オリジナルゾイドバトルストーリー 青い猟犬 (ロイ(ゾイダー))
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前編
今回は、ハウンドソルジャー編です。
ZAC2052年 8月 暗黒大陸 エントランス湾 ヘリック共和国軍基地
エントランス湾に橋頭堡を築いた共和国軍は、本土である中央大陸で編成したゾイド部隊を次々と暗黒軍(ガイロス帝国)本土の存在する暗黒大陸(ニクス大陸)に派遣した。
連日、中央大陸からサラマンダーやレイノスに護衛された浮遊輸送艦 タートルシップがエントランス湾に寄港し、多数のゾイドや兵員、補給物資を暗黒大陸に上陸した新生共和国軍の基地へと送り込んだ。
この共和国軍基地にも昨日飛来したタートルシップが着陸し、マッドサンダーを含む戦闘部隊を輸送していた。
対する暗黒軍もただ手を拱いていたわけではなく、共和国軍に対して小規模の襲撃部隊による遊撃戦を繰り広げていた。
今日も、暗黒軍は、共和国軍に襲撃部隊を差し向けていた。
一筋の青白い光線が地平線の彼方から発射されたゴジュラスmkⅡ量産型の胴体に突き刺さった。
胴体に被弾したゴジュラスが悲鳴を上げる。
「敵襲だ!」
青白い光の矢が次の獲物に突き刺さったのは、ある共和国兵が叫んだのと同時だった。
彼方の暗黒の大地から放たれた青白い光線は、次々と共和国軍基地に襲い掛かった。背部に直撃を受けたカノンフォートが大破し、頭部を撃ち抜かれたベアファイターが崩れ落ちた。逃げまどっていたアロザウラーがビームの直撃を受けて崩れ落ちる。
更に1発の荷電粒子ビームが集積されていた物資を満載したコンテナに命中。直後内部にあった弾薬が誘爆し、周囲にあった施設やゾイドを吹き飛ばした。次々と撃ち込まれる強力なビームに共和国軍は、混乱し、損害を積み重ねていく。
光線が放たれた方向には、鮮やかな黄色に塗装された機影が10機いた。それらのゾイドの正体は、暗黒軍の虎型高速ゾイド ガルタイガーである。
暗黒軍が開発した高速ゾイド ガルタイガーは、主兵装の超小型荷電粒子砲を始めとする数々の兵装により高い攻撃力を誇ると共に最高時速 260kmという高い機動性を両立したこの機体は、ヘリック共和国側にとっては高速ゾイドの常識を超えた攻撃力を持った恐るべき敵の1つであった。
背部に搭載した超小型荷電粒子砲は、最大出力で大型ゾイドにも打撃を与えられる威力を秘めている。この部隊は、超小型荷電粒子砲の火力と260kmの快速を組み合わせた一撃離脱戦法でエントランス湾に展開するヘリック共和国軍に対する攻撃を行っていた。
「海上のヘル・ディガンナー隊とブラキオスNEW隊が陽動になっている隙に離脱するか。」
指揮官のビクトル・ソコロフ大尉は、燃え盛る遥か向こう側の敵基地をモニター越しに満足げに見つめていた。
「全機帰還する。そろそろ追撃部隊が来るからな!」
「了解しました」
「了解!」
「了解」
「了解!」
「了解!」
部下の機体を引き連れ指揮官機のガルタイガーは、友軍勢力圏へと向けて走り去った。このまま一方的に攻撃して立ち去れると思えなかったからである。基地を攻撃されて混乱する共和国軍も追撃隊を組織しているに違いない。
指揮官機の背部のドップラーレーダーには、敵機と思われる反応が、少なくとも2つ確認できた。この電磁嵐の酷さでは、空軍を出撃させるのは、遭難のリスクがある。恐らく高速ゾイド部隊だと推測できた。
「ふん!シールドライガーやコマンドウルフが現れようと、このガルタイガーの敵ではない」
侮る様な口調でソコロフは、吐き捨てる。
現在共和国軍が配備しているシールドライガーは、mkⅡ仕様に改造されており、火力とパワーこそ強化されているが、重量増によって機動力が低下していた。その僚機のコマンドウルフは、装甲も火力も機動性もガルタイガーに劣っており、容易に蹴散らせる相手だった。
そして、2機種ともガルタイガーが全速力で離脱を図った場合、追いつくことは出来なかった。
最近、存在が暗黒軍側に確認されたキングライガーと呼ばれる新型機は、ガルタイガーと互角の機動力と格闘性能を有していた。だが、その配備数は少なく、脅威になりえなかった。
「ヨハンの機体が遅れているな……」
最後尾の機体が隊列から遅れ始めているのを見たソコロフは、もう少し速力を下げて脱落を防ぐべきか?と考えた。次の瞬間、最後尾の機体を示す光点がモニター上から消失した。同時に背後で爆発。
「!!」
「ヨハンがやられた!」
「追撃隊です!」
「何だと!」
ドップラーレーダーに捉えていた敵機か?そう思ったソコロフは、後方警戒センサーを確認する。後方警戒センサーが捉えた映像がモニターに表示される。そこには、見たこともない青い機影が別のガルタイガーに襲い掛かっているのが見えた。
青い機影に横切られたガルタイガーの左前脚と後脚が抉られ、絶叫と共にガルタイガーが崩れ落ちる。
更に少し後ろでは、先程撃破されたヨハンのガルタイガーが黒煙を上げて燃えていた。燃え盛る残骸は、脇腹に大穴を開けられていた。
更にもう1機のガルタイガーが黄色い閃光―――――高密度ビームの直撃を受けた、直撃を受けた機体は、眩い閃光と共にバラバラに吹き飛ぶ。ガルタイガー部隊は必死になって離脱を図ろうとする。
だが、青い機体は、更に速度を上げて追撃してくる。明らかに速力では、ガルタイガーが劣っていた。
「なんて速度だ!」
ソコロフは、思わず叫ぶ。青い機影は、ガルタイガー部隊を追い越すと、彼らの進路上に立ち塞がった。
「なんだこいつは?」
ソコロフは、目の前に立ち塞がった敵機を見て言った。その機体は、シールドライガーよりも小型でコマンドウルフにどこか似ていた。だが、形状はコマンドウルフよりも鋭角的で大型だった。鋭い歯が並んだ口と大きな2つの耳そして頭部の両側面からは青く光る槍が伸びていた。格闘性能に優れた機体であることは明らかであった。
胸部には三連装砲、背部には、白金色に輝くビーム砲が搭載され、火力も充実した機体である事が窺えた。その機体は、新生共和国軍が開発したシェパード型中型ゾイド ハウンドソルジャーであった。
機動性では、ゼネバス帝国が最後に開発した高速ゾイド ライジャーを上回る330kmを叩き出す事が出来た。
「……全機!敵は1機だ。集中攻撃で叩き潰すぞ!」
ソコロフは、交戦を決断した。目の前の新型機がガルタイガーよりも早い以上、撤退は困難である。それならまだ戦闘した方がまだ離脱出来る可能性はある。特に目の前にいる敵機はまだ1機。対する此方は3機が撃破されたものの7機いる。
全機で襲い掛かれば勝機はある。それが、彼と部下達の判断だった。7機のガルタイガーが一斉にハウンドソルジャーに襲い掛かる。3機が背部の超小型荷電粒子砲と連装ビーム砲を発射する。
ハウンドソルジャーは、それらの攻撃を回避し、ガルタイガー部隊に接近戦を挑んだ。
「逃がすか!」
指揮官機のガルタイガーが背部の連装ビーム砲を連射して突進した。ソコロフの部下のガルタイガー1機が飛び掛かる。
ハウンドソルジャーは、敵機の突進を回避する。間髪入れず、ソコロフの操縦する指揮官機が爪と牙を煌かせてハウンドソルジャーに突進してくる。
ソコロフのガルタイガーの尾部のパラライザーから雷光――――――マイクロ波ビームが放たれる。
パラライザーは、マイクロ波を敵ゾイドに照射する事で機体の電子機器を破壊、機能不全に陥らせる兵器である。
1秒の動きの差が命取りになる高速ゾイド同士の戦闘でもこの兵装は役立った。また尾部に装備されている為、敵に対する不意打ちにもなった。
ハウンドソルジャーは、その攻撃を回避すると、別のガルタイガーへと襲い掛かる。
ハウンドソルジャーは、クロスソーダーでそのガルタイガーの頭部を狙う。
「させるか!」
別のガルタイガーが横合いから連装ビーム砲を連射して突進する。ハウンドソルジャーは跳躍してその攻撃を回避し、着地と同時にダッシュ。
「なんて、跳躍力だ!?」
「落ちろ!」
背後からガルタイガーが飛び掛かる。ハウンドソルジャーは、背後に向けて腰部の3連装ミサイルポッドを発射した。
腰部の3連装ミサイルポッドが背後にいたガルタイガーに着弾した。その一撃は、ガルタイガーを撃破するには至らなかったが、その動きを一時的に止める事が出来た。
ハウンドソルジャーは、反転し、動きを止めた敵機に必殺の一撃を発射する。
ハウンドソルジャーの背部の砲――――――――ハインドバスターが閃光を放った。高出力ビームの矢がガルタイガーを撃ち抜いた。
「よくもヨハンを!」
「よせハルトマン!」
ソコロフの静止を振り切り、1機のガルタイガーが連装ビーム砲を乱射して突進する。
ハウンドソルジャーは、頭部両側面に装備した槍 クロスソーダーを正面に展開。右肩に突き刺し、そのまま右前脚を抉り取る。ガルタイガーが悲鳴を上げて崩れ落ちる。
止めとばかりにハウンドソルジャーが胸部の3連装ブレストボンバーを発砲。至近距離で高速弾を損傷個所に受けたガルタイガーが爆散する。
1機のガルタイガーは、超小型荷電粒子砲をチャージしていた。青白い光芒を放つ銃口の先には、ハウンドソルジャーの青い機影がある。
ハウンドソルジャーは、クロスソーダーを展開して、目の前の敵機に向けて全速力で突進した。超小型荷電粒子砲のチャージ中だったガルタイガーは、急に動き出すことが出来ず、ハウンドソルジャーの格闘攻撃を回避出来なかった。
クロスソーダーがガルタイガーの胴体を貫いた。3機のガルタイガーを撃破したハウンドソルジャーであったが、数の差から次第に防戦一方になりつつあった。
ガルタイガーが連装ビーム砲を連射する。ハウンドソルジャーは、その攻撃を回避するが、別のガルタイガーが2機掛かりで追撃し、反撃するチャンスを与えない。
ガルタイガー部隊の連携の取れた攻撃にハウンドソルジャーが追い詰められる番だった。
指揮官機のソコロフのガルタイガーともう1機のガルタイガーが背部の超小型荷電粒子砲をチャージしてそれぞれ別の方向からハウンドソルジャーを狙う。
「これで、止めを……」
ソコロフが共和国軍の新型高速ゾイドに照準を合わせたその時、超小型荷電粒子砲をチャージしていたもう1機のガルタイガーの腰部にビームが命中した。
背後からの攻撃を受けたガルタイガーが火球と化す。超小型荷電粒子砲を発射寸前だったことで機体にエネルギーが蓄積されていた事でその爆発も、それまで撃破された同型機よりも大規模だった。ソコロフのガルタイガーも爆風に巻き込まれて態勢を崩した。
「ソコロフ隊長!」
勝利を確信していたソコロフは、驚愕した。もう1機のハウンドソルジャーが出現したのである。「助かったぞ、ニーナ中尉!」
最初にガルタイガー部隊に襲い掛かったハウンドソルジャーのパイロット 第34遊撃小隊隊長 アレックス・ホーソン大尉は、不敵な笑みを浮かべ、右手の親指を立てて、追いついてきた僚機の援護に感謝した。
「アレックス大尉、先行しすぎです。1機で9機の敵に突っ込むなんて無謀ですよ。」
新たに戦闘加入したハウンドソルジャーのパイロット ニーナ・ベイカー中尉は、単機で敵部隊に突撃を仕掛けた上官の蛮勇に呆れていた。
栗毛色の髪をショートカットにした彼女は、アレックスの副官を務めていた。また、アレックスの部隊に2機だけ配備されているハウンドソルジャーを与えられているだけあって優秀なパイロットであった。
「お前らに合わせてたらこいつらを取り逃がしてしまうところだったんだ……ニーナ、文句はこいつらを全滅させてからだ。」
「……はい!」2機のハウンドソルジャーは、残り3機となったガルタイガー部隊に襲い掛かった。
2機のガルタイガーは、それぞれ撃破され、指揮官機のみが残された。
「こうなれば、1機だけでも道連れにしてやる!」
最後に残ったガルタイガー―――――――部隊指揮官のソコロフのガルタイガーは、アレックスのハウンドソルジャーを道連れにしようと試みたが、アレックスのハウンドソルジャーとニーナのハウンドソルジャーの背部のハインドバスターを同時に受けて一部の残骸を残して消し飛んだ。
ガルタイガーの色鮮やかな黄色とオレンジの残骸が散らばる黒い大地――――――今やそこには、2機の青い犬型ゾイドだけが佇んでいた。
「これで暗黒軍の奴らも、基地を襲撃するのを多少は躊躇う様になるだろうな。」正面モニターに映る残骸を見渡しながら、アレックスは言った。
「だといいですけどね。隊長」
そういうとニーナは、ため息をついた。連日、彼女達のいる基地を含め、エントランス湾の共和国軍は、暗黒軍の嫌がらせの様な少数部隊による攻撃を受け続けてきた。その度に、アレックスの率いる部隊は、戦果を上げてきた。
「このハウンドソルジャーは、いい機体だ。ライガー系に匹敵するパワー、300kmを超える速力、大型ゾイドの重装甲を撃ち抜ける攻撃力、アクティブレーダーによる優れた索敵能力……こいつが、量産化されれば、共和国軍高速部隊は、暗黒軍に後れを取る事は無くなるに違いない。」
アレックスは、現在の愛機 ハウンドソルジャーの性能にほれ込んでいた。
「ハウンドソルジャーがもっと配備されれば、暗黒軍との戦闘も有利になるでしょうね。」
ニーナも彼に頷く。2人ともハウンドソルジャーの性能の高さに惚れ込んでいた。
従来の共和国軍の高速ゾイド シールドライガーmkⅡ、コマンドウルフNEW、ベアファイターNEWでは、暗黒軍の装備する高速ゾイド ジークドーベルやガルタイガーを撃破する事は、困難であった。
特にゼネバス帝国軍が末期に開発したライオン型高速ゾイド ライジャーは、ゼネバス帝国軍の軍備を接収、利用している暗黒軍も高速部隊に配備していた。
現状の共和国軍高速部隊の数的主力であるコマンドウルフNEWでは、ライジャーやガルタイガーに勝利するのは不可能に近かった。その事を元コマンドウルフパイロットのアレックスとニーナは、身をもって認識していた。
「こいつは、ハウンドソルジャーは、コマンドウルフの後継機に相応しい機体だ。」
ハウンドソルジャーも、元々は、ライジャーに対抗できるコマンドウルフの後継機種として開発されていた機体だった。
そして、暗黒軍との戦争に突入してから、ハウンドソルジャーは、暗黒軍の強力なゾイドに対抗する為に更に数々の新技術を導入し、設計の改良が加えられた後、正式採用されたのである。
2機のハウンドソルジャーがガルタイガー部隊を全滅させて数分後、遥か後方からコマンドウルフNEWの部隊が出現した。その数は、12機。
「……(これが、今の〝小隊〟か)」
接近してくる部下の機体を見つめ、アレックスは、現在の共和国軍の部隊編成が、数年前、ゼネバス帝国と戦争していた頃とは、様変わりしている事を改めて実感していた。
その時期、デスザウラーによって共和国首都を始めとする国土の大半を制圧され、苦しい戦いを強いられていた頃、1小隊に配備されるゾイドの数は、2~6機だった。
この頃は、共和国軍のゾイド不足や中央山脈でのゲリラ戦が主体だった為、機動性と整備の簡便さが求められていたからである。
だが、中央大陸戦争の後半、デスザウラーを撃破可能な超大型ゾイド マッドサンダーが開発、量産されてから、ヘリック共和国軍は再編成され、その規模も拡大した。
それに伴い、共和国軍の部隊編成における小隊の規模も拡大し、今では、高速部隊や強襲部隊では、1個小隊辺り10機から15機のゾイドが配備される事も珍しくなくなっていた。
「アレックス隊長とニーナ中尉だけで潰したんですか、こいつら」部下の1人は、黒い大地に転がる敵機の残骸を見て驚嘆した。
「約3機はニーナのお陰だけどな。1人で全滅させてやれなかった。」「それでも凄いですよ!」
「魚狩りは終わったか?」
「はいっアレックス隊長!」
「アレックとマイクの奴がへまをしてダメージを受けましたが、機体も、パイロットも命に別条はありません」
「蜥蜴(ヘルディガンナーの綽名)共が混じってたのか?」
「いいえ、魚(ウォディックだけです)」
「それは珍しいな。」
アレックスは、コマンドウルフNEWに乗る部下達をガルタイガー部隊の追撃には参加させていなかった。コマンドウルフNEWにとって最新鋭のガルタイガーやライジャーは、危険すぎる上に捕捉すること自体が困難な存在だった。
その為、彼は、敵の高速ゾイドの追撃は、自分と副官のニーナのハウンドソルジャーのみで行い、部下のコマンドウルフ部隊は、高速ゾイド以外の敵………海上から出現する海戦ゾイド部隊の迎撃にあたらせていた。
今回も、機動力でハウンドソルジャーに劣るコマンドウルフNEW部隊は、ガルタイガーの追撃ではなく、海上から出現した敵ゾイドの迎撃にあたった。海上から沿岸地帯に上陸して基地への砲撃を行う暗黒軍の海戦ゾイド部隊を撤退前に捕捉して撃破することは、旧式化しつつあるとはいえ、210kmの最高時速を誇るコマンドウルフNEWにとっては十分可能な任務だった。
だが、その任務は、容易な物でもなかった。海上から現れる敵機は、ヘルディガンナーか暗黒軍仕様に改造されたウォディックの2機種―――――――そのどちらもコマンドウルフNEWにとっては危険な敵であった。ヘリック共和国軍が最初に遭遇した暗黒ゾイドの1種 ヘルディガンナーは、運動性と速度では、コマンドウルフに劣っているが、瞬発力とパワーは侮れない。
かつてゼネバス帝国海軍が開発したウォディックは、優れた海戦ゾイドとして知られている。だが、短時間しか陸上での活動できなかった。その為、コマンドウルフ等の陸戦ゾイドの前では、良いカモでしかなかった。
しかし、暗黒軍仕様の機体は、ゾイドを強化するエネルギー鉱石 ディオハリコンの投与によって出力を強化され、陸上での行動時間が大幅に増大している等、同クラスの陸戦ゾイドにとっても油断できない相手であった。アレックスも何度か部下に損害が出たのを知っていた。
「アレックの奴は、ドジを踏んだんですよ」
「そうなのか?」
「ウォディックだからって油断してたんですよ。」
「2人は無事か?」
「はい、どちらも軽傷です。ですが、コマンドウルフはどちらも中破相当の損害を受けました。」
「中破相当か………随分と手ひどくやられちまったな。………そろそろ帰還するぞお前ら。帰って祝杯と行こう!」
「はい!」
「他部隊の人と喧嘩しないでくださいよ隊長」
「分かってるよ!ニーナ中尉」
任務を終えた青い猟犬に率いられた軍狼達は、友軍の待つ〝巣穴〟へと帰還していった。
暗黒の大地に残されたのは、破壊された黄色いトラ型ゾイドの残骸のみ。
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中編
後編の内容の幾つか(ラスボスとか)は、小学館「小学三年生」1989年8月号掲載のバトルストーリーを参考にしております。
3日後、アレックスの部隊は新たな任務に従事していた。
アレックスのハウンドソルジャーは、エントランス湾の友軍基地から離れた森林地帯にいた。
彼の乗機の周囲には、ゴジュラスの全高に匹敵する大木が無数に生い茂っていた。月明かりの下で金属を多量に含有するそれらの金属樹の連なりは、銀色の塔の如く煌めいていた。
「ニーナ、これから敵勢力圏に入る。」
アレックスは、後方の僚機に通信を送った。
「はい。隊長、バックアップは任せて下さい。」
今回の任務に参加するのは、隊長のアレックスと副官のニーナの操縦するハウンドソルジャーだけ。今回は、部下達のコマンドウルフは、参加しない。今回の任務は、数だけ多くても意味がない。
彼らに与えられた任務…………それは、偵察作戦である。
ZAC2050年代、敵陣地への情報収集は、飛行ゾイドによる航空偵察が主流であった。だが、同時に地上の小部隊による偵察も消え去ったわけではない。
飛行ゾイドによる上空からの航空偵察だけでは、得られる情報には限りがあるからである。また上空からの写真や画像による偵察は、容易に欺かれる危険性があった。例として第2次中央大陸戦争期にヘリック共和国軍が行った〝かまどとツバメ作戦〟がある。
この作戦は、ZAC2047年 7月28日にルイス大尉とマーチン少佐の2人が立案した作戦である。
この作戦は、対デスザウラー用ゾイド(後のマッドサンダー)の開発の妨害を防ぐ目的、そのゾイドの開発が完了するまでの間、設計主任である科学者 チェスター教授ら開発チームの身柄を守る目的で考えられた作戦である。
当時変人参謀として知られていた2人は、かまどとツバメ作戦の計画書を共和国軍の最高司令官でもあるヘリック大統領に提出した。大統領は、この作戦を承認し、その為に2人を将官に昇進させた。
将軍となったルイスとマーチンは、共和国軍の勢力圏にある孤島の1つに大規模な工兵部隊と共に上陸し、そこに新しい施設を次々と建設した。
その動きは迅速で、1週間で空軍のサラマンダー用の滑走路を建設し、2週間目には、地下に隠されたゾイド工場が完成した。しかし、これらの施設は、単なるダミーに過ぎなかったのである。
この基地の設営自体が帝国軍の注意を逸らす目的で行われた囮だった。彼らは、仮設トイレを多数設置し、ゴジュラス等の共和国軍のゾイドに見せかけたデコイを多数島の各地に配置し、あたかもこの孤島に1万人規模の大部隊が駐屯している様に見せかけた。
彼らの読み通り、飛来したゼネバス帝国軍の偵察機は、共和国領内に重要拠点を発見したと打電した。
帝国軍は、デスザウラーを含む4万の兵員で編成された大部隊で偽りの島に侵攻した。彼らを迎撃したのは、ルイス将軍とマーチン将軍に率いられた少数の囮部隊だけであった。
短時間の戦いの後、ゼネバス帝国の侵攻部隊は、孤島全域を完全制圧したが、得たものは何もなく、資源と兵員を消耗させただけだった。
彼らは、あたかも対デスザウラー用新型ゾイドが開発されている重要拠点に見せかける事に成功したのである。ここまで大規模なものではないにしろ、敵の航空偵察を騙す為の偽装工作や隠蔽は、前線部隊でも後方基地でも日常的に行われている。
航空偵察がその信頼性を低下させるにつれ、地上の偵察部隊による情報収集が重要視された。
そして、地上の偵察部隊は、航空偵察以上に敵部隊の激しい追撃に晒される。無事に味方のもとに収集した情報を持ち帰るには、重装甲よりも素早く走る脚が必要であった。
その為、今回のアレックス達の様に陸軍の偵察任務では、高速ゾイドが利用される事が多かった。
地球の歴史で、軍の斥候部隊が騎兵や軽車両を用いた様に機動性に優れた高速ゾイドが必要とされていたのである。
最高時速330kmを叩き出し、戦闘能力も優れたハウンドソルジャーは、この任務に最適だといえた。2機のハウンドソルジャーは、300キロ近い高速で金属樹木が林立する森を駆ける。
30分後には、彼らは偵察目標である暗黒軍の基地の目前に迫っていた。
彼らは、敵のパトロール隊に見つからない様に森に隠れて敵基地を観察した。
「空軍の奴らの情報よりも規模が大きいな。ダークホーンやアイアンコングまでいる。」
「デッドボーダーもいますね。奥には軍事工場まで……」
基地の奥に存在する軍事工場らしき施設を見て、ニーナは驚嘆を隠せない。
「あのサイズの格納庫なら、デスザウラーだって整備出来る……」
「デスザウラークラスの機体………上層部の探している最終兵器がここで開発されている可能性も高いな。」
「はい。何としても、友軍に情報を持ち帰らないと。」
この規模の基地なら、暗黒軍の〝最終兵器〟が開発されている基地の一つの可能性も低くは無かった。
「そろそろ撤退するぞ。ここは敵地だ。長居は無用だ。」
「了解です。隊長」
情報収集を終えた2機のハウンドソルジャーとそのパイロットは、撤収を開始した。
帰路は別のルートから離脱することになっていた。同じルートだと敵に見つかるリスクが増える。シールドライガーよりも小型とはいえ、中型ゾイドが動き回った跡は、見つかりやすい。
「………」
後は、友軍の勢力圏まで帰るだけだったが、アレックスも、ニーナも警戒を緩めていない。偵察任務では、帰路に攻撃され、未帰還になる事は珍しい事ではない。
かつてコマンドウルフ偵察隊のパイロットとして、偵察任務に従事していた2人は、それを十分に認識していた。
「後方より反応!敵基地の追撃部隊です!」
ハウンドソルジャーに搭載されたアクティブレーダーが後方より追い縋る敵機の反応を探知する。
「きやがったか………このスピードは……ライジャーか!」
アレックスは、敵機のスピードから、敵の機種を推測した。
厄介な敵と遭遇した。アレックスは、内心で苦虫を嚙み潰した。
ライジャーの最高時速は、320km。ハウンドソルジャーの最高速度と10kmしか違わない。
後方警戒モニターに後方の映像が表示される。
暗黒軍カラーに塗り替えられたライジャーは、闇の中では、はっきりとは見えない。
目にあたる頭部センサーは、暗闇で緑色に輝いていた。
「……幽霊かよ!」
後方から追撃してくる敵機の映像を見たアレックスは忌々しげに吐き捨てた。
後方警戒センサーからの映像には、夜の森を物凄い速さで追いかけてくる黒い影が表示されている。ライジャー隊は、2機のハウンドソルジャーを逃すまいと火器を発射し始める。
アレックスは、機体を横滑りさせ、攻撃を回避する。ハウンドソルジャーが横に飛ぶと同時にビームが先程まで機体いた空間を通り抜ける。
「ニーナ、後方にジャミングミストとフレアを散布しろ!」
「了解!」
2機のハウンドソルジャーは、尾部に装備した煙幕発生装置とマルチディスペンサーを作動させる。偵察任務の為に追加装備された使い捨ての装備である。
銀色の煙と赤い火球が、追撃するライジャー部隊と2機のハウンドソルジャーの間の空間を満たす。センサーを狂わされたライジャーは、追撃を断念した。
アレックスとニーナは、追手のライジャー部隊の追撃を逃れた。
コマンドウルフやシールドライガーなら、途中で捕捉されているか撃破されているに違いない。
ハウンドソルジャーの高性能がなければ、偵察作戦を成功させることはできなかっただろう。
部隊指揮官であるアレックスは、暗黒大陸派遣軍司令部にハウンドソルジャーの追加配備を要請した。アレックスは、2週間後には実機が到着し、早ければその1週間後には、ハウンドソルジャーだけで編成された部隊で実戦を迎えることが出来ると考えていた。
元々、コマンドウルフの後継機として開発が進められていたハウンドソルジャーは、操縦性も良好であると同時にコマンドウルフに操縦系統が近かった。
同じイヌ科型ゾイドなのだから当然のことであったが、これは、コマンドウルフの操縦経験のあるパイロットは短い訓練期間で操縦出来るようになるという利点にもなっていた。
この理由で、コマンドウルフのパイロットは、ハウンドソルジャーへの機種転換訓練の訓練期間を短縮できた。その為、ハウンドソルジャーの配備は、高速隊の内、コマンドウルフを装備していた部隊に優先配備されていた。
アレックスは、自分の部隊にハウンドソルジャーが追加配備される事を……彼の部下達もハウンドソルジャーが、自分達の乗機になる事を楽しみにしていた。
しかし、アレックスと部下達の要望が実現することは無かった。何故ならば、2週間後、新しいハウンドソルジャーが、部隊に配備されるよりも早く新たな作戦が発動したからである。
攻撃目標は、アレックスとニーナのハウンドソルジャーが強行偵察を行った森林地帯の奥の暗黒軍基地。
暗黒軍の遊撃部隊は、この基地から発進している事が偵察隊の報告で確認されていた。
この基地を破壊すれば、エントランス湾基地に対して行われてきた暗黒軍の海戦ゾイドと高速ゾイド部隊による補給作業に対する妨害攻撃も低調な物となるのは間違いなかった。
暗黒軍が中央大陸侵略のために準備しているとされている〝最終兵器〟の開発が行われている可能性はゼロでは無かった。
暗黒軍が開発しているという、〝最終兵器〟………その正体は、未だに不明だったが、デスザウラーやマッドサンダーの様な強力なゾイドではないかというのは、共和国軍最高司令官であるヘリック大統領から、一般兵に至るまでの共通見解だった。
このゾイド星(惑星Zi)の戦史において、最強兵器は、ゾイドであったからである。この法則は、地球人が来訪し、レーザー兵器や誘導兵器、パワーアシスト、電磁砲等の高度技術を伝えた後も変わっていない。
ヘリック共和国軍は、ウルトラザウルス<インヴィンシブル>を旗艦とする4個大隊を送り込み、この基地を制圧する腹積もりだった。
本来の作戦計画では、約1年前にゼネバス帝国との戦闘で5機のデスザウラーを撃破した歴戦のマッドサンダー<レディ・マーガレット>も投入される予定だったが、起動時にハイパーローリングチャージャーの出力低下というマシントラブルに見舞われた事で作戦への参加は中止となった。
「全部隊攻撃開始!」
移動司令部を兼ねるウルトラザウルス<インヴィンシブル>から攻略部隊の指揮官機に対して通信が送られた。攻略部隊が森林地帯へと突入していく。
作戦では、攻略部隊は、6つに分散し、森林地帯を突破してそれぞれ目標の基地を攻撃する事になっていた。
アレックス率いる第34遊撃小隊は、その6つの攻略部隊のどれにも参加していなかった。彼の部隊は、司令部が置かれているウルトラザウルス<インヴィンシブル>の護衛として後方に留め置かれていたのである。
「全く、俺達はどうして後ろで待機になっちまったんだろうなぁ‥‥‥退屈すぎて死にそうだ。」
アレックスは、前線に出られない事に不満を漏らす。作戦開始が分かった時点で別の不満を覚えていただけに彼の内心の不満は、倍加していた。
ニーナは、そんなアレックスを窘める。これは、よくある事だった。そんな副官について、素行不良の兄を注意する真面目な妹の様だ。と評する部下もいた。
「仕方ありませんよ。命令なんですから、隊長も軍人なんですから納得しないと。」
「分かってるよ。だが、あの一件の後じゃ、文句の1つくらいは上層部に言いたくなる。」
憮然としてアレックスはそう吐き捨てる。
「確かにハウンドソルジャーの追加配備が実現しなかったのは、納得できませんけど。」
ニーナも隊長の不満に共感できないわけでは無い。
彼の部隊には、未だにハウンドソルジャーは2機しか配備されていなかった。
ハウンドソルジャーは、コマンドウルフNEWやベアファイターNEW等とは速力が100km以上も違う。当然の事ながら、2機種と隊列を組むのは困難だ。
ハウンドソルジャーの側が速度を落とす必要がある。機動性が持ち味である高速機にとっては、それは性能を殺すに等しい。
ハウンドソルジャーの性能を十二分に引き出す為に単独運用される事が多くなっていた。アレックスも自機と副官機だけで先行して敵に打撃を与えてから部下のコマンドウルフNEWに攻撃させるという戦術を取らざるを得なかった。
その意味では、共和国軍高速部隊の数的主力であるコマンドウルフの後継機としてのハウンドソルジャーは失敗作だと言えた。
ハウンドソルジャーは、コマンドウルフの代替としては、あまりにも高性能すぎたのであった。
シールドライガーの後継機に当たるキングライガーの最高速度さえハウンドソルジャーにはわずかに劣っている。
「もう2週間あれば‥‥‥ハウンドソルジャーだけで部隊運用出来たかもしれないのに」
悔しさのにじむ声でアレックスは言った。
1週間も待てば、6機のハウンドソルジャーが本国から輸送されてくることになっていた。
もし後2週間あれば、8機のハウンドソルジャーで編成された部隊をアレックスは率いることになっていただろう。
だが、それよりも早く作戦は発動してしまった。
その為にアレックスの部隊には、指揮官機と副官機の2機しかハウンドソルジャーが配備されていないのである。
「まあ、今回は、俺達の出番はないでしょう。隊長」
「もうすぐ味方が暗黒軍の拠点に攻撃を仕掛ける筈です。」
アレックス達は、このまま自分達の出番もなく戦闘が終わると思っていた。
その予想は5分と立たず裏切られることとなる。
「第3強襲大隊が暗黒軍の奇襲攻撃を受けている模様。現在苦戦中。救援要請を求めています。」
司令部からの通信が指揮官であるアレックスの機体に入った。その内容は、友軍部隊の苦戦を知らせていた。
「第34遊撃小隊は、第3強襲大隊の救援に迎え。但し、機動力を優先してハウンドソルジャーのみで救援に迎え」
続いて、支援命令の通信が送られてくる。
味方部隊の1つが奇襲攻撃に苦戦しているのを見たインヴィンシブルの司令部は、第34遊撃小隊のハウンドソルジャー2機を救援に向かわせることにした。
ハウンドソルジャーの最高速度は、時速330km。現在のヘリック共和国陸軍が配備しているゾイドの中で最も早い。
「おい!聞いたな!ニーナ」
「はい。隊長殿!」
「俺とニーナは、第3強襲大隊の支援に向かう。お前達は、<インヴィンシブル>の護衛を継続しろ。」
2機のシェパード型高速ゾイドは、青い風となって金属樹木が林立する森へと走っていった。
同じ頃、6つに別れた、ヘリック共和国軍・基地攻略部隊の1つは、森林に潜む敵ゾイドに苦戦を強いられていた。
敵ゾイドは、凄まじいスピードで共和国ゾイドに襲い掛かった。
「どこだ!?敵はどこにいる……?うわあぁ」
1機のベアファイターNEWが爆発した。
「ライジャーだ!」
共和国兵の一人が敵機を見て叫んだ。共和国軍の前に立ち塞がった機体‥‥‥…その正体は、ライオン型高速ゾイド ライジャー。
中央大陸戦争末期にゼネバス帝国が、旧式化著しいヘルキャットの後継機として開発した機体である。
またこのゾイドは、ゼネバス帝国軍が開発した最後のゾイドでもあった。ゼネバス帝国軍に所属していた多くのゾイドと同様にこの機体も暗黒軍に接収されていた。
彼らの目の前に立ち塞がったライジャーは、暗黒軍仕様にボディを銀色から漆黒に再塗装されていた。木々の間から出現したライジャー部隊が、森林に侵攻してきた共和国軍部隊に襲い掛かる。
カノンフォートが背部の2門の大砲 重撃砲を乱射し、アロザウラーが両腕に内蔵した火炎放射器を発射する。
だが、どちらの攻撃も、ライジャーには命中しなかった。ライジャーの3連電粒子砲がアロザウラーの首筋を撃ち抜いた。
「当たれ!」
シールドライガーmkⅡのビームキャノンが火を噴く。ベアファイターNEWも電磁キャノンを発射する。だが、ライジャーの機動性の前では、それらの攻撃は見当違いの場所に着弾するばかりだった。
対照的にライジャーの攻撃は正確に敵機を捕え、共和国軍のゾイドをスクラップに変えていった。ディバイソンの17連突撃砲が火を噴いた。1機のライジャーが砲弾の嵐に捉えられる。ボディを穴だらけにされたライジャーが爆発する。
ライジャー部隊は、次々と接近戦を挑み、共和国軍ゾイドを次々と屠っていく。
「なんてスピードだ‥‥‥わあぁっ!」
「ガンブラスターだ!ハイパーローリングキャノンで連中をハチの巣にしてやるんだ!」
敵機のスピードに業を煮やした共和国軍士官の1人が叫んだ。。
ガンブラスターの背部の黄金砲―――――――――ハイパーローリングキャノンは、20門のそれぞれ威力も能力も違うビーム、レーザー、実弾砲を束ねた火器であり、1分間で3000発発射できた。
その破壊力もさることながら、連射性能も高く、弾幕を張ることでライジャーの様な高速ゾイドも撃破可能だった。
「させるか!」
ライジャー部隊は、ガンブラスターの黄金砲の脅威を十分認識していた。
ガンブラスターの金色に彩られた20門の砲口が、ライジャーが潜む森林に向けられると同時に森林から幾つもの機影が飛び出す。
直後、共和国軍部隊の只中で爆発が巻き起こる。森から飛び出したライジャー部隊は、共和国軍ゾイドに襲い掛かった。
ライジャーの牙を受けたベアファイターが崩れ落ちる。
ライジャー部隊は、森林から飛び出すと共和国軍部隊の懐に飛び込み、混戦状態を作り出したのである。
「自慢の黄金砲も、友軍がいる中では使えまい!」
ライジャーのパイロットは、右往左往するガンブラスターを横目に愛機を弾丸の様に敵部隊の懐に突っ込ませた。
これまで暗黒ゾイドの装甲を撃ち抜いてきたガンブラスターのハイパーローリングキャノンも混戦状態では、封じられたのと同じだった。
「ちぃ、友軍機が邪魔で撃てん!」
ガンブラスターのパイロットは、目の前の敵を撃てない事に舌打ちする。彼の眼の前では、ライジャーがアロザウラーを叩き伏せていた。だが、その後ろには、ベアファイターNEWがいる。
ライジャー部隊の指揮官は、混戦に持ち込むことでガンブラスターの火力と言う脅威を封殺したのである。
「共和国陸軍のゾイドで、このライジャーを捕捉できる機体等いるものかよ!」
ライジャー部隊を率いる旧ゼネバス系のパイロットは、混乱する共和国軍部隊の醜態を嘲笑いながら、引き金を引く。
今は亡い彼の祖国 ゼネバス帝国が開発した最後のゾイドであるライジャーの速度に付いていける共和国軍のゾイドは、この戦場にいないかの様である。
またアロザウラーが1機、頭部を撃ち抜かれて崩れ落ちた。ライジャー部隊だけの為にこの共和国軍部隊は、敵基地にたどり着く前に大損害を被ろうとしていた
「くっ、救援部隊は、まだ来ないのか……!」
次の瞬間、1機のライジャーが胴体を撃ち抜かれた。更にもう1機が、胴体に高速弾頭を数発撃ち込まれて爆散した。
「何が起こった?!」
「味方だ!」
「待たせたな!」
アレックスとニーナのハウンドソルジャーが救援に到着したのである。ニーナのハウンドソルジャーの背中の大型砲………ハイパービームガンの砲口からは砲煙が噴き出していた。
アレックスのハウンドソルジャーのクロスソーダーが、ライジャーの脇腹を貫く。内部機関を貫かれたライジャーが糸の切れた人形の様に崩れ落ちる。
「前は、偵察で戦えなかったが、今回は違うぜ!覚悟しな」
アレックスのハウンドソルジャーは、もう1機のライジャーに襲い掛かる。アレックスは、クロスソーダーで串刺しにするつもりだった。
そのライジャーは、回避を試みたが、完全には回避できなかった。
クロスソーダーがライジャーの右後ろ脚を抉った。
損傷して速力が低下したライジャーにコマンドウルフNEWとベアファイターNEWが襲い掛かった。至近距離から2連装ビーム砲と電磁キャノンの集中砲火を受けてライジャーは爆散する。
基地攻略部隊の陸戦ゾイドでライジャーを捕捉できる速度を有するのは、ハウンドソルジャーだけである。ニーナのハウンドソルジャーが背部の火器を発射し、ライジャーを2機纏めて撃墜する。
「凄い、これが新兵装の威力……」
ニーナのハウンドソルジャーは、アレックスの機体とは、背部の装備が違っていた。通常のハウンドソルジャーのハインドバスターの代わりにグレードアップユニットと呼ばれる強化パーツが装備されていた。
ハイパービームガンは、ハウンドソルジャー用に開発されたグレードアップパーツであり、長射程高出力ビーム砲とレーダーサーチャーを組み合わせた兵装である。
ハイパービームガンを装備したハウンドソルジャーは、火力と索敵能力が通常型の2倍以上にまで向上していた。ハウンドソルジャーを2機装備するアレックスの部隊にも、3日前に1基送られていた。
「よくやったニーナ!お前にハイパービームガンを譲って良かった。」
ハイパービームガンを装備したニーナのハウンドソルジャーの動きを見ながら、アレックスは感慨深そうに言った。
「隊長がこの装備を使ってた方が……」
「俺は、機動性が下がるのは、嫌いなんだよ。それに射撃の腕は、お前の方が上だ。お前が使用する方が合理的だ。」
ハイパービームガンは、元々は指揮官であるアレックスの機体に装備される予定だった。
だが、アレックスは、機動性、運動性が低下する事を嫌って副官のニーナの機体に譲ったのである。
またアレックスは、格闘戦を好むパイロットだいう事情もある。彼と対照的にアレックスの副官である彼女は、元々、部隊の中でも射撃の技量が高かった。
「敵が引いていくぞ!」
残り数機まで撃ち減らされたライジャー部隊の生き残りは、撤退していった。
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後編
ライジャー部隊の襲撃で損害を被りつつも共和国軍部隊は、進撃を継続した。
森林地帯のどこに敵機が潜み、油断した共和国軍の喉笛を噛み切る機会を狙っているか分からなかった。
部隊に配備されたゴルドスやゴルヘックスといった電子戦機が、レーダーで森林に潜む敵を捜索する。その中には、高速戦闘ゾイドであるハウンドソルジャーも加わっている。
ハウンドソルジャーには、索敵用のアクティブレーダーが搭載されている。
ハウンドソルジャーのアクティブレーダーは、索敵半径こそ専用の電子戦ゾイドに劣るが、限られたエリアでの索敵能力に優れていた。
「見つけたか!」
アレックスのハウンドソルジャーのアクティブレーダーが金属樹木の林立する森の中に潜んだ敵機の反応を捉えた。同じく、ニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンのレーザーサーチャーで金属樹木が林立する森の奥に潜む敵影を捉えていた。
「ガルタイガーか……」
捕捉した敵機の機種の予測がモニターに表示される。超小型荷電粒子砲を内蔵し、速度に優れたガルタイガーは、待ち伏せに最適だといえた。
森林に潜む敵機を確認した共和国軍部隊は、火力で森林諸共吹き飛ばす事で対処した。
ガンブラスターとカノンフォートが森林地帯に砲門を向ける。
「砲撃開始!」
数秒後、2機種の火力が一斉に左右の森に叩き付けられる。
爆炎が木々をなぎ倒し、燃え盛る残骸が飛び散った。
「全滅したか?」
共和国士官の1人が呟く。次の瞬間、ジャイロクラフターを装備したガルタイガー……ガルタイガーGCが森林上空から飛び出す。
ガルタイガーGCは、ガルタイガーにグレードアップパーツ ジャイロクラフターを装備した強化型である。その最大の特徴は、ジャイロクラフターによってVTOL低空飛行が可能という事である。
これを装備したガルタイガーは、陸戦ゾイドとしてだけではなく、地形を選ばず活動可能な空中砲台として敵を攻撃できた。森林地帯に隠れていたガルタイガーGC部隊は、共和国軍を襲う機会を林立する金属樹木の中で待っていたのである。
だが、彼らは、アレックスのハウンドソルジャーのアクティブレーダーとニーナのハウンドソルジャーHBGのレーザーサーチャーによって発見され、ガンブラスターとカノンフォートの砲撃によっていぶりだされる事となった。
ガンブラスターの黄金砲から発射されたビームを浴びて森林に潜伏していたガルタイガーGCが数機纏めて大破した。突然の砲撃に堪らず、ガルタイガーGCが低空から飛び出した。
1機のガルタイガーGCは、上空からガンブラスターに襲い掛かった。背部に装備した超小型荷電粒子砲が不気味に光る。至近距離から直撃を受ければ大型ゾイドでも致命傷となる威力を有していた。ガンブラスターの超電磁シールドの展開も間に合わない。
ガンブラスターが打撃を受けるかと思われたその時、アレックスのハウンドソルジャーが跳躍した。
ハウンドソルジャーのクロスソーダーがガルタイガーGCの胴体側面を貫いた。
胴体を貫かれたガルタイガーGCは、地面に叩き付けられて機能停止した。ニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンの一撃で1機のガルタイガーGCを葬っていた。
残り2機となったガルタイガーGCは、ジャイロクラフターを全開にして離脱を図った。
ガンブラスターのハイパーローリングキャノンを受けて上空で爆発炎上し、僅かに残った燃え盛る残骸が森林に落下した。森林に潜む脅威は完全に排除された。
森林地帯を進撃する5つの共和国軍部隊は、森林を抜け、暗黒軍基地を包囲した。
ゴジュラスmkⅡ量産型とディバイソン、ガンブラスターが基地守備隊に対して砲撃を開始する。
上空をスカイブルーのテラノドン型飛行ゾイド レイノスの飛行隊が乱舞した。
レイノス隊は、急降下し、胴体の3連装ビーム砲で機銃掃射を行った。
弾着観測機のレイノスの観測データを受けたウルトラザウルス〝インヴィンシブル〟の遠距離からの弾着観測射撃も開始された。
基地に次々と砲撃が行われ、暗黒軍基地守備隊のゾイドと人員、防衛設備に多大な損害を与えていく。
慌てて格納庫から発進した守備隊のヘルディガンナーが次々と砲撃の前に蹴散らされる。ダークホーンが、ガンブラスターのハイパーローリングキャノンを受けて火を噴いて崩れ落ちる。
ゴジュラスmkⅡ量産型の砲撃を頭部に食らったデッド・ボーダーがもんどりうって倒れた。
砲撃がやむと同時に基地内にシールドライガーmkⅡを指揮官機とする高速部隊、アロザウラーとベアファイターNEWを中核とする歩兵部隊が突入した。
シールドライガーmkⅡが瓦礫に潜んでいたガルタイガーの超小型荷電粒子砲を食らって撃破される。
すかさず、周辺の僚機が集中砲火を浴びせてガルタイガーを撃墜する。
アロザウラーの火炎放射器が砲台を次々と破壊していく。そのアロザウラーをデッド・ボーダーが接近戦で撃破する。
共和国軍のゾイド部隊が、暗黒軍と交戦する中、アレックスのハウンドソルジャーとニーナのハウンドソルジャーHBGも活躍していた。アレックスのハウンドソルジャーがクロスソーダーでダークホーンを貫く。
アイアンコングmkⅡ量産型が長い腕でアレックスのハウンドソルジャーに殴り掛かる。
「当たるか!」
ハウンドソルジャーは、後退して振り下ろされた鉄拳を回避する。
「今だ!ニーナっ」
「はい!」
ニーナのハウンドソルジャーHBGのハイパービームガンがアイアンコングmkⅡ量産型の胸部装甲を撃ち抜いた。デッド・ボーダーがGカノンを放つ。だが、ハウンドソルジャーは、高機動でそれを回避、クロスソーダーで首筋を貫く。
「このままいけば、基地の制圧も近いか。」
アレックスは、周辺の戦況を見て呟く。彼の周りでは、共和国軍のゾイドが次々と暗黒軍守備隊のゾイドを撃破していた。
このままいけば、暗黒軍基地を占領するのも時間の問題に思えた。次の瞬間、彼らの頭上は、眩く太い光の奔流が通過した。
「………荷電粒子砲!?」
それを見たアレックスは、思わず叫ぶ。
その閃光は、後方で支援砲撃を行っていたゴジュラスmkⅡ量産型とガンブラスター、ゴルドスが部隊毎壊滅した。残されたのは、どろどろに溶けた地面と赤熱する破壊されたゾイドの残骸のみ。
「デスザウラーだ!暗黒軍の改造機だ!―――――うぁああっ!」
友軍機からの通信は悲鳴を最後にぷっつりと途絶えた。その直後、アレックスとニーナは、基地の格納庫から異形の敵機が出現するのを見た。
共和国軍部隊の目の前に改造デスザウラー デスキャタピラが出現したのである。
その改造デスザウラーの形状は、従来のデスザウラーと大きく異なっていた。まず、機体の各所が、蛍光緑色に輝いていた。
黒い装甲と相まってそれは、ニカイドス島で共和国軍が初めて遭遇した暗黒ゾイド デッドボーダーとヘルディガンナーを連想させる。
それらの暗黒ゾイドと同様にゾイドを強化するエネルギー鉱石 ディオハリコンを投与された機体の特徴である。
その両腕部には、アイアンコングの部品が移植され、マニピュレーターに改造されていた。両肩には、ビームランチャーとハイブリットバルカンが装備されている。そして両脚部と胴体には、大型のキャタピラが装備されていた。
「デスザウラー……!」
「改造機か!」
突如として基地から出現した改造デスザウラーの異形の巨体を見た攻略部隊の共和国軍兵士たちは、動揺を隠せない。
第1次暗黒大陸上陸作戦では、飛行改造されたデスザウラーが航空支援のマッドフライを撃墜し、艦砲射撃を行っていたウルトラザウルス<インドミダブル>を強化された荷電粒子砲で撃沈していた。
最初の暗黒大陸上陸作戦を頓挫させたこの改造デスザウラーは、デスエイリアンと呼ばれる機体であった。
更に第二次暗黒大陸上陸作戦でも、デスクラッシャーという巨大な改造デスザウラーが共和国軍に被害を与えていた。
共和国軍兵士にとって未知の高度な技術で強化されたデスザウラーは、恐怖の対象であった。
暗黒軍によって強化されたデスザウラーは、基地に侵攻してきた共和国軍に襲い掛かった。
デスキャタピラの右肩のハイブリッドバルカンが火を噴いた。直撃を受けたゴジュラスmkⅡ量産型の上半身が蜂の巣にされた。左肩のビームランチャーが連射され、もう1機のゴジュラスmkⅡ量産型の頭部を吹き飛ばす。
2機ゴジュラスmkⅡ量産型が地面に崩れ落ちる。デスキャタピラの両腕部に内蔵されたビーム砲が連射され、アロザウラーやカノンフォートが次々と破壊された。デスキャタピラの胴体に砲弾が数十発着弾し、爆発した。
その攻撃は、大したものではなかったが、デスキャタピラの動きを止める役割を果たした。
それは、ディバイソンの17連突撃砲による攻撃。
即座にディバイソンが頭部の超硬角を振りかざしてデスキャタピラの無限軌道付きの脚部に突進する。ディバイソンは、前のゼネバス帝国との戦争後半のデスザウラー無敵時代に首都を失ったヘリック共和国軍が、デスザウラーを撃破する為に開発した重突撃ゾイドである。
ディバイソンは、デスザウラーを撃破する事は困難だが、ツインクラッシャーホーンを振り立てての突進は、条件によっては、その重装甲を貫くことができた。
だが、通常機よりも強化されたデスキャタピラに通用するかは未知数であった。デスキャタピラは、ディオハリコンの投与によって出力を強化されている。
デスキャタピラは、ディバイソンの突進を両腕で受け止めるとビームランチャーで頭部を吹き飛ばした。頭部を失ったディバイソンは、その場に擱座した。
ガンブラスターが砲撃を浴びせようとしたが、それよりも早くハイブリッドバルカンが火を噴いた。
「くっ!これでは砲撃できん!」
ガンブラスターは寸前で電磁シールドを展開してそれを防ぐ。だが、防戦一方では、デスキャタピラを撃破できない。
このままハイブリッドバルカンの猛射を浴び続ければ、ガンブラスターの電磁シールドといえど、持ち応えられない。
次の瞬間、デスキャタピラの胴体に高出力ビームが着弾した。デスキャタピラのパイロットは、敵機の姿を探す。敵機は、デスキャタピラの正面にいた。
攻撃を行ったのは、ニーナのハウンドソルジャーHBGだった。更にアレックスのハウンドソルジャーがハインドバスターと三連ブレストボンバーをデスキャタピラに叩き込む。
「こっちだ!タンク野郎!」
「隊長!」
デスキャタピラの目の前に2機のハウンドソルジャーが立ち塞がった。
アレックスのハウンドソルジャーが背部のハインドバスターを連射した。同時にニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンを発射する。ビームが次々と着弾する。
だが、アイアンコングの装甲にダメージを与えられる威力のビームも、デスキャタピラの重装甲には、大した損傷を与えられない。
「ちっ、なんて重装甲だ……くっ」
アレックスのハウンドソルジャーにデスキャタピラのハイブリッドバルカン掃射が浴びせられる。
アレックスは、寸前で機体を後退させる。後一瞬でも判断が遅れていたら、彼とハウンドソルジャーは蜂の巣にされていただろう。
「あの改造デスザウラーは、装甲が強化されている様です。っ!あのキャタピラも重量増加に対応する為のものだと思います!っ」
攻撃を回避しながら、ニーナが報告する。
「ハウンドソルジャーの火器じゃ、奴の装甲を撃ち破るのは不可能か……ならば!」
アレックスは、砲撃でデスキャタピラを撃破する事を諦めた。彼は、ハウンドソルジャーの装備火器では、デスキャタピラの重装甲を撃ち抜くのは、不可能だと判断していた。
「クロスソーダーを使う。こいつの槍は、大型ゾイドの装甲を突き破れる。」
「隊長……」
「ニーナ、援護を頼む」
「分かりました隊長!」
2機の蒼き猟犬は、同時に動いた。デスキャタピラのビームランチャーが火を噴く。
アレックスのハウンドソルジャーは、回避する。更にデスキャタピラはビームランチャーを乱射しようとする。だが、ビームランチャーが発射されることはなかった。
デスキャタピラが怒りの咆哮をあげる。アレックスのハウンドソルジャーの頭部側面に装備された2本の特殊合金製の槍 クロスソーダーが展開される。
槍を掲げた騎士さながらに猛スピードでハウンドソルジャーは、突進する。ハウンドソルジャーHBGがハイパービームガンで援護する。デスキャタピラの巨大なマニピュレーターがアレックスのハウンドソルジャーに振り下ろされる。
「当たるか!」
ハウンドソルジャーはその攻撃を横に飛んで回避する。次の瞬間、アレックスのハウンドソルジャーが跳躍、デスキャタピラの胸部にクロスソーダーを突き立てた。
素早い一撃にデスキャタピラは、反応する事も出来なかった。
加速されたクロスソーダーの一撃は、デスキャタピラの重装甲を突き破り、内部機関を貫いていた。デスキャタピラの悲鳴が炎上する基地に木霊する。
「後は、任せたぞ!」
アレックスのハウンドソルジャーがクロスソーダーを引き抜くと同時にデスキャタピラは、悲鳴を上げて悶える。
「隊長!」
ニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンを連射する。
「今だ!」
更に友軍のガンブラスター2機のハイパーローリングキャノン、通称黄金砲が火を噴いた。集中砲火を浴びたデスキャタピラは、爆発四散した。
デスキャタピラが撃破された事で、暗黒軍の守備隊は総崩れとなった。
共和国軍部隊は、再び体制を立て直し、基地への侵攻を再開した。
敵のドーベルマン型高速ゾイド ジークドーベルの奇襲攻撃によって旗艦のウルトラザウルス<インヴィンシブル>が損傷を被った事による指揮系統の混乱というアクシデントに見舞われたものの、共和国軍は、暗黒軍基地を制圧した。
その後、その高性能が認められたハウンドソルジャーは、キングライガーと共に新世代の高速ゾイドとして優先して生産され、共和国軍高速部隊に配備された。
シェパード型高速ゾイド ハウンドソルジャーは、新生共和国軍の頼もしい番犬として彼らの進軍を助けたのである。
暗黒軍のドーベルマン型高速ゾイド ジークドーベルとは、同じイヌ科ゾイドであることと性能・運用方法が似通っていたことから、ライバル機として暗黒大陸の戦場で度々激突したことで知られている。
但し、その高性能と引き換えに量産性ではコマンドウルフに劣り、コマンドウルフの量産性と整備性には叶わなかった。
その為、ZAC2056年の大陸間戦争の終戦まで、共和国軍高速部隊は、コマンドウルフのマイナーチェンジ機であるコマンドウルフNEWを戦場に配備し続けた。
その意味では、コマンドウルフの後継機種としては、成功したとは言い難い機体でもあった。
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