機動戦士ガンダム 宇宙世紀0180 (NY15)
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悪夢

 あの時のことは今でも夢に出る

 

 

 あれは忘れもしない・・・今から12年前の夏のことだ・・・

 

 その年の夏もうんざりするほどの暑さではあったが子供の俺達にはさほど気には止まらなかった。

 

 俺たちは対ザンスカール戦争勝利15年式典のイベントで戦争博物館を訪れていた。

 

 イベントの目玉としてMSの曲芸飛行を行うのとその後のコックピット試乗体験を楽しみにしていた俺と君・・・サラはショーの時間までほかの展示物を見学していた。

 

 「しかしよく試乗なんてさせてもらえるよなぁ」

 

 俺はサラにそう問いかけた。

 

 「あー、うん それはね、本当は試乗は抽選なんだけどパパに頼んで私たちが乗らせてもらえるらしいよ」

 

 そう、サラの父親は連邦政府のまあまあの位のお偉いさんらしくつまりは今回の試乗はインチキだ。

 

 「そうなんだ、サラのお父さんが偉い人でよかった」

 

 そのとき俺はまだ12のガキで心から試乗を楽しみにしていた。だからそのインチキに対する罪悪感などまるでなかった。

 

 今思えばそんなインチキは・・・いやそのイベントに行くべきではなかったと後悔している。だが仮にあの時に戻ったところで俺に何ができるであろう。結局のところ何もできないのではないかと思う・・・いやこんなこと考えるのは止そう、この12年間そんな事考えては止める・・・それの繰り返しばかりだ。

 

 「そうそう試乗するMSってすごい奴なんでしょ たしかガンダムっていう」

 

 サラにそう聞かれると俺は少し考えて返事をした。

 

 「正確には違うって解説の人がいってたよ、正式な名前はF90っていうらしいよ」

 

 「ふーん、でも顔がガンダムだよね じゃあガンダムなんじゃないの?」

 

 「いやそこまで詳しいことはわからないよ」

 

 別に俺はMSに詳しいわけでもなくそのF90という機体のことを当時はよく知らなかった。

 

 今では忘れもしないあの機体・・・

 

 「ほらこれもガンダムだよね ていうかこっちのほうが有名じゃない?」

 

 そうサラが指をさしたMSは白いガンダム νガンダムという機体だった

 

 「ああこれは有名な奴だよね 乗ってた人なんてすごい英雄だよ。でもこれはレプリカで本物は70年以上前に行方不明だって」

 

 「そっかぁ・・・じゃあ今も宇宙のどこかにあるのかなぁ」

 

 暫く他の展示物を見学しているとサラの父親、トーマスさんが現れた。

 

「やあアレックス、いつも娘と仲良くしてくれて・・・おっとそろそろ時間だから行ったほうがいいな」

 

 そうして俺たち3人は野外展示場に向かった。

 

 かなり大勢の人が押しかけていたがそこはサラの父親の力なのか最前列で見学できるようだった。

 

 そして曲芸飛行が終わりMSからパイロットが降りると試乗できることになった。

 

 「サラから先にだって!」

 

 「うん」

 

 そうサラは返事するとF90に近寄りコックピットに入っていった。

 

 そう、それから俺は君の姿をみていない・・・

 

 その直後に警報が鳴った それからの記憶はあまりのことで完全ではないが爆発音が周囲に響き渡りF90の曲芸飛行の警備をしていたジェムズガン3機が吹き飛んだのだ。

 

 「なんだ!あれはザンスカールの!」

 

 そう誰かが叫び会場はパニックになった。

 

 のちに調べて分かったことだが会場を襲撃したMS3機 ゾリディアによりイベント会場は火の海になった。

 

 「サラ!!まずい!あいつら!軍はなにをやっているんだ!」

 

 そうサラの父親が叫ぶのもむなしくゾリディア3機はF90を掴みどこかに持ち去ってしまった。

 

 「サラ!サラ!」

 

 俺とサラの父親は大声で叫んだがその声はパニックの群衆にかき消されむなしく消えた。

 

 君は消えてしまった さらわれた

 

 当初は連邦政府の高官の娘を誘拐しなにかしらの要求をしてくるものだという報道がなされたがテロ組織 おそらくはザンスカール残党からの声明はなくサラは戻らなかった。 

 

 そうしてまた俺は悪夢から覚める、この感情の矛先を俺はテロリストに向けることになる・・・だが本当に許せないのは何もできない自分なのかもしれない・・・



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マハ

人物紹介1
アレックス・ハーディング
24歳 
マハ所属の少尉(マハは軍ではないが階級は軍のそれと共通)

サラ・ウィリアムズ
24歳
12年前の事件から行方不明

トーマス・ウィリアムズ
62歳
サラの父親
連邦政府高官


 あの事件 以前からマハの影響力自体は強かったが例のMS強奪政府高官の娘の誘拐事件からそれに拍車がかかったといえるだろう。

 

 あのような事件を防げなかった軍に批判が殺到、地上での治安維持はそれから主にマハの仕事になった。

 あれから12年がたち俺ももう大人になった。

 

 サラの父親とはあれ以来も家族での交流がありそのコネ・・・というと聞こえが悪いが俺はマハにいる。

 

 そう俺はあの悪名高きマンハンターの一員となった。

 

 あれから大規模な捜査が行われたが結局サラとF90・・・正確にはF90Ⅱは発見できなかった。

 

 隠す場所などいくらでもある。それこそ連邦政府をよく思っていない連中は多くもしF90が宇宙に持ち出されていたとしたらなおさら発見は困難であろう。

 

 せめて、せめて君だけでも戻ってくれたら・・・

 

 今ならわかる まだ12だったが初恋には十分な年齢だ。

 

 俺はサラのことを好きだったんだと思う。いやそうだった。

 

そして月日が経つにつれテロ組織への憎悪が増していった。

 

 もう君は生きてはいないだろう。 ならその仇はせめて自分の手で付けたい。

あれからの俺はその復讐心 その一心で努力してマハのパイロット、士官学校を卒業して少尉にまでなったのだ。

 

 ・・・が、このままで敵を討てるのだろうか?

 

 宇宙に比べるとMSを持ち出しての反政府運動など地上ではそうは起こらないのだ。

 

 奴らの手がかりすらない ザンスカール製のMSを使用していたことくらいだ。

 

 もしザンスカール残党ならもう地上にはいないだろう。

 

 ザンスカール紛争からかなりの時間がたったがいまだにそういった残党の活動は宇宙ではかなり報告されている。

 

 もっともかつてのジオン残党のような思想があるというよりも生きるための海賊行為といったところらしいが・・・

 

 ここニューヤークでの治安維持など俺はしている場合ではないのに・・・

 

 確かにニューヤークは大都市で任務の重要性はわかる。だが守るより攻めなけば、問題の根源をなくさなければ反政府テロリストなどいつまでたってもいなくならないのだ。

 

 不甲斐ない軍の連中、連中さえしっかりやっていればこんなことにはならなかったのだ。

 

 現在連邦軍の活動の殆どが宇宙である。せめて宇宙でちゃんと活動さえしていればいいのだが現在の宇宙は地球とは比較にならないほど荒れている。

 

 もはや宇宙においての連邦政府の影響力はないに等しく、親連邦派コロニーの数個のサイドに軍は駐留しているもののそれ以外のコロニーや月の幾つかの都市を除けば殆ど影響力はないのだ。

 



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暗礁宙域

人物紹介2
エドゥ・アルカラ
30歳
旧ザンスカール軍残党兵士の息子



暗礁宙域 旧ザンスカール軍拠点アベッハ

 

 ここ暗礁宙域の拠点アベッハはかつてザンスカール帝国の自国領警備拠点だった場所である。

 

 特に当時連邦軍やリガ・ミリティアに襲撃を受けることもなく、その設備のほとんどが残ったまま帝国は崩壊してしまいその後は残党軍およびその後合流したジャンク屋や海賊くずれのような連中が集まりコミュニティを形成し一種の小さな都市のようなものになっていた。

 

 宇宙での連邦軍の活動が少ないからなのかそれとも連邦政府が現在宇宙に関してあまり関心がないのか・・・それはわからないがこの拠点の存在を連邦は把握してないと思われる。

 

 そもそもここに集まっている連中は反連邦というより生きるために違法行為に手を染めているいわばテロリストというより犯罪者、もしくは金で雇われる傭兵のような感じなのだ。

 

 もはや残党軍の人間も帝国を復活や連邦に一撃食らわせるといった考えはもっていない。もっとも他の残党軍のことまでは分からないが・・・

 

 戦力もなんとかジャンクパーツや連邦系MSのパーツを使用して維持しているゾロアットが6機と哨戒艇5艇あとは・・・例のMSが1機。それだけだ。

 

 そうあんなものは取っておくべきものではないのだ。かつて高額の報酬で釣られ引き受けたあの仕事、あんな仕事は本来目立ちたくない俺たちがやるべきではなかった。

 

 しかしあの仕事のおかげで君がいるともいえるのだ。

 

 そういま隣で寝ている君・・・

 

 当時俺はまだ18で生きるために仕方なく父親と同じ道に進んだ。

 

 親父はザンスカールのパイロットで敗戦後も投降することもなく残党として活動した。

 あの仕事を父親とその仲間そして俺の3人で地上に降りて無事成し遂げたが、まさか鹵獲したMSに人が搭乗しているとは・・・それも12歳の女の子だ。

 

 そのことはこの仕事の依頼者に報告したが特に関心は示さなかった。その子の扱いはこちらに一任すると言ったらしい。

 

 しかしあのくそったれのクライアントはなんであんな仕事を依頼してきたのか。お目当てのMSを少し弄り回して中身のコンピューターか何かを抜き出してMSはそのままこちらにくれた、いや押し付けた。奴等はどうやらお目当ての物以外には無関心らしい。

 

 現在そのMS、F90Ⅱはコックピットをほかの機体から無理やり移植して稼働状態にはあるが使用する予定はない。

 

 まったくやっかいな代物だ。おそらくこんなワンオフに近い旧式機などばらして売っても足がつく可能性が高い。かといってその辺に捨てるのも躊躇われた。なので旧式とはいえここの予備戦力という形で保管してある。

 

 さてと、俺は起き上がろうとすると隣の君も目を覚まし話しかけてきた。

 

 「もう行くの?」

 

 「ああ、なにやら昔仕事を依頼してきた奴らまたなにか話があるらしい・・・」

 

 「昔?もしかして、あのこと?」

 

 「ああそうさ君には嫌な思い出だろうし、内容によっては断ることにするさ」

 

 「ううん・・・気にしてない。それに私宇宙のが好きよ。あなたにも会えたし。」

 

 「・・・そう言ってもらえると助かる。」

 

 俺はそう言うと着替えを済ませ立ち上がり部屋を出ようとした。

 

「気をつけてねエドゥ、個人的な事情になるけどあいつら私嫌いなの、だから・・・」

 

「わかってるさ、俺も連中は嫌いだし危険な仕事なら断るよ。別に断ってもほかの仕事がいくらでもあるさ」

 

 本当は仕事を断る余裕などない、だが連中はなにかやばい、なにか他の依頼者とは違うのだ。なにをいまさらと思うかもしれないが自分たちや他の依頼者のようなアウトローよりもさらに嫌な感じがするのだ。勘でしかないが。

 

 

 



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機体解説1

ジェムズガン(マハ仕様)

武装

頭部60mmバルカン

対人用Sマイン

サンドバレル

ビームサーベル

60mmサブマシンガン

シールド

 

 連邦軍からマハに払い下げられたジェムズガン。

 性能に差異はないが対人対車両に特化した装備になっており、ビームサーベル以外のビーム兵器は装備されておらず、シールドも実体盾になっている。(これは小型MSをビーム兵器で撃破した場合の弊害が大きいため、また警備という任務の都合上ビームシールドは常時展開できないため)

 また頭部バルカンと同じ口径で弾薬も共通のマシンガンを装備している。これは対MS戦には威力不足だが、車両や反政府ゲリラに普及しているザンスカール製バイクなどには有効である。補給面でも頭部バルカンと弾薬が共通なため都合がいいという利点もある。

 

ジェムソン

武装

頭部60mmバルカン

60mmガンポッド

対人用Sマイン

サンドバレル

90mmマシンガン

フレキシブル・シールド

作業用大型スコップ

 

 マハが開発した新型MS・・・ではなくジェガンを改修した機体。

 すでに開発配備から90年近く経過してる超旧式MSだが大型MSなため設計に余裕があり、また対人対車両や作業用としてみれば小型MSよりも利便性が高い。

 その装備も対MS戦能力は考慮されておらず増設された60mmガンポッドやSマインなど対人対車両に特化している。

 また左肩に装備されたフレキシブル・シールド表面にラックがついており、そこに作業用大型スコップを標準装備している。

 ジェムズガンより大口径のマシンガンを装備しており対MS戦以外でみればむしろジェムズガンよりも使いやすい機体といえるかもしれない。

 既にジェガンは連邦軍からは完全に退役しているが民間では使用され続けており、パーツなどもいまだに生産されているため補給面でも特に問題はない。

 実はジェガン以外にグスタフ・カールが元になった機体も少数存在しているがマハでは特にどちらがベースでも同じ機体として扱っており区別はされていない。

 

エドゥ専用ゾロアット

武装

ビームサーベル

ビームライフル

胸部バルカン

ビームシールド

5連ビーム・ストリングス

 

 旧ザンスカール拠点アベッハに残された6機のうち当時の性能を唯一維持しているゾロアット。

 特にビーム兵器の維持は困難であり、共食い整備でなんとかこの機体のみ維持している。(そのほかのゾロアットはビームサーベルのみ)

 塗装などは特に変更されていない。

 

ゾロアット(残党軍アベッハ所属機)

武装

ビームサーベル

胸部バルカン

5連ビーム・ストリングス

シールド

その他海賊行為または戦場で破棄されたものを修復した実弾兵器多数

 

 旧ザンスカール拠点アベッハに残された6機のうちの5機。

様々なMSのジャンクパーツなどで修復維持されており5機は実質バラバラの機体と言える。

 ビーム兵器もサーベル以外は維持できておらず(ビーム・ストリングスはビームと名付けられているがビーム兵器ではない)機体出力も低下している。

 また失ったビームシールドの代わりに実体盾を装備している。

 

 

 

 



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クライアント

旧ザンスカール軍拠点アベッハ

 

 俺は部屋から出るとクライアントが待つフロア2に向かった。

 

 さて、今度は何をやらせる気なのか・・・あいつらあの12年前の仕事以来特に接触してこなかったというのにいったいどういう風の吹き回しか。しかも俺は連中の組織の名前すら知らない。親父ですら知っていたかどうか、その親父も3年前に亡くなった。少なくとも奴等の名前くらいは知っておきたいところだが聞いたところでそれに応えるだろうか?

 

 そうこう考えているとフロア2についた。一応このフロア2は客間、いやそんなに立派なもんではないがほかのフロアに比べればまだましなフロアになっている。

 

 ちなみにフロア1がMS格納庫兼港フロア2が応接間と倉庫フロア3とフロア4は居住区になっている。

 

 部屋に入ると身なりの整った黒スーツの男がいた。見た感じ30代後半から40代といったところか。

 

 「やぁ久しぶりだな、たしかあの時はまだ君は18くらいだったか?」

 

 「世間話はいい、それより要件を聞こう」

 

 「まぁまぁそんなに焦らなくても、と言いたいところだが、まあ確かに我々も実のところ時間が惜しくてね。じゃあ本題に入ろう」

 

 そのスーツの男はそういうと何やら端末を取り出して操作しこちらに見せてきた。そこには赤い球体の画像が映し出されていた。

 

 「これは・・・MSの脱出ポッドか何かか?」

 

 「そうだ、君たちに頼みたいのはこれだ。」

 

 「・・・いったい何が目的だ?こんなもの俺たちに頼んで?自分たちでなんとかしたらどうなんだ?」

 

 「目的など君らが知る必要はない。それに我々は今はまだ目立つ時ではないからな。どうだ報酬はこれだけ用意する。もちろん前金も払う。YesかNoか今聞こう。」

 

 そう言うとまた端末を操作してこちらに金額を提示してきた。とんでもない金額だった。そしてこの金額が意味しているところはこの仕事が危険、もしくは相当大きな力が働いているということを表していた。

 

 断れるわけがない。この金額があれば・・・いやサラは望まないかもしれないな。

 

 「・・・でそのブツはどこにあるんだ?」

 

 「そうかやってくれるか、場所は把握済みだ。サイド7付近を拠点としている規模の小さなジャンク屋と海賊連中が所持しているはずだ。詳しくはデータを渡すからそれを読んでおいてくれ。」

 

 サイド7、また厄介な場所だ。サイド7は開発途上だったが戦乱が続いたため、現在他のサイド再建が優先されいま現在は手つかずになっていたはずだ。

 

 居住者も他のサイドに移ったか、残った連中もいるがやはりそいつらは俺たちの同業のような感じであろう。

 

 だが問題なのはそういった連中ではない。サイド7は放置され荒れているにも関わらず他のサイドより治安がいいのだ。なぜならあのサイド7のあるL3(ラグランジュポイント3)付近には古くからの連邦軍の拠点、宇宙要塞ルナツーが存在するためである。

 

 連邦軍の意地なのかそれはわからないがルナツーの連邦軍は他と比べると動きが活発であり、それがサイド7での俺たち同業者の仕事のやりにくさにつながっている。

 

 そのためサイド7のアウトロー連中は規模は小さくその動きも慎重でありあまり目立たない存在であるらしい。

 

 なるほど目立ちたくないこいつらが自分たちでやりたがらないわけだ。俺達だって目立ちたくないのは同じだというのに。

 

 「で、あんたらの名前は?それくらいはいいだろ?」

 

 「私か?まあ、アポステル・ドクトルとでも名乗っておこう。では、また次は仕事を終えてから、いい報告を待っている」

 

 こいつ個人の名前ではなく組織の名前を聞きたかったんだが・・・。そのアポステルとかいう名前も偽名だろう。

 

 まあいい、だがこいつらからの仕事はもうこれっきりだ。この仕事の報酬があれば自分達だけの分け前でもかなりの金額になる。

 

 この仕事はあくまでこいつらが俺達ザンスカール残党に依頼した仕事だ。このアベッハにいる全員に支払われるわけではないのだ。

 

 この報酬をもらったらMSを売り払ってサラと2人でまっとうに生きていくのも悪くはないかもしれん。



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クライアント2

お詫び
第3話の暗礁宙域で話に無理がある設定があったので加筆修正しました。



サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 ここスウィート・ウォーターは元は難民収容の為に建設された密閉型とオープン型を繋ぎ合わせたコロニーである。異なる設計をつなぎ合わせつくられたためにお世辞にもバランスがいいとは言えず、また過去に反連邦勢力の拠点になったこともあり、連邦政府からの復興支援もあまり受けられていない。他のコロニーよりもさらに環境が悪いと言えるだろう。

 

 またサイド3には現在連邦軍が駐留していないこともあり、連邦に不満をもつ、または実際に行動に起こすような反連邦勢力組織の温床になっていた。

 

 「で、そうか奴らはこの件を了承したか。よしならば問題ないな。それと例のデータの件だが、おそらくは1バンチコロニーのズム・シティにあるはずだ。そちらの件も早急に。では。」

 

 さてと、ようやくだ。これでやっと計画が進められる。データの件は我々自身で手に入れたほうがいいだろうな。このサイド3は連邦の監視などほとんどない。

 

 この計画が完了すればいよいよ我々の本格的な活動開始だ。今はまだ下地作りの時といっていいだろう。すでに我々の同志もかなり集まっている。他の反連邦勢力もこの計画が完了した暁には我々に加わる、もしくは連携するだろう。そしてなにより民衆の支持も受けるはずだ。

 

 しかしやはり例の件・・・初めから実績のあるザンスカールの奴らに依頼すべき事案だった。

 

 以前依頼した男がすでに亡くなっていたというのもあるが、あまり同じ連中を使うのも躊躇われたというのが本音だ。12年前の件はかなりの大規模だったためというのもある。

 

 いやあれほど計画に重要な物だ。多少のリスクを冒してでも我々の手でやるべきだったのかもしれない。

 

 しかし現在例の物はサイド7にある。あそこで我々が今活動するのはさすがに危険すぎる。

 

 「後悔先に立たず、というやつか」

 

 そういえば前の依頼の時の子供、あの件も我々で対処したほうがよかったのかもしれない。いやもう12年も前のことだ、今更になって何か問題が起きるとも考えにくいが・・・

 

 あの子供の件を連中に一任した時、もし連中がその子供を使って連邦政府に身代金でも要求しようとしていたらそのときに消えてもらっていたのだが、あのザンスカールの男はなかなかに分別のある奴だったのでそのようなことはしなかった。

 

 仮に何か問題になるようでも計画さえ完了してしまえばもはや何の意味ももたらさないか。それにもしその子供の件で計画完了前に我々の存在が露見する恐れがあれば消えてもらうだけだ。

 

 さて息子のほうはどうだろうか。できれば私を失望させないでほしいものだ。

 



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ニューヤーク襲撃

地球 北米都市ニューヤーク

 

「HQHQこちらオールド1異常なし、定時連絡終わるオーバー」

 

「オールド1了解、そのまま警備を続行せよ、アウト」

 

 ふと思う・・・このままでは何も変わらないのではないかと。

 

 俺は定時連絡を終えて、MSジェムソンのコックピットでボトルに手を伸ばし水分を補給する。

 

 マハは一応警察であり軍ではない。・・・が俺のような一介のパイロットに捜査などできないのだ。そもそもマンハンターのもともとの役割は地球上に存在する不法滞在者の摘発なのだが・・・

 

 あの時のMSゾリディア3機はどこに行ったのだろうか。その機体さえ発見されれば何かしらの手がかりになるかもしれない。・・・いや内部のデータなど消去されているだろうな。

 

 しかしあれだけ大々的に捜査されたのだ。影響力が低下したとはいえ地球上では連邦政府の手の届かないところなどないというのに。

 

 「やはり宇宙か・・・」

 

 実のところマハの宇宙進出はすでに決定されており、その準備は着々と進んでいる。がこの時点での俺はそんなことは知る由もない。

 

 そんなことを考えていると、周囲に警報がなりその後すぐに爆発音が鳴り響いた。

自分のいる位置の数ブロック先と思われる高層ビルが派手に火を噴き倒壊していた。

 

 「なんだ!?HQHQ!こちらオールド1」

 

無線で本部を呼び出したが答えは返ってこなかった。

 

 「まさか本部がやられた?いや違うミノフスキー粒子か!」

 

 「上空からMS接近!市民の皆様は直ちに屋内に避難してください!」

 

 避難アナウンスが流れ市街地はまるでハチの巣をつついたかのようなパニックになっていた。

 

 その時ビームの軌跡が目の前を横切りビルに直撃した。

 

 俺は機体を動かしビルの陰に隠れ敵を探した。

 

すると上空に1機飛行しているMSがおり、またビームライフルを発射した。

射線の先には他のジェムソンがおり、ビームが直撃し爆発炎上した。

 

 「クソッ!テロリストども地上で簡単にビームをつかってくれる!」

 

 もしやられたのがジェムソンではなく小型MSのジェムズガンだったなら核爆発を起こして今頃この周囲ほとんどがお陀仏だった。(小型MSの小型化した核融合炉はビームで撃破された場合高確率で核爆発を起こす)

 

 俺は上空にむかって90mmマシンガンを撃つが敵機はビルの陰に隠れ姿をくらました。

 

 こっちも移動しなければやられるな・・・

 

 俺は機体をビルの陰から陰へ移動し敵機を探した。

 

 「敵の機種はなんだ?・・・照合結果はゾリディア!?」

 

 まさかあの時の機体か?いや今は考えるのはよそう。それより奴をどうするかそれに集中しなければ。

 幸い敵機は単独行動しているようだ。だが相手のゾリディアとこのジェムソンではもはや性能の差は歴然だ。

 ならば味方と連携して数的優位を生かさなければ。がまたしてもビームが発射され味方がやられたようだ。

 

 「まずいな、このブロックの警備は俺含めて3機、もう俺だけか・・・」

 

 増援はあまり期待できないだろう、他のブロックでももしかしたらMSに襲撃されているかもしれない。

 

 頬に冷や汗が垂れた。だが俺はこんなところでは死ねない。

 

 おい、まったくこんなことで・・・何のためにマハに入ったんだ!君を・・・市民を守るためだ。と自分に言い聞かせる。

 

 大丈夫だ、ここは宇宙ではなく地上、しかも高層ビル群だ。小型MSもその動きを完全に発揮できるとは限らない、それにこの機体はジェムズガンより威力の高いマシンガンを装備している。当たれば倒せるはずだ。

 

 それに誰かが言っていた、MSの性能の違いが戦力の決定的差ではないと・・・

 



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ニューヤーク襲撃2

人物紹介3
アポステル・ドクトル
年齢不明
所属不明
ザンスカール残党に12年前と今回新たに仕事依頼してきた組織の一員。
現在の組織の名称や活動、目的は一切不明だが活動拠点は宇宙である。
 



 再び敵機を発見し頭部バルカンで応戦する。数発直撃するも撃墜するほどのダメージは与えられない。

 

 「チィッ!威力不足か!」

 

 すぐさま回避運動を行いビルを盾にしながら戦う。

 

 敵機のビームライフルが傍をかすめビルが火を噴く。

 

 相手のゾリディアがビームシールドを装備していないことが幸いだった。もし装備していたら、勝ち目はさらに薄くなっていただろう。

 

 「敵機はどこだ・・・上!?」

 

自分の真上からゾリディアがビームサーベルを構え斬りかかってきた。

 

 何とか機体を後ろに倒して回避するもマシンガンがサーベルに切断されてしまった。

 

 「ええい!ならこいつはどうだ!」

 

 敵機の至近距離からサンドバレル(砂状の重金属粒子を詰めた弾丸)を発射した。

 

 散弾が敵機の頭部、ザンスカール製の特徴的なカメラ・アイセンサーにめり込む。サンドバレルをもろに食らいゾリディアはビルに叩き付けられた。

 

 その隙に頭部バルカンと60mmガンポッドで機体の右腕、つまりビーム・ライフルに向けて射撃。ビームライフルの破壊に成功するが向うも黙ってやられているわけではない。

 

 ゾリディアは胸部バルカンで反撃、直撃弾をもらってしまった。

 

 「この程度!」

 

 ジェムソンは原型機のジェガンより装甲は強化されている。この程度のバルカンではダメージは少ない。

 

 よし距離を取ろう。向こうにはもはやこちらを撃墜できる飛び道具はない、そう判断して俺は機体を後退させる。が敵機は小型MSである。おいそれと逃がしてはくれなかった。

 

 ゾリディアは体勢を立て直し再びサーベルで追撃してきた。

 

 バルカンとガンポッドで応戦するがシールドで防がれてしまった。敵機の装甲とシールド表面に火花が散りながらもゾリディアは距離を確実に詰めてきた。

 

 俺は左肩のシールドにあるスコップを取り外し構えた。

 

 「正気の沙汰じゃないが。のってくれよ」

 

 俺は賭けに出た。どのみちこのまま格闘戦に持ち込まれれば勝ち目はない。

 

 敵機がついにそのサーベルの間合いでこちらを攻撃できるぎりぎりまで接近してきたその時に俺はスコップを敵機のやや上に放り投げた。それにゾリディアは一瞬反応してしまった。

 

 その隙に左肩のフレキシブル・シールドを前に出し機体をタックルさせた。

 

 金属同士のぶつかる重低音があたりに響き衝撃でMSのエアバッグが作動した。

 

 「グッッ!だがこれならさすがに」

 

 エアバッグが再び収納されると俺は機体を起き上がらせて敵機を正面にとらえた。

 

 ゾリディアは沈黙していた。大型MSともろに衝突したのだ。質量はこちらが上、いかにパイロット保護機能があろうとただでは済まないだろう。

 

 やれた・・・ 

 

 実戦は初めてではなかったが対MS戦はこれが初だ。

 

 なんとか生き残った・・・いや大金星と言うべきだろう。

 

 しかも敵機、ゾリディアを確保できた。パイロットも生きていればいいが。

 

 他は大丈夫だろうか。少なくとも核爆発は起きていないということはジェムズガンは撃破されていないはずだ。

 

 もっともジェムズガンの配備されているブロックに敵機がいなかった、もしくは他の敵機はビーム兵器を装備していなかったのかもしれない。このゾリディアは単独でテロを起こしたという可能性もある。

 

 とにかくこれは大きな前進だ。たとえこのゾリディアがあの12年前の事件と無関係でもこの機体の入手ルートか何か判明すればもしかしたら少しは事件の真相解明に近づくかもしれない。

 

 やってやるさ、絶対に。サラ、必ず奴らを見つけ出して裁きを受けさせる。

 

 俺は心の中でそう呟いた。

 



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アデレ―ドの惨劇

 例のMS襲撃テロ事件の報告を済ませ俺は少しばかり待機を命じられていた。

 

 マハニューヤーク支局は現在かなり混乱しており、ニューヤークに日常が戻るまでにはまだもうしばらくかかるであろう。

 

 襲撃したMSは2機だけらしく、もう1機も鎮圧されたらしい。もう1機のMSの機種はゾロだったようだ。

 

 そのゾロもテロリストの機体だからなのかビームローターなどの装備は稼働していなかったらしい。ビームライフルも装備していなかったようだ。

 

 今回の件、俺はけっこう注目されたようだ。小型MSのゾリディアをジェムソンで鎮圧できたというのはかなりの活躍と言えるだろう。

 

 こういう形で注目されるのはいいことだ。出世も早まるかもしれない、出世できれば俺の権限も増える。

 

 あとはあの機体の解析を待つばかりだ。何かしら出てほしいところだが、あまり期待しないほうがいいかもしれないな。

 

 しかしジェムソンでは小型MS相手には厳しいと言わざるを得ない。せめてジェイブスとは言わないまでもジャベリンを地上にまわしてくれたらどんなにいいか・・・

 

 いやその一番新しいMSであるジェイブスもはっきり言って旧式になってきているのがだが。そりゃそうか・・・いま連邦以外で新型のMSを開発できるところなんてないからな。連邦も新型を開発するよりも既存の機体の延命で済ませようとするのはわかる。

 

 俺はそんなことを考えていると俺が待機している部屋の扉が勢いよく開き同僚がいかにも焦っているというような感じで入ってきた。

 

 「おい聞いたか!」

 

 「いや?また何かあったか?」

 

 「そのまたが起きたようだ。テレビをつけてみろよ」

 

 そう言われて俺はテレビのリモコンに手を伸ばし電源を入れた。

 

 「~では民間人含めかなりの犠牲者が出ている模様です。えー・・・只今入りました情報によりますと政府閣僚にも犠牲者が数人出ている模様、ここアデレードの連邦議会を狙ったテロでトーマス・ウィリアムズ事務次官他多数の死者が出ている模様です。」

 

 

 そのニュースを聞いた俺は耳を疑った。手の力が抜けて持っていたリモコンが床に落下した。

 

 「まじかよなぁこれ、ニューヤークとアデレードで同時にテロなんて、同じ組織の連中かもな」

 

 同僚が話しかけてきたが、俺はそれに反応できなかった。しかし続けて入ってきたテレビのニュースのあるフレーズに現実に呼び戻された。

 

 「今回のアデレード及びニューヤークの事件での犯行声明が出ました!今回のテロ事件を引き起こしたのはザンスカール系残党組織ティンブレを名乗っており・・・」

 

 ザンスカール・・・奴らはどこまでも俺を・・・

 

 俺は壁に拳を叩き付けた。

 

 同僚は何やら心配そうに話しかけてくるが、その内容は俺の耳に入ってこなかった。

 

 

 



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機体解説2

ジェイブス

 

 現在の地球連邦軍の最新機種である。(といっても配備からすでに20年以上経過している)ジェムズガンよりひとまわりほど大きく、ザンスカール戦争当時連邦軍のMSで唯一ザンスカール製MSに対して性能面で優位に立つ機体であった。

 また現在の地球連邦軍で運用されているジェイブスは原型機から改良されている。主に3タイプの装備が存在する。

 

ジェイブスV装備

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

ビームシールド

ビームライフル

ヴェスバー

ハイパーバズーカ(オプション装備)

メガ・ビーム・バズーカ(オプション装備)

 

 一番普及しているジェイブス。ヴェスバーを標準装備しておりビームシールドを貫通することが可能。またザンスカール製MSの殆どを凌駕する性能を持つ。

 またかつて量産されたF91とは違いフルスペックの改良型バイオコンピューターとバイオセンサーを搭載。F91が一般パイロットに扱いにくい機体だったのとは違いジェイブスはある程度の訓練で問題なく性能を発揮できる。

 

ジェイブスJ装備

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

ビームシールド

ブルパップ・マシンガン

ジャベリンユニット

ハイパーバズーカ(オプション装備)

 

 ジェイブスのコロニー内戦闘用装備。コロニー内でビーム兵器を使用するのが大変危険なためヴェスバーではなくジャベリンユニットが装備されている。またビームライフルの代わりにブルパップ・マシンガンを装備。

 

ジェイブスTV装備

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

ビームシールド

ビームライフル

ヴェスバー(4基)

 

 背部のバックパックに新たにヴェスバーを2基追加し合計4基のヴェスバーを所持している近接火力支援型装備。他のジェイブスとは違いジェネレーターも新型に換装されている。3タイプの装備の中で最もコストが高く配備数は少ない。

 

ジャベリン改

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

ビームシールド

ブルパップ・マシンガン

ジャベリンユニット

ハイパーバズーカ(オプション装備)

 

 近代改修を施したジャベリン。原型機に比べて10%程度性能が向上している。配備が十分とは言えないコロニー駐留軍のジェイブスを補う目的で配備されている。

 

ゾリディア(テロリスト機)

武装

ビームサーベル

シールド

ビームライフル

胸部バルカン

 

 ニューヤークを襲撃したテロリスト所有のゾリディア。ビームシールドこそ装備していないがビームライフルとサーベルを装備している。(これはビーム兵器の維持の難しさによるもので特にビームシールドは非常に維持が困難。ライフルはなんとか維持している場合も多く、サーベルの維持は比較的容易)

 

ゾロ(テロリスト機)

武装

ビームサーベル

ガトリングガン

シールド

 

 ニューヤークを襲撃したテロリスト所有のゾロ。ビームローターなどは維持できずまた分離変形機構も使用不能である。

 



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セクター・フォッシル

人物紹介4
ロペ・ドラード
25歳
エドゥと同じ旧ザンスカール兵士の息子。
父親同士は戦友である。


旧ザンスカール軍拠点アベッハ

 

 さて、今回の仕事の戦力はシノーペ級哨戒艇1隻とゾロアット2機ほどでいいだろう。サイド7はほぼ放置状態といっても過言ではないためコロニー自治軍などはない。そのため戦力は少なくてもよいだろう、いやむしろ少ないほうがいい。連邦軍の駐留軍はいないがルナツーの連邦軍は脅威と言わざる負えない。俺の完全な状態のゾロアットでも連邦のMSジェイブスには分が悪い。ならば目立たないよう、なおかつ迅速に仕事を終わらせなければ。

 パイロットは親父の戦友の息子、つまり俺と同じような立場のロペでいいだろう。決行日は追って向こうから指定するそうだ。近いうちではあるらしい。

 あと問題なのは海賊連中の戦力だが・・・詳しいことは不明らしい。大した戦力ではないはずだが。まあそうだろうな、サイド7で大規模な戦力を保持することは不可能であろう。

 俺はフロア1に向かいロペを探した。ロペは格納庫のF90の前で腕を組み立っていた。

 

 「ロペ、奴らからの件まとまった。大仕事だ、報酬もでかい。」

 

 「ん?ああ、例の奴等か。で、どんな?」

 

 「なに、ちょっとサイド7までのお使いみたいなもんだ。詳しくはこいつをみろ」

 

 俺はロペにクライアントから受け取ったデータをみせた。

 

 「こいつは・・・脱出ポッドか。なんだってこんなものを?いやまあいい報酬さえもらえればな。しかしサイド7か、危険な場所だが、それにしても報酬がすごいな、何か裏があるんじゃないのか?」

 

 「まあ、あるだろうな、だがこんな報酬をぶら下げられたら断れん。」

 

 「同感だ、裏があるならそこを覗かなければいいだけさ。それにお前が大将だ、お前が決めたことならみんな反対なんてしないさ。サラちゃんのことまでは保証できないがね。」

 

 「・・・わかってるさ。」

 

 ちなみにここアベッハのザンスカール残党の俺は一応リーダーのようなものになっている。親父が亡くなったときに引き継いだ形だ。(ちなみにあくまで残党軍のみであり後から合流したジャンク屋などは例外である。ジャンク屋は仲間というより商売相手といったほうが正しい。)

 

 「ああそれとロペ、この仕事が終わったら少し話、というより相談がある。いいか?」

 

 「相談?どうせサラちゃんのことだろ?大方この報酬をもらったらこの生活から足を洗うとかそういうことじゃないのか?」

 

 「お見通しか。反対しないのか?」

 

 「反対などできないさ。俺らは全員あんたの親父に恩がある、俺の死んだ親父も俺もな。まあさみしくはなるがここは大丈夫だ。好きなように生きたほうがいいぜ。」

 

 「すまん。」

 

 「なに、それより仕事だ。お前らバカップルの新しい門出を祝うためにもさっさと終わらせちまおう。」

 

 

  



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セクター・フォッシル2

サイド7 グリプス2

 

グリプス2、以前このコロニー、いやそうではないな。この巨大なレーザー砲は人類史上核兵器に並ぶ強力な兵器であったが、現在ではすでに破棄されて残骸になり果てている。

 奴らからの情報によればこのグリプス2の残骸周辺がブツを持っている海賊の拠点らしいがいまのところ見当たらない。ミノフスキー粒子も散布されていないようだ。

 

 「よし、そろそろシノーペから離れよう。帰る足を破壊されたらかなわない。」

 

 「了解、さてお宝を探すとしますか。」

 

 シノーペ級哨戒艇をデブリの陰に隠し俺たちは例の脱出ポッドの捜索を開始した。 

 

 まず俺たちはグリプス2内部を捜索することにした。

 

 グリプス2、コロニーレーザー内部は柱状のレーザー発振装置が等間隔に並んでいるだけでありとくに人の気配はなかった。

 

 ここは外れか。いや待て何かあるようだ。

 

 「ロペみえるか?端のほうに何かある。」

 

 「ああ、こちらも今視認した。接近して確かめてみる」

 

 「注意しろ。海賊連中の罠かもしれん。」

 

 

 接近してみるとなにやらカバーの掛けられた物体が隅に鎮座していた。

 

 「よしカバーを外すぞ。・・・これはビンゴだな。」

 

 そこには例の画像と同じ赤い球体の脱出ポッドが隠されていた。

 

 「よし確保した。さてさっさとこんなとこずらかろう。」

 

 「ん?待て、ミノフスキー濃度上昇!まずい!」

 

 通信はそこで途切れてしまったがロペも状況を把握したようでレーザー発振装置の陰に機体を隠した。

 

 やはり罠か。だが仕方がない。虎穴に入らずばなんとやらだ。

 

 俺も機体を陰に隠し周囲を観察した。コロニーレーザー内部にMS3機が侵入してくるのが確認できた。

 

 俺はロペ機に通信用ワイヤーを発射した。

 

 「みえたか?」

 

 「ああ、だがどんな機種かまではわからない。連邦のMSでないとは思うが・・・」

 

 「よし、お前はなんとかここから抜け出せ。」

 

 「おいおい冗談じゃない、俺も戦うぜ」

 

 「いやそうじゃない。いいか、俺がビームシールドを展開させて敵機を引き付けるからお前はいったん上昇して背後から倒せいいな?」

 

 「ああそうか、なら頼む。」

 

 「よし10秒後にやる、いいか?」

 

 「了解だ。」

 

 ロペ機は脱出ポッドを抱えて待機した。

 

 俺はビームシールドを展開し敵機に向かって上昇した。

 

 敵機もこちらを確認したようで3機は散開したが、動きは鈍いな。

 

 「なんだこいつら!?大型MSだと?」

 

 データに照合なし、不明機か、いや違う。こいつらなんてMSに乗ってやがる!

 

 その機体はたしか資料映像で見た覚えがあった。あれは確か、ギラ・ドーガとかいったはず。

 

 「バカな、90年以上前のMSだぞ!」

 

 実のところ同年代のMSでジェガンタイプは現役で稼働しているのだがそれはパーツの普及している連邦系MSだからである。今目の前で動いているMS、ギラ・ドーガとはわけが違う。

 それにジェガンタイプのMSと言え最初期に生産された機体などもうないはずだ。だが目の前の機体はどうだ?おそらく生産された時期は限られている。つまりあれは本当の意味で骨頂品と言える代物であろう。

 よく今まで維持できたものだ。もっとも内部のパーツなどほとんど交換されているだろうが。

 

 そうこう考えているとギラ・ドーガ3機はマシンガンを撃ってきた。どうやら実弾のようだ。

 

 しかしこちらにはビームシールドがある。

 

 俺は弾を全部ビームシールドで防ぐと、ビームライフルを敵機に向かって3発発射した。

 

 2発のビームは空を切って外れたが1発は命中した。一応シールドで防いだようだが貫通してギラ・ドーガ1機は爆発した。

 

 俺はまた機体を上昇させコロニーレーザーからの脱出を図った。

 

 奴らの機体ではこのゾロアットについてこられないはずだ。

 

 ロペのゾロアットも出口付近から援護射撃を始めていた。

 

 ロペ機はビームライフルを装備しておらずマシンガンである。

 

 マシンガンが命中し敵機が体勢を崩した隙にビームライフルで俺がとどめを刺した。

 もう1機のギラ・ドーガがビームアックスを構えこちらに斬りかかってきたのでこちらもサーベルを構え迎え撃った。

 

 機体が接触したことにより敵機との通信が可能になる。何やら向こうは戦闘しながら通話してきたようだ。

 

 「化石どもの手先め!」

 

 「なに!?こいつ!」

 

 「貴様らのやろうとしていることは歴史への、いや死者への冒涜だ!」

 

 何を言っているんだこいつ?いやそんな戯言に付き合っている暇はない。俺は胸部バルカンを発射。威力が低いとはいえ至近距離で直撃したためギラ・ドーガは体勢を崩した。

 

 俺はサーベルでギラ・ドーガのコックピットを突き刺した。

 

 敵機を倒すとロペ機が接近してきてワイヤーをこちらに発射してきた。

 

 「よし!まあ楽勝だったか。さあさっさと行こう連邦軍に見つかったらやばい」

 

 「ああ、そうだな。」

 

 しかし敵機がコロニーレーザーの内部で仕掛けてきたのは幸運だったのかもしれない。

 外で戦った場合ビームの軌跡で目立つ。ルナツーのパトロール隊にでも見つかったらただでは済まない。

 今回は機体性能で圧勝できたがもし連邦のジェイブスと戦った場合こちら側が完敗するであろう。

 

 しかしあいつら妙な事言っていたな・・・あの海賊の奴等なにか知っていたのかもしれんな。いや、俺達には関係ない。もうこれ以上は深入りしないほうがいいだろう。

 

 

 

 



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セクター・フォッシル3

旧ザンスカール軍拠点アベッハ

 

 その後拠点に戻るまでに連邦軍に発見されることもなく無事に仕事は終了した。例のブツを奴らの輸送船に積み込みこれで仕事は完了。俺はMSから降りると例のアポステル氏が格納庫で待っており話しかけてきた。

 

 「やあ、見事仕事を終えてくれて助かった。うちの先生も結果に満足しているよ。」

 

 「そりゃよかった。まあこちらも大金を貰っている。その先生とやらに感謝してるよ。」

 

 「ところで、奴等・・・もとい海賊の連中とは何か話したか?」

 

 さてどうしたところか・・・いや変に隠したところでばれるだろう。通話ログを提出してくれと言われるかもしれん。まあそれは拒否できるにしてもあまりこいつらに不信感を抱かせるのは得策ではなさそうだ。正直に話しておこう。

 

 「ああ、奴等お前らのこと化石って呼んでたぞ。まあ俺らにはなんのことかさっぱりだが。」

 

 「化石?またそれはなんとも・・・まあ当たらずも遠からずと言ったところだな。」

 

 俺からしたらあの連中のMSのが化石だと思うがねと口に出かけたがそれは言わないでおいた。

 

 「いやしかし化石か。なるほど、ところで君、映画や小説は好きかね?」

 

 「?まあ人並みにはだが・・・それがどうした?」

 

 「大昔、宇宙世紀の前の旧世紀の頃、古代生物を化石から復活させるというSFがあったんだがね。まあ我々がやろうとしてることはそんなことさ。」

 

 「は?何の話だ?それにあんたらが目的を知らなくていいと言っていたのにどういう風の吹き回しだ?」

 

 「ああ、そのことか。いやいや我々の先生がね、この仕事が成功したらヒントぐらいは出してやれと言ってきたんだよ。どうやら先生は君たちのこと結構気に入ったらしい。まあヒントは他のフレーズがあったんだが、ちょうど君が化石と言ったのでそれに絡んだヒントを思いついてね。それと別に返事は後で構わないんだが、先生は君らを組織に勧誘したがっている。どうだ?」

 

 「まさか。お断りするよ。それに俺はもうこんな生活からは足を洗おうと考えていたところでね。」

 

 「そうか。まあでも今すぐにとは言っていない。我々も今すぐ活動を本格化するわけではない。気が変わったらいつでも待っているよ。」

 

 そう言うとアポステルは去っていった。なんだったんだ?いや考えても仕方がない。

 

 それよりサラに会いに行かなければ。俺は急いでパイロットスーツから着替えフロア4に向かった。

 

 部屋に入ると電機はついておらずサラがベッドの隅で丸くなっていた。

 

 「サラ?どうした?泣いているのか?」

 

 「エドゥ!」

 

 いきなりサラが抱きついてきた。

 

 「どうした?何があった?」

 

 「パパが、パパがね。いまテレビのニュースで地球でテロがあってそれで・・・」

 

 俺は急いでテレビの電源を入れた。

 

 「これは・・・」

 

 そこに映し出されているのは地球上のアデレードでの連邦議会を狙ったテロ事件発生のニュースだった。かなりの死傷者がでており、その死者の中にトーマス・ウィリアムズという名前があった。そしてそのテロの引き起こした組織は俺達と同じザンスカール残党であるという報道だった。

 

 「サラ・・・そのなんて声をかけたらいいか。謝って済むことじゃないが・・・」

 

 「ううん、そうじゃない。だってこのテロはここの人達が起こしたんじゃないから。それにパパにだってもう12年もあってない。もう私はここの人間になったから、宇宙で暮らすと決めたからパパにはさよならしたんだって思ってた。でもね、いつか、いつかはもしかしたら会いに行くことがあるかもしれないって心のどこかでそういう気持ちも残ってたの。」

 

 サラは俺の胸でさらに泣いた

 

 「ママはもう私が小さいころに亡くなったから、私独りになっちゃった・・・」

 

 「本当にすまない。」

 

 「エドゥは・・・私を独りにしないよね?いなくならないよね?」

 

 「ああ、君を独りになんてしないさ。保証する。だから今日くらいは泣いてたっていい。」

 

 サラが泣いているのが俺にも辛かった。何よりサラが俺達、いや俺のことを責めないのが辛かった。こんなところに連れてきたのは俺達だ。責められて然るべきなのだ。

 そしてテロを起こした他のザンスカール残党軍、ティンブレとかいう連中と俺達はしょせん同じ穴の狢。その行いが生きる為なのか政治や信仰の為なのかなんて被害者からすれば同じだ。どちらも同じテロリストでしかない。

 

 今この時ほど俺は自分の行いを後悔したことはなかった。

 

 

 

サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 「そうか、では。」

 

 よし。すべては順調だ。脱出ポッドも確保し例のデータのほうも入手できた。例のザンスカールの息子が勧誘に乗らなかったのも今の段階では想定済みだ。彼を引き入れる算段もついている。いや彼はおまけで次の行動での付属品のようなものかもしれんな。さてしかしティンブレの連中は同じザンスカールでもかなり毛色が違うな。下手をしたらこちらまで噛みつかれかねないが。いやそれならそれでもいいだろう。あちらのティンブレの首領は次の作戦でどの道お役御免だ。私達が始末するか連邦が始末するか・・・まあどちらにせよ同じことだ。しかし次の作戦・・・この私でも良心の呵責を感じる。いや、そんなことではいかんな。そんなことでは閣下の理想など達成はできないだろう。私は決めたのだ。あの日、閣下の理想を実現するためにはどんなことでもやるとな。

 

 

 



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悲しみを怒りに変えて

地球 ウェストバージニア チャールストン

 

 例のニューヤークでのテロ事件からしばらくして俺は少しばかりの休暇を貰い故郷に戻ってきていた。

 休暇自体は簡単に取得できた。そうだろうな、例のテロでの活躍もあるだろうが政府閣僚の葬儀に出席するという理由なら休暇が下りないはずがない。

 こんな形で故郷に戻って来たくはなかった。父と母に久しぶりに顔を見せた時なんだかずいぶん厳しい顔つきになったと言われた。こんな事があった直後だからというのもあるだろう。なんというか故郷であるチャールストン全体が悲しみに包まれているように感じた。いや悲しみに包まれているのは街ではなく俺自身だ。

 地元の知り合いにも何人か会った。昔俺とサラの仲を茶化していた同級生が俺のことを心配して話しかけてきたりもした。なんだかそいつがものすごく大人に見えて逆に自分がものすごい子供に思えてきた。

 ウィリアムズ家とは親の世代からの付き合いで必然的に俺とサラも物心ついたときから一緒にいることが多かった。

 サラが俺のことをどう思っていたかまでは正直わからない。幼馴染以上の感情は抱いてくれていなかったかもしれない。それこそさらに幼い頃にした大きくなったら結婚しようなんてよくある約束を真に受けるほど俺は子供でもない。でも君のことを忘れられるほど大人にもなれていない。

  実のところ最初俺がマハに入りたいと言ったとき父と母、そしてトーマスさんはあまりいい顔をしなかった。トーマスさんは俺に言ってたっけ・・・サラのことは君のせいじゃない、だから君にはそのことで危険な目にあってほしくないと。母も自分の兄弟がザンスカール戦争で亡くなっていることから反対していたし父もその母に同意していた。だが俺は自分の意思を貫き通した。これは俺の意地だ。このことだけはどうしても譲れなかった。

 やがてしばらくしてトーマスさんも父も母も反対はしなくなった。

 

 すでに葬儀は済んでいる。俺は今トーマスさんの墓標の前に立っていた。

 

 トーマスさん、俺宇宙に行くことにしたよ。局長から推薦を貰えて、マハの宇宙進出の先遣隊になる。スペース・マハ誕生まではまだ時間はかかると思うけど・・・

 

 俺はやるよ。トーマスさんとサラの仇はこの命に代えても成し遂げる。だから安心して眠っていてほしい。

 

 俺は無意識に拳を握りしめていた。ああそうさ、奴等テロリストどもをどこまでも追い詰める。たとえ宇宙の掃きだめに隠れていようが必ず、この俺が仇を討つ。

 

 俺にはそれくらいしかできない。



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動き出した陰謀

人物紹介5
ロバート・マクラウド
38歳
地球連邦軍大尉


宇宙 サイド4(旧サイド5)宙域付近 ラー・カイラム級 アドミラル・スターン

 

 まったくわざわざ俺達ルナツーの部隊を引っ張り出してテロリスト退治とは上の連中よっぽど焦っているらしい。それもそうか・・・マハの人狩りどもが宇宙にも手を出そうとしてるので軍としても何かしら大きな実績を残しておきたいのはわかる。

 現在俺たちはテロリストの拠点になっていると思われるサイド4のコロニー、フロンティアⅣに向かっている。ここの連中は以前から航路を荒らし輸送船などの襲撃を繰り返している。新連邦派のコロニーへの被害も大きく以前から連邦政府への対処要請が出されていたのだが問題は先送りにされていた。ここにきて軍がやっとその重い腰を上げたのはやはりマハの宇宙進出の話が持ち上がったためであろう。

 今回の作戦の戦力もラー・カイラム級1隻にクラップ級2隻、艦載MS28機と軍の本気度が窺える編成になっている。

 まったくマハの連中、俺たちが命がけであのザンスカールのガラクタを掃除してやらなかったら地球から出れない癖に。まあいい、そのおかげで軍の上層部が本気を出すならいいことかもしれないな。これをきっかけに軍もその活動を活発にするかもしれん。今までの軍はことなかれ主義が蔓延しており反政府勢力の活動すら見て見ぬふりを決め込んでいる。いや、どちらかというと今の宇宙の現状はコロニー同士での対立が深まっているほうが問題と言えるだろう。確かに連邦への反政府活動もかなり存在するのは確かだがそれ以上にコロニー間の対立のほうが重大であると言える。まさに宇宙戦国時代だ。もはやかつてのスペースノイドとアースノイドの対立からスペースノイド同士の対立へと移行している。連邦の宇宙への影響力低下が原因だろう。

 もしかしたらこのままマハの奴等が活動を拡大すれば連邦の力は元に戻るかもしれない、いや軍人の俺がそう考えるのはどうかと思うがマハは今の軍よりよっぽど治安維持に力を入れている。口の悪い同僚はマハのことをティターンズなんて言ったりするがもとを正せば軍が不甲斐ないせいなのだ。確かに連中は気に入らないが少しは軍も見習わなければならないのかもしれない。

 そういえばそろそろMSの更新の話が持ち上がっていたはずだ。詳細はわからないがなんでも連邦軍とマハ共同で開発するらしい。軍からはマハとの共同開発にかなりの反対意見が出たが結局はそれに乗ることになった。まあそのほうが予算が出やすい。マハと共通のMSを使うというのは癪に障るがそのほうが別々の機体を使うよりも予算の削減にもなるし補給面でも都合がいいだろう。

 さてそろそろフロンティアⅣ付近か、これだけ大規模な戦力を持ち出したからにはそれ相応の戦果は上げたいものだ。



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動き出した陰謀2

宇宙 サイド4 コロニー フロンティアⅣ ラー・カイラム級 アドミラル・スターン

 

 「フロンティアⅣからの応答なし、引き続き通信を試みます。」

 

 「ふむ、よしシャッター閉じろ!ビームシールド展開、戦闘ブリッジに移行。」

 

 「艦長!ミノフスキー粒子濃度上昇!コロニーからMS出現、推定20機以上。」

 

 「やはりフロンティアⅣ全体がテロリストとグルのようだ。MS隊発進急がせろ!現段階をもって作戦プランをAからBに移行。コロニー付近及び内部でのビーム兵器の使用を許可する、オールウェポンズフリー!」

 

 「MS隊各隊へ通達 作戦プランをBに変更。直掩機を除くV装備とTV装備の機体も外部の敵を殲滅後コロニー内部に突入せよ」

 

 「バルーン射出!続いてフロンティアⅣの工業ブロック及び港に各艦一斉射!」

 

 ラー・カイラム級1隻とクラップ級2隻の主砲が一斉に光を放ちコロニーに大量のビームが吸い込まれるように命中した。

 

 まったくやはりこうなったか。どうやらお偉いさんはコロニーの民間人など犠牲になっても構わないということらしいな。いやフロンティアⅣそのものを反乱分子として扱うつもりかもしれん。

 

 

 「MS隊射出位置へ!」

 

 「了解、射出位置についた。」

 

 「進路クリア、オールグリーン、発進どうぞ。」

 

 「ロバート・マクラウド、ジュリエット1出るぞ!」

 

 カタパルトから俺のジェイブスV装備が射出される。加速したことにより加速Gが体にかかる。

 

 俺の機体の後ろから2番機と3番機のジェイブスも俺に続いた。

 

 敵はデナンタイプか。まあ大したことはないが数は多いな。

 

 3番機のジェイブスTV(ツインヴェスバー)装備がヴェスバーを発射、敵機のビームシールドを貫通してデナン・ゾンが爆散した。

 

 敵さんはビームシールドを装備しているとはなかなか整備が行き渡っていると見えるが逆にそれが命取りだ。

 ビームシールドは確かに実体盾に比べて多くのメリットがある、がしかし相対する相手側がビームシールドを貫通できる装備を持っていた場合話は別だ。

 ビームシールドにはいくつかのデメリットが存在するのだが、特にこの二つが大きいであろう。一つは自機のセンサー系に干渉すること、もう一つは目立つということだ。つまりビームシールドを貫通できる装備があれば逆に目立つ的になってしまう危険性がある。ならかといってビームシールドの展開を解除すればいいと思うかもしれないがそれをやると今度は通常のビームライフルが防げなくなってしまう。

 まあ悩みどころだが幸いなのはそれを考えるのが俺達ではなく敵さんのほうだと言うことだ。

 

 俺もビームライフルを敵機に向かって発射、動きが止まったところをヴェスバーでとどめを刺した。

 

 戦闘はこちらが優勢のようだ。敵機の数は明らかに減っておりコロニー内部へ撤退する機体も出始めていた。

 

 「MS隊各隊へミノフスキー通信で通達、コロニー内部への進入路を作る、これよりコロニー中央部へ艦砲射撃を実施、射線上から退避せよ。」

 

 さてコロニー内部への突入だ、果たして連中いつまで抵抗を続けるのやら。

 

 

 

 

 

 



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動き出した陰謀3

フロンティアⅣ内部

 

 コロニーの外壁が艦砲射撃で吹き飛びその穴からMSが続々と突入していった。穴からは空気が逃げていきその勢いで外に投げ出された車や人が確認できた。

 

 嫌な光景だがあまりそちらに気を取られていては自分が危険だ。

 

 特に敵機の装備しているショットランサーには注意しなければならない。敵機よりもこちらのほうが性能が上とはいえあれに当たると流石にまずい。

 

 コロニー内部にはかなりの敵機がいるようだ。フロンティアⅣの自治軍の戦力は予想よりも多いらしい。

 

 俺は自機に迫ってきたデナン・ゲーにライフルを発射、ビームシールドで防がれたが敵機は衝撃で吹き飛びビルに叩き付けられる。しかしまだ生きているらしい。デナン・ゲーはそのビルからは動けないようだがショットランサー内臓のヘビーマシンガンを発射してきた。俺はそれを回避、そのまま接近して蹴りをお見舞いしてやった。

 

 デナン・ゲーの頭部が吹き飛び、転がっていった。俺は振り向きざまにビームライフルで止めを刺した。

 

 所詮はその程度か。

 

 周囲では他の小隊のジェイブスJ装備の発射したビームジャベリンが直撃したベルガ・ギロスが市街地に墜落していくのが確認できた。

 

 これでは虐殺と変わらない。なぜフロンティアⅣの連中は降伏しないのか。降伏勧告は出ているはずなのだが。これではコロニーの被害が増えるだけだろうに。まあその被害を出しているのは俺達なのだが・・・

 

 しかし連中、コスモ・バビロニアのMSを使用しているとは・・・確かにここフロンティアⅣはコスモ・バビロニアに一時期占領されていたことがある。奴らの建国自体は失敗したが、事件以降連邦政府の宇宙への関心の低さが露呈、歴史学者の中にはあの事件が今日の宇宙戦国時代の始まりだと言っている者もいるらしい。がそれも半世紀以上前の話だ。

 しかしコスモ・バビロニアのMSはブッホ社製、いやブッホ社自体がバビロニアと同じグループなのか・・・まあその辺の話は置いといて、ブッホ社自体はザンスカール戦争前に倒産したはずだ。ということはフロンティアⅣがその設備か何かを受け継いだのかもしれないな。まあそれは詳しく後で調査すればわかることだろう。

 

 

 ん?敵機がさらに後退していく?これ以上後退などもはやどこに行くつもりだ?

 

 何だあれは!?

 

 コロニーのさらに奥から何か小さな物体がこちらに飛来してくるのが確認できた。

 

 それは円盤状で高速で回転しているように見えた。

 

 あれは確か・・・まずい!

 

 周囲の味方機はその円盤に向かってビームライフルを発射、かなりの数を撃墜したように見えたがそれ以上に数が多い。

 

 なんて数だ、当てるのは簡単だがこれだけの数がいたら流石にまずい。

 

 その円盤が2番機のジェイブスに殺到、サーベルを振り回して何機か落としたが抵抗むなしく機体が切り刻まれて撃破されてしまった。

 

 「クソ!こいつらバグなんて隠し持ってやがったのか。」

 

 なるほど連中が降伏しないわけだ。恐らくはこいつら他のコロニーにこいつを使って攻撃、中の人間を皆殺しにして無傷でコロニーそのものを手に入れる計画でも立てていたのだろう。

 

 しかし今回の件で追い詰められて自分のコロニーでバグを使用したに至るというわけだ。

 

 まったくスペースノイドって奴はどうしてこうもトンデモないことをやらかすのやら。



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動き出した陰謀4

宇宙 フロンティアⅣ ラー・カイラム級 アドミラル・スターン

 

 「MS隊からミノフスキー通信入ります。・・・コロニー内部でバグと呼ばれる無人兵器を確認、MS隊に被害が出ている模様です。」

 

 なるほど、今回の作戦、どうやら軍の面子以外にも何かあるようだとは思っていたがそういうことか。もし面子を保つためだけの作戦ならこんな物騒な物は持ち込まないはずだ。ということは以前から上層部はフロンティアⅣがバグを所持していることを掴んでいたというのか、あるいは・・・いやそんなことを考えても仕方がない。

 

 「MS隊へ撤退命令を出せ。艦の直掩機も友軍の撤退を支援させろ!」

 

 もはや迷う余地はないようだ。仕方があるまい・・・神よ、われらの罪を赦し給え。

 

 「ミサイルランチャー1番2番発射管に核弾頭装填、友軍撤退と同時にフロンティアⅣを攻撃せよ。」

 

 私のこの言葉を聞いたブリッジには若干の戸惑いの声が響いたがすぐに収まった。

 

フロンティアⅣ内部

 

 撤退命令か、正直ありがたい。このままだとさらに損害が増えるだけだ。俺の小隊以外にも撃破された機体が出始めている。

 

 俺は頭部のバルカンを発射しながら機体を後退させる。

 

 バグにバルカンが命中して吹き飛んだ。

 

 こいつら相手ならビームライフルよりもバルカンのほうが有効だな。しかしバルカンの装弾数はそう多くはない。今の射撃で俺のは弾切れだ。

 

 バグ自体に攻撃を当てるのはさほど難しくはないのだがいかんせんこの数だ。

 

 よしさっさと脱出だ。3番機のジェイブスが外に出るのを確認すると俺も入ってきたコロニーに空いた穴に飛び込んだ。

 

 我が隊が一番先行していたこともあって俺が最後らしい。

 

 さてこの後どうするのか・・・いやとりあえず艦に戻ろう。

 

 コロニーからは追撃のバグや自治軍のMSは出てこなかった。

 

 「ん?艦隊から通信?コロニーに核攻撃だって!?」

 

 いや、それくらいやるかもしれんな。もっともビーム兵器使用が許可された時点でコロニーへの被害など考慮しても仕方がない。

 

 しかしそれをやれば間違いなくフロンティアⅣは壊滅、生き残りなど出ないであろう。

 

 こりゃ俺は間違いなく死後は地獄行だな。いやそんなものあるかどうかわからんが。

 

 しばらくしてラー・カイラム級から2発のミサイルが発射、フロンティアⅣに命中した。

 

 核爆発を直視したらまずいのでその瞬間を見なかった。

 

 まったくなんてことになっちまったのか。大勢が死んだ。もし俺があのニュータイプって奴なら何か感じることもあったのだろうが特に感じるものはなく罪悪感だけが残った。

 

 ニュータイプか・・・そんなもの本当に存在するのだろうか?確かに兵器をうまく扱えるという意味でのそれは存在するとは聞いたことがある。しかし本来の意味での人類の革新、誤解なく分かり合えるという意味でのニュータイプなど幻想なのではないかと思う。かつてジオン・ズム・ダイクンが提唱したとされるニュータイプ理論、しかしその後出現したニュータイプは戦争に利用され本来の意味とは真逆の働きをしてしまった。かつての伝説的なニュータイプ、アムロ・レイとシャア・アズナブルも最終的には袂を分かったのだ。

 

 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 「先生、フロンティアⅣの件予定通りに行ったようです。」

 

 「そうか、まあ持つべきものは友というからな、私の友人が連邦にいて助かったというところだろう。」

 

 今スペースノイド同士で大きな争いをしてもらっては困るのだ。それにこの件すら次の作戦に利用できるだろう。

 

 「それとティンブレにMS・・・ザンネックと例の機材を譲渡完了しましたが・・・あれでよかったのですか?」

 

 「ん?ああ構わないどうせ奴らはこちらのことなどほとんど知らんのだ。」

 

 「はあ、しかし次の作戦奴等に任せるにしては危険すぎるかと・・・」

 

 「なに、心配はいらない。それに私は鈴の扱いには慣れている。」

 

 

 



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宇宙へ

宇宙 月面航路 サラミス改級艦内

 

 サラミス、この艦はMS登場以前から現在に至るまで1世紀以上にも渡り連邦軍を支え続けている超老朽艦だ。戦場での主役をMSへ奪われてからも、いや奪われたからこそ今まで使用され続けていると言えるかもしれない。もしMSやミノフスキー粒子が実用化せず艦艇が戦場の主役であり続けたのであれば次世代艦にとっくの昔に交代していたであろう。ふと思う、いったいこの艦はいつまで使用され続けるのだろう?

 

 

 現在俺は連邦軍のサラミスに搭乗し月面に向かっている。

 

 マハ宇宙進出、その為のマハと連邦軍共同の次期主力機開発計画、通称プロジェクト・MM。

 

 詳細についてはまだ俺もよくは知らされていない。月面についてから説明されるであろう。

 

 しかし宇宙に来られたのはいいがその任務はテロリスト鎮圧ではない。いや今はまだ我慢だ。いつの日か必ずその任務に就ける時がくる。

 

 そうだ俺は今まで12年も必死に努力してきたじゃないか、ここで焦ってはいけない。

 

 そういえば宇宙に上がって暫くして妙な感覚に襲われた。なんだか他人の意識が自分の頭に入ってくるような、そんな感覚だ。ひどく頭痛がして、悲しみや痛み・・・そんな感覚が頭に入ってくるようだった。

 

 あれはいったいなんだったんだ?もしかしたら初めての宇宙で体にストレスがかかっているのかもしれない。

 

 しかし意外にも重力に体を縛られないというのは妙な感覚で思っていたよりも悪くはない。 

 

 それに宇宙から見る地球は美しかった。直に自分の眼でその地球を見たときその姿に目を奪われた。

 

 まったく今の時代になってずいぶんと時代遅れ的な事を言うと思うかもしれないが、直に見る地球というのはまた映像や画像とは違うものだった。

 

 目的地は月面のフォン・ブラウン市アナハイム社の工場だ。

 

 アナハイム社は一時期連邦軍の主力機開発をサナリィに奪われてからしばらくの間冷遇されていたが現在では再び全盛期の業績を取り戻しつつある。

 

 次期主力機もおそらくはアナハイム社製になるだろう。

 

 実はこのアナハイムという会社を俺はあまり好きではない。

 

 こいつら武器商人は金さえ払えば、いや金を払わなくてもテロリストに武器を供給している前科がある。もちろん表ざたになっていない事もたくさんあるだろう。

 

 要するにテロリストに武器を売りつけ、それに連邦も対抗する。つまりテロリストにタダで武器を渡したとしても最終的にはアナハイムの利益になるのだ。

 

 これだから武器商人って奴は嫌いだ、おそらく一年戦争後裏でアナハイムの関わっていない戦乱など殆ど無いであろう。

 



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月面での再会

登場人物紹介6

ヨハンナ・アルトマイアー
24歳
マハ少尉でアレックスと士官学校同期

ローレンス・ファーナビー
24歳
マハ少尉
ヨハンナとアレックスの同期


月面 フォン・ブラウン市アナハイム社工場

 

 月面、そこは宇宙空間とは違い地球の6分の1ほどだが重力が存在する。もっとも居住区には人口の重力を発生させているため施設の中にいれば地球と同じ重力が保たれているのだが。

 

 さて次期主力機開発計画、プロジェクトMMとは一体どのようなものなのか・・・

 

 しばらくしたらブリーフィングがあるのでそこで説明されるはずだ。そういえば先ほど簡単な健康診断したのだが、そこで脳波検査のようなものをされた。あれが一番時間がかかったのだが何だったのだろうか?昔やった脳波検査とは違うような気がしたのだが・・・

 

 しばらくすると今回の計画に参加するマハからの人員が集まり始めた。その中に俺の知っている人物も数名おり1人に向こうから話しかけられた。

 

 「アレックスじゃないか!ずいぶんと久しぶりだな、確か士官学校以来だから・・・」

 

 「ん?ローレンスか、お前も今回の計画に参加するのか?」

 

 「ああそうだ、いやまさかアレックス、お前に会えるとは、あれから連絡だってよこさないから心配してたんだぞ。」

 

 「いろいろあってね・・・それにそっちだって忙しかっただろ?」

 

 「いやいや俺の配属された地域なんて暇なほうさ、アレックスは確かニューヤークだっけか?いやあそこは大変そうだよなぁ、この間だってでかいテロがあったばっかりだし。・・・それよりヨハンナもここに来てるぜ、ほら向こうに。」

 

 ヨハンナか、俺の彼女に対する印象はやたらと突っかかってくる同期でローレンスの知り合いくらいな感じだ。最初はローレンスの彼女か何かだと思ったのだがそうではないらしい。ローレンス曰くパイロットにしておくには勿体ない美人だが性格はじゃじゃ馬・・・だそうだ。別にパイロットが美人だろうが何だろうが関係はない気がするが。まあたしかに美人ではあると思う。彼女のプラチナ・ブロンドはかなり目立つので士官学校の他の同期もヨハンナのことを何か話していた気がする。まあ士官学校は殆ど男なので女というだけで注目の的になるのだろう。

 

 「おいヨハンナ!こっちだ!アレックスもいるぞ!」

 

 「おい、別に呼ばなくてもいいよ。」

 

 「ん?別にいいじゃないか、まさかヨハンナのこと嫌いなわけじゃないだろ?」

 

 別に嫌いなわけではない、ただ彼女に関わってもろくな目に合わないというのが俺の士官学校時代のイメージだ。それにこんな仕事だ、ローレンスやヨハンナ、他の同期もそうだがあまり親交を深めても業務に支障をきたす可能性もある。もっともこれからこの計画がどれほどの時間が掛かるのかわからない以上あいさつ程度はしておいたほうがいいのかもしれない。

 

 しかしまさか同期が俺含めて3人も一緒になるとはやはりMSのパイロットというのは不足しているのかもしれないな。もっともマハの管轄である地上でMS戦があまり発生しない以上その経験を持つパイロットというのは限られてくる、おそらく俺が選ばれたのもその経験があるためであろう。ローレンス達がどうなのかまでは分からないが。

 

 「アレックス!久しぶりね。あれから連絡もくれないなんてずいぶん冷たいのね。」

 

 「そこまでの仲でもないだろ・・・それにローレンスとだって連絡は取ってなかったよ。」

 

 「そうなんだよなぁ、こいつ俺にも連絡しないで、まったくこれだからむっつり君は困る。」

 

 「・・・別にローレンスとヨハンナだって連絡なんて取りあってないだろ。」

 

 「あら、私とローレンスはたまに連絡してたわよ、もしかして妬いてるの?」

 

 「まさか。」

 

 「ま、俺のほうからヨハンナに連絡取ってたんだけど、俺だとヨハンナ全然相手にしてくれないからなぁ」

 

 「それよりさっき脳波検査のようなものをされたんだが、あれが何かわかるか?」

 

 「ん?ああ、俺もやられたな。詳細はしらないが・・・ヨハンナは何か知っているか?」

 

 「さあ、でもたぶんサイコミュの適正検査だと思うけど、あの機体のこともあるし、もしNT(ニュータイプ)適性があればその試験に協力してもらって新装備開発に役立てるつもりじゃない?」

 

 あの機体・・・確かにここに来たときに一番最初に目を引かれた存在である。

 

 なんでもプロジェクト・MMに関係のある機体だそうだが詳細は俺も聞いていない、だがその大きさは現在主力の小型MSどころか大型MSよりもさらに大きく40m近いサイズだそうだ。

 

 「それに私は貴方たちよりも少し先に宇宙にいて、ジェイブスのスナイパーカスタムの試験もしてたのよ、あれにもOT(オールドタイプ)用のサイコミュが搭載されてたし、それの関係でNTがいればその人に試験してもらいたいんじゃない?」

 

 OT用のサイコミュは既に開発はされているのだが、それはあくまでもOTでも使用できるというレベルに過ぎないのだ。まずどうしてもNTが使用した時よりも性能が落ちるのはまだいいとして、OTが使用した場合脳に損傷を与える危険性があるらしい。

 

 そういえばサイコミュ兵器の代名詞ファンネルだが近年再び注目されているようだ。ファンネルはMSの小型化や対サイコミュ戦術の普及など様々な原因で戦場からしばらく姿を消していたのだが、ザンスカール戦争の時期ほどから再びその手のサイコミュを装備した機体が登場していた。

 

 NTか、もし俺にその力があれば何をするのが正解なのだろうか・・・

 

 

 

 



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プロジェクト・MM

月面 

 

 プロジェクト・MM、自機主力機開発計画の概要は、MSを超える機動兵器開発計画であった。

 ミノフスキードライブを搭載し全領域に対応できる汎用性、またコストも低く抑えるという野心的な試みであった。その為機体はある程度大型化してもよいというのが連邦軍とマハの要求したスペックである。

 

 MMはマン・マシーンの略称である。

 

 マン・マシーンか・・・モビルスーツを超える機動兵器、その1号機が例の機体だ。

 

 と言っても例の機体は新造ではなくモスボール保管されていた過去の超大型MSに改造を施し新装備の実証を行う技術実証機であるらしい。(大型故に新装備の実証に最適だったと思われる)

 

 過去に封印されていたサイコ・フレームなどの技術もその封印を解除され自機主力機には搭載されるらしい。

 

 またそれ以外にも新規開発された武装などのテストも行うようである。

 

 その第一弾が俺がテストすることになった、名称は試製電熱化学砲エレクトロ・ケミカルガン。

 

 この装備の開発理由は小型MSの無視できないデメリットに起因する。

 

 小型MSはビーム兵器などがジェネレーターに直撃した場合核爆発を起こす危険性が高い。これは地上やコロニー内では深刻な問題である。

 

 そのため直撃しても核爆発を起こさず、また敵機を一撃で撃破できる威力を持ったバズーカなどよりも弾速や命中率の高い武装が求められ本武装が開発されるに至った。

 

 本武装を装備した機体は新兵装テストの為にヴェスバーなどを取り外したジェイブスで行う。

 

 しかしまだ試作品だからなのか随分とこの武装は大型だ、もう少し小型化しなければ地上で扱うには使いづらいはずだ。

 

 「標的機のジェムズガンを視認、これよりテストを開始する。」

 

 「了解、テスト射撃を実施せよ」

 

 照準を定め標的機に向かってエレクトロ・ケミカルガンを発射した。

 

 機体に反動が伝わりエレクトロ・ケミカルガンから成形炸薬弾が発射されたのだが命中はしなかった。

 

 「ダメか、規定通りもう1発発射する。」

 

 試作品だからなのか命中率に問題があると聞いていたのでこれも今後改良されるであろう。

 

 もう1発ジェムズガンに向かって発射、次は命中したので俺は内心ほっとした。

 

 「命中!ジェネレーターに誘爆なし、テスト成功です。」

 

 そう一番大事なのはそれだ。この装備が量産され地上軍やコロニー駐留軍に配備されればかなり楽になるだろう。敵機だけがビームを使えてこちらがマシンガン程度しか使えないのでは不利すぎるのだ。

 



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ニュータイプ

月面 フォン・ブラウン市アナハイム社工場

※ローレンス視点

 

 まったくアレックスの奴は妙にニブいんだか・・・あれは何か一つしか見えていないと言ったほうが正しいのか。あれだけヨハンナがアピールしても気が付かないふりだ。いやあれはマジで気が付いていないのかもしれない。

 一体彼の過去に何があったのだろうか、それをアレックスから聞いたことはない。

 

 「なあヨハンナ、まだお前アレックスに気があるのか?」

 

 「そんなのあんたに関係ないでしょ、それに折角また再会できたのにあきらめる理由はないわ。」

 

 士官学校時代からヨハンナはアレックスに気があるというのはアレックス本人以外知らない者はいないというくらいの噂になっていた。同期達でいつくっつくのかと賭けの対象にしていたり明らかにアレックスに嫉妬して敵意を抱いている者もいたのだが、当のアレックスがあの有様だ。理由は何となく思い当たる節がある。

 

 「それにさ、士官学校時代のルームメイトはあいつのサラっていう寝言みんな聞いてるんだぜ。」

 

 「・・・だから?そのサラとかいう女のことアレックスは何も言わないじゃない。付き合ってるわけじゃないみたいだし。」

 

 確かに俺達でアレックスに寝言の件を問いただしたことがあるのだが聞いてもあいつは何も話してくれないのだ。やれ昔の女だの振られた相手だのと同期達の間では話のタネになっていたのだが真相は分からない。

 

 そういえばいつの日だったか、なぜマハに入ろうと思ったのか士官学校で語り合ったことがあったはずだ。熱い理想を語る奴もいれば冷めたことを言う奴もいていろいろだったがあいつはその場でさえも特に当たり障りのないことしか言ってなかったな。

 それが本心だとは思えなかった。なぜならアレックスの内心に何か硬く強い意志のようなものを感じたからである。いや、別に俺は人の内心が読めるわけではないのだが彼にはそれを感じさせる決意のようなものを感じた。それが一体何なのか、なぜアレックスは隠すのだろうか・・・

 

 「まあヨハンナがそう言うならいいけどな、俺も協力するけどあんまり期待しないほうがいいぜ。」

 

 「別にあんたなんて最初からあてにしてないわ、それに人には言いたくない事の一つや二つはあるものよ。」

 

 そういえばアレックスの奴、検査の結果NT適正有りとでたらしいな。まさかあいつがニュータイプとは・・・あいつから感じた決意のようなものはそれだったのかもしれないな。だが俺はその結果をアレックスから聞いたとき何か嫌な予感がしたのだ。

 

 かつて存在したニュータイプ達の中には不幸な末路を迎えた者が多いと聞く・・・

 

 あいつ大丈夫だろうか、その力で身を滅ぼさなければいいが・・・



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ニュータイプ2

月面 フォン・ブラウン市アナハイム社工場

 

例の検査の結果で俺に適正有りと出たためまた後日さらに精密な検査を行うらしい。

 

 サイコミュか、俺に扱えるだろうか・・・

 

 このままでいけば俺は例の大型のMS、いやMM(マン・マシーン)のテストを行なうことになるらしい。

 

 例の機体はXMM-01 新技術実証機と言って愛称のようなものはないらしい。

 

 にしてもこいつは随分でかいな、こんな機体を俺が動かすことになるとは・・・

 

 俺はXMM-01の前でそんなことを考えているとヨハンナがやってきて話しかけてきた。

 

 「例の検査、適正有りって出たんだ、おめでとう。」

 

 「ああ、と言ってもあんまり実感がわかないな。まさか自分にNT適性があるなんて考えたこともなかった。」

 

 「あらそうなの?普通パイロット志望の男って自分がNTじゃないかとか考えそうだけど?」

 

 「さあ、少なくとも俺は違ったな。ていうかそれ別に男限定の話なのか?」

 

 「まあ私の場合はあんまりそういうこと考えたことなかったから、それに周りに女でパイロット志望の人はなかなかいなかったし。」

 

 「まあ確かにな、士官学校でも君とあと数人くらいしか女性はいなかったからな。」

 

 「・・・ねぇアレックス、聞きにくいんだけどサラっていう人のこと忘れられないの?」

 

 「・・・ローレンスから聞いたのか。」

 

 「うん、まあそうなんだけど、ローレンスもあなたからは詳しく聞いてないって言ってた。」

 

 「何でもない、ただどうやら俺は寝言で余計なことを言ったみたいで・・・まったく情けない話だ。」

 

 「嘘、何でもないことでそんな顔はしない・・・ごめんなさい、言いにくいことだってあるよね。今のは忘れて。」

 

 「いや別にいいんだ、気にしてない。ただあまり人に話すことでもないから聞かないでくれると助かる。」

 

 例の寝言の件は士官学校時代に聞かれることは多かった。だがそれはルームメイトしか知らないはずだったのだが噂っていうのは広がるものだから仕方がない。

 

 しかし情けない話だ、俺って奴は寝言でそんなこと言うなんて、しかも女性であるヨハンナまで知っているとなるともう同期の連中はこの話を全員知っているのかもしれないな・・・

 

 「でも、もし誰かに話したくなったら・・・私が聞いてあげるから、あんまり無理しないで。なんだかアレックス、つらそうな顔してるときあるから・・・」

 

 「すまない、君にまでそう思われるってことは相当ひどい顔してたんだな俺・・・でも大丈夫だ。別に無理してるわけではないさ、ただちょっとその時は疲れてたんだと思う。」

 

 しかし俺は意外と顔に内心が出やすいのかもしれない、ヨハンナにまでそんなこと心配されるくらいだ、少し気をつけないといけないな・・・あまり人に心配をかけたくはない。というよりヨハンナが俺のことを心配するなんて珍しいな、彼女は誰かを心配とかするタイプだったか?いや、俺が知らないだけで意外と世話焼きなのかもしれない。別に俺はヨハンナのことをよく知っているというわけではないからな。

 

 その時だった アナウンスでマハのパイロットに招集がかかったのは。

 

 「なんだ?とにかくブリーフィングルームに行ってみるか。」

 

 「ええ、でもただごとじゃないみたいね。」

 

 部屋は人で溢れておりローレンスも既に来ていた。

 

 「よおアレックス、ヨハンナ。二人で到着とは仲のいいことで結構だが残念ながら冗談言ってる場合じゃなさそうだ。」

 

 「何があった?」

 

 「前にアデレード襲ったティンブレとかいう連中いただろ、あいつらまたやりやがった。今度はもっとやばいぞ、カイラスギリーを乗っ取りやがったんだよ。」

 



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スクランブル

月面 フォン・ブラウン市アナハイム社工場 格納庫

 

 「私の名はロベルタ・オルティス、偉大なるザンスカール及びマリア主義の正当なる後継者である!今こそ全スペース・ノイド諸君は立ち上がってほしい、先日連邦政府のサイド4のコロニー、フロンティアⅣでの暴挙、もはや許せるものではない。今こそ再びスペース・ノイドが手を取り合い連邦政府に立ち向かう時が来たのだ!我々の要求は捕らえられている同志諸君の解放及びコロニー駐留の連邦軍の即時撤退である。これが受け入れられない場合はカイラスギリーのビッグキャノンで地球の都市ダカールに制裁を与える、回答期限は・・・」

 

 何が全スペース・ノイドだ、今現在彼らに仲間意識など存在しないにも等しいというのに・・・大方先日の事件を利用してスペース・ノイド全体のイニシアチブを取りたいだけであろう。それにフロンティアⅣの連中は他のコロニーの攻撃計画を練っていたというじゃないか・・・

 

 まったくとんでもないことになった。いや敵討ちのチャンスが巡ってきたと言えるのかもしれない。

 

 だがまだこの機体試運転もしていない、いきなり実戦とは流石に想定外だ。

 

 今回の事件、カイラスギリーを占領したテロリストは護衛の連邦軍艦艇をアウトレンジから攻撃、その全てを撃破したようだ。

 

 さらにそれだけではない、その後奪還に向かった連邦軍の艦艇とMSのビームを全て防いでしまったのだ。奴等カイラスギリー全体をカバーできるIフィールド発生装置を持ち込んでいるらしい。(それらしき敵MAを確認したとのこと)

 

 ありえないことだ、ミノフスキー粒子散布化で長距離射撃を成功させたこともそうだがテロリスト風情があの要塞全体をカバーできるほどのIフィールドを持っているなんてどう考えてもおかしい。

 

 ・・・で現状を打破できるのはこのXMM-01、つまり俺に声がかかったわけだ。

 

 このファンネル搭載機ならIフィールドの内側から敵を攻撃できる。敵機のIフィールド搭載MAさえ撃破してしまえばこっちのものだ。

 

 まさかマハの本部長直々に俺に声がかかるとは思っていなかった。

 

 「やるしかないか・・・で、このサイコミュ本当に俺に扱えるのか?」

 

 「一応この機体のファンネルはOTでも使用できるようになってますから使えはするはずですよ。ただNT適性がないと脳に障害が発生する危険がありますがね。」

 

 「大丈夫なのか?」

 

 「さあ、少尉殿はまだ精密検査を受けていませんからニュータイプ能力は未知数です、保証できるわけありませんよ。」

 

 「・・・はっきり言ってくれるな。」

 

 「まあ、気休めかもしれませんが少尉殿がNTであることは間違いないですから、うまくやれますよ。それにほら彼女さんも一緒なら大丈夫ですよ。」

 

 今回の作戦、ヨハンナがこの基地に乗ってきたジェイブス・スナイパーカスタムも参加、援護してくれることになっている。

 

 「・・・ヨハンナは俺の彼女ではない。ところでこの機体、新技術実証機だと言いにくんだが何か他の呼び名はないのか?」

 

 「特に無いですけどね、でもこの機体の原型機はクィン・マンサって呼ばれてたみたいですよ、随分昔の話になりますがね。では少尉殿、ご武運を。」

 

 「そうか、ありがとう。よし機体を出すぞ。」

 

 しかし説明は受けたがなぜかこの機体、メインのジェネレーターが動かないらしい。もっともサブの融合炉だけでも十分だと聞いたが・・・

 

 「進路クリア、オールグリーン、発進どうぞ。」

 

 「了解、アレックス・ハーディング、クィン・マンサ行きます。」

 

 

 



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ティンブレ

人物紹介7

ロベルタ・オルティス
32歳 女性

ザンスカール残党軍ティンブレの首領


旧ザンスカール軍拠点アベッハ フロア1 格納庫

 

例の地球でのアデレードの件のこともあり俺はサラになかなか話を切り出せないでいた。

 

 まあ足を洗うと言っても急いでいるわけではない。時間はたっぷりあるので移住先のコロニーをゆっくり選んでもいいだろう。(ある程度の金とツテがあれば非合法だがコロニーの戸籍を買うことは可能)それに先日のフロンティアⅣの事件のこともある、変なコロニーを移住先に選んでしまっては元も子もない。

 

 しかし気になるのはティンブレとかいう連中だ・・・あいつら何が目的なのだろうか?今更帝国の復活などできるはずがない。今連邦政府にテロを仕掛けたところで何の得になるというのか・・・

 

 「なあロペ、あのティンブレとかいう残党軍のことどう思う?」

 

 「どうって言われてもな、それに俺は残党軍とはいえ生まれた時には既に帝国は無かったからなぁ・・・だが連中のやっている事はとても正気とは思えないとしか言いようがないな。」

 

 「そうか・・・ん?警報だと!?」

 

 格納庫に警報が鳴り響き当たりがざわつき始めた。

 

 「なんだ!?レーダーに反応!?包囲されているだと!?」

 

 「艦艇2隻にMS20機以上!?まさか連邦軍に見つかったか?」

 

 いや違うな、連邦軍ならこの時点で攻撃あるいは投稿勧告を出してくるはずだ。それにミノフスキー粒子も散布されていない、ということはこれは戦力を見せつけているということか・・・

 

 「アンノウン艦の艦種は・・・カリスト級巡洋艦、これは・・・」

 

 間違いない、奴等はどうやら俺達と同じ残党軍ということになる。

 

 「周囲のMSにゾロアット以外にリグ・シャッコーとザンネックが確認できるな・・・MAまで持ってやがるのか、あれはビルケナウの改造機か・・・」

 

 ありえない、あのようなMSを今まで維持してきたというのか・・・特にザンネックなどその機体自体がとてもテロリストに維持できたものではない。

 

 「エドゥ、奴等ここに入港を打診してきてるぜ、どうする?」

 

 「どうするも何もこんな戦力差があっては戦っても結果は目に見えてる、受け入れるしかあるまい・・・」

 

 まさかこいつらがティンブレか?一体何の用事でここに来たのであろうか?

 

 しばらくして港の入り口にザンネックとリグ・シャッコーが侵入してきた。(ザンネック・ベースは装備していないようである。)

 

 「仕方があるまい、とりあえず酸素ブロックにパイロットを来させろ、話を聞いてみなければ連中の目的もわからん。」

 

 しかしザンネックから降りてきたパイロット、あれはどこかで見覚えがある気がする。距離がありパイロットスーツ越しなので顔がよく見えないが、あれはまさか・・・

 

 



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機体解説3

ジェイブス・スナイパーカスタム

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

シールド(実体盾)

ショートバレルビームライフル

ジェネレーター内臓型大出力ロングレンジビームライフル

Iフィールドジェネレーター

 

 マハが宇宙進出のため自機主力機のつなぎの為に開発したジェイブスのカスタム機。スナイパーの名を冠しているが近接戦闘能力も高い。

 そのメインウェポンであるジェネレーター内臓型のビームライフルはかつてネオ・ガンダムに装備されていたG-B.R.Dの改良発展型と言えるもので(ただしG-B.R.Dに搭載されていたコア・ファイターとのドッキング機能およびサブフライトシステム的機能は搭載されておらず純粋なビームライフルとしての機能しかない)威力はヴェスバーを遥かに凌駕している。またビームシールドはスナイパー機としては目立ちすぎる及びセンサー系に干渉するため実体盾が装備、ヴェスバーやビームシールドを装備しない分ジェネレーター出力にかなりの余裕があるためIフィールドを搭載している。

 またミノフスキー粒子散布化で長距離射撃を命中させるため戦後ザンスカールから接取したスーパーサイコ研究所開発のサイコミュ・センサーをOTでも使用できるよう改良したものを装備。ただしOTが使用した場合脳に損傷を与える危険が大きいため使用時間に20秒の制限が掛けられており、使用後は3分程度のインターバルを確保する必要がある。そのため後記のスポッターカスタムとの連携が想定されている。

 

ジェイブス・スポッターカスタム

武装

ビームサーベル

シールド(実体盾)

ビームライフル

Iフィールドジェネレーター

その他連邦軍オプション装備

 

 

 ジェイブス・スナイパーカスタムとの連携を想定して開発された複座仕様の機体。その要求された機能はサイコミュ・センサーを最大限活用してそのデータを僚機であるスナイパーカスタムに提供することである。

 OT用サイコミュ・センサーは20秒の制限が掛けられているが複座のこの機体ならば連続して40秒、僚機であるスナイパー・カスタムを合わせれば60秒の使用が可能である。また複座仕様だが1人でも操縦は可能である。(その場合のサイコミュ・センサーの使用時間はもちろん20秒)

 またサイコミュ・センサー以外のカメラユニットや通常のセンサー系も強化されておりその関係で頭部バルカンは搭載されていない。本機はサイコミュ・センサー抜きでも偵察機としてかなりの性能を誇る。

 

 

XMM-01 新技術実証機

武装

頭部90mmバルカン

ビームサーベル

サイコフレーム製OT用試作ジェネレーター内蔵型ファンネル

Iフィールドジェネレーター

機動兵器搭載用試作ミノフスキー・バリアー

 

 新技術を試験するために保管されていた旧ネオ・ジオン軍開発の超大型MSクィン・マンサに改造を施した機体。(ただし保管場所及び経緯は不明。第一次ネオ・ジオン紛争当時の機体とは別物である可能性が高い)搭載されていた各メガ粒子砲はオミットされ、頭部にあったコックピットも通常のMSと同じ位置に変更されている。(そのため頭部には通常のMSよりも大口径のバルカンが装備された)またミノフスキードライブを搭載している。

 ファンネルはOT用に感度を増幅させるためサイコフレームで出来ており、コックピット周辺にもサイコフレームが搭載されている。一応OTでも稼働させることは可能だがやはり脳への障害が発生する欠点はいまだに解決されていない。ジェネレーターを内蔵しているため実際にはファンネルではなくビットに属する兵装だがファンネルの名称のほうが普及しているためビットの名を冠していない。

 現在理由は不明だがメインのジェネレーターが稼働しておらず補助で搭載された核融合炉のみ稼働させることが可能(ただし補助の核融合炉だけでも原型機の倍に匹敵する出力が確保されている。)

 この機体で習得したデータは次世代機に反映させる予定だが、OT用のファンネル及びミノフスキーバリア搭載は次世代機には間に合わないとされ次の次を見据えたデータ取得が本機の主な任務である。

 

ザンネック

武装

ザンネック・キャノン

ビームライフル

ビームサーベル

ビームシールド

 

 ザンスカール残党軍ティンブレに組織から供給されたザンネック。一部武装がオミットされザンネックベースが装備されていない点を除けば当時と殆ど性能は変わっていない。またビームライフルを追加装備している。既にザンスカール戦争が終結してから27年が経過しているが依然としてこの機体が強力なMSであることに変わりはない。

 

ビルケナウ・イージス

武装

作業用アーム

メガマシンキャノン

外付け式ジェネレーター一体型Iフィールド発生装置

 

 組織から供給されたIフィールド発生装置を機体後部に無理やり取り付けたビルケナウの改造機。(ビルケナウの機体自体は以前からティンブレが所持していた)カイラスギリー全体を覆うほどのIフィールドを発生させることができるが、そのためにはカリスト級巡洋艦とのドッキングを必要としIフィールド展開中は機体を静止させなければならない。大型のIフィールドを無理やり取り付けたために機体バランスは最悪でありほとんどの武装が取り外されている。本機はカイラスギリー占領の為の要でありその求められた機能も広範囲にIフィールドを発生させることただそれだけの言わばIフィールド運搬機と言ったほうが正しいのかもしれない。戦闘用のクロ―アームも不要と判断され代わりに作業用アームが装備されている。

 

 

 

 

 



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ティンブレ2

旧ザンスカール軍拠点アベッハ 

 

 

 ここアベッハに乗り込んできたザンネックのパイロット、ロベルタ・オルティスという女性を俺は知っていた。といってももうかなり昔の話で前に会ったのはもう何年前か正確には思い出せないが・・・

 

 「しばらくぶりエドゥ、あなたのお父様が亡くなっていたなんて私、知らなかったわ」

 

 「ロベルタお前・・・一体何の用事だ、それにあんな戦力どうやって・・・」

 

 「まあ私達にも出資者というのが存在するの、気にくわない出資者がね。」

 

 「出資者・・・?でそいつらの命令でテロなんてやらかしてるのか。」

 

 「まさか、我々ティンブレは誰の命令も受けない、ただ彼らとは利害が一致しているから協力してるだけ、次の作戦が成功すればもう私達に逆らえるものは誰もいなくなる、そうすればもう奴等も何も言えなくなるわ。・・・であなたならもう私が何を言いたいかわかるでしょ。」

 

 「俺達に協力しろというのか、冗談じゃない、お断りだ。」

 

 「貴方達に選択肢があるとでも?見たでしょ外の戦力、賢明なあなたならまさかとは思うけど抵抗するなんて言わないと思うけど。」

 

 その時部屋の扉がいきなり開きサラが拳銃を構えロベルタに突き付けた。

 

 それに反応してロベルタの護衛二人が銃を構えあわや銃撃戦になりかけたがロベルタが護衛に銃をさげさせ何とかその場で流血騒ぎは回避された。

 

 「パパの仇!こいつらが・・・!」

 

 「サラ!やめるんだ、殺されるぞ!」

 

 サラの銃を持つ手が震えていた、当然だ、彼女は人を撃ったことなどないのだ。

 

 「サラ?そうかこの小娘があの・・・いやどうでもいいが撃つなら撃ってみろ、もっともその状態では無理そうね。」

 

 俺はサラから拳銃を取り上げ抱きしめた。

 

 「いいか落ち着くんだ、今ここであいつを殺したらみんな殺される。君の気持は痛いほどわかるが今は我慢してくれ・・・」

 

 「でも、でもこいつが!」

 

 「そんな小娘にお熱とはまったく、感心しないなエドゥ。」

 

 「黙れ、お前らが何をしたのかわかっているのか、罪もない人が大勢死んだんだぞ!」

 

 「いいや、まだまだ少ない、それに地球にへばりついたノミどもには次の作戦でさらなる鉄槌を下すことになる。」

 

 「貴様!!」

 

 ここにサラがいては危険だ。俺はロペを呼び出してサラを連れ出してもらうことにした。

 

 ロペはロベルタのことを知らないようだったがその場の雰囲気でどんな人物かを察したようだった。

 

 「エドゥ、なんだかやばそうだが、俺もここにいようか?」

 

 「いや大丈夫だ。それよりサラを頼む。」

 

 しかしこいつら、いったい次は何をやるつもりだ・・・

 

 「さて邪魔も消えたことだし、本題に入りましょう。次の作戦、私達は連邦の奴等から我らが帝国の所有物カイラスギリーを取り返す作戦を立ててるの、協力しなさい。」

 

 「なんだって!?ロベルタお前正気か!?そんなことをしてみろ、確かに奇襲すれば一時的にはあれを占領できるかもしれないが、すぐに増援の艦隊が到着してあっという間に鎮圧されてお終いだ、それこそカイラスギリーを1発も撃つ時間すらないだろうよ。それでは連邦を脅す時間すらない!」

 

 「それくらいは想定済みよ、そのためにザンネックとIフィールドも用意したわ。作戦は完璧、カイラスギリーの発射準備にさえ入ってしまえば連邦は我々に何もできない。」

 

 なるほど出資者とやらが随分とこいつらを支援しているらしい。一体何者なんだ?

 

 「あれさえあれば、帝国の、マリア主義の復活も可能、地球もコロニーも誰も我々には逆らえない、その時あなたには私の隣にいる権利も与えるわ。」

 

 冗談ではない、しかし俺達には逆らうことはできない。すまないサラ・・・

 

 



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ティンブレ3

旧ザンスカール軍拠点アベッハ 

※サラ視点

 

 

 みんな、みんな行ってしまった・・・

 

 私はまた独りに・・・

 

 ティンブレ、奴らはパパだけじゃなくてエドゥや他のみんなまで私から奪っていった。いやそんなことはさせない、私だってこのまま何もできない子供のままなわけじゃない。

 

 私はパイロットスーツを着込み格納庫に向かった。そう、確かにここのゾロアットは全機行ってしまった、でもまだあれがある。そうあの運命の機体が・・・

 

 「サラちゃんダメだ!危険すぎる、1機だけで何ができるっていうんだ!それにその機体は旧式も旧式・・・何もできずに殺されちまうぞ!」

 

 「大丈夫です、私だってエドゥから操縦は一通り習って動かせるんですよ!それにこのままあいつらの思い通りになんて絶対にさせません!」

 

 「でも!ああもう!言って聞くタイプじゃないって知ってたけど、仕方ない。でもその機体だけじゃ奴等に追いつけない、俺も付き合うよ。シノーペならまだ余ってるから、でもいいか付き合うのは途中までだからな!」

 

 「ありがとう整備士さん、それにこの機体はガンダムなんです、奇跡だって起こせるはずです。」

 

 ガンダム、昔アレックスから聞いた話ではいつの時代もガンダムは戦場で奇跡を起こしてきたって・・・

 

 アレックス・・・あなたは今何をしているのだろう?私のことなんてもう忘れちゃったのかもしれない。あの頃はまだ子供で何もわかってなかったけど、彼には淡い気持ちを抱いていた・・・それだけは分かっていた。でもなんだかひどく昔の話に感じられる。

 

 「えっと確か武器はマシンガンとサーベルにバルカン、これだけね・・・」

 

 この機体には各所にハードポイントが設けられていて本来は任務によって異なるミッションパックが装備できるのだが展示されていた時には何も装備されていなかった。ついでに言えばマシンガンはここに来てからの追加装備の為この機体の本来の武装はバルカンとサーベルのみということになる。

 

 

 「よし、シノーペの準備は完了だが、本当に行くんだな?・・・聞くだけ無駄か。」

 

 「ごめんなさい巻き込んでしまって、でも私このまま何もしないなんて出来ないんです。」

 

 「いや、いいんだ。よく考えれば俺だってエドゥの父親に借りがあるからな、今が返し時かもしれない。」

 

 もうあいつらの好きにはさせない。私はやってみせる、私から全てが去っていくなら今度はそれを追いかける。

 

 お願い、ガンダム・・・私に力を貸して、一度だけでいいから。

 

 「F90Ⅱガンダムはサラ・ウィリアムズで行きます!」

 



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カイラスギリー

宇宙 要塞カイラスギリー

 

 

 カイラスギリー、この巨大なビーム砲はかつて存在したコロニーレーザーすら凌ぐ威力をもった恐るべき兵器である。(もっともコロニーレーザーとは原理が異なるため単純に比較はできないかもしれない)

 

 戦後連邦軍に接収されコロンブス級を改装したコントロール艦により制御されるこのビーム砲の存在は大きく、連邦の力が低下したとはいえ各コロニーが表立って反連邦を掲げられない理由の一つはこのカイラスギリーにあると言えるだろう。(反地球的なコロニーも一応表立って連邦政府には反抗してはいないのだがそれはあくまで建前であり反連邦勢力を支援している場合がある)もっとも連邦政府自体も宇宙への関心を失っているためこれを使ってコロニーを恐喝するようなことはしていない、今の政府は予算の問題もあるが宇宙などに構っている余裕はないのだ。(ただし現在再び宇宙への干渉を強めようとする動きがあるのも確かである、その一つがマハの宇宙進出、スペースマハである。)

 

 俺はロペ機のゾロアットにワイヤーを射出、接触回線での通話を試みた。

 

 「ロペ、俺はロベルタを止める。お前とアベッハの全員は俺が攻撃した隙に離脱するんだ。」

 

 「何を言ってるんだ、俺も他の奴等もお前を見捨てて逃げ帰るなんてできるわけないだろ!」

 

 「しかし、それでは全員死ぬぞ!」

 

 「わかってるさ、だがみんなこのままティンレブの連中に大人しく従うなんてまっぴらごめんだと思ってる。それに言わなくたってアベッハの全員はお前に地獄の窯の底までついていくさ。」

 

 「すまん・・・」

 

 これも親父のおかげかもしれない、俺は仲間には恵まれたようだ。少し前に俺はこいつらを捨ててサラと一緒にどこかに行こうとしてたというのに。

 

 「ロベルタ様、カイラスギリーのエネルギー充填完了、いつでも発射できます。」

 

 「よろしい、・・・待て、光学カメラに反応?連邦の援軍か?だがこのザンネックの前にはただの的でしかないな。」

 

 ロベルタのザンネックがサイコミュ・センサーを使用し接近する機体を攻撃しようとした。

 

 「ん?なんだこいつ・・・回避運動をしている?まさか狙われているのに気が付いたのか!」

 

 「ロベルタ様、光学カメラにて接近する機影の機種判明、これは、ガンダムタイプです!」

 

 「ガンダム・・・そうかあの基地にまだ機体が1機残っていたがそういうことか。」

 

 ガンダムだって!?まさか・・・

 

 「なるほど、あの基地にパイロットはもういないと思ったがあの小娘か、大方エドゥに操縦を教わっていたのだろうがたかが1機で何ができる。」

 

 サラ!!君はなんてことを・・・

 

 確かに昔機体の操縦を教えたことがあった、しかしまさかここに君が来るとは想定外だ。

 

 サラのF90Ⅱがザンネックに接近、護衛のリグ・シャッコーが迎撃しようとしたがロベルタがそれを静止、自らがビームサーベルを構え2機が切り結んだ。

 

 「やるな小娘、まさかここまで来るとは思ってもいなかったぞ。」

 

 「これ以上あなたたちの好きにはさせない!私は貴女を止める、その覚悟を持ってきた!」

 

 「だがそんな機体ではこのザンネックは止められないはしない!」

 

 ザンネックがサラのF90Ⅱをその機体出力にモノを言わせ吹き飛ばした。

 

 「うぅッ!でもまだ!」

 

 しかしサラ機も瞬時に体勢を立て直しロベルタに食い下がる。

 

 「ふん、ならばよろしい、カイラスギリーの発射準備、出力40%!」

 

 ミノフスキー粒子が薄れていたためその命令がコントロール艦に伝わったようだ。

 

 何だって!まさかまだ回答期限には時間があるはずだ。

 

 「私に逆らった罰を与えよう、その小娘の素性などとっくに調べがついているわ。攻撃目標 ウェストバージニア チャールストン!」

 

 「なんですって!やめて!!」

 

 「いいや、やめないわ。それに我々がこれを本当に使えるということの証明にもなる、連邦政府も交渉に応じざる負えなくなるはずよ!」

 

 まずい、カイラスギリーが発射されてしまう。コントロール艦を撃破すれば止められるか?

 

 「アベッハの各機へ、もはやティンブレに従う必要はない、各自の判断で行動せよ!」

 

 俺はコントロール艦にビーム・ライフルで射撃、それを撃破した。

 

 ロペ機はリグ・シャッコーを奇襲、完全に不意を突いて撃破に成功したようだ。その他アベッハ所属のゾロアットも攻撃を開始した。

 

 ・・・がしかしカイラスギリーは既に発射体勢に入っており止めることはできないようだ。

 

 「クソッ!コントロール艦をやっても止められない!!」

 

 「もはや遅い、まさか貴様らがそこまであほだったとは、私の見込み違いだったようだ、ならば制裁を受けよ!」

 

 「そんな!!ダメッ!!」

 

 無情にもカイラスギリーのビッグキャノンが発射されてしまった。出力40%とはいえ地球の都市一つを破壊するのには十分すぎる威力である。

 

 「ああ・・・なんてこと・・・」

 

 「ロベルタ!お前はサラから全てを奪ったんだぞ!」

 

 俺はロベルタのザンネックにサーベルで斬りかかろうとしたが残っていたもう1機の護衛のリグ・シャッコーに防がれてしまった。

 

 「どうした小娘!動きが鈍くなっているぞ!ならばそこで死ね!」

 

 まずい、ザンネックのサーベルがサラ機に迫っていたがそこでザンネックの動きが止まった。

 

 「なんだ、これは・・・クソッ!」

 

 ザンネックがいきなり回避運動を取る。なんだ・・・これは、ファンネルだと!!

 

 いきなり戦場に出現したファンネルに周囲は混乱、全機が回避運動を取り始めたがファンネルの攻撃目標はMSではないようだ。

 

 「しまった!狙いはビルケナウか!各機へ、あの小うるさい蠅を打ち落とせ!」

 

 しかし時すでに遅くファンネルはビルケナウに殺到、ドッキング中のカリスト級巡洋艦を巻き込んで爆発大破してしまった。

 

 「クソッ!連邦の奴等、・・・この感覚は、サイコミュ・センサーか!!」

 

 サイコミュ・センサーはある特殊な素質を持つ人間にはロックオンを認知されてしまうという欠点が存在している。

 

 目視外からの長距離射撃がカイラスギリーに命中、おそらくはあの要塞の制御管制部分を狙ったのであろう。

 

 そして接近する機影・・・なんだこのサイズは、MAクラスじゃないか!!

 

 ザンネックがその巨大なビーム砲で接近する機体に攻撃、・・・しかし攻撃は防がれてしまったようだ。

 

 「馬鹿な!!このザンネックのビームを防いだだと、ありえない!!」

 

 しかしその攻撃された機体はザンネックを無視してサラのF90Ⅱに狙いを定めたようだ。

 

 「なにこの大きい機体!!私を狙ってくる!?」

 

 サラもサーベルを構えそれを迎え撃つ。なんだあのサイズ差は・・・まるで大人と子供だ。

 

 「そこにいたかッ!ついに見つけたぞ、その機体!」

 

 



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カイラスギリー2

宇宙

 

 

 そろそろカイラスギリー周辺に到着するがこれ以上接近すると敵に捕捉される可能性が高い。なんせ奴等ザンネックなんてMSを所持している、例のセンサーを使われたらこちらの位置はすぐに発見されてしまうだろう。

 

 ヨハンナのジェイブス・スナイパーカスタムが乗ってきたSFS、セッターから離れこちらに手をのせてきた、俗にいうお肌のふれあい通信というやつだ。

 

 「アレックス、じゃあ予定通りあなたがIフィールド搭載MAを撃破した後私があれの制御管制ブロックを狙撃する、そうすればしばらくの間発射はできないはず。」

 

 「ああ、しかしその機体のサイコミュ、本当に大丈夫なのか?」

 

 「私の心配してくれてるの?大丈夫よ、これはテスト済みで安全は保障されてるの・・・20秒だけね。」

 

 「ならいいんだが・・・なんだあの光は!?カイラスギリーが発射された!?馬鹿な、まだ回答期限まで時間があるはず!」

 

 「なんてことを・・・待って、それ以外にもビームの光・・・あいつら仲間割れでも始めたっていうの!?」

 

 

 うッ・・・頭が痛い、なんだこの感覚は・・・これはまるで・・・

 

 「クソッ!しかし奴等どこに撃ったんだ?ヨハンナ、情報は入っているか?」

 

 「ちょっと待って、ミノフスキー粒子が薄まっているから長距離通信が使えるはず・・・えっ!?」

 

 「どうした?何かわかったか?」

 

 「アレックス・・・落ち着いて聞いて、その、発射された場所はウェストバージニアのチャールストン、あなたの故郷・・・」

 

 「・・・!?そんなまさか・・・そんな馬鹿な、馬鹿なッ!どうして!?」

 

 「アレックス!!落ち着いて、今冷静にならないと・・・」

 

 

 ありえない、なぜ、何故なんだ!?あそこには別に連邦政府の重要な施設など何もないというのに、発射される理由がない。・・・いやそうか、奴等実際に撃てるということを証明したということか、それで政府を脅すために、重要度の低いところで試射したということか!!奴等は俺から一体どれだけ奪えば気が済むのだ!サラにトーマスさん、故郷とそこに住む父さん母さん、友人・・・

 

 戦闘狂のギロチンどもめ、あいつら人間じゃない!だから平気であんなことができるんだ、そして挙句の果てには仲間割れと来た。

 

 「いや、俺は冷静だ、大丈夫だ、大丈夫・・・」

 

 「・・・とにかく今は目の前のことを終わらせましょう、ごめんなさい、今のあなたにこんなこと言うなんて、私最低ね・・・」

 

 「そんなことはない・・・終わらせなければ、2発目は撃たせない。」

 

 そうだ、俺はやる、援軍など待っていられるか!当初の予定ではMAとカイラスギリーの管制部分の攻撃のみにとどめ連邦軍の援軍を待つ作戦だったが、奴らがあれを発射した以上もはやそんな猶予は無い。いつ第二射が来てもおかしくないとなれば多少の作戦変更はやむ負えないだろう。

 

 奴等は内ゲバに夢中でこちらをまだ捕捉していない。まったくちゃんと警戒できていればサイコミュ・センサーでとっくにこちらを捉えられていたはずなのに、奴らのリーダーとやらはあまり利口ではないようだ。いや当たり前か、利口なら仲間割れなどしないだろうしそもそもこんな真似しないだろう。

 

 ジェイブス・スナイパーカスタムがその強化されたセンサー系および光学カメラを使用し戦場の様子を偵察し始めた。この機体もスポッターカスタムほどではないがセンサー系およびカメラは強化されている。

 

 「敵はザンネックに、その他ザンスカール系MS多数、巡洋艦にMA・・・ガンダムタイプもいる!?」

 

 「ガンダム?機種は?」

 

 「待って、データに該当機あり、これは・・・F90Ⅱ!?」

 

 「なんだって!?ヨハンナ!それは本当か!!」

 

 「ええ、間違いないと思う、・・・アレックス!ちょっと!!」

 

 やっと見つけた。長かった、だが今全て終わらせる。

 

 「行け!ファンネル達!!一番熱量の高い奴がIフィールド持ちのMAなはずだ!」

 

 ファンネルが機体から一斉に射出され目標に向かって飛翔した。

 

 よしうまく使えた、大丈夫だ。・・・ん?

 

 この感覚はサイコミュ・センサーに狙われているのか!だがそんなもの、このクィン・マンサに!

 

 敵機のザンネックの放ったビームが機体に迫る、がミノフスキーバリアーとIフィールドの二重のバリアの前では流石にあのビームでも貫通することはできなかったようだ。

 

 「チィッ!ミノフスキーバリアーがダウンしたか、これだから試作品というやつは・・・」

 

 しかし問題ない、Iフィールドさえ稼働していれば何とかなる。

 

 いた、ガンダム、ついに見つけた。

 

 俺はサーベルを抜きF90Ⅱに斬りかかる、だが少し抑えなければ、あのパイロットには聞きたいことがたくさんある、生きたまま捉え情報を吐かせる。(もしこの機体で全力で斬りかかればあのような小型機など一刀で切り伏せてしまうだろう。

 

 「そこにいたかッ!ついに見つけたぞ、その機体!」

 

 俺はF90Ⅱのパイロットに接触回線で話しかけた。・・・そして相手からの返事に驚愕することになった。そう、その声に聞き覚えがあったのだ、忘れもしないその声に。

 

 「その声!!まさかアレックスなの!?うそ!?私よ、サラよ!」



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愛から憎しみへ

宇宙 要塞カイラスギリー

 

 

 その声を聞いた時、頭が一瞬真っ白になった。

 

 君が生きていた・・・!?生きていたのか!

 

 そして君がティンブレにいるだって!?そんな馬鹿な、そんな馬鹿な!!

 

 「サラなのか!?今まで一体・・・いや、何故君がそんなところにいる!!」

 

 「アレックス!!待って!これは・・・」

 

 その時、俺たちの間にゾロアットが1機乱入してきた。

 

 「サラちゃん、逃げるんだ!」

 

 「ロペさん!待って!」

 

 「なんだお前!!邪魔をするな!!」

 

 俺はそのゾロアットをサーベルで薙ぎ払う、今度は全力で。

 

 「ウッ!エドゥッ!すまな・・・」

 

 ゾロアットの機体が切り裂かれ、真っ二つに切断された。

 

 「ロペをやったの!?」

 

 俺はいったん距離を取って再びファンネルを操作する。

 

 サラ機以外は全て撃破する、逃がしはしない。

 

 

 

  クソッ!あのバカでかい機体はなぜサラを狙う?

 

  目の前の対峙しているリグ・シャッコーにライフルを発射、奴がファンネルに気を取られそちらの対処を優先してしまったこともあって撃破に成功した。

 

 「今行くぞサラ!」

 

 ・・・が俺の前にザンネックが立ちふさがりサーベルでこちらに斬りつけてきた。

 

 「どこ見ている!エドゥ!お前は私と来ればいい!あんな小娘など・・・」

 

 「ロベルタ!!もうやめるんだ、作戦は失敗だ、今ならまだ逃げられる。さっさと撤退するんだ!」

 

 「うるさい黙れ、私はやらねばならない!このまま終われるか!!あのインチキ医者に利用されたままでは!!」

 

 俺の機体がザンネックに吹き飛ばされる。機体のパワーが違いすぎる、いかに相手の機体が格闘戦をあまり想定していないとはいえこちらが劣ることには変わりない。

 

 ・・・がその時再びカイラスギリーを攻撃したと思われる敵機の長距離射撃がザンネックを襲った。

 

 「またサイコミュセンサーか!!まずい躱しきれない!?」

 

 「ロベルタ!!」

 

ロベルタのザンネックに長距離ビームが直撃した。ビームシールドで防いだようだが貫通してしまった。

 

 コックピットの直撃は免れたようだがあれでは・・・

 

 「馬鹿な!こんなところで・・・私は自分を強化してまでマリア主義と帝国にッ!!嫌ァッ!」

 

 ザンネックの機体が融合炉と推進剤に誘爆して粉々に吹き飛んでしまった。

 

 ロベルタ・・・

 

 

 いやそれよりもサラだ、助けに行かなければ・・・

 

 俺は敵の大型機にビームライフルを発射、しかしビームが弾かれてしまった。

 

 奴もIフィールド搭載機だと・・・それにあの機体はいったいなんだ!?データに該当機がない・・・

 

 

 

 



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愛から憎しみへ2

宇宙 要塞カイラスギリー

 

 

 何故だ、何故なんだ、何故君が・・・

 

 俺はファンネルを操作しながらF90に近づく。しかしまた邪魔が入ってしまった。ゾロアットがもう1機こちらにライフルを発射しながら接近してきたのだ。

 

 どいつもこいつも俺の邪魔をして・・・

 

 「ええい!ファンネル!あのうるさいカトンボを撃ち落とせ!」

 

 なんとかファンネルを回避していたがそれも限界がすぐに来たようで1発被弾してしまったようだ。このファンネルはジェネレーター内蔵型だ、その分威力も高い、あれで奴は戦闘不能だろう・・・あいつばかりに構ってはいられない。

 

 そして俺は再びサーベルを構えF90を捉えた。

 

 「サラ!何故だ!!君は父親を!!故郷を!!何をしたか解っているのか!!」

 

 「違う!!私はやってない!!」

 

 「・・・そうか、俺に嘘をつくのか、そういうことか!!」

 

 「違うの!!待って!」

 

 「なら言ってみるんだ!!この12年間君は何をしていた!!奴らと一緒にいたんだろ!?逃げ出しもせずに!!MSに乗れるなら逃げるチャンスなどいくらでもあったはずだ!!」

 

 そうだ、そのはずだ・・・今まで奴等と一緒にいたということはそういうことだ。MSの操作まで教えられるほど奴等はサラのことを信用していたし実際にサラも逃げ出そうとはしなかったのだから。

 

 何だったんだ、俺の今までは!!何のために・・・いや俺などどうでもいい、トーマスさんはどうなる!!これではあんまりじゃないか。

 

 「みんな死んだ!死んだんだ!!トーマスさんも俺の父と母も!同級生のコニーもローラもジェフもジョージも!!君も全員知ってるはずだ!故郷に残った人はみんな死んだ!!」

 

 「アレックス!!確かに私は残ったの、でもそれはティンブレじゃない、私がいたのはまた別の所で・・・」

 

 「そんな言い訳!!」

 

 いつの間にか涙が流れていた、いや確かに俺が勝手に君はそんな人間ではないと思っていただけなのかもしれない、よく言われることだが思い出は美化されるという・・・だがこれはそういうレベルの問題ではない。まさか君が親殺しと故郷を焼き払った連中の片棒を担いでいたなんて・・・

 

 もはや容赦はしない、俺はサーベルをF90に振り下ろした。

 

 F90は回避しようとしたが避けきれず右腕が切断された。

 

 「ううっ!やめてアレックス!」

 

 「・・・殺しはしないさ、ただ裁きは受けてもらう、投降するんだサラ!もうお終いだ。」

 

 F90にサーベルを突き付け投降を促した。だがサラばかりに構っていたせいかまだ残っている敵機3機が俺に襲い掛かってきた。

 

 「しつこいギロチンどもだ!たがが3機それもビームシールドもなしでこのクィン・マンサに!!」

 

 俺は頭部バルカンを発射、口径が通常のMSよりも大きいこともあってか被弾したゾロアットが吹き飛びさらにファンネルの追撃で撃破された。

 

 残り2機もファンネルの餌食になったようだ。

 

 ・・・が背後から接近してきた機体がもう1機、俺の機体に絡みついてきた、こいつはさっきの奴か!そんな状態の機体でまだやるか!!

 

 「やってくれたなデカブツ!!ロペとアベッハのパイロットの仇は取らせてもらう!」

 

 「なんだこいつ!自爆するつもりか!?」

 

 「エドゥ!!駄目!!あなたがいないと私!!」

 

 「させるか!」

 

 俺は絡みついてきたゾロアットを振りほどく、そこまで難しいことではない、既にダメージの大きい機体となれば尚更だ。

 

 「グゥッ!駄目か!!」

 

 「引導を渡す、既に貴様らの時代は終わっている!あの世で好きなだけギロチンとバイクで遊ぶがいい!!」

 

 だがまたしても邪魔が入ったようだ、クソッ、何だっていうんだ!?

 

 「!?この感覚!!狙われている!!どこだ!?」

 

 ファンネルだと!?俺の機体以外に搭載機が出てきたのか!?

 

 「どこからだ!?・・・あそこか!!」

 

 俺もファンネルを操作、ファンネル同士のドッグファイトが始まった。

 

 ヨハンナ機のサイコミュ・センサーのインターバルが終わればあの機体などファンネルとスナイパーの十字砲火で・・・

 

 しかしあの機体・・・一体何だ?クィン・マンサよりは小さいがそれでもかなり大型の機体だ、それも赤い。

 

 「赤い彗星気取りかあいつ・・・、撤退していく!?まずい!!」

 

 赤い機体のファンネルに手いっぱいでF90とゾロアットが逃げるのに対処できない、クソッ!!

 

 ミノフスキー粒子濃度再度上昇だと!?敵のさらなる援軍か!?

 

 いや違う、味方の、連邦軍の援軍か!!奴等、あれでは敵の撤退を助けるだけじゃないか!!役立たず共が!!

 

 



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赤いMS

宇宙 

 

 

 なんとか逃げられたが生き残ったのは俺とサラ機だけか・・・

 

 あの赤いMSが助けてくれなければ今頃は三途の川の向こう側だったはずだ・・・

 

 とりあえず離れた場所で待機していたサラの乗ってきたシノーペに掴まり戦闘宙域からの離脱に成功した。(ミノフスキー粒子の濃度が高まった為比較的簡単に離脱できた)

 

 それにしてもあの機体はいったい・・・

 

 そうこう考えていると赤いMSがこちらに通信用ワイヤーを発射してきた。

 

 「大丈夫か?もうすぐ我々の艦の待機場所に到着する、その機体はもう駄目そうだな、よし、機体から降りて哨戒艇に移れ。」

 

 「その声はアポステルか!どうして俺達を!?」

 

 「話は後だ、もたもたして連邦軍に捕捉されたくないのでな。」

 

 「わかった、今降りる。」

 

 この機体ともお別れか・・・親父の形見でもあるこのゾロアット・・・最後まで俺を守ってくれたこの機体をできれば破棄したくはないのだが仕方あるまい。

 

 「よし、自爆装置を作動させろ、タイマーは30分後くらいでいいだろう。」

 

 「・・・了解だ。」

 

 

 しばらくすると遠くに艦影が視界に入ってきた。なかなか立派な軍艦のようだなあれは。

 

 「よし、その哨戒艇とガンダムは艦に収納できる、急ぐんだ。」

 

 艦内に入るとそこには見たことのない外装のMSが3機格納されていた。なんだあれは・・・

 

 「エドゥ!よかった無事で!!」

 

 「サラ!しかし無事なのは俺と君・・・あとシノーペに乗ってきた整備士だけか・・・」

 

 「うん・・・ロペさんが私を庇って・・・」

 

 ロペ・・・すまないことをした、こんなことに全員を巻き込んでしまって俺達だけ生き残るなんて・・・

 

 暫くして赤いMSからアポステルが降りてきてこちらに近づいてきた。

 

 「どうだ我々の艦はなかなかだろう?ようこそ二十一の一乗へ」

 

 「ああ、だが二十一の一乗っていうのはこの艦の名前か?随分変わった艦名だな。」

 

 「・・・まあそれは私も同感だな。」

 

 「それよりなぜ俺達を助けた?あんたらが俺達を助ける理由が俺には思いつかないんだが・・・」

 

 「前に伝えただろう?うちの先生が君を勧誘していると、まあそのためだけに艦を派遣したわけではないがね、我々もあのティンブレには少し手を焼いていて、その始末の次いでと言ったところだ、まあ結局奴等は連邦が始末してしまったがな。」

 

 「・・・まさかあんたらがティンブレのスポンサーか?」

 

 「まさか、と言いたいところだがまったく関係がないわけではない、もっとも連中は我々の言うことなど聞かなかったがね。」

 

 「そうだろうな・・・」

 

 一瞬俺の脳裏にこいつらがロベルタ達を操っていたのではないかという考えが浮かんだ、いやありえないか、そもそもロベルタは思い通りに動くような人間ではないのだ。恐らく俺達と同じようにロベルタのティンブレもこいつらの依頼を受けたことがある程度の関係なんだろう。(実際ロベルタは独断でカイラスギリーの発射命令を下していた。)

 

 「で、君たちはこれからどうする?もうアベッハには戻らないほうがいいぞ、恐らく今回の事件を受けてザンスカール残党系の組織の拠点は掃除されることになるだろうしな、いまの連邦軍でもそれぐらいはやるだろう。」

 

 「ああ、あんなに派手に動いたんだ、あの拠点がもうすでに知られてしまった可能性は高い。俺たちはどこかのコロニーで暮らすことにしようと思ってるんだが・・・」

 

 「それは無理だな。」

 

 「・・・何故だ?」

 

 「正確には君の隣のサラという女性は無理だと言っている。」

 

 そのアポステルの発言を聞いて今まで黙っていたサラが口を開いた。

 

 「何故です?宇宙は連邦政府の監視なんてそこまで・・・」

 

 「ああ確かに、エドゥ君だけならそれもできただろう、だが君は違う。君は連邦にとって無名の人間ではないからな、今回の件を受けて君の生存が政府に知られてしまった。それに現在連邦内部に宇宙へ関心を高めつつある勢力が確認されているのだ、とても静かになど暮らせないだろう。」

 

 「・・・!!」

 

 「つまり俺達には選択肢はあまりないということか。」

 

 「まあそう言うことになる、だが私は悪くないと思うがね、待遇だって保障するよ。」

 

 「ああ、わかったよ。俺達をよろしく頼む。」

 

 「エドゥ!!」

 

 「仕方ないさ、それにここが一番安全そうだ。君にとっても。」

 

 「・・・わかったわ、私はエドゥと一緒ならいい。その代り絶対に私を置いていかないで、約束して!」

 

 「ああ約束する、前にもそう言っただろ?」

 

 「うん・・・」

 

 「よしまとまったようだな、では改めてようこそズィー・ジオンへ。」

 

 

 



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You have me

月面 フォン・ブラウン市

 

 

 基地に帰還してすぐ休む間もなくメディカルチェックが俺を待っていた。恐らくは脳に障害が発生していないかを調べる為であろう。

 

 逃げられた、あの赤いMSもそうだが連邦軍さえあのタイミングで来なければ・・・このまま俺達マハだけが活躍してしまえば軍の立つ瀬がないからな。クソッ!そもそもカイラスギリーを奪われたのは軍の責任だ、軍が弛んでいるからこういう事態が起きるのだ。

 

 サラ・・・今でも信じられない 12年の時の流れというのは確かに短くない、人は変わるという、だがそれでもこれはあんまりだ。

 

 基地に戻ってきてから実感が一気に沸いてきた、みんな死んだ、文字通りチャールストンは消滅した、家族も友人も思い出も全て・・・

 

 俺はいったいこれからどうすればいい?何をすればいい?

 

 わからない、もう俺には何もない。

 

 メディカルチェックが終わると簡単な報告を済ませしばらくの待機となった。詳しい報告などは後でいいらしい、体調面を考慮してのことだろう。サラの生存、また例の機体F90があの戦場にいたことも既に知らせてはあるがその辺のこともまた詳しく聞かれることになるだろう。

 

 サイコミュはうまく使えた、あの時は混乱していたこともあってあまり気には止めなかったがコックピットとファンネルが赤く発光するという現象が起きた、あれがサイコフレームの発光現象という奴かもしれない。

 

 手が震える、怒りに任せて壁に殴りつけてみたりもしたが何の解決にもならない。

 

 今まで宇宙人共が一体何をしてきたか、知らない者はいないだろう。

 

 地球にコロニーや隕石を落とし、ザンスカールに至ってはあの気味の悪い天使の輪で地球人類全ての抹殺を企てた、それが宇宙に進出した人間のやったことだ。

 

 そんな連中と一緒に君が・・・いや君もそんな連中と同じになってしまったというのか、何故なんだ!?

 

 

 自室のベッドに腰かけながら思いを巡らせていると扉がノックされた、扉の向こうにはヨハンナが立っていた。

 

 「すまない、今は少し一人にさせてほしい」

 

 「そう言うと思った、でもほっとけなくて・・・」

 

 あまり扉の前で立ち話されても目立つのでとりあえず部屋に入ってもらった。

 

 「散らかってるからあんまり人は入れたくないんだが・・・」

 

 「聞いたわ、まさか敵の中にあなたの言っていたサラっていう人がいるなんて・・・」

 

 「・・・12年前のテロ事件は知っているか?あのガンダム、F90Ⅱが奪われた事件のことだ。」

 

 「ええ、当時かなりのニュースになってたし、誘拐された子も私と同い年だったから・・・それにしてもまさかその時の子供が生きていてテロリストの仲間になっていたなんて・・・」

 

 「俺はあの時事件の現場にいた、幼馴染が、サラが誘拐されるのを目の前でただ見ている事しかできなかった。自分の無力さを呪ったよ、その時誓った、必ず仇を討つと・・・だが討つべき敵とサラは・・・同じだった、同じだったんだ・・・サラの父親も奴等に殺された、そして今回の件で俺の父と母も・・・」

 

 「そんな・・・じゃあそのサラさんは自分の父を殺し故郷にあんなことをしたっていうの!?」

 

 「信じたくはない、だが事実は・・・俺にはもう何もない、戦う理由も!すべては無意味になってしまった・・・」

 

 俺はこれから何のために戦えばいい?俺の今までは全て否定された、なんの意味もなかった!トーマスさんや家族も救えなかったじゃないか!

 

 「そんなことない、アレックスは今まで頑張ってきた、努力してきた、それが無意味だなんてことあるわけない!」

 

 「だが結果がこれでは!俺にはもう誰もいない・・・」

 

 その時いきなりヨハンナに抱きしめられた。

 

 「ヨハンナ!?」

 

 「私がアレックスの傍にいてあげるから、そんなこと言わないで!」

 

 「哀れみでそんなこと言ってるのか?こんな情けない男に君が構う必要は・・・」

 

 「違う!私は昔からアレックス、あなたをずっとみてた、気づいてなかったみたいだけど・・・」

 

 「俺みたいな奴を?・・・まさか。」

 

 「アレックスが鈍すぎるだけ、それに同期達はみんな知ってるのよ・・・その、私があなたのこと・・・たとえ私をそのサラっていう人の代わりにしてくれても構わない、だから・・・」

 

 俺はなんて弱い男なんだ・・・今ここでヨハンナに縋ってしまうというのか、サラの代わりにして・・・

 

 なんて情けない、最低な男なんだ俺は・・・



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登場人物紹介8
ハルミトン・グッドウィン
27歳
地球連邦軍中尉


宇宙 要塞ルナツー

 

 ザンスカール残党拠点の掃討作戦、以前から軍が掴んでいた残党の拠点と思われるエリアを例のカイラスギリー占拠事件後すぐに実施されことになった。

 

 まったく自分の尻に火が付かなければ何もできないとは上層部は何を考えているのやら・・・いや想像はつく、今の軍上層部はテロリストなどよりもよっぽどマハのほうに警戒している有様だ。マハに自分たちの管轄を侵されるのが嫌なら普段からこうなる前に行動すればいいのだ。

 

 ・・・が結果から言えば既にほとんどの拠点は既に破棄された後であった。

 

 既にテロリストどもは全員逃げ出した後のようだ。だがある一つの拠点、既にもぬけの殻だったが残っていたデータの解析などから例の誘拐された政府高官の娘が滞在していたと思われる証拠を発見することができたようだ。

 

 「マクラウド大尉!こちらでしたか!」

 

 「ん?ハルミトン中尉か、どうした?」

 

 「例の掃討作戦お疲れ様です、何かいい結果が出たとかで・・・」

 

 「あれは掃討作戦なんて大層なもんじゃない、戦闘なんて発生しなかったしな。」

 

 「それにしてもあのティンブレって連中まったく何考えてたんですかねぇ?もう奴等の国なんて無くなってるってのに抵抗運動なんてしてみせてるつもりですかねあれは?」

 

 「さあな、だがそれで地球に攻撃されたんではたまったものではない、これ以上軍が失態を続ければ人狩りどもがさらに調子に乗りかねんからな。」

 

 「でも大尉も例の計画に招集されたんでしょ?これからその人狩り連中と同じ職場になるんじゃあないですか。」

 

 「それはお前も同じだろ、俺みたいなロートル引っ張り出してまったく、老人に無茶を言う。」

 

 「仕方ないですよ、まさかマハは人員をだしているというのに軍が出さないわけにはいかないでしょ、これは軍とマハの共同プロジェクトなんですから。それにやはり軍から人員を出すとなればここルナツーの部隊の誰かから引き抜くのが道理ですよ。」

 

 「そうかもな。だが月に行くのは悪くない、それにこれが終わればそろそろ俺も退役してもいい頃合いかもしれん。」

 

 「冗談言わないで下さいよ、大尉みたいな人が辞めるって言うんならそれこそ上層部の椅子を尻で磨くだけしか能がないお偉いさんはみんな用無しになってしまいますよ。」

 

 「そういうことはあまり大声で言わないことだ、それより月面の人狩りにNTがいるって噂本当だったようだな、なんでもカイラスギリーで随分活躍したとか。」

 

 「ええ、しかしおかしな話ですね、まさか人狩りの中にニュータイプなんて輩がいるなんて。人と人とが誤解なく分かり合える存在がやっていることがまさかマンハンティングとは傑作です。」

 

 「その言葉よく知ってたな、俺達の頃ですらニュータイプの定義などエースパイロットくらいにしか認識されてなかったと言うのに。」

 

 「父がそういう話好きだったからよく聞いたんですよ、なんでも昔のニュータイプはその力でMSの動きを封じたりビームを弾き返したりしたらしいですよ。」

 

 「それが本当ならますます戦闘マシーンなんじゃあないのかニュータイプって存在は。」

 

 「そうかもしれませんね、でなければサイコミュ兵器なんて生まれませんよ。」

 

 「結局力なんてのは使い方次第ということだろう。それは我々も例外ではない。」

 

 最も我らが連邦軍もそれが出来ているとは言い難いのだが。先日のフロンティアⅣの件のこともある。

 

 「サイコミュと言えばマハのNT機以外にも戦場にもう1機いたらしいな、あれについては何かわからんのか?」

 

 「そうみたいですね、詳細は不明・・・でもあれはどう見てもザンスカール製じゃないですね、恐らく昔のジオン系ですよあれは、もっとも外装を偽装しているのかもしれませんけど。」

 

 「それは無いだろう、奴等演説までしてみせた、偽装する意味がない。ティンブレの機体でないとしたら一体何者であろうか・・・」

 

 「もしかしてジオン残党だったりして、それでザンスカールと残党同士結託しているのかもしれませんよ。」

 

 「まさか、ありえない話だ。ジオン残党の活動が最後に報告されたのはもう数十年も前の話だ、それこそ俺も生まれていない。」

 

 「言ってみただけですよ。それに正体が何であれテロリストには変わりありません、倒すべき敵です。」

 

 「ああそうだ、だが俺達の次の役目はテロリスト退治ではなく自機主力機開発計画だからな、暫くは連中の相手はしなくて済みそうだ。」

 

 



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コンテニュー・オペレーション

サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 

 ズィー・ジオン・オーガニゼーション、それが奴等の正式な名称のようだ・・・いやもう奴等と呼ぶのはおかしいだろうな、俺達もその一員になったわけだから。

 

 ジオンか・・・まさかその名を冠している組織がまだ存在しているとは・・・なるほど化石とは確かにその通りだ。

 

 もっとも大きな規模の組織に限らなければ宇宙の小規模な集団が勝手にジオンを名乗って活動していることもあるらしいが・・・

 

 この組織の目的はスペースノイド自治独立などではなく(既にそれは達成されてしまっているというのもあるが)各地に散在する反地球連邦政府運動をまとめ上げ連邦に対抗できる国家的な規模の組織の確立というまた壮大なものであった。

 

 そしてそのための計画というわけかこれが・・・

 

 「君が来てくれてよかったよ、ようこそ歓迎しよう。一応私がこのズィー・ジオンの指導者と言うことになっているがまあそこまでお堅いものではない、クワック・サルヴァーだよろしく頼む。」

 

 「・・・で説明はされたがその計画、本気なのか?とても俺には実現できるとは思えないのだが」

 

 今現在ズィー・機構が進めている計画、俺達元アベッハにも大いに関係のあるそれを説明されたとき耳を疑った。

 

 シャア・アズナブルの復活・・・肉体的にもそうだが彼の記憶すら引き継ぐというどう聞いても不可能と言える計画であった。

 

 確かに肉体的という意味での復活、クローンは可能であるのだがそれが記憶となると一体どうするつもりなのだろうか?

 

 このクワック・サルヴァー曰く肉体だけの空っぽの器では意味がないと言う。

 

 「記憶の復活、メモリークローンというのは肉体的なそれとは違い難易度の高いものだ、だが我々はそれを可能にしたのだ。それには君が回収してくれた例のMSの脱出ポッドが大いに役に立ったのだよ。」

 

 「あれが?特に何の変哲もないポッドにしか見えないが・・・」

 

 「君はサイコフレームというものを知っているかね?」

 

 「ああ、聞いたことはある、あれは随分前に封印された技術のはずだが。」

 

 「そのサイコフレームが鍵なのだ、あれには人の意思、いや言わば記憶のようなものが残留することがあるのだ。そしてその人物にNT能力があり強い感情が現れればそれが乗り移る。」

 

 「そんなオカルト話俺が信じるとでも?ありえない。」

 

 「私も最初は信じられなかったよ、だがあのサイコフレームというのはオカルトそのものだ。そしてそれを抽出することも不可能ではない。」

 

 「なんだって!?じゃあまさかあの脱出ポッドはまさか・・・」

 

 

 「そうだ、あれは第二次ネオ・ジオン抗争時、シャア・アズナブル最後の乗機サザビーの脱出ポッドそのものだ。」

 

 そうだったのか・・・シャア・アズナブル、彼の最後は謎に包まれている。ライバルであるアムロ・レイとの戦いの中で行方不明になりその後の消息は一切不明。だが今になって彼の痕跡が発見されるとは・・・

 

 「もっとも我々もサイコフレームだけに頼り切っているわけではない、それが君と君のお父様の仕事の成果でもある。あのガンダムがそうだ。」

 

 「F90のことを言っているのか?あれにシャアと何の関係があると言うんだ?」

 

 「正確にはあの機体そのものではなく中身についてだ、あれに搭載されていた疑似人格コンピューターType-C.Aが我々の目的であったのだ、まったく幸運であったよ・・・あれが再びF90に搭載されたのは。」

 

 F902号機はかつてある戦いで損傷、回収されて修復されたのだがその時疑似人格コンピューターは取り外されバイオコンピューターが搭載されたらしい。だがその後バイオコンピューターが実用化されると再びまた疑似人格コンピューターの試験が再開されることになりF90に再搭載されたということらしい。

 

 そしてそれの為に父と俺が、そしてサラの運命を変えたというわけか。

 

 「そうか・・・だからあの時コックピットと頭部に搭載されていたコンピューターを抜き出したら機体は俺達に寄越したというわけか。」

 

 「そういうことだ、この計画は君たちの貢献が大きいのだよ、そして復活したシャア・アズナブルというカリスマを中心に迎えた時我々の目的は達成されるのだ。」

 



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Go out with

月面 フォン・ブラウン市

 

 

 あの事件の後ザンスカール残党拠点の掃討作戦が実施、既に大半はもぬけの殻だったようだが一応の成果は上がったようだ。サラがいたと思われる拠点も発見されたらしい。

 

 今日は休暇ということもあり暫くぶりに気の休まる一日になりそうだ。

 

 あれからヨハンナとの関係はすぐにローレンス達にばれてしまった、俺はそんなにわかりやすい人間なのだろうか?曰く態度で分かるとのことである。

 

 戦う理由か・・・あの後ヨハンナに言われたことがある、私達マハは地球の為、市民の為に存在している、だからたとえそれが復讐という目的でもいいじゃないか、建前はどうであれテロリストと戦うのには変わらないのだからと・・・確かにそうかもしれない。それにこれ以上奴等のせいで俺と同じように人生を狂わせる人を生み出させたくはない。

 

 さてそろそろ時間か、月面でデートとは随分ロマンチックなことになってきた。

 

 思えばここに来てからフォン・ブラウン市を散策したことはなかった、もっとも遊びに来たわけではないのだからこれからも特に行く予定もなかったが、それも過去の話である。

 

 まだあの事件から立ち直れたわけではない、いや一生忘れられないだろう・・・だがこのまま立ち止まるわけにはいかない やるべきことが俺にはある それにヨハンナの気持ちを知った今それに応えたいという思いもあるのかもしれない。あの時傍にいてくれると彼女に言わて正直嬉しかった あんなことがあった直後というのもあったのかもしれないが、俺みたいな人間を必要としてくれているというのが嬉しかった。

 

 そして大事な事が一つ、決してヨハンナはサラの代わりなどではない、君は君として俺の傍にいてほしい・・・と伝えなければ、もう少し時間が経ってから言おうと思う。

 

 「アレックス!準備はできた?」

 

 「ああ、・・・でエレカは借りられたのか?」

 

 「ええもちろん、今日は私が運転するわ、アレックスはフォン・ブラウンをあまり知らないみたいだし。」

 

 「助かる、次からは俺が運転するよ。・・・ヨハンナがそういう服着ているの初めて見るな。」

 

 「似合ってない?」

 

 「いや似合ってるよ、ただこれまではプライベートな付き合いは無かったから少し驚いただけさ。」

 

 「ありがと、じゃあ行きましょ。」

 

 エレカが道路を進んでいき俺は助手席から外の景色を眺めていた。遠くにとてつもなく巨大な艦艇が存在するのを確認できた。

 

 「あれが噂の金星方面への入植艦ビーナス・グロゥブか・・・まだ建造中だと聞いたがあれはジュピトリスクラスよりでかいな・・・」

 

 「ええ、それにしてもよくあんな船作る金があるわね。ならもっとマハに予算を回してほしいくらい。」

 

 「まああれは連邦政府単独ではなく新連邦派コロニーとの共同らしいからな、それに新しく8番目のサイド、ガイアの建設も始まるらしい、景気のいいことだ。」

 

 予算という面では最近の連邦政府は以前より回復してきている、これはいい兆候かもしれない。それにそういう公共事業というのは必要な物なのだ。

 

 「そういえばヨハンナは俺達より先に宇宙にいたそうだが地上ではMS戦はやったのか?」

 

 「やったわよ、だから宇宙へ来れたの、アレックスもそうでしょ?」

 

 「そうか、ということは今ここにいるマハのパイロットは皆MS戦経験者ということか・・・いやローレンスは違うとか言ってたような・・・」

 

 「そういえばそうらしいわね、あいつ地上だとヨーロッパ方面のどこ配属だったかしら・・・」

 

 「いや、仕事の話は今は止そうか、それより今日はどこへ?本当ならこういうのは男がリードしないといけないけど、運転までさせてしまってすまないんだが・・・」

 

 

 



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帝国の影

登場人物紹介9
クワック・サルヴァー
年齢不明
反地球連邦政府組織ズィー・ジオン・オーガニゼーションの指導者
アポステルから先生と呼ばれていた人物
しかし現在までの経歴に不明な点が多く反政府組織でありながら連邦政府にパイプがあるなど謎の多い人物

オーソシエ・エララ
28歳女性
現在ズィー機構と協力を結んでいる木星帝国の使者
その目的は・・・


サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※サラ視点

 

 あのクワック・サルヴァーという人・・・なんだかとても嫌な感じがする。

 

 具体的にと言われてもそれがどうとは言えないのだがある種のオーラのようなものを感じる・・・私の考えすぎかもしれないけど・・・

 

 それよりもアレックス、貴方がまさかパイロットになっていたなんて・・・

 

 私はなんてひどいことを彼にしてしまったのだろう・・・アレックスは私をティンブレだと勘違いしてしまった、誰だってあの場にいればそう思うかもしれない。

 

 そう、貴方も故郷と肉親を奪われてしまった、私と同じように・・・

 

 アレックスは私に復讐しに来るだろうか?もし逆の立場であれば私はそうするかもしれない・・・

 

 私はどうしたらいいんだろう、それにここズィー機構の目的からすれば立場的にも私とエドゥはアレックスと敵対することになってしまうだろう。

 

 もうあの頃には戻れない・・・別に今が嫌なわけではないけれど・・・だが、もしあの事件がなければ・・・ズィー機構がガンダム強奪をエドゥ達に依頼しなければ、いやあの時私がガンダムに乗っていなければまた別の人生があったのかもしれない。私は本当にここにいていいのだろうか・・・何が正解なんて私にはわからない。

 

 だけどアレックス・・・これだけは信じてほしい、私は決してパパを殺してなんてない、そして故郷も貴方のお父様とお母様も・・・どうにかして伝えて、いや信じてもらいたいけれどそれは無理かもしれない、そもそもまた彼と会うことなんてあるだろうか・・・もし会えるとしてもそれは戦場になってしまうかもしれない。

 

 そうよ、それでもいい、私だってMSを操縦できる、ならここズィー・ジオンのパイロットに志願してもいいかもしれない。たとえそれでアレックスにさらなる誤解を与えたとしても彼にそれ以外で会う方法があるとは思えなかった。何故だろう・・・なんとなくそうすれば彼とまた会えるような気がする、根拠なんて全く無いのだけれどそう私の直観のようなものが告げているの・・・。私の言っていることが信じてもらえなくてもいい、だけど私は彼に会わないといけない・・・それが幼馴染に対しての、かつての想い人に対してのせめてもの・・・

 

 

 ここでパイロットになれば私も地球と宇宙の対立に身を投じることになる・・・それにしてもまさか今になってスペースノイドとアースノイドの対立なんて・・・

 

 カイラスギリーの件もあり再び連邦の中で反スペースノイド的な意見が出ているとサルヴァー氏が言っていたはずだ、そしてスペースノイド側もアースノイドに対して敵対を表面化させている。

 

 あの事件の後サイド1とサイド4はサイド自由同盟などと言うものを結成、地球連邦政府に対してカイラスギリーの即時破棄を要求した。

 

 彼らの主張によれば連邦軍の杜撰な警備体制のせいで先日の事件を防ぐことができず、また同じようなことが発生することがあれば今度はコロニーが被害を受けるかもしれない・・・ということらしい。確かに次またあれが誰かに奪われれば今度は地球ではなくコロニーが標的にされる可能性もあるだろう。

 

 しかしこのズィー機構、どれだけの戦力を保有しているのかしら・・・

 

 「あなたがサラ・ウィリアムズさん?」

 

 「はい・・・そうですけど、どちらさまで?」

 

 「やっぱり、私はオーソシエ・エララ、まあ一応あなた達の同志ということになるわ。」

 

 「同志・・・ですか?」

 

 「ええ、我々木星とズィー機構の目的のね。」

 

 「はぁ・・・ってあなたは木星の人間なんですか?」

 

 「ええそうよ、我々木星帝国とズィー機構は現在地球連邦政府打倒という共通の目的をもとに協力関係にあるの・・・知らなかったの?」

 

 木星・・・かつて総統クラックス・ドゥガチ率いる帝国は地球に対して宣戦を布告、木星戦役を引きを越した。大量の核兵器で地球の壊滅を目論んだがそれも結局は失敗したという。その後の木星について私はよく知らないのだがまさかまた地球に対して同じようなことを仕掛けるつもりなのだろうか・・・

 

 

 「まさかまた木星は地球に対してあのような核攻撃を・・・」

 

 「まさか、そんなことして何のプラスにもならないわ、我々の目的は飽くまで地球連邦の打倒よ・・・そしてその後のことをズィー機構も了承しているからこその協力関係よ」

 

 「その後?」

 

 「ええ、これを聞けば我々が核攻撃なんて事しないと信じてもらえるはずと思うわ。」

 

 「そんなこと私に話してもいいんですか?聞かないほうが・・・」

 

 「ええ、連邦にさえ知られなければね、あなたが元連邦の人間だとしても今は完全にこちら側、もし地球に帰りたいのならとっくに逃げ出せてるはずですもの。あなたが連邦に通じていないという事くらい調べればすぐにわかる、それぐらいの諜報力はあるつもりよ。それにあんまり年齢の近い女性が近くにいないからあなたとは仲良くしていきたいと思うの・・・恐らくは長い付き合いになると思うから。」

 

 「・・・でその後の目的とは一体何なんです?」

 

 「ああ、申し訳ない!話が脇道にそれてしまったわ。我々木星帝国の現在の目的は地球圏への帰還、レコンギスタよ」

 



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機体解説4

ゾーリン・ゲール

武装

ビームトマホーク

ビームサーベル

サンドバレル

メガビームライフル

隠し腕

メガビームシールド

ファンネル

 

 ズィー・ジオン・オーガニゼーションが所有するNT専用大型MS。

かつてシャア・アズナブル専用に設計されたものの製造されなかったサザビーの発展機を現行技術で再設計した機体。(製造はアナハイム・エレクトロニクス社)

 現行小型MSを凌ぐ性能を持ちV2ガンダムが装備していたメガビームシールドの改良型を装備している。またメガビームライフルは収束と拡散の打ち分けができ出力調整も可能、高出力モードでは通常のビームシールドを貫通する威力を発揮する。

 アナハイムからズィー機構へタダ同然で譲渡されておりカイラスギリー事件においてマハのXMM-01とファンネル同士でのドッグファイトを繰り広げた。

 ミノフスキードライブを搭載しその性能はマン・マシーンに近くなっておりMSとのミッシングリンク的立ち位置にある。(ただしファンネルは従来通りNT専用装備である)

 

イーディム

武装

ビームソードアックス

サンドバレル

ビームシールド

ビームライフル

ヴェスバー

改良型ランゲ・ブルーノ砲(実弾・オプション装備)

マシンガン(オプション装備)

 

 ズィー・ジオン・オーガニゼーションが所有する量産型MS。ただし中身は連邦軍MSジェイブスそのものであり偽装の為に外装を変更しているだけに過ぎないが武装はズィー機構側の要望により変更されている。本機もアナハイム社から極秘裏に供給された機体である。

 

フーピテル・ピトン

武装

右腕部ビームガン兼ビームサーベル付き有線式ハンド

マシンキャノン

ビームシールド

マイクロミサイルポッド

拡散メガ粒子砲

バスターランチャー

 

 木星帝国製量産型MS。地球圏への帰還、レコンギスタを前提に開発された機体であり数で勝る連邦軍に対抗するためジェイブスを超える性能を目指し開発された。機体サイズも18mクラスと大型MSに分類されるまでの規模になっている。

 木星の名を冠している通り帝国の威信をかけて開発されたMSだけに高い性能を誇りそのカタログスペックはジェイブスを凌駕している・・・のだがハード面はともかくソフト面でバイオコンピューターを搭載し誰が乗ってもある程度の訓練で性能を発揮できるジェイブスに対してこちらは従来通りでありまた本機の操縦系が複雑化していることも合わせ一概にもジェイブスを凌駕しているとは言い難い。

 

フーピテル・アギラ

武装

ビームサーベル

対ビームコーティング処理ニードルガン

ビームライフル

ビームシールド

 

 木星帝国製量産型MSフーピテルの軽装高機動型。

装備しているニードルガンの針に対ビームコーティングが施されており敵機のビームシールドを攪乱することが可能。またピトンに比べれば扱いやすい武装であり操作性もこちらが上である。ただし軽装高機動型の名の通り装甲は削減されておりピーキーな機体であることに変わりはない。

 

ガンダムF90Ⅱ

武装

ビームサーベル

頭部バルカン

マシンガン

シールド

 

 最初期に登場した小型MS。かつてオールズモビル戦役で大破したF902号機を大幅に改修した機体。その際ニューロコンピューターは取り外されバイオコンピューターが搭載されたがその後再びニューロコンピューター試験の為再搭載された。しかし既にバイオコンピューターが実用化されていたこと及びニューロコンピューターがバイオコンピューターに比べて安定性を欠いていた事などにより試験は中止、そのまま博物館送りになり展示物としてその後の余生を過ごす筈であった。しかし稼働状態は維持されておりそのため対ザンスカール戦争勝利15年式典の曲芸飛行の目玉に抜擢された。(当初はヴィクトリーガンダムが曲芸飛行を担当するはずであったとされるがVガンダムが連邦軍所属のMSではなかった為本機に変更された模様)

 強奪後はアベッハにて一応稼働状態は維持されていたものの予備扱いでありカイラスギリー事件までに実戦で使用されたことはなかった。

 

 

 

 

 

 



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月の底へ

宇宙 月周辺宙域

 

 

 結局あれから連邦政府はサイド自由同盟の主張を受諾しカイラスギリーの破棄は決定された。もっとも今の連邦にとってもあれは手に余る代物だったのかもしれない。

 

 実際の所カイラスギリーという巨大兵器は使用せずとも莫大な維持費人員を必要とする・・・仮に有事の際、例えば先日のフロンティアⅣの件の事からもわかる通り別にこんな巨大兵器でなくても核ミサイルで事足りるのだ。少なくとも現在の連邦はそう考えているらしい。だがこのカイラスギリー破棄自体が仕組まれたものだとしたら・・・

 

 しかしこんな処分方法はいい加減というか豪快というか・・・

 

 まさかカイラスギリーを月面の人が居住していないエリアに落とし破壊するなどと・・・

 

 確かにそれなら確実だ、そうすれば仮に修理修復して再利用するにしても途方もない時間と金がかかるだろう。しかし誰もいないエリアとはいえあんな巨大な物落として大丈夫なのだろうか・・・実際には落とすというより軟着陸程度という感じではあるらしい、まさに埋没作戦とはよく言ったものだ。実際あれだけ巨大なものだ、軟着陸程度でも十分破損させられると踏んだのだろう。解体するよりもはるかに安上がりで時間もかからない。月面まであれを持って来ればいいだけで済む。なおかつ月面に連邦軍が駐留しているため安全性も高いと踏んだのだろう。月面であるならば何者かが連邦軍の目を盗みあの残骸を利用するなど不可能である。

 

 父さん、母さん、故郷の皆すまない、俺は止められなかった、結局マハに、パイロットになったところで俺は何もできなかった。・・・でも、それでも俺は・・・そうさ、これで終わりになどさせるものか 例の赤いMSもそうだがティンブレが壊滅したところで何の解決にもなっていない。あのティンブレは・・・いやもしかしたらティンブレも何者かの傀儡に過ぎないのではないのだろうか。

 

 これは噂だが何やらザンスカール残党とはまた違う反政府組織が活動しているとの情報がマハに広まっていた。

 

 そして例のカイラスギリー破棄を要求したサイド自由同盟なる連中の動きも不可解だ。連中の行動がいくら何でも早すぎるのだ。もし今回の事件、何者かが仕組んだものでありビッグキャノンでの無差別攻撃とは別に何か違う目的があるのだとすれば・・・考えられるのはまずカイラスギリー自体を破棄させる為、もしくはアースノイドとスペースノイド間の緊張を高める為、あるいは・・・その両方かもしれない。

 

 だとすればサイド自由同盟のサイド1とサイド4のバックに何者かがいる可能性が高いだろう、だが宇宙での捜査など今のマハにそんな力はない。もちろん連邦軍など論外であろう。

 

 だが見つけなくてはならない、まだ見えない倒すべき敵を・・・そしてサラ、俺には君の生き方を否定する権利などない、この12年で何があったのかそれは俺にはわからない・・・だが君が、自分の父親すら殺してまで連邦政府と戦うつもりなら俺も覚悟を決めることにしたよ・・・

 

 俺は連邦が、マハが、そして自分が絶対的な正義だとは思っていない、けどこれだけは断言できる。自分の父親を、罪のない大勢の人間を殺すようなテロリストに正義など無いと。

 

 君がその道を往くのなら俺はそれを止めてみせる、たとえ君を殺すことになっても・・・いや殺してでも止めてみせる。

 

 



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Jupiter Attacks

登場人物紹介10
クレト・スポンデ
62歳
木星帝国内務大臣
木星帝国の他の大臣を凌ぐ権力を持ち実質木星を仕切っているとされる男。
総統の信頼も厚くズィー機構と協力し地球圏へのレコンギスタを目論む。


木星

 

 準備は順調に進んでいる、ミノフスキードライブの技術のおかげで改良したサウザンジュピター級は以前とは比べ物にならない速さで地球圏へ進行が可能になった。レコンギスタ船団は間もなくその編成を終える。

 

 しかし困ったのはあのふざけた予言者のような女だ・・・今は何とか総統に接触できないようにしているのだが何故かあの女は総統に気に入られているようなのだ。

 

 我等が親愛なる総統閣下にも困ったものだ、あのような妄言を吐く者を信頼するなど・・・

 

 もしあれを聞けばここまで準備してきたレコンギスタ作戦を中止すると言い出しかねないかもしれない、まったく頭の痛いことだ。

 

 総統はやれよくわからない伝説やおとぎ話など本気で信じているフシがある、それを利用してあの預言者は総統に近づいたに違いない。

 

 それにしても馬鹿げた話だ、レコンギスタを実行すればエスパダの怒りに触れる?なんだそれは?作り話ならもう少し具体的にしてもらわなければ物笑いの種にすらならん。

 

 レコンギスタに懸念があるとすればそれは連邦軍のみ、それも弱体化し戦乱を回避し続け地球圏でぬくぬくもやしのように育ってきた現在の連邦に我々は止められん。ズィー機構のおかげでその最大の懸念事項のカイラスギリーすら除去できたのだ。最もレコンギスタが成功した後はあの時代遅れのジオンなぞ切り捨てるつもりなのだがな。

 

 だが油断は禁物であろう、かの偉大なるクラックス・ドゥガチ閣下ですら失敗したという・・・

 

 それにしてもこの作戦の為に建造された戦艦、このレコンギスタ船団の旗艦カウディーリョは素晴らしい艦だ、搭載されたこの防御システムも完璧、カイラスギリーと核以外ではこのシールドを突破することは不可能であろう。この画期的な防御システム、実弾ビーム両方に有効なローレンツ・フィールドを発生させるFEバリア―はまさに鉄壁、そしてそれはサウザンジュピター級と連携することによりさらに強固にそして広範囲に展開可能。もちろんMSも相当数搭載できる。

 

 そしてMSフーピテルも既に作戦に必要な数は量産済みだ。既に先行してズィー機構と合流した部隊が地球圏での運用試験も順調であるとの報告だ。

 

 しかし問題点が無いわけではない、仕方のないことだが敵のほうが物量が上な以上どうしても武装を充実させる必要がある。そのためフーピテル・ピトンは火力偏重気味であり扱いに苦労しているというのだ、確かにカタログ・スペックでは連邦軍のジェイブスを上回る、だがズィー機構の協力で実施した模擬戦でジェイブスと殆ど同スペックのイーディムという機体との戦闘ではあまり期待通りにはいかなかったようである。

 最も連邦軍のMS全てがジェイブスではない、場所によってはジャベリンはおろかジェムズガンが配備されている場合もあり、地上などはまだジェガンタイプを運用していると言うではないか。・・・いや、地上の連中はマハとか言う奴等だったか、まあ同じようなもだろう・・・

 

 



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インチキ医者

サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※サラ視点

 

 木星帝国のレコンギスタ・・・!?わからない・・・私にはこのズィー機構の意図が・・・確かに組織の目的は反地球連邦政府運動をまとめあげて連邦に対抗できる国家的規模の確立からすれば木星を仲間に引き入れるのは間違いとは言えないかもしれない、けど帝国が大人しくズィー機構の言うことを聞くだろうか・・・少なくともレコンギスタ達成までは協力し合えるであろう、でもその後は・・・それくらいあのサルヴァー氏も分かっているはず・・・

 

 私が考え込んでいるとどこからともなく現れた例のアポステルさんが話しかけてきた。

 

 「やあ、ご機嫌よう、そういえば君、パイロットに志願したというのは本当かね?」

 

 「はい、私もただここにいるだけでは駄目だと思って・・・」

 

 「ふむ・・・しかしエドゥ君もよく反対しないものだな、はっきり言って志願したということは死ぬこともあり得るということだよ、君はそれを分かっているのかね?・・・いや君には余計なお節介だったようだな、目を見れば分かる。」

 

 「あの・・・聞いていいですか?」

 

 「ん?私にか?応えられる範囲での質問なら受け付けるよ。」

 

 「ありがとうございます・・・木星帝国についてなんですけど、何故ズィー機構は帝国と協力を結んでいるんです?私なんかが言うのもあれなんですけど・・・危険ではないですか?」

 

 「確かにそれは私も思っていたことではある・・・だがこれは先生の方針でね、私などには先生のお考えを全て理解などできないのだが・・・しかし危険性は先生も十分承知のはずだよ。」

 

 「サルヴァー氏の事、信頼しているんですね。私もエドゥのことを信頼しているから・・・わかりますよ。」

 

 「ああ、先生がいなければ今頃私など・・・いや昔話は辞めておこう。それに私はこのズィー・ジオンの、先生の理想に共感しているからこそとも言えるがね。」

 

 「そういえばアポステルさんもMSに乗るんですね、あの赤いMSの事聞いたんですけどあれはサイコミュっていう装置が搭載されているって・・・もしかしてニュータイプなんですか?」

 

 「いや、私の能力は後天的なものだ、ニュータイプではない。」

 

 「!!・・・ごめんなさい、無神経な質問をして・・・」

 

 「いや別に構わない、隠している事でもないのでな、それに強化人間と言っても不具合があったのは昔のことだ、かつて存在したデメリットなど殆ど解決されている、君が気にすることではない。」

 

 「そうなんですか・・・でも私達もその力のおかげで助けられました、あの赤い機体とアポステルさんに・・・あの機体、昔シャア・アズナブルの乗っていた機体の復元なんですか?」

 

 「半分正解と言ったところだな、正確にはシャアの乗っていた機体、サザビーの発展型の再現と言ったところだ、まあ今風のアレンジを加えているらしいが・・・それにあれの原型は結局設計だけで製造はされなかったはずだ。」

 

 「そうなんですか、しかしそんなに昔のMSの設計が現在にも通用するなんて驚きです。」

 

 「ああ、あの年代のMSは今の機種に比べると大型、特にあれはその中でも巨大な部類に入る、設計に余裕があるからこそと言えるな。大型MSのポテンシャルの高さともいえるだろう、無論小型MSが台頭した理由もあるので一概にはどちらが優れているとは言い難いが・・・それにあれだけではない、あの機体は新造されたMSだが確か地上では保管していた古い大型MSを1機改修し続けているそうだ。私の読みではこれから再び大型化の波が押し寄せると踏んでいるのだがね。」

 

  

 その後も少し会話を続けたのだが、アポステルさんもサルヴァー氏の考えを全て把握しているわけではないようだ。

 

 あのクワック・サルヴァーという人・・・一体何者なのであろうか?

 

 結局のところ彼についてわかっている事はズィー・ジオンの指導者であり連邦政府やアナハイム社にも顔が利くという事くらいなのだ・・・

 

 そもそもなぜ連邦政府とのパイプがサルヴァー氏にはあるのだろうか・・・

 

 何か嫌な予感がする、何となくだが私にはサルヴァー氏の語る理想が形式的なものに感じる・・・

 

 なぜ私はこのような違和感を感じるのだろう・・・それに例の計画、シャア・コンテニュー・オペレーションもそうだ、確かにシャア・アズナブルというスペースノイドにとっての英雄が蘇れば反地球連邦政府運動はさらに過熱し連邦政府を打倒することも可能かもしれない・・・だが復活したシャアは果たしてズィー機構の意向通りに行動してくれるのだろうか?はっきり言ってシャア・アズナブルという人間をコントロールすることなんて不可能であろうと私は思う・・・もっとも私は実際のシャアを知っているわけではないので断言はできないのだけど・・・

 

 クワック・サルヴァー・・・一体彼は何を考えているのだろう・・・

 

 

 

 

 



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インチキ医者2

人物紹介11
オズワルド・マイルズ
58歳
アナハイム社重役


月面 アナハイム・エレクトロニクス社直轄領 アナハイム

 

 

 さて・・・ここまでは先生の筋書き通り問題はない。だが当初の予想よりも木星の連中が早く動くか・・・

 

 しかし先生も残酷な人だ、目的の為ならどれだけ犠牲が出ようとも、いやその目的自体に犠牲が伴うと言ったほうが正しいのかもしれないな。

 

 帝国も一時の儚い夢を見ているに過ぎない、結局人間はあれだけ地球から離れても重力に縛られているという事かもしれない。

 

 先生の計画に抜かりはない、たとえ帝国が予想より早く行動を起こしたとしても・・・だが問題があるとすればむしろ帝国よりもあれのほうだろう。

 

 だが先生のことだ、全て想定内であろう、いや、あるいはあれのせいで想定外な事態が発生してもそれはそれで先生にとっては問題ないのかもしれない・・・

 

 それにもしどう転んでも我が社の利益になることに変わりはない。もしもの時の為に保険も打ってあるのだ。

 

 まああまり考えすぎても仕方あるまい、今はあれよりも自機主力機に専念すべきか・・・例のコンセプトマシーン2機も間もなくロールアウトするだろう。

 

 最も現在の時点で2号機よりも3号機のほうが既に有力になりつつある。

 

 まあ一応データは取らなければどちらが採用になるかまだ分からんがな。

 

 例の2機 XMM-02とXMM-03は自機主力機の為の検証機である。

 

 両機ともジェガンタイプのフレームを流用し2号機がミノフスキードライブ内蔵型、3号機がミノフスキードライブを外付け式とし換装装備・・・いわばオプション装備として全面域に対応させようというコンセプトである。

 

 これを元に自機主力機は製造されることであろう、その時はジェガンのフレームの流用ではなくまったくの新しい機体として

 

 だが両機ともジェガンのフレームの流用とはいえ現行MSの性能を凌いでいる、新型の量産型ミノフスキードライブはかつてのようにドライブ内に封じ込めきれなくなった高エネルギー状態のミノフスキー粒子が漏れ出すという欠陥はもう無い。(この現象、光の翼は確かに強力な武装にもなるが大変癖の強い武装であるため不要と判断されたというのもある。)

 

 そして機体だけではない、新型のマン・マシーン用ビームライフルは画期的でありその威力は他のライフルとは比べ物にならない、ビームシールドも貫通可能である。・・・このライフルが普及すればビームシールドは廃れて行くことになるかもしれない。

 

 核融合炉にも改良が加えられており現行小型MSよりも遥かに核爆発の可能性を低減することにも成功した。

 

 MSを超える機動兵器マン・マシーン・・・確かにそのスペックは名前負けはしていないようだ。

 

 



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ロールアウト

月面 フォン・ブラウン市

 

 

さて、これからがプロジェクト・MMの本番と言ったところだろう。

 

 例の2機は予想よりも早く完成、ロールアウトしたようだ。2号機はともかく3号機は機体自体はとてもシンプルというのもあるだろう。

 

 3号機・・・XMM-03は各種オプションの素体としての意味合いが強く機体そのものと言うよりは換装システムのほうがメインと言っていいかもしれない。そのため3号機は2号機に比べると機体出力は半分程度、MSであるジェイブスにも劣る。もちろんそれは何も装備しない裸の状態、そんな状態で運用することなど無いであろうが。

 

 2号機、XMM-02の方はまさに高性能機という言葉が似合うだろう。機体出力も8000kWに迫る、だがいかんせんこちらのほうがコストが高い。・・・いや3号機も換装システム全体を含めれば同じか、もしくはそれ以上のコストなのだが整備性という観点からは3号機のほうに軍配が上がるのだ。ミノフスキードライブに不調が生じれば機体そのものが使えなくなる2号機に比べて3号機はミノフスキードライブユニットを交換すればいいだけ、それにその他オプション装備を開発すれば様々な局面に対応可能な3号機は軍、マハともに2号機よりも魅力的な候補になっていた。

 

 だが実際には動かしてみない事には何とも言えんだろうな・・・俺は3号機の方のテストを担当することになっている。

 

 そして両機ともガンダムヘッドが装備されている・・・

 

 ガンダムか・・・嫌でもF90の、サラのことを思い浮かべてしまう。

 

 2号機の方は連邦軍のパイロットがテストを担当するらしい、ここについ先日連邦軍からの人員が合流してきたのだがまだ話したことはない。なんでもルナツーの精鋭部隊だとか・・・そのせいかわからないがここにもかなりの数のMSがやってきたようだ。

 

 「あんたが噂のNTか?」

 

 いきなり俺に話しかけてきた男・・・連邦軍の制服で大尉の階級章を身に着けている人物に話しかけられた。

 

 「はっ!マハ所属アレックス・ハーディング少尉であります。」

 

 「ロバート・マクラウド大尉だ、まあこれからよろしく頼む・・・まあそちらは軍をよく思ってないかもしれないがお互い様だな。」

 

 「・・・大尉が2号機のパイロットを担当するのですか?」

 

 「いや、違うな・・・俺のようなロートルはもはや主役は譲る、そういうものだ。それにしてもあんたがNTか・・・いやまったく初めて見たよ。だがあまり普通の人間とは変わらないように見えるな。」

 

 「・・・そうかもしれませんね、自分だってまだ半信半疑ですよ。」

 

 「まあ検査でそう出たのなら本物なんだろう、NTにガンダムか・・・これは何か起こるかもしれんな。」

 

 「どういうことですか?」

 

 「いや何でもない、それではまた。」

 

 しかし軍がここに合流してきてから少し空気がギスギスしてきたようだ。それもそうか・・・

 

 マクラウド大尉の言う通り連邦軍とマハはお互いをあまりよく思っていないのだ。勿論俺自身もそうなのだが。

 

 その両者が同じ空間にいるとなれば何が起こるか大体の想像はつく・・・それが血気盛んなパイロットとなれば尚更であろう。

 

 

 

 

 

 



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進宙

宇宙 サイド2 コロニー ヘラス

 

 艦艇と言うものはMSなどの機動兵器に比べて更新速度がかなり遅めである。(実際の所そのMSも以前に比べるとその更新速度はかなり遅くなっているのだが)

 

 しかし現在連邦軍で運用中の艦艇、ラーカイラム級やクラップ級はまだいい方としてアレキサンドリア級やサラミス級などは流石にもう限界の時期に差し掛かっている。

 

 その新型艦 クエゼリン級巡洋艦1番艦クエゼリンがまもなく進宙しようとしていた。 

 

 このクエゼリン級も連邦軍およびマハ両方で使用予定である。

 

 もっとも本艦の開発計画の時点ではマハの宇宙進出の話は持ち上がっていなかった為マハでの使用決定は最近決まったものであるのだが・・・

 

 このクエゼリン級は宇宙大気圏内どちらでも使用可能な汎用性を持ちその構造も完全にモジュール化されているため量産性も非常に高い。またMSやマンマシーン運用能力も以前の艦艇に比べて向上している。

 

 クラップ級、アレキサンドリア級、サラミス級と異なる巡洋艦を本艦に統合交代すれば運用面はもちろん長期的なコスト削減にも繋がるであろう。

 

 ここに来て連邦軍の兵器更新が一気に押し寄せたため軍需産業・・・主にアナハイム社だが業績が非常に好調、その好景気に歓喜しているようであった。

 

 またその経済効果は親連邦派のコロニーにも波及、実際に艦艇を建造しているここヘラスなどは一番その恩恵を受けているであろう。

 

 そしてそれがコロニー間の格差拡大に拍車がかかっているとも言えるのだが・・・

 

 親連邦派のコロニーは比較的裕福であることが多い・・・その為もあるだろうし反連邦派コロニーとの対立というのもあるが、やはりそういう裕福なコロニー所属の艦艇は海賊被害に頭を悩ませているというのが現状である。

 

 そのため親連邦派コロニーの自治軍へ連邦軍から兵器の払い下げが行われているのだがそれも十分とは言えない。最も払い下げられたMSがジェムズガンでは海賊連中のMSよりも性能が低い場合が多い、せめてジャベリン改をと言う声が日に日に大きくなっているらしい。(ジャベリン改を求める声は地上のマハからも出ている)

 

 そのためアナハイム社では現在連邦政府と共同で親連邦派へ供給するMSの新規開発計画が持ち上がっている。・・・と言っても全くの新型と言うわけでもなくジェイブスのスペックダウンモデル・・・俗にいうモンキーモデルという物である。

 

 具体的にはバイオコンピューターをオミットしその他性能も若干低下させたジェイブスと言ったところであろう。ヴェスバーも装備されずジャベリンユニットを装備する予定である。

 

 

 

 

 

 



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Turf war

月面 フォン・ブラウン市

 

 

 「なんとなく予想はしてたがやっぱりそうか、もう俺達だって子供じゃないんだぞ、ローレンス・・・」

 

 「ああ、分かってるよ、だがあのまま言われっぱなしじゃあ俺達の面子ってもんがあるだろ?」

 

 やはりと言うか連邦軍とマハのパイロットの間でトラブルが発生した。・・・と言っても軽い喧嘩程度だが。

 

 俺もその場にいたわけではないので詳しくは分からないがローレンスが連邦軍のハルミトン中尉という人物とやらかしたらしい。

 

 ローレンス曰く向こうから喧嘩を売ってきたそうだ、何でも嫌味だが皮肉を言われたらしい。

 

 「それにしても殴り合いにまで発展するのはやりすぎだ、まあ上に知られなくてよかったと考えるべきか・・・ばれてたら営倉入りだ。」

 

 「だがよ、あの連邦軍のクソ野郎お前の事も言ってたんだぜ、あとヨハンナにもちょっかい出してたなあいつ・・・」

 

 「別に俺のことを何と言おうが気にしないし、それでお前が怒ることもないだろ・・・」

 

 「ならヨハンナの事はどうなんだ?」

 

 「・・・それ俺に聞くか?」

 

 「付き合ってるなら当たり前だろ?まったくお前って奴は・・・でどうなんだその後は?」

 

 「どうって・・・まあ普通だと思うが。」

 

 「どこまでいったんだ?」

 

 「・・・黙秘する、それヨハンナに聞くなよ、セクハラになるからな。」

 

 「それぐらい俺だって分かってるよ、それにあのクソ中尉みたいに顔を引っ叩かれたくないからな・・・」

 

 「その中尉ヨハンナに引っ叩かれたのか・・・」

 

 「ああ、かなりしつこかったみたいだぜあの中尉、ざまぁみろ。」

 

 「仮にも一応向こうの階級が上なんだぞ、所属が違うとはいえ・・・」

 

 まあ俺も連邦軍の連中を悪く思っていないわけではない、だが先日話したマクラウド大尉という人物は悪くは見えなかった・・・もっとも一度話しただけなのでどんな人物なのか理解したわけではないのだが。

 

 

 「しかし2号機のパイロットがあのクソ中尉が担当らしいぜ、アレックスお前負けるなよ。」

 

 「勝ち負けとは違う気がするけどな、まあだがどちらの機体が採用されるか少なからずパイロットも影響することは確かなはず・・・手を抜く気はない。」

 

 「ああ、期待してるぜ。」

 

 「そういえば、ローレンス・・・お前は地上だとどこ配属だったんだ?」

 

 「ん?ああ、俺はヨーロッパ方面だよ、パリ湖の辺りだ。それがどうした?」

 

 「いや何でもない、すまないがこの後予定がある・・・じゃあまた、もうこんなことはやめとけよ。」

 

 「ヨハンナとか?まったくお熱いことでいいねぇ。この前までは全然そんな素振りすら見せなかったのになぁ。」

 

 

 

 



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模擬戦

宇宙 

※サラ視点

 

 

 「聞こえているか、サラ?」

 

 「はい、大丈夫・・・機体にも問題ありません。」

 

 「なら規定通り模擬戦を開始する。敵機役は木星のMS3機・・・くれぐれも無理はしないように・・・」

 

 「わかってるわエドゥ・・・サラ機出ます!」

 

 機体がカタパルトで艦から射出される。このイーディムという機体はとても使いやすい。勿論性能も申し分ない、これが反政府組織の持つMSだというのが驚きだ。もっとも中身は連邦のMSと同じだと言う話を聞いた・・・つまりは結局アナハイム製と言うことだ。

 

 エドゥはあれからズィー機構のMSの教官のようなことをやっているらしい。なんでも実戦経験のあるパイロットはここでも貴重らしい。

 

 後ろから後続の2機が艦から射出され私の機体に続いた。

 

 「えっと・・・敵はフーピテルの重装タイプ2に軽装タイプ1、性能は向こうが上・・・でも!」

 

 以前から木星のMSとの模擬戦が実施はされてはいた・・・カタログスペックでは向こうが上らしいのだが戦績は五分五分と言ったところである。

 

 「敵機捕捉、回避運動!」

 

 敵機のバスターランチャーがこちらの編隊を掠める・・・いや、実際には模擬戦なので発射はされていないのだがカメラにはそう映る。

 

 相手のバスターランチャーはビームシールドを貫通できる性能がある・・・注意しなければ・・・

 

 「3番機は隕石の陰に隠れて敵機がシールドを展開したらブルーノ砲で援護お願いします!」

 

 ・・・いた!ビームシールドの光、あれは軽装のアギラタイプ!

 

 敵機がライフルを発射、こちらもシールドを展開してそれを防ぐ。

 

 2番機のイーディムがライフルで応射、私もそれに倣った。

 

 おびただしい数のマイクロミサイルが私たちに殺到・・・重装タイプも前に出てきたようだ。

 

 「だけど・・・そんなに大荷物はMSには不要なんです!」

 

 軽装タイプを2番機が相手してくれている間に私はヴェスバーを発射、敵機の重装ピトンタイプに命中、撃墜判定を取った。

 

 もう1機の重装タイプが拡散メガ粒子砲を発射、さらに有線式の腕をこちらに伸ばしてきた。

 

 私はビームソードアックスを抜き有線ハンドを薙ぎ払う・・・だが回避されこちらにビームガンを発射してきた。

 

 ・・・味方の信号が一つ消失した!?、2番機がやられたようだ。

 

 軽装タイプのアギラがこちらにライフルを発射、敵機2機から十字砲火を受けるハメになってしまった。

 

 その時3番機のイーディムがランゲ・ブルーノ砲改を発射、軽装タイプに命中した。

 

 撃墜判定こそ取れないものの被弾した箇所の損傷をコンピューターが計算してそれがダメージとして反映される・・・動きが鈍くなったようである。

 

 「敵機の伸びる腕に何かいい武器が・・・これを使えばいいの!?」

 

 バイオコンピューターから伝えられた有効な武装、サンドバレルを敵機の有線ハンドに発射、損傷の判定が出たようで伸びる腕は使用不能に陥ったようだ。

 

 「これで!!」

 

 私はビームソードアックスを構え敵機に突撃、発射されたマシンキャノンをシールドで防御しながらそのまま敵機を斬りつけた。(もちろん実際にはビームソードアックスは展開されていない)

 

 

 「あと1機・・・3番機が倒したの!?」

 

 先ほどブルーノ砲が直撃した影響もあってか3番機がそのまま軽装タイプを倒したようだ。

 

 「よし模擬戦終了だ、全機帰投!」

 

 艦からアナウンスが入り周りのMSも再び動き出し帰投していった。

 

 

 

 

 



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機体解説5

XMM-02 次期主力機コンセプトタイプPlanA

武装

ビームサーベル

サンドバレル

マンマシーン用新型ビームライフル

シールド

シールドミサイル

ビームシールド(オプション装備)

その他連邦軍オプション装備

 

 次期主力機のコンセプトマシンでありミノフスキードライブ内蔵型の機体。機体出力は7980kw。

 本機は後記のXMM-03と同じくジェガンタイプのフレームを流用し比較的短期間で建造された。既に80年以上前の機体のフレームの流用だがミノフスキードライブとの相性は悪くなく当初の想定よりも高性能に仕上がっている。

 新規に開発されたビームライフルはヴェスバーに匹敵する貫通力がありコスト削減及びメンテナンス性向上の為にビームシールドとヴェスバーは搭載されていない。機体出力に余裕があるため当初Iフィールドの搭載が検討されたがジェイブスのカスタム機に搭載した教訓の為(量産機に搭載するにはコストが高くなるため)見送られている。

 ただしこの新型ライフルがテロリストに普及していない現在次期主力機にはビームシールドを搭載するべきとの声も上がっておりオプション装備としてビームシールドも用意されている。

 

XMM-03 次期主力機コンセプトタイプPlanB

武装

ビームサーベル

サンドバレル

マンマシーン用新型ビームライフル

シールド

シールドミサイル

ビームシールド(オプション装備)

その他連邦軍オプション装備

 

 次期主力機のコンセプトマシンPlanB案がこのXMM-03である。XMM-02と同じくジェガンタイプのフレームの流用だがミノフスキードライブは内蔵型ではなく換装装備扱いである。そのため素体となる機体はとてもシンプルであり素のままだと機体出力はMSであるジェイブスにも劣る4000kwクラスである。

 しかし本機は換装により様々な局面に対応可能というコンセプトのもとミノフスキードライブユニット以外の装備も開発中でありまたコストやメンテナンス性もXMM-02よりも上である。

 既に連邦軍とマハ上層部の間ではXMM-02よりもXMM-03の方が有力候補になりつつあるがどちらのコンセプトを次期主力機に反映するかは今後のテスト結果を踏まえ判断される予定である。

 どちらが採用されたとしても各種サブフライトシステムなどは次期主力機が配備されれば廃止退役予定であるためコスト削減や現場の負担軽減など様々な恩恵が想定されている。

 またXMM-02とXMM-03両機ともガンダムヘッドが装備されている。

 

 

 



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模擬戦2

宇宙

 

 

 「3号機各部動作問題なし、ミノフスキードライブ動作良好。」

 

 「こちら管制、了解。只今より模擬戦を開始する。」

 

 さて、このマンマシーン・・・従来の小型MSより大型化しているとはいえクィン・マンサよりは遥かに小型だ・・・使い勝手はどうなのか・・・

 

 「武装はシンプル、MSとしては十分・・・いやマンマシーンだったな、しかしビームシールド無しとは思い切ったことをする・・・」

 

 敵機はジェイブス3機、そのうち1機にツインヴェスバーがいるようだ。それに向こうの隊長機は連邦軍のロバート・マクラウド大尉・・・ルナツーの精鋭という事は腕も相当なはずだ、楽に勝てる相手ではないだろう・・・しかしこちらにはドライブがある。

 

 「さて敵機はどこだ・・・相手はこちらのライフルのスペックを知っているのだからビームシールドは使わないはずだ・・・そこか!!」

 

 機動性で圧倒すれば勝てるはずだ、それに量産型ミノフスキードライブのデータ取得という目的もある・・・最大出力で行かせてもらう。

 

 向こうが数の理ならこちらは性能を最大限生かすまでであろう。

 

 「ツインヴェスバーがこちらを狙ってきたか!!だがそれでは動きが止まるぞ!」

 

 ヴェスバーなどビームシールドが無いのだから無用の長物に過ぎない、少なくとも今の戦いでは・・・

 

 俺はビームライフルを発射、ジェイブスTV装備に命中し撃墜判定を取った。

 

 「これは模擬戦なのだから実際には発射されていないのだがこの新型ライフルという奴はすごいな・・・あと2機!!同時にくるか!?ならば!!」

 

 俺は自機のミノフスキードライブを全開、ドライブを搭載していない機体とは一線を画する推進力で敵機を引き離す。

 

 「何!?ビームシールドを展開しただと!?的になりたいのか!?・・・いや囮になる気か!!」

 

 一瞬・・・一瞬とはいえ俺はビームシールドの光に視線を奪われた・・・それが戦場では命取りになることは多い。

 

 いつの間にか死角から接近してきたもう1機のジェイブスがサーベルを構え斬りつけてきた。

 

 「グッ!シールドが破損判定・・・防いだとはいえ実体盾では仕方あるまい、だが!」

 

 俺もサーベルを抜き反撃、鍔迫り合いが発生する。

 

 だがこちらはマンマシーンだ、それも素の状態ではない、このまま力で押し切れる。

 

 相手のジェイブスが力負けしそのままサーベルで両断・・・いや撃墜判定が出た。

 

 「という事はもう1機が大尉か!!・・・上!?」

 

 「そういうことだ、ロートルとはいえわざと負けてやるつもりはないのでな。」

 

 シールドを失ったので敵機の攻撃は回避するしかない、牽制のバルカンが厄介だ。

 

 もう既にマクラウド大尉のジェイブスはビームシールドを解除している・・・ならばこちらのジャブも通りがいいはずだ!

 

 このサンドバレルという武装はなかなかに使い勝手がいい、タイミングを合わせればビームの迎撃にも使える優れた武装と言える。

 

 散弾が命中しジェイブスの足が止まる、だがそれでも向こうがバルカンを発射、こちらのビームライフルに命中判定が出た。

 

 「チィッ!ライフルがやられたか!ならとれる選択肢は一つだけになる!」

 

 体制を立て直したジェイブスのビームライフルを避けながら俺は敵機に急速接近する。

 

 「速い!これがマンマシーンか!?だが避けられなくはないな!!」

 

 「サーベルが躱された!?ならば!!」

 

 俺はジェイブスに機体をぶつける、模擬戦でここまで激しい機動をして整備士泣かせな運動と言える。

 

 「やるな人狩り!だが小型のこちらにもやりようはあるぞ!」

 

 今度は敵機がこちらに蹴りを繰り出してきた、だが今のタックルのダメージで動きが鈍くなっているのかは分からないが動きが見える!これならカウンターでいける!

 

 俺はサーベルを再び展開、蹴りを回避してジェイブスに斬りつける。

 

 「こちらの負けだな、撃墜されたよ今ので。」

 

 「・・・いえただこちらの機体性能のおかげですよ、同じ機体に乗っていたら負けていました。」

 

 「いや負けは負けだ、それにこちらの方が数は上だったのだ。完敗だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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決意

月面 フォン・ブラウン市

 

 

 「アレックスやったわね、例の大尉さんから撃墜判定取るなんて・・・私なんてスナイパーでこの前模擬戦したとき見事にやられちゃったっていうのに。」

 

 「ああ、だが性能差もある、完勝したとは思っていない。」

 

 「でもマクラウド大尉に勝ったんだからあのクソ中尉には負けないでよね。」

 

 「ひどい言われようだなあの中尉・・・ローレンスも言っていたが・・・」

 

 「言われる方が悪いのよ、それにしつこい男って最低・・・なんであんな男が2号機のパイロットなのかしら・・・」

 

 「人格面はあまり関係ない気がするけどな。」

 

 先日その例のハルミトン・グッドウィン中尉と会話する事があったのだがあれは・・・なんというか人の癇に障るという話し方だった、もっともわざとそうしているのかもしれない・・・よほどマハの事が気に入らないようだ。

 

 「今度あの中尉に絡まれたらアレックスが助けてよね、あいつ本当にしつこいんだから・・・」

 

 「ああ、・・・突然だが・・・話があるんだ、いいか?」

 

 「ええ、なに?」

 

 「例のカイラスギリーの件で家族の事なんだが、俺には遠方に住んでいる親戚などはいないし今回の計画が一段落したら一度地球に戻ってやらなくてはいけないことがある・・・その頃には故郷も少しは落ち着いていると思う・・・遺体は発見されないだろうがそれでも両親を弔ってやらなくてはならないからな。・・・いつ頃戻るかはまだ決めていないが・・・一緒に来てくれるか?」

 

 「・・・ええもちろん。一緒に行くわ。」

 

 「すまない・・・まだ暫く先の事になると思う。日程はまた相談するよ。」

 

 「いいの・・・傍にいてあげるって言ったでしょ?それに一人で戻るなんてさせられないわ・・・私がいてもつらいだろうけど・・・」

 

 「助かる、だが大丈夫さ。・・・それにもう俺は一人ではない。君がいれば大丈夫だ。」

 

 

 

サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 

 「サラやるじゃないか、まさか初の模擬戦で勝利するなんて・・・しかし本当にパイロットになるつもりか?確かに昔操縦を教えたのは俺だが・・・これは死ぬかもしれないことだぞ?」

 

 「わかってる、でも決めたことだから・・・それに私にだってできることがある。こう見えても何もできない女じゃないってエドゥならわかってるでしょ?」

 

 「そうだが・・・やはり君には戦場には出てほしくないというのが本音さ。だが君がそう決めたのなら仕方がない・・・無理だけはしないでくれよ?」

 

 「ええ、でも私にはしなくてはいけないことがある、だから・・・」

 

 「例の幼馴染の事か・・・だがいいのか?ここでこのままパイロットを続ければ敵同士になる、もし再会することがあればその時は・・・」

 

 「それでも私はそうする、たとえ私の言っていることが彼に、アレックスに信じてもらえなくてもいい・・・たとえ誤解が解けなくてもそれが私の責任なの。それに何となくだけどこうしていればまた会える気がするから・・・」

 

 「女の勘というやつか、それとも・・・いやまさかな、なんでもない。だが無茶だけはしてくれるなよ?君を失いたくはない、男の勝手というやつだが俺はそう思っている。」

 

 

 

 

 

 

 



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海賊部隊

宇宙...1年後 宇宙世紀0181年某日

※サラ視点

 

 月日の流れの感覚と言うのは人それぞれだとは思うが私にとってここに来てからの1年は恐ろしく早く感じた。

 

 現在ズィー・ジオン・オーガニゼーション表立った活動はしていない、その活動はもっぱら水面下である。・・・であるからしての今回の海賊部隊設立であろう。

 

 要するにズィー機構の存在が露見しないように活動する為の策である。

 

 今回の海賊部隊設立にあたって私は自分からこの海賊に志願することにした・・・もうこの時点ではエドゥも私の覚悟を理解してくれていたのか反対はされなかった。

 

 例の木星のオーソシエさんは海賊部隊という言葉を聞いたときあまりいい顔をしなかった・・・いや、というより露骨に嫌な表情を浮かべていたような気さえする・・・何か理由があるのだろうか?

 

 海賊部隊の初陣・・・その任務はかなり危険の伴うものであるしこれまでのズィー機構の活動よりも直接的なものになるであろう。

 

 その作戦の内容は現在連邦軍及びマハと呼ばれる組織で開発中の新型兵器のデータ収集、可能であれば鹵獲もしくは破壊である。

 

 ズィー機構が入手した情報によればその新兵器の大気圏突入試験が実施されるらしくそこを強襲するというのが今回の作戦のようだ。

 

 大気圏突入とその後重力下でのテストを行なうのが目的であろうというのが諜報部の予測らしい。

 

 地球は現在建前上は全面居住禁止となっているがそこには多くの例外規定が存在する。政府高官や一部の連邦政府職員はもちろん連邦政府の認可を受けた民間人もかなり多く居住している。(私だってそのうちの一人であった)そして数多くの不法居住者も存在しているのだ。全面居住禁止の法など有って無いようなものなのだ。

 

 だからこそズィー・ジオン・オーガニゼーションも地上で活動できると言えるのかもしれない。

 

 ズィー機構の地上部隊は主にヨーロッパ方面で活動しているらしくその任務は諜報活動がメインである。

 

 そういえば地上部隊には私と似たような境遇の人物がいるとアポステルさんから聞いた。なんでも連邦政府高官の娘であるらしい。もっともその女性は自らズィー・ジオンに志願したとのことらしいが・・・お会いする機会があれば少しお話ししてみたい気もする。もしかしたら私のパパともその女性の父親は面識があったのかもしれない。

 

 ・・・しかし大気圏突入のタイミングで戦闘を仕掛けるというのは非常に危険な行為である、勿論こちら側にとってもそれは同じで一歩間違えれば地球の引力に掴まりそこでお終いである。

 

 

 

 



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海賊部隊2

宇宙

※サラ視点

 

 「・・・それにしてもあなたのイーディムにガンダムの頭を取り付けるなんて・・・目立ってしょうがないじゃない、もしかしてあなた自殺願望でもあるのかしら?」

 

 「違いますよ・・・オーソシエさんは海賊部隊のガンダムだからって理由であんまり気に入らないんですか?」

 

 私は自分の機体にF90Ⅱの頭を取り付けてもらうことにした・・・そうすればアレックスが私に気が付くかもしれないと考えたからだ。それに既にこのことはサルヴァー氏も承諾済みである。

 

 「ええ、まあそんなところよ。昔私達と敵対していたガンダムがいたってだけの理由だからあなたはあまり気にしなくていいわ。」

 

 「それって前に言っていたクロスボーンっていう人達の事ですか?」

 

 「ええ、海賊部隊にガンダムと来たら嫌でも想像してしまうのよ。」

 

 「でも頭を取り換える許可をサルヴァー氏に貰いに行ったときまるでマフティー・エリンの再来みたいだと私は言われましたよ?クロスボーンじゃないですよ。」

 

 「マフティーねぇ・・・たしかあれの正体も有名な連邦の軍人の息子だったって話よね。私は木星の出身だからあまり詳しくないけれど・・・」

 

 「ええ・・・だからあんまり縁起のいい名前じゃないですね・・・それにマフティー・ナビーユ・エリンなんて散らかった名前・・・私は名乗りたくないです。」

 

 そのマフティーという人と私はもしかしたら近いものがあるのかもしれない・・・なんたって父親が連邦の人間で私は今こんなところにいるのだから・・・でも私の本音は別に連邦政府を打倒するだとか世の中を良くしたいなどではないのだけれど・・・

 

 「反政府組織の人間がガンダムに乗って戦うとなれば確かにそれを連想するのも無理ないかもしれないわね。」

 

 「・・・頭だけですよ。」

 

 まあこの機体自体チューンアップしてもらったので性能は上がっているのだけれど・・・

 

 それにしてもマフティーか・・・確かに有名ではあるけれど赤い彗星のシャアやアムロ・レイに比べたらかなりマイナーな存在であることは確かだ。というよりマフティーという名前は個人の名前でもあるが組織名でもあったはずだ・・・いずれにしても私の育った環境ではあまりよく思われていない存在であった。

 

 「まあでもガンダムにしろマフティーにしろそう言った戦場での伝説なんてあんまり真に受けないほうがいいのよね・・・木星にもそう言った類の伝説ならあるけど全部デタラメの大嘘で信じてる人なんて子供くらいなものよ・・・おっと総統閣下は信じていたっけ・・・今のは口外無用でお願いね。」

 

 「はぁ・・・でも木星の伝説ってなんです?クロスボーンとは違うんですか?」

 

 「ええ、まあお伽噺みたいなものよ、でもあのお話はお伽噺にしてはそこまで昔の話じゃないのよね・・・でも内容はあんまりにも現実離れしているから伝説は伝説よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




閃光のハサウェイはベルト―チカ・チルドレンの続編なので正直マフティー関係のワードを入れるか迷いましたが正史でもマフティー動乱は起こったという設定なので入れました。


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海賊部隊3

人物紹介12
ヒュー・ボネット
47歳 男性
ズィー・ジオン・オーガニゼーション海賊部隊所属艦カパーヘッド艦長


宇宙  巡洋艦カパーヘッド

※サラ視点

 

 

 しかしサルヴァー氏はいったいどこから宇宙艦なんて調達してきたのだろうか・・・MSもそうだが補給関係において特に問題が発生していないのはひとえにサルヴァー氏の働きによるものであろう。このカパーヘッドなんてそれこそ連邦軍の軍艦と比べたって見劣りするものではない。

 

 巡洋艦カパーヘッド 全長300mほどであり前面に連装メガ粒子砲2基を備えMSを6機搭載できるスペックを持つ。その深紅の船体はとても頼もしく見え連邦政府に対抗しようとする組織だけあってこれだけの艦艇を用意できるズィー・ジオン・オーガニゼーションの力・・・いやクワック・サルヴァーという人物の力をますます思い知らされたような気がする。

 

 

 「それにしても私が艦を預かるとは思ってもみなかったですけどねぇ、それにこんなお嬢さんまでクルーにいるとは・・・」

 

 「ボネット艦長こそ海賊船の艦長って柄にはみえませんけど。」

 

 「それはもっとも、ま、私は給料さえ貰えればそれでいいですけどね。」

 

 「・・・そうですか。艦長はズィー・ジオンの理念に共感して参加したわけじゃないんですね・・・」

 

 「まあ組織の理念は否定しませんよ、ただ私のような人間は理念よりも優先するものがあるのですよ・・・理念があれば腹が減らないのなら話は別ですがね。」

 

 「まあ私も人のことは言えない立場にありますから・・・それより海賊部隊ってだけじゃ何かちょっと味気なくないですか?名前とかって付けないんでしょうか?」

 

 「そうですねぇ・・・まあ我々は割と自由にやっていいと言われていますから名前くらい勝手につけても大丈夫だと思いますよ、何か案でも?」

 

 「うーん・・・特に思い浮かばないです、艦長が決めたほうがいいんじゃないですか?」

 

 「私がねぇ・・・そういえばお嬢さんは確か地球の出身・・・アメリカのどこかでしたっけ?」

 

 「はい、そうですけど・・・まさか私の故郷の地名から取るんですか?」

 

 「いやいや、ちょうどこの艦のネーミングもアメリカ由来でして・・・なら少し言い換えてアメリアなんてのはどうです?」

 

 「アメリアですか・・・アメリアの海賊部隊・・・いいじゃないですか!言いやすいですし!すごくいいと思いますよ!」

 

 「ならそれで、一応他のクルーにも確認を取りますがまあ問題ないでしょう。」

 

 「ええ、きっとみんなも気に入ると思いますよ、それに名前があったほうがやっぱりいいですよ。」

 

 「まあお嬢さんが気に入っているなら皆も反対はせんでしょう、それより次の作戦、アメリア海賊部隊にとっての初仕事の内容・・・それを聞いてもまだここにいるとはお嬢さんは見た目によらず肝が据わっているのですなぁ。」

 

 「そうでもないですよ、それに今はビームシールドと耐熱フィルムがあれば最悪地球の重力に掴まっても大丈夫なんでしょう?」

 

 「確かにそうですが危険な事には変わり有りませんので・・・甘く見ないほうが良いと思いますな。」

 

 

 

 

 

 

 

 



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海賊部隊4

海賊部隊戦力
巡洋艦カパーヘッド
同型艦ダイアモンドバック
準同型艦キングスネーク
計3隻


宇宙

※サラ視点

 

 「・・・以上が諜報部からもたらされた情報である、これらを踏まえ敵地球連邦軍及びマンハンターの新型機を叩く絶好の機会がこの大気圏突入のタイミングと判断。我々海賊部隊3隻の艦艇、MSを用いて3方向から攻撃、ダイアモンドバックとキングスネークは護衛を、カパーヘッドが本命を・・・MS部隊はくれぐれも地球の重力に掴まらないよう注意。」

 

 そう・・・たとえこちらに大気圏突入装備があるからと言って地球に落ちてしまえばそこは連邦の庭なのだ、燃え尽きなくても捕まってしまっては意味がない。

 

 「推定される戦力は護衛のサラミスが3隻、あとは本命に新型艦艇の存在も確認だそうで・・・サラミスはともかくこちらには要注意でありましょう。」

 

 それにしても諜報部などと言うものがあるという事はアナハイムや軍の内部にズィー・ジオン協力者がいるという事になる・・・いや、いないと考えるほうが不自然なのかもしれない。

 

 「新型艦艇の方の管轄はマンハンターという情報である、連中はまだ宇宙の経験が浅いようなのでそこが付け目ですな、もちろん油断は禁物であるがね。」

 

 その後細かな作戦プランの説明を受けブリーフィングは終了した。

 

 しかし今回の作戦・・・連邦の新型機のデータ取得であり可能であれば鹵獲もしくは破壊とのことだが危険度の割には得るものは少ないのかもしれない。

 

 実際新型機のデータを得るだけであればそれこそアナハイムか連邦内部にいるスパイに情報を持ってこさせればいいだけなのだ。

 

 「つまりは実よりも名を取りに行ったという事ね・・・初陣だからというのは分かっているけれど・・・」

 

 これでは組織の批判対象たる連邦の官僚主義のことをあんまり言えたものではないような気もする・・・まあ私には別に構わないけれど・・・まあもっとも新型機を鹵獲できればその成果は大きいだろう、データだけなのかそれとも実物があるのかでは雲泥の差ではある。

 

 「それに私は戦場に出ることが目的・・・作戦の内容など関係ない・・・か。」

 

 そう独り言を呟いてみるとなんだか嫌な感じがする。

 

 「これじゃあまるで私は戦闘狂みたいじゃない・・・」

 

 実際そう思われても仕方ないのかもしれない、なんたって自分から殺し合いに参加しようとしているのだから・・・でももう決めたこと、ここでやめたら一生後悔する・・・そんな生き方はしたくない。

 

 ズィー・ジオンでパイロットをやると決めた時真っ先に考えたのはこの先誰かの命を奪うことになるかもしれないという事だ。

 

 この道を選んだ以上それからは避けて通れない

 

 でも私は自分を優先してしまった・・・私は我儘な人間だ・・・この先誰かの命を手に掛ける事になる、もちろんその逆もあり得る。そしてその誰か一人一人にはこれまで生きてきた人生があり家族が・・・大切な人がいるのだ。

 

 いっそのこと仮面でも付けてみようか・・・いやそれは辞めておこう、それをするのは結局命と向き合うことから、目の前の現実から私が逃げているに過ぎない気がする、ちゃんと私自身で向き合わなければ・・・仮面には頼れない。

 

 

 

 



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海賊部隊5

宇宙 

※サラ視点

 

 「MS隊を発進、僚艦とMS隊準備ができ次第目標を攻撃する。」

 

 「しかしキャプテン、まだ第一戦闘距離に入っていません、当たりっこないですよ。」

 

 「それでいいんですよ、彼等はまだ宇宙に不慣れな連中・・・それが大気圏突入時に攻撃されるという事はストレスになるということでありましょう。目標正面!ビーム撹乱幕ミサイルの準備は出来ているな!?」

 

 「準備は完了しています!・・・ミノフスキー通信入ります!ダイアモンドバックとキングスネーク両艦とも作戦位置に付いた模様、いつでもいけますよ!」

 

 「MS隊射出位置へ!」

 

 始まる・・・やるからには中途半端では終わらせない

 

 「サラ機準備完了です・・・整備士さん、耐熱フィルムってこれ本当に大丈夫なんですか?」

 

 「大丈夫ですよ、ただそれを使うような事態にならないように気を付けてくださいね?お嬢さんご武運を。」

 

 「了解です、サラ機出ます。」

 

 艦が主砲で攻撃するまではなるべく機体の推進光で目立たないよう注意して接近しなければ・・・ビームシールドなんて論外であろう。幸いにも連邦軍は実戦を想定してのテストなのか自分からミノフスキー粒子を散布してくれている・・・しかしその分光学カメラでの監視は厳しいはずだ。

 

 問題があるとすれば諜報部が入手した情報に有った機体・・・サイコミュ・センサー搭載機だと思うけど・・・あれはNTでなければ短時間しか使用できないようだ。ならこちらの攻撃後遠距離から撹乱幕を撒けば母艦をやられる心配もないはずだ。その性質上哨戒機代わりにもならないはず・・・先手は取れるであろう。

 

 あそこにアレックスがいるかどうか・・・いや最初から遭遇出来るなんて思わないほうがいいだろうけど何となくあそこに彼がいるような気がする・・・何故だか最近は妙に勘が冴えるような感じがするのだ。

 

 あるいは戦場に出るから感情が高ぶってそう感じているだけかも・・・

 

 

 

 

 作戦宙域まで接近すると予定通りカパーヘッド含めた3隻の巡洋艦が主砲を発射 まるでバックの地球に吸い込まれるように連続したビームの軌跡が過ぎ去っていった。

 

 「MSが出てくる!?でも!!」

 

 連邦軍のMSが数機、ビームシールドを発光させながら接近してきた。

 

 カパーヘッドからミサイルが発射されその中身・・・ビーム撹乱幕が展開された。

 

 私の装備はビームライフルの他にマシンガンも持ってきている、撹乱幕が展開されている状況なら効果的なはずである。

 

 ブルーノ砲を装備した味方がこちらを援護し始めた・・・これなら一方的に攻撃できるというわけだ、だが向こうだってやられっぱなしと言うわけでない、いかにビーム撹乱幕と言えども接近戦でのビームには効果は薄い・・・完全に防ぎきれるというわけにはいかない。

 

 「狙われているッ!?この感覚は前にも!?」

 

 敵から放たれた長距離ビームが機体を掠める・・・何とか回避できたが撹乱幕があるというのにこの威力・・・流石に母艦までは届かないと思うけど・・・

 

 それにしてもこの感覚はあのカイラスギリーの時にもあった・・・あのザンネックに狙われたときの感覚だ

 

 一体何だっていうの・・・でもこれがなければ今のでお終いだったのも事実である。

 

 「考えるのは後にしないと・・・長距離ビームの敵は・・・そこね!!」

 

 あれほど強力なビームを持っているという事は接近して対処するべきだと私は判断、敵に向けて急加速をかける。

 

 周囲は乱戦になっているようで連邦軍は明らかに混乱しているようである・・・本命の新型機も見つけないといけないけど今はあの敵を優先しないと味方に被害が出る・・・

 

 いた・・・あの大きいライフルを持っている敵をまず先に対処しなければ。

 

 私は敵にビームライフルを2発発射、このコースなら間違いなく直撃のはずであった。

 

 「ビームが弾かれた!?これは撹乱幕の効果じゃない・・・Iフィールド!?」

 

 敵は長物のライフルからショートバレルのライフルに持ち替えこちらを攻撃してきた。

 

 「ビームシールド!!それくらいのビームなら・・・」

 

 ビームが効かないとなれば実弾で対処するしかない 幸いにもマシンガンがある・・・だがこの距離ならビームソードも使える!!

 

 私はビームソードアックスを構え敵機に斬りつけたが向こうも同じ考えだったようでサーベル同士の鍔迫り合いが発生する。

 

 機体同士が接触・・・向こうからの通信がこちらに入ってきた。

 

 「そのガンダム!!まさかあなたって・・・」

 

 向こうの機体からの通信・・・その声は女性の声であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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海賊部隊6

宇宙

 

 

 「ゴンドワン被弾!連邦軍の護衛MS部隊被害多数・・・スロバキア轟沈!」

 

 「なんだと言うのだ・・・相手はテロリストではないのか!?ヨハンナ機は何をしている!?敵に艦艇がいるのなら沈めさせるのだ!」

 

 「ビーム撹乱幕の影響で敵の母艦にまでビームが届きません!!高熱源体接近!!左舷上!!」

 

 「対空砲火!!敵を追い払え!落とせなくても構わん!」

 

 「艦長!テスト中の2機を呼び戻して対応させましょう、このままでは・・・」

 

 「いや、もうあの2機は突入準備に入っている、不可能であろう。」

 

 軍の連中め・・・こういう事態が発生する危険性があるから重要なテストの護衛の時くらいカイラム級を護衛に付ければよかったのだ。それをクラップはおろかサラミスが護衛とは・・・

 

 「これ以上テロリストの好きにさせるなよ、クエゼリン前へ!味方MS部隊を掩護する!」

 

 「無茶です!接近すれば巡洋艦は的になりますよ!」

 

 「既に護衛のサラミスが1隻やられている今、管轄違いとはいえ孤立している連邦軍のMS部隊を見殺しにはできん!ただでさえ向こうは撹乱幕を使い状況に合わせた武装をしているのだ・・・主砲1番2番、目標敵MS!」

 

 

 

※ヨハンナ視点

 

 

 なぜテロリストがこのような大規模な攻撃を仕掛けてくる!?しかも敵のMSは見たこともないタイプ・・・データにもない

 

 連邦軍の護衛部隊も押されている・・・まさかスペックまでこちらに匹敵するMSを所持しているというのか・・・

 

 でも・・・これは躱せないはず!

 

 私はサイコミュ・センサーを使用、本当なら敵の母艦を狙いたいけどどうやら撹乱幕が展開されているようでそれは不可能になってしまった・・・ならばある程度距離の近い敵MSを狙うしかない。

 

 狙いをつけた!撹乱幕があるといはいえこの威力ならば・・・

 

 このジェネレーター内蔵型のロングレンジビームライフルの威力はヴェスバーすら凌駕する、命中すればビームシールドが有ろうが無かろうが撃墜することは容易いはずであった。

 

 しかしそうはならなかった、敵はこちらがライフルの銃口を向ける直前から回避運動を取りビームは掠めただけで撃墜には至らなかったのである。

 

 「嘘!?なんで避けられる!?それにあの機体は・・・」

 

 

 敵機はこちらに急速接近、こちらにビームライフルで攻撃してきたがこちらにはIフィールドがある

 

 私はライフルを近接戦闘仕様のショートバレルタイプに持ち替え攻撃するがビームシールドに防がれてしまった。

 

 それにしてもあの機体はどう見てもガンダムタイプ、カイラスギリーの時の機体とは違うようだけど・・・でもまさかパイロットは・・・

 

 敵のガンダムはさらに接近、ビームサーベル・・・いやビームアックスを構えこちらに斬りつけてきたようだ

 

 「向こうは格闘戦をやろうっていうの!?でもスナイパーだからってこちらにもサーベルはある!」

 

 鍔迫り合いが発生し機体同士が接触している今なら接触回線が使えるはずだ・・・このガンダムのパイロットの正体を確かめなくては・・・通信してみる価値はあるだろう。

 

 「そのガンダム!!まさかあなたって・・・」

 

 「女の人!?話しかけてくるの!?」

 

 相手のガンダムのパイロットからの通信・・・その声は若い女性のものであった・・・であるならばやはり!

 

 「貴女サラ・ウィリアムズでしょ!?もしそうならもうこんなことはやめて!貴方は自分の父親だけじゃなくて幼馴染まで殺そうって言うの!?」

 

 「この人私を知っている!?それに幼馴染って・・・やっぱりアレックスがここにいるの!?」

 

 「何故貴女はこんなこと・・・サーベルの出力が負ける!?」

 

 私は機体をいったん引き離しバルカンで牽制するが相手も再びこちらに斬りつけてくる

 

 「違うわ!あなたがアレックスの知り合いなら・・・」

 

 「違う!?何が!?こんなことまでして!!いつだってそうじゃない!貴女みたいな世間知らずのお嬢様やお坊ちゃまが革命家気取りで出てきていつも過激な事ばかり繰り返す!毎回犠牲を出すばかりで!それでいて間違いを認めないのよ!」

 

 「私は世直しなんて考えてない!」

 

 「親殺しのいう事か!」

 

 ここで何としてでも彼女を止めなければ・・・アレックスの所までは絶対に行かせない

 

 

 

 

 

 

 



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海賊部隊7

宇宙

 

 

 敵のガンダムがサーベルでこちらにさらなる連撃を仕掛けてくる、こちらとしてはIフィールドがあるのだから少し距離を取りたいのだが振りきれそうにもなかった。

 

 なぜテロリストがこのような高性能機を所持しているの・・・いや、そんなことは少し考えればすぐに分かる事ではある・・・そもそも今現在MSを製造供給できる組織などあそこ以外には考えられないであろう。

 

 味方の援護は期待できない・・・皆防衛線を守るので精一杯なようである。

 

 ここを抜かれれば大気圏突入を控えた試作機・・・あの中尉はともかくアレックスがやられてしまう。(突入テストであるので例の2機はライフルを所持していない)

 

 連邦軍の援軍でも来てくれればいいのだけど・・・もし来るにしてもすぐには来ないであろう。

 

 こちらから少し離れた距離で戦闘をしていたサラミスがもう1隻被弾した・・・あれでは沈んでしまう!・・・しまった!

 

 一瞬サラミスがやられたことに気を取られてしまった、その隙をガンダムは見逃さなかった

 

 敵のビームアックスがこちらの左腕を切断、さらなる追撃で頭部も損傷した。

 

 「ウッッ!・・・でもまだ!」

 

 しかし既にもう決着はついた、こうなってしまってはもうどうにもならない。

 

 ガンダムは攻撃を緩めなかったがコックピットへの攻撃を避けているようだ・・・しかしこれでは機体は達磨状態である。

 

 「遊んでいるの!?馬鹿にして!!」

 

 「私の話を聞いて!・・・私は確かにこんなことをしている・・・どう思われても仕方がない、だけど私はパパやアレックスの両親を殺してなんかない!時間がないからもう行くけど・・・やっぱりこれは直接伝えないといけない事だから!」

 

 「何を!!待ちなさいよ!!」

 

 ガンダムは行ってしまった・・・防衛線を抜かれてしまった・・・

 

 私は何も・・・彼を守ることもできないで!!

 

 艦に防衛線を突破されたことを報告しなれば・・・クエゼリンは・・・どうやら無事なようである。

 

 しかし例の彼女の言葉・・・あれは本当なのだろうか?

 

 彼女のやっていることはまさしくテロリストそのものであるしその行動からすればあの発言は嘘・・・というより矛盾している

 

 だがそんな嘘をわざわざ何の為に言う必要があるのだろうか・・・

 

 そんな事考えたって分かりっこない・・・それよりアレックスが無事に大気圏突入を済ませられるか・・・もはや私には祈ること以外にできることはない。

 

 それにもちろん私だって無事に戻らなければ・・・幸いスラスターがまだ生きているから機体はなんとか動かせる。

 

 一緒にアレックスの故郷であるチャールストンへ行くと約束したのだから・・・二人で無事に生き残らなれば意味がない。

 



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大気圏突入

宇宙

 

 

 一体どうなっているんだ・・・

 

 護衛の連邦軍の部隊が押されているなんてテロリストの戦力はいったいどれほどなのか・・・少なくとも護衛の部隊はもっと多くてもよかったはずである、軍の見通しが甘かったという事であろう。

 

 

 こっちはライフルを装備していないというのに・・・もし交戦という事になれば負けはしないだろうが耐熱フィルムが破損でもしたら大変なことになる ビームシールドだけでも一応は突入できるらしいが・・・

 

 だがもう2号機は突入態勢に入ってしまっている・・・ならば俺の3号機はテスト中止と言うことになってもいいが無防備な2号機を守らなければならないだろう

 

 世話の焼ける中尉さんだ全く・・・だがまあ自分があの中尉に守られる立場に立つよりはいくらかましであるのかもしれない。

 

 ミノフスキー粒子が濃いためか艦隊からの指示が届かない・・・ミノフスキー通信は使えるのだがそれもないという事はかなりまずい状況にあるのかもしれない。

 

 「敵が見えた!突破してきたのはたったの1機か・・・」

 

 正直1機で助かった・・・性能で負けるはずはないが何せこちらにはサーベルとサンドバレルしか今現在手持ちがないのだ・・・これで複数の敵に囲まれでもしたらまず勝ち目は無くなってしまうだろう。

 

 「急接近してくるだって!?接近戦を仕掛けてくるつもりか!・・・あの機体は!?」

 

 ガンダムタイプ!?テロリストがなぜ・・・

 

 見間違うはずはないあの頭部は・・・しかしF90とは違う機体のようである。

 

 しかしなぜ敵はライフルを撃ってこないのか・・・いや考えても無駄であろう。それよりも突入中の2号機をやらせるわけにはいかない・・・

 

 急接近してきた敵をサーベルで迎え撃つ 何となくではあるが向こうのパイロットが誰であるかの想像はついた 

 何故であろう・・・これがNTの勘というやつかもしれない。

 

 「ガンダム!乗っているのはサラか!」

 

 「やっぱり!それに乗っているのはアレックス・・・あなたなのね!?」

 

 「ああそうさ!だが君はもう俺の知っているサラではない!」

 

 敵のガンダムを振りほどきサンドバレルを発射 相手のライフルの破壊に成功したが・・・マシンガンも持っているのか向こうは!!

 

 「お願い!!私の話を聞いて!!私は確かに自分の意思でここにいる・・・でもパパを殺したりなんてしてない!!もちろんアレックスの両親だって・・・」

 

 「そんな世迷言!!ならばなぜ君は戻ってこない!?」

 

 「それは!!・・・もう私だって大人だよ?あれから13年も経ったの・・・愛した人がいるからもう戻らない・・・もう私の人生は宇宙にあるから・・・」

 

 「なにっ!?グゥッ!!」

 

 敵のガンダムからワイヤーのようなものが伸びこちらに絡みついてくる これはいったい・・・

 

 「こんな紐で俺を縛るつもりかサラ!子供騙しがッ!」

 

 「海ヘビが見切られた!?これじゃあ・・・」

 

 「そうかい!今分かったぞサラ!君の企みが!この機体と2号機共々鹵獲しようという魂胆!言葉で惑わせて隙を作るつもりだったな!」

 

 

 

 

 

 

 



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大気圏突入2

宇宙

※サラ視点

 

 アレックスに会えたのはいいがやはり私の言葉を信じてはもらえないようだ・・・

 

 いやそんなことは最初から想定していたじゃないか 簡単に分かってもらおうなんて虫の良すぎる話、それに戦闘中という事もある・・・感情が高ぶって落ち着いて話し合いなんてできっこないなんてわかってる。

 

 折角今1対1で話せる機会だというのに・・・幸いと言うのは変な話かもしれないけど味方は防衛線を突破出来ていないようである。

 

 だったらあの機体・・・向こうもガンダムだっていうのは驚いたけどやはり鹵獲してしまうのがいいのかもしれない ズィー・機構も流石に捕虜を殺したりはしないだろうし・・・

 

 でも海ヘビが切り払われてしまっては・・・あとはビームストリングスも装備してきているけれどこちらの威力では最新式の対電磁装備の前ではあまり効果を期待できないかもしれない。(海ヘビの方は出力をかなり強化している)

 

 「わかってる、私の話が信じてもらえないなんてのは初めから!でもそれでも!」

 

 「それでも!?これ以上何を話す!?テロリストになった人間の話などッ!」

 

 向こうのサーベルが迫り私は回避するがマシンガンが犠牲になってしまった。 

 

 「確かにそう、私は今ここにいてテロリストって言われても仕方がない・・・でも幼馴染に・・・昔好きだった人に嘘なんてつかない!」

 

 「・・・ッ!?」

 

 向こうのガンダムの動きが一瞬止まる その隙にストリングスを発射、電撃が効かなくてもワイヤーで絡めれば物理的に動きを封じ込められるはずである。このまま鹵獲できればいいのだけどそうは上手く事は進まなかった。

 

 「しまった!捕まった!?だがこんなもの!」

 

 アレックスのガンダムは既に地球の引力に掴まりつつある それが今の捕縛で決定的なものになってしまった・・・私がもっと早く捕まえていれば!!これではもう・・・(私の機体も同じ高度にいたので引力に掴まりかけていたのは同じではある)

 

 「グゥッ!!サラッ!」

 

 向こうのガンダムが地球に落ちていく・・・鹵獲は出来なかった、今このタイミングに攻撃する手段があれば撃墜できるだろうがたとえ有っても私はそんな事しないであろう。

 

 戦闘データは取れたから組織への報告は問題ないだろうけど・・・私自身の目的は果たせなかった・・・

 

 いやまた話せただけでも良かったと考えるべきだろう もう目標の2機はいなくなってしまったので撤退しなければ 

 

 私は搭載されている信号弾を打ち上げる これでもう作戦終了を部隊全員に伝えられたはずである。

 

 まだ戦況は五分五分な今ならまだ撤退することはできるはずだ カパーヘッド含む巡洋艦が援護してくれるだろうし何より連邦軍だって軍艦を撃沈されている状況で追撃する余裕はないはずである。

 

 

 

 

 

 



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大気圏突入3

大気圏

 

 落ち着け・・・

 

 耐熱フィルムとビームシールドがあれば突入自体には問題ないはずである。

 

 冷却システムも正常に作動している、大丈夫だ・・・

 

 今は突入だけに集中しなければ・・・サラの言ったことなど気に留めている場合ではない。

 

 クエゼリンは・・・ヨハンナは大丈夫だろうか?

 

 クエゼリンも突入テストを実施するはずなので後から突入してくるとは思うが今回の件で中止になどならなければよいのだが。

 

 「あの中尉は無事に突入を済ませたか・・・ビームシールドを大気圏突入モード、耐熱フィルム展開!逆噴射ブレーキ!」

 

 機体に異常な振動は発生していない、全システム問題なく稼働・・・だが怖くないと言えば嘘になるかもしれない。それに全く振動が発生しないというわけにはいかないのだ。

 

 「この熱は・・・断熱圧縮というやつか!」

 

 機体は平気なはずである 少なくとも理論上はそうでありMSによる大気圏突入は既に確立された技術であるのだがそれでも戦闘と同じくらいに神経を使う事でもある。

 

 

 「空気抵抗が来た、突入は成功したか・・・」

 

 機体各部に異常なし 動作も完璧のようだ

 

 あとはヨハンナも無事に降りられれば良いが・・・クエゼリンが敵の攻撃で損傷していないことを祈ろう。

 

 しかしサラ・・・なんであんなこと・・・俺を動揺させるためか?

 

 恐らくはそうであろう テロリストの言葉など信じるほうがおかしい

 

 怒りのような悲しみのような感情がこみ上げてくる だがそれはあの嘘のせいか?

 

 もしかしたらサラを信じてあげられない自分への怒りなのか?

 

 誤解なく分かり合えるなんて俺にはできそうになかった

 

 あの言葉を信じたい気持ちもある しかし嘘だと・・・信じられないという思いの方が強かった

 

 

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 

 「・・・そうかあれを扱えそうな人間が見つかったのだな。ならば当初の計画を変更しその男にやらせる事にしよう、少なくともアポステルのような強化人間よりは本物のほうがいいだろう・・・ああ、そんなことは百も承知だ、まったくマイルズ、君が心配する事ではない。後でそのNTの身辺に関する情報を送るように、では・・・」

 

 さて、これで邪魔な存在を排除する算段はついた 見つかった適任のNTとやらを操ることなど造作もないことだ・・・適当に木星への恨みを作ってやればいい、それだけだ 

 

 あとは連邦へ私のツテを駆使すれば何も問題はない お膳立ては十分できるであろうな。

 

 これでまた一つ 地球に集る害虫を駆除できるというものだ

 

 

 



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Stand by me

地球 ウェストバージニア チャールストン

 

 

 あれから少しばかりの時間が経ったがチャールストンの現在は言葉では言い表せないほどの有様であり復興などまだまだ先の話であると実感させられた。

 

 重機やトラックが何台も止まっており場所によっては軍が規制線を張り立ち入りが制限されている箇所も見受けられた。

 

 実家のあった場所・・・懐かしい幼少期を過ごした全ては破壊されてしまったようだ。

 

 それでも数名・・・学生時代の友人と連絡がついたのは俺の心を少し安堵させた。

 

 故郷を離れていた者やそもそもチャールストンに現在住んでいなかった者など数人の友人の生存を知ったときの俺は思わず泣き出してしまいそうになった。

 

 サラの事を話すかどうか迷ったが止めることにした・・・もちろん現在連邦政府が正確な報道を差し止めているという事もあるが俺自身がそのことを話すのが嫌だったのかもしれない。

 

 クエゼリンもあの後無事に地球へ降下に成功し地上でヨハンナと合流することが出来た・・・二人そろって休暇も取得することが出来たので約束通り故郷にやってこれたのだ。

 

 2号機と3号機はマハの地上テスト部隊へ引き渡すことになっており重力下でのテストはそちらが担当することになる、つまり新型機開発計画での俺たちの役目は一区切りついたという事だ。

 

 そういえばミノフスキー技術関連の用語が増えすぎて似たような言葉があるためいくつかの用語が統合されることになるようだ。

 

 なんでもミノフスキー技術を用いて飛行することは全てミノフスキー・フライトという単語に統合されることになるらしい。(その他にもミノフスキードライブとミノフスキークラフトと言う別のシステムがあるのだがその辺も統合されるかどうか議論されているようだ)

 

 

 

 もはや原型すら残っていない家が存在した場所に立ちすくみその間頭の中には様々な思いが現れては消えていった。

 

 ぽつりと水滴が頬を垂れる 涙ではない 確か予報では雨になっていたっけか・・・

 

 隣にいたヨハンナが傘を差しだしてくれた・・・ここに来てからあまり会話をしていない、もっともそれも仕方ないのかもしれない。

 

 「その・・・私もサラさんと話したわ・・・戦闘中だったから私も冷静じゃなかったけど・・・」

 

 「そうか・・・君にサラはなんて言ったんだ?」

 

 「私はやってないって・・・そう言ってた・・・」

 

 「俺には・・・あの言葉が本当か嘘か正直判断がつかなくなってきた いや、常識的に考えれば嘘だと考えるのが普通なんだろうが・・・ヨハンナはどう思った?」

 

 「私もあの言葉がまるっきり嘘だとは思えないような気がして・・・もっとも私はあの時が初対面だからサラさんの事詳しく知っているわけではないけれど・・・」

 

 このことはいくら考えても答えなんて出ないであろう だが考えるのを止めることはできない

 

 「ねぇアレックス・・・もしサラさんが戻ってきても私といてくれる?・・・ごめんなさい、やっぱり今のは忘れて・・・私がサラさんの代わりでもいいって言ったくせに・・・」

 

 「君が俺の傍にいてくれるって言ったんだろ?たとえサラが戻ってこようが今の俺気持ちは変わらないさ。それに君をサラの代わりだなんて思ったことはない、だから・・・君は君のままで傍にいてほしいし俺もヨハンナと一緒に居たいと思ってる。」

 

 「!!・・・その言葉信じていい?」

 

 「ああ信じてくれていい、保証する。ヨハンナこそいなくならないでくれよ?」

 

 「なら私がずっといてあげる!もう撤回は受け付けないからね?」

 

 

 

 

 



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医者の謎

宇宙 

※サラ視点

 

 

 最近木星の人達の動きが慌ただしくなっているようだ。例のレコンギスタ作戦決行が近いのかもしれない。

 

 ・・・もしかしたら木星と地球との距離を考えればもうすでに 地球再征服(レコンギスタ)船団はとっくに出発しているのかもしれない

 

 その為かもしれないが最近木星の仮装巡洋艦テミストが何やら物資やMSの積み込み作業を行っているのをよく見る あれは木星帝国の先遣部隊が地球圏で活動する際に使用している艦であり一見しただけでは普通の輸送船や貨物船のようにしか見えないがMSや物資を搭載できもちろん艦艇自体にも武装が施されている。

 

 まだコンテニューオペレーションが完了していないというのにこれではイニシアチブがズィー・ジオンではなく木星に取られてしまうような気がするのだがサルヴァー氏の考えはどうなっているのだろうか・・・

 

 そういえば最近知ったことがある・・・私はてっきりこのズィー・ジオン・オーガニゼーションの創設者がサルヴァー氏だとばかり思い込んでいたがどうやら違うようである。創設者は既にもう組織に居ないようだが・・・名前は確かケネスというらしい でも聞いたことのない名前だったし年齢的にもう生きてはいないだろうとのことである。

 

 

 そうこう考えているエドゥが奥の通路からやってきた 彼も本当なら海賊部隊に志願したかったそうだがズィー・ジオンは彼にあくまでMSの教官をやってほしいということなのでそれは却下されてしまったようだ。

 

 「お疲れサラ、とにかく君が無事でよかった・・・」

 

 「ええ、でも完璧に作戦を遂行は出来なかったけど・・・」

 

 「それより例の彼・・・あそこに居たんだって?」

 

 「うん・・・でも駄目だった・・・確かにまた会えて話せただけでも前進なのかもしれないけれどやっぱり信じてもらうのは無理なのかもしれない・・・」

 

 「そうか・・・俺にはわからないが昔は友達だったんだろ?きっといつかは信じてもらえるさ」

 

 「ありがとう・・・分かり合うって難しいね・・・」

 

 「そうかもな・・・」

 

 「ねぇ・・・エドゥはサルヴァー氏のことどう思う?」

 

 「どうって・・・まあ謎は多いとは思うな、だがまあこんな組織のトップだからな、多かれ少なかれそういうところはあるのだと思うが・・・」

 

 「これは別に私の勘で証拠とか確信があるわけじゃないんだけど・・・サルヴァー氏は本当にこのズィー機構の目的・・・連邦政府に対抗できる国家規模の組織の確立なんて本気でやろうとしているのかってちょっと疑問に思ってね・・・」

 

 「・・・まあ例のシャアの復活なんて進めているくらいだからそうだとは思うが・・・もっとも例の計画に関しての詳細については俺も知らされていない・・・ただシャアを復活させるという事以外はな、だからあれが本当に実現できるかどうかの技術的な問題に関しては・・・少し調べてみるのもいいかもしれないな。」

 

 「本当にメモリークローンなんて実現できるのかしら・・・気を付けてねエドゥ・・・私が言い出してこんなこと言うのはあれなんだけどあんまり深入りすると危険かもしれないから」

 

 「ああわかってる、それに俺はこういうのは慣れてるから大丈夫さ、ばれないように上手くやるよ」

 

 

 

 



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医者の謎2

宇宙

※オーソシエ視点

 

 

 ついにレコンギスタ作戦決行の時が来た、既に船団は出発していて地球圏到着もあと少しと言うところまで来た。

 

 これで木星の民は多く救われることであろう それに地球人のことだって別に皆殺しにするわけじゃない 最初は衝突はあるだろうが・・・私達にだって地球圏で生きる権利があるはずである。

 

 しかし例のクワック・サルヴァー・・・我々もいろいろ調べたのだが彼についての経歴が全く不明なのだ 彼が組織の設立者ではないという事はすぐに判明したことなのだが・・・(別にそれは隠していたことではないらしくすぐに判明した)

 

 彼との繋がりがある人間についても我々なりに独自で調査したのだが正体につながるような情報は一切出てこなかった。

 

 確かに我々の地球圏での諜報力は限られる・・・しかしここまで何も出てこないというのは流石に変だと言わざる得ない。

 

 連邦政府やアナハイムとのコネを持つほどの人間ならば彼自身かなりの大物のはずなのだ・・・隠していたとしても一つや二つ何かしら出てもいいはずだ。

 

 クレト大臣閣下はそんな事捨て置けと言っておられたが・・・

 

 それでも私は本作戦が完璧に成功するようにバックアップするのが役目なのだ、懸念事項は少しでも取り除きたい。

 

 確かにレコンギスタ船団の戦力は凄まじい 改良型サウザン・ジュピター級6隻に新型戦艦・・・MSの数も数え切れないほどである。

 

 しかし逆にいえば作戦が失敗しこの戦力が失われるような事態になればそれこそ木星は文字通り終わりという事になる。(艦艇やMSの損失もそうだが現在の木星の事情から言えば人的資源の損失が一番致命傷になるであろう、本作戦には軍人以外にも木星の民間人が参加している、と言うより民間人のほうが数は多い)

 

 それだけは何としてでも避けなければいけない 確かにクレト大臣閣下は優秀な方でその能力は総統閣下よりも遥かに上だが若干楽観視しているような気もするのだ・・・こんなこと本人には絶対言えない事なのであるが・・・

 

 しかし本作戦・・・ズィー・ジオンの協力で進めてきたのであるから共同で行うつもりに変更はない もう時間がない以上クワック・サルヴァーを信頼するしかないのだ。

 

 まさかこの段階で裏切るつもりはないだろうし仮に裏切ったとしても今のズィー・ジオンの戦力では木星には太刀打ち出来ないはずだが・・・

 

 それでも私の中の不安は消えなかった いや木星の命運をかけた作戦なのだ・・・どれだけ万全を期してもそれだけは消えないのかもしれない 

 



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Upright the moon

月面 フォン・ブラウン市

※ローレンス視点

 

 

俺のやっている事、それに対しての罪悪感は確かにある・・・いやあったと言ったほうがいいのかもしれない。

 

 当初それを持ち掛けられたときやるつもりなんて無かった しかし言い訳にしかならないだろうが提示された金額の前には首を縦に振ってしまったのだ

 

 しかしやってしまえばなんてことはない 別にこれのせいで誰かが死んだり不利益を被っているわけでない・・・少なくとも自分の知る限りではそんな事態発生はしていないのだ。

 

 奴等の指示に従うと言ってもそんなに派手な事をやっているわけではないのだ・・・少し情報を流してやったりなど・・・まあ大体がそんなところだ

 

 別に俺は反連邦的な考えを持っているわけではない 奴等に協力する理由はただ金の為 それだけだ

 

 この金があれば俺の家族がだいぶ楽になるのだ 何も地球暮らしの人間全員が裕福というわけではない・・・

 

 今回の奴等からのおつかいも簡単だ 現在このプロジェクトMMに参加しているマハの人員リストとその人間関係の情報が欲しいらしい 人間関係については俺個人の主観でも構わないとのことである

 

 しかし今回の奴等の仕事・・・人員リストはともかく人間関係の情報などまた変わったものを欲しがるな・・・

 

 いやそんな事考えないほうがいい 先方の詮索などしたところでろくなことはないだろう

 

 俺は奴等の正体を良く知らないし別に知りたいとも思わない だが連中は地球で勤務しているときに俺に接触してきたのだ・・・それも間にはそこそこの階級の人間を挟んで・・・

 

 つまり俺以外にもこの仕事をやっている奴がマハや連邦軍にかなりの数存在しているはずだ・・・そう考えると俺の中の罪悪感はますます存在感を薄くさせる

 

 今回も大丈夫さ・・・それに俺みたいな下っ端から提供できる情報なんてたかが知れている 俺のやっていることで受けるダメージなんて地球連邦と言う巨大な組織からしたら蚊に刺されるよりもさらに低い・・・なら少しくらい俺がいい思いをしたっていいはずさ

 

 

 もちろんアレックスやヨハンナにはこの事については秘密にしている・・・騙しているに等しいが別にあいつらに迷惑はかけていないのだ なら構わないと思う・・・というのが俺の考えである。

 

 さて・・・そろそろあいつらバカップルも戻ってくる頃だ 大気圏突入テスト時にかなりトラブったと聞いたが無事地球に降下出来たようで安心した・・・やはり同期の事は心配になる。

 

 

 あいつらには幸せになってほしいものだ・・・戻ってきたら2人に一杯おごってやろう

 

 

 

 

 

 



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医者の計画

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 

例のNTは次期主力機開発計画の参加メンバーで01のパイロットであったか・・・

 

 ならばこちらの根回しが一つ不要になるであろう・・・好都合である。

 

 こいつには交際している人間が同じマハにいるようである それに先日の事件で家族を亡くしているようだ・・・であるならばスペースノイドへの恨みも相当なものと予想される これを利用すれば上手く行くであろう

 

 仮にこちらの予定通り進まなくてもその時は前のプランに戻せばいいだけである。

 

 少々回りくどいやり方だが我々より連邦が打倒してくれた方が都合がいい・・・それにやはり適性の問題もある 多少手の込んだやり方になるのも仕方のないことである。

 

 01の管外はマハであるのだから今回の件が成功すればマハの影響力はさらに増大するであろう もっとも扱うものがあれな以上本件は表ざたにはならないであろうが・・・

 

 思えば長い道のりであった・・・いやまだ道半ばか・・・

 

 いつの日だったかあの男に言われたことがあったな 私の目的を知ったあの男は驚愕し涙さえ流した

 

 だがそれこそが人間の限界であろう このような組織を立ち上げておいて結局彼は人間本位であり続けたのだ。 いや、彼の場合はあのかつてのマフティー個人との関係もあるのかもしれない・・・

 

 結局は大局や目的ではなく人間だけを見続けたのだ だが私は違う 私は目的遂行の為そこに一切の躊躇いを捨てたのだ 一時的な感傷や罪悪感は抱いたとしても最終的には実行する意思が私にはあるのだ。

 

 たとえニュータイプであろうがオールドタイプであろうが関係は無い あの男はニュータイプにこだわりすぎたのかもしれない・・・

 

 私からすればそのような違いは些細なものでしかない ニュータイプ・・・人類の革新と言われる存在ですら結局は人間でしかないというのが私の考えである・・・彼等には世の中を変えることはできなかったのだ もっともスペースノイドから言わせればその責任はアースノイドやオールドタイプにあるというのかもしれないが・・・

 

 仮に人類全体がニュータイプにでもなれればまた話は変わってくるのかもしれないがそれこそ不可能な話であろう。

 

  まあいい、後はシャアのコピーさえ完成してしまえばこの流れは確定的なものになる それに私は裏方のほうがよいのだ。

 

 飾りは目立つ方がいい・・・

 

 仮にマイルズが心配しているような問題が発生しても結局のところ大勢に影響はない 

 

 それに切り札(ジョーカー)は使わなければ意味がない 




 ちなみにクワック・サルヴァーは作者のオリキャラではありません

 NT論に関してですがNTに否定的なキャラクターを出したかっただけで作者自身がNT論に対して否定的なわけではありません。(NT論に関しては言葉を濁したいというのが本音です)

 

 


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正位置の死神

宇宙 月面 フォン・ブラウン市

 

 

 月に戻ってきてまず目についたのは連邦軍の慌ただしい動きであった。

 

 どうやら新連邦派コロニーへ譲渡されるはずだった例の量産型スペックダウンMSが輸送中テロリストに襲撃を受け強奪されるという事件が発生したようだ。また例のサイド自由同盟の反連邦政府デモも頻発しているらしい。

 

 そのせいか月の連邦軍駐留部隊や定期パトロール部隊すらその対応に駆り出されたようで通常のパトロール業務をマハが急遽担当する羽目になった。

 

 テスト部隊にパトロールを任せるなどなんともおかしな話になってきたような気がするが・・・まあこれからマハが宇宙へ進出していく以上将来的には俺達が行う業務ではある・・・ 

 

 ならば仕方がないか・・・と言ってもSFSとMSの数に限りがあるので通常時と同じ規模のパトロールを行うのは不可能ではあるのだが・・・それに俺達はまだ宇宙に完璧に慣れているというわけではないのだ。

 

俺も本来ならパトロール業務をやるべきなのだがいかんせん機体がない・・・まさかクィン・マンサで出撃するわけにもいかないだろう。それにあの機体は今調整中なようだ 何やら機体に追加でよくわからない装備を取り付けているようだがテストパイロットの俺にはそんな話は聞かされていなかった・・・あれは何の装備なのだろうか?というよりその装備の試験をするならもう俺のところにその詳細が来ていてもいいはずなのだが・・・

 

 ローレンスとヨハンナもパトロールに駆り出されるようだ ヨハンナのスナイパーはまだ修理中なので別の機体・・・スポッターカスタムで出撃するようだ もっとも任務の特性上こちらの機体のほうが適任ではあるだろう。

 

 「まあアレックス、心配するな この複座のスポッターならそうそうやられはしないさ」

 

 「だといいが・・・もし強奪されたMSが出てきた場合は注意しろよ?確かあれはリバティとか言う名前のMSだったか・・・モンキーモデルとはいえ元はジェイブスなんだからな・・・」

 

 「大丈夫さ・・・と言っても俺じゃなくてヨハンナが操縦で俺は後ろに座ってセンサーやレーダーの相手だけどな。」

 

 「まああんたより私の方が腕は上でしょ?」

 

 「まあ確かにな・・・とにかくアレックス、たかがパトロールくらいは俺達だけで十分さ、NT殿の出る幕じゃないから月でお留守番していてくれよ。」

 

 「ああ、ヨハンナを頼んだぞ。」

 

 「逆に私がローレンスを守る立場になると思うけど・・・アレックス、ちょっと話があるんだけど・・・

 

 「ん?どうした?」

 

 「・・・ううん、やっぱり戻ってきてから話すことにする・・・じゃあまた戻ってきてからね。」

 

 「ああ、分かった。気をつけてな。」

 

 しかしなぜだろうか嫌な予感がする・・・なんだこの胸騒ぎは・・・

 

 

 

 

 

 



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正位置の死神2

宇宙 

※オーソシエ視点

 

 

 まずいことになった 我々の艦艇への補給を担当しているサイド4所属の補給艦がどうやら連邦軍に捕捉されるという事態が発生したようだ

 

 月の連邦軍は出払っているという情報を受けもしかしたら油断していたのかもしれない。

 

 今あの補給艦を臨検でもされたらこちらの情報が連邦に知られてしまう・・・それではレコンギスタ作戦が奇襲攻撃ではなくなってしまうのだ・・・それだけは避けなくてはならない

 

 「仕方ない・・・私のフーピテルを出すわ、あれならこの位置からでもまだ合流ポイントまでに間に合う!」

 

 「単独出撃なんて無茶ですよ、如何に貴女のジュピターでも危険すぎます!」

 

 「無茶でもなんでもやるしかないのよ!本作戦には我々の命運がかかっている・・・こんなところで躓くなんて許されるはずがないじゃない!」

 

 しかしなぜあの補給艦は捕捉されてしまったのだろうか・・・連邦の定期パトロールの詳細は既にこちらには筒抜けである・・・実際今までに我々が捕捉どころか存在すら掴まれたことは無かったのだ。

 

 いやそんな事今考えても仕方がない 一刻も早く合流ポイントに急がなければ・・・

 

 

 宇宙 月周辺宙域

※ヨハンナ視点

 

  やっぱりアレックスに言うべきだったかしら・・・ううん、やっぱり落ち着いてから話したほうがいい・・・それに話したら話したで今の仕事に支障をきたす可能性は高い。

 

 「・・・でやっぱり戻ったらアレックスに話すのか?」

 

 「!!・・・気づいてたの?」

 

 「まあな、なんとなくだけど態度で分かるんだよ俺は。これでも人間観察は得意でね。」

 

 「・・・それ気持ち悪いわよ。」

 

 「態度に出るほうにも問題があるだろ?・・・まあなんだ、あいつなら大丈夫さ。」

 

 「・・・ありがとう。」

 

 「俺に礼を言うの初めてじゃないか?まあいいか・・・そろそろ例のポイントに到着する、ミノフスキー粒子は散布されていないな・・・レーダーに反応!どうやらビンゴのようだな。」

 

 「了解・・・どうやら情報は正しかったようね。」

 

 僚機であるSFSに乗ったジェムズガン2機が散開していく・・・しかし今回のパトロールはいつも連邦軍が担当している宙域からは少し外れている場所なのだ。

 

 その理由は上層部からもたらされた情報によるもの・・・どうやらどこのサイドかは不明だがコロニー所属の艦艇がテロリストかもしくはそれに準ずる艦艇への瀬取りを行なっている疑いがあるというのだ。

 

 そのため今回は連邦軍のパトロールルートから外れその瀬取りを行なっていると思われるポイントに向かっていたのだがどうやらその情報は正しかったようである。

 

 前回の作戦で私は乗機を壊してしまった・・・しかし汚名返上の機会が早くも回ってきたようだ。

 

 前回の失点があった為今回のパトロールの人員に指名されるとは思っていなかったので少し驚いているというのが本音だ・・・もっとも今の私の頭の中は仕事よりもほかに考えることがある・・・さっさと終わらせて帰ろう。

 

 大丈夫・・・たかが輸送艦1隻なんとでもなる

 

 「船体確認、船籍照会・・・あのタイプの輸送艦は広く普及しているけど・・・少し改造されてるみたいね。」

 

 「ああ、主砲があるな。他にも武装があるかもしれないぜ。」

 

 「呼び掛けるわ・・・僚機に連絡お願い!所属不明の輸送艦に告げる!こちら地球連邦政府警察機構特捜第13課第一パトロール隊である、直ちに停船せよ!」

 

 「応答が無いようだな、いや・・・逃げようとしているな。」

 

 「繰り返し警告します、所属不明の艦船、直ちに停船せよ!従わない場合は攻撃もやむなし!」

 

 「待てヨハンナ!所属不明艦こちらに砲塔指向!」

 

 「えっ!?」

 

 輸送艦からビームが放たれた これが通常のジェイブスならこれで撃墜されてしまったであろう。

 

 「Iフィールド!!・・・こちらに損害無し!SFSも大丈夫みたい。」

 

 ジェムズガンがビームシールドを展開、この時点でもはやあの艦艇はテロリストと断定できるであろう。

 

 メガ・ビーム・バズーカを所持しているジェムズガンが輸送艦に攻撃を仕掛ける、いかに旧式MSとはいえ輸送艦相手であれば問題は無い。

 

 私もビームライフルを輸送艦のブリッジに発砲、できれば爆発させないで沈めたい。

 

 「ローレンス!僚機にビーム・バズーカでの攻撃を止めさせて!あれは威力が高すぎる!」

 

 「了解だ!」

 

 

 

 

 

 

 



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正位置の死神3

宇宙 月周辺宙域

 

 輸送艦のブリッジにビームが直撃はしたものの船体自体は無事でありなんとかあの艦から情報を引き出すことが出来そうである。改造されていたせいもあるのか船籍照会では該当する艦船は確認できなかったのだ。

 

 「敵艦沈黙・・・あとは調査部隊を呼んであれを解析すればどこの所属か分かるはず・・・待って・・・何かある!!]

 

 「どうした?」

 

 「ローレンス、今から操縦系をそちらに移すから、あと僚機に連絡して警戒をお願い!」

 

 「おい待て!外に出るつもりか!?まだあの艦艇の生存者がいたら攻撃されるかもしれないんだぞ!!やめておけ!」

 

 「大丈夫、無理はしない・・・」

 

 MSのハッチを開け私は宇宙空間に飛び出す、ノーマルスーツのスラスターがあればある程度自由に身動きもできる。

 

 「ああ全く!!君の体は・・・」

 

 ローレンスが何か言いかけたがその言葉を聞かないうちに私は発見したそれを目指し進んでいった。

 

 よくこんな小さいものを見つけられたと自分でも不思議に思う 今時珍しい紙のファイルだ まあ電子機器に比べてメリットが無いわけではないが・・・

 

 「これは・・・機密ファイルのようね、中身は・・・!!」

 

 その時ローレンスから連絡が入った

 

 「お・ヨハ・・・聞こ・・・スキー・・どれ!!」

 

 「何!?聞こえない!!まさか!?」

 

 その時だった 近くを警戒していたジェムズガン2機がビームに貫かれ爆発した。

 

 「ウッッッ!!」

 

 鋭い痛みが上半身を襲う 爆発で飛んできた金属片がノーマルスーツを貫通して突き刺さっているのが確認できた 

 

 痛みで気を失いそうになるが訓練で学んだように不思議と無意識のうちに体は動いた

 

 手持ちのダクトテープで破片の突き刺さった周囲を補修する。血が滲みノーマルスーツが赤くなっていく。

 

 機体に戻らなければ・・・敵はどこ!?

 

 再びビームが2発発射された その標的は私達の乗ってきたスポッターカスタムである

 

 だがIフィールドがある 問題はないはずだ

 

 敵機を見つけた なにあの機体!?とてつもない速度の見たこともない機体・・・可変機!?

 

 ビームが効かないことが判明したためか敵機は一旦離れていった 今のうちに戻らなければ 生きて帰らないと・・・

 

 私はこんなところで・・・

 

 ローレンスがこちらに来てくれた ハッチを開けMSに乗り込む 

 

 「おい!ヨハンナ!!大丈夫か!?」

 

 「私はいいからそれより早く逃げて・・・」

 

 

 「ああわかった、掴まってろ、敵がまた来るぞ!」

 

 シートに座り込むと何とか自分の状況を把握することが出来た。 

 

 金属片が突き刺さっている お腹は無事みたいだけど・・・

 

 嫌な汗が頬を流れ落ちる 息が荒くなる 意識が遠のいていく

 

 アレックスごめん 傍にいてあげるって言ったけど 私ダメみたい・・・

 

 ああ・・・お腹の子にも謝らないと

 

 本当にごめんね

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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正位置の死神4

宇宙 月周辺宙域

※オーソシエ視点

 

 

 合流ポイントまで全速力で来たが既に補給艦はやられてしまったようだ

 

 あれにMSは搭載していない 無理もないか 

 

 周囲にMSの数は2、いや3

 

 まずはビームシールドで目立つ2機からだ 私はこの機体に搭載されている機体上部のジェネレーター直結式メガ・ビームランチャー2門を敵機に発射する、この威力の前ではビームシールドは無力である。

 

 「お次はこっち!他愛もない!」

 

 残りの1機にビームを発射、これで終わりのはずであったが敵機には命中せず弾かれてしまった。

 

 「Iフィールド!?あのサイズの人型に?生意気な・・・」

 

 この機体は一撃離脱戦法を得意とする機体である 一旦距離を取らなければ

 

 向こうはこちらのスピードについてこられないようだ ならばさらに足を止めて勝利を確実なものにする

 

 「ビームが効かないならこういうものがある!!」

 

 搭載されていたミサイルポッドから数十発のマイクロミサイルが敵機に襲い掛かる 機体自体は撃破できなくてもSFSはあれでもう破壊されたであろう。

 

 「おっと、証拠を消さないとね。」

 

 原型をとどめていた補給艦にビームを放つ この威力なら誘爆して証拠など残らないだろう

 

 「生き残りがいたかもしれないけど、ヘマしたあなた達が悪いのよ。・・・なにっ!?」

 

 しまった いつの間にか敵機が接近 サーベルを用いてこちらに斬りつけてくる

 

 先に止めを刺すべきだったか だがこの私のジュピターはそんじょそこいらのMSとは推力が違う

 

 一瞬のうちに私は機体を簡易MS形態に可変させる この機体のメインは高速巡航形態でありMS形態はおまけのようなものである。

 

 戦闘用のビームガン兼サーベル発生装置付きのマニュピレータークロ―からサーベルを発生させ迎え撃つ

 

 そのまま敵機を機体パワーに任せ吹き飛ばす やはりこの機体、素晴らしい

 

 つい最近になって木星で発見された機体データを現行技術を取り入れフーピテルを改造して再現したこのジュピター・・・反映したデータ自体は90年近く前のものだと言うが驚くべきことにその設計は現行MSすら凌ぐ部分があったという。

 

 「これを設計した人間は間違いなく天才ね、これがあれば連邦のMSなど!」

 

 再び距離を取り機体を可変させる しかし敵機がビームライフルを発射しこちらを捉えてくる。

 

 「このジュピターに当てるとは・・・しかしその火力では当ててもシールドは破れはしない!」

 

 発射されたライフルをビームシールドで防ぐ どうやらあの機体・・・ビームシールドを貫通できる装備がないらしい そのせいなのか敵機は再びサーベルを構え突撃してきた。

 

 「そう、ならお望み通り接近戦で相手してあげる それくらいしかあなたに勝ち目がないものね。」

 

 「貴様!!その機体はテロリストではないな!?」

 

 「さあ?それは自分の頭で考えてみたら?まあでもどの道分かったとしてもあなたはここで終わりよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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正位置の死神5

宇宙 月周辺宙域

※ローレンス視点

 

 クソッ!なんなんだ一体!?

 

 前のシートに座っているヨハンナから声をかけても返事がない・・・

 

 いや俺自身がそれどころではないというのもあるが、とにかく敵を何とかしなければ・・・それにしてもあいつあの輸送艦は味方だったんじゃないのか?それを沈めるとは証拠隠滅のつもりであろうか・・・その隙にサーベルで斬りかかったのだが機体パワーでこちらが負けてしまっているらしくそのまま弾き飛ばされてしまった。

 

 ライフルで敵機に狙いをつけ発射する、まぐれ当たりで2発ほど命中させたのだがビームシールドに阻まれてしまった。

 

 やはりサーベルしか有効打は無いか・・・

 

 再びサーベルを構え敵機に突撃する しかし相手の方が速いのだ、まともに相手してくれるかどうか・・・こちらにIフィールドが無ければその可能性は間違いなくゼロであろう。

 

 敵機もサーベルを発生させ迎え撃つ構えをとる 

 

 「貴様!!その機体はテロリストではないな!?」

 

 「さあ?それは自分の頭で考えてみたら?まあでもどの道分かったとしてもあなたはここで終わりよ」

 

 あれのパイロットは女!?いやそんなことは関係ない 男だろうが女だろうがテロリストはテロリストである

 

 やはり機体パワーで負ける なんてパワーだ・・・それに今の時代に可変機だって!?

 

 敵機がこちらを吹き飛ばしビームガンを連射する あのマニュピレーターは複合兵装のようだ

 

 敵機の実弾兵装がもう無ければある程度逃げに徹するのもありかもしれない だがそれでは結局じり貧になってしまう。

 

 ・・・その考えは甘かったようだ 敵機から連続した実弾と思われる攻撃が襲い掛かる

 

 あれはバルカンか!?それにしてもあの機体どれだけの武装を装備してやがる それでいてあの速度とは!!

 

 どこかに弱点は無いのか・・・いやあるにはあるのか あの機体はどう見ても一撃離脱が得意な機体であるのは間違いがない

 

 サーベルで斬り結んだ感触からして接近戦はそこまで得意でないはずである ただその機体パワーに任せているだけである しかし相手は接近戦に応じてくれている・・・今ならチャンスはあるかもしれない

 

 自分の腕に自信があるつもりだろうなあの女 でなければこんなことはしないはずである

 

 

 嫌な女だ全く ああいう女の相手は御免蒙りたいがその驕りが今はありがたいのかもしれない

 

 敵機のバルカンをシールドで防ぎつつサーベルを構える せめてこちらにもバルカンがあれば・・・

 

 頭部バルカンが装備できないのであればサンド・バレルが欲しいところである なぜ装備されなかったのであろうか?

 

 敵機がサーベルでこちらを切り払い装備していたライフルとシールドを切断される このままでは・・・

 

 クソッ!クソッ!

 

 俺は機体を反転させ先ほど大破した輸送艦の残骸の陰に逃げ込む 

 

 あれに有効な武器が無い、というよりもう既にこちらにはビームサーベルしかないのだ

 

 どうにかしなければ 援軍は期待できないであろう 

 

 何か手はないか?何かあるはずだ・・・

 



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正位置の死神6

宇宙 月周辺宙域

※オーソシエ視点

 

 

 もはやあの機体には飛び道具が無い 距離を取って徐々に甚振ってやってもいいのだがあまり時間をかけるのも得策ではないだろう まったくあのサイズのMSにIフィールドを搭載しているなど忌々しい。

 

 こちらに背を向けて残骸に逃げ込んだ機体を追いかける、逃げ足だけは速いようだがこの私の機体を見てしまった以上生かして返さないほうがいいだろう もっとも画像解析をしたところでどこの所属かまでは掴めないであろうが・・・

 

 奴めどこに行った、そこか!?

 

 私はビームガンを連射する たとえ効かなくても命中すればIフィールドが発光して居場所が判明するだろう それにIフィールドはエネルギー消費が激しいはずだ・・・被弾し続ければ使用不能に陥るだろう。

 

 連射されたビームガンは相手の機体に命中することは無かった いや正確には敵はそこにはいなかったのだ 

 

 Iフィールドが使用不能になったのか!?いや違う あれはビームサーベル!?

 

 馬鹿な 唯一残ったであろう武器を囮に使って捨てただと!?一体何のつもりだ!?まさか今の隙に逃げ出すというわけではないだろう・・・こちらのスピードから逃げられるわけがない、敵もそこまで馬鹿なはずは・・・

 

 その時だった 敵が私の前に再び姿を現したのは その敵機の腕には存在しないはずの武器が握られていた

 

 「なに!?馬鹿な!?」

 

 ビームシールドを展開させる なんとか間に合うがシールドにビームが直撃する・・・貫通はしなかったがこの衝撃は通常のビームライフルではない!

 

 その隙を敵は見逃さなかった 再びサーベルを手に取りこちらに斬りつけてきたのだ

 

 回避が間に合わん!そうか!ああも簡単にサーベルを囮にできたのは予備が存在していたからという事か!!

 

 しかしあのビーム火器はいったいどこから・・・いやそれよりもこちらのダメージが問題だ 致命傷ではないが少なくないダメージを受けてしまった・・・もろにサーベルが直撃した割には少ないダメージと言えるかもしれないが。

 

 クソ!私とジュピターに傷をつけるとは・・・仕方あるまい、今ここでやられるわけにはいかない 確かにこのまま戦えば私の勝つ確率は高いであろう だが負ける確率も低くはないのだ・・・

 

 どうせ私の所属などわかりはしない だがしかしここで撃墜されて解析されてしまってはそうはいかない あの補給艦からはもう情報は引き出せないであろうから逃げるのがベストか

 

 いいわ、今回は貴方の勝ちということで・・・借りを返す機会は作戦が成功してからいくらでもあるものね。

 

 

※ローレンス視点

 

 何とか撃退できた 本当に幸運だった・・・やられた味方のジェムズガンが装備していたメガ・ビーム・バズーカが逃げ込んだ残骸の所に漂って来たのは・・・

 

 「よしもう大丈夫だぞ・・・おいヨハンナ?おい!?」

 

 返事がない どうしたんだ?コックピットのスペース的にきついが俺は立ち上がり前のシートをのぞき込む

 

 「嘘だろ!?まさか・・・」

 

 ヨハンナの体に深々と破片が突き刺さっていた ノーマルスーツに血が滲んでいる。

 

 頭の中が真っ白になった どうしたらいい?脈があるか確認を・・・スーツ越しにはそれは出来ない

 

 とにかく早く基地に戻らないと・・・頼む 生きていてくれ 間に合ってくれ

 

 クソッ!!SFSが破壊されていなければもっとスピードが出るのだが・・・

 

 何やってんだよ、君はこんなところで・・・もし最悪の事態になったら俺はあいつになんて説明すればいいんだ・・・俺にそんな役目やらせないでくれよ 頼むから生きていてくれ・・・

 

 

 



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掌の上の運命

宇宙 月面 フォン・ブラウン市

※アレックス視点

 

 嫌な予感、胸騒ぎ・・・心の中のざわつきがひどく大きくなっていくのを俺は感じていた。

 

 なんなんだこの落ち着きのなさは・・・

 

 少し疲れているのかもしれない 気分転換も必要であろう。

 

 だがそうはいかなかった いきなりそれはやってきたのだ・・・まるで胸の中を抉られ貫かれるような・・・頭にもそれは襲ってきた。

 

 そんな馬鹿な、何故今自分の頭の中にはこんな考えたくもない事柄が過るのだ・・・

 

 そんな事たとえ事実でも分かるはずはない だからこれは真実ではないはずである。

 

 なんでこんなこと思うのか分からない 大丈夫だ・・・何事もなく戻ってくるはずだ・・・

 

 だが否定すれば否定するほど自分の頭の中はまるでそれが真実であるかのように、そうだという事を認める事こそが正しいとでも言うかのように処理を始める。

 

 そうなるともう体は勝手に動いていた しかし今ここで何をしようと結果は変わらないであろう

 

 だからこの予感が間違いであることを・・・自分の考えすぎであり彼女が無事に戻ってくるように祈るしか今の俺にはできないのだ。 

 

 

 月面 グラナダ

※エドゥ視点

 

 わざわざ目立たないように月面のグラナダまでやってきたのには理由がある。

 

 ここグラナダのアナハイム社工場で連邦政府に秘密裏にズィー・ジオンへ供給される兵器群の生産が行われているという情報を掴んだからである。

 

 ズィー・ジオン内部では例のクワック・サルヴァーに関する情報は手にすることは出来なかったし例のコンテニュー・オペレーションに関する詳しい情報はセキュリティが厳しすぎて観覧することは不可能であったのだ。だが全く何も収穫が無かったわけではない。何とかズィー・ジオンへの兵器の生産元に関する情報を入手することが出来たのだ。

 

 ならばこちらに何かあるかもしれないと思い多少のリスクはあるのは承知の上でここまでやってきたのだ。

 

 幸い昔のツテ頼った結果どうやったのかは分からないがある程度ここで動き回ることが出来そうである それにしてもアナハイム・エレクトロニクス社のグラナダ工場に入ることが出来るというのは何か話がうまく進みすぎているような気がする。

 

 もっともお客扱いでセキュリティー・ゲートを潜るのだ 大したものは見れないはずである

 

 反政府勢力に兵器を供給しているというのは勿論極秘裏に行われている事である その秘密が公然であったとしてもだ。連邦だって無能ではない、ここで何が行われているかを全く知らないという事は無いだろう。これほど大規模な工場で生産していて連邦政府が気が付いていないと考えるほうが不自然である。

 

 ちなみに一応ここでの俺の扱いは子規模な反政府勢力のメンバーという事になっており兵器購入の打診という仮の目的で来たことになっている。

 

 ある程度羽振りがいい様子をみせなければならないであろうが仕方あるまい そうでなければ仮の姿など信じてもらえないであろう。

 

 月面 グラナダ

 

 どうやら鼠が1匹潜り込んでいるようだな だがあの鼠・・・そうかここまで目立たぬよう身分を偽装してまで来たという事はそういう事か。

 

 なるほど ならば我々の目的の為餌を与えてやるのがいいかもしれん 上手く行けば全ては我々の手の中に転がり込んでくる可能性もある たとえそう転ばずとも我々にデメリットは無い

 

 「了解しました では例のネタを掴ませます。しかしダーゴル少佐・・・本当によかったのですか?」

 

 「なに君は命じられた事をしておればよいのだ これからマハの存在はさらに増す、その時君はどこに居たいのだ?あとは分かるな?」

 

 「はっ!」

 

 さあこれがどう出るか 

 

 

 

 

 

 

 

 



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運命の輪

お詫び
72話の人名に誤りがあったので修正しました。


宇宙 月面 フォン・ブラウン市

※アレックス視点

 

 戻ってきたジェイブス・スポッターカスタムを見た時俺は安堵した 

 

 なんだやはり嫌な予感など気のせいだったのだと だがそれは間違いであった。そればかりに気を取られ機体が損傷している事、随伴機のジェムズガン2機の存在が見当たらない事や戻ってくる少し前から基地内が慌ただしくなっている事など気には止まらなかったのだ。

 

 だがどうだ?戻ってきたジェイブスの周りを医療班が取り囲みコックピットハッチがゆっくりと開かれた。

 

 内部から人が医療班により出されていく 遠くからノーマルスーツ越しなのであれがどちらなのか判別できない 何があった?

 

 俺は機体に駆け寄る もう一人コックピットから出てくるその人物はローレンスであった。

 

 という事はあの担架で運ばれていく人物は・・・

 

 俺は再び走り出す 担架で運ばれていく人物を確認するために 自分の眼で確認しなければ信じられない だがこのとき既に俺の脳内は何が起きたか理解していたのかもしれない・・・

 

 間違いない それはヨハンナだった・・・ノーマルスーツの上から深々と金属片のような物が突き刺さっているのが確認できた。

 

 俺は大声で呼びかけた だが返事はなかった 慌ただしい医療班に俺は止められてヨハンナが処置室に行くのを見送るしかできなかったのだ。

 

 

 

 

 しばらくの時間が経った それはとても恐ろしく長く感じられた時間であった。

 

 「アレックス・・・俺が悪いんだ・・・俺があの時外に出るのを止めていたら・・・」

 

 「・・・」

 

 その後全ての話をローレンスから聞いた 

 

 彼女が俺の子供を妊娠していたことも全て

 

 何故こんなことになってしまったのだろう?もしパトロールの前にこの事を話されていたら俺はどうしただろう?

 

 ヨハンナの顔はまるで死んでいるのが嘘のようだった これほど大きな金属片が突き刺さったというのにその顔は眠っているかのようだったのだ。

 

 どれほどの苦痛だっただろうか なぜこんなことに彼女がならなければいけなかったのだろうか

 

 他人は言うだろう このような仕事を選んだ以上覚悟の上だろうと・・・だがこんなことは許されるはずがない

 

 何故だ、何故いつもこんな事になる?

 

 俺のせいか、そうかもしれない 思えば俺の周りは皆不幸になっていく 

 

 結局俺はいつもいつも何もできない たった一人の命さえ救えない男だ

 

 

 「彼女は・・・ヨハンナは俺の傍に居てはいけなかったんだ・・・いつだってそうさ、俺の周りは・・・俺は人を不幸にする・・・」

 

 「・・・!馬鹿野郎お前!!」

 

 「だが!!俺の家族だって・・・」

 

 「お前のせいじゃないだろ!今回だって責任を負うとすれば俺にある!・・・それにやったのは奴等だ。見ただろあのファイルの中身を!?ヨハンナが命を賭けて手に入れたあれを見れば・・・」

 

 テロリストの正体・・・木星帝国・・・!?

 

 「馬鹿な・・・木星は共和制になったはずだ、今更帝国などと・・・」

 

 「だがそれが事実だ!そして奴等の計画は何としてでも阻止しなければ・・・」

 

 木星帝国の目的 地球再征服(レコンギスタ)作戦だと!?

 

 あまりにこの奢りに満ちた作戦名に怒りを隠しきれなかった その文脈からは恐らく作戦が成功すれば地球人など家畜以下に扱う事など容易に想像できるようであった。

 

 こんな連中に・・・これ以上宇宙人共の好きにさせていいはずがない 

 

 

 

 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

 

 なるほどあの木星のお嬢さんは獲物を撃墜出来なかったか・・・だがこちらが望む結果にはなったようだな。

 

 いや撃墜出来なかったのはこちらとしては好都合 どうやら木星の情報についてはそのおかげで持ち帰ることが出来たようである ならばそれでよい。

 

 想定していたのはあのNTの交際している女性と友人共々撃墜というシナリオで木星に関する情報は私が流してやろうと思っていたがそれは不要になったな。

 

 全ては順調 連中の始末が完了すればいよいよガイア・ギア計画は始動する もう誰にも止められん

 

 動き出した運命の輪はもう止まらないだろ

 

 さて少し若者の背中を押してやるとしよう それが老人の役目だからな

 

 

 

 

 



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真実、正当なる預言者の王

宇宙 月面 フォン・ブラウン市

※アレックス視点

 

 

 ふざけるな 何が信憑性の薄い情報だ そもそもの問題が連邦軍がもう少しちゃんとしていればこんな事にはなっていなかったのかもしれないというのに

 

 例の機密ファイルの情報はすぐに連邦軍とマハの上層部に伝えられた。もっともマハの宇宙での戦力は現在無いに等しい 今回の件の対処は連邦軍が行う・・・筈であった。

 

 あの地球連邦宇宙軍総司令のふざけた言葉を思い出すだけで今でも怒りが込み上げてくる。

 

 何がそんな信憑性の薄い情報で艦隊は動かせんだ あの忌々しい声でこう言いやがった 君は艦隊を動かすのにどれだけの人員と金が掛かるか知っているのかね?と・・・

 

 もしあの総司令がその場に居たら俺は恐らく手が出ていただろう それでなくともモニターを殴りつけようとして止められたくらいなのだ。

 

 軍がもっとしっかりしていれば今宇宙はこんな状況になっていないのだ そして今必要とされている行動すらしないとは冗談では済まされない。

 

 形ばかりに一応こちらでその情報の真偽を精査するなどと抜かしたがそんな悠長な事している暇など無い あのファイルによればもう来月にも木星帝国の艦隊は地球圏に到達すると記してあったのだ。

 

 止められないのか むざむざ敵の情報を知りながらただ準備もできずに待つなどと・・・

 

 これではヨハンナは全くの無駄死じゃないか 

 

 マハは動かない・・・いや動けないだろう 今のマハの戦力では敵の戦力に対しては無力すぎる 

 

 こんな公園のベンチで腐っている俺をみたら死んでいった皆が失望するだろう だが出来ることなど・・・

 

 全てが嫌になる そんな時だった いつの間にか近くに初老の男性が寄ってきており話しかけてきたのだ

 

 「どうしたのだね、見たところその制服は軍人かね?・・・いや連邦軍の制服とは少し違うようだがこんな昼間から君のような人がこんなところにいると目立ってしょうがなくてね。」

 

 「・・・すいません、今は誰かと話す気分では無くて・・・一人にしておいてくれませんか?」

 

 「まあ少しばかり年寄りのお節介に付き合ってくれても構わんだろう?それにその様子はあまり一人にしておくと危険そうな気配がするのでね・・・で何か良くないことがあったように見受けられるが話してみてくれんかね?人に話すと楽になるという事もある。」

 

 少し怪しいとは思ったがなぜか俺は口が開いてしまった この初老の男性が紳士風の身なりで人当たりもよさそうであったという事もあるかもしれないが・・・赤の他人に何故話す気になったのか自分でもよく分からなかった。

 

 機密になる事は伏せ例え話を交えなんとなくその男性に俺は話を始めていた しかし自分でも話している途中でヒートアップしてしまったのかもしれない いや、もはや機密を守るなんて俺の中でそんな義務は吹き飛んでいたのだ 自分の所属しているマハはともかくあの連邦軍のお偉いさんはファイルを信憑性が薄いなどと言い放ったのである。ならもはや俺も機密を守る気なんて消し飛んだとしてもいいじゃないか・・・少なくとも今の俺はそんな気分であり守秘義務を放棄していた。 正直に言って自暴自棄になっていたのだ。

 

 一通り話を終えると初老の男性は少し考えてから口を開いた。

 

 「そうか、なるほど君の怒りは最もであろう。前回の戦争でも連邦軍は殆どその動きをみせなかったに等しい、動いていたのは一部主流派から外れていた戦力だけであったのだ。だが今の連邦軍にムバラク・スターン提督のような人物は存在しないであろうからな。」

 

 「・・・はい。」

 

 「そして君の話した事が事実であれば前回の戦争よりも厳しい状況にあると言えるだろう。前回は一部であれ軍が動いておりリガ・ミリティアと言う反抗勢力が存在したが今回はそうではない、たとえマハが動いたとしても竜の鬚を蟻が狙うが如き無謀であろう。」

 

 「すいません、こんな話をして・・・もしこの機密を知ったとなったら貴方にも迷惑がかかる可能性があると言うのに・・・」

 

 「いや私から聞いたのだ。気にすることはない。」

 

 「自分が無力で情けなくて嫌になります・・・誰一人守れないで・・・」

 

 「君はシャア・アズナブルという人のことを、知っているかね?」

 

 「シャア?あの赤い彗星のですか?勿論知っていますけど自分はアースノイドなのであまりいい印象は持っていませんよ。」

 

 「まあ彼についての印象は置いておくとして、彼はたった独りで両親の苦労を背負い込み強大なザビ家にそして連邦と言う巨大な組織に立ち向かったのだ。たとえ最終的には敗れたとしてもその行いは無駄ではなかった。」

 

 「・・・つまり自分も立場は違えど立ち向かえと貴方は言いたいんですか?できませんよ自分には・・・」

 

 「そうとも限らん、私はね、人間と言うのはどんな人物でもそこまでの差はないと考えているのだよ。たとえニュータイプであろうがオールドタイプであろうがね、どんな人間にも可能不可能はあるだろうがそれが人によって変わるかと言ったら私はそうは思わん。シャアに出来て君に出来ないという事は無いと私は考えるがね。」

 

 「買いかぶりすぎですよ・・・確かに自分の直面している困難などシャアに比べれば小さいものかもしれません、しかし俺はシャアのようなリーダーシップを取れる人間ではありませんよ、今回の件だってあのシャア・アズナブルやアムロ・レイと言った人物ならばともかく自分には無理です。」

 

 「果たしてそうかね?少なくとも彼等ならば不可能であると分かっていても、どれだけ無謀だとしても立ち向かうことはするはずだと私は思うがね、ならば君にもそれは出来るはずだ、確かに今私は人間に差はないと言ったがそれは何かをやり遂げようとする意志を持つことが前提の話なのだ  初めから諦めていては出来ることも出来なくなってしまう。」

 

 「・・・」

 

 「少し昔話をしよう、あるところに一人の青年が居た、年齢はちょうど今の君と同じくらいであったな確か。その青年は強い信念を持ち自分の役目を見事に全うしたのだ、確かに人は彼の事を赤い彗星より劣ると言うかもしれない 実際にその青年は自分の事をシャア・アズナブルやアムロ・レイより劣っていると考えていたのだ、だがしかし私はそうは思わない。その青年のあの意思、信念はそれこそあの英雄二人と比べても劣るなんてそんなことは無いのだ。彼は最後まで己の意思を貫き通したのだ、その高潔な意思をそもそも誰かと比べる事自体私は間違いだとすら思う。」

 

 「その人もニュータイプだったんですか?」

 

 「ああそうだ、だがね、彼がNTであるかどうかは重要ではないのだ、言ったであろう?重要なのは意思があるか無いかそこでありNTかOTか・・・はたまたNT能力の差ではないのだ。」

 

 その初老の紳士風の男の言葉は俺の中に染み入るように入っていくようだった

 

 そうじゃないか、俺は連邦軍を非難するだけで結局自分の力で何かをしようなんて最初から考えてすらいなかったのだ。

 

 最初から他人任せで自分でやろうともせず諦めていたのだ もし歴代の英雄のようなNT達であればそうはしなかったであろう。

 

 ならばたとえ命令違反でもやってみせる必要がある 自分の意思でだ たとえそれが先ほどの言葉の通り竜の鬚を蟻が狙うが如き無謀であってもだ。

 

 「すいませんこんな事に巻き込んで・・・俺は最初から諦めていたんですね・・・でも決心がつきました、たとえ無謀でもやってみせますよ俺は、でなければ死んでいった人達に顔向けできません。」

 

 「そうかならよかった、だが無謀かどうかはまだ分からんぞ。状況というのは刻々と変わるものだからな、さあもう戻ったほうがいい、何か進展があるやもしれんぞ・・・例えばもしかしたら身近なところに強大な竜を打ち倒す伝説の剣があるかもしれんからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ニーベルングの指環

宇宙 月面 フォン・ブラウン市

※アレックス視点

 

 そういえばあの初老の男性の名前を聞いておくのを忘れてしまった。

 

 全く俺というやつは赤の他人にああ言われなければ何せずにただ待つだけだったのかもしれない。

 

 だがもう決心はついた 例えそれがいかに無謀であろうともこの命尽きるまで、己の肉が骨から削ぎ取れるまで俺は戦う。

 

 使える機体はクィン・マンサだけ・・・木星帝国の来襲次期までには例の新装備の調整も完了しているはずだ、隙をみればあれで無断出撃だろうが可能であろう。

 

 1機で・・・単独でどうにかなる相手ではないというのは十分に承知している。

 

 まさに特攻 カミカゼ・・・

 

 死んでいった皆・・・少しでも皆の無念を晴らせればよい、1隻でも1機でも多く沈めてみせる もうすぐ皆の所に行くことになると思うが・・・これほどまでに死後の世界の存在を信じたくなったのは人生で初めてであろう。

 

 ああ、本当にそんな世界があればよいのだが・・・ヨハンナ、君にもまた会えるだろうか?

 

 遺書でも書いておこうか そんなことを考えながら基地に戻った俺を待ち受けていたのは俺の考えを汲み取ってくれたかのような事実であった。

 

 その命令を受けた時耳を疑った 何度も聞き直してしまったくらいだ

 

 ローレンスはその命令を聞いたとき猛烈に反対したようだが・・・まるで自殺行為だと。

 

 だが助け船とはこの事だ、少なくとも無断出撃などはせずに済むという事だ。

 

 しかし何故命令が出たのであろうか?流石に無謀すぎると上層部も分かっているはずだ。

 

 だがその後の人払いのされたブリーフィング・ルームで作戦計画を聞いたとき先ほどの命令を受けた時ですら耳を疑ったというのにそれ以上の衝撃を・・・いやそれは衝撃と言うよりその作戦を真剣な顔で話す本部直属の士官の頭を疑った、しかし冗談を言っているような雰囲気ではない 自分の方の頭がおかしくなったとさえ思ったがどうやら作戦に参加するメンバー全員がこの話に俺と同じ感想を抱いたらしくそれは否定された。

 

 ローレンスが口を開く

 

 「そんな与太話よくこの場で出来たものだ、何が極秘作戦だ全く、ふざけるな!」

 

 しかしその士官はローレンスからの罵倒を受けても顔色一つ変えずに話を進めついにはローレンスも黙ってしまった。

 

 だが俺からしたらこの話が嘘であるかどうかなど関係ない 正規の命令を受けられたのだ、それだけで十分

 

 それに嘘かどうかはこの後直に判明することなのだ。

 

 

 月面 グラナダ

 

 さあ餌は与えたぞ だがそれは余興であり本来であれば直接的に行動してもよいのだが先生相手には回りくどいやり方が合っているだろう たとえあの鼠がこちらの想定通り動かなくてもよい だが私と違って彼は心配性だからな ならばやはり駒で対応すべきかもしれん。  

 

 木星艦隊掃討作戦が終了すれば先生には悪いが退場していただく 今回の件が極秘裏で処理されたとしても連邦政府はマハの権限の拡大を承認せざる負えないだろう、そうなればもはや先生の力は不要である・・・ガイア・ギア計画も変更させてもらおう。

 

 

 あれはまさにラインの黄金とも言える代物であろう

 

 世界を支配するラインの黄金 ニーベルングの指環か・・・

 

 問題があるとすれば先生の手元にもあれがあるという事であろう だがそれさえ無くなればもはや我々の障害は無い

 

 全ては我らがヴァルハラ建設の為に

 

 

 

 

 

 

 



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地球侵略

宇宙 月面 グラナダ

※エドゥ視点

 

 この資料はいったい・・・まさかこれがあのクワック・サルヴァーの本当の目的だとでも言うのか!

 

 

 この資料の信憑性は何とも言えない だがもう一つの方の収穫もある

 

 そのもう一つの資料はズィー・ジオンからアナハイムへの兵器発注データであった。

 

 そこに記されていたのはMS1機と大型のIフィールドジェネレーター・・・そのMSの機種はザンネックであったのだ。こちらの方の信憑性は高いであろう。

 

 何となくそうではないかと言うような予感はあった しかし今までは証拠はなかったのだ。

 

 

 この2つを突き付ければあのクワック・サルヴァーから真実を聞き出すことも出来るかもしれない。

 

 だがここで焦るのは禁物だろう 時間に追われているわけではないのだ、もう少し調べてからでも遅くはない。

 

 これが事実なら許しがたい暴挙である カイラスギリーの件もそうだがこんなことは許されていいはずがない・・・

 

 サラ、どうやら俺達がズィー・ジオンに来たのは間違いだったのかもしれない 

 

 だが今ここにいる以上、そしてこの恐るべき計画を知った今、何としてでもクワック・サルヴァーの計画を阻止しなければならないだろう。

 

 これ以上奴の為に犠牲を出すわけにはいかない

 

 宇宙 某所

 

 さていよいよだ、こちらも準備をしておかなければ

 

 もしあのニュータイプがしくじったときのためのプランBは俺が努めなければならないだろう。

 

 だがあの機体を持ち出せば間違いなく先生は私たちの反逆に気が付く

 

 しかし今更元のプランに戻されてはマハの権力拡大という目的は果たせない ならばその時点で行動を起こすのが得策か それさえ果たせればもうこちらの勝利であろう。

 

 そういえば少佐は例の情報をあんな鼠に渡したとか・・・上手く行けば勝手に向こうで自滅してくれるかもしれんがそれは希望的観測かもしれない。常にどうなってもいいよう少佐なら考えているであろうが・・・今は目の前の木星艦隊掃討作戦が上手く行くよう祈るだけか

 

 しくじるなよニュータイプ 我らの理想の為に

 

 我らの世界に栄光あれ

 

 宇宙 レコンギスタ船団 旗艦カウディーリョ

※クレト視点

 

 間もなく地球圏へ到着する。

 

 地球再征服(レコンギスタ)作戦成功の暁には我々が全てを支配する 

 

 エスパダの怒りなど妄言に過ぎない 我々を止められるものは存在しない

 

 バロメッツもあるのだ、それも大臣たる私自らが扱うあれがな

 

 そのため私は自らに強化まで施した この私がそうすることで士気向上にも繋がるのである。

 

 最もかつての強化人間か手術とは違い現在はリスクなど殆ど無いに等しい

 

 私と私の護衛のアルファタイプのフーピテルのパイロット全員に手術を施してあるのだ まさにNT部隊と言えるものであろう。

 

 さあこれからが私達木星の時代の始まりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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BLAZING

宇宙 1ヶ月後 地球圏付近  レコンギスタ船団 旗艦カウディーリョ

※クレト視点

 

 さてそろそろ到着か 最初の攻撃ポイントまで敵に気が付かれなければよいが

 

 迎え撃つ連邦の艦隊がいないという事はやはりこちらの動きに気が付いていないようである、奇襲は成功であろう。

 

 「各艦警戒を厳に、気が付かれていないとはいえパトロール部隊に発見される可能性もあるのでな。」

 

 「待ってください大臣閣下!センサーに反応、接近する機影1!」

 

 「なに?連邦のパトロール部隊か?いや1機だけとは不自然だな、仕方あるまいMSを・・・」

 

 その時だった 一筋のビームが改良型サウザン・ジュピター級1隻を貫いたのは

 

 なんだあのビームは、あの威力は一体・・・

 

 艦長が悲鳴にも近い絶叫を上げる

 

 「3番艦被弾!馬鹿な!あの艦が一撃で・・・」

 

 ありえない・・・FEバリアーを貫通して一撃でだと!?あの規模の艦艇でダメージコントロールもあるというのに・・・

 

 「艦隊を密集隊形にしてバリアーを強化しろ!」

 

 「大臣閣下落ち着いてください!あのビームには確かに驚きましたがあれほどの攻撃を連続して行えるとは思いません!」

 

 「それが油断だと言うのだ、そもそもあれだけの火力は我々の想像外である、ならばこちらも最善を尽くさなければならない、私のバロメッツを出す、護衛のアルファも全機だ!」

 

 「閣下!?」

 

 「艦長、君の言いたいことは分かる、だが既に奴には1隻沈められているのだ、ならばこちらも切り札を出すべきであろう。」

 

 やってくれるな、ならば奴には私自らと護衛のアルファ100機で相手になってやろう、いかに奴がたったの一撃でサウザン・ジュピターを沈める事が可能な機体であってもこれだけの戦力であれば十分すぎる数だ。

 

 それに他のMSを出した場合これから連邦軍と戦闘を行う事も考慮するとこれ以上の損失は出せない 確かに油断は危険だが過剰反応して全戦力をここで出してこの後の本命である連邦軍と戦えなくなってしまっては本末転倒になってしまう。物資は無限ではないのだ。

 

 艦隊が密集体形に移行し各艦が主砲で敵機を攻撃し始める その光景はまさに圧巻の一言に尽きるがこれだけでは撃墜出来ないだろうとの予感を私は感じていた。

 

 やはりバロメッツを建造して正解だったようだな このMAを建造するにあたりあまりに過剰であるとの意見もあったが結局は私の意見が通ったのだ。

 

 しかし敵の攻撃の正体はなんだ?あの常識を逸脱した火力の正体には見当もつかない。だがまあいい 奴を撃破した後残骸から解析も可能であろうし作戦成功後あの機体に関するデータが地球にあるだろうからな。

 

 艦橋から格納庫への直通エレベーターのおかげで私は直に機体に搭乗することが出来た。

 

 サイコミュの調子も良好、問題は無い

 

 たとえ奴があのエスパダと言うやつでもこのバロメッツには到底及ばないであろう、この機体にはそれだけの性能があるのだ。

 

 「バロメッツを出すぞ、僚艦に格納されている護衛のアルファの準備は出来ているな?」

 

 「勿論です閣下、ハッチ開きます!。」

 

 船体の下部分が開き機体が放出される、私が今の段階で出るのは想定外だが計画というものは何事にも変更がつきものと言う事であろう。

 

 「さあ、敵機はそこか!こいつの攻撃にどう対応するか見ものだな、ファンネル!」

 

 機体からMSサイズもある大型ファンネルが10基放出され敵機にめがけ飛翔する、あのファンネル1基1基全てにミノフスキー・ドライブが搭載されているのだ、さらに1基に付き5基のチルドファンネルも搭載されている。大型の方はファンネルでありながらビームシールドすら貫通する出力があるのだ。稼働時間火力そして数どれをとっても圧倒的である。またこのMAバロメッツは防御面でも艦艇搭載タイプには流石に劣るがFEバリアーが搭載されている、まさに無敵の性能であると言えるだろう。

 

 護衛のアルファタイプフーピテルが一斉にジェネレーター直結式メガ・ビームランチャーを発射する、かなりの数が敵機に命中したように見えたが敵機は無傷であった。

 

 「Iフィールドを搭載しているのか!、しかしあれだけのビームが直撃してまだフィールドが機能しているだと!?ならばファンネルで内側から攻撃させてもらおう。」

 

 敵機が急速に接近してくる かなり速いな、だがこのミノフスキードライブ・ファンネルからは逃れられまい!

 

 護衛のアルファとチルドを含めたファンネルが一斉に敵機に襲い掛かる、だが敵機に接近した瞬間その全てが破壊されてしまったのだ。

 

 「何が起きた!?あの攻撃は一体なんだ!?いかん!これ以上艦隊に接近させるわけには!!」

 

 今の謎の攻撃を受け残存している機体は距離を取りマイクロミサイルを一斉に発射する

 

 しかし敵機はまるで当然のように無傷であったのだ 実弾すら弾くとは敵機もFEバリアーを搭載しているのか?ありえない、あれは木星で開発された技術なのだ、地球圏に存在するはずがない!!

 

 「ならばこいつはどうだ!これならば防御できまい!」

 

 バロメッツの機体から無数の触手が敵機に伸びていく、このテンタクラ―・センチピードならば有効打を与える事が可能であろう。

 

 あの敵のパイロットが悪いのだよ、なまじ性能のいい機体だったばかりにいらぬ苦痛を感じることになるのだ。

 

 このセンチピードからは電撃を放つことが可能である、たとえ最新の保護機能があろうとも敵機の電子機器は勿論パイロットも消し炭になる。

 

 機体はそのままパイロットには死んでもらう!

 

 しかしセンチピードは空を切る。何故だ、何故当たらん!?

 

 敵機を捉えられない、あの機体はこちらのセンチピードやアルファよりも速かったのだ。信じられない事である。

 

 私は恐怖を感じていた、あの機体はまさか・・・いやありえない、あんなものはつまらん伝説、作り話にすぎんのだ。そんな事があっていいはずがない

 

 敵機をこれ以上接近させるのは危険だと分かっていた、だが頭で分かっていても私は機体を艦隊のバリアーの中まで後退させてしまったのだ。気が付けば護衛のアルファの数が相当数減少していた、目を凝らすとどうやら敵機もファンネルを使用していたようだ、だがあのファンネル、赤く発光しているだと!?

 

 

 あの数のアルファが・・・

 

 

 敵機が急速に上昇し艦隊の真上に静止、艦隊から防空火器が一斉に発射されるがやはりバリアーに阻まれその攻撃は届かない。

 

 私も機体に装備されている近接防御機関砲及びビーム砲を連射するが全くの無駄であった。

 

 その時私は見た、敵機から放たれる無数の光を 宇宙の星々にも似たあの煌きを その光は艦隊を包み込むように拡散していったのだ

 

 馬鹿な、こんな事が現実とは認められるものか 奴は伝説の暴君(タイラント・ソード)だとでも言うのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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機体解説6

XMM-01/SX-01 クィンマンサ・ソード

武装

頭部90mmバルカン

ビームサーベル

大型SEジェネレータ式ビームキャノン

サイコフレーム製OT用試作ジェネレーター内蔵型ファンネル

Iフィールドジェネレーター

機動兵器搭載用試作ミノフスキー・バリアー

SEフィールド・バリアー

SE・トルピード(光子対消滅反応魚雷)

 

 サイコフレームと同じく封印されていた技術であるSEシステム(暫定的空間粒子消失制御システム)を用いたSEドライブ・ジェネレーターを搭載、起動したXMM-01真の姿。プロジェクト・MMは発見されたSE関連の技術を元に本システムを搭載した機体を量産するのが当初案であった。しかし本システムの実態を知った一部上層部の意向により一旦計画は白紙に戻ることになる。(本システム関連のデータ発見に際してはサイコフレーム封印解除の際に副産物として発見されたようである)本システムが開発された時期は実に90年以上前の事になるが、恐るべきことに現行機動兵器すら凌駕するまさに超兵器と呼べるものである。有機的統合及び機能を持つ兵器システムの確立と言う無人運用可能な随伴機を制御する機能は備わっておらず、バイオコンピューターなどの操縦インターフェイスの進化も相まって通常のNTであれば本機体を扱うことは可能。さらに当時は存在しなかったが技術の解析によるSEシステムの応用装備、光子対消滅反応魚雷が装備されている。本装備は反物質を閉じ込めた結晶体を散布、低温対消滅によって接触した物質を削り取るように消滅させるという恐るべき兵装であるが試作装備であり使用は1回のみの使い切りである。また20m近くある大型のSEジェネレータ式ビームキャノンを装備、最大出力ではあのサウザン・ジュピター級を一撃で轟沈せしめる威力があるが連射は不可能である。(出力を抑えれば可能)

 

 

バロメッツ

武装

90mm近接防御機関砲

ビーム砲

ミノフスキードライブ・ファンネル

チルド・ファンネル

テンタクラ―・センチピード

FEバリアー

 

 木星帝国が建造したNT・強化人間専用大型MA。搭載している10基の大型ファンネル全てにミノフスキードライブが搭載されており通常のファンネルとは火力稼働時間など一線を画する性能を持ち、さらに1基につき5基のチルド・ファンネルを搭載している。またかつてラフレシアに搭載されていたテンタクラ―・ロッドの改良発展型のセンチピードを装備している。防御面でも木星の最新技術であるFEバリアーを搭載するなどまさに攻守において隙の無い機体になった筈であった。突如として出現したSEドライブ搭載機であるクィンマンサに対して護衛のアルファ・タイプフーピテルと一斉に攻撃を仕掛けるがその武装全てが通じず光子魚雷に巻き込まれレコンギスタ船団と共に消滅した。

 

フーピテル・ディノファウスト・ジュピター/アルファ

武装

ジェネレーター直結式メガ・ビームランチャー

マシンキャノン

マイクロミサイル・ポッド

ビームシールド

ビームガン兼サーベル発生装置付きマニュピレータークロ―(選択式)

その他マニュピレーターハードポイントに選択式で武装各種

 

 最近になって木星で発見された機体データを現行技術を取り入れフーピテルを改造して再現した簡易可変機能持つ機体。その主な戦術は一撃離脱戦法であり連邦軍量産型MSジェイブスを凌ぐ性能を持つ。レコンギスタ船団において先行して開発されたジュピターを元にアルファタイプが100機ほど量産されていた。

 

イーディム改(ガンダムヘッド装備)

武装

ビームソードアックス

サンドバレル

ビームシールド

ビームライフル

マシンガン

ヴェスバー

海ヘビ

 

 イーディムにガンダムF90Ⅱの頭部を移植した機体。それ以外にも通常機よりもチューンが施されており性能が向上している。ただしガンダムタイプとはいえ旧式機の頭部を移植した為センサー系など劣化している部分も存在する。

 

リバティ

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

ビームシールド

ビームライフル(選択式)

ブルパップ・マシンガン(選択式)

ジャベリンユニット

その他連邦軍と共通のオプションを装備可能

 

 新連邦派コロニーへ供給される為にジェイブスをスペックダウンさせたモンキーモデルMS。バイオコンピューターやヴェスバーはオミットされているが基本性能は高くまた整備性やコストも良好でありテロリスト所有のMS相手であれば十分に優位に立てる性能を持つ。

 

ジェムズガン(マハ仕様宇宙型)

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

ビームライフル

ビームシールド

その他連邦軍と共通のオプション装備

 

 連邦軍からマハへ払い下げられたジェムズガンだが地上配備機とは違い対MS戦を意識した装備をしている。またビームライフルはジェイブスと同型を装備しており火力は向上している。かなりの旧式機であり改良も施されていない為既に通用しない機体と思われがちだがザンスカール戦争当時よりも敵対するMSは弱体化傾向にあり(たとえザンスカール製のMSが相手でも戦争当時よりもテロリストや残党軍所属のMSは満足した整備を受けられていない機体が多く、またビーム兵器を装備していない場合が多い、さらに戦争当時よりもパイロットの質も低下しているのが殆どである。)相対的な価値はむしろ向上している節もある。だが最新型の木星帝国製MSやズィー・ジオン所属のMS相手には当然ながら大幅に劣ると言わざる負えず、あくまで向上しているのは相対的にでありザンスカール製のMSに劣ることも事実である。

 

 

 

 

 

 



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医者の目的

宇宙

※アレックス視点

 

 あの士官の話に嘘偽りは一切無かった 今目の前で広がっている光景はまさに地獄絵図そのものであるように感じられたのだ。 あの巨艦、大艦隊が一瞬のうちに消滅してしまった、これが俺のやったことである。

 

 死んだ。恐らくは何万、いやそれ以上だろう人間が・・・俺が殺したのだ。

 

 これでよかった、仇を討ったのだ 奴等宇宙人共のやろうとしていたことを考えれば当然の報い・・・

 

 だが言葉でどう強がったとしても体の震えは止まらなかった、俺は結局こんな事しか出来ない人間だ ヨハンナ一人すら救うことが出来なかったじゃないか

 

 こんな悪魔のようなマシーンに乗って俺は・・・

 

 いやまだ終わってない、ここまでやったのだ、ならば最後まで未来に遺恨の残らないよう徹底的にやってやる。

 

 この後まだ今回の件もそうだが極秘作戦と言うのは俺に下されていたのだ

 

 情報部からもたらされた情報によればサイド3のコロニー、スウィート・ウォーターが大規模な反政府勢力の拠点になっているとの事であった。

 

 つまりはそれの撃滅だ。この機体を使えば造作もないことであろうが、その作戦の内容は最悪コロニー自体の破壊すら許容されていたのだ。

 

 また多くの命を手に掛ける事になる、だがこんなことは全て終わらせる、奴等さえ居なくなれば!

 

 いいさ、俺が全部やってやる 例え大量虐殺者と言われようがもう全て終わらせる。

 

 

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※サラ視点

 

 エドゥが月に行ってから1ヵ月ほどが経過したが特に彼からの連絡は無い 無事だとは思うけどやはり心配になる。

 

 あれから私達海賊部隊は連邦軍の輸送艦を襲撃してMSを強奪する作戦を決行、予想よりも抵抗は少なく簡単に作戦を成功させられたのだ。

 

 パパが今の私をみたらどう思うだろうか?たぶんショックを受けると思う・・・慣れというものは恐ろしいもので今やっていることに対する罪悪感は日に日に減っていき今では殆どそんな感情は抱かなくなっていた。

 

 そんなことを考えていると木星の仮装巡洋艦テミストが入港してくる様子が目に入ってきた。

 

 艦から何やら血相を変えたオーソシエさんが飛び出してきて大急ぎでどこかに行ってしまった。

 

 そういえばそろそろ木星の艦隊が地球圏に到着する予定だったような・・・

 

 何かあったのだろうか? それにしてもあんな作戦が本当に実施されればかなり大規模な戦争になってしまう・・・本当ならそんな事起きないほうがいいのだけれど私の口からは木星の人達に何も言えることは無いし意見を挟む権利なんて無いのだから・・・

 

 そんな時だった、港にまたもう1隻、さっきの木星の艦艇よりも遥かに小型の艦が入港してきたのは

 

 あれはエドゥが乗っていった艦!戻ってきたんだ!

 

 私は駆け寄り中から降りてきたエドゥに話しかけるが何やら様子がおかしい

 

 「おかえり!・・・で、どうだったの?」

 

 「サラ、君は今すぐにここを離れたほうがいい。クワック・サルヴァーの本当の目的が分かったが君には危険な目に合わせるわけにはいかない。」

 

 「え?それって・・・」

 

 その時、1発の銃声が響いた あの方角は・・・

 

 それを聞いてエドゥは走り出した 

 

 エドゥにはああ言われたけど私は今ここから離れるつもりは無かった だって私から頼んだことだもの、最後まで見届ける必要がある。

 

 



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医者の目的2

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※エドゥ視点

 

 大急ぎで銃声の聞こえた方角、つまりはクワック・サルヴァーの部屋の前まで来るとそこにはアポステルとオーソシエとかいう木星の女が居た・・・いや正確に言えばオーソシエは血を流し床に倒れていたのだ。後ろからサラが付いてきてしまったがもうこうなったら仕方ない。

 

 「アポステル貴様!」

 

 「ん?君達か、いや何、この女は何を血迷ったのか先生の部屋に銃を持って入ろうとしたのでね、声をかけ止めようとしたがいう事を聞く様子ではなくこちらに銃を向けてきたので仕方なくだ。」

 

 「そんな・・・どうして?」

 

 「アポステル、貴様はクワック・サルヴァーの本当の目的を知っていて奴に協力しているのか?」

 

 俺はアポステルに銃を向ける

 

 「・・・そうか、あのことに気が付いたか。まったくだから私は先生に忠告したというのに・・・我等がティンブレの依頼主だと気が付けばこういう事になるとね。」

 

 「うそ!?」

 

 「確かにそれもある、だが俺の言いたいことは他にもある、いやむしろもう一つのほうが今は問題だ。」

 

 「もう一つ?はて、何のことか私には分からんね。」

 

 これを奴に見せるのは一種の賭けだ、だがこのアポステルも実際の所クワック・サルヴァーの真の目的を知らないのだろうと言う予感が俺の中にはあったのだ、ならば問い詰める場にこいつも居てもらったほうがいいかもしれないと俺は思った。

 

 俺は例の資料、アナハイムへのMS発注書と合わせて例の資料をアポステルに見せた、はっきり言って資料自体の信憑性は最後まで不明確のままだったがそれでも疑念を抱かせるには十分、あとは本人に銃を突き付けてでも口を割らせるしかない。

 

 「これは・・・馬鹿な!こんな事先生が・・・いや、しかし・・・」

 

 明らかにアポステルが動揺しているのが見て取れた、これはビンゴかもしれない

 

 「ねぇ、サルヴァー氏の目的って一体・・・」

 

 「ああ、今からそれを明らかにする。アポステル!確かにその資料の信憑性は不明確だがそれの入手場所はグラナダだ!お前も分かっている通りあそこはアナハイムの工場がありズィー・ジオンの兵器生産を行なっている場所でもある、そんな場所にこんな資料が有るとなれば全くのデタラメとは俺には思えない!」

 

 「アポステルさん・・・」

 

 「お前だって木星艦隊の件は知っているはずだ、方法には皆目見当つかないが既に艦隊は消滅、それも全てクワック・サルヴァーの計画通りだと・・・目的の為ならばどれだけの犠牲が出ようとも気にも留めない、いやこの資料が本物ならまさに犠牲こそが奴の目的そのものだという事を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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医者の正体

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※サラ視点

 

 エドゥが銃を構えながら部屋の扉を開ける、アポステルさんは先ほどの資料の内容がよほどショックだったのか呆然と立ち尽くしそれを止めることはしなかったのだ。

 

 テーブルを挟みいかにもな椅子に腰かけそこにクワック・サルヴァーは居た。

 

 「騒がしいと思ったら君達か、その様子では例の件に気が付いたようだな。だが確かに私がティンブレの依頼主ではあるが地球に対する攻撃は彼女らの独断なのだよ。」

 

 「ああ、そうだろうな、だが今はそれよりもこちらの方が問題だ!」

 

 エドゥが資料をサルヴァー氏のデスクに叩き付ける、一体あれの内容は・・・

 

 サルヴァー氏が資料を読む、途中その顔つきがとてつもなく強張るが直にまたいつも通りに戻る・・・いや、あれは笑みを浮かべている?

 

 「そうか、君たちはこんな紙切れを信じてここまで来たというのかね?・・・いやもはやその資料の信憑性云々よりもなぜそれをどこで君が手に入れたかと言うほうが問題だろうな。」

 

 「なに!?」

 

 「ああ、そうだ、この資料の内容は真実だよ。何一つ間違いなどなくね。」

 

 「先生そんな!?」

 

 私もデスクに駆け寄り資料の中身を確認する・・・これは・・・

 

 「認めるのかサルヴァー!?」

 

 「ここでもう君達にしらを切っても何の意味もないのだよ、それにしても全くダーゴルの奴、この私を切るとは・・・これだから人間というものは、つくづく絶滅していい動物の中に入るな!」

 

 サルヴァー氏が激高しデスクを叩き付ける、その怒りは目の前の私達ではなく違う人物に向けられているようであった。

 

 「そこに記されているガイア・ギア計画、つまりは地球再生計画に全て嘘偽りはない、それが私の計画なのだよ。」

 

 その資料、ガイア・ギア計画と呼ばれる計画の細かな作戦資料とも言えるべき文章には恐るべきその計画の全貌が記されていたのだ。

 

 このズィー・ジオンの目的 連邦に対抗できる国家的な規模の組織の確立と言うのは嘘ではなかった・・・がそれは通過点でしかなかったのだ。

 

 ガイア・ギア計画、それは人類の粛清計画であった 連邦政府に対抗できる国家的な規模の確立、その後連邦政府とその組織の間に大規模な戦争を誘発させ地球圏の経済に打撃を与え尚且つ地球上から人類を掃討せしめる、また宇宙に住むスペース・ノイドも粛清の対象に含まれていた、それがこのクワック・サルヴァー真の目的であったのだ。

 

 「こんな事やっていい権利なんて貴方にあるって言うの?いいや、この世の人間誰にだっていいはずがない!」

 

 私はサルヴァー氏に問いかける。

 

 「ならばあの世の人間ならばどうなのだ?貴様らは結局赤い彗星の再生計画などと言うものに賛同しておいてこの私を非難する権利など無いのだよ。」

 

 「貴様!!」

 

 エドゥが銃を突きつける。だがサルヴァー氏はまだ言い続けたのだ。

 

 「まさか君が私を非難する権利があるとでも?あのような天使の輪を作り上げた国の人間に私を否定することができようか?それに結局シャアもこの私と同じようなものだろう、いや隕石落としなど馬鹿げた環境破壊をしない分私の方が大分まともだと思うがね。」

 

 「貴方にシャアの何が分かるっていうの?シャアは最後まで人間を、人類を信じて戦っていた!だから彼の意思はオーロラになって地球を救ったって・・・」

 

 「シャアが地球を救った?地球の為に戦っていた?何を馬鹿げたことを、君達こそ本物のシャアを知らないからそう言えるのだよ、それに私の手の中にはエドゥ君の仕事の成果でもあるサザビーの脱出ポッドがあるのだ、そこに残されたシャア・アズナブルとアムロ・レイの最後の通話ログを聞いてなお同じことが言えるか試してみるかね?」

 

 「えっ?」

 

 「それにだ、私から言わせればアースノイドもスペースノイドも連邦もジオンも木星もザンスカールも変わりはしない、皆母なる地球を汚染し食い潰す駆除すべき害虫、結局シャア再生計画など唯の人集めの手段、道具にしか過ぎないのだよ。」

 

 「貴方は!!シャアを尊敬していない!」

 

 「私がか?当たり前だよ、私はシャアなど尊敬はしていない。私が尊敬する人物は唯一ジャミトフ・ハイマン閣下ただ一人のみなのだからな。」

 

 「ジャミトフ・ハイマン?誰だそれは?」

 

 「待って、私はその名前に聞き覚えがある・・・確かあのティターンズの創設者だったような・・・でもそれが本当なら何故貴方はそんな人を尊敬しているの?だってティターンズは・・・」

 

 「ああ、私もティターンズがどういう組織だったか分かっている、だが閣下のお考えとティターンズの唱えていたお題目とは相反するものであったのだよ、閣下にとってティターンズなど理想を実現するための道具でしかなかったのだ、だが閣下は不幸にも人材には恵まれなかった、だから私がやっているのだ!私が閣下の理想の正当なる後継者なのだよ!それも全て台無しになってしまったがな。」

 

 「しかしそれだと変な話になるぞサルヴァー!お前の話しているティターンズにせよ、ジャミトフ・ハイマンにせよ、90年以上も前の事だぞ?それを貴様が何故・・・まさか!?」

 

 「気が付いたか、まあここまで話せば誰でも気が付くであろう、そうだ、私はメモリー・クローンだよ、それも完璧な記憶を引き継いだ完成体のね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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医者の正体2

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※サラ視点

 

 「なんですって!ありえない!だってメモリークローンの技術は・・・」

 

 「それについては君たちは大いなる誤解をしているようだから説明しておこう。何もメモリークローンの技術は最新技術ではないのだよ、確かに私は肉体的なクローンに比べて難易度が高いと言ったがそれは既に死亡した人間の記憶を再生させる場合の話であり生きている間に記憶の引継ぎを行なうことが出来るのであればそう難しいものではないのだ。ああそれとついでにこの話もしておこう、この組織の皆が希望を抱いているシャア・コンテニュー・オペレーションだが脱出ポッドのサイコフレームを用いたとしても完全な記憶の復活は難しいだろう、引継ぎを行なわなければ完全な再生は不可能なのだ、あれでは個体本来の記憶、自我が勝りシャアの記憶は断片的にしか発現しないであろうな。」

 

 「そんな・・・」

 

 アポステルさんがその発言を聞き項垂れる。その様子は今にも倒れこみそうなほどであった。

 

 「貴様一体何者だ?一体いつからこんな事を・・・」

 

 「私か?私の名前など聞いたところで君達は知らないだろう、私はアムロ・レイやシャア・アズナブルのような有名人ではないからね。だが知りたいのなら教えよう、私の名前はジョン・バウアー。」

 

 「ジョン・バウアー?」

 

 「ああ、そうだ。それが私の本名。いやかつてのオリジナルの名前と言ったところか・・・そして私が本物のマフティーである。こちらの方は聞き覚えがあるだろう?」

 

 「マフティー!!そんな!?だって彼の正体は既に・・・」

 

 「ああ、親愛なる彼は唯の飾り、表向きのリーダーでしかない 実質的な組織の運営は私の手で行っていたのだからな。」

 

 「そうか、今回もまた貴様は自分の駒を欲して、シャアを利用してかつてと同じようなことをしようとしていたわけだな。」

 

 「その通りだよ、最も閣下にとってのティターンズと同じく私にとってのマフティーと言う組織は唯の道具に過ぎなかったがね、それは今のこのズィー・ジオンも同じことだがな。」

 

 「貴方はそうやって何人の人間を利用してきたの?あなたは否定するかもしれないけどシャアだって、マフティーだって世の中を良くしようとそれに命を賭けて戦ってきたって言うのに・・・」

 

 「まだ君達は分かっていないようだな、いや君達ではなく人類全体がそうだと言うのが正しいのかもしれん、マフティーの掲げていたお題目は反連邦と言う事柄であり地球人類の粛清であった、だがよく考えてみろ?何も地球を汚染しているのはアースノイドだけではないのだ。結局組織としてのマフティーは地球環境破壊の原因を連邦政府だけに押し付けあたかも宇宙に暮らすスペースノイドには責任がないかのように扱っていたからね、そうではないのだ、地球を汚染しているのは人類という種族全体でありその責任も全体に課せられるものなのだ、たとえ今地球上に残っている人間全てを抹殺しても問題は解決しない、人類全てを粛清の対象にして初めて地球環境再生は成るのだ。」

 

 「それは貴方のエゴですよ!」

 

 「サラ、こいつに何を言っても無駄だ。」

 

 その時だった コロニー全体に警報が鳴り響いたのは

 

 「ダーゴルの駒が来たか、君達も逃げ出すなら今のうちだぞ?最もあれから逃げるのは難しいだろうがな。」

 

 私はこのコロニーに接近してくる存在をなんとなく感知していた 理由は分からないがそれが誰であるか分かっていたのだ

 

 「エドゥ、私決着をつけてくる、たぶん外にはアレックスが来ているから・・・」

 

 「それは本当か?しかしコロニーの守備隊とズィー・ジオンの戦力も対応するだろう・・・彼と話し合う前に撃墜されてしまうかもしれんぞ?」

 

 「無駄だよ、あれには通常のMSではまず対応できん、パイロットの腕前がアムロ・レイクラスともなれば話は変ってくるかもしれんがな。・・・だが君にやる気があるのならばこいつを渡そう。」

 

 サルヴァー氏が私に何やらカードキーを投げつける

 

 「なに?サルヴァー貴様、サラに何を・・・」

 

 「もしやるつもりならば13番倉庫に行ってみろ、君に素質があれば止められるかもしれんぞ?」

 

 「サラ、こいつの口車に乗るな!また何を企んでいるかわからんぞ。」

 

 「ううん、たとえそうでも私はやらなくちゃいけない。でもサルヴァーさん!私は貴方の言っている事なんて一つも肯定できない、だから彼を止めるのは私の為であって貴方の為じゃない。エドゥ・・・ここはお願い、私行ってくる。」

 

 

 



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その名は

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター 13番倉庫

※サラ視点

 

 私は13番倉庫の正確な場所は把握していなかったがアポステルさんが先導してくれたおかげで目的の場所には無事にたどり着くことが出来た。

 

 「それにしても一体こんな倉庫に何があるって言うんですか?」

 

 「・・・ガイアの機体があそこにはある、あの木星艦隊を消滅させたあれと同じタイプのマシーンだ。」

木星の艦隊を消滅・・・一体どういう事なのか私には分からなかった 

 

 「アポステルさんはそのことについては知っていたんですね?・・・いやそのことについて話している時間はありません。それよりそのマシーン・・・どんな機体なんですか?」

 

 「乗ってみれば分かる、だが君に扱えるかは保障できんよ。」

 

 倉庫にはロックが掛かっていたが渡されたカードキーで開錠することが出来た。

 

 倉庫内部の照明をつけるとそこには1機の現行MSよりも大型で見た感じは30m近くあるかもしれないトリコロールカラーに塗装された機体が鎮座していた。

 

 「これは!ガンダム・・・ではないみたいね。」

 

 「ああそうだ。あれの名前はガイア・ソード・・・」

 

 「とにかく機体を動かさないと・・・」

 

 私は機体に駆け寄り急いでコックピットへの昇降エレベーターに乗り込む

 

 後ろからアポステルさんが話しかけてくる

 

 「君達には本当にすまないことをした、まさかこんな事になるとは・・・先生がまさかあんなことを考えているとは思いもしなかった。」

 

 「これは貴方の責任じゃありません、それに貴方は理由はどうあれあの時私達を助けてくれた・・・今だって私に協力してくれているのに貴方を責められません。」

 

 「そう言ってくれる助かる、あのマシーン相手ではどこまで通用するか分からないが私もゾーリンで出よう、少しは足しになるだろう。」

 

 「いいえ、大丈夫です。これは私がやらなくちゃいけない事だから・・・それよりアポステルさんは避難の指揮をお願いします、私が止められるとは限りませんから・・・」

 

 「すまない・・・」

 

 私はガイア・ソードと呼ばれた機体のコックピットに入りシステムを立ち上げる。

 

 「すごいこの機体・・・通常のMSのエネルギーゲインとは比べ物にならない!!」

 

 「聞こえているか!その機体は通常のMSとは訳が違う、だがもし君にNTの素質があれば扱う事も可能であろう、搭載されたシステムの・・・シャアの力もある。」

 

 「えっ?シャア?」

 

 「ああそうだ、その機体には疑似人格コンピューターType-C.Aが搭載されている、君にとっては因縁深いシステムかもしれんがそれが無ければNTと言えどその機体を扱うことは難しいだろう。」

 

 「わかりました、何とかやってみます!・・・ありがとうございましたアポステルさん!」

 

 「・・・私の名前はアザリアだ、アザリア・パリッシュ・・・それが本当の名前だ。君の武運を祈る。」

 

 「やっぱりアポステルと言う名前は偽名だったんですね・・・教えてくれてありがとうございます。サラ機出ます!」



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BEYOND

宇宙 

※アレックス視点

 

 サイド3のコロニー スウィート・ウォーター付近に接近するとどうやらこちらの存在に向こうも気が付いたらしくこちらに攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

 巡洋艦クラスが3隻、もはや奴等は自分たちの存在を隠そうともしていないという事か

 

 艦艇やコロニー内部から30機を超える敵MSが出現、その中には先日の事件で強奪されたMSリバティや大気圏突入試験の時にこちらに攻撃を仕掛けてきた所属不明のMS(イーディム)が見受けられた。

 

 だが何機いようがこのクィン・マンサの敵ではない 光子魚雷は既に使用不能だがあれを使わずともこの程度では問題は無いのだ。

 

 SE式のビームキャノンを発射、この前の木星艦隊の時のような最大ではなく出力を抑えて連射し敵巡洋艦群を攻撃する。この火器の威力は凄まじくそれでも巡洋艦を一撃の下で轟沈せしめることが出来る威力があるのだ。

 

 機体から放出されたファンネルが敵機に襲い掛かる それを掻い潜って接近できたとしても敵はこちらを捉えることが出来ないであろう。

 

 今まさにこちらに接近してきたリバティをサーベルで薙ぎ払う この機体の性能は異常であると言うしかない、搭乗している俺でさえ恐怖を覚えるほどに

 

 数十機居た敵はみるみるうちに消えていき数分もしないうちに敵は全て撃墜してしまった さてまだいるはずだ 出てこないならば炙り出すまで・・・

 

 ビームキャノンをコロニーに向けようとしたその時、気配を感じ俺は回避運動を取る。

 

 数発のビームが・・・いやこの攻撃は通常のビームライフルではない

 

 コロニーから新手の敵が1機出現しておりこちらに接近してくていたのだ あのマシーンは小型MSではない!?

 

 トリコロールカラーのその機体はどう見ても大型・・・このクィン・マンサには及ばないがそれでも30mはありそうであった。 だが問題なのはそのサイズではない、あの機体のあの攻撃・・・それにあのスピードは・・・

 

 俺はファンネルを敵機に差し向ける、だがそれを容易に回避しこちらにさらに接近してきたのだ・・・よく見たら敵もファンネルを放出しこちらに対応してきているようであった。

 

 「馬鹿な・・・敵もこちらと同じソードのマシーンを使用しているだと!?ありえない!!」

 

 それは直に理解できた、あの目の前の機体がこちらと同じシステム、動力を搭載していることは一目瞭然であったのだ。

 

 敵の動きが速い、あの機動性と運動性能はこちらを超えているとでも言うのか!!

 

 敵機がサーベルを構えこちらに攻撃を仕掛けてくるようだ、こちらも対応しなければ・・・

 

 機体同士が接触し回線が開く あのパイロットが誰であるのか話す前から俺は気が付いてはいたが直接声を聞くまではあんな機体に彼女が乗っているとは信じられなかったのかもしれない。

 

 「アレックス!」

 

 「サラか!」

 

 俺は頭部のバルカンを発射し牽制するが弾は弾かれてしまう あれも同じタイプのマシーンならSEフィールド・バリアーは当然搭載してあるだろうが今の攻撃はそれを確かめる為でもある。

 

 「もう止めて!全て・・・全てわかったの!今までの全て全部仕組まれていた事だった!!」

 

 「世迷言を!」

 

 「お願い信じて!!私達の組織は確かに反連邦組織だった!でも!」

 

 サーベル同士が切り結び敵機がサンド・バレルを発射、こちらもバルカンで応射する。

 

 ファンネルが熾烈なドッグファイトを繰り広げサイコフレームが赤く発光し始める。

 

 恐らくは向こうの機体にもサイコフレームが用いられているであろう、たった今こちらのサーベルが向こうの実体シールドに防がれたことを考えれば敵のシールドはサイコフレーム製かもしれない。

 

 お互いのファンネルの数が減少していく あれでは決着はつけられないか 

 

 「アレックス!もう止めて!」

 

 そう言うとサラのあの機体を突然戦闘を中止して動きを止めた 一体何を考えているんだ・・・いやもはや容赦はしないと誓ったじゃないか ここで止めを刺すんだ そうしなければ・・・

 

 サーベルを構え敵機のコックピットを狙い突き刺そうとするがサーベルが敵機に接触する紙一重で俺は動きを止めることになる この感覚は・・・命だっていうのか!?

 

 「なんだこれは・・・敵機が発光している!?この光は・・・」

 

 その光は自機から発せられている赤い光とは別のもっと暖かい敵意のない光に俺は感じられたのだ。

 

 「もう貴方だって分かっているはず!どれだけ否定しても頭では理解しているはず!」

 

 「うるさい黙れ!こんな事が・・・頭に!?」

 

 俺の脳内に鳴き声のようなものが響いてくる この声は赤ん坊の声!?向こうの機体から発せられている!?

 

 戦場に、周囲に光が溢れる これは幻か、それとも・・・

 

 頭に様々な感情が錯綜する それは直接頭の中に響いてくるような感触であったのだ あの光から来ているのか!?

 

 「何故・・・何故なんだ・・・こんなにも時間が経ってから君は何故俺の前に現れる!?」

 

 その問いかけは無意味に思われた もはや言葉など発しなくても相手・・・サラの内心が分かっていたからだ・・・それに俺がマハに入ったのも宇宙に来たのも元の理由を考えればなおさらその発言がおかしいという事も俺には十分に分かっていた だがその問いかけをせずにはいられなかったのだ。

 

 「分かっていた・・・分かっていたさ、君に罪が無いことぐらいは!」

 

 「アレックス・・・」

 

 もはや俺に戦う理由は無い・・・もう全て理解してしまった こんな事したってなにも解決しないなんて分かっていたのに・・・

 

 ヨハンナが戻ってくるわけでもない、だが仇を取らなければ君に顔向けが出来ないと思っていただけだ。

 

 暫くの沈黙の後、気が付くと自機の赤い光も緑の暖かい光に変わっていた

 

 「サラ・・・すまなかった。君の言葉をもっと信じておけばまた違う結果があったかもしれないというのに・・・」

 

 「ううん・・・もういいの・・・それに私も今全て理解できた、この10年以上もの間の貴方の想いが、本当にごめんなさい・・・」

 

 「・・・どれだけ時を戻せればよいかそう考えない日は無かった、どれだけ足掻いてもこのメビウスの輪からは抜け出せなかったのが俺なんだ・・・皮肉なもんだ、お互いにこんなマシーンに乗って殺し合い、ようやく分かるなんて・・・抜け出せるなんて・・・」

 

 「アレックス・・・私達大人になったの・・・悲しいことだけどもう時は戻らない、でもだけど、大人だから出来ることもあるはず・・・」

 

 「ああそうかもしれない・・・そんな奇跡は起こらない、いや起きなくていい、必要なのは過去や未来じゃなく今この時・・・やり直しなど効く訳がない、未来だって分かるはずはない。だが今この時なら変えられる。そうすれば必然的に未来だって・・・」

 

 その時だった、一条のビームがサラの機体に目掛け閃光を放ったのは

 

 体が勝手に動いていた 機体を前進させサラ機の前に俺は自機を進める

 

 機体にビームが直撃しとてつもない衝撃が襲う SEフィールドすら貫通せしめるその威力は・・・

 

 「アレックス!!」

 

 「残念ながら君達には未来はない。ここが袋小路だ。」

 

 

 



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水の星へ愛をこめて

宇宙 サイド3 コロニー スウィート・ウォーター

※エドゥ視点

 

 しかし引っかかることがある・・・やけにこのクワック・サルヴァーの往生際がよすぎる事が俺の中の疑念を深くしているのかもしれない。

 

 それにこのサルヴァーの発言を信じるなら今回の件が露呈した原因・・・ダーゴルという人物についても何か不自然ではないか?

 

 さっきの話の中ではダーゴルと言う人物に裏切られたようだがそもそもがこのクワック・サルヴァーはそう簡単に人間を信用する人物ではない・・・だがダーゴルなる人物はこの計画の全貌を知っていたことになる・・・という事はかなりの信頼を寄せられていたはずなのだ。

 

 「サルヴァー、一つ聞くが何故貴様ほどの人間が自分を裏切るような人間を信用していたのだ?貴様は人間を信じてはいないタイプなはずだ、それは先ほどの貴様の発言からも明確になっているはずだが・・・」

 

 「ん?ああ、そのことか。そう難しい話ではない。たとえ自分自身ですら人間と言う愚かな生き物は信用できないと私も先ほど学んだ、それだけの話だからな。」

 

 「・・・意味が分かるように答えてもらおうか。」

 

 「彼らは私の記憶のごく一部を引き継いでいるいわば同志・・・少なくとも少し前までは私はそう考えていた為と言うのが理由だな、彼等2人は記憶の引継ぎ作業無しでサイコフレームを媒体にした言わば今回のコンテニューオペレーションの試作のようなものだからな、最も当人達はそのことについては承知していない事柄だがね。」

 

 「なんだって?それは貴様のメモリークローンという事か?」

 

 「いやメモリークローンなどと言うものではない、私の記憶を持っていると言っても数パーセントの話なのだ、本人たちに自覚すらないであろう。復活を予定しているシャアの記憶の保持率よりもさらに低い数値でしかない・・・この計画を進める上ではどうしても信頼できる人間が数名は必要だからな、ならば自分自身の要素を持つ人間が適任であると私は考えたのだ、だがそれは大いなる間違いであったがな。」

 

 「なに?だが例の脱出ポッドが発見されたのはつい最近の事だぞ?そんなにも前から再生計画は動いていたのか?見つかってもいないポッドを当てにして・・・」

 

 「まあそれも計画のプランの一つという事だよ、ポッドが発見されたときの試作も兼ねてだ、それに発見されなくても信頼できる人員が確保できると考えたからなのだがね。」

 

 「なるほど貴様らしい考えだな、だがそれで自分自身に足を掬われるとはな。それにどうせ貴様の事だ、たとえポッドが発見されなくても計画を実行したんだろう?」

 

 「その通りだよ。もし発見されなければシャアの生体データを使って肉体的なクローンを作るまでの話だ、たとえ中身が無くても万人がそれをシャアだと思えば良い、どの道私にとっては道具に過ぎないのだからな。」

 

 「・・・貴様は以前空っぽの器では意味がないと言っていた筈だが?」

 

 「ああそうだ、だが無いものねだりは出来ないという事だ。無いよりはましと言う事だよ。」

 

 「ふざけたことを・・・」

 

 「君は考えたことがあるかね?このまま人間が増え続ければどうなるかを?今ですらもはや限界だと私は思うがね、一つ例を挙げれば食糧危機などがいい例だよ。この問題についてはこれからますます深刻化するであろうな・・・どの道このまま手を打たなければ待っているのは滅びの道なのだよ。」

 

 「俺を説得でもするつもりか?そんな話を聞いて俺が貴様に賛同するとでも?」

 

 「いやいや、これは説得ではなく説明だよ。ところでだ、私が間違いを犯したのと同じく君も一つ間違いを起こしている・・・それが何か分かるかね?」

 

 「なに!?グゥッ!!」

 

 それはいきなりの事であった 油断していたのかもしれない 確かにクワック・サルヴァーは危険な人物であるとは分かっていたがそれはその思想などの方面であり肉体的な・・・こんな老いぼれだと侮っていたのが間違いであった。

 

 この目の前の老人はたった今信じられないような動きで俺に一撃を食らわせ銃を奪い取ったのだ。

 

 「言ったであろう?私はメモリー・クローンだと。ならば強化を施されていても不思議ではないだろう?もっともこの強化はNT能力の強化ではなく肉体だけだがね。」

 

 「貴様!!」

 

 「悪あがきくらいはさせてもらう事にするよ、まだ私は地球再生を、母なる水の星の再生を諦めてはいないのでね。残念ながら君とはここでお別れだ。」

 

 突き付けられた銃の発射音が響く それが俺の聞いた・・・感じた最後の感覚であったのだ。

 

 

 

 

 



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MW

宇宙

※サラ視点

 

 一条のビームが私に狙いを定め放たれた あのままでは間違いなく直撃のコースであったのだがアレックスが私を庇い代わりに攻撃を受けてしまったのだ。

 

 この機体の防御システムは相当なものであると聞かされている・・・アレックスの機体もそれに準じているだろうが今の攻撃はそのバリアーを貫通してしまったようだ。

 

 幸い機体の方はバインダーは損傷したものの無事なようであった 当たり所が良かったのかそれともバリアーのおかげで威力が減衰していたのか・・・どちらにせよまだ大丈夫そうであった。

 

 「アレックス!!」

 

 「こちらは大丈夫だ・・・それよりあれは!!」

 

 攻撃を受けた方角・・・そちらには3機の機影が確認できた 

 

 「テロリストを庇うとはそれではマハ失格だぞニュータイプ、貴様の命令は敵の殲滅だったはずだが?」

 

 「その声はハルミトン中尉!?」

 

 何やら向こうの機体のパイロットとアレックスには面識があるらしい しかし向こうの機体・・・中央の1機はともかく両サイドの2機は何か変だ・・・

 

 機種は恐らく連邦軍のジェイブスの改良型だと思われるが動きが不自然なような気がする 何と言うか両機とも同じ動きをしている気がするのだ 

 

 中央の1機の機種は私には分からなかったし機体照合でも該当機は無いようである・・・だが恐らくはあの3機とも私の機体と同タイプのシステム搭載機だろう。

 

 「貴様には失望したぞNT、最後に情が湧いたのかは知らんがそんなだから自分の女一人守れないのではないのか?まあどの道君達はここでお終いだがな。」

 

 「中尉!!貴様一体何を・・・」

 

 「俺は保険だよ、貴様がしくじったときの為のな、どうやら事は少佐の想定通り進んでいるようだが貴様が仕事を完了しなければ台無しになってしまうのでね。」

 

 「少佐?一体何の事だ!?」

 

 「それは知る必要のないことだよ、お喋りが過ぎたな、任務を遂行する意思がないのなら貴様にも消えてもらうことになる!」

 

 中央の1機がアレックスに襲い掛かる 私も援護しようとしたが両サイドの2機も動き出し私に襲い掛かってきた。

 

 「君の方には無人機が相手になるよお嬢さん!!」

 

 「クッ!!こいつら・・・」

 

 2機が散開しこちらにビームを放ってくる あのビームはやはり通常のライフルとは違うようだ 流石に中央の本体と思われる機体とは違いこちらのバリアーを一撃で破るほどの威力は無いようだがそれでも威力は通常のモノより桁違いであるらしい。

 

 「無人機・・・でもあの本体よりは火力は無いみたい!!」

 

 ファンネルは全て既に消耗してしまっている事が惜しまれた、だけどまだ武装はある!

 

 こちらもビームキャノンを発射して応戦する 何発かは敵に目掛け直撃コースを取ったがそれもバリアーに阻まれてしまう。

 

 一撃では無理か でもこの威力ならバリアーはいつまでも持たないはず!

 

 シールド裏に搭載されているビーム砲で牽制を入れながら本命であるSEジェネレータ式ビームキャノンで無人機を狙っていく 決してあの2機の動きは捉えられないスピードじゃない!!

 

 しかしあれはどうやって制御しているのだろうか・・・まさかサイコミュ!?ファンネルと同じようにMSを操作しているという事かもしれない 

 

 とにかくこの2機を何とかしないと・・・ビームキャノンよりも接近して一気に片を付けるのがいいかもしれない!

 

 私は1機の無人機に狙いを定め機体を加速させる 幸いにも機体性能でいえばこちらの方が上であるらしい。

 

 サンド・バレルを発射しながらもう1機の方に予備のサーベルを投げつけシールド裏のビーム砲を発射してコンフューズ攻撃で牽制する、この攻撃が予想外であったのかもしれない その機体は明らかに動作が鈍くなっていたのだ。

 

 そちらの機体を一瞬無視してもう1機にサーベルで斬りかかる その機体も対応するが敵機にシールドを押し付けビームキャノンを接射 コックピットと思われる部位を破壊することに成功したがまだ動けるようである。

 

 背後から先ほどのコンフューズ攻撃から立ち直った機体がサーベルで斬りかかってきたので今目の前で中破している敵を掴みその機体を盾にする。

 

 なるほど無人機と言うのは動きは正確・・・味方への攻撃は避けるのだろう 敵は斬りかかる途中で動作を止めてしまったようだ、その隙を私は見逃さなかった。

 

 そのまま2機ごとサーベルで敵機を切り裂く 念入りにその後ビームキャノンを連射して完全に敵機を破壊しておくことも実行しておいたのだ。

 

 「アレックスを助けに行かないと・・・状況はどうなって・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 



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暴君

宇宙

※アレックス視点

 

 ハルミトン中尉が搭乗している機体がこちらに襲い掛かる こちらは先ほどの攻撃でバリアーが使用不能に陥っている事やファンネルを使い切っている事からかなり不利と言えるかもしれない。それにしてもこのバリアーを一撃で破るとは一体どんな武器を搭載しているんだあの機体は・・・

 

 それにサラの方に行ったあの2機は無人機だって!?

 

 敵機が実体剣かビーム・・・パッと見ただけではどのようなものなのか判別がつかない近接戦闘装備でこちらを斬りつけてくる あれはなんだ!?ビームサーベルではないようだがどんな原理の武器なのか見当もつかなかった。

 

 それをサーベルで迎え撃つのは危険に思われた・・・そもそも原理が分からなければサーベルで斬り結べるかどうかが不明なのだ、それにたとえ切り結べたとしてもこちらが力負けする可能性も十分にあり得る。

 

 まだ弾数が残っていたバルカンで攻撃してみるがやはり向こうにもSEフィールド・バリアーが搭載しているようで弾き返されてしまう。こちらの装備しているSEジェネレータ式ビームキャノンは大型なため取り回しが悪い分動きの速い敵機と相対した場合は狙いをつけるのが難しい・・・敵機がこちらと同じシステム搭載機ならば尚更のことである。

 

 「どうした少尉!!そんな動きでこのタイラント・ソードの相手は務まらんぞ!」

 

 「こいつ!!」

 

 敵機の近接装備がこちらのバインダーに直撃しまるでスライスチーズを切るように切断されてしまった。

 

 「貴様は知らないようだから教えてやろう!ヨハンナが死んだ原因だが全ては仕組まれていたことなのだよ。それも全て今そこにあるコロニーの中に居るクワック・サルヴァーの計画だったからな!」

 

 「なに!?」

 

 「貴様がNTだったから招いた結末だよ!全てはあのインチキ医者が木星艦隊を始末するための回りくどい計画の一部・・・ああ、お前と付き合っていなかったらヨハンナは死なずに済んだかもな!!」

 

 「グッ!!・・・」

 

 「所詮はNTなど道具に過ぎない、問題は誰に使われるか・・・その点貴様は最悪な使われ方だったようだな!!」

 

 「お前だってそのマシーンを扱えるならNTだろうに!!」

 

 「俺がか?半分正解と言ったところだな、俺はNTとは少し違う・・・少佐は私の事をネクスト・ワンと呼んでいたが名称など関係ないことだ。それに俺は道具で結構、少佐の理想の為、ガイア・エンペラー実現の為の道具に喜んでなるさ!」

 

 「ネクスト・ワン!?ガイア・エンペラー!?・・・いやその言葉の意味などどうでもいい!だがこれだけは言わせてもらう!俺は!俺やヨハンナやサラは貴様らの道具ではない!NTだってそうだ!」

 

 「まさか貴様はNTが誤解なく分かり合える、相互理解を出来る存在だとでも思っているのか?そいつは傑作だよ!そういう存在がマハやテロリストをやっているという時点でね!!」

 

 敵機のほうが動きが速い・・・いつまでも逃げているだけでは限界があるようだ・・・

 

 今まさにあの正体不明の近接兵装がこちらに迫る、賭けに出るしかないか・・・

 

 俺はサーベルを取り出しそれを迎え撃つ

 

切り結べないのではないかと言う俺の不安は取り越し苦労であったようで何とか迎え撃つことが出来た。

 

 しかしこちらは既に機体がパワーダウンしてしまっているようで徐々にこちらが押し負ける

 

 このままでは・・・

 

 

 

 



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暴君2

宇宙

※サラ視点

 

 無人機を撃破した私は直にアレックスの救援に向かう 消耗してしまっているせいもあってか押され気味のようである。

 

 ビームキャノンを敵機に向けて発射 放たれた2発は確かに敵機を捉えるがバリアーに防がれてしまう だがこの威力であればそのうちバリアーを破ることは可能なはずである。

 

 「邪魔が入ったか、モビルウェポンをもう撃破するとはどうやら注意するべきはこちらの方であったか!!」

 

 敵機はアレックスの機体を吹き飛ばしこちらに向かってくる サイズではアレックス機の方が遥かに勝っているが機体パワーは恐らく互角・・・しかし連戦でしかもバリアーを破られていることを考えればアレックス機はパワーダウンしている可能性が高く押し負けているのはそのせいであろう。

 

 敵機がこちらに向かってサーベルのような物で攻撃を仕掛けてくる 

 

 「貴方は一体何なんです!?まさか貴方もクワック・サルヴァーの!?」

 

 「そうではないな!我々はあのインチキ医者の計画を乗っ取らせてもらっただけさ!」

 

 「!?」

 

 どういうことなのだろうか?いや、この人の正体が何であろうが私のやることに変わりはない!

 

 敵機の攻撃がこちらに迫る 私はシールドでそれを防ごうとするが嫌な予感が脳内を支配する・・・このまま盾で受けてはまずいという直感があったのだ。

 

 機体を後退させ紙一重で回避することに成功するがシールドにあの攻撃が当たってしまったようだ。

 

 「サイコフレーム製のシールドがっ!?」

 

 ビームサーベルすら防いだこの盾が切断された、と言っても被害はシールド上部が少しなので盾としてはまだ機能する(内臓のビーム砲は使用不能になってしまったが)問題なのはあの装備の恐ろしい切れ味であると言えるだろう。

 

 「このヴァリアブルスライサーを防ぐことは出来んよ、そうとも!この機体が貴様らのマザーマシーンであるという事は対ソードの装備をしているという事だよ!」

 

 その時アレックス機が敵機の背後を取りサーベルで不意を突いた しかし敵機から板のような物体が2つほど射出されアレックスに襲い掛かる。あれは一体・・・ファンネルとは違うようだが・・・

 

 その板がアレックス機に損傷を与える ファンネルでないならミサイルかと思ったが爆発していないようなのでそれも違う・・・とにかくサイコミュ兵装ではあるようだ。

 

 「アレックス!!」

 

 「グゥッ!!まだだ・・・まだ!!」

 

 「どうやらトラックフィンが気に入ったようだな。だがお遊びはここまでだ、流石に2対1では不利なのでな!」

 

 敵機から謎の攻撃が放たれアレックス機の動きが封じられてしまったようだ。

 

 私はサーベルを構え突撃、何とか間に合わせないと!!

 

 「機体が動かない!?何故動かない!?」

 

 「こいつがトラクタービームと言うものだ、そしてこうなってしまえば回避はできないなぁ!?」

 

 敵機の剣が機体を切り裂きそのまま向きを私の方向へ転換、再びこちらに斬りかかるようだ。

 

 そんな・・・でも機体は爆発していないようなのでまだアレックスは生きているかもしれない、コックピットから外れていればいいけど・・・

 

 「さあこれでタイマンだ!すぐ終わらせるさ!!」

 

 ・・・私にはまだアレックスが生きているという確信があった、何故だかは分からない、どうしてそんな事分かるのかは自分でも理解不能だけど私は人の死を感じることが出来るようになっていたのだ・・・だから今まだアレックスが生きているということも・・・エドゥが命を落としたという事も分かってしまったのだ。しかし私には悲しんでいる時間は無かった、今は目の前の事に集中しなければいけない・・・

 

 エドゥの命を奪ったのは間違いなくクワック・サルヴァーであろう、ならばまだ彼は何かをやるつもりだろう。

 

 

 敵機の剣がこちらに迫る だがまだ私には切り札がある 

 

 

 

 

 




ヴァリアブルスライサーの元ネタはゴジラのアレです


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赤い彗星

宇宙

※ハルミトン視点

 

 完全に敵機を捉えていた こちらの近接武装 ミノフスキー・ヴァリアブルスライサーが直撃すれば間違いなくこの勝負は決着 そこで終わりであるはずであったのだ。

 

 しかし剣は空を切る 敵が目の前から忽然と消えたのだ。

 

 ありえない 確かにあの機体はこちらと同じシステム搭載機 常識を超えた性能であることは確かなのだがそれはこちらにも言えることである 肝心なのはその動きをこの俺が感知できなかった事・・・そのことである。

 

 「どこだ!?どこに消えた!?」

 

 その時こちらに敵機のビームキャノンが四方から襲い掛かる まさかまだファンネルを残していたのかと思ったがどうやら違う・・・この威力はファンネルではなくSEシステムを用いたビームキャノン・・・一体何が起きている!?

 

 「馬鹿な・・・この俺が!!動きすら読めないなだと!?」

 

 ついに数発の直撃を受けてこちらのバリアーがダウンしてしまった。

 

 敵の動きがまるで見えない 一体どうなっているんだ ありえない!!この俺が!!俺はネクスト・ワンだ、こんなことがあっていいはずがない!!

 

 「おのれ!トラック・フィン!!」

 

 しかしこのトラック・フィンですら敵の動きに追従することは出来なかった・・・

 

 クソ!!当たりさえすれば・・・その隙にトラクタービームで追撃して動きを止めることが出来るというのに・・・

 

 

 「何故だ!!何故当たらん!?そこか!?」

 

 俺はこの機体に備えられている最強の武装、最初にあのクィンマンサのバリアーを一撃で破ったSEヴェスバーを発射するがやはり当たらない、いやそれどころかその隙に敵が背後に回り込むことを許してしまったのだ。

 

 「俺の背後を!!?ウガゥッッ!!」

 

 敵がサーベルでこちらのSEヴェスバーを破壊、さらにヴァリアブルスライサーを所持している腕さえも切断されてしまったのだ。

 

 ありえない!!この俺が負ける!?しかも女に!?

 

 「こんな事が!!」

 

 俺は苦し紛れに頭部のガンポッドからビームを乱射するが当然のように当たらない。

 

 何故あのような動きが出来る!?奴は赤い彗星だとでも言うのか!?

 

 駄目だ、ここではまだ終われない!!そうだ!!俺は少佐に期待されているのだ!!俺は選ばれた人間・・・ガイア・エンペラー実現の為に俺は!!そんな俺がこんな奴にやられていいわけがない!!俺はこいつらのようなその他大勢の人間ではない!!

 

 「もう終わりです、投降してください!貴方の負けです!」

 

 敵機から通信が入る、いつの間にか敵は俺の正面に位置してこちらにサーベルを突き付けていたのだ。



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Type-C.A

宇宙 

※サラ視点

 

 例のニューロコンピューター、Type-C.Aは伊達ではなかった このシステムと機体を同調した結果凄まじい機動性を発揮したのである 原理はよくわからないけれど恐らくはコンピューターがスラスターなどの推力を適切に調整した結果かもしれない・・・さらには周囲に漂っている艦艇などの残骸を蹴りそれを利用しての機体加速行うなどの挙動をみせた時はかなり驚いてしまった。

 

 この機体の搭載されているシステムもそうだがこのような挙動をされてはパイロットが持たないであろう・・・それを考えればこのシステム搭載機に実装されているパイロット保護機能とこのニューロコンピューターType-C.Aはとても相性がいいのかもしれない。

 

 既に敵機はその戦闘能力を喪失しているように見受けられたので私はサーベルを突き付け投降を促す。

 

 「もう終わりです、投降してください!貴方の負けです!」

 

 敵をそれを受け入れたのか残っていた腕に所持しているビームキャノンを手放したようだ それで私は安心してしまったのかもしれない 油断してしまったのだ 私の搭乗している機体もそうだがこれらの機体は通常のMSとは訳が違う・・・後から考えればとても浅はかで危険な行為であった。

 

 敵機から謎の攻撃がこちらに襲い掛かり機体の動きが封じられてしまったのだ。

 

 「間抜けが!!この俺が負けるなどと言うことはあってはならない事だ!!やはり勝負と言うものは最後の瞬間まで勝を欲する者が手に入れるものだったようだな!!」

 

 「機体が!?動かない!?」

 

 「無駄だよ、このトラクター・ビームからはたとえソードと言えども逃れられんさ、さてこの俺の顔に泥を塗ってくれた落とし前をつけさせてもらう!!」

 

 敵機が予備を思われるビーム・サーベルを取り出しこちらに斬りつけてくる、コックピットはわざと外しているようでまずはこちらの腕や脚部を狙い攻撃してくる・・・

 

 「ウッッ!!機体が・・・もう持たない!!」

 

 「どうだ!思い知ったか!この俺に恥をかかせた報いを受けろ!!」

 

 敵機が最後の一撃をコックピット目掛け振り下ろそうとする、私は目を閉じてしまった、これで全て終わったと思い身構えたが攻撃が来ることは無かった。

 

 恐る恐る目を開けると敵機が背後から掴まれ攻撃を防がれてしまっていたのだ。

 

 「アレックス!!」

 

 「貴様まだ生きていたか!!クソッ!!死にぞこないが!!」

 

 「サラ!!」

 

 その時には既に私の機体は動くようになっていた、この隙を逃すわけにはいかない。

 

 私はサーベルを構え敵機の残っている腕を切り落としさらに頭部をサーベルで貫いた。

 

 「馬鹿な!!この俺が!!」

 

 「中尉、あんたが何故こんなことをしているのか・・・いやそんなことは俺にはどうでもいい、今までの全てがそのせいだと言うのなら!!」

 

 「待て!!俺じゃないぞ!!落ち着けよ!なあ、そうだ!さっきも言っただろ?全てはあのインチキ医者、クワック・サルヴァーの仕組んだことなんだよ!そうだ少尉!!今から・・・」

 

 言い終わる前にアレックスがサーベルを振り下ろす。

 

 「待て!やめ・・・少佐!!ダーゴル少佐たすけ!」

 

 機体が両断され戦闘はそこで終了したようだった。

 

 「・・・終わったか。」

 

 「ええ・・・アレックス無事でよかった・・・でもまだあのクワック・サルヴァーが・・・」

 

 言いかけたその時コロニーの影から一筋の巨大な光が発射された 

 

 「なに!?あれは・・・なにが発射された!?あの方角には・・・」

 

 ゆっくりとコロニーの影からそれは姿を現す それは大型の巡洋艦のようにも見えたがあれは・・・

 

 

 

 



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サヨナラ

宇宙 

※アレックス視点

 

あれは一体・・・それよりあれが発射された方角には・・・

 

 「サラ!あれは一体・・・データではアレキサンドリア級と出ているが・・・」

 

 「分からない・・・あんな艦見たことなんて・・・」

 

 その時だった、向こうの艦艇から通信が入ったのは・・・

 

 「いやはや、君達には感心しているよ、素晴らしいね これで私の計画を台無しにしていなかったら尚良かったのだがね。」

 

 「クワック・サルヴァー!!」

 

 「その声はあの時の!?」

 

 

 「だがね、私はまだ諦めてはいないのだよ、今の一撃は月を標的としたものだからな、この威力なら着弾地点は壊滅的な被害を受けているはずだ。」

 

 「なんだって!?」

 

 「貴方って人は!!何でこんなことを!!」

 

 サラ機がビームキャノンを手に取りあの艦艇に攻撃を仕掛けるがバリアーのようなものに阻まれてしまい攻撃は無効化されてしまった。

 

 「何故だって!?それは勿論地球再生の為・・・いや、これはもはや不確実な方法・・・私の悪あがきだがね。」

 

 「!?」

 

 「今の攻撃での月の都市の被害は恐らくは甚大、そのような攻撃を受けたとあれば月の反地球勢力は勢いづく可能性は高いのだよ、今現在月はどちらかと言えば新連邦だからね。」

 

 「そんな馬鹿な!?今の攻撃が連邦が引きを越したものならばともかくそうではない!!貴様の思うようになど・・・」

 

 「分かってないな、要するに月の人間がどう思うかなのだよ、さらなる一撃を加えれば私の理想が成就する可能性もあるのだよ!!そしてだ!!この先の時代、そう遠くないうちに戦争が起きるだろう、それもあの一年戦争に匹敵する規模のな!その時だ、宇宙の新連邦派勢力を減少させる事こそが連邦政府を崩壊せしめる要因になるであろう、このソア・キャノンで歴史の流れを変える!次目標は新連邦派コロニー数基!!」

 

 「貴様!!」

 

 「アレックス!この人にはもう何を言っても・・・」

 

 もはや俺の機体は戦闘能力と言えるものは既に失っていた、サラの方もあれを止めるだけの武装など持ち合わせていないだろう。

 

 だがもうこれ以上犠牲など出させない、覚悟を決めるしかないだろう・・・そう、あれを止める方法が一つだけ存在するのだ。

 

 「サラ、今まですまなかった、なんて謝ったらいいか・・・俺には結局何もできなかった・・・だけど短い間だけだが君にまた会えてよかったと思ってる。」

 

 「アレックス!?一体何を・・・」

 

 「俺はあれを止める、もうこれ以上誰かを死なせやしないさ。」

 

 「止める!?一体どうやって・・・まさか!!」

 

 「ああ、そうだ。それしか方法は無い。」

 

 「そんな!!駄目よ!!絶対にそんな事!!」

 

 「いやもうこれしか方法が無い、あれの自弾発射にどれだけのチャージ時間が掛かるか分からないが恐らくはもう猶予は無い・・・」

 

 俺は機体をあの艦艇に向かって直進させる、だがサラ機に静止されてしまった。

 

 「ならせめてこれを持って行って!」

 

 サラ機から上部が切断されたシールドを手渡される。

 

 「これ・・・サイコ・フレームで出来てるから・・・もしかしたら奇跡を起こせるかも・・・せめてこれだけでも持って行って!」

 

 「ありがとう、助かる。・・・じゃあなサラ、幸せにな。」

 

 奇跡か・・・確かにこの素材はそう言った現象を引き起こしたことがあるという・・・この機体の材質にも一部サイコ・フレームが使用されているが・・・いや今起こさなければいけないのは俺の行動だ、奇跡ではない。

 

 

 今度こそあの艦艇に俺は急接近する それにしてもあれはトンデモない艦艇のようだ 見た目でいえばアレキサンドリア級の上部構造物を取っ払って巨大な砲を取り付けたような外観である。 

 

 「カミカゼで止めようというのか!だがもう遅い、ソア・キャノン エネルギー臨界!!」

 

 俺があの砲の前に機体を到達させた時にはもう発射されようとしていた、遅かったか・・・

 

 光が目の前に広がっていくのが感じられた この光は・・・

 

 なんだか暖かく感じる・・・ そうか・・・俺はやっと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 



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機体解説7

ガイア・ソード

武装

頭部バルカン

サンドバレル

ビームサーベル

SEジェネレータ式ビームキャノン

サイコフレーム製シールド

シールドビームキャノン

ファンネル

SEフィールド・バリアー

 

 サイコフレームと同じく封印されていた技術であるSEシステム(暫定的空間粒子消失制御システム)を用いたSEドライブ・ジェネレーターを搭載した機体 ソードと呼ばれる機動兵器であり尚且つ同システム搭載機の中では最新機種である。また疑似人格コンピューターType-C.Aが搭載されておりこれを用いた機動性向上効果は想定されていた数値を遥かに上回るレベルであった。本システムのパイロット保護機能と合わせその機体機動はたとえ同じシステム搭載機であったとしても圧倒することが可能である。本機はクワック・サルヴァー支持のもと極秘に建造されていた機体でありXMM-01/SX-01は技術封印解除におけるテストヘッドでもあった。

 

タイラント・ソード改ニーベルング

武装

頭部ビームガンポッド

ミノフスキー・ヴァリアブルスライサー

ビームサーベル

SEジェネレータ式ビームキャノン

SEジェネレータ式ヴェスバー

SEフィールド・バリアー

サイコフレーム製遠隔操作攻撃端末トラック・フィン

トラクタービーム

シールド

 

 かつて存在したとされるタイラント・ソードと呼ばれる機体を現行技術を取り入れ再現した機体でありその兵装、コンセプトは対ソードを意識したものになっている。備わっていた無人機運用機能も再現されており本機はネクスト・ワンと呼ばれるニュータイプの亜種的な存在の力が必要不可欠である。開発はビジャン・ダーゴルマハ情報部少佐主導の元、後記の無人機と合わせて極秘に行われており本機の存在はクワック・サルヴァーすら知り得なかった。

 

ジェイブス・ソード

武装

頭部60mmバルカン

ビームサーベル

シールド

SEジェネレータ式ビームキャノン

SEフィールド・バリアー

 

 タイラント・ソードの護衛援護を担当するジェイブスにSEドライブ・ジェネレーターを搭載した無人機、MW(モビルウェポン)と呼称されていた機体。機体出力はタイラント・ソードに劣るがそれでも通常のMSとは一線を画する性能である。本機もビジャン・ダーゴル少佐支持の元極秘に開発された機体でありその機体製造場所は宇宙ではなく地上のホンコンマハ研究技術開発部門である。

 

ソア・キャノン

武装

超大型SEジェネレータ式ビームキャノン

SEフィールド・バリアー

 

 アレキサンドリア級重巡洋艦の上部構造物を取り除き超大型のSEジェネレータ式ビームキャノンを搭載した艦艇と言うよりは大型の移動砲台に近い代物である。またそれに伴い艦艇の機関も変更されている。その威力はこのサイズでありながらカイラスギリーやコロニーレーザーに匹敵、または凌駕するものであり射角調整、発射のみであるならば1人でも可能である。(各所が自動化されているとはいえ流石に1人では艦艇の全ての機能を使用することは不可能である)

 

 

 

 



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ギア

宇宙

※サラ視点

 

 私は光が広がっていく光景を目にしていた

 

 アレックス機があれの前に立ちふさがったその行為はどう見ても無謀であり誰の目にもあれの発射を止められるなんて思いはしないだろう。

 

 しかしそれは起きたのだ アレックス機から発せられた光 サイコ・フィールドはあの攻撃を押しとどめた 私からも力があそこに吸われていくのを感じた いや私自身から力を差し出したと言ったほうが正しいかもしれない。

 

 あの巡洋艦に搭載されている砲のエネルギーがどれほどのものかは私には分からない・・・だが膨大なものには間違いないだろう、それを押しとどめたのだ 

 

 暫くの間私は放心してしまった・・・気が付いたときにはあの巡洋艦もアレックス機も目の前から消失してしまっていた 巡洋艦のエネルギーを考えれば自爆か・・・爆発してしまったのかもしれない だがコロニーに損傷は見受けられなかった・・・フィールドが押しとどめてくれたおかげかもしれない。

 

 「アレックスは・・・」

 

 アレックスと・・・クワック・サルヴァーがどうなったか、結論から言えばそれは最後まで分からないままになってしまった。

 

 私の死を感じ取る感覚が無くなってしまったのだ・・・力を吸われていく感覚があったのでそのせいかもしれない。

 

 私はNTだったのだろうか・・・確かにこの機体を扱えた、サイコミュもだ・・・

 

 でも結局何一つ私は出来なかった もしもっと早い段階で私自身が自分の力に気が付いていれば結果は変ったのだろうか?恐らくは答えなんて出ないだろう 何が正解で間違いかなんて神様でもなければ分からない・・・

 

 その時機体に通信が入った アポステル・・・いや、アザリアさんからであった。

 

 「大丈夫か?それにしてもあの光は・・・」

 

 「ええ・・・全部終わりました・・・全部・・・」

 

 それからのことはなんだか自分でも実感があまり感じられない時間になってしまった。

 

 私の前から皆いなくなってしまった もう頼れるものはいない・・・いやそんな事ではお腹の子は・・・

 

 この後の検査で発覚したことだが私が妊娠していることが判明したのだ。

 

 「・・・でこれからどうする?このままここに残るという選択肢もあるが・・・」

 

 「いえ、何とか私一人で・・・いや二人で生きてみようと思います。」

 

 「その顔は止めても無駄なようだな、以前私が言った事を覚えているか?」

 

 「・・・はい。私は宇宙では平穏に暮らせないと言ったことですよね?」

 

 「ああ、あの時はああ言ったが・・・それでも君は行くつもりだろう、少しばかり協力しよう、別人として生きてくための手伝いくらいしかできんがね。」

 

 「ありがとうございます・・・あの!・・・アザリアさんはこれからどうするんですか?」

 

 「私か?・・・私はやはりシャアの、赤い彗星の可能性に賭けてみようと思う・・・たとえ完璧ではなくても彼に私は賭けてみたい。」

 

 「そうですか・・・アザリアさん・・・今までありがとうございました、貴方の事は絶対に忘れません。」

 

 今後ズィー・ジオンは彼が率いていくことになるだろう そうすれば彼の名前を耳にすることくらいはあるかもしれない・・・だが恐らくはもう会うことは無いだろう

 

宇宙 某所

※ダーゴル視点

 

 まさか先生があのような物を隠し持っているとは驚いたがまあ事は計画通りだろう 月の被害は想定外だが問題は無い 先生が居なくなったことで委員会(イルミナーティ)の連中が勢いづいているが先生に比べれば御しやすい連中だ、奴等はさっそくSE関連技術の完全なる削除を決定したと通達してきたが予想の範囲内である。

 

 「しかし少佐・・・SE関連の技術の破棄なんてそんな事・・・それに我々は手放してもズィー・ジオンの連中はあれを手放すとは到底思えません!」

 

 「安心するんだなガーノー少尉、委員会(イルミナーティ)の力はある程度ではあるがあの連中の内部にも及んでいるのだ。それにだ・・・私とて全て言いなりになるわけではない、MWのデータは全て安全なところに移してある、あれさえあればソードの機体など不要だよ。心配することは無い、計画が完了しその後もあのデータさえあれば我々にはもはや敵は無い。」

 

 



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エピローグ 紙の城への入城/逆位置の世界

某所

 

 「・・・以上が月面、特にフォン・ブラウン市の被害実態である。なお今回の事件の犯行声明などは出ておらず依然として首謀者及び組織は不明、現在調査中。」

 

 今回の非公式会議には連邦政府閣僚や連邦軍の将官・・・そしてマハの人員の何人かが出席することになっている、実際自分の役目は委員会(イルミナーティ)への彼らの言動の報告である。

 

 「しかし困りましたな、今回の件で月での反連邦的な運動が勢いづいている・・・」

 

 「それだけではない!次期主力機のミノフスキー・ドライブの生産にかなりの遅延が発生するぞ!」

 

 「その件に関しましては我々警察機構特捜13課情報部のダーゴル少佐から詳しい説明を行わせて頂こう、少佐!」

 

 ダーゴル少佐が説明を始めようとする・・・そうこの男こそ今、委員会(イルミナーティ)が最も危険視していると言っても過言ではない、勿論マハ全体がそうなのだが・・・

 

 しかし何故高々少佐などを委員会は危険視するのだろうか?いや私などが考えても仕方あるまい・・・私は自分の役目をこなせればそれでいい。

 

 「現在ホンコン・マハの研究技術開発部門にてドライブの技術をスピンオフさせた新型のミノフスキー・クラフトの開発に成功しております、性能は多少落ちますが推進剤込みのコスト、メンテナンス性は遥かにこちらが勝ります、全て地球工廠で生産可能であり次期主力機へこれを用いれば遅延は発生しないと見込まれることでしょう。」

 

 その発言に連邦の将官や政府閣僚・・・特にアナハイム社と関係の深い者から反対意見が続出したがこのダーゴル少佐の発言はかなり魅力的に捉えられたのだ。

 

 しかし地球工廠など・・・全面居住禁止の法など本当にあってないようなものだと実感する。

 

 これでまたマハの力が増すことになる・・・恐らくはミノフスキー・クラフトだけではなく自前のMSやMMを地球で生産するつもりだろう。まさにティターンズの再来か・・・、委員会(イルミナーティ)が危険視するのも無理はない。

 

 そんなことを考えているとダーゴル少佐と一瞬だが目が合ってしまった。少佐の鋭い目つきがこちらに睨みをきかせていると感じた・・・私は背筋が凍るような感覚に襲われてしまったのだ。

 

 まさか私が、委員会(イルミナーティ)と関係していることがばれているのだろうか?いやまさか・・・

 

 

 

宇宙 サイド5 リボーコロニー

※サラ視点

 

 あれから暫くの時間が経過していた・・・あの後私はアザリアさんの助けもありこのサイド5のリボーコロニーに移り住むことに成功していた。

 

 勿論名前など全てを変えて 

 

 心地よく吹く風にあたりながら私は庭に出してある椅子に座り物思いにふける 最も風が心地よいのは調節されたものなので当たり前なのだが・・・程度はあれどコロニーでは地球のように天気が大荒れになることは無いのだ。あの自然のままの気候と言うものがひどく懐かしく感じるのは私の贅沢だろうか?

 

 お腹の膨らみも大きくなり一人ではなかなか生活するのが大変だけど周りの人たちの助けもあって何とか暮らしていけそうだ・・・いきなり引っ越してきたこんな得体のしれない人間を受け入れてくれた近所の人達にはどれだけ感謝しても足らないだろう。

 

 これから先の時代どうなるかなんて私には分からない でも私は何とか生きて行こう 

 

 この子達やさらに次の世代の人達が幸せに生きられるよう私には願うくらいしかできないけど・・・

 

 大丈夫だよね?

 

 きっと人類はお互いを理解できるようになる 争いを捨て助け合って生きていくことが出来るようになる

 

 エドゥ・・・パパ・・・アレックス・・・そうだよね?

 

 次の時代が平和になるように、この子達の世代が幸せでありますように

 

 

_______________________________________________________________________

 

 宇宙世紀0190 次期主力機としてUM-190Aガウッサロールアウト

 

     0196  ガウッサとは別にさらに安価な機体MM

          フリーダムがロールアウト、後に機体

          カテゴリーが再びMSに改められる

 

     0197  地球連邦政府、マハの権限拡大を容認

 

     0204  マハ地球逆移民計画発表 

          マハの反乱発生

 

     020x  マハの反乱を受け宇宙での反連邦政府

          運動が再び激化 また連邦内部での

          反サイド主義(地球至上主義)勢力の台頭

      

     0217  地球連邦政府 組織防衛本能を発動させ

          各サイドへの武力制圧を開始 自治政府

          の激しい抵抗から高烈度紛争へと発展

 

     0218  地球連邦政府崩壊 2世紀以上に亘る歴史に

          終止符が打たれる

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて一応完結になります。かなり投げっぱなしな展開になった事もあり本当に申し訳ないです。一応続編は何となく頭の中で妄想してみたりしてるんですけどまだ書くかは決めていません・・・が書くとしたら宇宙世紀0223年以降の時代設定になると思います。
小説に挑戦したのは初めてなので文章があれだったりとかなり不備があるにも関わらず最後まで読んでくださった読者の方に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。


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宇宙世紀0225
落日からのプロローグ


一応続きをここで書きます



 マハの反乱や反地球連邦政府組織の活動など度重なる戦乱で地球連邦政府は弱体化、宇宙植民地である各サイドの自立化を促していった。だがその結果連邦政府内部での反サイド主義(地球至上主義)勢力の台頭を招いた。そして宇宙世紀0217年 ついに連邦政府は組織防衛本能を発動させ各サイドへの武力制圧を開始、自治政府の激しい抵抗から高烈度紛争へと発展。最終的に新連邦派サイドの仲介で紛争は調停したのだがこれが地球連邦政府の崩壊を決定的なものにしたのだ。

 

 そして翌年0218年 地球連邦政府崩壊 2世紀以上にわたるその歴史に終止符が打たれた・・・

 

 地球連邦政府は崩壊、分裂し各サイド、コロニーというな差別的な名称はセツルメントに改められたのだ。

 

 しかし地球連邦政府崩壊後も地球上の旧国家群はそのままの位置にとどまり続け新連邦派サイドであったサイド2、サイド3、サイド5、サイド7を取り込みセツルメント国家議会を形成したのであった。またこれには属さなかったサイド1及びサイド4と月はセツルメント自由同盟を結成したのである。

 

 しかし当然ながら地球連邦政府時代よりもさらに輪をかけて現在は政情不安定であり地球宇宙問わずその影響は人々に悪影響をもたらしていたのだ。

 

 深刻化する食糧危機、度重なる紛争、環境破壊・・・

 

 さらにはその二つの秩序に属さないテロ組織や第三勢力の躍進、蔓延る終末論的思想や新興宗教・・・そして大地球主義者と呼ばれる者たち

 

 ガイアの光事件やプロジェクト・レイブンなど相次ぐ紛争・・・

 

 

 またセツルメント国家議会という組織も一枚岩ではなく内部では様々な派閥が跋扈しており現状では最大勢力である国家議会ですら安定とは程遠い状態にあるのだ。

 

 時に宇宙世紀0225年 混乱を極める世界・・・既にその状態はスペースノイドとアースノイドの対立など過去のものになった時代 もはやニュータイプという言葉などは人々の思考の片隅に追いやられ皆が今日をどう生きるかで精一杯でありその存在は忘れ去られようとしていたのだ。

 

 

 そんな中でもサイド5にて祖母と平和に暮らしていた少女リンダは隠されていたとある機体を発見してしまう

 

 その機体・・・マンマシーン ガイア・ギアϝ(ディガンマ)こそかつて連邦政府に吸収されることを良しとしなかった旧メタトロン(ズィー・ジオン)内のある派閥が作り上げた最後の反抗の機体であったのだ。

 

 再びギアが動き出す 搭載されたあるシステムを巡り再び戦火は広がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 



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ポケットの中

人物紹介1
リンダ・ウィリアムズ
16歳 女性
サイド5 リボーセツルメント在住


宇宙 サイド5 リボーセツルメント(旧称リボーコロニー)

 

 まず初めに私の名前について・・・ファミリーネームは祖母のものである。と言ってもこの本来の祖母の姓はついこの間までは別のものであったが最近昔の姓に戻したらしい。なぜかは私には分からないし祖母も教えてはくれなかったのだ。

 

 父は幼いころに亡くなった・・・曰く戦争で亡くなったらしいけど詳しいことはこれまた私には分からない・・・そして母は生きてはいるだろうけどどこで何をしてるのやら・・・サラお祖母ちゃんは自分の娘である母にもの凄く怒っているけど私は別に気にしてはいない。・・・とにかく私には分からないことだらけなのだ。

 

 別に全てを知りたいわけじゃない こんな時代だから私の苦悩なんてそれこそちっぽけなものなんだろうと思う・・・実際他にはそれどころじゃないような人をよく見るし私は恵まれている方なんだと思うようにしている。

 

 サラお祖母ちゃんは最近世の中の移り変わりが速くてついていけないと言う 昔話してくれたっけか・・・お祖母ちゃんの父親は昔あった連邦っていう国の偉い人だったって・・・

 

 地球連邦政府は私が9歳の時に無くなってしまった 今私の住んでいるこのサイド5はセツルメント国家議会に属するセツルメントである。 

 

 宇宙に住む人達にとって地球連邦政府というのは必ずしも好意的に抱ける存在ではなかったらしい だからこそ反連邦政府運動に加担していた人達も沢山いたようなのだ・・・だけど実際に連邦政府が崩壊した現在、かつてを知る人々は口をそろえて言う あの頃のがまだマシだったと。

 

 実際にそうなんだろうと私も思う 国家議会は現状では最大勢力であり最も安定している陣営でもあるけれどそれはあくまで相対的にであるのだ。

 

 また戦争こそしていないもののセツルメント自由同盟とは敵対しているし中立のサイド8や第3勢力との衝突というのもあるらしい 実際に外では小競り合いのようなものが起きることなど日常茶飯事だと誰かが言っていた。

 

 先日も宇宙港に入ってきた定期船が攻撃を受け損傷した状態だったらしい その船は民間船だったのらしいがそんなのはお構いなしなんだろう 国家議会軍だって数が足りているわけではないようなのだ。

 

 ここのセツルメント守備隊だってかなりお粗末なものらしくもし敵に攻められたらひとたまりもないと学校の先生が言ってたっけ・・・

 

 最も他のセツルメントもに似たり寄ったりな感じらしいけど・・・そんな状態だから私はこのセツルメントの外には出たことがない ここだけが私の世界 外の世界に興味が無いわけじゃないけどそこまで求めるほど私は勇敢でもないしそれに何よりサラお祖母ちゃんがいるから私はここでいい ここでこれからも生きていくんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ガイアの目覚め

更新を暫くサボってしまっていました
申し訳ないです


宇宙 サイド5 リボーセツルメント

 

 学校からの帰路に就く私の目の前にある見知った人影が現れた。

 

 その人物、年齢はいくつだったっけか・・・学年は小学校高学年あたりなのは確かだ・・・とにかくその近所に住む少年ビリーが私の前に現れたのだ。

 

 見たところ涙を浮かべているようだ、半べそというやつである。

 

 見かねた私は声をかけることにした

 

 「ビリー、どうしたの?」

 

 「僕のハロが・・・マイクに・・・」

 

 泣いているせいか話を理解するのに暫くの時間が掛かってしまったがどうやら友達のマイクにあのハロとか言う機械を隠されてしまったようだ。ビリーはどうやらいじめられっ子のポジションに居るらしい。

 

 「マイクが僕のハロを洞窟に隠したって・・・一人で取りに行けって・・・」

 

 「洞窟・・・?ああ、あのくり抜き倉庫のことね。でも確かあそこは立ち入り禁止じゃなかったかしら?」

 

 ビリーの言う洞窟とは恐らくはあの倉庫の事であろう、確かに洞窟に見えなくもないがあそこは立ち入り禁止・・・というより放置されている場所だったはずだ。

 

 国家議会所属のセツルメントとは言え内部全てを議会が管理把握している訳ではないのだ・・・それこそ連邦時代やコロニー自治政府時代の施設は他のサイドやセツルメントでも放置されているものは多いらしい。実際あの倉庫・・・いや実際には倉庫ではないかもしれないけれどとにかくあそこは利用されなくなってから久しいようだ。

 

 「うん、でもね・・・マイクがあそこに夜中に一人で行ったときに幽霊を見たって・・・だから度胸試しで僕をあそこに行かせるつもりなんだ。」

 

 「幽霊?」

 

 「うん、マイクはそれを見つけて追いかけて洞窟に入ったんだけど中には大きな扉みたいなのがあって先に進めなかったんだって・・・」

 

 幽霊・・・私はそんなもの信じてはいないけど子供にとってはそうではないのだろう。

 

 この子をこのまま放ってはおけないか・・・仕方がない、取りに行ってあげるか。

 

 「わかった、私が一緒に取りに行ってあげる!だからもう泣かないで、ほら!」

 

 ビリーにハンカチを手渡す 

 

 しかしあの倉庫・・・私も存在は知っていたけど結局のところあそこには何かあるのだろうか?

 

 いや・・・大したものはないだろう 

 

 

 その倉庫までは歩いてもそこまで時間はかからない ただ周りは荒れ果てておりあそこに近づく人間なんてそれこそ子供が遊びで行くだけであろう。

 

 その倉庫の前に私とビリーがたどり着くとやはり辺りに人の気配はなかった。

 

 内部に足を踏み入れると当然のことながら暗闇であった

 

 「暗い・・・電源が生きてるといいけど、スイッチは・・・」

 

 「ねぇリンダお姉ちゃん・・・これは?」

 

 ビリーがレバーのようなものを操作すると内部の照明が明かりを灯したのだ・・・信じられないことにこの施設の電源はまだ生きていた。

 

 すると目の前に巨大な扉のようなものが目に入ってきた・・・あの扉がさっき言ってた巨大な扉で間違いないだろう・・・ここは格納庫のようなものなのだろうか?

 

 とても人間が自分の力で開けること出来そうにはなかった だがこの施設の電源が生きているのであれば開けることも可能なのだろう・・・しかしここに来た目的はあの扉を開けることではない。

 

 「お姉ちゃん!あったよ!僕のハロ!!」

 

 すると球状の自立可動式と思われるおもちゃのようなロボットが転がりながらハロ!ハロ!という音声は発していた。

 

 このハロという玩具は一種の携帯端末のような機能を内蔵しているそうだ かつて・・・どれくらい昔なのかはわからないが相当前の時代にこのハロという玩具は一大ブームを引きを越したという これはその昔の玩具の復刻版であり機能もかつてのものとは比べ物にならないほど多機能かつ高性能・・・らしい

 

 「とにかく見つかってよかった。さぁ帰りましょう・・・ビリー!?」

 

 ビリーは巨大な格納庫と思われる扉の隅にある端末のようなものの前にいつの間にか移動していた

 

 「ちょっと!あんまり触らないほうが・・・」

 

 その端末に備え付けられているヘッドフォン?のようなものをビリーは被り何やらタッチパネルを操作しているようだが特に何か起きる様子はなかった。

 

 「ねぇお姉ちゃん!!これお姉ちゃんもやってみて!僕だと反応がないみたい・・・」

 

 仕方がない ビリーがやって駄目なら私がやってもだ駄目だろう 私は機械に強いというわけではない 今の小学生のがよっぽどその辺りは詳しいだろう

 

 それにしてもなんでヘッドフォンなんてついているのだろう?タッチパネルはわかるけどあのヘッドフォンの用途がさっぱりわからない。

 

 ビリーに言われるがままにヘッドフォンをつけてみる 何やらビリーがタッチパネルを操作すると先ほどとは違う反応を見せた

 

 「やった!扉のロックが外れた!お姉ちゃんすごい!!」

 

 「えっ!?一体どういう・・・」

 

 その時だった背後に何者かの気配を感じ振り返る 一瞬頭にあの幽霊の話が過ったがまさか・・・

 

 だがそこにいた人物は幽霊ではなかった 少なくとも私にはそう見えた・・・だが幽霊のがよかったのかもしれない なぜならその背後にいた初老の男性の手には銃が握られていたからである。

 

 

 「君かあのサイコミュロックを外したのは・・・それともそっちの小さい方か?」

 

 「貴方は一体・・・」

 

 「いいから答えるんだ、ロックを外したのはお嬢さんの方で間違いないか?」

 

 「はい・・・」

 

 「そうか・・・やっとか。だがもう遅かったか・・・全てはもう過去の話・・・」

 

 何やらぶつぶつとその初老の男性が独り言を呟いているようだがその言葉の意味の殆どを私は理解できなかった。

 

 「・・・しかしそうだな。これで私の役目も終わりだ。お嬢さん・・・その扉の先にあるもの・・・なんであるかは自分で確かめるがいいだろう。だがしかしあの扉を開けたということは君には資格があるということだ。ならばあれは君のものだ、自由にするといい。」

 

 「貴方さっきから一体何を・・・」

 

 すると格納庫の扉が開き始めた ビリーがどうやらタッチパネルを操作し続けていたようだ。

 

 巨大な扉が開く 私たちの目の前にそれは現れた 

 

 「あれこそがガイア・ギアだ。マン・マシーン ガイア・ギアϝ(ディガンマ)だよ。」    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ガイアの目覚め2

宇宙 サイド5 リボーセツルメント

 

ガイア・・・ギア?

 

 それがこの機体の名前・・・それに私に資格があるって一体どういう事なのかさっぱり分からない。

 

 しかもいきなりこれが私のものと言われても正直困る はっきり言って面倒ごとを背負わされたようなものなのだ。

 

 初老の男性は私たちに背を向けてこの場を立ち去ろうとする

 

 「ねぇ!ちょっと・・・まだ話は!!」

 

 しかし私が引き留めてもそれを無視するように彼は立ち去ってしまったのだ。

 

 「リンダお姉ちゃん・・・これ、どうしよう?」

 

 さて本当に困ってしまった 本当なら警察か軍に通報するのがいいと思うけどそれだと私たちがここに来ていたことが問題になる・・・この場所は立ち入り禁止なのだから

 

 ならばこのままにしておくというのがいいと思う 仮に暫くしてからこれが発見されるような事態になっても私達にはもう無関係だ うん それがいい

 

 念のため私は先ほどの扉の前の端末と電源レバーをハンカチで拭いておく 一応指紋を残さないほうがいいと思ったからである。

 

 私たちは足早に格納庫を後にした 帰り道ビリーはなんだか興奮した様子であったようだ 男の子というのは皆ああいうものが好きなんだろうか?私も男だったらまた違った選択をしたのだろうか?

 

 「あれ、一体どこのモビルスーツだろ?あれ?マンマシーンって言うんだっけか?昔の連邦軍の機体なのかも・・・それにあのタイプの頭は確かガンダムっていうMSに似ていたかも・・・」

 

 「そう・・・でもそれにしてもあの人は一体何だったのかしら?」

 

 「さぁ分かんないよ。でもよかったの?あれをあのままじゃすぐ近いうちにまたマイクの奴あたりがあの場所に行って見つけちゃうかも・・・」

 

 「それならそれでいいと思う・・・子供なら警察もそこまでお咎めは無いだろうし。」

 

 「そっか・・・まあマイクの奴が通報するとも限らないしそれにもし通報するようでも警察に怒られるのはマイクの奴だもんね!」

 

 この話をサラお祖母ちゃんにしたほうがいいだろうか?いや・・・辞めておこう 変に心配させたくはない。

 

 それからビリーとは別れて私はようやく自分の家に帰ることが出来た しかし自室に入りベッドに寝転がっても私はなんだか落ち着くことが出来なかったのだ なんだろう・・・胸騒ぎがする、というよりこれは嫌な予感というかそんな感覚があるのだ。たぶん疲れているせいだと思う・・・きっとそうだろう 先ほどの件のせいできっと気持ちが高ぶっているからそんな感覚がするのだろう 

 

 私はそう自分に言い聞かせた なんだか疲れた 急速に襲い来る睡魔に私は抗うことは出来なかったのだ。

 

 

 

 

※ビリー視点

 

 僕はあの洞窟で見つけた機体についてネットで調べてみることにした 幸いにもハロが自動撮影モードであの機体の写真を何枚か撮影してくれていたようなのだ。ネットで詳しい人に聞けば何かわかるかもしれない

 

 僕もMSは好きだけどすごい詳しいというわけじゃない 今の議会軍の主力MSであるブグやスピアヘッド辺りは見ればわかるけど・・・それにしてもあの機体はかなり大型だった・・・20m以上は確実だと思う。

 

 僕は早速先ほどの機体の画像を掲示板にアップしてみた すると直ぐに何件かのコメントが返ってきたのだ

 

 「ん?なになに・・・シールドの表面のマーキングは昔のアムロ・レイっていう人のパーソナルマークと同じなのか・・・こっちのコメントは機体についてだな・・・」

 

 やはりネットにはこの手の情報について詳しい人が沢山いたようだ 

 

 えー、どうやらこの機体の構造上簡易的な可変システムを有する可能性が高いだってか・・・あとはやはりその目立つ頭部に対してのコメントが沢山寄せられていた。しかし例の機体名 ガイア・ギアという名前が挙がることは無くもしこの画像が本物であるならば旧連邦時代に製造された試作のガンダムタイプではないかという考察がなされていたのだ。

 

 その後の掲示板は僕の予想以上に盛り上がっていたようだが結局この機体が何であるのかは分からず終いだった。

 



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ガイアの目覚め3

人物紹介

アーロン・ウェルズ
セツルメント自由同盟軍少尉

レフ・パーシバル
セツルメント自由同盟軍大尉



宇宙 サイド1 ロンデ二オン

 

 数日前 例の作戦が知らされてから今日まで心休まる暇などなかった。

 

 極秘の作戦 偽装した機体を使用するとはいえ国家議会のセツルメントを強襲するなんて聞けばそうもなる・・・いや作戦の目的はそうではない

 

 作戦の目的自体は至ってシンプル 国家議会所属のサイド5 リボーセツルメントに存在すると思われるMSの鹵獲 

 

 たかがMS1機のためになぜそんなことを?

 

 はっきり言って正気の沙汰ではない

 

 だがこれは冗談でも何でもない だが何故?

 

 あの機体 作戦に従事する俺達にすらその鹵獲対象のMSの情報は画像データしか提示されなかった・・・あの機体にはそれだけの価値があるということなのだろうか?

 

 最悪の場合は国家議会と戦争に突入する可能性だって無いわけじゃない 

 

 俺にはたかがMS1機にそこまでのリスクを冒す価値があるとはどうしても思えなかった

 

 たとえそれがガンダムタイプであっても・・・

 

 ガンダム・・・確かにあの機体の頭部はそう呼ばれていたMSの特徴と一致する

 

 ということはあれは旧連邦時代の機体なのか?

 

 いや・・・不確定情報だがガンダムに類似した機体を今現在使用している連中もいたか・・・ともすればあの薄気味悪いイルミナーティの連中の所有物か?

 

 いやそれはないか 少なくともあそこは国会議会所属のセツルメントだからな 

 

 国家議会はイルミナーティをテロリストとして扱っていたはずである まあうちも同じような扱いをしているのだが。

 

 今回の件 もししくじることがあれば国家議会だけではなくイルミナーティも完全に敵に回すことになるのかもしれない

 

 奴らは秩序の維持と不当な暴力への抵抗なんて大層なお題目を掲げている まったくこんな時代に酔狂な連中だ 

 

 奴らの存在はここ最近になって聞くようにはなったが、少し前まではその存在を知る者は少なかった 

 

 しかし今現在においても連中の組織の規模や活動は自由同盟軍はもちろん国家議会ですら把握しきれていないという 恐らくは両陣営に内通者や協力者が存在するのだろう

 

 いや、存在しないと考えるほうが不自然か しかしそうであるならば今回の作戦すらもうすでにイルミナーティに察知されているのかもしれない

 

 いやもうやめだ 俺が考えても仕方がない そうさ・・・俺はパイロットだ

 

 考えるのは上の仕事 パーシバル大尉もそう言っていたではないか 

 

 ただ俺は作戦を成功させることだけを考えよう そのためにこんな機体まで用意されたのだから

 

 俺は目の前に存在するその機体を見上げる 自由同盟軍所属のアラクニドタイプのMSの外装を変更し所属を偽装している、それは今回の作戦のためだけに用意された特別仕様だ。つい今日になってここに届いたばかりである。

 

 たった数日でこんな機体を3機も用意するなんてどうやら軍は本気のようだな

 

 見た目はまるで教科書で見たジオン系のMSだ 意図的に似せているのかもしれない

 

 

 ガンダムにジオンか・・・まるで時代が巻き戻ったようだ

 

 



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