インドの奮戦と敗北、そして… (空社長)
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設定集(旧)
設定①アメリカ合衆国(随時更新)


オリジナル兵器(アメリカ)の設定集です。作者の気分により随時更新致します


 

 

 

 

・アメリカ合衆国

本作最大の超軍事大国

『大侵略』と呼ばれる事件以後、カナダ、メキシコ合併条約に基づき、両政府の合意の元、カナダ、メキシコ領を併合、北米大陸国家として成立している

後述する新ソビエト連邦を仮想敵国としており、現代の軍事力を遥かに上回る軍事力を有する

 

 

 

・モンタナ級原子力戦艦

 

『モンタナ』、『オハイオ』、『メイン』、『ニューハンプシャー』、『ルイジアナ』、『コロラド』、『ウェストバージニア』、『サウスダコタ』、『ワシントン』、『マサチューセッツ』、『インディアナ』、『アラバマ』、『メリーランド』、『テネシー』、『ニューメキシコ』、『ミシシッピ』、『アイダホ』

 

全長320m

主機:BD02重力加圧原子炉2基(『モンタナ』、『オハイオ』、『メイン』はMHD特殊重力子動力炉に換装済み)

最大速力32ノット

主兵装

480㎜3連装多目的換装式砲塔4基

203㎜3連装荷電粒子砲2基

VLS 12セル

ファランクスCIWS4基

127㎜単装砲6基

30㎜レーザー機関砲6基

電磁放射防壁発生装置

・・・仮想敵国である新ソビエト連邦のソビエツキー・ソユーズ級戦艦の新規建造を受けて対抗する為に設計、建造された戦艦

かつて設計案が完成しつつも建造されなかった艦艇のネームシップを受け継いでいる

たった2年という短い期間、アメリカが誇る工業力で造船所をフル稼働して17隻を完成させた

 

 

 

・アイオワ級戦艦

 

『アイオワ』、『ニュージャージー』、『ミズーリ』、『ウィスコンシン』、『イリノイ』、『ケンタッキー』

 

全長280m

主機蒸気複合電動ディーゼルエンジン(『イリノイ』、『ケンタッキー』はMHD特殊重力子動力炉)

最大速力38ノット(『イリノイ』、『ケンタッキー』は48ノット)

主兵装

406㎜3連装電磁加速砲塔3基

127㎜単装砲10基

VLS 18セル

20㎜CIWS6基

30㎜レーザー機関砲2基

電磁放射防壁発生装置(『ニュージャージー』のみ未搭載)

 

・・・モンタナ級建造に伴い、その間の戦力の空白を防ぐ目的で既に退役し記念艦となっていた四番艦までを大改装の後に再就役させた

その後、モンタナ級と共に第1線に配備されることが決定され、『イリノイ』、『ケンタッキー』が新規設計、建造された

艦体の軽量化に重きを置いて、高速化を実現させている

 

 

 

・ヨークタウン級ミサイル巡洋艦

 

『ヨークタウン』、『インディアナポリス』、『アトランタ』、『ポートランド』、『ボルチモア』、『ウィチタ』

 

全長230m

主機MHD特殊重力子動力炉

最大速力45ノット

主兵装

250㎜3連装電磁加速砲2基

127㎜単装砲2基

VLS 30セル

ミサイル連装発射機2基

3連装短魚雷発射管1基

20㎜CIWS4基

30㎜レーザー機関砲2基

電磁放射防壁発生装置

 

・・・建造されるモンタナ級原子力戦艦の随伴艦として設計、建造された艦艇

戦艦の戦力化優先と既存巡洋艦の改良による第1線維持により建造の優先順位は低く、現在6隻のみしか建造されていない。

対空面での個艦防空、艦隊防空能力が高い

 

 

 

・ジェネラルホーク級ミサイル駆逐艦

 

全長180m

主機MHD特殊重力子動力炉

最大速力80ノット

主兵装

127㎜電磁加速砲1基

152㎜超音速誘導カノン砲2基

マイクロ波レーザー砲2基

特殊兵装『フォースロッグ』

VLS40セル

8連装多目的データリンク連動攻撃システム(MDLAS)2基

30㎜レーザー機関砲4基

3連装短魚雷発射管2基

電磁放射防壁発生装置

 

・・・本作ではあまり表舞台に出ることがない艦艇

北米大陸防衛及びハワイ防衛任務につく艦艇のため、派遣艦隊に配属されることはほとんどない。

従来のアーレイ・バーク級やズムウォルト級を遥かに超える対艦対地攻撃能力を誇り、MDLASは強力な近接対空対潜攻撃能力をもつ

特徴的なのは特殊兵装『フォースロッグ』で、実戦使用例は無いものの、試験発射の際、20隻を超える標的艦を殲滅した

 

 

 

・F-36 ハンター

 

全長18m

主機:複合反重力ジェット推進機関

副主機:反重力推進補助スラスター6基

最大速度2300㎞/h

航続距離3000㎞

戦闘行動半径1500㎞

兵装

30㎜レーザー機関砲4門

76㎜荷電粒子砲1門

ウェポンベイ搭載可能数

(空対地ミサイル4発)

(空対空ミサイル16発)

(対艦巡航ミサイル2発)

ステルスモジュール装甲

鏡面処理電波吸収版

可変翼自律展開システム

電磁放射防壁発生装置

自律コクピット姿勢安定装置

 

・・・アメリカ合衆国空軍及び海軍新型有人戦闘機の一角をなす

F-35ライトニングとF-22ラプターを合わせたような形をしており、ステルス性能はさらに向上している

さらに推進力が大幅増加し補助スラスターにより旋回性能、機動性が向上しており、今までF-22で多少苦手であった近接格闘戦能力が向上している

その際にかかるGは自律型コクピットにより人体にそこまで掛からなくなっている

また、自律型コクピットには《間接思考制御》と《網膜投影システム》が導入されており、操作性が向上している

攻撃面もレーザー砲により大幅改善され、防御面では対空ミサイルが殆ど効果が無くなっている

 

 

 

・FMS-4『パーシング』

 

全高12m程度

主力武装はRNN-01ビームソード四丁

頭部に20㎜レーザー機関砲2門

肩部に連装40㎜速射レーザー砲2基4門

背部に予備武装として連装式40㎜レーザーバルカン砲及び20㎜レーザーバルカン砲複合銃二挺

また、多目的換装兵装として肩部展開型シールド、6連装ミサイルランチャー『ZENIT』

防御兵装は電磁防壁発生装置及び各種物理シールド

反重力機関を使用した推進方式で、浮遊にも反重力装置を使用している

超音速巡航2000㎞/hが可能であり、Gを防ぐ為コクピットは完全自立型の内部重力が働いており、外部からの影響はない

 

モデルはマブラヴに登場する戦術機、F-22ラプター




今思うとアメリカやばくなってるな(汗)


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設定②新ソビエト連邦(随時更新)

オリジナル兵器(新ソビエト連邦)です。同じく作者の気分により随時更新します


 

 

 

 

・新ソビエト連邦

アメリカに次ぐ軍事大国であり、超兵器の開発に至ってはアメリカよりも優れる

『大侵略』以後、混乱を収束できず各共和国が独立しようとする動きも見られる中、ロシア連邦政府に見切りをつけロシア連邦共産党とモスクワ軍管区の軍隊がクーデターを決行

連邦大統領のいるクレムリンにて大統領を射殺、新ソビエト連邦の成立を宣言した

何らかの秘密結社の協力もありわずか数ヶ月でヨーロッパ=ロシア地域だけではなくユーラシア地域をも併合した。また、混乱が続くベラルーシとウクライナ、バルト三国を併合する

 

 

 

・ソビエツキー・ソユーズ級戦艦

 

『ソビエツキー・ソユーズ』、『ソビエツカヤ・ウクライナ』、『ソビエツカヤ・ベロルーシヤ』、『ソビエツカヤ・ロシア』、『ソビエツキー・グリーズ』、『ソビエツキー・ロフース』、『ソビエツカヤ・レーナ』、『ソビエツカヤ・サハース』、『ソビエツキー・バース』、『ソビエツキー・カラーズ』

 

全長360m

主機:反重力量子複合機関

最大速力35ノット

主兵装

40.6㎝3連装電磁加速砲3基

130㎝単装超音速対艦砲1基

VLS24セル

コールチク複合CIWS12基

130㎜単装砲4基

35㎜機関砲6基

量子シールド発生装置(『ソビエツキー・ソユーズ』、『ソビエツカヤ・ウクライナ』、『ソビエツカヤ・ベロルーシヤ』、『ソビエツカヤ・ロシア』のみ)

 

・・・正式名称は23設計戦列艦

かつてのソビエト連邦が建造としようとしたソビエツキー・ソユーズ級戦艦の設計をそのまま踏襲

130㎝単装超音速対艦砲は文字通り超音速で砲弾が飛び、通常の戦艦すら叩き割ることが可能

また、40.6㎝3連装電磁加速砲は仮想敵国アメリカの超高速駆逐艦に対抗する為に、対艦ミサイルを装填、発射が可能

 

 

・クレムリン級原子力戦艦

 

『クレムリン』、『ウラジミール』、『ノヴァ』、『ブレジネフ』

 

全長450m

主機:複合反重力MHD動力原子炉機関

最大速力40ノット

主兵装

56.8㎝3連装荷電粒子砲4基

重力子圧縮砲1基

VLS32セル

30㎜レーザー機関砲20基

130㎜単装砲6基

反重力浮遊推進装置

陸上走行ベルト

量子シールド発生装置

 

・・・正式名称は38設計戦列艦

新ソビエト連邦が仮想敵国アメリカに対抗して完成させた戦艦

破格の56.8㎝荷電粒子砲をもつばかりか、海域殲滅兵器である重力子圧縮砲を搭載する

また、この戦艦は反重力浮遊推進装置によって地面にかかる重量を激減させることによって陸上での走行を可能としていた

そして、決まって量子シールドという防衛装置を搭載する

この機能で諜報活動に出ていたCIAの諜報員を通じてアメリカの軍事関係者を驚愕させた

 

 

ザカフカース級ミサイル巡洋艦

 

全長300m

主機:反重力量子複合機関

最大速力40ノット

主兵装

300㎜3連装電磁加速砲2基

又は

130㎜3連装電磁加速砲4基

VLS30セル

ミサイル連装発射機5基

5連装長距離魚雷発射管2基

コールチク複合CIWS8基

量子シールド発生装置

 

・・・新ソビエト連邦が従来大型巡洋艦の建造を中止させ、新しく設計開発させた艦艇

対抗艦船としてキーロフ級やタイコンデロガ級を撃破が可能

また、主砲の発射速度の速さにより猛烈な攻撃を加えることが可能

 

 

ユニトヒット=ゴーダフ(殲滅者)

 

全長180m

主機:反重力推進機関

最高速度600㎞/h

下部320㎜荷電粒子砲9基

下部152㎜荷電粒子砲9基

上部130㎜速射荷電粒子砲12基

反重力浮遊装置

量子シールド発生装置

 

・・・新ソビエト連邦の空中戦艦ともいえるもの

反重力浮遊装置により最高高度600mぐらいまでなら飛行が可能

航続距離もほぼ無限とも言えるが最低地球半周分は可能




自分でも書いておきながら、新ソビエト、アメリカ以上の化け物じゃないか(震え)


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設定③欧州(随時更新)

オリジナル兵器(EU各国)の設定集です


 

 

 

・イギリス《グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国》

一時的に光栄ある孤立を保っていたものの、『大侵略』以後、国内情勢悪化と新ソビエト連邦の欧州への圧力外交を受けて再び欧州連合(EU)へと加盟した

 

 

・ロンドン級戦艦

 

『ロンドン』、『ヴィクトリア』、『ネルソン』

 

全長310m

主機: MHD特殊重力子動力炉

最大速力35ノット

主兵装

406㎜3連装自動装填式主砲3基

4.5インチ艦砲6基

20㎜ファランクスCIWS8基

30㎜連装機銃6基

VLS6セル

電磁放射防壁発生装置

 

・・・イギリス海軍がヴァンガード以来初の建造した超弩級戦艦である

新ソビエト連邦のソビエツキー・ソユーズ級の戦力化に対抗する為にギリギリの国防予算内で建造されている

その為、高価な装備は発注することが出来ず、正面からではソビエツキー・ソユーズ級には全く対抗ができない仕様となってしまっている

 

 

 

・フランス共和国

『大侵略』以後、国内で暴動、テロが多発、内戦の危機すらも訪れたが当時の政権が強引に鎮圧した

黒海から地中海に出てくる新ソビエト連邦海軍や北アフリカのイスラム教軍に対応する為、大幅に海軍力を増強している

 

 

・アルザス級原子力戦艦

 

『アルザス』、『デュプレクス』、『ダンケルク』、『ブルゴーニュ』、『フランドル』、『ストラスブール』、『リヨン』

 

全長308m

主機:複合二発原子炉ディーゼル機関

最大速力38ノット

主兵装

33㎝4連装自動装填式主砲4基

76㎜単装速射砲6基

単装短魚雷発射管6基

20㎜単装機銃16基

対レーザー耐熱耐弾装甲

 

・・・フランス海軍が対新ソビエト連邦用に建造した戦艦だが、実際は対イスラム教軍用に運用している

低コスト重視でできる限り高価な装備を使っておらず、防御面では冷戦期レベルである

また、主砲口径をできるだけ小さくしたことで連射力が高く他国の戦艦の2倍以上の速さで砲弾を撃ち込むことが可能

 

 

・リシュリュー級原子力航空母艦

 

『リシュリュー』、『ジャン・バール』、『クレマンソー』、『ガスコーニュ』

 

全長320m

主機:複合ディーゼル機関・加圧水型原子炉2基

最大速力30ノット

兵装

76㎜単装速射砲2基

20㎜単装機銃24基

VLS16基

ミサイル6連装発射機2基

可能搭載機数50機

 

・・・フランス海軍が旧式化したシャルル・ド=ゴールに代わる空母として建造した原子力航空母艦

電磁カタパルトを使用した発艦方式を採用しVLSや主砲を持った攻撃型空母となっている




なんだろ……アメリカや新ソビエトと比べたら正常という感じがする()


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設定④大東亜民主共和国(随時更新)

オリジナル兵器(大東亜民主共和国)の設定集です。
少し、国家説明が長いです


 

 

 

 

・大東亜民主共和国

旧中華人民共和国

『大侵略』以後、世界最多人口を誇る中華人民共和国は襲撃より大都市に大きな被害を受け、腐敗していた国家指導部はまともな対応を取れなかった

国家は混乱し独立意識が強い自治区では漢民族への暴行事件が多発し治安も日が経つにつれて悪化していった

その最中、共産党大会の若き議員達が人民解放軍の1部隊と結託、国家指導部を崩壊させ、クーデターによる政権交代後、大東亜民主共和国に国名を変更、その勢いで混乱が続く南北朝鮮を併合した

それと同時に自治区での独立運動を鎮圧、皆殺しなどの非人道的な鎮圧の仕方でそれを擁護する立場にあったインドとの対立を深めた

国内の問題を異種族、異星人のせいにして攻撃させることで、国内意識を統一しようとしている反魔法派国家

 

 

 

 

・黄河型戦艦

 

『黄河』、『淮河』、『杭州』

 

全長320m

主機:三発重力原子炉

最大速力:32ノット

主兵装

40.6㎝連装電磁加速砲3基

12.7㎝連装マイクラ波レーザー砲2基

30㎜CIWS4基

VLS20基

76㎜単装速射砲12基

量子シールド発生装置

 

・・・大東亜民主共和国人民解放海軍の戦艦

対日戦を意識しているが、設計が第一次世界大戦時の戦艦という対水雷防御があってないようなものとなってしまっている

しかし、攻撃面は強力で日本にとっても軍事的に脅威である

 

 

 

・長江型航空母艦

 

『長江』、『広州』、『新疆』

 

全長300m

主機:三発重力原子炉

最大速力40ノット

主兵装

76㎜単装速射砲1基

30㎜CIWS2基

VLS10基

搭載機数24機

 

・・・空母『遼寧』の後継空母だが、大きさの割に性能が低下している

自国設計の航空母艦を作ったことの無いという無経験が仇となり、中途半端であった

ただし、速度性能は優秀であり、機動作戦には十分参加可能である

 

 

 

・J-40可変人型戦闘機甲『毁坏(フイフアイ)

 

全高12m

主機:反重力ジェット推進装置

最高速度900㎞/h(アフターバーナー全開の音速巡航モード時)

兵装

腕部装着型36㎜チェーンガン2基

肩部36㎜機関砲2基

135㎜・36㎜チェーンガン複合銃システム×2

対光学フィールド

 

・・・大東亜民主共和国人民解放軍の人型兵器

可変型であり、音速巡航モードとホバリングモードを切り替えることが可能、ただしホバリングモードは急激な機動は不可能

また、この機体は特殊な操縦システムを採用している。間接思考制御システムを導入しているが、パイロットは運動能力の高い犯罪者が選ばれ、四肢を切り落としたのち機体の制御システムと接続し感情リソースを消滅させたのをコアユニットとして搭載しているため、機体にかかるGを無視した機動が可能

因みに機体が起動する際には毎回パイロットの血が抜き取られており、その人体が死亡判定を受けた時がその機体の寿命である




今思えば、人型兵器が残酷すぎ()


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設定⑤オーストラリア=オセアニア連邦(随時更新)

オーストラリア=オセアニア連邦(オリジナル国家)の設定集です


 

 

 

 

 

・オーストラリア=オセアニア連邦

『大侵略』以後、オーストラリア連邦政府は軍事の直接管理権を連邦軍最高司令官より奪い取り、統合軍という新たな軍隊を設置した

また、混乱が続くインドネシアを軍事併合し州として成立させ、他のオセアニアの国々はオーストラリアの圧力に屈しこちらも州として成立した。東南アジアに接し、ハワイ、グアムの近隣諸島、ガラパコス諸島の近隣にまで勢力を拡張したオーストラリアは国名を変更、オーストラリア=オセアニア連邦となった

 

 

 

・シドニー級航空母艦

 

『シドニー』、『カサブランカ』、『オーストラリア』、『クイーンズランド』、『サウスオーストラリア』、『バッセルトン』

 

全長290m

主機:複合ディーゼル機関

最大速力40ノット

主兵装

20㎜ファランクスCIWS4基

30㎜機関砲2基

搭載機数30機

対レーザー耐熱耐弾装甲

 

・・・オーストラリア=オセアニア連邦海軍がアメリカ合衆国海軍キティーホーク級通常動力型航空母艦を参考にて建造した空母

防空任務には広大な本土があるため不要で、外洋艦隊向けに建造された

他国の大型艦に比べると少し小型だが、高速性に優れ、艦隊追従能力も高い

 

 

・キャンベラ級ミサイル巡洋艦

 

『キャンベラ』、『アルベリー』、『ニューカッスル』、『ミルデューラ』、『アデレード』等

 

全長220m

主機:複合ディーゼル機関

最大速力40ノット

主兵装

127㎜連装電磁加速砲3基

20㎜ファランクスCIWS4基

30㎜機関砲2基

VLS48セル

ミサイル4連装発射機2機

連装魚雷発射管2基

多目的要撃システム『MIS』

対レーザー耐熱耐弾装甲

 

・・・オーストラリア=オセアニア連邦海軍の次世代巡洋艦

アメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を参考にしたとされ、艦形が非常に似てる

分間攻撃能力の向上もあるが、特筆すべきは『MIS』である

これは自艦に向かってくるミサイルなどの迎撃手段にハッキングを加えるもので、敵艦に対しそのミサイルを誘導することも出来る

 

 

 

・FW-3二脚重機甲陸戦兵器「グラント」

 

全高16m

主機:複合核融合機関

最高速度80㎞/h

主兵装

120㎜電磁投射砲4基(両腕部2基、両肩部2基)

8連装誘導ミサイルランチャー1機

30㎜4連装ガトリング砲2基(両腕部)

20㎜機関砲6門(頭部4門、両肩部2門)

電磁放射防壁発生装置

兵装担架:203㎜短射程無反動銃2門

 

・・・オーストラリア=オセアニア連邦軍の陸戦兵器

陸戦兵器の為、飛行は不可能

ただし、戦車よりも早い速度で走行し面制圧能力が高い為、使われる頻度は高い

正面にたった場合、多大な弾幕に襲われる事となる




最後の陸戦兵器はWarRobotというゲームから参考にしました


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旧本編ストーリー
chapter0 運命の分かれた二つの星


再投稿しようとしていたら、chapter1が1万字を超えてしまったので、分割してあらすじ的なのもを投稿しました


運命の分かれた二つの星

 

 

 

 

ー西暦2026年4月28日ー

 

 

~天の川銀河太陽系第3惑星地球~

~中央アジア連合インド管区~

~管区首都ニューデリー郊外~

 

 

 

 

 

ドンッ!ドンッ!

 

 

…地上戦の花形である現代主力戦車数百両の主砲から放たれる咆哮…

 

…戦場の女神とも称される砲兵部隊、自走砲連隊の面制圧砲撃…

 

…自走多連装ロケットシステムから放たれる多数の対地ロケット弾の弾幕…

 

…対空ミサイルシステムの素早い対空ミサイルの速射…

 

…対空自走砲による機関砲からなる地面を慣らすほどの弾幕

 

…超低空をホバリングする戦闘攻撃ヘリからの機関砲とロケット弾の咆哮…

 

 

それら全てはこちらに襲いかかってくる化け物の大群に放たれていた…

上空ではミサイルが飛び交い、光線が幾重にも重なっている光景が見られた…

 

 

 

…その光景を見上げる兵士たちにとっては既に常識となっていたが、上空を飛んでる戦闘機の姿は一機も無かった…

 

 

 

 

この世界は我々が住んでる世界とは違う……

 

 

ークリミアル宇宙天の川銀河太陽系第三惑星「地球」ー

 

この地球は、他の四大世界ー凄まじく科学技術が発展し高度な文明を持つ『白の世界』、統括軍と呼ばれる軍事組織が統治している『翠の世界』、7女神が統治し明るく、精神的に豊かな『紅の世界』、魔力と呼ばれるものが存在し魔族がいる『黒の世界』ーと並び、別名『碧の世界』と呼ばれ、私達が住んでる地球とは、魔法、異世界種族という存在等、多少の違いはあれど、同じ歴史を歩んできた……

運命の日、《西暦2024年8月14日》までは……

 

 

 

ー西暦2024年8月14日ー

 

 

碧の世界「地球」に突如としてクリミアル宇宙小マゼランに領域を持つ星間国家「デグルシア共和国」『急進派』が襲撃した事件【大侵略】による我々の世界と同じ歴史を辿っていたはずの星は変わった…

【大侵略】とそれに関連する事件により、今までの世界秩序は崩壊、また、この事件を機に、

魔法や異世界種族の存在が露見したことも、大混乱の原因となった…

 

ユーラシアに巨大な領土を持つ「ロシア連邦」は中央政府の混乱により連邦解体の危機が生まれ、共産党員のクーデターにより『新ソビエト連邦』へと、「中華人民共和国」は【大侵略】により大きな被害を受け、共産党上層部の混乱により自治区の独立運動を招き、1部の議員によって武力蜂起が計られ『大東亜民主共和国』へと再編された、そしてその他数多の小国は混乱を抑えきれずに崩壊し、併合されるか国家統合をするかの運命となった

 

唯一無二の超大国「アメリカ合衆国」は多民族国家ゆえの暴動が多発したが鎮圧され民族融和政策に踏み切り、「日本国」は魔法という存在を知っており国民性からか混乱は少なく反政府団体や共産党の取り締まりを強化、両国ともに体制維持に成功し、分裂しかけていた欧州各国は混乱を収束させるために『欧州連合《EU》』の旗印の元、体制崩壊に至った国や混乱が多発する国々をまとめ、再び国家統合へと踏み切った

 

中央・南アジアへと目を向けると、インド共和国はカザフスタン共和国と計り、その他の崩壊した国々をまとめ上げ、連合共同体の建設を唱え、連合条約により新ソビエト連邦の軍事作戦前に、カザフスタン、パキスタン、アフガニスタン、ウスベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、インド、キルギス、イラン、イラク、バングラデシュの国々が集まった共同体、『中央アジア連合』が建国され、それに伴い各加盟国家は管区へと編入された

 




次回予告

chapter1 襲来と始まり


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chapter1 襲来

これは(旧)chapter1 襲来、そして最初の決戦を書き直したものです。chapter2の方も後ほど修正する予定です。


_西暦2026年4月18日早朝_

 

人々の関心事には全く無かった謎の化け物、通称"火星起源種"との火星、月面両戦域での戦闘が人類の敗北に終わって2日たったある日。

 

謎の物体が宇宙より地球大気圏に突入し、

 

中央アジア連合インド管区ジャンムー・カシミール州シュリーナガル

 

大東亜民主共和国新疆ウイグル自治区カシュガル

 

新ソビエト連邦ヤマロ・ネネツ自治管区ノヴィ・ウレンゴイ

 

に落着した。

 

 

_同日_

インド管区大統領府

 

As you might already know,(既にご存知かも知れませんが、)Object of mystery came down.(謎の物体が落ちてきました。)We will request the support of your country.(我々は貴国の支援を要請します

)

 

『Okay,

However,(しかし、)the dispatch of a large force is(大部隊の派遣は)required congressional approval.(議会の承認が必要です。)

But,(ですが、) your country is one of our important partner,(貴国は我々の大事なパートナーの1人、) we can not forsake.(見捨てる訳には行きません。)

There is a force to move in the presidential authority.(大統領権限にて動かせる部隊があります。)It is the Joint Force.(それは各統合軍です。)

Let's dispatch the Central Command.(中央軍を派遣しましょう。)

They will keep you worked fine.(彼らは立派に働いてくれるでしょう)

 

Thank you very much. Fritz President.(ありがとうございます。フリッツ大統領)

 

In,(では、)Let's say you get down immediately.(我々はすぐに取り掛かるとしましょう)

 

中央アジア連合インド管区スイドール・ウラヴミッチ大統領はアメリカ合衆国ケント・フリッツ大統領とのテレビ電話で謎の物体への措置に対する支援を要請、統合軍の派遣を取り付けた。

 

テレビ電話を終え深呼吸する彼に補佐官が尋ねる。

 

「どうでしたか?」

 

「ああ、問題ない。アメリカ中央軍の派遣を取り付けた。落着した物体は恐らく月面の奴らだろう、管区軍司令部には謎の物体に対して"火星起源種"が侵攻してきた場合を前提として対応を行うよう伝えてくれ」

 

「了解しました」

 

補佐官は一礼した後、部屋を出ていった。

 

後にアメリカ政府はNATO加盟国及び、日本、そして魔法協会に人類未曾有の事態だとしてインド支援を要請した。

 

 

バーレーン王国 南部県

アメリカ中央空軍基地

 

『全機離陸せよ。』

 

『了解、離陸させます』

 

RQ-4グローバルホーク5機、MQ-9リーパー3機、MQ-1Cグレイイーグル4機…

合計12機の無人偵察機がシュリーナガルへと向かい始める。

ケント・フリッツ大統領によって中央軍にすぐさま出動命令が下り、中央軍司令部は手始めに情報収集として無人偵察機隊を向かわせた。

 

だが、その途上、シュリーナガルまであと20㎞と迫った時。

 

シュリーナガル地上に一瞬小さい光点が8つほど現れ、その直後に地上から放たれた一筋の光が一機の無人偵察機『RQ-4グローバルホーク』を貫く。

 

続いてさらに何条もの光が無人偵察機を撃墜していく。

 

ある機体は光を掠められ、エンジンに不調が出て少しづつ高度が下がっていく時に2発目を喰らって砕け、他の機体は真っ二つに裂けたり、機首を破壊され、

一部の機体では何条もの光に貫かれ、一瞬にして木端微塵と化した機体もあった。

 

たった数十秒の間に無人偵察機隊12機は全滅した。

 

バーレーン南部県 アメリカ中央空軍基地

 

「こちら、1番機!遠隔機体撃墜された!」

 

「6番機も同じだ!遠隔操作していた機体がやられた!」

 

「「こちらもだ!どう言う事だ…対空ミサイルの反応があったら見つけられるはずなのに!」」

 

遠隔操作していた機体がやられた操縦者達は基地司令の抑えも虚しく喚き始める。

 

その頃

 

バーレーン王国 マナーマ

アメリカ第五艦隊司令部

 

「司令!中央空軍基地から離陸した無人偵察機隊がシュリーナガル手前20㎞で撃墜されたようです!」

 

オペレーターが声を上げ、モニターに情報が更新され新たな表示が出現する。

 

シュリーナガル手前20㎞ーDrone Lostー と。

 

その表示を見て、アメリカ第5艦隊司令のリアム・ベンソン中将が口を開く。

 

「撃墜されたのか?撃墜要因は!」

 

彼はカメラ映像を解析中のオペレーターに聞く。

 

「現在、無人偵察機のカメラ映像を解析しているのですが……これは_」

 

「対空ミサイルか?」

 

「いえ、全く違います。そもそも対空ミサイルなら接近警報がなるはずです……」

 

オペレーターは困惑していたが、その傍で解析の様子を伺っていた副司令がベンソン中将に向き、口を開く。

 

「司令、撃墜原因はもしかしてレーザーの類ではありませんか?」

 

ベンソン中将は思わず眉をひそめ、聞き質す。

 

「レーザーだと?レーザーは確かに航空機を撃墜できるが……」

 

「司令、私もその意見に同意します。カメラ映像から、一筋の光が伸びてるのがわかりました。恐らくレーザーです」

 

ベンソン中将の顔が険しくなる。

 

「レーザーの命中率は?」

 

「恐らく……100%かと」

 

「……なに?それは冗談ではないよな?」

 

「ええ。冗談ではありません。奴らは空を飛ぶものを一機残らず殲滅しました。それも100%の命中率で_」

 

「それが本当だったら_」

 

一瞬、司令部の面々の顔が青ざめる。

 

「まずい!この事をすぐにインド管区国防省に伝えろ!」

 

ベンソン中将はすぐに命じた、しかし。

 

「通信障害で繋がりません!」

 

オペレーターの悲痛な叫びと共に、モニターにはCommunication Failureと書かれ、通信障害が発生した事が表示された。

 

「原因は?」

 

「シュリーナガルを中心に大規模な粉塵が巻き上がり、電波等を遮断し連絡が途絶えています!」

 

通信障害の表示に粉塵が巻き上がっている予測範囲も追加された。

 

「回復するのはいつ頃だ?」

 

「早くて1日、遅くて1週間かと……前例がないので分かりません!」

 

ベンソン中将の顔には焦りの色が見えた。

インド軍が航空攻撃を行えば確実にやられると思っていた。

その為、ベンソン中将は出来る事からしていこうと矢継ぎ早に命令を下していく。

 

「仕方ない、支援部隊を出す!空母を中心とした艦隊に陸上部隊を派遣する!それと、本国にその情報を送れ」

 

「はっ!」

 

 

インド管区ニューデリー サウス・ブロック合同庁舎

インド管区国防省 四軍統合司令室

 

「ジャンムー・カシミール連邦直轄領主都シュリーナガルにいた第37歩兵大隊との通信、ユニット落着以降、通信途絶!さらに、シュリーナガル南部のショッピアン、アナントナグ、及びシュリーナガルからそれぞれの2都市に繋がる交通上の町、村の駐屯部隊との通信途絶。また、シュリーナガルより幹線道路等が繋がっているマガム、ビアーワ、ウェイウール、パターン、ワクラ、ギャンダーボール、ソナマルグの駐屯部隊との通信途絶しています!」

 

オペレーターが現状を報告しつつ、統合司令室の大型モニターへインド管区ジャンムー・カシミール州の全体図の表示を速やかに変更していく。

 

ジャンムー・カシミール連邦直轄領夏季主都シュリーナガルはもちろんのこと、周辺の駐屯部隊との定期通信が途絶し、緊急通信も繋がらなくなっていた。

無事なのは直轄領北部の街々と西部外縁、東部一体、南部の冬季主都ジャンムー周辺だけである。

モニターにはシュリーナガルとその周辺にかけてーLostーと表示された。

 

「バンディポラの第13師団司令との通信回線開きます!まだ通信障害が回復しておらず、ノイズが酷いです」

 

オペレーターがコンソールを操作し、通信回線を開く。

モニターには「音声通信のみ」という表示が浮かぶ。

回線が開くと、初めに聞こえてきたのは盛大なノイズだった。

ザーという喧騒な音が流れ続き、少しずつ鎮まり、ようやく相手の方から声が発せられた。

 

『こちら、バンディポラ駐屯地第13師団、聞こえるか?』

 

「こちら、国防省統合司令室。問題ない」

 

相手からの問いに国防大臣が答える。

 

『そうか……こちらの現状を報告する。南のワクラへと派遣した偵察兵は"化け物"の接近報告の後、通信が途絶した。ワクラは既に奴らの支配域となっている』

 

その言葉を聞いた直後、オペレーターの1人がモニターを火星起源種の支配域予想図に切り替え、ワクラが新たに支配域になったということを通知した。

 

『私は現状を鑑みて、インド方面の撤退は困難と判断し、タジキスタン管区へと撤退する事にした。構わないか?国防大臣、そしてクマール大将』

 

彼は国防大臣と、インド管区軍参謀長であるアサーヴ・クマール陸軍大将に問いかけた。

国防大臣は頷き、クマール大将に目で指し示し、

「ああ、構わない。貴官以下第13師団は今後の行動に関して制限を与えない事とする。無事に逃れろ、幸運を祈る」

 

と、クマール大将が答える。

 

『了解した。そちらも幸運を祈る。……少しノイズが酷くなってきた、通信を終わる』

 

若干ノイズが声と被り、聞こえにくくなってきた所で通信が終了した。

 

「で、いいですかな?国防大臣」

 

「問題ない。無理にインド方面へ退け等という命令を伝えるわけには行かないだろう、クマール大将」

 

「……それで火星起源種ですか」

 

「ああ、我が国の航空宇宙軍も派遣されたから君も知ってるだろ、月面での戦闘に敗北し、奴らは地球へと到達したのだ」

 

「幸い、ここは地球です。人類が持つ全ての重火器を運用することが可能です。しかし……そう上手く行きますかね……」

 

その呟きに国防大臣は不安を覚えた。

 

「クマール大将の予感は的中する確率が高い、当たってくれないで欲しいのだが」

 

「……それは私も同じですよ、大臣」

 

しばらくしてモニターに3つの表示が出現した。

 

「参謀長、カルギル、プーンチ、グルマルグの各駐屯隊からの通信です」

 

オペレーターの言葉にクマール大将は眉を顰める。

「どれも火星起源種の支配域にある町等に近い……このままいたら飲み込まれる可能性があるな」

 

「どうします?」

 

「繋いでくれ」

 

国防大臣がオペレーターに命令し、すぐに通信回線は開かれた。なお、これも音声通信のみである。

 

『こちら、カルギル駐屯地第9混成大隊です。我が大隊は西、シュリーナガル方面のウェイウールに捜索部隊を送りましたが、化け物の大接近を報告後通信途絶しました。…また、西隣のドラスにて化け物共の先遣隊を確認しました、十体ほどですが、ドラス警備隊もドラスから撤退しつつあります。司令部の指示を請う』

 

『プーンチ駐屯地第83戦車小隊であります。東のマガムへと救難隊を送ろうとしたのですが、この事態では諦める他ありませんか……司令部の指示を請います!』

 

『グルマルグ第32空挺歩兵中隊です。我が隊も現在撤退準備中です。司令部の指示を請う!』

 

立て続けに指示を請う様子にクマール大将はため息を吐く。

 

「シュリーナガルのカシミール軍司令部との通信途絶したとはいえ、現場指揮官の判断は出来んのか……まあ、良い。

カルギル第9混成大隊はドラスの撤退兵を回収した後、途上の部隊を回収しつつ、ケイロングへと向かえ。ラングダム、パダムの歩兵小隊は別ルートでケイロングへと向かわせろ。合流した後、マンディを目指せ。その後は現地指揮官の指示に従え」

 

『はっ!』

 

「グルマルグ第32空挺歩兵中隊は即座にその場所を離れプーンチに向かい、プーンチ第83戦車小隊と合流後、ジャンムーを目指せ。両隊も到着後は現場指揮官の指示に従え」

 

『『はっ!』』

 

モニターに3部隊の撤退状況が表示される

カルギル駐屯第9混成大隊はカシミール地方東部の辺境すぎてほとんど整備されていない道を行き、ジャンムー・カシミール連邦直轄領南部の軍駐屯拠点があるマンディへと向かう大行程であった。

グルマルグ駐屯第32空挺歩兵中隊とプーンチ駐屯第83戦車小隊はカシミール地方西部の端にあるプーンチにて合流後、南下しジャンムー・カシミール連邦直轄領南部の冬季主都ジャンムーを目指す。

 

『総員の行程における無事の踏破を祈る』

 

『『『はっ!!』』』

 

三部隊の指揮官の返答は勇ましいものであった。

 

通信を終えた直後、

 

国防大臣がクマール大将に尋ねる。

 

「ジャンムーとな?」

 

「ええ……カシミールからインド本土への侵入を防ぐにはそこ(ジャンムー)で叩くしかないのです」

 

「残された人々は?」

 

その疑問にクマール大将は悔しそうに答える。

 

「インド数十億の命を守るためには……致し方ないのです、国防大臣ならお分かりでしょう」

 

「分かっている……あえて聞いたのだ」

 

「そうですか……ドゥビー少将!」

 

クマール大将は国防大臣との短い会話を終えると1人の将校を呼んだ。

彼はクマールの補佐的立場にあり、30代とクマールに比べれば若い、バラト・ドゥビー少将である。

 

「はっ」

 

「ジャンムー及び周辺部への火星起源種の迎撃部隊を手配しろ。事前のプランに基づき、現場の状況に合わせた迎撃プランを策定するんだ」

 

「了解しました」

 

ドゥビー少将はすぐに立ち去っていく。

それを見届けたクマール大将は国防大臣に話しかける。

 

「国防大臣、これを戦争とするならば……私は四度目の戦争を迎えることになります」

 

「……第三次印パ戦争からの従軍に加え、カルギル紛争、先の『大侵略』の際のパキスタンとの1週間戦争、そして今回か」

 

「ええ」

 

しばらくして、第32空挺歩兵中隊と第83戦車小隊はプーンチにて合流した後、ジャンムーへと到着した。

一方、第9混成大隊は道中の人員を回収しながら撤退しており、ケイロングを通過した。

 

また、第13師団はアフガニスタン管区国境に差し掛かったばかりであった。

 

 

_西暦2026年4月19日早朝_

 

"火星起源種"の侵攻は続き、ラジューリ、バニホール、ポカルの3地区及び山脈地帯で撤退中の部隊と会敵する。

 

第26山岳中隊第3分隊

 

「分隊長!奴ら、こんな斜面であんなスピードを!」

 

「後退しながら撃ち続けろ!RPG撃てぇ!」

 

ある山岳歩兵分隊は得意なはずの山脈地帯での戦闘で劣勢を強いられていた。

対戦車ロケット弾が一斉に4発発射され、2帯の赤い化け物が撃破され体液を散りばめる。

 

"たった"2体の撃破に歓声を上げるが、その後ろから続く大量の化け物に顔を青ざめる兵士たち。

 

「よし!」

 

「いや、数が多すぎる……!」

 

その時、一体の化け物が軽く跳躍し、1人の兵士の上に乗っかかる。

 

「ぐあっ!……ゲホッ」

 

その直後、首を引きちぎられた即死する。

 

その光景を見た分隊長は中隊長に無線を入れる。

 

「中隊長!全滅するかもしれません……我々が殿を努めますので、その間に撤退を!……小隊長もやられた、このままでは中隊すら全滅するかもしれませんっ!」

 

『分かった……任せたぞ!』

 

分隊長はその言葉を聞き無線を切ると声を上げる。

 

「お前ら!命が大事なヤツはさっさと逃げろ!我々が引きつける!第26山岳歩兵中隊第3分隊の力、思い知らしてやれ!行くぞ!」

 

この攻勢に対し、陸軍司令部は火星起源種予想進路上への工作活動を指示する。

ジャンムーへの敵の侵攻を遅らせるため、大量の地雷をばら撒き、また進路上の街の爆破によって進路を塞ぐなどの工作活動を行った。

 

また、インド空軍は既にジャンムー・カシミール連邦直轄領北部及び中部の空軍基地より全機退避済みであり、ジャンムー東方のビジェイコート及びパタンコートの空軍基地より少数の攻撃機隊による連続爆撃を行った。

 

ビジェイコート空軍基地

 

『こちら管制塔、ヘブラ01応答せよ』

 

「こちらヘブラ01」

 

『離陸を許可する。遅滞目的ではあるが化け物に容赦はするな』

 

「了解、離陸する」

 

管制塔との会話の後、Su-30MKI戦闘攻撃機6機が次々に離陸していく。

 

2日後、火星起源種は西部街道バムラ、中部街道リーシー、東部街道パトニトップに到達。

これはインド陸軍及び空軍による遅滞攻撃の成果であった。

 

この間にインド管区三軍は戦力を結集、陸軍主力の機甲師団を全て前面に展開し、迎撃、そして火星起源種が敗走した際に追撃できる態勢を整えた。ロケット砲及び自走砲、MLRSで構成される砲兵部隊は少し後方に展開する。

空軍はビジェイコート及びパタンコートの両空軍基地に戦力を結集中であり、ジャンムー空港も民間機を全てインド本土へと退避させた後、補給基地として使用が予定されていた為、ミサイル等の弾薬や交換用の予備部品、そして整備兵が多数置かれた。

海軍はムンバイ沖に西海軍コマンド所属のコルカタ級、ヴィシャーカパトナム級駆逐艦、タルワー級フリゲートやアリハント級原子力弾道ミサイル潜水艦等の、巡航ミサイル、弾道ミサイルが運用可能な艦が展開している。

4月21日午前

ジャンムー・カシミール連邦直轄領冬季主都ジャンムー

接収ビル地下 三軍統合臨時作戦司令室

 

「無人偵察機の映像より、火星起源種、バムラ、リーシー、パトニトップ地区の通過を確認!」

 

その言葉によって、司令室内は慌ただしくなる。

その最中、統合司令官であるダレル・ハーサン陸軍中将は素早く命令を飛ばす。

 

「砲兵部隊及び海軍原潜部隊に直ちに攻撃を開始させろ!オールストン少将、航空戦力の状態は?」

 

ハーサン中将の左隣にいたドランス・オールストン少将、彼はジャンムー・カシミール連邦直轄領航空総隊司令を任されていた。

 

「いつでも出撃可能なはずだ」

 

「……少し従ってもらいたいことがある、航空戦力は逐次投入で攻撃を行って欲しい」

 

その言葉にオールストン少将は驚愕し激しく声を上げる。

 

「バカなっ!戦術としては愚行だぞ!」

 

「……だよな……少し悪い予感がしたんだ、だがその程度で戦術を変えるのは愚かな行為だ。よし、全機出撃だ」

 

オールストン少将はその言葉に一抹の不安を覚えたが、数秒後にはその不安を振り切り、攻撃を命じた。

 

「ビジェイコート、パタンコートの空軍基地に伝達、全機出撃!徹底的にやれ!」

 

その命令によってビジェイコート、パタンコートの空軍基地よりSu-30MKI戦闘攻撃機、F-16C戦闘機、テジャスMK3軽戦闘機等が次々と離陸、さらに南方の大規模空軍基地ではB-52M戦略爆撃機、TU-22MH戦略爆撃機の爆撃隊も離陸した。

戦闘機だけでも約80機、爆撃機も含めれば100機を超える大規模航空集団だった。

 

3地区を通過した火星起源種への初撃は原子力弾道ミサイル潜水艦からのGPS誘導で送り込まれる超音速巡航ミサイルブラモスであった。

正確に超音速で飛翔するそれは、火星起源種の大群の中心に突き刺さり、巨大な爆炎と共に吹き飛ばす。

 

その頃には航空部隊も戦闘空域に入っており、Tu-22MHやB-52Mの爆撃機部隊は一時的に高度を下げ、巡航ミサイル及び対地ミサイルを一斉に放つ。さらに、火星起源種の大群の上空に移動して大量の爆弾も投下した。

 

その徹底的な爆撃に火星起源種の前衛集団は姿を消し、残る火星起源種もAH-64Eアパッチ・ガーディアンからの対戦車ロケット弾によって次々と撃破される。

 

「敵集団消滅!」

 

オペレーターが嬉しさと共に声を上げる。

 

「いや、奴らはまだ"前衛"だ」

 

だが、それをハーサン中将が戒める。

 

「我々は攻勢に入る。機甲師団に前進を命じろ!航空部隊は先行し、1つでも多くの敵を葬りされ!」

 

「戦略爆撃機隊はどうします?」

 

オールストン少将が尋ね、ハーサン中将は少し考えた上で返答した。

 

「帰還させろ、ここからは戦闘機部隊の出番だ」

 

「はっ」

 

B-52M、Tu-22MH戦略爆撃機隊は戦術的な汎用性に欠けるとして、帰還を開始する。

その機体とは反対に戦闘機隊が前進する。

 

「あれは……こちらドプク1発見した」

 

『よし、攻撃を開始しろ』

 

「了解」

 

Su-30MKI戦闘攻撃機に搭乗するパイロット、ドプク1は指揮下にある他の機体と共に急降下を開始。

 

「全機、発射!」

 

ドプク1の掛け声と共に12機のSu-30MKI戦闘攻撃機から対地ミサイルが放たれ、火星起源種の化け物共を爆炎で砕いていく。

他の中隊も次々と攻撃を開始し、火星起源種中衛集団も大きな被害を受ける。

 

『こちら、ビジェイコート・コントロール、そろそろ火星起源種の先頭が砲兵部隊の砲撃射程に入る。航空部隊はさらに奥の敵を攻撃せよ』

 

 

50両に上るBM-30スメルチ多連装ロケット砲、ピナカ多連装ロケットシステムより、大量のロケット弾が発射され、約60両のM270多連装ロケットシステムからは高威力の誘導ロケット弾が発射されていく。

さらに、M777牽引式榴弾砲が火を吹き、M109A4自走榴弾砲から155㎜榴弾が放たれていく。

 

「敵"中衛"集団、半数に減少」

 

オペレーターの声にハーサン中将は眉を顰める。

 

「まだ半数かっ!」

 

それに加え、参謀らが苦悩しながら提案する。

 

「中将、前進中の機甲師団に停止を命じましょう!このままでは会敵します!」

 

その言葉に難しい顔を浮かべるハーサン中将だったが、潔く決断した。

 

「いや、そのまま前進させろ!航空戦力の支援があるんだ、機甲師団でも打ち破れる!」

 

「りょ、了解!」

 

ジャンムーの前線司令部の命令を受け、M1A1ESI(イース)、アージュンMK2、歩兵戦闘車からなる機甲師団100数両は前進を続ける。

 

「弾種徹甲弾発射用意!」

 

師団長の命令が下り、彼らは発射砲弾を選択する。

そして、照準に"化け物"の姿を捉えると、

 

「全車、射撃開始!」

 

120㎜滑腔砲が、30㎜機関砲が、徹甲弾を放つ。

 

また、AH-64Eアパッチ・ガーディアン戦闘ヘリ中隊が先行し、射撃を開始した。

 

ジャンムー 三軍統合前線司令部

 

「ニューデリーの空軍司令部より通信です、開きます」

 

オペレーターの言葉にハーサン中将が頷き、コンソールを操作して映像通信が開かれる。

 

その画面には顎に豊富に蓄えた茶髭と左胸の大将を示す勲章が目立つ老齢の男がいた。

 

インド管区空軍参謀長のヴィハーン・ラル空軍大将である。

 

『状況は聞いているが、優勢らしいな。』

 

「ええ。現在は攻勢に打ってでており、それも優勢であります」

 

ハーサン中将が大まかに答えると、左手で顎髭に触れながら話す。

 

『ふむ……既に反攻に打って出てるか、だか油断は禁物だ。我ら地球人類にとっても初の地球外生命体、何かの切り札を持っていてもおかしくは無いぞ』

 

「はっ……!」

 

「大将閣下、戦略爆撃機をお貸しいただくなど、無理言ってすみません」

 

ハーサン中将が敬礼で答える中、オールストン少将は上司である彼にお礼を言う。

 

『"容赦なく"叩き潰すためには必要なのだろう?なんなら、問題無い』

 

「はっ!」

 

『では、検討を祈る』

 

その言葉を最後に通信は終了した。

 

ニューデリー 国防省四軍統合司令室

 

ニューデリーに夜が訪れた頃。

 

「……!、クマール大将、まだ起きていたのか……貴官も高齢だしそろそろ休んではどうか?」

 

国防大臣がクマール大将に声をかける。

 

「確かに……休みたいとは思ってるのですが、戦況が不安でして……」

 

「不安?今は優勢だが……」

 

「……予感がすると言いましょうか……なにか良くないことが起き、今の状況が崩れる予感がです……」

 

その言葉に国防大臣はため息をはく。

 

「クマール大将、考え過ぎ……ではないと思う。貴官の予感はよく当たるからな……だが、現状できることは何も無いだろう……今の手が最も最善の手なのだ……」

 

「確かに……ところで国防大臣は何か用が?」

 

「外務大臣から聞いたんだが、パキスタン管区が我々の要請、火星起源種の侵攻に警戒してくれ、という要請を受諾した、今はやっと展開している頃だろう。後、パキスタン管区政府はインドに一切の干渉を行わないと明言してきた」

 

「なるほど……それらの事に関しては、国防大臣ら政治家にお任せします。ブナート中将!」

 

「はっ!」

 

クマール大将に呼ばれたの陸軍副参謀長のレン・ブナート中将は威勢よく答える。

 

「私は休息するが、貴官にあとは任せても良いか?」

 

「ああ、その事ですが。閣下がいる間に休息をとっていたので大丈夫です。お任せ下さい」

 

それを聞き、クマール大将は寝室へと向かう。その姿を国防大臣やブナート中将らが見送る。

 

_4月22日正午頃_

ジャンムー 三軍統合前線司令部

 

「機甲師団、バニホール地区に到達しました」

 

オペレーターの声を聞き、ハーサン中将は頷く。

 

「ここから少し北上すればカジグンドに到達する……そして、そこからシュリーナガルまではほぼ平坦、火星起源種が物量を最大の武器としている事から、カジグンドから機甲師団は激戦を強いられることだろう。オールストン少将」

 

「はっ!」

 

「航空部隊には徹底的な地上支援を厳命しろ。航空戦力無くして機甲師団が勝てる見込みはない」

 

「了解した」

 

オールストン少将はそう返事をすると、付近にいた航空幕僚に伝え、CPにもその旨を伝えるよう話した。

 

機甲師団はまもなくカジグンドへと到達、シュリーナガルとの間にあるアナントナグを目指す。

 

オペレーターからその旨を聞いたハーサン中将は口を開く。

 

「原潜部隊に通達、シュリーナガル周辺への巡航ミサイルを発射しろ、また戦略爆撃機隊にはシュリーナガル周辺空域への進入を指示。火星起源種とやらは搭載されたユニットと思われる突入体で来たらしい、それを考慮に入れ、シュリーナガル周辺の火星起源種を徹底的に殲滅する」

 

すぐに命令が伝達され、原潜部隊から超音速巡航ミサイル"ブラモス"が発射され、同時にB-52M、Tu-22MH戦略爆撃機隊がシュリーナガル周辺空域へ進入を開始する。

 

 

───戦争は、まだ始まったばかりである───



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chapter2 生き延びる為に……

色々現代兵器が出てきます。

まあ……どうぞ!()


ー4月21日午後2時ー

 

 

 

~インド管区軍ニューデリー総司令部~

 

 

 

 

 

ジャンムーから発せされた謎の電場障害より、司令部は対応が遅れてしまった…

 

 

そして…ジャンムー司令部が崩壊したことで、総司令部に指示を求める通信が相次ぎ…混乱していた…

 

第13砲兵大隊『こちら、第13砲兵連隊!司令部!どうなってるんだ!…ん…なんだこの振動…は…突然あらわれやがった…くそ…ぐはッ…く………』

 

第26機甲大隊『…くそっ!司令部!援軍を…!航空支援は!くそっくそっ…なんなんだ奴らは!?硬すぎる…は……ピー』

 

第46ヘリ中隊『…こちら第46ヘリ…一機やられた…光線とかふざけんな…!…ん…くそぉっ!!…ピー』

 

 

第8歩兵連隊『…こちら…ジャンムーに展開する第8連隊…!我が連隊は敵生物に押し込まれ…戦闘…アガっ…ぐっがァァァ!!…』

 

叫び声の直後…はっきりと聞こえた…

 

謎の存在が人を食べてる音が…

 

 

 

 

アサーヴ「…なぜ、こんな状況に!?…空軍はどうしたっ!」

 

オペレーター1「…報告します。暗号通信で送られた内容です。パタンコートにいるグレジェフスキー中将によると、謎の光線にやられ、全機全滅したそうです。」

 

アサーヴ「だが、交代制で出撃していたのではないか?」

 

オペレーター1「…それが、現場の航空指揮官達が全機による波状攻撃をかけたようで…」

 

アサーヴ「…とりあえず、通信が繋がってる部隊に戦闘しつつ後退を命じろ。もはや、それ以外に選択肢がない…!」

 

オペレーター2「はっ。」

 

第27飛行中隊『こちら、第27飛行中隊…今は降りて市街戦の真っ最中だ。市街地の迷路のような道でなんとか善戦している…だが、後退は困難…疲労も激しい…。どのぐらい後退できるか…なんとか最善を尽くす。以上だ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサーヴ「………」

 

将校「…予感が本当に当たってしまいましたな…」

 

アサーヴ「当たって欲しくなかったのがね…」

 

将校「…部隊展開を。」

 

アサーヴ「あぁ…ジャンムー南部及びパタンコートに増援部隊を派遣する。ビジェイコートからは撤退させろ。両地点にて、後退の支援を行う。」

 

将校「はっ!」

 

 

 

 

だが…

 

数分後…さらに悪いことは起こった……

 

 

 

 

 

 

 

オペレーター3「!?…ジャンムーにいる全部隊との通信途絶!」

 

 

 

アサーヴ「いつもの電波障害ではないのか?」

 

オペレーター3「それにしては様子がおかしい…ノイズでさえ聞こえません!」

 

 

 

 

士官「閣下!これを見てください!映像切りかえます!」

 

アサーヴ「これは…」

 

士官「1分前に監視衛星6号がうつしたジャンムーの様子です。」

 

 

 

そこに…ジャンムーという都市の面影は全くなく、ただ、真っ赤な炎が鎮座していた…

 

 

 

アサーヴ「まさか…通信途絶の原因はこれか…。」

 

将校「ジャンムー中心部より100㎞圏内に熱波を確認したとの事です。」

 

 

アサーヴ「パタンコートやジャンムー南部の村々から部隊をジャンムーから50㎞圏外へと撤退させろ!急げ!」

 

オペレーター「…パタンコートと繋ぎます!」

 

 

第6航空団司令『こちら、パタンコート航空基地!敵生物!パタンコートに侵攻!応戦してるが火力が足りない!次々に喰われてる!くそっ!化け物どもめ!これでもっ!…』

 

その後ろからは小銃の連射ともとれる銃声が聞こえていた…

明らかにパタンコート全軍を司る航空基地に化け物が侵入した証拠だった…

 

 

アサーヴ「…早すぎる!たった数分だぞ!」

 

第6航空団司令『ぐっ…ガハッ…現実を見ろ!アサーヴ!…くそっ…ぐはっ…パタンコート航空基地は…最後の最後まで…抵抗する…俺はもう…腹を抉り取られて…ダメだが…部下が…!グホッ…それまで…民間人を避難…させろ!……!?くらえっ…ばけ…ドンッ……ピー』

 

 

最後の物音は通信機が床に落ちた音であった…

パタンコート航空基地の執務室は鮮血によって染まっていることは映像はなかったが、総司令部の面々は容易に想像できた…

 

 

 

 

アサーヴ「…すまないオールス…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵性生物の化け物群はジャンムーを消滅させ、パタンコートに侵攻…

さらなる南下を開始した…

 

 

 

 

 

インド管区政府はインド管区軍からの情報を元に

…カシミール地方全土が占領され、そして、インド亜大陸への侵攻を許してしまった為…

全土に非常事態宣言を発令した…

 

インド管区軍は政府に対し、外国観光客の母国への送還と今後の観光客の入国禁止も進言したが、頭の硬い官僚たちはこの進言を取り下げた

 

軍は文民統制によるコントロール。無理に政府への要求はできない。その為、軍上層部は諦めかけた…が…

 

 

中央アジア連合連合評議会議長…バレン・フォッシュが…官僚たちを叱責…

 

観光客の新たな入国禁止と在国観光客の母国送還命令を出させた

 

そして、それは世界にも発表され、情報共有に取り組んだ…

 

 

 

 

~中央アジア連合インド管区政府直属軍情報室~

 

 

アサーヴ「ありがとうございます、議長。」

 

バレン「いや、感謝されることではない、当然の事だ。で、どういう要件だ?」

 

アサーヴ「…先に…インドを脱出してもらいたいのです。いくら、支援を受けても奴らの物量には抗いきれません。」

 

バレン「私に逃げろと?…国民を置いて政治家がか?」

 

アサーヴ「…ですが、あなたはこの国にとって大事な方なのですよ!」

 

バレン「…分かっている…だが、国民の命の方が大事だ!お前もわかっているのだろう…。」

 

アサーヴ「…当然です。我々は国民を守るための軍隊ですから。」

 

バレン「…いずれは脱出する…だが、それは国民の最後尾でだ。それでいいだろう。」

 

アサーヴ「はぁ………これ以上は時間の無駄ですね…わかりました…それで行きます。…ですが、元首である以上、護衛はしっかりとさせていただきます。」

 

バレン「…分かった。やることがあるのだろう?戻りたまえ。」

 

アサーヴ「はっ!」

 

 

 

 

 

アサーヴがインド管区軍ニューデリー総司令部に戻って数分後…

 

 

~インド管区軍ニューデリー総司令部~

 

 

オペレーター「閣下、バーレーンのアメリカ中央軍司令官より通信が入っています。」

 

アサーヴ「…リアムか…繋げ。」

 

 

リアム『こちら、アメリカ中央軍第五艦隊司令部だ。…まずは謝罪を申し上げたい…。我々は貴軍らが要請した際、我々は無人偵察機10機程度を派遣したが、全機撃墜された。光線攻撃だ。』

 

アサーヴ「…!?」

 

リアム『…通信が繋がらなかったのだ…すまない…。』

 

アサーヴ「それで…他には?」

 

リアム『ムンバイ港へ艦隊を派遣して、西部コマンドの艦隊とともに、勝手だがインド西部の民間人、特に観光客の脱出を進めていた。インド政府から公式に観光客の国外退去命令が出されたからなんとか合法となったからよかったが…』

 

アサーヴ「……詳しく聞きたい。」

 

リアム『艦隊の構成はニミッツ改級ロナルド・レーガン1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、ズムウォルト級駆逐艦数隻、フリーダム級、インディペンデンス級沿海域戦闘艦10隻程度、ブルーリッジ級揚陸指揮艦、ワスプ級強襲揚陸艦、LSV等の20隻の揚陸艦部隊、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦3隻、ヴァージニア級原子力潜水艦2隻だ。ムンバイ港のインド海軍西部コマンドと独自に協力して民間船を徴用して主に観光客をオーストラリア大陸へと脱出させている。また、トラック等を上陸させて、インド西部の民間人を東へと移動させている。そして、その護衛と防衛線構築の為に機甲部隊、砲兵部隊1師団を上陸させている。』

 

アサーヴ「大部隊だな…。航空部隊も使えないか??インド東部の民間人の脱出に民間機だけではなく、貴軍の輸送機も使いたい。」

 

リアム『…分かった。VTOL輸送機は平原等で着陸できるが、大型輸送機は空港が必要だが、どうなのだ?』

 

アサーヴ「まずは民間旅客機を優先させて脱出させる。そして、大体の脱出後に輸送機を着陸させて欲しい。VTOL輸送機は集合地点を定めて定期的にオーストラリア大陸との間を往復させてもらえないか?光線攻撃の予測射程外ギリギリまで。」

 

リアム『…可能だ。』

 

アサーヴ「ありがたい…。それでは通信を切る。健闘を祈る。」

 

リアム『そちらもだ…。』

 

 

 

アサーヴとリアムは画面を介して、敬礼を返した…

 

 

 

 

 

…数十分間の通信で米軍との連携、及びオーストラリア軍の難民受け入れの承諾が確認された…

 

 

 

 

 

 

 

~インド管区ムンバイ港~

 

 

 

 

 

そこで、貿易船や資源輸送船は早々に出港してその姿は見えず、今では国外退去命令を受けた観光客達を乗せた民間客船が次々と出港していた…

代わりにアメリカ第五艦隊の輸送艦や、第七艦隊の大型輸送艦が入港していき、M1A3主力戦車やLOSAT1A1自走対戦車ミサイル、M901A4 ITV自走対戦車ミサイル、M109A7パラディン155mm自走榴弾砲、M270MLRS自走多連装ロケットシステム、M2A5ブラッドリー改歩兵戦闘車、M3A2ブラッドリー騎兵戦闘車、M113A4装甲兵員輸送車、AAV8A1水陸両用兵員輸送車、MIM-104ペイトリオットPAC-4対空ミサイルシステム、多数の歩兵師団等が上陸を果たしていた…

 

さらに、時々、沖合にいるヴァージニア級原子力潜水艦、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、ズムウォルト級駆逐艦より数発巡航トマホークミサイルが発射され、原子力空母ロナルド・レーガンからは艦上無人偵察機MQ-1Eアストレル数機が発艦していた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ムンバイ臨時アメリカ中央軍、太平洋軍インド方面作戦司令部~

 

 

士官1「機甲部隊、砲兵部隊、次々と上陸してきます。」

 

士官2「インド軍の戦況、通信障害により不明なままです。」

 

その声に返答したのが…

アメリカ太平洋軍フィリピン、東南アジア方面陸軍所属で

今はアメリカ合衆国軍インド方面作戦司令官の…

 

エイデン・トーマス陸軍少将であった…

 

エイデン「インド軍司令部からも掴めんのか?」

 

士官1「ニューデリーの総司令部でも繋がってないようです。」

 

エイデン「…仕方ないな…。暫定防衛線の警戒レベルをさらに上げろ。上陸した部隊はムンバイ郊外で再編成を終え次第、防衛線に向かわせろ。」

 

士官2「はっ…伝えます。」

 

 

 

ドタドタドタ…!

 

 

エイデン「どうした?」

 

士官1「…一時的に通信が回復、無線通信を盗聴した結果…ガンガナガル郊外にて敵性生物との戦闘が行われてます!」

 

エイデン「…!?…まさか…あそこはニューデリーからの距離が400㎞も無いぞ!…インド軍総司令部はその情報は掴んでるのか?」

 

士官1「確認したところ、掴んでいるそうです。しかし…その後の通信はダウンしたと…」

 

ダンっ!

 

エイデンは机を叩き…

 

エイデン「…くそっ!…化け物に先手を取られまくりだ!」

 

ドタドタドタッ…

 

 

エイデン「……今度はなんだ?」

 

士官3「はっ、報告します。本国統合参謀本部及び統括軍司令部より入電です。魔法協会及び統括軍…そして、U.S.M.F.第1中隊、日本軍特務魔法師団が共同作戦を取り、敵性生物の正体を探るために、ジュリーナガルの巣ヘ直接攻撃を仕掛けているようです…」

 

エイデン「…は?…あの伝説の軍隊…アメリカ魔法軍がか?」

 

士官3「その様です…。」

 

士官1「司令…通信回復した模様!敵性生物の侵攻が弱まってきています!」

 

副官「やれているんでしょうか?彼らは?」

 

エイデン「さあな…なにせ…我々太平洋軍も中央軍も演習で勝てたことが微塵もない連中だからな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~インド管区ガンガナガル防衛基地~

ニューデリーから約400㎞の地点…

 

 

 

そこには数百両の戦車、装甲車、自走砲、ミサイルシステム、兵員トラック、戦車運搬車、燃料補給者、工兵車両、そして、数十機の戦闘ヘリがいた…

この後方には航空基地もあり、パンジャーブ州軍がF-14トムキャット、インド管区軍がミラージュ2000の発進準備を整えていた…

 

 

場所は戻り…ガンガナガル防衛基地…

 

 

 

数十分前の戦闘の跡がまだ生々しく残っており、撃破された車両が散乱しており、死人の血の匂いも漂っていた…

 

 

残ってる戦車は修理と補給を急ピッチで行っており、次の接近までに終わらせられるようにしていた…

 

 

~ガンガナガル防衛基地第5戦車中隊~

 

 

カイラ「霧がこいわね…それと静か…なにか来る?」

 

第5戦車中隊のT-90戦車(ブォクシー3)の砲手である彼女は当然の不安を口にした…

 

 

ジョン「カイラさーん、そんなに尖らせていたら、またの戦闘時に本領発揮できませんよ?」

 

それに操舵手のジョンが答えた…

 

 

カイラ「あなたは逆にたるみすぎだと思うのだけど…」

 

 

 

すると…しばらく外で各車長と中隊長の会合から戻った車長のルドラが話しかけてきた…

 

 

ルドラ「…全員聞け。現在敵の攻勢が止まっており、また、司令部との通信が回復した。それによると、魔法協会や統括軍、さらにアメリカと日本の魔法部隊が情報を得るためにジュリーナガルヘ攻撃を仕掛けたらしい。しばらくは少し気を休めた方が良さそうだ。」

 

ジョン「…魔法ですかー、架空の存在だったと思ってたんですがね…魔法っていいですね!…」

 

ギーブ「ジョン!!貴様…分かってるよな…」

 

ジョンの軽すぎる発言に隣にいるM1A1戦車(ブォクシー2)の車長であるギーブが怒鳴った

 

 

ジョン「あ…」

 

ルドラ「…はぁ…全くお前は…」

 

 

 

カイラ「…魔法ね…あんなもの…どうぜ身を滅ぼすは…」

 

ジョン「…カイラさん…どうして…魔法を毛嫌いしてるのか…聞いてなかったような気がするのですが…」

 

カイラ「…単純よ…魔法が広まった時…私の生まれ故郷であるムンバイで魔法を認めない団体の暴動が発生、インド正規軍との戦闘に発展して…私の母親は…巻き込まれて…死んだわ…。だから、嫌なの。母親が死ぬ原因になったから…」

 

ジョン「……」

 

 

 

ルドラ「……はぁ…」

 

 

そのT-90の車内は…陰険になった時…

 

 

 

バンッ!

 

誰かが2人の方をぶっ叩いた!

 

 

 

カビーア「ん?何お前ら辛気臭くしてるんだ?どーせ、魔法のことだろ?俺らには今は関係ねぇんだ…敵が来ないうちに心身ともに休んどけ!ガハハハハッ!」

 

 

その声の主はギーブが乗るM1A1戦車(ブォクシー2)の砲手のカビーアであった…

第三次印パ戦争からの従軍兵であり、陽気な戦車砲手であった…

 

 

 

 

 

 

 

…ガンガナガル防衛基地の兵員達が少しばかりの時間をストレス発散や談話で楽しんで4時間…

 

 

 

魔法協会や統括軍による攻撃は終了…敵性生物群はガンガナガル防衛基地へと高速で向かった…

 

 

ガンガナガル防衛基地

 

 

HQ『敵性生物群接近…数…5万…』

 

 

 

~ブォクシー3:T-90~

 

 

ルドラ「…は…?…防げるわけがないな…まあいい…。どーせ遅滞だろ…お前らやれるな?」

 

ジョン「もちろんです!エンジンピンピンしてます!」

 

カイラ「砲も調子がいいようです。人以外の化け物を撃てることに…」

 

 

 

このT-90戦車の乗員はこの3人しかいない…

 

ならべく多くの兵士を打撃力のある戦車に載せようとする思惑と、被害が出たら終わりという認識が重なり、全車両が最低人数で運用していた…

 

 

 

そして、ガンガナガル防衛基地から多数の戦車、歩兵戦闘車が出撃…装甲車、自走砲等は基地に残り、支援体制を整えた…

戦闘ヘリも出撃し超低空で滞空した…

 

 

 

 

そして、後方より、F-14トムキャット、ミラージュ2000が飛んで行き、化け物の戦列にフェニックスミサイル、誘導爆弾、対地ミサイルがありったけ放たれ、先頭の装甲が分厚いやつ以外の先遣部隊は死滅した…

 

 

しかし、その攻撃が光線攻撃を放つやつに注目されることとなり、上空のF-14、ミラージュ2000の編隊は回避する、脱出する暇もなく、光線攻撃によって撃墜された…

 

 

 

~第5戦車中隊:ブォクシー3~

 

 

ルドラ「…航空戦力はボロボロか…」

 

ジョン「くっそ…!航空隊が!」

 

ルドラ「…ジョン…予定地点近くに到着だ。防備をしく、準備するぞ。カイラは砲手として待て。神経を研ぎ澄ますんだ。」

 

ジョン「はっ!」

 

カイラ「了解。」

 

 

…悠長に準備する余裕はなく…第5戦車中隊を含めた約200の戦車、歩兵戦闘車は陣を整えた…

 

 

 

 

 

 

戦車部隊が配置場所に到着して30分、準備を整えてから10分…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地面を揺るがすような振動を聞えてきた…

 

 

 

戦車兵達はこう思った…

 

 

…"奴らが来たのだ"…と…

 

 

 

 

後に…ガンガナガル攻防戦と言われる戦いが始まった…

 

 

 

 

 

 

後に【BETA】…

Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race

 

日本語では【人類に敵対的な地球外起源種】と呼ばれる化け物共と戦車兵達の熱き死闘が幕を開けた…




7000時超えた()

インドの兵器としては

大侵略という事件前まではロシア7アメリカ3の割合で輸入していた…

けど、新ソ連(反魔法派)とアメリカ(親魔法派)になって

インドが親魔法派を公式にしていることで

新ソ連0、アメリカ(を含める西側諸国)10になった


から、混成部隊となってる…という設定()




次回 chapter3 砂塵が覆う血の工房



インドの戦士達が血を流しながら…国、家族、そして、友を守るために戦う…そして…


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chapter3 砂塵が覆う血の攻防

約7500文字…


話タイトルから分かる通り?血の表現があります。


それではどうぞ


ー西暦2024年4月22日ー

 

 

 

…ガンガナガル基地へBETA群の先遣隊が接近する数十分前…

 

 

 

~インド管区軍ニューデリー総司令部~

 

 

 

オペレーター1「…インド管区行政府から通信です。」

 

アサーヴ「繋げ。」

 

バレン『アサーヴ大将、魔法協会や統括軍、アメリカ合衆国大使、日本大使より通告があった。内容はそちらに送った。以上だ。』

 

オペレーター2「…来ました。敵性生物群の呼称を【BETA】、Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race…【人類に敵対的な地球外起源種】との事です。」

 

オペレーター3「統括軍、魔法協会よりデータ受信!…これは!BETAの情報です!」

 

アサーヴ「何!前線司令部へデータを送信しろ!」

 

オペレーター3「…やってみましたが、無理です!大規模な通信障害により、各前線司令部情報データベースへの送信ができません!」

 

アサーヴ「なんだと…」

 

将校「閣下。少しよろしいでしょうか?」

 

アサーヴ「構わん。」

 

将校「では、一旦映像を切り替えます。」

 

 

先程のBETA各個体の情報から入れ替わり、そこにはジュリーナガル、ジャンムーの2つの都市を上空から映し出した映像だった

 

しかし…都市という文明の面影が一切なく、ただ、巨大な構造物が各中心部に立っていた…

 

 

アサーヴ「…これは…?」

 

将校「統括軍、魔法協会が地上から撮った映像と我が軍の衛星監視部からの映像です。魔法協会の調査によると、この構造物がBETA群の巣であることが判明してます。我々も衛星で確認したところ、BETA群個体がここから次々に出現してることが確認でき、これがBETAの巣であることが断定できます。」

 

アサーヴ「は…?今でも数が多い。さらに増えるのか…」

将校「統括軍と魔法協会はそのように予測してるらしいです。我々も同じ計算結果が出ました…」

 

アサーヴ「そうか…」

 

オペレーター1「閣下…ここの地上防衛部隊から通信です。」

 

アサーヴ「ん?繋げ。」

 

第81歩兵中隊『こちら、第81歩兵中隊!魔法協会魔法士及び統括軍兵士と接触!ゲートを生成し、ニューデリー及びインド全土の民間人の脱出を行うとの事。また、ニューデリー都市外縁部に結界を設置、理論上、敵の光線攻撃に対抗可能との事です!』

 

将校「…どうします?」

 

アサーヴ「……任せる…とでも伝えておけ。ただし、政治家及び軍人は民間人を守る盾だ。最後にしてもらう。」

 

第81歩兵中隊『了解、伝えておきます。』

 

アサーヴ「…行政府に通達、職員や官僚の脱出準備を。」

 

オペレーター1「はい。」

 

アサーヴ「民間人の疎開状況は?」

 

士官「現在、周辺は軍主導で進めており、集合地点にて魔法士のゲートを使い疎開させています。前線地域は魔法士及び統括軍が我が軍とともに率先して避難させております。アメリカ軍によりますと、ムンバイ周辺域の避難は完了。空港は民間機は全て離陸し輸送完了、民間人の軍用飛行機での輸送も継続中との事です。」

 

アサーヴ「義理堅い…な。…大侵略以前は考えられなかったな…」

 

オペレーター2「…閣下!ガンガナガル基地より連絡。『航空攻撃を行い敵先遣隊を殲滅、なお、航空隊は全機撃墜され全滅。敵性生物群本隊の襲来に備える。』との事です。これ以後、連絡出来てきません!」

 

アサーヴ「…そこまで来たか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ガンガナガル防衛基地前方臨時塹壕設備~

 

 

 

 

~第3戦車大隊~

 

 

 

HQ『こちら、基地司令部HQ。先遣部隊は殲滅したが、新たに敵部隊が接近中だ。前方200体規模の斥候と思える部隊を確認した。対処されたし。』

 

大隊長「さて…どうするか…」

 

第5戦車中隊長『こちら、第5戦車中隊、斥候の対処は我々に任せていただけますか?』

 

大隊長「…分かった…斥候どもを蹴散らしてこい!」

 

中隊長『はっ!』

 

 

 

 

~第5戦車中隊~

 

 

 

 

中隊長「…という方針だ…行けるか?」

 

ルドラ『承服できないというか…三倍以上の敵にですか!?』

 

中隊長「無論…無理なのは承知してる…だが、我々だけで対処した方が他の部隊の為にもいいだろう。」

 

ルドラ『…分かりました。全力を尽くします。』

 

中隊長「頼んだぞ…副中隊長。」

 

 

 

 

 

第5戦車中隊64両は、BETA群約200体との戦闘を開始した…

 

 

 

T-90戦車の砲発射式ミサイルが連続で放たれ、赤い奴(戦車級)にあたり、爆散…

 

前方の死骸に動きを弱らせた個体をM1A1戦車群が120㎜で粉砕…!

 

数が多い為、砲塔上部の20㎜機関砲、12.7㎜重機関銃も連射し、次々に赤い奴は死滅していった…

 

しかし戦闘開始して数十分後…入れ替わり、大型種とも思われる白く腕が黒い個体(要撃級)が出てきたことで、今までのワンサイドゲームは終わる…

 

あるM1A1戦車の1両が砲弾を弾かれ…黒い腕に潰され、爆散…

 

さらにT-90戦車の1両も車両旋回が終わった頃に、追いつかれ車両後部が潰されエンジンが破壊され行動不能になり…そこを赤い奴が近づき、逃げ遅れた乗員は硬い顎で噛み砕かれ、餌となった…

 

 

T-90『赤いやつが来る…やめろ…やめろ…あ…あ"あ"あ"あ"あ"…!!…痛い痛い痛い…やめろ…ぐ…』

 

 

中隊長「……全車両…奴の頭部を狙え。弱点かもしれん。」

 

各車両『了解!』

 

 

中隊長の助言に各車両は狙い始めた…

 

黒い腕に阻まれて反撃とばかりに潰されるなど、被害が増加していたが、狙える車両は頭部に着弾させダメージを与えた…

 

生存性が高いのか…一撃では死ななかったが、数発叩き込んで死滅させた…

 

 

…30分後…第5戦車中隊は犠牲を出しながらも…BETA群斥候を撃破した…

 

中隊長「…何両やられた?」

 

ルドラ『11両です。』

 

中隊長「…分かった。全車両、第1防衛線へと後退する。」

 

 

 

第5戦車中隊は第1防衛線へと後退した……

 

 

 

 

その後…監視衛星、無人偵察機が5万を越すBETA群を補足した…

前者は大体の位置を…後者は撃墜されるも、その直前まで詳細な位置情報をガンガナガル基地部隊に送った…

 

その後、第1防衛線の戦車の車長が双眼鏡で敵をハッキリと捕らえた…

 

 

 

 

 

ブォクシー3:T-90

 

ルドラ「敵性生物接近中!!」

 

中隊長「…来たか」

 

ガンガナガル基地HQ『HQより各部隊へ、5万の敵性生物群が確認された、現在、総司令部とは通信が繋がらないため、敵の情報が一切入ってきていない。恐らく苦戦を強いられる…何人生き残れるのかわからない。だが、これだけは言えよう。我々はインドの民を守る…国民軍だと…各員乗車!!戦闘配備!』

 

 

その言葉にインド将兵全員が敬礼し、それぞれ自分たちの車両へと乗車した…

 

 

 

基地司令官『よくぞ申した!HQ!まずは編成を再編成する。』

 

との声により再編成された…

 

内容は…第3戦車大隊に全ての部隊が配属されたのだった…

戦車部隊以外の部隊数が少ないことと第3戦車大隊長以外の統合指揮を可能とする現場指揮官がいないことが原因だった…

 

 

 

 

基地司令官『戦闘による混乱が起きる前までは私が指揮をする。対地ミサイル部隊、誘導弾撃て!』

 

 

その声に基地にいたMLRS、スメルチの誘導弾が多数発射された…

 

その数の多さに…5万の大群にいた光線を放つ個体が迎撃するものの、迎撃しきれずに5万の大群に次々と着弾する…

ただし…

赤い個体は撃破していくも、先頭の亀に似た個体(突撃級)は直撃しても耐え切っていた…

 

基地司令官『…こちら、ガンガナガル基地!通信障害…後は現場…に任せる。』

 

 

~第3戦車大隊~

 

大隊長「…弾着観測射撃用意…自走砲中隊砲撃始め!」

 

M109A6パラディン等の自走砲が砲撃を開始…

誘導弾でも数を削られたBETA群がさらに数を削られた…

 

 

 

戦車兵「射程距離に入りました!」

 

大隊長「…全車、車体を後方に旋回。砲撃開始!」

 

 

 

遂に最も数が多い戦車大隊のT-90やM1A1戦車、BMP-3歩兵戦闘車の射程に入り、重厚な弾幕を形成した…

 

 

~第5戦車中隊:ブォクシー3~

 

 

 

ルドラ「次、赤い個体を狙え。」

 

カイラ「了解…」

 

 

続けざまに125㎜徹甲弾が撃ち放たれ、赤い個体を粉砕…

 

ルドラ「白い個体、次だ。ジョン、リモコン機関銃使え!」

 

ジョン「了解。」

 

 

 

白い個体(要撃級)に12.7㎜M2機関銃が放たれ、牽制…その間に僚車が砲弾を放ち、頭部を破壊して撃破…

 

 

 

中隊長『…ブォクシーリーダーより全車、我が中隊は後退を開始する。』

 

ルドラ「何故です!?」

 

中隊長『他で食い破られた…文字通りな…』

 

 

 

 

そう…一部、BMP-3や装甲車で編成された部隊の場所があり、数が少ない為、弾幕が形成できず…食い破られた…

 

 

 

 

中隊長『…第2防衛線へと後退する。後退開始…。』

 

 

 

 

 

 

 

その時…赤い個体(戦車級)が高く跳躍し、中隊長のT-90へと飛びつき…砲塔を強引に外し…限られた空間での殺戮が始まった…

 

 

 

中隊長『がぁぁぁぁぁあ"あ"!?…がぁ…ルドラ…任せた…ぐぁ…』

 

ルドラ「…中隊長!?…全車、指揮権限は副中隊長である私が継承する。命令はそのままだ!カイラ、奴を殺せ。」

 

カイラ「了解。」

 

 

すぐさま、砲塔を旋回させ、赤い個体を粉砕した…

 

 

ルドラ『こちら、第5戦車中隊、大隊長へ。中隊長が戦死、私が継ぎます。』

 

大隊長『何…分かった、健闘を。』

 

 

 

 

 

 

 

~第2防衛線~

 

 

 

後退中にも数両がやられ、残存車両数は46両となった…

 

 

ルドラ「…砲撃続けろ!」

 

ギーブ『そこのゲパルト!やつの足に鉛玉喰らわせろ!』

 

ゲパルト車長『は…?うちは対空砲ですよ?』

 

ギーブ『そんなの関係ねぇ!M2重機関銃が効くんだから、その20㎜は効くだろ!それに戦闘機よりも当てやすい…お前のその機関砲はお飾りか!!』

 

ゲパルト車長『うるせぇ!!くらいやがれ、亀野郎!』

 

 

 

その機関砲の咆哮により、亀野郎(突撃級)の足が破砕、足が止まり、後ろのBETA群の動きも遅くなり…そこを多数の155㎜榴弾が直撃し粉砕された…

 

 

 

ルドラ「…ふぅ…第1陣は何とかやれたか…だが…次が来る…」

 

基地司令官『コマンドポストより各部隊、敵後続の接近を検知。戦闘態勢を維持!』

 

ルドラ「全車、次弾装填!」

 

 

T-90は砲発射式ミサイルの弾頭を再装填、自動装填装置も次が撃てる体制に整えた…

 

M1A1は自動装填装置とM2重機関銃の装填を完了した…

 

 

 

そして…

数分後…

 

基地司令官『各部隊に告ぐ、最後の面制圧対地ミサイル攻撃だ!次は長い装填をしないといけん。全車、攻撃開始!』

 

 

基地にいるMLRS、スメルチの全車両から遠距離面制圧ミサイル攻撃が開始され、光線攻撃の個体からの迎撃で3割が撃墜されたものの、多数の攻撃が着弾した…!

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それでもBETA群本隊、5万の大群は莫大に削れず…

 

前進していた…

 

 

 

大隊長『全車、砲撃開始!弾薬を気にするな!素早く、そして確実に化け物を殺していけ!』

 

 

 

 

 

その声に応えるかのように、全ての戦車、歩兵戦闘車、装甲車、対戦車ミサイル車両、歩兵部隊の弾幕が形成された…

 

 

 

 

 

 

そして…順調にー第2防衛線の1部が食い破られ、小隊規模の車両がやられたがー防衛に成功していた…第5戦車中隊の損失数も5両に抑えきれていた…

その後、第3防衛線に全車両が後退

 

 

 

 

その時…異変の兆候が始まった…

 

 

 

 

 

突然、どこかの米軍防衛陣地から低空で飛んできたB-1B

ー左翼から煙を吹いており損傷していたー

が捨て身の攻撃として、BETA群上空に展開、MOAB(大規模爆風爆弾)を投下…B-1Bは撃墜されたが、MOABはそのまま下降していき、振動が聞こえると共に爆煙が巻き上がった…

 

 

 

 

 

 

戦車兵たちが爆風お構い無しに歓声を上げる中、ルドラは疑問に思っていた…

 

ルドラ「(…今の振動が早すぎでは…?煙の広がり方もおかしい…)」

 

 

その疑問と予測は的中することとなった…

 

 

 

 

爆煙が晴れた時…第3防衛線の兵士達には絶望に包まれた…

 

 

 

 

そこには全高60mを超える…巨大な10本脚の怪物(要塞級)がほぼ無傷でたっていた…

また、周辺のBETA群もほとんど損害が出ていなかった…

 

 

 

 

 

第3防衛線の戦車部隊は砲撃を再開、撃ち続けたが巨大な奴はその砲弾をまともに受けてるのにも関わらず、微動だにしなかった…

 

 

 

 

その巨大な個体は鈍重に、しかし、しっかりと前進し第3防衛線の先頭に到達…

 

 

 

 

そこを巨大な衝角がついた触手がなぎ払い、5両程度が巻き込まれ、横転…

さらにその触手から放たれたの溶解液がその5両含めた数十両に飛散、砲塔が動かない、履帯が溶けた等の被害が出た…

 

そして、そこにBETA群の赤い個体が接近し、一方的な殺戮が起きた…

 

 

だが、人類は破壊されるだけの存在ではなかった…

 

出撃準備が遅れていたEC665ティーガー、Mi-35M30機ほどが前線地域に展開…

大半は光線攻撃によって撃墜されたが…残った10機ほどが奮戦をみせた…

 

それぞれが巨大な個体にロケット弾、機関砲、ミサイルを食らわし、脚という弱点を見いだしたパイロットは集中的にそこを攻撃した…

 

光線攻撃を行う個体は狙おうとするも、巨大な個体を影に攻撃するヘリを狙えなかった…

 

 

 

ヘリ部隊の活躍により窮地を脱した第3混成大隊だったが…

 

反撃もここまでであった…!

 

 

 

 

 

突如、上空に巨大な光線攻撃が過ぎていき

その直後に地上部隊に対して光線攻撃が的確に撃ち放たれ、命中し次々と戦車や歩兵戦闘車や装甲車が爆散していった…

 

その標的に不運にもブォクシー2のM1A1が選ばれてしまった…

 

 

~ブォクシー2:M1A1~

 

カビーア「…まさか、光…」

 

ギーブ「…くっそ…くっそぉ!」

 

 

 

そして…他の戦車同様、光線に貫かれて爆散した…

 

 

 

 

 

~ブォクシー3:T-90~

 

 

ジョン「ギーブさん!」

 

カイラ「カビーアさん…嘘…」

 

ルドラ「…何故だ!光線は航空機しか狙わないはずでは…」

 

 

 

唯一の希望だった残ったヘリも突然真下に現れた光線個体の光線攻撃の直撃で全滅した

 

 

 

~第3戦車大隊~

 

 

大隊長『司令部!ミサイル及び観測射撃を!!繰り返す、ミサイル及び観測射撃を要請する!聞こえてんのか!!司令部!観測射撃だ!』

 

大隊長「くっそ!!なんでだ!!」

 

砲手「…まさか…さっきの光線…」

 

その時…大隊長に悪寒が走った…

 

 

大隊長「…ま、さ…か…」

 

 

 

 

 

 

そのまさかであった…

 

 

 

 

 

先程前線地域上空を過ぎ去っていた光線はガンガナガル基地の自走砲、ミサイル中隊が展開している場所を直撃し、7割が破壊された…

残った3割も熱波により砲身が溶ける、台車が崩れる、そして…砲弾の自然暴発が起き…使用不能と化していた…

 

 

 

 

~ガンガナガル基地司令部~

 

 

 

自走、ミサイル中隊が展開している場所から500mしか離れていない司令部でも被害が発生していた…

 

基地司令官「何が…起こった…?」

 

副官「司令!大丈夫ですか!?」

 

基地司令官「まあ、少し傷を負った程度だ、で…」

 

その時…外の光景を見て唖然とした…

 

基地司令官「ほぼ全滅か…通信は?」

 

副官「先程の攻撃で通信機が全滅、現場部隊専用の通信機を優先して応急修理中です。」

 

基地司令官「……脱出準備を行え。恐らく戦線は崩壊する…その前にここを離れ、ニューデリーへと向かわねばならん!」

 

士官「「「はっ!」」」

 

 

 

 

 

 

~ガンガナガル基地周辺戦闘地域~

 

 

 

 

~第3混成大隊~

 

 

 

大隊長『全車…撤退!全速力!』

 

砲手「司令!横!」

 

大隊長「なに…」

 

 

大隊長の乗るM1A1は横を前面を硬い甲羅のようなものに覆われた個体(突撃級)に追突され、横転、そこを巨大な個体の脚が貫き、爆散した…

 

 

 

 

副大隊長『大隊長戦死!私が引き継ぐ!全車撤退!!』

 

 

大隊長の戦死により瓦解しかけていた大隊だったが、副大隊長の指揮により、なんとか統制を回復させ、全速撤退を開始した…

 

しかし、それすらもBETA群は認めなかった…

 

 

 

 

 

副大隊長のT-90の後ろから光線攻撃が放たれ、叫び声も上がらずにT-90が爆散した…

 

 

そこで大隊は混乱が生じたが、死への恐怖から全車両が全速撤退を行った…

 

 

 

 

 

その中にはブォクシー3…ルドラの乗るT-90もいた…しかし…第5戦車中隊は彼の戦車以外生き残っていなかった…

 

 

 

 

~ブォクシー3:T-90~

 

 

ルドラ「くっそぉ!…何故だ…」

 

ジョン「…今は生き残る。全速撤退だ!」

 

カイラ「その通り…車長、外の警戒を!」

 

ルドラ「…そうだな、その通りだ。」

 

 

 

そして、砲塔上部のハッチから警戒を行おうとした矢先、後方の地面から、巨大な個体が現れ、その衝撃で速度が下がった瞬間、巨大な個体の脚が車体前部を貫通…ジョンが体を貫かれ、悲鳴をあげる暇もなく、絶命した…

そして…T-90の足が止まった…

 

だが、次の瞬間、巨大な個体が穴に滑り落ちて行った…若干希望を抱いた3人だったが…それはことごとく打ち砕かれた…

 

 

その巨大な個体が放った触手が脚が離れた瞬間、ブォクシー3を数十メートル吹っ飛ばしたのだった…

 

 

その衝撃でルドラは車外に放り出され、カイラは中で何度も頭を打って気絶した…

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

 

 

 

 

カイラは目を覚ました…

 

 

カイラからは分からなかったが、T-90戦車は後部が炎上していた…その熱で目を覚ましたのだった…

 

 

 

カイラ「…あ、れ…私は…」

 

かすれ声で話していたカイラはあるものに気づく…

 

 

カイラ「…あぁ……ジョン…ルドラ…」

 

 

 

 

カイラは、ルドラが死んでることは見てないが、ルドラの声の代わりに、食べるような音が聞こえていたことで察していた

 

 

ルドラはBETAに既に心臓と頭を食われ…絶命していたのだった…

 

 

そして、ジョンとルドラの2人の死を悲しんでるカイラにも死が近づいてきた…

 

 

 

 

赤い個体が強引に砲塔を外し…カイラを直視したとたん…

 

顎を使って心臓付近から捕食し始めた…

 

 

カイラ「…!…!…!………!!!!あ…ゲボ……あ"あ"あ"あ"!!」

 

 

 

 

声にならない絶叫をよそに自分の体を食べている化け物を見て…痛みと失血で薄れゆく意識の中、死を実感し…

 

 

 

 

カイラ「(…エド…アールシュ…ごめんなさい…生き延びて…)」

 

 

 

 

ニューデリーにいる夫と子供に向かって祈った…

 

そして…最後の力を振り絞って、拳銃と時限式グレネードを取り出し…

 

 

 

グレネードを10秒後の起爆でセットし…化け物の口に放り込んだ…

 

 

口を痛みで開けるのも辛い中、口を開け拳銃を奥に突きつけ…トリガーを引いた…

 

 

 

1発の銃声とともに絶命し、その5秒後…未だにカイラの体を捕食している赤い化け物の体内でグレネードが爆発…内部器官にダメージを与えたのか…ゆっくりと絶命した…

 

 

 

 

 

 

その後も第3混成大隊の撤退は続いていたが、やられにやられ続け、ガンガナガル基地を超えて撤退できたのはわずか3割…自走、ミサイル中隊含めれば4割だった…

 

ガンガナガル基地司令官は最後まで基地施設に残り、基地にBETA群の大群が乗ったところで基地ごと自爆した…

 

 

 

 

ガンガナガル攻防戦の敗北により、北部攻防戦でも連敗へと傾き…

さらなるインド亜大陸への浸透を許すことになった…

そして、ニューデリー総司令部は禁忌の力を使うことを決定した…




巨大な個体=要塞級

赤い個体=戦車級

白い個体=要撃級

亀野郎=突撃級


地中から現れたりしてます。現時点で地中侵攻するなんて今回の人類知りません。

地上攻撃してる光線攻撃は重光線級です。
基地攻撃してるの超重光線級です。



次回chapter4 絶望の光と暗躍する影


状況は絶望的であった…
ここに、インドは禁忌の力を使う…それは絶対に使ってはいけない力…だった…

そして、暗躍する影も表立って動き始める…


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chapter4 消えていく空の騎士達、そして輝く絶望の光

…暗躍する影の方が入り切らなかったので絶望の光だけです。
暗躍する影は次回?やります。


 

 

 

~インド管区軍ニューデリー総司令部~

 

 

オペレーター1「…ガンガナガル基地通信途絶しました…」

 

アサーヴ「60m越えの個体だと…そして…全滅…」

 

オペレーター2「ガンガナル基地周辺に展開させといた偵察兵もBETA接近の報告を最後に通信途絶しました…」

 

アサーヴ「向かってきてるな…確実にここへ。」

 

 

そこへ…結界を生成する上で必要な技術者…

 

つまり、碧の世界『地球』を含む五大世界の1つ、白の世界 ー 碧の世界とは比べ物にはならないかなり高度な技術を持つ世界 ー の技術主任がやってきた…

 

 

技術主任「…かなり劣勢のようですが…ここのニューデリーの防備は万全です。」

 

アサーヴ「…それならば、何故ほかの都市にも設置しない?」

 

技術主任「それは避難が済んだからです。」

 

アサーヴ「そうかい…」

 

オペレーター3「監視衛星データリンク!ジャンムーの巣より強力なエネルギー反応!光線です!」

 

アサーヴ「目標は!?」

 

オペレーター「ここ…」

 

言葉を言い切る前に光線がニューデリー防護結界に直撃した!

 

結界のエネルギーと光線のエネルギーがぶつかり合い、激しいスパークを生み出した…

 

そのうち…光線の方が負け…徐々に消滅した…

 

 

アサーヴ「今撃った個体は分かるか?」

オペレーター4「…照合完了…超重光線級一体です。」

 

アサーヴ「あの巨体か…」

 

オペレーター3「…これは…監視衛星の映像映します!」

 

 

 

 

スクリーンに映されたのはジャンムーの巣であった…そして、そこには新たに5体が現れ、超重光線級が6体もいた…

 

 

 

 

アサーヴ「6体だと…!?」

 

オペレーター3「高エネルギー反応補足!単純計算で6倍のエネルギーです!目標はここです!」

 

技術主任「待て!…それほどのエネルギーを食らったら…」

 

アサーヴ「防備は万全ではなかったのか!」

 

技術主任「6体分など想定しておらん!同じ場所にあの巨体を6体も生産できるなど…奴らは化け物か…」

 

 

 

次の瞬間…

 

防備結界に6体分のエネルギーが1点で直撃…特大なエネルギーに結界は耐えきれず貫通…そして、拡散した…

 

 

 

ズガァァン!!

 

 

ニューデリー全体に振動が響きわたり…

 

総司令部でも揺れを観測した…

 

 

 

アサーヴ「被害報告!」

 

オペレーター1「ニューデリー北西第7地区にてビル群数十棟が消失もしくは倒壊しました!さらにほかの家屋にも被害を確認!詳細は不明!」

 

技術主任「くそっ!白の世界東京支部に連絡する。…強化が必要と。」

 

アサーヴ「…化け物に油断は禁物だな…だとしても…あの物量に光線…2つの脅威か…仕方ない。まずは物量を潰す…」

 

将校「どうやって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…戦略核ミサイル師団司令を呼びだせ。ニューデリーに接近させてはならない。核攻撃をもって迎撃する。」

 

 

 

 

 

 

 

 

将校「…それはっ…それも自国の領土に!」

 

アサーヴ「…もはや…このままでは奴らに占領される、そして多くの建造物、インド人が築き上げてきた遺産もな…その前に…少しでもやらなければ…。奴らの遅滞も完全ではない。」

 

将校「……分かりました…しかし、その前に神へ贖罪の祈りを…」

 

アサーヴ「…分かった、これより核戦争非常司令部に移る。戦略核ミサイル師団司令もそこで。」

 

 

……………

 

 

 

アサーヴ「最終ブリーフィングに入る。戦略ミサイル師団司令ヨハントシェフ中将。」

 

 

アドリーグ・ヨハントシェフ中将がこれに答えた…

 

 

アドリーグ「今回の攻撃は前代未聞とまずは前置きしていとこう。短距離、中距離、長距離弾道ミサイルの全種類を使う。また、航空機群による核搭載型巡航ミサイルも使用する。」

 

アサーヴ「…大規模だ…だが、やるしかない…。」

 

アドリーグ「だが…核ミサイル自体、速度が遅く、あの光線によって撃墜される確率が非常に高い。その為、存分に通常戦力も投入する。巡航ミサイル、長距離クラスターミサイルによる攻撃はもちろんのこと…要塞化されたニューデリーから核非搭載の弾道ミサイルを事前に発射させる…大量にだ。その後、大量の核ミサイルが奴らを襲うことになろう。」

 

アサーヴ「…了解した。ヨハントシェフ中将、あとは貴様に任す。」

 

アドリーグ「…承知した。」

 

アサーヴ「攻撃目標はパンジャーブ州からハリヤナ州にかけて浸透するBETA群だ。これで、最終ブリーフィングを終わる。各自、作戦準備に移れ!」

 

 

 

 

 

 

~インド管区空軍司令部~

 

 

 

空軍最高司令官「今回の作戦には我が空軍も参加する。大規模作戦の為、この司令部から現場司令として2名を向かわせる。名誉なことだが…はっきり言って生還率が絶望的に低いぞ。なんせ、奴らは絶対の命中率を誇る光線攻撃をするのだ。まず、最初に巡航ミサイルや対艦ミサイルを満載した戦闘攻撃機、攻撃機、音速爆撃機による部隊で奴らの光線攻撃を誘発させる。恐らく確実に撃墜される部隊だ。次が本命だ。核搭載型巡航ミサイルを満載した爆撃機、攻撃機群により奴らを叩く。ただし、いくら、光線攻撃を他のミサイルに誘導しても、撃墜率は高い。以上だ。希望者はいるか?」

 

 

空軍将校達は数分間誰も手を挙げなかった…

 

司令官も諦めかけた時…

 

2人の手がゆっくりと上がった…

 

 

空軍将校「「我々に行かせてください!」」

 

空軍司令官「お前ら…ここまで言ってしまったが…正気か…?死に行くようなものだぞ。」

 

 

2人は司令官が少将になった時の副官であり、ずっと副官を務めてきた…

今ではもう40歳を超えていた…

 

空軍将校1「正気ですよ。我々が狂ってるとお思いですか?」

 

空軍司令官「…分かった。どちらの部隊に着くかは決まってるのか?」

 

空軍将校2「私が先行部隊に着きます。」

 

空軍司令官「…貴様らをなくすのは惜しいが…指揮機に改造したB-1Bがある、それに乗るか?」

 

空軍将校2「まだ、死ぬと決まった訳ではありません。其のデカブツは私には合いませんよ。戦闘攻撃機で。」

 

空軍司令官「そうか…。複座型のSu-30がある…これでいいか?」

 

空軍将校2「構いません。」

 

空軍司令官「なら…直ぐに出撃準備を始めろ!その先行部隊の所属機は各地からかき集めている。上空で給油した後、直ぐに目標上空へと行く予定だ。全機集合した後、貴様が指揮を取り、向かわせろ!…」

 

空軍将校2「はっ!」

 

空軍司令官「…そうだ。降りたいものがいれば…下ろさせてやれ。」

 

空軍将校2「は…はっ!」

 

空軍司令官「そして…貴様も…出撃準備をしとけ。」

 

空軍将校1「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃…

 

~ナーグプル空軍基地~

 

 

???「母さんが死んだのか…」

 

 

その兵士は…パイロットで…ある手紙を見ていた…

 

 

???「どーせ…俺の事なんて忘れてたんだろうな…俺にとっての母は…ばあちゃんだ。この前に亡くなった時に…行けなかったなぁ…」

 

???「まあ、俺ももうすぐそっちへ行く…さっき、出撃待機命令が出された…光線で絶対に撃墜されるのに、飛行機で出ろとかないぜ…」

 

 

 

???「おい!ロハン!」

 

ロハン「どうした?」

 

???「…来てくれ。」

 

ロハン「?…分かった。」

 

 

 

 

B-52M格納庫に向かう途中…

 

 

 

兵士1「おい!聞けよ、あの化け物を核攻撃で殲滅するらしいぜ!」

 

兵士2「…やったな!やっと、安心できるぜ!」

 

兵士3「そしたら、飛行機で行ったやつとかは英雄だな…」

 

 

 

その話を聞いて…

 

ロハン「核攻撃…?ラフール…本当か?」

 

ラフール「そうらしい…」

 

 

 

そして…格納庫に着き…司令部へと入った時…

ロハンはある言葉を聞いて絶句した…

 

 

「核攻撃目標はパンジャーブ州、ハリヤナ州に浸透するBETA群、パンジャーブ州全土に核攻撃を行う。」

 

 

 

ロハン「…何…で…」

 

 

ラフールが気づいた時にはロハンはナーグプル空軍基地司令官に飛びかかっており

 

 

 

 

ロハン「…なぜ!何故だ!なんで、パンジャーブ州に核攻撃を行うんだよ!あそこには遺跡がいっぱいあるだろ!パンジャーブ州からの軍人はめっちゃいる!敵に回すつもりかよ!なんで!俺のばあちゃんの墓だって…生存者は全員救出したとしても…その故郷を破壊しないでくれよ!」

 

ロハンは…護衛の兵士にずり降ろされ、拘束された…

 

 

ナーグプル空軍基地司令官

「…私に核攻撃を中止する権力はない…俺が止めたって…どうせ止められない。それに…遺跡があるのは私も知ってる…だが、BETAの奴らはそれを破壊していく…墓もだ。そして、人を食い殺す。国を残すにはこれしかないのだ…済まない…」

 

ロハン「…ふざけるな…ふざけるなよぉ!…」

 

 

ナーグプル空軍基地司令官

「彼は拘束するな…士官室に連れて行ってやれ。彼も出撃メンバーなのだ。」

 

兵士「はっ。」

 

 

 

 

…パンジャーブ州上空大気圏内限界空域…

 

 

そこには…アメリカ太平洋軍のFS-1宙空両用戦略偵察攻撃機2機がいた…

 

パイロット「…こちら、ジャガー1。インド管区軍総司令部へ。熱源反応観測により敵個体数は20万を超える。繰り返す、20万を超える。」

 

 

 

~ニューデリー:インド管区軍総司令部~

 

 

アドリーグ「20万以上の個体数か…」

 

アサーヴ「恐らく…ガンガナガル基地攻防戦での損失をカバーするために増援を集合させたのだろうな。」

 

将校「数が判明しました…ただ、高高度観測の為、種類は…」

 

アサーヴ「…確かに…だが…攻撃するしかあるまい。」

 

アドリーグ「…了解した。各ミサイル基地に連絡!核非搭載型弾道弾の攻撃を開始しろ!」

 

アサーヴ「ニューデリーの陸軍基地へ。対艦ミサイル連隊及び自走砲連隊の展開を急げ。どんな武器も使っても構わん!」

 

 

 

~ニューデリー近郊~

 

~ニューデリー第1空軍基地~

 

 

 

…ニューデリーは大侵略以来…北の反魔法派の大亜共和国の侵攻に備え、ニューデリーを軍事要塞化していた…

…さらにBETAの脅威に晒されてる今、白の世界技術者や魔法士の協力もあり、周囲に結界を形成された完全防御都市に変貌していた…

 

 

そして、この空軍基地から核非搭載の短距離弾道ミサイル「プリットヴィー」が数発放たれた…

 

さらに他のニューデリー周辺の空軍基地より核非搭載の短距離、中距離弾道ミサイルが放たれ、パンジャーブ州に浸透しつつあるBETA群に向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

…ハリヤナ州西部上空…

 

 

 

 

そこにはインド管区空軍のSu-30MKI、MIG-29等の戦闘攻撃機、B-1B等の爆撃機が編隊を組んでいた…

さらに、アメリカ中央軍のオートパイロット型F-35C、MQ-1Eアストレル無人攻撃機も参加していた…

 

 

 

空軍将校2「壮観だな…まあ、これが向こうで全てやられるというのはなにか虚しいな…。」

 

F-35C『ダンドウダンツウカ』

 

空軍将校2「行ったな…。」

 

パイロット「そろそろ、パンジャーブ州上空です。巡航ミサイルの射程圏内へ入ります。」

 

空軍将校2「よし、全機、射程圏内に入った機体から巡航ミサイル、対艦ミサイルを前段射出しろ。化け物どもにありったけの火薬をばらまいてやれ!」

 

B-1Bパイロット『ウラァァァァァァァァ!!』

 

空軍将校2「あいつ…アメリカ機なのにソ連のやつ言ってるとは…くく…」

 

 

 

数十秒後…全機から巡航ミサイルが放たれた…

 

同時にBETA群は光線による迎撃を開始、初弾は5割を撃墜されつつも、BETA群に着弾した…

しかし…負けじと光線属種は航空機に対して光線攻撃を開始…

 

連続で大型巡航ミサイルを放っている大型爆撃機B-1Bから狙われ始め…最初の照射で数十機が被弾、数機が消滅した…

 

 

その頃…弾道ミサイルが到達した…

 

速度が遅いため、8割が撃墜されつつも、残りが着弾…

 

 

その隙に乗じて、巡航ミサイルの残弾が無くなったB-1Bから、BETA群上空へと移動した機体は投下型爆弾をもばら撒き始めた…

 

 

しかし、光線属種は重光線級も加わり、熾烈な迎撃を加えてきた…そして、投下型爆弾も無くなり、容赦なく戦闘機群に光線をあびせかけた…

確実に命中する光線に対し対応策すらない戦闘機達は次々に落ちて行き…そして…

 

 

 

空軍将校2「ぐぅ!…やられたか…」

 

指揮機であるSu-30MKIは片翼をちぎられ、そして、燃え尽きていった…

 

 

空軍将校2「……ダメか…済まない…帰れそうになかったわ…あの世で会おう。ゲビル…」

 

 

 

 

 

 

 

航空部隊が全滅しかけていた頃…

 

 

 

 

ニューデリー陸軍基地の対艦ミサイル連隊が長距離対艦ミサイルを、基地内の発射サイロから巡航ミサイルを連続で発射…!

 

それに対し光線属種が迎撃する…

 

 

 

応酬の連鎖が続いていた頃…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本命の航空部隊が離陸を開始した…

 

Tu-22Mジェット爆撃機、B-1B音速爆撃機、B-52M戦略爆撃機、C-130L爆撃機(輸送機改造型)のインド管区空軍爆撃機隊50機以上が編隊を組み…途中でアメリカ太平洋軍のPB-3超音速ステルス戦略爆撃機数機加わった…

 

 

 

 

ゲビル「…俺の名を呼んでいたな…奴は…ラーブは…全機、コースの再確認!散っていたもの達の仇を討つ!」

 

闘志に燃えていた彼らだったが…B-52Mに乗るある1人は悲しみにくれていた…

 

ロハン「…くっそ…なんで…俺らが…ばあちゃんの生まれ育ったところに核を…それに…なんで俺が爆撃手なんだよ…」

 

 

 

 

 

その言葉も叶わず…爆撃隊は予定通りの進路を進んでいた…

 

 

 

 

 

パイロット「…そろそろ射程圏内です。」

 

ゲビル「全機、核搭載型巡航ミサイル発射体勢!ハッチ開け!」

 

 

散発的に光線の迎撃が来ている中、各爆撃機はハッチを開き、核搭載型巡航ミサイルを露わにした…

 

 

 

あるB-52Mでは…

 

 

 

 

 

ロハン「ばあちゃん…許してくれ…ばあちゃん…」

 

パイロット「おい、そろそろ発射体勢だ。急いでくれ。」

 

ロハン「…くっそ…」

 

ロハンは手が震える中、ハッチを開き、発射体勢にした…

 

 

時同じくして…ニューデリー近郊のクナタ空軍基地から核搭載型弾道ミサイルが連続して放たれた…

 

 

そして…弾道ミサイルが爆撃機隊の上空を通過した頃で…

 

 

 

 

 

ゲビル『全機、化け物を鉄槌を下せ!!巡航ミサイル、発射!』

 

ロハン「…ばあちゃん…ごめん…」

 

 

号令とともに全機から連続で核搭載型巡航ミサイルが放たれた…

その間に光線属種の激しい迎撃で発射途中の鈍重な爆撃機が次々と落ちていった…

 

 

その激しい迎撃は対艦ミサイル連隊からの攻撃にも迎撃が割かれており、核搭載型巡航ミサイルは3割が撃墜されたのみに留まり、次々に着弾、炸裂地点に核の炎を燃え上がらせた

 

 

また、弾道ミサイルも迎撃で5割余りが撃墜されるも次々に着弾した…

 

 

しかし…光線属種の迎撃はさらに激しさを増し…爆撃機隊は数秒ごとに数を減らし…

 

ロハンの乗る爆撃機B-52が最後に残され…

ロハン「ばあちゃん…本当にごめん…」

 

とロハンが償いの言葉を言い切った直後に光線が中央を裂いた…!

 

それが…最後の光線迎撃だった…

 

 

 

 

 

落ちていった爆撃機は落ちてるのにも関わらず、核搭載型巡航ミサイルを撃ち尽くすまで撃ち続け…

弾道ミサイルもさらに着弾し…最後の弾道ミサイルが着弾する頃には迎撃が無くなっていた…

 

 

 

 

 

 

…パンジャーブ州上空大気圏内限界空域…

 

 

 

…FS-1 米太平洋軍宙空両用戦略偵察攻撃機 2番機…

 

 

パイロット『こちら、ジャガー2…BETA群の熱源反応は消滅した…繰り返す、BETA群の熱源反応は消滅した…BETAは炎の中に消え去った。』

 

 

~インド管区軍ニューデリー総司令部~

 

 

 

オペレーター1「…ジャガー2より連絡!BETA熱源反応消滅…BETA群…全滅しました!」

 

アサーヴ「…やったか…」

 

アドリーグ「まだ、分からんぞ?あの熱量じゃ観測は難しい。」

 

アサーヴ「そうだ…だが…大抵はやった…だろ?」

 

アドリーグ「…まあな。犠牲が大きすぎるのもどうかだが…これで一応危機は回避できる…避難も行える。」

 

アサーヴ「そうだ。各地の部隊に連絡しろ。避難命令を発令。人が全く居ない都市は放棄し、未だに残っている都市の防衛を最優先にしろ。」

 

 

 

 

 

 

 

インド管区政府は軍と状況を確認し、大規模避難命令を発令…また、核攻撃の行われたパンジャーブ州、ハリヤナ州の立入禁止指示を出した。

一旦はBETA群の脅威を追い返したインドであったが…BETAはこれだけでやられる存在ではなかった…

パンジャーブ州とハリヤナ州では未だに核の光が輝いていた…消えた街とともに…

 

 

 




描写が不安すぎる…


次回chapter5 蠢く暗躍する影


影が小さく、そして、大規模に動いていた…
そして、遂に…表へ


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chapter5 悪夢の進撃

蠢く暗躍する影の方は次回に回します。すいません。




オリジナル登場人物解説出さないとなぁと思ってきました。


 

4月25日…

 

 

 

~アメリカ軍インド方面ムンバイ臨時作戦司令部~

 

 

士官「司令。パンジャーブ、ハリヤナへの核攻撃後、BETA梯団20万以上の個体の殲滅を確認しました。」

 

エイデン「これで、一安心だな…おっと…」

 

士官「…また、地震ですか…しかし、最近地震が続いてますね…」

 

エイデン「あぁ、俺は妙に嫌な予感がする。」

 

士官「嫌な予感ですか…」

 

エイデン「…少し屋上へ出るぞ。風を浴びたい。」

 

士官「では、私も。」

 

 

 

 

 

 

臨時司令部としてインド管区海軍西部コマンドから使用を認可されたムンバイ司令部の屋上…

 

 

 

 

エイデン「…『Hey…』」

 

マティアス『トーマス少将か…』

 

エイデン『…数日ぶりですね、レアード国防長官。』

 

マティアス『お前が私的の電話を入れてくることも慣れたよ…まったく…で、何の用だ?』

 

エイデン『パキスタン方面の戦況を確認したい。』

 

マティアス『…分かった、直ぐに情報を送るが、少し話そう。』

 

『首都イスラマバードは放棄され、既にBETAの占領下にある。そして、パキスタン管区政府はムルターンに遷都していたが、BETAの猛攻により、さらに遷都し、現在クエッタに臨時首都を置いている。軍司令部はロラライに移動した。パキスタンは既に北部領土を損失して、インダス川東岸の領土は放棄している。』

 

エイデン『なぜ、最大都市であるカラチに遷都を行わないのでしょうか?』

 

マティアス『……憶測に過ぎないが…国民へ大統領は逃げないということを示したいのだろう。』

 

エイデン『…なるほど…』

 

マティアス『他には…?』

 

エイデン『…最近ムンバイ周辺、いえ、北側ですね。地震が起きている。探ってくれませんか?』

 

マティアス『それは地震学者に…』

 

エイデン『…嫌な予感がする。ただの地震ではないような気がする。』

 

マティアス『…分かった…探ってみよう…』

 

 

 

 

 

 

エイデン「…あれは…」

 

マティアス『どうした?』

 

エイデン「少し待ってください。」

 

 

エイデンは双眼鏡を取り出し、除くと…

 

 

1条の光が伸びてるのがはっきり見えた…

 

 

 

エイデン「あれは…」

 

その時…エイデンは悪寒がした…

 

 

 

エイデン『…国防長官。』

 

マティアス『トーマスか…少し緊急事態だ。』

 

エイデン『何が…』

 

マティアス『…在パキスタンの大使館との連絡がとだえた。既に定時連絡が来ているはずなのに途絶えた…第五艦隊から通信させているがそちらも繋がらないらしい…』

 

エイデン『…監視衛星をクエッタ上空へ回したらどうでしょう…』

 

マティアス『……そうだな。』

 

 

 

 

 

 

その頃…アメリカ国防総省…

 

 

 

 

 

 

マティアス「…監視衛星をクエッタ上空へ回せ!」

 

職員「そんな事するよりも大使館への連絡を!」

 

マティアス「俺が今更パキスタンを監視するか?!クエッタの状況を確認するんだ!連絡などさっきからしてるが途絶えっぱなしだ!」

 

職員「…分かりました…」

 

 

 

 

その後…監視衛星の映像がモニターに移され、マティアス以下職員達は言葉を失った…

 

 

 

その映像は上空からパキスタン管区臨時首都クエッタを移していたはずであった…

 

しかしそこには…中心部は消滅し…外縁部に辛うじて建物の残骸が残ってる更地であった…

 

 

 

マティアス「……これは…」

 

 

 

黙って数十秒後…

 

 

マティアス「ムンバイの部隊とインド軍に情報を送信しろ。第五艦隊には私から伝える。」

 

 

マティアス『…リアム。』

 

リアム『国防長官…』

 

マティアス『クエッタが…』

 

リアム『消滅したと…?』

 

マティアス『…そ、そうだ。なぜ、知ってる。』

 

リアム『薄々勘づいていたのですよ。ジャンムーみたいにね…』

 

マティアス『そうか…リアム、貴様はロラライのパキスタン軍司令部と連絡を取れ。情報を集め、トーマス少将の所に送れ。』

 

リアム『はっ!』

 

 

 

 

 

 

そして…場所は戻り、臨時司令部屋上…

 

 

 

エイデン「…」

 

士官「司令!緊急事態です!」

 

エイデン「すぐに戻る!」

 

士官「では!…」

 

 

 

エイデン「…化け物め…」

 

 

 

 

~アメリカ軍インド方面ムンバイ臨時作戦司令部~

 

 

 

 

 

士官1「パキスタン管区臨時首都クエッタが消滅しました。現在、パキスタン国内は混乱状態、一応、ロラライの軍司令部にいたイブラム・ハーン中将が臨時大統領に就任。混乱を収めようとしてますが、同時にBETA梯団が侵攻を開始、民間人の避難が上手くいってません。」

 

エイデン「……インダス川防衛線が崩壊したか…」

 

士官1「はい…ハーン中将は最高司令官ではありません。また、光線はただの光線ではなく…荷電粒子砲という事です…その影響で電磁波により通信システムがダウンし各部隊が各個に孤立してる状況です。」

 

エイデン「立て直せるのか?」

 

士官1「分かりません。数日中は無理だと思いますが…」

 

エイデン「…第五艦隊に一任するしかないか…」

 

ドタドタドタ…!

 

 

 

 

士官2「司令!BETAがこちらに…!」

 

かなり、焦ってより…言葉を選べなかった…

 

 

エイデン「詳細を話せ!」

 

士官2「ふぅ…はっ!」

 

 

「…前線部隊の前方にBETAが出現しました!」

 

 

 

エイデン「突然か!?数は?」

 

士官2「いえ…地中から現れたのです…数は確認できるだけでも10万以上。」

 

エイデン「地中…地中侵攻だと…」

 

士官1「司令、最近続いていた地震はまさか…奴らが掘削していた振動では…?」

 

 

ダンッ!…

 

エイデンは机を激しく叩き…

 

 

エイデン「くそっ!!今までの嫌な予感はこれか!」

 

 

士官1「しかし…ジャンムーから前線部隊のアフマダーバードまで1000㎞以上あります。いくら、ジャンムーから生産したとはいえ…直ぐには…」

 

士官2「司令、本国より通信です。」

 

エイデン「分かった。」

 

 

エイデン『トーマス少将です。』

 

マティアス『トーマス少将…情報を送る。見ながら聞いてくれ。』

 

 

エイデン『…これは…』

 

マティアス『あぁ…核攻撃が行われる数時間前だ。約50万のBETA梯団がいる。分かるな?』

 

エイデン『…ニューデリーに向かった20万とこちら側へ向かった10万以上の個体……』

 

マティアス『そうだ。奴らは…再生産されたのではない。分かれたのだ。途中でニューデリー方面とムンバイ方面で!』

 

エイデン『…他の20万は一体どこに…』

 

 

 

 

 

 

 

 

士官3『司令!緊急事態です!前線部隊が前方のBETA群を全力迎撃していた矢先、後方、アフマダーバード市街地に20万近いBETA群が出現!地中侵攻と思われます!現在、後方支援及びミサイル連隊が急襲を受けており、壊滅寸前!現地部隊司令部との通信途絶!前線部隊が挟撃の危機にあります!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その報告に臨時司令部の人員のみならず…通信が繋がっていた国防総省のマティアス・レアード国防長官とその通信を聞いていた数人の職員が唖然とし凍りついた…

 

 

 

 

 

 

…遡ること30分前…

 

 

 

~アフマダーバード防衛線~

 

 

 

そこでは…多数の車両が並んでいた……

 

 

 

アメリカ合衆国陸軍第十一機甲師団…通称エンペラー師団…

 

 

主力戦車から、歩兵戦闘車、装甲車、自走砲、自走対戦車ミサイル、自走対空砲、自走多連装ミサイルシステム、直援の攻撃ヘリまで編成されている特別機甲師団であり…小国ならば滅ぼせるほどの部隊であった…

 

 

 

その師団長であるグルトニー・イロンス中佐は…

 

 

グルトニー「さっきからの地震は…なんだ…嫌な予感がしてしょうがねぇ…」

 

戦車兵「ええ…核攻撃が行われる1時間ほど前から地震が頻発しています。」

 

 

グルトニー「さっさと収まって欲しいが…」

 

 

 

「…ん…何だこの振動は…大きい…が、地震じゃねぇこれは…」

 

 

 

 

 

 

その後…巨大な振動は続き…収まりかけた瞬間…

 

防衛線から前方10㎞の地面が巨大な衝撃音とともに土壌を吹き飛ばした…

 

 

 

 

 

グルトニー「…なんだ!?」

 

戦車兵1「…確認してます…BETAです!」

 

戦車兵2「レーダーで数を確認中!数は数百…数千…は…さらに増大中!」

 

グルトニー「…地中からだと!?奴ら、地中から来たのか!」

 

 

『全車両砲撃準備!急げ!食われるぞ!』

 

 

 

 

 

戦車隊は砲撃準備を完了し…砲手達は照準器を覗き込んでいた…

 

後方にいたMLRSで構成される対地ミサイル連隊は射程が長い為、準備出来次第誘導ミサイルを発射し始めた…!

 

光線属種がいないのか、迎撃は全くなく、対地ミサイルが次々にBETA群へ降り注いだ…

しかし、戦車級や要撃級ならダメージを与えられるが、装甲が硬い突撃級は当たりどころが悪ければ弾かれ、要塞級はあまり効果がなかった…

 

 

 

 

 

 

そして…BETA群が3㎞に迫ったところで…

 

 

グルトニー『全車狙え。まずは亀野郎の下部だ!砲撃開始!』

 

 

 

その号令とともにM1A3エイブラムスIII主力戦車は120㎜滑腔砲から改良型劣化ウラン弾を叩きだし…M2A5ブラッドリー歩兵戦闘車は20㎜ 劣化ウラン弾の雨を浴びせ、対戦車ミサイルを撃ち尽くせるまで撃ちはなった!

 

 

 

 

その後…5分で突撃級を殲滅した…

 

 

 

戦車兵1「よっしゃぁ!俺の戦車は10匹撃破したぜ!」

 

戦車兵2「俺のところは12匹だ!勝ちだな!」

 

グルトニー『私語は慎め。次が来る。』

 

 

 

 

そして、BETA群中衛が接近してきた…

 

 

 

 

 

戦車兵「なんとか…やれましたな。」

 

グルトニー「大侵略を戦い抜いた我々だから出来たことかもしれん。だが、中衛、戦車級や要撃級は問題ないとして…問題は…」

 

戦車兵「…要塞級ですか…」

 

グルトニー「あぁ…速度は遅いが、鉄壁の装甲を持ち、触手による中距離攻撃が可能だ。」

 

戦車兵「どうします?」

グルトニー「決まってる…役割分担だ。」

 

『ブラッドリー部隊は戦車級、要撃級を狙え。戦車部隊は要塞級に全力攻撃を集中しろ!』

 

 

戦車部隊は要塞級へ砲撃を集中…

 

ブラッドリー歩兵戦闘車を含む部隊は戦車級や要撃級への攻撃を継続した…

 

 

そして…

M2A5ブラッドリー歩兵戦闘車を含む装甲部隊が数両が破壊されたものの、戦車級、要撃級を含む数百の個体を撃破し…

M1A3主力戦車部隊が数両を串刺しにされながら要塞級を一体撃破していたとき…

 

 

 

異変は起きた…

 

 

 

 

グルトニー「…上手く行きそうだな…っ!…また振動か!?」

 

戦車兵「振動数…発生場所は…後方です!」

 

グルトニー「何!!」

 

 

その時、グルトニー以下数名が後ろを振り返った瞬間、アフマダーバード市街地内で爆煙が発生…土壌や瓦礫等が吹き飛ばされていた…

 

 

グルトニー「…アフマダーバード防衛司令部へ連絡!避難準備しろと!地中侵攻だと伝えろ!」

 

アフマダーバード防衛司令部

『こちら、司令部…我々は無理だ…逃げ道を失い…戦車級が登ってきている。既に数人が食い殺された…もう…バンッ…ドサッ』

 

グルトニー「…くそっ!…対地ミサイル連隊に退避命令!」

 

戦車兵「無理です!既に…」

 

 

対地ミサイル連隊

『こちら、対地ミサイル連隊…くそっ!化け物が当然地中から…ぐわっ…』

 

『やめろ…助け…』

 

『機甲部隊助けに来てくれ!俺らは…俺らは…ガハッ…』

 

『くそぉっ!化け物来るなぁ…来るなぁ…いだァァァァァァァァァい…』

 

 

 

 

 

グルトニー「…舐めていたのかもな…」

 

戦車兵「…中佐!後方より…BETA群!」

 

グルトニー「数は…?」

 

戦車兵「前方の2倍とも思われます。」

 

グルトニー「つまり…20万以上か。」

 

 

 

戦車兵「…死にたくありません我々は…どうすれば…」

 

グルトニー「…泣き言を言うんじゃねぇ!!それでも米国軍人か!アメリカンヤンキーか!守るものが亡くなったとしても…我々は戦うのだ。」

 

 

 

 

『全部隊…これより東への撤退行動に移る。中継地点はボパールを経由しインド東海岸に向かう。危険なものだがやり遂げられれば…価値はある。戦闘しつつ後退に入れ!まずは装甲の薄いやつから撤退させる。我らエイブラムス戦車部隊が殿となり、貴様らを撤退させる。終わるまでが勝負だ。これが最後の戦闘となる。諸君らの健闘に期待する!』

 

 

残った対地ミサイル部隊や自走対空砲、対空ミサイル部隊、装甲車、歩兵戦闘車が続々と撤退行動に移り、イロンス中佐直属の戦車部隊以外の戦車部隊はその護衛についた…

 

 

 

 

その後…

イロンス中佐直属の戦車部隊、数十両はその場に残り、撤退の時間を稼いだとされ…撤退部隊がその場から全て去った後の記録は一切なく…

後日観測衛星による当該地域の観測により、イロンス中佐直属の戦車部隊が全滅したことが分かり、イロンス中佐以下戦車兵は戦死したとされた…

 

撤退部隊はイロンス中佐の戦車部隊の時間稼ぎにより途上の襲撃による死傷者は出したものの、無事東海岸へ到達し、アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊のワスプ級強襲揚陸艦に助けられた…

 

 

 

 

 

そして、時は…アメリカ軍インド方面ムンバイ臨時作戦司令部…に戻る…

 

 

 

 

全員が凍りついて数分後…

 

 

 

 

 

マティアス『トーマス少将…これを見てくれ…』

 

トーマス『これは…』

 

 

 

 

そこには移されたのは…ジュリーナガルに建設された巣の出入口に鎮座していた奴だった…

 

 

超重光線級に酷似はしているものの、それとは完全に別格の存在であった…

 

 

 

頭部の円状に展開された8個の球体よりその中心にエネルギーが集められていた…

 

 

 

 

 

マティアス『…先程、ジュリーナガルで観測された未知の個体だ。我々アメリカ国防総省は現時点で光線属種に含まれる個体と予想している。エネルギーが充填完了するのは2分以内だと思われる…予想目標は…』

 

 

 

トーマス『ムンバイ臨時司令部よりムンバイにいる全部隊へ。ムンバイからの退避急げ!現時点で施行されている命令を全て中止、最優先命令として退避、避難、撤退を命ずる!』

 

 

 

 

マティアス『エイデン…死ぬなよ…』

 

 

 

 

 

トーマス『…はっ。』

 

 

 

 

 

 

 

しかし…2分で退避が完了できるわけがなく…

 

 

 

 

 

 

無慈悲にも…謎の未確認個体から荷電粒子砲に似たエネルギーが発射され…ムンバイに当たる直前で拡散し…

 

 

 

 

 

インペリアルツインタワーを含むムンバイに立ち並ぶ高層ビル群を次々とエネルギーの奔流が貫き…

 

 

臨時司令部にもエネルギーが直撃し…

 

 

 

 

エイデンは強烈な閃光と爆煙を見た瞬間、そこで意識を手放す…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…

エイデンは何故か生きていた…

 

エイデン「ん…ここは…」

 

 

 

…臨時司令部より高さ10m…距離50mも吹っ飛ばされ…路上に仰向けで倒れていた…

 

 

 

 

 

そして…エイデンが周りを見渡すと…

 

 

インド最大の都市は悲惨な状況になっていた…

 

 

 

 

様々なビルが崩れさり…燃え……そして…軍人や軍産複合体関係の民間人などが海へ向かって逃げていた…

 

 

 

 

その後…エイデンが違和感を感じ…横にずれると…部下が自分の体の下敷きになっていた…

 

エネルギーの直撃の時に既に死んでおり、偶然にも衝撃の緩衝材となっていた…

 

 

エイデン「…また…部下を死なせてしまったか…私だけ生き残って…」

 

 

 

最後に自分の体の状況を確認すると…

 

 

左足が膝下より損失しており、右足はギリギリ皮膚で繋がっていた…

 

右手はえぐれている部分があり…左手は指数本が無くなっていた…

 

 

 

 

 

 

 

士官1「司令!ご無事で!」

 

士官2「よし、運ぶぞ!」

 

エイデン「やめろ。」

 

士官3「え、しかし…!」

 

エイデン「やめろと言ってるんだ!俺がこの出血量で港まで耐えれると思うか…?それよりも…まだ救える士官を搬送しろ!」

 

士官2「…ですが…少将閣下にはこの世に未練はないのですか!!」

 

エイデン「無い!…」

 

士官1「え…」

 

エイデン「…俺は元々不幸だったんだ。まだ小さい時から家族を亡くし…少し大きくなってからは友達もできたがその友達は交通事故で無くなり、その時に一緒にいた俺は生き残り人殺しの烙印を押された…俺は15歳の頃に兵士になり…アフガン、イラン、サウジアラビアを戦った…不幸だから…この世に未練はないと死にたかったからな…だが、生き残り、少将まで昇進してしまった…そして妻もできた…だが…不幸だからなのか…妻にも被害が及んだ…。だから、子供を産んだ後は離婚してもらい…もう、生涯孤独の身だ。」

 

数秒間の沈黙の後…

 

士官3「本当に…いいんですか…?」

 

エイデン「…構わない…俺に楽をさせてくれ…」

 

 

 

その時…エイデンは普段は見せなかった涙を流していた…

 

 

 

「…俺はもう、苦しみたくない…」

 

 

 

 

 

士官1「司令…分かりました…ですが…武器は渡します…」

 

士官2「最後の抵抗…見せてください!俺達に!」

 

エイデン「…あぁ…。」

 

 

 

そして…エイデンの元に

 

…散弾銃…重機関銃、軽機関銃、小銃、対戦車ライフル、対物ライフル、携行型対戦車ミサイル、対空ミサイル、C4爆薬、グレネード…そして、全ての弾薬…

 

が集められた…

 

 

 

 

 

エイデン「…全く…豪華だな…」

 

 

 

その後…生き残った軍人、民間人等の退避が完了。

全ての人々が輸送艦、揚陸艦等に乗った…

 

 

 

 

 

そのときに…

 

 

 

 

ムンバイ市街地に地中侵攻が発生…

 

 

振動が起こり、いくつかの高層ビルが倒壊、

 

それが原因で奇しくも、BETAの侵攻ルートがエイデンのいる1つに絞られた…

 

 

 

エイデン「来たか…」

 

エイデンはまず、対戦車ミサイルを取り出し…

 

エイデンの姿を捉えた戦車級に…

 

 

エイデン「…喰らえ!」

 

対戦車ミサイルを御見舞した…

 

見事に命中し…爆散した…

 

 

エイデンは咄嗟に次の対戦車ミサイルを取り出し…

 

次々と接近してくる戦車級に当て続けた…

 

 

撃破される戦車級が20体を超えた頃…戦車級が全て後退し…要撃級が前衛に出た…

 

 

エイデンは咄嗟に武器を変え、対物ライフルを取り出し…

 

頭部に連続して当て…死滅させた…

 

 

その後も…エイデンは対物ライフルを使いこなし…死滅させし続けた…

 

 

 

その後…戦車級と要撃級合わせた群体で前進し始めたが…たった1本の細い道しか通れないため、様々な武器を使いこなすエイデンの各個撃破の良い的になった…

 

 

 

 

 

 

その頃…未確認個体のエネルギー再充填が完了…

 

同士討ち等を考慮に入れず…エネルギーが発射された…

 

 

そのエネルギーの奔流は前回と同様…ムンバイの直前で拡散し…ムンバイ市街に降り注いだ…

 

エイデンのいる場所にも…

 

 

 

 

奔流が接近してる中…

 

エイデン「…やっと…死ねる…な…」

 

 

1秒後、エイデンがいる場所をエネルギーが飲み込んで行った…

 

そして、それが晴れた時…エイデンの姿は無かった…

 

 

 

 

 

…ムンバイ沖にいる原子力空母ロナルド・レーガン甲板上…

 

 

士官1「…最後まで奮闘した少将閣下に敬礼!」

 

その空母の乗組員ではなく…ただの陸軍兵士だった彼だったがその言葉に…全ての…陸海空関係無しに…その言葉が聞こえた全ての兵士が敬礼をした…

 

 

 

 

~アメリカ国防総省~

 

 

マティアス「…なに…そうか…エイデンが死んだか…」

 

職員「…どうします?」

 

マティアス「彼は民間人、部下を守ったのだ…戦死扱いだが…勲章を贈ってやれ。そして…陸軍元帥に昇進だ。彼の家族にも慰霊金を支払おう。」

 

職員「了解致しました。」

 

 

マティアス「…どっかで生きてくれると嬉しいが…無理だろうな…あの生き残ることに関しては幸運な男も。」

 

 

 

~インド管区軍ニューデリー総司令部~

 

 

アサーヴ「ムンバイが落とされた…?」

 

将校「はい。アメリカ軍からそう伝達がありました。」

 

アサーヴ「…これで…パキスタンとは繋がれなくなるし…第五艦隊の支援も望めんな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ムンバイ陥落…

 

 

これは援軍に来た各国軍にとって…様々な思いがあった…

 

 

 

インドはさらなる窮地に陥ることになる…




やばいですね(^p^)



次回予告

chapter6 蠢く暗躍する影

戦士達の死が全て報われるとは限らない…
影がついに姿を現す…


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chapter6 暗躍する影

ふう…ここまで来たァ…


4月25日深夜

 

新ソビエト連邦 サハ共和国ティクシ

 

サハ共和国北部、レナ川河口にあり北極海ラプテフ海に面した港湾町、北極海の重要な港湾の1つであり、約6000人が暮らしている()()()()()

 

だが、今のティクシには住民の姿が見受けられず、住宅街や港湾は無惨にも破壊され、空港の管制塔のみが無傷に残されていた。

元より『大侵略』によってティクシはロシア空軍の飛行場や空港の滑走路等がズタズタに破壊されており、空港は解体されることも無く放棄されていた。

 

しかし、現在のティクシの惨状は『大侵略』とは無関係だった。ティクシにいた全ての住民は皆殺しにされた。

何故か明かりのついている空港管制塔にいる地球人では無い者によって。

 

ティクシ空港 管制塔

 

黒い羽衣を着た3人の謎の人物がたった一つの丸いテーブルを囲んで椅子に座り、テーブルの中央に置かれたホログラム装置と会話していた。

 

3人とも紫色の肌を見せるが完全に顔を覆い尽くし、ホログラム装置の通信相手は顔を見せず、『Z』というマークが映し出されていただけであった。

 

「なるほど…インド、パキスタンの制圧は順調ということか、ギュルティーゲ」

 

ギュルティーゲと呼ばれたホログラム装置の先の通信相手は答える。

 

『はい、パキスタンはインダス川を超え、我々の軍団を侵攻させています。ルクス(光線)級だけで十分であります』

 

『インド方面は北部のヒマラヤ山脈南側地域の制圧は順調、インド南部もムンバイを超え、侵攻中であります。疎開がほぼ完了しており、全くと言っていいほど、人がおりません』

 

「そんなものはどうでもいい。文明の全てを破壊し尽くせ」

 

『はっ!報告を続けます。

北部、南部の制圧は順調ですが、首都ニューデリーを含む首都圏制圧がうまくいっておりません。ニューデリーは鉄壁の防御により、光線による破壊を試みるも弾かれています。』

 

「その件についてはある人物に任せておる、タイミングを合わせるのだ」

 

『人を、人間という資源を信用するのですか?我々は人をも超えた高等生物、どうなのです?ラノル』

 

「ラノル」と呼ばれた男は顔を覆うフードを外し、わざとホログラム装置の相手と向き合う。

その顔は地球人とは異なる…紫色の肌をしており、額の中央と左目に傷跡があり、頭はスキンヘッドとなっていた。

 

「信用はしていない。人間の悪知恵を利用しているだけだ」

 

『はっ』

 

「宰相閣下から通信が来たぞ」

 

別の男がそう言うと、ホログラム装置から新たなホログラムが現れ、「宰相」と呼ばれた人物の顔が映される。

その人物の顔は「ラノル」と似ており、登坂帽子のようなものを肩の上に載せて装飾が豊かな少し豪華な服装をしていた。

 

「宰相」は3人を見渡した後、すぐに口を開く。

 

『ギュルティーゲよ、よくやっている。人類の殲滅と"あの目的"は忘れておるわけではあるまいな?』

 

『分かっております』

 

『よろしい、我らが神のために!』

 

「「「我らが神のために!」」」

 

『我らが神のために!』

 

「我らが神のために」

そう宰相が声を上げて言うと、続けてラノル含む3人の男が復唱し、ギュルティーゲも復唱する。

それを聞き、満足したかのように頷きながら「宰相」のホログラムは消える。

 

「ギュルティーゲ、引き続き作戦を継続せよ。ニューデリー打開策は貴様も考えることが出来よう?」

 

『もちろんだ』

 

「新ソ連、大亜共和国はどうなっている?」

 

「既に報告が入っている」

 

「新ソ連方面はシベリア地域の制圧完了後、西進を開始。2手に分かれたようだ…ノヴォシビルスク、エカテリンブルク方面で進撃中だ」

 

「大亜共和国方面はラサを制圧後、重慶に向かって進行中…現在迎撃を受けているが、問題は無いらしい」

 

「航空戦力がない状態で通常機甲戦力での迎撃はたかがしれている。」

 

「これにて報告は終わりだ。各自、我々ARIAの名誉の為に

全力を尽くせ!」

 

「「「аннигиляция!!!」」」

 

彼らは三度『ARIAの名誉の為に!』とロシア語の様にも聞こえる言語で復唱し、解散した。

 

 

4月26日早朝

 

中央アジア連合インド管区 首都ニューデリー

 

要塞都市ニューデリーは以前よりも数倍以上強固な防護結界が展開されてる為、既にジャンムー周辺にいる超重光線級8体から20回以上の最大出力照射の集中攻撃を受けている。

 

だが、それでも宇宙戦艦以上の防御力となる防護結界はその貫通を防いでいた。

 

インド管区軍ニューデリー総司令部

 

「なんとか…防げているようだな」

 

将校「ええ…地中侵攻も防いでおり、BETA群は未だにここを落とすことは出来ていません。」

 

技術主任「もちろんです。我々白の世界が全力を尽くしたのですから…」

 

アサーヴ「……現在の状況を出せ。」

 

 

 

その後、モニターに現れた…

 

 

アサーヴ「…やはり、南下しているか…疎開は既に完了しているものの…奴らは我々の建物を破壊しているな…北部も依然進撃中か…」

 

将校「確実に…我々のいるニューデリー、いえ、ニューデリーを含むニューデリー都市圏一体を包囲しようとしてきてますね。」

 

アドリーグ「…まあ、ゲートが使えればそれはほぼ無駄になるが…だが…一つ心配なことがある。パキスタン臨時首都クエッタ、ムンバイを襲ったあの荷電粒子砲を放った個体…通称デルタ個体、あのエネルギーが直撃しても耐えれるのか?」

 

技術主任「…可能でしょう。」

 

アドリーグ「それは予測に過ぎないのか?」

 

技術主任「………いえ…」

 

アドリーグ「…ふんっ…」

 

アサーヴ「…ジャイプール、ボパールの二箇所に魔法士を含む多国籍軍が駐留している。その2つが落ちたとき…我々はニューデリーを放棄する!」

 

技術主任「だが…ここは前線基地として…」

 

アサーヴ「…ここが絶対に落ちないと確信できるか?ゲートのみに頼った輸送だけで運営を維持できる前線基地等…軍人としては容認出来ん。」

 

将校「では、放棄の為の準備を今のうちに。」

 

アサーヴ「あぁ…まずは非武装員から退避させてくれ。武器弾薬生産工場の従業員もだ。あとは備蓄だけで足りる。」

 

アドリーグ「戦略ミサイル師団もいるか…?」

 

アサーヴ「…全ての兵器はまだ必要だ。」

 

将校「…ですね…。」

 

 

オペレーター1「…BETA群接近!数30万以上!」

 

アサーヴ「いつも通りだ!巡航対艦ミサイル部隊、対地ミサイル連隊!ミサイル攻撃を開始しろ!巡航ミサイルは準備出来自体連続発射!」

 

 

 

 

ニューデリー近郊の陸軍基地よりMLRSからなる対地ミサイル連隊、長距離巡航対艦ミサイル部隊がミサイル攻撃を開始…

 

陸軍基地内の地下サイロより巡航ミサイルが連続して放たれた…

 

 

 

 

その後、光線級が迎撃を開始…

 

 

上空に火球が生成されていった…

 

 

 

オペレーター2「BETA群、ジャイプール、ボパールにも侵攻を確認!それぞれ数は30万以上です!」

 

アサーヴ「同時攻撃だと!?」

 

将校「新しい戦術形態ですね。」

 

アサーヴ「……」

 

 

 

 

 

 

 

その時…総司令部の明かりが全て消えた…

 

 

 

アサーヴ「!?…非常電源に切り替えろ!」

 

オペレーター1「は、はっ!」

 

アドリーグ「何が起きた?」

 

オペレーター2「……何者にかに外部電源が切断されたようです!」

 

アドリーグ「BETAにより破壊工作か!?」

 

アサーヴ「いや…現状、外部からの移動はできん…」

 

アドリーグ「…味方に敵と繋がるものがいると!?…どうせ、奴らに殺されるのに…協力するのか!?」

 

 

オペレーター3「外部の部隊との通信が来てます!」

 

アサーヴ「繋げろ!」

 

 

『こちら、第31歩兵部隊!襲撃を受け交戦中!人だ!!敵の所属は不明!…くっそ!…ガフッ』

 

『通信代わります!敵は少数ですが、数で優る我々を圧倒しています!精鋭部隊です…バタっ』

 

『…なんで、人が撃って来るんだよ!俺らの敵はBETAだろ!くっそぉ!!…ブチッ…』

 

 

アサーヴ「…大統領府へ繋げられるか?」

 

オペレーター3「可能です。」

 

バレン『あぁ…アサーヴか…』

 

アサーヴ「フォッシュ議長、ウラヴミッチ大統領、そちらの状況は?」

 

バレン『…なんらかの武装部隊に襲われている。現在、SP部隊及びアメリカ陸軍特殊部隊が交戦中だ。一応優勢なそうだが、確定的な勝利は出来そうにない。』

 

アサーヴ「そうですか…」

 

バレン『アサーヴ、貴様のところもそうだろう?』

 

アサーヴ「ええ。現在歩兵部隊が交戦中です。ですが、奴らの攻勢が強く、苦戦しているとのことです。」

 

バレン『そうか…我々インド人の国土が犯されようとしているのに…なぜ…我々を攻撃するのか…』

 

アサーヴ「今、それを言っても仕方ありません。首都一帯に厳戒態勢を敷きましょう。非常事態宣言も場合によっては…」

 

バレン『そうだな…では、これにて通信をおわる。』

 

アサーヴ「はっ!」

 

 

……

 

アサーヴ「首都の各部隊との通信回線を開いとけ。状況を把握するんだ!」

 

 

その後…各部隊との通信が開かれ…悲鳴と怒号が交わりながらも状況を理解して行った…

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

ドンッ!!ズダダダダダダダ!!

 

 

という音が外から聞こえてきた…

 

 

 

 

アサーヴ「今のは…全員武器を持て。」

 

 

 

 

警備兵『くそっ!…やめろ…』

 

パンッ!

 

 

 

 

 

グレジェフスキー「…大将閣下…ご無事でしたか…」

 

アサーヴ「貴様、今、警備兵を撃ち殺したな?」

 

グレジェフスキー「いえ…私は別の入口から来たのですよ?それに、彼はスパイだったので、私の部下が撃ち殺したのです。気づきませんでしたか?」

 

アサーヴ「相変わらず…口が悪いな…貴様は…」

 

グレジェフスキー「いえいえ…」

 

 

 

その瞬間…グレジェフスキーがアサーヴの拳銃を取り出そうとし…

 

アサーヴ「…貴様!?」

 

グレジェフスキー「動かないでください。」

 

 

気づいた時には…拳銃を向けられていた…

 

 

 

アサーヴ「貴様、何が目的だ。」

 

 

 

グレジェフスキーはそれには答えず、指を鳴らした…

 

 

すると…

 

10名の兵士が入ってきた…

 

 

 

そして、アサーヴ以外の全員に銃を向けた…

 

 

 

 

グレジェフスキー「動かないでください。そして、武器を捨てろ!皆さんが信頼する最高司令官殿が…どうなってもいいのか!」

 

将校「貴様…くっそ!」

 

アドリーグ「……チッ…」

 

 

 

 

各々の感想を口にしながらも…人質に取られては何も出来ないとして…武器を手放した…

 

 

 

 

アサーヴ「…その兵士の服装…第1特殊連隊か…確かに…貴様の部下であり、精鋭部隊だったな…。」

 

グレジェフスキー「ふっ…」

 

 

………

 

 

グレジェフスキー「…じゃあ、大将閣下。結界を解除してもらおう。」

 

技術主任「…なっ、それ…グッ…」

 

 

グレジェフスキーは黙れと言わんばかりに、技術主任の肩に銃弾を当てた…!

 

 

グレジェフスキー「黙っとれ…」

 

アサーヴ「俺に解除を?俺はそんな権利を持っていない。魔法協会だけだ。」

 

グレジェフスキー「…いくら、魔法協会が超法規的な組織であろうと、国家の軍隊が相手なら言うことを聞くだろう。アサーヴ殿、貴様が命令しろ。」

 

アサーヴ「…断る!」

 

グレジェフスキー「何…」

 

アサーヴ「まず、教えてもらおうか、なぜ、こんなことをする?目的はなんだ?」

 

グレジェフスキー「……私は…今は…BETA教団という組織に入っている…」

 

アサーヴ「…そんな組織が…」

 

グレジェフスキー「…BETAは神の導き…そう…我々人間は既に定められた滅びの運命…逆らうことなどできない…という教えだ。」

 

アサーヴ「…」

 

グレジェフスキー「その教団の組織から教えられたのだ…結界を解除しろとな…」

 

アサーヴ「…パタンコートからいなくなったと思ったら…」

 

グレジェフスキー「…だから、私は結界を、解除しに来た…仕方がわからんから貴様に命令しているのだ…」

 

アサーヴ「…さっきから聞いていれば…貴様は狂ってるな…かつて印パ戦争で機甲師団を率いた貴様の方が良かったよ…」

 

グレジェフスキー「過去など知らん…BETAは神の導き…ここの全員いや…人類全てが滅ぶのは…定められた運命なのだよ…」

 

アサーヴ「呆れる…」

 

グレジェフスキー「…これで私の目的は伝えた…あとは私の命令を実行してくれれば済むのだが…」

 

アサーヴ「…分かった…」

 

 

そして…全員に言おうと前にアサーヴが出る…

 

その代わりに、左にいたアドリーグが下がり…

 

アドリーグのちょうど右に、グレジェフスキーがいる形となった…

 

 

アドリーグ「(拳銃の射程圏内…行けるか…?)…よう…グレジェフスキー…お遊びはそれまでだ。」

 

グレジェフスキー「なんだと…!?…」

 

 

グレジェフスキーが拳銃の存在に気づく前に…アドリーグが拳銃を撃ちはなった…

 

その銃弾は左脇腹を直撃し…グレジェフスキーは倒れた…

 

 

 

 

それを皮切りに…

 

密かに巨大モニターの天井に展開していたアメリカ軍特殊部隊『グリンベレー』がグレジェフスキー配下の第1特殊連隊兵士に狙撃を開始した…

 

 

グリンベレーは最初から見破っていたのか…第1特殊連隊の兵士達の顔面を覆ったマスクを次々に砕き行動不能にさせた…

 

 

 

 

そして…数分後には意識を保っているのはグレジェフスキーのみとなった…

 

 

 

 

 

アサーヴ「…ヨシフ・グレジェフスキー陸軍中将…全く…貴様がこんなことしてるのが惜しいぐらい有能()()()将校なのにな…」

 

アサーヴはわざと…"だった"と過去形で表した…

 

 

グレジェフスキー「…くっそ…くっそ!!」

 

アサーヴ「…アドリーグ司令…ありがとう。」

 

アドリーグ「…ふぅ…全く…アメリカ特殊部隊がいたとは…元々俺は死ぬ覚悟だったのだがな…」

 

将校「…大将は元から気づいていたのですか?」

 

アサーヴ「いや…俺が承諾する前に上を見たらいただけだ。」

 

将校「危なかったですね…」

 

アサーヴ「ああ。」

 

アドリーグ「…で、こいつはどうするか?」

 

アサーヴ「…殺すしかないだろう。中将という階級もあり…」

 

アドリーグ「理由はいらん。で、どこで殺すかだな…」

 

アサーヴ「……ここでやろう。」

 

将校「…ここで、ですか…?」

 

アサーヴ「そうだ。」

 

アドリーグ「…なら…グリンベレー…こいつを抑えるの手伝ってくれ。」

 

グリンベレー隊長「はっ!」

 

アドリーグ「…よし…アサーヴ…お前がやれ。」

 

アサーヴ「俺がか…?」

 

アドリーグ「…軍として…こいつの始末をつけるんだよ」

 

 

と言い、アドリーグは落ちていたアサーヴの拳銃を拾い…手渡した…

 

 

アサーヴ「…分かった…」

 

 

 

アサーヴはグレジェフスキーの唯一動かせていた頭を片手で抑え…もう一方の片手で拳銃を押し付けた…

 

 

 

その間に手の空いたグリンベレー兵士は負傷した技術主任を治療した…

 

 

 

 

 

アサーヴ「…貴様…死ぬ覚悟は出来ているな?」

 

グレジェフスキー「…俺には…まだ…BETAを世界へ…!」

 

アサーヴ「黙れ…反逆者が…」

 

グレジェフスキー「…BETAは神の導き…!誰にも…逆らうことは出来ん!…」

 

アサーヴ「死後の世界で反省しておれ。」

 

 

アサーヴは狂ったように呟くグレジェフスキーに躊躇することを捨て、吐き捨てるように言ったあと、容赦なく力を込めてトリガーを引いた…!

 

放たれた銃弾はこめかみから大脳部分を貫通…

 

 

一瞬にして絶命した…

 

 

……………

 

アサーヴ「…監査局に伝えろ。BETA教団員を洗い出せ。見つけ次第、処断する!」

 

アドリーグ「…今回の反乱に参加した兵士はどうする?」

 

将校「…ここはまだ目を覚ましていないですが、別の場所では目を覚ましているようで…その兵士の供述によると…マスクを被っていた時の記憶が全くないようなのです。」

 

アサーヴ「…一応、監査局に調べさせろ。その謎のマスクについては魔法協会に渡す。」

 

 

 

 

 

 

 

~ヴェルホヤンスク空港:管制塔内~

 

ラノル「やはり…人だからか…使えもしないとは…とんだゴミだな…」

 

???2・3「……別の作戦計画を立てなければ…」

 

ラノル「そうするとしよう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻…

 

パキスタン管区臨時首都カラチ…

 

 

パキスタン管区は北部領土を損失、その後…インダス川防衛線が臨時首都クエッタ消滅で崩壊して以降、数少ない軍隊で抗戦するも次々と敗れていった…

 

 

 

~カラチ市政庁:臨時政府設置場所~

 

 

 

ハーン大統領「…負け続きか…」

 

臨時軍司令官「ええ。インダス川防衛線が崩壊して以降…」

 

ハーン大統領「…それに…臨時首都クエッタの消滅による一時的な指揮系統の消滅による混乱が…避難にも影響している。」

 

政府職員「現在、カラチ港からカラチ市民や周辺都市の人々を国外へ疎開させています。」

 

ハーン大統領「…政治はわからんが…アメリカの支援を受けられないだろうか…」

 

外交官「…現在沖合いに第五艦隊が展開しているようで…ただ、直接支援は無理だろうかと…」

 

ハーン大統領「前大統領の政策で反魔法派を宣言しているからな…。だが、表面だけなんだよなぁ…翠の世界の技術を導入したかったわ…。」

 

政府職員「ですねぇ…」

 

 

ドォォォン…

 

 

 

ハーン大統領「今の振動は?」

 

政府職員「爆弾テロのようです。現在カラチ警察や保安部隊が対応に当たっています。」

 

臨時軍司令官「…今の振動と距離からして…臨時首都クエッタ消滅の混乱で流出したアメリカから輸入したMOAB(大規模爆風爆弾)ですね…」

 

ハーン大統領「あぁ…。」

 

政府職員「…大統領…イスラム教軍が犯行声明を出しています!」

 

ハーン大統領「…また、奴らか!」

 

政府職員「犯人の最後の声を聞いた人によると、『BETAは神の導き!』と言っていたようです。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

イスラム教軍…

 

 

 

北アフリカ、シリア・ヨルダン等の中東に勢力を広げるイスラム教過激派のこと。

勢力圏はかつて大侵略により壊滅的被害を受けた地域であり、国家が崩壊している。

イスラム教に入信しない者や異世界人、異種族に対して非人道的行為を行う。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ハーン大統領「…BETAか…BETA教みたいなのが発生しているようだな…」

 

政府職員「混乱の影響で治安が悪化しており、BETAの侵攻で、兵士の数が足りておらず、治安維持が困難な状況です。」

 

臨時軍司令官「…隣国の反魔法派のイランはなぜ援軍を寄越してくれないのでしょうか?」

 

外交官「…あの国は反魔法派と言いながら、オイルマネーで外国に売って稼いでますよ。それにその効果で国家元首は資産家がなっており、兵士はその資産家達がたてたPMC(民間軍事会社)の私兵ですよ。ただの傭兵に国の為とかできるわけがありません。それに国内は腐敗しています。」

 

政府職員「…それに彼らはBETAは脅威とは思ってないようで、我々に任せているというか、まるで…虫退治の扱いを受けてます。」

 

外交官「その割には…イランは国境封鎖を始めており、パキスタン人を締め出し始めています。」

 

臨時軍司令官「…そんなことが…」

 

外交官「イランよりもイラクの方がよっぽどマシですね。彼らは少ない人口と軍隊で、軍事力を強化し始めているサウジアラビアと共同戦線を張り、イスラム教軍のこれ以上の勢力拡大を抑えています。サウジアラビアの軍事力拡大は顕著です。既に紅海艦隊が設立されており、スエズ運河占領を目指しています。」

 

政府職員「…まあ、国外で頼れる国は余りないということですよ…アメリカに頭を下げるか…オーストラリア、サウジアラビアに頼むか…ぐらいですかね…」

 

ハーン大統領「…難題が山積みだな…」

 

 

 

パキスタンの悩みは今後も続く…




やっぱり、用語集作った方がいいですね…これ()

ただ、次話投稿したあとになりますが…


次回予告

chapter7 反撃の旋風


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chapter7 反撃の旋風

妄想が頭から消え去らないうちに描きました…

ここは無視して本文にどうぞ!()


 

 

4月26日午後…

 

 

 

 

~オーストラリア・オセアニア連邦第2首都シドニー~

 

~西側軍事条約協定機構軍総司令部:地下二階作戦会議室~

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

西側軍事条約協定機構軍…通称西側連合軍、WMTAM軍…

 

新魔法派の国や大侵略以前からアメリカよりの国々が加盟している世界規模の軍事同盟である…

 

なお、反魔法派の国々はモスクワ条約機構を設立している…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カリーニン「……」

 

 

現在、ここでは、数ヶ月に一回で行われる定例会議が行われていた…

 

だけど…最後にインドについて、ある大規模作戦が行われるとして…私は情報を見れた…想像を絶するものだった…

 

私はインド管区軍連絡将校として報告の出番が来るのを待っていた…

 

 

欧州方面軍連絡将校「と…欧州方面軍の報告を終わります。」

 

WMTAM軍総参謀長「では、次に北ユーラシア方面軍。」

 

北ユーラシア方面軍将校「は!我々は諜報及び核戦略師団を主にしていますが…近頃、新ソ連及び大亜共和国が白の世界より技術を輸入しているようです。」

 

総参謀長「正確なルートは分かるのですか?」

 

北ユーラシア方面軍将校「現在、捜索中です。」

 

総参謀長「…分かりました。続いて…アフリカ方面軍。」

 

アフリカ民主主義連邦連絡将校

「はい。現在、北アフリカではイスラム教軍が勢力を伸ばしていること知っていると思います。我がアフリカ軍はその勢力拡大を抑えるため、逆侵攻を行いましたが、スーダン、エリトリア北部、コンゴ北部国境で大規模な戦闘が起こっており、膠着状態です。」

 

総参謀長「…確実な優勢は掴めてないと?」

 

アフリカ方面軍将校「はい。」

 

???「奴ら狂信者の連中を野放しにしていく訳には行かない。その為にはアフリカ方面軍なはさらなる攻撃を行ってもらいたい。」

 

その低い声の正体は…西側連合軍総司令官、ウィリアム・V・タイラーだった…

 

アフリカ方面軍将校「既に…全力を尽くしています…」

 

ウィリアム「分かっている。欧州方面軍、余剰戦力はあるか?」

 

欧州方面軍連絡将校「ありますが…」

 

ウィリアム「北アフリカのモロッコへ回せるか?」

 

欧州方面軍連絡将校「可能です。我々としてもアフリカの安定は望みます。一部戦力を送ります。」

 

総参謀長「続いて…太平洋極東方面軍魔法協会連絡部。」

 

魔法協会連絡部将校「北ユーラシア方面軍の報告と同じです。ですが、追加報告として…現在、オーストラリア、日本、アメリカ等の軍人を魔法師部隊として育成しております。」

 

ウィリアム「魔法部隊の戦力は強力だ。頼んだ。」

 

魔法協会連絡部将校「はっ!」

 

総参謀長「では、最後に中央・南アジア方面軍、インド管区軍、さらに特例としてパキスタン、イラク、サウジアラビア軍。」

 

カリーニン「はい。現在インド軍は魔法協会の支援を受け、ゲートを使いつつ、遅滞作戦を行っています。ですが、物量差が圧倒的でかなりの速さで領土が奪われています。」

 

中央・南アジア方面軍将校「アメリカ軍、インド軍による戦線を敷いていますが、次々と後退を強いられています。先程、BETA群の先端がインド亜大陸南端へ到達したとの報告がありました。」

 

カリーニン「戦線は多数に分かれていますが…分けるとなると…南端及びボパール方面、北部戦線、そして、ニューデリー首都圏戦線です。」

 

パキスタン管区軍将校「我々パキスタン管区は現在、インダス川防衛線を崩壊させられ、消滅したクエッタまで侵攻させられています。なんとか…臨時首都カラチ北方に防衛線を敷いていますが、ジリ貧に追い込まれているのが確実です。アメリカ第五艦隊が間接的に支援はしてくれていますが、確実に民間人の避難やその時間稼ぎである遅滞作戦を行うには足りていません。」

 

総参謀長「隣国イランから援軍はないのですか?」

 

パキスタン「我々はあの国に嫌われています。また、虫退治を任せるかのように我々を扱っていて…援軍の望みはありません。」

 

ウィリアム「イラクに聞くが、余剰戦力はあるか?」

 

イラン管区軍連絡将校「全くありません。我々が今も攻撃を仕掛けられているイスラム教軍は自爆攻撃を仕掛けてくる連中です。前線には全戦力の7割強を割いており、その他の部隊は対テロ対策の為に首都近郊に展開しています。」

 

ウィリアム「サウジアラビア軍は?」

 

サウジアラビア王国軍連絡将校「現在、北部国境付近でイスラム教軍と戦闘しています。一応、余剰兵力はあるのですが…現在大規模作戦を遂行中でして…」

 

ウィリアム「大規模作戦?」

 

サウジアラビア軍連絡将校「…スエズ運河攻略作戦です。北からトルコ海軍、南から王国海軍を挟んでスエズ運河を攻略します。成功すればアフリカとシリア、ヨルダンのイスラム教軍を分断することが出来ます。」

 

ウィリアム「…分かった。」

 

…ウィリアムが黙ったが…数十秒後…再び口を開いた…

 

ウィリアム「…これ以上、奴らの侵攻を許す訳には行かない…既に将官たちには伝えておるが…ジャンムー、ムンバイ、ボパールの3つのハイヴを攻略する!」

 

 

 

 

 

 

その言葉に佐官の軍人達は驚愕した…

 

 

 

 

 

 

参謀長「…作戦名は?」

 

ウィリアム「作戦名は…オペレーション・ブロッサム…だ。」

 

 

 

 

そこから…会議は作戦説明へと入った。

 

 

 

ウィリアム「…今回は初のハイヴ攻略戦だ。オーストラリア、日本、アメリカにはある兵器の生産を頼んでいたはずだ。」

 

オーストラリア・オセアニア連邦宇宙軍将校

「はい。3カ国でこのA級軌道宇宙駆逐艦を建造しています。既に我が軍は50隻を建造しました。」

 

日本防衛省派遣職員「日本は改良を施しつつも、オーストラリア軍と同数の50隻を建造しました。現在、海上自衛隊軌道戦闘群として編成しています。」

 

アメリカ太平洋軍将校「我が国では倍の100隻を建造しました。」

 

ウィリアム「…では、総参謀長。」

 

 

総参謀長「はっ!これより、作戦説明へと入ります。」

 

「まず、アメリカ合衆国宇宙軍の軌道戦略ミサイル艦より戦術核弾頭弾をジャンムーハイヴに2発、ムンバイ、ボパールハイヴに1発ずつ発射します。」

 

「その後、宇宙駆逐艦計200隻を各ハイヴの上空へと突入させます。編成としてはジャンムーハイヴにアメリカが建造した駆逐艦群100隻、ムンバイハイヴに日本駆逐艦群50隻、ボパールハイヴにオーストラリア駆逐艦群50隻を派遣します。」

 

「突入した駆逐艦群により対レーザー攪乱膜放射弾の艦砲射撃と汎用対地ミサイル攻撃を実行します。これは数回繰り返しもらいます。なお、駆逐艦の人員は各国で決めてもらって構いません。」

 

「次に、海軍戦力を動員します。インド管区海軍西部コマンド、アメリカ第五艦隊、パキスタン水上戦闘群はインド亜大陸西側のアフマダーバード、ムンバイ南側、そして、亜大陸南端へと陸上部隊、特に機甲部隊を上陸させてください。」

 

「インド亜大陸東側ではインド管区海軍東部コマンド、アメリカ太平洋艦隊派遣任務部隊、オーストラリア・オセアニア連邦海軍、マレー海軍派遣部隊を動員します。これは主にインド亜大陸東側の陸上部隊の援護です。」

 

「では、最後に主力となる部隊を発表します。我々WMTAM直轄の特殊戦略情報部の第5,6,7大隊と…」

 

 

ウィリアム「グラデスニア帝国軍地球派遣軍第7地上部隊を突入させる。」

 

 

 

その言葉に少将以下の軍人達が驚いた…

 

 

 

それもそのはず…同じクリミアル宇宙にはあれど、銀河系外の国家の軍隊が協力するなど、前例も無かったからである

それも相手は領域はクリミアル宇宙にあっても、本国は別宇宙にある…そして、クラムスエイベリア公国に敗れる前までは宇宙最強の名を持っていた国家…グラデスニア帝国軍であったからだ…

 

 

 

アメリカ太平洋軍将校「…地球外、それも銀河系外の国家を協力させるのですか…!?」

 

 

ウィリアム「…グラデスニア帝国軍地球派遣軍副司令、グレゴリアン大佐、構いませんか?」

 

グレゴリアン「構わない…我が皇帝陛下はここいらで地球に恩を打っとくのがいいと考えたからだ。我が軍は臨時でWMTAM軍の管轄下に入る。」

 

 

 

 

 

その後…約2時間、作戦の変更や修正が行われれ……

 

 

 

 

 

ウィリアム「…これより各部隊準備に入れ。12時間後には最終準備を完了せよ。16時間後に作戦を発動する。以上だ。健闘を祈る。」

 

 

ウィリアムは…ゆっくりと…敬礼をした…

 

直ぐにその場にいた全将校が敬礼を返した…

 

 

 

 

 

 

 

 

12時間後…

 

 

 

インド洋東部…

アンダマン諸島小アンダマン島沖

 

 

 

 

アイオワ級戦艦イリノイ設計案を元にしたとされるプラハンディグダル級戦艦プラハンディグダルを旗艦とするインド管区海軍東部コマンド艦隊約50隻

ニミッツ級原子力航空母艦ハリー・S・トルーマンを旗艦とするアメリカ太平洋艦隊インド洋派遣艦隊約30隻

キティーホーク級を元にしたシドニー級航空母艦エアーズロックを旗艦とするオーストラリア・オセアニア連邦海軍第2戦隊約20隻

東南アジア連合マレー連邦共和国海軍第5駆逐艦隊5隻

 

 

が集結…

 

 

 

 

 

インド洋西部…

 

オマーン領欧州連合租借地マシーラ島沖…

 

 

 

 

ヴィクラント級航空母艦ヴィクラントを旗艦とするインド管区海軍西部コマンド艦隊約40隻

ニミッツ級原子力航空母艦ロナルド・レーガンを旗艦とするアメリカ第五艦隊約30隻

パキスタン管区海軍第15ミサイル戦隊4隻

 

 

が集結…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻…

 

 

アメリカ合衆国バーデンバーグ宇宙離着陸場…

 

 

そこでは100隻にもなるA級軌道宇宙駆逐艦が宇宙へと打ち上げれていた…

 

 

 

日本国札幌宇宙港…

 

オーストラリア・オセアニア連邦メルボルン発射場

 

 

この2つでも50隻のA級軌道宇宙駆逐艦が宇宙へと打ち上げれていた…

 

 

 

 

 

200隻のA級軌道宇宙駆逐艦は丁度インド亜大陸の真上にいるアメリカ合衆国宇宙軍戦略軍事ステーション『カリフォルニア』に停泊…

 

 

 

 

 

 

 

 

その後約4時間が経過…

 

会議より16時間後になる数分前に全部隊は戦闘準備を完了…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月27日早朝

 

 

 

ウィリアム『これより、オペレーション・ブロッサムを発動する!健闘を祈る!』

 

 

 

 

 

一大反攻作戦がたった今、開始された…




いろんな用語が登場してきていますが…用語集でまとめて書く予定です。すいません。


次回予告

chapter8 オペレーション・ブロッサム

反攻の火蓋が切って落とされる…


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chapter8 オペレーション・ブロッサム

BETAに対する大規模反攻作戦開始です。


 

 

 

 

4月27日早朝

 

 

 

 

ウィリアム『これより、オペレーション・ブロッサムを発動する!健闘を祈る!』

 

 

その直後

総司令部統合管制官『ネヴァダ、ビスマルクへ通達する。第1段階を開始せよ。繰り返す、第1段階を開始せよ。』

 

 

 

 

その通信後…アメリカ合衆国宇宙軍戦略ミサイル艦『ネヴァダ』、欧州連合宇宙軍戦略ミサイル艦『ビスマルク』より、アメリカや欧州各国、インドの数カ国で共同開発した対魔物用核弾頭、250キロトン級C18熱核弾頭弾が計4発射出された…!

 

 

 

 

各ハイヴから光線による迎撃…特にジャンムーハイヴからは超重光線級8体からの光線が浴びせかけられていた…

 

 

 

 

 

 

しかし、この核弾頭弾は先端に対レーザー反射魔法が展開されており…光線級による光線も超重光線級の厚いビームも弾き返し…

 

 

 

 

 

着弾直前で魔法を解除し、起爆した…!

 

 

 

 

 

 

ジャンムーハイヴで2発、ムンバイ、ボパールハイヴで1発ずつの巨大な熱エネルギーが解放され…

 

 

巨大な熱エネルギーは周辺のBETAを焼き付くし…巨大なきのこ雲を形成させた…

 

 

 

ジャンムーハイヴの超重光線級は起爆直後は立っていたものの、満身創痍だったらしく、光線を吐き出したあと…次々に倒れ始めた…

 

2体が残ったが、損傷が激しかった…

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

統合管制官『核起爆成功。繰り返す、核起爆成功。全宇宙軍艦隊へ。作戦に変更なし。繰り返す、作戦に変更なし。予定通り作戦に実行せよ。』

 

 

 

アメリカ合衆国宇宙軍ステーション作戦司令部

『フレッチャー001から100へ。予定通り作戦を実行せよ。繰り返す、予定通り作戦を実行せよ。編成データの通りに編成次第、各部隊は降下を開始せよ。繰り返す、降下を開始せよ。』

 

 

 

日本国防衛省軌道戦闘群地上司令部

『八咫烏1から八咫烏50へ。作戦に変更なし。繰り返す、作戦に変更なし。各部隊は事前会議で行われた通りに作戦を実行せよ。』

 

 

 

オーストラリア・オセアニア連邦宇宙軍司令部

『No.1からNo.50へ。作戦データを各艦艇に送信。作戦を実行せよ。繰り返す、作戦を実行せよ。』

 

 

 

統合管制官『…HQからグリズリーへ。どうだ?』

 

その後、管制官は秘匿通信へ切り替えた…

 

 

グリズリー1『こちら、グリズリー1。準備は万全だ。』

 

統合管制官『了解した。』

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃…地球上でも…

 

 

 

 

統合管制官『海軍部隊へ通達する。本命は宇宙軍部隊だが、海軍部隊も必要だ。作戦に変更なし。繰り返す、作戦に変更なし。速やかに作戦を開始せよ。』

 

 

 

 

 

 

インド洋西部…

 

 

アメリカ第五艦隊…

 

リアム『アストレルを速やかに発艦させろ!各部隊は沿岸部へ制圧砲撃を開始!』

 

 

空母ロナルド・レーガンからMQ-1Eアストレル艦上無人偵察攻撃機が発艦し…

第五艦隊海上部隊が次々にレールガンによる攻撃を撃ち放つ…!

時々、16インチ砲音が聞こえてきた…

 

 

リアム「まさか…ここでこいつをまたみる日が来るとはな。」

 

その視線の先には…

 

アイオワ級戦艦ニュージャージーがいた…

 

現代化改造が間に合わないため、即席のレーダーや管制システムなどが置かれていた…

 

リアム「老朽艦だが…まだ、この世界には必要だ。頑張ってくれよ…」

 

 

その声に答えるかのように1番砲塔が咆哮を放った…!

 

 

 

その為、インド管区海軍西部コマンド艦隊旗艦空母ヴィクラントからもMQ-1Eアストレルが発艦していき…

随伴する艦艇からは対艦ミサイルが放たれていき…

 

パキスタン管区海軍部隊のミサイル艇からは次々にミサイルが発射されていた…

 

 

 

 

 

 

インド洋東部…

 

 

ここに展開している海軍部隊の目的はインド亜大陸東部のインド軍の支援であり、その領域内であれば航空戦力が使えていた…

 

よって…

 

 

アメリカ太平洋艦隊インド洋派遣艦隊…

 

空母ハリー・S・トルーマンから航空戦力としてF-35が飛び立ち、輸送ヘリが次々と艦を離れた…

 

さらに隣にいる空母セオドア・ルーズベルトから艦上大型輸送機が発艦し、インド亜大陸の空港へ向かった…

 

 

 

インド海軍東部コマンド艦隊…

 

プラハンディグダル級戦艦ネームシップが旗艦を務める艦隊は亜大陸南端部への向かおうとしていた…

 

当初、亜大陸東部のインド軍支援を任されていた艦隊であったが、アメリカ海軍だけで十分だと判断した艦隊司令は米軍艦隊司令に通信を繋いだ。

 

 

 

~空母ハリー・S・トルーマン艦橋~

 

 

士官「司令、インド艦隊旗艦より通信です!」

 

???「なんだ?」

 

答えた人物は…米海軍インド洋派遣艦隊司令ジェームズ・アレン中将であった…

 

 

インド東部コマンド艦隊司令

『我々を南端部へと行かせて欲しい。』

ジェームズ「…だが、貴様らの配置場所はここだぞ?」

 

東部コマンド司令『それがおかしいのだ。空母を持たない東部コマンドが前線地域の支援など…輸送船の護衛はできよう。だが、戦艦が飾りになってしまう。どうか…』

 

ジェームズ「分かった…司令部へ伝えておく。南端部への加勢を許可する。」

 

東部コマンド司令『感謝する。』

 

そこで通信は終わり…上陸部隊を乗せていたヘリをハリー・S・トルーマンに移譲させ…輸送船も米艦隊に任せ、東部コマンド艦隊は最大船速で亜大陸南端部への進路を取った…

 

 

 

 

その後、指揮系統の統一を図るため、マレー海軍部隊とオーストラリア艦隊はアメリカ太平洋艦隊インド洋派遣艦隊の指揮下に入った…

 

 

ジェームズ「…まあ、あの戦艦が何も使わずには勿体ないだろうな…」

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…

 

 

ジャンムーハイヴ上空…

 

 

アメリカ合衆国宇宙軍の宇宙駆逐艦群が次々と大気圏突入し…数千機の爆撃にも匹敵する攻撃がハイヴへと降り注ぎ…ジャンムーハイヴ付近にいた超重光線級は…動かなくなった…

 

そして、トドメとして戦略ミサイル艦『ネヴァダ』よりMOAB弾頭弾2発が放たれ、超重光線級2体が爆発四散した…!

 

 

 

~フレッチャー006~

 

士官「ゲーリング少佐やりましたな。」

 

ゲーリング「そうだな。」

 

 

 

 

アメリカ合衆国宇宙軍ステーション司令部『対レーザー攪乱膜の展開を確認。突入部隊を降下させよ。繰り返す、降下させよ。』

 

ゲーリング「聞いたな。我々も降下してお客さんを切り離す。グラデスニア帝国軍だ。丁重に素早く切り離せよ。」

 

士官「了解。」

 

ムンバイハイヴ上空でも…

 

日本国防衛省司令部『八咫烏各部隊へ。対レーザー膜の展開を確認。突入部隊輸送艦は降下を開始。その他の艦は援護せよ。』

 

ボパールハイヴ上空…

 

オーストラリア・オセアニア連邦宇宙軍司令部『各部隊へ。No.1からNo30へ降下を開始せよ。繰り返す、降下を開始せよ。その他部隊は降下部隊の援護に当たれ。』

 

 

3つの地点にてほぼ同時に降下が開始された…

 

 

 

 

同時刻

 

 

 

亜大陸南端沖…

 

 

 

インド管区海軍東部コマンド艦隊…

 

 

 

 

艦隊司令「やはり…カバー出来ていないか…」

 

 

そこには…インド管区海軍西部コマンド艦隊のミサイル艇数隻が陸地に向けてミサイル攻撃をしているだけだった…

 

 

 

 

 

艦隊司令「東部コマンド艦隊および第五艦隊へ連絡。『南端部への海上支援は任せてくれ。上陸部隊をこちらにも回して欲しい』と伝え路。全艦、砲撃開始!」

 

 

戦艦プラハンディグダルの40㎝砲が砲弾を放ち、

巡洋艦群が12.7㎝砲を撃ち始め、

後方の駆逐艦がミサイル攻撃を開始した…!

 

 

陸地を進むBETA群は多数の砲から放たれるクラスター弾により、次々と撃破されて行った…

 

光線級はいるものの、砲弾は迎撃しきれず、戦艦に光線を放つも撃沈には至らず、南端部にいたBETA群は数十分で壊滅した…

 

その間に上陸部隊の揚陸艦が到着、少し沖合に停泊したのち、機甲部隊を載せたLCACが多数降ろされ、浜辺へ上陸し展開を開始した…

 

 

機甲部隊として…BETA支配領域に初めて足を踏み入れたのだった…

 

 

 

 

 

 

30分後…

 

 

ジャンムーハイヴ上空…

 

 

 

アメリカ宇宙軍ステーション司令部『フレッチャー001から020、降下ポッド着陸可能高度に達した。降下ポッド投下開始。繰り返す、降下ポッド投下開始!フレッチャー021から040着陸地点の後方に投下せよ。繰り返す、後方に投下せよ。フレッチャー041から070は順次支援部隊を投下。着陸地点の要塞設営に入れ。他の部隊は降下ポッド付近に接近するBETA群を撃破せよ。降下ポッドには一切近づけさせるな!』

 

 

司令部からの通信将校が言い終わる前に各部隊は行動を開始していた…

 

独断専行とも思えるが…実は既にこの行動は各部隊に表示していた…

 

この通信は合図であり…確認の為の通信だったのだ…

 

 

そして、第1段階の降下ポッドが大量に着陸した…

 

 

 

 

 

 

 

 

ムンバイ海岸沿い…

 

 

 

既にアメリカ第五艦隊やインド西部コマンド艦隊が上陸作戦を実行。ムンバイ南側近郊とアフマダーバードへと上陸に成功していた…

 

ムンバイ近郊へと上陸した機甲部隊は市内への突入を図る…その最中…

 

 

 

 

 

ムンバイハイヴ上空の日本国宇宙駆逐艦群も突入部隊の投下を開始した…

 

 

数分前

 

日本国作戦司令部『八咫烏全部隊へ。事前の予定通りに状況は進んでいる。予定通り八咫烏1から30、突入部隊の投下を開始せよ。繰り返す、投下を開始せよ。突入部隊はムンバイ近郊へ上陸した多国籍軍と協力し市内制圧を目指せ。八咫烏31から50は市内の残存BETA群をピンポイント爆撃で掃討せよ。』

 

その通信将校が言い終わる前に、各宇宙駆逐艦群は"予定通り"行動を開始した…

 

 

 

八咫烏1から八咫烏30は降下ポッドをコンピュータが割り振った地点に投下を開始した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボパールハイヴ上空…

 

 

 

オーストラリア宇宙軍司令部『各部隊、予定通りだ。投下作戦を開始せよ。繰り返す、投下作戦を開始せよ。』

 

オーストラリア宇宙軍司令部の指令通信は簡潔だった…だが、簡潔であるこそ行動も迅速だった…

 

No.1からNo.30の宇宙駆逐艦が突入部隊の降下ポッドを投下…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンムーハイヴ近郊…

 

 

 

グラデスニア帝国地球派遣軍第7地上部隊臨時第1大隊およびWMTAM軍特殊戦略情報部第5大隊

 

 

グレゴリアン「…全軍再編成終わったか?」

 

将校「終わりました。しかし…」

 

グレゴリアン「文句は言うなよ。」

 

将校「…はっ…すいませんでした!」

 

グレゴリアン「大きい声は出すな…と言いたいが…既に気づかれてるみたいだな…」

 

 

 

物陰に隠れていた戦車級がグレゴリアンに突進してきた…!

戦車級にしてみれば人は相手にならないと思っていただろう…

だが、相手が悪かった…!

 

 

バシュッ!!

 

 

戦車級が食いつこうとしたその時…

 

戦車級は上下ふたつに切り裂かれた…!

 

 

 

グレゴリアン「…知能がない相手など…どれほど脅威であれど造作もない…」

 

「第5大隊に次ぐ、お前らは防護服などしてるそうだが…BETA相手には役に立たないだろう。我らに盾を任しておけ。お前らは自分たちの任務を果たせ!」

 

兵士「おう!ハイヴさえ攻略してしまえばこっちのもんよ!」

 

彼らはハイヴへの突入を開始した…!

 

 

 

 

ムンバイハイヴ近郊ムンバイ市内…

 

 

 

グラデスニア帝国地球派遣軍第7地上部隊臨時第2大隊およびWMTAM軍特殊戦略情報部第6大隊

 

 

第2大隊の指揮官はグラデスニア帝国軍ラーフ中佐だった…

 

ラーフ「全く…目の前でBETAがいて…直ぐに爆発して煙に覆われるなど…幸先が悪い…」

 

白井「仕方ありません。第6大隊の隊長…白井一尉であります!」

 

ラーフ「固くならんでいい。まずは市内掃討か?」

 

白井「いえ…掃討は上空の部隊の役割です。我々は一直線にハイヴまで。」

 

ラーフ「分かった。こちらが全員いる…そちらは…。聞くまでもないか。」

 

白井「ええ。」

 

ラーフ「では、全軍前進!」

 

 

 

 

ボパールハイヴ近郊…

 

 

 

グラデスニア帝国地球派遣軍第7地上部隊臨時第3大隊およびWMTAM軍特殊戦略情報部第7大隊

 

 

第3大隊の指揮はゲイツ中佐である…

 

 

ゲイツ「さて、進むぞ。軟弱な地球人どもは着いてこれるか?」

 

イェスパ大尉「それは失礼に値しますぞ!第7大隊大隊長のイェスパです。」

 

ゲイツ「冗談だ。やってやるぜ!」

 

イェスパ「冗談ならいいのですが…分かりました。」

 

ゲイツ「全部隊前進!」

 

 

 

 

数分後…

 

 

ジャンムーハイヴ…

 

 

 

グレゴリアン「これがハイヴか…穴を開けるか…」

 

すると、巨大な大剣を取り出した…

 

グレゴリアン「イグザム!」

 

巨大な大剣が二つに分かれ、巨大なビームがハイヴの構造物の壁上に向かい…ぶち当たった…!

 

そして…岩盤が爆砕…!

 

中にいたBETAごと穴が空いた…

 

 

 

グレゴリアン「こんなもんか…前進!」

 

 

 

 

 

これは…ムンバイハイヴとボパールハイヴでも同様の光景が見られた…

 

 

ラーフ/ゲイツ「「イグザム!!」」

 

 

同様に壁が破壊され、穴が空いた…

 

 

 

 

 

 

 

~ジャンムーハイヴ内~

 

 

ハイヴ内には大量のBETAが生き残っており、

入ってきた異物を見た瞬間、襲いかかってきた…!

特殊戦略情報部第5大隊の兵士は恐怖するも…、襲ってきた戦車級は一閃され、血飛沫を上げた…

 

 

 

グレゴリアン「俺らはただの餌ということか…」

 

将校「見たいですね…大佐、先程の壁破壊する時、どのくらいのエネルギーを使いました?」

 

グレゴリアン「6割強だな。」

 

将校「戦略クラスに匹敵する!?そんなにハイヴの壁は…!?」

 

グレゴリアン「…まあ…あとは奥まで進んで脱出するだけだ。使うことはなかろう。」

 

将校「ですね…ん…要塞級を確認。少なくとも10体はいますね…」

 

グレゴリアン「よし、攻撃開始!」

 

 

 

要塞級から触手が伸び、貫こうとするも、簡単に大剣に弾かれ、エネルギー波によって要塞級本体ごと消滅する…

 

このような事が何度も繰り返され、ハイヴ中核部にもう少しでたどりつけるところで…

 

 

BETAの逆襲にあう…!

 

 

グレゴリアン「そろそろか…」

 

第5大隊長『後方から多数のBETA接近!要撃級です!戦車級もいる!既に部下が10名ほど喰われた!』

 

グレゴリアン「後ろだと…!?」

 

将校「恐らく抜け穴です。まるで、蟻の巣ですよ。これは…」

 

グレゴリアン「手空きのものを即座に後方へ向かわせろ!全周囲を警戒させるのだ!」

 

将校「既に向かってます!」

 

 

 

その途上…左横の壁が崩れ…戦車級が出現…!

 

部下「は…ぐ…がぁぁぁぁぁ…!!!!」

 

 

 

グレゴリアン「左から…!?」

 

将校「右前に動体反応!」

 

 

右前の壁が大きく崩れ…要塞級が新たに出現…

その要塞級が鋭い脚で先頭にいたグラデスニア帝国軍兵士数人の心臓を貫き…絶命させた…

 

 

グレゴリアン「…くそっ!」

 

将校「私が…!」

 

大剣を砲撃モードに切りかえ、要塞級の頭、腹部、脚を薙ぎ払った…!

 

 

 

思いもよらぬ苦戦に第5大隊も加勢し始めた…

 

 

 

夜戦用携行型ATMを撃ち放ち戦車級を爆砕させたり…

 

 

第5大隊兵士「これを!手榴弾です!」

 

グラデスニア兵士「おう、助かる!餌だ。喰らいやがれ!」

 

 

と言った感じに、協力して要撃級を撃破したりしていた…

 

 

 

 

 

そして…なんとか、この窮地を脱した…

 

 

 

 

 

 

その後…先のような事態に陥らず、BETAの攻撃を退けていた…

 

 

 

 

そして、ついに中核部に到達…そこでさらなる障害にあう…

 

 

 

 

 

 

 

中核部…大広間前…

 

 

 

 

 

グレゴリアン「この先が…このハイヴの中心か?」

 

将校「この壁の向こうですね」

 

グレゴリアン「確かに…この壁はほかの壁とは違うな。よし、破壊するか、お前、戦略クラスで撃て。」

 

グラデスニア兵士「え…あ、はっ!」

 

 

その兵士が大剣を展開し…砲撃準備に入ってる頃…

 

グレゴリアンはその壁をじっと見ていた…

 

 

 

その時…!

 

 

 

 

壁の上部から光線が放たれ、一部の兵士がそれに対応出来ずに飲み込まれる!

 

 

 

 

そして、第2射はグレゴリアン自身に向けられるが、グレゴリアンは大剣を盾モードにすることで防ぐ…!

 

グレゴリアン「おい!さっさと撃て!」

 

グラデスニア兵士「…無理です…退避…」

 

グレゴリアン「出来るか!…俺が守ってやるから、さっさと撃つ用意をしろ!」

 

グラデスニア兵士「…はい!」

 

 

 

 

 

 

だが、襲ってくるのは光線だけではなかった…!

 

 

グレゴリアン「…ん…触手だ!切り刻め!」

 

 

グラデスニア帝国軍の兵士は問題なく対応したが…第5大隊の兵士は首が切断されるなどで次々と殺されて行った…

 

 

 

グレゴリアン「くっそぉ!まだか!」

 

グラデスニア兵士「発射準備完了!」

 

グレゴリアン「撃てぇ!!」

 

グラデスニア兵士「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

その兵士の大剣に収縮されたエネルギーが一気に飛び出し…その壁の中央部を上から下へと切断した…!

 

 

その壁からは血のような体液が流れ出していた…

 

 

グレゴリアン「…死んだのか…?」

 

将校「分かりません…しかし…これも個体だったのでしょうか…?」

 

グレゴリアン「わからん…今のところ分かっているのは…奴らの個体の特性だけだ。」

 

 

 

損害を出しながらも大広間に入る…

 

 

そこには光を放つ謎の巨大な物体が佇んでいた…

 

 

グレゴリアン「なんだこれは…まあ、このハイヴの中心にいるのだから、さしずめ、ここを統べるやつだろうな…」

 

将校「そうなのですか…?」

 

グレゴリアン「そうだろう…なんだ…」

 

 

その物体は先程とは違い、強烈な、人なら目が眩むほどの光を放ち始め…

 

 

空間振動波に物理衝撃波が重なった『超振動波』を放った!

 

 

 

 

その衝撃は凄まじく…全ての人が壁に打ち付けられた…!

中には壁に打ち付けられただけで死ぬ者もいた程だった…

 

 

 

 

兵士たちがまだ生きていると判断したその物体は周囲に散らばっている未知の鉱石と連動し…青い閃光と共に電磁波も組み合わさった荷電粒子エネルギーを放った…!

 

 

 

 

それをある1人のグラデスニア帝国軍兵士が盾モードの大剣で防ぐも、その勢いに押され、壁に激突…直後飲み込まれた…

 

 

 

グレゴリアン「くっそ!これが最後の障害か!まるで、ボスバトルだ!」

 

 

 

その物体は次に周囲の未知の鉱石を浮かせ…その鉱石から高圧電流を放った…!

 

 

その高圧電流は盾で防ぐ者もいたが…防いだ結果、身体中に感電、数秒後には黒焦げとなった…

 

 

 

 

グレゴリアン「…ちっ…」

 

 

舌打ちする間もその物体は次の攻撃を繰り出す!

 

 

新たに何かを生成させたと思えば、それを超音速で飛ばした…!

 

 

盾で防げていた者もいたが…

 

 

 

将校「がぁぁ!!!」

 

グレゴリアン「アンナ!」

 

アンナ(将校)「…くっ…名前を容易く呼ぶな…くっそ…足が…」

グレゴリアン「大広間から出ろ。そこで応急処置だ。そこに数人の部下もいる。」

 

アンナ「…分かった…」

 

その物体の攻撃は熾烈を極め…次々とやられていく…

 

 

 

グレゴリアン「…大剣リミッター解除。」

 

 

 

 

 

20名ほどの体勢を立て直した兵士達がグレゴリアンに続いて大剣のリミッターを解除…

 

 

 

グレゴリアン「…戦略クラス用意!」

 

 

 

 

 

同じ戦略クラスだが…リミッター解除した大剣は通常のとは数倍も違う…

 

 

それが約20人分もだ…

 

誰もがやれると思っていた…

 

 

 

 

 

 

グレゴリアン「発射…!」

 

 

その号令で発射された約20名分のエネルギーは赤い光を伴いながら、全てが正確にその物体へ命中…!

 

 

その物体は攻撃をやめ…自身からも青い光を放ち始めた…

 

 

 

誰もが『青』と『赤』の決戦と思い…勝利を願った…

 

 

 

 

 

結果は…

 

 

 

 

 

グレゴリアン「は…」

 

 

 

 

その物体は表面に青い薄い膜を展開しながら…しっかりといた…どこも欠けることもなく…

 

 

 

兵士たちは絶望した…そして…損害の大きさから…士気も急激に下がっていた…

 

グレゴリアン「…貴様ら!何に絶望してんだ!男なら嫁に会えないことか?!笑わせるな!合わせてやる!全員に!」

 

その声で全員の士気が回復…

 

 

同時にその物体からの攻撃が再開した…

 

 

 

 

グレゴリアン「全員、大広間からでろ!急げ!」

 

 

大広間から出た後…撤退を開始するとグレゴリアンは言った…

 

 

その言葉には誰もが納得した…

 

 

 

 

だが、次の言葉には誰もが驚愕した…

 

「俺はここに残って撤退の支援をする。」

 

 

 

 

 

反対の声が多数上がった…副官でもあったアンナは特に殴りかかるなどして反対した…

 

 

アンナ「なんでよ!責任でもとるつもり!あんたの死ぐらいじゃ責任なんて取れない!無駄よ!なんで…父さん!」

 

グレゴリアン「…今…父さんと言ったよな…なんでだ…」

 

アンナ「…私は母さんが隠してきた子だったの…」

 

グレゴリアン「そうか…」

 

アンナ「…どうして…死に行くの…理由だけでも…」

 

 

グレゴリアン「グハ…」

 

その時…グレゴリアンは吐血した…

 

 

アンナ「え…」

 

 

グレゴリアン「俺は病気なんだ…ずっと隠してきたが…」

 

アンナ「治せば…」

 

グレゴリアン「治せない病気らしい…」

 

アンナ「嘘……」

 

 

アンナは…ポロポロと大粒の涙を泣き始めた…

 

 

また、グレゴリアンが上司になってずっと付き添ってきた兵士たちも静かに泣いていた…

 

 

 

グレゴリアン「…済まない…皆…俺はこの負傷した彼らと共に残る…ついて行きたいものがいれば…入れてはやる。だが、老兵限定だ。」

 

兵士1「わしも行きます…私は貴方様の隣としても働いてきました…」

 

兵士2「我も…もう、グレゴリアン様無しでは生きていけませぬ…」

 

 

 

そして、7名ほどが加わり…

 

グレゴリアンはここに残り、小隊を編成…

 

第1大隊はアンナが指揮を執ることになった…

 

 

 

 

 

 

 

第1大隊はその後…数度の交戦の末、無事に地上へと脱出…

 

 

グレゴリアン率いる小隊は奮戦するも全滅…

最後にグレゴリアン含め数名が自爆してハイヴの1区画を崩壊させた…

 

 

 

 

 

 

 

 

ムンバイハイヴ、ボパールハイヴでも突入部隊が脱出してきた…

 

 

 

 

 

ムンバイハイヴでは中核までたどり着くことは出来ず、途中で四方八方からBETAに襲われ、大損害を被った…

 

第2大隊のラーフ中佐は左腕と右手を失い重傷を負うも生還、一方で特殊戦略情報部第6大隊の白井一尉は報告によれば…突如現れた要撃級の触腕に頭を潰され即死だという…

 

 

 

 

 

 

 

ボパールハイヴでは中核までたどり着くことは出来た…

しかし、そこがBETAの生産転送区画だったらしく、突然頭上から現れたBETA群に多数が踏み潰され、撤退を決断…

 

第3大隊のゲイツ中佐は生きては帰れなかった…撤退途中に…要塞級が現れた触手からの溶解液で装備ごと腹を溶かされ、応急処置も間に合わず死亡した…遺体は地上へと運び出された…一方、特殊戦略情報部第7大隊のイェスパ大尉は生還した

しかし…五体満足ではなく…両足が切断され右腕がなく左腕が変な方向にネジ曲がり、右耳が無くなっていた状態ではあったが…

 

 

 

 

 

 

 

アンナ『ジャンムーハイヴ突入部隊から作戦司令部へ。グラデスニア帝国軍第1大隊臨時大隊長のアンナ少佐です。』

 

管制官『おい、グレゴリアン大佐はどうした!』

 

アンナ『…戦死しました…報告します…ハイヴの無力化に失敗。生存者は脱出しました。』

 

管制官『何…』

 

アンナ『も、申し訳ございません…』

 

管制官『…報告に感謝する。帰還せよ。』

 

アンナ『はっ…』

 

通信が終わると…力を失っていくようにアンナは…地面に倒れ込んだ…そして、号泣した…

 

 

 

 

 

 

ラーフ中佐『ムンバイハイヴ突入部隊です。報告します。ハイヴの無力化に失敗。特殊戦略情報部第6大隊の白井一尉は戦死しました。』

 

管制官『……速やかに帰投せよ』

 

ラーフ中佐『了解。』

 

 

 

 

 

 

イェスパ大尉『ボパールハイヴ突入部隊…報告します。』

 

管制官『待て…イェスパ大尉…ゲイツ中佐は…死んだんだな…』

 

イェスパ『はい…力になれず…』

 

管制官『謝罪はいい。無力化に失敗したのか?』

 

イェスパ『は、はい。』

 

管制官『速やかに帰投せよ。』

 

イェスパ『了解。』

 

 

 

 

西側軍事条約協定機構軍とグラデスニア帝国軍によるハイヴ攻略は失敗に終わった…

BETAはさらなる攻勢に転じるであろう…




ハイヴ攻略は数週間後先まで待たないと…




ところで閑話としてスエズ運河攻防戦を出したいのですが…アラブ人の名前決めるの辛い()

次回予告 chapter9 後始末

攻略作戦が失敗した今、各国はその対応に追われる…


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chapter9 後始末

作戦の事後報告会議なんで…つまらないかも…


 

 

 

 

 

 

4月27日深夜

 

 

 

 

オーストラリア・オセアニア連邦シドニー…

 

~西側軍事条約協定機構軍司令部:総司令官室~

 

 

 

 

統合管制官「司令官…作戦は失敗です。」

 

ウィリアム「そうか…報告ご苦労。我々の目標の中で成功したものはあるか?」

 

統合管制官「アフマダーバードは再度占領されましたが、ムンバイ南部近郊、亜大陸南端の橋頭堡は今だに維持できています。」

 

ウィリアム「そうか…突入部隊は即座に回収しろ!光線級が再度出てきたら、宇宙駆逐艦群は壊滅する!その前に回収を急げ!橋頭堡は拠点強化を念頭に防衛を行なえ!死守とは言わんができる限りそこを抑えておけ!」

 

統合管制官「はっ!即座に命令します!」

 

…カタカタカタ…

 

 

副官「総司令官。」

 

ウィリアム「あぁ、君か。作戦は失敗だよ。」

 

副官「聞きました。」

 

ウィリアム「…焦って聞き忘れていた…。インド亜大陸東部はどうなってるか君は知ってるか?」

 

副官「それを聞きに行ったんですよ。現在、予定通り防衛には成功してますが、ハイヴ攻略が失敗したことで襲来する数が徐々に増えていると…」

 

ウィリアム「報告ありがとう。」

 

 

 

 

統合管制官『全宇宙軍艦隊へ。作戦は失敗した。繰り返す、作戦は失敗した。宇宙軍艦隊は即座に残存する突入部隊を回収せよ。その他艦艇は回収艦の援護に当たれ。海軍部隊は残ってる橋頭堡を全力で支援し防衛に当たれ。この命令は各軍司令部を介さずに伝えている。最優先事項だ。』

 

 

 

~ジャンムーハイヴ周辺平原~

 

ここでは、ジャンムーハイヴ突入部隊の残存部隊が集結していた…

 

アンナ「父さん…」

 

士官「少佐、我々の乗る艦が来ました。」

 

アンナ「分かった。行くぞ。」

 

士官「はっ!」

 

 

 

乗る艦はフレッチャー006だった…

 

 

乗る艦が少しつづ降り始め、着陸した…

 

そして、全員が乗った…

 

 

フレッチャー006艦内…

 

 

アンナ「よろしくお願いします。」

 

ゲーリング「艦長のゲーリング少佐だ。少佐。しっかり休め。」

 

アンナ「はっ。」

 

ゲーリング「…そうだ。父のことは残念だったな。」

 

アンナ「…!」

 

ゲーリング「…作戦会議の前にあってな。話を少ししたんだ。あの人は凄かった…娘だろ?戦い抜くんだ…父親の為にな。」

 

アンナ「…は…い…」

 

アンナは…静かに涙を流した…

 

他の部隊も収容され、全艦が一斉に離陸した…

 

 

さらに、ムンバイ、ボパールハイヴ方面部隊も収容を完了し離陸した…

 

 

 

 

ハイヴから出現する光線属種は…出現直後に掃討する等、宇宙駆逐艦群が撃墜される危険性が高いため、かなり気を使っていた…

 

 

 

 

 

 

しかし…ジュリーナガルハイヴに居座る巨大な個体には注意が向けられなかった…

 

奴が…国を滅ぼすほどの光線を発射できることも知らずに……

 

 

 

 

 

~インド管区首都ニューデリー:軍総司令部~

 

 

アサーヴ「ハイヴ攻略が失敗したか…。」

 

アドリーグ「これで、また、BETAの攻勢が一段と激しくなるな。」

 

アサーヴ「東部領域は?」

 

アドリーグ「BETAによる攻勢が激化、海軍の支援もあるが数日しか持ちこたえそうにないらしい。」

 

アサーヴ「そうか…」

 

……数分後…状況をモニターで見ていた時…

 

 

 

 

 

オペレーター1「ジュリーナガルハイヴに高エネルギー反応補足!!居座ってる個体からです!」

 

アサーヴ「予測射程と威力、推定攻撃目標は?!」

 

オペレーター1「計算中………出ました!…これは……」

 

そのオペレーターは体が震え…喋られなくなった…緊張ではない…恐怖からである…

 

 

オペレーター2「どうしたの!…代わります!…え…嘘…」

 

アドリーグ「どうした!」

 

オペレーター2「答えます…威力、射程ともに未知数です!推定攻撃目標は…ここです!」

 

アドリーグ「…未知数か…」

 

アサーヴ「つまり…これが最大出力ということか…防げるか?」

 

技術主任「おそらく可能でしょう。」

 

 

オペレーター3「屋外観測兵より通信。ジュリーナガル方面より光が見えるとのことです…」

 

アサーヴ「光…?外部カメラをモニターに映せ!」

 

 

モニターに映された映像に司令部の全員が畏怖を感じた…

ジュリーナガルの方向に…山の向こうから光が見えていた…上空に光が伸びていたから…

 

 

 

 

~ジュリーナガルハイヴ~

 

 

 

 

 

そこにいたのは巨大な化け物だ…

 

荷電粒子を身体中に纏い…前方中心には多大な荷電粒子のエネルギーを束ねていた…

 

 

 

 

ムンバイを2度の遠距離光線攻撃により壊滅させた個体である…

 

 

 

そして…!

 

 

 

身体中に纏っていた荷電粒子が前方の一点に収束され…光の輪が生成され…

 

それもまた、その輪の中心に収束されていく…

 

 

収束されきった…直後…

 

 

 

膨大なエネルギーが渦を巻きながら、発射された…!

 

 

 

 

オペレーター2「高エネルギー反応!来ます!」

 

アサーヴ「総員直撃に備えろ!」

 

 

 

 

 

膨大なエネルギーが防護結界へと直撃…

荷電粒子と結界が相互干渉した…

 

 

 

 

 

そのエネルギーには膨大な電磁波が含まれており、最大出力の荷電粒子エネルギーに含まれた電磁波は司令部内の電子機器に施された白の世界によって貼られた対電磁シールドを尽く破り、破壊した…!

 

 

 

オペレーター1「電源ダウンしました!各種機器類、機能停止!」

 

アサーヴ「非常電源に切り替えろ!電子機器類は修復急げ!」

 

オペレーター1「非常電源起動まで数分かかります。」

 

アサーヴ「そうか…防護結界は?」

技術主任「なんとか…保っている。」

 

アサーヴ「…ここもそろそろ危ないかもな…」

 

アドリーグ「…アサーヴ…そろそろか。」

 

将校「何を…」

アサーヴ「ニューデリー脱出の最終段階へ入れ!」

 

 

 

 

一方…

 

荷電粒子エネルギーは今も照射しづつけており、既に1枚目の防護結界は破られた…

 

 

突然、その膨大なエネルギーは向きを変え…空を一閃した…!

 

直後…多数の火球が生まれた…

 

 

 

謎の巨大な個体は宇宙駆逐艦部隊へと狙いを変えたのだった…

 

 

 

 

 

 

~フレッチャー006~

 

 

士官「…な、なんだ…!」

 

ゲーリング「…電子機器が全てダウンしやがった…それに…片方のエンジンが消えてるし…」

 

士官「艦長…!高度がどんどん下がってます!」

 

アンナ「ゲーリング少佐、この衝撃は…」

 

ゲーリング「分からんが……手動操縦に切り替えろ!」

 

士官「しかし…エンジンが停止してます…」

 

ゲーリング「おいおい、この艦になんで翼があるのか分からんか?滑空するんだよ。」

 

士官「少佐は戦闘機に乗ったことは?」

 

ゲーリング「ある。それも輸送機や爆撃機も乗った。遮蔽解除、窓からの視界がないと操作できやしねぇ…」

 

 

 

 

ゲーリングは元は凄腕の戦闘機乗りだった為、手動操縦も上手くこなし…艦を安定させた…

 

 

 

ゲーリング「なんとかなったか…あとは滑空だが…」

 

士官「司令、レーダーと通信システムが回復しました。」

 

ゲーリング「レーダ表示をモニターに出せ。」

 

士官「はい。」

 

 

 

モニターに映された表示を見て息を飲んだ…

 

ゲーリング「これは…何だこの撃沈数は…」

 

 

そこには艦隊の中央がほとんど消え去っていることが表示された…

 

約40隻もの艦艇が消滅した…

 

 

ゲーリング「通信回線開け。」

 

 

『こちら、フレッチャー066…味方艦艇が撃沈どうなってんだ!』

 

『フレッチャー043だ!光線攻撃が見えて…まさか、ここまで…』

 

『こちら、司令部、速やかに撤退しろ。モタモタしてるとまた来るぞ!』

 

 

 

 

ゲーリングは悲鳴とも思える怒号が飛び交う通信を数秒間聞いたあと…通信を切り…聞いた…

 

ゲーリング「…光線か…だが、電磁波付きとなると…荷電粒子砲に似たやつか…?」

 

アンナ「…それは…私にも…」

 

ゲーリング「そうか…」

 

アンナ「…それよりも…この艦、滑空していますが…いずれはどこかに着陸しますよね…どこに…」

 

ゲーリング「…それなんだが…陸上だと衝撃が強いからな…ベンガル湾へ着水することにした…」

 

アンナ「着水ですか!?…しかし…」

 

ゲーリング「心配は無用だ。あそこには多国籍艦隊が集結している。救助してもらえるだろう。」

 

アンナ「…そうではなく…着水は大丈夫ですか?」

 

ゲーリング「そういう心配か…無論…経験はないが…成功させてみせるさ…俺は信じろ。」

 

アンナ「…はい。」

 

 

数分たち…

 

 

 

 

ゲーリング「着水態勢!総員しっかりつかまれ!」

 

 

宇宙駆逐艦フレッチャー006は急激に速度を落とし…着水した…

 

 

ゲーリング「姿勢は安定してるな…成功だ。」

 

士官「良かった…」

 

すると…突然通信が入った…

 

 

ジェームズ『フレッチャー006か?こちら、アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊インド洋派遣部隊旗艦、航空母艦ハリー・S・トルーマンだ。見るところ、成功したようだが…救助活動を行う。』

 

ゲーリング「A級軌道宇宙駆逐艦フレッチャー006です。まさか…アレン中将みずから通信を入れてくるとは…」

 

ジェームズ『それは別にどうでもいいことじゃないのか?実の所は…1分前ほどに同じように着水してくる駆逐艦群がいて、その応対に通信兵や空きの士官が当てられていたが…ちょうど貴艦の時に私しか手空きがいなかったわけだ。』

 

ゲーリング「そういう事でしたか…」

 

ジェームズ『さて、まずは全員を取り付けられている脱出ボートに乗せろ。駆逐艦は後で工作艦が回収する。まずは脱出ボートに乗せられた人員はオーストラリア・オセアニア連邦の海軍輸送艇に乗せ、オーストラリアへ行かせる。構わないな?』

 

ゲーリング「構いません。軍人は上官の命令には従うものです。」

 

ジェームズ『そうだったな。では、直ぐに脱出ボートに全員乗せろ。いいな。』

 

ゲーリング「はっ!」

 

 

 

 

 

 

10分前…

 

 

 

~ジュリーナガルハイヴ~

 

 

文明の光が消え、完全に真っ暗闇となったジュリーナガル…

 

 

その時…

 

 

 

 

巨大な光線が東へと発射された…!

 

 

 

 

 

 

その光線はヒマラヤ山脈山麓を大きく抉り…ミャンマー、タイの小都市を破壊し尽くし…バンコクへと直撃した!

 

しかし、バンコクは防護結界が貼られていたため、防ぎ切った…が、たった1枚の結界の為、貫通し…1部地区を壊滅させた…

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…

4月28日午前6時…

 

 

 

オーストラリア・オセアニア連邦 シドニー

 

西側軍事条約協定機構軍総司令部地下2階大会議室

 

そこは重々しい雰囲気に包まれていた…

オペレーション・ブロッサムの作戦結果報告会議を開いていたのだった…

 

 

総参謀長「…では、突入部隊の報告をします。中央アジア方面軍。」

 

中央アジア方面軍連絡将校

「はっ!一概に言うと…作戦は失敗です。以後、詳細な報告を行います。」

 

 

「まず、ジュリーナガルハイヴ突入部隊ですが…最終目的地である中核…大広間と呼びますが、広い空間までの突入に成功しました。しかし、その場にいた個体…我々は仮称として頭脳級と呼んでいます。に荷電粒子攻撃を受け、大打撃を受け、撤退を開始しました。ハイヴの無力化に失敗した他、情報採取もあまり結果はいいとも言えません。被害として…臨時第1大隊のグレゴリアン大佐が戦死しました…特殊戦略情報部第5大隊含めて…半数が戦死しました。」

 

「次にムンバイハイヴ突入部隊ですが、中核までの突入は出来ませんでした。道中…いえ、中核を第5層としますと…第4層にて大規模BETA群の襲来を受け撤退。被害としては4割以上が戦死、臨時第2大隊のラーフ中佐は重傷を負いながらも無事ですが…特殊戦略情報部第6大隊の白井1尉が戦死しました。」

 

「最後にボパールハイヴ突入部隊ですが、中核まで突入に成功したものの、そこがBETAの転送生成区画だったらしく…頭上より押しつぶされました…また、他区画からのBETAも押し寄せ、包囲状態にありながら戦闘を行い脱出しました。ただ、被害は大きく、臨時第3大隊のゲーツ中佐は戦死、特殊戦略情報部第7大隊のイェスパ大尉は1時命の危険を伴うほどの重傷を負いました。突入部隊は6割以上が戦死しました…」

 

総参謀長「他の損害は?」

 

カリーニン「インド管区軍です。インド管区海軍西部コマンド艦隊旗艦ヴィクラントが大破しました。」

 

総参謀長「詳細を言ってくれ。」

 

カリーニン「インド亜大陸西南沖を航行中に重光線級の照射を受けました。完全な狙い撃ちです。大破と言いましたが…応急処置があまり効果がなく損害が広がっているため、総員退艦の上で自沈処分しました。」

 

 

 

総参謀長「以上ですかな…では…」

 

ウィリアム「まだあるだろう!」

 

 

今まで黙っていたタイラー大将が口を開き、その第一声は威厳のある怒りのこもった声だった…

 

総参謀長「申し訳ございません!」

 

ウィリアム「分かればいい…」

 

「作戦失敗の通信後…宇宙駆逐艦40隻以上の損失がでた…この件について、なにかあるか…」

 

中央アジア方面軍連絡将校

「はっ!…その件の犯人は…ジュリーナガルハイヴに居座る巨大個体、アメリカ合衆国軍呼称《レッドウォルフ》…この個体はその時未知数だった過去最大出力の荷電粒子エネルギーをニューデリーへと照射、ニューデリーの防護結界はこれに耐えます…が、その後…

巨大個体がその荷電粒子エネルギーを上空へと薙ぎ払った結果…そのような被害が発生しました。また、2度目の発射でヒマラヤ山脈の一部山麓が崩壊し、ミャンマー、タイを破壊し、バンコクにも直撃、結界は張っていた模様ですが、耐えられず1部区画が壊滅させられました。」

 

ウィリアム「駆逐艦以外に被害は?」

 

カリーニン「インド管区軍です。相次ぐBETAの侵攻によりすり減っていた北部防衛線がヒマラヤ山脈山麓部の崩壊による混乱で瓦解しました。」

 

総参謀長「……北部がか…」

 

中央アジア方面軍連絡将校

「中央アジア方面軍からも1つ。ネパール、ブータンで救助活動をしていた部隊がヒマラヤ山脈山麓の崩壊に巻き込まれ、通信が途絶しました。」

 

総参謀長「民間人はどれくらい脱出できたのか?」

 

中央アジア方面軍連絡将校「3分の2は脱出できたとの報告がありますのでそれ以上かと…」

 

 

ウィリアム「…第1目的、第2目的は失敗に終わったが…第3目的はどうなのだ?若干成功したと聞いたが…詳細を知りたい。」

 

中央アジア方面軍連絡将校「はっ!報告します。アフマダーバードは占領されましたが…ムンバイ南にあるチプルン、亜大陸南端付近のコラムを橋頭堡として確保しています。亜大陸東側主にビシャーカパトナムへ援軍を派遣していますが、ムンバイ、ボパールハイヴからの増援が加わっており、抑え始めています。」

 

ウィリアム「対策は練っているか?」

 

中央アジア方面軍連絡将校「ほぼ、独断専行になるのですが、橋頭堡として確保してる2地点は結界を貼ってもらっており、強固な防衛体制を敷いています。亜大陸東部へと侵攻を続けるBETA群に対しては魔法協会と統括軍、U.S.M.F.、日本国陸上自衛隊から打診があり、ジャイプールにインド管区軍、オーストラリア・オセアニア連邦陸軍と共にゲートを使って輸送し、ボパールハイヴへの陽動攻撃を仕掛け、BETAの数を漸減する行動をしています。」

 

ウィリアム「それは今、現在進行中だな?」

 

中央アジア方面軍連絡将校「はい。」

 

ウィリアム「その漸減作戦の成否は作戦後明らかなる。今は彼らの健闘を祈るしかない。」

 

中央アジア方面軍連絡将校「はっ!」

 

……

その後…作戦参加部隊で現地から離れた部隊の整理が行われた…

 

 

……

 

総参謀長「司令、サウジアラビア軍士官から報告が。発言許可を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

ウィリアム「構わないが…」

 

総参謀長「サウジアラビア軍。」

 

サウジアラビア軍士官「はい。サウジアラビア王国連合です。先程軍上層部から通信を受けたのですが、スエズ運河の奪還に成功したようです。」

 

 

その報告に会議室の各地から歓声が上がった…

 

 

ウィリアム「現在はどうなっている?」

 

サウジアラビア軍士官「はい。現在、サウジアラビア、イラク、トルコとの連合軍を組み、勢いの無くなったイスラム教軍をユーラシア大陸から追い出しているところです。」

 

ウィリアム「サウジアラビア軍にはそちらの方面を担当させよう。」

 

 

 

「以後、各自は撤退を完了次第、部隊の再編成を急がせろ。」

 

 

 




次回予告

chapter10 小さき抵抗

ジャイプールに連合軍が集結した…
彼らは…東部への侵攻を防ぐため…高い戦果をあげる…


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番外編1 中東の安定へ

やばい…文字数がやばい…

誤字脱字はあるかもしれないです…


スエズ運河奪還作戦です!


 

 

 

 

北アフリカ…中東にある勢力が拡大していた…

 

 

 

『イスラム教軍』…

 

 

 

イスラム教に入信しないものを容赦なく射殺し、異種族や異世界人を拷問、殺害や解体をするなど…非人道的行為を当然と思っているイスラム過激派の連中である…

 

 

『大侵略』によって、北アフリカ、特にエジプト、スーダン、リビア等は政府が崩壊した以上に壊滅的被害を受け…このようなイスラム過激派組織が生まれる温床になった…

 

 

 

 

現在北アフリカの大部分が制圧され、南アフリカ諸国はこの勢いに恐れ、連合体であるアフリカ民主主義連邦を設立させた…

 

 

 

そして、中東にも手を伸ばし…

現在、トルコ連邦共和国、中央アジア連合イラク管区、サウジアラビア王国連合が攻撃を受けていた…

 

 

 

トルコはクルド人問題による民族抗争の隙をつかれ、トルコ東部を占領され、ある戦線では首都アンカラまで400㎞の地点まで攻められており…トルコ政府はすでにイスタンブールに首都機能を移転している。

 

 

イラクは旧シリア国境で防衛線を張り、侵攻を防いでおるものの、余剰兵力が無く、物量と自爆攻撃により反撃の機会を見いだしていない。

 

 

戦争そのものに不慣れなサウジアラビアは駐留していた米軍の支援を受け、防衛線を構築

優勢は掴めていないものの余剰兵力が存在した。

 

 

 

 

4月25日…

 

 

 

~サウジアラビア王国軍総司令部~

 

 

 

アフラー・ビン・ムハンマド女王が…そこにいた…

 

 

彼女は前ムハンマド国王より遺言によって王位を継承した…

反発が強かったものの、次々に出す強行策によって反対勢力を鎮圧、数年でサウジアラビア王国の治安、財政を安定させた

大侵略後は政府が崩壊したイエメン、オマーンを併合、王族に両国の元首に就かせ、連合国家に組み込んだ

 

 

 

アル・ヘブライ最高司令官

「女王陛下、ここにいらしたのですか…」

 

アフラー「ああ、戦況は分かっている。」

 

アル「…流石です…」

 

アフラー「…未だに優勢を掴めていないようだな。」

 

アル「残念ながら…」

 

アフラー「…奴らは預言者ムハンマドの後継者と謳っているが…馬鹿げている。」

 

アル「イスラム過激派等…殲滅できればしたいものです!」

 

アフラー「そうか…」

 

アル「では…女王陛下は宮殿に戻り下さい。ここからは胡散臭い戦の話です。」

 

アフラー「…ああ、戻ろう。」

 

 

 

そういい、アフラー女王は戻っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…作戦会議が始まった…

 

 

アル「現在、我々は旧エジプト、旧ヨルダン国境で防衛線を敷いている。だが、それがいつまで持つか…だ。」

 

参謀1「奴らはスエズ運河を渡り、次々と兵力が輸送されてきています。現状、奴らの矛先はトルコへと向けられていますが…そこが落とされてしまえば次は…標的は我々とイラクです。」

 

参謀2「イラクと我々サウジアラビア。人口も少ない上、兵力が少ないです。奴らの物量に対抗出来るのかが疑問です。」

 

アル「あぁ、そこでだ。スエズ運河を落とせば、奴らの勢いが収まるのではないか…」

 

参謀1「確かにそうではありますが…奴らもそこが重要ということは分かっているでしょう。頑強な抵抗が予想されます。」

 

アル「…それは我々もだ。この作戦にはギリシャ、イタリア、トルコ、イラク、アフリカ連邦が参加してくれる。」

 

参謀2「かなり大勢ですな。」

 

アル「女王陛下付きのあの優秀な外交官のおかげだ。それと、アメリカ第五艦隊から打診があったのだが、この作戦を聞き付けたCIAが大統領に進言してアメリカ合衆国アフリカ方面軍が参加することになったらしい。」

 

参謀2「…アフリカ方面軍となると…地上部隊及び空軍ですね…」

 

アル「今回の作戦概要を発表する。アフリカ連邦及びアメリカ合衆国アフリカ方面軍はイスラム教軍に対して積極的攻勢を開始。また、ギリシャ、イタリア空軍は北アフリカ沿岸の港湾都市を破壊する。その間に我々サウジアラビア軍は予備を除いた全戦力でスエズ運河東岸へ到達する。また、トルコ海軍と我々サウジアラビア海軍紅海艦隊を南北から向かわせる。内陸部はトルコ、イラク共に作戦開始前より積極的攻勢を行われる。」

 

参謀1「奴らを抑えるためにこれ程しないといけないとは…」

 

アル「だが、スエズ運河はそれ以上の価値がある。」

 

参謀2「コストではなくて…人の命です…」

 

アル「…そうか…」

 

 

「2日前、イスタンブールの学校にて爆弾テロが起きた…多くの子供が亡くなった…」

 

 

参謀3「司令?」

 

 

「14時間前には首都リヤドの学校にて銃撃事件が起きた…制圧部隊が到達するまでの数分間で2クラス分の子供達が亡くなるか、身体に重度の障害を生んだ…」

 

 

参謀1「司令!作戦会議中にその話は…」

 

 

アル「いいから聞け。すぐ終わる。」

 

 

「また、奴らの支配下では、反抗したものは子供であっても殺されている…女なら年齢問わず男の慰め者にされているという。…異種族…異世界人は存在するだけで殺されるか生きたたま臓器解体される……」

 

 

 

アル「…分かるな…?」

 

 

今まで黙っていた主席参謀が口を開く…

 

 

主席参謀「静かに聞いていましたが…理解しました…」

 

 

 

アル「そう…」

 

 

「我々かどこかの国が…スエズ運河を放置するだけで…多くの人々が殺されるのだ…また、奴らを放っておくだけで精神を壊される女性達がいる…」

 

 

参謀1「奴らを放っておく訳には行かない…ですね?」

 

アル「そうだ。12時間後に作戦を開始する!通信部は各軍に開始時刻を通達しとけ!」

 

通信兵「はっ!」

 

 

 

 

 

アフリカ民主主義連邦 南アフリカ共和国

 

アメリカ軍ヨハネスブルグ空軍基地

 

 

アフリカ随一のアメリカ軍基地であるヨハネスブルグ空軍基地からPB-3超音速ステルス戦略爆撃機が離陸した…合計10機…

 

 

 

 

 

 

アラビア半島 サウジアラビア王国

 

ジーザーン港

 

 

サウジアラビア王国海軍紅海艦隊20隻が出航した…

 

 

 

 

 

 

 

地中海 マルタ島沖

 

欧州連合海軍第2地中海艦隊

 

 

旗艦:ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世級通常動力型航空母艦ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世

 

 

???「…作戦実行だ。やれ!」

 

号令をかけたのは…

 

欧州連合海軍第2地中海艦隊司令…

 

カルメーロ・アリプランディ中将だった…

 

 

管制官『全機発進!繰り返す、全機発進せよ!』

 

 

航空母艦ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世よりユーロファイタータイフーン戦闘機が飛び立っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

イラク管区 旧シリア東部国境

 

 

そこではイラク管区陸軍第2機甲大隊が随伴する連隊規模の歩兵とともに国境を突破、イスラム教軍の叫びながら突っ込んでくる兵士をT-72M戦車の125㎜戦車砲で粉砕し、時には兵士を戦車の履帯で蹂躙しながら前進した…

イスラム教軍が鹵獲したT-72戦車が飛び出してくるが、空軍のSu-25攻撃機からの対地ミサイルでこれを撃破…また相次ぐロケット弾攻撃で歩兵を粉砕する…!

 

このように順調に侵攻していたイラク管区軍だったが…障害にぶつかってしまう…

 

「イスラム教軍は馬鹿ではない…」

 

ある指揮官が言った言葉だが…本当にその通りである…

 

 

イスラム教軍は旧シリア中央部のタドムルを中心に防衛線を建設し…そこで膠着状態に陥ってしまう…

 

 

 

だが、別の方面でも侵攻は行われていた

 

 

 

 

 

 

トルコ連邦共和国 旧シリア北部国境

 

 

トルコ政府はクルド人問題を誘発させた時の大統領を辞めさせ、今の大統領において国内のクルド人問題は一応の解決を見せていた…

また、トルコ軍はクルド人、そして、再び国を追われたユダヤ人達を希望者に絞り軍に採用し、今回の作戦では前線部隊に配備されていた…

 

亡命イスラエル軍とクルド人部隊は

【祖国奪還】と【新たな国の建設】という偉大な事業を行うため…

狂信者とは違う…勇敢にメルカバMk.5を駆り敵陣に突撃を敢行した…!

 

その2つを纏めているトルコ軍は旧シリアの都市アレッポにて立てこもっていた旧シリアの反政府勢力と合流…

勢いを増しつつ進軍した…

 

 

 

しかし…ついにこちらでもその勢いを失われた…

イスラム教軍がホムスという都市を中心に防衛線を構築…頑強な抵抗を受け、持久戦となったからである…

 

 

 

 

最後の頼みはサウジアラビアに託された…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧チャド共和国大気圏内限界上空

 

そこに…10機のPB-3超音速ステルス戦略爆撃機とFS-1宙空両用戦略偵察攻撃機20機が進んでいた…

 

元々PB-3は最高高度はもう少し低かった…しかし大侵略後の白の世界の技術輸出により性能が向上し、圧倒的な飛行能力を持つ世界最大の爆撃機となった…

 

 

爆撃機隊1番機機長『パットンリーダーよりケープタウンコントロール、命令の最終確認を求む。繰り返す、命令の最終確認を求む。』

 

ケープタウン空軍基地『こちら、ケープタウンコントロール。命令はチャド、リビア、スーダン、エジプト、アルジェリア等のイスラム教軍の内陸部軍事基地の爆撃である。命令に変更はない。繰り返す、命令に変更はない。』

 

爆撃機隊1番機機長『こちら、パットンリーダー了解。狂信者共に250キロトンの洗礼を言い渡す。』

 

ケープタウン空軍基地『健闘を祈る。』

 

 

 

 

パイロット1「通信終わりましたか…」

 

機長「ああ。」

 

パイロット2「しかし、最高ですな!こうやって空を飛べるなんて。」

 

機長「インドじゃそんなこと出来ないからな。光線級という制空権すらも奪い取る化け物のせいでな。」

 

パイロット3「ですね。ん…そろそろ爆撃目標です。」

 

機長『全機散開、各自の割り振られた爆撃目標へと爆撃せよ。目標破壊後、予定空域で合流する。』

 

 

1番機を除くPB-3戦略爆撃機9機はFS-1戦略偵察攻撃機を伴って、ブースターに点火後、爆撃機とは思えない軽快な機動性で散開した…

 

 

1番機の爆撃目標は真っ直ぐ前方にあった…

 

 

機長「ハッチ開け。」

 

パイロット1「投下ハッチ開きます。」

 

機長「クラスター弾はどうだ?」

 

パイロット2「クラスター弾投下準備完了!」

 

 

そして…爆撃機が爆撃目標から少し手前に着いたところで…

 

 

 

 

ハッチより"巨大な爆弾"が1発落とされ、その後少し小さめの爆弾が次々と投下された…

 

 

"巨大な爆弾"

 

 

それは西側軍事条約協定機構軍が1部の国で共同開発した250キロトン級C18核弾頭…の地中貫通型である…

 

 

 

 

投下数秒後…

 

 

 

地下に隠されていたイスラム教軍の基地に地中貫通型核弾頭が突き刺さり、起爆…

 

 

巨大なきのこ雲が出来上がった…

さらにクラスター弾により周辺にいたイスラム教軍の戦闘員を粉砕した…

 

 

 

 

 

その後、予定空域で散開していた9機のPB-3戦略爆撃機が伴っていたFS-1戦略偵察攻撃機とともに合流…

 

 

機長『こちら、パットンリーダー。ケープタウンコントロールへ。チャドの軍事基地の全壊を確認。アルジェリアへと向かう。』

 

ケープタウン空軍基地『こちら、ケープタウンコントロール。パットンリーダーへ。引き続き任務を継続せよ。健闘を祈る。戦果報告は帰還後に受ける。また、毎回の命令確認は無線封鎖命令の為、お断りしたい。』

 

機長『パットンリーダー了解。』

 

 

機長「帰還後に戦果報告はめんどいんだよぉ!」

 

パイロット1「仕方ないと思います。それに毎回通信するのは無線封鎖の点から…」

 

機長「分かっている…。」

 

『全機、回頭。アルジェリアへと転進する。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地中海 マルタ島沖

 

欧州連合海軍第2地中海艦隊

 

 

旗艦:航空母艦ヴィットーリオ・エマヌエーレ2 世

 

パイロット1『こちら、第13戦闘機隊!トリポリの防空拠点の壊滅を確認!』

 

パイロット『こちら、第5攻撃隊!チュニスの防空拠点を破壊!ざまぁ!』

 

管制官『補給が必要な機体はすぐさま帰還せよ。狂信者だからといって舐めるな!』

 

 

カルメーロ「順調だな…」

 

参謀1「絶好調ですよ。」

 

カルメーロ「ところで強襲揚陸艦に陸上部隊は乗せてるか?」

 

参謀2「は…スペインと我らイタリアの部隊がいます…規模は一個大隊規模です。」

 

カルメーロ「ふむ…リビアへ強襲上陸を仕掛けられないかな?」

 

参謀1「……………え…?」

 

カルメーロ「…リビア沿岸にその部隊を強襲上陸を仕掛けるのだ。」

 

参謀2「…話はわかります…ですが、元の作戦にはないことです…」

 

カルメーロ「作戦通りでは…期待した戦果も望めんではないのか?戦いは臨機応変にやるものだよ。これはかつて、オスマン帝国領であったリビア侵攻に倣うものだよ…。」

 

参謀1「戦史で習いましたが…やるのですか…」

 

カルメーロ「ああ。全艦に通達。リビアへの強襲上陸を行う!リビア沿岸の障害となるものを全て取り除け!空軍部隊発進!ミサイル駆逐艦隊は前進し、露払いを行え!」

 

 

 

第2地中海艦隊独断でリビア沿岸への強襲上陸作戦が実行された…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…12時間が過ぎた…

 

 

 

 

サウジアラビア王国軍総司令部報道室…

 

 

アル『国民の皆様、外国の報道関係者、そして、イスラム教徒の皆様。我々サウジアラビアはスエズ運河奪還作戦を開始します!』

 

 

 

 

その声に街では歓声が沸いた…

 

 

 

 

 

アル『作戦名はありません。元よりイスラム教軍という狂信者からイスラムの領土を解放することはイスラム国家としての義務だからです。』

 

『そして、もし…"ジハード"という言葉が"聖戦"を意味するならば…これこそが…メッカ、メディナという2つの聖地をいただく我らサウジアラビアが行うこの戦いこそ"ジハード"だ!』

 

 

『これより作戦開始する!全将兵の健闘を祈る!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その号令の直後…

 

 

 

 

 

 

旧ヨルダン国境に貼り付けていた一個師団規模のサウジアラビア軍機甲部隊とアメリカ軍第34機甲支援大隊が突撃を開始した…!

 

 

 

 

 

イスラム教軍も大部隊を用意していたが、サウジアラビア軍のM1A1D戦車やアメリカ軍のM1A3戦車の突撃に早期にT-72戦車部隊は殲滅されてしまう…

 

 

最も早い部隊は数時間でアカバ湾を輸送艇で渡り、シナイ半島のダハブ及びシャルム・エル・シェイクを占領する

 

また、その数時間後には旧ヨルダン首都のアンマンを制圧する…

 

そこからは二手に分かれ、エルサレム、ダマスカス占領部隊へ分かれるが、予想を上回る大部隊がおり、一時膠着状態に陥ってしまう…

 

 

 

~サウジアラビア王国軍総司令部~

 

 

参謀1「ダマスカス、エルサレム占領部隊からの報告。敵の大部隊の防衛線により戦況が膠着状態との事です!」

 

参謀2「5時間で突破できるとのことですが…」

 

アル「ダメだ。占領はともかく突破など…敵はイェニチェリでは無いなら…」

 

参謀2「どうします?」

 

アル「……」

 

「北側のシナイ半島沖に展開するトルコ海軍に通達。我が軍の支援はもういい。ホムスを攻略しているトルコ陸軍、友軍の支援をお願いする。と伝達しろ。」

 

通信兵「はっ!」

 

 

 

 

~東地中海 シナイ半島沖

 

トルコ海軍第5戦闘群

 

旗艦: タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦スレイマン一世

 

通信員「司令、サウジアラビア軍司令部からです。」

 

艦隊司令「サウジアラビア軍から?……」

 

参謀「どのような内容です?」

 

艦隊司令「…現任務を放棄し、トルコ陸軍の支援に向かえとな。」

 

参謀「今からですか…!?」

 

艦隊司令「…全くわがままなヤツらだ。だが、友軍を支援できるぐらい嬉しいことは無い。全艦に連絡!イスラエル沿岸付近に向かえと。スピードが大事だ!着いた艦から支援攻撃を始めよ!」

 

 

トルコ軍が全力でホムス攻略に手をつけ始め…そして…約1時間でホムスが陥落…

 

トルコ軍は一時的な補給の後、ダマスカスへと向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

~サウジアラビア王国軍総司令部~

 

参謀1「トルコ軍がホムスを制圧!続いてダマスカスに進行中!」

 

アル「イラク管区軍が攻めてるタドムルはどうだ?」

 

参謀2「……それは…まだ…」

 

主席参謀「司令!ジョージア軍が作戦参加表明を出しました!」

 

参謀1「今更っ…」

 

主席参謀「まだある!…その直後、ジョージア軍航空部隊がイラク領空を超えタドムルへ到達、A-10サンダーボルトによって構成される支援攻撃機隊でタドムルの敵部隊を掃討しました…!その後、イラク軍がタドムルを制圧したとの事です!」

 

アル「…ほう…その航空部隊は?」

 

主席参謀「現在、イラク領内の空軍基地にて補給を行っています。それともう一つ報告が。」

 

アル「何だ?」

 

主席参謀「トルコ軍がトルコ東部のイスラム教軍を掃討完了したとの事です。その後、ダマスカス攻略へと主力を回しています!」

 

参謀2「あと、残されるここのイスラム教軍の都市はダマスカスとエルサレムのみ…」

 

アル「あぁ…。エルサレムに全軍の3割を集中しろ。その部隊は陣地を構築の上、待機だ。他の7割の部隊はシナイ半島へ進軍させる!」

 

主席参謀「はっ!」

 

アル「シナイ半島のダハブ、シャルム・エル・シェイクの部隊は?」

 

参謀1「現在、橋頭堡を築き、敵の大攻勢に対する防衛に成功中です。工兵部隊により簡易的な港を作り、いつでも撤退できる状態のこと。」

 

アル「…よし、そろそろ本番だ。スエズ運河を奪還する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

紅海

 

サウジアラビア王国海軍紅海艦隊

 

 

シナイ半島に向かって艦隊は前進していた…

 

 

旗艦:メデルシャウト級現代型巡洋戦艦メデルシャウト

 

シャルンホルスト級巡洋戦艦とアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦を元にしたと言われているこの艦はアフリカ大陸のイスラム教軍の基地に向かって、正確射撃が行える射撃統制装置により250㎝3連装砲を絶え間なく撃ち放っていた…

 

 

 

マフムード・イル・ハーン艦隊司令

「静かなる海だな…」

 

参謀「それ、フラグですよ…」

 

レーダー手「アフリカ大陸方向に戦闘機反応6!」

 

参謀「やっぱり…機体は確認できるか?」

 

レーダー手「識別中……MIG-23です!」

 

マフムード「迎撃機を出す。軽空母ゾフドラスに連絡。タイフーンL発艦させろ!」

 

 

 

 

 

5秒後には発艦準備が完了し…タイフーンL4機が飛び立った…

 

 

 

 

隊長『第5小隊長機より各機へ。敵は旧式だが油断するな。』

 

アブル『大丈夫だと思いますよ?』

 

隊長『貴様のようなやつが落とされるのだ。さて…FOX2!』

 

 

 

6機より空対空ミサイルが放たれ…2機のMIG-23は撃墜…しかし、もう2機は直前に回避運動を行ったり、フレアを大量に炊くなどして回避した…

 

 

隊長『全機、これより近接航空戦に移行する。ミサイルは使えん。バルカン砲のみとなる。やれるな?』

 

パイロット『『『『おう!』』』』

 

 

最初のバルカン砲の引き金を引いたのはアブルだった…

 

アブル「くらいやがれ!」

 

MIG-23の後方に素早く付いたアブルのタイフーンLはつかず離れずでどんな旋回機動にも耐え、そして、25㎜バルカン砲をコクピットに直撃させ…主翼を折り…エンジンを壊し…撃墜した…

 

 

 

アブル「よっしゃぁ…!」

 

 

その時にはもう1つの敵機も落とされていた...

 

 

その頃艦隊では…

 

 

レーダー手「敵機全機撃墜。」

 

通信士官「司令部より伝達。作戦海域へ急行せよとのことです。」

 

マフムード「全機回収する。帰投せよ。」

 

隊長『了解。帰投します。』

 

マフムード「砲撃やめ。全艦厳戒態勢の上で最大戦速!」

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦は最終段階へと入った…

 

 

 

 

 

 

サウジアラビア王国軍機甲師団及びアメリカ合衆国陸軍第34機甲大隊は旧イスラエル南部にて南北方面の2部隊に分かれた…

 

 

 

南側方面は手始めに旧イスラエル最南端の都市エイラートを制圧

 

旧エジプト領に侵入しここまで二手に分かれ、主力部隊はシナイ半島の中央街道を西進

別働隊はシナイ半島を街道上に南下する

 

北側方面は地中海沿いの街道を西進…

 

 

 

 

 

当初は南側方面でダハブ、シャルム・エル・シェイクの友軍と合流し、攻勢を仕掛けていたイスラム教軍の二線級部隊を少ない損害で殲滅する…

 

 

 

 

しかし、中央街道、北側街道にて大部隊に遭遇…膠着状態となる…

 

 

 

 

 

 

 

 

~サウジアラビア王国軍総司令部~

 

主席参謀「シナイ半島中央街道、北側街道にて膠着状態!ですが、ダマスカスとは状況が違います!」

 

アル「…イェニチェリか…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

イェニチェリ…

 

 

イスラム教軍の最高練度集団である…

狂信者とも知られており、

どんなに損害を重ねても降伏しない…という

かなり厄介な部隊である

陸、空にかなりの人数がいる

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

参謀1「来るとは思っていましたが、実際に当たると…面倒な相手です。」

 

参謀2「突破は出来ますが…奴らは降伏しません…殲滅する必要があるかと…」

 

アル「分かっているが…」

 

アルはあることに気づいた…

通信兵と主任参謀がこちらに聞こえないぐらいの声で話していることに…

 

 

主席参謀「……司令、速報です!」

アル「何だ?」

 

 

主席参謀「トルコ・イラク連合軍がダマスカスを制圧!また、ギリシャ海兵隊がテルアビブを制圧しました。」

 

アル「何…」

 

主席参謀「そして、トルコ軍ダマスカス攻略部隊司令官からの伝言です。『エルサレムはトルコ、ギリシャ、イラクの連合軍で制圧する。サウジアラビアはスエズ運河の奪還に全力を尽くせ!』と…」

 

アル「…全陸海空軍に通達。シナイ半島に集結…」

 

参謀2「はっ!」

 

主席参謀「…もう1つ速報が入りました!イタリア、スペイン連合軍が第2地中海艦隊の援護を受けながら、リビアへの強襲上陸に成功!トリポリも制圧したとの事です!」

 

アル「…?…元々作戦予定にはなかったが…?」

 

主席参謀「第2地中海艦隊司令アリプランディ海軍中将の独断です。」

 

アル「…あの独断専行野郎か…まあ、いい。これで敵はリビアにも兵力を集中せざるおえなくなる…」

 

主席参謀「では?」

 

アル「全戦力をシナイ半島に回せ!それと、シナイ半島の部隊はスエズ運河へ向かえ!」

 

 

 

 

 

 

 

シナイ半島 中央部

 

サウジアラビア王国陸軍第4機甲師団

 

師団長『全将兵に達する!総司令部から命令が下された…前進せよ!イェニチェリの野郎が敵であろうと我々は前進しなければいけないのだ!恐らくこれがスエズ運河への道の最後の大攻勢だ!総員、身を引きしめて行け!』

 

 

 

 

その号令とともに進撃が開始された…

 

 

 

 

 

 

 

陸では…

 

 

 

戦車部隊同士とそれに随伴する歩兵部隊同士の激戦になっていた…

また、後方から敵味方の制圧砲撃等の砲火が飛び交っていた…

 

 

ストーク戦車中隊…

 

ストーク4『こちら、ストーク4、対戦車ミサイルを受け損害激しい…グォッ!…』

 

ストーク8『ストーク8だ!ストーク9がやられた!くそっ、まずい、手榴弾がァ!…』

 

 

~ストーク3~

 

砲手「敵歩兵、対戦車ミサイル発射…!」

 

車長「回避しろ!グッ!」

 

操舵手「そんなの無理です!履帯が破壊された…!こんな砲火の中、修理できるわけない!」

 

車長「分かってるわ…応戦しろ!」

 

砲手「正気ですか!?こんな砲火の中で立ち往生なんて…」

 

車長「正気だ!敵戦車はT-72だ。このM1A1の装甲を貫通できるわけがない…」

 

 

その直後、1両のT-72戦車から125㎜砲弾が放たれ、直撃する…!

 

だが、M1A1戦車は健在だった…

 

 

車長「…いってぇ…衝撃で頭を打ったが…それだけだ!」

 

砲手「もうっ、どうにでもなれ!発射…!」

 

 

反撃とばかりにM1A1戦車より120㎜砲弾が放たれ、T-72戦車に命中…数秒後爆散した…!

 

このような応酬が何度も繰り返されていた…

 

 

 

 

空では…

 

 

 

サウジアラビア王国空海軍のタイフーンL戦闘機、イタリア空海軍のEF-2000戦闘機、イラク空軍のSu-30Mk1、トルコ空軍のF-16戦闘機、ギリシャ空軍のタイフーン戦闘機等が連合航空部隊を組み、対するイスラム教軍はMIG-29、MIG-23戦闘機が出されており、空で激戦を繰り広げていた…

 

 

 

ドグール航空大隊…

 

 

ドグール8『くそっ…ブレイクブレイク…!グハッ…くっそ…』

 

ドグール6『ドグール8がやられた!…くっそ!今度はこっちかよ!』

 

ドグール4『こっちに2機向かってくる!…1機はやった…だが、もう1機…!』

 

ドグール7『…あいつら、並じゃないぞ!強すぎる!』

 

ドグール2『ドグール2より各機、こちらは5機をやった…だが…体力の消耗と燃料の消費が激しい…一旦戦域より離脱する!』

 

ドグール1『この練度…奴ら…イェニチェリか!』

 

ドグールリーダー『だろうな…おっと…』

 

ドグール3『敵機…撃墜!…はぁ…はぁ…はぁ……グワッ…くっそ…落ちる…』

 

ドグール5『ドグール3!?…仇はうつ…斉射!……4機撃墜確認!』

 

 

 

 

 

 

 

サウジアラビア王国陸軍はシナイ半島での膠着状態を抜け出そうと奮闘しているものの、抜け出せず…

 

連合航空部隊はイェニチェリ航空集団に予想外を超えた苦戦を強いられていた…

 

 

 

 

 

 

 

その最中…トルコ・イラク・ギリシャ・ジョージア連合軍がエルサレムを制圧したとの報がサウジアラビア王国軍総司令部に入った…

 

これで…イスラム教軍は中東の主要都市を失った…

 

また、イタリア・スペインを中心とする欧州連合陸軍がリビア西部を完全制圧したとの報も入った…

 

 

 

その2分後…

 

 

サウジアラビア王国軍全将兵へオープン回線で総司令部から通信が繋がった…

 

 

 

 

『サウジアラビア王国軍将兵の皆、いや、ムスリムの同胞達!私は王国軍最高司令官アル・ヘブライだ。イタリアがリビアへの強襲上陸を果たしたことを知っているものは一部の司令官にいるだろう。リビアはエジプトの隣だ。そこで私は全将兵に問う。パスタなんかを食いまくってるイタリア人に先を越されていいのか!!エジプトのカイロに一番乗りをされていいのか!私は断じて否と言いたい!我々はサウジアラビアの民だ!砂漠という過酷な環境で暮らしている。一方イタリアはどうだ?砂漠もない…人が住むには心地よい環境で暮らしている。我々は彼らとは違う!過酷な環境で暮らし戦い抜いた!まさしく砂漠の戦士だ!砂漠の戦士は強い!そして、イスラム教軍もまた強い。だが、我々は狂った強さではない!真の…本当の強さだ!狂ってなどいない!この真の強さ…狂信者どもに見せつけてやれ!死という概念をもって見せつけてやるのだ!』

 

 

 

 

 

 

 

この世紀に残ると思われる大演説はサウジアラビア王国軍全将兵を奮い立たせた…

 

 

 

 

 

瞬時に戦況が変わったのは陸だった…

 

 

 

 

 

サウジアラビア軍戦車部隊が暴力という言葉がお似合いなほどイェニチェリ歩兵部隊を叩き潰し、T-72等の戦車部隊はM1A1戦車による無双で叩き潰された…

 

 

 

 

空でも連合航空部隊の中でサウジアラビア王国空軍は演説を聞いた後、獅子奮迅の奮闘をみせ…他の空軍パイロットを唖然とさせた…

 

それでもトルコ空軍とイラク空軍は同じ中東に住む民としてサウジアラビアに負けじとサウジアラビア王国空軍に次ぐ戦いを見せた…

 

 

この結果…

 

 

 

 

空は多くの犠牲を強いられたものの…敵機全機を撃墜…制空権を確保した…

 

 

残ってる戦闘機は戦ったあとの勲章かのように…全て傷と煤だらけだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

4月27日

 

 

 

 

長い戦闘の末、先遣隊がスエズ運河南端の都市スエズ、北端の都市ポート・サイド、西岸都市イスマイリヤに入った…

 

 

 

 

 

 

しかし、そこでは…イスラム教軍がゲリラ戦術を駆使し、損害を重ねて行った…

 

 

兵士1『…こちら…ごぼ…あがっ…』

 

兵士2『おい…グハッ…』

 

 

 

 

この状況に先遣隊攻撃ヘリ部隊司令官

ウマル・サイードは…

 

ウマル「ぐぬぬぬ…」

 

 

数秒の沈黙の後…

 

 

 

『全部隊に連絡…運河航行に必要な設備以外は全て破壊せよ。街も補給用の石油タンクもだ!』

 

部下「待ってください!街もですか…!?あれを破壊するとしたら…」

 

ウマル「別に問題にはならねぇよ…一般人は住んでないし、住んでてもイスラム教軍だけだ。運河に関しては機雷とかが埋まってる可能性があるからその除去作業の上で石油タンク等の運河設備の復旧をすればいい。」

 

部下「はっ…」

 

 

 

M1A1戦車、自走砲、野戦砲連隊による制圧砲撃

 

攻撃ヘリ部隊による掃討

 

タイフーンL戦闘機による精密爆撃が行われ…

 

 

 

 

 

イスラム教軍の兵士は全ていなくなった…

 

 

 

 

 

スエズ運河の都市に入った時刻から数時間が経過した頃…

 

 

 

サウジアラビア王国政府によるスエズ運河制圧が公表された…

 

 

 

 

 

 

その後、スエズ運河西岸のイスマイリヤに集結して再編成されたサウジアラビア・トルコ・イラク連合エジプト方面軍は旧エジプトの首都カイロを目指して進軍を開始した…

 

 

カイロは既にアメリカ合衆国アフリカ方面軍のPB-3戦略爆撃機のMOAB投下により廃墟とかしていたが、それでも都市であることには変わりはなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウジアラビア王国 首都リヤド 広場

 

同日中にスエズ運河奪還作戦の成功が発表された…

 

アフラー女王陛下が演説し…アル=ヘブライ王国軍最高司令官も演説した…

 

 

 

 

 

アフラー「立派な演説でしたね。」

 

アル「陛下ほどではありません。」

 

アフラー「やはり、自分をほこらない性格なのですね。で、聞きましたよ。あの大演説…」

 

アル「あれは…お恥ずかしい限りです…」

 

アフラー「まあ…クスクス…」

 

 

 

 

 

2人が壇上から下り…立ち止まって話していた頃…

 

 

 

 

 

 

突如として警備兵の制止を振り切り、1人の少女が走ってきた…

 

 

花束を持ってるため…祝福するためだと…誰もが思った…

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

少女「…女王陛下…覚悟!…」

 

 

向けたその手には…長射程型散弾銃が握られていた…

 

 

 

 

 

 

 

それが火を吹いた直後、ヘブライ司令官は咄嗟に前へ踏み出して…女王陛下を守った…

 

 

 

 

 

5発を超える大口径の破片散弾を身に受けながら…

 

 

 

 

 

 

アル「グハッ…」

 

アフラー「…アル!…」

 

 

 

すぐさま…ヘブライ司令官は仰向けに倒れ込み…アフラー女王が何とか…後頭部を抱えた…

 

 

 

撃った少女は固まっていたところを警備兵に小銃一弾倉分の銃撃を受け…死亡した…

 

警備兵「これだから…狂信者共は…」

 

その警備兵はイスラム教軍に恨みがあるのか…その少女の強く踏みつけつつ…唾を吐いた…

 

 

 

 

アフラー「アル…!誰か…!」

 

 

ヘブライ司令官の状態は最悪だった…

 

体の各所から血を流し…心臓を避けられたものの、胃に破片が刺さっており…口から吐血していた…

 

 

 

アル「…カハッ…女王…陛下…無事…でしたか…」

 

アフラー「私は無事よ!だから!生きて!」

 

 

 

 

出血量が致死量を既にオーバーしており、もうだめかと思われたが…

 

 

 

主席参謀「司令!魔法協会リヤド支部の治療魔法士が来ました…早くしてくれ!」

 

魔法士「分かっています。治癒魔法…」

 

 

その魔法士はヘブライ司令官の体に触れ…

 

 

魔法士「…展開…」

 

 

 

すると…徐々に傷は無くなり…

 

 

 

 

 

銃撃を受ける前の状態に戻っていた…

 

 

アル「…死んだかと思ったが…生きてる…あぁ…魔法士か…すまない。」

 

魔法士「いえ…」

 

アル「女王陛下…心配…」

 

アフラー「アル!!…」

 

 

アフラー女王は…泣きながら…ヘブライ司令官に抱きついた…

 

 

アル「…女王陛下…いえ…アフラー様…私は無事です…」

 

アフラー「…アル・ヘブライ…取り乱して済まない…」

 

アル「いえ…」

 

アフラー「ヘブライ司令官。今後とも対イスラム教軍にやるのだな?」

 

アル「もちろんです。」

 

アフラー「…頑張ってください…」

 

アル「?…あ…はっ!」

 

アフラー「…ところでそこの少女はどうするのです?」

 

アル「魔法士、生き返らせることは可能か?」

 

魔法士「…無理です。もう…」

 

アル「…そうか…。警備兵。」

 

警備兵「はい!」

 

アル「遺体を踏むな…それに汚すな…。イスラム教軍に洗脳されたのだ…少女に罪はない。そして、死者には優しくしろ。」

 

警備兵「…分かりました…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スエズ運河の奪還に成功した…

 

 

 

 

 

これにより、小アジア地域は安定化の一途を辿り、スエズ運河の航行が可能になった…

 

 

 

 

 

世界は平和への道を模索する…




見てくれてありがとうございます

ちょっとした解説(ある人に習ってやります)


アフラー・ビン・ムハンマド(女)

サウジアラビア国王

本分にも説明描きましたがそれに追記で
金髪…やばい金髪美女
西洋の血は入ってないはずなのに
クール、そして…
20代


アル・ヘブライ

サウジアラビア王国軍最高司令官

堅実な人…有能
大侵略以前からの軍内部の改革で腐った老人共を蹴落としてきた
演説だけはやばい上手い
40代という若さ


カルメーロ・K・アリプランディ

欧州連合海軍第2地中海艦隊司令 イタリア海軍中将

50歳
独断専行頻発するけど有能…有能なんだけど…有能であるけれど…
すごい変態、やばい変態
10代から60代の美女にナンパしまくる
自分の家には日本から輸入したイタリア語翻訳の18禁同人誌がめちゃある
イタリアの同人誌ファンクラブの会長


マフムード・イル・ハーン

サウジアラビア王国海軍紅海艦隊司令

普通に有能な人、ただし、フラグを回収するのが上手い
こいつの予言した事めっちゃ当たる(特に悪いことだけ)


ウマル・サイード

階級は決めてないっす()
勇猛、以上、閉廷!()





ジョージア共和国


南コーカサス地方(カスピ海と黒海の間)の国
一般から見れば普通の国
しかし、軍事関係者から見れば極度の変態国家
海軍と空軍が2000年代の南コーカサス紛争で壊滅して以来、陸軍(歩兵と装甲車のみ)と沿岸警備隊しか居ない
ある軍事顧問がA-10サンダーボルトに惚れてから、
2020年から毎年アメリカからA-10サンダーボルトしか輸入していない極度の変態
実戦投入は今作戦が初めて
国としては魔法に対しては中立ではあるけれどアメリカに寄りすがっている

(国の内情は2018以降はオリジナル設定です)



イスラム教軍が支配するアフリカへの本格的な侵攻作戦…

今後書くかもしれません


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chapter11 陥落…死者との約定

 

 

 

 

 

 

 

 

4月29日早朝

 

 

 

~中央アジア連合インド管区首都ニューデリー~

 

~管区軍総司令部:中央司令室~

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでは多くの司令部要員がわざわざ倉庫から引っ張り出してきたベッドで仮眠を取っていて、一部の司令部要員は目を擦りながら…それぞれの作業に当たっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オペレーター「……ジュリーナガルにて高エネルギー反応来ます!…」

 

 

 

 

 

 

 

その方向から光が走り…ニューデリー手前で結界にぶつかり…電磁波を散らす…!!

 

 

 

 

 

 

将校「…何回も何回も…どれだけやる気だ…」

 

 

オペレーター「…落とすまででしょうね…」

 

 

 

 

アサーヴ「起きてたか…」

 

 

将校「ええ。では、交代します。」

 

 

アサーヴ「いや、これから会議だ。来い。」

 

 

 

 

 

司令部内のある部屋…

 

 

 

アドリーグ「…まさか、こんな小さい光で会議をすることになるとはな…」

 

 

 

この部屋は電気がつかず、太陽の光も届かない場所の為、なんとか小さい自己発電型ライトで照らした…

 

 

 

 

将校「仕方ありませんな…奴のせいで…」

 

 

アサーヴ「…この小さい光…この老人にはきついぞ…」

 

 

アドリーグ「…主任、やつの放つ荷電粒子砲による電磁波で電子機器は概ね破壊されているが、結界装置は大丈夫なのか?」

 

 

技術主任「白の世界の技術なので今のところ大丈夫ですが…もし、さらなる最大出力の電磁波受けた時は…もしです。突破されるかもしれません。」

 

 

アサーヴ「その時など元より覚悟はしている。分かっていたことだ。」

 

 

アドリーグ「…現状突破はされてはいない。だが、兵士達の疲労も激しい。それに通信によれば、ジャイプール陽動作戦後、バングラデシュへの侵攻が激化したらしい…。残っているのはここだけだ。」

 

 

将校「…また、先程の通り、『レッドウォルフ』の砲撃を食らってますが、それだけです。BETA群はここをガン無視しております。」

 

 

 

 

アサーヴ「…ニューデリー放棄を進めるしかないかもな。」

 

 

技術主任「……ですが、ここを前哨基地として機能できないんでしょうか?」

 

 

アサーヴ「…無理だ…それに毎回あの荷電粒子砲に晒されるんだ。装備や補給が良くても、士気が低下しては戦闘にさえならん。お前もわかっているだろう。」

 

 

技術主任「…分かりました…従います。」

 

 

アサーヴ「司令室へ戻るぞ。それと、全員を起こせ。その間に私はフォッシュ議長と話してくる。」

 

 

将校「はっ!」

 

 

 

 

 

通信室…

 

 

アサーヴ『…フォッシュ議長…そして、ウラヴミッチ大統領…お話よろしいでしょうか?』

 

 

フォッシュ『続きを話せ。』

 

 

アサーヴ『はい。我々インド軍は遂にここニューデリーを放棄することにしました。議長と大統領。構いませんか?』

 

 

フォッシュ『無論…脱出の準備を整えていた…問題ない。』

 

 

ウラヴミッチ『…覚悟はしていた…大丈夫だ。』

 

 

アサーヴ『…では、政府の皆さんは即座にゲートへ向かってください。向かう先はオーストラリアのシドニー演習場です。今後のニューデリーにおける撤退は我々軍の仕事です。』

 

 

フォッシュ『分かった…最後にと思っていたが…直ぐに向かおう。』

 

 

 

 

 

 

 

~中央司令室~

 

 

 

 

 

アサーヴ「ここの要員は…全員集まったか…。恐らく、これから私が話すことは皆予想しているだろうが…あえて話そう。」

 

 

「我々はここ、ニューデリーを放棄する。これは既に議長及び大統領から了承は得ている。…」

 

 

ここまでは多少の違いはあれど、司令部要員それぞれが予想できたことだった…

 

 

 

 

しかし…次の言葉は驚かせるには十分だった…

 

 

 

 

 

「そして…私はここに残る。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!?!?!?!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

数秒の沈黙の後、声を発したのはアドリーグ・ヨハントシェフ中将だった…

 

 

 

 

 

アドリーグ「…貴様っ!一体何を考えているっ!他のものは行かせて自分だけ残ると!しょうもない理由だったら貴様をぶん殴るぞ!」

 

 

 

アドリーグはアサーヴの胸ぐらを掴み壁に押し付け叫んだ…!

 

アサーヴ「…しょうもない理由ではない…!」

 

 

 

アサーヴはアドリーグに対し一瞬だが殺気放ちながら、いつもより低い声音で言った…

 

 

 

 

 

アドリーグ「…!?…なら、話せ。何故貴様が残るのかを…」

 

アドリーグは一瞬その殺気にたじろいたが…強く胸ぐらを掴んだ後…静かに放した…

 

 

 

 

 

 

アサーヴ「…皆もか…?」

 

 

将校「…もちろんです…"弟子"として…」

 

 

技術主任「…短い間ですが、生死を共にした…聞きたいです。」

 

 

その他のオペレーターや部下、掃除係に至るまでアサーヴが周りを見渡す限り頷いていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

アサーヴ「…全く…アドリーグ…話すとしよう。」

 

 

アドリーグ「…貴様は断言してるが、俺がしょうもない理由と感じたら強制しても貴様を連れていく。老衰になるまでこき使ってやるさ。」

 

 

アサーヴ「…その必要は無い。わかっているだろう。」

 

 

「俺の初戦は第二次印パ戦争というのは言っただろう。年は20歳ぐらいだったな。」

 

 

 

「そこで新兵だった頃に俺は2人の友人にであった、いや、まだ友人ではなかったか。彼らと共に生死を共にしていていつしか親友になったのさ。第二次印パ戦争で3人とも生き残り、勲章級の活躍により昇進した。それでもまだ同じ所属だった。」

 

 

「その後、どこだったか覚えてないが、ある河川の脇で約束…いや誓を結んだ。」

 

 

~回想~

 

 

 

 

 

1つ、我々は生きるのに執念深くあること!

 

1つ、一人一人死ぬ事は運に任せ、諦めん!

 

1つ、我々は生まれる日違えども、同年、同月、同日、そして、一緒の時に死ぬことを願う!

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、その誓は簡単に破られてしまった…」

 

 

 

「第三次印パ戦争のおいて、友人二人ともが死んでしまい、私だけが生き残ってしまった……」

 

 

 

「二人の戦死の報告を聞いた時、私は死にたかった…だが、誓を守らなければと思い苦しんだ。無意識に前線へ進んでたこともあったが部下にとめられ、それはなし得なかった。」

 

 

 

「その後、私は生き続けた、昇進もし、軍改革において腐った上層部を粛清もした。そして、今の立場、階級になったのだ」

 

 

 

 

アサーヴ「……これが私が残る理由だ。」

 

 

アドリーグ「俺にはどうもしょうもない理由に聞こえてしょうがないのだが…?」

 

 

将校「それに、自発的でしょう。これは…」

 

 

アドリーグ「俺もそう思うさ。どうなんだ?アサーヴ。」

 

 

アサーヴ「自発的ではない!俺の足がここに残るべき…といってるんだ…」

 

 

アドリーグ「……踏み出せんのか…」

 

 

アサーヴ「…ふっ…まさか…俺の生きたい気持ちにこれ程足が抵抗するとは思わんかった…」

 

 

アドリーグ「…寝れば収まるだろう…」

 

 

アサーヴ「だが、このような老人が生きてなんになる?それに…」

 

 

「このBETAに蹂躙された国土を最期まで見届けたいのだ。」

 

 

アドリーグ「…意思は硬い…か?」

 

 

アサーヴ「無論だ…俺の足もな。」

 

 

アドリーグ「…後で2人で話そう。」

 

 

将校「…"師匠"……」

 

 

アサーヴ「師匠と言うな。バラト。」

 

 

バラト…彼の名はバラト・ドゥビーであった…

 

 

バラト「師匠は師匠です!恩師を失くすのは…辛すぎます!…」

 

 

 

 

アサーヴ「……そうか…分かった…。皆、ニューデリーから完全撤退するまでの間、希望者だけになるが、一対一で10分程度の話し合いを許そう。これで私とも会うのは最後だ。次があると思うなよ。それと、アドリーグ。」

 

 

アドリーグ「…何だ?」

 

 

アサーヴ「…兵士たちの一部、残留民間人の1部でここに残るものを募ってくれ。」

 

 

アドリーグ「残留民間人だと、まだいたのか?」

 

 

アサーヴ「隠れていたらしいがな。」

 

 

アドリーグ「…分かった。貴様がここに残るのには承諾しかねる…が、役目は果たそう。」

 

 

アサーヴ「済まない…」

 

 

アドリーグ「謝罪は嫌いだ。貴様は悪くは無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

撤退までの時間の間、この司令部の人員やかつてアサーヴが指揮してた者達、残っている士官学校の後輩等がアサーヴと話を交わし…

 

 

 

 

女性であれば、話し終わったあと…ガクッと膝を落とし泣き叫ぶ者もおり…

 

男性であれば、壁に頭をうちつけ、涙を静かに流していた者もいた…

 

 

 

 

そして…

 

 

 

アドリーグ「…やはり、貴様の意思は硬いようだな。アサーヴ。正直に言うが、俺は貴様をぶん殴っても連れていきたい…が、もう、貴様を残す事になったんだ。彼らの泣き顔は台無しにしたくはない。」

 

 

アサーヴ「…話し残すことはあるのか?同僚として。」

 

 

アドリーグ「…無いな。だが、こうやって声を発して会話するだけでも構わんよ。俺の意見だが、声を交わすことだけで別れられるもの同士が親友なんじゃないかとかな…。」

 

 

アサーヴ「…そうか……。アドリーグ、お前…泣いてるな?」

 

 

アドリーグ「うるせぇ!…クククっ…まさか…この歳になって泣くことがあるとはな。聞くことが一つだけある。次のインド軍指揮官は誰にするつもりだ。」

 

 

アサーヴ「順列的にアドリーグ、お前だと思うのだがな。」

 

 

アドリーグ「…いや、俺は軍全体を指揮する立場ではない…やつになってもらおう。」

 

 

アサーヴ「…お前はそれでいいのか?」

 

 

アドリーグ「…構わんよ。おれはそもそも出世欲がない。この階級と役職はなるべくしてなった…それだけの事だ。」

 

 

アサーヴ「…そうか…バラトの補佐は頼んだ。」

 

 

アドリーグ「分かった…。」

 

 

 

次に入ってきたのはバラトだった…

 

 

バラト「……弟子として別れるのは辛いです。」

 

 

既に30であるはずのこの男は…震えていた…

 

 

アサーヴ「そうか…」

 

 

バラト「そうか、じゃありませんよ!弟子が恩師をなくすことがどれほど辛いか!分かってますよね?」

 

 

アサーヴ「分かっているつもりだ。」

 

 

バラト「…ここに残る理由は既に理解はしています。しかし…辛いんです…」

 

 

アサーヴ「辛い…そうか…なら、これを持っていてくれないか?」

 

 

バラト「これは…」

 

 

そこにはあるのは第二次印パ戦争から戦場に出る時はいつも携帯している帽子とタオル、そして、古いライフル銃であった…

 

 

 

バラト「この銃、ずっと使っていたものでは?なぜ?」

 

 

アサーヴ「ずっと使っていたからこそお前に託したい。それは俺の半身と呼べるものだ。だから、お前はずっと俺と一緒にいられる。」

 

 

バラト「…それはただの精神論では…?」

 

 

アサーヴ「…俺もそう思っていたのだが、かつての亡き親友達の道具を持つとな…一緒にいる気がするんだよ。だからだ。」

 

 

バラト「…分かりました。大事に持っています。しかし、死ぬとは決まっていませんが、今回携帯するのは…」

 

 

アサーヴ「無論、誓を交わした二人の愛銃だ。」

 

 

バラト「…やっぱり、分かりませんな…」

 

 

アサーヴ「分からんか…まあ、いつかわかる時が来るだろうな。」

 

 

バラト「……健闘を祈ります!」

 

 

アサーヴ「…期待しておれ、…というか、言いながら泣くなよ…おれが困る…」

 

 

バラト「ですが…悲しいんです!」

 

 

アサーヴ「…悲しいのはおそらく誰も同じだ。そうだ。今後、インド軍指揮官はお前だ。」

 

 

バラト「…え…」

 

 

アサーヴ「アドリーグの奴は断ったからな。そうすると、お前になる。正直お前には期待しているよ。」

 

 

バラト「…泣かそうとしてませんか?」

 

 

アサーヴ「…そうだろうな…まあ、最後なんだし…」

 

 

バラト「……では。」

 

 

アサーヴ「ああ。」

 

 

 

その後数時間が経ち…ゲートへ兵士たちが次々に進んでいる頃…

 

 

 

 

アサーヴ「さて、そろそろ向かうか。ん?どうした?」

 

 

そこにはアサーヴが嫌っているような感じで接していた技術主任の姿があった…

 

 

 

 

 

技術主任「結界解除準備が整ったことを報告しに来ただけですが、その機会に少し話してみようかと…」

 

 

アサーヴ「…そうか…そういや名を聞いていなかったな。」

 

 

技術主任「今更すぎますな…レーノルド・マッキンリー中佐です。隠していたのですが、アメリカ空軍白の世界派遣顧問そして、白の世界研究者であります。」

 

 

アサーヴ「…ふんっ…」

 

 

レーノルド「しかし、あなたのような人が残るのですか…老人らしく生き延びていく思いましたが…」

 

 

アサーヴ「さらっと悪い冗談を言うな。」

 

 

レーノルド「申し訳ありません。しかし…こうも死ぬ時を前にしてるものを見ると…何かを感じるんですよね…」

 

 

アサーヴ「研究者に相応しくない言い分だな。」

 

 

レーノルド「…さて、これでも私は白の世界の義肢をつけており、戦闘能力は高いです。ゲートの前におりますのでご連絡を。」

 

 

アサーヴ「…分かった…」

 

 

 

 

 

 

 

2時間後…

 

 

 

 

ニューデリー中心街

 

 

 

 

 

ニューデリー全域から民間人、軍人合わせて撤退を開始し、今ここにいるのは残留してアサーヴ・クマール大将と一緒に戦いたいと思う民間人と兵士たちであった…

 

 

さらにそこには旧式兵器が連なっており、例を挙げるならば、1番古いのは戦間期に開発されたイギリス陸軍の『オードナンスQF25ポンド砲』、1番新しいのは旧ソ連陸軍から譲渡された『T-55戦車』がいた

 

 

これらは全て博物館から持ってきた兵器であり、BETAに全て破壊されるよりかは実戦で使った方がマシということで使われることになった

 

 

アサーヴ「お前ら!これが最後の戦いだ!ここが長く保てれば、それだけ退いて行ったもの達への奉公となる!できるだけここを守りきるぞ!人間はBETA等に負けるわけがないんだからな!」

 

 

兵士たちはそれが虚勢を張った言い方だと分かっていた……だが、

 

 

兵士「「うぉぉぉ!!」」

彼を励ますかのように答えた…

 

 

 

 

 

 

 

 

アサーヴ『マッキンリー中佐、準備は出来た。解除してくれ。』

 

 

レーノルド『…いいのですか?』

 

 

アサーヴ『言わせるな…構わん…』

 

 

レーノルド『分かりました…』

 

 

 

 

レーノルド『解除カウントダウン開始!あと5秒で解除されます!では!』

 

 

アサーヴ『あぁ、生き残ってくれよ。』

 

 

5

 

4

 

3

 

2

 

1

 

 

……全員が臨戦態勢のまま、あっという間に5秒が過ぎた…

 

 

 

かすかに結界が蒼く輝き、半透明なフィールドは透明なり消えた…

 

 

 

 

 

 

 

その直後…ジュリーナガルハイヴより放たれた荷電粒子砲と思われる光線が都市上空で拡散

 

最低でも8つの光線に分かれニューデリー市内各地を直撃した…

 

 

 

幸いにしてアサーヴ達義勇部隊のいるニューデリー中心部には直撃しなかった

 

 

 

が、異変が起きた…

 

 

 

 

 

 

 

 

兵士「偵察兵より伝達、BETA群進路を変え、こちらに接近しつつあり!」

 

 

アサーヴ「やはりか…各員戦闘配置!使えるものはなんでも使え!」

 

 

アサーヴ(やはり、結界が貼られていてBETA群が進行できないと思っていたんだろう…だから、わざと後回しにしていた…か…)

 

 

 

 

周辺のBETA群は突然進路を変え結界が無くなったことによりすんなり入れるようになったニューデリー市内へと進入

 

幸いにして八本脚のデカブツ(要塞級)及び2種類の目玉野郎(光線級と重光線級)足の速い亀野郎(突撃級)はいなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

兵士「てぇーっ!」

 

 

 

オードナンスQF25ポンド砲などの火砲が火を吹き、榴弾が前方の赤いやつ(戦車級)巨大な腕を持った白いやつ(要撃級)に直撃する

 

 

 

 

さらにT-55戦車を中心とする旧式戦車群が100㎜や105㎜、90㎜、76㎜砲等を放つ…!

 

 

 

 

 

 

両者とも現代的な射撃管制装置等持っていないため、命中率は低いがそれでも期待以上の戦果を挙げ、BETA群の先鋒を血祭りに挙げた

 

 

 

 

 

 

しかし…終末の時は迫っていた…

 

 

 

 

数が多いBETA群は元よりその環境適応能力もあり、戦車級は微妙の開いた空間から迂回し、歩兵部隊を突いた…

 

 

歩兵達はRPGや対戦車砲、対戦車ライフルといった対戦車装備で対抗するが、先鋒は撃破しても後続が続々と投入されていく状況に劣勢になり、一部戦線が横からの攻撃で突破された…

 

 

兵士「…ぐ…がぁぁぁ…!」

 

 

 

 

さらに前方の戦線も突破され、戦車達は踏み潰されたり、砲塔を外され、中の乗員を喰われたりで次々と行動不能になってゆく…

 

 

 

 

 

 

義勇部隊の兵士たちが次々とやられていき…

 

 

 

 

遂にはアサーヴが最後の一人となる…

 

 

 

 

 

 

 

わずかに高い建物の屋上にたっていた為、容易に戦車級はそこを上ることが出来た…

 

 

 

アサーヴ「とうとう終わりか…親友達…もうすぐそっちに行く。」

 

 

RPGで1匹の戦車級は吹っ飛ばすも…

 

別の戦車級に左足を掴まれ、右足を潰される…

 

 

 

アサーヴ「…ぐ……だが、お前は巻き添えにしてやる!喰らえ…業火の炎を…!」

 

 

…左に持っていたスイッチを押す…

 

 

 

 

 

 

 

 

その時…アサーヴがいた建物の他、ニューデリー各地の建物が一斉起爆

 

 

 

アメリカ製のMOAB(大規模爆風爆弾)に匹敵する爆発が各地で起き…各地のBETAが道連れに死滅する…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサーヴ・クマール大将 戦死 享年79歳

 

 

 

英雄程の戦果を上げてはないにしろ、激戦の最中生き残り続ける事で昇進してきた将校

率いた部隊は他の部隊とも比べても生存率が高く、将兵から慕われていた

軍の要職につき、軍の健全化を図った…

 

 

彼の遺体は業火の炎と共に焼け…魂は天へと召された……

 

 

 

 

 

 

 

BETA群はニューデリーを占領後、進行を停止…

 

 

 

 

 

 

その停止を確認したWAMTAM軍は損耗した部隊の回復に務めたが…

 

 

その数日後…

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンムー、ムンバイ、ボパールハイヴ、新たに建設されたマドゥライ、バンガロール、ハイデラバード、ナーグプルハイヴ、建設途中のニューデリー、ジャイプールハイヴ……

 

合わせて80万のBETA群がバングラデシュへ向けて東進を開始した……




次回予告

chapter12 最後の意地


祖国をBETAに奪われた武人たちは避難民達を守るため、BETAに最後の意地を見せつける…

戦艦の砲撃、戦車の砲撃、レールガン、超音速航空機の突風、剣、銃の"咆哮"が戦場に轟く…!


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chapter12 最後の意地

 

 

 

5月1日…

 

 

 

WMTAM(西側軍事条約協定機構)軍の監視衛星『IMSS』6号がその目である物を捉えた…

 

その(カメラ)に映ったのは…

 

 

 

インド亜大陸中央部にて東進を続ける約80万のBETA群であった…

 

 

 

 

 

この情報は直ぐにWMTAM軍シドニー総司令部へと送られた

 

 

 

亡命インド軍司令部はバングラデシュにいる避難民の回収の為に可能な限りの大兵力による分散陽動及び各個撃破を目的とする大規模作戦を提案した

 

 

しかし、タイラー大将を含むWMTAM軍総司令部は後に行われる大反攻のための兵力温存を優先させたいが為に少数部隊による機動防御戦術(Active Defense)による防衛作戦を立案、亡命インド軍の提案を取り下げた

 

 

 

 

だが、亡命インド軍はこれまでの経験を元に機動防御戦術ではBETAの攻勢は抑えきれないと確信しており、極秘に作戦計画を立案、さらに他国の部隊にも協力を要請

 

多くの部隊がそれに応えた

 

 

 

翌日、オーストラリア・オセアニア連邦の各軍港より艦隊が出航する…

 

………

 

バラト「…まさか、このような形で意地を見せるとはな。」

 

 

アドリーグ「…亡くなったアサーヴの為にも…私は全力を尽くす所存です。」

 

 

バラト「分かっている。行くぞ。」

 

 

アドリーグ「はっ!」

 

 

 

 

 

5月3日…

 

 

 

 

 

アラビア海北部…

パキスタン管区カラチ沖

 

 

 

 

ニミッツ級原子力航空母艦『ロナルド・レーガン』を旗艦とするアメリカ合衆国海軍第五艦隊30隻

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦『ムハンマド・アリー』を旗艦とするサウジアラビア王国海軍アラビア海艦隊18隻

パキスタン管区海軍第6ミサイル戦隊12隻

イラク海軍第14駆逐戦隊3隻

 

 

が集結…

 

 

 

 

 

 

インド洋中部…

セイロン島ハンバントータ沖に

 

 

 

 

ロンドン級巡洋戦艦『ロンドン』を旗艦とするイギリス王立海軍第17次インド洋派遣艦隊8隻

アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦『ミッドル』を旗艦とするアメリカ海軍ディエゴガルシア島駐屯艦隊6隻

 

 

が集結…

 

 

 

 

 

 

ベンガル湾東部…

バングラデシュ管区チッタゴン沖

 

 

 

 

ヴィクラント級航空母艦『イルデハマータ』を旗艦とする亡命インド海軍広域コマンド艦隊80隻

ニミッツ級原子力航空母艦『ハリー・S・トルーマン』を旗艦し、同級『カール・ヴィンソン』『セオドア・ルーズベルト』を含むアメリカ海軍第七艦隊インド洋派遣艦隊60隻

シドニー級航空母艦『カサブランカ』を旗艦とするオーストラリア・オセアニア連邦海軍インド洋方面艦隊20隻

東南アジア連合タイ・ミャンマー連合艦隊12隻

 

 

が集結…

 

 

 

 

さらに…カザフスタン・ウズベキスタン・タジキスタン管区陸上打撃部隊がインド・パキスタン管区国境ラインに展開し、

パキスタン管区陸軍も全力出撃していた

 

また、バングラデシュ管区パッドマ・ジャムナ川沿岸では統括軍第6中隊及びオーストラリア・オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊が展開していた…

 

 

 

 

 

 

 

すでに全ての部隊が作戦開始の合図を待ち望んでいた…

 

 

 

 

同時刻…

 

 

 

~WMTAM軍総司令部: 通路~

 

 

 

WMTAM軍所属のインド軍将校であるカリーニン少佐はその廊下を走っていた…

 

彼女はアドリーグ・ヨハントシェフ中将から直接作戦について聞いていた…

…これほどの大作戦である為、WMTAM軍総司令部が怪しむのもそう時間はかからなかった…

むしろ、亡命インド軍司令部はそもそも隠し通す気は無く厳重に作戦情報を保管してもいなかった…

 

その為、WMTAM軍総司令部直轄情報局の捜査により直ぐに作戦がバレた…

その為に彼女は総司令官であるウィリアム・V・タイラー大将に呼び出された…

 

 

総司令官執務室前に着き、彼女はドアをノックする

 

ウィリアム「入れ。」

 

ウィリアムの声は若干怒気がこもっているようだった…

 

 

カリーニン「失礼します。」

 

 

ウィリアム「…私がお前を呼び出した理由、分かるな?」

 

 

カリーニン「…大規模作戦の無断実行でしょうか?」

 

 

ウィリアム「そうだ。我々は少数部隊による機動防御戦術(Active defense)の防衛計画を既に立案している…のにも関わらず!」

 

 

カリーニン「…恐れながら…それは…無理があります。」

 

 

ウィリアム「…何?」

 

 

カリーニン「機動防御戦術はそもそも推定された範囲内での敵の侵攻を考えたものです。BETAは何を考えてるのかがわからない以上…」

 

 

ウィリアム「…その弱点を補強した戦術も立案したのだ!だから理論的に防衛は可能だ!」

 

 

カリーニン「理論的という言葉を言わないでください!全ては実戦経験から判断されます!インドはBETAとの戦闘を身体で味わってきた…あなた方オーストラリア大陸に篭もっている人とは違います!それに…今回のインド軍の行動に同調した多数の部隊はオペレーション・ブロッサムに参加し…実際に戦闘に参加したもの達です。…これがあなた方の作戦計画があってないと彼らが判断したんですよ。」

 

 

ウィリアム「……分かった…我々の作戦計画の非は認めよう。だが、亡命インド軍の作戦計画も狂ってる!避難民についてとやかく言う気は無いが、オペレーション・ブロッサム並の戦力を陽動として使うのか!もしもの時があった場合、大反攻の為の戦力温存どころではない!逆に戦力を損失してしまうぞ!」

 

 

カリーニン「では、どうするのですか!バングラデシュにいる避難民は!見殺しにする気ですか!」

 

 

ウィリアム「…水際防衛で対処する」

 

 

カリーニン「80万ものBETAに対処出来るほど水際防衛は簡単ではありませんよ!」

 

 

ウィリアム「…だが、陽動作戦は危険を伴うんだぞ!お前に行けと言った時、お前は戦場に行く覚悟はあるのか!」

 

 

カリーニン「…あります。」

 

 

ウィリアム「!?」

 

 

カリーニン「…これでも私はインド人としての誇りがあります。祖国をBETAによって追われ、むざむざ他国の地で防衛戦…こんな仕打ちがありますか!皆がBETAに一矢報いたいと思ってるんです!私だってそうです!…BETAに…()()()()()ぐらい…見せつけてもいいじゃないですか…!…お願いします…!」

 

 

彼女は…大きく頭を下げ…その間に…抑えていたはずの涙を流した…

 

 

 

ウィリアム「…総参謀長…この作戦どう思う?」

 

 

総参謀長「……ただの防衛戦では突破される可能性もあります…ここはこの作戦で陽動し各個撃破をしていくのがいいと思います。バングラデシュ防衛線が突破されれば東南アジア連合に侵攻されるのは確実です…」

 

 

ウィリアム「そうか…カリーニン少佐。」

 

 

カリーニン「はい…」

 

 

ウィリアム「…作戦実行を許可する…」

 

 

カリーニン「え…」

 

 

ウィリアム「ただし…!作戦総司令官に伝達。作戦を許可する。ただし、我々総司令部は一切の責任はとらないと。」

 

 

カリーニン「…あ…ありがとうございます!…」

 

 

ウィリアム「その前に…涙を拭け。」

 

 

カリーニン「…すいません…では。」

 

 

 

自分の持ってたハンカチで涙を拭き取り…カリーニンは敬礼して執務室を出ていった…

 

 

総参謀長「…タイラー大将は涙に弱いのですか?」

 

 

ウィリアム「そんな訳あるか。だが…()()()()()か…」

 

 

総参謀長「…とりあえず、期待はしておきますか?」

 

 

ウィリアム「そうするとしよう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンガル湾…

~作戦総旗艦『イルデハマータ』艦橋~

 

 

 

 

アドリーグ「…WMTAM総司令部のカリーニン少佐からタイラー大将からの伝言だ。」

 

 

バラト「なんと?」

 

 

アドリーグ「…作戦を許可する。ただし責任はとらないとの事だ。」

 

 

バラト「…タイラー大将…」

 

 

アドリーグ「…感傷に浸ってる暇はないぞ。そろそろ時間だ。」

 

 

バラト「…そうですね。」

 

 

バラト『全艦に達する。作戦指令書を開封せよ。開封した後は熟読せよ。』

 

 

…作戦参加艦の全ての艦橋で作戦指令書が開封される…

 

 

 

そして…

 

 

 

作戦開始時刻08:00となった…

 

 

 

バラト『時間だ。これより作戦を開始する。作戦名は火星作戦(オペレーション・マーズ)。これより火星作戦(オペレーション・マーズ)の発動を宣言する!BETAどもに、祖国の地を奪われた恨みと、()()()()()を見せつけてやれ!』

 

 

 

 

『VLS解放…!対艦ミサイルFIRE…!!』

 

 

 

作戦発動後、多数のミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦より対艦ミサイルや巡航ミサイルが連続で発射される…!!

 

 

 

 

This is USS Carl Vinson control.(こちらカール・ヴィンソン管制。)

you are cleared for takeoff.(離陸を許可する。)Good luck!(幸運を祈る!)

 

Roger.(了解。)cleared for takeoff.(離陸を開始する。)Come back with a gift.(プレゼントを持って帰ってくる。)

 

 

さらにアメリカ海軍航空母艦『カール・ヴィンソン』よりF-35ライトニングに酷似した戦闘機40機が次々と発艦していく…!

 

 

 

その戦闘機は怖いもの無しかのようにそのまま突き進んでいく…!

 

 

 

 

当然、二つ目のような照射器官をもつ『光線(レーザー)級』がその戦闘機に狙いを定め…初期補足照射を開始し、次の瞬間、本照射が放たれた…!

 

その戦闘機は『レーザー警報』がなっているのにも関わらず回避起動を取らず直進していく…

 

 

 

 

そして、レーザーが直撃する…!

 

 

()()()()()戦闘機は木っ端微塵になるはずである…そう、()()()()()

 

 

 

 

その戦闘機は半透明の蒼い薄い膜を張り、光線(レーザー)級のレーザーを防いでいた…それも()()()

 

 

《こちら、グリフォン1。カール・ヴィンソン管制へ。防御テストは成功した。繰り返す、防御テストは終了した。これより攻撃に移る。》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バングラデシュ管区ジャムナ川沿岸…

 

 

 

『…最後の意地を見せつけやれ!』

 

『HQよりCP、全部隊に命令伝達…作戦を開始された。予定通りフェイズ1を実行する。』

 

 

クリア「…()()()()()か…」

 

 

???「隊長、こちらを付けて聞きませんか?」

 

隊長と呼んだ女性の手には通信用ヘッドホンがあった…

 

 

クリア「…ラミ…通信魔法で既に聞いてるよ…」

 

 

ラミ「でも、こっちが聞きやすいと思いますよ?」

 

 

ラミはクリアの耳に勝手にヘッドホンを装着した…

 

 

クリア「ちょっと…!」

 

 

ラミ「…聞きやすいと思いまして…」

 

 

クリア「確かに聞きやすいけどさ…」

 

 

ラミ「…まあ、いいじゃないですか…?隊長。」

 

 

クリア「はぁ…あと、隊長じゃなくて隊長代理なんだけど…」

 

 

ラミ「呼びやすいじゃないですか?」

 

 

クリア「確かに…呼びやすいけど…それで、用件はヘッドホンを持ってくることだけじゃないよね?」

 

 

ラミ「さすがっ…少し話したくて…」

 

 

クリア「いいよ…けど、死亡フラグ立てるのだけはやめてね…」

 

 

ラミ「流石に立てませんよ…」

 

 

クリア「で、何?ラミの話したいことって…」

 

 

ラミ「この作戦の事なんですが…私達は陽動出来なかった群体の対処ですよね…それでもし大半が陽動出来なかったら…」

 

 

クリア「…私たち全員喰われると言いたいの?」

 

 

ラミ「…そうです…」

 

 

クリア「…まあ、そのリスクはあるよね…」

 

 

ラミ「…それでは…なぜ参加したんですか…」

 

 

クリア「…ジャイプールで…多くの仲間を失った仇討ち…と、後ろの避難民の保護…仇討ちは精神論になるんだけど…後ろには私やラミのような少女だって…そして、赤ちゃんだっている…見殺しなんでできない…」

 

 

ラミ「……」

 

 

クリア「作戦についてだけど、多分これが最適だと思う。機動防御戦術(Active Defense)なんてあるけどほぼ損害を前提にしてるし、川岸防衛もあるけど…80万のBETAを迎え撃てる戦力なんてない…ほぼ全滅必須。」

 

 

ラミ「それに比べたら…ですか?」

 

 

クリア「たぶん…あとは…味方次第かな?…それに私達の任務はすぐ後ろの避難民がバングラデシュを出たら終わり。あとは後退するだけ…戦闘含めてだけど…」

 

 

ラミ「…味方任せ…祈っておかないと…」

 

 

クリア「…祈る必要なんてない…私は信じてるよ。かならずやってくれるとね。」

 

 

ラミ「…気を引き締める必要は無いんですか…?」

 

 

クリア「…まだいいよ…そんなに慌てなくてもね。実戦の時、対処できなくなる…まだ始まったばかりだから…」

 

 

 

 

 

 

 

そう…火星作戦(オペレーション・マーズ)はまだ始まったばかり…




次回
chapter13 火星作戦(オペレーション・マーズ)


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chapter13 Operation Mars(火星作戦)

 

 

 

 

 

国際監視衛星システム(International monitoring satellite systems)やインド亜大陸上空の軌道上に留まっているアメリカ合衆国宇宙軍戦略軍事ステーション衛星『カリフォルニア』によりBETA群の動きが観測され、戦域データリンクを通じて作戦各部隊に共有されていた

 

 

シュリーナガルハイヴBETA群は特級個体呼称『レッドウォルフ』を中心に周回しているのみ

 

カシミール州南端のジャンムー、インド亜大陸西部のムンバイ、中央部のボパール、亜大陸南端のマドゥライ、南部のバンガロール、ハイデラバードハイヴ、建設途中と見られるニューデリー、ジャイプールハイヴのBETAの大半がマドゥライに集結

 

インド亜大陸東部沿岸部を北上していた

 

 

 

 

 

 

少し時を遡ること1時間前

 

ー5月3日午前8時ー

 

 

 

作戦が開始された…

 

と同時に作戦計画フェイズ1が始動する…

 

 

()()()()

元々作戦条項には"無かった"いや、そもそも極秘作戦会議の際に()()()()()()()()()

 

 

 

インド亜大陸上空のアメリカ合衆国宇宙軍戦略軍事ステーション衛星『カリフォルニア』からの質量弾攻撃が始まった

 

 

 

 

 

余談だが……

この黙認事項について作戦前日の極秘作戦会議においてアメリカ宇宙軍が提示したその理論上の計算の上での絶大な威力を目にしたオーストラリア・オセアニア連邦軍将校が

 

「そもそもこれをインド亜大陸の全ハイヴに放てばBETAを完封できるのではないか?陽動の必要性すらなくなると思うが。」

 

と言ったところ、

 

 

周りの目が正気かと疑うかのような目を彼に向け……

 

 

さらに、アメリカ海軍インド洋派遣軍司令ジェームズ・アレン海軍中将が周りの誰にもわかる形で思いっきり()()()()()を睨んだ

 

 

ジェームズ「貴様、正気か?」

 

 

オーストラリア軍将校「え?」

 

 

返答を予想していなかったその将校は素っ頓狂な声を上げる…

 

 

ジェームズ「言っておくが、インドは新兵器の実験場じゃないんだ。それにいずれ我々はインドを奪還するのだ。この質量弾攻撃は命中率は完璧ではないと彼も言っていた……貴様が言うように命中率が完璧ではないこの攻撃を全ハイヴに放ち、当たるまで撃つか?」

 

 

アレン中将は最後の言葉を声をかなり低くして聞いた…

 

 

オーストラリア軍将校「………」

 

 

そのアレン中将の殺気じみた声にその将校はまともな返答もできず……

 

 

アレン中将の怒りを買った

 

 

ジェームズ「まともな返答も出来んのか!貴様。なら、なぜ、先のようなことを口にしたのだ!発言が軽々しいぞ!もう一度言うが、貴様は新兵器の実験場……『スペイン内戦』のようにする気か?…まあ、答えられないだろうな。」

 

アレン中将はその将校に問うたが、答えられないと判断した

 

この時点で彼は既にその将校に見切りをつけていた……

 

 

 

ジェームズ「これ以上話すのにも少し煩わしくなってきた。貴様に任せておけば、インドを地獄にしそうで何をするかわからん。貴様のような人間は西側連合軍にはいらん。こいつをここから叩きだせ!いいですかな?ドゥビー少将。」

 

 

アレン中将が左を向いた奥の方にバラト・ドゥビー少将、インド軍最高司令官……そして今次作戦の総司令官を務める男がいた

 

 

彼は頷き……

 

バラト「構わない。文字通り叩きだせ。」

 

 

 

 

この一言でその将校の運命が決まった…

 

 

 

その将校は作戦会議が行われた部屋を追い出されただけではなく、西側連合軍としての籍を抹消され、オーストラリア軍に連れもどされた

 

因みにWMTAM軍総司令部に作戦計画がバレたのも、この一件が関係している

 

 

その後、紆余曲折を経て、攻撃地点をジャンムー、ボパール、マドゥライに決定された

 

 

 

 

 

 

インド亜大陸上空軌道上……

 

~戦略軍事ステーション衛星『カリフォルニア』:管制室~

 

 

ステーション司令官「よし、作戦が開始された。砲撃用意!」

 

管制官1「量子エネルギー収縮開始。」

 

管制官2「砲塔、目標地点に向けます。」

 

 

ステーション下部の40.6㎝3連装砲塔5基が回転し、砲身を地表へと向けた

 

 

管制官1「砲撃準備完了!」

 

 

ステーション司令官「砲撃開始!」

 

 

砲身の砲口が青……赤……と変化していき、最終的に黄色く青白く変化したエネルギーが一斉射撃された…!

 

 

見た目はゆっくりと見えるがこれでも超音速で地表へと降り注いでおり……

 

 

光線級や重光線級がレーザー照射を食らわすも、ビームでも実体弾でもないエネルギー弾に効果が薄く、量子エネルギー弾の塊が()()()()

 

 

 

着弾地点周囲のBETAは全て消滅し、巨大な衝撃波も組み合わさり、ジャンムー、ボパール、マドゥライの3つのハイヴはBETAの生産に支障が出るほどの損傷を受けた

 

 

管制官「攻撃成功!着弾点付近のBETAの消滅を確認!モニター回復、映像でます!」

 

モニターには3つのハイヴ…ジャンムー、ボパール、マドゥライ、それらの地上構造物(モニュメント)()()()()()()姿が移された

周りのBETAの反応も一切なかった

 

 

 

ステーション司令官「よし、作戦司令部に伝えろ!フェイズ1始動準備完了とな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今に戻る…

 

 

 

 

ベンガル湾…

 

 

アメリカ合衆国海軍戦時インド洋派遣艦隊

~旗艦:ニミッツ級原子力航空母艦『ハリー・S・トルーマン』~

 

 

オペレーター1「カール・ヴィンソン搭載機、次々と発艦。」

 

 

ジェームズ「対レーザー防御実戦テストの報告はまだか?」

 

 

オペレーター2「アレン中将。カール・ヴィンソンより伝達。」

 

 

ジェームズ「読め。」

 

 

オペレーター2「はっ。グリフォン1の対レーザー防御は成功。実戦テストは成功した。との事です!」

 

その報告を聞き、ジェームズはニヤリと表情を変えた

 

 

ジェームズ「これで制空権を取り戻せる……よし、本艦も全機上げろ!」

 

 

管制官「全機発艦用意。繰り返す、発艦用意。」

 

F-35似た艦載機、『F-36 ハンター』が4機ずつ電磁カタパルトにセットされていき、次々と打ち上げられていく…!

 

 

 

隣にいた原子力航空母艦『セオドア・ルーズベルト』も次々と『F-36 ハンター』を発艦させていく

 

 

 

オペレーター1「水上砲撃部隊、砲撃開始しました!」

 

 

 

 

 

 

 

オリッサ州プリー沖

 

 

 

127㎜から155㎜、203㎜、250㎜、406㎜、480㎜までの火砲が火を吹き、陸上の多数のBETAに着弾し吹き飛ばしていく…!

 

 

 

 

イギリス王立海軍第17次インド洋派遣艦隊

~艦隊旗艦: ロンドン級戦艦『ロンドン』艦橋~

 

 

???「ふむ、順調のようだ。」

 

 

そう、呟くのは第17次インド洋派遣艦隊司令

アーサー・ハーディング少将である

 

 

アーサー「しかし、アメリカはこの作戦に戦艦をこれ程も投入するのだな。……ふっ、北海艦隊の要を派遣してるのだから、我々も同じか…」

 

 

「まあ、我々の目的はWMTAM及びEUへのプレゼンスを高めること。増大し続けるフランスには負けてはおれんのだよ。しかしまあ……現実通り越して理想を言うとは……俺も現実を見ておらんな……生き残ることが大事というのに。」

 

 

独り言なのか誰かに話しかけてるのか、また自虐しているのか誇ってるのかよく分からない話に艦橋内のオペレーターや士官は曖昧に反応し苦笑するしか無かった

 

 

アーサー「おい、俺がどんな話をしても攻撃は続けろよな?」

 

 

士官「あ…は、はい!」

 

 

自動装填装置により再び砲弾が装填され、40.6㎝クラスター散弾が再び放たれる…

 

同型艦『ヴィクトリア』、巡洋艦『バレンタイン』、『エクセター』、その他駆逐艦4隻が『ロンドン』の砲撃に呼応して砲撃する

 

 

アメリカ合衆国海軍戦時インド洋派遣艦隊

~第3打撃戦隊旗艦:モンタナ級原子力戦艦『オハイオ』艦橋~

 

 

オペレーター「第一次砲撃、成功。イギリス艦隊、連続砲撃を開始しました。」

 

 

???「彼らは連射力に長けてるからな、自由に砲撃した方が良い。だが、我々は違う。」

 

話してるのは第3打撃戦隊司令官ブラッドリー・ダンフォード海軍少将である

 

管制官「各艦、第二次砲撃準備完了!」

 

 

ブラッドリー「よし……」

 

 

「FIRE!!」

 

 

モンタナ級原子力戦艦『オハイオ』『ルイジアナ』、アイオワ級戦艦『アイオワ』『ウィスコンシン』『ニュージャージー』『ケンタッキー』、ヨークタウン級ミサイル巡洋艦『ヨークタウン』『アトランタ』等の

全ての艦艇がほぼ同時に砲撃し、海面に発射炎を照らし出す…!

 

 

『オハイオ』『ルイジアナ』から放たれた480㎜サーモバリック弾頭が陸地で巨大な爆炎をあげ、

 

『アイオワ』『ウィスコンシン』『ニュージャージー』『ケンタッキー』から放たれた406㎜サーモバリック拡散弾頭は陸地上空で多数のサーモバリック子爆弾に分散し、炸裂音が響き渡った…!

 

ヨークタウン級ミサイル巡洋艦や他の巡洋艦、駆逐艦は断続的に砲撃を続け、サーモバリック弾頭や誘導砲弾『エクスカリバー』でBETAを引き裂いていった

 

 

参謀「しかし、迎撃が全くありませんな。」

 

 

ブラッドリー「ふっ…空の連中のおかげだ。BETAの目ん玉共はより高度が高い物体を狙う性質がある事が判明している。」

 

 

参謀「ですが、防御力は……」

 

 

ブラッドリー「貴様、我々の技術を舐めるな。まさか、BETA戦で空を飛べるとは思ってなかっただろう…パイロットどもは。」

 

 

オペレーター「レーダーに反応!重光線級からの初期照射を確認!」

 

 

ブラッドリー「電磁放射防壁実体化。」

 

 

『オハイオ』の周囲から透明な青白い膜が展開され、その直後……重光線級からの全く見えなかったものから完全なものになったレーザーが直撃し互いに干渉し合い眩しい光が発せられる

 

 

ブラッドリー「この防壁さえあれば効かぬわ……あればな。」

 

 

オペレーター「艦隊砲撃射程内のBETA群20%まで減少。」

 

 

ブラッドリー「徹底的にやれ!上陸部隊が暇になるくらい露払いだ!」

 

 

『オハイオ』『ルイジアナ』『アイオワ』『ウィスコンシン』『ニュージャージー』『ケンタッキー』から一斉射で多くのサーモバリック弾頭が放たれ、着弾……!

 

着弾地点周辺で多くのBETAを吹き飛ばし、肉片に変えていく……

 

 

 

オペレーター「射程内のBETA群消滅したと思われます。」

 

 

その時、モニターの通信ウインドウが開き、アレン中将の顔が映し出された

 

ジェームズ『こちら、空母ハリー・S・トルーマン、インド亜大陸東海岸側は作戦をフェイズ2へと移行。上陸部隊を揚陸させろ。水上打撃部隊は上陸部隊の支援に当たれ。』

 

 

 

 

ゲティスバーグ級装甲揚陸艦『ボルチモア』『カナダ』『フランクリン』『フレッチャー』が沿岸へと前進する

 

 

重光線級からの光線照射が来るも、英米共同で重装甲の強行型揚陸艦として開発され、電磁防壁さえ搭載されてるこの艦には効果が無かった

 

 

遂に陸地に接岸し、初めに戦車と自走砲の大部隊が揚陸される

 

次にFW-3『グラント』とアメリカの識別マークが描かれた謎の人型兵器が揚陸された

 

 

FMS-4『パーシング』

 

それがその兵器の名前であった

 

 

 

その頃、水上打撃部隊はアメリカ戦艦6隻及びイギリス戦艦2隻が砲撃を続けていた

巡洋艦等は既に主砲の射程外となってしまった為、巡航ミサイルによる攻撃に切り替えていた

 

 

~モンタナ級『オハイオ』艦橋~

 

 

オペレーター「北西約110㎞にBETA梯団16万捕捉。」

 

淡々と答え、モニターの戦域地図に報告されたBETA梯団6万の表示が映る

 

 

ブラッドリー「イギリス艦隊にも情報を伝達してやれ。」

 

 

オペレーター「了解。」

 

 

ブラッドリー「全艦、一斉射用意!」

 

 

照準を向けていた砲が多少の微調整を終え、自動で固定される

 

 

ブラッドリー「発射!」

 

 

掛け声とともに6隻の480㎜、406㎜サーモバリック弾頭が放たれ、イギリス艦隊も続いて撃ちはなった

 

 

巡航ミサイル群の攻撃も合わせた為、光線属種は巡航ミサイルを優先的に撃ち落とし、サーモバリック弾頭の迎撃は後手に回り、7割が壊滅した

 

しかし、その直後

 

 

オペレーター「レーダーに反応!重光線級からの初期照射3!『ニュージャージー』に集中しています!」

 

 

途端にブラッドリーは顔を青くした

 

 

『ニュージャージー』も初期照射が向けられていることを察知し、回避行動に移る

 

しかし、その程度では重光線級の照射を誤魔化すことは出来ず

 

本照射が開始され、3つのレーザー光線は『ニュージャージー』に命中し

 

 

『ニュージャージー』は大きな爆炎をあげる

 

 

ニュージャージー艦長「被害報告急げ!!」

 

ニュージャージー艦長は歯をくいしばり、声を荒あげる

 

 

他の戦艦が電磁防壁を展開し重光線級の照射を防げていたのに、『ニュージャージー』だけが展開してなかったのは何故か?

 

それは『ニュージャージー』が電磁防壁を搭載していなかったからである

改造工事の不具合が相次ぎ、電磁防壁が搭載されないまま、政治的パフォーマンスを上げたい欲のために実戦投入されたのだった

 

 

オペレーター「……第3砲塔損失、左舷後部副砲消滅、死傷者10名以上!」

 

 

ニュージャージー艦長「くそっ!……すぐに『オハイオ』に状況伝えろ。それと指示を仰ぐ。」

 

思った以上の損害の大きさにニュージャージー艦長は壁に拳をぶつける

そして、すぐに我を取り戻し、被害状況等をダンフォード少将の乗る『オハイオ』に伝達するよう命令した

 

 

 

オペレーター「『ニュージャージー』より被害状況が伝えられました。情報出ます。」

 

ブラッドリー「……『ニュージャージー』には戦線を離脱させろ。それと参謀本部に伝達。「さっさと電磁防壁をニュージャージーにつけろ!人殺しども!」

 

 

ブラッドリーはモニタに映された損害の大きさに唇をかみ締め、『ニュージャージー』には戦線離脱命令を出した

また、参謀本部には言いたいことを思いっきり言ったのだった

 

 

 

そして、アイオワ級戦艦『ニュージャージー』は右舷に回頭を開始し、戦線を離脱する

 

 

ブラッドリー「……」

 

 

ブラッドリーは後部カメラにて戦線を離脱する『ニュージャージー』を眺めながら、前方の窓から見える、未だBETAに占領されていた陸地を睨め付けた

 

 

同時に『ニュージャージー』除くアメリカ戦艦5隻が砲撃を行い、『ニュージャージー』に損傷を負わせた元凶を片付ける

 

 

ブラッドリー「あとは陸の奴らに託すか……」

 

 

陸の部隊は確実に作戦を遂行できるという絶対の自信を胸に、安堵したかのように電子タバコを吸い始めた

 

 

 

 

 

インド管区オリッサ州バラーンギール県

 

バラーンギール

 

インド洋沿岸より約200㎞の地点

 

 

 

機甲部隊は上陸からわずか4時間程度でこの距離を踏破していた

 

 

CP『CP(コマンドポスト)より各部隊へ、北西より新たなBETA梯団が接近中。数は8万。至急迎撃されたし。』

 

 

この時、機甲部隊は南西方向を向いており、随時向かってくるBETAを迎撃していた

 

 

連合機甲部隊

亡命インド軍第3機甲師団第15機甲連隊

 

 

スェノル「北西……忌々しい。」

 

自分が乗るM1A2MAV1戦車の左横で1人呟いた

 

 

スェノル「対応するしかないか……」

 

 

スェノルは直轄中隊を率いて迎撃に向かおうと決断した、その時

 

 

???『こちら、第28戦術中隊【デスエンブレムズ】、CP聞こえるか?我々とオーストラリアの人型部隊でそのBETA梯団を叩く。』

 

その直後、CPはスェノルに直接通信を繋いだ

 

 

CP『だそうだ。カラノフ大佐、異論は無いか?』

 

 

スェノル『異論は無い。さっさと対処してもらった方がこちらとしても助かる。』

 

 

スェノルは自分の部隊の指揮官としてではなく、連合機甲部隊の現地総指揮官として答えた

 

 

 

バラーンギール北西約50㎞

 

バーパリ

 

 

 

アメリカ合衆国軍第28戦術中隊【デスエンブレムズ】20機及び

オーストラリア=オセアニア連邦軍第6戦術機甲大隊60機が到着した

 

 

第6大隊長(……アメリカの奴ら、スラッとした形状で大丈夫なのか?)

 

オーストラリア側の指揮官は初めて見るタイプの機体に当然の心配を口にした

 

 

???『こちら、第28戦術中隊【デスエンブレムズ】だ。貴官は……ウォルト中佐だったかな?』

 

 

ノレン『ああ、そうだ。第6大隊長改め、ノレン・ウォルトだ。貴官は?』

 

 

???『申し訳ない。アメリカ軍第28戦術中隊隊長を務める……』

 

 

クロード『……クロード・オリアン大尉だ。』

 

 

ノレン『オリアン大尉。よろしく。ところで何か私にあるのか?』

 

 

クロード『はっ、我々に先陣を任せていただきたい。』

 

 

ノレン『任せる……突っ込むのか?危険すぎる!』

 

クロード『もし、全滅するようなら私の責任です。どうか認めていただきたい。』

 

 

ノレン『……分かった……成功を祈る!』

 

 

 

FMS-4『パーシング』20機は反重力装置を起動し数センチ浮遊した

 

そして、推進装置を起動し600㎞/hに急加速し,BETA8万に突進した

 

 

クロード『全機、V字編隊に再編成!』

 

 

その一声とともに、20機は正面上方から見てV字になるように陣形を変えた

 

 

クロード『全機、Draw a sord!!』

 

 

「剣を抜け」の一言ともに機体の腰あたりから2つの円柱状の物体が両手に握られる

 

その数秒後、その物体の先端から光の線が伸び、一定の長さで止まった

 

 

それを見ていたノレンは面を食らう

 

 

ノレン「ビームソードだと!?……流石はアメリカだ。化け物じみている……」

 

 

 

クロード『全機、突っ込め!!』

 

 

クロード自身がV字陣形の先頭に立ち、BETA群先鋒の突撃(デストロイヤー)級の大集団に突っ込んだ

 

 

クロード『喰らえ!』

 

 

まず、正面の1匹をXの字のごとく、4つに切り裂いた

そして、0.01秒の時間で周囲の突撃級のモース硬度15以上の甲殻を紙同然のように切り裂いていく

 

 

クロード『おい、ウォルト中佐!少しは働け!』

 

 

ノレン『すまない……全機、味方撃ちはするなよ!赤い奴らに撃ちまくれ!!』

 

 

さらに、オーストラリア=オセアニア連邦軍のFW-3『グラント』60機が120電磁投射砲4門による射撃を開始した

 

 

超音速で放たれる砲弾の連続射撃に戦車(タンク)級は耐えられるはずもなく、次々と数を減じていく

 

 

だが数だけは多かった

 

 

第28戦術中隊が突撃級を掃討し終えた時、未だに数は4万は下らなかった

 

 

クロード「やっとか……多いな。」

 

 

ノレン『オリアン大尉、戦車級は我々に任せてくれ。』

 

 

クロード『任せる。全機、要塞級を殲滅する!』

 

クロード率いる第28戦術中隊が速度を上げ始めた

その時突然、司令部より2人の指揮官に限定された通信が入った

 

CP『こちら、CP!合同部隊聞こえるな?偵察部隊より通信があった。現在相手しているBETA群の10㎞後方に20万を超えるBETA師団の反応が確認された』

 

 

ノレン『なっ!?』

 

ノレンはあまりの多さに衝撃を受け、照準がぶれる

 

 

クロード『……それは現在戦域に確認されているBETAの約半数近くに上るんじゃないか?』

 

CP『そうだ、我々も確信している。それで、どうする?』

 

 

クロード『奴らも出し惜しみしていたわけですか……』

 

その時、無礼ながらも回線が開いた

 

『こちら、第2空母航空団第192戦闘攻撃飛行隊【ゴールデン・ドラゴンズ】只今参上!』

 

 

『こちら、第17空母航空団第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊【チェッカーボーズ】参上!』

 

 

『こちら、第1空母航空団第136戦闘攻撃飛行隊【ナイト・ホークス】参上!』

 

 

『カール・ヴィンソン』、『セオドア・ルーズベルト』、『ハリー・S・トルーマン』の空母の飛行隊が一同に集結し、F-36『ハンター』の総数は40機を超えた

 

 

さらに、

 

 

スェノル『どれほど強かろうと、その数を処理するのは大変だろう?』

 

 

連合機甲部隊を束ねるカラノフ大佐がその連合機甲部隊を率いて援護に来たのだ

 

 

ノレン『カラノフ大佐!?向こうはどうしたのですか?』

 

 

スェノル『ウォルト中佐か、向こうは既に掃討し終わっていた。上空に居るヤツらがいなければずっとあのままだ。』

 

 

ノレン『なるほど……』

 

ノレンは感嘆の目を向けた

 

 

突然

 

クロード『カラノフ大佐、我々の指揮権を預けます。』

 

 

ノレン『我々も同じく。』

 

 

そして、『我々飛行隊も指揮権をお預けします!!』

 

 

と、全ての部隊がスェノルに指揮権を預けた

 

 

スェノル「全く……フッ……」

 

 

少しは愚痴をこぼしたが満更でもない様子であった

 

 

スェノル『航空部隊は光線級に対する防御がある。光線級を優先的に潰せ!』

 

 

『了解!』

 

 

スェノル『第28戦術中隊は要塞級の殲滅を優先せよ。ただし無理はするな。』

 

 

クロード『了解!』

 

 

スェノル『第6戦術機甲大隊は戦車部隊と行動を共にしてもらう。いいな?』

 

 

ノレン『はっ!』

 

 

 

スェノル『さて……諸君らの健闘を期待する!』

 

 

『『了解!!』』

 

 

 

『Assault case!』

 

「突撃せよ」の一声でF-36ハンター40機以上が一気に急降下する

 

 

光線級は本能的にハンターに向けてレーザーを照射してくるが、電磁防壁に阻まれる

その光線級は再照射のインターバルに入るがもう遅かった

 

 

『FIRE ALL!!』

 

ハードポイントよりミサイル、いや、対地誘導弾ARGM-01『ファットドール』が何発も連続発射される

 

ファットドールは次々と光線級群に命中し、40㎜弾でさえ防げないその皮を灼熱の炎で焼いていく

 

 

『FIRE!!』

 

連合機甲部隊の自走砲連隊の射撃が開始された

米陸軍からはM109A6パラディンの155㎜とM116A1スチュアートの175㎜榴弾砲が発射される

 

英陸軍からはAS-90ブレイブハートの155㎜榴弾砲が発射される

 

亡命インド軍はM109パラディンを配備しており、155㎜榴弾砲が発射される

 

 

また、戦車部隊も砲撃をしていた

 

米陸軍はM1A4/FエイブラムスIVやM1A3エイブラムスⅢをもってして120㎜滑空砲弾を叩き込んだ

 

英陸軍はチャレンジャー3やチャレンジャー4の120㎜ライフル砲を叩き込んだ

 

亡命インド軍はというとアージュンIII戦車やM1A2MAV1、M1A1D、そしてT-90Mをもって120㎜滑空砲や125㎜滑空砲を叩き込んだ

 

 

さらに、洋上に居る艦隊からの低空飛行してきた巡航ミサイル数発がBETA群を襲う

 

 

 

 

スェノル『連続射撃続けろ!!1匹も逃すな!!』

 

 

 

 

6時間後

 

 

 

地形が変わるほどの攻撃によりBETA群20万以上は殲滅された

 

 

 

 

インド亜大陸上空

 

 

アメリカ太平洋軍所属

FS-1宙空両用戦略偵察攻撃機

 

『全軍に通達、BETAの反応は見られず、繰り返す!BETAの反応は見られず!!』

 

インド亜大陸のはるか上空で発せられるその声は調子が上がってるように聞こえた

 

 

 

 

ニミッツ級航空母艦『ハリー・S・トルーマン』艦橋

 

 

ジェームズ「あとは……バングラデシュの方か……頼んだぞ。」

 

 

ジェームズ・アレン海軍中将は艦橋の窓から視界の右に見えるバングラデシュ管区の陸地を見つめながら呟いた




※設定

・FMS-4『パーシング』

全高12m程度
主力武装はRNN-01ビームソード四丁
頭部に20㎜レーザー機関砲2門
肩部に連装40㎜速射レーザー砲2基4門
背部に予備武装として連装式40㎜レーザーバルカン砲及び20㎜レーザーバルカン砲複合銃二挺
また、多目的換装兵装として肩部展開型シールド、6連装ミサイルランチャー『ZENIT』
防御兵装は電磁防壁発生装置及び各種物理シールド
反重力機関を使用した推進方式で、浮遊にも反重力装置を使用している
超音速巡航2000㎞/hが可能であり、Gを防ぐ為コクピットは完全自立型の内部重力が働いており、外部からの影響はない

モデルはマブラヴに登場する戦術機、F-22ラプター



・ ジェームズ・アレン

アメリカ合衆国海軍中将
インドにおけるBETA戦時には戦時インド洋派遣艦隊司令を務めているが、常時であれば横須賀を母港とする第七艦隊、バーレーン・マナーマを母港とする第五艦隊、さらに新設されたフィリピン・マニラを母港とする第九艦隊を合わせた極東=アジア方面統合艦隊司令を務めている

なお、アメリカ・サンディエゴを母港とする第三艦隊、新設されたアラスカ州アンカレジを母港とする第八艦隊は、前者は艦隊総軍及び大統領直属軍、後者は北米軍に属している為、指揮下ではない


次回
chapter14 ガンジス川会戦

BETA群30万がバングラデシュへと侵攻する

迎え撃つのは統括軍第6中隊及びオーストラリア=オセアニア連邦軍第3機甲連隊

難民と避難が進まないバングラデシュの人々を守るため、戦う


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chapter14 ガンジス川会戦

 

 

 

西暦2026年5月4日

 

 

 

 

 

中央アジア連合バングラデシュ管区

 

 

ガンジス川下流東側沿岸

 

 

 

 

 

『観測班より各部隊、BETA群5000を確認!先遣隊と思われます!』

 

 

 

『そう……戦車隊は制圧砲撃を開始して!』

 

 

通信に対し、蒼色のポニーテールの髪型をした少女は威勢よく命じた

 

 

『了解!』

 

 

バングラデシュ管区陸軍第2機甲中隊の中隊長も威勢よく返事を返し、砲撃を命じた

 

 

T-72LMやT-90LL主力戦車等が125㎜砲の砲撃を開始した

 

その砲弾はBETA群5000の先頭集団に次々とぶち当てられていく

 

彼らは精鋭であると共に、状況が安定しているからこそ、落ち着いて狙えていた

 

 

 

???「クリア……」

 

 

クリア「ん?」

 

 

クリアと呼ばれた青色の髪の少女はしゃがんでいたが、立ち上がり声の方を振り向いた

 

 

クリア「何、ラミ?」

 

 

ラミと言われた少女はクリアがまだ子供体型に対し、水色のベリーショートの髪型をしてスラッとした大人っぽい体型であった

 

 

ラミ「やっぱり……数が多いかなってね。」

 

 

クリア「……そりゃ、私だってそう思うけど…この後ろには30万もいる……片付けないと……」

 

 

ラミ「……」

 

 

クリア「……行くよ。」

 

 

クリアはラミから反応が無いのを確認して言った

 

次の瞬間

 

クリアを青白いオーラが包み込んだ

 

また、クリアに続いて、他の第6中隊の面々も青白いオーラに包まれていき、ラミも包み込んだ

 

これは戦闘準備として全ての能力が最大限に発揮できる状態である

また、各隊ごとにシンボルカラーが決まっており、その色によってオーラの色も変わる

統括軍第6中隊のシンボルカラーは青の為、オーラも青白いものであった

 

 

 

 

クリアは常人では不可能な速度で走り始め、手始めにランス型武器で戦車級の首筋を切り裂いた

 

 

クリア『続いて!』

 

 

クリアは第6中隊中隊長代理として、マントごと体を翻し、背後にいた戦車級をランス型武器で引き裂いた

 

 

 

直後、要撃級の黒い触腕が振り下ろされるも、横に転がる形で回避

 

その間に腰から二丁の銃を抜き、レーザーを連射した

 

 

要撃級を弱らせた上で立ち上がり、至近距離で破片手榴弾を投げた

 

 

その破片手榴弾は爆発し、要撃級は粉砕された

 

クリア「……っ!」

 

しかし、至近距離であったため、多数の破片を浴びた

 

四肢や胴体はしっかりと防備が施されていたものの、顔は視界確保と能力発動の為に全く防備されていなかったため、頬の数箇所を切り裂かれた

 

 

だが、クリアは全くそれを気にすることなく、戦闘を続けた

 

 

途端にイヤホンマイクのような通信機器で通信を繋いだ

 

 

クリア『レナ、やれる?』

 

 

レナ『準備オッケー、いいよ。』

 

 

レナと呼ばれた相手は同じく少女であった

 

ピンク色のツインテールの髪型をして、クリアよりもさらに幼く見える体型だった

 

 

 

 

クリア『なら、お願い。』

 

 

レナ『了解!』

 

 

連装レーザーライフル二丁と近接戦闘ナイフで戦ってきた少女は突然飛び上がり

 

 

レナ「艤装発現!」

 

 

その一言で少女の周囲には20㎜レーザーライフル、40㎜レーザーバルカン砲、76㎜速射砲等の一人の少女が持てるとは思えない量の武装があった

 

 

レナ「掃射!」

 

少女は自ら回転しながら、全周囲に攻撃を放った

 

無論、第6中隊のメンバーに当たらないように注意しながらではあるが

 

 

容赦なく上方よりレーザーの雨を降らされたBETA群は一気に3000体が沈黙する

 

 

 

 

クリア『シャーロット!』

 

 

シャーロット『はいっ!』

 

 

元気な声で返事を返すのは白髪のロングテールをした少女であり……

 

 

クリア「サンダーストーム、発動!」

 

 

直後、クリアは片手から荒れ狂う黒い暴風を発生させ、

シャーロットは何万ボルトかも分からない高電圧の電流を纏った巨大な球を発生させ、暴風の中に放った

 

 

すると、暴風と電流の塊を混ぜ合わさり、クリアはその暴風をBETA群の方に志向させ、BETA群を積乱雲とも化した暴風が覆いかぶさった

 

 

暴風の中に流れる高電圧の電流が、BETAすらも感電させていく

 

 

そして、暴風が晴れた時、強烈な焼き焦げた臭いが辺りを漂い、全てのBETAは黒く焦げ、動いていなかった

 

 

クリア「ふぅ……」

 

 

 

誰もが安堵していた

 

 

だが

 

 

『こちら、観測班!BETA群多数接近中!数は……数えきれない!』

 

 

クリア「来た……」

 

 

レナ「BETAの主力だと思うけど……」

 

クリアの傍にレナが降り立つ

 

 

クリア「そう。多分数は30万か、それ以上……」

 

 

レナ「…っ!」

 

レナは体を微かに震わした

 

 

クリア「レナ?」

 

その様子に気づいたクリアはレナに疑問を投げかけた

 

 

レナ「……怖くなってきた……だって、ジャイプールで私は……体を無茶苦茶にされた……」

 

 

その時、クリアは後ろからレナを抱きしめた

そして、クリアも体が微かに震えていた

 

クリア「レナ、もしもの時は私が庇う。だから……」

 

 

レナ「……分かった」

 

レナは自分一人だけが怖いんじゃないということを理解して、一言で返事を返した

 

 

その時、クリアの元に通信が入った

 

 

スターク『こちら、第16戦術機甲中隊中隊長スターク・ナンガム大尉!ウィンチェスター大佐より伝言、「民間人の避難を優先とするが、火力部隊は手が余る。そこで対BETA戦に有効なFW-3『グラント』を有する1中隊を派遣した。」以上!』

 

 

クリア『了解、感謝します。』

 

 

スターク『礼は大佐に言ってくれ!』

 

 

クリア『はい!では、第2機甲中隊及び、第16戦術機甲中隊は制圧砲撃を始めてください!』

 

 

バングラデシュ管区陸軍第2機甲中隊からは125㎜砲弾が再度連続で放たれ、戦車級の大群に向かう

 

 

オーストラリア=オセアニア連邦軍第16戦術機甲中隊は第6中隊の突入を援護する為、FW-3が有する120㎜電磁加速砲4門及び他多数の機関砲で突撃級に連続砲撃を開始した

また、背部の8連装ミサイルランチャーからは光線級に向けてミサイルを撃ち始めた

 

 

 

クリア「暴風!」

 

 

再びクリアが荒れ狂う暴風を発生させ、BETAの1部をはるか後方へと吹き飛ばす

 

 

 

その時、数十メートル上で爆発が連続的に起きた

 

 

クリア「何!?」

 

 

それはバングラデシュ陸軍第2機甲中隊がから放たれた炸裂徹甲弾が何かとぶつかって爆発していた

 

 

クリア「何と当たってるの?」

 

 

『こちら、第2機甲中隊!BETA群後方にこちらの砲弾に直接砲弾を当てて撃墜する奴がいる!未確認種だ!!』

 

 

その報告にクリアは不安を覚える……

 

 

だが、次の報告は安堵させるものだった

 

 

スターク『こちら、第16戦術機甲中隊!突撃級の完全掃討完了!続いて、戦車級の漸減に以降する。先の報告にあった未確認種だが見た目は重光線級だが、大きさが肥大化し正面には大砲のような突起が見られる、以上だ。』

 

 

クリア『了解。未確認種の撃破に選抜隊を編成します。』

 

通信回線を個人宛に切り替える

 

 

クリア『レナ、ラミ、奴を私達で……っ!』

 

 

その時、咄嗟にクリアはすぐ後ろにジャンプする

 

直後、元いた場所に大剣が突き刺さった

 

 

クリア『やっぱりやめ!こいつは……』

 

 

クリアは回避行動をしているはずなのに、身体めがけて大剣が振り下ろされ、それをランスで防ぐ

 

 

クリア「…兵士級……いや、違う……新型?……っ!」

 

 

クリアは推測を立てる間に回避行動を見誤り、右腕の1部を切り裂かれた

 

 

クリア「……腕が4つ……不利か……」

 

クリアは視覚だけの情報で判断した

形は兵士級に似ているが、腕が4本あり、そのどれにも大剣が握られており、この時点で手数において勝られていた

誰がどう見ても未確認種だった

 

 

 

クリア「くそっ!!……ぐぁ……」

 

最初の1本の大剣で狙われた両足を回避したものの、ランスでもう1本を防ぎ、さらにもう1本を強引に何も持ってない左腕で防いだ

しかし、最後の1本は防ぎようがなく、右頬を深く削ぎ落とされ、少なくない血が流出した

 

 

その後も手数を使った攻撃により傷を次々と負わされ、そして……

 

 

 

ランスを横にした状態で最初の1本を防ぎ、次の1本は右腕を突き刺され裂傷を負い、少し力が緩まった隙をつかれ……

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、2本の剣が上下にクリアの体に突き刺さる

 

 

それどころか身体を貫通していた

 

 

 

クリアは来ている服はただの服ではなく、理論上20㎜機関砲に耐えれるレベルの防御力をもつ特殊装甲服であった

 

それがいとも簡単に貫通され、胃にも突き刺さっており、かなりのダメージを受けていた

 

 

 

 

 

クリア「ぐはっ……!」

 

 

クリアは痛みに苦しみながら地面に血を吐いた

それも微量ではなく、とてつもない量で

 

 

 

クリアの眼前にいる未確認種は貫通し赤い血に濡れた2本の大剣を強引に抜いた……!

 

 

それが血止めになっていた為、二つの傷口からは文字通り大量の血が流れ出てくる

 

 

クリアは力無く地面に膝をつける

 

 

 

それを見た未確認種は大剣を1つ振り上げる

 

 

それは誰がどう見てもトドメをさす為だと見えた

 

 

 

だから……

 

 

 

ラミ「クリア!」

 

 

ラミは2つのレイピアでその未確認種に斬りかかった

 

 

そのレイピアはレーザーを先端から装填6秒で撃てることも出来る剣であった

 

 

ラミはレイピア使って倒そうとした

 

だが、それは出来ずに終わることとなる

 

 

未確認種はレイピアによる攻撃もやはり手数の差で守り切り、レーザーでさえ大剣で防いだ

 

 

それに驚いてる間に剣でラミの右腕を斬りつけ、レイピア1本を落とさせ、そのレイピアは踏みつけて破壊した

 

 

 

ラミは不利と感じたら、すぐにクリアの元に駆け寄り

 

 

ラミ「クリア!……酷い。」

 

 

クリア「…ごめん…援護要請する……余裕が無かったから……かはっ……」

 

クリアは弱々しい声で返事を返した

 

 

ラミ「ねえ、クリア。プランB……行おうよ…クリアを死なせたくない!」

 

 

クリア(プランB……それは……絶対ダメ……)

 

 

プランB

 

現在進行中なのはプランAであり、これとは別に計画された作戦案である

 

それは誘い込んだ30万を戦略軍事ステーション『カリフォルニア』及びアメリカ合衆国宇宙軍艦隊による対地砲撃で殲滅するものであった

 

損害は少ないが、問題点はあった

 

 

それはバングラデシュの残された民間人と難民である

 

プランBは彼らを巻き添えにすること前提であった

 

 

 

クリア「それだけは……ダメっ!……」

 

 

ラミ「だったら……どうすれば……」

 

 

クリア「……ラミ、あの2体は私が倒す……他のBETAはラミ達に任せた」

 

 

クリアは自らの腹部に手をやり、真っ赤に濡れた手を見ながら話した

 

 

ラミ「!?…1人じゃ危険すぎる……」

 

 

クリア「本来の目的はBETA群の殲滅か撃退。その目的達成の為には一対多数が可能なラミも必要。だから……」

 

 

ラミ「無茶苦茶!クリアは死にたいの……?」

 

ラミがいつもより少し大きい声で話を遮った

 

 

クリア「無茶苦茶なのは分かってる。それに……死ぬわけじゃないから……。」

 

 

ラミ「……もう、説得しても無駄かな。絶対死んじゃダメ……」

 

 

ラミは思わずクリアを抱き締めた

 

 

クリア「分かった……。」

 

 

 

その直後

 

 

『こちら、第2機甲中隊第3小隊長車!砲弾来るっ、ぎゃぁぁぁ!!……』

 

 

悲鳴が木霊しその後音が消えた

 

 

 

重光線級に似た未確認種からの発射体がバングラデシュ管区陸軍第2機甲中隊のT-90LL主力戦車に直撃しその車輌は爆散したのだった

 

 

 

クリア「……ラミ、急がないと……」

 

クリアは抱きしめていたクリアを離し、ゆっくりと立ち上がった

 

 

ラミ「分かった……」

 

 

こちらの戦闘力が失われたと勝手に判断した未確認種は既にクリアの場所を横目に通り過ぎていた

 

 

クリアは大きく跳び、ランスを頭部と思われる場所に突き刺す

これを喰らえば確実に撃破できるが、その未確認種は振り向き、大剣で防いだ

 

 

クリアはランスを左手に持ち替え、右手に強く力を込めた

 

右手には蒼いエネルギーが纏わり、一瞬動きを止めた

 

 

次の瞬間、硬化し一種の打撃武器と化した右手を使い、ジャンプした後上方から殴りかかった……!

 

 

硬化した右手で勢いを失わずに殴られた大剣は一瞬にして割れ、それ同時にクリアの右手の骨が完全に"砕けた"

 

クリアの右手が硬いのと同様にその大剣も硬かったのだった

 

 

砕けた痛みに少し動きが緩む、その隙も突かれ、別の大剣に左肩下部を貫かれた

 

 

「……っ!!」

 

 

未確認種はその大剣でクリアの動きを阻害し、もう1つの大剣が振り上げられた

 

 

クリアもその様子は確認していた、だから、左肩下部に突き刺さっていた大剣を無理矢理脇近くで押し出した

 

 

脇近くにも裂き口が出来て大量の血が出るが、そんな事は気もとめず、阻害から解放され、寸前の所で振り下ろされた大剣から回避した

 

 

 

しかし、もう一本が再び振り下ろされ、クリアは仕方なく横にしたランスで防ぐ

 

 

だが何回も大剣による直撃を受けて限界が来ていたのか……二つに割れ、右肩が深く斬りつけられる

 

 

クリア「ぐっ……」

 

 

血飛沫が上がり、クリアは痛みに悶える……

 

 

 

クリア「……1人じゃ無理……そうなのかもね……でもやるしかないか……あんな言葉を言ったから……」

 

 

 

クリアは左手を背中に回し、1本の剣を抜いた

 

刀と似た形状をした剣、メーナソードは鋭敏であり、鉄でも簡単に斬れるように設計された剣である

 

ただし、弱点はある

それはこのメーナソードの重量であり、慣れればなんともないものの、初めての者や重傷者が持つには素早く振り回すにはかなりキツイほどの重さがある

 

 

クリアは初めて持つわけではないが、それでも経験回数は少なく、そして、誰が見ても重傷という傷を負っていた

 

 

 

クリア「くっ……重い……だけどっ!!」

 

 

クリアは損壊した右手に代わり左手で持ち、未確認種から振り下ろされようとしていた大剣を吹き飛ばしただけでなく一刀両断した

 

 

その直後隙を与えないために、上に跳躍し、上方から未確認種の頭部と思われる部位にメーナソードを突き刺そうと、防ごうとした大剣ごと突き破り、頭部を破壊した

 

 

その未確認種は一切動かなくなった

 

 

 

だが、もう一体がまだ健在だった

 

 

 

撃破直後、謎の物体がクリアの右腹部に直撃、鋭利な形状であり体内に侵入直後、爆発を起こした

 

 

クリア「ぐぇっ……!!」

 

 

いくつかの臓器が損傷を受け、クリアは再び口から血を吐いた

 

 

クリア「……これが奴の……攻撃……」

 

 

鋭利な炸裂弾を放つ未確認種は報告にあったように重光線級の肥大化バージョンであり、先端からは炸裂する砲弾を放つ

 

 

 

距離からして50m近くまでいつの間にか接近しており、相手からすれば始末対象が近距離に接近したから攻撃しただけである

 

 

 

クリアは悩んだ末、兎にも角もジャンプを含め走り始めた

 

相手は光線級程ではないとはいえ戦車砲から発射された砲弾に飛翔体をぶつけるという恐るべく精度を誇り、そもそも相手が動かない為こちらから接近しないと倒せないからであった

 

 

クリア「ハァハァ……っ!」

 

 

走ってる間、何発もの炸裂弾がクリアを襲う

回避していくものの、ある1発が左眉を掠め、その直後に至近距離で爆発した

 

 

それは破片を飛ばし、左眉の付近に多くの切り傷を生み、少なくない血が流出し目までかかり、左目を閉じざるをおえなかった

 

 

右目だけの視界では回避運動を続けるのも無理と判断したクリアは一気にジャンプし、その未確認種の横腹に足をつけ、メーナソードを突き刺した

 

 

その未確認種は多少の悲鳴をあげ、動きが遅くなる

 

 

クリア「ハァハァ……これなら行ける……ふぅ……」

 

クリアは一時的に安堵し、メーナソードを今度は両手で持ち、再び突き刺して切断するような動きで傷口を広げていった

 

 

その途上でクリアは一度顔を上げる

 

 

その視界には未確認種の先端がこちらを向いていたのが映った

 

クリアは悪寒が走り、逃げようとしたものの足は全く動かず攻撃を喰らうこととなった

 

炸裂弾4発が連続で放たれ、全弾がクリアの身体に侵入し爆発

 

その内1発は心臓の左心室を貫き爆発により粉砕させていた

 

 

クリア「ゴボッ……げほっ……かはっ……」

 

 

クリアは多量の血を口から吐き出す

 

 

その時、クリアは視界が歪んでいるのに気づいた

 

 

クリア「……ヤバい……意識が……」

 

 

既に撃破した未確認種との戦闘から連戦で戦っており、その間に多量の流血があり、失血死の可能性も無くはないほど重度のダメージを負っていた

当然意識も朦朧としてくる

 

 

クリア「……だったらっ!!」

 

 

クリアは足を引きずりながらも、未確認種の頭部の後ろに着き、メーナソードを突き刺した

 

 

クリア「……暴風。」

 

 

メーナソードに左手を添えながら、自らの攻撃型魔法の単語を呟く

 

左手からはそれは出ず、数秒後に剣先に伝導され、剣先より荒れ狂う暴風が発せされた

 

 

未確認種の身体に突き刺さった剣先より発せられた為、荒れ狂う暴風は勢いを失わないまま、その未確認種の身体を裂いていった

 

 

 

裂かれた未確認種は左にその巨体を倒す、そしてピタリとも動かなくなった

 

その倒れる最中にクリアもバランスを崩し地面に落ちる

なお、幸いにも擦っただけで、ゆっくりと立ち上がった

 

 

だが、メーナソードを杖代わりにしなければいけないほど体力を消耗していた

 

 

クリアの身体は未だに傷口が塞がらず、血を流し続けていた

 

また、顔は痛みに辛そうな顔をしていたが、BETAの数が減ってきたのも確認できていて、もう少しで戦闘が終わるという安堵の表情も滲み出ていた

 

 

 

 

 

しかし、

 

赤い化け物が接近していることは気づかなかった

 

気づいた時にはその赤い化け物は近くまで接近を許しており、突然ジャンプして踏む潰されるように押し倒され……

 

 

クリア「……た、戦車(タンク)級……」

 

 

クリアは食われる恐怖からその赤い化け物の呼称を口にした

 

 

 

そして、戦車級は巨大な口でクリアの右腹を齧る

 

 

クリア「……いっっっ!!!」

 

 

声にならない悲鳴をあげる

 

 

齧られた部分からは血が流れ出る

 

 

戦車級は1度齧っていた部分を離し、腹のさらに中央近くを齧り、右腹や表層の皮を含め噛みちぎった……!

 

 

クリア「あ……あああっ!!」

 

 

激しい痛みにより声が出せず体は痙攣を起こした

 

 

噛みちぎられた部分は大きく抉られ、大量の血が流れ出た

 

口からは流れように血が漏れだした

 

 

 

 

クリア自身もうだめかと思っていた

が、自然にメーナソードを握っていた左手がゆっくり動くにつれて「死にたくない」という気持ちをハッキリと感じた

 

 

クリアは残された力を振り絞って、メーナソードを握り、戦車級の頭部らしき部位に突き刺した

 

 

 

戦車級は痛みに苦しむかのように暴れ始めた

だが、死ぬ様子はなかったが、突然、爆発が起き、戦車級は動かなくなった

 

 

 

クリアは今の爆発を味方の砲撃と確信した

そして、本当に終わったと安堵した

 

 

だが、クリアは無事には遥かに程遠い姿だった

 

 

クリアの視界はどんどんとぼやけ始め……意識もハッキリとしなくなってきた

 

 

 

 

クリア「……血を…………失い……すぎた……かな……」

 

 

それが薄れゆく意識の中で言えた言葉だった

 

 

 

薄れゆく意識の中で自分を呼ぶ声が聞こえるものの、何も返すことは出来なく、意識を閉ざした

 

 

 

 

 

…………

 

…………

 

…………

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

翌日

 

 

西暦2026年5月5日

 

 

 

 

西側軍事条約協定機構軍総司令官

 

ウィリアム・V・タイラー大将

 

 

及び

 

 

亡命インド管区軍臨時司令官

 

バラト・ドゥビー少将

 

 

による共同記者会見が開かれ

 

 

 

対BETA作戦計画Operation Mars(火星作戦)の終了と

 

 

作戦の成功、すなわちバングラデシュ管区及び東南アジア諸国連合ミャンマー政府領域内へのBETAの侵攻及び現時点での侵攻の可能性を完全に排したことが報告された




※設定

クリア・フランネス少尉

年齢16歳
統括軍第6中隊中隊長代理
蒼い髪のポニーテールが特徴的な少女
戦闘用服装も蒼い
攻撃型魔法は『暴風』
観測史上最大の台風すらも上回る暴風を特定地点で発生させることが可能
戦闘力はまだ未熟とも思われる部分はあるが、完熟すれば姉に次ぎトップクラス

シャーロット・ユースティア少尉

年齢17歳
統括軍第6中隊所属
白髪のロングテールの髪型
攻撃型魔法は『雷球』
可視化された10万ボルトの電流の塊を球にして発現したもの
大体の生物は感電死させることが可能
本当は戦いが嫌いではあるが、人を守れることを初めて知った時に決心がついた

レナ・マーティ曹長

年齢16
統括軍第6中隊所属
ピンク色のツインテールの髪型をしている
攻撃型魔法は『艤装発現』
数多の武装が搭載された装置(いわゆる艤装)を唱えることで発現が可能
数多の武装による弾幕で歩兵1大隊を殲滅することは可能
外見は幼く見えるがれっきとした16歳である

ラミ・メノール少尉

年齢18歳
統括軍第6中隊所属
水色のベリーショートの髪型
攻撃型魔法は『補足』
意識して見るものの詳細を見ることが出来る
戦車ならば、装甲厚と弾薬位置、乗員数、現在装填済みかどうか等
クリアとは違って大人びた体型で人見知りで消極的な性格
クリアとだけ本音を面と向かって話し合える


次回予告chapter15 ひとときの安寧

Operation Marsは終了した
作戦に参加した兵士は疲れを癒す

一方でヴェルホヤンスクでは新たな計画が浮上していた


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chapter15 ひとときの安寧

西暦2026年5月15日現地時間16:30

 

OperationMars(火星作戦)から10日後

 

東南アジア諸国連合タイ王国

連合首都バンコク

 

バンコク先進医療技術病院区画L-6

 

重傷患者用の個室ベットであるL区画の6番室のベットに蒼髪の少女が寝ていた。

医療用マスクを被り、布団からはみ出している部分だけでも右目以外の顔の大部分は包帯に覆われていた

蒼いポニーテールの髪型は解かれていた。

 

彼女は10日前に瀕死の重傷を負ったクリア・フランネス、ここに運ばれてきて、緊急手術を行って生死の境から何とか脱することが出来た。

 

クリアはゆっくりと目を覚める。

 

右目だけの視界はとにかく見にくかったが、ハッキリ見えたのは包帯をぐるぐる巻きにして固定されていた右手を両手でがっしりと掴んでいる白髪の少女の姿だった。

 

クリアはその両手からかなり微弱な電流が伝わっていることに気づいた。

 

「……シャーロット…ちゃん……」

 

クリアは声が掠れながら白髪の少女の名を呼ぶ。

かなりか細い声であったが、耳に届いたのか目をハッと見開いた。

 

「……ク、リ、ア……さん?」

 

 

シャーロットはぎこちなく顔をこちらに向け、無事を確認すると一滴の涙を目から零す。

そして、自分の体を大きくせり出し、クリアの体を抱きしめた。

 

「良かった……皆さん心配してたんです!意識が戻るかもわからないって言われてたから……」

 

「シャーロットちゃん……ここは?」

 

「バンコクの先進医療技術病院です。お医者さん呼んできますね」

 

シャーロットは近くにいた看護師に目覚めたことを伝え、数分後に主治医がやってきた。

その主治医はちょっとした口頭質問をした後、すぐに去っていった。

 

「あ、そうだ。皆さん近くのホテルで目覚めるの待ってたんです。呼んできますね」

 

シャーロットは自分の携帯端末を取り出し、文字を打ち始めた。

 

「え?いや、そんなのいいよ……」

 

クリアは少し渋る表情を見せたが、

 

「ダメです!」

 

と、一喝された。

 

「え?」

 

「……クリアさんは"英雄"なんですから……」

 

「英雄って……」

 

クリアはそこまで活躍するほど戦ったとは思っておらず、英雄という言葉が嫌という感情を顔から滲み出していた。

 

「クリアさんは本当によく戦ったんです。今回の戦い、クリアさんがあの2体を撃破してくれたおかげで、私達は被害が少なく済んだんです!」

 

「そう……なの?」

 

クリアはその言葉に驚いた。

そして、自分でも守れるという自信に自然に笑みが零れた

 

その時、仲間の数人がお見舞いに訪れた。

訪れた数人の中に金髪のセミロングの髪型をした少女がいた。

 

クリアは彼女に視線を向け

 

「お姉ちゃん……?」

 

と呟いた。

 

少女、姉のセリア・フランネスは椅子を引っ張って、ベッドの横に置いて座り、クリアに言葉をかけた。

 

「クリア……よく頑張ったね」

 

クリアはその言葉にうん、と頷いた。

 

「そういえば……私ってどうやってここに運ばれたの?」

 

クリアは唐突に疑問を問いかけた。

その問いにセリアと一緒に来ていたレナが答えた。

 

「あー、確かに知りたくなるのは当然だよね……」

 

そこにシャーロットも話しかけた。

 

「私も少し離れてたから、知りたいです」

 

レナは小さくため息を吐き、話し始めた。

 

「私とラミが一番クリアの近くにいたんだけど、クリアが意識を失って倒れた時、真っ先に駆けつけたのはラミだった。ラミは泣きながら、必死に呼び掛けた。もちろん、私もみんなも、その後ろから呼びかけた」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

11日前

 

5月4日 ガンジス川流域

 

戦闘の激しさは消えたが、その代わり、少女の大きく叫ぶ声が響き渡った。

 

「クリア!クリア、起きて!クリアってば!!」

 

少女、ラミは倒れたクリアの傍で目から涙が溢れる中、必死に名前を呼びかけた。

 

(呼びかけるだけでなく、色々試した。けど、クリアは目覚めなかったね。で、諦めかけた時。)

 

「すぐに彼女から一定距離離れろ!」

 

そう叫んだのはオーストラリア=オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊連隊長オリバー・C・ウィンチェスター大佐であった。

彼は足早に歩き、クリアの元に近づく。

 

その彼をラミ達は睨んだ。

 

(ウィンチェスター大佐の言葉には最初は驚いたよ。そりゃ、クリアを放っておけとも取れる命令だったからね。だけど……)

 

仲間が睨むだけに留める中、ラミだけが階級が上の彼に声が荒あげた。

 

「ウィンチェスター大佐!何故そんなことを!!クリアが……クリアが死んじゃうのに……仲間を見捨てるんですか!!」

 

その抗議の言葉にオリバーは眉を顰める。

 

「誰が、誰が彼女を見捨てると言った?」

 

その一言で周りが一瞬静まり、オリバーは第6中隊の面々を見渡す。

そして話し始めた。

 

「アメリカ軍より連絡があった。負傷者や重体者を移送する為の戦術輸送機を派遣したと……そこに彼女を載せろ、いいな、これは命令だ!」

 

ラミは呆然としつつ涙が流しながら感謝した。

 

「……ごめんなさいさっきは……ありがとうございます!!」

 

その言葉を聞いたオリバーは彼女に視線を向ける。

 

「別に構わん。あと、お前も乗れ。傷を負っているだろ」

 

「え?」

 

「肩を斬られているだろ。他のみんなも聞け!少しでも傷を負っていたら、乗るんだ。いいな!!」

 

その後、アメリカ合衆国空軍戦術輸送機C-21グラマンⅡ一機飛来し

何も無い荒野の上に着陸し、クリアやラミ他数十名の兵士を載せ、再び飛び立った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「こんな感じかな。分かった?」

 

レナは話終えるとクリアに尋ねた。

 

「うん……思ったんだけどBETAは全て撃退できたの?」

 

それにシャーロットが軽く笑いながら答えた。

 

「というより、全て撃破できちゃったみたいです」

 

若干両目を充血させたラミも答える。

 

「まあ……クリアを襲った戦車級が最後の1匹だったという訳」

 

話が一旦終わると、セリアはクリアに尋ねた。

 

「クリア、どのくらい入院するの?」

 

「……うん、1ヶ月半、長ければ2ヶ月はかかるって……」

 

「ゆっくり休んでねとしか言えないかな……あれだけの傷を受けたんだから……」

 

レナがクリアに労いの言葉をかける。

 

その時、セリアはクリアの異変に気づき、クリアの頭を上げさせ、自分の胸に抱き寄せた。

 

「お姉ちゃん……?」

 

「クリア、思うことがあったら、ここで沢山吐き出して」

 

その言葉でクリアは今まで我慢してた感情を押し出し、両目から大量の涙を流し始めた。

 

「こ、怖かったよ……!本当に痛くて……私が壊されていくみたいで……殺されるっ、死んじゃうかもって……会えないかもしれないと思って……怖かったっ!」

 

クリアはセリアの胸に顔を埋め、泣き叫んだ。

戦場では怯える事が一切なかった少女もここではただ1人のか弱い少女だった。

レナやラミ、シャーロット達が先にホテルに戻る中、セリアは満足いくまでクリアを慰めた。

 

 

「……お姉ちゃん……ありがと、もう充分泣いたよ」

 

「そう?それじゃ、しっかり治して」

 

「うん」

 

セリアはクリアの頭をゆっくりと枕の上に乗せ、部屋から出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その頃

 

新ソビエト連邦サハ自治共和国ヴェルホヤンスク

 

 

 

 

???1「何故だ!!なぜ敗れる!」

 

 

???2「おかしいではないか!!理論上だと我らは勝つはずであったのに!!」

 

 

黒い法衣のようなものを着た三人のうち2人が叫んでいた

 

 

???1「総勢80万の我らの軍勢が1匹たりとも殲滅されるとは……」

 

 

???2「それだけではない!上空からの質量弾攻撃で1部巣が損傷を受け生産ができない状態に陥った!!」

 

 

???1「ラノル、貴様はどう考える?」

 

 

ラノルと呼ばれた最後の一人はフードの先に紫色の肌とスキンヘッドの頭を覗かせながら話し始めた

 

 

ラノル「……人の力よ……」

 

 

???1「貴様、狂ってるのか!人という資源の力とは……人間は資源、我らはそう教えこまれてきた筈だ!」

 

 

???2「人の力だと?では聞こう、新種を投入したのにも関わらず、それでさえ破れた。それも人の力だというのか?」

 

 

ラノル「……そうだ。」

 

その瞬間、その場の空気が凍るほど、2人はラノルという者を睨みつけた

 

 

???1「何故そう考える?何故だ!!」

 

 

ラノル「では、他の要因はなんだ?他に考えられる要因があるというのか?どうだのだ、ギュルティーゲよ?」

 

 

彼らが座る円状の机の中心にホログラム装置が起動、Zというマークが出現する

 

 

ギュルティーゲ「……インド亜大陸に陽動された50万はともかく、バングラデシュへ向かった30万は……そうとしか思えん……認めるしかない……」

 

 

その発言にラノル除く2人は驚いた素振りを見せた

 

 

???1「ラノルよ、仕方がない……それは認めよう。だが、次なる計画は考えていないということはあるまいな?」

 

 

ラノル「無論、考えている。」

 

 

???2「そうか……それならば良い……奴らに絶望を味合わせるのだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラノル「宰相閣下に伝達。」

 

 

 

 

 

「リヨンを投下目標の1つに加える、と。」




※設定

セリア・フランネス大尉

年齢19歳
統括軍第6中隊中隊長
金色のセミロングの髪型が特徴的
攻撃型魔法は『氷撃』
目標の地面に氷の剣を多数降らせることが出来る
なお、その際髪色が青へと変貌する
特殊装備として見た目は銀色の銃である元素変換射線装置を装備している
クリアの姉
正義感があり、仲間を救うために自分を危険に晒しても構わないという精神の持ち主
その性格はクリアも受け継いでいる


次回
chapter16 来襲、再び


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番外編2① 不穏な空気

やっぱり、この話は書きたかったので書いてみました


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Title:パキスタン管区軍作戦履行報告書」

the Date:AD2026/5/5

the Text

「OperationMarsは成功し、インド亜大陸における対BETA作戦計画は安定化の兆候を確認した。我々パキスタン軍も作戦参加部隊の一員となり、ムンバイやジャンムーへの陽動作戦を遂行することが出来た。これは誇るべき結果である。また、その陽動作戦でのインド軍との連携は多少のいがみ合いがありつつも良好な関係を築くことが出来ている。もし叶えられるならば、BETA戦が終わった時、インドとパキスタン両国は力を合わせ協力して復興していき、手を取り合うことで再び1つの国へとまとまることが望ましい。

一方でOperationMarsにおいて隣国イラン管区も作戦参加表明を出したが、彼らは最も醜い部隊を派遣したことをここに断言する。

彼らは西インド方面作戦参加部隊集結地でもあったカラチ駐屯地に入ったが、その際、多数の暴行事件を起こし、また、民間人への略奪事件も相次いだ。また、作戦中にはわざと我々の方に陽動するように仕向けているように見え、その陽動先はインド軍だったり、我々であったり、アフガニスタン軍でもあり、そして、アフガニスタンの民間人が多数住む市街地もあった。この作戦においての民間人の死傷者の発生原因がイラン軍部隊であると言っても過言ではない。彼らとの連携はまず無理であった。無理に連携しようとすれば我々が逆に窮地に陥るという体たらくであった。彼らは利敵行為を行っているとも過言ではない。彼らとは手を取り合うことも出来ないのだ。」

 

 

 

 

 

パキスタン管区臨時首都カラチ

 

 

~臨時政府設置場所:カラチ市政庁~

 

 

 

イブラム「これは本当か?ムルラム。いや、レノメルド・ムルラム大将。」

 

 

パキスタン管区臨時大統領イブラム・ハーンが大きな円状の机の真ん中にタブレット型の端末を置く

そこには先のパキスタン軍作戦参加部隊の報告書が映っていた

 

 

そして、それをもう一人の男が手に取り、見ながら口を開く

 

 

レノメルド「確かに本当だ。私の元にも報告が上がってきている。」

 

 

イブラム「……イランか……かつてサウジと並び中東の大国と呼ばれたこの国が今や新ソビエトの眷属とはな。」

 

 

外務大臣「どうする?」

 

 

イブラム「カザフスタン政府に情報を送ってくれ。イラン管区の処遇について考えなければならないという文を添付してな。」

 

 

外務大臣「分かった。」

 

 

 

 

 

カザフスタン管区:首都アスタナ

 

~カザフスタン管区行政府~

 

 

 

???「皆はどう考える?イランについての対応を。」

 

 

そう発言したのはカザフスタン管区大統領アルベール・ドモナフであった

 

 

国防長官「難しい問題ですな。ですが、我が軍からもイラン軍への苦情が届いています。」

 

国防長官は顔をしかめつつ、話す

 

 

すると、外務省職員らしき人が外務長官に耳打ちする

 

外務長官はドモナフ大統領に振り向き……

 

 

外務長官「大統領、アフガニスタン管区政府が中央議会での全会一致により、イラン管区との関係断絶を決定しました。その上で対応は我々に一任すると。」

 

 

アルベール「うぅむ……」

 

アルベールは目を閉じ唸った

 

 

国防長官「パキスタン管区としての対応はどうなのだ?」

 

外務長官「パキスタン管区も我々に一任すると言っていた。」

 

 

国防長官「スエズ解放戦を行ったイラク管区はどう言ってるのだ?」

 

 

外務長官「イラク管区はスエズ解放戦以前からの挑発行為があったらしく、この機会にイラン管区を連合から追放すべきと言っております。」

 

 

アルベール「なかなか強気だな……インド管区の発表はあるか?」

 

 

その時、全閣僚が外務長官に視線を集中した

 

 

インド管区は国土は失えど、カザフスタン管区に並ぶ盟主としての軍事力を未だに半分以上有していた

カザフスタン管区とインド管区の決定が連合の方針を決定づけると言っても過言ではない

 

 

 

外務長官「インドか……たしか…」

 

 

その時再び外務省職員らしき人が外務長官に耳打ちした

直後、外務長官は驚愕したような表情を見せる

 

 

アルベール「どうした?」

 

 

ドモナフ大統領は外務長官に聞く

 

 

外務長官「それが……『経済面においてはカザフスタン管区に一任する。軍事面においては現在の状況を踏まえ、イラン管区の作戦参加部隊指揮官の連合中央軍法会議での弾劾を主張する。が、最終的な判断はカザフスタン管区に一任し、我々はそれを支持する。』との事です。」

 

 

アルベール「……そうか。外務長官。」

 

 

外務長官「はっ。」

 

 

アルベール「イラン管区の代表に伝えてくれ。イラン管区作戦参加部隊指揮官の中央軍法会議の出席を要求する。期限は1週間以内。もし期限内での拒否及び無返答の場合、貴管区の連合からの追放を検討する……と。」

 

 

外務長官「はっ!」

 

 

 

その後、イラン管区は沈黙したように何も反応がなく、カザフスタン管区外務省職員がイラン管区大使館を訪れても、うやむやな回答をするだけだった

 

 

 

そして、1週間が過ぎた

 

 

 

 

 

5月12日

 

 

~カザフスタン管区行政府~

 

 

全閣僚は外務長官からの報告を聞いていた

 

 

そして、報告が終わると、1番先にドモナフ大統領が口を開いた

 

 

アルベール「イラン管区からは何の返答も無しか……ここまで静かだと逆に反応に困るな。」

 

 

国防長官「外務長官、各管区に情報は伝えたんだろうな?」

 

 

外務長官「はい、伝えました。」

 

 

アルベール「それで、その返答は?」

 

 

外務長官は少し渋った動きを見せるも、直ぐに口を開いた

 

外務長官「……イラン管区とアフガニスタン管区はすぐにでも連合から追放すべきとのコメントが、パキスタン管区は経済援助の全面的な中止を含めた一時的な経済制裁を求めています。ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギス等は我々に一任するとの事、最後にインド管区ですが、中央軍法会議での弾劾を要求すると共に拒否した場合に経済封鎖を敢行するため第4打撃隊を向かわせてるとの事です。」

 

 

国防長官「第4打撃隊……プラハン級高速戦艦ネームシップを旗艦とし駆逐艦6隻を指揮下に持つ部隊か……大統領、彼らは本気です。」

 

 

アルベールは考え込むために閉じていた目をゆっくりと開き、視線を外務長官に向ける

 

 

アルベール「外務長官、イラン管区に作戦参加部隊指揮官の中央軍法会議の出席を命じてくれ。ただし期限は3日だ。そして、拒否及び無返答の場合は、イラン管区の連合追放措置を実行すると。」

 

 

外務長官「…分かりました。」

 

 

 

 

だが、イラン管区は再び沈黙を貫いた

 

 

返答すらなかったため、中央アジア連合行政府はイラン管区の連合追放措置を実行

管区として名は外され、イラン共和国となった

また、全ての経済援助が断ち切られた

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

5月15日午後

 

 

即座に連合追放措置が実行されたその日の午後

 

 

イラン共和国はイラク管区に宣戦布告、侵攻を開始した

 

 




かなり短かったな……

※設定


・カザフスタン管区

中央アジア連合でインドと並ぶ権限を持つ
BETA侵攻によるインド亜大陸失陥後は経済面での事実上の盟主
軍事面でもインド管区は一部権限をカザフスタン管区に譲渡しており、カザフスタン管区は軍事経済両面での盟主になりつつある


・第4打撃隊

インド管区海軍の小規模編成部隊の1つ

プラハン級戦艦一番艦プラハンとヴィシャーカパトナム級(15B型)駆逐艦6隻によって構成される
インド管区海軍の中で最強級の1隻であるプラハン級とBETA戦初期からの連戦を生き抜いたヴィシャーカパトナム級6隻がいるため、インド管区政府がこの部隊を派遣すればインドが本気の姿勢であることが分かる


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番外編2② 北ペルシア湾大海戦

実際のところ、イランとイラクの国力差ってどのくらいなんだろう……


 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月15日

 

 

 

イラク管区はイラン共和国に突如として宣戦布告され、イランに先手を取られる形で領土になだれ込まれた

 

 

46年前に始まったイラン・イラク戦争の再発

第二次イラン・イラク戦争が勃発したのだった

 

 

イラン管区軍は警戒はしていたものの、完全な戦闘態勢では無かった、いや、すぐに侵攻してくるとは思っていなかった為、当初形成は不利であった

 

それでも国境から30㎞地点にある都市バアクーバで足を止めることに成功し、バアクーバ市内での市街戦に発展した

 

イラン共和国軍はT-14アルマータやT-22イェルネールなどの125㎜や140㎜砲等の威力の高い砲を用いる戦車連隊を突入させ、

イラン管区軍はT-90イラク仕様やM1A2エイブラムス市街戦仕様を防衛戦に展開させた

 

 

 

 

その最中

 

海上でも戦いは起こっていた

 

 

 

「ビエール轟沈!!」

 

 

アメリカがイラク管区に設計変更をした上でライセンス供与したアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の1隻が大きな爆発を起こす

 

 

「くっそ……ザカフカース級か……」

 

 

司令官らしき男性が敵艦の艦級を忌々しく呟き、今も3連装砲を連続発射し続ける敵艦を睨む

 

 

イラク管区海軍はアメリカよりライセンス生産が許可されたタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦とアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦や既存のフリゲート艦、サウジアラビアから供与されたミサイル艇等で構成されていた

 

対するイラン共和国海軍はザカフカース級ミサイル巡洋艦やキーロフ級ミサイル巡洋艦、ソヴレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、既存のムェルヴェール級ミサイル巡洋艦、国産フリゲート艦等で構成されていた

 

 

イラク管区海軍が制海部隊としか考えておらず、改良はしているものの設計は半世紀前の艦艇で構成されるのに対し

イラン共和国海軍は周辺各国への侵攻目的のために艦艇を輸入及び建造をしていた

 

 

 

「司令、敵魚雷補足!迎撃不能!!」

 

 

「何……」

 

司令官が強ばった表情で振り向いたその時

 

 

司令官の乗るタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦フローグに魚雷が命中、大きな水飛沫を上げ、さらに同時にザカフカース級からの3連装砲弾が上部構造物や甲板に命中、大きな爆発を起こし炎上する

 

 

 

「ふんっ、流石は最強の巡洋艦と謳われるだけはある。この程度の抵抗、なんの造作もない、全艦、殲滅せよ。遠慮はいらない。全て沈めよ。」

 

 

旗艦としているザカフカース級の艦橋で一人の男が命じる

 

その命令に呼応するように同型艦やキーロフ級ミサイル巡洋艦が前進し、指揮官を失い混乱するイラク管区海軍に容赦なく130㎜砲や300㎜砲を放ち、沈めていく

 

 

旗艦のザカフカース級は別の艦とは違った動きを見せる

VLSを開放し、大きな轟音と噴射炎を上げ、対地巡航ミサイルを放った

 

 

放たれた先はイラク領内にある唯一のイラク管区海軍基地

 

一発目で基地司令部を貫き、大爆発を起こし、ほかの艦艇からも放たれた巡航ミサイルで基地は壊滅した

 

 

 

「さて、あとは……クウェート国内の基地のみか……攻撃せよ。」

 

 

「クウェート海軍のフリゲート艦が展開しております。迎撃されるかもしれません。」

 

 

「構わん、どちらにせよクウェートも攻略目標、今のうちに戦力を削っていくのも悪くは無い。」

 

 

再び全艦より対地巡航ミサイルが放たれ、クウェート湾北部にあるイラク管区海軍基地に向かう

 

パトリオットミサイル迎撃システムが基地内に1つあり、対地巡航ミサイル1発を迎撃成功するも

それを想定した飽和攻撃のため、即座に破壊され、同基地は壊滅する

 

また、隣接していたクウェート海軍基地及びクウェート湾外に展開していたフリゲート艦部隊にも攻撃が加えられる

 

ザカフカース級1隻の300㎜3連装砲によりフリゲート艦が一撃で撃沈されたのを始まりに戦闘態勢の整ってないクウェート軍に容赦なく砲火が襲う

 

クウェート海軍のフリゲート艦から反撃として対艦ミサイルが放たれるも巡洋戦艦クラスの装甲防御を獲得しているザカフカース級によって全てが損害軽微で防がれる

 

 

イラク管区海軍よりも劣るクウェート海軍はより短時間でフリゲート艦部隊を殲滅され、イラク管区海軍基地に隣接するクウェート海軍基地も壊滅する

 

 

 

勝利に沸くイラン共和国海軍だった

 

だが、中立国を攻撃するのがどんなに愚かしいか分かっていなかった

 

 

 

「宣戦布告すらしていない部隊に攻撃するとは……全艦最大戦速!!」

 

 

ホルムズ海峡にてイラン船舶のみの海上封鎖を行っていたインド管区海軍第4打撃隊は最高速力でペルシャ湾北部に向かう

 

 

また、サウジアラビア王国連合及びアラブ首長国連邦の連合海軍もペルシャ湾中部に艦隊を展開し始める

 

カタール及びバーレーン政府は海軍艦艇数隻を緊急展開させる

 

 

そして、バーレーン・マナーマに駐留するアメリカ合衆国海軍第五艦隊はジェネラルホーク級ミサイル駆逐艦やヨークタウン級ミサイル巡洋艦、そして、アイオワ級戦艦『イリノイ』を中心とする駐留艦隊の5割以上を最も突出する形で展開させた

 

 

 

イラン共和国海軍が上陸部隊の揚陸作戦を行っている間の2時間でアメリカ合衆国海軍第五艦隊、サウジアラビア王国連合海軍ペルシャ湾艦隊、アラブ首長国連邦国防海軍、インド管区海軍第4打撃隊が同艦隊を包囲する形で展開した

 

 

 

「ふむ……まあいい、攻撃せよ。」

 

 

「長官!?ですが、相手はあのアメリカ海軍ですよ……それにインドも第4打撃隊という精鋭を、サウジアラビアでさえ本腰を上げてます。」

 

 

「艦長、我らは新ソビエトの犬でしかないのだよ。だから、犬らしい働きをするまでさ。それに奴らは旧時代の異物を持ってきている。そしてそれらは彼らの主戦力の1つ、ここでこのザカフカース級をもってアイオワ級を撃沈すればこのザカフカース級が最強ということが証明され、新ソビエトも作戦行動がしやすくなる。」

 

 

「……分かりました。撃て!」

 

 

 

だが、イランは知らなかった

いかに大国であろうと超大国には叶わないことを

そして、超大国と大国の違いも

 

 

 

 

最も先頭のザカフカース級が300㎜砲3連装砲を斉射し

アイオワ級戦艦『イリノイ』の甲板上に直撃させる

 

キーロフ級ミサイル巡洋艦がプラハン級戦艦『プラハン』の甲板上に130㎜砲弾を直撃させる

 

ソヴレメンヌイ級ミサイル駆逐艦3隻がサウジアラビア王国連合海軍ペルシャ湾艦隊の艦艇やカタール、バーレーンの沿岸警備隊に砲弾を直撃させる

 

 

 

 

アメリカ合衆国海軍第五艦隊

 

 

「反撃せよ、徹底的にな。」

 

 

リアム・ベンソン海軍中将がマナーマに停泊している原子力空母ロナルド・レーガンの艦橋で命じた

 

 

 

 

インド管区海軍第4打撃隊

 

 

「損害報告!」

 

「損傷軽微!」

 

「とうとうやったか……全艦砲雷撃戦用意!ぶちのめせ!」

 

グルム・ブレンディ海軍少将が『プラハン』の艦橋で怒りを顔に滲ませながら言い放った

 

 

『イリノイ』前部甲板の40.6㎝3連装電磁加速砲一基が重い動作音を響かせながら右舷方向に旋回し、3門超高速の砲弾がソニックブームを輝かせながら放たれた

 

狙われたのはキーロフ級ミサイル巡洋艦でその艦体の中央付近に直撃し、一撃で爆沈した

 

 

 

 

『プラハン』が大きく右に回頭し始め、40.6㎝3連装砲3基はそれに呼応して、左に旋回し始めた

 

そして装填されていた対艦用砲弾が一門ごとに連続で発射される

 

その砲撃はキーロフ級ミサイル巡洋艦、ソヴレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、ムェルヴェール級ミサイル巡洋艦、モルジ級ミサイルフリゲート艦に尽く直撃し、どれもが40.6㎝砲弾の破砕力で撃沈される

 

 

 

その2艦の砲撃を合図に攻撃が開始された

 

 

アメリカ海軍のジェネラルホーク級からは特殊兵装《フォースロッグ》が起動し、イラン海軍艦艇20隻ほどを巡洋艦からミサイル艇の区別なく海面下から雷撃が突き上げた

 

 

インド管区海軍のヴィシャーカパトナム級は対地攻撃強化目的で装備された127㎜電磁速射砲によって超音速で砲弾がソヴレメンヌイ級等にぶち当てられ、既に数隻は艦橋と機関部に被弾し航行不能となった

 

 

バーレーン及びカタール海軍はミサイル艇からの対艦ミサイル攻撃を共同で行い、ソヴレメンヌイ級等を大破させていった

 

 

サウジアラビア王国海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦やアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の砲が連続発射され、数の暴力と言わんばかりに次々と航行不能となる艦を続出させた

 

 

「多数の艦艇が航行不能および轟沈!長官、話が違うではありませんか……え?……」

 

旗艦であるザカフカース級の艦長は狼狽するも……

振り向いた先にいた長官に銃でこめかみを撃ち抜かれ死亡する

 

「反抗は許さない。全艦、アイオワ級とアイオワ級のコピーに集中攻撃。」

 

 

 

通常の戦闘距離でもない程の接近戦なのにも関わらず、イラン海軍全艦艇はP-270モスキート対艦ミサイルを発射

 

その全てが『イリノイ』及び『プラハン』に向かい、直ぐに両艦は電磁放射防壁を展開し、数秒後ミサイルが殺到する

 

全てのミサイルが電磁放射防壁に阻まれ、その爆煙が艦を覆い尽くす

 

ただ、『プラハン』の電磁放射防壁は2発のみ貫通を許し、左舷副砲群が損壊した

 

 

 

「やっぱりな……よし、ザカフカース級全艦最大戦速!」

 

 

ザカフカース級3隻だけが『イリノイ』と『プラハン』の前に躍り出た

 

 

『イリノイ』がザカフカース級1隻の量子シールドに着弾したことから、戦闘は次の段階に移行した

 

 

ザカフカース級3隻は130㎜砲、300㎜砲を次々と放ち、『イリノイ』と『プラハン』、そして、ジェネラルホーク級ミサイル駆逐艦2隻とヴィシャーカパトナム級駆逐艦6隻は3隻に集中攻撃した

 

 

 

 

『イリノイ』と『プラハン』はイラン海軍艦隊旗艦を識別し、その艦に対し40.6㎝全門をもって砲弾を量子シールドに叩きつけた

また、旗艦のザカフカース級も300㎜全門を両艦の電磁放射防壁に叩きつけていた

 

その光景は現代にも第二次大戦期にも全く見られなかったであろう、『イリノイ』と『プラハン』がザカフカース級を挟み込む形での、超近距離の砲撃戦であった

 

 

 

そして……

 

とうとう『イリノイ』の1発の砲弾が量子シールドを貫き……

 

強制跳弾した

 

そこは砲弾入射角が最もきつい場所であったため、貫通されることは分かっていた

 

 

その後もまたしばらく砲撃の応酬が続き、

 

 

再び砲弾が量子シールドを突破

 

ついにザカフカース級の艦体を貫き爆発

 

量子シールドが停止した瞬間、数秒前に放たれた砲弾が再び艦体を貫き、2連続で爆発、その後機関が誘爆を起こし、

 

 

艦隊旗艦のザカフカース級は撃沈された

 

 

 

 

ちょうどその時、クウェート空軍のF/A-18C戦闘攻撃機14機が到着

イラン海軍によって一方的に蹂躙された憎しみを抱え込んだクウェート空軍は旗艦を失い混乱しつつも反撃を行うイラン海軍に容赦なく襲いかかった

 

「全機、かかれぇ!!」

 

F/A-18C計14機は一斉に増槽を切り離し、混乱するイラン海軍の上空からハープーン対艦ミサイルを放った

 

 

コールチク対空システムで迎撃する艦艇がいたものの、それは数隻に過ぎず、多くが対艦ミサイルの餌食となる

 

 

 

結局、イラン共和国海軍の残存艦艇はムェルヴェール級ミサイル巡洋艦、ソヴレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、モルジ級ミサイルフリゲート艦の3隻のみとなり、他は全て海の藻屑と化した

また、その3隻も各所に被弾しており、修復することはほぼ困難であろうと思われた

 

 

 

 

 

 

 

 

イラク管区海軍とイラン共和国海軍の衝突から数えて既に16時間が経過していた

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争も次の段階へと移行する……




地上戦があまり書けなかった( ̄▽ ̄;)

特に説明することがないような……

ムェルヴェール級ミサイル巡洋艦はロシアのスラヴァ級ミサイル巡洋艦とほぼ同じと考えてもらって構いません
モルジ級ミサイルフリゲート艦はタランタル級フリゲートですかねぇ


次回予告 番外編2③ この戦いの意味とは

第二次イランイラク戦争は転換期を迎えようとしていた
この結末は……


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番外編2③ この戦争の意味とは

誰にも名前付けてないの初めてかもしれないw


 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルシア湾にて行われた海戦、通称北ペルシア湾大海戦

この戦いでイラン共和国海軍は壊滅的な敗北を受け、イラク管区海軍は1隻も海軍艦艇が残っていないものの、結果的にイラク管区海軍がペルシャ湾を制することとなった

 

 

その為、インド管区海軍第4打撃隊はホルムズ海峡で船舶の臨検行動を開始

アメリカ合衆国海軍第五艦隊はペルシャ湾の各地に哨戒艦を置き、イラン共和国海軍がペルシア湾に躍り出てくるかどうかの警戒監視を実施

そして、イラク民間船舶の護衛にバーレーン及びカタール海軍が付いた

 

 

 

 

 

5月18日

 

 

既にイラン共和国海軍が大敗北したニュースが世界中を駆け巡っていたその日

 

 

パキスタン管区及びアフガニスタン管区がイラン共和国に宣戦布告

 

 

M1A2エイブラムスⅡを中心とする機甲部隊を侵攻させた

 

 

 

さらにその2日後、5月20日

 

 

トルクメニスタン管区が管区成立直後からの妨害行為及び領土要求等の国権侵害を理由としてイラン共和国に宣戦布告

同時に海軍を一方的にイランに殲滅されたクウェート国もイラク領内における軍事通行権が許可されたのを機にイラン共和国に宣戦布告

 

 

 

 

 

ー バアクーバ市街地 ー

 

 

 

キュラキュラキュラと履帯が回転する音を発しながら、1両のM1A2エイブラムスⅡ市街戦仕様がゆっくりと前進していた

 

 

「……どこだ、どこにいる……」

 

 

車長が外部カメラから送られた映像を凝視していた

 

 

傾斜がかかった平面装甲が特徴的なM1A2の砲塔が左へと旋回する……

 

 

砲手はその間にも照準をずっと覗いていた

 

そこに……イラン陸軍のT-14アルマータが映っていた

 

 

「車長!敵車両補足!!」

 

 

「ファストルックファストキル!!さっさと撃て!!」

 

 

砲手が車長に報告すると、車長は怒鳴り返した

 

 

相手もこちらに気づいたのか、砲塔旋回を始めていた

 

 

砲手は照準カメラを凝視すると、砲身を微調整し、トリガーを引いた

 

 

44口径120㎜滑腔砲よりM912APFSDS砲弾が放たれる

 

 

その砲弾はT-14の車体側面に吸い込まれ、車体が粉砕され、砲塔は吹き飛んだ

 

 

 

続いてその撃破に呼応して味方のT-90戦車が躍り出る

 

 

そこではイラン軍歩兵を履帯で踏み潰していた

 

 

 

しかし、その直後、爆散し砲塔が吹き飛ぶ

 

 

 

「どこから……!」

 

砲手が驚きながら砲塔を前方に旋回させる

 

 

車長が砲塔が旋回している間にハッチから頭を外に出し車両前方を見ると

 

「T-22イェルメール……!!」

 

顔をしかめながら叫んだ

 

 

そこには凶悪な140㎜砲から発射煙を吐く戦車の姿があった

 

 

 

 

T-22イェルメール かつてのロシア連邦がユーラシアから消える寸前まで最新鋭戦車であった、また現在の新ソビエト連邦では旧式と見なされており1部の辺境のみしか使用されていない

 

 

 

 

直後、車長はハッと思い出し、車内に入りハッチを閉めた

 

 

「次弾装填は!」

 

 

「既に完了!」

 

「前進!動かなければ的になる!」

 

 

 

彼らの乗っているM1A2はT-22に対しカタログスペック上の性能だと劣っていた

 

 

M1A2は広い街路で最高速度を出し、T-22に対し斜めになるように右斜め方向に移動していた

 

T-22の140㎜砲がゆっくりとそれを追尾する

 

車長は車内の外部カメラからの映像でT-22の様子を見ていた

 

 

「!、このままの速度で左旋回!」

 

車長は映像でなにかに気づく

「え…了解!」

 

操舵手が一瞬困惑したものの、操縦桿を左に回す

 

M1A2は左に急旋回して停車する

 

その直後、140㎜砲から砲弾が発射され、砲塔を掠め……

 

 

背後にあったマンションを粉砕した

 

 

「ふう……車長よく気づきましたね。」

 

 

「以前、ロシア連邦の軍事演習でT-22の外から見た発射機構の様子を観察してたんだ。当たりだったようだな。よし、再度前進!回り込めるようなら回りこめ!砲手は砲塔を旋回して敵戦車が照準に入ったら構わず撃て!」

 

 

「は…了解!」

 

 

 

操舵手が再び操縦桿を限界まで押し出す

履帯が回転し、再びM1A2エイブラムスⅡ市街戦仕様は動き出す

 

その動きに反応してT-22イェルメールは140㎜砲塔をゆっくりと旋回させ追尾した

 

この遅さなら回り込めると思われたが、追いつかないと判断したのか、重戦車のような動きで超信地旋回で左に旋回し回り込まれるのを防いだ

 

 

「くっそ!回り込めれると思ったのに!」

 

 

「愚痴を吐くな!まだ撃たないのか!」

 

 

「ちょうど撃てます!発射!」

 

 

44口径120㎜滑腔砲よりM912APFSDS砲弾が放たれる

 

それはT-22の車体右正面に直撃し複合装甲の1枚目を貫き、そこで運動エネルギーが完全に停止する

 

 

「やはり、硬いか……そこは。ん?!反撃くるぞ!」

 

 

反撃とばかりにT-22の140㎜砲からも砲弾が放たれ、

 

 

「おっと!!」

 

 

操舵手が一時的に車体を停止させ、車両の前に砲弾が直撃し、道路が粉砕される

 

 

 

「このままだと埒が明かないな……ん?何だこの音は?」

 

 

車長や他の乗員が轟音を耳にした

 

 

その正体はイラク管区空軍のF-16改ジャール戦闘攻撃機だった

 

その翼下より対地ミサイル2発が切り離され、超高速でT-22イェルメールに向かう

 

もう既にT-22戦車に為す術はなく

 

 

直撃し大きな爆発が起きた後、砲塔が空中に飛び上がった

 

 

その様子をハッチから顔を出し眺めていた車長は「制空権が確保出来たようだな……」

と呟き、安堵した

 

 

しかし

 

 

「車長、正面!」

 

 

「何……」

 

車長は正面を向き、双眼鏡を覗き込んだ

 

 

(あれはイスラム教軍の旗だと?まさかイスラム教軍も我々に?だが、なぜイラン軍の服装を……!?、あれは、旧イスラエルの対戦車ミサイル『スパイク』だ……まずい!)

 

 

車長はすぐに中に入りハッチを閉め、砲手に怒号を浴びせる

 

「砲手!目標敵歩兵!さっさと撃て!!」

 

 

「え、了解!」

 

 

だが、照準を調整する内に対戦車ミサイル『スパイク』は放たれ、照準が甘かったのか右の履帯正面に直撃した

 

 

「車長!履帯が!」

 

 

「反撃せよ!」

 

 

その一声で120㎜滑腔砲から砲弾が放たれる

 

それは対戦車ミサイル『スパイク』を放った敵歩兵数人に命中し、肉片と変えた

 

 

「よし!」

 

 

履帯を破壊した元凶を撃破したことで車内は一度安堵した

 

 

 

だが、既に死への切符は切られていた

 

 

砲塔右側面に高威力の粘着爆弾が貼り付けられ

 

 

当人達が知る由もなく、時限式の爆弾は爆発、車内を高温の豪雨が襲い、砲塔が吹き飛ばされた

 

 

 

数分後

 

 

 

「くっそ!間に合わなかったか……」

 

 

イラク管区陸軍第6機甲中隊が、砲塔が吹き飛ばされ、車内では炎が燻ってるM1A2を発見した

 

 

「これで……最後の1両、先遣隊は全滅したようですね。」

 

「……だが、一定の戦果は上げたようだ。もうこの街に敵部隊はいない。それと、これを見ろ。」

 

「なんです、中隊長?……これは!?」

 

中隊長が降りて拾ってきた布とある装備を見て、副中隊長は絶句する

 

 

それはイスラム教軍の旗とイラン軍の歩兵装備の残骸だった

 

 

「これらは一緒に落ちていたものだ、このことから推測されることは……」

 

「……イスラム教軍とイラン軍は協力していた……ということですか?」

 

「まあ、そんな事は上層部が調べればいいことだ、我々はこのイラクの領土からイラン軍を一掃し、この戦争を終わらせることだ。」

 

「そうですな。」

 

 

 

 

 

 

 

2日後

 

 

5月22日

 

 

ー イラン共和国首都テヘラン ー

 

 

既に勝敗は決したも同然ではあったが、イラン軍はそれでも抵抗を止めなかった

 

 

東西からの挟撃、そして、イラク軍による怒涛の反撃により、イラン軍は既に首都テヘラン郊外まで追い詰められていた

 

 

 

そして、先程連合軍がイラン軍のテヘラン郊外の防衛線を陥落させ、戦車と歩兵の混合部隊が首都テヘラン市内に進軍を開始する

 

 

目指すべきはイラン共和国大統領府

 

 

途中、大東亜民主共和国のJ-40可変人型戦闘機甲『毁坏』のコピーと思われる機体数機が立ちはだかるも、コピーという名の劣化品で、シールドさえ生成できない代物はその巨体による当てやすさにより戦車部隊からの主砲一斉射を受けて砕け散った

 

 

 

ー テヘラン大統領府 ー

 

 

「そうか……負けか。貴様の責任だな。大統領。」

 

黒ずくめの男がスーツを着た中年ぐらいの男性の背中に短剣をあてながら話しかける

 

 

「いやいや、まだ終わったわけではありません。数日後、新ソビエトで"事"が起きるでしょう」

その大統領と呼ばれた男は笑みを浮かべる

 

 

「何をする気だ?」

 

 

「世界の……清算ですよ……」

 

その時、イラン大統領はほくそ笑む

 

「ふんっ、我々イスラム教軍としてはどうでもいい。少しは利益を貰い、女でさえ手に入れた。だが、私はどうなるのだ?」

 

 

「ご安心を。カスピ海から脱出できますので……」

 

 

「なるほど……提案に乗ろう。」

 

 

 

 

 

30分後、黒ずくめの男とイラン大統領が脱出した後

 

お飾りとして置かれていた副大統領が大統領が見つからない為、全責任をもって、全部隊の戦闘停止と対戦国及びカザフスタン管区政府に降伏宣言を通告した

 

 

 

ここに第二次イラン・イラク戦争は終わった

 

 

イランが何の目的で戦争を始めたかは不明のままであった




戦車の描写とか難しい……これでいいのか?



次回予告 東方危機⑴

新ソビエト連邦に異変が起こり始める


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番外編2④ 東方危機⑴

アメリカ合衆国の制度とか調べるのに苦労しました( ̄▽ ̄;)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月23日正午

 

 

 

ー アメリカ合衆国首都:ワシントンD.C. ー

 

ー ホワイトハウス:大統領執務室 ー

 

 

 

「大統領、食事中失礼します。」

 

国防長官のマティアス・レアードがノックするのを忘れ、顔に汗を浮かべたまま入ってきた

 

 

大統領であるケント・フリッツはフォークを置き、タオルで口を拭いたあと、口を開いた

 

 

「どうした?」

 

 

「はっ、それが……

 

 

 

新ソビエトの黒海艦隊が動き出しました。」

 

 

 

その時、フリッツ大統領は目をひそめ、

 

 

「補佐官、すぐにPEOCに全閣僚を集めてくれ。急を要するぞ。」

 

 

「はっ!」

 

補佐官はすぐに部屋から立ち去った

 

 

 

 

数十分後

 

 

 

 

ー ホワイトハウス地下 ー

 

ー 大統領危機管理センター【PEOC】 ー

 

 

 

「国防長官、国防総省(ペンタゴン)からの詳細の情報を求める。」

 

 

国家安全保障会議(NSC)が始まった

 

 

NSCとはアメリカ合衆国の国家安全保障と外交政策における最高意思決定機関の一つである

閑話休題

 

 

その直後、最も早くフリッツ大統領が口を開く

そして、全閣僚の視線がレアード国防長官に向いた

 

 

「はっ、大統領に報告する数分前、ちょうど黒海上空にいた偵察衛星が新ソビエト連邦ノヴォロシースク軍港より出港する新ソビエト海軍黒海艦隊を確認しました。」

 

「既に黒海艦隊はボスフォラス海峡に向けて前進を開始しています。」

 

 

「艦隊の編成はどうなっている?」

 

フリッツ大統領がレアード国防長官に質問を投げかける

 

 

「は……ザカフカース級が20隻近く確認されており、『ソビエツカヤ・ウクライナ』、『ソビエツカヤ・ベロルーシヤ』と新規建造艦と思われる艦艇の計3隻のソビエツキー・ソユーズ級、そして……」

 

 

「『ブレジネフ』が確認されました」

 

 

 

その一言で会議の空気が一変

全員が息を飲んだ

 

 

その最中、ある1人の人物が手を上げる

 

 

「国務長官のヴェール・ロンスです。」

 

 

ロンス長官は名乗った後矢継ぎ早に言葉を繰り出す

 

「トルコ政府より連絡がありました。トルコ政府は新ソビエト連邦艦隊の通行を黙認している、と。」

 

 

その言葉に会議場からはため息のような音が聞こえ、さらに

 

「ただでさえトルコにとって新ソビエトの通常戦力は脅威なのに、あの化物兵器を繰り出されたら……致し方ない対応だな……」

といった発言が閣僚の中から見受けられた

 

 

 

「NSA顧問、これは先日の出来事に連動しているな?」

 

 

突然、フリッツ大統領は視線を思いっきり右に向け、立ちながら聞いている人物に質問を投げかけた

 

 

「はい、我々の諜報員からの連絡にあった新ソビエト大統領の暴走。連動していると思われます。」

 

 

「……昨日にその件に関するNSC(国家安全保障会議)で共有されているが、大統領に次ぐ権限を持っていた副大統領が射殺された……連動しているとなれば明らかに暴走しているな。奴は……ヴィレシコフは何が望みだ?」

 

フリッツ大統領は目をひそめたまま、新ソビエトの大統領の名を上げ、質問を全閣僚に問うた

 

 

そして、1つの意見が上がる

 

 

「世界大戦でしょう。」

 

 

その言葉を上げたのはレアード国防長官だった

 

 

「まさか!第三次世界大戦を起こすつもりなのですか奴は?そんな馬鹿な真似はしないと思いたいですが」

 

ロンス国務長官がで柔らかい口調で異議を申し立てる

 

 

「『ブレジネフ』さえ動員しているのだ。奴は戦争を望んでいる。」

 

 

「推測など後で専門家交えてすればいい事だ。我々の目的はアメリカ国民を含めた世界の安全と平和を維持することだ。レアード国防長官、我々の対応は?」

 

フリッツ大統領がレアードとロンスの言い合いを諌め、レアード国防長官をじっとみて質問する

 

 

「既に第6艦隊隷下のCTF-60及びCTF-64を地中海東部に派遣しました。」

 

 

「空母打撃群と潜水部隊か、編成の詳細は?」

 

 

「はい、ジェラルド・R・フォード級原子力航空母艦CVN-82『レキシントン』、CVN-85『ミッドウェー』、CVNB-2『セント・ジョーンズ』、モンタナ級原子力戦艦BB-73『ウェストバージニア』、BB-76『マサチューセッツ』、BB-79『メリーランド』、BB-80『テネシー』、ヨークタウン級ミサイル巡洋艦『ヨークタウン』、ジェネラルホーク級ミサイル駆逐艦約40隻、他、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦やアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦約20隻を派遣。原潜部隊はハウンド級原子力潜水艦SSNB-1『ハウンド』、SSNB-2『ブラムバーク』、SSNB-3『インファント』、SSNB-4『ハンターキラー』他バージニア級原潜18隻を派遣しました。そして……1部にしか公開されていない秘匿艦も派遣しました。」

 

 

「それは?」

 

ロンス国務長官が尋ねる

 

 

「グリーズ・リーパー級特殊戦艦一番艦『グリーズ・リーパー』、アメリカや白の世界の1部協力者の技術を注ぎ込んだ戦艦であります。ステルス性能を格段に上げており、レーダー波さえ誤魔化します。また、62.4㎝3連装光子重主砲を搭載し、他にも40㎝クラスのレーザー砲を多数搭載しております。そして、現在の原潜を上回る潜航を可能としており、静粛性も上回ります。その他の装備としては各種弾頭を発射可能なVLSを装備し、潜水型UTVを搭載しております。」

 

 

その間に会議場ではザワザワと各地で話し声が聞こえた

 

 

 

 

その直後、机を強く叩く音が聞こえた

 

 

「会話をやめたまえ。諸君、我々は世界の警察官にはならずとも、第三次世界大戦を起こすことは絶対に避けなければならない。ソビエツキー・ソユーズ級ならモンタナ級でも十分だが、かの化け物戦艦『ブレジネフ』ではモンタナ級は相手にはならない。致し方ないのだ、奴らを牽制するためには。」

 

 

「それと」と後付けし、フリッツ大統領はレアード国防長官に向き直った

 

 

「国防長官、独断専行はやっては行けんことだが、今回ばかりは仕方ない。派遣を大統領命令として認定する。」

 

 

「了解。」

 

 

「USSOCOM司令官。」

 

 

「はっ!」

 

フリッツ大統領は今回の会議に特別参加が許されたアメリカ特殊作戦群司令官に向き合い

 

 

「諜報員の情報によると、現在主だった官僚たちは軟禁状態に置かれているらしい。」

 

 

「私もそう聞いております。」

 

 

「救出してくれ。そして大統領を拘束及び射殺しろ。」

 

 

「え?」

 

フリッツ大統領から発せられた命令に司令官は言葉を失う

 

 

「新ソビエトの憲法にはロシア連邦から受け継がれている法律があったのだよ。それは……大統領及び副大統領が職務を執行できない場合、国防大臣がその任に当たると……分かるな?」

 

 

「まさか……」

 

 

「ああ、我々による大統領の処分を明かさずに国防大臣によって職務を代行させ、その間に大統領が自殺したと見せ掛け、国防大臣を大統領に付かせる。まあ、ここまで上手くいったらバンザイものだが、そうはならんな。だが、絶対に第三次世界大戦を引き起こしてはならない。」

 

 

「りょ、了解しました!」

 

 

特殊作戦群司令官は大統領の考えに少し唖然としつつも、敬礼する

 

 

 

その時、国防次官が会議場に入り、

 

 

「し、失礼します!国防長官!」

 

 

「どうした?」

 

 

「耳を貸してくれませんか?」

 

 

「……分かった。」

 

レアード国防長官は疑問を抱きつつも聞いた

 

 

「!?」

 

直後、驚いた顔を見せる

 

 

「大統領。」

 

 

「何があった?」

 

「……新ソビエト連邦が極秘にジョージアへと宣戦布告、既に一部陸軍部隊がスターリングラードを抜け、ジョージア国境をめざしております。」

 

 

「……」

 

フリッツ大統領は少し目をつぶり……

 

 

「レアード国防長官。」

 

 

「なんでしょう。」

 

 

「在トルコ駐留部隊にジョージアへの支援体制を確立させろ。それと、第五艦隊と中央軍にも支援体制を整えるよう伝えろ。」

 

 

「ロンス国務長官。」

 

 

「はい。」

 

「トルコ政府及びイラク管区政府、サウジアラビア、インド管区、カザフスタン管区にこの情報を送れ。」

 

 

「了解。」

 

 

「……総員、デフコン2に完全移行。厳戒態勢を維持せよ!」

 

 

 

 

アメリカ合衆国国家安全保障会議は終了

 

 

 

各閣僚が自分の職場に戻る中、フリッツ大統領はレアード国防長官に声をかけた

 

 

 

「レアード。」

 

「なんでしょう、大統領。」

 

 

「君には少し重い責だが、特殊作戦群による国防大臣の救出等は君に一任する。絶対に第三次世界大戦という人類の惨禍は起こしてはならんぞ。」

 

 

「……お任せ下さい……大統領。」

 

 

「自信だけはあるな、だが、それがいい。」

 

最後にフリッツ大統領はレアード国防長官の背中を叩き、歩き去っていた

 

 

 

「……第三次世界大戦は起こしてはならない……そりゃそうだ。第二次世界大戦でさえ膨大な死者数が出た。戦争を止め、ヴィレシコフ大統領を止めなければな。」




グリーズ・リーパー級特殊戦艦……ややチートすぎた?
まあいいや




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番外編2⑤ 東方危機⑵

 

 

 

 

 

 

 

 

ー エーゲ海 ー

 

 

 

アメリカ合衆国海軍第6艦隊第2打撃群と新ソビエト連邦海軍黒海艦隊は23日の深夜には両艦隊の航空機の索敵範囲内に進入した

 

 

ー 第2打撃群旗艦:CVN-82『レキシントン』 ー

 

 

「壮観だな。」

 

この艦隊の総司令官であるスコット・ルマイヤー海軍中将が呟いた

 

 

「ですな。」

 

参謀が言葉を返す

 

 

「だが、こんな状況下では嬉しくないものだ。」

 

 

ルマイヤー中将はレーダー表示が映されているモニターに視線を向けた

再び前方に戻す

 

 

「あちらからも動きはないみたいだな。」

 

 

「ええ。ソビエツキー・ソユーズ級3隻を先頭に置き、『ブレジネフ』は艦隊の中心に王のごとく鎮座しています。付け加えるならばレニングラード級から発艦した航空機が飛び回ってるぐらいですかね。」

 

 

「で、例の艦についてだが、今は海の中かね?」

 

 

「ええ、潜水艦部隊と共に待機しています。」

 

 

「通常の原潜を上回る、というか戦艦クラスの大きさの癖に隠蔽は最高性能という……どんな技術を使ってんだ?」

 

 

「まあ、技術を提供してもらった白の世界には視覚すらもごまかせる技術がありますからな。」

 

 

「……とんでもない技術だな……まあ、とにかくその艦についての件は一旦棚上げだ。全艦、臨戦態勢で待機せよ。」

溜息を吐きながら、ルマイヤー中将は待機命令を下す

 

 

「ところで……国防大臣の救出と、大統領の拘束任務、成功するでしょうか?」

参謀が不安そうに尋ねる

 

 

「それは奴らに任せるしかないだろうな、SOCOM(特殊作戦軍)の連中にな。」

ルマイヤー中将は少しニヤッとしながら話す

 

 

「自信ありげですね?」

 

 

「まあ……奴らが失敗したら第三次世界大戦が始まってしまうんだ、気楽にいなきゃ待機しているあいだに疲れるぞ?」

 

 

「分かりました。」

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

 

ー グリーンランド島上空 ー

 

ー 地球大気圏限界高度 ー

 

 

そこにはPBU超音速ステルス輸送機と随伴する護衛のFS-1宙空両用戦略偵察攻撃機4機がいた

 

 

ー アメリカ空軍空軍特殊作戦コマンド輸送隊 ー

 

ー PBU機内 ー

 

 

「隊長、あと数分で新ソビエトの防空圏内ですね。」

 

「ああ、そうだ。心配か?」

 

「そりゃあ、俺たちが失敗すれば世界大戦が始まるんですから。」

 

「だとしてもやることは変わらん。俺たちの任務は要人を救出し対象を拘束か射殺することだ。」

 

「はぁ……。」

 

その時、機体の外部から通信が入る

 

《こちら、【ファルコン】、我々はもうすぐ離脱準備に入る。それでは、GOOD LUCK(幸運を祈る)。》

 

 

FS-1宙空両用戦略偵察攻撃機4機がスラスターを起動し離脱を始めた

徐々に離れていく……

 

 

 

「とうとう、我々だけになったな。機長、事故るなよ?」

 

「ふんっ、何年やってると思ってんだ。任せてくれよ。」

 

機長は前を見ながら、頼りになるグッドのハンドサインを見せつけてきた

 

 

「ハハッ、はいはい。」

 

 

「そういや彼女ずっと寝てますね。大丈夫ですかね?」

 

「逆に寝てもらわんとうるさいがな。」

 

そこでほかの隊員から笑い声が聞こえてくる

 

 

「まあ、寝ないと体力持たないんだろう。だが、頼りにはなるさ。なにせアメリカ魔法軍の出身らしいし。」

 

「それだけですか?」

 

「……お前は知らんのは当然だが、こいつはテロリスト集団を何個も壊滅させた実績がある狂人さ。ま、殺し好きとは違うらしいが。」

 

「……え?」

 

その兵士は言葉を失う、理解が追いつかなかったようだ

 

 

「この話、初めて耳にした時、俺もこいつのようになりましたよ。」

 

隣にいた仲間、詳しく言うならば一年早く入った先輩が口を開く

 

 

「だったな。さて……」

 

隊長は席をたち、その誰もが信じられないような戦績を持つ寝ている少女に近づき、銃のグリップで頭を軽く叩く

 

 

「イタッ。何するんですか隊長~!」

 

その少女は叩かれた痛みに軽く涙目を浮かべながら、隊長に口答えする

 

 

「金髪少女がなにダッサイ姿で寝てんだ。まあ、そんな事よりももうすぐ出撃だ。」

 

「はぁ~……リョウカイー」

 

 

その少女は棒読みで返事しながら、起き上がり、金髪の髪の毛をまとめあげポニーテールに結んでいく

 

 

「さて……機長!降下してくれ。」

 

 

「おうよっ!しっかりつかまってとれ!まあ、落ちたりはしないがな、ハハハッ!」

 

機長は顔は見せないが、ニヤケ顔を表した

 

 

機長は操縦桿を倒し、それに応じてPBU超音速ステルス輸送機は機種を下に向け降下していく

 

 

そこは既に新ソビエト連邦の領空内、詳細を話せば、コラ半島の上空であった

 

いわば、一度捕捉されれば、撃墜される危険性が最も高い場所であった

 

 

 

 

 

3(スリー)、、、」

 

 

 

 

 

 

2(ツー)、、、」

 

 

 

 

 

 

1(ワン)、、、」

 

 

 

 

 

 

「GO!GO、GO、GO!!!」

 

 

降下予定だった10人が後部ハッチから飛び降り、空気の流れに乗り、滑空していく

 

 

 

 

 

数十分後

 

 

 

彼らはモスクワ郊外に着陸する

 

 

 

「総員、無事か?」

 

 

「もちろん。」

 

一番最初に返事したのは、戦場にいると雰囲気がガラリと変わる金髪の少女であった

 

 

「そうか、他は?」

 

 

「もちろんですぜ。」

 

「は、大丈夫ですっ!」

 

 

「新人、少しは落ち着け、問題ない。我々は一度たりとも捕捉されていない。」

 

「それは……良かったです……。」

 

 

「では、動き出すぞ。ついてこい!」

 

 

 

 

アメリカ空軍特殊作戦コマンド第1特殊作戦航空団第91小隊は自分達の存在を無いものとして行動を開始した

 

 

 

 

 

 

ー 新ソビエト連邦 ー

 

ー 首都モスクワ:大統領府 ー

 

 

 

「どうかね、全ての部隊の様子は?」

 

ヴィレシコフ大統領が口を開く

 

 

その言葉に返答を返したのは国防大臣……ではなく、連邦軍首都管制司令部司令官であった

 

 

「はっ!全ての部隊の展開は完了しています!ですが、各地にてアメリカの艦隊が展開しております。」

 

 

「片付けろ……とは言いたいが、まだだ。まだ機は満ちていない。」

 

 

その時ヴィレシコフは視線を前に向ける

そこには四角形の大きな机が並べており、左右に挟み込むように閣僚たちが座っていた

 

そして、その誰もが両手に手錠をつけられ拘束されていた

 

 

その筆頭である国防大臣セルゲイ・ザルコフは大統領を眺めて心の中で思った

 

 

(クソっ……我々は大統領のありがたい言葉を聞くだけの存在か……)

 

その内、視線はヴィレシコフ大統領の後ろにいる男二人に向く

 

 

(そもそも、あの黒ずくめの男はなんだ……?その隣にいるのはイラン大統領、一体なぜ……?)

 

 

その後

 

 

「では、君。我々はこれからヘリで向かう。君は彼らの相手をしてやってくれ。まだ遊び足りないらしいからな……ククク。」

 

ヴィレシコフ大統領は黒ずくめの男に話しかける

 

「……全く面倒事を押し付けるとはな……まいい、こいつらの処分については任せられた。」

 

 

 

(とうとう世界大戦は止められなかったか。まあいい、残りの人生を悔いなきように過ごすとしよう。)

 

 

すると、ある士官が大統領の元に歩み寄る

 

 

「失礼します。大統領。ある通信信号が確認されました。」

 

 

「一体どこのかね?」

 

 

「……アメリカです。」

 

 

「そうか……」

 

 

ヴィレシコフはポケットから通信機を取り出すとすぐに話し始めた

 

 

「親衛隊長。」

 

『なんでしょうか、大統領閣下。』

 

「付近にアメリカ軍が展開している。片付けろ。」

 

『はっ!』

 

新ソビエト連邦大統領を護衛する役割を持つ親衛隊長はクレムリン防衛隊の1部を動かし始めた

 

 

(……アメリカ、彼らが世界大戦を防ぐための希望となってくれるだろうか……)

 

ザルコフは願った

 

 

 

 

 

 



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番外編2⑥ 東方危機⑶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~モスクワ時間5月23日深夜~

 

 

ー モスクワ市内 ー

 

 

クレムリンに最も近い、【大侵略事件】にて破壊尽くされ、それ以降放棄された廃工場地区、その中のある監視塔の1つに第91小隊は潜伏していた

 

 

「一応予定通りだな……」

 

隊長が沈黙を破る

 

 

「まだ、たどり着いていないけどね……」

 

 

「なぁに、すぐ着くさ。リリィ。」

 

 

「そう……」

 

 

「おい、戦車1両と歩兵部隊の接近を確認。」

 

 

「総員……音を出すな。」

 

一瞬にして静まり、その内、戦車やトラックの駆動音が大きくなる

 

 

 

数分後、戦車が監視塔の前で急停止し、トラックも止まる

そして、数台のトラックから兵士たちがぞろぞろと降り廃工場地区に入っていく

 

 

 

その後、トラックには誰もいなくなったと思われた

 

しかし、その矢先に1人の男がゆっくりと降り、手に持ったライトを監視塔の1番上に向けながら、監視塔の入口から中へと入っていく

 

 

ゆっくりとした歩みで監視塔の1階を見渡す……

 

 

そして、ライトを足元に置き、手に持ったAK-82自動小銃を上に向け発砲し一弾倉分を撃ち出した

 

 

「……く……」

 

 

その弾は半分以上が監視塔の真上までにある鉄骨に防がれるが、その残り全てが金髪の少女に当たり、フィールドを展開するも幾つか貫通した弾があり、悶える

 

 

 

男は1弾倉分の弾を出し切ったAK-82を足元に放り投げ、代わりに肩に担いでいた物を取り出す

 

 

RV-L2突撃砲銃、それを構える

 

 

再びそれを上に向け、一発撃ち出した

 

 

そして、その戦果を確認することもなく、ニヤケ顔を浮かべ、塔を後にする

 

「Установить случай!」

 

廃工場地区各地に分散していた兵士を集合させ、退いて行った

 

 

 

「カハッ……」

 

 

一方で、RV-L2突撃砲銃の弾丸はリリィの左腹を貫き、少なくない血が流れ出し、口からは血を吐き出していた

 

 

「……大丈夫です……私に別行動を認めてくれませんか?」

 

だが、それを大丈夫と強がり、あまつさえ別行動を要求してきた

 

 

「……分かった。」

 

隊長は逡巡していたものの、結局認めてしまう

 

 

「……ありがとうございます……任務を……遂行します。」

 

若干痛みに悶えながらも、言葉を発するリリィ

 

 

そして、監視塔から飛び降り、地面に着いた後、すぐにモスクワ川に飛び込んだ

 

 

「……行かせていいんですか?」

 

新人が口を開く

 

 

「あいつの要求だ。断れないさ……」

 

 

「ですが、もし死なされたりしたら……」

 

通常の兵士としての懸念を口にする

 

だが……

 

 

「おい、新人。俺たちは存在しない部隊だ。いいな?」

 

隊長は銃を突きつけ、威圧する

 

 

特殊作戦群はだいたい潜入任務を行うため、いないものとして扱われる

それは特殊作戦群にとっては常識であった

 

 

「はい……」

 

 

「よし、では、我々も行動するぞ。せいぜい一人の女に全て手柄を奪われないようにな。」

 

仲間達が吹き出しかける

 

 

「作戦開始だ。」

 

 

 

各自散らばり、行動を開始した

 

 

 

 

 

 

 

『大統領、アメリカ軍は廃工場地区にはいませんでした。発見できず申し訳ありません。』

 

 

「そうか……だが、付近にいることは確かだ。探し出せ!探すのだ!そして、殺せ!」

 

 

『ですが、それでは兵士たちが疲れてしまいますな。ところで大統領はいつ発つつもりでしょうか?』

 

 

「疲れる等人間にとって当然、私のことは気にせず任務を行え。」

 

 

『はっ!』

 

ヴィレシコフが通信を切る

 

 

「ヴィレシコフよ、だが、向こうとの予定もある。ここは彼に任せたらどうかね?」

 

イラン大統領が発言する

 

 

「……お前にか?」

 

 

「失礼だな。これでも軍指揮官はやっていたぞ?」

 

 

「……ならいい。だが、今はもう暗い。朝になり次第、出立する。」

 

 

 

 

 

 

 

 

~5月24日早朝~

 

ー 新ソビエト連邦大統領府屋上 ー

 

 

 

新ソビエト連邦大統領専用短距離輸送機

垂直離着陸型航空機KA-L28がエンジンを起動し、両翼端のローターを高速回転させる

その回転が軌道に乗ったところでヴィレシコフ大統領はイラン大統領とともに後部座席に乗り込む

 

 

「では、君。あとは任せた。」

 

 

「お任せを。」

 

黒ずくめの男が頭を下げ礼をする

 

 

 

 

そして、ドアが閉まり、KA-L28が飛び立つ

 

 

 

 

その後

 

 

「では、諸君。待たせたな。」

 

 

黒ずくめの男が中央会議場に戻ってきて、AK-82自動小銃を拘束された官僚たちに向ける

 

 

 

(これで終わりか……もう覚悟は決めている……)

 

 

銃口がザルコフ国防大臣に向けられた……

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

甲高い発砲音が聞こえ、ザルコフを拘束していた手錠が破壊される

 

 

さらに甲高い音が2発続き、狙っていたAK-82自動小銃とそれを持っていた黒ずくめの男の左手に命中する

 

「ぐあっ!」

 

 

そして、その声が聞こえた途端

9人が窓を突き破り突入してきた

 

 

9人は突入後、すぐに発砲し、9人の拘束していた手錠を一斉に破壊する

 

 

「くっそ!!これならば!」

 

黒ずくめの男が叫び、自分の周りに障壁を作り出す

 

 

そこに銃撃が殺到するも、その障壁は簡単に弾いていく

 

「フハハッ!その程度では貫通できんのだよ!」

 

 

黒ずくめの男は尊大な態度で第91小隊に銃撃していく

だが、男は一人いないことに気づかなかった

 

 

 

その直後

 

 

 

1発の銃弾が青白い膜を纏いソニックブームを起こしながら部屋に突入し、障壁に直撃し……

 

 

その障壁は貫通され、そればかりではなく銃弾の衝撃波によって、4つに割かれた

 

 

そして、障壁を突破した銃弾は黒ずくめの男の心臓に正確に直撃する……!

 

 

 

「ぐっ……どこから……障壁を突破しただと……」

 

 

その男はまだ生きていたが、立ち上がることが出来ず這いずっていた

 

そこに9人からの銃口が向けられる

 

 

「名前を言え。」

 

第91小隊隊長が真っ先に発言する

 

 

「ふんっ……アメリカ共に答える気等サラサラないわ……」

 

隊長は溜息を吐き、視線をザルコフ国防大臣に向ける

 

ザルコフ国防大臣は意志を察したかのように頷く

 

 

そして

 

 

「撃て。」

 

 

隊長除く8人がHK416小銃より5.56㎜NATO弾を一弾倉分撃ち尽くす

 

「こりゃあ、ひでぇ……」

 

 

その時別行動していたリリィより通信が入る

 

 

『隊長。現在、大統領専用ヘリのローターを充分狙える距離にいます。ローターさえ破壊できれば、機体を軟着陸させ拘束することも可能です。ご命令を。』

 

 

隊長は逡巡し、ザルコフ国防大臣に耳打ちする

 

彼は頷き、隊長はそれを見て意志を固める

 

 

「やれ。」

 

 

『了解。』

 

 

 

 

 

ー モスクワ市内ビル屋上 ー

 

 

Absolute magic eye(絶対魔眼)start-up(起動).」

 

 

M113セミオート式対物狙撃銃のスコープを覗いている金髪の少女の姿があった

 

左眼が通常の目とは異なり、赤く……まるで獲物を虎視眈々と狙う獣のような目をしていた

 

 

スコープと連動し約10㎞先のKA-L28垂直離着陸輸送機を正確に拡大照準で捉えることが出来ていた

 

 

トリガーに指をかける

 

 

「ふぅー……」

 

一度深呼吸を挟み……

 

 

「墜ちて。」

 

力強くトリガーが引かれる

 

 

銃口から青白い光が漏れ出ている中、青白い膜を纏った銃弾が超音速で吐き出された

 

 

それはKA-L28の左翼側ローターを正確に撃ち抜き、破壊した

 

 

 

 

 

左のロータを破壊されたため、バランスを崩し、徐々に降下していくKA-L28

 

「くっそ!これは……左を破壊されたか!?」

 

「どうにもなんないぞ、これ!」

 

2名のパイロットが混乱する中……

 

 

ヴィレシコフは冷静に判断する

 

「これは……落ちるな。」

 

 

「そうなのか!!脱出するぞ!」

 

イラン大統領はその一言を聞き、脱出する

 

だが、パラシュートの操作が上手くいかず、地面に激突する

なお、それでも生き長らえていた

 

 

しかし、KA-L28が同じ地点に墜落する事となり、イラン大統領はすり潰された

 

 

そこには大量の血溜まりが出来る……

 

 

 

その時、ヴィレシコフ大統領は我に返ったかのような表情を見せる

 

 

 

数分後には

 

第91小隊が到着し、大統領及び2名のパイロットを拘束する

 

 

「大統領、残念です……」

 

ザルコフがヴィレシコフに挨拶をする

 

 

「ま、待ってくれ!私は何をしたのだ、全く……覚えてないのだ!」

 

 

「え?」

 

ザルコフはその言葉に怪訝な表情をする

 

 

「……では、質問をさせて下さい。我々を拘束しましたか?」

 

 

「……何を言ってるのだ……最後の記憶はイラン大統領に会った時だ……そんな事やった覚えもない!」

 

 

「……」

 

ザルコフはこの言葉に唖然とする

 

 

「……そもそもこのヘリに乗った覚えがない……何をしようとしていたのだ……」

 

 

「……世界大戦……です。」

 

「……何……」

 

ヴィレシコフも唖然としてしまう

 

 

 

ザルコフ国防大臣は第91小隊に振り向き……

 

「……アメリカ軍、大統領の事だが我々に預からせて欲しい。」

 

 

「構わない。だが、我々が随伴しているという条件次でだが。」

 

 

「もちろんだ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

~アメリカ軍東部時間5月24日午前~

 

ー ワシントンD.C. ー

 

ー ホワイトハウス:大統領執務室 ー

 

 

 

「ヴィレシコフ大統領は催眠装置により動かされていた……か。」

 

フリッツ大統領は前に立つCIA長官、ブランツ・ニクセンに話しかける

 

 

「ええ。この事態を引き起こしたのは、イラン共和国大統領、サファダ・デル・ホスローです。」

 

 

「それと、黒ずくめの服であったイスラム教軍幹部か……名前はわからないのか?」

 

 

「……残念ながら……申し訳ありません。」

 

ニクセン長官は大きく頭を下げる

 

 

「まあ、いい。取り逃したら問題だが、始末しているんだ。今のところは重要ではない。」

 

 

フリッツ大統領は視線をレアード国防長官の方に向け

 

「国防長官、この被害だが、何が起きた?」

 

 

「はっ、エーゲ海の方は、『ブレジネフ』艦長がイラン大統領のシンパだったらしく、大統領命令が撤回された時に勝手に発砲したようです。」

 

 

「なるほどな……ジョージアは?」

 

 

「1部戦車隊同士の衝突がありました。また、その時、新ソビエト航空部隊の一部が亡命を行いました。」

 

 

「そこは現地政府に任せるとしよう。近海に展開している全ての任務部隊を下がらせてくれ。大戦の危機は去った……後はどうこの対立を終わらせるかだ。」

 

 

「「はっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

~同時刻~

 

ー モスクワ ー

 

ー クレムリン:大統領府 ー

 

 

 

「国防大臣、なぜその席に?」

 

ザルコフはなぜか大統領の席に座っていた

 

彼は目をつぶりながら他の閣僚の話を聞いていたが、終わると目を開け話し始める

 

「ヴィレシコフ前大統領より役職を受け継がれた為、臨時大統領に就任する。また、国防大臣は兼任する。」

 

その目は決意の炎が燻っていた

 

 

「ま、待ってください!それでは、独裁とも取られてしまうのでは?」

 

 

「分かっている。だからこそ、選挙の用意をしろ。」

 

 

「ヴィレシコフ前大統領はどうなるのです?」

 

 

「どうなるもない……彼は……自ら職を退いたのだ。」

 

 

「!?……了解。」

 

 

「しかし……アメリカとも連携できたのです。これは冷戦を終結させるチャンスかもしれませんよ?」

 

 

その言葉にザルコフはため息を吐く

 

「そんなことは無い。我々は良くても……地盤が追いつかん。ここはゆっくりと改変を進めいていく他ない。」

 

 

 

 

 

人類の惨禍たる世界大戦の勃発は回避された

両陣営の盟主であるアメリカ合衆国と新ソビエト連邦の努力によって

しかし、まだ冷戦は終わらない

この地球は未だに第三次世界大戦の勃発の引き金となる火種を数多く抱えている

また、世界を滅ぼせるほどの核兵器に代表された大量破壊兵器も

そして、未だにBETAは健在であった




番外編終了、次の章に移ります
その前に設定を……


※設定


・KA-L28

新ソビエト連邦垂直離着陸式航空機
簡潔にいえば、オスプレイのロシア版
しかし、この機体は新ソビエトが白の世界の技術も活用して開発したため、落ちる心配はほとんどない
なお、アメリカはオスプレイから既に3番目の機体を開発、運用している。そちらにも白の世界の技術が使用されている


・AK-82

新ソビエト連邦製小銃
AK-74の次世代版


・RV-L2 突撃砲銃

新ソビエト連邦製オリジナル銃
多種の弾頭を装填することが可能であり、用途によっては対戦車も可能
今回では炸裂しない対人徹甲弾頭を使用した


・戦車(T-26 ヴラニスク)

新ソビエト連邦主力戦車
ロシア連邦時代において計画、設計段階に入っていた車両であり、新ソビエト連邦軍にて制式採用された
T-14アルマータやT-22イェルメールを一気に陳腐化させた車両である


・ コルナーク・ヴィレシコフ

新ソビエト連邦第2代大統領
初代大統領が政変成功して数ヶ月で暗殺され、その座を受け継いだ
頑固者と知られており、頑固さはかのチャーチルでさえ劣るほど
第2次イラン・イラク戦争のイラン敗北直前にイラン大統領サファダ・デル・ホスローに訪問され、その時に催眠をかけられ操られた
物語終盤において責任をとり、職をセルゲイ・ザルコフ国防大臣に譲る


・ セルゲイ・ザルコフ

新ソビエト連邦国防大臣
初代と第2代で国防大臣を受け持っている(※初代と第2代ヴェルシニコフではたった数年しかありません)
ロシア連邦時代に軍人として数多くの紛争に参加してきた
武人あがりの国防大臣である
物語終盤において臨時大統領となる


・ サファダ・デル・ホスロー

イラン共和国大統領
とある秘密結社から購入した特殊な催眠装置でヴェルシニコフ大統領を催眠にかけ、操ったとされる
ヴェルシニコフ大統領を操り第三次世界大戦を起こそうとした事実はあるが、その目的と理由は不明
墜落するKA-L28垂直離着陸式航空機に押しつぶされ死亡


・黒ずくめの男

イスラム教軍幹部
これしか分かっていない
アメリカ空軍特殊作戦コマンド第91小隊からの銃撃を受け死亡


・ リリィ・エイミス

アメリカ合衆国空軍特殊作戦コマンド第1特殊作戦航空団第91小隊隊員
年齢17歳
身長160㎝ほど
体重?シランナ
金髪ポニーテールの髪型
アメリカ魔法軍に属していた時期もあり、多数の武装組織を壊滅させた実績がある
使用魔法は『Absolute magic eye(絶対魔眼)
20㎞以下の標的を正確に捉えることが可能
また、スコープと連動することも可能である
使用銃はHK416や魔改造して射程距離を超延長したM113セムオート式対物狙撃銃等多種に渡る
性格は常にぼーっとしているが、戦場では雰囲気が一変する


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chapter16 来襲…再び

 

 

 

 

~西暦2026年5月24日午前6時~

 

ー フランス共和国ブーシュ=デュ=ローヌ県マルセイユ市 ー

 

ー ある一軒家 ー

 

 

 

一人の少女がベットから起き上がってくる

 

 

「あれ、お父さん?その格好は……」

 

 

彼女は父親の服装を見て、疑問を抱く

 

「クロエ、今日、リヨンのおじいちゃん達に会いにいく予定だったろ?」

 

 

「う、うん。」

 

 

「すまないが、行けなくなってしまった。1人でも行けると思うし、1人で行ってくれないか?」

 

その時、父親は寂しい顔を一瞬浮かべた

 

 

「まさか、軍?」

 

彼女は服装がフランス共和国海軍の制服であることを見抜いていた

 

 

「あぁ……詳しくは言えないが、イスラム教軍の活動が活発してきたらしい。すまないな、久しぶりに父さんと一緒に行けたのにな。」

 

 

「ううん、大丈夫。お父さん怪我しないでね。」

 

 

「クロエも元気にな。」

 

父親はクロエの肩に手を置く

 

 

父親はアンセルム・ファルトマイヤー

 

少女はクロエ・ファルトマイヤー

 

 

元はナチス・ドイツのフランス占領軍の兵士と現地女性との関係であり、ドイツとフランスの血が混じっている

母親はクロエが生まれたすぐに亡くなっており、クロエとアンセルムの父子家庭であった

 

 

「それじゃ行ってらっしゃい。」

 

クロエは玄関内で手を振り

 

 

「あぁ行ってくる。」

 

アンセルムはドアを勢いよく開け放ち、出かけて行った

 

ドアはその後、自動的に閉まり、自動ロックがかかる

 

 

「じゃあ、朝ごはんでも作って食べ……あれ?もう作ってある。」

 

クロエは朝食を作ろうと思ったが、既にダイニングテーブルには朝食が置かれており、彼女以外なら父親が作ったのは間違いなかった

 

 

「まだ暖かい……じゃあ、Vous recevrez(いただきます)。」

 

 

その後、ゆっくり35分ほどかけて朝食を食べ終わり、出立の準備をした

 

そして、家を出る直前に

 

「それじゃ、お母さん行ってくるね。」

 

クロエはリビングに置いてある母親の写真に言葉をかける

クロエは母親の顔を生で見たことがないものの、いつの間にか、家を出る時にはいつも行うという習慣となっていた

 

 

その後、午前8時頃にはキャリーバッグを引いて家を出る

 

 

 

 

ー マルセイユ・サン・シャルル駅 ー

 

 

30分ぐらいで最寄り駅についた彼女は、すぐにリヨン行きのTGVの乗車券を購入し乗った

 

 

 

 

ー TGV車内 ー

 

 

クロエは席に座り、キャリーバッグは両膝の間に挟んで置いた

 

 

このTGVはフランス国内やベルギー、ドイツも繋ぐフランスが誇る高速列車であり、時速320㎞で走行する

 

 

 

「そこ、いいですかな?」

 

 

「え……あ、いいですよ。」

 

クロエはヘッドホンをして曲を聴いていたため、周りの音など聞こえなかった

声の低いおじいさんの声量なら尚更である

 

声をかけたおじいさんはクロエの真向かいに座った

そのおじいさんは若干ぽっちゃり体型でヨーロッパに見られる紳士服を着て、ハットも被っていた

 

 

「やっぱり、いいですな。この列車は。お嬢さんはどこに向かわれるのですか?」

 

おじいさんは唐突にクロエに質問をなげかける

 

 

「えっと……リヨンです。」

 

クロエはタジタジになりながら答える

 

 

「おお、私と同じではないですか……では、わざわざ片方が降りる時にもう片方も立つということをせずに済みますね。ここ、何故かかなり狭いのでね。」

 

 

「ハハハ……」

 

 

その後、おじいさんが喋ることは無く、ゆっくりと眺めているだけであった

 

クロエも音楽プレイヤーからヘッドホンで心地よく聴いていた

 

 

 

 

 

 

 

リヨン行きTGVがマルセイユ=リヨン間の5分の4を過ぎたあたり……

 

 

 

 

 

 

 

その時……超巨大な振動が発生する

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

揺れに敏感なクロエは最初の僅かな揺れに気づく

 

 

 

その後、徐々に大きくなり始め、列車は緊急灯を赤く点灯させ、緊急停車を試みる

 

 

 

だが、それも間に合わず、さらに振動が大きくなり

 

 

 

(まずいっ……)

 

 

そう思い、携帯を速やかにキャリーバックの中に押し込む

 

 

だが、それが逆に揺れに吹っ飛ばされることとなり、壁の固い突起部に頭部を強く打つ

 

 

「グゥッ!!」

 

 

 

そして、そのまま気を失った

 

 

 

 

 

 

ー ベルギー・ブリュッセル:ヨーロッパ連合本部 ー

 

 

「何だこの揺れは?」

 

「地震か?だとしたら震源は?」

 

「ん?収まった?」

 

「こんなの地震じゃないぞ!短すぎる……」

 

 

突然の揺れにより、EU本部で行われていた定期総会は1時中断となった

 

その時、イギリス首相がフランス大統領に話しかけた

 

「大統領。少しいいか?」

 

「何故でしょう、急に……」

 

「この揺れ、おかしいとは思わないか?」

 

「ええ、確かに。」

 

「……これを見てくれ。地質学者だったらしいからわかると思うが。」

 

「これは……今回の地震と同じ波形では……一体どこのです?」

 

「インド・ニューデリーだ。」

 

「……まさか、今回のは……BETA襲来……」

 

「の可能性があるだけだが……あらゆる対応は考えておいた方がいい。」

 

「……首相、少し再開の時、総会を欠席するよう伝えてくれないか?」

 

「……ほんとは補佐官の仕事だろうが……まあいい。」

 

「すまない……それでは……」

 

…………

 

 

「すぐに部隊をリヨンに派遣しろ!」

 

フランス大統領は軍司令部に連絡し、部隊を派遣させた

 

 

 

 

 

 

ー TGV車内 ー

 

クロエは思ったよりダメージは少ないのか、数分後には目が覚める

 

 

「ぅぅ……ここは……」

 

 

「目が覚めましたかな、お嬢さん。」

 

 

「おじいさん……タフだね……」

 

言葉通り、おじいさんは中々にタフであった

 

 

「まあ……分厚い服を着てるからですかね?お嬢さんは頭に傷を負って血が流れておりますぞ。」

 

先程強打した部分は切れ、血が垂れていた

 

 

「あ……うん……ところで……これは……脱線……したの?」

 

クロエはまず、自分がなぜ窓側の壁に倒れているのかが気になり、脱線と直感で思った

 

 

「……私も外に出られていないのですが、これは間違いなく脱線ですね。」

 

 

そのおじいさんの言う通り、全号車が左に横転していた

 

 

「さて、立てますかな?」

 

おじいさんが手をのばしてくる

 

クロエはその手を掴み、立ち上がろうとする……

 

 

 

が……

 

「いっ!!!……た……!」

 

 

右足に激痛が走り、立ち上がれなかった

 

 

 

「その様子だと無理ですな……これは救助を待つしかないようです。」

おじいさんは残念そうに話す

 

 

その言葉に罪悪感を覚えたクロエは必死に謝った

 

「ごめんなさい……ごめんなさい!」

 

 

「謝らなくていい、お嬢さんが悪いんじゃない。」

 

 

「でも……ずっと救助を待つことに……私が動ければ……」

 

 

その時、おじいさんは自分の両手を叩く

 

「こうしましょう。私が受けるはずだった傷をお嬢さんが代わりに受けてくれたと……これならいいですよね?」

 

 

「え……それならいいかな……」

 

 

「それは良かった。」

 

 

クロエは右の額の傷をタオルで抑え、止血しながら、キャリーバッグから携帯端末を取りだした

 

「……良かった、無事で……」

 

 

 

 

その時、救助隊が現れた

 

 

「大丈夫ですか!!動けますっ?」

 

 

「いえ……右足が痛すぎて……立てません……」

 

 

「分かりました。なら……お嬢さん、少し恥ずかしいかも思いますが、お願いします。」

 

 

「え?……」

 

クロエは一瞬呆然とした

 

なんと、お姫様抱っこのような形で担がれたのだ

 

 

その後、付近にあった駐車場の地面にバックを頭に置いて、寝かされた

 

 

「すいません、ただいま建物内は重症患者で1杯で、軽傷な患者はなるべく外にいてもらうようにさせてもらっています。」

 

クロエはなぜ外に寝かされるのかと疑問に思ったが、救助隊員に状況を教えられ納得した

 

 

数分後

 

「ぐ……ぁぁっ!!」

 

 

クロエは医者に足の様子を見てもらっており、色々弄られて悲鳴が何度があった

 

 

「これは……間違いなく折れてます……それに……脱臼と捻挫も重なってますね。」

 

 

「そんなに……」

 

 

「脱臼だけなら治すことが出来ますので、少し痛みますが我慢して下さい。」

 

 

「はい……グ……いっ……いだぁっ!!」

 

 

「……もう少し……もう少し……」

 

 

「……い"っ……」

 

「……よし、入った……!」

 

 

「グ……ハァハァ……」

 

 

脱臼を治すのにクロエはあまりの痛みで目尻に涙を浮かべていた

 

 

「……申し訳ありません。こんなにとは……」

 

 

「い、いや……ありがとうございます。」

 

 

 

その後はキャリーバッグから取りだした枕を頭に置き、薄いシーツを背中に、そしてタオルを巻いて、折れている右足を上げさせた

右の額には氷を当てながら、安静としていた

 

 

「あ……連絡しないと……」

 

クロエはスマートフォンを手に取り、父親であるアンセルムに繋げた

 

 

『おい!大丈夫か!!』

 

 

「うん、一応生きてるよ……」

 

 

『そうかっ……今すぐ逃げろっ!!』

 

アンセルムは切羽詰まった声で叫んだ

 

 

「え……?どういう事……?」

 

 

『これはただの地震じゃない!……BETAだ……BETAの襲来だっ!……いいから……逃げてくれ……』

 

アンセルムは声が震えながらも話し始めた

 

 

「……ごめん……お父さん、歩く事さえ無理……」

 

 

『何っ?』

 

 

「……列車乗ってる最中に揺れに襲われて、右足が折れて、あと捻挫を受けた……」

 

 

『……誰か支えになってやれないのか……俺は無理だ……今、急いで港に向かっているが、恐らく間に合わない……』

 

 

「……お父さん……死にたく……ないようぅ……」

 

クロエは涙を流す……それも大粒の涙を……今まで我慢してきた感情が一気に吹き出した

 

 

『……聞け。とりあえず……誰か支えになってくれる人を探せ。そして、逃げろ!恐らく軍部隊には連絡が行ってるはずだ。恐らく守ってくれる……だから、お前は自分の命を大事にしろ!…………こんな事は言いたくないが……もう無理だと思ったら……一言電話をかけろ。俺だって娘の最後の言葉ぐらいは聞きたい……』

 

アンセルムは喋りながら、空母の甲板上で静かに涙を流す

 

 

「……分かった……頑張る……」

 

 

『言いたいことは言った。切るぞ。』

 

 

「うん……」

 

 

 

 

クロエは手元にスマートフォンを置く

 

その手は目に見えるほどに震えていた

 

 

「BETA……こ、殺される……い、いや……」

 

 

止まっていたはずの涙がまだ流れ出した

 

 

 

「お嬢さん、……大丈夫ですか?」

 

その時、電車で会ったおじいさんが声を掛けてきた

 

 

「あ……おじいさん…………あのっ、救助隊の隊長のところに連れて行ってくれませんか?み、右半身だけ支えて貰うだけでいいので……」

 

 

「?……分かりました。」

 

 

数分後

 

 

クロエ達は救助隊隊長の元を訪れた

 

 

「お嬢さん、どうし…」

 

クロエは相手が喋りきらない内に話し始める

 

 

「この揺れの原因がBETAってわかってるんですか!!」

 

 

「……」

 

 

「……みんなを……見殺しにする気……ですか!!」

 

クロエは泣きながらも話す

 

 

救助隊隊長はそれを目を瞑って聞いていたが、しばらくして目を開く

 

 

「我々も初めは地震だと思っていた。だが、本来は指揮系統にないはずの軍司令部から連絡があり、BETAだと伝達された。お嬢さんの言った前者は本当だ。だが、後者は間違っている。我々は見殺しにする気は無い。まもなく第11機甲旅団が到着する。ここを防衛線とし、機甲旅団が耐えている間、すべての残存車両を総動員してあなた方を輸送する。それが軍司令部の計画だ。」

 

 

「……それだけで持ち堪えきれるのですか?」

 

 

「可能、不可能の問題じゃない……耐えなければならないんだ……あなた方を守る為に。」

 

 

「……分かり、ました……」

 

 

 

 

 

 

その後、一時避難所となっている公共施設と隣接する避難所にはフランス陸軍第11機甲旅団が派遣されてきた

 

ルクレールⅢ主力戦車、フランスとドイツの共同開発である最新鋭戦車EFM-1等数十両や対戦車ミサイル部隊、さらに多数の歩兵部隊も投入された

 

 

それと同時に遠方避難も開始された

 

 

 

 

だが、その直後、化け物どもが襲いかかり始めた

 

 

ルクレールⅢやEFM-1は一列縦隊となってBETAの進行を遮る形で配置され、一斉に右に砲塔を旋回させる

 

そして……

 

ルクレールⅢの120㎜滑腔砲が火を吹き、EFM-1の155㎜電磁加速砲から超音速で砲弾が放たれる

 

それぞれ先行していた赤い化け物を吹き飛ばす

 

 

数十分後にはBETA先遣隊は殲滅される

 

 

 

その後……

 

戦車(タンク)級、多数接近!さらに兵士(ソルジャー)級、闘士(ウォーリア)級も確認!」

 

 

「多いな……だが、」

 

第11機甲旅団長は口を緩ませる

 

 

「まだ戦車の敵ではないっ!戦車隊は戦車(タンク)級に攻撃を継続!歩兵部隊は銃撃を開始!」

 

 

「はっ!」

 

ルクレールⅢが自動装填装置で120滑腔砲を次々と発射、EFM-1も155㎜電磁加速砲で超音速砲弾を連射する

 

歩兵部隊は戦車の陰で5.56㎜NATO弾の弾幕を張る

 

また、数両のVBCI-2-AT対戦車ミサイル車両からERYX2対戦車ミサイルが連続発射される

 

 

 

 

戦車級は砲弾を喰らって四散していき、兵士級や闘士級は銃弾の雨を食らって穴だらけになり赤い体液を垂らしながら倒れていく

さらに、あらゆる個体が対戦車ミサイルを喰らい吹き飛ばされていく

 

 

 

「まだ行ける……が、どうなのだろうな……」

 

旅団長が呟いた時、士官が顔を青くしながら伝えてきた

 

 

「遠方……要撃(グラップラー)級及び要塞(フォート)級を捕捉!接近してきます!さらに小型種を多数従えている模様!」

 

 

「何っ!要撃(グラップラー)級ならまだしも、要塞(フォート)級だと!?」

 

旅団長は顔を青くして言った

 

 

旅団長を前方を見る

うっすら遠くに巨体ゆえに見える個体がいた

 

 

旅団長は双眼鏡を覗き……その視界には10本足の個体が映っていた

 

「化け物め……」

 

と呟く

 

 

「EFM-1と対戦車ミサイル部隊はデカブツ共を集中攻撃!他はそのままだ!」

 

 

超音速砲弾とERYX2対戦車ミサイルが要塞級にぶち当てられていき、倒れる

要撃級に対しても、EFM-1の電磁加速砲が連続発射され、穴だらけになる

 

 

 

一方でルクレールⅢと歩兵部隊は大量の戦車級を相手にしていた

 

しかし、先程までは今より少ない数を全車両で相手していた為、その物量に抗しきれるはずがなかった

 

 

一体の戦車級があるルクレールⅢ1両に急接近した

 

ルクレールⅢは砲塔上部12.7㎜重機関銃や同軸20㎜機関砲を慌てて連射するも、嘘と思わすかのように命中せず、砲塔に取りつかれ、強引に砲塔を外される

 

 

乗員からは赤い化け物が覗き込むように見え……慌てた操舵手が離れようとするものの、取りつかれた車体は頑なに動かすことは叶わなかった

 

 

そして、赤い化け物が巨大な顎によって形作られてる口を開け……

 

 

『来るな……来るなぁっ!!いやぁぁぁぁぁ!!……ブチ……』

 

文字通り、"喰われた"

 

 

「……1両、やられました……。」

 

士官が青ざめた表情で報告をする

 

 

「撃て。その車両をな。」

 

 

「なっ!?味方ですぞっ!」

 

 

「味方だろうと既に乗員は喰われたっ!いいからやれ!」

 

旅団長は額に大量の汗を浮かべていた

 

 

「は、はっ!」

 

 

すぐに命令が伝達され、あるひとりの歩兵が携帯型対戦車ミサイルを惨劇となっているルクレールⅢに向け、発射

命中し、ルクレールⅢは爆散、それに取り付いていた戦車級は炎に焼かれていく

 

 

その後、再び何両かのルクレールⅢが戦車級に取りつかれ、乗員が喰われていき、その度に味方で味方の車両を攻撃せざるを得なかった

 

 

 

「……何だこの物量は……これがBETAなのか……このままでは……避難状況は?!」

 

旅団長は何度撃破しても出でくるその物量に恐怖すると共に

 

 

「まだ半分です!」

 

 

「……このままでは……喰い破られるぞ!」

 

民間人の被害を抑えたい一心があった

 

 

その時

 

「対空レーダーに反応、これはっ!……タイフーン及びラファール混成航空隊12機です!」

 

 

「馬鹿なっ!正気か!?」

 

旅団長は驚いた表情を報告してきた士官に向ける

 

 

 

リヨン上空

 

 

フランス空軍第32飛行隊

 

 

「今まで1機も被害を受けてない……ふっ、命中率100%のレーザー等ただのデマに過ぎんということだな。」

 

呟いた言葉の通り、隊長は油断していた

 

 

だが次の瞬間

 

 

前方の視界に虚空を走る光の筋が見え……

 

数秒後、隊長機であるユーロファイター・タイフーン戦闘機はその光に真っ二つに裂かれ、脱出する暇もなく爆散した

 

 

隊長の死を知った後続11機は分散を開始、その内4機が空対地ミサイル2発ずつ、計8発を発射するも、レーザーによって撃墜される

 

さらに、分散した11機にも尽くレーザーが命中し、機体を貫かれ一撃で撃破されていく

 

 

残りラファール4機となり、無謀にも低空進入で突っ込んでいく

 

1本のレーザー光線がラファール1機の左翼を焼き切り、墜落させる

その直前に空対地ミサイル4発が続けざまに発射される

 

 

光線級は最も接近してくる目標として空対地ミサイル4発の迎撃に入る

 

たった数秒だが、残り3機のラファールはそれをチャンスと見て、空対地ミサイルを一斉発射

 

 

だが、光線級の強みはその必中精度とレーザーの威力

 

一斉発射された12発の空対地ミサイルを1つも残さず溶かしていき、後続のラファール3機もあっという間に撃墜した

 

 

 

 

「……第32飛行隊……全滅です……。」

 

 

「無茶しやがって……総員聞け。」

 

旅団長は汗を浮かべながら、目を瞑る

 

旅団司令部にいた士官や参謀が旅団長に向き直る

そして、通信士官が戦闘中の全部隊に通信を接続する

 

「司令部の主だった者は集まっております。」

 

主任参謀の一声で旅団長は目を開ける

 

 

「無理やりだが援護に来た第32飛行隊はほとんど何も出来ずに全滅した。我々は現在圧倒的なBETAの物量に押されかけている。そこでだ。我々の役目はここの避難所にいた民間人を無事に、1人の犠牲も出さずに守りきり、できる限り、避難してもらうことだ!だが、守りきるのは、この状況から無理だろう。全滅を覚悟せねばならない……だから、死にたくないやつはさっさと逃げろ。」

 

 

最後の一言に参謀や士官達は驚く

 

 

そして、悩む者もいたが、数分後には皆がスッキリした表情で向き直った

 

 

「いないか……」

 

 

「はっ、全員、最後までお供します!」

 

 

「よし!ならさっさと持ち場に戻れ!避難が完了するまでの間、耐え抜くぞ!」

 

 

「了解!」

 

 

 

その後は戦術など関係無い

 

 

ただただ続く消耗戦闘へと移っていた

 

 

民間人を守るため、車両ごと盾に、兵士達は自分達を盾として……

 

 

 

そして、1両、1両と戦車の乗員が喰われ、喰った化け物ごと戦車が焼かれていく

 

 

 

さらに戦車がやられていくにつれて、その盾にも穴が開き始め、兵士達も喰われていく……

 

 

 

 

 

 

重傷者の避難が終わり、やっと軽傷者の避難が開始された

 

クロエとずっと付き添っていたおじいさんはやっと6人乗りの商用バンに乗り込まされ、発車する

 

無事に着くと思われたが……

 

 

 

 

 

 

数分後、遂に耐えて続けていた防衛線が崩壊

 

 

 

 

 

その直前に発車したバンに、戦車級が飛び掛かる

その衝撃で急停止し横転したバンに乗っかった状態で運転席の窓を戦車級が左手で突き破り、運転手を引きちぎる

さらに他の窓からも手を突き入れ、巨大な口に車内の数人を放り込み、齧っていく

 

 

 

 

 

未だに避難が終わってなかった人々はさらに悲惨だった

 

 

避難所の外で既に乗り込んで今にも発車しようとしていた車を要撃級が踏み潰す

その後に続いた要塞級が10本足の内、数本に突き刺さった状態のルクレールⅢやEFM-1を大柄な触手で振り落とす

 

 

避難所内では人々の悲鳴が反響し混乱が混乱を呼ぶ

 

その中で最後まで残ると決意していた救助隊隊長は肩をガックリと落とし、ゆっくりと席に座る

 

「もう……無理か……」

 

そう言葉を残し、突っ込んできた戦車級に踏み潰される

 

その後は言うまでもなく、BETAによる大虐殺が起きた

 

 

 

 

 

 

その頃、クロエ達を乗せたバンはリヨンからマルセイユへ向かう道を行っていた

 

 

 

 

「……なんか……怖い……」

 

クロエはまったく状況を知らないのにも関わらず、恐怖を感じていた

 

 

「大丈夫ですかな?」

 

 

「……分からない……」

 

 

 

その時、運転手が少し慌てていた

 

 

それに気づいたおじいさんは声を掛ける

 

 

「どうしましたか?」

 

 

「いや……後続、間もなく発車すると言っていた後続車との連絡が繋がらないのです……」

 

 

「……まさか、BETA……」

 

クロエが考えられるひとつの要因を言う

 

 

「え……防衛線が崩れたと言うんですか!?」

 

運転手は動揺しながらも運転を行う

 

 

「そうだ、我々の後ろの車両と連絡はつきますか?」

 

おじいさんは提案を行う

 

 

「……そうですね……やってみます。」

 

運転手は軽く悩んだ後、承諾して、コールする

 

 

《こちら、8番車。無事ですか?応答してください。繰り返します、応答してください。》

 

 

だが、相手からは返答は無く、自動的に繋がる設定の様で、そこからはグシャグシャという奇妙な音が聞こえた

 

 

「返答ありま……いえ、この音は……?」

 

 

「貸してくれませんか?」

 

 

「え、ええ分かりました。」

 

おじいさんが音をヘッドホンに繋げ、聞く

 

 

「これは……人を喰う音だ……」

 

 

「え?!」

 

 

「そんな……後ろはほぼすぐ……」

 

 

「……き、来ました。」

 

ある乗客が後ろを指さし、運転手以外は後ろの窓を見る

運転手は運転しながら中央前の小さい鏡を覗く

 

 

 

そこには赤い化け物がこっちを凝視していた

 

 

 

「すぐに最高速度にしろ!食われたくなければなっ!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

狭く、片方が崖という山岳路では普通出さないスピードにまで加速する

 

 

 

だが、戦車級もそれとほぼ同じスピードで突っ込んでくる

 

 

 

そして……飛びかかり……

 

 

 

 

バンは崖下に転がり落ちていった

 

 

 

 

数分後……

 

 

どこかも分からない斜面の平地上

 

クロエ達が乗っていたバンは横転し

 

 

そこから少し離れた所にクロエが放り出されて、偶然にも木に寝そべっていた

 

 

 

「……え……あ……ここは……痛っ……」

 

 

意識を取り戻したクロエは初めに感じたのは痛みだった

 

左足の太ももに横から棒のようなものが貫いていて、血が流れ出していた

 

それだけじゃなく、頭部からも強く打ったのか出血しており、血が目の近くを垂れていた

また、右腕に深い切り傷が確認できた

 

 

「ぅ………ひどい状態……これじゃ立つ事も……」

 

 

 

その時、視界に映ったのは

 

 

横転したバンと大きな口を車内に突っ込んでいる"赤き化け物"であった

 

 

「ひっ……」

 

 

 

その声に気づいたのか、赤き化け物(戦車級)はこちらに振り向く

巨大な口を血で濡らした状態で

 

「い、いや……」

 

 

だが、それはこちらを気にすることも無く、両腕を突き入れ、上半身のみとなった人の体を喰らう

 

 

「……」

 

クロエは言葉を失う

その人はさっきまで同じバンに同乗していた人……

自分だって同じようになるということを予測してしまった……

 

 

 

 

そして、バンにいた人間の多くを喰らった戦車級がバンを足で踏み潰し……

 

 

クロエに迫る……

 

 

 

クロエは足元がおぼつかないまま、ゆっくりと立ち上がり、そして、ゆっくりと後ろに下がる

 

 

だが、そこは急な斜面

 

クロエは足を踏み間違い、斜面を転がり落ちる

 

「グフッ……!」

 

 

今度は気絶はしておらず、腹に強打した痛みに悶えた

 

 

その間にも戦車級は斜面をものともせず、クロエに近づき、喰らおうとする……

 

 

「いやだ、いやっ!!」

 

 

クロエは一瞬、目を閉じて視界から、現実から背ける

 

 

数秒の間

 

 

何も感じなかった

その為、閉じていた目を見開く

 

 

そこには列車に乗った時から付き添ってくれたおじいさんがいた

 

 

「おじいさん……!」

 

 

「お嬢さん……逃げてくれませんか?……いえ、逃げろ!」

 

 

「え……分かった……」

 

クロエはその時、微かに涙を流す

 

そして、ゆっくりと立ち上がり、歩き始めた

 

 

「ふ……さあ、化け物。私が相手だぁ!!」

 

 

だが、赤き化け物(戦車級)は無慈悲にもおじいさんに齧り付き、体を貪り始める

 

 

「ぐ……だが……お嬢さんが逃げ切るまで耐えるぞぉ!」

おじいさんは口からは血を吐き、体から血を垂れ流しながら、叫ぶ

 

 

それをうるさいと思ったのか、戦車級は首根っこを掴み、引きちぎる

 

 

そこからは血が噴水にように吹き出た

 

戦車級はその後、人だった身体を貪り食らった

 

 

 

 

 

 

少し離れた森

 

 

クロエは息を吐きながら、走っていた

 

 

いや、正確には歩いていた方が正しい

 

普通なら走れる体力ではあるが、骨折や多くの怪我の痛みがクロエの体力の多くを奪い、そして、その怪我が走ること自体を不可能としていた

 

 

「ハア……ハア……」

 

 

 

クロエはとうとう力尽き、背中をある木に擦り付けながら座り込んだ

 

 

何度も転び、怪我をしたクロエの服は文字通りボロボロだった

 

 

着ていた長袖Tシャツは破れにやぶれ、袖の部分と脇下から横腹の部分の生地は消えてなくなり、腹の部分も大きく見えるほど短くなっていた

長ズボンも履いていたが、もはや、半ズボンとしか見えず、その残っていた部分も切り裂かれ、下着が所々で見えていた

さらに下に来ていた肌着もボロボロで肩の部分の紐で何とか前後が繋がっている感じであり、ブラジャーはとっくに切れていて、胸の部分から外れていた

 

かなり露出していたものの、彼女には恥ずかしさを感じる余裕などなく、あるのは恐怖と疲労のみであった

 

唯一ポケットに入れていたスマートフォンは奇跡的にほぼ無傷であった

 

 

彼女はそれを取りだし、1人しかない親、父親にコールをかけた

 

 

『おい、大丈夫か!!』

 

 

父親であるアンセルムの声は震えていた

 

「お、お父さん……も、もう無理かもしれない……」

 

クロエの言葉も震えていた

 

 

『……それは……どういう……』

 

 

「そのまんまの意味……もう、逃げられない……」

 

 

『おい……諦めー』

 

 

「だから、無理なんだって!!」

 

父親の言葉を遮り、クロエは声を上げる

生まれて初めて父親に反抗したのだ

 

それと同時に涙を流す

 

 

『……』

 

その声にアンセルムは絶句するしなかった

 

 

「……お父さん、聞いて。」

 

 

『……なんだ……?』

 

 

「……お父さん……今まで……17年間、育ててくれて……ありがとう、ございました……!!……あぅぅぁ……」

 

その時、クロエは感極まって大粒の涙を流す

 

 

アンセルムにその泣き声が聞こえ思わず声をかける

 

『クロエ……』

 

 

「ぁ……まだあるの……お父さん、私がいなくても……頑張って……生きて……」

 

クロエは気持ちを抑えてなんとか言い終える、だが……

 

 

「……死にたくないよ……生きたいよぅ……」

 

本音が溢れ出る

 

 

その声を聞いていたアンセルムは声を掛ける

 

 

『……な、クロエ。まだ……逃げてくれ……たのむ……な、クロエ!』

 

 

だが、耳に当ててる携帯端末からクロエの声は聞こえなかった

 

「おい、クロエ!!声を……聞かせてくれ!!」

 

 

その時、クロエは父親に弱音を聞かせたくないとばかりに、スマートフォンを膝に置き、自分は大粒の涙を流し、声を聞かせまいと必死に口を抑えていた

 

その間に、自動的に通話が切られた

 

 

 

ー 地中海マルセイユ沖:フランス海軍第四艦隊 ー

原子力航空母艦『クレマンソー』甲板上

 

 

「くそっっっ!!」

 

無慈悲にも通話が切れたことを伝える音がアンセルムの心に響く

彼の心には2つの思いしかなかった

後悔と悲しみ

 

その思いが左手に持つスマートフォンを折らんばかりに握りしめていく

 

だが、海を見ていると、ある思いが湧く

 

(……せめて、最期を看取ることが出来れば……)

 

 

その思いを温めたまま、彼は艦橋へ向かう

 

 

 

「失礼します!」

 

 

「何の用だ?」

 

そこでは艦長、艦隊司令、参謀らが議論しあっていた

 

「艦長、マルセイユへ先に向かわせて貰えませんでしょうか?」

 

 

「……理由は?」

 

 

「娘がリヨンに行っていて……助けに行きたいのです。どうか……!」

 

艦長は目を閉じて悩んだ

"私情"か"任務"かで……

 

 

「いいじゃないか?行かせても。」

 

その声の主は艦隊司令であった

 

 

「長官!?ですが、私情を優先するなど……」

 

艦長は艦隊司令に振り向く

 

 

「本来ならば優先することは無いな。だが……、彼には娘ひとりしか家族がいない。それもリヨンに向かっていた。人間として判断したまでだ……幸い、彼がいなくなっても手空きの兵は他にもいる。問題は無い。」

 

艦隊司令は艦橋を見回し

 

 

「誰か、艦橋で手空きの者はいるかね?」

 

 

「はっ、私が。」

 

 

「無論、内火艇の操縦はできるよな?」

 

艦隊司令からの威圧的な目線がその将兵に向かう

 

 

「は、はっ!もちろんです。」

 

 

艦隊司令は再びアンセルムの方を向き

 

「よし、ファルトマイヤー少尉。5分後だ。」

 

 

「5分後……」

 

 

「5分以内に用意しろ。用意出来次第内火艇を下ろし出発する。」

 

 

「はっ!」

 

 

「……まあ、お前の娘だ。数々の紛争に参加して窮地に陥りながらも生き抜いてきたお前のな。本人は諦めてるかもしれんが、悪運を人生使い切れないほど持つお前から受け継いでるだろう、どんな状況になろうと……生きてるさ。必ず。」

 

艦隊司令はその時、ニヤケ顔を見せる

 

 

「……ありがとうございます!」

 

 

そして、5分後

 

用意が完了し、内火艇は下ろされ、出発した

 

 

(クロエ……頼む……生きていてくれ。)

 

 

 

 

クロエは未だに座り込んでいた

 

今は涙を流すのは止まり、呆然としていた

 

 

「いや……いやだっ……」

 

 

赤い化け物(戦車級)が獲物を探すがごとく、ゆっくりと接近する

 

 

そして、自らの対人探知能力でクロエの姿を探し出し、向かってくる

 

 

クロエの露出している腹に齧り付き、肉を引きちぎる……

 

「ぎっっっ!!!」

 

あまりの痛みに目がひん剥かれ、体が痙攣する

 

さらに、両腕でクロエの体をがっしりと固定され、巨大な口で貪り喰らう

 

 

「あ"……い"……」

 

貪られた穴から大量の血が流れ出し、口から血が流れる……

 

 

引きちぎられた内蔵が飛び出し……目からは光が失いかけていた

 

 

腹の肉に満足した戦車級は次に左肩に狙いをつけ、齧り付く

 

その強靭な顎の前ではいくら骨が固かろうと無意味であり、肩の骨を砕き、肉と骨を齧りちぎった

 

 

「……あ…………」

 

クロエの目からは光が消え失せ、もはや生きる気力さえ失い、絶望していた

あまりの痛みに言葉すらも口に出せなかった

 

 

そして……戦車級は右手をクロエの首に掛け、引きちぎろうとする

 

 

 

その時……

 

 

 

『グランボム!!』

 

 

その声とともに、戦車級の赤い表面を一筋の炎が貫き、それを4つに裂く

 

 

そこに2人の人物が降り立つ

 

 

「……なんとか、間に合ったわね?」

 

 

「ええ、まあ、なんとか……。」

 

 

「……たった1人の生き残り……」

 

 

「我々もリヨン支部の同僚を多く失いましたからな。突然の襲撃に我々魔法師が相手できる訳ありませんよ……」

 

 

「そうね……」

 

女の魔法師は涙を静かに流す

 

 

「では、かなり重傷を負っていますし、これは……」

 

 

「病院への転送が必要ね……私が担ぐから。」

 

 

「了解です。……彼女、目から光が消えていますが……大丈夫なのでしょうか?」

 

 

「……どんな姿になったって、生きていればいい。そう思わない?」

 

「え、……そうかもしれないですね。」

 

 

男の魔法師が転送陣を展開し、パリ中央病院へ転送するように設定する

 

 

「じゃあ……行くよ。」

 

女魔法師がクロエを担ぐ

 

そして、ゆっくりと転送陣の方に向かって歩き、陣の中央に立った後、その場から消える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦2026年 5月24日

 

 

 

この日、さらなる災厄が訪れた

 

 

 

フランス共和国メトロポール・ド・リヨン県リヨン市

 

 

イスラム教軍領旧モーリタニア・イスラム共和国ヌアクショット首都州

 

 

アフリカ民主主義連邦エチオピア連邦民主共和国アディスアベバ自治区アディスアベバ

 

 

アメリカ合衆国アラスカ州フェアバンクスノースター郡フェアバンクス市

 

 

そして……

 

東南アジア連合ベトナム共和国クアンチ省ドンハ市

 

 

 

この5つの都市に新たにBETAを載せた着陸ユニットが落着した

 

 

世界に再び混乱が訪れる




※設定

クロエ・ファルトマイヤー

年齢17
身長170㎝越え
胸は少し浮きでるぐらい(中の中の上的な)
体重?シランナ
魔法も使えないただの民間人の少女
被害担当でごめんなさい
元ネタはマブラヴユーロフロントのイルフリーデ・フォイルナー
父親はアンセルム・ファルトマイヤー

両者共にリメイク版登場予定
というか、かなりのキャラが登場予定

次回
chapter17 混沌のアフリカ


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chapter17 混沌のアフリカ

混沌のアフリカ

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦2026年5月25日

 

 

 

 

 

ー アフリカ大陸東部 ー

 

ー アフリカ民主主義連邦エチオピア自治区オロミア州ジンマ市 ー

 

 

エチオピア自治区南西部に位置するこの都市は旧エリトリアを占領したイスラム教軍への対策として要塞化が進められていた

だが、その防衛要塞は1回も使われることなく、幸運にも対BETA戦に使われることとなった

 

 

『BETA群接近!総数不明!距離30㎞!』

 

ジンマ要塞司令部では要塞の外壁で観測班に着いていた兵士からの報告が届く

 

要塞司令官と思われる男が拳を強く握りしめ、声を上げる

 

 

「距離20㎞に入ったら砲撃を始めろ!俺と同じようにエチオピアを母国とするものは多いはずだ。祖国を穢し、家族がいたものは家族を奪われた仇、今ここで討つ!」

 

 

アフリカ連邦軍ジンマ要塞司令官タスファイ・グルマン少将がそう宣言する

 

要塞外壁に格納してある多数のMK45/5インチ砲mod4の多数が展開し、BETA群を照準に収め始め、

 

距離20㎞に入った途端

 

 

「撃てぇ!!」

 

一斉に火を吹く

アメリカ製の為、その性能は高く全弾が命中する

また、イージス艦に搭載されていた艦砲システムであり、装填約3秒という物凄い早さで砲弾が吐き出され、戦車級が血飛沫を噴き出して動かなくなっていく

 

 

『観測班より司令部!戦車級の数、急速に減少!確実に数を減らしています!』

 

 

司令部はその戦果に湧く

ただ一人を除いて

 

 

(戦車級だけならばな。だが、それが要撃級や要塞級に増えればどうなる……耐えられるのか……?)

 

 

「司令、レーダーに反応あり。友軍機です。数は6。」

 

タスファイはその報告に怪訝な表情を浮かべ、当然の疑問を口にする

 

 

「は?光線級は?」

 

 

『現在確認できていません!』

 

 

ジンマ要塞の上空をケニア自治区に属するF-16Ⅱファイティングファルコン6機が通過し、直後、翼下のパイロンよりMark82/500ポンド無誘導爆弾を一機4発ずつ放り投げ、大きな振動と共に大量の戦車級を焼き尽くす

 

 

『戦車級群壊滅!それと前方に新たな敵影!要撃級と………要塞級ですっ!』

 

 

『こちら、第127航空団、後続が来る。砲撃を行いつつ、後続を待て。』

 

タスファイは安堵すると共に怪訝な表情を再び浮かべる

 

(なぜ、敵に光線級がいない…奴らの意志か、それとも……)

 

 

考えている間に、第127航空団の後続8機が到着し、Mark82無誘導爆弾が計32発投下される

その威力は要撃級を1発で焼き尽くし、要塞級の脚部を1発で破断するレベルであって、再び多数のBETAが殲滅された

 

 

 

その直後、パイロット達は地面のある一点で光を視認する

それは一筋の光線となって要塞外壁を直撃し、その衝撃は揺れとなって要塞司令部に伝わる

 

 

「何だこの揺れは?!」

 

 

「司令、観測班と通信が伝わりません!」

 

 

「第10、16、17、21、28砲台、損壊!」

 

通信担当と要塞砲台の管制官が声を上げる

 

 

(この被害は……レーザーか。)

 

 

タスファイは1人心の中でこの衝撃の原因にたどり着いた時に1人の参謀が声をかける

 

「司令、損壊した砲台の1部は外壁内に格納していたものもありました。その外壁を突破する威力となれば……」

 

 

「まさか……モニターに出せ!」

 

タスファイはハッとしてモニターに要塞前方カメラの映像を出させた

 

 

どこまでも続く荒涼な砂漠の遠くに見える一つ目の個体……

 

タスファイは顔を青くする

 

「重…光線級……バカなっ!奴らは空を飛ぶものを全て打ち落とすのだぞ!なぜ空爆を行う連中ではなく、この要塞に直接攻撃を?」

 

 

「……分かりません……ですが、やるべきなは原因究明ではなくこの要塞を守ることです。」

 

 

「そうだな……航空部隊はどうしたっ!」

 

 

「それが……重光線級を確認した途端、突然引き揚げ始め、ケニア空域の航空司令部に問い合せたところ『航空部隊が一方的に撃墜される可能性が高く、今後の連邦防衛戦力の温存の為引き上げさせた。』との事です……」

 

その報告にタスファイは顔をしかめ

 

「理にはかなっているが……ここが落とされればケニアも落ちる可能性だってあるっ!通信士官!ケニア総司令部に繋げ!」

 

 

「は…はっ!」

 

タスファイは自らは通信機を取り出す

 

「こちら、ジンマ要塞司令部、タスファイ・グルマン少将だ。」

 

 

『こちらケニア総司令部、要件は?』

 

 

「…単刀直入に申し上げる。陸上部隊の増援を要請する。」

 

数十秒経ち……

 

『残念ながら許可できない。』

 

 

「何故だっ!」

 

多少怒気のこもった声を上げるタスファイ

 

 

『戦力温存の為だ。』

 

 

「……我らは生け贄ですか?」

 

先程よりもかなり低くなった声で尋ね、相手は動揺した

 

『それは……』

 

 

その時、再び要塞司令部を揺れが襲う

 

 

「どうしたっ!」

 

 

「第5、8、16、23、29砲台損壊!先程と同じ衝撃から重光線級からの攻撃と思われます!」

 

 

「くっ……いいか、増援をよこせ!絶対にな!」

 

タスファイは通信機に増援をよこせと声を上げていい、通信を切った

 

 

「どういう事だ、なぜ今になって……なぜ砲撃をやめていたのだ?」

 

そこに1人の参謀が進言する

 

「司令、これはもしかすると、後続の戦車級が追いついたのではないでしょうか?」

 

 

「……後続の戦車級が足を止めている重光線級に追いついて、重光線級はそれまで攻撃をやめていたと……モニター出せ!」

 

再びモニターに映像が映され、そこには重光線級と戦車級の姿が映し出されていた

 

 

「……管制官、射程距離に入り次第砲撃を始めろ!」

 

 

「了解!」

 

外壁に格納されていた全てのMK45が展開され、接近する戦車級の大群に照準を合わせる

 

 

だが、有効射程に入れる前に重光線級からの第2射、第3射と大口径レーザーが放たれ、要塞砲台は次々と数を減らしていくが

 

それでも有効射程に入り次第、装填3秒という早さで5インチ砲弾が次々と放たれ、戦車級が行動不能となっていく

 

 

しかし、砲台の損耗はキツイものがあり、戦車級の接近を許す

さらに重光線級からの攻撃は砲台の破壊以外の目的があるように見えた

 

 

「司令!要塞外壁に穴が形成されています!あと数回の攻撃を受ければ外壁は破壊され、進入路が形成されます!」

 

 

「なんだとっ!くっそジリ貧だっ!」

 

 

 

その時、BETAの大群の上空わずか10mに数個の爆炎が発生され、大量の戦車級が引き裂かれた

 

 

「敵前衛の戦車級消滅!」

 

 

「何?」

 

 

 

 

 

要塞の50㎞後方

 

そこにはアフリカ連邦陸軍ケニア方面第12砲兵師団がいた

 

 

M270A2多連装ミサイルシステム(MLRS)が16両配備されており、投射火力が最も高い師団だった

 

 

「発射ァ!」

 

 

MLRS16両の227㎜ロケット弾12連装発射機が展開された状態で発射口の1つより白い煙を噴き出しながら、ロケット弾が発射される

それは要塞上空を越え、BETA群の上空で子爆弾を放出し地上で多数の爆発が起こる

 

 

 

「増援が……こういう形とはな……」

 

タスファイは若干ニヤケる

 

 

「使用弾頭…M88クラスター弾頭と思われます!」

 

M88クラスター弾頭

ロケット噴射式のクラスター弾頭であり、欧州連合軍が極秘に開発していたものが流出した形となった

空中爆発式であり、不発弾となった場合も触発式の信管であるためなにかに触れた場合問答無用で爆発する仕組みとなっている

なお、その不発弾は地雷としても運用可能

 

 

「だろうな……管制官、砲台は砲撃を続けろ!」

 

 

「はっ!」

 

 

 

だが、重光線級は空から降ってくる弾頭を全く狙わない

 

 

「外壁の一部が破壊されましたっ!戦車級!内外壁間に侵入!」

 

 

「なぜ……クラスター弾を狙わんっ!」

 

 

「知らんわっ!奴に聞け!」

 

 

予測不能な事に要塞司令部内の空気は張り詰めており、時折罵声が飛び交う

 

黙っていたタスファイだったが意を決して話す

 

 

「後方の門を解放、後方へと退避させろ。」

 

その言葉に殆どの司令部要因が驚いた表情を浮かべる

 

「しかし……」

 

 

「対BETAに歩兵戦力はあまり使えんだろう。現状、MK45や要塞内部に設置してある各種重機関銃で事足りる。最低限の戦力を残し、退避させろ。」

 

 

「……了解」

 

 

ジンマ要塞は緩やかな二等辺三角形と半円が合わさった形状をしており、後方の半円の部分よりゲートが開き、兵士達を乗せた輸送車が出発し始めた

 

 

 

 

「戦車級、要塞第62区画に侵入!」

 

 

「重光線級からの攻撃で外壁6割破壊されました!」

 

 

「第21区画にも侵入!!」

 

 

「第46区画、移動中の兵士に戦車級が……うぉぇ……」

 

オペレーターの悲鳴が飛び交い、ある1人は人が食われるという初めて見る光景に嘔吐感を覚え口からぶちまける

 

「BETA梯団、さらに増加!」

 

戦域レーダーにはBETA群集団の位置を表すアイコンが徐々に増加する

重光線級は3体に増え、光線級も出現し10体以上になっていた上に依然として重光線級は要塞外壁のみを攻撃していたが、光線級は上空から降るクラスター弾頭を光線(レーザー)で撃墜していた

戦車級という最多の個体はもちろんの事、要撃級、要塞級という大型種、闘士級や兵士級という小型種も数多く出現していた

 

 

後方支援も叶わず、防戦一方となる防衛側

要塞内部の20㎜機関砲は戦車級、兵士級に対しては効果的だが、要撃級にはその防御力で効きにくく、闘士級はその回避速度で連続した命中弾が見込めなかった

さらに要塞級は内壁をぶち破っていこうともしていた

 

 

 

「外壁の全砲台損壊!攻撃手段がなくなりました!」

 

 

「外壁損壊率90%越え!もはや丸裸も同然です!」

 

 

「すぐに総員退避命令を出せ!もしもの時には……この要塞を自爆させるしかない……。」

 

 

タスファイの言葉に管制官は一瞬タスファイの方を振り向き目を見開くも、すぐに正面に視線を戻しキーボードを打つ

 

「要塞残留人員につぐ。総員退避せよ!繰り返す、総員退避せよ!」

 

管制官の言葉が要塞通路の各地にある拡声器より発せられる

 

「我々も行く。全員武器を持て。」

 

要塞司令部の裏には司令部要員全員が携帯できる分だけの武器があった

そこからタスファイは2丁のAD-3T4自動小銃、3つの投擲武器を取り、高機動型の防弾着を着用した

 

 

その自動小銃はアメリカ、欧州連合、アフリカ連邦、日本、オーストラリア=オセアニア連邦が共同開発した物で、7.62㎜小銃弾が使用可能であり、連射速度、防塵性、整備性等は新ソビエトのAK-82小銃とは比べるまでもなく、その性能で耐久性の向上と軽量化もなされている

※閑話休題

 

 

タスファイ達は司令部室を囲む通路に出た後、後方出口に近い通路へと出る

 

 

そこで……

 

 

 

「い"……あ"ぁぁぁ……」

 

女性の声がして、その声の方向に振り向いた

 

そこには虚ろな目をした女性が倒れており、その腹は赤き化け物に齧られとめどもなく血が流れていた

 

 

「い、いやぁ!!」

 

その時、タスファイの隣にいた女性オペレーターが泣き崩れる

 

 

「知ってるのか……」

 

 

「……士官学校の後輩で……同じ所に配置されたから嬉しかったんです……それが……」

 

それっきり彼女は涙を流すばかりで一言も喋られなくなった

 

「……言わんでいい……総員射撃用意。戦車級だけを狙え。撃てぇ!!」

 

総数約20門の銃撃が赤き化け物に命中する

7.62㎜弾の為1発1発は威力が低いが、何十発と当てれば……

 

戦車級は無数に空けられた穴から赤い体液を噴出しいつの間にか行動不能となった

 

 

 

その後、要塞より脱出するために通路を往くが、もう少しのところで兵士級の大群に塞がれてしまう

 

全滅を避けたいタスファイは決心する

 

「お前ら、足元を見ろ。そこに脱出用の通路がある。そこから行け!」

 

 

「司令は?」

 

 

「私は最後に行く。」

 

その言葉に動揺する皆

 

「で、ですが!!」

 

 

「いいから速くいけ!」

 

なかなか行かない部下達にタスファイはキレ、護衛の兵士2人を残し10名以上は渋々脱出ハッチに次々と入る

 

 

タスファイらはAD-3T4自動小銃を使いこなし、兵士級の大群に撃ちかける

さらに、対物手榴弾のピンを抜き、大群に投げ入れる

 

次の瞬間兵士級数体が吹っ飛ばされる

 

 

いくらBETAであろうと近づかれなければやれることは無いとタスファイは信じていた

実際その通りであり、兵士級はそこまでの硬さも無い為、容易に一体一体と倒れていく

 

近づかれなければの話だが

 

突如後方の壁が崩れ去り、戦車級が飛び出してきた

脱出ハッチに集う人達に狙いを済ませるが、後方を見張っていた兵士が身を呈して、戦車級に齧られる

 

 

「グアァッ」

 

その兵士は痛みに耐えつつ、手榴弾を取り出し、自分の身ごと戦車級を至近距離で吹っ飛ばした

 

 

タスファイはその血と体液を浴び、兵士がいた方に視線を向け、飛び出してきた方向に敵がいないかを確認した

その直後、前方にいた兵士からも悲鳴が上がる

 

 

「ぐぅぅぅ!」

 

その兵士は全高が自分と同じぐらいしかない兵士級の大群に噛みつかれていた

ある個体は肩を引きちぎり

ある個体は腹を貪り

ある個体は右足を齧り

ある個体は左手を引きちぎる

戦車級のような巨大な口で数撃で絶命させるのとは違い、兵士級は決して数撃では死なせない、ただし強烈な痛みを与え確実に血を失わせる

実際、血がボタボタと落ちて来ていた

 

 

タスファイはその兵士に噛み付く兵士級にAD-3T4小銃による銃撃を加える

兵士級は容易に小銃弾で貫通しその上耐久力も低いため、数体ごとに倒れていく

だが、数が多い為、その兵士はゆっくりと倒れた

 

 

「遂に俺一人か……」

 

タスファイは銃を構え、一瞬後方を見る

その視線の先には誰もいない開けられた脱出ハッチがあった

 

 

タスファイは数秒思案した後、兵士級の大群にAD-3T4小銃による1弾倉分の銃撃を加え、弾が無くなった途端放り投げる

そして肩にかけていた銃を手に取りつつハッチへと走る

 

ここまでは彼の算段通り

 

 

だが、右から突如飛び出してきた戦車級に右腕を掴まれ、通路を転がった

転がった直後、右腕を手ごと咥え、顎により生み出される力で腕はバキバキと骨が一本一本折れていく

 

 

「ぐっ……」

 

タスファイは痛みに悶えるものの、咥えられた右手は要塞の自爆装置が握っていた

脳からの命令信号が伝わる内に親指がゆっくり動き、スイッチを押す

直後、爆発音が連続で響き渡り、スイッチを手から離し、強引に口から腕を引き抜いた

 

 

「グアッ……よし、行ける!」

 

右肘より下は無くなっていたが命に代えられないと、タスファイはハッチに飛び込み、脱出用のスロープを滑る

 

 

 

スロープの終点で待っていたのは部下たちであった

 

「司令……!よくぞご無事で!……っ、右腕が……」

 

管制官が一番最初に口を開き、敬礼して涙を流しながら話す

 

「治療すれば問題ない。すぐに行くぞ、もうすぐここはBETAの勢力下に入る。」

 

タスファイは右腕の事を案じる部下を窘め、すぐに命令を下す

 

車両は要塞後方の倉庫にいる輸送車であり、2人減った数で十分乗れる数であった

すぐにタスファイらを乗せて出発し、その直後、要塞は炎に包まれた

 

「やっと終わったか……あんな戦いはしたくないものだな。」

 

タスファイは要塞が炎に包まれる光景をつぶやきながら、自分の右腕に応急措置をしてくれている女性に視線を向ける

 

「ところで、後輩のことはどうする?」

 

その女性はその後輩という単語で体を震わせる

 

「……正直忘れられません。でも、BETAとの戦いは始まった。多分これからあのような光景を何度も見ることになるでしょうし、もう慣れるしかないです。」

 

 

「そうか……」

 

タスファイは突然通信機を取り出す

 

 

「聞け。我々とBETAとの戦いは始まってしまった。だがこれだけは行おう。総員、BETA襲撃で亡くなった無辜の市民と要塞防衛で亡くなった兵士達に敬礼!」

 

運転手以外後方を向き、炎に包まれる要塞を向いて敬礼をする

 

 

 

 

その頃、アフリカ連邦陸軍ケニア方面第12砲兵師団はジンマ防衛要塞が落ちた事を遅ればせながら聞く、だがすぐに撤退しようとはせず

 

「全車両、弾頭一斉射用意!斉射した車両から撤退を始めろ。てぇっ!!」

 

指揮官と思われる男は最後の土産とばかりにコンテナ型6連発射機2基を搭載するMLRS16両の計192発のクラスター弾頭をBETAへとぶち当てようとしていたのだ

192発の誘導クラスター弾頭がロケットモーターで飛翔し、要塞周辺のBETAは全滅したとはいえ、重光線級の周囲にいる大量のBETAの上空から降り注いだ

 

当然光線級が迎撃するが…数が多すぎた

 

9割以上のクラスター弾頭M88が生き残り、子爆弾を放出

その場にいたBETA群約1万を文字通り焼き尽くした

 

 

アフリカ民主主義連邦エチオピア自治区はBETAの手に落ち、ケニア自治区が矢面に立つこととなった

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

ー 大西洋モーリタニア沖 ー

 

アメリカ海軍大西洋艦隊第十艦隊特別任務編成群

 

 

アフリカ民主主義連邦は24日午後の時点でBETAの着陸ユニットの降下を確認していた

だが、各地の被害状況の確認や総力戦事態の布告宣言に関する議会の紛糾で日にちは過ぎていき、25日の午後にアメリカ海軍第十艦隊司令部より援軍要請の確認を求められたことにより、やっとアメリカから援軍が派遣された

 

この特別任務編成群にはアメリカ海軍艦隊総軍を兼ねる第一、第二艦隊よりモンタナ級原子力戦艦の『インディアナ』、『サウスダコタ』、『ニューメキシコ』が派遣されてきていた

 

 

「全く……対応が遅すぎるものだ。これ程までにBETAの勢力圏が広がってしまった。」

 

艦隊司令官が戦域モニターを見ながら、呟いた

 

 

「まあ、仕方ありません。アフリカ連邦は数年前まで存在した国々の集合体ですから。我々も集合体ですが、大統領の権限が強いため問題はありません。ですが、かの国は自治区としての権限が強く、連邦大統領の施政に介入できますからな…」

 

主任参謀がそれに答えていく

 

 

艦隊司令官はオスニエル・パーシヴァル・ニュートン海軍中将であった

 

 

「全艦、砲撃用意!」

 

モンタナ級の480㎜3連装電磁加速砲4基12門、3隻分が旋回し、陸地に巨砲を向ける

 

 

「FIRE!!」

 

一瞬の輝きとともに砲弾は陸地へと向かい、その破砕力でBETA共を焼いていく

 

また、巡洋艦以下の艦艇も砲撃及びミサイル攻撃を開始し、小規模の爆炎が上がる

 

 

「航空攻撃を開始せよ。発艦開始!」

 

ニュートン中将が直接通信機で、空母打撃群司令官に伝えられた

 

 

海域に派遣されてきたのはなにも戦艦等の水上戦闘艦艇だけでは無い

少し沖合に出ていたところにタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦やアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、電磁放射防壁増幅発生装置を装備したズムウォルト級駆逐艦を護衛としていた空母打撃群がいた

 

空母は2隻

1隻はニミッツ級原子力航空母艦CVN-72『エイブラハム・リンカーン』

もう1隻は同級『ジョン・C・ステニス』

 

その航空甲板上には現在アメリカが猛烈な勢いで量産しているF-36ハンター多数並べられ

 

Clear for take off(離陸を許可する)』という航空無線が伝えられた機から発艦していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次なる戦いは始まったばかり……




※設定

タスファイ・グルマン少将

エチオピア連邦共和国の出身
現アフリカ民主主義連邦エチオピア自治区ジンマ防衛要塞司令官
※アフリカの人達って名字だと思ったら父親の名前というのがあるらしくて、今回この人物を呼ぶ際はタスファイで呼ぶことにしています

オスニエル・パーシヴァル・ニュートン海軍中将

アメリカ海軍第二艦隊第18水上砲撃群司令官
今回特別任務編成群の司令官を務めた
第十艦隊には戦艦はおらず、その上中将もいなかった為、なし崩し的に彼が艦隊司令官となった


※次回
chapter18 フェアバンクス会戦


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chapter18 フェアバンクス会戦

西暦2026年5月24日深夜

 

 

ー ホワイトハウス・ウェストウイング地下 ー

ー 大統領危機管理センター【PEOC】 ー

 

大統領ら閣僚らが集まり、ある映像を見ていた

 

「落とされたか……ついに我が国にも。」

 

その映像にはアラスカ州フェアバンクスノースター郡フェアバンクス市の様子が映されていた

否、フェアバンクス市だったのが映されていた

 

 

「防空網はどうなっていた?」

 

フリッツ大統領が怒気をはらんだ声で質問する

 

 

「それが……成層圏通過する時には異常なほどの猛スピードであったのですが、着陸する際には急激に速度が低下していました。」

 

レアード国防長官が申し訳なさそうに答える

 

 

「……低高度では起爆が行えない専用防空弾頭の盲点を突かれたか……現段階の対応は?」

 

 

「はっ、在アラスカ陸軍の第18機甲師団を回しBETAの進出阻止に出動させています。次にエルメンドルフ空軍基地より第11空軍のF-36を緊急出撃させ偵察任務に当てております。また、これだけでは足りなすぎるため、カナダ連邦管区にも要請し2個砲兵連隊と4個歩兵連隊で連邦管区国旗沿いの防衛に当てました。それから……大統領。フェアバンクス市は見捨てますか……?」

 

 

「…民間人の救助は困難なんだろう?…無論構わん。そこまで人員に拘っていたら大統領にはなれていないからな。」

 

 

「ありがとうございます。これならば、北極海に展開する艦隊の支援砲撃が使えます。」

 

 

「頼んだぞ。アラスカは守り切らなければならない。」

 

 

「はっ。」

 

 

 

 

 

 

 

ー 北極海・ボフォート海 ー

 

 

アメリカ海軍艦隊総軍所属第6任務部隊(タスクフォース)

 

 

「で、再確認だがフェアバンクス市に奴らが落ちてきたのは本当なんだな?」

 

 

「ええ、間違いないです。アンカレッジも同様の連絡をしてきました。」

 

 

「全く……民間の通信が錯綜していたり、猛吹雪のせいで通信状況が悪くて繋がらなかったり散々だな。」

 

 

「どうします?」

 

 

「浮上させろ、をな。」

 

 

 

その時、旗艦であるジェラルド・R・フォード級原子力航空母艦CVNB-1『エセックス』の前方の海面が割れ、現れたのは巨大な戦艦だった

 

グリーズ・リーパー級特殊戦艦二番艦『フィッツ・ジェラルド』

奴とはこの艦のことであった

 

 

そして、この秘匿されている艦を運用する艦隊を率いるのはアンソニー・クラーク大将であった

 

 

「ところでフェアバンクス市へ砲撃は届くか?」

 

 

「!?、ですが、大統領の許可が……」

 

クラーク大将はその言葉をさえぎり

 

 

「問題ない。秘匿通信で国防長官から陸地への制圧砲撃許可が出た。で、どうなんだ?」

 

 

「はい。一応、飛ばしておいたFS-1改や衛星を利用したGPS誘導射撃は可能です。」

 

 

「そうか……射撃用意!他艦は巡航ミサイルの用意だ!」

 

 

「了解!各艦に通達、攻撃用意!攻撃目標、フェアバンクス市!!」

 

主任参謀が攻撃命令を各艦に伝える

 

その間にクラーク大将は祈った

「……神よ。同じ国の無辜の民に矢を放つこと、お許しください……MyGod……」

 

 

「司令、各艦攻撃準備完了!」

 

 

「よし、FIRE!」

 

その声に反応し、巡洋艦や駆逐艦の艦橋ではミサイル発射スイッチがバラバラに押され、前部甲板のVLSから炎が激しく吹きその隙間からトマホーク巡航ミサイルが放たれ、『フィッツ・ジェラルド』からは巨砲が吼え、洋上から600㎞離れたフェアバンクスに実体プラズマ弾が降り注ぐ

 

 

 

 

地上ではアメリカ陸軍第18機甲師団が展開、第68機甲連隊第4大隊による積極的防御(アクティブディフェンス)に徹していた

 

履帯をフル回転させ、猛獣のように勇ましく動き、第4大隊の先頭をゆくM1A4/FエイブラムスⅣ

それは同型の車両やM1A3エイブラムスⅢ、M2A5ブラッドレー歩兵戦闘車と共に、BETAの大群へと突っ込んでいく

 

「全車、ファイアっ!!」

 

そして、号令と共に120㎜滑腔砲からAPFSDS弾頭が叩き出される

 

「2号車は左、3号車は右を狙え。各車、割り当てられた目標に撃て。決して撃ち漏らすなよ。」

 

「サー・イエッサー!」

 

 

先頭をゆくM1A4/Fは進路の障害となった戦車級に120滑腔砲を至近距離で放ち、直後踏みつぶす

その後ろをゆく2号車は左に砲塔を旋回させ、要撃級の白い頭部を消し飛ばす

3号車は右方向の戦車級に120㎜砲を放ち、12.7㎜M2機関銃で小型種を消し飛ばしていく

その他の後続も続き、M2A5ブラッドレーは25㎜機関砲を乱射し戦車級を穴だらけにしていき

、別のブラッドレーは対戦車ミサイルで要撃級の脚を潰す

 

直後、重光線級からの攻撃が来るも、M1A4/Fは青白い膜を展開し耐える

 

 

 

『こちらCP(コマンドポスト)、全車両に通達する。一時後退せよ、後方より阻止攻撃が来る。』

 

その命令は伝達された時

 

『ヘル・ターニング!』

 

と第4大隊大隊長が叫び、彼らはなんと敵中での一斉超信地旋回を行った

 

 

絶好の標的と判断したBETAが接近する中、大隊長は無線機で外に向かって叫ぶ

 

 

《地獄に落ちろ!!下等生物共!!》

 

同時にいつの間にか後方側へと旋回していた120㎜滑腔砲が咆哮する

 

 

直後、車両の前方にいた小型種を踏みつぶし、強行突破を図る

 

 

「ヒャッハー!無謀なことが好きだねぇ!」

 

 

「化け物を砕くの爽快だぁ!!」

 

 

『ファイアっ!!』

 

 

全車両の火砲が一斉に火を吹く

 

後退中でもBETAを殺すことを欠かせなかった

ある車両は砲塔が後方を向いたまま12.7㎜M2機関銃を放ちつつ戦車級に吶喊して押し潰し、後方から接近するBETAを120㎜砲で撃破した

 

後退する内にCPが設定した後退ラインへ積極的防御(アクティブディフェンス)を行っていた全機甲大隊が後退が完了

 

 

直後、第301野戦砲兵大隊のM109A7パラディンやM116A1スチュアートの155㎜、175㎜榴弾砲が一斉に放たれる

 

 

その砲弾が飛翔する中、BETA群前衛を掻き乱した第4大隊大隊長は一言つぶやく

 

「ゴー・ヘル。」と

 

 

 

Ammo, now!(弾着、今!)

 

掻き乱されたBETA群前衛は爆炎に包まれる

 

 

BETAの後続は続く

だが、高速展開していたHIMARS(高機動ロケット砲システム)から227㎜ロケット弾が降り注ぎ、引き裂かれていく

 

 

それはまさに演奏

BETA共を地獄まで叩き落とす炸裂の伴奏が流れながら演奏は中盤へと差し掛かる

 

装填が完了した第301野戦砲兵大隊から破壊をもたらす演奏が流れ始める

また、第68機甲連隊第4大隊からもAPFSDS砲弾が放たれ、光線級の迎撃すら大量の砲弾で圧殺していく様はまさに破壊をもたらす演奏が奏でられていた

 

 

『砲撃終了!BETA群第1波……全滅!!』

 

CPが戦果報告を告げた事で破壊の演奏は終了する

 

 

 

 

 

25日午後4時

 

ー 大統領危機管理センター【PEOC】 ー

 

 

「戦況はどうだ?」

 

 

「ええ。簡潔にいえば若干有利と言った所でしょうか……」

 

 

「何……?」

 

 

「モニターで説明します。スクリーンに出せ。」

 

モニターにはアラスカ州が映され、さらに拡大し、フェアバンクス市から周囲200㎞が表示し部隊の配置状況も加えられた

 

 

「現状、フェアバンクス南方は現状のままで防衛が可能であるため、援軍は必要ないと考えます。東側もカナダ連邦管区軍が国境付近で河川防衛に徹しており、ここも援軍は必要ないと思われます。ですが、問題は北方……主な軍部隊が配置されていなかったことに加え、アンカレッジからフェアバンクスを開始して進むルートは少なく、そのルートでさえ大部隊を輸送するのには適していません。現在はなんとか数個戦術中隊による機動防御戦術と海軍の支援攻撃でその進行を押さえています。」

 

 

「北側はさらなる増援が必要か……。」

 

 

「はい。ですが、ここはアラスカ、ただでさえ北部は湿地地帯が多く、大重量の戦車はあまり使えないかと……」

 

 

「では、どうする?」

 

フリッツ大統領はレアード国防長官の目を視線で射貫く

 

「……軽歩兵師団を主力とする装甲部隊及びAH-77Bデファイアントをフル装備する第332航空連隊を送るべきと考えます。」

 

 

「つまり……アラスカ州及び近隣州に分散配置されている第22騎兵師団をまとめて北部へ送り込む許可か……レアード国防長官。どういう作戦目標にしている。」

 

 

「あ……失礼しました。」

 

レアード国防長官はモニターを示し、

 

「作戦目標は建設しつつある敵拠点の攻略です。」

 

 

その言葉を聞いたフリッツ大統領は苦い顔をうかべる

 

「レアード。第22騎兵師団の投入は許可する……が、作戦目標を大幅に変更。量子爆弾を実戦投入する。」

 

 

「!?、待ってください!現状、北部の防衛が成功すれば、突入が可能です!」

 

レアードは抗議するが……

 

「その突入作戦が確実に成功するか?」

 

 

「……それは……」

 

 

「出来んだろう。人類においてハイヴ投入はオペレーション・ブロッサムのみだ。そして、我が軍で突入に適してる部隊はFMS-4『パーシング』を有する部隊のみ。まだ全師団に行き渡ってない熟練部隊。それを突入させ作戦が失敗した時、我がアメリカは貴重な人員を失う事となる。それだけは避けねばならん。また、世界はアメリカのBETAに対する早期決着を望んでいる。これはアメリカの威信と経済にも関わる重大事態だ。速やかに奴らを処理しなければならん。」

 

 

「では……フェアバンクス市に量子爆弾を?」

 

 

「無論。だが、この戦域モニターに量子爆弾の起爆範囲を重ねてみると、現状量子爆弾の投下は不可能。国防長官、投下前に量子爆弾の爆発範囲外に対BETAの包囲陣を形成させるんだ。1体も逃してはならないぞ。」

 

 

「わかりました。」

 

 

レアード国防長官は早期に退出

国防総省にて、戦域部隊の量子爆弾の爆発範囲外での包囲陣形成を命じるよう伝え、戦略軍事ステーション『カリフォルニア』には量子爆弾の投下シークエンスを開始するよう命じた

 

 

 

 

 

 

西暦2026年5月26日早朝4時

 

 

量子爆弾の投下まであと2時間を切った

 

直後、戦略軍事ステーション『カリフォルニア』では巨大な発射口が口を開く

 

 

 

地上では、第68機甲連隊第4大隊が包囲陣前衛となって配置につき、時々襲来してくるBETAの迎撃任務も兼ねていた

第301野戦砲兵大隊も既に配置につき、上空では第11空軍のF-36『ハンター』が偵察行動を行い、AH-77B『デファイアント』も上空を浮遊していた

増援としてきていた第22騎兵師団は北部方面で包囲陣を形成し配置についていた

 

 

ー 大統領危機管理センター【PEOC】ー

 

 

「準備は整ったな?レアード国防長官。」

 

 

「ええ。全て整いました。」

 

 

「……BETAは放置しておくとさらに数が増えてしまう。早く始末しといた方が良さそうだ。」

 

 

「時間を繰上げますか?」

 

 

「ああ。頼んだよ、参謀総長。」

 

 

 

 

 

投下時間が1時間繰り上げられた

 

 

 

 

 

そして、その時間でさえすぐに過ぎる

 

 

 

 

 

 

軌道上の戦略軍事ステーション『カリフォルニア』の巨大な発射口より量子爆弾が射出されるブースターが点火し大気圏へと突入を開始した

 

 

光線級の光線(レーザー)が浴びせられる、が…その弾頭はブースターに電磁放射防壁と熱反射シールドを装備しており、全く効果が無かった

 

 

高度100mを切った時にブースターが分離、シールド類が解除され急上昇する

そして……

 

 

量子爆弾は炸裂した

 

 

 

触発型の信管となっていた第1段目の内蔵通常爆弾が炸裂し、爆炎がBETAを呑み込む

だが、それは第2段目、重力爆弾の起爆によって収束し、1点に集まった後

第3段目の本命、量子爆弾の起爆によって収束したエネルギーも全て解放されてゆく白い光が辺りを染め上げる

高温となった爆炎が津波となってBETAや残っていた建築物を呑み込んでいく

BETAは一匹残らず焼き尽くされ、フェアバンクス市も、BETAが建築しかけていたハイヴも、全てが焼き尽くされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー大統領危機管理センター【PEOC】ー

 

 

起爆する映像を見ていた官僚らは終始言葉が出なかった

 

あんなものが我々の頭上に落ちてきたら……

 

 

そう思わずにはいられないほどの、破壊力だったのである

 

 

 

「レアード長官。突入は可能か?」

 

 

絶句していた内の1人、フリッツ大統領が初めに口を開く

 

「核兵器ではないので、爆炎が晴れ次第可能です。ですが、かなり高温なので、核戦争下の活動が可能な兵器に限定されます。」

 

 

「戦車部隊か……まあ、熱が収まってからでいいだろう。ただし民間人は誰であろうと入れるなよ。フェアバンクスノースター郡は一時的に軍政下へと入れる」

 

 

「そうします。」

 

 

「それから……量子爆弾の製造を停止しろ。こんな兵器を他国に落とすなど……胸糞悪い……」

 

 

「……分かりました。」

 

レアード国防長官は気持ちを察したのか、一言で返答を返す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦2026年5月26日

 

 

BETAの北米侵攻は

 

 

たった1発の爆弾により

 

 

食い止められた




※次回
chapter19 生き残った者の苦しみ


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chapter19 生き残った者の苦しみ

 

 

 

 

西暦2026年5月26日午前2時

 

ー パリ ジョルジュ=ポンピドー欧州病院 第6区画8号室 ー

 

 

ひとつのベッドで1人の少女が医療マスクを被り、大粒の汗を大量にかき、苦しげに息を吐いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌……やめ……やめ…て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い……痛いっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べないで……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、目を覚ました少女

 

 

彼女こそ24日にBETAに襲われ、瀕死の重傷を負ったクロエ・ファルトマイヤーその人だった

 

午後にここパリ先進医療技術病院に運び込まれ、集中治療室で治療が行われた

それは長時間に及ぶ、各種内蔵の再生と微生物の生成、骨などの再生等、多岐に及んだ

結局治療は24時間程かかり、25日の午後6時ぐらいに終了した

 

 

 

 

彼女は手を震わせながら医療マスクを外す

 

 

「何……この……夢…は?……」

 

口元が震え、言葉が思うように出せず、震えの余り目の焦点が合っていなかった

彼女の夢に出てきていたのはBETAであり、自分を捕食していた

意識を失う前に見ていたのはまさにその光景であり、恐怖するのも無理はなかった……が、

 

 

その内、ゆっくりと重げに視線を上に向け、直後目を驚いたかのように目を見開く

なお、この時だけ目の焦点が収まっていた

 

 

「い……いやっ!」

 

あまり動かない体を恐怖でベッドの上で後ろに引きずるあまり、バランスを崩してベッドの左に転落する

 

「いっ……た……」

 

 

彼女が天井を向いて驚き、恐怖のあまり体を引き摺っていたのには理由があった

普通なら深夜の暗い病室の天井に見える

そのはずだが、彼女には赤い血で汚れた天井、そして、上からのしかかる赤い化け物

 

それらが彼女の視界に幻覚となって現れていた

 

 

 

そして、ベッドから落ちた彼女は叫ぶ

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

その声は深夜勤務の看護師らが待機している場所にまで届き、すぐに駆けつけた

 

「大丈夫ですか!……!?」

 

 

看護師らは絶句する

クロエは目から涙をとめどもなく流し、手を何かを振り払うように振り回していた

 

看護師がベッドに戻そうと抱える為に手を触れようものなら、さらに強く振り回してきて、3人の看護師では手のつけようがなかった

その為、深夜常駐の男性医師2名を呼び、無理やり抱えてベッドに戻した

それでもなお手を振り回し足をバタバタとさせる為、本来なら暴徒の拘束に使うのであって子供に使うものでは絶対に無い拘束魔法を仕方無く使用、両手、両足をベッドに拘束し、今も尚叫びつづける口は大声で叫んでも通常会話程度にしか聞こえない防音マスクで塞いだ

 

 

「彼女……」

 

 

「ああ、間違いない……彼女には……PTSDの可能性がある。」

 

1人の男性医師が顔をしかめる

 

 

「……まあ、あんな事をされたら私達であってもああなります。」

 

それに女性看護師が顔を青くしながら答えた

 

 

「それは俺らであっても同じだ。救出した魔法師が言っていたが、腹は裂け、肩は千切れ、目は虚ろになっていたじゃないか……」

 

男性医師は苦い顔を浮かべ、悔しげに手に力を込める

 

 

「どうしますか?」

 

「……俺らは日中いるわけじゃないしな、君たちが伝えてくれ。それと、しっかり休め。この後の深夜勤務時間帯は任せろ。」

 

「わ、わかりました。」

 

看護師らが退室し、男性医師2名もそこを出る

 

その時、1人が振り向き、クロエに声をかける

 

 

「自分勝手だが言わせてくれ。まだ若いんだ、しっかりと元気を取り戻してくれ。」

 

声をかけた医師は恥ずかしげにすぐに退出していく

 

言葉をかけられた彼女は拘束直後は虚ろな目をしていたが、今ではしっかりと目を閉じ眠っていた

 

 

 

 

 

 

昼頃にはクロエの狂乱状態や幻覚症状は収まったものの、異常な程に()()()だった

食事でさえ促されなければ手をつけないという状態で、担当する看護師は悲しいそうな目で見つめた

その為、父親に電話することが決定された

 

 

「すいません、ファルトマイヤーさんですか?」

 

 

『ええ。アンセルム・ファルトマイヤーです。』

 

 

「実はですね、娘さんがここパリの病院に緊急搬送されて、今はなんとか一命を取りとめています。」

 

 

『何っ!……それで……』

 

 

「聞いてください…命は助かりました。ですが……彼女にはPTSDの疑いがあります。」

 

 

『……そうですか…』

 

 

「あまり驚かれないんですね。」

 

 

『いえ…内心驚いています。命だけでも助かっただけで良かった。人間、命が助かっていれば、どうとでもなりますから。』

 

 

「そうですか……ところで治療はどうしますか?カウンセリング等の精神療法は総合病院の為、完備はしています。ですが、年齢を考えると単独では記憶が蘇って失敗する可能性も……」

 

 

『…家族療法と?』

 

 

「はい。それが一番いいと思います。」

 

 

『…私は軍人なので長期的に会うのは厳しいのですが……』

 

 

「それでも、1回だけ会ってくれませんか?大事な人に会う、それだけでも症状が改善される方が多いです。」

 

 

『……検討します……』

 

 

「お願いします。」

 

 

 

 

ー マルセイユ港 第四艦隊基地 ー

 

 

「はぁ……」

 

1人ため息を吐くアンセルム

 

(……クロエが助かったのはよかったが……PTSDか……まあ、BETAに襲われていたから仕方ないこととはいえ……)

 

 

「どうした?」

 

俯きかけていたアンセルムに声をかけたのは原子力空母『クレマンソー』艦長だった

 

「あ、いえ……」

 

 

「まあ、とりあえず、俺の部屋にこい。」

 

 

「あ、了解しました。」

 

 

アンセルムは諦め、艦長の個室に行った後、事の顛末を艦長に話した

 

 

 

「そうか……お嬢さん助かったのか……」

 

 

「助かったみたいですが……PTSDと診断されていて。」

 

 

「それで会いに来てくれと頼まれているのだろう?行けばいいじゃないか。」

 

 

「!……ですが、私の任務は?」

 

 

「リヨンに侵攻されてから、空母を使う意味は無くなった、航空機だと光線級に撃墜されるからな。というわけで俺も暇なんだな。行ってやれよ。」

 

艦長はヤレヤレという感じの表情をうかべる

 

 

「あ、ありがとうございます。ですが手ブラでは……何かあればいいのですが_」

 

「それの事だが、これでも持っていけ。」

 

艦長はアンセルムの声を遮り、何かが入った紙袋を渡す

 

「これは……?」

 

「俺の妻がスペインで買ってきたお土産だ。だが、俺の嫌いなものが入っててね……正直に言えないんだ……持って行ってくれ。」

 

「分かりました。ありがとうございます。」

 

 

 

 

翌日

 

アンセルムの姿はジョルジュ=ポンピドー欧州病院にあった

 

そして、8号室に来た途端、自分の娘と目が合った

 

「……お、お父さん……?」

 

アンセルムは自分から歩み寄り、クロエを抱きしめた

 

「……お前が無事で良かった……辛かったろう……泣いていい。」

 

「……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

クロエの涙腺は結界し、泣き叫んだ

アンセルムはクロエを受け止め、しっかりとクロエの体を支えた

 

「済んだか……?」

 

「うん……ありがと。」

 

「そうだ……これ、お見舞い品だが一緒に食べるか?」

 

「……うん!」

 

アンセルムは上司から貰ったお見舞い品を開き、一緒に食べながら色々な話をした

 

長いようで短い……すぐに時間は過ぎていく

 

「もう帰らないと行けないな……クロエ、また来るよ。」

 

「!……」

 

クロエは沈黙したままアンセルムの来ていた服の左袖を右手で引っ張った

 

そして、父にしか聞こえない小声で呟いた

 

「……行かないで……怖い……」

 

クロエに目には微かに潤っていた

 

 

「……」

 

アンセルムはゆっくりとクロエの右手を離す

 

 

そして……

 

 

 

 

クロエの左頬、アンセルムから見れば右の頬を右手で強く平手打ちした

 

 

 

 

甲高い音が響くと共に、沈黙が走る

 

 

 

 

「甘えるな!!」

 

部屋にアンセルムの声が響く

 

 

アンセルムはできるだけ乱暴にしないようにクロエの服の胸倉を掴み、引き寄せる

 

「悪夢を見ようが、幻覚を見ようが、PTSDだろうが関係ないっ!」

 

 

「お前はBETAに喰われかけた……その絶望は想像を絶するものだったんだろう……だが……」

 

 

「だがな……俺だって殺されかけた時もあるし、人が猟奇的な殺した方で殺される光景を見た。けど、俺は恐怖は感じたが、狼狽することも精神ショックを負うことも無かった。何故だがわかるか?」

 

アンセルムはクロエに問う、しかし、その答えを聞かずに話を続ける

 

「それはな、ファルトマイヤー家の人間だからだ。なりかけた時もある、だが、克服出来た。」

 

「もう一度言う、甘えるな。クロエ……お前はまだ幼いから仕方ないが、それでも必ず克服できると信じている。ファルトマイヤー家の人間なら必ず!」

 

そこまで言うと、アンセルムはクロエを抱きしめる

 

「……必ず克服できるさ……ファルトマイヤー家……いや、俺と妻の娘なら。」

 

「…………うん。」

 

クロエは頷きながら、静かにひと粒の涙を零す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜はクロエは静かに熟睡することが出来た



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chapter20 泥沼と化す戦場

 

西暦2026年5月25日日本時間午前1時

 

ー 東南アジア連合ベトナム共和国ハティン省ハティン ー

ベトナム人民軍臨時作戦司令部

 

 

暗い室内で正面のモニターを見ながら話し合う6人の影があった。

 

「観測衛星によるとBETA梯団20万はドンホイに向かっているらしい、既に半分は越えたか……?対応自体は遅くなったが、作戦航空部隊が向かいつつあり、陸上部隊も順次展開中、海軍が少し遅れているが、その代わりにアメリカ海軍が迅速に展開してくれている。南には向かってないが、ダナンに展開している部隊はどうするんだ?」

 

高級将校らしき男がモニターと手前のタブレット端末で現在の状況を口頭で確認する。

 

「BETAへの対応が無くなったことでハイヴへの直接攻撃が可能になった。作戦開始と同時にハイヴへ攻撃するんじゃないか?」

 

高級将校の問いに別の将校が予測を立てる

 

「そもそも人民議会が余計な反応を示したからこうなったんだ!速攻を前提としている作戦計画263は既に破綻している!」

 

一人の将校が憤慨する。

 

「ある情報によると、本来ならもっと時間がかかっていたらしい。だが、アメリカ、オーストラリア、タイ、インドの駐在武官が押し寄せ、強行させたらしい。まあ……アメリカと核戦力支援協定を結んで核保有しているタイと三大国からの圧力を受ければな……それにタイは我が国の対応がさらに遅ければ、領空侵犯してでもハイヴに核を投下するつもりだったのが恐ろしい。」

 

「人民議会の件は仕方ないだろう、我が国は強権的とは言っても、紛れもない民主主義国家だ。人民委員長の独断で行うことは出来ない……まあ今回の議会の行動は宜しくないがな。ところでBETA梯団への砲爆撃を行う際に、ドンホイへの被害が気になるが、ドンホイの民間人は全員疎開させたんだな?」

 

「ええ。」

 

「それなら良いだろう。少し遅れてはいるが、作戦計画263は実行に移せる。作戦航空部隊には作戦計画263第1行動を開始するよう命じろ!ダナンに展開している部隊には1時間後に攻撃するよう伝えろ。人民委員長には作戦計画263を実行すると伝えるのだ!」

 

「はっ!」

 

この部屋の中で最も階級が高い、司令と思われる男が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 

 

 

ー ドンハ市より北西60㎞ 上空 ー

 

暗い漆黒の空を飛ぶ20機の編隊。

機体の翼端に描かれたレッドグリーンの塗装と機体後部にある黄色い五芒星とそれを囲う赤い円と2つの四角が月光に照らされる。

 

ベトナム人民空軍第912連隊第16作戦機隊所属FA-12Aグローム

 

この機体はアメリカが中小国用に開発した機体で、AV-8BハリアーⅡをモデルに、高出力ジェットエンジン、共同交戦能力等の高性能の電子機器、ステルス性、そして対光線級防御システムを注ぎ込み、垂直離着陸機能は簡潔化している。

FA-12Aとして制式化され、アメリカ海兵隊やアメリカ海軍にも採用され、対BETA作戦計画263が纏まりつつあったベトナムはこの機体を輸入する形で多数の機体を購入した。

 

 

『ペシー02、機体は良好か?』

 

『こちらペシー02、良好だ。ペシー01。』

 

『そうか……全機に告げる。これより作戦計画263第1行動を開始する。内容は簡単だ、ただ光線級の注意をこっちに集中させればいい、それだけだ。では、諸君!我らの勝利の華をBETAの体液で咲かせようぞ!』

 

20機の編隊が高度3000mを進む中、後方では倍の数のFA-12Aの大編隊、第15、17作戦機隊が超低空で突き進んでいた。

 

そして、光線級からの光線第1射が第16作戦機隊の内1機に殺到、展開されていた蒼白い膜がそれを防ぐ。

 

対BETA戦の航空機において必ず装備しなければならないと言われる電磁放射防壁発生装置、略して電磁防壁はこの機体にも装備されており、抜群の防御力を持っていた。

 

何射撃たれようが、電磁防壁の前には防がれていく。

 

 

「よし!全機攻撃用意!」

 

第15,17作戦機隊は第16作戦機隊に光線級が釣られていることをしっかりと確認し、翼下にぶら下がっているミサイルの最終ロックを解除した。

そして……

 

「全機発射!」

 

40機に上る大編隊からAGM-65Hマーベリック空対地ミサイル2発ずつを解き放った。

光線級が高空に注意が向いてる中、BETAには何も出来ることは無く、57㎏成型炸薬が着弾と同時に爆発し、高温がBETAを飲み混んでゆく。

 

 

 

その頃

ー ベトナム沿海 ー

 

アメリカ海軍太平洋艦隊第9艦隊第32任務部隊

 

「交戦が開始されたか……」

 

480㎜3連装電磁加速砲2基を前甲板に備える艦隊旗艦モンタナ級戦艦『コロラド』の艦橋にてキース・ナカハラ海軍中将はそう呟く。

 

「ええ。既に光線級の注意は高空に向いてます。」

 

「そうか……四艦砲撃準備!ただし、念の為にDESP(防御装備艦)には用意させておけ!」

 

「了解!」

 

モンタナ級『コロラド』 『ワシントン』、アイオワ級『イリノイ』 『ケンタッキー』が単縦陣を編成、その前後にDESPが置かれ、陸地とは反対側の方に駆逐、巡洋艦が配置された。

なお、空母2隻も艦隊に付属しているものの、今回はあくまで艦隊防空任務として、任務部隊の南北100㎞の海上に配置されている。

 

「照準良好!対地制圧の振り分けも完了しています!」

 

「よし!FIRE!!」

 

ナカハラが吠えると同時に、480㎜3連装6基18門、406㎜3連装18門が咆哮し、砲口が蒼白く輝くと同時に480㎜サーモバリック気化弾頭が超音速で放たれ、陸地の一部に巨大な爆炎を上げ、406㎜サーモバリック気化クラスター弾頭が広範囲に小さな爆炎を無数に作り出す。

 

「艦隊、ミサイルセル解放!対地巡航ミサイル順次発射開始!」

 

駆逐艦と巡洋艦の垂直発射装置が次々と開かれ、艦対地ミサイルを放っていく。

また、円筒キャニスターの4連発射機からもミサイルが放たれていく。

全ての艦対地ミサイルは砲撃から逃れたBETAを次々と死骸に変えていく……それも容赦なく。

 

 

「米海軍も攻撃を開始、現状の戦況は優勢です。」

 

「ダナンの部隊はどうしている?」

 

「まもなく攻撃を開始します!」

 

ベトナム人民軍作戦司令部の管制室ではオペレーターと将校が話し、モニターにダナンの部隊のアイコンが映る。

 

 

 

ー ベトナム中部 ダナン市より北西100㎞ ー

 

「急げ!!まもなく攻撃開始時刻だぞ!」

 

指揮官が声高らかに叫ぶ。

 

FA-12A戦闘攻撃機80機にも上る大編隊が既に上空に上がっており、さらに増えつつあった。

 

「北側では我らの友が光線級を引き付けてくれているそうだ、我らはその隙をつき、直接BETAの落着ユニットを攻撃するっ!」

 

FA-12A全機の翼下には艦対地ミサイル4発がぶら下がっており、

 

「放て!!」

 

の一声で一斉発射され、約400発に上る艦対地ミサイルが放たれ……

 

ドンハ市より南東30㎞地点では日本から輸入した99式自走155㎜りゅう弾砲が機甲部隊の護衛の元、次々と榴弾を放つ。

 

ミサイルは落着したユニットや形成中のハイヴの外壁に命中し、榴弾はハイヴ付近のBETAを吹き飛ばしていく。

 

 

戦況は優勢であった、しかし……

 

 

 

事態は戦闘開始から6時間が経過した時、一変する。

 

 

最も早く事態に気づいたのは第16作戦機隊のパイロットであった。

 

「……ん?なんだこの反応?」

 

そのパイロットは困惑した表情でレーダー画面を見る。

 

『どうした、ペシー04。』

 

「いえ……ただレーダーに他の初期照射に混ざって別の反応が……」

 

隊長が問いただすも、そのパイロットの回答は非常に困惑しているといった口調であった。

 

「……別の反応だと?こっちには見えないぞ?故障じゃないか?」

 

「うーん……多分そうだと思いますので、一旦帰投します。」

 

「そうか……では待つぞ。2機ほど護衛についていってやれ。」

 

 

これが生死を分けることとなった。

 

そして……超重光線級からの極大出力照射の第1射目が放たれた

 

9つの照射膜が強烈に白く輝き、一斉に照射する。

 

「なっ、なんだあれはっ!!たすけ_」

 

「来るなぁーっ_」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ_」

 

 

如何に光線級や重光線級からの光線照射に耐えられる電磁防壁を展開していたとしても、もはや光線(レーザー)ではなく光線(ビーム)を照射してくる極大出力照射に耐えられるものなど、地球上の航空機には一切無かった。

極大出力照射1射目で、戦域を離脱していた3機を除く第16作戦機隊17機は残骸すら残さず()()()()

 

 

 

ー ハティン省ハティン ー

ベトナム人民軍臨時作戦司令部

 

「第16作戦機隊消滅!」

 

司令部の管制室において、オペレーターの悲鳴が響く。

その声を聞き、作戦計画263の実行指揮官や参謀がそのオペレーターの近くに集まる。

 

「消滅だとっ!ほんとに消滅したのかっ!?」

 

「はい……突然レーダーから消えたとしか……。通信も途絶しています。」

 

6人の将校は思わず顔を見合わせて唖然としてしまう。

彼らからすれば電磁防壁を装備した航空機が消滅する事など考えられなかった。

 

「……そうだ、第15及び第17作戦機隊のどちらかに同じ役目を命じろ!このままでは作戦が完全に破綻してしまう!」

 

「それが……通信とレーダーの状態がかなり悪いのです……現在繋がりません。」

 

「つながり次第命じろ!」

 

「はっ。」

 

 

司令部がモタモタしている間に、ダナンより往復攻撃を行う人民軍部隊にもその牙が向かれようとしていた。

9つの照射膜が再び白く輝き、一斉に放たれた。

 

その極大出力照射は高度400mを飛ぶベトナム人民空軍第901連隊80機を襲い、40機以上を消滅させ、残りを超巨大光線属種積乱雲(レーザークラウド)によって混乱に陥れた。

さらに、地上の機甲部隊の護衛の元で展開していた自走砲部隊がその極大出力照射のプラズマ爆風で吹き飛ばされる。

 

 

ー ダナン市 作戦司令部 ー

 

「40機以上が突然消滅してレーダー障害、その上他の機体とは通信障害で繋がらないとか……こんなバカげた話があるかぁっ!」

 

ダナン市に展開している部隊を1つに統率するこの男は大声を上げて叫ぶ。

レーダー上ではRADAR LOSTの表示とともに作戦展開していた航空機を示すアイコンがありバツという撃墜されたことを示す表示が多く現れていた。

 

「くそっ!第902、903連隊も動員して再び攻撃を開始するぞ!」

 

「しかし、またあの攻撃を食らってしまえば無様に人が死ぬことになりますよ!」

 

司令と参謀が言い合いを始める。

 

「だが、何もせんというわけには行かんだろう!」

 

「だからこそです!地上部隊にも損害が出ています。彼らの生存者を救出することが先では?」

 

「ぐぬぬ…………分かった。やってくれ。」

 

司令の男は自分が自暴自棄になっていたことに気づき、唸った後、素直に命じた。

 

 

 

ー ベトナム沿海 ー

 

アメリカ海軍第32任務部隊

 

「空母『マーティン・ルーサー・キング・ジュニア』のDNAコンピューターがベトナム軍のデータサーバーをハッキングしました。内部の情報によると、北側に展開していた航空部隊が消滅、さらに南側に展開し落着ユニットに攻撃を仕掛けていた部隊は航空部隊が半数以上、地上部隊が壊滅したとの事です。」

 

情報管制官がナカハラに伝える。

さらに広域レーダーを見つめていたオペレーターが同様の報告を伝える。

 

沈黙するナカハラに参謀らが話しかける。

 

「中将……これは……」

 

「お前らも勘づいたか。」

 

「もちろんです。」

 

「……まさか……ここに来るとはな。艦隊の警戒レベルをひとつ上げろ。DESPには防御装備を展開をさせろ。ただしまだ起動はするな。」

 

「はっ!」

 

その直後

 

「レーダーに高エネルギー反応補足!さらに陸地より重光線級の初期照射来ています!」

 

オペレーターがナカハラに声を上げて言う。

 

ナカハラは目を見開き、常時より低い声で命ずる。

 

「DESPに伝達、防御装備を起動せよ。」

 

防御装備艦(DESP)とされた艦隊の前方を航行するズムウォルト級は艦体中央部が青白く輝き始め、その輝きは増すばかりで衰えることなく……そして艦隊後方のDESPと連動し、艦隊を覆う規模のドーム状の電磁放射防壁を展開した。さらに、そのドーム状の電磁放射防壁の層も分厚くなり、個々の艦艇にも陸地から遮る形で1枚の分厚い電磁放射防壁の壁を作り出した。

 

 

DESPが全て起動し終わった次の瞬間、

 

第32任務部隊に極大出力照射の光線(ビーム)が照射された。

 

光線(ビーム)は白く輝きながらも、ドーム状の電磁放射防壁に衝突、互いが干渉しあい強烈な光が発せられる。

 

「ぐ……」

 

ナカハラは苦悶の表情を浮かべる。

水兵達にあるのは光線に呑み込まれないかという()()だけではなく、極大出力照射の際に発生するプラズマ爆風と衝撃波、爆風は海面に大波を作り艦隊にぶつけられ、衝撃波は直接、電磁放射防壁にぶち当てられていた。

 

その揺れは凄まじいものであり、何かに掴まなければ立っていられないものだった。

 

数十秒間の照射時間、それら彼らにとって長く感じられたが、だんだんとその光線(ビーム)の束は細くなり、最後には消えていった。

 

「状況確認しろ!」

 

攻撃が止んだのを確認し、ナカハラはやるべき事を叫ぶ。

 

「全艦に損害なし!艦艇間通信良好!ですが、空母群との通信が不可能となり、広域通信も応答しません!」

 

ナカハラは苦虫を噛み潰したような表情を顔に表す

 

(あれほどの熱エネルギーだ。レーザークラウドを発生しててもおかしくない。)

 

ナカハラは意を決したような面持ちを浮かべて

「……全艦、目標超重光線級、発射用意!」

 

「司令っ!?」

 

その命令に参謀らが驚くが、その声を流してさらに命令を発する。

 

「また、アーレイ・バーク級及びタイコンデロガ級は戦域より退避せよ。」

 

艦隊に命令が伝達され、タイコンデロガ級とアーレイ・バーク級は進路を変え、フィリピン諸島の南を通過するような進路を取り始める。

なお、その艦隊の右側にはタイコンデロガ級に防御装備を特設したSDS(特設防備艦)2隻が配置された。

 

その艦隊に残ったのは『コロラド』『ワシントン』、『イリノイ』『ケンタッキー』他、ズムウォルト級DESP2隻、デンバー級ミサイル巡洋艦3隻、ジェネラルホーク級ミサイル駆逐艦10隻程度だった。

 

「全艦、攻撃開始!」

 

モンタナ級2隻とアイオワ級2隻の巨砲が蒼白く輝くと共にサーモバリック気化弾頭を撃ち出し、同時に両舷のVLSから巡航ミサイルを放つ。

 

ジェネラルホーク級は電磁加速砲を高速装填で次々と撃ち出し、デンバー級は主砲を撃ちながらも、100セルを越えるVLSから大量の艦対地ミサイルを放つ。

 

光線級や重光線級では撃墜しきれないその高密度重点飽和攻撃だったが……

 

超重光線級は違った。

 

 

9つの照射膜が飛んでくる飛翔体の方向を向くと同時に、ガトリング砲のような凄まじい連続照射が開始された。その照射インターバルは確認できるだけでもわずか0.2秒であり、十秒も経たないうちに全て叩き落とされた

 

 

「……全艦艇の重点飽和攻撃……全て叩き落とされました……」

 

オペレーターが声を震わせながら報告する。

信じられないという表情をしており、その報告を聞いたナカハラ他参謀らも唖然とする。

 

「……もう一度、もう一度攻撃しろ!全ての武装を使ってな!」

 

全ての艦艇が再び砲火を放つ。

それも対艦ミサイルや対潜ミサイル、副砲や艦対空ミサイルすら使って。

 

しかし……

 

「結果はどうだ?」

 

「……同じです、再び全て叩き落とされました。」

 

艦橋に重苦しい雰囲気がただよう。

 

「司令……ここは質量弾攻撃を持って叩くしかありません。」

 

その最中に参謀が提案を行う。

 

「なんだとっ!貴様正気か!ダナンまで100㎞しかないことはわかってるのか!そんな事をすれば……半径100㎞は壊滅するぞ。」

 

「……ですが、それ以外の方法が……。」

 

「くっ……」

 

ナカハラは苦虫を噛み潰したような表情を顔に浮べる。

 

(まさか……これほどだったとは……。超重光線級の出現、そして『レッドウォルフ』の存在は耳にしていた……だが、まさかこれほどの強さだったとは。我々は……舐めていた。)

 

「いや……ここは魔法協会と統括軍に支援要請してもらうよう上層部に図ろう。質量弾攻撃も検討はしておくが……。」

 

「……我々は反対は致しません。ただ命令に従うのみ。」

 

 

ー ハティン省ハティン ー

ベトナム軍臨時作戦司令部

 

「空軍第15作戦機隊半数以上撃墜されました!第17作戦機隊はレーダー障害により特定不能!」

 

「米軍はどうしたぁっ!!」

 

オペレーターの相次ぐ被害報告に思わず1人の将校が()()()()()()()の名前を叫ぶ。

 

「それが……超重光線級と呼ばれる個体にアメリカ海軍でも叶わず、北上しているようです。」

その報告に将校達が絶句する。

 

「中将!!通信繋がりました!」

 

通信オペレーターが叫ぶ。

 

「誰とだ?」

 

通信オペレーターはあえて言わず、管制室全体に流す。

 

『こ…ちら……第17…作戦機…隊……残存……3機……帰還…許可を…求む。繰り返…す、帰還許…可を求…む。』

 

ノイズ混じりの通信だが内容はハッキリ聞こえた。

将校達はただ顔を青ざめることしか出来なかった。

 

「たった3機……ほぼ壊滅じゃないか!!」

 

たった1人だけなんとか声を出したその言葉は全員の心情と一致していた。

 

「くっ……どうすれば……」

 

将校の1人が本音を漏らす。

その声に反応するかのように通信オペレーターが叫んだ!

 

「作戦司令!」

 

「今度はなんだ!」

 

「総司令部を介してWMTAM軍より伝達です。」

 

「何……?」

 

作戦計画263の最高指揮官にして陸軍中将のこの男は思わず眉をつり上げる。

 

「なんと言ってきた?」

 

「はっ、それが……インドシナ半島地域において超重光線級が確認されたため、この撃破の為に統括軍、魔法協会、西側連合軍、アメリカ魔法軍、日本国陸上自衛隊の合同部隊の特殊任務隊を増援として差し向ける。丁重に扱えとの事です。」

 

「……特殊任務隊……」

 

「従来通りの倒し方が効かないから……別の倒し方か……。なるほどな。」

 

 

その時、司令部に急報が届く。

 

『こちら、ドンホイ外周観測班!落着ユニット周辺に未確認個体を確認!!何だ……あれは……触手……大量の触手を生やす巨大な個体が……あ…あっ、あ!!……』

 

「どうした!」

 

「……戦車砲弾を簡単に弾いて、戦車をひっくり返しました……。正直言ってやばい予感がします……。」

 

彼の目には戦車を簡単にひっくりかえした後、その車体裏を貫き爆散させた光景だった。

 

 

後に『レッドウォルフ』と並び【国防総省遭遇回避推奨個体情報】(DRI)に登録されることとなる個体、『ビオランテ』との初激突だった。




『ビオランテ』はGODZILLAアニメの前史にあたるGODZILLA怪獣黙示録の方を参考にしています、本来の方はほとんど知らないので……ごめんなさいm(_ _)m

※次回
chapter21 鮮血の舞


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chapter21 鮮血の舞

お久しぶりです
これほど待たせてしまって申し訳ございません。

また、この話には閲覧注意と言わせていただきます
結構、人が死ぬ描写を詳しく書いてしまったので


_西暦2026年5月25日 日本時間午前9時_

ー クアンビン省ドンホイ近郊 ー

 

数両のT-90戦車が最高速度である時速65㎞近いスピードで後退し、砲塔は後ろに向け、125㎜滑腔砲を放つ。

その傍をBMP-2歩兵戦闘車が30㎜機関砲2A42を後方に向けて連射しながら駆ける。

 

『こちら、ラヴシ中隊ラヴシ04、ラヴシ中隊は私の1両を残し全滅!撤退を行いたいが、駆動系に損傷を負い逃げられない……ブチッ』

 

「聞きたくはないな」

 

人が化け物に食われる時の悲鳴は、と言いかけた車長はため息を吐きハッチから顔を出す。

 

「化け物め……」

 

彼は双眼鏡で後ろを覗いていると、視界の右端で起こっていることに気づく。

 

(まずいっ!)

 

若干スタックしてしまった1両のT-90戦車に要撃(グラップラー)級の触腕が振り下ろされた。

後部のエンジンブロックは勿論、履帯を回転させる駆動輪が破壊され、二度と走れないようになってしまう。

そして戦車(タンク)級が纏わりつき、逃げようとする乗員も砲塔内でビクついていた乗員も全て奴らに捕食された。

 

「くっそ!来るなってんだよ!」

 

車長が大声を上げる。

 

「イカノル中隊!全車てぇっ!!」

 

無線機で言い放つと共に、中隊定数よりは減っているが6両のT-90戦車から125㎜滑腔砲が放たれる。

 

6発の内3発は接近する戦車級に命中弾を叩き出したが、残り3発は掠るのみだった。

その効果に車長は思わず顔をしかめる。

 

超高精度の行進間射撃技術は既に存在はしていた。しかし、それは()()()()()()()()()()為、ベトナムの様な国には導入が難しかった。

さらに、行進間射撃というのは全速では無く時速30㎞程度で行う為、時速65㎞近いスピードでの行進間射撃は考えられていない。

 

また、車長を悩ましているのにはもう一つの理由があった。

それは段々と中隊がBETAに追いつかれているという事だった。

その理由は単純明快、T-90戦車が最高速度時速65㎞の上に常時全速はエンジンの故障に繋がりかねないのに対し、戦車級は突撃級には劣るものの、常時時速80㎞以上のスピードで向かってくる。

 

航空隊の援護が期待できない現状、砲兵部隊の制圧攻撃は光線級に迎撃され効果は薄く、戦車部隊だけで抗う事はほぼ不可能だった。

また、操縦手もそろそろ限界である事を彼は見抜いていた。

既に数時間ぐらい激しい機動の繰り返しで休息は無く、もはや疲労困憊であることは誰の目にも明らかだった。

 

そして、彼が車長を務めるT-90戦車/イカノル01にも戦車級が迫る。

彼は腰の拳銃を取り出し、思いっきり睨みつけて拳銃を撃ち始めた。醜悪な見た目に怯えそうになるのを抑え、根気だけでトリガーを引いていた。

グロック43拳銃より9㎜パラベラム弾を連続で放つも、足を止めることは出来ず、戦車級が手と思われる部分を車体後部に手を掛けた……

 

その時

 

 

"奴"は真っ二つに割れた。

 

 

「何が起こった……?」

 

 

車長は血飛沫を浴びながら、困惑した表情を浮かべる。

 

そして、1人の少女が眩しく光る刀を握りながら、車両後部に降り立つ。

 

「……今度は間に合って良かった」

 

「あなたは?」

 

「……魔法協会日本支部所属、桜井(さくらい)(ゆめ)二等魔法士。」

 

車長は怪訝な表情で桜井夢と名乗った少女を見つめる。

 

「ベトナム陸軍機甲科イカノル中隊中隊長リー・ヴァン・ダット少佐だ。援軍か?」

 

「ええ。でも、私だけと思ったのは大間違い」

 

夢は髪…では無く髪に隠されている通信機に触れ言葉を発する。

 

「特殊任務隊……来て」

 

その言葉と同時に、光る刀を横に一閃して、よって生まれた巨大な光の波動がBETA数体を上下に裂く。

 

さらに、その後続のBETA群は、左側方より超高速で向かってきた大量の砲弾によって葬り去られる。

 

This is Japan Army.(こちらは日本国陸上自衛隊である。) Repeat, this is Japan Army.(繰り返す、こちらは日本国陸上自衛隊である)

 

ダットは癖の強い英語に思わずニヤける。

 

BETA梯団の左側方に展開していた部隊、それは日本国陸上自衛隊特殊連合作戦群第2戦車大隊、そしてアメリカ魔法軍陸戦群第11機甲大隊だった。

 

「……ここは我らの出る幕はなさそうだ。全車後退を再開する!」

 

イカノル中隊全車が再び履帯を回転させ、後退を開始する。

夢は一度跳躍してからゆっくりと着地し、イカノル中隊が後退し終えた後に、戦闘魔法士、陸戦魔導師、航空魔導師部隊、統括軍第12作戦群が降り立つ。

その中にはセリア率いる統括軍第6中隊の姿もあった。

 

 

植物型大型個体は南方の残存陸上部隊を蹴散らした後に、再び北方へと触手を足のように使い進軍する。大量の触手を絡ませ砲身の様に形成し、1つの大きなプラズマ弾を放つ。

 

それは夢の光る刀に一刀両断にされ、全く被害を与えることは出来ない。

 

「無駄」

 

だが、その吐き捨てる様に呟いた一言に反応したのか、史上最大の光線属種はアメリカ海軍部隊への砲撃を止め、9つの照射膜による極大出力照射を特殊任務隊へと撃ち放った。

 

その光線(ビーム)は夢の刀に阻まれ、強烈な閃光を発した。

 

「っ!?」

 

その眩しすぎる閃光に目を開けていられない彼女は目を閉じる。

だが、光線が消え彼女が目を開けるまでの間の一瞬の隙を突き、植物型個体は触手を伸ばしユメの体を貫く。

 

「かはっ…」

 

彼女の口から血が吹き出すが、植物型個体はさらにその触手を使い、奥へと吹き飛ばす。

 

「あ…がっ!?」

 

背中から叩きつけられた彼女は背骨が折れたのを感じ取り激しい痛みに悶えた。

彼女の仲間達がすぐに駆け寄り、無事なのかを確認した。生きている事が分かると、仲間達は目に涙を浮かべながら、良かった、とそれぞれが口にした。

彼女は痛みに苦しみながらも言葉を紡ぐ。

 

「ご…めん……こんな事しか出来なかった」

 

「そんな事ないっ、これでも十分だよっ!」

 

夢はありがとう、と口にして仲間達に運ばれていった。

 

超重光線級は戦力外となった夢に興味を失くし、踵を返して、米艦隊への攻撃を再開した。

 

 

「……『ビオランテ』か……?」

 

「ん?なんだそのビ何とかというのは?」

 

「あ、いえ中隊長、私の故郷は元々カナダの北辺りなんですが、そこで伝わる伝説があって、『人がその力に奢るとき、自然の主は人を裂く』という伝承で、ある絵にはあいつのような姿だったんです……まあ、伝説に過ぎないでしょうけど」

 

『それがビオランテという物か……?』

 

第11機甲大隊長が中隊長車に通信を入れたことに驚いた彼は思わず声を上げた。

 

「だ、大隊長!?」

 

『ふむ、いい呼び名を提供してくれたな、礼を言う』

 

_第11機甲大隊長車_

 

「奴の呼称を『ビオランテ』とする!日本戦車隊にも伝えろ!」

 

『目標ビオランテ!!射撃用意!』

 

第11機甲大隊と第2戦車大隊の車両は一斉に砲塔を旋回、ビオランテへと照準を向ける。

 

『砲撃…開始!FIRE(ファイア)!!』

 

砲撃開始の一声で引き金が引かれる。

M1A4/Fは青白く輝きながら120㎜APFSDS弾を超音速で放ち、90式S型改は圧縮エネルギー弾を撃ちはなった。

ビオランテに爆炎が生じ、幾つかの触手が吹き飛ばされた。

 

触手の一部が剥がれた事で内部が若干見えるようになった。

しかし、すぐに触手が再生され、その部分は隠れてしまった。

更に、初めてダメージを与えられた事でビオランテ自体に変化が現れる。

今まで這うようにしか移動してこなかったが、脚となる歩行専用の太い触手が大量に生え、明確な移動形態を持った。

内部を覆う触手の壁は分厚くなり、その内部にも変化が現れた。

内部が変化しながら隆起し、それは低空で滞空していたヘリ部隊によって視認された。

 

「黒…薔薇……?」

 

触手で形作られた奇妙な黒い薔薇は見た者に恐怖を感じさせた。

それは戦域共有データリンクによって全部隊に共有され、少なくともその場にいる全ての兵士に認知された。

そして、【ビオランテ】という伝説を知っていた兵士は狼狽した。

 

「な!?……どういう事だっ!……なぜ……()()()()に変化するんだ!?」

「伝説通り?」

 

「……『人に真の捌きを下す時、黒い薔薇が姿を現す』という物です……しかし、なぜ……?」

 

「奴らは伝説や神話の生物からこのような化け物を作り出すのかもしれんな……」

 

『全射、照準修正!一斉射撃用意!FIRE(ファイア)!!』

 

砲撃は継続されていたが、照準を黒い薔薇に修正され、再び発射命令が下る。

60両以上の車輌から砲弾が放たれ……

 

触手の壁に防がれた。

 

さらに、その壁は弾き飛ばされることは無く砲弾の直撃に耐えていた。

 

さらに、突如として地面が割れる。

その小さな割れ目からは大量の触手が現れ、戦車隊に襲いかかった。

 

『チッ、全車両後退開始!M1はシールド展開、90式は可変機構を起動しろ!後退中も砲撃を欠くな!』

 

第11機甲大隊長がとっさの判断で命じる。

M1A4/FエイブラムスIVは車輌を覆う蒼白い膜を展開し、90式S型改は4つの角より脚のようなモジュールを展開し4脚戦車と化し元々の底面より210㎜砲が姿を現した。

蒼白い膜は触手を弾き返し、90式S型改は4脚歩行機構による素早い跳躍で躱す。

 

その直後、大量の触手がビオランテより離れている隙に一斉射撃を放った。

だが、寸前で防がれ触手の壁の内部にダメージを与える事は叶わなかった。

 

「……戦車部隊だけであれを倒す事は不可能か……」

 

第11機甲大隊長はそう呟き、特殊任務隊への支援要請を行った。

特殊任務隊は支援要請を受け入れ、加勢する。

 

「突撃!!」

 

航空魔導師部隊が一斉に飛び立ち、陸戦魔導師部隊は地上を疾走する。

戦闘魔法士隊と統括軍第12作戦群はその支援へと入った。

 

「行くよっ!ついてきて!」

 

航空魔導師部隊は加速魔法を展開し、一気に亜音速に加速しビオランテへと迫ろうとする。

だが、その行為に敏感に反応したのは"超重光線級"であった。

米艦隊への砲撃を一時的にやめ、インターバル0.2秒のガトリング式照射を放つ。

 

"彼女ら"は防ぎようがなかった。

航空魔導師は文字通り空を飛ぶ為、速度を重視していた。

防御系魔法も光線級からの光線照射を防げる程度しかなかった。

そもそも重光線級群の一斉射程度なら回避出来る高速性を持っていた為、まさか数メートルの隙間が無い程の照射が来るとは思わず、呆然とした。

 

「ひっ……」

 

自分が焼き殺される未来が見えた彼女は目を閉じる。

だが、いつまでもその未来は来なかった。

 

「私達で防ぐ!行って!」

 

目に飛び込んで来たのは統括軍の兵士達が跳躍して空中にて大規模シールド魔法を展開して防いでいた光景だった。

彼女は一瞬呆然としつつ頷き、自分達の飛行速度を上げる。

 

再び超重光線級がガトリング照射を放つも、戦闘魔法士も加わった防御シールドの万全な体勢で完璧に防がれた。

 

後方の憂いが無くなったことで、航空魔導師部隊はビオランテに突撃、前衛は腕についていたアームを変形させた剣を持ち、後衛は右手を前に掲げレーザー魔法の用意をする。

 

「ハァァーー!!」

 

ある航空魔導師の少女が斬りかかり触手数本を裁断し、レーザー魔法の青い光の筋が触手を焼き切っていく。

いかに触手の壁が戦車砲を防ぐ程度であったとしても、数本程度の触手なら斬るには容易いものだった。

だが、ビオランテは攻撃を受けた事で戦闘態勢に入り、狩りを始めた。

 

目の前の航空魔導師の少女が真っ先に狙われ、1本の触手が回避する間もなく少女の腹を服ごと突き刺した。

 

「がぁっ!?」

 

無理やり腹の奥まで刺された事で皮膚だけでなく様々な臓器が悲鳴を上げ、とてつもない激痛が走る。

本能的に引き抜こうと試みるが、触手が瞬間的に変形し魚の毒針のような返と先端に無数の棘が付き硬質化して阻害する。1㎝ずつ引き抜く毎に傷口を抉る棘や返による激しい痛みが彼女を襲い、ゴポッという音ともに溢れてくる大量の血が腹から流れ落ちる。

 

(……何コレ……早くっ…抜けてっ!)

 

必死に抜こうとするが返や棘が抜く動きを阻害、さらに1㎝引き抜く毎に激しい痛みに襲われ、段々と腕の動作が緩慢な物となっていった。

 

「……はあ……はあ……、もう……ヤダ……(……もう無理、痛すぎる……)」

 

その最中、仲間達は彼女を救おうと一生懸命に接近を試みていたが、無警戒な先の状況とは異なりビオランテや少女の周りに触手を広げ、防衛に徹していた。

少女が自身の腹に突き刺さる触手を抜こうとせず掴んだままな事を感じ取ったビオランテは突き刺さる触手の先端から幾つもの注射針の様な細長い触手を生やし、腹の内部の各所に謎の液体を次々と注入させていく。

 

「……ぐぅっ!?」

 

その直後、突如として腹が膨れ上がり、妊婦の様な体型へと変貌した。さらにその強引な変形によって腹部が悲鳴を上げ激しい痛みをもたらした。

 

「え……な、に、こ、れ……」

 

彼女は自分の変わってしまった体に絶望の瞳を向ける。

顔をさらに多くの水滴で濡らしていった。

 

ビオランテは突き刺した触手の先端にてエネルギーの充填を開始した。

彼女は違和感を感じ再び引き抜こうとするが、返と棘は健在であり、激しい痛みと傷を生むだけだった。

その内、体内にて光球が出来上がり、皮膚とも接触した。

 

「あぢぃっ!?」

 

そのプラズマエネルギーは何千度まで温度が達しており、彼女にとって地獄でしかなかった。

さらに、傷口からは未だに大量の血が流れ続けており、失血によって意識が薄まり触手から手を離す。

そして遂に触手からプラズマ弾を発射、少女の背中が血飛沫を上げながら引き裂かれ、そのまま飛翔したプラズマ弾は後方の別の少女に直撃しその命を消し飛ばした。

彼女自身は仲間の命を気にする余裕は無く、

全ての臓器を破壊されており、ビオランテは突き刺していた触手を勢いよく引き抜き、大量の血が吹き出した。

 

(……ごめん)

 

小さく呟くと同時に彼女の意識は消えた。

 

その時、

 

ギュアァァァァァ!!

 

ビオランテが咆えた。

 

ビオランテには知性が存在し、女を苦しませながら殺す楽しさを知ってしまった化け物に航空魔導師部隊は手も足も出なかった。

 

「痛い痛い痛いっ、イギィィィィ!?!?」

 

ある少女は四肢に触手が巻き付き、四肢を限界以上に引っ張られ身体を引きちぎられた。

 

「が、ゴボッ……コヒュっ…ヒュ─」

 

またある少女は肺と心臓を太く鋭い触手で破壊され、失血と窒息状態に苦しみ、

 

「いぎゃああ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

別の少女は体全体に触手が巻き付けられ、その触手から高電圧の電流が流れ変色し焦げた匂いがするまで流し続けられた。

 

さらに、仲間を助けようとレーザー魔法を放った少女にキレたのか、回避不能な速度で触手を飛ばし脳を貫き、その上引き裂いて即死させた。

 

「許せないっ……がっ!?え─」

 

航空魔導師部隊のおよそ半数の命を散らしたビオランテは地上部隊にも牙を向ける。

 

ビオランテが最初に狙ったのは陸戦魔導師部隊だった。

陸戦魔導師は個人単体での高火力が特徴的であり、軽装部隊が装着する機動戦備はそれを補う素早い陣地転換速度を有していた。その反面、防御力は低かった。

それが災いし陸戦魔導師部隊はビオランテの餌食となった。(重砲戦備を装着する重装部隊もいたが少数であった。)

 

幸い陸戦魔導師部隊は航空魔導師部隊の末路を見ていた為に、"対応"は可能だった。

だが、どんなに粉砕しても再生し超音速で突っ込んでくる触手、航空魔導師の様な速度的アドバンテージを陸戦魔導師は持たない事により、徐々に追い詰められていった。

 

「くそがぁぁぁ!!」

 

時速120㎞近いスピードで戦場を()()回るある男はそれを超える速度で追いついてくる触手に恐怖の余り叫んだ、その数秒後、男の腹を貫き、衝撃波で体を粉砕した。

 

実戦経験が少ない若い男達や臆病な若女達は大量の触手に恐怖で足がすくんで立ち上がれ無くなり、互いに涙目で戦意を喪失し怯えていた。

だが、ビオランテはそういう者達にも容赦はしなかった。

彼らに触手を絡ませた直後、高空まで吊り上げ一気に叩き落とした

「─っ!!!」

 

彼らは声にならない悲鳴を上げる。

その衝撃は凄まじく、骨は粉砕され内蔵は破裂し筋肉や神経はブチ切れた。

もはら回復の見込みがない程、身体が壊滅的ダメージを負い多くの者が首の骨を折るなどして即死した。

それでも瀕死ながら生きている者にビオランテは男女の関係無しに苦しみを与える

即死をもたらさない程度に、何回も腹に突き刺したり、何回も触手で殴打を加え、嬲っていった。

 

「がっ……ぎ……もう死なせてっ!」

 

死を懇願したその女性は先程叩き落とされたせいで骨が色んな臓器を串刺しにしており、大量の血を吐血していた。

腹や胸、足に強烈な殴打をくらい、折れた骨同士が軋み、殴打した箇所は赤黒く変色していた。

だが、化け物にそんな声が聞こえるはずもなく、その体をさらに傷つけ嬲っていく。

 

しかし、第11機甲大隊及び第2戦車大隊、統括軍第12作戦群、戦闘魔法士隊及び残存した航空魔導師部隊からの妨害を受け、嬲るのが煩わしくなり、脳に突き刺して終わらせた。

結果的に陸戦魔導師部隊は重装部隊と1部の軽装部隊を除き全滅した。

 

「くそっ!間に合わなかったか……」

 

大隊指揮車両に乗車している第11機甲大隊長は指の肉に爪の跡をつける程拳を固く握りしめていた。

 

「……何なのだ、あの化け物は!傷をつけれたと思ったら……いつの間にか航空魔導師部隊と陸戦魔導師部隊が半壊しているっ……」

 

壮年のこの男の顔には若い男女を多く死なせてしまった悔しさが現れていた。

 

「大隊長っ!」

 

男の右の方に座る女性オペレーターが大隊長に顔を青ざめながら呼んだ。

 

「統括軍第12作戦群の方に大量の触手が接近しています!」

 

「すぐに迎撃するように伝えろ!」

 

「…伝達間に合いませんっ!」

 

「!!!」

 

その瞬間、男は顔をしかめた。

 

大量の触手は束なって大きな触手となり、統括軍が展開している付近の地面を叩き、巨大な衝撃波を起こし大きな土煙を発生させた。

さらに、束が分かれ打撃型の触手の状態で数人の少女に殴りかかった。

その1人にセリア・フランネス大尉がいた。

 

「……!」

 

高速で向かってくる触手は途中でシールドにぶつかるも相殺するには至らず、突破しセリアの腹に直撃した。

腹は大きく凹み、想像を絶する痛みとともに衝撃波で後ろへ吹っ飛ばされた。

 

「ゴホッゲホッ!…カハッ」

 

吹き飛ばされた彼女は一時的に呼吸困難に陥り咳き込んだ。

さらに内蔵を圧迫された影響か咳と共に血も吐き出す。

 

「喉の奥が苦しい……」

 

一息ついたのもつかぬ間、触手が彼女の首に巻き付き思いっ切り締め付け、体を吊り上げる。

 

「グッ!?」

 

締め付けは段々と強くなり、セリアは必死に引き離そうとするが触手は剥がれない。

(息がっ……)

 

徐々に呼吸が苦しくなり痛みとは反対に意識も朦朧としてくる。

その中で微かに自分の妹の顔が見えた。

 

(クリアぁっ……!)

 

その時、何故か力が湧き再び全力で触手を引き剥がしにかかる。

 

「(あああああ)あああああっ!!」

 

結果、引き剥がすことに成功し、セリアは引き剥がした触手を銀色の元素変換射線装置(トランス・ガン)()()させる。

 

「まだ死ねないっ!遺書だって書き終えていないし、クリアと話したい事がまだいっぱいあるっ!だから、まだ死ぬ訳には行かないっ!」

 

少女はどんなに嬲られても絶対に死なないという抗う意志を叫び、口についていた血を拭った。

先程触手を振り払った時に尻もちをついていたため、セリアはゆっくりと立ち上がる。

そして、〈トランス・ガン〉を両手で持ち前方の大量の触手に向ける。

セリアは銃のモードをspread mode(拡散モード)切り替えると、照準器部分に文字が投影され、同時に多数の触手がロックオンされる。

 

「……発射」

 

引き金を引く。

発射音が鳴らない代わりに"光"が放たれ、それに当たった触手は次々と元素に変換された。

数多くの触手が消え、視界が開ける。

 

「……!」

 

セリアはかなり遠方に見つけた唯1人で戦う他部隊の少女の姿を視界に映した。

その少女には多数の触手が囲んでおり、絶え間なく少女に襲いかかっていた。

セリアは出来る限り援護しようと走る。だが、その意思を阻むかのように触手の壁が前方に形作られ進路を塞ぐ。

 

「くっ!小賢しいっ!」

 

トランス・ガンで次々と消滅させても壁の厚みは増えていく一方でなかなか前進出来なかった。

 

(まさか……あの子を確実に殺す為……?……させない……私が身代わりになってもあの子を助けるっ!)

 

セリアは咄嗟にwide range mode(広範囲モード)に切り替え、トランス・ガンを撃ちはなった。

そして、視界が開かれ、その光景に……

 

絶句した。

 

数分前、その少女は自分の部隊が全員触手の餌食になり、たった1人で戦っていた。

自分の身長ぐらいはある大剣を軽快に振り回し、囲まれつつも決して寄せ付けなかった。

 

「くそっ……多すぎるっ…『空間凍結(フリージング・スペース)』!」

 

その一声で周囲の気温が絶対零度まで下がり、襲いかかってきていた大量の触手は凍りつき動かなくなる。

周りを見渡し、何も動く者が無いことを確認した少女は連戦続きの体を落ち着かせる。

 

その直後、1本の触手が彼女の背後より迫り、背中を突き胃を貫いた。

 

「…え……?」

 

背中に違和感と痛みを覚え、腹を思わず見た。

胃を貫いた触手は腹にまで達しており、その皮を突き破って先端を出し、その傷口から血が溢れ出していた。

さらに呼吸する度に口から血が漏れだし、口に触れていた手に生暖かい赤い液体が付着した。

それを見た少女は一気に死の恐怖に怯えた。

 

「なに…これ、なにこれ……なにこれなにこれなにこれ……わ、私……死ぬの……?いや……いやいやだいやだいやだ……嫌だよぉぅっ!!」

 

呪文のように言葉を紡ぎ、恐怖に固まる少女、しかしそんな状態であるこそ、ビオランテにとって絶好の標的だった。

 

再び静かに背後より2本の触手が近づき、だが先程とは異なり乱暴に背中にめり込み背骨を破壊しながら迅速に体内へと侵入、肺と心臓を貫いた。

人間の体感でわずか数秒の出来事であったが、その激痛と体内に侵入する際の激痛で首が限界まで上にねじ曲がる。

 

「がっ……は……!」

 

心臓という大量の血が流れている臓器が貫かれた事で口にまで逆流し大量に血がゴボッと噴き出す。

「か……(声が……出ない……?嫌だ……死にたくない……っ)」

 

少女は貧血と痛みから緩慢な動きへとなっていたが、落とした武器を持ち上げ《b》抗う《b》意志を見せた。

だが、ビオランテにとって、()()()()()()()()()()()()()()()()ことこそ、嬲りがいのあるものだった。

ビオランテは自らが有する触手を嬲る為と妨害する者を阻む為だけに用いた。

 

少女の左腕を引き裂き、右手首を斬り落とし、右肩の骨を1本1本押し潰す。

 

「あ"……!」

 

少女にはとてつもない激痛が走り、拾い上げた武器を落としてしまう。

ビオランテは追撃をかまし、体内へと侵入していた触手であらゆる内臓を引き裂いていく。

少女の口より鮮血が吹き出し、意識はさらに朦朧としてくる。

さらにビオランテは首の左部分を切り裂いた。

首から大量の鮮血が流れ出るだけではなくそれ以来少女の左半身は感覚が無くなり動かなくなった。

意識が朦朧としている少女はセリアがこちらに駆けてくるのを視界に映したその瞬間、一時的に意識をハッキリさせ、声が出ないのを無理強いし、ただひたすら囁いた。

 

「タ…………ス…………ケ…………テ…」

 

しかし、その言葉は続かなかった。

少女を嬲るのを飽きたビオランテが少女の首を斬り落としたからであった。

 

セリアは少女の口元をしっかりと見ていた。はっきりと「助けて」と伝えようとしているのが見えた。

だからこそ、目前で助けられなかったことを悔やんだ。

 

「ごめんっ……ごめんね……助けられなくて……っごめん……」

 

手を地面に付き、セリアは泣き出した。

涙は目より直接地面に落ちていき、濡らしていく。

 

そんな様子のセリアに隙ありと見たビオランテは音速で飛翔する1本の触手を差し向けた。

だが、セリアはトランス・ガンでその触手を弾いた。

そして、Shot mode(散弾モード)を選択し、大量の触手に照準を向け、撃ちはなった。

セリアは何も言葉を発さず、ただ撃ち続けた。

結果、セリアの周りにいた触手は全て消滅。

セリアは少女の触手に嬲られて中身がグチャグチャになった遺体を抱きかかえて、

 

「ごめん……」

 

と一言だけ発して黙った。

十秒程度経った後、遺体をゆっくりと下ろし切断された首も遺体の元に寄せる。

セリアはそれにトランス・ガンを向け、Irradiation mode(照射モード)を選択する。

 

「安らかに……眠って……」

 

そう呟いた後トリガーを引く。

少女の遺体は照射を受け、一瞬にして消滅した。

 

「……合流しようかな」

 

セリアは踵を返し、自分の中隊が展開している場所に駆け戻った。

 

1分ぐらいで駆け戻ったセリアは声を掛けられた。

 

「セリア!」

 

「レナ?」

 

その声の主は中隊の仲間であるレナだった。

 

「セリア……シャーロットちゃんが……っ!」

 

セリアはその言葉に嫌な予感を感じた。

 

「レナ、案内して!」

 

「うん!」

 

少し移動したところに1人横たわる白髪の少女とその周りに3人の少女がいた。

 

「状態はどうなの?」

 

セリアはまず、周りで見守る少女達に聞いた。

 

「致命傷では無いんです、けど額の右に大きな傷を負って、あと腹を貫かれました」

 

白髪の少女(シャーロット)は額と腹に包帯と応急パッチを貼り応急処置は済ましていた。しかし、血は滲み出て、苦痛により顔が苦悶の表情をしていた。

 

「シャーロット……」

 

「……せ、セリアさん……」

 

「安静にして」

 

「私……やられちゃいました……得意の雷撃が触手には効果が無くて……その時点で下がるべきでしたよね……」

 

セリアはシャーロットが自分は役立たずという思ってる事に気づいた。

だから、セリアは彼女を抱きしめた。

 

「セリア、さん?」

 

「下がるべきとか、進むべきとかさ……私にわかると思う?私には分かんない……だからさ、シャーロットが行った事も最善の行動だったかもしれないよ」

 

「……そうですよね……こんなんで悩んでたら……悩みなんて無くならないですから……」

 

「じゃあ、少し安静にしていて」

 

「はい……!」

 

「……ところで他のみんなは?」

 

そうセリアは聞くとレナが答えた。

 

「先に撤退させたよ。シャーロットちゃんも帰らせるべきだったんだけど、一緒に居たいと何度も言うから……仕方なくってところ」

 

「レナ、私達も退くよ。こんな所に居てもいずれビオランテに遊ばれるだけだから」

 

全員が頷いた。

 

「……総員撤退!」

 

「了解!」

 

統括軍第6中隊も遂に撤退を開始し、その報せはすぐに第11機甲大隊司令部へと伝わった。

 

『……第6中隊総員、撤退します』

 

「そうか……了解した。」

 

通信を終えると、第11機甲大隊長は頭を抱えた。

 

(こんな作戦、本当に必要だったのか……?大勢の命が失われたこの戦いにっ……!)

 

大隊長は南シナ海に展開する第9艦隊第32任務部隊のナカハラ海軍中将へ通信を繋げた。

 

『まさか、魔法域通信を飛ばしてくるとはな』

 

「我々はアメリカ魔法軍だ、当然だろう」

 

『で……負けたのか?』

 

「……ああ、陸戦では我々はビオランテに負けた。最後の希望は質量弾攻撃のみよ」

 

『あまり質量弾攻撃という手は使いたくなかったのだがな』

 

「この状況じゃ仕方あるまい、陸戦魔導師、航空魔導師、統括軍第12作戦群で被害が大きい、戦闘魔法士のみ軽かったが……」

 

『分かった。質量弾攻撃の要請はこちらで行う、ベトナム人民軍への説得はそちらで頼めるか?』

 

「了解した」

 

 

その後、アメリカ合衆国国防総省は質量弾攻撃の行使を承認、またベトナム人民軍も了承し、ダナン市に退避命令が発令された。

 

ー 地球・月間ラグランジュ点 ー

 

アメリカ合衆国宇宙軍戦略軍事ステーション衛星『カリフォルニア』

 

「全基砲撃準備!」

 

カリフォルニアの司令室の最も高い位置にいる男が声を上げる。

 

オペレーターらがその命令を聞き、コンソールを叩き始めた。それに同調し、外壁の40.6㎝3連装量子加速榴弾砲12基が起動し、ベトナム共和国クアンチ省ドンハ市に照準を向ける。

さらに6連ミサイル発射サイロが次々と開き実体プラズマ弾頭及び量子弾頭、光子弾頭を次々と装填する。

 

「しかし、再び化け物に撃つことがあるとはな……」

 

司令官が感慨深く思ってるとオペレーターが声を上げる。

 

「全砲塔、全サイロ発射準備完了、超重光線級及びビオランテ、建設中のハイヴへの照準修正も完了しています!」

 

「全基発射せよ!」

 

号令がかかると同時に、多数のサイロより弾頭が次々に射出され、40.6㎝全門より量子エネルギーが発射された。

 

先に発射されたシールド専用弾頭によって超重光線級からの照射は全て無効化され、多数の弾頭が着弾、量子エネルギーも次々とビオランテや超重光線級、ハイヴに命中する。

 

約5分間の攻撃で超重光線級及びビオランテは撃破され、ハイヴは中心部分まで焼き焦がされ、結果的にベトナム方面のBETAは1匹残らず撃破され、殲滅に成功した。




次回
chapter22 極北の勇戦


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chapter22 極北の勇戦(1)

恐らく2話程度で終わると思いますが、保険として(1)とさせていただきました。


_西暦2026年6月1日_

新ソビエト連邦首都モスクワ クレムリン

国防省統括戦略局

 

軍事上の国家戦略を司るその場所のある一室には複数の人影がいた。

セルゲイ・ザルコフ大統領以下の官僚達や、新ソビエト連邦軍を統率する軍のトップらがそこにはいた。

 

「これが、フリッツ大統領のホットラインによる連絡と、ペンタゴン(国防総省)から連邦軍に送られた情報だ」

 

ザルコフの言葉に疑問を浮かべる官僚ら。

 

「ちょっと待って下さい、なぜ連邦軍宛に?」

 

「分からんが、恐らく旧ロシア連邦軍への送信コードが残っていた、だから使ったんだろう。そうだな?レスチェンコ中将」

 

ザルコフは連邦軍のNO.3に当たるレスチェンコ中将に振り向く。

レスチェンコ中将は頷き、話を進める。

 

「はい、その通りです。大統領に代わって話を続けます。ペンタゴンより送られた情報によると、シュリーナガル、カシュガル、そしてノヴィ・ウレンゴイ、この3つのハイヴとは別に……いえ、この3ハイヴを指揮する者がいることが判明しました。戦術研究局でも議論されていましたが、インドにおけるBETAの移動ルート、大東亜のBETAの行動、そして我が新ソ連に侵攻するBETAの行動は最近、本能的行動ではなく人為的に第三者から指揮を受けているという分析結果に至りました」

 

「聞いていないが?」

 

レスチェンコ中将の発言に、ザルコフは眉を顰めつつ尋ねる。

それに、レスチェンコ中将は淡々と答えた。

 

「その時は、あの騒乱があったもので」

 

「そうか……話を続けてくれ」

 

「はっ」

 

レスチェンコ中将は頷くと、机にある電子モニターを起動して、モニターをなぞってロシア北部を映す。

 

「ペンタゴンも同じ分析に至っており、さらにペンタゴンはBETAを統率する指揮所の位置をはっきりさせています。サハ共和国ティクシ、『大侵略』前まで北極海に面する港町として利用されてきた街です」

 

「確か、その『大侵略』で空軍の飛行場や滑走路がズタズタに破壊されてましたな、以前被害の視察で訪れたことがありますし」

 

一人の官僚が口を開く。

 

「そうだ。そのティクシだが、ペンタゴン含めたアメリカは生存者がいないとしている。これがその"証拠"だそうだ」

 

ザルコフは1枚の印刷された写真を机の上に出す。

その写真には最近取られたと思われるティクシの街が映っていた。

 

「これはっ!?、ティクシの街が完全に破壊されてるだと……!」

 

「港もだ!」

 

官僚らは口々に感想を漏らす。

 

「そして、我々もティクシの街に強行偵察を行った。その写真も同じような状況だ」

 

と、同じ街並みを映した写真を出す。

 

「うぅむ……」

 

官僚らは言葉を失うが、その内の1人はザルコフに話しかける。

 

「大統領、これは……BETAを統率する者によってティクシの住民が皆殺しにされたということですか……?」

 

「……そうだ。話は変わるが、今回の作戦はアメリカ含むWMTAM軍との共同作戦だ。アメリカはティクシにある小規模ハイヴと唯一崩壊した様子もみられない空港施設へ急襲を図っているらしく、我々には周辺のBETAへの陽動攻撃及び殲滅を要請してきた」

 

ザルコフは話を切り、周囲の官僚や士官の様子を見る。

 

「大統領、それで返答は?」

 

「検討する、とだけ言っている」

 

「……」

 

官僚達はアメリカからの要請に不満を表情に出しながら、沈黙する。

1部の官僚は言い淀みながらも話す。

 

「……大統領、アメリカは我々に……囮をさせるのですか……」

 

「そう……思うだろうな。だが、我が新ソ連がBETAに大地を蹂躙されているのは看過できないし、連邦軍としてはBETAの動きを抑制できれば幸いと思っているのだろう?」

 

「はっ……」

 

レスチェンコ中将は頷く。

 

「私は要請を受け入れる。連邦軍は地上部隊の編成を進めてくれ」

 

「既に完了しています」

 

レスチェンコ中将以下参謀の速い動きにザルコフ大統領は笑みを浮かべる。

 

「速いな……説明してくれ」

 

「はっ。まずはモニターをご覧下さい」

 

レスチェンコ中将はタブレット端末を操作し、正面のモニターに編成図を映し出す。

 

「第4及び第7、第8独立親衛戦車師団を動員します。無論、主力戦車だけで構成している訳ではなく、ロケット砲旅団及び自走榴弾砲が入る砲兵旅団も所属しています。また、アメリカと大東亜の人型兵器に影響を受けて開発された、TN-1重自走機甲60両を実戦投入します」

 

「そうか……それは連邦軍で調整しておいてくれ、私はフリッツ大統領とテレビ電話_」

 

立ち去ろうとしていたザルコフを官僚が声を遮り話しかける。

 

「待って下さい。海上からの攻撃はどうするつもりですか!」

 

その官僚はティクシ周辺の地図を指差し、十分戦艦戦力が展開できる海域があった。

 

「当然派遣するさ。レスチェンコ中将、参謀本部に伝えてくれ、新ソビエト連邦軍法に則り、北方艦隊を派遣しろと」

 

「はっ!」

 

会議は終わり、新ソビエト連邦は初の広域反撃に打って出る。

 

ムルマンスク州 セヴェロモルスク

 

ロシア時代から閉鎖都市とされていたセヴェロモルスクは珍しく騒がしくなっていた。

その理由は明白で、北方艦隊が出撃するからであった。

 

初めに全長450mという破格の大きさを誇る38設計戦列艦の「クレムリン」「ウラジミール」が出港、続けて23設計戦列艦「ソビエツキー・ソユーズ」「ソビエツカヤ・ロシア」「ソビエツカヤ・レーナ」「ソビエツキー・バース」の4隻が130㎝単装砲を誇らしげに掲げ出港する。

戦艦部隊が出港し終えた後、1371型(ザカフカース級)重ミサイル巡洋艦、1144型(キーロフ級)重原子力ミサイル巡洋艦十数隻が続けて出港、最後尾には重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」と1147.5型(ブロナツフ級)重航空母艦数隻が出港する。

 

アルハンゲリスク州 アルハンゲリスク

 

アルハンゲリスクのロシア海軍基地でも、北方艦隊の出撃で騒がしくなっていた。

アルハンゲリスクは北方艦隊の中小艦艇を抱えており、1155型大型対潜艦や22350型・11356型フリゲート、1164.5型(改スラヴァ級)ミサイル巡洋艦等が出港する。

さらに、上空ではユニトヒット・ゴーダフ型航空艦4隻が轟音を上げて、アルハンゲリスクから離れていくのが見える。

 

クラスノヤルスク地方 ボリシェヴィク島

 

その最中で、ティクシに最も近い潜水艦基地からは、958型戦略任務潜水艦5隻が出港。

1番艦「ラプテフ」はその名前の海が面する1つの街に攻撃を加えるべく、同型艦4隻と共に潜水を開始した。

 

アメリカ合衆国バージニア州 ペンタゴン(国防総省)

 

「大統領より新ソ連が作戦案に承諾した事がわかった。現時点での新ソ連の動きは?」

 

レアード長官は隣の士官に尋ねる。

その士官はオペレーターに新しい画面を表示させる。

 

「現在、新ソ連海軍はクレムリン級2隻を含む北方艦隊を出撃させています。また、空中戦艦に相当する艦艇4隻の出撃も確認しています。また、」

 

モニターが別の画面に切り替わる。

 

「陸上でも多数の戦力を動員しており、判明しているだけでも主力戦車4000両以上を動員しています」

 

「何だと……?本当なのか!」

 

「はい」

 

室内に騒めきが起きる。

ヴラニスクシリーズ/T-26は、ペンタゴンの分析によってM1A4/FエイブラムスIVと同等の性能を持つとされており、それを今回の作戦で4000両以上も動員するということ。

その数は新ソ連が文字通りの化け物国家と感じさせるには十分であった。

 

「ま、まあいい。すぐに【オペレーション・ノーザンクロス(極北の十字架作戦)】の準備にかかれ。先のベトナムでの損害も回復しきれていないこの時期の作戦行動だ。慎重に選別しろ」

 

「はっ」

 

_1週間後 6月8日午前11時半_

アメリカ合衆国アラスカ州ウナラスカ アリューシャン列島アマクナック島ダッチハーバー

 

ダッチハーバーに隣接する形で置かれている空軍基地の一会議室では、オペレーション・ノーザンクロスの参加各部隊指揮官が招集されており、その中には統括軍第6中隊長のセリア・フランネスの姿もいた。

 

アメリカ合衆国を盟主とする拡大NATOとWMTAMは世界規模の共同軍事作戦だと謳い、NATO諸国や太平洋機構*1諸国だけではなく、統括軍や魔法協会にも協力を要請した。

この要請に統括軍は軍事組織ということで承諾したが、魔法協会は「我々はあくまで民間人」だとして猛反対した。だが、魔法協会の莫大な運営資金の半分を供与しているのもアメリカであり*2、アメリカの断ち切られるかもしれないという無言の圧力で、魔法協会は渋々承諾していた。

 

その事情を多くは知らない彼らの前に一人の男が現れる。

 

「これより、オペレーション・ノーザンクロスの作戦説明を行います。初めに私の紹介から」

 

現れた男は表情1つ変えずに話を続ける。

 

「NATO軍統合作戦参謀部、在欧アメリカ空軍所属、ハロルド・プリチャード空軍大佐です。また、オペレーション・ノーザンクロスの首席作戦参謀も務めています。

まず始めに、我がアメリカ軍以外の兵士らには感謝を申し上げる」

 

その言葉に、1部の軍人らは動揺を表す。彼らは軍人として当然のように命令に従っただけで感謝されるような事はしていないと思っていた。

 

「では、これより作戦説明を始める。今からは私は余分な敬語を使わないで話すため、そこは理解していただきたい。今回の作戦目標はここ、ティクシ」

 

プリチャード大佐は前置きして話し、室内の正面のモニターを指さす。

モニターにはロシア北部の地図が映されており、作戦目標であるティクシにはマーカーが付けられていた。

 

「我が国は新ソビエト連邦にも協力を要請し、無事受諾され、現在陽動攻撃及びティクシ周辺の安全確保の為、新ソ連軍が行動を開始している。オペレーション・ノーザンクロス発動後、新ソ連はティクシ及びその周辺の安全確保の為、陽動を開始し、我々()()()はその間にティクシへ強行突入する」

 

プリチャード大佐はモニターを別の画像に切り替える。

 

「これはティクシを軍事ステーション「カリフォルニア」から撮ったものだ。ティクシは空港周辺には空港の守りを固めているように、BETAが多数確認されている。また、ハイヴについてだが、北西部にシュリーナガルとは比べるまでもないほどの小規模な物が存在している。ハイヴが小規模な為、敵の本拠地はここでは無いと不安がる士官もいると思うが、我が軍はここを敵の本拠地としている。その理由はこれだ」

 

プリチャード大佐は再びモニターの画像を切り替える。新しく映し出されているこの画像は、先程の画像を空港地域に焦点を絞って拡大したものだった。

 

「これは空港に拡大して撮ったものだが、空港の滑走路や施設周辺にはBETAが確認できておらず、また空港の管制塔及びその付随施設は何事も無かったように健在であるのが確認されてるが、ペンタゴンはここにBETAを指揮する者がいると分析している。我々はここに突入し、BETAを指揮する者を拘束あるいは殺害し、BETA殲滅の第1歩とするのだ!」

 

そう言い切ると、モニターには作戦概要図が映される。

 

「作戦内容だが、大まかに言うと強襲空挺降下だ。対BETAとは違い、対象は()()()()()()()の可能性が高い為、正確に拘束もしくは殺害を行わなければならず、その為の歩兵部隊が必要だ。作戦参加戦力として、歩兵として最も戦闘力が高い統括軍及び、車輌等を相手にすることが多い対戦車部隊を選んでいる」

 

作戦概要図に強襲輸送機からの空挺降下のマークが描かれる。

 

「ただし、その対象に辿り着くまでに対BETA戦闘が頻発する為、機甲部隊も動員する。その輸送方法だが、空挺降下ではMBTは輸送出来ない為、魔法協会の魔法士及び各軍補助魔法師は転移陣の維持を管理し、戦闘魔法師には機甲部隊への随伴を命ずる。機甲部隊についてだが、アメリカ陸軍第108機甲中隊、オーストラリア陸軍第52機甲中隊、日本国陸上自衛隊第11戦車中隊を派遣する。なお、アメリカ陸軍第9戦術中隊及びオーストラリア陸軍第14戦術機甲中隊は、前者は空挺降下で、後者は転移陣によって戦域に派遣する」

 

作戦概要図に機甲部隊のマークも描かれる。

 

「これで以上だ。詳細は戦術データファイルNCを見てくれ。作戦発動は6時間後、ゆっくり休んでくれ」

 

作戦説明が終わり、セリアは自分の中隊の場所に戻る。

 

「みんな聞いて」

 

その言葉に妹のクリアやシャーロット、レナ、ラミ等の少女達が振り向く。

 

「作戦開始は6時間後、用意しといて」

 

セリアの発言にクリアが1番先に返事して姉を気遣う。

 

「了解。お姉ちゃん不安そうにしてるよね?」

 

セリアは正直に頷くと。

 

「大丈夫だよ、みんな、あれだけの戦いを生き抜いてるんだから」

 

「……そうだね」

 

セリアは妹の励ましに笑みを浮かべながら頷いた。

 

新ソビエト連邦 クレムリン

 

「大統領、アメリカ主導のオペレーション・ノーザンクロス(極北の十字架作戦)の発動が6時間後に設定された、と連邦軍参謀本部より連絡がありました」

 

補佐官がザルコフに伝えると、ザルコフは頷く。

 

「そうか……そろそろ攻勢を開始させるべきだな」

 

そう言うと、ザルコフはマイクをマイクを手に取り、連邦軍参謀本部へ命令を伝える。

 

「大統領命令により、作戦を発動する。オペレーション・ノーザンクロス前段作戦、【クレアストクリィヤ(十字架の翼)作戦】を発動せよ、健闘を祈る」

 

北極海・ラプテフ海

ティクシから約50㎞の海上

 

「全艦攻撃用意!」

 

ソビエツキー・ソユーズ級4隻の130㎝超音速単装砲がティクシの方向を向く。

 

「衛星からの誘導砲撃照準、調整完了!発射準備完了!」

 

「第2潜水艦戦隊、第15ミサイル艦師団、攻撃準備完了」

 

報告を聞いた北方艦隊司令官は頷き、

 

Начать атаку!(攻撃を開始せよ!)

 

ミサイル巡洋艦やフリゲートらのVLSが次々と開いて巡航ミサイルを放ち、ソビエツキー・ソユーズ級4隻の130㎝が火を噴く。

また、第2潜水艦戦隊は水中でありながら上部VLSを次々に開放し、水中発射型巡航ミサイルを次々に放つ。

 

当然、光線(レーザー)属種からの迎撃は訪れ、春の北極海沿岸の空を多数の光線が走る。

光線(レーザー)級対策を一切施してない通常のミサイルは次々と撃墜されるが、130㎝超音速砲弾は違った。

4発の130㎝砲弾に一斉に数十体の光線属種の迎撃が到達するも、耐熱対レーザーフィールドを展開しており貫くことは出来ず閃光だけが輝く。

ただ、光線があまりにも殺到する為か、耐熱対レーザーフィールドの表面温度が急上昇していたのは事実であるが。

その()()()を伴い130㎝砲弾は港湾沿いに展開するBETA群に着弾、巨大な爆炎を上げBETAの大量の体液と土煙を舞い上がらせる。

その後、ソビエツキー・ソユーズ級4隻は130㎝砲以外の武装も使用して順次攻撃を開始する。

 

さらに、クレムリン級2隻の56.8㎝3連装荷電粒子砲4基、計24門が一斉に荷電粒子砲を放ち、沿岸部のBETAを一掃する。

 

「同志中将、戦車部隊より通達です」

 

「何と?」

 

北方艦隊司令官は尋ねる。

 

「進路上に多数の要塞(フォート)級を補足。対処は可能だが、対応するのに時間がかかる、との事でした」

 

その報告に北方艦隊司令官は口元を曲げ、笑みを浮かばせる。

 

「なかなか、優勢のようだな。よし、ここはデモンストレーションと行こう。『重力子圧縮砲』発射用意」

 

クレムリン級2隻は荷電粒子砲の砲撃を一旦辞め、ディスクの様な物体を2つ、甲板から出現させる。

2つのディスクは沿岸方向を向き、スパークを放ちながらエネルギーを溜める。

このディスクはどこからエネルギーを供給していると言うと、クレムリン級が展開する量子フィールドから非接触型供給を行っていた。

 

「重力子圧縮砲、発射準備完了。軸線安定!」

 

北方艦隊司令官はその報告に頷き、一言告げる。

 

「発射」

 

2隻分計4基のディスクから赤色の奔流が吐き出され、射線上の要塞級群を消滅させ、周囲のBETAも引き裂いた。

その上で、艦隊からは荷電粒子砲と超音速砲弾、ミサイルの雨が降り注ぎ、上空に展開するユニトヒット・ゴーダフ型航空艦4隻から荷電粒子砲の砲火が降り注ぐ。

 

レナ川東岸10㎞

 

ティクシから西に約40㎞の地点には揚陸支援陸上戦艦から展開されたT-26戦車の大集団が砲兵戦力の支援攻撃の中で進軍している。

自動装填式152㎜滑腔砲が連続斉射され、BETA中型個体集団は次々と吹き飛んでいく。

さらに、部隊後方の同口径荷電粒子砲を装備するT-26より荷電粒子砲が放たれ、BETAが引き裂かれていく。

 

「今更だが、BETAが可哀想に見えてくるわな……」

 

「俺もだ……まあ食われる時は俺らが餌になるんだが」

 

後方からヴォルスク級揚陸支援陸上戦艦の26㎝連装砲2基4門の轟音が響く。

既に光線属種の対応力を超えたこの戦域で、その砲弾を阻む物は無く、BETA集団に突き刺さる。

 

ティクシ空港 管制塔内

 

「新ソ連が動き出したか、ここに向かってくるのか?」

 

フードを被った男が同じような服装の者に尋ねる。

 

「いや……彼らは所詮陽動だろう、恐らくここにはアメリカの連中が向かってくるはずだ」

 

「ラノル……なぜそう考える?」

 

ラノルと呼ばれた男は眉を顰める。

 

「少しは考えろ、イジェス。こちらの手を全て粉砕してきた国だぞ?位置特定程度ならあの国の頭脳(国防総省)ならやってのけるに決まっている」

 

「すまんな、貴様ほど頭は良くないのだ。それで、対応はどうする?」

 

「新ソ連と同調して大規模戦力を投入してきたり、大型爆弾を投下していないのを見ると、恐らく奴らは空挺降下で突入し我々を殺すか捕らえたいのだろう。ベルマン、貴様は瞬時に転移して別任務に当たれ。私とイジェスが殺されたとしても、だ」

 

「は…」

 

「私は相転移術の用意に入る、恐らく戦闘前には間に合わないだろうが、耐えて見せよう……相転移術が完了すれば……こちらの勝ちだ」

 

「ああ」

 

「イジェスは地上の駒たちの指揮をとってくれ。所詮駒だが、歩兵部隊には強力だろう。貴様は敵部隊の強力なやつを仕留めに行くだけでいい」

 

「わかった」

 

「……(恐らく、突入してくるのは、ジャイプールとガンジスに来た連中だろう、あの生き残り具合は人の比ではない……だが、貴様らの命はここで終わらせてやろう)」

 

ラノルは邪悪な思いを心に宿し、空を見つめる。

 

バージニア州 ペンタゴン(国防総省)

 

レアード国防長官は手元の時計を見る。

時計は17時18分を指しており、作戦時刻まで12分を切っている。

 

「そろそろか……大統領に回線を開く」

 

レアード国防長官はフリッツ大統領に電話を繋げ、相談する。

 

「どうしますか?」

 

「……予定通り実行しよう。慌てると行けないからな」

 

「はっ」

 

そして、1分前となる。

 

「作戦参加全部隊へ、私はアメリカ大統領ケント・フリッツだ」

 

フリッツ大統領はゆっくりと全兵士が聞き取りやすいように話す。

 

「これより、オペレーション・ノーザンクロス(極北の十字架作戦)】を発動する。総員の健闘を祈る!」

 

サハ共和国 ナイバ ティクシより南東約100㎞

 

その上空、高度300m付近をF-36A"ハンター"2機が先行し、大柄な全翼機のB-3爆撃機6機がそれに続く。

その後ろには、C-21戦術輸送機"グラマンⅡ"が5機程追随する。

 

始めに、B-3爆撃機が空港手前の廃墟となっている住宅街に向けて燃料気化(サーモバリック)爆弾を投下して更地にし、その間にC-21輸送機1機が高度を下げて、6両のM1A4/FエイブラムスIVを投下する。

 

「撃てぇ!」

 

120㎜電磁滑腔砲が咆哮し、音速でAPFSDS弾頭が放たれ、空港敷地内と外を分ける壁を粉々に粉砕する。

爆煙が生じ、それを振り切って出てきた()()に再び6両のM1A4/Fは発砲し粉砕する。

 

「人……いや、BETAか!?」

 

戦車隊の乗員らはその存在に気づき、初めて見る()()B()E()T()A()()()()()()()()()()()()に驚愕する。

 

そして、その様子を空挺降下しようとしているセリアからも見えた。

セリアは眉を顰めつつも、深呼吸して意志を固める。

 

「第6中隊、降下開始!」

 

 

戦いは次の段階を迎えようとしていた。

*1
太平洋地域の西側とされる諸国の防衛援護協力機構。主に日本やオーストラリア等が参加している

*2
もう半分は日本、オーストラリア、カナダ、台湾が占めている。この中で供与割合が大きいのは日本




新ソ連兵器を色々活躍させてみました、新ソ連の兵器も結構やばいですね、これは……

後、マブラヴ次回作のサンプル画像から人とBETAが融合したような奴を登場させました、まあまだ明確にわかってないので半分オリジナルですが。

また、ティクシにいる敵の本丸の人物3人の名前が全員やっと判明しましたね、依然として宰相が誰かは分かりませんが。

※次回予告 極北の勇戦(2)(タイトル変更の可能性もあり)

敵の本丸を落とすため、戦う者たちは全力を尽くす。


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ある少女のお話:ダイジェスト再編集版
chapter10【小さき抵抗】(1)


クリアとセリア達の話のみをリメイクします。
クリア達が登場するストーリーを章でまとめる予定です。

※本作を大幅に設定改変して再構成した作品
「Muv-Luv*Vierge 護世界の少女達 血潮染む運命に導かれる」を連載中ですので、こちらも見て頂ければありがたいです。
お気に入りして下されば嬉しいです。
https://syosetu.org/novel/196897/


 chapter9までのあらすじ

 人類に敵対的な地球外起源種・BETAが地球へと落着。

 中央アジア連合インド管区のジャンムー・カシミール州シュリーナガルへと落着したBETAはハイヴと呼ばれる巣を建設し、そこから広がるように大地を蹂躙していく。

 インド管区軍は激しい抵抗を見せるも、圧倒的物量と強力な個体の出現に次々と敗北していく。

 ジャンムー、ボパール、ムンバイと言った名だたる大都市が落ち、インド亜大陸の半分が奪われた。

 この状況に希望をもたらすため、アメリカよりの世界規模の軍事同盟、西側連合は反抗の一手を下す。

 オペレーション・ブロッサムと呼ぶ総力を挙げた作戦はジャンムー、ボパール、ムンバイのハイヴ攻略を目指したが失敗に終わる。

 反撃とばかりに数を増やし圧倒的な物量で進軍するBETAに対して絶望が加速する。

 だが、国家やあらゆる組織が作戦を提案。

 ここにBETAの漸減を目的とした義勇部隊による作戦が決行された。

 


 

4月28日深夜

インド管区マディヤ・プラデーシュ州中央部

 

 今では廃墟が連立するが、かつては約300万人が住んでいた大都市ジャイプール。

 BETAの侵攻により都市はかつての様子を見る影もなく、少数のBETAが徘徊してるだけである。

 

 そんな光景の中、突然空間が歪む。

 一般人が見れば、その意味不明な現象に疑問を持ち慌てるだろうが、このインドの地には少なくとも、一般人と呼べる者はいない。

 やがて歪みは深まり、その奥には眩いばかりの光が灯され、それが収まると奥は別の場所へとつながっていた。

 それを使う者からはゲートと呼ばれる物から兵士や機甲兵器等を擁する様々な部隊が現れ、速やかにジャイプール全域を制圧する。

 彼らはインド管区陸軍を筆頭に集められた連合部隊であり、インド管区陸軍第8機甲大隊の他に、オーストラリア・オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊、日本国陸上自衛隊第9戦車大隊、アメリカ魔法軍第1歩兵中隊に加えて、魔法協会から招集された魔法士部隊と、統括軍第12作戦群第6中隊で構成される。

 

「10時方向に戦車(タンク)級!撃てぇ!」

「11時方向より闘士(ウォーリア)級多数来ます!」

「総員車内に退避!遠隔機銃で薙ぎ払う!」

 

 ジャイプール全域を制圧後も、激しい砲声と銃撃音は止まない。

 制圧しただけのジャイプールは安全ではない。その為、魔法士部隊に属する白の世界技術者による防御結界の設置を行う必要があったが、設置中は無防備になるのが必然であるため、その護衛及び時間稼ぎの為に戦車部隊を中心にBETAを引きつけていた。

 

戦車(タンク)級多数!数が多すぎる!このままでは」

『こちら要塞(フォート)級も確認した。要撃(グラップラー)級も加えて大盤振る舞いだ。しかし隊長、まだなのか』

 

 120㎜滑腔砲の砲声に声がかき消されかけるも、隊長と呼ばれた男は聞き逃さない。

 

「もう少しの辛抱だ、総員命あっての物種だ。生き残ることを優先__っと、()()()()したようだ」

 

 その数に気押され、すぐにでも死傷者が発生しかねない危ない綱渡りの状況だった。

 だが、その寸前で防御結界が生成されたとの連絡が隊長の男に入り、彼らは結界内に撤収を行った。

 

 予想されていたことだったがジャイプール内に使用できる建物は全くなく、臨時指揮所としてのテントが敷設され、その屋根の下では会議を行うために、複数人の男女が集まった。

 

「事前に説明はしたが、再度確認を行いたい」

 

 そう話すのは、作戦指揮を執るオーストラリア・オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊連隊長のオリバー・C・ウィンチェスター大佐であった。

 

「作戦目的は既に周知のとおり、BETAの漸減だ。まず第一課題としてジャイプールを橋頭堡として確保することは達成済みだ。第二課題は、作戦目的を達成するために、我々はボパールハイヴへの全力攻撃且つ出現してきたBETA群とムンバイより突出してきたBETA群の誘引及び殲滅を行う。

作戦の編成もすでに伝えているが、ボパールハイヴ方面は我々連邦陸軍第3機甲連隊及び、陸自第9戦車大隊。ムンバイハイヴから来るBETA群の誘引には、インド陸軍第8機甲大隊、アメリカ魔法軍第1中隊、統括軍第6中隊、戦闘魔法士部隊を充てる。ただし、第6中隊と魔法士部隊には一定の自由裁量が与えられているのは周知済みだ。戦況に応じて行動せよ。いいな?フランネス大尉」

「はい」

 

 男の声とは異なる高音が彼らの耳に入る。

 金髪のセミロングの髪型をしている少女の名前は、セリア・フランネス。統括軍第6中隊の中隊長をしている。

 

「では、最後の周知事項だ。作戦時部隊コードネームは第3機甲連隊をアルゴス、第9戦車大隊をファントム、第8機甲大隊をヴェリーヤ、アメリカ魔法軍第1中隊をリザル、統括軍第6中隊をステラと呼称、魔法士部隊をレイツと呼称する。

さて、懸念点などはあるが、少しは安心できる。だが、決して慢心するな。作戦目的が重要であるのは無論だが、もっとも重要なのは自分の命だ。もしもの時は命を優先に行動しろ。以上だ」

 

 最後の一言を聞き、他の指揮官らは一斉に敬礼し、ウィンチェスターもそれに応え敬礼を交わす。

 

旧マディヤ・プラデーシュ州州都ボパール近郊

 

 砲声が轟く。

 ジャイプールから進発した部隊の内、ボパールハイヴのBETA漸減を目的としたオーストラリア・オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊と日本国陸上自衛隊第9戦車大隊はボパール近郊へと到達し、BETA群と遭遇する。

 10式戦車F型改の55口径120㎜滑腔砲から発射された砲弾は正確無比な一撃となって先頭にいた突撃(デストロイヤー)級の前脚1本を粉砕し、僚車はもう一本の前脚を粉砕する。

 

「大和田二佐!先頭の突撃(デストロイヤー)級の停止により後方の群体が頓挫しました!」

「よし、各車順次目標を選定しつつ射撃を継続!すぐに乗り越えてくるだろうから、気を緩めるな」

 

 そう命じる男は、陸自第9戦車大隊大隊長の大和田信吉2等陸佐であり、彼は大隊の中央で命令を出すのではなくわざわざ大隊長車を先頭へと置いていて、先程もこの車両が突撃(デストロイヤー)級の前片脚を撃ち抜いていたことからその練度の高さが伺えた。

 第9戦車大隊は陸上自衛隊の未だ数は増えていない完全機甲師団の一つであり、最古の機甲師団である第七師団隷下の戦車大隊であるため、その練度の高さは半ば当然とも言えた。

 そして、その間にも各戦車中隊は要撃(グラップラー)級への砲撃や頓挫した突撃(デストロイヤー)級の撃破に移行した。

 

 彼らがなぜここまで目立つ損害を受けないまま、順調に作戦を遂行できたのか、その解答は第9戦車大隊の両側面にあった。

 オーストラリア・オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊は、105㎜滑腔砲を装備するなどのスケールダウンを行うことでBETA戦仕様に改修したM1A1MA(A)"エディンバラ"主力戦車で構成される機甲大隊で要撃(グラップラー)級を狩り、10式戦車に食いつこうとする戦車(タンク)級を排除するなどして、第9戦車大隊の支援にあたっていたがそれは第3機甲連隊にとっての主役ではなかった。

 

 FW-3重機甲陸戦兵器グラント。

 オーストラリア・オセアニア連邦陸軍の対BETA戦特化の新兵器。同盟国であるアメリカ合衆国がその性能を鑑みて世界的な軍事プレゼンスの低下を恐れ、外交圧力によってライセンス譲渡及び名目上は共同開発として要求した話が関係者の間で囁かれている兵器であった。

 全高12mの二脚でありながら、走行時の走行安定性は高い上にその速度は速く、歩行時であっても戦車の戦闘時速度に追従可能であった。

 さらにその兵器の武装も凄まじい。

 

 第3機甲連隊に数個の戦術機甲大隊として編成されたFW-3は両肩に装備した120㎜電磁投射砲2門を放ち、一瞬発射後の青白い残光を灯した直後、散弾となって数十体の戦車(タンク)級を粉砕する。

 その間に多数の戦車級が近づくも、正面眼下は死角ではなく、両腕に装備されているAH-64アパッチに装備されているM230単装機関砲と同型である30㎜4連装機関砲が火を吹き、弾幕を形成すると瞬く間に死骸と化していく。

 それでもなお脚にへばりつく個体に関しては、アクティブ防護システムが対応し爆発反応装甲で戦車(タンク)級を弾き飛ばす。

 

「こちら第4戦術機甲大隊、BETA群両翼それぞれの掃討率40%、その後方のハイヴからの増援も確認できます。そろそろ引き際かと」

『分かっている、日本戦車隊が担当する中央はどうだ?』

「こちら大和田、ウィンチェスター大佐、私から答えさせていただく。BETA群の掃討率は60%と推定、増援が両翼に集中しており中央が最も少ないためこの結果になった。なお、こちらの損耗率は20%未満だ」

『感謝する。これより後退に移る。だが光線(レーザー)級の撃破が優先されるため、多少踏みとどまってほしい。ジャイプールより超低空での巡航ミサイル攻撃を実施する。着弾までひきつけろ、光線(レーザー)級の予測位置データを送る、移動していなければこの辺りにいるはずだ』

「了解した」

 

 そう返答し、大和田は通信を切る。

 そして、大隊の無線に全車後退と叫び、大和田の乗る10式戦車は即座にギアが切り替えられ、後退を始める。

 だが、後退中であってもその正確な射撃が止まることはなく、ある一両は飛びかかろうとした戦車(タンク)級を離陸前に撃破する。

 

「後退するのには早いのでは……?」

「いや違う。全車データリンクは問題ないか?」

「え?は、はい、問題ありません」

「よし、第一、第二戦車中隊は本車と照準連動。他の中隊は接近してくるBETAを迎撃せよ」

 

 大隊の他の車両がBETAを迎撃する中、10式戦車二中隊は送信されてきた光線(レーザー)級の予測位置に対して砲撃を開始する。

 理論上、現代戦車の主砲は一キロ程度離れた場所に対する砲撃は可能であり、そして今回の場合、命中させる必要もなかった。

 

(我々の役目は巡航ミサイル着弾まで光線(レーザー)級を引き付けること、ならば光線級の位置に砲撃しまくり、迎撃能力を飽和させるのが手っ取り早い)

 

 大和田の考えと同様に考えていたオーストラリア・オセアニア連邦陸軍第3機甲連隊もほぼ同時に動き出す。

 M1A1MA(A)とFW-3部隊の半数がBETAの迎撃に回される一方で、残り半数のFW-3は機体背部より二基の4連装誘導ミサイルランチャーをせり出させ、通常のAPFSDS弾を装弾した120㎜電磁投射砲の照準を光線(レーザー)級の予測位置に合わせ、攻撃を開始した。

 誘導ミサイルランチャーに装填されたAGM-114Kヘルファイア対戦車ミサイルが次々に発射され、120㎜APFSDS砲弾とともに光線(レーザー)級がいる位置へと殺到する。

 当然、自身に当たるか当たらないかは関係なく光線(レーザー)級は迎撃を開始し、たった数秒で十数発の弾頭がレーザーによって消し飛ぶ。

 だが、航空機でない限りその程度は問題ではなかった。

 ジャイプールではBGM-158高速打撃巡航ミサイルが移動型地上発射機より発射され、光線(レーザー)級の予測位置データ及び前線部隊の観測データを元にした誘導によって超低空での高速巡航を開始。

 わずか1分後、絶えず続く第3機甲連隊及び第9戦車大隊による阻止砲撃によって光線(レーザー)級の迎撃能力は飽和しけていた時に、超低空でBGM-158巡航ミサイルが進入し、わずかな光線(レーザー)級の迎撃で二発が撃墜されるもその他はすべて命中し、光線(レーザー)級群を含む多数のBETAの撃破に成功する。

 

『よし、光線(レーザー)級の撃破を確認した。アルゴス、ファントムは直ちに後退!接近してくるBETAを撃退しつつ、ジャイプールへと帰還せよ』

 

旧マディヤ・プラデーシュ州南部ガジェン

 

 一方でボパール方面へと向かった部隊とは正反対に南へと向かったインド管区陸軍第8機甲大隊、アメリカ魔法軍第1歩兵中隊、統括軍第12作戦群第6中隊、戦闘魔法士部隊はすでに戦闘に突入していた。

 ムンバイハイヴから東へと向かうBETA群の一部誘引し漸減する目的の彼らは、衛星からの情報による予測進路上に待機し、BETA群と遭遇した。

 

「撃てぇ!!」

 

 BETA群の誘引を担当するのは、最も目立つ存在であり唯一の機甲部隊であり、アージュンMK2(R)及びM1A2ESI主力戦車で構成されるインド管区陸軍第8機甲大隊である。

 BETA戦の初期から戦い続けた大隊であるためその実戦経験による練度は高く、それにより亜大陸陥落前までは常に定数割れを引き起こしていたが、陥落後の軍隊再編によって完全編成の機甲大隊となっている。

 大隊長はスェノル・カラノフ中佐、当初から大隊長ではなかったが大隊の幹部要員として所属していたため大隊のことは知り尽くしているつもりである。

 

 彼の声に呼応し、車体をBETAから背を向けつつ砲塔を後ろに向けていた戦車隊は一斉砲撃を行い、接近していた戦車(タンク)級の群体や要撃(グラップラー)級を葬り去る。

 

「どのぐらい誘引できている?!」

『40%程度かと……これ以上は』

「我々が対応できる数を超える……だな?」

『ええ』

 

 カラノフは副大隊長との通信でうなずくと、回線を切り替え声を上げる。

 

「全隊に通達!BETA群の一部誘引に成功!作戦を次の段階へ、誘引殲滅を実行する!」

『了解!』

 

 通信機からの甲高い返事はカラノフも作戦前で会話を交わしている統括軍第6中隊長のセリアであったが、カラノフはその声を聴き一瞬眉をひそめる。

 眉をひそめた理由、それは第6中隊などの年若い者たちをBETA戦に投じることをカラノフ自身が反対していたからである。

 BETAのインド侵攻時から化け物との戦いを行ってきた経験から、少女たちはBETA戦の現実を理解しきっておらず、楽観視しているとカラノフには感じられた。

 その理由から、誘引という最も危険な作業も彼女らをあてにせず、他から反対されつつも自分の大隊のみで遂行した。

 

(BETAは予想以上の物量も、兆候の無い行動も脅威ではあるが、一番の脅威は胸糞悪い光景を見せつけられること、つまり死の恐怖、食い殺される恐怖に抗わないといけない……それが年半端もいかない彼女らにできるかどうか……

統括軍第12作戦群第6中隊、一人一人が戦車、それ以上の力を持つという実力は確かだが……)

 

 誘引殲滅自体はアメリカ魔法軍第1歩兵中隊と統括軍第6中隊、そしてインド管区陸軍第8機甲大隊が担当し、戦闘魔法士部隊は補助に回った。

 開始直後、戦闘魔法士部隊は誘引されたBETA群とその本隊の間に簡易阻止結界を広範囲に構築、重光線(レーザー)級の攻撃に耐えられるようなものではないが、突撃(デストロイヤー)級の全力突撃に耐えられ、不可視であるために信頼性は高い。

 

 そして、アメリカ魔法軍第1中隊が射撃に徹する中、統括軍第6中隊は突入する。

 

「はぁぁ!!」

 

 セリアはFR-B18キャノンピストルを連射して放ち、増幅された指向性のエネルギー弾が十数体の戦車(タンク)級を貫いて撃破し、要撃(グラップラー)級にはセリアの後方から放たれた巨弾が仕留めていく。

 その間に、セリアの眼前に青髪の少女は跳び出す。

 

「クリア!」

「お姉ちゃん、了解!」

 

 青髪ポニーテールの少女の名前はクリア・フランネス、セリアの妹であり、戦術指揮は未熟なものの高い魔力量を有していることから、中隊の副隊長となっている。

 クリアは右手を前に突き出して手を広げ、大きな魔方陣を形成する。

 

暴風(ストーム)!!」

 

 声を発した次の瞬間、向かってくるBETA群に対し大量の砂塵を含んだ暴風が襲い掛かり、一瞬の間に包み込む。

 無論、ただの風ではない。"暴風"の名の通り、風と共に生み出されるのは微細かつ鋭利な物体であり、強風が叩きつけられるとともに超音速で飛来するそれがBETAを切り裂いていく。

 風が収まったときにはその効果範囲に生きている個体はいない…はずだった。

 

 どこからか「やったっ」と声がする中、クリアは表情を険しくしたまま、その声に言葉を返す。

 

「いや…いる」

 

 そうつぶやいた瞬間、未だ収まらない砂塵の中から数体の突撃(デストロイヤー)級が前進してくる。

 前面を覆う装甲殻の高さはダイヤモンドに匹敵するモース硬度12以上であり、鋭利な物体程度では貫けないのも納得であった。

 突撃(デストロイヤー)級を視認すると、左手に持っていたLc-4ランス型武器"ルーン"を両手で持ち前に突き出すように構え、突撃(デストロイヤー)級の突進をランスで受け止める。

 受け止めた時の衝撃でわずかに押されるも体が軋む様子もなく、逆に突撃(デストロイヤー)級が浮き上がることもあった。

 クリアは突進を受け止めたまま自分の武器を砲撃形態に変形させる。

 

暴風弾(ストームシェル)、発射」

 

 そう一言言い放つと、突撃(デストロイヤー)級の突進を受け止めていたランスの先端から砲口が開き、暴風のエネルギー弾が発射され、先頭の突撃級はおろかその後続を両断する。

 このように統括軍第6中隊は順調に戦闘を進める中、同時に第8機甲大隊も誘引していた位置より向きを変え、120㎜滑腔砲で確実に一体ごと撃破していく。

 

「総員、ファイア!!」

 

 戦車部隊の両隣に展開するアメリカ魔法軍第1歩兵中隊の中隊長マスターク・F・イルベン少佐は声を荒上げ、第1歩兵中隊は青く煌めく銃火を演出し、数多くのBETAを銃火にからめとっていき、追随するM2A5ブラッドレー歩兵戦闘車が驚異的な連射力で25㎜機関砲を放ち、戦車(タンク)級や要撃(グラップラー)級の胴体を穴だらけにしていく。そして、時にはミサイルランチャーから散弾ミサイルを打ち出し、広範囲のBETAを掃討する。

 傍目から見れば優勢な戦況であり、当事者達もそう感じていた。

 しかし。

 

『こちら戦闘魔法士部隊、簡易結界範囲外のBETA数が減少しています。移動による減少ではありません』

「何……?」

 

 その報告は突然だった。それとともにカラノフは今までのBETA戦の経験から悪い予感を増大させた。

 そして、その予感はすぐに的中する。

 

 突然起こる地中からの激しい振動。

 

「地中から……!まさか、地中侵攻か!!戦闘魔法士部隊は警戒態勢を維持!こちらが命令できない状況となったとしても、隊としての自己判断を優先!いいな!」

「は、了解!」

 

 カラノフ自身、地中侵攻というのは話に聞いただけであり、実際経験したことはなかった。だが、その知識の無さが判断の遅れにつながった。

 統括軍第6中隊でもその振動に気づいており、何よりその震源は第8機甲大隊よりも近かった。

 そしてその震源は移動し、第6中隊のど真ん中で炸裂。地面が割れ、大量のBETAが形成された穴から這い出てくる。

 名実ともに地中侵攻であったが、経験の無い者たちは即座に対応できず、出現位置の近くにいた複数の隊員は身体を踏みつぶされて即死し戦車(タンク)級の餌と化した。

 何より不幸なのは、地中侵攻の位置は第6中隊の配置のほぼ真ん中であり、再編成をするまでの過程で二つに分断されてしまったことで、唯一幸いなのは隊長のセリア、副隊長のクリアが一方ずつにいることだけだった。

 

 しかし、彼女ら自身も正気で戦闘できるほど、経験を積んでいない。

 セリアは妹の無事を祈りつつも、先ほどと同様に戦闘を続ける。だが、その動揺は隠せなかった。

 そして、クリアの方だが、彼女は姉以上にショックと動揺を受けていて、先ほどの勇敢な行動とは一変し、まともに戦闘できず要撃(グラップラー)級のモース硬度12の腕にたたきつけられてしまう。

 その寸前に防御フィールドを張ったために直接的な打撃は受けていないが、その衝撃と反動で大きく吹き飛ばされ、胃や肺などが圧迫され、大量の血を吐き出してしまう。

 

「ガハッ……!?」

 

 息も絶え絶えの少女に3匹の戦車(タンク)級が近づき、その手が触れようとしたその時、一匹の戦車(タンク)級が両断され、その他二匹も動く間もなく切りつけられ崩れ落ちる。

 

「クリア……!立てる?!」

「アイナ……?」

 

 アイナと呼ばれた少女はクリアに呼びかけると、咄嗟に手を差し伸べる。

 クリアは頷き、その手を握ってゆっくりと立ち上がる。

 

「アイナ、ありがとう……そして」

 

 言葉を続けようとするクリアをアイナが止める。

 

「ありがとうは後でね、まだお礼しなきゃならないこと出てくると思う」

「……うん」

 

 その二人に化け物は群がっていく。

 二人は互いに背をくっつけ、応戦を開始した。

 クリアは通常形態に戻していたランスを砲撃形態に変形し、戦車並みの砲撃で戦車(タンク)級や要撃(グラップラー)級の頭部を丁寧につぶしていく。

 アイナは片手剣とフライパンの様な盾を持つも一切動かず、その代わりに体の周りに生成した光球からビームを発射して、戦車(タンク)級を両断し要撃(グラップラー)級の頭部を撃ち抜き突撃(デストロイヤー)級の殻を溶かす。

 

 そうして二人で庇いながら応戦を続け、殺到するBETAが減り応戦に余裕が出始めた頃、アイナがクリアに話しかける。

 

「ねぇ……私たちが行うべきはBETAの殲滅だよね?このままだとジリ貧、だから私たちは少し離れて戦うべきだと思う」

「アイナ……それは」

「行くね」

「!?やめて!アイナ!」

 

 クリアが突然嫌な予感を感じ必死に止めるもアイナは聞かない。

 アイナは飛びあがり10メートル離れた地点に着地し傍にいた戦車(タンク)級3体をビームで焼き払い、要撃(グラップラー)級の腕の降り下ろしもジャンプして回避し、3つの光球からビームの集中砲火を浴びせて沈黙させる。

 その次は周りを囲い始めていた戦車(タンク)級を片手剣で一閃し、盾で溶き飛ばして着地場所を確保する。

 一方でクリアはアイナを心配するあまり、アイナのいる地点まで5メートル以内の距離に近づいていて、十分アイナの顔も視認できた。

 彼女はアイナの戦ってる様子を見て、さっきの嫌な予感は杞憂だと思い、背を向ける。

 

 その直後、クリアは強烈に嫌な予感を感じ取り、再びアイナの方へと視線を向ける。

 アイナは戦車(タンク)級からの攻撃を防ぐのではなく、跳躍で回避する。

 だが、その時アイナの意識しない方向から要撃(グラップラー)級の触腕が降り下ろされ、回避する間もなくあまりの衝撃がアイナを襲い地面へと叩きつけられる。

 不運なことに防御フィールドが展開できなかったために、甚大な傷害を受けており左腕は肩から下が木端微塵に粉砕されていた。

 

「あ……あ……あああ……ああああ」

 

 その見るのも惨い断裂部に不思議と痛みはなかった。何より、アイナの感情は恐怖心が支配していた。

 その様子を見て、戦車(タンク)級がアイナの周りを囲い込み、一斉に齧りはじめる。

 

「あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶!!!」

 

 その時初めてアイナは悲鳴を発したが、時すでに遅く意味はなかった。

 両脚や残った片腕を引きちぎり、頭部を曲がってはいけない方向に曲げて引きちぎった直後、クリアはBETAの壁を突破しその凄惨な場所へとたどり着き、"友人"の血しぶきを大量に浴びた。

 

「アイナ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 戦場では決して叫んではいけない悲鳴が轟く。

 だが、仕方なかった。姉やもう一人の友人とともに数少ない深く話し込める親友だったのだから。

 あまりの出来事に呆然と立ち尽くしてしまう。その隙をBETAが見逃すはずもなく、戦車(タンク)級が近づくが、彼女の本能的な自己防衛反応は機能しており、斬撃形態に変形したランスで切り裂く。

 彼女の心は悲しみに暮れ、目は涙で覆いつくされていた。

 しかし、要撃(グラップラー)級の打撃を受け止めきれなかったことにより、軽い衝撃ではあるが彼女は地面を転がって足には血が滲むも、彼女は正気に返る。

 地面を転んだことによって埃が付着した涙を拭き取り、偶然探知した味方のマーカーを確認して、決意する。

 

(アイナ、ごめん。……絶対に忘れない……)

 

 クリアはランスを通常形態に変形させ魔力を込め、ランスの穂先にはランスの2分の一の大きさにもなる巨大な光の刃が現れる。

 そして跳躍し加速して、進路上のBETAを引き裂きながら探知した味方のマーカーへと向かう。

 



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