

 

「あり得ないでしょ・・・・・・!」

 

「今なにが起きたのか分からなかった・・・・・・!」

 

「人間の反応思考速度を超えてる・・・・・・!」

 

召喚獣が戦闘不能になった子や、攻撃範囲外にいる子たちが唖然と、驚愕の表情で言った。

脳を過剰行使して息を整えていると。

 

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪

 

 

昼休みを告げる鐘が鳴り響いた。

これで午前中の戦闘は終了だ。残りは昼休み終了してからの午後から。

つまり午後からの戦いが本当の戦いなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 











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第ⅩⅩ問 明久VS恵衣菜+音ノ木坂学院生(ファイナルバトル)

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

明久)お祖母ちゃんとかおりさんの提案で始まった、僕VS恵衣菜+音ノ木坂学院生全員の試験召喚戦争。けどいくつか言いたいことがあるんだけど、一番言いたいのは、圧倒的に僕が不利でしょこれ!?一人で約120人程を相手にしないといけないの!?しかも恵衣菜もいるのにどうやって勝つって言うのさ!?不安しか残らないこの戦い、勝利の女神はどちらに微笑むのか。午後の戦闘が今、始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

昼休み

 

 

「お疲れさま明久くん」

 

「恵衣菜」

 

音ノ木坂学院に来てからの昼休みほぼ毎日いる木の下で休んでいると、僕のお弁当を持った恵衣菜がやって来た。

 

「はい、お弁当」

 

「あ、ありがとう」

 

「ううん。それより大変だったね」

 

隣に自然に腰かけて恵衣菜が言う。

 

「さすがにあれはないよ」

 

やつれた表情で言っていると。

 

「ハハハ。良いじゃないか。明久としても面白いだろ?」

 

「お祖母ちゃん!」

 

「カヲルお祖母ちゃん!」

 

お祖母ちゃんが愉快そうに笑いながらやって来た。

 

「楽しそうでなによりさね。やはりここに来させて正解だったようだね」

 

「まあね。それより僕が景品ってどういうことなのさお祖母ちゃん」

 

ジト目で召喚戦争の発案者にして首謀者のお祖母ちゃんに聞く。

 

「その方が盛り上がるだろ?」

 

「そういう問題じゃないんだけどなぁ~・・・・・・」

 

補充試験のない召喚戦争。RPGで言うなら、回復手段なしの連戦だ。あるのは己のスキルと装備している武器そして経験だ。対する相手は複数のパーティーを組んでいて、回復ありに仲間の援護ありなどがある一言で言うなら単独(ソロ)集団(パーティー)の対戦だ。いや、規模で言うなら対戦ではなく大戦かな?だって相手、音ノ木坂学院全生徒+恵衣菜だし。

 

「そんじゃまあ午後からの対戦も頑張りなよ。アタシたちは理事長室で観戦するからね」

 

そう言うとお祖母ちゃんは校舎の方に歩き去っていった。

 

「まったく・・・・・・お祖母ちゃんは相変わらずだね」

 

立ち去るお祖母ちゃんの後ろ姿を見ながら苦笑いを浮かべながら呟いた。

 

「あはは。でも、また明久くんと戦えるなんて嬉しいよ」

 

「圧倒的に僕が不利だけどね」

 

「そこは気にしちゃダメだよ」

 

いくら全力全開。本気をだせるからと言っても数の差では圧倒的に僕が不利だ。

そう思っているところに。

 

「いや~、今日もパンが旨い!」

 

「穂乃果ちゃん・・・・・・」

 

「太りますよ?それに歩きながらなんて行儀悪いです」

 

「ええ~っ。だってお腹すいてんだもん」

 

穂乃果たちがお弁当を持ってこっちに来た。

 

「いつも穂乃果ってパン食べてるよね。たまにはご飯食べたら?」

 

「ええ~っ。だってうち和菓子屋だからいっつも和食なんだよ~?」

 

「だからと言っていつもパンでは栄養バランスが偏ります。私やことりみたいにもう少しバランスの良い食事をですね・・・・・・」

 

「あはは。そこまでにしとこ海未。昼休みの時間がなくなるよ?」

 

「それもそうですね」

 

僕の言葉に海未はいつものようにそう言い、恵衣菜とは反対側の僕の横に腰掛けた。

そこに穂乃果が。

 

「ああ~!海未ちゃんズルい!」

 

「ズルくありません。早い者勝ちです」

 

「嘘だ~!ことりちゃんも海未ちゃんになんか言ってよ~」

 

「え、え~・・・・・・」

 

反応に困りながら僕の真正面に座ることりは穂乃果に戸惑いながら僕の顔を見てきた。

 

「いいから早く座ったら穂乃果?また明日があるんだからさ」

 

「う~。わかった」

 

渋々と言った感じで穂乃果はことりと恵衣菜の間に入り込んで座ってパンを食べる。

 

「ところで今回の指揮ってやっぱり恵衣菜?」

 

ある程度食べたところで恵衣菜に訊ねた。

 

「うん。なんでわかったの?」

 

「いや、なんとなくさっきの戦闘のやり方が雄二の作戦構造に似ていたからのと、僕の行動を把握して先読みするような行動をしていたから」

 

「なるほどね~」

 

僕の言葉に笑顔でうなずく恵衣菜に海未が。

 

「さすが恵衣菜ですね」

 

「そう言えば絵里たちのクラスと戦ったときの司令塔海未だったんだっけ?」

 

「はい。穂乃果に任せたらすぐ全滅してしまいますから」

 

「うう、海未ちゃんひどい」

 

「事実ですから」

 

「あはは。でも恵衣菜ちゃんのやり方と海未ちゃんのやり方ってやっぱり違うんだね」

 

「はい。私も今回の恵衣菜の作戦の立案や部隊作成、点数把握や状況判断などで自分自身がまだまだ足りないと自覚できました」

 

「う~ん、海未ちゃんの作戦もいいんだけどね」

 

「いえ、前回は絵里たちが試召戦争に不慣れであったからこそ勝てたものです。次やったら恐らく私たちが負けると思います」

 

「まあ、それは経験で底上げするしかないかな」

 

「練習するなら戦略ゲームをしたら良いと思うよ?」

 

「戦略ゲーム・・・・・・ですか?」

 

「うん」

 

恵衣菜が言ったように、確かに練習するなら戦略ゲームなどが便利だと思う。でも、それだけじゃまだ足りない。

そう声には出さずに言い。

 

「戦略ゲームも良いと思うけど、つい調子にのって戦略ゲームと同じようにしないようにね」

 

恵衣菜に半眼で見ながら言った。

 

「わ、分かってるよ~」

 

そう恵衣菜の声に僕らはいつも通りの昼食を済ませたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

 

「午前中に30人くらい倒したけど・・・・・・・あと90人・・・・・・しかも恵衣菜もいるんだよね」

 

始まった試験召喚戦争午後の部で、僕はグラウンドで四方を音ノ木坂生に囲まれていた。

 

「まだあまりのダメージは喰らってないけど・・・・・・」

 

迫ってきた召喚獣の攻撃を受け流してかわし、次々と来る武器の嵐を捌く。

 

「いくら事象改変(オーバーライド)で周囲に幾多の障壁を張ってあるとはいえ疲れるこれは・・・・・・」

 

双剣から双銃に切り替えて、周囲に弾幕をばらまく。連続して撃ち、弾丸の補充を自動補充(オートリロード)で済ませ、周囲の敵を一掃する。

 

「ん?」

 

ある程度倒したその時。

僕の視界の右端に映る校舎の屋上に人影が見えた。

 

「あれは・・・・・・」

 

そこにいたのは僕を見て手を振る恵衣菜の姿だった。

そしてなにか言っていた。

 

「(ここで決着を着けよう明久くん。待ってるね・・・・・・・か)」

 

読唇術で理解した僕は、内容を頭の中で繋げる。

 

「(いいよ恵衣菜・・・・・・)」

 

僕は静かにそう告げ。

 

「ここから先は全力全快!手加減なしで行くよ!」

 

表情を変えてそう言った。

そして。

 

「―――属性付与(エンチャント)発動!」

 

二つ目の腕輪の力を発動した。

そして早速。

 

「プラズマランサージェノサイドシフト!」

 

周囲に黄色い球体(スフィア)を数十個展開させて。

 

発射(ファイア)!」

 

一斉に周囲に解き放つ。

 

「逃げろ!」

 

「防ぐのよ!」

 

「みんな避けて!」

 

「退避!退避!」

 

「散会して逃げなさい!」

 

周囲の音ノ木坂生から声が上がる。

周囲からは戸惑いの声が上がり、逃げる召喚獣がいるがまだ操作をして半年も立っていない彼女たちに複数いる召喚獣の中で上手く立ち回りながら回避する術はない。

 

「逃がさないよ!」

 

プラズマランサージェノサイドシフトで10人ほどを戦闘不能にし、近くにいて戦闘不能にならなかった召喚獣は瀕死の状態。遠くにいた召喚獣は点数を僅かに減らしていた。

 

「まだまだ行くよ!―――氷炎地獄(インフェルノ)!―――凍焉氷世界(ニブルヘイム)!―――炎末焼世界(ムスペルスヘイム)!」

 

周囲に三つの魔法を築き上げ、同時に発動する。中央には螺旋を築くような炎と氷の竜巻が。その竜巻の左側には永久凍土、絶対零度を彷彿させる極寒の世界が。そして竜巻の右側には灼熱業火、地獄の業火を彷彿させる灼熱の世界が。

事象を改変させて、その場に無いはずのものを、有るもののとして改変する、事象の上書き。魔法を使えないはずの僕の召喚獣が魔法を発動している理由は単純にその事象を、さらに事象の上書きをしているからにすぎない。

 

「徹底!徹底よ!」

 

「校舎に避難!」

 

「急いで急いで!」

 

召喚獣を操作する音ノ木坂生たちは慌てて次々とそう言う。

だが、僕が放った3種の魔法の範囲は広く、逃げるも召喚獣はどんどん点数を減らしていく。僕の召喚獣は自分の放った魔法を無効化(レジスト)できるため点数は減らない。まあ、そのぶん腕輪によって点数は減っていくが。

 

「(まだ点数は一万点程ある。これならいけるかな)」

 

校舎に向かって、吹き荒れる極寒の吹雪と灼熱の旋風の中歩いていき、攻撃してくる召喚獣を撃破する。

 

「支援部隊!吉井くんを進ませないで!」

 

「連携して少しでも点数を減らすのよ!」

 

魔法の範囲外の相手からそう指示している声が聞こえた。

それと同時に。

 

「放てぇ!」

 

「撃てぇ!」

 

「ファイアァ!」

 

遠距離からの攻撃が雨のように降り注いできた。

上からは矢の、目の前からは魔法攻撃が。

 

「うわっ!」

 

あまりの多さに、僕は防ぐのではなく、かわすことにした。そんな中、妙に僕の避けた場所に数本の矢が突き刺さる。

 

「(遠距離攻撃?彼女たちからじゃない、一体どこから・・・・・・・・)」

 

辺りを見渡して攻撃者を探していると、校舎の三階から数本の矢が放たれたのが目に入った。

 

「!」

 

とっさに回避の指示を召喚獣に出して矢を避ける。

 

「(この僕の動きを予知しているような射撃・・・・・・こんなことが出来る音ノ木坂生は限られてる。恵衣菜だったらもう少し速いけど・・・・・・。つまり、これを射った生徒。いや、幼馴染みは・・・・・・・・・・!)」

 

考えているところに一本の矢が召喚獣に向けて放たれた。

僕はその矢に向かって召喚獣が右手に装備している銃で迎撃して撃ち落とした。

撃ち落としたところで、発射位置を見ると、そこに居たのは―――。

 

「やっぱりこの矢は君だよね。―――海未」

 

青く長い髪を風に吹かせながら召喚獣の構える矢の照準を僕に向けているのは幼馴染みの一人にして、僕の彼女の海未だった。

 

「(さすが海未。僕の行動はお見通しってことかな)」

 

あからさまに、僕の動きを読んでいるような射撃が出来るのは恵衣菜の他には海未だけだ。しかしあんな遠距離からの狙撃は恵衣菜には無理だ。けど、弓道部に所属している海未ならばそれが可能だ。

僕は海未の放つ、彼女たちへの掩護射撃を警戒しながら、目の前の召喚獣に自身の召喚獣へ指示を出して攻撃した。

 

~明久side~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~海未side~

 

 

「さすがですね明久」

 

校舎の三階から、校舎に入ろうとする明久を狙撃しましたが、まさかすべて避けるか撃ち落とされるなんて思いませんでした。

 

「どうやら明久も私に気付いたみたいですね」

 

召喚獣に次発の用意をしながらグラウンドで大魔法を放ち、残りの生徒たちを相手している明久に視線を向けていいます。

 

「点数や操作技術では明久にはまだまだ及びませんけど、諦めませんよ。勝つのは私たちです!」

 

そう言って交戦している集団の中に、明久に向かって召喚獣が構えていた矢を放ちました。

そんな矢の行く末を見ながら私は。

 

「(やっぱり私は明久の事が、だ、だだだだ、大好き・・・・・・なんですね。ちょっと破廉恥な気もしますけど)」

 

明久の憤死奮闘の交戦に、私は思わずうっとりと見惚れていたのでした。幸いだったのはその場にいたのは私だけのため誰にもこの姿を視られなかったことですね。

私はそう思いながら明久に向けて、次の矢を放ったのでした。

 

~海未side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「くっ!」

 

海未の的確な狙撃に僕は見事に翻弄されていた。

 

「接近戦に持ち込めない・・・・・・!」

 

近寄ろうとすれば魔法の雨に遇い、海未の狙撃でアウト。しかし遠距離からとなると決定打に欠ける。遠距離からの攻撃は便利と言えば便利だが、障壁などの障害物を貫く、貫通力が無い。魔法もそうだが、遠距離攻撃は当たらなければ意味がない。確かに近接という危険行為より、遠距離からの安全な場所からの攻撃はとてもいい。しかし、近接攻撃で一回に与えるダメージが100だとするならば、遠距離攻撃はその3分の2以下だろう。もちろん、遠距離攻撃でも弱点や急所(クリティカルポイント)にさ当たれば近接攻撃と同じダメージが与えられる。場合によっては近接攻撃のダメージよりも大きく上回ることが出来る。もちろん、それにも弱点はある。銃ならば弾数、弓なら矢数、魔法ならマナと、古今東西、どんな遠距離武器にも装弾数など限られた動作がある。それが無限ではないということだ。どんなに撃とうが、弾数が無くなったり、魔法を使うためのマナがなくなったら意味がない。その点、近接武器は武器が手から離れるか、破壊されるかまでは無限に使える。近接武器と遠距離武器。どちらにも強みが有り、弱点が有る。普通ならばもう終わりなのだろうけど。

 

「ふふ。面白くなってきた・・・・・・!」

 

僕は違う。

僕の武器は双剣双銃(カドラ)。近接武器と遠距離武器二つの、合計四つの武器を所持している。さらに、腕輪の属性付与(エンチャント)事象改変(オーバーライド)の能力。そして、今のこの、体験したこと無い戦いに僕は楽しくなっていた。相手は音ノ木坂生全員と恵衣菜。味方は0。僕一人だけ。このどうしようもない窮地なのに僕は今、とても楽しくて仕方がなかった。

 

「今よ!」

 

「放てぇ!」

 

立ち止まり、息を調えているところに遠距離攻撃の雨が降り注いでくる。そして校舎にいる海未からの狙撃。

これが当たったら恐らく終わりだろう。けど。

 

「ハアアッ!」

 

まずは上からの矢を撃ち落として、魔法攻撃を無効化して、海未の狙撃矢を避ける。

そして。

 

「往け!」

 

遠距離攻撃の雨が止んだのと同時に、走り出して接近する。

 

「なに!?」

 

「吉井くんを進ませないで!」

 

そう言って放たれる矢。

なにもそのすべてを迎撃する必要はない。必要最低限。自分に向かってくる矢だけを落とせばいい。

武器を左手に銃、右手に剣を装備して右手の剣で迫り来る矢を切り払う。

 

「うそっ!」

 

「くっ!誰か援軍を呼んできて!」

 

「了解!」

 

慌てふためく声が聞こえる。

 

「(これで総数の半分は減らしたよね)」

 

接近して、支援部隊を壊滅させて僕は数を数える。

そこへ。

 

「行かせないよ明久くん!」

 

「恵衣菜ちゃんの元には行かせないにゃ!」

 

「あんたの進軍もここまでよ!」

 

「穂乃果、凛、にこ、か~」

 

穂乃果たちが立ちふさがった。

点数はそれぞれ。

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年一組 高坂 穂乃果 1947点

 

 一年一組 星空 凛   1905点

 

 三年三組 矢澤 にこ  2103点

 

 

 

 

と自身の召喚獣の頭上に表示された。

 

「(三人ともCかDクラスレベルの点数・・・・・・)」

 

三人の点数を見て僕は思考する。

と言うか穂乃果が2000点近い点数をとっていることに僕は嬉しくなった。なにせいくら海未や僕が言ってもやらなかった穂乃果がここまで成長するなんて・・・・・・。そのやる気を常に出してくれたら嬉しいのだが。

 

「いいよ、三人とも。かかっておいで!」

 

「いくよ!」

 

「いくにゃ~!」

 

「いくわよ!」

 

まず最初に来たのは武装が短剣で、素早さの高い凛だった。

 

「せいやぁ!」

 

「ふっ!」

 

逆手に持った短剣を右手の片手剣で受け止める。

そこに。

 

「今にゃ!」

 

「やああっ!」

 

凛の後ろから穂乃果が上段に振りかぶった片手剣を振り下ろしてきた。

 

「くっ!」

 

穂乃果の片手剣を銃の銃身で受け止める。

 

「くらいなさい!」

 

そこに中距離武器の槍を構えたにこが突っ込んでくる。

普通ならばここで終わりだけど。

 

「まだ甘いよ!」

 

「にゃ!?」

 

「うそっ!?」

 

「えっ!?」

 

凛の短剣を滑らせて召喚獣の身体の軸を捩って、穂乃果の片手剣と同士討ちにさせる。そして迫ってくる槍を右手の片手剣で跳ね上げて、左手の銃でにこを射つ。

 

「にこぉっ!?」

 

「にこちゃん!」

 

すんでのところで避けたにこは変な声を出して転んだ。

 

「にゃにゃにゃー!」

 

素早く、トリッキーな動きで翻弄してくる凛の召喚獣に先読みして銃弾を放つ。

 

「にゃぁ!?」

 

「凛ちゃん!このぉ!」

 

「何時でも冷静でいないとダメだよ穂乃果!」

 

穂乃果の片手剣を受け止めて、召喚獣同士の唾競り合いのなか、僕は穂乃果に少しキツくそう言う。

 

「冷静さを欠くと周りに目が往かなくなってすぐやられるよ!」

 

「くっ!」

 

点数差は5倍近くあるのにも関わらず、穂乃果の召喚獣は巧みに片手剣を操り僕の召喚獣の片手剣を受け流し、スクールアイドルのリズム感でか、攻撃もステップで避けていく。

 

「まだにこはやられてないわよ!」

 

そこに背後からにこが槍の突き技を放ってきた。

 

「遅いよ!」

 

左手の銃を連続で三回撃つ技、三点バーストで槍の切っ先をずらしてにこの召喚獣の胴体に左回し蹴りで凛の召喚獣のところに吹き飛ばす。

追撃をしようとしたそこに。

 

「っ!」

 

僕の召喚獣の目の前で爆発が起こった。

 

「行かせないよ吉井くん」

 

どうやら攻撃してきたのは彼女らしい。確か二年二組の生徒だったはずだ。そして理系の点数が高く、腕輪持ちだ。名前は確か・・・・・・。

 

「君は確か二年二組の小金井 紗羅(こがねいさら)、さんだよね」

 

「うん」

 

小金井さんはそう言うと、小金井さんの召喚獣が自身の装備している細剣を構えた。そして、その手首には腕輪が装備されていた。

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年二組 小金井 紗羅 4236点

 

 

 

 

召喚獣の頭上に、小金井さんの点数が表示される。

そして僕の召喚獣の頭上にも。

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年一組 吉井 明久 10091点

 

 

 

 

「さすが吉井くん。一万点なんて私じゃ到底できないよ」

 

「そんなことないよ。僕だって最初の頃はもっと低かったからね」

 

昔から頭は良かったが、文月学園に入ってからは西村先生によく勉強を教えてもらった。西村先生の教えは全教科、どれも分かりやすく様々な参考書から過去問などから出したり、間違えたところは、何故間違えたのか、その要点を理解できるよう教えてくれたりと、僕の大事な恩師なのだ。正直、西村先生のお陰で今の僕が居ると言っても過言ではない。

 

「そうなんだ~。私ももっと頑張らないと」

 

「・・・・・・それじゃ、いくよ小金井さん」

 

「うん。いいよ吉井くん」

 

武装を双剣の二刀流にして小金井さんの召喚獣と相対する。

動いたのはほぼ同時だった。

 

「「っ!」」

 

中央でぶつかり合い、火花が飛び散る。

小金井さんの召喚獣が繰り出す素早い刺突を双剣で受け流したり、かわしたりして避ける。対する僕の攻撃は、小金井さんの召喚獣の細剣に軌道をずらされていた。

細い細剣で2倍の点数差がある攻撃をこうも見事に、剣の攻撃の軸を起点として軌道をずらされたことは、恵衣菜以外になかったから驚いた。

何合か打ち合いをし、小金井さんの召喚獣がバックステップで距離を保つと。

 

「燃え盛れ!―――焰華の爆炎(エクスプロージョン)!」

 

小金井さんがそう言うと、僕の召喚獣の足元に真っ赤な魔方陣が浮かび上がった。

 

「まずっ!」

 

とっさにその場を離れるが、一瞬早くそこから爆発が起き、僕の召喚獣を襲った。

周囲に小金井さんの腕輪の能力によって起きた煙が舞う。しばらくして、煙が晴れると。

 

「そ、そんな・・・・・・っ!」

 

そこには服が若干焦げているが、ほぼ無傷の僕の召喚獣の姿があった。

 

「今の攻撃はビックリしたよ。さあ、小金井さん、・・・・・・続けようか」

 

召喚獣が二つの長剣を構えながら、僕は驚いている小金井さんにそういった。

さあ、始めよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 











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第ⅩⅩⅠ問 明久VS恵衣菜+音ノ木坂学院生(ファイナルバトル) 第二幕(セカンド)

 

~明久side~

 

 

「行くよ、小金井さん」

 

未だに爆炎風の余波が吹き荒れる中、僕は静かに目の前に相対する小金井さんに告げた。

ここから先は手加減なしの全力全開の戦いだ!

そう声に出さずに言うと同時に、僕は召喚獣を操作して小金井さんの召喚獣の背後に召喚獣を移動させた。

 

「なっ!」

 

ギリギリのところで避けた小金井さんの召喚獣は、すぐさま僕の召喚獣から距離を取った。

 

「速い・・・・・・」

 

「続けていくよ!」

 

高速の速度で小金井さんの召喚獣を翻弄しつつ、点数を削る。

小金井さんも腕輪や召喚獣の持つ細剣を使って防ごうとするが。

 

「その腕輪の弱点は、一点にしか設置できないこと!そして、発動までに若干の時間差(タイムラグ)があるということさ!」

 

「ううっ・・・・・・!」

 

隙あらば腕輪を使って攻撃してくる小金井さんの召喚獣の攻撃を、発動する前にその場から大きく避け、高速で移動する。

 

「しまっ・・・・・・!」

 

「これで終りだよ!」

 

小金井さんの召喚獣が持つ細剣が真っ二つに折れ、動揺して一瞬動きが止まった瞬間、僕の召喚獣は小金井さんの召喚獣の点数をゼロにして戦闘不能にした。

 

「ナイスファイトだったよ小金井さん」

 

「あ~あ、負けちゃった。さすが吉井君だね」

 

「そんなことないよ。小金井さんも正直、あそこまで強いとは思わなかったよ」

 

小金井さんの召喚獣は武装が細剣という速度(スピード)型にして、設置型の腕輪を装備しており、戦闘スタイルは細剣の速度で翻弄しながら設置型の魔法(トラップ)を仕掛ける、速度(スピード)(タイプ)だ。さらに腕輪の弱点も、僕や恵衣菜ら、文月学園の序列上位者ならかわせる程のものだ。穂乃果やにこたちならまずかわせないだろう。しかも、戦闘中に相手を誘導しながら罠を発動してきたりして所々ヒヤッとした面もあった。

そう思ったその瞬間。

 

「っ!?」

 

背筋が凍るような寒気を感じた。そしてそれと同時に視界の端がキラッと何かが光った。嫌な予感が過り、召喚獣を慌てて下げると。

 

「うわっ!」

 

今まで僕の召喚獣がいた場所に突如として何かに抉られたかのように、小さな。召喚獣と同じ大きさのクレーターが出来ていた。そしてそのクレーターの中心部には一本の矢が突き刺さっていた。

 

「今の海未の攻撃!?」

 

恐らく海未が狙撃して出来たクレーターに、僕は冷や汗が止まらない。

 

「とにかく校舎に入らないと」

 

小金井さんが僕の相手をしていた隙に校舎に入ったのか、残りの音ノ木坂生とは校舎まで鉢合わせをすることはなかった。鉢合わせをすることはなかったが、逆に、海未の召喚獣の弓による狙撃の矢の雨に召喚獣を慌てて操作したりして大変だった。もしこれが弓ではなく銃。AMR(アンチマテリアル・ライフル)などの狙撃銃だったらと思うと恐ろしくなった。

そう考えながら校舎に入った。

 

「(僕の勝利条件は恵衣菜を撃破すること・・・・・・。ならば、最短ルートで恵衣菜の場所に行って、最少の時間で倒すしかない)」

 

周囲に誰もいないことを確認しつつ、これからの行動を確認する。

今の召喚獣の武装は左手に銃、右手に片手剣と銃剣(ガン・ソード)だ。一応事象改変(オーバーライド)はOFFにしてる。なにせONにしてると点数が減っていくからだ。

警戒しながら階段に近づき、階段を上がる。

2階についたその瞬間。

 

「!」

 

「やあああっ!」

 

1体の召喚獣がやって来た。

ギリギリのところで召喚獣の装備している細剣を受け止める。受け止めてその召喚獣の姿を見る。その召喚獣は水色の騎士服に細剣を持った召喚獣だった。さらにその召喚獣の顔は。

 

「絵里!?」

 

まさかの絵里だった。

驚いている僕に、絵里の召喚獣はバックステップで下がり階段の踊り場の、3階に通じる階段の方に下がった。

 

「ようやく来たわね明久」

 

「不意討ちって絵里らしくないんじゃない?」

 

「え?そうなの?」

 

「・・・・・・ちなみに誰から不意討ちした方が良いって聞いたの」

 

「希からよ」

 

「ああ・・・・・・そうなんだ・・・・・・」

 

絵里の言葉に、僕の脳裏に希がさも楽しそうに絵里に言っている姿が思い浮かんだ。

 

「一応言っとくけど不意討ちってかなり卑怯だよ?」

 

「え!?そうなの!?希からは不意討ちは普通だって言っていたけど」

 

「いや、まあ、確かに戦争とかだった不意討ちは普通なんだけど、ちゃっと卑怯かな~・・・・・・」

 

なんとも言えない、微妙に否定できない言葉に僕は口を濁らせた。まあ、確かに『卑怯、汚いは敗者の戯言』って言葉があるけど。なんか違うような・・・・・・。というか絵里に似合わない気がする。

そう感じながら2階の踊り場に立つ。

 

「さあ、始めようか絵里」

 

「そうね。一度明久とは本気で戦ってみたかったのよ」

 

「ふふ。それは光栄だよ絵里」

 

軽く会話をし、召喚獣の武装を二刀流にする。

僕と絵里の召喚獣の頭上にはそれぞれの点数が表示された。

 

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年一組 吉井 明久 9741点

 

 

 VS

 

 

 三年一組 綾瀬 絵里 5304点

 

 

 

 

 

「(凄い点数だ。さすが絵里・・・・・・。文月だったらAクラスの主席だったかもしれないね)」

 

表示された絵里の点数を見てそう思う。

 

「いくわよ!」

 

絵里がそう言うと、絵里の召喚獣が姿勢を低くして細剣で攻撃してきた。

 

「っ!」

 

放たれた単発の突きを、絵里の召喚獣の細剣の軌道を予測して剣の腹で受け止める。

 

「(なっ!重い!?)」

 

絵里の召喚獣の細剣を受け止めた召喚獣を見て、僕はふとそう感じた。音ノ木坂(ここ)ではフィードバックは無いが、ずっとフィードバック有りで戦ってきたため、なんとなく召喚獣の動作で何をすべきなのか、どこがやられたのかなど把握出来るようになっていた。そしてそれは、相手の武器の重さも感じられるようになっていた。

受け止めた方ではない、もう片方の剣でこっちも突きを放つ。

 

「甘いわ!」

 

しかしその攻撃を絵里の召喚獣は突いた細剣を軸として、右回りに回って僕の召喚獣の背後に回ってかわした。しかも、回りながら僕の召喚獣の足を引っ掻けて足技を仕掛けて転ばしてきた。

 

「くっ!」

 

地面に背中が着地する前に、突きを放った右手で床に手を置いて後ろに飛び退った。

 

「あら。今のを避けるの・・・・・・。驚いたわ」

 

「危なかった・・・・・・。まさか足技を仕掛けて来るなんて思わなかったよ」

 

「ふふん。バレエでの動きを召喚獣にもやってみたの。まあ、さすがに練習は少し必要だったけどね」

 

「さ、さすがだね」

 

少しの練習であんな動作が出来ることに僕は目を見開いて驚いた。

 

「さあ!続けていくわよ!」

 

そう言うや絵里の召喚獣は高速の突きを連続で繰り出してきた。

さすがに恵衣菜ほどの速さは無いが、それでも充分速い。絵里の召喚獣の細剣をパリィしたりして防ぎ、カウンターアタックを仕掛けるが絵里の召喚獣はステップで左右に避けたり、細剣でガードしたりして防いだ。互いの武器がぶつかる金属音が高く響き渡る踊り場。もちろん周囲にも意識を傾けてはいるが、絵里の召喚獣の操作はとても素人には見えなかった。

 

「やあっ!」

 

「せあっ!」

 

さすがに腕輪を発動する間もない攻撃に、僕と絵里は純粋な物理攻撃で勝負をしていた。

その間、僕は少し疑問が生じた。

 

「(そう言えばなんで絵里が一人でここにいるんだろ・・・・・・。希や真姫たちと一緒じゃないのが気になるなぁ・・・・・・)」

 

そんな疑問が浮かびながら絵里の召喚獣を相手する。

 

「(それにさっきからの動き、なにかを待っているような・・・・・・)」

 

そんな言葉が過り僕は嫌な予感がした。

 

 

「絵里、何を待っているの?」

 

「な、ナンノコトカシラ。ナニモマッテナイワヨ」

 

「なんで片言なのさ」

 

嘘をつけない絵里の性格に僕は苦笑いをつい浮かべた。

 

「あー、うん。なんとなくわかったよ」

 

絵里の挙動に僕の嫌な予感は的中した。なぜなら―――。

 

「明久覚悟!」

 

「凛ちゃん今だよ!」

 

「まかせるにゃ!」

 

僕の背後から2発の弾丸と翠の魔力弾と、黄色いローブを羽織り短剣を逆手に持った召喚獣が迫ってきた。

 

「真姫に花陽に凜!?」

 

まさかの1年生組に虚を突かれた僕はほんの一瞬、召喚獣の動きを止めてしまい。

 

「チャンスね!」

 

「しまっ・・・・・・!」

 

絵里の召喚獣の細剣による連続突きを数発食らってしまった。

 

「くっ!」

 

細剣による突きをバックステップでかわし、後ろから来る銃弾を屈んで避け、魔法弾をそのまま横にローリングでかわして、起き上がりながら凜の召喚獣の短剣を召喚獣の左手に握った剣で受け止めた。

 

「まだにゃ!絵里ちゃん!かよちん!今にゃ!」

 

「ええ!」

 

「う、うん!」

 

不安定な姿勢で凜の召喚獣の短剣を受け止めているため動きにくい。後ろからは絵里の召喚獣が細剣を腰だめに構えて突っ込んできていて、花陽の召喚獣は魔導書を開いてなにか詠唱している。そしてその後ろでは真姫の召喚獣が銃の照準をこっちに向け、何時でも撃てる体勢を取っていた。

 

「(マズイ。万事休すだよ・・・・・・)」

 

左右に避けたら真姫の召喚獣の銃で蜂の巣に。後ろに避けたら絵里の召喚獣の細剣に突き刺さる。その場にいても同じで。恐らく花陽の設置型魔法で攻撃を受ける。正直、この場は絶体絶命とでも言うべき所だった。右膝を地面につけて、左の剣で凜の召喚獣の短剣を受け止めているため出きる動作は限られる。

 

「(くっ・・・・・・!一か八か・・・・・・やってみるしかないね)」

 

絵里の召喚獣のタイミングを見極めつつ、一か八かの作戦を実行する。

 

「これで終りよ!」

 

背後から迫り来る絵里の召喚獣の細剣を背中に突き刺さるかどうかのタイミングで、凜の召喚獣の短剣を受け止めていた召喚獣のバランスを横に崩す。

 

「にゃ!?」

 

「え!?」

 

「ええ!?」

 

「うそ!?」

 

バランスを崩し、絵里と凜の召喚獣の細剣と短剣を重なるようにし、その直後に現れた足元の魔方陣を凜と絵里の召喚獣の足を足払いで転ばしてそのまま距離を取りながら真姫に右手の剣を投げ付ける。空いた右手でバランスを取りジャンプして懐から銃を取り出して花陽の召喚獣に向けて連続で射ち放つ。

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年一組 吉井 明久  8975点

 

 

 VS

 

 

 三年一組 綾瀬 絵里  2438点

 一年一組 西木野 真姫 3549点

      星空 凜   542点

      小泉 花陽  1971点

 

 

 

 

新しく更新されたそれぞれの点数はそう表示された。

絵里と凜の点数がかなり減っているのは、絵里は先に戦っていたのと、花陽の魔法攻撃を受けたから。そして凜は小金井さんとの前に戦闘したのと、絵里と同じで花陽の魔法を受けたからだ。

真姫は僕の召喚獣が投げ付けた剣を銃で受け止めて、軌道をずらし僅かにかすったためあまり減っておらず、花陽も然り、狙いが定まらず弾をバラつかせたためそれほど減ってはいない。

だが、これでいい。

驚きで動けない絵里たちを放っておいて、僕は召喚獣とともに、投げ付けた剣を回収しつつ、真姫と花陽のいる反対側の方に足を向けその場を立ち去る。

 

「ま、待ちなさい明久!」

 

「待つにゃ~!」

 

「え!?ちょっ!待ってぇぇ!」

 

「逃げないでよ明久!」

 

驚きから回復した絵里たちのそんな声を聞きながら、校舎の西にある階段へと目指す。

 

「こうなったら一撃で撃破するしかない!」

 

召喚獣の一番の弱点は喉元と人間と同じ心臓だ。この二つのどちらかを斬られたり貫かれたりしたら例えどんな高得点を保持している召喚獣であっても一撃で戦闘不能になる。もちろんそう滅多に一撃で終わったりすることは更々無いが。

そう考えながら西側の階段を目指す。どのみち屋上へ続く階段は中央階段だけなため3階か4階に行ったら中央階段を目指すしかないのだが。

校舎の西側の階段をかけ上り3階に辿り着くと。

 

「やっぱりうちの予想通りこっちに来たやね」

 

「!」

 

どこかのスピリチュアル巫女さんの声が聞こえてきた。

声の聞こえてきた方を見ると、そこにはタロットを持ちながらニヤリとにやけ笑いを浮かべている希と、その他音ノ木坂生の姿があった。そして希のタロットの絵柄は(スター)の正位置だった。

 

「直感でここに来たの?」

 

「ちゃうよ。カードが教えてくれたんや。明久君は絶対こっちに来るってな」

 

「なんちゅうスピリチュアルパワー・・・・・・」

 

正直音ノ木坂生の中で一番やりにくいと思うのは希だ。何せ希はスピリチュアルパワーとやらで予測してくるからだ。

 

「さあ、覚悟しい」

 

「ここで大人しく負けてたまるか!」

 

そう言うや僕は瞬時に召喚獣に腕輪の《事象改変》と《属性付与》を発動した。

 

「全員、攻撃開始や!」

 

『『『了解!』』』

 

対する希たちも攻撃をしてきた。

 

「《事象改変(オーバーライド)》―――全解放(フルバースト・ゼロ)時間制限(リミット)30秒(サーティー)―――始動(ドライブ)!!」

 

30秒の時間制限をした《事象改変》の全解放を発動し、迫り来る数人音ノ木坂生の召喚獣を切り伏せた。

 

「うそっ!?」

 

「なによ!今の動き!」

 

「反応できなかったわ!」

 

今の一撃で点数をゼロになった召喚獣の生徒や後方にいた他の生徒から動揺が出ていた。

しかし僕の目標は。

 

「希ぃ!」

 

今この場で一番の危険因子を持った希の召喚獣だ。

 

「やったるで!腕輪発動!―――《聖霊予言(スピリチュアル・アルカナム)》!」

 

希がそう言うと、希の召喚獣に着いていた腕輪が光りそこから赤いカードと白のカード、そして青緑のカードが出てきた。

 

「ふふ、赤と白と青緑ね。ならいくで~!」

 

希の腕輪の能力が不明なため警戒しながら僕は自身の召喚獣を接近させる。

 

「光ありて、吹き飛び燃え尽きれ!」

 

希がそう言うと、希の召喚獣の周囲を漂っていた白いカードが目映く光った。眩しく咄嗟に目を覆うと、召喚獣が後ろに吹き飛ばされた。そしてさらに炎の球が追撃のように迫ってきた。

 

「なっ!?」

 

瞬時に召喚獣のバランスを整え、迫り来る炎の球を避ける。幸いにも炎の球は追尾機能が無く、そのまま後ろの床に当たって弾けとんだ。

 

「(まさか希の腕輪の能力って、出てきたカードの色によって種類が違うんじゃ・・・・・!)」

 

今の一連の攻撃で僕はそう思った。

 

「まだまだ行くよ~!」

 

希が楽しそうにそう告げると、また腕輪が光り4枚のカード。それぞれ青、銀、黒、黄色のカードだ。

 

「楔で捕らえ、閉じ込めよ。穿きて地に染まれ!」

 

「くっ!」

 

希がそう言うとまたカードが光り、足元から銀色の楔が現れ、その周囲を水の壁が覆い、上からは岩が、そして下からは召喚獣自身の影の針が飛び出してきた。

その攻撃をギリギリのところでかわして、《事象改変》で張った障壁で防ぐ。

 

「(時間制限まであと7秒・・・・・・すぐに決めないと!)」

 

残り時間を思いだし、僕は召喚獣に指示を出す。

 

「行け!」

 

全解放した僕の召喚獣の動きは恵衣菜の腕輪の《閃光》や康太の《加速》をはるかに凌ぐ《神速》の域だ。

召喚獣の速度がトップスピードになり、そのまま周囲の音ノ木坂生の召喚獣を蹴散らしていく。

 

「させへんよ!―――護りて、動きを封じ込めよ!」

 

またしても希の召喚獣の腕輪が光り、銀色と茶色のカードが出てき、希の召喚獣の目の前に銀色の盾が出来上がった。そして、僕の召喚獣の行く先に地面から飛び出たかのように鋭く延びる切っ先が行く手を阻んだ。

 

「それはお見通しだよ!うおおおおお!」

 

しかしそれを読んでいた僕は、召喚獣に《属性付与》と《事象改変》で作り出した障壁を纏わせ、速度と威力を増加(ブースト)させていた。

結果、行く手を阻むかのように飛び出た針山は僕の召喚獣の勢いに吹き飛ばされ、剣に《属性付与》をしてさらに増加をした剣の振り下ろしはそのまま希の召喚獣の手前に張られた銀色の盾とぶつかり、甲高い金属音を発すると、バターのように熔けていき、その後ろにいて刀を振りかぶった希の召喚獣とぶつかった。

 

「はあああああ!」

 

「やあああああ!」

 

希と僕の声が響き渡り、互いの召喚獣は鍔迫合いながら拮抗する。が、徐々に希の召喚獣が圧されていき、やがて希の召喚獣の刀に皹が入るとそれは全体に広がっていき、希の召喚獣の刀はパリンッ!と音を立てて壊れ、僕の召喚獣の振り下ろした剣をそのまま受けた。

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年一組 吉井 明久 7534点

 

 

 VS

 

 

 三年二組 東條 希  0点  

 

 

 

 

 

希の召喚獣は斜めに切り裂かれそのまま地に伏し、虚空へと消えた。そして、それと同時に僕の召喚獣の《事象改変》による全解放が時間制限になり、動きが元に戻った。

 

「僕の勝ちだね、希」

 

「そうやね。でも、明久君の点数は削ったから目的は達したで」

 

予定通りと言わんばかりに言う希に僕は苦笑を出した。

 

「さてと・・・・・・」

 

「恵衣菜ちゃんは屋上に居てはるよ」

 

「うん」

 

希のその声にうなずき返し、僕と僕の召喚獣はその場から去り上の階。4階へと向かった。

4階に辿り着くと、目の前には。

 

「ここは通しませんよ、明久」

 

「通りたければ私たちを倒していくことね!」

 

「恵衣菜ちゃんのところには行かせないよ!」

 

ほぼ残りの音ノ木坂生全員の姿があった。

一番前には海未、絵里、ヒデコの姿がある。さらに全員召喚獣を召喚していた。

 

「残り全員か・・・・・・」

 

そう小さく口走ると、僕はズボンのポッケに入れていたあるものを取り出した。

 

「始めてこれを使うけど・・・・・・試運転にはもって来いだね」

 

取り出した白銀色に輝く腕輪を左腕に装着し。

 

「―――二重召喚(ダブル)!!」

 

腕輪の起動ワードを叫んだ。

起動ワードを叫ぶと、僕の召喚獣の真横に新しく魔方陣が展開されそこから一体の召喚獣が出てきた。その召喚獣の姿は僕の召喚獣にまんまそっくりだった。

 

「もう一体!?」

 

海未の驚く声に合計二体になった僕の召喚獣の点数が表示させる。

 

 

 

 

 

 総合科目

 

 

 二年一組 吉井 明久 A 3767点

           B 3767点

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、行くよ!」

 

そう告げると僕は二体の召喚獣を海未たちの召喚獣のいる集団に突っ込ませていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











次回 『明久VS恵衣菜+音ノ木坂学院生(ファイナルバトル) 最終幕(フィナーレ)』 GO to The Next LoveLive!


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第ⅩⅩⅡ問 明久VS恵衣菜+音ノ木坂学院生(ファイナルバトル) 最終幕(フィナーレ)

 

~明久side~

 

 

「―――二重召喚(ダブル)!!」

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 

 二年一組 吉井 明久 A 3767点

 

            B 3767点

 

 

 

 

 

 

「さあ、いくよ!」

 

新たに現れた、もう一体の僕の分身たる召喚獣とすでにいた召喚獣、合計2体を目の前にいる音ノ木坂生たちに向ける。

 

「っ!全員、攻撃開始!ここで明久を撃破するのです!」

 

『『『『『おおーーーっ!』』』』』

 

海未の号令に廊下にいる音ノ木坂の女の子たちは声を上げ、召喚していた召喚獣を僕に向けてきた。

 

「甘いよ!」

 

一直線に突っ込んできた二体の召喚獣を軽く横にかわして避け、そのままカウンターアタックで二体の急所に剣を突き刺して点数をゼロにする。

 

「そんな!」

 

「うそ!」

 

点数をゼロにされ戦闘不能になった召喚獣の操作者が声をあげる。

 

「一気に突破してやる!」

 

時間を確認して、僕はそう口走った。

 

「この人数を突破できるとでも!」

 

「突破できるとでもじゃないよ海未。―――突破するんだ!」

 

海未にそう言うと2体の召喚獣を巧みに操作して次々と戦死者の召喚獣を出す。遠距離からの攻撃を横に避けたり、弾く、また切り裂いて対処し、目の前の敵をそれぞれ相手させる。

 

「いったいどうやって2体の召喚獣を操作してるの!?」

 

絵里の声が廊下に響き渡る中、僕は意識の半分を召喚獣操作に向けていた。

 

「(やっぱり数が多い!《事象改変》の全解放はここでは使いたくないし・・・・・・)」

 

恵衣菜との戦闘もある以上、奥の手はここでは使いたくなかった。まあ、希にはやむ終えなく使ったけど。

僕は意識のもう半分で考えながら対策を取る。

 

「(残りの音ノ木坂生は海未たちも入れて約25人。時間もあまり残ってないし・・・・・・短期決戦で行かないと)」

 

この試験召喚戦争には一応時間制現がある、それは今日の午後3時まで、ということだ。時間制現を越えた場合、その勝利は恵衣菜たちになる。僕の勝利条件はただ一つ、恵衣菜を撃破することのみ。

そう思いながら2体の召喚獣を操作してると。

 

「っ!」

 

「さすがですね明久。ですが、2体の召喚獣を同時操作は未経験なのでしょう。動きが鈍っていますよ!」

 

海未の召喚獣が僕の召喚獣に的確に急所を狙ってきた。

しかも今の弱点も見透かされた。

海未の言うとおり、この腕輪。"白銀の腕輪"を起動させたのは今日が始めてだ。以前、≪清涼祭≫の召喚大会で優勝したときの商品の一つで、この腕輪は以前不具合があり暴走する危険性があり、僕と恵衣菜は優勝商品の腕輪を一旦開発者の学園長であるお祖母ちゃんに渡し、僕の腕輪はこの試験召喚戦争が始まる前に渡された物だ。

お祖母ちゃん曰く、この白銀の腕輪―――同時召喚は調整はしたが現状使えるのが僕だけらしい。理由は脳の過度の行使に他の人は耐え切れられないのと、2体の召喚獣を同時操作するのは難しい、とのことかららしい。しかし僕の場合は脳の過度の行使は、《事象改変》の全解放などで耐性が付き、同時操作に関しては思考操作速度と観察処分者としての召喚獣の操作技術随一だからそうだ。

もっとも、同時操作とは一つの脳で複数のことを考えなければならなく始めて使った僕も操作が難しいと感じていた。その証拠に、わずかだが召喚獣の動きにブレがある。しかしこのブレもほんの僅かなもので普通なら分からないほどだ。だが、しかし、召喚獣と言うのは自分の分身。昔から、幼い頃からずっと一緒だった幼馴染みには分かってしまうのだ。そう、今海未が言ったように。

 

「絵里!真姫!左の、Bの明久の召喚獣をお願いします!私はもう片方の方を仕留めます!」

 

「わかったわ!」

 

「まかせて!」

 

「ことり、後方から支援をお願いします!」

 

「うん!」

 

「穂乃果は明久の召喚獣の足止めを!」

 

「やってみるよ!」

 

「他の人も、少しずつ明久の召喚獣にダメージをお願いします!」

 

「了解!」

 

「オッケー!」

 

「わかりました!」

 

海未の指示により、現状の音ノ木坂生の戦力の半分、絵里や真姫の召喚獣が僕の召喚獣のBの方に、海未や穂乃果、ことりたちの召喚獣はAの召喚獣の方に攻撃をしてきた。

 

「くっ!まずい!」

 

さすがに不馴れなため、単一ではなく複数の指示を2体の召喚獣にそれぞれ個別にするのは難しく、まさに籠の中の鳥のような感じだった。

 

「(まずいね・・・・・・)」

 

2体の召喚獣をそれぞれ背中合わせにして武器を構える。

 

「(・・・・・・まてよ。なにもそれぞれ個別に指示を出す必要は無いよね・・・・・・。なら・・・・・・一か八かやってみるか!)」

 

とっさに奇策を思いつき一か八かやってみることにした。

 

「どうしました?動きを止めたと言うとは観念したと言うことでしょうか?」

 

「ううん。僕は諦めないよ海未。最後の最後まで足掻いて足掻いて、足掻き続ける!この試召戦争に負けようが勝とうがそんなことどうでも良いけど、僕は最後の最後まで絶対に、諦めない!」

 

「ふふ。あなたらしいですね。では―――」

 

海未のその声に僕の召喚獣2体を囲む、音ノ木坂生の召喚獣は構えをとった。

 

「―――覚悟です、明久!」

 

海未の声に合わせて放たれた海未の召喚獣の矢が一直線に、僕の召喚獣の急所を狙ってきた。そしてそれと同時に遠距離からの攻撃の雨が降り注いできた。

海未たちの召喚獣の攻撃が僕の召喚獣に当た―――

 

「なっ!?」

 

「そんなっ!」

 

「アリエナイ!」

 

―――当たるはずだった(・・・・・・・・)

 

「ふぅ。一か八かやってみたけど―――最初からこうすれば良かったね」

 

僕の2体の召喚獣は降り注ぐ遠距離からの攻撃をひたすら避け続けていた。紙一重で避けることもあるが、脚は止まってなかった。

 

「なんで当たらないの!?」

 

「どういうこと!?」

 

「だ、誰か吉井君のもう一体の召喚獣を操作してるんじゃないの!?」

 

「そ、そんなはずないわ!あの動きはどう見たって私たちには無理な動きよ!」

 

驚きと戸惑いの声が上がりながらも、遠距離からだけでなく近接戦闘も含まれる召喚獣との戦闘をただひたすら僕の2体の召喚獣は避け続ける。

僕が召喚獣に出している命令はただ一つ。"攻撃を躱し続けろ"と言うことだけだ。実にシンプルで単調だ。

 

「くっ!各自、近くの人と協力してください!」

 

海未が慌てて指示を出すが。

 

「遅いよ海未!」

 

僕は召喚獣に新たな指示を出す。

指示を出すと。

 

「きゃあっ!」

 

「そんなぁ!」

 

「うそでしょ!」

 

「いつの間に接近されていたの!?」

 

「え!?うそ!?」

 

近くにいた召喚獣を次々と攻撃して戦闘不能にさせる。

 

「にゃあ!?」

 

「り、凛ちゃん!」

 

「花陽、危ない!」

 

「え!?」

 

「花陽!・・・くっ!ここまで実力が違うというの?!」

 

「っ!絵里、後ろよ!」

 

「にこ!」

 

それは一方的な蹂躙とも言えるだろう。

凜の召喚獣を一刀両断で切り裂いて点数をゼロにしてその後ろにいた花陽の召喚獣を横凪ぎに切り払って点数をゼロに。もう一体の召喚獣には絵里の召喚獣に攻撃するが、間髪入れずに、にこの召喚獣が間に入り、召喚獣の剣を受け止める。

 

「残り8人・・・・・・」

 

僕が召喚獣に出した指示は簡単だ。

"目の前の敵を撃破せよ"。ただそれだけを指示した、細かい動作は観察処分者としての操作技術のお陰でなんとかなってた。

 

「そんな・・・・・・ここには残りの音ノ木坂生三十人弱いたんですよ!?しかもほとんどの人が高得点持ちなのに!」

 

一気に人数が減ったことに信じられないものでも見たのか海未はそう口走った。

 

「まあ、それは経験の差ってことで」

 

「それを言われると納得してしまうのですが・・・・・・」

 

「確かに・・・・・・」

 

「反論できないわね・・・・・・・」

 

「なんとも言えないね・・・・・・」

 

僕の言葉に海未、絵里、真姫、ことりらが納得したようにうなずいて答える。周囲の音ノ木坂生も、あ~って感じで納得していた。

て言うか経験の差でも流石にこれは僕だからできたことだと思うけど。

 

「海未たちの召喚獣の攻撃をかわせた理由は単純だよ。ただ、一つだけ指示を出しただけ」

 

「指示を一つだけ出しただけ、ですか?」

 

「うん」

 

僕の言葉に、海未は考え込むようにしながら僕の言葉の意味を探る。

僕の言葉の意味に答えたのは。

 

「なるほど、指示を単純化しただけ。・・・・・というわけね」

 

「正解だよ絵里」

 

「どういう意味絵里?」

 

「海未ちゃん・・・・・・?」

 

「・・・・・・なるほど。そういうことですか」

 

「海未もわかった?」

 

「はい。明久は2体の召喚獣に同じ指示を出したんですね」

 

「同じ指示?」

 

「ええ。さっきの私たちの攻撃を、明久は2体の召喚獣にただ躱すことだけを指示したのよ。反撃とかそんなの考えないでただ避けるだけ」

 

「その通り。そもそも2体の召喚獣を一人で操作するなんて難しいんだ。さっきまで僕は2体の召喚獣それぞれに個別の指示を出していたけど、さっきの行動はただ避けるだけ。目的を集中すれば、召喚獣は僕の指示通りに動いてくれる」

 

基本、人間が一つの脳で二つのことを同時に行うと必ずどこがブレる。それは単純に脳から発する指示のパルスが行き渡ってないから。極限の集中力があれば可能だろうけど、それは難しい。そして、召喚獣は僕の分身の通り、指示は脳から行う。2体の召喚獣でそれぞれに指示を出すから頭が混乱し、十全なパフォーマンスが発揮されない。正直、今始めて2体の召喚獣を同時に使っているため、慣れてないことゆえパフォーマンスが本来以下になる。

なら、それをただ一つのことに『集中』すればどうだろう?

結果は――――。

 

「これで、終わりかな?」

 

「「「なっ―――!?」」」

 

一瞬の出来事に、反応できなかった真姫と絵里、にこの召喚獣を撃破し、残りは4人。目の前にいる、ヒデコ、ことり、穂乃果、そして海未だけだ。

 

「いくよ、4人とも」

 

「っ!ことり援護を!」

 

「う、うん!」

 

2体の召喚獣を交互に、入れ替わり攻撃させ点数を減らしていく。

海未の声にことりが海未と穂乃果、ヒデコの援護をしてくるが。

 

「まずはことり!」

 

「え―――!?」

 

目の前にいた僕の召喚獣を踏み台にして、ことりの召喚獣の背後に回り込んで点数をゼロにする。

遠距離からの支援をまずは最初に潰す。

 

「ことりちゃん!」

 

「穂乃果、来るよ!」

 

「次は穂乃果!」

 

そして、点数が減っているとはいえ近接戦闘の穂乃果の召喚獣をことりの召喚獣を倒した召喚獣が踏み台にした召喚獣で倒す。

 

「っ!」

 

「驚いたよ・・・・・・まさか受け止めるなんて」

 

しかし、その攻撃は微妙に勘のいい穂乃果の召喚獣の剣の腹で受け止められた。

 

「明久くんの動きはわかってるんだから!」

 

「うん。それは僕もだよ穂乃果。・・・・・・でもね穂乃果、僕の召喚獣はもう一体いるよ!」

 

「うっ!」

 

「大丈夫だよ穂乃果!」

 

「ヒデコの言う通りです!もう一体の召喚獣は私とヒデコが相手します!」

 

「!お願い二人とも!」

 

どうやらもう一体の召喚獣はヒデコと海未が相手するようだ。

ヒデコの召喚獣の武装は刀、海未の召喚獣の武装は弓。遠近のコンビだ。

 

「勝負だよ明久くん!」

 

「いいよ!掛かってきて3人とも!」

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久  A 3218点

 

VS

 

 二年一組 高坂穂乃果   1545点

 

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久  B 3131点

 

VS

 

 二年一組 園田海未    4198点

      葉桜ヒデコ   3084点

 

 

 

 

 

 

それぞれの召喚獣の点数が頭上に表示された。

 

「いくよ!」

 

「行きます!」

 

「行け!」

 

穂乃果たち3人の召喚獣は同時に動き出した。

穂乃果の召喚獣は剣を右上段からの袈裟斬りを、ヒデコの召喚獣は刀を両手で持ち横薙ぎに切り払ってきて、海未の召喚獣はヒデコの召喚獣を援護するかのように連続で僕の召喚獣の逃げ場をなくしてくる射撃をしてくる。

 

「はあっ!」

 

対する僕は穂乃果の相手をしている召喚獣に、左の剣で受け止め、足払いからの斬りを指示し、ヒデコと海未の相手をしている召喚獣には海未の召喚獣の矢を躱し、ヒデコの召喚獣の刀をステップで避ける指示を出す。

 

「やあっ!」

 

穂乃果の召喚獣は僕の召喚獣の足払いからの斬りをスクールアイドルとしての感覚か、リズムよくジャンプして躱し、横からの斬りをしゃがんでやり過ごす。

 

「やるね穂乃果!」

 

「へへん。これくらいならなんとかなるよ!」

 

穂乃果のなんとかなるよ、という言葉に少々呆れながらも攻撃の手を緩めない。正直、あのコンボをすべて防ぐというのは初心者にしては有り得ないことだ。まあ、さすがスクールアイドルμ'sということか。そう思いながら穂乃果の召喚獣の攻撃を避けていくが、少しずつ僕の召喚獣にもダメージを与えてきていた。

 

「なら、もっと早くいくよ!」

 

そういうと否や、穂乃果の召喚獣と相手している僕の召喚獣に立て続けに指示を出す。右横薙ぎからの返し、左上からの逆袈裟斬りからの切り上げ、足払いしてからの右突き。

 

「うわっ!」

 

対する穂乃果の召喚獣はギリギリのところで避けていくが、足払いのタイミングをミスしバランスが崩れ右突きの単発を受ける。そしてその後ろには。

 

「穂乃果!?」

 

もう一体の僕の召喚獣を相手していたヒデコの召喚獣の姿があった。

 

「ごめん!あれ、明久くんの召喚獣は!?」

 

ヒデコの召喚獣とぶつかり、床に倒れるがなんとか起き上がったところで僕の召喚獣がいないことに気づいて当たりを見渡す。

 

「穂乃果、上です!」

 

「上・・・・・・?」

 

海未の声に穂乃果と穂乃果の召喚獣が上を見上げると。

 

「ぜりゃあ!」

 

「うそ!?」

 

剣を振り下ろす状態で降りてきた僕の召喚獣に一刀両断され穂乃果の召喚獣は点数をゼロになった。

 

「穂乃果の弱点は周りに眼が往かないことだからね」

 

「うう~~」

 

戦場でのとっさの判断が生死を分ける。古来から戦場において伝わる言葉だ。当たりを見渡すだけじゃなくて、五感すべてを通じて感じ取ればこの攻撃は穂乃果にも避けられたと思う。

 

 

総合科目

 

 

 

 二年一組 吉井明久  A 2843点

 

VS

 

 二年一組 高坂穂乃果   0点

 

 

 

 

 

「残りは2人」

 

そう呟いて、残った2人。ヒデコと海未を見る。

 

「海未ちゃん、勝算はある?」

 

「この状態ですと、さすがに私たちが勝つ確率は30%もないかと」

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久 B 2789点

 

VS

 

 二年一組 園田海未   3561点

      葉桜ヒデコ  2198点

 

 

 

 

 

そう表示されている三体の召喚獣のところに、穂乃果の召喚獣を撃破した僕の召喚獣も入れる。

点数が思った以上に減っているため、これ以上の減少は避けたいところだった。

 

「(合わせて5672点・・・・・・半分も減ってる。恵衣菜との対戦がやりにくいね)」

 

合計点数を暗算で処理し、恵衣菜との戦いを思案する。

 

「さて・・・・・・まだやる?二人とも」

 

「当然です」

 

「もちろん」

 

「明久が最後の最後まで絶対に諦めないのなら!」

 

「私たちだって足掻いて足掻いて足掻きまくってやるわ!」

 

息のあった2人の台詞にクスッと笑いを浮かべて。

 

「じゃあ・・・・・・やろうか!」

 

すぐさま僕の2体の召喚獣をそれぞれヒデコと海未の召喚獣に突撃させた。

 

「ヒデコ、援護します!」

 

「お願い海未ちゃん!」

 

ヒデコの召喚獣が刀の刀身の先を下に向けて地面すれすれに走りよってくる。

ヒデコの召喚獣が迫り来る僕の召喚獣は剣の鞘を腰に直して、鞘に剣を納め居合いの構えをとる。

 

「この一撃で決める!」

 

「受けてたつよ!」

 

「「はあああああっ!」」

 

互いの召喚獣が交差する瞬間に。

 

「「一閃っ!!」」

 

僕とヒデコの声が重なった。

剣の軌跡が一筋の軌跡となって輝いた。

一閃の軌跡が輝いたそのあと、片方の召喚獣が地面に付した。

 

「あ~あ。やっぱり負けちゃったか」

 

立っていたのは剣を抜刀した状態でいる僕の召喚獣だった。

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久 A 2417点

 

VS

 

 二年一組 葉桜ヒデコ  0点

 

 

 

 

 

 

「ナイスファイトだったよヒデコ」

 

ヒデコにそう言い、残った海未に視線を向ける。

 

「海未、いくよ!」

 

「くっ!」

 

ヒデコの召喚獣を斬り伏せた召喚獣とは別の、もう一体の僕の召喚獣が海未の召喚獣に迫っていく。

 

「このっ!」

 

矢を連続で射ってくる海未の召喚獣に向けて、ジグザグに動きながら躱していく。

ステップでリズムよく避け、高機動で動く。

海未の召喚獣も僕の召喚獣を近づけさせないように、動きつつ距離を取りながら射抜くがその距離が少しずつ縮まっていった。ちなみに、ヒデコの召喚獣を倒した僕の召喚獣はその場から動いてないです。

 

「まだです!」

 

海未の召喚獣は銃弾をばら撒くのと同じ様に矢を連射してくる。さらに海未にしては珍しく照準を合わせるのも省略して一本一本ではなく複数の矢を同時につがえて射ってくる。

 

「はあああああっ!」

 

雨あられのように降り注いでくる矢を僕の召喚獣は剣で裂きながら海未の召喚獣が剣の間合いに入るように接近し。

 

「っ!」

 

海未の召喚獣の構える矢が僕の召喚獣が接近しすぎて射貫けなくなったところに、僕の召喚獣が右肩から斜めに切り裂いた。

 

 

 

総合科目

 

 

 

 二年一組 吉井明久 B 2283点

 

VS

 

 二年一組 園田海未   0点

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・。二重召喚(ダブル)解除(アウト)

 

その場にいた音ノ木坂生全員を倒したことを確認し、僕は召喚獣の二重召喚(ダブル)を解き、元の一つに戻す。

 

「残った点数は4700点か・・・・・・。予想以上に減ったね」

 

まさかの5000点を下回り僕は苦笑した。そこへ。

 

「参りました明久」

 

「海未」

 

「勝てると思ったんだけどな~」

 

「やっぱり明久にはまだ勝てないということね」

 

「まさかこの場にいた音ノ木坂生全員を倒すなんてね」

 

「て言うか明久くん、音ノ木坂の生徒全員を倒したんじゃない!?」

 

「確かに・・・・・・」

 

「言われてみれば・・・・・・」

 

「やっぱり明久君は異常ってことね」

 

「ねぇ~」

 

「まったく歯が立たなかったもん」

 

海未をはじめとした、その場にいたことりや穂乃果、絵里たちがそれぞれ思ったことを言った。

 

「さて。恵衣菜はこの先よ明久」

 

「どっちが勝つのか楽しみにしてますね」

 

「うん。ありがとう、絵里、海未」

 

絵里たちに見送られて、召喚獣を消した僕は中央階段を目指して歩いた。

この時点で時刻は14時時30分。

中央階段にたどり着き、屋上を目指して階段を上る。

 

「・・・・・・・・・・」

 

階段の屋上へと続く扉を開け、初夏の掛かり掛けの夕陽が屋上を照らす。屋上に足を踏み入れ屋上を見渡すと、奥に待ち人(恵衣菜)が目を閉じて空を見上げて待っていた。

ゆっくりと、足音を立てて恵衣菜に近づく。恵衣菜との距離が10メートルを切ったところで。

 

「ついに来たね―――――明久くん!」

 

目を開け、空を見上げていた顔を僕に移す。

 

「お待たせ恵衣菜。約束通り・・・・・・来たよ」

 

「うん。・・・・・・明久くんなら来ると分かっていたよ。穂乃果ちゃんたちを倒したってことは明久くん、音ノ木坂学院の生徒全員を倒したってことだね。さすがだね」

 

「あはは・・・・・・」

 

「それじゃ・・・・・・・」

 

「うん・・・・・・やろう」

 

恵衣菜との戦闘前の会話を終わらせて僕と恵衣菜の間に火花が飛び散る。それは、最大の好敵手(ライバル)にして幼馴染みにして大切な恋人。そして、絶対に負けられない相手。

 

「「―――試獣召喚(サモン)っ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久  4700点

 

 

VS

 

 

 二年一組 姫宮恵衣菜 11589点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

点数差実に、約2.5倍。

圧倒的に不利な、試召戦争が始まる前の僕の点数に匹敵する程の点数に僕は冷や汗を掻く。

 

「いくよ、明久くん!」

 

「うん。いくよ、恵衣菜!」

 

召喚獣の点数を見て、僕と恵衣菜はそう言い合い。

 

「「はあああああああああっ!」」

 

それぞれの武装を構えて僕と恵衣菜の召喚獣は二人のいる真ん中の中央を目指して翔ていった。

 

 

 

 

 

 

ついに、この試験召喚戦争の最後の戦いが始まった!

 

 

 

 

 

 

 











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第ⅩⅩⅢ問 決着 最後の戦い(ラストバトル)

 

~前回までの奏で繋ぐ物語~

 

明久)ついにここまで来た、音ノ木坂での僕対恵衣菜+音ノ木坂学院生全員の試召戦争!

 

恵衣菜)明久くんは穂乃果ちゃんたち音ノ木坂生全員を撃破。残った相手は私ただ一人!

 

明久)しかし僕の召喚獣の点数に対して恵衣菜の召喚獣の点数差はおよそ2.5倍!

 

恵衣菜)圧倒的不利の中、ついに始まった最終決戦!

 

明久)最後に勝つのはどっちか・・・・・・

 

恵衣菜)今始まる決戦の刻!

 

明久)この勝負勝つのは・・・・・・

 

恵衣菜)この戦い勝つのは・・・・・・・

 

 

明久、恵衣菜)僕(私)だ(よ)!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「「はあああああああああっ!」」

 

 

僕と恵衣菜の声に僕と恵衣菜の召喚獣も勢いを付けそれぞれ手に握り締める武装を構えて突っ込んでいった。

 

「最初から全力でいくよ!」

 

恵衣菜にそう言うと、僕は"白銀の腕輪"ではなくもうひとつの腕輪。―――虹金の腕輪を付け起動ワードを言う。

 

「いくよ―――――終わりと始まりの双翼(ゼロ・ウイング)!」

 

起動ワードを言うと、僕の召喚獣の背中から二対の虹色の翼が現出する。

 

「じゃあ私も!」

 

続けて恵衣菜も右腕に空色の腕輪。空金の腕輪を付け。

 

吹き荒れて(テンペスト)――暴風よ(アネモイ)!」

 

腕輪の起動ワードを発した。

最後のアネモイが変わっていたのは気のせいじゃなかった。何故なら、恵衣菜の召喚獣の周囲を疾風よりも遥かに強力な風、暴風が吹き荒れていたからだ。

 

事象改変(オーバーライド)起動(アクティベーション)!」

 

「閃光、発動!」

 

腕輪を発動させると、さらに召喚獣が付けてる腕輪を同時に発動させる。

 

「はあっ!」

 

「せやぁ!」

 

超高速の近接戦闘で、周囲に金属音と衝突音が鳴り響く。

僕と恵衣菜の互いの召喚獣は三次元戦闘の真っ最中だ。空に上がって屋上に影響がでないように戦う。

 

「(くっ!やっぱり点数差が2.5倍も有ると差が出るね・・・・・・!)」

 

脳をフルに行使して恵衣菜の召喚獣の動きを先読みしながら自身の召喚獣を操作する。

 

「(一瞬の隙も見せられない。見せたらそこで終わりだ・・・・・・!)」

 

集中力を最大限に高めて一つ一つの行程を重要視する。

地面でやっていたら恐らく放射状の罅が辺りに出来ていたであろう威力のぶつかり合いに衝撃波が僕と恵衣菜に襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

「きゃっ!」

 

目を覆うように腕で受け止め、恵衣菜はスカートと長い髪を押さえる。

 

「(まずい・・・・・・!もう点数があまり残ってない!)」

 

そう思う僕の視線の先には僕と恵衣菜の召喚獣が二刀流()細剣()の高速近接戦闘をしていた。そしてその頭上にはそれぞれの点数が表記されてる。

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久  4085点

 

VS

 

 二年一組 姫宮恵衣菜 10842点

 

 

 

 

 

 

僕の点数がかなり減ってるのは恵衣菜の召喚獣の攻撃力が高いからだ。受け止めても点数は減るし、腕輪の《事象改変》も少しずつ点数が減る。このまま戦ってもいずれ点数が0になってジリ貧だ。

この勝負に勝つなら、勝算は短時間での勝負のみ。

 

「(時間もあまりない・・・・・・やるしかないね!)」

 

武装を銃と剣に切り換えながら恵衣菜の召喚獣と戦い、そう思うと同時に大きく距離を取る。

 

事象改変(オーバーライド)―――全解放(フルバースト・ゼロ)!―――発動(フルドライブ)!!」

 

今まで使っていた始動(ドライブ)とは違い、始動(ドライブ)の上位。発動(フルドライブ)を発動させた。発動(フルドライブ)を発動させると、僕の召喚獣は虹色のベールに包まれる。

 

「(リミッターを全部解除した。これで戦える時間は約3分ぐらいかな・・・・・・)」

 

そう脳裏に過らせて恵衣菜を見る。

 

「いくよ、恵衣菜!」

 

「っ!」

 

恵衣菜の召喚獣に一瞬で接近させ、数撃を叩き込む。

しかし、その攻撃の初撃と二撃目は恵衣菜の召喚獣の細剣によって防がれた。

 

「!?いまの数撃で1000点も削られた!?」

 

驚く恵衣菜の言うとおり、恵衣菜の召喚獣は点数が1000点も削られていた。

 

「まだだ!」

 

左右の連撃からの突きへと繋がる連続剣技を、無意識下の領域で行い恵衣菜の召喚獣の点数を削り取っていく。

 

「このままじゃ!」

 

みるみるうちに削られていく点数に、恵衣菜は歯切りをして思考する。だが、点数が減っているのは恵衣菜の召喚獣だけでなく、僕の召喚獣もだ。恵衣菜の召喚獣の攻撃も然り、腕輪の代償として点数が減っていく。

 

「(このペースだとギリギリ・・・・・・いや、同時に点数が0になる・・・・・・・!)」

 

リミッターを外した僕の召喚獣に、恵衣菜の召喚獣は風で召喚獣の動きを阻害したり、先読みをしたりして攻撃を防いだりしてる。

 

 

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 二年一組 吉井明久  3742点

 

VS

 

 二年一組 姫宮恵衣菜 8964点

 

 

 

 

 

 

新たに更新され、表示された点数を見て顔をしかめる。

予想以上に減っているからだ。正直、このままだと負ける確率が高い。

 

「やあっ!」

 

「―――っ!?しまっ―――!」

 

負けるというイメージが出てしまったせいかほんの一瞬だけ、僕の召喚獣は動きを遅くしてしまった。そこを見逃す恵衣菜ではなく、恵衣菜の召喚獣は僕の召喚獣の懐に入り、威力を風であげた細剣で攻撃してきた。とっさに躱そうとしたが、左腕に攻撃を食らい後ろに大きく飛ばされる。

 

「(今のでかなり削られた!まずい!)」

 

「さすがに明久くんも今回は私に勝てないよね」

 

「・・・・・・それはどうかな恵衣菜」

 

「・・・・・・やっぱり明久くんはスゴいね。私だったら無理なこといつもこなしちゃうんだから」

 

「そんなことないよ。僕にだって出来ないことあるし・・・・・・」

 

恵衣菜の言葉に自虐気味に肩を竦めて言う。

 

「でも、今回勝つのは私・・・・・・・・・・ううん。―――私たちだよ!」

 

「いや、勝つのは僕だ恵衣菜!」

 

「明久くんには・・・・・・」

 

「恵衣菜には・・・・・・」

 

「―――絶対に負けないんだからっ!!」

 

「―――絶対に負けないっ!!」

 

僕と恵衣菜の声に反応してか、召喚獣たちも声をあげて武器を互いに振り下ろして鍔迫り合いをした。

 

「くぅ――っ!」

 

「うぅ――っ!」

 

恵衣菜にこの不利の状況で勝てる勝算があるとすればそれは急所(クリティカルポイント)を狙う事だけだ。

けど。

 

「(そう易々と急所を狙わせてくれるわけないよね・・・・・・!)」

 

急所を狙わせてくれるほど恵衣菜は甘くない。大きな攻撃をしたら逆にカウンターでこっちがダメージを食らう。

僕の召喚獣は攻撃の手数が多いのが利点だが、速度は少しだけ恵衣菜の召喚獣に劣る。そして、逆に恵衣菜の召喚獣は武装が細剣と弓と、軽量武装なため速度が高い。そして、その動きに連動して手数も多いと、利点がかなりあるのだ。

今は鍔迫り合いから同時に後ろに滑って下がり、近接武装から遠距離武装に切り換えて戦っている。

 

属性付与(エンチャント)―――(イグニス)!」

 

「―――っ!」

 

属性付与で、銃弾を触媒として事象改変で魔法を銃から発射させる。放たれた炎の銃弾は火矢のように鋭く恵衣菜の召喚獣に向かって飛んでいった。

 

風壁(ヴォールウインド)!」

 

しかし、その炎の銃弾は恵衣菜の召喚獣が自身の回りの風を操作して障壁を産み出して防いだ。

 

「お返しだよ!―――風槍(エアリアルストライク)!」

 

そして逆に風の纏った矢を連続で放ってきた。

というか、それは矢と言うよりむしろ槍のようだ。

 

「っ!―――精霊障壁(エレメンタルヴェール)!」

 

恵衣菜の召喚獣の放つ風の槍をなんとか躱すが、元が風ということもあり大きく避けないと風の影響を受けるため、幾つかの風の槍の影響でバランスを崩したところに3本の風の槍が迫ってきた。それをギリギリのところで事象改変で張った障壁で受け流すように受け止める。そのあとも、僕は属性付与で様々な属性の攻撃を仕掛け、恵衣菜の召喚獣は風と《閃光》の能力をもうひとつの腕輪の《多段攻撃(マルチプル)》で複合して攻撃してくる。

そして、この時点で試召戦争の残り時間が5分となっていた。

 

「く―――っ!恵衣菜っ!」

 

「―――っ!明久くんっ!」

 

もう点数が残り何点かなんてそんなの関係ない。

 

「(召喚獣が動けて、点数がまだあるならそれで―――十分だ!)」

 

遠距離戦から一気に遠距離武装による超近接戦闘を開始する。

僕の召喚獣は二挺拳銃によるガン=カタを。恵衣菜の召喚獣は弓を盾にして僕の召喚獣のガン=カタの軌道を反らしたり、フェイントで矢を射ってきたりする。

こっちの攻撃は弓の反り部分を槍のように巧みに動かして軌道をずらし、逆に初動作無し(ノーモーション)で矢を射ってくる。対する僕の方も、恵衣菜の召喚獣の攻撃を首を反らしたり銃身を使って矢の軌道を反らしたりして反撃する。

その動作が2分ほど続き、ついに恵衣菜の召喚獣の弓の弦部分が僕の召喚獣の銃弾で切られ、弓自体が破壊される。しかし、僕の召喚獣の銃も恵衣菜の召喚獣の矢の一点射撃で銃身部分に突き刺さり破壊された。暴発の恐れのある二挺拳銃を上空に投げ棄て、僕の召喚獣は二振りの片手剣を、恵衣菜の召喚獣は一振りの細剣を取り出し、互いの位置を交換するように互いを攻撃した。

 

「「これで終わらせるっ!!」」

 

互いの位置を交換し、僕と恵衣菜は同時にそう言う。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

暫し無言の静寂が辺りを覆い。

 

「―――属性付与( エンチャント)―――――全属性(オールエレメント)。《事象改変(オーバーライド)》、全属性(オールエレメント)掌握(コンプレクシオー)

 

「―――《閃光》限界突破(リミットブレイク)!―――――閃風(ライトニングスウェイ)!」

 

僕の召喚獣は纏っていた虹色のベールがさらに強い輝きを放ち、恵衣菜の召喚獣は同じく纏っていた風を閃風の腕輪でさらに強化して、蒼白い輝きを照らめかせた。

そして同時に―――――。

 

 

 

「はあああああああああああ!!」

 

 

 

 

「やあああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲高い金属がぶつかる音が鳴り響いた。

僕と恵衣菜の召喚獣はそれぞれの剣を振り切った体勢で止まっていた。やがて、片方の召喚獣が倒れすぅ、とその場からゆっくりと消えていった。

最後まで残ったのは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年一組 吉井明久  0点

 

 

 

 

VS

 

 

 

 

 二年一組 姫宮恵衣菜 964点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そこまで!この勝負、姫宮+音ノ木坂生の勝ちさね!』

 

スピーカーから聞こえてきたお祖母ちゃんの声と同時に、張られていた召喚フィールドが閉じた。

そして。

 

 

『『『わあああぁぁぁあ!!!』』』

 

 

下の校舎内から音ノ木坂生の歓喜の声が聞こえてきた。

 

「はは・・・・・・負けちゃったか~」

 

召喚フィールドが消え、吹いてきたそよ風を受けながら苦笑しながら恵衣菜に言った。負けたけど、何故かあまり悔しくなかった。

 

「う~ん・・・・・・でも、今回勝てたのは音ノ木坂生みんなのお陰でもあるからな~。私だけだったらたぶん負けてたかも」

 

「そんなことないと思うよ」

 

「そうかな~?」

 

「うん」

 

勝負が終わり、気まずくもなくただ普通に話していると。

 

「恵衣菜ちゃん!」

 

「うわっ!」

 

「わっ!」

 

屋上へと続く扉から穂乃果たちがぞろぞろとやって来た。

 

「穂乃果!?それにみんなも!?」

 

「ビックリした~。どうしたのみんな」

 

「驚かせてごめんなさい。二人ともいい勝負だったわよ」

 

「視てたの!?」

 

「ええ。そこにカメラがあるでしょ」

 

絵里の指差す方を見ると、文月でも使っているカメラがあった。

どうやらそこからリアルタイムで観ていたようだ。

恵衣菜の方を見ると穂乃果たちに勝利の祝福をされていた。そんなところに。

 

 

『全校生徒はただちに講堂に集合してください。繰り返します。全校生徒はただちに講堂に集合してください』

 

 

スピーカーからそんな声が響いた。

 

「それじゃ講堂に行こうか」

 

「ええ」

 

僕の言葉に恵衣菜や絵里たちはうなずき、屋上から講堂に移動した。

移動している最中、あちこちから声をかけられてあの戦いのあとだから少し疲れたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 講堂

 

 

 

屋上から講堂に移動して早5分。

講堂の壇上には文月学園学園長のお祖母ちゃんと、音ノ木坂学院の理事長のかおりさんが立っている。

 

 

『それでは、今回の試召戦争の評価を藤堂学園長、お願いします』

 

 

かおりさんの言葉にお祖母ちゃんがかおりさんと位置を変わって台の前に出る

 

 

『まずは試召戦争お疲れ様さね。今回の試召戦争では音ノ木坂生のことについて注目していたが、実際予想外と言わざるを得ないさね』

 

 

お祖母ちゃんはどうやら今回の試召戦争について好評みたいだ。

 

 

『予想ではもう少し戸惑ったりするかと思ったんだが、教えが良かったのかね。想像以上に連携やら操作が良かったさね』

 

 

お祖母ちゃんはそう言うと、僕らの方を見渡す。

 

 

『さて。結果としては姫宮+音ノ木坂生のチームが勝ったが、音ノ木坂の生徒諸君の中には吉井に負けて悔しいと思っているだろう。だが、あたしから言わせてもらうと音ノ木坂の生徒らと吉井と姫宮の召喚獣操作は経験が違うさね。負けるのは仕方がないと言えるだろう』

 

 

お祖母ちゃんの言葉に何人かの音ノ木坂生は顔をうつむかせた。

 

 

『けど、それがどうしたさね。ハッキリ言うと、今年の文月の2年生は常識はずれの点数保持者がいっぱい居てね。序列15位より上は正直呆れるほどさね』

 

 

お祖母ちゃんの言葉に僕と恵衣菜は顔を見合わせて声には出さずにクスッと笑った。序列15位以内ということは、僕や恵衣菜、零華、雄二、霧島さんは当然のこと、須川くんや横溝くんら僕の友達全員が序列を占めるからだ。

 

 

『それに、吉井の召喚獣の操作は文月学園でも飛び抜けていてね。集団とはいえ、吉井の召喚獣に傷をつけられたことは誇るべきさね。今はまだ練度が足りないだけさね。あたしが見る限り音ノ木坂の生徒らは見所がかなりあるさね。それに吉井と対等に戦える生徒も数人居るはずさね。自信をしっかりと、持つように!あたしから以上さね。最後に、姫宮、そして音ノ木坂生諸君、勝利おめでとう』

 

 

お祖母ちゃんはそう言うと、かおりさんと変わり横に移動した。

 

 

『藤堂学園長ありがとうございました。以上を持ちまして、吉井君対姫宮さん+音ノ木坂学院生全員との試召戦争を終了します。諸連絡のある先生方はいますでしょうか?』

 

 

かおりさんが先生たちに視線を向ける。

 

 

『では、私から。明日から来学期までは試召戦争が出来ないので注意してください』

 

 

どうやら明日から来学期までは試召戦争が出来ないらしい。まあ、点数がないから出来ないけど。

 

 

『それと、みなさんには明日吉井君を自由にする権利が与えられますので、吉井君はすみませんが明日はよろしくお願いしますね♪』

 

 

「(忘れてたぁぁぁ~~!!!)」

 

かおりさんの最後の言葉で僕はお祖母ちゃんの言葉を思い出した。

かおりさんの言葉に周りの音ノ木坂の生徒は歓喜の声やらを上げた。

 

 

『それではみなさん、お疲れさまでした。各自教室に戻りHRを行って下校してください。なお、本日の各部活動は無しとします。今日は家で試召戦争の疲れを癒して、明日からまた頑張ってください』

 

 

かおりさんはそう言うと、お祖母ちゃんと一緒に舞台袖に向かっていった。

そのあと、僕らは各自クラスに戻りHRを受け下校した。

下校する最中、あちこちから明日なにしてもらおうかとかの声が聞こえてきた。あまり無理なお願いはしないでほしいんだけどな~。

そう願いながら、恵衣菜や穂乃果たちと一緒に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 











次回 『学校(音ノ木坂学院)から、学校(文月学園)へ』 GO to The Next LoveLive!


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第ⅩⅩⅣ問 学校(音ノ木坂学院)から、学校(文月学園)

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

穂乃果)ついに、長かった明久くんと私たちの試召戦争が決着!

 

絵里)勝ったのはギリギリで私たち!

 

ことり)恵衣菜ちゃんの活躍で私たちは勝てた!

 

花陽)どっちが勝つのかハラハラしたけど

 

凛)凛たちには考えられないとても発熱した戦いだったにゃ!

 

にこ)私たちが勝ったから今日は明久を一日好きにできるわね!

 

希)明久くんにあーんな事やそーんな事させないとね

 

海未)そして明久と恵衣菜が音ノ木坂学院から・・・・・・

 

μ's)音ノ木坂学院編、最終問!どうぞご覧あれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「え~と、それじゃあ明久君にはここに書かれている要望を出来るだけお願いね」

 

「分かりました、かおりさん」

 

朝早くから登校し、理事長であるかおりさんから渡された紙の束を見て僕は一気に疲れてきた。

 

「(まあ、勝負に負けたんだし仕方ないか。・・・・・・さすがにあの勝負はもうしたくないけど)」

 

昨日の召喚戦争で負けた僕は、始まる前にお祖母ちゃんが言った僕に勝ったときのみんなのご褒美として今日一日、正確には学校にいる間、音ノ木坂学院生からの要望を僕は聞かないといけないのだ。

 

「え~と、なになに・・・・・・」

 

かおりさんから渡された紙の束を次から次へと捲って読んでいく。

 

「(というかこんなの何時聞いたんだろ・・・・・・?)」

 

読みながらふとそんな疑問が浮かび上がってきた。

 

「え~と、さすがに無理なことはされてないみたいだ・・・・ね?」

 

ある一文を読んだ僕は思わず二度見をした。

 

「・・・・・・マジで」

 

再び見た僕は頭が痛くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「かわいい~!」

 

「ねぇねぇ!次はこっちを着てみてよ!」

 

「メイク班、よろしく!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

さて、僕が今何をされているのかと言いますと。

 

「ほんとう、下手したら零華も姉妹じゃないって思われないかしら」

 

「言わないでよ絵里」

 

「文月学園での文化祭で明久くんの姿を見たときはうちも驚いたわ」

 

「ふ、ふんっ!なによ、別に悔しくなんてないんだからね!」

 

「全然悔しくなさそうに見えないんだけど?」

 

「り、凛ちゃん、そんなに落ち込まないで・・・・・・」

 

「かよちん~!」

 

「はぁ・・・・・・明久はもうその姿でずっといたらどうですか?」

 

「嫌だからね海未!?」

 

「え~!かわいいのに~!」

 

「いや、ことり、さすがに僕は男だからね!?」

 

「男の娘でしょ?」

 

「違うよ!」

 

「あはは・・・・・・似合ってるよ明久くん、その女装すがた」

 

そう、僕は今穂乃果たちと音ノ木坂学院の制服を着ているのだ。つまり、女装しているということだ。

 

「恵衣菜ちゃんも音ノ木坂学院の制服似合ってるよ!」

 

「ありがとう穂乃果ちゃん♪」

 

ちなみに恵衣菜も穂乃果たちと同じ音ノ木坂学院の制服を着ている。

 

「ねぇ、脱いでもいいかな?」

 

「良いのではないでしょうか?」

 

僕の言葉に海未が疑問系で答えると。

 

「明久くん、次はこれね!」

 

ヒデコがメイド服を渡してきた。

 

「え?」

 

「他にもあるからね~」

 

「ええっ!?」

 

他にもあると言われ僕は驚いた。つい海未の方に視線を向け助けを求めるが。

 

「あ~、その、頑張って下さい明久」

 

「海未の薄情者~!」

 

視線を逸らされて言われた。

そのあと僕は、ことりを筆頭にメイド服や、何処から調達してきたのか文月学園の女子の制服や巫女服やらを着せさせられるという着せ替え人形になった。ちなみに先生たちも乗ってきたのは予想外だった。というか授業は!?と言いたかったのだが・・・・・・・。乗ってきた先生のなかに理事長のかおりさんまで居たため、ああ・・・・・・と理解し諦めた。

で、着せ替え人形兼女装が終わり、次は僕が料理を奮うことになったんだけど。

 

『『『『『・・・・・・・・・・』』』』』

 

食べた人は何故かズゥんと、落ち込んでいた。

そんな中、穂乃果たちμ'sと恵衣菜は平気だった。

 

「なんでみんな落ち込んでいるの?」

 

僕がそう穂乃果たちに聞くと。

 

「あ~・・・・・・・」

 

「え~っと・・・・・・・」

 

「なんといいますか・・・・・・」

 

「その~・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・・」

 

全員から苦笑いと歯切れの悪い答えが帰ってきた。

 

「言えることは単純に、明久の料理は私たちのプライドというかなんというか、その、女子としての・・・・・・ね」

 

「?どういう意味絵里?」

 

「あはは・・・・・・えっと、みんな明久くんの料理が美味しすぎて自信を無くしてるんだよ」

 

「???」

 

絵里と恵衣菜に言われたことが理解できず首をかしげてみんなを見た。

 

『『『『『はぁ~・・・・・・』』』』』

 

恵衣菜たち以外から溜め息が出たが何故かその溜め息は暗い雰囲気満載だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

とまあ、そんなわけでようやく一日が終わり、昨日の召喚戦争でのみんなへのご褒美が終わり僕も解放された。

あのあと、勉強を教えたりやら、執事をしたり、料理教室を開いたりと多忙の一日だった。

そして、僕は恵衣菜たちと一緒に〈アイドル研究部〉の部室にいた。

 

「終わった~」

 

「お疲れさまです明久」

 

「大丈夫?はい、お茶」

 

「ありがとう絵里」

 

絵里から冷たいお茶をもらい喉を潤わせ息を吐いた。

 

「ところであの要望って何時書いたの?」

 

ずっと疑問に思っていたことを恵衣菜たちに聞く。

 

「昨日よ」

 

「へ?」

 

「昨日のうちに書いておいたのよ」

 

真姫の言葉につい変な声が出てしまったが絶対僕は悪くないはずだ。何故なら、昨日のうちに書いてあったなんて誰が予想できようか。さすがの僕も予想できなかった。いや、まあ、事前にアンケートでもしてあったのかなとは思ったけど。

 

「そ、そうなんだ・・・・・・」

 

乾いた、気疲れした声で真姫に返す。

 

「それじゃ、練習始めましょうか!」

 

『『『はーい!』』』

 

絵里の声で既に着替え終わっている穂乃果たちは恵衣菜と一緒に屋上に向かっていった。

 

「動けるかしら明久?」

 

「うん、ちょっと回復したから大丈夫」

 

「そう」

 

残った絵里とともに、〈アイドル研究部〉の鍵を閉めて屋上へと向かって行く。

その道中。

 

「明久と恵衣菜が文月学園(向こう)に帰るまでもう1週間も無いのね」

 

「そうだね。なんていうか、いろいろあったけどあっという間の一ヶ月半だったよ」

 

「そうね。試験召喚システムが導入されたからか、生徒たちの成績の向上が凄まじいって理事長も言ってたわ」

 

「なら良かったよ。お祖母ちゃんも喜んでるんじゃないかな」

 

「ええ」

 

屋上へと続く廊下を夕陽が差し込むなか歩いていく。

 

「・・・・・・僕も音ノ木坂学院(この学校)に来て良かったよ。まあ、女子高だからちょっと疲れたけどね」

 

「ふふ。本来なら男子は入れない場所だもの」

 

「そうなんだよね。ていうか、なんで僕が入れたのか不思議なんだけど・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・それはたぶん、明久がよく音ノ木坂に来ていたからじゃないかしら。それに、穂乃果たちの会話から明久たちの事も伝わっていたことも関係あると思うわ」

 

「なるほどね」

 

絵里と会話をしながら屋上の扉前に立つ。

 

「だから、ありがとう明久。いつも、私たちのこと助けてくれて」

 

「気にしないで。僕はやりたくてやってるんだから。それに恵衣菜と零華も同じだよ」

 

「ふふ。そうね」

 

「さっ、残りわずかの日々を過ごそうか」

 

「ええ」

 

屋上へと続く扉のノブを回して、僕と絵里は穂乃果たちのいる屋上に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日。音ノ木坂学院は夏休み前の、終業式を向かえ僕と恵衣菜の音ノ木坂学院で穂乃果たちと過ごせる日の、登校最後の日となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終業式

 

 

音ノ木坂学院講堂

 

 

 

『―――次に、吉井明久君よりお話があります。吉井君、お願いします』

 

 

「はい」

 

司会者の先生に呼ばれ、ステージに登壇する。

終業式の今日、僕はかおりさんからスピーチをお願いされているのだ。登壇するまでのホンのわずかな、数歩歩けば辿り着くまでの道のりの中、僕は音ノ木坂学院で過ごした一ヶ月半の日々を脳裏によぎらせた。穂乃果たちとの授業、昼休み、μ'sの練習、試験召喚戦争などなど、数えきれない程の日々。充実した一ヶ月半を思い起こして壇上を歩く。

台にたどり着き、スポットライトに照らされながら目の前の、音ノ木坂学院生を見る。

そして。

 

 

「みなさん、こんにちは!吉井明久です」

 

 

息を整えて、口を開いた。

 

 

「今日、本日をもって僕と恵衣菜は元居た学校。文月学園へと帰ります。音ノ木坂学院で過ごした一ヶ月半というわずかな日々、それはとても充実した・・・・・・とても思い出に残る毎日でした。初めは女子高ということで慣れませんでしたが、少しずつこの空気に溶け込んでいけたと思います。そんな、慣れなかった日々を助けてくれたのは恵衣菜と、穂乃果たちμ'sのみんなです。みんなが居なかったら僕は恐らく暗い気持ちのまま一ヶ月半を過ごしていたと思います」

 

 

今までの、この学院での思い出を一つずつ言葉にしていく。

 

 

「理事長を初めとした、先生方もありがとうございました。文月学園とは違うことで戸惑いましたが、この一ヶ月半を問題なく・・・・・・ごめんなさい、問題は少しありましたね。ですが、この一ヶ月半を楽しく過ごせました!生徒のみなさんも、召喚獣操作の訓練や廊下ですれ違うだけの少しだけ出会ったのにも関わらず、僕が怪我から回復し再び登校したときは心配して様子を聞いてきてくれました。その事が本当に嬉しかったです。他にも、この学院での授業や、クラスメイトたちと過ごした昼休み・・・・・・μ'sのみんなとの練習やこの間の試験召喚戦争。・・・・・・・この一ヶ月半はとっても、楽しく、思い出に残る、最高の毎日でした!最後に・・・・・・みなさん!この一ヶ月半本当にありがとうございましたっ!!」

 

 

マイクを台に置いて頭を下げお辞儀をして、僕は壇上から降りていった。

 

 

『吉井明久君、ありがとうございました。最後に理事長、お願いします』

 

 

降りてステージ横に行き、僕と変わってかおりさんは壇上に上がっていった。

 

 

『音ノ木坂学院生のみなさん――――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「これで音ノ木坂学院に来るのは最後か~」

 

終業式が終わり、各クラスのHRが終わりμ'sのみんなと屋上にいる僕は不意にそう呟いた。

 

「μ'sの練習で来るでしょ?」

 

「そういう意味じゃないよ真姫」

 

「私たちと一緒に過ごせる学校生活がってことですよね」

 

「うん」

 

海未の言葉を肯定する。

そこに。

 

「明久くん、そろそろ行かないと」

 

恵衣菜がそう言ってきた。

 

「?どこか行くん二人とも?」

 

「文月学園に行かないといけないんだよ」

 

「そうなの?」

 

「うん、お祖母ちゃんに終わったということを報告しないといけないしね」

 

「なら、早く行かないと」

 

「そうよ。今日はもう練習もないんだから」

 

「そのぶん、明日は朝から練習するけどにゃ!」

 

「うぅ・・・・・・起きられるかな」

 

「穂乃果は寝坊しないでくださいね」

 

「しないよ~!」

 

「あははは・・・・・・っ!僕たちも可能な限り行くから」

 

「ええ。わかったわ」

 

みんなにそう言うと、鞄を持って屋上の扉の前に立つ。

 

「それじゃ、またね」

 

「またね」

 

「うん!またね明久くん!恵衣菜ちゃん!」

 

「二人と零華はもう私たちμ'sのメンバーなんだから忘れないでくださいね」

 

「わかってるよ海未」

 

「じゃあ」

 

そう最後に言い、僕と恵衣菜は屋上から出て理事長室に向かい、軽い手続きをして音ノ木坂学院を後にした。

手続きの際、理事長から僕と恵衣菜、零華の音ノ木坂学院入校許可証をもらった。これで、何時でも音ノ木坂学院の校舎内に入ることができるようになった。

 

「楽しかったね」

 

「うん、この一ヶ月半、充実した毎日だったよ。恵衣菜は?」

 

「私も、穂乃果ちゃんたちと一緒に過ごせて楽しかったよ」

 

「だね」

 

「それじゃ、文月学園に帰ろっか」

 

「そうだね」

 

音ノ木坂学院の校舎を後ろにして、僕と恵衣菜は文月学園へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園前

 

 

「この道を歩くのも久しぶりだね」

 

文月学園へと続く道を歩き、そう呟いた。

 

「そうだね~。ほんの一ヶ月半だったけど、もう何年もあるいてなかった気がするよ」

 

「恵衣菜も?」

 

「もしかして明久くんも?」

 

「うん」

 

意気が逢ったことに笑い、そのまま何気無い会話をして文月学園へと向かっていった。

やがて。

 

 

 

「着いた」

 

「うん」

 

僕と恵衣菜の学校。文月学園に着いた。

校門のところで立ち止まっていると。

 

「元気そうだな吉井、姫宮」

 

校舎の方からそう声が聞こえてきた。

 

「鉄・・・・・・西村先生!」

 

「西村先生!」

 

危うく西村先生のことを鉄人と呼んでしまうところを回避した僕は現れた西村先生を見る。

 

「今吉井が俺のことを鉄人と呼ぼうとした気がするがまあいい。お帰りとでも言うべきか・・・・・・いろいろ大変だったろうが、頑張ったな二人とも」

 

「「はい!」」

 

「ふっ。吉井妹や学園長から話は聞いていたが吉井は・・・・・・・・・・大丈夫そうだな」

 

「ええ。問題ありませんよ西村先生」

 

「そうか。よし、着いてこい二人とも」

 

「「???」」

 

そう言うと西村先生は校舎の方に引き返していき、僕と恵衣菜は疑問符を浮かばせながら西村先生の後を追いかけていく。その際、既に終業式は終わっているということを伝えられ、諸連絡などを聞いた。

そのまま追い掛けていき、僕と恵衣菜は2年Aクラスの教室前に辿り着いた。

 

「さぁ、開けるがいい」

 

「「???」」

 

訳が分からないまま、西村先生に促されるまま僕と恵衣菜は2年Aクラスの扉に触れ、そのままスライド式のドアを開けた。

ドアを開け、目に入ってきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!恵衣菜ちゃん!」

 

 

『『『『『お帰りなさい!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零華をはじめとする、雄二や秀吉、康太、須川君、横溝君、恭二、霧島さん、木下さん、友香さん、工藤さんたち。僕と恵衣菜の親友が待っていた。

 

「これは・・・・・・」

 

「一体・・・・・・」

 

唖然とする僕と恵衣菜の背中を西村先生が苦笑いしながら押し、中に入れる。

そこに、零華と葵姉さんがやって来て。

 

「お兄ちゃん、恵衣菜ちゃん。音ノ木坂学院での教習、お疲れさまでした!そして、お帰りなさい二人とも!」

 

「ふふふ。心配しましたけど、大丈夫そうですね明久くん、恵衣菜ちゃん。取りあえず、お帰りなさい二人とも」

 

そう言った。

やがて、理解した僕と恵衣菜は同時に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいま!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『肝試し大会IN文月学園!』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅴ章 肝試し編
第Ⅰ問 肝試し大会IN文月学園!


 

~明久side~

 

どうも、こんにちは。吉井明久です。つい先日、音ノ木坂学院から文月学園に戻り早数日。季節はもう夏休み。それはもちろん僕たちもなんだけど・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園

 

 

「暑い・・・・・・」

 

夏休みにも関わらず文月学園に登校している僕はあまりの暑さについそう漏らした。

 

「なんで僕らこんなことしてるんだろ・・・・・・?」

 

思わずそう呟く僕の答えに返したのは。

 

「仕方無いだろ明久。来学期から俺たちは生徒会役員なんだから」

 

「分かってるけどさ雄二」

 

悪友であり親友の坂本雄二だ。

僕らが今いるのは文月学園本校舎1階にある空き教室――――――ではなく、生徒会室だ。

 

「―――にしてもなんで生徒会なんて作ったんだろ?前までなかったよね」

 

そう、ここ今まで文月学園に生徒会というものは無かったのたが、来学期から新しく生徒会執行部、つまり生徒会を作ることになったのだ。役員は僕と雄二を含めてあと3人。計5人で成り立っている。僕が生徒会執行部の立ち上げに疑問をもっていると雄二が。

 

「さあな。恐らく、文月学園(ここ)と姉妹校になった音ノ木坂学院に生徒会があるからじゃないか?生徒会同士、交流があった方が良いってことだろ」

 

「へぇー」

 

雄二の言葉にそう返すと。

 

「さすが元神童と言われるだけはあるさね。まさにその通りだよ」

 

「学園長!」

 

扉から学園長が入ってきた。

 

「準備の様子はどうだい?」

 

「後は各部活動の予算などだな。それ以外は高橋女史たちのお陰で問題ない」

 

「そうかい。吉井、体調の方はどうだい?」

 

「あ、大丈夫です。傷の方も問題ないですし、ちゃんと動けます」

 

「そうかい、ならよかったさね」

 

学園長・・・・・・お祖母ちゃんは安堵したように言った。まあ、お腹の刺し傷の傷跡はまだ残ってるけど西木野先生のお陰で日常生活に支障はない。ただ、なんらかの衝撃でまた傷が広がる可能性もか無くはないそうなので少しでも体調に異変があったらすぐに知らせるようにと西木野先生からは入念に言われた。もっとも、可能性は低いので心配する必要はあまりないそうだけど。西木野先生からは走ったり、泳いだりと日常生活は問題ないとのことだ。

 

「ところで女子はどこに行ったんだい?」

 

「あ、恵衣菜たちは・・・・・・」

 

学園長の言葉に答えようとしたそのとき。

 

「た、ただいま~・・・・・・」

 

「お兄ちゃ~ん・・・・・・・」

 

「・・・・・・今戻った・・・・・・」

 

残りの生徒会役員である、恵衣菜と零華、霧島さんが戻ってきた。

 

「暑かったよ明久く~ん・・・・・・」

 

「お疲れさま恵衣菜。零華と霧島さんも」

 

「うん・・・・・・」

 

「・・・・・・雄二」

 

「おう、お疲れさん翔子」

 

恵衣菜たちに労いの言葉をかけると。

 

「ふむ。さすが仕事が速いさね。もう各部活動の予算が記入されてるよ」

 

零華の持っていたらしき紙を見てお祖母ちゃんが感心したように呟いた。

 

「あ、学園長」

 

「座ったままでいいさね姫宮」

 

立ち上がろうとする恵衣菜をお祖母ちゃんは苦笑いでその場に座らせる。

 

「ところで学園長、なにか用事でも?」

 

「実はだね、ちょいと不味いことになったんさね」

 

「「「「「???」」」」」

 

苦虫を噛み潰したようなしかめ面のお祖母ちゃんの言葉に僕たちは疑問符を浮かべた。

 

「言うより見せた方がいいさね」

 

お祖母ちゃんがそう言うと、突然召喚フィールドが形成された。

 

「誰でもいいから召喚獣を呼び出してみるさね」

 

「え~と、じゃあ、僕が。試獣召喚(サモン)っ!」

 

召喚獣を呼び出す言葉(キー)を呼ぶと、僕の前の空間に召喚獣が出る不可思議な魔方陣が現れる―――が。

 

「あれ?あんなに召喚獣を呼び出す魔方陣って大きかったっけ?」

 

零華の言うとおり、魔方陣の大きさがいつもの魔方陣より2、3倍大きかった。

しばらく待つと、魔方陣から召喚獣が出てきた――――――――――え?

出てきた召喚獣を見て僕は瞬きをした。

出てきた召喚獣の姿は西洋の騎士甲冑姿に両手剣クラスの大剣を床に突き刺していた。

うん、僕の召喚獣ってこんなのだっけ?

そう思いながら召喚獣を視る。そして召喚獣の大きさは僕と同じくらいあった。というよりこれって――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはもう一人の僕がいた。

うん、ドウイウコト?

 

「が、学園長、これは一体・・・・・・?」

 

雄二が恐る恐る聞くと。

 

「召喚システムに不具合が生じてこうなったさね」

 

「簡潔に言うと?」

 

「調整に失敗してすべての召喚獣が妖怪の姿になってしまったさね」

 

うん、とても分かりやすい。

つまり、お祖母ちゃんが召喚システムの調整に失敗して、僕らの召喚獣はこういう姿になってると。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「はいイイイイイイっ!!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お祖母ちゃんの言葉を理解して数秒後、僕らは絶叫を響き渡らせた。

 

「じゃあ、僕の召喚獣ってなんの妖怪!?」

 

僕がそう言うと。

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

目の前で僕の召喚獣の頭が取れた。

 

「え・・・・・・・?」

 

突然のことに唖然していると。

 

「明久くん、あああ、頭が・・・・・・きゅ~・・・・・・」

 

「お、おおお、お兄ちゃんの頭が、と、とれ、取れ・・・・・・・ふにゃぁ~・・・・・・・」

 

「恵衣菜!?零華!?」

 

恵衣菜と零華が眼を回して気絶した。

慌てて二人を介抱していると。

 

「ふむ、明久のこれはデュラハンか?」

 

「・・・・・・うん。でもなんで吉井デュラハンなの?」

 

「それはたぶん明久がバカだからじゃないか?」

 

「・・・・・・私や雄二より頭がいいのに?」

 

「ああ。だって考えても見ろよ翔子。自分の妹といつもいつもイチャイチャしていて恋人の姫宮とだってそうなんだぞ?いくらシスコンでもあそこまでしないだろ」

 

「・・・・・・確かに」

 

「だろ?だから予想だがシステムが、明久=シスコン=バカという方式をして頭がない騎士、デュラハンにしたんじゃないか?その辺りはどうなんだ学園長?」

 

「あー・・・・・・そうさね~・・・・・・おおよそは坂本の予想が正解だろうね。明久レベルのシスコンをシステムが異常(バカ)として認識したんだろうね」

 

雄二たちの酷い言われようが聞こえてきた。

 

「学園長これって元に戻るんですか!?」

 

「一応元に戻ると思うが・・・・・・・」

 

お祖母ちゃんの表情を見て僕はこの先の展開が読めてしまった。あ、お祖母ちゃんなにか企んでる。

そう思うのと同時に。

 

「実はこれでお化け屋敷をやってもらいたいさね」

 

うん、予想通り。予想通りなんだけど、一応。

 

 

「「「「「お化け屋敷!?」」」」」

 

 

僕らはまたツッコんだ。

あれ!?恵衣菜と零華いつの間に起きたの!?

 

「・・・・・・学園長、なんでお化け屋敷なんです?」

 

「清水のバカやFクラスのバカどものせいでここ最近我が校の評価が下がりっぱなしなんだよ。まったく、面倒なことしてくれたものさね」

 

「あ、それで評価向上と宣伝もかねてお化け屋敷ってことですか」

 

「ああ。予期せずシステムのオカルト面が色濃く出たからね。これを逃す手はないさね。それに丁度今は夏の季節だからね。お化け屋敷はもって来いなのさ」

 

「なるほど」

 

「それで私たちはなにを?」

 

「あんたたち生徒会役員にはこのお化け屋敷を作る作業をしてもらいたいさね」

 

「わかりました」

 

「それと、丁度補講とかも終わりさね?なら、全体でお化け屋敷を試験的にやってもらいたいさね」

 

「というと?」

 

「チェックポイントでも作って生徒たちの夏の遊びとして楽しんでもらうさね」

 

つまり、お化け屋敷型の攻防戦ということだ。

ではここで文月学園お化け屋敷のルールを説明するよ。

 

 

 

  文月学園お化け屋敷のルール

 

 

1:ペアは極力男女のペア。

 

2:お化け屋敷の恐怖判定は入る人に渡す、音量測定機能付きマイクから、一定のラインを超えたらその場で失格。どちらか片方でもラインを超えたらペアで失格となる。

 

3:チェックポイントはA~Dクラスまでの各4ヶ所に有り、4ヶ所全てを攻略できたら攻略するチームの勝ち、攻略出来なかったら驚かすチームの勝ちとなる。

 

4:視ている人も楽しめるよう支給されたカメラを必ず携帯すること。

 

5:お化け屋敷内の設備を故意に破壊することはしないように。

 

6:お化け屋敷内はキチンとルートの通りに進むこと。

 

7:驚かすチームは攻略者を物理的及び召喚獣でのバトルや妨害をしてはならない。

 

8:チェックポイントでの召喚獣での対戦は必ず二人一組のペアで行うこと。

 

9:相手を傷付けるようなことはしないようにしましょう。

 

10:以上のルールを元に、みんな仲良く、楽しく遊びましょう。

 

 

         承認  文月学園学園長 藤堂カヲル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後

 

 

「おーい、その天幕取ってくれー!」

 

「ここはどうする?」

 

「はい、次~!」

 

二年Aクラスの中ではほぼ全員の二年生がお化け屋敷に向けての装飾をしていた。

 

「うわ~。みんな凄いやる気」

 

「だな。まさか来ていた二学年全員が手伝ってくれるとは思わなかったぞ。しかもFクラスの奴らもいるしな」

 

雄二の視線の先にFクラスの生徒が黙々とお化け屋敷に必要な装飾を作ったりしていた。う~ん、あのFクラスがこうも落ち着いているなんて・・・・・・明日は雪が降るのかな?

 

「ねえ、坂本君」

 

「ん?どうした姫宮?」

 

「Fクラスの人たち・・・・・・あ、坂本君たちは除いてだよ。あの人たちに何かしたの?」

 

「あ~・・・・・・」

 

恵衣奈の問いに雄二は視線を泳がせた。

 

「雄二?」

 

「実はだな・・・・・・吉井妹が脅したと言うか、実力で屈服させたと言うかなんと言うか・・・・・・あ~、明久の妹がマジギレしてだな・・・・・・」

 

「はい?」

 

「ああ、なるほど」

 

雄二の言葉の意味を僕は理解できなかったが恵衣奈は理解できたみたい。え、どういうこと?

 

「一言で言うなら、アイツらは吉井妹の逆鱗に触れたと言うことだな」

 

「???」

 

疑問符を浮かべる僕に雄二が。

 

「姫宮、明久に説明頼む」

 

「あ、うん」

 

「どういうこと恵衣奈?」

 

「えっとね明久くん。零華ちゃんがFクラスの人たちにお話(OHANASHI)したということだよ」

 

今お話がお話(OHANASHI)って聞こえたのは気のせいかな?

 

「お話?」

 

「うん、お話(OHANASHI)

 

恵衣奈の言葉を復唱していると。

 

「お話がどうかしたのお兄ちゃん?」

 

装飾に必要な布を持って零華がやって来た。

 

「あ、零華」

 

「零華ちゃん、それって窓縁に架ける布?」

 

「そうですよ。それでお兄ちゃんたちどうしたの?お話がどうのこうのって言ってたけど」

 

零華が疑問顔で可愛らしく首をチョコンと傾けて聞いてきた。

うん、可愛い。写真に撮っておきたいぐらい。

零華を見てそう思っていると。

 

「おい明久」

 

「ん?なに雄二?」

 

「いや・・・・・・なんでスマホを持って吉井妹を撮ってるんだ・・・・・・?しかも連写で」

 

「へ?」

 

雄二に言われて自分の手元を見ると、そこには僕のスマホが握られていてカメラモードで零華を連写していた。

 

「お、お兄ちゃん・・・・・」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「あ、あれ!?いつの間に!?」

 

いつの間にか持っていたスマホを見て驚く。いつスマホを出したのかまったく分からなかった。

 

「無意識かよ・・・・・・吉井妹もだが、明久のやつシスコンがさらに極まってやがる・・・・・・」

 

「あははは・・・・・・」

 

慌てふためく僕に雄二は呆れた眼差しで見て、恵衣奈は苦笑いを浮かべていた。

そんなところに―――。

 

 

『『お前らうるせぇんだよ!!!!』』

 

 

Aクラスの扉を蹴破るかのよう勢いで開け、入ってくるなり大声で怒声を上げた三階のフロアではあまり見ない二人の男子生徒がやって来た。

 

「???」

 

「え~と・・・・・・?」

 

「どちら様?」

 

僕、零華、恵衣奈がそれぞれ口にすると。

 

「は!お前らは揃いも揃ってバカなのか?」

 

「そう言ってやるな夏川。吉井の頭は妹の事ばかりで埋まってんだ、しかたねぇだろ」

 

「そう言えばそうだったな常村」

 

何故かとてつもなくバカにされた気がする。

 

「まあ、零華のことをいつも思ってるのは当然ですけど」

 

そう首をかしげながら言うと。

 

「「シスコンかよ!?」」

 

目の前の男子生徒二人が同時にツッコんできた。

 

「私もお兄ちゃんのことをいつも思ってるよ?」

 

さらに零華が言うと。

 

「「コイツもかよ!?しかもブラコン!?」」

 

またしても二人のツッコみが響いた。

 

「あはは。何時ものことだね~」

 

のほほんと零華が言い、雄二たちもなぜかうなずくと。

 

「「何時もなのかよ!?しかも既に認知済み!?」」

 

三度目のツッコミが響いた。

そんなツッコミが響いたところに。

 

「一体何やってるのですか二人とも?あら、明久くん、零華ちゃん、恵衣奈ちゃん」

 

「葵姉さん!?」

 

「「葵お姉ちゃん!?」」

 

葵姉さんが男子生徒の後ろからAクラスに入ってきた。

 

「はい、そうですよ。それで、夏川君と常村君二人はここで何をしているんですか?」

 

「こ、小暮・・・・・・」

 

「別に、こいつらがうっせぇから文句を言ってるだけだ」

 

「ふむ・・・・・・」

 

葵姉さんが言った、目の前の男子生徒二人の名前の夏川と常村という名前に首をかしげる。

 

「(はて・・・・・・夏川に常村・・・・・・・どこかで・・・・・・・・・あ!)」

 

二人のことを思い出した僕は。

 

「召喚大会の時の常夏コンビ!!」

 

二人を指差して言った。

 

「「誰が常夏だぁぁ!!!」

 

「ふふっ・・・・・・」

 

常夏コンビ先輩がツッコミ、葵姉さんは手で口元をおおって笑う。

そこに零華と恵衣奈が。

 

「違うよお兄ちゃん!」

 

「そうだよ明久くん!あの人たちは―――」

 

「「変態先輩コンビ、だよ!!」」

 

ハッキリと同時に常夏コンビに向かって言った。

 

「「誰が変態先輩コンビだぁぁ!!!?」」

 

「ふふふふっ・・・・・・・・・」

 

さらにツッコむ常夏コンビに葵姉さんは肩を振るわせて笑っていた。

 

「お前らは人の名前すら覚えられないのかよ!」

 

「それで学年首席とか笑えるぜ!」

 

「しかたねぇだろ、首席とはいえバカなんだからよ」

 

「まっ、それもそうだな」

 

「「ギャハハハハハハハハ!!」」

 

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

常夏コンビの言葉に僕と恵衣奈、零華、そして葵姉さんは黙って常夏コンビを見た。最初にしゃべったのは。

 

「二人とも?」

 

「「ヒッ!?」」

 

妖艶な雰囲気から一転、悪魔のような微笑みを浮かべた葵姉さんだった。その葵姉さんを見た僕たちは。

 

「「「(あ、終わったなあの二人)」」」

 

と心に思った。

 

「こ、小暮?」

 

「な、なんだよ?」

 

「今、(わたくし)従兄妹(いとこ)がバカと・・・・・・お二人はそう言いましたよね?」

 

「「ひぃっ!!」」

 

「それは、私に対する嫌がらせですか?私は、私の従兄妹が知りもしない人にバカにされるのが我慢ならないのですよ。しかもお二人はこんなところで何をしているのですか?明久君たちがうるさいからと言いましたが、ここは本校舎。お隣の旧校舎とは違って防音設備が万全ですよ?しかも扉が閉まっていたのですから私たちのいた上の階にまで響くことはないと思いますが?違います?」

 

「「あ、ああ・・・・・・」」

 

「つまり、お二人は・・・・・・いえ、あなた方は勉強に飽きてフラフラしているところを明久君たち二年生が何か楽しげな事をしているのに気がついて、八つ当たりしたということですわね」

 

葵姉さんはAクラスの教室の扉前にいる三年生の人たちを視てそう言った。言われた三年生の人たちはバツが悪そうに眼を逸らした。

 

「つ、つうかお前はどっちの味方なんだよ小暮!」

 

「そうだ!なんで二年のガキどもを擁護すんだ!」

 

「あら?私はなにも二年生を擁護しているわけではありませんわ」

 

「はあ?」

 

「じゃあなんでソイツらを庇うんだ!」

 

「私が庇うのは私の従兄妹である明久君と零華ちゃんと妹同然の恵衣奈ちゃんですわ。他にも、明久君たちの友達は擁護しますが、別に二年生全体を擁護する気は更々ありませんわ。特に、そちらの二年Fクラスの方々はですが。ああ、もちろん、坂本君らは擁護する側ですわよ」

 

「葵姉さん・・・・・・」

 

凛々しく、年上の風格を持つ姉さんとは違う風格を持つ葵姉さんの後ろ姿を視る。

両者の無言の沈黙が漂っていると。

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

「学園長?」

 

お祖母ちゃんが入ってきた。

 

「やれやれ、状況を視に来たんだがどうやら面白いことになってるみたいじゃないか」

 

お祖母ちゃんのニヤリと笑いながら言う言葉に苦笑を内心浮かべる。

 

「ふむ。よし、決めたよ。三年もこの肝試しに参加するように。これは学園長命令だよ」

 

『『『『な・・・・・・っ!』』』』

 

常夏コンビたち三年生がお祖母ちゃんの通達に眼を白黒させた。

 

「正確に言うなら、補習と夏期補講に参加している二年と三年は全員余すとこなく参加しな。いいね。詳しい話は坂本から聞くんだね。坂本、ルール表は出来てるさね?」

 

「ああ、ここにある」

 

すでにプリントされてる肝試しのルール表の入ったクリアファイルを持ち上げて言う。

 

「うむ。今回の肝試しを学園行事として、学園長が認可する!ルールを守り生徒同士、切磋琢磨しあうんだね」

 

そう言うとお祖母ちゃんは満足そうに教室から出ていった。

 

「さて、つう訳だがセンパイ。どっちが脅かす側をする?」

 

「んなの俺たちに決まってるだろ」

 

雄二の言葉に常夏コンビの片割れ、坊主頭の夏川先輩が言った。

 

「なら、俺たちが驚かされる側だな」

 

「ああ。テメェらを徹底的に叩き潰してやるよ。前からお前らは気に入らなかったんだ・・・・・・!」

 

「ふっ。いいだろう。俺もアンタたちにはムカついてんだ」

 

坊主先輩と雄二の間に火花が散ってる気がする。

 

「なあ坂本。この肝試し、負けた側に罰ゲームとかねぇのかよ?」

 

「あ?」

 

「なんだねぇのかよ。つまんねぇな」

 

「・・・・・・いいか明久?」

 

坊主先輩の言葉に雄二は小声で聞いてくる。

僕が小さくうなずくと。

 

「いいだろう。負けた側は二学期にある体育祭の準備や片付けを相手の分まで引き受ける、これでどうだ?」

 

来学期の初手頃に予定されてる体育祭。それは文化祭に並ぶ結構な大掛かりなイベントなため、準備や片付けもそれなりに手が掛かる。それを相手の分までやるとなるとその苦労は計り知れないが、罰ゲームというのにしてはちょうど妥当だと思う。雄二の言った意味を理解したのか葵姉さんは苦笑を僅かに浮かばせていた。

 

「おいおい坂本。お前にしちゃ随分ヌルい提案じゃねぇか。さてはテメェ、勝つ自信がねぇな?」

 

「この罰ゲームは学園長ら学校側に知らせてないからな。知っているのはここにいる俺たち生徒だけだ。勝手に決める罰ゲームとしてはこの程度が妥当だろ?」

 

「・・・・・・けっ」

 

「安心してくださいセンパイ方。僕と勝負がしたいならチェックポイントにでもいてくれれば、相手をしてあげますよ」

 

「そういうことだ。俺と明久に個人的な勝負がしたいならそこにいたらいい」

 

常夏コンビの眼を視て僕と雄二は言う。

 

「面白れぇ、その話乗ったぜ」

 

「ああ。テメェらに年上の怖さを思い知らせてやる」

 

僕と雄二、常夏コンビとの間にバチバチと火花が飛び散り一気即発にでも成りかねない雰囲気だ。

こうして、肝試しは三年生をも巻き込んだ大規模な催しになった。

 

 

 

 











次回 『肝試しは内外ともにご注意を』 Let GO to The NextStory!


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第Ⅱ問 肝試しは内外ともにご注意を

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

葵)明久君と恵衣奈ちゃんが音ノ木坂学院から帰ってきて早数日。来学期に向けての日々の中、明久君たちはカヲルお祖母様からの頼みでお化け屋敷をすることになりました。二年生たちで準備しているそんな中、私のクラスメイトである常夏コンビ君(笑)が明久君たちにいちゃんもんを付けました。そこで私はニコリと笑いながら(殺気を出しながら)常夏コンビ君たちにお話をしました。しかし、そんなところにお祖母様が二年生と三年生による肝試しを学園行事として行い、私たちは肝試しを行うことになりました。私たちが驚かす側ですけど私の衣装はなんでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

なんやかんやあり、お化け屋敷ではなく肝試しを二年生と三年生で行うことになった翌日、僕たちは驚かされる側、つまり攻略する方の待機場所である旧校舎のFクラスにいた。

 

「あー、そんじゃ今から学年対抗肝試しを行う。各自ペアを組んでくれ」

 

雄二の声でそれぞれがペアを組み始める。

 

「康太、カメラの方は?」

 

「・・・・・・問題ない。すでに準備万全」

 

僕の問いに、Aクラスに設備されてる大型のプラズマディスプレイと複数のカメラをリンクさせながら康太は答えた。さすが仕事が早い。そう思ってると雄二が。

 

「それじゃ、夏の風物詩を楽しむとするか」

 

「だね」

 

こうして僕たち二年生と三年生による学年対抗肝試し大会が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ね、ねぇ・・・・・・。あの角、怪しくない・・・・・・?》

 

《そ、そうだな・・・・・・。何かでてきそうだよな・・・・・・》

 

 

康太が設置してくれたAクラスのプラズマディスプレイの画面には、尖兵として出撃したBクラスの男女ペアが映っていた。映像と音声は、二人の持つカメラからのものだ。

まず最初に攻略するところは、作りの関係上Bクラスの教室のチェックポイントだ。そこからDクラス、Cクラスと一クラスずつ攻略していき、最後のAクラスにあるチェックポイントを撃破したら僕たちの勝ちだ。

 

「Bクラスのモチーフは江戸時代の町並みなのかな?」

 

「みたいだな。まあ、肝試しっていった江戸時代とかの古ぼけた文明文化が最適だろ」

 

「だね」

 

演出のために天井からの光量が絞られていてボヤけた感じのその画は、僕らのいる教室で画面越しに見ても結構なスリルがあった。

 

 

《そ、それにしてもずいぶん凝ってるわね》

 

《だ、だが所詮は作り物だろ・・・・・・。脅かしかたもたかが知れて・・・・・・》

 

 

二人が互いを見ようとしたその瞬間、

 

 

《 《ぎゃぁああああーーっ!?!?》 》

 

 

突如、二人の真ん中に1つ目の女の子が現れた。というか何時からあの二人の間にいたんだろ?そう思っている間も、画面の二人は大きな悲鳴を上げていた。まあ、さすがにいきなり現れたら驚くし恐怖もあるよね、うん。

そう脳裏に思い侍らしてると。

 

 

『ブブー!』

 

 

画面からブザーが鳴った。

 

「・・・・・・失格」

 

康太が言ったように、二人の持つカメラの音声のデジタルメーターは声に比例して徐々に跳ね上がっていき、MAXと表示された失格ラインに到達していた。ちなみにこのブザーが鳴ると失格になる仕様だ。

そうして次々と肝試しに挑戦していくペアがいるが、そのペアも続けて失格となっていった。

あ、今更だけどFクラス(僕らは除いて)は男同士のペアだ。理由は言わなくても分かるだろう。姫路さんと島田さんは女子同士の、この二人のペアで決まってる。とまあ、それは置いといて。

 

「そう言えば零華と恵衣奈は大丈夫?」

 

僕の両隣で見ている妹と恋人に聞いた。

 

「う、うん。大丈夫・・・・・・」

 

「お、おおお兄ちゃんがいるから大丈夫」

 

恵衣奈と零華は僕の両腕にしがみついて答えた。

いや、しがみつくのは良いんだけどあまり強くしがみつかないでほしい。何故かというと。

 

「(ふ、二人の胸がダイレクトに・・・・・・!)」

 

二人がしがみついてくると、腕に二人の柔らかな胸の感触が伝わってくるのだ。慣れてるとはいえ少し困る。いや、慣れてていいのかと思うけど・・・・・・。零華は母さんの娘だからか姉さん同様、一般の高校2年生の大きさに比べるとかなり大きい。多分絵里と同じぐらい。で、恵衣菜も恵衣菜の母親の花音さんの遺伝子引き継いで、希と同じくらいにまで育ってる。ちなみに、僕ら幼馴染みの間の中で胸部の話は禁忌とされてる。理由は言わずもがな海未とツバサの二人がハイライトを無くした目で見てくるからだ。あれは正直怖い。以前その話を穂乃果がしてしまったとき、穂乃果に対して海未とツバサの恨み辛みとでも言うべきことが起こり、ことりと零華、恵衣菜は僕に抱き付いてビクビクと震えていた。正直僕も怖すぎた。だって二人とも真顔で能面みたいな表情なんだもん!しかも眼に光が灯ってなくて幽霊みたいだった!

 

「あの、二人とも。出来ればもう少しだけしがみつくの緩くしてくれないかな」

 

「「いや!」」

 

僕のお願いは即答で拒否られた。

というか拒否を拒否出来なかった。理由は、二人が涙目でこっちを見てきたからだ。これは無理。というか両腕が自由だったら今すぐスマホのカメラ機能で零華の顔を撮りたかった。何故か?それは零華の表情が健気で眼がウルウルとしていて可愛かったからだ!もちろん恵衣奈も可愛いが零華も可愛いのだ!!

まあ、それは置いといて。僕は二人に訳を話す。

 

「あのね恵衣奈、零華。二人がしがみついてくると二人の胸が当たるんだけど・・・・・・」

 

「いいの!お兄ちゃんだから当ててるんだもん!」

 

「零華ちゃんの言う通りだよ!私も明久くんだからだもん!」

 

ナニその僕なら何でもいい理論?まあ、僕も零華や恵衣奈、穂乃果たちのためなら命張れるしいいのかな?

そう思っていると。

 

「お前らって何時でもどこでもシリアスを壊すよな・・・・・・」

 

「まったくじゃ」

 

「・・・・・・肝試しの恐怖感が和らいでるどころか」

 

「逆に甘くなってるな。・・・・・・空気が」

 

「ああ。見ている俺たちが恥ずかしくなるっつうの」

 

「中学の時もそうだったが、吉井が明久の事をお兄ちゃん呼びし始めてから明久へのスキンシップが過激になってやがる」

 

「ああ・・・、そう言えば中学の時もそうだったな」

 

「僕としては出来ればTPOを弁えなくてもいいから、責めてもう少しだけ考えてほしい」

 

「つうかこのやり取り何度目だ俺たち?」

 

「もう数え切れぬほどやっておるの」

 

「・・・・・・日常風景」

 

雄二、秀吉、康太、須川くん、横溝くん、恭二、平賀くん、久保くんが呆れた表情で言ってきた。

 

「雄二、僕らはシリアスを壊してないよ?」

 

「いや、壊してるわ!」

 

「まさかの無自覚とはの」

 

「・・・・・・無自覚のシリアスブレイカーの二つ名は伊達じゃない」

 

「なにその二つ名!?」

 

まさか僕に新しい二つ名がつけられているとは思わなかった。

そうツッコミ思っていると。

 

「平賀くん行きましょう」

 

「久保くんも時間よ」

 

平賀くんと久保くんのパートナーである三上さんと若林さんが一緒にやって来た。

 

「もうそんな時間か」

 

「みたいだね。それじゃあ行こうか若林さん」

 

「ええ」

 

「気をつけてね4人とも」

 

僕は肝試しに向かう4人に注意を言った。

 

「う~ん」

 

「ど、どうしたの明久くん」

 

「いや、なんとなくだけど嫌な予感がするんだよね」

 

「嫌な予感?」

 

「うん。なんか、とてつもなく嫌な予感。気のせいだとは思うけど」

 

そう言って僕は視線をプラズマディスプレイに戻した。

ディスプレイには久保くんと若林さんペアと平賀くんと三上さんペア、さらにあと3ペア計6人が映っていた。

久保くんたちが今攻略しているのはBクラスだ。

え?何故まだBクラスなのかって?理由はBクラスを攻略できてないからだ。まあ、Bクラスのチェックポイントにまではたどり着いたんだけど、そこには案の定Aクラスの人が配備されていてたどり着いた人はみんな倒されたのだ。と言ってもたどり着いたのはFクラスの人なんだけど。他の人はたどり着く前に三年生の巧妙な仕掛けによって失格になっていた。ちなみにFクラスの彼らは零華のことを・・・・・・・・・・。

 

『『行ってきます(あね)さん!!』』

 

『だから姉さんじゃないっていってるよね!!』

 

うん、零華。僕の可愛い妹よ君は彼らに何をしたんだい?どうやったら零華のことを姉さん何て言うのかな!?

で、今も。

 

「姉さん!こちらにどうぞ!」

 

「次は何を致しましょうか」

 

「なんなりとご命令を!」

 

膝をついて頭を垂れてまるで家臣か、奴隷?なのかな。そんな感じのFクラスのバカがいた。

 

「雄二、あれはなに?」

 

雄二に視線を向けると。

 

「・・・・・・・・」

 

雄二は疎か、霧島さんも秀吉も全員が視線をそらした。

そこに。

 

「私は姉さんじゃないっていってるよね!もう何度目ぇ!?」

 

零華の悲痛の絶叫が響き渡った。

 

「お兄ちゃ~ん!助けてぇ~!」

 

「ふぐっ!」

 

目尻に涙を浮かべて抱き付いてくる零華に、僕は写真に撮りたい思いを持っていたが、次の瞬間にお腹付近に来た零華の頭の衝撃で吹き飛んだ。

 

「れ、零華!?」

 

「うぅ!私、姉さんじゃないよ~!お兄ちゃんの妹だもん~!私のお姉ちゃんは翠お姉ちゃんと葵お姉ちゃんとお兄ちゃんと私のお姉ちゃんだけでいいよ~!!」

 

本音どころか懇願まで含まれてる零華の言葉に僕はなんとも言えない表情を作った。

ちなみに恵衣菜は呆然としつつもちゃんと僕の腕に抱きついて、自分の年相応の豊かな胸を押し付けていた。

 

「(あー。なにこのカオス)」

 

そんなこんな色々ありながらも零華の頭を撫でて宥めながら久保くんたちの様子を見ていると、久保くんと若林さんのペアがBクラスを撃破した光景が画面に映し出されていた。

 

「久保君はだけど、若林さんかなり点数が上がっていたね」

 

今の勝負の互いの召喚獣を見てそう言葉に漏らした。

何故ならEクラス所属の若林さんの点数がEクラス平均の点数の数倍は上がっていたからだ。点数で言うならばBクラスの中位くらいだ。

 

「この間の期末テストの時、久保君と一緒にかなり勉強したみたいだからね。平賀くんと三上さんも一緒に」

 

「へぇー。久保君なら教えも上手だから納得だよ」

 

事実、たまに分からない問題があるときとか久保くんに教えてもらったりするときもあるのだが教え方が上手い。要点を押さえ、分かりやすく尚且つ難しくならないように簡潔に纏まってるのだ。

 

「この調子で久保君たちが全部クリアしてくれたらいいんだけど・・・・・・」

 

「さすがにそう上手くはいかないと思うよ恵衣菜?」

 

「うぅ。分かってるよ~」

 

そんなやり取りをしていると。

 

「あ、言っとくが明久。お前と姫宮、吉井妹は三人でペアだからな?」

 

雄二が思い出したようにいってきた。

 

「はい?」

 

「え?」

 

「へ?」

 

「いや、仕方ないだろ。姫宮や妹を他の男と一緒にペア組ませるわけにはいかないんだからよ(まあ、というのは建前なんだがな)」

 

なんか最後の方雄二が小声で言ったけどうまく聞き取れなかった。

 

「それは当然だけど、他の人がよく承諾したね?」

 

僕がそう訪ねると。

 

「いや、こう言っちゃあなんだが・・・・・・この案は満場一致で即可決だった」

 

雄二が飽きれ笑いを浮かべて言った

 

「そ、そうなんだ」

 

雄二の台詞に僕は思わず引き攣った表情を出す。

そのやり取りをしている間にも画面中では。

 

 

《若林さん、大丈夫かい?》

 

《え、ええ。久保くんは、ど、どうかしら?》

 

《僕はさすがにこういうのに慣れてなくてね。脚が生まれたての子鹿のように震えてるよ》

 

《まったく震えていないように見えるのは気のせいかしら・・・・・・。しかもその表現どこか違うよな・・・・・・》

 

 

BクラスからDクラスで攻略しているの久保くんと若林さんの会話や。

 

 

《うわっ!》

 

《み、三上さん!大丈夫?!》

 

《え、ええ。大丈夫。ありがとう平賀くん》

 

 

同じくDクラスで躓いて転んだ三上さんに手を差し出す平賀くんの姿が映っていた。

で、その光景を見て。

 

『『『『『チ・・・・・・ッ!!』』』』』

 

教室中から舌打ちと。

 

『『『『『キャアアアッ!!』』』』』

 

歓喜の声がそこら中から上がった。

誰がやっているのかと思い、チラッと周囲を見ると前半は男子、後半は女子だった。うん、分かりやすい。

そう苦笑いのようなことをしながら画面を見る。ちなみにその間にも恵衣菜と零華は僕に抱き付いたままだった。

平賀くんと三上さんの映る画面を見ると、装飾の草がガサゴソと揺れそれに驚いた二人が軽く抱き合っている姿が映し出されてた。

 

 

《キャア・・・・!》

 

《ッ・・・・・・!》

 

《 《あ・・・・・・》 》

 

 

抱き合っていて恥ずかしいのかすぐに離れながらも顔を赤くする二人。

 

「二人ともお似合いだね」

 

「そうですね~」

 

「うん」

 

と、僕たちはなんか的外れのような感想を口にした。

で、そんなところにも。

 

『『『『『チィッ・・・・・・ッ!!』』』』』

 

彼女がいなくて疎ましい男子たちからの舌打ちが大きくなった。

女子は女子で歓喜の声がさらに上がる。

 

 

《大丈夫、三上さんのことは俺が守る》

 

 

『『『『『チィッッッ・・・・・・ッ!!!!』』』』』

 

さらに上がる舌打ちの声に僕はかなり引いた。というより、怖い。

まあ、禁忌の話題をしたときの海未とツバサや寝ていたところを邪魔されて激怒状態の海未ほどじゃないけど。

そう思っていると。

 

「ん?」

 

スマホにメッセージが届いた。

内容を見ると。

 

〈明久、今私の胸のことやら何か邪な事を思ってませんでしたか?〉

 

〈明久くん、あとでお話ね?〉

 

海未とツバサからのメールが届いていた。

メールの内容に僕は思わず辺りを見回す。

何故なら、丁度いいタイミングで届いたからだ。しかも読心術でも使えるのだろうか海未とツバサは。

そう冷や汗を流していると。

 

「あれ、今何か変なものが・・・・・・」

 

零華が画面を見てそう言った。

 

「変なもの?」

 

画面には平賀くんと三上さんの甘々しいシーンが映し出されてる。

 

 

《こんな子供騙しのお化けなんて―――――》

 

 

平賀くんが三上さんと向き合って言ったその瞬間。

平賀くんと三上さんの正面にあった装飾の草から何かが飛び出してきた。

 

 

《 《ぁ・・・・・・っ!!》 》

 

 

飛び出してきたものを見て平賀くんと三上さんの顔が恐怖に染まった。そして、飛び出してきたものにスポットライトの光が当たり、飛び出してきたものを照らす。

暗闇の中の甘い空間から一転して、光の溢れ出した画面の中央には、常夏コンビの片割れである坊主先輩こと夏川先輩がスポットライトの光を浴びていた。

 

 

 

 

――――――全身フリルだらけの、黒いゴシックロリータファッション姿で。

 

 

 

 

 

 

『『『『『ぎゃぁあああーーーーっ!!』』』』』

 

『『『『『うわぁぁあああーーーーっ!!』』』』』

 

 

 

画面の内外問わず、そこら中から響き渡る悲鳴と絶叫。画面には化粧をし恐怖の象徴とも言える気持ち悪い常夏コンビの片割れの夏川先輩がドアップで映し出されていた。

 

「や、やりやがったなクソ野郎!」

 

「汚いッ!やり方も汚ければ映っている絵面も汚いよ!」

 

「きゃぁああーっ!お化け!お化けよりも怖いよ!」

 

「いやぁぁああーっ!お兄ちゃぁん!怖いよー!怖いよぉ!!」

 

「・・・・・・雄二、私もう無理・・・・・・」

 

「翔子ぉ!しっかりしろ翔子!」

 

「秀吉くん、あとはお願い・・・・・・ね」

 

「麗子!?しっかりするのじゃ麗子!」

 

「りょ、亮・・・・・・」

 

「浩二・・・・・・」

 

「綾香!しっかりしろ!」

 

「大丈夫だエレン!俺がいる!」

 

「き、恭二・・・・・・」

 

「友香、目を閉じるんだ!あれは見てはならないやつだ!」

 

辺りからは阿鼻叫喚な地獄絵図のような光景が出来上がり、雄二たちはそれぞれの彼女の介抱を。Fクラスのメンバーをはじめとした人はあちこちで失神や嘔吐などが起こっていた。さしもの僕も想定外のグロ画像に悲鳴を叫ばずには要られない。

そして最悪にもその悲鳴を呼び水として。

 

 

《今の悲鳴、美子?!》

 

《平賀くん何かあったのかい―――――っ!?》

 

《きゃぁあああーーーっ!》

 

《うわぁぁあああーーーっ!》

 

 

若林さんと久保くんが来てしまい、おぞましい夏川先輩の姿を見て悲鳴を上げてしまった。いや、あれを見て悲鳴を上げるなと言う方が難しい!これなら、怒ってる海未やツバサの方がまだ可愛く見える!

そう思っている最中も画面の中では―――。

 

 

《ぎゃぁあああーっ!!誰か、誰か助け――》

 

『ブブー!』

 

《嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!頼むからここから出してくれ!》

 

『ブブー!』

 

《助けてくれ!それができないならせめて殺してくれ!》

 

『ブブー!』

 

《☆●◆▽┐♯♭×っ!?》

 

『ブブー!』

 

 

 

「・・・・・・・・・・突入部隊・・・・・・全滅・・・・・・っ!」

 

「くそっ!みんなが!」

 

突入した部隊は全員が壊滅してしまった。カメラ越しに見ていた僕らでもこのダメージだ。直接見た久保くんたちは当分社会復帰は疎か、一生トラウマが出来てしまったかもしれない。

 

「どうするのじゃ?こんな恐ろしい敵に勝つ方法など!?」

 

確かに秀吉の言う通り、こんなおぞましい敵に勝つ方法なんて!

そう思っているとところに。一人の男子がスクッと立ち上がり言った。

 

「俺に任せろ」

 

「「「「「ムッツリーニ!」」」」」

 

あれ、かなり久しぶりに康太のことムッツリーニって言ったような・・・・・・。

そんな考えはさておき。

 

「ボクもいくよ。ムッツリーニくん」

 

「・・・・・・」

 

工藤さんの台詞に康太は静かに、小さく頷き。

 

「・・・・・・あの坊主に、真の恐怖を教えてやる」

 

 

 

 

 

 

 











次回 『一難去ってまた一難!?』 Let GO to The Next BAKALiVE!


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第Ⅲ問 一難去ってまた一難!?

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

雄二)ついに俺たち二年と常夏コンビ率いる三年の学年対抗肝試し大会が幕を開けた。三年の巧みな作戦に失格者が多く出るがまあ、それがあってこその肝試しだろう。そんな、肝試しを楽しく盛り上がっていたのだが、突然現れた常夏コンビの一人、夏川こと坊主センパイの気持ち悪い下劣で卑劣な姿によって俺たちの仲間。久保をはじめとした多くの二年が気絶や失神によって倒れた。そこで俺たちはムッツリーニと工藤を投入することにした!さあて、あのクソ坊主に目にもの見せてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

 

ムッツリーニこと、康太と工藤さんのペアがお化け屋敷の中に入ってしばらくすると、あの気色悪い常夏コンビ先輩の片割れ、坊主頭の夏川先輩がいる場所にまで来た。

 

「みんな!眼を瞑るんだ!特に女子は見てはダメだ!」

 

あの気持ち悪い、ゴシックロリータを着た先輩が映る前に、僕はみんなに聞こえるように声を高くして忠告する。そんな僕の両脇には。

 

「お、お兄ちゃん・・・・・・」

 

「あ、明久くん、土屋君と愛子ちゃん大丈夫かな・・・・・・」

 

眼をギュっと瞑った妹の零華と不安げに言う幼馴染みの恵衣菜が抱き付いていた。というか、さっきからずっとこの体勢だ。雄二たちもそれぞれ自分の恋人を不安がらせないようにしている。

そこに。

 

「よ、吉井君。土屋君と工藤さんで大丈夫なのかい?」

 

よれよれ状態・・・・・・というより、瀕死状態の久保くんが聞いてきた。隣には平賀くんがいる。

あれの犠牲になった人は葵姉さん率いる一部の三年生が連れてきてくれた。その時に謝罪もされたけど。どうやら三年生側でも同じような現象が起きてるらしい。との葵姉さん談。

 

「(そう言えば葵姉さん、こっちに着たときなんかマントみたいなのを羽織って服を隠してたけど・・・・・・・なんでだろ?)」

 

そんな疑問がふと過りつつも。

 

「あの坊主頭の先輩に勝つためには康太と工藤さんに任せるしかないと思う」

 

久保くんと平賀くんに言う。

 

「そう言えば土屋君はなにかを持って行っていたね」

 

「そういえばそうだな。確か・・・・・・鏡だったか?」

 

「鏡?」

 

康太が何故鏡を持っていったの分から・・・・・・・・・・・・・・・分かってしまった。

 

「ああ。なんとなく分かった気がするよ」

 

「?」

 

「どういうことだい吉井君?」

 

「たぶん康太は――――――するつもりなんだよ」

 

「「ああ・・・・・・」」

 

僕の説明に久保くんと平賀くんは理解したみたいだ。

そんな話をしているうちに康太と工藤さんは坊主頭の夏川先輩の近くまで来ていた。

 

 

《ムッツリーニ君、この先だよね?あの気色悪い面白い人がいるのって》

 

《・・・・・・ああ。準備はできてる。やるぞ愛子》

 

《りょ~か~い》

 

 

そんな会話が聞こえてきた。

そして。

 

 

《ヒャッハアアァァァ・・・・・・・・!!?》

 

 

奇声を上げて康太と工藤さんを驚すために出てきた坊主先輩は途中で声が止まった。何故かというと。

 

 

《・・・・・・・・・・・・ブハッ!ケポォ!!》

 

 

康太が持っていった等身大の鏡で己の姿を見たからだ。

そして案の定坊主先輩は・・・・・・・・嘔吐した。

 

『『『『『うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!』』』』』

 

僕らは康太と工藤さんが旨くやったことに歓声をあげる。

その声はクラス中から沸き上がった。

 

 

《て、てめぇ!なんてもんを見せやがる!思わず吐いちまったじゃねぇか!》

 

《・・・・・・吐いたことは恥じゃない。それは人として当然のこと》

 

《くそっ。想像を絶する気持ち悪さに自分で驚いたぜ・・・・・・。どうりで常村や着付けをやった連中が頑なに鏡を見せてくれねぇワケだ・・・・・・》

 

《・・・・・・当たり前。その姿は見ていてあまり気分が良いものじゃない》

 

《確かにねぇ。着付けをやった先輩たちにちょっと同情するかも。ね、ムッツリーニ君》

 

《・・・・・・工藤に同意。これはあまりにも一部の三年生が可哀想すぎる》

 

《なにサラッと俺のことディスってやがんだ!?》

 

《それにしてもムッツリーニ君。この先輩、ほんの少しだけ面白いね。来々世でなら知り合いになってあげてもいいかもって思っちゃうよ》

 

《・・・・・・・止めておけ工藤。それは来々世のお前が可哀想だ》

 

《無視すんな!って、ちょっと待てお前ら!お前ら俺の現世を全面否定してねぇか!?つうか来々世って生まれ変わってからまた生まれ変わりじゃねぇか!完全に別人だろうが!?しかも来々世でも知り合いどまりかよ!》

 

《あ。ごめんなさい。あまり悪気はなかったんです変態女装趣味の坊主先輩》

 

《純粋どころかドス黒い悪意しか見られねぇのは気のせいか!?しかもなんだその変態女装趣味は!好きでこんな格好してるわけじゃねぇよ!って待てやコラ!てめぇナニ人のこんな格好を撮ってやがるんだ!?》

 

《・・・・・・・ネットに配信し拡散させる。さらに海外のホンモノサイトにUPする》

 

《じょ、冗談じゃねぇ!覚えてやがれぇぇっ!!》

 

《バイバーイ!》

 

 

逃げ去るように走っていく坊主先輩こと夏川先輩を見て僕らは安堵した。これで、あのおぞましい驚異は去った。

 

「それにしても工藤さんがあんなこと言うなんてね」

 

工藤さんが誰かをああいう風に罵倒したりするのを見たことない僕はそう呟いた。

 

「そう言えば入る前、根本君と友香ちゃんに何か聞いていたような・・・・・・」

 

零華が思い出すようにいうと。

 

「ああ。それはさっき工藤に相談されてな」

 

「思ったことをそのまま口にすれば良いってアドバイスしたのよ」

 

「恭二、友香さん」

 

丁度いいタイミングで恭二と友香さんのペアが来た。

確かに、恭二と友香さんらしいアドバイスに僕は納得した。

 

「ところで二人はあの映像大丈夫だった?」

 

僕が二人に訪ねると。

 

「うっ・・・・・・・」

 

「友香はもちろんのこと、さすがの俺も無理だった」

 

「ええ。今日は悪夢に出るかもしれないわ」

 

さすがの恭二と友香さんも耐えられなかったらしい。まあ、当然といやそうなんだが。

 

「そういうわけで恭二、今日家に泊まりに来てくれるかしら」

 

「わ、分かった。さすがの俺もあれを見た夜は怖い」

 

何故かトントン拍子で恭二は友香さんの家にお泊まりにいくことが決まっていた。早いね。

二人の会話に僕がそう思っていると。

 

「あ、二人がチェックポイントに着いたみたいだよ」

 

恵衣菜が画面を観て言った。

恵衣菜の声につられて画面を見ると、画面にはチェックポイントにいる三年生と三年生と対峙する康太と工藤さんが映っていた。

 

 

《ようやく来たか》

 

《さっそく始めようぜ》

 

《 《試獣召喚(サモン)!》 》

 

 

 

 

 

 保健体育

 

 

 

 

 三年Aクラス 市原両次郎 303点

        名波健一  301点

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ここのチェックポイントの科目は保健体育なんだ」

 

画面に映る科目を見て僕はそう口に出した。

 

「これは――――」

 

「土屋君と愛子ちゃんの勝ちかな?」

 

「かもね」

 

僕らが画面を見つつそう言うと、画面の中の康太と工藤さんも召喚獣を呼び始めていた。

 

 

《 《試獣召喚(サモン)!》 》

 

 

康太の召喚獣はタキシード姿で、顔色が悪かった。多分あれは――――。

 

「あれ、吸血鬼かな?」

 

僕が康太の召喚獣がなんのお化けか言ってみると。

 

「あはは。確かに、土屋君のイメージが出てるね」

 

「土屋君はいつも血を欲してるイメージが強いからかなお兄ちゃん?」

 

「多分ね」

 

「土屋君の召喚獣が吸血鬼なのは分かるけど、愛子ちゃんの召喚獣。あれって・・・のっぺらぼう・・・・・・?」

 

恵衣菜の言葉の通り、工藤さんの召喚獣は顔がないお化け、いわゆるのっぺらぼうだった。

 

「工藤さんの召喚獣がのっぺらぼうなのはどうしてだろう?」

 

「さあ?」

 

「なんでかな?」

 

僕たちがそんな疑問を抱きながら画面を見ると。

 

 

《ムッツリーニ君。先輩たちの召喚獣、なんだか強そうだね。召喚獣の操作だってボクたちより一年も長くやってるし。結構危ないかな?》

 

《・・・・・・・確かに、強い。だが―――――》

 

 

そういうと康太と工藤さんの召喚獣は素早い動きで三年生の召喚獣を翻弄し。

 

 

《―――――俺たちの敵じゃない》

 

《確かに、ね》

 

 

一瞬の、瞬きすら許さないような刹那の後、三年生の召喚獣であるミイラ男とフランケンは地に臥した。しかも、康太と工藤さんの召喚獣と一度も組み合うこともなく、一瞬のうちに決まった。

やがて康太と工藤さんの召喚獣の点数が表示された。表示された二人の点数はそれぞれ。

 

 

 

 

 

 保健体育

 

 

 

 

 二年Fクラス 土屋康太 876点

 二年Aクラス 工藤愛子 743点

 

 

 

 

 

 

と、表記されていた。

 

「うわぁ、相変わらずすごい点数」

 

二人の700点超えの点数を見て思わず僕はそう声に出した。僕でも保健体育ではあんな点数は取れない。まあ、日本史とかならいけるけど・・・・・・。とまあ、それはおいといて。

 

「雄二、今の攻防、何があったか見えた?」

 

僕はすぐ傍で霧島さんの隣で腕組みして立っている雄二に今の攻防について訪ねる。

 

「ハッキリと見えた訳じゃないが、ヴァンパイアの方は一瞬で狼に変身して相手を切り裂いてもとの姿に戻っていた」

 

「へぇー。のっぺらぼうの方は?」

 

「のっぺらぼうの方は一瞬のうちに着物を脱いで全裸になり、相手をボコボコにしてまた着物を着ていた」

 

「なんで脱ぐ必要があるのじゃ・・・・・・」

 

「ふむふむ」

 

「そして、その一瞬のうちにムッツリーニは出血・止血・輸血を終わらせていた」

 

「あ、さすが康太。そこにはちゃんと反応するんだね」

 

「だな。つうかおまえも視れただろうが」

 

雄二がそう少し呆れたように言うと秀吉が。

 

「今のを見れるなど普通はできぬはずなのじゃが、何故だれもツッコまないのじゃ・・・・・・」

 

秀吉がなにか言っているが僕と雄二は聞こえない振りをした。

まあ、僕も雄二が言ったような映像を見えていたんだけど。

 

「これで次はCクラスだね。このまま康太と工藤さんのペアが全部クリアしていってくれるといいんだけど・・・・・・」

 

「まあ、そう巧くは行かねえだろうな」

 

「だろうね」

 

僕と雄二がその康太と工藤さんの快進撃ながらの進み具合を観ていると。

 

「え・・・・・・・」

 

「あれ・・・・・・・」

 

「へ・・・・・・・」

 

僕と恵衣菜、零華は思わずすっとんきょうな声をあげた。

なぜなら、画面に映り康太と工藤さんの目の前にいたのは――――――。

 

 

 

 

 

 

 

《ようこそ、ここまでいらっしゃいました。土屋君と工藤さん》

 

 

 

 

 

 

 

 

長い髪を結い上げ、色っぽい仕草で淡い紫の着物を上手く着崩して着ている葵姉さんの姿があった。

 

「葵姉さんっ!??」

 

「葵お姉ちゃん!?」

 

「葵さん!?」

 

予想外というかなんというか、驚きがかなりある僕らは揃って声をあげた。

 

「え!?ちょっ!?なんで葵姉さんがいるの!?」

 

「お姉ちゃんは三年生だから脅かし役なのは分かるけどそれはなんか違うよ!?」

 

「ていうかこれって色仕掛けだよね!?」

 

僕らは声を早く捲し上げて言う。

ていうか葵姉さんが相手となると、いくら康太でもこれはアウトだ。何故ならば――――――。

 

 

《・・・・・・っ!》

 

《こ、康太くん!しっかり!》

 

《・・・・・・な、なんの、これしき・・・・・・》

 

《ふふふ。頑張りますわね土屋君》

 

《・・・・・・・こんなところで・・・・・・負ける・・・・・・わけには・・・・・・・!》

 

《そう言う割にはものすごい鼻血の量だよ康太くん?!》

 

 

工藤さんの言う通り、康太の足元にはおびただしい量の血があった。それはすべて、康太の鼻血である。というか――――

 

「毎回毎回思うけど、康太ってなんであんなに鼻血出してるのに生きてるんだろう?」

 

何時も不思議に思っていたことを口にした。

 

「なんでだろうね雄二――――って、あれ?」

 

隣を見ると、そこに雄二の姿はなく。

 

「・・・・・・・雄二、見ちゃダメ。雄二には早すぎる」

 

「あれが早すぎるならこの状況はいいのか!?つうかそろそろ息苦しいんだが翔子!?」

 

「・・・・・・・でも、嬉しいでしょ?」

 

「ノーコメントだ!」

 

「・・・・・・何時も柔らかいって言ってくれるのに」

 

「それを今この場でいうなあぁぁっ!!」

 

霧島さんの胸に顔を埋めている変態(雄二)の姿があった――――――じゃなかった。画面を見ないように顔を霧島さんの胸に抱擁されてジタバタしている親友(雄二)のすがたがあった。

ていうか今の霧島さんの言葉って―――――。

 

「明久くん、翔子ちゃんと坂本君の方はスルーしようか」

 

「お兄ちゃん、今のは何も見なかった、聞かなかったってことにしようね」

 

恵衣菜と零華に言われ僕はすぐに首を縦に振ってうなずいた。

ウン、ボクハナニモキカナカッタ、ミナカッタヨ。ハイ。

そう言いながら画面を再び見る。

 

 

《それと、(わたくし)もう一着ユニフォームを着ておりますの》

 

《もう一着!?》

 

 

葵姉さんの言葉に僕は姉さんの所属している部活をおもいだす。

 

「(葵姉さんの所属している部活って確か茶道部と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!!)」

 

僕が思い出すのと同時に画面では。

 

 

《実は、私――――――!》

 

 

一瞬で、秀吉と同等の速さで着替えたのかな?着物姿から葵姉さんのもう一着のユニフォーム。

 

 

《―――新体操部にも、所属しておりますの!》

 

 

露出度高めのレオタードを着た葵姉さんが新体操に使うリボンを持って、そこに現れた。

そして葵姉さんのその露出度高めのレオタードを見た康太は。

 

 

《・・・・・・・・・・・・!!!!!》

 

《康太くん!!?》

 

 

鼻血を物凄い勢いで噴出していた。

 

 

《ち、血が止まらないぃぃ!!》

 

 

工藤さんも慌てて康太の鼻血を止めようとするが。

 

《ブブー》

 

画面は康太の鼻血で真っ赤になり、鼻血の噴出音で許容音を突破して失格となった。

そしてさらに。

 

『『『今助けにいくぞ土屋!』』』

 

『『『うおおおお~~!!』』』

 

『『『新体操!新体操!新体操!新体操!新体操!新体操!』』』

 

葵姉さんのあの扇情的な姿に、殆どの男子生徒が中に突入もとい、突っ込んで行った。・・・・・・・変な声を上げ、入ると同時に失格になって。

そんなことより僕は。

 

「なにやってるの葵姉さぁぁん!!」

 

葵姉さんにそう言うのが先だった。

 

「お姉ちゃん、さすがにそれはないよ!!?」

 

「ていうか完全に色仕掛けだよ!男子特効の!!」

 

「葵姉さん、微妙に天然だけど今回のはないよ!」

 

「少しは自分のプロポーションを理解してぇ!」

 

僕たちは葵姉さんに全力でツッコミを入れたのだった。

葵姉さんのプロポーションは、同姓の恵衣菜や零華、穂乃果たちから見ても見惚れる程なのだ。ましてや、出るところは出て、引き締まっているところは引き締まっているという体型に絵里や希とは別種の、年上の女性という色香が出ているのだ。ましてやそれが異性である男なら尚更だ。葵姉さんのあんな色っぽい姿を見て興奮・・・・・・・なのかな?というのをしないのは無理というものがある。あ、僕は昔からああいうのに慣れてるから大丈夫だよ。理由は・・・・・・・・何時か話すときが来ると思う。

そうしてる間にも、葵姉さんの周りには突入していった男子の鼻血の池が出来上がっていた。

それを見て、いつの間にか立ち直った雄二が。

 

「向こうがそうならこっちは、秀吉と天野のペアを突入させるぞ!」

 

秀吉と天野さんを見てそう言った。

そこに秀吉が。

 

「何故儂らなのじゃ雄二?」

 

と質問した。

 

「秀吉と天野なら小暮先輩の色仕掛けにも突破できるだろ」

 

「そうか・・・・・・。では行くとするかの麗子よ」

 

「そうね秀吉くん」

 

微妙に納得した秀吉は、天野さんとともに教室から出て迷路の中に入っていった。

秀吉と天野さんペアが入ってしばらくすると、葵姉さんのいる場所に辿り着いた。

 

 

《あら?今度は木下君と天野さんですか》

 

《うむ。すまぬが通らせてもらうぞ小暮先輩よ》

 

《ええ、構いませんよ》

 

《え、いいのですか?》

 

《はい。私に言われたのは土屋君たちを止めることでしたので》

 

《なるほどのお。じゃが、その姿はさすがに刺激が強すぎるぞい》

 

《あら、そうですか?クラスメイトからはこれを着たら一発でアウト間違いなしだと言われたのですが》

 

《いえ、アウトなのはそうなんですけど・・・・・・》

 

《小暮先輩はもしや天然なのじゃろうか・・・・・・》

 

《???では、どうぞお通りくださいませ》

 

《どうもじゃ》

 

《ありがとうございますわ》

 

 

軽く会話をして、葵姉さんの傍を通り過ぎた秀吉と天野さんのペアさんのペアに僕らは無言で見る。

理由は・・・・・・・・・・なんとも言えないからだ。

 

「明久」

 

「なに雄二」

 

「小暮先輩、天然過ぎないか?」

 

「なにも言わないで。なにも」

 

葵姉さんの天然さに僕は、雄二にただそう言うだけしか出来なかった。

そうこうしてさらに秀吉と天野さんペアが進んでいってしばらくすると。

 

 

《待てよ、木下秀吉》

 

 

突如、そんな声が秀吉と天野さんの持つカメラから聞こえてきた。

画面を見ると、そこには常夏コンビの片割れ、モヒカン頭の先輩こと、常村先輩が立っていた。

だが。

 

「なんだろ?とっても嫌な予感がする」

 

僕はその常村先輩の雰囲気を見てそう感じた。

そう感じながら、僕らは画面を静かに見守る。

 

 

《木下秀吉、お前が来るのを待っていた》

 

《秀吉くんを?》

 

《一体なにようじゃ。すまぬが麗子、少々待ってくれぬか》

 

《ええ。わかったわ》

 

《ありがとうなのじゃ。それで、なにようじゃ?》

 

《用件だけ言う》

 

《一体・・・・・・なんじゃ?》

 

《木下秀吉、俺は・・・・・・》

 

 

モヒカン(常村)先輩の言葉の続きを、僕らは固唾を飲んで見守る。そして。

 

 

《お前のことが――――――好きなんだ!》

 

《―――――――――――――!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、僕らははじめて、秀吉の悲鳴を聞いた・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すまぬ。あんなみっともない悲鳴をあげてしまうとは」

 

失格となり、戻ってきた秀吉は天野さんの介抱を受けながらそう言った。

 

「気にするな秀吉」

 

「そうだよ秀吉。あれで悲鳴を上げるなって言う方が無理だし」

 

そう。さすがにあれは悲鳴を上げるなって言う方が誰しも無理だ。

 

「・・・・・・まさか、あやつ。自作のポエムをも読み出すとは」

 

「・・・・・・僕も意識が遠退いたよ・・・・・・」

 

『『『『『うん、うん』』』』』

 

秀吉の言葉に僕が言うと、周りの生徒ら全員同時に首を縦に振った。ここにいる全員同じ気持ちなのだ。

 

「しかし、そろそろ・・・・・・手を打たないとな」

 

雄二が次々と失格と表示される画面を見てそう言うと、突然画面にノイズが走った。

 

「な、なんだ!?」

 

「これは・・・・・・・!」

 

雄二と僕が驚きながらそう言うと。

 

 

《おい!見ているか負け犬ども?》

 

 

突然、画面に二人の男子生徒が現れた。というかその男子生徒は常夏コンビだった。しかも坊主頭の夏川先輩は、あの気持ち悪いメイクしたままの顔だ。いきなり現れた気色悪いものに、僕たちはまた悲鳴を上げた。

 

『『『『『うわああぁぁああああ!!』』』』』

 

「あ、あいつら!」

 

 

 

《悔しかったら、さっさとここまで来てみろよ!おい、常村も何か言ってやれ》

 

《ふっふふふ・・・・・・。木下、俺は――――》

 

 

夏川先輩から常村先輩に変わったかと思うと、夏川先輩が慌てて何かをしたようでまた画面にノイズが走った。

 

『『『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』』』

 

その出来事に僕たちは呆然としているだけだった。

少しして。

 

 

《おい、吉井!坂本!聞いてんだろ?!》

 

「「!!」」

 

《いつまで待たせるんだ。さっさと来い!》

 

《せいぜい楽しませてくれよ?!》

 

《 《あーはははははは!!》 》

 

 

そう言うと画面に再度ノイズが走しった。

 

「あの野郎!上等だ!」

 

「眼にもの見せてやる!」

 

「ああ!」

 

常夏コンビの台詞を聞いた僕と雄二はそう声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










次回 『バカ(明久)たちの反撃』 Let GO to The Next BAKALiVE!


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第Ⅳ問 バカ(明久)たちの反撃

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

明久)常夏コンビ率いる三年生の巧みな作戦により、失格者が続出するなか、常夏コンビの挑発ともいえる言動に僕と雄二は本気を出すことにした!しかし、僕らの仲間はほとんどが失格になってしまってる。まさか、葵姉さんがあんなことするなんて・・・・・・そして秀吉には同情しかない。ウン。さあ、ここから僕らの逆転劇を始めようか雄二!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

「それで雄二、どうするの?もうかなりの数が三年生にやられてるよ?」

 

「ああ。須川、横溝」

 

「なんだ坂本?」

 

「どうかしたか?」

 

「おまえたちに頼みがある」

 

須川君たちを呼んだ雄二は、二人に何かを話。

 

「―――そんじゃ、頼んだぞ」

 

「ああ」

 

「了解した」

 

雄二から聞いた二人は、それぞれのパートナーである彼女のもとに向かい、そのままお化け屋敷の中にへと入っていった。

 

「雄二、二人になにを言ったの?」

 

「ん、ああ。ちょっとな」

 

「??」

 

雄二の何か企んでいる表情に疑問を持ちつつも、僕は須川君たちの映ってる画面に視線を戻した。

 

「さて、さすがのアイツらも須川たちの対策は取ってないはずだ。須川たちの正念場だな」

 

「?対策を取っていないって、どういうこと坂本君?」

 

雄二の言葉に同じく画面を見ていた恵衣菜が雄二に聞く。

 

「姫宮、俺たち二年生は総勢約300人近くいるんだ。その中でも対策を取る人物は限られてくる」

 

「土屋君や木下君みたいに?」

 

「あー・・・・・・木下のあれは対策なのか疑問だが、まあそんな感じだ」

 

雄二の歯切れの悪い台詞に僕も内心同意していた。秀吉はトラウマになっているのか顔が真っ青になっていた。

葵姉さんの、康太対策はまあ分かるけど、秀吉のあれは対策なのか疑問しかない。常夏コンビの夏川(ボウズ)先輩も常村(モヒカン)先輩の行動は予想外と言うか慌てていたし(さっきの映像)。

 

「しかも、アイツらは対して俺たちのことを知らない。康太や秀吉は有名だから当然だが、須川たちは成績が優秀な序列上位としか認識してないはずだ」

 

「ということはつまり?」

 

「アイツらが仕掛けてくるとしたら俺と明久が入ったときだろう」

 

油断できねぇ、と忌々しげに常夏コンビを思い出しているのか声に出した。確かに、あの二人なら何か仕掛けてきそうだ。

画面には、さくさくとは行かないが、順調に進んでいってる須川君と横溝君たちのペアや他のペアの様子が映し出されてる。

 

「雄二、あと何組残ってたっけ?」

 

「俺と明久たちのペアを入れてあと4組ぐらいか?突入準備をしているペアも含めると8組だな」

 

「あれ、もうそれだけ?もう少しいなかったかなお兄ちゃん?」

 

「私も、零華ちゃんと同じこと思っていたけど?」

 

残りペアの少なさに零華たちが疑問符を浮かばせる。確かに、もう少しいたが、彼らはもう行けない。失格にはなっていないが、彼らはもう行けないのだ。理由は言わずもがな。

 

「あの坊主センパイのせいで動けないペアが多いんだよ。ったく、幾らなんでも後遺症を残すほどの脅かしをするか、っつんだよ」

 

そう、あの夏川(ボウズ)先輩の恐怖の気持ち悪いゴスロリ姿を見たせいで、大半のペアが動けなくなってしまったのだ。さすがにあれを見たあとに行ってこいなんて事は口が裂けても言えない。ていうか言えるはずがない。それが言えるやつは人間じゃない。あの映像を見たあとに言えるやつは正直どうかしてると思う。僕や雄二でさえ無理だったのだから。

そうこうしている内に。

 

「お。横溝たちがクリアしたみたいだな」

 

横溝君とエレンさんのペアがCクラスのチェックポイントにいた三年生の女子生徒二人を撃破したようだ。

 

「・・・・・・次が最後、Aクラス」

 

「ああ・・・・・・」

 

霧島さんの声に雄二は今まで以上の、張り詰めた声を喉から絞り出す。そんなところに。

 

 

《きゃあ!!》

 

《うわっ!!》

 

 

画面から横溝君とエレンさんの悲鳴が響き渡った。

 

「なんだ?!」

 

雄二が聞くと。

 

「・・・・・・Aクラスに入ってしばらくした時なにかあった」

 

「何かだと?」

 

「・・・・・・(コク)恐らく接触型」

 

画面を見て、二人の驚き用から康太はそう判断したのだろう。

確かに、あんな暗い所でいきなり何か接触してきたら誰でも驚く。

 

「たぶん、こんにゃくなどじゃろう。二人が驚く寸前に画面の端に小さく映っておった」

 

「なるほどな。お化け以外のことは予想外だった」

 

「ルールでも召喚獣以外で驚かしてはならない、って無いからね。さすがに人はアウトだけど、ああいう道具は許容範囲だからね」

 

事前のルールにも『道具を使って驚かしてはならない』とは明記されてない。けと、まさか召喚獣以外の脅かしをするとは誰も予想しなかった。

そう思っていると。

 

 

《うわぁ!》

 

《きゃあ!》

 

《うおっ!?》

 

《な、なにっ?!》

 

 

立て続けに二組が失格になった。

 

「やべぇな・・・・・・」

 

「このままでは突入しているペア全員失格になってしまうぞ」

 

「・・・・・・今待機していた四組が入った」

 

「これで残りは俺たちか・・・・・・」

 

雄二は顔をしかめて呟く。そこに。

 

 

《ふっ。まずはテメェらか》

 

 

画面からそんな声が聞こえた。

 

「須川たちがたどり着いたみたいだな」

 

「だね」

 

「綾香ちゃんたちなら倒せるかな?」

 

「坂本君、確かあそこの科目は・・・・・・」

 

「科目は物理だ。にしても、常夏コンビがいるとはな・・・・・・アイツらそんなに成績いいのか?」

 

雄二の言葉に普段の言動からの常夏コンビ先輩を思い返す。

 

「でも、あそこにいるってことはかなり自信があるんじゃないかな?」

 

僕がそう言うと。

 

 

「かなり自信があるんじゃないかな、ではなくあの二人は自信があるのですわ」

 

 

後ろからそんな声が聞こえてきた。

後ろを振り返るとそこには葵姉さんがいた。制服姿で。その隣には戻ってきた横溝君とエレンさんがいる。

 

「ここに来て良いの葵姉さん?」

 

「あら、(わたくし)がここにいて驚かないのですか?」

 

「いや、驚いてるよ」

 

内心、葵姉さんの登場に驚いている。というか三年生の葵姉さんがここに来ていいのかな?

 

「それで、葵お姉ちゃん。葵お姉ちゃんはここに来て良いの?」

 

「ええ。私の役目は終わりましたし、後はあの二人が負けるのを観るだけですから」

 

「負けるのを観るだけって・・・・・・」

 

葵姉さんの台詞に僕はひきつり笑いを浮かべた。

 

「葵さんはどっちを応援してるんですか?」

 

恵衣菜が苦笑いをしながら訪ねると。

 

「もちろん、明久くんたちに決まっていますわ」

 

と、すぐに答えた。

 

「三年生の方応援しなくていいのかな・・・・・・」

 

「いえ、応援しなくていい・・・・・・というより、応援したくないですわね」

 

「なんで?」

 

「・・・・・・常村君と夏川君が原因ですわ」

 

葵姉さんのその言葉に僕らは『あー』と理解してしまった。

 

「あー。ところで、アイツら常夏コンビが自信があるというのはどういうことなんだ?」

 

「言葉通りですよ坂本君。彼らの得意科目は・・・・・・・」

 

葵姉さんがそう言うのと同時に。

 

 

《 《試獣召喚(サモン)》 》

 

 

 

 

 

 

 物理

 

 

 

 

 二年Fクラス 須川亮  453点

 二年Aクラス 桜咲綾香 471点

 

 

 

 

 

 

 

須川君たちの召喚獣の点数が表示され。

 

 

《 《試獣召喚(サモン)》 》

 

 

 

 

 

 物理

 

 

 

 

 

 三年Aクラス 常村勇作 562点

        夏川俊平 558点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――理系なのですわ」

 

そして、対する常夏コンビの召喚獣の点数も表示された。

 

『『『なにぃっ!?』』』

 

常夏コンビの召喚獣の点数を見た僕らは、思わずハモってしまうほどに驚いた。

 

「え、ちょちょっと、どういうこと!?」

 

「常夏コンビ先輩ってあんなに成績優秀だったの葵お姉ちゃん!?」

 

恵衣菜と零華が声をあげて言う。

僕も正直かなり驚いている。まさか、あんなに点数が高いだなんて。あれではまるで。

 

「あれではまるでAクラスの優等生じゃな」

 

「・・・・・・信じられない」

 

秀吉と康太があり得ないとでも言うように言い。

 

「マジかよ・・・・・・。アイツらまさか典型的な理系だったのか・・・・・・!」

 

雄二も驚いていた。

 

「彼らの得意科目である理数系類は、私たち三年生でもトップ五に入るくらいなのですわ。しかも彼らは三年生の序列七位と八位なのです」

 

「三年生の序列上位者!?」

 

「あの二人そんなに優秀なら、自力で大学入試受ければいいのに」

 

零華の呟きに葵姉さんを含む全員がうなずいた。

数ヵ月前の清涼祭で常夏コンビは、前教頭である竹原の手下として僕らの邪魔をしてきた。理由は大学への推薦のためだ。竹原は清涼祭で、学園長であるお祖母ちゃんの失脚を狙うため、僕たちのクラスの出し物に妨害をしてきたり、恵衣菜や零華、穂乃果、ことり、海未、ツバサたちμ'sとAーRISEのみんなを外部の高校のチンピラ共に誘拐させた。しかも、まだ小学生五年生の葉月ちゃんにも怖い思いをさせた。そして、常夏コンビはクラスの出し物に妨害だけではなく、封印指定の腕輪である【血金の腕輪】と【赤金の腕輪】を使って僕だけでなく恵衣菜に傷を負わせた。大会後、二人の所持していた二つの腕輪は直ぐ様お祖母ちゃんが回収し、現在はお祖母ちゃんが直接管理して二つの腕輪の能力をどうにかしている。

そのことを思い返しながら須川君たちと常夏コンビの戦いを見る。

 

 

《まさか俺たちよりも上の点数だとはな・・・・・・》

 

《私たちはどうやら二人を甘くみていたようですね・・・・・・》

 

 

須川君と桜咲さんも常夏コンビの点数に驚愕していた。

 

 

《へっ!どうせおまえら、俺と常村の点数が低いと高を括ってたんだろが、ざんねんだったな!》

 

《俺たちの力をみせてやるよ!》

 

 

そこに夏川先輩が須川君と桜咲さんをバカにするような言い方で発言する。常夏コンビの召喚獣は牛頭と馬頭と、二人の本質まんまだった。

戦いは長引かず、あっという間に終わった。

 

 

《うそだろ・・・・・・》

 

《私と亮ちゃんが・・・・・・》

 

 

須川君と桜咲さんのペアが常夏コンビ負けたのだ。

 

「二人が負けた・・・・・・」

 

「どうする雄二」

 

「正直アイツらを甘くみてたな。幾らAクラスといえどもせいぜい400点に届くかどうかと思ってたが・・・・・・」

 

「まさか500点オーバーだなんてね」

 

この点数に関しては予想外としかない。

三年生は受験に照準を合わせて勉強しているため、二年生と違い一部の科目。物理・化学・生物・地学・地理・日本史・世界史などが選択制になっている。その為三年生の試召戦争のルールも二年生のものと若干変わるらしい。国立である音ノ木坂学院の試召戦争ルールは全学年統一しているが、文月学園は進学校のため現在は各学年ごとに変わってるみたいだ。三年生の試召戦争ルールでは【物理⇔生物】【化学⇔地学】といったようにそれぞれ対応する科目に置き換えられる。大まかに言うと、三年生の試召戦争ルールは基本センター試験に合わせた設定だ。ちなみに僕たち二年生の総合点数も概ね、センター試験に準じて算出されるものとのことだ。まあ、お祖母ちゃんから具体的な話を聞いたというわけじゃないけど。

全学年を通じて保健体育は必修科目だが、受験に使用する科目ではないためあまり力を入れてる人はいないことの方が多い。例外が康太や工藤さんだけど。全科目を履修している僕たち二年生に対して、三年生は受験のため選択科目と一部の必修科目以外の学習はしないためああいう物理や地理などの選択科目ではその科目に特化している三年生が有利だ。

そう思っているところに。

 

「・・・・・・雄二、私たちもそろそろ」

 

「ああ。みたいだな」

 

長い黒髪をなびかせて、霧島さんが雄二に言った。雄二も顔を引き締めて答える。

 

「ってことは僕らもだね」

 

「ああ。行けるな明久」

 

「もちろん。恵衣菜と零華も大丈夫?」

 

「うん」

 

「行けるよお兄ちゃん」

 

「そんじゃ、行くか」

 

雄二のその言葉に、僕たちはFクラスから出てお化け屋敷の入り口にへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aクラス(お化け屋敷Ver)

 

 

 

『うらめし・・・・・・や・・・・・・』

 

「「―――!!」」

 

『おげああ゙あ゙あ゙―――』

 

「「ひうっ!!」」

 

『ゔぉぉお゙お゙お゙お゙―――』

 

「「ふぇぇぇっ!!」」

 

お化け屋敷に入ってから、僕の両腕には恵衣菜と零華が抱きついていた。歩きにくいが、二人を置いていけるわけもなく。

 

『ぶわ゙ああ゙あ゙あ゙!』

 

「「ひゅぐ・・・・・!!」」

 

今も急に現れたお化けに二人は少し涙を浮かべた。

 

「大丈夫二人とも?」

 

「う、うん・・・・・・大丈夫」

 

「ぅぅ・・・・・・お兄ちゃん」

 

僕の問いに恵衣菜は顔を少し青くしながら答え、零華は涙目で抱き締めてる力を強くした。うん、零華が可愛すぎる。

 

「明久くん、顔が緩んでるよ」

 

「ハッ!」

 

呆れたように言う恵衣菜の言葉にハッと改めて気を引き閉める。

 

「それにしても・・・・・・」

 

歩いてしばらくして僕は不思議に思ったことがあった。

 

「なんか、お化けが少ない気が・・・・・・」

 

他のクラスだったらもうお化けと六回ほど会っていてもおかしくないのだが、まだ四回しかあってなかった。いや、四回も会ったと言うべきかな?

 

「・・・・・・怖くない、怖くない・・・・・・っ。お兄ちゃんと恵衣菜ちゃんが一緒だから、怖くないです・・・・・・っ。大丈夫です・・・・・・っ」

 

零華は僕みたいに余裕はないみたい。まあ、当然だけどね。

 

「もしかしてAクラスは広いから少ないのかな?」

 

僅かばかり震えている恵衣菜の声に、なるほどと相槌をうって返す。

 

「それとも来るぞ来るぞと思わせて、疲弊したところに一気に驚かして来るんじゃ・・・・・・「そ、それ以上言わないでよお兄ちゃん!恐いから!」・・・・・・ご、ごめん」

 

ムニュッ、と零華の年相応より少しだけ大きい胸が腕に押し付けられる感触にどぎまぎしながら、涙を目尻に浮かべる零華に謝る。

 

「零華って小さい頃からこういうのって苦手だよね」

 

「だ、だって怖いんだもん。お兄ちゃんや恵衣菜ちゃんとかが一緒ならある程度は平気だけど、やっぱり怖い・・・・・・」

 

「零華ちゃんが怖がるようになったのって、小さい頃遊びに行ったとき海未ちゃんと一緒に私たちからはぐれちゃった頃からだよね」

 

恵衣菜は思い出すように言う。

小さい頃僕たちが遊びに行ったとき、零華と海未がはぐれてしまいその頃から零華と海未はこういうお化け屋敷なとが苦手になってしまったのだ。というか、僕が一緒でないと何故かダメになってしまったという、一種の依存症を零華は発症してしまったのだ。ちなみに海未も微妙に発症してしまってる。

 

「恵衣菜は平気なの?」

 

「零華ちゃんよりは幾分かはね。明久くんがいるから」

 

恵衣菜はニコッと微笑んで言った。

そこに。

 

「もう、恵衣菜ちゃん私は?」

 

零華が少しだけ頬を膨らませて聞いた。

 

「もちろん零華ちゃんも一緒だからだよ」

 

「恵衣菜ちゃん」

 

恵衣菜の言葉に嬉しかったのか、零華は怯えた表情から変わって笑顔を浮かべて恵衣菜に抱きついた。

何時もの見慣れた光景に微笑みながら二人を見る。その僕の耳に。

 

 

『・・・・・・雄二、もう少しくっつきたい』

 

『いくら何も出てないからって言ってもこれ以上くっつかられると歩けないんだが・・・・・・?それにカメラを持っているんだが』

 

『・・・・・・でも、もう少しくっつきたい。カメラは私が持つ』

 

『後にしてくれないかそれは・・・・・・。それとカメラを翔子が持てばいいという問題じゃない気がするが・・・・・・』

 

『・・・・・・やだ。いま』

 

『あとで思う存分くっついてもいいから今は勘弁してくれないか?』

 

『・・・・・・・・・・・・・・・わかった。今は我慢する』

 

『いつも以上に間が長かった気がするんだが・・・・・・?』

 

『・・・・・・気のせい』

 

『いや、気のせいじゃ・・・・・・』

 

『・・・・・・気のせい』

 

『いや、だから・・・・・・』

 

『・・・・・・気のせい』

 

『わかった・・・・・・』

 

『・・・・・・フフフ。夜が楽しみ』

 

『俺は一体何をされるんだ・・・・・・?!』

 

 

すぐそばの通路から。というより、すぐ近くの壁越しから聞こえてきた。こっちの二人も相変わらずみたいだ。しかし、雄二と霧島さんの会話に一つ気になるところがあった。

 

「雄二の方にも何も仕掛けられてなかった・・・・・・?」

 

ますますおかしい。雄二と霧島さんの方に何も出てなかったということはお化けすら出なかったということだ。僕たちの方には少しばかりお化けが出たのに雄二たちの方には出なかった。二年生の序列四位と五位の二人に警戒すらしないのはなにかおかしかった。というより、不自然すぎた。

そう思った瞬間。

 

「・・・・・・っ!?」

 

薄暗く道を照らしていた照明の灯りがフッとクラスの室内すべてが一斉に消えた。

 

『え・・・・・っ?あ、明久くんどこ・・・・・・?』

 

『お、お兄ちゃん、どこにいるの・・・・・・?』

 

恵衣菜と零華の戸惑う声が聞こえてくる。

零華の声から怯えている声が分かった。すぐに二人の近くに行ってあげたいが、完全に光のない真っ暗闇の状態ではすぐには動き出せない。

 

「(しまった。まさか少し距離が離れていたところを狙われるなんて)」

 

舌打ちしたい気分に捕らわれながらも頭を回転させる。

 

「恵衣菜、零華、二人とも離れないでそこにいて。それと暗闇に目がなれるまでなにもしないでおいて。あと、目も瞑っておいた方がいいかも」

 

『う、うん』

 

『わ、わかったお兄ちゃん』

 

二人にそう言い、僕も暗闇に目がなれるまで動かずじっとその場に留まる。目を閉じ、耳を済ませていると。

 

「(な、なんの音だ・・・・・・?)」

 

何かを動かすような音が聞こえた。

床と物がずれる物音が収まると、僕の目も少しずつだが暗闇に慣れ周囲の様子が分かるようになった。ぼんやりとしかみえないが、見えるのには変わりない。

 

「(二人のところに行かないと・・・・・・ん?なんだろこれ?)」

 

二人のところに向かおうとしたその時、僕の目の前には突然壁が現れていた。

 

「これ・・・・・・もしかして壁?」

 

手で触って確かめなにかと判断した。

 

「(まさか、迷路を造り替えられた!?まずいまずい・・・・・・!早く二人とも合流しないと・・・・・・!)」

 

慌てて二人と出会う迂回路を探す。

恵衣菜もだが零華はまずい。一度だけ、僕と一緒ではなく穂乃果たちと行ったことがあるのだがその時出てきた零華は目を回して気絶していたのだ。そして、僕を見ると周りの目を気にせず泣いて抱き付いたのだ。昔から僕の後ろを着いてくるのは、生まれたときから一緒にいたなのか僕が一緒でないと寂しいようなのだ。

僕も零華が一緒でないと寂しいため、急いで探す。

数十センチどころから、たったの数センチ先しか見通せない暗闇のなかを手探り状態で進んでいく。すると、しばらく行ったあたりで人の気配を感じた。

そこにまでゆっくりと歩いていくと、いきなり照明が点灯し。

 

「雄二?!」

 

「あ、明久!?」

 

僕は恵衣菜と零華ではなく、雄二と出会った。対して雄二の近くには霧島さんの姿が無かった。

 

 

 











次回 『恋する乙女たちの頑張り!』 Let GO to The Next BAKALiVE!


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第Ⅴ問 恋する乙女たちの頑張り!



こんにちはソーナです。
皆さんこの緊急事態ともいえる日々にどうお過ごしですか?
良ければ私の投稿小説を読んでくださると嬉しいです。そして、ぜひ感想をお願いします。些細なことでも構いませんので、待ってます!


~前回の奏で繋ぐ物語~

 

零華)つ、ついに残り一クラスとなった肝試し大会。エレンちゃんたちは虚しくも失格になってしまい、私たちが入ることになった。けど、さすがに恐くてお兄ちゃんの腕に抱きつきながら恵衣菜ちゃんとお兄ちゃんと一緒にクリアを目指す!。そんなところに、突如クラスの照明が落ちてしまい私と恵衣菜ちゃんはお兄ちゃんと離ればなれになってしまった。一体どうなるの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

「雄二?!」

 

「あ、明久!?」

 

室内の照明が落ちて暗くなり、再び照明が点いたかと思うと目の前に現れたのは、一緒のペアを組んでいた恵衣菜と零華ではなく、霧島さんとペアを組んで入った雄二だった。

 

「なんで雄二がここに」

 

「それはこっちの台詞だ。明久がなんでここにいる?姫宮と吉井妹はどうした?」

 

「それがさっきの照明が落ちたときに逸れちゃって・・・・・・。雄二は霧島さんと一緒じゃなかったの?」

 

雄二の質問に答えた僕は、霧島さんの姿が見えないのに不思議に思い聞く。僕の問いに雄二は。

 

「明久と同様だ」

 

と、顔をしかめて答えた。

 

「へ?」

 

「ったく、やられたな。まさか、照明を落としてまでやるとはな」

 

雄二の言葉に僕はさっきの事を思い返してピースを組み立てる。そして、僕も雄二の言っている意味が分かり。

 

「ってことはもしかして・・・・・・」

 

「ああ。恐らく、翔子は姫宮と吉井妹と合流しているだろうな」

 

さっきの出来事は僕と恵衣菜、零華と雄二、霧島さんを分かれさせ、僕と雄二、恵衣菜と零華、霧島さんのペアに入れ換えさせたということだ。

 

「取りあえず進むか」

 

「そうだね。もしかしたら途中で恵衣菜と零華、霧島さんに出会すと思うし」

 

僕と雄二は取り敢えずチェックポイントに向かって足を進めながら会話をする。

 

「いや、おそらくそれはねぇだろうな」

 

「あ、やっぱり?」

 

「ああ。俺や翔子は滅多な事じゃ悲鳴をあげないからな。明久はともかく、姫宮と吉井妹は・・・・・・だろ?」

 

「あ~、うん。恵衣菜は少しは大丈夫だけど、零華は・・・・・・」

 

「って事はだ。俺たちが翔子たちと出会う可能性はかなり低い。というより、アイツらは俺たちと出逢わせないようにするだろうな」

 

雄二と歩きながら会話していると。

 

「ん?」

 

僕の耳に声が聞こえてきた。

 

「どうした明久?」

 

「いや、今なにか聞こえてきたような・・・・・あ」

 

辺りを見渡すと、丁度僕と雄二のいる通路から少し離れた場所に恵衣菜と零華、霧島さんの姿が見えた。

 

「おーい、三人と―――ふむぐっ?!」

 

三人を呼ぼうとした途端、横にいた雄二に口を押さえられ変な声が出てしまった。

 

「何やってんだ明久」

 

「いや、零華たちがいたから呼ぼうかと」

 

「あのなぁ、呼んだら呼んだでアイツらの思うツボだぞ?」

 

「確かに・・・・・・」

 

雄二の言葉から僕は三年生が、この映像を見ていることを思い出した。例え僕と雄二が、零華たちと合流しても、また引き離されるか何かしら手を出してくるはずだ。それに、迷路を作り替えられたら合流しようも合流出来なくなってしまう。なら、零華と恵衣菜には悪いけどこのまま頑張ってもらうしかない。

 

「取り敢えず翔子たちの後をついていくか」

 

「そうだね」

 

僕と雄二は零華たちに声をかけずに、こっそり後に着いていく事にした。雄二も何気に霧島さんのことが心配のようだ。

そう思っていたからか、雄二が疑惑の視線を向けてきた。

 

「・・・・・・明久、なにか失礼なこと考えなかったか?」

 

「さー、気のせいじゃない?」

 

「なんかその目がムカつくな」

 

「アハハ、気のせいだよ雄二」

 

「はぁー」

 

僕の言葉に雄二は疲れたように溜め息を吐いて、僕と雄二はこっそり零華たちの後を追った。

 

~明久side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~恵衣菜side~

 

 

「ぅぅぅ~~・・・・・・」

 

「・・・・・・大丈夫、零華?」

 

「う、うん、大丈夫だよ翔子ちゃん・・・・・・なんとか」

 

「・・・・・・そう?」

 

「う、うん」

 

「にしても、明久くんと坂本君。何処だろう」

 

私たちは突然照明が落ち、再び点いた時偶々近くにいた翔子ちゃんとペアを組み、明久くんと坂本君を探しつつチェックポイントに向かっていた。

私と翔子ちゃんの間には零華ちゃんが怯えて、私の制服の裾を掴んでいる。明久くんとはぐれた時の零華ちゃんの慌てようは尋常じゃなかったね。まあ、仕方がないといや仕方ないんだけど。そのまま三人で迷路を進んでいると、零華ちゃんの体がビクッと震えた。

 

「―――っ?!」

 

「どうしたの零華ちゃん?」

 

「い、今なにか聞こえなかった・・・・・・?」

 

「・・・・・・聞こえなかった」

 

「うん、私も聞こえなかったけど・・・・・・」

 

「気のせい・・・・・・かな・・・・・・」

 

零華ちゃんに言われて辺りを見渡すけどあるのは迷路の壁やら装飾品だけ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

その一ヶ所に、人影があるのが見えたけど二人には言わなかった。

あの人影が明久くんと坂本君だとは限らないからだ。

 

「恵衣菜ちゃん?」

 

「・・・・・・何かあった?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

そう言い、さらに進んでいくと。

 

『おげああ゙あ゙あ゙―――』

 

「ひぅぅ・・・・・・っ!うぅー・・・・・・っ!」

 

「・・・・・・零華、大丈夫。これはただ召喚獣。見かけが変わっただけの作り物」

 

「大丈夫だよ零華ちゃん。私と翔子ちゃんが着いてるから」

 

「う、うん・・・・・・!ふ、二人がいるから・・・・・・!頑張るよ・・・・・・!お兄ちゃんが着いてなくても頑張る・・・・・・!」

 

涙声になりながらも懸命に耐える零華ちゃんを翔子ちゃんと一緒に支えてチェックポイントに向かう。

 

「翔子ちゃん」

 

「・・・・・・(コク)わかってる」

 

私は翔子ちゃんと一言そう会話して、零華ちゃんを守るようにして一緒に歩く。翔子ちゃんは平気みたいだけど、私は少し怖い。けど、零華ちゃんがこうだからしっかりしないと!

そう思いながら進んでいくと。

 

『うらめし・・・・・や・・・・・・』

 

「―――っ!―――っ!だ、大丈夫・・・・・・!大丈夫です・・・・・・っ!」

 

「・・・・・・大丈夫、なにもいないから」

 

召喚獣のお化けが現れ、零華ちゃんは眼をギュッと閉じて視ないようにしている。

 

『オネエチャンタチ コッチヲ ムイテヨゥ・・・・・・」

 

「はぅぅ・・・・・・っ!ひぅぅ・・・・・・っ!空耳だよね?幻聴だよね・・・・・・っ?!」

 

「・・・・・・私たちは取り込み中、だからそんな暇ない」

 

「零華ちゃん大丈夫だからね」

 

懸命に頑張る零華ちゃんと一緒に私と翔子ちゃんはチェックポイントへ向かう。

そこからさらに進んでいくと。

 

「・・・・・・零華、着いた」

 

「―――え・・・・・・?」

 

私たちは最後のチェックポイントにたどり着いた。目の前には想定外だとでも言うように驚いている常夏コンビ先輩さんがいた。

 

「げっ!お、おい常村!こいつら失格してねぇぞ!どうするんだ?!」

 

「どうするもこうするも、勝負するしかないだろ!」

 

どうやら私たちがここにいると言うことは二人にとっても予想外みたいだね。まあ、私たちを明久くんと坂本君と離れさせたのに、失格させてないのは予定外なのかな。

そう考えながら零華ちゃんを守りながら翔子ちゃんに小さな声で会話する。

 

「翔子ちゃん」

 

「・・・・・・なに?」

 

「あの二人は私と翔子ちゃんで相手しよう」

 

「・・・・・・(コク)はじめからそのつもり」

 

翔子ちゃんも私と同じ考えだったみたいですぐに返してくれた。

翔子ちゃんと私で二人を相手しようと前に出ると。

 

「まったく・・・・・・吉井と坂本をボコる前にとんだ邪魔が入ったな。ったく、誰だよミスったヤツ」

 

「あのクズ二人より面倒じゃねえか」

 

「二年なんざバカだらけだから楽勝だって言ってたのは誰だよ」

 

「悪かったよ。訂正する。吉井と坂本はクズだが、中にはちょっとはマシなやつもいるから注意が必要だ。これでいいか?」

 

「今更遅ぇよ」

 

常夏コンビ先輩がそう言った。

それを聞いた私と翔子ちゃんは足を止め。

 

「・・・・・・雄二たちは、クズじゃない」

 

「明久くんたちは、クズなんかじゃない」

 

そうハッキリと言った。私と翔子ちゃんの声に僅かながら怒気が入っていたのは当然だ。

 

「―――あ?」

 

「・・・・・・クズじゃない!」

 

翔子ちゃんが声を荒げて言ったことに私は、翔子ちゃんも激怒していることを感じた。

 

「「アッハハハハ!!」」

 

「アイツらがクズじゃないって」

 

「すぐに問題は起こすわ、教師に眼をつけられてるわ、オマケに吉井は観察処分者。これのどこがクズじゃないんだよ」

 

「そんならこれはどうだ?クズ改め、社会のゴミ」

 

「いや、それはさすがにゴミに対して失礼だ」

 

「「アッハハハハ!!」」

 

「ゴミはおとなしくゴミ溜めにでも埋まってろっての」

 

「まったくだぜ。ほんとクズでゴミでどうしようもねえヤツなんか―――」

 

ああ、ほんと・・・・・・ウザイ人たちだね。そう思いつつ、目の前にいる人たちに反論しようとしたその瞬間。

 

「ふざけないでよ・・・・・・!」

 

「「え」」

 

私と翔子ちゃんのすぐ後ろから低く、ものすごく冷たい声が聞こえた。翔子ちゃんと同時にバッと後ろを向くと、そこには長い髪を流して顔を俯かせて肩を震わせている零華ちゃんの姿があった。

 

「零華・・・・・・ちゃん・・・・・・?」

 

「・・・・・・零華・・・・・・?」

 

私と翔子ちゃんの間を通り抜けて、目の前の二人に零華ちゃんは近寄っていく。

 

「あ?」

 

「んだよ?」

 

零華ちゃんはゆったりとした歩みで二人に近寄る。

やがて、二人の前で止まった零華ちゃんは。

 

 

 

 

パシンッ!!

 

 

 

 

二人の頬を思いっきり叩いた。

 

「「!」」

 

零華ちゃんのその行動に、思わず私と翔子ちゃんは眼を見開いた。

 

「テ、テメェ・・・・・・!」

 

「いきなり何するんだ!」

 

いきなりの事に二人は顔に怒りを浮かべて零華ちゃんに言う。その二人に零華ちゃんは大きな声を出して返す。

 

「お兄ちゃんと坂本君はクズなんかでも、ゴミなんかでもないっ!!!!」

 

零華ちゃんの声で失格になってしまったのか、私のブレザーの胸元のポケットに入れてあった集音マイクの失格の判定音が鳴り響いた。

 

「お兄ちゃんと坂本君はあなたたち二人より何倍も、何万倍も優しいし、仲間思いだよ!人を見下すあなたたちに劣るはずがない!!」

 

「んだとテメェ!」

 

「俺たちがあのクズたちに劣っているだと!?」

 

「そうだよ!だってあなたたちは卑怯な手を使ってしか勝てないじゃない!召喚大会の時だって、元教頭の人の手を使って学園長が封印した腕輪でお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんを・・・・・・!だから、私はあなたたちを許さない!お兄ちゃんたちのことをまったく知らないくせに好き勝手に言う、あなたたち二人を絶対に。ぜぇーったいに許さないんだから!!!!」

 

零華ちゃんの涙混じりの声に、私と翔子ちゃんは何も言えなかった。と言うより、見ていることしか出来なかった。それほどまでに零華ちゃんの気迫に驚いていたのだ。

 

「ぎゃんぎゃんわめくな!失格者はさっさと出ていけ!」

 

「・・・・・・言われるまでもない」

 

「そうだね。その顔、いつまでも見ていて良いものじゃないし。行こう零華ちゃん、翔子ちゃん」

 

「・・・・・・(コク)」

 

「うん・・・・・・」

 

私たちは二人に背を向けてAクラスから出ていった。

 

~恵衣菜side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

『お兄ちゃんと坂本君はあなたたち二人より何倍も、何万倍も優しいし、仲間思いだよ!人を見下すあなたたちに劣るはずがない!!』

 

『んだとテメェ!』

 

『俺たちがあのクズたちに劣っているだと!?』

 

『そうだよ!だってあなたたちは卑怯な手を使ってしか勝てないじゃない!召喚大会の時だって、元教頭の人の手を使って学園長が封印した腕輪でお兄ちゃんと恵衣菜ちゃんを・・・・・・!だから、私はあなたたちを許さない!お兄ちゃんたちのことをまったく知らないくせに好き勝手に言う、あなたたち二人を絶対に。ぜぇーったいに許さないんだから!!!!』

 

『ぎゃんぎゃんわめくな!失格者はさっさと出ていけ!』

 

『・・・・・・言われるまでもない』

 

『そうだね。その顔、いつまでも見ていて良いものじゃないし。行こう零華ちゃん、翔子ちゃん』

 

『・・・・・・(コク)』

 

『うん・・・・・・』

 

 

恵衣菜たちの気配が遠ざかっていくのを、チェックポイント近くの物陰に隠れて感じた僕と雄二は小さな声で話す。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ったく、泣くなよ明久」

 

「泣いてないよ・・・・・・」

 

「じゃあその涙はなんだよ」

 

「これは嬉し泣きだよ」

 

目尻に浮かんだ涙を拭いながら雄二に言う。

僕が少し泣いている理由は、零華の言葉が嬉しかったからだ。

 

「今回は流石にシスコンとは言えないか・・・・・・」

 

「雄二」

 

「吉井妹にあそこまで言われちゃ、ここで退くわけ行かねぇだろ。それに」

 

雄二は目付きを鋭くして顔を上げる。

 

「はあ。にしても残念だな吉井妹たち。あんなに頑張って、苦労したのに」

 

「だね。でも、零華はちゃんと頑張ったよ。それはこの僕が見てた。それに恵衣菜も・・・・・・」

 

「ま、翔子は滅多なことじゃ驚かせねぇが・・・・・・」

 

本当、三人とももったいない。あんなに歯を食いしばって、一生懸命頑張ったのに。

だから。

 

「それじゃ行こうか雄二」

 

「ああ、行くか明久」

 

僕と雄二は常夏コンビのいるチェックポイントを目指して歩き出す。今回の肝試しはお祖母ちゃんの提案で始まったものだ。元々、肝試しなんて遊びにすぎない。ムキになってそこまでやるものじゃない。―――けど。

 

 

 

「「ここからは本気だクソ野郎!!」」

 

 

 

僕と雄二は常夏コンビを絶対に許さない!

 

 

 










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第Ⅵ問 肝試しの本気勝負!

 

~前回の奏で繋ぐ物語~

 

明久)ついにこの肝試し大会も終盤を迎え。

 

雄二)俺たちはお化け屋敷の中に入る。

 

明久)けど、三年生の分断作戦により、僕と雄二はそれぞれのパートナーである恵衣菜と零華、そして霧島さんとはぐれてしまった。

 

雄二)幸いにも、俺は明久と。翔子は姫宮と吉井妹と合流し、そのままチェックポイントにむかった。

 

明久)しかし、そこで待ち受けていた常夏コンビの言葉が恵衣菜、零華、霧島さんの怒りに触れる。

 

雄二)だが、三人は吉井妹の涙声やらで無念にも失格になってしまう。

 

明久)残ったのは僕と雄二のみ。

 

雄二)この肝試し大会の結末。そして、常夏コンビへの聖戦の始まりだ

 

明久)さあ、行こうか雄二。

 

雄二)そうだな、明久。

 

明久、雄二)ここから先は本気だクソ野郎!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明久side~

 

 

恵衣菜たちの失格のブザーが聞こえなくなり、辺りに気配を感じなくなった僕と雄二は隠れていた場所から出て、三人を泣かせた犯人。常夏コンビの待っているであろうチェックポイントへと視線を向ける。

 

「さてと、下準備はこれでいいか。な、明久?」

 

「そうだね。単一科目じゃなくてすべてを合わせて叩き潰そうか」

 

「ああ。んじゃ、いくか」

 

「了解、雄二」

 

僕と雄二は口角を上げて歩き出した。

さあ、始めようか。雄二は霧島さんの、僕は恵衣菜と零華のための報復を。声に出さずにそう言って、僕と雄二は常夏コンビの元へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終チェックポイント

 

 

「よお。待たせたなセンパイ方?」

 

チェックポイントに足を踏み入れた僕と雄二は、奥にいる常夏コンビに声をかける。けど、その声には待たせたことへの謝罪の気持ちなんて、言った雄二は微塵も思ってない。それはもちろん、僕もだ。この二人に僕と雄二が謝る必要性なんてない。今の僕と雄二は、表面上は冷静をかいてるけど、内面ではこの二人を全力でぶちのめしたいのだ。

そんな僕らの心情をしらない常夏コンビは。

 

「やっとかよ」

 

「随分と遅かったじゃねえか、吉井に坂本よ」

 

「すみませんでしたねセンパイ方」

 

「ああ、そうだな。悪かったなセンパイ?」

 

そう言う僕と雄二に、常夏コンビは顔の表情を歪ませていた。

 

「んじゃ、さっさと始めるか」

 

「おっと、その前に罰ゲームを決めないか?」

 

モヒカン頭の常村先輩の言葉を遮って、雄二が常夏コンビに提案する。

 

「あ?罰ゲームだ?」

 

「オマエら、なに企んでるんだ?」

 

雄二の罰ゲームという言葉に、さすがの常夏コンビも何かあるのでは無いかと怪しんでいる。なるほど、頭はそれなりに回るみたいだ。

 

「別になにも。そもそも罰ゲームを先に言い出したのはセンパイ方の方だぜ?」

 

「ええ。それに、この罰ゲームは僕と雄二、そしてセンパイ方二人だけの私的な罰ゲームです」

 

雄二と僕の言葉に、常夏コンビの二人はしばし互いの顔を見合わせ。

 

「へっ。いいだろう乗ってやる」

 

「そんで、罰ゲームってのはなんだ?」

 

余裕満々、余裕綽々という感じに表情をニヤけて聞いてきた。

 

「勝った方が負けた相手になんでも命令できる、でどうです」

 

「いいだろう」

「んじゃ、いくぜ!」

 

「「試獣召喚(サモン)っ!」」

 

 

 

 

 

 

物理

 

 

 

 

 

 

 三年Aクラス 常村勇作 562点

        夏川俊平 558点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「試獣召喚(サモン)っ!」」

 

 

 

 

 

 

 

物理

 

 

 

 

 

 二年Fクラス 吉井明久 681点

        坂本雄二 634点

 

 

 

 

 

 

 

僕と雄二、そして常夏コンビの召喚獣が現れ、それぞれの点数が表示される。

 

「なっ!」

 

「ろ、600点オーバーだと!?」

 

常夏コンビの二人は僕と雄二の点数を見て驚いていた。

けど、まだ甘い。

 

「それじゃあ雄二、いくよ」

 

「ああ、明久」

 

少しずつ後ろに下がり。

 

「「ダッシュ!!」」

 

勢いよくその場から駆け出した。

 

「あ!待てこら!」

 

「逃げんな!」

 

後ろから遅れて追い掛けてくる常夏コンビとその召喚獣。僕と雄二は、自分の召喚獣とともに目的の場所まで二人を誘導させる。そして、それと同時に。

 

「あれ、センパイ方以外に足遅いですね~」

 

常夏コンビがちゃんと追いかけて来るように挑発をする。

 

「そう言うなって明久。失礼だろ常夏コンビに」

 

「いや~。だって女子である葵姉さんより遅いし。それに、絵里たちに比べたらね」

 

「あのなぁ。小暮先輩は新体操部にも入ってるんだろ?ならあの二人より運動が出来て当然じゃないか。それに、後者は日頃、毎日ダンスの特訓をしてるんだから当たり前だろ」

 

「あ~、其れもそうだね」

 

ちなみにこの教室にいるのは僕と雄二、そして常夏コンビのみだ。あとは、教師が一人。

 

「さっきから好き勝手言いやがって!」

 

「どこだ!吉井!坂本!出て来やがれ!」

 

挑発が効いたのか常夏コンビは僕らを血眼になって捜していた。

そこに僕が影から少し出て。

 

「ほらほらセンパイ方、こっちですよ」

 

「いたぞ夏川!」

 

僕の方に来させ。

またある時は。

 

「俺達はここにいるぞ~」

 

「向こうの通路だ!」

 

雄二が声を響かせて常夏コンビを誘導する。

そんな鬼ごっこのようなことをして数分。

 

「くそっ!どこにいやがる吉井!坂本!」

 

「正々堂々勝負しろ!」

 

少し開けた場所で常夏コンビがそう声を響かせた。

そこに。

 

「自慢の頭を使って見つけてみろよ」

 

「そろそろ隠れるの飽きたなあ」

 

「まだ見つけられねえのかよ」

 

僕と雄二(・・・・)の声が辺りに響く。

それは近くの墓石から聞こえてくる。それに気付いたらしい常夏コンビも。

 

「ふっ。お前らのすることなんてなあ―――」

 

「―――お見通しなんだよ!」

 

ニタニタといやらしい笑みを浮かべてそれぞれの召喚獣に指示を出した。指示を受けた常夏コンビの召喚獣は一直線にその墓石にせまる。しかし―――。

 

「消えた!?」

 

「物理のフィールドを越えたのか?!」

 

常夏コンビの召喚獣はフィールド外に出たため消え、墓石に当たることは無かった。まさかの事に常夏コンビは驚愕していた。そのまま二人は、僕と雄二の声がした(・・・・・・・・・)墓石の後ろに回り込む。そこには、装飾品である墓石とその後ろの木札、卒塔婆(そとば)に、ハンガーに架けられた二着の文月学園のブレザー、そして墓石の影となっている下にはビデオカメラがある。

 

『残念だったな。―――これは囮じゃ』

 

『お見通しなのはこっち』

 

その画面には秀吉と康太が映っている。

そう、ここでわかったと思うけどさっきから発していた声は、全部秀吉の声真似なのだ。罠にハマったのは自分たちだと悟った常夏コンビは目を見開いていた。

それじゃあ、肝心の僕と雄二はどこにいるのかと言うと―――。

 

「―――西村先生、総合科目による召喚許可、お願いします!」

 

「うむ!承認する!」

 

「「試験召喚獣、試獣召喚(サモン)っ!」」

 

 

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 二年Fクラス 吉井明久 ―――

        坂本雄二 ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはもう総合科目のフィールドだ!おまえらお得意の物理では戦えないぜ!」

 

召喚獣を出した僕と雄二は、それぞれの召喚獣を傍らに立たせてまんまと罠に引っかかった常夏コンビを見る。

僕と雄二は物理のフィールドからここまで常夏コンビを誘導し、予めクラスでこの映像を観ている秀吉たちに作戦を伝えた声真似をしてもらったのだ。そして、ここに居る教師は西村先生。総合科目は各学年主任か、全科目のフィールドを展開することの出来る補習教師である西村先生のみが構築できる。つまり、西村先生いるこの場は物理のフィールドではなく、総合科目のフィールドなのだ。

常夏コンビは呆気に取られていた。やがて事態を把握したのか。

 

「汚ぇぞ!こらァ!」

 

憤怒の表情で突っかかってきた。

けど。

 

「チェックポイントの教科を変えてはならないっていうルールはありませんよ」

 

そう、予め決めておいたルールの10ヶ条のどこにも、【チェックポイントの科目を変えてはならない】という文はないのだ。

つまり、物理から総合科目に教科を変えてもなんの問題もない。

 

「それとも物理とか理数科目以外では怖くて戦えないんすかセンパイ?」

 

「バァロ!ふざけんな!俺達は三年の序列七位と八位だぞ!バカのお前たちに負ける訳ながないだろうがぁ!」

 

「「試獣召喚(サモン)っ!」」

 

 

 

 

 

 

 

総合科目

 

 

 

 

 

 

 三年Aクラス 常村勇作 5408点

        夏川俊平 5635点

 

 

 

 

 

 

 

 

常夏コンビの総合科目の点数を見て。

 

「(へえ。三年生の序列上位ってのはあながちホントみたい)」

 

そう思った。

しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年Fクラス 吉井明久 13749点

        坂本雄二 9547点

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なんだとぉ!!」」

 

 

二年生の序列一位と五位である僕と雄二には到底及ばない。

僕が言うのもなんだけど、今年度の二年生の序列十位から上位は正直化け物クラスだと思う。この文月学園は進学校のためそれなりに勉強は難しい。だが、それでもこうしてポンポンと5000点オーバークラスが多数いる。特に、上位五位以上の僕らは10000点近く保持しているのだ。もっとも、三年生になったらどうなるか分からないけど。

 

「い、10000点オーバーだと!?」

 

「バカな!バカのお前たちにそんな点数取れるわけ・・・・・・!」

 

「センパイ、自慢じゃねえが俺は二年の序列五位。そんで明久は俺ら二年の序列一位だぜ?本来なら明久が首席なんだけどな」

 

「あはは。まあね・・・・・・」

 

雄二の言葉に僕は苦笑いを返すしか無かった。

まあ、振り分け試験の時に恵衣菜を保健室に連れて行って退室したからFクラスになったんだし。でもまあ、後悔はしてない。

 

「でも、後悔はしてないよ雄二?雄二たちがいるんだから。それに恵衣菜もね」

 

そう、Fクラスには雄二や秀吉、康太、須川君、横溝君、そして恵衣菜がいる。それに零華には毎日会ってるから寂しくない。他にも、恭二や平賀君、久保君などいろんな人と友達だから。

 

「(それに、音ノ木坂で穂乃果たちの他にも知り合えたからね)」

 

最後の方を心に出して言い。

 

「それじゃあ始めましょうかセンパイ?」

 

常夏コンビの方を向いて、そう告げる。

 

「くっそぉ!」

 

「ふざけやがって!」

 

突っ込んで来た常夏コンビの召喚獣。坊主(夏川)先輩の馬頭とモヒカン(常村)先輩の牛頭を僕と雄二はそれぞれ相手をする。

僕の召喚獣は、甚だ理由が理由で不穏位だがデュラハン。雄二の召喚獣は狼男だ。それぞれ武器は大剣と素手。召喚獣の大きさは違っていつもより操作が難しい。だけど。

 

「いけ!」

 

「くらえ!」

 

「「なにっ!?」」

 

僕の召喚獣の大剣は坊主先輩の馬頭の(つち)と。雄二の召喚獣はモヒカン先輩の牛頭の槍を受け止めるのでは無く、体毛に被われた腕で弾く、もしくは逸らして槍をやり過ごしていく。

 

「どういうことだ!?」

 

「なぜ召喚獣をそんなに使いこなしてんだ!?」

 

常夏コンビの戸惑いは最もだ。普通、いきなり大きさの違うものを扱ったら戸惑うし、上手く操作は出来ない。しかし。

 

「コイツらは俺たちの分身だ。なら、動作などすべて自分に置き換えればいい」

「例え、大きさは変わっても召喚獣は召喚獣です。脳で操作する。それを自分の身体と同一化すればなんでことありませんよ」

 

「つまりだ。アンタらは努力を怠ってるんだよ」

 

「「はあっ!?」」

 

「アンタらの動きに召喚獣自身が付いて行ってねえ。どうせ、いつもの召喚獣と同じように動かしてんだろ」

 

召喚獣は脳から発せられた指示によって動く。脳から発せられた電気信号による指令。人間の筋肉やらはすべてその脳から発せられた電気信号によって動く。何時もの小さな召喚獣もしかり、召喚獣は言わばもう一人の自分だ。僕らは召喚獣を操作する時、常に周りの状況や相手の間合いや様子、そして自身の召喚獣の運動操作を思考している。つまり、今の状態の召喚獣を僕らと同じ、ヒトと同じように立ち振る舞わせれば、なんのことない。結果は。

 

「なっ!?」

 

「んな、バカな!」

 

「今更足掻いても遅いんだよ」

 

僕と雄二の召喚獣の前には、僕と雄二の召喚獣によって吹き飛ばされた常夏コンビの召喚獣、牛頭と馬頭が倒れていた。

有り得ないと言うような二人に雄二が。

 

「なあ、センパイ方よ。バカと言うのは面白いと思わないか?」

 

そう訪ねた。

それと同時に、再び常夏コンビの召喚獣と僕と雄二の召喚獣がぶつかり合う。

 

「あ?」

 

「なんだと?」

 

「一つのことに夢中になると、とんでもない集中力を発揮しやがる。空手バカとか柔道バカとか呼ばれるヤツがいるが、それは物事に集中するっている褒め言葉だ!」

 

「何が言いてぇんだよ!」

 

「これだけ言ってもわからねぇのかよ?いいか、よく聞けよ」

 

雄二は面白いとでも言うように告げた。

 

「アンタらが明久の妹を泣かせた瞬間から、明久のシスコンっていうバカのスイッチが入ったってことだ!」

 

「はあ!?」

 

「何言ってやがんだ?」

 

訳が分からないと言うかのような声を上げる常夏コンビ。

確かにコイツらには訳が分からないだろう。けど。

 

「僕は大切な妹を泣かせるヤツは絶対に許さないって決めてんだ!お前らは僕の、そして雄二の逆鱗に触れたんだよ!」

 

僕と雄二には、コイツらをぶっ飛ばす権利がある。

 

「どういう意味だ!」

 

「意味わかんねぇんだよ!」

 

「「さっさとくたばれや!!」」

 

「要するにだ―――」

 

愚直に真っ直ぐに突っ込んで来た常夏コンビの召喚獣に、僕と雄二の召喚獣は、カウンターで突っ込んで来た勢いをそのまま返して。

 

「零華と恵衣菜を泣かせたお前らを僕は―――」

 

「翔子を泣かせたアンタらを俺は―――」

 

常夏コンビの召喚獣を滅多叩きにして倒した。

 

「絶対に許さないってことだ!」

 

「絶てぇに許さねぇってことだ!」

 

そう言い放ち終えると同時に、常夏コンビの召喚獣がこの場から消え去った。

 

「な、なんで―――」

 

「俺たちが―――」

 

「「―――こんなバカ共に・・・・・・?」」

 

負けたのが有り得ないのか、呆然と力が無くなった感じでその場に膝をつく常夏コンビに僕と雄二は召喚獣を戻して近づいていく。約束の罰ゲームを実行するためだ。

 

「僕たちの勝ちです。約束、覚えてますよね」

 

「へ、俺たちに何をやらせようってんだ?」

 

「そんなの、決まってる」

 

忌々しげに訊く常夏コンビに、僕と雄二は。

 

「零華と恵衣菜に―――」

 

「翔子に―――」

 

「「―――謝れ」」

 

そう命令した。

そう命令し終えると。

 

「あとは西村先生、お願いします」

 

見届け人である西村先生に視線を向けて言った。

僕らの戦いを腕を組んで見届けていた西村先生は。

 

「うむ。さて、三年の問題児ども。お前らにはこれから道徳の補習が待ってる。いや、それより先に吉井妹たちに謝罪だな。その次は小暮たちが話をしたいみたいだからそれだな。そして最後にみっちりと道徳の補習授業だ」

 

地獄スケジュールのような事を言った。

それを聞いた常夏コンビは顔を真っ青にして力なく項垂れた。

そんな常夏コンビを見て、僕と雄二はみんなの待つFクラスへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

「~~~♪」

 

「フフ~~~♪」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

あの後、学園長(お祖母ちゃん)に片付け等の作業は必要ないと言われた僕らは手早く下校し、雄二たちはそれぞれ帰路に。僕と恵衣菜、零華は音ノ木坂学院に来ていた。

 

「はぁ~。なんかブラックコーヒーが飲みたくなったわ」

 

「私も」

 

音ノ木坂学院の〈アイドル研究部〉の部室で今日の肝試し大会のことを話し終えると、にこと真姫が疲れたように言った。周りの絵里達も同様に苦笑いを浮かべていた。

 

「なるほど、それでさっきからずっと二人は明久に抱きついているんですね」

 

「うん♪」

 

「そうだよ♪」

 

海未の言葉に零華と恵衣菜は僕の両腕に抱き着いたままそう返す。

 

「いいなぁ~」

 

「あ、あははは」

 

羨ましそうに零華と恵衣菜を見る穂乃果に、苦笑いを浮かべて見ることり。そこに。

 

「あ!なあ、明久くん」

 

「なに、希」

 

「確か文月学園のお化け屋敷って再来週までやってるんやったよな」

 

「えーと・・・・・・あ、うん、そうだけど」

 

希の問いに、お化け屋敷の公開日時を思い出す。確か、明後日からオープンして再来週の末まで公開しているはずだ。

 

「なら、今度みんなでそのお化け屋敷に行かん?」

 

「え!?」

 

そう言った希の言葉に一番反応したのは隣に座っている絵里だ。

 

「面白そうにゃー!」

 

「そ、そうかな・・・・・・?」

 

「わ、わたしは別に、どっちでも良いわ」

 

「にこも、行ってみたいかも」

 

「あー!確かに楽しそうだね!」

 

「穂乃果!?」

 

「穂乃果ちゃん!?」

 

「エリちはどうする?」

 

「え、えーと・・・・・・」

 

何故か悪戯している時の表情を浮かべる希に、絵里は戸惑う。

結局、穂乃果たちに押し切られた絵里は後日、妹の亜里沙と穂乃果の妹の雪穂も一緒に文月学園のお化け屋敷に行った。ちなみに、僕たちも一緒に行ったけど、なんと言うか、僕たちの時のようなお化けが出てこなくて幸いだった。まあ、絵里は半泣き顔だったけど。

 

 

 

 











次回 『玲襲来』 Let GO to The Next BAKALiVE!


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AFTER STORY ⅡStory
第Ⅰ問 玲襲来


 

~明久side~

 

どうも、皆さんこんにちは。主人公の吉井明久です。今、僕らは家で夏休みの課題に取り掛かっています。

メンバーは。

 

「あっつぅい~」

 

「穂乃果ちゃん、もう少し温度下げる?」

 

「その心配には及びませんよ恵衣菜。今のままでも十分涼しいですから」

 

「ま、まあ、昼間の炎天下よりはね」

 

「あはは。ほら、頑張ろう穂乃果ちゃん。凛ちゃんとにこちゃんも」

 

「そう言ってもにゃー」

 

「なんで夏休みの宿題なんかあるのよ」

 

「まあまあ、凛ちゃん、にこちゃん。あと少しで終わるから、ね」

 

「そうそう。早くせんと、後でかなり苦労するで~」

 

「あれ?真姫ちゃんは?」

 

「私はさっき終わったから」

 

「さすが~」

 

「ねえ、ねえ、雪穂、雪穂。ここどうやるの?」

 

「亜里沙、ここはね・・・・・・」

 

僕と恵衣菜、零華、穂乃果、海未、ことり、絵里、希、にこ、花陽、凛、真姫、雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんの十四人です。

雄二たちはそれぞれ、つばさは葵姉さんとあんじゅ、英玲奈と一緒にやるそうだ。時刻は十五時を過ぎているけどまだ少し暑い。

どうして家で宿題をやっているのかと言うと―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前

 

 

音ノ木坂学院屋上

 

 

昼前なのに夏真っ盛りの暑さの中、僕たちは音ノ木坂学院の屋上で練習をしていた。

 

「穂乃果、少し遅れてるわよ。凛はもう少しだけステップを遅くね」

 

「うん!」

 

「分かったにゃ!」

 

絵里の指導の元、曲の振り付けの練習が行われている。恵衣菜と零華も一緒に体を動かしている。で、その頃僕はというと。

 

「うーん・・・・・・」

 

「中々いい歌詞が浮かびませんね」

 

海未とともに新曲の歌詞を考えていた。

 

「テーマは夏、だよね」

 

「はい」

 

新曲のテーマは夏なのだが、いい歌詞が浮かばないのだ。

海未と歌詞を悩んでいると。

 

「二人とも大丈夫?」

 

「難しい顔してるよ」

 

ことりと恵衣菜が心配そうに聞いてきた。

 

「大丈夫ですよ恵衣菜、ことり」

 

「そう?」

 

「はい。少し歌詞を考えていたので」

 

「なるほど~」

 

「あ、二人だったら、夏といったら何を思い浮かべる?」

 

「え、えっと~」

 

「うーん」

 

僕の質問に二人はしばしの間考え。

 

「夏っていったらやっぱり、夏祭り?」

 

「私は海かな?」

 

「海未は私ですが?」

 

「いや、『海未』ちゃんじゃなくて、『海』だよ」

 

海と言われたら海未という海未のお決まりの言葉に、僕とことりは苦笑いを浮かべた。

 

「海未ちゃんは夏っていったらなに?」

 

「私ですか?私でしたら・・・・・・やっぱり山ですね」

 

「「「山?」」」

 

「はい!汗水流して山に登る。その達成感が思い出になると思います!」

 

海未の言葉に僕たちは若干引いた。

そこで、僕は海未が隠れ登山マニアだということを思い出した。海未という名前なのに山が好きと、少し―――いや、まあ、個人個人だけど、変わってる。

そこに。

 

「四人とも何話していたの?」

 

「あ、絵里」

 

「にこ達も混ぜなさい。気になるから」

 

絵里達もやって来た。

 

「いや、夏っていったら、何を思い浮かべるかなって」

 

「夏ねえ」

 

「夏っていったら、お盆かしら?」

 

絵里のお盆と言葉に少しだけ驚いた。

絵里に続いて希が。

 

「ウチは肝試しやね」

 

と言った。

すると、すぐ近くに立っていた絵里の顔が少しずつ青ざめて行った。

 

「え、絵里、大丈夫?」

 

「え、ええ。だ、大丈夫よ。悪いんだけど明久、少し背中借りるわね」

 

「え、あ、うん。―――部室に戻る?」

 

絵里の顔色に、アイドル研究部部長のにこに訊く。

 

「仕方ないわね~。まあ、今日はもうこれで終わりだしいいけど」

 

「という事なので、部室に戻ろうか。絵里、歩ける?」

 

「ご、ごめんなさい。身体に力が・・・・・・」

 

どうやら希の肝試しという単語にこの間行った、文月学園のお化け屋敷での事を思い出したらしい。一緒に行った絵里の妹の亜里沙ちゃんは興味深そうに見て楽しんでいたけど、その一方絵里は暗いところが苦手プラスお化けが怖いという事もあって、『かしこい、かわいい、エリーチカ』通称、KKEではなく、『怖くて、かわいい、エリーチカ』のKKEとなってしまった。まあ、どうやら他のみんな、希以外にはお化けが怖かった見られているみたいだけど。

 

「えーと・・・・・・」

 

「お兄ちゃん、絵里ちゃんを連れてきてね」

 

そう言って、零華にしては珍しいなにか企んでいる時の表情を浮かべて穂乃果たち一緒に屋上から出ていってしまった。そのままトントン拍子で希たちも行ってしまい。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

僕と絵里は顔を見合わせた。

 

「あー、取り敢えず。ちょっと、失礼します」

 

「え、あ!きゃっ!」

 

絵里に一言申し入れ、僕は絵里をお姫様抱っこした。

絵里をお姫様抱っこした僕は、見た目以上に軽いと思った。まあ、声に出さないけど。女子に体重の関連事はタブーなのである。

 

「お、重くないかしら」

 

「え?あ、うん。大丈夫。絵里軽いから」

 

そう言って僕はそのまま恵衣菜たちのいるアイドル研究部に戻った。

部室に戻り、練習着からそれぞれの制服に着替えた僕らは室内で涼んでいた。

 

「あ~、疲れたぁ~」

 

「穂乃果ちゃん、お疲れ様」

 

「はい、レモンのはちみつ漬け」

 

「ありがとぉ~。んん~っ!酸っぱい!けど、美味しい!」

 

タッパーから取り出したレモンのはちみつ漬けを一切れ食べた穂乃果は目を軽く瞑って言った。

 

「あ、それ冷たい水に入れたらはちみつレモン水になるから、苦手だったらそっちでね」

 

「どれどれ・・・・・・」

 

僕の言葉に、にこが一切れレモンのはちみつ漬けを食べ、冷たい水の中にもう一切れレモンのはちみつ漬けを入れ、軽く混ぜて飲む。

 

「お、美味しい・・・・・・」

 

「口にあったようで良かったよ」

 

何処かがっかりしたようなにこにそう言って、僕も一切れ食べる。

うん、我ながらよく出来てると思う。

やはり、疲労回復にはこれがいいね。手早く補給できるし。

そう思ってると。

 

「あ、折角やから明久くんを占ってあげるな」

 

「え?僕?」

 

突然希がそう言ってきた。

 

「まあ、いいけど」

 

占ってもらっても特に無いはずだけど、とそう思いながら希の占いの結果を待つ。

少しして。

 

「明久くんの今日の運勢はこれや!」

 

(スター)の逆位置?」

 

希の持つタロットに僕は疑問符を浮かばせながら言う。

確か、星の逆位置は良くない事が起こるとかそんなだってはずだ。正直タロットカードの占いとかは詳しくない。

 

「なにか嫌な予感がするのは気のせいかな・・・・・・」

 

僕の言葉に部室の空気が固まったのはなんとも言えなかった。そして、その予感が的中するまで残り数時間だと、この時の僕らは知るよしもなかった。

 

「え、えっと。あ!そういえば夏休みの課題、終わりましたか?」

 

話題を変えようと、海未が喋った。

 

「あと少しかしらね」

 

「ウチもや」

 

「私も同じよ」

 

「わ、私もです」

 

「お兄ちゃんと私はもう終わったよ」

 

「早いね~二人とも。恵衣菜ちゃんは?」

 

「えっと、私はあと4ページくらい」

 

「そうなんだぁ~。ことりもあと少しかな」

 

「私もですね。ところで」

 

「「「(ビクッ!)」」」

 

海未のジト目に話に入ってこなかった、我らがμ'sの三バカ。穂乃果、凛、にこに視線が突き刺さった。

 

「そちらの三人はどうですか?まさか・・・・・・まだ手を付けてすらいないなんてことは、ありませんよね?」

 

「「「(ギクッ!)」」」

 

三人のあからさまな反応に僕たちは同時に心に一つの言葉が浮かんだ。

 

『『『(あ、三人ともやってないな)』』』

 

と。

すると、案の定。

 

「に、にこは問題ないわ!え、ええ!大丈夫だとも!」

 

「凛も大丈夫にゃ!」

 

「え、えーと、その~」

 

三人は口を淀んで言った。

まあ、にこと凛は少しはやってるみたいだけど、問題は―――

 

「穂乃果?」

 

「な、なに海未ちゃん?」

 

「まさかと思いますが」

 

「う、うん」

 

「一ページもやってない。なんてことありませんよね?」

 

「え、えーと」

 

海未の詰問に視線を逸らす穂乃果。

やがて、海未が僕に視線を向け。

 

「明久、雪穂に連絡して聞いてください」

 

「海未ちゃん!?」

 

「え、えーっと・・・・・・」

 

「早く」

 

「あ、はい」

 

海未の眼力に僕は抵抗すること虚しく。そもそも抵抗してない気がするけど。雪穂に連絡して穂乃果の宿題について聞いた。

 

「もしもし」

 

『もしもし?』

 

「あ、雪穂ちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

『明久さん?どうしたんですか?』

 

「実は、穂乃果の夏休みの課題について聞きたいんだけど」

 

『お姉ちゃんのですか?』

 

「うん」

 

『お姉ちゃん、夏休みの課題全くというわけじゃないんですけど、あんまり手を付けてませんよ?精々、数ページ進んでるだけですかね』

 

雪穂ちゃんからの情報を海未に伝えると、海未は目に見えて目元をピクピク痙攣させていた。

 

「穂乃果」

 

「は、はい」

 

「今日はこの後勉強会をしましょう。ええ、今すぐしましょう!」

 

「う、海未ちゃん!?」

 

毎年、夏休みの終盤に泣き付いてくる穂乃果に海未が気迫を篭もった声で言う。さらに。

 

「明久、零華。この後二人の家で勉強会を開いても良いですか?」

 

「え?僕は別にいいけど」

 

「私もいいよ」

 

特に今日はこのあと予定がなかったので、僕と零華としては歓迎だ。だって、みんなとやった方が捗るしね。

 

「あ、海未。雪穂ちゃんも誘っていい?」

 

「ええ。構いませんよ」

 

「サンキュー。あ、雪穂ちゃん?」

 

『はい』

 

「良かったらこの後、家で勉強会しない?」

 

『明久くんと零華ちゃんの家でですか?』

 

「うん」

 

『いいですよ。あ、明久さん、亜里沙も誘っていいですか?』

 

「亜里沙ちゃん?別にいいけど」

 

『ありがとうございます。何時くらいに集合ですか?』

 

「うーん」

 

ちなみに現在の時刻は十二時前だ。

ここから帰ってお昼とかも食べるとすると―――。

 

「十三時半でいいかな?」

 

『はい!大丈夫です。お姉ちゃんも一緒に連れて行きますので安心してください!』

 

そんな雪穂ちゃんの声が聞こえたのか、穂乃果が「雪穂!?」と叫んだ声が聞こえた。

 

「あはは。じゃあ、よろしくね」

 

『はい!任せてください!』

 

そう言って、僕は雪穂ちゃんとの通話を終え、「雪穂の裏切り者~」と言っている穂乃果を見る海未を見た。

 

「ってことみたいだけどいいかな?」

 

「はい。私も雪穂と一緒に穂乃果を連れて行きますので」

 

もはや逃げ場なしの穂乃果に少し同情してしまうが、日頃の海未の苦労(穂乃果限定)に比べらたらまあ、いいのか・・・・・・な?

そう思っていると。

 

「明久、亜里沙も参加するのかしら?」

 

回復した絵里が訊いてきた。

 

「みたいだよ?」

 

「なら、私も行っていいかしら?」

 

「別にいいよ。ね、零華?」

 

「うん」

 

「ありがとう二人とも。せっかくだから午後はみんなで夏休みの課題を終わらせちゃいましょう」

 

「賛成やね。そうでもしないと、にこっちは逃げそうやし」

 

「ちょっと、希!?」

 

「ま、いいんじゃない?どうせ、凛に教えるには変わりないんだし」

 

「真姫ちゃん!?かよちんも何か言って!」

 

「えーと・・・・・・課題、頑張ろう凛ちゃん」

 

「決まりみたいだね。じゃあ、午後は明久くんと零華ちゃんの家で夏休みの課題をやるということで」

 

「はい。各自勉強道具を持って二人の家に集合ですね」

 

こうして、僕らはこの後僕と零華の家で夏休みの課題を消化するための勉強会を開くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

みんなが集まって勉強会を始めたのが十三時半過ぎ、そして現在は十六時半少し前と、約三時間勉強をぶっ続けでやっていた事になる。まあ、途中休憩も挟んだけど。

 

「終わったぁ~!」

 

「穂乃果ちゃん、お疲れ様」

 

「うう~っ。づかれたぁ~」

 

「もお、だらしないよお姉ちゃん?」

 

「だぁってぇ~」

 

「まったく、普段からコツコツしていれば苦労しないんですけどね」

 

「あはは。今更だよ海未ちゃん」

 

「わかってますよ恵衣菜」

 

穂乃果にほぼ付きっきりで勉強を見ていた海未の諦めた感じの言葉に、冷たいデザートを零華と一緒に作っていた僕は苦笑した。

他のところでも。

 

「お疲れにこっち」

 

「ええ。疲れたわ」

 

「終わったにゃー」

 

「凛ちゃん、お疲れさま」

 

「はぁ。なんで私まで・・・・・・」

 

「亜里沙、そろそろ終わりにしましょうか」

 

「うん!お姉ちゃん!」

 

勉強道具を片付けてのんびりしている姿が見えた。

それと同時に。

 

「お疲れさま、はい。冷たいデザート」

 

よく冷えて、疲れた体に丁度いい冷たいデザート、ミルクプリンを渡した。

 

「ありがとう明久」

 

「うん」

 

ミルクプリンをみんなに配り、自分と零華の分も取って食べようとした瞬間。

 

「ん?」

 

ポケットに入れていたスマホから着信音が鳴り響いた。

 

「誰だろ?」

 

スマホの画面を見ると、画面には母の文字が出ていた。

 

「母さん?」

 

「え、お母さん?」

 

「うん。もしもし?」

 

母さんからの電話を開くと。

 

『あ、明久くん?』

 

「どうしたの母さん。何かあったの?」

 

『何かあったの?っていうか、これからあるって言った方がいいのかしら』

 

「は?」

 

『実はね、玲ちゃんがそっちに行くことになったからよろしくお願いね』

 

「へ?」

 

母さんの言葉に僕は間の抜けた変な声を返した。

その僕の言葉に反応したのか、恵衣菜たちも僕を見てきた。

 

「ごめん、もう一度お願い」

 

『玲ちゃんがそっちに行くことになったの』

 

「―――はいっ!?」

 

うん、聞き間違いじゃなかった。

 

「ね、姉さんがこっちに来るの!?」

 

僕のその声に。

 

「お、お姉ちゃんが帰ってくるの!?」

 

零華も驚きの声を上げた。

さらに。

 

「玲お姉ちゃん帰ってくるの!?」

 

「玲さん帰ってくるんですか!?」

 

「うそっ!?」

 

「ええっ!?」

 

「ホントなの!?」

 

姉さんを知ってる恵衣菜、海未、ことり、穂乃果、雪穂の順に声が上がる。

一方、姉さんのことを知らない絵里たちはと言うと、誰?と言うように首をかしげていた。

 

「姉さんが帰ってくるって、なんでまたいきなり」

 

『えっとね~。玲ちゃん、和揮くんのお仕事手伝ってるでしょ?』

 

「え?ああ、そう言えば父さんの会社手伝ってるんだっけ?」

 

『そうそう。それでね、仕事の都合でしばらく日本(そっち)に帰ることになったの』

 

「な、なるほど。それで、姉さんいつ来るの?」

 

『あら、言ってなかったかしら?今日よ』

 

「今日!?」

 

僕がそう叫ぶと。

 

 

 

ピンポーン♪

 

 

 

 

インターホンが鳴った。

 

「え?まさか・・・・・・」

 

僕は嫌な予感がしつつも、玄関に行き扉を開ける。

するとそこには。

 

 

 

「久しぶりですねアキくん。元気そうでなによりです」

 

「ね、ねねねね、姉さんんんんっっっ!!?」

 

 

 

 

吉井家の長女にして、僕と零華の姉さん。

吉井玲がキャリーケースを持った姿でいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故かバスローブの姿で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





些細なことでも構わないので、感想などお願いします!





次回 『吉井玲』 Let GO to The Next Baka Live!


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第Ⅱ問 吉井玲

 

~明久side~

 

 

 

「久しぶりですねアキくん。元気そうでなによりです」

 

母さんとの通話中にインターホンが鳴り、嫌な予感がしつつも開けるとそこには、我が吉井家の長女にして、僕と零華の姉。吉井玲の姿があった。───何故かバスローブ姿で。

 

「ね、ねねねね、姉さんんんんっっっ!!?」

 

「はい。姉さんです」

 

僕はすぐに玄関の扉を閉めて鍵を掛けて通話中の母さんに聞く。

 

「母さん!どういうこと!?」

 

『あら?玲ちゃん、今来た感じ?』

 

「そうだよ!」

 

『あらら。もう少し早く言っておけば良かったかしら』

 

「出来ればそうして欲しかったよ!」

 

まあ、母さんは今海外にいるから時差とか色々あるんだろうけど、出来ればもう少し早く伝えて欲しかった!そう思っていると。

 

『あ、ごめん明久君、お母さんこれからお仕事だから』

 

母さんの慌てた声が聞こえてきた。

 

「えっ!?って、ちょっ、母さん!?」

 

『それじゃあ暫く玲ちゃんのことお願いね。零華ちゃんにも伝えといてね』

 

そう言う母さんの後ろから、マネージャーの人の声が聞こえることから何かあったのだろう。そう思いながらも返事を返そうとするが。

 

「───切れてる」

 

スマホの通話が切られていた。

どうやら母さんが切ったみたいだ。そこに。

 

 

『もしもし、アキくん聞こえてますか?姉さんを家の中に入れてくれませんか?』

 

 

姉さんの声が玄関扉越しに聞こえてきた。

その声が聞こえたのか、もしくは僕のさっきの声が聞こえたのか零華たちがやって来た。

 

「お、お兄ちゃん、外にいるのってもしかして・・・・・・」

 

「───姉さん」

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

僕の一言に、零華、恵衣菜、穂乃果、海未、ことり、雪穂ちゃんが息を飲んだ。

 

「ねえねえ雪穂。なんで明久さん外にいる二人のお姉ちゃん居れないの?」

 

「そ、それはね亜里沙・・・・・・」

 

訊いてくる亜里沙ちゃんに雪穂は戸惑い口淀む。

そんなところに。

 

 

『もしかして姉さんの格好が気に入らないのでしょうか?』

 

 

姉さんのそんな声が聞こえてくる。

さらに。

 

 

『分かりました。では恵衣菜ちゃんに頼んでメイド服を貸してもらうことにしましょう』

 

 

そう言う声が聞こえてきた。それが聞こえるや。

 

「普通の家庭にメイド服なんで常備されてるわけないでしょうがあぁ!!!」

 

「普通の家にメイド服は無いよお姉ちゃんんんっ!!!」

 

耐えきれなくなった僕と零華は同時に玄関扉を開けて、そこにいる姉さんに思いっきりツッコんだ。

 

「あら?そんなに私のメイド服が見たくないのですか?」

 

「いやいやいやいや!お姉ちゃんのメイド服が見たいとかそういうのじゃなくて!って言うか、なんでお姉ちゃんバスローブ姿なのっ!?」

 

「ああ、これはですね」

 

零華の言葉に姉さんは説明してきた。

 

「今日はとても暑く汗をかいたので、着替えたんです」

 

「「はい、アウトォォォォーーーッ!」」

 

姉さんの説明とも言わぬ説明に絶叫をあげる。

 

「なんでそこでタオルで拭くという選択肢が出なかったのかな!?」

 

「普通そっちを出すよね!?」

 

「なにを言っているのですかアキくん、レイちゃん。塩化ナトリウムの他にマグネシウムやカリウム、カルシウムなどの不純物を多少は含むものの、汗の主成分は水です。このバスローブの素材である綿は通気性や吸収性に優れているのですから、姉さんの意図したとおり汗を吸収しているはずです」

 

「いや・・・・・・。確かに汗は引いているかもしれないけどさ・・・・・・」

 

「汗が引けばどんな格好でもまともに見えるってわけじゃないんだけどなあ・・・・・・」

 

僕と零華がそう呟くように言うが、姉さんには聞こえてなかったみたいだ。

 

「取り敢えず中に入らせてもらいますね───あら?」

 

僕と零華を半ば無視して家に入った姉さんは、玄関に恵衣菜たちがいるのを見て驚いたような表情をする。

 

「お久しぶりですね、恵衣菜ちゃん、穂乃果ちゃん、雪穂ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん。みんな可愛くなりましたね」

 

「あ、ありがとうございます玲お姉さん」

 

「ど、どうも」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「あ、ありがとうございます玲さん」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「そして・・・・・・アキくん、レイちゃん、こちらの女性たちは何方ですか?」

 

姉さんが絵里たちを見てそう聞いてきた。

 

「は、初めまして、綾瀬絵里と申します。こっちは妹の亜里沙です」

 

「は、初めまして!明久さんと零華さんのお姉さん!」

 

「ウチは、東條希です」

 

「矢澤にこです」

 

「西木野真姫、です」

 

「え、えっと、小泉花陽です」

 

「星空凛です」

 

それそれ戸惑いつつも自己紹介する絵里たち。名前で思い出したのか姉さんは、ああという表情をして。

 

「あ、μ'sの皆さんでしたか」

 

と言った。

さすがの姉さんもμ'sのことは知っていたみたいだ。じゃなくて!

 

「姉さんは早く普通の服に着替えて!」

 

僕は姉さんに言う。その当の姉さんはというと。

 

「何故ですかアキくん?」

 

不思議な表情をしていた。

 

「零華!」

 

「うん!」

 

僕は零華と瞬時に意思疎通をして。

 

「お姉ちゃん!とにかく部屋で着替えてね!」

 

「なんですかレイちゃん?」

 

零華は姉さんを無理やり自室に連れていった。

これで取り敢えず大丈夫なはずだ。───と、そう思った時もありました。

 

「あ、明久、さっきの人は・・・・・・」

 

姉さんを知らない人たち代表として絵里が引き気味に聞いてきた。

僕は絵里たちの方を向いて。

 

「僕と零華の姉さんです・・・・・・」

 

と、やつれた表情で告げた。

それを聞いた絵里たちはと言うと。

 

『『『ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!??』』』

 

その瞬間、亜里沙ちゃんを除いた6人の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

姉さんのことを任している零華を除いた僕たち全員、さっきまで勉強していたリビングに戻っていた。

 

「そ、それで明久。あなた達のお姉さんって・・・・・・」

 

「僕と零華の姉さんは、頭は良いんだけど、一般常識が少しだけ欠けてるんだ」

 

『『『少し?』』』

 

さすがにさっきあれを見て少しではいかないみたいだ。そこに。

 

「お兄ちゃん、戻ったよ・・・・・・」

 

「着替えてきましたよアキくん」

 

疲れた表情の零華と、バスローブ姿から私服姿に戻った姉さんがリビングに入ってきた。

 

「お、お疲れ零華」

 

「うん・・・・・・」

 

「零華、お茶をどうぞ」

 

「ありがとう海未ちゃん」

 

「玲さんもどうぞ」

 

「ありがとうございますことりちゃん」

 

「いえ~」

 

海未とことりの渡した冷たいお茶を飲む零華と姉さん。その動作は姉妹そっくりだ。

 

「あ、改めて、はじめまして。吉井玲です。何時も弟と妹のアキくんとレイちゃんがお世話になっています」

 

『『『と、どうも・・・・・・』』』

 

姉さんの改めての自己紹介に絵里たちは戸惑いながら返す。まあ、無理もないけど。

 

「それで姉さん」

 

お茶を飲み終えた姉さんに僕は訊ねる。

 

「はい。なんでしょう?」

 

「姉さん、何時まで日本(こっち)にいるの?」

 

「そうですね・・・・・・どのくらいになるか、具体的には分かりませんが、少なくても半年は日本(こちら)にいるかと」

 

「そ、そう・・・・・・」

 

つまり、姉さんは少なくても半年はここに居るということになる。そう思うと僕と零華は頭が痛くなった。何故頭が痛くなったのかと言うと。

 

「一応言っておくけど、姉さんは台所立ち入り禁止だからね!」

 

「何故ですかアキくん?」

 

「だってお姉ちゃん、前料理した時鍋溶かしちゃったじゃん!」

 

そう、姉さんはなんでか知らないけど料理は枯らしきダメなのだ。どのようにダメかと言うと。

 

「失礼ですねレイちゃん。私だって料理ぐらい出来ますよ」

 

「・・・・・・お米はどうやって研ぐか知ってる?」

 

「もちろん知ってますよ」

 

僕の質問に姉さんは自信満々に、胸を張って答えた。

 

「クレンザ───くしゅん!」

 

「ちょっと待って!今クレンザって言わなかった!?まさかクレンザーの事じゃないよね!?」

 

「そんな訳ないじゃないですか」

 

「なんでそこで胸を張るの!?」

 

という訳で、姉さんは料理に関しては全くダメなのである。我が家では、姉さんを台所に入れてはならないという不文律があるだ。ちなみにこの事は恵衣菜たちも知っている。

 

「アキくん、騒がしいですよ?」

 

「姉さんのせいだよっ!」

 

姉さんはどこか抜けてるから疲れる。高橋先生と同じで。

 

「ちなみにお姉ちゃん。海胆とタワシ、見分けられるようになった?」

 

「はい。ついに見分けられるようになりました」

 

「そ、そう、よかったね」

 

姉さんのやり切った、達成感溢れる表情に僕と零華は若干ホッとした。そんなところに小声でにこが。

 

「ね、ねえ、明久。あなたたちのお姉さんって今まで海胆とタワシを見分けられなかったわけ?」

 

と、嘘でしょとでも言うような表情で訊いてきた。

 

「そうなんだよ・・・・・・。たぶん、ピーマンとパプリカはまだ見分けられてないと思う」

 

「はあ?」

 

僕の言葉を聞いたにこは目を見開き、マジでと目で訴えてきた。そしてその隣にいる絵里も驚いていた。

 

「一応、これでも姉さん頭はいいんだよ?」

 

「え、そうなんですかお姉さん」

 

「はい。日本ではなくアメリカのボストンにある大学に通ってました。大学の教育課程は昨年終了しています」

 

「ぼ、ボストンの大学・・・・・・・!?」

 

「そ、それってもしかして、世界に名高いハーバード大学じゃ───」

 

「はい。その通りです」

 

『『『えぇぇっ!?』』』

 

先程の姉さんの奇行を見た後でこう言ったら驚かれるのは当然だね。ちなみに、恵衣菜たちは姉さんが向こうの大学に行っていたことは知ってる。なにせ、それを言ったら『え!?』とかなり驚かれたから。姉さんは僕や零華よりも頭が良く、それこそボストンの大学を現役で楽々入ることが出来るのだ。その分、

 

「(姉さんの一般常識がかなりおかしいんだけどね!)」

 

「(お姉ちゃんの一般常識がかなりおかしいんだけど!)」

 

僕と零華は同時に姉さんを見てそう心に出した。

そう心に出した時、姉さんが時計を見て。

 

「あら。もうこんな時間なんですね」

 

と言った。

時計を見ると、時間は18時前を指していた。

 

「あ、ホントだ。みんな、夕飯食べていかない?」

 

時間も遅くなっているため僕はみんなにそう提案した。

 

「え、でも・・・・・・」

 

僕の言葉に絵里が姉さんを見る。

 

「よろしかったらどうぞ。私もみなさんにアキくんやレイちゃんのこと聞きたいので」

 

「それなら・・・・・・」

 

「決まりだね。あ、恵衣菜と海未ちょっと手伝ってくれる?」

 

「あ、うん」

 

「分かりました」

 

助っ人に僕は恵衣菜と海未を呼んで、台所に向かった。

台所に入り、姉さんの視覚から外れた僕ははぁっ、と息を大きく吐いた。姉さんがいると常にツッコミをしないといけないから疲れるのだ。

 

「だ、大丈夫明久くん」

 

「だ、大丈夫ですか明久」

 

「ああ、うん。何とか」

 

心配そうに声をかけてくる恵衣菜と海未に若干やつれた表情で返す。

 

「にしても玲さんが帰ってくるとは思いませんでしたね」

 

「だね。私も驚いてるよ」

 

「ほんと、帰ってきて早々ツッコミを入れるとは思わなかったよ」

 

アメリカに行く前はもう少しまともだったのに、何故帰ってきてああなるのか。いったい向こうで過ごしている間に何があったというのさ姉さん・・・・・・。

そう思いながら冷蔵庫の中身を見る。姉さんも含めて15人だからかなりの量が必要になる。

 

「・・・・・・なににしよう」

 

「15人ですからね・・・・・・ここは鍋ですかね?」

 

「うーん・・・・・・カレーは、今の季節残しておけないし・・・・・・」

 

「でも、15人もいるなら食べ切れるかも?」

 

冷蔵庫の中身を吟味して3人で献立を考える。

 

「あ、パエリア・・・・・・は、ダメか」

 

「なんで・・・・・・あ、凛ちゃん」

 

そう凛は魚介系が苦手なのだ。パエリアにはエビやムール貝など魚介系が入っているためダメだ。

 

「やっぱりカレーかな・・・・・・」

 

「ナスにジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン・・・・・・あ、パイナップルとレーズンがありますね」

 

「ん~。じゃあ、フルーツカレーにする?」

 

「だね。あとは、生野菜のサラダにコンソメスープかな?」

 

「ですね」

 

メニューを決めた僕たちはすぐに調理に取り掛かった。

まずはお米を炊き、野菜を洗う。生野菜サラダにワカメを使うため、ワカメを水につけて戻し、野菜を切る。

深鍋に油を引き、一口サイズに切った玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモを入れ炒め、牛肉とナスを入れる。十分に火が通ったら火を止め、水を入れて、再び火をつける。その間に、コンソメスープと生野菜サラダを作る。深鍋が沸騰しアクが出てきたらそれを取り除き、ジャガイモやニンジンが柔らかくなるまでし、柔らかくなったら火を止めてルーを入れて溶かして煮る。

一人でやったら一時間くらいはかかるのを、恵衣菜と海未が手伝ってくれたため一時間経たずに終わった。まあ、その作ってる最中に姉さんの声が聞こえてきたのにはツッコミを入れたけど。だって、人のアルバム。しかもいつ撮ったのか不思議な写真とかを見せてるんだもの!零華も疲れたのかグッスリと眠っていた。同情するしかない。

で、約一時間後。

 

「お待たせ~」

 

出来上がったものを持ってみんなのところに戻った。

 

「あ、ありがとう明久」

 

「大丈夫」

 

カレーと小皿にコンソメスープ、ドレッシング、水を持っていき、さすがに全員座れる訳では無いので分かれて座る。

ちなみに、花陽には白米とカレーと別々に分けている。理由は、以前あったからだ。

 

「ありがとうございます恵衣菜ちゃん、海未ちゃん」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「うん、良く明久くんと作ってるから大丈夫だよ」

 

「そうですか。良かったです」

 

恵衣菜と海未が姉さんと話している間、僕はと言うと。

 

「零華、起きて。ご飯だよ」

 

グッスリと眠りについている零華を起こしていた。

 

「ん~~」

 

「(ヤバい、可愛すぎる)」

 

そう思うと同時に、僕は自然な動作でスマホを取り出しカメラを起動させて零華のあどけない寝姿を撮った。そして写真を撮り終えると再度零華を起こす。

 

「零華、ご飯だから起きて」

 

「んにゃ~。ほぇ?おにいひゃん、ごひゃん?」

 

「うん」

 

「はぁーい」

 

眠気眼を擦りつつ身体を伸ばして起きる。

 

「あ、今日はカレーなんだね」

 

「まあね」

 

零華を起こし、僕と零華は席に着く。

 

「それじゃ。いただきます」

 

『『『いただきます!』』』

 

僕の声に続いて言い、みんなご飯を食べ始めた。

 

「あら、このカレー、フルーツカレーなんですね」

 

「うん。あれ、姉さん嫌いなものあった?」

 

「いえ、ありませんよ。アキくんのカレーを食べるのはずいぶん久しぶりですから」

 

そう言うと姉さんは美味しそうに食べる。

僕と零華はその姉さんの姿にクスッと小さく微笑み、フルーツカレーを食べる。うん、美味しいね。

夕飯を食べたあと、時間も時間なためみんな帰ることになった。

 

「じゃあ、僕みんなを送ってくるから」

 

「うん」

 

「気をつけてね」

 

「わかりました。ですが、アキくん、くれぐれも変な気は起こさないように」

 

「するかっ!!」

 

零華と恵衣菜、姉さんに見送られながら僕は穂乃果たちを自宅にまで送り届けて行った。

近い順に行き、穂乃果、雪穂ちゃん、ことり、海未の家と行き、真姫、花陽と凛と行っていき。途中でにこと希と分かれ、最後に絵里と亜里沙ちゃんを送って行った。

みんなを送っていき、自宅に帰るなりまたひと騒動起きるが、まあ、それはまた別の機会に語るとしよう。

 

 

 

 

 











次回 『夏合宿へ行こう!!』 Let GO to The Next Baka Live!


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第Ⅲ問 夏合宿へ行こう!!

 

~明久side~

 

 

どうも、みなさん。吉井明久です。夏休みに入り、長期休暇真っ只中のなか、僕は───。

 

 

「う~みだぁ~!」

 

「もう!人の名前を叫ばないでください!」

 

「違うよ!海未ちゃんじゃなくて、海!」

 

「あはは、お約束の流れ・・・・・・」

 

「うわぁ~!綺麗な海~」

 

「ホントだ~!」

 

「んん~っ!眩しいわね」

 

「結構人がいるな」

 

「うむ。海水浴場じゃからの、かなり人がいるの」

 

「・・・・・・暑い」

 

 

雄二や穂乃果たちと静岡県にある海に遊びに来ていました!

ちなみにここまで送迎してくれたのは、姉さんと翠姉さんだ。二人とも中型免許を取得してるため、マイクロバスを借り二台に分かれて来たのだ。

 

「姉さん、翠姉さんお疲れさま」

 

「大丈夫だよ~」

 

「ええ、問題ありませんアキくん」

 

その二人は水着に着替えてパラソルの下で休んでいた。

 

「翠姉さんは姉さんのことありがとう・・・ほんとに・・・・・・」

 

まあ、僕は別の意味でも翠姉さんにお礼を言いたいけど。

 

「あー・・・・・・さすがに、今回の玲のあれは・・・・・・ね~」

 

僕は翠姉さんと会話して、約一時間半前の車内でのことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約一時間半前 姉さんの運転する車内で

 

 

「いやー、まさかみんなで海に行けるなんて♪!」

 

「楽しみだね穂乃果ちゃん!」

 

「うん!」

 

姉さんと翠姉さんの車、2台に分かれて向かっている最中、姉さんの運転する車。乗員は、運転手の姉さんにはじまり、僕、零華、恵衣菜、穂乃果、ことり、海未、真姫、絵里、雄二、霧島さん、秀吉、亜里沙ちゃん、雪穂ちゃんの十四人だ。翠姉さんの方には、運転手の翠姉さんをはじめ、にこ、希、花陽、凛、康太、工藤さん、須川君、横溝君、エレンさん、桜咲さん、天野さん、葵姉さん、恭二、友香さん木下さんの十六人だ。

合計三十人人と、かなりの人数である。

 

「ツバサたちも来れたらよかったのに」

 

「仕方ないよ。ツバサちゃん、あんじゅちゃんと英玲奈ちゃんの三人で旅行だもん」

 

僕の言葉に、零華は仕方ない風に返す。

ここにいない、ツバサたちは三人で旅行らしく、久保君たちも各自、家の都合や、帰省、旅行などなどで参加出来なくてここにいない。ここに居るのは、丁度予定が空いていた人たちだ。

そもそも、何故僕たちが海に行くことになったのかと言うと、それは今から約十日ほど前のこと───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十日前

 

 

 

「「───海?」」

 

「はい」

 

明くる日の朝、朝食の席で姉さんの言葉に僕と零華は首をかしげた。

 

「めずらしいね。姉さんが旅行に誘うなんて」

 

「そうですか?そんなことないと思いますけど」

 

姉さんの言葉に僕と零華は苦笑する。一緒に出掛けることはあるが、姉さんから誘っての旅行などは数える程しかなかった。まあ、それは姉さんが旅行先の人に迷惑をかけないか心配という面もあるのだが。

 

「それで、なんで海なのお姉ちゃん?」

 

零華が姉さんに聞く。零華の問いに姉さんは。

 

「実はですね、父さんからその近くにあるホテルに書類を届けて欲しいって頼まれたんですよ」

 

「父さんから?」

 

僕たちの父さん、吉井和輝は吉井財閥の本社代表取締役として世界各国を飛び回っている。まあ、それは恵衣菜の父さんも同じだけど。そして、吉井財閥は様々な事業に手を掛けており、様々な企業と業務提携をしているのだ。

 

「はい。私たちの行く海の場所から少しだけ離れますが、近くの淡島にあるホテルに」

 

「へぇー」

 

「それで、どうせならみなさんもご一緒どうかと。ちなみに翠には声を掛けてありますよ」

 

「「早っ!」」

 

姉さんの行動の速さに僕と零華は目を丸くして姉さんにツッコンだ。

 

「ですので、お友達で参加する人がいたら教えてください」

 

「え、あ、うん」

 

「友達って言っても・・・・・・何人ぐらいまで誘っていいの?」

 

「そうですね・・・・・・・・・・私たちも入れて三十人くらいは大丈夫ですね」

 

「「三十!?」」

 

姉さんの言葉に再び絶叫を上げた。そんな大人数どこに泊まるのだろう!?

 

「はい。確か、伊豆辺りに別荘がありましたよね」

 

「「え?あー、そう言えば」」

 

姉さんの言葉に僕と零華は一字一句違えずに、同じ言葉を喋った。

かなり昔にだが、ウチが所有する別荘に行った覚えがあった。確かに、あの別荘なら三十人くらいは泊まれるとは思うけど。

 

「あー、取り敢えずみんなに聞いてみるね」

 

「はい」

 

こうして僕らは海に行くことになったんだけど、まさか本当に三十人近くの人数になるなんて僕と零華はこの時思ってもいなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は海に辿り着く1時間半前の車内に戻り

 

 

 

「いやー、まさか本当に三十人近く集まるなんてね」

 

「うん。誘った私たちが言うのもなんだけど驚いたね」

 

僕と零華は後ろの、荷物が置いてある席の前に座っていた。

席順は、運転席に姉さん。助手席に秀吉。座席の一列目に窓側から、真姫、海未、霧島さんが。二列目に穂乃果、ことり、恵衣菜。三列目に絵里、亜里沙ちゃん、雪穂ちゃんが。そして四列目に零華、僕、雄二となって、一番後ろが僕たちの荷物置き場となっている。車内ではそれぞれはしゃいだり、話したり、寝たりと様々なことをしていた。そこに。

 

「アキくん、姉さんのカバンの中に酔い止めの薬があると思うのですが取ってくれますか?」

 

「わかったー!」

 

姉さんからの声が聞こえてきた。どうやら秀吉が車酔いになってしまったらしい。秀吉が車酔いなんで珍しいと思いながらも返事を返して姉さんのカバンを取り出す。

 

「えーと、あれ、なんでこのカバンチャックが開かないんだろう?」

 

姉さんのカバンを開けようとしたが、中でチャックが絡まってしまっているのか開けなかった。幸いにも端の方になにか引っかかっているのが見えたためそれに手をかけ。

 

「よっと!」

 

それを引っ張ってチャックの絡みを無くす。

 

「ふう。にしてもなんだろこれ───えっ!?」

 

取り出したものに目を通した僕は言葉をとぎらせ。

 

「姉さんアウトォーーっ!!」

 

「な、なんだ!?どうした明久!?」

 

「お、お兄ちゃんなにがあった───えっ?!」

 

「どうしたの明久?」

 

「何かありましたか明久?」

 

僕の絶叫に雄二たちが怪訝な表情で見てくる。が、唯一零華は僕の持っている物を見て言葉をとぎらせた。

何故なら僕の手にある物は───。

 

「そ、それってお姉ちゃんの水着お兄ちゃん!?」

 

「たぶん」

 

姉さんのカバンから出てきた、姉さんの水着だったからだ。しかも、スクール水着(旧型)。一体どこからこんなの手に入れたのか疑問だが、そんなことより。

 

「姉さん、まさかこれを着て泳ぐつもりじゃないよね!?」

 

二十歳を超えた姉さんが民衆の面前でスクール水着を着ることがアウトだ。野球ならスリーアウトチェンジ。サッカーならレッドカード、即退場ものだ!

 

「え?そのつもりですけど?」

 

「ちょっ!お、お姉ちゃん!?なんでよりによってこの水着なの!?」

 

「え、だってアキくんとレイちゃんが、なるべく露出の少ない水着を着てほしいって言ったからそれにしたんですけど・・・・・・・なにかダメでしたか?」

 

「「全部がアウトだよ!!!!」」

 

雄二たちがいることすら無視して、僕と零華は姉さんに全力でツッコミを入れた。

 

「お願いだからもうちょっとマシなのにして!!」

 

「お姉ちゃん、もう普通の水着でもいいからこれだけは止めて!!」

 

さすがに弟、妹として姉のこれは許し難い。と言うか、恥さらしになること間違いなし!

 

「仕方ありませんね。まあ、私もその水着は胸元がキツくなって変えようとしていたんです」

 

『『『っ!』』』

 

姉さんの何気無いその一言に、車の中の時が止まった。主に女子勢が(亜里沙ちゃんは除いて)。

 

「あ、玲さん、以前見た時より色々成長しているような・・・・・・特に胸が」

 

「うんうん。あのスタイル、羨ましいよね。ボンキュッボンって感じで」

 

「どうやったらあのようなスタイルが身に付くのかしら・・・・・・羨ましいわ」

 

「玲お姉ちゃん、前も大きかったけどさらに大きくなってる」

 

「お母さんの遺伝子なのかな・・・・・・」

 

と、そんな暗い雰囲気になってしまった。

そんな女子勢の怨嗟とも言えるような声に僕と雄二、秀吉は怯えながら別荘に着くまでを過ごした。ホント、空気が辛かった。これで姉さんや翠姉さんが水着に着替えてみんなの前に出たらどんな反応をするのだろうか・・・・・・少し不安で仕方が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

 

『『『『『・・・・・・・・・・』』』』』

 

車の中で思っていた通り、姉さんと翠姉さんの水着姿を見て葵姉さんと雪穂ちゃん、工藤さん以外の女子全員が顔を暗くし、膝をついたorz状態に陥っていた。まあ、何せスタイルが良いのは姉さんだけじゃなくて翠姉さんもだから仕方ないのだけど。そしてそこに葵姉さんも入れてる。雪穂ちゃんは姉さんたちのスタイルの良さに感激してハラショー、と言っていた。ちなみに姉さんの水着は、すぐそこのお店で翠姉さんに頼んで買ってきてもらった物だ。姉さんの水着がスクール水着(旧型)だと知った翠姉さんはあんぐり顔で、英語で「Really?」と訊ねてきた。空耳かと思ったのだろう、そう思うのは仕方ない。僕や零華自身もこれが夢かと思う程なのだ。マジだと知った翠姉さんは無言で姉さんをどこかに連れて行き───。帰ってきた時ははァー、とため息をついていた。うん、ホント昔から何時も姉さんがお世話になります翠姉さん!!

ちなみに、姉さんと翠姉さんは小中高と同級生で同い年なのだ。つまり、幼馴染でもある。

でもって、その間工藤さんはと言うと。

 

「康太くん、大丈夫?」

 

「・・・・・・この程度・・・・・・どうってことない」

 

鼻血を吹き出して貧血を起こした康太の介抱をしていた。ちなみに康太は輸血パックを数個持ってきていた。これを知った真姫は「凄いわね」と言っていた。かなり久しぶりに康太が鼻血を吹き出したのを見るけどまあ、仕方ない。だって全員水着姿だからね。

 

「そう言えば秀吉は?」

 

ここに居ない秀吉を思い出して探すと。

 

「おーい!お主らー!待たせたのじゃ!」

 

更衣室の方から水着に着替えた秀吉がやってきた。

 

「あ、秀吉───」

 

秀吉に声を掛けようとしたが。

 

「あなた、何してるんですか?!」

 

「む。な、なんじゃ?」

 

「何で上を着てないんですか?!」

 

「それは男物の水着じゃからな」

 

「女の子が男物着ちゃダメでしょ!」

 

「いや、わしは女の子ではなく・・・・・・」

 

「とにかくこっちに来なさい!」

 

「ち、違うのじゃ!わしの話を・・・・・・!ちょっ!待つのじゃーー!」

 

どこからか慌ててきたライフセーバーの係の人にあっという間に連れていかれた。その光景に僕たちは唖然と、呆然となった。やがて。

 

「はっ!ひ、秀吉くん待ってください〜!」

 

「ちょっ!秀吉をどこに連れていくのよ!」

 

天野さんと木下さんが慌てて秀吉を連れ去って行ったライフセーバーを追っかけて行った。

その数分後。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ほ、ほら!元気出しなさいよ秀吉!」

 

「そ、そうだよ秀吉くん!私たちは秀吉くんが男の子だって分かってるから!」

 

lifesaverと書かれたTシャツを着て落ち込んでいる秀吉を連れて、天野さんと木下さんが秀吉を慰めながらやって来た。

 

「秀吉、そのTシャツ・・・・・・」

 

「放っておいてほしいのじゃ・・・・・・」

 

秀吉の言葉に僕たちはなにも言えずにいた。出来たとすれば、声に出さずに引き攣り笑いをすることだけだった。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

「勝負だ雄二!恭二!」

 

「良いだろう明久!」

 

「今日こそ決着をつけてやるぜ!」

 

僕は雄二、恭二は対決をしていた。

なんの対決かと言うと───。

 

 

 

 

「はーい、それでは今からビーチバレーをはじめまーす!」

 

 

 

 

ビーチバレーだった。

1セット15点先取の一本勝負だ。

 

「いくよ!穂乃果!霧島さん!友香さん!絵里!」

 

「うん!」

 

「・・・・・・雄二、負けない!」

 

「いくわよ恭二!」

 

「え、えーと、ええ」

 

僕のチームは僕、穂乃果、霧島さん、友香さん、絵里の五人だ。そして雄二と恭二の方はと言うと。

 

「お兄ちゃん!負けないよ!」

 

「穂乃果、私に勝とうなど十年早いです!」

 

「勝つのは俺だ翔子!」

 

「行くぜ友香!」

 

「負けへんよエリち!」

 

零華、海未、雄二、恭二、希の五人だ。

で、他のみんなはと言うと。

 

「みんな頑張って〜!」

 

「怪我しないようにねー!」

 

「どっちが勝つのかにゃー!」

 

「お主らー、頑張るのじゃー!」

 

コートの外で応援していた。

その間康太はと言うと。

 

「・・・・・・(パシャ!パシャ!)」

 

僕らの姿をカメラに撮っていた。

 

「では、行きますわよ〜!」

 

葵姉さんの掛け声で試合が始まる。

 

「いくよ!それ!」

 

先行で打ったこっちからのボールが相手側に渡る。

 

「そおれ!」

 

渡ったボールを希が受け止めてトスをし。

 

「よっ、と」

 

それに続いて恭二が二回目のトスをする。そして。

 

「行きます!───せいやあっ!」

 

ジャンプした海未が強烈なスパイクを打つ。

 

「させないよ!」

 

海未のスパイクで勢いよくこっちに来るボールを、地面に着く寸前に穂乃果が受け止めてはね上げる。

 

「まかせなさい!」

 

はね上げたボールを友香さんが上手く受け止めそのままトスをし、

 

「・・・・・せいっ!」

 

霧島さんがお返しにスパイクを放つ。

 

「させるか!」

 

だが、それを雄二がブロックし、溢れたボールを恭二がはね上げ、零華がそれを補助し二度目のトスをして。

 

「くらえっ!」

 

今度は雄二がジャンプして猛烈なスパイクをボールに打ち込んだ。

雄二の打ったボールは一直線に僕たちのコートに突き刺さり、バウンドしてコートの後ろに飛んだ。

 

「はい、こっちのチーム一点ですわ」

 

審判の葵姉さんの声で、雄二たちのチームに点が入ったことが知らされた。

 

「よしっ!」

 

「よっしゃ!」

 

「上手く行きましたね、零華!希!」

 

「うん!」

 

「そうやね!」

 

喜ぶ雄二たち。僕らは。

 

「まだまだ一点!取り返していくよ!」

 

「うん!もちろん!」

 

「当たり前よ!」

 

「・・・・・・頑張る!」

 

「わかったわ!」

 

気合を入れて点を取り返していく気で気合十分でいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は過ぎていき───。

 

 

 

「これで、ラストォォーー!!」

 

渾身を込めて打ったボールが雄二たちのチームのコート中央に突き刺さり。

 

「ゲームセット!こちら側の勝利ですわ!」

 

葵姉さんの声で僕らの勝利が決まった!

 

「よっしゃあ!」

 

「やった!海未ちゃんに勝った!」

 

「・・・・・・やった!」

 

「なんとかなったわね!」

 

「やったわ!」

 

勝利に喜ぶ僕ら。

 

「くっそぉ!」

 

「まさか穂乃果に負けるなんて・・・・・・」

 

「あと少しだったのに!」

 

「くぅ〜!お兄ちゃんたちの勝ちか〜」

 

「残念やね」

 

悲壮に暮れる雄二たち。

コートは砂浜なのにあちこちがボコボコと凹んでいたりしていた。

正直紙一重の勝利だった。

応援していた恵衣菜たちもそれぞれ言い、それからビーチバレーやら海に潜ったり、僕たちは海で楽しく過ごしたのだった。

 

 

 

 





感想や評価など、よろしくお願いします!





次回 『夏祭りで女装大会?!』 Let GO to The Next Baka Live!


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第IV問 夏祭りで女装大会?!

 

〜明久side〜

 

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「お、おい、大丈夫か明久、坂本?」

 

ど、どうも、吉井明久です。そして隣でグデー、と伸びているのが坂本雄二です。で、僕達に声をかけてきたのが根本恭二だ。

何故恭二が心配しているのかと言うと。

 

「お主ら災難?じゃったの」

 

「・・・・・・同情する」

 

「どっちかと言うとアイツらの方が災難じゃないか?」

 

「あー。それは自業自得だろ」

 

「確かにな。だって───」

 

「「「この二人に逆ナンしたんだから」」」

 

はい、須川君、横溝君、恭二の言った通り、僕と雄二は海で逆ナンされました。そしてそれを見逃す僕の妹+幼馴染兼恋人と雄二の彼女である霧島さんたちではなく。

 

「遠目から見てたが寒気が走ったぞマジで」

 

「ああ、それは俺も感じたぜ」

 

「というか、彼女たちの背後に鬼が見えたような気がするんだが・・・・・・」

 

「・・・・・・阿修羅だった」

 

「ふむ。普段優しい者ほど、怒ると怖いと言うからの」

 

何故逆ナンされて疲れているのかと言うと、僕は恵衣菜たちを、雄二は霧島さんを宥めるのにかなり苦労したからだ。さらに付け加えると、恵衣菜たちをナンパしてきた馬鹿な人たちへの排除にも疲れた。いや、普段は疲れないんだけど、今日は何故かとてつもなく疲れた。

そう思い出しつつ、僕と雄二は身体を起こした。

 

「お、起きたか」

 

「お主ら大丈夫か?」

 

「目が死んでないか?」

 

起こすとかなり失礼なこと言われた。僕達の目が死んでるわけないじゃん!ただ窶れてるだけだし!

 

「いや、それはそれで心配なんだが」

 

何故地の文がわかったのだろう?

恭二の言葉に驚きつつ、僕と雄二は身体をストレッチして解す。

 

「そう言えばみんなは?」

 

ここがウチの別荘だと分かり、僕は秀吉たちに恵衣菜達のことを訪ねる。そこに。

 

「あ、お兄ちゃんと坂本君起きたんだ」

 

「明久くん、なにかうわ言言っていたけど大丈夫?」

 

恵衣菜たちがやって来た。

それと同時に。

 

「ブハッ!!」

 

「あ、明久!?」

 

「何故いきなり鼻血が吹き出るのじゃ!?」

 

僕は鼻血を盛大に噴き出した。

何故鼻血が噴きでたかというと。

 

「どうかしたんですか───って!なんで明久は鼻血を流して倒れているんですか!?」

 

「え?!ちょっ!?尋常じゃない量よ!?」

 

「ゆ、輸血しないと!」

 

「・・・・・・輸血パック」

 

「あ、ありがとう!」

 

「いやいや!なんで輸血パックなんかもってるんや!?」

 

「・・・・・・万が一のため」

 

「説明になってないわよ!?」

 

「一体何を見たらこうなるの!?」

 

「え、えーと、その・・・・・・」

 

「お兄ちゃん、私の浴衣を見て、その・・・・・・」

 

『『『『『はい?』』』』』

 

「もしかして・・・・・・」

 

「まさか、また・・・・・・」

 

「つまり・・・・・・」

 

『『『『『結局いつものシスコンかよ!(じゃねぇか!)(じゃない!)(なの!)(ですか!)』』』』』

 

という訳である。

で、僕はと言うと。

 

「我が生涯に、一遍の悔い、なし・・・・・・」

 

と、鼻血を流して言っていた。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

「それで、なんでみんな浴衣着てるの?」

 

浴衣を着ている女子陣に聞くと。

 

「今日この近くの場所で夏祭りがあるんですよ」

 

葵姉さんが薄紫の浴衣を着てそう言った。

そう言えば昼間行った海の案内板にも夏祭りの告知が貼ってあった気がする。

 

「もしかして車で行くの?」

 

「はい。着替えとか持って行きますので」

 

「着替え?」

 

「ええ。着替え、です」

 

何故だろう、葵姉さんが着替え言った途端、僕の背筋に寒気が走ったんだけど・・・・・・。着替えって、普通に服を着替えるの着替えで合ってるよね?

そんな不安が過ぎるが、僕たちは外に停めてある車に乗り込み、夏祭りの会場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏祭り会場

 

 

姉さんと翠姉さんの運転する車に乗って十数分後、僕たちは夏祭りの会場に来ていた。

 

「うわぁ〜!お姉ちゃん!お姉ちゃん!凄いね!これが夏祭りなんだ!」

 

「ええ、凄いわね」

 

特に、帰国子女である絵里と、亜里沙ちゃんのはしゃぎ様が凄かった。亜里沙ちゃん、目をキラキラさせていたし。

 

「人が結構沢山いるね」

 

「うん」

 

夏祭り会場はそれなりに広く、海岸付近のためか結構人が沢山いた。地元の人や旅行で来た人と多様だ。

現に。

 

 

「さぁ!今日は夏祭りデース!沢山楽しむわよダイヤ!果南!」

 

「ま、鞠莉さん!引っ張らないでください!───って!果南さんも鞠莉さん止めてください!」

 

「えぇー。さすがにそれは無理かなぁ〜」

 

「果南さぁぁぁぁん!!?」

 

 

なんか凄い小学生ぐらいの女の子三人がいた。

 

「な、なんか、すごいね。今の子達」

 

「あはは。すごいと言うより、あの黒髪の女の子大丈夫かな・・・・・・」

 

「ま、まあ、大丈夫じゃないかな・・・・・・?」

 

ちょっと?───ま、まあ、かなりテンションの高い金髪の女の子に引っ張られて行く黒髪の女の子と、金髪の女の子同様にテンションの高い青い髪の女の子たちの後ろ姿を見ながら僕と恵衣菜、零華は苦笑した。他にも。

 

 

「千歌ちゃん、向こうにみかんアイスがあったよ!」

 

「ほんと曜ちゃん?!」

 

「うん!早く行こう!」

 

「うん!」

 

 

と、仲のいい子達の姿や。

 

 

「未来ずらー!」

 

 

なんか屋台を見て感動している女の子。

 

 

「ギランっ!堕天使ヨハネ、降臨!」

 

 

堕天使と呼称している黒いローブを羽織った女の子、などかなり個性的な人たちがあちこちにいた。

 

「な、なかなか個性的な人たちが多いね」

 

苦笑い気味にそう言うと。

 

「それは私達もだと思いますけど?」

 

深い碧の浴衣を着た海未が呆れた眼差しで僕を見てきた。はて、なんでだろう?

それに続いて、白とグレーの浴衣を着たことりが。

 

「ま、まあ、確かに・・・・・・私たちも個性的な人多いよね」

 

「そう?」

 

「うん」

 

「確かにことりの言う通りね」

 

ことりの言葉に同意するように水色の浴衣を着た絵里がうなずく。

 

「そうなの絵里?」

 

「ええ。明久はシスコンで、零華はブラコン。希はスピリチュアル。木下君は女の子?みたいだし、土屋君はカメラの腕がいいし、と数えるだけでも両手が足りないわね」

 

「ははは・・・・・・」

 

絵里の言葉に僕はあからさまに視線を逸らす。図星だからだ。まあ、確かに僕らの友達はかなり個性的な人たちが多いよね。

僕がそう思ってると。

 

「・・・・・・雄二、焼きそばを買ってきた」

 

「お、サンキュー翔子」

 

「・・・・・・うん、はい」

 

「ああ」

 

霧島さんと雄二がイチャついている姿が観えた。

 

「(仲良く食べさせあってるし、ホント仲いいよねあの二人。まあ、霧島さんの雄二への愛はかなり重いけど。あ、恵衣菜たちもかそれは)」

 

心の声に出してそう想いながら零華たちと屋台の中を進んでいく。

その間に、たこ焼きやかき氷、ケバブ、焼きそばや、夏祭りの醍醐味である射的、金魚すくい等など色んなことをした。途中迷子になっていた女の子を家族の元、というよりお姉ちゃんの元に送り届けたりとして時間が過ぎていった。

 

「へぇー、今日ミス浴衣コンテストがあるんだ」

 

途中あった看板の文を読んだ僕は少しだけ驚いていた。あまり浴衣コンテストというのは聞いたことないからだ。

 

「お、ホントだな」

 

「ほぉー。商品もあるんだな」

 

「・・・・・・海の幸セット、魅力的」

 

「ペアの温泉旅行チケットもあるのか、すごいな」

 

雄二たちも看板を見て、景品の一覧を見て感嘆の声を出した。

 

「どうせなら零華たちも出てみたら?」

 

「私たちも?」

 

「うん。あ、別に無理にとは言わないけど」

 

僕がみんなにそうフォローすると。

 

「いいですね、参加しましょうか」

 

「ええ」

 

姉さんと葵姉さんを筆頭に、みんな参加する表明を出した。

 

「え?参加するの?姉さん?」

 

「はい。もちろん参加しますよ」

 

姉さんの声に嫌な予感が過ぎった。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ここにいる(・・・・・)全員で(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『散開ッ!!』』』

 

姉さんのその一言を聞いた僕らはすぐさま逃走に移った。

が。

 

「逃がさないよお兄ちゃんたち!みんな!」

 

『『『うん!』』』

 

零華の指示のもと恵衣菜達が僕らを捕まえに来た。

僕の元には。

 

「くっ・・・・・・!」

 

「明久くん、逃げられないよ♪」

 

「明久、参加しましょう?」

 

「そうそう。ここにいる全員で♪」

 

「覚悟を決めてね明久くん♪」

 

「えーと、ごめんなさい明久くん。捕まってください」

 

恵衣菜や穂乃果たちμ's全員が。

雄二のところにはもちろん。

 

「・・・・・・雄二、逃がさない」

 

「うぉぉぉっ!?しょ、翔子!?」

 

「・・・・・・絶対似合うから」

 

「いやいや!俺に似合うわけないだろ!?明久や秀吉なら兎も角、俺はないだろ?!」

 

「・・・・・・お願い」

 

「ひ、卑怯な・・・・・・!」

 

霧島さんの首をかしげ、上を向いてお願いした姿にさすがの雄二も歯が立たず捕まった。普段クールな霧島さんがことりと同じ『お願い』をしたことにかなり驚いている。というか威力が半端ないと思う、雄二に対して。

秀吉達はと言うと。

 

「あ、姉上!麗子を止めてくれぬか!?」

 

「いやよ。残念だけど、あたしは今回こっち側だから」

 

「なぬっ!?」

 

「秀吉くんなら大丈夫よ!自信を持って!」

 

「いやいや!わしは男じゃぞ?!」

 

「男の娘でしょ?」

 

「違うぞ!?男の娘ではないぞ!?」

 

「はいはい秀吉。麗子、秀吉を連れていくわよ」

 

「うん」

 

「だ、誰かぁー!」

 

秀吉は木下さんと天野さん二人に連れて行かれ。

 

「・・・・・・愛子、まさかお前もか!」

 

「いやー、前から康太くんの女装姿見てみたかったんだよね〜」

 

「・・・・・・俺には似合わない。愛子は似合ってる」

 

「えへへ、ありがとう康太くん。で〜も、康太くんも参加だからね♪(チラッ)」

 

「・・・・・・ブハッ!!愛子、それは卑怯・・・・・・」

 

工藤さんの足にやられ・・・・・・やられたのかな?工藤さんの足を見て康太は鼻血を出し捕まり。

 

「りょ、亮、俺の目はおかしいのか?アイツらの後ろになにか見えるんだが・・・・・・!」

 

「い、いや、俺も見えるぞ」

 

「亮ちゃん、逃がさないからね?」

 

「浩二、おいたはそこまでだよ」

 

「「ヒィィーーーー!!!」」

 

横溝君と須川君は悲鳴を上げて自分の彼女に捕まり、

 

「さすがに俺にはしないよな友香!?」

 

「恭二」

 

「あ、ああ」

 

「女装して浴衣を着るのと、女装してメイド服を着るの、どっちがいい?」

 

「どっちも同じじゃねぇか!!しかもなんだその二択は!?どのみち女装するんじゃねぇか!」

 

「選んで恭二」

 

恭二は友香さんに追い込まれていた。

そんな多勢に無勢により──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後

 

 

 

 

 

『『『・・・・・・・・・・』』』

 

女装して浴衣に着替えた僕達がいました。

僕達の浴衣や化粧道具は車に積んであった。どうりで姉さんが、着替えを持っていくって言ったわけだ。化粧は演劇部である天野さんと、μ'sの衣装デザイナーであることりと絵里、妹の零華がやってくれました。

 

「うん!みんな似合ってる!」

 

「嬉しくないよ恵衣菜」

 

トホトホと、抵抗出来ないままなるようになった僕は女装して浴衣を着た姿で恵衣菜の褒め言葉を受け取っていた。正直あまり嬉しくない。

 

「アキくん、姉さんは嬉しいです。そんな可愛らしく育ってくれて」

 

「それ、褒めてないよね」

 

僕はジト目で姉さんを見る。

そこに。

 

「お姉ちゃん、お母さんとお父さんにも送ろう♪」

 

「もちろんです!お婆ちゃんにも送りましょう」

 

「うん!」

 

「では私も両親に・・・・・・」

 

「あっ!私もお母さんたちに送ろうっと!」

 

「うふふ♪明久くんの浴衣姿っていうレアな姿は絶対に残しとかないと!」

 

零華を筆頭に、姉さん、海未、穂乃果、ことりがスマホのカメラモードで僕の女装した浴衣姿を収めていった。───ん?ちょっと待って、今送るって聞こえたような・・・・・・。

そんな夢でも見ているような単語が聞こえ、頭をクリアにしようとする。が、

 

「絵里ちゃんたちもいる?」

 

「じゃあ、折角だから貰おうかしら」

 

「じゃあ、グループLINEに載せとくね」

 

「わかったわ」

 

穂乃果と絵里の話に僕は唖然とした。それと同時に、LINEの着信音が流れた。

 

「ま、まさか・・・・・・」

 

慌ててスマホのμ'sのグループLINEを見る。

そこには。

 

「─────────っ!!?!?!!?」

 

僕の女装して浴衣を着た姿が写っていた。

その写真を見た僕はムンクの叫びのような、声にならない悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後

 

 

 

僕達はミス浴衣コンテストの会場に来ていた。

というより、連れて来させられた。

いつの間に僕達の出場登録も済ませたのか、僕らはそれぞれネームプレートを受け取っていた。

僕のネームプレートには『吉井秋子(あきこ)』と書かれていた。『宵宮秋菜(よいみやあきな)』と『吉井秋子』、どっちがいいかかなり議論したらしい。え?僕の意見?そんなの始めから無かったよ、アハハハ。

他のみんなはと言うと、康太は『土屋香美(こうみ)』と無口な少女という設定。雄二は洪 雄麗(ホアン・シュンリィ)中国人という設定。秀吉はもうまんまの『木下秀吉』と。恭二は『根本京子(きょうこ)』と和服美人と言う設定。須川君は『須川璃与那(りよな)』と年上お姉さんという設定。横溝君は『アメリア・(フォン)・ミューゼル』と日系のアメリカ人女子という設定だ。

そこに。

 

 

『それでは只今より、第一回納涼ミス浴衣コンテストを始めます。出場者は控え室にお集まり下さい』

 

 

スピーカーからそんなアナウンスが流れた。

 

「どうする雄二?」

 

「くっ。大衆の面前で俺達が男だと知られたら世間的にもアウトだし・・・・・・」

 

「となると?」

 

「・・・・・・わざと失格になるしかない!」

 

「だな」

 

僕達、男七人は肩を組み。

 

「いいか、俺たちの目的は観客にバレることなく、この場を乗り切ることだ。これは俺たちの明日が掛かってる!」

 

「「「「「「おう!」」」」」」

 

「気を引き締めていくぞ!」

 

「「「「「「おうっ!」」」」」」

 

こうして、僕達男七人の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











次回 『第一回納涼ミス浴衣コンテスト』 Let GO to The Next Baka Live!


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第Ⅴ問 第一回納涼ミス浴衣コンテスト

 

〜明久side〜

 

 

《それでは、いよいよ今年から始まりました新企画!"第一回・納涼ミス浴衣コンテスト"を開催致します!》

 

 

『『『『『うおおおっー!!』』』』』

 

スピーカーよ割れよ、と言わんばかりのノリノリのアナウンスがコンテストの会場に響き渡った。快晴で、場所が海の近くという好条件だからか、そーっと舞台袖から覗いて見ると、お祭りと海水浴に来ていた人、そして地元の人らが大勢ひしめいていた。

 

 

《このコンテストは"浴衣の小畑"の協賛による浴衣を題材としたミスコンテストでありまして、名前の通り浴衣の似合う美女を見つけようというものです!》

 

 

アナウンスを耳にして、僕らは揃って思う。

 

『『『(水着審査がなくて良かった)』』』

 

と。

 

 

《審査方法は得点式で、予選は三名の審査員たちによる独断と偏見で、決勝は審査員プラス観客の皆様の投票によって行われます!》

 

 

今現在の時刻は十八時過ぎと、あまりこの会場にいる人は少ないはずだが、それでも結構な人がいた。現時点でこんな人数ということは、万が一にも決勝に出ようものなら更に多くの衆目に晒されるだろう。下手したら地元や地方新聞、ネットに乗せられることもあるかもしれない。幸い、ここは静岡の伊豆と内浦の間辺りなので、文月学園や音ノ木坂学園の生徒に見られる確率は低いと思うが、僕らはこの予選で何が何としても負けなければならない。これ以上大切な何かを失わないようにしないと。

 

 

《予選参加はなんと七十名、この中から決勝に進むことができるのはわずかに十二名となります!》

 

 

参加者七十名のうち、十分の一、一割・・・・・・七人が男子。すでにこのミスコンはミスコンですらなく、ミス(?)コンと名前を変えるべき状態になっていることなど、観ているお客さん達は夢にも思うまい。

 

 

《では、エントリーナンバー一番の方に入場して頂きましょう!どうぞっ!》

 

 

アナウンスと係員の人に促されて、最初の人がステージに出ていった。

 

 

《では、エントリーナンバー1の方、お名前を教えて頂けますか?》

 

『はいっ。えっと、旅行で東京から来ました東野(ひがしの)聡美(さとみ)と言います』

 

《東京からご旅行ですか。羨ましいです。では、特技などはございますか?》

 

『あ、はいっ。特技は―――』

 

 

ステージに立った人にマイクが渡され、ついに予選が始まった。

ここで予選に付いて説明しておこう。

まず、この予選は番号順に一人ずつステージに立ち、そこで司会や審査員の人の質問やらを答え、審査員のポイントが高かった人十二名が次の決勝に進むことが出来る。

だが、僕らはなんとしてもこの予選で落ちなければならない。出来ることならエントリーをした際に女装をしてると気づいて欲しかったのだが、ことりたちのメイクにより気づかれることなく、エントリーが通ってしまった。まあ、すでに終わってしまったものは仕方ないと割り切るしかない。が、一度ステージに立ってしまったら、観客には僕らが女装をしていることは絶対にバレてはならない。バレたらそれは、社会的な死も同然となってしまう。

以上のことから、僕ら男子の命題。それは、『女装していることを隠しつつ、華麗に。速やかに。迅速に。誰にも気づかれることなく予選を敗退する』というものである。もっとも、この参加者七十名から決勝に進めるのはわずか十二名。確率で言うならば5.8・・・・・・。およそ六人に一人という割合だ。余程のことがなければ、僕らは決勝に進むことは無いだろう。なにせ、参加者には僕らの他、恵衣菜や零華、穂乃果、海未、ことり、と絶世の美少女達がいるのだ。選ばれるとしたら絶対彼女達だ。そう・・・・・・余程のことがなければ―――

 

 

《───ありがとうございました。では次の方どうぞステージへ!》

 

 

そんなこんなでどんどん進んでいき、次は僕の番になった。

あまり乗り気でない僕に。

 

「おに―――じゃなかった。お姉ちゃん、頑張ってね」

 

お兄ちゃん呼びから、わざわざお姉ちゃんに呼び変えた妹の零華がニコッと笑って言ってきた。

 

「あ、うん。行ってくるよ」

 

覇気のない言葉でステージに上がる。

ステージに上がると、さっきより観客の数が多いのに気づいた。

 

「(さ、さっきより増えてる・・・・・・!)」

 

他の人に気取られないように驚く。

 

「(さあ・・・・・・どうする)」

 

驚いてどうするか悩んでいる僕に、スタッフからマイクが渡される。

 

 

《───それでは、お名前をお教えて頂けますか》

 

 

司会の人の声に、僕は心の声を出す。

 

「(顔は浴衣の裾部分で少し伏せて、答えも出来るだけ小声で)───は、はい。・・・・・・吉井秋子です」

 

 

《おや?吉井さんは恥ずかしがり屋さんのようですね》

 

《清楚な感じで、可愛らしいですね・・・・・・これは、高得点です!》

 

 

「(何で!?)」

 

司会の人の隣に座ってる、小畑と呼ばれた人のコメントにドン引きと驚愕、疑問が出た。

なにゆえ、これで高得点なのだろうか!?

そんな僕の考えを知らずに、

 

 

《なにか特技はありますか?》

 

 

司会の人が問いてきた。

 

「と、特技ですか?そうですね・・・・・・強いて挙げるなら料理でしょうか・・・・・・。パエリアとか、カルボナーラとか」

 

特技の内に入るのかわからないが、一応料理と答えておく。

料理が出来たのは、元を辿れば姉さんのお陰(?)でもある。なにせ、姉さんは頭がいいのに料理はからっきしダメなのだ。姉さん以外は料理出来るのに・・・・・・。父さんも、一通りの料理は出来るが、母さんには及ばない。その為、僕や零華は姉さんに料理を極力させないために普段からやっていた。母さんと父さんはいつも忙しいため、基本的には料理は僕と零華が担当しているのだ。

 

 

《お料理ですか。家庭的で素晴らしいですね〜。では、ご家庭でも?》

 

 

家庭?何を当たり前のことを。そもそも、家事全般僕か零華しかここ最近やってないし。姉さんにやられたら何が起こるか・・・・・・。

うぅ。考えただけで寒気が走る。

 

「はい、ほぼ毎日・・・・・・」

 

うん。嘘はついていない。

 

 

《毎日ですか!今時の若いお嬢さんにしてはとても珍しいですね。これはポイントが高そうです》

 

 

いや、そんなに珍しくないと思う。

現に僕の周囲には料理をしてる女子沢山いるし。零華と恵衣菜はもちろんのこと、霧島さんや友香さんを始め、エレンさんや桜咲さん、葵姉さんも普通に料理をする。まあ、毎日ではないと思うけど。他にも、チーズケーキをよく作ることりや、妹の亜里沙ちゃんと二人で暮らしてる絵里、何故かμ'sの中で料理スキルの高いにこに、希。μ's三年生はほぼ毎日料理してると聞いたことがある。絵里は亜里沙ちゃんからだけど、にこと希は絵里から聞いただけだけだ。あとは海未も料理はする。

と、僕の周囲には結構な人数がいるため、なんの珍しくもない。

ちなみに男だと、代表は雄二だ。なにせ、雄二曰く、ウニとタワシの区別が付かず、『お袋に料理を作らせたら、俺も親父も互いの無事を願わずには居られない』、とのことらしい。まさか、姉さんの他にもいたとは・・・・・・。その事を聞いた僕と零華は遠い目をして、互いに今までの苦労を嘆きあったのだった。

そう思い出していた僕に、さらに質問が飛んできた。

 

 

《それでは───彼氏さんはいらっしゃいますか?》

 

 

「(What's?!)」

 

司会者の質問に僕はつい英語が心の中で出てしまった。

いやいや、僕は男だし!彼氏なんかいてたまるか!というかいないわ!

 

「か、彼氏なんていませーーんっ!!!」

 

動揺した僕は思わず、大きな声で返してしまった。

僕のその声に、観客から大歓声が上がった。主に男性陣から。

 

 

《おおーっ!これは男性陣にはとても嬉しいお話です!どうですか協賛かつ審査員の小畑さん》

 

《携帯番号を教えてくれたらオジサンがあとでお小遣いをあげよう》

 

 

一体なにを言ってるんだろうかこの人は?

そう思わざるを得ない言葉が発せられたことに僕は唖然とした。そんな僕の耳に。

 

 

「お姉ちゃん、あの巫山戯たこと言った人どうしようか?」

 

「そうですね〜。まずは、社会的に抹殺してからにしましょうか」

 

「あ、賛成ですわ。翠姉さまはどうします?」

 

「そうねー。どうせなら、社会的にだけじゃなくて個人的にも抹殺したいわね〜」

 

「では、あとでお話(OHANASI)しましょう。───全員で」

 

 

零華や姉さんをはじめとした人の声が聞こえてきた。

所々怒気が入っているのは気の所為だろうか?そう思っているところに。

 

 

《はい。あなたがスポンサーでなければ張り倒していたところですがそうもいかないので質問を返させていただきます》

 

 

と司会者さんが隣に座る小畑と書かれたプレートのところに座る人を睨み付けて言った。何故か、あの人がかなり苦労してると思ってしまった。

 

 

《では、吉井さん、今回、浴衣を着る上で気を付けたポイントなどは?》

 

 

司会者さんの質問に、声を小さくして言う。

 

「その・・・・・・あまり、か、身体の線が、出ないようにと・・・・・・」

 

着付けをしてくれたのはことりなので、さすがに骨格とかでバレる可能性はないとは思う。まあ、着付けをしてくれたことりが顔を真っ赤にしていたのだけど。

 

 

《なるほど。小畑さんから、吉井さんの着こなしについてなにか質問はありますか?》

 

《下着をつけてるかどうかお聞かせ願いたい!》

 

 

はいぃ!?

物凄い質問(悪い)に僕は面食らった。

僕と同じ心象の司会者さんも。

 

 

《一周回って心地よくなってしまうほどのゲスな質問ありがとうございます。気のせいかわたくし、先程から冷や汗が止まりません》

 

 

と、隣の人に『こんなところでそんな質問するかこの人!?』と言いたげな表情をしていた。声に何も出さないとはスゴい司会者魂だ。いつまで持つのだろうか・・・・・・。司会者さんにそう同情を禁じ得ない僕であった。

で、小畑さん?の質問に関しては。

 

「そんなのつけてませーんっ!」

 

速攻でそう返した。

なんで僕が女子の下着をつけなければならないのか!?さすがの僕もそこまでやらないわ!いや、そもそも、女装自体嫌なのだけど・・・・・・。

 

 

『『『うぉおおおーーーっ!!』』』

 

 

僕の返しにしっきよりもスゴいウェーブが上がった。

なにか変な解答をして・・・・・・したかも。さっき自分が何言ったのか思い返した。

 

「(これ、観客からしたら僕は下着をつけないで浴衣を着てるって聞こえるんじゃ・・・・・・!)」

 

 

《よ、吉井さん!?こんなセクハラ質問に答えなくても大丈夫なんですよ!?男性客の皆様、ウェーブはおやめ下さい!ここはそういう会場ではございません!》

 

 

司会者さんが慌ててそう呼びかけるが時既に遅く、

 

 

《決めたよ。彼女は決勝には進ませない。衆愚に晒すにはあまりに惜しい人材だ》

 

 

隣の小畑という人も興味津々と言う感じでいう。

というか今あの人観客に向けて衆愚って言ってなかったかな?

 

 

《はい皆様空耳ですよー!スポンサーがお客様を衆愚などと呼ぼうはずがございませんからねー!》

 

 

なんだろう。あの司会者さん、ものすごくやつれてる気がする。

 

 

《とにかく、吉井さん。色々ありがとうございました。そして、本当にすいませんでした・・・・・・》

 

 

一気に疲れた表情の司会者さんが、僕に本当に申し訳なさそうに言った。まあ、司会者さんが悪いわけじゃないんだけど・・・・・・。そう感じながら、僕はマイクを係の人に渡して舞台袖に帰って行った。

舞台袖に帰ると、次の番の零華がスタンバっていた。

 

「えーっと、お疲れ様お兄ちゃん(お姉ちゃん)

 

今、零華のお兄ちゃんがお姉ちゃんになったのは気の所為だろうか?そう思考の片隅で考えながら。

 

「うん・・・・・・なんかどっと、疲れたよ・・・・・・」

 

多分、今日一日で一番疲れたと思う。

 

「あははは・・・・・・そ、それじゃあ、行ってくるね」

 

「うん」

 

ステージへと向かっていく零華と変わって、僕は舞台袖に向かった。舞台袖では、恵衣菜や雄二、ことり達がいた。

 

「お疲れさん、明久」

 

「あ、うん」

 

「なんというか、大変じゃったな・・・・・・」

 

「ホントだよ」

 

労いを掛けてくる秀吉の声を聴きながら、僕は海未に渡された飲み物を口に含む。そこに。

 

 

《―――それではお名前をどうぞ》

 

 

「はい。吉井零華です」

 

零華への質問が始まった。

 

 

《おや?もしかして、先程の秋子さんのご家族の方でしょうか?》

 

 

「はい。私のお兄ちゃん(お姉ちゃんです)

 

 

《なるほど。姉妹でのご参加ですか。いかがですか小畑さん》

 

《姉妹揃って素晴らしいですね!是非ともお近付きになりたいものです!》

 

 

司会者さんの問いに下心丸見えの小畑さんと呼ばれた人に、僕は冷たい殺気を送っていた。

 

「僕の大切な妹に手を出したら、ただじゃおかない・・・・・・!」」

 

呪詛のように言う僕に雄二達は、微妙に後ずさりして、

 

『『『シスコンここに極まりだな(ね)(ですね)(じゃな)(ですわね)』』』

 

と一斉に言っていた。

それからさらに零華への質問は続いていき。

 

 

《―――他になにか質問はありますか小畑さん?》

 

《お姉さんのスリーサイズと連絡先を教えて欲しい!》

 

 

何故か零華に僕のことを聞いていた。うん、ナンデ?!

理解できなくフリーズしている僕の耳に、零華の冷たい声が伝わってきた。

 

「この人、殺っていいよね?ウン、殺ろう。私の大切なお兄ちゃんに手を出そうとする害虫(ゴミ)排除(抹殺)しとかないと・・・・・・」

 

幸いにも、その声はマイクに拾われなった為、観客や司会者さんの耳に入らなったが、舞台袖にいる僕の耳にはきちんと入ってきていた。え?普通この距離じゃ聞こえないだろだって?僕は普通に聞こえたよ。理由?だって、僕は零華のお兄ちゃんだよ?可愛い妹の声が聞こえるのは当然じゃないか。

 

 

《またしても下衆な質問にこのわたし、冷や汗が先程から全く止まりません。そして、何故か頭が痛いです》

 

 

司会者さんの心労が悲鳴を上げているような気がするのは気の所為では無いはずだ。

小畑さんと呼ばれた人の、下衆な質問に零華は―――

 

「ごめんなさい。見ず知らずの人に、私の大切なお兄ちゃん(お姉ちゃん)の情報をひとつでもあげる訳にはいかないんです」

 

と、ニッコリと笑って答えた。

その笑みは、見たものを震え上がらせるほどの冷たさを醸し出していた。そして、その攻撃とも言える言葉を一番ダイレクトに受けていたのは小畑さんと呼ばれた人だった。

ちなみに、司会者さんには被害が行ってなっかたりする。

 

 

《はい、ありがとうございました吉井さん。そして、姉妹揃って本当に申し訳ありませんでした!》

 

《ま、待ちたまえ!まだ聞いて―――!》

 

《時間もあまり在りませんので次の方どうぞ!》

 

 

隣でなにか言おうとしている小畑さんを完全に無視して、司会者さんは次に進めた。

次の人と入れ替わって戻ってきた零華に僕は。

 

「お疲れ様零華」

 

と、そう一言言った。

 

「うん。司会者さんのには疲れなかったけど、あの小畑さんという人に疲れたよ」

 

零華はそう言うと、人目も憚らずに僕に抱きついてきた。

抱きついてきた零華に僕も返し、零華成分。略して妹分を補給した。

妹分がわからない人に説明しよう!零華成分―――通称妹分とは、零華の匂いや体温、感触などにより得られる成分である!また、零華のいうお兄ちゃん成分。略して兄分と同じ効果を得ることが出来るのである!そして、僕と零華にとってものすごく重要かつ大切なことなのである!

ここ、テストに出るのからちゃんと覚えておくように!

 

 

そんなやり取りをしながらも、僕達(男子のみ)の重要な戦い(?)は続いて行った。

 

―――次回へとつづく。

 

 

 

 

 











次回 『浴衣コンテストの結末』 Let GO to The Next Baka Live!


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第VI問 浴衣コンテストの結末

 

〜明久side〜

 

 

浴衣コンテストが始まり、次々と僕ら男子は攻略して行った(精神をすり減らして行った)・・・・・・。

 

 

《───ありがとうございました。では次の方、ステージへどうぞ》

 

 

「・・・・・・雄二」

 

「なんだ翔子?」

 

「・・・・・・ファイト」

 

「ああ・・・・・・」

 

霧島さんの声に雄二は全く覇気のない声で返し、ステージへと上がって行った。

ちなみに、残っている男子は雄二のみである。あの後、康太、須川君、横溝君、恭二、秀吉がステージに上がって行った。その時の事を一言で表わせと言うと難しい。まあ、言えるとしたら『なんとも言えない』と言うべきだろうかな?

何せ、恭二たち全員僕と同じような感じだったのだ。

僕は、雄二の背中を見ながら恭二たちの番だった時のことを思い出す。

康太は当初、司会者さんの質問を『はい/いいえ』の二択で答えていたのだけど、ある質問の『浴衣の他にどのような服が好きですか?』に康太は今までの寡黙キャラから一転して饒舌になり、「・・・・・・チャイナドレスや着物は言うに及ばずレースクイーンにチアガール看護婦にキャビンアテンダント更にはファミレス店員に女性警官制服やレオタードとOLスーツにセーラー服やブレザーや巫女服に加えてメイド服やテニスウェアなども素晴らしいと何でもありません」、と火葬後の心臓マッサージくらい手遅れなほどの饒舌っぷりを出したのだ。その結果、会場から康太に向けて『こ・う・み!こ・う・み!』と香美コールが繰り広げられたのだった。

その光景を眼にした僕らは、なんとも言えない空気に包まれた。なにせ、まさか康太にあそこまで男を虜にする《魅了》という才能があるとは思わなかったのだから・・・・・・。ちなみに工藤さんは、光を無くした眼で怖いと思えるほどに空笑いをしていた。

今にして思い出しても恐るべし康太と、言わざるをえない。

康太の次の僕らのメンバーは須川君だ。須川君がステージに上がると動揺のようなものが観客に流れた。その時、まさかバレた!?と思ったが、実はその全くの逆で須川君の姿に見蕩れていただけらしい。それを聞いた僕ら男性陣は揃って、「なんでだ!?」と心の声に出して叫んだ。その僕らに須川君の彼女である桜咲さんが、「亮ちゃん、素体が良いからなのか分からないんだけど、ああして視ると何処かお姉さん、って感じがするんだよね〜」と目を蕩けさせて言った。桜咲さんのその視線は、まっすぐに須川君へと向けられていた。まあ、確かにどこか霧島さんに似て、クール系お姉さんな感じがする。髪はダークブラウンのセミロングウィッグを着けているため、余計、須川君が男だと知らない人から見たらクール系お姉さんに見えるのだろう。

そのことを桜咲さんから伝えられた須川君は、今も近くの椅子に座って鬱状態になっていた。ちなみにそれは須川君だけに留まらず、横溝君と恭二もなのだが・・・・・・。あ、僕も戻って来た時はやや鬱状態だったけど、その次の零華の質問やらで回復したよ。回復した理由は単純に、僕の可愛い大切な双子の妹に下劣な視線を向けている人がいたからだ。

とまあ、それは置いといて、須川君のあとは五人くらいして横溝君がステージにたった。

横溝君は日系のアメリカ人女子という設定なためか、やや?いやかなり反響があった。さすがに須川君みたいにはならなかったんだけど、ファンデーションとかメイクした横溝君に会場のお客さんが盛り上がった。で、桜咲さんどうよう、横溝君の彼女であるエレンさん曰く、「浩二のメイク、やりすぎちゃったかもしれないわ。けど、仕方ないわよね!だって、浩二、カッコイイ+可愛いんだもの!」とのこと。まあ、確かにスラッとしていて女子目線からしたらカッコイイのかもしれない。可愛いかはわからないけど。とまあそんな訳で僕らの中では比較的マシな感じだったんだけど、横溝君曰く視線が気持ち悪かった、との事らしく今も須川君と同じく鬱状態でエレンさんに介抱されていた。ちなみに須川君も桜咲さんに介抱されているよ。

そして、次に恭二なんだけど・・・・・・。

 

「もういっその事殺してくれ・・・・・・!」

 

「だ、大丈夫よ恭二。私がいるから!」

 

恭二は須川君と横溝君より遥かに鬱状態だった。もう自虐的になってるし。何故恭二があの状態なのかというと───。

 

「さすがに、あれはないよね」

 

『『『うんうん』』』

 

僕達も同情してしまうほどのだったのだ。

恭二がああなってしまった理由、それは―――

 

「まさか恭二に告白してくる人がいるなんて・・・・・・」

 

そう。恭二の姿を見た観客の一部が、恭二に熱烈な告白をしてきたのだ。司会者さんも止めるように言ってくれたんだけど、数の暴力ならぬ、数の声により聞きいられなかった。最終的に、恭二が舞台袖に帰ってくることで止んだけど、帰ってくるなり恭二は、友香さんに抱きつき声に出さずに泣いた。で、それが今も続いている。うん、今日は僕達全員(男子のみ)のトラウマ記念日だなぁ・・・・・・。

 

「さて、雄二は・・・・・・」

 

気を取り直し、僕は視線をステージ上にいる雄二に向けた。

ステージ上では丁度司会者さんが雄二に名前を尋ね、雄二が答えているところだ。

 

 

『洪雄麗デス。ヨロシクオ願イシマス』

 

 

中国人という設定なのでわざと片言の日本語で雄二は喋る。まあ、雄二にはかなりのアドバンテージがある。リアクションが難しい質問がきたら言葉がわからないフリをすればいいのだから。

 

 

《これはまた・・・・・・背の高い方ですね。どうですか、小畑さん》

 

 

司会者さんは少しだけ驚いた表情を取ると、審査員の小畑さん?に話を振った。話を振られた審査員の小畑さんはと言うと―――

 

 

《素晴らしいですね。私、背の高い方が大好きなんですよ》

 

 

声高にそう告げた。

それを聞いた僕は心の中で大声で「何でぇーっ!」と発した。それは雄二もで、ものすっごく困った顔していた。

 

 

《審査員の高評価が得られました!他に質問は―――って、あれ、小畑さん?》

 

 

司会者さんも驚きながら解説する中、小畑さんは突然立ち上がり席から雄二のいるステージに向かって歩き出した。そのまま小畑さんは雄二に向かって言う。

 

 

《ハネムーンはカンボジアなんかどうですか?》

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?

雄二に向かって言われた言葉に、僕はフリーズし頭の動きが止まった。それは恵衣菜や鬱状態から少し回復していた恭二達もで───。

 

 

『こ、国籍ガ違ウノデ困リマース』

 

 

《愛があれば大丈夫です。マイハニー》

 

 

『愛ナンテアリマセン!』

 

 

《私には愛が生まれる自信がある!》

 

 

『ワタシアナタノコト嫌イデース!』

 

 

《友達からで構わない。一生大切にするぞ!》

 

 

『いい加減にしろ!シバくぞおっさん!』

 

 

《君になら、何をされてもいい!》

 

 

え、えーっと・・・・・・・・・・。

理解できない状況に僕達がいるなか、たった一人だけ動いている人がいた。それは───

 

「・・・・・・私の旦那に手を出そうだなんて。・・・・・・許さない」

 

雄二の彼女兼嫁兼妻である霧島さんだった。そして霧島さんの手にはいつの間にかスタンガンらしきものが握られていた。

 

「き、霧島さん・・・・・・?」

 

ようやく動いた頭を回転させて霧島さんに声を掛ける。

 

「・・・・・・吉井」

 

「な、なにかな?」

 

「・・・・・・あの人、始末してくる」

 

「へ?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

小さな声で。しかし、確かな怒気を混じらせて言った霧島さんは、そのままステージに向かって歩いていった。

 

「・・・・・・って、ちょっとまってぇっ!」

 

「・・・・・・(コク)?」

 

僕の声に振り返って小さく首を傾げる霧島さん。 その動作は、なんで止めるの?と言っていた。

 

「・・・・・・吉井も殺る?」

 

「やるが殺るになってるよ!?」

 

「・・・・・・?」

 

珍しく霧島さんにツッコんでいると。

 

「───翔子ちゃん。あの人殺るなら私も行くよ」

 

「零華!?」

 

後ろから、妹の零華がハイライトを無くした瞳で言っていた。

 

「・・・・・・じゃあ一緒に」

 

「うん」

 

「いやいやいやいやいや!一緒にじゃないからね!?」

 

慌てて二人を止めるが。

 

「お兄ちゃん、そこどいて♪あの人殺れないから♪」

 

「語尾に♪を付けて可愛くしてもダメだからね零華!?いや、確かに録音したいくらい可愛いけどさ!」

 

零華だけしか止められず、零華の物騒だが可愛い声にそう言う。すると。

 

『『『どこまでシスコンなんだ(なんですか)(なの)(なわけ)!?』』』

 

現実逃避から回復した恭二達がツッコんできた。

失礼な!零華の可愛い声を録音したいと思うのは当然じゃないか!

そうこう、している間に。

 

 

『・・・・・・雄二は渡さない』

 

『翔子ぉ!?』

 

 

霧島さんがステージ上で雄二を守っていた。いや、護っていた、の方が正しいのかな?

そんなこと思っていた次の瞬間。

 

「っ!?な、なに!?」

 

「機材のコードが爆発した!?」

 

ステージ上の機材が、霧島さんの持っていたスタンガンに反応して小規模な爆発をし、照明がすべて切れた。

 

 

『・・・・・・雄二、帰る』

 

『お、おう』

 

 

《ま、待ちたまえ!まだ連絡先を聞いて───》

 

 

『・・・・・・邪魔』

 

 

《あばばばばばばばばば!!》 チーン・・・

 

 

『・・・・・・そこの司会者さん』

 

 

《は、はい。なんでしょう?》

 

 

『・・・・・・この人、捨てといて』

 

 

《!わかりました!》

 

 

『・・・・・・よろしく』

 

 

《任されましたぁ!》 ガタッ!

 

 

な、なんか分からないけど霧島さんに捨てといてと言われて司会者さん、意気揚々と小畑さんの所に行った。

 

 

《ま、待ってくれ、まだ話を───》

 

《いい加減しつこいわ!いい加減にしろ!》

 

《な、なんだね一体!?》

 

《えー。コホン。誠に申し訳ありませんが、本日のミス浴衣コンテストはこれにて終了させていただきます!》

 

《な、何を突然───!》

 

《参加者の皆様。そして観客の皆様、誠に申し訳ありませんでした!以上をもちまして、本日のイベントを終了させていただきます!お帰りの際はお気を付けてお帰り下さい!》

 

《待ちたまえ!まだ終わって───!》

 

《うるさいですよ!だいたいあんたのせいで終わることになったんだろうが!》

 

《なに!?》

 

《それでは係りの方の指示に従ってご退出下さいませ。本日は誠に申し訳ありませんでした》

 

 

あー。司会者さんがいきなりミス浴衣コンテストの終了宣言をしだした。周りの人も、どこか納得している表情で文句を言わずに帰って行った。

 

「そ、それじゃあ僕らも帰ろうか」

 

なんともやるせない感じの中、僕らは参加の記念品を貰って別荘へと帰って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別荘

 

 

 

「「「「「「ハアーー・・・・・・」」」」」」

 

「大丈夫かお主ら?」

 

「「「「「「全然大丈夫じゃない」」」」」」

 

別荘に戻ってきた僕らは、さっそく夕飯の支度をするため、外に出たのだが、夕飯のBBQの支度をしながらつい数時間前のミス浴衣コンテストを思い出し、ステージに上がらずに終わった秀吉を除いた僕ら六人は盛大に、大きなため息を吐いた。

 

「一生もののトラウマをおったぜ・・・・・・」

 

「同じく・・・・・・」

 

「もう勘弁して欲しいな・・・・・・」

 

「ああ。ある意味忘れられない日になったな・・・・・・」

 

「・・・・・・激しく同意する」

 

「そうだね・・・・・・」

 

秀吉を除いた僕ら男共はため息を吐きながらそう言う。

手を動かしながら話していると。

 

「あ、あの、お兄ちゃんたち。ちょっといいかな・・・・・・」

 

「?どうしたの零華・・・・・・それにみんなも」

 

零華たち女子勢が神妙な趣でやって来た。

尋常じゃない雰囲気を感じた僕らは手を止め、息を呑む。そんな僕らに喋ったのは海未だった。

 

「その・・・・・・すみませんでした」

 

海未の言葉に頭を下げる零華たちに僕らは戸惑う。

 

「え、あ・・・・・・。すまん。何がだ?」

 

戸惑う僕らを代表して雄二が困惑気味に訪ねる。

雄二の質問に答えたのは前に出てきた霧島さんだ。

 

「・・・・・・雄二たちを浴衣コンテストに出させたこと」

 

「「「「「「ああ・・・・・・・」」」」」」

 

霧島さんの言葉にみんながなんで謝っているのかわかった僕ら。僕らを女装させて浴衣コンテストに出場させたことに謝っているのだ。

いや、まあ、確かに元はと言えば零華たちが僕らを女装させて出場させたことがきっかけなんだけど・・・・・・。まさか、ここにいる全員さっきのことは予想すらしてなかったと思う。あんな、女装した僕らに異様に熱い視線を向けてくる解説者と観客に。僕らだって予期してなかったのだ。それを零華たちのせいにするというのは、あまりにもお門違いというものだろう。

 

「あー、うん。別に気にしてないからいいよみんな」

 

「だな。まあ、多少はトラウマになったかもしれんが、流石にあそこまでとは誰も予想してなかっただろ」

 

「ああ。友香たちが気にすることねぇよ」

 

「けど恭二・・・・・・」

 

「大丈夫だって。それになんだ。あー・・・・・・さっきは友香に助けられたからな」

 

「恭二・・・・・・」

 

いつの間にか恭二と友香さんが惚気あってる。まあ、それは置いといて。

 

「んなわけだ。これでこの話は終わりだ」

 

「ですが・・・・・・」

 

「海未」

 

「明久・・・・・・。わかりました」

 

尚もなにか言おうとする海未を静止し、この話題を終わらせる。まあ、絵里や真姫、霧島さん、エレンさんたちが何が言いたそうだけど、ここで区切らせる。

話を終わらせたそこに。

 

「よし。すまんが、出来たから持って行ってもらってもいいか?」

 

雄二がそう言った。

雄二の手元を見ると、料理の下ごしらえやらが出来ていた。

 

「あ、うん」

 

「ええ」

 

「はーい」

 

出来た料理を、次々運んで行き。

 

「よしっ。んじゃ明久乾杯するか」

 

「そうだね」

 

僕達学生はジュースを。姉さんと翠姉さんはお酒を飲んでもいいんだけど、さすがにこの場ではあれ、という事もありノンアルコール飲料のコップを手に持つ。

 

「───えーと。それじゃあ、かんぱーい!」

 

『『『かんぱーい!!』』』

 

僕の音頭でみんなコップを打ち合う。

飲み物を飲むと、それぞれ食べたいものを手に取る。

 

「っ!美味しい・・・・・・。あんたがこれを作ったの?」

 

さっそく雄二の料理を食べたにこが目を見開いて問う。

 

「ん?ああ」

 

「意外に器用なのね・・・・・・。驚いたわ」

 

「そいつはどうも」

 

「・・・・・・私の自慢の旦那さん」

 

「おい翔子。俺達はまだ籍も結婚もしてないからな?」

 

「・・・・・・大丈夫。三年後ぐらいにはなってるから」

 

「二十歳になる前に結婚かよ!?」

 

「あ、明久に聞いてはいたのだけど直に見ると凄いカップルね」

 

「・・・・・・ありがとう。矢澤」

 

「にこでいいわ」

 

「・・・・・・にこ」

 

「ええ。あ、坂本」

 

「ん?なんだ?」

 

「これ、どうやって作ったのか教えて貰えない?家族に食べさせてあげたいから」

 

「ああ。構わねえぞ」

 

μ'sの中でかなり料理が上手いにこが雄二に手元の料理の作り方を聞いている。これまた驚きの組み合わせだ。雄二もにこと料理談義で気が合うのか楽しそうに話している。

そのまましばらくして、唐突に姉さんと翠姉さんが―――。

 

「それにしてもあのミスコン。やはり結果がどうなのか気になりますね」

 

「そうね〜。あのまま続けていたら誰が優勝していたのかしらね」

 

と口にした。

 

『『『っ!!』』』

 

それを聞いた僕らは、体がビクンと震えた。

今はもう既に着替えて普通の格好だけど、あの浴衣姿・・・・・・かなりハイレベルだったと思う。まあ、何せコーディネートしたのがことりたちなのだから当然かな。それに、この中から優勝者が出てもおかしくなかったと思う。まあ、もっともそれが"普通"の浴衣コンテストだったらなのだけどね・・・・・・。

 

「んー。やっぱり零華じゃないかな?」

 

優勝者、と聞いてまず一番最初に頭に出たのが妹の零華だ。

 

「え!?お、お兄ちゃんっ!?」

 

僕の言葉に驚く零華。さらに。

 

「あ〜あ。また明久くんのシスコンが出ちゃったよ」

 

「ったく。ほんと、ぶれねぇな明久のやつ」

 

「何故一番最初に零華の名前が出るのでしょう・・・・・・?」

 

「シスコンここに極まり、やね」

 

「希、なんでこっちを見るのかしら・・・・・・?」

 

「え〜。だってエリちもやろ?」

 

「なっ!?」

 

「どうしたのお姉ちゃん。顔が赤いよ?」

 

「なっ、なんでもないわよ亜里沙っ!」

 

恵衣菜や雄二たちが次々と呆れたように言ってきた。

 

「ん?やっぱり零華が優勝者だと思うよ。うん」

 

僕が自信を持って、胸を張って言うと。

 

「あーー。明久、その根拠は?」

 

雄二が歯切りの悪そうな感じに聞いてきた。

 

「え?だって普通でしょ?零華はこんなにも可愛いんだよ?それに、手入れのされてるクリーム色の髪に幼そうな顔。スタイルも良くて、可愛くて、綺麗で、可愛くて、似合っていて、可愛くて───」

 

「お、落ち着け明久!なんで可愛くてを連呼するんだ!?」

 

「え?事実でしょ?」

 

『『『はァー・・・・・・。こっの、極度の妹の大好きシスコン大バカ明久(さん)(くん)が・・・・・・!』』』

 

「え、なんで急に僕バカって言われたの・・・・・・?」

 

恵衣菜たち全員、揃って同じことを言い、バカって言われた僕は首をかしげた。うん、なんで?

理解出来ずにいる中、恵衣菜たちは僕をほぼ無視して。

 

「やっぱり、甲乙つけ難いですね」

 

「そうね。女装した明久たちも優勝候補に入っていたと思うし」

 

「いや、綾瀬絵里よ。わしらが優勝候補に入っていること時点でおかしいのじゃが」

 

「いやいやいや〜。ウチから見ても、木下君たちは十分優勝候補やったとおもうで」

 

「私も、恭二の女装姿にキュンッ!って来たわ」

 

「友香。頼むから女装だけはもう勘弁してくれ・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・。みんな大変ね〜。玲はどうかしら?」

 

「そうですね。アキくんの女装は見慣れてますから、他の五名の方の女装に新鮮で良かったです」

 

翠姉さんの質問に答えた姉さんに僕はすぐにツッコミを入れた。

 

「ちょっとまって姉さん!僕は女装なんかしないから!」

 

そう非難するように言うと、僕の耳に。

 

「ねえ恵衣菜ちゃん。明久くんの女装姿、つい最近にも見たような気がするんだけど」

 

「うん」

 

「というか、この半年で十回は見ていると思います」

 

「あはは・・・・・・」

 

「明久さん、言ってることが矛盾してるって気づいてないのかな・・・・・・」

 

ヒソヒソと、何かを話してる恵衣菜と穂乃果、ことり、海未、雪穂ちゃんの声が少し入った。

 

「なにを言っているのですか、アキくん?昨日の晩もスカートを履いたではないですか。寝ている間に」

 

「はいぃ!?」

 

いきなりの姉さんの言葉に僕は悲鳴のような声を上げた。

一体何をしているんだこの姉は!?

僕の疑問には妹の零華もで。

 

「ちょっと姉さん!僕が寝ている間に何したの!?」

 

「お姉ちゃん!お兄ちゃんになにしてるの!?」

 

「大丈夫ですよ二人とも。半分はウソですから」

 

「「へ?ウソ?」」

 

姉さんの、ウソという単語に面食うが。

 

「ウソ?どうやったら今の話の半分がウソにできるの!?」

 

「今の話の中にウソになるようなものあったかな!?」

 

これまたすぐにツッコミ問う。

すると姉さんは、ポケットからスマホを取り出し画面を見せてきた。

 

「はい。膝の上までしか履かせてませんから」

 

寝ている僕に、真っ赤なスカートを膝まで履かせた写真を。

 

「半分履かせたの?!」

 

「なんで半分履かせたのかな?!」

 

「いーえ。業界用語では"半ヌギ"です」

 

「は、半ヌギ・・・・・・」

 

「いやいやいや!これのどこが半ヌギなのよお姉ちゃん!しかも、半ヌギの意味違くないかな!?」

 

「そうですか?」

 

「「そうだよ!!」」

 

どこへ行っても全くぶれない姉さんに僕と零華はため息をついた。

そこに。

 

「玲〜。ちょっと、ひさしぶりにお話しましょうか〜」

 

甘ったるい声で翠姉さんが姉さんに近づいて言った。

僕らは翠姉さんのその声と空気の感じでなんとなくわかった。今の翠姉さんはかな〜り怒っていることを。そして、お話が、OHANASI、だということを。それにきづかない姉さんは。

 

「お話ですか翠?」

 

「うん。二人っきりで、たぁ〜〜っぷりOHANASIしましょう」

 

「わかりました」

 

翠姉さんと一緒に飲み物を持って別荘の方に歩いていった。

やがて、姉さんと翠姉さんの姿が見えなくなると雄二が。

 

「お、おい明久。お前達の姉、大丈夫なのか?小暮教諭がにこやかな笑みを浮かべて連れていったんだが・・・・・・」

 

その場の全員を代表して言ってきた。

それに対して僕ら―――僕、零華、恵衣菜、葵姉さん、穂乃果、雪穂ちゃん、ことり、海未。はもう慣れたというような感じで。

 

『『『多分大丈夫だと思う(よ)(います)(な)(いますわ)』』』

 

と、同時に同じ言葉を発したのだった。

なにせ翠姉さんは高校まで姉さんと一緒だったのだ。姉さんの対策方など翠姉さんにとっては御茶の子さいさいだろう。伊達に、姉さんの幼馴染みをやってない。

そんなこんなで時間は過ぎていき、合宿という名の旅行一日目が終わった。あ。ちなみに、今回の旅行は二泊三日です。

 

 











次回 『真夏の思い出』 Let GO to The Next Baka Live!


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第Ⅶ問 真夏の思い出

 

〜明久side〜

 

「───PV?」

 

合宿という名の旅行の二日目。朝食を食べ終えた僕らに、絵里がそう言ってきた。

 

「ええ。折角、ここに来たのだからどうせなら新しいPVを作ろうかな、とね」

 

「別にPV作成は良いけど、曲はどうするの?」

 

PVを作るとなると、新曲が必要になるはずなのだけど。

そう思っていると。

 

「この間出来た新曲ですよ」

 

海未がそう言ってきた。

 

「え!?あれ!?」

 

「そうよ」

 

驚く僕に、当たり前じゃないと顔に出してにこが返した。

 

「まあ、確かに夏に作る新作PVとあの曲はマッチしてるけど・・・・・・」

 

ちょっとだけ驚いている僕に、話を聞いていた雄二が。

 

「なんでそんなに難しい顔してるんだ明久?」

 

怪訝そうに見て聞いてきた。

 

「あー。そのー」

 

「絵里ちゃん、それって確か水着姿も撮影しないといけないんじゃなかったっけ?」

 

言い淀んでいる僕に苦笑いしながら、零華が絵里に訪ねる。

 

「ええ、まあ、そうなのよね」

 

引き笑いをする絵里。

今回作成している新作PVは少しだけみんなの水着姿が入るのだ。いや、別に水着姿じゃなくて、浴衣姿でもいいんじゃない?と、思うけど。

 

「や、やっぱり水着姿も撮るのですか絵里?」

 

そこにおずおずと海未が質問する。

 

「ええ」

 

海未の質問に間髪入れずに返す絵里。その絵里の言葉に、海未は顔を真っ赤にすると。

 

「は、は、は、破廉恥です!他人に水着姿を見せるなんて!」

 

と、言った。

その言葉を聞いた僕達幼馴染sは───。

 

「「「「「(あ。言うと思った)」」」」」

 

と、同時に思ったのだった。

 

「あ、明久や、坂本さん達にならまだいいですが、他人に・・・・・・しかも、動画でなんて・・・・・・!ムリですぅ!」

 

「(いや。昨日水着着て海で遊んだよね海未?)」

 

海未の言葉に僕はそう頭で突っ込んだ。

ま、まあ、動画で見るのとリアルで視るのは違うからね。

雄二達が大丈夫なのは、友達だからだと思う。まあ、何度も会ってれば大丈夫になるか。(僕や恵衣奈、零華経由で)

というか、海未のことだから昨日はずっと遠泳するのかと思ったりする。何故かというと、かなり前(約二ヶ月ほど前)にμ'sの合宿があった際、海未の考えた練習計画に【泳ぎ=遠泳】というのがあったのだ。他にも普通じゃやらない練習計画があったなどと、穂乃果とことり経由で聞いたのだ。その時の二人の声は泣きそうだったと記しておこう。

ちなみに、その練習計画の計画表のコピーを貰い、後日我が文月学園補習教師である西村先生に見てもらったところ、西村先生から、『これは、トライアスロン競技者並の練習量じゃないか?』と、かなり引いて疑問形で言われた。それと、『流石の俺でもこんな量の練習はやらんぞ・・・・・・。というか、これを女子高生がやるのは無理があるだろ。幼い頃から武道など鍛錬を培っている者は別として。男でもこれは無理に近いぞ』とも言っていた。西村先生がそこまで言うとは、さすがの僕らも目を丸くしてこの練習計画を考えた海未に恐れを為したのだった。ちなみに、これを雄二たちに見せたところ、雄二たちみんな顎が外れそうなほどあんぐりしていた。

とまあ、そんな訳で昨日海未がまたそんな練習計画を考えていさきているのではないかと不安だったのだ。

ま、それは置いといて───。

 

「あのー、海未さん?いつまで僕の後ろに隠れてるおつもりで?」

 

僕はいつの間にか、僕の後ろに隠れていた海未に問いかけた。

すると。

 

「あ、明久が変わりに出てください!」

 

全力の懇願で海未が言ってきた。

 

「ナゼニ!?!?」

 

「明久が私の代わりに水着姿で出れば問題ありません!」

 

「いやいやいやいや!!なんで僕なの!?しかも水着!?」

 

「女装すれば大丈夫です!」

 

「却下だから!」

 

「なんでですか!?可愛いじゃないですかっ!」

 

「男の僕に可愛いはおかしくないカナァッ!?」

 

「小学生のころ、ことりに色々されましたよね!」

 

「うぎゃぁぁぁぁああああ!それは思い出させないで海未ぃぃ!!」

 

あの時の事は、軽くトラウマになってるのだ!

何があったのかと言うと、朝から晩までことりや恵衣奈たちのおもちゃ。もとい、着せ替え人形になったのだ。知らず知らずの内に着ていたから、僕の中で軽く黒歴史ものなのだ。ちなみに、その時の写真は僕と零華の親は愚か、ことりの親であるかおりさんを始め、穂乃果と海未、ツバサ、葵姉さん、恵衣奈の親にも見られた。(写真で)まあ、誰が拡散させたかはどうでもいいけど。(遠い目をして)

 

「はぁー。なら、もういっその事、明久と海未二人が映ればいいでしょ」

 

『『『それだ(よ)!!』』』

 

「「それだ!ではないから(ありません)!」」

 

にこの案を名案だとでも言うように言う穂乃果たちに、僕と海未は全力で突っ込んだ。

μ's九人の中に僕がいるところを想像して欲しい。もしそれがネットに流れたら、僕は間違いなく社会的な死を迎える事になる。いや、社会的どころか精神や肉体の死になるかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、そんなやり取りを終え、僕らは別荘の前にある砂浜でμ'sの新作PV撮影を始めた。もちろん、周りの人に迷惑にならないようにしている。ま、なにかあったとしても、今回撮影しているのは康太だ。だからなんの問題もない。どういう意味かと言うと、文月学園でムッツリ商会をしている康太はカメラ撮影は勿論のこと、映像、音声などを、撮影対象本人の了承を得て販売しているため機械系はあらゆる面で凄いのだ。まあ、偶に学園長であるお祖母ちゃんが学校の行事やらなにやらで撮影協力を求められてる程だからね。

 

「手伝ってもらって助かるよ雄二」

 

「気にするな。俺としても、お前が彼女たちと何時もどういう風にしてるのか知れて良いからな」

 

僕の言葉に雄二はフッ、と軽く笑って嬉しそうに言った。その笑いは嘲笑ではなく、安堵の笑みだとすぐに分かった。

 

「まあ、話には聞いていたが、やっぱり自分の目で見た方が分かるな」

 

「ん?」

 

「いや。お前が音ノ木坂に行ったのはやっぱり正解だったな、ってな」

 

雄二の言葉に、僕は視線をPVを撮ってる穂乃果たちに向けた。

穂乃果たちは絵里と海未、そして撮影者の康太から色々言われ動いていた。

雄二たちは手伝ってくれなくてもよかったんだけど、雄二たちから「俺たちにも手伝わせてくれ」と言われ、今に至る。

 

「・・・・・・確かにね」

 

「女子高だったけどな」

 

「そ、それは言うな」

 

雄二の女子高、という言葉に僕は言葉を詰まらせた。

何せ女子高に男である僕一人だけなのだ。さすがに気疲れする。

 

「来学期からはすぐに体育祭だ。生徒会の仕事もあるから忙しくなりそうだな明久?」

 

「はは。そうだね雄二」

 

裏拳を軽く合わせて僕と雄二は言った。

来学期からは生徒会も始まるし、すぐに体育祭もある。他にもオープンキャンパスや学校説明会など、来年の新入生に向けての準備が沢山ある。もちろん、試召戦争やテストもあるけど。

 

「そう言えば来学期からの試召戦争どうするの?やるの?」

 

Fクラス代表である雄二に問いかける。

 

「あぁ。どうすっかなぁ〜」

 

思案顔になる雄二。

一学期は成績最底辺のFクラスでも頂点のAクラス打倒!という目標があったけど、その目標もそうそうに終わってしまい、今はFクラスとAクラスでは友好関係が築けている。まあ、僕と恵衣奈が音ノ木坂に行ってる間に零華が雄二たち以外のFクラス生徒にお話(OHANASI)したみたいだけどね。

 

「偶にするぐらいか?」

 

「ふぅ〜ん」

 

どうやらあまり試召戦争をするつもりはないらしい。これなら来学期は平和な毎日を送れるかもしれない。

そう脳裏に浮かばせた僕は、ある事を頭に出した。

 

「あ」

 

「ん?どうした?」

 

「いやさ。折角音ノ木坂と姉妹校になったんだから、学校同士の交流会みたいなのどうかなって」

 

「学校交流会か・・・・・・。具体的にはどんなのだ?」

 

「それぞれの学校のことを話したり、選抜メンバーによる試験召喚大会とか。どうかな?」

 

「面白そうだな、それ」

 

「でしょ?」

 

「ああ」

 

ニヤッ、と笑みを浮かべる僕に、雄二も面白いと言う風にニヤリと笑みを出す。話の内容を知らない人から見たら、若干引くような光景だろう。なにせそれほど悪巧みを考えているような顔なのだから。

現に。

 

「お主ら、なにか悪巧みを考えておらんか?」

 

呆れた顔で秀吉が言ってきた。

隣にいる恭二も同じ顔だ。

 

「せめて穏便なものにしてくれよ?」

 

「まったくじゃ」

 

「そこまで派手な事したか?」

 

秀吉と恭二の懇願に僕と雄二は頭上に?を浮かべて聞く。

派手な事をした覚えは無いはずなんだけど・・・・・・?

 

「いやいや、あれが派手じゃねぇって・・・・・・」

 

「類は友を呼ぶってやつじゃな」

 

二人の言ってることが理解できない僕と雄二はさらに?を出して互いの顔を見合わせた。

それを見てさらにため息を吐く二人を見ながら、μ'sの新作PV撮影は進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて夜。

 

 

「───それじゃあアップするよ?」

 

「ええ」

 

修正などを終えた動画をホームページにアップすることを絵里に問い、絵里の許可を得た僕はパソコンを操作してさっそく昼間撮った新作PVをサイトにアップロードした。

パソコンのインジケーターが左から右に流れていき、ほんの十秒ほどで右に到達し100%になった。

 

「───これでアップロード完了、っと」

 

新作PVがサイトにアップされると、一分と待たずしてコメント欄に見た人の感想やツイートが並んだ。それと同時に、サイトにある視聴者カウンターが次々に増加して行った。

 

「うおっ!もう百人を超えたぞ」

 

スマホから見ていた雄二が驚く声を出して言った。

こうしている間にも、コメントやカウンターは増え続けていき───。

 

「コメントが386。視聴者数は894人・・・・・・!!」

 

新作PVをアップした五分後にはこんな数になっていた。

 

「つまり、一分間に・・・・・・えーと・・・・・・」

 

「約180人。一秒に約3人は見てる計算になるわ」

 

「ひゃ、180人っ!?」

 

「すごいにゃー!」

 

「ちょっと待って!もう千を超えてるよ!」

 

「コメントもいっぱい来てくれてるね!」

 

送られてきたコメントには───

 

『新作PV待ってました!これからも応援します!』

 

『曲のタイトルと歌詞と風景とμ'sのみんなの水着がマッチしていてとても良かったです!』

 

『これからも頑張って下さい!』

 

と言った言葉や。

 

『ことりちゃんマジ天使!!』

 

『にこちゃん可愛い!』

 

『凛ちゃんの活発な動き凄い!』

 

と言う風なコメントも多々送られてきていた。

 

「スゴいのぉ、これは」

 

「・・・・・・想像以上の数」

 

「さすがに驚くな、これは」

 

「・・・・・・ビックリ」

 

「ええ。まさかここまでとは」

 

秀吉や康太、恭二、霧島さん、友香さんも驚嘆の声を漏らす。

そこに。

 

「ただいま帰りました」

 

「ただいま〜」

 

「あ、姉さん。翠姉さん」

 

今日一日外出していた姉さんと、そのお目付け役の翠姉さんが帰ってきた。

姉さんが一人で外出するとなると、なにか起こさないか心配とのことで翠姉さんが着いて行ったのだ。ホント、姉さんが迷惑をかけます!

 

「アキくん。私たちがいない間、不純異性交遊はしてませんよね?」

 

「ぶふっ!」

 

「お、おおお、お姉ちゃんんん!!??」

 

唐突に姉さんの言った言葉に僕は息が詰まり、零華は何言ってるのお姉ちゃん!?と言った顔をする。

 

「はぁ。いきなり何言ってるのかしら玲?」

 

額に手を当て、溜め息をつく翠姉さん。

 

「気にならないんですか翠は?」

 

「明久くんたちが昼間からそんな事するわけないでしょ?」

 

疑問顔の姉さんに、翠姉さんは呆れたように言う。

 

「それもそうですね。ですが───」

 

「ですが?」

 

「お姉ちゃん?」

 

「もししていたら───」

 

「「ゴクリッ・・・・・・」」

 

「一族郎党皆殺しです♪」

 

「「・・・・・・いや、それ姉さん(お姉ちゃん)も死んでるから」」

 

姉さんのどこかズレた言葉につっ込む気力もない僕と零華であった。その一連のやり取りを見ていた雄二たちは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、恵衣奈や穂乃果たち幼馴染sは苦笑し、唯一亜里沙ちゃんだけは頭上に?を出していた。

そんなやり取りもありつつも、夕飯を食べ、姉さんたちが買ってきた花火で遊んでいた。

別荘の前の砂浜で、水の入ったバケツの近くでみんな花火を手に楽しく遊んでいた。かく言う僕は海の近くに立ち、月夜の映る海面を眺めていた。そこに。

 

「なぁに黄昏てんだ」

 

「お前らしくねえぞ明久」

 

「雄二・・・・・・恭二も・・・・・・」

 

雄二と恭二が火のついてない線香花火を持ってやって来た。

 

「ほれ」

 

「ありがとう」

 

雄二から手渡された線香花火を持ち、ロウソクの火に付け静止する。

雄二と恭二もそれぞれ線香花火に火を付け静止し、しばしの間無言が貫く。

 

「んで?」

 

「ん?」

 

「なに悩んでんだよ」

 

「あはは。悩み事じゃなくて、ちょっと一人になりたくてさ」

 

「ん?そうだったのか?」

 

「悩みかと思ったんだがな・・・・・・」

 

「ははは」

 

クスッと笑い、零華たちの方を見る。

 

「みんな楽しそうだね」

 

「ああ」

 

「だな」

 

みんな楽しそうに、笑顔でいた。

それはつい一、二時間前にアップしたμ'sの新作PVの曲のタイトルと同じだった。

 

「来年もみんなで来れるといいね」

 

「そうだな」

 

「ああ」

 

僕たちがそう言うと同時に三つの線香花火の火は消えた。

 

 

μ'sの新作PVの曲のタイトルは───

 

 

 

 

 

 

 

 

  【夏色えがおで1,2,Jump!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











次回 『文月学園生徒会始動!』 Let GO to The Next Baka Live!


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2nd season 第VI章 体育祭編
第Ⅰ問 文月学園生徒会始動!


 

〜明久side〜

 

 

充実した夏休みが終わって早数日。新学期も始まったある日のこと。

 

 

「───ねえ、雄二」

 

「なんだ明久?」

 

「やっぱり変わらない?」

 

「無理に決まってるだろ」

 

「デスヨネー」

 

「なんでカタカナなんだ・・・・・・」

 

僕は雄二に提案していたが、何言ってんだと言う眼差しの元却下された。

ちなみに僕と雄二が今いるところは、教室ではなく体育館だ。

そして場所も、秀吉たちがいる所では無く───

 

 

『───続きまして、今学期より新たに発足した生徒会より挨拶があります。生徒会のみなさん、どうぞ壇上に』

 

 

「ささ、お兄ちゃん。行かないと」

 

「うう」

 

「あはは。大丈夫だよ、私達もいるから」

 

「・・・・・・吉井、ひとりじゃないから安心して」

 

「そうだぞ明久。おまえは俺たちの生徒会長なんだから。これぐらいシャキッとしないとな」

 

「はぁ。わかったよ・・・・・・。それじゃあ、行こうか」

 

僕らは体育館の舞台袖から歩きだし、壇上に姿を現す。

出た順番は僕から順に、零華、恵衣菜、雄二、霧島さんだ。

舞台袖から出た僕らは登壇の左横に横一列に並ぶ。

 

 

『では文月学園第一期生徒会役員を紹介させていただきます。右から【会計】二年Aクラス霧島翔子さん』

 

 

司会の先生の自己紹介に小さく頭を下げお辞儀をする霧島さん。

 

 

『【庶務】二年Fクラス坂本雄二君』

 

続けて雄二もお辞儀をし。

 

 

『【書記】二年Fクラス姫宮恵衣菜さん』

 

 

恵衣菜も同様にする。 

 

 

『【副会長】二年Aクラス吉井零華さん』

 

 

零華も同じようにしてお辞儀をして。

 

 

『最後に【生徒会長】二年Fクラス吉井明久君』

 

 

僕の名前が呼ばれると、少し前に出てみんなと同じようにお辞儀をする。

 

 

『以上五名が、文月学園第一期生徒会役員となります。尚、生徒会顧問は、第二学年学年主任の高橋先生となります』

 

 

生徒会の担当顧問は二年の学年主任である高橋女史だ。

西村先生も候補に上がっていたらしいが、補修担当やその他色々もあり、学年主任の高橋先生となったとの事だ。

 

 

『まだ慣れずに失敗するところもあると思いますが、みなさんも協力して下さい。それでは、生徒会長から挨拶を頂きたいと思います。生徒会長、吉井明久君』

 

 

「はい!」

 

司会の先生にいわれ、僕は壇上に登り。

 

「えー。コホン。・・・・・・みなさん、こんにちは。あれ、こんにちはでいいのかな?」

 

壇上に上がり、言葉を発っし疑問を声に出すと、あちこちからガタッとズッコケるような音が響いた。

問答していると、横から呆れ苦笑した声が伝わる。

 

「お兄ちゃん・・・・・・」

 

「明久くん・・・・・・」

 

「・・・・・・?」

 

「なにやってんだか・・・・・・」

 

やれやれと言った風の三人(霧島さん除く)の視線を受けながら。

 

「えーと。この度、文月学園生徒会長を務めることになりました、吉井明久です」

 

あはは、と引き笑いをして話す。

 

「と言っても、生徒会長のことを聞いたのつい一ヶ月程前なんですけどね」

 

思い返すように声に出して、生徒会の事を伝えられたある日のことを思い出す。

それは今から一ヶ月程前のこと───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一ヶ月前

 

 

 

音ノ木坂学院での試験召喚システムの講師と音ノ木坂学院での学院生活を終えた夏真っ盛りのある日、僕と妹の零華と幼馴染みの恵衣菜、悪友の雄二と雄二の彼女である霧島さんの五人は学園長であるお祖母ちゃんに呼び出され、文月学園学園長室にいた。

 

「いきなり休みの日に呼び出して悪いね」

 

「いえ、事前に昨日連絡を貰ってましたので」

 

すまなさそうに謝罪するお祖母ちゃんに僕はそう言う。

昨日の夜、お祖母ちゃんから学校に来るように連絡を貰ったのだ。雄二と霧島さんも学校から連絡を貰ったのだろう。

 

「ところで俺たちを呼び出したってことはなんかあったのか?」

 

僕らの問いに雄二がお祖母ちゃんに訪ねる。

 

「実は、アンタ達に文月学園第一期生徒会役員に就任してもらいたいのさ」

 

「「「・・・・・・・・・・はい?」」」

 

お祖母ちゃんの言葉に、僕と恵衣菜、雄二は間を大きく開けてポカンとした顔で言う。霧島さんも声には出さないけど、え?って顔をしている。その一方、妹の零華はふふふっ、と笑みを浮かべていた。

 

「えっと、学園長。もう一度言ってくれますか?」

 

空耳かと思った恵衣菜はお祖母ちゃんにもう一度言ってもらうようにお願いした。

 

「二年Fクラス、吉井明久。姫宮恵衣菜。坂本雄二。二年Aクラス、吉井零華。霧島翔子。あんた達に、来学期から文月学園第一期生徒会役員になってもいたい」

 

恵衣菜のお願いに苦笑してもう一度お祖母ちゃんがさっきと同じ言葉を言う。

お祖母ちゃんの言葉を頭に反響させ、十秒後ようやく理解した僕と恵衣菜、雄二は。

 

「「「はいいいいぃぃぃぃーーっ!!!?」」」

 

室内に響き渡るほどの声を上げた。

声を上げなかった霧島さんも目を大きく開いていた。

ただ一人、零華だけは違ったけど。

 

「ふふ。お兄ちゃんたち驚きすぎだよ〜」

 

「いやいやいや!これを驚くなって方が無理があるから!───って、なんで零華はそんなに冷静なの?」

 

「・・・・・・そう言えば。もしかして知っていた?」

 

僕の言葉に霧島さんが零華に聞く。

 

「あはは。実はね。生徒会を創るって話は聞いていたから」

 

どうやら零華はお祖母ちゃんから予め聞いていたようだ。

いつ聞いたのだろう?

 

「吉井妹には口止めしていたからね。吉井妹のせいじゃないよ」

 

「はあ・・・・・・」

 

まあ、お祖母ちゃんが口止めしていたなら仕方ないけど。

 

「そんで学園長。なぜ、急に生徒会なんか創ることにしたんだ?前までこの学校には無かっだろうに」

 

雄二の言うように、ここ文月学園は他校と違い生徒会執行部が存在しない。文月学園は開校まだ七年ほどだ。つまり、最近出来た学校といってもいい。他に近辺だと、つばさやあんじゅ、英玲奈が通うUTX学園(またの名をUTX高校)も近年出来た学校だ。UTXは近年出来た新しい高校なのに対して絶大な人気を誇る。現に、入学希望者は開校数年にして大勢だ。今は音ノ木坂学院への入学を考えている雪穂ちゃんも、UTXへの入学を考えていたほどだ。

ちなみにUTXは共学である。そしてさらに、設備が最新だ。しかし、その面入学金や受験料は多額であり音ノ木坂学院や文月学園と比べるとかなり高い。

今は廃校の危機が去った音ノ木坂学院が女子校。というのに対して、UTXは共学という点でも人気があるのだろう。

まあ、UTXの人気の一番の理由はつばさたちA‐RISEがいるからなのだろうけど。

で、さらに言うとここ文月学園も音ノ木坂学院が廃校という危機に陥った原因でもある。(お祖母ちゃん談)

何故なら、文月学園は『試験校』という試験召喚システムの実験場でありバックにスポンサーが多く存在するため、学費が半端なく安いのだ。その面、試験校のため経営が世論に左右されやすく、イメージの低下を避けるため不祥事は大っぴらにできないという問題点があるのだが。ここ最近だと、文化祭での拉致事件と前教頭竹原による内部事件。さらに、清水美春による傷害事件と男子生徒(一部除き)による覗き。そして、最大のが僕が刺された殺人未遂だ。

文化祭での零華や穂乃果たちを拐った拉致事件は、雄二と康太との協力により僕らが内々で片付けてある。しかし、その際に他校の穂乃果やつばさたち、小学生の葉月ちゃんを拐われた。こう言っちゃなんだけど、自校の生徒より他校の生徒が攫われたことが問題だ。まあ、それについては特に怪我とかも無かったし、僕たちの迅速な救援とお祖母ちゃんによって何とか事なきを得た。これで一番よかったのは、連れ攫われたのが僕らの知人だったということだけど。

そして、竹原に関してはお祖母ちゃんが内々に処理し竹原を学園から排除し問題なし。合宿での傷害事件と覗き未遂についても学園内で内々・・・・・・に処理したのかな?まあ、覗きに関わった生徒は一週間の停学処分を受けたみたいだけど。清水美春に関してはまあ、重罪ということなんだけど。

そして、開校始まって以来の一番の事件とも言えるのが、清水美春による僕への殺人未遂だ。いや、恵衣菜たちへの殺人未遂も入るのかな?

これにより、文月学園の生徒が同校生徒を刺したという事が広まり一時期文月学園は悪い意味で注目を浴びた。これが起きたため、スポンサーから問い合わせが来たり、生徒の親から抗議の連絡が来たりしたそうだ。僕はその頃恵衣菜とともに音ノ木坂学院へ行っていたから知らなかったけど。零華から聞いていた。

今は落ち着いたそうだけど、もしこれで殺人になっていたらこの学校は音ノ木坂学院と同じく廃校の危機になっていたかもしれない。まだ二ヶ月も経ってないけど、あの頃のお祖母ちゃんはとても疲れていたのを覚えている。ほんとゴメンなさい。

とまあ、そんなこんなで文月学園は『新入生を大量に取られた』ことから近隣の高校からは目の敵にされているのだ。まあ、UTXほどの規模じゃないけど、金銭で言えば文月学園の方がだんと安いからね。それに、文月学園の敷地面積は結構大きく、旧校舎と新校舎に体育館。食堂に、小さいが体育系の部活棟。さらに数ヶ月前にできたスタジアムと。こちらも施設はかなりある。

ちなみに、つばさがUTXに行ったのはあんじゅや英玲奈が誘ったからである。本当は葵姉さんにも声が掛かっていたんだけど、葵姉さんは翠姉さんが養護教諭としている文月学園に来た。理由はこっちの方が楽しめそうだから、だそうだ。

穂乃果、海未、ことりは母さんたちの母校である音ノ木坂学院に行ったが、僕は音ノ木坂学院が共学じゃないのに咥え、お祖母ちゃんから誘われていたため妹の零華と恋人の恵衣菜と一緒に文月学園に来た。うん。音ノ木坂が共学だったら、音ノ木坂の方に行っていたのにという想いもある。

とまあ、論点は少しズレたけど。雄二の問いにお祖母ちゃんが。

 

「坂本の言うように、急遽生徒会を創ることになった理由は音ノ木坂と姉妹校なったからさね」

 

と言った。

 

「一応、前々から創設する予定はあったんだけどね。システムの研究やらで手が回らなかったのさ。それに、元教頭の竹原がいたからね。おいそれと創れなかったと言うのが本音さ」

 

「なるほどな。そんで、竹原もいないこの機会に創ってしまおうとしたわけか」

 

「そういうことさね」

 

雄二の納得したように頷きながら言う言葉に肩を竦めて言うお祖母ちゃん。

確かに、元教頭の竹原は何かとお祖母ちゃんを失脚させようとしていた。もし、文化祭の時に大きく行動していなければまだ在籍していた可能性がある。お祖母ちゃんも竹原のことは調査していたみたいだけど。それに、竹原のことだ。生徒達に成績や進学のことを融通してやるとか言って手駒にするだろう。あの、常夏コンビのように。

 

「・・・・・・学園長、質問が」

 

「なにさね?」

 

「・・・・・・生徒会を創るのは分かりましたが、役職はどうなるんですか?」

 

霧島さんがお祖母ちゃんに尋ねると、お祖母ちゃんは引き出しから一枚の紙を見せてきた。

 

「アタシとしては、その紙に書かれている役職に就いて欲しい所さね」

 

お祖母ちゃんが見せてきた紙の一番上には『第一期生徒会執行部役員』と書かれていて、その下には五つの役職と僕らのそれぞれの名前が以下のように記載されていた。

 

 

 

 

 生徒会執行部 初期役員

 

 

 

 会計   二年Aクラス 霧島翔子

 

 

 庶務   二年Fクラス 坂本雄二

 

 

 書記   二年Fクラス 姫宮恵衣菜

 

 

 副会長  二年Aクラス 吉井零華

 

 

 生徒会長 二年Fクラス 吉井明久

 

 

 

と。

 

「!?」

 

用紙を見た僕は目をゴシゴシと擦り、再び用紙に視線を向ける。

が、そこに記載されていた名前と役職は変わってなかった。

やがて。

 

「ぼ、僕が生徒会長ぉぉぉぉぉぉぉーーーッ!?!?!?」

 

学園全体に響き渡るのではないかと思うほどの絶叫を出した。

 

「な、ななななななっ!?なんで僕が生徒会長なんですか、お・・・・・・学園長!!」

 

危うくお祖母ちゃんと言いそうになったのを堪え、学園長と言い直す。雄二たちには僕と零華がお祖母ちゃんの孫だとは言ってないからね。というより、秘密にしている。学園で知っているのは恵衣菜と翠姉さん、葵姉さんだけなんだけど、高橋先生と西村先生もお祖母ちゃんが僕達の関係を言っていたらしい。まあ、高橋先生はともかく、西村先生は大丈夫だ。高橋先生はその、若干天然だから。

高橋先生に姉さんを会わせたらどうなるんだろ。多分ツッコミが止まらないんだろうなぁ。

そう思いながらお祖母ちゃんを見ると。

 

「なんでって言ってもねー」

 

僕のこの反応が予想通りだったからか、お祖母ちゃんは苦笑しながら言う。

 

「吉井兄以外、初代生徒会長に相応しい生徒なんかいないだろうさね」

 

「いやいやいや!確かに僕は二年の序列一位ですけど、クラスはFクラスなんですよ!?人望でいうなら、零華の方が相応しいと思いますけど!?」

 

という言葉の裏で、零華の生徒会長姿が見たいのが本心である僕だった。

 

「───お兄ちゃん、今私の生徒会長姿が見たいって思わなかった?」

 

「ドキッ!」

 

突然の零華のその言葉にドキッ!とする。

その僕の姿を見て。

 

「「「「結局何時ものシスコンか」」」」

 

と珍しく霧島さんも声を揃えて言った。

え、だって、可愛い双子の妹の生徒会長姿見たいじゃん!?兄として当然だよ!凛々しく壇上でスピーチする零華。ああ、想像しただけで───

 

「───」

 

「おい明久。鼻を抑えろ。鼻血が出てるぞ」

 

「はっ!」

 

雄二の言葉に僕は鼻の穴をティッシュで抑えて止血する。

 

「一体何を想像したら鼻血が出んだよ・・・・・・」

 

「ま、まあ、明久くんだし。アハハ・・・・・・」

 

「・・・・・・血、大丈夫?」

 

「吐血よりはマシさね」

 

四者四様の言葉に返す言葉もない。ちなみに零華はと言うと。

 

「もう。はい、お兄ちゃんティッシュ」

 

「あ、あ"りがとう零華」

 

「家に帰ったらすぐに洗濯カゴに入れてね。染み抜きするから」

 

「お願いね零華」

 

「うん♪」

 

手馴れた動作で僕の手伝いをしてくれていた。

 

 

 

 

 

 

〜閑話休題〜

 

 

 

 

 

 

鼻血が治まり、再び話が始まる。

 

「話を戻すよ。なぜ、吉井兄が生徒会長なのかと言うとだね」

 

「言うと?」

 

「アタシを含め、全教員が吉井兄。アンタを推薦したからさ」

 

「ぜ、全教員!?」

 

まさか文月学園教員全員に推薦されてるとは。

 

「まあ、アタシも提案した時は驚いたよ。それと同時に納得もしたさ(まあ、元々明久には生徒会長になってもらいたかったんだけどね)」

 

「納得?」

 

「そうさね。吉井、アンタは観察処分者の役割だけでなく、文化祭での件や、合宿所での件。そして、先日までの音ノ木坂学院での姫宮との講師としての実績がある。これは成績だけじゃ測れないさね」

 

「なるほどな。確かに明久は文化祭での件や合宿所での件を含め、生徒やこの学園のために迅速してきた。それに、音ノ木坂での召喚獣の講師。なにより、俺たち二年の序列一位だしな。もうすぐ受験の三年は除くとして、新入生の一年もアウト。となると二年になる。俺たち二学年の中で一番生徒会長に相応しいのは誰でもない、明久だな。俺や翔子。姫宮や吉井妹でもない。寧ろ、俺たちはお前を支える方だな」

 

お祖母ちゃんの言葉に続いた雄二が言う。さすが元神童なだけある。頭の回転が速い。

 

「そういうことさね。どうだい、吉井兄。生徒会長。引き受けてくれないさね?」

 

「・・・・・・」

 

お祖母ちゃんや雄二の言葉を聞いて、僕は零華や恵衣菜、霧島さん。そして雄二の顔を見る。四人は僕に向かって無言で頷いた。

それを見て僕はお祖母ちゃんの顔に視線を向けて。

 

「分かりました。生徒会長、引き受けます!」

 

力強くそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在

 

 

「(ホント。お祖母ちゃんには適わないな)」

 

策士とでも言うのか、初期生徒会役員を僕ら五人にしたのは恐らく、僕が生徒会長としてやりやすくする為だったのだろう。

気心がしれた人たちとやれば落ち着いて出来る。ストレスなども無く、平穏な日々が送れるということだ。

まあ、これを伝えられてまだ約一ヶ月前といきなりで戸惑いもしたけど。

 

「───以上で僕の話を終わりにします」

 

生徒会長挨拶も終わりをむかえ。

 

「なにかと、不作法があるかと思いますが精一杯やって行きますので、どうぞ宜しくお願いします!」

 

と言い、一礼して壇上から降りて零華の横に移動する。

移動すると、体育館中から拍手の音が響き渡った。

 

 

『───以上で全校集会を終わりにします』

 

 

司会担当の先生の言葉によって、新学期初めの全校集会が終わった。

これで、僕ら生徒会が始まった。

二学期は一体なにが起こるのか楽しみで仕方ない想いでいっぱいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『第一期生徒会執行部 役員

 

  生徒会長 二年Fクラス 吉井明久

 

  副会長  二年Aクラス 吉井零華

 

  書記   二年Fクラス 姫宮恵衣菜

 

  庶務   二年Fクラス 坂本雄二

 

  会計   二年Aクラス 霧島翔子

 

 

  以上の者を文月学園第一期生徒会役員に任命する。

 

             学園長 藤堂カヲル 承認』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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第Ⅱ問 体育祭準備


新年明けましておめでとうございます!
今年も【バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語】やソーナの作品をよろしくお願いします!
では、どうぞ!





 

〜明久side〜

 

 

どうも、文月学園生徒会所属、生徒会長の吉井明久です。

僕らの、第一期生徒会が始まってすでに二週間が経とうとしていたます。色々あるんですが、今僕らの活動は───

 

 

『声だせぇぇぇ!!』

 

『『『フレー!フレー!あーかーぐーみッ!』』』

 

『もっと動きを滑らかに!』

 

 

後一週間後の体育祭だ。

開けた窓から聞こえる声に耳を傾けながら、体育祭に必要な書類やらを整理する。

 

「ったく。学園長にも困ったもんだぜ」

 

「あははは。さすがに今回はね」

 

「まあまあ」

 

雄二の不満気な言葉に僕と恵衣菜は宥めるが、まあ無理もないよね。だって───。

 

 

 

 

 

『         連絡事項

 

 

       文月学園体育祭親睦競技

        生徒・教師交流野球

 

 

 

         上記の種目に対し

        本年は実地要項を変更し、

      競技に召喚獣を用いるものとする。

 

 

       文月学園学園長 藤堂カヲル     』

 

 

 

 

 

っていきなり言われたんだから。いや、告知されたの方がいいかな?

朝学校に来てみたら廊下の掲示板にデカデカとこの文章が貼られていたのだ。それを見た僕は急いで荷物をFクラスに置き、お祖母ちゃんのいる学園長室に駆けた。

そして学園長室に着くなり。

 

「学園長、あの告知はどういうことですかあああっ!?」

 

ノックもし忘れて慌ただしく入った。

 

「うおっ!な、なんだい吉井兄か。ビックリしたさね」

 

「そんなことより、あの告知について説明お願いします!」

 

まさか体育祭の親睦競技が肉体ではなく、召喚獣になるとは誰が考えようか。

 

「もうスケジュールとかも出来上がって、パンフレット配るだけなんですよ!?それなのに、こうなるとまたスケジュール調整が必要になるじゃないですか!!」

 

「あ、ああ。それについては・・・・・・」

 

「しかも、召喚獣で野球なんてどれだけ難しいか召喚システム開発の第一人者である学園長ならわかってますよねえぇぇ!?」

 

「そ、それは知ってるさね。だ、だが、安心するさ・・・・・・」

 

僕の憤る表情と言葉にお祖母ちゃんは、かなり引いて声を出す。

そこに。

 

「お兄ちゃん。そこまでそこまで」

 

「声が廊下にまで聞こえてたよー」

 

「少しは落ち着けよ明久・・・・・・」

 

零華と恵衣菜、雄二の三人が呆れた声で入ってきた。

 

「いやいやいや!これがおちつけるわけないでしょおぉぉおーー!!」

 

「はぁ。吉井、姫宮。頼む」

 

「はぁーい」

 

「うん」

 

未だ落ち着けずにあたふたしていると。

 

「よいしょ♪」

 

「ふわっ!?」

 

「はいはい。明久くん、深呼吸深呼吸」

 

背中に零華が抱きついてきて、恵衣菜は僕の両肩に手を置いて言った。

 

「落ち着いたか明久」

 

「え、あ、うん・・・・・・」

 

雄二の声に僕は心臓がバクバクなっているのを抑えて返す。

ちなみにそう返すも脳内では。

 

「(ヤバかった・・・・・・!ここが学校じゃなくて家だったら二人を押し倒してたかも!)」

 

と悶絶していた。

理由は単純に、二人が可愛かったからである。

 

「はぁ。やれやれ。んじゃ、学園長話の続きを」

 

「ああ。助かったさね坂本」

 

お祖母ちゃんは引き出しからクリアファイルを取り出し僕たちに渡してきた。

 

「さて。本当なら昨日辺りにでも説明するはずだったんだが、生憎別の予定が入ってね。告知が今日になってしまったのさ。すまなかったね」

 

「はぁ」

 

お祖母ちゃんの言葉に僕は間の抜けたような返事を返す。

 

「基本的には体育祭のプログラム、『生徒・教師交流野球』が生身の人間ではなく召喚獣が行うだけだからね。そう大きくプログラムを変える必要は無いさね。時間割の方ももう決まってるのだろう?」

 

「ああ。すでに時間割については事前に提出している」

 

「なら、いいさね。あとはルール辺りを少し改変する必要があるだけさ」

 

「そうか。となると、この辺りを大きく変えた方が良さそうだな」

 

そう言うと、雄二は元々のルールの書かれた紙の一部分にバツを付ける。

 

「【表裏はそれぞれ五回まで。同点の場合は七回裏まで】。【七回裏まで続いても決着がつかない場合は両チーム引き分け。敗北とする】。【各イニングごとに科目を切り替える】・・・・・・とかか?」

 

「そうなるね」

 

「ふむ・・・・・・」

 

「雄二?」

 

顎に手を当てて考えてる姿勢を取る雄二。

しばらくして。

 

「なら、ここはこうか・・・・・・・。あとはここと、ここと、ここだな」

 

部屋の中の椅子に腰掛けて紙に上書きするようにペンを走らせる。

雄二がペンを走らせてしばらくして。

 

「よし。これでどうだ?」

 

雄二の新しく見せてきた紙を僕たちとお祖母ちゃんは見る。

 

「うん。いいんじゃない雄二」

 

「これなら、大きく変える必要もないから負担も減るね」

 

「うん。いいと思うな」

 

僕たちが賛成し。

 

「これなら構わないさね」

 

お祖母ちゃんも賛同する。

 

「なら、これをコピーして全クラスに新たなスケジュール表らを配れば完成だな」

 

雄二が書いた野球大会規則(召喚野球仕様)は以下の通りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      【召喚野球大会規則(校則)】

 

 

・各イニングでは、必ず授業科目の中から一つを用いて勝負すること

 

 

・各試合に於いて、同種の科目を別イニングで再び用いることは認めない

 

 

・立ち会いは試合に参加していない教師が務めること。また、試合中に立ち会いの教師が移動してはならない

 

 

・召喚フィールド(召喚野球仕様)の有効圏外へ打球が飛んだ場合、フェアであればホームラン、その他の場合はファールとする

 

 

・試合は5回の攻防とし、同点である場合は7回まで延長。それでも決着がつかない場合は両クラス敗北の引き分けとする

 

 

・事前に出場メンバー表を提出すること。ここに記載されていない者の試合への介入は例外を除いて一切認めない。(例外:急な体調不良、緊急連絡など)尚、これにはベンチ入りの人員及び立ち会いの教師も含む

 

 

・人数構成は基本ポジション各1名とベンチ入りの2名の計11名とする

 

 

・進行に於いては体育祭本種目を優先する。競技の時間が重なりそうな場合はクラス代表が試合開始の10分前までに、メンバー登録の変更を行っておくこと

 

 

・その他の基本ルールは公認野球規則に準ずる

 

 

・仲良く、楽しく、クラスメイトと協力し、学生らしく、思い出に残るようなプレイをすること

 

 

・以上の項目を召喚野球大会の規則とする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───時を戻して放課後の生徒会室

 

 

「───っし。こっちは終わったぞ」

 

「ちょっと待って、こっちも・・・・・・・・・・よし!今日の分終わったぁー」

 

今生徒会室にいるのは僕と雄二だけだ。

恵衣菜と零華、霧島さんは体育祭の設営やらに行ってる。書類関係は僕と雄二が終わらせてる。

背もたれに背中を預け、伸びをして固まった身体をほぐす。

 

「んんーーっ!ぁぁーーっ」

 

「これで明日各学年に配るだけだな」

 

「そうだね」

 

今回の書類は召喚野球大会のものや生徒会関係、部活動などの少なくない量のものがあった。

 

「体育祭が終わったら予算会議か」

 

「まあ、そっちの方も今日ので終わってるしね」

 

そう言いながら僕は視線を下のデスクに置いてある数枚の書類をボックスに纏めていれる。

 

「だな。おっと、明久これもだ」

 

「サンキュー」

 

雄二から数枚受け取り、それを今入れたボックスに入れ、戸棚の中に仕舞う。

 

「ふぅ。雄二、お茶でいい?」

 

「ああ」

 

室内には小型だが冷蔵庫もあるため、僕はそこからペットボトルのお茶を二本取り出し一本を雄二に渡す。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

冷たいお茶が喉を潤す感じに僕は一息吐く。

そこに。

 

「ただいまー」

 

「お帰り恵衣菜、零華、霧島さん」

 

恵衣菜たち三人が部屋に入ってきた。

 

「おう。お疲れさん」

 

「・・・・・・(コク)雄二、それもらっていい?」

 

「あ?別にいいが」

 

「・・・・・・ありがとう」

 

霧島さんに自身の持っていたお茶を渡す雄二。

霧島さんは雄二から受け取ったお茶の飲み口に口を着けそのまま飲む。

ちなみに、それはすでに雄二が口を付けたやつであり。

 

「(い、今さり気なく間接キスをした・・・・・・。さすが霧島さん・・・・・・!)」

 

声に出すのは無粋だから声には出さず思考に出したのだが。

 

「・・・・・・雄二との間接キス」

 

「ぶほっ!!」

 

「翔子ちゃん!?」

 

「わおっ・・・・・・!」

 

頬を紅くした霧島さんがボソリと言ったことにより、部屋の中にいた僕らの耳に入り雄二は噎せ、驚く零華、流石というような感じに口元に手を当てる恵衣菜。僕は苦笑して雄二を見る。

 

「(こ、こういう所は雄二もまだまだなのかな?)」

 

「今明久から物凄くバカにされた気がするんだが・・・・・・」

 

「(ギクッ!)」

 

勘の鋭い雄二の言葉にギクッ!となりながらも平常心を取り繕う。

 

「そんなわけないじゃないか」

 

「・・・・・・声に震えが入ってるぞバカ」

 

「っ!?」

 

「ったく」

 

呆れたように言う雄二の軽口に恵衣菜たちはフフ、と笑う。

そんなところに。

 

「・・・・・・雄二、今日こそは子作りをする」

 

「アホかァ!!?」

 

真顔で霧島さんが雄二に告げた。

そして赤面してツッコム雄二。

 

「・・・・・・?(コク)」

 

「なんで不思議そうに首を傾げてんだ翔子・・・・・・!」

 

「・・・・・・だってお義母さんが『押してだめなら押し倒せ』って言っていたから」

 

「あんのっ!お袋はーーッ!!何翔子に吹き込んでやがんだ!?」

 

「・・・・・・だから雄二と今日子作り。私は問題ない」

 

「いやいやいや!色々と問題があるだろうが!?」

 

雄二と霧島さんの夫婦漫才(?)を眺めつつ僕たちは。

 

「お兄ちゃん、坂本くんたちは置いといて私たちは行こう?」

 

「あはは。そうだね」

 

「あ、さっき海未ちゃんから連絡来て、今日は学校じゃなくて神社でだってよ」

 

「了解」

 

帰る支度をしていた。

 

「雄二、鍵締めよろしくねー」

 

「おぉい明久!?」

 

「じゃ、また明日ー」

 

「この状況下で俺を置いていくな明久!」

 

「・・・・・・雄二、家で子供の名前考える」

 

霧島さんの天然な声と焦る雄二の声を後ろに僕たちは生徒会室を後にし、学校から神田神社へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神田神社

 

 

神田神社に着くと、すでに穂乃果たちはストレッチをしている最中だった。

 

「ごめん遅れた」

 

「大丈夫よ、今始めたばかりだから」

 

遅れたことに謝るとアップを終えた絵里が返してきた。

 

「大変でしょ生徒会」

 

「まあね」

 

「わかるわ」

 

音ノ木坂の現生徒会長である絵里は苦労が分かっているらしく同情の眼差しを向けて来てくれた。

 

「あ、明久。練習が終わったあとちょっと相談があるのだけどいいかしら?」

 

「?いいけど」

 

「ありがとう」

 

そう言って絵里はストレッチを終えた穂乃果たちに指示を出し、僕らも練習に参加した。

練習が終わり、穂乃果たちと別れ恵衣菜と零華には先に帰ってもらい、僕は絵里と二人きりでいた。

 

「それで相談ってなにかな?」

 

「私って今生徒会長でしょ?そろそろ次の生徒会長を決めないといけないんだけど」

 

「うん」

 

「次の生徒会長、穂乃果にお願いしようかなって思ってるの」

 

「え・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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第Ⅲ問 開幕!文月学園体育祭!

 

〜明久side〜

 

 

『───只今より、文月学園体育祭を開幕します』

 

あれから時が過ぎ、今日は文月学園体育祭当日だ。

空は快晴で雲ひとつない。

生徒会長としての挨拶を終え、選手宣誓や召喚野球大会についての説明などが終わり、ついに一つめの種目が始まろうとしていた。

僕らは各々のクラスの陣地で。

 

「確か召喚野球の一回戦の相手はEクラスだったよね?」

 

「ああ。初戦は隣のクラスだな。二回戦は初戦で勝ち上がったクラスだし」

 

「ってことは零華と何れ戦わないといけないのか・・・・・・やだなぁ。妹と戦うの」

 

「あのなぁ、四月に思いっきり争ってたくせに何言ってんだ?」

 

「それはそれ。これはこれ」

 

「ったく」

 

呆れたようにため息を吐く雄二。

だって兄としては、可愛い妹と争いたくない気持ちが勝ってるんだから仕方ないよね!?

そこに。

 

「明久君のシスコンぶりは、今更のことよ坂本君」

 

「お、中林か」

 

「や、中林さん」

 

Eクラス代表の中林さんがやって来た。

 

「試験召喚戦争では負けたけど、今回の召喚野球では負けないわよ」

 

「望むところだ中林」

 

おお、雄二と中林さんの間に火花が飛び散ってる。

バチバチと火花が飛び散ってるような雰囲気に少しだけ引く。

 

「あはは、今日はお手柔らかにね吉井君」

 

「こちらこそ」

 

代表同士が火花を散らす中、僕はEクラスの副代表的な位置にいる三上さんと握手を交わす。

それから数分後。

 

 

『間も無く、試験召喚野球大会第一回戦第一試合が開始されます。出場する生徒は所定の位置に向かってください。繰り返します。間も無く、召喚野球大会第一回戦第一試合が開始されます。第一試合のクラスは所定の位置に向かってください』

 

 

設置されたスピーカーから放送委員のアナウンスが流れた。

 

「よし!んじゃ行くぞ!」

 

『『『おおっ!!』』』

 

雄二の掛け声に参加する僕らは声を上げた。

そのすぐ近くでは。

 

 

 

「行くわよみんな!Eクラスの力、Fクラスに見せつけるのよ!!」

 

『『『おおおっ!!!』』』

 

「私たちの成長した姿をここで発揮するわよ!総員構えぇ!!」

 

『『『Yes,my lord!!!』』』

 

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

え、ええぇ・・・・・・・・・・。

目をパチクリとするほどの一糸乱れぬ敬礼に僕たちは全員唖然としていた。

あれは・・・・・・一体・・・・・・。

 

「あ、あははは。宏美、熱の入りようが凄かったからねー。クラスのみんなも」

 

ただ一人、三上さんはあはは、と苦笑していた。

うん。Eクラスは軍隊になってしまったみたいだ。だって全員、中林さんに向けて、直立不動をとって右手を胸のあたりに持っていって中林さんに『Yes,my lord』って言っているんだもん。なんていうか、その、うん。中林さんが女王で、クラスメイトがその臣下?部下?みたいな感じだね。

 

「坂本君、私たちもあれやる?」

 

「誰がやるか」

 

恵衣菜の問いに雄二は嘆息したように返した。

まあ、少し恥ずかしいからね。

とまあ、そんなこんなもあり───。

 

「えー。では、第一回戦第一試合、Eクラス対Fクラスの試合を始めます。両クラスとも、礼」

 

『『『『『よろしくお願いします!』』』』』

 

両クラスとも挨拶を済ませ、僕たちFクラスは自営のベンチに戻った。

 

「それで雄二。順番って?」

 

「ああ。基本の守備位置と打順はだいたいこんな感じだ」

 

そう言って雄二が見せてきた紙には、僕らの打席順が書かれていた。

上から───

 

 

 

打順 守備位置   名前

 

1番 ファースト  木下秀吉

 

2番 ショート   土屋康太

 

3番 ピッチャー  吉井明久

 

4番 キャッチャー 坂本雄二

 

5番 ライト    姫路瑞希

 

6番 セカンド   島田美波

 

7番 センター   須川亮

 

8番 サード    姫宮恵衣菜

 

9番 レフト    横溝浩二

 

ベンチ 福村幸平

    近藤吉宗

 

 

 

以上11人だ。

 

「へぇ。主要メンバーは全員入れてるんだな」

 

紙を見て須川君がそう言う。

 

「だな。ん?だが、坂本」

 

「なんだ横溝?」

 

「いや、お前がキャッチャーなのはいいんだが・・・・・・吉井がピッチャーで大丈夫なのか?」

 

「あー・・・・・・まあ、なんとかなんだろ」

 

「おいおい・・・・・・」

 

雄二の応えに冷や汗を流す横溝君。

何故横溝君が雄二に聞いたのかと言うと。

 

「明久よ。雄二の召喚獣を消し飛ばさぬようにな」

 

「・・・・・・(コクコク)手加減必須」

 

「わかってるよ秀吉。康太」

 

そんなやり取りをして僕らは準備に取り掛かった。

先行後攻は、先行がEクラスで後攻が僕たちFクラスだ。

僕はピッチャーなため、グラウンドの投手の立ち位置に立ち召喚獣を召喚する。生身じゃなくて、召喚野球だから召喚者である僕らはどこにいても良いんだけど、やりやすさからほぼ全員が召喚獣と一緒に、それぞれの位置についている。もちろん、召喚獣の動きを阻害しないように真後ろや横に立ったりしてる。

ちなみに、今回使用するボールも(一般的な召喚獣と同じで物には触れない)実際の野球ボールと同じ重さに設定されてるらしい。

さて、ここで秀吉と康太が僕に忠告してきた理由はこれは野球だが、召喚獣による野球のため普通の野球とは違うのだ。召喚獣の力はFクラスの点数であっても、普通の人の数倍は力があるのだ。僕らやAクラスのみんなが普通のボールを投げたら打てっこない。そして、もしそんなボールが他の召喚獣に当たった結果は───予想した通りである。

まあ、そんな為一応パワー上限はあるみたいだけど。(お祖母ちゃん談)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『プレイボール!』

 

主審を務める寺井先生の声が召喚フィールドが張られたこのグラウンドに響き渡り、一回戦のゲームが始まる。

 

「しゃーっす!試獣召喚(サモン)っ」

 

Eクラスのトップバッターが挨拶・・・・・・でいいのかな?をしながらバッターボックスに入る。守備側は立ち位置に規定はないけど、バッターはボックスの真後ろあたりに立つ。これは相手のサインやミットの位置が見えないようにするためだ。

 

 

 

古典

 

 

 Eクラス 園村 俊哉(そのむら しゅんや) 117点

 

 

 VS

 

 

 Fクラス 吉井 明久 508点

 

 

 

「(うーん。やっぱり、最後に受けたテストがお化け屋敷前だから低いね)」

 

他の人から比べたらこれでも十分高いのだが。

二学期になってから特に補充試験を受ける必要もなく、前回のお化け屋敷前に受けたテストの点数からあの常夏コンビと戦った後の点数になってる。(希望者は補充試験を受けている)

この試合のそれぞれ科目は、一回は古典、二回は数学、三回は化学、四回は英語で、五回が保健体育になっている。まずは古典勝負だ。

僕の分身たる召喚獣にボールを持たせキャッチャーである雄二の指示を待つ。変化球は使えないので、雄二が指示するのはコースと、あとは球の速度くらいだ。まずは、一球目。雄二の召喚獣のミットが示す場所は───

 

「(え、ど真ん中?)」

 

ど真ん中だった。

 

《そんなど真ん中で大丈夫?》

 

キャッチャーとして召喚獣の後ろに立つ雄二へ視線を送り、アイコンタクトで会話する。すると、雄二からもアイコンタクトが帰ってきた。

 

《大丈夫だ。向こうも慣れない召喚獣を使っての一球目だ。様子を見てくるはずだ。それに、一球目で感覚を確認した方が良いだろう》

 

《なるほどね。了解》

 

確かに、通常の野球とは違うだろうから感覚が上手く行かないだろう。一球目で確認した方が良さそうだ。

相手は運動部だし、緩い球では打たれるだろう。だから、いつもと同じようにやってみるか。

 

《じゃあ行くよ雄二》

 

《おう。来い明久》

 

雄二の指示したコースに投げる。せぇ・・・・・・のっ!

 

 

 

キンッ

 

 

 

『ホームラーーン』

 

 

 

「うぉぉいっ!打たれてるぞ明久ぁー!」

 

「打たれてるじゃないか雄二ぃーー!」

 

ボールは甲高い音をたて、青空へと消えていった。

召喚フィールドの範囲を超えたボールは空へと消え、ホームランとなった。

 

「ふ、二人とも・・・・・・」

 

「お主ら・・・・・・。いくらなんでも、運動部の面子を相手にど真ん中はどうかと思うぞい・・・・・・」

 

初回の初球でいきなりのホームラン!これで0対1になってしまった。

しまった。思わずすっぽ抜けたボールを投げてしまった。

 

「おねっしゃっす!試獣召喚(サモン)っ!」

 

ノーアウトランナーなしで2番バッターが現れる。僕はボールを受け取り、雄二と視線を交わす。

 

《手加減するなよ明久》

 

《わかってるよ》

 

二球目を召喚獣を操作して投げる。

 

 

 

キンッ

 

 

 

『ホームラーーン』

 

 

 

「明久ぁぁーー!?」

 

「あ、あれぇーー!?」

 

今度は手加減なしで投げたはずなんだけどなあ?!

自分でも驚くことに僕は驚愕の表情を出す。

 

「明久くん・・・・・・」

 

「何やってんだよ吉井・・・・・・」

 

「大丈夫かおい・・・・・・」

 

「・・・・・・体調不良?」

 

「明久、お主・・・・・・」

 

「よ、吉井君・・・・・・?」

 

「よ、吉井・・・・・・?」

 

後ろの守備から恵衣菜たちの唖然とする声が響く。

 

「お願いします!試獣召喚(サモン)っ!」

 

ノーアウトランナーなし、0対2で3番バッターがボックスに入る。うん、これ以上はヤバい。

 

《明久、全力で投げろ。これ以上の失点はヤバい》

 

《うん。わかってる》

 

雄二がアイコンタクトで伝えてきた通り、これ以上の失点はヤバい。雄二の召喚獣が送ってきたサインは───

 

「(速球。真ん中下ね。了解)」

 

三度目の構えを取り、ボールを投げる。どうだ?

 

 

 

『ストライクッ!』

 

 

 

良かった。

今度は打たれずに済んだ。

僕の召喚獣が放ったボールは、雄二の召喚獣が構えるミットの中に収まっており、相手の召喚獣は微動打にしなかった。

 

《よし、いいぞ明久。その調子だ》

 

返ってきたボールを受け取りながら、アイコンタクトで伝えてくる雄二に。

 

《了解》

 

とアイコンタクトで応える。

続けて3番打者への二球目───

 

 

 

『ストライクッ!』

 

 

 

二球目も見事、雄二の召喚獣の構えるミットに収まりストライクが取れた。Eクラスの3番バッターは目で捉えられなかったのか一歩も動かなかった。

そしてその次の三球目もストライクが取り、アウトをもぎ取った。

 

《よし!いいぞ明久!そのままアウトをもぎ取るぞ!》

 

《わかった雄二!》

 

ボールを送ってきた雄二とアイコンタクトを交わして、4番バッターを見る。4番バッターは───

 

「勝負よ、明久君!!」

 

「受けて立つよ中林さん!!」

 

Eクラス代表の中林さんだ。

 

 

 

 Eクラス 中林 宏美 285点

 

 

 VS

 

 

 Fクラス 吉井 明久 508点

 

 

 

表示された僕と中林さんの召喚獣の点数は約二倍の差がある。が、僕は中林さんの点数に驚いていた。中林さんの点数は、Cクラス上位ほどの点数だったのだ。

 

「驚いた明久君?期末テスト勉強の時、久保くんに美子と一緒に教えてもらったのよ!」

 

中林さんの言葉に僕は納得する。

なるほど。確かに、Aクラスにして序列上位の久保くんなら教え方も上手いし、要点とかをわかりやすく解説できる。尚且つ久保くんは中林さんの彼氏だ。教えてもらう時間が多いのだろう。

 

「まだ貴方には遠く及ばないけど・・・・・・!この試合、私たちEクラスが勝つわ!そして、優勝賞品も貰うわ!」

 

「そうはいかない!勝つのは僕たちFクラスだ!」

 

僕と中林さんの間にバチバチと火花が飛び交い、召喚獣の背後に化身のようなものが現れたな熱気が出る。

ちなみに、この召喚野球大会、優勝したクラスには優勝賞品として図書カードや学食の食券などがある。

 

「(雄二からのサインは・・・・・・!)」

 

雄二とアイコンタクトを交わし、雄二の召喚獣はミットを移動する。

 

「(場所は・・・・・・右下!)」

 

僕は息を飲み、召喚獣に指示を送る。

 

「(行けっ・・・・・・!)」

 

投げられたボールは一直線に雄二のミットへと迫る。

 

「っ!」

 

 

『ストライクッ!』

 

 

投げられたボールは吸い込まれるように雄二の召喚獣のミットに収まった。一瞬動いたような気がしたが、中林さんの召喚獣は初球を目で追って見送った。どうやら様子を見たようだ。

雄二から返ってきたボールを受け取りながら再び構える。

 

「・・・・・・」

 

再び召喚獣に指示を出してボールを投げる───

 

 

 

カンッ

 

 

 

『ファール!』

 

 

中林さんの召喚獣は、今度はバットを振りボールに当たったが、当たったボールは三塁の方へと流れ飛んでいき、ラインから外れファールとなった。

 

「・・・・・・」

 

再びボールを持ち構えを取る。

相手を見据えて、三球目を投げる───

 

「見切ったわ!」

 

「なにっ!?」

 

 

 

キンッ

 

 

 

『ホームラーーン』

 

 

投げられたボールを完全に見切った中林さんの召喚獣は、眼をキランッ!と光らせて思い切りバットを振り、ボールを打った。

打たれたボールは僕のはるか頭上を飛び、青空の彼方へと飛んで行った。

これで0対3とさらにEクラスが有利になり、僕たちFクラスが不利になった。

 

「(さすが中林さん。まさか見切られるなんて!)」

 

今投げたボールは先二回投げた時より早くした。けど、それを予想していたかのように、中林さんの召喚獣はバットを振るい、ホームランをした。バトミントン部とはいえ、運動部所属は伊達じゃない。

 

「ふふ。この勝負、私たちEクラスが勝ちを貰うわ!さあ、みんな!Fクラスに私たちの・・・・・・。運動部活系クラスの底力を見せつけるわよ!!」

 

『『『Yes,my lord!!』』』

 

ホームベースへと戻ってきた自身の召喚獣を見て、中林さんは胸を張って言った。そしてそれに続く、三上さんを除くEクラスのクラスメイト。

5番打者と変わる中林さんを見ながら、雄二に視線を送りアイコンタクトを交わす。

 

《これ以上は相手の好きにさせるなよ明久。速攻で残り2アウトをもぎ取る》

 

《了解雄二!》

 

アイコンタクトを交わし、5番打者がバッターボックスに入り召喚獣が現れる。

僕は召喚獣に指示を出し───

 

 

 

『ストライクッ!』

 

 

 

 

『ストライクッ!』

 

 

 

 

『ストライクッ!バッターアウト!』

 

 

5番打者を速攻で3ストライクさせ、続く6番打者もストレートの3ストライクし、攻守を入れ替えた。

 

「よし、行くぞおまえら!この勝負、俺らが勝つぞ!」

 

『『『おーう!!』』』

 

雄二の激励に声を震わせて、僕らは攻撃に転じた。

Fクラス、1番最初の打者は───

 

 

「行くぞ!試獣召喚(サモン)っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───秀吉だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











次回 『激闘!発熱続く文月学園体育祭!』 Let GO to The Next Baka Live!


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