異生神妖魔学園 (さすらいのエージェント)
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設定資料集
登場人物1 生徒陣(2年・紺子側)


あらすじにあるように応募されたキャラを載せます。もちろん自分のキャラも入れます。
まずは紺子たち主人公側からです。


出雲(いずも) 紺子(こんこ)(さすらいのエージェント)

 

【挿絵表示】

 

性別

 

年齢

外見14歳、実年齢1164歳

 

種族

妖狐

 

容姿

人間の少女の姿をし、金髪のショートボブに狐耳が生えている。尻尾は1本。胸元にリボンをつけたレディースの半袖シャツは6つあるボタンのうち腹の部分を3つ外しており、へそ出し状態。赤いスカートを履き、靴はスニーカー。

 

性格

怒りっぽいが、臆病かつ泣き虫。困っている人を見捨てられない優しい一面も。

 

概要

この物語の主人公だが、非常に口が悪い。いつも売られた喧嘩は買うが、逆に泣かされている。人外のくせにお化けが大の苦手。パジャマを着る時はなぜかズボンを履かず、パンツ丸出し。人間や武器に化けられる。ボケとツッコミの役割を果たすが、ボケの方が多い。人生ゲームが大好き。

登校手段は基本自転車だが、遅刻した際や冬の場合は別。決してバカではないものの、文系が得意で理系は苦手(特に計算)、体育は平凡といった何とも言えない感じ。

何でも消せる消しゴムを持っており(紺子はこれを透明人間製造マシンと呼んでいる)、相手を透明人間にすることもできるが、持ち主の紺子しか使えず、紺子以外の者が使おうとすると電気が走る。手先は以外と器用で、相手の体を自由自在に物質変換できる。やはり狐であるがため、油揚げが大好物。

 

 

 

赤川(あかがわ) 龍哉(たつや)(青龍騎士さん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

龍族

 

容姿

赤いショートの番長姿。

 

性格

仲間思いの熱血漢で文武両道。怒らせると止められなくなり、仲間を傷つけたら容赦ない攻撃をしてしまう。

 

概要

第一人称は俺。紺子のクラスメイトで学園の番長。何よりも学園を大事にしており、学校中の仲間を大切なダチだと思っている。それによって多くの男子生徒が彼の部下に入っている。

また、他の部にも助っ人で行くことも多く、悩み相談も開いている。

紺子とは親友関係で牙狼(がろう)とは先輩後輩関係だが、牙狼のストッパーの役目も持っている。

 

 

 

・ディーゴ・黒鉄(くろがね)(ヒビキ7991さん)

 

性別

 

年齢

14歳(実際は250歳)

 

種族

付喪神

 

容姿

褐色の逞しい身体つきで黒い瞳。黒い服と黒い帽子に白手袋と、見た目はまんま蒸気機関車の車掌さん。

 

性格

律儀で礼儀正しいが、口が悪いかなりの頑固者。たまに古い言葉や方言を使う。

 

概要

一人称は俺。付喪神になる前は蒸気機関車D51として日本の鉄道で働いていた。非常に力が強く運動神経抜群。得意科目は体育と歴史。それ以外は平均よりやや低め。怒ると鼻から白い煙を出し、まさに暴走機関車の如く突進してくる。その破壊力は校舎の壁に穴を開けるほど。紺子とはよく喧嘩するが、すぐに仲直りする。大の鉄道好きで、特に蒸気機関車には目がない。

 

 

 

(くろがね) ライエル(天羽々矢さん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

妖狐(黒狐)

 

容姿

黒く少しボサっとしてるショートヘア。常に狐耳と尻尾があるがこちらも黒い。瞳は緑。

少々暑がりである為か基本的に上着は薄手のTシャツで白や黒といった地味目な色の物を良く着る。下はカーキのカーゴパンツ。

また赤い紐をつけた日本刀を常に持ち歩いている。

 

性格

気弱で内向的だが、仲良くなった物とは普通に会話でき笑顔も見せる。

いつかは弱い自分から抜け出したいと考え、常時帯刀もその一環らしい。

 

概要

一人称は《僕》。紺子のクラスメイトだが紺子とは話した事はない。

学校での成績は並だが、手先が器用かつ数学に関してはずば抜けて成績が高く通学に使用するスケートボードも彼が独自に改造しモーターをつけ自走できるようにしたもの。

かつて2本の尻尾を持つ兄『ヤイバ』がいたが目の前で落雷により死亡、そのせいか雷にトラウマがあり音を聞いただけで恐慌状態に陥るほど。

なお、持ち歩いている日本刀は死亡時の兄の持ち物、つまり兄の形見でもある。

狐には珍しく油揚げをあまり好まずチョコミントアイスが好物。

 

 

 

大蔵居(おおぐらい) 仁美(ひとみ)(星クーガさん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

食人鬼

 

容姿

黒髪黒目のちっこい女の子。美しいより可愛い系。人と全く変わらないが唯一違うのは歯で鋭い。

 

性格

のんびり屋で危機感がない。人によく甘える。よくお腹をすかせてごはんをねだっていることもしばしばある。

 

概要

食人鬼だが別に人以外も食べる。というか何でも食べる。特にこれといってなにかができるとかはないが歯が鋭く、顎の力も強い。しかも甘える際に甘噛みをするものだから痛くてしょうがない。

 

 

 

竜宮寺(りゅうぐうじ) (つかさ)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

ドラゴン

 

容姿

人間としての姿は、黒髪のオールバック、縦長の瞳が特徴的。

 

性格

乱暴でツンデレな俺様系男子。

 

概要

竜宮寺家…世界に名を轟かせる大財閥の一つで総資産は数千億とも言われる家の長男で跡取り息子。俺様系男子で、荒っぽい口調が目立つが、実際は優しい性格だったりする。何故か変なことわざを多用する。「財閥の息子だから…」などの偏見を嫌い、影で努力していたりする。

ドラゴンとしての姿は、蝙蝠に似た巨大な翼、禍々しい鱗を並ばせた黒い体躯で紅眼の西洋龍。灼熱の炎をはいて攻撃する。

 

 

 

三頭(みがしら) 獄宴(ごくえん)炎宴(えんえん)死宴(しえん)(スコープさん)

 

性別

男(別人格は女とオネエ)

 

年齢

14歳

 

種族

ケルベロス

 

容姿

黒のフード付きパーカーに黒のダメージジーンズ。パーカーの下は裸なので裸パーカースタイル。犬耳、犬尻尾、髪の毛全て黒。瞳のみは地獄の業火の如く紅い。両肩に犬の腹話術の人形をつけている。

 

性格

人骨に並々ならぬ執着を見せるものの(別に人骨じゃなくても良いが)優しいコミュ障。女人格は淡々としているが優しく、オネエ人格は気に入った人物に対してヤンデレレベルで入れ込む。ヤンデレと言う訳ではない。

 

概要

多重人格者。主人格として獄宴。服人格は女の炎宴と、オネエの死宴。

服人格は腹話術の人形を使って話している。獄宴、炎宴、死宴は互いの存在を理解しあっているため、主導権の奪い合いなどは起きない……はず(好みはよく割れる)。

会話をする際には、腹話術の人形が1人でに動き出す。右肩が炎宴、左肩が死宴の人格が入っている。

 

 

 

魚岬(うおさき) 辰美(たつみ)(鳴神 ソラさん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

人魚

 

容姿

身長が180センチもあり、深い藍色の膝まで来る髪に青い瞳、腰から下が青色の魚の下半身になっている。胸がGはあり、それにより制服を着ていると苦しいとのことで胸元が見えるくらいにボタンを外してて、下は尾びれがギリギリしか見えないスカートを履いている。

 

性格

世話好きで惚れたらとことん尽くすタイプ。

 

概要

紺子と同じ同級生の女の子。

1年の時に困っていた所を紺子に助けられて以来、紺子に惚れて彼女に何かと世話したりしている。

一人称は私、二人称は紺子は様付けで、他の人はさんづけ。

人魚だから泳ぎが普通に得意でどんな激流でも普通に泳げるとのこと。

魔法を使えるらしく、浮遊魔法で地面から少し浮いて移動しているが移動の仕方でラミアと勘違いされたりしている。

一応、移動用のスケボーがあるが止めにくいのと悪路とかの揺れで酔いそうで魔法が使えない時にしか使わない。

天然ボケで紺子のことになるとさらにボケが加速する。

名前がなんで辰美かは龍ぐらいに強くなれと親がつけ、ならばと紺子のためにトレーニングルームに通って大抵の重い人物でも持ち上げちゃうくらいに力がある。

ちなみに食べても太らないタイプで普段浮遊魔法を使ってるのも含めて結構な大食漢で自分で大量のお弁当を作ったりしてて紺子に彼女が食べれる範囲で油揚げを使った料理を作って持ってきている。

 

 

 

鬼灯(ほおずき) 冷火(れいか)(エイリアンマンさん)

 

性別

 

年齢

11歳

 

種族

魂喰い鬼

 

容姿

幼い少女の姿で、黒髪黒瞳の美形の顔つきをしている。全学年最低の身長である。その為長袖制服では腕が通りきらず、袖の先をいつもぶらぶらと揺らしている。S()()()()()()()()()()

 

性格

物静かで、周りとはあまり関わりたくない。特に用もないのに話しかけられたり、ちょっかい掛けられたりするのが嫌。誰かに助けを求められてもスルーすることが多い。

 

概要

飛び級で入学した天才児。魂喰い鬼の父と人間の母の間に産まれたハーフであり、その上可愛らしい事から学園のマスコットとして注目を浴びるが、本人はうざいと思っている。こう見えてファンタジー小説『メリーとアイズリー』シリーズを出版し、世界的大ヒットを記録させる程の天才小説家でもある。話し方は常におどおどとしながらの敬語だが、心の中ではかなり口が悪い。心の声が表に出ないかいつも心配である。我慢の限界が来たら、本来の口調が出て逃げ出す。そうなった原因は過去に起きたとある事件のせいだが、本人は信じられる人にしか話したくないようだ。

魂喰い鬼はその名の通り、魂を喰らう鬼であり、死者の魂を食べる事でその力と寿命を得てきた。彼女は未だに魂を食べてはいない。しかし、その素質は歴代最強と言われている。

趣味は読書と小説執筆であり、毎日ネタを探して歩いている。

一人称は「冷火」。二人称は「あなた」だが、本来の口調に戻ると「お前」あるいは「アンタ」になる。

 

 

 

四郷(しごう) (らん)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

シュゴーラン

 

容姿

黒いナマズの柄が特徴的な革ジャンと黒シャツ。黒のホットパンツとムチムチの健康的な生足。そして小さな翼とヒレがあり、髪と瞳は黒い。髪型は活発的なセミショート。

 

性格

明るく元気でキスと体育と混沌様が大好きな普通の女の子。

 

概要

かの邪神の化身に創られた生命。その神の名はNyarlathotep……黒神(くろがみ) 無亞(ないあ)と同じ存在である。違う化身ではあるがかの神である事に変わりはない……。

ゆえに

殺せと言われれば殺す。

盗めと言われれば盗む。

壊せと言われれば壊す。

侵せと言われれば侵す。

悪戯、遊戯、あらゆることを「やれ」と言われれば敬意と尊敬と信仰心を持って行う……。

しかし、キスは別。朝はおはようのキス、昼はいただきますのキス、夜はおやすみなさいのキス。例え教師だろうと、先輩だろうと、後輩だろうと、喧嘩相手でも、キスをする。誰か止めて。

そして、普段はその狂気的信仰心は見せず、創造主から課せられた秘密の命令……『自由に生きろ』という命令を実行し続ける。可愛いものは大好き。

特技というか、種族としての攻撃方はキスで窒息させる事。その時、何故か鼻で呼吸が出来なくなるらしい……本人曰く鼻で呼吸が出来なくなるキスがあるらしいが真偽は不明。なお、創造主はキスで肺を引きずり出すらしく、彼女はその領域を目指している。

余談だが紺子をこんこんと呼ぶ。

 

 

 

・セー・シレイン(スコープさん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

セイレーン

 

容姿

美しく、流れる様な青髪。鳥の様に鋭い赤い瞳。鳥の翼に女性的な顔立ちをしている。服装は特にコレと言った物を着ている訳ではなく、紺子達の世界では有名なユニ○ロ的な服ばかりを着ている。

 

性格

卑屈でネガティブ。笑うことはあれど、それは自らを嘲笑う時がほとんど。

 

概要

とても歌が上手く、美声であり、子守唄を歌えば喧嘩が収まるほど。よく人がいない屋上で歌っている。しかし、自分の女性の様な歌声や容姿、さらには性別にさえ強いコンプレックスを抱いており、誰かにその声を聞かれる事を酷く嫌う。

その理由はひとえに世間一般が抱く【セイレーンは女であり、海難事故を起こす存在である】という点である。幼少期はセイレーンでも数十億分の一で生まれる男児という事もあり、「セイレーンなのになんで男なの?」「声だけ女の子っぽいなんて変なの」などと、イジメや差別の対象にされ続けてきた。さらに、歌を人を狂わせるためでなく、文字通り人のために歌ってしまうほど優しかったがために同族からも「お前はセイレーンじゃない」と忌み嫌われ、長い間【1人ぼっち】だった事が起因する。しかも、家族全員からも男である彼は拒絶されている。故に、仲睦まじい家庭にも憧れと嫉みを抱く。

 

 

 

山如(やまごとし) 許人(きょひと)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

14歳(0を2つ取っている)

 

種族

だいだらぼっち

 

容姿

身長6.5メートルのチビ。服装は緑のコートと青のズボン。顔は強面で、パッと見威圧感満載。肩にリスを乗せている。

 

性格

穏やかで臆病。お花大好き。

 

概要

だいだらぼっちの中ではチビもチビ。ここからもう身長が伸びないらしく、成長期は既に終わってしまったいるとの事……第二次成長期が来たらだいだらぼっちは基本的に150メートル前後になるそうで、大人は基本的に1000メートル超え……うん、チビだな。

漫画とかアニメでは多分常に顔とかがフェードアウトしているキャラ。花と小さな生き物が好きで良くリスと戯れながら花を愛でている。彼女(八尺様)持ち。リスの名前はシマ。

一人称は僕、二人称は君、三人称はあの人など。

 

 

 

彼方(かなた) 高見(たかみ)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

13歳

 

種族

八尺様

 

容姿

白い帽子と白いワンピース姿で身長6メートルな巨大八尺様。黒いロングヘアーと黒い瞳は丸く清楚な印象がある。

 

性格

彼氏以外には素っ気なく、冷めた態度だが、彼氏に対しては少し話しかけられただけで「ぽっ」と言いながら頬を染める。デレデレ。

 

概要

八尺様の中でもかなりの高身長。彼氏の許人と違い「種族中でとても大きい」という特徴がある。互いに身長が近く、共に身長に悩みがある事から接点が多くなり、恋愛に発展した。リア充爆発しろクソが。

普段から許人とべったりとくっついており、もう何処かの幸せセットのオモチャレベルでくっついている。バカップルかな?

趣味は少年観察と彼氏とくっつく事。最近、互いの両親に挨拶に行ったとかなんとか……。

ちなみに胸はD。

 

 

 

雨野(あまの) 龍華(りゅうか)(深緑 風龍さん)

 

性別

 

年齢

14歳(実年齢は不明。恐らく数万年は生きてる)

 

種族

龍神族

 

容姿

青髪のロングヘアだが、身長は藤井(ふじい)一海(かずみ)と同じ。青系の色が好きなのか、服装は青いTシャツとスカートで、龍と炎の絵柄がある。プッツンとキレると赤髪になり、服もスカートも真っ赤に変色するという謎の仕様になっている。尻尾は青と赤の2本になっている。

意外と胸は大きく、Gカップはあるが、サラシを巻いてるため、Cカップだと全員が認知してる。

 

性格

紺子と同じぐらい口が悪いが、根は優しく、仲間思い。一度キレるとヤバいことになるが、水を被せれば収まる。だが仲間が傷つけられたら、地面からマグマを吹き出し、傷つけた相手をボコボコにするまで収まらなくなる。というかそこまでキレたらそばにいるだけで熱中症になる。

 

概要

一人称は俺で、格闘技の大会で最年少世界一になった程の有名人。様々な格闘術や拳法を習ってはいるものの、龍哉に対しては兄貴と呼んでいる。

一海とは幼馴染というか腐れ縁で、今働いてるカフェで紺子と一緒にバッタリと会うことも。

親は意識不明で病院にいるためか、とあるカフェで働くことになり、いつの間にかカフェのマスコットキャラになっている。

彼女が作るコーヒーは最悪だが、紅茶は一級品で、紅茶だけ淹れさせている(マスターはその逆)。

料理もちゃんと作れる。たまに紺子の家に来て、差し入れすることもある。というか弁当も作ってあげることも。

バカではないものの、理系はチンプンカンプンで、成績は理系だけは低く、体育系は高く、後は平均という、何とも言えない感じ。

 

 

 

信楽(しがらき) 一生(かずき)(ハレル家さん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

化け狸

 

容姿

ボサボサの茶髪に琥珀色の瞳をし、狸の耳と尻尾が特徴的な青年。主に甚平を着ている事が多い。余談だが、彼の尻尾の柔らかさは曰く『人をダメにするクッション並』らしい。

 

性格

気さくで人好きされやすい明るく朗らか、いわゆる『天然ボケ』で後先を考えない一面もあり、周囲のツッコミを買うこともしばしばであるが、クラス内ではムードメーカー。

 

概要

日本三大狸話のひとつであり、他の2つと異なる趣を持つ『松山騒動八百八狸物語』に見られる化け狸の一族。見識を広めるために四国から出てきた。学力はお世辞にも高いとは言えないが、化ける技術は高く、格上でも騙されることが多い。

化ける能力を扱い、時には騙し、時には知恵で出し抜き、時には実力で勝つなど機転が回る臨機応変な動きを見せる。

また、狐と狸関係からか、紺子のライバルでもある。

 

 

 

大壁(おおかべ) 盾子(じゅんこ)(ハレル家さん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

ぬりかべ

 

容姿

ウェーブのかかったショートボブで色は美空色。瞳は緑色。白色に薄く茶色の斑点模様の入った大きな垂れ耳と、小さな尻尾を持つ。服装は小豆色のスマートで少し短めな長袖ワンピースで、ワンピースの全面と襟は、薄いピンク色に分かれている。上着の下には白いシャツのようなものが、ワンピースの下からは白いスカートが覗く。足元は、黒い靴と白い三つ折りソックス。そして、見た目よりも成長した自己主張の激しい2つが……ロリ巨乳である。ロリ巨乳である(真顔)

 

性格

天然で『無垢』という言葉が似合う純粋な性格。見た目に反して母性が強く、どんな人物でも慈愛を持って接する心を持っているが、本気で怒ると誰よりも怖い。

 

概要

幼いながらも周りの人達に慈愛を振りまく見た目小学生五年生の(ロリ巨乳な)少女。

本来、ぬりかべのイメージは水木しげるで有名なこんにゃくのような存在だが、彼女は外国にあるぬりかべのイメージから反映された……『外国のぬりかべは白くて大きな犬』である。

壁を作る能力を持ち、壁の大きさは自由自在で空気を固めて透明な壁を作ったり、校舎の壁や地面から壁を草木のように生やして出現させたりできる。材質は出した壁により、土なら土の壁、鉄なら鉄の壁、鉄から土の壁は出せない。火や水も壁にできるがかなりの量が必要となる。また、空中で壁を作って固定すると足場になったりと応用性が高い。本人の意思で固定を解除でき、解除すると地面に落下する。

ただし、彼女を怒らすと壁が無制限に出現し、圧し潰されるまで高速で襲いかかってくる。唯一の対処法は彼女に誠意を込めて謝り、説得して許してくれるようにするしかない。

余談だが恋愛面は鈍いが、好きだと自覚したら恥ずかしがる。



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登場人物2 生徒陣(1年)

入学してきたキャラですが、レクリエーションで出す予定です。


・メリー・西藤(さいとう)・レイジア(ヒビキ7991さん)

 

性別

 

年齢

13歳(実際は5歳)

 

種族

アンドロイド

 

容姿

茶色のツインテールに青い瞳。白黒のミニスカメイド服に白いハイソックスとガーターベルトを身に付けている。

 

性格

少々内気でドジを踏みやすいが、仕事は最後までやりきる頑張りやさん。

 

概要

愛称は《メリーサ》または《メリーさん》。元々とある屋敷の主人が手伝いとして購入したメイドロボットだったが、ある日彼女の主人が突如行方不明となり、それからずっと主人を探し続けている。料理が大好きで、得意料理は主人の大好物だったというオムライス。ドジっ子なところが彼女の人気に火を付け、隠れファンが大勢いるとかいないとか。密かに牙狼に好意を寄せていて、牙狼の幼馴染の紺子を勝手にライバル視している。

 

 

 

・ココ・エンチャントレス(ODA兵士長さん)

 

性別

 

年齢

見た目、年齢は約8歳(実年齢は13歳)

 

種族

魔法使い

 

容姿

透き通った青の大きな瞳、白に近い金色(プラチナブロンド)の腰まで伸びる長い髪が特徴の"幼女"(←ここ重要)

身長はかなり低め。

 

性格

バカ。というかアホ。ド天然。

人懐っこいがゆえに人に騙されやすい。

バカにされると怒る。挑発に乗りやすい。

放っておけない妹系女子。

 

概要

フランス生まれ、日本育ち。

歴史ある魔法使いの名門、エンチャントレス家の三姉妹の末っ子。

お母様やお姉様達のような立派な魔女を目指して日々努力している。でもその努力の方向はよく間違える。

血筋のおかげか、潜在能力は高い。しかしその使い方を知らない。たまに暴走する。

 

 

 

藤井(ふじい) 一海(かずみ)(深緑 風龍さん)

 

性別

 

年齢

13歳(実年齢514歳)

 

種族

妖狐

 

容姿

黒から赤のグラデーションの短髪で狐耳が生えており、童顔。首にチョーカーを付けており、夕日が描かれた半袖と黒いチノパンを履いているためか、男性にしか見られていない。尻尾は9本だが、1本だけ雪のような白い尻尾がある。

 

性格

小悪魔っぽい性格をしている。しかもシリアスブレイカーなのか、鬱な展開になりそうになるとその空気を壊している。しかも空気をしっかり読んでる上でやってるため、質が悪い。

 

概要

ボクっ娘で、かわいい人なら同性でもOKなのだが、イケメン、または筋肉質(特に筋肉モリモリマッチョマンのような人)は苦手意識がある。

両親はすでに他界しているが、現在は紺子の家に同居している。普段は怒らないようにしているらしいが、怒る自分が嫌いのようで、その理由は顔に刻印のようなものが浮かび上がり、対象者のトラウマを引きずり出してしまうためらしい。

1人になるのが嫌で、常に誰かと一緒にいたいと思っている。

登校手段は自転車で、好物はブリとフルーツ全般。苦手なものはなぜか油揚げ(いなり寿司は平気)。成績は優秀で記憶力が高い。足技を多く覚えているのか、常に足を使って戦う。

玉藻前の血を受け継いでおり、尻尾が1本だけ白いのはその力を制御するため。怒ると他の8本と同じ色に戻ってしまうので、自分が自分でなくなることを恐れている。

 

 

 

黒神(くろかみ) 無亞(ないあ)(スーパーセルさん)

 

性別

 

年齢

外見年齢は12歳ほど。実年齢は不明だが万単位で生きている。

 

種族

旧神

 

容姿

髪型はセミロングの黒髪。女顔な、いわゆる男の娘。目は白目の部分が黒、黒目が黄色になっている。基本的にはその日の気分によって学ランかセーラー服を着ている。戦闘など荒事をするときには触手が生えてくる。

 

性格

基本的に気さくで明るいが、時折人をバカにしたような嘲笑を浮かべる。割と腹黒い。

 

概要

とある邪神の化身のひとつ。普通に接していれば基本人畜無害。ただし嫌いなやつにはかなりの頻度で悪戯をしかける。それも笑って流せるようなものから精神崩壊しかねないようなものまで。余程のことをやらかさない限り嫌われることはない。ちなみに化身とはいえ邪神なだけあって戦闘能力は非常に高い。が、基本的に本人は面倒くさがって戦わず、使い魔を使役する。一人称は俺、二人称はお前、○○(名前)、名前+先輩、先生など。先輩だろうが先生だろうが基本タメ口。滅多にないが、本気でキレると無表情になる。紺子とは友達。出雲先輩と呼んでいる。

 

 

 

雪降(ゆきふり) (しも)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

13歳(1156歳)

 

種族

雪女

 

容姿

白い着物姿に水色の髪、瞳は黒。氷の結晶の様な髪飾りを持っていて、顔つきは冷酷そうに見える。ちなみに草履は履いてるが履いてない。

 

性格

見た目と違って世話焼きでひとつの事に熱心に取り組めるタイプ。

 

概要

『地球温暖化を防止せよ!』と書かれた看板を常備している。隙あらば地球温暖化を防止せよ、隙がなくても地球温暖化を防止せよな少女。紺子先輩の自宅にクーラー代わりとしてついて行くことがある。冷奴が大好物で、冷奴を食べるのを邪魔するとガチで凍らせに来る。冬なら大吹雪を起こせるが、夏に近くなるほどクーラー程度の冷気に下がる。一応夏でも氷は作れるが、サイズが小さい。本人曰く、冬であれば北極を一月かければ作れるそうだ……凄いのか凄くないのか……。

実家が雪降りの宿という旅館を営んでいる。

 

 

 

雪村(ゆきむら) 麻由美(まゆみ)

 

年齢

12歳?

 

種族

人間→幽霊(トイレの花子さん)

 

容姿

透明感のある長めのおかっぱが可愛らしい女の子。雪のように白い肌と冬の空のように澄んだ瞳が印象的な、どこか儚げな魅力のある美少女である。そして、白いワイシャツに赤いスカートを着用している。

 

性格

内気で大人しい。他人に心を開くことは少なく、自分の殻に篭りがち。

 

概要

他人に心を開くことは少なく、自分の殻に篭りがちな女の子の幽霊。小学校で授業中に下痢を漏らして酷いいじめに遭い、学校に行けなくなったという暗い過去があるためである。そして自ら下剤を服用して中毒で死亡、幽霊になった。寒いのは苦手で、冷えるとお腹を壊してしまう(生前から)。

相手に腹痛を起こさせる能力を有している。彼女を本気で怒らせると一週間は腹痛に苦しみ、トイレの住人になってしまう。

 

 

 

茨城(いばらぎ) 藤一(とういち)(初城さん)

 

性別 男

 

年齢

13歳

 

種族

 

容姿

ちょっとチャラチャラな男。髪の毛が金髪。怪力乱舞かと思うが、それはお手伝いの時に使用。通常は知識人だが日陰の所寝てるのでちょいちょい授業に遅れる。

 

性格

ちょっとひねくれだけど優しい子。

争いはしないが!仏の顔も3度以上すると!怪力乱舞に変身する!

 

概要

一人称はワイ。友達がほしいがどうすれば良いのか分からずじまい!

遠くから様子を見てる!

 

 

 

(くさむら) 直刀(なおと)(オウガ・Ωさん)

 

性別

 

年齢

15歳

 

種族

神刀の付喪神(人とのハーフ)

 

容姿

肩まで伸びた白髪に黒混じりのウルフカットに華奢な体、背が低く幼い顔立ちを隠すように瓶底眼鏡を掛け、常に学生服を着ている。

 

性格

大人しくて、極端な人見知り。話しかけられただけでビクッと躰を奮わし距離を取り離れるほど。

クラスの皆とも距離を置いているが、本当は寂しがり屋で優しい性根を持っている。

 

概要

人である父と神刀の付喪神の母から生まれた《人と付喪神のハーフ》…一時期は人として育てられていたが、幼少期に友達と遊んでいた時に暴走トラックに曳かれそうになった時に《神刀》の力が顕現、躰を刃に変え斬り捨て救うも、友達に恐怖の目とその親から《バケモノ!》と呼ばれてから、他者の視線、他者の声に極端に怯えるようになった。

事件以降は「ただ触れた」だけでモノが斬れていくさまに、我を忘れ《神刀の付喪神》化した際は全身が鋼色に変化、《七支刀》に四肢を変化させ付喪神の母と宮司の父が二人がかりて鎮めていた。事態を重くみた父と母は異生神妖魔学園の噂を聞き入学させることを決めた、小等部から途中編入し、現在は《視たモノを鞘として認識》するコトで力を制御ができてる…しかしトラウマはいまだに癒えてない。

 

 

 

河流(かわながれ) (えびす)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

見た目14歳(実年齢89歳)

 

種族

河童

 

容姿

眼鏡にお河童頭。髪色は基本黒で頭頂部だけ円形に白い髪になっている。瞳は水色。背中に直径80センチの甲羅を背負っている。身長は155cm、体重36キロ。

 

性格

陰気で近寄りがたい……はずなのだが、周りに良く女子が集まり、一見明るそうに見える。

 

概要

代々受け継がれる、1㎤につき5キロの甲羅を背負うか弱い腐女子(ちなみに甲羅の体積は800㎤……ん?か、よわ……い?)。

周りに女子が集まると言ったが、原因は腐ってる秘宝とそれを描く際に得た男子の細かい情報目当て。

最近売れている本は稚童(鬼)×魍(猫魈)のショタ×病弱とか言う背徳的過ぎる掛け算……学園長室に入っていくのを目撃されるが、中で起きている事は想像に難くない。頭の白い髪は皿と同じ役割を果たすが、別に濡れてないと動きが鈍る程度で濡れてなくても問題ない。むしろ動きが鈍っててくれないと腐ってる秘宝の数が一気に増える。

趣味は本作り。

 

 

 

酒天(しゅてん) 稚童(ちどう)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

14歳

 

種族

 

容姿

長さ1センチにも届かない小さな角が額から2本生えており、髪は金、瞳は銅色。ひょうたんを腰につけており、メリケンなどの拳で使う武器もある。身長145センチ。

 

性格

教室の隅にいつもいる引き篭もり体質。授業は普通の上あたりだが、それ以外は部屋の隅にてボーッとしている。

 

概要

酒呑童子の隠し子である鬼の子孫の家系の1人。鬼は大抵の場合名前に『鬼』の字や茨木童子や酒呑童子などの鬼に関する名を持つのが常。別に鬼に関する名前を持ってないからどうとかはないが、彼は気弱で臆病で引き篭もりな自分が酒呑童子の力を受け継ぐ事に不安を抱いている。実家は『酒湯浴み(さけゆあみ)』と言う酒屋で、ひょうたんは永遠に酒が湧き続けるという飲兵衛御用達な道具。しかし、アルコールの濃度はスピリタスの3倍……おいエタノールより濃いぞ。

酒を飲むとベロンベロンに酔う。そして性格が反転するし、力も増すし、無防備になる(性的な方面で)……ゆえに、色んな変態や腐女子方の獲物にされている。家族以外の鬼と触れ合った事が少ないため、他の鬼と会う事に内心ワクドキしている

過去に飲んだ後、気が付いたら大狼先生と同じ布団にいた事があったが、何があったかは不明。

 

 

 

蒼嶺(あおみね) (さや)(天羽々矢さん)

 

性別

 

年齢

13歳

 

種族

化け猫

 

容姿

朱い紐で無造作に束ねられた青い髪。櫛を入れていないのでボサボサ。瞳はサファイアブルー。服装は半袖+へそ出しの黒セーラー服、スカートの丈はミニ。

年に似合わず小柄で人間でいう小学生くらいの身長。猫耳と猫尻尾も青色。尻尾は1本。

 

性格

表情が壊死したといわれるほど無表情かつ無感情。

 

概要

毛並みが青色という理由で人間に捨てられた子猫が妖力を得て猫又の姿をとったもの。その影響で普通に猫にも変身できる能力を持つ。

成績に関しては「脳筋」と言われるほどのバカで感情表現・論理的思考が苦手だが、その反面身体能力は学年1と言っていいほど高く、体育の成績はずば抜けている。

また妖力を用いて錬金術のような術を使え、自身の武器として自分の身長を超えるほどの大太刀を振り回す。

だがどうやら尻尾が弱点らしく、尻尾を触ったりなで続けられると、本人曰く「気持ち良すぎて力が入らない」らしい。

そのせいか、旧知であるライエルに尻尾を触られ続けた時はあまりの快楽に小の方を漏らしてしまったそうで…(これ言っていいの?)。

 

 

 

来転(くるころ) (おう)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

13歳

 

種族

オーク

 

容姿

緑の髪と瞳。髪はポニーテールだが、毛先がボサボサ。服装は半袖緑シャツと黒短パン。少し長い牙があり、爪も長い。身長195センチ。

 

性格

オークの中でもびっくりの平和主義者。NO喧嘩NO暴力。

 

概要

くっ殺で有名すぎるオーク。親もくっ殺から結婚、今は一応仲睦まじいが、祖父母もくっ殺、さらにその祖父母もくっ殺……先祖は全員くっ殺でくっついた。あんまりにもあんまりである。別に本人はきちんとした恋愛がしたいのだが、親が「目指せくっ殺!」とよく言っているのでどうしたものかと悩んでいる。目標はこの学園でせめて女子と仲良くなること。口癖は「くっ、殺せ!」。母親の口癖が移った。

 

 

 

葬遺(とむらい) (まい)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

13歳

 

種族

死神

 

容姿

黒いコートに黒のロングスカート。黒髪は三つ編みで、瞳は赤。

 

性格

人見知りで、泣き虫。感受性が非常に高い。

 

概要

死神(見習い)。両親から受け継いだ葬儀屋『此方から彼方へ』を営んでいて、普段はそこで自身の目の力の制御を練習している。しかし、最近はめっきり客が来ない……それもそのはず、子供に葬儀なんて任せられません。そのため、飼い猫で黒猫のワイズに頼んで出来るだけ葬儀を任せてもらえるように人を寄せる呪術を使ってもらっているが、全くもって来ない!

彼女の目は死神特有の寿命を見ることに加え、その人物と目を合わせることで死期、死因、その時の状況を感じ取り、己のことのように感じてしまう。故に人と目を合わせることがなく、合わせたら間違いなく泣く。最近、警備員のあの人に憧れを抱いている。

両親は不在、2人とも「ちょっとバロールの魔眼取ってくるー」とコンビニにでも行く感覚でどこかに行ってしまった。



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登場人物3 生徒陣(3年)

白銀(はくぎん) 牙狼(がろう)(ヒビキ7991さん)

 

性別

 

年齢

15歳

 

種族

狼男

 

容姿

普段は銀髪ショートに赤い瞳をした人間のイケメン青年だが、満月の夜になると赤い瞳の銀狼へと変身する。が、激怒したり喜んだりすると人間状態でも尻尾や耳や爪が出て来たり、顔が狼化する場合がある。

 

性格

物静かで優しい性格だが、怒ると凄く怖い。友人や大切な人を傷つけられたりされると、まさに鬼の如く怒り狂う。狼状態でも同じ。

 

概要

周囲にすぐ馴染む事が出来る。一人称は《僕》。学校中の女子生徒達に好意を抱かれているが、本人は全く気づいていない。紺子の幼馴染で、紺子の事をほっとけない。学校へは白のロードバイクで通学。成績は学年トップ3に入る実力。好物は行きつけのレストランのビーフステーキ。

 

 

 

富士(ふじ) 美弥妃(みやび)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

見た目13歳の127歳(ゾンビ歴)

 

種族

ゾンビもしくはアンデット

 

容姿

ピンク色のショートヘアに充血した青い目。服装はセーラー服(ボロボロ)固定。

 

性格

天然でアホの子。ぶっちゃけアホというよりバカを超えた何か。

 

概要

留年111年目のベテラン。本人曰く、「ゾロ目ってなんかめでたい!めでたいよ!」しゃべる時、最後の単語を繰り返す癖がある。

記憶力は脳が腐っているためもはや皆無。腐敗は脳と一部臓器のみで、別に普通の食事も摂れるし、生理現象だって起こる。成長は死んでいるため止まっている。ある意味永遠の若さを手に入れた……のか?

教師陣曰く、「もう脳がダメだから卒業はほぼ無理だな」との事……それを彼女は「つまり私は特別!?」と、なんか好意的に理解している残年生。

しかし、テストは0点なのにも関わらず、人に教える時は異常なまでに優秀になる事から、後輩からは人気。もしかしたら学校にいたいがためにわざと留年しているのかもしれない。

噛んだ生物を同族にして奴隷にする力を持つ(任意発動)。無論奴隷にしない事も可能。

噛まれた生物は寿命がなくなり、同時に彼女と同じ特性……そして、知性が低い場合は彼女と同程度になると言う特性がある。彼女はこの特性を生かしてカイコガをペットにしている。

また、身体の欠損や傷が瞬時に再生する。頭部や腕が離れても何の影響もなく動かせるなどの特性がある。

運が良いと(悪いと)屋上で頭でリフティングをする彼女が見られる。

 

 

 

赤井(あかい) 舌寺(ぜつじ)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

15歳

 

種族

垢嘗

 

容姿

かわいらしい小動物のような体型と顔。赤い髪と黒くて垂れた目が特徴。舌を常に出している。服は和服だが、腰にメモとペンを持っている。

 

性格

校内きっての変態……というか独特のフェチズムに従って生きている。人を嘗めた様な態度を取るが、内心相手を気遣ってはいる。

 

概要

変態と書いてフェチズムと読む。彼は舌で何かを舐める事にとてつもない快楽を感じているそうだ。女子の腹や足の裏、男子のうなじなど……一体何人の生徒が彼の舌に舐められたのだろうか?

因みに一番好みの味は女子の体育で出た汗の味と男子の悔し涙の味だそう(曰く青春の味だかなんとか)。

自分は俺っち、他人を○○っちと呼ぶ。先生だろうと関係無しで○○っちと呼ぶ。

なお、化学薬品を舐めて救急車送りになった回数は数知れず。

 

 

 

全猫(ぜんびょう) (もう)(スコープさん)

 

性別

雄(男)

 

年齢

見た目15歳(猫生では36歳)

 

種族

猫魈

 

容姿

猫耳と三叉の尻尾と髪の毛、そして肌は白く、髪の毛は手入れが施されているのかツヤツヤ。髪の長さは前髪が目が少し隠れるくらいで後ろが肩甲骨辺りまである。瞳は血のように赤く、顔つきは中性的。

 

性格

おとなしく、控えめ……なのだが、好きな相手には積極的に関わる。

 

概要

先天性色素欠乏症(アルビノ)の野良猫。紺子の家の近くで生まれた……が、アルビノであるが故の欠点、身体が弱いことが祟り、まだ生後5ヶ月の冬の時期に死にかけていた……が、紺子に命を救われる。そしてそのまま紺子に飼われていたが、紺子の妖力などに触れ続けていた影響で10歳になった日に妖怪化。

本来は化け猫から猫又になるのだが、紺子の妖力に近くで触れ続けていたために化け猫の段階を飛ばして猫又になる。しかし、アルビノである事には変わらず、自身の最期はそこまで遠くない……むしろ数ヶ月以内だろうと悟り、紺子の前から姿を消す……猫又として得た妖力を使い、自らの記憶と共に。

そして妖力も空っぽ、身体は弱いままの状態で人の街をふらついていた……そんな状態では車に轢かれるのも時間の問題。そしてついに車に轢かれるかと思われたその瞬間にバステト神こと教師、神守(かみもり)先生に助けられ、そのままバステト神の元で過ごす。

そして23年の月日が流れ、バステト神の力に触れた事もあり遂に猫魈としての力を得る。猫魈となった事で人の姿と外を歩いても平気な程度には身体が健康になる(病弱で日差しに弱い事に変わりはないが)。それを気に異生神妖魔学園に入学した。

最近では命の恩人である紺子に恋愛感情を抱いており、積極的に関わろうとする。音楽の授業をすっぽかしてでも。

趣味は読書(エジプト関連と恋愛関連)、折り紙、絵を描くこと。

紺子のことを呼び捨てにしようとするが本人の前だとついちゃん付けしてしまうことと、身体が弱いままなので体育に参加できないことが最近の悩み。

 

 

 

螺子巻(ねじまき) 綾野(あやの)(天竺犬さん)

 

性別

 

年齢

15(500歳?)

 

種族

未来の最新型ロボット

 

容姿

髪が赤目で白のロングで頭に機械の髪飾りがあり体には歯車が回っており機械で出来た尻尾がある。かなりの美少女で人格により顔にある線の色が変わる(例:怒り→赤、悲しみ→青)。

 

性格

マスター至高主義。いろんな人格がありなんでも行けるのでヲタクなのにも対応済み。マスターが傷つけば報復もする。若干メイド口調である。

 

概要

紺子をマスターと思っている。腕を武器に変えるなど可能で人助けをよくする。登校法は羽を出し飛んでいく。1週間に1回ガソリンを飲む必要があるが歯車を回せばしなくて良い。一人称は《私》。男女問わず人気がある。

 

 

 

種島(たねじま) ワコ(鳴神 ソラさん)

 

性別

 

年齢

16歳

 

種族

妖怪鼠

 

容姿

身長90センチで、腰まで来る鼠色の髪をポニーテールで纏めている。黒色の瞳で胸はD。鼠のイラストがかかれたシャツとミニスカートを履いている。

 

性格

面倒見のいいお姉さんだが天然っ子。

 

概要

皆の頼れるお姉さんを目指してる妖怪鼠の女の子。

一人称は自分の名前、二人称は男性は君、女性はさん、先生は性+先生と呼ぶ。

本人は頼れるお姉さんになりたいがいかんせん小さいのでマスコット扱いされててよく学生を勘違いされてたりする。

ボケ寄りのツッコミで直感は高いのだがズレてたりする天然な所がある。

必死に背伸びしてるところが愛らしく見られてる。

 

 

 

御神(みかみ) 竜奈(りゅうな)(curemasterさん)

 

性別

 

年齢

人間年齢で15歳

 

種族

龍神族

 

容姿

身長170センチ、美しい黒のロングヘア―に黒い瞳をしたFカップ以上の巨乳の持ち主で龍の模様が入った和服を着る。

 

性格

冷静かつ頭が切れる。争いは好まない平和主義者で正義感が強く怒ると恐ろしく怖い。中性口調でしゃべる。

 

概要

一人称は私。二人称はお前や貴様で名前で呼び捨て。

「龍神界」にいる龍神族と呼ばれるあらゆる世界の生命や魂、森羅万象を管理する存在達の1人で人型に近い彼女は龍神族の中でも最強クラスの力を持っている(龍神族は人型に近いほど力が大きくなるため)。

全能の如き能力やいともたやすく宇宙や次元を破壊できる程の力を持つものの普段は制限しまくっている(それでも相当強い)。

また知能も高く様々な分野に関して広い知識を持っていて隙間なくこなせる。

愛用武器は魔龍神刀「ドラゴニックスレイヴ」聖龍神剣「ドラゴニックカリバー」(やっぱり普段は使わない)。余談だけど神纏駕龍哉(クロスオーバー学園の人物)の補佐でもある。

紺子との会話は多く一緒に出掛けることも多い友人関係。ちなみに性的や下ネタ的なことに関しては絶望的にまでに耐性がなく聞いただけで卒倒してしまう。

 

 

 

浅井(あさい) 冬睡(とうすい)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

不明(宇宙と同い年と思われる)

 

種族

【何者かに塗り潰されていて読めない】

 

容姿

常にパジャマ姿、ナイトキャップを付けた状態。背中から四本の黒い触手が生えている。髪はとても深い青。瞳の色は不明だが、一部の教師からは「煌めく星々が美しくも冒涜的な宇宙の色」と、比喩される。パジャマは赤、青、緑、黒の何れかを着ていて、その上から布団を被りながら玉座に座っている。

 

性格

不明。ただ子供っぽいとの証言がある。

 

概要

【眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ……決して目覚めることのなき眠りにどうかつきたまえ……その眼を開く時に宇宙の理は崩落し、ただただ無に帰すであろう……】。この様な文章と共に学校のプールの中に、5匹の従者と共に落ちてきた。常に眠っているが、こっちの言葉や行動は認識しているようで、食事をすることやゲームをすることも可能。恐らく従者の1匹か2匹と五感を共有していると思われる。また、会話は従者がスケッチブックを用いた筆談で行う。彼の前に壊れたものや直したいものを置くと触手で包み、何らかの能力を行使した上で直してくれる(だからと言って校舎を壊しても大丈夫とは言ってませんよ校長)。

また、喜怒哀楽の感情表現に関しては従者(筆談担当)の動きで判断する。時々寝言を言っている。

戦闘能力に関して言えば、最上級と言えるだろう。過去に大狼先生が運んでいた対戦車地雷を落とした際に起爆する瞬間、大狼先生を触手で包み込み、爆破をモロに受けたが、服が消し飛んだことと髪が少し焦げたこと以外に傷はなかったからだ。ちなみに従者はぷすぷすと焦げていた。

誰かがボケをすると触手で突っ込んでくる癖があるが、壁を砕く威力を余裕で秘めているので注意。それと時々従者が缶コーヒーを飲んでいる時があるが、その時はそっとしておいてあげてください。疲れてるんです。

 

従者

前述の通り5匹。足役はトカゲ、それ以外は粘土細工の人形。フルートで眠らせる子守役1匹、筆談・感情表現役1匹、生活補助役2匹で構成されている。

 

備考

黒神無亞、南原透、伊佐野人からの証言や発言から彼の正体はおおよそ見当がついています。しかし、その名自体が危険な物なので決してしゃべらないように。

 

 

 

(とどろき) 龍信(りゅうしん)/竜香(りゅうか)(情報屋迅龍牙さん)

 

性別

不確定

 

年齢

15歲

 

種族

神龍

 

容姿

白髪と黒々とした半々の髪色を持つ。顔はどちらかと言うと中性的。尚性別が不確定となっており成長の過程で男か女になる。龍信自身は女になろうとしている。現に体付きが女性的になっており、出るところはかなり出ている。

 

概要

昔から性別が不確定でまともな授業を受けておらずかなりの独学者。しかし、独学者のため誰も知りえない情報などを有しており皆からは、情報屋としてかなり重宝されている。一人称は『自分』尚キレると男側の龍信が表に出てきて、かなり危険。龍信の一人称は『我』。

 

 

 

鬼道(きどう) 王臥(おうが)(スーパーセルさん)

 

性別

 

年齢

外見年齢15歳ほど、実年齢は地球と同じ。

 

種族

鬼/魔神(おにがみ)

 

容姿

黒髪のオールバック、額に1本角が生えている。黒い着物を着ている。インテリ系のイケメン。魔神状態になると黒い靄の塊のような不定形の翼が現れる。

 

性格

普段は知的でクール。割と兄貴肌で、世話焼き。キレても怒りをそのまま表に出すことはないが、視線が冷たくなり、言葉に刺が出てくる。

 

概要

地球誕生とほぼ同時に地球によって生物が生き残るための『恐怖』という概念そのものとして産み出された。元々概念なので種族など存在しないのだが、後に未知の恐怖、つまり人間にとっての妖怪を意味する『魔(おに)』という言葉を気に入り、魔神(おにがみ)という種族を名乗ることにした。普段は魔から読み方を取った妖怪である鬼の姿をしている。本気で戦う時のみ魔神状態になる。魔神状態になると凶暴な笑みを浮かべる。一部例外を除いた地球上のおおよそ全ての生物から恐怖という信仰を受けているため、神性を持っている。非常に強力な戦闘能力を有しており、本気を出せば大陸1つ程度ならたやすく消せる。一人称は私、二人称はあなた、○○(名前)君・さん・先生など。頭はかなりいい。基本的に誰にでも敬語を使う。

 

 

 

草薙(くさなぎ) 遠呂智(おろち)(深緑 風龍さん)

 

性別

 

年齢

 

15歳(15000歳)

 

種族

八岐大蛇

 

容姿

金髪でイケメンで、瞳孔が縦で赤い眼。左眼は失明している。長ランに付いた金属の鎖を着込んでいて、腰に赤と白マントを着けている。

 

性格

面倒見がよく、教えが上手。怒ることはないが、狂気的な笑いながら、外道な行動を起こすことも。人間を敵視してないが、仲間を傷つけられると容赦がない。

 

概要

異生神妖魔学園の生徒会副会長であり、不良のレッテルを張られている青年。仲間を守るためなら、あえて汚名を被るほどの覚悟があり、やられたらやり返す精神を持っている。

成績は理系と文系が優秀で、後は平均。ただ家庭科は苦手で、作ったら作ったでなぜかダークマターになる……料理下手の自覚あり。

天文学者になりたいようだが、宇宙の神秘も知っているゆえに、一部の教師と生徒から宇宙人説が建てられているが、本人は否定しているらしい。

カフェ『EVOLUTION SPACE』のマスターで、建てた当時はコーヒーだけで商売していたものの、売れ行きがよくなかった。だが、龍華が来てくれたおかげで繁盛している。

料理や紅茶は龍華に頼んでいる。

 

 

 

天亡(てんぼう) 黒陽(こくよう)(スコープさん)

 

性別

オナベ

 

年齢

15歳

 

種族

空亡

 

容姿

ヘヴィメタルバンドのような黒いジャケットに鎖、指輪、メイクをしている。黒髪は某野菜人の如く反り返っていて、瞳は朱色。

 

性格

この見た目で大人しく、何事も最後を好む。マイペース。

 

概要

百鬼夜行に登場する空亡……だけど、最近はやる事がなくて基本的にのんびりと猫をなでるのが趣味。純粋な同性愛者。日本の妖怪を異常なまでにかわいがる癖があり、西洋の妖怪や怪物に対しては親愛の感情を寄せる。教師陣からよく格好を正せと言われるが、気にしない。だってこれが普通になっちゃったんだもの。だから仕方ない。

主にかわいがる時にするのは抱きつきながら頭をなでる。その際にAカップの胸が押しつられるが意味がない。基本的に言葉の最後を伸ばす。

 

 

 

(くろかね) 清花(さやか)(オウガ・Ωさん)

 

性別

 

年齢

15歳

 

種族

妖怪(鞘から化生した妖怪)

 

容姿

腰元まで伸びた流れるような黒髪を白の髪留めでサイドテール、巨乳でハイカラ風女学生な出で立ち。

 

性格

見た目は清楚で奥ゆかしい大和撫子だが、底抜けに明るく、明朗快活で人懐っこく、やや子供っぽく自身を《僕》と呼んでいる。

 

概要

遙か昔に落ちた隕鉄から生みだされた鞘が日本に化生した妖怪。学園ではその容姿と性格から《お母さん》と呼ばれている。1年の直刀に一目惚れ、たびたびアプローチを仕掛けるも逃げられていて、後輩であり友人の紺子にアドバイスを求めるコトもしばしば。

戦闘向きでないが、触れた相手を治癒する術を得意としている。



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登場人物4 教師陣

・ヴォイエヴォーテ・ヴァレンタイン・ドラキュラ(さすらいのエージェント)

 

性別

 

年齢

400歳

 

種族

吸血鬼

 

容姿

黒ずくめ。黒いタキシードとマント、シルクハットを身につけ、ステッキを持っている。吸血鬼らしく上顎と下顎の犬歯が長い。

 

性格

基本紳士的でドラキュラらしく威厳がある。普段怒ることは滅多にないが、生徒を傷つけられると本気で怒り、殺しにかかる。

 

担当教科

2年担任/世界史

 

概要

誇り高き貴族、ドラキュラ家の一族。一人称は《私》、二人称は《お前》、《そなた》、《貴様》。教師として働き始めたのは200年前で、周りの教師のコネだったらしい。紺子たち生徒を思いやる優しい心の持ち主。

吸血鬼は普通日光に当たると灰になるが、ヴォイエヴォーテによると「それは人間が勝手に作り上げた想像」らしいが、真相は不明。

怒るとコウモリを飛ばしてくる。滅多にないが、本気で怒った時の姿は巨大コウモリで、タキシードの袖が破れてノースリーブのようになる。

 

 

 

南原(ねんぶら) (とおる)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

39歳(0を11個ほど取り外している)

 

種族

外なる神(旧神?)

 

容姿

冒涜的にねじ曲がった指揮棒を持っている。髪の毛は白に黒のメッシュが入っており、メッシュに合わせて音符の形をした髪飾りをつけている。さながら楽譜のように。服は白いジャケットにシャツ、ズボンの白づくし。楽譜のようなラインが走っており、そこに音符や記号が記されている。音色を奏でると髪と組み合わさって動く楽譜状態。

 

性格

音楽に関しては全身全霊ド取り組み、取り組ませる。物静かだが、音楽をバカにすればどこにいようとすっ飛んできてジャーマンスープレックスの刑に処す。サボり?死刑だ。

 

担当教科

音楽。音楽以外あり得ないのですよ。

 

概要

口癖が「〜ですよ」。彼女が奏でる音楽は素晴らしいものだが、彼女が思うがままに奏でてしまえば元々狂気的な存在でない限り精神的にヤバい。過去に授業をサボった生徒を地獄の果てまで(文字通り)追いかけてキャメルクラッチした事はひとつの伝説である。なお、テスト内容は授業に参加すれば大抵解ける問題ばかりなので音楽のテスト勉強は中々されない……彼女自身はその事を「生徒が真面目に授業を受けてくれてなによりですよ」と、言っている。また、音楽の才能が高い者を誘拐する癖がある(理由はトルネンブラのwikiとかを見てほしいのですよ)。

ただし、白髪(しらが)とか、年寄り扱いすると「私はまだ若いのですよ!」と言って指揮棒を投げてくるので注意。

 

 

 

寺岡(てらおか) 影夜(えいや)(星クーガさん)

 

性別

 

年齢

1000歳

 

種族

亡霊

 

容姿

白い服を好んで着る。少しパーマがかかっているがこれは天然。黒髪で眼鏡をかけている。

 

性格

とにかくドライ。冷めまくっている。めんどくさがりでもあり、最低限のことだけする。

 

担当教科

日本史

 

概要

天才、ただそれだけ。基本的にどの教科もできるが日本史が一番得意。というか見てきた。本人いわく『覚えればしまい』とのこと。性格はかなり冷めてしまっておりめんどくさがり。ただ頼られた場合はちゃんと用意してくれる。なぜかはわからないがクラスの人の名前を呼ぶときには名字でなく名前で呼ぶ。

 

 

 

・ラインハルト・ファブニール(深緑 風龍さん)

 

性別

 

年齢

600歳(外見はなぜか20歳)

 

種族

邪龍

 

容姿

黒髪のロングヘアで、日本の軍服を着込んでいる。両腕と背中、そして首のところに鱗が付いている。尻尾も生えている。

 

性格

王族のような威厳を持っており、傲岸不遜な性格をしているが、賞賛する時は賞賛し、自分に非があれば認めるが、生徒などが傷つけられると怒り、物理的、社会的に抹殺しないと気が済まなくなってしまう。

武道になると何故か性格が豹変する。始まるまでに大人しく正座し、穏やかに、そして厳しく教える。

 

担当教科

3年担任/武道(剣道)

 

概要

教師として新人に入るのだが、威厳があるせいか昔からいる教師かと間違われてしまう。一人称は『余』か『私』で、二人称は生徒教師平等に『卿』、『汝』だが、一海だけは呼び捨てになる。生徒が傷つけられるとキレる。

実は一海の師匠らしく、休みや暇さえあれば、武道館に呼び出して格闘術とか鍛えさせている。

ヴォイエヴォーテとは旧知の仲。

 

 

 

伊佐(いす) 野人(のびと)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

96歳(見た目は8歳のショタ)

 

種族

イスの偉大なる種族

 

容姿

ブカブカの白衣姿の完全無欠のショタ。しかも見た目は男の娘である。prprした……こほん。髪色と瞳の色は紫。セミロング。

 

性格

普段は知的で冷静だが予想外の事が起こると真逆の状態になる。また、種族的に格上の相手には内心gkbrしている。かわゆす。

 

担当教科

理科、化学

 

概要

驚き桃の木な完全無欠の男の娘ショタだが、そのブカブカの白衣の下には無数の化学薬品や電撃銃、精神交換機、トラペゾヘドロン、未来(過去)観測機などなどの化学の結晶(オーパーツ)が多々ある。声はほぼ完全に女声。口調は男っぽくしてるが背伸び感が拭えない。低身長はコンプレックス。

 

 

 

烏丸(からすま) トリノ(鳴神 ソラさん)

 

性別

 

年齢

25歳

 

種族

烏天狗

 

容姿

身長200センチで地面に着くか着かないかの黒髪をポニーテールで纏めていて、赤い瞳、背中からは小さい黒い翼を出していて、袖を省いたなんちゃって着物を着ている。胸はH。

 

性格

ボーイッシュで元気溌剌で優しい性格の持ち主。

 

担当教科

国語

 

概要

紺子達のクラスの担任を務める僕っ娘な女性。

一人称は僕で二人称はさん付け、透だけ先輩(時たま先生)呼び。

生徒の事第一なのと性格的なのもあって女性生徒からの人気が高い。

天狗なので背中の翼を大きくして空を飛ぶ事ができる他、普通にスイミングもできる。

透とは元教師と生徒の間柄で尊敬している。

ただ、教師の大半が凄い面々ばかりなのに頭を抱えてたりする。

ツッコミ全般でカオスになると某眼鏡や某ハジケてる奴らのツッコミ役ピンク髪の様な全力ツッコミになったりして口調が壊れたりする。

男家族の紅一点の末っ子だったので育ったからか、女性としての恥ずかしさはどこかに吹っ飛んでおり、もしも溺れてる生徒がいたらためらいなく着ている服を脱ぎ捨てて飛び込む程の持ち主。

だから上の兄弟達からは水着を常時下に着てなさいと注意されて以降は白のビキニを日常の下着替わりに履いている。

 

 

 

鬼灯(ほおずき) 燐斗(りんと)(エイリアンマンさん)

 

性別

 

年齢

30歳

 

種族

幽霊

 

容姿

黒髪黒瞳で、黒い着物を着た大和撫子の言葉が似合う美女。着痩せしているが、胸はFカップもあり、くびれも細い。ただし、なぜか子供のように低身長である。

 

性格

おしとやかで優しい性格。しかし、殺人もためらわない残虐性もある。そして、冷火の事になれば授業も抜け出して必ず娘の元に駆け付ける最大の親バカ。

 

担当教科

家庭科

 

概要

かつて魂喰い鬼の夫を持つ人間であったが、冷火が赤ん坊の頃に病気で亡くなる。しかし、いつまでも子供の傍に居たいという強い思いで、幽霊となって蘇る。幽霊となっても、物を触る事や持ち上げる事は可能で、寧ろ生きてる頃よりも何もかもが持ち上げられるようになった。

学園では家庭科をしながら冷火を見守っているが、他者と関わろうとしない冷火にいつも不安を抱いている。しかし、打ち解ける事ができた時は、授業ほったらかして抱きしめに行って頬擦りしたりほっぺにチューマシンガンを行うなど、かなりの親バカでいらっしゃる。それで他の教師や教頭、夫の怒りを買っているが、反省する気はなし。全教師史上最大の問題教師と呼ばれるようになった。

母親としてのスキルは完璧で、掃除、洗濯、裁縫、料理、勉強の教え方などが並の教師より上手い。

冷火はそんな気はないが、彼氏と勘違いした男達には鬼のような形相となって襲い掛かる。鬼のような形相となって怒る姿は、夫も教師たち、並びに冷火や生徒達も怖がるレベル。

 

 

 

鬼塚(おにづか) 真島(まじま)(鳴神 ソラさん)

 

性別

 

年齢

25歳

 

種族

 

容姿

身長210センチもあり、額に1本角が生えていて、腰まである赤髪に黒い瞳、Hもある胸をサラシで覆い、その上から白衣を纏い、黒の短パンを纏っている。

 

性格

サバサバしてる様に見えて純情乙女。

 

担当教科

保健体育

 

概要

学園の保険医を務める鬼の女性。

一人称は俺、二人称は基本呼び捨て、学園長やトリノ以外の教師陣は役職を付けて姓で呼ぶ。トリノは呼び捨て。

トリノとは幼馴染で同棲ながら恋をしている。

恋してる理由は同性ながらも男らしい所があるのと小さい頃から助けられていたのもあるからである。

口調が荒いが腕は確かでちゃんと注意する。

すごく純情で身体測定以外で男女関係なくいきなり服を脱がれると顔を真っ赤にするほど初心だったりする。

ちなみに鬼だけに力は強く、一緒に通う辰美とはお互いに恋してる人物が女性なので仲が良いのと同時に魔法ができ上がるのを心待ちしている。

 

 

 

全猫(ぜんびょう) 神守(かみもり)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

最低でも3000歳

 

種族

神(バステト)

 

容姿

古代エジプト風の衣装に身を包んだ猫の耳と尻尾が特徴的な黄金の猫の目をした黒いロングヘアー(腰上3センチほどまである)で、胸はB。

 

性格

猫を愛し猫に愛され猫を救う。猫の様に気まぐれでは無く、神様なのに公平な判断をする。冷血にも見える性格をしている。

 

担当教科

術科

 

概要

古代エジプトで人と猫から信仰を得ていた全ての猫の神。クトゥルフの方とは別神。というか、術科をやっているのは最近クトゥルフの方のバースト神とお茶をしていたらなんか魔道書やら呪文やらヤバそうな知識を教えられたから……彼女にとってはいい迷惑だが、それでもその知識は有効活用していく。猫系の妖怪や魔物だからと言ってひいきはせず、むしろそれに甘えようとしたら神罰(物理)が下る。

黒猫の姿(休息用)と、猫の頭部を持った人型の姿(戦闘用)が別である。職員室で黒猫の姿で毛繕いをしている事もしばしば。

 

 

 

・ユウジ11(オストラヴァさん)

 

性別

 

年齢

稼働年数210年

 

種族

アンドロイド(マシンナイズド・ヒューマン)

 

容姿

ロボット。某ターミネーターのようにロボットが人間を模した人工皮膚をつけているのではなく、機械そのものが人間を模したような姿をしている。体パーツもほとんどなく、全てが金属と未知の素材によるものでできている。普段はフード付きの黒のロングコートに各種ホルスターが併設された防弾ベストからなる軽装アーマーを着ている。一張羅。 

 

性格

皮肉屋でテキトー男。これに尽きる。おちゃらけていて無責任なように見えるが、ここぞという時で頼りになる兄貴分タイプ。ただし授業は真面目にやることが少なく、だいたい五分の確立で自習にするなど教育者としては疑問がつく。

 

担当教科

地理、狩猟

 

概要

アンドロイドの地理教師。しかしただのアンドロイドではなく、地球の超古代文明の遺産とされる「マシンナイズド・ヒューマン」という機械型ヒューマノイド。その生き残り。見た目こそロボットだが明確に感情を備えており、飯も食うなど人間と変わらない感性を持つ、それどころか人間より人間らしいとまで言われるほど超高度な人格プログラムを構築されている。ちなみに食料からエネルギーを摂取しているのではなく、体内にある動力炉で対消滅させてエネルギーを得ているというちょっと危ない仕様。

しばらくの間どこかの山の中に埋まって機能停止していたが、本編開始の50年前に起動。また、起動する前――すなわち古代文明の時には「銀河をまたに掛けて、悪いエイリアン軍団の退治やトレジャーハントしてた」らしいが真偽は不明。

先述したように教師としての態度や姿勢はあまり良いモノではなく、基本的に放任主義。しかし以外にも生徒受け、特に男子からの受けはいいそうな。しかし自習中にもかかわらず堂々と愛用のハンドキャノンと拳銃、ナイフの手入れを行うという危険な面も。また、たびたび「課外授業」と称して狩りや文字通りのトレジャーハントに生徒を引っ張り出すという問題行動も。

また、名前のユウジ11というのは彼が11体作られたのではなく、再起動した回数によるもの。

趣味はカーレースとラーメンの食べ歩き。

 

 

 

宇佐間(うさま) 論子(ろんこ)(平熱クラブさん)

 

性別

 

年齢

80歳(見た目は40歳)

 

種族

不明(本人も知らない)

 

容姿

ハゲマッチョ。とにかくムキムキ。

タンクトップに、ジーンズというシンプルな服装。

ワキ毛がはみ出てる。ジョリジョリのヒゲ。

 

性格

とにかく筋肉大好き(脳筋)。

自分の筋肉を我が子のように愛する。

筋肉のある男子生徒に見惚れる癖がある(ホモっ気アリ)。

女子生徒には紳士的。

実はかなり生徒思い。筋肉こそ正義と考えてはいるが、授業では決して無理はさせない。むしろ過保護。

 

担当

体育

 

概要

20年前に学園の教師に。

一人称は「俺」、二人称は「君」。

本人曰く、元々は普通の人間の「はず」。ただし、どこからか記憶がない。

生徒達の間では「自我が芽生えたゴーレムでは?」と噂されている。

また、筋肉を増大させる奥義を持っている。

「膨れ上がれ、我が筋肉よ〜~!!」

「フンッ!!」

バリバリ、ビリィッ!!

破けるのは上半身ではなく、下半身

 

 

 

大狼(たいろう) リン(スコープさん)

 

性別

 

年齢

見た目21歳(実年齢は本人も知らない)

 

種族

フェンリル

 

容姿

白いカッターシャツの上に灰色のブラウスを身につけ、黒に灰のチェック柄のスカートを履いている。低身長きょぬーで灰色の犬耳とフサフサ尻尾が自慢。髪は白銀のミディアム、瞳は紅。身長の関係で胸が強調され過ぎて目のやり場に困る。

 

性格

おっとり、性に疎い。

 

担当教科

体育

 

概要

アルティメットドジっ子。嘘にすぐ騙され、自分で用意した物でつまづき、着替え途中の男子生徒がいる部屋に入ってしまったりと色々としでかしている教師なのに学校の問題児。パイタッチ程度では「えっと、おっぱい触って楽しいんですか……?」程度の反応。しかし他人の裸には異常なまでに反応する。「はわわっ!な、何も見ていませーん!///」

私生活はズボラで女子力のかけらもない。料理はダークマター、掃除をすれば汚掃除になる。

慌てると「はわわっ!」というし、彼女の自宅では服が脱ぎ捨てられている。

なぜかロッカーにグレイプニルが入っている。

 

 

 

(から) 縁起(えんき)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

×*○<歳(文字化けにより見れない)

 

種族

神(エンキ神)

 

容姿

金術師を思わせる水色のローブを着ている。髪色は豊穣の緑、瞳は真紅。

 

性格

教育熱心で成績に関係なく「見聞を広めて欲しい」と思いながら授業をする真面目な性格。生徒のふざけた質問にも真面目に答えてしまう事も。

 

担当教科

人間学

 

概要

メソポタミア神話及びバビロニア神話に記されるエンキ神(エア神)。神としての権能である知識、魔法、淡水、繁殖、豊穣を司る力は問題なく使える。そして、創造神としての側面も衰えなく、人間に様々な物を教えた事も相まって知識量に関して言えば(宇宙の神々を除いた場合)学園内1である。

人ならざる生徒達に人の暮らしや人の心について教えている。

時々熱が入り過ぎてメソポタミア文明辺りの頃の事を話し始めるのが玉にキズ。

 

 

 

西田(にしだ) みのり(鳴神 ソラさん)

 

性別

 

年齢

30歳

 

種族

猫又

 

容姿

身長180センチで腰まで来る青髪に紫色の瞳、腰に2本の猫の尻尾がある。胸がG、チューブトップにスリットが入ったフレアスカートを履いている。

 

性格

幼女と美少女が絡まらなければできたお姉さん、絡めば変態オヤジで残念お姉さん。

 

担当教科

数学

 

概要

数学を担当してる猫又の女性。

二人称は私、二人称は先生は普通に先生付け、男性陣はくん、女性はちゃん付け、幼女にはたん付け。

見た目は普通に美人で決めてるお姉さんだが、幼女や美少女が絡むと猫ではあるが蛇の様に絡みつく残念お姉さんとなる。

ちなみに男の娘との区別もちゃんと分かる。

索敵能力が高く、どんなトコにいようと幼女の匂いを感じとれるとの事。

残念美人だが、成績優秀、運動神経抜群と言う。

上記のを見ると犯罪者っぽいが幼女にはイエスロリータノータッチ精神で普通に子供第一を考えてる良い先生?である。

ちなみに何で先生になってるかは…お察しください。

 

 

 

荒狂(あらくれ) ネイ(スコープさん)

 

性別

おと「レディよ!」……。

 

年齢

乙女に年の話はnonsenseよ♡

 

種族

アラクネ

 

容姿

一言で言うとイケメン、メイクは薄い。彼女の瞳は金、髪はショートの黒。服は女性物の服で無駄に乙女チック。

 

性格

全ての少年に幸あれをモットーにする心優しきオカマ。温厚ではあるが、不真面目な生徒には愛の折檻よ!

 

担当教科

英語

 

概要

美男子系女子を自称し、彼女に性別や年齢の話をしようとすれば人差し指で口を押さえ、「それはヒ・ミ・ツ♡」と言う。所謂ショタに目がなく、時折西田みのり先生と少年少女談義をしている。誰か止めろ。

因みに彼女はショタをある程度分類分けしており、見た目ショタ、大人ショタ、女性ショタ……そして純ショタの四つ。趣味はもっぱらショタ観察。しかし一線は超えず、見守る事に努める。

他人を誰であろうとちゃん付けして呼ぶのと、語尾によく♡が付く。そして発言に英語が混じる。

 

 

 

・コーティア・フェルクディース(スコープさん)

 

性別

 

年齢

400歳

 

種族

悪魔(ダンタリオン)

 

容姿

黒く額から伸びた禍々しく湾曲した角が特徴的な紅いロングヘアー、瞳は黒。服装は上半身裸で黒のズボンだけ。悪魔らしい翼はない。

 

性格

ザ・悪魔な性格。人を嘲笑うのだーいすき♡ソロモンに封印されていた分ハッチャケている。一応、思考操作や幻術などを生徒にかけない程度には自制しているが、侵入者とか外敵には容赦なし。

 

担当教科

美術

 

概要

ソロモン72柱の悪魔、序列71番の大公爵。一応美術以外の教科も教える事ができるほどの知識量はあるが、むしろ美術を教えれそうな教員がおらず、今の担当教科を教えている。本悪魔曰く「あいつら、特に校長と大狼に美術を教えさせたら正気が削れかねん絵が生まれかねん!」だから仕方なくやっているそうな。

最近では趣味でゴルフとビリヤードをやっている。

それにしてもこの悪魔、中々イベント事にはノリノリで、イベントのためなら自制なんてしない。学校で何かあったらコイツを疑いましょう。

 

 

 

石蛇(いしへび) ヒトミ(スコープさん)

 

性別

 

年齢

少なくとも数千ね「石にするわよ?」サーセン。見た目は14歳の少女。

 

種族

メドゥサ(ゴルゴーン)

 

容姿

緑の蛇でできた髪を持つ。瞳の色は過去に不死である者が確認したところ、赤、緑、黄、青、灰色の五色が螺旋を描くようになっていて宝石のようだったと言う。服装は目に黒い包帯を巻いてあり、肩を出した白いレースのワンピース。見た目が少女なのは神話で元々美少女だったのを醜い怪物にされた伝承の名残。関節部分は緑の蛇の鱗に覆われている。

 

性格

普段は寛容的だが、姉及び髪や年齢についてバカにされると石にしようとしてくる。時には蛇やらサソリやらペガサスなんかまで使って襲い掛かってくるので注意。

 

担当教科

技術

 

概要

三姉妹の末っ子。お前ペルセウスに殺されただろとか言ったらいけない。時々「アテナは殺す、いつか殺す」とか呟いて居るけどそっとしておきましょうね?(威圧)

姉は基本的に外国で別の学園の教師をしているが、本編に登場する事はないでしょう。そして、彼女が技術を担当する理由は単に最近の趣味の物作りの延長線。しかし、実力は本物で岩を渡せば100分の1スカールで人間の兵隊を一軍隊分作ってくれる。フィギィアとか欲しかったら私に頼みなさいとよく言っている。地味にオタクの味方。

ちゃんと技術の授業もしてるよ?うん。

ちなみにだが、ラインハルト・ファブニール先生に恋をしているそうだ。そしてラインハルト先生の前では急にしおらしくなる。

 

 

 

剛力(ごうりき) 拳次(けんじ)(curemasterさん)

 

性別

 

年齢

外見30代

 

種族

超越者

 

容姿

角刈りで厳格な顔つきをした筋骨隆々の男性。服装はタンクトップにジャージ。

 

性格

真面目な熱血漢で厳しいところもあれば優しいところもある。

 

担当教科

武闘全般

 

概要

学園に来る前はいろんな世界を旅して回ってた男で己の身ひとつであらゆる困難を乗り越えてきた。

戦闘力は超越者なだけあり様々な種族を超えて強くなり続けており、本気を出すと鬼や妖怪、悪魔や神の力などをまとった戦闘形態に変身する。

熱血漢だが脳筋ではなく、知力も高く相談を聞き、物事を冷静に見極める判断力がある。

ストッパーのポジションで苦労人。

ハンカチ盗難事件において犯人の司を目の敵にしている。

 

 

 

及川(おいかわ) 夏芽(なつめ)(鳴神 ソラさん)

 

性別

 

年齢

見た目20歳、中身は60歳

 

種族

牛鬼

 

容姿

膝まである茶髪を団子に纏めていて、赤い瞳、赤い着物の上に割烹着を纏っている。胸はG。

 

性格

ほんわかで色々と寛容。

 

担当教科

食堂のおばちゃん

 

概要

食堂のおばちゃんを自称する女性。

一人称はおばちゃん、二人称は生徒はちゃん付け、先生はさん付け。

本人は食堂のおばちゃんが夢だったとの事で入れた事が嬉しいとの事。

20歳の時から全然変わってないとの事。

出してる牛乳は自家製との事だがどういう意味かは出場所は秘密にしている。

腕っぷしも強く、問題を起こす子は持ち上げて外に出す。

料理も世界レベルの美味さの実力を持つ。

 

 

 

・ジャック・ザ・母ちゃん(平熱クラブさん)

 

性別

 

年齢

10万8000歳

 

種族

召喚種悪魔(サーヴァントデビル)

 

容姿

黒光りする革ジャン、革製のロングパンツ、ドクロの入った黒タンクトップ(レーザーラ◯ンチックな服装)、アフロっぽいパーマ頭、少し透明度のある茶色のグラサン、ふくよかなおばはん体型、鋭い眼光、常にジャックナイフを仕込んでる。

 

性格

頑固。

 

担当教科

食堂のおばちゃん

 

概要

元は魔界に住む、召喚種悪魔。

召喚種悪魔は基本、魔法使いに呼び出されることで魔界から出てくるのだが、この人は……使いこなせる人がいなかったそうだ。魔界の暮らしに飽きて現世に来たそう。

実は戦闘力は高い。

料理は一級品。ただし、飯を残すと彼女のナイフ芸を体感することになる。「お残しは許しまへん!」

生徒達からは色んな意味で恐れられてる。「ジャックおばはん」、「ジャック先生」などの呼び名が。

ちなみに召喚種悪魔は、主から名前を与えられるのが基本だが本人は「ジャック・ザ・母ちゃん」と自ら名乗っている。

人生相談も受け付けているようだが、来るのはモノ好きくらい。一人称は「アタイ」、二人称は「アンタ」。

 

 

 

死纏(しまとい)さん(スコープさん)

 

本名

アンビス・プルートー(名乗るまではこのまま)

 

性別

 

年齢

見た目40代(実際はなし、死であるため年齢がない)

 

種族

死神

 

容姿

明らかに買い替えた方がいいボロボロの黒いローブを身に纏い、顔が見えるか見えないかぐらいの辺りまでフードを深く被っている。黒い髪と目は天パに死んだ魚の目……顔自体は美形なのに台無し。

 

性格

無気力の塊。自分に利益があるなしにだらけられるならそれでいいと考えている。その上権力で他の死神を良い様に扱う。クズかな?根はまあ……たぶんいい奴?命は重んじる。

 

担当教科

「警備員は授業なんてしねーよ」

 

概要

名前の「死纏さん」と言うのは「警備員の名前なんて知らなくていいだろ……」と、名前を明かさないのでついた渾名のようなもの。本来、死神は魂を回収(もしくは刈り取る)して輪廻転生の輪に戻すのが役割なのだが、その仕事を全力でサボっている。むしろ部下に勝手に襲わないように命令したあるほど……曰く、「仮にも生徒連れ去ったら面倒な仕事が回ってくるだろーが」……要は面倒なだけ。

部下の死神は本能で魂を回収する猟犬で、死纏さんはそれを操る猟師と言ったところ。

死神の使う鎌などの武器は死纏さん曰く魂に直接攻撃する非実体的な攻撃のため物理防御は基本不可能。魔力や妖力などは命(魂)の余力に近いためあっさり斬り裂ける……らしいが、宇佐間先生が「フゥンッ!」と筋肉で受け止めたことがあり、これが虚実なのか宇佐間先生がおかしいのか物議を醸している(要はギャグ補正の前には無力)。なんと既婚者で、本人にそのことを聞くと「あー、いや、その、だな……まあ……そういうこった」と口籠もりながら肯定した。テメェもリア充かよ。

 

 

 

・妖精(スコープさん)

 

性別

男少数女多数

 

年齢

1〜23000歳

 

種族

妖精

 

容姿

赤、青、緑、黄……髪と瞳の色は同じだが、個体ごとに色が違う。しかし容姿は男女関係なしにロリショタしてる。同性だと殆ど顔に違いはない。服装は髪と同じ色の妖精服。半透明の虫のような羽だってある。

 

性格

色のイメージで変わる。下に一覧。ただしイタズラとお菓子が好きなのは変わらない。

 

担当教科

清掃

 

概要

文字通りの妖精。名前まで妖精なのは「僕たちは妖精だから妖精って呼んでね!」と言うから。9色×男女(2)+白黒金銀=22の妖精がきる。現在確認されている色は白黒灰赤青黄緑橙桃紫茶金銀。最大の特徴は死んでも復活する事。だから特攻気味のイタズラを仕掛けては校長と学園長に叱られている(もっと身体を大事にした悪戯をしなさいって怒られてる。いやイタズラを止めろよ)。

また、色毎に何かしらの属性的な物を持ち、属性に沿った位置や物の近くにいると力が増す。属性魔法(光なら閃光、火なら火炎玉)を行使する。

基本的に困ってたら助けてくれるいい子。知能及び物理的身体能力や身長は人の幼稚園児と変わらない。基本的に同色の男女で行動しているが、白と黒、金と銀のみは白黒、金銀で行動する。

 

色毎の性格・属性

白:天使の様な明るさを持つ。属性は光。

黒:厨二病でカッコつけたがり。属性は闇。

灰:引っ込み思案、けど遊びたがり。属性は崩壊。

赤:怒りっぽい(怒るのも頬を膨らませる程度)。属性は火。

青:寂しがり家、あまりにも構ってもらえないと泣く。属性は水。

黄:アルティメット活発、イタズラをよくする。属性は電気。

緑:休日の縁側的なのんびり屋さん、お茶をよく飲んでる。属性は風。

橙:せっかち、さらなる速さのその先へーーーー!属性は熱(熱量操作)。

桃:ムッツリ、恋バナ大好き、唯一知識量が大人で恋愛の事なら全力で手助け。属性は色欲。

紫:毒舌だけど実は臆病な子。属性は毒。

茶:地味で目立とうとしない子、しかし常に戦闘力が高い状態を維持できる子。属性は地(地面の近くに常に居るから戦闘力が高い)。

金:みんなのまとめ役、太陽が出ている時は真面目。夜は金と銀の性格が入れ替わる。属性は太陽。

銀:みんなの司令塔、金の後ろに常に隠れる。属性は月。

 

 

 

・アルケー・ティアランド・ケイオス(スコープさん)

 

性別

 

年齢

測定不可

 

種族

ティアマト

 

容姿

流水の様な青い髪、龍を思わせる細い瞳孔をした黄金の瞳。龍と羊を合わせた様な角を持つ。爪には水色のマニキュアが塗られ、服装は水色のドレス。常に微笑んでいて、その瞳に謁見する機会は少ない。

 

性格

物腰穏やかで、優しく、慈愛に満ち溢れている。

 

担当教科

校長

 

概要

「ふふふ、私のことが知りたいのですか?ちょうどいいので自己紹介させていただきますね?……私は原初の海、今では天であり地でもある女神、ティアマト……あなたたち全生命の母と言ってもいいでしょう。今はこのような姿ですが、私自身の力……大洪水や、怪物を生み出す力は健在ですよ?私は原初の母として、皆さんを見守っていますからね……ああ、私を呼ぶ時はティアランド校長、もしくはお母さん……まあ、ティアマト以外の呼び名なら自由に呼んでくれて構いませんよ」

……こほん、彼女はメソポタミア神話において、原初の女神とされ、今の天地の素材となった神性である。彼女はその気になれば元の姿にも戻れるが、その際に天と地から自分の身体を構成するためにいくらか削り取ることになる。

だがこう見えて彼女の体臭はあまりにもひどく、屁が人を吹き飛ばすほど強烈な上、へその穴があり得ないほど臭い。

 

 

 

喰輪(くいわ) 辰蛇(たつじゃ)(スコープさん)

 

性別

 

年齢

0であり∞

 

種族

ウロボロス

 

容姿

∞字にねじ曲がった竜の角、らせん状に渦巻き続ける赤と青の陰陽の様な瞳、身長100センチのチビっこさにEカップと言うアンバランスさ。童顔で黒い髪はツインテール。いつもセーラー服を着ているが、コスプレ好きでたまにスク水やらメイド服やらを着ていることも…。

 

性格

セクハラ、下ネタ、エロが好きな自由人。性のお悩み?是非相談してね!

 

担当教科

学園長

 

概要

「す べ て の 元 凶」そうまともな人物からは言われる。どうやってこんな人が教師になれた?とか、入学できた?と思ったらだいたいこの人のコネとか金とか脅しが上手くいったのだろうと考えましょう。おっぱいがでかい人の胸を揉み、小さくても揉みしだき、着替えを除き、下着をクンカクンカする煩悩の塊。曰く、煩悩(エロ)は無限に沸き続ける。つまり無と無限を象徴し、それらから力を得る彼女にとってエロは最高のもの。いやだからって生徒のパンツ嗅ぐなよ。

大抵しゃべれば下ネタが混ざる。ハレンチ?知ったことかと言わんばかりだ(実際に言ったこともあり)。無の力を行使してテレポート紛いのこともできる。それを私用しまくって生徒の家にテレポート。パンツクンカクンカ。匂い、パンツの形状、布の感触をメモ。テレポートで戻りメモと言う名のレポートを書く。

彼女がまともになることは恐らく絶対ない。外敵と判断した相手には「無限の呪い」というものをかける。それは至って簡単な効果で、それは……無限に性欲を高めるというもの。生殺しである。今まで何人の外敵(男)のくっ殺が学園に響いただろうか……ちなみにしょっちゅう食堂で夏芽さんのおっぱいを揉んでいるのが目撃される。後は大狼先生や宇佐間先生の雄っぱいとかも揉む。男女問わず1年生に1回は必ず揉まれるし嗅がれるし家に侵入される。しかも侵入に関しては必ず目撃されるようにしてくる。つまり「私が犯人さ!」と行動で示す。もう誰かコイツをシメろ。

学園で妙なイベントが起きたら学園長と校長のせいと言うのはほぼ常識。一応は龍の最上位に位置するが、威厳なんて捨てた。だって生徒に秘蔵本とか腐ってる本とか配っている、全て自作。

誰でも君ちゃん呼び。



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1学期
教室間違えるってのはよくあることさ


???「ヤッベー!!今日入学式昼からあるからって……寝過ごしちゃったよー!!ヤバイ!マジでヤバイ!」

 

 

春休みの終わる今日この頃。1人の妖狐の少女が顔を真っ赤にしながら慌てふためくように走っていた。

その少女の名は『出雲(いずも) 紺子(こんこ)』。カバンを持ち、女学生のような服を着ていることから、きっと彼女はどこかの学園の生徒なのだろう。

 

 

紺子「チクショー、カズミンめ!『昼前には起こして』って約束すっぽかしやがって!!あいつ何年私ん家に居候してると思ってんだよ!?後で見つけたらたっぷりボコボコにしてやるからなあの野郎!」

 

 

そんな悪態をつきながらも全力で走っていた。

だが顔を真っ赤にしながら走っている訳はそれだけではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

紺子(ボタンはなんとか間に合うけど…リボンは着いたら結ぶか)

 

 

紺子は走りながらボタンが外れているレディースに目をやると、そのまま留め始めた。

ところがボタンは6つあり、紺子は半分しか留めず、残りは腹の部分。いわゆる『へそ出しルック』という状態だった。学園に入学した頃からずっとそうで、よく周りから『服装を整えろ』『腹を隠せ』などと言われ続けてきた。

だが紺子はこのスタイルを気に入っているのか聞く耳を持たず、入学した頃からずっとそうしてきた。

 

 

紺子「………よし、できた!あとは全力ダッシュだ!!」

 

 

歯を食い縛り、先ほどから早めている足をさらに早め、大量の汗を流しながら学園へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子が家を出て約15分、彼女はようやく自分の通う学園が見え、校門も見えてきた。

 

 

 

 

 

異生神妖魔学園

 

 

 

 

 

異生神妖魔学園とは様々な種類の妖怪や神々が通う学園。紺子のような妖狐だってもちろんいる。そして西洋の怪物もだ。

学園の名前の意味はこうなっている。

 

 

 

なる

き方をする

々や

怪や

物が

ぶための

(その)

 

 

 

人呼んで『異生神妖魔学園』。紺子たちのような人外しか通えないため、人間は一切いないのだ。いや、『侵入した者は排除される』と言った方が正しいか。

 

 

紺子「チャイム鳴るなよチャイム鳴るなよチャイム鳴るなよチャイム鳴るなよチャイム鳴るなよチャイム鳴るなよチャイム鳴るなよチャイム鳴るなよ~~!!」

 

 

オウムのように「チャイム鳴るなよ」を繰り返し、校門へまっしぐら。紺子は血走った目をしながら校門を風のようにくぐり抜けた。

 

 

 

ガォンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど同じ頃、校門の前に警備員らしき男がいたのだが、紺子の風圧を受けて壁に押しつけられたところだった。

 

 

???「やれやれ、またあいつか…もう声でわかったわ。今日も服装乱れてやがる…また反省文書かれるんだろうなぁ、出雲

 

 

いや、男の服装は警備員とは言いがたい服装だった。

買い替えた方がいいんじゃないかと言われるくらいあまりにもボロボロな黒いローブを身に纏い、顔が見えるか見えないかぐらいの辺りまでフードを深く被っている。

その姿からして、まさに死神だ。

 

 

死神?「まっ、警備員の俺には関係ないがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「うおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!

 

 

校舎に紺子の雄叫びが響き渡り、全力で走り、全力で自分の教室を探し、全力で見つけ、全力で入り、全力で席に着いた。

 

 

紺子「ゼェ……ゼェ……ヒュー……ヒュー……」

 

???「紺子ちゃ~んあなたもう2年でしょ~」

 

紺子「あぁ?ゼェ…何だよお前…………」

 

 

荒い息遣いをしながら見ると、黒髪黒目で背の小さい少女が入ってきた。

 

 

???「春休みだったから忘れてるのも無理ないよね~。クラス札見ればすぐにわかるよ~」

 

紺子「めんどくせぇな…何が起きてんだ?じゃねぇや、どうなってんだ?」

 

 

紺子がだるそうに教室のクラス札を見ると、そこにはこうあった。

 

 

 

【1年教室】

 

 

 

紺子「………………………」

 

 

紺子は無言で教室とクラス札をしばらく見合わせるが、何かおかしいことに気づいた。

そういえばここの教室空っぽだよな?でも今日は確かに入学式。新しい生徒が入ってきて………………。

 

 

紺子「ん?新しい生徒?」

 

 

ふと黒板を見ると、1枚の張り紙があった。その張り紙を見ると、なんと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーっっ!!!私の名前がねぇーっ!!クラスの名前もねぇーっ!!」

 

???「もう遅いよ~あと30秒でチャイム鳴るよ~それじゃお先に~」

 

紺子「何でもっと早く気づかなかったんだよ~!ダメだ終わった!初日から遅刻確定!反省文確定!!」

 

 

少女はすでに去っており、紺子は半ベソをかきながらカバンを持つと、滑って転びそうになりながらも2年教室まで全力で走っていった。

 

 

紺子「カズミ~~~ン!!!!テメェのせいだぞあのアホ九尾~~~~~~~~!!!!

 

 

またしても校舎に紺子の雄叫びが響き渡った。寝坊する紺子も悪いんだけどね。




1学期あるある
教室を間違える


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個性集まりし人外たち

案の定間に合わなかった。紺子が2年教室に入ろうとした途端チャイムが鳴ってしまい、しかも転んでしまったのだ。

紺子のクラスはもちろん全員席に着いている。担任であろう吸血鬼の紳士は「またか」という表情で転んだ紺子を見ていた。

 

 

吸血鬼「…どうせお前だろうと思っていた。その癖は去年から変わっていないな」

 

紺子「イッテェ……結局間に合わなかった…………」

 

車掌?「おいおい。教室間違えたか?」

 

紺子「うるっせぇな!そもそもカズミンのせいだよ!あいつが起こしてくれなかった!約束破りがってあの野郎!」

 

吸血鬼「そういうのを言い訳というのだ。作文用紙を入れておいて正解だった」

 

 

吸血鬼は教卓から作文用紙を取り出し、それを紺子に渡した。

 

 

紺子「明日までに書いてこいって言うんだろ?わかってるよ、んなこと」

 

吸血鬼「今日は入学式だから呼び出しは免除してやる。だが反省文は私が納得いくようなことを書け」

 

紺子「はいはい、わかったよ」

 

吸血鬼「ならば早く席に着きたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸血鬼「よし、注目!皆知っていると思うが、私は誇り高き貴族ドラキュラ家の一族、ヴォイエヴォーテ・ヴァレンタイン・ドラキュラ。今年に引き続きお前たちの学級の担任を務めることとなった。よろしく頼む。まずは自己紹介からだ。さっき遅刻してきた妖狐、まずお前からだ」

 

紺子「えあっ!?は、はい!私、出雲紺子っていいます!よろしくお願いします!」

 

 

真っ先に指名され、思わず声が裏返ってしまったが、それでもちゃんと名乗れた。

続けて紺子の後ろの番長風と少年が立ち上がる。

 

 

龍族の番長風の少年「俺は赤川龍哉!よろしく頼むぜ!」

 

 

龍哉という少年は見るからにして熱血そうな姿だ。

続けてさっき紺子に「教室間違えたか?」とからかってきた車掌が立ち上がった。

 

 

車掌?「ディーゴ・黒鉄だ!よろしく頼む!」

 

黒い妖狐「僕は鐵ライエルといいます。よ、よろしくお願いします……」

 

ヴォイエヴォーテ「声が小さいぞ、ライエル。もっと声を大きくしなさい。赤川とディーゴに比べてテンションが低すぎる」

 

ライエル「すいません…昔のトラウマが忘れられなくて………」

 

ヴォイエヴォーテ「まあいい。次」

 

 

ライエルの後ろの少女が立ち上がる。紺子に教室間違えてるよと指摘した少女だった。

 

 

食人鬼「私は大蔵居仁美~よろしくね~」

 

ドラゴンの少年「俺様が頂点だ!」

 

ヴォイエヴォーテ「愚か者っ!!」

 

 

突然ヴォイエヴォーテが怒鳴ったかと思うと、ドラゴンの少年に数匹のコウモリを飛ばしてきた。

 

 

ドラゴンの少年「うおっ!危ねぇな先生!」

 

ヴォイエヴォーテ「竜宮寺司…今は自己紹介の最中だ。名を名乗らなければならない時にそんな中二病じみたことを言うんじゃない!」

 

司「悪りぃ悪りぃ。全く、ドラゴンに害獣とはこのこった…」

 

ヴォイエヴォーテ「ありもしないことわざも言うな!本当に学級全員が真似したらどうする!」

 

司「でもさ、体罰はないだろ体罰は…」

 

ヴォイエヴォーテ「こいつの言うことは無視して、次!」

 

 

次に立ち上がったのは犬耳と尻尾が生え、両肩に犬の腹話術人形を乗せた少年だ。

 

 

???「三頭獄宴だよ、よろしくね。ほら、炎宴と死宴も」

 

犬人形(女)「え、炎宴……よろしく」

 

犬人形(オネエ)「あらあらぁ?いい子がいるわねぇ。死宴よ、よ ろ し く ね ん♡

 

ヴォイエヴォーテ「う、うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

なんとヴォイエヴォーテ、炎宴たちに謎の発狂。紺子たち全員は驚いてしまった。

 

 

ヴォイエヴォーテ「た、多重人格………私にはわかる………!!炎宴はコミュ障、獄宴は女、死宴はオネエ………!!」

 

龍哉「先生、大丈夫っすか!?」

 

ヴォイエヴォーテ「大声を出してすまない…では次…」

 

 

次は身長が180センチはありそうな少女が立ち上がった。

制服の胸元のボタンを外しているため胸が大きいが、どうやって立っているのか?彼女は人魚であろう、スカートからは尾びれがギリギリしか見えない。

 

 

人魚「私、魚岬辰美といいます。1年の頃紺子様に助けてもらったのをきっかけに紺子様に尽くしています」

 

ヴォイエヴォーテ「ほう…何に困っていたのかね?」

 

辰美「私、魔法を使えるんですが使えない時にはスケボーで移動するんです。私が立っていられるのは浮遊魔法のおかげなんですが、ある日の休日にスケボーごと転んじゃって動けなくなったんです…」

 

ヴォイエヴォーテ「どんな転び方したらケガするんだ?」

 

辰美「坂道で走らせたら止められなかったんですよね。ですがちょうどその近くに紺子様がいまして、その家に連れてかれてケガの手当てをしてくれたんです。あれから私は紺子様に全力で尽くすために頑張ってます」

 

ヴォイエヴォーテ「そうか……だが無茶はするなよ。次」

 

 

だが次に立ち上がったのはなんと、幼い少女だった。

 

 

幼い少女「鬼灯冷火です。よろしくお願いします(視線がうざい…てゆーか、みんな早くどっか向けよ………)」

 

ヴォイエヴォーテ「鬼灯は物静かだが、用もないのに話しかけたりちょっかいをかけたりするなよ。常にオドオドしているからな。では次」

 

シュゴーラン「シュゴーランの四郷乱です!先生、キスしましょう!」

 

ヴォイエヴォーテ「お前がキス魔なのはみんな知っている。だが忙しいからまた今度な。次」

 

 

次はセイレーンなのだが、見るとその顔は女性的でかわいらしかった。

 

 

セイレーン「…セー・シレインです。男です」

 

ヴォイエヴォーテ「何だとォォォォォォォォ!!!!

 

 

 

ズガッシャガラガラドッゴーン!!

 

 

 

一同『先生ェェェェェェェェェエエエ!!?

 

 

はい、文字通り気絶しました。それもそのはず、ヴォイエヴォーテにも女にしか見えなかったからだ。炎宴、獄宴、死宴を見た時より絶叫し、転がるように倒れてしまった。

 

 

セー「………ハハッ、仕方ないよね」

 

紺子「おい先生!大丈夫か!?もう少しで私に衝突するトコだったぞ!」

 

ヴォイエヴォーテ「だ、大丈夫だ。も、問題ない……」

 

紺子「それ絶対大丈夫じゃないセリフだよな!?」

 

ヴォイエヴォーテ「と、とりあえず………次、だいだらぼっち」

 

 

ヴォイエヴォーテが指すと、強面の少年が立ち上がった。

ところが、だいだらぼっちといってもあまりにも背が低かった。

 

 

だいだらぼっち「山如許人です。僕、チビなんだけど……よ、よろしくね」

 

ヴォイエヴォーテ「山如はだいだらぼっちといっても成長期がすでに終わっている。二次成長期が来たら150メートル、大人は基本的に1000メートル超えなんだが……」

 

八尺様「……ふーん、私は八尺様の彼方高見……」

 

ヴォイエヴォーテ「そしてこいつは言われる前に自己紹介するとは………次は誰だ?」

 

 

次に立ち上がったのは青髪のロングヘア、龍と炎が描かれた青いTシャツとスカートを身につけた少女だ。

 

 

龍神族の少女「俺が雨野龍華だ。よろしくな」

 

ヴォイエヴォーテ「雨野の両親は意識不明で病院にいるため、カフェで住み込みで働いている。出雲もそうだが、お前たちもたまには会いに行ってやってくれ。次は誰かね?」

 

 

龍華の次に立ち上がったのは狸耳と尻尾を持ち、甚平を着た、いかにも化け狸らしい少年である。

 

 

化け狸「信楽一生。親しい人にはイッキって呼ばれてるよ……よろしく!」

 

紺子「おいイッキ…お前の尻尾私よりモフモフでまた誰かダメにしようってか?ざっけんなよテメェ!おかげで私も眠くて眠くてたまらなくなっちまったからな!私にとってお前は邪魔くさいんだよ!」

 

一生「何だと!?おい狐、初日早々やるか!?」

 

紺子「いいぞ、やってやろうじゃねぇか!!どっちが上手く人間に化けられるか…」

 

ヴォイエヴォーテ「やめないか!!

 

 

喧嘩が始まると思った矢先、ヴォイエヴォーテが怒鳴り、紺子と一生目掛けてコウモリを数匹飛ばしたのだ。

 

 

紺・一「「いや(うわ)あああああああああ!!」」

 

 

コウモリにたかられ、悲鳴をあげる紺子と一生。特に紺子はコウモリに噛まれまいと必死に抵抗していた。

 

 

紺子「あーっ!!やめてぇ!!血吸わないでぇ!!狂犬病になる!!死んじゃう!!やめて!!殺さないでぇーっ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「安心しろ、私のコウモリはお前たちのような奴らの血は吸わんし、殺しはしない」

 

一生「俺の血吸っても美味しくねーよーっ!!」

 

高見「人の話聞いてた?」

 

ディーゴ「殺さんから大丈夫じゃぞ!」

 

龍華「気にするトコそこ!?少しは心配しろよ!」

 

ヴォイエヴォーテ「気にするな。よし、最後のぬりかべ。名前は?」

 

 

ヴォイエヴォーテの言葉に最後に立ち上がったのは垂れ耳と尻尾を持った少女だった。

 

 

ぬりかべ「私、大壁盾子!よろしく!」

 

冷火(どこがぬりかべだよ…ガッツリケモミミと尻尾生えてんじゃねーか…)

 

ヴォイエヴォーテ「よし、これで全員だな。入学式まであと10分あるが……5分間自由時間としよう」

 

龍哉「あの2人無視!?」

 

 

コウモリが離れた紺子は教室の隅で座り込みながら頭を抱えて泣きながら「ごめんなさい」「許して」などと懇願しており、一生は恐怖のあまり気絶していた。

この後入学式会場である体育館に行く5分前になる頃には目を覚ましたという。




開始早々大騒ぎになってしまった。
次回はその後日談です。


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朝のHR→国語

紺子「今日はカズミンに起こされたからいいけど、問題は反省文…先生満足してくれるかな?」

 

カズミン「出雲姐ちゃんのことだから大丈夫でしょ。先生もたぶん出雲姐ちゃんの遅刻に飽き飽きしてるし」

 

 

自己紹介から翌日、紺子が自分と同じ妖狐で9本の尻尾を生やした少女と学園に向かう途中こんなことを話していた。

その少女の名は『藤井一海』。昨日異生神妖魔学園に入学した子だが、両親はすでに他界している。そのため紺子の家に居候しており、昨日起こさずに紺子が反省文を書かなければならなくなったのは紺子と今話している一海が原因だった。

ちなみにカズミンというのは紺子がいつも呼んでいるあだ名だ。

 

 

紺子「お前はいいよなぁ、こっちなんか昨日散々だったんだぞ?先生なんかコウモリ飛ばしてきやがるし、おかげでトラウマになっちまった…」

 

一海「だからそれは謝るけどさ、ホントは出雲姐ちゃんだっていけないんだよ?いつも僕に起こされてさ……たまには自分で起きなよ。もう2年でしょ?」

 

紺子(両親が死んだくせにガタガタ言うなよな…いつまでも寝てたいんだよ私は…)

 

 

紺子がしかめっ面でそう思っていると、彼女たちの隣に銀髪のショートのイケメン少年が白いロードバイクを押しながら歩いてきた。

 

 

イケメン少年「あっ、紺子とカズミンじゃないか。おはよう」

 

一海「牙狼君」

 

紺子「おう牙狼。おはよう」

 

 

彼の名は『白銀牙狼』。紺子が幼稚園の頃から一緒にいる幼馴染みだ。

 

 

牙狼「カズミン、ちょっと遅れたけど入学おめでとう。紺子が元気なさそうなんだけど、また何かやらかしたのかい?」

 

一海「そうなんだ。昨日出雲姐ちゃんが遅刻してね、僕に『お前のせいだ』って責任なすりつけてきたんだ。起こさなかった僕も悪いけど、もう2年なんだよ?たまには自分で起きなよってつくづく思っちゃうよ」

 

紺子「またその話を蒸し返す気かコラ?殴んぞ」

 

牙狼「あー、ほらほら…それやめようよ。そうやって誰かに喧嘩売ってまた泣かされるんだから。君の泣き虫は昔から変わってないし」

 

紺子「うー…お前まで…」

 

 

頬を赤らめて涙目になった紺子であった。

 

 

一海(全く、出雲姐ちゃんの泣き顔かわいいんだから………写真撮りたくなるなぁ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子たちは校舎へ入った。それにチャイムが鳴る前だったからよかったが、これからやる授業がまさかあんなことになるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

ヴォイエヴォーテ「よし、朝のHRだ。日直は誰だ?」

 

紺子「あれ、誰だろ?龍哉か?」

 

龍哉「違うぞ。ディーゴだろ?」

 

ディーゴ「ちゃう。ライエルじゃろ?」

 

ライエル「いや…ディーゴだよね?」

 

ディーゴ「だったら龍哉か?」

 

龍哉「紺子だと思うぞ?」

 

紺子「私だ

 

 

 

ガタタタタッ

バッタンッ

 

 

 

クラスメイトたちは全員机ごとずっこけ、ヴォイエヴォーテは教卓の天板を顔にぶつけた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「何を威張っているんだ!!日直ならちゃんと手を挙げんか!!」

 

紺子「もう、先生ってジョークわかんないの?」

 

ヴォイエヴォーテ「ジョークとかそういう問題じゃないだろ!そんなことよりさっさと進めんか!話が進まん!」

 

紺子「あいよー。起立。礼。着席」

 

 

 

 

 

ヴォイエヴォーテ「欠席者は0か…もうしばらくしたら授業が始まるが、昼休み後には全員体育館に来るように。1年とのレクリエーションがあるからな。よし、朝のHRはここまで。この後国語の授業があるからそれまで準備しておくように」

 

 

ヴォイエヴォーテは資料をまとめ、紺子から反省文を受け取り、教室から出ていった。

 

 

龍華「紺子、お前さ……さっきジョークって言ってたけど、さすがにわざとだろ?」

 

紺子「いえ、マジなジョークです」

 

龍華「泣き虫な割には何でふざけんのかなぁ………」

 

辰美「紺子様~、1時間目って何時からでしたっけ~?」

 

紺子「んあ?8時50分だぜ」

 

辰美「わかりました。ありがとうございます」

 

司「ヤッベ、初日から教科書忘れちまった」

 

龍哉「大丈夫だよ、俺が貸してやるぜ」

 

司「悪りぃな。俺様最近物忘れがひどいからな。窮地に教科書を得るってのはこのこった」

 

冷火「その年でもうアルツハイマー!?(いやマジあり得ねぇよ!てゆーか何初日から忘れてんだよ、アホか!)」

 

ディーゴ「お、俺も忘れてもた!なあ紺子、貸してくれね?」

 

紺子「ハァ!?だったら隣に頼めや!何私に頼んでんだよバカか!てかお前も初日から忘れてんじゃねーよオンボロ機関車!」

 

ディーゴ「何じゃと紺子!やったろかゴラァ!!」シュウウウウーッ

 

 

そう、紺子の言う通りディーゴは車掌の姿をした蒸気機関車の付喪神。鼻から白い煙を出しながら怒鳴ると、紺子の胸ぐらをつかんだ。

 

 

紺子「え、ちょ…マジで?ヤバイ、轢かれる…!」

 

ディーゴ「泣き虫狐の分際で偉そうな口叩くとはいい度胸じゃな、おい!轢きはしねぇが今から表出んかい、あ!?」

 

紺子「え……嫌…お願い、待って………」

 

 

紺子は泣きそうな顔で懇願するが、ディーゴは気づいていなかった。

これから自分の身に起こる悲劇を………背後から大口を開け、鋭い歯をむき出しにした仁美が迫ってきていることを………。

 

 

 

 

 

仁美「喧 嘩 は や め ま し ょ う ね デ ィ ー ゴ く ~ ん ?

 

 

 

ガブッ

 

 

 

ディーゴ「痛っだァァァァァァァァァ!!?

 

 

なんということでしょう、仁美が噛みつく音とディーゴの悲鳴が教室の外まで響きました。

ちょうど教室に眼鏡をかけた女性の烏天狗の先生が入ってきたのだが………。

 

 

烏天狗「いや何がどうしてそうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

目の当たりにしたのは紺子の胸ぐらをつかんだディーゴ、ディーゴの頭に噛みついた仁美だった。

 

 

ライエル「あ、先生……」

 

 

その後ライエルがさっき起きた出来事の一部始終を話したが、烏天狗は半分呆れていたとのこと。

確かに隣に頼めばいい話だが、授業初日から忘れ物するって…………………。

 

 

烏天狗「……き、今日はオリエンテーションだから仕方ないよ。次から気をつければいい話だし」

 

司「あいよー」

 

仁美「わはっは~?(わかった~?)」

 

ディーゴ「わがりまじだ…いい加減放してくだせぇ…」

 

紺子「お前も放せよな…」

 

仁美「あー不味かった」

 

仁美とディーゴ以外全員『食べる(食う)気だったの(かよ/んか/んですか)!!?

 

 

 

 

 

やがてチャイムが鳴り、クラスメイトたちは全員席に着き、机上に教科書やノート、筆記用具を出した。

 

 

紺子「起立。礼。着席」

 

烏天狗「はーい、皆さんちゅうもーく!僕は国語担当の烏丸トリノ。よろしくね」

 

全員『よろしくお願いしまーす!』

 

トリノ「今日はオリエンテーションだけど、教科書忘れちゃった人もちらほらいるみたいだから隣の人に見せてもらってね」

 

ディーゴ「わかってますって(チクショー…まだ痛む…)」

 

ライエル(全然わかってないセリフだこれ)

 

トリノ「で、何やるかだけど……まずは自己紹介、それから教科書の内容確認して、その後1年に習った漢字テスト。みんな覚えてるかなー?」

 

獄宴「ヤバイな…春休みずっと遊んでたからほとんど覚えてないかも…」

 

死宴「私は覚えてるけど教えてあーげない♡」

 

炎宴「何そのカンニングする気満々な発言!?」

 

トリノ「ちなみにカンニングしたら急遽テスト用紙取り上げて職員室に呼び出します」

 

 

1人と2体の会話が聞こえたのか、さっきまで明るく話していたトリノが急に真顔になり、声のトーンを低くしながら言った。

 

 

獄・炎・死「「「ひ、ヒィィ!?」」」

 

司「声低っ!?」

 

許人「さっきまで明るく言っていたのに急に真顔で言われると怖くなるんですけど………」

 

トリノ「それが当たり前なの。わかる?」

 

紺子「私は先生によってそれぞれ違うと思うんだけどなぁ…」

 

トリノ「正解!」

 

紺子「あっ、また笑顔だ」

 

トリノ「カンニングしなければ僕だって怒らないよ。要は真面目に授業受けて、真面目に家で勉強すればいいからね。さて、ちょっと長くなっちゃったけど皆さんの名前聞きますか。まずそこの狐さん」

 

紺子「私だな。出雲紺子です」

 

龍哉「赤川龍哉です!」

 

ディーゴ「ディーゴ・黒鉄だ!よろしく頼む!」

 

ライエル「鐵ライエルです…」

 

仁美「大蔵居仁美だよ~」

 

司「俺様は竜宮寺司だ。大財b…いや、何でもねぇ。続けてくれ」

 

獄宴「うん。僕は三頭獄炎」

 

炎宴「私、炎宴」

 

死宴「死宴よ。よ ろ し く ね ん♡」

 

辰美「魚岬辰美です。いつも紺子様のために尽くしてます」

 

冷火「鬼灯冷火です…(またやんのかよめんどくせぇ!次の授業もこんな感じなのかよ!)」

 

乱「シュゴーランの四郷乱です。キス魔なのでチュー意してくださいっ♡」チュッ

 

冷火(注意とチュー意…うわーつまんねー)

 

セー「セー・シレインです…」

 

許人「山如許人です…これでもだいだらぼっちです」

 

高見「私、彼方高見…」

 

龍華「雨野龍華だ!よろしく頼む!」

 

一生「化け狸の信楽一生です」

 

盾子「大壁盾子!よろしく!」

 

トリノ「いや~、みんな個性的でいいね~。先生にもいろんな種族がたくさんいて困っちゃうよ」

 

紺子「どんなのがいるの?」

 

トリノ「さあね。よし、みんな自己紹介したところで、オリエンテーションに入りますか!」

 

 

 

 

 

教科書の内容の確認はあっという間だった。ちなみに確認したのは人間界の物語、詩、和歌、エッセイなどだった。

トリノは漢字テストの用紙を取り出し、紺子たちにも指示を出した。

 

 

トリノ「はーい、漢字テストするよー。筆記用具以外出しちゃダメだからねー。教科書とノートはちゃんと机の中に入れてねー」

 

 

紺子たちは教科書やノートを机の中にしまい、教科書を借りている者は持ち主に返した。トリノは紺子の列から順にテスト用紙を配る。

 

 

トリノ「みんな行き届いたみたいだね。それでは…始め!」

 

 

制限時間は15分。紺子たちは早速問題に取り組む。

問題数は読み書き合わせて10問だった。

 

 

紺子(こんなの私の好きなクイズ番組で見たから簡単簡単!)

 

 

紺子はスラスラ解いていくが、周りを見ると、ほとんど覚えていないのか手が止まっている者がちらほらいた。

春休み中ずっと遊んでいたがために致し方なし。

 

 

紺子(………って、ん?)

 

 

ところが終了間近、紺子は自分の書いた解答に何かおかしいことに気づいた。

なんと絶望的なことに、解答欄が全てずれていたのだ。

 

 

紺子(あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!何してんだよ私!!こんな時に限って…うわああああああああ!!)

 

 

紺子は慌てて消しゴムで解答を全て消し、必死にさっきの解答を書いていくが間に合わず、トリノが手を鳴らした。

 

 

トリノ「はい、そこまで!手を止めて後ろから回収してください」

 

紺子「間に合わなかった…終わった……」

 

 

紺子は絶望のあまり目から涙が溢れ出し、机に泣き伏してしまった。

テスト用紙が次々回収されていく中、龍哉は泣いている紺子に声をかけようとした。

 

 

龍哉「紺子、どうした?大丈夫か?」

 

紺子「私はいいから持っていってくれ……」

 

龍哉「お、おう…(たぶんこれ解答欄ずれてたとかそういうパターンかな?)」

 

 

龍哉は紺子のテスト用紙を手にし、教卓まで持っていった。

 

 

トリノ「1、2、3、4……うん、これで全部だね(何で紺子さんのだけベッチョベチョに濡れてんの!?)」

 

 

見ると確かに紺子のテスト用紙だけ涙で濡れていた。

 

 

トリノ「あっ、ちょうどいい時間だね。もうそろそろチャイム鳴ると思うけど…」

 

 

時計を見ると、授業の終わりの時間が近づいてきていた。そして授業終了のチャイムが鳴った。

 

 

トリノ「はーい、これで国語の時間は終わりー。ところで紺子さん、君日直なのにどうしたの?何で伏せてるの?」

 

 

すると急に校内放送が流れてきた。

 

 

???『あー、マイクテスマイクテス。あー、あー!』

 

龍華「何だ?」

 

???『教室内の皆さん、正面向かって右手側をご覧くださ~い』

 

 

泣いている紺子以外全員右を向くが、壁しかない。ちなみにトリノは紺子たちの方を向いているので左を向いた。

 

 

ライエル「壁しかないけど………」

 

龍華「壁になんかあるのか?」

 

???『壁です

 

 

 

ガッシャガタガタドタバッターン

 

 

 

教室にいる教師含めた全員がずっこけた。特に紺子は泣きながら転げ落ちるようにずっこけていた。

 

 

トリノ「なら何で放送した!?」

 

???『暇だったので』

 

トリノ「遊ぶな!?」



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数学が苦手な私は数字を見るだけで目が回る

10分休みが終わり、次に始まる授業は数学だ。

 

 

紺子「あーあ、嫌な時間が来たよ……」

 

 

紺子にとって数学は1年の頃からずっと苦手としていた。正負の数の計算や方程式といった簡単なものは普通に解けていたのだが、文章題といった応用問題、途中から難しくなってきた単元のせいで頭の中が混乱するようになってしまったのだ。

おかげで数学の補習を受けることがたびたびあったのだ。しかも苦手を放っておいたせいで苦手意識が余計高まっており、春休みになってから大後悔したらしい。補習を受けないために40点以上取らなければならないのは()()()()()()()()()

それでも紺子には劣らなくても苦手な者はいる。だが苦手でも赤点を取らないためにも努力が不可欠なのだ。

 

 

司「お?紺子、お前俺様と同志だな。実は俺様も理系苦手なんだよな」

 

紺子「マジで?私文章題とか図形とかマジ無理…」

 

司「それ!ホンットよーくわかるぜ。でもこういう時にいてよかったぜ、トップ合格でこの学園に入ったズバ抜けた天才が。ハハハ!」

 

紺子「ズバ抜けた天才……そうか、あいつだ!あいつしかいねぇよな!」

 

司「授業終わったらそいつに問題聞いてみような!」

 

紺子「おう!」

 

冷火(おいおいおい!勝手にお前らが決めてんじゃねーよ!2人揃ってバカか!無法地帯か!)

 

 

冷火が異生神妖魔学園にトップ合格して入学したことはクラス全員が知っていた。ところが彼女は周りと関わるのが嫌なのかいつも物静かかつ敬語でオドオド、その上あまり話したがらない。

やがて教室に数学の教師らしき女性が入ってきた。その女性はとにかく美人で、見るからにして猫又だろう、猫耳と2本の尻尾が生えている。

 

 

猫又「はーい、皆さんおはようございます!私は西田みのり!好きな子は美少女と幼女です!」

 

全員『おいちょっと待てェェェェェェェェ!!?

 

 

残念な美人とはこのことか、ロリコンだ!ここにロリコンがおる!

 

 

高見「うわー、正直ちょっとそれはないわー…私八尺様だけどこんな残念な美人教師初めて見たわー…」

 

許人「で、でもさ…人は見かけじゃ判断できないっていうでしょ?成績優秀で運動神経も抜群かもしれないし…」

 

みのり「そこ。何を2人でブツブツ話してるの?」

 

許・高「「いや、何でもありません!」」

 

紺子「ガッツリこっちにも聞こえてたわ!」

 

みのり「はいはいお静かに。えーと改めて…私は数学担当の西田みのりです。よろしくお願いします」

 

ディーゴ(ちゃんと自己紹介できるなら最初からしろよ!?)

 

みのり「まずは1年の復習として小テストからね。プリント配るわよー」

 

 

周りは「えーまたかよー」「国語でやったからもういいよー」などと文句を言うが、みのりが言い出したことだから仕方ない。

 

 

紺子「ヤベェよヤベェよ…私去年から数学苦手だから40点以上取れる気がしない……」

 

みのり「…あっ!その前に大事なこと忘れてた!日直の挨拶誰?」

 

紺子「あっ、私だ。起立。礼。着席」

 

みのり「ではプリントを配ります」

 

 

紺子たちは次々とプリントを配られていき、名前欄に自分の名前を書いた。

 

 

みのり「みんな行き届いたみたいだね。それでは、よーい始め!」

 

 

みのりは合図を出し、紺子たちは一斉に問題に取りかかった。

 

 

紺子(正負の計算と方程式は楽々だけど文章題がァァァァァ!!)

 

 

見よ、これが苦手を放っておいた者の末路だ。

わかるところだけは解き、わからないところはどんどん飛ばしていくが、もはや完全に空欄だらけ。これが中間試験だったら赤点確定である。

 

 

紺子(カズミンだったら小学校で習った内容なんだろうなぁ…私小学校も算数無理だったよ…)

 

 

心の中で泣きながら呟く紺子であった。

それから15分後。

 

 

みのり「はい終ー了ー!後ろから集めてくださーい!」

 

 

小テストが終わり、紺子たちは次々と提出し、すぐに教科書とノートを出した。

 

 

みのり「今日から授業始めたいけど、どこだったっけな………ああ、単項式と多項式だったね。みんな教科書開いて」

 

 

全員は教科書を開くが、特に紺子は絶望した。文字が混じっているせいでもう何がなにやらである。

 

 

紺子「うわー!めんどくさっ!だいたいx2乗とか3乗とか何だよ!?文字入ってるせいでもう混乱するわ!」ヒソヒソ

 

龍哉「……なあ紺子、後で教えてやろうか?」ヒソヒソ

 

紺子「悪い、司と約束してるんだ。冷火に教えてもらおうとな…」ヒソヒソ

 

龍哉「そうか?あいつがトップ合格したこと学園中で有名だからなぁ…」ヒソヒソ

 

みのり「また誰かヒソヒソ話してる子がいるわねぇ…」

 

紺・龍「「いやいやいや、違います!!」」

 

みのり「あら、そーお?」

 

龍哉「その笑顔やめてくれます!?そんなニコニコしながら言われたらよけい怖いんですけど!」

 

ライエル(僕も紺子ちゃんの力になりたいなぁ……でも入学してから一度も話したことないし……どうしよう…………)

 

 

同じ妖狐でも弱気すぎるライエル。話しかけたいけど思うように声が出ないし、何を話せばいいかもわからない。

 

 

司「あ、これ意外と簡単じゃねぇか。紺子には悪りぃがお前が冷火に聞いてくれ」

 

 

どうやら司は教科書を一通り見たようだ。できるものとできないものがあるらしい。

 

 

みのり「数や乗法だけで成り立った式を単項式と言い、数の部分を『係数』と言います。係数が1で単項式1xの場合、省略できるのでxと表せる。-1の時も同様で、-xと表します」

 

紺子「あーダメだ、全っ然ついていけねぇ。数字見てると目回ってくるしチカチカしてきやがる」

 

 

だが、今まさに紺子と同様の者もいた。

 

 

ディーゴ「え、マジで何これ?春休みずーっと遊んでたから2乗とか何もかも忘れちまった………」

 

 

それはいわゆるド忘れではないのか?そんなものは苦手とは言えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習問題に取り組んでいるうち、やがてチャイムが鳴り、数学の授業は終わった。

紺子は号令をかけ終えると、早速冷火にわからないところを聞くことに。

 

 

紺子「なあ冷火、ちょっといいか?」

 

冷火「何ですか?(何でこっち来るんだよ!関わりたくねぇってのに!)」

 

紺子「今日の授業の内容全然わかんなかったんだ。教えてくれないかな?」

 

冷火「え…初っぱなからわからなかったんですか?(こいつマジで!?つーか全然教える気が起きねぇんだけど!)」

 

紺子「頼むよマジで。トップ合格したみんなのマスコットならできるだろ?」

 

冷火「マスコットなんて…そんな………(だぁぁぁぁ!!んなことどーでもいいんだよ!!早く1人にしてくれよな!!)」

 

 

仕方なく冷火は紺子にわからなかったところを教えることにした。紺子はノートに写した練習問題に答えをどんどん書いていく。

 

 

紺子「いやー、それでよくわかったよ。ありがとな」

 

冷火「いえいえ。またわからなかったらいつでも聞いてくださいね(もうあっち行きやがれ!!こっちゃもう教えたくねぇんだよ!!)」

 

 

心の中でそう叫ぶ冷火だったが、この時、紺子はこう思っていた。

 

 

紺子(司テメェ、堂々と裏切りやがってあの野郎……今度冷火に教えてもらうことあったらフルボッコにしてやるから覚悟しとけよ?)

 

 

実はあの時司がスラスラ解いているのを見ていたのだった。



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理科の教師は小学生!?司、大暴走!

次の授業のため理科室へ向かうその途中、紺子、辰美、盾子はガールズトークに夢中になっていた。

 

 

紺子「理科って聞くと毎回あれを思い出しちゃうんだよな」

 

盾子「あれって何だったっけ………ああ、3年の赤井舌寺先輩だ!」

 

辰美「化学薬品舐めていつも病院送りにされてましたよね~。紺子様も盾子さんも舌寺先輩に舐められてましたよね」

 

紺子「赤井先輩には参ったもんだよ…去年なんか『紺子っちのお腹は趣がありますな~』とか言ってきてさ、私の腹よだれでベトベトになっちまった……しかも私おへそ弱いのにさ、そこまで執着に舐めてきやがった」

 

盾子「ゴマ溜まってたんじゃないの?私なんか足の裏だよ?くすぐったくてしょうがなかったよ」

 

紺子「男子もやられてたっけ。うなじとか」

 

辰美「そうですね。龍哉さんもディーゴさんも許人さんもやられたって言ってましたっけ」

 

盾子「一体何人舐められたんだろうか…」

 

紺子「全員じゃね?たぶん」

 

 

夢中になっているうちに理科室に到着し、紺子たちはそこに入った。

理科室には人間や動物の骨格標本、剥製、無数の実験器具、大量の化学薬品などが置かれていた。

 

 

ディーゴ「そういや理科の先生誰じゃったっけのう?」

 

 

席は指定されていないので紺子たちはそれぞれ好きな場所に座り、一生の隣に座ったディーゴが早速声をかける。

 

 

一生「新しく入ってきたって聞いてるけど、子供って言ってたな」

 

ディーゴ「ダニィ!?どどど、どういうことだよ先生が子供って!!」

 

一生「知らないよ!!でも理科の先生ってことは確かだし!!」

 

 

ディーゴが取り乱している中チャイムが鳴り、理科室に一生が言っていた教師が入ってきた。

その教師はなんと、一生の言う通りブカブカの白衣を着た完全無欠の少年……………むしろ男の娘だった。

 

 

ディーゴ「…………………なんてこった。この化け狸の言うことはホントだった」

 

???「さあ、授業を始めよう。私が新しく異生神妖魔学園に着任したイスの偉大なる種族、伊佐野人だ」

 

紺子(マジで小学生にしか見えねぇ……マジで何この人?)

 

セー「僕と同じだ……僕も女の子だってよく間違われるのに何で先生まで………」

 

野人「えーと、日直は?」

 

紺子「私です。起立。礼。着席」

 

ディーゴ「何であんな小学生みたいな奴が先生なんだ…?」ヒソヒソ

 

一生「うるさいな。授業始まったんだから静かにしてくれよ」ヒソヒソ

 

野人「今日はオリエンテーションということでまずは君たち、自己紹介してもらおうか」

 

紺子「はーい。出雲紺子です」

 

龍哉「赤川龍哉です。よろしくお願いします」

 

ディーゴ「ディーゴ・黒がn」

 

 

自己紹介終わるまでキングクリムゾンッ!

 

 

野人「2年の生徒はこれで全員だね。さあ、そろそろ授業を始めようか。じゃあ教科書開いて」

 

 

紺子たちは教科書を開くと、そのページは時間跳躍に関することだった。

 

 

龍華「いやいや、なんかおかしくね?ページ違うだろ。普通動物から……だよな?何で時間跳躍なんだ?」

 

野人「こっちもいろいろ事情があるんだ。文句なら目安箱で頼む」

 

龍華「校舎のどこにもないものでごまかしやがった!!ちゃんとした言い訳してくれよ!!」

 

紺子「時間跳躍……てことは未来に行くにはどうしたらいいか、か………」

 

龍華「そいでオメーは真剣に読んでんじゃねぇ!!」

 

司「この授業理科じゃなくなるかもな。たぶんタイムマシンの建造かもな」

 

龍華「タイムマシンってそんな訳あるかー!!だいたい理解だぞ!?技術じゃあるまいし!!」

 

野人「あー、とりあえず落ち着いて。そこのオールバックの君。今何て言った?」

 

司「あ?タイムマシンの建造っつっただけだが」

 

野人「………君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

 

司「はぁぁ!?俺様がガキだぁ!?テメェ、俺様が財閥の息子だから知っての分際か!?小学生みたいな奴が先生やってるってどういうことか説明しろドチビ!!」

 

 

生ゴミを見るような目で言われた司が怒鳴りながら立ち上がり、立て続けに野人の胸ぐらをつかみながらすごみをかけた。

 

 

野人「うわあああ!!お、落ち着け落ち着け!!竜宮寺司君、別に君をバカにした訳じゃない!!感づかれてちょっと不愉快になっちゃっただけなんだよー!!」

 

司「それにしては生ゴミを見るような目してたんだがなー!!目は口ほどに正直ってのはこのこった!!」

 

龍哉「やめろ司!落ち着けぇ!!」

 

司「できぬぅ!!

 

龍哉「ふぉおお!?」

 

 

 

キーン

ドカーン

 

 

 

また訳のわからないことわざを言い、龍哉がそれを止めようとするも無駄だった。

司が突然龍哉に飛びかかり、彼の顔面をつかみながら壁に押しつけたのだ。もちろん壁はめり込み、龍哉は司に顔面をつかまれたまま意識を失っていた。

 

 

司「ザコが…この程度か」

 

冷火(何だこいつ……ドラゴンにならなくてもえげつない力じゃねぇか……)

 

司「龍哉がくたばったところで、伊佐野人…まずお前から血祭りにあげてやる………」

 

野人「うわぁぁぁ!ち、ちょっと待ってぇ!あ、あああ泡てず沢が図ゆっくりと腕立て伏せをををを」

 

司「させぬぅ!!

 

野人「ふぉおお!?」

 

 

 

キーン

ドカーン

 

 

 

龍哉同様顔をつかまれ黒板送りにされた。

 

 

紺子「おいヤベェぞ!司が暴走してる以上誰か止めるかここから逃げるしかねぇ!」

 

ディーゴ「ぬおおおおおおおおお!!」

 

紺子「てかディーゴは何してんだよ!大声出しながら鼻から煙出しやがって!」

 

ディーゴ「あいつを止められるのは俺だけじゃあ!!蒸気機関車の付喪神舐めんなァ!!」

 

紺子「そうか!よく言った!よし、じゃあ私たちは帰るとするか」

 

辰美「そうですねー」

 

許人「僕も…帰ろうかな…?」

 

高見「絶対帰った方がいいわよ」

 

ライエル「だったら僕も帰るよ」

 

司「あ、そんなら俺様も帰るわ」

 

ディーゴ「いや、何で何事もなかったかのようにケロッとしてんのお前!?暴走とか自由にコントロールできたのかよ!?てか問題はそこじゃねぇし!!俺を置いて帰るんじゃねーよ!!俺一度暴走したら自分じゃ止められねぇんだよォォォォォオオ!!!!

 

 

だがもう時すでに遅し。ディーゴは黒板に向かって一直線。

 

 

ディーゴ「誰か止めてェェェェェェ!!!

 

 

 

ドッガァァァァァァン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理科室には倒れた龍哉と野人、そしてディーゴによって空けられた穴があるだけだった。もはや殺人現場である。

理科室の中には先程の騒ぎを聞いた教師たちが駆けつけてきていた。

 

 

???「おい……これは一体どういうことだ?」

 

 

教師の中には死神警備員も混じり、殺意をむき出しにしたような目で呟いた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「これはこれは、死纏殿。2年の担任代表として私が話そう」

 

死纏さん「あんたの生徒が何かやらかしたのか?」

 

ヴォイエヴォーテ「去年のことをはっきり覚えているんだが、ディーゴ・黒鉄が壁に大穴を空けてな……あの穴を空けたは奴しかいない。奴は一度怒ると手を出せなくなるからな」

 

死纏さん「爆破テロかと思っていたが………紛らわしいこともあるもんだ。最近物騒になってきてるし、帰ってきたらとっちめてやるか」

 

ヴォイエヴォーテ「その前に理科室の壁の穴は?」

 

死纏さん「妖精たちに任せりゃなんとかなるだろ。はいはい、みんな職員室に戻って。俺は警備に戻るからな」

 

ヴォイエヴォーテ「死纏殿………」

 

 

理科室から出ていく死纏さんの背後を見て呆れる教師たちであった。

もちろん理科の授業は中止となり、負傷した龍哉と野人は保健室に送られ、帰ってきたディーゴはヴォイエヴォーテから反省文10枚分の罰を受けた。

え?暴走した司はどうなったかだって?理科室に穴空けたディーゴは有罪だったけど、司は教師たちが来る前だったから無罪扱いだったよ。




最初野人のサンプルボイス見て「タイムマシン建造にしよう」と思ってたけど、とんでもない騒動になってしまった………。
次にこの授業の話を書く際はまともに書こうと思います。


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うるさすぎる世界史

???「オラァ!ケガした所を見せろ!早く治療しねぇと治るもんも治せねぇからな!」

 

 

理科の授業が中止になってから30分後、龍哉は保健室で種族は鬼であろう、額に1本角が生えた女性の保健医の治療を受けていた。

彼女の名は『鬼塚真島』。口調は荒いが腕は確かな保健体育の教師でもある。

 

 

龍哉「イダダダダ!!お、お手柔らかにお願いしますよ…!(っていうか司の野郎どんだけ力あるんだよ!顔面砕けるかと思ったわ!)」

 

真島「学生はケガするのも成長する証でもあるが、だからってケガをしたら心配されるからすんじゃねぇぞ」

 

龍哉(いや、司のはヤバかっただろ!ただでさえ人間の姿しててもあんな力なのに!)

 

野人「そんなことより助かりましたよ、真島先生。あなたの治療の腕はいつ見ても素晴らしい」

 

真島「べ、別に俺は当たり前のことをしてるだけだぞ?俺だって昔頼りないトコもあったし…///」

 

龍哉「あれ?先生、もしかして……照れ隠し?」

 

真島「なっ…何言ってんだよ!そんな訳ねーだろ!グズグズ言ってないで早く治療させろ!!//////////」

 

龍哉「だから痛いんですってー!!」

 

野人「我慢しなさい。男だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方2年教室では紺子が時間割表を見ており、次の授業を確認していた。

 

 

紺子「次は世界史……てことはヴォイエヴォーテ先生か」

 

冷火「そういえばヴォイエヴォーテ先生、吸血鬼ですよね?こんな真っ昼間に世界史教えても大丈夫なんですかね…(てか何でこいつと時間割確認しなきゃなんねぇんだよ…)」

 

???「なるほど…お前たちは今でも『吸血鬼は日光で灰になる』と信じているのだな」

 

紺・冷「「!?」」

 

 

振り向くと、いつの間にか背後にヴォイエヴォーテがいたのだ。

ヴォイエヴォーテは何か言いたそうな目をしている。

 

 

紺・冷「「うわあああああああ!!先生!!」」

 

紺子と冷火以外全員『うわっ!?』

 

 

突如現れたヴォイエヴォーテに驚いたのは紺子と冷火だけではなかった。

この場にいる全員も驚いた。

 

 

紺子「いつからいたの!?心臓止まりかけたよ!!」

 

冷火「れ、冷火もです…!(何この人悪ふざけ!?)」

 

ヴォイエヴォーテ「わりと最初からいただろう」

 

紺子「嘘つけよ!!時間割見ようと思った時からいなかったじゃねーか!!」

 

ヴォイエヴォーテ「コウモリになって来た」

 

冷火「…ていうか私、時間割見てる時からずっと違和感あったんですが、やっぱり先生だったんですね(誘拐犯だったらどうすんだって話だよ!)」

 

紺子「あっ、そういえば先生さっきの話聞いてたんじゃ?冷火が言っていた『吸血鬼は日光で灰になる』っていう…」

 

ヴォイエヴォーテ「ご名答。それは人間が勝手に作り上げた想像。我々が灰になることなぞない」

 

司「何………だと…………?」

 

乱「先生の親族も全員…ですか?」

 

ヴォイエヴォーテ「その通り」

 

乱「だったら安心した!先生、キスしましょう!」

 

ヴォイエヴォーテ「そろそろ授業だからまた今度な」

 

乱「じゃあ、こんこん!チューしよ、チュー!」

 

紺子「勝手に決めんなよ!?おい、やm」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

紺子の言葉が終わらないままキス魔の乱の問答無用のキスが紺子を襲う!

 

 

獄宴「や、やった!!」

 

炎宴「さすが乱!私たちにできないことをやってのける!」

 

死宴「そこにしびれる!憧れるゥ!!」

 

司「いいゾ~これ!もっとやれもっとやれ!」

 

紺子「……ッ~~~~!/////////」

 

ヴォイエヴォーテ「…時間潰れるからもうそろそろ席に着いてくれないか?キスした瞬間からもうチャイム鳴っているからな」

 

 

 

 

 

ヴォイエヴォーテ「これで授業ができる……よし、教科書を開く前に少し話がある」

 

龍華「何だ何だ?」

 

ヴォイエヴォーテ「先程の理科の件だが、ものすごい騒ぎが起きたそうじゃないか。おかげで赤川と伊佐殿が今保健室で治療を受けている」

 

龍華「…あっ(察し)」

 

ヴォイエヴォーテ「『あっ』だと?さすが雨野、察しがいいな。あの後私は保健室へ行って赤川と伊佐殿から話を聞いたのだが、『司君が暴走した』とのことだ」

 

司「ファッ!?何だよそれ!?知らねぇ知らねぇ知らねぇ…!」

 

ヴォイエヴォーテ「私はディーゴが壁に穴を空けたぐらいだろうと思っていたが、きっかけはお前だったとはな……」

 

司「うるせぇ!!知らねぇっつってんだろ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「…まあいい、先ほど学園長と校長に伝えたら校長が激怒していた。放課後校長室に来いと言っていたから来てもらうぞ」

 

司「う、嘘だろ……?唯一怒らせちゃいけない人に話しちゃったのかよ…………」

 

ディーゴ「校長にバラされたのは仕方ないから諦めな」

 

ヴォイエヴォーテ「愚か者!」

 

 

入学式にやったようにコウモリ飛ばしをするヴォイエヴォーテ。数匹のコウモリがディーゴを襲う。

 

 

ディーゴ「ダアッー!!ちょ、先s…アダダダダッパァー!!」

 

 

1匹がディーゴの鼻先に噛みつき、残りは飛びながら蹴ったり体当たりする。

 

 

ヴォイエヴォーテ「理科室の壁に穴を空けたのはどこのどいつだ?反省文10枚分を書くことを忘れたか?」

 

ディーゴ「死纏さんにとっちめられたばっかなのにィギャアアアア!!」

 

紺子「うーわっ…私と一生の時よりえげつなっ…」

 

一生「もうあれでトラウマなのに見る方も鳥肌立つよ…」

 

ヴォイエヴォーテ「あんな奴はほっといて、授業を始める。教科書を開け」

 

 

ディーゴはまだコウモリにたかられている。紺子たちが開いたページは人類の起源だった。

 

 

ヴォイエヴォーテ「世界史は人類の歴史を世界的な規模とするのも歴史のひとつ。文字がなければ歴史は始まらない。今日は人類の誕生から始めよう」

 

紺子(私は妖狐だけどここに集まるのはみんな人間じゃないし、これ学ぶにはちょうどいいや)

 

 

数分後、真島の痛い治療を受けた龍哉が教室に入ってきた。

 

 

龍哉「赤川です!遅れました!」

 

ヴォイエヴォーテ「鬼塚殿の治療は嫌と言うほど痛かっただろう。もう大丈夫なのか?」

 

龍哉「はい。野人先生も無事です」

 

ヴォイエヴォーテ「伊佐殿も無事ならそれでいい。だがディーゴと竜宮寺は災難だがな」

 

龍哉「ディーゴと司は災難?どういうこと…ですか?」

 

ヴォイエヴォーテ「あれを見たまえ」

 

 

見るとディーゴはコウモリにたかられ、司は恐怖のあまり手を膝に置き、青ざめていた。

 

 

龍哉「いやいや、何がどうした!?何でディーゴはコウモリに襲われて司は怖がってんの!?

 

ヴォイエヴォーテ「それは………想像に任せてくれ」

 

龍哉「ちゃんと説明して!?全然わからん!!」

 

ヴォイエヴォーテ「そんなことより早く席に着きなさい!授業が進まん!」

 

龍哉「う……」

 

ディーゴ「俺が悪うございました~~!!もう勘弁してくださ~~~~~~~~い!!

 

龍哉「ほらほらほらほら!!俺が悪かったって言ってますし!俺がここに来るまで何があったか説明してくださいよ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「………単刀直入に言おう。ディーゴは人のことを言えない、竜宮寺は口答えした。それだけだ」

 

龍哉「それだけでこんななっちゃうんですか!?キッツ!うわキッツ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「授業を続ける。人間は猿から進化したことは皆知っているだろうが、いつ猿に似た何かから進化し始めたのか?霊長類が誕生したのは1億年から7000万年前。霊長類の中では最も原始的なもので、『原猿類』と呼ぶ。いや、むしろヒトよりネズミに近い感じだ」

 

ディーゴ「もうやめてくれ!!俺から離れてくれー!!」

 

司「…………………………終わった」

 

冷火(ホントにうるさくてしょうがねぇ…)

 

高見「集中できないし内容が全然頭に入らないです」

 

ヴォイエヴォーテ「今回だけは我慢してくれ。で、4000万年前になると霊長目の亜目として類人亜目が分かれ…」

 

 

 

 

 

世界史が始まってからしばらくし、昼になった。

ヴォイエヴォーテは黒板に書いた内容を消し、懐中時計を見たあと、プリントを取り出す。

 

 

ヴォイエヴォーテ「そろそろ授業が終わるが、小テストだ。内容は今日やったことだが、ノートや隣の者の解答を見るといった真似はするなよ。時間はチャイムが鳴るまで」

 

 

国語と数学のように紺子たちはプリントを受け取ったが、ディーゴと司は授業が始まってからまだ同じ状態なので集中できず、その上自分のノートには何も書かれていない。

それもそのはず、ヴォイエヴォーテに逆らったり、彼の言っていた校長に呼び出されているのだから。

 

 

ヴォイエヴォーテ「では、始め!」

 

紺子(国語と数学は散々だったけど、ここで一気に取り返す!)

 

 

だが散々コウモリにたかられたディーゴはすでに疲労で倒れ、司はプリントをもらってもずっと手を膝に置いたままだった。何やってんだこいつら。

 

 

 

 

 

しばらくしてチャイムが鳴った。紺子は国語と数学でやらかしたことは一切なく、解答欄も全て埋まっていた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「よーし、手を止めろ。もう何も書くなよ。後ろから回収」

 

 

プリントは後ろから次々と回収され、ヴォイエヴォーテはそれらを受け取っていく。

ヴォイエヴォーテが教壇に戻った途端、国語の時のようにまた校内放送が流れてきた。

 

 

???『あー、マイクテスマイクテス』

 

紺子「こ、今度は何だ?」

 

ヴォイエヴォーテ「またふざけた校内放送か………!?」

 

 

実を言うと各クラスで授業を行っていた教師3人も同じ校内放送を聞いていた。その中でトリノと同じくヴォイエヴォーテもいたらしい。

ヴォイエヴォーテはもう何を聞いても驚かんぞというような風貌で身構えた。

 

 

龍華「あんま身構えなくてもいいが、念のため警戒しとくか」

 

 

だがいつまで経ってもなかなか放送が流れてこない。

さっきの『マイクテスマイクテス』からどうした?全員がそう思ったが、いつまで経っても何も起こらない。ということは………。

 

 

一同『終わりかよ!!?』ズコココーッ

 

 

全員がずっこけた瞬間、また放送が流れてきた。

 

 

???『終わりだと思ったか?マヌケがァ~!!』

 

一同『まだ続いてた!!

 

龍華「何だったんだ今の間は!?」

 

???『…おっと失礼。俺は生徒会副会長、草薙遠呂智だ。えー、1時間目の終わりに遊んだ放送担当者。今すぐ体育館に来い。生徒副会長の俺が指導してやる』

 

ヴォイエヴォーテ「…あっ(察し)」

 

龍華「うわー、マスター……まさかあれを食わせる気か………?」

 

遠呂智『そして2年の雨野龍華、2年の雨野龍華。放課後、3年の教室に来い。以上!』

 

 

今度こそ放送が終わり、龍華が遠呂智が言っていたことに何か気づいた。

 

 

龍華「……あ、これ仕事の話だ」

 

冷火(それでわかるのか!?まず『あれ』って何だ!?『あれ』って!)

 

龍華「ちなみにマスターの料理はなぜかダークマター料理になるから、絶対に食うなよ?」

 

紺子「お前のコーヒーもな………メッチャまずかったし」

 

ヴォイエヴォーテ(それで経営成り立っているのか!?)

 

龍華「まあ俺にコーヒー、マスターに料理と紅茶を頼まなければの問題だがな。経営成り立つし」

 

冷火(こいつさりげなく心読んだ!?)

 

紺子「そういや腹減ったな。食堂行こうぜ」

 

龍華「おっ、そうだな。ここの飯スッゲェ美味いしな」

 

 

数人が席から立ち上がり、食堂に向かっていると、体育館から断末魔が校内に響いた。

 

 

許人「ご愁傷様、放送担当者…」




ディーゴは安定の被害者、放課後司に降りかかる悲劇………まあ、ドンマイ。
次回は昼休みですが、紺子たちの食後がてら別の話も書きます。


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昼食最高!お残し厳禁!

今回から食堂のおばちゃんコンビが出てきますが、1人は某落第忍者に出てくる人っぽいです。


昼休みが始まり、食堂へ向かった紺子たち。周りにはすでに食事をしている生徒たちもいた。

 

 

辰美「うわぁ…すっごいたくさんいますね」

 

龍華「食券の自販機はっと……ああ、これか」

 

紺子「やっぱ私きつねうどんだな!油揚げ超最高だし!」

 

龍哉「お前好きだなぁ、油揚げ…」

 

辰美「でしたら私は特上大盛三段弁当にします」

 

仁美「私もそれにする~」

 

ライエル「2人共大食い……なんだよね?そんなに食べれるの?」

 

辰美「大丈夫です。私、食べても太らない体質なので」

 

龍哉「うわっ!!何してんすか!うなじ舐めないでくださいよ、びっくりしたじゃないですか!ていうか抜かすな!」

 

紺子「ゲッ!舌寺先輩!」

 

 

紺子が驚きのあまり声をあげた龍哉に振り向くと、辰美と盾子と話していた垢嘗、『赤井舌寺』がニヤニヤしていた。

舌寺の周りにいる紺子、辰美、ライエル、龍華は急いで彼から離れたが、舌寺はニヤけながら長い舌を動かした。

 

 

舌寺「やっぱ龍哉っちのうなじはいい味ですな~。あ、でも一番舐めたいのは紺子っちのお腹かな~?」

 

紺子「え…また私……?ちょっと、冗談でしょ?やめてくださいよ、ねえ…ねえ……!」

 

舌寺「俺っち、紺子っちのお腹舐めてからすっごいやみつきになっちゃったんだよね~。だからお願~い、もっかい舐めさせて~」

 

紺子「い、嫌…待って…やめ…!」

 

舌寺「いいじゃんいいじゃ~ん」

 

紺子「…うわああああん!!この先輩気持ち悪いよ~!!見てないで誰か助けてぇぇぇぇ!!」

 

 

舌寺の長い舌が迫り、紺子が泣き出したその時だった。

 

 

龍哉「赤井先輩…もういい加減にしてください…紺子泣き出しちゃったじゃないですか……………」

 

舌寺「んん~?な~に~?」

 

龍哉「いい加減に……しろーーーーっ!!龍王連撃打!!

 

 

堪忍袋の緒が切れた龍哉が襲いかかり、舌寺に連続パンチを浴びせ始めたではないか。

 

 

舌寺「ホブァアアアアアア!!?」

 

龍哉「消し飛べェェェェェェェェ!!」

 

舌寺「ギャアアアアアアアアァァァァァァ…!!!」キラーン

 

 

とどめに思い切り殴られ、舌寺は天井を突き破るほど大空まで飛ばされ、星になった。

それから龍哉は紺子へ駆け寄った。

 

 

龍哉「紺子、大丈夫か!?」

 

紺子「龍哉…!」

 

龍哉「もう安心してくれ。赤井先輩は星になったぜ」

 

紺子「うっ………う、うわああああああああん!!今のホントに気持ち悪かったよ~!!助けでぐれ゛てあり゛がどう~!!」

 

 

紺子は安心のあまり大声で泣き出し、龍哉に抱きつきながら泣きじゃくった。

 

 

牙狼「あっ、龍哉。さっき舌寺の悲鳴が聞こえたけどどうかしたのかい?」

 

龍哉「白銀先輩。お疲れ様です。実は赤井先輩のいつもの悪い癖が出まして……」

 

牙狼「あー…実はそうなんだ。あいつ、何か舐めることによってとてつもない快楽を感じてるんだよね。僕も最近またうなじ舐められたし」

 

龍哉「奇遇っすね。俺もさっきうなじやられましたよ」

 

牙狼「『変態』と書いて『フェチズム』って読むからね。それにあいつ、誰に対しても舐めた態度とるし、先生に対しても『○○っち』って呼ぶし。全くとんだ問題児だよ」

 

龍哉「でも化学薬品のあれは笑いましたよね」

 

牙狼「うん。でもいつものことさ。最初あれには僕も笑ったけど、最近はねぇ………」

 

 

 

 

 

紺子が泣き出してから数分後、彼女はやっと泣き止み、早速食券をカウンターまで持っていった。これから使用するトレイの上には箸と水が入ったコップがある。

目の前には数年の生徒が並び、その中には一海もいた。

 

 

紺子「うはぁ…結構多いなぁ…」

 

一海「……あっ、出雲姐ちゃんだ」

 

???「はーい、次の方ー!」

 

???「あらっ、あんた前に紺子ちゃんが言ってた妹じゃないの!」

 

 

食堂で料理を作っているのは割烹着を着た女性とふくよかな体型のオバハンの2人だった。

 

 

???「あなたが昨日入学してきた新入生ね。おばちゃんは及川夏芽だよ」

 

???「アタイのことはジャック・ザ・母ちゃんと呼びな!」

 

一海「よ、妖狐の藤井一海ですっ!カズミンと呼んでくださいっ!」

 

紺子「出雲姐ちゃんここにいるぞー!」

 

一海「うわっ、ちょっと…声でかいよ!いつの間にか並んでたなんて最悪だ~…!」

 

夏芽「はい、おばちゃんお手製いなり寿司だよ!」

 

ジャック「お残しは許しまへんで!残したらどうなるかわかってるかい?」

 

一海「わかりません!し、失礼します!」

 

 

一海は顔を真っ赤にしながらいなり寿司が乗ったトレイを持って慌ててカウンターから離れると、次に待っていた生徒がカウンターの前に出る。料理ができるには少し時間がかかるようなので生徒たちはトレイと食券をカウンターに置いたあと、離れた。

ようやく紺子の番になり、カウンターの前に出た。

 

 

紺子「夏芽さん、ジャックおばちゃん、久しぶり!」

 

ジャック「あらま!カズミンのお姉ちゃんじゃないか!久しぶりだね~!さっきあんたの妹顔真っ赤っかだったよ~!」

 

紺子「う、うん…(妹っちゅーかただ居候してるだけなんだけどな…あいつの両親もう死んでるし)」

 

夏芽「昨日は散々だったでしょ。入学式に遅刻しちゃって大声出して……おばちゃんにも聞こえてたよ~」

 

紺子「はあぁ!?ウッソでしょ…!」

 

ジャック「当たり前だろ?まさか教室間違えたとか言うんじゃないだろうね?」

 

紺子「…………あ゛」ビシッ

 

夏芽「あらら、石化しちゃった。ジャック先生、さすがに今のはないでしょ…」

 

ジャック「紺子ちゃん石化しちゃった!?アタイの何がいけなかったんだろうね…」

 

龍華「さっきの発言だろうが。紺子な、昨日マジでその通りだったぜ」

 

夏芽「こらこら龍華ちゃん。ちゃんと順番通りに並んで」

 

ジャック「並んでるみんな、紺子ちゃんはほっといてトレイそこに置いといておくれ」

 

 

生徒たちは石化して倒れた紺子など無視してカウンターにトレイを次々と置いていく。

そんな中龍華は紺子をテーブルの席まで引きずり、なんとか座らせていた。隣には一海がいる。

 

 

一海「何で出雲姐ちゃん石になってんの?ちょっと理解できないんですけど」

 

龍華「ほら、こいつ昨日遅刻したろ?教室間違えたせいで先生から反省文もらってさ………で、さっき夏芽さんとジャックさんと話してたらジャックさんがこう言ったんだよ。『教室間違えたんじゃないだろうね?』ってな」

 

一海「昨日も今日もその話か…でもきつねうどん出したら元に戻るかもしれないし、そのままにしとくか」

 

龍華「ところでお前、前から気になってたんだけど、油揚げ嫌いなんだろ?何でいなり寿司は平気なんだ?」

 

一海「さあね。僕にもわからない」

 

龍華「何じゃそりゃ。自分でもわかんないって…」

 

夏芽「はーい、きつねうどん一丁!」

 

龍華「あっ、できたみたいだな。俺が運ぶか。あいよー!」

 

一海「ついでに僕の食器も片付けといて」

 

龍華「思いっきりパシってんじゃねぇよ!?」

 

 

 

 

 

その後龍華は仕方なく一海の食器を洗い場に入れ、カウンターで紺子のきつねうどんが乗ったトレイを持ち、一海たちがいるテーブルまで戻った。

きつねうどんを紺子の前に出すと……………。

 

 

紺子「よっしゃああああ!!きつねうどんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!出雲紺子ふっかーーつ!!!

 

龍華「うるせぇよお前は!たかがきつねうどんでテンション上がりすぎだよ!」

 

紺子「何言ってんだよ!狐が食べるうどんの中に油揚げがなけりゃ辛いだろうが!お前らは考えたことあんのか!油揚げに入ってないいなり寿司の気持ちをォォォォォォ!!」

 

龍華「んなこと一度もねーよ!てかそれ寿司じゃなくてただの米!シャリだろうがよ!」

 

一海「出雲姐ちゃん、こんな奴無視してさっさと食べなよ。のびちゃうよ?」

 

紺子「お、おう。そうだな」

 

龍華「こんな奴ってどういう意味だよ!」

 

紺子「言っとくけど私よりすごい大食いがここにいるからな」

 

一海「え?」

 

 

紺子が指した方向を見ると、確かに辰美と仁美が特上大盛三段弁当を食べていた。

弁当の中のおかずは恐ろしいほど豪華で、もはやおせち料理である。伊勢エビが入っているのが遠くにいてもわかるほどはっきり見えた。

だが大食らいの辰美と仁美には関係なし。夢中でどんどん食べていき、弁当の中身はもうほとんど入っていなかった。

 

 

龍華「やっぱあいつらスゲェ…」

 

紺子「な?」

 

一海「すごいけど引くわ怖くて…あの2人太らない体質なのかな?」

 

紺子「うん。あいつら、昔はっきりそう言ってたし」

 

ジャック「ゴリャアアアアアアアアア!!!!せっかくアタイらが作った料理をこんなに残しやがってぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

紺・龍・一「「「!!!?」」」

 

 

突如ジャックの怒号が食堂中に響き渡り、紺子たちは驚きのあまり転びそうになった。

見ると残したであろうボロボロのセーラー服を着た少女がヘラヘラと笑っていた。

 

 

紺子「あっ(察し)」

 

一海「びっくりしたぁ…ジャックさん何があったの?」

 

龍華「あれから見て先輩、昼飯残したみたいだな。ナイフ持ってるからあれが始まるぜ」

 

ジャック「留年111年目の残年生、富士美弥妃ィ…!アタイがいるにも関わらず残すなんていい度胸してるじゃないか…!

 

美弥妃「だって私、もうお腹いっぱい!お腹いっぱいなの!」

 

ジャック「あんたは食べ物の大事さがわかってないみたいだね……残飯はいつも誰が処分すると思ってるんだい……!?

 

美弥妃「えー?知らない。知らないよーん」

 

ジャック「知らない…!?残したみんなには責任かかってるのに、あんたは『知らない』だぁ…!?

 

美弥妃「だって私、美味しいものが食べれれば嬉しいんだもーん」

 

ジャック「もう頭に来た!!口で謝ってもまたやるかもしれないし、土下座しても絶対に許さん!!あんたの体で教えてやろうじゃないかい!!ジャックおばはん流お仕置き、『地獄壁ナイフ』を見せてやるわァァッ!!!!

 

 

ジャックは隠し持っているナイフを取り出し、そのうち1本を壁に投げつけた。

刃先は見事に刺さり、美弥妃の顔にギリギリ当たるところだった。

 

一海「ね、ねえ…あれって……」

 

紺子「そうなんだ。夏芽さんとジャックおばちゃんが作った料理を残すと、ああやってジャックおばちゃんがキレて地獄壁ナイフの刑を受けることになるんだ」

 

一海「はぁ!?何それ!いくら残したからってあそこまでする!?見てる方も怖いけどやられる方は……!」

 

紺子「1回頼んでみるか?トラウマになるから」

 

一海「嫌だよ!!残したらされるんでしょ!?てか僕出されたものは全部食べる方だし!!」

 

 

2人が話している一方でもジャックのナイフ投げは加速していた。

 

 

美弥妃「面白ーい!もっとやってー!もっとやってー!」

 

ジャック「チェストォォォォォォ!!

 

 

最後の1本が決まり、これまで投げられた無数のナイフは見るからに人の形をとり、美弥妃はその罰を受けたにも関わらずヘラヘラ笑っていた。

 

 

ジャック「アタイの腕は料理以外にもナイフ芸もピカイチ!やっぱアタイはサイキョーだね!」

 

美弥妃「…あっ!」ゴロンッ

 

一海「ん?ギャー!!頭取れたー!!」

 

美弥妃「どうしよどうしよ!頭取れちゃった!取れちゃった!」

 

夏芽「ジャックさん、あっちでカズミン怖がってるし、おばちゃんそういうのは見えないところでやった方がいいと思うの」

 

ジャック「このくらい大丈夫だろ。アタイがやることなんて日常茶飯事だし、見てるうちにすぐ慣れるさ。紺子ちゃんだって去年そうだったよ」

 

紺子「…………」ズルズル

 

 

夏芽とジャックの話には一切耳を傾けず無言できつねうどんを美味しそうにすする紺子であった。

 

 

龍華「お前少しは心配しろよ!?」




次回も昼休みの話ですが、爆チュー問題でやってたネタやります。
活動報告ですが、イベントや外道陰陽師はまだ募集中です。


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人生ゲーム、派手に進むか?地味に進むか?

今回は爆チュー問題でやってたすごろくの話やります。


昼食を食べ終えた紺子、龍華、一海はそれぞれ自分の教室に戻った。

しばらくして紺子が龍哉にこんなことを言い出した。

 

 

紺子「なあ」

 

龍哉「ん?」

 

紺子「さっきは…助けてくれてありがとな」

 

龍哉「何だ、そんなことか。気にするなよ。俺はこの学園やクラスを大切に思っている。ここのクラスメイトはみんな俺のダチだ。紺子たちに手ぇ出したら俺が承知しねぇ。俺が卒業するまで守り切ってみせるぜ」

 

紺子「龍哉…」

 

ディーゴ「なあなあ紺子!人生ゲームやろうぜ!俺とお前で!」

 

紺子「マジか!やるやる!」

 

龍哉「あれ?ディーゴさっきまで気絶してたのにもう大丈夫なのか?先生のコウモリはどうした?」

 

ディーゴ「んなもん起きたらもういなくなってたばい。見てる方はいいけどやられる方は気分悪いぜよ…」

 

紺子「ていうかお前方言使いすぎ。どこ出身なの?」

 

ディーゴ「俺蒸気機関車の付喪神だからなぁ…詳しいことはよくわからん」

 

紺子「忘れられちゃったんだな。まあいいや、早くやろうぜ。私人生ゲーム大好きなんだ」

 

ディーゴ「そうだな!いでよ人生ゲーム!!」

 

 

 

ズドーン!!

 

 

 

紺子「でっか!!いつの間にそんなの用意したんだよ!?ほぼ教室全体じゃねーか!!」

 

 

教室全体といっても床だけではない。壁にもマスが貼られている。

周りもざわめき、あまりにも大きい人生ゲームのせいで足の踏み場がわずかしかなかった。

 

 

ディーゴ「俺はこういったのが大好きなんだ。ガキの頃からずっとそうしてきた」

 

紺子「私がやる人生ゲームより全然想像つかねぇよ…」

 

冷火(気にするトコそこ!?後片付け大変だろ!!)

 

許人「僕邪魔かな?身長高いし…」

 

高見「そんなことないわよ。でも終わった後の片付け大変かもしれないし、終わったら手伝うわよ」

 

 

ディーゴは早速大きな車のコマとピンと数字が1から12まであるルーレットを用意し、紺子の前に置いた。

 

 

ディーゴ「ほら、コマもピンもルーレットもあるぜ。俺は白にしよう」

 

冷火(それルーレットじゃねぇ!時計だよ、時計!)

 

紺子「じゃあ私緑な」

 

ディーゴ「2人だしな。ところでさ、車種はどうする?」

 

紺子「え?」

 

ディーゴ「外車と国産車、どっちがええ?」

 

紺子「そりゃ国産じゃん。右ハンドルよろしく」

 

ディーゴ「よし、じゃあピンクを右に刺して……俺は外車じゃ」

 

紺子「あっ!ディーゴお前、意外とリッチな方選んだな!」

 

ディーゴ「こういうのにはこだわるタイプなんだ。あとは先攻と後攻…」

 

紺子「お前からでいいよ。私こういうのにはあんまり薦まないタイプなんだよね」

 

盾子「正反対なんだね」

 

ディーゴ「じゃあ俺から行くぜ?せーの!」

 

 

早速ルーレットを回すディーゴ。

出た数は………4だった。

 

 

紺子「おっ、4か!4は結構いい数字なんじゃねぇのか?微妙だけど」

 

ディーゴ「1、2、3、4…おおっ、これは!」

 

 

【6マス進む】

 

 

ディーゴ「やった!結構進むじゃねぇか!」

 

紺子「6マス!ディーゴの人生派手だな~!最初から飛ばしてるもん!私置いてけぼりだよ!」

 

ディーゴ「ちょっと稼ぐぞ?飛ばしちゃうぜ。置いてけぼりだぞ?」

 

紺子「スタートダッシュだもん、派手だよ!まるで音速のハリネズミだな!まさに蒸気機関車のお前にはふさわしい進み方だよ!」

 

ディーゴ「1、2、3、4、5、6…おっと、これは?」

 

 

【10マス戻る】

 

 

デデドン!(絶望)

たどってみると、ふりだしだった。

 

 

ディーゴ「スタートじゃねーかよ!!」

 

紺子「かわいそ…」

 

ディーゴ「全然意味ねぇよ!喜んで損したわ!」

 

 

ディーゴは悔しそうにコマを叩きつけるようにふりだしに置くと、紺子がルーレットの前に向かった。

 

 

紺子「次私だな。参ります。せーの!」

 

 

だが出たのは………1だった。

 

 

紺子「あ~~、1かよ~~!いっつもそうだよ私の人生…歩みが鈍い亀だよ…」

 

仁美「でもわかんないよ~?ひょっとしたら勝てるかもしれないし~」

 

紺子「ミドリガメだよ…」

 

ディーゴ「あっはは!緑だしな!面白いなお前!」

 

紺子「ホンットにもう嫌になっちゃう…」

 

 

ブツブツ文句を言いながらコマを進める紺子。止まった場所は………。

 

 

【サラリーマンになる】

 

 

ディーゴ「おっ!お前サラリーマンになるのか!うらやましい…」

 

紺子「ホントになっちゃったよ…」

 

 

なんと紺子、いつの間にかスーツを着て、カバンを持っているではないか。

 

 

ディーゴ「何でなるんだよ実際に!?マスに止まったからって!」

 

 

 

ピピピピピピピピピッ

ピピピピピピピピピッ

 

 

 

紺子「あっ、すいません。ちょっと待ってくれますか?今キャッチ入りましたんで」

 

ディーゴ「キャッチ入ったって今電話もしてねーだろ!」

 

紺子「はいもしもし。出雲商事の出雲と申します。あっ!あーはいはい、いつもお世話になっております!」

 

ディーゴ「うるっせぇな耳元で…早く終わんねーかな…」

 

紺子「えっと私、出雲商事の…出雲商事の…あの………出雲商事と申します!」

 

ディーゴ「出雲商事の出雲商事って社長じゃねーかよ!」

 

紺子「いやー、いつもお世話になっております。あっ、すいません!今キャッチ入りましたんで少々お待ちください!」

 

ディーゴ「キャッチ入りすぎ!」

 

紺子「もしもし?あー、俺だよ俺俺

 

ディーゴ「オレオレ詐欺か!!もういいよ!」

 

 

ふざける紺子を無視してルーレットを回すディーゴ。出た数は3だ。

 

 

ディーゴ「1、2、3…あっ!」

 

 

止まった場所は『?』のシールが貼られたマスだった。

 

 

紺子「あっ!チャンスだよディーゴ!」

 

ディーゴ「ホントだ!シークレットじゃねぇか!」

 

紺子「参った参った。ディーゴの人生派手だな~!」

 

ディーゴ「まだわからんぞ?まだわからへんよ?よーし、はがすぞ?」

 

 

?シールを恐る恐るはがしてみると、マスには何か書かれていた。

 

 

【医者に】

 

 

ディーゴ「お!?医者になんの!?やった!」

 

 

【医者にかかる(鼻風邪で)】

 

 

ディーゴ「え~!?風邪かよ!!医者になるんじゃねーのかよ!!」

 

紺子「かわいそうに…」

 

ディーゴ「医者になれるかと思ったのによ~…何だよこれ…」

 

紺子「じゃあ私やっていいか?行くぞー!」

 

 

早速ルーレットを回しにかかる紺子だったが、また小さい数だった。

出たのはさっきと同じ1である。

 

 

紺子「あ~!また1……どれどれ?」

 

 

【歌手になる】

 

 

ディーゴ「歌手!?メチャメチャ派手じゃねぇか!いいなー紺子!」

 

紺子「なっちゃったよ…」

 

 

だが歌手とは言いがたい服装だった。スーツの上にストールを巻き、マイクを持っている。

 

 

ディーゴ「おいちょっと待て。歌手か!?これ歌手か!?」

 

紺子「それではお聞きください。新曲です。『雨の有給休暇』」

 

ディーゴ「いや、聞きたくねぇよ誰も!タイトルからして暗いし!たぶん耳腐る!」

 

紺子「じゃあディーゴやって」

 

ディーゴ「おう……せーの、よっ!」

 

 

だがディーゴと紺子の勝負より紺子の服装が気になって仕方ない一同。出た数は6だった。

 

 

ディーゴ「1、2、3、4、5、6!」

 

紺子「またチャンス!スッゲェ激動だなおい!」

 

ディーゴ「でもまだわかんないぜ?じゃあはがしまーす!」

 

 

【3マス戻る】

 

 

ディーゴ「ちょっとドキドキするな…」

 

紺子「ディーゴは派手だな~」

 

ディーゴ「1、2、3…あっ!」

 

 

【4マス進む】

 

 

ディーゴ「4マス進む!1、2、3、4!」

 

 

【10マス戻る】

 

 

ディーゴ「またじゃねーかよ!さっきからも~う!!」

 

紺子「別にいいじゃん。激動の人生だなおい」

 

ディーゴ「激動の人生じゃねぇよ!!始まってから風邪引いただけだぞまだ!!」

 

紺子「んじゃ、行くぜー」

 

 

そんなディーゴなど無視してルーレットを回す紺子。出たのは3だった。

 

 

紺子「あ~3か!3マス進まないとな…てか持ちづれぇ」

 

ディーゴ「当たり前だろ!いろいろ持って大変じゃねぇか!」

 

 

紺子は左手にカバンとマイクを持ち、右手でコマを持って3マス進んだ。止まった場所は………。

 

 

【プロ野球選手になる】

 

 

ディーゴ「無理だろ。もう無理だろそれ」

 

 

無理ではなかった。右手にバットを持っていた。

 

 

紺子「さーて、野球もしなきゃならないし…いろいろ忙しいぜ。ハードスケジュールだよ」

 

ディーゴ「絶対警察に捕まる格好だよ!」

 

 

 

ピピピピピピピピピッ

ピピピピピピピピピッ

 

 

 

紺子「あっ、ごめん。ちょっと電話入っちゃった」

 

ディーゴ「今試合なんだろ!?電話してる場合じゃない…」

 

紺子「タイム!タイム!」

 

ディーゴ「タイムって…」

 

紺子「すいません。今これから打席なんですよ」

 

ディーゴ「そんな奴いるか!」

 

紺子「打席終わってから、あのー…ちゃんと商談の方行きますので」

 

ディーゴ「いや、いいよ!どっちかにしろ!」

 

紺子「接待も行きますので」

 

ディーゴ「接待とかやってる場合じゃねぇし!もういいよ!さっさと着替えてこい!せーの、よっ!」

 

 

針が回り、出たのは8だった。

 

 

ディーゴ「おっ、8!1、2、3、4、5、6、7、8…」

 

 

【3マス進む】

 

 

紺子「また!派手だよ…いいな~」

 

ディーゴ「1、2、3…あっ!」

 

 

【8マス戻る】

 

 

ディーゴ「1、2、3、4、5、6、7、8…」

 

紺子「おいおいまたチャンスじゃねぇか!」

 

 

だがさっきディーゴが止まったマスは鼻風邪で医者にかかったマス。

よく見ると新たに?シールが貼られていた。

 

 

ディーゴ「また同じトコだよ…さっき風邪引いたトコ…」

 

紺子「何言ってんだよ。また別の出るかもしれねぇぞ?」

 

ディーゴ「変わるかもしれない!?嘘くせぇ!でも一応はがしてみるか…」

 

紺子「マジで変わってるかもしれないぜ」

 

ディーゴ「ホントか?せーの…」

 

 

疑心暗鬼を抱きながらもとりあえずはがしてみた。そこには………。

 

 

 

 

 

【たくさん歩いたね】

 

 

ディーゴ「いや、知ってるよ!!何じゃこれ!指示出せ指示!」

 

 

 

 

 

その後着替えた紺子はルーレットを回し、出た数は2だった。

 

 

紺子「1、2!」

 

ディーゴ「あーっ!」

 

 

【結婚する】

 

 

紺子「なんてこった!結婚した!結婚しちゃったよ!」

 

ディーゴ「いいな紺子!結婚しやがった!」

 

紺子「辰美、私女子だから旦那さん持ってきて!」

 

辰美「旦那様ですね。旦那様は青ですから……はいどうぞ」

 

紺子「旦那はね、ちゃんと隣にな。よし、新婚だ!」

 

ディーゴ「新婚だな。うらやましいじゃん」

 

紺子「人形劇タイム~。なあなあ、ハネムーンはどうする?やっぱり今流行りの熱海がいいわ♡

 

ディ・龍「「昭和30年代か!!」」

 

龍華「いくらなんでも熱海はないだろ!もうちょっと豪華な場所ねぇの!?」

 

 

 

 

次にディーゴが出した数:6

 

 

ディーゴ「1、2、3、4、5、6!」

 

紺子「ディーゴまたチャンス!」

 

ディーゴ「またシークレット…だけどよかった試しねぇからな……よっ!」

 

 

【結婚しないかもしれない】

 

 

ディーゴ「もう意味わかんねぇ!だいたいさ、人生ゲームってのは結婚したり子供できたり金儲けしたり…それが楽しいのにさ、独身でずっと行くのもなぁ…………」

 

紺子「そういう人生もあるんじゃないのか?」

 

 

 

 

次に紺子が出した数:9

 

 

紺子「1!2!3!4!5!……あれ?」

 

 

元気よく進むが、急に立ち止まる紺子。

それもそのはず、先は壁で行き止まりだ。

 

 

ディーゴ「どうすんの?壁あるぞ?」

 

紺子「よーし、こうなったら奥の手だ。よく見てろよ?せーの、6ッ!!」シュタッ

 

ディーゴ「うわっ!!」

 

龍華「うえぇぇ!?そんなのありかよ!!」

 

 

なんと紺子、ジャンプしたと同時に壁に立った!

 

 

紺子「7!8!9!」

 

ディーゴ「ちょちょちょちょちょ!!何!?何!?」

 

紺子「どれどれ?」

 

 

【男の子の双子が生まれる】

 

 

紺子「…だってさ」

 

ディーゴ「おっ!いいな~…ってそうじゃねぇよ!!何でそんなことできんだよ!?」

 

紺子「ディーゴ、双子持ってきて。青いの」

 

ディーゴ「あ、ああ…おめでとう」

 

 

ディーゴは青いピンを2本手にし、紺子へ持っていくが、龍華は壁に立った彼女を見てまだ驚いていた。

 

 

龍華「いやいやいや、どうなってんだこれ…」

 

ディーゴ「はい」

 

紺子「早くよこせよバカヤロー!」

 

ディーゴ「何だよそれよ!何なんだよ!」

 

紺子「よしよし、私のかわいい双子ちゃん♡ここに刺さなきゃね♡で、こいつはジョニーで…こいつはジョニーにしよう」

 

ディーゴ「一緒じゃねぇか!紛らわしいよ!」

 

紺子「いや~しかしね、なんかこう…なかなか新鮮で眺めがいいね」

 

ディーゴ「いやまあ、そりゃそうじゃないの?」

 

紺子「ディーゴも早くこっち来た方いいぞ」

 

ディーゴ「…そうだな。俺も壁登りたいよ。龍華は壁歩きたいって思ったことある?」

 

龍華「俺が幼い頃テレビでそういうの観てよく思ってたけどなぁ……やってみたら無理だったぜ」

 

紺子「龍華は仕方ないけど、ディーゴ早くこっち来なよ。だってここ別世界で楽園だぞ?全然違うぞ」

 

ディーゴ「そんな楽しいの?」

 

紺子「そりゃそうだ。こっちゃ全然違うぜ」

 

ディーゴ「よしっ!今から俺も行くからな!行くぜ!」

 

 

壁を登りたくてウズウズしながらルーレットを回すディーゴ。出たのは3だ。

 

 

ディーゴ「どうかな?1、2、3!まだだった~!まだダメだった~!」

 

紺子「惜っしいな~!」

 

ディーゴ「で?何て書いてるんだ?」

 

 

【壁に立つ紺子にびっくり】

 

 

ディーゴ「いや、それ…言われなくてもな」

 

紺子「ああ」

 

ディーゴ「全然意味ねーじゃんこのマス!だって…あれ?何だこのマス?【ディーゴは壁に立つことができるでしょうか?】?【ディーゴは結婚できるでしょうか?仕事は何をしてるでしょうか?】?知らねぇよ!おかしいだろ!」

 

紺子「ディーゴ、ディーゴ!私のルーレット回してきてよ」

 

ディーゴ「お前の?んだよ、も~……全然なんかさ、俺が面白くないんだからな……お前のな?じゃあ代わりにやるで。よいしょ」

 

紺子「いいの出せよ?」

 

 

そんな期待とは裏腹に出たのは1だった。

 

 

ディーゴ「あっ!また1だった…」

 

紺子「1かよ~!!」

 

ディーゴ「いいじゃん、いいじゃん!別に!」

 

紺子「も~!紺子はもういっつも地味だよ!」

 

ディーゴ「でも今までで全然いいじゃねぇかよ!俺だよ一番地味なの!」

 

紺子「んじゃ行くぞ?1!何だこれ?」

 

 

【写真集がベストセラーに!10万ドル儲かる!】

 

 

ディーゴ「10万ドル!?10万ドルってスッゲェベストセラーだぞそれ!」

 

紺子「ベストセラーだよ!」

 

ディーゴ「そんな売れたんだ!」

 

紺子「熱海で撮影した」

 

ディーゴ「また熱海!お前頭の中全部熱海だな!でもいいな~。よしっ!次は俺絶対壁行くからな!せーの!」

 

 

そう宣言したあとルーレットを回すと、3が出た。

さあディーゴ、登れるか?

 

 

ディーゴ「それじゃあ俺も壁に登っていきたいと思います!行くぞー!」

 

 

ディーゴは早速右足を壁につけ、続けて左足を床から離す。

 

 

ディーゴ「1…あれっ。1…イッテ!」

 

紺子「何してんだよディーゴ!早く来いよ!」

 

ディーゴ「1…あーっ!ちょっと…全然登れねぇじゃねぇかよ!何で俺はダメで紺子は登れんだよ!」

 

紺子「ディーゴがバカだからだよ」

 

ディーゴ「ふざけんなよ…1、2、3!」

 

 

仕方なくコマだけ壁につけ、進める。止まったのはまたシークレットマスだった。

 

 

紺子「チャンスだよ!またチャンス!」

 

ディーゴ「まただよこれ!じゃあめくるぜ?よっ!」

 

 

【1回休み】

 

 

ディーゴ「何だよも~~!」

 

 

 

 

 

次に紺子が進む数:1

 

 

紺子「じゃあ1進むよ?1っ!何だ?」

 

 

【油田を掘り当てる。100ドル儲かる】

 

 

ディーゴ「何で油田掘り当てとるんじゃ!…ってちょっと待てちょっと待て。写真集で10万ドル儲かって油田100ドルっておかしくね?」

 

紺子「いいからいいから」

 

 

 

 

 

次に紺子が進む数:2

 

 

紺子「もうちょっと大きい数字出せよ!使えねぇな!」

 

ディーゴ「いいじゃねぇかよ!1とか2なのにそっちの方が全然いいだろ!俺なんか大きい数字出してるのに全然ダメだよ!」

 

紺子「うるっせぇなお前は!」

 

ディーゴ「いいから早く行けよ!早く!」

 

紺子「1!2!」シュタッ

 

 

壁から床へ戻った紺子。果たして止まった場所は?

 

 

紺子「えーと?」

 

 

【ボランティアで町内の大掃除。10万ドル儲かる】

 

 

ディーゴ「おかしいだろそれ!儲かっちゃダメだろ!!何でボランティアやってんのに10万ドルもらってんだよ!」

 

紺子「まあボランティアっつったって…」

 

ディーゴ「『つったって』じゃねぇよ!ボランティアにならんじゃろそんなの!」

 

紺子「いろいろあったってことだよ」

 

 

 

 

ようやくディーゴの1回休みが終わり、ルーレットの数は4。

進めてみると、またシークレットマスだった。

 

 

紺子「あ゛~!!またチャンスや~…!」

 

ディーゴ「でもさ、ここ儲かりゾーンなんだぜ?そのド真ん中だからな?一発逆転行きます!せーの!」

 

 

お金がたくさん儲かるチャンスに胸をときめかせながら?シールをはがしてみた。

そこには………。

 

 

【5円拾う】

 

 

紺子「うわー、すっごーい!」

 

ディーゴ「すごくなーい!!5円拾ったってしょうがねぇじゃねぇかよ!!何だよ10万ドルとか言ってんのに!!」

 

紺子「あったまいいー!」

 

ディーゴ「頭の問題ちゃう!」

 

 

 

 

 

次に紺子がルーレットを回すが、またしても1だった。

だがその先はとても嬉しいことだった。

 

 

【女の子の双子が生まれる】

 

 

ディーゴ「また双子かよ!どんだけ子供生むんだよ!」

 

紺子「生まれたもんはしょうがねぇよ。双子持ってきて」

 

ディーゴ「スゲェな!もうこれで4人だぞおい!」

 

紺子「もう大変だぜこれ…名前はさくらと一郎にしよう」

 

ディーゴ「一郎かよ!かわいそうだろ!」

 

 

 

 

 

ディーゴはルーレットを回し、出たのは3だった。

 

 

ディーゴ「せーの、1、2、3。何だ?」

 

 

【神社にお参りして、お賽銭5円投げ入れる(ご縁がありますように)】

 

 

ディーゴ「さっきの…!拾った5円そのまま…!そのままじゃねーかよ!」

 

紺子「でも5円はな、『ご縁がありますよ』っていう…」

 

ディーゴ「うるせぇよ!書いてあるしここに!」

 

紺子「私やっていい?」

 

ディーゴ「紺子やってみろよ!」

 

紺子「回します。せーの」

 

 

やはり小さい数しか出ない。2だった。

 

 

紺子「あー2だ!1、2っと」

 

ディーゴ「何だ?」

 

 

【男の子と女の子の双子が生まれる】

 

 

ディーゴ「またかよ!てか何で男と女1人ずつ生まれるんだよ!意味わからんわ!」

 

紺子「いいから早く持ってきて」

 

ディーゴ「もう乗らねぇよこれ…横に入れろよ横に?横に…ってそうじゃなくて。挟むの!何やってんの?何やってんの!?おい!何やってんの!?」

 

 

紺子はディーゴを無視し、ピンはフロント側に無理矢理刺された。

 

 

紺子「お前ら前方を確認してくれ」

 

ディーゴ「死んじゃうし!ちょっとかっこいい戦車みたいになってんじゃねぇかよ!」

 

紺子「別にいいだろ(外車1人ってかわいそすぎかよ!)」

 

ディーゴ「じゃあ行くぞ?」

 

 

ルーレットを回すディーゴ。出た数は3。

進めてみると、そこにはこうあった。

 

 

【写真集を発売】

 

 

ディーゴ「…だけなの?これだけ?」

 

紺子「だけ。発売した()()なの」

 

ディーゴ「え、じゃあ何?10万ドル儲かるとかそういうのは?」

 

紺子「ないね」

 

ディーゴ「確かに書いてないな」

 

紺子「2冊ぐらいしか売れなかったんだと思う」

 

ディーゴ「最悪だ…しかしさ、もうすぐあがりなのにさ……あ、そうだ。あがりのルールなんだけど、ぴったり止まらないとダメだから」

 

紺子「あっ、そういえばそうだな。てことは6ちょうどじゃないとダメなのか」

 

ディーゴ「ちょうどだから」

 

紺子「1、2、3、4、5、6、やったー!!」

 

ディーゴ「いや、やったじゃなくて!それを出すんだよ!」

 

紺子「6より大きかったら戻んないとダメなのか」

 

ディーゴ「そうそう。戻るルール」

 

紺子「わかったわかった。じゃあやるぞ?6出ろっ!」

 

 

6が出ることをルーレットに望みをかける紺子。回してみると、10が出た。あがりから4マス通りすぎている。

 

 

紺子「あ~10!」

 

ディーゴ「ほら、俺のトコだよ」

 

紺子「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…」

 

ディーゴ「な!俺と同じトコ!ほら、写真集発売しかないトコ!ハハハハハ!かわいそうに、ハハハ!」

 

紺子「ハハハじゃねぇよ。どけほら」

 

ディーゴ「え?」

 

 

紺子は自分のコマをどかしてみると、なんとそこには。

 

 

【写真集発売。10万ドル儲かる】

 

 

ディーゴ「あれ…あれ!?おい、おかしいだろ!いつ変わったんだよ!?」

 

紺子「儲かっちゃったよ…」

 

ディーゴ「おい、いつ変わったんだよ!!さっき止まった時そんなもんなかったじゃねぇかよ!!一体どうなって…!」

 

紺子「いいからゴタゴタゴタゴタご託並べずにとっとと私のスペースから出てけよ!!

 

ディーゴ「ひでぇ…ひでぇよ!いつ変わったんだよこれ~!何だよ~!」

 

 

逆ギレする紺子に泣きそうになりながらルーレットを回すディーゴ。

出た数は6。2マス行きすぎだ。

 

 

ディーゴ「1、2、3、4、5、6…」

 

 

【2マス戻る】

 

 

ディーゴ「またここかよ~!もう…あっ。でもあれだ!10万ドル10万ドル!やったやった…って!?」

 

 

【ニューアルバムを発売】

 

 

ディーゴ「また変わってんじゃねぇか!!おかしいだろ!!何で俺が止まると儲からないことになってんだよ!?

 

 

 

 

 

紺子「よーし、回すか」

 

ディーゴ「4じゃなきゃダメだから」

 

紺子「4ね。よーし、4出ろ!」

 

 

またルーレットに望みをかけながらルーレットを回す。

出たのはまた10だった。

 

 

ディーゴ「あー10だ!行きすぎた!」

 

紺子「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!」

 

ディーゴ「何?」

 

紺子「えーと…」

 

 

【男の子と女の子の双子が生まれる】

 

 

紺子「また双子生まれちゃったよ…」

 

ディーゴ「おーい!!もうこれ人生ゲームじゃねぇよ!!子作りゲームだよこれもう!!

 

紺子「ウヘヘヘヘ…」

 

ディーゴ「もうホント無理だから…中に刺して中に。中だよ中、そこじゃないそこじゃない!だーかーらー!!何ドアに刺してんだよ!」

 

紺子「私もう体ボロボロだから…………これでいいや」

 

ディーゴ「俺せめて3出したい。あがりの1個前」

 

紺子「あがりの1個前……ああ、あれか」

 

 

【芸能界の人気者になり、結婚して家も建てる】

 

 

ディーゴ「妙にリアルで嫌だけど、まあそれがいい!」

 

紺子「そう?」

 

ディーゴ「3よ出てくれ!!」

 

 

勢いよくルーレットを回した。そして出たのは……………。

 

 

ディーゴ「4!あ~惜しい!」

 

紺子「4は……あっ!あがり!」

 

ディーゴ「あがりか…」

 

紺子「あ~~~負けたわ~~~~!!」

 

ディーゴ「全っ然嬉しくない!」

 

 

ディーゴはあがりマスにコマを投げつけるように置いた。

 

 

紺子「アカ~ン!」

 

ディーゴ「俺の人生ろくなことなかったよほとんどさ!おかしいじゃん、こんなあがったって…」

 

紺子「辰美、ディーゴにあれ持ってきて」

 

辰美「かしこまりました」

 

 

辰美は湯飲みを用意し、それに茶を入れると、ディーゴに渡した。

 

 

辰美「はい、あがりの人にはこちら、()()()になります」

 

ディーゴ「くっだらねぇ!いいよ別に!そんなダジャレ面白くもなんともない!」

 

辰美「どうぞ」

 

ディーゴ「全然いいよこんなの。嬉しくねぇ…アチッ!熱いしよ~…何だよこれ…あ~つまんなかった!」

 

龍華「まあそうだろうな。紺子なんちゅー優遇ゲーだよ………」

 

ディーゴ「ところで紺子、一応やるん?」

 

紺子「やるよ。私もそろそろあがりたいし。よいしょ」

 

 

ルーレットの前に向かい、針を回してみた。

6が出た。

 

 

紺子「1、2、3、4、5、6。やった2着だー!」

 

ディーゴ「まあ2人でやってるからな」

 

辰美「紺子様お疲れ様で~す」

 

紺子「よーしあがりだ♪」

 

ディーゴ「いやちょっと待て!何で2着のあがりがでかいんだよ!」

 

紺子「はぁ~ほっこりほっこり」

 

 

その後本当に後片付けに時間がかかった。終わったのは昼休みが終わるギリギリだった。




紺子はぴかりポジション固定のつもりです。
次回から1年とのレクリエーションですが、笑ってはいけないでやってる捕まってはいけないをやります。


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新入生歓迎

レクリエーションの話にしようと予定していましたが、諸事情によりやめました。楽しみにしてた皆さん本当にごめんなさい…。
というわけで今回から一海を含めた新入生が登場します。


人生ゲームの片付けが終わって間もなくチャイムが鳴った。

紺子たちは急いで席に着き、教室にヴォイエヴォーテが入ってくる。

 

 

ヴォイエヴォーテ「みんなそろっているな……よし、これから入学してきた1年の生徒たちとの交流が始まるが、その前に確認すべきことがある」

 

許人「確認すべき…こと?」

 

ヴォイエヴォーテ「何でも我々教師の中で災難が起きたらしい。その件は後ほど明かされるだろうが、教室を出て整列しろ。間もなくレクリエーションが始まるからな」

 

 

生徒たちは教室を出て整列し、ヴォイエヴォーテについていくように体育館へ向かうことに。

 

 

ヴォイエヴォーテ「全員並んだか?列は乱れていないか?」

 

冷火(わかってるよ、うるせぇな…ペチャクチャしゃべりやがって。何でこんなに口うるせぇんだ?)

 

紺子「全員いまーす。4時間目からずっとあの状態でいる司も大丈夫でーす」

 

ヴォイエヴォーテ「そうか。よし、全員列を乱さぬよう前進!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館に入り、紺子たちが辺りを見回すと、一海を含めた新入生はもちろん、3年の生徒たち、教師たちがそろっていた。

 

 

ディーゴ「スゲェ…もうこんなに集まってやがる……」

 

紺子「カズミンもちゃんといるな。個性があふれてるぜ」

 

ヴォイエヴォーテ「無駄口禁止だ。黙って歩け」

 

 

それから用意されてある席に座り、ヴォイエヴォーテも教師側に戻った。

ステージに学園長であろう女性がステージに上がる。

 

 

校長「それでは学園長からのお話です」

 

学園長「全校生徒の皆さん、こんにちは。新入生の皆さんも初めまして。私、異生神妖魔学園の学園長、『喰輪辰蛇』でございます」

 

ライエル(学園長……あの人みんな苦手なんだよな……『全ての元凶』って呼ばれるほどだよ)

 

龍華(美人なのに何であんなに下品なんだ?集会とかではああやって意外と礼儀正しいのに…)

 

乱(キスしたい…1年全員にキスしたい………)

 

紺子(その顔!こいつ絶対1年全員にキスする気だよな!?)

 

辰蛇「桜が舞い落ちる今日この日、私たちは新入生の皆さんと関わり合えることを楽しみにしていました。私は皆さんを異生神妖魔学園へ歓迎します」

 

セー(どうせ1年も僕のことバカにするんだろ?わかってるよ、そんなこと)

 

辰蛇「それでは1年生の皆さん、起立。まずは私たちに自己紹介をお願いします」

 

 

立ち上がった1年の生徒たちも紺子たち同様個性があふれている。

いや、中には人間も混じっている?だがこの学園は人間禁制。つまり混じっているのはロボット………そう、アンドロイドだ。

人間禁制だとしてもここはアンドロイドは許される場所で、教師たちの中にもそれに似たような者もいる。

魔法使いの少女もいた。彼女は人間のはずである。魔法が使えるから辰蛇に人外扱いされて入学することを許可されたのだろうか。

 

 

メイドアンドロイド「メリー・西藤・レイジアです。よ、よろしくお願いします!」

 

魔法使い「ココ・エンチャントレスです。よろしくですぅ!」

 

一海「藤井一海です。よろしくお願いします」

 

旧神の男の娘「黒神無亞だ。よろしく頼むぜ?」

 

雪女「雪降霜でーす。地球温暖化、はんたーい!」

 

鬼1「ワイ、茨城藤一ていいます!よろしくお願いしやーす!」

 

瓶底眼鏡の少年「く、叢…な、直刀です……」

 

河童の少女「河流胡っていいます。尻子玉抜きたいです」

 

鬼2「酒天稚童です。酒呑童子の子孫です……一応」

 

化け猫「蒼嶺彩。よろしく」

 

オーク「あっ……と…その…………」

 

辰蛇「?」

 

オーク「…………………」

 

辰蛇「たぶん緊張してるみたいだから、そこの死神ちゃん。お願いできる?」

 

死神少女「あ……葬遺埋です。えっと、見ないでください……」

 

オーク「……俺は、自己紹介すらまともにできないのか!くっ……殺せ!」

 

無亞「バカジャネーノ?お前どんな生活送ってきたの?そんなことでは誰も殺しゃしねぇよ」

 

藤一「すんません学園長。こいつ『来転王』っていうんですけど、家族も先祖もあんまりにもあんまりなんですよね。みんな『くっ殺』でくっついてまして……」

 

辰蛇「あらあら、かわいそうに。来転君の種族ってオークよね?その様子からすれば…………平和主義者ですかぁ?

 

 

辰蛇が不敵な笑みを浮かべ、来転に目を向けながら言った。

 

 

来転「……ち、チクショウ…何でバレちまったんだ…!俺ホントに争いが嫌いなんだよ!くっ…殺せぇぇぇええぇぇぇええぇぇぇええ!!!

 

霜「うるさいよっ!!

 

 

しびれを切らした霜が怒鳴ったかと思うと、口から吹雪を吐き出した。

すると来転の体がみるみる凍っていき、しまいには氷漬けになってしまった。

 

 

ココ「…ああ、来転さん凍っちゃったですぅ。でも……ココも霜さんみたいn」

 

無亞「ならないだろ。お前昔からドジだから俺たちにも被害及んでるんだぜ?」

 

メリー「全く、バカでアホでド天然というのはこのことですね」

 

ココ「ココはバカじゃないですぅ!!!

 

一海(まーた始まったよ…)

 

胡「だったら小学校で起こしたあの事件何だったの!?君の魔法暴走して観葉植物が怪物になっちゃってさ、私たちあれ処分するのに苦労したんだからね!?無亞君がいてくれたおかげでなんとかなったけど!」

 

無亞「フッ」

 

ココ「あれはいつまで経っても成長しなくてイライラしてただけですぅ!!大きくなったらみんな感激するかもしれないって思ってたんですぅ!!」

 

霜「食われかけた人もいるのによくそんなこと言えるよね!!凍らせてオブジェにするよ!?」

 

ココ「嫌ですぅ!!死ぬならせめて寿命の方がいいですぅ!!」

 

藤一「もー!ガタガタガタガタうっさいねん、ホンマ!見てみ!?先生も先輩も呆れとるやん!」

 

藤一と無亞以外全員『……あっ』

 

 

辺りを見回すと、辰蛇と校長は別だが確かに教師たちと紺子たち先輩が呆れていた。

 

 

辰蛇「元気なのはいいけどそういうのは休み時間とかにやってくださいね?」

 

ココ「ひぃぃ!ごっ、ごめんなさぃいい!!」

 

辰蛇「さて、自己紹介が終わったのはいいものの、次は何しましょうかねぇ…」

 

校長「『レクリエーションしましょう』って言ったの誰ですか?」

 

辰蛇「私ですわ!!職員会議で話した内容すっかり忘れてましたわ!!オーッホッホッホッホッ!!」

 

トリノ「スッゲェ腹立つゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!出した内容生徒たちの心折れるほどだったけどそのまま宣言するのもムカつくことこの上なしだァァァァァ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「落ち着け烏丸殿。学園長殿がああやってふざけるのはいつものことだ。この間も何だ………うちの学級の女子の1人も学園長殿のセクハラを受けている。あの時私がいたからよかったが、いなければ連れていかれて【自主規制】されていただろう」

 

 

昔のことを昨日のように覚えているように語るヴォイエヴォーテ。

その話を聞いた軍人風の邪龍の男が口を開く。

 

 

軍人風の邪龍「ドラキュラ殿、確かに貴殿はコウモリとなって学園長を止められた。だがあの時暴走していたのを覚えておられるのか?」

 

ヴォイエヴォーテ「新人にして3年の担任にして我が友『ラインハルト・ファブニール』…」

 

紺子(私のことじゃねーか!!ラインハルト先生どうやって見てたの!?)

 

ラインハルト「貴殿は私同様一度怒ると手の施しようがなくなりますが……私は別です。あの日うちの弟子が下賎な輩に絡まれた際、生理的に奴を殺したい気持ちが湧き上がり、奴をじわじわ痛めつけてから殺してしまった……」

 

ヴォイエヴォーテ「何だと…?」

 

ラインハルト「それも何度も。ドラキュラ殿同様生徒たちを思う気持ちは十分にあります。貴殿はただ相手を襲い、時には血を吸い取ることもあるでしょう?私の場合社会的にも抹殺しなければならなくなる。例え貴殿たちだろうと校長殿だろうと学園長殿だろうと…………それが私の正義です」

 

みのり(うわっ、ラインハルト先生のクラスの副担じゃなくてよかった…もしセクハラしてたらその先に待ってるのは…………)

 

フェンリル「はわわっ…もう聞きたくないですぅ…」

 

アンドロイド「やれやれ…食後から聞きたくない話聞いちゃったよ」

 

 

ラインハルトの話を聞いていたみのりは青ざめていた。もし彼の目の前でセクハラしていたら間違いなく殺されているし、見ていなかったとしても誰かに告発されているだろう。

同じく話を聞いて恐れていたのは灰色の犬耳と尻尾を生やしたフェンリルの女性『大狼リン』、テキトーに流していたのは武装した一張羅なアンドロイド『ユウジ11』だった。

だがユウジ11はただのアンドロイドではない。地球の超古代文明の遺産、マシンナイズド・ヒューマンである。明確な感情を持ち、食事もするなど完全に人間らしい超高度なプログラムが構築されている。名前の後ろに11とついているのは彼が11体作られたのではない。再起動した回数なのだ。

 

 

ユウジ11「50年前まで山に埋まってたのにまた動けるようになったと思ったらこれだよ。ったく、今夜はろくにラーメンも酒も食えやしねぇ」

 

ハゲマッチョ「また君は『早く帰りたい』って思ってるのかい?ダメダメ、今日は俺の筋トレに付き合う日だろ?」

 

ユウジ11「いつも下半身丸出しにするテメェが言うセリフか?俺にもいろいろ予定があるんだ、邪魔するなら撃つぜ」

 

ハゲマッチョ「何を~!君はこの『宇佐間論子』の肉体美に興味がないというのか!?筋肉はいいぞ!筋肉はいつだって自分の味方!俺みたく毎日鍛えてムキムキになれば毎日がバラ色!女の子たちにだってモテるぞォ~!」

 

ユウジ11(うぜぇ…)

 

辰蛇「思いっきり話が脱線しちゃいましたが……そろそろレクリエーション始めますかねぇ」

 

紺子「やっとだよ……どうせまたろくなもん出さないんだろうな………」

 

龍哉「去年俺たちがやって来た時もあれだったし、今年も絶対そうだ。うん、きっとそうさ」

 

 

紺子と龍哉が小声でブツブツ言うも、まさか今年も辰蛇が考えたレクリエーションに恐怖するとは誰も思っていなかった。

 

 

辰蛇「ですがその前にいくつか連絡があります。体育担当の宇佐間論子先生、大狼リン先生、ステージ上へ」

 

大狼「えあっ!?は、はい!」

 

宇佐間「簡単な用事ならすぐ済ませたいんだけどね」

 

 

呼び出された大狼と宇佐間がステージに上がる。2人の間に何があったのだろうか。

 

 

 

 

 

辰蛇「この2人は会議中、教師として情けない行動をしていました。宇佐間先生はこっそり筋トレに関する本を読み、大狼先生は大事な書類をシュレッダーにかけるといったものです」

 

宇佐間「ファッ!?学園長見てたんですか!?」

 

大狼「はわわわわっ!あの時もっと早く気づいてたら…!」

 

辰蛇「こんなことが二度とないよう、武闘全般担当の剛力拳次先生による闘魂注入の刑に処します。剛力先生、お願いします」

 

 

教師たちの中から前に出て、ステージに上がったのは角刈りで厳格な顔つきをした筋骨隆々の男だった。

 

 

剛力「ガァッデーム!!

 

ヴォイエヴォーテ(剛力殿は敵に回したら大変な男だ。さて、何をされるか……)

 

剛力「改めて聞きますが、宇佐間先生。会議中何したんですか?」

 

宇佐間「やっぱ俺ってムキムキだろ?だから筋トレの本を読ん…」

 

 

 

ドゴォ!!

 

 

 

宇佐間「でっ!?

 

 

剛力の鉄拳が宇佐間の顔面の中心をとらえた。宇佐間の顔面はめり込み、ステージ上から落ちた。

 

 

剛力「で、大狼先生は?」

 

大狼「書類をシュレッダーにかけちゃいましたっ!」

 

剛力「あんな大事なものをねぇ……この野郎」ボソッ

 

大狼「ち、ちょっとちょっとちょっと!今『この野郎』って言いましたよね!?小声で!」

 

剛力「黙ってください。気合い入れてくださいよ?」

 

大狼「ああ、現実は非情ですね…」

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

なす術もなく顔面にパイを優しくぶつけられた。

 

 

辰蛇「えー、それからもうひとつ連絡がございます。皆さんも担任から聞きましたが、教師たちの中で剛力先生が災難に遭いました」

 

 

体育館内が生徒たちの声でざわめき出す。

しばらくして剛力が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剛力「……俺のハンカチを盗んだのは誰だ?」



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ハンカチ泥棒への制裁

剛力「……俺のハンカチを盗んだのは誰だ?」

 

 

剛力は眉間にシワを寄せ、生徒全員を睨みつけていた。怒りと殺意のオーラを感じているのは遠くでもよくわかる。

そんな中、声を出して笑ってしまった者が数人現れた。

 

 

剛力「ほう…?人の不幸を笑うとはいい度胸じゃないか。犯人は絶対この中にいる!正直に名乗り出れば、今回は特別に許してやる」

 

 

だが生徒たちは担任から聞いただけで身に覚えがないし、そんなことを知っているわけがない。

 

 

剛力「俺が優しいうちに早く名乗り出てくれ。俺はみんなを信じてるぞ」

 

ディーゴ(みんなそんなことするわけねぇだろ…先生がただ忘れただけなんじゃねぇのか?)

 

辰美(いくら口悪い紺子様でもそんなことしませんよね?)

 

乱(こんこんじゃなかったらお祝いに思いっきりチューしよっと)

 

紺子(おいちょっと待て!?みんなの視線が痛すぎるんだが!私のこと向きすぎだろ!)

 

 

2年のクラスメイト全員が紺子に注目する中、他の生徒たちは全員名乗り出ることはなかった。

そして剛力が口を開く。

 

 

剛力「つまりお前らの中に嘘をついている奴がいるということだ。しかし!取り調べはさせてもらう!学園長、今から持ち物検査してもよろしいでしょうか?」

 

辰蛇「まあ、あなたが?ダメですよ、その役目は全部私の役目ですから♡」

 

剛力「といってもまともにやったことありますか!?学園長が調べたら必ずセクハラになるじゃないですか!!お願いしますよ!俺にやらせてください!」

 

辰蛇「………わかりました。ですが今回だけですよ?」

 

剛力「ありがとうございます!絶対邪魔しないでくださいよ?」

 

辰蛇「わかっていますわ」

 

剛力「よーし、これより持ち物検査を始める!生徒全員起立!今からポケットを調べろ!俺のハンカチの柄は確か………水色の無地に青い魚柄だ!」

 

 

生徒たちは観念したのかポケットの中に手を突っ込み、ありとあらゆるものを出してみた。

出された持ち物は椅子の上に次々と置かれていく。

 

 

紺子「よかったぁ…狐柄だったよ」

 

龍哉「俺も持ってなかったぜ…」

 

辰美「私もです。色は違いますが」

 

許人「あっ、入ってなかった。忘れちゃったよ…」

 

高見「ティッシュならあるでしょ?」

 

冷火(そこ気にするか!?)

 

ライエル「僕でもなかったみたい……龍華ちゃんは?」

 

龍華「持って…ないな」

 

盾子「こっちも」

 

ディーゴ「俺もですたい」

 

セー「僕も………」

 

乱「入ってないで~す」

 

仁美「同じく~」

 

死宴「獄炎ちゃん、ど~う?」

 

獄宴「…あっ、違った」

 

炎宴「よかったね。一生は?」

 

一生「持って……ないね」

 

司「俺様…も……?」

 

 

司も無実を証明しようとした途端、それは起こった。

 

 

司「え…?え?あれ!?」

 

 

なんと上着のポケットから剛力が言っていた『水色の無地に魚柄』のハンカチらしきものが出てきたのだ。

 

 

辰蛇「犯人、前へ」

 

司「お、おいおいおい…何で入ってんだこれ…」

 

剛力「上がってこいオラッ!!」

 

司「いや、『上がってこい』っつったって…!」

 

 

もちろん司は今日一度も剛力と話していないし、剛力の持ち物に手を出したこともない。

ということは…………。

 

 

 

 

 

司「ちょ、これ絶対誰か俺様がいない間に入れただろこれ!!

 

ディーゴ「理科の授業でも暴れて先生のものも盗むなんて最低じゃの!」

 

司「だったらお前だけおかしいだろ!何でお前だけ反省文で済まされたんだよ!!」

 

獄宴「悪あがきはやめてさっさと怒られてきなよ。また書かなきゃならない反省文が増えたね」

 

炎宴「あーあ、早くレクリエーションしたいのになぁ…」

 

死宴「とにかく、それ返して全力で謝れば剛力先生もきっと許してくれると思うわよん?」

 

司「嘘つけよ!!殴られる未来しか見えねぇよ!!」

 

剛力「さっさと上がれ!!」

 

高見「もうホント時間潰れるから早く行ってくれない?私もホントに怒るわよ」

 

ライエル「確かに僕が言うのもなんだけど……いくら抵抗しても無駄なんだよ?ポケットから先生のハンカチが出てきたことは事実なんだし、洗いざらい全部話して謝罪した方がいいんじゃないかな」

 

司「ざっけんなよお前ら…後で覚えとけよ…」

 

 

悪態をつきながら渋々ステージへ上がる司。そして…………。

 

 

 

 

 

剛力「水色の無地に魚柄。完全に俺のハンカチだな。何でお前がそれを持っているんだ?」

 

司「知らねぇよ!だいたい今日一度も俺様と話してないだろ!先生のものに手出すなんてそんなわけあるか!」

 

冷火(うーわ、この期に及んで言い訳かよ……財閥の親が知ったら絶対悲しむ……わけないか)

 

剛力「くだらねぇこと言いやがって。お前、さっきクラスメイトと話してたみたいだが、素直に謝る気はないか?」

 

司「ないに決まってんだろ!俺様はちゃんと授業受けてたって!理科室に行く時も必要なものしか持っていかなかったぞ!」

 

剛力「ほーう?じゃあ理科室で暴れたってのはあれ何だったんだ?まあそんなことはどうでもいい。なぜお前が俺のハンカチを持ってるのか理由を聞きたいんだが」

 

司「理由なんかあるかー!!」

 

剛力「そうか…………なら覚悟はできてるんだろうな?」

 

司「はぁ!?いやいや、待て待て待て待て!待ってくれ!!体罰はダメだろ、体ばっ!?」ガバッ

 

 

司の言葉が終わらないまま剛力に口を塞がれてしまった。

 

 

剛力「うるせぇこの野郎!!

 

司「※@☆■#∞◎Ω!!£§♪$∴√¢∬!!

 

龍哉「クククッ…も、もうしゃべらせてくれないっ…」

 

紺子「早く謝れよっ…!ププゥッ…!」

 

辰美「あの性格からして絶対謝らないと思いますよ?」

 

乱「往生際悪いなぁ……後で死の接吻あげようかなぁ?」

 

龍華「ダメだやめろ!!お前のせいであいつ死んだら司の家族殴り込んでくるから!!」

 

乱「ああいう人たちにもキスしたくない。死の接吻はあげるけど」

 

龍華(ダメだこいつ…!完全に本能の赴くままだ…!)

 

 

紺子たちが話しているそんな中、司はまだ抵抗していた。謝る気も完全にない。

 

 

剛力「お前ホントに往生際が悪いな!ハンカチを盗んだことを認めず、こんなに抵抗するとは!」

 

司「お願いだ、信じてくれよ!!ポケットから出てきたのは事実だけど今日一度も話してねぇじゃねぇか!!ボコるのはやめてくれ!」

 

剛力「仮にそうなったとしても鬼塚先生がちゃんと治してくれるだろ」

 

司「あの痛い治療は嫌だー!!後生だ!マジで体罰だけはやめてくれ!!頼むからこの通りだ~~~!!」

 

 

見よ、大財閥の跡取り息子の惨めな姿を。

宇佐間のように殴られたくない司はクラスメイト、新入生、先輩、教師たちの目の前で必死に剛力に土下座した。

 

 

紺子「うーわ、何あいつ!あの金持ちの息子土下座しちゃったよ!情けなっ!」

 

乱「やっぱ死の接吻あげようかな?」

 

ディーゴ「まだそんなこと考えてたの!?誰もあいつの血なんか見たくねぇだろ!」

 

ライエル「司の死……兄さんの死……あああ…………」

 

ディーゴ「そいでライエルは何怖がってんだよ!?」

 

ライエル「知ったことじゃないだろ!!ほっといてよ!!」

 

冷火(ライエルの奴…見るからして絶対冷火と同じ境遇持ってるのかもしれねぇ……)

 

龍華「クソ頑固かよ…なーんであいつ『すいませんでした』の一言が出てこねぇのかな………」

 

 

だが土下座された剛力は困っていた。

どうしようかと思った挙げ句、許すか殴ろうか辰蛇に決めてもらおうと目を向けた。

 

 

剛力「どうしますか?土下座しちゃいましたが…」

 

辰蛇「やってください。この子理科の時間にもクラスメイトと教師に暴力振るいましたし♡」

 

剛力「……わかりました」

 

司「はあぁ!?ざっけんなよ、おい!!

 

 

剛力と辰蛇の話を聞いてしまった司は思わず立ち上がり、怒鳴り返した。

だが辰蛇が決めてしまったことだから仕方ない。剛力は司を逃げられないように胸ぐらをつかんだ。

 

 

剛力「非常に残念だ………『すいませんでした』の一言があれば酌量の価値があったんだが………」

 

司「……す、スマン!悪かったよ!今から謝るから今回だけは見逃してくれ!」

 

剛力「ダメだ、許さねぇ。それに言われてからじゃもう遅いんだよ。わかるか?」

 

司「ぐっ……………」

 

 

ついに観念したのか、抵抗をやめる司。剛力はこう問いかけた。

 

 

剛力「5から行くか?3から行くか?」

 

司「え?」

 

剛力「殴られるまでのカウントダウンだ。5か3か、どっちだ?」

 

司「……3で」

 

剛力「3か…よし、3だな。ほら、ちゃんと立って歯食いしばれ」

 

司「ぐっ………!」

 

剛力「よし、カウントダウン行くぞ!3ッ!!2ッ!!1ッ!!

 

 

 

ドグオォォォォォォン!!!

 

 

 

司「ブゥゥアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

 

剛力の恐ろしいほどのスピードの鉄拳が司の顔面の中心をとらえた。宇佐間同様顔面がめり込み、壁に叩きつけられた司は走り出したら止まれないディーゴのように穴を空けた。

 

 

剛力「ガァッデム!」

 

 

剛力は穴など気にせずステージから下りた。

同じく殴られた宇佐間だが、実は加減されていたようだ。何事もなかったかのように平気で立っており、パイをぶつけられた大狼は顔面真っ白でパイまみれのままだ。

 

 

大狼「ふええ…もし私もあんな感じに殴られてたら………」

 

宇佐間「やっぱ俺が筋肉ムキムキだからかな?全然何ともなかったぜ」

 

大狼「顔めり込んでたじゃないですかぁ…」

 

辰蛇「剛力先生、ありがとうございました。宇佐間先生も大狼先生もお戻りください」

 

龍哉「あれ?そういえば剛力先生の種族って何だったっけ…」

 

紺子「超越者」

 

龍哉「うわ……俺の龍王連撃打といい勝負だな………」

 

辰美「今度会った時勝負してみては?」

 

龍哉「おいおい無茶言うなよ…学園崩壊しちまう…」

 

辰美「うふふ、冗談ですよ♪」

 

一生「全然笑えねぇよ…」

 

 

 

 

 

数分後、ようやくまともにレクリエーションが始まると思っていた時だった。

 

辰蛇「それではこれよりレクリエーションを始めたい…………と言いたいところですが、いろいろハプニングが起こったせいで、私の気が変わりました。よって延期します

 

全員『超気まぐれかァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

 

学園中に生徒たちと教師たちの絶叫が響き渡った。



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剛力VSトイレの花子

あの後司は保健室へ運ばれ、真島のあの痛い治療を受けることになった。

帰りのHRが終わり、紺子、龍哉、一海、牙狼が学園の外に出た。日はほとんど西に沈みかけている。

途中保健室から司の悲鳴が聞こえたような気がした。

 

 

死纏さん「おう、お前らもう帰るのか」

 

 

門の前に立つ死纏さんが声をかけ、紺子たちはそれぞれ返事をする。

 

 

死纏さん「今日は騒動が多い日だったな……ああ、それと出雲。新入生。痴漢には気をつけろよ。春はそういった変態が多いからな」

 

紺・一「「はーい」」

 

 

 

 

 

龍哉「司の奴、とんだ災難だったろうな。剛力先生には殴られるし、鬼塚先生の治療もうけなければならないし、校長先生にも呼び出されてるし………」

 

紺子「お前だけ治療で済んでよかったじゃねぇか。正直言えば私もあんな治療受けたくないよ」

 

 

進み慣れた帰り道を歩き、会話する4人。

特に紺子は発言からして、彼女も過去に龍哉が受けた同じような治療を受けていたようだ。

 

 

牙狼「そういえば紺子って去年…だったっけ?体育の時間アキレス腱切ったんだよね?」

 

紺子「正解。痛くて痛くてすっごい泣いたよ。最初誰かに蹴られたと思ってたけど、周りに人いなかったし、『あっこれはアキレス腱切れたな』って確信したぜ」

 

一海「よっぽどのことがない限り切れないだろうけど、出雲姐ちゃん急に足伸ばしたらああなったって言ってたし」

 

紺子「言っとくけどいずれお前もあの治療受けるからな。一生忘れられないかもしれないから覚悟しとけよ?」

 

牙狼「たぶん痛いと思うから余計痛くなるんじゃないかな」

 

龍哉「『こんなの痛くないっ!』って思ってもなぁ…」

 

 

それから紺子、一海、牙狼は龍哉と別れ、3人は同じ帰り道を歩む。

 

 

紺子「あーあ、レクリエーションしたかったのにつまんねぇ。あんなくだらないことで時間潰しやがって……」

 

一海「僕と同じ学校から来たんだからしょうがないよ。出雲姐ちゃんのクラスだってそうでしょ?」

 

牙狼「もし僕が紺子と同じクラスだったらどんな風になってたかな…」

 

紺子「うん、私も牙狼がいなくてちょっと寂しいよ」

 

 

すると一海があることを思い出した。

 

 

一海「……あれっ?そういえばあの子……どうしたんだろうな………」

 

紺子「カズミン?どうした?」

 

一海「いや、実は………僕のクラスの中に生徒がもう1人足りなかったんだ。女子なんだけど………」

 

牙狼「えっ!?」

 

紺子「はぁ!?た、足りなかったぁ!?どういうことなんだよ、おい!!自分の口で説明しろよ!!」

 

牙狼「ちょっとちょっとちょっと!!1回落ち着けよ!!あと首絞めるなよ!!」

 

一海「あ゛……あ゛……」

 

 

紺子は一海の首を絞める手の力を緩めることはなかった。

それでも牙狼はなんとか紺子を一海から引き離すことに成功し、首を絞められていた一海は咳き込んでいる。

 

 

紺子「私今日初めてだぞおい…カズミンの首絞めたの……」

 

一海「オ゛ーエッ!ゲッホゲッホ!」

 

紺子「いや待てよ…?そういえばあの時…椅子ひとつだけ空いてたような……?」

 

一海「今頃思い出すくらいなら最初から口で言ってよ…!」

 

牙狼「うーん………そういえばあの学園のトイレに花子さんが出るって噂聞いてるけど………」

 

紺子「花子さん?ああ、それなら私も聞いたことあるな。校長先生から聞いたんだけど、あの花子さんって奴、生前人間だったんだよな」

 

牙狼「に、人間…?」

 

 

紺子は話を続ける。

 

 

紺子「あの学園、昔人間が通ってた頃なんだけどね。『雪村麻由美』って子が授業中下痢漏らしてさ、それからひどいいじめを受けてきたんだ。耐えられなくなって引きこもるようになった麻由美は大量の下剤を飲んで自殺しちゃったんだ」

 

一海「そ、それから…?」

 

紺子「怖いのはそこからだよ。あれから月日は流れ、怪奇現象が起こるようになった。生徒数人が毎回ひどい腹痛になってさ……特に麻由美をいじめてた奴らは1週間苦しんだあげく、そのまま行方不明。クラスの何人かは『麻由美の怨念だ!』『トイレの花子さんの仕業だ!』って恐れるようになったのさ」

 

牙狼「じゃあ…あの席が空いてたのって……」

 

一海「まさか……」

 

紺子「過疎化が進んで廃校になって私たちが通う学園になったけど、たぶんあの子なんじゃねぇかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剛力「トイレの花子が出るのはこの個室だな?」

 

妖怪鼠の少女「そうみたいですよ。生前人間だったって聞いてますが…」

 

遠呂智「仕事の話ついでに来てみたが、面白いことが起こりそうだ」

 

龍華「あんたの言う面白いことっていっつもろくなことしかねぇじゃん!」

 

 

一方女子トイレではその花子が出るといわれる3番目の個室の前で剛力と生徒3人が話していた。

1時間目の放送で遊んだ者に罰を与えた3年の生徒『草薙遠呂智』は金髪のイケメン。だが服装は鎖がついた長ランと腰に赤と白のマントを身につけているといった、いかに不良中の不良らしい風貌である。

同じく3年の生徒だが身長が90センチしかなく、ネズミのイラストがプリントされたシャツを着ている少女は『種島ワコ』。まるで学園内のマスコットキャラだ。

 

 

ワコ「もしワコたちも先生も腹痛起こしてトイレの住人になったら……うああ……」

 

剛力「心配するな。超越者にできないことはない。そんな呪いをかけられそうになっても全力で…」

 

 

その時、遠呂智が剛力の背後の個室から邪悪な気配を感じ取るまでそれほど時間はかからなかった。

個室の前に立ち、戸を思い切り蹴破る。

 

 

遠呂智「ヘヘヘ…いたぜいたぜぇ…」

 

龍華「こ、こいつが……」

 

ワコ「トイレの花子さん………」

 

 

いたずらそうに笑う遠呂智の目の前にいたのは白いワイシャツに赤いスカートを着用している、透明感のある長めのおかっぱがかわいらしい少女だった。

雪のように白い肌と冬の空のように澄んだ瞳が印象的な、どこか儚げな魅力のある美少女である。

 

 

トイレの花子?「ホントは『花子さん』じゃないんだ……私は雪村麻由美、これが私の名前………」

 

剛力「学園中で噂になっていたが、お前、生前人間だったそうだな。この学園がまだ人間が通ってた頃、授業中下痢を漏らし、それからひどいいじめに遭い、耐えられなくなったお前は大量の下剤を飲んで自殺した。最近ひどい腹痛を起こす生徒がいるからもしやと思っていたが、雪村麻由美。やっぱりお前だったとは……」

 

龍華「俺もやられたよ」

 

ワコ「ワコも…3番目の個室怖かったからいつも1番目の個室に入ってたけどね」

 

遠呂智「前々から気になってたさ。俺はならなかったけどな」

 

龍華「運よすぎかよ!!」

 

ワコ「どうにかならないんですか!?」

 

剛力「俺に任せてくれ。おい、質問したいことがある。生徒たちに腹痛を起こさせたのはお前か?」

 

 

尋ねられた花子こと麻由美はこう答えた。

 

 

麻由美「そうよ……あなたたちにわかる……?私の苦しみを!下剤飲めって言われて、お腹壊して、トイレに駆け込んで、お漏らしして!腸がメチャクチャになってて、胃に穴が空いてて…………あなたたちにも味わってもらうわ!コーラック10粒分の痛みを!!」

 

剛力「笑止ッ!!!

 

麻由美「!!?」

 

 

呪いをかけようとした麻由美だが、剛力の一喝に怖じ気づいた。

 

 

剛力「たった10粒分など生ぬるい!!いや、むしろ器が小さい!!人を恨むのはわかるが、本格的に恨んだことはないのか!!俺にアドバイスできることといえばそうだな……10箱分だ!それぐらい恨め!!1人でいつまでも背負い続けやがって!」

 

龍華(先生どっちの味方なんだよ!?)

 

 

沈黙が続いたかと思うと、やがて麻由美が涙目になり、口を開いた。

 

 

麻由美「………私………ホントは人を殺したいなんて思ってなかった…………誰かを苦しませて苦しませて、私の苦しみを知ってもらいたかっただけだったの…………………」

 

剛力「そうか…でも大丈夫だ。俺たちという存在があるからこそ、もう苦しむ必要はない」

 

麻由美「先生………」

 

 

麻由美の目から涙が溢れ、それを止めることはできなかった。

泣きながら剛力に抱きつき、声を抑えるようにして泣いた。

 

 

剛力「いじめを苦に自殺したんなら居場所はどこにもないだろう?もう大丈夫だ。今日からお前は………」

 

遠呂智「そのシリアス、ちょっと待った。住むんなら俺ん家がオススメだ。うちはカフェもやってるから、そこに住めば美味い料理も食えるし、コーヒーも紅茶だって飲めるぜ?」

 

龍華「嘘つけよ!!あんたが作る料理必ずダークマターになるじゃねぇか!!」

 

遠呂智「俺が料理下手なのは自覚してる。だからお前がいるんじゃねぇか」

 

龍華「あのな…」

 

ワコ「遠呂智ェ……」

 

剛力「まあまあ、別にいいだろ。せっかく歓迎してくれてるんだ、新たな居場所ができていいじゃないか」

 

 

 

 

 

こうしてトイレの花子さんこと雪村麻由美は遠呂智が経営するカフェに住むことになった。

もちろん遠呂智は歓迎してくれたが、龍華は正直気が進まなかった。それでも麻由美は幸せに暮らすことができるだろう。

 

 

 

 

 

夜。紺子の家にて。そんなことを知らない紺子はベッドの上でぐっすり寝ていた。相当疲れていたのかだらしない寝相で、その上毛布をはね飛ばしていた。

紺子が着ているパジャマはボタンつきの前開き。だが下半身はズボンを履いておらず、薄ピンクのかわいらしいパンツを丸出しにしている。パンツとパジャマの布でできた三角形からは肌色の皮膚と縦長のくぼみがのぞいていた。

それをいたずらそうな笑みでうっとり見ていたのは紺子と同じくパジャマ姿の一海だった。紺子とは違い、ズボンをちゃんと履いている。

 

 

一海「もう、出雲姐ちゃんまたパンツ丸出しで寝ちゃって………写真、撮っちゃおうかなぁ?」

 

紺子「ん……ぁんっ…ひゃっん……/////」

 

一海「うふふ」

 

紺子「か、雷しゃま……おっ、おへそ…取らないでぇ………/////」

 

一海「ああ~……あえぐ出雲姐ちゃんかわいいよぉ…………」

 

 

一海は紺子のパジャマからのぞいている縦長のへそに人差し指を入れながら、その中でくすぐっていた。

へそをくすぐられる紺子は夢の中でも快楽を味わい、顔を赤くしながら寝言を呟き、一海のいたずらは彼女が満足するまで続いた。



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バーストじゃねぇ、バステトだ

待たせたね。
というわけで授業のネタが思いつかず申し訳ないです。


朝のHR終了後にて。

 

 

ライエル「あの、次術科って聞いたんですが、やる場所は?」

 

ヴォイエヴォーテ「そういえばまだ言っていなかったな。確か地下の秘術室とか言っていたような…?」

 

盾子「魔法と魔術ってどう違うのかな?」

 

ディーゴ「俺も魔法しか知らねぇでごわす。絶対聞いた方がいいな」

 

紺子「今年新しく入ってきた先生だからな。確か猫とか言ってたっけ」

 

冷火「猫?西田先生みたいな化け猫とかですかね…(どうせまた変態なんだろ…)」

 

高見「猫は猫でもバステト神とか言ってた気が…」

 

許人「バステト神?」

 

高見「知らないの?エジプトの猫の姿をした神様よ」

 

司「バステトだかバーストだか知らねぇが、今日もドタバタな1日が始まりそうだぜ」

 

紺子「んっ…」

 

 

教科書とノート、筆箱を持ち、教室から出ようとした紺子だったが、腹に違和感が起き、右手で押さえた。

寝る前から起きた後までの記憶をほじくり返す。

 

 

紺子(……あーっ!!夕べ見た夢か!?夢に雷様出てきて、そいつが私のおへそいじってたせいか!?)

 

龍哉「あれ?紺子どうした?腹痛いのか?」

 

紺子「あっ……いや、ちょっとな……さすがにトイレ行くまでの深刻さじゃないけど」

 

一生「妖術も魔術と違うのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、紺子たちが向かった場所は地下にある秘術室。『秘術』である。『美術』でも『技術』でもない。

中は童話によくある魔女が使う大鍋、小動物が入ったいくつかの籠、壁には魔法陣が描かれたポスターが貼られ、教室の中央には4つの長机が置かれていた。

 

 

一生「へ~、ここが秘術室…」

 

辰美「あっちに大鍋ありますし、きっと何か魔術に関するもの作るんでしょうね」

 

セー「小動物もいるんだ…」

 

???「ふむ、2年の生徒たちはこれで全員か」

 

 

秘術室に入ってきたのはこの科目の教師だろう、古代エジプト風の衣装に身を包んだ冷血そうな女性だった。

高見が言っていたようにバステト神の名にふさわしく、確かに猫耳と尻尾が生えていた。

 

 

バステト神「我が名はバステト、またの名を『全猫神守』。バーストとは呼ぶな。向こうの狂気的な方と混ざる」

 

許人「この人がバステト…」

 

高見「ね?言った通りだったでしょ?」

 

司「魔術とかめんどくせぇな…だいたい何でエジプトの神g」

 

神守「そこ、我が猫だからといって怠けるならば知性すらなき猫として暮らすか?」

 

司「嫌だよ!!俺様ただのバカになっちまうじゃねぇか!!(全部聞こえてたかチクショー!)」

 

仁美「たぶん司ドラゴンより猫の方が似合ってると思うよ~」

 

司「テメェもか仁美ー!!」

 

セー「食われないよりはマシでしょ?」

 

神守「さて、そろそろ授業を始めたいが……」

 

紺子「先生しつもーん。魔術と魔法ってどう違うの?」

 

神守「出雲紺子か。ふむ、いい質問だな。魔術と魔法の違いか……簡単に言えば魔法はその場で即座に使えるものが多く、魔力で発動の大部分を補い、魔術は術式と贄……何らかの代償を伴うものだ。魔法は失敗すると暴発しやすい点や、魔術は失敗しにくいものの、失敗すると効果が自分に飛んでくることも多いなどの違いもあるな」

 

ライエル「………………」ガタガタガタガタ

 

ディーゴ「ん?どうしたんだよライエル。何か怖いことでもあんのか?」

 

 

全身を小刻みに震わせていた。それに顔は青ざめ、唇も少し震えている。

 

 

ライエル「じ、実は僕の兄さん……あの授業受けてたんだけど、その日の帰り道、僕……他校の不良に絡まれたんだ。まさかあんなことになるなんて…………」

 

龍哉「どうした?何があったんだ?」

 

ライエル「僕が絡まれてる時、兄さんが駆けつけてきてくれたんだ。それで黒魔術であいつらを止めてくれて、雷とかそういうのも使おうとしたら急に暴走して、兄さんに当たったんだ。それから兄さんは死んだ………」

 

 

赤い紐つきの帯刀に目を向けながら呟く。

 

 

ライエル「僕が持っている刀は兄さんが生前使ってたもの。これを持ってれば周りから強く見られると思ってる。ホントは弱いけど、いつかこんな自分から抜け出したいんだよね」

 

龍哉「まさかそんなことが……俺がお前の兄貴に会ったの小学生だったから、あれから全然知らなかったよ……」

 

ディーゴ「いろいろ大変じゃのう……」

 

紺子「私、入学してからライエルと話したことないけどその話ホントなの?」

 

神守「ああ。我もその話は聞いてる。鐵ライエルの兄『鐵ヤイバ』だが、あいつが死んだと聞いた時は魔術の暴走が原因だろうととどめておいたがな。まさか本当に暴走していたとは………」

 

冷火(紺子が変な魔術覚えたらこっちもパニックだけどあいつは学園一死んでほしくない奴ベスト10に入ってほしい…いやいや何考えてんだ冷火は!!)

 

一生「やっぱり俺の考えてる妖術と魔術はそんなに違うんですね。俺も人間に化けたり、たまに人騙したり…」

 

神守「ほう?」

 

一生「いや、これでも臨機応変なところだってあるんですよ!?俺だって騙されますし、時には知恵を出し抜いたり………いつもじいちゃんが言ってました。『ワシら狸は人を騙すために欺くんじゃない、笑顔を咲かせるために演じる』んだって……俺も、そんな自分になりたいんです」

 

神守「…………化け狸よ、確か信楽一生といったな。ならばそこにいる狐、出雲とはどういう関係だ?」

 

紺・一「「!?」」

 

 

言葉を失ってしまった。

特に一生、ライバルだなんて言えない!紺子も同じ状態だった。

 

 

一生「あっ……あんっと……そのぉ…………」

 

紺子「ら…ら…ライバルですっ!」

 

一生「あーっ!!紺子テメェ!!」

 

紺子「正直に言ってやったよ!お前がどもってたからじれったくなったんだよ!!」

 

一生「だからってバラすバカがどこにいるんだよ!いくら俺たちがライバルでも絶対隠すところだろ!」

 

獄宴「まーた始まった…」

 

乱「そんなことよりチューしたいよ、チュー。私のチューでこんこんと一生の喧嘩止めたい」

 

 

このクラスにはキス魔は1人しかいない。獄宴が呆れる中、乱は紺子と一生にキスすることしか頭になかった。

 

 

許人「君ホントそれしか考えることないんだね。ところで今朝起きたらシマがいなかったんだけど、どこ行ったんだろ?」

 

獄宴「シマ?ああ、ペットのリスのことか」

 

炎宴「それなら小動物の籠の中のひとつに」

 

死宴「入ってるわよ~ん?」

 

許人「え?まさか……冗談だよね……?」

 

 

半信半疑で立ち上がり、小動物の籠の前に向かう許人。いくつもの並んだ籠の中、ネズミやモルモット、蛇などが入っている。

許人が言っていたリスのシマを探していると……………簡単に見つかった。リスがいくらネズミの仲間でも、あんな地味な色をしていない。茶色と灰色、黒い線が入っているのだから。

 

 

許人「…あ…あ……ああああああああああああああ!!!

 

神守「どうした、だいだらぼっち(名前わからん)」

 

許人「先生…ぼっ、僕のペットが……!り、リスのシマが……!!」

 

神守「お前のペットがどうした?」

 

 

取り乱す許人に神守が近づき、シマが入っている籠を見る。

 

 

神守「………あ」

 

許人「『あ』って何ですか!?『あ』って!!」

 

神守「わかりきったことを。こんなことをするのは学園長しかいないからだ」

 

許人「学園長!?僕が寝てる間にどうやって…!」

 

神守「どうやってやったかはわからん。だが犯人は100%あの方で間違いない」

 

冷火(セクハラ以外にも人のペットにも手出すのかよォォォォ!!学園長として終わってんじゃねーかー!!)

 

龍華「とりあえず許人、1回落ち着け。シマが無事ならそれでいいじゃねぇか」

 

許人「う、うん……」

 

神守「さて……それでお前たちはいつまで喧嘩しているんだ?

 

紺・一「「あ゛」」

 

 

神守の怖い顔とひと睨みで紺子と一生の喧嘩の手は止まってしまった。

今日も学園は平和です。



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その頃カズミンと牙狼のクラスでは

場所が変わって、ここは一海たち1年の教室。日本史の授業が始まろうとしていた。

それを担当するのは亡霊の『寺岡影夜』。白い服に眼鏡、天然パーマが特徴的な青年である。

 

 

寺岡「お前らに日本史を教える寺岡だ」

 

ココ「て…寺……寺……子屋?」

 

寺岡「寺岡だ。周りから言いにくいとよく言われる。まあ、気にしてないけどな。とりあえずお前ら、まず自己紹介から頼む」

 

 

冷めきっているのか、ココに間違えられた寺岡は適当に流す。

 

 

メリー「メリー・西藤・レイジアです」

 

ココ「ココ・エンチャントレスです!よろしくです!」

 

一海「藤井一海です。よろしくお願いします」

 

無亞「黒神無亞だ」

 

霜「地球温暖化反対、雪降霜でーす」

 

麻由美「雪村麻由美…」

 

藤一「ワイ、茨城藤一ていいます!よろしくお願いしやすっ!」

 

直刀「く、叢…な、直刀です……」

 

胡「河流胡っていいます。人間の尻子玉食べたいです」

 

稚童「酒天稚童です。一応酒呑童子の子孫です」

 

彩「青嶺彩。よろしく」

 

来転「く、来転…王だ……」

 

埋「葬遺埋です…」

 

 

それぞれ自己紹介が終わると、生徒たちの名前を聞いていた寺岡が口を開く。

 

 

寺岡「今年も個性的な奴らが入ってきたもんだ。とりあえずこの学校にいる間は問題を起こすな。俺が処理しないといけない。卒業したら好きにしろ。俺は関係ないからな」

 

藤一「え?じゃあワイらが寝てたり無駄話してたらどないするんすか?」

 

寺岡「寝てようがしゃべってようが俺には関係ない。困るのはお前らだ。俺は平等に教えるし時間も平等。あとはお前らがどうするか」

 

一海(めんどくさそうな人だなぁ…)

 

来転「俺たちが困るとか……ろくに問題起こせないとか……くっ、殺せ……!」

 

埋「その口癖自体が問題ですよ?嫌なことあったらいつも『くっ殺せ!』とか言っちゃって…」

 

来転「家族も先祖も全員くっ殺主義!口癖もお袋にうつされたんだよ!ひどすぎるだろ!」

 

稚童「こんなにもあんまりな人外っている!?ていうか君の家族も先祖も同じ名前!?」

 

来転「まともな恋愛したいのに…こんな名前知られたらホントにあんまりだ!」

 

無亞「そういえばオークって好戦的だったよな。こいつだけ平和主義ならそれでいいんじゃね?」

 

来転「平和主義とか無責任なこと言うなお前!くっ、殺せぇええぇぇぇええええええぇぇえ!!

 

霜「あんたホンットにうるさい!少しはおとなしくして!」

 

 

霜は来転に向けて口から吹雪を吐き出した。

やがて来転の体はどんどん凍りつき、最終的には氷漬けになった。2度目である。

 

 

一海「まーた凍っちゃったよ…」

 

霜「だってこうでもしなきゃ集中できないでしょ?冷奴取られた時ぐらい腹立つし」

 

一海「君の冷奴好きは昔からだもんね」

 

寺岡「無駄話はもう終わりだ。そろそろ授業やるぞ。来転が元に戻ったら誰か写させてやれ」

 

 

入学式同様またうるさくなってしまった。

だが冷めきった寺岡にとって問題を処理するのは『ただめんどくさい』と感じているだけ。説教する気力もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マシンナイズド・ヒューマン、ユウジ11もめんどくさがりな性格だった。

現在牙狼たち3年の教室で地理の日本の地方や文化を行っているが、テキトーな一面も見せるゆえに、たまに嫌なことがあると………。

 

 

ユウジ11「ピッピー、ガガガー。タダイマ電波ガ通ジナイタメ会話プロトコルヲ中断シマス」

 

 

このようにわざとエラーが起きたふりをしてごまかそうとする。一部の者は「これは嘘だ」とすでに感づいているが………。

 

 

牙狼「先生、この学園スマホ使えますよね。僕の電波バリサンでしたよ」

 

ユウジ11「…………」

 

遠呂智「黙っちゃったか。都合悪くなるといっつもこうだもんな(ホントは聞こえないふりしやがって…)」

 

ロボット少女「でしたら私が」

 

 

頭に機械の髪飾りをつけ、機械の尻尾が生えた美少女、『螺子巻綾野』が立ち上がる。

腕が複雑に展開され、それは別のものへ型どっていき、鉄でできたハンマーのようになった。

 

 

遠呂智「おいおい、できんのか?」

 

美弥妃「これで壊れたら私の力でゾンビとして復活!復活!」

 

綾野「先生、覚悟はいいですか?」

 

 

綾野がハンマーを振りかざし、それを一気に振り下ろしたその時だった。

 

 

ユウジ11「甘いぜ螺子巻」

 

 

そう、それは瞬間的な出来事だった。

ハンマーが振り下ろされる寸前、ユウジ11が目にも留まらぬ早さでホルスターから拳銃を抜き、綾野のハンマーめがけて発砲したのだ。

 

 

綾野「……私の攻撃を防いだのは先生が初めてでしょう」

 

ユウジ11「バカにしやがって。俺は古代文明の時からから全宇宙をまたにかけてきたトレジャーハンターだぞ?こうやって騙し討ちするってのも当たり前のことさ。それに悪い宇宙人にも負けたこともねぇ」

 

遠呂智「宇宙人!?」

 

ユウジ11「ん?どこかまずかったか?」

 

遠呂智(い、言えねぇ!俺のカフェの装飾『宇宙一色だ』なんて言ったらぜってぇ殺しにかかる!カフェのことバレたら人生終わっちまう!)

 

ユウジ11「あー…めんどくせぇからこれから自習」

 

ワコ「ホントにテキトーだなぁ……」

 

龍神族の少女「私はテキトーなことが嫌いだ。私も去年撃たれそうになったからな」

 

鬼?「おやおや、あなたもですか。ユウジ先生も見た目にして本当はしっかり生きているんでしょうよ。実は私も一度グレネードで仕留められそうになりましてねぇ…」

 

 

和服を着た少女と額に1本角が生えた少年が話す。少女の方は『御神竜奈』、鬼の方は『鬼道王臥』という名前だった。

 

 

牙狼「………?」

 

綾野「どうかしましたか?」

 

牙狼「いや、なんか地下から紺子の声が聞こえた気がした」

 

 

牙狼のクラスではユウジ11の言う通り自習になった。

本当にこのマシンナイズド・ヒューマン、教師として成り立つのだろうか。



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変態マッチョマンとドジっ子フェンリル

あの後シマは籠から出された。犯人は学園長だったが、放課後シメてやろうか。誰もがそう思っていた。

術科が終わり、次は体育。一旦教室に戻った紺子たちは体操服を持って体育館へ。更衣室では紺子を含めた女子たちが着替えている中、ガールズトークに夢中になっていた。

 

 

仁美「辰美って結構力持ちで羨ましいよね~」

 

辰美「そ、そうですか?私いつもジムで鍛えてますし…////」

 

紺子「私だって意外と力あるんだけどなぁ…」

 

高見「例えば?」

 

紺子「人を縛る。私の尻尾自由自在だから龍華だって捕まえられる」

 

龍華「いやいや、それ嘘だろ。俺を捕まえられるなんて……」

 

紺子「いーや、捕まえられるんだ。ハッ!」パンッ

 

 

その時、不思議なことが起こった。紺子の尻尾があり得ないほどの長さに伸び出したのだ。

尻尾は龍華を巻きつけ、ぐるぐる巻きにしていく。

 

 

龍華「ダーッ!!おい、ちょっとやめろ!!やめてくれー!!怖い怖い怖い怖い!!ていうかこれどうなってんの!?どうなってんだよこれ!!」

 

盾子「すっごいなぁ、紺子!私もやってみたい!」

 

龍華「ホントにスゲーよこれ…!め、目が回った………」

 

紺子「どうだ、私の尻尾はすごいだろ!」

 

龍華「ところで……お前の尻尾スッゲェモフモフだな」

 

紺子「ギュウギュウに締めつけられる痛みの中にちょっとした癒しを入れてるのさ」

 

冷火「れ、冷火も触ってみたいです!(矛盾してる矛盾してる!全身ギュウギュウだったらほとんど痛みしか感じないだろ!ちょっと出てる手で触れられたらそりゃ気持ちいいけど!)」

 

高見「ねえ辰美。あなた人魚でしょ?魔法で浮けるのはわかるけど、跳び箱とか大丈夫なの?」

 

辰美「それは………いや、それだけは苦手ですね。毎回崩しちゃいますし」

 

仁美「去年体力測定でいい結果出てたのに変なの~」

 

乱「こんこんの尻尾にもチューしてみた~い」

 

紺子「やめろ!?私の毛ついて処理大変になるぞ!」

 

乱「脱毛症?それとも夏毛への生え変わり?」

 

紺子「ちょっとずつ生え変わってるよ!」

 

辰美「紺子様~、昼休みには尻尾を手入れしましょうね~」

 

紺子「はぁ!?嫌だよ!!お前いっつもちぎれそうなほど引っ張るじゃねぇか!!」

 

龍華「そうだぞ!こいつの悲鳴2階から1階まで聞こえたからな!カズミンにやらせろよな!」

 

盾子「私一生のより紺子の尻尾の方が好きなんだよね」

 

乱「こんこんの尻尾にはチューできなくてもモフモフして癒された~い」

 

高見「あと耳もね」

 

辰美「み、皆さん言いたい放題ですね…」

 

龍華「ところで紺子……お前いつまで縛ってんだよ!」

 

紺子「必殺龍神ゴマ!!

 

 

 

ギュオオオオオオオオオ

 

 

 

龍華「ギニャァァァァァァアアアアァアアアアァァァアアア!!!

 

 

龍華は青い竜巻の姿となり、周りにも強風を起こし、辺りをメチャクチャに散らかす。

紺子たちも竜巻と化した龍華に巻き込まれそうになったため、急いで更衣室から出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方男子更衣室でも龍哉たちが着替えながら女子更衣室にいる紺子たちの話し声を聞いていた。

 

 

龍哉「………あいつの尻尾自由自在だったんだ。龍華の声ここまで聞こえてたぞ」

 

ライエル「僕も聞いたよ。『ダアァァ!』って言ってたもん」

 

ディーゴ「災難じゃけぇのう…」

 

セー「………ていうか獄宴、お前裸の上にパーカー着てるの?」

 

獄宴「うん」

 

 

ロッカーの中にはパーカー以外にも、炎宴と死宴も雑に置かれていた。

 

 

死宴「ちょっとぉ~ん♡雑に置かないでくれる~?」

 

炎宴「それで私たちも連れてってくれるんでしょうね?」

 

獄宴「連れてくに決まってるじゃん。ロッカーの中で長くて退屈な時間過ごすの嫌でしょ?」

 

許人「シマが助かってよかったけど、僕宇佐間先生苦手なんだよね」

 

一生「あの筋肉バカの先生か。筋肉増大させる時毎回ズボン破ってるよな。それに他人の筋肉にも見惚れるし、ゲイかよ。ホモかよ」

 

司「悪口ばっかり言うなよ。無理はさせない一面もあるし、意外と生徒思いなんだぜ?まさにマッチョマンに愛情、だな」

 

セー「また変なことわざ…」

 

ライエル「大狼先生もいろいろヤバイと思うよ?先生なのにドジっ子って……」

 

司「それ!去年ここに入ってきた時は爆笑しちまったな。今でも思い出すと笑いが止まらないぜ」

 

龍哉「あれでホントに先生なのかな?」

 

許人「しかもグレイプニルって……」

 

ディーゴ「グレイプニル?グレイプニルって何だ?」

 

許人「乱から聞いたんだけど、魔法の紐っていうか…足枷っていうか…」

 

???『ギニャァァァァァァアアアアァアアアアァァァアアア!!!

 

ディーゴ「誰の悲鳴だ?何があったか知らねぇけど、かわいそうに」

 

獄宴「もう女子みんな集まってる頃だし、そろそろ出て並んだ方がいいんじゃないかな?」

 

一生「そうだね。そろそろ出て並ぶか」

 

 

着替え終わった男子たちはすぐ更衣室から出た。またしてもとんでもない騒動が起こることを知らずに……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャイムが鳴り、全員が体育館の真ん中に並んだ。紺子は動きやすいようにか、体操服の裾を結び、へそ出し状態にしていた。

 

 

紺子「やっぱこの格好だと寒いな…」

 

ディーゴ「だったら裾ほどけばいい話じゃろ」

 

紺子「でもこの格好じゃないとしっくり来ねぇんだよ」

 

 

だがこの中に龍華はいない。ご存じの通り、先ほど紺子によって竜巻にされた。それが原因で現在トイレで胃の中のものを全て吐き出していた。

しばらくして体育館に剛力にお仕置きされた教師2人が入ってくる。顔面パンチされた筋肉ムキムキのハゲ頭の宇佐間、顔面にパイをぶつけられたフェンリルの大狼だった。

 

 

宇佐間「フハハハハハハ!ハーッハハハハハハ!」

 

大狼「はわわっ!ちょっと、宇佐間先生!?何笑ってるんですかぁ!?」

 

宇佐間「春なのにこの肌寒さ!ツルツルの頭の俺には参るねぇ!」

 

龍哉「冬終わったばっかなのにどんだけ元気なんですか?ていうか脇毛だけボーボーって……」

 

宇佐間「いやー、下の毛と脇毛はボーボーなのに頭はツルッツルなんだよなぁ〜。筋肉まだまだ育ち盛りなピッチピチの80歳なのに」

 

冷火(嘘つけよ!ジジイじゃねーか!見た目40のハゲたオッサンが80なわけあるか!)

 

辰美「それにしても宇佐間先生の筋肉、いつ見てもかっこいいですね。ハゲてなければですが」ボソッ

 

宇佐間「おお!?そこの人魚の君!俺の筋肉がかっこいいって!?」

 

辰美「はい」

 

冷火(聞いてねぇ!!さっきの『ハゲてなければですが』絶対聞いてねぇ!!)

 

宇佐間「く~~っっ!俺のかっこよくてプリティーな筋肉を褒めてくれる子がいるなんてなかなか見る目あるじゃないか!」

 

 

自分の両腕にキスをしながら言う宇佐間。彼のテンションについていけない大狼。

 

 

大狼「もうホントにこの人筋肉バカですぅ……そういえば龍華さんは?」

 

司「あいつならトイレで吐いてるぜ」

 

大狼「今日やることですが………」

 

宇佐間「今日は体力測定っ!君たちの運動神経、この目ではっきり見せてもらうぞ~!」ガッキーン!!

 

 

宇佐間は自分の筋肉をアピールするようなポーズを決めた。同時にこう思った。

 

 

宇佐間(今日も決まった!毎日鍛えられた我が筋肉は永遠に不滅!筋肉こそ正義!筋肉は裏切らない!筋肉を愛し、筋肉に愛された男!そう、俺こそがスーパー体育教師…宇佐間論子ッ!!)

 

大狼「な…なんか宇佐間先生が自分の世界に入っちゃったみたいなので、とりあえず始めましょう。体力測定になりますが、その前に体操です」

 

全員『はーい』

 

宇佐間「体操指導も俺の役目。みんな、俺についてこい!」

 

紺子「や、ヤバイ…!まさか、いつものあれが!?」

 

宇佐間「膨れ上がれ、我が筋肉よ~~!!」

 

大狼「う、宇佐間先s」

 

宇佐間「フンッ!!

 

 

 

バリバリビリィッ

 

 

 

上半身のタンクトップが破けた―――――

 

 

 

 

 

かと思いきや、破けたのは下半身。つまりジーンズだった。

パンツだけは破けなかったからいいものの、紺子たち女子全員は顔を真っ赤にして次々と顔を隠しながら悲鳴をあげる。

 

 

女子全員『キャーー!!キャーーーー!!

 

紺子「自宅でやれやー!!だからヤバイって言ったんだよー!!/////////」

 

龍哉(御神先輩もこれ見て泡吹きながら気絶したって聞いたっけ…)

 

大狼「はわわわわぁ!!また宇佐間先生のズボンがぁぁばばばばばばばばばば!!」

 

宇佐間「…ありゃりゃりゃりゃ、またやっちゃったか♪」

 

大狼「『またやっちゃったか♪』じゃないですよ!!何回破ったと思ってるんですかぁ!!」

 

宇佐間「少なくとも11万2338回かな?」

 

大狼「家でやったのも入れてですか!?どんだけ破ってるんですか!!」

 

宇佐間「いやー、一度膨れ上がらせると自分でも止められなくなるんだよなぁ。予備ズボン買い溜めしといてよかったよ」

 

冷火「なら早く履いてください!更衣室あるじゃないですか!//////////(絶対刑務所で無期懲役になるレベルだろ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大狼が代わりに体操を進めた。宇佐間はすぐに男子更衣室で新しいジーンズに履き替え、戻ってきた。

 

 

宇佐間「終わっちゃったか。まあ、俺にとってはズボン履くってのも体操みたいなものだと思ってるからね」

 

冷火(それが嘘だっつーんだよ!ダメだこの先生、世紀末筋肉バカだし超ド級変態だ!)

 

 

それからして、ようやく体力測定が行われた。

行ったのは握力、反復横跳び、立ち幅跳び、上体起こし、長座体前屈、そして20メートルシャトルラン。50メートル走とハンドボール投げは次の時間にやる予定だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業終了のチャイムが鳴り、全員整列。号令が終わると、全員それぞれ更衣室に入り、着替える。

竜巻にされた龍華だが、あれからついに不参加に終わっていた。あまりの気分の悪さに保健室送りにされたのだった。

 

 

龍華「紺子の野郎、あいつのせいで俺の出る幕が………格闘大会で優勝した腕を見せてやりたかったのに……………」

 

真島「んなもん先生に頼んで放課後にやりゃいいじゃねぇか。50メートル走とハンドボール投げがまだ残ってんだろ?それで見返してやりな」

 

龍華「放課後できればいいんだがな………(ダメだ、まだ頭クラクラする………)」




なぜ体育教師が2人いるんだって?
ある方によると、その人の学校の体育の先生が2人いたかららしいです。


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邪龍歩ミシ武之道

武道館には牙狼たち3年の生徒が武道の授業のため集まっていた。

担当はヴォイエヴォーテの友にして新任、邪龍のラインハルト・ファブニールだった。黙想と準備運動を終え、竹刀を手にする。

だがラインハルト以外にも剛力もいる。そう、彼の担当は辰蛇が言っていたように武闘全般。格闘も得意なら剣術も得意なのだ。

 

 

ラインハルト「……………では、武道を始める。全員竹刀を持て」

 

剛力「ちょっと待ってくださいよ。草薙と御神だけ着せるのおかしくないですか!?」

 

ラインハルト「剣道具が足りなかったものでね。ありあわせを用意しておいて正解だった」

 

 

見れば確かに遠呂智と竜奈以外剣道着と防具を身につけている。

だが2人が着ているのは明らかに別物。戦国武将の鎧である。

 

 

遠呂智「いくらなんでも無理あんだろこれ!?俺たち戦場に来てんじゃねぇんだぞ!?

 

竜奈「龍神族の私からすればそのうち慣れるだろうと思うが………周りから『独眼竜伊達政宗』と言われるのではないのか?」

 

ラインハルト「誰も言わん。その上汝は眼帯をつけていないだろう?」

 

剛力「気にするトコそこ!?もういいから早く始めてくださいよ!ほら、お前らも早く並んでくれ!」

 

 

 

 

 

ラインハルト「さて、全員竹刀は持ったな?では基本動作から始める。まず握り方についてだ。竹刀の中心線上で両手の親指と人差し指でV字を作り、それから柄頭を力いっぱい握れ」

 

 

言われた通り握ってみるも、初心者が多い。本当にこれで合ってるの?自信がない。

だが竜奈は授業中だろうと休み時間だろうと休日どこかに出かける時もいつも刀や剣を持ち歩き、手離さない。つまり彼女にとって竹刀を扱うことも容易いのだ。

剛力はこれを見て素晴らしいと褒める。

 

 

剛力「御神を見習え!これが竹刀の正しい持ち方だぞー!誰か困ってる奴はいるかー?」

 

舌寺「レロレロ………こ、これは!自然の中で育ってきたのに人間によって武器に作られた竹の苦しみの味がしますなぁ!」

 

 

 

バヂゴォンッ!!

 

 

 

武道館に人を竹刀で殴るすさまじい音が響き渡り、竜奈の足元には後ろ首にアザができた舌寺が倒れていた。

 

 

竜奈「貴様!!人の話を聞かずに竹刀を舐めるとは!!」

 

牙狼「す、すごい……ただの竹刀なのに舌寺を一撃で意識喪失させちゃったよ…………」

 

綾野「ええ、竜奈は龍神族の中では最強クラスの力を持っています。それは宇宙や次元を破壊してしまうほどです」

 

遠呂智「だったら学園長も簡単に殺せるんじゃねぇのか?」

 

牙狼「不吉なこと言うなよ!鳥肌立つだろ!」

 

綾野「一度怒らせると取り返しがつかなくなるので私や龍華しか止められません」

 

王臥「舌寺君、絶対死んでますよね?さすがにないでしょうけど」

 

綾野「先ほどパワーのデータを確認してみましたが、手加減していた模様。舌寺が意識を取り戻す頃には授業が終わっているでしょう」

 

王臥「つまりさっき言ってた『宇宙や次元を破壊するほどの力』というのは抑えているとのことですね?」

 

綾野「ええ」

 

牙狼「…ん?誰か入ってきた」

 

 

牙狼が指す方向を見ると、入ってきたのはジーンズが破れた宇佐間だった。

先ほど紺子たちのクラスの体育の授業で体操をする際破っていたのだった。もちろん女子全員は悲鳴をあげ、男子の一部はドン引きする。

 

 

剛力「ちょ、宇佐間先生ぇぇぇぇぇええぇえええぇぇ!!?なぜまた下半身丸出しにィィイイイイイィィィィィイイイイ!!?

 

竜奈「女子の目の前で、な、なんとハレンチな!?あばばばばばば……」ブクブクブクブク

 

 

無論剛力もドン引きのあまり絶叫し、竜奈は下半身丸出しの宇佐間を見るなり泡を吹きながら倒れた。

それに比べてラインハルトは。

 

 

ラインハルト「宇佐間殿、またですか?」

 

 

落ち着いたように問いかける。

 

 

宇佐間「やあ、ラインハルト君。そうなんだよ、いつもの癖でね~。体操前に筋肉を膨れ上がらせようとしたら必ずこうなっちゃうんだよね~」

 

ラインハルト「貴殿が体育の時間いつもそれをやるのは知っています。なぜここに来たのですか?」

 

宇佐間「うちのタンスと押し入れに入りきらなかったズボンを取りに来たんだ。見られちゃまずいから校舎の至る所に隠してるんだよ。暇な時探してみたら?」

 

ラインハルト「頑として遠慮します」

 

剛力「ラインハルト先生まで!宇佐間先生、校舎の至る所に隠してるんならさっさと見つけて履いてくださいよ!俺が見つけても絶対内緒にしますから!」

 

ラインハルト「ならば私も内密にしておきましょう」

 

宇佐間「すまないねぇ。んじゃ、俺は履いたらさっさと紺子ちゃんたちのクラスに戻るとしますか」

 

 

その後宇佐間は新しいジーンズを履き、何事もなかったかのように武道館から出た。

気絶していた竜奈も意識を取り戻し、立ち上がる。

 

 

遠呂智「あ、やっと起きた」

 

竜奈「………宇佐間先生の下半身露出はもううんざりだ。紺子か一海のクラスでやっているのかわからんが、武道が体育と同じ時間に行われると全く嫌になる」

 

???「仕方ないよ。そういう日もあるんだから」

 

 

性別不確定の神龍が声をかける。名は『轟』なのだが、この者には名前が2つある。

ひとつは『竜香』。自身がいつも名乗る女の名前で、普段表に出している女の人格。もうひとつは『龍信』。本気で怒った際に出てくる男の人格。龍信は危険だが、それでも怒らない限り彼の人格が出ることはないので、轟自身は女になりたいと望んでいるのだろう。

 

 

ワコ「あーもう!宇佐間先生より竹刀の方が扱いづらい!ワコより大きいから小学生がおもちゃで遊んでるように見えちゃうよ!」

 

ラインハルト「言われてみればそう見えなくもない」

 

ワコ「これよりもっと小さいのないんですか?」

 

ラインハルト「すまないがそれしかない。慣れるまで我慢することだな」

 

ワコ「え~、そんなぁ!」

 

綾野「………危険を察知。どうやら私のデータにミスがあったようです」

 

牙狼「え?」

 

綾野「舌寺が意識を取り戻しました。あの様子からすればラインハルト先生の首筋を舐めるつもりです」

 

 

綾野の言う通り、舌寺は本当に意識を取り戻して立ち上がっており、ラインハルトを興味深そうに見つめている。だが彼を舐めたら間違いなく罰は逃れられないだろう。そんな不安も漂ってくる。

やがて舌寺は覚悟を決めた。舌を伸ばし、ラインハルトに気づかれないよう首筋を舐めてみた。

 

 

牙狼「あ」

 

遠呂智(終わったなこれ)

 

舌寺「こ、この味は………!『殺るといったら殺る』という味がする!!

 

 

 

 

 

やがて全員は何が起きたかわからなかったというような目をした。

 

 

舌寺「あ゛びぇ!!?

 

全員『!!?』

 

剛力「あ…あれ!?ラインハルト先生!?」

 

 

変な声をあげて倒れる舌寺。さっきまで隣にいたラインハルトがおらず、見回す剛力。

倒れた舌寺の背後にはいつの間にか竹刀をついたラインハルトが少し彼から離れた場所に立っていた。

 

 

ラインハルト「………………斬り捨て御免」

 

 

舌寺が変な声をあげて倒れた理由がよくわかった。

ラインハルトが目にも止まらぬ速さで竹刀で舌寺を叩いたのだ。

 

 

綾野、竜奈以外全員『舌寺ィィィィイイイイイィィィイイイィイイイイイイイィ!!!!

 

ラインハルト「汝、我が刃に取るに足らず」

 

 

 

 

 

かなりダメージが大きかったのだろう、牙狼たちがいくら声をかけても舌寺は目を覚ますことはなかった。だがラインハルトによれば「力を加減しておいた」とのこと。力は竜奈には劣るだろうが。

その後の授業は何事もなく平常進行。やがてチャイムが鳴り、授業終了の合図を知らせる。

 

 

王臥「やっと終わりましたか…」

 

剛力「お前ら、次も授業なんだろ?早く着替えて準備するんだぞ」

 

轟(竜香)「剛力先生、そのことなんですが……」

 

剛力「どうした?」

 

轟(竜香)「ラインハルト先生がいつの間にか着替え終わってて……」

 

剛力「?」

 

 

確かに剣道着からいつもの軍服に着替えていた。ラインハルトは無言で近づいてくる。

 

 

ラインハルト「………………………」

 

 

他の者も唖然としている。そしてラインハルトは上着のボタンを外し、その下に着ていたのは―――――

 

 

 

 

 

【今着替えた】

 

 

 

ズドドドドドドドォォーッ

 

 

 

言葉より服で表した方がいいと考えていたようだ。彼のTシャツを見た3年の生徒全員、及び剛力は盛大にずっこける。

上着のボタンを留めたラインハルトはそのまま無言で武道館を出ていった。

 

 

ワコ「何だったのあのTシャツ!?あれダサすぎない!?」

 

牙狼「想像の斜め上を行く破壊力だ…!」

 

竜奈「もはやどこから突っ込んでいいかわからない!」

 

 

全員唖然、呆然。だが1人だけ気になっている者がここにいる。

遠呂智だった。

 

 

遠呂智(あんな服を着てた理由がわかんねぇ……よし、空いてる時間に聞いてみるか)

 

牙狼「遠呂智だけ落ち着いてるって…遠呂智だけ落ち着いてるってぇ!!」

 

 

遠呂智の言う通り、ラインハルトのあのTシャツには本当に何か理由があるかもしれない。そこで全員帰りのHRに聞いてみようと決意した。




宇佐間先生とラインハルト先生のバカ対決、いい勝負になりそう。
でも今回の話書いてラインハルト先生の方がマシかな?


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音楽も先生もバカにするのは控えるべし

音楽の授業、混沌化。
だってクトゥルフのあの外なる神だからね。


武道館でドタバタ騒ぎが起こっているその頃、一海たち1年のクラスは音楽室で授業を受けていた。合唱の授業だった。

担当は『南原透』というどこかおかしな女教師だった。読みは《なんばら》ではない。《ねんぶら》だ。外なる神『トルネンブラ』から取って《ねんぶら とおる》。

見るからに怪しげな雰囲気を漂わせ、あり得ない方向にねじ曲がった指揮棒を振り回しているが、対照的に素晴らしい音色を奏でていた。

 

 

南原「いや~、皆さん素晴らしい歌声だったですよ。振るだけで音楽を奏でられる指揮棒は私でも感動しちゃうですよ」

 

ココ「南原先生の指揮上手すぎて緊張しちゃいましたぁ…」

 

南原「フフフ、かの有名なモーツァルトやバッハは私の指導を元にあの才能を開花させたのですよ♪」

 

藤一「そういうバレバレな嘘やめてくれます?」

 

南原「ちょっと、さっき嘘とか言った子起立ですよ。私の音楽の才能をバカにする子は痛い目見せてやるですよ」

 

藤一「先生?ちょ―――――」

 

南原「バカにした奴はこうやってジャーマンスープレックスの刑に処すですよー!!

 

藤一「ゴギャアアアアアアアアア!!

 

 

床に投げつけられた。

音楽をバカにする者は許さない。バカにした者はこうやってジャーマンスープレックスをかける。それが南原にとってのモットーである。

 

 

胡「先生ェェェェェェ!?」

 

来転「た、体罰だ……!!」

 

無亞「………今日も平和だな」

 

一海「平和じゃないでしょ!?藤一プロレス技かけられたんだよ!?」

 

無亞「そんなに騒ぐんじゃないよ。南原先生にとっては当たり前のことなんだぜ?まっ、俺はやられる前にやる方だがな。例えばこんな風に……」

 

 

来転に目を向ける無亞。口元を歪める。

 

 

無亞「さあ、出番だぞ。『ティンダロスの猟犬』」

 

 

音楽室の隅から青黒い煙が出てくる。それが凝り固まってある動物の姿をかたどる。

犬?いや、普通の犬とはかなり違う。無亞が言っていた猟犬とも言いがたい。

そう、その名は古代ギリシア時代から伝わりしクトゥルフ神話の怪物『ティンダロスの猟犬』。底なしの食欲の持ち主で非常に執念深く、獲物独特の匂いを知覚し、それを捕らえるまでどこまでも追いかける。例え時空を超えてでも……………。

 

 

来転「まさか…また大声出そうとする俺を黙らせようというのか……!?」

 

無亞「そりゃそうさ、平和主義者のオーク野郎。また言うんだろ?あのセリフをよォ」

 

来転「くっ……………殺せぇぇぇぇええええぇえぇぇえぇえええええぇぇえぇえぇ!!!!!

 

 

いつもの口癖を叫び、同時にティンダロスの猟犬も彼に襲いかかる。

 

 

来転「恋愛できなくなってもいいから殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

来転は転がるように逃げ、ティンダロスの猟犬はおぞましい鳴き声をあげながら彼を追っていった。

それを見ていた無亞はいたずらそうに笑っている。

 

 

無亞「ヘッ、どこまで逃げれるか見ものだぜ。これで静かに授業受けれるな」

 

彩「…………」

 

ココ「あ……あ……ああああぁあぁあぁぁぁああああ!!」

 

無亞「どうした、ココ」

 

 

ティンダロスの猟犬を見て大声をあげるココ。周りが次々と心配をよそう声をかける。

しかしココの口から飛び出したのは。

 

 

 

 

 

ココ「今の犬みたいなの……すっごくかっこよかったですぅ!!」

 

ココと無亞と南原以外全員『はあぁ!?』

 

 

彼女には恐怖という文字がなく、逆に目を輝かせていた。さらに自分もあんな使い魔が従えたいと言い出したものだから、もう止まらない。

だがあの怪物を見た麻由美と埋は別の意味で止まらない。恐怖で体の震えが止まらないのだ。

 

 

麻由美「無亞君が出したあのティンダロスの猟犬って奴……来転君が襲われたの見てかなり寒気が………」

 

埋「私もクトゥルフなんてちょっと小耳に挟んだぐらいですから………」

 

無亞「ん?お前らクトゥルフの怪物初めて見たのか。安心しろ、南原先生もクトゥルフ神話に出てくる神だから」

 

南原「うふふ、その通りですよ無亞君!私は古代より音楽を愛し、音楽に愛された外なる神『トルネンブラ』。さっき『嘘やろ?』とか言った藤一君にジャーマンスープレックスをかけたのは私をバカにしただけではないのですよ。私がクトゥルフ神話の外なる神であることを知らないことも理由に入るのですよ!オーッホッホッホッホッ!!」

 

 

高笑いする南原。だがトルネンブラを知らない者は藤一以外にも誰かいるはずである。

 

 

一海「………上機嫌のところすいません。僕も知らなかったんですが」

 

南原「あーら、一海さん?知らないとはどういうことか説明してほしいのですよ」

 

無亞(あ、これ終わったな)

 

霜(ていうか私も知らなかったんだけど…)

 

 

一海に当たりそうなほどギリギリ顔を近づける南原。少し恐怖するも、一海は答える。

 

 

一海「実は僕、クトゥルフ神話の神や怪物はいくつか知ってるんですが……南原先生のような外なる神はいくら僕でも聞いたことがありませんでした……」

 

 

そんな中、音楽室に来転を口にくわえたティンダロスの猟犬が戻ってきた。相当抵抗したのだろうか、来転の息づかいが荒い。

 

 

来転「くそぉ………いくら殺せって言っても全然殺してくれなかった………」ゼェゼェ

 

無亞「黙らせるためにやったからな。どうだ、『くっ殺せ』って言いたくなくなったか?」

 

来転「まだ言いてぇよ………そもそもこいつ犬じゃないだろ?逆に殺さなかったのが不思議でしょうがないぜ………」

 

無亞「俺が使うティンダロスの猟犬は誰も殺さねぇんだよ」

 

来転「誰も………殺さない………だと………?」

 

無亞「ああ」

 

来転「うそーん………」

 

 

自分でも意識が遠退いていくのがよくわかった。

一方、説明を終えた一海だが、藤一みたくジャーマンスープレックスをかけられる覚悟はしていた。

 

 

 

 

 

南原「素晴らしいッ!!

 

一海「!?」

 

南原「正直に全部話してくれて先生嬉しいですよ!」

 

 

自分もジャーマンスープレックスにかけられる覚悟はあったのに。南原はまたしても上機嫌になった。

 

 

南原「またひとつクトゥルフの神を知るのはとても勉強になるですよ!私以外にもそういった先生や生徒はたくさんいるから暇な時聞いてみた方がいいですよ!」

 

一海「え…じゃあ無亞の種族って……」

 

無亞「旧神だよ。俺もクトゥルフの神さ」

 

 

一方、稚童は南原を見ていた。気になることがあるようだ。

 

 

稚童「………」

 

埋「どうしたんですか?先生の方じっと見て…」

 

稚童「いや…白髪混じってるから年ごまかしてるのかなって」

 

 

その瞬間、南原の鋭い視線が稚童に刺さった。

 

 

南原「…………のですよ」

 

稚童「え……え……?」

 

南原「私はまだ…………若いのですよッ!!

 

稚童「うぎゃああああああああ!!」

 

 

南原の投げつけた指揮棒が稚童の額に刺さった。

無論稚童は悲鳴をあげ、額から出血する。

 

 

南原「白髪が混じってるからって私の年齢を気にするとか言語道断!!音楽をバカにする子も年齢聞く子も絶対許さんですよ!!」

 

稚童「ぞ……ぞれはぁ……」

 

 

ふらつきながらもしゃべろうとするが、彼の話も聞かず後ろからつかむ。

 

 

南原「あんたもジャーマンスープレックス食らいやがれですよー!!

 

稚童「■■■■■■■■■■■■■■!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽室に声にならない悲鳴が響き渡った。

やがて静かになり、床には逆さに埋められ痙攣している稚童がいるだけだった。

 

 

南原「…皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんですよ。音楽一筋なので昔からこういうタイプなのですよ。こういった暴力も当たり前で怖がる人もいるかもしれませんが、それでも頑張って授業を受けたいと言うのなら………私も応援するですよ」

 

メリー「先生………」

 

胡(なーんかさっきから2年と3年の先輩の悲鳴がここまで聞こえてくるのは気のせい?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合唱の授業は続けられ、やがてチャイムが授業終了を知らせる。

号令が終わり、教室に戻る一海たちだが、途中紺子たち2年の先輩たち数人と偶然鉢合わせした。

 

 

一海「あっ、出雲姐ちゃん。もう授業終わったんだね」

 

紺子「うん……マッチョマンの方あまりにもひどかったよ。体操する時なんかズボン破りやがった!」

 

龍哉「宇佐間先生の脳筋っぷりおかしすぎるぜ…フェンリルの大狼先生のドジにも参ったもんだ。転んだ時なんか犬みたいな声出して涙目になってたし、去年なんか爆笑しちゃったな。男子更衣室に入ってきたもんでさ」

 

一海「……この学園ろくな先生がいないんだね」

 

ディーゴ「真面目な先生だってちゃんといるぞ。うちの担任のヴォイエヴォーテ先生とかな」

 

紺子「言っとくけどこいつ昔蒸気機関車だったから運動神経抜群なんだぜ。宇佐間先生みたいな脳筋バカには劣るけど」

 

ディーゴ「誰が脳筋じゃゴラァ!!!喧嘩売っとんのかぁ!!!

 

 

鼻から煙を出しながら憤るディーゴ。龍哉が以前舌寺に決めた龍王連撃打を出そうとする。

 

 

龍哉「また壁ぶち破るってんなら……俺が相手してやるぜ。今すぐ突進をやめるか、俺と喧嘩してお互い校長先生に呼び出されて反省文書く羽目になるか」

 

ディーゴ「う…………」

 

 

龍哉の睨みにディーゴは少し怖じ気づき、同時に怒りが収まってくる。

 

 

ディーゴ「…………くそっ。司がトラウマになったあれを出すとは……」

 

龍哉「いくら運動神経がよくても俺の龍王連撃打に劣るんだから、たまには鍛えろ」

 

紺子「ん?」

 

一海「どうしたの?」

 

紺子「気のせいかな…なんか学園長の悲鳴が聞こえたような気がした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1階では紺子の言う通り、放送室には逆さ吊りにされた辰蛇がいた。もちろんスカートはめくれ、パンツが丸出しになっている。

目の前には悲鳴を聞いて駆けつけてきた校長のティアマトこと『アルケー・ティアランド・ケイオス』が唖然とした表情で立っていた。

 

 

アルケー「が、学園長……!?」

 

辰蛇「遠呂智君にやられました…………許人君のペットに手出したのと校内放送でいたずらしようとしたのが原因かもしれない…………………」

 

アルケー「いや、そりゃそうなりますよ。ていうか人のペットに手出すとかどういう思考回路なんですか?」

 

辰蛇「でもあの『向かって右側をご覧くださ~い』は私じゃないんだけど………さっき放送室に入ろうとしたら遠呂智君に捕まって事情聴取されて、洗いざらい全部話したらこのようになったのよね…………」

 

アルケー「学園長………………とんでもないバカですね

 

辰蛇「あえ!?ち、ちょっと…アルケー校長!?どこ行くの!?お願い下ろして!置いてかないで!ずっとこのままなんて嫌だー!!このまま吊るされてたらウロボロスの私でも死んじゃうよぉぉおおおぉおおおお!!」

 

 

辰蛇の叫びを無視するアルケー。ドアを閉めても彼女の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。




ちなみに辰蛇は助ける予定。
絶対に笑ってはいけない異生神妖魔学園のネタはまだ募集中です。


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オカマアラクネのEnglish Lesson♡

体育を終えた紺子たち2年生を待ち構えていたのは英語。いや、3年生たちも嫌がるようなものだった。

 

 

紺子「先生オカマなんだよな」

 

 

休み時間まで元気があったのに一気に顔色が悪くなった紺子。辰美が心配そうな表情で声をかける。

 

 

辰美「紺子様~、どうなさいました~?」

 

紺子「どうしたこうしたもねぇよ…次英語だろ?あの先生もどうも苦手なんだよな…」

 

高見「わかる。男なのに『レディよ』とか言ってさ」

 

仁美「あの人アラクネでしょ~?」

 

紺子「男のアラクネなんかいるかって話だよ。マジあり得ねぇわ」

 

 

やがてチャイムが鳴り、紺子たちは席に着く。教室に入ってきたのはオカマの名にふさわしく、女物の服を着て薄いメイクを施したイケメン男だった。

そのオカマの名は『荒狂ネイ』。アラクネというクモにされた女の名前から取られたが、全くクモに見えない。

 

 

荒狂「はーい、everybody♡English Lessonを始めるわよ~ん♡」

 

紺子(ほら、これだよ!しゃべる時英語混じるしショタ好きだし、不気味でしょうがねぇよ!)

 

辰美(あ~…だから紺子様あんなに顔色悪かったんですねぇ)

 

 

一方で龍哉とディーゴも。

 

 

龍哉「なーんか嫌な予感しかしないの俺だけ?」ヒソヒソ

 

ディーゴ「安心せい。俺もじゃ」ヒソヒソ

 

荒狂「あ~ら、あそこでかわいいpuppyちゃんたちが何かヒソヒソ話してるわね~?」

 

龍・ディ「「ゲッ!!」」

 

 

全部聞こえていた。荒狂は龍哉の前に近寄り、ニッコリ笑う。

 

 

荒狂「授業中に内緒話するのは今後nothingよ?あなたは友達思いのいい子だから二度とすることはないだろうけどね♡」

 

龍哉「は、はあ…(キモッ!!)」

 

 

それからディーゴにも近づく。

 

 

ディーゴ「何?何すか?」

 

荒狂「あなたも内緒話してたみたいねぇ?ちょっとしたpunishmentを与えないといけないわねぇ♡」

 

ディーゴ「punishmentって……え!?罰!?ち、ちょっと待ってくださいよ!!俺別に変なこと言って―――――」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

しゃべる間もなくオカマアラクネによる気持ち悪い接吻がディーゴを襲う!

 

 

龍哉「………………!!」

 

 

龍哉はあまりの展開に呆然とするばかり。いや、紺子たちもあんぐり口を開けていた。

さて、荒狂の接吻を受けたディーゴは。

 

 

ディーゴ「さ、最悪だぁぁ……俺も乱のキス何回か受けてるけど……今まで受けたキスの中で一番最悪なっ………オゥブッ!」

 

 

吐き気を催していた。トイレに行っていいですかと聞き、承諾されるとすぐ教室を出てトイレまで走っていった。

 

 

紺子(あんなの受けたくねぇ……乱がいてよかった………)

 

一生「人工呼吸してるのはドラマで何回か見たことあるけどあんなオカマにキスされるの初めて見た……」

 

盾子「き、聞こえてるよ…!」

 

一生「え?」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

振り向くと、そこには優しい笑みを浮かべた荒狂が立ち、一生にそのまま接吻を与える。

無論、一生はディーゴ同様トイレ送り。

 

 

紺子「ウッソだろ………」

 

乱「私のチューの劣化版?もしこんこんもあれにやられたら………」

 

荒狂「はいはい、茶番はここまで♡日直は誰かしら?」

 

龍哉「俺か…起立。礼。着席」

 

荒狂「改めまして皆さん、How are you?」

 

全員『あ、I'm fine...』

 

荒狂「うふふ、みんなfineなら先生嬉しいわ♡textbookを開いてちょうだい。最初の単元は過去形からね♡」

 

 

 

 

 

しばらくしてディーゴと一生が教室に戻り、席に着いてすぐに黒板の内容を写す。

 

 

荒狂「はーい、注目。この『was』というのは『~でした』って意味。例えば『I was a student』。私は、でした、生徒と並べて、『私は生徒でした』と文章が成り立ちます」

 

司(そうやって真面目に授業教えればいいんだよ!俺様もあれ見ただけで吐きそうになったわ!)

 

荒狂「ですが何でもwasで通用するとは思わないでください。去年の復習として、例えば『I was baseball』。『私は野球でした』とおかしな文章になりますね。『I play baseball』、つまり『私は野球をします』と直し、playの後ろにedを足して過去形にすれば『I played baseball』……『私は野球をしました』となるんです」

 

セー(……ダメだ、ほとんどチンプンカンプン)

 

荒狂「playはただ後ろにedがつく単語ですが、yが変化してiになり、iedになるものもあります。それを変えないで減点される子が意外と多いのよね♡」

 

冷火(なぜそこで♡をつける!?)

 

荒狂「子音とyで終わる『study』なら『studied』、母音とyで終わる『enjoy』なら『enjoyed』といった風にね♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何事もなく授業が進む。途中誰かがキスされることもなく、練習問題を解いたり指示にしたがって教科書にある単語や文章を朗読するなど真面目だった。

だが紺子たちにとっては恐怖しかなかった。またヒソヒソ話したらあのキスでトイレ送り。そう考えると寒気が走る。

 

 

荒狂「もうそろそろチャイム鳴るわね。今日はhome workを出すけど、内容は今日やった過去形と単語、文章の並べ替え♡単語は虫食いになってるからわからなかったらtextbook見てもいいわよ♡」

 

 

そう言いながら宿題であるプリントを出し、配る。

紺子たち前列にいる者はプリントを後ろに回す。そのうちに授業終了のチャイムが鳴った。

 

 

荒狂「はーい、今日のEnglish Lessonはここまでー♡龍哉ちゃん、号令♡」

 

龍哉「起立、礼、ありがとうございました(やっぱり気持ち悪い……)」

 

荒狂「Thank you very much♡」

 

 

教室を出ていく荒狂。紺子たちにとってはようやく地獄から抜け出せたような気分だ。

 

 

紺子「あ゛~~~、気持ち悪かったぁ………」

 

辰美「紺子様、保健室行きましょうか?」

 

紺子「行くほどでもねぇだろ。それにいちいち心配しすぎ。過保護かよ」

 

辰美「ですが去年助けられたのでそれぐらいの恩返しはしようと思いまして…」

 

一生「あんな先生に……あんなアラクネにキスされるなんて……」

 

 

机に突っ伏して元気のない声で呟く一生。元から苦手だったのをキスされたせいでさらに苦手になってしまったようだ。

その様子を振り返って見る紺子。

 

 

紺子「キス相手が乱じゃなくて残念だな」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

その口を封じるように乱が紺子にキス攻撃。そのまま自分の顔に押しつけるように手で紺子の後頭部を押さえ、彼女の口内に自分の舌を交わらせる。

 

 

紺子「!!?……!!?」

 

乱「んっ……」

 

 

紺子は全身が麻痺したように震えながら動けなくなる。

 

 

紺子(い、いや!何これ!こいつのキス今までで全然違う!)

 

獄宴「乱!ねえ、ちょっと乱!?」

 

炎宴「さすがにこれはすごく激しいね…」

 

死宴「これがディープキスっていうんじゃない?」

 

紺子(息が…息ができないっ…!お願いやめて!ねえ、誰か見てないで助けて!私、死んじゃうよ……!ねえ、助けてよ!!)

 

 

周りの聞く耳も持たず、紺子との舌の交わりを楽しむ乱。

紺子は息ができない苦しみ以外にも脳内はピンクに染まり、それは不思議な快楽へと変わっていく。

 

 

紺子「っ……んん…っ………」

 

 

互いの口からよだれが漏れ、互いの舌は蛇が絡み合うかのようにじゃれ合う。いや、紺子の場合舌が無意識に舌が動いているのだろう。

 

 

乱(こんこん、いつ見てもかわいいよぉ…♡こんこんにチューするのは私だけで十分…………♡)

 

紺子(やめっ…てぇ……っ……♡こんなことして…何が楽しいってんだよぉ…………♡)

 

 

乱は容赦なく紺子の舌を絡ませる。

この時、さっきまで抵抗しようとしていた紺子の腕もどんどん力が抜け、だらんと垂れ下がってきていた。

 

 

紺子(何なんだよこの気分…力が……抜けてくよぉ……)

 

乱「ん……っ……」

 

紺子(も、もうっ……だっ、ダメェ………いし…意識…が………………ぁ……………………)

 

 

クラスメイトの声がどんどん遠退いていく。

やがて紺子の思考は停止し、意識は快楽と共に深い闇へと落ちていった。



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生きているのと快楽を感じるのは素晴らしい

(R-18要素は)ないです。
ですが紺子がカズミンにやられる。そこははっきり言わせていただきます。
さーて、どんな展開になるかな?


闇の中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ゃん!

 

 

どこからか声が聞こえる………。

 

 

―――――えちゃん!

 

 

間違いない。この声は聞き覚えがある。暗闇の真ん中にある線からわずかに人影が見えた。

 

 

 

 

 

―――――出雲姐ちゃん!ねえ、起きてよ!出雲姐ちゃん!!

 

 

見慣れた妖狐がいる。藤井一海だった。

 

 

 

 

 

紺子「………………私、生きてる?」

 

一海「当たり前でしょ!乱先輩にディープキスされて保健室に運ばれて、それから全然息してなかったから………死んだって思ってたんだよ!?出雲姐ちゃんが死んでたら……僕……僕………!」

 

紺子「わかってるよ……お前、両親がいなくなってからずっと私と一緒にいるもんな………」

 

 

ベッドから起き上がる紺子。相変わらずズボンを履かないパンツ丸出しのパジャマ姿である。

時計を見上げると、針が夜の10時を指していた。

 

 

紺子「ご丁寧にパジャマまで着せやがって…」

 

一海「放課後になっても全然起きなかったから僕が家まで運んだんだ。牙狼君と龍哉先輩も一緒だったな」

 

紺子「あいつらか……で、気づけばここで寝てたわけか」

 

一海「心配してたよ、あの2人も」

 

紺子「!?」

 

 

見るとパジャマをめくられ、元から少し見えている腹をさらに露わにされる紺子。思わず顔を赤らめる。

 

 

紺子「お、おいおい…どうしたんだよ私のパジャマめくって…////」

 

一海「刺激与えても全然起きなかったし……もう大丈夫なら……こんなことしてもいいんだよね?」

 

紺子「!?」ビクッ

 

 

敏感な場所だったので何をされたかすぐにわかった。

一番弱い腹を触れられた。一海は指を立て、紺子の腹を優しく、そしてめでなでる。

 

 

紺子「んふっ……んっ……」

 

一海「出雲姐ちゃん、やっぱりお腹弱いんだね…」

 

紺子「や、やめ……くっ…す、ぐるなぁっ……お腹、おかしくなっちゃぅぅぅ………////////」

 

 

一海の指はクネクネ動きながら紺子の腹を刺激する。

柔らかい腹に力が入れられ、そしてへこみ、同時に肋骨が浮かび上がった。

 

 

一海「ホントにかわいいなぁ、出雲姐ちゃんったら……そんな声出したらもっといじりたくなっちゃう………」

 

紺子「てっ…テメッ………////////」

 

 

怒鳴りたくても指から伝わってくる快感に言葉が出ない。その上自然に身をくねらせてしまう。

 

 

一海「いやらしい声出しちゃって……もっとくすぐってほしいんだね………」

 

紺子「出しっ、たくて……出してるんじゃっ…ねっ…………ひゃうあっ//////」

 

一海「なら望み通りにしてあげる…」

 

紺子「ぬゃっ!?」

 

 

押し倒される紺子。一海はそのまま抵抗できないように2本の尻尾で紺子の腕を固定する。

 

 

紺子「あっ……お前の尻尾も……モフモフ…………//////////」

 

一海「僕の尻尾だって負けてられないんだから……」

 

 

一海は幸せそうないたずらそうな顔で微笑み、再び紺子の腹に手をつける。

くすぐり責めが再開された紺子にとっては「やめて」と言っても徐々に快楽に沈み、同時にいつまでもこれが続けばいいのにという不思議な感覚も味わうようになってきた。

 

 

一海「なでる以外何にもしないのに…そんなに喘ぐともっとくすぐりたくなっちゃうなぁ……」

 

紺子(この小悪魔狐……後で覚えとけよ……)

 

一海「………あっ」

 

 

ふと、あるものが目に入る。紺子の腹の中心にある、縦長のへそ。これが一海をさらにいたずらな気分にさせるものだとは紺子は気づかなかった。

 

 

一海「ねえ、出雲姐ちゃん。ここくすぐられると出雲姐ちゃんどうなっちゃうのかな?」

 

 

紺子は一海がどこに目を向けているのかわかった。

自分のへそだった。

 

 

紺子「お、おへそ…!?い、いや…やめて…そこだけはくすぐらないで………」

 

一海「だって出雲姐ちゃんが生きてるの嬉しかったんだもん…そうやって喘いでくれると『出雲姐ちゃん死んでない』って感じるし……」

 

紺子「私生きてるっつったよな……生きてることわかったなら…もうこんなことやめてくれよ……」

 

一海「やだなぁ…そのかわいい顔見てるともっといじりたくなっちゃうしなぁ…」

 

 

微笑みながら指を紺子のへそに近づける一海。へそに指を入れられる恐怖と不安に腹をへこませる紺子。

いや、腹をへこませても無駄だった。一海の指は無慈悲に近づく。

 

 

一海「入っちゃった♪」

 

紺子「んゃっ…!/////////」ビクッ

 

 

へそをいじられる夢は見たが、現実でも一海にへそをいじられるとは。

しかしそのはずみか、夢の内容や朝急に腹に違和感を持ったことを思い出し、聞いてみる。

 

 

紺子「そういえば……お前っ……ぅひんっ!朝っ、急に…お腹いたふぐぅっ……なったけどっはぁ……お前…がっ……やったのっ、かっふぅ………////////」

 

 

指を入れられたへそをくすぐられ、顔を赤らめて変な声をあげながら聞いてみる。

 

 

一海「だって今日もパンツ丸出しで寝るつもりだったんでしょ?あんな風に寝たら誰でもいたずらしたくなっちゃうよ……」

 

紺子「お前、だけっ…だろうがよっ……ぁふんっ////////」

 

一海「写真撮りたいなぁ……ここにカメラないのは残念だけど……」

 

 

うっとりした表情で紺子のへそをくすぐる。

 

 

紺子「んあっ……はぁっ…あっ……んっふぅっ………いやっ……ぁぁっ…………」

 

 

一海の指から流れる快感という名の電流。さらに親指と人差し指で広げてみる。

 

 

一海「うふふ…出雲姐ちゃんのおへその中ってまるで花みたいだね…」

 

紺子「何見てんだよぉ…そんなにジロジロ見んなよぉ…//////////」

 

一海「味も見ておこう♪」

 

紺子「へ…?おい、何顔近づけて…」

 

 

 

ペロッ

 

 

 

紺子「んやぁっ!!//////////」

 

 

へそを舐められるという今まで味わったことのない感覚に思わず大声をあげる。

この声が一海をさらに楽しませる。

 

 

一海「『んやぁっ!!』だって……お願い、またその声出して……」

 

紺子「もう出せねぇよ、その声……」

 

 

 

ペロッ

 

 

 

紺子「んひゃあっ!!//////////」

 

 

2度目のへそ舐め。またしてもだらしない大声をあげた。

そして一海は舌以外にも指を加え、紺子のへそで遊び始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「も、もうわかったからぁ…や、やめてぇ……もうおへそいじらないでぇ……」

 

 

約10分後、目から涙が溢れ、声にならない声で懇願し始めた。一海は紺子のへそから指を抜く。

 

 

一海「そんなにやめてほしい?」

 

紺子「うん………うん………」

 

 

泣きながらうなずくことしかできない紺子。

それもそのはず、腕は一海の尻尾によって固定され、身動きできないのだから。

 

 

一海「でもねぇ……まだ最後の仕上げが残ってるんだよねぇ……」

 

紺子「ま、まだやるのぉ~…」

 

一海「ホントにごめんね。これでホントに終わらせるからね……」

 

 

そう言いながら再びへそに親指と人差し指をかける。

中身を押し出すかようにふちをつまみ、思い切り力を入れる。

 

 

紺子「ちょ、カズミン…や、やめ…!」

 

 

やめろと言う前にそれは起こった。紺子のへその中身が一海の指によってついに押し出されてしまった。

 

 

紺子「で、出べそになっちゃった……」

 

 

変わり果てた自分のへそを見て唖然とし、目からさらに涙が溢れる。

 

 

一海「全く、出べそになってもかわいいんだから…」

 

 

一海はうっとりした表情で紺子の出べそをつつく。

 

 

紺子「いや……元に戻してよ……」

 

 

泣きながら懇願する紺子の出べそは散々いじられたせいか、赤くなっている。

 

 

一海「戻せって言われてもねぇ……自分でも戻せるんだから自分で戻してみなよ」

 

紺子「だったらさ……尻尾どかしてくれよ………おかげで全然動けねぇんだよぉ………」

 

一海「嫌だよ。どうしても動けないなら一晩中僕にいじられる?」

 

紺子「そ、それは………」

 

一海「はい決定。もっといじってあげる……」

 

紺子「はぁあっ!?うっっ、あっあっあっ、ひゃあぁぁあああんんっっっ!!いやああああっああ~~~~!!」

 

 

部屋に紺子の泣き叫ぶ声が響く。へそ以外にも腹を指と舌で責められ、その快感に悶える。

その声は家の外まで聞こえ、明らかに近所迷惑。さらに最悪なことに紺子の家の前に自転車に乗った遠呂智が通りかかった。

 

 

遠呂智「看病してるカズミンのためにいなり寿司たくさん持ってきたやったが…あいつら何してんだ?」

 

 

あまり考えない方が無難か。遠呂智は自転車から降り、コンビニで買ったいなり寿司をポストに入れる。

さあ帰ろうと自転車に乗るが、まだ紺子の声が聞こえてくる。

 

 

遠呂智「………全部聞かなかったことにしよう」

 

 

聞こえないふりをしながら自分の家……喫茶店に帰っていった。



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ファーストフード恋愛疑惑!?

今回はイベント募集でスコープさんが送ってくれた話をお送りします。


紺子と一海が目を覚ましたのは午前6時半過ぎだった。

 

 

紺子「ん……もう朝か………」

 

一海「出雲姐ちゃんいじってるうちに、いつの間にか寝ちゃったみたいだね…」

 

紺子「上手い具合に私の上に乗っかりやがって……」

 

 

お互いベッドから起き上がり、伸びた後、紺子は新聞を取りに外へ、一海は顔を洗いに洗面台へ向かう。

リビングに戻った紺子は新聞と遠呂智が置いていったいなり寿司入り容器、そして封筒を持っていた。

 

 

一海「ん?それ何?」

 

 

歯を磨きながら持っているものを見てみる。

 

 

紺子「新聞取りに行ったらポストに入ってたんだけど」

 

一海「これは……いなり寿司!?」

 

紺子「いなり寿司だけじゃねぇ。手紙も入ってたぜ」

 

一海「誰から?」

 

紺子「草薙遠呂智って書いてたな。倒れた私のために持ってきてくれたんだろうな」

 

一海「草薙遠呂智って……え、嘘でしょ!?まさかあの遠呂智さん!?」

 

 

驚きのあまり床に歯ブラシを落とす一海。封筒をもぎ取り、それを開封してみる。

 

 

一海「カフェ『EVOLUTION(エボリューション) SPACE(スペース)』のマスターが何で…!」

 

紺子「私が龍華を大回転させたからじゃね?あいつ体育の時間からずっと保健室にいたし」

 

一海「大回転させたとかマジで何したの!?

 

紺子「話せば長くなるぞ?」

 

一海「あっ…………じゃあ、いいや」

 

 

そのまま手紙を読んでみる。

 

 

 

 

 

カズミンへ。

 

お前んトコの紺子、ずいぶんひでぇ目に遭ったみたいじゃねぇか。

龍華も早く寝ちまったし、喫茶店もあいつのせいで営業時間減って閉店しなきゃならなかったし、こっちもこっちで最悪だぜ。そこで俺が差し入れとしていなり寿司買ってきてやったぜ。

俺もいなり寿司作ってやりたかったが、昔から料理下手なんだよなぁ。だからいつもダークマターになっちまう。龍華に頼みたかったが、あいつ具合悪いとか言ってたからなぁ…だからコンビニので我慢してくれ。マジですまん。

夜食に食ってもいいし、紺子が起きたら食わせてもいいし、好きにしていいぞ。そんじゃあな。休日だからしっかりリラックスするんだぞ。

 

草薙遠呂智

 

PS.たまにはEVOLUTION SPACEに来てくれよ?いつでも美味いコーヒーおごってやるからな。

 

 

 

 

 

紺子「……そういえば遠呂智先輩が作る料理、マジでダークマターだったっけ」

 

一海「知ってるの?」

 

紺子「私行きつけの店だからな。ナポリタン注文した時なんかもう最悪だったな。イカスミパスタより黒かったし、もはやパスタじゃないし、笑うしかなかったよ。結局諦めてコーヒーだけにしたけど」

 

一海「いやいや、何をどうしたらそんな料理になるの?」

 

紺子「わかんねぇ。でも料理下手なのは自覚してるし。最初コーヒーだけで商売してたけど、龍華が来てから繁盛してるし」

 

一海「龍華があそこで働いてるのも気になるけど、出雲姐ちゃんが龍華に何したか一番気になるんだけど」

 

紺子「尻尾使って竜巻にしました」

 

一海「いや、出雲姐ちゃんとことんバカ!?そりゃ遠呂智さんが代わりに持ってくるわ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は朝食として遠呂智が買ってきたいなり寿司を食べた。

手紙にあったように今日は休日。紺子が着替えたのはいつも着ている服ではなく、狐のイラストがプリントされた長袖とネイビーブルーのチノパン。一海はいつものチョーカー、夕日がプリントされたTシャツ、黒いチノパンだった。

 

 

紺子「今日は休日だからどっか遊びに行きてぇなぁ…」

 

一海「ゲームセンター寄らない?あっ、あと買い物もいいね」

 

紺子「うーん……そうだな。私もその気分だったし」

 

一海「奇遇だね!よし、決定!」

 

紺子(休日だからって油断できないと思うのは私だけ?また変な騒ぎ起きたりして………)

 

 

 

 

 

シャワーを浴びた後、部屋の掃除をする、食器を洗うなどして、それが終わったのは午前9時頃。

出かける準備を終え、紺子が鍵をかける。それぞれ自転車に乗ると、そのまま街へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「結構時間かかったけど、やっと人間の街に……キタ━━━(゚∀゚)━━━!!

 

一海「そんなに大声出さないでよ!変な目で見られるでしょ!」

 

 

2人が到着した時間は午前10時前だった。

普通の人間たちがたくさん歩き回り、車も走り回っている。

 

 

紺子「時間もちょうどいいし、どっか開いてる店あるかなー?」

 

一海「全然聞いてない…!ていうか人って休日になるとこんなにテンション上がるの!?」

 

 

すっかり元気になったというのも理由に入る。そういえばこの2人、バイトしているのだろうか。

 

 

紺子「まずどこに行こうかな?」

 

一海「とりあえず…買い物しよっか。欲しい服あるし」

 

紺子「お、マジで!私も前から欲しかった服あるんだ!」

 

 

いつも口の悪い紺子だが、こう見えても今時の女子と同じ一面もある。特にかわいい服には目がないのだ。

見ると、紺子の目はキラキラ輝いていた。

 

 

一海「ちょうどいいところにいい店が……」

 

紺子「うおおおおおお!!ここ私の好きな店じゃねぇか!ナイスタイミング!ほらカズミン、早く行こうぜ!」

 

一海「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!引っ張らないでよ~!」

 

 

腕を引っ張られながら店内へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして紙袋を持った紺子と一海が出てきた。持ちきれないものは腕と尻尾に引っ提げていた。

 

 

紺子「いや~、買った買った!今日が半額セールだったなんてびっくりだよ!」

 

一海「出雲姐ちゃんより僕の方が一番荷物持ってない!?」

 

紺子「そりゃお前、尻尾9本あるし。荷物持ちとかとても便利じゃねぇか。文句言うなよ」

 

一海「文句も何もさ、自転車どうすんの?両手塞がってるから乗れないじゃん」

 

紺子「…………あ」

 

一海「バカだーっ!!これじゃ帰れないじゃん!!マジでどうすんの!?」

 

紺子「私としたことが全っっ然考えてなかったよぉ……」

 

一海「誰か手伝ってくれる人いたらいいけど………いるわけないか………」

 

 

手伝ってくれる人とはこの街に遊びに来ているクラスメイトか先輩である。

しかしここに来ている者などいるのか?辺りを見回していると。

 

 

???「やあ。紺子とカズミンも来てたんだね」

 

紺・一「「牙狼(君)!」」

 

 

見覚えのある銀髪の少年がロードバイクを押しながら近づいてきた。3年の牙狼だった。

 

 

紺子「びっくりしたぁ…こんなところで会うなんて…」

 

牙狼「僕もここにたまたま遊びに来たんだけど…君たちもここにいるなんて僕もびっくりしたよ」

 

一海「そりゃ僕たちも休日満喫したいよ。出雲姐ちゃんなんかテンション高くてさぁ……」

 

牙狼「……あ~、だからこんなに服買ったんだね」

 

紺子「持ちきれないから尻尾とかに引っ提げてるんだけど、おかげで自転車に乗れなくなっちまった……」

 

一海「半額セールだからって調子乗ってたんだよね」

 

牙狼「うーん………強いて言えば紺子の方が悪いかな」

 

紺子「はぁぁ!?おいテメェ!カズミンの味方する気かよ!?」

 

 

荷物を持ったまま牙狼につかみかかろうとするが、文字通り腕に荷物を引っ提げたままなので思うように腕が上がらなかった。

圧力がかかり、ちぎれそうなほどの痛みが走る。紺子は痛みを紛らそうとしゃがむ。

 

 

紺子「イテェ……腕も尻尾もマジでイテェ……」

 

一海「ほら、それだもん。牙狼君の言う通り出雲姐ちゃんが悪いよ。半額セールだったからってさぁ…」

 

紺子「うるせーよ…ホントこれマジで重いし痛いし………」

 

牙狼(なんかかわいそうに見えてきたな………)

 

 

しゃがんだ紺子に牙狼が近づく。

 

 

牙狼「重いんでしょ?そんなに無理しちゃって、骨折れたらどうするの?」

 

紺子「牙狼……」

 

牙狼「君もカズミンもずっと持ってたら怪我するかもしれないし、こういうのは僕も協力して持った方がいいと思うんだ」

 

一海「え……」

 

牙狼「ほら、無理しないで。僕も持ってあげるから」

 

紺子「でも…私たちの荷物結構多いぞ?大丈夫なのか?」

 

牙狼「平気だよ。慣れてるし」

 

紺・一「「牙狼(君)…………/////」」

 

 

赤面する紺子と一海。口が悪い紺子も一人称が《僕》の一海も女子。先程みたく手伝ってやると言われると嬉しくなってしまう。

今の2人の状況はまさにその通りだった。特に紺子は嬉しさのあまり言葉が出てこない。

 

 

紺子「………………っ/////」

 

一海(どうしようどうしよう……何て言ったらいいかわかんない………/////

 

牙狼「ん?どうかしたのかい?」

 

紺子「どうかしたも何も………嬉しすぎて言葉出ねぇんだよ………//////」

 

一海「僕も………//////」

 

牙狼(僕何か変なこと言ったかな…)

 

 

 

 

 

紺子と一海が赤面してから10分後、ようやく落ち着きを取り戻した。荷物持ちは牙狼も手伝ってくれることになり、いくつか持ってくれた。

周りの人間はほとんどが気にしなかったが、その中である人間が見つめていた。

 

 

???(ヘッヘッヘッ、人外か……人外が通う学園があったと聞いたが、あいつらがその生徒だとはな………)

 

 

その男の名は『砂道(さどう) (ほむら)』。ドレッドヘアーでサングラスをかけ、黒い肌に無精髭を生やした大柄な体格をした、まさにヤクザと言ってもいいような風貌である。

 

 

焔(あいつらの仲間を人質にするにゃあちょうどいい……ゲーム感覚で弱い奴から順に捕まえて殺し、海に捨てりゃあ俺様は人外殺しの英雄になれるんだからなァ……)

 

 

だが焔の考えている英雄とはほど遠い。このヤクザ、一体何がしたいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて昼近くになり、紺子がスマホで時間を確認する。

 

 

紺子「もう12時近いな。お前ら腹減ってない?」

 

一海「あ、もうそんな時間?いい感じにお腹鳴ってるよ」

 

牙狼「どこかいいレストランあればいいんだけどなぁ……」

 

 

牙狼が見回すと、ある店に目が入った。

 

 

牙狼「あっ、ファーストフード店『フォック』だ」

 

一海「フォック?」

 

紺子「昼飯食べれるんならどこでもいいや。私そこ行きてぇ」

 

牙狼「いい店があってよかった……そこで食べるとしますかね」

 

一海「うん」

 

 

だがそこで思いもよらない出来事に遭遇するとは夢にも思わなかった。

そんなこととは露知らず、3人はフォックに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店員「お待たせしました。こちらビッグフォックセットが2つ、チーズバーガーセットが1つになりまーす」

 

 

食べたいものを頼んだ3人だが、紺子と牙狼がビッグフォックセット、一海がチーズバーガーセットだった。

 

 

紺・一・牙「「「いただきまーす」」」

 

紺子「あ~、やっぱここのハンバーガー美味いわ~♡」

 

一海「メニューも豊富だからいろいろ楽しめるよね」

 

牙狼「ビーフステーキもいいけどハンバーガーも悪くないや」

 

紺子「ビーフステーキ?ああ、お前のお気に入りのレストランにある好物か」

 

牙狼「今度君たちにもおごるよ。いつになるかわからないけど」

 

一海「いいよいいよ。そのレストランに行ったらまた君に会えるかもしれないし」

 

紺子「滅多にないと思うぜ?私たち家で食べる派だし」

 

一海「でも会えたら嬉しいじゃん」

 

牙狼「はいはい、その話はおしまい。早く食べないとポテトも冷めるし、シェイクも溶けて変な味になっちゃうよ」

 

一海「うん(ポテトって何で冷めたらパサパサになるんだろ?)」

 

紺子「………ん?」

 

 

ポテトを口に入れようとした紺子だが、ある人影に目を向ける。

 

 

牙狼「どうしたの?」

 

紺子「なんか……あれ?あの2人、どっかで見たことあるんだけど……」

 

 

後ろ姿だが、紺子には見覚えがある。

座っていたのはブカブカの白衣を着た少年、灰色の犬耳と尻尾が生えた女性だった。

 

 

紺子「嘘だろ…あれ野人先生と大狼先生じゃねぇか……」

 

牙狼「え…先生までいるの?」

 

 

観察を続けていると、座っていたのはやはり野人と大狼だった。

野人はポテトを手にし、それを掲げる。大狼はポテトを見上げながら口を開ける。

 

 

牙狼(嘘だろ!?やっぱり野人先生と大狼先生だった!!何でいるの!?え、ホントに何で!?)

 

一海(まるでペットにおやつあげる飼い主みたいだな……)

 

大狼「ワンッ!」パクッ

 

野人「あーダメだ!僕身長低すぎるからすぐ食べられちゃう!もっと身長高ければなぁ…」

 

大狼「もっとくださいよ~。ね~え、野人せんせ~」

 

 

甘えるような目をし、野人は再びポテトに手を出す。

 

 

野人「仕方ないですね……はい、あーん…と見せかけてっ!」

 

大狼「きゃうんっ!」

 

 

野人がポテトを動かしながら口に入れ、期待していた大狼は転ぶ。

 

 

野人「『きゃうんっ!』って……ククッ……い、犬みたいな声出してっ……プフッ…か、かわいい………」

 

大狼「笑わないでくださいよぉ…痛いじゃないですかぁ…」

 

野人「す、すいませんっ…プククッ……」

 

 

笑いをこらえる野人だったが、これを見ていた紺子は。

 

 

紺子「こ、これはまさか……もしかすると……もしかするとぉ………!?」

 

一海「どうしたの出雲姐ちゃん?」

 

紺子「れ………れ………れっ………」

 

牙狼「れ?」

 

 

 

 

 

 

紺子「恋愛ィ!!?

 

 

たまらず大声を出してしまった。周りの客はもちろん、ぎょっとした野人と大狼も紺子たちの方を向く。

 

 

野人「うわああああああ!!!う、うちの生徒たちがなぜここにィィィィ!!?

 

大狼「知りませんよぉ!!ていうか私たちの行動全部見られてたかもしれないですぅぅぅ!!

 

 

文字通り大パニックになる2人。困り果てた野人が立て続けに叫ぶ。

 

 

野人「皆さんホントに勘違いしないでください!!別に私たちは恋愛とかそういったものでここに来たんじゃありませーん!!自分の身長とかそういうのについて話してただけなんですー!!!そして大狼先生は狼より犬に見えたのでその気分で大狼先生にあーんさせてただけなんです!!!これホントにホントなんです!!!お願い信じてー!!!

 

大狼「伊佐先生落ち着いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

野人「ゴファ!?

 

 

叫びすぎが原因か、野人は吐血してしまった。

 

 

紺子「え?これ全部私のせい?」

 

一海「そりゃそうでしょ!!」

 

牙狼「伊佐先生叫びすぎて血まで吐いたんだよ!?『恋愛ィ!?』とか言っちゃってさ!さすがにないよ、それは!」

 

紺子「やっぱり……」

 

 

口から血を流した野人が紺子に近づく。吐血して満身創痍なのにまだ叫ぶのかと思っていたが。

 

 

 

 

 

野人「出雲君……お願いだ…今日君たちが見たこと……全部…内緒にしてくれないか………?」

 

 

息も絶え絶えになり、顔色も悪かった。だがその表情からは必死という文字が浮かんでいた。

 

 

野人「このことが他の生徒たちや……先生にバレたら……我々はもう教師として生きていけない…………」

 

紺子「…………」

 

野人「頼む………ホントにお願い………」

 

紺子「あ、ああ…わかったよ」

 

野人「ダメだ………め、目の前………に………は、花畑………が…………………………」

 

 

野人の意識はここで途絶えた。

大狼も必死に懇願して紺子もそれにうなずくと、倒れた野人を抱えて店を出ていった。

 

 

紺子「な、なんかちょっと……複雑な気分……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の異生神妖魔学園。辰蛇はまだ放送室内で逆さ吊りの状態だった。

 

 

辰蛇「フゴォォォォ!ホゴォオオオオオオ!」

 

 

いつの間にかボールギャグを噛まされており、その穴からよだれを垂らしながら必死に助けを求めていた。



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鬼灯冷火は動かない:黄泉への13階段

エイリアンマンさんからのリクエストでやらせていただきます。
元ネタは漫画『岸辺露伴は動かない』、島田秀平の怪談からです。


鬼灯冷火。異生神妖魔学園の生徒で、魂喰い鬼である。

天才的な頭脳を持ち、飛び級で合格したほどの実力も兼ね備えているため、教え上手でもある少女だ。

そして、彼女は小説家でもある。執筆中のファンタジー小説『メリーとアイズリー』シリーズが大人気で、世界中に大ヒットさせたほど。

もちろん彼女には担当がいる。これはその男が体験した話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の休み時間のこと。冷火のスマホに担当から電話がかかってくる。

 

 

冷火「はい、鬼灯です(また催促とかなんだろ?いちいちめんどくせぇんだよ……)」

 

担当『鬼灯先生。僕今度……村の高級アパートに引っ越すことになりました』

 

冷火「えっ?(こいつ何言ってんの?)」

 

 

彼が昔から貧乏なのは冷火もよく知っていた。

高級アパートに住む?文字通り家賃も高く、そんな彼に到底できるわけがない。

 

 

冷火「さ、さすがに冗談ですよね?あなた昔から貧乏じゃないですか。そんなお金どこにあるんですか?」

 

担当『メッチャいい物件なんですよ!2階建てで外側に階段があるんですけど、これから行くのは上ってすぐ横の201号室なんです。他の部屋の家賃全部10万円なんですけど、僕が住む201号室だけ………たった5千円なんですよ

 

冷火「5千円!?他の部屋の家賃かなり高いのにそこだけ5千円!?いやいや、それは絶対に怪しい!もし後から来て『家賃大幅アップしました』とか言われて払えずに大家さんから追い出されたら…!」

 

担当『不動産屋さんホントに言ってましたもん!ホントに5千円しかしないって!何かあったら面白いネタになるかもしれないし、こんな美味しい話、乗らないわけにはいきませんよ!』

 

 

不動産屋はいわくつき物件のものに関しては絶対口にしてはならない義務があった。冷火は明日聞きに行きましょうと言い、担当もわかりましたと答えてくれた。

 

 

 

 

 

翌日、担当と高級アパートの家賃の安い部屋を提供したその不動産屋へ。

話してくれないことはわかっていたが、それでも単刀直入に聞いてみた。

 

 

冷火「あのアパートの部屋……ヤバイですよね?」

 

 

店員は悪びれることなく答える。

 

 

店員「はい、ヤバイです。あの部屋は以前4人の方が住んでまして……ですが誰も2週間も経たないうちに出ていってるんです。3人は夜逃げするかのように出ていって、あとの1人はなぜか遺体で発見されていました。窒息死だったんですよね」

 

 

店員の話を聞いていた担当はネタになると考えたらしく、その部屋に入居することになってしまった。

この時冷火は契約をやめるべきだと忠告していたが、彼は聞いてくれなかった。

 

 

 

 

 

異変は早速起きた。不動産屋で店員から話を聞いたその日の翌日、冷火のスマホに担当から電話がかかってきた。

 

 

冷火「はい、鬼灯です(こんな時間に何の用だよ…もう行かなきゃならねぇってのに……)」

 

担当『鬼灯先生。やっぱヤバイっすよ、ここ…』

 

冷火「何かあったんですか?(どうせ店員が言ってたあれだろ?)」

 

担当『引っ越しが終わってその疲れで寝てたんですが、急に寝苦しくなって目が覚めたんですよ。時計見たら夜の2時22分で、下の方から子供の声がワーワー聞こえてきました。誰だって思ってカーテン開けてみたらピタッてやむんですよね。閉じたらまたワーワー聞こえてくるんです』

 

冷火「子供が遊ぶ時間じゃないのに………それから?」

 

担当『それからよくわからないんですけど、階段の方からゴトンッて聞こえてきまして。昨夜そんなことがありました』

 

冷火「……もう1回詳しく話聞いた方がいいんじゃないですか?」

 

 

 

 

 

その日の放課後、冷火は担当と共にもう一度不動産屋に行ってみることに。

話を聞いてみると、2階建ての家は階段の段数は14段であるという決まりがある。ところがまれに13段という建物もあり、担当が住むことになった高級アパートがまさにそれだった。

何でも13段上ってすぐ横にある201号室は絶対に入ってはいけないと不動産業界では噂になっているらしい。

アパートに帰った担当はすぐに段数を数えてみたが、何度数えても13段しかなかった。しかし彼は引っ越しを考えなかった。ネタになるかもしれないという考えが強かったのだ。

 

 

 

 

2日目の朝。冷火のスマホにまた担当から電話がかかってくる。

 

 

冷火「またですか…そろそろ行かなきゃならないんですけど(ホンットいい加減にしやがれってんだ!ろくに準備もできやしねぇ!)」

 

担当『すいません、ホントに。実はまた聞こえてきたんですよね』

 

冷火「引っ越そうとか考えてないんですか?」

 

担当『考えてないですよ。また同じ時間に目が覚めまして……また2時22分なんです。気持ち悪いなって思ってたらまたあの声が聞こえてきて、今度は階段の方からゴトンゴトンッて音が鳴りました』

 

冷火「いや、ちょっと待ってくださいよ。昨日話した時ゴトンッて1回だけでしたよね?ゴトンゴトンッて2回鳴ってるのはなぜですか?」

 

担当『今そのことを話そうとしてまして。あの音でハッと気づきました。階段上ってる音だって』

 

冷火「階段を上ってる………え、じゃあ店員が言ってたあの『誰も2週間持たなかった』っていうのは…そういえばあのアパートの階段13段でしたよね!?2週間ってことは全部上りきったら入ってきちゃうじゃないですか!だから前の住人はみんな出ていったんじゃ…!」

 

 

ところが担当、冷火の話も聞かずにずっとその部屋に住むと発言。もはや引っ越す気などさらさらなかった。

 

 

 

 

 

冷火があの話を忘れかけた頃の13日目、彼女のスマホに電話がかかってきた。

相手はあの担当だった。あの話を思い出して電話に出ると、あり得ないことが起こったと言う。

 

 

担当『いつもゴトンゴトンッて鳴ってたのに、夕べは明らかに大人数かもしれないのが階段をドドドドドッ!て上ったり下りたり、ドアをドーンドーン!って叩かれたんです…』

 

冷火「だから言ったじゃないですか!絶対やめた方がいいって!(バカが!なーにがネタになるだ!こんなギリギリまで黙りやがって!)」

 

担当『僕もう決めました。2週間経つ前に今日引っ越しの準備して出ていきますんで手伝ってくれますか?』

 

冷火(朝からなんて迷惑な奴だ…)

 

 

その日、冷火は学校を休み、担当の引っ越しを手伝うことに。

行く途中神社で魔除けのお守りを2つ買い、彼のアパートに着くと、暗くなる前にすぐに引っ越しの準備を始めた。

 

 

 

 

 

ところがかなり手間取っているせいか、荷造りはなかなか終わらず、とうとうアパートの周りは闇に包まれてしまった。

時刻は9時、それは起こったのだった。

 

 

冷火「もうすっかり暗くなっちゃって……明日も学校あるのに」

 

担当「ホントすいません。でももう少しなんで頑張りましょう」

 

 

その瞬間、部屋が何も見えないほど暗くなり、冷火たちは闇に飲まれた。

 

 

冷火「おい、どういうことなんだよ!こんな時にブレーカー落ちるなんて!」

 

 

目が慣れるまでしばらく時間がかかる。

転倒したりぶつかったりしたら大変だと思った冷火は手探りで壁を伝い、ブレーカーを探すことに。

 

 

冷火「どこにあんだよ、ブレーカーはよ!」

 

 

人の家なのでなかなか見つからない。ところが急に担当のうめき声が聞こえてきた。

 

 

担当「うぅっ!ガッハァァア……!」

 

冷火「ちょっと!?どうしたんですかこんな時に!」

 

 

うめき声は聞こえるが、辺りは闇に包まれているので何が起きているかわからない。

ところが、冷火の目が次第に闇に慣れてくると………そこでとんでもないものを見た。

 

 

担当「あ゛っ………あ゛ぁあっ………

 

 

なんと担当が床に倒れ、苦しそうにもがいているではないか。

霊のしわざか?放っておけば命取りになりかねない。急いでブレーカーを探す冷火。玄関も探してみたが、窓から漏れる光のおかげで簡単に見つけることができた。

部屋全体が明るくなり、すぐに救急車を呼び、彼は病院へ搬送された。

 

 

 

 

 

担当は一命を取り止めたが、あの時苦しんだ理由があり得なかった。

冷火がアパートに行く途中買った魔除けのお守り。そのうちひとつを担当に与えたのだが、そのお守りが彼の喉に詰まっていたのだ。もし1人で引っ越しの準備をしていれば、前の住人のように間違いなく窒息死していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから担当は元気に暮らしているが、あの日体験した恐怖からか、引っ越しを考えることは二度となかった。



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遠呂智と龍華のカフェにようこそ

今年最後の投稿になります。


紺子「EVOLUTION SPACE行こうぜ」

 

 

唐突だった。一海が理由を聞いたが、いつも自分が作るインスタントコーヒー以外にもたまには遠呂智のコーヒーを飲みたかったかららしい。

それに彼と一緒に働いている龍華も気になる。体育が始まる前の着替え中、竜巻にされたのを怒っているのではないかと不安で仕方なかったのだ。出会ったらすぐに謝ろうと考えている。

 

 

一海「いなり寿司くれた礼も言わなきゃならないし、ホント大変だよね」

 

紺子「でも今日やってるかどうかわかんねぇしなぁ……仮にやってたとしたら昼飯食えるかどうかだし」

 

一海「龍華いるかな?」

 

紺子「遠呂智しかいなかったら最悪だぜ……」

 

一海「あ、龍華ってあのカフェで働いてるんでしょ?あのかわいいメイド姿見たくてたまらないなぁ…」

 

紺子(何言ってんだこいつ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EVOLUTION SPACE。それは異生神妖魔学園の生徒であり生徒副会長でもある草薙遠呂智が営む有名なカフェ。

後輩である2年の龍華も働いていることは紺子も教師も他の客もよく知っており、彼女が作る料理を求める者が後を絶たない。それとは別に彼女のメイド姿を求める者も。

店内も宇宙を模したような装飾が施されている。星空が散りばめられた天井をはじめ、天体望遠鏡やいろいろな天球儀、星座早見盤なども飾られ、常連の一部である宇宙マニアにはたまらないものだ。

だからこうして遠呂智のカフェは今日も繁盛している。

 

 

紺子「おーっす、遠呂智せんぱーい」

 

遠呂智「おう、紺子か。いらっしゃい」

 

一海「カズミンもいまーす」

 

 

軽く挨拶を交わし、カウンターの席に座る。

それぞれお冷やをもらい、メニューを見ているとメイド姿の龍華が出てきた。

 

 

龍華「全然メイド服には慣れねぇなぁ……////」

 

 

恥ずかしがりながらも紺子たちの前に出てくる龍華。彼女の声を聞いた紺子はすぐに立ち上がり、謝ろうとしたが。

 

 

 

 

 

紺子「めっ、メイド服ーーーー!!お前いつも青いTシャツとスカート着てるけど、カフェで働くお前の姿もスッゲェかわいいよ!!」

 

龍華「会って早々そのセリフかよ!!いや、言うと思ってたけど!!」

 

一海「…………」

 

龍華「カズミンもカズミンで変な目で見てんじゃねぇ!!」

 

遠呂智「落ち着けよ龍華。こいつ、何か言いたそうにしてるんだぜ?」

 

龍華「は?」

 

 

見ると、確かに何かしゃべりたそうに身を震わせている。同時に唇も震えていた。

 

 

龍華「お、おい?どうしたんだよカズミン……」

 

一海「……………」

 

 

返事がない。

 

 

紺子(あー、こりゃ絶対かわいいって言うな)

 

 

 

 

 

一海「……………か……か……かわいいーーーーーーーーーーっっ!!!!!」ピーーーーッ

 

 

興奮のあまり絶叫したかと思うと、沸騰したやかんのように耳や鼻から煙を出した。

目もハートになり、頭の中も「かわいい」の一言で埋まっていき、さらに厄介なことに意識が遠退いてしまい、倒れてしまった。

 

 

龍華「カズミンンンンンンンンンン!!!え、何で!?いくら興奮するからって気絶するか!?え、マジでどういうこと!?」

 

紺子「そりゃお前、着慣れてなくて恥ずかしがってたからだろ。ただでさえカズミン、かわいいの好きだってのに」

 

龍華「はぁ…いや、だからって!今さっき変な目で見られてたんだぞ!?俺だって恥ずかしいったらありゃしないのに!」

 

紺子「私だってお前に謝りたいことあるんだよ。覚えてるか?体育始まる前の着替え中にさ、お前のことグルグル巻きにしてコマみたく大回転させたろ?」

 

 

紺子の一言に黙る龍華。しばらくの沈黙が続いたと思うと。

 

 

龍華「……あーーーーーっ!!そういえばお前、確かに俺を大回転させて保健室送りにさせたよな!!あそこにいた時、どんだけ具合悪かったと思ってんだ!?」

 

紺子「知らねぇよ!……あっ、さてはお前!私の尻尾の万能さにビビってたなぁ!?」

 

龍華「確かにあれはビビったわ!でもさ、そこまでするか普通!?俺が尻尾動かしてるの見たことないからってそこまでするか!?」

 

紺子「あっ、言ったな?そこまで言うんなら動かしてみな」

 

龍華「上等じゃねぇかテメェこの野郎!!」

 

 

カチューシャを床に投げ捨て、カウンターにあるお冷やを尻尾を使ってつかもうとする。龍華は龍神族の1人で赤と青の尻尾が2本ずつ生えている。

しかしいくら彼女が龍神族といっても尻尾を動かしたことは一度もない。なかなか動かず、逆に尻尾がお冷やを押してしまう。

 

 

紺子「…なーんだ、全然動いてねぇじゃん。それがお前の本気?笑っちゃうぜ」

 

龍華「うるっせぇな!ていうか!動いてねぇどころか全然動かねぇ!どうなってんだ!?」

 

紺子「龍華がバカだからじゃね?」

 

龍華「バカって何だよ、バカって!せめて体育つけろよ!」

 

遠呂智「ほらほら、もうやめろよ。せっかく客が来てくれたんだ、ちゃんともてなしてやれ。あと紺子、お前も用があってここに来たんだろ?俺にも何か言わなきゃならないことあるじゃねぇか」

 

紺子「…………そうだった。遠呂智先輩、いなり寿司届けてくれてありがとな」

 

龍華「俺にも言わなきゃならないことあんだろ」

 

紺子「龍華もごめん。もう二度としないから」

 

龍華「全くよぉ…」

 

遠呂智「これにて一件落着。さて、あとはカズミンを起こすか起こさないか……」

 

 

ドアが開くと同時にベルが鳴り、別の客が入ってきた。

 

 

???「入るぞ」

 

???「遠呂智君、いる~?」

 

 

入ってきたのは教師のヴォイエヴォーテとトリノだった。

 

 

遠呂智「おう、いらっしゃい。先生」

 

紺子「ヴォイエヴォーテ先生!?しかもトリノ先生まで!」

 

ヴォイエヴォーテ「我々が来てはまずいのか?出雲」

 

紺子「そういうことじゃないんだけど……先生もここに来るんだって思って………」

 

トリノ「遠呂智君のコーヒーと龍華さんの料理はとても美味しいって先生たちの中でも噂になってるんだよ。ヴォイエヴォーテ先生に誘われてここに来たんだよね」

 

ヴォイエヴォーテ「うむ。では草薙、早速だがコーヒーをひとつくれないか?」

 

トリノ「僕は龍華さんの紅茶で」

 

遠呂智「へーい、かしこまり。龍華、紅茶はお前の役目だから頼むぜ」

 

龍華「おう」

 

紺子「じゃあ私もコーヒーとナポリタン頼むわ」

 

遠呂智「任せな。龍華と一緒にとびっきり美味いのを作ってやるよ」

 

紺子(カズミンのも頼めばよかったかな…)

 

 

紺子は少し後悔した。すると。

 

 

 

 

 

一海「ちょっと出雲姐ちゃん!!ちゃんと僕のも頼んでよ!!

 

紺子「ウェ!?カズミン!?」

 

龍華「生きてたんかい!!」

 

一海「勝手に殺さないでよ!!まだ生きてるから!!」

 

トリノ「いや、僕たちがここに来る前何があった!?」

 

遠呂智「カズミンが龍華のメイド姿見て気絶しちまってな」

 

トリノ「気絶!?」

 

ヴォイエヴォーテ「雨野はここのカフェでメイドをやっているが、全然慣れないとのことだ。藤井はその恥ずかしがっている姿を見てあまりのかわいさに倒れたのだろう」

 

遠呂智「正解」

 

トリノ「一海さァァァァァァん!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやくコーヒーと紅茶が完成し、紺子たちの前に置かれる。その中には一海の分であるコーヒー以外にもいなり寿司もちゃんとあった。

 

 

紺子「全然起きなかったらどうしようと思ってたけど、これで安心だ」

 

 

紺子の前にはコーヒー以外にもナポリタンもしっかりあった。

 

 

一海「だから勝手に殺すなって」

 

トリノ「一海さん……」

 

ヴォイエヴォーテ「烏丸殿、そなたもあまり気にするではない。しばらくの間ここでくつろごうではないか」

 

トリノ「ええっ!?ですがヴォイエヴォーテ先生…」

 

ヴォイエヴォーテ「今日は休日だろう?私にもたまにはゆっくりしたいという気持ちがある。この時期働き盛りの我々にはちょうどよいからな。ほどよく休みをとれば、翌日の仕事が大変はかどるのだ。烏丸殿は考えたことはないのか?」

 

トリノ「ヴォイエヴォーテ先生…ぼ、僕は………」

 

 

言葉を続けようとしたが、再びドアが開く。

来店したのは司である。

 

 

遠呂智「おう、いらっしゃい。うちのコーヒーは美味いぜ?」

 

司「最近人気だと言われてるカフェに初めて来てみたが……なかなかいい雰囲気出してるじゃねぇか」

 

紺子「お前がここに来るなんて珍しいな。どうしたんだ?」

 

司「よっ、紺子。実はいろいろ悩んでてな…」

 

龍華「悩んでる?いっつも明るいお前がどうしたんだ?」

 

司「音楽の先生だよ。あの先生、種族トルネンブラだろ?あんな白髪混じりのババア、どうやって先生になれたんだってつくづく思っちまう。音色もたまに不気味すぎるし―――――」

 

 

司がため息をつきながら言っていたが、この時彼は気づいていなかった。

誰かが声をかけようとしたが、間に合わなかった。司の背後にいつの間にか現れたその音楽の教師が殺意を込めた笑顔で仁王立ちしていたのだ。

 

 

 

 

 

南原「つ・か・さ・く~ん?

 

司「!?」

 

 

振り向こうとしたが、即座につかまれた。

南原はいつものジャーマンスープレックスをかけようとする。

 

 

南原「何度も言いますが、音楽をバカにしたり私の年齢を気にする奴はジャーマンスープレックスの刑に…」

 

遠呂智「すんなよ?ここ、店の中だから。やるなら外でやってくれ」

 

南原「わかったですよ~」

 

トリノ「そこは了承するんかい!?」

 

司「ふざっけんなよ、おい!!なぜ俺様がジャーマンスープレックスを決められなければならない!?」

 

南原「ごちゃごちゃ言わずに表に出るですよ♪」

 

一海「やっぱり怖い…」

 

 

引っ張り出されるようにカフェを出た司。外から店内に地響きが起こり、同時に司の絶叫も聞こえてきた。

 

 

一海「ほら、僕の授業の時だってそうだったよ。藤一と稚童の断末魔がまだ忘れられない………」

 

紺子「ごちそうさん。お金はここに置いとくぜ」

 

一海「僕の分もちゃんと払ってくれた?」

 

紺子「当たり前だろ。ほら、帰るぞ」

 

遠呂智「またのお越しを~」

 

 

店を出た紺子と一海は南原のジャーマンスープレックスによって埋められた司を見た。それを見た2人は恐怖で震え、絶対音楽をバカにしないと決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「うぃーっす」

 

 

紺子と一海が出て30分後、新たな客が来店した。

その男は平安時代の貴族の着物と袴を身につけ、色合いは黒と紫。黒い立烏帽子をかぶっているというまるで陰陽師と同じ服装をしていた。

 

 

龍華「いや、だからここお前の家じゃねぇだろって!実家どうした!?」

 

陰陽師「同じ陰陽師に燃やされたんだよね~。おかげで住む場所がねぇよ。弁償しろよなぁ、あいつ…」

 

 

陰陽師はカウンターにぐったりと突っ伏しながら呟く。

 

 

龍華「………………マジで陰陽師だったのかよ」

 

陰陽師「信じてなかったの!?」

 

龍華「お前の話が9割嘘くせぇからだよ!」

 

陰陽師「さすがに泣くよ、自分………」

 

トリノ「人間がここに来るなんて珍しいですね………」

 

ヴォイエヴォーテ「珍しくもないだろう。草薙のカフェは人間も入店できる」

 

遠呂智「そういうこった。特にこいつは人間の……それも陰陽師初の常連客でな」

 

トリノ「陰陽師なのにチャラそうに見える気が……………」

 

遠呂智「安心しな。俺たちが見つけ次第じわじわとなぶり殺しにしてやっからよ」

 

龍華「怖いこと言うなよ!?」

 

遠呂智「住む場所なくなったんだぞ?せめて何か食わせないとかわいそうだろうが」

 

ヴォイエヴォーテ「失礼だが、そなたは陰陽師のようだな。名は?」

 

陰陽師「言峰(ことみね)貴利矢(きりや)と名乗っておきますかね。ところであんた、見たところ吸血鬼みたいだな。俺にはわかるんだ」

 

ヴォイエヴォーテ「そうか……見たところそなたは全ての妖怪を知っていそうだな。では烏丸殿の種族はわかるか?」

 

貴利矢「天狗だろ?」

 

遠呂智「おーい、貴利矢ー?あんたの好きなロコモコとコーヒーでいいかー?」

 

貴利矢「別にいいぜ。ちょうど腹減ってるしな」

 

 

果たしてこの陰陽師、一体何者だろうか。



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まともな美術?

休日が終わり、紺子、一海、牙狼が学園に到着する。

放送室から辰蛇の叫び声が聞こえてくるが、牙狼以外無視してそれぞれ教室に向かった。

 

 

牙狼「学園長!?どうしたんですかその格好!」

 

辰蛇「フゴォォォォ!フゴォオオオオオ!(どうしたじゃないよぉ!助けてぇぇぇ!)」

 

 

無論、牙狼は唖然。

逆さ吊りにされた辰蛇がボールギャグを噛ませられた口から必死に助けを求める声を出す。

 

 

牙狼「遠呂智の仕業だってのはわかってるけど……助けなきゃまずいな」

 

 

 

 

 

辰蛇「ありがとう!ホントにありがとう牙狼く~ん!」

 

 

下ろされた辰蛇は礼を言いながら礼拝するように何度も頭を下げる。それを見ていた牙狼は苦笑していた。

 

 

辰蛇「一生あのままだったら間違いなく死んでたよぉ~!」

 

牙狼「わかったからそれやめてください。そもそも何が原因であんな風に吊るされてたんですか?」

 

辰蛇「許人君のペットに手出して、校内放送でいたずらしようとしたら遠呂智君に捕まって事情聴取されて、結果あのザマになっちゃったのよね……」

 

 

だがなんという不運か、たまたま放送室を通りかかろうとした綾野の耳に入ってしまった。

話を聞いた綾野は放送室に入り、辰蛇の前に立つ。

 

 

綾野「もう一度吊るしてさしあげましょうか?学園長」

 

辰蛇「いやああああああ!!綾野ちゃんいやああああああああ!!」

 

 

見ると、綾野の顔にある線の色が緑になっていた。いつも無表情なので感情のないアンドロイドのように見えるが、実を言うと彼女にも喜怒哀楽といった感情がある。

それは顔にある線。普段の色は黒だが、感情を表に出す際は線の色が変わるらしい。喜びならオレンジ、怒りなら赤、悲しみなら青、そして先ほどの楽しみなら緑………といった風にそれぞれ。

なぜ緑になったかは辰蛇にはもうわかっていた。彼女は自分のさらけ出された恥ずかしい姿を見たがっている。だがこれ以上吊るされたら体がもたない。恐怖のあまり絶叫し、さらに続ける。

 

 

辰蛇「暴力はやめてください死んでしまいます~!学園長の私がいなくなったらみんな寂しいと思うじゃないですか~!」

 

牙狼「学園長………で、綾野の反応は?」

 

綾野「………殺しはしませんが、自分の身は自分で救ってください

 

 

言っている意味がよくわからない辰蛇だったが、綾野は口を大きく開け、そこから炎を辰蛇に向けて吐き出した。

 

 

辰蛇「ヴィェァァァァアアアアアアアアア!!

 

牙狼「綾野ォォォォ!!?何学園長燃やしてんの!?」

 

 

火だるまになった辰蛇は奇声をあげながら放送室を飛び出した。

途中、廊下から教師たちの声が放送室まで聞こえたような気がした。

 

 

剛力「学園長ォォォォォォ!!?朝から一体何がァァァァァァ!!?

 

ラインハルト「落ち着いてください、剛力殿。きっと生徒のいたずらに違いない」

 

ユウジ11「話す暇あるなら逃げようぜ。トリノ、お前代わりに頼むわ」

 

トリノ「だからって僕を巻き添えにしようとするなァァァァァ!!ギャアアアアなんちゃって着物に火がーーーー!!

 

大狼「はわわわわぁ!!烏丸先生も燃えてるぅ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「ユウジ殿!!そなたは何をしているのかわかっているのか!!」

 

南原「そんなことより早く逃げるですよー!!私たちまで燃えちゃうですよー!!」

 

 

放送室で彼らの声を聞いていた牙狼と綾野だったが。

 

 

牙狼「……もうこれ絶対学園壊滅するんじゃないかな」

 

綾野「大丈夫でしょう。よほどのことがない限り」

 

牙狼「いや、君が学園長燃やしたこと自体がよほどのことだからね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、ここは美術室。紺子たちがいる。

チャイムが授業開始の合図を知らせ、美術室にその担当の教師が入ってくる。

 

 

???「フッハハハハハハ!久しぶりだな、2年の諸君!」

 

 

彼の名は『コーティア・フェルクディース』。ソロモン72柱の悪魔『ダンタリオン』、序列71番の大公爵を名乗る悪魔。

筋肉質な上半身だが、服は着ずズボンのみ。額には角が1本生え、手には書物の代わりに美術の教科書を持っている。

 

 

紺子(コーティア先生今日も明るいなぁ…)

 

ライエル「先生、何で先生っていつもそんなに明るいんですか?ていうかダンタリオンって封印されてたんじゃ…」

 

コーティア「ソロモンの奴に使役されていたが、このように今は自由なのだ!ならば我がこの学園にいる者を傷つけられ、怒り狂うのも自由よなぁ?」

 

ディーゴ「うちの担任と同じなんですね」

 

コーティア「それに人生は楽しまなければ損!我もようやく自由になり、最近は趣味のゴルフとビリヤードに走っているのさ!学園長もいじって当然だ!」

 

一生「やめてくださいよ!?ていうかさっきまで学園長の悲鳴聞こえてたんですけど!」

 

コーティア「………自己紹介が遅れてたな。我はコーティア・フェルクディース!種族は悪魔、ソロモン72柱の大公爵、ダンタリオン!美術を受け持つ教師なり!」

 

 

そう言って右手に持っている教科書のページを閉じる。

 

 

コーティア「我の知識量は豊富。だがこの学園に美術を教えられる者がいない。そこで美術以外いろいろ教えられる我がこの担当に選ばれたのだ。休み時間の間は美術以外のことも聞いてもよい。何でも教えてやろう」

 

ディーゴ「うおおお!!先生マジですか!?じゃあ教科以外のことも…!」

 

コーティア「お前たちの趣味でも構わん。自分のことに集中するのはとてもいいことだ。さて、長引かせてしまったな。今日の内容だが…………教科書を開け」

 

紺子(さっき教科書閉じる必要あった?)

 

 

 

 

 

教科書の内容を確認し、コーティアがこう言った。

 

 

コーティア「よし、今日は写生の授業だ。お前たちには絵心があるか?友の絵を描いたことはあるか?」

 

 

もちろん誰も手を挙げない。それもそのはず、いくら仲がよくても、さすがにお互いの似顔絵を写生したことは一度もないからだ。

 

 

コーティア「なんとなく予想はしてたが誰もいないか………ではお前たちには早速ペアを組んでもらう」

 

龍哉「ペア?」

 

コーティア「これも人生の経験のうちのひとつさ。我だって烏丸の似顔絵を描いている。それを今からやってもらう」

 

司「うわっ、めんどくせぇなぁ…俺様あんまり絵心ねぇよ……」

 

コーティア「絵心がなく思うように上手く描けなくてもしっかり『よくやった』と評価してやる。だがふざけて描いた者は………いや、やはり黙っておこう」

 

冷火(黙っておくとか絶対嫌な予感しかしねぇ!!)

 

 

このクラスの人数は16人。2人1ペアになれば合計8ペア完成する。

クラス全員それぞれ立ち上がり、誰と組むかそれぞれ話しかける。特に紺子は龍華と組むことになった。

 

 

龍華「ちゃんと上手く描けよ?」

 

紺子「わかってるって。かわいく描いてやるから」

 

 

紺子と一度も話したことのないライエルは龍哉と組み。

 

 

ライエル「いつになったら僕は紺子ちゃんと話せるようになるのかな…」

 

龍哉「昼休みにお悩み相談室開いてるから来た方がいいぜ。何でも答えてやるから」

 

ライエル「うん…でもどうしようかなぁ………」

 

 

特に一生は辰美と組んだことにより安心していた。ライバルの紺子と組んだら似顔絵対決になりかねないと思ったのだろう。

もちろん許人は高見とつき合っているためすぐにペアを組むことができ、結果このようになった。

 

 

・紺子×龍華

・龍哉×ライエル

・ディーゴ×仁美

・司×冷火

・辰美×一生

・獄宴×セー

・乱×盾子

・許人×高見

 

 

コーティア「皆組み終わったようだな。では各自取りかかれ」

 

ディーゴ「俺の得意科目体育と社会の歴史だから上手く描けるかどうか……」

 

仁美「頑張って描けばそれなりに私と似るんじゃな~い?」

 

許人「これで一緒になれたね。ちゃんと君そっくりに描いてあげるよ」

 

高見「ぽっ/////」

 

 

許人の一言に照れたのか、顔を赤らめる高見であった。

 

 

 

 

 

龍華(細けぇトコ苦手なんだよな……)

 

 

独り言を呟き、紺子の顔を見ながら絵を描く。

細かいところといえば髪の毛や光の当たり具合など、初心者にとってはかなり手こずってしまう部分だ。全員鉛筆で描いているので描き直すことは可能だが、細かい部分を間違えると本当に大変である。

龍華は間違えないようにその部分を表現しようとするが、手が震えて思うように上手く描けない。

 

 

龍華(紺子はちゃんと描いてんのか?)

 

 

対照的に紺子は無表情で画用紙に黙々と描いている。

心配になった龍華は彼女が描いている絵を覗いてみた。

 

 

 

 

 

今日は龍華と似顔絵を描いて楽しかった。

出雲紺子

 

 

 

 

 

龍華「作文じゃねーか!!?こんな時間に書いてんじゃねーよ!!今美術だぞ、美術!!国語の時間じゃねーだろ!!

 

紺子「え、違うの?」

 

コーティア「そこ、うるさいぞ」

 

 

消すのは面倒だと思ったのか、画用紙を裏返す紺子であった。

 

 

コーティア(絵ではなく作文とはな……世の中には面白い人外がいるものだ)



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Cont'd.体力測定

龍哉、ついに先生に…の巻。


美術が終わり、次は体育。やりきれなかった体力測定が始まる。

やるのは50メートル走とハンドボール投げで、それが終わると本格的に体育の授業だ。

 

 

 

 

 

さて、ここは女子更衣室。あの時宇佐間がやったことが頭から離れられない紺子は前回の時間ずっと保健室にいた龍華に話した。

 

 

龍華「…………」ポカーン

 

乱「あの場にいなかった龍華もポカーンってなっちゃったね」

 

紺子「そりゃそうだろ。知り合いとかに話してみろ。たぶん誰でもそうなるかもしれないぜ」

 

龍華「またやってきたらどうすんだ?俺には一応考えあるぞ」

 

紺子「何か考えあんのか?」

 

龍華「決まってんだろ?あの先生があれしてきたら、先生の股間に跳び蹴り…」

 

辰美「ま、待ってください!!なぜか知りませんが、あなたがやったら大惨事になる気がするのでやめてください!!」

 

冷火(てかこいつがあの筋肉モリモリマッチョマンの変態野郎のあれ蹴ったら、そっから血出そうな気がすんぞ!?)

 

紺子「……………それは最終手段にしとけよ龍華」

 

龍華「んじゃあ俺が作るコーヒーを飲ませるってのは?」

 

紺子「それだーっ!!

 

冷火(それだじゃねーよ!!たかがコーヒーだけであのド変態野郎の制裁になんのか!?)

 

龍華「それかマスターのダークマターを食わせるか………」

 

冷火(エグい!?いろいろとエグすぎんぞ!想像せんでもなんかヤバイ気がすんのがわかる気がする!あのド変態野郎に同情したくねぇけど、忠告ぐらいしてやりてぇよ!!)

 

???『は、はわわわわわぁっ!!また男子の方行っちゃいましたぁぁぁ!!』

 

 

隣の男子更衣室から聞こえてきた。声の主は大狼だった。

 

 

紺子「………大狼先生また男子の方行ったのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって男子更衣室。間違えて入ってきた大狼に男子たちは爆笑していた。

 

 

ディーゴ「ギャハハハハハ!先生!ここ女子更衣室じゃなくて男子更衣室ですよ!」

 

大狼「わ、わかってますぅ!私ったら絶対ここには入らないってずっと守ってきたのに……またここに入っちゃうなんてぇ!!///////////」

 

許人「ククッ……は、早くっ…ブフッ……ここから出てってくださいよっ……………」

 

 

大半は爆笑していたが、中には許人のように一部笑いをこらえる者もいた。

大狼は慌てて更衣室から出たが、なぜか司だけ見ていなかった。いや、むしろイライラしていたと言った方が正しいだろう。

 

 

司「ふざけやがってあのトルネンブラめ…」

 

ディーゴ「いきなりどうした、司」

 

司「EVOLUTION SPACEって知ってっか?俺様あそこ行ったんだけどよ……もう散々だった」

 

ライエル「EVOLUTION SPACE?」

 

獄宴「僕知ってるよ。草薙先輩が営業してるカフェでしょ?」

 

炎宴「人形の私たちでも見ただけで吐きそうになるわ、あの料理」

 

死宴「いっつもダークマターで嫌になっちゃうわん♡龍華ちゃんに任せてるならいいけど♡」

 

司「そこでな、俺様は先生の暴力を受けた!あのトルネンブラどうやって教師になれたんだとか音色が不気味だとか言ったら………」

 

龍哉「言ったら?」

 

司「後ろに南原先生がいやがった!全く、口はジャーマンスープレックスの門とはこのこった。俺様とあの先生にとっては」

 

セー「それを言うなら口は災いの門でしょ」

 

許人「うわぁ…南原先生の悪口言ったらそうなるなんて考えられないよ……」

 

龍哉「ていうか……それ全部お前が悪いだろ

 

司「はあぁ!?正直に全部言ったじゃねぇか!あの先生俺様が言うことに全部当てはまるだろ!!俺様のどこが悪いってんだよ!!俺様何か悪いことしたか!?」

 

司以外全員『南原先生の悪口を言ったお前が悪い

 

司「皆まで言うなァ!!あァァァんまりだァァアァ~~~~!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員着替え終わり、グラウンドに集まった。特に紺子はまたいつものように体操服の裾を結んでへそ出しにしている。

チャイムもちょうどいい時間に鳴り、宇佐間と大狼も紺子たちの前に立つ。

 

 

宇佐間「よーし、みんな集まったね!じゃあ体操始めるぞー!」

 

大狼「宇佐間先生!だから人前でズボンを破るのは…!」

 

宇佐間「膨れ上がれ、我が筋肉よ~~!!」

 

龍哉「先生ェェェェ!!ヤメルルォォォォ!!!

 

 

 

グワキィィン!!

 

 

 

宇佐間「ホデュアーーーーーーーーーーッッッ!!!!

 

 

再びジーンズが破れる直前、龍哉が目にも止まらぬ素早さで宇佐間の股間に蹴りを入れた。

無論、宇佐間は絶叫し、悶絶しながらその場にうずくまる。

 

 

宇佐間「お、俺のイチモツがぁぁ……!!」

 

大狼「ひええ…!あ、赤川さん…先生蹴るとか何考えてるんですかぁ……!」

 

龍哉「女子の目の前であんなことされたら俺もたまりません。男子もみんなドン引きしますし、今回ばかりは阻止させていただきました」

 

紺子「阻止させていただきましたって……先生蹴るとかそれ停学じゃねぇか!宇佐間先生の下半身見なくて私たち安心してるけど、さすがに他の先生にバレたらお前どうなると思ってんだよ!」

 

司「あれ見た瞬間俺様も寒気したし、あそこもヒュンッてなったぞ!」

 

ライエル「ぼ、僕も…………」

 

一生「俺も……マジで何してんの?」

 

冷火「やりすぎですよ、龍哉さん…(絶対停学になると思うが、龍哉GJ!)」

 

龍華(俺のコーヒーかマスターのダークマター料理にしといてよかった……)

 

 

周りから次々と言われるが、龍哉はそんなことでは揺るがない。

 

 

龍哉「停学になっても構わない……例え起きたことがくだらないことでも全力で止める。俺の場合そうするしかないんだよ」

 

大狼「赤川さん…………ホントに申し訳ないですが、今回宇佐間先生に暴力を振るった件は先生方に報告させていただきます」

 

紺子「そりゃそうだ」

 

ディーゴ「いくら止められたとしても先生に暴力とかさすがにねぇわ」

 

龍哉以外全員『ワイワイガヤガヤ』

 

 

紺子たちに次々と言われるも、龍哉は黙り続ける。

それまでうずくまっていた宇佐間も龍哉を見上げると、苦し紛れにこう口にする。

 

 

宇佐間「龍哉君っ……いくら俺でもこれはっ…………」

 

龍哉「…………………」

 

 

何を思ったのか、苦しそうな宇佐間を見るなり、校舎に向かって歩き出した。

 

 

許人「あれ?ねえ、ちょっと龍哉?」

 

一生「おい、どこ行くんだよ!」

 

辰美「龍哉さーん!戻ってきてー!」

 

大狼「赤川さん!ねえ、赤川さーん!!」

 

 

それでも龍哉は無言で校舎へ向かっていく。

実はあの時、龍哉は自分が停学になっても構わないこと以外に退学も覚悟していた。仲間を思う気持ちが強すぎたのだろう。

とはいっても、いつもジーンズを破る宇佐間を止めるためには仕方なかった。彼を蹴ってしまったことを自首するため校舎へ向かっていたのだ。

 

 

司「…何だよ、あいつ………」

 

紺子「そういえば司、南原先生にジャーマンスープレックス決められてたけどもう大丈夫なのか?」

 

司「スッゲェ痛かったけどもう大丈夫だぜ。でも今その話するか?」

 

セー「どういうきっかけでジャーマンスープレックスの話出てきたのかわからないけど、体操…」

 

大狼「……あっ、そうでしたそうでした!宇佐間先生!」

 

 

うずくまる宇佐間に大狼が心配そうな表情で様子を見る。

宇佐間は股間を押さえながらふらつくが、なんとか立ち上がることに成功した。

 

 

大狼「ホントに大丈夫ですか?」

 

宇佐間「な、なんとかね……(くそぉ……まだ痛む………)」

 

大狼「冗談じゃないですよ…ホントに無理しないでください」

 

宇佐間「ならリンちゃん…君が代わりにやってくれるかい?」

 

大狼「………わかりました。それでは皆さん、宇佐間先生が体操するのは不可能のようなので今日は私が行います」

 

 

 

 

 

体操が終わり、前回の時間できなかった50メートル走とハンドボール投げが行われる。この時全員複雑な気分だったが、好記録が出ないかもしれないと思ったのか、龍哉のことをあまり考えないようにしていた。

まずは50メートル走。特に蒸気機関車の付喪神であるディーゴは男子の中でも一番足が速く、記録もなかなかのものだった。

 

 

許人「勝てるわけないよ、こんなのに…」

 

ディーゴ「運動神経抜群の俺を舐めちゃいかんぜよ!」

 

 

紺子たち女子の方も行われ、特に記録がよかったのは龍華。だが女だから仕方ない。運動神経はディーゴには少し劣り、記録も彼より下である。

 

 

龍華(もしマジな殴り合いしたらどうなるんだろうか?いや、待てよ……俺まだ体力測定でやらなきゃならないこといろいろあんじゃねぇか!)

 

 

次に行われたのはハンドボール投げ。2回投げ、そのうち一番よかった方が記録になる。

中でも記録がよかったのはやはりディーゴと龍華であった。

 

 

紺子「いいなぁ、龍華。私もお前みたく遠くに投げれるようになりてぇ」

 

龍華「でもどっかの誰かのせいでやらなきゃならない体力測定がまだ残ってんだよな」

 

紺子「ところで…………あいつ今頃大丈夫かな」

 

龍華「俺は大丈夫だって信じたいな。あいつ、停学覚悟で宇佐間先生のあそこ蹴ったんだろ?Mに目覚めなきゃいいが、あれで懲りて普通に体操やってくれればなぁ…………」

 

宇佐間「紺子ちゃん、龍華ちゃん」

 

紺・龍「「んがっ!?」」

 

 

突然背後から宇佐間が話しかけ、紺子と龍華は思わず飛び上がりそうになる。

 

 

龍華「いきなり後ろから声かけてくんなよ!びっくりしたわ~……!」

 

宇佐間「ごめんごめん。君たち、さっき俺がイチモツ蹴られた話してたでしょ?」

 

紺子「してたけど…」

 

宇佐間「俺、もうあれをきっかけに体操前に筋肉膨れ上げさせるのやめようと思うんだ」

 

紺子「えっ!?」

 

 

それは突然の言葉だった。龍華はあの場にいなかったからわからないものの、紺子は宇佐間が言ったことを理解できなかった。



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これがレインボー紺子だ!

また爆チュー問題のネタからです。


あの騒動からしばらくし、体育の時間が終わった。

紺子たちはすぐ着替えた後、すぐ理科の準備をし、理科室に向かう。

チャイムが鳴り、理科の授業が始まった。

 

 

ディーゴ「龍哉いねぇとなんか寂しいな」

 

紺子「宇佐間先生蹴ったからしょうがねぇよ。もし停学どころか退学になったら……私………」

 

龍華「まだ気にしてたの?」

 

紺子「気にするだろ!あいつ私とは親友だし、困ったことあったらいつも聞いてくれたし、こないだの昼休みだって舌寺先輩から守ってくれたじゃん!なのにあいつ………」

 

司「でもストッパーとしては役に立ったんじゃね?」

 

 

指定されていない席に座る司が口添えする。

 

 

紺子「『役に立った』じゃねぇよ!これからどうなるかわからないってのに!」

 

司「でもあの龍哉が先生蹴るなんてな。俺様も目を疑ったわ」

 

 

理科室の引き戸がガラリと開き、野人が鼻歌を歌いながら入ってきた。

しかし紺子たちを見るなり鼻歌を止めると、少し気まずそうな顔をしてしまった。

 

 

野人(い、出雲君あのことバラしてないかなぁ……また竜宮寺君をガキとか言ったら間違いなく骨も残らないだろうなぁ………)

 

紺子「先生?大丈夫?」

 

野人「………おっと、失礼。では授業を始めます。日直は?」

 

ディーゴ「起立、礼、着席」

 

 

号令をディーゴがかける。

授業の内容はタイムマシン製造ではなかったので全員ホッとしていた。

だがその途中、紺子の身に何かが起こることを彼らはまだ知らない。

 

 

 

 

 

野人「えー、今日は光の屈折について。教科書開いて」

 

司「タイムマシン作る話どこ行った」

 

野人「うっ………」

 

ライエル(こういうの僕すっごい得意なんだけどなぁ……タイムマシン作る時間でもいいと思うんだけどなぁ………)

 

仁美「どーしたのせんせー?」

 

野人「大蔵居さん!?べ、別に何でもありませんっ!」

 

紺子(普段のと休日と比べて性格全然違ぇ!?)

 

司「あの先生どうしたんだ?ずいぶん慌ててんな」

 

紺子「休日な、フォックに行ったらいたんだよ。しかも大狼先生と食事しててな…」

 

野人「わああああああああ!!!い、出雲君ンンンンンン!!!

 

紺子「!?」

 

 

休日の一部始終が紺子の口から出る瞬間、野人は大声をあげながら彼女の口を塞ぐ。

 

 

紺子「~~~~ッ!?~~~~ッ!!」

 

野人「話すなって言っただろォォォォ!!!約束忘れるなァァァァァァ!!!

 

辰美「紺子様ァァァァァ!!野人先生、セクハラで訴えますよ!!

 

野人「ち、違う!!これには深いわけがばばばばばばばば!!それに教師として断じて話してはならないのだァァァァァ!!

 

ディーゴ「先生まず落ち着けぇぇぇぇ!!そんなに叫んだら死ぬぞォォォォォォ!!」

 

野人「ガバッ!!

 

 

2度目の吐血。

口を塞がれている紺子の足元に血溜まりが広がった。

 

 

 

 

 

野人「すまない…私としたことがまた錯乱してしまったようだ」

 

 

口から流れる血をハンカチで拭きながら謝る。口を押さえられた紺子はたまらなかった。

 

 

紺子「先生…!」

 

野人「でも出雲君……このままバラしてたら君も私も……」

 

冷火(マジで何があったんだ!?休日!)

 

野人「ま、まあいい…授業を続ける。君たちの中で雨が止んだ中、虹を見ることがあるだろう?その原理について今日は勉強していこう」

 

龍華(何事もなかったかのように振る舞ってるけどこっちゃスッゲェ気になってるからな!?)

 

 

 

 

 

虹の仕組みの図や野人が説明したことが次々と板書されていき、紺子たちはそれらをノートに写していく。

しかし、その中でもやはりチンプンカンプンでさっぱり頭に入らない者も。

 

 

ディーゴ「………ダメだ、もうグダグダじゃ」

 

龍華「俺も理系全般苦手だから頭イテェ」

 

紺子「たぶん今からやる実験でわかるんじゃね?」

 

龍華「もうちょっとわかりやすい説明してくれねぇか?」

 

紺子「脳筋ゴリラにはわかんねぇんだよ」

 

龍華「俺はそこまでバカじゃねぇ!!てかゴリラって何だよ!?ゴリラって!俺は龍神族だよ!」

 

冷火(突っ込むトコそこ!?)

 

野人「はいはい、静かにしてこっち向いて」

 

 

前を見るよう促した野人はプリズムと懐中電灯を机の上に置く。

 

 

野人「雨がプリズムの役割をすることで虹が作られるわけですが、このプリズムと懐中電灯を使えばいつでも虹を見れます」

 

紺子「ん?プリズム……懐中電灯……先生、ちょっといいですか?」

 

 

懐中電灯を手にすると、面白いことを思いついたのか、わずかに口元が歪んだ。

クラスメイト数人に目を向け、叫ぶ。

 

 

紺子「暗幕ーっ!!照明ーっ!!

 

司「いきなりどうした!?」

 

ディーゴ「暗幕とか照明とかどういうことやねん!?」

 

紺子「暗幕下ろして照明落とせっつってんだゴラァ!!早くしろォ!!

 

辰美「わかりました~!少々お待ちくださ~い!」

 

一生「乗っちゃった!?お前もバカかよ!?」

 

 

暗幕こと遮光カーテンが閉まり、シーリングライトの明かりも全て消えた。

これらを行った辰美にはもちろん、紺子にも全員唖然としていた。

 

 

紺子「いいか!!明日本番だぞ!!私たち劇団はここまで上り詰めてきたんだ!!失敗したら私たち団員は!全員丸裸ーっ!!

 

龍華「丸坊主だろ!?丸裸になってどうすんだよ!」

 

ディーゴ「しかも熱すぎ!」

 

紺子「プリズムに!!光をォォォォォ!!!

 

 

大袈裟に叫びながら懐中電灯の光をプリズムに当てた。

光はプリズムを通り、その光は紺子の目の前の壁に一点に集中する。

他の者も光が当たる壁に目を向けると、虹が浮かび上がっていた。

 

 

ライエル「あっ!に、虹が……!」

 

龍華「マジで!?あっ、ホントだ!」

 

一生「そうか!プリズムに光を当てるとこうやって光が分散して虹が見えるのか!てことは…!」

 

野人「雨が上がって晴れたのはいいけど、まだ空気が湿ってると感じたことがありますね。その空気中にある水滴がプリズムの役目を果たし、太陽の光が通ることで空に虹が現れるんです。ていうか出雲君、熱すぎ!」

 

紺子「明かりちょうだい」

 

野人「さっきまでのテンションどこ行った!?」

 

 

 

 

 

理科室が明るくなり、遮光カーテンも開けられる。

全員席に戻ろうとするが、なぜか紺子だけ真剣な眼差しでプリズムを見つめていた。

 

 

ディーゴ「あれ?おい、戻らねぇの?」

 

紺子「………ってみたい」

 

ディーゴ「?」

 

紺子「私もプリズム通ってみたい」

 

ディーゴ「いや、お前は何を言ってるんだ!?光がプリズム通るのはわかるぞ!?こんな小っちゃいのに紺子が通れるわけねぇだろ!」

 

紺子「通れるんだな、それが」

 

 

悪そうな笑みを浮かべ、プリズムを床に置いたかと思うと、両手を前に出して叫ぶ。

 

 

紺子「ジャンボプリズムッ!!」

 

 

 

ボゥンッ

 

 

 

紺子「何じゃこりゃー!!」

 

ディーゴ「自分でやったんじゃねぇか!」

 

 

目の前に現れたのはその名の通り大きなプリズム。ほふく前進すれば通れそうなほどの大きさである。

自分で出したにも関わらず、紺子は思わず腰を抜かす。

 

 

司「いや、虹の謎よりこっちの方が謎だろ」

 

紺子「さあ、このジャンボプリズムに私を通すと…」

 

 

紺子は腹這いになり、そこから頭を入れてみる。するとどうだろう。スッと吸い込まれるように頭が突っ込まれた。

 

 

許人「ホントに入った!?」

 

高見「え、ちょっと待って!?何でプリズムに入れるの!?」

 

龍華「あっ、出てきた!スッゲェ!ホントにスゲェよ!」

 

ディーゴ「虹だ!虹になってる!どうなっちゃってんの!?」

 

 

プリズムから出てきた紺子は全身虹色に染まっているではないか。皮膚はもちろん、髪の毛、耳、尻尾、服、リボン、スカート、靴下、そして上靴まで。

虹色に染まった紺子を見た全員は無論、唖然としていた。

 

 

紺子「いや~、通れた通れた!」

 

野人「通れたじゃないよ!私も他のみんなもビビってるよ!うわっ、怖~っ!」

 

紺子「どう?」

 

辰美「紺子様、きれいでかっこいいです!私もびっくりですよ!」

 

紺子「実験成功だ~!」

 

龍華「マジでスゲェよ!レインボー紺子じゃねぇか!」

 

紺子「その通り!私は紺子であってもただの紺子ではな~い!虹の妖狐、レインボー紺子!」

 

司「もはや紺子は妖狐じゃねぇよ!」

 

 

するとちょうどいいタイミングで授業終了のチャイムが鳴った。

 

 

野人「すごいのはよくわかった。今チャイム鳴ったから席に戻って?」

 

紺子「あいよ」

 

ディーゴ「起立、礼、ありがとうございました」

 

 

号令をかけるディーゴだが、どうしても虹色になった紺子………もとい、レインボー紺子が気になって仕方ない。そして疑問を感じる。

 

 

ディーゴ(あのプリズム通ったら誰でもレインボーになれるんじゃね?)

 

紺子「どーしたよ、ディーゴ?」

 

ディーゴ「お前はもはや別の妖怪だよ…でもスゲェじゃん!」

 

紺子「レインボー紺子だからな♪」

 

ディーゴ「じゃあ俺もあのプリズム通ったら……レインボーディーゴになれるのか!?」

 

紺子「うん。お前も通ってみるか?」

 

ディーゴ「通る通る!通るぜよ!」

 

 

ディーゴは目を輝かせながらプリズムの手前で腹這いになる。

 

 

ディーゴ「通ってやるぜ!俺は機関車!プリズムは車庫!機関車が車庫に入るかのごとく、ここを通ってレインボーディーゴになってみせよう!」

 

紺子「よし、来い!」

 

 

早速プリズムに頭を突っ込むが、ぶつけてしまった。

壁に押しつけるかのように頭をプリズムに押しつけ、無理矢理通ろうとする。

 

 

紺子「もっと来いよ、もっと来いよオラ!もっと来いお前!」

 

ディーゴ「すいません!すいませーん!」ゴンゴンッ

 

 

扉をノックするかのように叩くも、ディーゴの手はプリズムに入ることはない。

 

 

紺子「もっと来いよお前よぉ!」

 

ディーゴ「そんなこと言われても…!」

 

紺子「来いよ来いよ!来ていいんだよ!」

 

ディーゴ「来ていいんだよって…通れねぇよ!」

 

紺子「やっぱ無理か」

 

ディーゴ「『無理か』じゃねーよ!どうしてなんだよ!!どうしてお前は通れて俺は通れねぇんだよ!!」

 

 

肩をつかみ、紺子を激しく揺さぶる。

 

 

紺子「そりゃお前、ディーゴは光でも闇でもないからな」

 

ディーゴ「ちょっと待てよお前。もうちょっと納得いく説明してくれねぇか?」

 

紺子「しょうがねぇさ」

 

ディーゴ「俺もレインボーディーゴになりてぇよ~!」

 

紺子「なりたいか?」

 

ディーゴ「なりたい」

 

紺子「しょうがねぇな、ホントに………よし!じゃあ昼休みを楽しみにしてろ!お前を私みたく染めてやるからさ!」

 

 

教科書とノートをまとめながら言うと、理科室を出る。ディーゴも彼女を追う。

 

 

ディーゴ「昼休み!?今じゃないの!?」

 

紺子「今から染めたら次の授業に遅れることは確実だろうがァ!!

 

ディーゴ「何逆ギレしてんの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、綾野に火だるまにされた辰蛇はというと。

 

 

辰蛇「私の服……………私の服がぁ……………」

 

 

下着姿になっていた。教師たちに消し止められたのはいいものの、服はどうすることもできなかったようだ。




授業は昼休みを挟んで4~6時間目までやる予定。


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マジで気になって集中できません!

トリノ「授業開始前からいきなりどうしたァァァァァァ!!?

 

 

教室に戻り、まもなく国語が始まろうとしていたが、入ってきたトリノが虹色の紺子もといレインボー紺子を見て絶叫していた。

 

 

紺子「理科の授業で変身しました。レインボー紺子です」

 

司「龍哉が宇佐間先生の股間蹴った時ぐらい驚いたわ!紺子はもはや妖狐じゃねぇよ!」

 

紺子「さっきトイレ行ったけどパンツも虹色だったわ」

 

乱「パンツも虹色!?いや、今日のこんこん別の妖怪みたいでホントに怖いんだけど!」

 

紺子「失礼な!私は元から妖狐だよ!」

 

ディーゴ「妖狐がプリズム通れるわけあるかー!!むしろ羨ましかったわ!!」

 

 

教室全体がざわめき、全員虹色の紺子に集中する。

それもそのはず、紺子がプリズムを通るなどあり得ず、彼女の体はどうなっているんだと聞きたいぐらいだ。

 

 

トリノ「と、とにかく!僕は国語担当なので紺子さんに何があったか全然わかりませんが、授業始めますよっ!教科書開いて!」

 

 

全員机の上にある教科書を開くが、司だけ様子がおかしい。

持ってきた教科書を持ち、表紙をまじまじと見ている。

 

 

紺子「おい、教科書開けっつってんだろ」

 

司「その前にいろいろ問題があるんだよな」

 

紺子「え?」

 

司「国語の教科書じゃなくて………落語の教科書持ってきちまったぜ」

 

トリノ「なぜに落語!?」

 

 

机に置かれていたのは分厚い教科書。表紙には司の言う通り、確かに舞台で座布団に座る落語家の絵があった。

 

 

紺子「いや、おかしいだろ!?何をどうしたら落語の教科書持ってくるんだよ!?」

 

冷火(それよりその落語の教科書どこで買った!?)

 

 

そんな中龍華は相当呆れたのか、ゴミを見るような目でこう言い放った。

 

 

龍華「………司。お前バカだろ」

 

司「はぁ!?俺様がバカだぁ!?おいエビフライ尻尾女、俺様のどこがバカってんだ!?」

 

龍華「短歌やるって先生言ってただろうが!ってか、エビフライのどこが悪いんだ!!」

 

司「悪くねぇけどテメェ、頭と尻尾にタルタルソースぶっかけんぞゴリラ女!!」

 

龍華「ゴリラ女って言うなよ!!せめて筋肉バカにしろよ!!」

 

冷火(いや筋肉バカでいいんかい!?)

 

トリノ「2人共喧嘩しない!!司さん、後で職員室に来なさい」

 

 

司に目を向けたトリノの顔は微笑んでいたが、全員不思議と恐怖を感じてしまった。

 

 

司「はぁ!?ふざけんな!なぜ俺様が!」

 

トリノ「い・い・で・す・ね?

 

司「ヒェ!?は、はいぃ…!」

 

トリノ「あと龍華さん、せめてバカは否定して?」

 

龍華「エビフライとかゴリラ女とかよりはマシだよ!」

 

紺子(ゴリラって言った人ここにもいるんですけど!?脳筋ゴリラって言いましたけど!?)

 

 

 

 

 

ようやく授業が始まり、司以外全員教科書の短歌のページを開く。

 

 

ディーゴ「万葉集?ヤベェ、いくら歴史得意でも昔の文章の意味全然わかんねぇかも…」

 

トリノ「少しずつ訳せば簡単だよ。でも笑いをとろうとして変な訳し方をするのはやめてね」

 

ライエル「そういえば紺子ちゃん平安生まれだったっけ。紺子ちゃんなら普通にスラスラ訳せちゃうかもね」

 

ディーゴ「そんならいいんじゃがのう……あえて言うけど俺、漢文も無理かもしれん」

 

ライエル「紺子ちゃんに教えてもらったら?」

 

ディーゴ「おう」

 

 

ディーゴとライエルが話している中、落語の教科書を持ってきた司は。

 

 

司「俺様いっつも不憫すぎない?先生から暴力受けたり、職員室に呼び出されたり…………」

 

盾子「全部あなたが悪いんじゃないの?」

 

司「ふざけんな」

 

 

明らかに文句ありげな雰囲気を漂わせている。

 

 

一生「あっ、教科書忘れた」

 

盾子「私の貸してあげる」

 

一生「悪いね」

 

 

 

 

 

ようやく授業が始まり、万葉集の短歌の意味を答えたり朗読したりする。落語の教科書を持ってきた司は国語の教科書を貸してほしいと頼むことはなく、むしろ全く手つかずだった。

獄宴はわからない部分は炎宴と死宴が教えてくれるが、天才な冷火は当てられるとスッと答えてしまう。それでも全員気になることはある。ひとつは龍哉がいないこと、もうひとつはプリズムを通って虹色になった紺子だった。

文武両道の龍哉がいないのはまだいいとして、まさか紺子がプリズムを通るなんて。

だが今はそれを気にしている場合ではない。いや、それでも気になってしまう者は数人いた。

 

 

ディーゴ(俺も早くレインボーディーゴになりてぇ……)

 

司(紺子も気になるが、俺様もどんなお仕置きされるのかマジで冷や汗が止まらん…)

 

高見「紺子、ホントは妖狐じゃないんじゃないの?」ヒソヒソ

 

許人「油揚げ出せば妖狐かどうかわかるんじゃないかな」ヒソヒソ

 

冷火(それであいつの種族がわかるのか!?ここに油揚げ好まない妖狐いるんですけど!!)

 

ライエル(僕油揚げあんまり好きじゃないんだよね。チョコミントアイスならいくらでも食べれるけど…)

 

 

一方でトリノが紺子に目を向けたが、見るなりいきなり驚いて目を丸くした。

 

 

トリノ「あ…あれ!?紺子さん!?急にどうしたの!?」

 

紺子「………………」

 

獄宴「嘘でしょ、ちょっと……」

 

炎宴「あの子…よく見たら…」

 

死宴「泣いてる?」

 

紺子「っ…………ぅっく…………」ポロポロ

 

 

短歌を見る紺子はなぜかしゃくりあげながら涙を流しているではないか。

 

 

辰美「紺子様、いかがなさいました!?」

 

龍華「あいつ、マジでどうしたんだ?」

 

一生「短歌の中に何か変なの入ってたのかな?」

 

盾子「さすがに変なのは入ってないでしょ」

 

龍華「入ってたら問題だぞ………仮に学園長のが入ってたら問題だけど」

 

冷火「いやいや、それはないでしょ(そういえば朝学園長の悲鳴聞こえてきてたけど大丈夫なのか?)」

 

 

教室全体が困惑する中、紺子が何か呟く。

 

 

紺子「……………ゃん」

 

トリノ「?」

 

紺子「お母ちゃん……………」

 

トリノ「お母……ちゃん?」

 

 

泣きながら呟く紺子にトリノは首をかしげた。

他の者も紺子が呟いた「お母ちゃん」に気づく。

 

 

冷火(こいつ、何を言ってるんだ?)

 

盾子「お母ちゃんとか意味わかんない…」

 

ライエル(昔お母さんとかいたのかな…?)

 

 

疑問を抱く中、突如チャイムが授業終了の合図を知らせた。

複雑な気分で号令をかけたディーゴは紺子に話しかけようとする。紺子の目からは涙が止めどなく溢れていた。

 

 

ディーゴ「お、おい紺子?どうしたんだ急に泣いたりして……」

 

紺子「………………」ポロポロ

 

 

紺子は泣きながらディーゴに顔を向ける。一方で呼び出しを受けた司は授業終了後、すぐに職員室に連行された。

 

 

ディーゴ「わかった。龍哉が退学になんの嫌で泣き出したのか?」

 

紺子「…………ちげぇよ」ポロポロ

 

ディーゴ「違う?……あっ、そうだ!理科終わった時約束したよな!俺をレインボーディーゴにしてくれよ!できるよな?なあ、頼むたい!」

 

紺子「…………悪いけど、その話辰美に頼んでくれない?私その気分じゃないんだ…」ポロポロ

 

ディーゴ「お前3時間目と比べてテンションおかしくね?『プリズムに光をー!!』とか叫んでたお前どこ行っちまったんだ?」

 

紺子「………………」ポロポロ

 

ディーゴ「なあ、聞いてんのか?」

 

紺子「黙ってろよ!!自然に悲しくなっちまったってのに、ゴチャゴチャ聞いてくんじゃねぇよ!!

 

 

泣きながら怒鳴ると、そのまま教室を出ていった。

 

 

ディーゴ「紺子!」

 

 

出ていった紺子の後を追おうとするディーゴだったが、辰美に背後からつかまれた。

 

 

ディーゴ「辰美!?」

 

辰美「ディーゴさんはこちらですよ~」

 

 

辰美は人魚の少女の体に合わず、ものすごい怪力の持ち主だった。

暴れるディーゴだったが、それに動じず平気でズルズル引きずっていく。

 

 

ディーゴ「放せ!おい、放せよ!どこに連れてく気だ!」

 

辰美「どこって、美術室じゃないですか~。紺子様に言われたんですよね~」

 

ディーゴ「あの狐野郎ォオオオオオオ!!」シュウウウーッ

 

 

ディーゴは鼻から煙を出しながら暴れ、解放を試みたが無駄なこと。辰美の怪力には全く敵わず、そのまま美術室へ連行された。



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出雲紺子の過去

紺子は国語の時間が終わって以降、昼休みは顔を見せることはなかった。

昼食にも手をつけず、屋上でベンチの上にうずくまるように体育座りし、声を押し殺して泣いていた。

時間は刻一刻と過ぎ、扉が開き、誰かが紺子のそばに近づいてくる。

 

 

竜奈「紺子が急に泣き出しただと?」

 

龍華「虹色になったとはいい、マジでびっくりしたぜ」

 

竜奈「あのベンチにうずくまってる奴がそうか」

 

 

2人は泣いている紺子に寄り添うように座る。竜奈が紺子の肩をなで、そっと声をかけた。

 

 

竜奈「紺子」

 

紺子「うるさい!ほっといてくれよ!」

 

 

肩をなでる手を振り払う。その手は竜奈の手をわずかにかすった。

同時に涙が虹色に染まった頬を伝う。

 

 

紺子「…今は1人になりたいんだよ………話しかけんじゃねぇよ………」

 

龍華「何言ってんだよ。俺たちはお前のために来てやったんだぞ。お前、あの時『お母ちゃん』とか言ってただろうが。何か隠してることあるんじゃねぇのか?」

 

竜奈「ああ。私にもわかる。できることなら私たちに話してくれないか?」

 

紺子「………………」

 

 

しばらくの沈黙のあと、紺子は思いきって顔をあげ、龍華と竜奈と目を合わせた。

 

 

紺子「………わかったよ。今なら私の気持ち、わかってくれる気がする………」

 

竜奈「…話してみろ」

 

紺子「おぼろげだけど、私が生まれたのは……平安時代のとある洞穴だった。その頃私は『出雲紺子』って名前なんてない、ただの―――――」

 

 

ただの狐、と言おうとしたその瞬間、いつの間に着替え終わった辰蛇が目の前に現れた。

 

 

辰蛇「何でそんなしんみりした雰囲気で生い立ちの話してるの!?」

 

龍華・竜奈「「空気読めェ!!!!」」

 

辰蛇「ニジイロパンツッ!!」

 

 

龍華の恐ろしいほどの速度のアッパーが顎をとらえ、宙を舞う。

だがそればかりではない。気づけば体が屋上の外側まで放り出されていた。

 

 

辰蛇「ほぎゃああああああああああああ……!!!

 

 

辰蛇の悲鳴が遠ざかっていくのをよそに、龍華は紺子の隣に寄り添う。

 

 

龍華「ったく……紺子、続きを頼む」

 

紺子「おう……」

 

 

紺子は自分の過去…つまり母と自分の身に起きたことについてついに語ることに。

 

 

紺子「あれは私がまだ…ただの狐の頃だった…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は平安時代、とある1匹の子狐がまだ親離れする前の頃。その頃の子狐は母の動きを真似て狩りの仕方を少しずつ覚え始めていた。

母子の住み処は村の片隅にある洞穴。生んだ場所が悪かったのか、子狐に狩りを教えるための獲物があまりいない。

だから2匹はいつも村に行っては、

 

 

母狐(今日も餌が見つからなくてごめんよ。人間の食べ物で我慢しておくれ)

 

 

残飯で飢えをしのいでいだ。時には作物を失敬することもあった。

 

 

人間「コラー!!盗っ人狐めー!!」

 

 

作物を盗むところを何度か人間に見つけられることもあったが、いつも村と洞穴よりかなり離れた場所へ逃げ隠れていたので決して捕まることはなかった。

そこで2匹は安心して新鮮な作物を口にすることができたのだった。

 

 

 

 

 

そんなある日、子狐にとって絶望の時が訪れるとは夢にも思わなかった。

今にも雨が降り出しそうな空模様に狩りを終えた母子は急いで洞穴へ向かっていた。ところが子狐の方が急に足を止め、興味本位で村の方へ駆け出した。

 

 

母狐(どこへ行くの!?雨が降ってもおかしくない天気なのに!)

 

子狐(あっちで人間が騒いでるから行くだけなの!)

 

母狐(ダメ!戻ってらっしゃい!あいつらに捕まったら二度と生きて戻れないよ!)

 

子狐(嫌だ!)

 

 

村へ駆け出す子に母は連れ戻そうと追いかける。到着した子が見ていた先はEVOLUTION SPACEの常連客、言峰貴利矢と同じ陰陽師と妖怪が互いに睨み合っていた。

妖怪を相手に冷静に戦う男の髪型は金髪混じりの短髪。黒い鳥の羽根でできた着物を着て、貴利矢同様袴と立烏帽子を身につけていた。

 

 

陰陽師「腹が減った…お前を腹の足しにしてやろう」

 

妖怪「キルルルッ、キャキャキャキャキャッ!

 

 

不気味な鳴き声が妖怪の喉から絞り出されるように出る。

だが陰陽師は怖じ気づかず冷静に刀を抜くと、刃先を妖怪に向け、間合いをとる。

 

 

陰陽師「妖刀『骸喰(むくろくらい)』の餌食となりし時、お前の体は私の身体と妖力を向上させる糧となる」

 

 

妖怪を睨みながら呟いたその時、雷が鳴り始める。同時に雨も降り始める。

先に襲いかかったのは妖怪の方だった。陰陽師はすかさず骸喰を妖怪の腹に突き刺す。

 

 

妖怪「ギギャア!?

 

 

かなり効いたのか、妖怪は激痛のあまり変な声をあげる。血が地面を赤く染め上げ、降る雨が血を薄め、雷によるまばゆい閃光が陰陽師と妖怪を不気味に照らした。

子狐は構わず陰陽師と妖怪の戦いを見ていたが、ようやく自分の子を見つけた母狐が洞穴へ連れ戻しに迎えに来た。

 

 

母狐(坊や!)

 

子狐(お母ちゃん!)

 

母狐(雷に打たれたんじゃないかと心配してたけど無事だったんだね!)

 

子狐(そんなことよりお母ちゃん、あれ!)

 

母狐(まあ……あれは人間と妖怪?人間の方が上回ってるけど……)

 

 

 

ピシャアッ

 

 

 

子狐(!!!!!)

 

 

子狐のすぐそばで雷が落ちる轟音が響いた。驚きのあまり、思わず転ぶ。

 

 

陰陽師「!?」

 

 

同じく雷鳴を聞いた陰陽師はすぐに済ませようと思ったのか、妖怪の四肢に狙いを定めていた。

一方で母子の方は、子狐は無事だった。

 

 

子狐(すごい近くに雷落ちたよ…なんだか怖くなってきちゃった…)

 

 

しかし、母狐の返事がない。いくら見回しても母狐の姿が見当たらず、代わりに黒焦げの動物を模した物体が横たわっていた。

 

 

子狐(お母ちゃん?どこ行っちゃったの?ねえ、お母ちゃん?)

 

 

やがて黒い物体を見つけたが、それが自分の母であると気づくのにそんなに時間はかからなかった。

どんなに揺すっても目を覚ますことはなく、息もしていない。絶命していたのだ。

 

 

子狐(お母ちゃん…死んだなんて嘘だよね?ねえ、起きてよ……起きてよ、お母ちゃん。1人ぼっちは嫌だよ。私だけ残して死なないで………置いてかないで……お母ちゃん………お母ちゃん!)

 

 

母狐が死んだ現実を受け入れられず、子狐は黒焦げの死体に寄り添い、泣いた。焦げ臭い匂いが鼻の穴を刺激すると、さらに涙が溢れてくる。

だが現実は現実。どんなに泣いても寄り添っても、母狐は二度と目を覚ますことはなかった。

 

 

 

 

 

陰陽師「先ほど近くに雷が落ちたが、死んだのは母の方か……」

 

 

妖怪退治を終え、返り血を浴びた陰陽師が母狐の死体に寄り添う子狐を見下ろしていた。

 

 

陰陽師「まだ親離れする時期ではないが、このまま放っておけばいずれ栄養不足で死ぬだろう………仕方ない。拾って育てるとするか。式神を生み出すにはちょうどいい」

 

子狐(い、いやっ!やめて!放してよ!お母ちゃんと離ればなれに……1人ぼっちにさせないで!お母ちゃん、起きてよ!助けて…!お母ちゃん……!お母ちゃーん!!)

 

 

哀れな子狐は一心で暴れた。どんなに暴れても母狐の姿はどんどん遠ざかり、なす術もないまま陰陽師に連れ去られた。

 

 

 

 

 

その子狐を拾った陰陽師の名は辰廻(たつみ)・アウィス・カエルレア。日本の母と異国の父の間に生まれた息子である。

辰廻の父は船が転覆し、漂流した場所が日本。母は何の警戒もなく助けた。お互いの言葉を教え合っているうちに数ヶ月経ち、一目惚れした父と優しい彼が気に入った母はやがて結婚、辰廻を産んだ。

彼が将来陰陽師になりたいと思ったのは少年時代、たまたま妖怪と戦っている陰陽師を見かけたから。僕も人のためになりたいと思った辰廻は出家、修行。数十年の時を経て身体能力、妖力、神力を底上げしていった。

本人は人間や妖怪の肉や血を口にすることで力を底上げできると考え、行き倒れの人間、現れた妖怪を見つけては腹の足しにする。同時に自身の力にもなる。それを繰り返したことで今となっては人間を超えた存在となっていた。

 

 

辰廻「今日からここがお前の家だ。お前には私の式になってもらうぞ」

 

子狐(嫌だ!お母ちゃんのところに帰るの!出して!)

 

 

屋敷では籠に入れられた子狐が嫌がって暴れていた。さらに白い右目と黒い左目の視線が刺さり、よけいに怖がる。

 

 

子狐(狭いよ…怖いよ!誰か助けて!お母ちゃん!お母ちゃん!)

 

 

だが母狐は先ほど雷に打たれて死んだ。もし生きていたとしても間違いなく辰廻に殺され、その肉と血は彼の腹の足しと力の向上となっているだろう。

 

 

辰廻「さて……まずは妖力を向上させ、しゃべれるようにさせなければ」

 

子狐(あっ、ああ…いや、いや、いやいやいやいやいやああぁぁぁあああ!!)

 

 

 

 

 

やがて月日は流れ、成長した妖狐は人間の少女の姿を象っていた。面影として狐だった頃の耳と尻尾が生え、そして死んだ母親のことをまだ考えていた。

ところがそんな妖狐にとって最大の転機、妖狐を拾った辰廻に悲劇が訪れるとは双方とも考えてもいなかった。

 

 

 

 

 

辰廻「小娘……檻から出て何をしている?」

 

 

その日の夜だった。遡ること数分前、辰廻がある用事で屋敷を空けていた時のこと。すっかり大きくなった妖狐はある部屋の中の檻に入れられていた。

辰廻は逃げられないようにいつも鍵をかけていたのだが、その日は着物の中にしまい込んだつもりが畳の上に落としてしまった。辰廻はそれに気づかず屋敷を空けた。

しかもすぐ手が届くに落ちていたため、妖狐にとっては二度と訪れることのない転機だ。辰廻が屋敷から出たのを見計らい、すぐさま鍵に手を伸ばす。

錠は海老錠だったが、辰廻が開閉させているのを何度も見ているうちに覚えてしまったのだ。鍵を穴に差し込んでバネを閉じ、牡金具を引き抜くと、檻が開いた。

 

 

妖狐(あっ、開いた!これでやっと出れる…!)

 

 

しかし、バレればどんな仕置きを受けるかわからない。机にあった短刀を着物の中に隠し、屋敷から逃げようとしたが、ふとあるものが目に留まる。

厨子棚にいろいろな薬が置かれているが、その中のひとつを手にすると、ふたを開け、一舐めしてみた。

そして今に至り、鍵を落としたのを思い出して戻ってきた辰廻が鬼のような形相をしていた。

 

 

辰廻「檻から出たのをいいことに、しかも禁断の呪薬『不老不死の呪薬』を舐めるとはいい度胸をしているな……?」

 

妖狐「もうあなたに振り回されるのはたくさんなんです!私をここから出してください!」

 

辰廻「寝言は寝てから言え!!誰がお前を拾ったと思っている!?あの不老不死の呪薬を完成させるのにどれだけ苦労したと思っている!?お前は母狐が死んで泣いているところを私が拾ってやったのに、貴様はそれを仇で返すつもりか!!」

 

妖狐「だって……だって!ずっとずっと同じような妖術を私にかけてきた!今まで我慢してましたが、もうこれが限界なんです!」

 

辰廻「限界…?よろしい、ならば楽にしてくれる!我が力を見せてくれる!間もなくお前の肉と血は我が身体の一部となり、我が妖力はさらに底上げされる!お前がしでかした不孝を地獄で詫びるがよい!!」

 

 

妖狐は短刀の刃先を向ける間もなく辰廻に口を押さえられる。不気味に光る骸喰の刃先が妖狐の喉仏に当てられた。

 

 

妖狐「っ………!!」

 

 

もはやここまでか。そう思っていた妖狐だが、短刀を手にして正解だった。気づかれないよう着物から抜き取り、辰廻の首筋に突き刺そうとしたその瞬間。

 

 

辰廻「!?」

 

 

突然辰廻が骸喰を落としたかと思うと、そのまま頭を押さえながらしゃがみ込んだ。

 

 

辰廻「おのれ……こんな時に急に頭痛が起こるとは………!」

 

 

辰廻は冷や汗を流しながら歯を食い縛り、頭を押さえながら落とした骸喰に手を伸ばそうとした。

 

 

辰廻「力の底上げのツケか…!?なんとなくわかっていたが、私が長年続けてきたことは……全て……命…に………だが……まだ………死ぬわけ……には……」

 

 

言葉が終わらないまま背後から短刀が刺され、刃は心臓に到達していた。黒い着物が血に染まったのは妖狐にははっきり見え、刺された辰廻も口から血を吹き出した。

 

 

妖狐「ご主人様………死んでください

 

辰廻「………!?」

 

 

骸喰がいつの間にか妖狐の手に渡っていた。

バカな。考える間もなく辰廻の首は畳の上を転がった。胴体も崩れ落ちるように倒れて動かなくなり、それぞれ血溜まりを作っていく。

 

 

妖狐「……………………」

 

 

血溜まりができていく様子を見る妖狐は飽き足らず、骸喰を力強く握りしめると、辰廻の頭を一刀両断にした。

妖狐は骸喰をその場に投げ捨てると、屋敷の庭の隅にある物置小屋へ入る。

しばらくしてから屋敷に入り、持ってきた油らしき液体を屋敷中にまいた。もちろん庭にもまかれた。そして辰廻の遺体にも………。

やがて燃え上がる屋敷が夜の闇を照らす。妖狐はそれをしばらく見つめると、燃える屋敷を背後に涙を流しながら去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その話を聞いていた龍華と竜奈は気の毒そうな表情をしていた。

 

 

龍華「お前……相当苦労をしてたってのか……」

 

紺子「……ああ。辛かったよ。特にあの陰陽師の実験台にされたことは……………」

 

竜奈「だが、その『出雲紺子』という名は誰がつけたんだ?」

 

紺子「………そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖狐が陰陽師を殺し、屋敷を放火させてから長い年月が過ぎた。

時は明治時代中期。不老不死の呪薬を舐めて以降、妖狐は本当に老いることも死ぬこともなかった。むしろ変わっているのは年齢だけであるということ。あれ以来自由が自分のものになって嬉しかった。しかし母親が死んだことに心を痛めていることだけは変わりなく、明治時代中期になっても夜になると母親のことを思い出しては泣きながら眠りについていた。

ある日の雨の中、妖狐は今日も生きていくために残飯を探していたところ、中年の男が声をかけてきた。

 

 

中年「今日も残飯探しか。精が出るねぇ」

 

妖狐「あんた、誰?私を殺すつもりだったら承知しないよ」

 

 

声をかけた中年に妖狐は殺意がこもった表情で睨みつけながら短刀を向けたが、中年は落ち着かせようと優しい声をかけながら頭をそっとなでた。

 

 

妖狐「………?」

 

 

すると不思議と安心感を持ったのか、そのままスヤスヤ眠りについてしまった。

中年は妖狐を抱きながらどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

妖狐「ここは……」

 

中年「おっ、目を覚ましたか」

 

 

目を覚ました妖狐は見覚えのない天井を目の当たりにした。隣にはあの中年の男がいた。

 

 

中年「俺は出雲(いずも)惣一(そういち)。この家の者だ」

 

妖狐「惣一…………?」

 

惣一「お前がボロボロの服を着てゴミを漁ってたところを話しかけてきたら、まさか短刀を持って襲ってくるとはな。何があったか知らねぇけど、安心しろ。お前を傷つける奴はいないから」

 

 

惣一と名乗る男は笑顔を見せた。妖狐は部屋を見回してみる。

 

 

妖狐「…………ここ、どこ?」

 

惣一「ここは俺の家。ボロボロの服を着ていたが、名前とかあるのか?」

 

妖狐「名前……ない」

 

惣一「名前ないの!?ウッソだろ、平民にはちゃんと名前がつけられてるってのに……親とかいる?」

 

妖狐「死んじゃった………雷に打たれて………」

 

惣一「え?」

 

 

顔を覗き込むと、妖狐の目には涙が溜まっているのがよくわかった。そして両手で顔を覆い、泣き出した。

 

 

妖狐「あ……あああ……私が……………私が……………」ポロポロ

 

惣一「あああああ待って待って待って!?泣くな泣くな、落ち着いて!?俺これでも息子と娘が―――――」

 

 

妖狐と惣一の話し声を聞いていたのか、2人の子供が入ってくる。惣一の言う通り、1人は息子、もう1人は娘だった。

 

 

娘「もー、うるさい!黙らないとえぐる……!?」

 

息子「お父さん、一体どうした…の……!?」

 

惣一「あ」

 

 

絶句する2人。惣一と妖狐を見ながら沈黙する。

 

 

娘「…………ちょっと貴彦(たかひこ)?警察呼んできて」

 

貴彦「お、おう」

 

惣一「ち、違う海里(みさと)!!誤解してるけど、この子を泣かせてるわけじゃないんだ!違うんだーっ!!」

 

 

 

 

 

しばらくしてようやく落ち着いたのか、惣一はこれまでの経緯を説明した。

貴彦と海里もやっと状況を飲み込めた。

 

 

海里「つまりお父さんは誘拐したわけでも泣かせたわけでもないのね?」

 

惣一「はい」

 

貴彦「ふーん。ところでこの子の名前は?」

 

惣一「ないんだって。だからさ、お前に質問するけど………うちの子にならないか?」

 

妖狐「え?いいの?襲ったのに…」

 

惣一「気にするな。何があったのかは聞かないでおくから。で、どうする?」

 

妖狐「……お、お願いします………////」

 

 

妖狐は顔を少し赤らめ、もじもじしながら答えた。

 

 

惣一「よし決まった!今日からお前は俺たちの家族だ!で、名前だが………『紺子』。狐の『コンコン』って鳴き声から取って『紺子』。今日からお前は『出雲紺子』だ!」

 

妖狐「出雲……紺子…………?」

 

 

これが自分の名前?そう言おうとした矢先、先ほどまで垂れていた耳がピョコンと立った。

 

 

貴彦「狐の耳!?癖毛かと思ってた!」

 

海里「しかも尻尾も!」

 

紺子「あ……」

 

惣一「まあまあ、いいじゃねぇか。紺子は誰だろうと俺たちの家族なんだからさ。んじゃ改めて、俺は出雲惣一。こっちは俺の娘の出雲海里」

 

海里「よろしく、紺子ちゃん」

 

惣一「んで、こっちが貴彦。養子だけどな」

 

貴彦「よろしくな、紺子」

 

紺子「よろしく……海里……貴彦……!」

 

 

紺子の顔からは少しずつ喜びの表情が浮かび始めていた。

 

 

惣一「よろしく。そしてようこそ我が家へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「というわけで、今に至るってわけ。惣一の父ちゃんが拾ってくれなかったら私はここにいなかったってわけ」

 

 

彼女の話が終わった頃にはちょうどチャイムが昼休み終了の合図を知らせた。

 

 

紺子「心配かけさせて悪かったな。話してるうちに気が楽になったよ」

 

龍華「紺子」

 

紺子「?」

 

龍華「次カフェに来たら、マスターに頼んでとびっきりいいサービスしてやる」

 

竜奈「また何か辛いことがあったら相談してくれ」

 

紺子「……………ああ。ありがとな龍華、竜奈先輩」

 

 

こうして3人は次の授業のため、教室に戻っていった。

紺子にとって惣一が彼女を拾ってくれたことは一生忘れられない思い出だ。それを胸にまっすぐ進もうと強く心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、屋上から落とされた辰蛇は。

 

 

辰蛇「何で私こうなるのぉ………」シクシク

 

 

固い地面に叩きつけられて血溜まりを作りながら泣いていた。




回想シーンに出てきた外道陰陽師こと辰廻・アウィス・カエルレアですが、辛魂 BON!さん考案のキャラです。
実を言いますとこの話作る前から辰廻には死んでもらおうと考えていました。辛魂 BON!さん、ごめんなさい。
ちなみに紺子はまだ虹色です。


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先生、子供の話はほどほどに!

2年教室に戻った紺子と龍華。ふとディーゴを見ると、なぜか全身絵の具まみれになっていた。

 

 

龍華「紺子はまだしもディーゴはどうした!?」

 

ディーゴ「見てわかんねぇか?辰美にやられたんだよ」

 

辰美「4時間目終わって、ディーゴさんが紺子様に虹にしてくれと言ってましたので」

 

ディーゴ「車掌の服いくらでもあるからってこんなにしやがって魚野郎!結構高かったんだぞ!」

 

辰美「はい、知りませ~ん!」

 

ディーゴ「イデデデデデ!!ギブギブギブ!関節外れるゥゥゥゥゥ!!」

 

 

関節技をかけていると、ちょうどよいタイミングでみのりが教室に入ってきた。

 

 

みのり「紺子ちゃんが虹色!?あと辰美ちゃん、開始前からディーゴ君の関節外すのやめて!?」

 

ディーゴ「あ゛~、先生助けて!こいつとんでもない怪力なんですけど~!」

 

紺子「やめろよ辰美!お前は加減してるつもりでもホントに外れたらどうするつもりなんだよ!」

 

辰美「あっ、ごめんなさい」

 

 

すぐ素直になり、関節技を解いた。ディーゴはすぐさま辰美から離れる。

 

 

仁美「大丈夫~?」

 

ディーゴ「噛んできたお前が言えるセリフじゃねぇだろ…」

 

司「言っとくが、俺様も散々だったぜ?落語の教科書持ってきて、龍華をゴリラ女と呼び、挙げ句には呼び出し食らっちまった。マジで不憫すぎるわ」

 

仁美「龍哉の方がひどすぎたなぁ。宇佐間先生のあそこ蹴ったんだもん」

 

みのり「龍哉君先生の股間蹴ったの!?」

 

一生「そうなんですよ。あの先生いつも体操前にズボン破ってましたもん。龍哉が止めてくれましたけどあれは……」

 

みのり「で…その龍哉君はどこに?」

 

ライエル「生徒指導室です。校長先生から聞きました」

 

みのり「ええ………」

 

 

 

 

 

ようやく授業が始まった。まずは小テストの返却。紺子は真っ先に点数を見る。

 

 

紺子「赤点じゃなくてよかったけど、これって……」

 

龍華「紺子、結果どうだったよ?」

 

紺子「どうだったも何も50点以下だったよ。私も数学苦手だし」

 

龍華「別に50点以下でもいいじゃねぇか。赤点じゃないんだろ?俺お前より数学苦手だし。ていうか理系全般無理だわ」

 

 

龍華は笑いながら言った。それとは別に紺子は龍華の結果が気になっている。

 

 

紺子「じゃあ聞くけど、お前何点?」

 

龍華「……………21点」

 

 

聞いただけで笑ってしまった紺子であった。

 

 

ディーゴ(…………俺も紺子とほぼ同じじゃん)

 

 

 

 

 

龍哉を除き、小テストが全員分返却された。無論、1位は冷火、最下位は龍華である。理科も苦手なので致し方なし。

早速本題に入っていく。復習をある程度行った後、いつも通り授業が進む。

 

 

みのり「私は文字以外にもこんなのにも置き換えますけどね。特に幼女とかショタとかぁ……」

 

冷火(なぜそこから幼女とショタが出てくる!?)

 

 

みのりの話は続き、子供のかわいさや素晴らしさの話ばかりでもはや授業から脱線してしまっている。

さらには自分は美人である、結婚したい、そして子供もガンガン産みたいとも言い出し、完全に授業を放棄していた。

 

 

紺子「せ、先生…授業に関係ない話はもうこのくらいに……」

 

龍華「変な話続けてもう30分くらい経つぞ?みんな目ェ死んでるじゃねぇか」

 

みのり「別に構いませんわ。特に幼女!素晴らしいではありませんか!」

 

紺子「私たちから見れば変態にしか見えねぇよ!私は紺子ちゃんって呼ばれるからいいけど冷火とかには冷火たんって……!」

 

冷火「こ、紺子さんまで!/////(だあぁぁぁ!!よけいなこと言いやがってあいつ!!恥ずかしいったらありゃしねぇよ!!)」

 

 

一刻も早く終わってほしい、そして逃げたい気分でいっぱいの冷火。そんな彼女を見たみのりは彼女の顔を見るなりにやけてしまった。

 

 

司「お、おい冷火……」

 

冷火「?」

 

司「先生の目線がお前に刺さってるんだが………」

 

冷火「え?」

 

 

冷火がみのりに目を向けようとするが、教卓のそばにみのりはいない。

もしやと呟き、恐る恐る横を向いてみた。

 

 

冷火「ひゃあ!!」

 

 

予想通り、みのりがいつの間にか隣にいた。

 

 

冷火「せ、先生…!(驚かしてんじゃねぇよ!私ちょっかいかけられるの嫌だってのに!泣きそうになるわ!)」

 

みのり「あ~、その反応超かわいい♡もっと見せてちょうだい♡」

 

 

この時、生徒たちはすでに気づいていたが、みのりだけは気づいていなかった。

みのりの背後にただならぬ殺意を持った女性が立っていることを。冷火を助けようとみのりを殺意のこもった目で睨んでいることを。

 

 

 

 

 

???「娘に手ェ出そうとしてるのはどこのどいつだァ……………?」ゴゴゴゴゴ

 

みのり「!!?」ゾクッ

 

 

ドスの効いた声にみのりもようやく背後の女性に気づき、恐る恐る振り向いてみる。

そこに立っていたのは長い黒髪と黒い瞳がを持つ美女。大和撫子とはこのことか、着物を着ているのでさらに美しく見える。

 

 

みのり「り、燐斗……先生………!?」

 

冷火「お母さん…!?」

 

 

みのり同様この学園に勤める教師で、冷火の母親でもある。彼女の名は『鬼灯燐斗』。家庭科担当の教師だった。

 

 

燐斗「よくまあうちの娘にちょっかいかけてくれましたねぇ………?生きて帰れると思ってんのか?あ゛ぁっ!?

 

みのり「ヒィィッ!?ち、違います……!燐斗先生落ち着いてぇ…『生きて帰れると思ってんのか?』とか大げさぁ……!」

 

燐斗「質問に答えないならちょっと外に出てもらいましょうか」

 

みのり「あえ!?き、聞いてないですよそれ!」

 

燐斗「いいから来な」

 

みのり「…皆さん……これから自習」

 

 

連行されるみのり。自習と言われた紺子たちは複雑な気分のまま各自教科書の練習問題に取りかかることに。

仕置きをされているのか、途中みのりの絶叫が聞こえ、冷火以外全員鳥肌が立った。

 

 

冷火「お母さん………(いくら相手が先生でも殺したらマジで冗談じゃねぇぞ!?)」

 

 

全員みのりが戻ってくることを祈っていたが、チャイムが鳴っても戻ってくることはなかった。

心配に思った紺子と冷火が廊下に出てみると、教室のすぐそばで血を流して倒れているボロボロのみのりがいた。

 

 

紺子「………さすがに死んでんじゃね?これ」

 

みのり「生きてます。手加減してくれてたようです」

 

冷火(手加減してたらこんなボロボロにならねぇだろ!)

 

紺子「学園長も屋上から落とされてたし、真島先生大変だろうなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって保健室。紺子の言う通り龍華に屋上から落とされた辰蛇が治療を受けていた。

出血して倒れていたところを死纏さんが見つけ、運ばれたようだ。

 

 

真島「おい、おとなしくしろ!暴れると治るもんも治らねぇぞ!」

 

辰蛇「注射は嫌ーっ!!針刺されるくらいならあのまま死んだ方がよかったよー!!」

 

死纏さん「死んでたらとっくに輪廻転生に送ってたが、あんたが死んだら誰があんたの代わりを務めるんだ?」

 

辰蛇「にゃーっ!死纏さん、それだけはご勘弁を!まだパンツクンカクンカしてない子もいるのに…まだ書かなきゃならないポエムもいっぱいあるのにぃ~!」

 

真島「ベッドの上で土下座するほどとかホントは輸血する必要ないんじゃねぇのか?」

 

辰蛇「…………あ、お願いします」

 

 

無我夢中でベッドの上で起き上がっていた辰蛇は再び横になる。真島は半分呆れながら辰蛇の腕に針を刺す前に消毒液を塗る。

 

 

死纏さん「んじゃ、俺は警備に戻るぜ。あとはよろしく」

 

真島「おうよ」

 

辰蛇「アィッギャァァアアアアアアアアアアア痛ったぁぁぁあぁあぁあああぁああぁい!!!!!

 

 

注射嫌いの辰蛇の悲鳴が保健室の外まで聞こえ、その悲鳴は紺子たちにも聞こえたという。



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みんなの調理

これから行われる家庭科の授業は調理だった。

家庭科室に向かう途中、紺子と盾子が話している。

 

 

紺子「昼休みずっと屋上にいたから昼飯全然食ってねぇよ……最悪だ」

 

盾子「それホント?ていうか紺子がずっと屋上にいるとか珍しいね」

 

紺子「いろいろあったんだよな。龍華と竜奈先輩に打ち明けてやっと落ち着いたけどさ、問題は昼飯だよ」

 

盾子「屋上にいたんだ……全く、私たち心配したんだよ?」

 

 

一方で仁美はまた食事ができることが嬉しいのだろう、にこやかな表情だ。

だが中には不服そうな気分の者も。

 

 

司「料理いつもうちが雇ったシェフが作ってるから自分で作ったこと一度もねぇよ」

 

ディーゴ「マジで!?こんな俺でもいつも料理作ってるのに!」

 

司「ディーゴが作る料理ってなんか想像できん…」

 

ディーゴ「おいちょっと待て。まさかとは思うが、毎日駅弁食ってる俺を想像してたのか?」

 

司「………バレたか」

 

ディーゴ「バカか。いくら俺でもさすがに毎日食ってたら体に悪いわ」

 

 

生徒たちが次々と家庭科室に入っていく中、辰蛇の悲鳴が聞こえたような気がしたが、あまり気にしなかった。

持参してきたエプロンと三角巾を身につけているうちにチャイムが鳴る。

 

 

一生「燐斗先生絶対ろくなことしないんだろうなぁ……」

 

燐斗「あ゛?私がろくなことしないですって?」

 

一生「いや、別に…」

 

許人「変なこと言わない方がいいよ。目の前で冷火にちょっかい出したらもっと大変なことになるし」

 

一生「う………」

 

燐斗「みのり先生みたくちょっかい出してみなさい。ぶっ飛ばしますよ♡」

 

 

笑顔で忠告する燐斗だったが、その笑顔には容赦ない殺意が見えると誰もが知っていた。

冷火を驚かし、犠牲となったみのりにとってはとんだ災難であった。

 

 

 

 

 

準備が整い、早速調理が行われることになった。作るのはハンバーグだ。

それぞれ作り方のプリントを渡され、各班それぞれ取りかかる。

 

 

紺子「ひとつだけ3人って寂しくね?」

 

ディーゴ「気にすんな」

 

紺子「お前は絵の具の液体が混ざりそうで気になるんだけど」

 

ディーゴ「やかましいわ!もう乾いとるがな!」

 

 

理科同様自由席のため、班はこのようになっている。

 

 

1班:紺子、ディーゴ、仁美、辰美

2班:ライエル、司、冷火、乱

3班:獄宴、セー、龍華、一生

4班:許人、高見、盾子

 

 

紺子「うちの班ろくのしかいねぇ!絵の具まみれの車掌と大食いコンビじゃねぇか!」

 

ディーゴ「辰美のせいでこうなったんじゃ!ガタガタ言うな!」

 

 

手袋を脱いだディーゴが玉ねぎを切りながら怒鳴った。

 

 

仁美「作ってる時からもうお腹減ってるんですけど~」

 

紺子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛よだれが混ざるゥゥゥゥゥ!!」

 

辰美「紺子様、焼き加減はどうしましょう?」

 

紺子「ステーキじゃねーんだよ!腹壊すわ!」

 

ディーゴ「ハンバーグって牛乳も入れるっけ?」

 

 

2班では冷火が真剣に肉をこねているが、司が味見をしてみる。

 

 

ライエル「司!?まだ焼いてないのに何で味見してるの!?」

 

司「別にタルタルステーキでもいいだろって思ってな」

 

冷火(バカだこいつ!龍華よりバカだ!)

 

乱「お腹壊しても知らないよ」

 

 

なお、3班は会話しながら真面目にハンバーグ作りに取り組んでいた。

 

 

龍華「ろくなことしない奴ばっかだな………」

 

セー「龍華、玉ねぎ切るの上手だね」

 

龍華「マスターのカフェで料理してるからな。これぐらい朝飯前さ」

 

一生「ていうか獄宴、そのゴーグルどこから持ってきたの?」

 

獄宴「今日ハンバーグ作るっていうから持ってきたんだけど」

 

炎宴「私たちも目にしみるの嫌だから」

 

死宴「目隠ししてるのよね~♡」

 

 

ぬいぐるみの言う通り、確かに2体は目元を布で覆われていた。獄宴は龍華同様玉ねぎを切っている。

そして4班でも。

 

 

盾子(許人と高見のせいで集中できない…!)

 

許人「手伝えることがあったら手伝ってあげるよ」

 

高見「そっ、そんなことないわよ……」

 

 

恥ずかしがりながらも取り組んでいた。これを見ていた盾子はどうしても許人と高見に目を向けてしまう。

 

 

冷火(嫌な予感しかしないの私だけ?お母さんすごいこっち見てるんだけど………)

 

 

肉をこねながら視線を変えると、燐斗が期待の眼差しで見つめている。

一方で紺子も冷火同様切った玉ねぎ、パン粉、卵、牛乳を入れ、こねている最中だった。

 

 

辰美「紺子様も意外とお上手なんですね」

 

紺子「妖狐だからって甘く見るなよ?私の手先は器用だからこんなの朝飯前さ」

 

ディーゴ「技術の時間すごいの作ってたよな。消しゴムだったっけ」

 

紺子「消しゴムって言うなよ。透明人間製造マシンって言えよ」

 

仁美「あれっていろいろ消せたよね~。ボールペンで書いた字も人も消せたよね~。私も使ってみたいな~」

 

紺子「無理な話だな。あれ私しか使えねぇよ。私以外の奴が触ったら電気走るから」

 

ディーゴ「お前しか使えないの!?いや、問題はそこじゃねぇか。普通の消しゴムは?」

 

紺子「持ってるぜ。私いつも普通の消しゴム使ってるけど、透明人間製造マシンはよっぽどのことがない限り使わないな」

 

ディーゴ「初めて知ったぞ、その話………」

 

仁美「あ~、お腹減った~」

 

 

唖然とした表情で肉をこねる紺子を見つめるディーゴであった。

 

 

 

 

 

焼き加減を見ようとフライパンのふたを開ける冷火。美味しそうに焼き上がり、家庭科室に香ばしい匂いが充満する。

ふたを開けた冷火を見た燐斗は思わず彼女に飛びついた。

 

 

燐斗「はあああああ!!こんなに美味しそうに作れるなんてお母さん嬉しいよぉー!!

 

冷火「ゲバァ!?

 

 

飛びつくように抱きつかれた冷火にとってはたまらなかった。

実は家にいる時を含め、これと同じようなことを何度も経験しているため、冷火にとって燐斗がやることはもはやストレスに過ぎなかった。

 

 

龍華「先生ぇぇぇぇ!?冷火ぁぁぁぁ!!」

 

セー「飛びつかれただけで血吐いた!?」

 

一生「スッゲェ親バカ……!」

 

獄宴「この次はチューマシンガンかな?」

 

燐斗「お母さんあまりにも嬉しいからご褒美にチューマシンガンあげちゃうううう!!ブチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュ―――――

 

冷火「いぎゃあああああああああ!!人前でそんな恥ずかしいことすんじゃねぇぇぇぇぇええええ!!

 

 

普段丁寧語の冷火の口が突然悪くなった。紺子たちも口が悪くなった冷火にぎょっとする。

 

 

燐斗「…………あら、ごめんなさいね。私、娘のことに触れるとホントに止まらなくなっちゃって」

 

冷火「チューマシンガン何回受けたと思ってんだよ!!」

 

紺子「冷火、とりあえず落ち着け!さっきまでおとなしかったお前どこ行っちまったんだ!?」

 

冷火「…………ごめんなさい。どうやら錯乱してたみたいです」

 

 

 

 

 

冷火を落ち着かせてから数分後、紺子たちはようやくハンバーグにありつけた。

残念ながら用意されていたのはひき肉、玉ねぎ、パン粉、卵、牛乳といった材料のみ。白米とサラダも食べたかったと嘆く者も少々いた。

特に仁美は辰美と同じぐらい大食い。全然足りないとぼやいていたが、辰美は全く気にせず、美味しいと喜んで食べていた。

 

 

紺子(せっかくだからカズミンにも作ってやろうかな?)

 

 

食べているうちにチャイムが鳴り、帰りのHRの時間になった。

洗った皿を拭き、食器棚にしまうと、紺子たちは急いで教室へ戻る。6時間目の家庭科はハンバーグを作る時間はヴォイエヴォーテも知っていたため、HRを行う時間が遅れてもお咎めなし。

だが一番驚いたことがひとつだけあった。宇佐間の股間を蹴って呼び出しを食らっているはずの龍哉が席に着いていたことだ。紺子は嬉しさのあまり、思わず抱きついていた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「校長によると、何でも砂道焔という人間の男を追い払ったとか……」

 

龍哉以外全員『人間!?』

 

ヴォイエヴォーテ「本当なら停学処分になっていたが、あの件で厳重注意に留められた。しかし人間禁制の学園に侵入した奴はあの男が初だろう。なかなかいい度胸をしておる」

 

ライエル「ですが先生、その砂道焔っていう人………まさか僕たちの命を狙ってるんじゃ?」

 

ヴォイエヴォーテ「その件についてはまだわからん。もし本当にお前たちの命を狙っているならば、今後同じようなことがあった場合すぐに我々が対策を練らねばならない。お前たちもくれぐれも気をつけることだ。何かあったらすぐ連絡しろ」

 

龍哉以外全員『うへぇ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校長室では、アルケーが微笑みながら呟いていた。

 

 

アルケー「フフフ………龍哉君にはよくやったとしか言えませんが、あの砂道焔という男…再び会ったら私がこの手で始末しなければなりませんね………」

 

 

優しく微笑んでいるアルケーだったが、その微笑みは何か違っていた。

そして()()()()()()()()()()()()を目の当たりにするとは誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって砂道焔の家。

 

 

焔「あの赤川龍哉とかいう小僧、なかなかいいパンチしてたな……俺様があんなガキに押されるなんて初めてだったが、人外は不要な俺様にとっては絶好のチャンスかもしれねぇ。手始めにあのガキを海に沈めてやるか。その前に決行日はいつにするか…………」

 

 

焔はそう言い、クククと笑った。




龍哉がヒロインになりそうな予感。


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停電中の奇怪な出来事

長い1日が終わったと思ってたらそうでもなかった。
紺子にとってかなりのストレスが溜まることでしょう。


夜、紺子の家にて。台所で紺子と一海がハンバーグを作っていた。

この時、紺子の体はすっかり虹色が抜け落ち、元の色に戻っていた。

 

 

一海「ハンバーグ作ったなんて羨ましいなぁ。僕も出雲姐ちゃんみたく調理したいよ」

 

紺子「昼飯食べれなくて困ってたけど家庭科に助けられてよかったぜ」

 

一海「え!?出雲姐ちゃん昼休み中ずっとご飯食べてなかったの!?」

 

紺子「そうなんだよ。まず国語にいろいろあったっていうか……龍華と竜奈先輩に全部話したらスッキリしたよ」

 

一海(帰ってきてから料理作るまでの間出雲姐ちゃんが虹色だったのにもびっくりしたけど、出雲姐ちゃん一体どうしたのかな…)

 

 

 

 

 

 

完成したハンバーグ2個とつけ合わせを皿に盛りつけ、ソースをかける紺子。一海は先ほどまで刻んでいたキャベツを別の皿に盛りつけ、ドレッシングをかけていた。

 

 

紺・一「いただきまーす」

 

 

食卓へ着くと、一海は早速ハンバーグを口にしてみた。

 

 

紺子「家庭科で作ったのを早速実践してみたんだけど………どうかな?」

 

一海「うん!出雲姐ちゃんが作る料理いつも美味しいから、このハンバーグも最高だよ!」

 

 

一海は笑顔で言いながら再びハンバーグを次々と口へ運ぶ。

それにハンバーグを2個作ったのは、一海が満足できるよう2個にしようと考えていたのかもしれない。

 

 

紺子「へへっ、ありがとうカズミン。うちの家庭科なんかもう散々だったよ。仁美のよだれが入りそうになるし、ディーゴの絵の具が混ざりそうになるし、あと冷火。燐斗先生あいつのお母さんなんだけどさ、あいつもチューマシンガンされて大変だったよ」

 

一海「先輩のお母さんも勤めてるんだ………まあ、当ててやるか。チューマシンガン以外にも変なことしてた………よね?」

 

紺子「正解。数学なんだけどさ、みのり先生冷火驚かしてボコボコにされてたよ。どんだけ娘大好きなんだか」

 

一海「こっちも僕はカズミンって呼ばれたけど、ココとか麻由美みたいな小さい子を『ココたん』とか『麻由美たん』って呼んでたね」

 

紺子「学園長と手組んだらもっとヤベェことになりそう…」

 

 

お互い複雑な表情を浮かべたが、紺子があることに気づく。

 

 

紺子「そういえばお前、帰りのHRで先生のあの話聞いた?人間が侵入したみたいなんだけど……」

 

一海「僕も聞いたよ。砂道焔って男が僕たちの命狙ってるかもしれないって話でしょ?」

 

紺子「まあ龍哉が追い払ってくれたみたいだけど、あいつその前に宇佐間先生蹴って呼び出し食らってたからなぁ……あの件で厳重注意で済んだらしいぜ」

 

一海「え!?あの龍哉先輩が先生蹴ったの!?」

 

紺子「あの先生体操前にいっつも筋肉膨れ上がらせようとするじゃん。女子にとってはいい迷惑だよ」

 

一海「出雲姐ちゃんはそう言ってるけどさ、龍哉先輩が蹴ったのって今日だよね?僕も前の日、宇佐間先生がムキムキになった体とパンツ見ちゃってさ…あれ見た瞬間気絶しちゃってさ」

 

紺子「カズミン昔から筋肉質な人苦手だしな」

 

 

白米を口に運ぶ紺子だったが、白米を口に入れた途端、急に部屋の電気がちらつく。

 

 

一海「ねえ、なんか電気ちらついてない?」

 

紺子「………そろそろ交換時かもな」

 

 

そればかりではない。外では雨が降り出し、遠くで雷鳴が聞こえてくるようになった。

雨音と雷鳴を聞いた一海は少しばかり不安を覚え、紺子は龍華と竜奈に暴いたあの過去を思い出す。

 

 

一海「帰る時間に雨降らなくてよかったね」

 

紺子(雷といえばあの日お母ちゃんが死んだ……)

 

一海「ん?出雲姐ちゃんどうしたの?顔色悪いよ」

 

紺子「いや、ちょっとな……昔のことを―――――」

 

 

 

ピシャアッ

ガラガラガラガラッ

 

 

 

紺・一「「きゃあ!!」」

 

 

雷は紺子の家に落ちたようだ。

悲鳴をあげると同時に、頭を抱えるように耳を塞いだ。

 

 

紺子「おい…今の近かったぞ!」

 

一海「てか出雲姐ちゃんどこ行ったの!?暗くて何も見えないよ!」

 

 

今の衝撃で電気が壊れたのか、紺子と一海の周りは全て闇に包まれていた。

 

 

紺子「雨が降るならまだしも、この時期に雷っておかしくね!?しかも今のせいで停電になるとかふざけんな!普通瞬断だろ!」

 

一海「出雲姐ちゃん、ここは目が慣れるまであんまり動かない方がいいと思うよ!」

 

紺子「そ、そうだな……カズミンもあんまり動くんじゃねぇぞ」

 

 

 

 

 

停電から1分、部屋の中が少しずつ見えるようになってきた。

 

 

紺子「おいカズミン。私が見えるか?」

 

一海「僕もだいぶ見えてきたよ」

 

紺子「だったら懐中電灯探さなきゃな。どこにあったっけ…」

 

一海「タンスの中にあるよ」

 

紺子「え?」

 

一海「タンスノナカニアルヨ…

 

 

声を低くし、不気味な笑みを浮かべながら呟くように言った。

 

 

紺子「ヒィィッ!?」

 

 

声が裏返るほど驚き、腰を抜かしそうになる。

 

 

紺子「そんな怖い声で言うなよ!びっくりするだろ!」

 

一海「ごめんごめん。タンスの中にあるよ」

 

紺子「タンスにあるなら別にいいけどさ!」

 

 

悪態をつきながらもタンスの前に立ち、引き出しを開けてみる。

しかし……………。

 

 

紺子「あっ、いやあああああ!!」

 

一海「どうしたの出雲姐ちゃん!?」

 

 

懐中電灯を取り出そうとしていたが、引き出しから白い煙が噴き出していた。

 

 

紺子「煙!煙出てるぅぅ……!」

 

一海「煙?あっ、これ体にかけたらありがたいんだ」

 

 

タンスの前に立った一海は引き出しから出てくる煙を全身にかける。

紺子も一海の真似をしようとしたが、彼女の頭を殴った。

 

 

紺子「そんなわけねぇだろ!どうなってやが…痛っ!!」

 

一海「痛いって何が痛いの?」

 

紺子「手突っ込んだらビリッてなった!しかも一瞬冷たかったし………あっ!!」

 

 

紺子は煙が出ている場所にハンカチを被せ、そこに手を当ててみる。

固い感触があり、ハンカチを被せられた何かは石のようなものをかたどっていた。

 

 

紺子「………お前これドライアイスだろ」

 

一海「あ、バレたか☆」

 

紺子「『バレたか』じゃねぇよ!声変えたりタンスに入れたりして、そんなに私を怖がらせて楽しいか!?」

 

一海「だってお化け嫌いな出雲姐ちゃんかわいいんだもん」

 

紺子「停電だっていうのによくそんなふざけたこと言えるな………てかこれどうやって手に入れたんだよ」

 

一海「気にしない気にしない。早く食べないと冷めちゃうよ」

 

紺子(この状態で食えるかよ!)

 

 

ドライアイスをシンクに捨てたが、またしても煙が立ち上って気になってしまう。

一海は平気で食事をするが、紺子はすっかり食欲を失い、ハンバーグを見つめていた。

 

 

紺子「…………!?」

 

 

突然、目が大きく見開かれた。まばたきをした瞬間、ハンバーグから溢れていた肉汁が真っ赤な血に変わっていた。

 

 

紺子「ふぁあああああっ!!」

 

 

紺子は驚きのあまり椅子ごと転倒してしまった。

椅子から離れると、しゃがみ込んで背中を丸め、頭を抱えて震える。

転倒した紺子を見た一海も立ち上がり、紺子に近づく。

 

 

紺子「血……血……血がぁぁ!」

 

一海「血なんて出てないよ。ケチャップと見間違えた?」

 

紺子「カズミン…!」

 

 

恐る恐る顔を上げる紺子。しかし追い打ちをかけられるように、顔がさらに恐怖に歪んだ。

 

 

一海「出雲姐ちゃん、怖がりすぎだよ」

 

紺子「うっ、わあああああああ!!」

 

 

目の前にいた一海は目も鼻も口もないツルツルの顔。そう、今目の前にいるのは一海ではなく、一海の姿をしたのっぺらぼうだった。

 

 

紺子「のっぺらぼう!のっぺらぼう~~!」

 

一海「大丈夫~?出雲姐ちゃ~ん」

 

 

のっぺらぼうは心配そうに優しい声をかけるが、紺子にとってはもう恐怖の連続で泣きそうになっていた。

いや、もう泣き出している。紺子はのっぺらぼうが視界に入らないようしゃがんで頭を抱え、泣きながら必死に懇願した。

 

 

紺子「もう嫌だお願いします助けてください夢なら覚めてください…!」

 

一海「ねえねえ」

 

紺子「いやぁっ!触んないで!」

 

一海「出雲姐ちゃん」

 

紺子「だああっ!来ないで…来ないでよ!」

 

 

泣きながら立ち上がり、一海の手を振り払おうとしたが、そこに立っていたのは………。

 

 

紺子「…あれ?カズミン?」

 

一海「怖がりすぎだよ出雲姐ちゃん。僕の顔見るなりのっぺらぼうとか言ってさ」

 

紺子「今いたんだよ!今ここにいたの!!」

 

一海「疲れてるんじゃないの?今日ゆっくり寝た方がいいよ」

 

紺子「寝てる間に変なこと起きたら嫌だよ~……カズミンがいたずらで目の前にいたらもっと嫌だよ~……」

 

一海「失礼な!いくら僕でもそんなことしないよ!」

 

 

すると唐突に全ての電気が点き、辺り一面が明るくなった。

 

 

一海「あっ、電気点いた」

 

紺子「え………?」

 

 

涙と鼻水で濡れた顔で辺りを見回す。そのうち紺子は嬉しくなり、同時に言葉が詰まった。

 

 

紺子「…………んぐっ……ぬ~~~……!」ジワッ

 

一海「?」

 

紺子「うわ~~~~ん!!怖かったよカズミ~~~~ン!!」

 

一海「ちょちょちょちょちょ、何で泣くの!?」

 

紺子「泣くわ!!タンスから煙出るしよ、ハンバーグから血出るしよ、お前を見たら顔ツルツルになってるしよ~………!」

 

 

一海に抱きつきながら大声でワーワー泣き叫んだ。この時、一海の顔は呆れていた。

 

 

一海「出雲姐ちゃん、そんなに泣いたらみっともないよ………でもかわいいなぁ」

 

紺子「一言でもいいから何か優しい言葉かけてよ!マジで怖かったんだから!」

 

 

 

 

 

紺子が泣き出してから数分後、一海は少し落ち着いたのを確認してから食事がてら先ほどの奇怪な出来事を話した。料理はすでに全て冷めきってしまっていた。

実はあの現象は引き出しからドライアイスの煙が立ち上ったことを含め、全て一海がいたずらで仕掛けていたのだ。

 

 

紺子(せっかく私が作ったハンバーグが………)

 

一海(冷めてても美味しいや)

 

紺子(こいつの味覚おかしいんじゃねぇのか!?)

 

 

しかし、あの停電は何だったのか?電気のことはあまり触れないでおこうと思っていたその時だった。

 

 

 

ドスッ

 

 

 

紺・一「「!?」」

 

 

 

どこからか何かが落ちる音がした。

音を聞いた2人は互いに顔を見合わせた。

 

 

紺子「おいカズミン、テメェ!?まだ何か仕掛けてんのか!?」

 

一海「仕掛けてないよ?幻聴じゃないの?」

 

紺子「よくわかんねぇけどさっきドスンって聞こえたぞ!?」

 

一海「ホントに違うって!何も仕掛けてないよ!」

 

 

 

ガッタガタガタガシャーン

 

 

 

紺・一「「!!」」

 

 

先ほどより大きな音が聞こえた。まるで人が暴れているような音だ。

 

 

一海「………洗面所の方から聞こえたよね?」

 

紺子「……ホントにお前じゃない?」

 

一海「違うよ!」

 

紺子「まさか……………泥棒か?」

 

一海「不吉なこと言わないでよ………」

 

 

2人は警戒しながら足音を立てないようにそっと歩き、音がした洗面所へ向かう。もし本当に泥棒なら、暴行されているか殺されているだろう。

恐る恐る顔を覗いてみると、そこにいたのは………。

 

 

紺子「…………………」

 

一海「…………………」

 

 

言葉を失った。物音を立てた正体が意外な人物だったからだ。

 

 

辰蛇「あ…………」

 

 

荒らされた洗面所にいたのは、紺子と一海のパンツの匂いを嗅ぐボロボロになった辰蛇だったのだ。

 

 

辰蛇「……………パンツ、いただき―――――」

 

 

それは一瞬の出来事だった。言葉が終わらないうちに紺子の鉄拳が恐ろしいほどの勢いで辰蛇の顔面をとらえていた。

 

 

辰蛇「バベラッ!?

 

 

殴られた辰蛇は壁に激突し、崩れ落ちる。

 

 

辰蛇「ち、ちょっと紺子ちゃん!?私の顔見るなりいきなり顔面パンチって……!」

 

紺子「私と話すよりカズミンと話した方がいいんじゃねぇのか?」

 

辰蛇「…あえ!?か、一海ちゃん……顔は笑ってるけど目が笑ってない!!

 

 

微笑みながら死んだよう目で見つめる一海には殺意まで感じられる。

この場にいたら殺されると恐怖を感じた辰蛇はこう言い放った。

 

 

辰蛇「こ、こうなった学園に代々伝わりし奥義…………逃~げるんだよ~!!

 

 

隙を突いて逃げようとした。

だがそれはあまりにも無駄なこと。以前紺子を拘束したように、一海は尻尾で辰蛇を捕まえ、縛り上げた。

 

 

辰蛇「ひゃいっ!?」

 

一海「……………」ゴゴゴゴゴ

 

 

一海は辰蛇を縛ったまま無言で外に出る。紺子も後を追って外に出た。

相変わらず雨が降り続けていた。

 

 

一海「学園長、どこか行きたいトコありますか?」ゴゴゴゴゴ

 

辰蛇「行くトコなんてどこにもないよ~!一海ちゃん、お願いだからその顔やめて!?怖すぎるよ!辰蛇泣いちゃう!」

 

 

その後の行動は素早かった。辰蛇を空中に放り投げた一海は目にも止まらぬ速さで足蹴にした後、そのままムーンサルトキックを浴びせた。蹴られた辰蛇はどこまでも飛んでいき、雨雲に隠れて見えなくなった。

私たちの学園長だぞ!?雨雲に消えた辰蛇を見た紺子は唖然。一海は何事もなかったかのような表情で雨雲を見つめていた。

 

 

紺子「うーわ…さすがに学園長相手に容赦なさすぎだろ…」

 

一海「出雲姐ちゃん、何か言った?」

 

紺子「な、何でもないです……」

 

 

今の一海にこれ以上何か言えば今度は自分が一海の足技の餌食になるだろうと思い、寒気が走った。

家に戻った2人は荒らされた洗面所を片づけることに。一方で辰蛇が嗅いでいたパンツは彼女に盗まれてはいなかった。きっと衝動的に嗅ぎたくなったのだろう。紺子はそう確信した。

だがさらに確信すべきことを思い出さなければならなかった。停電の原因だった。

 

 

紺子(学園長が来ますよって警告だったのかな?そこでちょうどいいところに雷が落ちて…………あれまだ交換時じゃなかったんだな。スゲェ焦った………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、EVOLUTION SPACEの前では仕事を終えた龍華が掃除していた。

 

 

龍華「こんな時間に雨とかふざけんなよ。今夜晴れるっつってたじゃねぇか」

 

 

悪態をついた後、中でテーブルを拭く遠呂智を呼ぶ。

 

 

龍華「マスター?雨降ってんだけど」

 

遠呂智「雨だって?そうか……風邪引いたら仕事に差し支えが出て俺が困るんだよな。掃除はもういいから早く中に入りな」

 

龍華「悪いな」

 

???「ああああああああああああ!!」

 

龍華「?」

 

 

中へ入ろうとした途端、空から女性の悲鳴が聞こえてきたを龍華は悲鳴が聞こえた方へ顔を上げる。

落ちてきたのは一海の足技を食らって吹き飛ばされた辰蛇だった。辰蛇は龍華に覆い被さるように落ち、しかも顔が龍華の胸に埋まった。

 

 

辰蛇「………龍華ちゃん、サラシほどいて?CじゃなくてGカップだってことはもう知ってるの」

 

龍華「んなぁぁ!?///////」

 

 

雨の中、辰蛇は気が済むまで龍華の胸を揉みしだいた。ところがいつまでも戻ってこない龍華に心配した遠呂智にこの光景を見られ、背後から殴られた後店内に連行された。

気づけば辰蛇は遠呂智によってまた逆さ吊りにされ、その上ボールギャグと目隠しも追加されていた。



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鍛えましょうトレーニングジム

一海たちが異生神妖魔学園に入学して数日。彼女たちは学園生活に慣れてきていた。

そんなある日の休日の朝、紺子と一海は自転車でそれぞれ別の場所へ向かっていた。

 

 

紺子「ちょっとしたダイエットのついでに強くなりたいけど、辰美が通ってるジムってどんなんだろ?」

 

一海「また師匠に特訓しろって言われちゃったよ。ゆっくりさせてほしいなぁ……」

 

 

紺子が向かっているのは近所から少し離れたトレーニングジム、一海は学園の武道館である。

紺子は少し期待に胸をときめかせていたが、一海は少々嫌そうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

紺子「これが辰美が通うトレーニングジム…」

 

 

平安時代から始まった長い人生の中で初めてトレーニングジムで鍛えるのだからやや緊張気味であった。

意を決した紺子は早速トレーニングジムに入ってみた。

 

 

紺子「あの~…」

 

辰美「あっ!紺子様じゃないですか!」

 

紺子「辰美!」

 

 

予想通り辰美がいた。

そう、辰美はこのトレーニングジムの常連客。自分を救ってくれた紺子に尽くすためにいつもここで鍛えているのだ。

 

 

辰美「紺子様も私に負けないくらいの力が欲しくてここに来たんですか?」

 

紺子「お前ほど力持ちになれるかどうかはわかんないけど………ついでにちょっとしたダイエット感覚かな」

 

辰美「ダイエットですって!?太ってないじゃないですか!ダメですよ紺子様、健康損ねちゃいますよ!」

 

紺子「女同士だからって腹つまんでんじゃねぇよ!!」

 

辰美「ボゲラッ!?

 

 

 

 

 

顔面を殴られた辰美をよそにめくられた服を直しながら中を見回すと、様々な器具が置かれている。ところがその途中、紺子にとって見覚えのある人物が目に入った。

 

 

紺子「ん?あの人まさか……」

 

辰美「ひどいですよぉ…私、紺子様のために全力で尽くしてるのにぃ…」

 

紺子「また先生見つけちゃったよ!あの人真島先生じゃん!」

 

 

視線の先には数台のエアロバイクがある。そのうち1台に乗ってペダルをこいでいる女性は紺子も辰美も知っている保健担当の鬼の教師、真島だった。

 

 

真島「ん?そこにいるのは紺子じゃねぇか」

 

 

真島はエアロバイクから降りると、自分を見つめる紺子へ近づく。

 

 

真島「どうしたんだ?お前がトレーニングジムに来るなんて……雨でも降るんじゃねぇのか?」

 

紺子「失礼だろ!てか『どうしたんだ?』じゃねぇよ!辰美がここの常連だってのはわかったけど、真島先生もここにいたの!?」

 

真島「あー…そういや言ってなかったな」

 

紺子(フォックにいた野人先生と大狼先生、EVOLUTION SPACEに来たヴォイエヴォーテ先生とトリノ先生といい、今度はここで真島先生に会うなんて、私何かの病気なんじゃねぇのか!?)

 

辰美「病気ではないです。偶然だと信じてください」

 

紺子(さりげなく心読むなー!!)

 

真島「?」

 

 

辰美の言っていることがさっぱりわからない真島は首をかしげたのだった。

 

 

 

 

 

紺子「いたのが真島先生でよかった……もし宇佐間先生だったら悲鳴の嵐だったかもしれねぇ」

 

真島「いつもズボン破るからな。俺も女だからあいつのあれ見たら間違いなく悲鳴あげてるだろうな」

 

辰美「龍哉さん、宇佐間先生のあそこ蹴って停学処分にされそうになりましたよ。学園に侵入した人間を追い払ったおかげで厳重注意に留められましたが」

 

 

紺子と真島はエアロバイク、辰美はバーベルを持ち上げながら話していた。

 

 

辰美「ところで紺子様、エアロバイクって自転車みたく走るって思ってましたよね?」

 

紺子「そりゃ思ったさ。走らないって知った時はちょっとショックだったけど」

 

真島「エアロバイクが道路走ってたらマジで走ってたら怖いだろうなぁ」

 

紺子「都市伝説にありそうだな……あっ、バーベルも持ち上げてみようかな?」

 

辰美「どうぞ」

 

 

エアロバイクから降りた紺子は辰美が持つバーベルを手にしてみた。

辰美は紺子がバーベルを持ったことを確認すると、すぐさま手を離す。

 

 

紺子「ぬわっちょ!!

 

 

当然耐えられるはずもなく、紺子はバーベルを持ったまま四つん這いのようになってしまった。

 

 

紺子「重すぎんだろ!これ何キロあんだよ!」

 

辰美「30キロありますよ」

 

紺子「最初に言え~!!」

 

辰美「私なら簡単に持ち上げられるのに………」

 

紺子「いやいやいや、今ので顔打ってたらマジでお前の責任だったからな!?この場で真島先生の治療も受けてたからな!?」

 

真島「応急処置はここのスタッフがやるから。それに俺、飲み物ぐらいしか持ってきてねぇし」

 

 

 

 

 

約1時間後、紺子はベンチに座って休憩しており、行く途中自動販売機で買ったコーラを飲んでいた。

 

 

真島「お前、そればっか飲んでると歯溶けるぞ」

 

紺子「たくさん動いた後の炭酸ってスッキリするじゃん」

 

真島「紺子はそう思ってるかもしれねぇが、逆に体に悪いぞ。ちゃんとした水分補給しろよな」

 

紺子「わかってるって」

 

真島(全然わかってないセリフだ………)

 

 

しばらくして、先ほどまでラットマシンで背筋を鍛えていた辰美がある機械を目につける。

 

 

辰美「紺子様、通学する以外に歩いたことありますか?」

 

紺子「んあ?冬以外いつも自転車だよ」

 

辰美「たまには歩かないと足腰に悪いですよ。あっちにランニングマシンありますからそれで足腰鍛えてください」

 

紺子「めんどくさっ…だったら辰美は?」

 

辰美「私はいつも魔法で浮いてるからいいんです。調子が悪い時はスケボーで通学しますが」

 

紺子「何でそんなよけいめんどくさいやり方で行くの?」

 

辰美「気にしないでください。そういう日だってあるんです」

 

 

面倒くさそうな表情の紺子は仕方なくランニングマシンに乗ることに。

速さを調節し、スイッチを入れるとベルトコンベアが動き出した。

 

 

辰美「スピードは最大にしてもいいですけど転ばないでくださいね」

 

紺子「だからこうして最初は歩いてんじゃねぇか。横から口出すなよ」

 

真島「俺もお前にはケガしてほしくねぇんだけどな」

 

 

 

 

 

やがてランニングマシンの速度を上げていくうちに、紺子の息づかいがだんだん荒くなってきた。

 

 

紺子「コーラ………コーラ………」

 

 

一旦停止させ、ペットボトルのコーラを口にする。

先ほど真島に歯が溶けると言われたが、紺子にとって疲れた体を癒すためのものに過ぎなかった。

 

 

紺子「お前魔法使えるから歩かなくていいよな」

 

辰美「ええ。魔法使えない日はやっぱりしんどいです」

 

 

辰美はそう言いながらペットボトルの水を紺子にかけた。

 

 

真島「辰美、紺子に水かけて何してんだ?」

 

辰美「すごい暑そうでしたので」

 

紺子「あのさ……そんなよけいなことしなくてもあっちにシャワールームあるから」

 

 

頭から服までずぶ濡れになっているだけでなく、ランニングマシンにもかかっていた。

 

 

真島「おい……ランニングマシン動いてないか?」

 

紺子「え?」

 

 

よく見ると、ベルトコンベアがなぜか勝手に動き出していた。

 

 

紺子「え?え……?え?」

 

 

しかもベルトコンベアの速度はどんどん上がっていき、持ち手をつかみながらでないと体勢を整えることができなくなった。

やがてランニングマシン以外にも、紺子にも異変が起こるとは誰もが予想していなかった。

 

 

紺子「ちょちょちょちょ!?誰か、誰か止めてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

真島「おい、なんか電気出てるぞ!?」

 

辰美「紺子様!早く降りてください!!」

 

紺子「それができたら苦労しねぇよ!!誰か止め―――――」

 

 

誰か止めてと言おうとした瞬間、紺子とランニングマシンがまばゆい閃光に包まれる。

辰美と真島はたまらず目をつむった。恐る恐る目を開けると、先ほどまで走っていた紺子の姿と暴走するランニングマシンがなかった。

 

 

真島「き、消えた……!?」

 

辰美「紺子様!?紺子様ぁ!!」

 

 

辺りを見回したが、壁を突き破ったわけでもない。

では紺子は本当にどこへ消えたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「な、何じゃあああああああ!!?

 

 

さて、トレーニングジムからランニングマシンごと姿を消した紺子だが、彼女はあり得ない場所にいた。

暴走したランニングマシンに乗りながら宙に浮かび、街中を走っていた。だがその街は紺子が知っているものではない。あらゆる建物が全て近未来的な作りだったのだ。

 

 

紺子「確か私はトレーニングジムで走ってて……辰美に水かけられて……何でいつの間にこんなトコにいるんだ!?」

 

 

街中を見回していたが、あることに気づいた。

周りで車が走っていることを。自分は今道路の上を走っていることを。

車はなぜかタイヤがなく、宙に浮かんでいる。

 

 

紺子「なんとか道路から抜け出さな…きゃ…!?」

 

 

そう呟いて前を向いた瞬間、紺子の顔は恐怖に歪んだ。

1台の車が紺子に向かってきていたのだ。

 

 

紺子「い、いやああああああああ!!」

 

 

紺子は悲鳴をあげながら目をつむり、顔を背けた。

 

 

 

 

 

ところが、いつまで経っても痛みが走ってこず、紺子はつむっていた目を少し開けてみる。

さっきまで紺子に向かってきていた車が見当たらない。それどころか、紺子の体には傷ひとつなかった。

 

 

紺子「私、死んでない………?いや、それより一体何が………?」

 

 

また別の車が紺子に向かってくる。紺子はまた悲鳴をあげ、車と接触してしまった。そして同時に奇妙なことが起こった。

車が紺子の体をすり抜けたのだ。遠ざかっていく車を唖然とした表情で見つめる。

 

 

紺子「おいおいおいおい!?ど、どうなってんだよ!?」

 

 

頭の中が混乱し、本当に何が起きているのかわからない。

その時、目の前がまた真っ白になる。

 

 

紺子「ううっ!?」

 

 

この時、紺子はまたまばゆい閃光に包まれていた。

たまらず目をつむり、恐る恐る目を開ける。今度は住宅地だろうか、何者かの家の屋根の上にいた。

 

 

紺子「ん?あそこにいるのは…………」

 

 

庭を見ると、3人の子供が遊んでおり、もう1人は母親だろうか、洗濯物を干していた。母親らしき女性の種族は紺子と同じ妖狐。狐の耳と尻尾が生えている。

子供にもそれぞれ種族にばらつきがあった。1人は狼の耳と尻尾を持つ男の子、もう1人は狐の耳と尻尾を持つ女の子、そしてもう1人は狼の耳と狐の尻尾を持つ女の子のような顔つきの男の子だった。

 

 

紺子「あの妖狐、いつかどっかで見たことがあるような…………いや、あの子供の中に狼男と妖狐のハーフがいたよな?じゃああの妖狐は狼男と結婚してるってことじゃん……一体誰と………」

 

 

誰と結婚しているのか考えていると、ガレージに1台の車が入った。女性はそれを察したのか、尻尾を振りながらガレージへ走り出す。

車から降りてきたのは夫であろう、銀髪のショートヘアの青年。しかし、紺子にとってあの青年の顔に見覚えがあった。驚愕の表情が紺子の顔に浮かぶ。

 

 

紺子「もしかして……あれ牙狼!?じゃあ、あそこにいんの私!?

 

 

思わず叫んでしまった。そう、紺子の目の前にいたのは未来の自分と牙狼。あの3人の子供も紺子と牙狼の間に生まれた息子と娘だったのだ。

だが未来の紺子と牙狼には聞こえていないのか、誰も反応しない。もちろん子供もだ。未来の紺子と牙狼は抱きしめ合い、今の紺子はあることを察した。

 

 

紺子「もしかして……ここって未来なのか?私、牙狼と結婚して3人の子供を産むのか!?」

 

 

気づけば紺子は牙狼との結婚生活、子供との触れ合いなどいろいろなことを想像していた。

その途端、目の前がまた真っ白になった。まばゆい閃光に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辰美「紺子様!紺子様!」

 

真島「大丈夫か!?目開けてくれ!」

 

紺子「ん………」

 

 

辰美と真島の声が聞こえる。目を覚ますと、辰美と真島の顔があった。

壁に激突したのだろうか、そばには無残に壊れたランニングマシンがあった。

 

 

辰美「紺子様!おケガはありませんか!?」

 

真島「念のためにケガがないか確認するか!?」

 

紺子「ケガなんてしてないよ………なあ辰美、真島先生………」

 

辰・真「「?」」

 

紺子「………このランニングマシン、暴走したら未来とか行けたりするのかな?」

 

真島「いや、お前は何を言っているんだ?」

 

辰美「頭打っておかしくなっちゃったんですか?」

 

 

心配していた辰美と真島だったが、紺子の一言によってさらに心配する羽目になった。

その後紺子は体重計に乗ったが、2キロ痩せていた。



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武道館での模擬戦

紺子がトレーニングジムにいる一方、一海は武道館にいた。師匠と呼ばれるとある男に呼び出されたらしいが、武道館にいるのは一海だけでなく、司と龍華もいた。

 

 

ラインハルト「一海、足技だけでは他の敵には勝てんぞ?腕と手も使え」

 

一海「そう言われても僕は昔から足技一筋でして…」

 

剛力「お前そのうち武道の授業受けるだろ。特に剣道とかあるだろうが。足技だけだったら師匠、アドバイスのしようがないぞ」

 

 

以前新入生の歓迎式でヴォイエヴォーテに話したあの言葉が脳裏をよぎる。

そう、ラインハルトの弟子とは一海のこと。ラインハルトにとって本人の言う『下賎な輩』に一海が襲われているところを生理的に痛めつけて殺したことは今でも昨日のようにはっきりと覚えている。

生徒を傷つけられ、激怒するのはヴォイエヴォーテと同じ。だがそのまま相手を殺す彼とは全く違うのだ。傍観者はこう叫ぶだろう。「悪魔だ!血も涙もない悪魔だ!」と。

その血も涙もない悪魔に呼び出された生徒が一海以外に司と龍華もいるのである。

 

 

龍華「俺たちもラインハルト先生についてきたのはいいけど…」

 

司「なぜ俺様だけ脅迫されたんだ………」

 

ラインハルト「2人でボソボソ話すでない。悪いが卿たちも1日一海の特訓につき合ってもらうぞ」

 

剛力(ラインハルト先生あっちで脅迫してたの!?)

 

 

ここで異議を唱えれば今度は自分がどんな目に遭うかわからない。そんな恐怖に剛力は黙ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

一海「ところで砂道焔のことですけど、師匠も剛力先生もその話聞いてるんですよね?つまり僕たちを呼んだのって………」

 

ラインハルト「我々もその話は聞いた。赤川龍哉が追い払ってくれたらしいが、卿たちはいつ悪質な輩に襲われてもおかしくない。その身を守るためや砂道焔を倒すための対策としてここへ呼んだのだ」

 

龍華「兄貴、宇佐間先生のあそこ蹴って停学処分になりかけてたんだけど」

 

剛力「宇佐間先生何があったの!?

 

司「体操の際またズボン破ろうとしてな…」

 

 

だが司がしゃべっている途中、剛力は司に鋭い視線を浴びせた。

どうやらあのことをまだ恨んでいるようだ。

 

 

司「いや、ちょっと待って!?俺様何か変なこと言った!?」

 

龍華「変なこと言ったも何も、たぶんあのこと根に持ってるんじゃね?ほら、お前覚えてるか?ポケットに剛力先生のハンカチが―――――」

 

司「だあああああああああ!!!!や、やめてくれェェェ!!それ以上言うなァァァァアアァアァアアア!!!!

 

 

一生忘れられないこと………つまり司にとってあの暴力はトラウマとなっていた。

全て思い出してしまった司の悲痛な叫びが武道館に響き渡った。

 

 

剛力「こいつどんだけ俺に恐怖抱いてんだ!?そんなに怖かったんか!?」

 

龍華「たぶんそうかもしれねぇ…」

 

ラインハルト(傍から見た私にとっては問題行動だと思ったがな)

 

 

 

 

 

体育に起きた出来事の一部始終を龍華が話したが、剛力の顔は血の気が引いていた。

 

 

剛力「タバコとか持ってきちゃいけないもの持ってきたとかじゃなかったのか!?あいつが宇佐間先生の股間蹴るとか前代未聞だぞ!」

 

ラインハルト「ですが宇佐間殿にとっては自業自得とも言えるでしょう。剛力殿はそう考えられなかったのですか?」

 

剛力「考えるも何も、開いた口が塞がりませんよ!」

 

ラインハルト「とにかく、無駄話はここまでにして早く模擬戦を始めましょう」

 

剛力「は、はあ……わ、わかりました……」

 

 

不思議とラインハルトから剛力に対しての威圧感が滲み出ていた。

 

 

一海「やっぱりこの人の威圧感すごい…僕でもわかる………」

 

 

 

 

 

それから10分後、ようやく模擬戦が幕を開けていた。一海、司、龍華の3人による対決だ。

ラインハルトの言う通り、一海は足技を得意としており、腕を使うことは全くない。そのため司と龍華に隙を突かれ、つかみ技を受けてしまう。

 

 

司「オラ、だらしねぇぞカズミン!」

 

一海「っ………!」

 

 

司に首をギリギリと絞め上げられ、上手く声を出せない。さらには景色がずれて見える。

ところが龍華が司の隙を突き、背後からの奇襲として司の後頭部に頭突きした。

 

 

司「ぐわぁ!!」

 

 

たまらず一海を離してしまい、後頭部を押さえながらのたうち回る。

それをよそに龍華は首を押さえて咳き込む一海に声をかけたが、もう1分ほど絞められていたら間違いなく死後の世界を見ていたとのことらしい。

 

 

龍華「ラインハルト先生に先に言われたけど、カズミン。足技を多用すんのはいいけど、せめて手も使えよ。司みたいにつかみ技使ってくる奴もいるし、足技のほとんどが大振りになるぞ?攻撃に使わなくてもせめて受け流すか防ぐぐらいしとけ」

 

一海「大会で優勝した君が羨ましいよ。僕だってそうしたいけど、難しくて…………」

 

剛力(そういえば雨野の奴、『昔行われた武闘会で最年少で優勝した』っつってたな……だったら俺必要なかったんじゃないのか?いや、ラインハルト先生が知らないだけか?)

 

司「カズミン、隙ありィ!!」

 

龍・一「「!!」」

 

 

一海が龍華のアドバイスを受けているのをいいことに、司は龍華を体当たりで突き飛ばすと、そのまま一海の腕をつかんだ。

突き飛ばされた龍華はそのまま壁に激突し、埋まってしまった。

 

 

剛力「雨野ォォォォォ!!」

 

司「損して1本取れとはこのことかもしれねぇな。さっきは油断してたが、これで1対1の勝負ができるなぁ………?」

 

 

それを言うなら損して得取れだろう。司の顔はもはや別人のように歪み、同時に狂気的な笑みが表に出ていた。

 

 

ラインハルト(こいつは調子に乗りすぎて後で痛い目に遭うことを知らぬのか?まあいい、もし泣かせた上にさらに追い討ちをかけるような真似をした場合、私が直々に相手をしてやるとするか………)

 

 

司の別人のような顔を見た一海はもはや泣きそうな顔になっていた。

 

 

一海「は、離し…て………」

 

司「あ?」

 

一海「離してよ!!

 

 

 

グワキィィン!!

 

 

 

司「ガアアアアアアアア!!?

 

龍華「カズミン!?」

 

 

恐怖に耐えきれなくなった一海が司の股間を蹴っていた。

同じ頃、壁から抜け出した龍華がその光景を見てしまった。あの時と同じだ。自分の兄貴的な存在の龍哉が宇佐間の股間を蹴る光景が、今自分が見た目の前の光景と完全に一致している。

よほど怖かったのか、飽き足りないのか、一海は司に追い討ちをかけるように股間を何度も蹴っていた。

 

 

一海「これでもか!!これでもか!!」

 

司「ごわっ!!ギャイン!!」

 

剛力「藤井!ストップストップ!竜宮寺の股間蹴りすぎだ!」

 

 

剛力が一海を止めようとする中、真っ先に駆けつけたのは龍華だった。

急に現れた龍華に何が起こったのかわからないような表情をする剛力には気づかず、そのまま一海を羽交い締めにする。

 

 

龍華「よせカズミン!司のライフが0から振り切ってマイナスになっちまう!」

 

一海「だって…だってぇぇぇぇ!!」

 

 

だって怖かったんだもんと言いたいが、途中涙で言葉が詰まってしまい、その上一向に司の股間を蹴るのをやめない。

それを無言で見ていたラインハルト。何も言わぬまま武道の授業が終わった時同様上着のボタンを外し、めくる。下のTシャツに書かれていた言葉は―――――

 

 

 

 

 

【誰か止めてやってくれ】

 

剛力「ラインハルト先生!?藤井はラインハルト先生の弟子でしょ!?」

 

 

ラインハルトは無言で再び上着をめくる。

 

 

【どう止めろと?】

 

 

上着の中のTシャツがいつの間にか別の言葉が書かれたものに変わっていた。

 

 

剛力「いつの間にTシャツ変えたんですか!?」

 

【さっきです】

 

剛力(この人ひょっとして自覚ないのか!?もしそうならさっきみたいなTシャツ着て出かけているのを想像したら…………………ダメだ、考えたくねぇ!!想像しただけで寒気がしてきたァァァァァァァァァ!!

 

司「ぐぎゃああああああ!!」

 

龍華「カズミンンンン!!マジでヤメルルォォォォ!!」

 

 

ようやく止まった頃には一海は龍華に抱きつきながら泣きじゃくり、蹴られ続けていた司は泡を吹きながら気絶していた。



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バステト様からの依頼!神罰代行!

トレーニングジムと武道館での騒動から翌日、紺子は数人の生徒たちと神守の車に乗せられていた。

 

 

神守「集まったのは出雲、藤井、赤川、螺子巻……ふむ、いい人材だな」

 

龍哉「先生、俺たちを乗せてどこに連れてくつもりなんですか?」

 

綾野「見ればわかりますが神守先生は私たちを変な場所へ連れていくつもりはありません。ある用事があって自分の家で私たちと話をするつもりでしょう」

 

紺子「どうせあれじゃね?進捗どうとか成績がこうとかだろ?」

 

神守「勘違いするな。我は別にあっちの方にお前たちを紹介する気はさらさらない。それに成績のことでもないが、来れば今にわかる」

 

 

神守はアクセルをふかし、紺子たちと共に自宅へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここは神守の家。彼女には猫耳と尻尾が生え、古代エジプトの神の服装をしているため、種族は文字通りバステト。古代エジプトに関する像やミイラの棺を模したレプリカが飾られ、さらには道具や武器が置かれていた。

紺子たちはテーブルの前で神守が淹れてくれた紅茶とケーキを口にする。頬が落ちそうなほどの美味しさだ。

 

 

一海「それで、僕たちを呼び出した理由って?」

 

神守「ああ。お前たちを呼んだのは他でもない。我は見ての通りバステト…猫の神。猫を愛し、猫に愛され、猫を救う存在でもある。エジプトにいた頃から全ての猫及び人間から信仰を受けていたんだが………………」

 

 

見ると、神守の眉間にはシワが寄っていた。どうやら激しい怒りを感じているようだ。

 

 

神守「最近、うちの近所で猫をいじめる人間がいる!これは動物愛護法違反だ!今すぐ警察に言いつけてやりたい気分だ!」

 

龍哉「気持ちはよくわかりますが、注意はしたんですか?」

 

神守「注意だと?そんなもの、あいつはただ『あーはいはいわかりましたよ』ぐらいにヘラヘラと聞き流すだけだ。まるで右耳から入って左耳から抜けていくような感じで無性に腹が立つ」

 

紺子「じゃあ私たちを呼んだのって、その猫をいじめてる奴に罰を与えてくれっていう頼…ビボッ!?

 

 

紺子が紅茶を飲みながらしゃべった途端、むせる。鼻に紅茶が入ってしまったのだ。

鼻に紅茶の香りが充満し、鼻の穴から紅茶が滴る。

 

 

神守「飲みながらしゃべるんじゃない」

 

一海「出雲姐ちゃん面白っ!『ビボッ!?』だって!お願い、もっかいやって!」

 

紺子「う、うるせぇ!マジで死ぬかと…!」

 

一海「やらないの?つまんないなぁ…」

 

綾野「一海、あなたは自分の姐を笑うなどサドですね。マスター、大丈夫ですか?」

 

 

綾野はハンカチを紺子に差し出した。

だが一海は気になった。出雲姐ちゃんがマスター?この先輩の?

 

 

紺子「わ、悪いな……」

 

綾野「気にしないでください。私はマスターが大好きなんです。あなたもそうでしょう?『綾野先輩マジ大好き!』と言っていたではありませんか」

 

一海「ていうか先輩。何で先輩って出雲姐ちゃんをマスターって呼ぶんですか?」

 

綾野「私の動力源は基本ガソリンですが、1週間に1度補給する必要があります。歯車を回せば必要ありませんが、去年1度だけ怠ってしまいました」

 

龍哉「ロボットでもミスすることってあるんですね…」

 

 

綾野は話を続ける。

 

 

綾野「命が尽きそうな中、このマスター……出雲紺子様が歯車を回してくれました。実は私には最初に私にガソリンを補給させるか歯車を回してくれた人をマスターと認識するシステムが導入されているんです。そのシステムが働いたのをきっかけに、私は紺子様をマスターと認識するようになりました」

 

龍哉「そんなことが……紺子、ちょっと羨ましいぞ…………」

 

紺子「いや、あれはたまたま私が助けただけで…」

 

一海「とか言っちゃって、ホントは先輩のこと好きなんでしょ~?」

 

紺子「違げぇよ!!よってたかって好き勝手言いやがって!!もうその話はおしまい!!//////」

 

 

顔を真っ赤にしながら怒鳴った。それを見ていた神守は。

 

 

神守「話を戻すぞ。お前たちを呼んだのは猫をいじめる奴の件を聞いてほしかっただけではない。あいつに罰を与えてほしいことも含まれている」

 

綾野「罰?」

 

神守「我が口で言っても全く通じないからな。そこでだ、奴にトラウマを植えつけてほしいのだ。意味はわかるな?殺す必要はないが、まずは奴を動けないように縛り、空き缶や小石をぶつけろ。特に螺子巻。お前が罰を与えると絶対お前に恐怖し、二度と表へ出れなくなるだろう」

 

紺子「あ~、綾野先輩ならやりかねないだろうなぁ……」

 

綾野「無論そのつもりです。神守先生は殺す必要はないと言いましたが、システムを起動させればいつでも殺せます」

 

龍哉「やめてくださいよ綾野先輩!!マジで冗談に聞こえませんから!!」

 

 

 

 

 

うろつくより家の前で待てばすぐに犯人が見つかると言われたのだろう。神守の家を出た紺子たちは彼女の家の門の前で待機することになった。

龍哉がふと紺子の方を見ると、なぜかたそがれていた。

 

 

龍哉「おい紺子、何たそがれてんだ?」

 

紺子「いや…………猫って聞いて昔うちで飼ってたモーちゃんを思い出してたんだ」

 

龍哉「モーちゃん?」

 

 

首をかしげる龍哉。こいつ猫なんて飼ってたか?という不思議そうな表情を浮かべた。

 

 

紺子「私が名づけたんだ。冬だったかな……だいたいその時期に私が拾ってきたんだよな。生後5ヶ月ぐらいでさ、しかも死にかけてたから…」

 

一海「死にかけてるどころか、あれアルビノだったよね」

 

紺子「うん。拾われてからずっとうちで暮らしてたけど、私とカズミン妖狐だろ?私たちの妖力のせいで妖怪になっちゃったんだ。しかも化け猫の段階を飛ばして猫又にな」

 

綾野「猫は10年経つと化け猫、さらに5年経つと猫又になると聞きますが、その猫又はどこに?」

 

紺子「アルビノ患者は寿命が短いっていうじゃん。猫は死期が近くなると姿を消す。あいつにはどっちも当てはまるもんでな………私たちに黙って勝手にいなくなりやがって………あいつの最期見守りたかったのに………何で?どうして?」

 

 

気づけば紺子は涙を流していた。

 

 

一海(あの猫、僕みたいに1人ぼっちだったって出雲姐ちゃん言ってたっけ。僕も1人なんて嫌だった。いずれあの人たちの後を追って死ぬつもりでいたし………もし出雲姐ちゃんと出会ってなかったら今の僕はここにいなかった。僕はこんなところで出雲姐ちゃんと別れるわけにはいかないんだ)

 

龍哉「カズミンまでどうしたんだ?」

 

一海「いや…別に」

 

 

そんな中、綾野があることに気づく。

 

 

綾野「神守先生が言っていた猫をいじめる人間のデータを確認」

 

紺・一・龍「「「!?」」」

 

綾野「性別は男。さらに推測すれば、目の前に猫。このまま放っておけばあの猫の命が危ないでしょう」

 

 

この時、紺子はすでに泣くのをやめていた。

 

 

紺子「そ、それで場所は?」

 

綾野「神守先生の家の後ろ……路地裏です。私についてきてください」

 

龍哉「わかりました!よし、お前ら!すぐ急ぐぞ!二度と猫をいじめないようにさせるためにも!猫を助けるためにも!」

 

一海「はい!」

 

紺子「天国で見ててくれ、モーちゃん!私たちの勇姿、お前にも教えてやるからな!」

 

 

猫を助け、猫をいじめる男に罰を与えるためにも全力で走る。特に紺子は帰ったら自分が飼っていた猫が写っている写真に自分はよくやったと伝えるつもりでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって路地裏。神守が言っていたあの『猫をいじめる男』がいた。

目の前には傷ついた猫。その猫は体を丸めて怯えているが、男を引っ掻こうと今にも飛びつきそうな姿勢にも見える。

ちょうどその時、紺子たちが駆けつけてきたことに気づき、その方向へ顔を向ける。

 

 

男「誰だお前ら?興冷めな……」

 

紺子「興冷めもチョウザメもあるか!神守先生が言ってた猫をいじめる奴ってのはお前か!?」

 

男「………お?てことはお前ら、あの自称神の猫女の仲間か。あいつに代わって注意しに来るなんて、あいつすっかり気が抜けちまったみてぇだな。生意気なガキ共だが、その勇気は褒めてやるよ」

 

 

龍哉は怒りに震え、男の前に出ると、胸ぐらをつかむ。

 

 

龍哉「テメェ!動物の命はそんなに軽いもんじゃねぇんだぞ!その猫みたいな小さい命も、猫より大きい人間みたいな命もたったひとつしかない!俺たち人外だってそうだ!お前は命の大切さを考えたことがあるか!食べる前に言う『いただきます』は『()()()()()()()』の意味!お前は何の意味もなく食べてきたのか!?感謝もせず食べれればそれでいいと考えてきたのか!?」

 

男「命はいずれ尽きるんだよ。お前ら人外だってそうさ。寿命を迎えたり殺されたりすればおしまいなんだよ。そんな世の中で生きて何が悪い?」

 

 

男は悪びれることなく答えた。

彼の言葉を聞いた龍哉は怒りが爆発しそうになり、血液が沸騰しそうなほど全身が熱くなるのを感じた。

 

 

男「もういいだろ?そろそろあの猫いじめたいんだが」

 

紺子「よくねぇよ!私たちは神守先生に頼まれて来たから引き返すわけにはいかねぇんだよ!」

 

男「ったく、なーにが猫をいじめるなだよ。俺に罰する奴なんていないくせに。いっそ殺そうかなぁ?たかが1匹殺しても、ニュースやったとしたって誰も興味持たねぇし……な…………!?」

 

 

一海の顔を見た男は突然驚愕の表情を浮かべた。

男の言葉を聞いた一海の顔中に刻印のようなものが刻まれており、目が白く染まっているではないか。

他の3人も動きが止まった一海に不思議と彼女に目を向けると、男同様驚いた。

 

 

龍哉「お、おいカズミン!?一体どうした!?」

 

綾野「一海の妖力が数十倍に膨れ………いえ、数百………………数千!?まだ上がっています!」

 

紺子「カズミン!何があって…」

 

一海?「黙れ。今『妾』は機嫌が悪い………………!

 

 

声は一海そのものだったが、まるで別人と話しているような雰囲気で全員鳥肌が立った。

この時、紺子は一海が数日前に言っていた言葉を思い出した。なぜ一海は怒る自分を嫌うのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子『なあカズミン。何でそんなに怒る自分が嫌なんだ?』

 

一海『僕たち藤井一族は代々『玉藻前』の血筋を持っているんだ。僕もその血を強く引いてるけど、はっきり言って、その力を使うのが怖いんだ……………自分が自分じゃなくなるんじゃないかって。だから制御するために1本の尻尾は白く染まってるんだ。でも、僕がキレたらその1本が8本と同じ色に戻ってしまい、最悪自分を見失っちゃう………だから、もしそうなったら………………もしも相手を殺そうとしていたら、僕を………………『玉藻前』を止めて。出雲姐ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「まずい………!」

 

綾野「マスター、何がまずいのですか?」

 

 

紺子は急いで一海の状態を説明しようとするが、一海はすでに行動していた。

男を見る一海の目は凍りつくように冷ややかだった。

 

 

一海(玉藻前)「いざや呪え、常世咲き裂く怨天の花。数多の怨霊となりし生き物よ、愚かにも命ありける者を辱め陥れる者に憑依し、心を荒らせ

 

男「て、テメェ…変な呪文唱え…ダグァ!?

 

 

男は猫を見るや否や、腰を抜かした。先ほどまで猫を怯えさせていたのに、今度は逆に男が猫に怯えていた。

一海は下等生物を見下すような目で見つめ、猫を見る男は壁まで後ずさる。さらには徐々に過呼吸になってくる。

 

 

紺子「おいカズミン!!もうやめろ!!殺しになるぞ!!」

 

一海(玉藻前)「………『妾』はただ、かの愚かしい人間にトラウマを魂にまで植えつけているだけだが?

 

紺子「目を覚ませカズミン!!元のカズミンに戻ってこい!!おい、聞いてるのかカズミン!!」

 

綾野「一海、私たちの声が聞こえますか!?神守先生も『トラウマは植えつけてもいいが殺すな』と言っていました!」

 

龍哉「そうだ!そいつを殺しても何の得もないぞ!お前はそんな奴じゃないだろ!頼む!正気に戻ってくれ!!カズミン!!」

 

男「■■■■■■■■■■■■■■■!!

 

 

いくら説得しても止まる気配はなく、男も容態が次第に悪化していく。このままでは本当に死んでしまう。

本当にまずいと思った紺子は、こう言い出した。

 

 

紺子「もしやめてくれたら、明日の夜私のお腹を好きにしてもいいから!!戻ってこいよカズミン!!!!!

 

 

紺子が叫んだその時、一海に異変が起きた。顔中の刻印が徐々に消えていき、目の色も元通りになり、そのまま気を失った。

一方で男もぐったりと横たわった。それをよそに紺子は倒れた一海を抱き抱える形となった。

 

 

綾野「……………確認しました。あの男に命の別状はありません」

 

龍哉「危なかった………一時はどうなることやら………」

 

紺子「………とにかく、先生の家に行って報告しよっか」

 

 

傷ついた猫は去っていく紺子たちの背中を黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、紺子たちは職員室にいた。登校するなり神守に呼び出されたのだ。

神守は新聞を取り出し、その一面を紺子たちに見せる。

 

 

神守「この記事を見てくれ」

 

 

その一面の写真に写っていたのは昨日猫をいじめていたあの男。その男が精神病院に入院したとのことだった。

さらに読むと、たまたま通りかかった人間が男に声をかけ、目が覚めるや否や、男は急に「ねこがいるそこにねこがいますねこがあらゆるばしょにいますだれでもねこはいます―――――」と意味不明の言葉を言い出したらしい。

何があったのか聞けず、ただただ『ねこですよろしくおねがいします』などうわ言ばかりしゃべり続けているという。

 

 

神守「確かにトラウマを与えろとは言ったが、ここまでやるか………?それはいいとして、藤井」

 

一海「はい?」

 

神守「出雲たちが言うに、キレて男にトラウマを呼び起こしたようだが、覚えているか?」

 

一海「……………キレて?」

 

紺子「キレてたよ!?スッゲェ怖かったからな!?まるで別人みたいだったからな!?」

 

一海「……別人、か。でも死んでないってことは、出雲姐ちゃんたちが止めてくれたってことかな?」

 

紺子「全力で止めようとしたわ!私の一言で元に戻れたけど!」

 

神守「その様子だとわけありのようだな。キレた瞬間玉藻前になるなんて聞いたことがないが、今回は不問とさせていただく」

 

 

そう言って、朝のHRが始まる前に4人を教室へ戻らせた。地下の秘術室から辰蛇の悲鳴が聞こえたような気がしたが、いつものことだろうと思い、あまり気に留めなかった。

だが神守だけは全て知っていた。

 

 

神守「あの学園長………挨拶代わりに耳と尻尾をいじってきおって」

 

 

眉間にシワを寄せ、今日配る予定の小テストをまとめながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘術室から聞こえてきた悲鳴は本当に辰蛇のものだった。

なぜなら神守の猫耳と尻尾をいじった報復としてライオンの檻に入れられたのだから。

 

 

辰蛇「イィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!!⊆¥○♂☆Ω×*■※~~~~~!!!

 

 

血まみれになりながら噛みつかれたり振り回されたりしていた。

抵抗しても全く無意味。再びライオンの牙の餌食となり、角をかじられてそのまま振り回された。

 

 

辰蛇「お願いだから出してよぉぉぉぉぉぉぉ!!!助けてぇぇぇぇえぇえぇえええぇええぇええええぇぇぇぇええぇぇぇええぇぇぇえぇえ!!!!




今回は猫関係の話だったので青龍騎士さんが出してくれたお仕置きを使わせていただきました。
もちろん放課後までずっとあのままです。


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死神と妖精と眠れる少年

チャイムが鳴り、1時間目の授業が始まったその頃、死纏さんは退屈そうに校門の前に立っていた。

 

 

死纏さん「………なーんか空から人が落ちてきそうな気がするのは俺だけか?」

 

 

青空を見上げながらありもしないことを呟く。長年学園の警備員を務め、まれに不審者を見つけることは死纏さんにとっては当たり前。おかげで最近無気力であることは自分でもよくわかっていた。

そんなありもしないことを想像していたその時。

 

 

 

ドオオオオオオオン

 

 

 

死纏さん「!?」

 

 

鳴り響いた轟音と共に地面が揺れた。全く立てないほどの震動を味わった死纏さんはすぐに悟った。これは地震じゃない、隕石ほどではないが何か巨大なものが落ちた音だと。

轟音が聞こえた場所はプール。だがプールは夏にならないと使えない。まさか不審者か?とにかく行かなければいつ何時生徒や教師の身に危険が及びかねない。

 

 

死纏さん「……めんどくせぇけど行くしかねぇか。仕事だし」

 

 

鎌を携えると、音がしたプールへ。だが音の正体が()()()()()()()()()に驚くなど全く予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金「よーし、みんなぁ!今日はプール掃除するよぉ!」

 

 

一方プールには、学園内の清掃を担当する妖精たちが集まっていた。彼らにはそれぞれ個性があり、明るい性格の者もいれば、泣き虫な性格の者やいたずら好きな性格の者もいる。中にはのんびり屋として茶を飲んでいる者も。

清掃担当といっても、冬の間プールだけは掃除できなかった。学園のプールはビニールを張る屋根つきタイプ。プール納めになると必ずビニールを外さなければならなかったので致し方なし。雪が積もっていた影響でかなり汚れていたので念入りに掃除する必要があった。

 

 

青「うー……なんだか嫌な予感がするよぉ……」

 

黒「心配することはないわ。ここには偉大なりし暗愚の帝王の生まれ変わりのあたしがいるのよ!嫌な予感なんてあたしがぶっ飛ばすわ!」

 

紫「そもそも騒ぎが起こることなんざいつものことだろ」

 

灰「………………」

 

緑「まあそれが平和の証なのかもしれないねぇ」

 

赤「飲んでる場合!?」

 

茶「ね、ねえ……とにかく掃除始めよう?」

 

橙「水浅めに入れといたよ!」

 

桃「あら、早いわね~」

 

黄「早く掃除して、いたずらしたい!」

 

赤「ちょっと、ブンブン回さないで!」

 

白「それじゃあ早く掃除始めよう!」

 

 

妖精たちがデッキブラシを持ち、プールに入ろうとしたその時。

 

 

 

ドオオオオオオオン

 

 

 

プールの真ん中に得体の知れない何かが落ちてきた。轟音と共に地に立てないほどの震動が起こる。

妖精たちはパニックのあまり、辺りを走り回る。中には泣き出す者もいれば、この世の終わりだと叫ぶ者も。

だが金だけは落ちてきたものの正体がわかった。これは隕石ではないと。だが隕石ではないとすれば、これは一体?同じく死纏さんも音が聞こえたプールに駆けつけてきた。

 

 

死纏さん「あっ、お前ら!」

 

金「死纏さん!さっきプール掃除しようとしたらあんなものが!」

 

青「うわ~ん!!死纏さ~ん!!」

 

死纏さん「隕石…?じゃなさそうだな………おいテメェら!すぐ警戒態勢に入れ!隕石じゃなくてもいつ何が起きるかわかんねぇぞ!」

 

金「落ち着いてよ、死纏さん!確かにあれは隕石じゃないけど、よく見て!人っぽいよ!?」

 

 

金が指す方向を見るや否や、死纏さんは話を聞かず、人らしきものに鎌を投げつけようとする。

 

 

死纏さん「人だとしてもそいつが危険な奴なら排除して輪廻転生させなきゃ意味ねぇだろうが!」

 

紫「いや、屋上から落ちて死にかけてた変態トカ…いや、学園長すら送ろうとしてたよな!?」

 

死纏さん「今の学園長が死んだら誰が次を務めるんだって話だよ!」

 

灰(今ライオンに襲われて死にかけてるんだけど!?)

 

緑「ん?あれは………紙?」

 

 

ところが、ある1枚の紙が宙を舞い、それが死纏さんの足元に落ちた。

 

 

死纏さん「ん?何だこれ?」

 

 

死纏さんが拾うが、そこに文章が書かれていることに気づくのにあまり時間はかからなかった。

拾った紙には、こう書かれていた。

 

 

【眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ……決して目覚めることのなき眠りにどうかつきたまえ……その眼を開く時に宇宙の理は崩落し、ただただ無に帰すであろう……】

 

 

文章を読んだ死纏さんは落ちてきたものと文章を交互に見合わせる。目を凝らすと、そこにいたのは玉座に座ったパジャマ姿の少年………人間で言えば中学3年生ぐらいだろうか。なぜか布団を被せながらスヤスヤと眠っていた。

 

 

死纏さん「あいつ宇宙から落ちてきたのか。痛くないのか?だが眠ってるとはいえ、何か危険な能力を持ってるかもしれねぇから警戒しねぇとな」

 

赤「死纏さん、他にも何かトカゲと人形みたいなのが…」

 

死纏さん「あ?」

 

青「ホントですね。寝てる人の従者かな……」

 

死纏さん「うかつに近づいたら危ねぇぞ。俺が確かめるから離れててくれ」

 

 

妖精たちに離れるように促し、警戒しながら近づく死纏さん。少年の足元を覗いてみると、そこにいたのは。

 

 

死纏さん「…………トカゲはいいとして、粘土細工ってどういうことだよ」

 

 

玉座の下には1匹のトカゲが下敷きになり、玉座の周りには4体の粘土細工が目を回して倒れていた。

 

 

死纏さん「うーん……………()()()()()()()()()()()()()()

 

妖精全員『!?』

 

死纏さん「だが宇宙から落ちてきたってことは…」

 

アルケー「皆さん仲良く揃って楽しそうですね」

 

 

振り向くと、先ほどの音と震動で駆けつけてきたアルケーと南原がいた。

 

 

死纏さん「校長か。南原まで来てどうしたんだ?」

 

南原「校長に頼まれて来たんですよ。さっきすごい地震が起きたとか……」

 

黒「地震ってあれのことですか?」

 

 

黒が玉座に座っている少年を指しながら言った。それから妖精たちは先ほどの出来事を説明したが、いくら説明しても南原は信じてくれなかった。

 

 

南原「空から人が落ちてくるとかあり得ないですよ。おとぎ話じゃあるまいし」

 

橙「信じてくださいよ南原先生!ホントに空から降ってきたんですよ!」

 

南原「信じろって言われても信じられないですよ。私ずっと職員室にいたですよ」

 

死纏さん「なら近くで確かめてみろ。玉座に変なのいてちょっと引いたから」

 

南原「いいですよ。私が直接見て、もし何にもなかったら帰るですよ」

 

アルケー「南原先生、気をつけてくださいね」

 

 

口笛を吹きながら少年に近づく南原。しばらく少年と玉座を見合わせていたが、急に顔色が青ざめた。

 

 

南原「………………」

 

 

真っ青な顔で無言で死纏さんとアルケーに近づく。妖精たちも様子がおかしい南原に心配している。

 

 

アルケー「どうしました?顔が青いですよ」

 

南原「………私、あの子の正体知ってるですよ。もし話したら大変なことになるかもしれないので黙っておくですよ」

 

金「南原先生?」

 

死纏さん「おい、南原?」

 

南原「……………………」

 

 

南原は黙ったまま職員室へ戻っていった。

死纏さんもアルケーも妖精たちも顔を見合わせる。

 

 

アルケー「…………」

 

死纏さん「あいつ、全てを知ってるような顔だったよな………いや、待てよ?南原の種族はトルネンブラ………てことはあいつも…………」

 

 

死纏さんが言葉を続けようとした途端、1体の粘土細工が死纏さんのローブを引っ張った。

まるでそれ以上言うなと警告しているようにも見える。

 

 

死纏さん「うげっ!!な、何だこいつ!?粘土細工なのに動いてやがる!!」

 

灰「き、金……なんか怖いよ………」

 

金「だ、大丈夫だよ……大丈夫……(ホントにそう信じたい……)」

 

紫(敵じゃなさそうって言ってたんだけどなぁ………)

 

アルケー「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ死纏さん。この粘土細工、『私たちの話を聞いてくれ』って伝えたがってるんですよ?それに………この子以外にも仲間がいますし」

 

死纏さん「こいつに仲間?なあ校長、どっかおかしくなったのか?」

 

アルケー「失礼ですね。私はいつでも正常です。座ってる子をよく見なさいな」

 

 

ローブを引っ張った粘土細工以外の3体はすでに目を覚ましており、玉座の下敷きになったトカゲは手当てを受けていた。

そのうち1体が最初から所持しているであろうスケッチブックに何か書いている。書き終わると、自分たちの前に来てほしいと言うように手を動かして促す。

 

 

死纏さん「今気づいたけど、あの寝てる奴背中に触手生えてんじゃねぇか…まあ、敵じゃなさそうだったし、行ってみるとするかね」

 

 

 

 

 

粘土細工の筆談によると、常に玉座に座って眠っている少年の名は『浅井冬睡』、粘土細工とトカゲは青の言っていた通り彼の従者らしい。トカゲは浅井が座っている玉座を運ぶ足役。4体の粘土細工は子守、筆談及び感情表現、他の2体は生活補助を担当している。

常にまぶたを閉じているので浅井の目の色はわからないが、宇宙から落ちてきたため、アルケーが言うに「きっと宇宙のように神秘的に煌めいているんでしょうね」とのこと。一方で浅井が敵ではないと知った妖精たちはすでに安心していた。

 

 

死纏さん「食事とかどうしてるんだ?いつもお前らが食わせてるのか?」

 

 

筆談役は再びスケッチブックに言葉を表す。五感が機能している者もおり、食事は生活補助役が食べさせているのでなんとか大丈夫とのこと。

だが彼らは年中無休。1日中浅井の世話をしなければならないので、休息できる時間がほとんどないんだとか。いや、できるといえば疲れた体を癒すためにコーヒーを飲むことぐらいである。給料や休日をくれと言いたいが、彼らはアルケーや死纏さんみたくしゃべれないので苦情のくの字も出ない。

だが従者たちが死ねば浅井も生活できないので、彼の目が覚めるまで必死に世話を務めなければならない。例え体調不良でも、ケガをしていても。眠り続ける浅井を支えられるのは彼らしかいないのだ。

 

 

死纏さん「何だそのブラックすぎる仕事。寝るだけで生きられるとかその時点でスゲェよ」

 

アルケー「フフ…浅井冬睡さんでしたっけ?あなた、見たところ転校生のようですね?」

 

浅井「……スゥー」

 

 

微笑みながら浅井に聞くアルケーに筆談役は慌ててスケッチブックに言葉を書く。

 

 

【なぜわかった?】

 

アルケー「私の勘がそう言ってるんですよ♪」

 

浅井「む……んん……」

 

【そうです、私が異生神妖魔学園に転校することになった浅井冬睡です】

 

死纏さん(俺たちの言葉は通じるのか……てかその時点でおかしくね?普通声かけられたら起きるだろ)

 

【浅井様に言葉は通じても決して目を覚ましません】

 

死纏さん(こいつさりげなく心読みやがった!?)

 

 

一方、アルケーたちの会話を聞いていた妖精たちは。

 

 

緑「僕たちの存在………」

 

灰「すっかり空気…」

 

黄「だね」

 

 

完全に存在を忘れられていた。そして掃除することすらも忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、住む場所を燃やされ、EVOLUTION SPACEに居候している貴利矢は。

 

 

貴利矢「さっきの音、学園からだったよな……こりゃ誰かやって来たみてぇだなぁ。空から落ちてきたってことは、確か種族は…………ダメだ、全然わかんねぇ。まるで塗り潰されてる感じだ」

 

 

真相を突き止めるべく学園に行く準備をしていた。



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舌寺の腹舐めへそ舐め騒動

1時間目の終了の合図を知らせるチャイムが鳴った。

紺子たちが受けていた授業は体育だった。内容はバスケットボールで、ある程度基礎的な動きを学んだ後、紺子チームと一生チームそれぞれ8人ずつにわかれて対決。

特にライバル関係である紺子と一生、ボールの取り合いになるとさらに試合が白熱化。だが紺子チームには龍哉とディーゴがいる。2人の運動神経の抜群さによって紺子チームは勝利。乱は勝利の祝いに紺子に激しくキスをした。

 

 

 

 

 

それから女子更衣室にて、いつものように開始前同様ガールズトークをしていた。

 

 

紺子「だからさぁ、乱。お前のキス激しすぎるんだって。燐斗先生みたくチューマシンガンとか引くわ」

 

乱「だって嬉しかったんだもん。龍哉とディーゴにもやったけど、やっぱりこんこんが一番だよ」

 

紺子「私にとっちゃストレスしか溜まんねぇんだよ!いつもいきなりすぎるわ、濃厚すぎるわ……!もうちょっと薄めにできねぇのかよ! 」

 

辰美「まあまあ紺子様、そんなことおっしゃらずに」

 

 

辰美がなだめるが、すでに着替え終えた龍華が声をかけてきた。

 

 

龍華「俺たちもう着替えたけどまだ終わんないの?」

 

紺子「もうちょっとなんだけど……あれ?リボンどこ行ったかなぁ………」

 

 

ほぼ着替え終えている紺子だが、いつも胸元につけているリボンを見失ったようだ。

どこかに紛れてしまったのだろうか、更衣室全体を探してみることにした。

 

 

紺子「あれがないと困るんだよな。お気に入りなのに……」

 

龍華「紺子、俺たちもう行くからな。次の授業に遅れちまうし」

 

紺子「構わないよ。私も見つけたら全力ダッシュで行くから」

 

仁美「じゃあお先~」

 

冷火「冷火も先に行きますね(私だって待ってられねぇわ!ちゃんと目に入るトコに置いとけってんだよ!)」

 

紺子「うん。じゃあねー」

 

 

女子たちが次々と出ていき、更衣室に残ったのは紺子ただ1人。そんな彼女に悲劇が訪れるなど考えてもいなかった。

 

 

紺子「あっ!あった!」

 

 

やっとリボンを見つけた紺子はすぐに胸元に結んだ。

 

 

紺子「なーんでこんなトコにあったかわかんねぇけど、すぐ走って教室に戻んねぇとな」

 

 

リボンの形を整え、更衣室を出ようとしたが、急に何者かの不気味な視線を感じ取った。

 

 

紺子「!?」

 

 

紺子の全身に寒気が走り、更衣室を出ようとした足がすくんで止まる。

更衣室には紺子しかいない。まさか学園長が隠れているのか?だが辰蛇は今秘術室のライオンの檻に入れられている。

そんなことは露知らず、視線に恐怖する紺子はすぐにここから出ようと動かない足をなんとか無理矢理動かそうとしたその瞬間。

 

 

 

 

 

???「紺子っち、つっかまーえたー♪」

 

紺子「ひえあぁ!?」

 

 

背後から聞き覚えのある声が聞こえ、赤い蛇のような紐のようなベトベトした何かが紺子を縛ってきた。

なんとか拘束を解こうとするが、縛りつける力が強すぎる。全身を腕ごと締めつけられているせいで動くことすらできない。

 

 

紺子「さっきの声………この舌………ちょっと!舌寺先輩だろ!おい!どこに隠れてんだよ!」

 

舌寺「こ~こで~す。ここ、ここ~」

 

 

床下から声が聞こえる。床を見ると、先ほどまで開いていなかった床板が開いており、その下には下品そうに笑う舌寺がいた。

 

 

紺子「い…い…いやあああああああああ!!」

 

 

更衣室に紺子の悲鳴が響き渡り、舌寺は床下から出てくると、そのまま紺子の背後に回った。

 

 

紺子「ち、ちょっと……いつの間にそこにいたの……!?授業どうしたんだよ………!?」

 

舌寺「授業?こっそり抜け出したんだけど、それが何か?紺子っちのお腹急に舐めたくなったからずっとそこに隠れてたんだよね~」

 

紺子「それこそ問題だろ…!ねえ、ホントにどうしちゃったの舌寺先輩…!?」

 

舌寺「ん~?俺っちは別にいつも通りだよ~。垢嘗の舌は長いからこうやって人のこと捕まえられるんだよね~」

 

紺子(思いっきりパクってる!?尻尾で人を捕まえる私をパクってんじゃねーか!)

 

舌寺「いや~、それにしても紺子っちの怖がってる顔もすっごくかわいいですな~。このまま舐めればどうなっちゃうのかな~?」

 

紺子「へ?い、いや…ちょ、待っ―――――」

 

 

 

ペロッ

 

 

 

紺子「てゃあっ!!/////////」ビクンッ

 

 

余った舌先が服のはだけた部分から出ている腹を舐めた。紺子は身を震わせ、顔を赤らめる。

 

 

舌寺「うん!やっぱり紺子っちのお腹は趣がありますなぁ!」

 

紺子「私のお腹予約済みだってのに………今夜カズミンがいじるって決めてるのに………」

 

舌寺「カズミン?カズミンって誰?」

 

紺子「私の妹みたいなもんだよ…この光景、あいつに見られてみろ…?あんた、絶対骨も残らないぞ………」

 

舌寺「別にいいじゃん。俺っちの魔法で気持ちよくなろうよ~」

 

紺子「舌寺先輩がやってるのは魔法じゃ―――――」

 

 

 

ペロッ

 

 

 

紺子「にゃひぃっ!!/////////」

 

 

反論する前にまた舌先で舐められた。

 

 

紺子「ひ、人がしゃべってる間に~…!////」

 

舌寺「反論させないよ~ん。これからもっとペロペロしちゃうよ~ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、一海たち1年はというと。

 

 

一海「次の授業体育だったよね」

 

無亞「ああ。でもなぁ……俺の顔つきと声女の子みたいだろ?気分で学ランかセーラー服着るけど、今日セーラー服着てきちゃってさ」

 

 

次の授業のために体操服を準備していた。

 

 

ココ「絶対笑う人いないと思うです。女子更衣室に来れば…」

 

一海「ココ、全然フォローになってないよ」

 

ココ「えー!?」

 

藤一「お前ホンマバカやなぁ……」

 

ココ「あーーーーもう!!藤一さんまでバカって言うー!!

 

藤一「だって、しゃーないやん!お前昔からそうやんけ!魔法も今までに一度でも役立ったことあったか!?しょっちゅう暴走してはったな!」

 

無亞「バカにつける薬はないってのはこのこった」

 

ココ「いい加減にしてくださいですぅ!!それ以上言ったらまた魔法使うですよぉ!!

 

 

 

ポンッ

 

 

 

霜「やめなさい。じゃないとマジで凍らせるよ?Did you understand?

 

ココ「ひ、ひゃいぃっ!?」

 

一海「霜が聞いたことない英語しゃべった!?」

 

 

このクラスにはもはやココを脅しで黙らせることが板についてきていた。

そうしているうちに体育館に行くことになったが、特に女子たちは更衣室で目を疑うものを見るとは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、未だ更衣室にいる紺子はまだ舌寺による舌責めを受けていた。

 

 

紺子「も、もうやめてぇ……そろそろ次の授業に行かないと怒られちゃうぅ………/////」

 

 

完全に快楽の海に沈んでいた。それどころか体も言うことを聞かず、むしろ涙目になりながら舌寺の舌責めをもっと求めていた。

 

 

舌寺「悪いけどもうちょっとつき合ってよ~。口ではやめてって言えても紺子っちの体は正直だよ~?」

 

 

紺子はまだ舌寺の舌で縛られているが、突然舌先が紺子の腹を舐めるのをやめた。安堵のあまり胸をなで下ろした。

 

 

紺子「はあ………はあ………もうこれで満足なのか?もう戻ってもいいのか?/////」

 

舌寺「ん~~~……まだだね」

 

 

舌寺は両手を紺子の腹へ回すと、へそのふちへ添えた。

 

 

紺子「ま、またおへそぉ~……//////」

 

 

腹舐めに続き、やっと終わったと思ったら今度はへそ。紺子はもう泣きたい気分だった。

 

 

舌寺「まずはへそを整えないとね~」

 

 

舌寺は優しい声をかけた後、へその中身を押し出すかのようにふちをギュウギュウ引っ張り始める。

若干痛みを感じるが、紺子は舌寺の手を払いのけたい。だがそれは不可能。舌寺の長い舌によって完全に動きを封じられているのだから。

 

 

紺子「舌寺先輩…や、やめ…!」

 

 

必死に拒否しようとするが、もちろんこれは無駄な抵抗。なす術もなく以前一海にされたようにへその中身が押し出され、出べそになってしまった。

 

 

紺子「わ…私のおへそがまた出べそに………」

 

 

とうとう紺子の目から涙が溢れ出た。紺子のへそが出べそになったと知った舌寺はいやらしい表情で彼女の前に立ち、出べそをつついた。

 

 

紺子「んひゃぁんっ!//////」

 

舌寺「全く、出べそになってもかわいいですな~♡」

 

 

それから舌寺は再び舌先で紺子を舐めようとする。次は出べそのつもりだった。

 

 

紺子「え……い、いや…やめて……私、おへそも弱い………」

 

 

 

ペロッ

 

 

 

紺子「はひゃあっ!!/////////」

 

 

出べそを舐められ、変な声を出す紺子。出べそを舐め、うっとりした表情になる舌寺。

だがそんな舌寺に天罰が下る。

 

 

紺子「もうやだ………誰かぁ……カズミン、龍華……助けてぇ………//////」

 

 

泣きながら長いつき合いである妹と友人の名を出しながら呟いた。

 

 

舌寺「授業なんかサボっちゃって、俺っちと一緒に快楽の世界へ―――――」

 

???「行・か・せ・な・い・よ?

 

舌寺「!!?」

 

 

背後から殺意がこもった声が聞こえ、同時に紺子は快楽から抜け出した。

舌寺が振り向くと、声の主は一海だった。さらに他にいる女子の一部がゴミを見るような目をしていた。

 

 

紺子「か、カズミン……?」

 

一海「変態が………出雲姐ちゃん縛って何してたの?

 

 

冷たい目をしながら問う一海に舌寺は慌てて紺子を縛っている舌をほどく。

 

 

舌寺「え……あ…み、みんなも舐められに来たの?いやぁ、自分から舐められに来るなんて光栄―――――」

 

霜「先輩、氷は大好き?」

 

舌寺「大好きだよ、そりゃ。雪女の君も舐めたい気分になっちゃ―――――」

 

 

この時、霜は質問している最中手を冷気を包ませていた。答えた瞬間、氷の鉄拳が舌寺に直撃。そのまま氷漬けになった。

 

 

一海「……………」

 

 

一海は無言で氷漬けの舌寺を蹴り飛ばす。舌寺は階段を転げ落ちた後、そのまま滑って体育館の外へ。

 

 

メリー「学園内きっての変態がいるって先生から聞きましたが、あの先輩だったんですね」

 

 

紺子「そうなんだよ~~~!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

紺子は大泣きしながら一海に抱きついた。

 

 

一海「そんなに怖かったんだね……でもあれで懲りればいいんだけど………」

 

紺子「アホか!あの変態だぞ!?あれで懲りるわけねぇだろうがよ!化学薬品も舐めるほどで病院送りになったことも少なくないしよ~!ていうか今のホントに怖かった~~~~~!!うわああああああああん!!」

 

メリー「紺子さん、泣くのはいいですけどチャイム鳴っちゃいますよ」

 

 

メリーの言葉も耳に入らず、紺子は次の授業が始まる合図のチャイムが鳴るまでずっと一海に抱きついて泣き続けた。



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お前ペルセウスに殺されただろとか言ってはいけない(戒め)

技術室には2年のクラスがすでに集まっており、チャイムが鳴り終わるとその担当の教師が入ってきた。

名は『石蛇ヒトミ』、種族はメドゥサ。髪の毛が蛇で、目を合わせた者を石にしてしまう女の怪物だ。そのため生徒を石化させないよう、常に両目を黒い包帯で覆っている。

しかし、技術室に入るなりうつむきながら、

 

 

石蛇「アテナは殺す………いつか殺す………」ブツブツ

 

 

と、小声で謎の恨み言を呟いていた。

だが教卓の前に立つなり、すぐに生徒たちの前を向く。

 

 

石蛇「あ、さっき言ってたことは忘れてね」

 

龍哉(忘れられる気がしないわーっ!!)

 

石蛇「では改めまして、私はメドゥサの石蛇ヒトミ。技術を担当させていただきます」

 

 

自己紹介と号令が終わると、石蛇は誰かいないことに気づく。

 

 

石蛇「なんか1人足りないわね。出雲紺子だったっけ」

 

龍華「紺子!?いや、ちょっと待て!あいつまだ更衣室にいんのか!?」

 

辰美「何か探してた様子ですし、遅くなるのは当たり前なんじゃないですかね?ですが時間かかりすぎじゃないかと私も………」

 

盾子「ひょっとしてトイレじゃない?たぶん便秘だったりして」

 

 

だといいんだがなという目をする龍華だったが、戸が開く。入ってきたのはなぜかぐずり泣く紺子だった。

 

 

紺子「ひっぐ……あぐ…ぐすん………」

 

龍華「って紺子!?入ってくるなり泣いてるとかどうした!?」

 

 

紺子の腹の表面が唾液で濡れているばかりでなく、へそも出べそになっている。

 

 

紺子「舐められた………」

 

盾子「え?」

 

紺子「舌寺先輩だよぉ………あの変態に舐められたぁ………」

 

高見「嘘でしょ!?あの変態いつの間に更衣室にいたの!?全然気づかなかった!」

 

紺子「リボン結んで出ようとしたらいてさぁ……舌で私の体縛ってお腹とおへそ舐めてきてさぁ……すっごく怖かったし気持ち悪かったよぉ…………」

 

辰美「あああああ紺子様、泣かないでください!ハンカチ貸しますからこれで拭いてください!」

 

 

辰美からハンカチを借りた紺子はしゃくりあげながら舌寺の唾液でベトベトになった腹を拭く。唾液まみれの出べそも拭いているうちに引っ込み、元の縦長のへそに戻った。

 

 

一生(出べそな狸は見たことあるけど出べそな狐は見たことないな…)

 

石蛇「ほら紺子ちゃん、もう授業始まってるから座って」

 

紺子「…………」

 

 

席に座った紺子だが、ディーゴが手を挙げる。

 

 

ディーゴ「先生、ちょっといいですか?」

 

石蛇「何?」

 

ディーゴ「年齢も気になりますけど、メドゥサってあのギリシャ神話の怪物じゃないですか。ペルセウスに首はねられて殺されたのに―――――」

 

石蛇「はい、ギルティ。石になりなさい

 

 

凍えるような声で言い放った石蛇はうつむきながら目の包帯を外すと………。

 

 

 

シャーーーーッ!!!

 

 

 

ディーゴ「へああああああああああああ!!?

 

 

瞳を不気味に光らせながら鬼のような形相になり、頭の蛇と共に威嚇するような声をあげる。

ディーゴは恐怖に顔を歪めながら灰色になって固まり、座ったまま動かなくなった。

 

 

許人「でぃ、ディーゴが石になった………」

 

 

許人はもちろん、石化したディーゴと先ほどの石蛇の声で全員鳥肌が立っていた。

 

 

石蛇「何度も言ってるけど、私に向かって姉さんのこととか年齢のこととか禁句だからね。今日の技術は石像作りよ」

 

 

何事もなかったかのような顔で目を閉じ、包帯を巻き直しながら言った。

 

 

獄宴「僕たちも絶対言わないようにしないと…!下手したら粉々にされる…!」

 

炎宴「さすがにそれはないでしょ」

 

死宴「でも授業終わる時間には元に戻れるじゃない。あの目で睨まれたらたまったもんじゃないわね」

 

石蛇「無駄口禁止」

 

獄・炎・死「「「あっ、はい」」」

 

 

 

 

 

しばらくして、石蛇の言う通り石像作りが始まった。

全員は班にわかれ、石蛇に石にされたディーゴをモデルに自然石で彫っていく。

班はこの通り。

 

 

1班:紺子、龍哉、辰美、乱

2班:ライエル、仁美、司、セー

3班:獄宴、冷火、龍華、盾子

4班:許人、高見、一生

 

 

紺子「いくら手先が器用でも私石像なんて作ったことないんだけど!?」

 

龍哉「椅子とかそういうのかなって思ってたけど、ディーゴが悪口言うなんてびっくりしたぜ」

 

セー「恨むよ、ディーゴ……」

 

ライエル「決まったものはしょうがないよ」

 

冷火(もうこれ技術じゃねぇよ!美術だよ!コーティア先生だったら喜んで取り組んでるだろうけど!)

 

 

全員ディーゴに対して文句ばかりぶつけ、技術室がざわめく。それもそのはず、ディーゴが石蛇に言ってはいけないことを口に出したのだから仕方ない。

一方2班では司だけ手を動かさず、何か考えている。

 

 

ライエル「司、手動かしてよ」

 

仁美「全然動いてないけど、何か考えてるの~?」

 

司「いや、考えてるっちゅーか………さっき入ってくる時独り言言ってたろ?誰か殺してやるとかそういう―――――」

 

石蛇「何か言った?」

 

 

司の言葉に反応した石蛇は彼を睨む。まるで自分に対する悪口だったら石にしてやろうかという風に。

 

 

司「いや、さっき―――――」

 

 

その瞬間、石蛇のただならぬ殺意を感じ取ると、とてつもない寒気を感じた。

以前模擬戦で一海を怖がらせ、股間を何度も蹴られたことを思い出し、すぐに床について頭を何度もぶつけながら土下座する。

 

 

司「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいどうか股間を蹴るのだけはやめてください死んでしまいます男として人生が終わりますお願いします何でもしますから―――――」ガンガン

 

紺子「司!?」

 

石蛇「そ、そこまでしないわよ……てか、なぜ私があなたの股間を蹴らないといけないのよ………」

 

司「今回だけはホント勘弁してください!!すいませんでした!!マジでごめんなさい、許してください!!股間潰れたらマジで死にます!!お願いします、この通りです!!」ガンガン

 

 

何度も頭を床にぶつけながら土下座する司に石蛇は何も言えず、引いていた。

だが龍華を除く生徒は愕然としていた。あのプライドを持っていそうな司が先生の前で土下座するのを見るなど、剛力のハンカチを盗んだ時以来だった。

そして龍華は察していた。これ絶対トラウマになっているな、と。

 

 

龍哉「おい龍華!?何でお前だけ驚いてねぇんだよ!?あの司が土下座してんだぞ!?」

 

龍華「いや、俺あいつがあそこまで土下座する理由がわかるからな……まさかトラウマになるとは思わなかった……」

 

紺子「何か知ってんのか?」

 

龍華「司と一緒にカズミンの模擬戦につき合ってた時にさ、あいつがカズミンの腕つかんだ時………股間蹴りやがったんだ」

 

紺子「……………あっ」

 

 

あの日紺子はトレーニングジムにいたのでわからないものの、龍華の話を聞くと何があったのかすぐに察した。

 

 

龍華「俺メッチャ焦ってカズミン止めたんだけど、メッチャ怖かったのかまだ足りなかったのか知らねぇけど、何度も何度もあいつの股間を蹴りまくってたんだよ………俺でも早いって思うほどの蹴りを司の股間に連続で当てたんだぞ?」

 

冷火(いやいやいやいや、どんだけだよ!?そりゃトラウマになるわ!!)

 

セー(何だろう…想像したら僕も震えてきた………)

 

石蛇「ご、ご愁傷様です………」

 

龍華「もう剛力先生焦ってたし、ラインハルト先生なんてTシャツで会話してたりで、もう大混乱だったぜ……」

 

石蛇(ラインハルト先生が!?)

 

 

 

 

 

この後石像作りが再開されたものの、石蛇はなぜか始終までラインハルトのことを妄想していた。

脱線はしなかったものの、まだ頭をぶつけながら土下座している司を除き、彼らは石蛇ののろけ話を聞きながら石像を彫る羽目になった。

 

 

冷火(……………終わったら石蛇先生に聞こう。ネタが浮かび上がるかも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、霜に氷漬けにされた舌寺はグラウンドの真ん中にいた。

上半身の部分が溶けた中、舌寺は氷を美味しそうに舐めていた。なんとかして溶かそうという焦りは全くなかった。

 

 

舌寺「ウヒョヒョヒョヒョ!あの雪女に凍らされたのはちょっと悔しいけど、ひんやりして最高ですなぁ!」

 

 

振り向くと、さらにひんやりする気分を味わった。

額に青筋を浮かべ、容赦ない殺意を漂わせている南原が仁王立ちしていたのだ。

 

 

舌寺「ヒエッ!?」

 

南原「授業サボってグラウンドで氷舐めてるとかのんびりできて羨ましいですよ……」ゴゴゴゴゴ

 

 

凍りつくような冷たい笑みを浮かべる南原。つかまれた舌寺はやめてくれと懇願するが、音楽の授業をサボっている。音楽に全力で取り組む南原にとっては絶対許せない行為だと認識していた。

 

 

南原「サボりも断じて許さんですよー!!

 

舌寺「■■■■■■■■■■■■■■!!!!

 

 

声にならない悲鳴をあげる舌寺。南原が去った後に残ったのは上半身を埋められ、氷漬けの下半身を地面から出している舌寺だけだった。



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体育館と音楽室にて

最初に言っておきますが、1年の体育の方は完全にネタ仕込みです。


紺子が救出され、舌寺が報復を受けて少し時間が経った頃。

 

 

一海「……………」キュー

 

 

気絶した一海を除き、女子全員が絶叫していた。

二度とズボンを破らないと決めた宇佐間がまた体操前に筋肉を増大させ、ズボンを破っていた。

 

 

大狼「は、はわわわわぁ!!宇佐間先生、もうズボン破らないって言ってたのにぃぃぃ!!」

 

宇佐間「いや~、家で何回かこの癖抑える練習したんだけどね~。やっぱり体操前に筋肉膨れ上がらせないと俺が俺じゃなくなる気がして……」

 

大狼「そんなことしてたらまたいつ蹴られるかわかりませんよ!?」

 

宇佐間「大丈夫だって。龍哉君みたいに阻止しようと思う子がいなければ―――――」

 

 

だが男子の中では殺意のオーラを漂わせる者が1人いた。

旧神の無亞だった。顔は笑っているが、目が笑っていない。宇佐間はそんな彼を見て驚きのあまり声が裏返り、恐怖で顔が青ざめた。

 

 

無亞「そういえば宇佐間先生、前に赤川先輩に股間蹴られてたよなぁ?」

 

大狼「な、無亞さん!?宇佐間先生の股間はどうかやめてあげてくださいぃぃ!!」

 

無亞「安心しろ。俺は股間を蹴ったり殴ったりしねぇ……」

 

霜「なんだか嫌な予感が………」

 

 

宇佐間と大狼はひと安心していたものの、無亞と一海以外全員は嫌な予感を抱いていた。

無亞は殺意の笑顔を保ったまま宇佐間に問いかける。

 

 

無亞「ところで宇佐間先生、少し質問だ。右の拳で殴るか、左の拳で殴るか、当ててみな」

 

宇佐間「ヒェ!?」

 

大狼(どっち選んでも殴られるだけじゃないですかぁ!?)

 

宇佐間「ひ、ひと思いに…み、右で……お願いします……」

 

 

宇佐間は恐怖で引きつった顔で答えた。しかし無亞は。

 

 

無亞「NO!NO!NO!NO!NO!」

 

宇佐間「ひ、左!?」

 

無亞「NO!NO!NO!NO!NO!」

 

宇佐間「り、両方ですか!?」

 

無亞「YES!YES!YES!YES......YES!!」

 

宇佐間「も、もしかして『ヨグ=ソトースの拳』での『オラオラ』ですかぁ!?

 

無亞「YES!YES!YES!Oh My God......」

 

 

ちなみにヨグ=ソートスとはクトゥルフ神話に登場する神の一種。外なる神の副王の座につく存在………いや、空虚。あらゆる大地、宇宙、物質を超えた空虚。時空との隣接及び超越、内包している最強の神とも呼ばれる。

旧神の無亞はその力を持っているため、背中と無数の空間からは触手が生えている。つまりこれは無亞にとっての戦闘形態だ。

 

 

無亞「『ヨグ=ソートス』の力をその身で体感してみな」

 

宇佐間「ゴバッ!?」

 

 

空間から生えた触手が宇佐間へと向かって伸び、殴り飛ばす。他の触手も一斉に宇佐間に襲いかかり、目に見えないほどの速さで次々と殴っていく。

無亞自身も足がふらつく宇佐間の前に立ち、背中の触手でアッパーカットを決めた。天井に殴り飛ばされた宇佐間の頭が刺さった。

 

 

大狼「……………」ポカーン

 

 

大狼は天井に刺さった宇佐間に呆然とし、無亞は気絶した一海に声をかけながら揺り起こす。

 

 

無亞「カズミン、起きろ。俺が片づけておいたぞ」

 

一海「う、う~ん………」

 

麻由美「………龍華先輩もあんな感じみたいにできるのかな………?」

 

 

その後授業が終わるまでの間、宇佐間はずっと天井に刺さったままだった。

仕方なく大狼が代わりに進めたが、途中転んでしまい犬のような声を出しながら涙目になることもあった。

 

 

大狼「きゃんっ!くぅ~ん……」

 

藤一「この人たちが先生でホンマに大丈夫なんかなぁ…」

 

 

小声で呟く藤一であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方音楽室にいる3年の生徒たち。舌寺にジャーマンスープレックスを決めて戻ってきた南原は開いた口が塞がらなかった。

牙狼たちのクラスメイトである3本の尻尾を持つ猫の妖怪がバイオリンで美しい音色を奏でていたのだ。その猫は演奏を終えると、音楽室に牙狼たちと南原による大きな拍手喝采が巻き起こった。

 

 

南原「そこの猫のあなた、とても感動したですよ!私がいない間こんな美しい音色を奏でてたなんて素晴らしいですよ!」

 

遠呂智「ホントにすごかったよな。バイオリンの才能あるんじゃねぇのか?」

 

猫の妖怪「そ、そんなことないよ………美弥妃ちゃんがバイオリンのきれいな弾き方を教えてくれただけで……」

 

南原「え?」

 

美弥妃「それでもすごいよ!教えただけでここまで上手になるなんて、才能あるよ!才能あるよ!」

 

 

先ほどまで感動していた南原だったが、美弥妃のおかげと聞いた途端ポカンとした。猫が上手く弾けたのは美弥妃が教えてくれたこと。

美弥妃さんが教えてくれた?南原は意味がわからず、そう思いながら混乱する。ジャックが言っていた『留年111年目の残年生』の通り、テストはいつも全教科0点。卒業できないでずっと異生神妖魔学園にいることはすでに知っていた。そんな彼女が猫にバイオリンの弾き方を教えてくれるとは聞いたこともなかった。もちろん他の教師も知らない。

そんな彼女のおかげでバイオリンを弾けるなんて考えられなかったが、あることを思い出していた。

 

 

南原(そういえば美弥妃さんほどじゃなかったけど、前に点数が低かった生徒がいた………でも次のテストで急に点数が上がって90点以上も取った。カンニングした様子も不自然な動きもなかったのにあの点数………一体どんな勉強であの点数取れたのか全くわかんないですよ)

 

 

もしや美弥妃と関係があるのでは?もしそうなら0点が不自然に思えてくる。

疑問に残る南原だったが、あまり深く考えていると今の時間に差し支えが起こるかもしれないと思い、頭の片隅に置いておくことにした。そしてバイオリンを上手に弾いた猫を褒めた。

 

 

南原「大変よくできましたですよ♪また聞かせてくださいですよ♪」

 

美弥妃「教えた甲斐があってよかった、よかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャイムが鳴り、それぞれ教室に戻る全生徒。石化したディーゴを自分の尻尾に巻きつけた紺子は一海と2人の先輩と会話していた。

 

 

王臥「おや、ディーゴ君が石化してますね」

 

紺子「石蛇先生に禁句言っちゃったからね。あの時間始まる前にまた舌寺先輩に舐められたもんだし散々だよ」

 

牙狼「あいつまた紺子のお腹舐めたのか…どうりでなかなか来ないと思ってたよ」

 

紺子「でもこうやっておへそ出してねぇと全然しっくり来ねぇし、体操服も裾結ばねぇと私じゃねぇ気がするし」

 

 

腹をなでるついでにへそに指を入れる。

 

 

一海「どんだけこだわってんの?パンツ丸出しのパジャマ姿もそれと同じでしょ。それより出雲姐ちゃん舐めてた舌寺先輩ですけど、どうなったんですか?」

 

王臥「自業自得というものですよ。グラウンドで氷舐めてたところを南原先生にジャーマンスープレックスかけられたと聞きました」

 

一海「………あっ」

 

 

全てを察したような顔をする一海。それもそのはず、先ほど起きた出来事なのだ。

 

 

牙狼「何か知ってるの?」

 

一海「知ってるも何もあの先輩の名前大狼先生から聞いたんだけどね。始まる前、出雲姐ちゃんのお腹とおへそ舐めてるのを見たんだ。霜が凍らせて、僕が体育館の外まで蹴り飛ばしたんだけど、そこから出雲姐ちゃんもう大泣きだったよ。出雲姐ちゃんのお腹もうよだれまみれだったし、おへそも出べそになってたし」

 

紺子「リボン結んで出ようとしたらいたんだよ。気持ち悪いったらありゃしねぇよ」

 

王臥「そういう性格なんです、仕方ありません」

 

牙狼「あっ、こっちも南原先生がいない間に美弥妃がバイオリンの弾き方教えてくれてね」

 

 

しばらく話しているうちに石化したディーゴが元に戻った。

 

 

ディーゴ「お前いつまで縛ってんの?きつくてしょうがないんだけど」

 

紺子「今日の授業美術っぽくなったの誰のせいだと思ってやがる。お前石蛇先生の悪口言ってたじゃねぇか。自覚ないの?」

 

ディーゴ「グボッ!?(あの時意識はあったけど目の前真っ暗だったから…!)」

 

 

ディーゴは紺子の尻尾に縛られたまま吐血しながら気絶した。

 

 

一海「あ、死んだ」

 

紺子「たぶん死んでねぇだろ。それより美弥妃先輩だっけ?留年111年目なのは知ってるけど、バイオリンの弾き方教える時急に天才的になるって……」

 

王臥「他の教科もそうですよ。小テストも0点ですが、人に教える時だけはびっくりするほど頭がよくなります。それで逆に人気がありましてねぇ」

 

紺子「私もたまに美弥妃先輩が教えてくれることあるけど、スラスラしゃべってたっけ。意味わかんなくて混乱するよ」

 

王臥「あまり深く考えてはいけません。卒業したくなくてわざと留年してるのかもしれないと考えた方がいいですよ」

 

紺子「うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、体育館の天井に刺さった宇佐間だが、一海たちと大狼が出ていった後ユウジ11に助けられていた。

 

 

宇佐間「いや~、助かったよユウジ君。無亞君にやられて困ってたけど安心したよ」

 

ユウジ11「手間かけさせやがって。これから授業だってのに。まあ校長に頼まれたからしょうがねぇが」

 

宇佐間「恩は必ず返すからさ。今日筋トレにつき合ってくれないかい?」

 

ユウジ11「テメェの頭はそれしかねぇのか………むしろ仇で返してるだろ」

 

 

筋肉をアピールする宇佐間にユウジ11はもはや呆れるしかなかった。



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探究心は止まらない

ユウジ11「あーい、授業やるぞー」

 

 

宇佐間を助けたせいで授業時間が少し削れてしまったユウジ11は気だるそうに言った。

いや、面倒くさがり屋なのは以前からのことだ。

 

 

冷火(前からだけど先生がやる気ゼロってどういうことだよ!)

 

龍哉「チャイム鳴っても全然来なかったから仮病使ったのかなって思いました」

 

ユウジ11「いくらめんどくさそうな俺でもそんなことしねぇっつーの。働かなきゃ生きてけねぇっつーの。ラーメンも食えねぇっつーの。さっき宇佐間の変態野郎が体育館の天井に刺さっててな」

 

紺子「宇佐間先生何があったの!?」

 

ユウジ11「1年の黒神無亞って奴の触手でボコボコにされたらしい。ズボン破ったらこうなったって言ってたな」

 

紺子「あの先生もうやらないって言ってたのにまたやったのか………」

 

 

呆れ顔の紺子に龍華はジーンズを破った宇佐間を想像してみる。

 

 

ユウジ11「ていうか、毎年クトゥルフにまつわる奴が入学してんのか?だいたい50年ぶりに起動して働き始めたからわかんねぇけど」

 

ディーゴ「人外しかいないから当たり前っすよ」

 

龍華「誰があの先生のパンツ望むかってんだよ。もういっそのこと俺のコーヒー飲ませようかな?」

 

冷火(だからそれであのド変態野郎の制裁になるのかってんだよ!)

 

龍華「それかマスターのダークマターを…」

 

ユウジ11「食わせるなよ?いくらあいつが変態でもかわいそすぎるぞ。よーし、やるのめんどくせーけど教科書開け。ヨーロッパのページな」

 

 

 

 

 

授業が進む中、これらはテストによく出る重要なものだとユウジ11は断言した。

今日やった内容はヨーロッパ州の国々の名称や時差はもちろん、自然や農業、民族など様々なものだった。

 

 

ユウジ11「気候は必ずテストに出るからなー。西岸海洋性気候と地中海気候だが、特に前者は名前を書くだけじゃねぇ。記述も出すからちゃんと覚えとけよー」

 

龍華「数字マジ嫌い………進むか戻るかすらもさっぱりだぜ」

 

獄宴「農業3つ?名前は覚えられそうだけどどこでやってるとかは全然わかんないよ……」

 

ユウジ11「おいそこのケルベロス。わかんないからってぬいぐるみと教え合うのは完全にアウトだかんなー。テストの日は終わるまでどっちも預からせてもらうぞー」

 

獄宴「う…」

 

炎宴「仕方ないでしょ。決まりなの」

 

死宴「寂しいのはわかるけど終わるまで我慢してちょうだい♡」

 

 

まさにその通りだった。獄宴は常に両肩に犬のぬいぐるみ、炎宴と死宴を乗せているケルベロスの少年。去年の中間テスト、期末テスト、学年末テストもそうだった。朝のHRが終わるや否やすぐに炎宴と死宴を没収されていたのだ。

だが以前の小テストは?没収しないが、周りに聞こえないように教え合いなさいと言われていた。

 

 

ユウジ11「まあ俺がカンニングしてる奴見つけたら間違いなく殺っちゃってるけどな」

 

龍哉「それ猫いじめてる奴殺そうと考えた綾野先輩と同じじゃないですか!?ユウジ先生も冗談に聞こえないこと言わないでくださいよ!」

 

ユウジ11「あいつそんなこと考えてたの?藤井がキレて玉藻前になったってのも全猫から聞いてるな」

 

紺子「別人と話してる感じで怖かったけど私が止めたおかげで元通りになったよ」

 

ユウジ11「俺が知らない間何があった…で、学園長は全猫の耳と尻尾いじった報いでライオンに襲われてると」

 

紺子「え゛!?学園長ライオンに襲われてるの!?」

 

龍哉「地下から聞こえてきた悲鳴学園長のだなってわかってたけどライオン!?そんなの秘術室にいなかったじゃないですか!」

 

ユウジ11「詳しいことは全猫に聞きな。まあその話は置いといて、こっち向いてくれ」

 

 

黒板に目を向ける紺子と龍哉。ユウジ11はある数枚の写真を取り出し、黒板に磁石で貼りつける。

 

 

ユウジ11「あーい、ちゅうもーく。これらが何かわかる奴挙手」

 

 

生徒たちは次々と手を挙げ、ユウジ11は一生を指す。

 

 

ユウジ11「んじゃ、信楽」

 

一生「当たっちゃったよ…えーっと……ヨーロッパの観光地の遺跡とかですかね?」

 

ユウジ11「正解。この写真はギリシャのクノッソス宮殿とアクロポリス遺跡、イタリアのローマとポンペイだ。長期休暇になったら行く予定の場所でな」

 

盾子「いやいやいや、長期休暇って夏休みと冬休みぐらいしかないでしょ!?その間にそこ行って何する気なんですか!?」

 

ユウジ11「今それを言おうと思ってたんだ。お前らの中にロマンが好きな奴はいるか?体を動かすのは好きか?単位が欲しい奴はいるか?だったら俺のトコに来な!未知の冒険と単位、両方手に入れられるぜ?おっと、その前にこいつを忘れてたな」

 

 

そう言いながら自分の持つ資料から取り出したのは誓約書と書かれた紙。ユウジ11はそれを見せびらかすように紺子たちの前に突きつける。

 

 

ユウジ11「参加したかったらこの誓約書にサインな。俺に頼めばいつでも用意してやるよ」

 

ディーゴ「明らかに今日の授業の内容から離れてってる!?」

 

ユウジ11「嫌なら構わんぞ?その代わり…」

 

ディーゴ「ああああああああ!!今の言葉取り消しー!!」

 

 

とりあえずヨーロッパの遺跡の説明で時間を潰し、宿題を出したユウジ11であった。

宿題はプリントで今日の内容の穴埋め形式だったが、さすがに遺跡に関するものはなかった。

 

 

ユウジ11「次の授業までに終わらせろよ」

 

ライエル「夏休みに遺跡探索に行く奴いるのかなぁ………」

 

ユウジ11「もし全員来てくれたらホントに嬉しいんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地理の授業が行われている一方、校長室にて。

 

 

貴利矢「いやー、悪いなぁ。ここって人間が入っちゃいけないトコだろ?陰陽師の俺にこの学園に入れる許可を出してくれるなんて感謝しますよ」

 

 

空から落ちてきた何かが気になって異生神妖魔学園に来た貴利矢は校長室でアルケーと対談していた。

 

 

アルケー「今のところあなたのような陰陽師は信用してもいいと思いまして。ですが、何か不自然なことをすれば………わかりますね?」

 

 

アルケーは笑顔で言うが、貴利矢にはわかっていた。自分が不審なことをすれば命はないと。

 

 

貴利矢「それは心得ている。さすがに学校を襲撃するほど自分、イカれてないんで。まあ最も俺の家を燃やした陰陽師はいるけどな。ホントに弁償しろや。あれ建てるのに時間かかったんだぞ………!?」

 

アルケー「陰陽師なのに他の陰陽師に家を燃やされたんですか?」

 

貴利矢「ああ。どうも他の外道なことをする陰陽師の怒りを買っちゃってさ、絶賛狙われ中なんだよね。今は遠呂智のEVOLUTION SPACEってカフェに居候してるが。あ、ちゃんと働いてはいるからな?俺だって陰陽師だから、悪事を働く妖怪を狩らないとダメだからな………そこだけは誤解がないよう頼むぜ」

 

アルケー「それはわかっています。それで、ここに来た用事というのは何ですか?」

 

貴利矢「どうもこの学園のどっかに空から落ちた奴がいるっぽくて、その気配と種族を確認するために来たんですよ」

 

アルケー「プールに落ちてきた子ですね。それって『浅井冬睡』君のことでしょうか?」

 

貴利矢「浅井…………?すまないが、もう一度そいつの名前言ってくれねぇか?」

 

アルケー「浅井冬睡ですが?」

 

 

落ちてきた少年の名前が書かれた紙を手渡された貴利矢が読む。

 

 

貴利矢「浅井冬睡………?あさい………とうすい………アサイ………トウスイ…………え!?」

 

 

名前から連想する貴利矢だったが、しばらくしてぎょっとした表情になった。

そして、こう悟る。『クトゥルフ関係か!?』と。

 

 

貴利矢「まさか……アザト―――――」

 

アルケー「はい、そこまで。貴利矢さん、それ以上言ってはいけません。狂気に飲まれてしまいますよ?」

 

貴利矢「おいおい、まさかのクトゥルフの生物もこの学校にいんの!?え、この学校大丈夫なんか!?そいつら狂気とかに飲まれてないよな!?」

 

アルケー「それはないと思いますよ?ところで貴利矢さん、あなたは本当に陰陽師なんですか?」

 

貴利矢「ひどくない!?龍華にも疑われたし、俺そんなに陰陽師っぽくないの!?」

 

アルケー「雰囲気的に嘘くさいというか………」

 

貴利矢「ねえ、やめて?俺泣くよ?確かにいつも嘘つくけど、そこまで言われるとさすがに泣くよ?」

 

???『イィィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

 

地下から女性の悲鳴が聞こえてきた。

だがその正体は神守以外にアルケーも知っていた。これは辰蛇の悲鳴だ。

 

 

貴利矢「うお!?何か叫び声が聞こえた気がするんだが!?」

 

アルケー「気にしないでください。学園長へのお仕置きですので」

 

貴利矢「いやいやいやいや、あんたらの学園長だろ!?何普通にお仕置きしてんの!?何かやったの!?」

 

アルケー「全猫先生の猫耳と尻尾をいじったらしく、その報復としてライオンの檻に入れられたようで」

 

貴利矢「外道だった俺が言うのもあれだが、エグくねぇか!?同じ陰陽師もドン引きするぞ!?」

 

アルケー「仕方ないですよ。セクハラを平然とする方なので。パンツの匂いも平気で嗅ぎますし」

 

貴利矢「ホントに大丈夫なのかこの学校!?なんか心配になってきたぞ!?」

 

 

冷や汗を流しながら焦っていると、校長室にトリノと神守が入ってきた。

 

 

貴利矢「あ、こないだの天狗とバステト」

 

トリノ「貴利矢さん、一時的でもいいので僕の代わり務めてください。胃腸薬が足りなくなってしまいます……」

 

貴利矢「無茶言うなよ!?俺、陰陽師だぞ!?教師向いてねぇって!!」

 

神守「ふむ、この際陰陽師が使う術を覚えるのもありか」

 

貴利矢「何この学校自由すぎね!?」

 

 

疑問を多く抱えた貴利矢だったが、人外にとっては当たり前だった。



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異生神妖魔学園脱出劇

今回はヒビキ7991さん提供のネタです。


4時間目の世界史が終わり、昼休みに突入。食堂へ入った紺子はなぜかいつも以上に嬉しそうだ。

 

 

紺子「今日は午前授業だから早く帰れる♪」

 

 

そう言ってニコニコしながらきつねうどんの食券とトレイをカウンターに置く。

 

 

夏芽「紺子ちゃん、今日はいつも以上に嬉しそうだけど何かあったの?」

 

紺子「だって今日午前授業だもん、午後にゆっくりできる時間多くて最高なんだよ!」

 

ジャック「だからって寄り道とかするんじゃないよ。アタイら紺子ちゃんたちのこと心配してるからね。誘拐とか痴漢とか……」

 

紺子「お気遣いどうも。きつねうどんよろしく」

 

夏芽「はーい、きつねうどん一丁!」

 

ジャック「好物でも残したら覚悟することだよ」

 

 

紺子は昼休みになるといつもきつねうどんを頼む。残せばジャックの怒りを買うことになるが、残さず食べる紺子には関係なかった。

 

 

一生「俺も化け狸だからたぬきそば食べるけど、あいつ毎日きつねうどんばっかで飽きないのかな?」

 

辰美「確かに私もきつねうどん食べてるところしか見たことないですね。油揚げが入ってるから飽きないんじゃないでしょうか。去年『油揚げの布団で寝たい』って言ってましたし」

 

一生「そんなこと言ってたの!?すっかり忘れてた………ってそこまで油揚げ大好きだったんかい!?」

 

 

いなり寿司だけでは足りないと思ったのか、一海はいなり寿司としょうが焼きの食券を買った。

 

 

ジャック「今日はしょうが焼きも食べるのかい?」

 

一海「はい。よくよく考えれば、いなり寿司だけじゃ足りなかったんです。おかずもちゃんと食べようとしょうが焼きの食券を…」

 

ジャック「そりゃそうさ。あんた、いっつもいなり寿司だけだったし、栄養はちゃんと摂った方がいいってアタイらは心配してたんだよ?育ち盛りなんだからしっかり食べないと」

 

夏芽「牛乳もちゃんと飲みなさいね~。今日はサービスとしておばちゃんが牛乳配ってるからね~」

 

一海(牛乳?確か夏芽さんの種族…牛鬼だったよね。今日がサービスで配られてることは…………え!?まさかとは思うけど………夏芽さんの!?)

 

 

何かを察したような顔をし、みるみる青ざめていった。

一海は自分の顔色が夏芽とジャックに気づかれないようにカウンターを後にすると、紺子と龍華が座っているテーブルへ向かった。

 

 

一海「出雲姐ちゃん……龍華……」

 

龍華「ん?顔色青いけどどうしたんだ?」

 

紺子「あの変態マッチョマンの先生のパンツが頭から離れられないのか?」

 

一海「全然違うよ………出雲姐ちゃんと龍華って牛乳好き?」

 

紺子「好きだけど、それがどうかしたか?」

 

龍華「今日夏芽さんの牛乳サービスデーだったよな……ん?牛乳サービスデー?カズミン、お前まさか!?」

 

 

一海の真っ青な顔色で龍華は察したように驚愕する。

 

 

龍華「夏芽さん、毎月牛乳サービスデーってのやるんだけど………噂では『あの牛乳は夏芽さんから出てるんじゃないか?』って囁きがあるんだよ………」

 

紺子「龍華、まだそんな噂信じてるの?たかが噂じゃん。そんなことあるわけねぇだろ」

 

一海「種族牛鬼なんだよ?夏芽さん」

 

紺子「……………ウプ!?

 

 

先ほどまでどこから牛乳がとれるのか想像していた紺子だったが、まだ何も食べていないにも関わらず顔色が悪くなり、吐き気を催してしまった。

 

 

一海「どうしたの出雲姐ちゃん!?」

 

龍華「おい、大丈夫か!?顔色悪いぞ!?」

 

紺子「あれがもし夏芽さんから出てきたのだったら………想像してたら皮膚に違和感が………」

 

 

 

 

 

数分後、きつねうどんを受け取った紺子。食欲はあったものの、食べている間始終顔色が悪く、目が死んでいた。

きつねうどんは食べ終えたが、牛乳だけは全く手つかずだった。紺子が飲めなかった牛乳は仁美がもらい、美味しく飲んでしまった。

 

 

紺子「ちょっと屋上行って涼んでくる」

 

龍華「早く戻ってこいよ?この後すぐ帰りのHRやるからな」

 

仁美「ねえジャックおばちゃ~ん。紺子が牛乳くれたけど、あれってお残しの分類にはならないの~?」

 

ジャック「夏芽ちゃんの牛乳は料理には入らないからいいんだよ。一番許せないのはアタイらが作った料理を残すこと。それだけさ」

 

夏芽「おばちゃんのだけ扱いひどくない!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて数十分経ち、2年教室にて。

 

 

ヴォイエヴォーテ「おい、誰か出雲がどこにいるか知っている者はいるか?」

 

 

昼休みが終わり、帰りのHRが始まろうとしていたが、空いている席を見たヴォイエヴォーテが生徒たちに問いかける。

 

 

龍華「あいつなら屋上で涼んでくるって言ってたけど……」

 

ヴォイエヴォーテ「何だ、屋上にいるのか」

 

ディーゴ「時間忘れて昼寝でもしてるんじゃないですかね?」

 

ヴォイエヴォーテ「ではなぜ起こしに行かない?これでは帰りのHRができないではないか」

 

ライエル「待ってたらよけい時間かかるし、今から起こしに行っても間に合わないし、もう紺子ちゃん抜きでやりましょうよ」

 

 

確かに時間の無駄だ。提案したライエルに全員うなずいた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「ふむ……いいだろう。ではこれより、出雲抜きで帰りのHRを始める」

 

龍哉「全く、しょうがない奴だなぁ………終わったら起こしに行くか」

 

ヴォイエヴォーテ「そうしてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りのHRが行われた一方、屋上ではディーゴの言う通り、紺子はベンチの上で昼寝していた。

満腹感と涼しい風に当たっているうちに眠くなってしまったのだろう。

 

 

紺子「スゥー……スゥー……」

 

 

寝息と共に服という名の布に覆われていない腹が静かに上下に動く。

約10分後、扉が開き、龍哉と牙狼が寝ている紺子に近づいた。

 

 

龍哉「いたいた。気持ちよさそうに寝てんな…」

 

牙狼「寝顔はかわいいけど、お腹が無防備すぎるよ…」

 

龍哉「でも……すぐ起こした方がいいと思うんだけどなぁ………」

 

牙狼「いろいろあってかなり疲れてるのかもしれないよ?」

 

 

風邪を引くといけないと思った牙狼は優しそうな表情で自分のブレザーを紺子の体にかけた。

 

 

龍哉「これでお腹は大丈夫っすけど、やっぱり起きるまで見守るしかないっすかね……」

 

牙狼「時間かかるかもしれないけどそうするしかないよ」

 

紺子「ん………スゥー」

 

 

唇から少し声を漏らし、再び寝息を立てる紺子。目が覚めるまで寄り添っていようと思った龍哉と牙狼は優しく微笑んだ。

ところが………。

 

 

牙狼「何だろう………よくわかんないけど、僕も眠くなってきちゃった…………」

 

龍哉「白銀先輩……寝ちゃダメっす………」

 

 

紺子に寄り添っているうちに、急に強烈な眠気が襲ってきたのだ。

寝てはいけないと頭の中で念じることはできる。しかしどれだけ逆らっても眠気は容赦なく襲い、まぶたはどんどん重くなってくる。

 

 

龍哉(寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃ―――――)

 

 

そう念じているうちに意識がどんどん遠退いていくのは牙狼も同じだった。

とうとう2人は眠気に耐えられなくなり、龍哉はスラブへ倒れ込むように、牙狼はベンチの上で座りながら寝てしまった。

3人は静かに寝息を立てる。ところが目が覚めた時、最悪な出来事に遭遇するとは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍哉と牙狼が寝落ちしてから数時間後、先に目を覚ましたのは紺子だった。

 

 

紺子「ん………ふあああ……寝ちまったみたいだな………」

 

 

あくびと伸びをしながら呟いたが、なぜかスラブには龍哉が倒れ、隣には牙狼が座りながら寝ているではないか。

 

 

紺子「…あれ!?龍哉!?牙狼!?」

 

 

寝起きで頭が回らず、状況が全く理解できない紺子だったが、彼女の大声に龍哉と牙狼も目を覚ました。

 

 

牙狼「あれ……僕たち寝ちゃった?」

 

龍哉「寝てましたよ……俺もそうでしたけど」

 

紺子「え、ちょっとどういうこと!?何でお前らここにいんの!?」

 

 

寝起きなのは龍哉と牙狼も同じだった。

だが混乱する紺子とは対照的に、状況を頭の中で少しずつ整理。結果、帰りのHRが終わった後屋上にいる紺子を呼ぼうとしていたのを思い出した。

龍哉と牙狼はそのことを説明したが、紺子もようやく状況を飲み込めた。同時に呆れた表情になる。

 

 

紺子「起こすんなら起こしてくれよ。もう夕方じゃねぇか。午後から家でカズミンと最近買ったゲームしたかったのに」

 

牙狼「それは謝るけど、いろいろあってかなり疲れてるっぽかったから…」

 

龍哉「ああ。ヴォイエヴォーテ先生お前抜きで帰りのHRやったからな」

 

紺子「で、今何時?早く帰らないとカズミンに怒られるんだけど」

 

 

スマホで時間を確認する牙狼。16時56分である。

 

 

紺子「16時56分!?嘘だろ!?私たちそんな時間まで寝てたのかよ!17時には完全に戸締まりされて閉じ込められるじゃねぇか!」

 

龍哉「なんてこったい!俺までとばっちりだよ!白銀先輩、だからすぐ起こした方がいいかもしれないって言ったんすよ!?どうしてくれるんすか!」

 

牙狼「僕に文句言ってもしょうがないよ!ていうか紺子、すぐに教室戻って支度して玄関まで走らないと間に合わないよ!」

 

龍哉「帰る支度………?あっ!!」

 

 

帰る支度と聞いて、龍哉は何か思い出したように叫んだ。

 

 

龍哉「完全に忘れてた!!カバンを教室に置いたままだった!!」

 

紺子「こいつまでドジ踏んでやがる!?」

 

牙狼「と、とにかく!僕は玄関に行くからすぐ準備して!間に合わなかったら僕たちみんなここに閉じ込められちゃうから!」

 

龍哉「わかりました!行くぞ紺子!」

 

紺子「ああ!」

 

 

お前はカバン取りに行くだけだからいいよなと言いたかったが、グッと我慢。紺子と龍哉は2年教室、牙狼は毛布代わりに使ったブレザーを着ると玄関まで走っていった。

 

 

 

 

 

紺子「牙狼!」

 

龍哉「白銀先輩!」

 

 

帰り支度を終えた紺子と龍哉は牙狼が待つ玄関までまっしぐら。

玄関では牙狼が手を振っている。2人は到着すると、紺子が急いで扉を押し開けようとした。

 

 

紺子「あれっ…」

 

龍哉「どうした?」

 

 

扉に手をつけたまま黙っていたが、しばらくして口を開く。

 

 

紺子「………非常に残念なお知らせです。野人先生が作ったオートロックシステムなので17時になると自動的に鍵がかかります。よって朝になるまで開きません!完全に閉じ込められました!」

 

龍・牙「「な、何だってぇぇぇええぇえぇえぇええええぇぇぇぇええぇぇぇえええぇぇ!!?」」

 

 

誰もいない校内に龍哉と牙狼の絶叫が共鳴した。

 

 

紺子「最悪だー!!恐れてたことが現実になったぁぁぁぁ!!一晩中校舎で過ごさなきゃならねーじゃねーか!食べ物もないしどうすりゃいいんだよー!」

 

龍哉「空腹を我慢するしか策はないけど……死纏さんも気まぐれだし……今日死纏さんうろついてるかな?」

 

牙狼「だったら嬉しいけどね。騒いでたら何にもならないし、ここから出る方法考えてみない?」

 

紺子「は!?出る!?オートロックだぞお前!窓は違うから大丈夫かもしれないけど、外から鍵かけられないじゃん!そこから出たら泥棒が入ったって勘違いされるぞ!?」

 

 

紺子はもはや救いの道はないと絶望していたが、牙狼にある考えがひらめく。

 

 

牙狼「窓からはダメだってのはわかってるよ。どこかに非常口があったはず…」

 

紺子「非常口…?それだ!そこからだったらバレずに出れるかも!」

 

龍哉「ホントに大丈夫っすか!?『こんな時間に生徒がうろついてました』とか言われないっすよね!?」

 

牙狼「ないと信じたい。とにかく、非常口探してすぐにここから出よう!」

 

 

 

 

 

牙狼「………とは言ったものの、学園長室の地下にも隠されてるって………」

 

紺子「私も初めて知ったんだけど」

 

 

数分前、紺子たちは非常口をいくつか見つけていたものの、ドアが不思議な力により開けられることを拒否。そのドアは全てオートロックではなかったが、紺子がドアノブに手をかけた途端、電流が走ったのである。

 

 

 

 

 

紺子「アババババババババッ!?

 

 

 

 

 

何度もドアノブに手をかけ、何度も感電した紺子。それを見ていた龍哉は藁にもすがる思いで学園長室を探ってみようとひらめいた。

そう、今紺子たちはなぜか学園長室の地下にもある非常口の前に立っていた。

 

 

龍哉「あの時メッチャ骨見えてたよな。尻尾モフモフなのに感電してる時、尻尾の骨細くて笑っちゃったよ」

 

紺子「うるせぇな。非常口なんて避難訓練ぐらいにしか使われねぇから知らなかったんだよ」

 

牙狼「何回も開けようとしたけど無理だったよね。これでもしまた感電したら笑えないけど」

 

龍哉「これが最後の頼みの綱ってことっすね………紺子、悪いけどまた開けてくれないか?」

 

紺子「また私!?もう嫌だ~…感電死しちゃう~……」

 

 

紺子は嫌々ドアノブに手をかけようとするが、恐怖で手が震え、思うように手を伸ばせない。

 

 

紺子(また電気走ったら私絶対死ぬよ?これはこれでもう笑えないよ?)

 

龍哉「何ためらってんだよ紺子」

 

牙狼「開けられないなら僕か龍哉が開けるよ?」

 

紺子「…………よろしく………………」

 

 

よほど怖かったのか、振り向いた紺子は涙目だった。仕方ないぜと龍哉はため息をつくと、牙狼と共に誰がドアを開けるかジャンケンをすることに。負けた方がドアを開けなければならない。

 

 

龍・牙「「最初はグー、ジャンケンポン!」」

 

 

龍哉はパー、牙狼はチョキを出した。龍哉がドアを開けることになった。

 

 

龍哉「俺かよ」

 

 

本当は龍哉も内心不安だった。恐る恐るドアノブに手をかけると………。

 

 

龍哉「………あれ?何も起きないぞ」

 

紺・牙「「え゛?」」

 

 

確かに龍哉には電流が走らず、紺子と牙狼は同時に首をかしげる。

 

 

紺子「電気走らないとかおかしいな……ちょっとそこどいて」

 

 

今度は何度も感電した紺子が手をかける。だが龍哉同様電流が走ることはなかった。

 

 

紺子「…ホントだ。マジで何でもない」

 

牙狼「嘘でしょ?どれ、僕も……」

 

 

続けて牙狼も手をかけてみた。やはり電流が走らない。

 

 

牙狼「ホントは龍哉が開けなきゃならないけど、僕が代わりに開けるか」

 

龍哉「すいません白銀先輩…俺の役目だったのに…」

 

牙狼「別に構わないよ。いい?開けるよ?」

 

紺子「うん」

 

龍哉「お願いします」

 

 

紺子と龍哉はうなずくと、牙狼はドアノブを回し、押し開けた。

 

 

牙狼「鍵がかかってない!?なんて不用心なんだ!」

 

紺子「地震とか火事とか起きたらいつでも逃げれるように開けてるんじゃね?」

 

龍哉「自分だけ助かろうとか最低かよ、あの学園長!?」

 

紺子「でもこの秘密の非常口は私たちにバレた。会ったら拷問にかけてでも問い詰めてやる」

 

龍哉「こいつまで学園長ボコボコにしようと考えてる!?」

 

牙狼「紺子、それはかわいそすぎるからやめてあげて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて3人が出た場所は校舎の裏側だった。

 

 

紺子「か~~っ!やっと出れた!これで一件落着だ!」

 

 

紺子は嬉しそうに言いながら背伸びした。龍哉と牙狼も喜び合ったが、牙狼があることを気にする。

 

 

牙狼「そういえば今日学園長見てないけど……どうしたんだろ」

 

龍哉「ユウジ先生から聞きましたけど秘術室でライオンに襲われてますよ」

 

 

龍哉がそう言った途端、突然3人の目の前にそのライオンに襲われているはずの辰蛇が現れる。

 

 

紺・龍・牙「「「学園長!!」」」

 

辰蛇「なんとか脱出できました」

 

 

その時、紺子の中の何かが切れた。

何度も感電した恨みか、尻尾を伸ばし、辰蛇の頭が見えなくなるほどぐるぐる巻きにした。

 

 

辰蛇「グムォ!?

 

 

角とツインテールの黒髪が締めつける尻尾の下からはみ出る。

 

 

牙狼「紺子!?学園長の頭縛って何してるの!?」

 

紺子「私あのドアで感電しまくったからさ、絶対犯人学園長だなって」

 

龍哉「恨みありすぎだろ!」

 

辰蛇「む~~~~~~!!ん~~~~~~!!」ジタバタ

 

 

尻尾を引き離そうと必死に抵抗する辰蛇の表情はわからないが、苦しそうな顔だろうなと紺子は思った。

しばらくして尻尾の下から聞こえる辰蛇の懇願する声がだんだん泣き声に変わっていったが、紺子は決してやめることはなかった。



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一海の秘めた思い

あの後辰蛇を尻尾で窒息で気絶させた紺子は龍哉と牙狼に別れを告げ、気絶した辰蛇を尻尾に巻きつけたまま自宅に帰ったが、一海は怒ってなどいなかった。むしろ心配してくれていたのだ。

一海は気絶した辰蛇など気にせず、紺子が帰ってくるなりいきなり飛びつくように抱きつき、無事であったことに嬉しさのあまり泣きそうになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺・一「「ごちそーさまー」」

 

 

入浴を終え、その日の夕食は激辛麻婆豆腐だった。パジャマ姿の紺子と一海は裾を結ばなければならないほどあまりの辛さに汗を流した。

紺子は常にパンツ丸出しのため腹と下半身がとても涼しくて快適だったものの、対照的に一海はズボンを履いているため汗がくっついて気になってしまった。

 

 

一海「うわぁ……こんなに濡れちゃって……」

 

紺子「脱いだ方がいいんじゃね?パンツ丸出しはかなり涼しいぞ?」

 

一海「出雲姐ちゃん、そのうち風邪引くよ?」

 

紺子「いいんだよ。脱げばかなり涼しくなるぜ。頼むよ、脱いでくれよ」

 

一海「はぁ………しょうがないなぁ」

 

 

仕方なくズボンを脱ぐ一海。履いていたのは縞模様のパンツ。紺子はそれを目の当たりにするなり一海の膨れた腹に触れた。

 

 

紺子「私たち、よく食べたなぁ…カズミンのお腹、こんなに膨れちゃって………」

 

一海「んっ……そう言う出雲姐ちゃんのお腹だってなかなか触り心地がいいよ……」

 

 

一海も紺子の膨れた腹をなでる。互いの腹をなでているうちにふと時計を見上げると、針が夜の9時を指していた。

今の時間を確認した一海が口を開く。

 

 

一海「ねえ………ベッドに行こうよ」

 

紺子「?」

 

一海「こうやって座ってばっかりだと面白くないし、寝ながらやった方が面白いでしょ?」

 

紺子「…………姐ちゃんカズミンが何言ってるかさっぱりわかんないんですけど」

 

 

 

 

 

紺子「………そっか……ベッド行こうってのはそういうことだったんだな………………」

 

 

意味がさっぱりわからなかった紺子だったが、彼女の部屋のベッドの上で納得した表情をしていた。

部屋には気絶した辰蛇が倒れていたが、一海にはすでにわかっていた。どうせまたセクハラでもしたんだろうと。それをよそに一海は紺子に心配するような声をかけようとした途端………。

 

 

辰蛇「プァッ!し、死ぬかと思った……!」

 

 

先ほどまで気絶していた辰蛇が起き上がった。辺りを見回すと、ここは紺子の部屋。その中にはもちろん紺子と一海がいた。

 

 

辰蛇「ちょっと、紺子ちゃん………いきなり尻尾で窒息させるとか―――――」

 

一海「開け、『異世界の門』よ」

 

辰蛇「へ?何それ?」

 

 

首をかしげた瞬間、目の前には謎の空間があった。そこから皿に盛られたある料理が飛び出し、辰蛇の顔面に直撃する。

 

 

 

ベチャッ

 

 

 

辰蛇「○☆♀々※Ω■∞#$@Σ¥×△£%♂℃*〆ε√◇Åゞ§∝≧‡∬α!!!!!

 

 

飛び出したものは先ほど紺子と一海が食べていた激辛麻婆豆腐。いや、激辛麻婆豆腐といっても紺子と一海が食べていたものに非ず。辰蛇が声にならない悲鳴をあげたということは、この麻婆豆腐は何か特殊な材料を使って作られたすさまじい辛さを誇る激辛麻婆豆腐だった。

辰蛇はそのまま倒れると同時に後頭部を本棚にぶつけ、いかにも重そうな辞書が彼女の腹めがけて落下し、直撃。何かを吐き出すような苦しそうな短い声をあげると、そのまま顔に皿が被さったまま動かなくなった。

激辛麻婆豆腐が辰蛇の頭の周りに広がり、角とツインテールも麻婆豆腐まみれになり、紺子は唖然としていた。

 

 

一海「………やっぱり無亞みたいには行かないかぁ。僕なりの『創造の門』を妖術化してみたけど…………」

 

紺子「いや、普通妖術で『創造の門』作れるか!?」

 

一海「心火を燃やせば何とかなると思って」

 

紺子「心火で何とかなるか!?てか、あの麻婆豆腐は何!?」

 

一海「わかんない。でも僕の本能が言ってる。あれは僕たちが食べちゃいけない麻婆豆腐ってことだよ…………」

 

紺子「その麻婆豆腐、私たち絶対死んでるよな!?」

 

 

再び気絶した辰蛇に顔が青ざめた紺子を一海はしばらくなだめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして紺子はようやく落ち着き、一海は改めて心配するような声をかける。

 

 

一海「ところで出雲姐ちゃん。思い出したくないかもしれないけど、舌寺先輩に舐められてどうだったの?」

 

紺子「急に何を聞いてんだ?あんな怖い思いをしたっていうのに………」

 

一海「いいから答えて。どうだったの?」

 

 

顔を近づけて詰め寄る一海に紺子はもじもじしながらこう呟いた。

 

 

紺子「………………だった」

 

一海「ん?」

 

紺子「ぜ、舌寺先輩の舌で舐められて…き………気持ち悪かったのに………だんだん………気持ちよくなっちゃって………………おかしくなりそうだった………………/////」

 

一海「…………………」

 

 

そう呟いた紺子に一海は目を閉じ、体育が始まる前の時間を思い出す。

更衣室の中、目の前にいたのは舌寺の長い舌で縛られ、腹と出べそを舐められている紺子。舌寺はもう報復を受けて終わったはずなのに、彼に対する憎悪が再び込み上げてきた。

 

 

一海(あのペロリストの下郎、絶対に許さない。司先輩からつかみ技、龍華から格闘技を学ばないと。そこからまずはあの長い舌を引っこ抜いて、その後股間を何度も蹴りまくって―――――)

 

紺子「ほら、言ったぞ!思い出したくなかったってのに!おい、聞いてんのか!?///////」

 

一海「…………………」

 

紺子「ってカズミン!?な、なんか怖い…!」

 

一海「あ、ごめん。改めて聞いたけど、あのペロリスト…………いや、舌寺先輩だね?」

 

 

優しい笑みを浮かべる一海だったが、紺子は嫌な予感がした。『これ絶対怒ってんじゃね!?』と。

だが一海は怒ってなどいなかった。一海は笑顔を保ったまま言葉を紡ぐ。

 

 

一海「ホントにひどいよね……僕が予約取ってたのに……」

 

紺子「か、カズミン…?」

 

一海「でも一番ひどいのは………」

 

紺子「え?え………え?」

 

 

笑顔の一海は紺子を押し倒すと、尻尾で紺子の両腕と両足を縛り、拘束。紺子は理解できないまま一海の顔を見ると、その目に恐怖感を覚えた。

 

 

一海「出雲姐ちゃん、僕以外に触られて気持ちいいなんて、ひどいじゃないか…………」

 

紺子「カズミン?な、なんか目が光ってないぞ!?」

 

 

そう、舌寺に舐められたと聞いた一海は優しい笑顔を保っているものの、その目は光が消えていたのだ。

 

 

一海「しょうがないでしょ?あんなペロリストの汚れた舌なんかで、気持ちいいって言うんだもん…………」

 

紺子「な、なあ……確かに昨日私のお腹好きにしてもいいって言ったけど……あ、あんまりやりすぎないでくれよ?休みだったら一晩中触ってもいいけど、そうじゃない日は勘弁してくれよ?」

 

一海「場合によるかもね………てことで、早速………」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

紺子「!!?////////」

 

 

一海が紺子の上に乗るように互いの腹をくっつけ合い、急に顔を近づけてきたかと思うと、そのまま口づけをしたのだ。

だが、そのキスは乱にされたように息ができなくなるほどの激しいディープキスではなく、優しいキスだった。

 

 

紺子「んっ…!?んんぅっ!?////////」

 

一海「んむっ………チュッ………♡」

 

紺子(おいおいおい!こいつまで急にチューしてくるとか………けど、何だろう……なんか……全然嫌じゃない………)

 

 

乱のディープキスとは対照的に一海のキスは勢いがなく、逆に一海への優しい気持ちを受け止めているようにも思えた。

 

 

紺子(キスはいつも乱にやられてるけど………カズミンのは………すごい優しい………)

 

 

最初は嫌がるような声を出していたが、次第におとなしくなっていく紺子。ようやく終わった時には互いの目がトロンとしていた。

 

 

紺子「はぁ…はぁ…カズミン、お前ぇ……/////」

 

一海「ごめん、ちょっと怖かった?」

 

紺子「ふぇ?」

 

一海「あのペロリスト先輩の話を聞いただけで冷静にいられなくなっちゃって……出雲姐ちゃんがひどいことしかできない誰かに捕まって………また……また……1人ぼっちになるんじゃないかって………………」

 

紺子「……カズミン?」

 

 

語尾を震わせながら言う一海は今にも泣きそうな顔をしており、目には涙が溜まっていた。

 

 

 

ポタッ

 

 

 

一粒の涙が紺子の頬に落ちる。一海はそれを指で拭うと、あることを問う。

 

 

一海「ねえ出雲姐ちゃん、覚えてる?あの日僕が泣いてたことを……出雲姐ちゃんと偶然出会ったことを…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の夕暮れ、紺子の家の前にて………。

 

 

一海『ひっぐ…………えっぐ…………ごめんね…………ごめんね………父さん…………母さん…………僕のせいで…………僕のせいで…………死んで…………ごめんね………』

 

紺子『誰かいるのか?』

 

 

何らかの理由で泣いているところを買い物帰りの紺子が見つけ、声をかけた。

 

 

一海『だ、誰?』

 

紺子『待て、警戒すんな。こんなトコで何泣いてんだ?』

 

一海『………僕のせいで…………父さんと母さんが…………死んじゃった………僕が………僕が捕まらなければ……………僕が…………!』

 

紺子『…………私の家に来るか?』

 

一海『え?』

 

 

この時、紺子の脳裏にあの記憶がよぎった。明治時代中期、初めて惣一と会った自分。声をかけられたところを短刀を向けて警戒した自分。養子となって惣一の家に住んだ自分。全てあの時と同じだ。

警戒する一海に優しい声をかけたのも自分の記憶と全て一致していた。

 

 

紺子『私も親がいないんだ。お母ちゃんは目の前で雷に打たれて死んで、お父ちゃんは老衰………お前と一緒だ』

 

一海『………………』

 

紺子『一緒に来ないか?』

 

一海『………………行く』

 

紺子『そうか。私は出雲紺子。お前は?』

 

一海『…………藤井…………一海…………』

 

紺子『なら今日からカズミンって呼んでやるよ』

 

一海『カズ……ミン………?』

 

紺子『ああ。その方が親しみやすいだろ?』

 

一海『…………うん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至り、今の一海は紺子の家に居候。1人でなくなって幸せな毎日を送っている。だが、ここで紺子もいなくなれば一海は二度と立ち直れなくなってしまう。

 

 

一海「僕、本当のこと言うけど…どこにも行ってほしくないんだ……出雲姐ちゃんが………いなくなることが………怖いんだ………」

 

紺子「…………そうだったな。けど、いつかは私もお前も嫁がなきゃいけない時が来るだろ?」

 

一海「それはそうだけど………それでも…………やっぱり出雲姐ちゃんを僕が信用できそうな奴じゃないと渡したくないんだ…………」

 

紺子「………………(これ思ってた以上に懐いてんな)」

 

一海「それなのに…………あのペロリスト先輩は…………!!」

 

 

再び舌寺に憎悪をぶつけたい。一海は歯ぎしりしながら拳を強く握りしめる。

 

 

紺子「待て待て待て待て!?今はそう言うの忘れて、な?今日は私のお腹触ってあげてんだから……そ、それでいいだろ?」

 

一海「………それもそっか。それじゃあ、出雲姐ちゃんが落ち着いてきたところでお腹触ろうっと。もちろん出雲姐ちゃんがよがり狂って二度とペロリスト先輩の舌責めが感じなくなっちゃうほどいっぱい触ってあげるね?」

 

紺子「か、加減ぐらいしてよ……!?」

 

 

それから一海は自分が満足するまで紺子の麻婆豆腐で膨らんだ腹とへそをくすぐった。

一海も紺子同様腹とパンツを丸出しにしているため、紺子の右手を動かせるようにすると、紺子も一海の腹をなで回したりへそに指を入れたりした。どうやら紺子も一海の麻婆豆腐で膨らんだ腹をなでたかったようだ。

やがて互いの気が済むまで、2人はいつまでも互いの腹とへそをいじり続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって閉店したEVOLUTION SPACE。麻由美はすっかり寝静まっている。

紺子と一海が互いの腹とへそをいじっているその頃、貴利矢はコーヒーを飲みながらあることを思い出していた。

 

 

貴利矢「ったく、あの学園どんだけハチャメチャなんだよ………………そういえば学園で思い出したけど………あの妖狐はどうしてんだ?」

 

遠呂智「どうした?いつにも増して真剣じゃねぇか」

 

貴利矢「いや、昔を思い出してな。悪事を働いていた妖怪を倒した時の話なんだが、俺の他にもう1人の陰陽師と一緒に行動していたんだよ。終わったのはいいんだが、いつの間にかその陰陽師がいなくなっててな。探して探して探し回ったんだが見つからなくて、仕方なく帰ろうとしたらその帰り道……偶然見つけたんだよ。()()()3()()()()()()()()()()()()()

 

龍華「3匹の妖狐?」

 

貴利矢「ああ。一体どういうことだと思った瞬間、親と思われる妖狐を殺したんだよ。俺目線からして、あいつらは何の悪さをしたような覚えがねぇし……にも関わらずあいつは殺したんだ。そして今度は子供と思わしき妖狐を狙いつけた。俺は急いで術を使って妖狐を守り、村正で陰陽師の攻撃を防いだ」

 

 

コーヒーを一口飲み、続ける。

 

 

貴利矢「そしてとっさに妖狐に言ったんだ。『逃げろ!俺が何とかするから逃げろ!』ってな。けど、なかなか動かねぇからこうも言ったんだ。『何ボサッとしてんだ!?早く逃げねぇと親と同じ運命を辿るぞ!!生きたいと思ってんなら逃げろ!!』ってな。そしたらそいつは泣きながら俺たちから離れていき、せめてもの償いとしてその陰陽師の一部の能力を奪って、意識不明の重傷を負わせちまったんだ。そしてこの様だ。他の陰陽師に狙われる羽目になっちまったんだよ。『裏切り者』ってな」

 

龍華「………救ったことに後悔でもしてんのか?」

 

貴利矢「後悔してねぇって言えば嘘になっちまうが、その妖狐の大事な家族を奪っちまったからな。もし再会できたら……土下座してでも謝りてぇんだ」

 

 

星空の天井を見上げ、たそがれるように言った。

 

 

遠呂智「………そうか。ところであんた、酒飲めるか?」

 

貴利矢「酒?飲めなくはないが、カフェにそんなのねぇだろ?」

 

 

すると遠呂智はニヤリと口元を歪めて笑い、ある飲み物の名を口に出した。

 

 

遠呂智「ところがあるんだよな。『裏メニュー』のひとつ『カルーア』ってカクテルがあってな」

 

龍華「は!?カクテル!?おいマスター!?どこで買ってきたんだよ!?つーか裏メニューなんて聞いてねぇぞ!」

 

遠呂智「通販で興味本位で買ったんだ。コーヒー豆も使ってるって聞いたしな。言っとくが飲んでねぇからな?天文学者になれなかった時のためにバーテンダーも視野に入れてんだよ」

 

貴利矢「お前カクテル作れるのか!?」

 

遠呂智「まだだ。卒業したら勉強するつもりだ。昼間はカフェ、深夜はバーっていうのもありかもな。宇宙空間の中で酒を飲めるなんて、贅沢だと思わねぇか?」

 

龍華「あんたなぁ………」

 

貴利矢「んじゃあ、そのカルーアっちゅうカクテル飲んでみるとするかね」

 

遠呂智「毎度。念のため薄めにしておくぜ」

 

 

呆れた顔をする龍華をよそに、遠呂智は早速カルーアを作る準備をする。

 

 

龍華「……マスター、念のため聞くけどさ……まさか裏メニューって全部酒関連とかじゃねぇだろうな?」

 

遠呂智「さすがにそれはない。今んトコこれと………チャレンジ精神を持ってる奴限定に『俺特製のダークマター』も出してるんだ」

 

龍華「あれ出してんの!?」

 

遠呂智「何でもゲテモノ好きの狂った常連客がいてな。どこでその情報を知ったか知らねぇが、それを注文しやがったんだ。しょうがねぇから作って食わせてやったら、あいつ何て言ったと思う?美味い美味いって言いながら何度もおかわりしやがったんだよ」

 

貴利矢「や、ヤベェ……で、そいつどうなったんだ?」

 

遠呂智「満足するまで食らい尽くして金払って帰りやがった。正直俺、生涯初めてのトラウマになっちまったよ。ぶっちゃけ金払わんでもよかったんだが………」

 

 

遠呂智の話が終わった頃、彼の目には光がなかった。

 

 

龍華「どんな客だよ!?そいつもう化け物じゃねぇか!!」

 

貴利矢「てか、そいつ自体人外なんじゃねぇのか!?」

 

 

龍華と貴利矢の大声はEVOLUTION SPACEの外まで聞こえ、その前を通りかかった者が1人いた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「雨野と言峰殿の声?まさかとは思うがまだ閉店していないんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここは牙狼の家。彼は自室で寝ていたが、ふと目が覚め、サッとカーテンを開ける。

窓の向こう側には満月が美しく輝いている。

 

 

牙狼「……………」

 

 

満月を見るや否や、牙狼の顔が急に険しくなった。

うめき声をあげると同時に瞳孔が大きくなり、口から鋭い牙が生える。手足の爪がフックのように鋭くなり、同時に髪の色と同じ銀の毛が生え、毛むくじゃらになった。普段の体格よりもひとまわり大きくなり、パジャマが破ける。全身も毛むくじゃらになっていき、やがては顔まで毛むくじゃら。尻尾まで生え、口が犬のように突き出し、尖ってきた耳は頭へと移動する。声は獣のうなり声と化していた。

先ほどまで部屋に立っていた牙狼の姿はなく、そこにいたのは赤い瞳を持つ二足歩行の狼男だった。

 

 

狼男「僕は白銀牙狼………狼男………

 

 

白銀牙狼と名乗る狼男はノイズのようなおぞましい声を出して呟く。

家を飛び出し、超人的な脚力で家の屋根まで上ったかと思うと、満月に向かって遠吠えをした。

そして、下を向きながらこう呟いた。

 

 

牙狼?「友達に手を出してみろ……命はないものと思え……




やっと牙狼が狼男に変身した…。
次回も出す予定だったり。


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やるの遅いよレクリエーション

夜のじゃれ合いから翌日、腹とパンツを丸出しにして寝ていた紺子と一海が目を覚ました。

 

 

一海「……あれ……僕たちいつの間にこんな姿に?」

 

 

寝ぼけ眼をこすり、なぜ自分がこんな服装なのか理解できない一海。だが紺子も彼女と同じ状態なので、昨夜の出来事を口に出した。

 

 

紺子「お前覚えてないの?麻婆豆腐食った後ズボン脱いで腹触り合って………」

 

一海「………あっ」

 

 

麻婆豆腐と聞いてあることを思い出した。妖術で作った『創造の門』から飛び出した激辛麻婆豆腐が辰蛇の顔に直撃したこと、紺子を舐めた舌寺に改めて憎悪を抱いたこと、紺子との出会いなど、昨夜の出来事が次々と頭の中に浮かんだ。

ふと顔を横へ向けると、顔に皿を被せて倒れた辰蛇。頭の周りには昨夜と変わらず麻婆豆腐が広がっていた。

 

 

一海「これ……死んでるんじゃないかな?」

 

紺子「ウロボロスだからたぶん死んでないんじゃね?」

 

一海「……そういえば食券に『ジャックおばはん特製激辛麻婆豆腐』ってのがあったけど、あの麻婆豆腐って学園長が食らったのと同じぐらい辛いのかな」

 

紺子「龍華、去年あれ頼んで燃えてたからなぁ…結局残して壁ナイフの刑になったけど。ところで今何時?」

 

一海「今は………」

 

 

時計の針が朝の10時を指している。それを知った途端、紺子の顔から血の気が引いた。

 

 

紺子「10時ですと……!?完全に寝坊じゃねぇか………!

 

一海「あー、あれ?昨日先生が言ってたけど………」

 

 

紺子は飛び起きるなり、一海の話も聞かず肩をつかんで激しく揺さぶる。

 

 

一海「アガガガガガガガガガガガガッ!?

 

紺子「テメェェェェ!!!昨日言ったこと忘れたのかァァァァ!!!休みだったら一晩中触ってもいいけどそうじゃない日は勘弁してくれっつってたじゃねぇかァァァァァァァ!!どうすんだよ、おい!!私たち完全に遅刻じゃねーか!!どう責任取ってくれんだよォォォォォォォォォ!!!

 

一海「ゆ、揺さぶるのはやめてぇぇぇ!!目!目回っちゃうぅぅぅぅぅ~~~!!

 

 

それでも紺子は揺さぶるのをやめない。このまま揺さぶり続ければ意識を失ってしまうだろうが、お構いなし。

だがこの時、2人は気づいていなかった。昨夜まで倒れていた辰蛇が起き上がったことを。起き上がったと同時に皿が音を立てながら床に転がったことを。

 

 

紺・一「「!?」」

 

 

皿が転がった音を聞いた2人が横を向くと、顔面、角、ツインテールが麻婆豆腐まみれになった辰蛇が起き上がっていた。

 

 

辰蛇「人の話は落ち着いてしっかり聞くものよ、紺子ちゃん?」

 

紺子「学園長生きてたの!?てっきりカズミンの麻婆豆腐が辛すぎて昇天したかと……!」

 

辰蛇「ウロボロスだからまだまだ死にゃしないわよ♪昨日のはホントに辛かったけど」

 

一海「出雲姐ちゃんと甘い夜過ごしたかったから寝ててもらおうと思って」

 

紺子「おいバカズミン、テメェ!何バラしちゃってんだよ!//////」

 

 

両手で真っ赤な顔を覆おうとする紺子だが、そうはさせまいと言わんばかりに辰蛇が目を輝かせながらギリギリまで顔を近づける。

麻婆豆腐の臭いが鼻の穴を刺激する。

 

 

辰蛇「だから一海ちゃんと一緒にそんなエロい格好してたんだね!私だけ仲間外れとかずるくない?次やる時は私も入れ―――――」

 

紺子「~~~~~~~~っ!!/////////」

 

 

 

ズガッ

 

 

 

辰蛇「ブギャボッ!?

 

 

鼻骨が折れる音がした。

これ以上言わせまいとばかりに辰蛇の顔に頭突きした紺子であった。

 

 

 

 

 

紺子「で?登校時間は昼?」

 

一海「うん。それ知らなかったの出雲姐ちゃんだけじゃん。昨日の午後ずっと屋上で昼寝してたでしょ?」

 

紺子「あ」

 

 

朝食のパンを食べながら話す2人だったが、ある教師によると『掲示板に1枚の貼り紙があった』とのこと。それは辰蛇が書いたものらしく、1年とのレクリエーションをやると書かれていたのだ。

しかし、辰蛇は昨日までライオンの檻に入れられていたはず。一海が聞いたところ、それは辰蛇が神守の猫耳と尻尾をいじる直前、黙って掲示板に貼りつけたらしい。

レクリエーションと聞いた紺子の反応は、あんぐり口を開けていた。

 

 

紺子「すっかり忘れてたけど全部思い出した………延期になって以降全然連絡なかったから、てっきり中止になったかと………」

 

一海「僕もいろいろ思い出したね。新入生歓迎のあの日、宇佐間先生が顔面埋まるほどのパンチ食らって、大狼先生はパイを顔面にぶつけられ、そして司先輩は先生のハンカチ盗んでぶん殴られたっけ」

 

紺子「よく覚えてんな…」

 

一海「入学して早々あんなのが思い出になるって嫌だよね」

 

 

いや、紺子と一海だけではない。紺子と一海のクラスメイトにとっても3年生にとっても嫌な思い出になることは間違いない。特に司は剛力のハンカチを盗んだせいで壁に穴が空くほど顔面を殴られ、さらに武道館での模擬戦でも一海の腕をつかんで股間を何度も蹴られたのが大きなトラウマとなっているので無理もないだろう。

そんなことを考えながらパンを食べ終えた2人は袋を捨て、一海がレクリエーションの内容を口にする。

 

 

一海「鬼ごっことか言ってたような……」

 

紺子「鬼ごっこ?」

 

一海「詳しいことはよくわかんないけどそんな感じだった気がする」

 

紺子「……………なんか嫌な予感しかしないの私だけ?」

 

一海「あの変態学園長が追いかけてきたら出雲姐ちゃんにとって最悪だよね。僕だったら思いっきり蹴り飛ばしてるけど」

 

紺子「牙狼だったら狼男になってボコボコにしてるだろうなぁ。満月見た時以外にも怒ったり喜んだりした時でも変身するって言ってたし」

 

一海「怒っても変身するの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて昼近くになり、すでに着替え終えている紺子と一海はすぐに登校。

校舎に入るなり、すぐに食堂へ。

 

 

紺子「おばちゃん、きつねうどん大盛り」

 

一海「いなり寿司としょうが焼き」

 

ジャック「はいはい、すぐ作るからね。残したら承知しないよ(なーんでアタイ特製の麻婆豆腐食べないのかねぇ…アタイが何が変なものでも入れてるというのかね)」

 

夏芽「今日レクリエーションあるからね、腹が減っては戦はできぬっていうからたくさん食べて体力つけるんだよ~」

 

 

食堂には生徒たちが次々と集まり、紺子と一海が座っているテーブルに龍華が座る。

 

 

龍華「よっ」

 

紺子「龍華じゃねぇか。何頼んだんだ?」

 

龍華「決まってんだろ?兄貴と同じスタミナ丼大盛りだよ」

 

一海「龍華も聞いてたんだね。あの鬼ごっこの話」

 

龍華「お前ら、夏芽さんかジャックさんに体力つけろって言われたんだろ?スタミナ丼の食券出したら俺も言われてさ、よっぽどハードな鬼ごっこなんだろうな」

 

紺子「ハードとかそんなレベルじゃねぇかもしれねぇぞ?もし学園長に捕まったら胸揉まれるぞ」

 

龍華「ああ、そうなんだよ。この前店の前掃除してたら落ちてきてさ、俺の胸いつもサラシ巻いてるから小さく見えるだろ?学園長は全部知ってるような顔しながらホントの大きさ言ってマスターに殴られるまで揉んできやがったんだ。殴られた後は逆さ吊りにされたぜ」

 

 

龍華の話を聞いた紺子と一海だったが、一海が自分の仕業だと告発する。

それは停電が起きた後のこと。洗面所の方から大きな音が聞こえ、向かうと辰蛇が紺子と一海のパンツの匂いを嗅いでいた。キレた紺子が殴り飛ばし、続けて一海が家の外で足蹴にした後ムーンサルトキックを浴びせたのである。特に停電中の紺子が本当に怖がっていたことも話してしまった。

 

 

龍華「あれお前らがボコボコにしてたの!?てっきりテレポートか何かに失敗したかと思ってたよ!」

 

一海「ホントに嗅いでたよ。あの時の学園長すごい怖がってたし」

 

 

そんな中、直刀が紺子と一海の後ろを通りすぎようとした途端、紺子の肩に当たってしまった。

 

 

 

ブシャアッ

 

 

 

一・龍「「ファッ!?」」

 

直刀「あ、あ、ああ!?」

 

 

直刀が紺子の肩に当たった瞬間、気づけば返り血を浴びていた。そばにいた一海と龍華にもだ。

 

 

龍華「紺子が殺された!!この人でなし!!」

 

直刀「……ごめんなさい、ごめんなさい………ごめんなさい!ごめんなさいぃぃ!!」

 

 

直刀はパニックになり、許しを乞いながら逃げていった。

 

 

 

 

 

紺子「すぐくっついたからよかったけどさ、あいつの能力触れただけで斬っちゃうとかそういうのなんだな」

 

 

この時一海はきつねうどんができるまで倒れた紺子に寄り添って泣きじゃくっていたらしい。あの後きつねうどんができたと夏芽に呼ばれた瞬間紺子はすぐカウンターまで走って受け取り、美味しそうにきつねうどんを食べていた。

 

 

龍華「お前あれか?大好物出ると復活するタイプか?」

 

紺子「うん」

 

一海「出雲姐ちゃんの体どうなってんの……?これでもし死んでたら………僕、生きる希望が………」

 

ジャック「ふざけやがってこの留年ゾンビがァァァァァァァァ!!!!まーた残しやがったのかァァァァァァァァァ!!!!

 

 

新入生を歓迎した日同様、一海の言葉を遮るように再びジャックの怒号が響き渡る。紺子と龍華は『またか』と呆れながら昼食を残した美弥妃へ視線を向けた。

 

 

ジャック「ホントにあんたは!!何回残せば!!!気が済むんじゃああああああああああああ!!!!

 

 

文字通り、残した美弥妃はまたジャックのナイフ投げを受け、また頭が床に転がった。

転がった頭はヘラヘラ笑っていた。

 

 

夏芽「おばちゃん、ちょっと怖いわー…いつか食堂崩れそうで怖いわー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食が終わり、チャイムが鳴ると、生徒たちはグラウンドに集まっていた。

 

 

牙狼「昨日ラインハルト先生が言ってたあの…」

 

龍哉「ヴォイエヴォーテ先生が言ってた鬼ごっこって…」

 

麻由美「想像しただけでまたお腹が………」

 

 

目にはほとんど生気がない龍哉と牙狼。腹痛が起こる麻由美。他にも呆れ顔の者や脱力感に襲われる者も。

 

 

直刀「もし捕まってその人殺しちゃったら……僕は………僕は………」

 

無亞(大好物で復活する出雲先輩もスゲェがな)

 

竜奈「しかし、捕まった際抵抗してもいいのだろうか?鬼は斬っても大丈夫なのだろうか?」

 

ワコ「抵抗はしてもいいけど斬るのはダメだと思うよ」

 

ディーゴ「どんな鬼ごっこなのかは知らねぇが、俺の運動神経で逆に怖じ気づかせてやるぜ」

 

紺子「だからって調子乗って人をはねたりすんなよ?大ケガしたらお前のせいだからな」

 

ディーゴ「そっ…そ、そそそそそそんなことするわけ…なななななないじゃないですかかかかかかか………」

 

ライエル「心配だなぁ……」

 

 

このざわめきの中、アルケーが辰蛇に目を向ける。まるで次へ進めてもいいでしょうかという風に。

 

 

アルケー「では、学園長からのお話です」

 

 

仕方ないわねと呟くと、辰蛇は朝礼台へ。

 

 

辰蛇「皆さん、こんにちは。ただいまより新入生歓迎の日以降延期となったレクリエーションを行いたいと思います。延期となってしまったのは私たちも誠に申し訳なく―――――」

 

 

辰蛇が話を進める一方、一部の生徒たちは小声でヒソヒソ話をしていた。

 

 

牙狼「トリノ先生が言ってた『生徒の心が折れそうな企画』って一体………」

 

竜奈「たぶんよくないことが起こる前触れかもしれない。念のため身構えていた方が無難だろう」

 

舌寺「人は舐められても企画は舐められない、か……今日の俺っちはちょっと真面目にやるとしますかね」

 

牙狼「何回も同じセリフ聞いてるけどお前が真面目になったこと一度もないだろ。お前も僕の首筋舐めたことあったよな?」

 

綾野「更衣室に隠れてマスターのお腹を舐めるなど言語道断にもほどがあります。自重する気もなさそうですね」

 

王臥「こういうキャラは大抵ボコられるのがお約束なんですよね」

 

 

だが舌寺はすでに1年の体育が始まる前、紺子の腹を舐めて霜に凍らされ、一海に蹴り飛ばされた挙げ句南原のジャーマンスープレックスを食らうという報復を受けている。

そんな舌寺が言い寄られる中、2年でも。

 

 

仁美「鬼って美味しいものなのかな~」

 

ライエル「いくら食人鬼の君でも食べちゃダメだからね!?」

 

司「俺様だったら本来の姿に戻って全部焼き尽くしてるがな」

 

龍哉「するなよ?鬼ごっこの意味なくなるからな?」

 

一生「ズルして人間に化けてそのまま帰るか……それとも真っ向勝負するか……」

 

盾子「真っ向勝負して紺子とどっちが鬼に捕まった回数が少ないか競ってみたら?」

 

紺子「なぜに私を持ってくる!?」

 

 

そして1年でも………。

 

 

一海(出雲姐ちゃん助けたいけど、みんなバラバラになって逃げちゃうし………やっぱり自分の力で何とかするしかないのかなぁ?)

 

無亞「かなり体使うから動きやすいセーラー服で来てよかったぜ」

 

一海「今日もセーラー服?学ランよりその方が似合ってるよ、無亞ちゃん♡」

 

無亞「無亞ちゃん!?おっ、おまっ!『ちゃん』って呼ぶなよ!/////」

 

来転「まさか捕まったらひどい目に遭わされる鬼ごっこなのか…!?くっ……殺せ……!」

 

埋「さすがに殺しはないと思いますよ?」

 

 

そう話しているうちに辰蛇の話が終わり、いよいよ彼女が出した企画が発表されることになった。

 

 

辰蛇「では、いよいよレクリエーションの企画を発表します!題して―――――」

 

 

生徒たちは息を呑み、ついに企画の名称が辰蛇の口から発表される。その発表された名称は………。

 

 

 

 

 

辰蛇「―――――『デンジャラス・逃走中』ッ!!」

 

 

企画の名称を聞いた無亞は何かが切れたのか、背中から触手が生える。

 

 

辰蛇「………あれ?な、無亞君?」

 

無亞「普通の鬼ごっこじゃ…………」

 

 

昨日宇佐間を殴った時と少し違い、空間がひとつ現れたかと思うと、そこから生えた触手が目にも止まらぬ速さで伸び、辰蛇めがけてまっしぐら。

 

 

無亞「ねぇのかァァアァアアアァアァァアアアアァァァァア!!?

 

辰蛇「ボビガッ!?

 

 

触手が辰蛇の顔面をとらえ、殴り飛ばされた彼女は校舎の壁まで吹き飛ばされ、そこへ叩きつけられた。

殴り飛ばした無亞は何事もなかったかのようなすまし顔。もちろん生徒と教師はざわめく。

 

 

剛力「が、学園長ォォォォォォォ!?」

 

ヴォイエヴォーテ「学園長!」

 

麻由美「無亞君!?何で学園長殴ったの!?」

 

無亞「なーに、学園長の考えることなんか全部ろくなことがないからさ。俺なんか女扱いされてスカートめくられてケツなでられたけどさ、ティンダロスがボコボコにしてくれて助かったぜ」

 

藤一「お前もセクハラ受けてたんかい!?男やから大丈夫やろって思ったけど嘘やろ!?」

 

無亞「嘘じゃねぇ、マジだ」

 

 

もう一度吹き飛ばされた辰蛇の方を見たが、すでに朝礼台に立っていた。

顔面を殴られたせいで鼻血が垂れている。そんなことは気にせず辰蛇はレクリエーションの内容を説明する。

 

 

辰蛇「えー、ルールは極めて簡単。学園内なら基本どこへ逃げても隠れてもよしとしますが、門の外から出てはいけません。出た場合、私が直々に連れ戻しますのでご注意ください。あとは個性豊かな鬼ですが、捕まった場合その場できついお仕置きを受けてもらいます。中には先生方が与えるのもいるかもしれません」

 

生徒一同『!!?』

 

 

つまり教師たちも参加するということ。その事実に生徒たちは絶句、そして愕然、唖然、呆然。

そんな彼らを気にせず、辰蛇は再び言葉を紡いだ。

 

 

辰蛇「それでは、デンジャラス・逃走中!これよりスタート!!」

 

 

 

短く鳴り響いたラッパの音と共にグラウンドの隅に置かれた黒いステージから白い煙が噴き出し、黒い全身タイツを着た『鬼』が現れた。

胴体には『肘打ち』と書かれていた。




鬼を応募してくれた皆様方に謝罪。せっかくたくさんの応募をいただいたのに、延期にして本当に申し訳ありませんでした。
『ハンカチ泥棒への制裁』で延期になって以降どうしようかと考えてましたが、前回の話を書き終わってちょうどいい区切りだと思ったので今回からレクリエーションの話に入らせていただきました。

さて、紺子たちは恐怖の鬼からどうやって逃げるのか。今回出せなかった狼男モードの牙狼も出ます。次回もお楽しみに。チャーオー!


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終わったら授業?いいえ、逃走中です

黒いステージから『肘打ち』と書かれた鬼が飛び出した。

突然現れた鬼に全生徒が驚くのも無理もない。悲鳴をあげながら三々五々散るように逃げていくが、そのうち1人の女子が転んでしまった。

 

 

ココ「ま、待ってですぅ!!こっち来ないでぇぇぇぇ!!」

 

 

1年のココだった。

当然肘打ちはココに目をつけ、必死に懇願する彼女に無慈悲に襲いかかる。

 

 

ココ「お母様ぁ~~~!!」

 

 

母親に助けを求めながら悲鳴をあげるも、もちろん無駄な抵抗。肘打ちは肘を曲げると、ココの腹めがけてエルボーを食らわせた。

 

 

ココ「ギャボォ!!

 

 

肘打ちがココにエルボーを決めた途端、再び短いラッパの音が鳴る。黒いステージから煙が噴き出し、もう1人の鬼が現れたのだ。

その鬼の胴体には『ザリガニ』と書かれ、手には虫籠を持っていたが、入っている生き物は胴体に書かれた名の通りザリガニ。エルボーを食らったココを無視して別の獲物を捕らえに向かった。

 

 

龍哉「おぉぉぉい!!何で俺なんだよォォォォ!?てか持ち方からしてあいつはネズミ小僧かー!!」

 

 

抵抗する間もなく鼻の穴にザリガニを挟まれ、激痛に悲鳴をあげた。

 

 

龍哉「イダダダダダダダダダダダ!!俺はお笑い芸人じゃねぇぇぇぇぇ!!」

 

 

やっとザリガニが離れたかと思うと、3人目の鬼の登場を知らせる短いラッパの音が鳴った。

次に出てきた鬼は『ゴムパッチン』。そのターゲットにされたのは遠呂智だった。

 

 

遠呂智「こいつメッチャ速ぇ!?執拗に俺を狙ってきやがる!」

 

 

するとどこからともなく胴体に何も書かれていない2人の黒無地の鬼が現れ、遠呂智を動けないように羽交い締めにした。

ゴムパッチンは抵抗できない遠呂智にゴムを咥えさせ、片手で持ちながらそのまま引っ張った。もう片方には1枚の紙を持ち、そこにはこう書かれている。

 

 

【離したら尻叩き1000発の刑!】

 

遠呂智「グォ!?ホイ(おい)ホヒャ(そりゃ)ヒフヒン(理不尽)ハホ(だろ)ホウヒハヘフホホヘイ(そう言われるとよけい)ハハ()ヒハフハフア(したくなるわ)!」

 

 

口にゴムを咥えたまま拒否するが、ゴムパッチンは無慈悲のごとくゴムを手離した。

 

 

 

バチーン

 

 

 

遠呂智「イッデェェェェェエエエェエエェエエエエェェエェエェエエェェェ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、校舎に逃げ込んだ生徒たちの一部が遠呂智の悲鳴を聞いていた。

 

 

龍華「今のはマスターの悲鳴!?何に捕まったんだ!?」

 

 

遠呂智の悲鳴を聞いた龍華は紺子、一海、竜奈、綾野と合流しており、どこへ逃げるか隠れるか話し合っているところだった。

 

 

竜奈「どうせプロレス技でも食らったんじゃないのか?いや、小道具を使われたというのもあり得るな」

 

綾野「現在の鬼は肘打ち、ザリガニ、ゴムパッチンの3人ですが、その鬼たちによってすでに犠牲者が出た模様。肘打ちはココ、ザリガニは龍哉、そしてゴムパッチンは遠呂智です」

 

龍華「マスターゴムパッチンされたの!?捕まらない方だと思ってたのに!」

 

綾野「鬼はまだどんどん出てきます。隠れ場所も全部探すつもりですし、増えれば増えるほど逃げ道がなくなるので覚悟しておいてください」

 

 

綾野が解析している中、紺子が無言で逃げ出した。

 

 

一海「って、出雲姐ちゃん!?」

 

 

逃げたのにはしっかり理由があった。先ほどまで綾野の解析を確認していたのだが、彼女の背後から鬼が迫ってきていたのだ。

しかも現れた場所は職員室。どうやら鬼はステージ以外にも別の場所から現れることもあるらしい。その鬼の胴体には『校長のおへそ』と書かれていた。

一海たちは全く気づかず、校長のおへそに捕まったのはそのうち1人。竜奈だった。

 

 

竜奈「なっ!?」

 

 

羽交い締めにされた竜奈は今の状況を理解できず、他の3人も嫌な予感がしたのか竜奈と鬼から離れる。

目の前に現れたのは優しく微笑むアルケーだった。

 

 

竜奈「こ、校長…?」

 

アルケー「うふふ……怖がらなくても大丈夫ですよ。暴力は与えないから安心しなさいな」

 

 

アルケーは優しい言葉を投げかけると、ドレスのスカートをめくる。

目の前にあったのは見るからに触り心地のありそうな腹、白いパンツ。それを目の当たりにした竜奈は絶句し、困惑。龍華と一海は何が起きているのかさっぱりわからず、綾野は今の状況を解析している。

 

 

竜奈「いくら女同士だからといって、なんというものを…!」

 

綾野「校長は悪臭系」

 

龍・一「「?」」

 

 

爪に水色のマニキュアが塗られた指を自分のへそに突っ込むアルケー。グリグリ動かした後、その指を竜奈の鼻へと近づけた。

 

 

竜奈「ヴェアアアアア!!!

 

 

どうやら相当臭かったのだろう、竜奈は悲鳴をあげると同時に失神してしまった。

 

 

龍・一「「竜奈先輩!!」」

 

 

だが背後にはもう1人『屁』と書かれた鬼が静かに迫ってきていた。危険を感じたのか、綾野も紺子同様気づいていない龍華と一海に黙って逃げてしまった。

声をかけようとした一海だったが、急に悪寒が走った。龍華も悪寒が走っており、振り向こうとした瞬間屁につかまれた。

 

 

龍華「どいつもこいつも俺たちに黙って逃げやがってー!!」

 

一海「鬼ごっこなんだから逃げるのは当たり前なんじゃないのー!?」

 

 

屁が2人を羽交い締めにし、アルケーは微笑みながら近づく。

 

 

アルケー「あなたたちにも悪臭をプレゼントしましょう」

 

 

背を向けながらそう言い、前かがみになったかと思うと。

 

 

 

ドォンッ!!!!

 

 

 

この世のものとは思えない爆発するような音の屁がアルケーの尻から放たれた。自分のスカートがめくれるほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、音楽室へ逃げてきた紺子は。

 

 

紺子「ここまで来れば大丈夫……なはず………」

 

???「出雲先輩」

 

紺子「きゃあ!!」

 

 

机の下に隠れていた無亞に声をかけられ、一瞬足がすくんでしまった。

 

 

紺子「な、無亞ぁ……驚かすんじゃねぇよぉ……私そういうの一番嫌いなんだよぉ…………」

 

 

涙目になる紺子に無亞はいたずらそうに笑っていた。

 

 

無亞「悪い悪い。俺もいい隠れ場所ねーかなーって思って探してたんだけどさ、なかなか見つからないもんだな。2時間連続逃げっぱなしも辛いし」

 

紺子「次って授業ないの!?学園中全部探されるって綾野先輩言ってたし……どうすんだよ!?序盤から私たち不利だぞ!?」

 

無亞「まあ落ち着けって。逃げ道が減ってきてもいい作戦はあるんだぜ」

 

紺子「いい作戦って何だよ!?教えてくれよ!」

 

無亞「残念だけど出雲先輩は絶対無理なことだ。俺にとってのいい作戦だよ。さっき学園長を殴ったように空間から触手生やして攻撃する作戦さ。鬼に抵抗してはいけないってルールあったら失格になるかもな」

 

紺子「期待して損したー!!」

 

 

紺子は諦めて音楽室を出た。だが恐怖はまだまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始10分経過。鬼、増量します』

 

 

学園中に流れた校内放送に再び黒いステージから煙が噴き出し、鬼が2人出てきた。1人は『ねこです』、もう1人は『ローラースケート』だった。

だが生徒たちはどんな鬼が追加されたかわからない。唯一知っているのは全教師及び学園長の辰蛇だった。

 

 

ライエル「今度は何が来るんだ?僕もいつ襲われるか怖くてしょうがないよ………」

 

 

今ライエルがいる場所は教員トイレの前。いつ襲われてもいいように抜刀する準備はできていた。

するとトイレから女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

ライエル「だ、誰っ!?」

 

 

教員トイレから3人の鬼が飛び出して走り去っていき、立て続けに出てきたのはなぜか全身クリームまみれになった大狼だった。

 

 

ライエル「って大狼先生!?どうしたんですかそんなクリームまみれになって!」

 

大狼「『学園内ならどこにでも逃げてもいい』って学園長が言ってたんですけど、急にトイレに行きたくなっちゃって………用を足して出ようとしたら個室から鬼が………パイを持って………」

 

 

怯えながら訴える大狼だったが、さらなるアクシデントに巻き込まれるとは予想だにしていなかった。

肘打ちがこちらへ向かって走ってきていた。大狼とライエルは気づいておらず、そのままエルボーを食らったのだった。

 

 

ライエル「ゴバァ!!

 

大狼「何で私までぇ!?

 

 

パイ投げの被害を受けたのは大狼だけではなかった。

大狼とライエルがエルボーを食らった同時に司も急にトイレに行きたくなったのだ。

 

 

司「うっ……小便してぇ……」

 

 

この後降りかかる災難など知らず、司はトイレに入った。その前を藤一が通りかかる。

 

 

藤一「メリーがやられてもうた…油断できひんな。でもこれって賞品あるん?たぶんサプライズかもしれへんな………そんな気がするんや」

 

司「ごわあああああ!!お前らどっから…個室に隠れてるとか卑怯ギャアアアアア!!

 

 

トイレから司の悲鳴が聞こえ、藤一は思わず後ずさった。

 

 

藤一「な、何や!?まさか鬼が隠れとったんか!?」

 

 

まさにその通り。トイレから3人の鬼が飛び出すと、そのまま走り去っていく。藤一は悲鳴が聞こえたトイレに慌てて入ると、そこにはクリームまみれになって倒れた司がいた。

 

 

藤一「先輩!大丈夫っすか!?しっかりしてください!」

 

 

藤一に揺さぶられ、司のクリームまみれの唇が開く。

 

 

司「…………トイレにいやがった」

 

藤一「トイレに……あっ!じゃあさっき出てった奴らってまさか先輩をこんなにした鬼っすか!?」

 

司「そうだよ………神出鬼没すぎるぜ………まさにトイレに入れば鬼が喜ぶ、だな……………」

 

 

正しくは風が吹けば桶屋が儲かるである。変なことわざを言った司はそのまま気を失ってしまった。

 

 

藤一「先輩!せんぱーい!!」

 

 

気絶した司に大声で呼びかける藤一。だがそれが大きな間違いだった。

トイレに響く藤一の大声を聞きつけたザリガニが侵入し、藤一の肩を叩いた。

 

 

藤一「ゲッ!あ、アカーン!!や、やってもうたー!!」

 

 

なす術もなく鼻の穴にザリガニを挟まれたのだった。

廊下では紺子も一海たちに黙って逃げた罰が当たったのか、羽交い締めにされた状態でゴムを咥えさせられていた。

 

 

【離したら尻叩き1000発の刑!】

 

紺子「んーっ!んーっ!」

 

 

ゴムが顔に当たる恐怖に必死に顔を横に振っていたが、無慈悲なゴムパッチンはゴムを手離した。

 

 

 

バチーン

 

 

 

紺子「んやあああああああああああああああああっ!!!

 

龍華「あの悲鳴は紺子!?」

 

一海「出雲姐ちゃん!?」

 

 

その頃、アルケーの屁を受けた龍華と一海は壁に叩きつけられてしばらく気絶していたが、ちょうど目を覚ましたところだった。

立ち上がった瞬間ゴムが顔に当たった紺子の悲鳴を聞き、すぐに向かおうとしたが、ふとあることが脳裏をよぎる。

 

 

龍華「……罰が当たったんだろうなぁ。あいつ、何も言わないで俺たち置いて逃げたよな。おかげで俺たち綾野先輩が言ってた校長の悪臭嗅いじまった」

 

一海「綾野先輩だって黙って逃げてたじゃん。僕たちにはオナラとは言えないオナラ、竜奈先輩にはおへその匂い………今回ばかりは見損なったよ、出雲姐ちゃん………」

 

 

あの紺子が裏切るはずがないと信じていた。特に一海は紺子に拾われ、それ以降すっかり彼女に懐いてしまっているため、黙って逃げたと知った時には物事も言えなかった。

2人が呆れている中、向こうで誰かが鬼に捕まったことに気づいた。

 

 

???「わぁー!はずみで頭が取れちゃった!取れちゃったよー!」

 

 

目を凝らして見てみると、そこにいたのは昼休み、ジャックのナイフ投げを受けた美弥妃だった。

頭が転がった美弥妃を見て鬼は驚いたのか、少し後ずさる。美弥妃が目にしていたのは胴体に『ねこです』と書かれた鬼だった。

 

 

美弥妃「『ねこです』ってなーにー?体で自分が猫だってこと表現したいの?したいのー?」

 

龍華(いや、さすがにそれはないだろ…あいつが持ってるのって…)

 

 

ねこですが持っているのは猫耳カチューシャ、猫髭、そして猫の尻尾。鬼が持っているものに美弥妃はすぐに悟った。私に猫のメイクをするつもりだ、と。

 

 

美弥妃「ニャー!!ねっこみーやびっ!ねっこみーやびっ!」

 

 

猫のメイクをされた美弥妃は嬉しそうに跳ね回っていた。

すると先ほどアルケーのへその匂いを嗅がされ、倒れた竜奈が起き上がる。

 

 

竜奈「なぜあいつは喜んでるんだ?」

 

一海「あ、竜奈先輩」

 

龍華「あのお残しゾンビ…じゃねぇや、美弥妃先輩さっき猫のメイクされたんだ。それでメッチャ跳ね回っててさ」

 

美弥妃「ねっこみーやびっ!ねっこみーやびっ!」

 

 

そう言いながら跳ねて喜んでいる美弥妃を無視し、3人は自分の身に起きたことを告白することに。

龍華と一海は屁で壁に叩きつけられたこと、竜奈はへその匂いを嗅がされたこと。互いに告白し合った。アルケーの屁はとてつもなくすっぱ臭い匂いがしたらしく、へそは何日風呂に入っていないんだと叫びたくなるほどの匂いだったらしい。

 

 

龍華「でも、あのオナラって1回きりで終わりなのか?もしどこかで焼き芋とか食いまくって補給してたら……」

 

竜奈「きっとそうだろうな。しかし紺子め、鬼が来たなら『逃げろ!』と言ってほしいものだ」

 

一海「出雲姐ちゃん誰かに捕まってましたよ。『んやああああ!!』って声ここまで聞こえてきましたもん」

 

竜奈「捕まったのか。ふむ………罰が当たったと思えばいい」

 

一海「僕もホントに見損ないましたよ」

 

龍華「目の前で捕まってたら爆笑してたけどな」

 

 

ところが、またしても気づけなかった。

3人が話し合っている最中、鬼が足音を立てずに近寄ってきていたことを。肘打ちが抜き足差し足で忍び寄ってきていたことを。

 

 

竜奈「!!!」キランッ

 

 

突然竜奈が目を光らせたかと思うと、腰に携えている刀『ドラゴニックスレイブ』を目にも止まらぬ速さで抜刀し、一刀両断にした。

肘打ちも何が起きたかさっぱりわからず、体が真っ二つになると同時に血液らしき黒い液体が噴き出した。肘打ちは倒れ、黒い液体は床に広がっていく。

 

 

龍華「り、竜奈先輩が………

 

一海「鬼を………

 

龍・一「「斬った………………!」」

 

 

龍華と一海は恐怖にガタガタ震えながら抱き合った。竜奈は鬼の死体を見つめながら呟く。

 

 

竜奈「降りかかる火の粉を払うため、仕方なかった………だが本当にこれでよかったのだろうか?自分は本当に鬼を斬ってよかったのだろうか?」

 

 

疑問に思う中、校内放送が校舎に流れた。まるで竜奈の疑問に答えるかのように。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、もうひとつのルール。鬼は倒せますが、30秒後にはまた復活しますのでご注意を』

 

 

 

ズドガドドドガッシャーン

 

 

 

龍・一「「倒せたんかーい!!!」」

 

竜奈「バカな………そんなバカなことが……あっていいのか…………!?」

 

美弥妃「ねっこみーやびっ!ねっこみーやびっ!」

 

一海「先輩も先輩でうるさーい!!」

 

 

相変わらず跳ね回っている美弥妃のやかましさにしびれを切らした一海が彼女の頭めがけて飛び蹴り。吹き飛ばされた頭は壁に激突した。

にも関わらず、美弥妃の頭はヘラヘラ笑っていた。頭をなくした胴体につけられた尻尾はしなやかに動き回る。

 

 

美弥妃「私の頭はね、サッカーボールにもなるんだよ!今度の昼休み教えてあげるね、あげるね!」

 

一海「気持ち悪くてやる気にもならないよ!」

 

竜奈「喧嘩してる場合か!ずっとここに留まっていれば私たちは結局捕まる羽目になるぞ!美弥妃だってその犠牲になる!」

 

 

その言葉通り、竜奈に斬られた肘打ちが宙に浮かび、時間が巻き戻るように体がくっつこうとしていた。

 

 

龍華「言ってるそばから復活しかけてんじゃねーか!カズミン、先輩、早く逃げるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって理科室では、牙狼が鬼と対峙していた。

 

 

牙狼「ヴォルルルルル……

 

 

牙狼は狼男の姿となっており、ものすごい剣幕だった。

目の前には『ローラースケート』と書かれ、その名の通り手にはローラースケートを持った鬼。互いに間合いを取り、いつ襲っても襲われてもおかしくない状況だった。

 

 

牙狼「どこからでも来いよ………お前が僕に牙を向けた瞬間、お前は八つ裂きになっている………

 

 

ローラースケートは牙狼の言う通り下手に手を出せば骨も残らないと思ったのか、隙を見せた瞬間にローラースケートを履かせようと考えていた。

 

 

 

ガタッ

 

 

牙狼「グァウ!?

 

 

物音がした方に顔を向ける牙狼。ローラースケートにも聞こえていないはずもなく、物音が聞こえた机に顔を向けた。

机から出てきたのは霜。狼男に変身した牙狼を見ているうちに恐怖に耐えられなくなり、気づかれないように理科室から出ようとしたのだろう。

音の正体はこれだった。椅子に足を引っ掛けてしまったのだ。

 

 

牙狼「霜!?

 

 

転びそうになりながらも立ち上がった霜は牙狼に恐怖しながら理科室を飛び出していった。

ローラースケートはこの狼男といがみ合っていれば自分が不利になるかもしれないと判断し、理科室から逃げた霜を追いかけていった。

 

 

牙狼「あれからして怖がってたのかな?この姿だからしょうがないよね……いつか慣れてくれればいいけど…………

 

 

うつむきながら呟いた牙狼だったが、ふとあることを思い出す。

 

 

牙狼「そういえば紺子たち…今頃大丈夫かな?いつまでもここにいたら意味ないし、探しに行くとするか

 

 

自身の姿に不慣れの者に怯えられるのを覚悟で理科室を出た牙狼。同時に校内放送が流れる。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始30分経過。鬼、増量します』

 

 

再び黒いステージから3人の鬼が飛び出した。そのうち1人は肥満体である。

肥満体の方には『関取』と書かれ、他の2人には『らくがき』、『ちちもみ』と書かれていた。

 

 

乱「うそーん!?1人だけ変態なのがこっち来てるー!!」

 

 

関取とらくがきはそれぞれ別方向へ走っていったが、ちちもみだけ乱へまっしぐら。

 

 

乱「いやああああああああ!!おっぱい触んないでぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!////////」

 

 

恥辱のあまり顔を真っ赤にしながら叫んでしまった。

もしターゲットを冷火にして母親の燐斗にバレれば、高確率で骨も残らないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でその冷火は。

 

 

辰蛇「冷火ちゃ~~ん!!!怖がらなくてもいいのよ~~~~!!!パイタッチするだけだから~~~~~~!!!あなた何カップ~~~~!!?

 

冷火「何で学園長も参加してんだよ!!?私のそばに近寄るなァァァァァァァァ!!!!

 

 

なぜか鬼役となった辰蛇に追いかけられていた。



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やっぱり長時間逃走は肉体的にきつい

紺子「絶対見つからないって一生言ってたのにぃぃ!!あのクソ化け狸チクショー!!」

 

 

教室のカーテンの裏に隠れていた紺子だったが、鬼に足をつかまれていた。紺子は引っ張り出され、肥満体の鬼『関取』の餌食になろうとしていた。

関取は紺子の両足をしっかりつかむと、周りに置かれている机など気にせずそのままぶん回す。ジャイアントスイングだ。

 

 

紺子「イギャアアアアアアァァァァアアァアアアァァァァアァアアアアアァァァアアアァ!!!!

 

 

景色が回転しているように見え、机にも何度も頭をぶつけ、スカートも上半身が隠れるほどめくれてパンツが丸出しになる。やめてと必死に叫ぶと、関取はそのまま手を放した。いや、投げ飛ばしたと言った方が正しいだろう。

紺子は教室の外まで投げ飛ばされ、そのまま壁に突き刺さった。隣には屋内消火栓があったが、もし投げられた位置が悪ければ紺子にとっても投げた関取にとっても大惨事となっていたかもしれない。

関取は内心ホッとし、次の獲物を探しに行った。だが問題は壁に突き刺さって身動きがとれなくなった紺子だ。

 

 

紺子「ん~~~~~~!むお~~~~~~!(抜けないよ~!誰か助けて~!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒狂「人のunhappyを笑うなんて、いけない子ねぇ♡」

 

一生「そ、そんな!何で荒狂先生まで!?」

 

 

別の場所では一生が荒狂に詰め寄られていた。

ことのきっかけは少し遡ると、隠れ場所を探していたライバルの紺子と偶然合流した。

 

 

一生『あっ、紺子!』

 

紺子『一生!ライバルのお前が何の用だ!?まさかこんな時に勝負しろとでも言うのか!?』

 

一生『待て待て待て待て!お前が何回捕まったのかはわかんないけど、俺とお前の仲は悪いけど一旦休戦ってことでどこに逃げるか話し合おうよ!』

 

紺子『………そんならしょうがねぇや』

 

 

一生は紺子に教室のカーテンの裏に隠れた方が見つからないと伝え、言われるがままにそこへ隠れた。ところが鬼に見つかってしまい、紺子の悲鳴が教室の外まで聞こえてきた。

そして今に至る。紺子の悲鳴を聞いた一生は自分のライバルが鬼に捕まったことに笑っていたが、そこへ荒狂が近づき、彼の肩を優しく叩いたのである。

 

 

一生「あ…あ…荒狂先生も鬼なんですか………!?」

 

荒狂「That's right.いくらライバルでも人のunhappyを笑うのはどうかと思うの。鬼役として教師として、一生ちゃんにはpunishmentを与えます♡」

 

一生「ちょ―――――」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

しゃべる間もなく優しい笑みを浮かべた鬼役の荒狂による気持ち悪い接吻を受けた一生であった。

接吻が終わった頃には一生はすでに気絶していたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、食堂。ここに運悪く鬼に遭遇してしまった生徒がいる。

ここでも4人の鬼たちが厨房から出現していた。彼らの胴体にはそれぞれ『からみ(長男)』、『さんみ(次男)』、『にがみ(三男)』、『あまみ(四男)』と書かれていた。味覚に関する四兄弟だろう。

 

 

ワコ「嘘嘘嘘嘘!ワコを捕まえても楽しくないよ!ほら、ワコ背低いじゃん!身長90センチの低学年だよ!この学園の生徒じゃ―――――」

 

 

バレバレの嘘をつくなと言わんばかりに味覚四兄弟はワコを捕まえ、椅子に座らせると、両手足を縛って拘束した。

それからからみ(長男)がここに残り、弟たちは食堂を走り去った。からみ(長男)がテーブルに用意したのは激辛料理のフルコースである。

まさかこれを食べなきゃならないの!?ワコが悟ると同時に青ざめた。そう、食堂に現れた味覚四兄弟はターゲットに辛いもの、すっぱいもの、苦いもの、そして甘いものを食べさせる鬼の四兄弟。特に長男であるからみは辛すぎるあまり暴れないように弟たちと協力して拘束した後、辛いものを食べさせるのである。

 

 

ワコ「ホガァァァァァ!ハワァァァァァ!!」

 

 

開口器で口を強制的に開けさせられたワコはからみ(長男)によって嫌というほど無理矢理激辛料理を口に運ばれた。

 

 

ワコ「ボハァァァァアアアアアアアアアア!!!!

 

 

あまりの辛さに涙目になり、口に入れたものが吹き出される。

口からは唾液が垂れ、それを見たからみ(長男)はますます興奮。どんどん激辛料理をワコの口へ運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でからみ(長男)の弟たちは手分けして獲物を待ち伏せして捕らえる作戦に出た。さんみ(次男)は職員室、にがみ(三男)は音楽室、あまみ(四男)は秘術室へ向かう。

しかし、生徒たちの中で唯一捕まっていないのが1人だけいた。2年の運動神経抜群の蒸気機関車の付喪神、ディーゴだ。

 

 

ディーゴ「でもなぁ………いくら運動神経抜群の俺でも……長時間走りっぱなしはきついわい…………」

 

 

息を荒らげながら呟いたが、下を向いて走っていたため目の前の誰かに気づくことはなかった。

頭突きするようにぶつかってしまい、その相手に謝ろうとした矢先、全身から血の気が引いた。それもそのはず、立っていたのは先輩でも後輩でもなく………。

 

 

ディーゴ「はっ……はあぁっ………ああ…っ……」

 

 

胴体にローラースケートと書かれた()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディーゴが鬼に捕まったその頃、アルケーによる悪臭の犠牲者が再び現れた。

 

 

司「校長も学園長も鬼になってるだと!?」

 

 

あの後意識を取り戻し、トイレから出て水飲み場でクリームまみれになった顔を洗っているところを校長のおへそに羽交い締めにされたのである。

恐怖に震える司にアルケーは優しく微笑みながらスカートをめくり、腹とパンツを見せつけた。

 

 

司「ダメだこの校長…完全に女を捨ててやがる…!」

 

アルケー「別に殴ったりしませんよ?司君には私のおへその匂いを嗅いでもらうだけです…♡」

 

司「いつも笑ってるけど何考えてるかわかんねぇことあるからもはやその笑顔も恐怖にしか見えねぇ!?」

 

 

アルケーは何のためらいもなく自分のへそに指を突っ込んでグリグリ動かした後、竜奈同様臭くなった指を司の鼻へ近づける。

 

 

司「グッゼェェェエエエェェエエエエエェェエェエエエエェェェェェェエェェェ!!!

 

稚童「だ、誰の声!?」

 

 

別人のように顔を歪めながら悶絶する司。その悲鳴を聞いて駆けつけてきたのか、アルケーと校長のおへその足元で倒れている司に稚童が絶句する。

校長のおへそは素早く稚童の気配を察し、素早く羽交い締め。アルケーはスカートをめくったままの状態で稚童に近づき、へそに指を突っ込んだ。

 

 

稚童「まさか……さっきの悲鳴って……」

 

アルケー「嗅・ぎ・な・さ・い♡

 

稚童「これのことかァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

想像を絶するほどの匂いを嗅がされ、司同様悲鳴をあげながら悶絶したのであった。

2人が倒れてしばらく時間が経ち、再び鬼の追加を知らせる校内放送が流れた。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始45分経過。鬼、増量します』

 

 

普段ならその5分後には授業終了のチャイムが鳴っている。しかし、その日は違った。

次に現れたのは『犠牲と献身』、『笑』、『一本釣り』。3人は校舎へ入ったが、一本釣りはフックつきの釣竿を持っているので、強いて言えば鼻フック。他の鬼が捕まえた獲物の鼻を2階から引っ張り上げるつもりでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「~~~~~~~~~!」

 

 

同じ頃、紺子はまだ壁に突き刺さったままだった。そこへ何度も鬼に捕まって満身創痍となった辰美が通りかかった。

 

 

辰美「紺子様、今助けますわ!」

 

 

満身創痍で校舎をフラフラと力なくさまよっていたが、壁に突き刺さった紺子を見るなり急に元気になり、ものすごい力を発揮。すぐに紺子を壁から抜いてしまった。

はずみで背後にある別の壁にぶつかったが、気にしない方へ。紺子の安否を確認するため声をかける。

 

 

辰美「しっかりしてください紺子様!大丈夫ですか!?何があったんですか!?」

 

紺子「一生に騙された………カーテンの裏に隠れてたら黒いデブに捕まってぶん回されて…………」

 

牙狼「あっ、紺子!それに辰美まで!やっと見つけた!

 

 

すぐ近くでノイズのような声が聞こえる。振り向くと、そこに立っていたのは銀の体毛が生えた狼男。だがその目は紺子にとって見覚えがある。

狼男を見た辰美は腰を抜かし、紺子は狼男の正体がわかった。これは牙狼だ、と。

 

 

紺子「牙狼……!」

 

辰美「へ!?この人牙狼さんだったんですか!?てっきり別の鬼かと……!」

 

 

信じられないというような目をする辰美だったが、狼男の正体が牙狼だと知った時には心底ホッとしていた。

 

 

牙狼「2人共こんなにボロボロになっちゃって……実は僕もそうなんだ。僕も何回も捕まっているうちに『鬼は倒せる』ってアナウンスを聞いて、僕も負けてられないと思って狼男になって身を守ってたんだ。周りから怖がられるのを覚悟してね……それでも僕を捕まえようとする奴はいたね

 

辰美(これ………私必要なさそうですね。紺子様と牙狼さんだけにしておいた方がよさそうですね………)

 

 

複雑そうな表情をしながら辰美は紺子と牙狼から離れた。

 

 

牙狼「僕はこれ以上紺子たちがボロボロになるのを見たくない。君だって思ってるよね?こんなレクリエーション廃れちまえって。全員は守れないけど、紺子。君だけはこれ以上こんな目に遭ってほしくない。幼馴染みの君を守れるのは僕しかいないんだ

 

紺子「……………///////」

 

 

話している途中ディーゴの悲鳴が聞こえたような気がしたが、全く気にも留めていなかった。

紺子は顔を赤らめながらそっぽを向きながらこう言った。

 

 

紺子「べ、別に私は誰にも助けなんか求めてねぇよ……辰美は私が埋まってたところをたまたま助けてくれただけで、鬼は倒しても倒しても復活するし、逃げ道もほとんどないし…………///////」

 

牙狼「ダメだよ、そんなネガティブになっちゃ。僕がいるじゃないか。僕という強い味方が。いつまでも恥ずかしがってちゃ何にもならないでしょ?足止めできるだけでも十分だし、一緒に逃げようよ

 

紺子「………牙狼………私……私…………」

 

 

言葉を続けようとしたその時、辰蛇の声が聞こえてきた。

声がした方向に顔を向けると、後に続いて辰蛇から逃げる半べその冷火が。

 

 

辰蛇「ああ~~~~、かわいいかわいい冷火ちゃ~~~~ん!!!お願いだからパイタッチさせてちょうだいよ~~!!!超一瞬だから!!!超一瞬で終わるから~~~~~!!!!

 

冷火「もう勘弁してくれー!!!いつまで私を追いかけやがるんだァァァァァァ!!!諦めて違う奴探そうって思わねぇのかよォォォォォォォォ!!!

 

辰蛇「だって一度触るって決めたら絶対触れって私の本能がそう言ってるんだもおおおおおおおおおん!!!!!お願い冷火ちゃん、触らせてちょうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!

 

 

辰蛇に追いかけられている冷火に紺子と牙狼は唖然。明らかに予想はついているが、共にこう口に出す。

 

 

紺・牙「「学園長、絶対終わったな」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎から出てグラウンドに出た冷火だったが、辰蛇はまだ追いかけてくる。だが辰蛇は紺子と牙狼が予測していた天罰が下るとは全く考えてもいなかった。

 

 

冷火「あっ!」

 

 

グラウンドの真ん中に差し掛かった瞬間つまずいてしまった冷火。もう逃がさないといういやらしい目つきで冷火の胸を触ろうと構え、ジリジリ近づく辰蛇。

 

 

辰蛇「もう逃がさないわよ~ん♡でも大丈夫、一瞬触るだけですぐ終わるからね~♡

 

 

ところが、これから自分に天罰が下ることに辰蛇は気づいていなかった。

背後から家庭科の教師にして冷火の母親、燐斗がものすごい形相で迫ってきていたことを。

 

 

燐斗「キイイイイイイサマアアアアアアアア!!!!

 

辰蛇「ヒデブッ!!?

 

冷火「!?」

 

 

娘思いの燐斗による怒りの飛び膝蹴りが辰蛇の顔に直撃!

 

 

燐斗「執拗にうちの娘追いかけて挙げ句には胸触ろうとか何考えdjdjmjapaegdrg3rjpagdi4mg3mg6mkjvdg12!!!!

 

 

怒りのあまり呂律が回らない燐斗。何しろ辰蛇があの親バカの娘に手を出そうとしていたのだ。

それもそのはず、誰であろうと禁じられていることをするなど燐斗にとって言語道断。ここまで怒り狂ってもおかしくないだろう。

 

 

冷火「お、お母さ―――――」

 

燐斗「あらあら冷火、怖かったでしょ?こんなにかわいいあなたを傷つけるわけにはいかないからね♡ここはお母さんに任せて♡」

 

 

怯える冷火に燐斗は娘をなでながら笑顔で言い、再び辰蛇の方を向くと鬼のような形相になる。

 

 

燐斗「ド変態野郎、娘に手ェ出したらどうなるかァ、体で教えたるわァ!!!!覚悟決めろやゴルァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

何と説明すればいいのだろうか、言葉では表せないほどの暴力が辰蛇を襲う。

背後から冷火が見ているが、辰蛇から血が飛び散っているのがよくわかる。いつも過度な愛情を注がれているのはまだいいが、私を助けたいがためにそこまでするか?今日の母親は本当に別人にしか見えない。その別人のような母親を冷火は見ながらよけい青ざめ、そして怯えていた。

 

 

燐斗「ぐだばべぇええぇぇぇええええぇえぇぇえええええぇぇぇぇえええ!!!!!!

 

辰蛇「ビョアァァァァァアァアアァアアァアアアアアァァァアアァ!!!!

 

 

地面には血が広がっていき、返り血を浴びる燐斗の着物は真っ赤に染まっていく。

 

 

燐斗「この変態クソゲス最低エロスケベババア野郎がァァァアアァアアァァァアァァアアアアァアアァァァァ!!!!!!

 

辰蛇「■※☆×Ω∞♂ω*℃♯◯〆@¢∃∝∠⊥¥◇±Å√△÷∬≦∂$%♀∥∴〒§;£仝∀⊆々ゞ∇□∧∽◎≡〃⇔‡!!!!!

 

 

 

 

 

辰蛇の声にならない悲鳴が止んだと思うと、グラウンドの真ん中には『喰輪辰蛇』と彫られた墓石が建てられていた。

墓石の周りに辰蛇の血が広がっているが、無論燐斗は気にしない方向へ。それから怯えている冷火へ駆け寄り、怯えている彼女をなで、微笑みながら優しい声をかける。

 

 

燐斗「あ~、私のかわいい冷火…♡あの変態学園長にいつ待ても追いかけられて怖かったね…♡」

 

冷火(学園長より私を思いすぎてこんなに返り血浴びるほど【自主規制】したお母さんが一番怖ぇよ!)

 

 

しばらく優しい声をかけながら冷火をなでていた燐斗だったが、突然不気味にニヤリと口元を歪めると同時に目が怪しく光った。

 

 

燐斗「………かかったわねぇ♪

 

冷火「え?」

 

 

腰周りになぜか燐斗の腕が絡みついており、気づいた時にはもう遅かった。

 

 

燐斗「ざーんねーんぴょーん!!実は私も鬼でしたー!!必殺ブレーンバスターーーーー!!!

 

冷火「■■■■■■■■■■■■■■■!!?

 

 

ブレーンバスターで地面に叩きつけられた。そう、燐斗が鬼役だったのには当然理由があった。

春休み、レクリエーションについての会議中、現在行われているデンジャラス・逃走中に決まったのはいいものの、もし辰蛇が鬼役になれば女子生徒の中でそのうち娘も被害に遭うだろうと推測。娘や他の教師たち及び、アルケーと辰蛇に内緒で自ら鬼役になることを決意。

そして今に至り、予想通り辰蛇が冷火を執拗に追いかけた。本能が働いたのだろう、『娘に手を出すなんて許せない』と全身の血が煮えたぎるほどの怒りがほとばしった。

助かったと泣きつくまでには至らなかったが、油断したところをブレーンバスターにかけようという悪巧みも頭に入れていた。結果、この様だ。

 

 

燐斗「…………黙っててごめんなさい。痛かったでしょ?ただあなたがかわいいだけで………逃げてる時の半べそが見たくって………それで鬼になろうと思ったの。でも学園長相手によく頑張ったね。お母さん嬉しいな」

 

 

燐斗の顔は笑ってはいるものの、目には涙がうっすらと浮かんでいた。

娘にブレーンバスターをかけたせいで嫌われることは間違いないとも少々不安を抱えているが、それでも気絶した冷火を表情を変えずになでながら褒めると、すぐにその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来転「お……俺はなんてものを見てしまったんだ………くっ、殺せ………!」

 

 

運悪く近くに居合わせ、この惨劇を目の当たりにした来転が背後の壁に張りつき、恐怖で震えていた。

グラウンドの真ん中に建てられた墓石とその周りに広がる血、ブレーンバスターを決められて気絶した冷火。もし自分があんな目に遭っていたらどうなっていたか想像するだけで鳥肌が立つと共に、冷や汗が地面に滴り落ちた。

だがこの後一本釣りによる鼻フックを受けるとは1秒たりとも予想していなかった。上から釣り糸に結ばれたフックがゆっくり、またゆっくりと来転の鼻の下まで垂れていく。この時来転は周りの警戒はしていたが、上方までの確認はしていなかったのだ。

 

 

来転「…!?」

 

 

ようやく垂れ下がるフックに気づいたが、時すでに遅し。フックが鼻の穴に入り、そのまま一気に上へと引っ張られた。

 

来転「ホガァァァァァァァァァァァァァ!!!ヒィデデデデデデデデデデデデデェェェェェェェェェェェェェェェ!!!

 

 

2階の一本釣りは来転の鼻がちぎれそうなほど引っ張り、来転は豚鼻になると同時に爪先立ち。悲鳴をあげながらフックを外そうとしたが、瞬間的に現れた他の鬼に羽交い締めにされたため不可能だった。

 

 

来転「くっ!!ホオ()()ェェエェエエエエエェェェェエエェェエエエエェ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室、音楽室、秘術室でも同じ頃、男女それぞれの生徒たちがからみ(長男)の弟たちによる被害を受けていた。許人と高見はさんみ(次男)に梅干し、藤一はにがみ(三男)にゴーヤ、そして美弥妃はあまみ(四男)によってお菓子を大量に食べさせられていた。

さらに気絶していた司も起き上がった瞬間、おはようと言わんばかりに目の前に『犠牲と献身』と書かれた鬼がおり、絶句。必死に抵抗するも、むなしく紐で結ばれた大量の風船と空き缶を腰に巻かれたのであった。犠牲と献身が去った後、ローラースケートを履かされたディーゴ、盾子、ハイカラ風の制服を着た3年の先輩と合流する。

 

 

ディーゴ「司…ってどうしたんだその風船と空き缶!?」

 

司「ディーゴ、盾子、清花先輩……人のこと言えねぇが散々な目に遭ったみてぇだな…俺様なんかもっとひでぇぞ?トイレの個室にパイ持った鬼がいたんだよ!」

 

清花「トイレにも鬼!?嘘でしょ!?」

 

盾子「あ、それ私も見かけましたよ。遠くで鬼が3人トイレに…」

 

 

清花という少女が驚き、盾子が目撃情報を口に出す。

 

 

司「しかもそれだけじゃねぇ。顔洗ってたらまた違う奴に捕まっちまって、なぜか校長がいたんだよ。そしたらパンツ見せつけてきたと思ったらへその穴に指突っ込んで、その指の匂いを嗅がせてきやがった!何日風呂に入ってないんだって言いたくなるほど臭かったぜ…………」

 

ディーゴ「鬼の中に校長と学園長も混じってるってのは聞いてるが、そこまでやるか?廊下がすっぱ臭かったのはあれ何なんじゃろ……」

 

清花「ていうか司、そんなのつけられて目立たないの?ずっとここにいたら僕たちまで巻き添えに…」

 

司「あーーーっ!そうだった!さっき起きたらまた近くにいてな、これつけられたんだよ!頼む、俺様と一緒に逃げてくれないか!?」

 

 

風船と空き缶を振りながら頼むが、3人は一斉にこう言い放った。

 

 

ディ・盾・清「「「絶対に嫌です」」」

 

司「おい、何でだよ!?俺様と逃げると問題があるってか!?」

 

ディーゴ「ありまくりじゃボケ!そんなのつけたお前と一緒に逃げたら必ず俺たちまで巻き添えになるだろうが!」

 

清花「司君、ホントは君のこと助けたいけどあの鬼だし、手の施しようがないから逃げさせてもらうからね」

 

盾子「絶対私たちに近寄らないでよ?」

 

司「近寄んなだぁ!?おいコラふざけんな!別に助けてくれてもいいだろうが!こんなに土下座してんだぞ!」

 

清花「してないじゃん!てか、それが人にものを頼む態度!?よけい助けたくなくなるよ!」

 

 

3人は被害に遭わないようにすぐに階段を降りるが、司はすかさず3人を追いかける。

 

 

 

ガランガランガラガラガラガラ

 

 

 

空き缶を引きずる音が響き、司は全く気にせずディーゴたちを追う。その音を聞いたディーゴたちはますます逃げ足を速めた。

 

 

ディーゴ「ちょ、おま、うるせぇな!」

 

盾子「走ったら音で見つかっちゃうよ!お願いだから来ないで!」

 

司「うるせぇぇぇぇぇ!!黙って俺様を助けろォォォォォォォォ!!

 

清花「ディーゴ君、足速すぎて僕たちついていけないよ!」

 

ディーゴ「だってあんなのと一緒に餌食になりたくないですもん!ローラースケート履かされてからいろんな鬼に捕まりましたもん!」

 

盾子「で、それ脱げたの!?」

 

清花「僕に任せたら脱げたよ!」

 

 

逃げているうちに司が鬼役の教師に捕まるとは3人は思ってもいない。

それもそのはず、荒狂が笑顔で猛スピードで追いかけてきているの様子が風船で遮られて見えないのだから。

 

 

司「助けねぇんならお前らも巻き添えにしてやルルァァァァァァァァァァァァ!!!

 

荒狂「ダ~メよ司ちゃ~ん♡」

 

 

 

ガシッ

 

 

 

司「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!この俺様がオカマに捕まるだとォォォォォォ!!!

 

ディーゴ「天罰だよバーカ!」

 

 

荒狂に捕まった司は絶叫し、ディーゴが振り向いて彼をバカにすると、盾子と清花と共に校舎から出ていった。

 

 

荒狂「人を巻き込もうと追いかけて、態度がなってなかったあなたにはpunishment……私のキスを受けてもらうわ♡」

 

司「や、やめてくれ…!ファーストキスの相手がオカマとか…俺様そんなの絶対―――――」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

問答無用で一生同様気持ち悪い接吻を受けた。気絶までとは行かず、トイレに入ればまたパイをぶつけられると思ったのか、その場で吐いた。

しかし吐き終わるなり荒狂は顔をグッと寄せると………。

 

 

荒狂「ゲロするならtoiletでしょ♡」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

司「■■■■■■■■■■■■■■■!!

 

 

2度目の接吻を与えた。同時に再び鬼が追加される校内放送が流れた。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始1時間経過。鬼、増量します』

 

 

プールの近くではちょうど綾野が鬼を数人撃退したところだった。

 

 

綾野「はぁ……いくら足止めしてもキリがありませんね。マスターが無事ならいいのですが……」



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THE END OF DANGEROUS FLIGHT GAME

鬼が追加されたことが知らされた綾野は別の鬼が近づいてきていることを感じ取る。

横を向くと、『ダークマター』、『麻婆豆腐』と書かれた2人の鬼が迫ってきていた。

 

 

綾野「麻婆豆腐はいいとして、ダークマターですか……明らかに遠呂智がいつも家庭科で作るあの料理をぶつけるつもりでいますね。いくら高性能な私でも、あれを食らえば確実に拒絶反応を起こすでしょう」

 

 

やられる前にやろうと判断し、ダークマターと麻婆豆腐の背後に回り込む綾野。前腕で首を絞めて動きを止めると、校舎の屋上めがけて放り投げた。

屋上に放り投げたということは校舎に入れたことと同じ。このおかげでさらに被害者が増えてしまうことは綾野自身にもわかっている。だが自身も身を守るため仕方のないことだった。

しばらくして鬼たちは復活したが、『あの女一体何なんだ!?』と言わんばかりに抱きしめ合って震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上に放り投げられた遠呂智のダークマターと麻婆豆腐は綾野が去るところと鬼たちが復活するところを見て、とんでもない奴を相手にしてしまったと震えながら見下ろしていた。

背後から扉が開く音が鳴り、振り向くとそこには龍華がいた。あの女より龍神族の女を狙った方がまだマシだと思い、共に襲いかかった。

 

 

龍華「屋上ォォォォ!!しかもダークマターってまさかマスターのか!?こいつらさっきまでいなかったのにどうやってここに来たんだァァァァ!!」

 

 

しかも麻婆豆腐までいるので嫌な予感しかしない。もちろん鬼たちには理由があるが、口がないためしゃべることができない。

その腹いせとして綾野が言っていたあの『遠呂智のダークマター料理』と激辛麻婆豆腐が盛られた皿を混乱する龍華の顔にサンドイッチの具材のように挟むようにぶつけた。

 

 

 

ベチャチャッ

 

 

 

龍華「☆♂○℃〆∞♯※*¥@⊥*∬£Ω∂×√±ω∃¢!!!

 

 

遠呂智のダークマターを食らうなんて夢にも思っていなかった龍華。口の中で壮絶な辛さと苦さが混ざり合い、声にならない悲鳴をあげた後意識を失ってしまった。

特に麻婆豆腐は何を思ったのか、倒れた龍華のスカートをめくると、彼女のパンツめがけて激辛麻婆豆腐をぶつけた。一瞬龍華の体が震えたように見えたが、気にしない方向へ。

 

 

紺子「今のは龍華!?誰にやられたんだ!?」

 

牙狼「ダメだよ紺子!気にして様子見に行くのは自ら鬼に捕まりに行くようなものだよ!だってほら、上から足音が!

 

紺子「足音!?」

 

 

足音は上の階から微かに聞こえる。耳をすませると、その足音はだんだん大きくなってくる。下りてきたのはダークマターと麻婆豆腐。先ほど龍華を襲った鬼たちだ。

 

 

紺子「………マジかよ」

 

牙狼「ね、言った通りでしょ?だからここは僕に任せて、紺子は僕の後ろにいて

 

 

牙狼は紺子に笑顔を見せるが、その笑顔はまるで般若のようだった。不慣れの者なら怯えて逃げ出すだろうが、紺子は怯えも叫びもせず、わかったよとニッコリと笑顔を返した。

改めて牙狼はダークマターと麻婆豆腐に目を向けると、鼻にシワを寄せ、牙をむき出しにして睨みつける。そのまま投げつければ避けられてもおかしくない。ならば一緒に少しずつ近づくか?いや、むしろ逆に牙狼がジリジリと近づいてきて壁まで追いやっているではないか。

 

 

牙狼「よくも学園のみんなをあんな目に遭わせてくれたね?借りはきっちり返させてもらうぞ……お前たちは度を越えるようなこともしたんだ、土下座して許されると思うなよ!!

 

 

怒気と殺意を含めたダミ声にさらにドスを効かせながら怒鳴ると、ダークマターと麻婆豆腐は皿に盛られた料理を落とし、抱きつきながら震えた。落ちた料理が牙狼に踏まれ、その上靴はグチャグチャと音を立てる。

万事休すだった。今のダークマターと麻婆豆腐はまるでこれから処刑される囚人のようだった。

 

 

牙狼「死ネエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!!

 

 

そんなことはお構いなしに、牙狼は抵抗できない鬼たちに襲いかかった。

まず目らしき部分を両手の人差し指と中指で潰し、視界が失われたところを手首、前腕、上腕の順に引き裂く。さらにダークマターと麻婆豆腐の腹の中に手を突っ込むと、生暖かい内臓をつかみ、そのまま引きずり出した。

 

 

牙狼「どうだ!!!鬼がこんな無残な死に方をするなんて予想もつかなかっただろう!!!死んでも永遠に消えないトラウマをお前たちの身に刻み、その恐怖を共に怯え苦しみ続けろ!!!!!!

 

 

両手が黒く染まり、黒い血飛沫が牙狼の顔と服に付着し、引きずり出された腸と黒い血液が床及び牙狼と紺子の足元に広がる。

 

 

紺子(え、えっぐ…!でも私を守ろうと……みんなをひどい目に遭わせた鬼に……ここまで奮起してくれるなんて…………どうしよう、なんか胸がスゲードキドキしやがる…………!)

 

 

紺子の心臓の鼓動が早くなる中、ダークマターと麻婆豆腐の体は1分も経たないうちにわずかな肉片となった。黒い血溜まりの中、牙狼は静かにそこに立ち尽くしていた。

 

 

牙狼「………またしばらくすれば復活する。紺子もこいつらが復活するまでずっと僕のそばにいた方がいいよ

 

紺子「は!?復活するまで!?お前捕まりたいのか!?しかも私を巻き添えにしてまで!」

 

牙狼「30秒もすれば復活するんだ、間違いなく僕たちを襲わないさ。僕は傑作だと思うんだけど、もし目の前に僕がいたらどうなると思う?

 

紺子「…尻尾巻いて逃げるんじゃね?」

 

牙狼「うん。それに紺子にも手を出せない。だからその様子を一緒に見ようよ。それに僕には血がついている。狼男にもなってるし、他の鬼もきっと腰抜かすかもしれないね

 

 

話しているうちに30秒経ち、ダークマターと麻婆豆腐は復活。牙狼の言う通り、2人の鬼は復活するなり狼男の姿の牙狼に腰を抜かして尻餅をついた。

ついでにいたずらとして牙をむき出しながら唸り声をあげると、ダークマターと麻婆豆腐はさらに怖がり、もはや立つことすら不可能になってしまった。それをよそに牙狼と紺子はその鬼の前から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始1時間10分経過。鬼、増量します』

 

 

黒いステージからまた新たに『カミナリオヤジ』、『マッサージ』、『三角木馬』、『ロシアンたこ焼き』の4人が現れた。

運悪くグラウンドにいたのが一海。鬼たちは一海を見るなりすぐに彼女に狙いをつけた。

 

 

一海「ホントにもう逃げ場がないんだけど!!グラウンドには学園長の墓もあるし何がどうなってんの!?」

 

 

校内へ逃げ込む一海。続けて校内へ入る鬼たち。ところが、マッサージとロシアンたこ焼きだけ進路を変えると、別の方向へ走り出した。

マッサージの方は別の場所で待ち伏せしようと企み、ロシアンたこ焼きの方はどうやら別の獲物を見つけたようだ。近くに遠呂智がいた。

 

 

遠呂智「カズミンでいいじゃねーか!!何でお前だけ違う奴狙うんだコノヤロー!!」

 

 

逃げている先にもう1人の鬼がいた。その鬼には肘打ちと書かれている。挟み撃ちに遭ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上へ逃げ込んだ一海だが、顔面とパンツにダークマター料理と激辛麻婆豆腐をぶつけられて気絶した龍華を横に、とうとう追い詰められた。

龍華を起こす時間を稼ぐため近づいてくる鬼たちを蹴って遠ざけるが、その程度のダメージでは鬼は死なない。ただ蹴り飛ばされて壁に叩きつけられるだけなのでしつこく迫る。

 

 

一海「龍華…起きてよ……!寝てる場合じゃないでしょ……!鬼が来てるんだよ………!?ねえ龍華…!龍華…………!!」

 

 

すっかり疲弊した一海。倒れた龍華を起こそうと揺すったり叩いたりしたが、何をしても目を覚ますことはなく、鬼もどんどん近づいてくる。

やがて一海は覚悟を決めた。こうなれば最後の手段。それでもダメなら諦めるしかない。

 

 

一海「………………開け、『異世界の門』よ!!」

 

 

昨夜辰蛇の前に現れた時同様、カミナリオヤジと三角木馬の前に謎の空間が現れた。

そこから生えてきたのは足。サッカーボールのように鬼たちの股間を思い切り蹴り飛ばした。だがそれだけではない。足が鬼の股間をとらえた瞬間、宙に投げ出されたのである。

悶絶する中、カミナリオヤジと三角木馬は『もう何がどうなってるんだ!?俺たち、とんでもない奴ばっかり相手にしてないか!?』と叫びたい気分だった。鬼たちはそのままグラウンドへ飛んでいった。

あとは閉じるだけだったが、閉じる前1枚の葉らしきものがふわりとスラブの上へ落ちた。

 

 

一海(ん?葉っぱ?こんなの出した覚えないんだけど………)

 

 

そう疑問を抱えつつも、あまり気にせず龍華を抱えると、屋上を後にした。

ところが一海が出ていった直後、風が吹き出した。葉は風に乗ってグラウンドまで飛んでいき、その真ん中に置かれている辰蛇の墓石の上に乗ったその瞬間だった。

 

 

 

ピカアアアアアアアアッ

 

 

 

周りに広がっている辰蛇の血を浴びて真っ赤になったかと思うと、突然まばゆい光に包まれた。直視すれば失明も免れないような眩しさである。

やがて光は収まり、墓石が建っていた場所には燐斗によって墓石にされた辰蛇が何事もなかったかのように立っていた。

 

 

辰蛇「プハァー!いやー、びっくりした!冷火ちゃんの胸触りたかっただけなのに、あの子のお母さんあんなにキレるなんて……」

 

アルケー「当然でしょう?あの子、あんなに嫌がってたのにしつこく追いかけたのが悪いんですよ」

 

辰蛇「へ?」

 

 

 

ドォンッ!!!!

 

 

 

辰蛇の前にいつの間にか背を向けて前屈みになったアルケーが立っており、そのまま爆発するような屁を食らったのだった。

屁を食らった辰蛇はそのまま吹き飛ばされ、校舎の壁に叩きつけられ気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ココ「いやああああああああ!!!ゴムパッチンも尻叩き1000発も嫌ァァァァァァァァ!!!

 

 

同じ頃、ココはゴムパッチンに追いかけられていた。途中ロシアンたこ焼きにたこ焼きを食べさせられた遠呂智とすれ違ったが、彼はゴムパッチンが迫ってきていることを知らなかった。

ゴムパッチンはココに目をつけて追いかけていたが、視界に入った遠呂智にも目をつけ、誰を捕まえようか追いかける足を速める。

 

 

遠呂智「おいおいおいおいおいおい、俺食らったぞ!さっき食らったからな!さっき食らったよー!!俺食らったって、さっき!!ゴムパッチン食らったよー!!

 

 

走りながら必死に訴えるが、ゴムパッチンにとってはお構いなし。なおさら遠呂智を捕まえたくなった。

 

 

遠呂智「もうやめてくれよぉ……!」

 

 

結局遠呂智が捕まってしまった。難を逃れたココにとっては幸運だった。

 

 

ココ「た、助かったですぅ………でもあの先輩、またゴムパッチンされるなんて………」

 

 

遠くから遠呂智がゴムを咥えさせられる様子を見て安堵していたが、改めて恐怖を抱えるココ。一方で再びゴムが顔面に直撃される恐怖に遠呂智は断固として拒否していた。

 

 

遠呂智「グウゥゥゥゥゥ!グオォォォォォ!」

 

 

 

バチーン

 

 

 

遠呂智「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!

 

 

2度目のゴムパッチンを食らった遠呂智の悲鳴が校内に響き渡った。

同時に彩も美術室に隠れていたマッサージに捕まったが、遠呂智の悲鳴を聞いてどんな鬼に捕まったかなど何ら疑問に思うことはなかった。

 

 

彩「マッサージって何するの?」

 

 

いつも感情を表に出さず、常に無表情の彩に『この子表情筋壊死してるのでは?』と少しためらったが、それでも自分の気をよくするためにうつ伏せに寝かせた。

それから骨抜きになるほど気持ちよくさせるために肩と背中をほぐしたり、彼女の尻尾を揉んだりする。

 

 

彩「ふにゃ……尻尾……ダメ…………」

 

 

文字通り、彩は肩と背中のほぐしと尻尾を揉まれたことで骨抜きになるほど気持ちよくなってしまった。だがその時である。

 

 

 

キラッ

 

 

 

マッサージの目元が光ったかと思うと、片方の手が彩の尻尾のつけ根をつかんで引っ張り、もう片方の手はマッサージが背中のツボを見つけると同時にそこを親指で強く押した。

 

 

彩「ふ、ふにゃあぁぁぁぁ………痛い…痛いぃぃぃぃ………!」

 

 

まだまだやるぞと言わんばかりに引っ張る力と押す力をさらに強める。

だが彩には痛いと感じることはできるものの、いくら尻尾を引っ張られてもツボを押されても顔をしかめることは一切なかった。『やっぱりこいつ表情筋壊死してんじゃね!?』と始終内心困惑するマッサージであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デンジャラス・逃走中が始まり、もうすぐ1時間半が経とうとしていた。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始1時間20分経過。鬼、増量します』

 

 

体力のある牙狼にも当然限界がある。紺子にも疲労が見え、共に鬼に捕まってしまった。その鬼は『笑』。笑は相手を捕まえては5分間くすぐっていたが、デンジャラス・逃走中がもうすぐ終わるので、終わる時間までくすぐろうと思っていた。牙狼は脇腹と足の裏をくすぐられ、紺子は全身をくすぐられた。笑うのが嫌になるほどくすぐられた。

一方で一海もようやく目を覚ました龍華と隠れ場所を探していたが、もうほとんどなかった。それもそのはず、ステージや予期せぬ様々な場所から鬼が放たれているのだ。

 

 

龍華「カズミン!」

 

一海「龍華!」

 

 

そして今、食堂で2人の鬼から逃げている一海は転んで片方に捕まってしまい、思わず足を止めた龍華ももう片方に捕まってしまった。一海を捕まえた鬼には『パイ投げ』と書かれ、龍華を捕まえた鬼には『あまみ(四男)』と書かれていた。

椅子に座らされ、抵抗できないように両手足を縛られた一海と龍華。まずはパイ投げから。

 

 

一海「え、ちょっと!それパイじゃないよね!?どこからどう見てもケーキだよね!?ねえ、ちょっと聞いてる!?」

 

 

ケーキを持ったパイ投げは一海の抗議も聞かず、そのまま近づく。

 

 

一海「ねえ、話…あーっ!!」

 

 

 

ベチャッ

 

 

 

なす術もなく顔面にケーキをぶつけられた。

 

 

龍華「カズミン!くそっ…こいつは俺に何食わせるんだ!?」

 

 

あまみ(四男)が取り出したのはラスグッラと書かれた缶だった。

 

 

一海「それはラスグッラ!テレビで見たことあるけど、あれはインドのお菓子!世界一甘いらしいよ!」

 

龍華「俺もテレビで見たことあるぞ、それ!そのテレビで見たお菓子をそのまま食わされるのかよ俺!本気でケーキぶつけられたお前と代わりたい気分だよ、チクショーめ!」

 

 

今の一海はケーキをぶつけられただけ幸運だった。両手足に縛られたロープを引きちぎろうと抵抗を試みるが、いくらもがいてもロープはびくともしない。

 

 

龍華「こんな時に紺子はどこ行っちゃったんだよ…!」

 

 

あまみ(四男)は缶のふたを開け、ラスグッラをスプーンに乗せると、抵抗できない龍華の口へ運び始める。

当然龍華は首を横に振って拒否するが、関係なし。口を無理矢理こじ開けられ、そのままラスグッラを入れられた。

 

 

龍華「うあっ!!何だこれ!!まるで全種類の砂糖を一気に食った感じじゃねぇか!!」

 

【缶が空っぽになるまで食べてもらいます】

 

龍華「もういい、もういい、もういい!!1個食っただけでスゲェ胸焼けしてきたから………!!」

 

 

問答無用だった。次々とラスグッラを口に入れられ、胃袋の中にあるスタミナ丼も吐きそうになるほどの甘さに涙を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は刻一刻と過ぎ、終了まで約3分前となった。

ちなみにジムカーナに捕まった生徒は数少なかったが、実はその犠牲となったのは生徒だけではなかった。

 

 

宇佐間「ウギャアアアアアァァアアァアァアアアァァァアアアアアアァァアアァァァ!!!!!ユウジ君、止めて止めて止めて止めてェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!

 

大狼「はわわわわぁ~っ!!ユウジ先生!もっとスピード出せますか!?」

 

宇佐間「リンちゃああああぁぁぁぁぁぁん!!!!?ちょっと、ちょっとユウジ君!!!!!それ以上スピード出したらさすがの俺も死ぬゥゥゥゥウウウゥゥゥウゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥウゥウウウゥゥウ!!!!!

 

みのり「わ、我が生涯に………一片の悔いなし………」チーン

 

 

生徒たちが逃げている一方、街中にて。なぜか宇佐間、大狼、みのりの3人の教師がユウジ11の車に乗せられ、ジムカーナの刑に処されていた。

乗せられたのは終了約8分前。宇佐間は始終絶叫し、大狼はテンションが高く、みのりは意識が飛んでしまったらしい。

それをよそにユウジ11がデジタル時計を見ると、もうすぐデンジャラス・逃走中が終わる時間に近づいてきていた。

 

 

ユウジ11「宇佐間、西田、生きてるかー?」

 

宇佐間「い……生きてま~す…………」

 

みのり「……………」チーン

 

大狼「こんなにエキサイティングな体験したの、すっごく久しぶりです!もっかいやってほしいです!」

 

ユウジ11「時間ねーんだけどな、もう。もうすぐ鬼ごっこ終わるんだけどな」

 

 

ユウジ11はアクセルをふかすと、そのまま学園へ戻った。すっかりやつれた宇佐間と意識を喪失したみのりに心配したのか、その配慮としてもうジムカーナは行わなかった。

 

 

大狼「ユウジ先生、もうジムカーナやらないんですか?」

 

ユウジ11「宇佐間と西田を見てみろ。げっそりしてる奴と瀕死の奴を乗せてやるわけにはいかねぇだろうが」

 

 

到着した頃には、ちょうどデンジャラス・逃走中が幕を閉じていたのだった。

グラウンドには全生徒たちが集まり、朝礼台のアルケーが話をしている。

 

 

アルケー「皆さん、大変お疲れ様でした。本日のレクリエーション、いかがだったでしょうか?」

 

冷火(『いかがだったでしょうか?』じゃねぇよ!あの学園長のせいで身体中がイテェよ!)

 

 

心の中で文句を言う冷火のみならず、ほぼ全員生気がない状態に近かった。長時間逃げ続けなければならなかったので無理もない。

アルケーの話は続き、しばらくして彼女から生徒たちにとって嬉しい知らせが届く。

 

 

アルケー「そこで皆さんにお詫びの印です。今日のレクリエーションでかなりの疲労が溜まっていると思うので……その疲労を癒してもらうため明日から5日間の休暇を与えようと思います」

 

生徒一同『!!?』

 

 

全員言葉を失った。沈黙がしばらく続いたが、やがて生徒たちの歓喜の声が次々とあがっていく。

そして紺子も同じだった。

 

 

紺子「よかったぁ……今日はマジで地獄だったぁ……今夜はぐっすり眠れる………」

 

ヴォイエヴォーテ「2年の者は全員集まってくれ。私から連絡がある」

 

 

そのまま帰ろうとしていた2年だったが、ヴォイエヴォーテがそんな彼らに声をかけた。

 

 

乱「連絡?その前に龍華いないんですけど」

 

ヴォイエヴォーテ「ああ、雨野ならラスグッラをたらふく食べさせられたせいで保健室で寝込んでる。彼女にもしっかり伝えるつもりだ」

 

ディーゴ「ラスグッラ?」

 

仁美「インドのお菓子だよ~。私もそれ食べたかったな~」

 

ヴォイエヴォーテ「ほら、こっちを向け。で、休み明けの件だが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アルケーの屁を食らって壁に叩きつけられた辰蛇だが、ヴォイエヴォーテが話をしている最中目を覚ました。

 

 

辰蛇「どうせならオナラよりパンツとおへそクンカクンカしたかった………アルケー校長のオナラすっごい臭かった………」



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時を越えた再会と紺子の決意

いよいよ明後日から令和ですね。よってこれが平成最後の投稿となります。
ゴールデンボンバーの動画見てたら寂しくなりました。


夕方のEVOLUTION SPACE。レクリエーションがあった学園から帰ってきた遠呂智、龍華、麻由美は先ほどのデンジャラス・逃走中のせいでぐったりとしていた。

 

 

貴利矢「お、お前ら………どうした?」

 

 

ぐったりとそれぞれカウンターとテーブルに倒れ込んだ3人に貴利矢は唖然とした表情で尋ねる。

 

 

遠呂智「わ、悪りぃな貴利矢……今日は………動けそうにねぇわ………」

 

龍華「もうマジでレクリエーション嫌だ……休めばよかった………」

 

麻由美「私も………」

 

 

それぞれ疲れきった声で言い、特に遠呂智と龍華はどんな鬼の餌食になったのか口々に言う。

 

 

龍華「今日レクリエーションやったんだけどさ、ひどい鬼ごっこでよ………校長のオナラが爆発的でよ…………あとあまみにラスグッラっちゅうお菓子食わされて……今でも………うっぷ………………」

 

 

口の中に広がるラスグッラの甘さがまだ抜けていないようだ。しゃべっている最中一瞬吐き気を催し、胃の中にあるもの全てを吐き出しそうになってしまった。

 

 

遠呂智「俺なんかあれだぞ?尻叩き1000発よりはマシだったが、ゴムパッチン2回も食らったぞ……たこ焼きは当たりだったからどうでもいいが………それでもマジでヤベェ………」

 

貴利矢「うわぁ………なんか聞いただけで身体中が痛くなってきたんだが……………」

 

 

遠呂智たちを追いかけた鬼とは全く違う……そう、れっきとした妖怪の方の鬼を想像した貴利矢は思わず青ざめてしまった。

特にカウンターに倒れ込んでから挙動不審の龍華がなんとなく気になり、何があったんだと声をかける。

 

 

龍華「…………………ツに………」

 

貴利矢「え?」

 

龍華「他にも屋上で食らった麻婆豆腐とダークマター………麻婆豆腐が…お……お……俺のパンツに…………//////」

 

 

顔を赤らめながら立ち上がると、スカートの裾をつかんでパンツを貴利矢に見せようとした。

 

 

貴利矢「わ゛あああぁぁぁぁぁ!!ど、堂々と見せようとすんな!!何で陰陽師の俺がJCのパンツ見なきゃなんねぇんだよ!!お前は俺の性欲でも求めてんのか!?

 

龍華「冗談なのに……もうあの麻婆豆腐のせいでさ、あそこは辛いわパンツはニチャニチャするわで気持ち悪りぃよ………口ん中も甘いし、俺のコーヒーで口直ししたい気分だ………」

 

遠呂智「だが、ダークマターに捕まらなくてよかった…」

 

貴利矢「………………あー、コンビニで何か買ってくるか?」

 

遠呂智「頼む……俺と龍華は…………しばらく寝る……………………」

 

 

そして遠呂智はカウンターに横たわったまま意識を失うように眠ってしまった。

 

 

龍華「お、俺は……ひとまずシャワー浴びてから寝るよ……麻婆豆腐とダークマターがメッチャこびりついてるし……………」

 

 

龍華はそう言いながら頼りなげな足取りで風呂場へ向かっていった。

 

 

貴利矢「…………ホント、あの学園に常識とかあんのかな?」

 

麻由美「私が聞きたいよ…………」

 

 

こうして貴利矢と麻由美は疲弊した遠呂智と龍華のために一緒に弁当を買いにコンビニへ行くこととなった。

 

 

 

 

 

遠呂智「ん………誰だ?」

 

 

ところがその数分後、少し目を覚ました遠呂智は自分と龍華以外の誰かが店内にいることを察した。

 

 

遠呂智(泥棒か?だったら俺のやり方で散々痛めつけてから………)

 

 

カウンターから立ち上がり、少し殺気立ちながら包丁を手にすると、周りを警戒する。

実は遠呂智、こう見えて幼い頃からこれでもかと言うほど本の知識と護身どころか無慈悲に殺すほどの格闘術を身につけていた。といっても彼は親の顔すら知らないどころか会ったこともない。その代わり格闘術を教えてくれた師匠が育ててくれた。今はもういないが、それでも師匠のおかげで今の遠呂智がいた。

 

 

遠呂智「…………………」

 

 

気配がした場所へ慎重に動く遠呂智。そして彼の目に入ったものは自分にも龍華にも紺子にも見覚えのある人影だった。

人影は遠呂智に襲いかかったが、いとも容易くかわされた。しかも背負い投げで床に叩きつけられた挙げ句、包丁を首元に突きつけられる。

だが遠呂智には人影に襲われた瞬間からすでに正体を知っていた。異生神妖魔学園の者なら誰でも知っている学園長だ。

そう………低身長にも関わらず巨乳で∞の字にねじ曲がった角の持ち主のツインテールでセーラー服を着た異生神妖魔学園の学園長、喰輪辰蛇である。

 

 

辰蛇「お、遠呂智君………そ、その包丁しまって?メッチャ怖いんですけど………」

 

 

不審者ではなかったから安心したものの、レクリエーションの惨劇を思い出したのか、急に腹が立ってきた。

包丁を近くのテーブルの上に置くと、首めがけて殴りつけた。

 

 

辰蛇「ゴバッ!?な、何で…………」

 

 

それだけでは飽き足らず、遠呂智は辰蛇の角をつかんで自分の身長ぐらいの高さまで持ち上げると、鼻先が当たりそうなほど顔をギリギリまで近づけながら睨み、こう言った。

 

 

遠呂智「学園長テメェよぉ、何だあのレクリエーションは?何だ『デンジャラス・逃走中』って?おかげでゴムパッチン2回も食らったわ、龍華はダークマターと麻婆豆腐とラスグッラを味わう羽目になったんだぞ!?どうしてくれんだ、あ゛ぁっ!?あいつの味覚が変わっちまったら責任取れるのかテメェ!!

 

辰蛇「そ、そんなこと…い、言われても……」

 

遠呂智「とにかく、テメェには罰を与えてやる。こっち来やがれ」

 

辰蛇「いやああああああ!!痛いのは嫌だァァァァァァァァ!!」ジタバタ

 

 

遠呂智は辰蛇の角を持ったまま歩き、地下室へと続く通路へまっしぐら。辰蛇はこれから自分の身に起こる何かに恐怖し、悲痛な叫びをあげながら必死に両足をばたつかせる。

当然それは無駄な抵抗だった。いくら泣いても喚いても遠呂智の耳には全く入らなかった。

 

 

 

 

 

嫌がる辰蛇を地下室まで連れていった遠呂智は電灯を点け、彼女をテーブルに座らせ、棚から100枚の皿を取り出す。

辰蛇の目に入ったのは数十個ほど並んだ樽。しかし、それらを見るなり彼女はすぐに察した。この樽の中にある『何か』、ヤバイ気がする。

 

 

遠呂智「ウプッ……」

 

 

戦慄する辰蛇をよそに、遠呂智は樽のふたを開ける。すると樽の中からふたを開ける前よりさらに邪悪なオーラがこれでもかと言うほど溢れてきた。辰蛇の予感は当たった。そのオーラは遠呂智でも鼻と口を押さえてしまうほどだった。

少し吐き気を覚えるも我慢してふたを置くと、樽に入っているダークマターをおたまですくい上げ、皿に盛る。

 

 

辰蛇「ひ、ヒィィィィィィィィ!!?

 

遠呂智「学園長は初めてか?『俺特製のダークマター』は。学園長にはこれを3分以内に100皿全部平らげてもらうぜ?」

 

辰蛇「無理無理無理無理!!こんなの食べたら絶対死んじゃうって!!

 

遠呂智「あ、もし失敗したら龍華と同じ目に遭ってもらうぞ?ちなみに拒否権はねぇ。皿置いたらすぐ食え」

 

辰蛇「イィィィィィィヤァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3分後………。

 

 

辰蛇「し、死ぬ………け、けど……遠呂智君の………ダークマター…………3分以内に…………完食………で………き………………」ガクッ

 

 

顔色は青黒く、口の中も真っ黒になり、そのまま椅子ごと仰向けに倒れて意識を失ってしまった。もちろんセーラー服はポッコリ膨れ上がった腹を隠せず、まくれてしまっていた。

 

 

遠呂智「…………マジで3分きっちりで完食しやがった」

 

龍華「どうせ失敗するって思ってたんだが……あれを完食できるとかヤベェだろ……」

 

 

この3分の間、着替え終えた龍華が遠呂智がいないことに気づき、どこに行ったのか探そうとすると地下室から辰蛇の悲鳴が聞こえた。

学園長!?驚いた龍華は地下室へ駆けつけたが、目の前の光景に思わず引いてしまった。そこには腹がポッコリ膨れ上がり、青黒い顔色で泣きながらダークマターを大量に食べさせられる辰蛇とダークマターを皿に盛りつける遠呂智の姿があった。

助けてと言わんばかりに辰蛇はダークマターが入った口から懇願するような声を出したが、遠呂智から事情を聞いた龍華は仕返しと言わんばかりに辰蛇の両手足を縛り、口をこじ開け、大量のダークマターを流し込んだり膨れ上がった腹やへそをくすぐったりなどしてメチャクチャに苦しませたのである。

そんなことがあったにも関わらず、辰蛇は100皿……いや、正確には100皿以上。3分きっちりで完食した後そのまま気絶し、遠呂智と龍華を戦慄させた。

 

 

遠呂智「…………ダークマター完食させたからこれぐらいで許してやるか」

 

龍華「俺、しばらくダークマター見たくねぇ…」

 

遠呂智「…………俺もだ」

 

 

そうして気絶した辰蛇を置いて地下室から出ると、自分の部屋に戻って眠ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レクリエーションから翌日、アルケーが言っていたように5連休が始まった。

自転車に乗った紺子と一海はきっと閉店中であろうEVOLUTION SPACEへと向かっている。何しろ彼らも昨日のデンジャラス・逃走中の影響で疲れていたのだ、そのままぐったり寝て次の日にはすっかり元気になって働いているかもしれないと思ったのだろう。

だが紺子たちは知らなかった。まさかあの店で意外な人物に会おうとは。特に一海が知っているあの男と出くわそうとは。

 

 

紺子「あー、昨日ホント死ぬかと思った……」

 

一海「出雲姐ちゃんが僕たち置いて逃げるからでしょ?こっちもひどい目に遭ったんだから………」

 

紺子「そりゃ悪かったけど………で、EVOLUTION SPACEは閉店中かな?」

 

一海「たぶんそうじゃないかな?龍華は胸焼けするほど気持ち悪がってたから保健室に連れていかせたけど」

 

紺子「あいつ何食ったんだ…?」

 

 

インドの菓子、ラスグッラだ。

話しているうちにEVOLUTION SPACEに到着した2人。すぐに扉にかかっている看板を見てみる。

 

 

【OPEN】

 

紺子「あ、やってる……」

 

一海「2人共、大丈夫かな?」

 

 

紺子が扉を開け、店内に入る。すっかり元気になった遠呂智と龍華が仕事に取り組んでおり、カウンターには貴利矢が座っていた。

 

 

遠呂智「よう紺子、カズミン」

 

紺子「って陰陽師!?何でこんなトコに陰陽師が!?」

 

 

貴利矢を見るや否や驚く紺子だったが、一海は微動だにしない。紺子の声を聞いた貴利矢はすぐに2人の方を向いた。

 

 

貴利矢「お?そこにいる2匹は妖狐かな?なーに、警戒すんな。まずは軽い自己紹介ってことで。自分、『言峰貴利矢』。陰陽師やってる。ウェーイ、仲よくしようぜ?」

 

紺子「い、出雲………紺子です………(チャラっ!?この陰陽師チャラくね!?)」

 

貴利矢「紺子か。で、そっちの……………え?」

 

 

いつもチャラチャラしている貴利矢だが、一海を見た途端急に静止した。紺子はもちろん、遠呂智と龍華も困惑する。

 

 

龍華「貴利矢?カズミン?2人共どうした?」

 

貴利矢「……あー、紺子?ちょっとこの子貸してくれ。ちょっと外で話させてくれねぇか?」

 

紺子「え?いや、何勝手なこと…」

 

一海「出雲姐ちゃん、大丈夫だよ。この陰陽師だけど、信用できるから………」

 

紺子「??????」

 

 

さらに困惑する紺子だったが、一海と貴利矢は気にせずEVOLUTION SPACEの外に出た。

 

 

紺子「……何なんだあいつ?」

 

遠呂智「言峰貴利矢。文字通り陰陽師なんだが、あることがきっかけで裏切り者扱いされた人間さ」

 

紺子「あることって?」

 

遠呂智「何でも、ある妖狐を守るために襲ってきた陰陽師を撃退したんだってよ。親はその陰陽師に殺されたが―――――」

 

紺子「ん?ちょっとストップ、遠呂智先輩。何て言ったんだ?」

 

 

遠呂智の話に何か引っ掛かったのか、紺子の狐耳がピョコンと動き、彼の話を遮るように止めた。

 

 

遠呂智「何てって、ある妖狐を守るために―――――」

 

紺子「そこじゃなくて後の方!」

 

遠呂智「………『親はその陰陽師に殺された』のトコか?」

 

紺子「………カズミンの奴、確か私に出会った時『父さんと母さんが死んだ』って言ってたような」

 

龍華「……………まさか……貴利矢が言ってた妖狐って……………!?」

 

紺子「とりあえず聞き耳するか」

 

遠・龍「「そうしよう」」

 

 

3人は扉に寄り添うように耳をくっつけた。ところがその3人の他にもう1人聞き耳を立てている者がいようとは。

 

 

辰蛇「な、何の話………!?」プルプル

 

 

昨日遠呂智と龍華にダークマターを100皿以上食べさせられた辰蛇が震えながら聞き耳を立てていたのだ。

 

 

紺子「ゲッ、学園長!!また何か企んでんのか!?」

 

 

何しろ紺子も昨日のレクリエーションで散々な目に遭ったのだ。彼女にも恨まれても致し方なし。

突然現れた辰蛇に紺子は拳を握りしめる。

 

 

龍華「あっ、おい待て!今学園長を殴ったら!」

 

 

龍華が止めようとしたが、時すでに遅し。紺子の拳が辰蛇のみぞおちをとらえていた。

 

 

辰蛇「グボッ!?

 

龍華「うわぁ、よりによって腹パンか………」

 

辰蛇「オゲェェェェエエェエェエエエエエェェェエエェエェェェェェエエエェェェエエェェエェェェ!!!!」ゲボボボボボボボボボボボボボボボ

 

紺子「うわっ、何だこりゃ!!何で学園長こんなに吐いてんだ!?」

 

 

みぞおちを殴られた辰蛇の生暖かくどす黒い吐瀉物が床に広がる。

 

 

龍華「この学園長、マスター特製のダークマターを3分きっちりで完食したらしくてな。俺もマスターもドン引きだったぜ……」

 

紺子「ダークマター食ったの!?」

 

遠呂智「正直完食するなんて思わなかったんだ……で、完食の褒美としてお仕置きはそこまでにしたんだが、おかげでトラウマが…………」ガクガク

 

紺子「遠呂智先輩怯えすぎ!?」

 

龍華「とりあえず学園長はそっとしといてやれ。いいな?」

 

紺子「お、おう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わってEVOLUTION SPACEの外。一海と貴利矢は少し気まずそうな空気になっていた。

 

 

一海「………………」

 

貴利矢「………なあ、確認したいんだが…………お前に両親とかいるか?」

 

一海「…………いない。僕のせいで陰陽師に殺された」

 

貴利矢「お前を助けに来た陰陽師とかはいたか?」

 

一海「うん………ちょうどあなたみたいな陰陽師に」

 

貴利矢「…………そう………か……………」

 

 

場が沈黙の空気に包まれる。すると貴利矢が一海に顔を見せたと思いきや、急に土下座した。

 

 

貴利矢「すまなかった…!」

 

一海「え?」

 

貴利矢「本当にすまなかった!!俺の……俺のせいでお前の両親を奪ってしまった!!」

 

一海「え、急にどうしたんですか!?何であなたが謝るんですか!?」

 

 

突然土下座した貴利矢に戸惑う一海。それでも貴利矢は懺悔を続ける。

 

 

貴利矢「元を辿れば…俺があの陰陽師をしっかり見てやっていればこうはならなかったんだ!!」

 

 

貴利矢は土下座しながら叫んだ。何しろ一海を助けただけで他の陰陽師に裏切り者呼ばわり。それだけならまだ大目に見てくれたものの、そもそも一海とその両親を殺した陰陽師を殺しかけた。相棒と妖怪退治に行ったことは一海の両親を殺しに行ったのと同じことだ。たぶん許してくれないということはわかっていた。それでも貴利矢は謝罪の言葉を続けた。

一海は気にしていないよというような顔で彼の肩に手を添える。

 

 

一海「もういいよ、貴利矢さん」

 

貴利矢「え……?」

 

一海「もう懺悔しなくていいよ。確かにあなたのせいで僕の両親は殺されたけど、その代わり出雲姐ちゃんが拾ってくれて今は幸せなんです」

 

貴利矢「………けど……けど俺は!」

 

 

相棒を殺しかけたせいで命を狙われるばかりか家まで燃やされた。自分にできる償いなんてないと言おうとしたが。

 

 

一海「だったらお願いがあるんだ」

 

貴利矢「何だ?何なんだ?俺に償えることがあるなら言ってくれ!」

 

一海「…………もし、もし僕が僕じゃなくなって『玉藻前』になってしまったら…………殺してほしいんだ」

 

紺・遠・龍「「「はぁ!!?」」」

 

一・貴「「!?」」

 

 

店内からの大声に2人はビクッとした。紺子たちが聞き耳を立てていたことを知らなかったのだ。

EVOLUTION SPACEの玄関の扉がバタンと強く開かれ、紺子が一海の肩を強くつかんだ。

 

 

紺子「お前、自分が何言ってるかわかってんのか!?せっかく助けられた命を散らす気か!?

 

一海「わかってるよ!!わかってるから………わかってるからこそ怖いんだ…………もしこの尻尾の色が戻らなかったら、玉藻前が何をするかわかんない………その時には僕は死んでるかも―――――」

 

紺子「ふざけんじゃねぇよ!!!

 

 

 

バチンッ!!!

 

 

 

一海「!?」

 

 

紺子が一海の頬を思いきりひっぱたいた。

 

 

紺子「だったら私が正気に戻してやる!!何年だろうと、何十年だろうと、何百年だろうと、何千年だろうと、この世に私とカズミンしかいなくなっても!!絶対に!絶対にお前を正気に戻してやる!!誰も殺させやしねぇし、自殺なんてさせねぇ!『玉藻前』が何をやらかそうと、私が全部止めてやらぁ!!」

 

一海「出雲……………姐ちゃん………………!」

 

 

辺り全体が沈黙に包まれた。そして一海は紺子を抱きしめると、しばらくの間静かに泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「貴利矢が両親を亡くした妖狐への懺悔か……うーむ、これは……人と人ならざる者が共存する道も見えたかもしれぬなぁ……」

 

 

一方、とある場所では1人の老人が紺子たちの話を興味深げに聞いていた。

その老人は貴利矢と同じく陰陽師の服装をしていた。



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鬼灯冷火は動かない:怪奇の家

令和初の投稿がこれだよ!orz
というわけで、またエイリアンマンさんからの提供ネタで『鬼灯冷火は動かない』をやらせていただきます。


鬼灯冷火は親バカで異生神妖魔学園の家庭科の教師でもある母親、燐斗にいつも悩まされている。

彼女は常に娘に愛情を注いでいるが、その愛情はあまりにも過度。いつもキスの雨を浴びせたり、時には娘を傷つけた者には冷酷極まりない性格となったりなど、冷火は苦労していた。

おかげで燐斗は全教師の中から問題児扱いされていた。授業中でも親バカぶりが発揮されるのだから、冷火にはたまったものではない。これはそんな親子が体験した話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の鬼灯家にテレビ局から電話がかかってきた。

内容は『怪奇の家を調査してほしい』とのオファー。電話に出た燐斗は当然これを了承。娘がメリーとアイズリーシリーズを書いているのは彼女も知っていたため、娘に新たなネタを作らせるにはちょうどいいと思ったのだ。

親子一緒に出演することも決まり、家の前にテレビ局専用マイクロバスが停まり、鬼灯親子は早速『怪奇の家』と呼ばれる家へ向かうことになった。

 

 

燐斗「頑張ろうね?冷火」

 

冷火「う、うん…(あー何でこんなことに……まっ、ネタになるならいっか)」

 

 

マイクロバスが到着する前までオファーを受けたくないと言っていた冷火だったが、燐斗から内容を聞いて気に入ったのか心の中では珍しくノリノリだった。ありきたりなネタでは読者に飽きられる、怪奇現象に悩む家ならすごいネタが手に入ると思ったのだろう。

 

 

冷火(一体どんな怪奇現象が起きるんだろ?楽しみだなぁ………)

 

運転手「あー、燐斗さん?念のため神社でお祓いしましょうか?」

 

燐斗「嫌よ。お祓いなんかしたら私が成仏しちゃうし」

 

運転手「……そ、そうでしたね。燐斗さん幽霊でしたもんね」

 

 

マイクロバスに乗りながら談笑しているうちに怪奇現象に悩まされる家に到着。鬼灯親子は早速その家に住む主人の話を聞くことに。

心霊現象が絶えない家、通称『怪奇の家』。ここに住む家主はよくポルターガイストに悩まされているらしく、起こり始めたのは10年前から。その真実をつかむため鬼灯親子はその家に一晩泊まることになった。

 

 

 

 

 

各部屋には2階を除き、カメラがいくつか設置された。2階の部屋は開かずの間と呼ばれていたらしく、設置しようとしたところ家主にあっさりと断られてしまった。

その夜、スタッフたちは同行された僧侶と異変が起こるまでマイクロバスで家の様子を寝る間も惜しんで一晩中監視することに。その僧侶はすでに冷火と燐斗の種族を見抜いていたが、スタッフにはバラさなかった。

鬼灯親子が夕食と入浴を終え、くつろいでいるその時、ついにその現象は起こった。

 

 

 

ガシャーン

バリバリバリィィッ

 

 

 

突然台所の方からいくつものガラスが割れるすさまじい音が響き渡った。

 

 

冷火「ひゃあっ!?(おおっ、来てよかったぁ!ネタになるぞこれ!!)」

 

燐斗(やっぱり思った通りだったわね。冷火、びっくりしててもホントは嬉しいんだよね♪)

 

 

正直燐斗もこの家で何が起こるか予想していなかったため、台所から聞こえてきたガラスが割れる音には驚いた。

だが同時に驚いた冷火の目を見ると、彼女は一瞬だが喜びのあまり光っていた。面白いネタが浮かんだに違いないとも考えてしまった。

ガラスが割れる音を聞きつけたスタッフたちと僧侶もマイクロバスから飛び出し、すぐに家の中へ入る。

 

 

スタッフ「何ですか、今のすごい音は!?」

 

冷火「あ、スタッフさん!さっき台所からガラスみたいなのが割れる音が!」

 

 

音がした台所へ向かう一同。そこには予想通り、食器棚のガラスが全て砕け、床に散らばっていた。

この場にいる鬼灯親子と家主を除いた全員が青ざめ、絶句。だがこれはほんの序曲にしか過ぎなかった。これから起こる真の恐怖が待っていることをまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

???『出ていけぇ……殺してやるぅ……

 

 

その後もポルターガイストが次々と勃発し、さらには押し潰したような低い声が耳元で聞こえるようにもなった。

 

 

スタッフ「ヴッ…!」

 

 

やがて僧侶やカメラとマイク担当を除いたスタッフたちにも異変が起こる。謎の声の影響か、脳震盪を起こし、次々と倒れていくではないか。

 

 

冷火「一体この家で何が起きてるんだ!?(スゲェ!こんなに起きるなんてネタが盛りだくさんだぁ!)」

 

 

恐怖には震えているものの、小説のネタが次々と頭に入っていく冷火。こんなに怪奇現象が起こるなんて冷火自身も予想していなかったため、心の中では歓喜に満ちていた。

ところが、その歓喜はいつまでも長く続かなかった。スタッフ以外になぜか燐斗も倒れ、過呼吸に陥ったのだ。目には怯えの色が見え、こんな奇妙な言葉を放った。

 

 

燐斗「……ピエロが、ピエロがいる………」

 

冷火「ピエロ!?ピエロなんてどこにもいないじゃん!ねえ、どうしたのお母さん!?ねえ、お母さん!!お母さん!!しっかりして!!お母さん!!」

 

 

燐斗の言うピエロは彼女にしか見えていないようだ。冷火にはもちろん、生き残ったスタッフにも見えていない。

 

 

冷火「これ、どうしたらいいんだよ!お母さんまでおかしくなっちゃった………」

 

僧侶「わかりました。では燐斗さんは私たちに任せてください。きっと家のどこかにポルターガイストを引き起こしてる原因があるものがあると思いますので、冷火さんはカメラさんとマイクさんと一緒に探してきてください」

 

 

こうして僧侶と生き残ったスタッフは燐斗を落ち着かせるため居間に残り、冷火はカメラとマイク担当の2人と原因を探るべく家を探索することになった。

 

 

カメラ「じゃあ冷火ちゃん、僕たちは外の物置の方にいるから君は家の中を頼むよ」

 

マイク「こっちも何かあったら連絡するからね」

 

冷火(連絡がどうとかそういう問題じゃねぇよ!何で私みたいな小っちゃい女の子1人残してお前らだけ外なんだよ!私が脳震盪起こしたらどうすんだお前ら!)

 

 

 

 

 

二手にわかれ、冷火が家の中を探索しているうちに、2階からただならぬ気配を感じ取った。その場所は昼間家主に撮影を断られた開かずの間。『立ち去れ!立ち去れ!』と警告しているように禍々しい雰囲気を漂わせている。

嫌な予感とただならぬ恐怖に震えるも、勇気を振り絞り、思いきってそのドアを開けた。

 

 

冷火「!?」

 

 

気づけば冷火は和室の真ん中に立っており、彼女の目の行く先には奥に大きな祭壇があった。

祭壇には2つの大瓶が置かれ、警戒しながら近づいた後、恐る恐るふたを開けてみる。

 

 

冷火「っ!!!!な、何だよこれ………ひどすぎるじゃねぇか………」

 

 

入っていたのはなんと、ひとつは何者かの血や肉片。もうひとつは狐、狸、蛇といった動物の生首。生首の方には先ほどの大瓶に入っていたものであろう血が塗られ、口には肉片が詰め込まれていた。

血と肉片が入った大瓶の匂いを嗅いでみると、思わず吐きそうになり、顔を背けてしまった。

 

 

冷火「こ、これは……人間の血だ…………!」

 

 

そして顔を背けた方向の行く先である祭壇の横に置かれていたのは1棹のタンス。引き出しを開けると、そこには人間以外の血肉が入った瓶が並べられていた。しかもご丁寧に名前まで書かれていた。

次々と引き出しを開けて調べたが、どれも血肉が入った瓶しかなかった。すぐに伝えなければ一大事である。冷火は急いで窓を開けると、外にいるカメラとマイク担当に大声で2階に来るよう呼びかけたのだった。

 

 

 

 

 

幸い僧侶は徳が高かったため、報告を受けて鬼灯親子とスタッフを家から出した後、すぐにお祓いを始めた。長時間に及ぶお祓いが終わると、脳震盪で倒れたスタッフたちは回復。先ほどまで呼吸困難で苦しんでいた燐斗もすっかり回復した。

お祓いを終え、家から出てきた僧侶はこんな話をしてくれた。

 

 

僧侶「あの家は元々『怨念屋』の家系でしてね…怨念を持った人たちを集め、その血肉を採取し、動物の死体を生き霊の依り代として儀式を行うことで憎い相手を呪い殺していたんです。冷火さんはさっき祭壇の大瓶に入ってる狐、狸、蛇の生首を見ましたよね?」

 

冷火「………」コクッ

 

僧侶「で、燐斗さんが見たピエロですが、あれは儀式で呼び出された死神の1人なんです。あれ以外に呼び出された死神もたくさんいますし、死神以外の他にも悪魔や邪神を呼び出すことも可能だったと言われていました。今回は幸いピエロだけで済みましたが、燐斗さんが見たピエロはあくまで弱い死神。あれ以上の相手なら私も冷火さんも燐斗さんもスタッフの皆さんも全員殺されていたでしょう………間一髪でしたね」

 

 

僧侶の話が終わると、冷火は何か変わったことがないかどうか調べるため、お祓いを終えた家へ入ってみた。

 

 

燐斗「気をつけてね、冷火…」

 

冷火(お母さん心配しすぎなんだよ……逆にこっちが心配するわ)

 

 

 

 

 

ところが冷火、家の中へ入った瞬間驚きの光景を目にし、凍りついてしまった。

 

 

冷火「え……そんな…………嘘だろ?そんなことって………()()()()()()()()()()…………」

 

 

真っ暗闇の中、家の中には何もなく、ただ無惨に散らばった瓦礫だけがあった。いくら探索しても瓦礫しかなく、そればかりか家主の姿もどこにもなかった。

 

 

冷火「………ということは祭壇も!」

 

 

すぐに祭壇が置かれていた2階へ駆け上がる冷火。だが2階も和室だった部屋も何もなく、祭壇どころかガランとしていた。

 

 

冷火「そんな………あり得ない………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体あの家主は何者だったのか?この家で昔何があったのか?そしてなぜ冷火たちを襲ったのか?

そんな多くの謎が残ったが、冷火は心の中で面白いと思い、いいネタになるかもしれないと確信した後、燐斗やスタッフたちと僧侶と共に帰っていった。



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金的タックルラリアット

連休2日目。街中では紺子、一海、龍華、綾野、清花がぶらついていた。

 

 

清花「紺ちゃん紺ちゃ~ん、どうやったら叢君と恋人になれるのかなぁ?僕が話しかけたらまた逃げられちゃったんだけど……」

 

紺子「いや私に聞かれても………」

 

綾野「ふむ……これは片思い、ですね。私も直刀を危険視していますが、マスターが彼とぶつかっただけで斬られるなど最初は全く考えていませんでした」

 

龍華「ぶつかっただけで斬られる!?」

 

 

そう、あれは一昨日のレクリエーションの日のことだった。

特に紺子の返り血を浴びた一海と龍華は今でもはっきり覚えている。一海は直刀のクラスメイトのため能力を知っているが、知らなかった龍華だけは思わず腰を抜かし、何があったのか綾野に問い詰める。

 

 

綾野「マスターが斬られた後彼の種族を調べてみましたが、彼の種族は人間と神刀の付喪神のハーフ。当初は普通の人間と扱われて育てられましたが、幼少期に友達と遊んでいたところ、友達がトラックにひかれそうになりました」

 

一海「それでその子を助けようとしたら能力が発動、トラックを斬ってその子と親に化け物呼ばわりされて周りから避けられるようになったんでしょ?あいつから聞いたから知ってるよ」

 

綾野「一海はすでにご存知と………彼が異生神妖魔学園に入学するまでは相当辛い思いをしていたんでしょうね」

 

龍華「しっかし、清花先輩があいつに片思いなぁ……俺はあいつより学園長の方が問題だと思うんだけどなぁ。一昨日はマジで地獄だった………」

 

 

一昨日のレクリエーションことデンジャラス・逃走中を思い出す龍華。とはいえ、あのレクリエーションが地獄だったことは紺子たちも変わりない。

そのレクリエーションを考えた者こと学園長の辰蛇が背後から近づいてきているなど5人は知る由もなかった。

 

 

辰蛇「ヤッホー、ペロリストの被害者たち!」

 

紺・一・龍・清「「「「学園長!?」」」」

 

綾野「ターゲットロックオン」カチャ

 

辰蛇「ファッ!?あ、綾野ちゃん待って待って待って!?私何もしてないよ!?ていうかどんだけ武器持ってるの!?」

 

紺子「結構多いけどな。こんなトコでなぁにやってんだ学園長?職務怠慢か?」ボキボキ

 

 

突如現れた辰蛇にすぐさま腕をバズーカに変えて狙いを定める綾野。昨日EVOLUTION SPACEでやったようにもう一度辰蛇の腹を殴ろうと手をボキボキ鳴らしながら睨む紺子。

 

 

辰蛇「紺子ちゃん、綾野ちゃん、ホントに待って!?暴力はマジで勘弁!私、今ペロリストの被害者たちを探してたのよ!?」

 

一海「…………あっ(察し)」

 

 

ペロリストと聞き、すぐに察する一海。それもそのはず、学園内きっての変態といえばあの生徒しかいない。そしてあの生徒は授業をサボって女子更衣室に忍び込み、紺子の腹を舐めていたのだから。

 

 

一海「あの変態ペロリスト……いや、舌寺先輩ですね?」

 

辰蛇「そうそう、その変態ペロ…じゃなくて赤井舌寺君!紺子ちゃんが更衣室で舌寺君にお腹舐められたって話聞いて、あれからあの技を伝授しようか悩んでたけど………本日より決定!あなたたちに素晴らしい護身術を伝授しようと思います!」

 

紺子「護身術?」

 

 

紺子はキョトンとしながら殴る構えを解き、綾野は腕のバズーカを元の腕に戻す。

そして綾野は思い出すように言った。

 

 

綾野「……あ、そういえばそうでしたね。マスターのお腹とおへそを舐めてる最中霜に凍らされ、一海にグラウンドまで蹴り飛ばされ、最終的には南原先生にまでジャーマンスープレックスを決められ……私も思わず彼の舌を切りたいという衝動と怒りに駆られました」

 

清花「怖いこと言わないでよ!?それと似たようなこと何回も聞いてるけどホントに冗談に聞こえないから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、路地裏にて。

 

 

紺子「学園長に手招きされて路地裏に来たけど……」

 

一海「この人が学園長の護身術の犠牲者って……」

 

 

辰蛇に手招きされて路地裏に来たのはいいものの、紺子たちの目の前には両手を縛られた漫画でよく見るようなリーゼント頭の男だった。

 

 

不良「女が束になったところで俺に敵うとでも思ってんのかよ!」

 

綾野「学園長、なぜ私たちをここへ?」

 

辰蛇「あっちみたいな公共の場だとドン引きされちゃうからね。さて、ここには誰も来ないし、ゆっくりお手本を見せられるわね」

 

不良「ハッ、ロリ巨乳のガキが面白いこと言ってんじゃねぇよ!こんな縄で俺を縛って楽しいと思ってん―――――」

 

 

 

キーンッ!!

 

 

 

不良「ノ゛ァ!?

 

 

しゃべっている最中、辰蛇の足が恐ろしい勢いで不良の股間をとらえた。

彼女はいたずらそうな笑みを浮かべ、不良はあまりの激痛に言葉を失い、股間を押さえながら悶える。

 

 

辰蛇「まずは金的。次はトゥァックルゥゥゥ!!」

 

 

 

ガオンッ

ドンッ

 

 

 

不良「グボォ!?

 

 

みぞおちめがけて突進した辰蛇だったが、『なぜみぞおち?』と疑問を抱える前に突進した瞬間の現象に疑問を抱えなければならなかった。

突進する瞬間、強烈な風圧が紺子たちを襲ったのだ。風圧が来るなど思ってもいなかったため、紺子たちは耐えることができず、壁に押しつけられる。

 

 

龍華「おお………」

 

辰蛇「そしてラリアットォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

 

 

ゴシャアッ!!!!!

 

 

 

不良「#♂☆○℃◇$■◎¥〃*ゞ※∞£÷@±∃αΣ∀⇔♀§×∬≠⊥♪Ψ〆;仝θ∴々!!!!?

 

 

骨が砕けるような嫌な音と声にならない声が路地裏に響き渡った。

 

 

綾野「…………」

 

一海「が、学園長エグすぎるよ………金的の後にみぞおち、挙げ句には喉仏潰すって……………」

 

龍華「マジで苦しそうな顔してんな………」

 

紺子「絶対こいつ瀕死だろ…………」

 

清花「僕女なのに何だかあそこがヒュンッて………」

 

 

地面に倒れ伏した不良はただピクピクと小さく体を震わせることしかできなかった。

不良は力なく頭を上げると、血走った目で辰蛇を睨みつける。

 

 

不良「て、テメェェェ………

 

辰蛇「ざっとこんな感じよ。あ、この護身術私が生み出した技だし、ちゃんと名前もついてるからね?」

 

紺子「こんな感じって……ていうか、それ何……?」

 

 

紺子は恐怖に震えながら問う。

 

 

辰蛇「対男性特攻奥義、その名も『金的タックルラリアット』ッ!!」バァァァァァン

 

 

だがドヤ顔の辰蛇とは対照的に、紺子たちは逆に唖然としていた。

それもそのはず、辰蛇に見せられた不良に対する攻撃は紺子の言う通り、護身術より殺人に近かったのだから。

 

 

清花「僕、攻撃より回復専門なんだけど………こ、こんな技覚えていいのかな………」ガタガタ

 

辰蛇「んー?覚えて損はないよー?特に紺子ちゃんなんか舌寺君にお腹舐められてるし、一海ちゃんも舌寺君のこと憎んでるんじゃないの?」

 

一海「え…まあ確かにあのクズ野郎で変態ペロリストの下郎には本気で怒りましたけど…」

 

紺子「カズミン、お前ぇ……//////」

 

 

思い出したくないのにどうしても思い出してしまい、赤面しながらうつむく紺子。

少しの間だったが、顔を上げた途端辰蛇がいつの間にか姿を消していた。

 

 

紺子「あれ!?学園長!?」

 

綾野「マスター、学園長なら私たちを見ていた人間を連れてくるためしばらくここを離れてます」

 

龍華「思えばあの学園長もスゲェ変態なんだけどな。人のパンツの匂いは嗅ぐし、俺のおっぱいも揉みまくるし。しかも俺のおっぱいのホントのサイズも知ってるって……」

 

紺子「そういえば龍華、お前ブラジャーじゃなくてサラシ巻いてたっけ」

 

 

龍華がサラシを巻いているのは紺子だけでなく、幼馴染みの一海、全てのクラスメイトと後輩のデータが入っている綾野も知っていた。

 

 

清花「龍ちゃんの胸Cにしか見えないなぁ……てか、C?学園長が龍ちゃんのホントの胸の大きさ知ってた?紺ちゃんとカズミンとは友達………え?知らないの僕だけ?」

 

龍華「みんなで何カップか一斉に答えてみるか?」

 

紺・一「「うん」」

 

龍華「……せーの」

 

清花以外4人「「「「Gカップ」」」」

 

 

彼女の胸の本当の大きさを知らないのは清花ただ1人。口を揃えて言った紺子たちに紛れて綾野も口を出していた。

 

 

龍華「おーい!!綾野先輩まで知ってんのかよ!!先輩にまで言われるとスッゲェ恥ずかしいんだけど!!//////////」

 

綾野「龍華、私は未来の最新型ロボットですよ?生徒と先生方のデータは全て取得済み。女子の胸の大きさだって自然に計算してしまうほどです」

 

龍華「自然って、あんたなぁ……//////」

 

 

赤面しながらうつむいていると、どこからか男の抵抗するような声が聞こえてきた。

 

 

男「離せ!おいガキ、こんなことしてただで済むと思ってんのか!?」

 

 

縛られた男は辰蛇に引きずられながら必死に抵抗し、紺子たちの前に倒れた。

 

 

辰蛇「というわけで早速連れてきたよー。その前にひとつ言っていい?」

 

紺子「?」

 

辰蛇「この人間……私たちにミンチにされる未来が見えるわ♪

 

清花「え?学園長?」

 

 

目の前にいるのは辰蛇だが、まるで別人のように雰囲気が全く違った。

かつて見たことも聞いたこともない辰蛇の容赦ない殺意とドスの効いた声。それは先ほど連れてきた男の正体を知っているかのような雰囲気だった。

こんな悪そうな笑みを浮かべた学園長は見たことがない。紺子たちは少し鳥肌が立ってしまった。

 

 

龍華「が、学園長?もしかして怒ってんのか?」

 

辰蛇「別に怒ってなんかいませんわ。この人間はジャーナリスト、『深海(ふかみ)光弘(みつひろ)』。でもね、この人つかんだ瞬間とんでもない本性が見えちゃったの。人間の全ての“負”を強調してるかのような外道マンで、特技は名誉毀損として他人のゴシップとスキャンダルを流すこと。そしてスクープを手に入れるためなら手段を選ばない。誰も裁くことがないなら私たちの手で始末した方がいいかなって

 

深海「はぁ!?白昼堂々殺人予告!?な、何だよこいつ!バケモンか!?」

 

辰蛇「化け物で結構。この子たちは私の学園の生徒。そして私はこの子たちが通う学園の学園長ですからね♪

 

 

顔を近づけながら目に光のない笑顔で言った。

 

 

深海「ひ、ヒィィ!?

 

 

その笑顔には殺意がこもっているようにも見え、深海は腰を抜かしそうになる。

一方で深海の本性を聞いた紺子、一海、龍華にも深海に対する殺意がこみ上げていた。

 

 

紺子「学園長、今日ばかりは賛成します。こいつを裁くのは警察でも法律でもない………私たちが徹底的に処分しなきゃならねぇ………

 

一海「僕も賛成です。エグすぎて停学処分になるのを覚悟の上でやらせていただきます

 

龍華「こいつの性根は腐りきってる。誰かがやらねば被害者が増えてくだけ…………紺子、カズミン、遠慮はいらねぇ。殺す気で行くぞ(死刑執行だ)

 

 

容赦ない殺意を持っているのは辰蛇と同じだが、それらは彼女より大きく上回っていた。

紺子たちは深海にジリジリと近づき、深海は後ずさり、辰蛇は唖然としていた。

 

 

深海「い、一体何する気だ!?こんな抵抗できない俺に一体何を…!」

 

一海「まずは僕から!」

 

 

 

キーンッ!!

 

 

 

深海「ガァッ!?

 

 

まずは一海が深海の股間めがけて蹴りを入れた。

 

 

一海「そのまま壁に!」

 

 

 

ダシィアッ

 

 

 

深海「ウボォ!?

 

 

立て続けに回し蹴りで壁に叩きつけ、一瞬動けなくなった隙を突いてさらに襲いかかる。

 

 

一海「飛び膝蹴りッ!!」

 

 

 

ズゴンッ

 

 

 

深海「グガァ!?

 

辰蛇「え?」

 

一海「とどめはかかと落とし!!」

 

 

 

ゴシャアッ

 

 

 

深海「ガ………!

 

辰蛇「金的の次に回し蹴り、その後みぞおちに飛び膝蹴り、とどめにかかと落としって…………」

 

一海「我、天啓を得たり」

 

深海「お、おぉぉ………………

 

 

天啓どころではなかった。まだ一海しか攻撃していないにも関わらず、満身創痍となった深海は攻撃された股間とみぞおちを押さえて悶絶していた。

 

 

紺子「……もう全部カズミンだけでいいんじゃないかな?」

 

龍華「殺す気で行く(死刑執行)っつったじゃん。俺だって最初からこいつを許すつもりはねぇんだ」

 

紺子「ぬう………わかったよ、停学覚悟でやるよ!やっちゃダメだってのはわかってるけど、悪く思うなよ深海さん!」

 

深海「え゛……く、来るな……!

 

 

 

キーンッ!!

 

 

 

深海「アヒィ!?

 

 

今度は紺子に近寄られ、激痛に悶えながらも後ずさろうとする間もなく一海にやられた時同様股間を蹴られた。

 

 

紺子「次に肘打ち!」

 

 

 

ゴギッ

 

 

 

深海「オボッ!?

 

紺子「顎に向けてアッパー!!」

 

 

 

ゴシャアッ

 

 

 

深海「グゴォ!?

 

 

みぞおちに肘打ちされて吐血し、さらに顎にアッパーカットを食らった深海。抵抗のての字もなく宙を舞って地面へ落ちた。

 

 

紺子「龍華、あとは任せた!」

 

 

悶絶する中、深海は龍華という名前を聞いて思わず愕然。苦し紛れに龍華の顔を見上げる。

 

 

深海「はぁ………はぁ………き、貴様………………確か………格闘技世界一決定戦の……………最年少優勝者の………………

 

龍華「…………」

 

 

血を流す口から苦し紛れに呟いた深海に龍華は無言で近づく。

 

 

深海「お、俺をどうする気だ………!?もし何かしたら………お前の地位も名誉も消えるぞ……………!?

 

龍華「地位?名誉?そんなもので何になるんだ?俺が格闘技を始めたのはな、今でも意識不明で入院してる親父とお袋を治すための治療費を稼ぐためだ。優勝なんて目じゃない。また親父とお袋と一緒に過ごしたいだけなんだ」

 

一海「龍華………」

 

龍華「地位とか名誉なんかクソ食らえだ!そんなものに頼るぐらいなら捨ててやる!!」

 

 

 

ゴギャッ

 

 

 

深海「ヒギャアアアアアア!!!お、俺の肩がァァァァァァ!!!

 

 

龍華に胸ぐらをつかまれ、無理矢理立たされて肩の骨を殴られて砕かれた深海が覚醒した瞬間だった。

それでも龍華は容赦せず、先ほど一海と紺子がやったように股間めがけて蹴りを入れた。

 

 

 

キーンッ!!

 

 

 

深海「ゴワァァァァァアアアアアアアアアア!!!

 

 

股間を蹴られたばかりでなく、壁にまで吹き飛ばされ、叩きつけられた。

 

 

龍華「その身をもって!!」

 

 

 

ズゴンッ

 

 

 

龍華「きっちり地獄で反省!!!」

 

 

 

ダシィアッ

 

 

 

龍華「しやがれゴミクズ野郎ォォォォォォォォッ!!!!

 

 

 

ブシャアアアアアアアッ!!!!

 

 

深海「▲◎※¥*■〆#♂Ω☆ω℃仝μ♀£¶ゝ$∀∬◆@±●ゞ々*★∃≡∧⊥√Å∫‡⇔§≒∴○〓ΦÅ♪Σ〒¢!!!!?

 

 

壁に叩きつけられた深海に追い打ちとして肘打ち、続けて顔面に飛び膝蹴り、とどめに拳を恐ろしいほどの勢いで深海のみぞおちめがけてぶつけた。

地獄の底から湧き出るようなこの世のものとは思えない断末魔が路地裏全体に響き渡り、やがてその断末魔をあげた喉は裂けると同時に血が噴き出し、そのまま倒れ伏した。深海の心臓はもう動いていなかった。

 

 

龍華「………できるだけ使わねぇようにしようと思ってたが、こんな奴に使う羽目になるなんてな」

 

清花「り、龍ちゃん……いくら君が格闘技世界一決定戦の最年少優勝者でもさすがにこれは………」

 

龍華「これでよかったんだ。こいつみたいな外道な人間は死ななきゃわからねぇ。少なくともこいつによる被害者たちはきっと………こいつの死を望んでたはずだ」

 

 

深海の血を浴びた龍華はそれを払いながら言った。

彼の凄惨な死に青ざめているのは清花だけでなく、辰蛇も引いていた。

 

 

辰蛇「な、なんか私が思ってたのと全然違ったけど…………とりあえずもう1回だけ見てちゃんと覚えてよ?これ、ノーカンにするから」

 

紺子「みんなドン引きじゃねぇか………なあ、綾野先輩大丈夫か?」

 

綾野「………あ、すいません。少し寝てました」

 

綾野以外全員『寝てた!!?

 

 

この日、紺子たち5人は護身術『金的タックルラリアット』を習得できた。

紺子たちが去った路地裏には惨殺死体となった外道ジャーナリストこと深海光弘、そして辰蛇に金的タックルラリアットを食らった不良しかいなかった。

 

 

不良「お、俺は………どうなんだよ………………」ガクッ



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幕間1:校長の依頼

この話は『時を越えた再会と紺子の決意』、『金的タックルラリアット』の間の話になります。


これは紺子がEVOLUTION SPACEで一海への決意を抱いたその日の夜のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「ビンタしたのはさすがにやりすぎちゃったな。ごめんなカズミン、痛くなかったか?」

 

 

2人はすでに夕食を食べ終え、入浴も終え、パジャマ姿だった。紺子は相変わらずズボンを履かず、パンツ丸出しだ。

紺子は牛乳を飲みながら一海に問う。

 

 

一海「大丈夫だよ……もし出雲姐ちゃんと会ってない状態で貴利矢さんにあのお願いしてたら……」

 

紺子「言ったろ、絶対に死なせないって。お前を支えられるのは私しかいないんだ。それに………お前の中の玉藻前にも怒鳴りつけてやりてぇ」

 

一海「うん…僕と同じ妖狐だもんね。でもあの頼みを聞いた貴利矢さんもどう動くか問題だけど………」

 

紺子「バカ」

 

一海「?」

 

紺子「それでもお前を守ってやる。だから私の知らないトコでくたばるんじゃねぇぞ?その時はあれの10倍でひっぱたくから」

 

一海「………うん」

 

 

うなずいた直後、EVOLUTION SPACEで貴利矢が自分の相棒を話したことを目を閉じて思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前、EVOLUTION SPACEにて………。

 

 

遠呂智『貴利矢、カズミンの両親を殺した陰陽師ってのは誰なんだ?』

 

貴利矢『そうだな………はっきり覚えてるけど、どこに隠れてるとか話はまだ聞いてねぇ。けど絶対俺を襲おうと機会を待ってるに違いねぇ』

 

龍華『それで名前は?』

 

貴利矢『神楽坂(かぐらざか)闇音(やみね)。頭のネジ何本外れてんだって突っ込みたくなるほどイカれてる陰陽師でな、元いた陰陽師学校の問題児』

 

一海『神楽坂闇音?』

 

龍華『そんな奴をお前が面倒見てたっていうのか!?』

 

貴利矢『ああ。ちなみに言うが、そいつは人外だけじゃねぇ…………同じ人間も襲ってる。野放しにもできねぇし、どの道俺は裏切り者だ………………これで許してくれとは言わねぇが、カズミンの代わりに両親の敵を取ってきてやるよ』

 

紺子『でもあんたがしくじって殺されたらどうすんだよ!?』

 

貴利矢『………俺は負けねぇ。あのじいさんほどじゃねぇけど、こう見えて上位に食い込むほどの実力持ってるんだ』

 

一海『……だったらこの約束だけは絶対に守って。生きてEVOLUTION SPACEに戻ってくるって』

 

貴利矢『わかったよ。約束するぜ、カズミン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところがその記憶は突然のチャイムによって打ち消された。

こんな時間に客?ドアホンを見ると、そこにはどういうわけか校長のアルケーの姿があった。

 

 

紺子「何でこんな時間に……私たち何か変なことしたか?」

 

一海「わかんない。僕だって身に覚えがないし…たぶんお詫びの印として何かくれるんじゃないかな」

 

紺子「知らね。とにかく開けようぜ」

 

 

玄関に明かりを灯し、扉の前に立つ紺子と一海。扉を開けると、そこにはアルケーが微笑みながら立っていた。

 

 

アルケー「うふふ、こんばんは♪紺子さんに一海さん♪」

 

紺子「こ、こんばんは……もう夜なのにどうしたんですか?」

 

アルケー「ちょっとわけあってお邪魔しますわ。上がりますよ」

 

 

アルケーは紺子と一海の次の言葉を待たずにハイヒールを脱ぐと、そのまま玄関に上がる。

この行動に紺子は若干パニックになってしまった。

 

 

紺子「上がるって、ストップストップ!常識的に考えてくださいよ!?先生が女子中学生2人の家に泊まりに来るなんておかしくないですか!?」

 

一海「誰も泊まるなんて言ってないよ?出雲姐ちゃん、早とちりしすぎ」

 

紺子「早とちりも何も、おかしいと思わねぇか!?こんな夜中に客が来るなんて…!」

 

アルケー「一海さんの言う通りですよ。泊まりに来たのが目的じゃありませんし、お話はゆっくり居間でしましょう」

 

紺子「何なんだよ…こんな時間に校長が来て用事があるとかわけわかんねぇ………!」

 

 

紺子は混乱した状態でアルケーを居間へ案内したのだった。

 

 

 

 

 

紺子「………それで、用事って?」

 

 

湯飲みを差し出されたアルケーはそれを手にして茶を口にすると、こう呟いた。

 

 

アルケー「……………てほしいんです」ボソッ

 

紺子「え?」

 

 

思ったより声が小さく、紺子は首をかしげる。

首をかしげた紺子にアルケーは紺子と一海に聞こえるようにはっきりした声でこう言った。

 

 

アルケー「私がこんなこと頼むなんてとても恥ずかしいんですが……………私のおへそを掃除してほしいんです………………」

 

紺子「はぁ!?校長のおへそ掃除!?」

 

アルケー「あのレクリエーション、私も鬼として全力で皆さんを追いかけましたし………竜奈さん、司君、そして稚童君に私のおへその匂いを嗅がせました。そこで紺子さんと一海さんに私の臭いおへそを掃除できるかの勇気があるかどうか試そうと思いまして」

 

一海「………僕も校長にオナラで吹き飛ばされましたけど、あれはホントに臭いったらありゃしませんでした。オナラはどうしようもないですが、おへその掃除は()()()が何とかしましょう」

 

紺子「僕たちって………え゛!?まさか私もやんの!?

 

一海「ん?そうだよ?ちなみに拒否権はないからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、アルケーは紺子の部屋のベッドで両手足を縛られ、拘束された。

 

 

一海「準備終わりました」

 

紺子「ええぇ……マジでやんのかよ……」

 

 

ベッドで横になるアルケーを見て、紺子は唖然とした表情をしていた。

そして一海と共に手にしていたのは綿棒とオリーブオイルが入った瓶。へそ掃除によく使われる道具だ。

 

 

アルケー「では紺子さん、スカートをめくってくださいな」

 

紺子「…………どうしてもめくらなきゃダメ?」

 

アルケー「ええ」

 

 

常に微笑んでいるアルケーだが、その笑顔からは真剣な気持ちも伝わってくる。しばらくの沈黙が流れたが、紺子はそれを破るようにこう言った。

 

 

紺子「…………はぁ……もう、わかったよ。やりゃいいんだろ?」

 

 

渋々了承した紺子はアルケーのスカートの裾をつかむと、そのまま頭上までめくった。人間でいうところの茶巾縛りのようなものだろう。

頭上で縛られた両手以外上半身が隠れ、下半身があらわになる。腹とパンツ、スラッとした足を見て興奮しない者はいない。そう、決していないのだ。

 

 

一海「こ………これが校長の下半身………」

 

 

アルケーの下半身を見るなり、一海の息づかいが少し荒くなった。

その息づかいがアルケーに聞こえたのか、少し恐怖に怯えたような声で一海にこう問いかける。

 

 

アルケー「その荒い息づかい……まさかとは思いますが似たようなこと……紺子さんにも………?」

 

一海「はい、やりました…出雲姐ちゃんが先輩にディープキスされて死んだんじゃないかって思ってすごく怖かったですけど………生きてたことが嬉しくてお腹なでたり、あとおへそもいじったり……」

 

紺子「ヒエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!おいバカズミンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!テメェ、先生の前で!!!!!しかも校長の前で何さらっと恥ずかしいこと暴露しやがんだバカァァァアアァアアアァァァァァア!!!!!

 

 

あの時のことをアルケーに暴露され、赤面しながら一海の肩をつかみ、激しく揺さぶりながら怒鳴った。

しかしそれが災いしたのか、思わず喉を痛め、吐血してしまった。

 

 

紺子「ゴファ!?

 

一海「出雲姐ちゃんんんんん!!」

 

 

 

 

 

どうやらショックのあまり気絶したようだ。叫びすぎて吐血した紺子はそのまま倒れ、動かなくなってしまった。

そんな紺子をよそに、仕方なく一海1人でアルケーのへそを掃除することになった。

 

 

一海「出雲姐ちゃんにも手伝わせてやりたかったけど………まあいいや。校長、もしかして緊張してますか?」

 

アルケー「別にそんなことはございません。ですが生徒にスカートをめくられるなんて生まれて初めてでドキドキ………それに私のおへそを掃除してくれる人がいるなんて光栄に思ってますよ」

 

 

スカートを顔に被せられているアルケーはまだ微笑んでいた。だがその笑顔はいつまで保てるか。一海にはある程度へそ掃除を進めたらどんな顔をしているか覗いてやろうという考えもあった。

校長って泣くのかな?出雲姐ちゃんみたくそのうち涙目になって嫌がるようになるのかな?そんな考えが頭の中でいっぱいだった。

 

 

一海「じゃあ校長……オリーブオイル垂らす前に………おへその匂い嗅いでもいいですか?」

 

アルケー「どうぞ」

 

 

綿棒と瓶を床に置き、恐る恐る鼻をアルケーの縦長のへそに近づける一海。その反応は当然竜奈、司、稚童と同じく………。

 

 

一海「うわっ!!何これ…!!今までに嗅いだことのないようなすっごい悪臭…………!!」

 

 

思わず腰を抜かしてしまい、尻餅をついてしまった。

 

 

アルケー「これを竜奈さん、司君、稚童君は嗅いだのですよ。それでも掃除する勇気はありますか?」

 

一海「も…もちろんです…」

 

 

大丈夫というようなそぶりを見せる一海だが、アルケーはスカートで前が見えず、紺子も気絶しているのでもちろんその2人にはわかるはずもない。

気を取り直して床に置かれた綿棒と瓶を再び手にすると、まずは瓶のキャップを開けた。

 

 

一海「校長には見えないからわからないけど、今の僕はすごく真剣です。なのでこれからオリーブオイル垂らします」

 

アルケー「ああ………ついに始まるのですね………若干恥ずかしいですがよろしく頼みますよ」

 

 

ついに生徒によるへそ掃除が幕を開けられた。

一海はまずアルケーのへそにオリーブオイルを少し垂らす。アルケーはへそにオリーブオイルなど入れたことがなかったので思わず腹を一瞬ビクンと震わせてしまった。

 

 

アルケー「ひゃんっ…!」

 

一海「震えたらこぼれますよ。リラックスしてください」

 

アルケー「リラックスしろって言われましても………私、オリーブオイルなんか使ったこと………」

 

一海「え?」

 

 

わざと真顔になった一海はもう片方の手に持った綿棒の先をアルケーのオリーブオイルが入ったへそに突っ込み、少しクリクリ回す。

 

 

アルケー「ぁぁぁぁっ……りま……っ!」

 

 

へそから伝わる快感に声が出せなかった。

 

 

一海(おへそのゴマをきれいに取るには20分ぐらい放置しないといけないから………)

 

 

一海はアルケーのへそにオリーブオイルをさらに多めに足すと、何を思ったのか急に尻尾を動かし、アルケーの脇腹をくすぐり始めた。

 

 

アルケー「んひゃあっ!?ちょっ、一海さん、何をッ!?指の感覚じゃ………!」

 

一海「僕の尻尾ですよ。これで出雲姐ちゃん縛ってお腹とおへそいじりましたし、くすぐることだってできます」

 

 

小悪魔じみたいたずらそうな笑みを浮かべながら一海は続ける。

 

 

一海「それにおへそのゴマが柔らかくなるまで20分ぐらいかかるって聞いてますし、今から20分ぐらいくすぐります」

 

アルケー「一海さん、待ってください…さっきおへそにオリーブオイル入れましたよね?そんなことしたらベッドが…」

 

一海「だったら耐えればいいじゃないですか♡」

 

 

小悪魔じみた笑顔のまま一海は尻尾を動かし、アルケーの脇腹をワサワサとくすぐり始めた。

 

 

アルケー「んっ……んあぁぁぁぁ!んゃはははははははは!!」

 

一海「校長のお腹もコ~チョコチョ♪」

 

アルケー「やめひぇくだしゃいぃぃぃ…!わたひ、お腹のッホォ!くすぐり…ダメャアアアアアアッヒャハハハハハハァァ!!」

 

 

アルケーは嫌でもあまりのくすぐったさに身をよじらせ、その上両手足も縛られているため、その動きはまるでハリガネムシが路上でのたうち回っているようだった。

この動きと笑い声が一海をさらに楽しませる羽目に。

 

 

一海「すごい………校長がこんなに笑いまくるなんて………もっとくすぐられたいのかな?」

 

アルケー「一体ぃぃ……な、何をおっしゃってェェェッヘヒャヒャヒャハハハァァァァ~!」

 

 

この時、へそに垂らされたオリーブオイルが流れ出していた。だがへそ掃除しようと決めた一海はそんなことなど気にせず、アルケーの脇腹をくすぐり続ける。

 

 

アルケー「か、一海しゃぁはははははぁんっ!お、おへそからぁぁぁ!おへそから何か垂れ…ンヒィィィッヒヒヒィ~~~~!?オリーブオイルがァァァァ!!オリーブオイルがひゃ~~~~っ!?ぬぇぇぇぇっへへへへへへへへへへ!!」

 

一海「校長、もっともっと笑ってください!一生笑うのが嫌になるほどくすぐってあげますから!」

 

アルケー「だからってェェェェェ!?えひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!ンヒィッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィィィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルケーをくすぐっているうちに約20分が経った。そろそろへそのゴマが柔らかくなっている頃合いだろう。しかし激しくくすぐられ、何度も身をよじらせていたせいでへそからは大量のオリーブオイルが流れてしまい、おかげで腹はオリーブオイルまみれとなっていた。

実を言うと一海、尻尾で脇腹をくすぐる中、身をよじらせて悶えるアルケーに興奮していたのだ。へそから流れたオリーブオイルを見てさらに興奮してしまい、瓶からさらにオリーブオイルを垂らしたことでこのような状況となった。

 

 

一海「すごい……校長……こんなにエロい姿になって…………」

 

アルケー「はぁ………はぁ………もう……もうくすぐらないでぇ………お腹ぁ…おかしくなっちゃいますぅぅ…………//////」

 

 

未だ茶巾縛りの状態に近いアルケーはスカートの中から懇願するような声を出した。荒い息づかいは散々くすぐられたせいで色っぽかった。

 

 

一海「くすぐりが終わっても、まだ肝心のあれが終わってないじゃないですか………♡」

 

 

スカートで上半身を隠されたアルケー。散々くすぐられて身をよじらせた挙げ句オリーブオイルまみれになったアルケーの腹。興奮している一海はもう止まらない。

再びオリーブオイルを注ぎ、綿棒でグリグリとこねくり回した。

 

 

アルケー「いっ!いぃぃぃぃ……いやぁぁぁぁぁぁ……奥は…やめてぇ………っ!感じちゃいますぅ……!//////」

 

 

すっかり疲弊しきったアルケーの声は明らかに涙声だった。一度へそ掃除する手を止め、頭上までめくられたスカートを少し下ろすと、一海はにやけてしまった。

予想通りだった。アルケーはすっかり涙目となり、口からはよだれが垂れ、顔も赤い。一海は再びスカートでアルケーの顔を隠すと、へそ掃除を再開。アルケーはさらに色っぽい声を出す。

 

 

一海「うわぁ、こりゃすごい………ゴマが豊作だぁ………」

 

 

綿棒でほじくり回すこと約5分。アルケーのへそからはあり得ないほどの量のゴマが次々と出てくる。

ティッシュで綿棒についたゴマを拭き取り、腹とへそにまみれたオリーブオイルも拭き取られた。一海は念のため再び鼻先をアルケーのへそに近づけてみる。

 

 

一海「………うん、もう大丈夫」

 

アルケー「ぁ…………//////」

 

 

やがてアルケーはスカートを頭上までめくられた状態のまま気絶してしまった。

それに気づかない一海はさらにへそを広げてみる。花弁のようなシワが広がる。

 

 

一海「ゴマも全部取れてすっかりきれいになっちゃいましたね……」

 

アルケー「……………」

 

 

返事がない。きっと安心して眠ったしまったのだろう。そう確信した一海はそのまま眠りについてしまった。

その翌朝まで気絶していた紺子はなぜアルケーがベッドの上にいるのか一海に説明されるまで混乱していたという。



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暴走特急!学園崩壊へのカウントダウン! 前編

金的タックルラリアットを習得したその日の夜、紺子の家にて。

夕食の最中、突然紺子のスマホに着信が入った。

 

 

紺子「誰だよ晩飯の時に…」

 

 

着信画面には『ディーゴ・黒鉄』とあった。あいつが私に電話よこすなんて珍しいな。何しろ彼が紺子に電話をかけることなんて滅多にないのだからきっと何か重大な事件が起きたに違いない。

これには本当に出ないわけにはいかないのですぐにスマホを手に取ると、通話を始めた。

 

 

ディーゴ『よっ、紺子。連休どう過ごしてる?』

 

紺子「なーんか今日カズミンと龍華と綾野先輩と清花先輩と街歩いてたら学園長に会ってさぁ…お前平気なの?一昨日のレクリエーションマジで地獄だったじゃん」

 

ディーゴ『もうすっかり元気になっちまったぜ。それより紺子、聞いてくれ。明日学園の最寄り駅に行かねぇか?いいニュースなんだけどさ、俺にとってのいいニュースでもあるんだ』

 

紺子「駅で何か祭りでもあんのか?もし明日行ってつまんなかったら帰るぞ」

 

 

しばらく通話していた紺子とディーゴだったが、5分ほどすると紺子が電話を切った。

 

 

一海「誰から?」

 

紺子「うちのクラスメイトのディーゴから。何でも学園の近くで祭りがあるんだってさ」

 

一海「祭り?」

 

紺子「場所は学園の最寄り駅。カズミンも連れてみんなで行こうぜって話があったんだよ。他にも私たち以外に連れてく奴らは龍哉、辰美、あと1年のメリーだって」

 

一海「メリーか……とりあえず行ってみてもしつまんなかったら帰ろうか」

 

紺子「私と同じ考えなのな」

 

 

乗り気ではないが、行かないわけにはいかない。仮に約束を破られて怒ったディーゴによる蒸気機関車にひかれるかのような体当たりを食らうわけにもいかない。

夕食を終えると、紺子はすぐにクラスメイトの龍哉と辰美に電話したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日、連休3日目。紺子と一海は着替え終えるなりすぐに異生神妖魔学園より少し離れた街の最寄り駅へと向かった。そこへ向かっているのはディーゴ、龍哉、辰美、メリーも同じで、駅前に到着するなりディーゴたちと鉢合わせしてしまった。

駅前にある垂れ幕には『祝!夢物語号運行』と書かれていた。

 

 

紺子「仕方なく来てみたけど、お前らも同じか」

 

龍哉「ああ。ディーゴがどうしても来いって言うから……」

 

辰美「私も乗り気じゃないですし…ディーゴさんのゴリ押しも半端ありませんでしたし」

 

一海「ところで何でメリーもいるの?」

 

メリー「私もよくわからないままディーゴさんに…」

 

 

気づけば紺子はディーゴにつかみかかっていた。

 

 

紺子「テメェ!カズミンならまだしも無関係の奴まで誘うとか……!」

 

ディーゴ「まあまあ、そうカッカすんなよ。俺が鉄道マニアだからってみんな嫉妬してんのか?」

 

メリー「え?ディーゴさんが鉄道マニアだとか私知らないんですが」

 

紺子「ほら見ろ!勝手に無関係の後輩まで連れてきやがって!」

 

龍哉「紺子、1回落ち着け。大勢の人の前でキレて恥ずかしいと思わないの?」

 

 

辺りを見回すと、夢物語号に乗りに来たのであろう人々が紺子たちに注目を浴びせていた。

 

 

紺子「あ……………/////////」

 

 

恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にし、そのまま手で顔を覆ってうつむいてしまった紺子であった。

 

 

 

 

 

数分後、ディーゴは紺子たちを導くように駅に入れたが、紺子は人々の前でディーゴにつかみかかったことに罪悪感を抱いていた。

 

 

辰美「紺子様、お恥ずかしい気持ちはわかりますが少しは公共の場というものを考えてください」

 

紺子「うるせぇよ……お前の説教聞く気分でもねぇよ………//////」

 

辰美「しかもこんな時にディーゴさんはどこに……」

 

龍哉「あいつなら俺たちの切符と駅弁買いに行ってるけど?」

 

ディーゴ「いやー、待たせたなぁ!もうとにかく夢物語号に乗りたい客の行列だったわい!」

 

 

売店の方からディーゴが6個の駅弁を重ねて持ってきた。それらをベンチに置くと、ポケットから6枚の切符を取り出す。

 

 

一海「遅いですよ先輩。こんなに駅弁と切符買って…………って全員分!?

 

ディーゴ「せっかくみんな来たんだし、ウダウダ言ってもしょうがねぇ。連休なんだからさ、いろんなトコ冒険してみようや」

 

龍哉「……紺子、どうする?」

 

紺子「こいつ蒸気機関車の付喪神で大の鉄道好きだからなぁ………わかったよ、全員分買ったんならもう引き返せねぇな」

 

ディーゴ「よーし、じゃあ決まりな!早速ホームにゴーだ!」

 

 

ディーゴは紺子たちに駅弁と切符をそれぞれ渡した後、すぐにホームへと走っていった。

 

 

メリー「足速すぎ!?」

 

一海「さすがにこれ片道とかじゃないよね……?」

 

 

恐る恐る切符に書かれている文字を読む一海だったが、不安は当たった。

 

 

一海「やっぱり……お金足りないんじゃないかな………」

 

 

切符には片道と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駅のアナウンス『間もなく第4ホームに新特急列車、夢物語号が到着します。なお、夢物語号は第4ホームにて10分停車の予定です』

 

 

駅のホームで特急列車を待つ紺子たち。特にディーゴはもうすぐ夢物語号がこの駅に到着することに胸をときめかせていた。

 

 

ディーゴ「ウッホ~、いよいよじゃあ…!」

 

紺子「ディーゴ。おいディーゴ」

 

ディーゴ「あ?んだよ、今ウズウズしてる時に」

 

紺子「帰りの時の金足りるの?この駅弁と切符の値段、私たちの分と合わせて全然足りねぇんじゃねぇの?」

 

ディーゴ「……あ~大丈夫大丈夫。そうなってもお前らで1人ずつ切符買えばいいから。お前ら金持ってきてるんだろ?」

 

辰美「持ってることは持ってますが…」

 

メリー(なんかすっごく心配なんですが!!)

 

 

冷や汗を流しながら心の中で叫ぶメリー。一海が乗客らしき人々を見ると、カメラやスマホを持っている者がやたら多かった。

 

 

一海「それにしてもカメラ持ってる人たくさんいるね」

 

龍哉「よっぽど記念写真撮りたいらしいな。鉄道マニアにもたまらないかもしれないし」

 

ディーゴ「俺も撮りまくるとしますかね。だって蒸気機関車だった頃、いろんな列車見てきたんだぜ?」

 

紺子「ところでさ、なんかちょっと駅が騒がしくなってきたんだけどさ、もしかして来たんじゃね?夢物語号」

 

紺子以外全員『え?来た?』

 

 

 

プァーーン

 

 

 

遠くからホームにかけて警笛が鳴り響く。

振り向くと、線路の上を走っていたのは………。

 

 

ディーゴ「うおおおおおおお!!あれだあれだ!!あれこそ新しくできた特急列車、『夢物語号』だ!!激写激写ー!!

 

 

ディーゴは目を輝かせながらスマホを取り出し、近づいてくる特急列車こと夢物語号の写真を何枚も撮り始めた。人々もディーゴのように次々と写真を撮っていく。

夢物語号の車体は藍色のカラーに無数の星、三日月の上で眠る少女。正面には特急列車の名前と獏の絵が描かれていた。

 

 

紺子「…だから乗り気じゃなかったんだよ。ホント帰りてぇ」

 

辰美「まあまあ、そう固くならずに。ディーゴさんもあんなに喜んでるんですから一度乗った方がいいかもしれませんよ(と言っても私もホントは帰りたいんですよね………)」

 

 

顔を背ける紺子に辰美が声をかけ、龍哉と一海とメリーもスマホを取り出すと、近づいてくる夢物語号を写真に収めた。

そして紺子たちの近くに夢物語号が停車し、全てのドアが開いた。

 

 

ディーゴ「あれ?おい紺子、辰美。お前らまだ撮ってないの?」

 

紺子「撮るも何も鉄道のことあんまり知らないから………」

 

ディーゴ「鉄は熱いうちに打っとけ。龍哉とカズミンとメリーだって撮ったんだぜ?また何かの用事で乗る機会あってもさ、今さらこれ撮っても遅ぇぞ」

 

紺・辰「「は、はぁ………」」

 

 

言われるがままにスマホを取り出し、夢物語号を写真に収める紺子と辰美。しかしディーゴはそれを見るなり気に入らない様子でこう言った。

 

 

ディーゴ「こんなに人集まってるのにお前らだけたった1枚?ふざけんなよ。俺みたいにたくさん撮るのがマニアってもんだろうがよ。あと龍哉、カズミン、メリー。お前らのこともちゃーんと見てたからな。俺みたくもっと撮れや。なんか俺だけ無駄にテンション高い奴みたいでむなしくなるんじゃが」

 

龍哉(ごめん!俺も鉄道のこと興味ない!)

 

紺子「私も昔蒸気機関車何回も見て興味わいたことあったけど、さすがにマニアの道には…」

 

ディーゴ「ホントに何にもわかってねぇんだなお前ら……まあこんなトコで喧嘩しててもしょうがねぇや。5連休だしゆっくりしねぇとな」

 

紺子「お前が話振ってきたんだろうが!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子たちを含めた乗客が夢物語号に乗り込んだ中、その特急列車の担当であろう車掌と運転手が夢物語号から降りて休憩していた。

1人は30代前半の男、もう1人は明らかに定年退職してもおかしくないような年老いた男。2人は夢物語号の外でこんな立ち話をしていた。

 

 

車掌「この仕事始めて結構経つのか………」

 

運転手「おいおい、若いくせにジジくせぇこと言うなよ。俺の方がジジイだってのに」

 

車掌「そう言うわりには結構元気じゃないか。お前のようなジジイがいるか?鉄橋でぶら下がり腹筋するようなジジイが」

 

 

※危険ですので絶対に真似しないでください。

 

 

運転手「まだまだ若いもんに負けたくねぇからなぁ……と言いたいが、だんだん筋肉が衰えてきちまって……いい加減引退も考えてるし、お前さんに任せようかと考えてるんだ」

 

車掌「まだそこまでの自信は…」

 

運転手「大丈夫だ。少なくとも今のお前さんなら任せられる。俺の代わりに頼むぞ」

 

車掌「………ん?」

 

 

車掌が違和感を感じたのか、夢物語号の方へ目を向けた。いや、気づくのがあまりにも遅かったと言うべきだろう。

なんと先ほどまであった夢物語号が………いつの間にか車掌と運転手の視界から消えていたのだ。

 

 

車掌「え?あれ?え゛ぇ!?

 

運転手「どうかし………な!?夢物語号が消えてる!?

 

車掌「ちゃんと停めたよね!?」

 

運転手「お、おう!ちゃんとブレーキかけたぞ!お前さんも見ただろ!?」

 

車掌「見てた見てた!でも一体いつ………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車掌と運転手が慌てる一方、駅の外ではとある男が駅を憎らしげな表情と目つきで睨んでいた。

 

 

???「………くだらねぇ夢の列車と共にくたばりやがれ………人間と人外のクソッタレ共が………」



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暴走特急!学園崩壊へのカウントダウン! 後編

お待たせして本当に申し訳ありません!約1ヶ月ぶりの更新になります。


運転手と車掌が大慌てしている一方、夢物語号に乗ってる紺子たち。テンションが上がっているディーゴに対し、紺子たちはあることに気づいた。

 

 

紺子「なあ、さっき発車メロディ鳴ってたか?」

 

一海「ううん」

 

ディーゴ「運転手や車掌が嬉しさのあまり間違えて出発したんじゃねぇの?」

 

龍哉「……なんか心配だから運転手に聞いてくる」

 

辰美「私は車掌さんに聞いてみます」

 

 

そう言って龍哉と辰美は席を外し、運転手と車掌がいる運転席へ向かっていった。

 

 

 

 

 

しばらくして、2人はひどく動揺したかのような様子で戻ってきた。

運転席には運転手と車掌がいるはずである。それなのになぜか2人共恐怖に引きつった顔であった。

 

 

ディーゴ「おう、運転手と車掌さんいたか?」

 

紺子「てかどうしたんだ?そんなに青ざめて…」

 

龍哉「どうしたも何も………大変なことが起きちまった………」

 

メリー「大変なことって?ていうか何でもったいぶってるんですか?」

 

 

先輩がこんなに青ざめているなんて。メリーは首をかしげたが、龍哉が唇を震わせながら叫んだ。

 

 

龍哉「実はな………運転手いねぇんだよ!!

 

辰美「車掌さんもいません!!これ、勝手に走ってますよ!?

 

ディーゴ「はぁ!?

 

一海「運転手も車掌さんもいない!?それ、まずいじゃん!!」

 

 

しかし、夢物語号のスピードは龍哉と辰美が運転席に向かっていた時点で徐々に速まっていた。

しかも厄介なことに、その先にはカーブ。さらにその先は紺子たちの学園。放っておけば脱線と学園への突撃は逃れられない。

紺子たちはすぐに食べかけの駅弁を置き、運転席へ向かうことに。

 

 

 

 

 

紺子「マジかよ………これホントにヤバイぞ!?」

 

 

運転席を調べに向かった紺子たち。だが運転席には誰もおらず、前倒しになったレバーがあるだけだった。

 

 

辰美「どうするんですか!?」

 

ディーゴ「それより何で勝手に動き出したんだよ!?」

 

メリー「そんなことより早く止めましょう!急がないと学園が!」

 

 

言い合っているうちに夢物語号のスピードはどんどん上がっていく。

紺子たちは急いで止めようと運転席に入ろうとするが、彼女たち同様夢物語号の乗客の1人が近づいてきた。

 

 

乗客「おいおい君たち、ここは運転席だよ?遊ぶ所じゃないから自分の席に戻って」

 

紺子「邪魔しないで!早くこれ止めないと脱線しちまうんだよ!」

 

乗客「脱線?何言ってるかわかんないけど、運転手の邪魔になるから入るなよ?」

 

一海「運転手!?僕たちがさっき覗きに行ったらいなかったよ!?」

 

龍哉「ああ、どっからどう見てもいない!」

 

 

今の状況を必死に説明する紺子たち。だがいくら話しても乗客はこいつら何を言っているんだと言わんばかりに紺子たちを信じなかった。

 

 

乗客「変なことばっかり言う奴らだな…おーい、ちゃんと運転手いるよな?」

 

辰美「こ、紺子様……これはどうなってるんですか?」

 

紺子「私が聞きてぇよ…」

 

龍哉「まさか……俺たち以外の客って………」

 

 

そう、もうおわかりであろう。人間の乗客たちは全員、なぜ夢物語号のスピードがどんどん上がっていくのかと考える者が誰1人いなかったのだ。

気づいたのは龍哉と辰美の2人。紺子たちもその報告を受けたのだから紺子たち人外たちがすぐに止めなければ全員命はない。

 

 

ディーゴ「どうすんだよ!このままじゃみんな死んじまうぞ!!」

 

紺子「だったら………無理矢理でも入るしかねぇだろ!!」

 

ディーゴ「お前がそう言うならヤケクソだァァ!!」

 

乗客「あっ、ちょっと!」

 

 

乗客の引き止める声も聞かず、紺子とディーゴは運転席に入った。ドアの前に乗客を通さないと言わんばかりに龍哉、辰美、一海、メリーが立ちはだかる。

 

 

乗客「コラ!入っちゃダメだって親に習わなかったのか!?運転手の邪魔……に…………!?」

 

 

運転席は遊ぶ場所ではないと言った者とは違う乗客が立ち上がって龍哉たちを押しのけ、運転席のドアを開けたその時だった。

 

 

乗客「な゛!!?あ………あわわわわ………!?こ、こここ、ゆ、ゆゆゆゆ………!?なななななななな何が―――――」

 

龍哉「悪い、ちょっと寝ててくれ」

 

 

 

タンッ

 

 

 

乗客「ガ……………」

 

 

運転席に目が行った乗客だったが、その時彼は困惑するような光景を目の当たりにしてしまった。

紺子とディーゴが入っていった運転席。夢物語号の運転手は運転席に入ってきた紺子とディーゴに気づいていない。紺子が運転手に触れようとすると、すり抜けているように見えた。

摩訶不思議な光景を見て運転席のドアを開けたが、乗客がパニックを起こしかけたのはその時である。運転席には紺子とディーゴしかおらず、運転手などどこにもいなかったのだ。

 

 

龍哉「おい、まだかかるのか!?もうすぐカーブに差し掛かるぞ!!」

 

 

手刀で乗客を気絶させた龍哉が手前のカーブを指しながら叫び、ディーゴが前倒しのレバーを指す。

 

 

ディーゴ「なあ、これじゃねぇのか!?」

 

紺子「レバー……じゃあこれを引けば止まるってわけか!よし!」

 

 

紺子がレバーに手を伸ばし、それを力いっぱい引こうとした。

しかしどういうわけか、いくら引いてもてこでも動かないような固さでうんともすんとも言わず、びくともしないではないか。

 

 

紺子「固っ!?全然動かねぇぞ!?」

 

ディーゴ「はぁ!?俺にもやらせろ!」

 

 

ディーゴも力いっぱい引くが、紺子と同じくまるっきりびくともしない。

 

 

ディーゴ「固ぇ!何だこれ!?どうなってんだ!?」

 

紺子「だったら一緒に!!」

 

紺・ディ「「でぇーい!!」」

 

 

今度は紺子とディーゴが一緒にレバーを引くが、それでも動く気配はなかった。だがそうこうしているうちに夢物語号はどんどんカーブへと近づいていた。

もう時間がない。このままでは本当に全員死んでしまう。頭を抱える紺子とディーゴ。すると運転席に辰美が入ってきた。

 

 

紺・ディ「「辰美!!」」

 

辰美「紺子様、ディーゴさん!諦めちゃダメです!私も手伝います!一緒にやればきっと!!」

 

 

何しろ辰美はトレーニングジムの常連客。紺子に捧げるためいつも鍛えている彼女にとってはお茶の子さいさいだと思ったのだろう。

 

 

紺子「ああ、超怪力の辰美がいればレバーは動くかもしれねぇ!『いっせーのーで』でレバー引くぞ!」

 

ディーゴ「お、おう!」

 

辰美「はい!」

 

紺子「行くぜ!!いっせーのーで!!!

 

 

力いっぱい一斉にレバーを引く紺子、ディーゴ、辰美。3人の力にはかなわなかったのか、レバーは少しずつ動き、徐々に元の位置に戻ってきた。だがそれに抵抗するかのように見えない『何か』が押し戻そうとする。

 

 

ディーゴ「くあッ…!!」

 

辰美「んっ…!!」

 

紺子「止まれェェェェエェェェエエエェェェェエエェェェエエェェェェェエエエエェェェェェエエエエエェェ!!!!!

 

 

紺子が叫んだその瞬間、レバーに異変が起きた。『何か』の力が消え、一気に後ろ倒しになったのだ。

 

 

 

ギュギィィィィィィィィィーーーーーーッッ

 

 

 

火花が飛び散るほどの急ブレーキがかかり、乗客たちはパニックに陥った。

乗客たちが急いで身を屈めた中、夢物語号の速度は徐々に落ちていき、カーブに差し掛かる寸前でようやく停止した。

 

 

ディーゴ「と………止まった?止まった……のか?」

 

紺子「お、おう……」

 

辰美「そうみたいですね………」

 

 

座席を見ると、何が起きたと困惑するかのように乗客たちがざわついている。

 

 

一海「ね、ねえ……たぶん乗客のみんな何があったのか知りたがってると思うよ?」

 

紺子「あ~確かにな。とりあえずディーゴ、乗客のみんなに何か言ったら?」

 

ディーゴ「おいおいおいおいおいおいおいおい!?何無茶ぶりすんだよ!?」

 

紺子「いいから早く!」

 

ディーゴ「………ったく」

 

 

呆れ顔のディーゴはマイクを手に取り、乗客たちに先ほどの出来事を伝えたのだった。

 

 

 

 

 

車内アナウンスを終え、乗客たちが全員降りたのを確認した後、紺子たちも夢物語号から降りた。

紺子たちはホッとしていたが、ディーゴだけは不満そうだった。

 

 

ディーゴ「チェッ、せっかく楽しめると思ったのによ……」

 

龍哉「それお前だけだよな。鉄道マニアじゃない俺たちを誘ってあんな目に遭わせやがって。もうあんなことは二度とごめんだ」

 

 

険しい顔をしながら睨む龍哉。

すると辰美が………。

 

 

辰美「ファ………ファ………」

 

紺子「辰美?」

 

辰美「ファックション!!!!!

 

辰美以外全員『!!!!?』

 

 

なんと辰美が大きなくしゃみをした瞬間、まるで竜巻に巻き込まれたかのように夢物語号が吹き飛ばされたのだ。

 

 

ディーゴ「ゆ、夢物語号がぁぁぁ……!」

 

辰美「え?」

 

紺子「スゲェ………」

 

 

この日、夢物語号は最初にして最後の運行となった。ディーゴにとっては一生忘れられない絶望的な思い出となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、駅で夢物語号を睨んでいた男は夢物語号が止められたことに腹を立てていた。

 

 

???「クソが!上手く行くと思ったが、詰めが甘かったか………!あのまま行けば大勢殺せたものを………次だ、次の手を考えなくては…………!」

 

 

彼の服装は貴利矢と同じ陰陽師の服装をしていたが、切り刻まれたようにあまりにもボロボロだった。さらに刀で斬られたであろう傷跡が腹や胸に、片目は失明している。そして両腕にはこれまで殺してきた人外と思われる遺骨の腕輪をつけていた。

そう、彼こそがEVOLUTION SPACEにて貴利矢が言っていた狂った陰陽師『神楽坂(かぐらざか)闇音(やみね)』。人外の他に人間をこの上なく憎み、そして一海の両親を殺害した張本人でもあった。




貴利矢たち陰陽師のプロフィールは載せようか検討中。


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みのりの華麗なる日常 前編

夢物語号が最初で最後の運行になったその日の夜、公園で闇音が焚き火の前で苛立ちながらあるものをあぶり焼きにして食べていた。

食べていたのは焼き鳥………ではない。腕のようなものだった。

 

 

闇音「味はしねぇが、腹の足しになるだろうな」

 

 

よく見ると、闇音が食べていたのはやはり腕。人間の腕だった。

夢物語号を暴走させて紺子たち人外と人間を殺す作戦が失敗したことに腹を立てていたのか、いつも他人を見下していそうな金持ちの雰囲気を醸し出している中年男を路地裏で殺害。彼が持っている金目のものだけでなく、彼の死体の一部を食料として運び込んでいた。

すると食事中であるのをいいことに、ある男が闇音をからかってきた。

 

 

焔「よう、人外を殺そうとして失敗した無能陰陽師さんよォ。テメェは強いのか?俺様の名前を言ってみろ!」

 

 

人外を殺して英雄になろうと企み、異生神妖魔学園へカチ込んできたところを龍哉とアルケーに阻止された男、砂道焔だった。

 

 

闇音「チッ………貴様みたいなドチンピラごときが陰陽師とか名乗ってんじゃねぇ、砂道焔」

 

焔「て、テメェは!?テメェは陰陽師学校の問題児…神楽坂闇音!?死んだはずのテメェがなぜここにいやがる!?」

 

闇音「俺が死んだ?あの貴利矢ですら生きてると思ってんのに、他の奴らはそう思ってんのか」

 

 

実を言うと、こう見えて焔の職業は貴利矢と闇音と同じ陰陽師だった。だが本人は陰陽師の自覚をしておらず、ただ自分より強い者ばかりを求め続ける戦闘狂の男にしか過ぎなかったのだ。

だが闇音を殺した貴利矢を追わなければならないことは頭の片隅にはあった。見つけ次第じわじわといたぶってから己の力として取り込もうとしていたのだ。昔から問題児扱いされていた闇音を倒した男だ、きっとものすごい怪力と妖術の持ち主なのだろう。

 

 

闇音「砂道焔。貴様に陰陽師を名乗る資格もなければ、貴利矢を追う資格もねぇ……何が人外共を殺して英雄になるだ?自分が強いとうぬぼれるだけの力の亡者の貴様には一生なれねぇんだよ」

 

 

先ほどまで食べていた腕が骨だけとなっていた。骨は地面に放り投げられ、焚き火の近くまで転がった。

 

 

焔「て、テメェ今何食ってた………?骨……?明らかに人間の骨じゃねぇか………!」

 

闇音「ああ、それか。味はしねぇが腹の足しになるんだよ」

 

 

そう言って立ち上がると、焔を養豚場の豚を見るような目で見た。

 

 

焔「腹の足しって……てかこいつ、俺様の話を全部聞いてやがったのか…!?俺様が陰陽師じゃなけりゃ貴利矢を追う資格もねぇ?じゃあテメェは何だ!?自分はおかしくないとでも言うつもりか!?()()()()()()()()()()()!?傍らから見りゃ、俺様が言うのもなんだが、テメェの方がよっぽどおかしいじゃねぇか!!

 

闇音「俺を惑わせようとするなドチンピラの化け物め!!よくも無能とか言いやがってクソ野郎が……ここで殺してやる………!!ここで死ね、化け物が!!

 

焔「なら俺様を殺してみろォ!!クソガキの分際で言わせておけばいい気になりやがって!!テメェも俺様の力の糧になるんだなァ!!」

 

 

焔が手をかざすと、何か禍々しいオーラが溢れ出てきた。だがそんなことで怖じ気づく闇音ではない。

闇音は無言で懐からある武器を素早く取り出す。

 

 

 

ズダンッズダンッズダンッ

 

 

 

焔「ァギャアアアアァアアァアアアァアアアアァァァァァァ!!!?て、テメェェェェ!!お、陰陽師が!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!?

 

闇音「わかんねぇか?こう見えて俺は世界各地のテロに加担してたんだよ……現代兵器の扱いも容易けりゃ銃の扱いだって容易い」

 

 

手に3発の鉛玉を撃ち込まれ、目の前の銃口からは煙が立ち上っていた。

そう、闇音が取り出した武器は6連発のリボルバー。陰陽師がどうやってテロに加担した?どうやってリボルバーを手に入れた?焔は聞こうとするも手の銃創から滴り落ちる血を止めようと必死になり、聞けなかった。

悶絶する焔をしばらく無言で見つめる闇音だったが、やがて口を開く。

 

 

闇音「このままデコを撃ち抜くのは生ぬるい………」

 

 

憎悪の目で焔を睨みつけ、リボルバーを懐にしまう闇音。静かにゆっくり近づくと、焔の腕をつかむ。

 

 

焔「テメェ…何を―――――」

 

 

 

ブヂィッ

 

 

 

焔「アガァァァァァァァァァ!!!!よ、よくも俺様の腕をォォォ!!!やァァみねェェ!!!闇音テメェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!

 

 

力任せに腕を引きちぎられ、悲痛な叫びをあげる焔。

闇音は返り血を浴び、悶え苦しむ焔の顎にアッパーカットを決める。この時、焔の頭は屈強な胴体から離れ、上空を舞っていた。

 

 

闇音「………ハァッ!!」

 

 

引きちぎった腕で焔の頭をホームランを決めるように吹き飛ばす。同時に皮が剥がれ、サングラスも吹き飛ばされる頭。宙を舞ったのは血まみれの頭蓋骨だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「殺人事件……私たちが夢物語号に乗った昨日のことじゃん」

 

 

連休4日目、紺子と一海は新聞で殺人事件のニュースを読んでいた。

 

 

一海「被害者は『砂道焔』…ん?砂道焔?」

 

 

被害者の名前を見るなり、紺子と一海は思わず複雑そうな表情になった。

 

 

紺子「砂道焔って……あれ確か学園に襲撃してきたのを私たちが知らん間に龍哉が追い払った奴だったっけ?」

 

一海「ああ、そういえば思い出したな。で、死体は腕を引きちぎられ、胴体には首がない状態か。引きちぎられた腕には銃創…焚き火の跡のそばには人間の骨………」

 

紺子「一体誰がこんなことしたんだか………」

 

 

すると紺子のスマホにまた着信が入る。着信画面を見ると、今度は『魚岬辰美』とあった。

 

 

紺子「今度は辰美かよ………もしもーし?」

 

辰美『おはようございます紺子様!紺子様、今日暇ですか?』

 

紺子「暇っちゃあ暇だけど……今カズミンと新聞読んでたんだよね。で、何の用?」

 

辰美『ああ、よかった!私たちにつき合ってくれるんですね!それで電話したわけなんですが―――――』

 

 

 

 

 

紺子「……あ~、それ私も気になってたんだわ。あのロリコン猫又残念美人先生の生活」

 

辰美『言いすぎ言いすぎ!それでなんですが、竜奈さんも誘って私たち3人で今日1日みのり先生を観察しましょうよ』

 

紺子「んで、待ち合わせ場所は?みのり先生の家の前?わかった。んじゃ」

 

 

電話を切り、紺子は一海にすまなそうな顔をする。

 

 

紺子「悪りぃカズミン、お前今日留守番しててくれない?」

 

一海「え、何で急に?」

 

紺子「ちょっくらみのり先生の私生活を覗きにな。辰美から電話来て、あの美人の猫又の皮を被ったロリコン変態クソ親父がどんな生活してるか観察しようって魂胆」

 

一海「さっきよりひどく言ってない!?出雲姐ちゃん、さっきロリコン猫又残念美人教師って……」

 

紺子「気にすんな。それにカズミンも連れてきたら絶対見つかると思うし……」

 

一海「あー……そういえばみのり先生、僕たちを見た瞬間興奮してたなぁ………」

 

紺子「マジか……まあそんなわけで留守番頼むわ。寂しい思いをするだろうけど」

 

一海「うん。気をつけてね?」

 

 

そうして紺子は家から出て自転車に乗り、辰美と竜奈が待つみのりの家に向かった。

去っていく紺子を見送った後、一海は部屋に戻り、ある写真立てを見つめる。

 

 

一海「…………父さん……母さん……」

 

 

写真に写っていたのは一海の家族、藤井一家。一海は両親を寂しそうな目で見つめた。

それらは闇音に殺された両親まさにそのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、待ち合わせ場所であるみのりの家の前にて。

 

 

竜奈「待たせたな辰美」

 

辰美「竜奈さん!お待ちしていました!」

 

 

まだ紺子は来ていないが、辰美に言われた通り竜奈がみのりの家の前に到着した。

 

 

竜奈「おい、紺子はどうした?ちゃんと連絡したのか?」

 

辰美「紺子様ですか?来ると言ってましたが―――――」

 

 

 

チリンチリーン

 

 

 

辰・竜「「?」」

 

 

遠くから自転車のベルが聞こえてきた。振り向くと、自転車に乗った紺子が辰美と竜奈に近づいてきていた。

 

 

紺子「お待たせ~!」

 

 

紺子は手を振りながら声をかけ、すぐにブレーキをかけた。

 

 

 

ギュギギギギギギギギギィィィィィーーーーッ

 

 

 

紺子「って止まらねぇぇぇぇ!?」

 

 

なぜかブレーキが効かず、急いで来たのかスピードを出したまま辰美と竜奈の前を通りすぎた。

だがそれだけではない。自転車は止まることなく近くの電柱にまっしぐら。

 

 

紺子「いやああああああああ!!止まって!!止まってぇぇ!!ぶつかるのは嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

 

 

まさに泣きっ面にハチである。ブレーキが効かない自転車は紺子の悲鳴に応えることなくそのまま電柱に激突した。

 

 

 

ガシャアアアアアアアアン

 

 

 

辰美「紺子様!?」

 

竜奈「紺子!?」

 

 

自転車もろとも電柱に激突し、転倒した紺子。前輪が歪んだ上にパンクもしてしまい、使い物にならない状態となっていた。

 

 

紺子「イテテテ……ここに来る前まではちゃんと効いてたのに………あーイッテェな………」

 

 

袖とズボンをめくると、肘と膝が少し擦りむけ、血が出ていた。

 

 

竜奈「紺子……ぶつかったのが電柱でよかったな。今のスピードで私たちにぶつかってみろ。電柱じゃなかったら今頃私たちが大ケガしてたんだぞ」

 

辰美「でも紺子様の自転車壊れちゃいましたね…もしよければ私のスケボー貸しましょうか?ライエルさんが作ったターボつきの」

 

紺子「え、いいの?でも前にトレーニングジムに来た時ターボつきとかそういう話出てなかったじゃん。あれって………」

 

辰美「この前ライエルさんが作ってくれたんです。魔法が使えない日に限りますが。もしよければ用意しますよ?」

 

紺子「………そうなんだ。よろしく……」

 

 

 

 

 

とりあえず壊れた自転車をどこかに隠した後、紺子はふとあることに気づいた。

 

 

紺子「ところで観察するのはいいけど………どうやって尾行するんだ?」

 

辰美「あ、そういえば考えていませんでした」

 

竜奈「どうするんだ一体?」

 

紺子「………だったらあの妖術使うか。その代わり音は出すなよ?()()()()()()()()()()()だからな」

 

辰美「あるんですか!?ていうか紺子様、妖術使えたんですか!?」

 

紺子「バカ。ちゃんと使えるわ。妖術使えない妖狐は妖狐じゃねぇだろ」

 

竜奈「………そういえば紺子の過去って…………」

 

 

紺子は平安時代、陰陽師の辰廻によって何度も妖力を送り込まれ、何度も実験台として利用されてきた。だが時に協力しなければならないこともしばしばあったため、様々な妖術も強引に覚えさせられていた。強いて言えば完全に拷問である。

前の昼休み、紺子が自分の過去を話してくれたことを思い出す竜奈。3人はふとみのりの家の中に目を向けると、みのりが何やら出かける支度をしていた。

 

 

竜奈「辰美、時間は?」

 

辰美「もうすぐみのり先生が外に出る時間かと思います」

 

紺子「でもお父ちゃんたちにお披露目した日から全然使ってないしなぁ……上手く行くかなぁ?」

 

竜奈「大丈夫だ。失敗してもいい、ぜひやってくれ」

 

紺子「よし、んじゃあ使うぞ?」

 

 

静かに目をつぶり、静かに精神統一する。数十秒も経たないうちに両手を前へ差し出すと、印を結んだ。

 

 

紺子「出雲流妖術“霧隠(きりがくれ)ノ術”

 

 

紺子と辰美と竜奈の周りに霧のようなものが現れ、彼女たちはそれに包まれた。

霧が晴れ、見ると彼女たちの体が半透明になっていた。これは失敗か?竜奈が成功か否か問おうとした途端玄関の扉が開き、みのりが出てきた。みのりは紺子たちに近づいてくる。

まずい、バレる。紺子たちはすぐにそこから離れようとしたが、どういうわけかみのりは紺子たちに目もくれず、そのまま家を離れていった。

 

 

紺子「…………?」

 

竜奈「みのり先生が私たちに気づいてない……?」

 

 

こんなことってあるのか?紺子と竜奈はポカンと口を開け、みのりの後ろ姿を見つめていた。

 

 

辰美「となると………これは成功ととらえてもよろしいのでしょうか?」

 

紺子「ま、まあ……そう言えなくもねぇな。あ、そうだ。もしみのり先生が街のド真ん中で何か変なことしたら?」

 

竜奈「決まっているだろう?その時は直々に関節技をかける」

 

紺子(………私も学園長から習得したあの護身術使ってみようかな?)

 

辰美(なぜでしょう……竜奈さんならわかりますが、紺子様からとんでもない殺意が………)

 

 

そんなことを考えても仕方ない。紺子たちは音を立てないように静かにみのりに近づき、彼女を尾行することになった。

まさか紺子が辰蛇から取得したあの護身術を使うとは知らずに………。

 

 

みのり「さっきうちの前で自転車が事故ったような音が聞こえたけど気のせいかな…?」




闇音が焔を殺す元ネタ
モータルコンバット11のジャックスのFATALITY


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みのりの華麗なる日常 後編

みのりを尾行しているうちに何事もないまま街に到着した。

 

 

紺子「今のところ変な動きはなしか……」

 

辰美「紺子様、はぐれないように手を繋ぎましょうか?」

 

紺子「いらねぇよ」

 

竜奈「だが絶対何かやらかすと思うんだが………」

 

 

尾行を続ける3人。視線は完全にみのりの方へ向けているにも関わらず、みのりは紺子たちの存在に気づく気配はない。となると紺子が使った妖術は。

 

 

紺子(大成功じゃないですか!やったー!!)

 

 

と、心の中で嬉しそうに叫ぶ紺子であった。そんな中竜奈がある2人に目を向ける。

 

 

竜奈「……ん?何だあの2人は?」

 

紺・辰「「?」」

 

竜奈「親子………なのか?にしては父親の方はやたら背が低く見えるが……」

 

 

偶然見つけた親子らしき2人。片方は銀髪の幼い女の子で、父親らしき男の腕をつかんでくっついている。その父親らしきもう片方の男は髭を生やしており、いかにも中年のようにも見えた。

すると紺子があることに気づく。父親の方は紺子たちと同じ人外か?何か動物の体の一部のようなものが生えているではないか。

 

 

紺子「あいつの種族何だ?なんかコウモリの翼とワニの尻尾生えてんぞ?」

 

 

さらに彼が着ている服にも目を向ける。ところがその瞬間、どういうわけか思わず吹いてしまった。

 

 

紺・竜「「ブフォッ!?」」

 

辰美「ど、どうしたのですかお二方!?」

 

竜奈「辰美…………あれを見ろ」

 

辰美「あれ?って何ですかあれ!?

 

 

男のファッションはなんとも目に余るものだった。竜奈なら武道の授業を受けているのでわかるだろうが、革ジャンの下に四字熟語が書かれたTシャツを着込んでいた。

書かれていた四字熟語は『威風堂々』。ラインハルトが着ていた文字入りTシャツ並のひどさである。

 

 

竜奈「何なんだあのファッションのひどさは!?ラインハルト先生みたいじゃないか!」

 

辰美「そ、想像の斜め上を行く破壊力ですわ……!」

 

紺子「もはやどこから突っ込んでいいかわかんねぇ……!」

 

 

開いた口が塞がらず、ただ唖然と見つめることしかできなかった。

そんな親子にある男が近づいてきた。彼を見た3人はさらに驚くことに。なぜなら彼は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

紺子「って、あれって!?」

 

辰美「コーティア先生!?」

 

 

そう、親子に近づいてきたのは美術担当のコーティア。どうやらコーティアも街に来ていたようで、両手の袋には大量の衣服やら食料やら入っていた。

となると髭の男と銀髪の女の子は親子ではない。つまりコーティアが父親となる。

 

 

竜奈「コーティア先生、子供いたのか………!?」

 

 

兄弟か?いや、年の差が大きすぎる。そもそもあんな髭を生やした男がコーティアの息子とは言いがたい。

 

 

紺子「けど…あの女の子だけ人間の気配がするんだが……」

 

辰美「え!?どういうことですか!?」

 

 

紺子たちの目的はどこへ行ったのやら。本来の目的はみのりを尾行すること。髭の男、女の子、そしてコーティアを見た3人はもう目的などすっかり忘れてしまっていた。

みのりもコーティアたちに気づいたのか、彼らに近づき、コーティアに話しかけた。

 

 

みのり「コーティア先生、こんな所で何を?」

 

コーティア「ん?おや、西田ではないか。奇遇だな。お前も街に用があったのか?」

 

みのり「ええ、お散歩しに」

 

コーティア「そうか。我は息子と娘のために買い物を終えて帰ろうかと思っていたところだ」

 

 

そう口にしながらも、コーティアはみのりに対して警戒していた。

 

 

コーティア(散歩……?あ、たぶんうちの娘のことだ。何かしでかすに違いない…………)

 

みのり「え!?コーティア先生、息子と娘がいたんですか!?」

 

コーティア「義理だがな」

 

髭の男「はぁ……何でみんな俺のファッションセンスがわからないんだ……?」

 

みのり「!?」

 

 

ため息をついた男の『威風堂々』と書かれたTシャツを見るみのり。当然紺子たち同様あまりのひどさに唖然としてしまった。

 

 

みのり「え、えっと……この息子さん………ファッションが奇抜すぎません?」

 

コーティア「やっぱり西田もそう思うか…見ろ玄徳、ドン引きされてるぞ?」

 

玄徳「え、誰が?俺が?何を?これを?マジで言ってんのか?」

 

みのり「ドン引きしま……………って、キャアアアアア!!幼女たんが!幼女たんがここに―――――」

 

コーティア「おい

 

 

玄徳と呼ばれる男にくっついている女の子に目を向けるなり興奮し、抱きつこうとしたところを片手でみのりの顔をつかみ、アイアンクローをかけた。

 

 

 

ギシギシギシギシギシッ

 

 

 

みのり「イダダダダダダダダダ!!こ、コーティア先生何するんですかァァァ!?

 

コーティア「どうやら悪い予感が当たったようだ………すまない玄徳、シャルロット。後で我が西田を説教しておく」

 

 

ところがその瞬間、みのりの猫耳がピョコンと動いたかと思いきや、コーティアのアイアンクローをかけている腕をつかみ、顔から引き離した。

コーティア以外に義理の息子と娘が驚く中、みのりはすかさずコーティアを背負い投げ。彼を地に伏してしまった。

 

 

紺子「何ィ!?おい嘘だろ!?」

 

竜奈「あんなきれいな背負い投げ、見たことがない……」

 

辰美「ロリコンってそこまでの力を持ってるんですか……!?」

 

 

驚いていたのは紺子たちも同じだった。

背負い投げを決めたみのりはシャルロットと呼ばれる女の子に近づく。

 

 

みのり「シャルロットたん!?あなたシャルロットたんって言うの!?」

 

シャルロット「え……えっと……はい」

 

みのり「なんて…なんてかわいらしい幼女がいるのかしら……街で銀髪ロリ幼女に出会えるなんて……♡しかもこれは天使の予感………♡」

 

シャルロット「え?え?」

 

みのり「これでも私、天使萌えなの♡」

 

 

その発言からしてもはや嫌な予感しかしない。シャルロットに手を出したらすぐに強行手段に出てでも止めようと思っている紺子たち。

 

 

紺子「そろそろ準備するわ」

 

辰美「え?」

 

みのり「困惑している幼女もいいけど、私が好きなのは…………天使のような純真無垢な笑顔を見せてくれる幼女がいい…………!幼女最高ォォォォ!!!銀髪ロリたん最高ォォォォ!!!♡♡♡♡

 

玄徳(普通に考えたら犯罪だよなこれ)

 

 

これには玄徳もどう止めればいいかわからない。

だが紺子に頼んで妖術を解かれた竜奈が忍び寄ってきていたことをシャルロットに夢中のみのりは全く気づいていなかった。

 

 

玄徳(ん?誰だあの和服の女は?猫又に近づいてきてるが、まさか………)

 

 

この後の展開を察したのか、あえて口に出さない玄徳であった。

 

 

シャルロット「こ、怖い……なんだか怖いよ………」

 

 

怯えるシャルロットと笑顔のみのり。そしてみのりに音もなく近づいてくる竜奈。

 

 

みのり「ぐへへへへ、シャルロットたん♡怖がらなくていいのよ?私が笑顔にして―――――」

 

 

 

グギィッ

 

 

 

みのり「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!う、腕ェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!

 

シャルロット「!?」

 

竜奈「そこまでにしてもらおうかみのり先生。それ以上は犯罪だぞ

 

 

野次馬が見ているのも気にかけず、竜奈はすかさず関節技をかけた。絶叫したみのりに竜奈はさらにドスの効いた声で脅しをかける。

 

 

みのり「こ、この声……竜奈ちゃん!?き、奇遇ですね…こんな場所で会うなんて……」

 

竜奈「ああ、奇遇だな?尾行しといて正解だった」

 

みのり「尾行!?」

 

コーティア「イッタタタタ……何がどうなって………って何だ!?なぜ西田が!?」

 

 

ようやく意識を取り戻したコーティアだが、どういうわけか竜奈が自分たちの目の前におり、みのりに関節技をかけているではないか。

そして竜奈以外気づいていないだろうが、術がかかった紺子と辰美もこの場にいた。

 

 

竜奈「どうもコーティア先生。私たち今みのり先生の私生活を知るために尾行してたんですよ」

 

コーティア「って御神!?お前までなぜここに!?」

 

玄徳「だが、私たち…だと?他にもいるのか?」

 

竜奈「ああ」

 

 

だが紺子と辰美はまだ術がかかったままである。解かなければこの場にいる意味がない。

 

 

辰美「これいつまで続くんですか?」

 

コーティア「ん?何か術をかけたのか?」

 

紺子「あ、そうだった」

 

 

半透明の紺子と辰美は姿を消す時同様霧に包まれ、コーティアたちの前に紺子と辰美が姿を現した。

 

 

コーティア「出雲と魚岬もいたのか。なんとも素晴らしい妖術だ」

 

紺子「とりあえずコーティア先生、あとで質問しますが……まずはちょっとこのロリコン先生を何とかしておきますね

 

みのり「あえ!?こ、紺子ちゃん!?なんだか怖い顔してるけど!?」

 

竜奈「紺子、あとはお前に任せる」

 

 

竜奈のみのりにかけている関節技が解かれるや否や、紺子はすかさずみのりに襲いかかった。

 

 

紺子「オラァ!!」

 

 

 

キーンッ!!

 

 

 

みのり「ヒギィ!?

 

紺子「ここでッ!!」

 

 

 

ズドゴンッ

 

 

 

みのり「ゴボッ!?

 

紺子「学園長の護身術がッ!!」

 

 

 

ダシャアッ

 

 

 

みのり「ゴヘェ!?

 

紺子「役立つ時が来るなんてなッ!!」

 

 

 

ゴシャアッ!!!!!

 

 

 

みのり「仝∠¶∞℃Ω◎£※▲α〆■δ∀⇔∝Å∴∋∥〒Φゞ∬∩¥±★≡‡¢♂∃⊥♀ε∧μ●♯⊿♭%+♪◆〓々ゝ!!!!?

 

 

まず金的蹴りを繰り出し、股間を押さえたところをすかさず追い討ちとして腹めがけて肘打ち。さらに少し後ずさってラリアットを食らわせ、とどめに顎めがけてアッパーカットを決めた。

声にならない断末魔をあげながら吹き飛ばされ、宙を舞ったみのりはそのまま地へと倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった。紺子以外全員唖然、呆然。もちろん玄徳とシャルロットもポカンとした表情だった。

 

 

辰美「え、あの……紺子様?」

 

紺子「ん?」

 

竜奈「今のはさすがにやりすぎじゃ……」

 

紺子「ああ、これか。この技は学園長に伝授された護身術でな、自分なりにアレンジしてみたんだ」

 

竜奈(何やってるんだ学園長!?)

 

 

普通ならここでジャーナリストの深海のように惨たらしい死に方をしているが、どういうわけか気絶で済んでいた。

そんなみのりに目も向けず、紺子はコーティアに問いかける。

 

 

紺子「んでコーティア先生、質問だけど…………このファッションセンスのかけらもない奴と……この人間の女の子は誰?」

 

コーティア「あー、そうだったな……とりあえず皆公園に行こう。そこで質問に答える」

 

 

野次馬たちには目もくれず、気絶したみのりを引きずりながら公園に案内されたのだった。



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玄徳とシャルロット

街から公園へ移動し、到着した紺子たちは早速コーティアに質問することに。

護身術を食らったみのりはまだ気絶しており、ベンチの後ろに放置されていた。

 

 

紺子「で、そいつらは誰?義理とか言ってたけど」

 

コーティア「そうだな…………話せば長くなるが、まずこのダサいファッションをしているのが『鷹山玄徳』、路地に座り込んでいたところを我が見つけた元不良でな。今は我の家に住みながら教育を受けてるのだ」

 

竜奈「元不良?何かあったのか?」

 

コーティア「あー、それはな………」

 

 

コーティアは玄徳のことを話そうとするが、話してもいいのか口ごもってしまった。

 

 

玄徳「親父、無理しないでくれ。その先は俺が話す」

 

 

見かねた玄徳が口を開き、彼がコーティアの代わりに自身のことを全て話すことに。

鷹山玄徳とは何者なのか?種族は何なのか?中年のような男がなぜコーティアの家に住んでいるのか?紺子たちはそんな多くの疑問を抱える。

 

 

玄徳「じゃあ早速話すが……『地龍ヶ丘(ちりゅうがおか)学校』を知ってるか?」

 

辰美「地龍ヶ丘学校?紺子様、知ってますか?」

 

紺子「いや、全然」

 

 

見たことも聞いたこともない紺子と辰美とは対照的に、竜奈が思い出すように言う。

 

 

竜奈「私は知ってるが……確かそこって廃校になったんだよな?あまりにも学校としての機能がなく、先生たちが次々と仕事をやめていき、最終的には不良の溜まり場になってしまった所なんだよな?」

 

玄徳「俺の知らない間に潰れたのか……まあ不良たちがいたのは確かだ。だが俺がいた頃はまだまともだった。俺はそこの番長として名を馳せていたんだ」

 

紺子「番長!?」

 

玄徳「だが………今はそんなもんはない。仲間に裏切られたし、学校に通えるだけの金も盗まれたし、中退せざるを得なかったがな」

 

 

自嘲するかのような笑みを浮かべ、きれいな青空を見上げる。

すると竜奈がこんな質問をした。

 

 

竜奈「では今は学校に通っていないのか?」

 

玄徳「ああ、今はな。今は親父の家で生活もかねて勉強してる。夏が終わり次第親父が仕事してる学校に行くつもりだ」

 

辰美「つまり私たちの学園に来るというわけですね」

 

コーティア「まあ、その約束だしな。すでに学園長にも会わせているし、夏休みが終わった後に入学させるつもりだ」

 

紺子「夏休みが終わった後って………嘘ォ!?半年だけェェェェ!?

 

玄徳「ごもっともだが……もう俺の年齢は15なんだよ(ホントは9万2505歳だがな)」

 

竜奈「じゅ、15!?」

 

 

意外や意外、髭を生やした中年のような男はなんと竜奈と同じく人間の年齢でいう15歳だった。これには竜奈以外に紺子と辰美も唖然とするしかなかった。

だが、紺子はふとコーティアとみのりの会話であることを思い出した。あの会話の中で、コーティアは玄徳同様シャルロットと呼ばれる人間の女の子を『義理』と呼んでいた。となると彼らに親はいたのだろうか。その好奇心に負け、聞いてみることに。

 

 

紺子「んじゃあ……さ、あんたには………あー、親とかいたの?」

 

玄徳「………!」

 

 

紺子の質問に玄徳の目つきが変わった。その目はまるで殺したかのような怖い目だった。

聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、睨まれた紺子は恐怖で辰美の背後に隠れてしまった。

 

 

紺子「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい―――――」ガクガクブルブル

 

 

紺子は泣きそうな顔と声で必死に許しを乞う。

 

 

コーティア「玄徳、怖がってるぞ?」

 

竜奈「紺子は口は悪いが泣き虫なんだ。あまり怖がらせないでほしい」

 

玄徳「……すまない。嫌なことを思い出してな………」

 

辰美「じ、地雷を踏んだみたいですね紺子様……」

 

竜奈「しかし…コーティア先生。その銀髪の女の子もコーティア先生が拾ったんですよね?一体何が?」

 

 

銀髪の女の子、シャルロットに目を向ける竜奈。紺子と辰美もシャルロットの方を見る。

シャルロットは呼吸が浅く、両手も震えている。まるで何かに怯えているようだった。

 

 

シャルロット「ぁ……ぁぁ…………!」

 

玄徳「シャルロット、しっかりしろ」

 

 

玄徳は優しく声をかけ、シャルロットの頭をなで始める。するとシャルロットは徐々に落ち着いていき、そのまま玄徳に寄りかかった。

 

 

辰美「あの子は一体どうしたんでしょうか………?」

 

コーティア「…………お前たちも薄々気づいていると思うが、シャルロットは人間だ。拾ったのは我ではなく玄徳……玄徳が言うに、()()()()()()()()()()()()

 

紺子「虐待!?」

 

辰美「そんな!?」

 

 

なぜ人間であるシャルロットがコーティア(悪魔ダンタリオン)の娘になったのか、なぜ玄徳が拾ったのか聞こうとした途端、玄徳の口からあり得ない言葉が飛び出した。

 

 

玄徳「俺も昔からひどく虐待されてたさ。だがシャルロットとは違い、俺はあのクソ野郎とクソアマの息の根を止めた

 

竜奈「何だと!?お前、親を殺したのか!?」

 

玄徳「ああ。学校に通えたのもあのクソ野郎共の金を使ったからだ。あんな奴らを親と呼ぶつもりはねぇ。もちろんこの女の子の親もな」

 

竜奈「自分が殺した親のお金で通ってたのか…………!?よく警察にバレなかったな!?」

 

玄徳「近くの住人ががみんなカニバリズムでな。食わせる代わりに俺が殺したことを黙っててもらったんだ。警察が来てもカニバリズムによって襲われて食われたって話も聞いてたしな」

 

 

話が終わった頃には紺子たちの全身に寒気が走り、鳥肌が立っていた。

だがすぐに切り替えると、竜奈が種族について聞いてきた。

 

 

竜奈「もうひとつ聞きたいが、お前の種族は何なんだ?」

 

玄徳「そうだな………まず俺はハーフだ。エジプト神話の『セベク神』とマヤ神話の悪神『カマソッソ』のな」

 

辰美「セベク神?」

 

竜奈「悪神カマソッソ?」

 

 

玄徳の体に生えたワニの尻尾とコウモリの翼。セベク神と悪神カマソッソとは一体何なのか。

その疑問に答えるかのようにコーティアが説明し始めた。

 

 

コーティア「セベク神はバステト神の全猫と同じくエジプト神話に出てくる神だ。全猫は名前の通り猫の神だが、セベク神はワニの神。見た目がワニだから尻尾もワニなんだ。悪神カマソッソはコウモリの悪神だ。とにかく、玄徳はそいつらの血を引いている。まあ、そいつらに虐待されていたせいでその血も毛嫌いしているがな」

 

紺子「じゃあその女の子は?」

 

玄徳「この子か。数日前だったかな…親父のお使いでスーパーで夕飯の買い物をしてた時だった。買い物を終えて帰ろうとしたら、シャルロットがいてな。ひどいケガだったから残ってた金で包帯やら消毒液やら買って応急処置してやったんだ。で、その後親元に返そうかと思ってた矢先、あっちから来たんだが…………雰囲気から察してやめた。それは単純な理由だった………この子も俺と同じように『虐待』されてたからだ…………!」

 

 

 

ガシャーン

 

 

 

淡々と話していたが、玄徳の声には怒気が混じっていた。同時にその場にあったゴミ箱が玄徳の尻尾によって倒され、凹んだ。

またかと言わんばかりに呆れるコーティア。倒されたゴミ箱を立て直すと、凹んだ部分を魔術で元通りにした。

 

 

玄徳「で、俺があいつらを説得してやった(あいつらに暴力を振るった)。そしてこの子を保護して今に至るというわけだ」

 

コーティア「ちなみにシャルロットという名は我がつけた名前だ」

 

紺子「先生がつけたのかよ」

 

竜奈「しかし玄徳といいシャルロットといい、その者たちの親は最低だな。聞いただけで虫酸が走ったぞ」

 

コーティア「それだけじゃない。シャルロットが家に来て悩みもできた」

 

辰美「悩み………ですか?」

 

紺子「幸せな悩みか何かか?」

 

コーティア「いや…シャルロットが玄徳のことを………『旦那様』と呼んでな………」

 

紺・辰・美「「「旦那様!?」」」

 

 

予想より斜め上だった。3人は唖然とし、玄徳を白い目で見る。

 

 

玄徳「ご、誤解してるようだが家に連れて帰ったら突然『旦那様』って呼ばれたからな!?」

 

シャルロット「旦那様ぁ……」

 

コーティア「玄徳にフォローするが、決してロリコンじゃないからな?ホントに玄徳を旦那様と呼んでるだけだからな?ただ……あの子の愛情表現が………………あまりにも官能的で………………」

 

紺子「あ///」

 

 

うっかり口を滑らせてしまった。官能的という言葉に反応した紺子と竜奈が思わず顔を赤らめた。

 

 

竜奈「な…な…なんとハレンチな!?///」

 

シャルロット「ふぇ?何かおかしいの?」

 

玄徳「少なくとも常識とは思えない……」

 

コーティア「たぶん今までの欲望が爆発して今のような状態になったと推測できるが………なぜにこうなったんだ………」

 

紺子「は、ハハハハ……」

 

 

もはや苦笑するしかなかった。

駄弁っているうちに時間は刻一刻と過ぎ、コーティアは公園の時計を見上げる。

 

 

コーティア「おや、もうこんな時間か。少ししゃべりすぎたようだ。玄徳、シャルロット、帰るぞ」

 

玄徳「おう」

 

シャルロット「うん、お父様」

 

 

公園から立ち去るコーティア一家。彼らが去っていくのを見届けると、3人はベンチに座る。

 

 

紺子「……ロリコン先生の尾行をするはずがコーティア先生の話になっちまったな」

 

辰美「コーティア先生に義理の息子と娘がいたなんてホント驚きましたね……」

 

竜奈「しかし地龍ヶ丘学校の元番長か………どこかで聞いたことがあると思っていたがあいつだったのか」

 

紺子「竜奈先輩は知ってるの?」

 

竜奈「ああ。あの学校の不良たちを束ねた番長だとどこかで聞いたんだ。まさか中退していたとは…………」

 

紺子「…………ところで気絶してるみのり先生はどうすんの?」

 

 

振り向くと、みのりはベンチの後ろで未だに倒れていた。

 

 

竜奈「とりあえず家まで運ぼう。その後解散だ」

 

紺子「あいよ」

 

辰美「わかりました」

 

 

気絶したみのりを3人は複雑な気持ちで家まで運ぶ。到着するとみのりの服のポケットから家の鍵を取り出し、ドアを開け、玄関に寝かせた。

やがて辰美と竜奈はそれぞれ自分の家へ帰っていったが、紺子は自転車が壊れた上に前輪もパンクしていたため、一海に電話で頼んで迎えに来てもらったという。



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女子たちのお泊まり会!でも明日から学校だけどいいの?

なんとか今年中に投稿できた……幻想甲虫録ばかり書いていたので楽しみにしていた皆様、申し訳ございません。
最後の投稿が9月末だったのでかなり間が空いてしまいました。


連休5日目、最終日の夜。紺子は今ベッドの上で悩んでいた。

なぜか両手足を一海の尻尾ではなく、ロープで縛られて。

 

 

紺子(明日から登校日じゃん!何でこいつら『泊まる』って勝手に決めんだよ!しかもご丁寧に旅行セットまで持ってきてやがるし!ていうかこれ何!?何で私を縛ってんの!?)

 

 

それは夕食前までに遡る。さあ夕食を作ろうと思った矢先、玄関のチャイムが鳴った。紺子が出てみると、そこにいたのはクラスメイトの仁美、辰美、そして乱。

どういうわけか聞くと、『せっかくの連休で最終日は紺子の家で過ごしたい』というのだ。紺子が混乱する中、一海は紺子の許可なく歓迎。止めようとしたが、もう手遅れだった。

夕食を食べ、入浴を終え、ゲームをした後、今に至る。紺子の横には小悪魔じみた笑みを浮かべる一海、辰美、仁美、乱が立っていた。手にはどういうわけかパイがある。

 

 

紺子「ね、ねえカズミン……これほどいてよ。こんなことして何の意味があるの?」

 

一海「せっかく先輩たちが来てくれたんだし、それに女同士だからみんなで出雲姐ちゃんいじってもいいでしょ?♡」

 

乱「こんこんのパイまみれの顔いっぱい舐めまくって、チューもいっぱいしてあげる♡」

 

紺子「お前は何を言ってるんだ?な、なんかみんな……怖いよ……」

 

仁美「クリーム紺子の味ってどんな味かな~?」

 

紺子「仁美まで何を―――――」

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

それは突然の出来事だった。怯えた表情をしながら言っている最中に目の前が暗くなったこと。顔面全体に何かが引っついたような感じがする。

取ろうと思っても両手足が拘束されているせいで動けない。そればかりかだんだん息苦しくなってきた。こうなれば顔を振って顔面に引っついた何かを取るしかない。

 

 

紺子「ンフッ!クフッ!」

 

 

紺子の横に何か丸くて薄っぺらい何かが落ちる。それが紙皿であるということにそれほど時間はかからなかった。

紺子は一海にパイをぶつけられていたのだ。

 

 

一海「うふふ…出雲姐ちゃんの顔、真っ白♡」

 

紺子「か、カズミン……お前ぇ……息できなくなったらどうすんだよ……」

 

一海「大丈夫だよ、その時はまたお腹をくすぐって復活させるから♡」

 

紺子「んなもん普通できる―――――」

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

紺子「んむっ!!」

 

 

口封じと言わんばかりにまた顔面にパイをぶつけられる。また息ができず、紙皿を振り落とす紺子。

 

 

辰美「もう始めればいいんですよね?一海さん」

 

一海「うん。けどやり過ぎないように時間を置いてやらないとね」

 

紺子「バッッカッッ!そもそも何でこうなったんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはゲームをする前まで遡る。これからやるゲームはトランプを使ったものだった。

今からやるのはポーカー。本来なら2人でやるゲームなのだが、特別ルールとして一番強い組み合わせを出した者が5ポイント、2番目が3ポイント、3番目が2ポイント、4番目が1ポイント、一番弱い組み合わせかノーペアを出した者はノーポイント、そしてチェンジは2回までというルールを設けた。

ルールを設け、一海が罰ゲームを提案したのはその時である。

 

 

一海「5回勝負して、ビリだった人が罰ゲームを受けるってのはどう?」

 

紺子「結局やるのか…………で、ジョーカーありってことは?」

 

乱「ファイブカードも入るってことだね」

 

辰美「ですが相当運がないとダメですよね?」

 

仁美「まあまあとりあえずやろうよ~。で、罰ゲームは?」

 

一海「優勝した人の特権ってことで」

 

紺子「な、なんとか罰ゲーム回避しないと…………」

 

 

 

 

 

1回戦

 

 

紺子「に、2と3のツーペア……」

 

仁美「私はスペード以外4のスリーカード~」

 

辰美「クラブのフラッシュです」

 

乱「ハートのストレートフラッシュ!」

 

一海「勝った。エースとジョーカーを合わせたファイブカード」

 

紺子「おいおいおいおいおい!?いきなりファイブカード!?イカサマしてねぇよな!?

 

一海「バレなきゃイカサマじゃないからね、出雲姐ちゃん…って言ってもイカサマしたことないけど」

 

 

 

 

 

2回戦

 

 

紺子「負けた……ノーペアだ………」

 

辰美「あら?私は4が1組、5が3枚のフルハウスですね」

 

乱「えー?私ハートのフラッシュだった」

 

仁美「私は7とジョーカーのストレート~」

 

紺子「………カズミンは?」

 

一海「スペードのストレートフラッシュ」

 

乱「カズミン強くない?」

 

一海「まだまだ序盤だよ。さすがに3回連続はないと思うよ」

 

紺子「ぐぬぬ……次こそ勝たないと……」

 

辰美「紺子様、『二度あることは三度ある』とも言いますが………」

 

 

 

 

 

3回戦

 

 

紺子「よし、スペードとハートの5とスペード以外の4のフルハウスが来た!これで勝てる!!」

 

辰美「あら?6から10のクラブのストレートフラッシュが来ました」

 

乱「私は5から9のダイヤのストレートフラッシュ!」

 

紺子「え゛!?」

 

仁美「うう~、ハートのフラッシュだったぁ………」

 

紺子「よっしゃ、やっと1ポイント!!で、カズミンは…」

 

一海「スペードのロイヤルストレートフラッシュ」

 

一海以外全員『……………』ポカーン

 

 

 

 

 

4回戦

 

 

紺子「だぁぁぁぁ!!スペード以外3のスリーカード………!」

 

辰美「悔しいですね…ノーペアです」

 

仁美「私、2から5のストレート~!」

 

乱「やったー!!ダイヤのロイヤルストレートフラッシュが来た!!」

 

紺子「罰ゲーム決まったわ、これ絶対私だわ。そんでカズミンは………」

 

一海「あ、ハートのロイヤルストレートフラッシュだ」

 

紺子「私の運どうなってんの?」

 

 

 

 

 

5回戦

 

 

乱「ええぇ……ノーペアだったぁ……」

 

辰美「クラブのフラッシュですわ」

 

仁美「ダイヤのフラッシュ~」

 

辰美「まあ…罰ゲームは回避できましたが、紺子様と一海さんはどうなんでしょう?」

 

紺子「…………カズミンから出して」

 

一海「しょうがないなぁ、スペードの9からKのストレートフラッシュだよ」

 

紺子「何で…………?何で負け確定なのに最後の最後で…………エースとジョーカーのファイブカードなんだよ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、一海は完全勝利まで行かなかったものの、優勝。紺子が罰ゲームを受けることになった。嫌な予感がした紺子は急いで逃げようとしたが、回り込まれてしまい確保、罰ゲームが執行された。

そして今に至る。今まさに紺子は一海たちによる罰ゲームを受けており、パイをぶつけられていた。

 

 

乱「まあ負けたんだから諦めてね、こんこん」

 

紺子「納得いくかよ!?」

 

辰美「次は私ですね」

 

紺子「いや……ホントに待って―――――」

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

言い終わらないうちにまたパイをぶつけられる。

この時辰美はパイを2つ持っており、片方は顔面、もう片方は腹めがけてぶつけていた。

 

 

紺子「な……何でよりによってお腹ぁ………」

 

辰美「あら?パンツの方がよかったですか?」

 

紺子「そ、そうじゃなくて……ひやぁぁぁぁぁぁ!おへそに指入れないでぇ!//////」

 

 

辰美はうっとりした表情で紺子のクリームまみれの腹をなでる。そこから現れたのはクリームが入ったへそ。

そんなへそに指を突っ込んでグリグリといじった後、指先にまみれたクリームを舐め取る。

 

 

紺子「はぁ………はぁ………お、お腹がぁ……おへそがぁ……ムズムズするぅぅ…………//////」

 

乱「まだまだパイはあるよ♡」

 

一海「罰ゲームのためにたくさん作っておいたからね、いっぱい堪能してね♡」

 

紺子「う……嘘…………だろ…………ねえ、待って……待ってよ………ホントに待っ―――――」

 

 

哀れな妖狐(紺子)の静止もむなしく、4人は紺子めがけて次々とパイをぶつけてきた。4人にとって紺子の静止は『もっとやってほしい』としか聞こえていなかったのだ。

紺子の全身がどんどんクリームにまみれ、どんどん白くなっていく。特に一海は何を思ったのか、紺子にまみれたクリームを拭い取ると、彼女の尻尾に塗りたくった。

必死に抵抗したくてもご存知のように両手足を縛られているせいで全く動けない。尻尾の毛にクリームが絡まり、さらに気持ち悪く感じたのか尻尾だけ全力で動かすという抵抗を試みた。

 

 

一海「そんなに尻尾振り回しちゃって……それでもかわいい♡尻尾振り回してるところも、クリームまみれになってるところも全部かわいいよ、出雲姐ちゃん♡」

 

紺子「かわいいかわいい言うなぁぁぁぁ……!//////」

 

仁美「そ~れそ~れ~♡」

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

紺子「ブゥゥゥ!」

 

 

次々とパイをぶつけられていくと共に次々とパイが減っていく。

ようやく収まった時には紺子にぶつけたパイはなくなり、紺子はもはや別人のようにクリームまみれになっていた。

 

 

紺子「も…………もう無理ぃ…………もうやめてぇ…………やめてよぉ…………//////」

 

 

真っ白になった顔面から懇願する声が出る。紺子の視界をパイで完全に遮られ、鼻で呼吸するのがやっとの状態だった。

 

 

辰美「もうパイがありませんよ?」

 

仁美「じゃあさ、もうペロペロしてい~い?」

 

一海「まだダメだよ。まだ最後の1個が残ってるもん」

 

乱「え~?早くこんこんをチューしたいよ~」

 

紺子「もういいからぁ………これで最後にしてぇ………お腹とおへそがぁ……尻尾がぁ……パンツがぁ……………//////////」

 

一海「開け、『異世界の門』よ」

 

 

 

ベシャァァァッ

 

 

 

紺子「!!」

 

 

とどめと言わんばかりに一海は辰蛇の顔面に激辛麻婆豆腐をぶつけた時、デンジャラス・逃走中の鬼のカミナリオヤジと三角木馬に追い詰められた時と同じあの謎の空間を紺子の真上に出した。

そこから落ちてきたのは巨大なパイ。紺子の懇願もむなしく彼女は尻尾を残して巨大なパイに埋まってしまった。

 

 

一海「はい終わり」

 

乱「え?か、カズミン?」

 

仁・辰「「……………」」ポカーン

 

 

乱の種族はクトゥルフ神話の生物『シュゴーラン』。妖狐の一海が異世界の門を作り出したところを見て思わずポカンとしてしまった。

それは仁美と辰美も同じだった。

 

 

乱「み、未完成とはいえ……何でカズミンが『創造の門』作れるの?ていうかいつから使えるようになったの?」

 

一海「え?心火を燃やしたらなんかできた」

 

乱「ちょっと何言ってるかわかんないんだけど。いくら何でもそれで使えるようになるって聞いたことないよ。他の旧神たちも戸惑うんだけど」

 

一海「えー?」

 

紺子「モッ…モゴォ~~………!むぐむぐ……むぐ~~~~………!」

 

 

パイに埋まった紺子は残った尻尾を振りながら何かを訴えていた。

 

 

辰美「って、ちょっと!?紺子様窒息してますよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、闇音はとある山にある洞窟にて射撃訓練をしていた。帰国してから銃の腕が落ちないようにひっそりとやっていたのだが、少し問題が生じていた。

 

 

闇音「………?」

 

 

愛用のリボルバーの調子が悪いのか、トリガーが軽く感じた。

 

 

闇音「っかしいな……手入れは怠ってねぇはずだが……」

 

 

一度弾を抜き、空撃ちしてみる。今度はリングハンマーが動かなくなった。

 

 

闇音「………寿命か。長いこと使ってきたが、そろそろ限界ってわけか。しょうがねぇ、飾っておくか」

 

 

そう言って洞窟を出ると、近くの小屋に目をつけた。小屋に足を踏み入れた闇音が見たのは寿命が来て使い物にならなくなり、闇音の手によって飾られた数々の銃だった。中でもリボルバーとマグナムは丁寧に飾られていた。

歪んだ人間至上主義者である闇音だが、意外にも銃マニアなところがあり、古いものから最新式まで徹底的に集めている。彼が殺した焔に言ったようにテロに加担していた頃は様々な銃を取り扱っていた上に、それらを利用した戦術が増えたのか、全盛期以上に立ち回れるようになっていた。

今まで使っていたリボルバーを飾り、ノートに戦歴を書いた闇音はカレンダーを見る。何を思ったのか、彼の口元がニヤリと歪んだ。

 

 

闇音「……明日は武器の闇商人が来るのか。ちょうどいい、新しい相棒()を探すとするか。テロ時代に稼いだ金も持っていかねぇとな…………」



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大きくなりました♡ 前編

5連休明けからいきなり事件起こしてみました。
スコープさんリクエストですが、前編、中編、後編に分けて投稿します。


5連休明けの翌日、事件はいきなり起こった。

 

 

紺子「なああああんじゃああああこりゃああああああああああああああああ!?!?!?!?

 

一海「……………」ポカーン

 

 

絶叫する紺子、唖然とする一海。そして昨日紺子の家に泊まった仁美、辰美、乱もポカンとしていた。

 

 

 

 

 

いつも紺子たちが通っている学園があり得ないほどに巨大化しているではないか。

 

 

紺子「え、ちょっとマジでどういうこと!?一晩のうちに何があったの!?何でこんなにでかくなってんの!?」

 

乱「遠くから見てもどこかおかしいなって思ったけど……」

 

一海「絶対他の街に被害及んでるよねこれ」

 

 

そんな学園を見ているのは紺子たちだけではない。紺子のクラスの生徒たちも唖然としている。さらに1年の後輩たちも、3年の先輩たちも。

紺子はちょうど近くにいた竜香に声をかけてみる。

 

 

紺子「あの、轟先輩?何でこんなに学園がでかくなってんの?」

 

竜香「自分だってわかんないよ……遠くから見てもメチャクチャ大きかったし」

 

紺子「轟先輩でもわかんないって………まさかあいつか?あの変態トカゲ(学園長)か!?」

 

 

いつも何を考えているか、何をしでかすかわからない学園長、喰輪辰蛇。彼女ならやりかねなかった。

それもそのはず、紺子が龍華と竜奈に自分の過去を話そうとしたところで突然現れて屋上から落とされたり、EVOLUTION SPACEに現れたところを遠呂智に捕まってダークマター100皿を3分で完食しなければならなかったり、さらには5連休前日にレクリエーションでデンジャラス・逃走中を開催した。

巨大化した学園もどこからどう見ても辰蛇の仕業としか考えられなかった。そう確信した紺子の心境はこうなっていた。

 

 

紺子(あの変態ウロボロス、あの変態学園長どこに隠れてやがんだ?学園をあんなにでかくしやがった元凶はどこにいやがる?見つけたらみんなで拷問にかけて、それから燐斗先生に頼んで秘術室の大鍋でグツグツのシチューに―――――)

 

 

完全に殺意がむき出しになっていた。そんな時、何者かが紺子の足を引っ張る。

見下ろすと、そこにいたのは数日前プールに落ちてきた浅井冬睡の従者である粘土細工だった。

 

 

紺子「きゃあ!?」

 

 

無論、驚きのあまり足を上げる。紺子の足を引っ張っていたのは筆談役だった。

 

 

一海「どうしたの?出雲姐ちゃん」

 

紺子「か、カズミン!これ見てよ!人形が…人形が動いてる!」

 

一海「え?」

 

 

首をかしげる一海。筆談役はスケッチブックを取り出すと、こう記す。

 

 

【私たちは浅井冬睡様の従者。驚かせてしまい申し訳ありません】

 

一海「うわっ!人形が字書いてる!」

 

紺子「そんなことより浅井冬睡って誰!?浅井冬睡って誰なの!?」

 

【あの玉座で寝ている方がそうです】

 

筆談役が指す方向を見ると、そこには玉座に座りながら眠っているパジャマ姿の少年、浅井冬睡が。

 

紺子「あれが最近うちの学園に来たって言われてる先輩!?何でこんな騒ぎが起きてるのに平気で寝てられるの!?」

 

乱「何でだろう………私と同じ雰囲気が出てるのに……見てるだけでこんなに悪寒がするなんて………」

 

 

怖がる紺子。不思議と恐怖感を抱き、鳥肌が立つ乱。

そんな時、校舎からコーティアが高笑いしながら出てきた。

 

 

コーティア「フハハハハハハハハハハハ!!ハーッハッハッハッハッハッハッ!!どうだ、諸君!()()()()を気に入ってくれたかな!?」

 

 

この時、生徒全員の思考が停止した。同時に信じられないという驚きが湧き出してきた。

元凶はコーティア先生?あの学園長じゃないのか?

 

 

コーティア「犯人がいつも学園長とは限らない!校舎を含めた学園の備品を大きくしてみたんだが、ぜひお前たちの感想を聞きたい!」

 

牙狼「いや、感想も何も僕たち授業どころか先生も仕事しづらいじゃないですか!備品が大きくなったってことは、教室も黒板も職員室も!どうやって生活しろっていうんですか!?」

 

コーティア「それを承知で行ったのが我だ。元に戻せと言われても丸1日かかるからな、それまで我慢するのだ」

 

 

牙狼の苦情は撤回された。

 

 

死纏さん「今日は珍しく学園長が犯人じゃないなんてな。学園全てがでかくなったってことはまさか……うっ、ヤベェ。何でか知らねぇが、死神なのに鳥肌が立ちやがった………」

 

 

 

 

 

しばらくして校内に入る生徒たち。扉は閉じたままでは酷だと思ったのか、ご丁寧に開いていた。

校内でもさらにとんでもないものを見てしまった者がいた。

 

 

紺子「何だこのでっかい角!?」

 

 

校長室をふと覗いたのだが、ある女性が仰向けにブリッジのような体勢になっていた。上半身はめくれた水色のスカートによって隠れており、腹とパンツ、そしてハイヒールを履いたスラッとした足があらわになっている。

だがこの角、どこかで見たことがある。それにこのめくれた水色のスカート。さらに紺子と一海にとって丸出しになった腹とパンツに見覚えがあった。

 

 

龍哉「あの……校長……ですか?」

 

アルケー「うふふ、まさしく私こそがアルケー・ティアランド・ケイオスですわ♡」

 

龍哉「見たことある角だと思いましたが、校長でしたか………いや、そんなことより!何で校長そんなにいやらしい格好してるんですか!?」

 

アルケー「前におへそ掃除されたことを思い出しまして……あそこに綿棒とオリーブオイルがあるでしょう?さっきまでおへそ掃除してたんですが、急に角が大きくなりまして………」

 

 

コーティアの言う通りアルケーの机も大きくなっている。本当にあるのかと机の上を見上げる紺子と龍哉。備品も大きくなっていた。

さらに観察してみる。なるほど、確かに机に綿棒とオリーブオイルが置かれている。アルケーのへそもオリーブオイルで濡れていた。

 

 

紺子「……おい、思い出させんなって………ただでさえ私もカズミンにおへそいじられまくったってのに………//////」

 

龍哉「紺子お前顔赤いぞ?それより校長がへそ掃除とかどうとか言ってたけど、何があったんだ?」

 

紺子「実はな…………//////」

 

 

 

 

 

龍哉「……お前ん家でカズミンが校長のへそ掃除って、おい………」

 

紺子「私だって家に校長が来るなんて思ってなかったもん!私もカズミンにお腹とおへそいじられまくって、しかも出べそにされてさ!おかげで体が敏感になってたし、ずっとカズミンに出べそいじられたんだよ!?それに昨日なんか罰ゲームでパイぶつけられまくってさ!お腹とおへそはムズムズするわ、尻尾もクリームまみれにされるわ、挙げ句にはカズミンが出したでっかいパイに埋もれたんだからな!?//////」

 

 

今日も服のボタンを閉じず、丸出しになっているへそを両手で隠しながら言う。

 

 

アルケー(……思えば紺子さんもいつもおへそ出してますが、紺子さんってちゃんとおへそ掃除してるんでしょうか?)

 

龍哉「もういいもういい、わかった!想像しちゃうから!ムラムラしてくるから!」

 

紺子「想像しちゃうとかムラムラしてくるとかどういう意味だよそれ!!お前も私のおへそいじりたいのかよ!!やめてよ!!//////」

 

龍哉「そんなこと1ミリも思ってないんですけど!?」

 

 

顔を真っ赤にしながら叫ぶ紺子に詰め寄られる。紺子の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

すると校長室の外から何者かの悲鳴が聞こえてきた。子供がふざけながら奇声をあげているようにも聞こえる。

 

 

???「キエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!

 

紺・龍「「!?」」

 

 

だが紺子と龍哉、アルケーにとっては聞き覚えがある。

 

 

龍哉「伊佐先生!?」

 

野人「どういうことだこれはァァァァァ!!!!何でこいつもでかくなってるんだァァァアアアァアアァアアアアァァァァァァアアアアァァアアァアァアァ!!!!

 

 

そう、悲鳴の正体は野人だった。

 

 

紺子「今理科室からだったよな!?何があったんだ!?すぐ行かねぇと!」

 

龍哉「あっ、おい待ってくれ!てか、校長あのまま!?」

 

 

恥ずかしい姿のアルケーを放置したまま校長室を飛び出し、理科室へ向かう紺子。彼女を追うように龍哉も理科室を飛び出した。

だが紺子は知らない。これから自分の身に降りかかる恐怖と悲劇を。さらに龍哉もそれを目撃するなど知る由もなかった………。

 

 

アルケー「うふふ、それではお2人さん、よい1日を♡」

 

 

 

 

 

紺・龍「「先生!」」

 

野人「ウワァァァァァァァァァァ!!出雲君、赤川君、助けてェェェェェェェェェェ!!

 

 

理科室の戸を開けるなり、野人がすごい勢いで飛び出してきた。

 

 

龍哉「ゴバッ!?

 

 

野人に衝突したのは龍哉だった。当然避けられるはずもなく吹き飛ばされ、壁に激突する。

 

 

紺子「龍哉ァァァァ!!ちょっと先生、龍哉に体当たりって何してんだよ!!」

 

野人「話してる暇はないィィィィ!!とにかく理科室にィィィィィィ!!

 

 

尋常じゃない野人のこの慌てよう。手を引っ張られ、理科室へ引き込まれる。

壁に激突した龍哉も立ち上がると、急いで理科室へ入っていった。

 

 

野人「こ、これを!これを見るんだ!!

 

 

これもコーティアの仕業だろうか、3人の目の前には巨大かつ得体の知れないものがあった。

得体の知れないものを見て紺子と龍哉は絶句。野人は恐怖で震えるしかなかった。

 

 

紺子「嘘………でしょ………」

 

龍哉「まさかとは思ってたけど………植物も巨大化してやがる………しかも食虫植物って………」

 

野人「食虫植物じゃない……学園長が作ったといわれる『性欲を高揚させる植物』だ……!いつもなら成人男性の身長と同じぐらいのサイズなのに………」

 

紺子「どこで知ったの、その情報……?」

 

野人「学園長がそう言ってた……」

 

 

蛇とヤツメウナギとウツボカズラを合体させたような姿をした怪植物。今にも襲いかかりそうな様子で3人を見下ろし、液体を垂らしていた。

恐怖と不安に駆られ、3人は少しずつ後ずさる。

 

 

龍哉「学園長、あんな化け物も作れたっていうのかよ………!?」

 

紺子「そいつ作った学園長今どこにいんの……!?」

 

野人「それが………その………さっきまでいたんだが、急に校舎から姿を消したんだ………」

 

紺子「え…じゃあ今いないのかよ……!?」

 

 

そうこうしているうちに時は刻一刻と進んでおり、もうすぐ朝のHRを始めるチャイムが鳴ろうとしていた。

 

 

野人「そんなことより君たち…もうすぐ朝のHR始まるぞ……早く教室に行った方がいいんじゃないのか……?」

 

龍哉「わ、わかりました……おい紺子………」

 

紺子「うん……わかってるよ……でも足が………足が動かな―――――」

 

 

 

バグンッ

 

 

 

紺子「!!?

 

龍哉「紺子!?」

 

野人「出雲君!!」

 

 

予感は的中した。怪植物が恐ろしい勢いで紺子に襲いかかり、頭からかぶりついたのだ。

 

 

紺子「んぐっ~~~!?~~~~~~ッ!!

 

 

宙に浮く紺子の足。この怪植物は龍哉と野人に興味がなかったのか、紺子を丸呑みにしようと考えていたようだ。

上半身を丸呑みされ、残った下半身が逃れようと必死に両足を動かして抵抗していた。

 

 

紺子「ぬ~~~~~!!んあ~~~~~!!」ジタバタ

 

龍哉「紺子!今助けるぞ!!」

 

野人「非力だが私も力を貸そう!」

 

 

紺子の足をつかみ、怪植物から引っ張り出そうとする野人と龍哉。

しかし中でスカートがめくれているのか、パンツが丸出しになってしまった。

 

 

野人「ゲェ!?なぜに我々は出雲君のパンツを見なきゃならないんだ!?」

 

龍哉「俺だって聞きたいぐらいっすよ!」

 

 

引っ張れば引っ張るほど怪植物の力は強くなり、紺子もどんどん怪植物に呑み込まれていく。

そうしてついに残ったのは足先だけになってしまった。それでも必死に抵抗する紺子。

 

 

紺子「〒¶£■§≒Ωゞ¢仝×Å~~~~!!」ジタバタ

 

 

しかし野人と龍哉には紺子を助けたい気持ちでいっぱいだった。2人は足先をつかむと、力を振り絞って紺子を引っ張った。

 

 

龍哉「頼む!紺子を丸呑みにしないでくれぇ…!」

 

野人「出雲君、戻ってこぉい…!」

 

 

 

スポンッ

 

 

 

やはり無駄だった。2人が手にしていたのは紺子のスニーカー。靴下を履いた紺子の抵抗する足先が目に止まる。

 

 

野人「あ……あああ………」

 

紺子「ん……………ん……………」ピクピク

 

 

とうとう紺子は抵抗する力を失い、怪植物に呑み込まれた。それと同時に朝のHRが始まるチャイムが鳴った。

野人は丸呑みされた紺子と彼女のスニーカーを呆然と見つめることしかできなかった。龍哉は紺子を救えなかったせいか、悔しさのあまり膝をつく。

 

 

龍哉「紺子…………うう……くっ………ち…チクショウ……チクショウ…………チクショォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオッ!!!!

 

 

怪植物は目的を達成して満足したのか、そのまま眠りについてしまった。



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大きくなりました♡ 中編

失意のうちに教室に戻る龍哉。机と椅子も巨大化しており、コーティアが言っていた通り黒板も巨大化していた。

 

 

ライエル「本当に何もかも大きくなってるね……」

 

ディーゴ「これ座ってるって言えねぇよ……ん?龍哉?」

 

 

教室に入ってきたのはなぜか元気のない龍哉だった。

 

 

ディーゴ「龍哉、どうした?珍しく元気ねぇな」

 

龍哉「……それが………実は………」

 

 

 

 

 

ディーゴ「なっ……紺子が植物に呑み込まれたじゃと!?しかも学園長が作った植物って……なおさらヤベェじゃん!」

 

 

愕然とするディーゴを含め、教室内がざわつき始める。

 

 

龍華「どういうことだよ兄貴!龍王連撃打で倒せば救えたんじゃねぇのか!?」

 

龍哉「したくてもできなかったんだよ!むしろできてたら苦労しない!もし紺子を呑み込んだあいつを殴れば……下手したら………紺子もケガしてたかもしれないんだぞ!?」

 

龍華「じゃあどうすんだよ!?カズミンが聞いたらあいつ絶対黙ってねぇぞ!」

 

仁美「私だったら呑み込まれる前に噛みつく~」

 

 

生徒たちがざわついているうちに、ヴォイエヴォーテが教室に入ってきた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「お前たち、やかましいぞ!何を騒いでいる!」

 

ライエル「何で先生だけ落ち着いてるんですか!?」

 

ヴォイエヴォーテ「………ああ、失礼。少し冷静さを失っていた。実を言うと私も朝来た時、校舎が巨大化していたことには腰を抜かすほど驚いた。だがあれで驚くなどドラキュラ家の一族として恥ずかしいと思った私は冷静さを取り戻すため、あることをした」

 

許人「あること?」

 

ヴォイエヴォーテ「それはな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴォイエヴォーテ『待て待て待て待て!いろいろと待て!落ち着け、落ち着くのだヴォイエヴォーテ!心を平静にして考えるんだ!こんな時どうするか……我々ドラキュラ家は心を落ち着かせるにはどうしてきたか……素数だ、素数を数えて落ち着くんだ!素数は1と自分の数でしか割れない孤独な数字…私に勇気を与えてくれる!2、3、5、7、11、13、17、19…………!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴォイエヴォーテ「というわけだ」

 

生徒全員『いや、先生の親族どんな決まり作ってんの!!?

 

司「先生の親族って今までそうやって素数数えて落ち着いてきたのか!?俺様も初めて聞いたが、どんな親族なんだよ……!寝耳に水だぞ!」

 

ディーゴ「司がちゃんとしたことわざ使いやがった!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、1年教室でも。

 

 

一海「ドラキュラ先生、いつも予想外なこと起きたら素数数えてたんだ。初めて知った………」

 

 

ヴォイエヴォーテの話がここまで聞こえていた。

 

 

無亞「素数を数えるって突っ込みどころが多すぎるんだが…」

 

直刀「と、ところで……先輩が学園長が作った植物に呑み込まれたって話聞いてる……?」

 

一海「え?」

 

藤一「いやいや、何でそないなこと言えるん?」

 

 

何を言っているのか理解できない。それでも直刀は続ける。

 

 

直刀「みんな聞こえてなかったと思うけど、僕聞いちゃったんだ……と…隣の教室から聞こえてきたんだけど………レクリエーション始まる前に僕が間違って斬っちゃった狐耳の先輩が………」

 

一海「出雲姐ちゃんがどうかしたの?」

 

直刀「さっきも言ったように……あの狐耳の先輩が……学園長が作った植物に呑み込まれたんだ……」

 

一海「!!」

 

 

直刀の話を聞いた途端、一海の動きが静止した。

 

 

直刀「え……?」

 

藤一「ど、どないしたんカズミン……?」

 

一海「………………」

 

無亞「………なんか知らねぇが、まさか旧神の俺が怖じ気づくなんてな」

 

 

ただならぬ殺意を感じ取った無亞に悪寒が走り、鳥肌が立つ。

耳を澄ませると、一海は何かブツブツ呟いていた。

 

 

一海「学園長死スベシ、学園長ノ植物滅ブベシ、慈悲ハナイ。今日の午前授業が終わったら問いただしに行かないと。内容次第で腹パンしてやる。内容次第で金的食らわせてやる。出雲姐ちゃんをいじめる奴は許さない出雲姐ちゃんを泣かせる奴は許さない許さない許サナイ許サナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ―――――」ブツブツ

 

ココ「ヒェ!?か、一海さん!?な、なんか……すごく怖い………!」

 

無亞「ココがメッチャ怖がってやがる……この殺意と怒り………マジで本物じゃねぇか」

 

一海「ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ―――――」ブツブツ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、3年教室でも。

 

 

竜奈「なんか綾野の様子がおかしいんだが」

 

牙狼「どうしたの、綾野?」

 

綾野「1年教室にて一海の激しい怒りと殺意を感じ取りました。それもまた測定不能なほどに」

 

牙狼「測定不能?」

 

綾野「この間の休日、マスターの紺子様、一海、龍哉と共に神守先生の頼みで猫をいじめる男に制裁を与えろと頼まれたのですが………その男に対する一海の妖力が数十、数百、数千倍以上と大きく膨れ上がっていました。その原因は一海に流れる玉藻前の血………」

 

 

正直、綾野も一海に玉藻前の血が流れているなど知らなかった。

それにあの測定不能になるほどの妖力。綾野も下手に手を出せば破壊されかねなかっただろう。

 

 

綾野「さらに男に対して言った呪詛の言葉。私はロボットなのでしっかり記録しています。『いざや呪え、常世咲き裂く怨天の花。数多の怨霊となりし生き物よ、愚かにも命ありける者を辱め陥れる者に憑依し、心を荒らせ』。一海はそう言っていました。その言葉を聞いた男は死にそうなほど苦しんでいました」

 

竜奈「一海が人を殺しかけただと!?」

 

綾野「ご安心を。マスターが正気に戻しました。『もしやめてくれたら明日の夜私のお腹を好きにしてもいいから』と言って」

 

舌寺「紺子っちのお腹と聞けばすぐ見参!紺子っち、今どこにいるの!?俺っち、また紺子っちのお腹舐めたくなっちゃった!」

 

 

割り込むように現れる舌寺。この場の空気が悪くなる。

 

 

綾野「ただの変態でしかない部外者はお黙りなさい。この『駄犬』

 

 

この時、綾野の声にはドスが効いていた。そのまま舌寺の目めがけて指から催涙ガスを発射する。

 

 

舌寺「ギャアアアアアアア!!!!目がァァァァァ!!!!目がァァァァァァァアアア!!!!

 

牙狼「……後で1回舌切られてこい」

 

竜奈「全くだ。こいつの性癖は一体いつになったら直るのやら……ところで一海に呪われた男はその後どうなった?」

 

綾野「なんとか一命を取り留めて精神病院に入院しました。ですが目が覚めると『ねこがいるそこにねこがいますねこがあらゆるばしょにいますだれでもねこはいます―――――』と意味不明なことを言い出し、さらに『ねこですよろしくおねがいします』といううわ言ばかり言っているとのこと。神守先生がその記事を見せてくれました」

 

竜奈「………だが、なぜに紺子は腹?あいつは腹が弱点なのか、それとも一海の性欲を求めてたのか?」

 

綾野「その辺は私もわかりません」

 

 

綾野に催涙ガスを浴びせられて悶絶する舌寺を除き、3年は2年と対照的にあまりざわついていなかった。

やがてラインハルトが教室に入ってきた。

 

 

ラインハルト「卿たち、席に着け。これより朝のHRだ」

 

牙狼(ラインハルト先生、校舎が大きくなっても落ち着いてるなぁ………)

 

舌寺「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!目が痛いィィィ!!何すんの綾野っち!?俺っちの目に何してくれてんのォォォォォ!!」

 

ラインハルト「私が来る前に何があったというのだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして理科室にて。紺子を丸呑みにした怪植物はぐっすり眠っていた。

 

 

紺子「ッ………ッ………

 

 

モゾモゾ動く怪植物の体。その中から紺子のうめき声がする。なんとかして脱出しようと必死にもがいていた。

その甲斐あってか、怪植物の口から靴下に覆われた足先が出てきた。怪植物は気づいていない。

 

 

紺子「ッ………ッ………

 

 

このままもがいていればそのうち出られるかもしれないと思っていたその矢先、突然怪植物が自身の胴を持ち上げた。

 

 

紺子「ッ!?

 

 

そしてブッと紺子の下半身が吐き出されると同時に、尻尾とパンツがあらわになる。

どうやら体内でまたスカートがめくれているようだ。恥ずかしさのあまり足をばたつかせる。

 

 

紺子「~~~~~!!~~~~~!!」ジタバタ

 

 

いくら抵抗しても紺子は怪植物から抜け出せることはできなかった。暴れる紺子を再び呑み込む怪植物。そしてまた眠りについた。

だが紺子はもちろん、怪植物は知らない。ただならぬ殺意と怒りを放った妖狐が1年教室にいることを。



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大きくなりました♡ 後編

新型コロナが流行っている中、皆様はどうお過ごしでしょうか。特に自分は3月下旬、志村けんさんが亡くなったことが信じられませんでした。
皆様もコロナに感染しないようマスクをする、うがい手洗いをしっかりするなどして予防しましょう。


その後始まった授業はもう教師たちにとって散々だった。

特にトリノに至っては、

 

 

トリノ「チョーク重すぎるッ……もう……限………界………」

 

 

と言って巨大化したチョークの重さに耐えられず下敷きになり、保健室に運ばれたほど。もちろん保健室内も備品もベッドもコーティアによって巨大化していた。さすがの真島も「俺が胃薬と頭痛薬飲みてぇよ!」と嘆くほどである。

しかしユウジ11は別。持っていたサバイバルナイフで巨大チョークを削ると、手持ちサイズにし、黒板にある漢字2文字を書いた。

 

 

【自習】

 

ユウジ11「おし、これから30分自習な。余った時間で狩猟のビデオを観せるぜ」

 

 

何のために削ったんだ、ユウジ11。

 

 

ユウジ11「ところで朝から学園長見てねぇって話があるんだが、誰か知らねぇか?」

 

 

全員知るはずがなかった。何しろ生徒たちはおろか、他の教師たちも全員辰蛇から連絡を受けていないのだから。

となると辰蛇は本当にどこへ消えたのだろうか。だが気にしていても仕方がない。生徒たちは授業に、教師たちは仕事に集中せねばならなかった。

 

 

石蛇「うーん、このチョーク……これで彫刻作るには手頃なサイズね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4時間目の授業が終わり、生徒たちは食堂へ。だがコーティアは気を遣っていたようで、酷だと思ったのか、食堂内はもちろん備品も巨大化していなかった。

 

 

夏芽「おばちゃんたち、聞いたよ。コーティア先生が校舎大きくさせたんだってね」

 

ジャック「トリノちゃんもチョークで潰れたほどだろ?みんなあの状態でよく授業受けられたねぇ…」

 

竜奈「はい。特に石蛇先生なんかチョークで彫刻を作ろうとするほどでした」

 

 

食堂に次々と集まる生徒たち。愚痴を聞く夏芽とジャック。やっと地獄の時間が終わったと言わんばかりに席にもたれかかる者、テーブルに寝そべる者がやたらと多かった。

その中には頭痛を起こしている者、テーブルに寝そべりながらブツブツ文句を言う者もちらほら。

 

 

遠呂智「保健室で真島先生から頭痛薬もらってきたからそれ飲め」

 

王臥「すみませんねぇ。帰ったらゆっくり寝ますよ」

 

遠呂智「まさかトリノ先生がいるとは思わなかったが、理由がチョークで潰れたって………」

 

王臥「え!?トリノ先生ケガしたんですか!?」

 

 

だが、この場にある妖狐だけはいなかった。それを気にした龍華がスタミナ丼をテーブルに置き、近くを通りかかったメリーに声をかける。

 

 

龍華「なあメリー、ちょっといいか?」

 

メリー「はい?」

 

龍華「ここにカズミンがいねぇんだが、何か知らねぇか?」

 

メリー「一海さんならさっきの授業終わった後、すぐに理科室に行きましたが……それに一海さん、朝からとてつもない怒気帯びてましたもん」

 

龍華「はぁ!?カズミンの奴、朝からキレてたのか!?あいつ何があったんだ!?」

 

 

龍華は信じられないというような表情で肩をつかむ。

 

 

メリー「直刀さんが聞いたんです。『学園長が作った植物に狐耳の先輩が呑み込まれた』って」

 

龍華「え…………」

 

 

思わず絶句するほどだった。それもそのはず、その呑み込まれた狐耳の女の子の正体は言わずもがな………。

 

 

龍華「ライエルはちゃんといるよな………てことは紺子じゃねぇか!!あいつ、一体何が………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一海はというと、メリーの言う通りしっかり理科室にいた。

直刀の言う通りだった。一海は怪植物から紺子の気を感じ取っており、紺子を呑み込んだ怪植物に睨みを利かせ、怪植物も一海を呑み込まんとばかりの様子だった。

 

 

一海(玉藻前)「…………これ以上妾を怒らせたくなければ、妾の愛しき出雲紺子を解放せよ

 

 

顔中に刻まれた刻印。白く染まった目。猫を殺そうとした男の時のように、一海には玉藻前の人格が表に出ていた。

だが相手は辰蛇が作ったといわれる怪植物。そんな命令に従うはずもなく、あるものを吐き出す。

 

 

紺子「~~~~~………

 

 

吐き出されたのは紺子の下半身、またあらわになった尻尾とパンツ。怪植物はそれを使って一海に攻撃を仕掛けようとする。

しかし攻撃する直前、怪植物はあることに気づく。一海の足が炎に包まれているように見えた。

 

 

一海(玉藻前)「二度は言わんぞ?早く解放せねば貴様を引き裂き、燃やし尽くすぞ

 

 

忠告はしたものの、怪植物は紺子の下半身を再び呑み込むと、一海に襲いかかった。

それを見た一海は素早くかわし、凍えるような冷たい声でこう言い放った。

 

 

一海(玉藻前)「…………よかろう。ならば塵芥と化して死ね。惨たらしく絶命せよ

 

 

紺子の下半身が呑み込まれたのを目の前で見たせいで、一海の怒りの炎はなおさら燃え上がっていた。

まず炎に包まれた足で怪植物を蹴り飛ばし、怯ませる。そして何かブツブツ言いながら妖力を溜め始める。

 

 

一海(玉藻前)「いざや散れ、黄泉咲き咲く怨天の花………!“彼岸花・黒炎獄”!!

 

 

一海の足元には黒紫の球体があった。それを怪植物めがけて蹴り飛ばし、球体に直撃した怪植物は黒紫の炎に包まれた。

 

 

一海(玉藻前)「妾に逆らわねば苦痛もなく死なせてやったものを………

 

 

そう言って怪植物が悶え苦しみながら暴れ回るのを絶対零度の目で見る。怪植物は自身を包む黒紫の炎を消そうと近くにあったスプリンクラーのスイッチを入れた。

 

 

一海(玉藻前)「無駄じゃ

 

 

理科室に冷たい雨が降り注ぎ、一海の全身を濡らす。黒紫の炎を消そうとする怪植物も浴びるが、どういうわけか一向に消える気配がない。それどころかますます燃え上がり、さらにのたうち回る。

やがてピクリとも動かなくなり、黒紫の炎が消えた時、目の前には原型をとどめないほどの燃えカスとなった怪植物の姿があった。

 

 

一海(玉藻前)「さて、助けるとするかの

 

 

燃えカスから現れる2つの人影。片方は狐の耳と尻尾を生やしたへそ出しの金髪の少女。もう片方は頭に角を生やし、巨乳が特徴的な黒髪のツインテールの少女。

一海はその正体がすぐにわかった。いや、すでに知っていたと言った方が正しいだろう。それは妖狐とウロボロス。妖狐の方は出雲紺子、そしてウロボロスの方は朝から生徒と教師が見ていないといわれる学園長の喰輪辰蛇だった。

 

 

紺子「ぁ……………ぅぁ……………」

 

辰蛇「ふぇ……………はぇ……………」

 

 

2人は怪植物のものであろう液体とスプリンクラーから出る水にまみれ、力なく体をピクピクと震わせていた。

 

 

一海(玉藻前)「出雲紺子………喰輪辰蛇………いや………

 

 

紺子と辰蛇に近づくと、顔中の刻印が消え、目の色も元通りになり、玉藻前の人格が消える。

 

 

一海「出雲姐ちゃん………学園長………」

 

 

玉藻前の人格が消えた一海は悲しそうな目で紺子と辰蛇を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、学園で面倒なことが起きているその頃、とある港にやって来た闇音はある人物を探していた。

 

 

闇音「予定ではここのどっかに武器商人がやって来るって話だったな。いい銃があればいいんだがな……」

 

 

そう呟きながら武器商人と呼ばれる人物を探す闇音だったが、あっさりと見つかった。

 

 

武器商人「…………はぁ、ここはホントにセキュリティが厳しいトコだな。商売しづらいったらありゃしねぇ」

 

 

コンテナに身を潜めながら倉庫へ進むその男は死纏さんほどボロボロではないが、黒いコートとフードをまとっており、不健康そうな青白い肌をしている。

ガラガラのだみ声を出しながら周囲に警戒し、なんとか倉庫の扉まで辿り着いた。すると誰かが声をかけてきた。

 

 

闇音「おい、お前が武器商人か?」

 

武器商人「!?」

 

 

新たな銃を求めている闇音だった。

 

 

武器商人「って、これはこれは、俺のお得意様の神楽坂闇音じゃないですか。心臓に悪いぜ………」

 

 

見つかったと思い動揺する武器商人だが、その男が闇音だったことに安堵する。

そして闇音自身もこの武器商人の正体を知っていた。

 

 

闇音「……お前、確か………『ドレイン』だったか?」

 

武器商人「誰が相手の体力を吸う魔法だ!?『ブライド』だ、『ブライド』!」

 

闇音「冗談だ。テロ以来だな」

 

 

顔馴染みと言わんばかりの様子である。

武器商人の名は『ブライド』、闇音がテロリストとして活動していた時世話になった男。彼が使う銃などの武器は常に高品質なものだけでなく、銃の改造や製造も取り扱っており、裏業界では有名だった。

 

 

ブライド「確かにテロ以来だな、ストレンジャー。にしても何だその格好?侍っぽい格好してるな?ボロボロだが」

 

闇音「侍じゃねぇよ。陰陽師っつう……まあ、その、何だ………わかりやすく言うと、オーガとかゾンビとか、場合によっては悪霊とかそういった魔物を退治する仕事をしてるんだ。日本に帰ってきてからこっちが本業でな」

 

ブライド「ほう、陰陽師だったのか」

 

闇音「悪かったな、黙ってて」

 

ブライド「気にすんな。どんな変わり者だろうがお前が言う魔物だろうが、金さえ払ってくれれば商品は差し上げるぜ。それにここじゃ商売しづれぇし、とりあえずこの倉庫に入ってからいろいろ話そうか」

 

闇音「化け物共にも売ってるのが気に食わねぇが、そうしねぇとやっていけねぇんだろうな……早速だが武器を見せてくれ」

 

ブライド「ヘッヘッヘッ、サンキュー」

 

 

誰にも使われていない倉庫に入る闇音とブライド。誰にも見られていないことを確認すると、ブライドはフードとコートからたくさんの銃と手榴弾を取り出してズラリと並べ、その中には最新式のロケットランチャー、レールガンもあった。

 

 

闇音「常々思ってたが、どうなってんだそのフード?しかもロケットランチャーどころかレールガンも売ってるって……」

 

ブライド「そりゃお前、バレねぇようにいろいろとやってるからな。武器商人になるには高度な隠密技術も必要になるもんでな。まあ購入するとなるとアタッシュケースも必要になるがな」

 

闇音「そういうのはヤクザと極道に売ってやれ。まあはなっからイカれてる俺が言うのもなんだけどな……

 

 

ロケットランチャーとレールガンも売っていることを知った闇音もさすがに理解に苦しんだ。

小声で呟くも、ブライドに聞こえることはなかった。

 

 

ブライド「ロケランは日本円?で数億、レールガンは10億するぜ」

 

闇音「戦闘機が数機買えそうな値段だな……」

 

ブライド「もちろん高品質な分それだけの価値があるということだ、ストレンジャー」

 

闇音「…………まあいい、俺が欲しいのはリボルバーかマグナムの銃だ。今まで使ってきたM629がイカれちまってな」

 

 

どうやら闇音が昨夜まで持っていたリボルバーはM629という名前のようだ。

 

 

ブライド「M629がイカれた?あれ使い始めたのって確かテロ時代からだったか?よく使い続けたな。普通なら数年ぐらいで寿命のはずなんだが」

 

闇音「ちょくちょく手入れをしていてな。使わない日でもメンテナンスしてたぜ」

 

ブライド「自分でメンテナンスしてたのか。そりゃ長持ちするよな」

 

闇音「気に入ってたんだがな」

 

 

その気に入っていたM629は今は小屋の中に丁寧に飾られていた。同じく丁寧に飾られたマグナム、寿命が来て使い物にならなくなった数々の銃と共に。

新しい銃を求めている闇音は3箱のアタッシュケースを取り出す。その中には莫大な札束が入っており、どれもこれも全て闇音がテロ時代に稼いできたものだった。

 

 

闇音「…………」

 

 

しばらく無言でリボルバーとマグナムを見つめていたが、あるものに目をつけると、それを手に取る。

 

 

闇音「何だこれ?銃口が2つある?見た目は俺が使ってたM629とよく似ているが………」

 

ブライド「そいつは改造リボルバー『BR-M629』。通称『ブルーローズ』だ」

 

闇音「ブルーローズ?」

 

ブライド「銃口が2つあるんだが、そこから2発の弾丸を発射する仕組みにしてあるんだ。デザートイーグルのパワーを超えるために何度も試行錯誤して、ようやく完成した代物なんだ。だが………反動が尋常じゃねぇぐらいにヤバくてな。こいつを使ったら腕が粉砕したってあるストレンジャーが訴えまくってな」

 

闇音「腕が粉砕されるほどの反動か………」

 

ブライド「だがその分威力もヤバイぜ?コンクリートどころかダイヤモンドだろうが何だろうが木っ端微塵にできるぜ?」

 

 

ブルーローズの仕組み、危険性、威力を聞いた闇音はフッと笑った。

 

 

闇音「気に入った。化け物共を殺すのに最適だ。こいつを新しい相棒にしようじゃねぇか。で、いくらだ?」

 

ブライド「そうだな……専用弾もつけて、特別に50万のところを45万だ」

 

闇音「45万?ずいぶんと安いな」

 

ブライド「お得意様にはこれからも買ってもらいたいためにこの価格にしたぜ」

 

闇音「そうか。なら45万を出そう」

 

ブライド「ヘッヘッヘッ、毎度あり」

 

 

闇音は45万円を差し出すと、ついでに予備として何か買っていこうと思い、他の武器も探すことに。

 

 

闇音「ついでに、そうだなぁ………M500とデザートイーグル。あとは―――――」

 

 

闇音は新たな銃と弾丸、加えて手榴弾なども購入。かなりの大金を支払うことになったが、手持ちの金はそんなに減っていなかった。

 

 

闇音「とりあえずこんなもんか。いい買い物したぜ」

 

ブライド「こっちも大儲けさせてもらったぜ。さて、ストレンジャー。購入は以上か?」

 

闇音「ああ」

 

ブライド「そうか。んじゃ、こっからはブルーローズ以外の改造銃を紹介してやるよ。例えば弾がロケットミサイルのハンドガン」

 

闇音「いや、待て待て待て。弾がロケットミサイルって……それ使う場所限定されるじゃねぇか」

 

 

一見普通のハンドガンを見た闇音はブライドの話を遮るように口を挟む。

 

 

ブライド「ショットガンもあるぞ?」

 

闇音「話聞いてたか?危ねぇだろ、それ絶対。撃った瞬間爆発しまくる上に爆風もこっちに飛ぶから特攻武器じゃねぇか」

 

ブライド「こればっかはホントに想定外でな。他にも―――――」

 

 

 

 

 

2人は改造銃の話で盛り上がると、闇音はふとあることを思い出した。

 

 

 

 

 

焔『て、テメェェェェ!!お、陰陽師が!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!?

 

 

 

 

 

自身が殺したチンピラ風の男、砂道焔が言っていたあの言葉。それを思い出した闇音は不機嫌になり、こんなことを呟く。

 

 

闇音「………あのチンピラ風情の化け物野郎が………………」

 

ブライド「ん?何か嫌なこと思い出しちまったみたいだな?」

 

闇音「………ああ。じゃあ、当ててみるか?俺が何を思い出したのか」

 

闇・ブ「「リボルバーをピストルだと思った勘違い野郎がいた」」

 

 

ほぼ同じタイミングで闇音が思い出したこと、ブライドが予想したことを口に出した。

 

 

闇音「……わかってたのか」

 

ブライド「そりゃ俺にもあったからな。あのトーシロめ、間違えんなっての」

 

闇音「俺にもわかるぜ。砂道焔のクソ野郎もつい最近リボルバーをピストルとかほざきやがった。でもあのクソ野郎はもういねぇ。腕を引きちぎって頭を吹っ飛ばしてやったからな。なんか知らねぇが、あいつの頭吹っ飛ばしたら皮剥けて頭蓋骨だけになっちまった」

 

ブライド「そこはリボルバー使えばいいのに」

 

闇音「あれでデコを撃ち抜くなんて生ぬるいだろ」

 

 

そんな雑談を続けているうちに、太陽は西に沈みかけていた。

時刻は17時4分。闇音はアタッシュケースと購入した銃などをしまい、帰り支度をする。

 

 

闇音「んじゃ、俺はそろそろ帰るぜ。商売頑張れよ」

 

ブライド「おう。そっちも化け物退治頑張れよ、ストレンジャー」

 

 

互いに別れを告げ、闇音は倉庫から出ていった。



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九尾の狐は趣向を変えたい

あああああ次の話投稿するまで何ヶ月かけてるんだ俺ェェェェェェ!!

というわけで皆様、待たせすぎて本当に申し訳ありません……深くお詫び申し上げます。
そのお詫びとしてアンケートを設けたので皆様ぜひ投票よろしくお願いします。


紺子と辰蛇が救出されたその日の夜、紺子の家にて。

 

 

紺子「んぁ………カズミン………」

 

一海「よかった、出雲姐ちゃん………」

 

 

ベッドの上で目を覚ますパジャマ姿の紺子。一海はこの光景に見覚えがあった。

英語の授業終了後、紺子がクラスメイトの乱に息ができなくなるほどのディープキスをされて意識を失い、夜まで目を覚まさなかったこと。目が覚めた紺子の腹とへそをいじったこと。全て思い出した一海の顔に自然に笑顔が出た。

 

 

紺子「……まさかとは思うけど、この展開は………」

 

一海「うふふ、あの時と同じだね……♡」

 

紺子「あの時と同じって………カズミン、まさか………!?」

 

 

有無を言わさず尻尾で紺子の両手足を縛って拘束する一海。

 

 

紺子「んひゃ…!///」

 

一海「先輩にディープキスされて、大きい植物にも呑み込まれて……真島先生から聞いたけど、あの植物……媚薬みたいな成分含まれてたんだってね。縛られただけでそんなかわいい声出すなんて、すごく感じるんだね♡」

 

紺子「か……感じてない……ッ!///」

 

一海「そんなバレバレな嘘ついても出雲姐ちゃんの体はすごく正直だよ?♡」

 

 

続けてへそに指を突っ込み、クリクリといじる。

 

 

紺子「んぁ!ふぁぁぁぁ!またおへそぉ~……!//////」

 

一海「ほらほら、そのかわいらしい声♡本当に出雲姐ちゃんは何されてもかわいいんだから♡」

 

 

なんとかして拘束を解こうともがくも、尻尾で拘束する力は強く、どうしても解けない。一海はそんな紺子の動きにニヤけてしまい、拘束に使っていない尻尾をある場所へ伸ばした。

3本の尻尾は紺子の狐耳、そして尻尾へと近づいていく。

 

 

紺子「んやぁぁぁ!み、耳と尻尾もいじっちゃ嫌ぁぁ………!!//////」

 

 

紺子の狐耳と尻尾は一海の尻尾に巻きつかれるようにこすられていた。

 

 

一海「うふふ、そう言ってもすごく気持ちいいって意味が僕に伝わってくるよ♡」

 

 

尻尾で拘束しながら紺子の狐耳と尻尾をいじり、指はまだ紺子のへそに突っ込まれていた。

へそのふちに親指と人差し指をかけると、中身を押し出すかのように力を入れる。また出べそにしたいといういたずら心が湧いたようだ。

紺子はこれまでに2度出べそにされている。これ以上出べそにされてなるものかともがくが、力強い拘束のせいで全て無意味だった。

 

 

紺子「やめてぇ…出べそにしないでぇ……何でカズミン私のおへそがぁ……//////」

 

 

 

ムニィ

 

 

 

紺子「あ………あああ………//////」

 

 

 

3度目の出べそ。紺子がまた出べそになったのを見た一海はうっとりとした表情になる。

 

 

一海「そうやって僕に出べそ見せつけてるところも、ズボン履かないでパンツ丸出しにしてるところも、赤面してるところも、涙目になってるところも全部かわいいよ出雲姐ちゃん♡」

 

紺子「だからかわいいかわいい言うなぁ……!//////」

 

一海「口ではそう言ってもホントは嬉しいんでしょ?だから、もっともっと出雲姐ちゃんのかわいいところ見せて?♡」

 

紺子「ふあっ……ふあああっ……!//////」

 

 

今の紺子は出べそにされただけでなく、狐耳と尻尾までいじられている。

 

 

一海「それじゃ今度は……これも使おうかなぁ………♡」

 

紺子「ふぇ…?//////」

 

一海「開け、『異世界の門』よ♡」

 

 

紺子の顔の真上に現れる謎の空間。するとそこから白く平べったい何かが紺子の顔面に落ち、直撃した。

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

紺子「ッン!」

 

 

パイだった。お泊まり会の時にも大勢の女子にぶつけられたが、まさか2人きりの空間でもぶつけられるとは。

紺子は顔に引っついた白い紙皿を振り落とし、クリームまみれになった白い顔をあらわにする。しかし謎の空間はまだ開いたままだ。

 

 

一海「あの時のパイまみれの出雲姐ちゃんもすごくかわいかったよ。だからまたパイまみれになって?」

 

紺子「そんな無茶な―――――」

 

 

 

ベシャッ

 

 

 

紺子「ンンンッ!」

 

 

有無を言わさずまた紺子の顔にパイが落ちる。すると一海にあることがひらめいた。

 

 

一海「ねえ、出雲姐ちゃん?顔に紙皿くっついてる状態で出雲姐ちゃんのおへそいじったらどうなるのかな?」

 

紺子「…………!?」

 

 

紺子の顔に引っついている紙皿を片方の手で押さえつけ、もう片方の手の指を紺子の出べそに近づける一海。

紺子は息ができず、紙皿の隙間から叫ぶような声を出す。

 

 

紺子「~~~~~~!!~~~~~~!!」

 

一海「ツーンツン♡」

 

紺子「ッ!!~~~~~~!?~~~~~~!!~~~~~~~~ッ!!//////」

 

 

出べそから感じた快感という名の電流に腹をビクンと震わせる紺子。だが息ができないというのは変わりない。

一海は本当に苦しそうだと思うと、紺子の顔から紙皿を剥がした。

 

 

紺子「プハァ!!か……カズミン…………お前ぇ…………!//////」

 

一海「窒息してるところもかわいかったよ♡おへそもつつかれただけであんな反応するなんて………♡」

 

 

一海は再び出べそに指を近づけ、紺子はそうはさせまいとできる限り腹をへこませる。

 

 

一海「そんなことしても無駄なのに……♡」

 

紺子「い……嫌ぁ……//////」

 

一海「ツンッ♡」

 

紺子「んひゃぁんっ!//////」

 

 

出べそに指が触れると同時に出るかわいらしい声。さらに指先で出べその中央をクリクリといじられる。

そんな中一海は紺子の出べそをいじる手を止めると、紺子の両手足に謎の空間を出現させ、突っ込ませる。謎の空間が消えると、紺子は両手足をロープで縛られていた。

 

 

一海「僕の尻尾の仕事はおしまい。次は……」

 

紺子「もう無理無理無理無理……何でロープ持ってくるのぉ……てか私のおへそ元に戻してよぉ………出べそは嫌ぁ………//////」

 

 

一海が立ち上がり、紺子から少し離れたかと思うと。

 

 

一海「開け、『異世界の門』よ」

 

 

 

ベシャァァァッ

 

 

 

紺子「!!」

 

 

お泊まり会の時同様また巨大なパイをぶつけられ、尻尾を残して埋まった。

まさかまた巨大パイをぶつけられるとは思ってもみなかった紺子。

 

 

紺子「もっ……モゴッ!むぐむぐむぐ………」

 

 

残った尻尾が激しく振られている。それを見た一海はニヤけ、紺子の尻尾へと手を伸ばす。

 

 

一海「ああ……出雲姐ちゃんの尻尾もモフモフで触り心地があって気持ちいいなぁ……一晩中触っていたいほど気持ちいい………」

 

 

そう言って尻尾をつかむだけでなく、頬擦りしたり、顔を埋めたりする。その一方で紺子は息ができない状態に陥っていた。巨大パイの中から苦しそうな声が聞こえてくる。

一海は空気を吸わせようと紺子の全身に覆い被さる巨大紙皿を剥がす。ベッドの上には尻尾以外全身クリームまみれになった紺子の姿があった。

 

 

紺子「はぁ……はぁ……もうやめてよぉ………窒息しちゃうぅぅ………//////」

 

一海「やめないよ。だって出雲姐ちゃんのいろんなところがかわいいんだもん♡おへそいじられてあえいだり、パイまみれになって苦しがったり………次は出雲姐ちゃんのおへそ探しっと♡」

 

 

腹の部分に手を伸ばす一海。クリームを人差し指につけては舐め、またつけては舐め、またつけては舐め………それを繰り返しているうちに腹に鎮座している何かを発見する。

 

 

一海「お宝はっけーん♡」

 

 

紺子の出べそだった。一海はすぐに紺子の出べそめがけて顔を近づけ、キスをする。

 

 

紺子「ひゃうああぁぁぁぁぁああああっ!!//////」

 

 

紺子から色っぽく、そして悲鳴のような声が喉から飛び出した。よほどの快感だったのか、体が弓のようにのけ反った。

 

 

紺子「ぁ………ぁぁぁ…………//////」

 

一海「おへそへのキスがそんなに気持ちいいなんて……僕が満足するまでもっといじっちゃおうかなぁ?♡」

 

 

のけ反ったはずみで一海の口の周りにはクリームがついており、まるで泥棒髭のようだった。

それでも一海はうっとりした表情で再び紺子の出べそに顔を近づけると、再び出べそにキス。それだけでなく舌も出し、ペロペロと舐め始める。

 

 

紺子「んあっ、んやぁぁぁぁぁ!!あっあっあっ、んひゃぁぁぁぁあああんっ!!んああああああ!!いやああああああ!!ひゃぁぁぁぁぁあああああんっっっ!!//////」

 

 

紺子の部屋に再び泣き叫びながら快感に悶える声が響き、その声は再び家の外まで聞こえ、再び近所迷惑になる。この場に遠呂智がいたら「またか」と呆れるに違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辰蛇「フゥー……フゥー……//////」

 

 

ところ変わって、ここは辰蛇の家。今の辰蛇は紺子と同じ状態に陥っており、色っぽくも荒い息づかいをしていた。

辰蛇は今パジャマ姿で寝室でベッドに寝転がっているのだが、紺子同様ズボンを履かず、パンツを丸出しにしていた。

 

 

辰蛇「あの植物が燃やされちゃったのは残念だけど………媚薬効果が……まだ続いてるぅぅ………//////」

 

 

枕を甘噛みしながら呟くと、手が自分のへその穴へと伸びていた。

 

 

辰蛇「はぁ……はぁ……//////」

 

 

そして人差し指がへその穴に突っ込まれる。

 

 

辰蛇「ぁ……!//////」

 

 

へそに指を突っ込んだ時点で辰蛇は淫らな顔になり、そこからグリグリとこねくり回し始めた。

辰蛇の息づかいはさらに荒くなり、どんどん涙目になっていく。それでもへそをいじることをやめられない。

 

 

辰蛇「んっ、あっ……へぁ…はぁっ……いやっ………ふあ……ぁぁっ………んぁっ………//////」

 

 

しばらくしてへそから指を離すと、指先に黒い何かがくっついていた。それがへそのゴマであることにそんなに時間はかからず、辰蛇はへそのゴマの匂いを嗅ごうと鼻に近づける。

 

 

辰蛇「ンヒィィィ…く、臭いぃぃ……でも癖になるぅ……//////」

 

 

辰蛇は指先についたへそのゴマを取ると、再び指をへそに突っ込み、グリグリとこねくり回す。それは午前2時を過ぎるまで続いたという。



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とある牛角男との出会い

今回自分が考えたオリキャラ、『箕田蓮之介』を登場させます。今回は蓮之介との戦闘がメインになりますが、活動報告にもある通り夏休み編から本格参戦させる予定です。


昨夜の出来事から翌日、紺子と一海は再び街へ出かけていた。

 

 

紺子「うう……まだおへそがムズムズする……」

 

 

自転車を駐輪場に置き、歩きながら服をめくり、一海にいじられたへそを出す。

紺子はむずがゆいへそをボリボリかいた後、一海に問う。

 

 

紺子「つうかよ、カズミン。昨日の夜使った、あのー…………何とかの門?」

 

一海「異世界の門?」

 

紺子「そうそう。あれマジでどうやって覚えたんだ?」

 

一海「え?だから心火を燃やしたら―――――」

 

紺子「いや、真面目に答えてくれ。心火を燃やしても絶対それできねぇだろって」

 

 

昨夜出てきた無数のパイに巨大パイ、そして辰蛇の顔面に直撃した激辛麻婆豆腐。食べ物ばかりだが、誰かから教わったのかもしれない。

では一体誰から教わったのか。紺子の表情は本当に真剣だった。

 

 

一海「………もう、しょうがないなぁ………」

 

 

一海はやれやれといった表情をした後、真実を明かしてくれた。

 

 

一海「無亞からだよ」

 

紺子「無亞が?」

 

一海「うん。あれを使いたかったからどうすればいいのか聞いてみたら教えてくれたんだ」

 

紺子「いやいや、お前大丈夫か?おかしなことされてねぇよな?正気保ってる?」

 

一海「まだ未完成だから問題ないよ」

 

紺子「じゃあ完成したら狂気に飲み込まれるじゃねぇか」

 

 

だが一海のことだ、妖狐にして玉藻前の血を継いでいるから問題ないだろうと確信した。

すると途中ですれ違った赤髪の………紺子のクラスメイトにして親友である龍族こと赤川龍哉が紺子と一海に気づき、話しかけてきた。

 

 

龍哉「おう、紺子とカズミンじゃないか。何の話してんだ?」

 

紺子「よう龍哉。今カズミンと異世界の門について話してたトコなんだ」

 

龍哉「異世界の門?それってクトゥルフの……」

 

 

紺子たちの通う学園にはクトゥルフ神話に出てくる生物もいる。だが一海は妖狐のはず。クトゥルフとは無縁の人外が異世界の門を使えるなんてあり得ないと言おうとしたが、紺子がその疑問に答えるように教えてくれた。

 

 

紺子「カズミンは『まだ未完成』とか言ってるけど、何でも無亞から教わった創造の門を使いたかったみたいでさぁ……」

 

龍哉「何で覚えようと思ったんだ?そこが気になるんだが」

 

一海「え?使いたかったから覚えようとしただけですけど」

 

龍哉「…………悪用する気がないならいいけど、使いすぎには気をつけろよ?一応言うが、紺子をその門に入れるとか変なことは考えるなよ?」

 

紺子「おい怖いこと言うんじゃねぇよ!?」

 

一海「大丈夫大丈夫。僕出雲姐ちゃん好きだけど、あの中に入れるわけないじゃん。ヤンデレじゃあるまいし………」

 

 

そう言って顔を紺子と龍哉から背ける一海。なぜ背ける必要があるのか、紺子は不安になった。

 

 

龍哉「あー、紺子?相談ならいくらでも聞いてやるよ?」

 

紺子「そうする」

 

 

とはいえ、一海の過去が過去なだけに仕方ないと言わざるを得ないのだが、紺子に対しての依存は本人も気づかないうちに悪化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、紺子たちはゲームセンターに到着した。

ところがいざ入ろうとしたその瞬間だった。

 

 

一般人たち『キャアアアアアアッ!!!

 

紺・一・龍「「「!?」」」

 

 

突然どこからか女性の甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 

 

紺子「何だ!?」

 

一海「今ゲーセンの後ろから悲鳴が聞こえたよ!?」

 

龍哉「なんか嫌な予感がしやがる……急いで行くぞ!!」

 

 

悲鳴が聞こえたと思われるゲームセンターの後ろへ向かう3人。そこには燦々たる光景が広がっていた。

紺子たちが見たものは不良らしき数人の倒れた人間の学生、着物姿の男に首根っこをつかまれながら持ち上げられている不良のリーダーらしき人間。

一方で不良のリーダーを持ち上げている着物姿の男は眼鏡をかけており、頭に牛の角を生やし、斧を背負っていた。

 

 

牛角男「貴様ァ…………愚かな人間風情が…………『お前テーセウスに殺された化け物だろ』と言ったか…………!?」

 

不良のリーダー「ぐっ…………な、何だこのおっさん…………!?い、息が…………!

 

 

牛角男は怒りと殺意、憎悪に満ちている血走った目で不良のリーダーを睨みつけている。

 

 

紺子「おいおいおいおい!?なんかブチギレてないか!?」

 

龍哉「チッ、無視できねぇ………!止めないと!!」

 

一海「先輩!!」

 

 

むやみに突っ込むのは危険だと言おうと一海が制止しようとしたが、その前に龍哉が真っ先に動いていた。

牛角男を止めようと走り出した龍哉は彼めがけて飛び膝蹴りを食らわせる。

 

 

龍哉「オラァ!!」

 

 

 

ゴシャッ!!

 

 

 

牛角男「オボッ!?

 

 

飛び膝蹴りが決まり、牛角男は怯むと同時に不良のリーダーの首を離す。龍哉はすぐにその人間に話しかける。

 

 

龍哉「おい!何があったかは知らねぇけど、早くそいつら担いで逃げろ!」

 

不良のリーダー「ぐっ………何でガキのテメェなんかが俺に………!」

 

龍哉「いいから行け!!あと少しのところで殺されるところだったんだぞ!?死にたくなきゃさっさと逃げろ!!」

 

不良のリーダー「チッ…………クソが!」

 

 

不良のリーダーは悪態をつくが、紺子たちから見て彼は本当に殺されかけていた。やむを得ず龍哉の言う通り仲間を起こしたり担いだりして逃げていく。

当然だが、まだこれで終わりではない。不良たちを襲った牛角男を何とかしなければならないからだ。牛角男は標的を自分を攻撃した龍哉に変え、血走った目で睨みつける。

 

 

牛角男「誰だ貴様………なぜ私の邪魔をした…………!?」

 

龍哉「通りすがりの学生だ。ところでおっさん、何があって不良たちにキレてたのかは知らねぇが落ち着け!」

 

牛角男「うるさい!!人間の分際で私に意見をする気か!?

 

龍哉「意見って、俺は―――――」

 

牛角男「黙れ!!貴様ら人間のせいで私はひどい目に遭い、ひどい仕打ちを受けてきたんだ!!そのような奴らの意見など、ひとつも聞くものか!!

 

 

龍哉は牛角男の怒りを鎮めようと説得しようとするが、見た目が人間であるためか彼の怒りはヒートアップしていく。そんな牛角男の見た目も人間だが………。

すると3人は夢でも見ているのか、牛角男の筋肉がどんどん肥大化していき、着物がどんどん破れていく。

 

 

牛角男「私は………殺さなければならない…………!!殺さなケレバナラナイッ!!貴様ラ人間共ヲォォォォォォォォォォ!!!!

 

 

牛角男の激しい怒りと憎悪に満ちた咆哮が轟く時、全身の皮膚が燃えるようになくなり、筋組織と骨格筋がむき出しになる。全身が燃える中、その炎によって新たな皮膚と鎧が作られ、口は大きく突き出す。先ほどの姿とは打って変わり、面影として残ったのは牛の角と斧だけ。

そう、その姿こそが牛角男の本来の姿。ギリシャ神話に登場する牛の怪物にして、ミノスとパシパエの間に生まれた息子。迷宮に閉じ込められ、最期は彼が言っていた英雄テーセウスに殺されたといわれる『ミノタウロス』だった。

 

 

ミノタウロス「ブモオオオオオオオオオッ!!!!

 

龍哉「ミノタウロス…!」

 

 

周囲の人々はミノタウロスと化した牛角男の姿を見るなり悲鳴をあげ、パニックを起こし、クモの子を散らすように逃げていく。

 

 

龍哉「紺子、カズミン!!他の奴らを避難させろ!!」

 

紺子「お、おう!」

 

一海「龍哉先輩はどうするんですか!?」

 

龍哉「こいつは俺に任せろ!急げ!!」

 

 

龍哉はすぐにミノタウロスに向かって走り出し、攻撃を仕掛ける。紺子と一海は人々を安全な場所に誘導させる。

 

 

一海「ちょっと、写真とか動画とか撮ってる場合!?」

 

紺子「そんなものより自分の命を大事にしろよ!!早く逃げないと死ぬぞ!?」

 

 

避難を進める一方でも龍哉はミノタウロスに攻撃し続けていた。しかし、いくら殴っても蹴ってもミノタウロスには怯む気配はなかった。

 

 

龍哉「何でだよ……!?こんなに殴ったり蹴ったりしてるのに、全然効かねぇって……!」

 

ミノタウロス「ブモォォォオオオオオオオオオオオオオ!!

 

龍哉「危なっ!?」

 

 

その程度かと言わんばかりに咆哮をあげながら龍哉に殴りかかろうとする。ギリギリで回避したのはいいものの、その速度は風を切るほどだった。もしあの攻撃を顔面に食らっていたら、間違いなく潰れているだろう。

 

 

ミノタウロス「オオオオオオオオオ………!!

 

 

するとミノタウロスの口から何かが溢れ出ているのが見えた。よく見ると、それは炎だった。

 

 

龍哉「まさかあいつ……炎も使えるのか………!?」

 

ミノタウロス「オオオオオオオオオオオオ!!

 

 

ミノタウロスは龍哉めがけて咆哮と共に炎を吐き出す。龍哉はミノタウロスの背後に素早く回ってかわすが、彼が立っていた場所には大きな焼け跡があり、地面も大きくえぐれていた。

 

 

龍哉「牛野郎、調子乗んなよ…………!これでも食らいやがれ!!龍王連撃―――――」

 

 

 

ブォンッ!!

 

 

 

龍哉「うおっ!?」

 

 

一度先輩の舌寺に仕掛けたことがある連続パンチ、龍王連撃打。それを繰り出す前にミノタウロスが背負っている斧を手にし、龍哉を斬りつける。

なんとか回避できた龍哉だったが、こう見えてその攻撃をかすっていた。見ると、腕に小さな切り傷ができている。

 

 

ミノタウロス「ブモ!!ブモォォォ!!ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

 

 

切り傷で済んだ龍哉にミノタウロスはさらに激昂し、攻撃もさらに激しくなっていく。

攻撃どころか避けるのも精一杯になっていき、やがて龍哉に疲労が見え始める。次の攻撃をかわそうとした瞬間彼は石につまづいてしまった。

 

 

 

ゴシャアッ!!!!!

 

 

 

龍哉「ガッ!!?

 

 

龍哉の全身に鈍痛が走る。ミノタウロスが自身の巨体を使った突進を仕掛けてきたのだ。

吹き飛ばされた龍哉はそのまま壁にめり込み、気を失ってしまった。

 

 

紺子「龍哉!?」

 

一海「龍哉先輩!?」

 

ミノタウロス「ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

ちょうどその時、人間たちの避難を終えた紺子と一海が戻ってきた。壁にめり込んだ龍哉を見て動揺し、駆け寄ろうとする2人。

 

 

ミノタウロス「オガアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!

 

 

そんな2人の存在に気づいたミノタウロスは一度斧を置くと、彼女たちに襲いかかる。

 

 

紺子「オゴッ!?

 

一海「うっ!?

 

 

ミノタウロスの拳が見事に直撃。2人は別の壁に叩きつけられた。

 

 

一海「うう………って、出雲姐ちゃ………!?」

 

 

幸いにも一海は軽傷で済んだが、紺子は頭から血を流しながら気を失っていた。

それを見て呆然とした一海だったが、やがて全身からどす黒い感情が沸き上がってくるのを感じた。

 

 

一海(玉藻前)「……………………貴様、やってはならんことをしたな……………………!!

 

 

自身の大事な『家族』が、『義姉』が傷つけられた一海は激怒した。再び玉藻前の人格が現れ、再び顔中に刻印が浮かび上がり、ミノタウロスを睨みつける。

 

 

一海(玉藻前)「人間に敗れ、殺された獣風情が…………妾の愛しき出雲紺子を傷つけおって……………………!!その罪、死をもって償え!!!

 

ミノタウロス「ッ!!ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!

 

 

ミノタウロスの標的は完全に一海となり、再び手にした斧を投げつけた。対して一海は妖術で斧を止めると、それをミノタウロスめがけて蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた斧はミノタウロスから外れ、一海に突進する。

 

 

一海(玉藻前)「ふんぬっ!!

 

 

突進は一海の回し蹴りによった受け止められた。だが次の瞬間。

 

 

ミノタウロス「オオオ!!

 

 

ミノタウロスが突進を受け止めた一海の足をつかんだのだ。

 

 

一海(玉藻前)「!?

 

ミノタウロス「ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

 

 

 

ビダンッ!!

 

 

 

一海(玉藻前)「ウボッ!!

 

 

一海の足をつかんだミノタウロスはそのまま地面に叩きつけ始めた。

 

 

 

ビダンッ!!ビダンッ!!ビダンッ!!ビダンッ!!

 

 

 

それも何度も何度も叩きつけた。立て続けに上空へ投げ飛ばし、再び地面に叩きつけられる寸前、一海のみぞおちに強烈なパンチを叩き込んだ。

 

 

 

ドゴォッ!!

 

 

 

一海(玉藻前)「ゲハァ!?

 

 

一海は血反吐を吐いた後、再び壁に激突。意識が朦朧としているところをミノタウロスに首をつかまれる。

 

 

一海(玉藻前)「ぐっ………ぁ……がぁぁ…………ぁぁぁ…………!

 

紺子「……………………っ……………………ううう……………………!」

 

 

ちょうどその時紺子が意識を取り戻し、目を覚ました。何が起きたのか把握しようと頭を整理しようとするが、ある光景が視界に映った。

自分たちを襲ったミノタウロスが一海の首をつかんでいたのだ。しかもミノタウロスは頚椎ごと引き抜こうとしていた。

 

 

紺子「カ……………………ズ……………………ミ……………………ン……………………!」

 

 

 

ドクンッ

 

 

 

ミノタウロスに首をつかまれている一海を目の当たりにした紺子から鼓動が強く鳴り響くと同時に、頭の中に声が響き渡った。

 

 

 

 

 

戦え……………………。

 

 

 

 

 

紺子「!?」

 

 

 

 

 

戦えと言っている……………………。

 

 

 

 

 

戦わなければ…………大事なものを失うぞ……………………。

 

 

 

 

 

声がやんだ時には紺子はうつむき、全身を小刻みに震わせていた。

 

 

紺子「…………………んなこと……………………んなこと……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「んなことさせるかぁぁあああぁあぁぁぁああああぁぁああぁああぁぁあ!!!!!

 

 

紺子の叫びと同時にミノタウロスは彼女の方に目を向ける。するとそこから無数の火球、水球、風刃、鋼刃、氷球、雷槍がミノタウロスめがけて飛んでいき、それらは全てミノタウロスに直撃。先ほどまでダメージを受けていなかったミノタウロスはさすがにこれには怯み、一海の首を離した。

 

 

ミノタウロス「ブモォ………!!

 

 

何が起きたといったような目で紺子を見るミノタウロス。彼の目に映ったのは一海のように尻尾が9本生えた紺子の姿だった。

 

 

紺子「牛野郎…………うちの大事な家族に手ェ出してんじゃねぇよ!!

 

 

ミノタウロスがまばたきをした瞬間、紺子が一瞬にして目の前に現れたかと思うと、ミノタウロスの頭を蹴り飛ばした。

突然の出来事に状況が追いつかないミノタウロスだが、紺子はさらに怒涛の攻撃を放ち、さらによろけさせる。

 

 

ミノタウロス「モッ………ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

紺子を一刀両断しようと斧を振るおうとするが、斧を持つ手を攻撃され、斧は弾き飛ばされる。さらに追い討ちをかけるように紺子はミノタウロスの股間を殴りつけた。

 

 

 

グシィアッ!!

 

 

 

ミノタウロス「オッ!?

 

紺子「ウォラァァァァァ!!」

 

 

 

ドグオォォォォォォン!!!!!

 

 

 

ミノタウロス「!?!?!?!?!?!?!?

 

 

とどめとばかりに紺子にみぞおちを殴られ、ミノタウロスの巨体が吹き飛ばされる。

壁に叩きつけられたミノタウロスはそのまま崩れ落ち、倒れ込む。続けて全身が再び炎に包まれたかと思うと、人間の姿である牛角男に。それを見届けた後、紺子の尻尾の数は元の1本になり、すぐに一海の元へ。

 

 

紺子「カズミン!おいカズミン、しっかりしろ!」

 

一海(玉藻前)「…………う…………す、すまぬ…………出雲紺子…………妾のしたことが…………

 

紺子「あんまりしゃべんな!何とかすっから………!」

 

 

紺子はみのりを尾行する前の時のように静かに目をつぶり、静かに精神統一。両手を一海に向けて前へ差し出すと、印を結ぶ。

 

 

紺子「癒しの風よ、汝の傷を埋めよ。出雲流妖術“命癒ノ術”

 

 

すると不思議なことに一海の傷がみるみる塞がっていき、数十秒も経たないうちに完治してしまった。そればかりか玉藻前の人格も刻印もまた消えていった。

 

 

一海「ありがとう出雲姐ちゃん………けど………出雲姐ちゃんの頭が…………」

 

紺子「え?」

 

 

紺子はまだ頭から血を流しており、今度は一海が両手を紺子に向けて前へ差し出し、印を結ぶ。

 

 

一海「今度は僕が治すね…………霊術“治癒ノ風”

 

 

紺子が一海の霊術を受けている中、ミノタウロスだった牛角男が意識を取り戻し、起き上がった。

 

 

牛角男「う…………い、痛い…………体中が痛い…………特に股間が…………」

 

 

紺子と一海も牛角男が起き上がったことに気づいた。2人はすぐに牛角男に近づくと、彼もそれに気づいたように話しかけた。

 

 

牛角男「え!?ちょ、大丈夫ですか!?」

 

 

紺子の頭から流れている血を見るや否や驚愕する牛角男。

 

 

一海「大丈夫だって?お前はこれが大丈夫のように見えるのか?出雲姐ちゃんを傷つけたのお前じゃないのか?」

 

牛角男「え?一体何のこと………って、何ですかこの大惨事!?何があったんだ!?」

 

一海「とぼける気か!?これやったのお前だけだぞ!!」

 

牛角男「私がやった……!?で、ですが私は覚えてませんよ!?覚えてるのは不良たちがわざと私にぶつかってきたまでで……!」

 

一海「まだ―――――」

 

 

詰問を続けようと何か言おうとする一海だが、すっかり完治した紺子がそれを制止する。

 

 

紺子「もうやめろ。それ以上何言っても無駄だ。たぶんやり過ぎて記憶障害起こしてるかもしれねぇ。それより龍哉を助けねぇと」

 

一海「そうだった!先輩を運ばないと!」

 

 

牛角男の突進を食らった龍哉はまだ気を失っており、壁に埋もれたままである。

 

 

紺子「まあ運ばなきゃダメだけど、どっか安全な場所に行かねぇとな」

 

牛角男「あっ、ちょっと……」

 

 

正気を取り戻した牛角男を無視し、壁から龍哉を引っ張り出す紺子と一海。龍哉を背負ったのは紺子で、2人はこの場から離れることに。

途中パトカーのサイレンの音が耳に入ったが、あの牛角男はこれから逮捕されるんだろうと思い、気に留めなかった。

 

 

紺子「さて、どこに行けばいいやら………」

 

 

EVOLUTON SPACEに行こうかと考えていたが、距離が長すぎる。するとたまたま近くを通りかかった龍華に声をかけられた。

 

 

龍華「ん?紺子とカズミンじゃねぇか……って、何でお前らボロボロなんだ?紺子は兄貴背負ってるし、どうしたんだ?」

 

紺子「そういう龍華こそどうしたんだ?」

 

龍華「ああ、マスターの頼みでコーヒー豆を買いにな。『ブルーマウンテン』、『ハワイ・コナ』、『モカ』、『エメラルドマウンテン』を頼むって言われたんだ。で、お前らが立ってるトコはコーヒー豆専門店の前ってわけ」

 

一海「え?」

 

 

紺子と一海はコーヒー豆専門店といわれる店の方に視線を移すと、誰かが店から出てくるのを目にした。

 

 

???「そんじゃ行ってくるっす~」

 

紺子「ゲッ!?『ペロリスト』!?」

 

???「うひょ?紺子っち?」

 

龍華「舌寺先輩!?何で舌寺先輩がここに!?

 

 

店から出てきた紺子たちの先輩、赤井舌寺。彼の姿を見るなり紺子はまた腹とへそを舐められると思ったのか一海の背後に隠れ、一海は警戒しながら舌寺を睨みつける。

 

 

舌寺「って、何でみんなボロボロなの?ていうか龍哉っちどうしたの?」

 

一海「そう言う出雲姐ちゃんのお腹舐めまくってたペロリスト先輩こそここで何してたの?

 

舌寺「え?買い物だけど?店長のお使いで」

 

紺・一・龍「「「店長?お使い?」」」

 

 

気絶している龍哉を除く3人が一斉に首をかしげる。

 

 

舌寺「というかここ、()()()()()()()だよ」

 

 

店の入り口の上には『ハイドラの息吹』と書かれたアンティークな看板があった。

 

 

舌寺「とりあえず入る?店長に伝えとくから」



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