隣の一等星 (Re:GHOST )
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邂逅、そして.........

初めまして、レミリア親衛隊と言います。

初投稿により拙い文章になってしまうかと思いますが、誠心誠意努力致しますので、お付き合い頂けると幸いです。

前書きは堅苦しいですが、後書きでは、はっちゃけたいと思うので、よろしくお願いします。


「なぁ、一体いつになったら着くんだ?」

 

 .........俺の声だ。なんでそんなものが聞こえるんだ。

 

「もうちょっと!頑張ってついてきて」

 

 綺麗な、女の子の声だ。耳朶に優しく触れるような、心地いい声。

 

 少しずつ、意識が覚醒してきた。多分これは、俺の夢の中なのだろう。その証拠に、夢特有の、景色がぐにゃぐにゃするという、気持ち悪い光景が広がっている。

 

 真夜中と言ってもいい程、暗い中、俺と女の子は階段のようなものを登っている。左右には薄暗い森林が広がっており、お世辞にも視界がいいとは言えない状況だ。

 

 空の状況を確認したいのだが、夢の中の俺は、どうやら上を向く気は無いらしく、どんな感じなのかはわからない。

 

「もうちょっとってセリフ、3回目なんだが.........」

 

 おい、何言ってんだ俺、声から美少女と判別出来るような子と歩いているんだぞ、いくら歩いても楽しいだろ。

 

 夢の中の俺は、随分と贅沢らしい。現実の俺だったら、徹夜で歩いてもいいくらいだ。

 

「ごめんごめん、本当にもうそろそろだから、ね?」

 

 そう言う彼女の顔を、一目見ようと思ったが、顔がわからない。夢の中というのはつくづく、ご都合主義のようだ。黒いモヤモヤがかかったような、そんな感じ。

 

 ご想像にお任せしますってか?でも、よく考えたら、この子と同じくらいの美少女と知り合いになったことなんてないから、顔を想像しようにも、全くできなかった。

 

「あ!着いた着いた!とうちゃーく!」

 

 不意に、彼女が張り切りだした。どうやら、目的地に着いたようだ。

 

「やっとかぁ、疲れた」

 

 夢の中の俺も疲れきっており、ここまでの道のりが長かったことを物語っている。

 

 ふと、足元を見ると、今まで登ってきた石の階段がここで途切れている。1歩先は、土と雑草で、地面が出来ていた。

 

 ところで.........俺は一体どこに向かっていたんだ?階段を登っていたということは、高低差がある場所。つまり、山や丘だろうか。

 

 俺が1人で考察していると、美少女に手を引かれた。

 

 おいおい、まじかよ、俺にも春来ちゃった?

 

「あっちにベンチあるから一緒に座ろ!」

 

 彼女は元気よく、向こうにあるベンチを指さす。登山という程では無いかもしれないが、高所に来て、テンションが上がっているのだろう。俺は、大人しくついて行くことにした。

 

「おいおい、あんまりはしゃぐと転ぶぞ?」

 

 彼女の手を引く力は、強く、小走りなので少し危ない。転んでからでは遅いので、先に注意しておこうということだろう。

 

「だいじょーぶだよ!」

 

 小走りで、後ろを向きながらそう言う彼女。その前方には、小石が。

 

「危ない!」

 

 夢の中の俺が叫ぶ。彼女が躓き、手が離れる。その手を掴もうと、俺は自分が倒れるのも構わず、右手を前のめりに思いっきり伸ばした。

 

 のだが.........

 

「おっとと.........ピタッ!」

 

 なんと彼女は転けた瞬間に、その場で3回転したのだ。バランスを取り戻し、綺麗な回転を見せてくれた彼女は勿論、無事だった。

 

 ということに気づいたのは、俺が顔面から地球へ激突し、突っ伏しながら、鼻を抑えてる時だった。

 

「痛ってぇ.........」

 

 うわあ、痛そう。夢の中の俺よ、どんまい。俺は全く痛くないが、心が痛いわ。いや、マジで。

 

「ご、ごめんね!?あたしが走ったせいで.........」

 

 彼女が、とても申し訳なさそうに謝っている。黒いモヤモヤのせいで、表情は伺えないが、多分しゅんとしているのだろう。

 

「いや、大丈夫だから気にすんな」

 

 お、夢の中の俺イケメンだな、言動だけ。見た目?そんなもんフツメンだよ、彼女なんていた事ねぇよ。

 

 顔だけ彼女に向け、心配ないという旨を伝える。いつまでも、うつ伏せでいる訳にもいかないので、手にぐっと力を入れ、片膝をつき立ち上がる。ジーパンにたっぷりついた土を払い落とすことも忘れない。

 

「さて、行こうか」

 

 夢の中の俺は立ち上がりそう言った。彼女に手を差し出しながら。子供みたいに、早く行こうと急かすような言い草で、そう言った。

 

「うん!」

 

 彼女は、俺の思惑を知ってか知らでか、元気よく、差し出した手を取り、歩き出した。さっきとは違い、2人並んで歩いて行くのだ。

 

 そこから目的地のベンチまではすぐだった。幸せな時間は早く過ぎるというのは、あながち間違いでも無いのだろう。そんなことを実感出来た時間だった。

 

 ベンチに座る前に、俺は、彼女の座るところを重点的に、手で汚れを払う。なんでこういう細かい所に気を使えるのにモテないんだろう.........

 

「ありがと!」

 

 その言葉だけで俺はなんでも出来るぜぇ!それは流石に言い過ぎだけど。

 

 ポスッと可愛らしい効果音でも出そうな勢いで、彼女が座る。俺も、彼女の隣に腰掛ける。

 

「ねーねー」

 

 俺の右隣に座る彼女が、唐突に話しかけてくる。なんの話だろう、告白とかだったら気絶するからやめて欲しい。あ、夢の中だから気絶しないか、ならいいや。

 

「ん?どした」

 

 無難な返答をしておく。これが一番。無難最強、超強い、ベリーベリーストロングなのだ。

 

「今から、一緒に、空を見上げよう!」

 

 声を張り上げ、彼女が叫ぶ。自分の欲望を、外に解き放つように。声に乗せて、思いっきり叫ぶ。

 

「やっとか」

 

 ん?やっとかってどういう意味だ?今まで上を見るのを我慢してたって訳か?

 

「そうだよ、やっとだよ。さっきの約束忘れてなくて良かったー」

 

 そうか、俺が夢を見る前に、話の流れがあったに決まっている。大方、そこで俺と彼女が、頂上に着くまで、上を見ないっていう約束でもしたのだろう。そして、頂上に着いた今こそ、空を見るというタイミングなのだ。

 

「じゃあ、目を閉じて」

 

 彼女がそう言うと、俺は目を閉じた。先程から繋いだままだった右手に、自然と力がこもる。

 

「行くよー!」

 

 彼女の掛け声が聞こえる。

 

「3!」

 

 妙に冷静になる。

 

「2!」

 

 周りの音が聞こえない。

 

「1!」

 

 顔を上に上げる。

 

「0!」

 

 ゆっくりを目を開ける。

 

 奇跡。星の瞬き。形容し難い。綺麗。月明かり。

 

 抽象的な表現しか出てこない。とんでもない夜空を見上げた感想が、上手く出てこない。

 

「すっげぇ.........」

 

 思わず声に出してしまった。それもそうだろう。部活に入っていない俺は、普段夜は出歩かない為、星を見る機会は少ない。にも関わらずこの満天の星空。声に出てしまうのも仕方の無いことと言える。

 

「でしょ!?他の人と、1度来てみたかったんだよねー」

 

 彼女がとても興奮した様子で喋っている。俺と同じで、この星空に、気分が盛り上がっているのだろう。繋いでいる俺の右手をブンブンと振りながら、足をバタつかせている。可愛らしい仕草だ。

 

 俺はさっきから、この星空を表せる表現を、探していた。頑張って探した結果、1つだけ、胸の中にストンと落ちるような言葉が見つかった。少し恥ずかしいが、もう、これしかないだろう。それは.........

 

「星の鼓動.........」

 

 それは星の鼓動だ。だから言ったんだよ、恥ずかしいって。でも、これ以上ない位、いい言い方だろ?俺は最高だと思う。

 

「星の鼓動かぁー いいね!すっごく、るんって来るね!」

 

 彼女の言う、るんっと来るというのは全くもって良く分からないが、褒められているということは、なんとなく分かる。

 

「あたし、君とここに来れて良かった」

 

 それはそれは、こちらこそありがとうございます。すっごく楽しい夢を見させてもらいましたよ。

 

 でも、所詮は夢なのだ。何時かは醒めてしまう、儚いものだ。

 

「俺も、こんな星空を見れてよかったよ。ありがとう。」

 

 そろそろ、お別れの時間かな。景色が更にぐにゃぐにゃしてきた。もう隣に居る筈の、彼女の輪郭さえもわからない。

 

「あたし、君に会えてよかった」

 

 ふと、彼女が呟く。他にも何か言っているが、これだけしか聞き取れなかった。最後だからだろうか、少しだけ彼女の顔が見れた。

 

 とても、可愛くて、寂しそうな顔をしていた。

 

 綺麗な黄緑色の瞳が、潤んでいた。

 

 そんな顔、しないでくれ。俺は心からそう思った。

 

 さよなら、楽しかったよ、夢の中の君。

 

 もう起きる時間だ。

 

 そして俺は、寂しさと、喪失感を伴いながら、起床した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんつー夢だ、悲しくなっちゃったじゃねぇか」

 

 夢から醒めた俺は、ベッド上で、上半身だけ起こしながら、そう呟いた。

 

 はぁ.........と、ため息ひとつ。

 

 取り敢えず、顔を洗いに洗面所へと向かう。2階にある俺の部屋から、1階の洗面所へ向かうには、階段を降りなければならない。階段を降りている途中でリビングから、焼けたトーストの匂いがして、頬をゆるめた。

 

 顔を洗い、朝食をとったら、後は着替えて学校へ出発だ。

 

 少し前から共学化した羽丘学園に通っている俺は、家が割と近めなので、始業時刻の30分前に出れば余裕で着く。

 

 のだが、朝からあんな夢を見てしまったので、妙に外を歩きたい気分になってきた。

 

 早めに出るか.........心の中でそう決めた。

 

「行ってきますー」

 

 せっせと制服に着替え、玄関前で、誰もいない家に、そう言う。

 

 両親は働き者なので、もう家を出てるのだ。早すぎだろ、韋駄天かなんかなのか?といつも思うが、もう慣れた。

 

 のんびり、のんびり通学路を歩く。元気なご老人や、朝からランニングしている人で、意外と道は賑わっている。

 

 やることもないので、白線の上だけを歩くことにした。子供っぽいとかいうツッコミはやめてくれ!俺が1番わかってるから!

 

 俗に言う、白線から落ちたらマグマ状態である。

 

 両手を横に伸ばし、バランスを取りながら少しずつ、道を進んでいく。

 

 ちなみに歩きスマホは、昔電柱にぶつかったのでもうしない。めちゃめちゃ痛かったぞ.........

 

 小学生モードで、ある程度進んだら、十字路が見えてきた。右に曲がる為に信号待ちしていると、十字路の前からアイスグリーンの髪色をした、女性が走って来た。

 

 なんか見た事あるなぁ.........少しの既視感を感じ、彼女の顔をじっくりと見てみる。

 

 黄緑色の目と、目が合った。

 

 その瞬間、全てが繋がった。

 

 夢の中で会った子だ.........

 

 そういうことか、夢を現実に出来るかは俺次第ってことなのね。

 

 信号が青に変わった。彼女がこちらに歩いてくる。

 

「キミ!その制服、羽丘の子だよね!一緒に学校行こ!」

 

 これが、俺と彼女の出会いだった。これから先、苦楽を共にする、最高の人との、出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




当作品を書くにあたってのきっかけは2つありました。

1つ目は、他の作者様の作品を読んでいる内に、私も書いてみたいと思うようになったからです。

何事もチャレンジ!ではありませんが、私にもやれば出来るかもという思いが強まってきたので、執筆への踏ん切りがつきました。

2つ目は、氷川日菜というキャラクターにとても惹かれたからです。

天才肌で、無意識の内に他社を見下してしまう一面もしばしば.........。更には、人の気持ちを汲み取ることが出来ない。この文面だけ読んだら、少なくとも私は、いい印象を持ちません。

しかし、氷川日菜というキャラクターには、文面だけでは語れない「なにか」があるのです。

姉思いだったり、ムードメーカーだったりと、彼女なりにも苦労することも多い筈です。

本当は好きな姉にも、少し避けられ、辛いと思います。

でも彼女は、決して諦めないでしょう。どうにかして姉との仲違いを修復しようとするのです。

私は彼女の前向きな性格が好きで、彼女のように楽しく生きたいと思います。

長々と後書きを書いてしまいましたね。すみません。

結論 日菜可愛い天才最高


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さようなら日常、初めまして非日常


UAの伸び方と、お気に入り登録の数を見て、改めてBanG Dream!というコンテンツの偉大さに気づきました。

これからも邁進してまいりますので、付いてきてくれると、とても嬉しいです。

さて、挨拶はこの辺にして。

2話目、はっじまるよ〜!



 

 前回までのあらすじ!

 

 夢の中で出会った美少女と、天体観測デート!

 

 良い雰囲気になった所で目が覚めてしまい、気分はブルー.........

 

 仕方ないと気持ちを切りかえ、学校までの通学路を歩いていると。

 

 なんと、昨日の夢で会った美少女が現実にいた!?

 

 そんな美少女に一緒に学校へ行こうと言われ、内心超ウキウキな俺なのであった!

 ↑今ココ

 

 いや、回想してもなんもわかんねぇわ。どういうこと?変態の一言日記詰め合わせみたいになってるぞ。

 

 幸いにも、俺の右隣を歩いている彼女に、気持ち悪い回想を知られてるということは全くなく、悩みなど一切無さそうな、満面の笑みで歩行している。

 

「ねーねー 1年の時はクラスどこだったの?」

 

 彼女が不意に、俺に問いかける。手を後ろで組み、小首を傾げながら俺の顔を覗き込むという、実に可愛らしい仕草だ。

 

 1年の時は、担任がお堅いおじ様でつまらなかったと、記憶している。だってあのじいさん、顔が怖ぇんだもん!恐怖でしかなかったわ。

 

 そんな地獄のクラスと言えば「1ーB」で有名だ。俺は「1ーB」出身なのだが、1年生最後の登校日には、同じクラスの奴とは出所だ、出所だ!と騒ぎ、違うクラスの奴には、英雄の凱旋などと、まぁ御大層な言い方をされたものだ。

 

「1年の時は1ーBだったよ」

 

 なんの含みも持たせず、ただ淡々と事実を伝える。ここで1年の時まじ辛かったわ笑とか言ったら蹴られる。というか俺なら蹴る。本当の出身者なら、神妙な顔持ちで、辛そうに言うからな!ソースは俺。

 

 因みに昨日の夜、2年生のクラスは楽しくしてくださいと神に30分祈りを捧げた。寝る前にやっていたので、多分お祈り中に寝落ちして、あの夢を見たのだろう。

 

 今日は、春休み明けの初登校日、つまり決戦の日だ。

 

 1年間が楽しいか楽しくないか、6割決まる、クラス発表は今日なのだ!

 

「ふーん あたしは1ーCだったんだ!」

 

 意外。

 

 俺の頭は意外で埋め尽くされていた。彼女は他人にあまり興味がないタイプなのだろう。大抵の人は、俺のクラスを知ると、ご愁傷さまみたいな視線を送ってくるのだが、この子はそんなのどうでもいいと言わんばかりに、元気よく自分のクラスを告げる。

 

「そう言えば、まだ自己紹介してなかったね。あたしの名前は氷川日菜って言うんだ!よろしくね!」

 

 笑いながらそう言う彼女に見惚れた。とても、美しい.........時が止まったような錯覚さえ覚えてしまったくらいだ。

 

 氷川日菜.........まるで、昔からその名を知っていたかと思うくらい、納得してしまう。名は体を表すとはよく言った物だ。名前からも、美しさが滲み出ている。

 

 しかし、返答に困るなぁ.........これでよろしく!と返しても引かれてしまうかもしれないし、しどろもどろしながら返答すると、気持ち悪がられてしまう。あれ?これ詰んでね?夢は所詮夢ってことなのか。なにそれ悲しい。

 

 いつまでも固まっていても仕方ないので、勇気を持って話をすることにした。頑張れ、俺!

 

「そうなんだ、よろしくね氷川さん」

 

 よっしゃ行けた。不自然さ0で行けた。興味無さそうで実はあります感をとても演出できたと思う。がっついてると思われると恥ずかしいし。

 

 こんなパーフェクトな受け答えが出来た俺を、不思議そうな目で見ている日菜さんがいた。目をぱちくりさせ、キョトンとした表情だ。控えめに言ってとても可愛い。

 

「同学年なのに敬語なんていらないよ〜 しかも、喋り方も素じゃないでしょ?」

 

 やっべ恥ずかしい。めっさ見抜かれてるじゃん。

 

 気持ち悪い、取ってつけたような喋り方も、恥ずかしいからと使った敬語も、彼女にはどうやら、お見通しのようだ。

 

「それと、あたしには双子のお姉ちゃんがいるから、苗字じゃなくて名前で.........日菜って呼んで?」

 

 これは夢の続きか?名前呼びとか嘘だろ。無理ゲーだよ無理無理。

 

 神よ.........高校生で付き合ってもいないのに、名前呼びなど許されるのですか?

 

 あまりの衝撃に神に問いかけてしまったが、ここで一度冷静になろうか。実は俺の名前は「雹崎冬夜」と言う。

 

 ひょうと冬とかどんだけ寒いの好きなんだよ両親.........と、よく愚痴っているが、いい名前だと自負している。一応。

 

 ここで考えて欲しいのは、クラスの席順の事である。普通席順というのは出席番号というものを振り分けられ、それは名前順で1から振られていく。俺の名前は雹崎。彼女は氷川。つまり、よっぽどの事がなければ、俺は彼女の後ろで授業を受けることになる。

 

 日菜さんの後ろで授業を受けるとかこれもう結婚じゃね?(錯乱)

 

 ん?なんでクラスが同じという前提なんだって?それは言うな。俺の夢を壊すな!

 

「わかったよ、日菜。これでおっけー?」

 

 俺は、頑張って名前呼びをすることにした。いや、まじで小中高と、あまり女子と喋ってこなかった俺には難しいのだ。業務連絡くらいしかしてこなかったからなー。

 

「おっけーおっけー!」

 

 彼女が、ご機嫌な様子で答える。

 

「キミの名前はなんて言うの?」

 

 興味津々といった顔で聞いてくる日菜。どんな顔をしてても雑誌の表紙を飾れそうな彼女だ。ドキドキするから心臓に悪い。

 

「俺の名前は雹崎冬夜」

 

「ひょーざき.........とーや.........うーん」

 

 何やら日菜が悩んでいる。俺のあだ名でも決めているのだろうか?俺のあだ名は小中はザキトーだったが。今思うとブリ〇ー感ハンパないな。高校?あだ名で呼び合う友達なんていねぇよ、悪いか!

 

「とー君とやー君どっちがいい!?」

 

 予想の斜め上をいく、回答が来た。

 

 何かすっごくトムヤムクンみたいになっちゃってるよ。とー君に至っては遊戯王かよ。

 

「普通に冬夜って呼んでくれ」

 

「わかった、冬夜君!」

 

 君付けは確定なのね......しかしまぁ、元気がよろしいこと。

 

 そんなこんなで、学校までの道のりはとても楽しかった。

 

 2人で白線ごっこをしたり、しりとりをしながら歩いた。キャッキャウフフ状態である。

 

「クラス、同じになるといいね」

 

 もう学校に着くであろう、そんな時に日菜が呟いた。

 

 天使かな?もうこれだけで好きになるわ。

 

 何やかんやで羽丘学園に到着。校門を抜けた先の広場に、クラスが貼り出されており、生徒達で賑わっている。

 

 俺たちもクラス表を見に、前に行こうとするが、如何せん人の波がスゴすぎる。これは仕方ないか。

 

「人が多すぎるから少し待つか。早めに家出たお陰でホームルームにはまだ余裕あるし」

 

 ここは待ちの戦法一択だ。彼女も同調してくれたようで、スマホを見ながら小刻みに動いている。

 

 5分くらい立っただろうか、人の並が減ってきた。俺たちはその隙を見逃さず、ささっとクラスの張り紙を確認しに行く。

 

 そこで、俺が見たものは.........

 

「2ーA クラス名簿」

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

「29 氷川日菜」

 

「30 雹崎冬夜」

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 隣合う、俺たちの名前だった。

 

 え、嘘?まじで奇跡起きたわ!高校生活勝ち組の仲間入りぃ!

 

 俺は興奮を抑えきれず、堪らず日菜の方を向いた。

 

 日菜も同じ気持ちだったようで、同時に顔を見合わせた。

 

「「いぇーい!」」

 

 柄にもなくはしゃいでしまった。2人でハイタッチしてしまうなんて。

 

「やったね!冬夜君!」

 

「ああ、良かったよ!」

 

「じゃあ早速、クラスに行こう!」

 

 彼女の提案で、クラスに向かうことにした。少なくなったとはいえ、まだまだいる生徒たち。邪魔にならないように移動するとしよう。

 

 昇降口で上履きに履き替える。これが地味にめんどくさい。今はそんなでもないが、授業を受けた後や、文化祭準備で帰るのが遅くなった時は辛たんだ。

 

 2ーAは2階の一番奥なので、2人で階段を上る。なんか、同じクラスに向かう友達がいるっていいな.........しみじみとそう思う。

 

 廊下を歩いていると、リノリウムを踏み鳴らす音が沢山聞こえるが、隣を歩く日菜の足音は特別なものに聞こえた。

 

 しばらく歩いていると、赤い扉が見えてきた。ってかこの高校広すぎだろ、廊下を歩くので疲れるぞ。そんなことを思っていたら、2ーAのクラス前に到着した。日菜が扉をガラガラと開けたので、後ろに続いて入る。

 

 教室内を見渡して見ると、とても美人なギャルがいた。何あれ可愛い。他の人?有象無象みたいなもんだから紹介しないでもいいだろ。

 

 取り敢えず黒板の前に貼ってある、席順を確認し、自分の席に着く。日菜は俺の前の席だし、先に座っても大丈夫だろう。

 

 何の変哲もない自分の席に座り、カバンを横のフックに引っ掛ける。歩いてる人にぶつからないようにしっかりと内側にしまうことも忘れない。

 

 俺が自分の席で一息ついていると、前に日菜が座った。そのまま後ろを向き、俺の席に肘をつく。

 

「ねぇねぇ冬夜君」

 

 俺に呼びかけてくる。

 

「これからよろしくね!」

 

 この言葉で確信した。俺は今までの日常と別れ、非日常と暮らすのだろう。日菜という人間は、凄くて、可愛くて、人を巻き込むような人だ。友達になるからには、生半可な覚悟ではダメだ。そう、直感した。

 

 だから俺はこう返す。

 

「ああ、もちろん。こちらこそ、友達になってくれて、ありがとう」

 

 俺を日常から連れ出し、明るく、キラキラした世界へ連れてきてくれた友達に、感謝の気持ちを伝えるのだ。

 





少しキリが悪い気もしますが、これにて2話目は終了です。

これから先、冬夜にどんなことが起こるのか、楽しみにしていてください。

それでは今回もお読みいただきありがとうございました。

また次回、会いましょう。

(作者としては、天文部でイチャコラさせたい欲がとても強いナリ)


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Let's 文通!

本文は考えるの難しいけど、前書きはなんも考えずに書けて楽だわぁー

なんてことは一切ありません。前書きも考えるの大変です(白目)

異常気象が続いておりますが、皆様お体には気をつけてください。

ではでは、3話目始まり始まり〜



 今日は登校初日ということもあり、すぐ帰れる。とても嬉しい、ハッピーラッキーだ。

 

 当たり前だが、授業などは無く、軽いホームルームと、全校集会をして終わり。これが毎日続けば楽しいんだけどな。明日からは通常授業が始まる。

 

 俺は、前の掲示板のような物に、視線を向ける。明日の時間割りはなんだぁ!?

 

 1 現代文

 

 2 数2

 

 3、4 コミュニケーション英語

 

 5 物理

 

 6 歴史

 

 や っ て ら れ っ か

 

 はぁ!?現代の拷問ってのは随分と陰湿なんだなぁ!日常生活を脅かしにかかるたぁふざけてんのか!

 

「冬夜君、冬夜君」

 

 1人で悲しみに暮れていると、前の席の日菜が話しかけてきた。今は担任が1年の抱負と、自己紹介をしているというのに。

 

 話しかけて大丈夫か?いや、なんか慣れてそう。女子ってコソコソ話上手いしな。電車とか乗ってると怖いよね。JK2人組がくすくす笑ってるとか耐えられないよ。自分が笑われてると思っちゃうじゃん。

 

「ん、どした」

 

 小さな声でそう返す。バレて怒られても嫌だし。

 

「やっぱり授業中は文通の時間だよね」

 

「それどういう意味?」

 

 ごめん日菜、何がやっぱりなのかさっぱりわからないよ。俺はきっぱりと告げる。さっきからパリパリうるせぇな、せんべいかよ。

 

「だからさ、これを使ってお話するんだよ」

 

 日菜が可愛らしいカバンから、メモ帳を取り出す。カバンの模様は、水色のギンガムチェックだ。

 

 なんかよく見るとこのメモ帳超デコられてる。JKカスタム仕様なのだろう。

 

「ああ、なるほど。メモ帳に書いて話すってことか」

 

「そうそう、んじゃまずはあたしから」

 

 そう言うと日菜は机に向かった。多分何かを書いている。

 

 しかし文通ねぇ.........こーいうのって何書けばいいのかイマイチよくわからないんだよな。いっその事SNSのIDでも書いてみるか!?よっしゃ私書いちゃるネ!

 

 .................やっぱり恥ずかしいし却下。それって俺が日菜とL〇NEしたがってるってことじゃん。いや、したいけどさ。あからさま過ぎるのでこれはNGだ。

 

 こんなことを思っていたら、前から机をちょんちょんと叩かれた。叩いたのは日菜で、その手には折りたたまれた手紙が握られていた。

 

 俺の机の上に手紙をポトっと落とし、手を引いていく。

 

 どれどれ〜どんなこと書いたんだー。とても気になるぞい。

 

 丁寧に折りたたまれた手紙を開封する。中に書いてあったのは。

 

「やっほーあたし、氷川日菜だよ、よろしくね!」

 

「誕生日は3月20日 血液型AB型 好きなものはガムとかキャンディで、嫌いなものは味の薄いもの!(豆腐とか)」

 

「趣味はアロマオイルを作ることなんだ〜今度分けて上げるね!」

 

「最近のマイブームはギターで、おねーちゃんがやってるのを見てるるるんって来たから始めたんだ!」

 

 等々、etc..

 

 俺がこの手紙を読んで、いの一番に出てきた感想は、この子書くの早!?である。どんだけ筆進むの早いんだよ、文豪なの?

 

 こんな調子でよく行く店や、友達の事など色々書いてあるなか、俺は最後の1文に興味を惹かれた。

 

「あたし天文部に入ってるんだけど、冬夜君がもし入ってくれるならとってもるるんって来るな!ちなみに部員はあたししかいないから2人っきりになるけどね」

 

 蠱惑的な誘いが、そこにあった。

 

 2人っきり?入ります入ります、光の速さで入部します!俺は欲望には忠実な男なのだ、自分に嘘はつかない!そんな心持ちで生きています。

 

 自分でも引くくらい反応が早くなってしまった。しかし、天文部か。

 

 この前の夢でも、星を見ていたことを思い出すなぁ。綺麗な星空を見上げ2人で.........ぐふふ.........

 

 若干(というかかなり)気持ち悪い笑みを浮かべる俺がそこにはいた。普通に考えて、教室で先生が喋っているのにニヤついている奴がいたら異常者だ。右の方から視線を感じるぞ。多分俺のことを見て気持ち悪がってるんだろう。人間第一印象が大切だからな、嫌われる前に落ち着こう。

 

 落ち着きを取り戻し、マイ筆箱からシャーペンを取り出す。お手紙の返事を書かなくては。

 

 ここは男らしく、スパッと短文で行くか。

 

 取り敢えず、書かないと何も始まらないので、筆を進めることにした。

 

「俺、天文部入るからさ、部活中に自己紹介するよ」

 

 これでいいか。いや、どうだろ、適当すぎるかな。うーん。まぁ、何とかなるべ。

 

 自分の手紙にゴーサインを出すことにした。この内容でバッチリ!

 

 と、ここで問題点に気づく。

 

 え、これどうやって渡すの?日菜、思いっきり前向いてるよ?

 

 そう、どうやってこの手紙を渡すかということだ。

 

 シャーペンでつついてもいいのだろうか。肩を叩くなど以ての外である。そんなことしたら、ヘタレの俺は爆散してしまう。

 

 しゃーない、呼ぶか。

 

「日菜」

 

 机から少し乗り出し、彼女の耳元で囁いた。これならボディタッチしてないしセーフだろ。

 

「ひゃっ!な、何?」

 

 と、思ったのだが。こちらに振り向いた日菜は頬を紅潮させ、驚いている様子だった。声は抑え気味だが、びっくりしすぎて、ソプラノ声で反応したとこが可愛い。

 

「いや、書けたからさ」

 

 要件を手短に伝え、手紙を渡す。

 

「あ、ありがとね」

 

 そう言うと日菜は、手紙をすぐさま受け取り、自分の席で縮こまった。

 

 あれ、俺なんかしちゃいました?

 

 いや、わかってるよ、これが最善手とは程遠かったってことはな。普通にシャーペンでつつけば良かった!まぁ今更後悔してもしょうがない。切り替えてこ。

 

 と、自己フォローを入れていると、日菜が手紙を回してきた。さっきも早かったが、今回は20秒程で帰ってきた。

 

 とにかく中身を確認することにする。

 

「わかった。冬夜君のことは部活中に聞くね。それと、これあたしのL〇NE IDだよ!部員同士の連絡は大切だからね(☆ω☆)」

 

 手紙の右端には丸文字で、英数字の羅列が書いてあった。

 

 俺は今日、快挙を達成しました。美少女と連絡先を交換するという、大きな大きな快挙を。

 




日菜ちゃんの天然タラシ発動!の回でしたね。

少し短いのは許してください!

本当はリサ姉とかも絡ませたいんですが文章力ががが。

でも最近執筆速度が上がっているような気がします。継続は力なりというやつですね。

まぁ、個人的な話はここら辺で。

今回も、お読みいただき、ありがとうございました!


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新たな居場所


書き始めて4日目。日間(加点式・透明)のランキングに乗っていました!

とっても嬉しいヤッタネ!

これもひとえに皆様のお力添えのお陰です。

さてさて、4話目が始まりますよ〜



 楽しかった文通の時間も、終了のお知らせだ。というのも担任が、全校集会があるので体育館に集まれと言い出したのだ。

 

 あれ、もう30分も立った?1人絵しりとりしてたらいつの間にか時間が来たようだ。悲しい。

 

 ぞろぞろと生徒が廊下に出る。出席番号順で行くらしく、俺の前には日菜がいた。

 

「全校集会ってめんどくさいよね」

 

 うなだれながら、元気を欠片も持ち合わせていないような口調で、日菜が話しかけてくる。

 

「まぁ、しょうがないんじゃないか? 早めに帰れるだけで儲けものだと思うぞ」

 

「えぇー?まぁ、そっか」

 

 渋々といった形で了承してくれた。家帰ってゆっくり出来るなら、1時間程度拘束されようが訳無いぜ!

 

 でも今日は.........

 

 放課後には部活というビッグイベントがある!

 

 天文部って何すんのかなぁ.........夕方まで星のことを調べて夜からは外に出て実地調査でもすんのかな。それとも、あの丘の向こうには明日の星がある!とか言って走り込みすんのかな。

 

 .........するわけないか。普通に考えて。

 

 1人で活動内容を予想していると列が動きだした。多分体育館に向けて移動し始めたのだろう。その証拠にさっきまで前の方にいた2ーBが消えている。

 

 ま、考えても無駄か。後でのお楽しみってことにしとこう。なるようになれって奴さ。

 

 思考を止め歩き出す。目指す先は体育館だ。

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 全校集会はつつがなく進行し、もう解散の時間になった。先生との帰りの挨拶を終え、「飯食いに行こうぜ」や「カラオケでも行く?」と言った会話が聞こえてくる。午前中で学校が終わるのは珍しいので、みんなテンションが上がっているようだ。

 

 ん?集会の話は無いのかって?あぁー。ハゲが喋り、違うハゲにバトンタッチして、そのハゲが校長にマイクを渡して校長が話を終わらせた。以上。

 

 え?適当すぎるって?こーいうのは適当なのがちょうどいいんだよ(適当) それになんの話してたか1ミリも覚えてないし、喋れって言われても無理な相談だ。

 

「冬夜君!部活の時間だよ!」

 

 カバンを背負い、椅子を席にしまっている所に、日菜が声をかけてくる。

 

「部活の時間だな。天文部が何をするのか楽しみだ」

 

「えっとねー 星がでてない時間は部室で本とか読んで、夜になったら外に星を見に行くんだ!たまに花咲川学園の天文部と共同活動することもあるんだよ〜」

 

 ほうほう、他校との交流もあるのか、それは凄いな。しかし日菜みたいに、言っちゃ悪いがぶっ飛んでる子と話が合うなんて、どんな子なんだ?

 

 まぁ気になるけど共同活動があるらしいし、そこでわかるか。

 

「ほほう、んで、活動場所はどこなんだ?」

 

 普通は空き教室や部室みたいな所だろう。でもさっきの手紙には1人で活動していると書いてあった。そこから考えるに、どこか特別な場所にあるのでは、と思い質問してみた。

 

 まぁ日菜と2人ならどこでも天国なんですけどねー!はーはっはっ!

 

「物置部屋だよ!」

 

「え?物置部屋なんてあるの?」

 

 そんなとこがあるなんて初耳だ。まぁ学校探検なんてしたことないし、友達もあまり多くはないので当たり前といえば当たり前だが。

 

「うん!普段は授業で使わない物を置いておく部屋を、部室として貸してもらってるんだ」

 

「そうなんだ。じゃあ早速行こうよ」

 

 日菜から説明を受け、俺の心は踊っていた。

 

 やべぇやべぇ、めっさ面白そうじゃん天文部。ちょっと舐めてたわ、これは認識を改める必要があるな。

 

 俺の中の天文部に対する関心がぐぐんと上昇した!

 

 .........それにしても。

 

「腹減ったな」

 

 それもそうだろう。今日は早めに帰れる代わりに午前中しかないのだ。つまり、お昼ご飯がない。

 

 俺としては、通学路で日菜と会う予定も、天文部に入る予定も全くなかったので、お弁当を持ってきていない。

 

 だってお家帰ってYouTube見ながらゆっくりご飯食べようと思ってたんだもん!

 

 とにかく昼飯がないのは死活問題だ。一旦家に帰るか、それともコンビニに買いに行くか。普段なら食堂という選択肢もあるが、あいにく今日は休業だ。

 

 と、思いを巡らせていると。

 

「お腹すいた!?それならちょうど良かったよ。今日あたしがおねーちゃんと自分のお弁当作ったんだけど、忙しいからいらないっておねーちゃんが置いてったお弁当があるよ!」

 

 神が、そこにはいた。

 

 もはや後光がさしている気がする。日菜が光り輝いている.........だと!?

 

「え、まじ!?」

 

「まじまじ!今カバンの中に入ってるから部室で食べようよ!」

 

 日菜の魅力的な提案に乗り、部室を目指すことにする。天文部の活動や、これからの生活。気になることは山ほどあるが、取り敢えずはご飯を食べよう。

 

 昼飯はすぐそこだ!





当面の目標は、短くても毎日更新していくことにします。

多分、というか十中八九大変だと思いますが、そこは気合いと根性でやりきりたい所ですね。

そういえば、お気に入り数とUA数を見てニコニコしている筆者がここにいますよ!

沢山の人が見てくれているということに感動しています。

期待を裏切らず、これからも頑張るぞ!

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!

(4時間目が終わってお弁当箱を開く時のワクワク感ってとんでもないよね)


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美味しい昼食と、これからのこと


日菜ちゃんの手作り弁当.........イイ!

天文部とは一体何をする部活なのか.........今、その秘密が紐解かれる!(大した秘密はないです)

ってな訳で5話目、どうぞ。



 俺たちはお昼ご飯を食べるため、特別棟へ向かっていた。特別棟には、家庭科室や理科室などの実習部屋がある場所だ。あ、あとダンス部とかもあったな。去年の文化祭では体育館の壇上を、所狭しと動き回っていたのが印象に残っている。

 

 教室を出て右へ左へ、階段を登り、また右へ。そんな感じで歩いていたら古ぼけた教室の前へ着いた。多分ここが部室だろう。

 

「とうちゃーく!ここが我が天文部の部室だよ」

 

 日菜が誇らしげに紹介をしてくれる。ちょっと古い感じはするけど、これはこれで味があるというか、秘密基地っぽくてワクワクする。

 

「早速、中に入ろっか!」

 

 そわそわしている俺に気づいたのか、日菜が気を利かせて部屋に入れと催促してくる。こちらとしても願ったり叶ったりなので、横開きの扉に手をかけた。

 

 かけたのだが。

 

 .........なんだか緊張するなぁ。ただ扉を開けるだけなのに、大事のような気がしてきたぞ。実は部活なんてのは全部ハッタリで扉を開けた瞬間「ドッキリ 大成功」と書いてあるプラカードを持った人が出てくるのでは。

 

 不安というのはスパイラルハリケーンするもので、俺の心の中はマイナス思考で埋め尽くされていった。

 

「どうしたの?ドア、固い?」

 

 俺が扉の前で逡巡していると、見兼ねて日菜がそう言った。

 

 いや、全然そんなことは無いんだけれど。まず扉を開けようと思ってなかったから固いかどうかなんて全然知らんし。

 

「いや、そんなことはないんだけど」

 

「じゃあ、入ろ!」

 

 これは覚悟を決めるしかないな。

 

 意を決して、扉を開く。

 

 ガラガラという音がなり、立て付けの悪さと、この教室の古さを感じさせてくれる 。この教室いつからあるんだよ。まずこんなとこにあることすら知らなかったし。これは秘密基地感増してきたぞ。

 

 1歩、教室へ足を踏み入れてみる。

 

 そこは、色褪せた図書館のような場所だった。

 

 誰もが知っている有名小説は勿論、題名も作者も知らないマイナーな本まである。右の壁に寄せてある机の上には、埃を被った高そうな地球儀が置いてあり、ここが物置部屋ということを実感する。

 

 定位置でもあるのだろうか、日菜が迷わず俺の横をすり抜けて行き、部屋の中心にあるソファーに座る。

 

「冬夜君も座りなよ」

 

「いや、そのソファーどしたの」

 

「あたしが入部した時にはもうあったよ。なんでも3年の先輩が昔、持ち込んだんだって!」

 

 いや、意味わからんし。その先輩?とか言う人ぶっ飛びすぎだろ。学校に完全なる私物を持ち込み、あまつさえそれを認可させてしまうなんて。常人の出来ることではない。

 

 ま、日菜の先輩だもんな、もう驚かないぞ。

 

「そうなのか。それじゃ、失礼して」

 

 日菜の隣に腰掛ける。中々に良いソファーなのだろうか。座り心地が抜群だ。

 

 あぁ、この沈み込む感じよ.........もう、最高。

 

 俺がソファーに洗脳、もとい懐柔され、間抜けな顔をしていると、何やら日菜がカバンをゴソゴソと漁っている。

 

 お弁当楽しみだなぁー!ああ、中には夢いっぱい腹いっぱいの希望が詰まってるんだろうなー。想像したら早く食べたくなってきた。

 

「よし、それじゃ食べよっか!」

 

 お弁当を探し当てた日菜がそう言う。手にはピンク色と水色の可愛らしい風呂敷で包まれた弁当箱がつままれており、日菜のセンスの良さが窺える。

 

「こっちのお弁当箱が冬夜君のだよ」

 

「この水色のか」

 

「結構頑張ったから、美味しいと思うけど.........」

 

 美味しいに決まっている(断言)

 

 まず日菜の手作りというアドバンテージの時点で美味い。そこから料理の才能点がプラスされるので、料理が上手くなくてもご飯は美味い。

 

 暴論すぎるだと?じゃあなんだお前ら、日菜の作った飯が不味いって言いてぇのか!?そりゃ少しは不安だわ。本当にこの子が料理なんて出来んのかなって気持ちもある。でもよ、そういう事じゃねぇだろ!愛がこの弁当にはつまってんだよ!その愛の対象は俺じゃなくてお姉さんにだがな!

 

「俺は日菜が作ったご飯を食べれるだけで嬉しいよ。味はあんまり関係ないさ」

 

「そっか。なら、はい!召し上がれ!」

 

 玉手箱を開けるような気分だ。

 

 よし、行くぞぉ!

 

 弁当箱の蓋に手をかけ開ける。中にはプチトマトやレタスなどの彩りの他、唐揚げやフライドポテトなどの男子が好きそうなガッツリ系のおかずも入っていた。

 

 端的に言ってめちゃくちゃ美味そう。

 

 クオリティ高ぇ.........超うまそうなんだけど。日菜って天才かな?

 

「え、超美味しそうじゃん!」

 

 感想を包み隠さず言う。思ったことをそのままにだ。

 

「感想は食べてからにしてよね〜 でも、ありがと」

 

 日菜も弁当箱を開けて待機している。中身は俺の弁当より少なく、にんじんが入っているのが見える。

 

 今から始まるのは「あれ」だ。

 

 そう、あの古来より伝わる「あれ」を今からするんじゃ!とっても大切な事だからね。

 

「じゃあ、せーの」

 

 日菜が掛け声をかける。

 

 この世の全ての食材に感謝を込めて!

 

「「いただきます!」」

 

 二人分の声が部室に響いた。

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 結論から言ってお昼ご飯の弁当はとても美味しかった。唐揚げは時間が経ったにも関わらずさくさくジューシー。トマトもみずみずしく食べやすかったし、なによりフライドポテトが凄かった。味付けに工夫がされているのか、俺の人生で1番美味しいフライドポテトで賞!を余裕でかっさらっていった。

 

「じゃあ、今日の活動を説明するよ」

 

 食後の余韻に浸り、夢見心地だった俺に、日菜が唐突に提案する。

 

「今日の活動は.........無しだよ!」

 

 え、梨狩り?そんなことすんの.........って、え?無しなの?うせやん。

 

 今日は俺の記念すべき初部活だから、特別なことをやりたいと思っていた矢先にこれだ。正直納得がいかない。

 

「どうしてだ?」

 

「今日はあたしに用事があるんだ。元々、このお弁当も学校で食べるつもり無かったし。あ、でも明日はちゃんと活動出来るからね!」

 

 堪らず質問したが、帰ってきたのは曖昧な答えだけ。

 

「それはわかったが、理由とかは話せないのか?やっぱり気になる」

 

 なんの用事か、これだけは聞いておきたかった。同じ部員だからな、これくらいは許されるだろう。

 

「あたし、今からアイドルのオーディション受けに行くんだ!」

 

「は?」

 

 これが、国民的アイドルバンドのPastel*Palettesギター担当。氷川日菜の誕生秘話である。このことを知っているのは、この世で俺と彼女だけだ。




はい、5話目を書き終えました。結構疲れますね(汗)

でも自分で決めたことは曲げません!毎日頑張って書くぞー!おー!

あんまり書くこともないので今回はこの辺で。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

ちなみに天文部の活動は、作者の設定で昼は本を読み、夜は外に天体観測しに行くということになっています。

(紗夜さんのお弁当にポテト入れて、にんじんを抜いてあげるって日菜ちゃん可愛すぎませんか??)


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夜のるぅあいん


文章力も構成力もない私が唯一勝負できるのが更新速度です。

だからこの1日1投稿スタイルは崩さないぞ!

胸きゅん?な6話です



 

 日菜がアイドルのオーディションを受けに行くという話をしてから30分が経過した。

 

 俺は1人で、今日の朝通った道。つまり来た道を引き返して家への帰宅路を歩いていた。

 

 しかし、日菜がアイドルねぇ.........余裕で合格だろ。むしろ選考で落とした奴をクビにするまである。

 

 アイドルデビューしたらどうなるんだろ。日菜の可愛さが全国放映されてファンクラブなんか出来ちまうのかな。なんかムカつくな、それ。俺の平手打ちを耐えれた者だけ、下っ端の雑用係になれるとかしようかな。しないけど。とりまイメトレしてみっか!バシーン!

 

 うーん、罪悪感が完スト!

 

 そんな馬鹿なことを頭の中で実践していると、家の前に着いた。

 

 普通より少し裕福な家庭の我が家。二階建ての綺麗な家だ。

 

 親父.........ありがとな。今度おやつカル〇ス買ってくからよ。

 

 母さんには日頃の感謝を込めて化粧水でも送ろうか。

 

 別に父親とわだかまりがある訳でも、深い溝がある訳でもない。おだてると調子に乗るからだ。別に他意はない。

 

 両親に感謝しながら、家の鍵を開ける。昔、家の鍵をなくしたことがあって、その時は自分の家の塀に乗り、二階にある俺の部屋に忍び込もうとした。無事に部屋に入ることが出来てミッションコンプリートかと思われたが、ご近所さんから俺の強行が親の耳に入ったようで、こっぴどく叱られた。

 

 やっぱ身近な人の結束って怖ぇな。

 

 空いた玄関をくぐり、鍵を閉める。靴を脱いで綺麗に揃えることも忘れない。スリッパに履き替えることは嫌いなので絶対にしないが。カパカパうるさいんじゃ!

 

 廊下をまっすぐ歩き、リビングへと進む。普通は自分の部屋に向かうところだが、俺は家の中でリビングが一番好きだ。だから、ゆっくりするなら自分の部屋には行かない。

 

 理由は特にない。強いて言うなら椅子よりソファーの方が好きだから、だろうか。

 

 リビングの真ん中にでーんと鎮座しているベージュのソファーに座る。大して重くないかばんも足元に置いてしまおう。

 

 あふー。あー。疲れたー。

 

 動きたくないでござるぅー。ほへー。

 

 目の前には無駄にでかい60インチのテレビがある。

 

 いや、無駄じゃないわごめん。ゲームする時超助かってます。はい。

 

 テレビの横にはゲームが山積みされていて、誰が見ても俺がゲーマーだとわかるようになっている。ゲームは俺のアイデンティティだから譲れません。

 

 そーいや日菜大丈夫かなぁ.........折角ID貰ったんだし、連絡してみるか。

 

 俺はスマホを開き、アプリを起動する。

 

 部室前で解散する時に、打ちこんでおいたIDの持ち主へ連絡するために。

 

 この「ひな☆」ってのが日菜だよな。

 

 震える指先を制御し、慎重にフリックしていく。

 

「これから先、アイドルになったら苦しい場面も沢山あると思います。でも日菜にはそれに負けないで欲しい。応援してるから頑張って!」

 

 いや、おかしい。アメリカにサグラダファミリアがあるくらいおかしい。

 

 まずなんでアイドルになった前提で話をしている?それに文面きもすぎワロタ。

 

「オーディション大丈夫そう?」

 

 これくらいでいいだろ。変に飾る方がおかしいんだし。それにこれから連絡なんていっぱいするだろうし、こんなことで一々動揺してたら死んじまうわ。

 

 送った文面をボーッと眺めていると、既読の文字がついた。

 

 はえーな、やっぱり女子はマメなんかな。

 

「今からオーディション。頑張るね」

 

 .........何も言わなくても大丈夫そうだな。日菜ならいけるさ。

 

 俺は、早起きで疲れていたのか、日菜の文面に安心しきって深い眠りに落ちた。

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 やばい寝すぎた。寝たのが1時半で起きたら10時ってやばいだろ。しかもリビングのソファー占拠して。

 

 いや、起こせよ!なんでスルーして寝に行くんだよ俺の親。

 

 まぁ、寝たのは俺の責任だし、親に怒るのはお門違いか。ごめんなさい。

 

 スマホを取り、画面を確認する。

 

 .........なにこれ通知めっちゃきとるやん。

 

 どーせ中学のクラスグループだろ。俺は集まり行かねーつってんだよめんどくせー!

 

 取り敢えず目を通しておこうとアプリを開くと。

 

 そこには「ひな☆」からの着信3件と、トーク通知が370件来ていた。

 

 これは草。いや、これは草でしょ。

 

 ヤンデレマンだぁー!!

 

 ど、どうしよう。

 

 早く返信しなきゃという思いから指の動きが早くなる。

 

 トーク部屋を開き、文面を確認する。そこには.........

 

 大量のスタンプが送られていた。

 

 スタ爆マンだぁー!!

 

 んだよびびらせんなよ!死んだかと思ったわ。

 

 上まで履歴を遡ると会話が3件で、あとは全部スタンプだった。

 

「ひな☆」 「オーディション受かったよー!」 17:51

 

「ひな☆」 「あれ?寝ちゃった?」 18:30

 

「ひな☆」 「じゃあ、喰らえー!\(( °ω° ))/」 18:31

 

 以下、スタンプということである。一瞬でも日菜の事を疑った俺が恥ずかしい。ヤンデレとか俺に恋愛感情持ってるわけないじゃん。何勘違いしてるんだ、どーt.........ゲフンゲフン ピュアの塊くん。

 

「冬夜」 「わり、寝てた。合格おめでとう!」22:04

 

「ひな☆」 「やっと起きた!まぁ!あたし以外るんってくる演奏してた子もいなかったから当然かな〜」22:04

 

 安定の早さだな。てか、演奏?どういうことだ、アイドルなのに演奏するのか?

 

「冬夜」「演奏ってどゆこと?」22:04

 

「ひな☆」「あれ?あたし言ってなかったっけ。アイドルはアイドルでも、アイドルバンドのオーディション受けたんだよ!あたしはギターをギュイーンって感じで弾いてきた!」22:05

 

 なんじゃそりゃ。ギュイーンもよく分からんし、擬音で話す系の子かな?まぁ、薄々気づいてたけど。

 

「冬夜」「そうなんだ。まぁ何はともあれ受かって良かった」22:05

 

「ひな☆」「ありがと!それでね、実は3週間後にライブがあるの!1週間後にメンバーとミーティングして、2週間で仕上げるらしいんだー」22:06

 

「冬夜」「ほほう、それで?」22:06

 

「ひな☆」「それで冬夜君に来て欲しいんだ!おねーちゃんは忙しくて来れなさそうだし、どうかな?」22:07

 

「冬夜」「もちろん行きます」22:07

 

 っは!?条件反射で返信してしまった。まぁ、しょうがないよ、断れるわけないし、なにより日菜のギターを聞いてみたい。

 

「ひな☆」「やった!来てくれるなんて嬉しいよ〜」22:08

 

「ひな☆」「でも、ここだけの話、あたしがオーディションを受けたアイドルバンドは演奏しないんだってー!笑 バックで演奏を流すから楽器を弾いてるフリして欲しいらしいよ!」22:09

 

「冬夜 」「まじか」22:09

 

「ひな☆」「まじまじ!あたしはばりばりギター弾けるんだけどね」22:10

 

「冬夜」「でも、来て欲しいなら行くさ」22:10

 

「ひな☆」「そう言ってくれると助かるよー!冬夜君優しいね!かっこいいし、本当いい人だよ!」22:10

 

 日菜からの突然の褒め言葉に思考が固まる。告白まがいのことをされて平気な程、男の子を捨てていない。

 

 え、まじかよ!これ動画だったらUC流れてるよ?完全勝利UCだよ?

 

「冬夜」「か、かっこいいなんてそんなことにゃひ」22:12

 

 誤字った。とてつもなく恥ずかしい。羞恥心で死にそうなくらいには。

 

「ひな☆」「あはは、噛んでるよ笑 あたし疲れたからもう寝るね」22:13

 

 指摘されちまったよ.........それにしてもお別れか、少し寂しいな。

 

「冬夜」「そっか。おやすみ」22:13

 

 無難に就寝前の挨拶を言う。また明日学校で会えるしいいだろ、これくらいで。

 

「ひな☆」「今日は一日とっても楽しかったよ!冬夜君に会えてよかった!また明日会おうね!おやすみ!」22:14

 

 日菜がそう返信してきた。この文面を読んでいると、不思議な事に、寂しさはもう消え、明日へのワクワク感でいっぱいになった。




6話目終了!すいません、めちゃくちゃ読みづらくなってしまいました!

某連絡アプリ風にしたかったのですが技量が足りない.........

では今回はこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!

(日菜と寝る前のLI〇Eとかしてみてえええ!!)


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零距離の気遣い

今回はとくにありません!じゃあ書くなよ!って思った方々、その通りですすみません。

なんか埋めないと気がすまなくて.........

では、7話目どうぞ!



 日菜とのLI〇Eから一夜明け、時刻はただいま7時50分。

 

 俺はトーストを咥えながら、窓の外に付く水滴を見て辟易していた。心なしかこの部屋とトーストまで冷めてきた気がする。廊下から吹き込む風に震えながら、さっさと制服に着替えるためトーストを口に放り込む。

 

 今は小雨だが帰宅時間には本降りになるだろう。朝のニュース番組のキャスターがそう言っているのが聞こえる。

 

 はぁ.........この天気じゃ外に星を見に行くなんて無理そうだな。楽しみにしてたのに。

 

 自室から持ってきた制服を着る。成長するから、とお母さんが大きめのを買ったのだが、見事に成長することはなく多少大きめのワイシャツになってしまった。

 

 青色のネクタイを締め、上から学校指定のブレザーを羽織り、ボタンを留めれば登校準備の出来上がりだ。

 

「行ってきます」

 

 さぁ行こうか、学びの場へと.........!

 

 そう思ってた時期が私にもありました。

 

 歩き出して15分。昨日日菜と初対面した交差点に来た。そこには黄色のひよこ柄をした傘をグルングルン回している知り合いがいた。ありゃ多分、昨日知り合いになった奴だな。

 

「来た来た!昨日ここで会ったから待ってたんだ」

 

 氷川日菜がそこにはいた。

 

「おはよう」

 

「おはよう!」

 

 1日の挨拶は元気な挨拶から始まるというが、日菜のは元気過ぎるな。魔人ブウを倒せるくらいには元気を集めてるだろ。

 

「それじゃ早速だけど.........入ーれて!」

 

 俺が差していた大きめの傘に来訪者が来る。日菜が横から入ってきたのだ。

 

 これじゃあ学校は学びの場じゃなくて、デートの場だな!

 

 何言ってんのお前、怖。

 

「えぇ.........せっま」

 

「いいじゃんいいじゃん、行こう!」

 

 いや近い近い可愛いいい匂いあぁ死ぬ死ぬぅ.........脳みそとけりゅうううう!!

 

 そこからの事はよく覚えていない。天国のような地獄のような.........臨死体験のような時間で、俺が出来た事と言えば、日菜を濡らさないように傘を持っていることくらいだった。

 

 それから意識を取り戻したのは、1時間目の数学の時間にボーッとして、三角定規で先生に頭をぶっ叩かれてからである。

 

「大丈夫〜?なんか辛そうだけど」

 

「ああ、大丈夫」

 

 3時間目が終わり、10分休憩の時に日菜が話しかけてきた。多分俺が次の時間使う地図帳を出さずに、保健の教科書を出したので、見るに見兼ねてだろう。

 

「つ、次は地理だよ?」

 

 ほら見ろ苦笑いしちゃってるぞ。異常者だと思われてないかしら.........心配だわ。

 

「そ、そうだよな.........」

 

「ほんとに大丈夫?」

 

「た、多分」

 

 純粋に心配してくれる日菜の優しさが身に染みる。こんなに優しいなんて.........

 

 ってかちょいまち、なんか.........透けてね?

 

 湿気で日菜の制服が透けている。教室内は若干暑く、ワイシャツ1枚になっていた為、日菜の下着が見えてしまっている。

 

「ひ、日菜!?あの、その、ふ、服が!」

 

「ああ、これ?おねーちゃんが今日は下に体操着を着なさいって言ってさー。あたしは要らないって言ったんだけど女子のマナーとか言われちゃって.........中に着てるんだ」

 

 お姉さんナイス判断!ぐすっ。悲しくはないよ?うん。別にー?

 

 お姉さんの好感度が1下がった! 現在83

 

 まぁそれはそれとして、とても恥ずかしい。10秒前の自分をぶん殴りたい。なにアタフタしてんだプギャー!!

 

「そ、そっか。あはは」

 

「変な冬夜君〜!」

 

 こんな調子で学校は終わり下校時刻。

 

 雨のせいで部活もないので2人で帰ることにした。

 

「相合傘で帰ろう!」

 

 下駄箱で傘を取り、土砂降りの雨の中帰ろうとしているところにこの爆弾発言。

 

「だって日菜、傘持ってるでしょ」

 

「それとこれとは別だよ 行きもそうしたでしょ?」

 

 んーまぁいいか。俺が濡れても風呂入ればいいだけだし。断る理由もない。

 

「わかったわかった。濡れないように早く帰ろう」

 

 学校の校門から外に出る。日菜が濡れないようにと傘を押し付けたのだが、日菜の押し返す力が中々に強い。

 

「どうした?」

 

「あたしだけ濡れるのはなんか申し訳ないよ。ワガママ言ったのはこっちだし」

 

「そうか」

 

 仲良く肩をくっつける。零距離の気遣いとでも言うのだろうか。

 

 その日は、2人で肩を濡らしながら帰った。




私の小説はセリフの隣にキャラ名を書かないので分かりずらい時もあると思います。まぁ基本的にはビックリマークがついてる時は日菜のセリフですね笑

最近忙しくて執筆時間を確保できないです.........

なんでこんなに忙しいんじゃあ!でもあたい負けへん!

それではこの辺で

今回もお読みいただきありがとうございました!


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板書板書板書.........


ネタが無い!(ド直球)

夜8時くらいに案を捻り出す。トテモタイヘン。

それでは8話目レッツゴー!



 雨に濡れながら帰った日の翌日。俺は若干グロッキー状態で授業を受けていた。

 

 ちくしょーべらんめぇばーろー。さみぃ.........風邪ひく1歩手前だな。

 

 今日の授業は世界史。先生が黒板に書くことを必死に板書していた。

 

 あのじじぃ.........調子悪いって言ってんのにたっぷりと黒板に書きやがってよぉ!(言ってないです)

 

 今はローマの事を勉強していて、5分に1回出てくるネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスに大苦戦していた。

 

 なんでフルネームなんだよ、馬鹿なの?他の生徒も右手と左手痛くて抑えてるよ?高校生にして厨二病パンデミックかよ。

 

 先生に対する愚痴が止まらない。このまま行くと毛量の事をdisりそうなのでやめた。あのバーコードいい波乗ってんね!ボソッ

 

「あの先生の言ってること、全っ然るんってこないね」

 

「ああ、同感だ。これなら鉄棒してた方がまだ楽しい」

 

「あはは。でも今日は部活あるからるるんって出来ると思うよ」

 

「おお、そいつは楽しみだ」

 

「でしょ。あたしもた.........た.........くしゅん!」

 

 日菜が盛大なくしゃみをした。そんなに大きい声じゃなかった為、クラスには聞こえなかったみたいだが俺にはしっかりと聞こえた。

 

 くしゅんって可愛すぎかよ惚れた。

 

「えへへ〜ちょっと風邪気味かな?まぁ、大丈夫だと思うけど」

 

「日菜もか。実は俺も風邪気味で寒い」

 

「えー!?じゃあじゃあ、こうすればあったかいよ」

 

 ギュッ

 

「え、ええ!?」

 

「えへへ〜あっかたいね〜」

 

 日菜が俺の右手を握ってきた。左利きだから板書に影響はないが、顔が熱くなる。日菜の体温は低めなのか、手がひんやりとしていた。

 

「はぁ.........そうだな」

 

 もうなるようになれだ。俺に不利益があるわけでもなんでもないので、日菜の好きなようにさせよう。

 

 そんなこんなで授業も後半戦。ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスの呪縛から解放された俺は、先生の個人的な話をポケーっと聞いていた。

 

「俺が若い頃はな.........」

 

 知らねぇよ、おめぇの髪の毛があった時代の話なんて。紀元前かよ。

 

「今の学生は根性が.........」

 

 なんだそれ、お前らが学生の頃は体力1で耐えたのか?実は今のおっさん世代はナインなガルダだったんだろ。

 

「以上のことから勉学に対する取り組みが疎かに.........」

 

 今思ったけどこれ世界史関係ないじゃん、じいさんの小言やんけ。

 

 はぁ.........つまんな。

 

 ちょっと日菜をからかってみるか。

 

 今も手は繋がれたままで、がっしりと掴まれている。普通に繋いでいる手を恋人繋きにしてみることにした。

 

 どんな反応するかな、おりゃ!

 

 勇気を出して手を絡めてみる。すべすべで柔らかくてあったかくて、なにより幸せだ。

 

「んぅっ.........なぁ〜に?どうしたの?」

 

 彼女は頬を赤らめ、そう呟く。風邪を引いているからか、漏れ出す吐息さえも色っぽく、なんだか如何わしい事をしているような錯覚さえ覚える。

 

「いや、特に理由はないけど。日菜と触れ合いたかったから.........これじゃだめか?」

 

「んーん!あたしも嬉しいよ」

 

「そっか。それにしても.........日菜の手、綺麗だな。すべすべもちもちって感じだ」

 

 肌触り抜群!あの殺人鬼が手を集める理由が少しわかった気がする。いや、嘘ですごめんなさい。

 

「これでも、体のケアには気を使ってるからね!」

 

「確かに、これからはアイドルになるもんな。体調管理とかしっかりしないと」

 

 3週間後にはライブも控えてる。慣れない新生活に体を壊さないといいけど.........

 

「心配してくれてありがと。冬夜君がるんるらるんっ!って来るようなアイドルになるね!」

 

「るんるらるんっか.........楽しみにしとく」

 

「期待して待っててね。あたし、絶対凄いアイドルになるから!」

 

 日菜がそう言うと、丁度授業終了のチャイムがなった。時計を見てみると、3時間目は終わりの時間だ。がさがさと皆、教科書をカバンの中や机の中、果てはロッカーに閉まっている。

 

 俺も例に漏れず、世界史の教科書を机の中に突っ込む。入れる際に若干折れたが見なかったことにしよう。

 

「次は体育だね!」

 

「そうだな。女子はバレーで男子はサッカーだったはず」

 

 日菜は体育着の入った袋を手に持ち、移動の準備を始めている。女子はここから少し歩いた所にある更衣室で着替えるからだ。

 

 野郎は教室だ。今も馬鹿な奴が上裸で暴れ回っている。ってかあいつ、北斗有情拳とかいつの世代だよ。核の炎に包まれてますよ?

 

「じゃあ冬夜君、また後でね」

 

 日菜が教室を出ていこうとしている。手を振っているのでここは振り返すのが道理だろう。

 

「ああ、また後で」

 

 さて、俺はエターナルブリザードでも打って来ますかね。

 

 ちなみに、その日のサッカーは、俺がパス練習で地球蹴りをし、足を痛めて見学になった。




甘々青春劇.........砂糖吐くくらいの甘さで書きたいですねー。

というか原作より日菜が熱血タイプみたいになってきてる気がする.........

ま、まぁキャラ崩壊ってタグ付けてるから多少はね?

それではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!




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近づく距離感

今日は書くことがポンポン出てきた!

おっしゃ頑張るぞぉー!

9話目行くぞぉ!



「おーいてて.........」

 

「あはは、冬夜君もドジだなぁ。地面を蹴って足痛めちゃうなんて」

 

「俺もそう思う。まぁそんなに酷い怪我じゃないから良かった。安静にしてれば1日で痛みは取れるってさ」

 

 俺たちは放課後の時間になり、部室へ向かっていた。右足が痛くて歩き方がぎこちない。

 

 ひょこっ、ひょっこ、と右足ホップ状態だ。

 

「もうそろ着くよな」

 

「うん。ここ曲がったらすぐだよ」

 

 右に曲がるために、壁伝いに歩く。最初からこうすれば良かったと思ったのは内緒だ。

 

 消火器に膝をぶつけないように気をつけながら曲がろう。

 

「ようやく到着か.........はぁ、疲れた」

 

「お疲れ様、中入ったら座ればいいよ」

 

 部室の前へ着き、安堵のため息をつく。タダでさえここまで遠いのに、怪我をしてると、とてつもなく遠い気がする。

 

 扉を開け、中に入る。一昨日座ったソファーを目指し、部屋の中を進んで行く。

 

 ソファーの前に着いたのでおもむろに座る。足首に負担をかけないよう、ゆっくりとだ。

 

「あぁー」

 

「はふぅ.........」

 

 二人揃ってこのくつろぎようである。つ、疲れたんだもん、しょうがないじゃない!

 

 ソファーが二人分の重さで沈み込むが、そこは高級ソファー。高反発でポヨンと跳ね返された。

 

「じゃあ、本でも読もっか!冬夜君は何がいい?」

 

「あー、星に関しては初心者だから入門書とかがいいかな。あるかわからんけど」

 

「ふむふむ、リョーカイ!」

 

 日菜が立ちあがり敬礼する。右手をピシッとし、頭に添えている。顔もいつもより凛々しくて綺麗だ。

 

「うーん。これが.........いやいや、こっちの方が.........」

 

 何やら日菜が唸っている。棚の中やらダンボールの中やら、色んなところを物色しているようだ。

 

「あ、これがいいかな!」

 

「あったー?」

 

「うん!ぴったりなのがあったよ!」

 

 小脇に抱え込み、こちらへ向かってくる。表紙がちらっと見えたが、どうやら写真集らしい。アンドロメダ銀河っぽいのが書いてあるのが見えた。

 

 日菜が靴を脱ぎ、ソファーの上に膝立ちになる。俺たちの間に本が置かれる。どうやら二人で覗き込む形で見るのだろう。

 

 なになに、タイトルはっと.........「宇宙の神秘!星の瞬きと私たち」か.........小学生の自由研究キット付きと、右下にギザギザで強調している。

 

 いや、初心者って言ったけどこれは流石に、ねぇ?

 

 まぁ、何事も見てから決めよう。中身は神がかっているという可能性も無くはない。

 

「取り敢えず見てみるか」

 

「そうだね!じゃあオープン!」

 

 ページが開かれる。最初は目次なので飛ばし、2ページ目だ。そこには星の起源について書いてあった。

 

 かいつまんで説明すると、星は宇宙にある星雲という殆ど水素ガスで構成された物の中で、核融合が起こり、出来るのだそうだ。

 

 ほへ〜。そんな凄いことが起こってたんだなぁ.........

 

「宇宙って不思議だな」

 

 思わず口に出してしまった。目の前に広がる綺麗な写真を見ていたら、自然と呟いてしまったのだ。

 

「宇宙には解明されてない謎がいっぱいあるからね。るんるらるんって来るよね」

 

「.........そうだね」

 

 そこからは二人で静かに読書の時間だ。日菜はとても物知りで、星のことをいっぱい教えてくれた。

 

 そんな感じで読み終わり、俺はとても眠くなっていた。うつらうつらと船を漕ぎ、ソファーの上で眠りこけるところだった。

 

「冬夜君!見て見て!」

 

「んぁ?どーしたんだ?ふぁ.........」

 

 やっべぇねみぃ。ラリホーを食らったくらい眠いぞ。体験したことないけど。

 

 日菜が見て見てと言うので視線をそちらに向ける。どうやら首から何かを下げているみたいだ。眠くてあまり読み取れないが、英語が書いてある事は辛うじてわかる。

 

「なにそれ」

 

「これは去年の文化祭で使ったFreeハグの看板だよ!」

 

 なん.........だと!?フリーハグだと!?この学校ではそんな恐ろしい事が行われていたのか.........

 

「そんなのあったのか」

 

「去年は誰もやってくれなくて.........」

 

 少し寂しそうな口調で言いながら俺の隣に座る。

 

 そりゃそうだろう。女子はそんなもんなくても年がら年中引っ付いてるし、男子に至っては勇気がないに決まってる。それで日菜と抱き合った奴強すぎだろ。

 

「でも今年は冬夜君がいるから良かった!」

 

「そうだな。俺がい.........え?俺?」

 

「じゃあ、練習で.........失礼しまーす!」

 

「うわっ!」

 

 座っていた俺に日菜が抱きついてくる。女の子特有の柔らかさがダイレクトに伝わってとても気持ちいい。

 

「少し、恥ずかしいね」

 

「うん、そうだね」

 

 お互いに顔は見えないが、きっと今の俺たちは、幸せな表情だろう。ずっとこんな時間が続けばいい。そう、本気で思った。

 

「眠いんでしょ?星が見えるまでもう少しあるから、寝てもいいよ」

 

 日菜が穏やかな声で言う。俺の頭は、背中から回された日菜の右手によって今も撫でられている。

 

「うん、そうする」

 

「おやすみ、冬夜君」

 

「おやすみ、日菜」

 

 俺たちは星が出るまで、抱き合いながら眠りについた。その後、俺が起きて、正常な思考回路を取り戻し、やばいことに気づいた頃には、いささか関係が進みすぎていた。




もうちょっとで評価バーに色が付きそうです!読者の皆さん!いつもありがとうございます!

この話を書く前に5連ガチャ引いたら星3のひまりちゃんが来てくれました!うれぴぃ。

それではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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見えないものを見ようとした結果


なんか雨ばっかりで気分が落ち込みますね.........まぁ執筆時間は確保できるんでいいですけど。

ついに部活、始動.........!!

2桁到達の10話です!



「なぁ、いつまでくっついてるの?」

 

「いつまでも!ってのは無理だからあと5分お願い〜」

 

「さいですか」

 

 あと5分ってなんだよ、俺は遅刻しそうな息子を起こす母ちゃんか。

 

 外を見てみると、星が顔を出し、夕陽が沈みそうになっている。天体観測を始めるには絶好の時間だ。

 

「屋上行ったらくっついていいから、取り敢えず移動しよう」

 

「わかった〜」

 

 俺たちは屋上へ向かうことにした。そういえば最近、屋上には霊が出るという噂を聞いたけど.........なんでも、黒髪に血のついた女の霊が、授業時間中に出るとの事らしい。い、今は放課後だから大丈夫だよね?

 

 若干の不安を覚えつつ、屋上への階段を登って行く。あれ?でも確か.........

 

「屋上って鍵閉まってるんじゃなかったっけ?」

 

 そうだ。昼食の時間は一般開放されているが、授業中と放課後は鍵がかかっているはず。

 

 ん?じゃあどうやって女の霊は屋上へ入ったんだ?目撃情報は授業中だよな。やっぱり壁とかすり抜けんのかな?おぉー怖い怖い。

 

「それはね.........じゃじゃーん!天文部は鍵を渡されてるんだ!」

 

 日菜のポケットから、青色の羊毛フェルトで作られた熊のストラップ付きの鍵が出てきた。

 

「なるほど」

 

 どうやら階段の道のりはここで終わりみたいだ。少し先には椅子と机が山積みされている踊り場が見える。

 

 というかよく見たら扉の上に取り付けされている窓をすり抜けられるように机が積まれている。

 

 実は霊なんていなくて、授業中にサボりに来たやつが、窓をすり抜けて屋上にいたのではないか.........そう思うとこにしよう。怖いから。

 

 ってか授業中にその霊が目撃されるってことは何らかの方法で入れるってことじゃん。じゃあ窓すり抜けで確定っぽいな。脅かすなよなぁ.........

 

「じゃあ開けるね!」

 

 霊なんていないぜ!証明をしていたら、日菜が扉の前で鍵を開けようとしている。いよいよ部活開始か.........おらワックワクすんぞ!

 

 扉が開かれ、肌寒い風が吹き込んでくる。4月上旬の、冬の名残がある風だ。

 

「よし、じゃあ行くか」

 

「れっつらごー!」

 

 外へと歩みを進める。防寒着か何か持ってくれば良かったと、後悔したが遅かった。だって、この景色を見て戻ろうなんて考えは全く出てこなかったから。

 

「すっげー!」

 

「わぁー!今日はいつもより綺麗だー!」

 

 上に広がっていたのは星の瞬き。空をキャンパスにした、色とりどりの輝きだ。

 

 それから俺たちは、天体観測を始めた。日菜の星に対する考え、夢なんかも聞いた。天体望遠鏡を持ってきて、スケッチしたりもした。

 

 ってか日菜の夢ビック過ぎでしょ。火星に行くって。常人じゃ思いつかないよ。でも俺は応援してるから、頑張れ。

 

「ねぇねぇ」

 

「ん?どうしたの?」

 

「冬夜君にはさ、夢ってある?」

 

 時刻も8時半になり、そろそろ帰ろうと思っていたら、思いがけない質問をされた。

 

「夢はないかな、でもやりたいことはある」

 

「なになに〜?気になるな!」

 

「日菜とこうやって、いつまでも友達で、一緒に居るってこと」

 

 今日を通してわかった。俺はこの子とずっと一緒に居たいということ。これを恋とか愛とか呼ぶのかはわからないが、少なくとも好意的な感情であることは間違いない。

 

「それはいいね。でも、あたし達に出来るかなぁ?」

 

「出来るさ、きっと」

 

 根拠はないが確信はあった。俺は信じてる、この関係が崩れない事を。

 

「あはは、そうだね!よし、それじゃあ帰ろっか!」

 

 寄っかかっていた手すりから身を離す。もう真っ暗なので日菜を家まで送っていこう。

 

「そうだな、暗いから送ってくよ」

 

「やったー!冬夜君と帰るの楽しみだなー」

 

 そんな会話をし、現在帰宅中。暗い道を歩いているので、光源が街灯しかなく、少し危ない。

 

「暗いからコケないようにね」

 

「わかってるよ!」

 

 本当にわかってんのかしら。さっきからくるくると俺の周りを回ってるけど。

 

「あ!あれ、おねーちゃんだ!」

 

 日菜が前方を指さす。

 

 お姉さん?俺には真っ暗で何も見えないが.........日菜には見えているというのか!?

 

「.........お姉さんあそこにいるの?」

 

「うん!間違いないよ!」

 

 .........いくら目を擦ってもわからないし見えない。お姉さんセンサーでもついてんのかな。

 

「じゃああたし、おねーちゃんと帰るからここまででいいよ!」

 

「そっか。じゃあ、また明日ね」

 

「ばいばーい!」

 

 そう言うと、前へ全力ダッシュしていった。え、早くね?運動神経もいいのかよ。チーターやんけ!

 

「おねーちゃん!」

 

「日菜!いつも言ってるでしょ、外でくっつかないで」

 

「えぇー?じゃあ、お家に帰ったらいいんだー」

 

 声だけしか聞こえないので、顔は見えないがきっと日菜は今ニヤついているはずだ。お姉さんと仲が良さそうで何よりです。

 

「っ!そういう訳じゃないわよ!」

 

「照れてるおねーちゃんも可愛い〜!」

 

「日菜!全く.........今日は貴女の好きなハンバーグを作ろうと思ってたのだけれど、どうやら要らないみたいね」

 

「えっ!?うそうそ、許しておねーちゃん!」

 

「はぁ.........わかったわ。だから早く帰りましょう」

 

「うん!おねーちゃん大好き!」

 

 顔は見えないがお姉さんもとても可愛いのだろう。だってあの日菜の姉だよ!?可愛くないわけがないじゃん!

 

 と、1人寂しく氷川姉妹の会話に聞き耳を立てながら帰る俺であった。




屋上に出るという霊はあふたーなぐろうのボーカルの子ですかね笑

筆者は日菜と同じくらい紗夜さんが大好きです。さよひな流行れ。

それではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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イロトリドリの色

UA数4000突破!本当にありがとうございます!

今回は遂に、パスパレの皆と顔合わせ!

ジュウイチワメデス、ドウゾ



 今日は日菜がアイドルバンドの顔合わせに行く日だ。

 

 俺は学校が終わり一足先に帰宅していて、珍しく自室でうずうずしてした。日菜は終わったらどんな感じだったか連絡するって言ってたけど、やっぱり心配だ。メンバーの皆さんにご迷惑をおかけしてないかしら.........

 

 ピローン

 

 軽快な通知音と共にスマホの液晶画面が光る。どうやら日菜からみたいだ。噂をすればなんとやら。今日の成果報告を聞くことにしよう。

 

「ひな☆」「聞いて聞いて!というか話したい事いっぱいあるから電話しよ!」18:57

 

 え、電話?まぁ、いいk.........

 

 テレテレテレーン

 

 手に持っていたスマホが振動し、着信音が鳴る。着信音はデフォルトの、CMでも使われている馴染み深い奴だ。

 

 相変わらず、発言から行動に移すのが早い子だ。俺もぱすてるぱれっと?とかいうグループがどんな感じなのか気になるし、なにより日菜と話すのはとても楽しい。さっさと電話に出るとしよう。

 

「もしもし、日菜?」

 

「あ、冬夜君!あたし、パスパレ大好きかも!もう、るるるるんって来ちゃって、それで!」

 

「あー落ち着いて?俺も気になることは沢山あるけど、1つづつね?」

 

「うん!まずは彩ちゃんから紹介するよ!彩ちゃんはね.........」

 

 .........それにしても楽しそうで良かった。うんうん。パステルパレットが日菜にとって、居心地のいい場所になるといいな。

 

「イヴちゃんって子はブシドーに憧れてるんだって!」

 

 ぶ、ブシドー?それは具体的にどういう感じなのか.........名前がハーフの子っぽいから日本の文化に興味があるかもわからんな。

 

「後は千聖ちゃん!あたし、有名人と一緒にアイドルやるんだ!」

 

「ん?有名な千聖って、あの白鷺千聖か?」

 

「そうだよ!実際に会ってみると凄い美人で、びっくりしちゃった!」

 

 これは驚いた。あの天才子役と言われた白鷺千聖がいるなんて。俺も昔、白鷺さんが主演していたドラマを見てたけど、子供ながらに可愛いと思ったもんだ。

 

「楽しくやれそう?」

 

 なんか食卓の場で話すことがないお父さんみたいな質問しちゃったよ。

 

「もちろん!あたし、パスパレの皆と頑張るよ!冬夜君も応援してね?」

 

「当たり前じゃん。頑張れ」

 

 日菜の幸せが俺の幸せ.........なんてことは言うつもり無い。ただ、彼女には楽しく元気でいて欲しい。それだけだ。

 

「ありがと!これで、あたしのファン1号は冬夜君だね!」

 

「それは光栄な事だ」

 

「じゃあまた明日会おうね!ばいばい!」

 

 電話越しでも分かるくらいテンションの高い日菜。俺も元気に返したかったのだが、出てきたのは暗い声だけだった。

 

「ああ、また明日」

 

 そう言い放ち、すぐさま電話を切る。愛想が悪い事は自分でも分かっている。でも、それでも今の俺に、いつもと同じような対応は出来なかった。

 

 座っていた椅子から立ち上がり、よろめきながらベッドに倒れ込む。

 

(日菜がアイドルになったら、この気持ちも無駄になっちまうな)

 

 アイドルが恋愛禁止なんてのは世間の常識。そんなことは誰だってわかる。だけどそれを認めることなんて嫌だ。

 

(想うだけなら、いいよな)

 

 日菜がアイドルのオーディションを受けると言った日から、こうなることは決まっていたも同然だった。だって、あの「天才少女」が失敗することなんてあるわけが無い。それこそ、有り得ないというやつだ。

 

 そう、さっきの日菜の発言で決定的になってしまったんだ。

 

 俺は、どこまで行ってもファン止まりだって事が。

 

 とても悔しい。自分の中でどす黒い感情が渦巻いているのが手に取るように分かる。油断したら、涙まで出てきそうな勢いだ。

 

(でも、迷惑をかけることなんて出来ない。日菜がアイドルを頑張るって決めたんだ。その決断に負担をかけることや、足を引っ張る真似なんて出来るわけがない)

 

 感情が決壊し、悲しい気持ちがとめどなく溢れ、零れ落ちてくる。乱れきった心のバランスを取るのが、とても難しく思えてきた。

 

 ピローン

 

 ああ、日菜怒ってるだろうな。無愛想に自分の都合で電話を切って.........嫌われてもしょうがない。

 

 半分諦め、半分自己嫌悪をしながら、スマホの画面を見る。

 

「ひな☆」「もしかして具合悪かった?そうだったらごめんね!あたし、自分の話ばっかりしちゃって。冬夜君の話全然聞いてあげられなかった。本当にごめんなさい」19:18

 

 涙が止まらない。自分のペットが亡くなった時にも、こんなに泣けなかったというのに。

 

 そうだよ、日菜はこんなにも優しい子じゃないか。自分の浅ましさを思い知ったよ。ちゃんと謝らなきゃ、心配かけてごめんって。自分の気持ちを伝えないと。

 

 涙で視界がぼやけてキーボード画面がよく見えないが、頑張って文章を打つ。

 

「冬夜」「俺は大丈夫だよ。心配かけてごめんね」19:20

 

「ひな☆」「ほんとに!?あたし、冬夜君を怒らせちゃったと思って.........でもなんもないなら良かったよ!また明日ね!」19:21

 

「冬夜」「うん、また明日」19:21

 

 別れの挨拶を済ませ、枕元にスマホを置く。今日はもうこのまま寝よう。

 

(人を想うのがこんなに辛いなんて、知らなかった)

 

 日菜のもっとそばに居たい。一緒に居たい。でも、それは叶わぬ夢なんだ。日菜にはもっとカッコよくて、ヒーローみたいな人がお似合いなんだ。俺みたいな奴とは釣り合わない。

 

 なんて言って諦めるつもりはない。

 

 日菜がアイドルだから?俺が微妙な男だから?そんなの諦める理由には微塵もならない。

 

 だって俺は、日菜の隣に居たいから。その為なら俺はなんでも出来る気がしてくる。

 

 まどろみの中へ誘われていく。泣き疲れたんだろう、もう眠る寸前だ。

 

(ひな.........好きだ、よ.........)

 

 意識が落ちる寸前で、想うのは愛しい人。星が大好きで、明るいあの子の事だ。眠るには少し早いが今日くらいはいいだろう。今日は初めて失恋して、初めて真剣に、恋を始めた日なんだから。

 

 こんな事を考えていたらとっても素敵な星の夢が見れるような気がしてきた。それこそ俺達が出会った、あの夢の続きが。




冬夜君.........頑張れ!俺は応援してるぞぉ!

今回は少し長めでしたね。でも、書いててとっても楽しかったです。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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変わり出した世界

ここから物語は終盤に向けて加速する!(多分しない)

終わり方はぼんやりとは決めているんですがタイミングが分からんのです。

では、12話目に突撃〜!



 もうこの際はっきり言おう。寝起きの気分は最悪だ。

 

 星の夢なんて全く見なかったし、泣きすぎて枕は冷たいし、何より起きたのが遅刻寸前の時間ってのが1番辛い。

 

 でも、晴れやかな気持ちだ。自分が何をしたいのか、誰が好きなのか、再認識することが出来た。

 

 取り敢えず今、優先すべきは始業時刻までに教室に滑り込むことか。

 

 そうと決まったら急がないとな。寝巻きをさっさと脱ぎ、クローゼットの中から制服1式装備を取り出し装備する。時刻は現在、8:23分。

 

 40分にホームルーム開始だから、後17分か.........走れば間に合うだろ!(能天気)

 

 おおお!燃えろ!オレの小宇宙よ!!

 

 階段を高速で降り、玄関口までダッシュで行く。靴を履き、そのまま勢いよく外へ飛び出す。でもちゃんと鍵は閉めることは忘れない。

 

 それから全力で走り、席についたのは、チャイムが鳴る10秒前だった。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「あはは、だから疲れてるんだね」

 

「はぁはぁ.........遅刻するといけないからな。全力疾走したよ」

 

「お疲れ様。それでさ、言いづらいんだけど.........」

 

 俺がめちゃくちゃ疲れて机に突っ伏していると、日菜が申し訳無さそうに話しかけてくる。

 

「今日から毎日バンドの練習があるんだけど.........それで、部活は当分無しになっちゃうと思う」

 

「ああ、そんなことか。俺は大丈夫だよ。日菜のアイドル活動、応援するって言ったろ?俺の事は気にすんな」

 

 俺は平気で嘘をついた。本当は天文部で一緒にいたいし、大丈夫なはずがない。でも、昨日決めたんだ、絶対日菜の足枷にはならないって。その為には俺の我慢が必要なんだ。

 

「冬夜君.........ありがと!あたし、頑張るよ!」

 

 一瞬悲しそうな目をしたけど、日菜は直ぐにいつもの元気な目をしてくれた。良かった、バレてないみたいで。でも案外、この子は鋭いから、察してくれて気丈に振舞ったのかもな。

 

「ああ、頑張れ。俺は疲れたから少しそっとしといてくれ」

 

 そう言って、伏せ目がちに教科書を見る。

 

 今日の授業はずっと上の空だった。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 学校が終わり、日菜はすぐに事務所に行ってしまったので、俺は1人で帰っていた。下を向きながら、のろのろと歩いているところに、右から昨日聞いた声が聞こえてきた。

 

「では、今日の練習はお休みと言うことで。湊さん、また明日会いましょう」

 

 この声は.........間違いない。日菜のお姉さんだ。すぐさま顔を右に向け、声のする方向を見る。

 

 そこに居たのはとても綺麗な女性だった。身長は日菜よりも高く、髪も長い。目元はキリッとしていて、とても凛としている。でも、どこか優しそうに見えるのは、きっと気のせいじゃないだろう。

 

 お姉さんと目が、合った。

 

「あ、あの!もしかして日菜のお姉さんですか!?」

 

 無意識に話しかけてしまった。自分でも何をしているのかわからない、気づいたら話しかけていたのだ。

 

「そうですけど.........貴方は?」

 

「俺は雹崎冬夜って言います。日菜とはクラスメイトで、天文部を一緒にやってるんですけど.........」

 

「はぁ.........貴方の事はわかりましたけど.........私に何か用ですか?」

 

 いや、そりゃそうなるよな、知らんやつにいきなり話しかけられたら。何か用があると思われるに決まってる。でも、生憎用があって話しかけた訳では無い。

 

「え、えっと.........用は無いんですけど、昨日の夜、日菜と話してたのが聞こえて、声が同じだなって思って、話しかけちゃいました」

 

「そうですか、私は氷川紗夜と言います。日菜がいつもお世話になっております」

 

 紗夜さん.........か。ギターケースを背負ってるけど、この人もバンドとかやってるんだろうか。

 

「いえいえ、お世話だなんてとんでもない!それより、氷川さんもバンドやられてるんですか?」

 

「妹と同じになってしまうので、紗夜と呼んでください。それより、私もとは?」

 

 やっぱり姉妹なんだな、言ってることが全く同じだよ。やっぱり苗字が同じだと名前で呼んで欲しいものなのかな?

 

「あれ、聞いてないんですか?日菜もギターを始めたんですよ。なんでも、アイドルをしながら楽器を演奏する、アイドルバンドという奴らしいんですけど」

 

 紗夜さんの顔がみるみる怒りに染まっていく。でも、それ以上に悲しそうだ。まるで、子供が自分の好きな物を横取りされたみたいな。

 

「それは.........本当ですか?日菜は.........本当にそんなことを始めたんですか?」

 

 ものすごい剣幕で詰め寄ってくる。正直、とても怖い。昨日の会話からは想像出来ない怒り方だ。

 

「は、はい。日菜は今日もアイドル活動のレッスンがあるって言ってましたよ」

 

「またなの.........またあの子は私から奪うのね.........」

 

 下を向き、拳を握りしめる紗夜さん。

 

「私にはギターしか無いのに、どうして.........」

 

 とても小さい声で、恨み言を呟く彼女は、とても悲しげに見えた。

 

 多分、日菜と紗夜さんには溝があるのだろう。それも、ただの溝じゃない。埋めることなんて、不可能に近い程の、溝が。

 

 でも、そうじゃないだろ。それじゃダメなんだよ。日菜が紗夜さんと、紗夜さんが日菜と、ちゃんと向き合わなきゃダメなんだ。それは当事者である彼女たちにしかできないことで、俺には無理なんだ。

 

「紗夜さん、日菜は今頑張って変わろうとしてます」

 

「それを姉である貴女が信じなきゃ、誰が信じるんだよ!?」

 

「俺は紗夜さんと日菜に何があったかなんて知らない!でも、姉妹なんだろ!?」

 

「俺には出来ない事なんだよ!」

 

 言ってしまった。思ってる事、全部。これは俺のわがままで八つ当たりなのかもしれない。でも、日菜と紗夜さんには笑っていて欲しい。その為には仲直りしなきゃいけないんだ。

 

「貴方に.........私の何がわかるんですか!?」

 

 飛んできたのは、罵声だった。せき止めてた感情を一気に吐露するように、声を荒らげている。

 

「いつもあの子ばかり!私の努力なんて、才能で軽々しく追い抜いていく.........」

 

「ギターだけは負けないと、頑張っていたのに!それすらもあの子は奪うというの!?」

 

「私は凡人だから、天才の日菜といつも比較されて生きてきた」

 

「私が二等を取った時、一等のあの子が私に言うの、おねーちゃん、おねーちゃんって」

 

「何よそれ.........勝者の余裕?敗者への慰め?いい加減鬱陶しいのよ!」

 

 紗夜さんが息も切れ切れに叫ぶ。そして、同時に俺は悟った。

 

 ああ、この人、俺と同じだ。どうしようもない壁にぶち当たって、どうしたらいいか分からなくなっているんだ。

 

 きっと、認めたくないはずだ。誰しも、自分が劣っているなんて。だから紗夜さんは自分の存在を認めさせる為に、ギターを始めた。でも、それが日菜に邪魔された、と.........

 

「なんだよそれ.........」

 

「一番比較してんのは紗夜さんじゃないか!」

 

「日菜は日菜、紗夜さんは紗夜さんだろ!?そんな結果だけ、表面上の事だけ見て比べんなよ!」

 

「それに、日菜が余裕や慰めでそんな事は言わないって紗夜さんならわかんだろ!」

 

「日菜は紗夜さんが好きなんだ、もうちょっと歩み寄ってあげてくれよ.........」

 

 叫びすぎて声が掠れる。でも、伝えたいことは全部伝えた。紗夜さんの顔を見る。

 

 泣きそうで辛そうで、でもふっ切れた、そんな顔をしていた。

 

「そう.........ね。貴方の言う通りだわ。私は私、日菜は日菜。どうしてこんな簡単な事に気づかなかったのかしら」

 

 紗夜さんが晴れやかな表情でそう言う。日菜とは違うって、自分の弱さを認めたんだ。

 

「ありがとうございます、雹崎さん。貴方のお陰で大切な事に気づけました」

 

「い、いえ!こちらこそ生意気な事言っちゃってすみません!」

 

「大丈夫です。それにしても.........ふふっ、なんだか怒られて嬉しかったです」

 

「両親も先生も、私を怒ることなんて滅多に無かったですから。なんだか新鮮で」

 

 紗夜さんが笑う。あれ?めちゃくちゃ可愛い.........いや、そりゃそうだろ、日菜の姉なんだから。

 

「そう言って貰えると嬉しいです。じゃあ、俺はこれで」

 

 そう言い、立ち去ろうとしたが、紗夜さんに服の袖を掴まれる。う、うん?中々引っ張られるな。氷川姉妹は力が強いのか?

 

「あ、あの.........その、わ、私とも、友達になっていただけますか?」

 

 上目遣いで、紗夜さんがフレンド申請してくる。え、当然受理でしょ。

 

「ええ、もちろんいいですよ」

 

 この日を境に、俺には魂でぶつかりあった友達が出来た。

 




書きたいことがぐちゃぐちゃになって伝わってないような気が.........不安です。

やばい紗夜さん可愛い。好き。

ちなみに紗夜さんは攻略しません。すみません。

別の作品でもしかしたらやるかも?って感じです。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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それでも前へ進もう

評価バー色付き&執筆開始時日刊ランキング80位!

本当にありがとうございます!ありがとうございます!

ターニングポイントな13話目です!



 紗夜さんと醜くみっともない、でも大切な口論をした日から、実に2週間が経過していた。

 

 2週間と言えば今日は前々から約束していた、日菜の所属アイドルバンドであるパステルパレット(通称パスパレ)の初お披露目の日である。

 

 意外とライブ開始の時間は早く、眠い目を擦り朝5時半に家を出発し、7時半に会場へ着いたのだが、そこにはもう長蛇の列が出来上がっていた。

 

(後ろの方の人達は普通なんだけど.........前の方に並んでいる人強すぎだろ、リュックサックにポスター差してるやつ初めて見たわ)

 

 ネットでしか見たこと無いものに、若干の興奮を覚えテンションが上がる。そんなこんなでスマホをいじったりして時間を潰し、会場入りしたのは1時間半後の事だった。

 

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(うぉー。すっげーセットだな)

 

 ライブ会場の中に入った感想は、月並みだが可愛い。これが一番合うだろう。

 

 暗い廊下をスマホの明かりを頼りに進んで、開けた場所に出たと思ったら、そこがライブ会場だった。

 

 明るい色でコーティングされた壁と床。それに、キャンディやマカロン、シンデレラが眠ってそうなベッド。まるで女の子の部屋みたいな装飾だ。1度も入ったことないけど。

 

 なるべく、日菜の姿が見れるように前へ行きたいのだが、そこへ立ちはだかるは人の壁。

 

 1万人もいるだけあって会場の熱気は凄まじく、立っているだけで体力を持っていかれる。

 

(いやしかし、あちーなぁ.........春なのにこんなに暑いのか?次のライブの時は熱中症対策してこよ.........)

 

 しょうがないので後ろの方で我慢しよう。つま先立ちすれば余裕で見れるし、大丈夫なはずだ。

 

 そんな感じで暑さと格闘し、他のアイドルグループを見ていると、遂に彼女達の番がやってきた。

 

『続きまして、新生アイドルバンド「Pastel*Palettes」の登場です!このステージで初お披露目となる彼女たちを、どうぞご覧ください!』

 

(お、ついに始まるのか)

 

 舞台袖から壇上へ、5人のアイドルが出てくる。あ、日菜いた。

 

「みなさーんっ!はじめましてーっ!私達、Pastel*Palettesです!略して『パスパレ』って呼んでくださいね♪」

 

 えーっと、白鷺さんはわかる。あの背が高くて白い髪の子が多分イヴちゃんで.........んで、今MCしてるのが彩ちゃん、だよな。

 

 あれ?じゃああの子誰だ?日菜からの話だとエア演奏をするはず。ドラムの前に居るけど.........普通に考えてドラムの叩いてるふりって無理くね。

 

 え、じゃああの子本当に演奏すんの!?まじかよ、すげぇ.........超楽しみ。

 

「私達のことをよーく知ってもらうためにー.........まずは1曲聞いてくださいっ!『しゅわりん☆どり〜みん』!」

 

 しゅ、しゅわりんどりーみん?それは何ともメルヘンチックな曲名ですね.........まぁアイドルらしくていいと思うけど。

 

 曲が始まり、お客さんの歓声が上がる。うん、中々にいい曲だ。事前に日菜から聞いていなかったら大興奮していただろう。

 

 でも、ドラムを叩いてる子、とんでもねぇな。とてつもなくカッコよく見えるぞ。音楽知識は皆無だし、センスの欠片もないけど、わかる。あの子は凄いドラマーだってことくらいは。

 

 ドラムの音色にうっとりしていると、日菜が元気にギターを弾いているのが見えた。ってか日菜は引けるんだからちゃんとやればいいのでは.........?

 

 まぁ大方、お客さんを騙しきれるか、ドキドキするね〜!とか言ってみんなに合わせたんだろ。.........うん、脳内再生余裕だったわ。

 

 興奮と熱狂に包まれたライブ会場。観客はライブに忘我し、ステージ上の彼女達はとても楽しそうにしている。そんなPastel*Palettesの初ライブは大成功に見えたが.........

 

 ガタンッ!

 

(ん?バックサウンド止まったけど.........あれ?これって結構やばいやつじゃね?)

 

 いきなり演奏が止まった。観客達も、どよめき驚いているが、一番驚いているのは壇上にいる彩ちゃんだろう。ここからでも分かるくらい体が震えている。

 

『なんだ?音が止まったぞ?』

 

『機材トラブルとかじゃないの?』

 

『もしかして、今のって口パク?』

 

『ていうか、演奏もしてなくない?』

 

『演奏どうしたー?』

 

 不安と疑問は波紋のように広がり、今や会場全体が猜疑心でいっぱいになっている。MCの彩ちゃんが頑張って喋ろうとしているが、動揺で喋れず、漏れだした吐息は、無慈悲にも会場の野次に飲み込まれ消えていく。

 

「みなさん、ごめんなさい。機材のトラブルで、残念ですが演奏ができなくなってしまいました」

 

「私たちは、今後もライブを行っていく予定なので、もしよければ遊びにきてくださいね。それでは、『Pastel*Palettes』でした!」

 

 白鷺さんが、急遽MCをする。やっぱりプロなんだな、不測の事態にはちゃんと対応できるのか。

 

『どうなってんのー!?』

 

『これでおわりー?』

 

 彼女達がそそくさと舞台袖へはけていく。あ、焦りすぎて彩ちゃん若干コケた、可愛い。

 

 うーん、一応どーすんのか日菜に聞いてみるか。よし、そうなれば一旦外に出ないと。

 

 会場を後にすることを決意し、出口を目指す。人の波に揉まれ、会場の外に出た時には疲れきって満身創痍だった。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

(はぁ.........疲れたぞおい。取り敢えず電話してみるか)

 

 日菜に電話をかける。4コールしても出ないので、少し日菜の状況が気になる。

 

「あ、冬夜君!?」

 

 やっと繋がった。まぁ今忙しいのは分かりきってた事だから、しょうがない。

 

「ああ、日菜。そっちはどう?パスパレ大丈夫なの?」

 

 これからアイドル活動がどうなるのか、メンバーの子達はどうなるのか、心配なことは沢山ある。でも、彼女は、彼女だけは違った.........

 

「大丈夫。彩ちゃんの目の色がビビビッて変わったからね。パスパレは前へ進むよ」

 

 .........無駄な心配だったみたいだな。それもそうか、日菜がネガティブになる訳が無い。そんな前向きな姿勢が、俺は好きなんだ。

 

「そっか、忙しそうだし、切るね」

 

「うん、心配ありがとね。んじゃ、またね〜!」

 

 日菜との電話を切り、スマホをしまう。会場の暑さのせいで汗をかき、フィルムがヌルっとくるのが少しムカつく。

 

(前に進む.........か)

 

(俺も前に進まないとな)

 

 今日は自分へのご褒美に、帰り道で大好きな抹茶ラテを買おう。

 

 暑さと人の波と戦った、ご褒美に。

 

 Pastel*Palettes結成に、乾杯。




なんか原作改変しすぎてすみません.........

そんなこんなで原作話でした!

次回はオリジナル投下したい!

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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朝はパン!昼もパン!夜もパン!いつもパン!

バンドリーマーの方ならタイトルで誰が出るのかわかりそう(小並感)

シリアス回が続いてたのでゆるゆるな日常回の14話目です。



『パスパレ、大失敗!口パク&アテフリがデビュー当日にバレる』

 

 俺が起床し、日課であるネットニュース漁りをしていたら、目に飛び込んできた。トップを飾るのは余程のことじゃないとないことなのだが.........やはり芸能界に取っては大きい出来事なのだろう。

 

 まぁ、日菜が大丈夫って言うなら心配はいらないだろう。謎の安心感があるし。

 

 それよりも.........今日は日曜日!ということはですよ!?

 

 俺の愛食している山吹ベーカリーのセール日だ!

 

 何にしようかな。ウィンナーパンにカレーパン。いや違う、やっぱりチョココロネだろ!

 

 最後までチョコたっぷり、生クリームとチョコレートの黄金配分。あんなに完璧なチョココロネは他にない。

 

 うーん考えただけでお腹がすいてきた。よし、善は急げだ!商店街へ繰り出すぞ!財布とスマホを持って、夢のパン王国へレッツゴー!

 

 そう思ってた時期が私にもありました。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「な、なんじゃこりゃ.........」

 

 山吹ベーカリーに着き、ウキウキ気分で入店してみたものの、そこにパンはほとんどなく、トレーの上から消えていた。チョココロネはともかく、いつもあるパンダちゃんパンまでないなんて.........

 

「むっふっふ.........」

 

 店の奥にあるカウンター席から女の子の声がしてきた。席に座ってフードを被っているからどんな人なのか全然わからないが。

 

 気になったので少し近寄ってみることにする。って、あいつめちゃくちゃパンの袋持ってるじゃん!さては、買い占めやがったな!?

 

「あのぉ.........少しいいですか?」

 

 内心、怒りで震えているが基本チキンなので物腰柔らかに話しかける。だ、だって人間怖いじゃん?

 

「なんですか〜?モカちゃん、パンを食べるので忙しいんですけど〜」

 

 こ、このアマぁ.........しょうがない、何とかパンを貰えるように交渉するか。

 

「お忙しい中すいません.........こちらのパンは全て、このお店で購入なされたんですか?」

 

「そうだよ〜。なんてったって、今日はセールの日だからねぇ〜」

 

「そうですよね、セールですもの。いっぱい買いたくなるのもわかります。.........ところで、そのパン。どれか売ってくださりませんか?」

 

 チョココロネとかメロンパンなんて高望みはしない.........だからせめてきのこグラタンパンくらいは欲しい!

 

「いいよ〜。1人で食べるより、2人で食べた方が美味しいし〜」

 

 え、この子聖人かよ、超優しいじゃん。見直したぜ、フードの少女よ!

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「いいよいいよ〜。ほら、隣に座りなよ〜」

 

 席に座ることを促される。椅子も引いてくれて、至れり尽くせりだ。

 

「で、なんのパンが欲しいの〜?」

 

「お腹空いてるので、なんでもいいです」

 

「じゃあこの.........っと、その前に自己紹介しようか〜。折角のパン友なんだし〜」

 

 ぱ、パン友ってなんぞや.........まぁ字面から推測するにパンを一緒に食べる友達ってことか。

 

「え〜っと、モカちゃんはモカちゃんです。以上〜」

 

 ん?この情報量だけだとモカちゃん=モカちゃんということしかわからないんですが。もっと他にないのん?

 

「うそうそ〜。ちゃんとするから〜」

 

 .........どうやら仕切り直すらしい。今度こそ、ちゃんとしたのを期待しているぞ。

 

「FJKの青葉モカだよ〜。好きなものはパンで、嫌いなものはおかんモードのひーちゃん〜」

 

 フードを取り、青緑色の目をした美少女が、自己紹介する。

 

 この子も可愛いなぁ.........よく考えたら最近、美少女とエンカウントしすぎじゃね?春だからか、春だからこんなに美少女と出会うのか!?(謎理論)

 

「そうですか。俺は高校2年、羽丘学園の雹崎冬夜です。よろしくお願いします」

 

 つーかこの子、高1かよ。思いっきり敬語使ってたよ、まぁパンをくれるお方は、目上の人だけどね!

 

 自分で言ってて悲しくなったぞ、プライドの欠片もない男よ。

 

「え、同高じゃないですか、先輩〜」

 

「もしかして、青葉ちゃんも羽丘なの?」

 

 これは驚いた。うちの学校にこんな女神がいたなんて、世界は広いな。

 

「そうなんですよ〜。ていうか〜、モカちゃんは友達と対等な関係をモットーにしているので、敬語なんていらないです〜。あと、モカちゃんはモカちゃんなので、モカちゃんって呼んでください〜」

 

 何回モカちゃんって言うの?というか、モが多すぎる。

 

「おっけーモカちゃん。.........それより早く食べようぜ。パン、好きなんだろ?」

 

「好き〜」

 

 やっぱり休日は外に出てみるもんだな。こんなに楽しいことが外には待ってるんだから。

 

 俺はこの日から、日曜日のパン友が出来た。




あと、が.........き?ナニソレオイシイノ?

FJKについて説明すると ファースト 女子 高校生 つまり1年生のことです。わかりづらくてすみません!

それとUAの伸び方が凄まじい.........いつも応援ありがとうございます!

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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広がる交友関係

執筆開始時日刊ランキング11位!!

いや、見た時驚きすぎて心臓止まりそうでした.........

本当にありがとうございます!

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以下、真面目な話というか活動報告

火曜日から修学旅行なので更新できません.........

毎日やる!という目標の元、頑張って続けてきたのですがとても無念です。つーか悔しい。

金曜日には必ず更新します。待っててください

それじゃ湿っぽい話はここまでで。

遂にギャル姉が登場の15話目!



 謎の美少女モカちゃんと、パンを食べた日から一夜明けた。世界というのは残酷で、日曜日という幸せな時間のあとには、月曜日という地獄を持ってくる。まぁ、今日の日菜は、事務所入りが遅いらしい。ということは星は見れないにしろ、放課後に活動する時間はあるということだ。

 

 久しぶりの部活に心が踊る。でも今はクラス前の廊下を歩いているので奇行には走らないようにしよう。スキップなんてした日には掲示板にお尋ね者として張り出されてしまう。

 

 まぁ、懸賞金は5億くらいかな?いや、あえての0で、めちゃくちゃ強いってのもありだな.........

 

 訳の分からない中二妄想をしているとクラスの前に着いた。いつもより着く時間が早いのは、きっと足取り軽やかだったからだろう。

 

 ここで扉をバゴーンッ!って開けて能力発動!みたいな、ふふっ。

 

 もちろん扉をバコーンなんてしないし、能力なんてのも無い。普通に扉を開けて邪魔にならないようにさっさと入るだけだ。現実悲しい。

 

(あーカバン重いなぁ.........早く席に置きた.........誰あのギャル怖い)

 

 教室に入り、自分の席に着こうと思った。思ったのだが.........

 

 なんと、自分の席は見知らぬギャルっぽい人に占領されていた。髪型もおしゃれでスカートもなんか短い気がする。え?え?どうすればいいの?

 

「でね、リサちー!そしたらおねーちゃんが.........」

 

「あはは、日菜もあんまり、紗夜の事困らせちゃダメだよ?」

 

「そうするよ〜!ん?冬夜君!早くこっち来なよ!」

 

 .........っは!?あまりの衝撃に立ち尽くしてしまった。てか日菜の奴こっちに来いだって?俺がそんな陽キャ全開のシャイニングエリアに立ち入れるとでも?

 

「いや、えっと.........そちらの人は?」

 

 恐る恐る尋ねてみる。ギャルと話すの未知との遭遇すぎて怖い。あ、でも香水のいい匂いがする。

 

「あ、急にごめんね!アタシは今井リサ。リサって呼んでね!」

 

 おおう、おうおう。勢いが凄くてオットセイみたいになっちゃったよ。最近名前呼びが流行ってるのかしら、日菜に紗夜さんにモカちゃんにリサさん.........みんな可愛いな。

 

「リサちーはね、おねーちゃんと同じバンド、Roseliaでベースやってるんだよ!」

 

「紗夜さんと.........?」

 

「え?冬夜君、おねーちゃんのこと知ってるの!?」

 

 あ、そうか日菜知らないんだ。俺が紗夜さんにめちゃくちゃ失礼な事言ったの.........今思い出しても、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

「うん、この前紗夜さんとお話したんだ」

 

「まぁ、それは置いとくとして。リサさんは日菜と仲いいんですか?」

 

 百合百合フィールドが展開されているところに俺がいるのはおかしい気がする。客観的に見たらギャル2人にパシられている陰キャみたいな感じだろう。俺だけ席なくて立ってるし!

 

「仲いいよねー!」

 

「ねー!」

 

 .........見てわかるやつだ。この子達めっちゃ仲いいでしょ。ほっといたら抱き合ってそうなレベルには。

 

「ほらほら、冬夜君も立ってないで座りなよ」

 

 いや、リサさん.........そんな事言われても椅子ないんですが。リサさんが座っている席が俺の席ですし。

 

「じゃあ、あたしの席、半分こしよ!」

 

 日菜に右腕を引っ張られる。日菜が少しズレたのか、椅子にはもう一人分くらいはギリギリで座れそうなスペースが出来ていた。

 

「い、いやいやいらないいらない!俺、時間潰してくるから!」

 

 日菜に掴まれた腕を振りほどいて教室の外へ逃げる。恥ずか死ねるわぁあああ!

 

 冬夜 は 日菜とリサさん から逃げ出した!

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「あはは、からかいすぎちゃったかな〜」

 

「あの子、面白いねー」

 

「でしょ!?おねーちゃんと話してる時くらい面白いんだよ〜」

 

「うんうん、アタシにもわかるよ」

 

「あー早く放課後にならないかな〜」

 

「日菜、放課後になにかあるの?」

 

「うん!今日はね〜冬夜君にあたしのギターを聴かせてあげようと思ってね!」

 

「それは楽しみだねぇ.........日菜の言葉を借りるなら、るんって来るって感じ?」

 

「ううん!るんるらるんっ!だよ!」

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 教室の外でアプリをぽちぽち。こういうところが友達いないって言われる原因なんだよな。それはわかってる、わかってるけど.........ゲームたのちいじゃん?(崩壊)

 

 スマホの時計には、8時37分と表示されている。始業時刻の3分前だ。そろそろ戻るとしよう。

 

 教室に戻ると、リサさんが俺の席から離れ、自分の席に座っていた。あ、手を振ってくれてる。小さく振り返しておこう。ふりふりと。

 

 あ、あの人机に顔伏せて震えてるよ。絶対リサさん笑ってるだろ、まぁ無表情で手を振られたら面白いか、主に顔が。

 

 自分の席につき、机の中にスマホをしまう。ん?中になにか入ってるぞ、これってカビたパンってやつか?

 

 いや、サイズ的に全然違うな、これ紙っぼいし。

 

 机の中から手紙のようなものを取り出す。ってかこれエグイな。日菜のJKカスタムより進化してるよ、遺伝子操作レベルだよこれ。

 

『いきなりごめんね!驚いたよね、朝来たら知らない人が席に座ってたら。アタシの事はリサでいいし敬語もいらないから!あ、あと近くのコンビニでバイトしてるから会ったらよろしくね!』

 

 .........俺、最近女の子に翻弄されすぎじゃね?あ、リサさん親指立ててサムズアップしてるよ。

 

 っていうか前に座ってる日菜はなんでそんなにむくれてるんですか。可愛いけどフグみたいになってるよ?

 

「えっと.........日菜、どした?」

 

「別に〜?リサちーと仲良さそうだなぁ、と思って」

 

 あ、なんか日菜怒ってるよ。もしかして.........やきもちですかぁ!?いやごめん嘘だから、そんなわけないってわかってるから。

 

 こっから6時間は地獄の時間だ。訳の分からない、使うかも不明な授業を受けさせられる。

 

 はぁ.........こんなことなら女心の扱い方を学校で教えてくれよ。

 

 心からそう思った。




新イベの日菜欲しすぎるやばいかわいいツラミ。

執筆する前にイベ遊んできたんですがエキスパート難易度高いですね.........ずっとやってればフルコンは取れそうですけど。

まぁパスパレのイベならぶん回すぜ!

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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天才の片鱗

誰も月曜日は更新しないなんて言ってないぜぇ!?

もちろん、やります。僕は、書きます。

お気に入り登録100人突破!感謝です。ヾ(〃^∇^)ノ

日菜ちゃんの才能、爆発!な16話です。



 よく分からん授業をなんとか乗りこえ、放課後という名のヘブンリータイムに突入だ。

 

 部室にはちょくちょく掃除に来てるので、あまり久しぶりな感じはしなかった。だって日菜全然掃除しないんだもん。俺がやらないとゴミ屋敷になってしまう。そんなわけで俺は部活がない日もたまに来ていた。

 

「ふんふ〜ん」

 

 ソファーに座ってまったりしていると、日菜がご機嫌そうにギターケースからギターを取り出した。とても丁寧に手入れされているのか、青色に塗装されたギターが輝いて見える。

 

「それ、すごくかっこいいね」

 

「でしょ〜!楽器屋さんで見つけた時、この子しかない!って思ったの」

 

「そーいや、日菜はなんでギターを始めたの?」

 

 前から気になっていた事を聞いてみる。正直な話、日菜は才能に溢れている人間だ。別にギターじゃなくても好成績は残せるはず。それなのにどうしてギターを始めたのか、不思議で仕方ない。

 

「おねーちゃんがキラキラして見えたから」

 

「キラキラ?」

 

「そう。ギターを弾いているおねーちゃんが、ライブをしているおねーちゃんがキラキラしてたから」

 

「だからあたしも、おねーちゃんの隣に並びたいって、一緒に弾けたらと思って始めたの」

 

 .........紗夜さんも日菜もお互いを好きすぎだろ。シスコン姉妹尊い。

 

「そうだったんだ」

 

「ま、パスパレのみんなも面白いし、始めてよかったよ〜!」

 

 心底嬉しそうな顔でそう語る。

 

「それは良かったね」

 

「うん!それでね、今日は冬夜君にあたしのギター演奏を聞いて欲しいんだ!」

 

 ギター演奏?でも、パスパレはエア演奏のアイドルグループって言ってなかったっけ。個人的に日菜が弾くってことかな、やっぱり。

 

「それは嬉しいけど.........パスパレってドラム以外やらないんじゃなかったっけ」

 

「この前のライブからね、話し合いしてちゃんと演奏するアイドルバンドにするってことになったの!」

 

 ああ、合点がいった。彩ちゃんの目の色が変わったってのも、前に進むってのも。彼女達は「偽物」から「本物」に変わろうとしているのだ。なら俺は応援するだけだ、その「本物」とやらに、彼女達がなれることを。

 

「それなら頑張らないとな」

 

「頑張る頑張る!.........よし、それじゃあ弾くね!」

 

 ギターを肩から掛け、ケースからピックを取り出し演奏準備を進める。美少女がギターを持っているという光景、それだけで絵になりそうだ。

 

 部室内が静寂に包まれる。聞こえるのは僅かばかりの冷房の音だけ、他は何の音も聞こえない。

 

 日菜がギターに手をかけ、弾く。

 

(うっお.........なんだこれ、魂が揺さぶられるみたいな、そんな奇妙な感覚だ)

 

(でも、安心出来るいい音だ)

 

 この前聞いたしゅわりん☆どり〜みんのギターソロだろうか。忙しなく動く両手からは、綺麗な旋律が奏でられていく。

 

 そこからの4分間はとても濃厚で、まるでライブハウスに居るかのような時間だった。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「どうだった!?」

 

「最高だった」

 

 目を輝かせ、ギター演奏の感想を聞いてきたので、素直に伝える。

 

「それは良かったよ!」

 

「こんな素敵な演奏をしてくれたんだ。なにかお礼がしたいな」

 

 恩返しというには程遠いが、なにか出来ることがあるならしてあげたい、そんな気持ちで聞いてみた。最近世話になりっぱなしだし、いい機会だろう。

 

「ん〜。あっ!そうだ.........」

 

 日菜がとても悪い顔をしている。やばい、嫌な予感しかしないぞ、そこから紐なしバンジージャンプしろとか言われるのかな.........いや、そんな事言わないはず。言わないよね?頼むよ?

 

「今日、冬夜君の家に泊めてよ!」

 

「はい?」

 

 ある意味紐なしバンジージャンプより怖いかもしれない。そんなお願いをしてきた。

 

 今日の夜はどうなってしまうのか.........俺の命はあるのかな?




短くてすいません!少し(とても)忙しかったんです.........

金曜日は甘々の話書きます!宣言制です。

では金曜日に!

今回もお読みいただきありがとうございました!


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一夜限りの秘密

お待たせしましたあぁぁぁぁ!!やっと小説書けるよ.........

今回は少し刺激強めですかね。まぁ3日も待たせましたし、ね?(謎)

久しぶりの17話目です!



 だって無理でしょ、あんな期待の眼差しで見られたら。君たち断れる?無理でしょ。よって俺は悪くない、世界が悪い。

 

「どうしたの〜?」

 

 自分の家のソファーに座り、自己擁護していると、日菜に心配されてしまった。ああ、そうだよ。俺は入れちまったんだよ!家に日菜を入れちまったんだよ!

 

「あー大丈夫」

 

 今日に限って両親は飲みに行くとかいいだして、家にいないし。まぁあの二人仲いいし、たまーにある事だからご都合主義って訳でもないが。それにしても恥ずかしい。もう二人で家のソファーに座っていることが恥ずかしい。新婚さんかよ。

 

 日菜が事務所でのレッスンを終え、俺の家に泊まりに来た。家の人はと聞くと「あたしの家、今日誰もいないんだ。おねーちゃんはリサちーの家に泊まってるし、両親は.........知らない〜」こんな感じだ。

 

(取り敢えず、飯でも作るか)

 

「ご飯作るけど、何か食べたいのある?」

 

 一応、日菜はお客様なので、夕ご飯のリクエストを取る事にする。

 

 冷蔵庫の中、何入ってたっけ。プリンと牛乳とチーズと.........あれ、俺ってもしかして乳製品大好きキッズだった?

 

「なんでもいいよ!でも、愛情がこもった料理がいいな!」

 

 いっぱい入れます。なんなら愛情入れすぎて血液まで入れないように頑張ります。

 

「じゃあ、ハンバーグにしようか」

 

 ひき肉、玉ねぎ、ハンバーグミックス。ついでにチーズもあるのでチーズインハンバーグなんてのも出来てしまう。

 

「ハンバーグ!?それは楽しみ!」

 

「じゃあ、少し手伝ってくれる?」

 

 俺は、この軽はずみな発言を、今とても後悔している。

 

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 皆さんは地獄絵図というものをご存知だろうか。その名の通り、地獄の光景のことである。そしてそれは、今まさに俺の目の前で起こっていた。

 

「るんるらるんっにさりげなく〜」

 

 え、何その訳の分からないダークマターは.........俺、ハンバーグこねてって言ったよね?地球外物質の製造なんてお願いしてないよね?しかも口ずさんでる曲もなんか違うし。

 

 日菜がなんと表現したらいいかわからない色彩をした物質をこねている。本人はとても楽しそうに料理しているのだろうが、傍から見ると研究者にしか見えない。

 

「え、えっと日菜さん?大丈夫ですか?」

 

「うん!ばっちりだよ!これおねーちゃんに作ってあげると、いっつも美味しいって言ってくれるんだよ!まぁ、作業工程は見せたことないけどね!」

 

 いや、そんな化学兵器生産工場を見せたら、あの人卒倒しちゃうよ。ってか俺の聞き間違えじゃなきゃ美味しいって聞こえたんだが。嘘だろおい。紗夜さん、優しすぎだろ。日菜の料理を食べているうちに味覚破壊されてしまったのか?刷り込みで美味しいと思い込まされているのか?

 

(こりゃ、俺の方でもいくつか作っといた方がいいな)

 

 ちゃんとレシピ通りの、美味しいハンバーグを自分で作ることを決意した瞬間であった。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 そんなこんなで料理も作り終わり、食卓に出揃った。あれ、日菜のハンバーグ美味しそう.........って普通の人はなるんだろうけど俺はならねぇぜ!?それ意味わからんもんばっか入ってるもんな、さっき見たもん!ほら、俺の作ったtheシンプルなハンバーグ美味そう。

 

「「いただきます」」

 

 取り敢えず自分の作ったハンバーグを1口。うーん美味い、チーズもちゃんと溶けてるな。

 

「冬夜君!食べてみてよ!」

 

 出やがったな、見た目だけハンバーグ野郎。でも日菜の事だからなんだかんだで若干美味いかも。ほら、マズさの中に光るものがある、見たいな?

 

「い、いただきまーす」

 

 箸で掴み、恐る恐る口へと運ぶ。紗夜さん、僕に勇気を!

 

「どう?」

 

 .................なにこれ、美味すぎる。極上のハンバーグをここに見つけたり。

 

「うっま!え、日菜これすげぇ美味いよ!」

 

 先程の調理工程からは想像もつかないような繊細な味だ。俺のハンバーグが陳腐なものに思えるくらいには。

 

 やっぱり天才は天才だったってことか.........参りました。こんな子が毎日ご飯作ってくれたらなぁ.........って思ったけど週3でいいや、家事は夫婦で分担しないとね。というのは建前で、あの暗黒物質食い続けたらどうなるか分からんというのが本音だ。

 

 

 そんな調子で箸も進み、もう食べ切ってしまった。ああ美味かったぞ.........

 

 今は2人で皿洗いをしていて、この後どうするか考えていた。うーん客人に床やソファーで寝かせる訳には行かないし.........お母さんの布団で寝てもらうか。

 

「日菜、寝るところだけど」

 

「もちろん、一緒だよね!」

 

 うん、もう驚かないぞ。なんとかして説得しよう、流石に倫理観というものがあってですね.........

 

「それはまずいだろ。ほら、日菜アイドルだろ?色々とさ」

 

「今日のあたしはただの氷川日菜。アイドルなんて関係ないよ」

 

「そうだけどさぁ.........」

 

「もしかして、あたしと寝るの.........嫌?」

 

 嫌とか嫌じゃないとか、そういうことではないんだけどな。いや俺ヘタレですよ?きついよそんなの。心労で死んじゃうよ。

 

「嫌.................じゃない、です」

 

 でもそこは男の子。断るなんて選択肢は毛頭ないぜ!俺のベッド狭いからリビングに布団引いて寝るか。

 

「ほんとに?」

 

「うん、ほんと。ほら、布団取りに行こ」

 

 距離感が分からないけど、俺も日菜に、もうちょっと寄り添ってもいいかもな。これは違うと思うけど。

 

 客人用の布団を取りに、押し入れへと向かう。襖を開け、普段は使わない小綺麗な布団を取り出す。布団を2ついっぺんに運ぶというのは意外に難しく、前が見えない。

 

「大丈夫?」

 

「なんとか、ね」

 

 ゆっくりゆっくり、コケないようにリビングへと運ぶ。目的の場所へ着き、布団を下にバサッと落とす。ついでに持ってきた枕もぼふんっと投げる。

 

「えいっ!えへへ〜きもちいいー」

 

 布団にダイブした日菜が気持ちよさそうに目を細めている。

 

「なら良かった。ふぁ〜あ.........俺も眠い」

 

「早く隣に寝なよ」

 

「うん、そーする」

 

 ああ、眠いなぁ.........まだ8時くらいだが、ちょっと疲れた。さっさと寝てしまおう。でも、隣に日菜がいるのか。ちょっと非日常過ぎてやばいな。

 

「よいしょ」

 

 布団の中に入り、一息つく。ちなみに日菜は家に来る前に、一旦帰ってお風呂に入っている。つまり隣がエデン状態。しかも、パジャマ。

 

 あぁ、ちょっとそれは刺激強すぎだよぉ!魅力がたっぷりすぎるでしょ!煩悩よ、消えろ消えろ。

 

「電気消すね」

 

 我が家はリモコン1つで電気も消せるしテレビもつく高性能リモコンなのだ!だから親父が動かないでダラダラしちゃうんだよ。俺も動かないからお互い様だけど。

 

 暗闇に包まれるリビング。右隣にいる日菜の顔もわからない程、暗い。

 

(これマジで体に毒だわ、さっさと寝よう)

 

 隣に女性が寝ている、ましてやそれが好きな子だ。心臓が爆発しそうになるのも仕方ないことだ。

 

「おやすみ、日菜」

 

「うん、おやすみ」

 

 こうして、俺と日菜の、はちゃめちゃお泊まり会は幕を閉じた。

 

 

 

 ―――――筈だった。

 

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 時刻はただいま、体感でAM:2:00頃。俺は今、人生最大の局面に差し掛かっていた。

 

「えへへ〜」

 

 俺が寝苦しさを感じて1度起きてみたら、なんと、後ろから日菜に抱きつかれていた。女の子特有の肢体の柔らかさに脳が痺れたような感覚を覚える。

 

「ど、どうかした?」

 

「別に〜」

 

 別に〜って意味わかんねぇよ!なんも用ねぇのに抱きつくやついねぇよ!あ、ここにいたか。ってか、ああもう、体くっつけてくんな!恥ずかしくないのか!?

 

「ただ.........」

 

 急に日菜が口ごもる。さっきまでの快活なしゃべり方は微塵も感じられない。

 

「ねぇ」

 

 たった一言、それだけで、硬直してしまう。多分、これは直感だが、この子は今からとんでもないことを言うだろう。だって日菜のそんな声は聞いたことがない。だから、これからする話はとても大事な話なのだろう。確信に近い何かがあった。

 

「あたしが冬夜君のこと」

 

「好きって言ったらどうする?」

 

 ほれ見ろ、言った通りじゃないか。とんでもないことを言ってきた。本当にこの子はよくわからない。いきなり抱きついたり告白まがいの事をしてくるなんて。でも、彼女は今、本気なんだ。本気で俺と話をしようしている。それに嘘で答えるなんて、俺には出来ない。

 

「俺も好きだよって言う」

 

「日菜のことが大好きだって」

 

 これでいいんだ。恥ずかしいとか、柄じゃないとか関係ない。本気で来ている人に、嘘や虚実で答える方が恥ずかしい。だから俺は、ありのままの気持ちを伝える。日菜に思ってる気持ちをそのまま。

 

「.................そっか」

 

「じゃあ、いいよね」

 

 集中しなければ聞き取れないような声量で、日菜が呟く。

 

「あたし、独占欲強いんだ」

 

 そんな事を言った、次の瞬間。

 

 俺は日菜にキスされていた。

 

 よく、初キスの味は甘酸っぱいとかレモンの味に例えられるが、実際のところ、よく分からなかった。ただ、幸せな気持ちになったことは確かだ。

 

「んんっ.........」

 

「ぷはっ」

 

「ひ、ひな?」

 

 とても長い、初キスが終わった。俺は動揺でうまく呂律が回らず、舌足らずな喋り方になってしまう。

 

「これは一夜限りの秘密だよ。あたしと冬夜君だけの」

 

「ひ、みつ?」

 

「そう。今からすることは誰にも秘密」

 

「わかっ、た」

 

 そうか、これは秘密なんだ。じゃあ、大丈夫か。

 

 どんどん、日菜に堕とされていくのがわかる。秘密ということを盾にして、理性のタガを外しに来ているのだ。そして今、現に外れた。

 

「そうだ、跡も付けちゃお」

 

 日菜が俺の首に顔をうずめ、強く跡を付ける。いわゆるキスマークというやつだ。実際に体験してみると、とてもくすぐったいもので、声が漏れ出してしまう。

 

「ひ.........な.........」

 

「んんっ.........とうやくん、好きだよ」

 

「お、れも.........」

 

 これは一夜限りの秘密。

 

 2人だけの、秘密。

 

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 

 .................また俺はなんつー夢を見たんだ。はぁ.........

 

 朝になり、濃厚な夢から覚める。隣には日菜がすやすや寝ていて、昨日の出来事が夢であったことを、嫌でも自覚させられる。

 

 寝起きの気分をスッキリさせるために顔を洗いに行く。洗面所へレッツゴー。

 

  と思ったのだが予想外の事態が発生した。

 

 .................これやばいでしょ。

 

 洗面所の、大きな鏡に写った俺の首筋には、しっかりとキスマークの跡が残っていた。

 




明日も更新できるか微妙な感じ.........短くても許してください多分上げます。

日菜ちゃんが積極的になってきましたね。次も楽しみにしていてください。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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好きの再確認

時間が無い!(断言)

書きたい書きたい!

忙しすぎるぞおい。

まぁ、明日から本気出すから!(フラグ)

眠気と戦い書いた18話目です。



 俺の今の状態は気が気でない、これ一択だろう。そわそわして落ち着きもないし、何より貧乏揺すりが止まらない。

 

 俺の膝がビートを刻んでいる.........だと!?

 

(あぁ.........なんてことをしてしまったんだ.........俺は馬鹿だ.........)

 

「そんな背中丸めてどーしたの?」

 

 自己嫌悪の波に飲まれ、頭を抱えていると後ろから声を掛けられた。声の主はタイムリーな事に、俺が悩んでいる原因の人だ。

 

「どうしたもこうしたもねぇーわ!ひ、日菜は昨日何があったか.........わかってんの!?」

 

「うん」

 

 うわぁ.........超ケロッとしてるよこの子。心做しか顔もつやつやしてるし、テンション最高潮ってことですか。

 

「わ、分かっててそんな平然としてるんすか.........?」

 

「だって過ぎたことを気にしても仕方ないし〜」

 

「あ、はい」

 

 もうダメだ、手遅れだよこれ。日菜最強説提唱するわ。

 

 過去は変えられない、これは周知の事実。言わば、世界の理だ。そんなもん考えても意味が無い、彼女はそう言いたいのだろう。

 

 でもそんな簡単に割り切れないのが現実。少なくとも俺には無理だ。

 

 だってそんな簡単に割り切ってしまったら、昨夜の気持ちは一時の気の迷いということになってしまう。

 

 そんなのは嫌だ。俺は真剣に好きなのに、すぐに忘れちゃうなんて辛すぎる。

 

 .........ていうかなんで日菜は後ろ向いてるんだ?普通、声かける時はこっち向くだろ。背中越しに会話するなんておかしくないか?

 

「なんでこっち向いてくれないんだ?日菜」

 

 頑なにこちらを向かない彼女を不審に思い、手首を掴む。彼女の体温はほんのり温かく、指先に伝わってきた。

 

「っ.........」

 

「え.........?」

 

 くいっとこちらに引っ張り、確認した顔は紅潮していた。日菜も顔を見られたことが恥ずかしかったのか、驚きと焦りの表情を見せた。

 

「み、見ちゃダメだよ.........」

 

 消え入りそうな声で訴えてくる彼女は、とても愛おしく思えた。

 

「ご、ごめん!」

 

「バカ.........」

 

 くっそかわいいー!いつも元気な子がしおらしくしているだけでこんなにもギャップ萌えが発生するなんて!ああ、抱きしめたい!

 

 そんな大胆なことは一切出来ないチキンなので、手を絡めることしか出来ない。すべすべだなぁ.........

 

「朝からお熱いねー二人共」

 

 でしょーラブラブなんだぜー。

 

 .........え、リサ?

 

 嘘だろ、見られたのか?俺らの秘密の関係を!?

 

「いやこれは違うんだ!」

 

「違わないでしょー手なんか繋いじゃって♡」

 

 うわ、めちゃくちゃニヤついてるぞ。美人だけど、中々にムカつくな。というか今思い出したけど、ここ教室ですやん。そりゃ見られるわ.........

 

「い、いつまで繋いでるの!」

 

 日菜に手を振り払われる。え、結構勢い強くね?もしかして嫌われたのかな.........

 

「ご、ごめん!」

 

「あはは、アタシもからかってごめんね?」

 

「うぅ.........」

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 朝から酷い目にあったぜ.........リサには煽られるし、日菜には嫌われるし.........嫌われるし.........

 

 い、いや希望を捨ててはいかんよ?あれは照れ隠しなのさ、いわゆるツンデレってやつ。

 

 取り敢えず聞いてみることにする。今は授業中だが、そこは目をつぶってもらおう。手紙だと受け渡しづらいしスマホでいいや。

 

「冬夜」「さっきはごめん.........怒ってる?」9:19

 

 まぁ怒るよな、いきなり手を掴まれて赤面してる所を見られたら。

 

 .........今考えたらとんでもないことしとるやん俺。良くて絶交。悪くて死罪かな?

 

 俺にとってはどっちも死罪みたいなもんだわ!

 

「ひな☆」「だいじょーぶ。怒ってないよ」

 

 良かったあああ!セーフセーフ!日菜は怒ってないみたいだ!

 

 でもこれに懲りて、あんまり調子に乗りすぎないようにしよう。今回のことで嫌われるのがどれだけ辛いか身に染みたわ。

 

 ほっとして机の中にスマホをしまう。

 

「冬夜君」

 

 安堵のため息を漏らしていると、前から声をかけられる。昨日の夜聞いた、あの声で。

 

「あたし、冬夜君の事好きだから。嫌いになんてならないよ.........」

 

 .........こんなこと言われちゃ、応えないわけにはいかないな。

 

「俺もだよ。俺も好きだから、このこと忘れないでね」

 

 教室には、俺たちを祝福するような暖かい風が、窓から吹いていた。

 

 

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 雹崎 冬夜 HYOUZAKI TOYA

 

 身長 173cm

 

 体重 57kg

 

 足のサイズ 27cm

 

 好きな物 アニメ ゲーム 寝ること 日菜

 

 嫌いな物 勉強 学校 教師

 

 本作の主人公。嫌いな物を見ると、不良みたいだがそんなことは無い。むしろ優等生タイプ。

 

 学校にはちゃんと行くし、勉強もする。でも内心はボロクソに言っているタイプ。多分、先生の写真とかでコラ画作って遊んでいる。

 

 ゲームは全般好きだが、特に好きなのはFPSゲーム。日頃のストレスを解消しているのだと思われる。

 

 友達は多くないがちゃんといる模様。

 

 日菜のことが好きだが奥手で、いつも踏みとどまるチキン。

 

 家族構成は父と母と息子の三人家族。冬夜は生き別れの兄がいると信じている。(ただの厨二病)

 

 P.S.スマホには中々の額を親に無断で課金しており、バレたらシバかれる状況にある。




突然の深夜投稿お許しください!

眠くて文章ガバガバな気がしてきた。てか絶対そうだわ。

まぁ祝日だし.........ね?(意味不)

あと、キャラ紹介を付けることにしました。字数稼ぎとか言うなよ?その通りだから。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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子供と大人の境界線

最近感想が増えてきて通知を見る度に驚いてしまいます笑

これからも頑張っていかないと!

どちらでもない19話目です。



 こどもの日(こどものひ)とは、日本における国民の祝日の一つで、端午の節句である5月5日に制定されている。

 

 祝日法2条によれば、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことが趣旨である。1948年に制定。ゴールデンウィークを構成する日の一つである。

 

 .........と、まぁ形式ばった説明をしたが、要するに今日は子供の日だ。5月5日にある、鯉のぼりとか兜とか使う日だ。

 

「んで、何しに来たの?」

 

「るんってしにきたの!」

 

 そんな国民の休日に、俺の家には訪問者が来ていた。今日は大好きなソシャゲがイベントをやっているので、ゴロ寝しながらゲームをしていたらインターホンが鳴り、迎えに行ったらこのザマだ。

 

 今日しか出現しないコイコイ丸は高ステなんだぞ!?これ限凸させてないとクラメンに煽られちまう!ちくしょおおお!日菜、頼むから今日くらいはゲームさせてくれ!

 

「.........悪いけど今日は忙しいんだ」

 

「忙しいってどーせゲームでしょ?ゲームは明日も出来るけど、あたしとこの日に遊ぶのは来年になっちゃうんだよ!」

 

 謎理論ここに爆誕。コイコイ丸も来年になっちゃうんですがそれは.........

 

 いや、待てよ?これ日菜と遊んだ方が絶対いいだろ。コイコイ丸なんかより、彼女いますよ?俺。とか言った方が100%煽れる。なんなら死人が出るレベルだわ。

 

「.........それもそうだな。取り敢えず上がって」

 

「お邪魔しま〜す!」

 

 日菜、可愛い靴履いてるな。ピンクを基調としているパンプスを履いている彼女はとても魅力的だ。

 

 どーせ今から靴脱ぐんですけどね。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「ああああああああああ.........」

 

「なにそれ、おっかしぃー」

 

 やることもないので自室に来た俺たちは、ダラダラしていた。ベッドに沈み込むこの感じ.........いいね!

 

「そーいや、なんで遊びに来たんだ?子供の日なんて俺らには関係ないだろ」

 

「好きな人に会うのに、日にちとかイベントとか、関係ないよ?」

 

 この子ったらもう.........照れちゃうじゃないの!

 

「それに.........関係ないってことは、もう子供じゃないんだよね?」

 

 俺が照れ隠しに顔を背けていると、ベッドの上に日菜が乗ってきた。特段、高いベッドでもないので、スプリングがギシッと軋む。この音で俺と日菜、二人分の重みを実感出来た。

 

「子供じゃないけど.........大人でもないだろ?」

 

「そうかもね」

 

 上から覆いかぶさられ、胸板に顔を擦り付けられる。少しくすぐったいが、日菜のいい匂いがして、あまり抵抗出来なかった。

 

「まるで猫だな」

 

「おねーちゃんにも、んっ、よく言われる」

 

 おい誰がキスしていいって言った。鎖骨に痕を付けるな痕を。

 

「何してんの日菜」

 

 やられっぱなしは悔しいので、取り敢えず頭を撫でておく。さらさらの髪の毛を撫でられると気持ちいいのか、目を細めて頭を振っている。

 

「スキンシップというか.........マーキングというか.........」

 

「大体わかったよ」

 

「なら良かった!じゃあ.........続き、しよっか」

 

 瞳をとろんとさせ、唇を奪おうと近づいてくる。日菜が近づく度に鼓動が早くなっていくのがわかった。

 

 でもこの前、自分から1回もしてないな.........よし、頑張ってやってみるか。

 

「んんっ!?」

 

 おお、驚いてる驚いてる。中々に責めるのって楽しいな。

 

 あれ、いつ離せばいいんだ.........?若干苦しいんだけ.........ど。

 

「ぷはぁ!」

 

 も、もう限界.........

 

「と、冬夜君.........?」

 

「ごめん、好奇心でやっちゃった」

 

 ああ、きつかった。ドラマとか映画ってどうしてあんなに長くキス出来るんだ?光学酸素ボンベつけてる説濃厚だな。

 

「ぷっ.........あはははは!鼻で呼吸すればいいのに!」

 

 日菜が面白おかしく笑う。やばい恥ずかしい.........何が酸素ボンベだよバカか。

 

「た、確かに」

 

「ふぅ.........でも良かったよ。冬夜君の好きって気持ち、いっぱい伝わってきた」

 

 日菜が綺麗な顔で微笑む。顔も赤くなっていて、俺達が長い時間キスしていたことがバレバレだ。

 

「でも、あんなにいっぱいされたら.........あたしも我慢出来ないよ?」

 

 溜め込んでた気持ちを吐き出すように、日菜が舌なめずりをする。その目は獲物を狙う獣のようだ。

 

「え、あのごめ」

 

「だ〜め!」

 

 この後めちゃくちゃキスをした。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 氷川 日菜 HIKAWA HINA

 

 身長 156cm

 

 体重 ?kg

 

 足のサイズ 23cm

 

 好きな物 ガム キャンディ ジャンクフード 星

 

 嫌いな物 豆腐 湯葉など、味が薄いもの じっとしてること

 

 本作のヒロイン。姉の紗夜と好きな食べ物が一緒というシスコンっぷり。多分、この作品において、1番キャラ崩壊の犠牲になっている。

 

 最近、よく紗夜と一緒にいる所が目撃されている。リサ曰く、「日菜と紗夜?あぁー仲いいよね。あこと巴くらいラブラブなんじゃない?」との事だ。

 

 最初に冬夜に話しかけたのは、るんっとくる何かを直感で感じ取った模様。

 

 ギターは紗夜と自分を繋いでくれた、大切な物だと信じて、メンテナンスを欠かさない。(紗夜に口うるさく言われたというのも大きな要因)

 

 P.S.中々に変態。結構変態。そこはかとなく変態。冬夜のシャンプーを分析し、お風呂で使うくらいには変態。

 




楽しかったあああ!やっぱ時間があるっていいね!お昼に出すから夜は明日の分を少し書こうかな。

日菜、ごめんよ.........こんな子にするつもりは無かったんだ.........なっちゃったんだよ。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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表の光、裏の闇

日菜ちゃんのガチャおわちゃう!幾ら回しても出ない出ない。

(。•́ωก̀。)…グス

スマホのフィルム貼るのを失敗して発狂したレミリア親衛隊です、よろしくお願いします。

若干シリアス.........?苦手な方すみません!

再確認する20話目です!



 最近、日菜の貞操観念がとち狂っている気がする。普通は付き合ってもない男と、キスをしすぎて唇がふやけるなんてありえない事だ。しかも、男の家で.........

 

「そーいうわけでおかしいと思うんですよ、日菜さん」

 

「じゃー付き合っちゃう?」

 

 冬服から夏服への調整期間、つまり5月の下旬。俺は休み時間に、その付き合ってもいないのにキスしまくっている女の子に相談していた。うだるような暑さ.........と、まではいかないが普通に暑いので、俺も日菜も半袖の夏服だ。

 

「そういうことではない気がするけど」

 

「もー冬夜君はめんどくさいなー」

 

「日菜が考えなさすぎなんだろ!?」

 

 ダメだ、考えることを放棄している.........ちゃんと告白してOK貰って、そういう付き合いはいいけど.........考え無しなのはダメだろ。

 

「えーいいじゃんー」

 

「良くねぇよ!」

 

 何が良いのか全くわからない。あまり物事に執着しないタイプだと思ってたが、ここまで酷いとは.........

 

「じゃあ、いつか冬夜君が告白してくれるのかな〜?」

 

 勝ち誇ったような顔をして、日菜が笑みを零す。日菜の奴.........俺が告白なんて出来ないの知ってて言ってやがるな.........

 

 ああ、いいさ!やってやるよ俺だってやる時はやるんだ!

 

「あ、当たり前だろ!?夏くらいにしようかなーって思ってたところだ!」

 

「え.........そ、そうなんだ.........」

 

「う、うん.........」

 

 何この雰囲気.........日菜も俺も黙りこくるしかないぞこれ。ど、どうしたものかなー。

 

「じゃあ、期待して待ってるね」

 

 頬を紅色に染め、期待の眼差しでこちらを見つめてくる。いつか見た、冗談無しの本気の目だ。

 

「ああ、るるんっと待っててくれ」

 

 俺は、こんな曖昧なことしか言えないのに、日菜は信じてくれている。なら、最善を尽くすだけだ。気恥しい気持ちをとっぱらって、ぶつかっていこう。

 

 ご期待に添えるように頑張らなきゃな。

 

「えぇ〜!そこはるるるんっ!くらい言ってよ〜!心配になっちゃうな〜?」

 

 .........やはり彼女の表現方法はイマイチ分からない。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗く、寒い世界。誰にも見せないあたしだけの世界。

 

 ああ、いつも通りの時間が来た。今日までの、人生振り返り会。

 

 何もわかってくれない。誰もわかってくれない。1人は嫌だって言ってるのに.........

 

「なんでいつもいつも同じことばかり!」

 

 ごめんなさい。悪気はなかった.........って言ってもダメだよね。あたしが悪いんだもん。あたしはおねーちゃんの負担でしかないんだ。

 

「また.........か」

 

 違うの?頭がいい方が褒められるんじゃないの?先生はつまらなそうにあたしの答案を返す。まるで興味が無さそうに、淡々と返却する。

 

 おかしいじゃん。なんであたしはいつも100点なのに、勉強もしないで、廊下を走り回ってるだけの奴が60点を取ると嬉しそうにするの?

 

 あたしだって頑張ってるのに。教科書をいっぱい読み込んで、覚えよう覚えようって必死にやってる。なのに人は、あたしのことを天才だとか才能だとか、中身を見ないで、空っぽの名称だけ付けて知ったふうな口を利く。

 

 誰も「努力」なんて見てくれない。世間一般的に言う人間という生き物は「結果」しか見ない。だから他の人とは乖離しているあたしは、拒絶され、忌避され、嫌悪される。

 

「努力」したら「結果」が出るんじゃない。

 

「努力」したら「結果」を出せる人間が報われるんだ。

 

 じゃあ、あたしは?

 

 他の人から見たら「努力」なんてしなくても「結果」を出しているように見えるだろう。それも、最上級の「結果」を。

 

 嫌われて当然だ。みんなが頑張ってやっている中、あたしだけが楽をして、「努力」している人間の上に立っているんだから。

 

 .........でも本当は違うんだ。この世に本当の意味の天才なんていないのだから。無から有を生み出すのが無理なように、覚えてもいない問題を、初見で解ける人間なんて、恐らくいないはずだ。

 

「見ただけで出来るなんて日菜ちゃん凄いね!」

 

 嘘をつくな、凄いなんて思ってない癖に。どうせ、腹の中では愚痴ばっかりだろ。

 

「天才はちげーよなー」

 

「氷川最強説!」

 

 あたしだって、頑張ってる。

 

「これも分かるとかどんだけだよ.........」

 

「氷川さん、初めてなのにとっても上手ですね!」

 

「この調子で次もやりなさい」

 

 誰か、ちゃんと見てよ.........

 

 アイドルとか天才とか、関係なく.........

 

 頑張ってるあたしを、氷川日菜を見てよ.........

 

 裏のあたしも愛してよ.........

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「日菜?」

 

 あー寝ちゃったか.........まぁ、テスト範囲にも関係ないし、さして重要な授業でもないからいいか。アイドル活動とかバンド練習とかで疲れてるんだろ。最近、日菜頑張ってるしな。

 

「んぅ.........」

 

「あ、起きた?」

 

 日菜が寝惚け眼をこすり、こっちに顔を向ける。

 

 眠り姫の起床ってとこか。あ、ヨダレついてるよ、っていうか.........

 

「なんで泣いてんの?」

 

「え?」

 

 日菜の目元は真っ赤に染まっていて、制服の袖も濡れている。泣いていたのは明白だ。

 

「いや、目真っ赤だし.........」

 

「あー.........少し怖い夢、見てたんだ」

 

「大丈夫?」

 

「うん、なんとか」

 

 日菜でも怖い夢なんて見るんだな。向かうところ敵なし!って感じだと思ってたけど、ちゃんと女の子らしい一面もあるんだな。

 

「冬夜君」

 

「なんだいー?」

 

「あたしを、氷川日菜を幸せにしてね?」

 

 泣き腫らした目を必死に隠して日菜が言う。よほど夢が怖かったのだろうか、体は小刻みに震え、恐怖心と戦っているようだった。

 

 なんかあったんかな。日菜がこんなこと言うなんて.........まぁ、あんま考えても仕方ないか。辛かったら日菜の方から言ってくれるだろ。

 

「もちろん幸せにするさ」

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 あたしが授業中にも関わらず、訳の分からない質問を彼に投げかけたら、帰ってきた言葉がこれだ。

 

 もちろんするさって.........本当に頼もしいね。

 

 あたし、やっと見つけたよ。ちゃんと見てくれる人。愛してくれる人。

 

 冬夜君、君はあたしにとって1人しかいない、一等星みたいな存在だよ。

 

 あたしは涙を拭い、大切な人に向けてこう言った。

 

「大好きだよ」

 

 ひとりぼっちのあたしを見つけてくれた、そのお礼に。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 氷川紗夜 HIKAWA SAYO

 

 身長 161cm

 

 体重 ?kg

 

 足のサイズ 24cm

 

 好きな物(人) ジャンクフード(特にフライドポテト) ガム キャンディ 日菜 ギター

 

 嫌いな物 にんじん スケジュール通りにいかないこと

 

 言わずと知れたRoseliaの狂犬。本作品では見事に牙が取れ、妹大好きおねーちゃんと成り果てた。フライドポテトは、王道の塩が1番好き。

 

 日菜とのわだかまりは解消され、姉妹仲は良好な模様。休日にはお菓子作りを一緒に行うなど、微笑ましい場面も目撃されている。(家に遊びに行ったリサ談)

 

 ふわふわした動物が好きで、最近だと商店街で見かけるピンクの熊に、抱きつくか抱きつかないか、一晩中悩んだとの噂も。

 

 ギターの腕前は一流で、ピッキングは正確無比。あこにライブパフォーマンスとして、ギターを叩き割ってみては?との意見を受けたが、そんなことはしないとあこに説教して、この案はお蔵入りとなった。

 

 P.S. あまり言わないが、妹との関係を修復するのに、一歩踏み出させてくれた冬夜には物凄く感謝している。恋愛感情はないが、大切な人だと思っている




突然の日菜視点!闇を抱えながらも、乗り越える強さを見せてくれましたね。

久しぶりの3000文字突破ですね。書いてて楽しかったー。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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10円玉と生徒会


寝ている時に足がつって叩き起されました.........これ、辛いですよね笑

というか執筆の息抜きに単発引いたら日菜出たんですけどおおお!!

ガチャ終了30分前の奇跡!

まぁそれは置いといて

優しさの21話目です。



(レモントルネードスカッシュってどれだ.........)

 

 階段をせっせこせっせこ上がり、食堂前の自販機で俺は目当てのジュースを探していた。

 

 事の発端は、日菜とリサとじゃんけんして、負けた人がジュースを買いに行くという、とてつもなく学生っぽいことをした為である。そしてその勝負に俺が負けた。ズルとか出し忘れとかなんもなく、純粋に負けたのだ。

 

(お、あったあった)

 

 三段ある自販機の1番上に目的のブツを見つけた。因みにリサが頼んだストレートティーは俺もよく飲むのですぐ見つけることが出来た。

 

(って.........はぁ!?なんじゃこりゃ!)

 

 持ってきた160円を入れ、いざ買おうとボタンを押したらボタンが反応しない。なんでだろうと思い、値段を見てみる。そこには衝撃の価格が書いてあった。

 

(170円ってどういうことだよ!普通のジュースは160円以内に収めんのが鉄則だろ、エナジードリンクじゃあるまいし.........)

 

 自販機の値段表示には、非情にも170円と記載されていた。とてもじゃないが見慣れない金額の為、発見するのが遅れたのだ。

 

 困ったな、リサのストレートティーは値段知ってるからピッタリ持ってきてるし、このスパイラルトルネードランチャーは160円あれば買えると思って160円しか持ってきてない.........

 

 1回戻るか.........はぁ、ついてない.........

 

 ってかトルネードなんていらねぇから10円割引きしろよ、トルネード無駄要素過ぎるだろ。

 

 日菜の奴、知ってて買いに行かせたなぁ.........俺が320円でいいかって言ったら、あいつ笑いを堪えてたし。

 

(しょーがねーから戻ろ.........ん?)

 

 踵を返し、教室に戻ろうと後ろを向いたら、床に何か落ちているのを見つけた。形状的には財布っぽい形をしている。

 

 誰かの落し物だろうか、職員室に落し物として届けよう。そう思い、拾うことにした。

 

(しっかし、使い込まれてるな。きっと持ち主は大切に使ってたんだろうな)

 

 手に取って表面や裏面を確認する。中を見れば学生証や保険証などの身分を証明するものが入っているかもしれないが、それは無粋な気がして開けなかった。

 

(持ってく前に少し探してみるか)

 

 もしかしたら落とし主がこの財布を探しているかもしれない、そんな希望を持って探すことにした。

 

(と、思ったんだけど意外とすぐ見つかったな)

 

 俺の視線の先にはおろおろとした、既視感ある女子生徒がいた。下をキョロキョロと見渡しているので、何かを探しているのだろう。

 

(十中八九この財布だろうな)

 

「あの、これ落としませんでした?」

 

 あまり知らない人と話すのは得意ではないが、困っている人をスルーすることは出来なかった。

 

「え.........あ!私の財布!あ、ありがとうございます!」

 

 なんか見た事あると思ったらこの子、生徒会の子じゃん。いつも行事の時とか、壇上で頑張って話してる人。名前はなんだっけなぁ.........は、は、歯車くるみみたいな感じ.........

 

 お、思い出した、羽沢つぐみさんだ。モカがたまーに話してるの聞いたことがある。栗色の髪色をした美少女。見ている人にも一生懸命さが伝わるあたり、とても真面目な人なんだろう。

 

「ここに落ちてたから拾ったんだ。見つかって良かったよ」

 

 財布の持ち主が羽沢さんなら、このすり減り具合も納得だ。壊れないように、大事にされてきたのだろう。

 

「.........あの、お礼に何か買わせてくれませんか?」

 

「え、いいの?」

 

「はい!」

 

「じゃあ、このレモントルネードスカッシュでお願い」

 

「え.........」

 

 羽沢さんが奇異の目で見てくる。あ、やっぱりこれ買うやつ異端者なんですね、わかります。誰だって腹の中にトルネード入れたくないもんな。

 

「やっぱりこれおかしい?」

 

「い、いやいやそういうことじゃないんですよ!?それ、買う人いたんだなぁって。すいません、失礼ですよね」

 

「いや、俺も頼まれただけだから.........正直おかしいとは思ってる」

 

「あはは.........じゃあそれで」

 

 その後は、買ってもらったジュースを羽沢さんに貰い、解散した。別れ際にまた感謝されて、少し困ってしまったのは内緒だ。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「ってことがあってさ」

 

「あはは、ありがとねー」

 

「それでそれで、そのトルネードジュースはどれ!?」

 

 教室に戻り、事の顛末を2人に話すと、日菜がとても食いついてきた。大切なのレモンスカッシュだから、トルネードそんな重要じゃないから!

 

「ほいよ」

 

「わぁー!ありがとね!早速飲もっと!」

 

 キャップを開け、飲み口に口をつける。あ、飲んでる時の喉が少しえっちぃ.........なんて思ってませんよ。

 

「んん?ん、ん、うんん?うん」

 

 飲み口から口を離し、机の上にジュースを置いたら、日菜が壊れてしまった。首を左右に振ってるし.........怖い。

 

「ど、どうした?」

 

「なんか.........どがぴかーんって感じ.........冬夜君も飲んでみればわかるよ」

 

 そう言い、日菜が俺にトルネードジュースを渡してくる。これ、劇薬入ってたりしないよね.........?

 

 まぁ、飲んでみるか。死にはしないだろ。

 

 トルネードジュースを飲む。味は.........ゼリサイアで調子こいたドリンクバーを作ったみたいな味だ。つまり、不味い。

 

「うわ、まず.........」

 

「でしょ!」

 

「それにしても、間接キスなんて大胆だねー」

 

 え、間接.........キス?あぁ!?これ、日菜が飲んだやつじゃん!

 

 その事に気づいた時には、トルネードの不味い味は消えて、キスの甘い味に変わっていた。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

 青葉 モカ AOBA MOKA

 

 身長 158cm

 

 体重 ひーみーつー

 

 足のサイズ 23cm

 

 好きな物 パン パン パン

 

 嫌いな物 辛いもの 階段

 

 何はなくともパンな少女。取り敢えずパンがあれが細かいことは気にしない性分。

 

 1km圏内であれば沙綾を発見できるというハイスペックで、警察犬もびっくりな嗅覚を持つ。凄いぞ、モカちゃん!

 

 日曜日は、冬夜と一緒にパンを食べる大切な日になっている。もちろん支払いはポイントカードで。

 

 どこでも眠ることが出来て、起こすのにいつもAfterglowは苦労している(主にひまりとつぐみ)

 

 学校からレモントルネードスカッシュが消えないのはモカのせい。愛飲しており、大量に購入するため、自販機会社の人に売れ筋商品だと勘違いされている。モカ以外に買う人は罰ゲームで買う奴くらいだろう。

 

 P.S.誰にも言っていないが、スマホの写真ホルダーには、蘭の泣いている写真が保存されている。成人式の時にみんなに見せようという考えらしい。




今回はちょっと疲れました.........つぐつぐ喋り方がイマイチ分からない!

今週UA数がグイグイ上がってきてとても嬉しいです!

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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祝日が無い=つまらないではない

お気に入り200件突破!やったぁー!

初の前後編ですねー。

お出かけの22話目です!



 行き交う人々に、駅の喧騒。右を向けばおしゃれなコーヒー屋さんがあり、左を向けば待ち合わせをしているカップルがいる。因みに電源のついていないスマホを見れば、そこには冴えない顔をした微妙な男が映る。おい、どういうことだ。

 

「「時刻は現在、12時です。皆様、ごゆるりとお買い物をお楽しみください」」

 

 流暢な日本語の、駅構内アナウンスが流れる。これを待ってましたと言わんばかりに、あちらこちらへと人が移動していく。日本という国は本当に律儀な人が多い。時間通りにならないと納得がいかないのか、ここから見ていてもわかる。皆、足並み揃えて12時のアナウンスぴったりに動き出すのだから。

 

(そろそろ来てくれよー)

 

 ただでさえ祝日も無く、休みが少ない6月。そんな6月の貴重な休みを使って、俺が羽丘駅に来ているのには訳があった。まず理由もないのに外出するわけが無いんですけどね。俺、エリートニートですから。

 

 俺が何故こんなところに来ているのか、説明しよう。

 

 これは昨日のこと。金曜日、つまり、辛い1週間を俺は乗りこえた訳だ。6時間とSHRを終え、部活に出ようとカバンを背負った所に、日菜が話しかけてきたのが始まりだった。

 

「明日、付き合ってよ!」

 

「え?」

 

 その時の俺は、喜びに打ち震えたものだ。可愛い彼女が出来る。人生の中でこんなに嬉しいことはあまりないだろう。そんなことを考えて内心、狂喜乱舞していた。

 

「お、俺でいいの?」

 

「うん!冬夜君でいい、じゃなくて.........冬夜君がいいの!」

 

 この言葉が決め手だった。心拍数は急上昇し、俺の心はゴールイン寸前だった。結婚式場はどこにしよう、ご両親と紗夜さんに挨拶をしなければ.........想像すればするほど、夢が膨らむ。

 

「だから明日!買い物付き合ってね!」

 

 が、すぐに萎んだ。高校生にもなって裏切られた.........なんて、言うつもりは無いが、これはあんまりだろう。美味しいと思って食べてたお母さんの手作り料理が、実は激安の殿堂で買ってきた、出来合い商品でしたというくらい酷い。

 

 例えがわかりづらくてすまない。それくらい動揺してたということだ。

 

 そんなことがあり、今に至る。今日は昨日の約束通り、日菜の買い物の荷物持ちという訳だ。

 

(それにしてもこないな〜.........本当はもう着いてるけど俺の影が薄くて見つけらんないとか?)

 

 .........いくらなんでもそれはないか。自分で思っておいてなんだが、そこまで日菜はあんぽんたんじゃないだろ。

 

 やることもないので周りをキョロキョロと見渡してみる。すると、少し離れた所に、見慣れたアイスグリーンの髪色をした人を見つけた。頭の高さが上下しているので、つま先立ちで誰かを探しているのかもしれない。

 

(あ、日菜いるじゃん)

 

 目的の人物を見つけたので、後は接触するだけだ。後ろから近寄り、声をかける。若干、不審者とか何かのスカウトに見え.........なくもないけど気にしない。

 

「こんにちは、日菜」

 

「あ、冬夜君!探したんだよー?」

 

「それはこっちのセリフだよ」

 

 思わず笑ってしまう。俺と日菜はニアミスしてたということか。こういう所でも相性バッチリだな!うわ、俺きしょい。

 

 それにしても.........日菜の服装、超可愛いな。白色のワンピースに黄色のスカート。ワンポイントアクセントに青いリボンを付けているのが愛らしい。

 

「その格好、似合ってるよ。超可愛い」

 

 デートの基本は褒める。なにかの本で読んだことがあったので実践してみた。日菜はこれをデートだなんて微塵も思ってないだろうが。

 

「冬夜君こそ.........か、かっこいいよ?」

 

 日菜が何を言っていいのかわからないような顔をしている。

 

 それもそのはず、俺の格好はジーパンにポロシャツという完全にレンタルビデオ屋に行くような格好だ。お世辞にもかっこよくはないだろう。日菜が困惑するのも無理はない。

 

「大丈夫。ださいのわかってるから.........」

 

「ご、ごめんね?気を取り直して出発しようよ!」

 

 そうだった、今日の目的はあくまで買い物。俺のださいファッションを見せつける訳では無い。

 

 取り敢えず電車で隣町かー。

 

 日菜と一緒だとなんだかワクワクするな。

 

 期待に胸をふくらませながら、交通系ICカードを改札口にタッチした。

 

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 今井 リサ IMAI RISA

 

 身長 158cm

 

 体重 教えないよ♡

 

 足のサイズ 23.5cm

 

 好きな物 筑前煮 酢の物 恋バナ

 

 嫌いな物 グリーンスムージー 虫(特にセミ)

 

 Roseliaのおかん担当。友希那の良き相談相手で、モカとバイト先が同じ。とてつもなく情報網が広く、恋バナなどは、すぐリサの耳に入る。日菜と冬夜の話も漏らさず知っているのは、彼女くらいだ。

 

 最近のお気に入りはスイーツ巡り。ひまりとケーキを食べに行く約束が現在進行中。モカには二人揃ってカロリー煽りされる。

 

 P.S.ベース練習は決して手を抜かず、家でもライブハウスでも常に全力。友希那の夢を叶えるために、妥協することは無い。




リクエストとか取りたいですね。感想で〇〇出して!や、こんな展開キボンヌ!など、お気軽にお願いします。

どれだけ抽象的でも構いません。頑張って肉付けしてお話にしたいと思います。

時系列がバラバラなものは番外編として出します。

(もっと感想欲しい!読者様と触れ合いたい!)←心の声

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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光の中のシンデレラ

あーめっちゃ文章ガバガバな気がする(実際そう)

明日は休日だからもっとマシなの書けるといいな。

バカップルな23話目です!



 (暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い.........)

 

 俺たちは買い物に行くため、早速電車に乗っていた。乗っていたのだが.........

 

(ああこのおっさん邪魔!新聞読みてぇならトイレにでも行ってろ!)

 

(痛い!そこのキッズ足踏まないで!)

 

 如何せん、この人口密度だ。正直な話、足の踏み場を確保することすら難しい。それに加え、熱気も凄まじく電車内はサウナ状態と化していた。

 

「冬夜君.........あつい」

 

「ああ、俺も暑いわ.........」

 

 俺達が出来ることといえば、せいぜい開閉するドアに、力なく寄りかかるくらいだ。

 

(早く着いてくんないかなぁ.........干からびちまうよ)

 

(でも日菜と距離近いし、いっか。良く見たら汗でちょっと透けてるし.........)

 

 俺が下に視線を向けると、汗と湿気で透けた日菜の下着が見える。色は.........

 

 あ、目が合った。ジト目で俺のことを凝視しているな。

 

「冬夜君、見すぎだよ?あたし、えっちぃのは良くないと思うな〜」

 

 笑いながら日菜が囁く。バレてたの?穴があったら入りたいよ。そしてそのまま永眠したい。女子は視線に敏感というのは都市伝説じゃなかったのか.........

 

「ごめん。少し気になった」

 

「素直でよろしい!」

 

 俺の変態目線はお咎めなしで助かった。電車はガタンゴトンとどんどん目的地へ進んでいく。この会話の後、恥ずかしすぎて一言も喋れなかった俺ほど、ダサい生き物はあまりいないだろう。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「とうちゃーく!」

 

「それで、何を買うんだ?」

 

「特に決めてないけど.........何がいいかな?」

 

「俺に聞かれてもなぁ.........」

 

 目的の駅に着き、電車を降りた俺たちは、人で賑わう繁華街に来ていた。そこで今日の目的物を聞いたのだが.........逆に質問されるとは微塵も思ってなかった。

 

「冬夜君は何か欲しいものある?」

 

「それ男の俺が聞くことだと思うけど」

 

「えぇー.........やっぱり初デートだから、プランとか立てた方が良かったかなぁ」

 

 ん?今さらっとすごいこと言わなかった?デートだって?え、これ日菜の買い物に俺が付いてきただけじゃないの?

 

「これデートだったの?」

 

「.........デートじゃなかったらなんなのさ.........あたし、好きでもない異性を誘ったりなんてしないよ?」

 

 呆れ顔でド正論を言われてしまった。女の子と2人で遊びに行くなんて初めての経験だったから、デートが何なのかよく分かってなかったぜ。

 

「確かに」

 

「まったくも〜冬夜君は鈍感だなぁ.........」

 

「ど、鈍感.........」

 

「それとも.........好きなのはあたしだけだった?」

 

 挑発的な笑みを浮かべ日菜がそう言う。いたずらっ子みたいでとても可愛いが、若干イラッときた。こいつめー.........俺も好きに決まってんだろう!

 

「んなわけないでしょ。俺の方が先に日菜のこと好きになった自信あるわ!」

 

「それならあたしだって!」

 

「なにをー!」

 

 顔を突き合わせ、何ともバカップルみたいなことをやっている俺たち。待って、ちょっと面白くなってきた。

 

「ぷっ.........」

 

「ふふっ.........」

 

「「あはは!」」

 

 2人して吹き出してしまう。やっぱり日菜といるととても面白い。運命の人.........なのかな。そうだといいな、あの夢で見たことが本当になれば楽しいのに。

 

「冬夜君面白いー!」

 

「日菜もだいぶ面白いよ」

 

「ひどい!?」

 

「あはは、嘘だよ」

 

「.........もー、早く行こ!」

 

 日菜がぷりぷりと怒りながら先に進んで行く。アスファルトに照り返す日差しが眩しくて、俺には前にいる日菜が、光り輝いて見えた。




待って終わらない.........上・中・下になってもうた!

時間なさすぎ!1日30時間くらいは欲しい。まじで。

うっすい内容で遅くなってしまいすみません.........“〇| ̄|_

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!



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月光

最近バンドリがスランプ気味.........判定ねじ曲がってる気がするぞ!

近づく24話目です。



 女子の買い物はなんと長いのだろう。みんなもそう思わないか?男だったら5分で必要な物だけ買って終わるのに、なんでいらないし、買いもしない、いらない物を見て盛り上がるのだろう。いらなすぎて2回も言っちゃったよ。

 

 誤解のないように言っておくが、別に俺は女子の買い物に不満がある訳では無い。じゃあ何がそんなに気に入らないのか、それは.........

 

「ねぇ見て冬夜君!ティッシュの空き箱だって!あはは、なんでこんなのが置いてあるのー!?」

 

 いらない物にも限度があるという事だ。

 

「早く行こうよ.........」

 

「えぇ!?これ可愛いじゃん!あたし、ちょっと買おうかな.........」

 

 控えめに言って意味がわからない。こんなので買うか悩む人間がいたのか.........?しかも中身入ってないのに普通のティッシュと値段変わらないし、やっぱり意味がわからない。

 

「そんなのいらないでしょ。まず、家のティッシュの空き箱で代用出来るし」

 

「あ、そっか!おねーちゃんがすぐ捨てちゃうから見たこと無かったよ!今度取っておいてってお願いしとこ!」

 

 .........やっぱり日菜といると楽しいけどそれ以上に疲れる。

 

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「何ともメルヘンチックなとこですな」

 

「るんっ!て来るものがいっぱいだねー!」

 

 100円ショップを後にし、俺たちは服屋に来ていた。ここは前から日菜が気になってた店らしく、移動中に沢山話を聞かされた。夏のコーデはうんたらかんたら.........今注目の帽子はうんたんうんたん.........正直、俺には無縁な話だ。

 

「冬夜君はおしゃれすればもっとかっこよくなれるのに.........感性がおかしくなっちゃってるのかな?」

 

 神妙な面持ちで言われるとなんだか深刻に聞こえる。え、コンビニにジャージかスウェットで行くのっておかしくないよね。感性おかしくなってないよね。

 

「おい、日菜には言われたくないぞ」

 

「あたしはおしゃれにも気を使ってるもーん」

 

「それ以外だよ。ティッシュ箱欲しいやつなんてそうそういないぞ.........」

 

「可愛いのに.........」

 

 頬をぷくっと膨らませて抗議する日菜。紗夜さんがあんまり怒れないのもわかる。こんな可愛い顔されちゃ怒るに怒れないぞ.........

 

「そうだな可愛い可愛い」

 

「投げやりだなぁ.........ほら、行こっか」

 

「おっけー」

 

 日菜に促され入店することにした。中に足を踏み入れると涼しい冷房の風が体を冷やしてくれる。ああ、きもてぃー.........内装はシャンデリアやロウソクなどの装飾がされていて、洋風な感じだ。

 

「あ、あの服可愛い!」

 

「おーいいじゃん」

 

「あれも綺麗で、るんってくるな!」

 

「ふむふむ」

 

 店内を回る日菜はとても楽しそうで、瞳がキラキラ光っている。あちこち動き回るところは、どこか小動物っぽい感じがする。

 

「あ、これ.........」

 

「なんかあった?」

 

 ふと、日菜の足が止まった。視線の先には煌びやかな服が陳列されていた。今、この服を頭の中で日菜に着てもらったが、鼻血もんの可愛さだった。どれどれ、お値段は.........8000円か。あんまり服買わないし、しかも女子の服.........相場は全くわからないけど、この可愛さでこの値段は安いと思う。

 

「これいいね」

 

「.........冬夜君ちょっと待ってて」

 

「いいけど、どうしたの?」

 

「今から着てくる!」

 

 日菜はそう言うと、服を持って試着室へと向かっていった。

 

(楽しみに待っときますか)

 

 そこから三分ほど経過した辺りで、日菜から声をかけられた。

 

「着れたから今から見せるよ?」

 

 どうやら試着が終わったららしい。俺と日菜とを仕切るカーテンの向こうから、恥ずかしさ4割、自信6割の声で話しかけられる。日菜の事だからほとんどが自信だと思っていたが、やはり異性に服を見られるのは恥ずかしいところもあるのだろう。そんなことを思った俺であった。

 

「うん。見せて」

 

「っ.........」

 

 カーテンが、開かれた。そこには天使のような少女が、いた。

 

 恥じらいながらもこちらをしっかりと見つめてくる日菜は、俺の目には天使のように見える。背中に羽がないか確認してしまった程だ。

 

「ど、どう.........?」

 

「愛してる」

 

「あ、あいっ!?」

 

 どうやら日菜の反応を見る限り、俺はとんでもない受け答えをしたようだが、そんなことはどうでもいい。目の前の麗人に最大限の称賛を送りたい、その一心だ。

 

「大胆だなぁ、冬夜君」

 

「ん?なんか言った?」

 

「なんでもなーい。これ、買ってくるね!」

 

 心底嬉しそうな表情で試着室へと戻っていく日菜。そのはしゃぎっぷりは子供がおもちゃを買いに行くものに通づる何かがある気がした。

 

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 以下、少し前の会話。

 

「あー楽しかった!次は映画行こうよ、映画!」

 

「何か見たいのあるの?」

 

「王道の恋愛映画!」

 

「ほほう」

 

「じゃあ、そこの映画館へレッツゴー!」

 

「ゴー」

 

 以上、会話終了。

 

 こんな会話を繰り広げ、俺たちは映画館へと来た。恋愛映画なんて見た事も聞いたこともやったことも無い。無い無い尽くしの俺である。

 

 チケットは日菜が取ってくれるらしく、俺は上映スケジュールを見上げてポケーっと突っ立っていた。「ムーさんと大人になった僕」.........か。子供の頃、ムーさんの声が怖くてトイレに行けなかった時代があったなぁ.........しみじみと思う俺であった。

 

「お待たせー」

 

「よし、入ろっか」

 

 受付の人にチケットを渡して座席へと移動していく。少し暗いので、手を繋ぐことにした。コ、コケたら危ないからね?

 

 指定した座席へ座り、スマホの電源は切る。未だに繋いでる手は暖かく、ぽかぽかした気持ちになってきた。

 

「映画、始まってもこのままでいようね」

 

「日菜から離さなきゃ、俺が離すことは無いよ」

 

 小声で囁かれたので、同じくらいのボリュームで返す。.........それにしても横顔超可愛いな。ずっと見ていられるわ、ってか見させてください。

 

 アホなことを考えていると、照明が消えた。

 

 お馴染みの泥棒映画や、上映中のマナー、新作映画の予告など映画好きには馴染み深い映像が流れ始める。地味にこの瞬間好きだわ、始まる前のワクワク感ってのを制作側は分かってらっしゃる。

 

(お、始まった)

 

 予告も終わり、本編が始まる。

 

 そこからは、笑ったり泣いたり、ちょっとキスしたり、幸せ気分な2時間だった。

 

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「もう、終わりかーなんだか寂しいね」

 

「そうだなー」

 

 時刻は夕刻。映画を見終わって軽くお昼ご飯を食べた俺たちは目的もなく歩き回っていたが、どうやらその時間も終わりのようだ。夕日が沈み、月が顔を出す。

 

「今日楽しかった?」

 

「日菜のおかげでな。そっちは?」

 

「もっちろん、楽しかったよ!」

 

 なんてことの無い、別れ際の挨拶。なのに、どうしてだろう。悲しくて仕方ない。今生の別れという訳でもなんでもないのに、何故こんなにも気分が沈むのだろう。

 

「それなら.........良かったよ」

 

 悲壮感で何とか返事をする。悟られてないといいが.........

 

「冬夜君」

 

 でも、やっぱりダメみたいだ。日菜は全てお見通しってわけだ。街灯もあまりなく、曇り空なので、日菜のことはあまり見えないが、きっと泣きそうな顔だろう。なんでか分からないけど、そんな気がした。

 

「なに?」

 

 虚勢を精一杯張り、いつもと変わらない口調と、声量で返事をする。

 

「あたし、まだ一緒にいたいよ」

 

 そんなの当たり前だ。俺だってそうだ。

 

「でも、今日はさよならしなきゃ。冬夜君もお別れの時くらい笑わなきゃダメだよ?」

 

 わかってる.........わかってるけど.........

 

「じゃあ、あたしが笑顔にしてあげるね」

 

 日菜がそう言うと、曇り空が晴れた。満月が顔を覗かせ、月明かりが彼女を照らした。

 

「あ、お月様!」

 

 空を指さし、明るくはしゃぐ日菜。そんな日菜を見ていると、かぐや姫もこれくらい美しかったのだろうか、そんなことを考えてしまった。

 

「冬夜君、月が綺麗ですね」

 

 真剣な顔で、日菜がそう言った。

 

 俺の方に向き直り、まっすぐ見つめてくる日菜。この一言には、今日までの出来事を全部、詰め込んでいる気がした。

 

「急に敬語なんて使ってどうしたの?」

 

「別に深い意味はないよ?ただ、君に笑って欲しくてさ」

 

 この一言で、俺は自分が笑っていることに気づいた。心の底から、嬉しそうに笑っていたんだ。

 

 .........日菜には叶わないな。俺だってそこまでアホじゃない。さっきの言葉の意味だってわかっているつもりだ。だからありったけの感謝を伝えよう。俺のことを想ってくれる、大切な人に。

 

「ありがとう」

 

 俺はこの5文字に色んな思いを込めた。俺と出会ってくれて、一緒にいてくれて、好きになってくれて。本当にありがとうって。

 

「.........うん。あたしからも、ありがとう」

 

 そう言って、日菜が近づいてくる。少し身長差があるため、背伸び気味になる日菜はとても美しかった。

 

「んっ.........」

 

 月明かりの下で、影が重なる。口付けを交わした瞬間に、好きという気持ちが溢れて止まらなくなった。

 

「お昼の返事、まだだったね」

 

「あたしも、愛してる」

 

 6月中旬。この月に祝日は無いが、俺と日菜にとっては特別な月になった。

 

 人生で1番長いキスをした月。初めてデートをした月。

 

 そして.........愛を確かめあった、大切な月。

 

 顔を出したばかりの満月は、今も俺たちを見守ってくれていることだろう。




終わりまで持ってくのに字数めっさかかった.........

そろそろ終わりかなぁ.........まぁいくらでもアフター出しますけど!

終わりというか一区切りという言い方の方が正しい気がしますけどね!

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!

(実はガールズコードの歌詞を参考にしました.........気づいた人いるかな?)


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ぶりりあんとなふぁいあーわーくす

休みだからって寝すぎた.........5時起きです(P.M)

最終章の始まり、25話目です。



「花火大会?」

 

「そうそう、花火大会!」

 

「花火大会ねぇ.........小学生の頃、友達の付き合いで行ったきりだなぁ.........」

 

「なら尚更だよ!今度行こうね!」

 

「おっけー、予定開けとくわー」

 

 7月2日、月曜日。

 

 蝉がミンミン、太陽さんさんなこの時期に、俺は同級生で天才でシスコンという多属性な友達に、花火大会への同伴を頼まれた。まぁ、こうなることはある程度予測していた。日菜の性格的に、祭りやイベントをスルーするなんて、それこそありえないというやつだ。

 

 俺としてはそっちの方が嬉しい。辛く落ち込んでいるより、明るく活発な日菜の方が見てて楽しいし、何より、日菜の魅力が十二分引き出されるというものだ。

 

 断る理由もないので(むしろ、受ける理由しかない)もちろんOKを出した。別に、この決断が取り返しのつかないことになったわけでも、人生の転落の始まりになった訳でもない。

 

 ただ.........

 

 ―――幸せを掴む転機になったはずだ。

 

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「るんるんるんっ!楽しみだね、花火!」

 

 日菜は――そう言って、俺と繋いでいる手をぶんぶんと振っている。地元の花火大会、場所は.........なんと、あの夢の中で見た場所だ。

 

 7月7日、土曜日。

 

 約束の花火大会は今日、この七夕の日に行われる。開催10分前、俺は日菜に連れられ、例の丘へと来ていた。日菜が言うには、前に、弦巻さんという人と、合同で部活を行っている時に見つけたらしいが.........どっからどう見ても、俺が夢の中で見た景色と一致していて、言っちゃ悪いが、少し気味が悪い。

 

 日菜の格好は、やはりと言うべきか、それとも意外や意外と言うべきか、まぁ、知り合ったのは3ヶ月前だから、こういうイベントにあった服装をする性格なのかは知らないから、どっちを言うべきかは、わからないが。

 

 話が逸れた。結論を言うと日菜の格好は.........浴衣だ。

 

 浴衣、それは男のロマン。年に数回、見れるか見れないかというレア度。いつもとは違う雰囲気でちょっとエロい。可愛さが2倍にも3倍にもなる。三拍子揃った、水着、パジャマと並ぶ、3種の神器の内の1つ.........だと俺は思っている。世間一般的にどうなのかは知らない。

 

「ああ、俺も楽しみ。.........それにしても、似合いすぎじゃね?浴衣」

 

「そう?ありがとねっ!おねーちゃんが着付けてくれたんだー」

 

 どうやら、紗夜さんがやってくれたみたいだ。やっぱりあの人、日菜に甘いな。

 

「そうなんだ。紗夜さんは呼ばなくて良かったの?」

 

「野暮な事聞かないでよ.........冬夜君と二人っきりが良かったから呼ばなかったの!」

 

 日菜がジト目を向けてくる。失言だったか放言だったか.........まぁ、どちらにせよ、いい質問ではなかったことは確かだ。よく考えてみれば、友達以上恋人未満のデートに、誰が第三者を連れてくるのか.........そんなやつが見るのなら見てみたいものだ。ん?鏡を見ればいいって?またまた、ご冗談を。

 

「それは配慮が足りてなかった。ごめん」

 

「まったくもー.........あ、始まるよ!」

 

 小言を言われるのを覚悟していたが、どうやら花火が始まるらしく、日菜の意識は、完全に花火へと持っていかれた。横から見ていても分かるくらい、興奮している。

 

 俺が見たあの夢と違うのは、今日は花火大会で、俺が告白するという事だ。全身全霊、一世一代の告白だ。俺は意を決して、彼女、日菜に話しかける

 

「日菜、聞いてくれ」

 

 夏の夜空を彩る花火が、今始まる。




短めですね、でもこれが綺麗な切り方だと自分で思っているので、後悔はありません。

次で最終話です。投稿間隔が空いてしまう可能性もあります。最後は、しっかりと時間をかけて書きたい、そんな気持ちでいっぱいなので。

今までこの駄文に付き合ってくれた皆様、もう少しお付き合い頂けると幸いです。エピローグというか、番外編というか、最終話と言ってもまだ全然書きます。

ではこの辺で。

今回もお読みいただきありがとうございました!


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始まりと終わり


ここまでのお付き合い、本当にありがとうございます。

後書きで伝えたいことは沢山書きますので、前書きはこの程度で。

最後の26話目です。



「日菜、聞いてくれ」

 

「.........うん」

 

 花火が上がり、爆音が聞こえてくる。赤青緑、色とりどりの花が、夜空いっぱいに咲き誇り、俺たちに降り注ぐ。まほろばの場所と言ってもいいくらい、ここは「素敵」だ。

 

「俺は日菜が好きだ。愛してる」

 

「.........うん」

 

 花火の音に掻き消されないように、必死に声を、気持ちを吐き出す。今までのこと、これからのこと、伝えたいことは山ほどあるんだから。

 

「だから、えっと.........」

 

 でも、言葉に詰まってしまう。おかしいな、練習だと上手く言えたんだけどな.........練習、足りなかったかな.........?

 

「冬夜君」

 

 俺がしどろもどろになり、口をもごつかせていると、名前を呼ばれた。目を合わせてみると、なんだか分からないけど、とても安心できた。俺が日菜の顔を見て、穏やかな気持ちになって笑うと、彼女もまた、笑ってくれた。いつもと変わらない.........いや、それ以上に笑ってくれた。とても楽しそうに、俺が好きになった、笑った顔を見せてくれた。

 

 そんな顔見せられちゃ、俺が怖気付く訳には、いかないよな。

 

 .........覚悟は決まった。

 

「日菜」

 

 あとは、言葉にするだけだ。

 

「はい」

 

 色んなことがあった。

 

「俺は、日菜から色んなものを貰った」

 

 何かの本で読んだことがある。

 

「だから、これから俺なりにお返ししていきたいと思う」

 

 大人になるってなんだろう。

 

「そのためには.........日菜」

 

 今なら、わかる。きっとこういう事だったんだ。ああ、これは1人じゃ気づけないわけだ。

 

「俺と.........」

 

 大切な人がいて、守りたいって思って.........

 

「付き合ってください!」

 

 ずっと隣にいたいって思える人が出来る事なんだ。

 

「.........はい、喜んで!」

 

 今日、俺は少しだけ大人に近づけた。日菜という、かけがいのない、大切な人のお陰で.........

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「うぅ.........顔、見れないよぉ.........」

 

「俺の方が恥ずかしいんだけど」

 

「そ、それはそうかも!しれないけど.........は、恥ずかしいことに変わりないの!」

 

「まぁ、確かに.........」

 

「でも、ありがとね。あたしも、大好きだよ」

 

「うん。どういたしまして」

 

 でもさぁ.........そんな後ろ向かれて言われても、説得力の欠片もないよ!?声も若干うわずってるし.........これは、お仕置きが必要ですなぁ.........(ゲス顔)

 

「日菜、もう1回、こっち向いて?」

 

「うっ.........こ、これでいい.........?」

 

 優しい口調で語りかけると、恥じらいながらもこっちを向いてくれた。やっぱりとてつもなく究極的に完全なまでに、可愛い。かのクレオパトラも裸足で逃げ.........出しはしないがティーパーティーには入れてくれるだろう、楊貴妃と小野小町も入れて、世界4大美女パーティーも開けそうだ。

 

 何を言ってるかよくわからないって?大丈夫、俺もよくわからないから。

 

「やっぱり可愛い」

 

「も、もう!冬夜君のすけこまし!」

 

 す、すけこまし.........?心外すぎるぞ、それ。恐らく(というか確実に)照れ隠しなのだろうが、それにしてもレベルが高い。現実で初めて聞いたぞ、そんなセリフ。

 

「さっきの気持ち、嘘じゃないよ。本当に好きなんだ」

 

「うぅ.........」

 

「愛してる。これからも一緒にいてね?」

 

「わ、わかったからぁ!あたしが悪かったから許して!」

 

 勝った。別に勝敗を競ってたわけではないが、日菜を照れさせることに成功した。競技名をつけるとしたら.........「デレデレ!?日菜陥落選手権」とかだろうか。自分でつけたのにこう言うのは悲しすぎるが、センスがなさすぎる。

 

 そのあと2人で花火を見て、バカ笑いして、気持ちを伝えて。

 

 こうして、花火大会は終わりを告げた。そして始まるのは、先の話。未来の話。

 

 これからの、約束の話。

 

 ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕

 

「また、来ようね」

 

「ん?」

 

 時刻も頃合。花火大会が終わり、丘の上に少なからずいた人もまばらになってきたので、帰りの支度をしていたら、ぼそっと隣の日菜が呟いた。別に何回来てもいいけど.........なんでわざわざそんなことを?多少の疑問が残る。

 

「次は.........秋に来たいな」

 

「なんかあるのか?」

 

「うん.........あたしが一番好きな、星が見れるんだ」

 

「.........そりゃ、来るしかないな。彼氏として、お供させていただきますよ」

 

「うん!くるしゅうない!」

 

 軽口を叩きあい、恋人らしいことをしてみる。これが本当に恋人の正しい姿なのかはわからない.........でも、俺は今、幸せだ。なら、それでいいじゃないか。

 

「日菜、手、繋いでもいい?」

 

「もう.........彼氏っていうのは、空気を読んで、さりげなく手を繋ぐんだよ?」

 

「.........そうだね、ごめん」

 

 .........どうやら、もう手を繋ぐ確認は不要みたいだ。流石日菜、もう俺の照れさせる攻撃を克服しやがった。なんて恐ろしい子なんだよ!?

 

「それじゃ、帰ろっか!」

 

 快活に、笑い飛ばすように、日菜が元気に声を上げる。聞いてるだけで、勇気を貰えそうな、そんな声で。

 

「.........うん」

 

 自分でも思うが、俺はどれだけ女々しいのだろう。この期に及んで、まだ別れが寂しく感じてしまう。この前、あんだけ励ましてもらったのに.........

 

「大丈夫だよ」

 

「だって、終わりじゃないもん。寧ろ、始まりなんだよ?」

 

「明日から世界が、見てる景色がきっと、変わるから」

 

「だから、大丈夫」

 

 俺が暗然としていると、沢山、勇気づけてくれた。ああ、泣いちゃダメだって思ってたのに.........なんでだろう、涙が止まらない。悲しくなんてないのに、希望を持てたのに、涙がとめどなく溢れてくる。

 

「ひな.........ありがとう.........」

 

 嗚咽混じりの声で、感謝を伝える。顔も涙で濡れてぐしゃぐしゃだ。正直、人前に出られるような状況じゃないけど、日菜には、ちゃんと言いたかった。

 

「泣いちゃダメだよ。言ったでしょ?お別れの時は、笑わないと!」

 

「.........うん」

 

 袖で涙を拭う。そうしたら、不安や悲しい気持ちも一緒に消えた気がした。

 

「冬夜君、好きだよ」

 

「俺も好きだよ、日菜」

 

 泣き腫らした、真っ赤な目を合わせる。すると、日菜の綺麗な黄緑色の瞳と、ピッタリ視線が合う。

 

 もう、言葉はいらない。

 

 日菜を抱き寄せ、そのまま口付けをする。キスの時間はそんなに長くなかったが、気持ちを通わせるには十分だった。

 

「じゃ、帰るか」

 

「そうだねー.........っあ!流れ星!」

 

 唐突に日菜が空を指さし、声を上げる。空には流れ星が雨のように降り出していた。

 

「綺麗.........!!」

 

 横にいる日菜の方が綺麗.........そんなことを思ったけど言わなかった。だって、言わなくても伝わってるから。

 

「日菜、これからも一緒にいようね」

 

「うん!」

 

 固く繋いだ手は離れない。離さない。空には、花火が終わり、満天の星空が広がっていた。

 

「そーいや、帰りにコンビニ寄っていい?」

 

「いいよー!」

 

「お腹すいちゃったよ、俺」

 

 今日が、俺と日菜の.........

 

 友達関係が終わり、恋人関係が始まった日だ。




これにて、日菜と冬夜の物語は一旦、完結です。

(どうでもいいことかも知れませんが、本文は3020文字で構成されています。日菜と紗夜さん好きなら、わかりますよね笑)

初めて投稿して、ちょうど1ヶ月。長かったような、短かったような、そんな気分です。でも、あらすじにもある通り、「走り抜けた」1ヶ月であったことは確かですね。

あと1話!あと1話だけこの続きを出します。時期は未定ですね.........気長に待ってくれるとありがたいです笑

最後に!ここまで読んでくれた皆様!本当にありがとうございます!

では、この辺で!

今までありがとうございました!

(別の作品とか書くつもりなので、またお会いしたらよろしくです笑)


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エピローグ フォーマルハウト


書きたいことはあとがきで書きます。

取り敢えず、これだけは言わせてください。

この作品を読んでくれた皆様、本当にありがとう!

では、本編へどうぞ!



「あ!着いた着いた!とうちゃーく!」

 

「やっとかぁ.........お疲れ様、日菜」

 

 石造りの階段から1歩、今朝の雨で少し湿った土に足を乗せる。デートだからと浮かれて、高い靴を履かずに運動靴を履いて来て良かった。この地面の状態じゃ、土が付いて靴が汚れる。

 

 11月10日、土曜日。

 

 夏の花火大会からはや4ヶ月。俺と日菜は、約束していた秋の天体観測に来ていた。この4ヶ月の間に色々なことがあったが.........まぁ割愛させてもらうことにする。理由はキリがないからだ。ん?何があったか知りたいって?まぁ、そのうち話すよ。多分。

 

「う〜ん、風が涼しくて気持ちいいね!」

 

「そうだなぁ......... 天気もバッチリ晴れたし、絶好の天体観測日和になったよ」

 

 日菜が気持ちよさそうに伸びをして、爽やかな笑顔を向けてくる。その表情はとても嬉しそうで、なにより可愛い。こっちまで笑顔になってしまう気さえしたくらいだ。やはり、アイドルというのは違うな。俺みたいな無気力人間をアクティブ人間に変えてしまう力があるんだから。ここだけの話、最初は恋愛パラメーターがカスだった俺も、最近はお家デートで自分からキスできるようになった。これも、日菜の才能の1つ、「人を変える力」なのか.........知らんけど。

 

「じゃあいつものベンチ、行こ!」

 

「そうだな。.........でも、その前に手、繋がないか?ほら、冬本番はまだとはいえ、少し寒いだろ?」

 

「えぇ〜 私は寒くないけどなぁ〜 まぁ、冬夜君と手を繋ぐの大好きだから、嬉しいけどさ」

 

 日菜がやれやれといった表情で、手を差し出してくる。ジト目も.........イイッ!なんて思ってしまった俺は多分末期だろう。日菜好き病のな。取り敢えず手を繋ぐことにする。勿論、恋人繋ぎ。日菜の手は思ったよりも冷たく、ひんやりとしていた。というか、俺がドキドキして体温上がってるだけだと思うけど。

 

「冬夜君も素直じゃないなぁ〜 寒いなんて言い訳しちゃってさ」

 

「言い訳なんかじゃないよ」

 

「うっそだ〜 じゃあなんでこんなに手、暖かいの?」

 

「.........っば!ちげーよ!それはあれだよ.........そう、階段!階段で疲れたからさ!」

 

「えぇ〜 その割には息、上がってないけど?冬夜君はウブだなぁ〜 私にドキドキして暑くなったって言えばいいのに〜」

 

 言えるなら言ってるわ!.........全く、日菜は本当にからかうのが上手だな。あと無自覚の煽りも天才級。煽り上手の氷川さんという称号を授けたいくらいにはな。

 

 手を繋いで、ベンチへ2人で歩みを進める。なんだかんだで、俺はこの時間が大好きだ。日菜が近くにいることを感じられる大切な時間、暖かい繋がりを持てる、幸せな時間だから。繋がれた手からは、暖かくて、優しい温もりが伝わってくる。体温だけじゃない、確かな温かみが、そこにはあった。

 

「ふぅ.........ねぇ、冬夜君」

 

「ん?」

 

「あたしたち、色んなことがあったよね」

 

 ベンチに座って一息、そんな時に日菜が話しかけてきた。足をぷらぷら、首をゆらゆらしている彼女は、さながらモデルみたいだ。まぁ、モデルの仕事も最近してるらしいから、あながち間違いでも無いけど。

 

「あーあったなぁ......... 特に笑ったのは日菜が寝ぼけて噛み付いてきた時だな」

 

「あはは、あの時はごめんね?ご馳走の夢見ててさ」

 

「んで、俺の腕をご飯と間違えたと」

 

「うん!」

 

 あれは.........いつだったかなぁ......... まぁいいよそんなことは、とにかく休日だ。休日に俺は日菜の家に泊まりに行ってたんだ。んで、2人で沢山遊んで、るんっとして(意味深)それで遊び疲れた俺達は、服もろくに着ないで眠りについた。

 

 .........ここまでは普通だったのだが。普通だよな?服なんて下着着てればいいよな?良い子のみんなは、服を着て、風邪を引かないように暖かくして寝ようね!

 

 ここですやすや快眠中の俺に悲劇が起こった。あろう事か、日菜を抱きしめて寝ていた俺の右腕に、ガブッと勢いよく噛み付いてきたのだ。正直言って、めちゃくちゃ痛かった。彼女じゃなかったら叩き起していただろう。冗談抜きで!俺は、可愛い彼女を起こすことが出来ず、頭を撫でて、念仏を唱えて、邪念を振り払った。まぁ、彼女も振り払えない奴が、邪念なんて払えるわけないんですけど。そんなこんなで、俺の地獄の一夜は、日菜が起きるということで、決着が着いた。

 

「今だから言うけどさ、あれ、めちゃくちゃ痛かった。腕もげるかと思った」

 

「そんなに〜?甘噛みのつもりだったんだけどな〜」

 

「あれが甘噛みならステーキとか食う時どうすんの?なに、日菜ってライオンなの?」

 

「あはは!面白〜い!」

 

「面白かねぇよ!全く.........ほら、星見ようぜ」

 

「そうだね、見よう見よう!」

 

 本題に入る。俺達が来た理由、夏にした大切な約束。日菜の大好きな星を、俺達を繋いで結んでくれた星を、2人で見よう。

 

「.........本当に綺麗だね」

 

「うん、綺麗だ」

 

 空には満天の星空。あの時、夢で見た景色より綺麗で、少し滲んで見える。悲しいから泣いてるんじゃない、嬉しいから泣いてるんだ。感動して、心が動かされて、泣いてるんだ。誰に言えばいいかわからないけど、俺はこう言いたい。日菜と会わせてくれて、ありがとうって。心から、感謝したい気持ちだ。

 

「日菜」

 

 .........でも、思うだけじゃダメなんだ。伝えなきゃ、ダメなんだ。

 

「愛してる」

 

 声なんて張り上げなくていい。ただ、この気持ちを伝えよう。ありがとうって、愛してるって、大切な人に言うんだ。だって、それが好きってことなんだから。

 

「.........あ、たしも.........愛してるよ.........」

 

「ありがとう」

 

「.........あたし、君とあえて良かった!」

 

「俺も、日菜と会えて、本当に良かった」

 

 日菜の顔は涙で濡れていて、綺麗だった。月明かりが照らし、キラキラと光る彼女の顔は、本当に魅力的だと思った。彼女の泣くところを見るのはこれで二回目だ。いつも元気で活発な彼女の泣き顔はあまり見ることが出来ないので、貴重な顔だと言えるだろう。前に見た時は、怖い夢を見たと言っていたが、今はそんな夢、見てないといいな。

 

「.........うぅ.........」

 

「泣くほど嬉しかった?」

 

「あたりまえじゃん!.........だって、愛してるって」

 

「思ったことはきちんと言う。それが恋人だろ?」

 

「そうだけど!いつもは好きだけなのに、なんで今日は.........」

 

「俺が日菜を愛してるからだよ」

 

「また言った!」

 

「いくらでも言うよ。日菜は大切な人だから」

 

「.........はぁ.........わかったよ、今日はあたしの負けだね。いつもは私がからかう側なのに.........」

 

「はは、からかってなんかないよ。.........それにしても、綺麗だな」

 

「それって、あたしの事?ありがとう、冬夜君!」

 

「軽口叩く余裕はあるんだな、顔真っ赤の癖に」

 

「.........んなっ!ち、違うよ!」

 

「さっきのお返し。これで形勢逆転だな」

 

「逆転しーてーなーいー!」

 

 俺はこれからも、笑って、泣いて、支えあって生きていきたい。少し前なら考えもしなかったことだ。あの夢を見るまでは。でも、今は違う。大切な人が俺にも出来たんだから。隣にいてくれる大切な人が、今はいるんだ。だから、今を大切に生きていこう。好きな人と、歩幅を合わせて進んでいこう。2人ならきっと怖くないから、何があっても大丈夫だから。

 

 空には、俺達を祝福するかのように、燦々と一等星が輝いていた。

 

 秋のただ一つの一等星。「フォーマルハウト」が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、大学遅れちゃうからもう行くね!」

 

「あ、日菜!ちょっと待って!」

 

「何〜?急いでるんだけど!」

 

「そりゃ、見りゃわかるけど.........って、そうじゃなくて、今日の夜、レストラン予約してるから」

 

「ほんと!?楽しみだな〜!」

 

「うん、本当。だから、寄り道しないで早く帰ってくること!」

 

「わかった!」

 

「あ、あともう1つある!」

 

「ん?どうしたの?」

 

「日菜、好きだよ。.........行ってらっしゃい!」

 

「.........あたしも好き!それじゃあ、行ってきまーす!」

 

 俺にとっての一等星は、時が経ってもキラキラで、素敵で、隣にいてくれるようです。

 




これにて、「隣の一等星」完全完結です。季節ネタとかはやるかも知れませんが、日菜と冬夜の物語は、私が書きたかった物語はこれで終わりです。

初めて投稿した時は、文法もめちゃくちゃで、UA数も伸び悩み、やめようかと思っていた時期もありました。.........しかし、今この場で小説を書き終え、あとがきを書けているのは、皆様のおかげです。読んでくれた皆様、お気に入りしてくれた皆様、コメントしてくれた皆様。私が折れずに、ハーメルンに投稿出来たのは、全部皆様のお陰です。本当に、ありがとうございます。

.........さて、ここら辺であとがきも終わりにしましょう。下で宣伝とかしたいしボソッ

ここまでの、長いお付き合い、本当にありがとうございました!

また、どこかで会いましょう!

2018 11.27 レミリア親衛隊

以下宣伝

日菜の姉、氷川紗夜がヒロインのDream Shout ハーメルンにて連載中です!是非、読んでみてください!

Twitterもやってます!こっちでも仲良くしてくれる人、フォローお願いします!

ユーザー名 レミリア親衛隊@inferno

ID @infernoMMDer

バンドリのフレンドも募集してます!そんなに強くありませんが、それでもいいよという優しい方、フレンドお願いします!

バンドリ! ガールズバンドパーティ! ID 93997205

では、これにて宣伝終わります!

今までの応援、ご愛読、本当にありがとうございました!


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EX stage
ベタベタの愛情



ぶっちゃけ言います。本編終わったんで前書き後書き、めちゃくちゃふざけます ʅ(´⊙ω⊙`)ʃ

(嘘です真面目にやります)

注:EX stageは会話文多めです。何故かって?執筆速度がそっちの方が早いからだよ!こんなこと言わせんな、恥ずかしい。

EX stageは簡潔に言うと、大学生編です。いつもより甘々、というか砂糖がぶ飲みくらい甘めにしてあります。ぜひ、楽しんでください。

ところで.........クリスマスの日菜紗夜可愛すぎません??

プレゼントの話読んで悶えました。あれは破壊力抜群やでぇ.........

よし、じゃあ本編行きますか!



「37.6度.........風邪ですね」

 

「ありゃりゃ〜やっぱり?」

 

「はい、やっぱりです。.........つーわけでさっさと寝なさい」

 

「せっかくの休みなのに〜!ぶーぶー!」

 

 日菜が風邪を引いた。俺達は高校卒業後、同じ大学に進学し、アパートを借りて同棲している。この同棲計画には紗夜さんの後押しが強くあったらしく、日菜の両親を押し切ったとのことだ。あの人も妹離れしたんだな.........と思いたい。まさか、日菜とどったんばったん部屋で大騒ぎしてた音が聞こえていたとか、ありえないし。紗夜さんの顔がいつも赤いのは、きっと暑がりだからだ。そうじゃないと俺は死んでしまう。

 

 まぁ、そんな感じで今は2人で暮らしている。家事などは基本分担.........なのだが、如何せん日菜は多忙人だ。アイドル活動にモデル。それに加え、大学も行かなくてはならない。そんな彼女が家事をする時間は、はっきり言ってあまりない。だから俺が朝飯を作る事の方が多い。

 

 今日は休日ということもあり、2人で出かけようと約束をしていた。だから俺は、いつも通りに朝飯を作り、食卓で日菜を待っていた。待っていたんだけど.........

 

「日菜、全然来ないな。いつもなら、お腹空いた〜!とか言って速攻来るのに」

 

 日菜が朝ごはんを食べに来ない。名探偵冬夜はこの謎を事件と判断し、容疑者である日菜の部屋へと突撃した。

 

 そこに居たのは、風邪を引いた彼女だったって訳だ。これにて、日菜失踪事件は解決だ!風邪っぴき事件が始まったけど。

 

「ってか、ちゃんと寝巻き着ろよ。だから風邪引くんだよ」

 

「だって寝てる時暑いんだも〜ん」

 

「はぁ.........さいですか」

 

 彼女は少し、暑がりだ。現に、今もパジャマがはだけている。普通に気になるんだけど、もうそれ服として機能してなくね?布面積が世紀末レベルだよ。

 

「.........冬夜君に、お願いがあるんだけど」

 

「何?言ってみ?」

 

「ベタベタするから.........体、吹いて欲しいな」

 

「.........後ろだけだぞ」

 

「ありがと〜!」

 

 そんな訳で、日菜の背中を拭くことになった。.........いや、どんな訳だよ意味わかんねぇよ。高校時代だったら俺失神してるぞ、展開についていけなくて。

 

「.........んっ、あたし、汗大丈夫?」

 

「.........ああ、いい匂いがする。日菜の匂いだ」

 

「.........っく、ありがとう.........ふぁっ........」

 

 日菜の柔肌にタオルを滑らせていく。もちもちすべすべのタオルで拭いているからか、日菜がときおり、悩ましげな声を上げてくる。端的に言ってとてつもなくエロい。

 

「あのー日菜さん?声を抑えて貰えると、こちらとしても助かるのですが.........」

 

「そんなこと、言ったって.........ひゃあ///くすぐったいんだもん!」

 

「.........そんな声出してると、キスしちゃうよ」

 

「.........あたしもしたいけど、風邪移しちゃうかもしれないし.........」

 

「俺は構わないよ。日菜とキスしたい」

 

「.........じゃあ、いいよ。いっぱい、キスしよ?キス以外の事も.........ね?」

 

 .........どうやら、俺の朝食は、麗しい姫君との戯れで、ブランチになってしまうみたいだ。




1時間で書き終わった.........やっぱ日菜は書きやすい。ばんばん情景とセリフが流れてくるもん。紗夜さんは.........難しい!

うぇーい!うぇーい!後書き楽しいなぁ!

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!


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ラジカルな立場逆転


寒くなってきましたね.........自転車乗ってると手がお亡くなりになりそうです。

なので、そんな寒さを吹き飛ばすようなアツアツカップルをどうぞ!



「くぅっ!.........それはるんってしないなぁ!」

 

「よっ、ほっ、ここだぁ!」

 

「あー負けたぁ〜!.........あははははは!おもしろーい!」

 

 外の気温は4℃。冬も本格的に始まり、外に出るのも億劫な時期になってきた。そんな中、俺達が外に出る理由も必要もない。なので少し狭めなこたつに2人で入り、仲良くゲームをしている。.........久しぶりのゆっくりした時間というやつだ。こたつ机の上に白紙のレポート用紙が2枚置いてあることに目をつぶれば。

 

 .........レポートだって?ンなもんポケ〇ンでしか書いたことねぇから書き方わかんねぇや。うん。日菜はすぐ終わるからやらないでいいって言ってるけど。

 

 .........どうやってすぐレポート終わらすんですか?僕の低スペ脳じゃ焼却法しか出てこないんですけど。もしかしてそれが正解なのか.........?レポートは燃やすというのが真理なのか?

 

「あれ、冬夜君?なんでライター持ってるの?」

 

「.........え?ああ、俺のレポートは特別性でね。レモン汁で書いたから炙ると文字が浮かび上がるんだよ」

 

「なにそれおもしろーい!」

 

「嘘だよ」

 

 気づいたらライター持ってるし、日菜はなんかすごい喜んでるし、色々とカオス。

 

 ちなみにレポートは燃やしませんでした。そんなことしたら俺の成績が赤ばっかりで炎上してしまうので。

 

 ま、ゲームだったら日菜をボコれてストレス解消できるからいいや。レポート書くイライラも収まるだろう。.........正直、俺が勝てるものってこれくらいしかないし.........

 

 閑話休題。

 

「あ!いい感じ!」

 

「ちょ、ちょ!」

 

「.........やった〜!」

 

「ま、けたのか.........この俺が.........?」

 

 前言撤回。やっぱこいつおかしいわ。最初は互角以上に戦えてたのに、途中からフレーム回避とかやりだすんだもん。そんなんできひんやん普通、そんなんできる?言っといてや、できるなら.........

 

「.........まぁ、日菜が上手なのは認める。認めるけど.........」

 

「足を擦り付けてくるのは違うだろ!全っ然集中できねぇよ!」

 

 そう、敗因はこれが原因だ。90%これのせいと言っても過言ではないだろう。.........ん?フレーム回避はって?あんなもん、俺だって出来るさ。十回に一回くらいはね。日菜の精度は人間じゃねぇよアレ。なんで後半一発も攻撃当たんないんだろ、TASさんがやってんのかな?

 

「集中出来ないって.........どんな風に?」

 

「こんな風にだよ!見えないからって色々とやばいことしてんじゃねぇ!」

 

 日菜が感触のいい太ももを俺になすりつけてくる。彼女はどうせ「あったかーい」くらいの気持ちでやっているんだろうけど、やられる側からしたらたまったもんじゃない。今すぐゲームを消して、レポートを廃棄処分して、日菜をベッドまで運びたくなってしまうから。そしてその後色々して、朝チュンというトゥルーエンドを迎えたい。こんな過激思想をしている男を迎えてくれるのは警察くらいだと思います。はい。

 

「もう子供じゃないって、昔、冬夜君言ったよね〜?」

 

「.........そんなことまだ覚えてんのか。あれは言葉の綾で.........」

 

「覚えてるよ、大切な思い出だもん。冬夜君がいっぱい、いーっぱい、苦しそうにキスしてくれた、そんなことも覚えてるよ」

 

 とても恥ずかしそうに頬を赤に染めているが、伏せ目がちにはならず、綺麗な翡翠色の瞳をこちらに向けてくる。.........俺は昔から、日菜のこの表情が苦手だ。この顔をされてしまったら、なんだって言うことを聞いてしまう気がする。世間的にはそれは好きってことなんだろうけど、とにかく俺は苦手だ。恥ずかしくて目を合わせられないし。

 

「.................テレビでも観るか」

 

「ん〜?あ、わかった!手、繋ぎたいんでしょ〜?だからゲームはやめてテレビを観るってことだよね」

 

「.........あの、追い討ちやめて貰えます?もう恥ずかしすぎて死にそうなんですけど」

 

「あはは、やっぱり図星なんだ〜」

 

 日菜との付き合い方は多少強引の方がいいかもな、そうじゃないとリードできないし、これくらいがちょうどいい。.........意図の深読みと解説はやめて欲しいけど。

 

 結局、今日も日菜には勝てなかったとさ。恋愛もゲームも。




もうそろそろクリスマスですね!

ん?どうせぼっちだろうって?いいや、俺はクリスマスさよひなが来ると信じている。そしてそれを引けると。だからぼっちじゃない!氷川家にお邪魔してクリパや!(無理)

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!


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シュワシュワ忘年会

冬休みシーズンはイベントが目白押し!なので、日菜の方更新しまーす。

では、本編どうぞ!



「「「せ〜っの!カンパ〜イ!!」」」

 

 オシャレで少し高そうな、それでいて隠れ家的雰囲気もある居酒屋に、3人の声が重なる。その声の主は、俺と日菜と、今では全国.........いや、世界レベルのアイドル、丸山彩だ。あれから3年、俺と日菜が出会って3年。パスパレは急成長を遂げ、今や世界的アイドルグループになっている。そのリーダーである丸山彩ちゃんが、急な招集にも関わらず来てくれたのだ。昔は承認欲求の権化で街に出る時は変装をしなかったらしいが、今そんなことをやるとSNS拡散祭りで人が集まり、普通に歩くことも困難になるだろう。なので、変装はバッチリしてきている。.........丸山ちゃんよ、そのマスクにサングラスはどうにかならなかったのか.........

 

「ごめんね?丸山ちゃん。忙しかったでしょ?年末も近いしクリスマスだって.........」

 

「全然大丈夫だよ!」

 

「大丈夫じゃない癖に〜 あたし知ってるよ?今日来るためにスケジュールぎゅうぎゅうに詰め込んで無理やり空きを作ったの」

 

「え、そうなの!?」

 

「あたしは撮影とかインタビューとか全部一発OKだから空きがあるけど、彩ちゃん不器用だからね〜 完璧を求めすぎちゃって何回もやり直してるんだよ。そう考えると、クリスマス特番と年末年始ライブもあるし、今ってパスパレ史上一番忙しい時期かもね」

 

 な.........なんだって。俺はそんな忙しい時期に「丸山ちゃん、今度暇かな?クリスマスと年末は日菜が生放送出ちゃって忘年会出来ないから三日後やるんだけど、もし良かったら来れないかな〜なんて。連絡待ってます!ヾ( '▽' |」なんて馬鹿丸出しの文を送っていたのか。とてつもなく自分が惨めに思えてきた。実際そうだけど。というか、普通に考えて日菜がパスパレとしてテレビに出るのに、丸山ちゃんが出ないわけないだろ、アホか。

 

「忙しいのは事実だし、時間が無いのも事実.........だけど、日菜ちゃんと雹崎君が誘ってくれて嬉しかったから、どうしても来たかったんだ」

 

 .........こういう裏表のない、素直な性格だからファンが沢山いるんだな。笑顔もすごい可愛いし、何より努力家だし。魅力が溢れ出してるな。

 

「.........そういうことなら、沢山飲みますか!ほら、日菜も日菜も!」

 

「テンション高いね〜冬夜君」

 

「あはは、雹崎君って面白いね」

 

「あたしの彼氏なんだから当たり前だよ〜 ね?冬夜君!」

 

「おう!いつもはあんまり元気ないとか言われるけど今日は違うぜ!よーし、パスパレの未来に、乾杯!」

 

「「乾杯!」」

 

 こうして、今年もお疲れ様会.........もとい、忘年会は進行していく。

 

 

「あははは!彩ちゃん面白〜い!」

 

「ひなちゃんらって、面白いよぉ!」

 

「うはははは!楽しいー!.........うっぷ」

 

「わー雹崎君!?大丈夫!?」

 

「あははは!冬夜君が吐きそうになってる〜!」

 

 .........忘年会は俺が気持ち悪くなるまで飲んで、お開きとなった。

 

 ──────────────────────

 

 

 現在、自宅。状況、酩酊。人数、2人。う、吐きそう.........

 

「あー気持ち悪いわ。なんか、出そう。視界はぼやけるし、呂律はあんま回んないし」

 

「大丈夫?冬夜君。横になったら?」

 

「あー先に風呂入る」

 

「でも酔ってるのにお風呂は危ないよ?」

 

「すぐ出るから」

 

「うーん心配だなぁ〜.........あ、一緒に入ればいいっか」

 

 そう言うと日菜は俺に寄ってきて、濃厚な口付けをした。アルコールの香りが、情欲的な雰囲気を醸し出す。酔った俺の思考回路で考えられることは、快楽だけだ。もっと、もっと欲しいと、ねだるように唇を合わせていく。俺の頭の後ろに回された日菜の手が、優しく撫でてくれるのが、暖かくて嬉しかった。

 

「あたしも入りたかったけど酔ってるし.........ちょうど良かったよ」

 

「何がちょうど良かっただよ。いつも俺が風呂入ってると乱入してくる変態さん」

 

「.........そんなこと、んっ、言い出したら変態なのはそっちじゃん。1人でお風呂入るのになんでタオル2枚持ってくの?それって、あたしが来るの期待してるってことだよね」

 

「.........いいから、風呂行くぞ」

 

「は〜い」

 

「.........冬夜君」

 

「ん?どうした?」

 

「お疲れ様」

 

「.........おう、今年も1年、お疲れ様」

 

 この後、お風呂で盛大にイチャついた俺たちは、揃ってのぼせて、揃って後日、紗夜さんにめちゃくちゃ説教された。




クリスマスと年末年始も更新しまーす!更新しなかったらTwitter凸って文句言ってくださーい!

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!


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キラキラXmas


クリスマスですね。みなさんはどうお過ごしですか?私は.........ガルパのランキング上げですね笑

では、本編どうぞ!



『帰るの遅くなっちゃう』

 

 俺がこの文面を読んだ時、思ったことはなんだろう。遺憾?失望?そんな日菜に対するマイナスな気持ちじゃない。やっぱりな、という半ば諦めの気持ちが強いだろう。日菜は今、クリスマススペシャルの生放送に出演中だ。そんな忙しい中、休憩の合間を縫ってメッセージをくれたのだろう。彼女は基本的に、絵文字や可愛らしい口調を使いがちだが、この文面からそんな類いのものは一切感じられない。きっと、忙しくて彼女にもそんな暇はないのだろう。それを分かっていて責める彼氏はアホだ。だからそんなことは俺はしない。.........でも、分かっていても寂しさや孤独が忘れられる訳では無い。俺が頑張って作った、クリスマス料理はいつの間にか冷めて湯気が消えていた。まるで、俺の気持ちとシンクロしているかのように。

 

「寂しいよ、日菜」

 

 少し飲みすぎたのだろうか、テレビに映る日菜の顔がだんだんとぼやけてきた。クリスマスに恋人と過ごせないだけで泣くなんて、いつから俺はこんなにセンチメンタルになったのだろう。

 

 .........きっと、感受性豊かな彼女と過ごしている内に、伝染してしまったんだろう。よく笑い、よく泣き、よく怒る彼女の、そんな一面が俺にも移ったんだ。

 

「そうだと.........いい、な」

 

 酒を沢山飲んだ俺は、そんなことを思いながら意識を手放し、深い深い睡眠へと落ちていった。

 

 

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「遅くなってごめんね」

 

 ふと、寝ている俺にそんな声がかけられる。最愛の人、氷川日菜から。頭はクラクラするし、意識はまだ覚醒しきっていないが、この声だけははっきりと認識できた。だって、ずっと待ってた人の声なんだから。

 

「日菜?帰ってきたの?」

 

「うん、帰ってきたよ。.........ごめんね、料理も冷めちゃったし、時間も守れなかったし」

 

 炬燵に突っ伏していた顔を上げると、日菜が悔しそうな、悲しそうな顔をしていた。涙こそ零してはいないが、とても辛そうな顔をしている。

 

「大丈夫だよ日菜。俺は日菜が無事に帰ってきてくれるだけで、何よりも嬉しいから」

 

 いつもは恥ずかしくてあまり言えないようなことも、酒の力か、クリスマスの力か、はたまた愛の力か。スラスラと口から出てくる。いつも抱いている感謝の気持ちや、愛おしい気持ち、そんなことを伝える為にクリスマスはあるのかな。

 

「.........冬夜君、ありがとね」

 

「うん。.........ほら、疲れてお腹空いたでしょ?ご飯食べようよ」

 

「ご飯も食べたいけど.........撫でて欲しいな」

 

「いいよ、いくらでも撫でてあげる」

 

 冷めた料理と同じで、人間関係だって温め直せる。.........それに、日菜と一緒ならどんなものでも美味しく、どんなことでも楽しめる確証がある。

 

「そう言えば、ブレゼントあるんだよ!日菜!」

 

「え、ほんと!?」

 

「えっとね.........あ、これこれ!アロマランプ!前に買い物行った時に気になってるって言って.........」

 

「ん〜!」

 

 俺が袋からプレゼントを出そうとした瞬間、日菜が勢いよく飛びついてきた。暖かくて優しい体温が、じんわりと伝わってくる。

 

「おいおい、ご飯食べるのも、プレゼント開けるのも、抱きつかれてちゃ出来ないよ」

 

「.........今は、このままがいい!」

 

「.........はいはい、日菜お嬢様はワガママだなぁ」

 

 今日はクリスマス。そんな特別な聖なる夜に、大切な人と過ごせる俺は、本当に幸せ者。日菜の頭を撫でていると、そんなことが実感出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さんのクリスマスにも、どうか幸あれ。

 




次お会いするのは大晦日ですかねーいやークリスマスの話書くの楽しい!毎日クリスマスでいい!(謎)

Twitterでもこっちでも、真面目な話は新年の時にしようと思うのでクリスマスは適当です!うぇーい。

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!


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ゴンゴン除夜の鐘


時間が無い!適当クオリティ!助けて!

では、本編どうぞ!



「赤白歌合戦お疲れ様、日菜」

 

「疲れたよ〜」

 

「じゃあお蕎麦、食べに行こっか」

 

「うん!るんっと来るお蕎麦、食べたいなぁ〜」

 

 12月31日 11時53分

 

 今日は大晦日。街を歩くだけで有名人が雑踏に紛れる程の人口密度なので、俺達ははぐれないようぎゅっと手を握っている。なんでこんな所にいるかと言うと、あの超有名番組「赤白歌合戦」に出場した日菜を、俺は迎えに来たという訳だ。.........8分前まで生放送に映ってたのになんでこんなに来るのが早いのかはわからない。日菜だからなせる技なのだろう。余程俺に会いたかったのだろう。.........それか単純に蕎麦がめちゃくちゃ食いたかったか。.........多分後者だな、この結論の根拠はない。

 

「冬夜君の手、冷たいね」

 

「まぁ、冷え性じゃ無いけど、この寒い中外にいたらな。そりゃしょうがないよ」

 

「なんか.........ごめんね?」

 

「いいよいいよ。.........時に日菜よ、大晦日は家族と過ごさなくて良かったのか?ほら、紗夜さんとか」

 

「おねーちゃんは毎年一緒だったからいいの。それに.........私たち家族になるんだから、これは予行練習だよ!」

 

「それってプロポーズか?」

 

「正式なものじゃないけどねー。.........受けてくれる?」

 

 そう言うと日菜は、鼻まで上げていたマフラーを下げ、少し赤くなった鼻を見せてニッと笑った。

 

「勿論」

 

「わー!」

 

 少し恥ずかしくなったので、日菜の頭をくしゃくしゃと撫でる。すごく楽しそうにしてくれて何よりだ。.........俺は、この子の隣に立てるような男になれたのかな。いつも思う、釣り合ってるかな?とか、負担になってないかな?とか。日菜がそういう損得で人を選ぶような人間では無いことは知ってる。でも、気になって仕方ない。

 

「.........こんな俺でいいのか?」

 

 だから、こんな質問をしてしまう。こんな、誰も得しないような愚問を、1度ならず2度も、繰り返してしまう。今ならまだ間に合うから、日菜には幸せになって欲しいから、本当に俺でいいのかと、確認してしまう。自信の無さの表れと言われてしまったらそれまでだ。.........だって実際そうなのだから。

 

「前にも言ったよ?あたしは冬夜君がいいって。あたしのことをちゃんと見てくれて、ちゃんと叱ってくれて、いつも優しくしてる冬夜君が大好きだって。あたしの気持ちが足りなくて伝わってなかったかなぁ?」

 

 口元に手を当てながら、上を見上げる日菜。ん〜と唸っている姿は、高校生時代から何も変わっていない。.........いつもの可愛い日菜だ。人間は変化を求める生き物だけど、何も変わらないってことも、そんなに悪く無いかもしれない。

 

「ごめん、変なこと聞いちゃったね。.........ありがとう」

 

「どーいたしまして!.........あたしが冬夜君の事、好きじゃない時なんて、ないからね?」

 

 日菜がそう言うと、ゴーンゴーンと、鈍い音が聞こえてくる。除夜の鐘の音だ。今年の終わりを告げ、来年の始まりを告げる特別な鐘。実は、日菜と一緒に聞くのはこれが初めてだ。いつもは忙しかったり予定が合わなかったりで、一緒に年は越せなかったが、今年は違う。.........大切な人と迎える新年って、凄くいいものだな。俺はそう思い、日菜を抱き寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 さよなら2018年、よろしく2019年。

 




はい、書き終わりましたー!じゃあ新年のやつ書いてきますねー!忙しい!忙しい!

皆さん、1年間(正確には3ヶ月だけど.........)ありがとうございました!では、良いお年を〜!


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ピカピカ新年


新年、あけましておめでとうございます!絶賛開催中のドリフェスですが、皆様は星4、排出されましたか?私はこれを書いている時点で12月30日なので明日が楽しみです笑

では、本編どうぞ!



(どうか、いい一年になりますように.........)

 

 お賽銭を投げ入れ、名前は知らないけど、なんかでっかい縄をぶんぶんと振る。すると、頭上からカランカランと、鈴の音が聞こえてくる。その音が聞こえたらパンパンと手を合わせ、神様にお願い事をする。.........所謂お参りと言う奴だ。今日は1月1日なので、初詣に名称は変わるが。やることは、何ら変わらない。

 

「出来た〜?」

 

「うん、出来た」

 

「じゃあ、何をお願いしたのか教えて〜?」

 

「それ、教えちゃ意味ないでしょ.........」

 

 詳しいことは知らないけど、テレビかなんかで見た気がする。初詣の願い事は人に言わず、自分の内に秘めておくと叶うって。まぁ、正直な話、言った言わないで願い事が叶うか叶わないかなんて、決まると思ってないから、日菜に言ってもいいかもしれない。

 

「まぁ、あれだよ。日菜と同じだよ」

 

「あたしと同じなの?ふーん。冬夜君も子供欲しいんだ」

 

「え?何そんなことお願いしたの?」

 

「嘘に決まってるじゃーん。それは神様にお願いするんじゃなくて、冬夜君にお願いすることだし」

 

 .........何年経っても、俺は彼女にからかわれるらしい。とりとめのない会話でも彼女となら笑えるから、いいっちゃいいんだけど。なんか、こう.........俺の威厳ってもんが無いよね。最初から無いとか一番言っちゃダメな奴だから。俺が一番わかってるから、再確認させないで?

 

「.........そのうちな」

 

「期待して待ってまーす。じゃ、絵馬書きに行こ!絵馬!」

 

 ずっと前を向いて話していた日菜が、くるっとこちらに振り返る。そして、そのまま絵馬を書く場所へと引っ張られてしまう。あー、活発というかなんと言うか.........この子はいくつになっても元気だな。昔ほど破天荒な発言や行動は無くなったけど、その代わり積極的になった印象だ。あと.........優しい微笑みが増えたとか?昔はあはは!うふふ!おほほ!とか、そんな感じだったけど、今はニコッと優しく笑うのが増えた。今思ったけど、うふふとおほほは無かったな、うん。

 

「焦らなくても、絵馬は逃げませんよー」

 

 「絵馬は逃げないけど、幸せは逃げちゃうかも知れないよ!?」

 

「そしたら、また捕まえればいいさ。.........俺たち二人で」

 

 2019年はどうなるか.........なんて、誰もわからない。俺だって勿論わからない。でも、日菜はわからない方がるんっとして楽しいと言うだろう。なら、彼氏の俺が未来の心配をしてたらまずいよな。ポジティブに行かなきゃポジティブに。

 

 きっと大丈夫さ。心配なんていらない、絶対に。

 

 だって.........

 

「お!絵上手いな、日菜」

 

「ふふーん。張り切っちゃった〜」

 

「え、もしかしてこのイケメンって俺?」

 

「それ以外誰がいるの?」

 

「いや、思いつかないけど.........」

 

「そーいう訳で、今年もるんっとよろしくお願いします!」

 

「ああ、よろしく、日菜」

 

 

 

 

 

 日菜の絵馬には、楽しそうに笑う、俺と日菜と紗夜さんの絵が書いてあったんだから。

 

 

 

 




(о゚□゚)о<<<A Happy New Year!!!!!

ということで、今年もよろしくお願いします(〃..))

なんか、書くことがあまりないですね、はい.........文章力不足でしょうか(きっとそう)

語彙力upの為に、最近定期的に本を読むようにしてます!今は読んでいるのは「幼女戦記」ですね。アニメで知ってすごく面白かったので買ったのですが.........難しい!話がごっちゃになっちゃいます笑 でも、それを乗り越えた先に、文章力があると思うので頑張って読みますよー!

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!


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アマアマちょこれいと

ハッピーバレンタイン!お久しぶりです、日菜の方更新していきまーす!今日はバレンタインという事で、甘々なチョコのお話です。果たして、日菜ちゃんは冬夜にチョコレートを渡すことが出来るのか!?(出来ない訳が無い)

では、本編どうぞ!


 ポケットに入った鍵を探す為、(かじ)かんだ手をポケットに突っ込む。手に硬いものがガツガツと当たるがこれはきっと、今日沢山貰ったチョコレートだろう。板チョコや箱に入ったチョコは大きいからカバンに入れたが、チ○ルチョコや10円チョコはちっちゃいのでポケットに纏めて入れたんだ。.....というか、大きいチョコをくれるという気持ちは嬉しいのだが、その気持ちの分カバンが重くなるのはムカつく。何故俺が富山の薬売りが持ち歩くような重さのカバンを持たねばならないのだ。本来は感謝すべきチョコレートをくれた女の子に恨みつらみを並べていると、ポケットの中で細長い金属質の物体を発見した。

 

「あーさみぃ......しかも待ってるのはホワイトデーかよ......」

 

 発見した鍵を鍵穴に差し込みドアを開ける。ドアノブはとても冷たく、それはまるで俺のバレンタインデーに対する冷めきった心みたいだ。別にバレンタイン自体は嫌いじゃないよ?ただ差出人不明と俺が講義でいつも座る席の中にチョコを突っ込むのは辞めていただきたい。怖いし、何より俺が貰う理由がよくわからないから。直接渡してくる子は講義のノートをよく貸し借りしたり、昼飯をちょくちょく一緒に食べたりと接点があるが、差出人不明と机に突っ込んでいる人達は接点が全くと言っていいほどない。つまり、意味がわからないという訳だ。俺を毒殺しようとみんなで画策してるのかなぁ......なんか悪影響ありそうだからよく分からないチョコは日菜に食べてもらうか。

 

「ただいまー」

 

「あ、お帰り!寒かったでしょ、暖房入れといたからこっちおいで」

 

 玄関で靴を脱ぎ、ドアの鍵を閉めている俺に掛けられるのは彼女からの労いの言葉。こっちにおいでと手をちょいちょいと動かしているのがとても可愛い。...........俺はあんなに可愛くて優しい彼女に劇物を食わせようとしていたのか。日菜に危険なことはさせられない、俺が全て食おう!

 

「ありゃ、そのカバン重そうだね〜何が入ってるの?」

 

「チョコがたっぷり」

 

「最後まで?」

 

「それはなんか違う」

 

「あはは、それにしても冬夜君モテモテだね〜」

 

「日菜以外にモテてもあんま嬉しくない。俺が好きなのか日菜だからなっと」

 

 チョコがぱんぱんに入ったカバンを机の上にドサッと置く。あぁ、重荷から肩が解放された......肩が軽くなった事だし、気になってた事を日菜に聞くとするか。オチはだいたい想像つくけどな。

 

「......何でチョコくんなかったの?今日、講堂一緒だったのに」

 

「もしかして、拗ねてる?」

 

「拗ねてない!気になっただけだ!」

 

「もー可愛いなー!......何で上げなかったか、気になる?」

 

「日菜からはいつも色々貰ってるし、無くても全然大丈夫だけど......やっぱり一番日菜から貰いたかったから......」

 

「......そっか、ありがとね」

 

 日菜が座っていたソファーから腰を上げて俺に近づいてくる。日菜が近くに来る......なんて事は良くあるが、今日だけはいつもと違うような気する。いつもより日菜が魅力的に見えて、脳髄まで蕩かされそうだ。緊張なのか興奮なのかは定かではないが、自分の鼓動がドクドクと早まっていくのが、一昔前の俺みたいで少し笑える。

 

「あのね......」

 

 日菜が足を絡めぴったりと密着した状態で囁く。勿論俺の耳元で、だ。

 

「冬夜君には特別なチョコ......貰って欲しかったんだ」

 

「......特別なチョコ?」

 

「口開けて......?」

 

 そう言って日菜が俺に差し出してくるのは、何の変哲もない普通のチョコレート。特段変わったところは見受けられないようなチョコだ。何が特別なのか当てろ!みたいなクイズを出された暁には、日菜がくれたから特別!というクソみたいな解答を出すレベルで特別具合が分からない。

 

「......えっと、こう?」

 

 取り敢えず、言われた通りに口を開けることにした。多分、食べさせてくれるから......え、これアーンって事だよね?違かったら俺、期待し過ぎなただの痛いやつになるけど。

 

「あーーんっ、......えへへ」

 

「え、それ俺のじゃ......」

 

 誰がこの結末を予想出来ただろうか、俺の口に運ばれる筈だったチョコレートは、くるっと踵を返して日菜の口の中に入ってしまった。イタズラっぽく笑う日菜がめちゃくちゃ可愛いから許すけど、少し悲しい。

 

 ......しかし、その悲しみは一瞬で快楽に変わった。

 

「んむぅ......はぁ、おいひぃ......」

 

「んんっ......!?」

 

「ほうはって、くひのなかでちょことかすと、おいひぃよ、ね?」

 

 口の中に流れ込んでくるのは唾液と少し苦くて甘い、ビターチョコ。ビリビリと頭が痺れるような感覚に襲われた俺は膝を震わせ、情けなく日菜に寄りかかるしか無かった。

 

「......はぁ、美味しかった。......ハッピーバレンタイン!」

 

 どれほどの時間、キスをしていただろうか。日菜がバレンタインを祝う言葉を言った時、俺は意識を朦朧とさせていた。日菜とのキスに骨の髄まで蕩かされたというのもあるが......多分原因はそれじゃないだろう。

 

「おま、え......何入れ......た?」

 

「ああ、ガラナチョコを作ろうと思ったんだけど......手が滑ってガラナ入れすぎちゃった!」

 

「正直に言え......わざとだよな?日菜が分量間違える訳ないし」

 

「...........ごめん!気持ちいいかなって思って!」

 

 成程、先程から止まらない体の疼きはガラナのせいであったと。納得がいった、通りで日菜がいつもよりエロく見えるわけだ。ってか、多分日菜も発情してんなこれ、目にハートマークが現れそうな勢いだもん。

 

「......ちなみに日菜は幾つくらい食べた?」

 

「.........作ってる時の味見で、たっくさん食べたよ......?」

 

 目をとろんと潤せ、はぁはぁと吐息も漏らす彼女ははっきり言って魅力的過ぎる。今すぐ彼女の全てを貪りつくしたいくらいには。いつもは気恥しさや奥手な性格が幸いして歯止めがきくが、今日だけはそういかない。今は......日菜をめちゃくちゃにする事しか考えられないのだから。

 

「これ入れたって事はヤる気だよな.........?」

 

「......うん、もう我慢出来ない......シよ?」

 

 こうして、俺たちのバレンタインデーは幕を閉じた。俺と日菜がラブラブになるという形で。

 

 因みに俺が貰った大量のチョコは、後日リサとひまりちゃんを呼んで食べてもらった。これは余談だが、リサが機転を利かせて作ってくれたチョコレートフォンデュは最高に美味かった。

 




日菜可愛い。エッチな日菜可愛い。うん、可愛い。すきすきすき。次の更新っていつだ.........?その内イベストでもあった天文部の危機!の話もやりたいんですよね笑 いつ書くかは未定ですが笑

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!


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