Every human being has value. (しまらくだ)
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序章 prologue
人生の軌跡


こんにちは、しまらくだと申します。

文才皆無の身ですが、趣味の範疇で自己満足で書いていこうと思ってるので、読んで頂ける場合は暖かい目で読んで頂けると幸いです


1人の男が死んだ。

 

もうすぐ30歳になる俗に言うアラサーだったのだから男と言うべき人間であっただろう。

死因は交通事故。

そう、事故である。

少なくとも()()()は・・・

 

男が歩いていた時に、車と接触してしまった結果、死に至ったのである。

法廷や世間の目ではもしかしたら車の方が罪が重くなるかも知れない。

しかし、真相はどちらにも非がある。

そんな事故であった。

寧ろ男の生きていた場合は自分に非があり、車の運転手は悪くないと証言していただろう。

その証言の背景には当然男の性格によるところも大きい。

しかし、事故にあった際に男に自殺願望がなかったかと言うと否定できない部分があったからだ。

 

何故男がそう思っていたか?

それはついては男自身の説明する必要がある。

 

まず男の家庭環境は十分に恵まれていたと言えるだろう。

男は一般家庭の次男として生まれた。

特別裕福な家庭ではなかったが、貧しい家庭でもなかった。

小中高と兄は勿論、男自身も問題なく通っていた。

大学にしても兄は公立だったが、男は学力の問題もあり、公立こそ難しかったが、援助金を貰えば良いと私立に通わせて貰えた。

当然虐待を受けていたという訳でもなかった。

手を挙げられた事自体は存在する。

しかし、手を挙げると表現すると誤解がありそうだが、別に理不尽なものではない。

本当に本気で心配をかけた時に母親からビンタを受けた事はあった。

だがそれを母親は勿論、男自身も暴力とは思っていない。

兄弟関係も喧嘩する事はあったが、概ね良好。

両親の夫婦仲も悪くなかった所か寧ろ良かった部類だろう。

何しろ夫婦でよく出かけり、旅行も行っていた上、夫婦喧嘩も男の記憶の限りでは1~2回しかなく、それも仕事等の関係で電話越しでしか見た事なかったのだから・・・

 

では、友人関係はどうか・・・

正直良好ではなかった時期は存在した。

小~中学校時代はいじめは受けていた時期も存在した。

そのせいもあり、捻くれた部分がある性格になったのは事実だろう。

しかし、それは自身の性格もあると男自身納得していた部分もあり、また友人がいなかった訳ではなかったため問題はなかった。

それに高~大は特に問題なく楽しく過ごしていた。

皆勤賞も取ったし、同性はもちろん異性にも友人がいた。

卒業後でも親交がある友人もいたし、時々食事をする友人までいた。

 

なら何が問題だったか・・・

それは社会人時代である。

いや、厳密に言えば少し異なる。

社会人時代の事はあくまできっかけを作っただけだ。

本当の理由は身体的な部分にあった。

 

男は母親のお腹の中には問題なく約10ヶ月いた。

出産予定日より、2日速く生まれたが、許容範囲と言えるだろう。

それなのに2000gに満たない体重で生まれた。

俗に言う未熟児というやつである。

生まれてすぐNICU(新生児特定集中治療室)に入れられた。

しかし、その後は特別問題なく退院したし、問題なく成長して過ごしてきた。

その事自体は親から聞かされていたため、男も知っていた。

知った上で少なくとも()()()問題にはならなかったのだ。

時々、生まれたばかりの頃は心配をかけたんだなと思うような部分を親から垣間見たりはしたが、普通に小~大の学校に通い卒業できたのだ。

概ね問題はなかったと言えるだろう。

強いて言えば、男は極端に不器用で鈍くさい所があった。

利き手利き足はまだマシであったが、逆の手は顕著であった。

 

例えば、両手同時に開いて閉じてを繰り返せば、利き手のおおよそ半分の速さでしか出来なかった。

例えば、両手でリズムを刻もうとすれば、利き手と同じテンポでリズムを刻めなかった。

例えば、逆の手でボタンを留めようものなら1.5~2倍の時間がかかった。

例えば、格闘ゲームをしようものなら、十字キーのダッシュ入力が出来なかった。

例えば、音楽ゲームをしようものなら、密集したノーツに指が追いつかなかった。

 

それらは当然生活していれば、男自身歯がゆく感じる事はあった。

心が弱った時には未熟児で生まれた事を言い訳にする事もあった。

しかし、あくまでも自分中に留め、不器用なりに頑張って来た。

学生時代はそれでどうにかなったが、社会人ではそうはいかなかったのである。

不器用さも相まって本人としてはどんなに急いでやっているつもりでも周りの人より作業が遅かった。

本人がいくら頑張ってもそれは変わらなかった。

その点でいつも注意されていた。

その事が原因クビにもなった。

そして、それはいくら職場が変わっても同じであった。

それでも、男が真面目なのもあり、挫けはしなかった。

親に心配をかける訳にもいかないという想いもあっただろう。

幸いな事に派遣のアルバイトでならアルバイトという立場もあってか何とかやっていけていたため、それで食いつなぎながら就職活動を続けていた。

 

そんな生活をしていたある日の事、真面目な話があると親に呼び出された。

何事かと思っていると、両親から言われた事は・・・

 

「あんた障害持ちなんだけど・・・」

 

男は最初頭がついてこなかった。

両親が言うにはやはり未熟児で生まれた事による障害らしい。

ただ、今までの生活に大きく影響が無かったように、医者からはあくまで()()の神経障害という診断をされたそうだ。

こういう言い方あれだが、世の中不器用で鈍くさい人はたくさんいる。

故にこの程度なら1つの個性と見ても問題無いと言われたらしい。

その事もあって今まで男に言わなかったそうだ。

なら何故今それを明かしたか。

それは当然仕事の事だった。

男の仕事がどうも上手くいかないから障害者登録してみてはどうかというのだ。

不幸中の幸いと言うべきか、男の障害は軽度のものだからその手の枠の人材として会社も採用しやすいのではないかという事だ。

両親は最後に・・・

 

「言うか悩んだのだけどね」

 

と言っていた。

男は少し考えさせて欲しいと答えを保留にした。

 

両親から自身の身体について聞いて以降、心配をかけまいと表には出さないように努めてはいたが、内心物凄いショックを受けていた。

変わった事だけみれば、不器用な事に理由があった事が分かっただけだ。

別に今後の生活に問題が生まれた訳でも、不器用さが増した訳でもない。

世の中不器用で鈍くさいと言われる人なんてたくさんいるだろうし、ある意味では正当な理由があるだけまだマシだという人も、もしかしたらいるかもしれない。

たったそれだけの事、そう他人からみればたったそれだけ事だろう。

しかし、男にとってはたったそれだけの事が大きな事だった。

確かに不器用さが人と比べて極端だと感じ、疑った事はあった。

それでもあくまで男自身至って健康体だと思っていた。

それを支えにしていた部分があった。

それが根本から崩れてしまったのだ。

そう簡単に受け入れられない自分がいた。

 

両親の気持ちは一応理解出来ているつもりではいた。

今まで男に事実は隠していた事、今それを打ち明けた事、打ち明ける事に悩んだ事。

それら全て頭では理解出来た。

しかし、気持ちがついていかなかった。

いい年してと男自身も小さい人間だとも思った。

でもだからと言って整理が付く何てことはなく、寧ろ悪い結果を招いた。

それが原因で自己嫌悪に陥ったのだ。

気が消沈し、やる気を失った。

自身を攻め、自身を価値がわからなくなった。

 

そんな時に交通事故にあってしまったのだ。

自殺をするまでは全く考えていなかった。

故にあくまで交通()()なのは間違いない。

しかし、当時男が消沈しており、気持ちが弱っていたのは事実であった。

心のどこかで自分なんかとも考えていた。

そんな状態の男に自殺願望がまるでなかったかと聞かれれば否定できないだろう。

 

そんな男が死んだ。

 

★★★★★

 

そんな男を空の上から神は見ていた。

 

男は結果だけみれば事故死である。

仮に自殺だとしてもその理由は小さな物かも知れない。

他人から見れば男の抱えていた物など大した事ではないのかもしれない。

それでも、神は男に目を留めた。

男よりも恵まれていない人間など山ほどいるだろう。

だからこそ、知って欲しいと思ったのだ。

確かに障害は抱えてしまっていたかもしれない。

それが原因で捻くれた部分もあったのは事実だろう。

しかし、学校に小~大までいじめ等にも負けず不登校等にならずに高~大は皆勤賞だった事。

卒業後は評価はされないかったかもしれないが、男なりに懸命に働いていた事からも根は真面目なのだ。

未だに続く友人もいたのだから、それだけの魅力を持っていたのだ。

そして、何より両親の気持ちを理解した上で、心を落ち着かせて欲しかった。

自身を見つめ直して人生を楽しいものとして謳歌して欲しいと願ったのだ。

少なくとも()2()()()()()()()()()()()()()()()の資格は有するくらいの人間である事を自覚して欲しかったのだ。

 

だから、神はこの世とあの世狭間に来た男に対して告げた。

 

「『転生』に興味はないか?」

 

 




第一話にしてバンドリ要素なしww
ここから題材変更してもばれない気がww

今の所書き始めた限りは続けるつもりではありますが、こちらは息抜き的な執筆なので、本当に亀更新兼不定期更新予定です。

その点をご理解頂けると幸いです。

というか書いてて思ったのですが、題材というか文章表現というか大丈夫だろうか・・・


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権利の選択

始めに1つだけ。
今回までバンドリ要素出ませんのでご了承下さい


「ここは・・・?」

 

男は気が付くと知らない場所にいた。

辺り見渡すとまるで綺麗な色の霧に囲まれたような印象を受けた。

落ち着いて来ると足元の異変にも気づいた。

まるで浮いているのだ。

地面足を付けている感覚はない。

しかし、落下している感じでもなければ、背中に何か背負っている訳でもなかった。

 

「・・・夢・・・か?」

 

男がまずその考えに至るのも当然と言えば当然だろう。

しかし、ここで違和感を感じる。

男は今まで夢は見てきたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

夢を見ても起きたらぼんやりとしか覚えていないタイプであり、夢の中で自由に自身の意思で考えたり、行動したり出来たりするタイプではなかった。

それなのに今は意識も考えもしっかりしている。

ならば、夢では無いのか、夢でないならここは何のか、そんな事を考えていると後ろから声がした。

 

「やっと目が覚めたか」

 

男は急な声に驚きつつ振り向くと、そこには見たことのない知らない人のはずなのに、どこか安心できる雰囲気を持つ老人がいた。

 

★★★★★

 

「あなたはどなたですか?」

「ワシか?ワシはそうだな・・・お主が分かる言葉で言うならば、神と言われる存在じゃよ」

「神・・・ですか?」

 

男は別段、神の存在を否定はしていなかったが、熱心な信者と言う訳ではなく、「いるならいるで別に良いんじゃない」程度に考えていた。

しかし、()()()だからと言ってすぐ目の前に現れた老人を見て、「はい、そうですか」と信じられる人間ではない。

だが、なぜだか目の前の老人が言っていることをすんなり聞き入れている自分がいた。

そんな男を見ながら神は優しく微笑みながら語りかける。

 

「お主、どこで記憶が途切れておる?」

「・・・」

 

男は、神と言う老人に言われ自分の記憶を思い返してみる。

 

「普通に家に徒歩で帰ってて、それで途中の車が表れて、その後は・・・」

 

そこまで思い出し気づく。

 

「もしかして接触事故にあった・・・?」

 

神はその言葉を聞き、静かに首を縦に振って肯定する。

 

「その後、死に至ったのだ」

「・・・そうですか・・・」

 

男は自分が死んだと聞かされたにも関わらず、それほどショックを受けていなかった。

寧ろどこか安心してしまっている自分に気づく。

 

「やっぱり自殺願望が少なからずあったのかな・・・」

「・・・」

 

男が静かにそう呟くのを聞き、神はどこか悲しそう顔で男を見つめていたが、男は伏せていて気付くはずもなかった。

 

★★★★★

 

「それで、死んだはずの私がいるここはあの世というやつですか?」

 

目の前に神が存在しているのだ。

そして男は死んだのだと言っていた。

ならば、今いるここはあの世と呼ばれる場所だと考えてたのだ。

 

「厳密には少し異なるな、ここはそちらの言う所のあの世とこの世の狭間と言う所だ」

「あの世とこの世の狭間ですか・・・?」

 

神からの言葉を聞き、生前の知識を思い返す。

細かい違い等は生じるが死後の世界が存在するとした場合、『天国』と『地獄』が存在すると考えられている場合が多い。

そして、それは生前の行いによって神によって決められると考えられるのが最も一般的だろう。

ならば・・・

 

「死後の世界の宣告ですか・・・」

 

この狭間の世界にて、それを言い渡すのだろう。

そして、それは悪い方なのだろうと思った。

何と言っても両親よりも早くに亡くなり、そこに後ろめたい気持ちがあったのだから。

そう考えていたのだが・・・

 

「宣告ではなく、提案じゃな」

「提案ですか?」

 

男は一体何を提案されるのかまるで見当もつかなかったが、もしかしたら『地獄』なんかよりももっと自身の行いを改められる場所でもあるのかと考えていたのだが、神が発した次の言葉はそんな男の予想の遥か斜め上を行っていた。

 

「『転生』に興味はないか?」

 

★★★★★

 

男は始め聞き間違いかと思った。

 

「『てんせい』ですか?」

「そうだ」

 

故に聞き返して確認を取ったが、目の前の神は間髪入れずに肯定した。

 

「『てんせい』ってもしかしてよく漫画やアニメとかである、別の世界とかで別人として生まれ変わったりするあの『転生』だったりします?」

 

状況やアクセントから考えてその『転生』が思い浮かんだが、一言で『()()()()』といっても『天性』や『天声』と同音異義語が存在する。

中には男が知らない同音異義語が存在していても不思議ではない。

そもそも、『転生』というのは誰でもして貰えるものではないはずだ。

二次元作品でも、何か理不尽な死を迎えた人物への特典であったり、神話や宗教、いや生前の普通の世の中においても(それが本当かは別として)何かしらの特別な存在であったり、才能を持つ者の転生者というのが、最も一般的であった。

それなのに、自分はどうだろう。

交通事故という点だけ見れば理不尽な死ともいえるかもだが、そこに自殺願望を抱えていた人間は理不尽な死と言えるだろうか。

そして、当然何かしらの才能に恵まれていた訳でもない。

だから、その『転生』である訳がない。

そう思い、再度確認を取ったのだが・・・

 

「その『転生』で間違いない」

 

今度こそ疑いようのない肯定をされる。

 

「このままあの世行ってもそれはそれで構わない。しかし、もし興味があるならば『転生』をして第2の人生を送ってみるつもりはないかの?」

「・・・正直興味がないと言えば嘘になります」

 

男は生前から漫画やアニメといったサブカルチャーの事は好きであった。

その手の二次創作にもちょくちょく目を通していた。

 

「ほう、ならば・・・」

「でも!」

 

男は神が進めようとした話を強く遮った。

 

()()()()()()()()()()

 

それは男の本心からの疑問であった。

少なくとも自分が知っている『転生』というのは自分が与えられても良いような特典でない。

本当にその権利が貰えるならばもっと相応しい人はたくさんいるはずだ。

 

「・・・」

 

神は直ぐには答えなかった。

とは言っても、沈黙時間はせいぜい数秒であったであろう。

しかし、その時間は男には非常に長く感じた。

 

「才能に溢れる者や本来寿命で生きるはずの年数の半分以下で死を迎えた者にはその権利があるのじゃよ。・・・と言っても納得はしそうにないな」

 

神は男の目を見てそう結論付けた。

その程までに真剣な目であったからだ。

神はどこか観念したかのようにため息を一度ついた後に、改めて語り出した。

 

「前提として言っておくが、さっき言ったのも決して嘘ではないぞ。まぁ、基本的な最低条件ってだけで、それに加えて細かい条件があったり、また例外もあったりするがな」

「・・・その条件というのはなんですか?」

「残念ながら、それは教えられない事になっている」

「それじゃあ意味がないです」

「そうじゃろうな。お主が知りたいのは理由じゃろうからな。確かに細かい条件は教えられないが、お主が選ばれた理由なら教えられる」

「・・・教えて下さい」

 

男がそういうと神は今まで一番穏やかで優しい顔で話し始めた。

 

「お主に見つめ直す時間を与えたいのじゃよ。お主は自身に価値がない人間と思っておるのじゃろ?しかし、それをきちんと冷静に考える時間はなかったはず。ならばもう一度きちんと考えてから答えを出してほしい。だからその時間を与えるための『転生』じゃ」

「それだけならわざわざ『転生』をする意味がないように思いますが・・・」

 

死後の世界がどういったものかは定かではないが、少なくとも意識はきちんと持っている。

ならば、別に死後の世界でも考えられるのではないか。

おそらく文字通り時間は無限にあるのだから・・・

 

「確かにそれだけならそうじゃの。しかし、ワシはその上で生きて欲しいと思っておる。お主、自身の家族に申し訳ないという気持ちがない訳ではなかろう?」

「それは一応・・・」

「ならば、死後の世界という()()()で償うのではなく、きちんといち一人の人間として考え、その上で償うべきじゃ」

「仰りたい事は分かります。でも!」

「価値のない自分が再び生きて良いのか、か?」

「・・・はい」

「本当にそうかを知るための提案と言っておろう。もし、考えた上でその結果に至ったのなら好きにすれば良い」

「・・・」

「さて、どうする?」

 

神が言っている事は一先ずは理解できた。

言っている事も賛同出来る部分もあった。

それでも、本当に自分なんかが良いのかという考えが過る。

しかし、それと同時に生前の両親や友人の事も頭に過っていた。

人の本心なんてものは分からない。

でも、今回の事で死ぬまで親にきちんと育てて貰いながら生き、友人も少なくとも男はそう思える人物はいた。

ならばと・・・

 

「迷うくらいなら受けてみたらどうじゃ?この提案はこれを逃すともう提案せん。せっかく機会なんじゃ。受けた場合の方がデメリットも少なかろう」

 

神に言われ、確かにそのように思える。

先程あの世でも意識があると考えたが、それはつまり死後の世界においても迷惑をかけるという概念が存在することを意味する。

そして、おそらくそれは『転生』するよりもより多くの存在であろう。

例え『転生』しようがそれは最終的には同じであろう。

しかしならば、『転生』をしてしっかり見つめ直すせば、先程神が言った通り、人間として罪を償えるかも知れない。

それならばそれも一つの手段であろう。

 

「・・・そうですね。せっかくのお話ですし、お受けしてみましょうかね」

「そうか」

 

神は男のその言葉を聞きどこか安心していた。

 

「それでどうすれば?」

「先ずは『転生』における『特典』を3つ決めて貰おうかの」

「『特典』なんてそんなもの要らないですよ」

「『特典』と言えば、仰々しく聞こえるかも知れんな。しかし、そんな大した事じゃなくても良いのじゃよ。例えば『兄弟のいる家庭に生まれる』であったり、『ペットを飼える家庭に生まれる』だったりそんな事でも良いのじゃ。とは言えお主が考えたであろうことを願う者も多くおるな。例えば『生前から好きな物語の世界に生まれる』やら、『チート能力を得たい』とかな。『転生』する者にはみな与えておるのじゃ。仮にお主が決めなくてもランダムで決める事になっておる。それはお主の望むとこではなかろう?」

「それは・・・そうですけど・・・」

 

もし、神の言う通り神がランダムで決められ、有り得ないチート能力を得たら?

自身を見つめ直そうというのに、余計な邪魔になるかもしれない。

それなら自身で決めた方が安心だ。

 

「それに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃろう?ならば、せっかく『転生』の機会じゃ。少しくらいわがままを言っても罰は当たるまい」

「・・・そうですね、もしそれで耐え兼ねれば()()()()()()()()()()()()ですしね」

「それは出来れば避けて欲しいがの」

 

神のその言葉を男は苦笑いで返していた。

 

「それでは、まず1つ目は『生前の記憶を引き継ぐ事』で」

 

神は見つめ直して欲しいといっていたが、それは『転生』後の死後に知ったとしても叶う事である。

ならば、生前の記憶は引き継がなくても問題ないが、それではもしも時に()()()()()()()()()()()かもしれない。

故に生前の記憶は必要であろう。

 

「・・・2つ目は?」

「そうですね。『健康体で生まれたい』ですかね」

 

男は生前障害を抱えてしまっていた。

それによって悩まされた。

それをなくしたいというのだ。

 

(健康体であれば少なくとも他人に迷惑かける頻度は減る可能性は高いし、それに・・・)

 

生前、極端に不器用であったが、男にとってそれが普通であった。

しかし、周りを見て普通に出来る事に憧れがなかったと言えば嘘になるだろう。

 

「・・・」

 

神はそんな男の願いを聞き、改めて『転生』して欲しいと思った。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と知って欲しいと・・・

 

「最後の願いですが、『生前知ってるどこかの二次元の世界に転生したい』って可能ですか?」

 

男のその発言を聞き、神は呆気に取られた様子であった。

まるで予想していなかったかのように・・・

 

「すみません、高望みし過ぎですよね。忘れて下さい」

 

男がそう申し訳なさそうに言うの聞き、神は我に返る。

 

「いやいや、そんな事はない。『生前から好きな物語の世界に生まれる』と願う者もおると言うたじゃろ?ただ、乗り気でなかったからそういう願いをされると思ってなかったのじゃ」

「いや、先程おっしゃってた通りせっかくの機会ですし、()()()()()()()()()()()くらいなら許されるかと思ったので」

「・・・そうじゃの。しかし()()()で良いのか?別に指定しても良いんじゃよ?」

 

大抵のその手の特典を希望する者はどこの世界に『転生』するかも指定する。

しかし、男はどこかと言い、希望をしなかったのだ。

 

「はい。その方が分かるまで楽しいかなって思いますし」

 

男はそう()()()()()答えた。

神はその顔を見て本当はちがうのであろうと思ったが・・・

 

(今はあまり突っ込んだ事はすべきではないかの・・・)

 

そう結論付け・・・

 

「承知した。では特典は『生前の記憶を引き継ぐ事』、『健康体で生まれたい』、『生前知ってるどこかの二次元の世界に転生したい』の3つで良いかの」

「はい。それでお願いします」

 

男がそう答えた瞬間に辺りが光り始めた。

 

「では、お主の『第2の人生』が有意義であるものを願っておるよ」

 

そう言った次の瞬間、光と共に男はその場からいなくなっていた。

 

★★★★★

 

男を見送り改めて1柱となった神は・・・

 

「本当に願っておるよ」

 

神は条件を満たし、希望したものを『転生』させていた。

男が初めてではない。

しかし、神が行うのは()()()()なのだ。

『転生』したその後人生には干渉しない、いや、()()()()のだ。

だから・・・

 

「願っておるよ・・・」

 

そんな言葉を繰り返し、まるで()()()()()かのように願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて序章終了です。
作品上この話を始めにやる必要があると思ったため、こうなりました。

次回からバンドリ要素出る予定ですww
ただ、リアルが忙しくメイン側の執筆もあまり芳しくないので、また間はあくと思います。
展開の構想はあるので、今のところはまだ失踪する気はないです。
もし、読んで下さる方は気長に待って頂けると幸いです。



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第1章 The second life that begins
第二の始まり


お久しぶりです。
ようやくバンドリ要素登場です。


初めは夢だった。

 

自身で自覚をしたのは当然物心がついてからであったが、両親の話ではもっと小さな頃から言っていたらしい。

情景をみるのだ。

知らない()()の景色にいろんな人々がいて様々な事をしていた。

遊んでいたり、勉強をしていたり、仕事らしき事をしていたりと本当に内容は多種多様であった。

その夢の中では自身も一緒にいたようではあったが、鏡に映ると知らない顔があった。

夢と言う事もあり、小さい頃は比較的嬉々として話していたらしいが、物心がついてからは徐々に違和感を覚え始めた。

夢にしてははっきりとしているのだ。

その割に自身の意思で自由で動けるという訳ではないのだ。

怖いなどのそう言った感情は起きなかったが、ただの夢ではない気がしたのだ。

それが確信になり始めたのは小学生になってからだった。

小学生になって以降は夢ではなく、徐々に記憶が思い出されるような形で様々な記憶が思い出されいき、それが記憶なのではないかと意識するようになった。

そして、それから1年後の2年生になる頃には記憶はもちろん、意識的にもはっきり自覚出来ていた。

 

自身が()()()である事を・・・

 

★★★★★

 

自身が転生者である事を自覚したからといって大した変化はなかった。

仮に初めから自覚していれば、今の両親や名前などに少なからず戸惑ったかもしれないが、幸い慣らされるような形で知った。

つまりは()()()()の土台がしっかりしてからこの事実を知ったのだ。

前世の名前や両親の顔などもはっきり覚えてはいるが、現在の環境になって物心ついて3年程も経ち、前世にとの関係のほとんどない状態なのだ。

違和感も薄くて済むだろう。

 

(まぁ、その辺も考慮した上でのこういう方式なんだろうけど・・・)

 

彼は改めてそんな風に考えていた。

メタ的な考えにはなるが、前世より疑問に思っている事だった。

もし、自身が二次創作等でよくある転生なんてものを経験するとして、怖くはないだろうかと・・・

自分自身はまだ良いかもしれないが、周りはどうかと・・・

作品等にもよるが、転生をして、幼年期から描かれるものの中には記憶等を引き継いでいるものも少なくない。

しかし、普通は幼年の頃は本来物事を考える力がまだまだ発展途上であり、絶対ではないが、大人のように振る舞う事は難しいものだ。

それなのに、記憶を引き継ぎ考えもしっかりしていた場合、まず大人も驚くのではないか?

大人びたや大人顔負けではなく、正真正銘幼年ではないのだから・・・

そういった意味でこの方式は幼年期はきちんと年相応に過ごしている。

小学2年生でも、十分速い気はするが、それでもある程度は物事をしっかり考えられる年齢と言えるだろう。

故にそこまで深くは考えないようにし、この状況を受け入れ順応していくことに専念する事にした・・・

 

★★★★★

 

そうしてさらに時を過ごしてさらに1年、小学3年生となっていた。

元々の転生の目的は自身を見つめ直し、償っていく事。

彼自身はそう考えていた。

そのためにも転生後の自身の事はもちろんだが、世界について知ることも当然大事だろう。

少なくとも前世の世界とは異なるのは確実なのだから、前世と異なる理があるかもしれない。

それを考慮せずに行動するというのは愚行もいいところだろう。

せっかく()()()()()で生まれたのだから・・・

そう思ってそれとなく注意して過ごしていたのだが、大して記憶の限りの前世と変わりが見当たらないでいた。

()()()()の両方をきちんと得ている以上ここはどこか二次元世界のどこかだとは考えてはいるので、まず、ここが異世界等ではないか、異能力等はないかといった分かりやすい部分から疑ったが、特にそんな事はなかった。

ここは日本であり、少なくとも現時点で異能力等の事は確認出来ていない。

全ての地名を記憶している訳ではないが、代表的な地名は特に名称も変えずに存在していた。

さらに日常的な部分でも俗に言う年号や月日といったものにも大きな違いなく、生活環境もほぼ変わらない。

 

(こうなると、日常系もしくは特殊能力等が表になってない系統のもののどちらかかな・・・)

 

彼はそんな風に考えるようになっていた。

これもまたメタ的な考えだが本来二次元の世界に転生したからといって本来いる原作キャラ等に都合よく関わりを持てるのもご都合主義だと思っている。

二次創作物である以上そうしないと物語上面白味がない等などは理解できるが、もし本当に転生したとしてそんな都合よく知り合えるだろうか・・・

そういう特典も付けているならともかく本来現実的に考えて、知り合えるだけでも特典として成立するくらいの事のはずだ。

それならこのまま転生した世界が分からないでもおかしくはないし、それならそれで良いとも思ってはいる。

目的には関係ないのだから・・・

 

★★★★★

 

「テル~。ご飯よ~」

「は~い」

 

彼は両親にそう呼ばれ1階のリビングへ向かう。

両親には愛称で呼ばれているが、正確な名前は二部 道光(にぶ みちてる)それが今の彼の名前であった。

自分が転生者と分かった時、比較的分かりやすい名前だと思わず笑ってしまったのを覚えている。

果たして名前に負けない人生が送れるかは甚だ疑問である。

 

 

「ごめん、待たせた?」

「そんな事はないわよ、さぁ、食べましょう」

「今日からお父さんは出張だっけ?」

「ええ!確か福岡だったかしら。このところお仕事が好調みたいでそう遠くない内に海外も視野に入れようかって上の方々が言ってたとかで、そのためか、お父さんも気合入っちゃってるみたいで」

「それはそれは、良い事なんじゃないかな」

 

そんな雑談後席につき・・・

 

「「いただきます」」

 

二人での食事をしていた最中の事だった。

ふとついていたテレビに母親が目を向け・・・

 

「最近この子も話題なってからは引っ張りだこね」

「この子?」

 

道光はそう言われテレビに目を向ければドラマが流れていた。

 

「この子役の子。この前出たドラマで演技が上手って事で、天才子役って話題になってるのよ。たしかあなたと同じくらいの年だったはずよ。凄いわよね~」

 

母親がそう言う子役の子を見た瞬間あまり映画やドラマなどは見てこなかったのもあり、初めて見るはずなのにどこか見覚えがあると思った。

 

「へ~、お母さん、因みにこの子の名前分かる?」

 

「名前?千聖ちゃんだったかしら。苗字は確か・・・白鷺・・・。そう白鷺千聖ちゃん」

 

 

 

 

 




という訳で申し訳ない程度のバンドリ要素登場です。
作中において千聖さんって天才子役ってだけで具体的に何歳頃って明記がなかったと思うのでこうなりました(あったらごめんなさい)
なんかイメージ的にはもっと小さい頃からやってそうですが、小学3年生は十分子役なのでww

一応ヒロインは未定ですが、大まかな話の展開と流れはもう構想あるのですが、そこまで果たして描けるのでしょうか?ww

しかし、もっと文章力が欲しいと思う今日この頃です。


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