気づくとそこは神様達が普通に暮らす街でした。 (チゲタ)
しおりを挟む

プロローグ:始まり

ダンまちが好きで勢いで書いてみた処女作です。
あまり原作の雰囲気を壊さないようとりあえず目標は原作13巻までを書きたいと思っています。


人生てのは重要な選択肢の連続とは言ったものだ。

生きている限り人間は選択し続けなければならない。そしてその選択が間違いだったとしても恋愛ゲームのように後戻りはできない。だからこそよく年配の大人は言う「若いうちに失敗しろ」と。これはつまり若いうちなら失敗もこの後の糧になる、失敗の数だけ色んな経験が出来て大人になった時の判断材料になるとかそんな感じのことだ。でも、よくよく考えれば難しい話である。だってそもそも失敗とわかって選ぶ人なんていない。誰だって良い方の選択肢を選びたいはずだ。

そう、今まさに某人気世界的ファーストチェーン店のメニューの前で苦悩している少年も失敗しないため、より良い結果のために悩んでる真っ最中である。

「くっそ、どっちだ?どっちを選べばいいんだ!?あぁ神よ俺にこの試練をどう乗り越えろと!?」

「あ、あのーお客様?」

「690円もするが期間限定のバーガーセットにするべきかはたまたここは安定の250円というリーズナブルなバーガーセットか」

「えっと後ろのお客様が詰まってきていますのでそろそろ決めていただけませんか?」

「いまの残り残金1750円しかない状況で690円の昼食は明らかに痛手だけど写真からわかるこのボリュームはまるで食べてくださいと言っているようなものだしかもこれでポテトとドリンクがついて1000円以下とは、あーでもなー、690円……でも期間限定……ブツブツ…」

「まだお決まりでないなら他のお客様のお会計したいのですが……」

「…いや、だがしかし、まて……もう少し」

「お客様?」

「うぇ?あ、ひゃい!もう少し待っててもらっていいですかすぐなんでホントもうマジであと30秒で決めますんで!」

「でもそう言って40分以上もカウンター前にいらっしゃいますし、これ以上ここにあられますとこちらも営業妨害として対処しなければならなくなりますし、それに……あ、あのお客様?後ろを見ていただけますか?」

「え?後ろ?」

そう言い少年が後ろを向くとそこには

『おい、まだ終わんねーのかよ?』

『ねーおかしゃんまだー?』

『んー、まだかなー、あのお兄さん長いねー』

『もうやっちゃうよやっちゃっていいよね空腹で状況判断できなくなっちゃうよ僕!?』

そこには長蛇の列ができており、並んでいるほとんどの人の顔には のマークがついており、その矛先は当然ながら全て少年に対してである。

ここの店にはカウンターが4台あるが流石にお昼の時間帯に1人がカウンターを40分も独り占めしていれば捌ききれずこのような事態になるのは火を見るよりも明らかであった。

「………あやっべ」

「ですので大変申し上げにくいのですがこれ以上の滞在はご遠慮させていただきたいと思うのですが…」

「あ、あの!この期間限定のチキンの方のセットで!サイドメニューはポテトでドリンクはコーラでお願いします!!あ、あとお待たせしてしまって大変申し訳ございませんでしたぁ!!!!!」

その後この少年は期間限定のバーガーの販売中は出入り禁止になったりならなかったり。

 

 

「はぁー、4月からは大学生だってのに…情けねぇ」

先程の一件で深く落ち込んでいるこの少年の名は成木 斂《なりき れん》先週高校を卒業したばかりで大学で一人暮らしをするための準備の途中息抜きにで外に出たはいいもののバイトの給料日前で所持金が乏しく軽く済ませるつもりでファーストフード店に寄ったはいいが先程のように色んな意味で重い昼食となった。

「あーまだ荷造り全然終わってねーんだよなー、だりぃーー」

ブーブー

「ん?メール?母さんからかな……じゃなかったってなんじゃこりゃ?」

少年=斂が開いたメールにはこう記してあった。

 

〈汝、力を求めるか?はいorいいえ〉

 

「力を求めるか?ってなんだよこのメール誰から来たかわかんねーし、本文以外なんも書いてねーいたずらメールか?このご時世に?」

わけのわからない謎のメールに対し返信しない方がいいと感じ無視しようとスマホのホームボタンを押したが

「あれ?反応しねぇ、あれ?え?あれ?」

スマホのあらゆるボタンや再起動の方法を試したがうんともすんともいわず、唯一推せるのは画面上の返信のみであった。

「えー、ウイルスにでもかかった?とりあえず返信しろってことだろ?えーと力を求めるか?だっけ。力、力ね、また曖昧な聞き方だなー。普通に考えれば超能力的なやつなのかな?空飛んたり一瞬でテレポートしたり、おお!めっちゃいいじゃん!あーでもなー散々期待させといてしょーもないパターンあるしなーしかしー」

なんだかデジャヴを感じる自問自答である。

「はっ!これじゃさっきと同じじゃん!ここは思い切りが大事!貰えるもんはもらっといたほうがいいよね!はいで返信!」

返信した途端直ぐに別の文字が浮かんだ。

 

〈ならば汝、心せよ、探求せよ、勝利せよ、その手に栄光を、絶望に抗いたまえ〉

 

「え?」

それはまるでダンジョンや未開拓な場所、魔鏡に行く冒険家に語るような、そしてそれは少年に言っているようそんな感覚だった。そして新しい文字が浮かんで来た。

 

〈君の活躍に期待する。僕を楽しませてくれ〉

 

それを最後にメールは消えスマホの画面も元に戻っていた。

「あ、戻った。なんだったんだ一体……え?」

彼は選択をした。そこには軽い気持ちだったのかもしれないけれど彼は選択をした、それが失敗かまだわからない。

「マジかよ」

この選択がよかったのか失敗なのかそれはこれから先の彼が証明するだろう。この

「どこだよ、ここ」

この神が地上に降りし迷宮都市オラリオで。

では異世界に踏み入れた最初の一言で創めよう。

「………最悪だ」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

序章
迷宮都市オラリオ


おっす!俺は成木 斂!なんなよくわかんねーメール見て適当に「はい」押したらよくわかんねー場所にいたぜ!わぁおファンタジーだぜ!いやー人生何が起こるかわかんねーもんだねー!あー驚いた。さ、帰ろう。荷造りがまだだから帰らなきゃならないからな!あ、もしかしてこれ夢?じゃあ覚めろ今すぐ醒めろ!ああくそ覚めねぇ!どこかにデカくて固い石はねーか!?頭思いっきりぶつければ覚めるはず!ああどこにもねぇ!ちくしょう!目をつぶって念じてみよう、覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!

「う…………、ダメだ覚めねー!!!!どこだここーーーー!?」

 

序章 第1話 迷宮都市オラリオ

 

「ダメだ、何をどうしたって同じ街並みが続くばかりだし、しかもよくよく周り見たら耳が長かったり、ケモ耳生えてたり、褐色のめちゃくちゃ布が薄い服着た女性だったり、なんかまさにファンタジー世界って感じなんだが、これってもしかして異世界召喚ってやつ?え、なに俺あのジャージのコンビニの前からいきなり異世界召喚されたあの引きこもり主人公と同じ状況なの?俺も死んだら戻る系の能力なの?だれかこの状況教えてくれよ!!!!」

都市のメインストリートのような大きい道にある噴水に座りブツブツとそこだけなぜか証明が暗く側から見たら危ない男である。少年=斂の言うとおりこの都市には人間以外にも耳が長かったりケモ耳だったり、褐色の少女だったりそれ以外にも背の低い人間も確認出来、そこはまさしくファンタジーの世界だった。そして状況的にも某異世界生活の主人公とほぼ同じ状況だ。

「と言っても俺の場合は完全に身に覚えがあるんだよな。」

そうあの死に戻る主人公と違う点はそのきっかけがある。

「あのメールだよな、明らかに。あー、マジか力を求めるかとか言ってたからてっきりあっちからなんかしらの能力が来るかと思ったけど俺がこっちに来るパターンは全然想像してなかった…………つか、ここでどう力を求めればいいんだよ。はぁー。」

異世界召喚の出だしは前途多難であった。

(ぐだぐだ言ってても何も進まないし割り切って今の状況を整理するしかねぇか、まずここは日本じゃないあと外国でもない、とりあえず意思疎通できるかだけど、大丈夫そうだなさっきから聞こえてくる会話は理解できてる。ちょっと安心。んで次に文字だが……ダメだ英語とか日本語とか少なくとも俺の世界で使われてた文字じゃねーな読めね)

散々騒ぎ頭が少し冷えた斂は状況整理をするため歩き始めた。ここが自分の知る土地ではないことそもそも異世界だからそれは当たり前である。そして次に意思疎通、コミュニケーションは可能であること色んな人間?がいるのにもかかわらずこの都市にいる人は皆同じ言語を使い会話をしており不幸中の幸いか、それは連続にも理解できる言語であった。しかし意思疎通の次に必要な文字は全く分からずそもそも元の世界にはない異世界特有の文字のようで残念ながら読み取りは出来なかった。他にも自動車やバイクなどの機械類は見当たらず店もコンビニなどは当然なく、祭りの出店のような形で果物だったり魚などを売っていた。

(でもガラスが付いている店とかもあるし、それに皆んなが来ている服は俺の世界でも昔の人が着てた感じがちらほらあるから、少なくても日本でいう明治とか大正ぐらいの発展って感じだな。んで意思疎通と同じくらい重要の金!要はこの世界での通貨だけど……よし)

「へいらっしゃい!」

「すみません。この果物なんて言うんですか?」

「お?こりゃりんごじゃねーか兄ちゃん見たことねーのか?今時珍しいね!」

「あ、そうなんですねいや僕の知っているりんごとは色が違ったんで」

「へーどんな色のりんごなんだい?」

「薄い緑色です。僕の故郷じゃその色なんです。」

「緑色?それ食べても大丈夫かい?こっちの赤いりんごの方が美味しいと思うけどなぁ。とゆうか兄ちゃんオラリオに来るのは初めてかい?」

(来た!)

「はい!そうなんです。でも、来たはいいものの右も左もわからずちょっと困っていたとこなんです。」

「そりゃあ大変だったねー、いいぜ俺でよけりゃ力になるぜ?」

「それは助かります。じゃあ早速聞きたいんですけどこの街に来た人はどんな職種に入るんですか?」

「おいおい兄ちゃんそこからかい?」

「すみません。結構な田舎来たものなんで」

「まぁいいや、あのでっかい塔があるだろう?」

「はい」

「あそこの下になダンジョンがあって塔のことをバベルって言うんだけどな、そのバベルがダンジョンに蓋をする形であるのさ」

「だ、ダンジョン?」

「おうよ、んでこの都市にいるほとんどのやつがそのダンジョンで稼ぐ[冒険者]つーのになるな、まぁ他にも鍛治士やらサポーターやらいろんなのがあるが大抵[冒険者]だなそっちの方が普通に稼げるしな」

「おじさんはなんで冒険者じゃないんですか?」

「そりゃおめーおれは神様から恩恵〈ファルナ〉を授かってねーからな!」

「?神様?恩恵?え、ちょ、ちょっと待ってこれ以上は驚かないつもりだったけどえ?おじさん神様って?」

「神様は神様だ天界から降りてきたデウスデアの方達のことだよ。ほらそこにいる方やあそこにいる方も男神や女神様だ。」

そう言われ指刺された方を見るとそこには像の仮面をかけた男性や袋いっぱいの野菜を持った優しい雰囲気の女性がいた。そして言われて気づく。その他とは明らかに違う存在だと言うことに。異世界から来た少年にもそれがすぐにわかった。なぜかはわからない。普通だったらそんな訳ないと疑うはずだが、自分の中の本能というべきか見た瞬間彼らはそういう存在なのだと理解できた。なのであれこれ言って疑うのはよくないので一言だけ少年は述べた。

「うそーん」

 




多分次の話かその次あたりで白髪の少年を出そうかと思います。
あと気付いている人もいるかもしれませんが某自称天才物理学者の作品も好きなので所々使わせていただいていますw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冒険者とファミリア

今回は小説を見直して説明不足を減らしているのでもしかしたら見にくくなっていると思います。
もしわかんねーと感じましたら。そのモヤモヤのまま本屋へ足を運んでいただき、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?一巻をお手にしてもらえればと思います。
ということで第3話どうぞー


序章 第2話 冒険者とファミリア

 

「ファンタジー、ファンタジーって思ってたけど、ここまでファンタジーだとはなー、しかもRPG要素まであると来た。もう完全に脳のキャパオーバーだ。エルフとかキャットシー、ドワーフはわかる。パルゥムとかもまだわかる。でも神様ねーわ、しかもアプリゲームでよく聞くレアリティ高い名前がちらほらと、もうね考えてるのも馬鹿馬鹿しくなるわ」

果物屋の親父にこの世界のことをあらかた聞き終え、元の噴水広場に戻ってきた斂は今一度状況の整理をして、そのありえなさからほぼ現実逃避または思考停止状態になっていた。

斂がこの世界に来てまだ数時間。それでもこの世界について大体のことがわかった。

まずこの都市の名は〈迷宮都市オラリオ〉なんでもこの世界じゃ一番大きな都市で唯一の迷宮=ダンジョンが存在する都市らしい。その迷宮に入り挑む者のことを〈冒険者〉といいこの冒険者は皆〈神〉の〈恩恵〉という力を得ている。

「その神が比喩的な意味じゃなくてもろ本物の神で、天界から来た理由が刺激を求めて来って言うから驚きだよな。しかも天界から来た神は全員神の力とやらが使えないと来た。職務放棄もいいとこだな。ってことはあれか今天界は少ない人数で回しているわけか。同情するぜ。」

1000年前に天界より降り立った不変不滅の超越存在(デウスデア)。下界に住む者を子供達と言い、その子供達が見せる変化に刺激を求めて降りて来た。そして降りて来た神は一部を除きほぼ全員が神の力〈アルカナム〉を禁じられその結果、身体能力や機能が並の人間と同じまたはそれ以下になるため怪我や病気にもなるらしい。天界から降りた神の多くはこのオラリオにいるらしいが、ここ以外にも遠くの村や国、都市にも存在しており、そのせいで天界では死者の魂を導く仕事が滞っており残った神達はデスマーチが続いているらしい。職務放棄どころか完全なるブラック企業である。

「んで、まずこの都市で暮らすにはどっかの神の〈ファミリア〉に入るのが手っ取り早いと」

超越存在〈デウスデア〉である神の恩恵〈ファルナ〉を受けた下界の子供はその神の眷属となりその集まりを〈ファミリア〉と呼び、その神の名前、例えばよく知る神ゼウスのファミリアだったら[ゼウス・ファミリア]のように親である神の名のファミリアで呼ばれる。

〈ファミリア〉はその親の神、主神ごとに違いがあり、冒険者系が最も多いが、商業系、製作系、医療系、果ては国家系なども存在するようだ。

っと時間にすれば数時間だがこれだけのことがわかった。つまり逆に言えばこれらのことはこの世界では、そこら辺のおっさんでも当たり前に知っているということ。まさにファンタジー。ゲームの世界に迷い込んだみたいだった。

「でも、肝心の〈恩恵〉やら〈ステイタス?〉についてはあまりわからなかったな、つかそもそも俺この世界から元の世界に帰れんのか?俺ラノベやアニメはそこそこ好きだけどあの主人公達みたいにあの世界に絶望感とか退屈もしてねーし、何よりまだバリバリで親生きてんだけど!?まだ全然親孝行とかしてないし!?ていゆうか!俺4月から大学生なんですけど荷造りまだなんですけどーーーーー!?」

問題はそこかい。

「あーくそ!だいたいあのメールの主は俺になにをさせたいんだよ!!!!そりゃ選んだのは俺だよ!?確かに最終判断をしたのは僕のだよ!でもそのまま放り投げることねーだろ!?なぁおじさん!」

「え!?わ、わし?」

「そーだよアンタだよ!ねぇありえないよね!?この状況!理不尽過ぎるよね!?」

「え、そ、そうだね、理不尽だね」

「勝手に理不尽とか決めつけてんじゃねーぞ!!!はっ倒すぞゴラァ!」

「ひ、ひぃ!」

これぞまさに理不尽である。

「はぁ、はぁ、はぁ………あー、ちょっと騒いだら落ち着いて来た。んまー愚痴も言ったし、理不尽に対してはちょっと大人気ないが八つ当たりして少しスッキリしたし、これからどうするかだな。」

先程のがちょっとのはずはないがやはり人間その状況に慣れれば落ち着くもので人が変わったように淡々と思考をした。

(まぁ、とりあえず騒ごうが喚こうが元の世界には戻れないし、状況が一向に進まない。じゃあどうするかって話だけど、まず目先の目標というかやるべきことはメールの主を見つけ出すことだな。神がいる世界に連れてこられたんだ。だったらそいつは神の可能性が高い。しかもここはその神が最もいる都市。もし、いないにしても手がかりの一つや二つあってもおかしくない。)

斂は今自分に出来ること出来ないこと、何をするべきかを簡潔にまとめる。実は彼は昔から不測の事態にその時は慌てるものの、その状況に慣れてしまえば、思考をクリアにして動くことが出来、この時の彼の選択は迅速である。

「うし!とりあえず元の世界に戻るとか、1人生活の荷造りとか大学生のことは後回しにだ!ここに呼んだメールの主を見つけ出して1発ぶん殴る!」

そしてその選択は失敗しない。

「のためにまずはファミリア探しだな、基本は冒険者系だけど恩恵?が貰えんならどこでもいいかな。まぁ、神は娯楽優先で動くやつばっかみたいだからできれば人格者の神がいいんだけどな。とりあえず片っ端から突撃だ!」

こうしてまた彼は選択した。その場に留まるのでもなく、帰れないからと諦めるのでもなく、前に、未知の世界に踏み込む覚悟を持って。それはもしかしたら冒険者の本質の一つのかもしれない。ならば彼は案外この世界が合っているのかもしれない。まぁでも

「あのお願いします。このファミリアに入れてください。」

「失せろガキ」

ボキっ

「あのお願いします。このファミリアに入れてく、」

「断るこのファミリアは強き者以外に用はない」

ボキっボキっ

「あ、あのお願いします。このファ」

「帰れ田舎者」

ボキっボキッボキ

人間、決心や心変わりだけじゃ強くなれるもんじゃないある程度経験も積まなくちゃならないじゃないと……

「………滅べ世界。」

心がすぐ折れる。このように。彼は見た目の割には心は純真で気付きやすく、そして繊細だ。

「あ、あの」

だからこそ、そんな彼だからこそこの出会いは偶然ではなく必然だったのかもしれない。

「え?」

「大丈夫ですか?」

少年と赤目白髪の少年、世界と世界が交わる時物語は動き出す。

さぁ、刮目せよこの冒険譚を

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

少年と少年

僕がこのオラリオに来て数週間がたったある日。

ダンジョン探索を終え、いつものように今日の結果や探索状況を担当アドバイザーのエイナさんに報告するためギルドに寄っていた。

僕があの(ヒト)のファルナを授かって、あの(ヒト)とファミリアになれて本当によかったと思ってる。

でも、だからこそ不甲斐ない自分が恥ずかしかった。

僕はまだ冒険者なって間も無く、ファミリアもあの(ヒト)を除けば僕1人。ソロでいける階層も1〜2階層まで。僕の実力じゃその日の食費と次回の探索のための資金で稼ぎが消えてしまう。

そのためあの(ヒト)もバイトをして2人で稼いでなんとか生活できている。

そんな現状に僕は少し嘆いていた。はぁ、あと1人団員がいればなー。

「…ル君?…ベル君!」

「あ、はい。何ですかエイナさん?」

「もう!何ですか?じゃないよさっきからぼーっとしてるけど、大丈夫?なんか悩み事?」

「ご、ごめんなさい!別に大したことじゃないので!」

「本当?まぁ顔色は悪くないしベル君がそういうならいいけど、なんかあったらすぐに相談するんだよ?」

「はい、本当にすみません。」

「もういいよ。それで明日の探索のことなんだけど、問題なさそうだし今日と同じ感じで少しづつ到達階層を増やしていこうね。」

「はい。わかりました。」

「うん。あと、何度も言っているけど。くれぐれも無茶はしちゃダメだからね?」

「はい!それじゃエイナさん!また明日」

「うん、また明日ね」

エイナさんに手を振り僕はギルドを後にした。

外に出ると空は雲で覆われていて、少し小降りの雨が降っていた。

僕は少し雨が降ったことへの不運を恨みながらも、小走りで〈ホーム〉に向かった。

その帰り道。僕はその少年と出会った。

その少年はどこかのファミリアの扉の前で座り込んでいた。状況から察するにファミリアの入団を断られたのだと思った。

周りの人はその少年を見て同情的な目線を送ったり、その姿を無様だと思い鼻で笑う冒険者がいたり、決して話しかけようとはせず素通りしていた。

でも、僕は少年を赤の他人としても素通りすることができなかった。いや、素通りしてはいけないと思った。

なぜならあの少年は僕だからだ。

僕もオラリオに来たばっかの時は、どこのファミリアにも入れてもらえず徒歩にくれていた時があった。

そんな時僕に手を差し伸べてくれたのは他でもないあの(ヒト)だった。

そして僕はあの(ヒト)のファミリアだ。眷族なんだ。

それに僕自身あの青年と自分が重なり放っておいたらダメな気がした。

そう思った頃には僕は少年に声をかけていた。

「あ、あの」

「え?」

「大丈夫ですか?」

これが僕と青年。レンとの出会いだった。

 

序章 第3話 少年と少年

 

「あ、あの。大丈夫ですか?」

「え?」

少年こと成木 斂は突然声をかけて来た少年に動揺していた。

先程まで斂は数十件のファミリアを巡り、その全てから断れ、知り合いもいない未知の世界に心が折れ、絶望していた。

そんなこんなで異世界生活第一歩目を見事に踏み外し、絶賛露頭に迷っていたときに、まさか声を掛けられるとは思っても見ていなかった。

「立てますか?怪我とかしてませんか?」

「あ、ああ大丈夫だ、ありがとう」

そう言い、斂は立ち上がり

「悪いな余計な心配をかけたみたいだな、もう行くわ。」

「は、はぁ」

「ん?つか雨降ってんじゃん、参ったなー今日泊まるとこねーし。」

斂の言う通り、彼が落ち込んで座り込んでいるうちに雨が降って来ていた。

(こりゃ本格的にまずいな、まさかファミリアに入るのがこんなに難しいとは思わなかった。とりあえず今日ちゃうにも雨風凌げる場所探さねーと)

斂の当初の予定では

 

ファミリアすぐ見つかる

さっさと恩恵とやら貰う

初ダンジョンへ向かい、今後の活動資金を稼ぐ

帰る方法がなんとなく見つかり無事帰還

 

というとなんともまぁ、曖昧なスケジュールであった。

しかし、人生とはそう上手く行くものではなく、初っ端から挫けていた。

(ちくしょうマジで滅べ世界め)

でも案外捨てたもんじゃ無いのも人生であり、

「え?帰る場所無いんですか?」

「うぇ?あ、ああー俺今日ここに来たばっかでさ、さっきからいろいろなファミリア回ってんだけど」

「全然相手にしてもらえず門前払いを受け続けて途方に暮れていた。ですか?」

「え?なんでわかったんだよ?」

「あ、あのその前に今日行くとこないんですよね?」

「ああ、」

「じ、じゃあもしあなたがよければ何ですけど……」

誰にでも手は差し伸べられるもので

「僕達の〈ホーム〉に来ませんか?」

それを掴むかはその時の選択で決まるものだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女神〈ヘスティア〉

卒業単位やら就職やらで全然投稿出来なかった……
これからまた投稿を再開したいと思っています。
あ、そういえばダンまち映画見ました。面白かったです。でもパワーバランスがなー
それとダンまち2期も楽しみです。やっぱり見所はやっぱり戦争遊戯かなー
あとOPは井口裕香さんか水瀬いのりさんと思います。


 

 

「僕達の〈ホーム〉に来ませんか?」

「へ?」

「あ、いやあなたがもしよければなんですど!雨も降ってきてますし!」

 

歛サイド

 

話しかけてきた冒険者であろう少年の予想外の提案に思考がついていけない俺に少年は矢継ぎ早に提案の理由を話した。

その少年は俺よりも年下のようで、見るからに駆け出しの冒険者のようだった。

 

「そ、それに今日この天候で宿無しって言うのも…」

その少年の容姿は紅目白髪で一言で言うなら兎だ。その他の特徴が無いところを見ると種族はヒューマンだろう。

「今日オラリオに来てばっかりなのに風邪をひいてしまうのも可哀想と言うか……」

俺が考え事をして中でも少年の説得?は続いていた。

正直提案自体には願っても無いことでありがたいし、喜んで返事をしたいのだが…

(得体の知れない人からの誘いってなんか躊躇するんだよな……なんか騙されそうというかなんというか)

 

少年を知る者からしたらそんな不安は杞憂に過ぎないと笑って返せるが、なんせネットが普及し、何をするにもスマホ片手に行動する現代っ子な歛にとって見ず知らずの相手から話しかけられるというのは戸惑うものである。

この数分でも少年が嘘をつける者でないことはわかるし、本当に善意で言ってくれていることがわかる。優しい奴だ。

 

(悪いやつじゃないことは確かなんだが…なんで見ず知らずの俺に話しかけたのか確かめたいな)

「取り敢えず服を乾かすだけでも来ませんか?それによかったら夕食も…」

「あの、さ」

「どうです…っては、はい?」

「お前……っていうのはちょっと感じ悪いか、君のその申し出は正直願っても無んだが…」

「!じ、じゃあ!」

俺の返事にわかりやすく表現が明るくなる少年

「でもその前に一つ聞きたいことがある」

「はい!なんですか?」

「なんで俺に声をかけた?」

「え……」

「あんたはいい奴だ、でもだから困っている人全員に声かけるって訳じゃないだろ?」

「それは、そうかもしれません」

「じゃあなんで俺に声をかけたんだ?それも初対面の今日この街に来たばっかの俺に」

 

正直助け舟を出してくれた少年には失礼な質問だと劍自身自覚はあった。

ギルドを出てから降り出していた雨が時間を追うように強くなっていった。

周りのほとんどが急な雨に急ぎ足で通って行く中少年〈ベル〉は徐に口を開いた。

 

「あなたが僕に似てたから、です。」

「俺があんたに?」

「はい、僕冒険者なんですけどまだなって数週間で、つい最近まであなたと同じ田舎からこのオラリオに来てファミリア探しで苦労しました。」

「…」

「それで貯めてた貯金も底がついて途方にくれたときひと様、ヘスティア様が声をかけてくれたんです。」

「ヘスティア、それがあんたのファミリアの主ひとの名か?」

「はい、僕はそれがとても嬉しかった。あの時本当にもうダメで諦めようとした時あの(ヒト)が僕を見つけてくれたから、今ここに僕がいるんです。」

「…」

「僕はあの(ヒト)の眷属です。もし前の僕と同じ境遇の人がいたとしてその人を見過ごすことは出来ません。もし見て見ぬ振りをしたならそれは神様の顔に泥を塗る事になります。そんなことしたくありませんし、なにより僕と同じ目にあっているあなたをほっとけないんです。」

(なんつー目してんだよ。俺より3、4ぐらい下なのに、真っ直ぐにこっち見やがって、そいつが真剣なのか目を見ればわかるってよく学校の先生達がよくいってたけど本当なんだな…)

こいつはイイ奴だ。それもアホがつくくらい。そして優しい子だ。

「ははっ」

「あ、あの?」

「歛」

「え?」

「俺の名前、成木 歛だ。」

「ナリキ レン?変わった名前ですね、僕はベル・クラネルです。」

「変わってるのかな?まぁレンでいいよ、今日一日よろしくな」

「はい!僕もベルで構いません!よろしくお願いします!」

「って事で悪いんだが早速その〈ホーム〉ってとこに案内してもらってもいいか?流石に冷えて来た」

おっと鼻水が

「あ、ああー!そ、そうですよねごめんなさい!」

「い、いや、そ、そもそ、もおれがあしど、めしたん、だし、へ、へ、へ、へくしゅん!!」

「だ、大丈夫ですか!?ごめんなさい〈ホーム〉まで結構あるので走ります!」

「お、お、うだどんだだどんだ(頼んだ)

 

歛サイドout

 

ここまであまり運がよくなかった歛だったが、少年(ベル)のお陰でなんとか屋根と壁がある建物を確保することに成功した。

 

「ここ?」

「はい……まぁより正確に言えばこの建物の地下なんですけどね…」

歛がベルに連れていってもらった場所、そこは廃教会だった。

(冒険者になってまだ数週間って言ってたけど、これって冒険者っていうより、ファミリア結成数週間じゃね?)

正解である。

ベルの主神ヘスティアもこの下界に来て間もなく、つい最近までとある神友の鍛治神に世話になっており、この廃教会もその鍛治神がくれたモノだった。

(まぁ、散々失礼な事を言った挙句今日1日世話になるんだから文句は言えねーな、最悪雨風凌げれば今の俺には十分だからこの教会内でも全然野宿よりマシだよな)

 

それに実は歛は楽しみにしていることがあった。

 

(あのベルを眷属にした主神ヘスティア、名前や俺がやってきたアプリゲームとかでは女性…この場合は女神か、のはずだがベルの雰囲気からして神格者の神だと思うけど……どんな神なんだろう)

「じゃあ中に案内するよ」

 

ベルはそう言うと教会奥にある隠し部屋がある扉から階段を下って歛を案内してくれた。

 

「しかしまぁ隠し部屋とは秘密基地みたいでワクワクするな」

「あはは、そう言ってもらえると嬉しいです。」

「でも今更だけどその神様に前もって言った方がよかったんじゃないか?いきなり押しかけたら迷惑なんじゃ…」

「大丈夫ですよ。事情を話せば神様はわかってくれますから。」

 

そう話をしているうちに地下部屋の扉の前に着いた。

 

「神様、今帰りました!」

「おっかえりー!!!!ベルくーーーーーーーん!!!!」

「ぐぉっ!!」

「べ、ベル!?」

 

扉を開けた途端幼女がベルに向かって突進し、ベルと一緒にその幼女に押し倒された。

 

(な、なんだ、何が起こった!?)

「もー!!遅いじゃないかい!ベル君!外は雨降っているのにこんな 遅くまでどこ行ってたんだい!ずぶ濡れじゃないか!!心配したんだぞ!!」

「ご、ごめんなさい!ギルドの人と打ち合わせしてて遅くなりました。雨が強くなる前に帰れればよかったんですけど」

「身体がものすごく冷えてるじゃないか!このままでは風邪を引いてしまうよ!それはダメだ!だから先にシャワーを浴びておいで!なんなら僕も一緒に暖めるぜ!」

「い、いや!それはダメですよ!!」

「照れることはないだろう?別に決してベル君と一緒に入りたいと か!ベル君の身体を堪能したいとかそんな邪な考えではなく!ベル君が風邪を引かないためなんだよ!!だ、だからい、一緒にシャワーを浴びるのは仕方ない事なんだよ!ぐへ、ぐへへ」

(すげーな、建前を言ったあとで本心がダダ漏れな会話をここまではっきりわかるなんてな……つか、この幼女が神様?いやいや神様っていったらあれだよな、あれしかないよな、あれ以外ありえないし…いやでも)

「な、なぁベル」

「とりあえず離れてください!濡れちゃいますよ!ってああ、すみません!ちょっと待っててください」

「いや、それはいいんだけどよ、そこの女の子はお前の妹さんかなんかか?」

「え?何言ってるんですか、この(ヒト)が主神のヘスティア様ですよ。神様ごめんなさい、この人を今日一晩泊めさせてください。」

「むむ?どうしたんだいベル君、君がお客さん、それも〈ホーム〉に泊めさせたいんだなんて、めずらしいじゃないか」

「え、ま、マジでこの子が神様?」

「おいおい僕は君よりも長く生きていて年上なんだぞー!」ドヤぁ

 

幼女(ヘスティア)はドヤ顔で威張ると、歛を正面に見据え

 

「まぁベル君が連れて来た子だから大丈夫だと思うけど後でいろいろ聞かせてもらうとして、君名前は?」

「え、レ、歛、成木 歛だ、です?」

 

さっきまでの暴れっぷりが嘘のように雰囲気が変わったヘスティアに対し、戸惑う歛はついタメ口のあとで敬語を使う。

そんな歛の心中を知ってか知らずか意気揚々と名乗った。

 

「レン君だね!初めまして僕はこの子の主神で慈愛の神ヘスティアさ!とりあえずオラリオでベル君の初めての友達は歓迎するぜ!よろしく!」

 

その自己紹介は神にしてはあまりにも威厳がなく、敬愛するにはとても子供っぽかったが、その言葉一つ一つに慈愛に満ちた感情が流れ込んだ気がした。

 

序章 第4話 女神〈ヘスティア〉



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ファミリア

令和です。
それだけです。
そんなことよりもなんと来月6月にはダンまち15巻とソード・オラトリア 12巻が同時に発売だって!
んでもってその次の月はダンまち2期やるし、ダンメモも2周年になりますし、この夏はダンまちフィーバーや!!


「僕の名前はヘスティア!よろしくね!」

 

序章 第5話 ファミリア

 

ヘスティアと名乗った少女……いや女神は初めて会うレンに明るく自己紹介をした。

この自己紹介からでも彼女が善神であり、神格者なのがわかる。

 

ヘスティアの容姿は小柄で歛やベルの胸あたりの身長だ。が、それとは対照的に豊満な胸があり、ロリ巨乳という言葉がぴったりだった。

髪はツインテールで服装は胸元が開いたホルターネックの白いワンピースでその大きい胸のせいで谷間が暴力的なまでに目立っており、その大きさをより強調していた。

そして1番の特徴といえば左二の腕から胸の下を通って体を巻きつけるように青いリボンをつけていた。

ここまでのヘスティアの容姿を踏まえると年頃な歛にとって目に毒で直視出来ないように思えるが、ヘスティアの親しみやすい明るい雰囲気が歛に緊張感を与えず接することが出来た。

 

「それでベル君?なんでレン君をここに連れてきたのか聞かせてもらえるかい?」

「あ、はい。実は……」

ヘスティアに促され、俺をここに連れてきた経緯を説明するベル。

その間俺は今後のことを考えていた。

(とりあえずベルのおかげで今日は野宿せずに済んだが明日もこうとは限らない)

今日はベルの言葉に甘えて泊まらせてもらうが、そのまま明日からファミリアが決まるまで泊まらせてもらうなど虫が良すぎる。

(やっぱ、まず第一目標はどこかのファミリアに入ることだな、んで出来ればダンジョン探索系のファミリアが理想だけど、今日の感じだと難しいそうだな。

一目見られただけで田舎者、弱者って言われてるくらいだからなー)

「はぁ、」

「?どうかしました?」

「ああ、なんでもない気にすんな」

「は、はぁ…」

 

今日の惨敗記録に思わず溜息を吐き、それに気づいたベルは声をかけるが歛はなんでもないと言い手のひらを振った。

 

「あ、それで神様、今日はもう雨も降ってますし、今晩だけでもレンさんを泊めさせてください。」

と、俺がこれからについて考えているうちにベルの事情説明が終わったらしく、再度自分の主神に頭を下げていた。

頭を下げるベルに続き俺も慌てて頭を下げる。

「お願いします。今晩だけでいいんでここに泊めてください。迷惑はかけません。上の教会の空いてるスペースでいいのでお願いします。」

「ンー、ベル君の気持ちはわかったし、レン君の事情もよくわかったよ。僕らも余裕があるわけじゃないから満足いく食事とか出せないけど、困っている子供をほっておくのは僕の存在意義に反するしね!今日一日はゆっくりしていってくれよ!」

「!神様ありがとうごさいます!!」

「ありがとうごさいます。助かります!」

その慈愛の心で俺を受け入れてくれたヘスティアに感謝し、ベルの神様がヘスティアで本当に良かったと思った。

っと話がひと段落したとき

 

ぐぅ〜〜〜〜

 

俺の方から誤魔化せられないほどの空腹であるアラームが鳴った。

「……はは、じゃあ早速だけどご飯にしよっか!」

「はい!そうですね!すぐ準備します。」

「あー、すまん…手伝うよ」

「あ、じゃあお願いします。」

お腹の音を合図に食事の準備をし出した。

そしてテーブルには3人分の料理が並んだ。

「なんか1人分の食事が増えただけなのに豪華に感じますね神様。」

「そうだね!やっぱり食事は食べる人数が多ければ多いほど楽しいもんさ!レン君もそう思うだろ?」

「え…」

 

ヘスティアの質問に歛は一瞬戸惑った。つい数時間前までこれから一人暮らしする準備をする予定で、しばらくは1人で食事をするのは当たり前だと思っていた。

それに親や兄弟も仕事やアルバイトで時間がバラバラで家族一緒に食事をするなんてここ何年も無かった。

だからベルとヘスティアの会話には何か眩しいものを感じた。

 

「?レンさん?」

「あ、ああ悪い、そうだな、やっぱみんなで食べるのはいいこと、だよな」

「はい!」

「うんうんレン君わかってるね!じゃあいただこっか!」

「はい!神様」

 

ベルの返事から3人とも手を合わせ、

 

「「「いただきます!」」」

 

こうして、俺は何とか今日1日だけだが寝床を確保することが出来た。

そして何故か数時間前の俺が見たら貧相と思う食事は数時間前に食べたバーガーセットよりもうまく、とっても暖かいものだった。

 

「…………」

ベルとヘスティアが寝静まった時を見計らい俺はホームの外、廃教会にあるベンチに寝っ転がっていた。

ヘスティアには

「レン君はそこのベットで寝てくれよ。え?僕はどうするのかだって?ムフフン心配は無用さ!僕は今日ベルと一緒のソファーで寝るからね!そうさ、これは仕方なく、やむ得ず、なくなくそうするしか無いのさ!ムフ、ムフフ、ムフフフフ………」

と言われたが、ようは俺をダシにしてベルと一緒に寝ようとし、恥ずかしさの申し訳なさからベルが慌てて「ぼ、僕は床でいいですよ!!!」と顔を赤くしながら叫び、それを阻止しようとヘスティアがベルを強引にソファーに寝かせつけるというよくわからん一悶着があった。

俺が仲裁に入り、話し合いの結果俺が床に寝ることでまとまった。その際ベルに「レンさんはお客なんだからせめて柔らかいソファーで寝てください!」とちょっと怒り気味に言われたが、流石にそこまで図々しくする訳にはいかない訳でベルを説得し、渋々承諾してくれた。

(たく、どこまでお人好しなんだよ……)

たった数時間だけどこの〈ヘスティア・ファミリア〉が、どうゆうファミリアなのかがよく分かった。

(団員、というか眷属はベル1人、計2人のファミリア。結成はつい数週間前。ヘスティアとベルはどっちもこのオラリオに来たばっか)

故にベルはダンジョン、ヘスティアは屋台のバイトで2人で稼ぎなんとか生計を立ててる。

それでも決して辛そうとか苦しそうというわじゃなく、毎日2人で支え合って生活している。そしてそこには確かな家族の絆のようなものがあり、これから入ってくる加入者が入ってきてもそれは変わらないだろな。

いいファミリアだ。

(俺もこのファミリアに……)

そこで歛は自分自身でも気づかないほど心身ともに憔悴していたらしく、ふと自分もこの暖かい空間の一員になりたいと思っていた。

 

「って!んなわけ行くか!散々世話になってその上『ここ居心地いいんでファミリア入れて下さい』なんて言えるわけねーだろ……」

こんな都合のいい事を思える自分が嫌になる。

(ダメだ完全に弱気になってる……)

情けない。本当に情けない。見通しが

甘かった所為で今日の寝床の確保も出来ず、最終的には年下のしかも冒険者になったばっかりの少年に助けてもらって………

(今まで本当、恵まれてたんだな俺は……)

今回の成果を言えば俺が今までどれだけ恵まれた環境にいたのか認識出来たぐらいだ。

「はぁ…これ以上ナイーブになってもしかない、とりあえず今日はもう寝よう、明日ヘスティアに入れてくれそうな神に心当たりがないか聞いてみるか」

 

今日の歛の行動が正しいかはわからない。

でも

 

「本当いいファミリアだなここは」

 

歛がベルの誘いを受けた事でヘスティアという女神に会えた。

 

「もし願うなら俺もこのファミリアに……いやないな……」

 

そして彼女の司る事物の一つが慈愛である。そんな彼女が明日からも苦労するとわかっている子供をほっとくなんて、それは彼女自身が許さないだろう。

 

「へぇー、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

「え?」

 

それに超越存在(デウスデア)である彼女達には

 

「ベル君が助けたいと思った子だから大丈夫とは思ってたけど、ものすごくいい子じゃないか」

「な、なんで」

「いやー、君の事情を聞いたときにちょっと違和感を感じてね、タイミングよく君が上に行くのがわかったからね、話しをするなら今かなって」

「話って………それに違和感ってなんだよ」

「レン君、田舎から来たって嘘だろ?」

「な………どうして」

 

嘘は付けない。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。