Vanguard tale (片倉政実)
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オリジナルカードの詳細

どうも、片倉政実です。ここでは今作品に登場するオリジナルカードの紹介をしていきます。
それでは、どうぞ。


【アンダーテール】

 

ヒューマンズソウル・決意(ディタミネーション)

ノーマルユニット グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド10000 ☆1

 

【自】ライドされた時、カードを1枚ドローし、このユニットを手札に戻す。

 

【永】このユニットはノーマルコール出来ない。

 

【自】【(R)】登場時、山札から『ヒューマンズソウル』とつくカードを1枚まで探し、それをソウルに置く。ソウルに置いたら、手札からあなたのヴァンガードのグレード以下のユニットを1枚まで(R)にコールする。

 

二つに分かれたソウルが一つになり、新たな力となる。

 

ヒューマンズソウル・勇気(ブレイブリー)

トリガーユニット(クリティカルトリガー) グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド15000 ☆1

 

勇気ある者の拳は、数多の敵をも砕き抜く。

 

ヒューマンズソウル・正義(ジャスティス)

トリガーユニット(クリティカル) グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド15000 ☆1

 

正義の弾丸は、あらゆる悪を打ち砕く。

 

ヒューマンズソウル・忍耐(ペイシェンス)

トリガーユニット(ヒールトリガー) グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド20000 ☆1

 

忍耐強さはいつか勝利への一歩となる。

 

ヒューマンズソウル・親切(カインドネス)

トリガーユニット(ヒールトリガー) グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド20000 ☆1

 

親切な心は仲間達の力となる。

 

ヒューマンズソウル・誠実(インテグリティー)

トリガーユニット(ドロートリガー) グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド5000 ☆1

 

誠実な者による舞は、他者を魅了してやまない。

 

ヒューマンズソウル・不屈(パーサヴィアランス)

トリガーユニット グレード0 ブースト

アンダーテール――ソウル パワー5000/シールド0 ☆1

 

【永】:守護者(守護者を持つカードは合計でデッキに4枚まで入れられる)

 

【自】【(G)】:登場時[コスト 手札を1枚捨てる]事でそのバトル中、あなたのユニット1枚はヒットされない。

 

知識と不屈の心は、いつかその身を助ける。

 

プルプル生物 チビカビ

ノーマルユニット グレード1 ブースト

アンダーテール――モンスター パワー8000/シールド10000 ☆1

 

今日も彼らはライムゼリーの香りを漂わせながら生き続ける。

 

謎多きカエル フロギー

ノーマルユニット グレード1 ブースト

アンダーテール――モンスター パワー8000/シールド10000 ☆1

 

【自】【(R)】:このユニットが後列の(R)にいる時、同じ縦列にいる相手のユニットにアタックする事が出来る。

 

ケロケロケロ(もう井の中のフロギーとは言わせないケロ)

 

啜り泣く臆病な昆虫 ナキムシ

ノーマルユニット グレード1

アンダーテール――モンスター パワー5000/シールド10000/☆1

 

【自】 【(R)】:あなたのエンドフェイズ中、このユニットが(R)にいる時、あなたの[アンダーテール]のヴァンガードがいるなら、このユニットをデッキの一番下に戻してよい。戻したら、デッキの一番上を一枚だけめくり、それがグレード1以下の[アンダーテール]のユニットだった時、ユニットのいない(R)にコールし、そうでなかった時、そのカードをデッキの一番下に戻し、デッキをシャッフルする。

 

成長した彼らは、ただ泣くだけでは無くなった。

 

悪そうな昆虫 ミ=ゴス

ノーマルユニット グレード1 ブースト

アンダーテール――モンスター パワー8000/シールド10000 ☆1

 

【自】【(R)】あなたの他のリアガードがいるなら、あなたのターン中、このユニットのパワーは+5000される。

 

【自】【(R)】あなたの他のリアガードがいないなら、エンドフェイズ時にこのユニットを山札の一番下に置き、デッキからカードを1枚ドローする。

 

悪そうに見えるのは、実は仲間のせい。

 

美味しい野菜 ベジトイド

ノーマルユニット グレード1 ブースト

アンダーテール――モンスター パワー8000/シールド10000 ☆1

 

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたアタックがヒットした時、[コスト このユニットをソウルにおく]ことで、あなたのレスト状態のリアガードを1枚選択し、パワーを+5000し、それをスタンド状態にする。

 

腹をポンと叩けば、彼らが美味な野菜を振る舞ってくれるだろう。

 

二面性を持つ大目玉 ルークス

ノーマルユニット グレード1 ブースト

アンダーテール――モンスター パワー8000/シールド10000 ☆1

 

【自】【(R)】:このユニットがアタックするかこのユニットがブーストしたユニットがアタックした時、このユニットのパワーは+5000される。

 

【自】【(R)】このユニットがアタックされた時、このユニットのパワーは-5000される。

 

心を入れ替えた彼らは、けして他者をからかう事は無いだろう。

 

心優しきゴースト ナプスタブルーク

ノーマルユニット グレード2 インターセプト

アンダーテール――モンスター パワー10000/シールド5000 ☆1

 

【永】【(R)】:このユニットへのアタックはヒットしない

 

【自】【(R)】:このユニットがインターセプトをした時、[コスト SB1 CB1 このユニットを山札にもどす]ことで、そのバトル中、そのアタックはヒットされない。

 

なんだかやる気が出ないけど……やってみるね。

 

不思議な金色の花 フラウィー

ノーマルユニット グレード1 ブースト

アンダーテール――モンスター パワー8000/シールド10000 ☆1

 

【自】【(V)/(R)】:登場時、あなたの山札から『ヒューマンズソウル』とつくカードを1枚まで探し、ソウルに置いてよい。ソウルに置いたら、デッキからカードを1枚ドローする。

 

【自】【(V)/(R)】:このユニットのアタックかブーストしたアタックがヒットした時、山札から『暗躍する金色の花 フラウィー』を1枚まで探し、手札に加えてよい。加えたら、SC①する。

 

Howdy(こんにちは)! 僕はお花のフラウィーさ。

 

暗躍する金色の花 フラウィー

ノーマルユニット グレード2 インターセプト

アンダーテール――モンスター パワー10000/シールド5000 ☆1

 

【自】【(V)/(R)】:登場時、あなたの山札から『ヒューマンズソウル』とつくカードを1枚まで探し、ソウルに置いてよい。置いたら、そのターン中、このユニットのパワーは+5000される。

 

【起】【(V)/(R)】:1ターンに1回[あなたの他のユニットをソウルに置く]事で、あなたの山札から『転生せし金色の花 フラウィー』を探し、手札に加える。そのターン中、このユニットのパワーは+5000される。

 

自身の目的のため、金色の花は地下世界のあちらこちらに出没する。

 

転生せし金色の花 フラウィー フォース

ノーマルユニット グレード3 ツインドライブ!!

アンダーテール――モンスター パワー11000/シールド無し ☆1

 

【自】【(V)】: 登場時、SC②し、それがトリガーユニットなら、そのターン中、その数だけこのユニットのパワーは+1000される。

 

【自】【(V)】:あなたのソウルにトリガーユニットがある時、そのターン中、その数だけこのユニットのパワーは+1000される。

 

【起】【(V)】:あなたのソウルに『ヒューマンズソウル』とつくユニットが6種類いるなら、山札から『全てを凌駕する神 フォトショップフラウィー』か『地下世界の王子 アズリエル』を1枚探し出し、公開して手札に加えて良い。手札に加えた時、相手のダメージゾーンが4枚以下なら、相手のヴァンガードに1ダメージを与える。

 

他者のソウルを身に宿し、金色の花は新たな力を得る。

 

遺跡の守護者 トリエル フォース

ノーマルユニット グレード3 ツインドライブ!!

アンダーテール――モンスター パワー13000/シールド無し ☆1

 

【永】あなたのターン中、あなたのリアガードのパワーは+5000される。

 

【自】【(V)】:相手のヴァンガードにアタックした時、このユニットのパワーは-5000される。

 

【自】【(V)】:このユニットのアタックがヒットしなかった時、[コスト CB2]を支払うことで、あなたのレスト状態になっているリアガードは全てスタンド状態になり、そのターン中、パワーが+5000される。

 

心優しきモンスター達の女王が、今立ち上がる。




以上が今作品に登場するオリジナルカードです。作中で新たなカードが登場した際には更新していくつもりなので、お楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また本編で。


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序章 Side:惑星クレイ
Determination of a human


どうも、初めましての方は初めまして、他作品を読んで下さっている方はいつもありがとうございます。作者の片倉政実です。今回は、ちょっとしたチャレンジとして今作品を投稿させて頂きます。尚、タグにもありますが、作者はUndertale未プレイ勢なので、執筆の際に調べたりプレイ動画を見たりはしましたが、オリジナル設定以外でところどころおかしいと感じる点があるかと思います。なので、その時は感想などに書いて頂けるととてもありがたいです。
それでは、そろそろ始めていきます。


 とある世界に存在する星、地球。この星に住む種族──『ニンゲン』と『モンスター』は、遙かな昔に対等な関係として暮らしていたが、種族間で起きてしまった戦争によって長期に渡って戦いを繰り広げた。そして、その戦争はニンゲンの勝利で幕を下ろし、勝利をしたニンゲン達が地上を支配する一方で、敗北したモンスター達は地底へ追いやられる事となり、ニンゲンが地上と地底を繋ぐ唯一の入口であるイビト山のゲートを魔法のバリアで封印したため、モンスター達は地底に閉じ込められた。それから長い時が経った201X年、ある出来事がきっかけでモンスター達の王である『アズゴア・ドリーマー』は、ニンゲン達に戦争を仕掛けようとしていた。しかし、地下世界に落ちてきたニンゲンの働きでそれは無くなった上、ゲートを封印していた魔法のバリアを壊した事でモンスター達は地上へと戻り、地上では再びニンゲンとモンスターの二種族が、至る所で交友を深めていた。

 そんなある日の事、ある場所──イビト山の(ふもと)には()()()()()()()とモンスターの一種であるスケルトンの姿があった。一人のニンゲンはイビト山を見上げながら体をグーッと上に伸ばすと、とても安心した表情で独り言ちた。

「うーん……やっぱりここに戻ってくると何だか家にいるときと同じくらい落ち着く感じがするなぁ……」

「落ち着く感じ……まあ、その気持ちは分かるかな。あの頃、私はここに住んでいた時期があるし、ニンゲン達の事を憎んでいたわけだから、ここが私にとっての故郷みたいな物だからね」

「ふふ、そういえばそうだったね。でも、今のニンゲン達はそんなに悪いとは思わないでしょ? キャラ」

「……まあ、それはそうかもね」

 青地に紫色のボーダーの服に青いズボンといった服装の細目のニンゲン──フリスクが隣に立つ緑地に明るいベージュ色のボーダーの服を着たニンゲン──キャラと話す中、赤いマントをつけたスケルトン──パピルスはイビト山を見上げながら不思議そうに小首を傾げた。

「しかし……オレさま達に一体何の用なんだろうな? 地上で少し遊んでいたら、いきなり博士から研究所に来て欲しいと電話で言われ、ちょうど近くにいたお前達とこうして一緒に来たは良いが、博士達は理由すら話してくれなかったぞ」

「それはまだ分からないけど……博士達には色々お世話になってるから、何か手伝える事があるならしっかりと手伝わないといけないね」

「ニェッヘッヘッへ、そうだな。よーし……見てろよ、フリスク、キャラ。このパピルス様の力で、どんな問題でもすぐに解決してやるからな!」

「……一匹の犬のせいで必殺技が使えなくなる事が多い君にどれ程のことが出来るかは予想がつかないけど、とりあえず期待だけはしておいてあげるよ。さて……そろそろ行こうか、フリスク、パピルス」

「うん」

「おう!」

 キャラの言葉にフリスクとパピルスはそれぞれ返事をすると、三人は自分達に集まって欲しいと言ってきた博士の研究所へ行くため、地上と地下世界を繋ぐゲートを潜り、地下世界へと入っていった。玉座の間などがあるコアの中を通り、エレベーターを乗り継ぎながらアルフィー博士の研究所へ行く途中、フリスク達は同じように地上へと出ていったモンスター達と出会い、軽く立ち話をした。すると、モンスター達は口を揃えて『自分達はアルフィー博士やメタトンから一度地下世界に来ていて欲しいと言われたから』と語った。

「……つまり、博士達に呼び出されたのは、ボク達だけじゃなかったって事だね」

「そうだね……呼び出されたのが私達だけならまだ分からなくはないけど、モンスターキッド達まで呼ばれたとなると、博士達の目的はまったく予想がつかないね」

「むむむ……お前達でも分からないとなると、このパピルス様にもサッパリだな。博士達は、あの日から大切な友達になったが、友達の頼みだと思って安請け合いしてしまったのを今更になって後悔し始めてしまったぞ……」

「後悔しなくても大丈夫……だと思うけど、少しだけ不安はあるよね」

「まあ、そうだね。ただ……私達が呼ばれていてモンスター達もいるという事は、アズゴア王──父さんやフラウィーもこの地下世界に呼ばれているんだろうね」

「後はトリエルさんやサンズ、それにアンダインさんも呼ばれている可能性は高そうだね」

「む……となると、地下世界に呼ばれているのは、おれサマ達モンスターとフリスク達地下世界に関わるニンゲンだけという事になるのか?」

「恐らくね……まあ、結局の所まだ事情が分からないわけだから、早く博士の研究所に行った方が──」

 その時、フリスク達の背後に何者かが現れると、フリスク達はその気配を感じて振り返ろうとしたが、「止まれ、お前達」という彼らにとって聞き馴染みのある声を聞いてその動きを止めた。すると、背後に立った何者かは、少し安心した様子でふうと息をつくと、低い声でフリスクに話し掛けた。

「おい、ニンゲン。ここでの挨拶の仕方を教えてやる。お前だけ振り返って俺と握手をしろ」

「……分かったよ」

 フリスクはクスリと笑ってから静かに振り返ると、そこにいたモノ──白のタンクトップの上に青色のパーカーを羽織り短パンを履いたずんぐりとした体型のスケルトンが差しだした手を取った。その瞬間、辺りに何かが抜けるような音が鳴り響くと、フリスクとスケルトンは一度顔を見合わせてから同時に笑い始めた。

「ふふ……あははっ! やっぱりブーブークッションを仕込んでたんだね」

「くくっ、もちろんだとも。ちょっと古い手だが、まだまだ面白いもんだ。それに……これはお前さん──フリスクと初めて会った時にやった手と同じだからな」

「ふふっ、そうだね。あの時は、まだこの地下世界に来たばかりで、トリエルさんとも別れたばかりだったから、サンズがこうやってくれたのはかなり助かっていたよ」

「へへ、なら良かったぜ。それと……お前達、もう振り向いても良いぜ」

 まだ振り向いていなかったキャラ達にサンズが声を掛けると、二人はゆっくりと振り返り、少し呆れた様子でサンズに話し掛けた。

「サンズ……そのブーブークッションを仕込んだ握手が、君達の出会いに関わる大切な思い出の一つなのは分かっているけれど、果たして今それをやる必要はあったのかな?」

「そうだぞ、兄ちゃん! その間、オレさま達はしっかりと待ってやってたんだからな!」

「ああ、悪い悪い。だがな、たまにはこうした楽しみだって必要なんだぜ? オイラみたいに毎日()()()()()()()()()()()働いてる奴にはな。スケルトンだけに!?」

 その瞬間、どこからかともなくツクテーンという音が聞こえたかと思うと、フリスクは再び楽しそうに笑い始めたが、キャラはやれやれといった様子で首を横に振り、パピルスは拳を固く握りながら「サンズ!」と少し怒りが籠もった大声を上げた。しかし、サンズはそれに対して驚く様子やムッとする様子も無く、むしろその反応を楽しむようにニッと笑った。

「そんな元気があるなら、ここから博士の研究所までは、平気で歩いて行けるな」

「それは当然だ! このオレさまともあろうスケルトンが、その程度の距離を歩けないわけが無いだろう!」

「へへ、そうだな。んじゃあ……そろそろ行こうぜ、お前さん達。アズゴア王達は、もう研究所に着いてるからな」

「アズゴア王達は、って事は……」

「ああ、そうだ。他のモンスター達は、この地下世界でぶらぶらしてもらってるが、あの日フリスクと戦ったり絆を深めたりした連中は、全員研究所に集まってるぜ? だから、後はお前さん達だけってわけだ」

「なるほど……」

「それで、私達だけを集めて何を話そうとしているのかな? 私とフリスクのように地下世界に関係するニンゲンと強い力を持つモンスター達を集めてまでしたい話というのは、一体どんな内容なのかな?」

「……ついてくれば分かるさ。ただ一つだけ言うなら、今は他の連中に話せるような内容じゃねぇって事だ」

「……分かった」

「物わかりの良い奴は嫌いじゃねえ。それじゃあ行こうぜ、お前さん達」

「「うん」」

「おう!」

 サンズの先導で再び歩き出した後、アルフィー博士の研究所に着くまでフリスク達はサンズも交えて他愛ない話を始めた。楽しそうに話をするフリスク達に対してサンズは微笑みを浮かべながら頷いたり、相槌を打ったりしていたが、どこか深刻そうな雰囲気を漂わせていた。キャラはそのサンズの雰囲気に気付いてはいたが、それを口に出す事はせず、そのままフリスク達と同じようにサンズの後をついていった。そして、それから数分が経った頃、フリスク達は目的地であるアルフィー博士の研究所に着いた。

「ふぅ……ようやく着いたね」

「そうだね。ところで……凄い今更な事を言うけど、集合場所がここでアンダインは大丈夫なのかな? 種族的にアンダインは、このホットランドが苦手だと思うけど……」

「……ああ、それなら──」

「その点については問題ないよ、キャラ。アルフィー博士の研究所内は、空調がしっかりとしているからね。だから、彼女も問題なく元気にしているよ」

 突然聞こえてきたその声にフリスク達が辺りを見回す中、キャラだけは少し安心した様子でふうと息をつくと、声の主に声を掛けた。

「フラウィー、隠れてないで出てきたら? 別に隠れている理由は無いんだから」

「……そうだね」

 すると、キャラの横に笑顔を浮かべた一輪の金色の花──フラウィーが顔を出し、それを見たフリスクはゆっくりとしゃがみ込んでフラウィーに話し掛けた。

「やっぱり君も呼ばれてたんだね、フラウィー」

「まあね。ああ、それと……父さ──アズゴア王達は、一足先に説明を受けているよ。それで、ボクはサンズのように君達を迎えに来たってわけさ」

「そう。ところで、いつまでフラウィーのままでいるのかな? せっかく、博士達の実験のおかげでその姿から変われるようになったんだから、その姿のままでいるよりアズリエルの姿でいた方が動きやすいんじゃない?」

「……まあ、そうしても良いけど、今のボクがあの姿になるにはかなりの力が必要だからね。だから、地中に潜って色々なところに行ける上、体力の消費も少ないこっちの姿の方が、今はちょうど良いんだよ」

「……そっか」

 フラウィーの答えを聞いてキャラは納得した様子で微笑みながら頷いたが、その表情はどこか寂しそうな雰囲気を漂わせていた。すると、「……しょうがないな」と目を閉じながらフラウィーが言った直後、フラウィーは光に包まれ、光の中のフラウィーの姿は徐々に変化していった。そして、光が止む頃にはフラウィーの姿は、金色の花からキャラと同じような服装の羊のような姿のモンスターへと変わり、それを見たキャラはその行動に一瞬驚いたもののすぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。

「ありがとう、アズリエル」

「どういたしまして。まあ、よくよく考えてみたらこっちの姿でいた方が、研究所内は歩きやすいし、最近フラウィーの姿でいる事が多かったから、たまにはこっちの姿にもなっておいた方が良いからね」

「うん、そうかもしれないね。さて……と、それじゃあ行こうか、皆。これ以上、他の皆を待たせてもいけないからね」

「「うん」」

「おう!」

「おう」

 キャラの言葉にそれぞれ返事をした後、フリスク達は研究所の自動ドアを潜って研究所内へと入っていった。研究所内には、エスカレーターやモニターといった様々な機械やそれらに関すると思われる書類や設計図が置かれている机、そしてニンゲン達に人気のアニメに関するグッズなどがあり、それらを眺めながらフリスクはポツリと感想を漏らした。

「ここに来る度にいつも思うんだけど、アルフィー博士って本当に凄いよね」

「まあ、博士と言われるだけあってその頭の良さや発想力なんかは素晴らしいからね」

「後はあの恥ずかしがり屋な性格だけどうにかなれば良いんだが……まあ、こればかりは個性と捉えてやるしか無いかもしれねえな」

「そうだね。それにしても……博士達は、一体どこにいるのかな?」

「む、それもそうだな……研究所内のどこかにはいるのだろうが、それがどこか分からないと話を聞く事が出来ないぞ……」

 パピルスが困り顔で言ったその時、突如ピンポーンという音が研究所内に鳴り響き、それと同時に前方にあったガラスの扉が開くと、フリスク達の知り合いである様々なモノ達が次々と姿を現した。そして、それを見たフリスクがニコリと笑いながら近付いていくと、その中にいた青色の魚人型のモンスターがフリスクの姿に気付き、とても嬉しそうな笑みを浮かべた。

「フリスク、久し振りだな!」

「うん、久し振りだね、アンダインさん。久し振りと言っても、大体一ヶ月くらいなんだけどね」

「ん……そうだったか? まあ、そんな事はどうでも良いか!」

 アンダインのその言葉に、フリスクが苦笑を浮かべる中、それを見ていたキャラとアズリエルの元にアズリエルと同じ羊のような姿をしたモンスター達が近付いた。

「キャラ、お疲れ様。ここまで歩いてきて疲れただろう?」

「ううん、大丈夫だよ、父さん。フリスク達が一緒だったし、アズリエルも迎えに来てくれたから、このくらいはへっちゃらだよ」

「ふふっ、それなら良かったわ。アズリエル、キャラのお出迎えをしてくれてありがとうね」

「……うん、どういたしまして」

 アズゴア王とキャラが笑い合い、トリエルの言葉にアズリエルが気恥ずかしそうに返事をしていると、魂を持った男性ロボット──メタトンを連れた眼鏡を掛けた白衣姿の恐竜のようなモンスターが、安心したような笑みを浮かべながらフリスク達に近づき、深々とお辞儀をした。

「……み、 皆さん……わざわざ研究所まで来て頂いてありがとうございます……」

「いえ、アルフィーさんには色々とお世話になってますから、このくらい当然ですよ」

「そうですよ、フリスクが色々助けてもらったり、私とアズリエルがこうして皆と一緒にいられるのもアルフィーさん達のおかげですから」

「そ、そう言ってもらえるのは……とても、嬉しい……です」

 フリスクとキャラの言葉を聞き、アルフィーは嬉しさと恥ずかしさが入り交じったような笑みを浮かべていると、その隣に立っていた黒スーツ姿のスケルトン似の男性がニコリと笑いながらキャラ達に話し掛けた。

「やあ、キャラ、アズリエル。体の調子はどうかな?」

「はい、バッチリですよ、ガスター博士」

「僕の方も異常はありません。ただ……相変わらず、こっちの姿になる時はかなり疲れますけどね」

「はは、そうかそうか。まあ、何かあった時には遠慮無く言ってくれたまえ。今こそ異常は無いかもしれないが、アズリエル君が変化の際に疲労を感じているように二人の体や『ソウル』はまだ安定しないところが多いからね。その上、前の人格へと戻ってしまう恐れもあるから、何かおかしいと思った事があったら、その時はしっかりと話してくれ」

「「はい」」

 キャラとアズリエルが、声を揃えて返事をすると、ガスター博士は満足そうに頷いた。本来、キャラとアズリエルの両名は故人であり、彼らが元々持っていたソウル──ニンゲンやモンスターが持つタマシイのような物は既に失われている。しかし、アルフィーが過去に行っていた()()()()やメタトンを開発した際の技術にガスター博士の頭脳、そしてかつてフラウィーが行ったある行動によってフラウィーの中に奇跡的に残っていたあるニンゲン達とモンスター達のソウルの残滓(ざんし)を組み合わせる事で、ガスター博士達は擬似的にキャラとアズリエルのソウルを創り出した。その後、フラウィーの体と人工ソウルを融合させ、研究所の地下深くに冷凍保存をされていたキャラの遺体を元に創り出した新たな体には、それに加えてフラウィーから抽出したケツイを注入した。そして、それによってキャラは再びこの世に生を受け、フラウィーは生まれ変わる前の姿──アズリエルの姿に変化する力を得る事となったのだった。

 そして、そんなガスター博士の様子をサンズは静かに見ていたが、やがてやれやれといった様子で小さく溜息をついた。

「ガスター、コイツらの事が気になるのは分かるが、例の話は良いのか?」

「……おっと、そうだったね。いやはや、長いこと意識体として過ごしていたせいか、誰かに話をするよりも何かの経過観察の方に意識が向いてしまうようだ。これからは気をつけるようにするよ」

「はいはい……まあ、確かにオイラとフリスクの力や皆のアイデアでどうにか見つけ出すまで本当の意味で一人だったからな」

「ああ。だから、こうしてまた実体を持った状態で皆と会話を交わしながら様々な研究をさせてもらえるのは、本当に嬉しいよ。私の後任となったアルフィーや発明品であるメタトンにも色々と手伝ってもらっているしね」

「は、はい……もっとも、過去の過ちを償うためにその役職は辞めているので、今はガスター博士の助手としてメタトンと一緒にお手伝いさせてもらっているだけですけど……」

「はは、確かにそうだが……君の頭脳や発想力には、いつも助けられているから私にとって君はとても心強い助っ人だよ。もちろん、メタトンやアンダインもね」

「フフ……そう言ってもらえるのは、とても光栄だよ。」

「まあ……私はいつも力仕事くらいしか手伝えてないが、それでも助けになってるって言うならこれからも助けてやるよ」

「ああ、頼りにしているよ。さて……それでは、そろそろ本題に入るとしよう」

 そのガスター博士の言葉と同時に、消えていたモニターのスイッチが一斉につき、地下世界の様々な場所に仕掛けられたカメラの映像が映し出された。

「これは……アルフィーさんが過去に仕掛けていた隠しカメラの映像ですよね?」

「その通りだ。元々は、アルフィーがフリスク君の地下世界での様々な行動を見るために仕掛けていた隠しカメラだが、今はこうして地下世界に何かの変化や異常が無いかを見るために使わせてもらっているんだよ。そして……今回、実際にその異常という物が起きてしまっているんだ」

「異常って……おれサマには特に何も無さそうに見えるが……?」

 映像を見ながらパピルスが不思議そうな様子で首を傾げていると、ガスター博士は険しい表情で首を横に振った。

「今は確かにそうだが……最近、地下世界のあらゆる場所で()()()()が発見され、その存在が私達にとって大きな被害をもたらす可能性が出てきたんだ」

「とある物……?」

「ああ。私達が発見した物、それは()()()()()という物だ」

「次元の歪み……?」

「その通りだ。普段、私達はこの世界で何気なく生活を行っている。しかし、私達の世界のすぐ傍では、この私達とは違った別の私達が生活をしている。これを一般的には、平行世界──パラレルワールドと呼んでおり、このパラレルワールドの例を挙げるなら、性格が真逆の私達が住む世界やこの中にいる誰かがいない世界などだな」

「なるほど……それで、その次元の歪みがどんな被害をもたらすんですか?」

「次元の歪みは、発生した世界に様々な影響を及ぼす。本来、その世界に無かった物を別の世界から呼び寄せたり、その逆で別の世界に飛ばしたりする。最悪の場合、歪みは別の世界同士を合わせてしまう事もあるんだよ」

「別の世界同士を合わせてしまう……そうなると、どうなるんですか?」

「簡単に言えば、また別の世界が生まれる事になる。ただし、私達の記憶がその新しい世界用に書き換えられてしまう事になり、今の私達の関係性も崩れる事にもなりえる」

「そんな……」

「私はそれを何とか阻止したいと考えているが、次元の歪みを何とかする手段はまだ分からない。しかし、次元の歪みが観測されているのはこの地下世界だけだった事から、とりあえずモンスター達をこの地下世界に呼び戻し、フリスク君とキャラ君のようにモンスター達と交流が深いニンゲン達にも来てもらったんだ。次元の歪みがまだここにしか発生していないという事は、何か起きるとしたらまずはここだからね」

「それじゃあモンスター達を呼び戻したのって……」

「ああ、モンスター達を向こうに残した状態で、この地下世界に大きな異変が起きてしまったら、最悪彼らの帰る場所も無くなってしまうからね。彼らや君達には悪いんだが、次元の歪みがどうにかなるまでは、以前のようにこの地下世界で暮らしてもら──」

 その時、突然地面が大きく揺れ出し、その震動で研究所内に危険を報せるブザーがけたたましく鳴り響いた。

「えっ、え……な、何……!?」

「地震……いや、これは……!」

「ガスター博士、何か知ってるのか!?」

「ええ……まだ仮定にしか過ぎませんが、恐らくこれは……次元の歪みが引き起こした物だと思われます! 今まで発生してきた次元の歪みが、この世界と他の世界を隔てる壁に少しずつヒビを入れていき、それが今になって繋がった事で、この揺れを引き起こした可能性が……!」

「世界を隔てる壁にヒビって……それじゃあこの世界は……!」

「い、いや……! まだ、そうと決まったわけでは──」

 ガスター博士の焦りを含んだ声が研究所内に響いたその時、フリスク達の意識が遠退きだし、意識の混濁によって次々とその場に倒れていく友人達の姿にどうにか助けようと手を伸ばしたものの、フリスクの体もグラリと揺れ、視界は暗闇へと包まれていった。

 

 

 

 

 地球によく似たとある星、()()()()()。この星では、神や悪魔などの存在が忘れ去られずに残っており、魔法と科学が共に研究された事で、技術として確立している。そして、惑星クレイには幾つかの地域があり、その地域によって同じ数だけの国家と一部を除いてそれぞれの国家に所属する『クラン』と呼ばれる組織が存在している。クランには、そのクラン特有の能力や得意とする戦術、文化などが存在し、クランに属する種族もその地域によって様々だが、各クランを代表する『ユニット』の存在もあり、時にはクランを越えた交流なども行われていた。

 そんなある日の事、『スターゲート』と呼ばれる国家に所属するクランの一つ、『リンクジョーカー』のユニットである『真星輝兵(ネオスターベイダー) カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』は、とある人物からの依頼を受け、別の国家である『ユナイテッド・サンクチュアリ』の上空を飛んでいた。

「さぁて……異常な次元の歪みが観測されたのは、確かこの辺りだったはずだけれど、今のところそれらしい何かは見られないな……。まあ、ひとまず依頼者である()と合流する事にしよう。私達の事を真っ先に信じてくれ、この惑星クレイに住む様々なクランと打ち解けるきっかけとなってくれた彼と……」

『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』は上空をゆっくりと飛びながらリンクジョーカーや彼自身の事について想起した。『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』が所属するリンクジョーカーは、かつて異星から惑星クレイを侵略するために襲来し、星輝大戦(インベイション・グレイトウォー)と呼ばれる事件を引き起こしたが、リンクジョーカーのユニットが持つ能力──呪縛(ロック)を打ち破ったクレイのユニット達によって退けられた。リンクジョーカーは、その後にも第二次星輝大戦を引き起こし、再び侵攻を開始するが、これを阻止された事で、リンクジョーカーの根源たる存在──虚無(ヴォイド)がクレイの英雄達によって砕かれ、クレイの生き物達に混ざり合い、リンクジョーカーはクレイの一部となった。そして、第二次星輝大戦の影響で発生した異常事態──時空混線の後、リンクジョーカーはそれぞれ|虚無の化身にして現在も惑星クレイの侵略を目論むリンクジョーカーの先兵──星輝兵(スターベイダー)、異星である『遊星ブラント』の環境に順応した上で遊星ブラントに寄生する生命体との共存に成功した──根絶者(デリーター)、そして()()()()の「再生と調和」の意志によって再生した新世代のリンクジョーカーという三つの勢力へと分かれる事となった。『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』は、『星輝兵』という名を持つ通り、現在も惑星クレイの侵略を目論む勢力のユニットだが、この『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』はかつてオリジナルの『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』が作り出したクローンの一体だ。しかし、この個体は、オリジナルも予期していなかった変異によって発生した他の完全なるクローン達とは一部が異なった個体であり、その異なった部分というのが、侵略の意志を持たない平和主義な性格という点だ。オリジナルは、このクローンを失敗作と呼び、このクローンを完全なるクローンのための犠牲にしようと考えたが、彼自身が持つ『他者を絶望させ堕とす事に至上の喜びを見出す』性格からその考えを変え、ある企みのために失敗作を牢獄へと幽閉した。そして、時空混線後に自身らが撤退する際に失敗作を牢獄から出し、失敗作を連れてクレイに戻った後、執拗に傷付ける事で思うように動けない状態にした上でそのまま置き去りにした。オリジナルの目論み通り、失敗作はオリジナルから切りすてられたという事実と自身以外の星輝兵が近くにいないという状況に絶望し、自身が生まれてきた意味を自問自答しながらひたすら死を待った。その後、新世代のリンクジョーカー達によって彼は発見され、強い警戒をされながらもリンクジョーカー達の本拠地へと運ばれ、傷の手当てを受けながらリンクジョーカー達からの尋問を受けた。そして、彼の『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』らしからぬ平和主義な性格と彼自身が持つ強い力を受け入れた事で、彼は新世代のリンクジョーカーの仲間入りを果たしたが、その際に『星輝兵』の名を捨てるように言われ、彼はそれを拒否した。その事で、彼は再び新世代のリンクジョーカー達から強い敵意を向けられたが、彼自身が持つ『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』という名前への強い拘りを語ると、その愚直なまでの強い熱意に押される形で、彼は引き続き星輝兵を名乗る事を許され、新世代のリンクジョーカー達が捕縛をしていた星輝兵達を束ねる指揮官としての生活を始めた。しかし、平和主義な『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』という存在に違和感を抱く星輝兵達からは強い反発を受ける事になり、中にはオリジナルが呼んでいた失敗作という言葉を浴びせる者もいたが、彼はそれにも負けず必死になりながら星輝兵達との交流に務め、自身の思いを伝え続けた。すると、その内に星輝兵の中にも彼の気持ちを理解し慕い始める者が出始めると、やがて星輝兵全員が彼を指揮官として認めだし、星輝兵軍でありながら新世代のリンクジョーカーと同じように再生と調和の意志を持った軍──『真星輝兵』が出来る事となった。そして、その存在がクレイ中に広まると、各クランの代表ユニット達からの面会を次々と申し込まれる事となったが、彼は臆すること無く自身の気持ちやこれからについての展望を正直に語った。代表達の多くは初めこそ彼が何かを隠しているのではないかと勘繰っていたが、ある人物──『騎士王アルフレッド』の代理として来ていた『ロイヤルパラディン』のユニットである『ブラスター・ブレード』は一番に彼の事を信じた。すると、疑いの目を向けていた代表ユニット達は、次々と彼や彼が率いる星輝兵軍の事を信じ始め、彼らは正式に惑星クレイの仲間として認められる事になった。そして、かつて失敗作と呼ばれたクローンは、元々『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』が得意としていた話術を駆使して様々な任務を平和的に解決していく様子から、同じリンクジョーカーのユニット達や他のクランのユニット達から『対話者(トーカー)』と呼ばれるようになり、『ブラスター・ブレード』は彼の良き理解者となり、クランの垣根を越えた良き友にもなったが、彼はその事に有り難さを感じつつも『ブラスター・ブレード』が何故自分達の事を一番に信じてくれたのかが不思議で仕方なかった。というのも『ブラスター・ブレード』はリンクジョーカーとは浅からぬ因縁があり、特に第二次星輝大戦の際にはリンクジョーカーのユニットの企みによって一時的にリンクジョーカーのユニットにされており、彼の軍に対して強い疑念や警戒を抱いていてもおかしくは無かったため、彼は『ブラスター・ブレード』との交流を続けながらもその疑問を抱き続けていた。しかし、彼は遂にこの疑問をぶつける決心をし、ある日の『ブラスター・ブレード』との会話の中でこの事について問い掛けた。すると、『ブラスター・ブレード』は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐにそれを微笑みへと変え、疑問に対しての答えを口にした。

『確かに貴方の話を聞いた時、私は自分の耳を疑った。同胞達からも『道化』と呼ばれ嫌悪されるような存在が、まさか新世代のリンクジョーカー達に与するとは思わなかったからな。だからこそ、その真偽を見定めるために他のクランの代表ユニットと同じように私も貴方との面会をする事にし、もし何か良からぬ企てがあるならば、私の命を賭けてでもその命を絶つつもりだった。だが、あの日に貴方と面会して私の考えが間違っていた事を知った。確かに姿は、あの『星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン』そのものだったが、貴方からはあの悪意に満ちた気配は一切感じられず、自信の気持ちなどを語るその表情や声には偽りが無かった。だから、私は貴方を信じた上で同じ惑星クレイの仲間として認め、一番に貴方の味方であろうとしたのだ。同じ正義と平和を愛する者として』

 その言葉に、対話者が強い感動を覚え、友人に対して感謝の言葉を述べた後、これからも共に協力し合うへの誓いの意味を込めてお互いの拳を軽くぶつけ合い、彼らの絆は更に深まったのだった。

「……ふふ、あそこまで信用をしてもらっている以上、これからもそれに報いるために頑張らないといけないな」

 懐かしさと心からの嬉しさを感じながら小さく笑った後、対話者はそのまま上空を飛び続けた。そして、それから約数分後、対話者はとある山の麓に一人の人物が立っているのを目にし、その場所へ向かってゆっくりと降下し、静かに着地をした後にその人物に微笑みかけた。

「お疲れ様です、ブラスター・ブレード。……おや、今日は部下の方はいらっしゃらないのですか?」

「ああ、他の皆には待機してもらったり王の警護についてもらったりしている。次元の歪みの影響で何が起きても良いようにな」

「なるほど……それで、私達に調査の手伝いを依頼してきたんですね」

「その通りだ。いざという時には、対話者殿の『呪縛』の力が必要になるかもしれない。その時はよろしく頼む」

「ええ、任せて下さい。依頼を受けた以上、私も精一杯やらせてもらいますよ」

「ああ、頼りにしている。さて……まずは、この山についてなのだが……」

『ブラスター・ブレード』が山の方へ視線を向けると同時に、対話者もそちらへ視線を向けた。件の山は、一見何の変哲も無いように見えたが、彼らは山の中から感じる異様な気配に強い警戒心を示していた。

「……この山は、前からこの地域にあった物では無いんですよね?」

「ああ。今朝、『ロイヤルパラディン』のユニットの一人が次元の歪みと思われる物を観測し、経過の観察をしていたところ、この山が突如出現したのだという。そして、一度『ディメンジョンポリス』にも連絡は取ったのだが、彼らは関与していないという返答があったため、まずは私達だけで調査をする事にしたのだ」

「なるほど……それにしても、結構大きな山ですよね」

「そうだな。先程、軽く周りを歩いてみたところ、一箇所だけ山の中に入れそうな大穴を見つけたのだが……その穴の周囲と奥の方から何やら強い力を感じた」

「強い力……この異様な気配と何か関係があるんでしょうか?」

「恐らくな。だから、今は充分に警戒をし──」

 その時、彼らは近くから妙な気配が漂ってくるのを感じ、すぐにそちらへ視線を向けた。視線を向けた先にあったのは、話の中に出てきた大穴だったため、『ブラスター・ブレード』は更に警戒心を強めながら対話者に声を掛けた。

「……対話者殿」

「……ええ、やはり誰かがいるようですが、どうしましょうか……」

「……ここは正々堂々行くしかないだろうな。対話者殿は、いつでも『呪縛』が使えるように心の準備だけはしていてくれ」

「分かりました」

 対話者が深く頷きながら答えた後、彼らは気配がした方へと向かった。そして、件の大穴が見えてきたその時、彼らの視界に入ってきたのは、注意深く辺りを見回すサンズの姿だった。

「あれはスケルトンのようだが……もしや『グランブルー』の新たなユニットか?」

「いえ……この前、『グランブルー』のユニットと会う機会がありましたが、そんな話は聞いた事が無いので、たぶん違うかと。しかし……あのスケルトン、どうやら只者では無さそうですね……」

「……ああ、そうだな。よし……とりあえず話しかけてみよう。だが、警戒は解かないようにな」

「……はい」

 そして、彼らが再び静かに近付いていくと、サンズは彼らの存在に気付いた様子で、ゆっくりと視線を向けた。サンズは対話者達の姿を見た瞬間、不思議そうに首を傾げたが、すぐにハッとした表情を浮かべると、警戒心を強めながら両手をゆっくりと広げた。その様子を目にし、対話者達はピタリと足を止めると、サンズの姿を視界から外さないようにしながら声を掛けた。

「見慣れぬ方、私の言葉は分かるか?」

「……ああ、不思議な事に全部分かるが、お前さん達はどうだ……?」

「ああ、こちらもしっかりと分かっている」

「そうか……まあ、それならそれで良いが、まず少し訊きたい事がある」

「……何だろうか?」

「『ソウル』、『EXP(エグゼキューションポイント)』、コア……これらの言葉に聞き覚えはあるか?」

「……ソウルはもちろん聞き覚えがあるが、他の二つについては聞いた事は無いな」

「……そうか。んで、お前さん達はオイラと戦うつもりはあるのか? もし、あるって言うのならお前さん達にとって最悪の時間を過ごす事になるぜ……?」

 その瞬間、サンズの目の奥が黒く染まり、ただならぬ雰囲気を醸し出し始めると、それに対して対話者は慌てて言葉を返した。

「い、いえ……私達は貴方と戦うつもりは一切ありません……! ただ、次元の歪みが観測された後にこの山が出現したという話を聞いたので、調査のために訪れただけです……!」

「……そうか」

 対話者の言葉に少し安心した様子で答えると、サンズの目と雰囲気は元に戻った。そして、大穴の方へチラリと視線を向けたかと思うと、覚悟を決めた様子で対話者達の方へ視線を戻した。

「……なあ、いきなり敵意を剥き出しにしておいてなんだが、一つ協力してもらっても良いか?」

「私達が協力出来る事なら構いませんが……」

「……お前さん達も何となく気付いてる通り、オイラ達はこの世界とは別の世界の住人だ。だが……正直な事を言うならば、何でこんな事が起きちまったのかはサッパリ分からない。今、仲間の博士達が必死になって原因を探ってくれてるとは思うが、それが見つかるのもいつになるかは見当がつかない。そこで、もし可能ならお前さん達に原因を探るための協力を依頼したいんだ。このままこの状況を放置するわけにもいかないからな」

「……なるほど」

「もちろん、ただでとは言わない。その代わり、お前さん達が何か困っている事があれば、その分の協力はするつもりだ。まあ……言わねぇとは思うが、他の奴らがそれを拒むようなら俺だけでもそうするつもりだ。だから、頼む……俺達に協力してくれないか……?」

 深々と頭を下げながら頼み込むサンズの姿に対話者達は一度顔を見合わせた後、コクンと頷き合ってからそれに答えた。

「もちろん、協力させてもらいますよ、異世界のスケルトンさん。異世界から迷い込んで困っている方を放ってはおけませんから」

「それに、次元の歪みによって異世界の方がこちらに迷い込んだ以上、こちら側のユニット達も同じように別の世界に迷い込む事になる可能性は大いにあります。なので、こちらとしてもこの現状を放置するわけにもいきません。異世界の方、何か困った事がありましたらいつでも言って下さい」

「……ありがとうな、お前さん達。さて、後は他の奴らにこの事を伝えるだけなんだが──」

 サンズが少し心配そうな表情で腕を組んだその時、「おーい、サンズー!」という声が大穴の方から聞こえ、全員がそちらに視線を向けた。すると、そこには小型のモニターを持ってこちらに向かって駆けてくるフリスクとキャラの姿があり、その二人の姿にサンズは「やれやれ……」という溜息を漏らした。

「お前さん達、そのモニターは何なんだ? というか、アズゴア王達やガスター達はどうしたんだ?」

「王様は、モンスター達に今の状況を説明してて、パピルスとトリエルさんとアンダインさんもそれを手伝ってるよ」

「そして、ガスター博士はアルフィー博士とメタトンと一緒に現状の確認と原因の究明中。今はフラウィーになっちゃってるけど、アズリエルもそれを手伝ってるよ」

「そうかい。んで……さっきも訊いたが、そのモニターは一体何なんだ?」

「これは、ガスター博士が研究所のモニターの一つを改造して急いで作ってくれた即席通信機だよ。一見、ただのモニターにしか見えないけど、横に付いてる機械でこっちの音を拾って向こうに届けたり、あっちからの音を届けたりするって言ってたよ」

「へえ……ソイツは結構なもんだが、本当に点くのか?」

「うーん……ガスター博士は大丈夫だって言ってたけど、まだ試してはいな──」

 フリスクが困り顔で答えていたその時、持っていたモニター型通信機の画面が独りでに点くと、画面には様々な機械を背にこちらを見つめるガスター達の姿が映った。

『あー……フリスク君、キャラ君、モニター型即席通信機は映っているかね?』

「あ、はい。しっかりと映ってますよ、ガスター博士」

『おお、そうか。理論上は、しっかりと点く事になっていたが、こうしてこの眼で確認できるとやはりホッとするね』

「ところで、そこに父さん達もいるという事は……モンスター達への説明も無事に済んだっていう事ですか?」

『ああ、そうだ。皆、まだまだ不安はあるようだったが、何とか納得してもらったよ』

『ニェッヘッヘ、アズゴア王の演説は実にクールで素晴らしかったぞ! お前達にも見せてやりたかったくらいだ!』

「ふふ、そっか。そこまで言うならそ見てみたかったかも……」

 モニター型即席通信機越しに伝わるパピルスの気持ちの高ぶりに対してフリスクが柔らかな笑みを浮かべる中、そのやりとりを対話者達がただ静かに見ていると、その様子を見たサンズが少し申し訳なさそうに頭をポリポリと掻いた。

「あー……紹介が遅れたが、これが俺の仲間達だ……。なんかすまないな、急に騒がしくしちまって……」

「……ふふ、別に騒がしいとは思っていませんから気にしないで下さい。それにしても……ここまで出来の良い即席の通信機を作ってしまうとは、貴方──サンズさんのご友人はとても凄い方なんですね」

「……まあ、間違ってはいないが、その分苦労はしてるのも間違いはないな。さて……雑談はここまでにして、まずはお互いの自己紹介でもしようぜ? そうすれば、こんな()()()()()進行役を誰かに変わってもらえそうだからな。スケルトンだけに……」

 サンズの口から溜息と共に出てきたスケルトンジョークを交えた本音に対話者とフリスクから笑い声が上がった後、彼らはお互いに自己紹介を始め、それを終えた後に改めてお互いの目的のために協力し合う事を誓った。そして、安心した事による和やかな雰囲気が流れたその時、サンズは何かを思い出したような表情を浮かべると、傍らにいたフリスクに声を掛けた。

「今更なんだが……フリスク、お前さんの()()()()()()の能力に何か変化は起きてないよな? 次元の歪みの影響で何か変化をしていたら、いざという時に困ると思うんだが……」

「あ、それもそうだね」

 フリスクは納得した様子で答えた後、体に力を込めながらこれからの先の事について考えた。そして、ケツイが漲ったその時、突如フリスクの両手が大きな輝きを放ち始めた。

「え、え……!?」

「これは……一体……!?」

 その輝きに全員が驚きを露わにしていると、輝きは次第に幾つもの小さな紙のような物へと変化を始めた。そして、突如フリスクを原因不明の頭痛が襲い、フリスクの頭の中に一人の少年の姿が浮かぶ中、光を纏った紙のような物は独りでに積み重なりだし、最後の一枚が一番上に乗った瞬間、光は静かに止んだ。

「これは……カード、かな……? それもこんなにたくさん……」

「さっきの現れ方から考えると、それはただのカードではないみたいだけど……フリスク、一番上のカードを捲ってみてもらえるかな?」

「う、うん……」

 その言葉に従って一番上のカードを捲ると、そこに描かれていたのは──。

「……え? ボ、ボク……?」

 細めで人懐っこそうな笑みを浮かべる青地に紫色のボーダーの服を着た人間──フリスクの姿と何かの数値を表しているであろう幾つかの数字、そして細かな字で書かれた説明文のような物だった。フリスクは驚きを隠しきれない様子で、その下にあった一枚を捲ると、今度はサンズの姿が描かれており、他のカードにもパピルスやアンダインといった地下世界の仲間達の姿が描かれていた。

「ど、どういう事……? もしかして、前に皆のロストソウルをセーブしたのが何か関係してるのかな……?」

「……それもあるかもしれないけど、ナプスタブルークやマフェットのカードもあるみたいだし、理由はそれだけじゃ無いかもしれないね。フリスク、他に何か変化は無いかな?」

「変化……変化とは違うかもしれないけど、さっきカードが光ってる間、頭が痛かったかも……。後は、誰かは分からないんだけど、人間の男の子の姿が浮かんだくらい……かな?」

 その言葉を聞いた瞬間、対話者達は「「人間の男の子の姿……」」と何か思い当たった様子で同時に声を上げると、とても真剣な表情でフリスクに話しかけた。

「フリスクさん、その少年の姿の詳細は覚えていますか?」

「え、えっと……ちょっと背丈が低めで短い少し暗めの青色の髪の毛の子で、ぱっと見は少し気弱そうだけど、どこか優しそうな雰囲気でした。それで服装は──」

「いえ、そこまでで大丈夫です。ですが、となると……」

「ああ、もしかしたらそういう事かもしれないな」

 フリスクの説明を聞いた対話者達が真剣な表情で話す中、フリスクはわけが分からないといった様子で対話者達に話しかけた。

「あ、あの……話がまったく見えないんですけど……」

「おっと……すみません、確かに説明しないと何が何だか分からないですよね」

 そして、対話者はフリスクが口にした人物に心当たりがある理由について話を始めた。

「実は、この惑星クレイは()()()と繋がりがありまして、その星の名前は『地球』と言うのです」

「地球……え、それって……」

「はい、偶然かもしれませんが、皆さんが住んでいる名前の星と同じ名前なのです。そして、地球にはフリスクさんとキャラさんと同じ人間が住んでいて、地球にはあるゲームが流行っているそうで、それに使うのがフリスクさんが持っているそのカードと同じ物なのだそうです」

「なるほど……でも、どうしてそんな物がここに……」

「……これは聞いた事があるだけなのですが、地球にはある力を持った一族が住んでおり、その力というのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと言われています」

「惑星クレイへのアクセス……」

「具体的に言うならば、惑星クレイの状況をその場にいながらにして見る事が出来、自らや他者を惑星クレイと地球に移動させる事が出来るというものらしいのですが、何故か先日の星輝大戦などではその姿を見る事は無かったといいます」

「なるほど……つまり、ボクに宿ったのもそういう能力であり、ボクが見たのはこの世界の地球の様子だという事ですね」

「……恐らくは。フリスクさん、貴方自身は何か感じる物などはありますか?」

「そうですね……ちょっと言葉にはしづらいいんですけど、何となくそういう能力が自分の中にあるような感覚はあるかもしれません」

「……分かりました。そして、フリスクさんが見た少年なのですが、私は夢の中でその姿を見た事がありまして、雑談の中でこの事を『ブラスター・ブレード』さんにお話したところ、『ブラスター・ブレード』さんも同じ少年を夢で見た事があるらしく、その際に二人で姿の確認はしたので、二人が見たのか同一人物であるのは間違いはありません。そして、彼は私達の夢の中でそのゲームをしており、使っていたカードの中に私達がいた事から、私達は彼の事を遙か昔に件の一族に味方したとされる人間の呼び名から取って『先導者(ヴァンガード)』と呼んでいます」

「『先導者』……」

「しかし、フリスクさんがその能力で姿を見た事から私達が『先導者』と呼ぶ少年は、地球上に実在するようです。そして、フリスクさんの手にそのカード達があるという事は──」

「……その子が今回の件の鍵を握っている可能性が高い上、このカードデッキを渡す必要があるという事ですよね」

「そうなります。本来ならば、私達も同行するべきなのですが、流石に普通の人間の姿に変化をする手段は知らないので、共に行く事は出来ませんが、フリスクさんが留守の間はこちらはこちらで今回の件について調べようと思っています。申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

「いえ、気にしないで下さい。今はそれぞれが出来る事をやるだけですから」

 ニコリと笑いながらそう言ったが、フリスクは新たな能力が発現した事とこれから自分が知らない場所へ行くという事への不安は感じており、本当ならばこのまま地下世界の仲間達と一緒に行動をしたいと思っていた。しかし、自分の中にそういった能力が芽生え、鍵を握っているかもしれない存在に会う必要がある事は分かっていたため、フリスクは逃げ出したくなる気持ちを必死に抑え込み、自分の手の中にあるカードデッキをギュッと握り込んだ。そして、仲間達に出発の挨拶をするために口を開こうとしたその時、不意に肩をポンッと叩かれフリスクは「……えっ?」と言いながらそちらに視線を向けた。すると、キャラが微笑みを浮かべながら自分の事を見つめているのが目に入り、フリスクがそのキャラの様子に疑問を覚えた。

「キャラ……どうしたの?」

「フリスク、私もフリスクについていくよ」

「……え?」

「だから、フリスクについていくって言ったんだよ。『先導者』君に会いに地球まで行き、カードデッキを渡すその役目を果たすためにね」

「でも……これから行くのは、ボク達が知らない人達ばかりが行くところで、すぐに『先導者』が見つかるとは限らな──」

「大丈夫だよ」

「え……?」

「フリスクの中で漲っているその『ケツイ』がきっと私達と『先導者』を引き合わせてくれる。だから、大丈夫だよ」

「キャラ……」

「それに、私だって私とアズリエルを復活させてくれた地下世界の仲間達や新しい友達である対話者君達のために何かしたいんだよ。生憎、私にはフリスクが持ってるような特殊な能力は無いみたいだけど、精一杯皆のために頑張りたいと思ってる。だから、私はフリスクについて行く事で、フリスクの力になりたいんだよ」

 そう思いを語るキャラの目はとても真剣であり、その決意が簡単に揺らぐ事が無い様子は、フリスクにもしっかりと伝わっていた。

「……うん、分かった。それじゃあよろしくね、キャラ」

「うん、こちらこそよろしくね、フリスク」

 フリスクはキャラ固く握手を交わしながら笑い合った後、静かに体に力を入れ、自身に新たに発言した能力を発動する準備を始めた。そして、何となく大丈夫だと感じると、キャラと手を繋ぎながら仲間達に声を掛けた。

「それじゃあ……行ってきます」

「皆、留守の間の事は頼んだよ」

「はい、任せて下さい」

「お二人のご武運を祈っています」

「……まあ、頑張ってきな」

『二人とも、無理はしないように頑張ってきてくれ』

『子供達、どうか気をつけて……』

『フリスク! キャラ! その……が、頑張って来いよ!』

『お前達なら絶対に大丈夫だ!』

『え、えと……ファ、ファイト……です!』

『頑張ってきてくれ! 地下世界のスター達!』

『フリスク、キャラ、頑張ってきてくれ! どんなに辛い事があろうとも決意を抱き続けてくれ!』

『二人とも……行ってらっしゃい』

「「皆……うん、ありがとう! そして、行ってきます!」」

 仲間達からの言葉に対してフリスクとキャラは感謝の気持ちを込めて答えた後、繋ぎ合った手から伝わるお互いの温かさを感じながら頷き合った。そして、「……行くよ!」というフリスクの言葉を最後にフリスク達の姿は対話者達の目の前から消えた。




いかがでしたでしょうか。今のところは、この一話で終わりの予定ですが、連載作品として続きを書いていくかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。そして、今作品も皆さんに楽しんで読んで頂けるように様々な配慮をしたつもりですが、もし不快感を持たれた方がいらっしゃいましたら、本当に申し訳ありませんでした。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、別作品又は本編で。


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Two of the king wish for peace and harmony

どうも、片倉政実です。今回も書きたい話が浮かんだので、投稿をさせて頂きました。
それでは、どうぞ。


 フリスクとキャラの二人が、揃って地球へ向かって出発した後、サンズは少し安心した様子で小さく息をついた。

「……どうやら、無事に行けたみてぇだな」

「ええ、そのようです。後はフリスクさん達に先導者(ヴァンガード)を捜し出して頂くだけですが、その前にこちらで幾つかやっておかないといけない事がありますね」

「やっておかないといけない事……?」

 サンズが不思議そうな様子を見せると、対話者(トーカー)は静かに頷いた後、傍らに立っている友人――『ブラスター・ブレード』へと視線を移した。

「この地は、『ユナイテッド・サンクチュアリ』という国家の国土であり、彼が所属するクランである『ロイヤルパラディン』はその国家の第一正規軍であるので、彼には今回の皆さんの件を報告する義務があります」

「んー……まあ、そうだろうな。お前さん達が来たのは、このイビト山がどんなモノなのかを調査するためだったわけで、少しでも情報を集められた以上、それを報告しないわけにはいかねぇからな」

「その通りです。本来、私もこうして調査に来た以上は、私達を統括する方にこの件を報告する義務がありますが、今回は私のクランが所属する国家以外で起きた事である上、調査に来たのも彼からの私的な依頼であるため、報告自体は後でも問題はありません。ですが、彼の場合はそういうわけにもいきませんし、皆さんも少しずつでもこの世界について知りたいだろうと思います」

『ふむ……確かにそうだね。いつまでこの世界にいる事に分からない以上、この世界についての知識は自ずと必要になるし、少なくともこの地に住む人々とは仲良くしておきたいところだからね』

「はい、私達としてもそれが望ましいです。なので、ここは二手に分かれて行動するのが一番かと思います。ブラスター・ブレードと共に『騎士王アルフレッド』殿に謁見する組とこの場に残り私と共に原因の究明のために動く組という二つに」

 対話者の提案を聞き、アズゴア王は顎に手を当てながら納得顔で頷いた。

『なるほど……確かにその方法を取った方が、双方のためになるかもしれませんね。先程ガスター博士も言いましたが、この世界にいつまでいるか今のところは見当もつきませんから、それならば最低でもこの国の方々とは仲良くしておく方が良いですから』

「はい、私もそう思います。ですので、皆さんには是非とも我が王に一度会って頂き、正式に協力関係を結んで頂くのが良いかと思っています。我が王が協力関係を結んだとあれば、『ユナイテッド・サンクチュアリ』に属する他のクランの有力なユニット達も皆さんに興味を示し、他のクランの協力を得る事も出来るはずですから」

『ふーむ……となると、早めに組を二つに分けて行動をし始めた方が良さそうだね。ただ、組を分けるにしてもあまり偏りすぎてもいけないし、ここは慎重にメンバーを選ぶ必要があるかもね』

「ああ、確かにそうだが……俺達の内、何人かの役割はもう確定してるだろ?」

 サンズが即席通信機のモニターに視線を向けると、アズゴア王やガスター博士は静かに頷いた。

『ああ、そうだね。私はこの地下世界のモンスター達の代表として王様に謁見する組に自動的に入るし、ガスター博士とアルフィーにはここで原因の究明をしてもらう組に入ってもらう事になるからね』

「その通りだ。んで、オイラも謁見組の仲間入りは確定してる。元研究員としては、ここに残った方が良いんだろうが、研究員枠は二人で十分そうだからな」

『うーむ……そうなると、オレさまはここに残る方が良さそうだな。正直な事を言えば、アズゴア王やサンズと一緒に行きたいところだが、フラウィーが言ったようにあまり人数や役割が偏ってもいけないからな。だから、サンズ達と一緒に行くのは、アンダインとかフラウィーとかの方が良いとオレさまは思うぞ』

『ん……アタシか? まあ、まだ力仕事が必要そうではないから、それならサンズ達について行く方が良いかもしれないな』

『僕もそれで問題ないよ。僕もその王様やこの世界の様子には興味があるからね』

『それなら……私はここに残る方が良さそうね。謁見組が戻ってくるまでの間、モンスター達の不安を取り除くメンバーも必要になるでしょうから』

『そして、同じ理由でぼくも居残り組に入らせてもらうよ。このぼくの美しさで皆の不安を取り除く仕事もあるし、ちょっと安否を確認したいいと――友人がいるからね』

「んじゃあ、簡単にまとめると……オイラとアズゴア王、それとアンダインとフラウィーが謁見組で、残りがここで原因の究明をしたり、モンスター達への事情説明や不安の解消をしたりするって事になるな」

『そうだね。では早速、私達はそっちに向かうとするよ。』

「ああ、分かった」

 サンズが頷きながら答えた後、少し疲れた様子で小さく溜息をついていると、対話者は心配そうに声を掛けた。

「サンズさん、大丈夫ですか?」

「……ん? ああ、大丈夫だ。だが、やっぱり慣れねぇ事をすると疲れるもんだな。オイラはこういう進行役よりは、影から何かをする方が向いてるからな」

「そうなのですか?」

「ああ……まあ、この状況がどうにかなるまでは、『骨身を惜しまず』頑張るとするかな。スケルトンだけに!?」

 その瞬間、サンズ達の頭の中でツクテーンという音が鳴ったかと思うと、対話者はとても楽しそうにクスクスと笑い始めた。

「サンズさんは、本当に面白い方ですね」

「へへっ、そうかい? まあ、こんなに笑ってくれるのは、フリスクやトリエルを除けばお前さんくらいだから、オイラもスケルトンジョークのし甲斐があるってもんだぜ」

「……それなら、私もこれからはドラゴンジョークでも――」

「……対話者殿、その件は今やるべき事が終わってからゆっくりと話す事にしよう。今優先すべきは、地下世界の皆さんがこの世界にいる間だけでも落ち着いて過ごしてもらう事なのだから」

「……っと、それもそうですね。止めて頂きありがとうございます、ブラスター・ブレード」

「いや、礼には及ばない。私も幾度となく対話者殿には世話になっているからな」

「ふふ……では、今回の件はその分でお相子という事にしましょうか」

「ああ、そうだな」

 対話者と『ブラスター・ブレード』が仲良く微笑む中、サンズは珍しそうな様子でそれを眺めていたが、不意に腕を組むと不思議そうに対話者達に話し掛けた。

「……お前さん達、本当に仲が良いんだな」

「ええ、もちろんです。彼はもちろんの事、私もこんななりではありますが、この『惑星クレイ』の平和を願う者の一人ですからね」

「こんななり……まあ、さっき簡単に話は聞いたが、お前さんのオリジナル個体は、その姿らしい結構邪悪な性格をしてるみたいだからな」

「ええ、その通りです。ですが、対話者殿はそのオリジナルとは違い、『惑星クレイ』の平和を心から願い、自身のクランである『リンクジョーカー』以外のクランの問題にも親身になって取り組むような方です。ですので、私はそんな対話者殿を友人として、そして同じ星の仲間として誇りに思っています」

 友人の口から出たその言葉に対し、「ブラスター・ブレード……」と対話者が感動した様子で呟く中、『ブラスター・ブレード』は傍らに立つ友人の目を真っ直ぐに見つめながら親愛の気持ちを込めた笑みを浮かべた。

「対話者殿、惑星クレイや我々にはこれからも様々な苦難が待っているでしょうが、共に手を取り合いながら頑張っていこう。クランや国家こそ違うが、我々は平和を心から願う気持ちは同じなのだからな」

「……ええ、もちろんですよ。私のオリジナルが皆さんにしてきた事は、今更取り返しが付くわけではありませんが、その事をしっかりと受け止めた上で頑張っていくつもりですからね。

 だからでブラスター・ブレード、改めてこれからもよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ」

 彼らが種や国家を越えた友情を改めて感じながらお互いに微笑み合う中、サンズはとても真剣な表情を浮かべ、一言も発さずに対話者の事を深淵を思わせるような()()()でただ見つめていた。そして、「……来たか」とサンズがそのまま小さな声で独り言ちた時、サンズと同じ謁見組となったアズゴア王達がイビト山から姿を現し、そのままゆっくりとサンズ達へと近付いていった。サンズはその足音でクルリと振り返ると、近付いてくるアズゴア王達の姿に「……ほう」と少し驚いたように呟くと、それと同時に眼には光が戻り、彼らが目の前でピタリと足を止めた瞬間に声を掛けた。

「……その格好は、謁見用かなにかなのか?」

「ああ、そうだよ。やはり、他の王と会うからには、それなりの格好が必要だと思うからね」

「……まあ、確かにそうかもしれないけど、アンダインの方は謁見をしに行くというよりは、これから戦いに行く格好にしか見えないかな」

「仕方ないだろう! アタシ的にはこの格好がピッタリだと感じたんだからな!」

 トリエルと同じような服装に着替えたアズリエルの姿のフラウィーに対して重厚な鎧兜姿のアンダインが吼えるように大きな声を上げる中、豪奢(ごうしゃ)な鎧と紫のマントを纏ったアズゴア王は、愛用の赤い三叉槍(さんさそう)を携えながらその二人の様子に苦笑いを浮かべていた。サンズはそんな仲間達の平和そうな様子に安心したように息をつくと、先程までの不穏な雰囲気は完全に消え、いつものようなのんびりとした雰囲気へと戻っていた。そして、再び対話者達の方へ視線を戻した後、悠然とした様子で立つ『ブラスター・ブレード』に声を掛けた。

「どうやら、こっちの準備は良いみたいだぜ」

「分かりました。それでは、そろそろ出発するとしましょう。しばらくの間は歩き続ける事になりますが、皆さんは体力に自信はありますか?」

「んー……まあ、()()()の体力なら問題ないぜ?」

「私も体力に問題はありませんよ」

「同じく問題なし」

「アタシも体力なら問題ない」

「……分かりました。では、これより我が王の元へ皆さんをご案内します」

『ブラスター・ブレード』は、サンズ達へ恭しく一礼をした後、対話者にアイコンタクトを送り、そのままサンズ達を伴って『騎士王アルフレッド』の元へと歩いていき、対話者は歩き去って行く友人達を見送ると、ガスター博士達とモニター越しの会話を始めた。

 

 

 

 

 謁見組が歩き続ける事約数十分、彼らは『ユナイテッド・サンクチュアリ』の城下町に辿り着き、その活気溢れる様子にサンズ達は思い思いの感想を口にしていた。

「へえ……思っていたよりも賑わってんじゃねぇか」

「国民達の表情もとても晴れやかな上、街中も実に清潔感がある……うむ、これは色々と見習う事がありそうだな」

「見た所、ニンゲン以外にも色々な種族がいるみたいだけど、果たして何種類の種族がいるのかな……」

「……なんだか強そうな見た目の奴も結構いるみたいだし、元の世界に帰る前に一度腕試しでもしてみたいな!」

 そんな仲間達の感想に『ブラスター・ブレード』が苦笑いを浮かべていたその時、彼らの元に一人の人物がゆっくりと近付いた。

「……もう調査は済んだのか? ブラスター・ブレード」

「『ブラスター・ダーク』……いや、まだだ。私がこうして戻ってきたのは、ここにいる方々の件も含めて、ひとまず報告しないといけない事があるからだ」

「……そうか」

『ブラスター・ブレード』に似た姿の人物――『ブラスター・ダーク』は、サンズ達の姿を一瞥(いちべつ)すると、少し警戒した様子を見せながらも礼儀正しく一礼をした。

「……私は『ブラスター・ダーク』、所属クランは『シャドウパラディン』だ。以後、よろしく頼む」

「……オイラはサンズ、別の世界から来たスケルトンだ」

「私の名前は、アズゴアと言います。彼――サンズと同じく別の世界の住人です」

「僕はアズリエル。訳あってこの姿をしていますが、本当の姿はフラウィーという名前の金色の花で、同じく別の世界の住人です」

「アタシの名前はアンダイン、サンズ達と同じく別の世界から来たんだ」

「異世界の住人……確か『ディメンジョンポリス』は、今回の件に関わっていないと聞いた気がするが……?」

「ああ、それは間違いない。しかし、こうして異世界の方がいらっしゃっている以上、この件を放って置くわけにはいかない。よって、現在は対話者殿も交えて此度の原因を探る組と王への報告を兼ねた謁見をする組の二つに分けて行動をしているところだ」

「……なるほど。そういう事ならば、さっさと行った方が良い。判断の遅れは、取り返しのつかない事態を引き起こす原因にもなり得るからな」

「ああ、分かっている」

『ブラスター・ブレード』が頷きながら答えると、『ブラスター・ダーク』はそれに頷き返し、「……では」とサンズ達に一礼をしてからその場を静かに立ち去った。そして、『ブラスター・ダーク』が立ち去った後、彼らが再び城下町の中を歩き出す中、サンズは先頭を歩く『ブラスター・ブレード』に声を掛けた。

「なあ、一つ質問をしても良いか?」

「はい、何でしょうか?」

「お前さんとさっきの奴は、どっちも名前に()()()()()って付くみたいだが、もしや兄弟か何かなのか?」

「いえ、そういうわけではありません。私と彼が名乗っている名前は、本当はこの武器の名前で、私達にはそれぞれしっかりと別の名前があります」

「ほう……どちらも武器の名前だったのですか」

「けど、どうして本名じゃなく武器の名前を名乗っているの?」

「……それは、神界と地上の二つの歴史に名を残す稀代の名剣、『フィデス』の所有者が代々その名を名乗っていた事に肖っているからです。もっとも、対話者殿は私の本名を知っているので、そちらの名前で私の事を呼ぶ時もありますが、基本的に私は自身を『ブラスター・ブレード』という一人のユニットとして考えており、本名の私はこの武装を外した時のみの存在としています」

「なるほどね……それで、アタシ達にも基本的にはその武器の名前で呼んでもらいたいというわけか」

「そうですね……いつかは皆さんにも本名をお話しする機会は設けるつもりですが、しばらくの間はそれでお願い致します」

『ブラスター・ブレード』の言葉にサンズ達が頷くと、彼は安心した様子で「ありがとうございます」と小さくお礼の言葉を口にした。そして、歩き続ける事約数分、彼らの目の前に巨大な王宮が見え始めると、その大きさにアズリエルの姿のフラウィーは眼をキラキラと輝かせ始めた。

「わぁ……! こんな大きな王宮は初めて見るなぁ……!」

「フラウィー……お前さん、今回ばかりは感情が芽生えた事をラッキーだと思ってるだろ?」

「まあね。前の僕――アズリエルの頃は、そんな事は考えもしなかったけど、感情を持たないお花のフラウィーとしての期間を経験したからこそ感情がどれだけ大切な物かは身に染みて分かってるつもりだよ」

「そうかい。まあ、そう思っているなら今の自分って奴は大切にしときな」

「ああ、もちろんさ」

 フラウィーとサンズがそんな会話を交わす中、彼らが王宮の入口へ近付くと、入口の両側に立っていた二人の人物が先頭の『ブラスター・ブレード』に声を掛けた。

「おや……ブラスター・ブレード殿、もう調査は終わられたのですか?」

「何やら見慣れぬ方々をお連れのようですが、こちらの方々は一体?」

「ベディヴィア、それにケイか。この方々は、此度の調査の件で出会った方々で、一時的な報告も兼ねて我が王に会って頂くためにお連れしたのだ」

「ふむ……そういう事でしたか」

「そういう事ならば、どうぞお通り下さい。アルフレッド様は、現在玉座にてブラスター・ブレード殿のお帰りを心待ちにしていらっしゃるようでしたので」

「分かった。しかし……何故お前達がここで番をしているのだ?」

『ブラスター・ブレード』が不思議そうに問い掛けると、『忠義の騎士ベディヴィア』は落ち着いた様子でその理由を答えた。

「先程、ケイと共にここを通りがかった際、番をしていた者の一人が体調を崩しているのを見掛けまして、大事に至ってはいけないと思い、もう一人が代わりの者を連れてくるまでの間、一時的に番を引き受けているのです」

「なので、私達の事はお気になさらないで下さい」

「……分かった。だが、お前達も自身の体調には気をつけるのだぞ?」

「「はい」」

『忠義の騎士ベディヴィア』と『仁愛の騎士ケイ』が同時に頷いた後、『ブラスター・ブレード』は「それでは、どうぞこちらへ」と彼らが開けてくれた扉の向こうを手で指し示しながらサンズ達と共に王宮の中へと進んでいった。そして、王宮内のユニット達と軽く挨拶を交わしながら進み続け、玉座のある王の間へ着いたその時、玉座に座っていた人物――『騎士王アルフレッド』は自身の部下であり友人でもある『ブラスター・ブレード』の姿を見ると、安堵の表情を浮かべながら何も言わずにスッと立ち上がった。

「よく無事で戻ってきてくれたな、ブラスター・ブレード。対話者殿が一緒とはいえ、あまり前例が無い物だったため、ここでお前の身を案じていたのだが……どうやら杞憂だったようだな」

「私の身を案じて頂き、誠にありがとうございます、我が王よ」

「いや、身を案じるのは当然の事だ。私にとっては、この国の住人全員が大切な存在なのだからな」

『騎士王アルフレッド』は、自身の目の前で傅く『ブラスター・ブレード』に対してニコリと笑った後、彼の後ろで静かに立っているサンズ達に視線を移した。

「……ブラスター・ブレード、そちらの方々はもしや……」

「はい、此度の調査の際に出会った異世界の方々です。そして、現在は一時的な協力関係を結び、対話者殿にも協力をして頂きながら原因を探っているところです」

「……そうか」

『ブラスター・ブレード』のその言葉に『騎士王アルフレッド』は静かに答えると、サンズ達へゆっくりと近付き、深々と一礼をした。

「初めまして、異世界の皆様。私はこの国――『ユナイテッド・サンクチュアリ』を治める王であり、『ロイヤルパラディン』のユニットの一人、『騎士王アルフレッド』という者です」

「これはご丁寧にありがとうございます。私はアズゴア・ドリーマー、地下世界にてモンスター達の王をしている者です」

「オイラはサンズ、見ての通りスケルトンだ」

「僕はアズリエル、もっともこの名前はこの姿の時だけで、本当の姿はフラウィーという名前の金色の花です」

「アタシはアンダイン、ロイヤルガードの元団長で、今は知り合いの博士達の手伝いをしているんだ」

 地下世界の住人達がそれぞれ自己紹介を終えると、『騎士王アルフレッド』は一言も発さずに彼らの事を数秒ほど見つめていたが、自身の様子に対して緊張した面持ち浮かべる彼らに何かを感じ取った様子でコクンと頷いた後、笑みを浮かべながらアズゴアに右手を差しだした。

「アズゴア殿、私は『ユナイテッド・サンクチュアリ』を治める者としてあなた方を歓迎し、あなた方が無事に元の世界へ帰る事が出来るように協力をさせて頂きます。これからよろしくお願い致します」

「……こちらこそこれからよろしくお願い致します、アルフレッド殿。そして、私達を受け入れて頂き、本当にありがとうございます」

「いえ、礼には及びません。あなた方の目の中に我々と同じ『平和と調和』を愛する光を見た以上、あなた方を志を同じくした同志として放っておく事など出来ませんので」

 平和と調和を愛する二人の王が固く握手を交わすと、サンズはその光景にとても安堵した表情を浮かべた。

「ふう……一瞬ヒヤッとはしたが、これで一安心ってところか」

「ああ、そうだね。……そうだ、この世界に滞在する間、せっかくだから僕達にもクラン名みたいなのが欲しいな。いつまでも『地下世界』という単語を自己紹介に使うわけにもいかないし、この世界に生きているという証のような物があった方が良い気がするからね」

「クラン名……まあ、地下世界の何某って名乗るよりは、それらしい自己紹介にはなるか」

「でしょ? けど……どんな物が良いかな?」

「そうだな……」

 フラウィーとアンダインが真剣な様子で腕を組みながら悩み始める中、「……ん、そういえば……」と、サンズは何かを思いだした様子で顎に軽く手を当てた。そして、そのままの格好で記憶の糸を手繰っていたその時、自分の頭の中に()()()()が浮かび、彼はそれをポツリと呟いた。

「……『アンダーテール』」

「え……?」

「いや、フリスク達が持っていったカードにそんな言葉が書いてあったのを思い出したんだが……もしかしたらアレは、オイラ達のクラン名だったんじゃないか?」

「アンダーテール……アンダーが『アンダーグラウンド』を示しているなら、『地下の物語』とでも言ったところかな?」

「恐らくな。だが、本当にそうだとすれば、地下世界で生活をしていたオイラ達にピッタリなクラン名だとは思うんだが、お前さん達はどう思う?」

「ふむ……確かに僕達にピッタリな名前かもしれないね」

「ああ、アタシもそれで良いと思うぞ」

「……へへっ、どうやら決まりみたいだな」

 サンズ達がそんな事を話しながら楽しそうに笑い合っていると、その様子にアズゴアは不思議そうに小首を傾げた。

「皆……何かあったのかい?」

「ああ、オイラ達のクラン名が無事に決まったのさ」

「クラン名……そういえば、私達にはそういう物は無かったね。それで、どんなクラン名になったのかな?」

「『アンダーテール』だよ。どうやら、フリスク達が持っていったカードにそんな言葉が書いてあったみたいで、僕達にピッタリな名前だと思ったからそうする事にしたんだ」

「『アンダーテール』……か。うん、私もこの名前は良い名前だと思うよ」

「ん、分かった。それじゃあアズゴア王、オイラ達――『アンダーテール』の新たな旅立ちとこれからの未来に向けて何か一言頼むぜ」

 ニッと笑うサンズに対して頷いて答えた後、アズゴアは『アンダーテール』と『ロイヤルパラディン』の仲間達を見回し、三叉槍を掲げながら大きな声を上げた。

「皆、今私達の目の前には大きな問題が立ち塞がっている。しかし、仲間達と共に手を取り合えば、きっとどんな問題でも解決する事が出来るのだ。平和と調和を愛し、仲間や世界を守り抜くという『ケツイ』の下、これから共に頑張っていこう!」

『おー!』

『アンダーテール』と『ロイヤルパラディン』という二つのクランのユニット達の声は、彼らを鼓舞するかのように王の間に大きく響き渡った。




いかがでしたでしょうか。今回は惑星クレイに残った組の話でしたが、楽しんで頂けたなら幸いです。
今作品は、現在短編作品として投稿させて頂いてますが、来年から連載作品として投稿をさせて頂きます。投稿予定は未定ですが、投稿開始の際は活動報告などでお知らせさせて頂きますので、よろしくお願いします。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けたらとても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また。


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序章 SIDE:地球
Monologue of a Vanguard


どうも、片倉政実です。今回、書きたい内容が浮かんだので、こちらを投稿させて頂きました。かなり短いですが、お付き合いの程よろしくお願いします。
それでは、始めていきます。


 僕がこのゲーム──『カードファイト!! ヴァンガード』を始めるきっかけとなった物、それはある一枚のカードだ。そのカードの名前は、『ブラスター・ブレード』。白い鎧を纏ったとてもカッコいい姿の騎士のカードだ。このカードとは、僕よりも前からこのゲームを始めていた兄さんに連れられて行ったカードショップで出会い、そのカッコいい姿が僕は一目で好きになり、その場で『ブラスター・ブレード』やその仲間達のカードが入っている『ロイヤルパラディン』のスターターキットを買った。そして、このスターターキットを買ったその時から僕のファイター人生は幕を開けたんだ。

『ロイヤルパラディン』は、絆をモチーフにしているという事もあり、仲間達を手札やデッキから呼び出したり、その力を高め合ったりする事が得意で、僕はそんな『ロイヤルパラディン』のユニット達がとても好きだった。だから、兄さんから余ったカードを貰ったり、パックを買って集めたりしながら僕は自分の『ロイヤルパラディン』のデッキを徐々に強化していった。だけど、どんなに最初のカード達が抜けていっても『ブラスター・ブレード』だけは、決して抜こうとは思わなかった。もちろん、『ブラスター・ブレード』だけが強いわけじゃないし、同じ『ロイヤルパラディン』を使う人の中には『ブラスター・ブレード』を入れていない人もいた。けれど、僕は『ブラスター・ブレード』と一緒に『ロイヤルパラディン』のデッキで勝つ事を目標にして頑張り、それと同時に勝利で自信をつける事で、この弱気な性格を変えていきたいと考えていた。流石に()()とまでは言えないけど、僕に新たな道を示してくれた大切な相棒のような物だったから。

 しかし、現実はやっぱりそう甘くは無く、僕は龍夜(りゅうや)お兄ちゃんとのテストファイト以外ではどうにも勝つ事が出来なかった。それは、僕の引きの悪さだけじゃなく、その場その場の判断力の悪さも影響していた。こんな調子じゃあ、僕は変わる事が出来ない。このまま弱気な僕のままで終わってしまう。

 そんな風に考えていたある日の事、僕は『ブラスター・ブレード』と出会ったあのカードショップで、もう一枚の相棒と出会った。そのカードの名前は、『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』。『ロイヤルパラディン』とは、また違った戦い方をするクランである『リンクジョーカー』のユニットの一体だ。『リンクジョーカー』は、主に『呪縛(ロック)』という能力を使うクランで、『呪縛』というのは簡単に言えば一時的に相手のカードを行動不能に出来る能力だ。その頃、僕は『ロイヤルパラディン』で勝つ事しか頭に無かったけれど、その日は何故か『ロイヤルパラディン』が封入されていないパックを手に取り、何かに導かれるようにそれを買っていた。そして、出てきたのが『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』だった。出てきた瞬間は、その姿がとても怖かったけれど、カードのイラストを見ている内に僕は『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』の姿に慣れ、徐々にカッコいいと思うようになっていった。その後、僕は彼とも一緒に戦いたいと思うようになり、『ロイヤルパラディン』だけじゃなく、()()()()()手に入れたカード以外の『リンクジョーカー』のカードも集めるようになった。そして、それなりに戦えるレベルに組み上げた頃、元から使っていた『ロイヤルパラディン』と一緒に机の上に並べ、各デッキのエース達をイラストが上になるようにして一番上に置いた瞬間、僕はその二枚に思わず声を掛けていた。

『……これからもよろしくね』

 ただのカードであるその二枚に声を掛けたところで、当然何か返事をするわけでは無かった。けれど、まるでそれに答えるようにカードがキラリと光ったような気がして、僕は嬉しくなっていた。そして、その日から僕はこの二つのデッキを使っていったけれど、相変わらず勝率が良いわけではなく、周りからは宝の持ち腐れ、なんて言われる事もあった。けれど、不思議な事にある条件下では一切負ける事が無かった。それは、この二枚のいずれか又は両方が賭けの対象となった時、僕が負けたら『ブラスター・ブレード』と『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を渡さないといけない時だ。その時だけは、何故かいつもよりも頭がスッキリとしている上、僕の負けたくないという思いにカード達が応えてくれているかのようにとても良いタイミングで出てきてくれる。そのため、今でも『ブラスター・ブレード』と『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』は各デッキの中にいて、ファイトの度に活躍をしてくれている。

『いつもありがとう。そして、これからもよろしく』

 そんな言葉を感謝の気持ちを込めて二つのデッキへと述べ、僕は毎日を過ごしている。僕はこの二つのデッキで行うファイトが大好きだし、不満なんかは当然無い。けれど、僕にはいつも胸の中に秘めているある思いがある。それはもっと大きな大会に出たり、世界中のファイターと戦ったりする中で、彼らをもっと活躍させてあげたい。彼らの強さをもっと色んな人に知ってもらいたいという物。今の強さじゃそんなのは夢のまた夢なのは分かっている。けれど、僕はいつも大切な試合以外では負け試合しかさせてあげられていないからこそそう思い、そう願うんだ。

 だから、神様というモノがもしも本当にいて、この願いを聞いているならどうか叶えて欲しい。僕自身も強くなる事を誓うから、どうか彼らの事をもっと活躍させてあげられる場所へ導く事が出来る力を僕に与えて欲しい。このまま弱気な僕でいる事、そして彼らを大きな舞台で活躍させてあげられないなんてのは嫌だから。




いかがでしたでしょうか。今回は、前回の話の中で対話者達が先導者と呼んでいた少年の独白でしたが、楽しんで頂けたなら幸いです。前回も後書きで話させて頂きましたが、今作品は一応短編作品ですが、もしかしたら連載作品として続きを書いていくかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。


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本章
第1話 Vanguard and seekers


どうも、一番好きなクランはロイヤルパラディンの片倉政実です。今回から、今作品の本編を投稿させて頂きます。よろしくお願いします。
それでは、早速第1話を始めていきます。


「はあ……今日もダメだったなぁ……」

 夕暮れ時、ランドセルを背負った一人の少年が溜息をつきながら人が行き交う街の中をとぼとぼと歩いていた。彼の表情はどこか暗く、誰の目から見ても彼が落ち込んでいるのは明らかに分かるほどだった。そして彼は不意に立ち止まると、暗い表情のままで手に持っていたカードデッキを見つめ、とても申し訳なさそうに視界に入っていたデッキのエースであるカードへと声を掛けた。

「ゴメンね、『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』。君の事を今日もあまり活躍させて上げられなくて……」

『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と呼ばれたカードから彼の言葉に対しての答えが返ってくる事は無かったが、カードに描かれている鎌を手にした禍々しい龍の姿に彼は勇気をもらったような気がした事で、ようやく彼の表情にも笑みが浮かんだ。

「ふふ……やっぱり君と()の姿を見ていると、なんだか元気が出てくる気がするなぁ……。もちろん、ただのカードだっていう事は分かってるけど、やっぱり僕にとって君達は相棒と言っても良い存在だから、そんな風に思えるのかな……?」

『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を夕日に翳しながら少年は小首を傾げていたが、やがてクスリと笑いながらカードをデッキに戻すと、服のポケットに入れていたもう一つのカードデッキを取り出し、『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と白い鎧に身を包んだ騎士のカードへ微笑みかけた。

「今日はダメだったけど、今度こそ君達が賭けられていないファイトでも勝てるように頑張るつもりだから、これからもよろしくね。『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』、『ブラスター・ブレード』」

 そして、その言葉に応えるかのように『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』の目と『ブラスター・ブレード』の剣が煌めいたように見えた後、少年はニコリと笑いながら頷き、二つのデッキをポケットにしまい、再び自宅へ向けて歩き始めた。彼の名前は進導龍聖(しんどうりゅうせい)、『カードファイト!! ヴァンガード』という世界中で親しまれているカードゲームのプレイヤーである小学5年生だ。そして、今日も学校帰りに同じプレイヤーである友人達と共に近所のカードショップに寄り、『カードファイト!! ヴァンガード』による勝負──『ファイト』を楽しんでいた。しかし、彼の勝率はいつもあまり芳しくなく、その中には彼の相棒と言えるエース達を活躍させる事すら終わってしまったファイトもあった。そのため、龍聖はエース達に対してその事をいつも申し訳なく思っており、毎日兄に手伝ってもらいながらファイトの技術向上やエースを活躍させるためのデッキ構築の思案などを行っているのだった。

 そして歩き始めてから数分後、自宅の付近まで来たその時、不意に頭の中にある映像が流れ、「……え!?」という声を上げながら龍聖は立ち止まった。龍聖の頭の中に流れたのは、一人のニンゲンがある大きな穴に落ちる光景の他、落ちた先に住む様々な姿の住人達と交流し、時にはそれぞれの思いを胸に戦う光景。そして白いヤギのようなモノに対して微笑みながら手を差し伸べる光景だった。

「……これは、一体……?」

 龍聖は頭の中に流れていく映像に対して疑問の声を上げたが、それに対しての答えは一向に返ってこず、二人のニンゲンが笑顔で握手を交わしている映像を最後にそれは終わりを告げた。そして映像が終わった瞬間、背後からこちらに向かって走ってくる二つの足音が聞こえ、龍聖はゆっくりと後ろを振り返った。すると視界に入ってきたのは、先程までの映像の最後に出て来た青地に紫色のボーダーという服に青いズボンといった服装の細目の人間と緑地に明るいベージュ色のボーダーの服に茶色のズボンという服装の人間──フリスクとキャラの二人だった。

「え……ど、どうして……?」

 あまりに突然の出来事に龍聖の頭がパンクしそうになっていた時、フリスク達は龍聖の目の前で足を止め、息を切らしながら龍聖に話し掛けてきた。

「はぁ……はぁ……ねえ、突然で悪いんだけど、幾つか質問をさせてもらっても良いかな……?」

「う、うん……僕に答えられる事であれば……」

「……うん、ありがとう。それで、質問なんだけど……君は『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と『ブラスター・ブレード』という二枚のカードを持っているよね……?」

「うん、持っているけど……もしかしてそれを賭けてファイトをしようとか!?」

「ううん……そんな事はしないよ。だって君は……その二枚のカードを相棒だと思っているんでしょ? だったらそれを奪うような真似はしないよ……」

「それなら一体どうして……?」

「えーと……それはね──」

 そしてフリスク達は、ゆっくりと息を整えながら自分達がどういった存在であり、何故龍聖に話し掛けたのかについての話し始めた。フリスク達の口から語られる話の内容に、龍聖は徐々に引き込まれていき、フリスク達が話し終えた瞬間にポケットに入れていた二つのデッキを取り出すと、デッキを見ながら嬉しそうな笑みを浮かべた。

「そっか……僕が君達を相棒だと思っているように、君達もそんな風に僕の事を思ってくれていたんだね……」

 微笑みながら龍聖が二つのデッキに語りかける中、キャラは少し不思議そうな様子で龍聖に話し掛けた。

「……ねえ、話をした側がこう訊くのもなんだけどさ……私達の話を疑ったりしないの?」

「……うん、疑わないよ。だって、君達は嘘をついているようには見えないし、僕に対して嘘をついたところで何も得は無いだろうからね」

「……そう」

「それに……君達が来る少し前、まるで君達が来る事を予言していたように君達や様々な人達の映像が不意に頭の中に流れ、その映像から君達がとても良い人なのは分かった。だから、僕は君達の話を信じるよ」

 龍聖がニコリと微笑みかけると、フリスクとキャラはゆっくりと顔を見合わせ、同時にクスリと笑ってから龍聖の方へ向き直った。

「……うん、ありがとうね、先導者君」

「どういたしまして。それと、僕には進導龍聖っていう名前があるから、出来ればそっちで呼んでもらえると嬉しいかな?」

「うん、分かった。さてと……それじゃあせっかくだから、ボク達も改めて自己紹介をしようかな?」

「うん、それが良いと思うよ、フリスク」

「分かった」

 キャラの答えに頷くと、フリスクは微笑みながら龍聖に対して自己紹介を始めた。

「ボクはフリスク。こことは別の地球に住むニンゲンの一人で、『セーブ』や『ロード』と呼ばれる不思議な能力を持ってるよ」

「そして私はキャラ。フリスクと同じニンゲンだけど、向こうではモンスターの家族と一緒に暮らしているよ」

「モンスターの家族……」

「うん。私達が住む地球には、ニンゲンとモンスターの二種族がいて、少し前まではモンスター達はイビト山という山の地下にある地下世界に閉じ込められていたんだけど、フリスクが地下世界に来た事でモンスター達は再び地上へと出てくる事が出来、今では二種族が交流し合いながら生活をしているんだ」

「けれど、次元の歪みの影響でボク達はこの世界へと飛ばされ、その先にあった『惑星クレイ』で『対話者(トーカー)』さん達と出会い、お互いの利害のために協力し合っているわけだね」

「なるほど……それで、君達がこの地球に来たのはフリスクの力で創り出されたカード達を渡しに来たから、だったよね?」

「うん。『対話者』さんや『ブラスター・ブレード』さん、そしてボクの三人が揃って君の姿を『視た』事から、ボク達のカードと君が関係しているのは、まず間違いないと思う」

「まあ……リュウセイからすれば、いきなりそんな事を言われてスゴく混乱してるだろうけどね」

「そう……だね。僕みたいな大切な相棒が賭けられた時くらいしか勝てないファイターが、そんな物語の登場人物みたいな出来事に遭うなんて思ってもみなかったけど、君達の事を信じると決めた以上、最後まで君達の事を信じてみるよ」

「リュウセイ……うん、ありがとう。それじゃあ早速カードを渡しちゃうね」

 フリスクはニコリと笑ってからズボンのポケットから件のカードを取り出し、それを龍聖へ差しだした。龍聖は「ありがとう」と言いながらそれを受け取ると、パラパラと軽く捲りながらカードの内容に目を向けた。

「……スケルトンにロボット、半漁人に恐竜みたいなモンスター……君達の仲間には本当に色々な人がいるんだね」

「そうだね。でも、皆大切な仲間で友達だよ」

「大切な仲間で友達……ふふ、なんか良いね。それで、君達のクランは『アンダーテール』っていうみたいだね」

「クラン……確か、『ロイヤルパラディン』や『リンクジョーカー』のようにユニットがそれぞれ所属している物だったよね?」

「うん。クランはデッキを組む際にはとても重要な物で、別に複数のクランを織り交ぜたデッキを組んでも良いんだけど、基本的にはクランは統一した方が良いかな。旧シリーズって呼ばれてるカード群にある『盟主』っていう能力を持ったユニットをデッキに組み込むなら尚更ね」

「『盟主』……?」

「うん。簡単に言えば、自分の場に共通しないクランのユニットがいる時に攻撃が出来なくなる能力で、例を挙げるなら『ロイヤルパラディン』の『盟主』持ちのユニットがいても、『リンクジョーカー』のユニットが一枚でも場にいたら、その『盟主』持ちのユニットは攻撃が出来なくなる感じだね。もっとも、この『アンダーテール』の中にはそれを持っているユニットはいないみたいだけど」

「……そっか」

 カードを熱心に見ながら言う龍聖の言葉にフリスクがどこか嬉しそうな笑みを浮かべていたその時、何かを思い出した様子のキャラがポンポンとフリスクの肩を叩いた。

「フリスク、カードは渡し終えたんだし、私達はそろそろ帰ろう。向こうの皆も何か新しい発見があったかもしれないし」

「あ……それもそうだね。ちょっと名残惜しいけど、帰らないと皆が心配するからね」

「うん」

 そして、フリスクは未だに熱心にカードの内容に目を向けている龍聖へ再び視線を向けると、その様子に苦笑いを浮かべながら声を掛けた。

「ねえ、リュウセイ」

「……うん? どうしたの?」

「えっとね……スゴく申し訳ないんだけど、そろそろ『惑星クレイ』に帰らないといけないんだ」

「あ、そっか……『惑星クレイ』には、君達の帰りを待っている仲間達がいるんだもんね」

「うん……リュウセイとはもっと話していたいところだけど、皆の方の進捗状況も気になるし、一度帰って安心させてあげたいからね」

「……うん、僕もそれが良いと思う。大切な人を安心させてあげたいという気持ちは、僕も分かるからね」

「……そっか」

 フリスクはニコリと笑いながら言うと、体の奥にある力を目覚めさせるイメージを浮かべながらキャラと手を繋ぎ、能力を使用する準備を始めた。そして『惑星クレイ』から地球に来る時にも感じた『大丈夫だという感覚』で準備が出来た事を確認した後、龍聖に声を掛けた。

「じゃあね、リュウセイ」

「リュウセイ、私達のカードをしっかりと使いこなしてね?」

「うん、もちろんだよ。それじゃあバイバイ、二人とも」

「「うん!」」

 フリスクとキャラは同時に返事をすると、龍聖に向かって手を振りながら『惑星クレイ』へ転送しようとした。しかし──。

「あ、あれ……?」

 いつまで経っても戻る様子が無かったため、フリスクは「おかしいな……」と独り言ちながら再び体の奥にある力を目覚めさせるイメージを浮かべ、能力を使う準備を整えた後、改めて自分達を『惑星クレイ』へ転送しようとした。だが、何度同じ事を繰り返しても転送される様子が無かったため、フリスクの顔は驚愕の色に染まった。

「嘘でしょ……『惑星クレイ』に()()()()……!?」

「戻れないって……まさか、あの転送能力は一歩通行だったとか!?」

「そんなはずは……でも、どうして戻れないんだろう……?」

 フリスクとキャラの表情に不安と恐怖の色が浮かび始めたその時、突然フリスクのポケットから甲高い音が鳴り始めた。

「この音って……」

「地下世界に来たばかりの頃にトリエルさんが持たせてくれた携帯電話の着信音……!?」

 フリスクはすぐに携帯電話を取り出すと、驚きから震える手で携帯電話を操作し、掛かってきた着信に出た。

「……もしもし?」

『もしもし、フリスク君。そっちの進み具合はどうかな?』

「ガ、ガスター博士……」

 電話を掛けてきた人物──ガスター博士の声にフリスクは安心感から目に涙を浮かべながら答えると、『惑星クレイ』にいるガスター博士はフリスクの様子に対して『ふむ……』と声を漏らした。

『その様子だと……何かトラブルが発生したようだね。フリスク君、現在の状況を詳しく教えてくれるかな?』

「あ、はい。実は──」

 フリスクは現状に焦りと不安を感じながらも龍聖に事情を理解してもらった事やカードを渡せた事、『惑星クレイ』と地球を行き来できなくなっている事を話した。そして話が終わると、ガスター博士は『……なるほど』と少し不安げに独り言ちたが、フリスク達をこれ以上不安にさせないためにすぐに気持ちを切り替え、落ち着いた調子で話を始めた。

『……こちら側からそちら側に行けた事は間違いないし、本当ならば戻って来る事も可能なはず。という事は、行き来をするには何か条件があるのかもしれないね』

「条件……ですか?」

『ああ。そしてそれはたぶん……先程君が渡したあのカードなんだと思う』

「カードが行き来するための条件……」

『まあ、まだこれは仮定に過ぎないけどね。ただ、そのカードを渡す事は私達の目的の一つだったわけだから、一時的に借りてそれを試すのは出来るから、それは後でやってみるとしても、まだ先導者君──リュウセイ君から正式に返してもらうわけにもいかない。だから、とても申し訳ないが……こちらで何か別の方法を見つけるまでは、そのリュウセイ君の世話になってくれ』

「……分かりました。ところで……さっきから疑問だったんですが、どうしてこっちとそっちで通話が出来ているんですか?」

『うん……説明してあげたいのはやまやまなんだが、実はその理由は私達にも分かっていないんだ』

「え……それじゃあどうして電話を?」

『先程、『ロイヤルパラディン』側の王とアズゴア王の間で協力関係が結ばれたんだが、それをどうにか伝えようと待機組で考えていた時、メタトン君が電話を掛けてみたらどうかという案を出してくれてね。ダメ元でそれを試したところ、このように通話が可能だったというわけさ』

「なるほど……」

『とりあえず、何か新発見があったら逐一報告するよ。そちらも何か新たな出来事があったり、トラブルが発生したりした時には私の方へ連絡をしてくれ。まあ、まだ試してはいないが、他の皆の携帯電話とも繋がるだろうから、話したい事が出来た時や心細くなった時には電話を掛けると良い。こちら側の皆も君達の事を心配しているからね』

「……分かりました。ありがとうございます、ガスター博士」

『どういたしまして。それでは、まずは君達の現状を話さないといけないから、とりあえずこれで失礼するよ。フリスク君、キャラ君にもよろしく』

「はい。ガスター博士、皆にもボク達は無事という事を伝えてもらっても良いですか?」

『ああ、もちろんだ。では……』

 そして、ガスター博士との通話が終わると、キャラとリュウセイが不安げな様子でフリスクに話し掛けた。

「フリスク……どうだった?」

「うん。ガスター博士が言うには、そのカードがボク達が『惑星クレイ』と地球を行き来するための条件かもしれないって。ただ、リュウセイから返してもらうわけにもいかないから、とりあえず後でその実験をする事にはなったよ。それと……行き来するための他の条件を見つけるまでは、リュウセイにお世話になった方が良いって言ってたんだけど……」

「リュウセイの世話になるって事は、リュウセイの家に泊まらせてもらうって事だよね……。でも、それは流石に申し訳ないというか……」

「そうだよね……」

 フリスクとキャラが暗い表情で話す中、龍聖が「大丈夫だよ」とフリスク達にニコリと微笑みかけると、フリスク達は同時に驚いた様子で龍聖の方へ視線を向けた。

「大丈夫って……?」

「実は……今、お父さん達が仕事の都合でよそに行ってて、ウチには僕と龍夜(りゅうや)お兄ちゃんの二人しか住んでないんだ。だから、龍夜お兄ちゃんさえ説得できれば、何とかなると思う。まあ……もし説得できてもお父さん達の部屋を使うのは難しいと思うから、二人には屋根裏部屋で寝泊まりしてもらう事にはなるけど……それでも良いかな?」

「うん、もちろんだよ。でも……問題はお兄さんをどう説得するかだよね……」

「うん……リュウセイみたいにすぐに信じてくれるなら全部話しても良いけど、そこが分からない以上はどうにも出来ないよね」

「確かにそうだよね……」

 三人が腕を組みながらどうしたものかと考えていた時、「……龍聖?」という声が聞こえ、龍聖達がそちらに顔を向けると、そこにいたのは学生服姿の一人の男子高校生だった。

「あ、龍夜お兄ちゃん。今帰り?」

「ああ、部活動が少し長引いちゃったからな。ところで、そっちの二人は?」

「あ、うん……今日知り合った友達だよ」

「ん……そっか」

「……えっと、それでね……実は龍夜お兄ちゃんにちょっと話さないといけない事があるんだけど……」

 龍聖が話し辛そうにしながら不安げな表情を浮かべていると、龍夜はニコリと微笑みかけながら弟の肩をポンと軽く叩いた。

「龍聖、落ち着いて話してごらん。大丈夫、話はしっかりと聞くからさ」

「龍夜お兄ちゃん……うん、ありがとう」

「どういたしまして。それで、何を話したいんだ?」

「うん、あのね──」

 そして、龍聖はフリスク達と出会った経緯やフリスク達が描かれたカードの件、フリスク達を自宅に泊めたい件などを話した。その間、龍夜は怪訝そうな表情などを一切浮かべず、龍聖が話し終わるまで優しい笑みを浮かべ続けていた。

「……っていう事なんだけど、良いかな……?」

「…………」

「……やっぱり、ダメ……かな?」

「……いや、良いよ。そういう事ならこの二人を放っておくわけにはいかないからさ」

 龍夜がニコッと笑いながら答えると、龍聖とフリスクは心から安心した様子で胸を撫で下ろしたが、キャラだけは不思議そうに小首を傾げた。

「……でも、どうして私達の話を信じてくれたんですか? 私達と出会う前に予感めいた物を感じていたリュウセイならまだしも、お兄さん──リュウヤさんは私達とは本当に初対面なのに……」

「はは、確かにそうだ。でも、リュウセイの話を聞いていた時、君達の目も見ていたんだけど、そこに俺を騙してやろうという思いとか悪意みたいなのとかは感じなかった。むしろ、心からの助けを求めているような感じだった。だから……かな?」

「リュウヤさん……」

「……まあ、ウチはそんなに裕福っていうわけでも無いけど、父さん達からの仕送りや俺のバイト代なんかでそこそこな暮らしは出来ているから、生活面は安心してくれ」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとうございます、リュウヤさん」

「どういたしまして。さて……それじゃあ皆、早速帰ろうか」

「うん!」

「「はい」」

 リュウヤの言葉にリュウセイが嬉しそうに、そしてフリスクとキャラが揃って返事をした後、リュウセイ達は様々な話をしながらリュウセイ達の家に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 その日の夜、龍聖が自室でデッキの調整を行っていると、突如コンコンとドアをノックする音が聞こえ、「どうぞ」と言いながら龍聖はドアの方へ顔を向けた。すると、ドアを開けて入ってきたのは、嬉しそうな笑みを浮かべたフリスクとキャラの二人であり、フリスクの手には『アンダーテール』のカードが握られていた。龍聖はその二人の様子からある事を感じ取ったが、それは直接二人の口からも聞きたかったため、ニコリと笑いながらフリスクに話し掛けた。

「その様子だと……どうやら『実験』は成功したみたいだね」

「うん、ガスター博士の予想通りだったよ」

「この『アンダーテール』のカード群は、『惑星クレイ』と地球を行き来するためのパスポートのような物なのは間違いないようだね」

「ただ、一枚でも欠けていればそのパスポートとしての機能は発揮されないみたいだから、どれか一枚だけ借りるみたいな事は出来ないかな」

「……つまり、仲間は一人でも欠けちゃいけないって事だね」

「そうなるね。だから、向こうに戻る時には今みたいにカードを全て借りる事になるけど、その時はゴメンね」

「ううん、別に良いよ。それで、向こうに残っている家族や友達の様子はどうだった?」

「うん、皆元気だったよ。それに、『ロイヤルパラディン』だけじゃなく、『ユナイテッド・サンクチュアリ』の他クランや新世代の『リンクジョーカー』達とも協力関係を結べたみたいで、次は他の国家の様子を見に行きながら別のクランとも協力関係を結びに行くつもりみたい」

「うん、それなら良かったよ」

 嬉しそうに話すフリスクの様子に龍聖が口元を綻ばせながら答える中、キャラはふと机の上に広げられているカードへ視線を向けた。

「……あれ? もしかして、デッキの調整中だった?」

「うん。まあ、いつもやっている事ではあるけどね」

「そっか……ねえ、リュウセイ。私達もそのカードゲームを覚えたいって言ったらどう思う?」

「え……それはもちろん嬉しいけど、いきなりどうしたの?」

「うん……ガスター博士の話だとしばらくはここにお世話になるわけだから、それなら私達も覚えた方が良いんじゃないかってフリスクと話し合ったんだ」

「この世界でそのカードゲームが流行っているのは知ってるし、いつかは誰かとやる事にもなるだろうから、覚えておいても損はないと思ったんだ。それに、しっかりと覚えてしまえば、龍聖の練習相手にもなれるしね」

「フリスク……キャラ……」

 和やかに微笑むフリスク達に対して龍聖は少し驚いたような表情を浮かべていたが、すぐに嬉しそうに微笑み返した。

「うん……ありがとう、二人とも」

「どういたしまして」

「それじゃあ早速色々教えてもらっても良いかな?」

「うん、もちろん!」

 そして、フリスクとキャラが机に近付いた後、龍聖の部屋は龍聖達の楽しそうな話し声で満ちていった。




第1話、いかがでしたでしょうか。次回は『アンダーテール』デッキでのファイト回……と言いたいところですが、恐らく次回はファイト回にはならないと思います。ですが、カードの効果やデッキの内容などは考えていますので、近い内には書けると思います。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。


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第2話 The birth of the underground world Fighter

どうも、一番好きなロイヤルパラディンのユニットはブラスター・ブレードの片倉政実です。今回はファイト回ではなく、ちょっとした世界観の説明回やメインキャラクターの登場回です。
それでは、第2話を始めていきます。


 異世界の住人であるフリスクとキャラとの出会いを果たした翌日、部屋のドアがノックされる音で龍聖は目を覚ますと、ベッドから体をゆっくりと起こし、眠たそうに目を擦りながらボーッとしたままで「はーい……」と答えた。すると、ドアはガチャッという音を立てて開き、そのままゆっくりと開いていくと同時に、龍夜が室内へと静かに入って来た。

「おはよう、りゅうせ──あはは、なんだかスゴく眠そうだね」

「……うん、昨日の夜にフリスク達にヴァンガードの事を色々と教えていたから……」

「あ……なるほど。それで、いつもよりも遅く眠ったから、そんなに眠そうなのか」

 龍夜は龍聖の返答に納得顔で頷いた後、勉強机の上に広げられたカードの山へ視線を向けると、「……よっぽど楽しかったんだな」と苦笑いを浮かべながら独り言ちた。そして、再び龍聖の方へ視線を向けたその時、廊下の方から二人分の足音が聞こえたかと思うと、ドアの陰から寝間着姿のフリスク達がヒョコッと顔を出した。

「おはようございます、リュウヤさん」

「リュウヤさん、おはようございます」

「うん、おはよう、二人とも。昨夜はゆっくりと眠れたかな?」

「はい、もちろんです」

「ゆっくりと眠れすぎてフリスクが中々起きられないくらいには……ね」

「ちょ……ちょっと、キャラ!」

「でも、それは嘘じゃないでしょ? まあ、向こうでお泊まり会をした時もそんな感じだったし、これは元からなのかもしれないけどね」

「う……それは確かに否定できないけど……」

「ふふ、だと思った。けど、それだけフリスクが落ちつけてる証拠なわけだし、悪い事では無いけどね」

 キャラがニコリと笑いながらそう言うと、「……まあね」とフリスクは安心したように笑みを浮かべた。そしてそんな二人の様子を龍夜は微笑ましそうな様子で見ていたが、龍聖の机の上に置かれた時計に目を向けると、両手を軽くパンパンと打ち合わせながら龍聖達に声を掛けた。

「さあ、そろそろ朝ご飯にしよう。せっかくの休日なんだし、時間は無駄にしないようにしないといけないからさ」

『はーい』

 龍聖はフリスク達と声を揃えて返事をした後、ゆっくりとベッドから体を出し、大きな欠伸をしながら龍夜達と共に自室を出ていった。

 

 

 

 

『いただきます』

 数分後、リビングに着いた龍聖達は、それぞれの席につくと、声を揃えて食事の挨拶をした。そして食べ始めてから数分が経った頃、「そういえば……」と龍夜は何かを思い出したように声を上げ、フリスク達と話をしながら朝食を食べていた龍聖に視線を移しながら声を掛けた。

「龍聖、昨日の夜に二人とヴァンガードの事について話したって言っていたけど、どこまで説明したんだ?」

「えっと……たしか用語とルールの簡単な説明と各クランの特色ぐらいだったかな? だから、今日は二人がもっとカードに触れるために一緒にカードショップまで行くつもりで、出来るなら二人が使いたいクランまでは見つけて、ファイト出来るまで行ければいいかなと思ってるよ」

「そっか。個人的には愛用している『シャドウパラディン』を推したいところだけど、勧めたところで必ずしも合うわけではないし、無理には推さないでおくよ」

「『シャドウパラディン』……たしか『ロイヤルパラディン』みたいなクランでしたよね?」

「そうだね。簡単に言えば、『シャドウパラディン』は『ロイヤルパラディン』と『ゴールドパラディン』のように仲間を呼ぶ事を得意としているクランだけど、『絆』をテーマとした山札からのコールやパワーアップの手段の豊富さを誇る『ロイヤルパラディン』、『イマジナリーギフト』の力で仲間を数多く場に呼び出し、様々なスキルで相手と戦う『ゴールドパラディン』とは違い、『シャドウパラディン』には『ユニットの退却』をコストにするユニットがいる事が特徴かな」

「『ユニットの退却』がコスト……つまり、勝利のために仲間を犠牲にする……と?」

「悪い言い方をすればそうなるかもしれない。けれど、俺は『ユニットの退却』は『仲間を犠牲にする事』じゃなく、『力を一時的に借りる事』だと考えているよ。『ロイヤルパラディン』が絆の力を用いて表舞台で光輝く英雄達で、『ゴールドパラディン』が煌びやかな鎧をまとって民達に希望を与える英雄達ならば、『シャドウパラディン』は仲間の力を一時的に奪う形で借りてでも影のように任務を遂行する英雄達。そんな感じにね」

「なるほど……」

「ああ。だから俺は、『シャドウパラディン』のユニット達が大好きなんだ。どこか邪悪な雰囲気ではあるけれど、自分達の目的を果たすためにしっかりと進んでいくそんな勇ましき黒騎士達がね」

 そう楽しげに語る龍夜の表情は、どこか誇らしげであり、そんな龍夜の様子に龍聖達が笑みを浮かべていると、龍夜は優しい笑みを浮かべながら再び口を開いた。

「まあ、今の話は俺個人の意見だから、参考程度に聞いてくれて構わないよ。もっとも、参考になったかは分からないけどね」

「……いえ、とても参考になりましたよ。そうだよね、キャラ」

「うん。それに……龍夜さんの『シャドウパラディン』への思いもとても伝わってきましたし、そんな風に思えるクランを見つけたいと思いました」

「ははっ、そっか。それなら良かったよ」

 フリスク達の言葉に龍夜は嬉しそうに笑いながら答えた後、リビングの壁掛け時計へと視線を向けると、「……っと、ちょっとゆっくりし過ぎたかな」と呟いてから龍聖の方へ視線を移した。

「もう少し話していたいところだけど、そろそろ部活の時間みたいだから、俺はさっさと食べてしまうよ。龍聖、すまないけど後片付けは頼んで良いかな? それと……カード代は後で精算するから、もし買うまでいくようなら払っておいてくれ」

「うん、もちろんだよ。今日も部活動頑張ってきてね、龍夜お兄ちゃん」

「ああ」

 微笑みながら答えると、龍夜は急いで朝食を食べ始めた。そして数分足らずで食べ終えると、「ごちそうさまでした」と手を合わせながら言い、自分の食器をシンクまで運んだ後、急いでリビングを出ていった。フリスク達はそんな龍夜の様子を不思議そうな様子で見た後、微笑みながらリビングのドアの方を見ている龍聖に問い掛けた。

「ねえ、リュウセイ。リュウヤさん、何だか急いでいたようだけど、何かあったの?」

「あ、うん。今日は『CF(カードファイト)部の』活動がある日だから、ちょっと急いでるみたいだよ」

「『CF部』?」

「うん。龍夜お兄ちゃんが学校で入っている部活動、言い換えれば集まりみたいな物で、日々ヴァンガードの戦術についての研究や特訓のためのファイトをしてるんだよ」

「へえ……そんな物があるんだ。という事は、リュウセイもそういうのに入ってるの?」

「まあね。ただ……フリスク達も知ってる通り、僕はそんなに強くないから、いつも友達から馬鹿にされちゃってるんだよね……」

「たしか、『ブラスター・ブレード』と『カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を賭けた勝負以外は、全然勝てないんだったよね?」

「うん。一応、それ以外のファイトでも勝てる時はあるけど、勝てない時の方がやっぱり多いかな。だから、いつも持っているカードを色々見てみたり、龍夜お兄ちゃんに相談したりしながら強くなるために日々頑張ってるんだ。このまま負けっぱなしなのも良くないし、彼らをしっかりと活躍させてあげたいからね」

 拳を硬く握りながら真剣な表情を浮かべて言うリュウセイの姿に、フリスクとキャラは一度顔を見合わせた。そして二人同時にクスリと笑うと、フリスクは微笑みを浮かべながらリュウセイに話し掛けた。

「リュウセイは本当に彼らの事を大事に想っているんだね」

「うん、もちろんだよ。何と言っても『ブラスター・ブレード』と『カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』はとても大切な僕の相棒だからね。そんな彼らから『先導者』と呼ばれている以上、これからはもっともっと頑張っていくよ。もちろん、新しい仲間である君達『アンダーテール』の皆とも一緒にね」

「……ふふ、そっか。それならボク達もその思いには精一杯応えないといけないかな。ね、キャラ」

「そうだね。まあ、私達が戦う機会はあまり無いかもしれないけど、もしその時が来たら全力を出させてもらうよ」

「うん、その時はよろしくね」

「うん、了解」

「了解」

 フリスクとキャラの返事に対し、嬉しそうに頷いた後、仲良く話しながら朝食を食べ続ける二人の姿にクスリと笑い、龍聖は自分自身も再び朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

 朝食後、後片付けや戸締まりを終えた龍聖達は、近所にあるというカードショップへ向けて話しながら歩いていた。

「カードショップかぁ……向こうでは行った事が無いから、スゴく楽しみだなぁ……」

「フリスク達の住んでる『地球』では、何か流行ってるカードゲームって無いの?」

「うーん……特には無かったと思う。でも、『ニンゲン』と『モンスター』が手を取り合う事で、何か新しい物は生まれていくと思うし、その時はボク達もやってみようかな」

「そうだね。でもまずは……『カードファイト! ヴァンガード』のルールや戦術なんかをしっかりと覚えないといけないね。昨夜、リュウセイに説明をしてもらったとは言え、まだまだ知らない事は多いから」

「うん、そうだね。ところで……今から行くカードショップって、どんなところなの?」

「今から行くのは、『カードステーション』っていうところで、ボク達だけじゃなく、色々な人達が日々訪れているところだよ。それに、あそこならファイトテーブルも結構多いし、二人も他の人達がやってるところを見る機会は多くなると思うよ」

「なるほど……」

「因みに、『カードステーション』という名前の由来は、買い取りや販売でカード達を様々なファイター達という『駅』との中継駅になりたいという店主さんの思いがあったかららしいよ」

「なるほどね。まあ、それなら私達という『駅』にも色々なカード達を発車してほしいところだね。もっとも、どんなカードでも使いこなしてみせるつもりだけど」

「ふふ、キャラならたしかに出来そうだね──っと、二人とも着いたよ」

 龍聖の声でフリスク達が横へ視線を向けると、そこには『カードステーション』と書かれた銀色の看板が掲げられた一軒の大きめな建物があり、それに対してフリスクは嬉しそうな笑みを浮かべた。

「ここが『カードステーション』……! ここに色々なカードが置いてあるんだよね?」

「そうだね。一つにつき数枚が入ったカードパックから特定のカードだけを買えるシングル売り、色々なカードが一つの箱の中に入ってるストレージまで色々な物があるよ。でも、フリスク達の場合は、スタートデッキを買うのが一番かな」

「スタートデッキ……?」

「うん、そう。でも、それについては入ってから説明するから、まずは中に入ろうか」

「うん、分かった」

「了解だよ」

 そして、自動ドアをくぐって中へ入ると、まだ客がいない店内のレジカウンターで作業をしていたオレンジ色のエプロン姿の短い銀髪の男性が龍聖を見ながらニコリと笑った。

「いらっしゃい、龍聖君──おや、今日は新しいお友達を連れてるようだね」

「こんにちは、拳輔(けんすけ)さん。彼女らは昨日できた新しい友達で、今日は彼女らに『カードファイト! ヴァンガード』のルールを教えたり、使ってみたいユニットがあるかを見に来たんです」

「ははっ、なるほど。新しいヴァンガードファイターの誕生は、カードショップの店主としても同じヴァンガードファイターとしても大歓迎だよ」

 拳輔と呼ばれた男性がニコニコと笑いながら言うと、龍聖は拳輔を手で指し示しながらフリスク達に視線を向けた。

「フリスク、キャラ、この人は『カードステーション』の店主で、『ノヴァグラップラー』っていうクランを使っている目加田拳輔(めかたけんすけ)さん。とってもカードについて詳しいし、ファイトも強いんだ」

「そうなんだ。えっと……拳輔さん、ボクはフリスクといいます。今はちょっと事情があって、龍聖のお家にお世話になっているんです。これからよろしくお願いします」

「私はキャラ、フリスクと同じで龍聖のお家にお世話になっています。これからよろしくお願いします、拳輔さん」

「うん、こちらこそよろしく。それにしても……まさか龍聖君にこんなに可愛らしいお友達が出来たなんてね。これは()()()()()が黙ってなさそうだ」

「あはは……確かにそうかもしれませんね」

 拳輔の言葉を聞いて龍聖が苦笑いを浮かべていると、その様子にフリスクはキャラと顔を見合わせた後、不思議そうに龍聖に話し掛けた。

「ねえ、リュウセイ。そのあの子や彼らっていうのは、龍聖の友達なの?」

「うん、そうだよ。ボクと同じ『CFクラブ』に所属しているんだけど──」

 その時、「……あーっ!」という声が店奥から聞こえ、龍聖達が揃ってそちらに視線を向けると、そこではピンク色のパーカーに若草色のスカートといった服装の赤いツインテールの少女が驚愕した様子で龍聖達の事を見ており、少女の姿に拳輔は小さく溜息をついた。

「……聖凪(せいな)、店内ではあまり大声を出すなってあれ程……」

「あ、ごめんなさい……って、それどころじゃなくて! 龍聖君、隣にいる子達は一体誰!?」

「え? ちょっと事情があって、昨日からウチの屋根裏部屋に住んでもらってる子達だよ。それで、今日は彼女らに『カードファイト! ヴァンガード』のルールを教えたり、使ってみたいユニットがあるかを見たりしようと思ってるんだ」

「……つ、つまり……その子達とは何も無い……って事で良いんだよね?」

「……とりあえず、聖凪ちゃんが思っているような事は何も無いよ」

「そ、そっか……」

 龍聖の言葉に聖凪はホッとしながら胸を撫で下ろすと、人懐こそうな笑みを浮かべながらフリスク達へと近付き、スッと右手を差しだした。

「突然変な事を言いだして本当にゴメンね。私は目加田聖凪(めかたせいな)、苗字から分かると思うけど、私は拳輔お兄ちゃんの妹だよ」

「セイナ、だね。ボクはフリスク、そしてこっちはキャラだよ」

「よろしくね、セイナ」

「うん、こちらこそよろしくね」

 聖凪がフリスク達と握手を交わすと、フリスクは小首を傾げながらセイナに問い掛けた。

「ところでなんだけど……もしかしなくてもセイナはリュウセイの事が好きだよね?」

「え……う、うん……」

「やっぱりね。でも、安心して。たしかにリュウセイは優しくて素晴らしい子だと思うけど、ボク達にとってはあくまでも大切な友人というだけであって、そういう対象になる事は無いからさ。ね、キャラ」

「まあ、そうだね。でも、セイナがうかうかしてると、いつの間にか……って事も──」

「そ、それはダメ!!」

「……ふふ、ゴメンゴメン。今のはまったくの冗談だよ。だから、安心してよ」

「キャラ……もう、驚かさないでよ!」

「ふふっ……はいはい」

 安心半分怒り半分といった様子の聖凪の姿にキャラはクスリと笑った後、そのまま龍聖へ視線を移した。

「……それで、リュウセイはそれを聞いてどう思ったのかな?」

「……え、いや……聖凪ちゃんの気持ちは前から知ってるし、もちろん嬉しいけど……そういうのはまだ早いと思ってる……かな?」

「そう。まあ、お互いに好きではあるみたいだし、これ以上は突かないでおこうかな」

「……うん、そうしてもらえると嬉しいかな」

「うん、了解。ところで……セイナもヴァンガードファイターなのかな?」

「うん。私が使ってるのは、龍聖君と同じ『ロイヤルパラディン』だけど、デッキ内容は結構違うかな」

「……あれ、そうなの?」

「うん。龍聖君は『ブラスター・ブレード』がメインで活躍するように組まれたデッキだけど、私は『ソウルセイバー・ドラゴン』っていうユニットがメインのデッキだから、ところどころ同じユニットが入ってるくらいで、後は全部違うかな」

「なるほど……」

「因みに……二人は最初はどのクランを使いたいっていうのは、少しでも決まってる?」

 その聖凪の問い掛けにフリスク達はコクリと頷きながら答えた。

「ボクは二人と同じ『ロイヤルパラディン』を最初に使いたいかな。昨日、用語やルールを簡単に説明してもらった時、『ロイヤルパラディン』を使って説明してもらったんだけど、その時に『ロイヤルパラディン』の連携力がとてもスゴいと思って、もし使うなら『ロイヤルパラディン』が良いかなって思ったんだ」

「なるほど……キャラは?」

「私はリュウヤさんと同じで『シャドウパラディン』かな。今朝、リュウヤさんから『シャドウパラディン』について話を聞いた時に良いなって思ったのもあるけど、『ロイヤルパラディン』と『シャドウパラディン』はなんだか対になる存在みたいだから、それならフリスクと対になるのも面白そうかなと思ってね」

「……あれ? という事は、ボクが『ロイヤルパラディン』を選ぶのを知ってたの?」

「まあね。フリスク、『ロイヤルパラディン』を結構気に入ってるようだったし、仲間と共に戦うみたいなのは好きでしょ?」

「ふふ、まあね」

「ふふっ、だと思ったよ。という事で、フリスクは『ロイヤルパラディン』、私は『シャドウパラディン』にしようかな」

「そっか……という事は、二人とも『イマジナリーギフト』が『フォース』のクランになるんだね」

「『イマジナリーギフト』……たしか、各クランに割り振られた能力なんだっけ?」

「そうだよ。『イマジナリーギフト』には万能型の『フォース』に攻撃型の『アクセル』、守備型の『プロテクト』の三つがあるんだけど、置かれたサークルにいるユニットのパワーを上げる『フォースⅠ』とパワーじゃなくクリティカルを上げる『フォースⅡ』みたいに更に二つに分かれていて、また少しだけ与えられる能力に違いがあるの。そして、そのファイト中に『イマジナリーギフト』を獲得したら、もう一つの方はそのファイト中には獲得できないから、そのデッキに合った方を選ばないといけないね」

「なるほど……やっぱり、中々奥が深いんだね……」

「そうかもしれないけど、そういう点も『カードファイト! ヴァンガード』の面白いところだと思ってるよ。それに、結構運の要素も絡んでくるから、スタートデッキを買ったばかりの人が、結構やってる人に勝つなんていうこども普通にあるしね」

「そうなんだ……という事は、たとえばボクとリュウセイがファイトして、ボクが勝つみたいな事も普通にあるんだね」

「そういう事。因みに、拳輔お兄ちゃんの『ノヴァグラップラー』は、『アクセル』っていう『イマジナリーギフト』を持っていて、これは主に呼び出せるユニットの数を増やせる『イマジナリーギフト』だね」

「なるほど……拳輔さん、『アクセル』にも『フォース』みたいに違いはあるんですか?」

「うん、もちろんあるよ。『アクセルⅠ』はサークルを増やす上にそこに置かれたユニットのパワーを大きく上げて、『アクセルⅡ』はパワーの上がり方は控えめだけど、獲得する度にデッキからカードを1枚ドロー出来るってところかな。因みに、もう一つの『プロテクト』は、さっき聖凪が言ったように守備型の『イマジナリーギフト』で、『プロテクトⅠ』は相手からのアタックを完全に防ぐ事が出来る疑似カードの『プロテクト』を手札に加え、『プロテクトⅡ』は置かれたサークルにいるユニットのパワーを上げる上に他のユニットへのアタックをガードしたくて『インターセプト』という行動をする時、ガードをするのに必要なシールドの値を上げられるんだ。まあ、今は使う予定のクランが持つ『フォース』の違いだけしっかりと覚えて、『アクセル』と『プロテクト』に関してはとりあえず覚えておく程度でも問題は無いよ」

「「分かりました」」

 フリスクとキャラが頷きながら同時に返事をすると、拳輔は満足げに頷き、「さてと……」と言いながら商品が納められている棚へと視線を向けた。

「それじゃあ……今回は『ロイヤルパラディン』と『シャドウパラディン』のスタートデッキを一つずつって事で良いのかな?」

「はい、お願いします」

「うん、分かった。後……今、ちょっとしたキャンペーン期間中だったから、二人には『フォースⅡ』の『ギフトマーカー』もつけておくよ。パワーこそ上がらないけど、相手に与えられるダメージが上がる分、いざという時にはかなりのプレッシャーを掛けられるから、上手く使えるように研究をしてみてね」

「はい、ありがとうございます!」

「ありがとうございます、拳輔さん」

「どういたしまして」

 拳輔はニコリと笑いながら答えた後、棚から『ロイヤルパラディン』と『シャドウパラディン』のスタートデッキを一つずつ手に取り、それをレジカウンターに置いた。そして、財布を取り出しながら龍聖がレジカウンターに近づき、拳輔が「おや……」と少し驚いた様子を見せると、龍聖はニコリと笑いながら静かに口を開いた。

「今は話せないんですけど、フリスクとキャラはちょっとお金を持ってないので、僕が代わりに払います」

「……ああ、さっき言っていた事情という奴だね」

「はい……さっきも言ったように、今は話せませんけど、いつもお世話になっている拳輔さんや聖凪ちゃんにはいつかお話しますね」

「……分かった、それじゃあその時を楽しみにして待ってるよ。聖凪もそれで良いかな?」

「うん! 龍聖君がいつか話してくれるって言うなら、私もその言葉を信じて待つ事にするよ!」

「拳輔さん、聖凪ちゃん、本当にありがとうございます」

「ありがとうございます、拳輔さん、セイナ」

「二人ともありがとうございます」

「どういたしまして。さてと……会計が終わったら、早速ファイトしてみるかい? 開店直後の今なら、お客さんも殆ど来ないし、何か分からない事があったら、僕や聖凪もサポート出来るから」

「あ……はい、やってみたいです!」

「元々、しっかりとやれるようにするのが目標だったし、その機会に恵まれたっていうなら、それを無駄にするのは良くないからね」

「決まりだね。それじゃあ早速会計をしようか」

「はい」

 そして、龍聖は会計を済ませると、フリスクに『ロイヤルパラディン』のデッキを、キャラに『シャドウパラディン』のデッキを手渡した。

「はい、どうぞ」

「うん、ありがとう、リュウセイ」

「リュウセイ、ありがとう」

「どういたしまして。さてと……それじゃあそろそろ二人の初ファイトと行こうか」

「「うん」」

 フリスクはキャラと共に返事をすると、揃って店奥にあるファイトテーブルの一つへ向かって歩き、向かい合う形で席に座り、手に入れたばかりのデッキをケースの中から取りだして、中に入っているカードを確認した。

「……うわぁ、本当に色々なカードがあるんだね……!」

「こっちも色々なカードが入ってるみたいだよ。まあ、フリスクの方にどれだけ色々なカードがあろうと、負けるつもりはさらさら無いけどね」

「ふふ……その言葉、そっくりお返しするよ。『ロイヤルパラディン』の絆、キャラにも見せてあげるよ!」

「……そう、それならこっちは命を賭してでも任務を遂行する覚悟を見せてあげようかな」

 声は静かではあったが、二人はお互いに負けたくないという気持ちからバチバチと火花を散らしており、その姿に龍聖は頬をポリポリと掻きながら苦笑いを浮かべた。

「二人とも……その気持ちは大切だけど、楽しむ事も忘れないでね?」

「うん、それはもちろんだよ」

「楽しみながら勝つ。それが今回のファイトの目標だからね」

「うん、それなら良いや。さてと、それじゃあ二人とも、まずはプレイマットや『ギフトマーカー』の準備、それぞれのFV(ファーストヴァンガード)になるユニットを出してくれるかな?」

「FV……あ、このG0(グレードゼロ)のユニットだね?」

「そう。それで、そのユニットをプレイマットのヴァンガードのサークルに裏向きで置いて──」

 龍聖の指示に従い、フリスク達は次々準備を進め、シャッフルと相手がカットをしたデッキを指定の場所へ置いた後、最初の手札となる5枚のカードを引いた。そして、手札のカードを確認すると、フリスクは難しい顔をした。

「う……思ったよりも手札が悪いかも……」

「……あ、そういう時は引き直しをしてみたら?」

「引き直し……そういえば、始める前に一回だけ出来るんだっけ?」

「そう。何か戦略がある時は別として、最初の手札はG0を除いた全てのグレードが1枚以上あるのが基本になるから、戻すならG0と3枚以上あるグレードから数枚の方が良いと思うよ」

「そっか……それなら、ボクは2枚戻すよ」

「それじゃあ私は……うん、1枚戻そうかな」

 フリスク達はそれぞれ戻すカードを決めると、それをデッキの一番下に戻し、再び自分でシャッフルをしてから相手にデッキを渡し、それをカットした。そしてお互いに相手からデッキを受け取ると、それを定位置へと置き、戻した数と同じ数をデッキから引いた。そして、じゃんけんで先攻後攻を決めた後、裏向きになっているFVを静かに掴んだ。

「……キャラ、準備は良いかな?」

「……いつでも良いよ、フリスク」

「分かった。それじゃあ始めようか」

「了解」

 キャラの返事にフリスクはコクリと頷いた後、キャラと声を揃えながら『カードファイト! ヴァンガード』の始まりを告げる言葉を口にした。

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」




第2話、いかがでしたでしょうか。次回はロイヤルパラディンとシャドウパラディンのデッキによるファイト回ですが、フリスクとキャラの使用デッキは既存のスタートデッキになる予定です。
そして最後に、今作についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。


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第3話 Sanctuary Knights and Shadow Knights

どうも、シャドウパラディンで一番好きなユニットはブラスター・ダークの片倉政実です。今回は前回もお知らせした通り、ようやくのファイト回です。一応、矛盾などが無いように気をつけて書いたつもりですが、もしスキルの裁定などでおかしな点がありましたら、指摘して頂けるとありがたいです。
それでは、第3話を始めていきます。


「行くよ、『ぐらいむ』!」

「共に行こう、『フルバウ』!」

 二人が『FV(ファーストヴァンガード)』となるカードを表向きにすると、龍聖は両者のカードを一瞥(いちべつ)してからコクリと頷いた。

「うん、これで最初はバッチリだね。さてと……それじゃあ二人にとってはこれが最初のファイトだから、ルールや用語を一つ一つ解説しながら進めていこうか」

「うん」

「分かった」

 二人の返事を聞くと、龍聖は両者のFVを指差しながら静かに口を開いた。

「まずはこのカード──ヴァンガードとなるユニットについてだね。『カードファイト!! ヴァンガード』の設定上、二人はこことは違う星──『惑星クレイ』に降り立ったとてもか弱い霊体。だけど、そのヴァンガードと呼ばれるリーダー的なユニットにライドする事で、そのユニットと共に戦う事が出来、コールした他の仲間であるリアガードと一緒に先に相手に6つのダメージを与える事が出来れば、勝利を収める事が出来る。そして、各ユニットにはそれぞれグレードという物があり、基本的にはグレード0からグレード3までなんだけど、そのクランによってはグレード4やグレード5なんてのを持つユニットもいて、フリスクの選んだ『ロイヤルパラディン』というクランにはそのグレード4のユニットがいるけど、そのデッキには流石に入ってないかな」

「そういえばそうだったかも。でも、グレードが高い分、強さは折り紙付きなんだよね?」

「そうだね。ただし、ヴァンガードはそのFVとなるグレード0から順番にグレードを上げたり、同じグレードのユニットをライドさせたりしていくんだけど、『カードファイト!! ヴァンガード』のルール上、それより下のグレードのユニットにはライド出来ないから、1度グレード4のユニットにライドしたら、基本的にはグレード4以上のユニット以外にはもうライド出来ないから、そこは注意してね」

「うん、分かった」

「それじゃあ……今度は各グレードが持つ能力についてだよ。フリスクの『ぐらいむ』とキャラの『フルバウ』はそれぞれグレード0のユニットなんだけど、グレード0とグレード1のユニットは『ブースト』という能力を持っていて、これはそのユニットが自分の前にいるユニットにパワーを与える事が出来る能力なんだ。だから、これらのユニットは前列にいる時にはその能力を使えないけど、ヴァンガードのグレードがどんどん上がっていく内につれて後列に置くようにはなるから、その時には能力を発動できるようになるかな」

「なるほどね……」

「さてと、グレード2とグレード3のユニットの持つ能力はその時に説明するとして、まずはそこまでファイトを進めていこうか。先行はたしかフリスクからだよね?」

「うん、そうだよ。それじゃあボクのターンなんだけど……まずはデッキからカードを1枚引くんだったよね?」

「そうだね。ただ、基本的な流れとしては、前のターンに行動をし終えた状態であるレスト状態になってるユニット達をもう一度行動させられる状態であるスタンド状態にする『スタンドフェイズ』から始まって、カードを1枚引いたり特定の条件が揃った時に『Gアシストステップ』という動作を行う『ドローフェイズ』、新しいユニットをヴァンガードとしてライドする『ライドフェイズ』、リアガードをコールしたりユニットが持つスキルを発動したりする『メインフェイズ』、相手のヴァンガードやリアガードにアタックが出来る『アタックフェイズ』、そして最後に特定のスキルを発動したり相手にターンを渡す事を告げたりする『エンドフェイズ』までが一連の流れだね。因みに、今回は主流の『スタンダード』っていうルールで進めるけど、かなり前のカードを混ぜて使える『プレミアムスタンダード』というのも存在するよ」

「分かった。それじゃあ……ドロー!」

 フリスクは勢いよくデッキからカードを1枚ひくと、それを手札に加えながら別のカードを手に取り、それを『ぐらいむ』ヘと重ねた。

「ボクは『ぐらいむ』に『ういんがる』をライド。そしてこの時、『ぐらいむ』のスキルを発動! このユニットがライドされた時、デッキからカードを1枚ドローする。そして『ういんがる』の後ろの(R)(リアガードサークル)に『ナイトスクワイヤ アレン』をコール。後は、えっと……先行はアタックが出来ないんだったよね?」

「そうだね」

「それじゃあボクは、これでターンエンド。次はキャラのターンだよ」

「うん。それじゃあ……私のターン、ドロー」

 勢いよくドローしたフリスクとは対称的に、落ち着いた様子でデッキからカードを1枚ドローすると、キャラは手札からカードを1枚抜き取り、それを『フルバウ』ヘと重ねた。

「私は『フルバウ』に『グルルバウ』をライド。この時、『フルバウ』のスキルを発動して、デッキからカードを1枚ドローするよ」

「……あれ? 『フルバウ』も『ぐらいむ』と同じスキルなの?」

「どうやらそうみたいだけど……リュウセイ、グレード0のユニットは基本的にこうなのかな?」

「うーん……全部が全部そうでは無いけど、そういうスキルを持ってるグレード0のユニットは多いし、そのユニットがFVに選ばれる事は多いかな」

「そっか。さて……私は『秘薬の魔女 アリアンロッド』を『グルルバウ』の後ろの(R)にコール。スキルは……うん、今回は使わなくても良いかな。それじゃあフリスク、早速バトルに入らせてもらうよ」

「う、うん……!」

「まずはアタックステップに入って、『秘薬の魔女 アリアンロッド』がブーストして、パワーが14000になった『グルルバウ』で『ういんがる』にアタック。フリスク、ガードはする?」

「ガードは……うん、しないよ」

「分かった。それじゃあそのままドライブステップに移行して……リュウセイ、グレード1はデッキから確認できるのは1枚だけだったよね?」

「うん。ドライブステップで行うドライブチェックは、今キャラがやろうとしてるようにデッキの一番上のカードを確認して、それがトリガーユニットだったらそれに対応した効果が発揮されるけど、グレード0からグレード2までは1枚までで、『ツインドライブ!!』っていう能力を持ってるグレード3からは2枚まで確認して、そのまま手札に加えるよ」

「うん、ありがとう。それじゃあ……ダメージチェック」

 そう言いながらキャラはデッキの一番上のカードを確認すると、ニヤリと笑いながらそれをフリスク達へと見せた。

「『デスフェザー・イーグル』、たしかこのユニットはパワーを+10000と相手に与えるダメージを増やせるクリティカルトリガーを持つユニットだったよね?」

「うん、そうだね」

「ふふっ、やったぁ……♪ それじゃあパワー+10000とクリティカル+1は全て『グルルバウ』に与えるよ。さあ、ダメージを受けてもらうよ、フリスク」

「う……わ、分かったよ……」

 嬉しそうなキャラとは対称的にフリスクは悔しそうに返事をすると、自分のデッキへと手を伸ばし、カードを1枚ずつ捲り始めた。

「ファーストチェック──ノーマルユニットの『ういんがる』だったから、そのままダメージゾーンへ置くよ。そしてセカンドチェック──2枚目はトリガーユニットの『まあるがる』だったよ」

「あっ、それはドロートリガーだね。さっきのクリティカルトリガーみたいにどれか1枚のユニットのパワーを+10000させる事が出来る上、デッキからカードを1枚ドロー出来るよ」

「つまり……どちらかと言うなら、守り寄りのトリガーなんだね。ボクはパワー+10000を『ういんがる』に与え、デッキからカードを1枚ドローするよ」

「うん、了解。さてと……これで私の出来る事は無くなったし、このままエンドフェイズに移行して、ターンエンドにするよ」

「分かった。それじゃあボクのターン、ドロー!」

 先程まで見せていた悔しそうな様子とは一転して、フリスクは元気よくカードを1枚ドローすると、龍聖を一瞥してから手札にあったカードを『ういんがる』の上に重ねた。

「ボクは『ういんがる』に『ブラスター・ブレード』をライド! そして、『至誠の騎士 ベルギウス』を前列の右側の(R)にコールして、ここでバトルフェイズに入るよ。『至誠の騎士 ベルギウス』で『グルルバウ』にアタック! キャラ、これはガードする?」

「……ガードはしないよ。ダメージチェック──ノーマルユニットの『ザ・ダーク・ディテクター』だから、そのままダメージゾーンへ置くよ」

「分かった。それじゃあ今度は……『ナイトスクワイヤ アレン』がブーストして、パワーが18000になった『ブラスター・ブレード』で『グルルバウ』にアタック! これはどうする?」

「……うん、それもノーガードで良いよ」

「了解。さてと……それじゃあドライブチェック──トリガーユニットの『世界樹の巫女 エレイン』だったよ」

「ん……それはヒールトリガーだね。ヒールトリガーはいずれかのユニットにパワーを+10000する事が出来る上に自分のダメージゾーンの枚数が相手の枚数以上ならダメージを1枚回復できるんだ。この場合、フリスクさんのダメージが2で、キャラさんのダメージが1だったから、フリスクさんはダメージを1枚回復できるよ」

「よし……! それじゃあボクは『ブラスター・ブレード』にパワー+10000を与えて、ダメージを1枚回復するよ」

「うーん……これで逆転されちゃったかぁ……。まあ、ファイトは始まったばかりだし、まだまだこれからだけどね」

「ふふ、そうだね。でも、ダメージはキッチリと受けてもらうよ?」

「もちろん。それじゃあダメージチェック──『ハウルオウル』、ドロートリガーゲットだよ」

「う……キャラもダメージでドロートリガーを引いてきたかぁ……」

「ふふっ、気が合うね。さてと、パワー+10000は『グルルバウ』に与えて、カードを1枚ドロー……っと。これでフリスクのターンは終わりかな?」

「う、うん……これでボクはターンエンドだよ」

「分かった。それじゃあ私のターン、ドロー」

 キャラはカードを1枚ドローすると、それを手札に加えながらニヤリと笑い、手札の中の1枚を『グルルバウ』の上に重ねた。

「私は『グルルバウ』に『ブラスター・ダーク』をライド!」

「……え? 黒い『ブラスター・ブレード』……!?」

「あはは……やっぱり、最初見た時はそう思うよね。実際、私も最初はそうかなって思っちゃったし。だけど、この『ブラスター・ダーク』はただ『ブラスター・ブレード』に似てるんじゃないんだよ。『ブラスター・ダーク』のスキル、このユニットの登場時、コストを支払う事で、相手は自分のリアガードを1枚選び、それを退却させる。私はコストとしてダメージを1枚裏返してCB(カウンターブラスト)1を支払い、フリスクにリアガードを1枚退却してもらうよ」

「うう……ただでさえリアガードが少ないのに、退却させるリアガードを選ばないといけないなんて……」

「まあ、『ブラスター・ブレード』も同じようなスキルを持ってるんだから、そこはお相子だよ。それで、誰を選ぶ?」

「……それじゃあ、『ナイトスクワイヤ アレン』を選ぶよ」

 再び悔しそうな様子を見せながらフリスクが(R)『ナイトスクワイヤ アレン』をドロップゾーンと呼ばれる場所に置く中、キャラはそれをニヤリと笑いながら眺めた後、手札の内の1枚を手に取った。

「フリスク、悔しがるのはまだ早いよ?」

「……え?」

「私は前列の右側の(R)に『ブラスター・ダーク』をコール。そして、もう1枚のダメージを裏返してCB1を支払い、フリスクにもう1枚のリアガードを退却してもらうよ」

「そ、そんな……」

「ふふ……そして、フリスクのリアガードがいなくなった事で、『ブラスター・ダーク』のもう一つのスキルの発動条件が満たされたよ」

「『ブラスター・ダーク』の……もう一つのスキル……?」

「そう。『ブラスター・ダーク』が(V)(ヴァンガードサークル)にいて、相手のリアガードがいない時、1ターンに1度だけ、コストを支払う事で、このターン中、このユニットのドライブを+1する」

「ドライブが+1……って事はまさか……!?」

「そう。さっき説明してもらった『ツインドライブ!!』のようにドライブチェックで確認出来るカードが2枚に増えるんだよ。つまり、トリガーユニットが出る可能性も増えるわけだね」

 説明をしながらキャラが楽しそうな笑みを浮かべる中、フリスクの顔には絶望の色が浮かんでいた。

「グレード2なのに『ツインドライブ!!』まで使えるなんて……」

「まあ、それが使えるのは、相手のリアガードがいなくて(V)にいる時のみだから、とても状況は限られるけど、この隙にガンガン攻めさせてもらうよ」

 ニヤリと笑いながら言うと、キャラは(R)に置かれた『ブラスター・ダーク』をレスト状態にした。

「(R)にいる『ブラスター・ダーク』で『ブラスター・ブレード』にアタック。さて、これはガードする?」

「う……し、しないよ……。ダメージ……チェック──ノーマルユニットの『ブラスター・ブレード』だから、そのままダメージゾーンに置くよ……」

「それじゃあ今度は、『秘薬の魔女 アリアンロッド』のブーストでパワーが16000になった『ブラスター・ダーク』で『ブラスター・ブレード』にアタック。さて、これはどうする?」

「ガードは……しない」

「そっか。それじゃあ……ドライブチェックに入ろうかな。まずはファーストチェック──ノーマルユニットの『撃砕の騎士 ダマン』だったから、このまま手札に加えるよ。続いてセカンドチェック──『アビス・ヒーラー』、ヒールトリガーゲットだよ」

「くっ……!」

「今のお互いのダメージは2。よって私は、ヒールトリガーを引いた事でダメージを1枚回復できる。さて……それじゃあ3枚目のダメージを受けてもらおうかな?」

 ニヤリと笑いながら言うキャラに対して、フリスクはコクンと頷くと、「ダ、ダメージチェック……」と声を震わせながらデッキの一番上のカードを捲った。するとその瞬間、フリスクの表情は明るくなった。

「『まあるがる』……! ゲット、ドロートリガー!」

「おお……結構ドロートリガーを引くね」

「そうだね。ダメージは受けちゃったけど、手札が増えた分、やれる事も増えたはず! だから、ここからまた逆転してみせるよ!」

「……うん、期待してるよ。さてと……これで私はターンエンドだよ」

「分かった。それじゃあボクのターン、ドロー!」

 フリスクは勢い良くカードをドローすると、それを手札に加えながら別のカードを手に取り、静かに目を閉じた。

「……白き鎧に身を包んだ若き日の騎士王よ、己が目指す未来のため、その勇気の剣を振るえ! ライド、『アルフレッド・アーリー』!」

 その言葉と共にフリスクが『アルフレッド・アーリー』を『ブラスター・ブレード』に重ねると、キャラはとてもワクワクした様子で『アルフレッド・アーリー』に視線を向けた。

「へえ……中々カッコいいユニットだね。それで、このユニットと一緒にどんな戦いを見せてくれるのかな?」

「それはね……こうするんだよ! 『アルフレッド・アーリー』は『フォース』の『イマジナリーギフトアイコン』を持っているため、『アルフレッド・アーリー』にライドした事で、ボクは『フォースⅠ』を獲得し、それを(V)へと置く。これにより、『アルフレッド・アーリー』のパワーは+10000される」

「……パワーを上げてきた、か……」

「そして、『アルフレッド・アーリー』のスキル、このユニットの(V)への登場時、コストを支払う事で、あなたの手札かソウルから『ブラスター・ブレード』を1枚まで(R)にコールし、そのターン中、そのユニットのパワーを+10000し、コールしたら1枚引く。ボクはソウルから『ブラスター・ブレード』を前列の右側の(R)にコールし、コールし『ブラスター・ブレード』のパワーを+10000し、デッキからカードを1枚ドローする」

 そう言いながらフリスクがカードを1枚ドローしていると、キャラの表情にも少しだけ陰りが見えた。

「仲間を呼ぶ上にドローまで……これは思ってたよりも厄介かな……」

「厄介がるのはまだ早いよ、キャラ。コールした『ブラスター・ブレード』のスキル、このユニットの登場時、コストを支払う事で、相手の前列にいるリアガードを1枚選び、退却させる。ボクはSB(ソウルブラスト)1とCB1を支払い、キャラの(R)にいる『ブラスター・ダーク』を退却させるよ!」

「『ブラスター・ダーク』が……!」

「そしてここで、さっき引いた『ナイトスクワイヤ アレン』を『アルフレッド・アーリー』の後ろの(R)にコールし、『ナイトスクワイヤ アレン』のスキルを発動! このユニットの登場時、コストを支払う事で、あなたの手札からあなたのヴァンガードのグレード以下のユニットを1枚まで(R)にコールする。コールしたら、1枚引き、このターン中、このユニットのパワーを+3000する。ボクはこれで『まあるがる』を後列の右側の(R)にコールし、1枚ドローする。そしてそれと同時に、『ナイトスクワイヤ アレン』のパワーを+3000する。更にボクは、『スタードライブ・ドラゴン』を前列の左側の(R)にコールするよ」

「……これは、流石にキツくなってきたかな……」

 フリスクの怒濤のコールラッシュにキャラが冷や汗を掻く中、フリスクはニコッと笑いながら『スタードライブ・ドラゴン』をレスト状態にした。

「さあ……行くよ、キャラ。『スタードライブ・ドラゴン』で『ブラスター・ダーク』にアタック! この時、『スタードライブ・ドラゴン』のスキルを発動! (R)にいるこのユニットが相手のヴァンガードにアタックした時、あなたのリアガードが3枚以上なら、そのバトル中、このユニットのパワーは+5000される。よって、『スタードライブ・ドラゴン』のパワーは、合計18000になる!」

「18000……つまり、ガードをするには10000以上のシールド値が必要なんだね……。それなら、今回はガードしないよ。だから、ダメージチェック──『撃砕の騎士 ダマン』だったから、そのままダメージゾーンに置くよ」

「分かった。それじゃあ今度は、パワーが3000アップして合計11000になった『ナイトスクワイヤ アレン』がブーストして、更に『フォースⅠ』でパワーが+10000されてパワーが合計34000になった『アルフレッド・アーリー』で『ブラスター・ダーク』にアタック! さあ、これはどうする?」

「……ここは、ノーガードで良いよ」

「分かった。それじゃあ『ツインドライブ!!』、ファーストチェック──『幸運の運び手 エポナ』。ゲット、クリティカルトリガー!」

「おっと……ここでクリティカルトリガーは結構痛いなぁ……」

「ふふ、そうだろうね。クリティカル+1は『アルフレッド・アーリー』に、パワー+10000は『ブラスター・ブレード』に与えるよ。そしてセカンドチェック──『まあるがる』。ゲット、ドロートリガー! パワー+10000は『ブラスター・ブレード』に与えて、デッキからカードを1枚ドロー!」

 ドライブチェックで捲ったトリガーユニットの処理をフリスクが終えると、キャラは苦々しい顔をしながらデッキに手を伸ばした。

「……ダメージチェック、ファーストチェック──『グルルバウ』だから、そのままダメージゾーンへ。セカンドチェック──『ハウルオウル』、ドロートリガーゲットだよ。パワー+10000は『ブラスター・ダーク』に与え、1枚ドローするね」

「う……またキャラにもドロートリガーを引かれた……」

「ふふん♪ こっちだって負けてないって事だよ」

「たしかにね。でも、これはどうかな? 『まあるがる』がブーストして、パワーが合計45000になった『ブラスター・ブレード』で『ブラスター・ダーク』にアタック!」

「ノーガードで。ダメージチェック──『ハウルオウル』、ドロートリガーゲットだよ」

「う、うそ……またドロートリガー!?」

 ドロートリガーが捲れた事でフリスクが驚愕していると、それを見ていた龍聖達は苦笑いを浮かべた。

「あー……やっぱりまだ少し固まってるんだね」

「か、固まる……?」

「うん……構築済みデッキってかなりの回数シャッフルとカットをしないと本当にカードが混ざらないんだよ」

「だから、同じカードが連続で出る事も珍しくないかな。まあ、それでもよく切られている方だけどね」

「な、なるほど……」

 龍聖達の説明にフリスクが少し驚きながら答える中、キャラは勝ち誇った笑みを浮かべながら『ハウルオウル』をフリスクへと見せるように指で挟み、明るい声で話し掛けた。

「どう、フリスク? これが私の実力だよ」

「……それは運も実力の内って言いたいの?」

「そういう事だね。さてと……これでフリスクのターンは終わりだよね?」

「あ、うん……」

「了解。それじゃあ私のターン、ドロー」

 キャラは落ち着き払った様子でカードを引くと、それを手札に加えてから手札の内の1枚を手に取った。

「……禍々しき闇を纏う黒竜、我らの勝利のためにその呪われた力を振るえ! ライド、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』!」

 そして、キャラが『ブラスター・ダーク』の上に『ファントム・ブラスター・ドラゴン』を重ねると、龍聖は『ファントム・ブラスター・ドラゴン』にキラキラとした視線を向けた。

「おぉ……! 遂に出たね、そのユニットが! 」

「え……このユニットって、そんなに強いの?」

「もちろん、強いよ。ただ、スキルを発動する条件が結構キツいけどね」

「ふふ、そうだね。でも、私はさっきフリスクがダメージを与えて、ドロートリガーを引かせてくれたおかげでそのスキルを使えるんだよね~♪」

「うぐっ……!」

 キャラの言葉にフリスクが悔しそうに歯をギリッとならすと、キャラは再び手札の内の1枚を手に取った。

「さて、まずは『ファントム・ブラスター・ドラゴン』が『フォース』の『イマジナリーギフトアイコン』を持ってるから、『フォースⅡ』を獲得して、それを(V)に置く。次に『ブラスター・ジャベリン』を後列の右側の(R)にコール。この時、『ブラスター・ジャベリン』のスキルを発動。このユニットが(R)に登場した時、グレード1以下のあなたの他のリアガードがいるなら、コストを支払う事で、カードを1枚引き、このユニットのパワーを+3000する。私にはグレード1の『秘薬の魔女 アリアンロッド』がいるから、CB1を支払い、カードを1枚引いて、『ブラスター・ジャベリン』のパワーを+3000する。そして、後列の左側の(R)にもう1枚の『ブラスター・ジャベリン』をコールして、再びスキルを発動するよ。CB1を支払い、カードを1枚引いて、『ブラスター・ジャベリン』のパワーを+3000するよ。後、(R)にいる『秘薬の魔女 アリアンロッド』のスキル、このユニットが(R)にいるなら、コストを支払う事で、あなたのユニットのパワーを+10000する。私はSB1を支払って、『秘薬の魔女 アリアンロッド』をレスト状態にする事で、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のパワーを+10000するよ」

「…………」

「さてと、ここで『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のスキルが使えるから、使わせてもらおうかな。『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のスキル、このユニットが(V)にいる時、コストを支払う事で、相手は自分のリアガードを3枚選んで、それを退却させる。そしてそのターン中、このユニットはパワー+15000/クリティカル+1される」

「なっ……!?」

「私はCB1を支払って、『ブラスター・ジャベリン』2枚と『秘薬の魔女 アリアンロッド』を退却させ、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のパワーを+15000し、クリティカルを+1する。さあ……退却させるユニットを選んでもらうよ、フリスク」

「う……それなら、『スタードライブ・ドラゴン』と『ナイトスクワイヤ アレン』と『まあるがる』を退却させるよ……」

「分かった。後は……手札から『ブラスター・ダーク』を前列の右側、『グルルバウ』をその後ろ、『撃砕の騎士 ダマン』を前列の左側、『デスフェザー・イーグル』2枚をそれぞれ後列の左側と中央にコール。そして、『ブラスター・ダーク』のスキルを発動して、CB1を支払い、もうそれしかいないから『ブラスター・ブレード』を退却させてもらうよ」

「くっ……!」

 フリスクが悔しそうに『ブラスター・ブレード』をドロップゾーンへ置く中、キャラはどうだと言わんばかりの笑みを浮かべた。

「フリスク、これが『シャドウパラディン』の力だよ。流石の君でもこれはどうしようも無いんじゃないかな?」

「……まだ、だよ。ボクはまだダメージが3枚だけだから、チャンスなんて幾らでもあるよ!」

「まあ、そうだね。でも、本当に防ぎきれるかな? 『デスフェザー・イーグル』がブーストして、パワーが合計33000になった『ファントム・ブラスター・ドラゴン』で『アルフレッド・アーリー』にアタック!」

「必要なガード値は40000越え……だったら、『守護者(センチネル)』のスキルを持つ『堅強の騎士 ルノリア』を(G)(ガーディアンサークル)にコールして、手札から『まあるがる』をドロップゾーンへ置く事で、そのアタックを完全ガードするよ!」

「……へえ、『守護者』なんて手札にあったんだ。まあ、良いよ。『ツインドライブ!!』、ファーストチェック──『デスフェザー・イーグル』、クリティカルトリガーゲットだよ。パワー+10000とクリティカル+1は『ブラスター・ダーク』に与える。続いてセカンドチェック──『厳格なる撃退者(リベンジャー)』、クリティカルトリガーゲット。クリティカル+1とパワー+10000は全て『撃砕の騎士 ダマン』に与えるよ」

「に、2枚ともクリティカルトリガー……」

「ふふ、勝利の女神はまだまだ私を見放してないようだね。それじゃあ次は、『撃砕の騎士 ダマン』で『アルフレッド・アーリー』にアタック。この時、『撃砕の騎士 ダマン』のスキルを発動。(R)にいるこのユニットがヴァンガードにアタックした時、あなたのリアガードが相手のリアガードよりも多いなら、そのターン中、このユニットのパワーを+5000する。よって、『撃砕の騎士 ダマン』のパワーは合計28000になる」

「今度は20000……! だったら、『世界樹の巫女 エレイン』と『ういんがる』を(G)にコールしてガード!」

「それなら、『グルルバウ』がブーストして、パワーが合計28000になった『ブラスター・ダーク』でアタック!」

「……これは受けるよ。ダメージチェック、ファーストチェック──『アルフレッド・アーリー』だから、そのままダメージゾーンへ。セカンドチェック──『ういんがる』だから、これもそのままダメージゾーンへ置くよ」

「分かった。それじゃあ私はこれでターンエンド。さあ、フリスクのターンだよ」

「うん。ボクのターン……ドロー!」

 フリスクは希望に満ちた目をしながらデッキからカードを1枚引き、それを手札に加えると、手札から1枚のカードを抜き取った。

「高貴なる聖域の騎士王、己の友と共にこの戦場を駆け抜けろ! ライド、『騎士王 アルフレッド』!」

 そして、フリスクが『騎士王 アルフレッド』を『アルフレッド・アーリー』の上に置くと、それを見ていた龍聖の目がキラキラと輝き始めた。

「『騎士王 アルフレッド』……! そのユニットが手札にあったんだね!」

「うん。さて……『騎士王 アルフレッド』も『フォース』の『イマジナリーギフトアイコン』を持っている事で、ボクは『フォースⅠ』を獲得し、それを前列の右側の(R)に置くよ。そして、『騎士王 アルフレッド』のスキルを発動! このユニットが(V)にいる時、1ターンに1度、コストを支払う事で、山札から『ブラスター・ブレード』を1枚まで探し出し、(R)にコールし、そのターン中、そのユニットのパワーを+5000し、その後に山札をシャッフルする。ボクはCB1を支払い、山札から『ブラスター・ブレード』を1枚探し、前列の右側の(R)にコールし、『ブラスター・ブレード』のパワーを+5000する。キャラ、シャッフルの後にデッキのカットをお願いするね」

「うん、分かった」

 キャラが頷くと、フリスクは山札から『ブラスター・ブレード』を1枚取り出し、それを(R)に置き、山札をシャッフルした。そしてそれを終えると、キャラにデッキを手渡し、キャラがカットを終えてそれを受け取ると、小さく息を吐きながらデッキを定位置に置いた。

「そしてこの時、『騎士王 アルフレッド』のスキルを発動! あなたのターン中、あなたの(R)に『ブラスター・ブレード』がいるなら、このユニットのパワーは+10000される。更にここで『ブラスター・ブレード』のスキルを発動! CB1とSB1を支払い、『ブラスター・ダーク』を退却させるよ!」

「また『ブラスター・ダーク』が……!」

「更に『ういんがる』を後列の右側、『スタードライブ・ドラゴン』を前列の左側、『ナイトスクワイヤ アレン』を後列の中央、『幸運の運び手 エポナ』を後列の左側の(R)にコール! この時、『ういんがる』のスキルを発動。このユニットが(R)にいるなら、あなたのターン中、このユニットと同じ縦列にいる『ブラスター・ブレード』全てのパワーを+5000する」

「あんなに退却させたのに、またリアガードがそんなに……!?」

「たしかに、『シャドウパラディン』もスゴい展開力だったけど、『ロイヤルパラディン』にだってユニット同士の強い絆があるんだよ! そしてここでバトルに入るよ! 『幸運の運び手 エポナ』がブーストした『スタードライブ・ドラゴン』で『ファントム・ブラスター・ドラゴン』にアタック! この時、『スタードライブ・ドラゴン』のスキルが発動し、『スタードライブ・ドラゴン』のパワーは合計23000になる!」

「……それなら、『厳格なる撃退者』でガード!」

「だったら、『ナイトスクワイヤ アレン』がブーストして、パワーが合計41000になった『騎士王 アルフレッド』で『ファントム・ブラスター・ドラゴン』にアタック! 」

「41000……それなら、『抗拒の騎士 リムリス』を(G)にコールして、『ザ・ダーク・ディテクター』をドロップゾーンへ!」

「分かった。それじゃあダメージチェック、ファーストチェック──『ふろうがる』。ゲット、クリティカルトリガー! パワー+10000とクリティカル+1は『ブラスター・ブレード』に」

「う……で、でもそれなら『アビス・ヒーラー』を2回引けば──」

「セカンドチェック──『ふろうがる』。ゲット、クリティカルトリガー!」

「なっ!? ダブルクリティカルトリガー!?」

「ふふ、どうやら勝利の女神はボクに微笑んだようだよ。パワー+10000とクリティカル+1は『ブラスター・ブレード』に!」

「という事は……『ブラスター・ブレード』はブーストを含めると、合計48000のクリティカル3……」

「そういう事。という事で、『ういんがる』がブーストして、パワーが合計48000になった『ブラスター・ブレード』で『ファントム・ブラスター・ドラゴン』にアタック!」

「くっ……それなら、ヒールトリガーに賭けるまでだ! ノーガード!」

「分かった。それじゃあダメージチェックをお願い」

「だ、ダメージチェック──」

 そして、キャラは震える手でデッキの一番上を捲ると、表情に悔しさを滲ませながらそれをフリスク達に見せた。

「……『ブラスター・ダーク』、私の……負けだよ」

「キャラ……」

「おめでとう、フリスク。おめでとうなんだけど……はあ、やっぱり悔しいなぁ……。正直、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』を出せた辺りで勝った気がしてたから、そこが勝負を分けたのかもしれないね……」

「油断大敵、って事だね」

「……だね」

 フリスクの言葉にキャラがクスリと笑いながら答えていると、龍聖はニコリと笑いながらフリスク達に話し掛けた。

「お疲れ様、二人とも。初めてとは思えない程、良いファイトだったよ」

「ありがとう、リュウセイ」

「リュウセイ、ありがと。でも、やっぱり負けたのは悔しいから、これは『シャドウパラディン』についてリュウヤさんに色々とアドバイスを貰いたいなぁ……」

「あ、それならボクはリュウセイとセイナからアドバイスを──」

 キャラに対抗するようにフリスクがやる気に満ちた表情で言い始めたその時、『カードステーション』の自動ドアが開く音が聞こえ、全員の視線が自動ドアヘと注がれた。すると、そこには三人の少年の姿があり、紫色の長髪を麻紐で結った和装の少年とオレンジ色のスポーツ刈りの革ジャンにダメージジーンズ姿の少年の二人を率いるように立つ半袖短パン姿の肩程まで伸ばした赤髪の少年の姿に龍聖は少し困ったような表情を浮かべた。

紅貴(こうき)君……おはよう」

「おう、龍聖! 今日こそお前の『真星輝兵(ネオスターベイダー) カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を貰うぜ!」

「あのカードは、お前が持つには相応しくないからな」

「紅貴に負けて、さっさと差しだしやがれ!」

「そうは言うけど……紅貴君、『リンクジョーカー』のデッキを持ってないんじゃ──」

「そんな事はどうでも良い! それを強者である俺が持つ。その事に意味があるんだ!」

「あ、あはは……」

 紅貴と呼ばれた少年たちの言い分に龍聖が苦笑いを浮かべていると、その様子にフリスクは小首を傾げながら聖凪に話し掛けた。

「ねえ、セイナ。彼らは?」

「あの赤い髪のが赤崎紅貴(あかざきこうき)で、その後ろの紫色の髪のが東雲忍(しののめしのぶ)、オレンジ色の髪のが鳴神雷仁(なるかみらいと)っていう名前で、三人とも私達と同じクラスで同じVF(ヴァンガードファイト)クラブのメンバーなの。それで紅貴は『かげろう』っていうクランを使うんだけど、龍聖君の『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を狙っていて、そのためにファイトをしかけてくるのよ」

「そうだったんだ……でも、あのカードってそんなにレアなカードなの?」

「そうだね……あのカードは、元々『カードファイト!! ヴァンガード』の制作会社のスポンサーの内の一社が考案した物で、公式サイトのカードリストにもデータは載っているんだけど、あるキャンペーンのために作られたカードだから、世界には龍聖君が持つ4枚しか無いんだよ」

「あるキャンペーン……?」

「うん。それが『降臨! 真星輝兵!!』っていう物で、ある条件を満たした一人だけが前に出ていた『星輝兵(スターベイダー)』っていう『リンクジョーカー』のカテゴリーのユニットのリメイク版やそれぞれのクランの要素を加えた『リンクジョーカー』の新規ユニットのカードを貰えるんだけど、その条件っていうのがパックの中に1枚だけ混ぜられた『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』を当てる事だったの」

「それで、リュウセイがそれを当てて、あの紅貴って子がそれを手に入れるためにひたすらファイトを申し込んで、その度に負けてるんだね。リュウセイ、『真星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン・トーカー』と『ブラスター・ブレード』が賭けられると、絶対に負けないみたいだし……」

「うん。普段はプレイミスなんかが目立つんだけど、その時だけはどんなに絶望的な状況でも勝っちゃうんだぁ……」

「そして、そんなリュウセイの姿がカッコ良く見えて、そのまま惚れちゃった、と……」

「え……ま、まあ……ね。だって、その時のリュウセイ君って、いつものぽわーんとした感じと違って、とてもキリッとしているんだもん……」

「ふふ、そっか。それなら、今からそれが見られそ──」

 そう言いながらキャラが紅貴達へ視線を戻したその時、紅貴の視線が自分に向いている事に気付き、キャラは不思議そうに首を傾げた。

「え、えっと……何か?」

「……可愛い」

「……はい?」

「お、お前……名前は?」

「……キャラ。訳あって、昨日からこっちのフリスクと一緒にリュウセイのお家にお世話になってるんだ」

「リュウセイの家に!? おい、龍聖! それってどういう事だよ!?」

「どういう事って……それはちょっと話せないよ。話すにはだいぶ時間も覚悟もいるし……聖凪ちゃんや拳輔さんにすら話せてないんだから」

「何だと!?」

「兄貴がいるとはいえ、龍聖如きが美少女と一つ屋根の下とは……」

「羨ましい……羨ましすぎる!」

「羨ましいって……うーん、そんなにかなぁ……?」

「……まあ、一般的には羨ましがられてもおかしくないんじゃない?」

「そうだね。彼ら曰く美少女と一つ屋根の下な上、セイナからも好かれているわけだからね」

「そうなんだ……」

 フリスクとキャラの言葉に龍聖が納得顔で頷いていたその時、「……そうだ!」と紅貴は何かを思いついた様子で声を上げると、ビシッという音が鳴りそうな程の勢いで龍聖を指差した。

「龍聖! 今回はあのカードは諦めてやる。だが、その代わり……俺が勝ったらそこにいるキャラに今日一日俺と付き合ってもらうよう頼んでもらうぞ!」

「……え?」

「……へえ」

 紅貴の言葉に龍聖が困惑する中、キャラは面白そうだといった表情を浮かべながらクスリと笑うと、考えるような素振りを見せつつ紅貴に話し掛けた。

「……ねえ、そんなに私に一日付き合ってほしい?」

「ああ!」

「そっか……まあ、リュウセイに勝てるようなら考えてみても良いかな? もっとも、君じゃあリュウセイには敵わないと思うけどね」

「そ、そんな事ねぇ! 龍聖なんかに負けるもんか!」

「そう……まあ、そこまで言うなら見せてもらおうかな」

 キャラがクスクスと笑いながら挑発的な発言をしていると、それを聞いていた龍聖は焦った様子で声を上げた。

「ちょ、ちょっと!? 僕抜きでそんな話をしないでよ!」

「大丈夫。龍聖なら勝てるって信じてるし、勝てるだろうと思ってるから。それに、龍聖には()()がついてるでしょ?」

「私達がって……まさか、『アンダーテール』のデッキで紅貴君の相手をしたらって事?」

「そういう事。一応、デッキは組んだわけだし、試してみるにはちょうど良いんじゃない?」

「試してみるにはって……キャラは良いの? まだ一回も試してないデッキでファイトをするのに、負けたら自分が紅貴君に一日付き合うのを考えてみるなんて言って……」

「ふふ、あくまでも()()()()()だからね。まあ、結果如何ではどうなるか分からないけどね?」

「……分かったよ。とりあえず頑張ってみるね」

 ウインクをしながら言うキャラの言葉に対して龍聖が溜息交じりに答えた後、バッグの中から『アンダーテール』のデッキを入れたデッキケースを取り出すと、それを見ていた拳輔は興味深そうな視線を向けた。

「龍聖君、今チラッと聞こえたんだけど、また新しいデッキを組んだのかい?」

「あ、はい。フリスク達からあるクランのカードを受け取ったので、とりあえず組んでみたんです」

「なるほど……それはカードショップの店主としてとても楽しみだね。だが、練習はまだしていないんだろう?」

「はい……でも、信じてくれるキャラ達のためにもこのファイトは絶対に勝つつもりです」

「ふん……どんなクランが相手か知らないが、俺の『かげろう』に勝てるわけが無いぜ!」

「もちろん、僕だって負けないよ。さあ、ファイトをしよう、紅貴君!」

「おう!」

 紅貴が返事をした後、二人は空いているファイトテーブルに向かい合わせで座ると、それぞれデッキや『ギフトマーカー』同時の準備を始め、FV(ファーストヴァンガード)となるユニットを裏向きで置くと、それぞれのデッキのシャッフルとカットを始めた。そして、デッキを渡し終えた後、二人は初期手札となる5枚のカードを引いた。

「……僕は引き直しは無しで良いけど、紅貴君はどうする?」

「俺もいらねぇぜ」

「分かった。それじゃあ……」

「ああ、始めようぜ!」

 そして二人は、それぞれのFVに手を触れ、ファイトの始まりを告げる言葉を口にした。

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」




第3話、いかがでしたでしょうか。前書きにも書きましたが、色々と気をつけて書いたつもりですが、もしスキルの裁定やルールなどでおかしな点があったり、ファイト中の情報について作中で書いてほしいなどありましたら、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
そして最後に、今作についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、こちらも書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。


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第4話 Pure Dragon and Guardian of the Ruins

どうも、好きなかげろうのユニットは、ドラゴニック・オーバーロードの片倉政実です。今回は遂にアンダーテールの初陣回です。オリカのスキルなどは色々調整を行いましたが、それでも強すぎるんじゃないかと思った際は、感想欄などで言って頂ければ嬉しいです。
それでは、第4話を始めていきます。


「僕に力を貸して、『ヒューマンズソウル・決意(ディタミネーション)』!」

「さあ、暴れ回るぜ……『ワイバーンキッド・ラグラー』!」

 二人のFV(ファーストヴァンガード)が露わになると、紅貴達の視線は半透明になりながら背中合わせに立ち、胸元に赤いハートが半分ずつ浮かび上がっているフリスクとキャラのイラストが描かれた『ヒューマンズソウル・決意』へ一斉に注がれた。

「な、なんだ……そのカード……?」

「『アンダーテール』なんてクラン、聞いた事ねぇぞ……?」

「拳輔お兄ちゃんはどう?」

「いや、僕も聞いた事は無いね。ただ、こうしてカードとして現存する辺り、ちゃんとしたカードなのは間違いないんだろうけど……この『ヒューマンズソウル・決意』というカードのイラストに描かれている人物、どこかフリスクさんとキャラさんに似ているような……?」

 その瞬間、拳輔達の視線がフリスクとキャラに集中したが、二人は笑みを浮かべながら首を横に振った。

「あはは、それは気のせいですよ」

「そうそう。まあ、『アンダーテール』のデッキを渡したのはたしかに私達ですけど、あくまでも私達は渡すように言われたような物なので、そのデッキとはあまり関係はありませんよ」

「そ、そう……まあ、二人がそう言うならこれ以上は訊かないけど……」

「そうしてくれると助かるかな」

 聖凪の言葉を聞き、フリスクがニコリと笑って頷く中、龍聖は真剣な表情を浮かべながら紅貴に声を掛けた。

「さて……それじゃあそろそろファイトを始めようか、紅貴君」

「……あ、ああ」

「それじゃあ僕のターンからだね、ドロー」

 龍聖はニコリと笑ってからドローしたカードを手札に加えると、手札の内の1枚を『ヒューマンズソウル・決意』の上に重ねた。

「僕は『ヒューマンズソウル・決意』に『不思議な金色の花 フラウィー』をライド。この時、『ヒューマンズソウル・決意』のスキルを発動。このユニットがライドされた時、デッキからカードを1枚ドローし、このカードを手札に戻す。僕はカードを1枚ドローして、『ヒューマンズソウル・決意』を手札に戻す」

「カードを1枚引ける上に手札に戻るユニット……」

「まあ、戻ったところでこのユニットはノーマルコールは出来ないんだけどね──引けたのはこのカードか……。そして次に、『不思議な金色の花 フラウィー』のスキルを発動。このユニットの登場時、あなたの山札から『ヒューマンズソウル』とつくカードを1枚探し出し、それをソウルに置いてよい。ソウルに置いたら、デッキをシャッフルし、デッキからカードを1枚ドローする。僕は山札から『ヒューマンズソウル・勇気(ブレイブリー)』を1枚探し出し、これをソウルに置く。そして、デッキをシャッフルする。紅貴君、デッキのカットをお願いしても良いかな?」

「ああ。それにしても……また手札を増やすんだな」

「まあね。さて……と、それじゃあデッキからカードを1枚ドローして、僕は手札から『謎多きカエル フロギー』を(V)(ヴァンガードサークル)の後ろにコール。これでターンエンドだよ」

「分かった。それじゃあ俺のターン、ドロー!」

 紅貴は勢い良くデッキからカードをドローすると、手札の内の1枚を『ワイバーンキッド・ラグラー』の上に重ねた。

「俺は『鎧の化身 バー』をライド! この時、『ワイバーンキッド・ラグラー』のスキルを発動して、カードを1枚ドローするぜ。そして、『ドラゴンナイト・ブルジュ』を(V)の後ろに、『リザードソルジャー・ラオピア』を前列の右側の(R)(リアガードサークル)にコール」

「早速展開してきたね、紅貴君……!」

「へへ、まあな! さて……『ドラゴンナイト・ブルジュ』のブーストでパワーが14000になった『鎧の化身 バー』で『不思議な金色の花 フラウィー』にアタック!」

「……ノーガード」

「うっし……それじゃあ、ドライブチェック──『ドラゴニック・ウォーターフォウル』、ノーマルユニットだからそのまま手札に加えるぜ」

「ダメージチェック──『不思議な金色の花 フラウィー』、ノーマルユニットだからそのままダメージゾーンへ」

「じゃあ次だ! パワー8000の『リザードソルジャー・ラオピア』で、『不思議な金色の花 フラウィー』にアタック!」

「それもノーガード。ダメージチェック──『暗躍する金色の花 フラウィー』、ノーマルユニットだからそのままダメージゾーンへ置くよ」

「へへっ、これでダメージ2枚だな。俺はこれでターンエンドだ!」

「了解。それじゃあ僕のターン、ドロー。僕は『不思議な金色の花 フラウィー』に『暗躍する金色の花 フラウィー』をライド。そして、『暗躍する金色の花 フラウィー』のスキルを発動。このユニットの登場時、山札から『ヒューマンズソウル』とつくカードを1枚探し出し、ソウルに置いてよい。置いたら、デッキをシャッフルし、そのターン中、このユニットのパワーを+5000する。僕は山札から『ヒューマンズソウル・誠実(インテグリティー)』をソウルに置き、『暗躍する金色の花 フラウィー』のパワーを+5000する。まずはデッキをシャッフルして──紅貴君、またカットをお願い」

「おう──ほらよ、終わったぜ」

「うん、ありがと。そして、『暗躍する金色の花 フラウィー』のもう一つのスキルを発動。1ターンに1回、他のユニットをソウルに置くことで、山札から『転生せし金色の花 フラウィー』を1枚探し出し、それを手札に加える。そしてデッキをシャッフルし、そのターン中、このユニットはパワーが+5000される」

「つまり……次のターンに順当にライド出来る上にこのターンだけでもパワーが+10000されるって事か!?」

「そういう事。僕は(R)の『謎多きカエル フロギー』をソウルに置き、山札から『転生せし金色の花 フラウィー』を手札に加えて、『暗躍する金色の花 フラウィー』のパワーを+5000するよ。後はデッキをシャッフルして……紅貴君、もう一度カットをお願い」

「お、おう──ほら、終わったぞ」

「ありがと。そして次に、『心優しきゴースト ナプスタブルーク』を前列の両側の(R)に1枚ずつ、『二面性を持つ大目玉 ルークス』を(V)の後ろ、『美味しい野菜 ベジトイド』を後列の右側の(R)にコール」

「へえ……結構コールしたけど、『かげろう』相手にそんなにコールしても良いのか?」

「良いよ。それくらい強気じゃないと、たぶん勝てないからね」

 紅貴からの問い掛けに龍聖がニッと笑いながら答えていると、フリスクはハッとした様子で龍聖に話しかけた。

「龍聖、『かげろう』はたしか『退却』が得意なクランなんだったよね?」

「そう。そして、それをスイッチにしたスキルを持つユニットも多いけど、この選択は間違ってないって僕は信じてるよ。なにせ、僕には『あのユニット』がついてるからね」

「あのユニット……あっ、そういう事か!」

「なるほど……たしかにあのカードがあるなら、その方が良さそうだね」

 龍聖の言葉にフリスクとキャラが納得した様子を見せると、紅貴は少し怯えたような表情を浮かべながら龍聖に話しかけた。

「な、なんだよ……そんなに強いユニットでもいるってのかよ……?」

「いるよ。もっとも、その出番はもう少し後だけどね。さて……それじゃあ行くよ、紅貴君! まずは左側の(R)にいる『心優しきゴースト ナプスタブルーク』で『リザードソルジャー・ラオピア』にアタック! ブーストは無いから、パワーは10000のままだよ」

「……ノーガード」

「それじゃあ次、『二面性を持つ大目玉 ルークス』のブースト、『暗躍する金色の花 フラウィー』で『鎧の化身 バー』にアタック! この時、『二面性を持つ大目玉 ルークス』のスキルを発動! (R)にいるこのユニットかブーストしたユニットがアタックした時、このユニットのパワーを+5000する。このスキルによって、パワー8000の『二面性を持つ大目玉 ルークス』はパワー13000となり、合計パワーは33000になる!」

「パワー33000か……だったら、ノーガードだ!」

「分かった。それじゃあドライブチェック──『ヒューマンズソウル・正義(ジャスティス)』、クリティカルトリガーゲットだ!」

「げっ、ここでクリティカルトリガーかよ!?」

「パワー+10000は右側の『心優しきゴースト ナプスタブルーク』に、クリティカルは『暗躍する金色の花 フラウィー』に与えるよ」

「……はあ、だよな。それじゃあダメージチェック、1枚目──『クルーエル・ドラゴン』、ノーマルユニットだからそのままダメージゾーンへ。2枚目──『レッドジェム・カーバンクル』、ドロートリガーゲットだぜ! パワーを『鎧の化身 バー』に与えて1枚ドローするぜ」

「それじゃあ今度は、『美味しい野菜 ベジトイド』のブーストでパワーが28000になった『心優しきゴースト ナプスタブルーク』で『鎧の化身 バー』にアタック!」

「必要なガード値は15000か……だったら、ノーガードだ。ダメージチェック──『鎧の化身 バー』、ノーマルユニットだからそのままダメージゾーンへ」

「ここでノーガード……だいぶ思い切ったね」

「まあな。ただ、ここから巻き返せば問題は無いぜ!」

「そうだね。でも、そう上手くは行くかな?」

「……何?」

 龍聖の言葉に紅貴が眉をひそめると、龍聖は楽しそうな笑みを浮かべながら『美味しい野菜 ベジトイド』ヘと手を伸ばした。

「『美味しい野菜 ベジトイド』のブーストしたアタックがヒットから、『美味しい野菜 ベジトイド』のスキルを発動。このユニットのブーストしたアタックがヒットした時、このユニットをソウルに置くことで、レスト状態になっているリアガードを1枚選択し、それをスタンド状態にし、そのターン中、パワーを+5000する」

「はあ!? そのクラン、そんな動き方までするのか!?」

「ふふ、まあね。僕は『美味しい野菜 ベジトイド』をソウルに置き、前列の右側の(R)にいる『心優しきゴースト ナプスタブルーク』をスタンド状態にして、パワーを+5000するよ。そして、合計パワーが25000になった『心優しきゴースト ナプスタブルーク』でもう一度『鎧の化身 バー』にアタック!」

「くっ……だったら、『槍の化身 ター』でガードだ!」

「うん、了解。これで僕はターンエンドだよ」

「分かった……それじゃあ俺のターン、ドロー! 俺は『バーニングホーン・ドラゴン』にライド。そして、『ドラゴンナイト・ネハーレン』を前列の右側の(R)にコールして、『ドラゴンナイト・ネハーレン』のスキルを発動! このユニットの登場時、コストを支払うことで、相手の後列にいるリアガードを1枚選び、退却させ、このユニットのパワーを+5000する。俺はCB(カウンターブラスト)1を支払い、お前の『二面性を持つ大目玉 ルークス』を退却させる!」

「う……やっぱり、そう来るよね……」

「そして、俺は手札の『クルーエル・ドラゴン』を前列の左側の(R)にコール!」

 紅貴が手札から抜き取った『クルーエル・ドラゴン』を(R)に置くと、フリスクは『クルーエル・ドラゴン』を見ながらとても驚いた様子を見せた。

「えっ……(V)の『バーニングホーン・ドラゴン』はグレード2なのに、どうしてグレード3の『クルーエル・ドラゴン』をコールできるの?」

「それが『クルーエル・ドラゴン』のスキルだからだよ。『クルーエル・ドラゴン』は自分のターンに相手のリアガードが退却した時、自分のヴァンガードがグレード2以下でもノーマルコール出来るんだ」

「な、なるほど……」

「まっ、『クルーエル・ドラゴン』の強いところはそれだけじゃないけどな。さて……それじゃあそろそろアタックさせてもらうぜ! 『ドラゴンナイト・ネハーレン』で『心優しきゴースト ナプスタブルーク』にアタ──」

「あ、言っておくけど、『心優しきゴースト ナプスタブルーク』は永続効果でアタックされてもそれはヒットしないからね」

「はあ!? そんなのありかよ! うー……じゃあ、『ドラゴンナイト・ネハーレン』で『暗躍する金色の花 フラウィー』にアタック!」

「ノーガード、かな。ダメージチェック──『二面性を持つ大目玉 ルークス』だったから、そのままダメージゾーンへ置くよ」

「それじゃあ次だ! 『ドラゴンナイト・ブルジュ』のブースト、パワーが16000になった『バーニングホーン・ドラゴン』で『暗躍する金色の花 フラウィー』にアタック!」

「……流石にそろそろガードしないといけないね。『ヒューマンズソウル・正義』と『ヒューマンズソウル・誠実』の2枚でガード!」

「シールド値20000って事は……トリガーが出てもこのアタックはヒットしないけど……まあ、良いや。ドライブチェック──『レッドジェム・カーバンクル』、ドロートリガーゲットだ。パワー+10000は『クルーエル・ドラゴン』に与えて、1枚ドローするぜ。そして、パワーが23000になった『クルーエル・ドラゴン』で『暗躍する金色の花 フラウィー』にアタック!」

「……ノーガード。ダメージチェック──『ヒューマンズソウル・不屈(パーサヴィアランス)』、ドロートリガーゲットだよ。パワー+10000を『暗躍する金色の花 フラウィー』に与えて、カードを1枚ドロー」

「『クルーエル・ドラゴン』のヴァンガードへのアタックがヒットした事で、『クルーエル・ドラゴン』のスキルを発動! (R)にいるこのユニットのアタックがヒットした時、このユニットを手札に戻すことで、SC(ソウルチャージ)1をする。俺は『クルーエル・ドラゴン』を手札に戻すことで、デッキの一番上のカードをSCするぜ」

 そう言いながら紅貴がデッキの一番上のカードを捲った瞬間、紅貴はとても嬉しそうな笑みを浮かべ、龍聖は逆にとても悔しそうな表情を浮かべた。

「『ファイアレイジ・ドラゴン』……これがSCされた意味、お前なら分かるよな?」

「……もちろん、だよ。けど、『アンダーテール』のみんながいるから、『あのカード』は特に怖く無いよ」

「……へへ、言うじゃねぇか。まあ、良いさ。これで俺はターンエンドだ」

「了解。それじゃあ僕のターン、ドロー! 僕は『暗躍する金色の花 フラウィー』に『転生せし金色の花 フラウィー』をライド。この時、『転生せし金色の花 フラウィー』は『フォース』の『イマジナリーギフトアイコン』を持っているので、僕は『フォースⅡ』を獲得して、それを(V)に置くよ。そして更に『転生せし金色の花 フラウィー』のスキルを発動。このユニットが(V)に登場した時、SC2をし、その中にトリガーユニットがいるなら、このターン中、その数だけパワーを+1000する」

「またSCか……そのクラン、なんだか『ダークイレギュラーズ』とか『ペイルムーン』みたいだな」

「あはは、たしかに()()()()()はそんな感じだよね」

「このデッキはって事は……アンダーテールの本質はそれじゃないって事か?」

「そうなるね。さてと……まずはSCをするね」

 そう言うと、龍聖はデッキの上から2枚を次々と捲り、それを確認すると、とても嬉しそうな笑みを浮かべた。

「ソウルに入るのは、『ヒューマンズソウル・正義』と『ヒューマンズソウル・不屈』の2枚。どちらもトリガーユニットだから、『転生せし金色の花 フラウィー』はこのターン中、パワーが+2000される」

「これでパワーは15000か……まあ、グレード4を相手にしてるのと何ら変わらないし、大した事は──」

「更に、ここで『転生せし金色の花 フラウィー』のスキルを発動するよ」

「なっ! まだ何か発動するのか!?」

「うん。『転生せし金色の花 フラウィー』の二つ目のスキル、ソウルにトリガーユニットがあるなら、そのターン中、その数だけパワーを+1000する。ソウルの中のトリガーユニットは合計で4枚。よって、『転生せし金色の花 フラウィー』のパワーは合計で19000になるよ」

「『フォースⅡ』なのに、ブースト無しで19000……また厄介なユニットが出て来たもんだな」

「あはは、紅貴君からすればそうだろうね。さて……そろそろアタックしようかな。左側の『心優しきゴースト ナプスタブルーク』で『ドラゴンナイト・ネハーレン』にアタック!」

「……ノーガードだ」

「それじゃあ次だ! パワー19000の『転生せし金色の花 フラウィー』で『バーニングホーン・ドラゴン』にアタック!」

「それはガードさせてもらうぜ! 『ドラゴンモンク・ゲンジョウ』でガードだ!」

「シールド値20000って事は……トリガーユニットが2枚出れば良いんだね。それじゃあ『ツインドライブ!!』、ファーストチェック──『謎多きカエル フロギー』、ノーマルユニットだから、そのまま手札に。セカンドチェック──『ヒューマンズソウル・勇気』、クリティカルトリガーゲットだよ! パワー+10000とクリティカル+1は全てもう1枚の『心優しきゴースト ナプスタブルーク』に与えるよ。そして、パワーが20000になった『心優しきゴースト ナプスタブルーク』で『バーニングホーン・ドラゴン』にアタック!」

「それはガード出来ないな……それじゃあダメージチェック、1枚目──『ドラゴンナイト・ネハーレン』、ノーマルユニットだから、そのままダメージゾーンへ。そして2枚目──『バーニングホーン・ドラゴン』、これもノーマルユニットだから、そのままダメージゾーンへ置くぜ」

 紅貴が『バーニングホーン・ドラゴン』をダメージゾーンへ置く中、フリスクとキャラと聖凪は顔を見合わせながら嬉しそうに頷き合った。

「これで相手のダメージは5、これなら勝てるかも!」

「うん。さっき言ってたカードの存在は気になるけど、このまま行ければリュウセイは勝てるはず」

「そうだね!」

 そして、そんなフリスク達の姿に龍聖はクスリと笑ったが、すぐ真剣な表情へ戻ると、闘志に満ちた視線を向けてくる紅貴に話し掛けた。

「これで僕はターンエンドだよ、紅貴君」

「おう! それじゃあ俺のターン、ドロー!」

 紅貴は勢い良くカードを引くと、手札の内の1枚を抜き取り、静かに目を閉じた。

「清らかなる白竜、その聖なる力で数多の敵達の全てを洗い清めろ! ライド、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』!」

「遂に来たね、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』……!」

「へへっ、コイツは俺の切り札だからな。さっきみたいにいつだって俺の来て欲しい時には来てくれるんだ。そして、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』は『フォース』の『イマジナリーギフトアイコン』を持っているから、俺は『フォースⅠ』を獲得して、それを(V)に置くぜ。更にここで『ドラゴニック・ウォーターフォウル』のスキルを発動! このユニットの(V)登場時、グレード2以上の相手のリアガードを1枚選び、退却させる。俺は右側の『心優しきゴースト ナプスタブルーク』を選択するぜ!」

「くっ……!」

「更に『クルーエル・ドラゴン』を前列の右側、『ドラゴンナイト・ネハーレン』を前列の左側の(R)にコール。さあ、行くぜ! 『ドラゴンナイト・ブルジュ』のブースト、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』で『転生せし金色の花 フラウィー』にアタック! そしてここで『ドラゴニック・ウォーターフォウル』のもう一つのスキルを発動! (V)にいるこのユニットのアタック時、コストを支払うことで、そのバトル中、このユニットのパワーを+10000、クリティカルを+1し、相手は守護者(センチネル)(G)(ガーディアンサークル)にコールできない。俺はソウルにあるグレード3の『ファイアレイジ・ドラゴン』をSB(ソウルブラスト)して、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』のパワーを+10000、クリティカルを+1するぜ。よって、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』は合計39000のクリティカル2になるぜ!」

「くっ……それなら、『心優しきゴースト ナプスタブルーク』でインターセプトしてスキルを発動! このユニットがインターセプトをした時、コストを支払うことで、そのバトル中、アタックはヒットされない。僕はCB1とSB1を支払い、『心優しきゴースト ナプスタブルーク』を山札に戻して、そのアタックをヒットされなくするよ!」

「なっ……守護者じゃないのに完全ガードできるのか!? くそっ……『ツインドライブ!!』ファーストチェック──『ドラゴンモンク・ゲンジョウ』、ヒールトリガーゲットだ。パワー+10000を『ドラゴンナイト・ネハーレン』に与えて、ダメージを1枚回復。そしてセカンドチェック──『ドラゴンナイト・ブルジュ』、ノーマルユニットだから、そのまま手札に加える」

「ふぅ……これでどうにかなったかな……」

「ふん、安心するのはまだ早いぜ! パワーが20000になった『ドラゴンナイト・ネハーレン』で『転生せし金色の花 フラウィー』にアタック!」

「それなら『ヒューマンズソウル・勇気』でガード!」

「だったら、『クルーエル・ドラゴン』で『転生せし金色の花 フラウィー』にアタックだ!」

「うっ……ノーガード! ダメージチェック──『ヒューマンズソウル・不屈』、ドロートリガーゲットだよ! パワー+10000を『転生せし金色の花 フラウィー』に与えて、カードを1枚ドロー!」

「ちっ……このターンで仕留めきれなかったか……。まあ、良いさ。『クルーエル・ドラゴン』のアタックがヴァンガードにヒットした事で、俺は『クルーエル・ドラゴン』を手札に戻し、デッキの一番上をSCしてターンエンドだ」

「了解。それじゃあ僕のターン、ドロー」

 龍聖はカードをドローすると、手札の内の1枚を抜き取り、ニコリと微笑みかけてからそれを『転生せし金色の花 フラウィー』に重ねた。

「心優しきモンスター達の女王よ、その慈愛の心を以て仲間達に幸せと安寧を! ライド、『遺跡の守護者 トリエル』!」

「『遺跡の守護者 トリエル』……それがさっき言ってたユニットか?」

「そうだよ。そして、『遺跡の守護者 トリエル』も『フォース』の『イマジナリーギフトアイコン』を持っているから、僕は『フォースⅡ』を獲得し、それを前列の左側の(R)に置く。更に『遺跡の守護者 トリエル』のスキル、僕のターン中、僕のリアガードは全てパワーが+5000される。そして、『転生せし金色の花 フラウィー』を前列の左側、『謎多きカエル フロギー』を(V)の後ろにコール。さあ、行くよ! パワーが13000になった『謎多きカエル フロギー』で『ドラゴニック・ウォーターフォウル』にアタック!」

「はあ!? ソイツ、後ろからでもアタックできるのか!?」

「うん、『謎多きカエル フロギー』は、後列の(R)にいる時、同じ縦列にいる相手のユニットにアタックできるんだ」

「くっ……だったら、『ドラゴンナイト・ネハーレン』でインターセプト!」

「それじゃあ次だ! パワーが18000になった『転生せし金色の花 フラウィー』で『ドラゴニック・ウォーターフォウル』にアタック!」

「それは『ドラゴンモンク・ゲンジョウ』でガードだ!」

「それじゃあ次! 『遺跡の守護者 トリエル』で『ドラゴニック・ウォーターフォウル』にアタック! この時、『遺跡の守護者 トリエル』のスキルを発動」

「またスキルか……今度は何が……」

「(V)にいるこのユニットが相手のヴァンガードにアタックした時、このユニットのパワーは-5000される」

「……は? 自分のパワーが低くなるスキル、だと……?」

「うん、だから『遺跡の守護者 トリエル』のパワーは8000になるけど、これはガードする?」

「え、うーんと……これは『ワイバーンガード バリィ』を(G)にコールして完全ガードだ! そしてコストとして、手札の『クルーエル・ドラゴン』をドロップゾーンに置くぜ」

「分かった。それじゃあ『ツインドライブ!!』、ファーストチェック──『遺跡の守護者 トリエル』、ノーマルユニットだから、そのまま手札に。そしてセカンドチェック──『不思議な金色の花 フラウィー』、ノーマルユニットだから、これもそのまま手札に」

「ふぅ……ヒヤヒヤしたが、これで次の俺のターンで何とか──」

「それじゃあ、『遺跡の守護者 トリエル』のアタックがヒットしなかったので、ここで『遺跡の守護者 トリエル』の最後のスキルを発動!」

「なっ!?」

「このユニットのアタックがヒットしなかった時、コストを支払うことで、あなたのレスト状態になっているリアガードを全てスタンド状態にし、そのターン中、パワーを+5000する!」

「嘘だろ……今度は『アクセル』のクランみたいな事をしてくるなんて……」

『遺跡の守護者 トリエル』のスキルに紅貴が絶望的な表情を浮かべる中、龍聖はスタンドさせた『転生せし金色の花 フラウィー』に手を掛けた。

「さあ行くよ、紅貴君! パワーが23000になったクリティカル2の『転生せし金色の花 フラウィー』で『ドラゴニック・ウォーターフォウル』にアタック!」

「く……ノーガード! ダメージチェック、1枚目──『ワイバーンガード バリィ』、ドロートリガーゲットだ! パワーを『ドラゴニック・ウォーターフォウル』に与えて、カードを1枚ドロー! そしてセカンドチェック──」

 そして、紅貴は震える手でカードを捲り、それを確認すると、とても悔しそうな表情を浮かべながらそのカードを龍聖へと見せた。

「『ドラゴニック・ウォーターフォウル』……ノートリガーだから、俺の負けだよ……」

「紅貴君……」

「……あー! スッゲぇ悔しいー! あと一歩で勝てたのに、そこを耐えられた上に逆転負けされたのがスッゲぇ悔しい!」

「あ、あはは……まあ、僕も同じ立場だったら、そう思ったと思うよ」

「だろ!? というか、本当にそのクランは何なんだよ? 『フォース』のクランなのに『アクセル』や『プロテクト』みたいな動き方もするしさ……」

「うーん……僕もまだまだ謎が多いんだけど、強いて言うならとても頼りになる大切な仲間、かな?」

「……『リンクジョーカー』や『ロイヤルパラディン』と同じく、か?」

「うん。出会ってからまだ本当に日は浅いけど、他の二クランと同じで大切な仲間だよ」

「……そっか。まあ、お前ならそう言うと思ったけどさ……」

 溜息交じりにそう言った後、紅貴はニッと笑いながら龍聖にスッと右手を差し出した。

「なんにせよ、良いファイトをありがとな、龍聖」

「紅貴君……うん、こちらこそ!」

 そして二人が固く握手を交わすと、それを見ていたキャラはクスリと笑ってから紅貴に話し掛けた。

「残念だったね、コウキ。でも、本当に良いファイトを見せてもらったよ」

「お、おう……サンキューな、キャラ……」

「ふふ……まあでも、さっきのファイトはどちらかと言うならリュウセイの方がカッコ良かったかな。そうだよね、セイナ?」

「え? ま、まあ……」

「ぐ……やっぱりそう言われちまうかぁ……」

「けど、君も少なくともカッコ良かったとは思うし、次はどう思うかは分からないよ?」

「そ、そうか……?」

「うん。だから、次も頑張ってね、コウキ」

「お、おう……!」

 キャラの言葉を聞いて紅貴が嬉しそうに返事をする中、拳輔は『アンダーテール』のデッキを興味深そうに見ていた。

「それにしても……本当に不思議なデッキだね。龍聖君、このデッキのカード以外にも『アンダーテール』にはユニットがいるんだよね?」

「はい。他にも色々なスキルを持ったユニットがいますよ」

「そっか……『アンダーテール』、中々興味深いクランだね」

「ふふ、僕もそう思います。だからこそもっと『アンダーテール』でもファイトをして、もっと『アンダーテール』のユニットの事を知りたいと思っています」

「ああ、僕もそれが良いと思うよ。さて……君達以外のお客さんもやってきた事だし、僕はそろそろ仕事に戻るよ」

「あ、はい」

 そして、拳輔がレジカウンターへ向けて歩いていくと、紅貴は再びニッと笑いながら龍聖に話し掛けた。

「龍聖、せっかくだからもう一回ファイトしようぜ! 今度は賭けは無しでな!」

「紅貴君……うん、やろう!」

 龍聖は大きく頷きながら答えた後、フリスク達が見守る中で再び『アンダーテール』のデッキをプレイマットの上へと置いた。そして、FVの準備やデッキのシャッフルなどの準備を終えると、二人はそれぞれのFVに手を掛けた。

「行くよ、紅貴君!」

「おう!」

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」




第4話、いかがでしたでしょうか。今回の終わり方が前回と同じようになっていますが、次回はアンダーテールでのファイト回では無く、既存クラン同士のファイト回にしようと思っていますので、お楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。


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