人理修復してたら幼馴染はスクールアイドルしてました。 (ギルキス・ファミリア)
しおりを挟む
人理修復してたら幼馴染はスクールアイドルしてました。
好きなものと好きなものを掛け合わせてみました。
個人的にはベストマッチです。
なるべく小ネタとか面白く書けてれば幸いです。
青い空と視線の先一杯に広がる青い海。
幼い頃はこの電車の窓から見える景色を見る度にはしゃいでいたような気もするが、今ではそういったことはない。
ただ、久し振りに見ると代わり映えしないこの景色も感慨深いものがあるような気もする。
俺の名前は藤丸立香。
七つの特異点を巡る旅の果てに、人理を救った人類最後のマスターである。
…そんな俺だが、何故電車に揺られているのかというと、絶賛里帰り中だからである。
◆
事の始まりはダ・ヴィンチちゃんの提案だった。
『マスターくん、そろそろ実家が恋しくは無いかい?』
人理修復中は夢中でそれどころじゃなかったし、その後の4つの特異点の時も毎回死ぬ気でやってたから休暇とか考えたことなかったな。
そう思ったが吉日。
とりあえず手軽に荷物を簡単に纏めて、カルデアを出た。
そこから先はダ・ヴィンチちゃんが手配してくれた乗り物に乗ってあれよあれよという間に気が着いたら電車の中に一人である。
ずっと座りっぱなしで身体中が痛いが、それももうすぐだ。
「次は〜沼津〜、沼津〜」
車掌さんのアナウンスと共に意識が覚醒する。
さて、久し振りに帰る我が家だ。
少し緊張するけど、特に問題はないだろう。
帰る前に電話したけど、元気そうだった。
ただ、こうして考えて見ると目先の心配事が出来た。
…そういえば、何も言わずに出て来てしまったからな…。
彼女達、怒ってないかなぁ…。
改札から出ると、昔から少し発展した様な駅周辺の景色が視界に広がる。
とりあえずバスに乗って、彼女の宿まで行こうかな。
そう思ってショルダーバッグを担ぎ直して、バス停留所まで向かおうとしたその時だった。
「あーーーー!」
何処からか聞き覚えのある声が聞こえて来た。
何事かと思って声の方を向くと、ショートカットの女子高生がこちらを指差していた。
後ろに何人か同じ制服を着た女子がいるが、彼女以外に見覚えのある顔もちらほら見えるが、自分の頭の中はこちらに走って向かって来ている彼女にどう話しかけようか考えていたが手遅れのようだ。
「りっくん!りっくんだー!」
そう言いながらこちらに突っ込んで来る彼女を受け止めつつ、彼女───高海千歌に声を掛ける。
「ただいま、千歌ちゃん」
そういうと、彼女は少し何か言いたそうな顔をしたが、すぐに微笑みかけてきた。
「おかえり、りっくん」
「先輩ー!」
「立夏ー!」
千歌の方を見てたから余所見をしている間に他の二人も近付いて来ていたらしく、自分の体に衝撃が走る。
ボブカットの女の子と、少し長めのポニーテールの女の子の二人だ。
少女特有の柔さかの一瞬後に衝撃が走った。
アームロックされて痛いのと、片腕にとてものしかかられている。
「お久し振りですー!突然いなくなったと思ったら突然帰って来るんですからー!」
「もう、今までどこで何やってたのー!心配したんだからー!」
一応言伝は頼んでおいた筈だけど、まぁでも自分の事を思ってくれているのだから特に口を出すことはないのだろう。
女子3人寄れば姦しい訳だが、とりあえず離れて欲しい。
女子の力と言えどあまり強く抱きつかれてると苦しいのだが。
それとそろそろ後ろに控えている彼女達の級友?に説明させて欲しい。
立ち話もなんだからと、駅前のファーストフードに移動して改めて自己紹介することになった。
自分が率先しようとしたのだが千歌が、
「彼の名前は藤丸立夏、通称りっくん。昔私ん家が近くて、一緒に曜ちゃんと果南ちゃんとよく遊んでたんだ〜」
と軽い感じで紹介してくれたお陰で特に第一印象は悪くないと思う。
自分から特に語ることは無くなったが。
千歌ちゃんと果南ちゃんと曜ちゃんの自己紹介は省略して、黒髪ロングの口元の泣き黒子が特徴的な子が率先して来た。
「私は浦の星女学院の生徒会長を務めております、黒澤ダイヤです。果南さん達の知り合いと言うことで信頼のおける殿方と言う事はわかっております。よろしくお願い致します」
カルデア含めてここまで真面目な子と話すのは久しぶりな気がする。
これから仲良くなれたらいいとは思う。
「んもう!ダイヤったら硬いんだから!私は浦の星女学院の理事長、小原鞠莉よ!気軽にマリーって呼んでね!」
「えーっと…マリーさん?」
「なぁに立夏?あ、わかった!私が理事長って信じてない顔ね!」
「ええまぁ。本当なんですか?」
「本当ですわ、鞠莉さんは学生と理事長の両方を兼任していらっしゃるんですの」
「ヘぇ〜、凄いんですね」
ダイヤさんが頷いて真実であることを理解した。
自分と同い年くらいの年で大した人だと思う。
聞けば何でもアメリカに仕事で行っている父親の代わりに学院の経営を手伝ってるらしい。
しかし…名前と経歴といい、どことなくオルガマリー所長を思い出すな。
…っといけない、湿っぽくなってしまう。
切り替えていこう。
「ほらルビィ、貴女の番ですわよ」
「う、うゆ…」
次に紹介されたのはダイヤさんの後ろに隣に座っている、ツインテールの女の子だ。
こちらの視線に対してビクビクしており、それがまるで小動物のようで可愛いなと思って見てたら「ピィギャ!?」と言ってますます隠れてしまった。
これはどういうことなのかと思ってたら、隣にいたダイヤさんが彼女の頭を撫でながら教えてくれた。
「ごめんなさいね、この子男性恐怖症であまり男の人に慣れていないのですわ」
「はぁ…」
「この娘は黒澤ルビィ。私の自慢の妹ですわ」
成る程、姉妹なのか。
道理で距離感が近い気がした。
あまり似てない様に見えるが、目元とか少し似てなくもない気がする。
「で、そのルビィちゃんの友達の国木田花丸ずら」
「うん、よろしくね花丸ちゃん」
「…えっと、藤丸さんは私の口癖とか気にならないんですか?」
「?可愛いと思うよ?」
「可愛っ!?」
「?俺はいいと思うけどなぁ」
カルデアには口癖とか気にならないくらいキャラが濃い人達居たし。
するとジト目の曜ちゃんがでこちらに声をかけてきた。
「先輩、花丸ちゃんを口説かないで下さい」
「えっ」
そんな口説いてないんでるつもりは無いんだけどなぁ…。
カルデアに居て人との距離感間違えたかなぁ…。
その横にいた子サイドのお団子が特徴的なが「クックックッ…」と笑い声を上げてた。
「我が名は堕天使ヨハネ。貴方もヨハネのリトルデーモンに…なってみない?」
「よろしくね〜、ヨハネちゃん」
「善子言…え?」
「?どうしたのヨハネちゃん?」
「え、えっとその…引いたりしないんですか?」
「あぁ、似たような人知ってるからね」
もっとも自分の場合、「クハハハハ!」とか「フハハハハ!」とかすごい声を上げる人達で歴とした過去の偉人なのだが。
それに比べると彼女の方が可愛げもあるというものだ。
「初対面で喜子ちゃんに引かない人初めて見たずら…」
「まぁりっくん昔から人見知りとかしないからねー、誰とでも仲良くなれるんだよー」
「そうかな?」
「そうだよ!」
最後に自己紹介したのは、髪留めが特徴的なロングヘアーの娘だった。
「桜内梨子です。私はまだ転校して来たばかりだけど、よろしくね?」
「あまり見ない感じの子だと思ってたけど、転校生だったのか」
「あのねりっくん!梨子ちゃんピアノがとても上手なんだよ!」
「それは凄いなぁ」
自分はアマデウスの演奏を聴いた事が、兎に角すごいことしかわからなかった。ピアノに関しては素人だからしょうがないけども。
彼女達は現在スクールアイドルたるものをやっているらしく、それの練習帰りだったらしい。
アイドルというと某トカゲ娘とか赤い薔薇の皇帝が思い浮かぶが、普通のアイドルとは違うらしい。
なんでも衣装とか曲とか全て自作らしい。
凄いなぁ、自分達で全部やってるのか。
そうこうして自己紹介が終わり、暫くそれぞれの娘と話していたが、千歌ちゃんが本題に入り込んできた。
「そういえばりっくんこっちに帰って来たのは良いけどさ、りっくん家引っ越してるじゃん、今日どうするの?ウチに泊まるの?」
言い忘れていたが数年前に自宅は引っ越して今県外にあるらしい。
先日両親に電話して確認した。
一年余り連絡しなかったとはいえ、息子に引っ越した事すら言わないとはどういう事なのか。
「あぁ、予約済みだし今日はそっちでお世話になるよ」
宿自体ダヴィンチちゃんに取って貰うよう言ったし、問題はないだろう。
とりあえず移動しながらという事になり、少し大所帯だが千歌の家に向かう。
だが俺は気づかなかった。
「んー…おかしいな。今日お一人様の予約なかったと思うんだけど…」
千歌の何気ない一言の本当の意味に。
◆◆◆
途中で何やら慌てた様子でマリーさんが突然帰らなければならないというアクシデントがあったりもしたが、千歌の家である安田屋旅館には無事着いた。
序でに心配だからと言って、果南ちゃんもマリーさんについて行った。
その間7人+αでの会話は実に楽しかった。
着いた事は付いたのだが、外の駐車場に見覚えのあるバイクが停まっていた。
キィリッシュ・オルタ。
これは確かアルトリア・オルタの愛機である筈だ。
新宿では何度か乗せてもらったこともあるし間違えるはずもない。
なんでこんな所に…と考える間もなく答え合わせは出来た。
何故なら。
本人が宿の玄関から出て来たのである。
皆は突然宿から出て来た不思議な外国人の美人さんにしか見えないだろうが、彼女は此方を見てニヤリと笑うと近付いてきた。
皆が何事かと身構える中そんな視線を無視して彼女は此方に声をかけてきた。
「ほぅ、沢山の女を侍らせて歩くとは相変わらずいい趣味をしてるな、私のマスターは」
みんなは謎の外人が突然話しかけて来たことに?マークだが俺としては当然慌てる。
困った、カルデアの誰かとエンカウントするなんて全く考えてなかった。
どうしようかなと考えていると千歌が率先して話し掛けに行った。
流石旅館の娘、話しかけにいくのは慣れてるな。
「あの、ウチのお客さんですよね?」
「あぁ、そこの腑抜けてる男と二人で予約した者だ。来るのが遅いから様子見を見にきたんだが──」
「──ちょっと待ちなさいよ!誰が二人よ、三人よ三人!勝手に私を抜くな、このゾンビ女!」
突然、宿のから聞き覚えのある声がしたかと思ったら、これまた見覚えのある人物が来た。
ジャンヌ・ダルク・オルタ。
何時ぞや新宿で見た現代風の衣装を着た彼女が、此方に向かって来た。
皆も急展開に驚いてるんかもしれないけど、俺も驚いてるから。
そのまま此方に真っ直ぐ突っ込んで来てアルトリアと揉め始めた。
会えば喧嘩ばかりするこの二人が、何故一緒にいるか甚だ疑問なんだけれどもこの場では余り暴れてほしくはない。
「まぁまぁ落ち着いて、オルタちゃん」
「「どっちのことだ(よ)!!」」
相変わらず息はぴったりである。
なんか怒った顔もそっくりだし。
しかしこのままだと収集が付かなくなってしまう。
この場で聖剣とか炎をぶっ放されても困る。
誰か救いの手がないものかと思ってると、また宿から誰か出てきた。
片方は金髪におかっぱ、サングラスと身体のあちらこちらに目を引くような金のアクセサリーを着けた男と、胸にある赤と青の髑髏のマークのデザインのTシャツを着た二人だった。
「金時、黒髭!助けて!」
こっちの騒ぎに気付いて出て来たのもあってなのか「ああ、やっぱり揉めてるな」みたいな顔をして金時と黒髭は近付いてきた。
でもその一方で黒髭は俺の周りの女子を遠目から見ている。
ある意味すごいな。
しかし黒髭、多分ルビィちゃん辺りに視線を注いでるんだろうが彼女は男性恐怖症だ。
そこまでにしとけ黒髭。
「おう大将、休暇だってのに悪いな!この二人が着いていくって言って聞かなくてよ!俺と黒髭二人が見張り役ってワケじゃん?」
「マスターは相変わらずモテますなぁ!かー羨ましい!拙者にもそのポジション譲って欲しいでござる!あ、修羅場だけは勘弁ですぞ?」
久々、というほどでもないほどの再会に少し安心してる反面、驚いてる。
なんでここにいるのか。
千歌ちゃん含め、他の子達もこの面子の濃さに面食らっている。
正直俺ですら時々付いていけない時もあるから気持ちはわかる。
もう今ではだいぶ慣れたけど。
「えーっと…りっくんの知り合い?」
「まぁ、そうなるかな…」
「とりあえずウチに入らない?」
「そうだね…」
…なんて言い訳(?)をしたものか。
この後のことを脳内で思いながら、俺はこの場を収めるべくオルタ二人組の仲裁に入った。
───こうして、俺の波瀾万丈な夏休みは幕を開けたのである。
目次 感想へのリンク しおりを挟む