はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常 (鶏唐)
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主要人物紹介

特に見なくても困りません。

2016/06/11 加筆
 MUGEN世界との融合による影響、虎徹の神器について追記



主要人物紹介

 

 

 

名前:八代 虎徹(やしろ こてつ)

職業:学生

技能:神器「ソロモンの日記帳」

   ソロモンの書いた日記帳。中身は悪戯用の魔法円やソロモン72柱から聞き出した

   大がかりな魔法円と使い方、執務時代の愚痴などが書かれている。

   しかし、書かれているのは古代ヘブライ語なので虎徹は読めない。

   また、ソロモン72柱の分霊達が封印されていた。

 

紹介:本編の主人公。

   興味を持った事には何でも首を突っ込みたがる問題児。

   大体の騒動の原因その一。

   逆に興味の無いことにはやる気を出さないのだが一度決めた事には全力投球。

   例えそれが間違った方向だろうと最後まで突っ切る。

 

   家族構成は父、母、居候との4人暮らし。

   料理上手な母の食事を日常的に食べているためか妙に舌が肥えてしまっている。

   しかし本人の料理の腕は壊滅的で周囲から止められるほど。

 

   大量の本を召喚する神器を所有しているが謎に包まれている。

   神器に関しては謎パワーを持った枕になる本、と言う認識でしかない。

 

   中学時代にティナから騎士の駒をもらう。

 

   10数年前に格闘ゲームの世界と融合させて、更にMUGEN世界と融合させた。

   当の本人にその自覚はない。

 

 

強さ:このカオスな世界では珍しい一般人。

   運動神経はいいのだが格闘的センスが壊滅的に無い。

   最近、武器を持とうか検討中。

 

一言:「今日は誰に飛び道具の出し方を教えてもらおうか」

 

 

 

 

名前:服部 半蔵 保長(はっとり はんぞう やすなが)

職業:学生 兼 忍者

技能:忍術

紹介:自称、虎徹の腹心にして大体の騒動の原因その二。

   虎徹の幼少期からの幼馴染であり、虎徹の事を”殿”と呼んで慕っている。

   虎徹と二人セットになるとボケが加速して手が付けられない。

 

   家族構成は父、母との3人暮らし。

   純粋で疑う事を知らず、父親が何故忍者を辞めたのかも知らない。

   長期休暇は毎回、父親の実家である忍びの里で修行している。

   21時に就寝、4時に起床と早寝早起き。

 

   洋菓子が大好きで常に新作が出ていないかチェックしている。

   その割にはカタカナ文字が苦手。

 

   中学時代にティナから兵士の駒を3つもらう。

 

   融合した世界でMUGEN界の忍者達のせいでカオスになるだろう一人。

 

強さ:戦闘は可能だが、その強さを披露するような機会は琢磨の実験機と相手する時だけ。

   まだ修行中のため数える程度の忍術しか扱えない。

   伊賀の忍術だけでなく他流派の忍術も多少使える。

 

一言:「殿ー!拙者も参りますぞ!」

 

 

 

 

名前:高藤 琢磨(たかふじ たくま)

職業:学生 兼 科学者 兼 情報屋

技能:機体開発、道具作成

紹介:虎徹達のグループの参謀的役割。

   虎徹とは中学校で知り合う。

   ボケの多い中で数少ない突っ込みにしてストッパーだが、悪ノリする。

 

   戦災孤児であり、原作のティセの開発者ロンブローゾ博士に拾われ、その技術を磨く。

   ロンブローゾ博士の周りにいるメイドが個性的過ぎるのでティセのような自動人形を開発。

   現在は一人暮らし。

 

   博士号を持つため様々な研究者とのコネがある。

   バイトとして情報屋もしているので虎徹達の中で最も現在の世界事情を把握している。

   超常的な現象がある事は認めてはいるが科学的に説明がつかない事が苦手。

 

   中学時代にティナから僧侶の駒をもらう。

 

強さ:運動音痴であり本人も昔は改善しようとしたが今は諦めている。

   しかし琢磨が開発したロボットや自動人形の強さは異常な強さを持っている。

   多分、やろうと思えば世界制服も可能。

 

一言:「虎徹達の言うガ○ダムを作るにはまだ時間がかかるな」

 

 

 

 

名前:結城 明日奈(ゆうき あすな)

職業:学生

技能:料理

紹介:「ソードアート・オンライン」のヒロイン。

   虎徹達のグループでの自称、常識担当。

   虎徹とは中学校で知り合う。

   当初は家族との亀裂もあり冷たい印象だったが現在では天然ボケで、よく暴走する。

   

   家族構成は父、母、兄。

   両親の仲が悪く、兄も修行のため世界中を歩き回っていたため、

   精神的に参っていたところを虎徹の母に救われる。それ以降は家族の仲は良好。

 

   虎徹の母、虎徹には感謝しており虎徹達のグループに仲間入りする。

   毎週、八代家で虎徹の母に料理を教わっており月に一度、虎徹達への品評会を行っている。

 

   中学時代にティナから騎士の駒をもらう。

 

強さ:運動神経は高いが、あくまで一般人としてのレベル。

   しかし傍には魔界大帝フェルナンデスがいるため危険は無い。

   本人も特に強さには興味が無い。

 

一言:「フェルちゃん!お兄ちゃんを食べちゃ駄目だよ!」

 

 

 

 

名前:ティナ バティン

職業:学生 兼 上級悪魔

技能:薬草、宝石の知識、人の転送

紹介:虎徹達を更なるカオスへと引きずりこんだ元凶。

   虎徹達のグループのリーダーで1年上の先輩。

   虎徹とは中学校で知り合う。

   好奇心旺盛で楽しければそれでいい、と言った享楽主義。

 

   家族構成は不明。

   高級マンションで暮らしているが、思い立ったら即行動のためあまり家にはいない。

   ふと思いつけば自身の能力で何処にでも転移しては騒動を巻き起こしている。

 

   ライザーとは実家が隣同士の幼馴染。

   ただ冥界の上級悪魔であり領土も広いので、それほど親交があったわけでもない。

   愛嬌があり他者の心に敏感だが自分に向けられる感情には疎く、ライザーの好意に気づいていない。

 

   中学時代に虎徹、半蔵、琢磨、明日奈に自身の悪魔の駒を渡す。

 

強さ:レーティングゲーム無敗の記録を持つ。

   駒を必要とせず、たった一人で勝ち抜く強さを持ち一目置かれている。

   一時期、天狗なっており三大貴族に勝負を挑み全て敗北している。

 

一言:「今日はトラちゃん達と何をして遊ぼうかしらね~」

 

 

 

 

名前:リアス グレモリー

職業:学生 兼 上級悪魔

技能:滅びの魔力

紹介:原作「ハイスクールDxD」のヒロイン。

   神器持ちの虎徹を警戒する内に関わるようになる。

   原作よりも人間と関わっているためか感情を表に出しやすい。

   よく虎徹と朱乃にからかわれている。

   

   家族構成は変わらず父、母、兄の4人家族。義姉と甥っ子もいる。

   現在はティナとは違う高級マンションを貸しきっており小猫、祐斗もそこに住んでいる。

   最近は虎徹への対抗心からか料理の修行をしている。

 

   冥界で教わった人間界とのギャップに毎日苦労している。

   とは言え、気兼ねなく話せる友人達との生活を楽しんでいる。

   

   バアルの分霊のせいで融合した世界で、前の世界の感覚となっている。

   悪魔なのに常識人枠に選ばれてしまった。

 

強さ:レーティングゲームは未経験。

   ティナとの訓練と称したはぐれ悪魔狩りにより腕は磨いているがまだ未熟。

   滅びの魔力による遠距離からの攻撃は強力だが本人よりも強い相手だと効果は薄い。

 

一言:「虎徹に朱乃!何でこういうときだけ息がぴったりなのよ!」

 

 

 

 

名前:姫島 朱乃(ひめじま あけの)

職業:学生 兼 転生悪魔(ハーフ堕天使) 兼 巫女

技能:除霊術、雷

紹介:原作「ハイスクールDxD」のヒロインにしてリアスの女王。

   リアスと同じく神器持ちの虎徹を警戒する内に関わるようになる。

   虎徹がリアスをからかうのに共感、自らのSを自覚して共にからかうようになった。

   

   家族構成は父、母、地球意思、居候の恐らく本作で最も変な家族構成。

   原作とは違い地球意思のおかげで母が亡くなる事も無く父と仲違いする事も無い。

   7歳の時にとある事件に巻き込まれて冥界に飛ばされ、リアスと出会い悪魔に転生した。

   信仰の対象が神ではなく地球意思のため、頭痛に悩まされる事も無い。

 

   冥界での暮らしが長かったため現在の人間界に若干着いていけない。

   明日奈と共に虎徹の母から料理を教えてもらっている。

   最近は我侭なオロチを宥める事が多い。

 

 

強さ:今はまだ未熟だが将来恐ろしい強さになる事を約束されている。

   父親からは堕天使としての力を、母親からは巫女としての力を、

   地球意思からは自然を操る力を、居候からはワイヤーを使った技術を教わっている。

 

一言:「あらあらオロチ様、グリーンピースを残しては駄目ですわ」

 

 

 

 

名前:搭城 小猫(とうじょう こねこ)

職業:学生 兼 転生悪魔(猫又)

技能:仙術

紹介:原作「ハイスクールDxD」のヒロインにしてリアスの戦車。

   リアスと琢磨に着いて行ったところで虎徹に出会う。

   口数は少なく、たまに出てくる言葉も毒舌か甘味に関する言葉がほとんど。

 

   家族構成は姉一人だが現在行方不明中。

   虎徹達の通っていた中学とは別の中学に祐斗と一緒に通っている。

   最近知り合った猫娘と遊んでいたり半蔵と甘味処を探して人間界を満喫している。

 

   始めは虎徹が神器持ちと言う事や、フェルナンデスを召喚した事もあり心配はしていた。

   が、本人の何処までも一般人な姿に真剣に考える自分が馬鹿らしくなる。

   

強さ:猫又ながらも悪魔の駒による怪力と高い防御力で前衛をこなすも未熟。

   最近、仙術の応用で波動拳を覚えた。

   また、補助系の仙術を若干扱える。

 

一言:「本当に八代先輩はバカですね。いえ、褒め言葉です」

 

 

 

 

名前:木場 祐斗(きば ゆうと)

職業:学生 兼 転生悪魔(人間)

技能:剣術、スピード

紹介:原作「ハイスクールDxD」のイケメン担当にしてリアスの騎士。

   小猫と同じ理由で虎徹と出会う。

   人当たりがよく温厚な性格だが聖剣と速さに関しては別人のようになる。

 

   家族構成は無し。現在はリアスが貸しきっているマンションの一室に住んでいる。

   小猫と同じ中学に現在通っている。

   中学校では同級生のビーフジャーキー好きのグラサンと行動している。

   

   虎徹達については一緒にいて飽きない面白い先輩といった印象を持っている。

   ただ、ティナについてはとある理由から苦手意識を植え付けられてしまった。

 

強さ:魔剣と扱うスピードタイプで同級生と闘い腕を磨いている。

   何気にグレモリー眷属の中で一番人間界に適応している。

   最近、誠の字を背負った人の剣術道場に通っているらしい。

 

一言:「師範、僕はもっと速く、強くなりたいんです」

 

   

   

名前:フェルナンデス

職業:魔界大帝

技能:暴れる

紹介:格闘ゲーム「わくわく7」のラスボスにして本作のマスコット担当。

   虎徹の神器の魔力を使って明日奈を召喚主として人間界に召喚される。

   神器の魔力が古く強力なものらしく召喚主の明日奈に逆らえない。

   自由気侭に暮らしていたので明日奈以外には我侭。

 

   家族構成は兄が一人。現在は冥界の奥深くで破壊を繰り返しながら弟を探している。

   明日奈の家で暮らしており明日奈の兄を相手に道場で暴れてストレスを発散している。

   普段は手乗りサイズの大きさとなって明日奈の肩に座っている。

   

   家では明日奈にお菓子を貰い、学校では女生徒達からお菓子を貰い撫でられている人気者。

   天敵は何かと解剖しようと狙ってくる琢磨。常に背後を取らせないように気をつけている。

 

強さ:冥界の4割を領土としており冥界でも最大の領土、のはずだった。

   融合した世界の影響で領土の数は変化していないが冥界が広がった事により全体の1割にも満たない。

 

   暴れる威力が凄いので眷属はおらず兄と二人っきりの勢力。

   召喚され制約がかかっていようが主要人物の中で圧倒的強さを持つ。

   

一言:「アキラ、また相手をするデスデスデッスーン!」

 

 

 

 

名前:ライザー フェニックス

職業:上級悪魔

技能:炎 再生

紹介:原作「ハイスクールDxD」の登場人物にして恐らく本作で一番キャラ崩壊している。

   虎徹が中学時代にティナに近づくために八代家へと居候する。

   始めは傲慢な態度だったが八代家のペースに流されてしまい人間界に染まってしまった。

 

   家族構成は父、母、兄二人、妹の5人家族。

   八代家に居候しているが眷属もいるため週に何度かは実家に帰っている。

   人間界に来てから駒王町のプロ野球チーム「駒王フェニックス」のファンとなる。

 

   ティナが中学を卒業してからの1年間は自身を鍛えるため世界中を放浪。

   下手な悪魔よりも強い人間やどう見ても人間じゃない者を相手に鍛えていた。

   度胸や実力は着いたがティナを前にすると挙動が怪しくなる。

 

強さ:原作以上にパワーアップを遂げている。

   持ち前の火力でゴリ押し+再生による長期戦も可能。

   また、世界中を旅した事で視野も広がりレーティングゲーム連勝中。

 

   

 

 



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入学編
第1話


暇つぶしに執筆をしました。
気が向いたら更新します。


10/26 誤字脱字を修正しました。



 

駒王学園に入学して3日経ったが俺、八代虎徹(やしろ こてつ)

未だこの光景に慣れていなかった。

中学3年での進路調査、クラスメイトの女子からは

ここがお勧めと聞いていたので受験して何とか受かったのはよかった・・・が

 

 

「去年まで女子高とか聞いてねぇよ・・・」

 

 

そう、駒王学園は今年から共学となっていたのだ。

当然上級生は全員女子、同級生でさえ男子はほとんどいない。

ここを勧めたクラスメイトとはこの学園でも同じクラスとなり、

当然俺は文句を言ってやったが、本人は

 

 

『え、八代君。てっきり知ってると思ってた』

 

 

なんて事を言い出す始末で怒るに怒れなかった。

と、いうよりもその後の自己紹介や休憩時間に突き刺さる女子からの視線が痛いこと。

 

 

「殿、いい加減に慣れたらどうでござるか?」

 

「まぁお前たちがいるから慣れて来てはいるけどよ。そうじゃなかったら入学3日にして不登校になるところだったぜ」

 

 

時代錯誤な口調に俺を『殿』と呼んでくるのは小学校からの腐れ縁である服部半蔵(はっとり はんぞう)だ。

口調といい名前といい忍者である。実際忍法が使えるらしい。

出会った頃から何故か俺を『殿』と呼んでくる変わり者だ。どう考えても生まれてくる時代を間違ったとしか思えない。

 

 

「ふむ。まぁ僕としては気兼ねなく実験できるスペースも確保できそうだし気に入っているがね」

 

 

なんてクールに言って眼鏡をクイッと上げる無駄に白衣を着こなしている男子生徒。

こいつは中学からの友人で高藤琢磨(たかふじ たくま)

しょっちゅうよく分からない発明品を開発している自称天才科学者だ。

この間は転送装置とかいうのを作ってたな、忘れ物をした時に便利そうだ。

 

 

「そうでござるよ。殿も琢磨のように、”ぽじてぃぶ”になるでござる!」

 

「そりゃそうだけどなぁ・・・」

 

 

テンションの上がらない俺を半蔵が励ましてくれるのは嬉しい。

だが、どうしてもテンションの上がらない理由があるのだ。

確かに女子ばかりで観察されて気が滅入ってしまうのもある。

しかしそれ以上に・・・・

 

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

「何であいつらあんなに見てくると思うよ。俺何かしたっけな」

 

 

そう、昨日からやけに視線を感じるのだ。

最初は偶然かと思ったが気づけばあの二人は俺の視界にいた。

 

 

「グリズリーと鬼島だっけか、あいつら」

 

「リアス・グレモリーと姫島朱乃(ひめじま あけの)だ虎徹」

 

 

あぁ、そうそうそんな名前だったな。

まだ3日目なんだから覚えれられないっての。

 

 

「一昨日の交流会で何か粗相をしたのではござらんか?」

 

「グレモリーさんは欧州出身のようだからな。僕たちには分からない独自の文化があるかもしれないぞ」

 

「つってもな、一昨日はクラス全員でカラオケ行ったりして遊んだだけだろ?」

 

 

入学式初日にクラスメイトの一人が皆で親睦を深めようと言い出した。

どうやらうちのクラスはノリのいい連中が多いようで俺も折角なので、と便乗していた。

さすがにカラオケに30人近くは入らないから幾つかの部屋を借りたりしたがな。

 

 

「確か後半あたりで虎徹はあの二人と同じ部屋になっていなかったか?」

 

「そういえば同じ部屋だったな。確かその場のノリで一発芸をした気がするな」

 

「一発芸というと例のアレか?」

 

「そう、これ」

 

 

俺は視線を自分の机の上に向ける。

すると何もない空間から本がドサドサッと落ちてきた。

1冊1冊が図鑑みたいに分厚い本だ、それも20冊近くある。

何故かは知らないが気づけばこんな事ができるようになっていた。

しかもこの本、よく分からない言語で書かれていてちっとも読めやしない。

他の連中からは白紙にしか見えないとか言う始末で俺は早い段階でこの謎を解き明かすことを放棄していた。

 

 

「ふむ、相変わらず謎だな。どうせなら他の生徒みたいに面白い一発芸にすればよかったのに」

 

「いーんだよこれで。枕になるしな」

 

「さすが殿でござる!そのような使い方があったとは!」

 

「半蔵の忍術の方が十分面白いけどな」

 

 

一昨日の交流会で俺が披露したこの一発芸。

だがやはり世の中は広い。

何とクラスの8割が俺よりもすごい一発芸を持っていたのだ。

火や水、電気を出すわ何処からともなく槍を出すわ空中浮遊するわで俺の方が驚いた。

 

 

「おかしくね?何であいつらが格好よくて俺のは枕にしか使えない本なんだよ!」

 

「殿、論点がズレてきてるでござる!」

 

「おぉう、そうだった。でも何で本出しただけで注目されなければならないんだ?」

 

 

よほど本が好きなんだろうか?

でもあの二人にも本は見せたが何も見えないって言ってたしなぁ。

 

 

「おはよう、3人とも。何の話をしてるの?」

 

 

俺たちが頭を悩ませていると一人の女生徒が声をかけてくる。

ってこの声は・・・・元凶か。

 

 

「あぁ、おはよう結城さん」

 

「おはようでござるよ結城嬢」

 

「なんだ元凶か」

 

「もうっ!八代君、しつこい男は嫌われるよ!」

 

「へいへい、悪かったよ結城。おはようさん」

 

 

この女こそが俺をこの駒王学園に進めてきた結城明日奈(ゆうき あすな)だ。

栗色の髪を背中まで伸ばして容姿端麗、性格良し、頭脳明晰、運動神経抜群、おまけに家は金持ちと、

お前何処の漫画のキャラだと言わんばかりの完璧超人である。

中学の時、とある事をきっかけに俺達3人と共に行動をするようになった。

 

 

「うんうん。おはようございます。で、何を話してたの?」

 

 

俺達が挨拶を返すと首を傾げて疑問を再度投げてきた。

そんな仕草でさえ普通に可愛く見えてきて俺は首を横に振って幻想をかき消す。

 

 

「ほらあの二人が俺に熱視線を送ってるって話だ」

 

「あぁ、グレモリーさんと姫島さんだね。そういえば何でだろうね?」

 

「やはり殿の素晴らしさに気づかれたのでは!?」

 

「何!?そうか、カリスマってーの?そんなのが溢れてるのか!」

 

「「いや、それはない」」

 

 

結局疑問は解決しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

私、リアス・グレモリーは上級悪魔の一人だ。

今年から人間界で通う事になった駒王学園はグレモリー領土のひとつであり、

私以外にも悪魔が通っている事は知っている。

だがそんな彼女たちよりも私はとある人間を一昨日から調べていた。

 

 

「八代虎徹、調べてもそれらしき情報は無し、か」

 

「えぇ、だけれどもあの時彼から感じた力は間違いないですわ」

 

 

情報をまとめてくれた私の眷属である『女王』の朱乃の言葉に私は頷く。

クラスの交流会で時間も経った時、とあるクラスメイトから発せられた一発芸大会。

 

 

草薙京(くさなぎ みやこ)!手から炎出すぜ!」

 

「甘いわね!二階堂紅(にかいどう くれない)!電気を発生させるわ!」

 

「「「「 服部半蔵!分身の術でござる!」」」」

 

「「「「「すげぇっ!?」」」」」

 

 

人間であり神器も無いのに異能を持つクラスメイトたちに顔が引きつるのを止められなかった時に、それは起こった。

彼、八代虎徹の一発芸は複数の分厚い書物を召還した。

 

 

「うーす、出席番号27番 八代虎徹!本出すぜ」

 

「何か地味」

 

 

グサッ

 

 

「ぐはっ!自分でも分かってるってーの!」

 

 

その書物からは悪魔と天使の力を、そして神器の力が感じられたのだ。

神器所有者が、それも今年から共学になったこの駒王学園に来る。

何か狙いがあっての事なのか私は朱乃だけでなく近辺の中学に通っている二人の眷属にも調査を命じていた。

しかし結果は特になし、単なる偶然なのかしら?

 

 

「やっぱり手っ取り早く本人に聞くのが一番かしら」

 

「案外それが一番かもしれないですわね。さすがに2日続けて注視しているのもバレているようですし」

 

 

今も4人で集まってはこちらを気にしたように視線を向けてくる。

他のクラスメイトにも変な誤解を与える前に行動に移した方がよさそうね。

私が八代虎徹に声をかけようとした時、教室のドアが開きちょっとしたざわめきが起こった。

 

 

「あの方は・・・」

 

「ティナ・バティン・・・」

 

 

1学年上のティナ・バティン。駒王学園に通う悪魔の一人だ。

本来成人してから行われる悪魔のステータスとも言えるレーティングゲームで今のところ全戦全勝。

それも従者を引き連れずたった一人で勝ち抜いてきている強者。

私とは対照的に青く長い髪を靡かせてこちらへといつもの悪戯好きな笑みを浮かべてくる。

 

 

「はーいリアスちゃん。久しぶりっ」

 

「えぇそうねティナ。それでわざわざ何の用かしら?」

 

「堅いわねぇ。もっとゆるーく楽しく行きましょうよ」

 

 

人間界の学園に通う悪魔は基本不干渉が暗黙の了解だ。

まぁソーナとは幼馴染という事もあってその例外だけれども。

 

 

「実はね、貴方の活動拠点として旧校舎の一室を用意しているの」

 

「旧校舎?」

 

 

ティナからの言葉に私は旧校舎へと視線を向ける。

確かに人払いの術式が展開されているみたいね。

 

 

「まぁ他には私達もいるけど階が違うから大丈夫だよね」

 

「・・・・私達?ソーナも使うということ?」

 

「ん?ソーナちゃんは必要ないって言ってたわよ」

 

 

となると他にこの学園で悪魔の生徒はいないはず。

しかしそれではティナが私達、と言った事に説明がつかない。

 

 

「じゃあそういう事でっ!」

 

 

私が説明を求めようとするとティナは片手を上げてそのまま去っていく。

しかしそれは教室の出口ではなく・・・・

 

 

「ようこそトラちゃん!皆!お姉さんは会いたかったよ~!」

 

「先輩はしゃぎ過ぎだろ!」

 

 

先ほど私達が警戒していた八代虎徹の元へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩はしゃぎ過ぎだろ!」

 

「だってこの1年、お姉さんは4人が来るのを寂しく待ってたんだよ~」

 

 

そう言ってこっちに抱きつこうとしてくるのを頭を抑えて止める。

ティナ・バティン先輩、中学時代からの付き合いでまぁ色々とトラブルを起こす人でもある。

まぁ俺達もそれに付き合って騒いだのは確かだけどな。

 

 

「って待て、結城!お前まさか先輩がこの学園にいることを知って俺を嵌めやがったな!」

 

「え、八代君。てっきり知ってると思ってた」

 

 

返って来たのは以前にした質問の答えと全く同じだった。

何でこいつは普段頭が切れるくせに変なところで天然なんだ・・・

 

 

「え~トラちゃん達は私がいるからここに入学したんじゃなかったの?」

 

「いや、単純に家から近かったし。結城がここがお勧めって言うから」

 

「拙者は殿が行かれる場所ならば何処までもお供するでござる!」

 

「僕はこの二人といると飽きることがないからだな」

 

「私は親からも勧められてて・・・あ、でもティナ先輩がいるのは知ってましたよ!」

 

「うわ~ん!やっぱりアスナちゃんはいい子だよ~!」

 

 

泣きながら結城へと抱きつく先輩。

結城もあはは、と笑いながら先輩を慰めている。

これじゃあどっちが年上か分かったもんじゃない。

 

 

「ティナッ!」

 

 

と、俺達がいつものやり取りをしていると邪魔してくる奴が現れた。

一昨日から俺を監視しているグリズ・・・グレモリーと姫島だ。

何やら厳しい視線で先輩と俺に一瞥をくれる・・・何ガンつけてんだコラ。

 

 

「まさか彼らが貴女の眷属なの?」

 

「ん~?今のところはまだ眷属ではないかな。それに皆知らないし」

 

 

結城の胸から顔を上げて首を傾げながらそう返す先輩。

っつうか眷属って何だ?

何かグレモリーが難癖を付けて先輩がのらりくらりと交わす様をぼけーっと見ていると・・・

 

 

「八代君、ですわよね?」

 

「ん?あぁ、あんたはおに・・・姫島だったよな」

 

 

姫島がこちらに話しかけてきた。

はて、あれだけ遠めに監視しておいて近づいてくるとは一体どういった風の吹き回しだろうか?

 

 

「その、ティナさんとは何処でお知りあいになられたのですか?」

 

「何処って同じ中学出身だけど。後こいつらも・・・」

 

「ねぇ姫島さん。何で八代君を見てたの?」

 

 

まさかのド直球である。

しかも会話の流れをぶった切って。

結城、お前って奴は本当に時々空気読めてないよな。

 

 

「え、えーとそれは・・・ですね」

 

「それは?」

 

「・・・そ、そう!以前に何処かで見かけたような気がしたりしなかったりしまして!」

 

「あ、そういう事だったんだ」

 

「まぁ確かに僕達は姫島神社で祭りなどで遊んだからな。その時に虎徹の顔を見たのかもしれないな」

 

 

あぁ、姫島ってどこかで聞いたのかと思えばあの神社か。

それなら何度か祭りに行った事があるな。

 

 

「おほほほ。そ、そうなんですの」

 

「そうか、悪かったな。祭りとは言えはしゃぎ過ぎた。全ては結城のせいだ」

 

「何で!?八代君が率先してやりだしたよね!?」

 

「馬鹿言うな。言いだしっぺは琢磨だ」

 

「違う、僕は無実だ。半蔵だろう」

 

「拙者ではござらん!と、殿が・・・」

 

「・・・貴方達、何の話をしていますの?」

 

 

どうやら苦情を言いに来たと思ったが勘違いのようだ。

俺達は姫島から一斉に視線を逸らした。

いや、ちょっと前科がありすぎて・・・

 

 

「な・に・を、しましたの?」

 

「さ、さぁ何だっけ半蔵?」

 

「せ、拙者物覚えが悪い故、琢磨?」

 

「む・・・新しい研究を思いついた。というわけで後は頼んだ結城さん」

 

「え、えぇっ!?えーとその、や、八代君が!」

 

 

くっ、こうなったら誰かを生贄に逃げるしかないな。

そう思い口を開こうとしたときだった。

 

 

「トラちゃん。それじゃ私は帰るから放課後に旧校舎に寄ってね~」

 

 

これは好機!

 

 

「はい!後で必ず寄りますよ。おい姫島。グレモリーが会話に入れず寂しそうにしてるぞ」

 

「だ、誰もそんな顔してないわよっ!」

 

 

話の矛先を逸らすためグレモリーの話題を出すと姫島の視線が和らぎグレモリーに向かう。

当の本人は図星なのか怒りなのか顔を赤くして吠えていた。

 

 

「あらあらリアス。放っておいてごめんなさいね」

 

「違うったら朱乃!これは彼が・・・」

 

「いえいえ、私には分かっていますから」

 

 

どうやら姫島も俺と同種の人間らしい。

弄れる人を見たら一先ず弄る。

グレモリーも弄り甲斐のありそうな奴だしな

最初は大変な学園に来てしまったと思ったが、こんな面白い連中ばかりなら楽しくなりそうな予感がした。

 

「だーかーらー!朱乃!分かっててからかってるでしょう!」

 

「あらあら。何の事かしら、ねぇ八代君?」

 

「あぁ全く何を恥ずかしがっているのやらグレモリーは・・・」

 

「何で貴方達そんなに息が合ってるのよっ!」

 

 

 




基本は虎徹、半蔵、琢磨、明日奈の4人と悪魔3人(リアス、朱乃、ティナ)で展開していきます。

モブキャラなどは、まぁ今回のように何処かで見たような、聞いたような人達になります。



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第2話

正直な話、私は原作は全く見ておらず軽いノリで執筆しています。
タグにもあるSAOは昔オンライン小説で読んだ記憶が若干ありますがほぼ忘れています。

執筆の目的が暇つぶしなので気軽に見てください。

10/26 誤字脱字を修正しました。


グレモリーが”弄ると面白い反応を返してくれる奴”と分かった日の放課後。

俺達は先輩の言ったように旧校舎へと向かっていた。

旧、と言う名が付くだけあってボロい建物だ。

 

 

「新校舎にも部室棟があっただろうに何故こっちなんだろうな」

 

「と言うよりも何故私達まで一緒に行動しなければならないのよ」

 

「まぁまぁグレモリー嬢も向かう場所は同じなのでござろう?旅は道連れ世は情け、でござるよ」

 

「それにしても皆さんは大丈夫なんですの?」

 

 

グレモリーと姫島は何やら部活動を作り部室が俺達と同じ旧校舎のようで同行していた。

俺、半蔵、琢磨、結城、グレモリー、姫島の6人で旧校舎を目指すしていると、姫島が変な質問をしてきた。

 

 

「大丈夫?何がだ?」

 

「確かに変ね・・・コテツ、貴方達ティナから何かもらっていない?」

 

「何かって、先輩にもらったものと言えばこれか?」

 

 

俺は鞄につけているキーチェーンのソレをグレモリーに見せる。

そこにはチェスの駒である騎士(ナイト)、要は馬の形をしたキーホルダーだ。

結城も俺と同じく騎士(ナイト)のキーホルダー。

半蔵は兵士(ポーン)が3つ連なったキーホルダー。

琢磨は僧侶(ビショップ)のキーホルダーをそれぞれ先輩から以前に受け取っていた。

何でも常に持ち歩いているといいことがあるらしい。

 

 

悪魔の駒(イービルピース)、使っていないという事はやはりコテツ達はティナの眷属候補なのね」

 

 

何かまた変な事をブツブツと言い出しやがるグレモリー。

っていうか何でこいつは俺のことを名前で呼んでるんだ。

 

 

「まぁ正直チェスなんてやった事も無いから分からないんだけどな」

 

「拙者も将棋なら分かるでござる」

 

「私は簡単なルールくらいなら知ってるけど、他の駒はどうしたんだろう」

 

「バティン先輩のことだ。どこかの土産だろう」

 

 

琢磨の言う通り、先輩は放浪癖でもあるのか中学時代もよくどこかに出かけていた。

で、帰って来ては俺達に土産を色々とくれたもんだ。

土産話の方は大半がうそ臭い話ばかりだったけどな。

 

 

「そういえばお前達の関係がさっぱり掴めないんだが。グレモリーと姫島は何処で知りあったんだ?」

 

 

グレモリーは欧州から来た留学生らしいし、姫島はこの街にある神社の娘だろう?

まるで接点が見当たらない。

 

 

「えぇ、私は時々日本には来ていたのだけどその時に知り合ったのよ。ねぇ、朱乃」

 

「はい。昔からリアスはお転婆で付き合わされるこちらが大変でしたわ」

 

「ちょ、ちょっと何を言ってるのよ!朱乃だって大して変わりないじゃない!」

 

 

なるほど、つまりは似たもの同士という事か。

それでここまで性格が異なるのはある意味すごいことだが。

 

 

「ん、あれ?」

 

「どうした結城さん?」

 

「うーん、何だろう。何か違和感を感じたような・・・」

 

 

旧校舎を目の前にして一度立ち止まる結城。

本人はその原因が分からないのかしきりに疑問符を頭に浮かべている。

違和感?まぁこんなボロボロな建物だ、違和感の一つや二つあってもおかしくないだろう。

現に、1階の窓ガラスがない、時計が傾いている、全体的に薄暗い。

こりゃ人も近寄りたいとは思わないよな。

 

 

「よく来たわね、皆。さぁ入って入って、案内するわね」

 

 

入り口の前で俺達を出迎える先輩。

俺達は先輩を先頭にしてボロ校舎の中に入っていく。

 

 

「見ての通り1階は修復が面倒だったから手をつけてないわ。でも2階と3階は比較的綺麗だから安心してね」

 

「この状態で何を安心しろと」

 

「研究できるスペースが確保されているなら僕は構いませんよ」

 

「うーん、やっぱりまずは掃除、かな」

 

「手伝うでござるよ結城嬢」

 

「リアス、部活の名前は決まったの?」

 

「そうね、何かいい名前は無いかしら」

 

 

それぞれが好き勝手言いながら階段を昇り2階にたどり着く。

先輩の言う通り1階とは比べ物にならないほどマシだった。

何せさっきまでギシギシといつ床が抜けるかと思ったぐらいだ。

 

 

「さて、リアスちゃん達はここね」

 

「オカルト研究部?」

 

「あぁ、恐らく以前に使っていた部活の名前ね」

 

「・・・・うん、これにしましょう」

 

「リアス、まさか・・・」

 

「私達は今日からオカルト研究部よ!」

 

 

何処に自信を持つ要素があったのかグレモリーは胸を張って宣言した。

コイツ、考えるのが面倒になっただけじゃないのか?

姫島も呆れてるぞ。

 

 

「まさかオカルトとはな。どうやら僕に喧嘩を売っているようだ」

 

「思えば拙者は”おかると”に入るのでござろうか?」

 

「半蔵のは芸だろ」

 

「そうだよ。服部君は盛り上げ役でしょ?」

 

「おぉっ!そうでござった!」

 

「相変わらず平和な頭でお姉さんは嬉しいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はーい、ティナ・バティンよ。

一応これでもソロモンの72柱の1柱を先祖に持つ上級悪魔なんだけど4人には内緒ね。

リアスちゃんと朱乃ちゃんと別れた後、私は4人と3階の部屋へと案内した。

 

 

「で、ここが私達の『知的探求部』の部室よ!」

 

「おぉ、廃墟ではござらんな」

 

「ってーか何もなくね?」

 

「机も椅子も無いね」

 

「そこでタクマちゃん、貴方の出番よ!」

 

「あぁ、なるほど」

 

 

昨日、旧校舎の使用許可を貰ったばかりだから本当に何もないのよね。

でも私達にはこういう時に頼りになるタクマちゃんがいるから問題ないわ。

 

 

「ふむ、一先ずは・・・TypeC 120-2、225-2、002-1転送」

 

 

タクマちゃんが懐からブレスレットのようなものを取り出して言葉を紡ぐと私達の目の前に突然、物が出現した。

絨毯x2、ソファーx2、テーブルx1

いやはやいつ見ても凄いわね。

私もご先祖様の能力で転移は扱えるけど引き寄せ(アポート)は無理なのよねぇ。

 

 

「他に必要なものはあるか?」

 

「テーブルクロスとカーテン頼めるかな高藤君」

 

「今週の発売のジャ○プ、まだ読んでねぇんだよ」

 

「畳を所望するでござる!」

 

「後はドリンクをお願いね~」

 

「さすがに何でも転送できるわけじゃないんだがな・・・」

 

「お詫びに隣の教室を琢磨君専用の研究室にしてもいいわよ?」

 

「さて、他に必要なものはないか?」

 

私の予想通り張り切って聞いてくるタクマちゃん

確か家の方に転送装置みたいなのがあって管理している、だったかしら?

タクマちゃんの発明するものは面白い物ばかりで興味がある。

私が最後に見た発明品は・・・ティセちゃんって言うメイドロボね。

 

 

「それで先輩、やる事は中学の時と一緒でいいんですか?」

 

「ささ、殿。じゅーすでござる」

 

「うむご苦労。なんてな、サンキュ」

 

 

ポンッと本を召還して枕にしてソファの上に寝転がるトラちゃん。

A4サイズの分厚い本が15冊に文庫本サイズのこれまた分厚い本が5冊。

神器の力を感じるのは分かるけれども未だにその能力は分かっていない。

本を召還していない時は神器の反応も無いから危険は無いから気にするほどでもないかしらね。

それよりもトラちゃんの質問に答えないと。

 

 

「えぇそうよ。部活名の通り、中学と同じくわ、た、しの知的好奇心を満たすために探求する部活よ!」

 

「もう電柱をよじ登ったりしないでくださいよ・・・」

 

「湖の主とはまた戦いたいでござるな」

 

「超電磁ヨーヨー・・・あれは大変満足のいくものだった」

 

「72時間耐久ゲームはさすがに死ぬかと思ったぜ」

 

あら、懐かしい話ね。

けどまぁ、当分はこうして皆でお話しようかしら。

つい先日もレーティングゲームでストレスは解消した事だしね。

私にも従者を持てって皆五月蝿いのよねぇ。

別に一人で勝てるならそれでも全然構わないのだけど。

この4人に駒を渡したのだって人払いの結界を通過させるためだし。

そりゃ私の眷属になってくれるなら嬉しいけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部活と称した雑談をした後、俺達はそれぞれ帰宅することとなった。

時刻は6時を過ぎたところ、俺は家のドアを開けようとすると後ろから声をかけられる。

 

 

「虎徹、お前も今帰ったのか」

 

「親父、珍しく早いな」

 

 

スーツに身を包んだ親父がいた。

やや長身で彫りの深い顔には若干の疲労が見て取れた。

普段は遅くまで運送会社の営業として働いている親父だ。

何かあったのかね。

 

 

「今日は取引先との営業でな。直接帰ってきたんだよ」

 

「ふーん」

 

 

質問して悪いがそこまで興味があるわけでもない。

俺は軽い相槌を打ちながらドアを開けて家に入った。

 

 

「ただいまー」

 

「今、帰ったぞ」

 

 

玄関で靴を脱ぎリビングに親父と一緒に顔を出す。

リビングにはお袋が洗濯物を畳みながらTVを見ていたようでこちらに顔を向ける。

 

 

「あら二人ともお帰り。ご飯はもう少ししたら作るから待ってなさい」

 

 

そう言うとそのままTVに顔を戻す。

本当に作る気があるのかと思うぐらいに軽い。

だが俺と親父は二人とも料理なんてできないからお袋に任せるしかなかった。

俺は水でも飲もうと冷蔵庫へと向かう。

 

 

「虎徹、すまないがビールを取ってきてくれ」

 

「あいよー」

 

 

水を飲んだ後、冷蔵庫から缶ビールを取り出し親父に持っていく。

ネクタイを外し、襟元を緩めた親父はソファに座ると受け取ったビールをぐいっと飲んだ。

 

 

「くーっ!美味い!ところで虎徹、学校の方はどうなんだ?」

 

「どうって言われてもな3日しか経ってないから分かんねぇよ」

 

「ホント、明日奈ちゃんと琢磨君に感謝しなさいよ、あんたは」

 

「へいへい、分かってるよ」

 

 

俺もお袋が見ているTVを見ながら、親父とお袋に答えていく。

実際、駒王学園を受験すると決めたのはよかったが俺の学力では難しいと言えた。

そこで結城や琢磨の二人が俺に勉強を教えるために何度か家庭教師の真似事をしてもらったのだ。

半蔵?あいつも俺と同じく教わる側だ。

あの時の事を思い出すと頭が痛くなるので別の話題を振った。

 

 

「親父は変わらず社長に振り回されてるのか?」

 

「まぁな。社長自ら宅配をする会社なんて聞いたことない」

 

「CMでもよく見かけるわね」

 

「そのCMも突然営業先に私と向かうと言い出したときは何事かと思ったよ・・・」

 

「しかし親父も外国の人ばかりの所で働くなんてスゲェよな」

 

「そうでもないぞ。向こうも日本語はきちんと話せるしな、まぁ運び方は未だに納得行っていないが」

 

そんな話を続けているとTVのドラマが終わったらしい。

お袋の方も洗濯物が片付いたようで立ち上がった。

ようやく飯を作ってくれる気になったか。

 

 

「ほら、虎徹。自分の部屋に戻るならこれ持ってあがりなさい」

 

「へーい。あぁ、これ弁当箱」

 

 

お袋から畳んで貰った洗濯物を受け取り、空になった弁当箱を渡す。

片手間にやったにしては綺麗に畳まれた洗濯物を持って俺は自分の部屋のある2階へと向かった。

 

 

 




虎徹の両親は一般人です。
周囲は逸般人ですが。


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第3話

暇つぶしに更新と言ったのにもう3話。
どれだけ暇なんだって話ですね。



駒王学園は元女子高だった。

おまけに入学するには結構な学力と厳しい面接が必要な狭き門だ。

つまりは何が言いたいのかと言うと、

 

 

「ではこの問題を八代君、答えなさい」

 

「げっ!あー、えーと・・・」

 

 

親友二人の手ほどきでギリギリ入学した俺にとっては授業初っ端から着いていくのでやっとだった。

国語の島津先生もどうして俺を当てるかね。

肩パットつけてるしよ、ここの教師大丈夫か?紙袋を頭に被った教師もいたぞ。

 

 

「はぁ、今はまだ復習の段階だぞ八代君。では変わりにグレモリー君」

 

「はい」

 

 

俺が席に座ると同時にグレモリーが席を立つ。

そしてすらすらと答えを言った。

欧州出身の奴に国語で負ける俺は一体・・・

しかも見ればグレモリーの奴、勝ち誇った顔をしやがる、ぐぬぬぬ!

 

 

「正解だ。ここは間違えやすいので注意してほしい。次に・・・」

 

 

そこまで言ったところで島津先生の声は授業終了のチャイムに中断される。

 

 

「では今日の授業はここまで、号令を」

 

「起立、礼!」

 

 

日直の春日野の声を最後に授業は終了した。

俺は教科書とノートを机の中に収めて背筋を伸ばしているといつものメンツが集まってきた。

 

 

「八代君、さっきの問題。以前に教えたよね?」

 

「バカヤロウ、そんなの忘れてるに決まってるだろ!」

 

「自信持って言う事じゃないよ・・・」

 

「うむ、拙者も忘れていたでござるよ」

 

「本当に君達の記憶力は刹那的だな」

 

 

呆れた様子でため息を吐く結城と琢磨。

すると先ほど勝ち誇った顔をしたグレモリー、後は姫島までこちらにやってきた。

 

 

「よく入学できたわねコテツ」

 

「リアスだって国語や社会では必死に勉強したじゃないですの」

 

「い、いいのよ!今はきちんと身になってるんだし!」

 

「相変わらず面白い奴らだな」

 

 

余裕たっぷりに言おうとしたんだろうがその後の姫島の言葉で完全に崩れている。

外国から来たんだから国語や社会、歴史なんかは苦戦して当然だろうな。

まぁ俺は日本人だが苦戦しているが。

 

 

「そういえばリアス、朱乃。聞きたい事があるんだけど」

 

「何かしらアスナ」

 

 

知らない間に名前で呼び合う仲になったらしい結城とグレモリー達。

まぁ女同士、気が合うのも早いんだろう。

 

 

「オカルト研究部って何するの?」

 

「何ってそりゃオカルトを研究するんだろ?」

 

「うん、だからそのオカルトって何なのかなって」

 

「このクラスに来てからオカルトの定義が崩れてる気がしてなりませんわ」

 

 

何やら遠い目をしながらも姫島が教室を見渡す。

このクラス変な奴らばっかりだもんな。

 

 

「一緒に相撲やりませんか?」

 

「藤堂流古武術をお見せしよう、覚悟、よろしいな!」

 

「お兄ちゃん、何処にいるんだろう」

 

 

3人集まっているのに一切会話がかみ合ってない奴ら

まぁあいつらはまだマシな方だな

 

 

「アイヤー、この間街で金髪の格好いい人を見つけたアル。ぜひともバイトに誘わないとネ」

 

「ジョニーより格好いい人なんていないよーだ!」

 

 

この間、狭いカラオケ店内で飛び跳ねた中華娘とイルカを召還した奴か。

こいつらも大概だな。

と、言うよりもこの状況に慣れている俺も相当な気がする。

 

 

「活動と言っても今のところは特に予定はないわ」

 

「じゃあ僕達の部活と同じ感じだな」

 

「あら、ティナ先輩の所もですの?」

 

「うん。ここ最近はお話して解散って形が多いかな」

 

「文化系の部活なんて何処もそんなものじゃないのか?」

 

「元々、先輩のために作られた部だしなぁ」

 

 

逆にこれと言った目的があった試しがない。

暇だから、とか疑問に思ったら即行動って考え方の人だしな。

 

 

「そうね・・・話を戻すけどオカルトと聞いて何を思い浮かべるかしら」

 

「うーん、幽霊とか?」

 

「スタンドじゃね」

 

「非科学的なことだな」

 

「超能力でござるな」

 

 

グレモリーの質問に咄嗟に思いついた事を言ってみる。

 

 

「何で誰も悪魔って言葉が出てこないのかしら・・・」

 

 

何故か落ち込んでブツブツと言い出すグレモリー

俺達の回答が不満だったらしい

 

 

「スタンドは分からないですけど、そういった情報を集めたりするのがオカルト研究部の内容ですわ」

 

「ふーん、じゃあこの学園でもそういった話ってあるのか?」

 

「七不思議と言うやつでござるか?」

 

「そういえば聞いたこと無いね」

 

「たとえば・・・悪魔が支配している、とかだったらどうする?」

 

 

不適な笑みを浮かべてグレモリーは聞いてきた。

悪魔が支配、ねぇ。それもまたオカルトちっくな・・・

まぁとりあえず、もし本当にいたとしたらだな。

 

 

「十字架を学園中に置いておこうぜ!」

 

「後はお札も必要でござるな!」

 

「では僕は太陽光を使った武器を用意しておこう」

 

「何でそんなに攻撃的なのよ!?」

 

「いや、だって支配してるなら徹底抗戦だろ」

 

 

ゲームで得た知識でよくある悪魔の撃退方法を言ってみると怒られてしまった、解せぬ。

 

 

「分かった。じゃあまず鳥もちで身動きを封じてだな」

 

「ドラム缶に詰め込んでコンクリを流し込むでござる」

 

「最後に太陽に向けて打ち上げるとしようか」

 

「おかしい・・・最近の人間はこんな非道な事を考えるというの」

 

 

何やらガクリとうな垂れるグレモリー

相変わらず変なところでぼそぼそとしゃべる奴だ

 

 

「朱乃はお母さんからお料理を習っているんだ」

 

「えぇ。アスナはどうやっているんですの?」

 

「うーん、私のお母さんは料理が苦手だから、一緒にある人に習ってるの」

 

 

その一方で結城と姫島は暢気にそんな会話をしていた。

料理ってあぁ、確かに結城のお袋さんは仕事一筋って感じで苦手そうだったよな。

一時期は険悪と評する程の親子仲だったらしいが。

何やらうちのお袋が介入したらしい、ぐらいの事しか分かっていない。

まぁ、うちのお袋は容赦、遠慮を知らない肝っ玉母ちゃんだからな。

以前も全く知らない人から感謝されているのを見たことがある。

 

 

「ん?そろそろ時間だな。席に戻るとしようか」

 

「そうでござるな、この眠気に耐えねば忍びの恥でござる」

 

「いや、勉強しようね服部君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の授業が終わって現在はお昼休み。

私達は食堂の一角で昼食中。

 

 

「あー腹減った」

 

「先ほどの授業、恐ろしい相手だったでござる」

 

「ただの英語の授業だがな」

 

 

私はお料理の勉強をかねて、お弁当。

八代君は私にお料理を教えてくれている小母様お手製のお弁当

服部君と高藤君は学食、リアスと朱乃も手製なのかお弁当みたい。

 

 

「本当にコテツさんとハンゾーさんはお勉強が苦手なのですね」

 

「好きな人なんているはずが無いでござるよ姫島嬢」

 

「世の中テキトーにできてるんだから無理に勉強する必要はねぇんだよ」

 

「だからと言って堕落するのもどうかと思うわよ?」

 

「そうだよ、普段遊んでばっかりいるからこうなるの」

 

「虎徹と半蔵はこれで問題ないと僕は思うがな」

 

「さすが琢磨、いい事を言う」

 

「左様、拙者達はこれでいいのでござるよ。日々、自然体でござるな」

 

 

私とリアスが注意していると高藤君が二人を庇う。

むぅ、高藤君はいつも二人に甘いんだから。

そうやって甘やかすから二人は遊んでばっかりなのに。

特に八代君は普段から自分の好きなように過ごしてるだけという印象がある。

服部君はそんな八代君に従っているみたいだから、まずは八代君のやる気を出させないと。

 

 

「小母様からも言われてるんだから駄目です!」

 

「げっ。お袋の奴、俺の友人関係にまで魔の手を伸ばしやがった」

 

「ぬぅ、殿の母君に言われたとなると・・・」

 

 

八代君の小母様は私と両親の仲が険悪だったのを解消させてくれた感謝してもしきれない人だ。

あれ以来、まだぎこちないながらも話もできるようになった。

そんな小母様から頼まれてるんだから私がしっかりしないと!

 

 

「い、いや、俺はやればできる子だと信じているから問題無い!」

 

「せ、拙者もいざとなればキラリと光るでござるよ!」

 

「・・・・あら、何かしらこの感覚」

 

 

どうみても咄嗟に出た言葉にしか聞こえない言い訳の二人

そんな二人の困った様子を見て朱乃の笑顔が2割り増しに見えるけどどうしたんだろう?

 

 

「そ、それよりもだ!改めて見るとよ」

 

 

話をごまかすように八代君が周囲を確認する。

私達も同じに見てみるけど、当然のように他の生徒も食事中でおかしな様子は無いね。

 

 

「何か留学生多くね?」

 

「そう言われればそうでござるな」

 

「・・・言うだけ無駄だと思うが二人とも、パンフレットは確認したのか?」

 

「「いや?」」

 

「駒王学園は姉妹校が幾つもあってそこから経由して留学してくる生徒が多いんですのよ」

 

「ふーん、なるほどねぇ」

 

 

元女子高と言う事も知らなかった八代君だからもしかして、とは思ってたけど・・・

まさかパンフレットすら見ていないとは思わなかったよ。

相槌を打ちながら再度周囲をじっくりと見回す八代君・・・む、何かイラッと来た。

 

 

ガツッ

 

「いてぇっ!何しやがるっ!」

 

「女性をそんなに見たらだめでしょ」

 

「ぐっ、そんなつもりじゃなかったんだが。確かに今のは俺が悪いな」

 

「基本世の中は男に不利にできているでござるよ・・・」

 

「別に女性上位と言うつもりはないけれど、ある意味真理ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、俺達は日課となった部活に顔を出すため部室へと来ていた。

今日は結城は習い事の日のためいない。

あれから琢磨のおかげで部屋も一新されて過ごしやすい部屋となった。

 

 

「ねぇトラちゃん」

 

「何ですか先輩?」

 

「何だか隣から異様な音がするんだけど私の気のせいかしら」

 

 

先輩に言われて耳を澄ますと確かに小さな音だが聞こえてくる。

何だろう、何かを削るような音っぽいな。例えばドリルとか。

 

 

「琢磨の奴が何か作ってるんじゃないですか?」

 

 

先輩から許可をもらって翌日からずっと琢磨は隣の部屋で何かの作業をしている。

時たま休憩がてらこちらには顔を出しているが、本当に何をしてるんだろうか。

 

 

「しかし殿。段々と音がこちらに近づいてきているでござるよ」

 

「そうなのよ。一体何なのかしらね」

 

 

半蔵と先輩が言うなら間違いないだろう。

この二人、耳は凄くいいからな。

耳だけでなく身体能力全てが異常だが。

 

 

「ちょっと見てきますよ」

 

 

俺自身も気になったのでソファから起き上がって部室を出ようとした時だった。

 

 

ドッゴーンッ

 

 

部室の一角が壊れて向こうの空き教室が見えるようになった。

開通工事でもしてたのか琢磨は。

そしてその壁をぶち壊しやがったのは琢磨ではなく別の見知った奴だった。

 

 

「す、すみませーん!」

 

「あら、ティセちゃん」

 

「何だティセ嬢でござったか」

 

 

ぺこぺこと頭を下げる頭に2本のアンテナを生やした少女。

膝裏まである無駄に長い金髪に前髪も長いのか常に目が隠れている。

こいつこそ琢磨が開発した自動人形、っていうかロボのティセだ。

 

 

「ティセ、お前何してんの?」

 

「すみません。は、博士からここから通れるようにとご命令があったもので・・・」

 

「いや、とりあえず壁の陰から出てきて話せよ」

 

「あう~」

 

 

相変わらずロボのくせに引っ込み思案な奴だ。

おずおずと部室へと入ってくる、そしてその後ろから琢磨も入ってきた。

 

 

「ふむ、これで移動が便利になったな」

 

「タクマちゃん、せめて一言教えてくれたらお姉さん嬉しかったんだけどなー」

 

「何、先輩ならOKを出すと思っていましたのでその手間を省いたまでです」

 

 

さすが琢磨、自分の研究に勤しむため無駄な手間を省いたか。

確かに隣の部屋からわざわざ廊下に出て部室まで来るのは面倒だよなぁ

 

 

「ティセ、悪いが瓦礫の撤去は頼むぞ」

 

「お、お任せください博士!」

 

 

さすがはロボ、あの小さい身体で軽々と瓦礫を箒で掃いている。

いや、その前にあの箒が凄いと思うべきか?

そんな事を考えている間に琢磨はこちらに来てソファに腰掛ける。

 

 

「もう隣の部屋はいいのか?」

 

「一応必要な物は全て揃えた」

 

「それで今度は何を作ろうとしているのかしら?」

 

「起動戦士作ろうぜ!」

 

「合体変形ロボがいいでござる!」

 

「いや、今日話していた太陽光を吸収、圧縮して放つ武器を開発中だ」

 

「そ、それはまた斬新ね」

 

 

珍しく先輩が顔を引きつらせながら感想を言う。

 

 

「ならば剣でお願いするでござる」

 

「ここはやっぱりソーラービームだろう」

 

「ふむ、今は機構を作っているところだが・・・案として考えておこう」

 

 

ビームサー○ルかビームラ○フルか、悩むところだな。

俺はいつものように本を取り出して数冊を重ねて枕にする。

余った本は足で端に固めておく。

 

 

「ハンゾーちゃん、そこのペンを取ってくれるかしら」

 

「承知」

 

 

余った本をいつの間にか先輩が手にしていた。

そして半蔵からペンを受け取るとさらさらと俺以外には白紙にしか見えない本に書き始めた。

 

 

「って何してんすか先輩」

 

「んー?ちょっとした実験ね・・・はい、トラちゃん」

 

 

先輩から本を受け取って見るとデフォルメされた先輩の絵が描かれていた。

これをどうしろと?

 

 

「一旦消して、また出してくれる?」

 

「はぁ、いいですけど」

 

 

言われるがままに本を消す。

何故か一冊一冊消すことはできずに常に全て出すか、全て消すことしかできない。

そして再び本を出す。

 

 

「えーっと、絵を描いた本はどれか分かるかしら」

 

「これ、ですね・・・あれ?」

 

 

他の人からは表紙すら見えないのでどれか分からないため俺が手に取る。

そして先ほどのページを開いて見ると先輩が描いたはずの絵が見事に無かった。

 

 

「なるほどなるほど。恐らくこれは元々書かれてあった状態に戻るんじゃないかしら」

 

「ふーん、ジュースを溢しても大丈夫って事か」

 

「落書きしても大丈夫でござるな!」

 

「初期状態を記憶しておき、出す度に、初期状態にも書き換えられるということか」

 

 

原理はよく分からないが常に元の状態になるって事らしい。

ん?って事はだ

俺は立ち上がると本を数冊持って部室の隅に向かう。

 

 

「どうしたのトラちゃん?」

 

「いや、燃やしたらどうなるかなーって」

 

「さ、さすがにそれはやめた方がいいんじゃないかしら」

 

「え?だって戻るんでしょう?」

 

「先ほどのは落書き程度で済んだが本自体が変化した場合も戻るとは言えないからな」

 

 

確かに戻らなかったら幾つもあるとはいえ損した気分になるな。

仕方なく諦め座りなおす。

 

 

「それよりも3人とも、週末の予定は空けておいてね」

 

「今のところ特に予定は無いでござるが・・・何処へ行くでござるか?」

 

「いい質問よハンゾーちゃん。ちょっと皆に調べてきてほしい事があるの」

 

 

そう言って先輩は俺達に封筒を手渡していく。

特に考えずに中身を取り出せば紙切れが1枚折りたたまれていた。

ピラッと開けば簡潔にこう書かれていた。

 

 

「教会?」

 

「神社でござるな」

 

「僕のは廃ビルだな」

 

 

イマイチ何を調べてほしいのかさっぱりだ。

 

 

「駒王学園周辺にあるソレを調べてきてね」

 

「この辺に教会なんてあったっけな・・・」

 

「神社は姫島神社ぐらいしか見た覚えが無いでござるよ」

 

「何故僕だけ難易度が高いんだ」

 

「そりゃタクマちゃんの調査力を期待してに決まってるじゃない」

 

 

これがどういった事につながるのか分からないが、どうせ暇だしやってみるか。

 

 

 

 




ここまで読んで頂いて分かった方もいるかと思いますが、
原作本編は当分先になります。(と言うかやるのだろうか)



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第4話

モンハン4でゴア・マガラに心を折られたので続きを執筆します。
明後日はガンダムブレイカーのアップデートか・・・
クロスボーンX1が楽しみです。


先輩から依頼を受けてやって来た土曜日。

俺は昼から教会を探していた。

 

 

「1件目は・・・誰もいそうにないな」

 

 

事前にパソコンで調べて見たところ駒王学園近辺の教会は3箇所あった。

一番近い教会はボロボロでとても教会として機能しているようには見えない。

こんなとこで結婚式なんて挙げたら非難殺到だろうな。

 

 

「次の場所はここから南か」

 

 

琢磨に用意してもらった通信端末に転送した地図を確認した後、自転車に乗り込む。

春先だから日向ぼっこでもしてぇなぁ。

あ、そういえば他はどうしてるんだろうか。

 

 

「あー、こちら虎徹。今から2つ目に向かうとこだ。半蔵、琢磨。そっちはどうだ?」

 

『僕は5件程確認した』

 

『拙者はまだ一つ目でござるよ、廃寺でござ・・・』

 

 

って、琢磨の奴早いな。

でも廃ビルか、幾らでもありそうだよなぁ。

 

 

『む、何奴!』

 

『我、拳を極めし者』

 

『な、何でござる?』

 

『覚悟はよいか・・・』

 

『のわっ!?何か飛んで来たでござるっ!?』

 

 

それで半蔵は一つ目か。神社もそんなに数は無さそうだな。

まぁお互い順調そうで何よりだ。

 

 

『と、殿!?お、鬼が出たでござるーっ!』

 

ピッ

 

「全く、半蔵もくだらない嘘言いやがって」

 

 

通信を切ってそう愚痴を溢す。

お前が行くのは寺じゃなくて神社だろうに。

っと、行き過ぎるところだった。

小奇麗な教会に俺は自転車を止める。

 

 

「花も手入れされているし誰かいそうだな」

 

 

扉を開けて中へと入る。

中は意外と広く、奥に誰かが背を向けているのが見えた。

あれは・・・牧師か?

 

 

「こんにちはー」

 

「おや?ようこそいらっしゃいました。礼拝ですか?」

 

「あーいや、ちょっと調べ物をしてまして」

 

「調べ物、ですか」

 

「えぇ、駒王学園の近辺にある教会を調査していたんです」

 

「なるほど、そうでしたか」

 

 

何だか人のよさそうな牧師だった。

俺は自分の名前を名乗って駒王学園の生徒である事を説明した。

牧師さんの名前はゲーニッツさんと言うらしい。

何でも娘さんも同じく駒王学園に通っているとの事。

 

 

「ウィンドと言うのですがご存知ありませんか?」

 

「うーん、聞いた事ないですね。違うクラスだと思いますよ」

 

「そうですか。調べ物と言っていましたが具体的には何を?よろしければ協力しますが」

 

「本当ですか!それはありがたいです。えーっと・・・んん?」

 

 

ゲーニッツさんが協力してくれるので折角だから質問しようとしたところで気がついた。

・・・俺は一体何を調べればいいんだろうか。

先輩は調べて来て、としか言っていなかったよな。

しまった。その辺聞いておくんだった・・・まぁいいかテキトーに調べるとしよう。

 

 

「教会って結婚式のイメージぐらいしか無いんですけど他って何してるんですか?」

 

「ここは礼拝堂でもありますので、信者の方が礼拝をしていく事もあります」

 

 

礼拝・・・あぁお祈りって事か。

いやー、質問したはいいが全然興味が沸かないな。

仏壇に線香上げて、墓参りするぐらいしかした事無い。

しかも教会関連なんて今まで関わりもしなかったからなぁ。

 

 

「確かバチカンに総本山があるんでしたっけ?」

 

「いえ、それはカトリック教会ですね。私は牧師ですのでプロテスタントになります」

 

「・・・違いがよく分からない」

 

 

一般の人によく知られているローマ法王とかがカトリック教会。

そこから派生した組織とか無く、様々な派閥の集合体がプロテスタント、という事らしい。

他にもいろんな名前が飛び交っていたが俺の脳が受け付けようとしなかった。

 

 

「ははは。貴方は信者ではない、理解しようとしてくれるだけでも有難い事です」

 

「はぁ・・・なんかすいません」

 

「いえいえ、ずっと立ち話も疲れるでしょう。お茶を入れますのでこちらへどうぞ」

 

「あー、じゃあお邪魔しまーす」

 

 

ガチャッ

 

 

「あれ、お父さん。お客さん?」

 

 

奥の部屋に向かうと俺と同年代ぐらいだろう女の子が椅子に座ったままこちらを伺っていた。

お父さんって事はこの子がウィンドか。確かに俺のクラスでは見た記憶が無いな。

 

 

「あぁ、ウィンドと同じ学園の生徒だそうだ」

 

「あ、貴方八代虎徹君でしょ」

 

「そうだけど・・・何で知ってんだ?」

 

「そりゃ、あの学園で男子なんて10人もいないんだもの。分かるわよ」

 

 

そういわれてみればそうだった。

俺のクラスが一番多くて3人、他のクラスは1人か、0人ってとこだったな。

 

 

「私は・・・お父さんから聞いたわよね?ウィンドでいいわよ?」

 

 

そう気さくに話しかけてくる彼女。

俺は一応ゲーニッツさんにいいのか、と聞いて見るが笑顔で頷くだけだった。

どうも、他の連中を苗字で読んでるからか違和感があるな・・・

 

 

「んじゃよろしく、ウィンド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

「虎徹はこれから2件目、半蔵は1件目。これなら僕が一番早いか」

 

 

他の二人の進捗具合を見る限り半蔵の方に手助けをしたほうがよさそうだ。

こちらは残り4件、幸い現在地から近いため移動にかかる時間は無い。

 

 

ジャリッ

 

 

次の目的地に向かおうとしたとき、背後から誰かの足音が聞こえそちらを振り返る。

 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 

そこにいたのは見たところ中学生ぐらいだろうか。

僕が通っていたのとは違う制服を着ている女の子だった。

しかし何故こんな廃ビルの近くに?この辺に学校は無かったはずだが・・・

 

 

「君はこんなところで何をしているんだ?」

 

「その質問はそのままお返しします」

 

 

どこか無表情に切り返してくる彼女。

さて、どうしたものか。

そのままこちらが質問に答えてもいいのだがね。

 

 

「小猫、そっちはどうかし・・・あら、タクマじゃない」

 

 

彼女の背後から現れたのはグレモリーさん

知りあい、なのだろうか?

 

 

「む、珍しいところで会うな。グレモリーさんは彼女の知り合いかな」

 

「えぇ、紹介するわ彼女は搭城小猫。小猫、こちらはクラスメイトの高藤琢磨よ」

 

「初めまして・・・」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

無表情に加えてどうやらコミュニケーションを自ら取るタイプではないようだ。

まぁそれを言ってしまえば僕も彼女の事をいえないのだが。

 

 

「それでタクマはどうしてここに?他の皆はいないの?」

 

「バティン先輩から廃ビルについて調べて来てほしいとの依頼があったものでね。虎徹と半蔵も似た理由で出かけている」

 

「ティナが?・・・・コテツとハンゾーは何を調べているのかしら」

 

「虎徹は教会、半蔵は神社だな」

 

「・・・・・・・」

 

 

僕が情報を開示すると難しい顔で考え込みだすグレモリー。

実のところ僕もこの3つの関連性が分かっていない。

とは言え、元々何をしでかすか分からないのがティナ・バティン先輩だ。

考えるだけ無駄だろう。こういう時は過程まで楽しんでこそ面白い結果となるものだ。

 

 

「部長?」

 

「ティナの依頼、気になるわね」

 

 

搭城さんが声をかけて今まで黙ったままだったグレモリーさんがぽつり、とつぶやく。

それにしても・・・部長?

確かにグレモリーさんはオカルト研究部の部長だが搭城さんは中学生で駒王学園の生徒ではない。

この事から考えられる可能性としては・・・

 

 

「・・・何よタクマ、その生暖かい視線は?」

 

「なに、たった二人しかいないとは言え部長に就任して、他の学校の生徒にまで部長と呼ばせていると思うとな」

 

「・・・はっ!ち、違うのよ!?別に私はそんなつもりはなくて!」

 

「部長・・・そうだったんですか」

 

「小猫!?だからそういうつもりではないのよっ!」

 

 

部長と副部長しかいない部活だから心細いのは分かるが幾ら何でも悲しすぎる。

グレモリーが必死に否定しようとすればするほど憐れに見えて仕方が無い。

搭城さんも同じ気持ちなのか無表情ながらもその視線は若干憐れみが含まれていた。

 

 

「分かってます。私は部長の味方ですから」

 

「気にするな。何なら僕も今度からそう呼ぼうか、グレモリー部長?」

 

「やめてっ!本当、そんなんじゃないんだからーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、ようやく終わったぜ」

 

 

日も傾いてきた頃、俺は公園のベンチでぐったりとしていた。

ゲーニッツさんのところでゆっくりした後、最後の教会に向かったのはよかった。

そこにいたのはグラサンをかけた神父で俺が来た目的を知るなり説教されてしまった。

何でもゲーニッツさんのプロテスタントとグラサン神父のカトリック教会は仲が悪いらしい。

というか聞いた限りじゃカトリック教会側が一方的に嫌っているみたいだが。

 

 

『神はおっしゃった。悪者には平和がおとずれる事はない!と』

 

 

最後にそう締めくくって教会から追い出されてしまった。

・・・にしても嫌な神様もいたもんだ。

 

 

「あれ、八代君?」

 

「あら、奇遇ですわね」

 

「あん?おぉ結城に姫島か。どうしたんだこんなところで」

 

「こんなところって、私の家この辺なんだけど」

 

 

声をかけてきたのは結城と姫島だった。

言われてそういえば、と辺りを見回してみる。

確かにこの辺は結城の住んでいる高級住宅街の一角だ。

 

 

「俺は先輩に言われて教会を調べていたんだ・・・って結城はいなかったな」

 

「ティナ先輩が?」

 

 

俺は休んでいた結城と知らない姫島に先輩からの依頼について説明した。

何故か横で姫島が難しい顔をしていたが・・・

ティナ先輩の事だ、悩むだけ無駄だぞ。

 

 

「教会に神社に廃ビル?教会と神社なら分かるけど廃ビルが加わった途端に関連性が分からなくなったんだけど」

 

「そりゃ同感だ」

 

「それでこれが最後なの?」

 

「おう、そうだ。結城は・・・お袋のところか」

 

「そう、また新しいレシピを教えてもらっちゃった」

 

「ふふふ、私も教えていただきましたわ。コテツさんのお母様はとても素晴らしい方ですわね」

 

「本当、うちのお袋はなんでこんなに評価が高いんだ?」

 

 

結城はいつもの事として、姫島まで俺の家に行ったのか。

そのうち料理教室とか開くんじゃないだろうか。

他所の家の料理なんて食った事ないからイマイチお袋の料理が凄いと思えないんだよな。

 

 

「それで朱乃と帰り道が一緒だったからここまで来たんだけど」

 

「そこでやけに疲れた様子のコテツさんを見かけましたの」

 

「なるほど。姫島神社もこの辺りだったな」

 

 

神社と言えば半蔵の奴はどうしたんだ?

あれから結構時間もかかってる。

 

 

「一応連絡はしておくか、ちょっと悪い。半蔵、琢磨」

 

 

二人に断って連絡を取る。

結城と姫島は俺の持っている端末に興味があるのか横から覗いてきた。

画面が2分割されておりすぐに出たのは上半分に映る琢磨だった。

 

 

『虎徹、そっちは終わったのか・・・って結城さんと姫島さんも一緒か』

 

「おう、ついさっき会ったばかりだ」

 

「高藤君、何処にいるの?森?」

 

 

結城が質問するのも無理は無い。

何故か琢磨の背後に映るのは森だった。

この辺に森なんてあったっけか?

画面の中の琢磨は深いため息を吐いていた。

 

 

『僕も何故こうなったのか知りたいぐらいだ』

 

『コテツ、ちょっとタクマを借りてるわよ・・・朱乃、貴女なんでそこにいるの』

 

『どうもです、姫島先輩』

 

「リアス?それに小猫ちゃんまで」

 

「・・・グレモリーはいいとして、どちらさん?」

 

 

俺と同じように琢磨の両隣にはグレモリーと知らない子がいた。

どうやら姫島は知っているようだが、またよく分からん関係だ。

姫島の紹介により、彼女は搭城小猫。姫島の中学の後輩らしい。

 

 

「で、タクマを貸すのはいいが何してんだ?」

 

『人探しをしているのだけど、タクマなら何かいい物を持ってないか協力してもらっているのよ』

 

『僕は誰の所有物でも無いんだが・・・』

 

「・・・リアス、私もそちらに行った方がいいかしら?」

 

『いえ、朱乃。タクマのおかげでもうすぐ終わりそうだからいいわ』

 

「で、半蔵はどうした?」

 

『む。そういえば反応が無いな』

 

 

グレモリーと姫島の方が俺達より端末を使っている様子を見ながら半蔵がいない事に気が付く。

まだ鬼がどうとか言っているんだろうか。

 

 

ピッ

 

『殿!遅くなって申し訳ござらぬ。ようやく鬼を撒いたでござるよ』

 

『ったく、何なんだあのおっさんは。あれで本当に人間かよ・・・おっと、久しぶりだなコテツ』

 

 

画面に映ったのは疲れた様子の半蔵と見覚えのある金髪の兄ちゃんだった。

 

 

「ん?ライザーさん、あんた何してんの?」

 

『いやー、久しぶりにお前の家に行こうとしたら必死に逃げてるハンゾーを見つけてな』

 

『ライザー殿がいなければ拙者、鬼に討ち取られていたところでござった』

 

 

中学時代、俺の家にホームステイしていたライザー・フェニックスさん。

こうして画面越しだが会うのは数ヶ月ぶりだった。

 

 

『お?アスナもタクマも相変わらずそうだな・・・ってリ、リアス!?』

 

『ライザー!?どうしてあなたがハンゾーといるのよ!?』

 

『ぬぬ?ライザー殿はグレモリー嬢と旧知の仲でござったか?』

 

「うーん、何だかややこしい事になりそうな予感」

 

 

結城の言う通り、またメンドクサイ話になりそうだ。

画面の上半分と下半分で驚いているライザーさんとグレモリーを見ながら俺は自然と空を見上げた。

 

 

 

 

 

 




と、言うわけでライザー・フェニックス登場です。
とある理由により性格は変わっていますが、その理由は次話で。

そして出てきた神父。分かる人いるんだろうか。




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第5話

現在、ガンダムブレイカープレイ中。相変わらずのレアパーツの出にくさに苦戦です。


 

 

 

 

端末越しだと会話が面倒なので全員俺達のいる公園へと集まってきた。

結城、半蔵、琢磨、グレモリー、姫島、ライザーさん、搭城、知らない少年

 

 

「・・・ってまた増えてんじゃねぇかっ!」

 

「おぉ、何奴でござるか!?」

 

「この子は木場祐斗、私の知り合いで一つ年下よ」

 

「初めまして。先輩方の事は部長から聞いています」

 

 

礼儀正しくキラキラとした笑みを浮かべる木場。

ま、眩しい。輝いて見えるぜ。

どうやら木場が琢磨を借りてまで探していた奴らしい。

ただ、一つグレモリーの紹介で気になった事があった。

 

 

「部長?」

 

 

木場が言う部長とは恐らくグレモリーの事だろう。

グレモリーは1年生であり、今年発足したばかりのオカルト研究部の部長をしている。

だが待って欲しい。部員はグレモリーと姫島の二人だけだ。

俺はそこまで考えたところで全てを理解した。

琢磨が俺の考えた事に感づいたようで同意するように頷いた。

 

 

「グレモリー、お前いくら部長になって嬉しいからって入学もしてない後輩に強要はどうかと思うぞ」

 

「だから違うわよっ!」

 

「へぇ、じゃあ何で部長って呼ばせてるんだ?ん?」

 

「そ、それは・・・その」

 

「あの、コテツさん。それぐれいにして頂いては?」

 

 

否定してきたが俺の疑問に答えられずに口ごもるグレモリー。

さらに追い詰めて楽しもうとしたところで姫島が仲裁に入ろうとする。

 

 

「甘いぞ姫島。弄れる時はとことん弄らなければ逆に失礼だ」

 

「そ、そうだったのですかっ!」

 

「騙されないで朱乃っ!」

 

「さぁ共にグレモリーを弄ろうじゃないか。見ろ、あの羞恥で赤くなった顔」

 

「あぁリアス。貴女、今とても輝いてますわ」

 

「うぅ、朱乃が穢されてしまったわ・・・」

 

 

どうやら姫島は素質があったのかすぐに俺の考えを理解したらしい。

恍惚とした表情で羞恥心に悶えるグレモリーを見ていた。

 

 

「お楽しみのところ悪いが虎徹。話が脱線しているぞ」

 

「っと、そうだった。それでライザーさんとグレモリーは知り合いなのか?」

 

「まぁな。実家が同じなんだよ。で、その実家近辺は交流会と称して色々と顔見せをしていたからな」

 

 

琢磨の言葉に仕方なくグレモリー弄りを中断してライザーさんに質問する。

聞いた感想としては近所付き合いも大変なんだな、って感じだ。

 

 

「それでライザーはどうしてコテツ達と知り合いなのかしら」

 

「俺が中一の頃から2年ぐらい家にホームステイしてたんだよ」

 

「ホームステイ?」

 

 

グレモリーの質問に俺が答えると疑わしげな視線をライザーさんに向ける。

向けられた当の本人はと言うと気まずそうに視線を逸らしていた。

 

 

「ま、まぁな」

 

「それでライザーさん。ティナ先輩にはもう会ったんですか?」

 

「ちょっ!アスナ!?」

 

 

さすが結城、明らかに理由を言いにくそうなライザーさんに構わずストレートに質問しやがった。

ライザーさんが来たって事は先輩の様子を見に来たのは知り合いなら誰でもわかることだろうに。

要するにだ、ライザーさんは先輩の事が好きだ。

それで先輩とよくつるんでいる俺の家にホームステイして近況などを聞いていたのだ。

何でも滅多に実家の方には帰ってこないらしく会う機会が無いのだ。

 

 

「どう言う事なのライザー?」

 

「うっ・・・この状況で説明を求めるのかよ」

 

 

ストーカー一歩手前の行動に近いが俺達はライザーさんを応援すると決めた。

が、これまで全て空振りに終わってしまった。

っつーか先輩の好みのタイプとか聞いても面白くて楽しい人、としか教えてくれなかったしな。

なんだ、芸人が好みなんだろうか。

 

 

「仕方が無いでござるよライザー殿、ここは素直に白状してしまうでござる」

 

「本人を前に告げるよりは遥かに楽だろう」

 

「お前ら人事だと思って気軽に言ってくれるな!」

 

「・・・あぁ、そういう事ね」

 

「つまりは、そのティナさんと言う方が好きなんですか」

 

 

グレモリーがこれまでの会話で納得したように頷き、搭城が結城並の空気ブレイカーを発揮する。

姫島と木場も微笑ましそうにライザーさんを見ていた。

 

 

「うぐっ・・・あ、あぁそうだよ」

 

「よし、後は先輩に言うだけだな」

 

「拙者、呼んでくるでござる!」

 

「待て待て!頼むからそれだけはやめてくれ!」

 

 

何というヘタレっぷり、他の女の子相手には強気だというのに何なんだろうか。

そういえば一度変な事をしようとしていたな。

あれは俺が中2の秋だったか。

 

 

『コテツ!ティナの前で他の女といちゃついたところを見せたら嫉妬してくれるだろうか?』

 

『ライザーさん、あんたそれを先輩に目の前でやられたらどうするよ』

 

『・・・その男を殺す!』

 

 

ちょっと考えれば分かるだろうに。

そこにすら頭が働かないくらいに先輩の事が好きなんだろうな。

 

 

「あの、ライザーがねぇ」

 

「噂とは大違いですわね」

 

「女誑しと聞いていましたが」

 

「人は見かけによらないんですね」

 

 

グレモリー、姫島、搭城、木場の4人はライザーさんの噂を聞いていたらしい。

まぁ俺達としてはこっちのライザーさんしか知らないから何ともいえない。

現に半蔵と結城も何の事か分からず首をかしげている。

 

 

「ふん、笑いたければ笑えばいいさ」

 

「笑わないわよ。私は応援しているわよ・・・ただ相手が振り向くかしらね」

 

「問題はそこでござるな」

 

「ティナ先輩も鈍感だもんね」

 

「結城さんも大概だと思うがな」

 

「?どう言う事高藤君」

 

「いや、本人が気が付いてないなら僕が言う事じゃないか」

 

 

一先ずライザーさんとグレモリー間での疑問は解決したか。

しかしこれだけの人数でただ集まっているってのも何だな。

えーと全員で9人か・・・・よし。

 

 

「じゃあ野球をするか」

 

「ふむ、野球道具は転送するとしよう」

 

「確か近くで草野球の練習をしているチームがいたでござる!」

 

「じゃあ交渉して試合もできるね」

 

「よし、俺も久しぶりに活躍するか!」

 

 

俺が提案すれば即座に乗ってくるいつものメンツ+ライザーさん。

 

 

「何がじゃあ、なのかさっぱり分からないのだけど」

 

「相変わらずこの展開には付いていけませんわ」

 

「やきゅう?」

 

「ははは。先輩方、元気ですね」

 

 

グレモリー達はノリが悪いのか困惑気味だった。

こんなのいつもの事だぞ?

俺達が休日に集まったらテキトーに思いついた遊びをしているだけだ。

 

 

「ははーん。さてはグレモリー、お前野球知らないんだろ」

 

「失礼ね、それぐらい知ってるわよ」

 

「まぁ、いいとこのお嬢様じゃ出来なくても無理は無いよな」

 

かちーんっ

 

「・・・上等じゃない。やるわよ皆!」

 

 

さすがはグレモリー、打てば響くという言葉通り分かりやすい反応を返してくれる。

あっさりと挑発に乗ったグレモリーは姫島、搭城、木場に声をかけると既に動き出していた皆の後を追いかけていった。

どうせ遊ぶなら全力で遊ばないとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそっ、まさかリアスがいるとは思わなかった・・・

まぁいい、この鬱憤を野球で晴らすとしよう。

一度解散し動きやすい格好になり再度合流する。

俺はコテツの家に行き、未だに置いてある荷物の中から着替えていた。

 

 

「あら、ライザー君じゃないの。久しぶりねぇ」

 

「はい、久しぶりですお袋さん。ちょっとこれからコテツ達と遊んできます」

 

「えぇ、行ってらっしゃい。これは夕飯は豪勢にしないとねぇ」

 

 

途中お袋さんに会ったが、あの人も変わらず元気そうで安心したぜ。

 

 

「遅いわよ二人とも!」

 

 

集合場所に来るとどうやら俺達が最後だったようだ。

しかしリアス。お前やる気十分じゃないか。

両腰に手を当ててふんぞり返るリアスに俺は若干、戸惑ってしまった。

俺の知ってるリアスと言えばグレモリー家の長女として、上級悪魔として常に冷静に物事を見ている感じだった。

それが目の前のリアスはどうだ?

 

 

「うるせぇな。別に時間とか決めてないんだからいいだろ?」

 

「見てなさいよ!コテツより上手だって事を証明してやるわ!」

 

「へっ、上等だ!それならどっちが好成績を残せたかで勝負だ!」

 

 

ま、まぁあのコテツと同レベルの張り合いをしている時点で年相応というかガキっぽいというか・・・

これで同じ元ソロモンの72柱の子孫とは思えないな、今のリアスは。

 

 

「それで、対戦相手のチームは?」

 

「えっと今は高藤先輩が交渉に行ってます」

 

 

リアスの眷族である木場の言葉に視線を向けると確かにタクマの奴が何か話している様子だった。

暫くしてこちらへと戻ってくる。

 

 

「琢磨、首尾はどうでござるか?」

 

「あぁ了承してくれた。ただ5回までで20点差以上でコールドだ」

 

「十分だ。打席とか守備はどうする?」

 

 

川原にある小さな野球場、その一塁側ベンチに向かいながらコテツが聞いてくる。

 

 

「あー、ちょっと先に行っていてくれ・・・リアス、いいか?」

 

「?何よ」

 

 

俺はコテツ達を先に行かせておいてリアスを呼ぶ。

怪訝な顔をしながらもこちらへと近づいたのを見計らって小声で話す。

 

 

「さすがに俺達が本気を出すわけには行かないの分かってる、よな?」

 

「?・・・と、当然でしょ。人間相手に本気を出すまでもないわ」

 

「いや、そういう意味じゃないんだが」

 

「わ、分かってるわよ」

 

 

と、言うか本気を出すつもりだったのかよ。

コテツ、ハンゾー、タクマ、アスナを除いた5人が悪魔だって事を忘れてたのか?

コテツ達は今更そんな事を気にする奴らじゃないのは知っているが対戦相手のチームは分からない。

 

 

「おー、痛いチーム名だな」

 

「中二臭がするでござる」

 

「直訳すると・・・血塗られた唸り声?血統の唸り?かな」

 

「まるで意味が伝わらないな」

 

 

何とかリアスを説得してベンチへと移動すると得点板を見ながら騒ぐコテツ達が目に入った。

今度は何をしてるんだ?

 

 

「どうした?」

 

「あぁ、相手のチーム名凄い名前だなって。こりゃ俺達も相手に負けない名前を考えないとな」

 

「うーん。共通点のある名前にした方がいいよね」

 

「駒王学園・・・ってライザー殿は違ったでござる」

 

 

俺も相手のチーム名を見ると意味があるのか無いのか分からないチーム名だ。

これで相手側が悪魔だと言うなら分からなくもないセンスだが。

何はともあれ、まずは守備を考えないとな。打席については好きなさせればいいだろう。

 

 

「・・・ハンゾー、いやアスナ。ピッチャー行けるか?」

 

「え、私ですか!?」

 

 

まず身体を使った運動が苦手なタクマは除外。

コテツかハンゾーにしようかと思ったが、こいつらは動きからして内野がいいだろう。

となると残ったのはアスナだけだ。

リアス達は初めてみたいだからまずは他の守備で様子を見よう。

このメンツだと俺がキャッチャーだな。

 

 

「ハンゾーはショートだな。他に足に自信がある奴はいるか?」

 

「はい、短距離でよければ」

 

「ユウトなら問題ないわ」

 

「それならセンターを頼む。フライが来て落としてもいいが、なるべく前に落としてくれよ」

 

「分かりました」

 

 

リアスが押すと言う事は眷属でもスピードに重視した騎士(ナイト)か。

タクマはファーストとして、野球を知っているコテツがセカンドだな。

後はリアスとその眷属2名か。空きはサード、ライト、レフト。

 

 

「3人で一番運動神経がいいのは?」

 

「それですと小猫ちゃんになりますわね」

 

「なら君はサードで頼む」

 

「はい」

 

「二人はライトとレフト、外野の右側と左側だ。分かるか?」

 

「えぇ、分かりましたわ」

 

「どんな球でも取って見せるわ」

 

 

リアスの意気込みが空回りしなければいいんだがな。

とは言え、相手チームも大人と子供の混成チームだ。

まぁこちらの大人は俺一人だが。

油断は出来ないな。遊びとは言え、どうせなら勝ちたい。

 

 

「1番に打ちたい人ー」

 

「私が行くわ!」

 

「リアス、こういう時は足が速い人がいいの」

 

「そうなの?だとしたらユウトかハンゾーね」

 

「じゃあ1番は木場殿、2番は拙者でござるな」

 

「僕は期待されても困るから9番で構わない」

 

「ふふん、なら俺は4番だな」

 

「コテツ!そうは行かないわ。4番はエースなんでしょ!」

 

「ちっ、バレたか。ならじゃんけんだ」

 

 

それにしてもリアスもすっかりコテツ達の側に染まっちまったな。

俺もかつてはあんな感じだったと柄にも無く思ってしまう。

 

 

「あらあら、私達はどうしましょうか」

 

「3番4番5番はプロ野球だとパワーヒッターが多いな」

 

「では私が」

 

「え、小猫ちゃんが行くの?」

 

「私は8番で構いませんわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで打順と守備は決まった。

 

1 木場祐斗 中

2 服部半蔵 遊

3 搭城小猫 三

4 八代虎徹 二

5 リアス・グレモリー 左

6 ライザー・フェニックス 捕

7 結城明日奈 投

8 姫島朱乃 右

9 高藤琢磨 一

 

ふっ、見事俺が4番打者の座を手に入れる事が出来た。

あの時のグレモリーの悔しそうな顔と言ったら爆笑ものだったぜ。

まぁそれはいいとして俺達は後攻だから守備について相手の1番バッターを待っていた。

 

 

「おい、あれ猫耳に尻尾ついてるぞ」

 

「こすぷれ、でござるか?」

 

「・・・ライバル登場です」

 

 

ショートの半蔵と相手バッターについての感想を言っているとサードの搭城がポツリと何かを言った。

猫耳に尻尾をつけた先頭バッターの女の子は張り切った様子でバッターボックスに着いた。

 

 

「さぁかかってこーい!」

 

「結城ー、三振にしちまえー!」

 

「結城先輩、当てちゃってください」

 

「小猫ちゃん!?」

 

 

俺と搭城で野次を飛ばしていると結城は搭城の言葉に驚きながらも投球フォームへと入った。

 

 

ブォンッ

 

 

「うにゃっ!?」

 

「ストライク!」

 

 

思いっきり振り遅れるバッター。

見た目どおりの素人みたいだな。

まぁ俺達も人のことは言えないけど。

 

 

キンッ

 

 

「おっと、当てやがった」

 

「搭城殿、取ったら琢磨にパスでござる!」

 

「分かりました、行きますっ!」

 

 

サードゴロ、搭城は落ち着いた様子でゴロを捌くとファーストへと投げる。

って返球早いなおい。

 

 

ズバンッ

 

 

「っ・・・痛いぞ」

 

「セーフッ!」

 

「うぇっ!?マジで!?」

 

「にゃはは、足には自信があるもんねー」

 

 

搭城の素早い返球にも関わらず既に一塁に駆け込んでいた。

あんな球を取った琢磨なんか取ったポーズのまま痛がってるぞ。

 

 

「いやはや、今のは向こうが上手でござったな」

 

「・・・悔しいです」

 

「まだ点を取られたわけではない故、気にする必要はござらんよ」

 

 

さて、次はっと・・・眼鏡をかけた兄ちゃんか。

さっきの1番バッターと言い、中華っぽい服装だな。

 

 

「・・・・」

 

「ロンさん、頑張ってー」

 

 

静かに構えるバッター、な、何か貫禄があるな。

結城もライザーさんのサインを見て投げた。

 

 

「ぬんっ!」

 

 

カキーーンッ

 

 

げっ、外野コース!?

ライザーさんの配置とは言え、野球をほとんど知らない連中ばっかりだぞ?

 

 

「祐斗!」

 

「はいっ!」

 

 

うぉっ、木場の奴本当に足が速いな。

グレモリーとの微妙なラインをあっさりとキャッチしやがった・・・って

 

 

「センター!セカンドに投げるんだ!」

 

「え?・・・あ!」

 

 

タッチアップで走者が二塁へと走っていた。

木場もライザーさんに言われて俺にボールを投げるが間に合わなかった。

 

 

「すみません、コテツ先輩」

 

「気にすんな。さっきのキャッチで帳消しだ」

 

 

二塁のランナーを見て、俺はボールを結城へと投げた。

次は3番かクリーンナップがどんな奴らなのか分からないがこりゃ一筋縄じゃ行きそうにないな。

 

 

「今度は服部先輩みたいな格好の人が出てきましたね」

 

「む、あの忍装束は・・・」

 

 

忍者っぽいが手袋とかは現代っぽいバッターだな。

年は俺達と同い年か若干年上ってとこか。

 

 

「さぁ来い!」

 

 

凄い張り切りようだ。

結城じゃ抑えられないか?とは言え打たせて取るタイプだしな。

 

 

カキンッ

 

 

お、セカンドゴロ・・・ならば!

 

 

「半蔵!」

 

ヒュッ

 

「琢磨!」

 

バシッ

 

「アウト!3アウトチェンジ!」

 

 

俺がセカンドを踏んでいる半蔵にパスをして、そのまま半蔵は琢磨へとパス。

これでゲッツー、さっきのフライと合わせて3アウトだな。

 

 

「さすがの3人だな」

 

「へへっ、俺達の連携プレーを甘く見るなっての」

 

 

ライザーさんに答えながらパシンッと半蔵と琢磨とハイタッチをかわす。

さぁ、ここからが反撃だな!

 

 

 

 




野球は次回で終わりの予定です。
守備だと会話できる人数に限りがありますね。


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第6話

平日の夜は案外暇だと気づき続きを書きました。
私はゲームは土日とかまとまった時間にガッツリとやる派です。



 

 

俺達の攻撃、1番は木場だったな。

 

 

「デカイのはいいからとりあえず塁に出てくれ」

 

「はい。頑張ります」

 

 

ライザーさんの指示によりバッターボックスへと立つ。

次の打席である半蔵もネクストバッターズサークルへと向かうので適当に頑張れと言っておいた。

 

 

「しかしあのピッチャー、怖い面してるな」

 

「う、うん。顔に×の傷があるけど大丈夫なのかな」

 

「きっと極道の息子とか若頭って奴に違いねぇよ」

 

「何でそんなのが混じって野球してるのよ」

 

 

琢磨の言葉に相手ピッチャーの顔を見れば確かにあれはやばい。

絶対その筋の人だって。

そういえば、さっきネクストバッターズサークルにあの人がいたな。

って事は4番ピッチャーか、相当自信があるのか?

 

 

「相手チーム、随分と前に出てます」

 

「あら、本当ですわね」

 

「あぁ、バントを警戒してるんじゃないのか?」

 

「前に出ればそれだけボールを取って1塁に投げる時間が短くなるからな」

 

 

搭城と姫島の疑問にライザーさんと一緒に答えながらも唸る。

先ほどの守備で見せた事で木場が足の早い奴ってのは相手チームも気づいたか。

こりゃ塁に出るのは厳しいか、特にサインも考えてなかったから今から作戦を変更するってのもなぁ。

 

 

ブンッ

 

 

あらら、空振りか・・・ってピッチャー投げる球速いな。

 

 

キンッ

 

 

おぉ、ファール。でもまだタイミングが合ってないみたいだ。

 

 

ブンッ

 

 

ん?今微妙に変化しなかったか?

ともあれ木場は三振に終わってしまった。

 

 

「すみませんでした」

 

「いや初めてだし無理もないって。あんな球、俺達でも難しいぞ」

 

「祐斗先輩のカタキは打ってきます」

 

「あぁそうだ搭城。そのまえに一つ、3球目から振ってくれ、いいな?」

 

「?はい、分かりました」

 

 

搭城も次の出番か琢磨が転送してきたバットを持って次に控えた。

次は半蔵なので搭城に予め言っておく。まぁ半蔵なら・・・

 

 

コンッ

 

 

「キャッチャー!・・・って無理か」

 

 

一塁方向の白線ギリギリのバント

ピッチャーが慌てて指示を出すが半蔵は既に一塁にたどり着いていた。

まぁ、予想通りだな。

 

 

「さーて、次は待望の4番バッターだぜ」

 

「ふん、どうせコテツは三振に倒れて終わりよ」

 

「あはは、頑張ってね八代君」

 

「期待しておりますわ」

 

「まぁお前なら大丈夫だろう、女性陣の期待に応えて来い」

 

「あいよー」

 

 

バットを軽く振りながらネクストバッターズサークルへと向かう。

そして搭城がバッターボックスに立つと予想通り構えはするが1球目を見逃す。

 

 

バスンッ

 

 

「・・・・・・」

 

 

うへぇ、近くで見ると本当に速くて重そうな球だな。

真芯に当てないと飛ばないぞこりゃ。

そして2球目、俺の思ったとおり、相手ピッチャーが足を前に出した時に半蔵が走り出す。

 

 

「しまったっ」

 

「楽勝でござる」

 

 

これで2塁、十分得点圏だな。

さて、搭城みたいに背丈も小さいとなるとここは三振ってとこ・・・

 

 

カキーンッ!

 

 

「・・・へ?」

 

 

やけに甲高い音と共に搭城は振りかぶった体制のままやや上空を見ていた。

も、もしかして・・・

 

 

「ホ、ホームラン・・・」

 

「マジかよ」

 

「えっと、1周走ればいいんですよね?」

 

「あ、あぁ半蔵を追い抜かない程度でな」

 

 

遠くのホームランゾーンの川へと落ちていくボールを見て、俺は搭城の質問に応えた。

凄ぇな搭城の奴、あの背格好でこりゃまた大きなホームランを放ったもんだ。

相手ピッチャーも打たれた時はポカンとしてたもんな。

いやいや、誰が予想したよこんな展開。

 

 

「よくやったわ小猫!」

 

「凄いよ小猫ちゃん!」

 

「お見事ですわ小猫ちゃん」

 

「なるほど戦車(ルーク)だったか」

 

「末恐ろしい後輩だな」

 

 

ベンチ側でも大騒ぎ状態だった。

まず半蔵がホームベースを踏み、搭城が踏んで帰ってきた。

 

 

「いやはや驚いたでござる」

 

「全くだ、凄いな搭城。こりゃ今日のヒーローインタビューは決まりか?」

 

「ぶい、です」

 

 

Vサインをする搭城を見送り、俺が今度はバッターボックスに立つ。

後ろでグレモリーが控えてるのを確認した後にピッチャーに視線を向けて構える。

ピッチャーは何故か怪訝そうな顔をした後に大きく振りかぶった。

 

 

ヒュッ

 

 

「?」

 

 

スパンッ

 

 

あれ、何か球速が遅くなったような・・・

遠くで見るのと近くで見るのじゃ違うのか?

俺が怪訝そうな顔をしているのを見たのか後ろにいるキャッチャーが話しかけてきた。

さっきの忍者っぽい奴だ。

 

 

「君からは1番と3番みたいな危険な匂いがしない。ユーゴさんが力を出すまでも無いだろう」

 

「はい?」

 

 

匂い?何だ、木場と搭城は危険な匂いがするって事か?

どんな匂いだよ、火薬の匂いって事か。

けど、一つ分かった事は・・・手加減されてるって事だよな。

 

 

「・・・へぇ、面白いじゃねぇか」

 

 

こっちは遊びとは言え真剣に遊んでるってのに向こうは手加減とはねぇ。

まずはその考えを・・・

 

 

ヒュッ

 

 

「改めてもらおうか!」

 

 

カキーンッ

 

 

真芯で捕らえた打球はセンターを超えてホームランゾーンの茂みへと入った。

俺は一塁を回りながらピッチャーへと向けて言ってやった。

 

 

「もっと本気で遊ぼうぜお兄さん」

 

 

物事を決めるときはテキトーに。

だが実際やるとなると本気で取り組むのが俺のモットーだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、作者の都合によりダイジェスト(ほぼ会話のみ)でお送り致します。

 

 

「ちょっと!急に速くなったわよ!?」

 

「うぉっ!?変化球まで使うだと!?」

 

 

5番、6番、ピッチャーの剛速球+変化球に三振。0-2

 

 

「あらら、これは無理ですわね」

 

「祐斗、飛びなさい!」

 

「無茶言わないでくださいよ部長・・・」

 

 

2回表 4番ピッチャーのホームラン 1-2

 

 

「グレモリー!こっちだ!」

 

「分かってるわよ!えいっ!」

 

「何処投げてんだボケーっ!」

 

 

5番、2塁打。6番のレフト前ヒットがリアスの暴投により同点。 2-2、ランナー1塁。

 

 

「わっ!?」

 

「ナイス結城!後は任せろ!」

 

 

7番のピッチャー返し。グローブに当てて弾くが虎徹が機転を利かせてキャッチして1塁へ送球2アウト。

 

 

「えーと、この辺かしら・・・きゃっ、取りましたわ!」

 

「お見事です朱乃先輩」

 

「グレモリーに比べたらスゲェなぁ」

 

「ちょっとどういう意味よ」

 

 

8番のライトフライを朱乃が危なげながらもキャッチしてチェンジ。

 

 

「む、無理だよこんな速い球!」

 

 

2回裏 明日奈、三振。1アウト。

 

 

「えーい」

 

「おぉ、ポテンヒットでござるな」

 

「姫島は出たって言うのにグレモリーと来たら」

 

「さ、さっきのは油断しただけよ」

 

 

朱乃、レフト前ヒットで1塁へ。

 

 

「あれを僕に打てと?」

 

「いや、琢磨にはそこまで期待してない」

 

「デッドボールにならなかっただけマシだろタクマ」

 

 

琢磨、見逃し三振。2アウト。

 

 

「ここだっ!」

 

「祐斗走りなさい!」

 

「朱乃も頑張って!」

 

 

祐斗、右中間のヒットでランナー23塁。

 

 

「む・・・制球が甘くなってきたでござるよ」

 

「よく見たハンゾー」

 

 

半蔵、四球でランナー満塁。

 

 

「・・・えいっ」

 

「あぶね、何であんな奥深いとこ守ってんだよ」

 

「何はともあれこれで1点だ」

 

 

小猫、センター前ヒットで2-3、ランナー満塁。

 

 

「さっきとは比べ物にならないくら速い、やっぱこっちの方が面白いだろうが!」

 

「抜けた!」

 

「また満塁、リアス頼むぞ!」

 

 

虎徹、三遊間を抜けるヒットで2-4、ランナー満塁。

 

 

「幾ら速いと言っても所詮は人を超える速度じゃないって事よ!」

 

「うぉっ、マジで打ちやがった」

 

「さすがリアスね」

 

「リアスの奴・・・本気でやってやがる」

 

 

リアス、左中間を抜けるヒットで2人ホームイン2-6、ランナー23塁。

 

 

「変化球の打ち方ならコテツの親父さんに教えてもらってるんだよ!」

 

「そういや親父の運送会社、社会人チームがあったな」

 

「ライザーさんも野球ファンだからな」

 

 

ライザー、レフト前へのヒットで2-7、ランナー13塁。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合終了、31-12で俺達が負けてしまった。

何だこの点数、野球の点数じゃねぇよ。ほぼコールドじゃねぇか。

 

 

「あれ、おかしくね?途中まで俺達いい感じだっただろ」

 

「まさか相手チームが9打者連続ホームランしてくるとは予想だにしなかったでござるな」

 

「つまりは相手は超攻撃布陣のチームだったと言うわけだな」

 

 

そう、俺の言葉が皮切りだったのかピッチャーだけでなく相手チーム全員がボコスカと打つわで大変だった。

結城の奴なんて途中から涙目で交代したからな。

一方でこちらのチームと言えば木場、半蔵、俺、ライザーさんはかなり打っていたのだが・・・

 

 

「変化球なんて卑怯です」

 

「男なら真っ直ぐに勝負してきなさいよ!」

 

 

搭城とグレモリーは変化球に弱く、相手にそこを突かれてしまった。

姫島は当たり外れが大きく打つときもあれば三振やフライに終わるときもあった。

結城と琢磨は・・・まぁ無理だろう。

 

 

「うぅ、ごめんなさい。せめて打って汚名挽回したかったんだけど」

 

「いや、俺のリードも悪かったからアスナだけのせいじゃないさ」

 

「琢磨も溢すことなく守備は果たしたでござるよ」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

 

既に相手チームは帰ってしまった。

搭城と猫娘、半蔵と忍者は何やら気があったようで最後に一言二言話していたが。

 

 

「試合には負けちまったが・・・なぁグレモリー。勝負は俺の勝ちだよな?」

 

「むっ・・・分かったわ、今回は私の負けよ」

 

「はっはっは・・・って今回は?」

 

「次こそは私が完全に勝利するんだから覚悟してなさいコテツ!」

 

 

ビシィッと俺に指を突きつけて言い放つグレモリー。

何だ、まだやるのか。へへっ、面白い。

 

 

「おーけー、望むところだ!」

 

「と言うかリアスの奴、途中から人間相手とか忘れてたな」

 

「ふふっ、リアスったら負けず嫌いなんだから」

 

「私達も人のこと言えませんが」

 

「それでも敵わない相手チームは何者だったんだろう」

 

 

俺とグレモリーは互いに不敵な笑みを浮かべる。

初めてであれだけ打てるならちょっと練習すれば相当上達するだろうな。

こりゃ俺もうかうかしてられないな。

 

 

「殿、既に日も傾いてきたでござるよ」

 

「ん?そうだな、じゃあ今日はこれで解散でいいか」

 

「そうだね。さすがに遊びすぎたかな」

 

「ではまた明日、学校で会うとしよう」

 

 

日も暮れてきたと言う事で家へと帰る事にする。

俺は家が同じライザーさんと近所の半蔵と一緒に我が家へと歩みを進める。

 

 

「・・・・まずいな」

 

「何が?」

 

 

その途中で突然ライザーさんが足を止めたかと思うとそう呟いた。

今更試合内容に納得が行かなかったんだろうか?

 

 

「もうすぐナイターが始まるじゃないか!」

 

「あ、ちょっ!ライザーさん!?」

 

 

突如ダッシュするライザーさん。

ナイター?あぁ、野球の試合か。

 

 

「今日は駒王フェニックスの試合だっけ?」

 

「ライザー殿も殿の父君に染められたでござるなぁ」

 

「苗字と同じフェニックスだから応援してるって言ってたけどな」

 

 

ライザーさんが俺の家に居候して数日後、親父がプロ野球の試合を見ていたところにライザーさんが遭遇。

ライザーさんの苗字であるフェニックスが入った地元チームが気に入ったのかそれ以来、かかさず見ているらしい。

何回か親父と一緒に地元の試合を見に行った事もあったっけな。

 

 

「って事は親父もそろそろ帰る時間帯だしな・・・って、あれは」

 

 

俺と半蔵が話しながら歩いていると向こうから見覚えのある人が歩いてきていた。

グレモリーと同じような紅く長い髪をした女性だ。

俺と半蔵が小さい頃から知っているその人もこちらに気づいたようで優しい笑みを浮かべた。

 

 

「あら、奇遇ね二人とも」

 

「よぉ、グリ子さん」

 

「久しぶりでござる、グリ子殿」

 

「相変わらずオツムの弱い子達ねぇ。そのスタイルで行くならグレ子なのだけれど」

 

「言いづらい。グリ子さんでいいだろ」

 

「そうでござるよ」

 

「はぁ、まぁいいわ」

 

 

しっかし、グリ子さん・・・何かグレモリーに似てね?

グレモリーを見た時から思ってたんだが誰か思い出せなかった。

 

 

「それより、随分と面白い事になってそうねコテツ」

 

「最近、何かあったっけ?」

 

「記憶に無いでござるな?」

 

「ふふふ。本当、いつ見ても飽きないわ貴方達は」

 

 

そう言って俺達の頭を撫でだすグリ子さん。

って恥ずかしいからやめろーっ!

 

 

「ふふっ、残念。もっと話していたいけれど日も沈んできたから今日はこの辺でね」

 

「おっとそうだった。速く帰らないと」

 

「拙者も夕餉が待っているでござる」

 

「また今度ゆっくりとお話しましょう?」

 

「おう、じゃあなグレ子さん!」

 

「グレ子殿も気をつけるでござるよ!」

 

 

グレ子さんに挨拶をすると俺達は暗くなってきた道を駆け出した。

 

 

「大侯爵、侯爵、そして私の・・・ね、本当に面白くなってきたわね」

 

 

 

 

 

 




何と言う無理やり感。まぁ人間4人+若手悪魔5人 VS 獣人?9人ですからね。
悪魔5人には野生のカン(笑)で強いと判断したようです。


「本気で遊ぶか。ならば俺も超獣化で相手を・・・」

「ソレはさすがに止めようユーゴ!」



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第7話

ゴッドイーター2買いました。
友人とskypeで話しながらゲームスタート。
・・・オンラインマルチプレイが無い、だと?




「どーして私を仲間はずれにするのよーっ!」

 

 

休み明けの放課後、俺達が先輩からの依頼の報告をしていたら突然先輩が大声を上げた。

一緒に野球が出来なくて不満のようだ。

 

 

「つってもなぁ・・・」

 

「バティン先輩が試合すると試合どころではなくなると思うが」

 

「全打席ホームランは確定でござるな!」

 

「あはは、ピッチャーやっても三振の山を築くのが目に見えるよ」

 

「私だってたまには皆と遊びたいのにー」

 

 

そんな事を言われてもな。

先輩休日は何してるのかさっぱりだし。

携帯で連絡しても圏外なんてよくある事だ。

 

 

「まぁ、でも3人ともこれだけよく調べてくれたわね。ありがとね」

 

「この程度造作も無かったでござる!」

 

「お前が一番大変そうだったけどな」

 

「でもティナ先輩。こんな情報集めてどうするんですか?」

 

「肝試しでもするんじゃね?」

 

「さすがに時期が違うだろう」

 

 

そうだった、結局なんで神社、教会、廃ビルなんてものを調べさせられたのか。

何かイベントとかあったっけ?

 

 

「ふふ。残念ながらこれはリアスちゃんのタメになる情報ね」

 

「グレモリーの?」

 

「むむむ。分かったでござるよ!グレモリー嬢はお化けが怖いからその特訓をするためでござるな!」

 

「なるほど。半蔵、お前頭いいな」

 

 

半蔵の言葉に俺は全てを納得した。

グレモリーはお化けが怖い。

そして日本では夏に肝試しがあると姫島あたりから聞いたんだろう。

それで少しでも克服するために同郷の先輩に頼ったと・・・

 

 

「完璧だ。完璧すぎる筋書きだな」

 

「まず最初のリアスはお化け怖いってところがあやふやだよ」

 

「グレモリーさんも調査には疑問に思っていたんだがな・・・」

 

 

となると、あいつが克服する前に何とかして怖がらせないと駄目だな。

 

 

「それにしてもライザー君がいたのね」

 

「え?あぁ、俺も大体1年ぶりでしたよ」

 

 

どうグレモリーを怖がらせようかと考えていると先輩がライザーさんを話題に出した。

やったなライザーさん。一応、先輩はライザーさんを覚えてるみたいだぞ。

初めて俺がライザーさんと先輩の会話を見た時は忘れられてたからな。

あの時のライザーさんと落ち込みようと来たら不憫でならなかった。

 

 

「どうせなら私に挨拶でも来ればよかったのに。幼馴染なのに水臭いわね」

 

 

その幼馴染を忘れていた貴女が言いますか。

 

 

「確か以前に会ったのは3ヶ月くらい前かしら」

 

「あぁ実家にでも帰ったんですか?」

 

「えぇ、レーティングゲームをしてたの」

 

「レーシングゲーム?海外じゃ流行ってるんですか?」

 

「えぇ、一種のステータスと言っていいくらいで・・・ってレーシングゲーム?まぁいいか」

 

 

なるほど、ライザーさん車の運転でも負けたのか。

あれ?でもまだ先輩は免許取れる年じゃない。

と、言う事は・・・

 

 

「ゴーカートか」

 

「マ○オカートでござるな」

 

「いいわね。今度のゴールデンウィークはゴーカートで遊びましょう!」

 

 

俺と半蔵の漏らした呟きに先輩がいい反応を示した。

おぉ、それは面白そうだ。

 

 

「リアルでマ○オカートか。こいつは楽しみだ!」

 

「でもこの辺にゴーカートで遊べる場所なんてあったっけ?」

 

「ふむ・・・少し遠いが日帰りで十分行ける距離にあるな」

 

「あっ、先輩。ライザーさんも誘っていいですか?」

 

「ライザー君を?そうね、構わないわよ。他にもリアスちゃんと朱乃ちゃんも誘いましょうか」

 

 

ライザーさんにグレモリーに姫島か。

ついでに木場と搭城も誘うか。

こりゃ楽しいレースになりそうだな!

 

 

「殿!まずは甲羅を手に入れるでござる!」

 

「はっ!そうだな、赤と緑。後はトゲ付きの青も外せないな!」

 

「実際バナナで滑るかなぁ」

 

「雷をどう入手するつもりだ二人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜の街中、私はリアス、小猫ちゃん、祐斗君。

そしてティナ・バティンさんと歩いていました。

 

 

「なるほどね。それでコテツ達に調べさせていたわけなのね」

 

「そういうこと。リアスちゃん達、まだ討伐した事なかったでしょ?」

 

 

はぐれ悪魔の討伐、ここ駒王町はグレモリーの統治している街であるため治安維持も仕事との事です。

グレモリー家からの依頼でリアスへの指導に当たる事になったのがティナさんでした。

 

 

「と、言うよりも戦った事ってあるの?」

 

「失礼ね。冥界では戦闘訓練ぐらいならした事あるわよ」

 

「・・・あぁ、こりゃ駄目ね」

 

 

呆れたようにため息を吐いて首を横に振るティナさん

一体何が駄目と言うのでしょう?

これでも筋がいいと褒められたりしたのですけれど。

 

 

「どういう意味よ?」

 

「レーティングゲームが流行ってから冥界も人間界に合わせてぬるくなったからねー」

 

 

レーティングゲーム。悪魔の数が減った事による救済策にして嗜好ともなった遊び。

死ぬ事が無いようにとされたルール、それが時に気に食わないとティナさんは仰いました。

 

 

「例えばそうね、私やリアスちゃん達上級悪魔はどういった括りか分かるかしら?」

 

「括り?元ソロモンの72柱と言う事ですか?」

 

「えぇ、そうね。今では数は減ったけれど。問題はそこなのよ」

 

 

ティナさんやリアス達上級悪魔と呼ばれる方達の共通点と言えばソロモンの72柱である事は悪魔だけでなく堕天使や天使でも知っている事。

しかしそれが問題とは?

 

 

「ソロモンの72柱には序列が存在しているでしょう?けど私達悪魔に通用した事があったかしら?」

 

「・・・・無いわね。私達グレモリーは56位に座していたけれども特に上の序列から何かを命令されたなんて聞いた事が無いわ」

 

「でしょう?大公爵や大王といった位は事実でも序列なんて人間が勝手に定めたものですもの」

 

「ちょっと待ってください。それでも魔王様は上級悪魔から輩出されていますよ?」

 

「72柱に名を連ねていた悪魔が強いのは確かよ。でもね、当時なんて他にもそんな連中はごろごろいたらしいわよ?」

 

 

確かに元ソロモン72柱以外でも強い方はいらっしゃいますわ。

冥界三大貴族とも言われているアーンスランド、ヴォシュタル、ドーマの3家は魔王様にも匹敵される力を持ちながらも冥界の奥地に棲んでいらっしゃるとも聞きますし。

他にもマキシモフ家のヴァンパイア、魔界大帝と上げればキリがありませんわね。

 

 

「結局何が言いたいのかと言うとね。上級悪魔だからってイコール強さってわけでもないの。だから注意しなさいってこと」

 

「えぇ、肝に銘じておくわ」

 

「いい?これから行うのは討伐。ゲームじゃないの。殺し、殺される関係。甘い考えでいると・・・こっちが死ぬわよ」

 

 

普段の人の好い笑みとは異なる好戦的な笑みを携えて助言して下さるティナさん。

これが未だレーティングゲーム無敗の彼女の本当の顔なのでしょうか。

 

 

「まぁ、まずは下級悪魔からレベルアップしていきましょうか」

 

「・・・えぇ、分かったわ」

 

「助言ありがとうございますわ」

 

「いいのよ。貴女達がこんなところで倒れたりしたら魔王様達の小言が五月蝿くてたまらないしね」

 

 

あらあら、さすがはティナさんですわね。

 

 

「それに、トラちゃん達が悲しむでしょ?」

 

「八代先輩達、ですか」

 

「あの、本当に先輩達は悪魔を知らないんでしょうか?」

 

 

祐斗君の言う通りです。

神器の持ち主でいてティナさんの悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を持っている。

これだけの条件を持っているのですから疑うのは当然・・・だったのですけどね。

 

 

「祐斗。心配しなくても本当にコテツ達は人間よ」

 

「えぇ、それは私も同意見ですわ」

 

「あら、さすがはグレモリー家。調査が早いわね」

 

 

既にコテツさん達は普通の人間であると調べは付いていますから。

 

 

「でも一般人じゃないですよね?」

 

「小猫、ソレは言わなくても分かってるわ」

 

 

さすがにあの方達を一般人と言うには抵抗がありますわ。

アスナもどこかズレているところがありますし。

タクマさんとハンゾーさんなんて言わずとも、です。

コテツさんも神器が無かったとしてもあの行動力は異常ですわ。

 

 

「そんな事を話している間に出たわね」

 

 

ティナさんの言葉に視線を前に向けると一匹の悪魔が姿を現しました。

私達が気を引き締めているとティナさんは悠々と一歩前に出ます。

 

 

「最初は私が見本を見せるわね。まず、対象かどうかの確認」

 

 

そう言って目の前の悪魔に確認を取るティナさん。

よほど位の低い悪魔なのか人語を解さないようですわね。

 

 

「まぁ名前に反応したと言う事は対象で間違いないでしょ。で、次に討伐」

 

 

スパッ

 

 

「え?」

 

「い、いつの間に・・・」

 

 

気づけばはぐれ悪魔の首から上が地面に転がっていました。

まるで切断されたかのように、攻撃の気配を一切感じませんでしたわ。

 

 

「と、まぁこんな感じで頑張ってね。それじゃあこれから毎日一人一殺を心がける事!」

 

「ま、毎日!?」

 

「そうよ、何故かこの街ってやけにはぐれ悪魔とかが多いのよね。後は天使とか堕天使も」

 

 

いつの間に駒王町は人外魔境の巣窟になったのでしょうか。

・・・あら?ですが学園の方達を思えば人間の方が危険な気がしてきましたわ。

 

 

「つまり手っ取り速く強くなれるって事。ゲームと同じでレベルアップするには多く戦わないとね」

 

「先ほどはゲームと思うなって言ってませんでしたっけ」

 

「いい、祐斗ちゃん。人間は常に気を張り詰めていたら駄目よ。気を抜く時は抜かないと」

 

「私達、悪魔です」

 

「シャーラップ!それはそれ、これはこれ、よ!あ、朱乃ちゃん。死体はこれで回収お願いね」

 

 

渡されたのは一枚のカード。

魔法陣が描かれていますわね。

回収、と言うくらいならば・・・

 

 

ピカッ

 

 

一瞬光ったと思うと先ほどの死体は姿を消していました。

そして手にしているカードには予想通り先ほどの死体が描かれています。

 

 

「回収完了しましたわ」

 

「ありがとね。それじゃあ早速行ってみましょう!」

 

 

その後、はぐれ悪魔の集会場に突貫してしまい大変な目に会いましたが蛇足とさせて頂きますわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁライザーさん」

 

「どうしたコテツ?」

 

 

自室でライザーさんが実家から持ってきたエロ本を読んでいて、ふと思った事がある。

 

 

「何でライザーさんが持ってくるエロ本ってコスプレばかりなんだ」

 

 

そう、何か悪魔の羽や尻尾だの動物の耳だのが生えている女の子ばかりなのだ。

もうちょっとこう普通のは無いのか。

 

 

「あー、それはまぁ・・・なぁ?」

 

「なぁ、って言われても全然わかんねぇよ」

 

 

もしかしてライザーさんはこういうのが趣味なんだろうか?

確かに先輩ならこんな格好も面白がってしそうだけどな・・・って言うかハロウィンでしてたな。

まるで本当に生えているかのような精巧さだった。

尻尾とかブンブン動いてたし。

 

 

「分かった分かった。今度は普通のを買ってきてやるよ」

 

「サンキュ」

 

「それよりもだな、コテツ。学校にはほぼ女子ばかりなんだろ?」

 

「あぁ、ようやく最近は慣れてきたとこだよ」

 

「それで、誰か好みの子はいたのか?」

 

 

好みねぇ、顔だけで言えば綺麗な子や可愛い子ばかりなんだが・・・

性格がなぁ・・・何でどいつもこいつも一癖も二癖もあるやつばかりなんだ。

 

 

「リアスはどうだ?」

 

「グレモリー?そりゃ弄り甲斐のある面白い奴ってのは認めるけどなぁ」

 

「コテツにはまだ早かったか」

 

「早い遅いの問題じゃないと思うんだけど」

 

 

恋人なんて言われてもイマイチ、ピンと来ないんだよな。

まだ友達と遊んでた方が楽しいし。

 

 

ガチャッ

 

 

「コテツ。おっとライザー君もいたのか」

 

「親父、どうしたんだよ」

 

「どうしたんです、親父さん」

 

 

突然入ってきたのは親父だった。

そのまま部屋に入るとテレビの前を陣取る。

 

 

「今日はこれを買って来たんだ」

 

 

そう言って取り出したのは確か今日発売の野球ゲーム。

本当に野球好きだな親父は。

 

 

「見ろライザー君。これはなプレイヤーが監督や選手として体験できるんだ」

 

「マジッスか!もちろんそのチームは・・・」

 

「あぁ、駒王フェニックスに決まっているじゃないか!」

 

 

訂正、本当に野球好きだな親父とライザーさんは。

あっという間に食いついたライザーさんとはしゃぐ親父。

俺も野球は好きだけど実際にやるのが楽しいってだけで見るのはそこまで好きじゃないな。

 

 

「帰りが遅いと思ったらソレ買ってたのかよ」

 

「そうだ。売り切れ寸前で何とか買ったんだ」

 

「親父さん、これ俺もやってもいいですか?」

 

「もちろんだとも。ただ私のセーブデータは消さないようにしてくれよ」

 

「っつうか何で俺の部屋なんだよ。ゲーム機持っていけばいいじゃん」

 

 

これでお袋まで入ってきたら怒られるのは俺なんだぜ?

 

 

ガチャッ!

 

 

「あんた達、もう遅いんだからさっさと寝なさい!虎徹もお父さんやライザー君の都合を考えなさい!」

 

「「は、はい・・・」」

 

「ほら見ろ」

 

 

お袋に怒られて自らの部屋に戻っていく親父とライザーさん。

お袋も帰っていき俺一人となった部屋で俺は立ち上がりテレビの前に行く。

 

 

「さて、ゲームでもするか」

 

 

親父が置いていった新作の野球ゲームを始めたのだった。

これ買おうかどうか悩んでたんだよな。

 

 

 

 

 




原作キャラ以外は格闘ゲームのキャラという妙な縛りをしていますが、
北斗の拳やペルソナ4など原作が漫画やRPGと言った格闘ゲームは含まれませんのでご注意を。



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第8話

ゴッドイーター2でマルチプレイで遊んでます。
VITAでもPS3のアドホックパーティ使えたんですね、知りませんでした。

しかし前書きも後書きもネタが無い。
次回から適当なネタでも入れておきますか。



 

「花見?」

 

「うん。第2回クラス親睦会だよ、コテっちゃん!」

 

 

元気よくアホ毛をピンと跳ねさせながら愛乃は話す。

第1回の提案者も愛乃だったけど随分と早いな。

 

 

「まだ2週間しか経ってないぞ?」

 

「だって皆、決まった人としか話してないんだもん」

 

 

言われて見ればそうだな。

俺もいつものメンツに最近はグレモリーと姫島ぐらいしか話してない。

他のクラスメイトも似たような感じで少人数でグループを組んでいるらしい。

 

 

「よし、俺も他のクラスメイトと話すいい機会だしな・・・ で、いつやるんだ?」

 

「今日」

 

「いや、急過ぎんだろ」

 

「愛があれば大丈夫だよ!」

 

 

いや、その理屈はおかしい。

せめて週末と言う事にして愛乃を無理やり納得させる。

渋々と言った具合で青髪のクラスメイトの元へと戻っていった。

あれは・・・廿楽(つづら)だったっけ?

やっぱり何度か話していないと名前を忘れるな。

 

 

「八代、そろそろいいか?」

 

「おう、悪い悪い。ほら返すぜ疾風」

 

 

愛乃が話しかけてくるまで借りていたブーメランを疾風に返す。

何であのブーメランで草薙達とまともにやりあえるのか不思議だ。

と、言うよりも空手とブーメランを組み合わせた格闘技って何だ?

 

 

「殿。風雲流の武器いかがでござった?」

 

「全く分からん。何処からどう見てもブーメランだ。何で分身するのかさっぱりだ」

 

「それで、愛乃さんは何の用件だったんだ?」

 

「あぁ、それがな」

 

 

いつものメンツの元へと戻って俺は先ほどの花見の件を話した。

 

 

「拙者は参加するでござる」

 

「僕も予定は無いから問題無いな」

 

「・・・・・」

 

「ん?結城、どうした?」

 

「え?あ、うん。私も参加するよ」

 

 

半蔵、琢磨が参加を決めたところで悩んだ様子の結城。

声をかけると気づいたようで返答するが何だ?

 

 

「どうしたんだ、何か悩みでもあるのか?」

 

「・・・うん。実は最近、何か変なの」

 

「変って何が?」

 

「家に帰る途中で後ろに誰かの気配を感じたり家にいても誰かに見られているような気がして」

 

「それストーカーじゃね?」

 

「ストーカーだな」

 

「"すとーかー"でござるな」

 

「や、やっぱりストーカーなのかな」

 

 

結城の悩みは満場一致でストーカーで決まった。

で、後はどう対処するかだが・・・

 

 

「半蔵はストーカーを調べるとして琢磨は結城に便利アイテムを上げればいいんじゃないか?」

 

「八代君はどうするの?」

 

 

俺は・・・何ができるよ?

いや、あれがあったな。

 

 

ポンッ

 

 

俺は本を取り出し大きな一冊を手にとって適当なページを開く。

何か久しぶりに出した気がするな。

大きな本は変な模様ばかりだから1枚ぐらい無くなっても大丈夫だろ。

 

 

「よし、これだ」

 

 

ビリッ

 

 

「後はこうしてっと・・・どうだ結城」

 

「どうだって・・・何これ?」

 

「お守りだ。俺のよく分からない能力で出来た不思議パワーで結城を守ってくれると思うぞ」

 

 

破いたページにボールペンで俺にしか見えない模様を上から描いて結城に渡した。

するとグレモリーと姫島がこちらにやってくる。

 

 

「本なんて出して何をしているの?」

 

「あ、リアス。これ、八代君がお守りだって」

 

「お守り?・・・コテツ。この魔法陣はその本に書いてあったのね?」

 

 

魔法陣って言えばアレだろ。

縦で足しても横で足しても同じ数になる奴。

あれ、苦手なんだよな。

 

 

「俺、クロスワードの方が好きなんだけど」

 

「コテツさん、ナンプレの話ではありませんわ」

 

 

となるとゲームとか漫画で出てくる方の魔法陣か。

本当に謎な本だなこれ。

 

 

「そっちか。確かに魔法陣っぽいのばかりだな」

 

「これは召還の魔法陣、それも随分と高度なものだわ」

 

「さすがオカルト研究部、もう少し僕達にも分かる話をして欲しいものだ」

 

 

ぱらぱらとページを捲っても形は違うが大体同じ作りと相変わらず読めない文章が載っている。

 

 

「まぁ今は置いておきましょう。それでどうしてこんなものをアスナに渡したのかしら?」

 

「うん、実はね・・・」

 

 

結城がグレモリーと姫島にも先ほどのストーカーの話をした。

話を聞くにつれて難しい顔をしていたが最終的には怒りの顔となった。

こ、怖ぇよ。ライザーさんや親父が女は怖いと言っていたがこういう事だったのか。

 

 

「許せないわ!」

 

「女の敵ですわね!」

 

「コテツ!放課後そのストーカーを捕まえに行くわよ!」

 

「お、おう」

 

 

あれ?何で捕まえる話になったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ結局いつもの皆で結城嬢を尾行中でござるが・・・

 

 

「幾ら何でもこの人数はどうかと思うでござるよ」

 

「何だこいつら、追っかけにしては変だな」

 

 

結城嬢にはなるべく遠回りで帰るようにお願いしたと思ったら次から次へと出てきたでござる。

ちなみに分身の術を使えば容易く見つけることができるでござる。

共通点と言えば黒服の男達と言った点のみ。

 

 

「残念ですが仕方ありませんわ。これは尋問が必要ですわね」

 

「姫島さん、残念と言いながら目が輝いているぞ」

 

「殿、そこの店先にある客もそうでござる」

 

「おいおい、またかよ」

 

 

"すとーかー"が何故こうも跋扈しているのでござろうか。

結城嬢は確かに中学時代から人気のある女性ではあるがさすがにこれは度が過ぎているでござるよ。

 

 

「琢磨、何か分かるか?」

 

「そうだな・・・彼らの情報となりそうなものはあるか?」

 

「あら、その必要はなさそうよ」

 

 

何時の間にかグレモリー嬢は捕まえた一人の目の前にいたでござる。

男を見ればどこか虚ろにしながらも一枚のカードを取り出し、こちらに渡したでござる。

これは社員証?

なるほど・・・グレモリー嬢の色香に惑わされたでござるな。

 

 

「レクト・プログレス?電気機器を作っているあのレクトに関係があるのかしら?」

 

「俺の家のテレビはレクト製だぜ」

 

「レクト・プログレスはオンラインゲームを製作しているレクトの子会社だったはずだ」

 

「他の連中も同じ会社みたいでござるな」

 

 

他に捕まえた男達の懐からも同様の社員証が見つかったでござる。

はっ!拙者閃いたでござるよ!

 

 

「殿!聞いてくだされ!」

 

「どうした半蔵」

 

「きっと結城嬢は凄腕の"げーまー"で、この会社がその腕に目をつけたでござる!」

 

「何!と、言う事は・・・」

 

「うむ、きっと"てすたー"として問題ないかの素行調査を行っているに違いない!」

 

「やるな半蔵。だが一つ忘れている事があるぞ」

 

 

忘れている事?一体なんでござろうか。

拙者の推理に何一つ穴など無いはず。

 

 

「レクトのCEOは結城の親父さんだ!」

 

「な、何と!?」

 

 

はっ!そういえば以前に結城嬢の家でそんな事を聞いた覚えがあるでござる。

・・・・ところでCEOって何でござろうか?

 

 

「確かにそうだが虎徹、よく覚えていたな」

 

「たまにうちの親父と一緒に飲んでるらしいからな」

 

 

さすがは殿の父君でござるな。

一見平凡なように見えてそのお心は海よりも広く深いでござる。

 

 

「それならアスナさんのお父様がこのような事をしたのでしょうか?」

 

「どうだろうな。だが結城さんにも気づかれるレベルの人数だぞ」

 

「まどろっこしいわね。直接聞けばいいじゃない」

 

「グレモリー嬢、どうするつもりでござる?」

 

 

そういえばグレモリー殿の色香に惑わされていたのを忘れていたでござる。

 

 

「貴方達がアスナを付回しているのは誰の命令かしら?」

 

「・・す・・ご・・・う、で・・・す」

 

「すごう?人の名前でしょうか?」

 

「いや、やはり凄腕と言いたかったに・・」

 

「半蔵、そのネタはもういい」

 

 

ぬぅ、ネタではござらんのに。

それにしてもその"すごう"と言う御仁が結城嬢を付回す"すとーかー"のようでござるな。

 

 

「コテツ、そろそろアスナの家の近くだけどどうするの?」

 

「んー、そうだな。後は家の中の視線って奴か。琢磨、何渡したんだ?」

 

「盗聴器と盗撮カメラの探知機だな。近づけば逆探知して相手の居場所が分かるようにしている」

 

「彼らはどうしますの?」

 

「放置でいいだろ、警察に突き出すのも面倒だし。結城と合流しようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

「いらっしゃい・・・うわっ」

 

 

結城家にお邪魔すると早速、琢磨の探知機が反応を示した。

んん?何処だ?

 

 

「この辺触っても大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫。でも壊さないでね。特に八代君と服部君は」

 

「失敬な!殿と拙者がそんな事するはずが無いでござるよ!」

 

「以前に結城さんの家に来たときの事をもう忘れたのか」

 

 

ははは、何のことやら。

高そうな絵を破いたりなんてしてないぞ。

 

 

「・・・あったぞ」

 

 

あっさりと琢磨が盗聴器と思われる機械を見つけた。

花瓶の中か、俺が触ったら絶対落としそうだ。

 

 

「これで犯人が分かるのか?」

 

「他にもあるに越した事は無いがな」

 

「じゃあ家捜しだな!」

 

「あ、あまり変なとこには行かないでね」

 

「変なとこって何処だよ?」

 

「それは・・・その、わ、私の部屋とか?」

 

 

そういえばいつもリビングとかで結城の部屋には行った事なかったな。

口癖が「十年早いんだよ!」な結城の兄貴の部屋には入った事がある。

結局何が十年早いのか分からないままだった。

 

 

「そうか。結城の部屋は変な部屋なのか」

 

「ち、違うよ!?そういう意味で変って言ったわけじゃないからね!」

 

「ははは、知ってるよ」

 

 

さすがに俺も女の子の部屋に無闇に入るような真似はしねぇよ。

他に結城が立ち寄りそうなところを探すとするか。

 

 

「共有スペースを見て回れば問題無いだろう。リビングやキッチン、後は・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ってて!」

 

 

琢磨の提案の途中で突然、結城が走り出してしまった。

 

 

「お風呂、トイレ、ベランダとかだな」

 

「・・・コテツさん達はリビングとキッチンをお願いしますわ」

 

「そうね。洗濯物とか覗かないように、いいわね?」

 

 

なるほどね、心配しなくても人様の家でしねぇよ。

と、言うかこいつらは俺をどういう目で見てんだ。

 

 

「そういえば殿、結城嬢に"すごう"なる犯人は告げないでござるか?」

 

「あ、そういえば言うの忘れてたな」

 

「いや、まだ言わない方がいいだろう」

 

 

何でだよ?結城も心配してたんだし安心させてやるべきじゃねぇのか?

俺は琢磨の言っている意味が分からず眉をひそめる。

 

 

「まだこの"すごう"って人が犯人って言う物的証拠が無いもの。それを見つけてからでも遅くないわ」

 

「つまりは今探している盗聴器や盗撮カメラを押さえてしまえば証拠になる、と言う事ですわね」

 

「生憎とこの盗聴器はオンラインで繋ぐタイプではないみたいだ」

 

「それは犯人は定期的にこの家に来て取り替えているって事ですわね」

 

「と、言う事はアスナ、もしくは家族の知人と言う事ね」

 

 

琢磨、姫島、グレモリー達3人で次々と推測していくのはいいんだけどよ。

俺と半蔵・・・置いてけぼりなんだが。

 

 

「殿、結局のところ拙者達はどうすれば良いでござるか?」

 

「そうだな。盗聴器と盗撮カメラを探せって事だろ」

 

「なるほど。つまりは元の目的で問題無いでござるな」

 

 

ボーンッボーンッ

 

 

「うおっ!?びっくりした。時計かよ」

 

「大きなのっぽの古時計でござる」

 

 

耳元で鳴る音に驚けば柱時計から出る音だった。

もう7時か、早く見つけて帰らないとお袋がうるさいぞ。

 

 

「きゃーーーっ!」

 

「結城!?」

 

 

今度は一体何だって言うんだ。

結城の叫び声に俺達は家の奥へと走っていく。

 

 

「これは・・・魔力!?」

 

「それも私達よりも強い魔力ですわよ!?」

 

 

後ろでグレモリーと姫島が騒ぐが知った事じゃない。

まさか犯人が家にいたのか!?

 

 

バタンッ

 

 

「結城!どうした!?」

 

 

扉を開くとそこには床に座り込む結城と・・・・

 

 

「何デスかここは?何で小さくなっているデス?」

 

 

羽の生えた喋る黒いボーリング玉がいた。

 

 

 

 

 




と言うわけで感想に頂いたキャラの登場デス。

それにしても半蔵の一人称がござるばかり。
そりゃ、どこぞの野生児も真似したくなりますよね。

「ござる!ござる!ほしにく くれ!」



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第9話

ifシリーズ~服部半蔵が別の服部半蔵だったら~

「よし、半蔵!行くぞ!」

「委細承知。百舌落としっ 滅せよ 天誅!」

「やべぇ、忍者っぽい。マフラーが赤くて目立つけど」

「怒り頂点也!」

「何で!?」


こんなのでほのぼのとか無理です。




 

 

 

 

 

 

 

「・・・結城、何だその変な球は」

 

「し、知らないよ。いきなり光ったと思ったら突然出てきたんだもん」

 

 

結城の叫び声が聞こえたと思ったら尻餅をついた結城と黒い変な球がいた。

 

 

「変な召喚の魔法陣に縛られたデス。ここはどこデス?」

 

「えっとここは私の家だけど・・・魔法陣?」

 

「そうデス、カビの生えたような無駄に縛りが強い魔法陣デス」

 

 

魔法陣?はて、最近それを聞いたような気がするな。

そんな事を思っていると結城は鞄から一枚の紙切れを取り出す。

あれは・・・俺が上げた奴じゃないか。

 

 

「え、マジでこんなのから黒球が出てきたわけか?」

 

「黒球とは失礼デス!ボクにはフェルナンデスと言う素晴らしい名前があるデス!」

 

「ですです変な球だな」

 

「それにしても小さいでござるな、野球ボールぐらいの大きさでござるよ」

 

「新種の生物か?だとすると虫か動物かそれが問題だな」

 

 

黒球を囲んで俺達は興味深く見てみる。

耳のところに何だろう、蝙蝠の羽?みたいなのがある。

後は球に手足が生えてるだけだ。誰かの落書きみたいな存在だな。

 

 

「ふぇるなんです、長いでござる。もっと短くするでござるよ」

 

「そうだな、昼のテレビ番組みたいだぞ」

 

「フェルナンデス科フェルナンデス。後は解剖あるのみだな」

 

「何で初対面で駄目だしデス!?しかも最後のニンゲンはしれっと怖い事言ってるデス!」

 

「もう3人とも!かわいそうだしやめてあげてよ」

 

 

あ、結城の奴取り上げやがった。

正確には両手で抱えてだが、折角面白い生物?を見つけたってのに。

 

 

「あのね、私は結城明日奈って言うの。よろしくねフェルちゃん」

 

「フェ、フェルちゃん?ボクのことデス?」

 

「うん。服部君が言うように長くて呼びづらいのもあるけど可愛い名前の方がいいかなって」

 

 

まぁ確かにマスコット的な可愛さはあるな。

手のひらサイズで持ち運びも便利だし。

・・・あいつ投げて野球できねぇかな。

 

 

「俺は八代虎徹だ。よろしくな黒球」

 

「拙者は服部半蔵でござる。よろしく頼むでござるよ"なんです"殿」

 

「僕は高藤琢磨だ。同じくよろしく、じっけんた・・・被験体君」

 

「せめて統一感を出して欲しいデス!そしてやっぱり最後の奴が怖い事言ってるデス!」

 

 

あれ?そういえばグレモリー達はどうしたんだ?

後を追ってきていたから後ろを見てみる。

何故か顔を引きつらせているグレモリーと姫島がいた。

 

 

「どうした二人とも?」

 

「ど、どうしたも何も・・・・」

 

「魔界大帝フェルナンデス様・・・」

 

「ん?そこの二人の魔力・・・ボクと同じムガムガ!?」

 

 

黒球が何か言おうとしたところでグレモリーと姫島が結城から奪い別の部屋に行ってしまった。

はっ、今のうちに黒球で定着させておかねば!

 

 

「いいか。今日からあいつは黒球で決定だ」

 

「可愛くないから駄目、フェルちゃんでいいでしょ」

 

「なんです殿で問題ござらんよ」

 

「被験体No552でいいだろう」

 

 

琢磨、残りの551匹?の被験体は何処に行ったんだ。

 

 

「その前にアレをどうやって出したんだ虎徹」

 

「俺に言われてもな。この謎パワーじゃねぇの?」

 

 

琢磨に言われて変な本を出す。

確か・・・この本だったっけ?

ページをぱらぱらと捲れば一ページだけ破れた後があった。

なるほど、落書きは消えるけどページを破いた場合は戻らないのか。

 

 

「それであの珍生物は結城嬢が飼うでござるか?」

 

「え?あ、いいの八代君?」

 

「いいんじゃね?家はペット禁止だし。連れて帰ったらお袋が捨てて来いって言うに決まってる」

 

「ど、どうしよう。お父さんとお母さんに言わないと。あ、お兄ちゃんにも言わないと」

 

「そもそもアレは何を食べるんだ?どう生活しているのか非常に興味があるんだが」

 

 

ガチャッ

 

 

「ま、待たせたわね」

 

「アスナさん、デス様をお返ししますわ」

 

「ありがとう朱乃・・・デス様?」

 

「本来なら魔界大帝フェルナンデス様と呼んで欲しいデスが、仕方ないデスからデス様で許してやるデス」

 

 

急に強気になって帰ってきたぞ黒球。

ん?って言うかデカイ?

 

 

ひょい

 

 

「さっきまで野球ボールくらいじゃなかったかコイツ?」

 

「今ではバレーボールほどの大きさだな」

 

「こ、こら!もっと丁重に扱うデス!ボクは大きさなんて自在に変えることができるから当然デス!」

 

 

じたばたと短い手足を動かして主張しだす黒球。

手を離してやると見事に着地してこちらを見上げる。

 

 

「フェルちゃんがいいのに・・・」

 

 

キンッ

 

 

「うっ、契約の縛りが・・・わ、分かったデス。アスナだけはその呼び方を許すデス」

 

「本当に!?ありがとうフェルちゃん!」

 

 

ぎゅっと黒球を抱きしめる結城。

何!?そんな馬鹿な、黒球じゃない、だと!?

 

 

「いい、コテツ、ハンゾー、タクマ。あの方の事はデス様、それが嫌なら魔界大帝フェルナンデス様とお呼びするのよ」

 

 

やたらと怖い顔をして言い出すグレモリー。

その目が徐々に紅く光りだし・・・・

 

 

「まぁいいや、結局そのデス様はどうするんだ・・・あれ?」

 

「デス様を学校で飼うというのも選択肢の一つだな・・・む?」

 

「強気だったり弱気だったりとデス様は浮き沈みが激しいでござるな・・・むむむ?」

 

 

あれ、何か違和感を感じた気がする。

何だろうこのモヤモヤとした感覚は。

 

 

「そ、それで結局この後はどうするのですか?」

 

「そうだったな。結城さん、僕達はリビングとキッチンを探す。悪いが他は女性陣で回ってくれるか?」

 

「うん、分かった。それじゃあ行こうリアス、朱乃、フェルちゃんも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、日課となりつつあるはぐれ悪魔を撃退し終わったところで私は息を吐いた。

結局あの後、アスナの部屋やリビングから隠しカメラを見つけた。

タクマが犯人を突き止めると言っていた事だし後は任せるとしましょう。

問題は・・・あの方よね。

 

 

「うわぁ、さすがトラちゃん。相変わらず予想だにしない事をしでかすわね」

 

「さすがに魔界大帝を怒らせると怖いからとっさに暗示にかけたけどよかったわよね?」

 

「まぁさすがに魔界大帝フェルナンデス様相手ならしょうがないか」

 

 

魔界大帝フェルナンデス様。

まだ冥界が魔界と呼ばれていた昔に猛威を振るった暴虐の化身。

その力は未だ衰えを見せず冥界の4割を領土としているほどの持ち主。

そんなお方が何故コテツの神器で召喚されたのか疑問は尽きないけれども。

 

 

「でもアスナさん、大丈夫でしょうか」

 

「暴虐の化身とも言われていた方なんですよね?」

 

「アスナ先輩、心配です」

 

「大丈夫じゃないかしら。召喚されたとは言え、契約に縛られていたんでしょう?」

 

「えぇ、あの方ならそれぐらい無効化するかと思ったけど、契約は成されていたわ」

 

 

唯一にして幸いなのは召喚した際による召喚者との間に結ばれる契約が正常に働いていた事ね。

もし契約が不履行となっていたら・・・考えたくも無いわ。

 

 

「それにしても何で先輩達は驚いたりしなかったんですか?」

 

「魔界大帝フェルナンデス様の姿は人間界では見ない生物のはず、です」

 

 

祐斗と小猫の疑問に私も言われて気づいた。

ちょっと・・・いえ、かなり変わった生徒や教師ばかりでも異常だと感じるはず。

朱乃も分からないのか考え込んだ様子でいた。

ただ一人、ティナだけを除いて。

 

 

「あぁ、まだ貴女達はここに来て間も無いんだったわね」

 

「どういうことティナ?」

 

「冥界の人間界についての資料も更新しないとね。いい?今から言う事は本当よ」

 

 

そう前置きをして話した内容は私達には大きな衝撃だった。

この10数年間は格闘ブームが起こっているらしく世界中で格闘家達の試合が中継されている。

その中にはカンガルーや熊といった動物からサイボーグ忍者や半世紀眠っていた軍人など眉唾な存在さえも参加していると。

な、何よそれ。何時の間に人間界はそんな恐ろしい場所になったのかしら・・・

 

 

「だから私達が悪魔だって正体がバレたとしても違和感なく溶け込めると思うわよ?」

 

「もしそうだとしても今度は世界中の格闘家達から勝負を挑まれそうで嫌だわ」

 

「あはは、それもそうね。最近では某財閥から悪魔の風貌をした格闘家が現れたからね」

 

 

楽しそうに笑いながら携帯でその格闘家を見せてくるティナに私は頭を抱えるしかなかった。

見れば私の眷属たちも苦笑いを浮かべている。

それはそうだ、悪魔よりも悪魔らしい姿の格闘家がティナの携帯には写っているのだから。

 

 

「まぁそれはそれとして、次にトラちゃんの事ね。分かってるとは思うけど・・・」

 

「分かっているわ。コテツに関しては誰にも話さない。皆もいいわね」

 

 

こんな事話したとしても信じてもらえるかどうか。

仮に信じたとしたのならば召喚者のアスナや魔法陣を持っていたコテツが危険だわ。

 

 

「えぇ、分かっていますわ」

 

「はい。誰にも話しません」

 

「私もです」

 

 

これで私達が黙っていればいいだけの話よね。

・・・いえ、もう一つあったわね。

私は近づいてくる足音を聞いてそちらに身体を向けた。

 

 

「おい、リアス。用事って一体何・・・・ティ、ティナ!?」

 

「?・・・・・・・・あぁ、ライザー君!久しぶりね」

 

 

ティナ、貴女今忘れていたわね。

ライザーにもコテツ達の事を話しておこうと思って呼んだのだけれど。

これは逆に呼ばない方がよかったのかしら。

 

 

「よ、よう。ひ、久しぶりだな」

 

「うん、そうね。最後に会ったのはレーティングゲームの時だったっけ?」

 

「そ、そうだな」

 

 

・・・彼は本当にライザーなの?

普段見せている飄々とした態度が欠片も無いじゃないの。

幾ら好きな相手だからってどもり過ぎじゃない?

 

 

「ライザー、貴方を呼んだのは聞いて欲しいことがあったからなの」

 

「聞いて欲しい事?今日は親父さんに晩酌するから早くして欲しいんだが」

 

 

ライザー・・・貴方すっかり人間界に染まったわね。

先ほどの話は聞かなかった事にして私は夕方にあった事を説明する。

さすがにタダ事ではないと思ったのか真面目な顔になるライザー。

 

 

「まさかアスナが魔界大帝フェルナンデス様を召喚するとはな。いや、この場合はコテツの神器か」

 

「えぇ、だからこの事は黙っていてくれないかしら。それと」

 

「当たり前だ。弟分を売るような真似なんてしたら誇り高いフェニックスの名に傷が付く。それにコテツについてはこちらでも探って見るさ」

 

 

普段からこうならティナもライザーの好意に気づきそうなのだけれど。

いえ、先ほどの様子を見るに無理ね。

 

 

「これで心配事は全部済んだかしら」

 

「部長、一人忘れてませんか?」

 

「え?」

 

「ソーナ・シトリー先輩を忘れています」

 

「・・・・・・あ」

 

 

す、すっかり忘れていたわ。

でもさすがにアスナも学園にはお連れしないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結城が変な生き物、デス様を飼い始めた翌日

 

 

「結城さん、それ何?」

 

「うん、フェルちゃん」

 

「わー可愛い!」

 

「お菓子食べる?」

 

「もらうデス」

 

 

学校にデス様を連れてきていた。

しかしあっという間に人気者だな。

 

 

「あ、あははは・・・」

 

「どうしたグレモリー?」

 

「今朝私の幼馴染がデス様を見て倒れてしまったのよ」

 

 

頭を抱えながら言うグレモリーに俺は首を傾げるしかなかった。

デス様を見てなんで倒れるんだろうか?

あの丸いフォルムが生理的に受け付けないとかあるのか?

 

 

「支取蒼那って言う子なんだけど・・・知ってるかしら?」

 

「いや、知らない。他のクラスで知ってる奴なんて限られてくるぞ」

 

 

ウィンドぐらいしか名前は覚えてないな。

後は特徴的な奴を何人か見かけたぐらいだ。

 

 

「まだ1ヶ月も経ってないし無理も無いか。とにかくソーナが倒れて保健室に運ばれてしまったの」

 

「保健室って大丈夫か?ファウスト先生だぞ」

 

 

紙袋を被ってるやたらと背が高い怪しい先生だ。

この間なんて紙袋を被ってるのにアフロにしてるのを見かけたことがある。

 

 

「腕はいいらしいですわよ」

 

「あんな姿だが正式な医師免許も持っているらしい」

 

 

姫島と琢磨を疑うわけじゃないが本当かよ。

そこへ結城と、結城の肩に乗っているデス様がやってきた。

 

 

「はぁ、やっと解放された・・・」

 

「もう疲れたデス」

 

「おっす、お疲れさん」

 

「しかし何故デス様まで学校に来られたでござるか?」

 

「家にいてもつまらないデス。それならまだアスナの傍が面白そうデス」

 

 

ぴょんっと結城の肩から机の上に飛び乗りながら言うデス様

 

 

「要するに解剖されに来た、という事でいいな?」

 

「よくないデス!」

 

「駄目だよ高藤君!フェルちゃんにそんな事させないんだから」

 

 

ぽよんぽよん

 

 

「おぉ、柔らかい。低反発まくらみたいだ」

 

「やめるデス!ボクをおもちゃにしないで欲しいデス」

 

「おもちゃになんてしてないぞ。デス様で遊んでるだけだ」

 

「それをおもちゃにしてるって言うデス!」

 

 

ぶんぶんと短い手足を振り回しながら怒るデス様

しかしその姿だからか全然怖くない、むしろ癒される。

 

 

「お、そうだ。デス様」

 

「何デス?」

 

「明日クラスの皆で花見やるんだが来るか?」

 

「花見・・・何をするデスか?」

 

「花見って言えば花を見て皆で騒ぐに決まってるじゃないか」

 

 

何を当たり前のことを言ってるんだ。

そのために場所取りと言われる過酷な所業に何人が脱落した事か。

親父の会社でもクリザリッドさんが毎年花見の場所取りをしていて開始時点で力尽きているってよく聞くぐらいだ。

 

 

「変な事をしているデスね、魔界・・・こちらでは冥界デスか。冥界ではそんな事は無かったデス」

 

 

め、めーかい?何用語だソレ

 

 

「何でござるか?そのめーかい、と言うのは?」

 

「何ってそんなの・・・」

 

「き、きっとデス様の故郷の事よ!」

 

「え、そうなのか?」

 

 

デス様の言葉を遮ってグレモリーが無理やり補足した。

聞いたことないな。どの辺だろうか、ジャングル?

 

 

「・・・あぁ、そうデスそうデス。ボクの故郷デス」

 

「今、思い出したように言ったのは僕の気のせいか?」

 

「おほほほ。デス様もこちらに来たばかりでちょっと忘れてしまっていただけですわ」

 

「そんな事はどうでもいいデスがボクはどうやったら元の場所に戻れるデス?」

 

「知らね」

 

「3文字で即答されたデス!?」

 

 

そんな事言われてもな。

デス様がどうやって来たのかは分かるけど、それが何故かって言われると謎パワーとしか言いようがない。

 

 

「アスナからあの魔法陣はコテツのと聞いたからもしや、と思ったデスがアテが外れたデス」

 

「そうだな・・・あ、ゲーニッツさんに聞いてみるか」

 

 

以前に困った事があったら相談してください、って言ってたもんな。

神のご加護とか言う謎パワーで何とかしてくれるに違いない。

 

 

「ゲーニッツ?誰なの?」

 

「あぁ、以前知り合った親切な牧師さんだ」

 

「牧師!?駄目デス、却下デス」

 

「コテツ。貴方、実は知っていてそんなことを言ってるんじゃないでしょうね・・・」

 

「何のことだよ?」

 

 

やけに疲れた様子のグレモリーに俺は首を傾げた。

それにしてもゲーニッツさんが駄目となるとお手上げだな。

 

 

「大丈夫大丈夫、いつか帰れる時が来るって」

 

「いや、ボクが知りたいのは召喚の契約を解除する方法デスから・・・」

 

「難しい話をしている暇があったらもっと楽しい話をしようぜ!」

 

「そうでござる!頭が痛くなる話は堪忍して欲しいでござる!」

 

 

こういう真面目な話をしていると俺や半蔵の思考が止まってしまう。

やっぱり話をするなら楽しい話をしないとな!

 

 

「半蔵、明日の花見のために何か一発芸は無いか?」

 

「むむ!拙者恥ずかしながらそんなに術は覚えてないでござるよ」

 

「忍者なら火遁の術とかあるだろ」

 

「殿。人間が口から火を吹けるわけないでござるよ。常識的に考えて欲しいでござる」

 

「・・・これは突っ込みどころなのでしょうか?」

 

分身できる奴に常識を語られてしまった。

って言うかこのクラスなら火を出せる奴もいるし一発芸にしては芸が無いな。

 

 

「いや、待て。半蔵、俺は素晴らしい案を思いついたぞ」

 

「何と、その案とはいかに?」

 

「何も俺達が一発芸をする必要は無いんだ。ここに存在が一発芸な奴がいるじゃないか!」

 

「おぉ、それはもしやっ!」

 

「な、何デスか?」

 

「フェルちゃんなら面白い事できるよね?」

 

「アスナまで純粋な期待の目で何を言ってるデスか!?」

 

 

よし、俺の睨んだところデス様は結城の頼みを断れないっぽい。

何故かは分からないが。

このまま行けば後は簡単だな。

 

 

「あれー?もしかしてデス様、一発芸も無いのか?自分で大層な名前まで言っておいて?」

 

「何だ、期待はずれでござった」

 

 

かちんっ

 

 

「そんな事は無いデス!ボクの凄さを思い知らせてやるデス!・・・はっ!」

 

 

きらきらっ

 

 

「楽しみにしてるからねフェルちゃん!」

 

「し、しまったデス!」

 

 

ふっふっふ、作戦通りだぜ。

 

 

「僕は最近完成したアレを持っていくとしようか」

 

「それ、以前言っていた悪魔対策の武器じゃないでしょうねタクマ」

 

「いや、以前から作っていたものだ。明日を楽しみにしているといい」

 

「タクマさんの発明品では何が来ても驚く自信がありますわ」

 

 

こりゃ明日の花見が楽しみだな!

 

 

 

 

 




と言うわけで第9話でした。
原作が格闘ゲームではないキャラは前書きか後書きで出す事にします。


ifシリーズ~MUGENキャラで原作が進んでいたら~

「僕は吸血鬼のハーフなんです・・・」

「あら奇遇ね、私も吸血鬼なの」(あーぱー)

「ふん、吸血鬼ならばロードローラーの一つも出してみよ」(WRYYYYYY!)

「貴方、私のようにカリスマが無いわね」(かりちゅま)

「ハーフだと?我が息子と同じと言う事か」(若本)

「もう嫌!冥界に帰らせてもらうわ!」

「部長!?」

何だこのカオス



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第10話

ペルソナのP4Uからラビなんとかさんを出そうとしましたが、
生徒会長と言う事は・・・ますますリアスの幼馴染の出番が無くなることに気づきました。


週末、俺達のクラスは休日にも関わらずとある公園にいた。

目的は当然、以前に愛乃から提案のあった花見のためだ。

 

 

「それでは皆の出会いを祝して、かんぱーい!」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

 

愛乃の掛け声と共に全員がグラスを掲げて近くの奴と音を鳴らす。

まぁ当然のように中身はジュースだけど。

 

 

「しっかし、俺達以外にも人が多いな」

 

「今日は花見が満開ってニュースでもやってたからね。はい、お菓子いる?」

 

「お、サンキュ。えーっと・・・誰?」

 

 

横に座っていた奴がお菓子をくれたのはいいんだが知らない奴だった。

こんな奴クラスにいたっけ?っつーか何でヨーヨー持ってんの?

 

 

「あはは。普段は仕事とかあって中々学校に来れないからね。私は鬼子母神陽子(きしぼじん ようこ)。よろしく」

 

「すげぇ苗字だな、よろしく。で、仕事って何してるんだ?」

 

「ICPOだよ」

 

 

あいしーぴーおー?

ICPOか、それってもしかして・・・

 

 

「あの有名なとっつあんと同じ仕事か!」

 

「あはは、アレはアニメの話だけどね」

 

 

すげぇ奴がクラスメイトになったもんだ。

それにしても改めて見回してみると何人か知らない奴がいる。

そんな視線に気づいたのか鬼子母神は同じ様に見渡すと説明してくれた。

 

 

「アイドルのアテナに芸人一座のエリス、あれは石油王の娘でエミリ・ド・ロシュフォール」

 

「凄いメンツだな。しかし何で普段いないんだ?」

 

「うちの学校は一芸制度だからそれが認められたら出席扱いになるんだよ。アテナの芸能活動やエリスの公演とかね」

 

「石油王の娘は?」

 

「建前上は親の手伝いってことらしいけど・・・どうだろう?」

 

 

学生で働くとか大変だな・・・って

 

 

「一芸制度って何だよ。俺、聞いてねぇぞ」

 

 

それなら勉強しなくてもよかったじゃないか!

これはまた結城に問い詰めなくてはいけないな。

でも結城の事だからどうせ、『知ってると思った』とか言いそうだ。

 

 

「あはは。その割には一芸制度でも受かりそうな子達ばかりだけどね」

 

「おーっす、邪魔するぜ」

 

「よう草薙」

 

 

鬼子母神と話していると草薙京(くさなぎ みやこ)が来て向かいに座る。

とりあえずコップが空だったので近くにあるジュースを注いでやった。

 

 

「サンキュ八代」

 

「で、どうしたんだ?」

 

「アレ見ろよ、アレ」

 

「あれは・・・石油王の娘と神月か?」

 

 

先ほど話しに出てきた石油王の娘と神月が開けた場所で向かい合っていた。

何だ、お互い金持ちの家だから成金自慢でも始めるつもりか?

だったら結城やグレモリーあたりも混ぜてやれよな。

 

 

「へへっ、これからバトルに決まってるだろ」

 

「何だ、いつもの事か」

 

 

今までも何人かが廊下やグラウンドで闘っているのを見たことがある。

神月は噂じゃ段位を合わせれば100段とか言う段位マニアだ。

石油王のお嬢様は・・・闘えるのか?

 

 

「あの立ち姿からしてあっちも相当な腕前だな。鬼子母神、アンタもな」

 

「ふふっ。ありがとう、でいいのかな?」

 

「おーい、火花散らしてないで質問に答えろよ。別にここじゃなくても見るなら他があるだろ」

 

「おっと、忘れるところだった。八代、どっちが勝つか賭けようぜ」

 

「へぇ、面白いじゃないか」

 

 

そういう事なら受けて立つぜ。

さて、神月は何度か春日と闘っているのを見たことがある。

問題は石油王の娘、ロシュフォールだな。

 

 

「ちょっと、私の前で賭博とはいい度胸じゃない」

 

「心配しなくてもお菓子とかその程度だって」

 

「それぐらいならいいけれど・・・」

 

「よし決めた!ロシュフォールだな」

 

「お?強さも分からないのにいいのか?」

 

「ふふん、いいか草薙。俺はな、面白い方に賭けるのが好きなんだよ!」

 

 

強さが分からない?だから面白いんじゃないか。

草薙は俺の答えを聞いて一瞬間の抜けた顔をしたかと思うと笑った。

 

 

「へっ、いいね。アタシはそういうの好きだぜ。じゃあアタシは神月だな」

 

「おう!勝った方がこのアイス獲得だぞ?」

 

「・・・二人とも、溶けるよ?それよりもちょっと見て欲しいものがあるんだけれど」

 

 

盛り上がっていたところで鬼子母神が水を差す。

まぁ今はロシュフォールも神月も闘いの前の話をしているみたいだからいいけどよ。

取り出したのは一枚の紙切れだった。

 

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ。こいつ見たこと無い?」

 

「変な顔してる奴だな」

 

「賞金首か?」

 

「そう。それも史上最高額のね、最近日本に出没したって聞いたからもしかしたら見たかなって思って」

 

「うーん、こんな変な顔してる奴なら中々忘れないと思うけどな。草薙は?」

 

「いや、アタシも知らないな。やっぱ強いのか?」

 

「えぇそうね。数々の賞金首が探しているのだけど見つけて挑んでも今のところ全て返り討ちにされてるの」

 

 

じゃあ捕まえたら大金が貰えるじゃないか。

ってさすがに俺じゃ無理だな、半蔵や琢磨の手を借りればどうだろう。

さすがにこの賞金首も忍者と科学者を相手にした事はないだろう!

 

 

「はぁ、大物の賞金稼ぎソル・バッドガイも近々動くって言うし早く捕まらないかな。統制機構の人も何だか面倒そうな人だし」

 

 

相当困っているようで今度は愚痴を溢しだした。

俺と草薙は顔を見合わせると何事もなかったように闘いの様子を見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁクリザリッド君。お疲れ様」

 

「はぁはぁ、や、八代さん。そう言ってくれるのは貴方だけです」

 

 

毎年花見の席を陣取ってくれているクリザリッド君に労いをかけるとパタリと倒れてしまった。

製塩会社ネスツと我が社、ルガール運送が業務提携をしてはや5年、ネスツからこちらに来た社員もよく働いてくれている。

特にクリザリッド君はオズワルドさんと同じく仕分け担当として頑張ってくれている。

 

 

「八代君!今日は無礼講だ、どんどん飲みたまえ」

 

「その台詞は既に聞きましたよ社長。マチュア君、飲ませすぎじゃないか?」

 

「社長からしたらこの程度序の口ですよ」

 

 

クリザリッド君の横にビールを注いだコップを置いたところで社長に絡まれてしまう。

挨拶の時に聞いた言葉を再度言う社長に酔っているのかと思い秘書のマチュア君に聞くが聞いての通りだ。

 

 

「ははは。八代君も営業でいつも大変だろう。さぁ飲みなさい」

 

「あ、これはありがとうございます」

 

 

社長自ら注いで頂いたビールを飲む。

やはり花見の席でのビールは格別だな。

 

 

「社長が私の営業にまで付いてきたりしなければもう少し楽なんですがね」

 

「まぁまぁ、八代君は社長のお気に入りなのですから」

 

「オズワルドさん」

 

 

愚痴を溢した私を宥めてくれたのは仕分け担当のオズワルドさんだった。

クリザリッド君が来るまでは一人で駒王町の仕分けを行っていた偉大な人だ。

 

 

「お気に入りって私は何かしましたかね?」

 

 

社長のお気に入りと言われても何かをした記憶が無い。

いや、失敗した記憶なら幾らでも思いつくのだが。

 

 

「それは俺も聞きましたよ。さすが八代さんです」

 

「あぁ。父が認めるのも納得できると言うものだ」

 

 

何時の間にやら起き上がっていたクリザリッド君に社長の息子さんのアーデルハイド君までが言い出す。

本当に身に覚えが無い。

 

 

「まず94年の入社したのが八代さんだけですからね」

 

「あの年の社長は鬼のようだった」

 

 

私はサラリーマンから今の職場に中途入社したのだがその時のことを言っているのだろうか?

あの時はまだ小さい虎徹が私のために特製ドリンクをくれて飲んで向かったのを覚えている。

しかし虎徹は大の料理音痴だ。面接が始まった時にはまるで二日酔いのように視界が揺れ、寒気が襲ってきていた。

 

 

「何を馬鹿な、たかが面接じゃないか」

 

「父は完全に根元から入っていた、と言っていました」

 

「私も当時見ていましたよ。たった一歩後ろに下がっただけで完全に見切ってみせたのですから大したものです」

 

 

そういえば突然社長が足を上げて飛び上がった時があったな。

視界の揺れで一歩後ろに後ずさったが・・・結局あれは何をしようとしていたんだ?

 

 

「まぁ、私の事はいいじゃないですか・・・ん?」

 

 

どうも分からないのに褒められるという行為はむず痒く感じてしまう。

話を流そうとすると何やら歓声が聞こえてきた。

 

 

「ほぅ、あちらでどなたかが闘っているようですね」

 

「あれは・・女子高生同士か。どちらも中々の腕前だな」

 

「しかも神月財閥のご令嬢に・・・ロシュフォール家のご令嬢まで?」

 

 

格闘が流行してはや10年、今や子供達も闘う光景はよく見られる。

見るのは構わないがさすがに闘う事は私にはできない。

虎徹も才能は無いらしく危険な事をしなくて済むと思い、ほっと胸を撫で下ろしたものだ。

だが何故か格闘家達と妙に縁があるので結局心配は尽きないのだが。

 

 

「ふむ、駒王学園の生徒のようだね。ローズもいるようだ」

 

「お嬢さんもいらっしゃると言う事は・・・まさか虎徹も?」

 

 

社長の娘さんも私の息子と同じ駒王学園に通っているはず。

いや、しかし息子からは同じクラスといった話は聞いてはいな・・・

 

 

「よーしそこだ!いいぞロシュフォール!」

 

「今でござる!拙者のしゅーくりーむは神月嬢に懸かっているでござるよ!」

 

 

・・・・いた。それも半蔵君も一緒のようだ。

二人は幼い頃からいたから逆にいて当然、と言うべきかもしれないが。

去年まで女子高だったからか、虎徹達の姿が目立ってしょうがない。

近くにいるもう一人の男子生徒は琢磨君か。

 

 

「ほぅ、あそこで声を張り上げているのが八代君のご子息かね?」

 

「はい、そうです・・右にいるのが家の愚息です」

 

 

社長の質問に私は頭を抱えながらも答えた。

社長は何故か右目を光らせながら息子を凝視していた。

まさか社長のコレクター魂に火がついたのでは・・・

しかし虎徹に運送業が向いているとは思えない。

 

 

「八代君の息子と言う事は彼も相当な人材なはずだ。八代家の力、私の物としたいものだな」

 

「・・・はい?今、なんと仰いました社長?」

 

「いやいや、気にしないでくれたまえ。さぁ私達も応援するとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ぐおおおおぉぉっ!」」

 

 

納得の行かない結果に俺と草薙は叫び声を上げた。

決着付かず引き分け、神月とロシュフォールは清々しい笑顔で握手なんてしている。

 

 

「あと一歩でロシュフォールが勝ってた。そうだろ草薙?」

 

「はぁ?何言ってんだ。その前に神月の拳がロシュフォールを捉えたのが早い」

 

「いーや、ロシュフォールだ!」

 

「神月だ!」

 

「賭けは二人の負けでしょ?」

 

「と、言う事でお二人のお菓子は私達で頂きますわね」

 

 

俺と草薙が言い合っているとグレモリーと姫島がそう言ってお菓子を取り上げた。

気づけば結城、琢磨、半蔵、デス様の姿もあった。

 

 

「どちらも引き分けに賭けないのですから当然でしょ」

 

「ふむ、では頂くとしようか」

 

「うぅ、拙者のしゅーくりーむがぁ」

 

「ボクが全部頂くデスから安心するといいデス」

 

「ちっ、こうなったら八代!実力で勝負だ」

 

「無茶言うな!」

 

 

格闘の心得以前にセンスが無いと太鼓判を押された俺に勝負を挑むな。

俺だって当然このままでは収まりが付かない事は分かっているが・・・・そうだ!

 

 

「琢磨、草薙の相手を用意してくれ」

 

「ふむ、丁度いいか。いいだろう」

 

 

さすが琢磨、困った時には頼りになるぜ。

若干俺達から離れて何かを転送しようとしているのを見て、俺は草薙に話しかける。

 

 

「草薙、これから琢磨の用意したメカに勝てれば俺の残りの菓子をやろう」

 

「高藤の?・・・へっ、メカ程度に草薙の歴史を超えれるかよ。いいぜ、相手になってやる」

 

「さぁ琢磨!草薙の相手を・・・・」

 

 

振り返ると琢磨の傍には何も無い。

あれ?どういうことだ・・・いや、いた。

視線を下げれば変なのがいる。

身体がないロボと言えばいいのか?手足や頭は何故か浮いているけど。

 

 

「これがホウオウだ」

 

「おいおい、頼むぜ琢磨。こんなので勝てるのかよ」

 

「ふっ、心配せずとも実践データは既に取っている」

 

「なんだ、こんなガラクタでアタシに勝てると思ってるのか?」

 

「では早速試合開始と行こうじゃないか」

 

 

終始怪訝な表情のまま草薙とホウオウが向かい合う。

琢磨は大丈夫と言っているけど本当に大丈夫なんだろうな。

 

 

「それでは試合・・・・開始!」

 

 

俺の掛け声と共に草薙が駆け出し飛び上がった。

ホウオウはそれに合わせて宙に浮いた手が一旦下がり・・・勢いよく上げた。

 

 

「なっ!?嘘だろ!」

 

 

ズサァッ

 

 

・・・・夢でも見てんのか?

あんな小さい姿で草薙を十数mは吹き飛ばしやがった。

 

 

ドンッ

 

 

「ぐっ、今度は飛び道具かよ」

 

 

いや、連射してるぞ。

おかしいな。出せないから分からないが、そんなにポンポンと出せるもんだっけ?

暫くの間、そのまま草薙は近づく事もできずに負けてしまった。

 

 

「どうだ草薙?」

 

「納得いかねーっ!もう一回だ!」

 

「おっと今度は私がやらせてもらう!」

 

「違うよ、私の番だよ!」

 

「その力、私が取り込んでくれよう」

 

 

何やら次々と参加者が現れてしまった。

結局順番で闘うということで落ち着いたクラスメイト達。

あれ?何か大人も混じってるような・・・

 

 

「虎徹、話しておく事がある」

 

「何だ琢磨?」

 

「先日の結城さんの件だ」

 

「あぁ、監視カメラか。どうなった?」

 

「生憎と犯人の特定までは行っていないが、"すごう"は限りなく黒だ」

 

「そうか。証拠は集めれそうか?」

 

「難しいな。相手も警戒してくるだろう」

 

 

結城に聞くのも手だが下手に不安にさせるのもな。

少なくとも下校時の黒服達はいなくなったようだし。

 

 

「他に手がかりは無いもんかね」

 

「レクト・プログレスのPCから社員名簿を探れば分かるかもしれん」

 

「あぁ、そういえば黒服たちはそこの社員だったな」

 

「"すごう”を特定し、警戒しておけば証拠も集まるだろう」

 

「いざとなれば半蔵が家に潜り込むのも手だな」

 

「呼んだでござるか?」

 

「高藤君、あのロボット何?」

 

「あんなのボクが轢いてやれば終わりデス」

 

 

やれやれ、内緒話はここまでだな。

半蔵には後で話すとして結城には話すわけには行かない。

 

 

「殿!拙者のしゅーくりーむが!」

 

「おいしかったデス」

 

「俺のまで食べやがって!何処にそんなに入ってんだ」

 

「痛いデス!止めるデス!」

 

「一旦メスを入れれば分かるかもしれんぞ」

 

「やっぱりこいつが一番怖いデス!」

 

「だからフェルちゃんを苛めちゃ駄目だよ!」

 

 

結城のストーカーは一先ず忘れるとしてだ。

不思議生物デス様と戯れるとしよう。

 

 

 




明日奈のストーカーはさっさと捕まえて終わりにしますか。


ifシリーズ~MUGENキャラで本作が進んでいたら~

「ティナ、他の駒はもう埋まったの?」

「えぇ、あそこではぐれ悪魔と戦っているのが私の眷属達よ!」

「ドゥドゥドゥドゥドゥドゥエ!」

「ワワワワワワワワルイネ☆」

「アッアッアッアッアッアッアッ-イ!イーア!」

「まともな人選にしなさいよ!」

「だって面白いんだもの」




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第11話

最近、携帯をついにスマートフォンに変えました。
表示がスマートフォンに連動して回転するのが邪魔で仕方ないです。

私が慣れてないだけですかね?


2/9 誤記修正


「虎徹!早く起きなさい!」

 

 

バサッ

 

 

「うぅ、まだ寝かせてくれよお袋」

 

「何言ってるの、もう学校に行く時間でしょう!ほら、半蔵君も迎えに来てるわよ!」

 

 

布団ごと取り上げられて俺は泣く泣く起きる。

やべぇ、もうこんな時間かよ。

昨日はライザーさんと深夜にプロレスを見てたから寝るのが遅かったからなぁ。

しかしグリフォンマスクVSザンギエフは熱い試合だった・・・

 

 

「ほら早く制服に着替えなさい」

 

「朝飯は・・・食ってる時間ねぇな」

 

 

制服をベッドに投げてお袋は部屋から出て行く。

時間は・・・走らないと間に合わないな。

俺は手早く着替えて鞄を持って1階に下りる。

 

 

「殿、おはようでござる」

 

「おっす、悪いな。もう少し待っててくれ」

 

 

玄関前で待っている半蔵に言って洗面所で支度を整える。

丁度、支度を終えたところでライザーさんがやってきた。

やはり眠たそうにしている事からお袋に同じように起こされたんだな。

 

 

「ふわぁ。よぅコテツ、おはようさん」

 

「おはようライザーさん。じゃあ俺行って来るわ」

 

「あぁ、気をつけてなー」

 

 

眠たそうなライザーさんに挨拶をして玄関に向かう。

しかしライザーさんって昼間何してんだろうか。

大学に通ってるわけでもないし・・・ニート?

 

 

「殿、走れば間に合うでござる!」

 

「よし行くぜ半蔵!」

 

「承知!」

 

 

同時に走り出すが半蔵は走るのが尋常じゃない速さだ。

俺と一歩後ろを歩いているって事は抑えてくれているんだろう。

さすがに俺一人だけ遅刻ってのも嫌だから助かる。

 

 

「また夜遅くまで起きていたでござるか?」

 

「あぁ、どうしても、見たい、番組が、あったからな」

 

「ぬぅ、拙者は耐えられんでござるよ。9時には瞼が落ちてしまうでござる」

 

 

走りながらなので途切れ途切れに返すが半蔵は余裕そうだ。

しかし9時って相変わらず早寝早起きだな。

確か4時には起きているんだったっけ?

 

 

「子供より、早く、寝すぎ、だろっ」

 

「里の者も同じでござるよ」

 

「年寄りかっ!」

 

 

半蔵の故郷がどんなところか逆に気になるぞ。

以前に聞いた時は忍者の隠れ里らしいけど・・・半蔵、そういうの言ってもいいのか?

 

 

「殿、ここまで来れば歩いても間に合うでござる」

 

「そ、そうか」

 

 

全力疾走しただけあって何とか間に合うらしい。

息を整えながら他の生徒達が歩いてるのを見て安心した。

 

 

「はぁはぁ・・・朝から全力疾走はつらいぜ」

 

「殿の場合、朝餉も抜いている故に無理も無いでござる」

 

 

やがて校門に差し掛かったところで見覚えのある奴が校門前に立っていた。

あれは・・・同じクラスの双葉か。

 

 

「あ、おはよう。八代君、服部君」

 

「おはようさん」

 

「おはようでござる」

 

「何で双葉が校門前に立ってるんだ?」

 

「何でって、朝の挨拶運動だよ。私、風紀委員だから」

 

 

双葉が風紀委員?

・・・何故だろう、突っ込まなきゃいけないのに突っ込めない、このもどかしさは。

だが半蔵は特に気にしてない様子だし俺がおかしいのか?

 

 

「そ、そうか。頑張ってくれ」

 

「?うん、もう少しでチャイムが鳴るから遅刻しないようにね」

 

「では失礼するでござる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お昼休みになりましたけれど、今日のコテツさんは様子がおかしいですわね。

朝も学校に来るのが遅刻ギリギリでしたし、授業中や休憩時間も何かに耐えているようでしたわ。

 

 

「うー、半蔵。昼はまだか」

 

「もう昼でござるよ殿」

 

「あー、ようやくかー」

 

 

何よりも元気が無いのが丸分かりですわ。

一体どうしたのでしょうか?

 

 

「コテツさん、調子がよくなさそうですが何かありましたの?」

 

「おー姫島かー・・・・実はな」

 

 

ぐうぅっ

 

 

「なるほどお腹が空いているのですね」

 

「朝は殿が寝坊だった故、急いだのでござるがお昼ご飯を忘れたようなのでござるよ」

 

「でしたら購買か食堂ですの?」

 

「いや・・・財布も忘れた」

 

 

あらあら、それは確かに困りますわね。

 

 

「うぅ、半蔵。俺はもう駄目だ」

 

「殿!何を弱気な!しっかりするでござる!」

 

「俺が死んだら故郷に残してきた妻と息子に父は偉大だったと伝えてく・・・れ」

 

 

ガクリ

 

 

「と、殿ーーーーっ!」

 

 

突然寸劇を始めるお二人、いえハンゾーさんは本気みたいですわ。

その元気があるならまだ大丈夫でしょう。

 

 

「何やってるの?」

 

「ハンゾーから悲壮が漂ってるのだけど?」

 

「忍者がうるさいデス」

 

「また虎徹が何か馬鹿をやって半蔵が乗せられたのだろう」

 

 

皆さんもやって来ましたわね。

そしてさすがタクマさん、よく分かっていますわ。

 

 

「なー、デス様ー」

 

「何デスか」

 

「デス様って美味そうだよな」

 

「デス!?」

 

「なるほど、食用としてどうか調べる必要があるな。仕方ない、僕も手を貸そう」

 

「全然仕方なさそうじゃないデス!」

 

「コテツさんは朝急いでいてお弁当もお財布も忘れたそうですわ」

 

「そういうことね」

 

「大丈夫だよ八代君」

 

 

何やらアスナさんに案があるようです。

あら?手に持っているのは重箱?それもかなり大きめですわね。

コテツさんもそれに気が付いたのか机に突っ伏していた状態から起き上がりました。

 

 

「そうか!今日は試食の日か!」

 

「おぉ、結城嬢は命の恩人でござる!」

 

「試食の日?」

 

 

首を傾げる私とリアスにタクマさんが説明して下さいました。

アスナさんの料理上達の為に月に一度お弁当を作って来てくださると。

確かにコテツさんはお母様の料理を毎日食べている事から舌は肥えているはず。

それにしても先ほどのコテツさんの泣きそうなお顔を見ていると胸が高ぶってしまいますわ。

これが以前にコテツさんの仰っていた弄り甲斐のある、と言う事なのでしょうか?

 

 

「よし、今食おう!すぐ食おう!骨まで食おう!」

 

「軟骨は入ってないよ?」

 

「それなら教室で食べるとしようか。結城さん、ご馳走になる」

 

「拙者も昼食は持ってきたでござるが、ありがたく頂戴するでござるよ」

 

「うん、よかったらリアスに朱乃も食べて感想を聞かせてね」

 

「それなら頂こうかしら」

 

「そうですわね、私も頂きますわ」

 

「アスナの料理は美味しいデスからボクも食べるデス」

 

 

重箱の蓋を開けると色とりどりのおかずが詰まっています。

見た目としても美味しそうですわ。

 

 

「あぐあぐあぐあぐ」

 

「はぐはぐはぐはぐ」

 

「・・・・・・・・」

 

「ど、どうかな?」

 

 

一心不乱に食べるコテツさんとハンゾーさん。

静かに食べるタクマさんと対極的な様子ですわね。

コテツさんはお腹が空いているので仕方ないにしてもハンゾーさんはお行儀が悪いですわよ

 

 

「美味でござる!」

 

「あぁ、先月よりまた腕を上げたみたいだな」

 

「美味しいですわよ」

 

「本当、ここまで美味しいなんて・・・」

 

「この肉が美味しいデス」

 

「ありがとう皆。えっと、八代君はどうかな?」

 

「もぐもぐ。んんっ?・・・このかぼちゃの煮付け、家の煮付けと近い味だ」

 

「本当!?」

 

「あぁ、結構いけるぞ」

 

 

アスナさんの喜びようからして賛辞のようですわね。

確かにコテツさんのお母様のお料理は大変素晴らしいものばかりですわ。

その味に近づけたと言うのですから同じく習っている身からすればアスナさんの腕は相当なレベルとなっているのでしょう。

 

 

「細かい事に気づきそうにないコテツがどうして料理の味が分かるデス?」

 

「いや、俺も細かい事は分からねぇよ。ただ何となくの判断だ」

 

「僕は食事は栄養が補給できれば何でも構わない」

 

「拙者は洋菓子があれば生きていけるでござる」

 

「あはは、でもねフェルちゃん。八代君の判断は厳しいし高藤君や服部君のように美味しいって言ってくれるのも嬉しいんだよ」

 

 

その気持ちはとても分かりますわ。

美味しいと言って頂けると作った甲斐があると言う物。

逆に指摘を受けたとしてもそれを次の上達する手段とできますもの。

 

 

「・・・・ねぇ、3人とも。よかったら私のも食べてみない?」

 

「あら、いい案ですわ。どうぞ、私のも召し上がってくださいな」

 

「んじゃ遠慮なく」

 

 

リアスと私のお弁当も評価してもらう事にしましょう。

迷い無くリアスの卵焼きと私の肉団子を取って味わうコテツさん。

 

 

「・・・グレモリーのはイマイチ、姫島のは微妙」

 

「厳しいわね」

 

「もっと精進しますわ」

 

「ふむ、僕は十分美味しいと思うがな」

 

「拙者達の舌が馬鹿になったのでござろうか?」

 

 

これは・・・予想以上に厳しいですわ。

またコテツさんのお母様にご指導して頂きましょう。

 

 

「・・・いいわ、その挑戦受けようじゃない」

 

「あん?」

 

「リアス?」

 

 

ガタッ

 

 

「いつか絶対に美味しいって言わせてみせるわ!」

 

 

どうやら負けず嫌いのリアスに火をつけてしまったみたいですわね。

コテツさん、こうなったリアスは手強いですわよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹も膨れたし午後の授業も乗り切るぜ。

体育なので俺達男子は別室で体操服に着替えてグラウンドに向かっていた。

女子は体育館でバレーボールだっけ?何で俺達だけグラウンドを走らなければならないんだ。

 

 

「殿、今日も走るのでござろうか?」

 

「いや、でも今日は隣のクラスと合同だろ?さすがに無いだろ」

 

「となると、これが初めてになるな」

 

「何がだ?」

 

「隣のクラスにいる男子生徒だ」

 

 

あぁ、そういえばそうだな。

たまーに移動教室で男子生徒をちらっと見かけることはあっても直接話す機会って無いな。

 

 

「隣のクラスは二人程、男子がいるらしいでござる」

 

「へぇ、どんな奴だろうな」

 

 

靴を履き替えてグラウンドに出てみると黒髪と金髪、二人の男子生徒がいた。

あいつらか、とりあえず話しかけてみるか。

黒髪は刀を持ってることからして剣士?

最近は闘うのに武器を使う人も増えてきたもんな。

 

 

「よぅ。合同体育で一緒だよな?俺は八代虎徹、よろしくな」

 

「あぁよろしくな。俺はロック・ハワード。ロックって呼んでくれ」

 

「僕は御名方楓。僕も名前で構わないよ」

 

 

何か似てないような似てるような二人だな。

半蔵と琢磨も自己紹介をしたところで体育の教師がやってきた。

 

 

「俺が最強の格闘王、KENJIだ!もう一度やるか」

 

「何言ってんすか先生」

 

「まだ何もしてないでござるよ」

 

「ならばかかってこい!」

 

「会話になってないな」

 

 

やっぱりよく分からない先生だ。

ロックと楓も困惑してるしな。

 

 

「それより先生。走る以外の事しましょうよ」

 

「八代、それなら私に勝てたら考えてやろう」

 

「え?いやいや、俺は無理だって」

 

 

普段から格闘王とか言ってるし身体つきからして強そうなのは分かる。

特に鍛えてもない俺が相手になるわけ・・・

 

 

「はっ!そうだ。3対1ならどうだ」

 

「拙者とこちらの2名でござるな」

 

「おいおい、俺達もカウントしているのか?」

 

「僕も?」

 

「仕方ないな。僕も虎徹も闘えない。半蔵は辛うじて闘えるが普段から闘っているわけではないからな」

 

「いいだろう、かかってこい!」

 

 

どうやら空手先生はやる気のようだ。

ロックと楓も渋々と向かい合う。

 

 

「では殿、頑張るでござる」

 

「おう頼んだぜ半蔵」

 

「程ほどにな」

 

 

問題はロックや楓がどの程度闘えるのか、だな。

お、空手先生が飛び上がったぞ。

 

 

「満月斬!」

 

「何か飛んで来たでござる!」

 

「それならこっちも!烈風拳!」

 

 

おぉ、ロックも飛び道具を出せるのか。

俺も春日野とかに習ってるけどさっぱり出せないんだよな。

今度コツを聞いてみよう。

 

 

「もらったでござる!」

 

「昇竜脚!」

 

 

半蔵が飛び掛ったけど駄目か。

いや、まだ一人いたな。

 

 

ガシッ

 

 

「えっ?」

 

「ウルトラバックドロップ!」

 

 

楓をがっしりと掴むとそのまま投げやがった。

空手使えよ。

 

 

「どうした!もっとかかって来い」

 

「ぬぅ、名前の癖に空手を使わないでござるな」

 

「飛び道具に突進に投げ技。俺の知ってる空手じゃないぞ」

 

「いや、そもそも先生の武術は何なんだろう?格闘王とは言ってるけど・・・」

 

「ふっ、この技で数々のテコンドー使いを倒してきたものだ」

 

「範囲狭いなおい!テコンドーだけかよ!」

 

 

その後も勝負を挑む3人だったが勝てずに終わってしまった。

結局、俺達はグラウンドを走るだけで授業が終わってしまったのだった。

ちくしょう、次は別の手を考えてやる。

 

「排氣撃!」

 

「何でジャンプしたのに下段なんだよ!」

 

 

 




ifシリーズ~MUGENキャラで本作が進んでいたら~


「赤龍帝がこんな奴とはな期待外れだ」

「では一緒に踊ってもらおうか」

「誰だ?」

「行くぞ己のターン!」

「え?ま、待って何で俺も!?白龍皇はあっち・・ぶべら!?」

「破滅のブラストスクリーム!」

「「ぎゃーーーっ!」」

「大喝采!」


味方だからこそ安心できません。


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1年 ゴールデンウィーク編
第12話


今回からゴールデンウィーク突入です。
11話かかって1ヶ月・・・原作には何時になることやら。



「トラちゃん、おっはよー!」

 

「・・・あ?」

 

 

目が覚めれば目の前には満面の笑顔を浮かべた先輩がいた。

正確には俺に馬乗りになって、だが・・・重い。

 

 

ゴスッ

 

 

「いってーっ!」

 

「乙女にとって失礼な事を考えなかったかしら?」

 

「め、滅相もないです」

 

 

器用に馬乗りになったまま俺の頭を叩く。

いててて、結局何だって言うんだ。

 

 

「折角の休みに何しに来たんですか?」

 

 

今日から待ちに待ったゴールデンウィークだ。

何か約束してたっけ?

 

 

「はぁ、トラちゃん。起きたばかりとは言えそれは無いんじゃないかしら」

 

「?」

 

「まぁいいわ。とにかく着替えて下に降りてくる事。いいわね?」

 

「ういっす」

 

 

先輩が部屋を出て行った後、俺は言われた通りに着替えて1階のリビングに向かう。

うーん、何か忘れてる気がしたんだけど何だっけな。

 

 

ガチャッ

 

 

「虎徹、遅いわよ。やっと起きたのね」

 

「ふわぁ、起きたんじゃなくて起こされたんだよグレモリー・・・・グレモリー?」

 

 

リビングの扉を開けた途端に何故かいるグレモリーが話しかけてきた。

って言うかいつものメンバーに木場に搭城までいるじゃねぇか。

 

 

「殿、今日は戦でござるよ!」

 

「戦?」

 

「皆でゴーカートで遊ぶんだろう」

 

「おぉ、そういえばそうだったな」

 

 

すっかり忘れてたぜ。

もう10時過ぎじゃないか。

 

 

「最近は珍しいペットがいるのねぇ」

 

「ボクはペットじゃないデス」

 

「小母様、この子はフェルちゃんって言うんですよ」

 

「服部先輩、商店街でゴールデンウィーク限定のケーキがあるみたいです」

 

「何と!それは真でござるか搭城嬢!?これはぜひとも買わねば」

 

「木場、君は剣道部だったな。今度、僕の研究に協力して欲しいんだが」

 

「あはは、か、考えておきます」

 

「おいタクマ。また変な発明してるんじゃないだろうな」

 

「それではお父様、トラちゃんをお借りしますね」

 

「ははは。折角の連休だ、思いっきり遊んできなさい」

 

 

さすがに一軒家にこれだけ集まれば姦しいどころの騒ぎじゃないな。

 

 

「さぁコテツさん。朝食を召し上がってくださいな」

 

「私達もお母様のお手伝いをしたのよ」

 

 

姫島とグレモリーに勧められて席につく。

見た目は普通の日本食って感じだな。

 

 

「んじゃ、いただきます」

 

「えぇ、どうぞ」

 

 

パクッ

 

 

鮭の切り身を口に放る。

うん、これはいつも食べてる味だ。

 

 

「私が作ったのはそれじゃないわよ」

 

「そんなに急かすなよ。どうせ食べれば分かるだろ」

 

「まぁまぁリアス、落ち着いて」

 

 

味噌汁を飲んですぐに分かった。

これはお袋が作ったやつじゃないな。

味は・・・まぁ微妙だ。

 

 

「うん、微妙」

 

「相変わらず手厳しい評価ですわね・・・」

 

「くっ、手強いわね・・・」

 

 

そんな事言われてもな、思った事を言っただけだぞ。

落ち込む姫島とグレモリーにかける言葉も見つからないので食事を勧める。

 

 

「ところで何処に行くんですか?」

 

「僕達、今日は遊ぶって事しか聞いてないんですけど」

 

 

搭城と木場がそんな疑問を口にする。

って言うか説明してなかったのかよ。

俺がジト目で連絡を取ったグレモリーを見ると慌てた表情で弁解を始めた。

 

 

「わ、私だって何処に行くか詳しく聞いてないもの」

 

「私も知りませんわよ」

 

「そういえば俺も聞いてなかったな」

 

 

グレモリー、姫島、ライザーさんまでそんな事・・・・

あぁ、そういえば行き先を決めたのって部室だったから知らないのも当然か。

 

 

「行き先はリーアランドだ」

 

「・・・・・え?」

 

「まぁ一種の遊園地だな。最近は格闘家の試合もやっているみたいだが」

 

「うちのお兄ちゃんも参加してるって聞いたことあるよ」

 

「暴れる事ができるならボクも参加したいデス」

 

「うむ、何よりも洋菓子が一杯あるでござる」

 

 

行き先を告げると何故か固まるグレモリー。

ん?何か変な事でも行ったか?

 

 

「あら、いつの間にか名前が変わったんだねぇ」

 

「前は違う名前だったんですか?」

 

「そうだね。確か以前はサーゼクスランドって名前だったはずだよ」

 

『・・・・・・・』

 

 

親父とお袋の説明を受けて今度は他の奴らまで固まりだした。

変な奴らだな。

 

 

「10数年前に経営者の妹が生まれたそうでそれにちなんだ名前に変えたって聞いた記憶があるね」

 

「ふーん、その妹が聞いたら驚くだろうな」

 

「まさか自分の名前が遊園地の名前になるなんて思いもしないでござるよ」

 

「そ、そうね。あ、あははは・・・・はぁ、お兄様・・・」

 

 

ガクリとうな垂れるグレモリー。

ライザーさんに先輩まで愛想笑いをする始末だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、リーアランドに到着したわけだが。

 

 

「ひゃっほー!今日は遊ぶぞ半蔵!」

 

「承知でござる!」

 

 

虎徹、半蔵。少しは静かにしろ。

色々見て回りたいのは分かるが今日の目的を忘れているんじゃないだろうな。

 

 

「八代君、服部君。今日はゴーカートで遊ぶんじゃなかったの?」

 

「もちろん分かっているさ。けどその後で遊ぶ分には問題ないだろう?」

 

「トラちゃん元気ねぇ。お姉さん人ごみで疲れちゃったわ」

 

 

僕達は何度か来ているから慣れたものだが初めて来たグレモリー達は周囲を見ては驚いている。

 

 

「凄い人達ね」

 

「リーアランド限定ケーキ、タルト、クッキー・・・全部食べてみせます」

 

「あはは。結城先輩じゃないけど僕達の目的を忘れないでね」

 

「サーゼクス様、何時の間にこんなものを・・・」

 

 

さて、今回はゴーカートで遊ぶわけだが。

ゴーカートなら直接身体を動かすわけでは無いので僕でも遊ぶ事が可能だ。

確かここのゴーカートは最近リニューアルしたと聞いた。

 

 

「殿、殿!ここなんてどうでござるか?」

 

「おぉ、お化け屋敷か面白そうだ」

 

「こらこら、トラちゃん、ハンゾーちゃん。面白そうだけどこれから・・・」

 

『レイレイちゃーんっ!』

 

『アイヤー!何でバイト先にまで来るアルカー!!』

 

 

ふむ、随分と賑やかなお化け屋敷のようだ。

とは言え、先ほど言ったように目的のサーキットはここではない。

 

 

「さぁ、サーキットに行きましょ」

 

 

バティン先輩の言葉に全員が頷き移動を開始する。

ゴーカートにはNERDLESを使った拡張現実ARによるレースが可能となっている。

そのため、半蔵が以前言っていたマ○オカートも実際に出来る。

 

 

「さぁ着いたわよ・・あら?」

 

「お、何か大会やってるみたいだな」

 

「リーアグランプリだって・・・どうしたのリアス?」

 

「いえアスナ、何でもないから気にしないで頂戴」

 

 

サーキットに到着するとどうやらイベントをやっているらしい。

リーアグランプリと題されたそれはレースのタイムを競うもので賭けも行っているらしい。

優勝者にはトロフィーと賞品も出るとの事だ。

 

 

「丁度いい、これに出ようぜ先輩」

 

「いい考えよトラちゃん。皆もそれでいいかしら?」

 

 

特に異論も無いため頷いておく。

どうやら反対するものはいないようだ。

 

 

「じゃあ申し込みをして開始まで練習にしましょう」

 

「そういえば乗った事無い奴もいるんだったな」

 

「それなら先輩、虎徹、半蔵、結城さん、僕で教えるとしようか」

 

「ボクはアスナと一緒にいるデス」

 

「うん、フェルちゃん。頑張ろうね」

 

「あー、ちょっといいかコテツ、タクマ」

 

 

ライザーさんに呼ばれて僕と虎徹が近くに寄ると小声で提案をしてきた。

 

 

「なぁ、何とかティナに教えてもらえるようにしてくれないか?」

 

「あぁ、なるほど。任せとけ」

 

「そうだな、努力しよう」

 

 

そういえばここに来るまで口数が少ないと思えば緊張しているのか。

好きな人が近くにいるとは言えどもこれは行き過ぎじゃないだろうか?

尤も、好きな人が言えない僕が言えた立場ではないがな。

 

 

「それじゃあティナ、悪いけど教えて・・・」

 

「よーし行くぞグレモリー。お前を立派な一流レーサーに仕上げてやる」

 

「え、ちょっと!引っ張らないでよコテツ!」

 

「結城さんは姫島さんに、半蔵は搭城さんを頼む。僕は木場君に教えよう」

 

「うん。じゃあ行こうか朱乃」

 

「うふふ、お手柔らかにお願いしますわね」

 

「ではレースを早く終わらせて、でざーとを食べに行くでござる」

 

「お供します服部先輩」

 

「いくぞ木場君。こちらの分野なら僕も多少は役に立つ自信がある」

 

「はい、お願いします高藤先輩」

 

 

ぞろぞろと分かれて指導に向かう僕達。

さて、お膳立ては済んだぞライザーさん。

 

 

「あらら、皆決まると早いわね。それじゃライザー君行きましょうか」

 

「あ、あぁっ!が、頑張るさ」

 

「今からそんなに硬くなってたら本番大丈夫?」

 

「あ、あぁっ!が、頑張るさ」

 

「・・・・まぁ、いいわ。行きましょ」

 

 

さて、今日中に獲物が網にかかればいいんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、そんな感じだ。後はコーナーでぶつからないように気をつけろよ」

 

「えぇ・・・・こうね」

 

 

参加の申し込みをしてから俺はグレモリーと併走しながら指導をしていた。

筋がいいのかほとんど教える事はなかったけどな。

 

 

「後はこのサーキット専用だけどハンドルにボタンがついてるだろ?」

 

「えぇ、これね」

 

「サーキット場にあるパネルを踏めばアイテムがランダムで支給されるからボタンを押せば使えるってわけだ」

 

「・・・どこまでゲームに忠実なのよ」

 

「自分がどのアイテムを持っているかはヘルメットを装着していれば分かるぞ」

 

「まぁいいわ。それで甲羅が当たればスピンでもするのかしら?」

 

「その通り、車体とリンクしているみたいでな。当たるとスピンだ」

 

「どんな技術使ってるのよっ!」

 

 

普通に科学技術だと思うが?

最近じゃ家庭用のNERDLESマシンも出てるし珍しいものでもないだろうに。

海外じゃそこまで出回ってないのか?

 

 

「ところでさっきから気になってたんだけど・・・知り合いか?」

 

「さぁ?見覚えはないけど」

 

 

先ほどからじっとこちらを見ている奴らが気になって聞いてみたがグレモリーは知らないようだ。

俺達が練習している背後から3人の視線を感じていた。

ちらっと見ると俺達と同年代か下といった男の3人組みがいた。

 

 

「おい一誠、こっち見たぞ」

 

「知らないフリだ。まず目線を逸らせ」

 

「ぐっ、あのおっぱいから逸らせない自分の目が憎い」

 

 

遠くて何を言ってるのか分からないが碌な事じゃ無さそうだ。

放って置くとするか。

 

 

「ねぇコテツ」

 

「あん?」

 

「アレ、どう思う?」

 

「アレって・・・どれよ」

 

 

ヒュンッ

 

 

ん?今何かが通り過ぎたような・・・

グレモリーの視線に目を向けると凄いスピードで飛ばしている奴がいた。

おぉ、コーナリングと言い上手いな。

 

 

「ありゃ相当な腕だぞ」

 

「私達より年下なのに大したものね」

 

 

さっきので運転してる奴が見えたのか。

グレモリーの動体視力すげぇな。

 

 

「どんな奴だった?」

 

「男の子でお兄ちゃんみたいね。」

 

 

そう言って指差す方向を見ればおかっぱの女の子が騒いでいた。

見たところ中学生か?

 

 

「きゃーお兄ちゃん頑張ってー」

 

「スグ!恥ずかしいから止めろって!」

 

 

いやお前の声も大概だぞ。

気づけば声援を送っていた女の子の傍に停止して何やら口げんかを始める兄妹。

随分と仲のいいこった。

 

 

「敵は中々手強いな」

 

「あら、でも私は負けるつもりは無いわよ」

 

「へぇ、そいつは楽しみだ」

 

「初心者の私でもこのアイテム次第では勝つ可能性はあるもの。コテツ、足元を掬われても知らないわよ?」

 

「へへっ、上等だぜ」

 

 

確かに先頭に対して効果のあるアイテムを引けば初心者でも十分に勝てる。

他にもコースによっては障害物があるコースもあるからな。

 

 

ヒュンッ

 

 

「あははは、凄い!誰も僕を止める事はできない!」

 

「「・・・・・・・」」

 

 

おかしいな、今木場の声が聞こえた気がするんだが。

あいつあんなにテンション高い奴だったっけ。

 

 

「なぁ、グレモリー」

 

「言わないで。私もあんな祐斗を見たのは初めてなんだから」

 

 

スピード狂かあいつ。

遅れて琢磨もその後を追っていくのを見て気づく。

琢磨の奴、システムにハッキングしながら運転してやがる。

やっぱり琢磨も油断ならねぇな。

 

 

「殿ー!見てくだされ」

 

「上達しました」

 

「おぉ、搭城もやるな・・・で、何で板チョコ銜えてんだ?」

 

 

半蔵と搭城がやってきたのはいいんだが二人とも板チョコを口に銜えていた。

 

 

「先ほど親切な御仁がくれたでござる」

 

「何故か白目な人、でした」

 

「悪いけど、全然想像できないわ」

 

「さっちん殿はチョコレート大使だそうでござるよ」

 

「素晴らしい人、です」

 

 

白目のチョコレート大使?

そういえばニュースか何かで見た記憶があるな。

 

 

「おっと忘れるところでござった。殿、組み合わせ表を持ってきたでござる」

 

「お、サンキュ」

 

 

参加者が多いためか幾つかに分けてレースを行い、最終的なタイムが早い奴が優勝だ。

さて、俺はどこのブロックだ?

 

 

「俺は・・・Cブロックだな」

 

「私は何処なの?」

 

「グレモリーはっと・・・Aブロックだぞ」

 

「拙者はBブロックでござる」

 

「私はDブロックです」

 

 

ここのメンバーは綺麗に分かれたみたいだな。

他の連中の名前も何人か乗っている。

まぁとりあえず俺の参加するCブロックだけでも見てみるか。

 

 

・アステカ

・一文字伐

・ヴァーリ

・ムツキ

・キリト

・世紀の大天才大道寺きら

・高藤琢磨

・兵藤一誠

・最強の虎

・八代虎徹

 

 

登録名はニックネームでもいいとか行ってたけど変な名前もあるな。

琢磨も同じブロックか、こりゃ負けられないな。




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「愛乃嬢、どうされたでござる!」

「うぅ、はっちゃん。負けちゃったよ」

「私達姉弟の力見たかっ!」

「今は悪魔が微笑む時代なんだぁっ!」

「変な二人組み、あれで弟とかマジかよ」

「それで愛乃さん。隣で倒れている巨漢は知り合いか?」

「うん、私のアルカナだよ」

「いや、アルカナって何だよ」

石油のアルカナVS肉のアルカナ



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第13話

あけましておめでとうございます。

実家に帰ったのはいいんですがネット環境が無いので
ほとんど寝て過ごしていました。

1/7 ルビの振りを修正しました。


「琢磨、手を抜くなよ?」

 

「勿論だ。あらゆる手段を使ってでも勝ちに行かせてもらう」

 

「お前が言うと本当に何でもしそうだな・・・」

 

 

各ブロックに分かれてレースを行うと言う事で俺と琢磨は一緒にいた。

しかし色んな奴がいるんだな。

特に目が付くのは仮面を被った奴だな。何処の秘境から来たんだ。

 

 

「とは言え、他にも懸念事項があるがな」

 

「懸念事項?」

 

「あぁ、結城さんのストーカーの件を覚えているか?」

 

「・・・・えーとアレだろ、"すどう"とか言うやつだっけ?」

 

「"すごう"だ。須郷伸之。レクト・プログレスのフルダイブ研究部門の主任だ。結城さんの父親からは信頼されていて、婚約者だそうだ」

 

「・・・お前、本当どこからそんな情報入手してんだ」

 

「それは気にするな。話はここからだ」

 

 

いや、そりゃ気になるだろう。

しっかし結城に婚約者がいたとはな。

その割には結城からは聞いた事が無いな。

 

 

「須郷の自宅のPCをハッキングしたところ今日、結城さんがリーアランドに来る事を知っていた」

 

「へぇ、まだ何処かで監視してたって事か」

 

「しかも今回は本人が来るらしいぞ」

 

「なるほどな、そこで捕まえてやろうってわけか」

 

「あぁ。既にティセが須郷の自宅に向かって証拠を押さえている頃だ」

 

 

じゃあ後は須郷って奴を探すだけだな。

それで琢磨は練習中も何か弄ってたのか。

 

 

「とは言え、油断できる相手じゃないのが何人かいるぞ」

 

「プロのレーサーでもいたか?」

 

「いや、エントリーされている大道寺きら。彼女は僅か10歳にしてエーテル伝導体の母と呼ばれるほどの天才だ」

 

「えーてる・・・何だそりゃ」

 

「虎徹には縁の無い発明をしたと覚えておけ」

 

「おーけー。で、何でそんな天才児がエントリーしてるんだよ」

 

「僕が知るわけないだろう。ともかく彼女もシステムにハッキングして色々と細工をしている事は間違いない」

 

 

うーん、よく分からないが要は琢磨と同じタイプの人間って事だな。

本当、変な奴がいるもんだ。

 

 

「あー、ちょっといいか。お前さん、高藤琢磨だろ?」

 

「ん?このおっさんと知り合いか琢磨?」

 

「おいおい、お兄さんだお兄さん」

 

「貴方は・・・ムツキ大佐?」

 

 

突然変な奴が話しかけてきたかと思うとどうやら琢磨の知り合いだったようだ。

ベルト何個巻いてんだこの人。

 

 

「やっぱ俺の事は知っているか」

 

「えぇ、ココノエ博士から色々と。しかし何故日本に?」

 

「なに、お忍びって奴だ。可愛い子が一杯でいいなココは」

 

「で、誰だコイツ?」

 

「おっと悪いな少年。カグラ・ムツキだ。階層都市から遊びに来たんだ」

 

 

階層都市?俺は思わずある方角へと目を向ける。

さすがに見えないか。

何十年も前に日本近海に作られた階層都市。

ニュースでも情報はほとんど入ってこないな。

 

 

「俺は八代虎徹。なぁ階層都市ってどんなとこなんだ?簡単な事しか知らないんだけど」

 

「そうだな。面倒な場所だよ。別の都市に行くには魔操船って言う飛行船でしか移動できないしな」

 

 

そりゃまた面倒な場所だな。

階層都市っていうぐらいなんだからエレベーターかと思ってたぜ。

 

 

「ほら、あそこの女の子達が俺の勇姿を見たいって言うからさ」

 

 

言われた方向を見ると女子大生か?5,6人がこちらに向けて手を振ったりしているのが見えた。

大佐って言ってたよな?軍人はナンパも仕事なんだろうか。

 

 

「それで僕に何の用ですか?」

 

「あぁ、博士には俺が日本にいる事を黙っててくれないか?」

 

「はぁ・・・別に構いませんが僕が黙っていても」

 

「後、俺を探してる奴がいたら知らないフリを頼んだぜ。じゃあな」

 

 

言いたい事を言うだけ言って琢磨の話を遮って女子大生の方へと向かうムツキさん。

結局何がしたかったんだあの人は。

 

 

「全く・・・どうして僕の知り合いは人の話を聞かない人ばかりなんだろうか」

 

「おい、どうしてそこで俺を見る」

 

「虎徹もその一人だからに決まっているだろう?」

 

「そこで不思議そうにするな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、どうなってるんだ!」

 

 

俺はもうすぐ始まるレースのためゴーカートの傍にいる。

しかし憤りは留まることを知らなかった。

 

 

「どうして俺のコースにはおっぱいの大きい女の子がいないんだ!」

 

 

さっきはあんなに素晴らしいおっぱいの女性がいたって言うのに!

出場者はほとんどが男ばかりで唯一の女の子と言えば小学生だ。

 

 

「お、お兄ちゃん。あの人・・・」

 

「しっ、スグ。関わっちゃ駄目だ」

 

 

応援に来ているんだろうか俺よりも年下ながらも素晴らしい発育のいい娘も兄だろう人物に邪魔されて拝めない。

元浜と松田は参加すらしていないし、俺に注目している人と言えば・・・

 

 

「ふっ、赤龍帝。君の力楽しみにしているよ」

 

『ヴァーリ。まだ彼奴は目覚めていないぞ』

 

「赤龍帝は自らの力を倍化する。つまりはこのレースでスピードを倍化するということだ。ならば僕も参戦し・・・」

 

『はぁ、聞いていないな』

 

 

一人でブツブツと俺に向かっている残念なイケメンぐらいだ。

せきりゅーてー、とか俺のことを言っているが何だ?妄想の事を俺に押し付けてくるな。

押し付けるならさっきの八代先輩と一緒にいた赤髪の美人さんのおっぱいにしてくれ。

 

 

「そういえば八代先輩がいるんだよな・・・いや、高藤先輩に服部先輩もか」

 

 

俺が通っていた中学校の先輩達。

トラブルメーカーとしても有名で3日に1回は必ず騒動を巻き起こしていた記憶がある。

つまりは男の顔なんて覚えていない俺が覚えるぐらいに騒ぎを起こしていたって事だ。

 

 

「って事は結城先輩もいるかな?」

 

 

あのトラブルメーカーな先輩達と一緒にいた結城明日奈先輩。

当然、元浜や松田と一緒に着替えを覗こうと何度もチャンスを伺ったが結果は惨敗だった。

 

 

「あ、ちょっといいかな」

 

 

何がいけなかったんだろうか・・

更衣室の傍にたどり着くまでは上手く言っていたはずだ

 

 

「あのー、もしもーし」

 

 

だが何故あのタイミングで落とし穴だったり先生に見つかったりするんだ!

後一歩!後一歩でそこには桃源郷が広がっていたはずなんだ!

 

 

「どうしましたのアスナ?」

 

「八代君達の居場所を聞こうとしたんだけど・・・聞こえてないみたい」

 

「ニンゲンは皆、変な奴ばっかりデスネ」

 

「あら、あちらにコテツさんとタクマさんがいますわよ」

 

 

くぅっ、今思い出すだけで悔しさが沸き起こってくる。

 

 

「見ろ、あの赤龍帝の顔を白龍皇との因縁の闘いに燃えているだろう」

 

『いや、そんな表情にはとてもじゃないが見えないぞヴァーリ』

 

 

・・・・あれ?今誰か俺に声をかけなかったか?

それも、とびきりの美少女達が。

 

 

「兄ちゃん、さっきから何しとるんや?」

 

「あんたじゃねぇっ!」

 

「うおっ!」

 

「あ、すんません」

 

 

関西弁の男に話しかけられて思わず怒鳴ってしまう。

落ち着け、クールになれ一誠。

あれから覗きのテクニックを元浜と松田、3人で磨いていったはずだ。

大丈夫、昔の俺じゃない。俺は成長しているんだ。

 

 

「ふぅ、えーっとどちら様でしたっけ?」

 

「わいも同じレースに参加する最強の虎ってとこや」

 

「はぁ、それはどうも」

 

「よぅ!あんた達も参加者だよな!俺は一文字伐!よろしくな!」

 

 

こりゃまた随分と暑苦しい奴が来たな。

あぁっ!八代先輩のとこに結城先輩と・・・な、何だあのおっぱいは!

くぅっ!何で俺のところには暑苦しい野郎と関西弁を喋る外国人と残念なイケメンなんだよっ!

 

 

「さぁ俺を楽しませてくれ赤龍帝!」

 

『だから・・・はぁ、もう好きにしろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、優勝は一体誰が手にするのか!リーアグランプリ開催ですっ!』

 

 

実況の声を俺はゴーカートに乗り聞いていた。

ヘルメットを被り今か今かと待っている。

俺のスタート位置は後方、タクマは先頭だ。

 

 

『今回は参加者が多かったため4ブロックに分けて同時に行います。またアイテムの中には別ブロックを邪魔するアイテムも入っています』

 

 

それじゃあ1位を取っていても油断はできないな。

逆に言えば1位でも他のブロックを邪魔できて優勝も狙いやすくなるって事か。

 

 

『また、各選手の検討振りが分かるようにヘルメット内にマイクが内蔵されており選手視点のカメラもあります』

 

 

おぉ、マジか。下手な事言えないじゃないか。

 

 

『殿ーーっ!拙者頑張るでござるよーっ!』

 

『コテツ!私が絶対に勝つわよ!』

 

『ふふっ、お姉さんが優勝をもらっちゃうわよ』

 

 

・・・・見知った連中が真っ先に喋るなよ。

半蔵にグレモリーに先輩だな。全く恥ずかしい奴らめ。

 

 

「よし、別ブロックを邪魔するアイテムを取ったらあいつらを真っ先に狙おう」

 

『聞こえてるわよコテツ!』

 

『さぁ、選手達も盛り上がっています!それでは間も無くスタートです!』

 

 

なんてこった。早速喋ってしまったじゃないか。

まぁいいや。こうなったら思いっきり楽しまなくちゃな!

 

 

『3』

 

 

カウントが始まったな。

やっぱりスタートダッシュが肝心だ。

それぞれがエンジン音を響かせて集中する。

 

 

『2』

 

 

ただでさえ後方からのスタートだ。

まずは前に出てアイテムで後方を邪魔しつつ別ブロック狙いで行くか?

 

 

『1』

 

 

でも後方の方がいいアイテムは出やすいよな?

うーん、どっちも捨てがたい。

えーい考えるのは止めだ!

 

 

『スタート!』

 

「先手必勝に決まってるだろう!」

 

『行くぞ赤龍帝!白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の力をとくと見ろ!Dvid・・・」

 

『ウララララ!』

 

『何!?ぐはぁっ!?』

 

『おーっとCブロックのヴァーリ選手!アステカ選手のゴーカートから飛び上がっての体当たりを避けきれずに吹き飛んだー!!』

 

 

・・・え?

仮面の人が突如俺の目の前を横切ったかと思うと銀髪の男がコース外に吹き飛んでいった。

おかげでスタート出遅れちまったじゃないか。

 

 

『さぁ波乱のスタートとなりました。先頭はAブロック、ティナ選手。Bブロック、木場選手。Cブロック、キリト選手。Dブロック、スーラ選手です』

 

『さぁこのまま突っ切るわよー!』

 

『ははは、風だ!僕は今、風になっている!』

 

『何か他のブロック、テンション高いなぁ』

 

『おらおら!どけどけ!』

 

 

木場の奴、本当に人格変わってるぞ。

まぁいい。今は自分のことだな。

さて、ハテナのパネルを踏んでアイテムをゲット!

赤い甲羅か、それならカーブ手前を狙って・・・

 

 

「早速前の奴、当たれ!」

 

『甘いで!龍撃閃!』

 

「はぁっ!?そんなの有りかよ!?」

 

『はっはっは悪いのぅ兄ちゃん!』

 

 

カーブを曲がる反動で足を出したかと思うと飛び道具を撃って甲羅を弾きやがった。

って今度は後ろから青いトゲの甲羅!?

 

 

「うお、危ねっ!」

 

 

何とか避ける。確か青い甲羅は1位に当たるんだったな。

って事は今の1位は・・・

 

 

『よっしゃー1位!このまま俺がモテモテだー・・・どわぁっ!?』

 

『おーっとCブロックの兵藤一誠選手、キリト選手を抜いた途端に青甲羅の餌食に!』

 

 

ちっ、あのキリトとか言う奴。練習のときに見た上手い奴か。

って事はわざと抜かせたな。

 

 

『あーっとBブロックの服部半蔵選手、姫島朱乃選手の投げたバナナの皮を踏んでスピンーっ!』

 

『ぬおおぉっ!姫島嬢ーーー!』

 

『あらあらごめんなさいねハンゾーさん』

 

 

くっ、半蔵も梃子摺ってるみたいだな。

けど勝負は始まったばかりだ。

 

 

『きゃーーっ!小猫ちゃーん!?』

 

『ごめんなさい明日奈先輩。でも勝負は非情なんです』

 

『Dブロックの結城明日奈選手、搭城小猫選手の甲羅を受けてスピンッ!』

 

 

ゴロゴロドガーーーンッ!

 

 

「どわっ!こ、今度は何だぁっ!?」

 

 

突然の轟音と共に車体がスピンを始める。

こ、これは・・・雷か!?

 

 

『何とAブロックのライザー選手、全ブロック対象の雷でトップに躍り出たー!』

 

『いよっし!このまま優勝だっ!』

 

『くっ、ライザー卑怯よ!』

 

 

ライザーさん、初めてなのにアイテムの引きが随分といいな。

えーい、だがまだこれから・・・

 

 

ゴロゴロドガーーーンッ!

 

 

「またかーーっ!」

 

『今度はDブロックのハヤト選手が雷を引き当てたーっ!』

 

『遊びでやってんじゃねぇんだぜ!』

 

 

さ、さすがに人数が多いと邪魔するアイテムを引く奴も多いな。

これはアイテム勝負になりそうだぜ。

 

 

ゴロゴロドガーーーンッ!

 

 

『今度はCブロックの高藤琢磨選手だーっ!』

 

「うがーっ!進まねーじゃねーか!」

 

 

い、一周が遠い・・・

これ、ゴールできるのか?

 




ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
英雄派の日常

「レッツパーリィ!!」(六刀流武将)

「親方様ーーーっ!」(二槍流武将)

「ふん、雑種。我に芸を見せてみよ」(慢心王)

「汝のカルマ救い難し」(Foo♪)

「曹操、お腹が空きました」(腹ペコ王)

「これが・・・アーサー王、だと?」(腹ペコ王の末裔)

「・・・え、これを俺がまとめるのか?」(英雄派リーダー)


どうみても無理です。本当にありがとうございました。


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第14話

マ○オカート、いつのまにか7まで出てたんですね。
アイテムも増えてて驚きました。(SFC/64しか知りません)





『さぁ盛り上がっておりますリーアグランプリ!』

 

 

さすがに4連続の雷は無かったようで何とか進んでいる。

雷は無いが甲羅やバナナは何度も出ているがな!

 

 

「危ねっ!お返しだ!」

 

『おら!気合弾!』

 

「また飛び道具かよっ!」

 

 

さっきから飛び道具を持ってる奴が多すぎだろ。

大体、仮想現実としてヘルメット上のアイテムを現実で打ち落とせるってどうなんだ。

 

 

『本グランプリでは数十名のスタッフによりリアルタイムで現実と仮想現実をリンクさせております』

 

「無駄にすげぇなっ!」

 

『うおおぉぉっ!俺が優勝して女の子にモテるんだあぁぁっ!』

 

「うぉっ!あぶねっ!」

 

 

体当たり同然で突っ込んできた車を避ける。

あのキラキラ光ってるのは・・・無敵になれる星か!

 

 

『Cブロックの兵藤一誠選手、無敵状態でTOPに迫る!さらにムツキ選手が金キノコで加速で追いついていく!』

 

『お?このキノコ何回も使えるのか、これならいけそうだな』

 

 

ま、まずい。このままじゃ最下位になってしまう。

何とかいいアイテムを・・・・お?これは・・・7?

 

 

『Aブロックのリアス選手、Cブロックの八代虎徹選手、Dブロックのスーラ選手の3名が引いたのは7つのアイテムが使えるラッキー7です!これはチャンスだっ!』

 

 

おっしゃ、これならイケる!

星、赤甲羅x3、緑甲羅、キノコx3、バナナ、雷、イカ。

まずは星でかっ飛ばすぜ。

 

 

『どっかーんっ!雷祭りだぜっ!』

 

『Dブロックのスーラ選手!雷4連続だ!これは他の選手には痛手となるで・・・おーっとCブロックの八代虎徹選手、無敵で回避だー!』

 

 

あ、あぶねぇ。もうちょっと使うのが遅かったら俺も雷の餌食になっていた。

これで一気に順位を上げて・・・4位だな。

キリトとか言う中学生とムツキさんと何か叫んでた奴・・・兵藤だっけ?

そして俺のすぐ後ろを走っているのが琢磨と大道寺とか言う天才ちびっ子だ。

 

 

『ふっふっふ、高藤琢磨。覚悟はいいな?』

 

『さて、大道寺博士を怒らせるような事をした覚えは無いのだがな。そら、虎徹行くぞ』

 

「何の!こっちもお返しだ!」

 

 

併走している相手と会話しながらもこちらを狙ってくる琢磨。

幸い緑甲羅だったので避けてお返しとばかりに赤甲羅をお見舞いしてやる。

 

 

『おっと危ない』

 

『高藤琢磨っ!貴様また私を盾にしただろう!』

 

『さて、何のことやら』

 

 

琢磨は一旦下がったかと思うとちびっ子の反対側に並んだ。

あのちびっ子のゴーカート、何だあれ?スライム?

そのスライムから突然手が出てきて赤甲羅を弾きやがった。

 

 

『わ、わわっフェルちゃんお願い!』

 

『任せるデス。あーーん、モグモグ・・・変な味デス、この飛び道具』

 

『人でないならペットとみなしますので問題ありません!』

 

「それでいいのか!?」

 

『ウララララ!』

 

『おっとCブロックの最強の虎選手に再びアステカ選手が襲い掛かる!』

 

『龍斬しょ・・・あ、あかん!アクセルが・・・どわぁっ!』

 

『残念、撃退しようとしましたがアステカ選手の方が早かったようです!』

 

 

やべっ、あのアステカって人・・・人?人でいいのか?

まぁいいや、とにかく順位を上げないと追いつかれてしまう。

 

 

『では先に行かせてもらうぞ虎徹』

 

「あ、待ちやがれ琢磨!」

 

『高藤琢磨選手、キノコを使い八代虎徹選手を抜いていく!』

 

「こっちだってキノコがあるっ!」

 

『高藤選手の後を追う八代虎徹選手!しかし後ろからは魔の手が迫っている!』

 

 

魔の手?・・・・うぉっ!?

間一髪、実況の声にハンドルを切ると先ほどまでいた場所を長く伸びたスライムが通過した。

 

 

『ちっ、外したか』

 

「何しやがるスク水のチビッ子!」

 

『貴様、高藤琢磨の知り合いだろう』

 

「はぁ?そうだけどそれがどうしたって言うんだ」

 

『奴への鬱憤を貴様で返すと言っているんだっ!』

 

「どんな理屈!?」

 

 

再度襲ってくるスライムにキノコを使ってスピードを上げて避ける。

しかし向こうも加速してあっさりと追いついてきやがった。

くそっ、こうなったら・・・

 

 

『さぁ今度こそ逃げられんぞ?』

 

「まだ甘い!」

 

 

速度を一気に緩めてチビッ子を先に行かせる。

そしてここでイカを使えば!

 

 

『うわっ!な、なんだこれは視界が!』

 

『Cブロックの八代虎徹選手、イカスミを使い順位が上の選手達の視界を黒く染め上げたっ!なお、これは他ブロックにも有効となります』

 

 

ラッキー、他のブロックにも効果があるのか。

一先ず、油断している内にもう一回キノコで加速して差を広げてしまおう。

 

 

『ウララララ!』

 

『気合弾!何!?効いて無いだと!?』

 

『後方から着実に順位を上げていくアステカ選手も迫っているCブロック。おーっとここでAブロックではデッドヒートが繰り広げられています』

 

 

Aブロック?確かグレモリー、ライザーさん、先輩がいるブロックだったよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ようやく2周目に入ったわけだけど・・・

リアスちゃんにライザー君も色々と忘れてるみたいね。

 

 

『くっ、ライザー炎なんて卑怯よ!』

 

『そういうリアスだって滅びの魔力を使うのは反則だろ!?』

 

 

お互い併走して魔力合戦をしているものね。

幸いと言うべきかリアスちゃんよりライザー君の方が実力があるためか滅びの魔力も相殺程度で収まっているからいいけど。

でも、まぁゲームだし。そういうアイテムって事にしましょう!

 

 

「と、言うわけで・・・そーれっと!」

 

『うわっ!?ティ、ティナ!?』

 

『ちょっと!後ろからなんて卑怯よ!』

 

「そんな狙いやすいところにいるのが悪いのよ二人とも?」

 

 

隙だらけの二人に魔力弾と緑甲羅を同時に当てて抜き去る。

いやー二人とも弄り甲斐があって楽しいわね・・・あら、これは雷が来るかしら。

 

 

『雷遁の術でござる!』

 

「じゃあ星で回避しましょ」

 

『Bブロックの服部半蔵選手、雷で他選手を抜きにかかる!しかしAブロックのティナ選手、Dブロックの結城明日奈選手が星で回避!』

 

 

あら、明日奈ちゃんもやるわね。

でもこれで先頭ね、他ブロックからしてもトップ。

うーん、ここで気をつけるべきは青甲羅なのだけれど・・・よっと

 

 

『Aブロックのティナ選手、華麗に誘導つきの青甲羅をかわす!』

 

 

ま、この程度なら問題無いわね

 

 

『熱い、熱いでござる!』

 

『ふふふ、ほら逃げないと駄目ですよハンゾーさん?』

 

『これは酷い、Bブロックの姫島朱乃選手。服部半蔵選手がスピンしてもまだ火の玉を投げ続けています』

 

 

朱乃ちゃんも最初出会った頃と比べて随分と変わっちゃったわね。

全く、誰の影響かしら。

 

 

『逃がさないわよティナ!』

 

『くっ、例えティナでも勝負事は別だ!』

 

「えぇ、待ってたわよ?」

 

『『・・・え?』』

 

『おーっとAブロックのライザー選手、リアス選手。二人揃ってバナナの皮でスピンッ!』

 

『おまけにコレ、置いておくわね』

 

『さらには目の前に再度バナナを置いて行く!これは厳しい!』

 

 

うふふ、あの二人の顔ったら面白い。お姉さん楽しいったら無いわ。

えーっと何の話だったかしら?

そうそう、朱乃ちゃんの性格ね。本当に誰に似たのかしら。

 

 

『赤甲羅です』

 

『うわっ!テメェ!後で覚えてやがれ!』

 

『おっとこいつも、喰らいな!』

 

『Dブロックの搭城小猫選手、スーラ選手をスピンさせてトップに躍り出ます!さらにハヤト選手が緑甲羅で追撃!』

 

『ぜ、絶対後で泣かしてやる!』

 

 

小猫ちゃんも随分と力強い走りだけれど、悪魔の駒(イービルピース)の恩恵でも受けているのかしら?

サーゼクス様が関わってるって時点で否定できないのが怖いわ。

 

 

『はははははっ!まだだ!もっとスピードが出せるはずだ!』

 

『木場殿!何故スピンしながら走れるでござるか!?』

 

『祐斗君、トリップしすぎですわ』

 

 

何よりもあの祐斗ちゃんの様子もおかしいし。

いや、恩恵を受けたからってあんなにテンションが上がるのもおかしな話。

と、なるとアレは祐斗ちゃんが元々持っていた素質と言う事ね。

 

 

『ウララララ!』

 

『どうせ飛び込んでくるならおっぱい大きな人がよかったーーっ!』

 

『Cブロック、兵藤一誠選手。アステカ選手の体当たりに脱落っ!残る標的は5人となりましたっ!』

 

 

トラちゃんとタクマちゃんのブロックは既に別ゲームと化してるわね。

あのアステカとか言う人、人・・・でいいのかしら?

体当たりで突撃してはその後、ちゃっかり自分の車体に戻ってるんだから凄い運動神経だわ。

 

 

『追いついたわよティナ!』

 

「は~い、リアスちゃん。何でそんなに怒ってるの?」

 

『あ・な・た・のせいでしょ!』

 

 

もう、怒りっぽいんだからリアスちゃんは。

悪魔だからって健康管理に気を使わないと駄目よ?

今度カルシウムを取る事を勧めましょう。

でもリアスちゃんの事だから胸に栄養がいきそうね。

 

 

ひょいっ

 

 

『あーもうっ!どうして当たらないのよっ!ティナ、何か力を使っているんじゃないでしょうね!』

 

「さすがにそこまではしてないわよ?純粋に運転技術のおかげよ」

 

 

一時期、世界中を回ってたからね。海外だと運転免許は未成年でも取れたから役立ったわ。

転移を使っても、つまらないから乗っていたけど・・・人生何が役立つか分からないものね。

 

 

『さぁ、最終ラップ!現在1位はAブロック、ティナ選手。Bブロック、木場選手。Cブロック、ムツキ選手。Dブロック、ハヤト選手となっております!』

 

 

さて、残り1周。楽しく行きましょう。

もちろん優勝は狙っていくけどね。

・・・・そういえば優勝したら何がもらえるのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、追いついたぜっ!」

 

『そう簡単には勝たせてはくれないか』

 

『さすが虎徹。ここまで来るとは思っていたぞ』

 

 

琢磨、ムツキさん、キリトとか言う中学生。

トップを走るこの3人に俺はやっと追いついた。

あのチビッ子は今頃アステカと頑張っているだろう。

 

 

「全員アイテムは無し。となれば次のパネルで決まるな?」

 

『それは間違っているぞ虎徹』

 

 

カチリッ

 

 

琢磨がハンドルから手を離したまま懐から取り出した銃をこちらへと向ける。

あいつ、完全にゴーカートを掌握しやがったな。自動操縦じゃねぇか。

 

 

『自前のアイテムを持っていれば話は別ってことか』

 

 

ガチャリッ

 

 

「まてまて、ムツキさん。あんたその大剣、どっから出した!?」

 

『少年、階層都市にはな。守秘義務っつーのが多くあるんだ』

 

 

いや、背中から出したように見えたがサイズが明らかにおかしい。

あれか。琢磨みたいに転送したって考えていいのだろうか。

 

 

『ど、どうせ偽物に決まって・・・』

 

 

パンッ!キィンッ!

 

 

『ひぃっ!』

 

『防弾加工がしてあるとはな。命拾いをしたなキリトとやら』

 

 

琢磨の奴容赦なくヘルメットに向けて撃ちやがった。

キリトとかいう中学生も可哀相に。ビビッて後退しちゃったよ。

しかしこれはチャンス・・・

 

 

ジャキンッ

 

 

『そうは行かないんだ、これが』

 

「ムツキさん、あんた何処に目付いてんだ」

 

『気配だ気配』

 

 

これだから格闘できる奴は、気だの気配だの殺気だの。

そんなので分かってたまるか!

 

 

『ウララララ!』

 

『おのれ、こんな仮面なんかに、このきら様がーーっ!』

 

『Cブロック、残り4人。アステカ選手も追い上げていきます!』

 

 

くそっ、何で俺達のブロックだけサバイバルなんだ。

けれど今度こそチャンス、全員がアステカを警戒しているおかげでパネルを踏めるぞ。

 

 

『おっと高藤琢磨選手!最後の最後でラッキー7を引きました!』

 

『う、嘘だろ?パネルを踏んだ時は1位だったはず、なのに!?』

 

『ふっ、今日は運がいいようだな』

 

 

しれっと言いやがって。

システムに細工しやがったな。

琢磨の奴、本気を出すと本当に容赦が無いな。

けど俺だってアイテム次第じゃ・・・何だこれ?砲弾か?

 

 

『よしっ!これなら・・・それっ!』

 

『おっと、こんなもの・・・!?』

 

 

ドガーーンッ

 

 

『あーっとムツキ選手、キリト選手の投げた爆弾を切り払ってしまい爆発に巻き込まれスピン!これは痛い!』

 

『あー、実際の爆弾じゃなくて仮想現実だったな。咄嗟に身体が動いちまった』

 

『ウララララ!』

 

 

ギィンッ

 

 

『おっと、今度は俺が相手かい仮面選手?』

 

『何とアステカ選手の攻撃をムツキ選手防いだーっ!』

 

 

ま、まぁ何はともあれこれでムツキ選手は脱落だ。

後は3人、じゃあ早速このアイテムを使うとするか!

 

 

「って、速っ!何だこりゃ!?」

 

『八代虎徹選手、砲弾と化して進んでいく!ちなみにこれは別ブロックでもリンクしており触れた場合はスピンしますっ!』

 

『ちょ、ちょっと!だからって、いきなり背後に出現するのは頂けないわよトラちゃーん!』

 

『うおぉぉっ!冗談じゃねぇっ!?』

 

『ははは風だっ!僕は風・・・・あれ?飛んでる!?』

 

 

何だか知らないが他ブロックの先頭が全員当たってスピンしてるみたいだ。

木場の奴は空飛んでるぞ?あれは吹っ飛ばされてると言っていいんだろうか・・・あ、壁に激突した。

 

 

『やるな虎徹。しかし、それは時間制限付きだ。切れたと同時に無敵化して体当たりをすれば僕の勝ちだな』

 

『トップに立った八代虎徹選手の後ろで金キノコで追いつく高藤琢磨選手!どうやらこの二人が優勝を決めるようです!』

 

 

まずい、時間が切れたら後ろから琢磨に体当たりを喰らってしまう。

かと言って、もうアイテムもパネルも無い。

どうする、どうす・・・る?

 

 

『さぁっ、最後の直線。そろそろ砲弾化も解ける八代虎徹選手にその背後をぴったりと追う高藤琢磨選手!』

 

 

ポンッ

 

 

効果が切れたか、ココしかない!

琢磨、教えてやるぜ。

俺だって自前のアイテムぐらい持ってるってなっ!

 

 

ポンッ!バサバサッ!

 

 

『何!?しまった!』

 

『突如現れた大量の本が背後にいる高藤琢磨選手を襲うっ!』

 

「はっはっはーっ!琢磨、悪いがこれで俺の勝ちだなっ!」

 

『これは幾ら無敵化と言えど現実ですので防げません。八代虎徹選手、独走!そして優勝は・・・』

 

 

さぁ、後2mでゴールだっ!

優勝はもら・・・

 

 

『・・・・ラッ』

 

 

ヒュンッ

 

 

「・・・・え?」

 

『ウララララ!』

 

『優勝はアステカ選手ーっ!最後の最後で見事な追い上げ!』

 

「何でだーーっ!?」

 

 

 

 

 




ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
英雄派の日常2


「まぁまぁ曹操、気楽にやろーぜ」

「いいか美猴。俺達は英雄と英雄の末裔によって構成された誇りある英雄派だ。まとまりをもって行かないと英雄としてだな・・・」

「英雄英雄五月蝿いぞ」

ガシャーンッ

「ぶるああぁぁぁっ!英雄は何処だぁっ!?」(英雄殺し)

「英雄か、なら愛し合おうじゃないか!」(仲間殺し)

「ここにオラと同じ名前の奴がいるんだろ?オラわくわくすっぞ!」(食料庫殺し)

「吼えるな雑種が、我が宝具の錆となれ」(アイテム宝具を使用しました)

「ここはリーダーとして俺がグングニルで!」(アイテム神滅具を使用しました)

「アイテムなぞ・・・使ってんじゃねぇ!!」




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第15話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
ロック達の自己紹介


「俺はロック、よろしくな」

「俺は楓だ。よろしく」(金髪覚醒)

「オレハろっく、ヨロシクナ」(ロボ)

「そっくりだな」

「3つ子でござるか」

「ロック3兄弟か、覚えておこう」

「ちげーよ!」




「あー惜しい!後少しだったのに!」

 

「八代君、惜しかったね」

 

「あのアステカと言う御仁、かなりできる人物でござったな」

 

 

レースが終わった後、リーアランド内にあるファーストフード店で休憩していた。

結局、アステカはCブロックの俺以外を全員体当たりで沈めての優勝だった。

優勝者のインタビューでは『テスカトリポカ』だもんな、意味わかんねーよ。

最後の最後までわけの分からない奴だった。

 

 

「タクマ、あのアステカの体当たりを受けたんだろう?大丈夫だったか?」

 

「何とか、と言った方が正しいがな・・・」

 

「貧弱、ですね高藤先輩」

 

 

ライザーさんに答える琢磨も元気ねぇな。

そして搭城は容赦ねぇな、おい。

まぁ俺もあの体当たりをくらって元気に立ち上がれる自信は無い。

 

 

「優勝賞品も優勝者にしか公開されていないって言ってたし、何だったのかしらね」

 

「ここのフリーパスじゃないかしら?」

 

「はぐはぐ、アスナ。ハンバーガーお代わりデス」

 

「ちょっと待ってね・・・はい、フェルちゃん」

 

 

皆が遊んで楽しめたんだから良しとするか

・・・約1名を除いてな。

 

 

「・・・・・・・はぁ」

 

「祐斗、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないの」

 

「部長・・・自分がスピード狂だと知った時のショックが分かりますか?」

 

「うっ、それは・・・・」

 

 

木場の奴、レース中は終始ハイテンションだったもんな。

二重人格と疑う程だったぜ。

 

 

「普段が大人しい反動が発揮されたのではないか?」

 

「そうでござるよ。男子は皆、何かに熱中すると我を忘れてしまうでござる」

 

「ハンゾーちゃん。口元にクリームをべったりさせて言う台詞じゃないわよ?」

 

 

甘党忍者の言う台詞じゃないが確かにそうだ。

誰だって好きな事に熱中すれば我を忘れる。

木場はそれがスピードを出す事だけだったって話だな。

 

 

「木場、済んだ事をぐだぐだ考えるな。いいじゃないかスピード狂なんて、将来レーサーになれるかもしれないぞ」

 

「八代先輩・・・ははは、そう、ですね」

 

 

何とか元気を取り戻したようで、これで一安心だな。

ん?何か入ってるな、これはカード?

セットを頼んだからおまけでも付いていたのかね。

 

 

「殿も入っていたでござるか?拙者もでござるよ」

 

「僕も入っているな。トレーディングカードの類だな、これは」

 

「あ、僕のにも入っていますね」

 

 

俺、半蔵、琢磨、木場の4人にしか入っていないようだ。

注文した内容は別なのに何でだろう?

 

 

「ワールドレジェンド?あぁ、あの有名な奴か。テレビでもやっていたな」

 

 

世界中の伝説上の生き物とか武器とかで戦うカードゲームだ。

袋のパッケージを見れば"リーアランド限定1枚入り"と書かれている。

リーアランドとコラボでもしてたのかね。

 

 

「へぇ、そうなんですか。僕、こういうのは初めてみますよ」

 

「じゃあ開けてみようぜ」

 

 

と言うわけで全員開封して中身を見てみる事になった。

最初は琢磨からだな。

 

 

「ティルナ・バティム。ソロモン72柱の1柱で序列18番の大公爵、だそうだ」

 

「おぉ、何か強そうじゃないか」

 

「馬に乗っているでござるが何でこの馬は青ざめているでござるか?」

 

 

絵柄には青ざめた馬に乗っている大男の姿が描かれている。

尻尾みたいなのが蛇になってるな。

ステータスも結構高い方みたいだ。

 

 

「やったな、当たりじゃないか」

 

「いや、脳筋のようで役に立たな・・バティン先輩、いたひれす(痛いです)

 

「あーら、ごめんなさいねタクマちゃん。虫が止まっていたのよ」

 

 

何故か琢磨の頬を抓る先輩。

気のせいか?こめかみに血管が浮き出ているようにも見えるぞ。

 

 

「では次は拙者でござるな!・・・おぉ、不死鳥でござるよ!」

 

「ゲイザー・フェネクス。ソロモン72柱の1柱で序列37番の大いなる侯爵だな」

 

 

やっぱりフェニックスって格好いいな。

ただの鳥なのに不思議だ。

 

 

「格好いいでござる!」

 

「ごほん、あー、ハンゾー。俺のポテトをやろう」

 

「ライザー殿、よいのでござるか?」

 

 

やけに上機嫌でポテトを半蔵に差し出すライザーさん。

何だ?何かいい事でもあったのか?

 

 

「今度は俺だな、どれどれ?」

 

「リアネス・ゴモリー。ソロモン72柱の1柱で序列56位の公爵、ですね」

 

 

駱駝に乗った女悪魔の姿が描かれていた。

・・・ん?これ何だかグリ子さんに似ているな。

まぁでもステータスもぱっとしないし・・・

 

 

「女悪魔か、何か弱そ・・いてぇっ!何しやがる!」

 

「ふんっ、何でもないわよっ!」

 

 

くそっ、グレモリーの奴、思いっきり足を踏みやがった。

何で急に機嫌が悪くなってるんだよ。

 

 

「あははは、最後は僕です・・・か」

 

「どうしたんですか祐斗先輩?」

 

「ははーん、相当強いカードを引いたと見たぞ。木場、俺達にも見せろよ」

 

「っ!え、えぇどうぞ」

 

 

カードを見た途端に固まる木場に声をかけると戸惑いながらも見せてくれた。

そこに描かれていたのは1枚の剣。

見事な装飾をされた派手な金の剣だ。

 

 

「おぉ、エクスカリバーじゃないか。レアカードじゃないのかこれ?」

 

「確かアーサー王の剣だったよね?」

 

「祐斗さん?大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ。僕は大丈夫です」

 

 

木場の奴、急に顔色が悪くなったな。

ははーん、さては先端恐怖症だな。

こういった先が鋭いものを見て怖くなったんだな。

 

 

「木場」

 

「木場殿」

 

 

ぽんっ、ぽんっ

 

 

「えっと・・・八代先輩、服部先輩?」

 

「誰でも怖いものはある。けどな、シャーペンや包丁とか身近にあるんだから少しは慣れないとな?」

 

「拙者もクナイや手裏剣などを扱うでござるが、そう簡単には怪我などせぬから心配いらぬでござるよ?」

 

「限りなく間違った解釈ですわよ、お二人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ2時ですね。ティナ先輩どうします?」

 

「アスナちゃん。それはもちろん、遊ぶに決まってるじゃないの!」

 

「では拙者は早速、洋菓子巡りに向かうでござるっ!」

 

「っ!服部先輩、お供しますっ」

 

「あらあら、仕方ないですわね。私が着いていきますわ」

 

「ライザー君!祐斗ちゃんを捕まえなさい!」

 

「え?あ、あぁ分かった」

 

「な、何ですか一体!?」

 

「あっちに祐斗ちゃんに似合いそうな可愛い服があったからお姉さんが見繕ってあげる。行くわよ!」

 

「すまんな、祐斗。許せ」

 

「それってもしかして女性用じゃないですか!?」

 

 

あははは。あっという間に皆いなくなっちゃった。

私とフェルちゃんとリアスはぽつんと、取り残されてしまっていた。

 

 

「皆、落ち着きが無いわね・・・」

 

「ホントデス」

 

 

リアスも人の事言えないんじゃないかな?

さすがに言うと怒るだろうから黙っておくけど。

 

 

「あれ?八代君と高藤君がいないよ?」

 

「そういえば・・・確か最初に店を出て行ったはずよね」

 

「あそこにいるデス」

 

 

フェルちゃんの指差す方を見ると道の端に二人がいた。

何かを見て話しているようだけど・・・あれは高藤君が作った通信機?

 

 

「何をコソコソしているのかしら?」

 

「ストーカー、ティセ、丸焦げ。これ以上は聞き取れないデス」

 

「フェルちゃん、耳がいいんだね」

 

 

蝙蝠の羽みたいな耳をぱたぱたさせているフェルちゃん、可愛いなぁ。

あれ?羽?耳?うーん、可愛いからどっちでもいいよね。

 

 

「ストーカーと言えば、以前にあったアスナのストーカーの事かしら?」

 

「ボクが召喚された時に言ってた奴デスカ」

 

「そうなのかな?最近はそんな事は無いんだけど・・・」

 

 

結局のところ、はっきりとは分からないんだよね。

八代君や高藤君は私に心配をかけまいとしてくれているのは分かっているんだけれど。

私のせいで危ない事をしているんじゃないかと別の心配をしているから本末転倒のような気がする。

 

 

「ここで話していても仕方ないわね。行ってみましょう」

 

「あ、ちょっとリアス」

 

 

ああやって離れているって事は聞かれたくないからじゃないのかな?

でも私も気になるし、着いて行こう。

まだ二人はこちらには気づいていないみたい。

そして二人の会話が聞こえてきた。

 

 

「おい、琢磨。このストーカー・・・死んでるんじゃないか?」

 

「よく見てみろ。僅かに痙攣しているだろう、瞳孔も開き切ってはいない。生きているさ・・・かろうじてな」

 

『ご、ごめんなさい博士~。出力を間違えました~!』

 

「ふむ、最近は調整をしていなかったからな。帰ったら調整し直すか」

 

「暢気だな、おい・・・って、結城にグレモリー?それにデス様まで」

 

 

あ、八代君がこっちに気づいたみたい。

八代君の言葉に高藤君もこちらを見るけど特に何も言わない。

と言う事は用事は済んだのかな?

二人が見ていた通信機の端末をリアスとフェルちゃんと一緒に覗き込んでみる。

そこにはぺこぺこと頭を下げているティセちゃんと・・・全身黒こげの人?が倒れていた。

 

 

「何デスか?料理に失敗したデスか?」

 

「いや、アレが結城のストーカー」

 

「証拠を押さえたところで察知したストーカーが戻ってきたんだがティセが出力を間違えて撃退したところだ」

 

「・・・よく生きてるわね」

 

 

うわぁ・・・そんな言葉しか出てこないよ。

 

 

「ストーカー、と言う言葉も若干怪しいんだがな」

 

「どういうこと?」

 

「ティセが抑えた証拠を見る限り結城のストーカーって言うよりは結城家のストーカーって感じだな」

 

「アスナの家のストーカー?」

 

「結城さんの兄の動向や父親が働いている会社の取引先のリストなどなど、挙げればキリが無いな」

 

 

お兄ちゃんの動向にお父さんの会社の事まで。

一体何がしたかったんだろう?

でも、これでもう心配はいらないんだよね。

何だかほっとしたような、気が抜けちゃったような。

でも安心感は間違いなくあるね。

 

 

「とにかく僕はこれから、これらの証拠とストーカーを連れて警察に行って来る。見たところ、このまま自由行動のようだしな」

 

「おぉ、何時の間にか他の連中がいない!?」

 

 

高藤君は気づいていたみたいだけど、八代君・・・本当に気づいていなかったんだ。

 

 

「ありがとう、二人とも」

 

「何、礼なら虎徹に言うんだな。僕は虎徹の言うように徹底的にやっただけだ」

 

「それでも、だよ。高藤君がいなかったらストーカーの人を捕まえられなかったもの」

 

「・・・分かった、礼は受け取るとしよう」

 

「あらら?タクマったら照れているのかしら?」

 

「はっはっは!タクマ、照れてんのか?」

 

「実に似合わないデス」

 

「・・・・ふん、僕はもう行くぞ」

 

 

久しぶりに高藤君の照れた顔を見たなぁ。

3人にからかわれて、すぐに元の無表情に戻っちゃったけど。

八代君とリアスはまだ笑いを堪えていて、何故かフェルちゃんは怯えていた。

 

 

「どうしたのフェルちゃん?」

 

「さっき通りすがりに『不思議生命体の解剖の準備が整う』って言っていたのが聞こえたデス・・・」

 

「あはは、きっと高藤君なりのジョークだよ」

 

「ブラックにも程があるデス!」

 

「でもタクマの事だからやりかねないのよね」

 

「それと、八代君もありがとう」

 

「ん?あぁ、俺は大した事はしてないぞ」

 

 

何でもないように言う八代君。

でも八代君が率先してストーカー探しをしてくれたから高藤君や皆が動いてくれたんだよ?

それにフェルちゃんとも出会えたしね。

けれど説明したところで八代君の事だからとぼけちゃうのは目に見えてる。

 

 

「うん。じゃあそういう事にしてあげるね?」

 

「・・・何か癪に障る言い方だな」

 

「ふふっ、そう?」

 

「あーもう!いいからまだ時間はあるんだから遊ぶぞ!結城にグレモリーにデス様も!」

 

「そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ」

 

「暴れる場所があれば文句は無いデス」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うがーーっ!何だあの結城の『しょうがないなぁ』みたいな微笑は!?

何故だか知らないが無性に悔しい気分だ。

 

 

「それで何処に向かってるのよコテツ」

 

「グレモリーにデス様もリーアランドは初めてだろ?リーアランドに来たら一度は見ておく場所だ・・・ってどうしたグレモリー?」

 

「・・・お願いだからそんなに連呼しないで頂戴」

 

 

説明をしていると恥ずかしそうにするグレモリー。

デス様は特に何も無いようで結城の肩に乗って俺の話を聞いている。

 

 

「それで何デスカ?」

 

「ん?あぁ、それでその場所が・・・っと着いた。ここだ、時計台だな」

 

「うわぁ、やっぱり何時来ても壮観だね」

 

 

リーアランドの中でも一番高い建物である時計台。

丁度リーアランドの中央に位置していて展望台となっている最上階から見渡す景色は絶景だ。

何よりも入場料無料!俺の少ないお小遣いに優しい場所だ。

 

 

「とにかく昇ってみようぜ」

 

「そうね。ここまで来たんだから行きましょう」

 

 

中に入るとホールになっていてイベントをやっているようだ。

コンサートか?舞台上で数人が楽器を演奏している。

 

 

「お?あの人、ゾンビのコスプレしてギター弾いてるぞ」

 

「凄いね。本当にゾンビみたい。骨とかも見えてるし、凝ってるなぁ」

 

「・・・・あのゾンビ、本物じゃないわよね」

 

「どうみても本物デス」

 

 

他にも赤いボンテージに同じく赤いとんがり帽子を被った女の人もギターを弾いている。

スキンヘッドでサングラスかけたおっさんがドラム。

時々、人差し指を天に向けてポーズを取ってるけどあれは一体何のポーズなんだろうか?

 

 

「確か展望台行きのエレベータが・・・あぁ、アレだ」

 

 

デスメタルを弾き鳴らすグループを聴きながらエレベータに乗り込む。

最上階のボタンを押してエレベータが上昇していく。

窓には何人か、空を飛んでる人がいる。

あの赤いトサカみたいな頭の人は以前にテレビで見たことあるな、サイキッカーだったっけ。

 

 

「・・・ちょっと待ってくれるかしら」

 

「どうしたのリアス?」

 

「何で人が空を飛んでるのよ!」

 

「何でってそりゃ空を飛べるからだろ?」

 

「そういう事じゃなくて!何で人が空を飛べるの!?」

 

「よく分からないけど超能力とか、気らしいね。さすがに長時間は飛べないみたいだけど」

 

 

見れば飛んでる人より跳んでる人の方が多い。

いいな、俺も空中を走ったりしたいぜ。

 

 

「おかしい・・・やっぱり冥界にある人間の知識は間違ってるわ」

 

「勝手に騒いで勝手に落ち込むなよグレモリー」

 

「リアスどうしちゃったんだろう?」

 

「ボクはもう諦めたデス」

 

 

最早、いつものやり取りと言える光景だったがエレベーターが到着したので終わる。

グレモリーはふらふらとしながらも出て行き、目の前に広がる光景に足を止めた。

 

 

「・・・綺麗」

 

「でしょ?」

 

「いやー、何時来ても絶景だな」

 

「お腹空いたデス」

 

 

デス様は平常運転だな。

久しぶりに来たけれど本当に絶景だ。

リーアランドが一望できる展望台。

今日は晴れだから青空も広がっている。

うん、連れてきて正解だな。

 

 

「目の前の光景が無ければもっと素敵だったのだけれど・・・」

 

「空中ステージにもなってるから仕方ないよ」

 

 

ガラス窓の向こうでは誰かが闘っているのが見える。

さっきの超能力者同士の闘いか。

 

 

「でも眺めは素敵よ?二人ともありがとう」

 

 

こちらに振り返って笑顔で礼を言うグレモリー。

不覚にもいや、まぁ、なんだ、可愛いと思ってしまった。

あー、さっきの結城と言い、今日は一体どうしちまったんだ?

 

 

「どうしたのコテツ?顔が赤いわよ?」

 

「実は俺、高所恐怖症なんだ」

 

「それなら普通は顔が青くなるよ」

 

「と・に・か・く!見てみろ、アレ・・・・を?」

 

 

こんな事が知られてしまえば先輩とか琢磨のからかいのネタにされてしまう。

何とかして話題を変えようと窓の外を指差すが俺も思わぬものを見て固まってしまった。

 

 

「ひゃっほーーーでござる!これが忍法ムササビの術でござるよ!」

 

「服部先輩、さすが忍者、です」

 

「ハンゾーさん。駄目ですわ・・・よ」

 

 

風呂敷を広げて浮遊している半蔵。これはまだいい。

しかし搭城と姫島、あいつら背中に蝙蝠の羽を広げて飛んでやがる。

 

 

「あ、朱乃・・・」

 

「リ、リアス・・・どうしましょう?」

 

「おぉ、殿ではござらんか!見てくだされ拙者の勇姿を!」

 

「ちょっと待て。搭城、姫島。お前達それを何処で手に入れた?」

 

「そうだよ。ズルいよ二人とも」

 

「「はい?」」

 

 

半蔵は置いて搭城と姫島に質問をする。

結城も同じ考えだったようで拗ねた口調で問いかけている。

 

 

「今日は何のイベントだ?いや、それよりもその羽は何処でもらったんだ?」

 

「八代君!早く行かないと売り切れちゃうよ!」

 

「そうだな、俺もその羽をつけて空を飛び回るぞ。行くぞ結城!」

 

「うん!」

 

 

こうしちゃいられない。あんな便利な羽をもらえるなんて、さすがはリーアランド。

よく分からないイベントに関しては右に出るものがいないな!

 

 

「・・・バカなコテツと天然なアスナで助かったわね」

 

「ここは喜ぶべきなのでしょうか?それともお二人を嘆くべきなのでしょうか?」

 

「まずは呆れるべきだと思います」

 

「殿~、拙者も参りますぞ!」

 




さようならストーカー、もとい須郷伸之。
1章も始まっていませんが、2章のフェアリイ・ダンス編終了です。

虎徹達が悪魔の存在を知る事になるのは何時になる事やら。



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第16話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
三大勢力の会議編


「それではこれより、悪魔、天使、堕天使の会議を始めるぞ」

「うおおぉぉぉっ!あっちいぃぃぃぃっ!」(ミカエルその1)

「一番いい会議を頼む」(ミカエルその2)

「・・・天使ってのも俺が堕天して随分と変わったんだな」


ミカエルその1には動画を見て、原作再現し過ぎで爆笑しました。
しかし堕天使ってMUGENにはあまりいませんね。
これは原作縛りを解禁した場合、何処の勢力が勝つんでしょうかね?




「あー、眠い」

 

 

リーアランドで遊んだ翌日。

まだゴールデンウィークだって言うのに10時にお袋に起こされて外を歩いていた。

どうせなら昼まで寝ていたかったぜ。

おまけに俺におつかいを頼んできやがった。

どうせ飯を作るのはお袋なんだからお袋が買いに行けばいいのにな。

 

 

「あら、コテツさん。おはようございます」

 

「あん?おぉ、姫島。おっす」

 

「休日はお昼まで寝るのではありませんでしたの?」

 

「そうなんだけどよ。お袋に起こされてよ、しかも晩飯の買い物をしてこいだってさ。まだ朝だぜ?」

 

「あらあら、いいじゃありませんか。そのおかげで美味しいご飯を食べられるのですから」

 

「そんなの平日も一緒だろ。何で休日になると俺に買い物を頼むんだ」

 

「・・・なるほど。これがコテツさんのお母様が言っていた修行ですわね」

 

 

俺が愚痴を溢していると納得したような顔で頷く姫島。

修行?たかが晩飯のおつかいだぞ。

 

 

「ふふっ。コテツさんではなくコテツさんのお母様の修行ですわ」

 

「お袋の修行?そうか、俺を追い出して実は修行していたのか」

 

 

そういえば最近、俺を起こす時の力が強くなったような気がしたんだ。

何時か俺を張り手だけで倒す気じゃないだろうな。

 

 

「違いますわ。料理の修業ですのよ。それでコテツさん、何をお買いになられるんですの?」

 

「ん?頼まれてたメモはこれだな」

 

「これは・・・」

 

 

お袋に渡された買い物メモを姫島に渡してやる。

するとメモを見た途端に驚く。

 

 

「どうした?」

 

「・・・いえ、いつもこのようなメモですの?」

 

「あぁ、そうだぜ。今日は魚に野菜と適当な食材、だろ?」

 

「曖昧すぎますわ。よろしければご一緒しても?」

 

「別にいいけど、たかが買い物だぞ?」

 

「コテツさんのお買い物がきちんとできるか心配で・・・」

 

「俺は子供か!」

 

「あらあら、さすがに冗談ですわ。コテツさんがどう言ったものをお買いになるのか気になりますの」

 

 

何で買い物が気になるんだ。

所詮は晩飯の材料だぞ。

とは言え、特に断る理由も無い。

 

 

「別にいいけどよ。大して楽しくねぇぞ?」

 

「いえ、この1ヶ月で私はある事を学びましたの」

 

「ある事?」

 

「えぇ。コテツさんの傍にいれば楽しい事には事欠きませんわ」

 

「あーそーかい。それで姫島は何してたんだ?」

 

「そうでした、すっかり忘れてましたわ。実は家の神社で祀っている神様が家出しましたの」

 

「・・・はい?」

 

 

はて、俺の聞き間違いだろうか。

神様が家出?

 

 

「ですから、家の神社で祀っている神様が家出を・・・」

 

「いや、聞こえてる。そうか、聞き間違いじゃ無かったか」

 

 

待てよ、確か姫島神社で祀っている神様って・・

 

 

「白い蛇、だったっけ?」

 

「えぇ、そうですわ。昨日、書置きがありましたのよ」

 

 

何度か姫島神社の祭りでも白蛇の神輿とかを見た記憶があるな。

でも白蛇なんてあの神社で見た覚えが無いぞ。

 

 

「待て、蛇が書置きしていったのか?」

 

「えぇ。何でも嫌気が差したから出て行く、と」

 

 

いやいや、蛇が書置きするわけねぇだろ。

でもカンガルーや熊が闘うんだ。別に字を書いても不思議じゃなかったな。

 

 

「なら買い物ついでに探して見るか」

 

「そうしましょう。どうせ食事時になれば帰って来ますわよ。これで52回目ですもの」

 

 

そんなに頻繁に家出している蛇なのかよ。

飯になれば帰ってくるって、どれだけ自堕落してる蛇だ。

蛇なら自分で食事ぐらい調達しやがれ。

 

 

「母から聞いたのですが去年にも地球を破壊すると言って家出しましたの」

 

「白蛇が地球を破壊ねぇ」

 

「まぁ1週間で泣きながら家に戻ってきたそうですわ」

 

「根性ねぇな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬおぉっ!拙者に任せて先に行くでござるーーっ!」

 

「わわわっ!は、半蔵様~!」

 

 

ピーーーーッ

 

 

『そこまでだ。半蔵、ティセ。上がってきてくれ』

 

 

ぬぅ、難しいでござるな。

今日は琢磨に頼まれて色々と実験に付き合っている最中でござる。

しかしあのホウオウと言うカラクリは尋常ではない強さでござるな。

拙者とティセ嬢の二人がかりでも相手にならぬとは。

 

 

「それではお茶にしますね。今日は半蔵様に頂いたドーナッツにしましょう」

 

「ひゃっほーでござる!」

 

 

さすがティセ嬢でござる。気配りについては右に出る者がおらんでござるよ。

そして"どーなっつ"を持ってきた拙者もさすがでござるな!

 

 

「半蔵。先ほどの実験で聞きたい事がある」

 

「何でござるか?」

 

「何故ホウオウキャノンをそんなもので対抗しようとしたんだ?」

 

「そんなものとは失敬な!れっきとした技でござるよ!」

 

 

琢磨め、何と言う事を言うでござるか!

これは拙者が里の忍から教わった由緒正しい技だと言うのに!

 

 

「いや、だが・・・下敷きだろう?」

 

「拙者の里にいる忍は、この下敷きで如何様な飛び道具も跳ね返すのでござるよ」

 

「俄かには信じがたい話だな」

 

「これぞ如月流忍法、流影陣でござる!」

 

「お前は伊賀の忍者だろう」

 

「人数が減っているが故に他流派の忍と住んでいるでござる」

 

 

現代では忍も働き辛いでござるからな。

拙者の里である伊賀の里には幾つもの流派の忍と修行したものでござる。

 

 

「しかしお前の父親はサラリーマンじゃなかったか?」

 

「うむ。父上は息子を立派な忍にする事を条件に忍を止めたでござる。とても勇気のいる事でござるよ」

 

「お前、それは売られたと言うんじゃ・・・いや、何でもない」

 

「?とにかく拙者は父上の分まで立派な忍になるでござる」

 

 

何故か琢磨が憐れみの視線で見ているのが気になるでござるが、拙者は細かい事は気にしない性分。

こうして琢磨の実験に付き合えば忍としての腕も磨かれるし琢磨も研究が捗る。

まさに一石二鳥でござるな!

 

 

「博士、半蔵様。お茶が入りました~」

 

「おぉ、待っていたでござる!」

 

「あぁ、ありがとうティセ・・・ん?何だこれは」

 

 

ティセ嬢が持ってきたお盆には紅茶と拙者の持ってきた"どーなっつ"。

そしておまけで付いて来た"どーなっつ"のたてがみをしたライオンのぬいぐるみがいたでござる。

 

 

「これは、ますこっとの"ぽん○らいおん”でござる」

 

「ふむ・・・・」

 

「博士?あの~、どうかされましたか?」

 

「いや、次の機体で使えそうな案が思い浮かんだだけだ」

 

 

あぐあぐ、何でござろうか?

"どーなっつ"を作ってくれる機体ならば拙者は大歓迎でござる。

 

 

ピンポーン

 

 

「ん、誰か来たようだな」

 

「では出てきます~」

 

「ぬぅ。しかし拙者の腕も中々上がらぬでござるな」

 

「そうなのか?僕から見れば十分に強い部類に入るぞ」

 

 

そうは言っても拙者の里では拙者よりも強い者ばかりでござるからな。

学園の方でも勝負はしてはおらぬが、実力者と分かる者が多数いるでござる。

 

 

「博士、半蔵様のお客さんです~」

 

「お邪魔します・・・半蔵ちゃん、そろそろ修行の時間よ」

 

「霞姉上!」

 

「姉上?お前一人っ子だろう」

 

「うむ、姉上は忍の里に住んでいて今は拙者の家に居候しているでござる」

 

「半蔵ちゃん・・・だから里の事は秘密なんだってば」

 

 

何とそうだったのでござるか。

しかしそれはおかしいでござるな。

 

 

「伯母上は別に構わないと言っていたでござるよ?」

 

「はぁ・・・半蔵様も何で言わないのかしら」

 

「待ってくれ。半蔵は二人いるのか?」

 

「うむ。まずは拙者の伯母上が服部半蔵鮎香(うるか)。そして拙者が服部半蔵保長(やすなが)でござる」

 

「代々、伊賀の忍の長は服部半蔵を名乗るんだけど、ね」

 

 

拙者の父上が継ぐはずだったのでござるが辞めたため、ややこしくなったでござる。

拙者が強くなるまでの間は伯母上が名乗っているでござる。

 

 

「込み入った事情がありそうだな。とにかく帰ったらどうだ半蔵」

 

「駄目でござる!まだ"どーなっつ"食べてないでござる!」

 

「もぅ半蔵ちゃん。お菓子は3時だけって言っているでしょ!」

 

「嫌でござる!この"くりーむどーなっつ"も拙者に食べて欲しいって言っているでござる!」

 

「うっ。お、美味しそう・・・」

 

 

霞姉上も甘いものに目が無いでござるからな。

はっ!これが伯母上の仰っていた甘計をめぐらす、と言うのでござるな。

 

 

「姦計だ、半蔵。そして意味が違う」

 

「琢磨、心を読まないで欲しいでござるよ」

 

「喋っていたぞ」

 

「そ、それでどうでござろう?霞姉上も一つ休憩すればいいでござるよ」

 

「そ、そうね。まだちょっとだけ時間はあるし。休憩していきましょう」

 

「・・・半蔵の言う忍の里にはケーキでも送り込めば全員懐柔できそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この、待ちなさい!」

 

「誰が待てと言われて待つかっ!」

 

「コテツさんが悪いからですわよ!」

 

 

商店街を俺と姫島は追われていた。

お団子にしたあのチャイナ娘、人の獲物を取ろうとしやがって。

 

 

「それは私が仁に料理を作るための鮭なんだからっ!」

 

 

ビュンッ

 

 

「どわっ!いーや俺が取るのがコンマ1秒速かったね!」

 

 

顔の真横を通過する鞄にビビりながらも反論する。

こっちはもう金も払ったんだから潔く諦めやがれってんだ。

 

 

「本当にコテツさんといると退屈しませんわね」

 

「姫島、こんな時に褒めるなよ」

 

「褒めていませんわ、呆れていますの」

 

 

ため息なんて吐き出した姫島を横目で見ながら逃げ切るためのルートを探す。

この角を右だな・・・ん?あの黒髪に刀を持って闘っているのは・・・しめた!

 

 

「ロック!邪魔するぜ!」

 

「ロックさん?失礼しますわね」

 

「え、虎徹と誰?それと僕は楓・・・」

 

「隙だらけだぞ!『そうるえっじ』は俺が貰う!」

 

 

ガギンッ

 

 

「だから僕の刀はソウルエッジじゃ無いんですってば!」

 

「待ちなさーーい!ちょっと!邪魔よっ!」

 

「うわっ!今度は誰ですか!?」

 

 

よし、これで少しは距離が開いたな。

さらばだロック。お前の名前は忘れないぞ。

 

 

「先ほどのロックさん、大丈夫かしら」

 

「大丈夫だろ。ほら急ぐぞ」

 

 

あの中華娘がチャンバラに絡まれている間に少しでも差を広げないとな。

お?今度は二階堂に知らないおっさんか。

 

 

「二階堂!追われているんだ。助けてくれ!」

 

「紅さん、助太刀願えますか?」

 

「八代に姫島?まぁいいわ、私にかかれば容易いわよ。大門もいいわね?」

 

「紅の学友だったな。いいだろう、手を貸そう」

 

「だから待ちなさいって言ってるでしょ!早くしないと仁が帰って来ちゃうんだから!」

 

「来やがった!頼んだぜ!」

 

「失礼しますわね」

 

 

二階堂なら得意のビリビリで足止めしてくれるだろう。

隣にいたデカイおっさんも何か強そうだしな。

 

 

「何だか掃除機みたいなおじ様でしたわね」

 

「そうか?どっちかって言うと山みたいな感じだったぞ」

 

 

姫島は随分と想像力が豊からしいな。

あの図体のでかいおっさんの何処が掃除機なんだよ。

 

 

「さぁ、ここからは私達が通さないわよ」

 

「なっ!貴方達はKOFの優勝チームだった・・・」

 

「ふむ、ワシらも有名になったものだな」

 

「ほぅ、これは中々面白そうな事になっとるのぅ」

 

「あ!おじいちゃん、どうしてここに?」

 

「今はどうでもよいわ。面白い奴らがおるでのう」

 

 

何か騒動が大きくなってきた気がするな。

こっそり後ろを見れば変な髪型の爺さんがいた。

そしてさらに近づいてくる人物、あれは草薙か?

 

 

「おいおい、紅にゴローちゃん。どうしたんだ?」

 

「京、いいところに。八代を追ってる連中よ」

 

「八代を?おい、テメェらオレのクラスメイトに何の用だ」

 

「そんなものは知らん。が、KOFの優勝者の実力、見せてもらうとしようか。ほれ、行くぞ。構えんか!」

 

「ちょ、ちょっと何で私までーー!」

 

 

・・・・よし、今のうちに逃げよう。

俺は姫島と顔を見合わせるとその場から立ち去った。

後ろからの闘いの音なんて俺は知らないったら知らないからな。

 

 

「コテツさん、何やらややこしくなっていませんこと?」

 

「あぁ。俺もそう思っていたところだ、けど俺のせいじゃないよな?」

 

「少なくとも騒動の原因はコテツさんですわよ」

 

「いいじゃないか皆が静かにしているより騒がしい方が楽しいだろ?」

 

「・・・それもそうですわね。・・・あら」

 

「おっと、どうした?」

 

 

突然足を止める姫島に俺も合わせて止まる。

幾つか角を曲がったからもう追ってはこれないだろう。

 

 

「いえ、あそこにいるのは・・・」

 

 

そう言って指差すのはこちらに歩いてきている一人の男だった。

白い髪に上半身裸で刺青?をしている。

そんな男がとぼとぼと、俯いた状態で歩いてきていた。

 

 

「オロチ様!探しましたのよ!」

 

「む・・おぉ!朱乃ではないか!ここは何処なのだ!」

 

「だからあれほど勝手に街を出歩かないでくださいと申したではありませんか」

 

「ふん。我は、おでんがいいと言うのに朱璃が肉じゃがと言うのが悪いのだ」

 

 

まさかこいつが白蛇様?

蛇じゃなくて人間じゃないか。

しかも家出の理由がしょうもない理由だな。

いや、待てよ。こいつ何処かで・・・

 

 

「それよりも朱乃。そこの人間は・・・む」

 

「あら、すみません。こちらは私の学友で・・・」

 

「八代虎徹!貴様性懲りも無く我の前に出てきたな!」

 

「おろちん!おろちんじゃないか!」

 

「あらら?」

 

 

これはまた随分と懐かしい顔に会ったもんだ。

 

 




今回は虎徹がやらかす回と半蔵の実家の事情でお送りしました。
さて、今回は何人知っているキャラがいますかね。



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第17話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

エクスカリバーを回収するため乗り込んできたシーン

「分割されたエクスカリバー?何本もあるのか?」

「9本でいい」

「7本ですブロントさん」

「そうだったな忘れるところだった>>イロナ感謝」

「それほどでもありません」

「謙虚だなーあこがれちゃうなー」

「・・・教会の人たちって皆こうなのかしら」


天使勢の感染が確認されました。



1年前、3月

 

 

「あー、何か気が抜けるな」

 

「殿、どうしたでござるか?」

 

「先輩も昨日卒業しちまったし、もうすぐ3年だぜ俺達」

 

「確かにもうすぐ私達、最上級生になるんだよね」

 

「虎徹と半蔵は受験の心配でもしたらどうだ」

 

 

昨日の卒業式で先輩が中学を卒業した。

とは言え、俺達在学生は普通に授業があり終業式まで2週間先だ。

中学での騒動の4割を占めていた先輩がいなくなったからか何だかやる気が起きない。

 

 

「受験ってまだ先じゃねぇか」

 

「ふむ。しかし本当に駒王学園でいいのか?」

 

「だってそこが一番家から近いんだろ?なぁ、結城」

 

「うん。そうだよ」

 

「拙者も家から近くて殿と同じ学校ならば文句はござらん」

 

「・・・まぁ二人が納得しているならこれ以上言うのも野暮か」

 

 

何か言いたそうにしている琢磨だが特に気にするでもなく机に寝そべる。

本当になんだって言うんだこのやる気の無さは?

 

 

「殿」

 

「あー?何だよ半蔵」

 

「もう少しで拙者達も最上級生でござる。今だからこそ出来る事をするべきではござらんか?」

 

「今だからこそ、ねぇ」

 

 

そう言われてもなぁ。

確かに後少しで中2から中3になるとは言え出来る事?

・・・・・・はっ!?

 

 

ガタッ

 

 

「うわっ、びっくりした」

 

「どうした?」

 

「来たでござるな殿!」

 

「あぁ、そうだ。すっかり忘れていた、感謝するぞ半蔵!」

 

「ありがたきお言葉!」

 

 

半蔵のおかげで残り2週間だがやらなくちゃいけない事を思い出した。

ん?何で3人とも笑顔なんだ?

 

 

「ふっ。やっといつもの虎徹に戻ったようだな」

 

「うんうん、八代君は元気でなくちゃね」

 

「それでこそ殿でござる!」

 

「何だか分からねぇが、俺達も後少しで中2が終わっちまう」

 

「うん、そうだね」

 

「だが俺達は・・・中二病にかかった事が無い!」

 

「何と!そういえばそうでござるな!」

 

「そこでだ、中二病っぽい事をしようぜ!」

 

 

俺がやりたい事を言うと反応が3者に分かれた。

結城はわけが分からないと言った具合で首を傾げ、

琢磨はやれやれ、と頭を横に振り、

半蔵は目をきらきらとさせて興味津々だ。

 

 

「えっと・・・病気に自分でかかるの?」

 

「虎徹、お前は本当にバカだな」

 

「殿、どうすればいいでござるか!?」

 

「要するにゲームの主人公みたいな事をすればいいんだろ?簡単だって」

 

「それで具体的には何をするの?」

 

「はっはっは、おかしなことを言うな結城。そんなの見本は幾らでもいるだろ」

 

 

窓の外を指して俺は笑顔で言ってやる。

丁度、グラウンドでは知り合いの後輩が何人か闘っている。

 

 

「あの包丁持った赤頭巾はどうだ?」

 

「マシェッタ嬢はどちらかといえば切り裂き魔でござるよ」

 

「じゃああのファンネル使いの路線で行こう」

 

「うちの妹の悪口なら喧嘩を買うわよ?」

 

「うおっ!いたのかシルト」

 

「シルヴィ・ガーネットよ、変な略し方しないでよね」

 

 

音も経てずに背後を取るとは暗殺者かお前は。

ガーネット姉は妹の悪口で無い事を知ると呆れながら去っていった。

・・・あれ?あいつ隣のクラスじゃなかったっけ?

恐ろしい地獄耳だな。

 

 

「中二病ならぴったりな奴がいるだろう」

 

 

琢磨がそう言って視線を教室の隅に向ける。

俺達がそちらに視線を向けると琢磨の言った意味がよく分かった。

 

 

「あぁ、イゾルデ。今日は帰ったら一緒にでかけよう」

 

 

あのグローブに向かっての独り言。

ボロボロのマントに厳ついガントレット

後は包帯を巻いて眼帯でもしていれば完璧だな・・・ん?眼帯?

 

 

「幾世、その眼帯貸してくれ」

 

「あはは、まーた八代っちはバカな事を言って」

 

 

おかしいな、本気だったんだが。

まぁ駄目なら駄目でいいか。後で柳生先生の予備を借りてこよう。

 

 

「大体やりたい事は決まったな。後は場所か・・・よし、姫島神社の裏手にしよう」

 

「まるでやりたい事が伝わってこないんだが」

 

「何で姫島神社の裏手でござるか?」

 

「あそこなら広い場所があるだろ」

 

「あぁ、初詣の時の騒動でまた(・・)広くなったんだったね。あそこに行く度に広くなってる気がするよ」

 

 

あそこの巫女さんも気のいい人だからな。

何回もやらかしているにも関わらず笑顔で許してくれるいい人だ。

 

 

「じゃあ放課後に神社に集合って事で!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はオロチ、故あってこの数百年は姫島神社に祀られている。

地球意思であり神ではないのだが人と言うものは信仰の対象になれば何でも構わぬようだ。

今代の巫女である姫島朱璃は素質があるのか私の姿や声を認識している。

同じく居候している男も私が現界するのに優れた触媒である。

 

 

「今日もいい天気ですわね」

 

「えぇそうですね朱璃様。ところでバラキエル様はまだ帰ってこられないのですか?」

 

「えぇ、もう1ヶ月ですのに。これは帰ったら激しく攻めないと駄目ですわ」

 

「おやおや。全く仲のいい事です。そう思いませんかオロチ様」

 

『ふむ。私が知る限りの男女の営みとはまた違ったと思ってはいるがな・・・む、例の童達が来たぞ』

 

 

この気配は以前から来ている童達か。

何かと騒ぎを起こしている騒々しい童達だ。

二人もさぞや迷惑をして・・・

 

 

「あらあら、虎徹君達ね。今日は何をするのかしら」

 

「これは楽しみです。前回は裏庭に温泉を作ったのでしたね」

 

「えぇ。朱乃がいたら楽しいお友達になれたのに残念ですわ」

 

 

全く、この温和過ぎる二人はどうにかならぬものか。

ともかくあの童達を放って置くとまた自然を壊されてしまう。

いや、以前は裏庭を大森林に変化させたのだったか。

どちらにせよ放って置けば碌な事にはならぬ。

 

 

『グスタフよ、肉体を貸せ』

 

「おや、構いませんが相手は子供。どうかご容赦を」

 

『・・・気にはかけておこう』

 

「ではお気をつけて」

 

 

本当に甘い男だ。

闘いとなれば恐ろしい程の腕を持ちながら食えぬ男よ。

グスタフの肉体を触媒に現界し、童達の元へと向かう。

最も騒動を起こす童が今よりも幼少の折に描いた陣が至るところに残っているため分かりやすいものだ。

見たところ皆が奇妙な格好をしており予想通り碌でもない事をしているようだ。

 

 

「童達よ、此度は何をしに参った」

 

「ん?グスタフさん、キャラ変わったのか」

 

「や、やっぱりこれは恥ずかしいよ」

 

「他人に見られているだけで死にたくなってくるな」

 

「何だか楽しくなってきたでござる」

 

 

揃いも揃って右腕に包帯を巻き、ボロボロのマントを羽織っている。

最も騒ぐ童については眼帯をしているが、全員が怪我をしているわけでもない。

・・・私の知らぬ間に人の衣装も変わったようだな。

と、騒がしい童の二人が自らの腕を掴み更に騒ぎ出す。

 

 

「ぐぁっ!右腕が疼きだしやがった!」

 

「くぅっ!拙者達に近づくと危ないでござるぞ!」

 

「「・・・・・・・」」

 

「おい、どうして二人ともやらないんだよ」

 

「だってさすがにこれは・・・」

 

「僕達には無理だ」

 

「おいおいノリが悪いな。グスタフさんを見習えよ」

 

 

怪我をしている訳でもないのに何をしているのだろうか。

それよりもまずは童達の誤解を解くべきであるな。

 

 

「違う」

 

「え?」

 

「私はグスタフではない、彼奴は触媒に過ぎぬ。私はオロチ、お前達人が地球意思と呼ぶ魂魄である」

 

「えっと・・・オロチさん、ですか?」

 

「そんな半裸で髪まで真っ白になって否定したい気は分かるが・・・」

 

「しっ、彼は拙者達とは違い本物でござる。今は合わせておくでござる」

 

「そうだな。それで、そのおろちんが何しに来たんだ」

 

 

?急に聞き分けがよくなったな。

騒がしい童達の生暖かい視線が気に入らぬが。

 

 

「私は童達が自然を壊さぬよう忠告に参っただけだ」

 

「そんな事するわけないだろ、なぁ?」

 

「しかし前科があるだろう」

 

「去年の夏祭りではこの辺りって焼け野原になっちゃったもんね」

 

「だ、だがすぐに殿のおかげで元に戻ったでござるよ!」

 

「いや、アレはこの本のおかげだけどな。ホント、昔の俺に感謝だ」

 

 

童が虚空から取り出した本、アレは以前にも何度かみた覚えがある。

この場に幾百も残っている陣が記載されているらしいが扱いこなせてはいない代物だ。

 

 

「結果が問題なのではない、その行為が問題なのだ」

 

「そんな事を言われてもな。俺だってこれが何の効果があるか分からないし」

 

 

未だに反省した様子を見せぬ童に灸でも据えるべきかと足を一歩踏み出す。

 

 

カッ

 

 

「「「「あ・・・」」」」

 

「・・・・・童よ、私は今何を踏んだ」

 

「さ、さぁ?えっと、どれだ?ちょっと待ってくれ探してみる」

 

「虎徹、その本に書かれている字が読めないのだから探しても意味が無いだろう」

 

 

幾百も描かれている陣の一つを私が踏んだ突端に陣が光を放つ。

見たところ特に変化は無い、いや・・・

 

 

「おやオロチ様。もうよろしいので?」

 

「いや、まだ童達に仕置きが済んでは・・・・何故グスタフがいる」

 

「おぉ、グスタフさんが分身したぞ」

 

「何と拙者と同じ忍でござったか」

 

 

グスタフは私が現界するための触媒として肉体を借りる形となっている。

つまり今の私は魂魄の状態であり童達には私の姿が見えるはずがない。

しかもこれは・・・力が封じられている?

 

 

「童よ、貴様・・まさか陣を触媒として私に仮初の封印された肉体を与えたとでも言うのか?」

 

「よく分からないけど・・・ふっふっふ、良くぞ気づいたな」

 

「早くこの陣を解放するのだ」

 

「・・・・よし、逃げるぞ。半蔵!琢磨!」

 

「承知!」

 

「やれやれ、任せておけ」

 

 

ぼふんっ!

 

 

「小癪な!風よ!」

 

 

本来放つはずであった強風は人一人を吹き飛ばすぐらいが精々となっている。

くっ、これも封印のせいだな。

おのれ童、いや八代虎徹め!

 

 

「わわっ、た、高いよ!」

 

「竜子からメンテナンスの為に預かっていて助かったな」

 

「おぉ、こうして見れば姫島神社も絶景でござるな」

 

「ひゃっほー!あばよーおろちん!」

 

 

上空を見上げれば鋼の巨人の手のひらに彼奴らの姿があった。

先ほどの煙は時間稼ぎと言うことか。

 

 

「随分と感情の起伏が激しいですねオロチ様」

 

「感情、だと?」

 

 

グスタフに言われてみれば確かに私の中に怒りが生じているのが分かる。

解せぬ、これではまるで本当に人の様ではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに会ったおろちんはまだ怒っているようだった。

全く、気の短い・・・いや長いといった方がいいんだろうか?

 

 

「なるほど。以前にお母様とグスタフおじ様が仰っていた子とはコテツさんの事でしたのね」

 

「うむ、我は長らく探しに行こうとするのだが朱璃が止めようとするのだ」

 

「そんなに怒る事ねーだろ」

 

「力を封印しておいてよくぞそのような事が言えるものだ!」

 

「あんなの事故だって」

 

「とにかく、早く我の封印を解くのだ」

 

 

一人称まで変わっちまってるぞ。

そもそも封印と言われても分からない。

ガキの頃に書いた落書きで攻める大人・・・

格好悪いぞ。おろちん。

 

 

「でもそちらの方がオロチ様にとっては良い事も多いではありませんか」

 

「ぬ、どこが良いことだというのだ朱乃よ」

 

「お母様の料理をあんなに美味しそうに食べているではないですか」

 

「あれは・・・この肉体を保つために仕方なくだな」

 

「家出した理由をお忘れでしょうか?」

 

「ぐぬっ・・・」

 

「この間もグスタフさんに会ったけど何も言われなかったぞ」

 

「おのれ、我の周りには敬わぬ奴が多すぎる」

 

 

だって神様じゃなくて地球意思とやらだからな。

とりあえず怒りが収まってきたようで何よりだ。

おろちんは面白い奴みたいだから何時までも喧嘩したくないしな。

 

 

「はぁ・・・良いだろう。八代虎徹よ、我にしたことは一時、置いておくとしよう」

 

「許すわけじゃねーのかよ!?」

 

「当然だ、我の封印を解かぬ限りはな。貴様が封印を解くまで気長に待つとする」

 

「寛大な処置、感謝致しますわ」

 

「ありがとう、でいいのか?」

 

「それより何をしておったのだ」

 

「何って買い物だけど?」

 

 

俺は手に持っていた買い物袋を見せる。

おろちんもそれで納得したのかと思えば急におろおろとしてきた。

 

 

「あ、朱乃よ。朱璃はどうしておる?」

 

「ふふっ、心配いりませんわ。オロチ様の好きなおでんを用意していますわよ」

 

「卵はあるのであろうな!」

 

「もちろんですわ」

 

「なんだ、おろちんはおでんが好きなのか」

 

「うむ!あの茹で上がった卵に出汁を浸して食べるのがまた格別なのだ!」

 

「はぁ?大根が一番美味いに決まってるだろ、なぁ姫島?」

 

「私は、お餅の入った巾着が好きですわ」

 

「「・・・・・」」

 

 

バカな、おでんと言えば大根に決まっているだろう。

あの出汁が滲みこんだ大根が格別なんだよ。

 

 

「何故卵が一番と分からぬ!」

 

「いーや大根だね!」

 

「あらあら、どちらも美味しいではありませんか。巾着には敵いませんが」

 

 

ちっ、こいつらどうあっても引かないつもりだな。

こうなったら・・・

 

 

「ふん、もう良い。帰るぞ朱乃、我のおでんが待っている」

 

「あらあら、ではコテツさん。失礼しますわ」

 

「あ、ちょっと待ちやがれ!」

 

 

人が折角、どの具材が美味いか決着をつけようとしてやったのに。

くそー、おろちんめ。いつか決着をつけてやるからな!

 

 

「しっかし5月におでんって早くないか?」

 

 

鍋物をするなら冬だろうに。

そんな事を考えながら俺も家へと歩みを進めた。

 

 

 




ちなみに作者はおでんの具は、しらたきが一番好きです。


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第18話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

「ktkr!人間の女の子の時代は去った!これからは悪魔っ娘の時代だね!勝ったね!俺もう勝ち組決定じゃね?」

「とりあえず美人で人の姿をしていれば何でもいい!結婚しようリアスちゃん!」

「だ、誰よ、このポエマーな変態学生と金の斧を持った変態戦士は」

「おおっと!アダクンにジャの字君、待ちたまえよ。あちきをお忘れじゃないか!」

「今度は何なのよ!」

「げぇっ!ロボっ娘!?」

「出たな全自動漫才機!」

「・・・イッセーさん、どうしたんですか?」

「・・・いや、あの二人、他人事のような気がしなくて」



私は続きをまだ待ってます。




ゴールデンウィークの最終日

俺は河川敷にいた春日野に飛び道具の出し方を教わっていた。

 

 

「波動拳!」

 

「違う違う!こうだよ、波動拳っ!」

 

「ぬぬぬ、波動拳っ!」

 

「・・・波動拳」

 

 

ポンッ

 

 

「・・・でました」

 

「何で搭城が先に出すんだよ!俺なんて2時間前からやってるんだぞ!?」

 

 

10分程前に近寄ってきた搭城はあっさりと出しやがった。

ちくしょう、俺だってドラゴン波とか出したいと言うのに!

 

 

「うーん、八代君」

 

「おう、何だ。とっておきのコツとか教えてくれるのか?」

 

「君って壊滅的に才能が無いね」

 

「ぐはっ!」

 

 

これで格闘家に駄目出しされたのは何度目だ?

色んな人に教えてもらってはセンスが無いだの才能が無いだの言われている。

 

 

「八代先輩、へなちょこですね」

 

「ぐぬぬ、ちょっと飛び道具が出せるからっていい気になるなよ!」

 

「ふっ」

 

「てめっ、鼻で笑いやがったな!」

 

 

おのれ、グレモリーの知り合いは癖が強い奴ばかりだな。

最近Sに目覚めてきた姫島と言い、スピード狂の木場と言い。

甘味好きなだけで、まともかと思った搭城がこんな奴だったとは。

 

 

「まぁまぁ。運動神経はいいんだし、もしかしたら今まで教えてもらったのが合ってないだけかもしれないよ?」

 

「なるほどな。となると何か武器を持った方がいいって事か」

 

「今までは素手ばかりだったんですか?」

 

「いや一度だけ後輩にファンネルを教えてくれって言ったら、そいつの姉にボコボコにされた事がある」

 

「何をやってるんですか」

 

 

あの時は本当に死ぬかと思った。

妹が仲裁に入ってくれなかったら今頃ここにはいないな。

 

 

「とにかく武器だな。搭城は俺には何の武器が合うと思うよ?」

 

「・・・剣、は似合わないですね。普通じゃない武器が似合うと思います」

 

「普通じゃない武器?確かに剣や槍や斧なんて使ってもつまらなそうだ」

 

 

うーん、何が面白い武器になるだろうか。

あ、傘なんていいんじゃないか?

闘いに向いて無さそうだし。

 

 

「何だか適正じゃなくて面白さ重視になってるよ八代君」

 

「はっ!そうだった。ついつい面白さを優先してしまったな」

 

「八代先輩はそれでいいと思います」

 

 

それは褒めているんだろうか、貶しているんだろうか。

 

 

「あ、それじゃあ私はそろそろ試合だから行くね」

 

「おう、悪かったな時間を取らせちまって」

 

「ううん。興味を持ってくれるのは格闘家として嬉しい事だから」

 

 

そう言って春日野は河川敷で待っていたピンク色の胴着を着た男の前に向かって行った。

あ、何か色紙渡されてる。有名な奴なんだろうか?

 

 

「搭城、春日野の対戦相手って誰か知ってるか?」

 

「いえ、私は知りません。けど春日野先輩と親しげですね」

 

「でも色紙を渡されていたぞ?俺も行ってもらってこようかな」

 

「・・・やめておいた方がいいと思いますけど」

 

 

でも俺達が知らないだけで有名な格闘家ならサインは欲しいしなぁ。

あれ、春日野の奴サインを返してる。

うんざりとした顔から察するにいつもの光景なのかもな。

 

 

「八代先輩はこれからどうするんですか?」

 

「うーん、そうだな。適当にぶらついて面白い事が無いか探して見るつもりだ。搭城はどうすんだ?」

 

「そうですね・・・私も着いて行ってもいいですか?」

 

「別に構わないぞ。じゃあ自転車の後ろに乗せてやるよ。待ってな」

 

 

道端に止めていた自転車に乗り搭城の元へ向かう。

搭城は何か考えていたようだが素直に後ろの荷台に座った。

 

 

「じゃあ行くか!」

 

「れっつごー」

 

 

搭城を乗せて走り出す。

ここから近いとなると商店街の方だな。

あの辺は毎日騒がしいから何かしら面白い事でもあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処までも戦いとは縁の無い人ですね、八代先輩は。

自転車の後ろに乗りながら八代先輩の背中を見て私はそう思う。

格闘家でもない、ただ神器を持っただけの普通の人間。

そんな人ですけど一緒にいて楽しい人である事は確か。

出来ればこのまま平和な日常を過ごして欲しいとは思う。

 

 

「でも八代先輩、空気読まずに騒動を起こしたり首を突っ込みますよね」

 

「え?何だって?」

 

「いえ、何でもありません。それで何か面白い事は見つかりましたか?」

 

「いや、無いな。ワイシャツだけ着た幼女と全身紫色で翼の生えた御曹司が闘っているぐらいだ」

 

「え?」

 

 

それはそれで面白い事なのでは?

視線を彷徨わせているとすぐに見つかった。

上空で八代先輩の言った通りの姿の二人が闘っている。

と言うか片方は完全に悪魔だ。

あ、ビームを放った。

 

 

「あれは面白くないんですか?」

 

「面白そうではあるけど遠いだろ。ずっと首を上げているのも疲れるし」

 

「結構高いですからね」

 

「っと、そうこうしている内に商店街に着いたな」

 

 

八代先輩の話では毎日騒がしい商店街らしい。

放課後に何度か寄った事はあるけど静かだったような気が・・・

 

 

わーーーーーっ

 

 

「見ろ搭城。今日も一段と騒がしいぞ」

 

「本当ですね。でも一体何が?」

 

「んー、誰か知り合いでもいれば」

 

「トラせんぱーい!」

 

「げふっ!?」

 

 

八代先輩が自転車から降りて周囲を見渡していた時。

素早い動きで八代先輩の背中に向けてタックルを仕掛ける女の子がいた。

頭に猫耳をつけてる・・・あれは本物?と言う事は私と同じ?

 

 

「げほっ、な、何だ?」

 

「久しぶりトラ先輩!」

 

「おぉ、何だネコか。久しぶりだな、卒業式以来じゃねーか」

 

「お知り合いですか?」

 

「どーも!イズコ・クリスベル、駒王第二中学2年生だよ!」

 

「私は搭城小猫です、駒王第一中学2年生です」

 

「あー、そう言えば二人とも同学年だったな。ネコは俺の後輩だ」

 

 

八代先輩も二中だったんですか。

と言う事は去年まで二中にいた騒動を起こす男と言うのは八代先輩だったんですね。

それよりも先ほどから八代先輩が彼女に言っている名前は・・・

 

 

「ネコ、ですか?」

 

「ん?あぁ、ほらこいつ猫耳が付いているだろ。実際に耳もあるのに」

 

 

ピコピコと動く頭の上の猫耳。

確かに彼女にはちゃんと人間の耳も付いている。

かと言って猫耳が偽者にも見えない。

 

 

「ぶー、先輩ったら全然遊んでくれないんだから」

 

「そーいえば最近会って無かったな。ずっと寝てたのか?」

 

「起きてたよ!」

 

「でもゴールデンウィークに入る前、携帯に連絡してもお前の兄貴が出て、寝てるって言ってたぞ」

 

「むー、お兄ちゃんったらしょうがないなぁ」

 

「あの、イズコさんの猫耳は本物なんでしょうか?」

 

「うにゃ?そうだよ?こっちも本物」

 

「何だっけ?改造人間なんだよな、かっけー」

 

「そう、ベルトがあったら変身するかもね」

 

 

ピコピコと耳を動かして私の質問に答えるイズコさん。

そしてビシッとポーズを取る。

・・・改造人間?

 

 

「本当に八代先輩のお知り合いはまともな人が、ほとんどいませんね」

 

「あぁ、それはよーく分かる。変で面白い奴ばっかりだもんな」

 

「にゃー、そんなに褒められると照れちゃう」

 

 

思えばまともな人と言う意味ではアスナ先輩ぐらいです。

八代先輩は神器持ち、服部先輩は忍者、高藤先輩はマッド。

ティナ先輩も上級悪魔ですし。

あ、でもアスナ先輩もデス様の契約主でした。

 

 

「訂正します。本当に八代先輩は類は友を呼ぶ、と言う言葉が似合いますね」

 

「おいおい、その言い方だと俺を中心に変な奴が寄って来るみたいじゃないか」

 

「トラ先輩が中心なのは間違いないよね」

 

「んだとコラ!」

 

「痛い痛い!」

 

 

イズコさんのこめかみにグリグリと拳を押し付ける八代先輩。

あれは本当に痛そう。

何故か彼女には同じ猫と言う共通点以外にも共感が持てるので助けよう。

 

 

「八代先輩、それぐらいにしてあげてください」

 

「へいへい。ったく、それでネコ。今日は何をやっているんだ?」

 

「あいたたた、今日は半裸の4人が試合していて、刀を持った人と熊が闘っていたよ」

 

 

何ですかその内容は。

全く想像が出来ないんですが。

ここは本当に商店街なんでしょうか?

 

 

「半裸はまぁいいとしてだ。刀を持った人って、もしかして黒髪のポニテで気弱そうな奴じゃないか?」

 

「んー、そんな感じの人だった気がする」

 

「なるほど、ロックだな」

 

「お知り合いですか?」

 

「あぁ、隣のクラスの奴だ」

 

「八代先輩達以外に元女子高に通う奇特な人がいたとは・・・」

 

 

本当に失礼な奴だな。

ロックと楓は知らないが俺は結城にはめられただけだ。

あれ?黒髪が楓で金髪がロックだったっけ?

まぁいいや、今度会ったら確認しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネコは買い物があるからと別れて俺と搭城は商店街を歩く。

とは言っても商店街なんてそれほど広いわけでもない。

歩けば15分もすれば端から端まで簡単に着ける、と考えるのが普通だろう。

 

 

「おっしゃー!ハリケーンアッパー!」

 

「おんどりゃー!タイガーバズーカじゃ!」

 

「島と大地の怒り!」

 

「ドグゴラァ!!!」

 

 

何故か分からないがここは公認戦闘地域に指定されている。

おかげで格闘家達が何時来ても闘っている。

それにしてもネコの言った通りに今日は暑苦しい半裸がいるな。

ロックと熊の姿も見えないな、もう終わったんだろうか?

 

 

「無いですね、面白い事」

 

「そうだな、小腹も空いてきた事だし、たい焼きでも」

 

「ぜひそうしましょう」

 

「食べるか・・・って食いつき方ハンパ無いな」

 

 

どれだけ腹が減ってたんだ。

とりあえずたい焼き屋の親父に2つ注文する。

それにしてもこの親父、何で天狗のお面付けてるんだろうか?

天狗も副業する世の中って事か。

 

 

「ほれ、搭城」

 

「あ、お金・・・」

 

「いいって。今日は俺の奢りだ」

 

「ありがとうございます」

 

 

たい焼き一つ安いもんだ。

搭城にたい焼きを渡して俺も自分の分を食べる。

うん、ここのたい焼きは初めて食ったが中々美味いじゃないか。

 

 

「もぐもぐ・・・美味しい」

 

「お?搭城は頭から食べる派か」

 

「はい。最後の尻尾に餡子が詰まってると合格です」

 

「あー、確かに。尻尾まで餡子が詰まってると得した気分になるよな」

 

 

俺は尻尾から食べる方だな。

当たりにしろ外れにしろ最後は餡子たっぷりの方がいいからな。

 

 

「そういえばこの先に半蔵が美味いって言ってたケーキのある喫茶店があったな」

 

 

キュピーンッ

 

 

ふと以前に半蔵が絶賛していた喫茶店を思い浮かべる。

途端に隣に座る搭城の目が光ったような気がした。

 

 

「行きましょう!」

 

「へ?」

 

「その喫茶店に行きましょう」

 

「おいおい、今たい焼きを食ってる最中だろう?」

 

「デザートは別腹なんです」

 

「いや、これもデザートだろ」

 

「間違えました。ケーキは別腹なんです」

 

「器用な腹してんだな・・・まぁいいけどよ」

 

 

今までにない興奮っぷりだな。

ネコみたいに耳があればピコピコと動いていそうだ。

やけに乗り気な搭城に俺はたい焼きを一口で詰め込んで飲み込む。

 

 

「じゃあ行くか?」

 

「待ってください」

 

「ん?忘れ物か?」

 

「その前にたい焼きを味わって食べます」

 

「・・・あーそーかい」

 

 

何か俺だけ損した気分だ。

搭城が食べ終わるのを待って喫茶店へと向かう。

 

 

「八代先輩はやっぱり戦闘とは無縁な人だと思います」

 

「何だ突然。それは俺に才能が一切無いから諦めろって言ってんのか?」

 

「それもありますけど」

 

「あるのかよ!」

 

「どうしてそこまで闘いたいんですか?」

 

 

やけに突っ込んで聞いてくる搭城。

こちらを見上げる目は真剣だ。

・・・って言うか何でこんなにマジになってるんだ?

 

 

「別に俺は闘いたいわけじゃないんだが」

 

「え?」

 

「飛び道具が出せれば面白いかと思ってるだけだぞ」

 

「・・・・・・」

 

 

真剣な視線で見上げたまま固まったかと思うと今度は俯いて黙り込む。

搭城、お前はさっきから何が聞きたいんだ。

 

 

「はぁ。まぁ八代先輩ですしね」

 

「どういう意味だコラ」

 

 

これってバカにされてるよな?怒っていいところだよな?

一人で悩んで一人で納得して解決されても困る。

 

 

「あぁ、すみません。八代先輩に質問をした私がバカだっただけです」

 

「そうだな、搭城はバカだな」

 

 

グリッ

 

 

「痛っ!?」

 

 

こ、こいつ思いっきり足を踏みつけやがった!

しかも小指を!ぐおおおぉいってえぇっ!

足を押さえて蹲り悶える俺を搭城の奴は見下ろしながらため息を吐き出す。

 

 

「な、何しやがる!」

 

「はぁ・・・すみません、ついイラッと来たもので」

 

「ついって何だついって・・・」

 

「では行きましょう。今日は奢りなんですよね」

 

 

ずるずるずる

 

 

「引っ張るな!っつーか凄ぇ力だな!」

 

「男に二言はありませんよね?」

 

 

まるで会話になっていない、と言うかする気があるのか。

俺の首根っこを掴んで引きずりながら言う言葉をふと考える。

ん?こういう時って大抵のパターンは・・・

 

 

「搭城、ケーキは1個だよな?」

 

「一先ず一通りのケーキを試すつもりです」

 

「アホかお前は!奢りにも限度があるってーの!」

 

「ですから二言は無いんですよね、と聞いたんです」

 

「そんなのあるに決まってぐえっ!」

 

「何ですか?聞こえませんでした」

 

「だから二言はあるに決まってぐっ・・・服を引っ張るな!答えられないだろうが!」

 

「さすがに一通りは冗談です」

 

「・・・本当だろうな?」

 

「当然です」

 

 

結局、喫茶店のメニューにあるケーキの内、半分を注文しやがった搭城。

・・・ケーキって結構高いんだな。

今月入ってまだ1週間経ってないのにもうピンチだぜ・・・

 

 

 




悪魔側がシリアスだろうと虎徹がシリアスになるのはありえません。


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1年 球技大会編
第19話


ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

「あれ、ロック。何を見ているんだ?」

「僕は楓だってば。虎徹、あれを見てよ。ロックの様子が変なんだ」

「ん?あっちが本物のロックと・・・全身青タイツに変なグラサンかけた奴?」

「ビフォー!ビフォー!ビフォー!」

「レイジング!デッドリー!レイジングレイジングストーム!」

「よくわからないけどカッコいい!」

「嘘!?」


「今日のHRは2週間後に行われる球技大会について決めていく」

 

 

球技大会?そんなのがあるのか、この学園。

ゴールデンウィーク明けで若干休みボケの頭で、いつの間にか教室にいた担任の話を聞き流す。

 

 

「種目やチーム分けの基準は毎年変更される。チーム分けの基準はクラス、学年、委員部活だ」

 

 

ちょっとした体育祭だな、こりゃ。

それにしても担任の名前って何だっけ?

 

 

「今年はクラス毎のチーム分けとなる。君達A組は1年、2年、3年でチーム分けを行う事になるな」

 

 

って事はウィンドやB組のロックと楓のクラスと対決する事になるわけか。

で、目の前の担任の名前は何だっけ?

こうやって集中しているといいんだが気がついたらいないからな。

かと思えば突然現れるから心臓に悪い先生だ。

 

 

「そして今年行われる種目だがバレーになる。クラス委員は2年、3年と相談してチーム分けを行うように」

 

「はい、お任せくださいませ」

 

 

クラス委員の神月が自信満々な表情で答える。

うちのクラスは何かしら身体を動かすのが得意って言うか格闘家が多いもんな。

 

 

「それでは皆さん、簡単な質問をさせて頂きます。それを元に上級生達とチーム分けを行います、よろしいですわね?」

 

 

壇上に立ってこちらに向けて質問してくるので全員が頷く。

あぁ、神月が目立つから担任の姿が見えない。

あれ?さっきまではいたよな?自在に透明人間にでもなれるのか。

 

 

「まず、身体を動かすのが苦手な方は挙手をお願いしますわ」

 

 

俺は当然得意な方だな。

いつものメンツの中だったら琢磨だけか。

 

 

「高藤さんとミヅマさんですわね」

 

「頭を動かすのならば得意なんだがな」

 

「動くのが面倒、ずっと寝ていたい」

 

「高藤さんは分かりますがミヅマさん、貴女と言う人は・・・」

 

「ふわ~ぁ」

 

 

今更だが濃い奴が多いな、このクラス。

この間の花見でもあいつは寝てたような気がする。

 

 

「こほん、まぁいいでしょう。では次に部活動やクラブなどでバレーの経験者の方」

 

「俺はバレー部だぜ」

 

「私も」

 

「山崎さんに鮎原さんですわね。他に過去に経験していた方はいらっしゃいませんか?」

 

 

過去に経験ねぇ・・・・あ

あったな、そういえば。

 

 

「中学の時、助っ人で何度か呼ばれたことがあるぞ」

 

「あ、私も」

 

「拙者も同じく」

 

 

俺が手を挙げて言うと続いて結城と半蔵も同じように手を挙げる。

俺と半蔵は男子バレー部の助っ人に、結城は女子バレー部の助っ人として試合をした事があった。

・・・いや、あれは強制的に助っ人させられた、が正しいな。

全く先輩の無茶振りにも面白いが困ったもんだ。

 

 

「ありがとうございます。それでは2、3年生と話をして参りますわ」

 

 

何度か頷いた後、出て行く神月。

この後は自習でいいのか?教師もいないし。

 

 

「・・・なぁグレモリー」

 

「何よ?そんな格好してたら転ぶわよ」

 

 

俺が横に座っているグレモリーに話しかけると注意してくる。

椅子に座ったまま後ろに傾けてガタガタさせているだけだぞ。

 

 

「うちの担任の名前って知ってるか?」

 

「えぇ、知ってるわよ・・・・えーっと、その・・・な、何だったかしら」

 

「何で担任の先生の名前を忘れるのよ貴方達は」

 

「じゃあ廿楽は知ってるのかよ」

 

「当然でしょ?担任の先生は・・・あ、あれ?」

 

 

グレモリーも廿楽も知らないか。

なるほど、誰も知らない担任の名前か。

 

 

「半蔵、琢磨」

 

 

シュタッ

 

 

「お呼びでござるか殿!」

 

「何だ一体?」

 

 

俺が呼べば教室の反対側から一瞬で駆けつける半蔵と普通に歩いてくる琢磨。

一応二人にも担任の名前を知っているか聞いてみるが・・・

 

 

「おぉ、そういえば拙者知らぬでござる!」

 

「あぁ、担任か・・・苦手な人だ」

 

「ん?琢磨、先生の名前知ってるのか?」

 

「知っているが、姿が記憶に無い」

 

「んん?どういう事だ」

 

 

名前は知っているが姿が記憶に無い?

なぞなぞか?

 

 

「大体どういった容姿をしているかは分かるんだが、どんなレーダーにも反応しない存在だ。本当に人か怪しいな」

 

「そういえば拙者も気配を察知できぬでござる」

 

「ははは、じゃあ何か?俺達の担任は幽霊とでも言うのかよ」

 

「幽霊・・・まさか精霊?新しいアルカナなの?」

 

「サキ?どうかしたの?」

 

「い、いえ何でもないわ」

 

 

幽霊が担任ねぇ。

となると専門家に聞くのが一番だな。

 

 

「姫島ー」

 

「あら、どうしましたコテツさん?」

 

「姫島って除霊できるよな?」

 

「はい?除霊、ですか・・・できませんよ」

 

 

俺の期待を込めた質問はあっさりと否定されてしまった。

同じ中学だった大自然とか以前に見かけた数の暴力で除霊する巫女とかいるんだがな。

 

 

「おかしいな、大自然が巫女の仕事ですって言ってたぞ」

 

「大自然って何よ・・・コテツ、意味が分からないわ」

 

「うむ、大自然の巫女ならば可能でござるな」

 

「あまり非科学的な事には頼りたくないんだが・・・大自然の彼女に頼むしかなさそうだな」

 

「何で大自然が浸透しているのよ!」

 

 

全く、グレモリーは何も分かっていないな。

大自然は本物の巫女だからな、短刀だけで除霊できる凄い奴なんだぞ。

 

 

「そうだ、結城。大自然ってこの学園にいるんだよな?」

 

「ナコルル?うん、D組にいるよ」

 

「人の名前だったの!?」

 

 

D組か、2週間後には対戦する相手に担任を除霊してくれって頼みにくいな。

仕方ない、このクラスで除霊できる奴を探すしかないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで除霊できる奴に心当たりは無いか?」

 

「確かに担任の先生は名前も顔も覚えてないけど、それだけで幽霊って決め付けるのはよくないよ」

 

 

結城嬢は相変わらず優しいでござるな。

だが時には非情となる事も必要なのでござる。

 

 

「変デスネ、会話の流れがさっぱり分からないデス」

 

「大丈夫です、デス様。私達も分かっていません」

 

「悪魔となった私に除霊はできるのかしら?」

 

 

神月嬢が戻るまで暇な為、場所を移して会議でござる。

非科学的な事には関わりたくないと言って抜けた琢磨以外はいつものメンツで集まっているでござる。

しかし幽霊、でござるか。伯母上に対幽霊の忍術を教わればよかったでござるよ。

 

 

「貴方達・・・保健室は溜まり場じゃないのだけど?」

 

「何と、水無月先生。それは真でござるか!?」

 

「え?違うのか?」

 

「二人とも。ファウスト先生に言いつけるわよ?」

 

「「すみませんでした!!」」

 

 

殿と一緒に必死で土下座でござる!

ファウスト先生にかかればどんな生徒もあっという間にアフロでござる!

 

 

「はぁ・・・全く。今は具合の悪い生徒はいないからいいけど、静かにしておく事」

 

「ういっす。さすが水無月先生。話が分かるぜ」

 

 

何とか許しを得たようでござるな。

静かに会議を続けるでござる。

 

 

「神月嬢ならお抱えの陰陽師の一人や二人はいるのではござらんか?」

 

「そういえば草薙も昔は幽霊だったか悪魔だったかを退治する仕事をしていたって聞いたことがあるな」

 

「姫島神社でも朱璃さんが幽霊とお話した事あるって言ってたよね」

 

 

ぬぅ、話がまとまらぬでござるな。

こういう時に話をまとめる琢磨がおらぬから仕方ないでござるが・・・

 

 

「おかしいわね。私達オカルト研究部より事情に詳しくないかしら?」

 

「本当に一般人、ですわよね?」

 

「前から思っていたデスがこの世界の一般人の定義がおかしいデス」

 

「リアスと朱乃は何か案は無いの?」

 

「お前達オカルト研究部だろ?本職じゃねーか」

 

「そうでござるな、このお二人に任せればいいでござる」

 

 

拙者とした事が忘れていたでござるよ。

こういうのは専門家に任せるのが筋と言うもの。

 

 

「そんな事言われても、ね。大体、本当に幽霊なのか疑わしいわよ」

 

「そうですわね。担任の先生が幽霊と言われてもピンと来ませんわ」

 

「何でだよ、別に幽霊がいても不思議じゃねーだろ」

 

「・・・だったら別に悪魔がいても不思議でもないわよね?」

 

「はんっ、悪魔なんているわけねーだろ。グレモリー、漫画の見すぎだぜ」

 

「・・・何かしら、この理不尽さは」

 

 

どうやら専門家の意見では担任の先生は幽霊ではないと。

では一体何者でござろうか、拙者達の担任は?

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「おっとチャイムか。こうなったら帰りのSHRで正体を暴いてやるぜ」

 

「うむ、拙者も近くの生徒に協力を仰ぐでござる」

 

 

決戦は夕方でござるな。

売店で手裏剣の補充をしておいた方がよいでござるな。

 

 

「おかしいわよ、何で幽霊が有りなのに悪魔は駄目なのよ」

 

「まぁまぁリアス、やはり悪魔は受け入れがたい存在なのですわ」

 

「しれっとボクの存在を否定されたデス」

 

「あれ?フェルちゃんがもっと小さくなっちゃってる。どうしたの?」

 

「アスナ、放っておいて欲しいデス。やっぱりこの世界おかしいデス」

 

「まだ慣れてないのかな。大丈夫だよフェルちゃん、この国には住めば都って言葉があるんだから!」

 

「何の慰めにもなってないデスヨ」

 

 

その前に授業があったでござる・・・

まずは眠気と言う強敵と戦わねばならぬ。

今のところは全戦全敗、これでは殿をお守りする事ができぬでござる。

 

 

「はぁ、あの先生も毎年毎年可哀相に・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、授業も全て終わり問題のSHRとなった。

協力者はクラスの約半数、SHRが終わりとなった瞬間に全員で攻撃する手筈になっている。

 

 

「さて、帰りのSHRを始める」

 

 

来たな!相変わらず扉を開ける音すら分からなかったぞ。

目を離さないように半ば睨みつけるようにして集中する。

 

 

「まず連絡事項は・・・(何だ?やけに生徒達からの視線が強い気が・・・)」

 

 

こちらの気も知らないで暢気に連絡事項を伝えてくる担任。

え?明日の数学の授業は先生が出張なので自習?ラッキー。

はっ!しまった、気を抜いたから担任の姿がぼやけて見える。

集中だ集中。

 

 

「それと神月」

 

「は、はい!」

 

 

ガタッ

 

 

「球技大会のチーム編成が決まったら今週末までに報告しておくように(驚かせるような事をしたか?)」

 

「わ、分かりましたわ」

 

「それと今週は鳴鏡館で百人斬りが行われるので帰り道は連行されないように注意しなさい」

 

 

げっ、平日にやるのかよ。

あそこは本当に百人斬り捨てるからな。

足りなくなったら街で勧誘してくるしな。

鳴鏡館の百人斬りは駒王町での死因ダントツ第一位だぞ。

 

 

「連絡事項は以上だ。ゴールデンウィーク明けだからと言って気を緩めないようにな。では帰りのSHRを終わる。日直」

 

 

さて、そろそろだな。

日直の藤堂が席を立ち号令をかける。

 

 

「起立!」

 

 

ガタガタッ

 

 

「礼!」

 

 

全員が立ち上がりお辞儀をする。

それに合わせて担任も一礼をする、ここだ!

 

 

「全員かかれっ!」

 

「真空波動拳っ!」

 

「神月流 神扉開闢!」

 

「超重ね当て!」

 

「くらいやがれぇっ!」

 

「幻影ハリケーン!」

 

「烈風殺!」

 

「山田さーんっ!」

 

「もらったアル!戀崩嬢!」

 

「手裏剣乱れ撃ちでござるー!ささっ!お二人も続くでござるよ!」

 

「え、私達もやる流れなの!?」

 

「では失礼しまして、雷はいかがでしょう」

 

 

おぉ、傍から見たら凄いリンチだな。

っつーかグレモリーと姫島も飛び道具出せたのか、羨ましい。

 

 

「何っ!?くっ、はあぁぁっ!」

 

 

何か出したっ!?

あれ、どっかで見たような・・・あ、コンタクトレンズだ。

テレビのCMとかでよく見かけたことある形だ。

 

 

「って暢気に思ってる場合じゃねぇっ!」

 

 

攻撃した奴ら全員を吹き飛ばして俺の方にまで迫ってきていやがる。

どんだけ強力な飛び道具なんだよ!

 

 

「八代君こっち!」

 

「うおっ!た、助かったぜ結城」

 

「フェルちゃんが教えてくれなかったら危なかったよ。ありがとねフェルちゃん」

 

「デス様サンキュな」

 

「後で何か奢ればいいデス」

 

 

間一髪のところで結城とデス様に助けられたぜ。

いや、久しぶりに本当に死ぬかと思った。

 

 

「お前達、一体どういうつもりだ!」

 

 

冷や汗をかきながら怒鳴り声に顔をあげれば、赤い髪に顎鬚を蓄えた担任の姿があった。

何でだろう怒ってるだけなのに物凄い迫力だ。

とても普段、影薄い人には見えないな。

 

 

「あー、いやー。先生って何て名前だったかなーと思って」

 

「入学式と最初のHRで自己紹介はしたはずだがな。そしてそれと襲い掛かってきた事がどう関係するんだ八代?」

 

「それは・・・そう、やっぱり先生も強いのかなーと皆で思って・・・な?」

 

 

苦し紛れにクラスメイトに話を振る。

全員が襲い掛かっていない生徒達も一斉に首を縦に振った。

さすが親睦会をやっただけあってチームワーク抜群だな!

 

 

「全く、そういう事か。それで納得したか?」

 

「えぇ、そりゃもう。先生も強いんですね。それで先生の名前は何でしたっけ?」

 

「やれやれ、ヨハン・カスパールだ。満足したか八代?」

 

「何だ、案外普通の名前だな」

 

「・・・何か言ったか?」

 

「いえいえ、何でもありません!」

 

 

ボソッと呟いたつもりだったんだが意外と聞こえていたようだ。

頭に手を当てた先生はクラスを見渡して何故か視線を俺にロックした。

 

 

「八代、お前が主犯だな。これから生徒指導室に来るように!」

 

「何故バレた!?」

 

「お前の中学時代の噂は聞いている。ムカイ先生からも厳しくするように言われているからな」

 

「あのガングロ教師か!卒業しても俺の前に立ちはだかるとは!」

 

「反省の色がまるで無いな、厳しく行くから覚悟しておけ」

 

 

ずるずるずる

 

 

「あぁ、何か足りないと思ったらこの光景か」

 

「そういえば殿、この学園に来て初めて生徒指導室に連行されたでござるな」

 

「何だかほっとする光景だね」

 

「誰か助けろーー!」

 

 

 




おかしいな、担任の紹介なんて簡単に済ませる予定だったのに。

ちなみに担任は某動画とは違い泣き虫ではありません。


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第20話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
第4話 半蔵の神社探し、虎徹の教会探し

「おかしいでござる。神社が異様に多いでござる」

『そうだな、僕が探しただけで博麗神社と言う名前が10以上あるぞ』

『なぁ教会にいるゲーニッツさんって人、子供が10人以上いるらしいぜ』

『僕も廃ビル探していて同じ顔のナイフを持った学生服の男を10人以上見たな』

「なるほど、つまりこの町には似た顔が多いでござるな」



MUGENで一番派生キャラが多いのって誰なんでしょうね?


ガラガラッ

 

 

「あー、やっと終わったぜ・・・」

 

「遅かったわねトラちゃん。また生徒指導室でヨハン先生のお説教かしら?」

 

「そーっすよ。本当に話は長いわ、存在感薄いわ、途中から島津先生が参加するわで疲れましたよ」

 

 

放課後、一日置きに行われる生徒指導室の説教地獄から帰ってくると俺以外のメンバーは既に揃っていた。

ったく、ちょっと廊下でカーリングをしていたぐらいで怒るんだもんな。

別に廊下を全力疾走で走っていたわけじゃ無いんだから、そんなに目くじら立てる事じゃないだろうに。

 

 

「中学校よりも呼び出されるペースが上がっているな」

 

「八代君の場合、8割くらいは自業自得だからね」

 

「10割じゃない事が驚きデス」

 

「うむ、拙者も必死に説得したのでござるが主犯である殿だけ呼び出される始末でござるからな」

 

「駄目よトラちゃん。そういう時は見つからないようにしないと」

 

 

そんな事を言われてもなぁ。

この学園は無駄に広いから色々と遊べないか考えてしまう。

 

 

「それで今は何の話をしていたんだ?」

 

「来週の球技大会でござる」

 

「今年はクラス毎の大会だからね。皆とは違うチームになるけど大丈夫かしら?」

 

 

あぁ、そういえばそうだったな。

すっかり忘れていたぜ。

 

 

「確か明日あたりにメンバーの顔合わせをするはずです」

 

「私はBチーム、八代君と服部君はEチーム、高藤君はGチームでフェルちゃんはBチームのマスコットだよね」

 

「お菓子を貰えるんデスから文句は無いデス」

 

「残念、私はCチームだから皆と対決できないわね」

 

 

確か各チーム毎に対戦して勝った数が多いクラスが優勝だったよな。

てっきり総当たり戦かと思ったが学園的にも時間が無いのかね。

あれ?でも待ってくれ。

 

 

「何時の間にチーム分けが決まったんだ?」

 

「八代君、先週の金曜日に神月さんから連絡があったでしょ」

 

「そうだったか?まぁいいや、俺はEチームだな」

 

「どうせ何か企んでいて話を聞いていなかったんだろう」

 

 

否定できないな。

今度は視聴覚室のビデオとDVDを全てジ○リ作品に置き換えようと考えていたからな。

 

 

「でも参加するからには勝つ気持ちで行かなくちゃ駄目よ、特にタクマちゃん」

 

「うっ・・・善処はします」

 

「ドーピングとか使えばいいじゃないか?琢磨ならそれぐらい作れるだろ」

 

「僕の専門分野は機械工学だ。さすがに薬学の知識は乏しいぞ」

 

「拙者は多少齧った程度でござる」

 

 

そうだったのか。ドーピングぐらい公式の大会じゃないから構わないと思ったんだがな。

何か琢磨が活躍できるような方法は無いものかな。

 

 

「練習、は駄目だよね?」

 

「アスナちゃん・・・タクマちゃんの運動音痴は知っているでしょう?」

 

「軽く走る程度なら問題ないんだけどな、とにかく体力が足りない」

 

「縄跳びすれば絡まり、球技をすれば顔面に直撃、本気で走ればこける、実に残念でござるよ」

 

「つまりへなちょこ、デスネ」

 

「解体ぐらいなら僕でもできるぞ」

 

 

チャキッ

 

 

「デスッ!?」

 

 

まぁデス様が言うようにへなちょこ、って言葉がぴったりだな。

そして琢磨、お前どこからメスなんて出した?

あぁ、転送装置か。あれは本当に便利だよな、俺にも一個作って欲しいぜ。

 

 

「よし、それじゃあ今回の活動内容はこれね!3日後までにタクマちゃんの運動音痴を治す方法を各自用意すること!」

 

「むむ、承知!拙者は知己の薬師を当たってみるでござる」

 

「うーん、お兄ちゃんなら押したら治るツボとか知ってるかな」

 

「はっ!大自然なら大自然の力で何とかしてくれるに違いない」

 

「こうなればパワードスーツを・・・いやパワーアシスト付きのアクセサリーの方が・・・」

 

「・・・アレ?普通に練習する手段は無いデスカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん。おかしいわね」

 

「どうしたのティナ?」

 

 

深夜、恒例となったはぐれ悪魔相手の訓練も一区切り着いたところでティナが悩んでいた。

普段から飄々としているティナが悩むなんて珍しいわね。

 

 

「なーんか、はぐれ悪魔の数が少ない気がするのよね」

 

「そういえば最近は数が少なくなっていますわね」

 

「これだけ毎日退治していれば数も減ると思いますけど」

 

「いいえ、普段私達が狩っている程度なら放っておけば増えるわよ」

 

「どれだけ数がいるんですか・・・」

 

 

ここの町の人間もそうだけど、はぐれ悪魔も変なのばっかりね。

 

 

「これは気をつけたほうがいいかもしれないわね」

 

「どういう事ですか?」

 

「下手したら私達も狩られるかもしれないって事よ・・あら?」

 

 

ザッ

 

 

足音の聞こえる方向へと全員で目を向けると変わった剣を持った男がいた。

赤いヘッドギアに赤い服を着た見るからにガラの悪そうな男。

 

 

「おい、この辺りでこいつを見なかったか」

 

 

そういって男が見せてきたのは一枚の薄汚れた紙。

そこに描かれていたのは白い髪に赤と黒を基調としたコートを着ている変な顔をした男。

・・・これってもしかして賞金首なのかしら?

 

 

「いいえ、見ていないわよ」

 

「チッ、そうか。悪かったな・・・ん?」

 

 

舌打ちをして退散するのかと思ったらマジマジとティナを見る男。

この男、賞金稼ぎ?

賞金首に賞金稼ぎなんて映画や漫画だけの話かと思っていたけど実際にいるのね。

 

 

「お前・・・ティナ・バティンか?」

 

「え?えぇ、そうだけど・・・会った事あったかしら?」

 

 

確かにティナの能力を考えれば色んな場所に行けるのだから知り合いでもおかしくない。

でも知り合いって感じでもないし、まさかまた何かやらかしたのね。

 

 

「ちょ、ちょっとリアスちゃん。何かしらその目は、お姉さん詳しく聞きたいんだけどなぁ」

 

「また何かやらかしたのね」

 

「直接言った!?」

 

 

本当にコテツと言いティナと言い、厄介事を起こす才能だけは確かなんだから。

ちょっとでも目を離すとどんな厄介事を持ってくるか分かったものじゃないわ。

 

 

「いや、ライザーの奴から聞いていてな」

 

「ライザー君が?と言う事は貴方、ライザー君の知り合い?」

 

「あぁ、ソル・バッドガイだ。ライザーから色々と聞いているぜ」

 

「ふーん、どんな話かしら」

 

「そいつはライザーの名誉のために伏せておく」

 

 

げんなりした表情で言っているしきっとティナについて熱く語ったんでしょうね。

それだけ熱く語れるなら早く告白すればいいのに。

 

 

「ソルさんはその方を探しにいらしたんですの?」

 

「一応そのつもりだったんだがな。当てが外れたか」

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ?」

 

「それ本名なんですか?」

 

「違うだろうな。とにかく日本に来ているのは間違い無い。もう暫く探すしか・・・・」

 

 

ザザッ!

 

 

「見つけたぞソル!」

 

「チッ、面倒なのが来やがったか」

 

 

今度は何だって言うのよ。

あの言い方からしてソルの知り合いみたいだけど。

 

 

「決着を着けるぞソル!」

 

「坊やもしつこ・・・い、ぞ?」

 

 

後ろを振り返って固まるソル。

どうしたのかしら?それよりも・・・

 

 

「女の子に対して坊やは無いと思うわよ」

 

「わお、可愛い子ね。ソル君の彼女?」

 

「・・・色々と待て。坊や、なのか?」

 

「そ、そうだ!私だ、カイ・キスクだ!」

 

 

長剣をぷるぷると引きずって凄い剣幕で怒鳴っているけど、可愛いだけよね。

あんな子を怒らせるなんてソルはどんな酷い事を?

 

 

「ソルさん、怒っているみたいですし謝った方がいいですよ」

 

「ソルさん、きちくです」

 

「違ぇっ!いいから黙っていろ!坊や、お前その姿はどうした?」

 

「そ、それは・・・信じてはもらえないかもしれませんが・・・」

 

 

カイの話では本当に信じられない話だった。

カイは本当は男で何処かの吸血鬼に女性の姿に変えられてしまったとの事。

・・・吸血鬼、ギャスパーじゃないわよね?

 

 

「このままではICPOにも戻れませんしどうしてくれるんですか!」

 

「何故それを俺に言う」

 

「貴方がいつまで経っても真剣に(勝負の)申し出を受けてくれないからでしょう!」

 

「ソル貴方・・・最低ね」

 

「女性にここまで言われて無視は酷いですわ」

 

「だから違う!こいつは男だったって言ってんだろ!」

 

「と言う事はソル君は男色の気があった、と」

 

「どちらにしろ最低ですね」

 

 

さすがに私達では入り込めない世界だわ。

そういうのが好きって人がいるのは知ってはいたけど実際に会うことになるなんてね。

 

 

「話の通じねぇ悪魔どもだな!坊やも言葉を抜かして言うんじゃねぇっ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってソル君。何で私達の事、悪魔って分かったのかしら」

 

「あん?そんなの分かるだろ普通に」

 

「えぇ、分かりますね普通に」

 

 

ソルだけでなくカイまで・・・

もしかして今までバレていないと思ったのは見逃されていただけってことなの?

 

 

ガサガサッ

 

 

「ちっ、こんな時に面倒な奴らが」

 

「この騒ぎではぐれ悪魔が寄って来ちゃったみたいね。皆、行けるわね?」

 

「えぇ、最近物足りなくなってきたところだったもの」

 

「あらあら、苛められたいのは誰かしら」

 

「あはは・・・頑張ります」

 

「・・・カイさんは下がっていてください」

 

「いえ、私も戦います!」

 

 

そんな事を言っても剣が使えないんじゃ駄目だと思うけど。

かと思ったら剣を手放してはぐれ悪魔の一匹に身体を向ける。

 

 

「スタンエッジ!」

 

「手は貸さねぇぞ」

 

「ここを切り抜けたら今度こそ勝負を受けてもらうぞソル!」

 

 

十分戦力になりそうね。

さて、それじゃあ私達も行くとしましょうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうしたもんかね」

 

「ととととと殿!ここは拙者にお任せあれ!」

 

「「グルルルルルッ!」」

 

 

深夜、半蔵の言っていた薬師の知り合いと俺の目的である大自然に会うため森の中にいた。

ただし野犬に囲まれた状態で。

何でこいつらこんなに涎をだらだら溢しているんだよ。

森なんだから飢えには困らないだろ。

 

 

「っつーか腹減ってんのか。半蔵、ちょっとコンビニでドッグフード買ってきてくれ」

 

「殿ぉ、何でそんなに落ち着いているでござるか!」

 

「はぁ?だって腹空かせてる犬だろ」

 

 

全く、逆に何でそんなに慌てているのか知りたいぐらいだ。

ちょっと目をぎらぎらさせて涎を溢しているぐらいで大げさだな、半蔵は。

 

 

「拙者達が食べられるでござるよ!」

 

「バカだな半蔵は。犬はドッグフードしか食べないだろ」

 

「殿は都会っ子だから知らないでござるよ!空腹の野犬は平気で人を襲うでござる!」

 

「マジでかっ!?」

 

 

なんてこった、野良犬がそんなに危険な存在だったとは。

今度から野良犬を見てもドッグフードやらないようにしよう。

 

 

「グルルルルッ!」

 

「こうなれば仕方ないでござる、無益な殺生は好まぬが殿を守るため!」

 

「おいおい、動物愛護団体に訴えられるぞ」

 

 

クナイを服の袖から取り出す半蔵に待ったをかける。

・・・いや、待てよ。RPGだと敵を倒して仲間になるのは王道じゃないか。

いやいや、しかしこのままでは俺達が襲われるみたいだし、どうするか。

 

 

ドゴンッ!

 

 

うおっ!何の音だっ!?

何かを叩きつける音に俺が視線を向けるとそこには変な格好をした男がいた。

白い髪に赤いコートを羽織った・・・浮浪者?

でっかい剣を地面に振り下ろしているし、さっきの音はアレか。

 

 

「おら、どけ犬っころ!」

 

 

ぶぉんっ!

 

 

「「キャインキャイン!」」

 

 

でっかい剣を振り回して野良犬を追っ払う浮浪者。

難しそうな顔をしているが実はいい人なんだろうか?

 

 

「よぅ、大丈夫かテメェら」

 

「サンキュな」

 

「かたじけないでござる」

 

「日本は比較的平和って聞いてきたんだが嘘だったのか?」

 

「いや平和だぞ。たまに何処かの悪の組織が動いたりするけど」

 

「平和でござるよ、何処かの道場で毎日人斬りが行われるでござるが」

 

「・・・日本での平和って言葉の意味が違うのか」

 

 

さすがに戦争が起こってないから平和で合ってるよな?

抗争はしょっちゅう起こっているけど。

 

 

「そういうお兄さんは何でこんなところに?」

 

「あぁ、ちょっとした用事で日本に来たんだが金が無くてな・・・この森で一夜を明かそうかと」

 

「本当に浮浪者だったのか」

 

「ほーむれす、と言う奴でござるな!」

 

「人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ!ちょっとホテルに泊まる金が無いだけだ!」

 

 

そういうのを世間一般ではホームレスって言うんじゃなかったか?

でもまぁ助けてもらったからな。

 

 

「そういう事なら助けてもらったお礼に家に泊まっていけよ」

 

「・・・いいのか?」

 

「さすが殿、寛大な心でござるな」

 

「なーに困ったときはお互い様だろ」

 

「・・・そっか。なら世話になる、俺はラグナ・ザ・ブラッドエッジ。よろしくな」

 

 

ラグナ・ザ・ブラッドエッジ?

あれ、どっかで聞いたような気がするな。

どこだったっけ?

 

 

「なぁ、半蔵。どっかで聞いたことないっけ?」

 

「うーむ、記憶に無いでござる」

 

 

普段一緒にいる半蔵も覚えてないなら気のせいか。

何処かで聞いた気がしたんだけどな・・・

 

 

「なんだ?どうかしたか?」

 

「あ、いや何でもない。俺は八代虎徹だ、こっちは親友の服部半蔵」

 

「よろしく頼むでござる」

 

 

ガサガサッ

 

 

「何時までも来ないから探しに来てみれば・・・何をやっているんですか二人とも」

 

「おぉ、大自然」

 

「大自然嬢、わざわざかたじけないでござる」

 

 

茂みをかきわけて大自然が出てきた。

相変わらず肩には鳥、傍には犬を引き連れている。

これで後は猿でもいれば桃太郎だな。

 

 

「そちらの方は?」

 

「あぁ、さっき野犬に囲まれていたのを助けてくれたんだ」

 

「そうですか、だから森に入るときは注意してくださいと言ったんです。二人を助けて頂きありがとうございました」

 

「いいって、俺も通りかかっただけだからな」

 

「それにしても放課後から今までずっと森にいたんですか?」

 

「久しぶりに来たから迷っちまったぜ」

 

「遭難するかと思ったでござる」

 

 

悪魔の棲む地と呼ばれるだけあって薄気味悪い場所だしな。

途中出会ったカレーが好きそうなロンゲの兄ちゃんに聞いても帰れしか言わなかったしな。

 

 

「ここに棲む人でも油断すると迷いますから・・・今度からは校門前で待ち合わせしましょう」

 

「おう、頼んだぜ大自然。それじゃあ帰るな」

 

「また明日でござる大自然嬢」

 

「邪魔したな、大自然とやら」

 

「あの私、ナコルルです。虎徹さん達は諦めましたけど初対面の人に呼ばれるのは・・・」

 

 

仕方ない、明日出直すとするか。

 

 

 




気づけば20話です。
このままゆるーく続けていきたいですね。

はぐれ悪魔が減っている理由とラグナが日本に来た理由は別です。


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第21話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

「それでは今日は委員会を決める」

「なぁヨハン先生」

「どうした八代」

「清掃委員はゲージMAXって書いてあるけどゲージって何だ?」

「給食委員はブロッキングできれば完璧って・・・この学園に給食はないぞ」

「ボクは飼育小屋にいた方がいいような気してきたデス」

「校長のお達しだ。私が聞きたいぐらいだ」



飼育小屋・・・本編で使えますね。
さて、登場できそうな生物は何がいましたっけ。



ドンッ

 

 

「ほらほらラグナ君、どんどん食べなさい」

 

「うっぷ・・・お、おう」

 

「お袋、さすがにこれ以上は無理だろ」

 

「何を言ってるの!男の子なんだからまだまだ食べるわよね?」

 

「俺も初めて来た時はこんな感じだったなぁ」

 

「ラグナ君、無理はしなくていいからな」

 

 

ラグナさんを泊めた次の日、朝からお袋のフルコースに手をつけるラグナさん。

田舎のばあちゃんの家でもこんな感じで次から次へと飯が出てくるんだよな。

あぁ、ちなみに俺達は普通の朝食だ。

 

 

「タダで泊めてくれた上にこんなに飯までもらっちまって、なんか悪いな」

 

「いいのよ。ラグナ君は細いし格好いいからサービスしちゃうわね」

 

 

ドンッ

 

 

大盛りのポテトサラダがラグナさんがやっとの思いで減らしていた皿に追加される。

一日の飯の量じゃねぇぞお袋。そしてまた料理するためか台所に戻っていく。

どれだけ張り切ってんだよ。

 

 

「それでラグナ君はどうしてこの町に来たんだい?観光かい?」

 

「あぁ、それなんだが一つ聞いてもいいか」

 

「何だい?」

 

「この町に一番美味い天玉うどんがあるって聞いたんだが本当か?」

 

 

天玉うどん?そんなのあったっけな。

この町の名物と言われても何処にでもある町だしな。

観光名所なんて無いと思うけど・・・あ、リーアランドがあるか。

 

 

「んー、俺も数年ここにいたけど聞いたこと無いな。親父さん知ってますか?」

 

「ふむ、それを知っていると言う事はかなりの通だね」

 

「親父知ってんのか」

 

「あぁ。うどんの全国大会で優勝した店だね。雑誌にもテレビにも店の住所を載せていない常連だけが知る穴場だよ」

 

「何でそんなのが全国大会に出たんだよ」

 

「常連が応募したようでそのまま出場したみたいだな。私も以前に社長に連れて行ってもらったが・・・」

 

「で、・・・どうなんだ味は」

 

 

何でうどんでここまで真剣な表情ができるんだラグナさんは。

親父もノリなのか神妙な顔で頷いているし。

 

 

「極上、この一言に尽きるね」

 

「っ!?・・・頼む!俺をその店に連れて行ってくれ!」

 

「そうだな、こうして出会ったのも何かの縁だ。都合をつけようじゃないか」

 

「本当か!」

 

 

ガタッ

 

 

え、何このノリ?

俺も一緒に行くべきか?

いや、でも今日は大自然の家に行くからな。

 

 

「じゃあライザーさん、よろしく」

 

「・・・そうだな。俺も聞いていて食べたくなってきた。親父さん、俺も連れて行ってください!」

 

「分かった、二人とも夕方に駒王駅前にいなさい。私も仕事が終わり次第合流しよう」

 

「「おう!」」

 

 

いいな、俺も用事が無ければ行くんだけど。

今度親父に連れて行ってもらおう。

 

 

「殿ぉーーーーーーーーっ!」

 

「お、半蔵だ。じゃあ俺行って来るな」

 

「あぁ気をつけるんだぞ」

 

「ティナによろしくな」

 

「まぁ頑張れよ」

 

「行ってらっしゃい、車と辻斬りには気をつけるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、虎徹と半蔵はそろそろ家を出る頃だな。

二人に取り付けている発信機が動いているのを見ながら教室の時計を確認する。

今日は家を出るのが若干遅いな、いつも5分前には教室にいるのだがこの調子だと3分前と行った所だろうか。

 

 

「あれ、高藤君。何を見てるの?」

 

「あぁ虎徹と半蔵の居場所を確認していただけだ」

 

「それって発信機?」

 

「そうだ。バティン先輩からもらったチェスのキーホルダーに細工をしたんだ・・む、通信?誰からだ」

 

「・・・ねぇ、高藤君。それ見せてもらってもいい?」

 

「あぁ構わない。すまないが少し席を外す」

 

 

結城さんなら下手な事はしないだろう。

僕は結城さんに断って教室を出て階段の踊り場に移動して通信機を取り出す。

 

 

ピッ

 

 

『遅いぜ。俺だったからよかったが女性を待たすようじゃあ、ミステイクだ』

 

「・・・唐突に連絡しておいて随分な一言だな、ジョニー団長」

 

 

通信の相手はジェリーフィッシュ快賊団の団長からだった。

世界中の権力者達に顔が聞くためか、まともな人間としては唯一のA級ランクの危険度を持っている変わった男だ。

駒王町に本拠地があるとは言え、今は行方をくらましていたはずだが?

 

『どうだい女性のエスコートは上手くなったか?』

 

「切るぞ」

 

『まぁ落ち着きなって、今日はちょいとお前さんに探し人を依頼したい』

 

「ふむ、別に構わないが。それでどんな女性だ?」

 

『残念ながらそいつはまだ分からないな。悪魔の棲む地と呼ばれる場所にギアいると噂がある』

 

「・・・ギア、か」

 

 

どこぞの馬鹿が生み出した生体兵器だったか。

しかし指揮官機は3年前に破壊されたはずだが?

 

 

『ただその噂が至るところから発生していてな。場所の特定をお前さんに依頼したいってわけだ』

 

「分かった。そういう事なら引き受けよう、期限はいつまでだ?」

 

『早ければ早い方がいい。あぁ、後は他にも依頼を受けてくれそうな相手がいたら教えてくれ。当然、女性でな』

 

 

本当にこいつの女性好きはどうにかならないものか。

老若問わず口説くからな。

結城さん達を合わせると大変な事になるのは目に見えている。

いっその事ココノエ博士や大道寺博士あたりでも紹介して痛い目をみればいい。

 

 

『あー、それで、だな。メイの様子はどうだ?』

 

「自分で確かめればいいだろう」

 

 

先ほどまでの自信に溢れた姿とは対照的に心配そうな声色で質問してくる。

何かゴタゴタがあったようだが、さすがにそこまで首を突っ込む気は無い。

ただ、あの錨娘が可愛らしく怒っていたので大方こいつが何かやらかしたのだろう。

 

 

『女子高だから俺は来るなっていうんだよ』

 

 

そいつは正解だ。

こいつをこの学園に解き放ったら何人の女生徒が犠牲になるか分かったものではない。

 

 

「ふむ。正確には今年から共学になったんだがな」

 

『・・・何?そいつは本当か』

 

「あぁそうだが・・・知らなかったのか?」

 

『・・・・・・・・・』

 

 

普段かけているサングラスがズレる程に動揺する姿は初めて見る。

かと思うと真剣な表情で考え込む。

どうせ碌でもない事を考えているんだろうが。

 

 

『ちょいと用事を思い出した』

 

「おい、その金ピカ装備は何だ」

 

『ヒーローは俺一人でいいって事さ』

 

 

金のテンガロンハットに金のコートを着込みだす団長。

何故だろう、とても危険な予感しかしないのは。

一撃でこの学園にいる数少ない男子全員が沈んでいく光景が容易に想像できた。

 

 

「心配しなくてもお前のクルーに手を出すような奴はいない」

 

『・・・本当だろうな?』

 

「情報屋は信用第一だ」

 

『・・・分かった、今は信用しようじゃないか。それじゃあ依頼の件は頼んだぜ。あ、そこのお嬢さん。俺とエレガントなティータイムを』

 

 

ぶつんっ

 

 

ああいった奴は一度手痛い目に合わないと分からないな。

それはそれとして、そろそろ時間か。

虎徹達ももうじき来るだろうし戻っておくとしよう。

 

 

ガラガラッ

 

 

「あ、お帰り高藤君」

 

「これはコテツ達の居場所が分かるデスカ?」

 

「あぁそうだ」

 

 

自分の席に戻ると未だに興味津々といった様子の結城さんとデス様がいた。

できればデス様が一人っきりになれるような状況があれば僕としては非常に嬉しいんだが。

当然、生命の神秘解明と言った意味でだ。

 

 

「ねぇ高藤君。私にもこれ作ってくれないかな」

 

「二人の発信機をか?別に構わないがどうしてまた」

 

「ほら、騒動を起こすのっていつも八代君か服部君でしょ?高藤君一人じゃ見張っているのも大変かなって思って」

 

「なるほど。確かに僕も研究があるからいつも見ているわけには行かないからな。今度作って渡すとしよう」

 

「うん、ありがとう」

 

 

はて、お礼を言うのは寧ろこちらなのだがな。

 

 

ガラガラッ!

 

 

「セーフッ!」

 

「間に合ったでござるっ!」

 

 

「本当にギリギリだぞ八代に服部。早く席に着きなさい」

 

「うおっ!?ヨハン先生、何時の間に!?」

 

「相変わらず気配が読めぬ御仁でござる」

 

「私を追い抜いて教室に入ってきただろう。他の生徒も早く席に着きなさい」

 

 

相変わらずレーダーにも反応なしか。

電波、熱源、音と全て駄目となると何に反応するんだこの教師は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて放課後、俺と半蔵は校門前で大自然を待っていた。

今日は先輩も何か用事とかで部活は休みだったから丁度いい。

 

 

「しかし先輩達もアクの強い人が多かったな」

 

「2年の先輩方も3年の先輩方も強そうでござった」

 

 

そういえばそうだな。いきなり交流戦を始めたぐらいだ。

勝手に動く剣を持った紫色の先輩だったり、ブルマを連呼する先輩だったり、

俺達のヒーロー、グリフォンマスクにちなんだ投げ技を持つ先輩だったりと楽しそうな人ばかりだ。

 

 

「お待たせしました」

 

「おう大自然、昨日ぶり!」

 

「昨日ぶりでござる大自然の巫女殿!」

 

「やっぱり変わらないんですね、その呼び名は・・・」

 

 

出会うなりため息を吐くなんて失礼な奴だな。

それに呼び名は以前にも言ったはずだぞ。

 

 

「大自然が俺達にタメ口を聞けば考えるって前にも言っただろ?」

 

「そうでござるよ。結城嬢には普通に話しているではござらんか」

 

「それは、その・・・癖みたいなものなんですよ」

 

 

うーん、よく分からないな。

まぁ無理強いはするつもりも無いし構わないか。

 

 

「それでは行きましょうか」

 

「そうだな。さすがに今日も深夜だとまずい」

 

「拙者、昨日はほとんど寝ていて記憶に無いでござる」

 

 

今日はキングとグリフォンマスクの覆面レスラー頂上決戦だからな。

録画を予約しているとは言え、やっぱり放送時間に見たい。

 

 

「そういえばあいつらの姿が見えないな」

 

「殿、上にいるでござるよ」

 

 

大自然といつも一緒にいる奴らの姿が見えないので聞いてみると半蔵が答えた。

上?おぉ、見覚えのある鳥が飛んでいるのが見えるな。

ぐるぐると上空を旋回している鳥が真っ直ぐにこっちに飛んできて・・・って

 

 

ブスブスッ

 

 

「いてぇっ!?何しやがるこの鳥!」

 

「殿に無礼でござるぞ!」

 

「ママハハも虎徹さん達に会えて喜んでますよ」

 

「もうちょっと大人しく喜んでくれよ!」

 

 

いってぇな、思いっきり嘴で頭を突きやがって。

頭に穴が開いたらどうしてくれるんだ。

 

 

「狼は何処に行ったでござるか?」

 

「お、そういえば姿が見えないな」

 

「シルクゥは実家にいますよ」

 

 

実家?確か北海道だっけ。

ア、ア、アイ何とかってとこだったよな。

 

 

「実家って具合でも悪いのか?」

 

「いえ、ただ色々と事情がありまして家族の元で暮らしているんです」

 

「なるほど、色々な事情なら仕方ないでござる」

 

 

半蔵、どうしてそれで納得できるんだ。

まぁいっか、大自然も悲しそうな顔もしていないし納得した上での事なんだろう。

話しながら歩いていたからか気づけば既に森の中に来ていた。

 

 

「そういえばこの森って大自然以外にも誰かいるのか?」

 

「えぇ、私以外には一人のご老人がいると聞いたことがあります」

 

「むむ?しかし昨日、拙者達は他の者に出会ったでござるよ」

 

「どのような方でしたか?」

 

「黒い布をまとったロンゲの兄ちゃんだったな。カラスを連れていたから、てっきり大自然と同類かと思ってたぜ」

 

 

よく考えれば顔色の悪い兄ちゃんだったな。

深夜だって言うのに切り株に座っていたし。

 

 

「よかったら出会った場所に案内してもらえませんか?」

 

「迷って出会ったんだから分かるわけないだろ」

 

「あ、そうでした・・・」

 

 

ガサッ

 

 

「殿っ、巫女殿、下がるでござる!」

 

 

茂みの音が揺れたと思ったら半蔵が俺と大自然の前に出る。

何だ?また野犬か?

そう思って茂みが揺れているのを見届けていると一人の女の子が姿を現した。

 

 

「あ、あの・・・驚かせてしまってすみません」

 

「おぉ、こちらこそ失礼したでござる。てっきり野犬と思ったでござるよ」

 

 

警戒していたから怖がらせてしまったみたいだ。

しかしこりゃまた凄い美少女が現れたもんだ。

とある一部も大自然とは雲泥の差・・・

 

 

グリッ

 

 

「いぃっ!?」

 

「何かよからぬ思念を感じました」

 

「お前はエスパーか」

 

 

さすが大自然、侮れないぜ。

変な事を考えた途端に足のつま先を踏みつけるとは。

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「おう、大自然も手加減してくれているみたいだし問題ないって。ところであんたこの森に住んでるのか?」

 

「は、はい。そうですけど・・・」

 

「どうだ大自然!俺達の勝ちだな!」

 

「何の勝負ですか・・・それに先ほどは男の人と聞いたんですけど?」

 

「男の人・・・もしかして彼の知り合いですか?」

 

 

ん?この子、あの兄ちゃんの知り合いなのか。

 

 

「ロンゲでカラスを連れている兄ちゃんなら確かに知っているぞ」

 

「わ、お客さんが来るなんて初めて・・・あ、その、ど、どうぞこちらへ!」

 

「・・・どうするんですか虎徹さん」

 

「ここは行くに決まっているだろ」

 

「して、その心は?」

 

「何だか面白い予感がするからだ!」

 

 

琢磨のパワーアップ計画のためにも色んな人の意見を聞かないと行けないしな。

と、まぁそんなわけで俺達は、やけに緊張している女の子の後を着いて行く事にした。

 

 

 

 

 




主要人物の紹介って書いたほうがいいですかね。


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第22話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~


「ねぇコテツ」

「何だグレモリー?」

「休日に町を歩いていると音楽が流れてくるんだけど、アレは何なの?」

「あぁ、誰か一撃必殺でも使ったんだろう。学校でもよく聞くじゃねぇか」

「一撃必殺って何よ。それに聞いたことは無い・・・」

テレッテー

「新しく保険医に入った先生だな、コレは」

「どうなってるのよ、この学園は!」



「・・・・・・・・これで、どうだ!」

 

「わ、えっと、その、ごめんなさい!」

 

「何と!拙者も切り札を出す時が来たようでござる!」

 

「ふぉっふぉふぉ、お返しじゃ」

 

「切り札なら私も持っていますよ」

 

「ぐああーっ!1周してきやがった!」

 

 

ちくしょう、これで終わりだと思ったのに!

 

 

「・・・おい、何故ニンゲン達が集まってUNOをしているんだ」

 

「まぁまぁ、いいじゃないか」

 

 

ジト目で睨んでくるロンゲの兄ちゃん、テスタメントさんだっけ?を尻目に俺達はUNOで遊んでいた。

と、言うのも森の中で出会った女の子、ディズィーに着いて行っていた最中に半蔵の目的の人物である爺さんと合流。

それでディズィーの家に着いてお互い自己紹介をしたところで爺さんがUNOを取り出したからだ。

後はディズィーと大自然にルールを教えてひたすら遊んでいた。

 

 

「ディズィー。どうしてニンゲンを連れて来たんだ」

 

「え?だって皆さんが貴方の知り合いだって言うから」

 

「わしは知らんぞ」

 

「私も知りません」

 

「俺は知ってるぞ」

 

「拙者も知っているでござる」

 

「・・・はぁ。後ろの少年二人が夜中に出歩いていたから注意していただけだ」

 

「えぇっ!そうだったんですか!?」

 

 

全く、何を今更。

俺はそう言ったじゃないか、心の中で。

自分勝手に呆れていると驚いたディズィー・・・・うーむ

 

 

「呼びづらいな」

 

「はい?」

 

「ディズィーって名前が呼びづらい。あだ名つけてもいいか?」

 

「さすが殿!拙者もそう思っていたところでござる」

 

「あぁ、物凄く聞き覚えのある会話です」

 

「面白そうじゃのぅ」

 

 

同じ初めて会ったにしても爺さんはいいんだよ。

ウブって短いから簡単に覚えられるし。

テスタメントさんは何か変なあだ名を付けた途端に手に持っている鎌で斬りかかってきそうだしな。

 

 

「あだ名・・・何だかいい響きですね!」

 

「お、おう。そうか」

 

 

思った以上に食いつきがよかった。

寂しがりやなのか?

こんな森に二人で暮らしていたら分からないでもないな。

 

 

「ディズィーさん。今のうちに辞めておくべきだと思います。後悔するのは貴女ですよ」

 

「そうだディズィー、そもそもニンゲンと関わると碌な事にはならない」

 

 

なんと、テスタメントさんだけでなく大自然まで敵に回ってしまうとは。

大自然め、一体何が気に入らないと言うんだ。

 

 

「そもそも!虎徹さんは私に何か聞きたかったんじゃないんですか?」

 

「え?UNOをしに来ただけだけど」

 

「うむ、中々白熱した戦いでござった」

 

「違うでしょ!虎徹さんは私に、半蔵さんはウブさんに用事があったんでしょう!」

 

 

あれ?そう言われるとそんな理由だったような気がしないでもないな。

何でディズィーの家に来る事になったんだっけ?

 

 

「・・・・・・・あっ」

 

 

ポンッ

 

 

「おぉ、すっかり忘れてたぜ」

 

「どうしたでござるか殿?」

 

「大自然に琢磨のパワーアップについて聞こうとしていたんだった」

 

「琢磨?・・・・・・・・・・おぉ、そういえばそうでござったな!」

 

「わしを呼びつけた本人が忘れるとはの。嬢ちゃんも苦労しておるようじゃな」

 

「うぅ、虎徹さん達に関わるといつもこんな事ばかりです」

 

「ニンゲン、さすがに同情するぞ」

 

 

むぅ、何だか知らないがディズィーのあだ名をつける雰囲気じゃなくなったな。

先に用事を済ませないと大自然が大噴火になってしまう。

・・・・全然上手くないな。口にしないで正解だったぜ。

 

 

「殿!早く用事を済ませねば大自然の巫女殿が大噴火の巫女殿になってしまうでござるよ」

 

 

ゴスッ

 

 

どやぁ、と得意げな半蔵の頭を殴っておく。

 

 

「とりあえず皆に集まってもらったのは他でもない。琢磨の運動音痴を治したいんだが何かいい手は無いか?」

 

「琢磨さんのですか?・・・アレは筋金入りですよ」

 

「誰じゃね、半蔵君の知り合いかい?」

 

「うむ、拙者の親友でござる。頭でっかちで知識は凄いでござるが運動をすると途端に、ぽんこつになるでござる」

 

 

半蔵、それは褒めているのか?

いや、まぁ合ってるから別にいいけどよ。

 

 

「で、ディズィーとテスタメントさんも一緒に考えてくれ。同じ森一族の仲間だろ」

 

「森一族?」

 

「言語はわかるが言っている意味が分からない」

 

「虎徹さんにそれを言うのは無意味です。すみませんが諦めてください」

 

 

首を傾げるディズィーと何やらコソコソと二人で話しているテスタメントさんと大自然。

さすが自然の力を操る連中だ。もう案が浮かんだのか。

 

 

「ウブ殿もよい薬は無いでござろうか」

 

「・・・ちなみにその琢磨、とやらは背は低いかの?」

 

「?普通ぐらいの高さでござるよ」

 

「よし協力しよう!1日どのようなスポーツもこなせる薬なんてどうじゃ?」

 

「おぉ、素晴らしいでござる!」

 

「じゃがその代わり、次の日から1週間ほど歩けぬ身体になってしまうがの」

 

「ぬぅ・・・琢磨なら問題ないでござろう。頂くでござる」

 

 

ウブの爺さんはもう見つけたのか。

後は俺の方だな。

 

 

「その琢磨さん、と言う方はスポーツが得意ではないんですよね?」

 

「おう、そうだぞ」

 

「でしたら一杯練習すればいいんですよ」

 

「はぁ・・・分かってないなディズィー」

 

「え?駄目ですか?」

 

「そんなの面白くないだろ!」

 

「えぇっ!?」

 

「そうですよね・・・虎徹さんならそう言うだろうと思ってました」

 

 

全くディズィーの奴は何も分かっていないな。

俺達、知的探求部の行動理念は面白くなければ駄目だって言うのに。

 

 

「そもそも虎徹さんは私に何を期待していたんですか?」

 

「何って・・・自然パワー的な力とか?」

 

「馬鹿にしてますよね、それ」

 

 

笑顔で怒る人なんて久しぶりに見たぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが・・・そうか」

 

「見た目はとてもそう見えないな」

 

「名店、と言うのはそういうものだよ」

 

 

親父さんに連れられて俺とラグナは噂のうどん屋に来ていた。

親父さんに合流するまでのラグナは常にそわそわして落ち着きがなかった。

それに昼からずっと付き合う俺の身にもなって欲しいものだ。

正直な話、俺はうどんは嫌いじゃないがそこまで好きじゃない。

まぁ虎徹のノリに合わせる形で来たので別にいいんだけど。

 

 

「って言うか寿司屋じゃないっすか」

 

「うん?言ってなかったっけ」

 

「いや、まぁ確かに寿司屋にもうどんはあるだろうけどよ」

 

「ここのうどんは隠しメニューなんだよ。さぁ入ろうか」

 

 

うどん屋かと思ったら寿司屋だった。

寿司屋のうどんって、サイドメニューだろ?

しかも回らない寿司屋、本当に美味いのか疑問だ。

 

 

ガラガラッ

 

 

「へい、らっしゃい」

 

「3名だけどいいですか?」

 

「八代さんか、どうぞ」

 

「「・・・・・」」

 

「ほら二人ともこっちだ」

 

 

すいすいと中に入っていく親父さん。

俺とラグナもそれに着いて行くがカウンターに座っているマスター、じゃなくて大将を見て動きを止めた。

海賊帽子を被って白ひげを蓄えた筋肉隆々とした初老の男がいれば俺達じゃなくても動きを止めると思う。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「あ、いや何でも・・・おい、ラグナ」

 

「あ、あぁ。邪魔するぜ」

 

 

我に帰ってラグナと一緒に親父さんの座っているカウンター前に腰を下ろす。

っつーか大将、寿司握るような人間に見えないぞ。

 

 

「注文は?」

 

「例のものを3つ、それと適当に握ってください」

 

「へい」

 

 

さすが親父さん、タダものじゃねぇな。

あの大将と平然と会話をしている。

大将が店の奥に行ったのを見計らってラグナが耳打ちしてきた。

 

 

「おい、本当に大丈夫なんだろうな、この店」

 

「俺に聞くなよ。親父さんも何度か来た事があるって言ってるんだから大丈夫だろ」

 

「騙されてんじゃねぇだろうな・・・」

 

 

そう思いたいのは俺だって一緒だ。

帰ろうと、言おうとしたが親父さんは平然としているし大将も戻ってきたため断念する。

そして見事な手際で寿司を握っていく。

 

 

「・・・寿司3人前、お待ち」

 

「ありがとう大将。二人とも、ここはメインの寿司も美味いんだよ。ほら、食べなさい」

 

「お、おう」

 

「い、いただきます」

 

 

目の前に置かれた握りずし。

ネタはマグロなど至って普通のネタみたいだな。

親父さんも食べてるし俺も覚悟を決めて食べてみる。

 

 

パクッ

 

 

「・・・美味い」

 

「・・・美味ぇ」

 

 

寿司を食べるのは初めてじゃないが今まで食べてきた寿司とは全然違う。

思わず次へと箸が進むのを見て親父さんが笑った。

 

 

「ははは、今回はうどんがメインなのを忘れていないかい二人とも?」

 

「天玉うどん3つお待ち」

 

 

おっと、そうだった。

危うく忘れるところだったな。

ドンッと置かれた湯気をたてる丼に目を向ける。

 

 

「こいつが伝説の天玉うどんか・・・」

 

「伝説って、おおげさだなラグナ」

 

 

普段の無愛想な顔から一転して真剣な表情で天玉うどんをじっと見るラグナ。

よっぽど天玉うどんが好きなんだな。

しかし親父さんが極上と呼ぶほどのうどんだ。気にはなるな。

 

 

「では・・・いただきます」

 

 

ずるずるずる

 

 

「「・・・・・・・・」」

 

 

ずるずるずるずるっ!

 

 

「どうだい味は・・・って聞くまでも無いみたいだな」

 

「当然だ」

 

 

あ・・・気がつけば食べてしまっていた。

まさか、こんなうどんが存在するとは・・・

俺が今まで食べてきたうどんとは一体何だったんだ。

親父さんが極上と称するのに相応しい天玉うどんだった。

 

 

「大将、お代わり!」

 

「悪いがうちはお代わり禁止だぜ兄ちゃん」

 

「なっ!頼む!後一杯だけでいいんだ!」

 

「何と言われようが駄目なもんは駄目だ」

 

 

チャキッ

 

 

ラグナ、気持ちは分かるが食事のマナーぐらいは守れよ。

そして大将、その剣はどっから出したんだ。

よく見ると剣の柄のところに拳銃が取り付けられている。

見た目といいおっかない大将だ。

 

 

「満足できたみたいで紹介した私も嬉しいよ」

 

「えぇ、寿司も美味いし本当にありがとうございます親父さん」

 

 

ラグナと大将が言い争いから闘いに発展しそうなのを親父さんと遠目に見ながら寿司をつまむ。

しかし変わった名前の店だな、瀬流万手寿って何て読むんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーむ、まさか自然パワーが役に立たないとは。

他に琢磨の運動音痴を治せそうな方法は無いかね。

 

 

「あ、そうだ。アレがあったな」

 

 

ドサドサッ

 

 

大量の本を出現させる。

大自然は慣れた様子だったが初めて見る3人は驚いた様子だった。

特にテスタメントさんはディズィーの前に出て鎌を構えるほどだ。

 

 

「ニンゲン、それは何だ」

 

「俺にもよく分からない落書きノート」

 

「明らかに今、魔力を感じた。何らかの魔道書か?」

 

「うーん、そんなステキな本じゃないと思うけどな」

 

 

一冊をテスタメントさんに渡すと難しい顔で本とにらめっこを始めた。

そこで後ろのディズィーの変化に気づいた。

 

 

「なぁディズィー」

 

「何ですか?」

 

「その後ろにいるのって何だ?」

 

「え?あっ!だ、駄目二人とも!」

 

 

ディズィーの背中?肩?に緑頭巾と水色の姉ちゃんがいた。

何だか怒ってるというよりは警戒してる?

ふむ、イマイチ状況が分からないが・・・面白そうだ。

 

 

「大丈夫・・・ちょっと驚いただけだよね。危なくないから落ち着いて・・・」

 

 

ぺたぺた

 

 

「おぉ、触れるぜ。幽霊か何かと思った」

 

「御菓子を食べさせてもよいでござろうか?」

 

「え?」

 

「ニンゲンども!ディズィーから離れろ!」

 

 

何だよ、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。

ペタペタと緑頭巾を触ってみれば感触があるな。

半蔵も水色の姉ちゃんにクッキーを上げようとしていた。

 

 

「なぁなぁ、こいつらの名前は?」

 

「え、えっと・・・この子がネクロで、この子がウンディーネです」

 

「ネクロって言うのか。骨みたいな顔してるんだな、お?背中から出てるのか」

 

「ひゃんっ!そこは触らないでください!」

 

「この"しゅーくりーむ"は格別でござるよ。しかしこれは拙者の・・・ああっ!食べた!拙者のでござるよ!」

 

 

背中から出ているって事は・・・そうか、寄生虫の仲間だな。

やたらと露出した服装になったからドキッとしたが、ネクロとウンディーネが出やすいそうになっているのか?

まるで二人羽織みたい・・・・はっ!こ、これだ!

 

 

「虎徹さん、女性の身体をじろじろと見るのは関心しませんよ」

 

「それ以上ディズィーに触れようものならば斬る!」

 

「おぅ、悪い悪い。ほらディズィーにネクロも悪かったな」

 

「い、いえ・・・その、大丈夫ですから。ネクロも怒ってないよね?」

 

「殿ぉっ!うんでぃーね嬢が拙者のしゅーくりーむを~!」

 

「そんなのいつでも買えるからいいじゃないか」

 

 

ネクロも困ったような顔をしているが怒ってはないみたいで安心したぜ。

骸骨の顔してるから怖い印象だけど実際は違うみたいだな。

 

 

カッ

 

 

「きゃっ!」

 

「おぉ、何やら本が光ったが何じゃこれは?」

 

「・・・さぁ?」

 

 

チャキッ

 

 

「正直に言え。何をした」

 

「俺も知らねぇよ!だからその鎌を離してくれ!」

 

 

一安心したところで本が光ったかと思うと、その光がディズィーを包み込んだ。

やっぱり変な事しかしないな、この本。

 

 

「ディズィーさん、大丈夫ですか?」

 

「はい、突然でびっくりしましたけど特に何ともありませんよ?」

 

「・・・命拾いしたなニンゲン」

 

 

おぉ、怖ぇ。テスタメントさん、どんだけ過保護なんだよ。

しっかし・・・何ともない?

 

 

「半蔵、大自然。どう思うよ」

 

「殿の本が光って何も無かったなど、これまで無かったでござる」

 

「絶対、何かやらかしましたね」

 

 

やっぱり二人もそう思うよな。

でも本人は問題無いって言ってるしな。

 

 

「む?・・・ディズィー」

 

「?」

 

「いや、これは・・・ギアの力が感じられないだと?」

 

「え、でもネクロとウンディーネはいますし、私も力は感じますよ」

 

「これは一体どういうことだ・・・」

 

 

ぎあ?確か歯車だったっけ?

歯車の力、何か弱そうな力だな。

っと、話しているところ悪いがそろそろ帰らないとテレビが始まってしまう。

 

 

「あー、悪いけど俺そろそろ帰るけどいいか?」

 

「では拙者もお暇するでござる」

 

「そうですね。さすがに何時までもお邪魔するわけには行きませんし」

 

「わしも夕餉の支度があるからのう」

 

「もう帰っちゃうんですか?」

 

 

他の皆も帰る事を告げると寂しそうな顔になるディズィー。

何だか俺が苛めているみたいじゃないか。

 

 

「あー、でもディズィーのあだ名をまだ決めてないし。また今度来るな」

 

「・・・いいんですか?」

 

「うん?来ちゃまずいか?」

 

「い、いえ。そういうわけじゃないですけど」

 

「こんなに面白い友達が出来たんだ。また遊ぼうぜ」

 

「友達・・・・は、はいっ!」

 

 

何ていうか純粋って言葉が似合うな。

あと、何か動作が犬っぽい。

黄色いリボンを見てバナナとか、ネクロとウンディーネを合わせてアシュ○マンとか名づけようとしたけど考え直すか。

 

 

 

 

 




半蔵知り合いの薬師は、おじいさんキャラなら誰でもよかったです。
某アンバーは制限に引っかかりますしね。


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第23話

まず最初に、すみません。

投稿したつもりで完全に抜けていました。
何か忘れているとは思っていたんですがね。
と、言うことで今回は2話連続で投稿しています。



「さぁ皆。考えて来たかしら?」

 

「一応、ですけど」

 

「ばっちりでござる」

 

「これで琢磨も活躍できるな」

 

「発表前から既に不安だ」

 

「いい気味デス」

 

 

いよいよ琢磨の強化計画をする時が来たようだ。

先輩は俺達を見渡すと実にいい笑顔で促してくる。

 

 

「じゃあ順番に発表してもらおうかしら。まずはアスナちゃんね」

 

「はい。やっぱり運動神経はバランス感覚が大事だと思うの」

 

「ふむ、一理あるな。バランスが駄目だと機体も二本足で立つことはできない」

 

 

琢磨らしい意見だな。

初めて琢磨の作った機体を見た時なんて4本足の機体だったもんな。

 

 

「そこでお兄ちゃんとお父さんにバランス感覚を矯正するためのツボを教えてもらったの」

 

 

おぉ、そんなツボがあるのか。

これなら琢磨もマシになるな。

 

 

「それじゃあ高藤君。後ろを向いてくれる?」

 

「あぁ、こうでいいのか」

 

「うん。えっと確かココだった、かな」

 

 

ゴリッ

 

 

「っ!?」

 

 

何か今、変な音がしたぞ。

琢磨が今まで見た事無いくらいに険しい顔しているし。

 

 

「結城嬢、本当に合っているでござるか?」

 

「あれ?間違ったかな?こっちだったような・・・」

 

 

メキッ

 

 

「っ!!!」

 

「鳴ってはいけない音が鳴ったデス」

 

「面白いからもう少し見守りましょう」

 

「ゆ、結城さん。ほ、本当に大丈夫なんだろうな」

 

「うん、大丈夫だよ。ほら、大人しくしていて」

 

 

ブチッ

 

 

「お、おい。何か今切れた音がしたぞ」

 

「琢磨?大丈夫でござるか?」

 

「・・・・・・・・」

 

 

バタッ

 

 

「「琢磨ーーーっ!」」

 

「高藤君!?」

 

「あらら、琢磨ちゃんには刺激が強すぎたみたいね」

 

「刺激の方向性がおかしいデス」

 

 

結城、なんて恐ろしい奴なんだ。

指先一つでダウンとは、さすが結城道場の娘なだけはあるぜ。

 

 

「琢磨!無事か!」

 

「ぐ・・あ・・・あぁ、一瞬だが綺麗な川が見えた」

 

「それは大丈夫とは言わないでござるよ」

 

 

助け起こせば何とか意識を取り戻した様子の琢磨。

それは三途の川って言うんじゃねぇのか。

 

 

「ごめんね高藤君」

 

「いや、結城さんは悪くない・・・はずだ」

 

「それで効果はあったデス?」

 

「む・・・そういえば心なしかスッキリしたような」

 

「ふーん、確かにツボの効果はあったようね。先ほどよりは重心が降りて安定しているわよ」

 

 

俺にはよく分からないが先輩が言うならそうなんだろう。

結城のツボ押しは一応効果はあったみたいだな。

 

 

「しかし特に運動ができるようになった気はしないな」

 

「体力や力が上がったわけでは無いでござるよ。結局は琢磨の運動神経次第でござる」

 

「あれ?それって結局意味が無いって事か?」

 

「そんな事は無いわよ。バランスが安定するって事は次の動作にスムーズに動けると言う事だもの、あって損は無いわね」

 

「劇的に効果があるわけじゃないって事か。地味だな」

 

「今度はちゃんとできるようにお兄ちゃんとお父さんに習っておくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしいなぁ、習った通りにしたつもりだったんだけど。

お父さんはセンスが無い相手にも効果があるって言ってたのに。

 

 

「さて、次はどちらかしら?」

 

「では拙者が」

 

「半蔵は薬だったか・・・お手柔らかに頼むぞ」

 

「問題ないでござるよ。琢磨もこれを飲めばあっという間に超人になれるでござる」

 

「・・・既に嫌な予感しかしないな」

 

 

それって危ない薬じゃないよね?

服部君は問題ないって言ってるけど本当かな。

そういえば八代君も一緒に行ったはず。

 

 

「八代君。本当にあの薬大丈夫なの?」

 

「知らね。俺は大自然の力を借りるので忙しかったからな」

 

「ナコルルの?」

 

「あぁ。結局駄目だったけどな・・・あ、忘れてた。ディズィーのあだ名も考えないと・・・」

 

 

ディズィー?あの森に住んでる人の名前かな?

それにしても人に変なあだ名をつける癖、まだ治ってないんだ。

私は何とか止めてもらったけど、突然付けようとするから注意が必要だね。

リアスや朱乃にも気をつけるように言っておかないと。

 

 

「ふむ。怪しさ満点だが・・・試してみるか」

 

「ささっ、ぐいっと行くでござる」

 

「タクマちゃん一気よ一気!」

 

 

グイッ

 

 

ゴクゴクゴクゴクッ

 

 

「あの薬の入っている瓶、髑髏マークが描かれているデスヨ」

 

「危険なほど効き目があるって事じゃないのか?」

 

「それは危ない方の薬だよ」

 

 

服部君とティナ先輩に促されて一気飲みをする高藤君。

飲み干すと自分の動きを確かめるように両手を握ったり開いたりしている。

 

 

「・・・これは」

 

「どう?タクマちゃん」

 

「今までに無いくらい身体が軽くて力が漲ってきます」

 

「マジか。すげぇな」

 

「本当に効き目があったんだ」

 

 

話を聞いただけなら普通は信じないような効果なのに。

 

 

「ハンゾーもやればできるデスネ」

 

「えっへん。どうでござるか!」

 

「あれ?でもこれって何時まで続くの?」

 

「さぁ?拙者は知らぬでござる」

 

「・・・おい、待て」

 

「ちなみに薬の効果が切れると1週間は歩けない副作用があるらしいでござるよ」

 

「何故それを先に言わない!」

 

「だって聞かれなかったでござる」

 

 

本番は4日後なんだけど・・・

薬って効き目が長くても一日も持たないはずだよね?

と、言う事は本番は歩けない状態って事だよ・・・

 

 

「あらら、ハンゾーちゃん。駄目でしょ、ちゃんと確認しないと」

 

「面目ないでござる。しかし琢磨なら科学の力で何とかするでござるよ」

 

「そういった信頼はお断りだ」

 

「ふっ。どうやら俺の出番がやってきたようだな」

 

 

何処か得意気な八代君。

この時点で嫌な予感しかしないのは何故だろう。

きっと今までの前科が一杯あるせいだね。

 

 

「虎徹。一応聞いておくが・・・例の本に頼ったのか?」

 

「いや、違うぜ。森で大自然達と話していた時に思いついた、とっておきの方法だ」

 

「まぁ信じる事にしよう・・・ん、森?」

 

「あれ、高藤君知らないんだっけ?ナコルルは森の奥で暮らしているんだよ」

 

「うむ、さすがは大自然の巫女でござる。自然と共にあろうとする心意気は立派でござるな」

 

 

私も遊びに行った事はあるけど一人だったら絶対に迷う自信がある。

夜中は野犬が出るって言うし、怖いよね。

そういえばあの森の名前も怖い名前だったなぁ、何だっけ?えーっと・・・

 

 

「悪魔の棲む地、だっけ?」

 

「そうそう、物騒な名前だよな」

 

「へぇ、面白い名前の場所ね。由来は何なのかしら」

 

「・・・悪魔の棲む地、だと?」

 

「知っているのか琢磨!?」

 

「知っているでござるか琢磨!?」

 

「知っているが何故驚く?」

 

「いや、何故か驚かなくちゃいけない気がして」

 

「同じくノリでござる」

 

 

相変わらず変なノリだなぁ二人とも。

 

 

「悪魔の棲む地。まさか駒王町にあるとはな」

 

「悪魔でも棲んでるデス?」

 

「まさか。大自然みたいな森一族ぐらいだろ」

 

「何デスカ、その一族って」

 

「まぁ人は知らない事に恐怖を持つものよ。自然と悪魔なんて言葉が出てきても不思議ではないわね」

 

 

不思議と説得力があるなぁティナ先輩。

それにしてもナコルルの苗字って森だったんだ。

一族って事は親戚の家があるのかな?

 

 

「とにかくだ、俺の方法は動けなくなっても大丈夫だから安心しろ」

 

「君がそう言って自信満々な時ほど碌なことは無い」

 

「うん、それには私も同意かな」

 

「失礼な奴らだな!これを見てから言ってみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半蔵!」

 

「御意!」

 

 

ボフンッ

 

 

俺の言葉に半蔵は分身の術で二人になる。

琢磨に結城め、俺の考えた案に驚くがいい!

 

 

「本気で何をするつもりだ?」

 

「いいから大人しくしておけって、半蔵頼んだぜ」

 

「承知でござる」

 

 

琢磨の背後に回ると、どてらを着込む半蔵。

 

 

「さぁ琢磨、今こそ合体でござる!」

 

「いや、もう展開は読めた」

 

「これ、二人羽織だよね」

 

「甘いな結城。これは三人羽織だ」

 

「え?でも高藤君と服部君で二人でしょ?」

 

「さらにそこにデス様をトッピング!」

 

「人を調味料みたいに言わない欲しいデス!」

 

 

二人羽織となった琢磨と半蔵にデス様を合体!

これぞディズィーと背中の二人を見て思いついた琢磨パワーアップ計画だ。

結局あの背中の二人が何だったのか分からないが、まぁ細かい事はいいか。

 

 

「ねぇトラちゃん」

 

「何すか先輩?」

 

「デス様を入れた意味はあったのかしら?」

 

「フェルちゃんは高藤君の頭の上に乗っているだけだよ」

 

「デス様の役目は半蔵の目、だな。見えないと危ないだろ」

 

「虎徹、これには致命的な欠陥があるぞ」

 

 

そんな馬鹿な。俺の完璧な計画に欠陥だと?

一体何が不満だって言うんだ。

 

 

「確かに試合当日は身体が動かないため半蔵が動かすという発想はいい。しかし、どう見てもバレるだろう」

 

「そうか?真正面から見れば案外大丈夫じゃね?」

 

「他の学生が観客としているんだぞ。無理に決まっている」

 

 

そうだった、俺とした事がこんな事にも気づかなかったとは。

いや、だがまだ大丈夫だ。

 

 

「半蔵、確か姿を消せたよな?」

 

「うむ。外国の忍者に教わったでござる。ふぁいんどみー!」

 

 

おぉ、本当に姿が消えたぞ。

これなら問題ないな。

 

 

「どうよ?」

 

「・・・姿は消えたけど服部君のいる場所が膨らんでるよ?」

 

「背中に突起物があるって事でいいだろ」

 

 

琢磨なら不思議じゃない。

以前も変な道具が入ったバックパックを背負っていたし。

 

 

「それもそうね。タクマちゃん、これならいいわね」

 

「・・・はぁ、どうなっても知りませんよ」

 

「ボクはどうすればいいデス?」

 

「デス様は拙者にボールが来たら方角を教えてくれるだけで十分でござる」

 

「まぁそのくらいな別に構わないデスヨ」

 

 

うんうん、これで琢磨も安心して試合に参加できるってもんだな。

そうだ、二人羽織・・・じゃなかった三人羽織と言えばこれだな。

 

 

「半蔵、これを琢磨に飲ませるんだ。上手く飲ませる事が出来たら試合も勝てるはずだ」

 

「承知でござる!デス様は案内を、琢磨は殿の前まで歩くでござる」

 

「任せるデス」

 

「やれやれ・・・」

 

 

俺の元までやってくる琢磨達。

俺が鞄から取り出した水筒をデス様の指示で半蔵が掴む。

 

 

「うーむ、コレは何でござるか?」

 

「水筒デスネ」

 

「おぉ、なるほど。ではコップを外して・・・」

 

「ボタンを押せば中が出るようになっているデス」

 

「むむ・・・これでござるな」

 

 

思った以上に順調だな。

水筒のコップに中身を注いで行く。

そして注いだコップを琢磨の口へと寄せていった。

 

 

「ん?虎徹、聞いておきたいんだが」

 

「どうした琢磨」

 

「これは匂いからして麦茶か?」

 

「あぁ、そうだぜ。それは・・・」

 

「ふむ・・・なら大丈夫だろう」

 

 

ぐいっ

 

 

「ささ、琢磨。飲むでござる」

 

「案外簡単デスネ」

 

 

ごくりっ

 

 

「俺が作った特製麦茶だ」

 

「なん・・・だと?」

 

「八代君、一人で料理しちゃ駄目だっていつも言ってるでしょ!」

 

「タクマちゃん、大丈夫!?」

 

 

あれ?何で俺は結城に怒られているんだ?

先輩も何で琢磨を心配しているんだ?

まるで俺の料理が下手みたいじゃないか。

これでも人並みと思っているんだぞ。

 

 

「今のところは何もありまん・・・が、どうなるか分かったものじゃないな」

 

「殿、拙者に犯罪の片棒を担がせるつもりだったでござるか!」

 

「ごくごく、普通の麦茶デスヨ?」

 

「フェルちゃん、駄目!」

 

 

あ、俺の水筒を取り上げやがった。

半蔵と言い皆失礼だな。

たかが麦茶だろ、さすがに俺だって作れるぜ。

 

 

「今日はもう帰った方がいいわね」

 

「ええ、そうですね」

 

「明日が琢磨の命日にならぬ事を祈るでござるよ」

 

「服部君、本当にそうなりそうだからやめてよ」

 

 

 




ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~


「これが僕の禁手双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)だ!」

「アレは!?」

「祐斗先輩の頭上に"木"の文字が浮かんでます」

「そして先生から教わった奥義で!」

デーンデーンデーン

「何処からか曲が流れてきたわよ!?」



もう無茶苦茶だな、これ。
"木"とか4画ですか、何て溜まりやすいB Styleだ。



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第24話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

「あれ?大自然、お前のペット変わったのか?」

「本当だ。ナコルルの飼っている鳥って鷹だったよね」

「これはママハハのお友達です」

「わっ、氷を出してきたでござる」

「何処かで飼育禁止になっていそうな鳥だな」

「・・・まず鳥が氷を出すところから突っ込んだらいいのかしら」


天使でも堕天使でも悪魔でもない。
人間グループの強化計画がどんどん進みますね。



昼休み、いつものメンツー1で食堂で昼飯を食べていた。

当然、-1は琢磨だ。

マジで身動きが取れない状態らしく、本番までは休むと連絡があった。

そういえば電話の最後に恨むぞ、とか言ってたけど何だったんだ?

 

 

「そういえばグレモリーの方は練習はどうなんだ?」

 

「えぇ、順調よ。先輩達もいい人ばかりね・・・変な人が多いけど」

 

「変な人?」

 

「外道って叫びながら相手に銃を撃っていたわ」

 

「ん?それは練習中にか?」

 

「そうよ。先輩達の間でちょっとした口論になってね。突然拳銃を取り出したんだもの」

 

「短気な先輩なんだな」

 

「もっと他に言うことがあるでしょ!?」

 

 

今日も変わらずグレモリーのテンションは高いな。

別に不思議じゃないだろ、世の中拳銃よりも危険なものなんて幾らでもあるぞ。

 

 

「デス様、この"ちょこころね"もお勧めでござる」

 

「あぐあぐ、甘くて美味しいデス」

 

「あら、アスナ。味付けを変えましたの?」

 

「うん。今日は甘口にしてみたの」

 

 

見てみろ。他の連中なんてグレモリーの戯言なんて全く気にしていないぞ。

グレモリーも皆の反応を見て状況を理解したのか納得行かないような顔をしている。

 

 

「あ、朱乃まで・・・ついにコテツ達に毒されてしまったのね」

 

「随分な言い様だな、おい」

 

「どうしてコテツ達は普通にしてるのよ、おかしいでしょ」

 

「うーん、何がおかしいのかさっぱりだ。グレモリーの日本の知識が変なだけじゃないか?」

 

「この国だけじゃないわよ。世界中おかしいわ」

 

 

何だ?ホームシックにでもなったのか?

俺は実家から通っているから一人暮らしの辛さは分からないからな。

知り合いで一人暮らしをしているのは・・・先輩と琢磨か。

いや、琢磨はティセやロボがいるから先輩だけだな。

 

 

「まぁ文化の違いとかもあるし困ったら先輩に相談したらどうだ?」

 

「・・・そうさせてもらうわ」

 

 

やっぱり海外で暮らすってのは大変みたいだな。

俺だったらまず外国の言葉を覚えるだけでも苦労しそうだ。

 

 

「ふふっ、どうぞデス様。私のおかずもお裾分けしますわね」

 

「あぐあぐ甘くて美味しいデス」

 

「あら?この金平ごぼうはピリ辛に仕上げたつもりなのですが・・・」

 

「うん、ちゃんとできてるよ?」

 

「どうしたの?」

 

「何かあったのか?」

 

「デス様の味覚が変でござる」

 

 

デス様の味覚が変?

クラスでもお菓子を貰っては食べてるから舌が馬鹿になったんじゃないのか?

 

 

「ウーン、何を食べても甘く感じるデス」

 

「な、何て羨ましい・・・デス様!どのような修行をすればよいでござるか!?」

 

「ボクが知るわけないデス」

 

「はっはっは、何か変なものでも口にしたんじゃないのか」

 

 

不思議そうにしているデス様。

悪戯好きな奴から変なものを食べさせられたに違い無い。

全く、ドジだなぁデス様は。

 

 

「・・・八代君。変なものに心当たりがあるんだけど」

 

「あん?結城が食わせたのか?」

 

 

結城の家も金持ちだからな。

一般人の俺には想像もつかないような高級食材とかがあるんだろう。

以前に結城の家で食ったキャビアとか塩辛いだけだったし。

 

 

「八代君、昨日の事もう忘れちゃったのかな?」

 

 

ビクッ

 

 

え、笑顔なのに恐ろしいだと?

昨日の事?な、何かあったか?

 

 

「コテツ、やっぱり貴方が何かしたのね」

 

「仕方ありませんわね、コテツさんは」

 

「待て待て!何で俺のせいと決め付けるんだよ!?」

 

「殿、もしや昨日の麦茶では?」

 

「麦茶?・・・・・いやいや、さすがに無いだろ」

 

 

だって麦茶だぜ。

確かに適当に身体に良さそうな粉は混ぜたけど幾ら何でも・・・なぁ?

とりあえず不思議そうにしているグレモリーと姫島に昨日の事を教える。

 

 

「麦茶でそこまで酷い事になるかしら・・・」

 

「そうですわね。俄かには信じがたいですわ」

 

「お二人とも殿を侮り過ぎでござる」

 

「そうだよ。何人もの人が八代君の餌食になっているんだから」

 

 

本当に失礼な連中だな。

少なくとも目の前で倒れた奴はいないぜ。

たまたま、俺の料理を食べてから体調が悪くなったに違いない。

 

 

「きっと味覚が破壊されたに違い無いでござるよ」

 

「と言う事は高藤君も今頃・・・」

 

 

いやいや、そんな事はないだろ。

あれ、でも恨むぞ、って言ってたな。

 

 

「それでその麦茶はどうしましたの?」

 

「あぁ、親父に飲ませたら何故かお袋に怒られて捨てられちまった」

 

「お母様も懸命な判断ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギアがこの近くにいるってのか?」

 

『あぁ、僕も昨日知ったばかりだがな。悪魔の棲む地、そこにギアがいる』

 

 

情報屋が呆れた様子で思いがけない情報を出してきた。

賞金首を追って日本に来たが、まさか活動しているギアがいるとはな。

 

 

『しかも、だ。情報によれば指揮官型のギアだそうだ』

 

「ちっ、メンドクセェ」

 

 

アイツの他にも指揮官型のギアが残っていたか。

 

 

『それと賞金首の情報についてだが駅前で見たと言う情報があるぞ』

 

「先にそっちを片付けてからにするか」

 

 

心情としてはギアを先に片付けたいが坊やもいる事だ。

先に賞金首を捕まえて渡した後に行けばいいだろう。

それにしても情報屋の奴、映像通信とは言え何でしかめっ面してんだ?

 

 

「どうかしたのか?」

 

『・・・朝起きたら甘みしか感じない舌になっていてな。それと無性に脛が痛い』

 

「何だそりゃ、何処か打ったりしたのか」

 

『いや、僕の親友からの嫌がらせだ』

 

 

そいつはまた随分と地味な嫌がらせだ。

快賊団の団長から紹介してもらったが若いのに腕は確かだ。

何とかしてやりてぇとは思うが無理だな。

 

 

『とにかく、情報は渡したぞ』

 

「あぁ、十分だ」

 

 

通信を切って一息吐く。

ギアがいる事には驚きだが好都合だ。

幸い、今は駅前にいるから賞金首を見つけて・・・

 

 

「おいラグナ、まだ開店時間じゃないぞ」

 

「うるせぇ、この辺で待ってりゃいいだろうが」

 

 

二人の男組みが俺のいる裏路地へと入ってくる。

一人は見覚えのある、もう一人は何処かで見たような気がする。

 

 

「お?ソル?ソルじゃないか!久しぶりだな」

 

「ライザー、やっぱお前か。何してんだ」

 

「今はこの町で居候してるんだよ」

 

 

以前に何度か出会い一緒に旅もした事のあるライザー。

炎を操る特殊体質のナニカって事は分かる。

そういえば以前にお世話になっている一家があるって言っていたが、その事か。

 

 

「・・・誰だ?」

 

「あぁ、ラグナ紹介するよ。こっちはソル・バッドガイ、こんな見かけだがいい奴だぜ」

 

「一言余計だ。あん?ラグナ?ラグナ・ザ・ブラッドエッジか?」

 

「あぁ、そうだが・・・何だよ」

 

 

ラグナ・ザ・ブラッドエッジだと?

持っていた賞金首の顔写真を取り出して確認するが、全然違ぇな。

着ている服は同じだが、どうなってやがる。

これだから階層都市の連中は、事務仕事ぐらいしっかりやりやがれ。

 

 

「いや、人違いだ。悪かったな」

 

「?まぁいいけどよ」

 

 

それにデカイ剣を腰にぶら下げてはいるが、そこまで危険な奴には見えねぇ。

右目に右手も動いていないようだし、法力や気といった力を感じるわけでもない。

警戒するだけ無駄か。

 

 

「で、何してんだ」

 

「それがさ。ラグナが天玉うどんが大好物でさ、昨日食べた店にまた行こうって言うんだよ」

 

「美味いもん食って何が悪いってんだ」

 

「開店時間もまだだろ、それにラグナ。お前金持ってないだろ」

 

「ぐっ、それぐらい奢れよ」

 

 

無一文か、見たところ日本の生まれでも無いが、よく日本に来れたもんだ。

 

 

「いや、働いて稼げよ」

 

「うざってぇな。稼ぎたくても稼げねぇんだよ」

 

「そうだ、ソルなら働き口とか知ってるんじゃないか?」

 

「マジか。なら教えてくれ」

 

 

何で俺が初対面の人間の働き口を探さないとならねぇんだ。

 

 

「へビィだぜ・・・」

 

 

情報屋にでも聞いてみるか。

仲介はしていないはずだが何か知っているかもしれねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

「へっ!勝負に待ったは無しだぜ石油王!くらえっ!」

 

 

バシンッ

 

 

「勝負有り!勝者、八代虎徹!」

 

「くぅ、もう一回ですわ!」

 

 

授業と授業を挟む休憩時間、俺とリリ何とかって石油王の娘は勝負をしていた。

まぁ、結果は見事に俺の勝ちだな。

こういう勝負なら負けないぜ。

 

 

「何で定規を弾いて落とすだけでここまで盛り上がれるのよ」

 

「あら、リアス。微笑ましくていいじゃありませんか」

 

「殿~、拙者は負けてしまったでござる」

 

 

何!?半蔵が負けただと!?

相手は一体誰なんだ。

 

 

「真剣勝負って素晴らしいですわ~」

 

「四条、まさかここでもパワープレイとはな。恐るべし」

 

「いいからもう一度私と勝負なさい!」

 

「明日な、明日」

 

 

って言うかこのクラス、お嬢様キャラが多すぎだろ。

確か四条もお嬢様だったよな。

 

 

「えっと決勝は雛ちゃんとコテっちゃんだね」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

「おう、負けねぇぜ!」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「じゃあ決勝は明日って事で」

 

 

チャイムか、仕方ねぇな。

しかし四条相手に対策を練る必要があるな。

こっちは普通の定規を使うか?

それとも相手の上に乗せれるように三角定規がいいだろうか。

 

 

ガラガラッ

 

 

「席に着きなさい、今日最後の授業を始める」

 

 

国語か、体育の後じゃなくても眠くなるんだよな。

むむむ、今日こそは睡魔という強敵に勝てるだろうか。

 

 

「今日は読書感想文を書いてもらう。図書室で好きな本を選んで明日の授業までに書いてくるように」

 

「げっ、マジかよ」

 

 

って言うか図書室って何処だっけ。

俺とは全くの無縁の場所だから知らないな。

まぁ皆に着いて行けば分かるだろう。

 

 

「図書委員は・・・高藤君、は休みか。それでは八代君、頼んだよ」

 

「俺が?」

 

 

島津先生は俺に鍵を手渡すと教室を出て行った。

と言うか琢磨の奴、図書委員だったのか。

 

 

「では皆さん行きますわよ」

 

「うーん、どの本にしようかな」

 

「確かに明日までとなると悩むわね」

 

「短編の本があればよろしいのですが」

 

 

クラス委員の神月の言葉に皆が教室を出て行く。

俺も遅れないよう最後尾を歩いて着いて行く。

 

 

「殿、拙者達はどうするでござるか?」

 

「どうするって言ってもな・・・そうだ漫画はどうだ」

 

「駄目に決まってるでしょ」

 

「そんな事を言ってもなグレモリー。俺は文字を読むと眠くなる病なんだ」

 

「あ、拙者もそうでござる!・・・何とあの現象は病気だったのでござるか!?」

 

「ハンゾーさんも真に受ける必要はありませんわ」

 

「八代君は本を読みたくないだけでしょ?」

 

 

ちっ、バレちまったか。

本をまともに読むのも面倒なのに読書感想文なんてさらに面倒じゃねーか。

半蔵はともかく何でこいつらはやる気満々なんだ。

 

 

「はぁ、コテツ。そんなので中間テストは大丈夫なの?」

 

「・・・何だって?」

 

「何って中間テストよ、中間テスト」

 

 

はて、グレモリーは一体何を言っているんだ?

中間テスト・・・・?

 

 

「八代君、一応言っておくけど。球技大会の翌週から中間テストだからね」

 

「はぁ!?聞いてねぇぞ!?」

 

「以前からヨハン先生もHRで仰っていましたわ」

 

「あの影薄い先生の話なんてほとんど聞いてねぇよ」

 

 

おいおい、やべぇぞ。

授業なんて、まるで聞いていないって言うのに。

 

 

「せ、拙者は球技大会が終わったら修行に出かけるでござる」

 

「見え透いた嘘は駄目よハンゾー」

 

「うぅ、これは大変な事になってきたでござる」

 

 

半蔵め、一人だけ逃げ出そうなんて汚いぜ。

そうはさせるか、俺だって逃げる手段を・・・

 

 

「実は親父が危篤なんだ!」

 

「先週、家で元気にしていらっしゃたわよ」

 

 

ぐぬぬ、グレモリーめ。何故俺の家の事情を知っている。

って、結城と姫島と一緒にお袋に料理を習っていたんだったか。

遊びに出かけていたから気づかなかったぜ。

 

 

「大体図書室って何処だよ」

 

「オリエンテーションの時に教わったよ」

 

「・・・おかしい、記憶に無いぞ」

 

「そういえば殿の姿は見えなかったでござるな」

 

 

オリエンテーションをした記憶はあるんだが。

図書室なんて案内されたっけ?

 

 

「さすがに私もその時のコテツは知らないわね」

 

「私達がコテツさんを知ったのは後でしたから」

 

「うーん・・・あ、そうだ。校長室に・・・いや、なんでもない」

 

「何をしたの!?」

 

 

言えるのは分身できる軍人がいたって事ぐらいだな。

 

 




適当に思いついた事を書いているためか、
全く球技大会に行かないですね。

この調子だと次の次くらいになりそうです。


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第25話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

「この森に半蔵の知り合いの薬師がいるのか?」

「うむ・・・お、いたでござる!」

「おやおや半蔵さん。待っていましたよ」

「それでは早速薬を・・・」

「この"まききゅーX"を飲めば巨大化してパワーアップ間違いなしです」

「何と素晴らしい!かたじけないでござる!」

「G琢磨か・・・面白そうだな!」


ルガールが飲めばGルガールですかね?
肌が黒くなりそうな気がします。



ちゅんちゅんちゅん

 

 

ばさっ

 

 

「おっしゃーっ!今日はやるぜ!」

 

 

ガチャッ

 

 

「うるさいわよ虎徹!ご近所の迷惑になるでしょ!」

 

 

さすがに起きて騒ぐのは駄目だったようだ。

とは言え、今日の俺はテンションが上がりっぱなしだ。

何せ今日は球技大会、座学の授業が無いなんて最高じゃないか!

 

 

「ふわぁ、元気だな虎徹は」

 

「おはよライザーさん」

 

 

お袋の後ろでライザーさんが眠そうにしていた。

一昨日から家に帰ってこなかったな。

実家にでも帰っていたのか?

そういえばラグナさんもいなかったな。

まさか二人で旅行していたのか、羨ましい。

 

 

「おう、ったく。何で俺まで付き合わなくちゃいけないんだ」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「ラグナ君のお仕事を探すために一昨日から頑張っているみたいなのよ」

 

「へぇ、それでそのラグナさんは何処に?」

 

「結局見つからなかったからリビングで落ち込んでるよ」

 

 

それは残念だったな。

まぁ外国の人だし採用条件も厳しかったりするんだろう。

 

 

「ほら、二人とも。朝御飯が用意出来ているんだから早く降りなさい」

 

「へーい」

 

 

お袋とライザーさんと一緒に1階に下りる。

そこにはライザーさんの言う通りソファに座ってうな垂れているラグナさんの姿があった。

親父はいないみたいだし、出勤したんだろう。

 

 

「おはようラグナさん・・・とどちら様?」

 

 

食卓で知らない男が飯を食っていた。

っつーかゴツいな、この人。

何食ったらこんなに筋肉がつくんだ。

 

 

「あら、ソル君。お代わりはいるかしら?」

 

「・・・あぁ、頼む」

 

「はいはい、ちょっと待っててね」

 

 

お袋は知ってるみたいだけどソルって言うのか。

 

 

「あぁ、コテツ。こっちは俺の知り合いでソル・バッドガイ。たまたま日本に来ていたみたいで招待したんだ」

 

「へぇ。俺は八代虎徹、よろしくなソルさん」

 

「あぁ。お前さんの事はライザーからよく聞いている」

 

 

一体何を言ったのか気になるぜ。

しっかし我が家が暑苦しい場所になっちまったな。

唯一の女性がお袋だけって、何の癒しにもなってねぇよ。

 

 

「はぁ、この国はどうなってんだよ。一言目には履歴書だなんて、おかしいぜ」

 

「んー、身元がはっきり分かってないと不安だからじゃないのか?」

 

「って言うかラグナさんって何処の国の人?」

 

「あぁ?・・・階層都市だよ」

 

 

階層都市って日本のすぐ近くじゃないか。

行ったことはないけど何か面白そうな場所だろ?

一回行って、最下層から最上層まで昇ってみたいと思っているんだよな。

 

 

「ったく・・・おいライザー、ソル。履歴書が無くても働ける場所はねぇのかよ」

 

「無茶苦茶な注文だな」

 

「・・・メンドクセェ」

 

「はい、お待たせ。大盛りにしておいたわね。それで何の話をしているの?」

 

「ラグナさん、履歴書が書けないってさ」

 

「あ、そうよね。ラグナ君は外国の人だから日本語は書けないわよね」

 

「いや、そうじゃな・・・」

 

「そう言う事なら私に任せなさい!」

 

 

そうだよな、日本語ペラペラだったから忘れていたけど、この3人って日本人じゃなかったな。

何で履歴書が書けないか不思議に思ったけど当たり前だった。

 

 

「おい、ライザー。何かあいつら勘違いしてねぇか」

 

「あはは・・・ここの家は基本的にこんな感じだ」

 

「あー・・・何か悪ぃな」

 

「いいのよ。おばさんがおせっかいなだけなんだから」

 

「そうそう、お袋の迷惑な世話好きは今に始まった事じゃないって」

 

 

ゴツッ!

 

 

「いてっ!何すんだよ!」

 

「アンタは黙って学校に行きなさい!」

 

「へいへい、分かったよ」

 

 

こうなったお袋は誰にも止められないな。

おっと、忘れるところだった。

 

 

「今日はうちの学園で球技大会があるんだけど暇だったら見に来てくれよな」

 

「球技大会?」

 

「詳しくは知らないけど一般の人にも公開して行うんだとさ」

 

 

ディズィー達にも伝えるよう、大自然に言ってあるしな。

ライザーさん達は一昨日から帰ってこなかったから伝えそこねていたぜ。

 

 

「殿ーっ!絶好の球技大会日和でござるよーーっ!」

 

「ほら半蔵君も来たよ、頑張って来るんだよ」

 

「おう!それじゃあ行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい。まぁ気分転換の意味も込めて見に行こうぜ二人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は僕の通う中学校は創立記念日で休み。

部長から駒王学園で行われる球技大会を見に来るようにと言われていた。

その道すがら僕の友人がいたので声をかける。

 

 

「あ、ケイ」

 

「あん?何だ、オメェかよ」

 

「む?相棒の知り合いか?」

 

「初めまして。ケイと同じ学校に通う木場祐斗です」

 

 

友人のケイ・ダッシュの隣にいた大柄な男性に自己紹介をする。

見た目は怖そうだけど・・・あのモミアゲ凄いね。

 

 

「俺はマキシマ、相棒が世話になっているようだな」

 

「チッ、お前は保護者かよ。このポンコツが」

 

「はっはっは。相棒は口は悪いが根はいい奴でな、気を悪くしないでくれ」

 

「はい、それは分かっています」

 

 

確かに学校でも色々と誤解されがちだけど何だかんだ言いながらも助けてくれるしね。

まぁ大体そう言うとケイの場合は・・・

 

 

「チッ、さっさと行くぞ」

 

「おいおい、別に照れなくてもいいだろう」

 

「照れてねぇよ!いいから行くぞ。遅れたらあいつに何を言われるか分かったもんじゃねぇ」

 

「何処に行くんだい?」

 

「俺達の仲間が学園で球技大会が開かれるから見に来ないかと言われていてな」

 

 

球技大会?

もしかして行き先が同じなのか。

 

 

「それって・・・駒王学園ですか?」

 

「そうだが、知っているのか?」

 

「はい。僕も招待されているんです」

 

「そうか。だったら案内を頼んでもいいか?」

 

「いいですよ」

 

 

マキシマさんと話している間もケイが先に進んでいく。

本当に見ていて飽きない友人だ。

マキシマさんもそんなケイの様子を見て苦笑を漏らす。

 

 

「全く、相棒は・・・すまんな」

 

「いえ。ケイ!駒王学園はそっちじゃないよ」

 

「・・・テメェらが早く来ねぇのが悪い。さっさと案内しろ木場」

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

「そうだな」

 

 

マキシマさんと一緒に笑って駒王学園を目指す。

そういえばマキシマさんの着ている服・・・服?に着いているマークってどこかで見て事がある。

確か、製塩会社ネスツのシンボルマークじゃなかったっけ?

 

 

「マキシマさんはネスツで働いているんですか?」

 

「ん?あぁ、そうだ。今日は休みを取っていたんだが早朝に呼び出されていてな」

 

「何かあったのか?」

 

「いや、クリザリッドが過労で倒れただけだ。何の心配もいらんよ」

 

「けっ、いい気味だぜ」

 

 

恐らくは人の名前なんだろうけど随分な扱いを受けてる人みたいだ。

それにしても二人はどういった経緯で知り合ったんだろう。

年齢も違うし性格も違う。マキシマさんは相棒って言っていた事と関係あるのかもしれない。

 

 

「木場は身のこなしからして何かしているのか?」

 

「えぇ、剣術をしています」

 

 

僕は神器で剣を取り出して構える。

最近では学校での闘いにも参加しているからか自然と出せるようになった。

部長には悪いけど既に人間界に慣れてしまっている自分がいる。

突然人が空を飛んだり炎を出したりしても驚かなくなってしまった。

 

 

「ほぅ、能力者か。腕もよさそうだな」

 

「まだまだ俺の相手じゃねぇけどな」

 

「あはは。ケイが強すぎるんだよ」

 

 

まさか同学年で僕よりも速い人がいるとは思わなかった。

けど僕だって最近は、とある剣術道場に通って腕を磨いている。

そこの師範も一瞬で背後に回る速さを持つからいつか教えてもらいたいと思っている。

 

 

「ならば俺と闘ってみるか?訓練と思えばいい」

 

「いいんですか?」

 

「頑丈さには自信があるさ」

 

「・・・それで故障したら世話無いぜ」

 

 

マキシマさんからの意外な提案だ。

でも見た目からして戦車がよく似合う人だ。

将来行われるレーティングゲームのためにも色々なタイプの人と闘えば経験になる。

 

 

「そうですね・・・分かりました。()りましょう!」

 

「ちなみに俺が勝てばそこのクレープを奢ってもらうぞ」

 

「この甘党が・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは球技大会を開催する!」

 

 

いよいよ、この日がやってきた。

グラウンドに生徒全員が集まり空手先生の話を聞く。

身体が動けない琢磨は心配して着いてきたティセに支えられている。

 

 

「学年混合のチームで対戦し勝てば1ポイント、全ての試合が終了後に合計ポイントの多いクラスの優勝だ」

 

 

確か全部で7クラスあったな。

1クラスが30人前後だし学年もあるから×3で・・・

と、とにかくかなりの試合数になるわけだな!

 

 

「30人×7クラス×3学年で630人だな。そして6人制のバレーだから105チームだ」

 

「だから試合数としては52試合前後だね」

 

「・・・お、俺もそう思っていたところだ」

 

「嘘をつけ」

 

「あはは、指を折って数えていたからね」

 

 

琢磨と結城め、ちょっと自分達が頭いいからって。

俺だって考えればすぐに分かったはずだ。

 

 

「それにしてもさすがにチーム数が多すぎよね。今日中に終わるのかしら」

 

 

グレモリーの言う通りだ。

グラウンドと体育館が3つだろ?

何日かに分けた方がいいと思うぞ。

 

 

「なお試合会場については、この後発表される会場で行うように」

 

 

なんだ、他にも場所を確保していたのか。

どこかの広場とか他所の学校の体育館とか借りたのか。

 

 

「そして駒王学園特別ルールとして、武器、能力の使用を認める」

 

「え?」

 

「試合で用いるバレーボールは頑丈だが、万が一破壊した場合はそのチームは失格とする」

 

「はい?」

 

「相手コートに入らなければ対戦選手への攻撃を認める」

 

「何と!?」

 

「我々、教師陣チームが抜き打ちで乱入する。勝った場合は特別に10ポイント、負ければマイナス10ポイントだ」

 

「・・・解せん」

 

「以上だ。俺が最強の格闘王、KENJIだ!文句のある奴はかかってこい!」

 

 

短い時間で物凄く大変な事を説明された気がするな。

えーっと武器、能力が有りで対戦選手にも攻撃が可能。

おまけに先生達も乱入してくる?

ぬおーっ!無理に決まってんじゃねーか!

 

 

「これならいけますわね!」

 

「ちょっと待て神月!あのルールを聞いてその反応かよ!?」

 

「私達のクラスをお忘れですの?武器を持った方は少ないですが能力者は大勢いますわよ」

 

「うおおおっ!俺が一番だー!」

 

「へへっ、燃える展開じゃねぇか」

 

「よーっし!愛の力で絶対勝とうね!」

 

「山田さんも有りなのかな?」

 

「波動拳じゃ、ネットに当たっちゃうなぁ」

 

 

確かにこれなら勝てそうだな。

とは言え、俺みたいな一般人はどうやって生き延びるかを考えないと死んでしまう。

 

 

「半蔵はいいが、結城と琢磨。俺達やべぇな?」

 

「アスナはボクが守るデス」

 

「ありがとうフェルちゃん」

 

「武器が有りならば・・・ホウオウもありと言う事だな?」

 

 

あれ?何か大丈夫そうだぞ。

もしかしてこのクラスで一番危険なのは俺だけか?

グレモリーも飛び道具を使えていたしな。

 

 

「はっ!そうだ姫島!お前は危ないだろう!?」

 

「あの、危ない人みたいに言うのは止めて頂けませんの?」

 

「その素質は十分にあるだろうが・・・って俺が聞きたいのはそうじゃなくてだな」

 

「朱乃もコテツの言う飛び道具なら出せるわよ」

 

「何・・・だと?」

 

 

まずい、このままじゃ俺だけ死んでしまう。

何とかしなくては・・・

 

 

「チャンピオンさんなら大丈夫ですわ~」

 

「四条、お前はそれでいいのか」

 

「真剣勝負って素晴らしいじゃありませんか」

 

「お前はそういう奴だったな」

 

 

昨日行われた第1回定規戦争では見事に俺が優勝となった。

まぁ四条の奴がいきなり自分の定規を壊して俺の不戦勝だけどな。

それ以来何故かチャンピオンと呼ばれてしまっている。

・・・悪い気はしないがな!

 

 

「大丈夫でござるよ殿、拙者にお任せあれ!」

 

「任せていいんだな半蔵?」

 

「もちろんでござる!殿を守れずして何が忍びか!」

 

 

半蔵と同じチームなら何とかなるか。

いざとなれば分身を盾代わりにすればいいんだもんな。

 

 

「ふふん、その余裕がいつまで続くかしらね虎徹!」

 

「げぇっ、ガーネット!?」

 

「アンタの対戦相手は私達よ!」

 

 

中学時代の知り合いであるシルヴィ・ガーネット。

シスコンで手が剣になる便利なんだか不便なんだかよく分からない奴だ。

よくガーネットから妹にちょっかいを出したとか言って叩かれていたな。

後輩と話すだけで叩かれて、たまったものじゃなかったぜ。

 

 

「今日はよろしくね虎徹」

 

「ウィンド、お前も相手チームか」

 

 

でもウィンドは教会の娘ってだけだろ?

ゲーニッツさんも人が良さそうな人だったからな。

戦力として数えなくてもいいだろう。

となると相手はガーネットだけか。

ここはグリフォン先輩とトッキー先輩で抑えてもらおう。

 

 

「ふふふ、勝てる。これなら勝てるぜ!」

 

 

 




虎徹はウィンドの強さを知りません。
次回、カオスなバレーボールをお楽しみに。


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第26話

お待たせしました。
ココ最近、仕事が忙しく更新できませんでした。
ようやく落ち着いたので執筆を再開します。



さて、身の危険を感じるが何だか面白い事になって来たじゃないか。

ガーネットの宣戦布告から時間が経ち、いつものメンバーで話をしていた。

 

 

「この中で最初の試合って誰だ?」

 

「えっと・・・朱乃みたいだね」

 

「その後が結城嬢、琢磨、グレモリー嬢、殿と拙者でござるな」

 

「グレモリーと俺達は午後か」

 

「そうね、頑張りなさい朱乃」

 

「えぇ、もちろんですわ」

 

「ふむ、しかし場所が多彩だな」

 

 

街中や山の中や他の学校とかもあるぞ。

俺達の試合は・・・駒王第二中学って俺の母校じゃねーか。

 

 

「懐かしい面々と会えそうでござるな殿」

 

「まずいな、ガーネットの奴想像以上に張り切るんじゃないか?」

 

「あぁ、妹さんの前だからな」

 

 

あのガン黒教師にもう一度出会うのは嫌だが仕方ないか。

今回は俺は何も悪い事していないしな。

 

 

「それで朱乃の試合は何処でやるデス?」

 

「できればマスターに負担のかからない近場がいいのですけど・・・」

 

「ははは、琢磨。介護老人みてーだな」

 

「・・・誰のせいだと思っている」

 

「私の試合は・・・10時から第2体育館のようですわね」

 

「まだ後30分は時間があるね」

 

「先に行って場所を取っておくのも・・・あら、祐斗に小猫」

 

「ん?」

 

 

グレモリーの声に振り返れば木場と搭城の姿があった。

後はグラサンかけた中学生とサイボーグっぽいおっさんが一緒だ。

 

 

「応援に来ましたよ部長」

 

「頑張ってください」

 

「ありがとう二人とも。それでそちらの二人は?」

 

「私も先ほど祐斗先輩と合流したので分かりません」

 

「僕のクラスメイトでケイです。こちらはケイの友人のマキシマさんです」

 

「・・・ふん」

 

「賑やかそうな面々だな。よろしくな」

 

 

人が多くなってきたな。

って言うかこいつら学校はいいのか?

 

 

「あれ?木場君に小猫ちゃん。学校はいいの?」

 

「はい。今日は創立記念日でお休みですから」

 

「何だ、てっきりグレモリーの奴の命令で無理やり来たのかと思ったぜ」

 

「ちょっと、コテツ。私をどんな性格だと思っていたのよ」

 

「え、我がままで短気で弄ると面白い奴」

 

「あら、全て合ってますわね」

 

「合ってないわよ!」

 

「・・・・・」

 

 

ん?グラサンが何か別の方を見ているな。

木場にサイボーグっぽいおっさんも気づいたようだ。

 

 

「どうしたんだいケイ」

 

「何か気になることでもあったか?」

 

「いや、アレは何だ?」

 

 

視線をグラサンの方に向けるとそこにあるのは飼育小屋だった。

そういえばオリエンテーションで見て以来行った事なかったな。

 

 

「飼育小屋ね。あまりあそこには近寄りたく無いわ」

 

「よし、試合前に飼育小屋に寄って行こうぜ!」

 

「人の話を聞いていたの!?」

 

「いいじゃねーか。時間はまだあるんだし」

 

「あそこに行くと私の中の日常が崩れるわよ」

 

「面白い動物が一杯いますものね」

 

「動物って呼んでいいのかしらアレは」

 

 

そんなに変わった動物なんていたっけか?

ボクシンググローブをしたカンガルーにスフィンクス、後は紫色のイカ?タコ?ぐらいだろ。

 

 

「その前に聞きたい事があるんだが・・・ウィップと言う名前を知らんか?」

 

「ぬぅ、聞いたこと無いでござるな」

 

「私も知らないなぁ」

 

「それなら私と同じチームの先輩だわ」

 

 

聞いた事ねーな。

先輩って事は2年か3年か。

今度2,3年の教室に遊びに行ってみるか。

 

 

「あ、いたいた朱乃ちゃーん」

 

「あら、ほたるさん。どうされました?」

 

「ルールが変わっちゃったから作戦を変更するんだって先輩が言ってたよ」

 

「まぁ。では皆さん、私はお先に失礼しますわ」

 

「おう、頑張れよ姫島」

 

 

双葉も姫島と同じチームだったのか。

しかし姫島抜きで飼育小屋に言ってもいいんだが・・・また今度にするか。

 

 

「じゃあ俺達も向かうとしようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くっ、相手のチームも手強いですわね。

第2体育館で行われている私達AクラスとBクラスの試合。

ルールが変わるとここまで苦戦しますのね。

 

 

「そーれっ!」

 

 

ビュオンッ!

 

 

「甘い!」

 

 

バシッ

 

 

「朱乃ちゃん!」

 

「行きますわっ!」

 

 

バシンッ!

 

 

「うおりゃーっ!」

 

 

先ほどから何度かスパイクをしているのですが簡単に止められてしまいます。

しかし先輩方も何故炎を纏ったボールを軽々と受け止められるのでしょう?

本当にこの学園には一般人が少なくて困りますわね。

 

 

「今だ烈風拳!」

 

「よっと、気が抜けませんわ」

 

 

地面を這うような衝撃波をかわして再び相手が打ってきたボールを弾く。

何度か取りこぼして点を取られてしまってはいますが、それは相手チームも同じ。

自然と拮抗した試合になっていますわね。

 

 

「こらーロック!飛び道具なんて卑怯だぞ!出し方教えろーっ!」

 

「うるさい気が散るだろ!」

 

 

コテツさん、応援なのか相手への野次なのかよく分かりませんわ。

とは言え、皆が応援してくれている手前、情けない姿は出せませんわね。

 

 

バシッ

 

 

「姫島、行け」

 

「はい刹那先輩!」

 

 

3年の刹那先輩のトスから雷の魔力を込めてスパイクをする。

受け止めようとしたようですが痺れて見当違いの方へボールが弾かれました。

さすがに今のを返されたらどうしようかと思いましたが安心しましたわ。

 

 

「よくやったな姫島」

 

「刹那先輩のおかげですわ」

 

 

どのようなボールが来ても軽々と受け止めてくれる刹那先輩がいたからこそ拮抗しているようなものです。

バレーボールは初めてとは言え、あのような強いボールを簡単に受け止めれるのか謎ですわね。

 

 

「アーマーを張っているからな」

 

「あーまー?」

 

 

直訳すれば鎧ですが特に鎧を着ている様子もありませんし別の意味でしょうか?

今度、オロチ様に聞いてみましょう。

 

 

「前を見ろ。次が来るぞ」

 

「はい」

 

 

今ので1点リードしたとは言え、まだまだ気は抜けませんわね。

今度はどのような手で邪魔をしてくるか分かったものではありませんもの。

 

 

「ほらよ、今だぜミリア先輩!」

 

「そこっ!」

 

 

相手の上級生の方でしょうか、放ったのは一見すると普通のスパイクに見えますが・・・

 

 

 

「これならっ!あれ!?」

 

 

ぎゅいんっ

 

 

「ボールが曲がった!?」

 

 

ほたるさんがボールを受け止めようとした時、突然ボールが直角に曲がりました。

そして再び地面に向けて落下してしまいます。

あら、このボールに付いているのは・・・髪の毛?

 

 

「やられたな」

 

「すみません」

 

「仕方ない、双葉。止めなかった刹那先輩が悪い」

 

「おい、位置的にフォローできたのはお前だろう、冴嶋」

 

「まぁまぁお二人とも。また点を取り返せばよろしいではありませんか」

 

 

何とか宥めてお二人もポジションについて頂きました。

先ほどのボールの軌道は髪の毛に秘密がありそうですわね。

金髪である事と、先ほどのスパイクからして恐らくはミリアと呼ばれた先輩の仕業だとは思うのですが・・・

とりあえず、刺さっている髪の毛は抜いておきましょう。

 

 

「今度こそっ!」

 

 

ほたるさんが相手のサーブを受け止め、相手に気弾を撃ちこみます。

そして2年の冴嶋閑先輩がトスをして刹那先輩が刀でスパイクと言う異常な連携を決めました。

ルール的には有りなのでしょうがやはり納得行きませんわね。

 

 

「ロック!」

 

「了解、レイジング・・・ストームッ!」

 

 

これは気の柱!?

刹那先輩のコーナーを突いたスパイクは気の柱によって高々と打ち上げられてしまいました。

 

 

「おまけにこれはいかが!」

 

「ミサイル!?」

 

「ちぃっ、小癪な」

 

 

やはりそう簡単には勝たせてもらえそうにはありませんわね。

しかしスカートの中からミサイルが出てくるのは予想外でしたわ。

服装が自由とは言えど誰も想像できませんもの。

 

 

「セリア先輩、それはさすがにやりすぎじゃないッスか?」

 

「ロック君。ルール上問題ないからおっけー」

 

 

ふふふ、そちらがそういう事ならもう少し激しくしても問題なさそうですわね。

楽しくなってきましたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、案外まともなバレーしてるじゃないか」

 

ところどころ相手の妨害で飛び道具が出る以外は普通だな。

もっと血みどろな試合を予想していたんだが、これなら何とかなりそうだな。

後は試合後半の姫島のはしゃぎっぷりが凄かったな。

雷が試合場に常に飛び交っていたからな。

 

 

「一度コテツのまとも、と言う定義を聞いてみたいわね」

 

「ん?聞きたいのか?」

 

「いえ、やっぱり止めておくわ。それを聞いたら引き返せなくなりそうだもの」

 

 

試合は僅差で姫島のチームが勝利を収めた。

しかしロックめ、これ見よがしに飛び道具を使うとは・・・何て羨ましい。

地面に這うような飛び道具のためネットにも当たらないから便利だな。

 

 

「でも刀でも斬れないボールって凄いよね」

 

「あぁ、どんな材質をしているのか気になるところだな」

 

 

待てよ、あの材質を使って鎧でも作れば完璧じゃないか。

ダメージを一切通す事の無い鎧、よし今度琢磨に作ってもらおう。

 

 

「私、バレーボールって初めて見たんですがこういうものなんですか?」

 

「小猫ちゃん。さすがにそれは違うよ」

 

「うむ、これはこの学園だけのルールでござるな」

 

 

幾ら能力者や闘える奴が多いとは言え、全国で行うには無茶だろ。

プロの試合とか見てみたい気もするけどな。

 

 

「次は結城だっけ?」

 

「うん、私は駒王中央小学校で試合するみたい」

 

「なら朱乃を待って向かうとしましょうか」

 

 

今度は小学校か。中央小ってどこにあったっけな。

・・・・あぁ、駅前のところか。

 

 

「いたいた、探しましたよ皆さん」

 

「あ、ナコルル。どうしたの?」

 

「虎徹さんにお客さんです」

 

「俺に?」

 

「呼んでおいて忘れるのはどうかと思いますよ?彼女、校門の前で困っていたんですから」

 

「はぁ?」

 

 

何故か冷たい視線を俺にくれる大自然。

はて、一体何を忘れているって言うんだ?

 

 

「あ、あの来ちゃいました!」

 

「おぉ、ディズィー。そういえば忘れてたな。あっはっは!」

 

「笑い事じゃありません!」

 

「い、いいんですナコルルさん。こうして無事に会えたんですから」

 

 

そういえばディズィーを招待していたのを忘れていたな。

とりあえず他の連中にディズィーと大自然を紹介しておくか。

 

 

「皆、こっちは大自然だ。で、隣にいるのが大自然のご近所さんのディズィーだ」

 

「貴女が大自然と呼ばれている子なのね・・・同情するわ」

 

「よく言われます・・・」

 

「あ、あのよろしくお願いします!」

 

「よろしくねディズィー。八代君には気をつけてね、すぐに変なあだ名をつけようとするから」

 

 

ひょいっ

 

 

「コテツ、あの子に何かしたデスカ?」

 

「はぁ?」

 

 

頭の上に乗ってきたデス様が突然そんな事をいう。

何かって言われても心当たりなんて無いぞ。

 

 

「僕を縛っているのと同じ魔力で隠蔽されているのダケは分かるデス」

 

「全く、相変わらずデス様は変な事を言うな。もう少し俺にも分かる言葉で話せよ」

 

「コテツが馬鹿だから仕方ないデス」

 

「なんだとこんにゃろ!」

 

 

ぐにゅっ

 

 

「離すデス!」

 

「いい弾力だ。デス様、このまま白く塗ってバレーボールに成り済ましたらどうだ?」

 

「断固お断りデス!」

 

「ちぇっ、いい案だと思ったのによ」

 

「殿、殿」

 

「ん?何だ。自己紹介は終わったか」

 

 

半蔵に呼ばれてデス様を解放して皆の方へと顔を向ける。

何人かいなくなっているな。

大自然とグレモリーとグラサンとサイボーグっぽいおっさんがいねぇな。

 

 

「大自然の巫女殿は次の試合があるため先に向かうそうでござる」

 

「リアスはケイ君とマキシマさんを知り合いのところに連れて行ったよ」

 

 

ふむ、じゃあ姫島とグレモリーが来てから小学校に向かうとするか。

 




ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

「さて、今日の営業先はここか」

コンコン

「どうぞ」

ガチャッ

「ルガール運送の八代さんですわね。私、ボーダー商事社長の八雲紫ですわ」

「初めまして。いやお若いのに社長とは驚きました」

「・・・・ですわ」

「はい?」

「取引成立ですわっ!」

「えぇっ!?いや、しかしまだプレゼンテーションもしていませんが」

「紫様、お願いですから仕事はきちんとしてください」




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第27話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
今回から手持ちのMUGENを使ってランセレで選んだ二人でネタにします。
・上条当麻、斬魔狼牙

「よう当麻、飯は何にするんだ?」

「ん?上条さん今月は既にピンチ・・・水でも飲むか」

「・・・・・・・」

「どうしました虎徹さん」

「いや、何故だか栗とナスが食べたくなってきた」

「今は春ですよ?」



 

駒王中央小学校、駅前に位置するだけあってか生徒の数が多いな。

教室の窓から顔を出している生徒や見学している生徒が大勢いる。

っていうかこれ授業になってないよな?自習か、羨ましい。

しっかし、この学校・・・来た覚えがあるんだよな。

俺が通っていた小学校ってわけじゃ無いんだが何故だ?

 

 

 

「どうしたグレモリー?上なんて見上げて」

 

「・・・いえ、何でもないわ」

 

 

ここに来るまでの間、やたらと上空を見上げていたグレモリー。

カラスが飛んでいるぐらいで取り立てて珍しいものも無いけどな。

 

 

「ふむ、君がディズィーか・・・ティセ、反応はどうだ?」

 

「それが・・・ギアの反応がありません~」

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「いや、何でもない。こちらが勝手に勘違いしただけのようだ」

 

 

相変わらずティセに支えられた琢磨がよく分からない話をしているな。

ティセの背丈が小さいんで、それに支えられている琢磨が格好悪くて笑えてくる。

 

 

「・・・何か言いたそうだな虎徹」

 

「はっはっは、格好悪くて笑えるな琢磨」

 

 

ぴきっ

 

 

「・・・そうか、そっちがその気なら・・・結城さん」

 

「どうしたの高藤君?」

 

「これを。例のモノだ」

 

「あ、用意できたんだ。ありがとう」

 

 

俺に何か毒舌でも吐くのかと思えば違ったようだ。

にやり、と笑うと結城に通信機のような機械を渡している。

そしてそれを嬉々として受け取る結城。

・・・何故だ?渡してはいけない奴に渡してはいけない物を渡してしまった気がするぞ。

 

 

「あら、何ですのコレ?」

 

「虎徹の位置を常に把握するためのGPS受信機だ」

 

「ちょっと待て、何でそんなものを渡していやがる!?」

 

「以前に結城さんと約束していてな。それにお前はいつどんなトラブルを起こすか分からん」

 

「面白そうですわね。私にも一つ頂けますか」

 

「そうね。私も頂こうかしら」

 

「ふむ、お安い御用だ。二人にも虎徹の分を渡そう」

 

 

姫島とグレモリーにまで俺のGPS受信機を渡しやがった。

こ、この野郎。さっきの笑みはそういう意味かよ。

 

 

「って言うか何で俺のだけなんだよ!?半蔵だっていいじゃねぇか!」

 

「虎徹と半蔵。トラブルが多いのは圧倒的にお前だからな」

 

「今更何を言っているのかしら」

 

「毎週、生徒指導室に連れていかかれるのはどちらか、考えるまでも無いですわね」

 

 

ぐぬぬぬ、事実だけに言い返せねぇ。

結城に姫島にグレモリー、3人が俺の四六時中監視をしていると思うとぞっとしないぜ。

 

 

「心配しなくても虎徹が騒動を起こさなければ使う機会は減っていく」

 

「さらっと難しいことを簡単に言うな」

 

「確かに騒動を起こさない八代君は想像できないもんね」

 

 

こいつら、事実だからって言いたい放題いいやがって。

な、なーに。要は俺がトラブルを起こさなければいいんだろ?

へっ、俺だって静かに過ごそうと思えばそれぐらい簡単にできるっての。

 

 

「虎徹さん」

 

「どうしたディズィー?」

 

「あの旗って何でしょう?」

 

「旗?」

 

 

ディズィーに呼ばれて指差している方を見る。

グラウンドには国旗と都道府県旗、後は校旗や市旗が掲げられている。

しかしその内の一つの旗が駒王フェニックスの旗になっていた。

 

 

「あれはこの町のプロ野球チームの旗だな」

 

「そうなんですか。私知りませんでした!あれ?どうしてプロ野球チームの旗が?」

 

「それは何でだろう・・・な?」

 

 

んん?待てよ?

そういえば昨日の放課後に何処かの学校に忍び込んで旗を入れ替えたような気が・・・

 

 

「いやー、ふしぎだなー。ほんとーになんでだろーな」

 

「どうしたんですか虎徹さん。汗が凄いですよ?」

 

「やー、熱いからな。そりゃ汗の一つや二つ、かくってもんだぜ」

 

「確かに、森の中に比べたらぽかぽかしてますよね」

 

「だろ!?いやー、本当に熱くて困ったな!」

 

 

よし、ディズィーは誤魔化せた!

後はこのまま知らないフリを突き通せば!

 

 

ガシッ

 

 

「八代君」

 

「コテツ」

 

「コテツさん」

 

 

で、ですよねー

 

 

「あわわ、だ、大丈夫でしょうか?」

 

「放っておけ、自業自得だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アテナッ!」

 

「任せてアスナっ!えーいっ!」

 

 

ばしんっ

 

 

「なんのっ!」

 

 

くっ、まさかこんな事になるなんて・・・

試合が開始してから10分、私達のチームは苦戦を強いられている。

ルールが変わったからとは言え、朱乃の試合を見て何とかなるかと思ったけど考えが甘かったみたい。

 

 

「アスナ、次が来るデス!」

 

「う、うんっ!」

 

 

相手コートに入らなければ対戦選手への攻撃を認める。

このルールを深く考えていなかったのがいけないみたい。

既に私達のチームは2人が倒されてしまい4人となっている。

私はフェルちゃんが守ってくれているから何とかなっているけど・・・

 

 

「ちゃんと守るんじゃぞ!イアリ、紅葉!」

 

「・・・分かった」

 

「はいはい。まったく実年齢を考えてよ・・・」

 

「失礼な、わしは17歳じゃぞ」

 

「げ、聞こえてた・・・」

 

「ほれ、お主も傭兵ならば働かんか」

 

「もう依頼料分は働いたと思うけど?」

 

 

あのコートの隅で休んでいる人。

あの人に私達のチームの2人が倒されてしまった。

色々な武器を投げて私達に攻撃して来るのはフェルちゃんがいなかったら私が一番危なかったよ。

 

 

「カッケー!半蔵、お前も出来ないのか!?・・・あれ?半蔵は何処行った?」

 

「そういえば見当たりませんわね。小猫ちゃんと祐斗君もいませんわ」

 

「あら、あっちにいるじゃない。何だか小学生と話しているようだけど・・・」

 

「お前ら、結城さんの応援をしたらどうだ」

 

 

うぅ、さっきの朱乃の試合もそうだけど野次なのか応援なのか分からないよ。

ともかくこっちは人数が少ないんだから頑張らないと。

相手は入学式や朝礼でも見た事がある3年の生徒会長、イングリッド先輩が指揮を執っているみたい。

 

 

「ほんまにこの学園は退屈しませんなぁ」

 

「こころ先輩、そんな暢気に言ってる場合じゃないですよ」

 

「そうは言いはりましてもアテナはん。面白いやないですかぁ」

 

「全く、こころには困ったものね」

 

「あはは、リン先輩は全く応えてないみたいですけど」

 

「当然じゃない。このリン・ベーカーがバレーボールで負けるなんてありえないわ!」

 

 

うーん、敵も味方も個性が強い人が多いなぁ。

って考えている傍からボールが来た!

 

 

「えいっ!」

 

「ナイスよアスナ、こころ!合わせなさい!」

 

「行きますえリンちゃん、えーい」

 

「どりゃーーっ!」

 

 

ずばーーーんっ

 

 

「イアリ、行ったよ!」

 

「ん・・・任せて」

 

 

リン先輩の気合の入ったスパイクだったけど対戦相手の子が何と足で蹴り上げた。

え、バレーって足を使ってもいいんだったっけ?

でも審判の人も何も言わないし・・・

 

 

「でかしたぞ、ほれ早く打ち上げんか!」

 

「分かってますよ、忍び使いが荒いなぁ・・・ほいっと、そしておまけに手裏剣!」

 

「これでどうじゃっ!」

 

 

上からのスパイクとネットの下を潜って巨大な手裏剣が飛んで来た。

わわっ、ま、まずいよこれはっ!?

 

 

「サイコボールッ!」

 

「ありがとアテナ!それっ!」

 

 

ばしぃっ

 

 

「くぅ、惜しいのぅ。これ紅葉、しっかり狙わんか」

 

「でかしたって言ったじゃないですか・・・」

 

 

巨大手裏剣をアテナの超能力で打ち落としてくれたおかげでボールを拾う事ができた。

あ、危なかったぁ・・・あんなのが当たったらタダじゃすまないよ。

 

 

「結城、もっと前に出ろよー」

 

「無茶言わないでよ!?」

 

 

他人事だと思って八代君ったら。

八代君の試合のとき、野次を飛ばしてやるんだから。

 

 

「アスナ、大丈夫デス?」

 

「うん、ありがとうフェルちゃん」

 

 

でもこれじゃあ、その内負けちゃう。

どうにかして現状を打破する方法を考えないと・・・

 

 

「・・・アスナ、ボクは一応不服デスガ、アスナの能力扱いになっているデスヨネ?」

 

「え?う、うん。そうみたいだけど?」

 

 

試合前にお互いが能力や武器を持っているかの確認が行われていた。

私は何故かフェルちゃんの召喚者として認められてしまっていたんだけど、それがどうかしたのかな?

 

 

ぴょんっ

 

 

「そこのオマエタチ、ちょっとの間アスナを頼むデス」

 

「フェルちゃん?」

 

「デス君どうしたの?」

 

「何をいきなり命令してるのよ、この黒いのは」

 

「はぁ、構いまへんけど」

 

 

私の肩から飛び降りたかと思うとフェルちゃんは相手コートへと入っていった。

確かに選手じゃないからルール上は問題ないんだろうけど何をするつもりなんだろう?

 

 

「何じゃ丸っこいの」

 

「・・・何か光ってる」

 

 

フェルちゃんの身体が黄色く光りだしてる。

そしてフェルちゃんの身体が一気に相手コートを埋め尽くす程の大きさになった。

 

 

「アスナを苛めるヤツはボクが許さないデス!」

 

「ちょっ!?」

 

「こ、転がってきおったぞ!?」

 

「よ、避けられない!?」

 

「こんなの相手じゃ依頼料の割りに合わないわよ!?」

 

 

どがーーーんっ!!

 

 

「勝者!魔界大帝フェルナンデス!」

 

「え、誰!?」

 

 

審判とは違う人が突然現れて勝者の名乗りを上げて去っていった。

あれ?これって私達の勝ちでいいんだよね?

何でフェルちゃんの勝ちになってるのかな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、デス様すげーな」

 

「デス様も心なしかすっきりした様子でしたわね」

 

「いくら常識外とは言え、ここまでやっていいのかしら・・・」

 

 

転がっただけで相手チームがボーリングのピンみたいに倒れていったぞ。

後で審判に聞いたが対戦相手を全滅させたのは結城のチームが初らしい。

まぁ普通に考えれば人数が少なくなったところで点を取っていく方が楽だろうからな。

 

 

「さて、半蔵達はこの辺りにいたはずだが?」

 

「あ、あれじゃ無いですか?」

 

「ん?何やってんだあいつら」

 

 

試合前と同じように小学生と何かしているようだ。

近づいていくと話し声が聞こえてきた。

 

 

「見よ!これぞ分身の術でござる!」

 

「おぉ!凄いぞ!増えたぞ!格好いい!」

 

「フェイク・シルエット?それにしては触っても消えませんね・・・」

 

「この先を曲がったところにある喫茶店のバームクーヘンは絶品です」

 

「なるほど・・・今度4人で行ってみます、ありがとうございます」

 

「どうだ貴様、我が騎士とならんか」

 

「あはは。君がもう少し大きくなったら考えておくよ」

 

 

やけに意気投合してるな。

もしかして知り合いだったか?

 

 

「半蔵、木場に搭城も何やってんだ」

 

「殿!」

 

「殿?じゃあコイツがござるの言っていた殿様だな!」

 

「あん?おい半蔵、このチビッ子は何だ?」

 

「チビッ子じゃない!ボクはレヴィだっ!」

 

「貴様、塵芥の分際で殿を名乗るとはいい度胸だ」

 

 

水色の髪をしたアホっぽいチビッ子がぴょんぴょんと飛び跳ねながら絡んでくる。

そして銀髪の無駄に偉そうな態度のチビッ子まで絡んできやがった。

 

 

「二人ともそれくらいで。この子達が失礼しました」

 

「まぁ、別に気にしちゃいねーよ」

 

 

茶髪の礼儀正しいチビッ子が謝って来るが若干イラッと来ただけだし気にするまでもない。

っつーか本当に小学生かと思えるぐらい落ち着いたチビッ子だな。

 

 

「・・・で、もう一人のは何で隠れているんだ?」

 

 

最後の金髪のチビッ子は半蔵の分身の後ろに隠れていた。

人見知りでもするのか、それにしちゃ半蔵の分身の後ろに隠れる意味が分からないが。

・・・はっ!まさか俺の強いオーラを感じ取っているのか。

何て将来有望な子なんだ、この子はきっと将来大物になるぞ。

 

 

「半蔵は精神年齢は小学生だからな。懐かれ易いんだろう」

 

「そういう意味では虎徹も同類ではないかしら」

 

「何だと、グレモリーも似たようなもんだろうが」

 

「そうですわよリアス。五十歩百歩ですわよ」

 

「何でよっ!?」

 

 

これだからグレモリーを弄るのは止められないぜ。

っとと、そうじゃなくてだな。

 

 

「おい塵芥。貴様、我のユーリを見つめるとはいい度胸・・・」

 

 

ひょいっ

 

 

「さっきから小難しい言葉ばかり並べて中二病かチビッ子」

 

「こ、こら何をするっ!離さんかっ!」

 

 

小学生で中二病を患っているとは・・・

こうやって抱えている状態で足をバタバタさせている姿は小学生らしいと言うのにな。

さっきの子とは違ってこっちは将来残念な子になりそうだ。

 

 

「こらー!王様を放せ殿様ー!」

 

「ん?・・・わははは!返して欲しくばこの俺を倒してからにして・・・」

 

「とりゃーーっ!」

 

 

どがっ!

 

 

「ぐはっ!な、何てヤツだ。名乗りをする隙をついてくるとは」

 

「王様大丈夫!?」

 

「うむ、よくやったレヴィ。このままこの塵芥を滅するのだ!」

 

「うん、任せてよ!」

 

「そうはさせぬ!殿に仇名す者はこの半蔵が許さぬでござるよ!」

 

「むむむ、こいつは手強いぞ。でもボクは強いんだっ!」

 

 

半蔵とアホの子が向かい合って唸り声をあげている。

・・・おかしいな、急に小芝居が始まったぞ。

 

 

「何でこうなったんだ?」

 

「最初に始めたのは虎徹さんじゃないんですか?悪者っぽい言い方をしていたじゃないですか」

 

「いいか、ディズィー。魔王の名乗りを邪魔するようなヤツこそが悪者なんだ」

 

「え?」

 

「つまり寧ろ俺が勇者であっちが魔王ってことだな、うん」

 

「人質を取るのは勇者って言っていいの?」

 

「お、結城。試合お疲れさん」

 

 

帰ってくるなり突っ込みをする結城。

苦笑しながらも肩に乗っているデス様を撫でる。

 

 

「うん。フェルちゃんのおかげで勝った気がしないんだけどね」

 

「えっへんデス」

 

「なぁデス様。今度ボーリングに行こうぜ」

 

「ぼーりんぐ?どんなところデス?」

 

「うーん、さっきみたいに邪魔な奴らを倒すゲームをするところだ」

 

「それは楽しみデス!」

 

 

デス様を使えばストライクも簡単に取れそうだ。

 

 

「さて、そろそろ次の場所に向かいましょう。次はタクマだったわよね」

 

「あぁ、そうだな。半蔵、悪いが頼むぞ」

 

「任せるでござるよ」

 

「で、場所は何処だ?」

 

「ふむ。どうやら駒王学園のグラウンドのようだ」

 

 

逆戻りか。まぁ琢磨の試合が終われば昼飯だし丁度いいか。

ん?そういえば木場と搭城の二人はどうするんだろうか。

一般に開放しているとは言え、食堂って使えるのかね。

 

 

「まぁいいや、んじゃ行こうぜ」

 

 




小学生4人組み、出すつもりは無かったのですが、ジャンルが魔法対戦アクションとなっているので出しました。まぁ今後出番があるかは不明ですが。
原作キャラは出せませんし、あまり深く考えるのも面倒ですしね。





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第28話

気づけばゴールデンウィークも終わり前回の投稿から1ヶ月。
おかしいな、モヒカン視聴者の多いMUGENストーリーを1話から見ていただけなのに。

今回から視点が一人分増えています。


 

「ゲームセット!勝者A組!」

 

 

早っ!もう試合終わったのか!

1分も経ってねぇぞ。

 

 

「くくく、はははははっ!圧倒的じゃないか我が作品達は!」

 

「拙者の出番が全然無かったでござるな」

 

 

琢磨のヤツ、ノリノリだな。

ティセとホウオウと新作のロボで相手チームを3方向から狙い撃ちだもんな。

対戦相手が全員戦闘不能って、このルールだからこそ出来る決着だ。

しかし半蔵と二人羽織しながら威張ってもコントにしか見えないぞ。

 

 

「ってーか何だその黒いロボ。初めて見たぞ」

 

「それはそうだろう。最近完成したのだからな」

 

「琢磨、あの光る"どーなつ"は食べられるでござるか?」

 

「単なるエネルギー体だ」

 

「ちなみにこいつは何て名前なんだ?」

 

「X-0型ワーロックだ」

 

 

わーろっく、ねぇ。

またロックが増えるのか。

さすがに3人?もいたら区別がつかないぞ。

 

 

「ティセちゃんもお疲れ様」

 

「あ、ありがとうございます明日奈様」

 

「高藤先輩は世界征服でもするつもりなんですかね」

 

「あはは、さすがにそれは無いと・・・思いたいよ」

 

 

ティセも相変わらずスゲー雷を出すよな。

溜めに時間がかかるみたいだが今回はバレーコート外から撃ち放題だから相手が可哀相に見えてたぜ。

 

 

「親睦会の時にも見たけど本当に強いわね、このホウオウってロボットは」

 

「こんなに小さいですのに恐ろしい性能ですわ」

 

「・・・さっきからボクの方を見ている気がするデス」

 

 

ホウオウも相変わらず脛を執拗に狙う弾を撃っていた。

しかも威力が高いのか相手は必死に防御していた。

 

 

「で、この黒いロックがドーナツ振り回して暴れてたわけだ」

 

「虎徹さん、皆さん大丈夫なんでしょうか」

 

「ん?あぁファウスト先生と水無月先生が連れて行ったから大丈夫だろ。それより、ディズィー」

 

「はい?」

 

「お前の肩、カラスが止まってるけど大丈夫か?」

 

「え?あ、はい。この子はテスタメントさんのカラスですから大丈夫ですよ」

 

 

何でか知らないがカラスに睨まれてる気がしてならないぞ。

俺がディズィーに近づこうとすると羽を広げて威嚇しているし。

 

 

「とにかく、これで午前の俺達の出番は終わりだな」

 

「そうね、そろそろお昼だけれどどうするの?」

 

 

あー、確かに搭城と木場とディズィーは駒王の生徒じゃないからな。

一度どこかで昼食を取ってもらわないと駄目か。

 

 

「むむ?一般の人に公開しているのならば食堂も使えるのではござらんか」

 

「いえ、どうやらグラウンドなどの試合会場があるエリアだけで食堂は駄目のようですわね」

 

 

姫島がそう言って遠くにある掲示板を見ながら答える。

・・・っつーかアレが見えるのか。どれだけ視力高いんだ、マサイ族かお前は。

 

 

「うーん、どうしよっか・・・あっ」

 

「どうした結城さん」

 

「あそこにいるのって小母様?」

 

「あん?」

 

 

何かに気づいた結城の方を見てみれば確かに俺のおふくろの姿がある。

他にもライザーさん、ラグナさん、ソルさんも一緒だ。

ってことはラグナさんのバイト先見つけたのか?

 

 

「・・・何故ソルがココに来るティセ」

 

「わ、私も分かりません~」

 

「あら、タクマさんとティセちゃんのお知り合いですか?」

 

「赤いヘッドギアをした男だけだがな・・・いや、あの男は」

 

 

ん?琢磨の奴、ソルさんと知り合いだったのか。

気にはなったが、おふくろ達が近づいてくるのを見てそちらに声をかける。

何でラグナさんはげんなりとした顔をしているんだ?

 

 

「おーっす。ラグナさん、どこでバイトする事になったんだ?」

 

「色々と探したけど駄目だった」

 

「リーアランドのお化け屋敷なんて結構いいお給料がもらえたのにラグナ君たらすぐに出て行っちゃうんだもの」

 

「あー、いや、まぁ・・・」

 

 

やけに歯切れが悪いな。

何があったんだ?

ライザーさんは苦笑いだしソルさんは・・・何故かこちらを睨みつけているし。

いや、正確には俺じゃないのか?無愛想な顔ぐらいしか見た事無いからよく分かんねぇや。

 

 

「ははは、まさかラグナがお化けがこわ・・・」

 

「べべべ別に怖くねーよ!何言ってやがんだテメーは!」

 

「はいはい、分かったよ」

 

 

何だ、てっきりお化けが怖いかと思ったが違うのか。

だとすると暗所恐怖症なのか。

 

 

「それで、虎徹。そっちは試合終わったの?」

 

「そこそこは。これから昼休みを挟んで、グレモリーの試合があって最後に俺と半蔵の試合だな」

 

「そう。それじゃあ何処かで食べて来ようかしら」

 

「あ、それならこいつらも一緒に連れて行ってくれよ」

 

 

俺は木場、搭城、ディズィーの3人をおふくろの前に連れてきた。

おふくろは笑顔で任せなさい、と頷く。

ディズィーは初対面だからかオドオドとしていたが、おふくろに任せておけば問題ないだろう。

 

 

「ふむ、皆。すまないが僕も一緒させてもらおう」

 

「ついでにこのロボットを撤去して欲しいデス。さっきからボクを狙っている気がしてならないんデスガ」

 

「デフォルトでデータベースに無い生物は確保するように組んでいるからな」

 

「明らかにボク狙いデス!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、何処に食べに行こうかしら」

 

「天玉うどん」

 

「ラグナ、今の時間は開いてないって」

 

「ふむ・・・ソル。あの銀髪は何者だ?」

 

「あ?見ての通り死神の偽者だ」

 

「確かにデータベースを確認しても顔以外は一致しています」

 

 

相変わらず八代先輩の交友関係は謎です。

ラグナと呼ばれた男性とソルと呼ばれた男性。

どちらも魔力とも妖気とも異なる力を感じます。

何でも、お二人ともライザーさんと同じく八代先輩の家に居候中だそうですが。

 

 

「とても敵いそうにないです」

 

「あはは、それが分かっただけでも成長したと思うよ」

 

 

祐斗先輩も苦笑を漏らすしかありませんか。

夜中にティナ先輩に鍛えられていると言っても私達は悪魔でも中級に届くか届かないかと言ったところ。

それでも敵わないと感じるということは上級悪魔レベルでしょうか?

 

 

「でもラグナさんはよく分からないね」

 

「・・・弱っているというか欠けている?感じがします」

 

「欠けている。確かにそんな印象を受けるよ」

 

 

ソルさんは、まるでドラゴンに相対したかのような感覚でした。

・・・いえ、実際にドラゴンに出会ったことは無いんですが。

一方でラグナさんは何か欠けていて一般人のように見えます。

悪魔の私達では感知できない隠し方をしているのかもしれないですね。

 

 

「うーん・・・」

 

「?どうしたんですかディズィーさん」

 

「いえ、あのソルさんと言う方なんですが」

 

「ソルさんがどうかしたんですか?」

 

「どこかで見たような・・・」

 

「カーッ!」

 

「きゃっ、どうしたの?」

 

 

後ろを歩いているディズィーさんがソルさんを見て何か思い出そうとしたときでした。

ディズィーさんの肩に止まっているカラスが突然騒ぎ出しました。

・・・そういえば何でカラスがいるんでしょうか。

それよりも先ほどまで感じ取る事ができなかった力を感じます。

 

 

「コイツは・・・スゲェな」

 

「ふむ、僕も譲り受けただけで原理は分からんがな」

 

 

力の発生源はラグナさんです。

先ほどまではしていなかった赤いブレスレットを右腕にしています。

会話の流れからして高藤先輩が渡したんでしょうか?

 

 

「とにかく、そのブレスレットがあれば大気中の魔力とか言う怪しげな気を擬似的な魔素として変換するらしい」

 

「擬似的な魔素?魔素とは違うのか」

 

「術式の変換効率が悪い。尤も、魔力がどういったものか僕は判断できないので何とも言えないがな」

 

 

さらっと、とんでもない事を言っていませんか高藤先輩。

既に科学の領域を超えているとしか思えません。

魔力を変換して別のエネルギーに変換するなんてマジックアイテムでしょうか。

 

 

「お前、その目と腕は魔素で動いてんのか」

 

「あぁ、まぁそんなもんだ」

 

 

ラグナさんから力を感じてからソルさんの目つきが更に鋭くなってきました。

まさか一戦始めるとか言いませんよね。

 

 

「術式って言ってたな。法力とは違って階層都市にある魔素じゃねぇと発動できない代物じゃなかったのか」

 

「だから魔力を擬似的に変換しているんだ。あくまで擬似的だから魔素による中毒は一切無いぞ」

 

「変換をそのブレスレットでか?だとすると魔力の吸収と魔素への変換の複合術式で・・・いや、それだと足りねぇな」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「祐斗先輩、説明をお願いします」

 

「ちょっと僕にも分からないな」

 

「ソルさん、脳筋かと思ったんですが違ったみたいですね」

 

「こらこら、そういう事は口に出しちゃ駄目だよ」

 

 

そういえばティナ先輩からは強くなる方法は聞きましたが知識のほうはさっぱりでした。

本当に私の知っている人間界かと思うくらいに変わりすぎていて分からない事だらけです。

今度ティナ先輩に人間界についても聞いた方が良さそうですね。

 

 

「このままでは八代先輩や服部先輩をバカにできませんし」

 

「何かいったかい?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 

そういえば先ほどから後ろを歩いているディズィーさん。

お会いしたのは今日が初めてですがどこの学校の方なんでしょうか。

私達は今日は創立記念日なので休みなので問題ないですがディズィーさんは?

ま、まさか私達と同じ中学生?

いえ、そんなはずはありません。

部長や朱乃先輩といい勝負ができる戦闘力を持っているのですから。

き、きっと違う高校の方に違いありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な、何だか皆さん仲がいいですね。

私は皆さんとは初めてお会いしたので後ろから着いて行くことしかできません。

それに、あのソルさんと言う人・・・何故私のほうを睨みつけているんでしょうか!?

わ、私は何もしていませんよ。だからネクロとウンディーネも落ちついて!

 

 

「そういえば貴女とは初めてよね。虎徹の知り合い?」

 

「ふぇ!?あ、は、はい!ディズィーです!虎徹さんは私の初めてのお友達で、その・・・」

 

「ふふっ、全くうちの馬鹿息子は遠慮ってものを知らないから大変でしょ」

 

「そ、そんな事ないです。確かにちょっと強引だったかもしれないですけど・・・」

 

 

そのおかげで私にもお友達ができましたし。

虎徹さんだけじゃなくてナコルルさんや半蔵さん。

一気に3人もお友達ができたときは夢じゃないかと思ったくらいです。

 

 

「ん?もしかして森に住んでるって子か?」

 

「あらライザー君。知ってるの?」

 

 

確かライザーさん、でしたっけ?

ここにいる中では虎徹さんのお母さんと一番親しそうな方です。

 

 

「おふくろさんも聞いていたはずですよ。この間の夕飯に虎徹が言ってたじゃないですか」

 

「あー、そういえば言っていたわね。ドラマに夢中で半分聞き流していたけど」

 

 

ど、どんな事でしょう。

虎徹さんが私の事をどう言っていたのか・・・

もしかして悪い事でしょうか!?

いつもテスタメントさんにも苦労をかけてばかりですし。

 

 

「そう、虎徹の言っていた森さんってディズィーちゃんの事だったの」

 

「森が苗字って事はハーフなのか?」

 

「・・・え?」

 

 

えーっと確かに私は人とギアのハーフですけど。

恐らくお二人が仰っているのは違うハーフ、ですよね。

この場合なんと答えたらいいんでしょうか。

 

 

「親戚の方と二人で暮らしているとか」

 

「趣味が二人羽織、いや三人羽織だったか?」

 

「違うわよ骸骨と水の妖精の寸劇をしてくれるのよ」

 

「あれ、そうでしたっけ?」

 

 

虎徹さんが私の事をどう話したのか分かったような分からないような・・・

とにかく嫌われてはいないようなのでほっとしました。

 

 

「それで虎徹のことはどう思ったのかな?」

 

「はい?どうってとっても明るくて優しい方です」

 

「ほうほう、それじゃあ虎徹にもチャンスはあると・・・」

 

「何のチャンスですか?」

 

「・・・あぁ、うん。気にしないで」

 

 

ライザーさんの質問の意味が分からないので尋ねたのに諦め顔になってしまいました。

チャンスって何だったんでしょうか?

 

 

「確かに虎徹の言う通り純粋な子だ、と言うよりも色恋を知らないって感じだな」

 

「駄目よライザー君。ディズィーちゃんにも選ぶ権利はあるんだもの」

 

「おふくろさん、本当に虎徹に関しては厳しいですね」

 

「当たり前じゃない。可愛い一人息子ですもの。そうだ、ディズィーちゃんはお料理は得意な方かしら?」

 

「お料理、ですか・・・」

 

 

木の実や野菜を使ったサラダぐらいしか作った事は無いです。

他はテスタメントさんが用意してくれていましたし。

 

 

「いえ、得意ではないです」

 

「そう、興味があったら私が教えてあげるけど?こう見えてもおばさん、お料理は得意な方なのよ」

 

「おふくろさんのレベルで得意な方って・・・それじゃあ大多数が得意じゃないですよ」

 

 

お料理・・・そういえば以前に呼んだ本に友達を呼んでパーティーをするって話が・・・

はっ!私もお料理を習ったら虎徹さん達を招待してパーティーができると言う事では!?

凄いです、とても魅力的です。これはぜひとも教えて頂かなければ。

 

 

「は、はい。お願いします!」

 

「カーーッ!カーーッ!」

 

 

突然鳴き出したって事はテスタメントさんは反対って事?

そんな、どうして・・・

 

 

「・・・へぇ、立派なカラスを飼ってるじゃないか。おーい、ソルー」

 

「何だ?」

 

「大体捕捉したから捕まえに行かないか?」

 

「・・・いいだろう。悪ぃが後で合流する」

 

「熱心な事だな、ほどほどにしておけよソル」

 

 

え?一体どうしたんでしょうか。

ライザーさんがソルさんに声をかけて別の道へと歩きだしました。

 

 

「じゃあ、ちょっとストーカーを懲らしめますか」

 

「この感覚、アイツか。何でこんなところにいやがる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~いトラちゃん達、そっちはどうだった?」

 

「お、先輩。今のところ順調っすよ」

 

 

昼飯を食っていると先輩が姿を現した。

そういえば先輩の方はどうだったんだ?

 

 

「ティナ先輩の方はどうでした?確かお昼前に試合だったんですよね」

 

「もっちろん快勝よ。ただ場所が遠かったわ」

 

「あら、どちらでしたの?」

 

「ルガール運送のグラウンドで試合だったわ」

 

「何でまたそんなところで」

 

「何でも社長が気前よく貸してくれたらしいわね」

 

 

さすがルガール社長、太っ腹だ。

アレで俺を勧誘しようとしてこなければなぁ。

会う度に、君達親子の力が欲しい、なんて言って来るんだもんな。

俺はそれほど力持ちじゃないから運送の手伝いは出来そうにないんだけど。

 

 

「そういえばリアスちゃん。リアスちゃんの対戦相手はソーナちゃんみたいね」

 

「え、ソーナが?」

 

「えぇ、ここに来るときに偶然会って聞いたんだけどね。張り切ってたわよ」

 

「そう・・・なら私も全力で相手しないとね」

 

 

ソーナ?

確か・・・グレモリーの幼馴染だったっけ?

こいつの幼馴染って事は同じく弄り甲斐のある奴か、逆にグレモリーを弄って楽しんでいたかどっちかだろうな。

 

 

「姫島、そのソーナってやつはどんな奴なんだ?」

 

「ソーナさんですか?とても真面目な方ですわ」

 

「なるほど。となると大自然みたいに弄ると楽しい感じか」

 

「既にソーナさんの行く末が見えた気がしましたわ」

 

「タクマに狙われないだけまだ安心デス」

 

 

よし、まずはグレモリーの幼馴染を見てどう弄るか決めよう。

色々と聞いてからよりも第一印象で決めた方がいい場合が経験上多い。

大自然と初めて会った時も何か人生楽しんでないような顔してたからな。

それが今じゃ立派なツッコミ役に成長してくれて俺は嬉しいぞ。

 

 

「あれ?リアスが対戦するクラスってD組だよね」

 

「えぇ、そうよ」

 

「と言う事はナコルルも同じクラスなんだ」

 

「そういえばナコルルちゃんもソーナちゃんの隣にいたわね」

 

「ナコルル・・・コテツの被害者ね。ソーナと一緒にいたなら同じチームの可能性が高いわ」

 

「被害者とは何だ被害者とは」

 

「トラちゃんのおかげで人生変わったって事よ」

 

「何だ褒め言葉か。照れるじゃねーか」

 

 

そういう事ならもっと褒めても構わないぜ。

俺は褒めて伸びる子だからな。

 

 

「ティナ先輩、そんな事言うから八代君が調子に乗ってるじゃないですか」

 

「ふふん、俺に任せておけば人生楽しく送れる事間違いなしだぜ」

 

「さすが殿でござる!」

 

「駄目だわ。コテツのストッパーであるタクマがいないからつけあがるだけね」

 

「タクマさんもそれほどストッパーとしての役割は果たしていないと思いますけど」

 

「ただ自分の知識欲に正直なだけデスヨ」

 

「うちの部員は皆正直に生きるのがモットーなのよ。アスナちゃんも正直になっていいのよ?」

 

「はい?正直なつもりですけど?」

 

「うーん、これは手強いわね。何かきっかけがあればいいんだけど」

 

 

むむ、先輩が何か楽しそうな事を考えていそうな気がするぜ。

話の流れからして結城関連か。

結城はおふくろと裏で繋がっていやがるからな。

ここは一つ先輩には頑張って欲しい。

 

 

「そういえば殿」

 

「ん?」

 

「拙者達の試合では何か作戦はあるのでござろうか」

 

「あー、ガーネットとウィンド達だったな」

 

 

そうだよな、今までの試合を見るとかなり危険な試合だもんな。

そこにあの凶暴なガーネットが相手となると・・・死ねるな。

しかもウィンドもいるんだよな。

後から思えばゲーニッツさんの教会って暴風教会で有名なトコじゃねーか。

となるとウィンドも風を使うって事だよな。

他にもメンバーはいるだろうし、この学園の事だ。

どうせ碌でもないメンバーだろう。

 

 

「よし、ソーナには負けないわよ!」

 

「へっ、例え相手が強敵でも勝つ!作戦は無くても勝つ!」

 

「あー・・・リアスちゃんにトラちゃん?意気込んでいるところ悪いんだけど」

 

 

折角俺達が試合に向けてテンションを高めていたと言うのに先輩に水を指される。

うーむ、こういう時は先輩も一緒に盛り上がるタイプなのにどうしたんだ?

 

 

「何よティナ」

 

「うん、二人とも対戦相手が変わるのよね」

 

「「・・・・・はい?」」

 

 

対戦相手が変わるって・・・どういうこった。

どこかで組み合わせに問題でもあったのか?

 

 

「ほら、私達って一応全勝してるじゃない?」

 

「え?・・・・あ、そういえば」

 

「確かに皆さんのチームは勝っていますわね」

 

「でね、タクマちゃんが対戦相手を秒殺しちゃったらしいじゃない」

 

「ぬ?既に知っておられたでござるか」

 

「うん、実は私のチームも秒殺しちゃったのよね。いやーグローリアちゃんが張り切っちゃって」

 

 

ん?って事は先輩と琢磨が秒殺したから対戦相手が変わったって事か?

でもどうして俺とグレモリーの試合なんだ?

 

 

「私もテンション上がっててね。つい、リアスちゃんとトラちゃんはもっと余裕ですよーって審判の先生に言っちゃって」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「そうしたら二人のチームの対戦相手が教師チームになっちゃった♪」

 

「つまりはティナのせいデスカ」

 

「デス様、違うのよ。ついぽろっと言葉に出ちゃっただけで他意はないのよ」

 

「ますます信憑性が薄れるでござる」

 

 

え、じゃあ俺はこの学園の猛者達を上から抑える事のできる奴らが相手にするって事か?

ガーネットやウィンド達以上の相手を?

 

 

「・・・なんて事してくれたのよティナ!!」

 

「だってその方が面白、げふん、わざとじゃないのよ」

 

「今、本音が漏れましたわよ」

 

「・・・ふっ」

 

「コテツ?どうしたデス?」

 

「ふははははっ!えーいこうなったらやってやろうじゃねーか!」

 

「や、八代君?」

 

 

教師が相手?上等だ!

所詮はバレーだ!何とかなる!

 

 

「どんな相手でもかかってきやがれってんだ!」

 

「殿がそう言われるならば拙者は何処までもお供するでござるよ!」

 

「それでこそトラちゃんにハンゾーちゃんよ!」

 

 




ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
ランセレ神の抽選  P3HERO

「タナトス!」

ザシュッ

「殿!見るでござる!死神でござるよ!」

「本当だ、あの仮面といい剣といい漫画で見た事があるぞ!」

「ぜひとも卍解と叫んでくだされ!」

「・・・どうでもいい」



P3主人公はP4U2で参戦しないかなぁ



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第29話

かなり間が空きました。

ペルソナQを3周、閃の軌跡を3周もすれば時間が経つのも早いはずです。
まぁ、今度は閃の軌跡Ⅱが発売されるのでまた間が空くかもしれませんが。




昼食も終わり外に行った連中と合流する。

本来ならグレモリー達と大自然達の試合だったはずなんだが、

教師チームと試合と言う事で両チームは隣り合ったコートで話をしているようだ。

が、どうやらまた一人知り合いが現れたようだ。

 

 

「テスタメントさん?あんた何でそんなにボロボロなんだ?」

 

「・・・ふん、私はディズィーが心配だっただけだ」

 

 

いや、全然答えになってねーよ。

ソルさんとライザーさんが連れてきたのは分かるが何故そんな姿なのかさっぱりだ。

ディズィーはテスタメントさんの姿を見て驚きオロオロしている。

まぁ家族みたいな人がボロボロになっている姿を見れば誰だって驚くな。

 

 

「あら、教師の方が来たみたいですわよ」

 

「お?こりゃまた凄いメンバーだな・・・ってアレ?」

 

 

姫島の言葉に視線を向ければコートに向かってくる教師陣の姿。

あー、ファウスト先生と壬無月先生と教頭がいるじゃないか。

長身の三人がいると結構不利かもな。あ、でも教頭以外は大自然達のコートに行ったな。

そして教師陣の中に混じっている俺が疑問に思う人もいた。

 

 

「ラグナさん、何してんの?」

 

「いや、何かいきなり雇われてな」

 

 

ガシガシと頭をかきながら困惑したように言うラグナさん。

雇われたって事はラグナさん教師やるのか。

教員免許持ってたのか?いや、まぁ校長が校長だし気にしたら負けだな。

 

 

 

「ふふっ。校長先生も話の分かるいい人で助かったわ。在学中の頃と変わりないみたいだし」

 

「校長が・・・いい、人?」

 

 

お袋の喜ぶ声に思わず言葉に詰まる。

短い言葉の中に突っ込みどころが多すぎる。

お茶目な悪戯をしただけで分身を飛ばしたり瞬間移動して踏みつけてくるような緑軍人がいい人?

いや、そもそも人なのかあの緑。

それにお袋がここの生徒だったなんて初耳だぞ。

 

 

「全く校長にも困ったものだ」

 

「あらいいじゃない。楽しみがないとつまらないわ」

 

「っ!?」

 

 

最後尾を歩いてきた禍忌教頭とモリガン先生。

そんな二人を見てか隣にいた姫島が驚きに目を見開いていた。

 

 

「どうした姫島」

 

「・・・近くで見て分かりましたが教頭先生はオロチ様と同じ存在(地球意思)ですわ」

 

「おろちんと同じ存在?」

 

 

校長や他の先生の無茶ぶりを一手に引き受ける真面目な先生って感じだけどな。

俺の悪戯に真っ先に怒るのがヨハン先生と教頭の二人だし。

しかしまさか教頭が同じ存在(中二病)だったとは・・・

 

 

「それにモリガン・アーンスランド。三大貴族の一人が何故ここに・・・」

 

 

ふむ、どうやらモリガン先生は海外じゃ有名なお嬢様のようだな。

俺の悪戯を推奨してくれる気さくで話し易いイメージがあるんだが。

まぁ服装は胸の谷間が見えたり下着が見えそうなくらいミニスカートでエロいけどな。

 

 

「リアス!頑張って!」

 

「ふぁいと、でござるよ!」

 

「顔面セーブだ!顔面セーブするんだグレモリー!」

 

「アスナとハンゾーはいいとして、コテツ!何を期待しているのよ!」

 

 

結城と半蔵が応援していたので咄嗟に俺も応援をしてやる。

しかしグレモリーには不服だったようだ。

折角応援してやっているのに何て態度だ。

 

 

「トラちゃん。リアスちゃんは先生方をこてんぱんにやっつけるから心配しなくても大丈夫よ」

 

「へぇ。面白そうじゃない、グレモリーだから一層期待しちゃおうかしら」

 

「ティナも煽らないで!?モリガン先生もやめてください!」

 

 

どうやら相手陣営にばっちり聞こえていたようだ

グレモリーにしてはやけに低姿勢だな。

モリガン先生に苦手意識でもあるんだろうか。

 

 

「部長、勝てますかね・・・」

 

「どうだろうな。グレモリーさんのチームも一筋縄では行かないようなメンバーだが」

 

「そういえばケイの知り合いが参加してるって言ってたな。どの人だろう?」

 

「鞭や剣を持っていたりと多様スギデス」

 

 

確かに教師陣だけじゃなくてグレモリーのチームも面白そうなメンバーが多いな。

コート内で定位置につく教師チームを油断無く見ている。

 

 

「グレモリーさん、始まりますよ」

 

「そ、そうね。悪いわねヒビキ」

 

「いえ、先輩方の足を引っ張らないよう頑張りましょう」

 

 

グレモリーに声をかけた子は俺達と同じ1年生か。

刀を持っているって事は、かえ・・・ロックと同じ剣士か?

いや、意表をついて多種多様な武器で戦うかもしれないな。

 

 

「それではこれより試合を始めます。準備は宜しいですな?」

 

 

審判の人が出てきた。

何であの人、全身黒い格好なんだろう。

確か裏方の黒子だっけ?

審判してるんだから裏方じゃないだろうに。

 

 

「いざ尋常に・・・勝負!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ人の持つ可能性見せてみるがいい!」

 

「えっ!?」

 

 

試合開始と同時に教頭先生の姿が全身紫色へと変化する。

まさか魔族!?いえ、それにしては違うような・・・

それに先輩方も平然としているし。

 

 

「こ、これはっ!?」

 

 

同じチームのヒビキが驚愕の表情となるのを見て若干安心する。

そ、そうよね。幾らこの学園に異能力を持っている人間が多いとは言ってもおかしいわよね。

 

 

「一瞬で姿を変えるとは教頭先生は手品師ですか!?」

 

「ちっがーーうっ!」

 

 

そこじゃないでしょ!?

驚くところはそこなの!?

 

 

「落ち着きなさいリアス。響も・・・来るわよ!」

 

「っ!?」

 

 

ウィップ先輩の声で身構える。

モリガン様、いえモリガン先生がジャンプレシーブと共にボールがこちらのコートへと向かってくる。

速度は平凡、そ、それもそうよね。

三大貴族と言えど人間界に来て公衆の面前で力を振るうなんて真似は・・・

 

 

「ソウルフィスト!」

 

「躊躇もなく振るって来た!?」

 

「うわっと、全く飛び道具なんて羨ましいたら無いわねっ!」

 

 

アオバ先輩が魔力の塊を避けてボールを拾う。

そのボールを私は慌ててネット際に向けてトスをする。

先ほどの攻撃威力は絞っているけど一般人に当たったらどうするつもりだったのかしら。

私は魔力塊の向かった背後をちらっと見てみる。

 

 

「モグモグ。中々の味デス」

 

「何!?食べられるのかデス様!?よし、じゃあ俺も」

 

「こら虎徹!拾い食いするように育てた覚えは無いよ!」

 

 

さすがはデス様と言うべきか吸収してしまっていた。

そしてコテツも真似しようとしてお母様に怒られている。

何をしようとしているのよコテツは。

そしてコテツのお母様、ツッコミどころが違います。

 

 

「行きなさい響!」

 

「承知!」

 

 

視線を戻すとウィップ先輩に答えてヒビキがスパイクを打つ。

それを受けようとするのは見るからにやる気の無さそうなラグナ、だったかしら?

ライザーの知り合いのようだけど新入りの先生がどう動くかしら。

 

 

「雇われたと思ったらいきなりお遊戯かよ・・・」

 

 

パンッパンッ!

 

 

「うおっ!?」

 

 

不満を溢しながらボールを拾おうとしたところへウィップ先輩の威嚇射撃がラグナの足元へと撃たれる。

それを避けたもののボールは相手コートへと落ちた。

よしっ、まずは1点ね。

 

 

「あっぶねーなっ!何しやがる!」

 

「新人教師とは言えルールを理解していないのなら引っ込みなさい」

 

「何だと?」

 

「そういえばルール説明はまだだったわね」

 

 

モリガン先生が手短に説明する。

相手は新人教師とは言え、あの無骨な大剣を見る限りあの人も一般人じゃないことは分かる。

本当にどうなっているのよ人間界は。

 

 

「へいへーい、ラグナさんビビってる!」

 

「どうしたラグナ、その剣は飾りかー!」

 

「うぜぇ!外野は黙ってやがれ!」

 

 

コテツとライザーが野次を飛ばしてしっかりと反応している。

どうやら短気のようね、ウィップ先輩の言葉にも反応していたようだし。

 

 

「さーてこの調子でガンガン行きましょ」

 

「あらあら、どうするの教頭先生?」

 

「ククク、まだ始まったばかり。これからだ」

 

 

・・・教頭先生あんなキャラだったかしら?

もっと落ち着いた紳士な人だったと思うけど。

姿が変わると性格も変わるのかしらね。

とにかく今度はこちらからのサーブ。

 

 

「行くわよ!青葉サーブ!」

 

「ちっ、つまりはこういう事だろ。おらぁっ!」

 

 

バシィッ!

 

 

アオバ先輩の強烈なサーブをラグナ先生が素早く前進して高くアッパーで打ち上げる。

他の試合を見ても思ったけどボールに攻撃するなんて違和感しかないわ。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ラグナ先生とは別の白髪の先生がスパイクを打つ。

鍛え上げられた身体に片目からは赤い光を放っている。

空手着を着ているけど見た事ない先生ね。誰かしら?

 

 

「任せなさい!」

 

「させるかよ、デッドスパイク!」

 

「ふふっ、こちらもね。ソウルフィスト!」

 

 

ウィップ先輩に向けて二人の同時攻撃。

こうなったらっ!

 

 

「片方は任せて下さい!」

 

 

魔力を込めて放つ。

消滅の魔力を帯びた弾丸はモリガン先生の魔力を何とか無力化させた。

さすがに力の差が有りすぎるのか一方的に消滅は無理だったみたい。

後はもう一方だけど・・・

 

 

「飛び道具で邪魔してくるなんて・・・この、外道がああぁぁぁっ!!」

 

 

えっ、そういうルールのはずでしょ・・・

と言うか先に攻撃したのはウィップ先輩じゃ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい、何だよあの拳銃は。事象兵器(アークエネミー)か!?

ったく、この国はどうなってやがる!?

階層都市よりも面倒な奴らばかりじゃねぇか。

何でたかがバレーでこんなうぜぇ事しなくちゃならねぇんだ。

 

 

「ちっ、うぜぇな」

 

 

いくら天玉うどんのためとは言え、割りに合わないぜ。

それにしてもこの腕輪、何だってんだ。

出力は低いとは言え魔素と認識しているのか魔道書も動いてやがる。

こんなモン作りそうなところと言えば第七機関だろうが・・・

ちっ、こんな事なら外の世界についてもう少し師匠に聞いておくんだったぜ。

 

 

「あちらのコートも面白い事になってるわねぇ」

 

「あれは面白いというか悲惨って言うんだよ」

 

 

無駄にデカイ壬無月、とか言う奴が剣を下から上へと振り上げる。

それだけで衝撃波が発生しネットの下を潜り抜けて相手コートへと攻撃していく。

そしてファウストとか言ういかにも怪しい紙袋を被った奴は上から色々なものを投擲して相手コートへと落としている。

・・・幾らなんでも隕石を降らせるってのはどうなんだ。

他の教師陣は逃げ惑う生徒達を楽しそうに見ているだけで何も言わねぇし。

 

 

「キャーッ!」

 

「あぁっ!蒼那がやられたっ!」

 

 

一人ひとりと生徒が脱落していく。

これは向こうが終わるのも時間の問題だな。

それはこちらのコートも同じだが・・・

 

 

「ハハハハハッ!どうした、もっと抗ってみせるがいい!」

 

「ちょっ!さすがに反則でしょっ!?」

 

「くっ、ボールの軌道が見えません」

 

「打ち返しても戻ってくるなんて卑怯よ!」

 

 

教頭が猛威を振るっていた。

ボールを空間移動させ相手コートへとそのまま送り返している。

しかも出現するのは相手チーム全員の死角となっている場所や中間地点と絶妙な場所へだ。

まぁおかげで俺達がこうしてのんびりとできるんだから文句は無いが・・・

 

 

「さすがに勝った気がしねぇな」

 

「ルール上問題ないからいいのよ」

 

「うむ」

 

 

ルールを教えてくれたモリガンとほとんど喋らねぇズィルバーのおっさんが楽観的に言う。

少なくともモリガンは生徒達の慌てようを見て楽しんでいるのは分かる。

 

 

「くっ、そこっ!」

 

「魔力弾!?ヒビキ、それはフェイントよっ!」

 

 

気づけば攻撃も混じっている。

阿鼻叫喚な相手コート、一方で教頭は本当に楽しそうだな。

こんなワンサイドゲームじゃ外野も面白くは・・・

 

 

「今だグレモリー!顔面からぶつかっていけ!」

 

「そっちは囮でござるよ!」

 

「規則性があるようだが上手く隠しているな。何かに使えるかもしれん、ティセ解析しておけ」

 

「部長、頑張ってください」

 

「ほら、後ろですわよ」

 

「あ、上から魔力弾がきますよ部長」

 

 

駄目だあいつら、完全に楽しんでいやがる。

むしろ虎徹達が対戦した方がよかったんじゃねぇのか。

 

 

「やはり人間は危険だ!帰るぞディズィー!」

 

「ま、待ってくださいテスタメントさん!きっと何か理由があるはずです!」

 

「生徒だけじゃなくて教師までこんなのかよ・・・へヴィだぜ」

 

 

よかった、まだマシな奴がいたか。

とは言え一般人なのがディズィー、だったか?その女だけってのもどうなんだ。

賞金稼ぎのソルに見るからに怪しい男。

あんなのと俺は同類なのか・・・

 

 

「あら、皆楽しそうね。私ももう少し若ければ参加したのに」

 

 

いや、さすがにあんたは無理だ。

虎徹の母親だけあってかこの試合の危険さに全く気づいていない。

 

 

「ったく、階層都市の基準がおかしいのかこの町の基準がおかしいのか・・・」

 

「あら、他の学校でも似たようなものだけど?」

 

「階層都市に帰りたい・・・」

 

 

これならまだタオに絡まれてる方がマシだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピーーッ!

 

 

「試合終了!勝者、教師チーム!」

 

 

うん、まぁ分かってた。

けどグレモリーのチームも点を取っていたんだから健闘した方だ。

っつーか教頭の出鱈目な強さは何だ。

やっぱり、おろちんと同じで中二病だから強いんだろうか。

 

 

「いやー面白かった。グレモリーの逃げっぷり見たか?」

 

「ふふっ、あんなに慌てているリアスを見て心が躍りましたわ」

 

「どこが面白かったのよ!こっちは必死だったのよ?!」

 

「まぁまぁリアス。でも惜しかったよ」

 

「何処がよ。こっちは全員で追いかけてるのにあっちは教頭一人で余裕だったじゃない」

 

 

結城が宥めようとするがやはり悔しかったようだ。

グレモリーは相当な負けず嫌いなのは知っていたが教師相手でもとはな。

 

 

「ふっふっふっ、まぁ今度は俺達が勝つから見てな」

 

「本当でしょうね。教頭先生だけじゃなくて他の先生も十分強かったわよ」

 

 

俺の自信満々な言葉に疑わしい視線を向けてくるグレモリー。

俺だって何もしなかったわけじゃない。

それに試合会場は俺達の母校、作戦なんて山ほどあるさ。

 

 

「半蔵、琢磨。去年のトラップはまだ残ってたよな?」

 

「うむ。卒業式に大量に使ったとは言えどグラウンドの罠はまだ残っているはずでござる」

 

「そうだな。いざとなれば屋上からグラウンドに向けてのミサイルも隠したままだ」

 

「よし、後は中学校の奴らに連絡を取ってタイミングを合わせるか」

 

「うーん、でもムカイ先生達が見つけていたりしないかな」

 

 

む、確かにその可能性はあるな。

あの岩石教師め、物理的にトラップを壊そうとするからな。

 

 

「とても試合の話をしているとは思えないデスネ」

 

「ふふっ、コテツさん達の中学時代が目に浮かぶようですわ」

 

「まぁ、他所の中学でも話が伝わるくらいですからね」

 

「本当にどういう学生生活をしていたのよ・・・ティナもいたのよね?」

 

「んふふ~、それはもう私達にとって面白おかしく過ごしたに決まってるじゃない!」

 

「先生たちの苦労が目に浮かぶわ・・・」

 

 

んん?そういえば俺達の中学で何か忘れてはいけない何かがあった気がするんだが・・・

何だっけな?

 

 

「どうした虎徹」

 

「いや、なーんか忘れてる気がしてな」

 

「ぬぅ、何でござろうか。大抵の事は卒業式にやりきったはずでござるが」

 

「あれだけやってまだ足りなかったの八代君」

 

 

まぁ今思い出せないって事は大した事じゃ無いはずだ。

とにかく今度は俺達の通っていた中学校で試合だ。

先生達と話をしているお袋は場所知っているからいいとして。

 

 

「おーい、次の試合会場に向かうから着いて来てくれー」

 

 

ライザーさん、ディズィー、ソルさん、テスタメントさんに声をかける。

ラグナさんは早速教師としての仕事が待っているらしい。

 

 

「悪いが俺はそろそろ行くぞ」

 

「ん?いいけど何か用事でもあるのかソル?」

 

「結局目当てはどちらも空振りだったようだからな。次の依頼を探す」

 

 

そういえば賞金稼ぎって言ってたな。

ソルさんの狙っていた賞金首ってどんな奴らだったんだろうか。

きっと厳つい顔をしたいかにも悪人みたいな顔なんだろう。

 

 

「私も帰るぞ。さぁ、ディズィーも行こう」

 

「え、私はまだ・・・」

 

「おいおい、肝心のコテツ達の試合を見ないでどうするんだよ二人とも」

 

「ふん、私はニンゲンとつるむ気は無い」

 

「カラスでストーカーしていたくせによく言うぜ」

 

「何だと?羽を毟り取ってやろうか鳥が」

 

「へぇ。さっき俺とソルで火炙りにしたのをもう忘れたらしいな」

 

 

何故かライザーさんとテスタメントさんが火花を散らす。

あれ、この二人初対面だったよな?何でこんなに仲が悪いんだよ。

 

 

「カラスとフェニックス。鳥同士何かあるんだろ」

 

 

ふむ。ソルさんの言葉を考えて見よう。

カラスとフェニックス・・・・そうか!

東京レイブンズと駒王フェニックスのファン同士の争いか!

あんな山奥にもプロ野球の中継は入っていたのか、いやもしかしたらラジオかもしれない。

 

 

「そういう事なら俺はライザーさんに味方するぜ!」

 

「オメェが入るとややこしくなるから止めておけ」

 

 

ひょいっと首根っこを掴まれて後ろに放り投げられてしまった。

むむむ、俺にも熱い駒王フェニックスファンの血が流れているというのに・・・

 

 

「あ、ソル君。それじゃあこれを上げる」

 

「あ?」

 

「見つけたら適当に狩っておいてね」

 

「・・・メンドクセェ」

 

 

先輩がソルさんに紙の束を渡す。

それを軽く見たソルさんはげんなりとした表情でその場を去って行った。

 

 

「先輩、さっきのは?」

 

「害虫駆除の依頼書よ」

 

 

へぇ、そんなのもあるのか。

害虫なんて退治しても次から次へと沸いてきて大変・・・あ

 

 

「思い出したぞ」

 

「どうしたの八代君?」

 

「いや、あまりにもウザイ奴だったから記憶の彼方に追いやっていた」

 

「ウザイ奴って・・・八代先輩が言うってことは相当ですね」

 

「おい、どういう意味だ塔城」

 

「まぁまぁ、それでコテツさん。誰を思い出したんですの?」

 

 

そうだった。塔城なんかに構っている場合じゃなかった。

俺は当事者である半蔵を見てみる。

 

 

「?どうしたでござるか殿」

 

「ふむ。ウザイ奴などあの中学には幾らでもいるが?」

 

 

その様子だと半蔵も琢磨も記憶の彼方のようだ。

だが中学校に行くという事は確実に半蔵は被害に会うだろう。

あの変態で絶壁な胸をしていて半蔵に付き纏っていたストーカー。

 

 

「忘れたかお前達。あの変態ストーカー、天野夕麻を」

 

 

 



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第30話

小ネタ 疑問


「ライジングタックル!」

「・・・なぁロック」

「ん?どうした虎徹」

「その技、パンチなのかキックなのか?」

「え?あ、いや・・・タックルって言うぐらいだから体当たりじゃないのか」

「何で技使ってるお前が分からないんだよ」

「俺だって教わっただけだっ!」


本当、どういった攻撃方法なんでしょうね。





 

「嫌でござる!嫌でござるーっ!」

 

「もうここまで来たんだから観念しろって半蔵」

 

「そうだよ服部君。逆にそうやって騒ぐと目立っちゃうよ」

 

 

場所は俺達の母校である駒王第二中学校。

その校門に半蔵がしがみついて駄々をこねている。

俺と結城が宥めてはいるが効果は無かった。

 

 

「高藤先輩。服部先輩は何故あんなに嫌がっているんですか?」

 

「・・・まぁ、誰にでも苦手な相手はいると言う事だ」

 

「ハンゾーの苦手な相手ねぇ」

 

 

あのストーカーの事を知るはずもない連中は首をかしげて半蔵の駄々を見ている。

と、半蔵がピクリと反応したかと思うとガタガタと震えだした。

 

 

「来やがったな。結城、琢磨。手はず通りに行くぞ」

 

「任せて!」

 

「了解だ」

 

 

二人に声をかけると同時に奴が物凄い勢いでこちらへとかけてくるのが見えた。

腰まで届く黒く綺麗な髪、その端正な顔立ちに薄く染まった赤い頬。

まぁ胸が壊滅的に無いがここまで見れば美少女だ。

だが今の奴は鼻息荒く、涎を垂らしながら迫っていてどう見ても変態、こいつこそ天野夕麻だ。

 

 

「半蔵せんぱ~い!ついに決心してくれたんですね!私に捧げるどうて」

 

「どりゃあっ!」

 

「服部君こっち!」

 

「行け、ホウオウ!」

 

 

相変わらずな元後輩の腹へと向けて渾身の右ストレートを放つ。

結城が震えて動けない半蔵を引き寄せ後ろに匿う。

同時によろけた天野へと向けて琢磨の指示を受けたホウオウがアッパーで打ち上げる。

 

 

べしゃっ

 

 

そんな潰れた音を経てて地に伏せる天野。

だがすぐにガバッと起き上がる。

こいつ、以前よりも耐久力が上がってやがる・・・

 

 

「何するんですか八代先輩達!はっ!もしかして私を好きだって言うんじゃないでしょうね!」

 

「心配するな。そんな気持ちは微塵もねぇよ」

 

「駄目ですよ。私の身も心も半蔵先輩のものなんですから・・・きゃっ」

 

 

駄目だこいつ、早く何とか・・・いや、もう手遅れだな。

半蔵は更に後方にいるグレモリー達の背後に隠れてしまった。

 

 

「っつーか幾ら何でも気づくのが速すぎじゃねぇのか天野」

 

「当たり前です。今日半蔵先輩が中学校に来るのは事前にリサーチ済みです!」

 

 

そんな鼻息荒くして自信満々に言うな。

見てみろ、後ろの奴ら唖然とした顔しているじゃないか。

 

 

「ちなみに半蔵先輩の今日のパンツは白のふんどしですっ!」

 

「ななな、何故そんな事を知っているでござるか!?」

 

「乙女の嗜みです、えへへ」

 

 

いや、仕草は可愛いかもしれないが台詞が全てを台無しにしている。

どうやら卒業後も変わらずに半蔵のストーキングをしていたようだ。

半蔵が気づかなかったって事は相当遠くから観察していたんだろう。

夕飯の支度があるからと帰っていくお袋をを引き止めていけばよかったぜ。

お袋が見ればお得意のお節介で天野を真人間に戻してくれるだろうに。

 

 

「さぁ半蔵先輩。そのふんどしを私にくださいっ!」

 

「嫌でござる!」

 

「えーっと・・・この子が半蔵が苦手にしている子なの?」

 

「うん。でも暫く会っていなかったけどココまで酷かったかな」

 

「変態度が増している気がするな」

 

「失礼な、乙女度が増していると言ってください!」

 

 

変態=乙女なんて図式はお前しか当てはまらねぇよ。

とにかく天野に会いにここまで来たわけじゃない。

天野を琢磨に任せておく事にする。

俺の意図を察した琢磨は黒いロボット、ワーロックだったか?に担がせた。

 

 

「離してくださいよ!せめて半蔵先輩と一緒に縛ってください!」

 

「・・・うわぁ」

 

 

微妙な視線を集めるのにも気にせず騒ぐ天野を放って俺達は駒王第二中学校を進んでいく。

そしてグラウンドに出ると歓声が待っていた。

校舎の窓やグラウンドの端には観客に称した在学生達がいた。

あ、そういえば木場や塔城の学校とは違って通常授業だったな。

そしてお祭り好きなあいつらが黙って授業を受けるはずが無い。

 

 

「来たぞ!駒二の台風が!」

 

「忍者ー!分身してくれ!」

 

「博士ー!改造してくれー!」

 

「結城せんぱーい!結婚してくれー!」

 

 

ゴスッ、バキッ!グシャッ!ブチッ!

 

 

「あそこにいるのはティナ先輩!?」

 

「と言うことは知的探求部の全盛期メンバーが勢ぞろいという事か・・・」

 

 

俺達のことを知っているって事は2、3年生だな。

ティナ先輩を知ってる奴は3年生だろう。

一方で戸惑った表情をしている生徒達は1年生ってところか。

そして結城に求婚をした奴の安否が気になる。

 

 

「皆さん、凄い人気ですね!」

 

「いやー、アレであいつらもノリがいいからな」

 

「学校を5回ほど全壊させたのも良き思い出でござる」

 

「違うな半蔵、7回だ」

 

「一体何をしたんですの・・・」

 

「やっぱり八代先輩の周りの人は異常と言うことがよく分かりました」

 

 

何故か知らんが馬鹿にされた事は分かるぞ塔城。

その呆れたような視線を俺に突き刺すのは止めろ。

 

 

「うふふふ、皆さん私と半蔵先輩を祝福しているんですね。ありがとうございますっ!」

 

「誰も祝福してないデス」

 

 

見当違いも甚だしい天野は放っておくとして、だ。

グラウンドのコートへと視線をやれば既に対戦するはずだった相手、ガーネット達と俺達のチームの先輩達がいるのが見えた。

ウィンドや他の生徒も違う学校の生徒だからかこの空気に戸惑っているのが遠目から見ても分かる。

そしてガーネットは元在校生と言う事もあってか気にしていない様子で似た顔の奴と話をしている。

あれは妹の方か。こちらに気づいたようで手を控えめに振ってくるので振り返してやる。

・・・・何故姉が反応して睨んでくる。

 

 

「さて、それじゃあ俺達も行くぞ半蔵。お前達応援よろしくなー」

 

「承知!」

 

 

琢磨達に言って俺は半蔵を引き連れて先輩達の元へと向かう。

先輩達も歓声に戸惑った様子ながらも俺達に気づくと気を引き締めた顔つきになった。

 

 

「ここの学生達は一先ず置いておきましょう。二人とも準備はいいわね?」

 

「もちろんグリフォン先輩」

 

「準備万端でござる!」

 

「突然の変更とは言えやる事はそう変化は無い。相手の妨害を避けて点を取るのだ」

 

 

3年のグリフォン先輩、2年のトッキー先輩がそれぞれ確認を取る。

俺達の勇者グリフォンマスクの名を冠した投げが得意技なグリフォンネイル先輩、改めグリフォン先輩。

やたらと堅苦しい言葉を話し天然ボケなところがある凶器になりそうなポニーテールをしたトッキー先輩。

 

 

「美味しくご飯を食べるために頑張っちゃいますよー」

 

 

剣の腕は俺並みの癖に最近賞金首を始めたらしいハイゼン先輩。

何か電気を身体から出す特技があるらしいので感電池先輩と呼んだ事がある。

本人いわく可愛くないと怒られてしまったので仕方なくそのまま呼んでいる。

 

 

「うおおおぉっ!アタシの風雲拳を見てやるぜ!」

 

 

俺達と同じクラスの疾風、名前みたいな苗字のブーメランを使った格闘技が得意な奴だ。あと声がデカい。

と、まぁ以上が俺達のチームメンバーだ。

 

 

「お、相手チームのお出ましだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく今は天野嬢の事は気にしない事にしたでござる。

さすがに天野嬢とは言えどもコートの中に乱入はしないと思いたいでござる。

 

 

「ん?知らない先生ばかりだな」

 

「しかし殿。いずれも手強い相手のようでござるよ」

 

 

教師方を殿が見渡した感想を漏らすも拙者からは強者特有の重圧に耐えていた。

先輩方も同様に自然と構える姿勢へとなる中、さすがは殿。平然としておられる。

拙者の知っている教師は体育教師の空手殿ぐらいしかいないでござる。

 

 

「あら?」

 

「どうしたんすかグリフォン先輩」

 

 

ふと、教師陣を見ていた殿がグリフォン先輩と呼んでいる謝華嬢が怪訝な表情を浮かべた。

見ているのは長髪を弁髪にしている顔色の悪い男性教師。と似た顔をしている同じく顔色の悪い裾の長い胴衣を着た男性教師

ふむ、体調が悪いのでござろうか?

 

 

「確か片方は今年入った新任の教師ね。もう一人は分からないけれど」

 

「ふむ。似た顔立ちということは親戚だろうか、いやそれよりも・・・」

 

「トッキー先輩も知り合いがいるのか?」

 

「知り合いと言うか・・・まぁ、そのようなもので構わない」

 

 

誰でござろう?

生憎と朱鷺宮嬢が視線を閉じて考え込んでしまったので分からぬでござる。

そうこうしている内に教師陣がそれぞれのコートに別れていく。

拙者達のコートにやってきたのは5人。

謝華嬢の言っていた顔色の悪い男教師が2名、赤い縁の眼鏡をかけた褐色肌の白衣を着た女教師。

額にVの字の傷のある眼鏡をかけた黒いコートを羽織った男教師。

そして緑色の軍服を着た初老の男性・・・む?

 

 

「あれは校長ではござらぬか?」

 

「あぁ、やっぱり出やがったな。悉く俺の邪魔をしやがって・・・」

 

 

殿の悪戯を防いでいたのはヨハン殿だけではなかったか。

ぬぅ、校長は入学式や全校集会でしか見た事が無かった故、盲点でござった。

 

 

「あれ?一人足りないですよー」

 

「本当だな。相手は5人で余裕っていいたいのか?」

 

「誰が相手だろうとアタシが一番だっ!!」

 

 

疾風嬢、すまぬがもう少し声量を落として欲しいでござる。

しかしハイゼン嬢や殿の言う通り一人足りぬ。

むむむ、これは挑発でござるな?

拙者達が勝てないと余裕の表れでござるな!?

 

 

「殿、これは拙者達舐められているに違いないでござるよ」

 

「そうだな。今に見ていやがれ、俺達が勝って鼻で笑ってやる!」

 

「何処をどう見たら5人に見えるんだ。八代、服部」

 

 

拙者達が憤っていると呆れた声が耳に入ったでござる。

声の方向に視線をやれば何と!

ヨハン殿がいるではござらんか。

 

 

「い、何時の間に・・・」

 

「私が気配を見落とす、だと?」

 

「わわっ、びっくりしました」

 

 

先輩方も今気づいたようで驚愕しているでござる。

それは拙者と殿、疾風嬢も同様。

相変わらず気配の読めぬ御仁でござる。

 

 

「八代。職員室の蛍光灯を全て換えた事について後で話がある」

 

「おいおい、善良な生徒を疑うのは教師としてはどうよ?」

 

「あんな事をするのはお前しかいないからな。全く、職員室を赤一色にしてどうするつもりだ」

 

「赤?俺が換えたのはピンク・・・はっ!」

 

「語るに落ちたな。嘘でごまかそうとした事も踏まえて覚えておくがいい」

 

「は、図ったな!?」

 

 

語るに落ちるのが速すぎでござるよ殿。

そして先ほどから重圧が増してきているのがひしひしと分かるでござる。

これは・・・校長からでござるか!

 

 

「学生の身分で我々に勝とうとは、感心しませんな。近頃の子供はやんちゃで困る」

 

 

ゾクリッ

 

 

投げかけられた言葉に思わず懐からクナイを取り出し構えてしまったでござる。

見れば他の者も同様で各々いつでも闘えるように構えておった。

 

 

「へっ、子供は昔からやんちゃって相場が決まっているんだよ」

 

「と、殿・・・」

 

「ふっ、それもそうだ。この後はティータイムなのでね、余り時間はかけたくない。始めるとしようか」

 

 

如何様な苦難にも笑って立ち向かっていく。

それでこそ拙者が忠誠を誓った殿でござる。

拙者も張り切ってクナイから棒手裏剣に持ち替えて先制すべく狙いを定める。

しかし殿は何故か異能の力を用いて本を取り出していたでござる。

 

 

「殿?間も無く試合が始まるでござるよ?」

 

「ん、あぁそうなんだが・・・あれ?どれに書いたっけな」

 

「何をしている八代。始まるぞ」

 

 

ピピーーーッ!

 

 

そうこうしている内に審判の試合開始を告げる笛の音が響き渡る。

しかし殿は複数ある本を取ってペラペラと捲っては投げ捨ててを繰り返す。

 

 

「無いぞ、トラップの場所を去年書いておいたはずなんだが・・・」

 

「・・・殿、その本は確か初期化されるとバティン嬢が言っていた気がするでござる」

 

「・・・・あ」

 

「隙だらけだな!」

 

 

パァンッ!

 

 

乾いた銃声と共に殿の本が打ち落とされる。

拙者はすぐに殿の前を陣取り手にした棒手裏剣を投擲。

しかし相手は恐ろしいまでの早撃ちで悉くを撃ち落す。

な、何と!この距離で全てを撃ち落すとは只者ではござらんな。

 

 

「うおおおおおぉっ!負けてられるかよぉぉっ!」

 

「八代早く立ちなさい!はぁっ!」

 

 

疾風嬢と謝華嬢が相手陣営へと攻撃を加える。

ソレを見て殿が即座に立ち上がり打ち上がったボールへとスパイクを叩き込んだでござる。

 

 

「おりゃあぁっ!半蔵やれ!」

 

「承知!」

 

 

殿の命を受けて懐から煙玉を相手陣営へと転がし手裏剣で打ち抜き破裂させる。

瞬く間に広がる煙に再度先輩方の奇襲攻撃が展開されたでござる。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ゴウッ

 

 

ヨハン殿の声が聞こえたと同時に煙幕が一気に晴らされる。

くっ、これは気柱!?

 

 

「甘い」

 

 

ドドドドドッ!

 

 

さらには先輩方の攻撃も気柱の向こうから表れた校長の姿をした気の分身によって撃ち落される。

 

 

「消えろ」

 

 

「ぬおおぉっ!?何でござるか気持ち悪いでござる!?」

 

 

人の顔をした気弾?が拙者を狙ってきたでござる!?

何とか後方に飛び去り避けるが・・い、一体なんだったのでござろうか。

 

 

「そこか」

 

 

ピシュンッ!

 

 

「わわっ!」

 

 

ハイゼン嬢へと今度は光線が襲い掛かる。

しかし剣で何とか弾くも後退せざるを得ない様子。

そしていつの間にか高く飛び上がっていた・・・誰でござるか?

銀髪で褐色の肌をした布一枚を前面に張り付かせたような破廉恥な女性がスパイクをしているでござる。

後ろはマントで隠しているようでござるが裸も同然ではござらんか!?

 

 

「何て眼福、じゃなくてけしからん!」

 

「八代、お前を狙ってるぞ!」

 

「殿、見惚れている場合ではござらん!」

 

 

朱鷺宮嬢と拙者が声をかけると同時に殿に向けてボールと氷の矢が降り注ぐ!

こ、これはまずいでござる!

 

 

「殿っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっわぁ、トラちゃん達もトンデモ無い先生達と当たっちゃったものね。

ハンゾーちゃんの煙幕が晴れた向こうには全員無事な姿の先生達。

一方で反対側は苦戦を強いられているトラちゃん達の姿があった。

最初の一手で躓いちゃったわね。これは厳しいかしら?

 

 

「わわっ!や、八代君の頭から血が!?」

 

「虎徹さん!?た、大変ですっ!」

 

「落ち着け結城さん、ディズィーさん。心配しなくても衛星砲の発射準備を急がせている」

 

「は、博士も落ち着いてくださいぃ。掠った事で裂傷を起こしているだけですぅ」

 

「全くあの程度で怪我とはニンゲンは何と脆い」

 

 

アスナちゃんにディズィーちゃんもそうだけどタクマちゃんも落ち着きなさい。

私が見込んだトラちゃんとハンゾーちゃんだもの。こんなところで死にはしないわよ。

・・・・大丈夫よね?あの先生達を見ていると若干不安が残るけど。

 

 

「リアス、わたくし・・・駒王学園をまだ侮っていたようですわ」

 

「朱乃!正気に戻って!お願い、私を一人にしないで!」

 

「ニンゲンの癖に中々やるデスネ」

 

 

何処か悟った表情をしている朱乃ちゃんの両肩を掴んで前後に揺さぶるリアスちゃん。

まぁ魔界で教わった人間界の常識なんて何十年も前のものだものね。

あと、デス様?デス様の基準でされると私達の立つ瀬が無いので止めてもらいたいわ。

私だって今のところレーティングゲーム無敗なんて記録があるけどあの先生達に勝てるとは到底思えないもの。

 

 

「うへぇ、悪魔の俺達よりも悪魔みたいな強さだな」

 

「僕もあの人たちのような強さを身に付けられるだろうか」

 

「祐斗先輩、アレを人と定義するのはニンゲンの方に失礼だと思います」

 

 

うん、それは私もそう思うわ小猫ちゃん。

と、言うかニンゲンじゃないのも混じっているみたいだしね。

あとライザー君。いたのね。

 

 

「くっ、これほどとは!」

 

「あんな攻撃避けられませんよー」

 

「まだだっ!まだアタシの風雲拳は破れちゃいない!」

 

「試合はまだ始まったばかり。諦めるには速いわよ」

 

「と、殿大丈夫でござるか!?このチョキ何本に見えるか分かるでござるか!?」

 

 

トラちゃん達のチームはまだやる気十分みたいね。

そして怪我しているトラちゃんよりも顔面蒼白なハンゾーちゃんの方がお姉さん心配だわ。

その心配されているトラちゃんだけど先ほどから俯いたまま動かないわね。

・・・これは、もしかすると

 

 

「タクマちゃん、準備をした方がいいかもね」

 

「既に虎徹の指示に合わせて指定場所のトラップを順次発動できるよう手段は整っています」

 

「うん、でもトラちゃんの事だからもっと楽しくしてくれるはずよ」

 

「・・・嫌な予感しかしないんですが」

 

 

そう言いつつも笑顔を浮かべるタクマちゃん。

トラちゃんのしでかす事に期待しているのが良く分かるわ。

タクマちゃんも私と同じくトラちゃんのする事に期待して近づいた一人だものね。

ふふふ、さぁトラちゃん。どんな事をしでかしてくれるのかしら?

 

 

「くくく、はっはっはっ!琢磨!学校中のトラップを全て発動だ!」

 

「・・・何?おい待て。それだとお前のいる場所にも」

 

「えーい知った事か!って言うか発動場所忘れたんだよ!何が何でも勝ってやる!」

 

 

高笑いをしながらタクマちゃんに指示を出すトラちゃん。

まさか自分で仕掛けた場所を忘れるなんてトラちゃんらしいわ。

でも笑顔を浮かべて叫んでいるところからしてまだ何か隠し玉があるみたいね。

 

 

「くくっ、仕方ないな。せいぜい自分で罠にかからないよう気をつけることだ」

 

 

そう言ってタクマちゃんが抱えていたノートパソコンで操作をしていく。

これで全ての仕掛けが作動したみたいね。

去年は私は卒業していたからどうなっているのか分からないけれど・・・どんな罠があるのかしら。

 

 

ちゅどーんっ

 

 

あら、早速発動したみたい。

でもそれは隣のコート、見ればシルヴィちゃんが空中に打ち上げられている。

あらら、災難ね。

 

 

「きゃあっ!こ、こんな事をするのはアンタね虎徹!」

 

「わははは!ざまぁ無いなシルト!」

 

「だから略すなっ!」

 

 

カチッ

 

 

「どわっ!?」

 

 

爆笑するトラちゃんが一歩下がった途端に右足がふとももまで地面へと埋もれる。

しかも片足だけと言う事で抜け出すのに苦労しているみたい。

 

 

「ぐぬぬぬっ!」

 

「全く、何をしているの貴方は・・・始めるわよ」

 

「ちょっ、まだ抜け出せてないんですけど!?」

 

 

トラちゃんの制止の言葉も待たずに試合を再開する先輩。

確か・・・レイミ先輩だったかしらね。

そして当然トラちゃんを狙おうとする銃を構えた先生。

額にV字の傷がある金髪の眼鏡をかけたのはヴァーミリオン先生ね。

 

 

「まずは一人・・・」

 

「今だ!無敵弓ガンタイダー!」

 

「私はロボか!まぁいいわ、任せなさい八代っち!それそれそれ!」

 

「ちっ」

 

 

観客の子達の中からヴァーミリオン先生へ目掛けて多数の弓が降りかかる。

それをちらっと見て横に飛んでかわす先生。

あれは・・・あやねちゃんじゃない。確かにここの卒業生だけど何故ここにいるのかしら?

よく見れば他にも駒王第二中学校の制服を着た卒業生が見える。

 

 

「さぁお前らゲーム開始だ!ルールは簡単、先生を倒した奴が勝ちだ!見事先生を倒した奴には賞品も出るぞ!」

 

 

トラちゃんの声に響き渡る歓声。

同時に無数の攻撃が先生達に注がれる。

あはは、さすがトラちゃん。勝負事となれば形振り構わないわね。

私もこれは予想しなかっただけに笑顔でトラちゃんへエールを送る。

 

 

「トラちゃん!言ったからには有言実行よ!」

 

「ういっす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオス、正にその一言に尽きるだろう。

試合が始まって結構経った。

あちこちから飛んでくる攻撃に教師チームは何とかかわしている。

俺達も何とか食らいついてはいる。

っつーかまだ一人も倒れないのもどうよ?

特に校長、カァンッと言う音と共に一瞬姿消えてね?

 

 

「いきますよー。それ、ブルーレイン!」

 

 

ちゅどーんっ

 

 

ハイゼン先輩がボールを打ち上げる。

と、同時に青く細長い雷を放ち更にもう一発とばかりに相手コートに青い光が張り付く。

それに続くように疾風も飛び上がりブーメランでボールを相手コートに叩き落す。

もう何でもありだな、ブーメラン。

 

 

「おりゃあああっ!」

 

「油断はしない」

 

 

ちゅどーーんっ

 

 

ロンゲの先生がこちらに背を向ける。

そんな隙だらけで何を・・・ってうおっ!?

何か幽霊みたいな人魂が出てきたぞ!?

人魂みたいなのが雷を弾きボールを打ち上げる。

おまけに周りからの攻撃も防いでいるみたいだ。

 

 

「図に乗るな」

 

「うおっ!?」

 

 

ちゅどーーーんっ

 

 

ロンゲの先生その2が青いレーザーを放ってきた。

それも前からと俺達の後ろからに幾重ものレーザーをだ。

その場に寝そべって何とか避ける。

あ、危ねぇ。あんなの食らったら一溜まりもねぇぞ。

 

 

「ふふっ、元気があってよろしい。八代虎徹、と言ったかしら?その生命の輝きもっと見せてみなさい」

 

「なにそれこわい」

 

 

ちゅどーーーーんっ

 

 

生命の輝きって・・・命をかけろって事か?

冗談じゃない、あんな塗れたタオルを前面に貼り付けたような痴女に命をかけれるか。

それにしても空中にいるのによくあれだけの攻撃を避けれるな。

今もすぐ横で赤頭巾のぶっといビームサーベルが通過したぞ。

 

 

「ぜぇぜぇ、しつこい教師達だな」

 

「それはこちらの台詞だがね。その勝利に貪欲な点は評価しよう」

 

「あっそ。はぁはぁ、じゃあさっさと俺達に勝ちを譲れ・・・って言うかカァンカァンうるせぇよっ!」

 

 

ちゅどーーーーーんっ!

 

 

俺の愚痴に返す校長。

しかし先ほどから甲高い音と共に点滅しながら返答するんで気になって仕方が無い。

って今度はガラの悪いメガネ教師が銃を向けてきた!?

 

 

キィンッ!

 

 

「そう何度も殿は狙わせぬでござる!」

 

「た、助かったぜ半蔵」

 

 

ちゅどーーーーーーんっ!!

 

 

銃を向けたと同時に銃弾を弾く音が聞こえて半蔵が叫ぶ。

い、命拾いした・・・あの先生の銃弾速過ぎで見えねーよ。

・・・それはそれとしてだ。

 

 

「さっきからうるせぇなぁ!」

 

「あんたの仕掛けた罠のせいでしょうがあぁっ!」

 

「きゃあぁっ!」

 

 

さっきから何の音かと思えば隣のコートからだった。

今度はガーネットとウィンドが吹き飛ばされていた。

あー、そういえばあの辺りは地雷地帯にしたんだっけ?

卒業式で随分使ったと思ったがまだ残っていたとは。

ガーネット達の相手の教師陣も吹き飛ばされたりしているが・・・まぁいいか。

 

 

「ほんっとうに後で覚えておきなさいよ虎徹!」

 

「よし、ガーネットから逃げるためにもさっさと勝つぞ」

 

「承知!」

 

「随分勝つ理由が弱気になって来たな」

 

 

トッキー先輩のツッコミを華麗にスルーしておく。

点数を確認すればデュース。ここから2連続で点を取ったチームの勝ちとなる。

相手も段々と周囲の攻撃に慣れてきている、と言うよりも周囲が疲れてきている。

さすがに長い間攻撃ばかりしていると疲れるか。

だがおかげで勝機が見えてきたぜ。誰も先生を倒していないから賞品を出す必要も無い。

 

 

「ほら八代、ボールが来たわよ。ぼーっとしているとグリフォンネイルかけるわよ!」

 

「おおっと、そいつは簡便だ、なっと!」

 

 

バシィッ!

 

 

ラインギリギリのところを狙って放たれたスパイクを横っ飛びで食らいつく。

ふわりと上空に浮き上がったボールをハイゼン先輩が更に高くトスをする。

 

 

「頼みましたよー」

 

「うむ、任せるがいい」

 

 

トッキー先輩が男前に頷いて飛翔する。

何もない空中を踏みつけてさらに舞い上がる。

同じクラスの愛乃とか錨娘もやっていたがアレ、どうやってるんだろうか。

 

 

「オン・アヴィラ・ウンケン・・・アヌトゥパーダ!」

 

 

キィンッ

 

 

「・・・はっ!?」

 

 

トッキー先輩が何か呟いたかと思った瞬間にはボールが相手コートの地面に落ちていた。

点を取って喜ぶ前に言っておくッ!俺は今トッキー先輩の能力をほんのちょっぴりだが体験した。

い・・・いや・・・体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが・・・

あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!

 

 

「俺はトッキー先輩を見上げていたと思ったらいつのまにかボールが落ちていた」

 

 

な・・・何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった。

頭がどうにかなりそうだった・・・

催眠術とか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・

 

 

「殿、何を言っているでござるか?」

 

「いや、正直俺もよく分かってない」

 

 

何故か言わなくちゃいけない気分になったが周囲の歓声で我を取り戻す。

とにかくこれで後1点取れば俺達の勝ちだ。

 

 

「朱鷺宮神依、そういえば時のアルカナと契約していましたね」

 

 

あ、あるかな?

よくわかんねぇがトッキー先輩が何かしたんだろう。

 

 

「とにかく後1点だ」

 

「えぇ、この調子で行くわよ」

 

「がんばりましょー」

 

 

意気込む俺達に比べて教師チームは相変わらずのようだった。

瞬間移動をして攻撃をかわす教師もいればバリアみたいなので身を守る先生もいる。

・・・っつーか銃弾を防御で耐えるなんて真似できねーよ。

 

 

「いくでござるよ!」

 

 

半蔵のサーブに即座に反応したのは宙に浮いている痴女が反応する。

しかし甘い!罠の位置は全ては覚えてないとはいえ少しは把握しているさ!

 

 

「ネコ、やっちまえ!」

 

 

飛び道具を持っていないため屋上に待機させていたネコへと合図を送る。

すると屋上から何かが射出されるのが見えた。

当然、痴女先生はそれを防ごうと周囲に浮いているクリスタルに身を守らせようとするが・・・

 

 

パァンッ

 

 

「きゃっ!こ、これは!?」

 

 

クリスタルに当たると同時に破裂し周囲にトリモチをぶちまける。

大量の取り持ちを頭から被り地面に落下していく。

・・・白いトリモチがまとわりついているのを見ると益々エロく見えるな、さすが痴女。

 

 

「くっ、埒が明かない。まずは周囲を止める!」

 

「私も力を貸そう」

 

 

ヨハン先生が何か巨大なコンタクトレンズみたいなのを左右に向けて飛ばす。

たまらず左右にいた学生達は避ける。

続けてロンゲ先生その2が両手をだらりと下げたかと思うと紫色の雷の柱が周囲に降り注ぐ。

うげっ、そんなのアリかよ!?

 

 

「そらっ」

 

 

その間にロンゲ先生その1がボールを拾う。

校長が分身を使って高く打ち上げる。

・・・分身を使う意味があったのか?

 

 

「死ねぇッ!!」

 

 

飛び上がったガラの悪いメガネ教師がボールをこちらに叩きつけると同時に銃を撃ってきた。

しかしそれは今までの銃弾とは違い・・・レーザー!?アンタもか!?

 

 

「させぬっ!ぐぅっ!」

 

 

トッキー先輩が上空からのレーザーを防ぐ。

グリフォン先輩がすぐさまボールを拾い疾風が思いっきり高くボールを上げた。

・・・って高すぎだろ!?こうなれば・・・

 

 

「半蔵!」

 

「承知!」

 

 

声をかければ直ぐに返事をしてネット際に寄り俺に向けて屈む半蔵。

その半蔵目掛けて走り出す。

 

 

「頼んだでござるよ殿ぉっ!」

 

 

半蔵の組んだ腕を足場にする。

半蔵を思いっきり腕を振り上げると同時に俺は跳躍する。

ボールに追いつき相手コートを確認するがヨハン先生とロンゲの先生、校長が既に動き出せる状態だ。

くっ、どこかに隙は無いか!?

 

 

「虎徹君、アレを狙ってくださいー!」

 

 

ハイゼン先輩の言葉にすぐに校長目掛けてスパイクを放つ。

あのやたらと目立つワープをやめてどっしりと迎え撃つ姿勢の校長。

そしてボールと校長の距離が近づいたその時、校長の足元から青い光が纏わりつく。

 

 

「むっ、これは・・・」

 

 

それはハイゼン先輩が放った青い光。

なるほど、トラップってわけだなっ!

となれば校長も今はワープができない・・・

 

 

「ちゃーんすっ!くたばれ校長!主に俺の愉快な学園生活のために!」

 

 

能力を使い本を取り出すと校長に向けて数冊投げつける。

下にいる半蔵たちも好機と見たのか攻撃を開始した。

 

 

「む・・・ふむ、どうやら熱くなりすぎたようだ」

 

 

何か構えを見せた校長だったが息を吐く。

ふっ、どうやら諦めたみたいだな。これで俺達の・・・

 

 

「だが、教師に暴言を吐く生徒にはおしおきが必要ですな」

 

 

アレ?目の前に落ちていくボールに目もくれず俺を注視する校長。

・・・空中で身動きのできない俺、何かすっげー嫌な予感がするんだが。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ボールが地面に着いたのを確認したと同時に校長の分身があっという間に俺の目の前まで迫っていた。

ちょっ!何で俺だけ!?って言うか・・・

 

 

「大人げないぞこんちくしょーー!!ぶべらっ!?」

 

 

まるでトラックに轢かれたような衝撃を受けて俺の意識は暗転していった。

 

 

 




天野夕麻はとある一部で分かるとは思いますがレイナーレとは異なる別人です。



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第31話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

俺達の対戦相手である教師陣がやってきた。
ただ、一つだけおかしいのがいる。
全体的に丸いフォルムの人間サイズのロボットだった。
そしてそいつは俺達を見渡すと声を張り上げた。

「小生らに勝つことが出来れば我が隊に入れてやろう」

「は?」

「だができるかな?小生は今、絶好調である!」

「知らんがな」


10/20 無界の口調を修正しました。



 

「う・・・ぐっ・・・はっ!?」

 

 

目を覚ませばそこは駒王第二中学校のグラウンド。

俺は・・・そうか!あの緑軍人め!

思い出した途端に怒りが沸いてきたが自分の現状を確認して疑問が浮かぶ。

 

 

「あれ?何か動けない・・って言うか立ってる?」

 

 

首から下の感覚が無いが視点の高さから俺が立っていることが分かる。

うーん、何か大きな怪我でもしたのか?やっぱりあの緑軍人のせいか?

 

 

「メがサめたかヤシロ」

 

 

ビクッ

 

 

直ぐ傍から聞こえてきた声に思わず震えてしまった。

こ、この久しぶりに聞く声は・・・

ギギギと錆付いた機械のように首を横に向けて見た。

そこには想像通りの人物が腕を組んで立っていた。

 

 

「げぇっ!ガングロ教師!!」

 

 

ゴスッ

 

 

「おマエはマッタくセイチョウのキザしがミられんなヤシロよ」

 

 

無防備な俺の頭に拳骨を落とした人物。

中学時代に幾度となく俺のイタズラを邪魔してきた元担任のムカイ先生だった。

くっ、後輩達の情報だと今日は出張でいないはずだったのに!

 

 

「ハヤくヨウジがオわったのでカエってきてみれば、このバカサワぎだ。どうせおマエがミナをソソノカしたのだろう」

 

「あぁ、そうだが?」

 

 

ゴスッ

 

 

「ヒラきナオるな」

 

 

二度目の拳骨に視界に星が見えたぜ・・・

しかしこれで首から下の感覚が無いのが理解できた。

視線を下げれば思いっきり石化している俺の身体があった。

他にも校庭や校舎にも俺と同じようになっている生徒達がちらほらと見える。

逃げ遅れた奴らか。幾世やガーネット達など俺のイタズラに慣れている奴らの姿は見えないって事は逃げたな。

 

 

「そ、それよりも試合はどうなったんだ!?」

 

 

ボールが地面に着いたとこまでは覚えているが審判の結果は聞いていない。

俺が知らないルールで無効になった可能性だってある。

知っていそうな奴がいないか首を限界まで捻って確認するとガーネットとウィンドの姿があった。

 

 

「ふふっ。虎徹達の勝ちよ、おめでとう」

 

「よっしゃああっ!ざまぁみやがれってんだ!」

 

「ホントウにおマエはハンセイのイロがミえんな」

 

 

ガシッ

 

 

「あだだだだだっ!」

 

 

アイアンクローを受け締め付けられて思わず痛みが声に出る。

 

 

「ふんっ、調子に乗るからこうなるのよ虎徹」

 

「ガ、ガーネット、お前よく無事だったな」

 

「無事じゃないわよ!」

 

 

確かによく見ればあちこち服が焦げたりしている。

そこまで火力の高い罠じゃなかったんだがな。

そこまで散々な状態って事は相当な数の罠を踏んだんだろう。

 

 

「わはは、調子に乗るからこうなるんだだだだっ!ギブギブッ!」

 

「もっとやって頂戴ムカイ先生!」

 

「やれやれ。おマエもカわらんな・・・」

 

 

ガーネットにそっくりそのまま返してやろうとするがアイアンクローの激痛が再び走る。

ぐぅっ、暴力教師め。

ん?そういえば半蔵達は何処に行ったんだ?

見える範囲にはいないみたいだが・・・

俺がきょろきょろとしていたのを見てかムカイ先生が教えてくれた。

 

 

「ハットリタチならコウナイのワナをテッキョさせている。イッショにキていたモノもレンタイセキニンでな」

 

「ちぇっ、まだ面白いトラップが一杯あったのによ」

 

「逆によくそんなに仕掛ける事ができたわね」

 

 

呆れたように言ってくるウィンドに俺は誇らしい気持ちで言い返す。

 

 

「当然だ。伊達に中学3年間、授業も放って思いつく限りの罠を仕掛けてきてないぜ!」

 

「ムカイ先生、やっちゃって」

 

 

ガシッ

 

 

「いだだだだだっ!」

 

「そんなコトでホコるな。このイタズラコゾウめが」

 

 

ちくしょう、普段なら走って逃げるって言うのに・・・

ガーネットもそれを分かっているからか、ここぞとばかりに挑発するような笑みを浮かべている。

ぐぅっ、何だあの笑顔は!何てムカつく笑顔だ!

 

 

「ふっふっふ、どうしたのかしら虎徹?」

 

「あ、あのシルヴィ?その辺にしたらどうかしら」

 

「甘いわよウィンド。こいつは直ぐ調子に乗るんだから」

 

「けっ、調子に乗ってるのはどっちだよシスコンが」

 

「ふん、何とでも言いなさい。妹を可愛がって何が悪いって言うの」

 

「へっ、ちょっと可愛くてスタイルがよくて頭がよくて運動神経がよくて・・・あれ?こいつ弱点無くね?」

 

 

自分で言っていて気づいたが、こいつ弱点が存在するんだろうか?

あ、そうだ性格が悪いってのがあったな。

改めて言おうとするとガーネットの奴が顔を真っ赤にして俯いてしまった。

今まで見た事のないガーネットの反応に俺も動揺してしまう。

 

 

「え、あ、そ、その・・・あ、ありがとう」

 

「お、おう」

 

「やれやれ、せめてザイガクチュウにそのようにナカヨくしてくれればワタシのフタンもヘったのだがな」

 

「ふふっ、喧嘩するほど仲がいいって事ね」

 

 

ぐああぁっ!首から下の感覚が無いはずなのに胸がもやもやする!

大体お前そんなキャラじゃねーだろ。もっと食らいついて来いよ!

外野も生暖かい目で見るんじゃねーっ!

いや、待てよ。こいつが顔を赤らめる理由について考えて見る。

ガーネットの奴が俺を好きだなんて事はまず無い。

俺は恋なんてしたことないから分からないが、こいつとは喧嘩ばかりではなく普通に話したりもするのだ。

もしこいつが俺の事を好きなら今までに何らかのアプローチがあったはず。

そこまで考えてある事に思い当たり俺はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「な、何よ。その笑みは」

 

「へぇ、ふーん、ほぉ。なるほどなぁ」

 

「だから何よ!」

 

「いやいや、ガーネット家の長女は褒められるのに弱いとは知らなかったなぁ」

 

「んなっ!」

 

 

図星のようで驚きと共に固まる。

かと思えば顔を俯かせてプルプルと身体が震えているのが見えた。

 

 

「あぅ、えと、その・・・お、覚えてなさいよーーっ!」

 

「あ、シルヴィ!じゃあね虎徹。先生も失礼します」

 

 

負け犬の常套句を叫んで逃げていくガーネット。

そして礼儀正しく頭を下げてその後を追うウィンド。

はははっ!これはいい弱点を見つけたぜ。

今度盛大に弄ってやろう。

 

 

「ヤシロ、あまりからかいスぎると・・・いや、こいつはナンドもイタいメをミたホウがいいな」

 

「何だよムカイ先生。っつーかいい加減解放してくれ」

 

「おマエはスデにここのセイトではないからな。このアト、コマオウガクエンにツれてイきそこでセンセイガタにみっちりとシカってもらう」

 

「ぐぬぬぬ」

 

 

さすがに逃げようとしても石化した状態だから逃げようが無い。

仕方ない、今回は潔く負けを認めてやる。

だが!このままで済むと思うなよ!必ず復讐と言う名のイタズラをしに戻ってくるからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城さん、そこでストップだ」

 

「ここにも仕掛けてあったの?」

 

「これで一体何個目デスカ・・・」

 

「ぬぅ、拙者は覚えてはおらぬ」

 

「ここが皆さんが通っていた中学校なんですね」

 

「ふん、くだらんな」

 

 

僕、結城さん、デス様、半蔵、ディズィーさん、テスタメントで駒王第二中学校3階の罠を撤去していた。

未だに忌々しい薬の効果で僕一人では行動ができずティセに支えてもらっている。

残りのメンバーはバティン先輩主導で1階の罠の撤去に当たってもらっている。2階は在校生達の担当だ。

罠の撤去なので全ての罠は現在起動中、トリガーを元にそれぞれ発動するだろう。

その前に、何故ギアのテスタメントがいるのか疑問だ。ソルとライザーさんが連れてきたようだが・・・

 

 

「博士、解除終わりました」

 

「これでようやく全体の20%か」

 

「そんなに仕掛けてあるんですか!?」

 

「少なくとも僕が知る限りではな。虎徹が一人で仕掛けたのもあるから実際はもっとあるだろう」

 

 

僕の家から色々と持って行っては学校中に仕掛けていたようだからな。

火薬など危ないものは僕が監視の下に仕掛けたので危険な罠は無いはずだ。

 

 

グイッ

 

 

「きゃっ!」

 

「な、何ですかーっ!」

 

 

後方を歩いていた結城さんとディズィーさんの悲鳴が上がる。

振り返ってみると片足に縄がついており吊り上げられている二人の姿があった。

二人とも必死でスカートを抑えて抵抗していた。

 

 

「大丈夫でござるか結城嬢?」

 

「大丈夫から早く降ろしてよー!み、見えちゃう!」

 

「わわ、だ、駄目ですー!」

 

「ディズィー!今助けるぞ!」

 

 

半蔵の手裏剣とテスタメントの鎌が二人を吊り上げている縄を断ち切る。

どさっと共に結城さんとディズィーさんは床に落ちた。

 

 

「うぅ、八代君のバカ」

 

「あぅ、お尻が痛いです」

 

「コテツは一度痛い目を見た方がイイデス!」

 

 

心配しなくても既に何度も痛い目にあっている。

虎徹が罠をしかけたり悪戯をする度に当時の担任であるムカイ先生が指導していたからな。

それに今頃二人は感動の再会をしていることだろう。

 

 

「ふむ、次はここだな」

 

「アスナ、ココは何の部屋デスカ?」

 

「あいたたた。えっとねフェルちゃん、ここは音楽室だよ」

 

 

僕達が部屋に入ると壁に描かれている音楽家達の視線が一斉にこちらへと向く。

ただの絵にも関わらず僕を支えているティセが短く悲鳴を上げる。

だが僕はそれよりも部屋に入って違和感に気づく。

やけに熱いなこの部屋は・・・窓を閉め切っているとは言え、まるで暖房器具でも使用しているような・・・

 

 

「は、博士怖いです・・・」

 

「ただの絵だ。別にこちらを見ているだけで何かをするわけでは・・・」

 

 

ピシュンッ!

 

 

一先ずティセを落ち着かせようとしたがそれは途中で止まる。

僕の足元を見れば焦げた跡の床。

そして先ほどの音と共に放たれたのはレーザーだ。

そこまで考えて僕はティセと共に音楽室から出て半蔵を前に押し出す。

 

 

「どうしたでござるか琢磨?」

 

「いや、少し時間をくれ。他の皆は音楽室に入らないように」

 

 

ピシュンッ!

 

 

「なんと!?肖像画が攻撃してきたでござるっ!」

 

 

驚きながらも多数の目から放たれるレーザーを前に飛ぶようにしてかわしていく半蔵。

さすがは忍者、軽快な動きだ。

いや、それよりもここに仕掛けられている罠だ。

僕は手にしているノートパソコンから罠の仕掛けられたリストを確認する。

音楽室に仕掛けられた罠は入った相手を数秒間ロックしてレーザーを放つ肖像画と・・・

 

 

「水風船が落ちてきたでござる!」

 

 

バシャッ!

 

 

「ぬおっ!?血?いや、とにかく赤いでござる!げほっ!の、喉が!目が痛いでござるっ!」

 

 

天井が回転してそこから落ちてくるタバスコ入りの水風船。

床は暖房となっていて時間をかけずに気化していく。

溜まらず半蔵は窓を開けようと鍵を外し一気に開け放つ。

 

 

「はぁはぁっ!た、助かったでござああぁぁっ!?」

 

 

窓を開けたと同時に上からゾンビの顔をした人形が半蔵の目の前に降って来る。

あれは僕が試作した簡易バルーンだな。尤も、あんなゾンビの顔などはしていなかったはずだが。

大方、虎徹がゾンビの顔をしたマスクを被せたのだろう。

 

 

「し、心臓に悪いでござる・・・よ!?」

 

 

ガコンッ、とした音と共に後ろによろめいた半蔵は落とし穴へと落ちていく。

この下は確か・・・僕達が過ごした教室か。一番危険な場所だな・・・

 

 

ヒュンッ・・・ガッ

 

 

半蔵の冥福を祈ろうとしたところで床に鉤縄がひっかっかる。

さすがは忍者、咄嗟とは言えよく使えたものだ。

 

 

「だ、大丈夫ですか半蔵さん?」

 

「も、問題ないでござるよ・・・ぬぅ!壁が滑って昇りにくいでござる」

 

「油を塗っているんだろう。それなら残り一つをテスタメント。音楽準備室の扉を開けてもらえるか」

 

「ふん、何故私がニンゲンの命令を聞かねばならんのだ」

 

 

僕の頼みを突っぱねるテスタメント、と言うよりも先ほどからの態度にイラッと来るものがある。

僕はノートパソコンにテスタメントの手配書を映し出して本人に見せる。

 

 

「日本円にして1000万。僕の研究費の足しにしてくれると言うのなら構わんが?」

 

「キサマッ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「い、いやディズィーには関係の無い話だ・・・クッ、扉を開ければいいのだろう!」

 

 

後ろにいるディズィーさん達にはテスタメントが見た画像が何なのか分からず首を傾げている。

ギアの討伐はまだ根強く残っており当然手配書もICPO経由で世界各地に渡っている。

どういった理由で駒王町にいるのかは分からんが今ここでは都合がいい。

音楽準備室に仕掛けられているのは僕達では荷が重いからな。

 

 

「これだからニンゲンは信用が出来ない。ふんっ、これを開ければいいのだろう」

 

「あぁ、その通りだ」

 

 

半蔵はまだ時間がかかるようだ。

仕方ない、いざとなれば後ろの球体を突っ込ませるとしよう。

強さは先ほどの試合でも見せてもらった。

何、万が一があれば僕が有効活用してみせる。

 

 

ビクッ

 

 

「どうしたのフェルちゃん?」

 

「何か不穏な気配を感じたデス」

 

 

さて、後方の事は置いておくとしてテスタメントが扉のノブに手をかける。

これまでのトラップの数々を見ていたからか、ゆっくりと慎重にドアノブを回す。

 

 

ガチャリッ

 

 

「なっ!?」

 

 

扉を開けた途端に大量の水が押し寄せる。

あっという間に音楽室は水浸しだ。

水圧によりテスタメントが教室の中央まで押し流される。

こんな仕掛けを施した覚えは無い・・・と言う事は虎徹の仕業か。

 

 

「がぼがぼがぼっ!?」

 

 

水浸しとなった教室はすぐに半蔵の落ちている穴へと流れていく。

・・・まぁ半蔵だし死ぬ事は無いだろう。

 

 

「・・・それで、アレは何なの高藤君」

 

「それは僕が聞きたいな。どちらにせよあれを退治なり何なりするしか無いようだ」

 

「ボクがやるデス!」

 

「フェルちゃんが暴れちゃうと教室が滅茶苦茶になるから駄目!」

 

「ウゥ、酷いデス、アスナ」

 

 

水の球体、とでも言えばいいのだろうか。

黄色い丸が二つほど中心からやや上に存在している・・・あれは目か?

先ほどから伸びては縮みと伸縮を繰り返している。

あのような面白、いや奇怪な生物を虎徹が用意していたとはな。

 

 

「私も手を貸しますテスタメントさんっ!」

 

「待て来るなディズィー!」

 

 

一瞬で姿がワンピースからボンテージ姿といった露出の激しい姿へと変わるディズィーさん。

早着替えでも得意なのだろうか、それとも予め下に着込んでいたのか。

ただ、その両肩の緑の外套を被った骸骨と全身水色の女性はなんだ。

 

 

「は、博士!ディズィーさんとあの2体からギア反応が!」

 

「何?」

 

 

以前虎徹から聞いた話から彼女が魔の森に潜むギアだと考えてはいた。

しかしギア反応が無い事、現れたテスタメントからギアとはテスタメントのことだと思っていた。

だが現にこうして彼女からギア反応が出ているとは・・・一体どうやって隠していたんだ。

疑問は尽きないが半蔵は落とし穴の中、ティセも防水加工をしているとは言え油断はできない。

となると二人に頼るしか無さそうだ。

 

 

「やれやれ・・・虎徹に聞きたい事が山ほどできたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お、おおおおお落ち着くんだライザー・フェニックス!

い、いい幾らティナがと、隣を歩いているからって動揺などみ、見苦しいぞ!

 

 

「うーん、この辺りはこれでお終いかしら」

 

「・・・・・・・」

 

「どうしたのライザー君。さっきから?」

 

「はっ!い、いや何でもないさ。さ、さぁ早くコテツの仕掛けたトラップを見つけよう!」

 

「?うん、そうね」

 

「なるほど。二人にするとああなるのね」

 

「ふふっ、プレイボーイも形無しですわね」

 

「・・・ヘタレ」

 

 

後ろにリアスとその眷属達がいるとは言え、まさかティナと二人でこうして歩けるとは夢みたいだ。

俺の胸にすら届かない身長から自然とティナは俺と会話するときには上目遣いになり、それが反則級に可愛い。

抱きしめたいなティナ!あぁ、だが突然抱きしめて嫌われてしまったらどうする。いかん、我慢だ。

 

 

「あ、ここが怪しいわね・・・ライザー君。ちょっとそこの床を思いっきり踏んで欲しいんだけど」

 

「あぁっ!任せておけ!」

 

 

ティナに頼られていると言うだけでもやる気は100%を突破している。

例えコテツやタクマが作ったトラップだろうとフェニックスである俺には無意味だ。

ティナの指差している床をダンッと思いっきり踏む。

 

 

ガコンッ!

 

 

「え?」

 

 

天井から透明な壁が落ちてきて俺を囲う。

コンコンと叩いてみるが、これは・・・ガラスか?

多少の身動きはできるが狭い。

 

 

「確かに落ちてきたときは驚いたがこんなものか?」

 

「何だか拍子抜けしたわね」

 

「いえ、まだ続きがあるみたいです」

 

「小猫ちゃん?何を言って・・・」

 

 

リアスの戦車である小猫が何やら俺の上を見ながら言うを見てつられて俺は見上げる。

そこには天井が開いていて何かの大きな袋が見える。

そしてその袋が下に向けて口を開いて中のものが落ちてこようとしていた。

袋に書かれていた文字、小麦粉が俺に降りかかった。

 

 

ばさぁっ

 

 

「ぷっ。ライザー君、一気にお爺ちゃんになっちゃったわね」

 

 

視界一杯に広がる白い粉。

それは当然密室となった俺に全て降りかかり上から下まで全身真っ白となってしまった。

そしてそれを見て噴出して笑うティナ。

 

 

「・・・・・・・ぐっ」

 

 

いや、笑うティナは悪くない。寧ろ可愛いのでもっと笑っていてくれ。

全てはこんな仕掛けをした犯人だ。そしてその犯人は当然分かっている。

そいつの後始末で俺達は中学校の廊下を歩いているのだから・・・

 

 

「こ~て~つ~っ!!」

 

 

ボワッ!

 

 

ドガンッ!!

 

 

俺の怒りに応じて魔力が高まり炎を纏う。

瞬間、轟音と共に爆発が起こった。

突然の衝撃に俺の意識が一瞬途切れる。

囲っていたガラスも破壊され破片となり床に散らばる。

 

 

「ちょっと大丈夫なのライザー?」

 

「あ、あぁ。完全に俺のミスだ」

 

 

怒りで我を忘れていたとは言え、自ら粉塵爆発をしてしまうとは。

傷は再生されるとは言え痛いものは痛い。

 

 

「でも変ね。この辺にはトラップなんて無いけど」

 

「タクマさんのリストに洩れでもあったのでしょうか?」

 

 

リアス達が予めタクマから渡されていたトラップのリストを見ながら首をかしげる。

いや、あのタクマがそんなミスをするとは思えない。

となるとコテツが一人で仕掛けた可能性が高いな。

そう思い再度コテツへの怒りが湧き起ころうとしたがティナが無邪気に笑った。

 

 

「あはは。それ私が1年生の時に仕掛けたのよ。タクマちゃんが知らないのも無理はないわ」

 

「ティナ先輩・・・さすがにライザーさんが可哀相ですよ」

 

「うっ、ごめんねライザー君。騙すつもりは無かったのよ、ただライザー君がどんな反応してくれるか期待しちゃったの」

 

 

ティナが俺に・・・期待?

ふらつく頭だったがその言葉が耳から入り脳に刻み込まれる。

 

 

「はっはっは!この程度どうって事ないさ、可愛い悪戯じゃないか!」

 

「さすがライザー君、フェニックス家の耐久力は凄いわね!」

 

「軽い脳震盪を起こして言う台詞ではありませんわ」

 

「あれを可愛いで済ませるとは恋とは恐ろしいですね」

 

 

外野が何と言おうが構わない。

コテツへの怒りも何処かへ吹き飛んでしまっていた。

そんな身体はともかく心は有頂天な俺へと声が降りかかる。

 

 

「あ、ちょっとそっちは駄目!そこの人たち!逃げてください!」

 

 

やけに切羽詰った声に視線を向ければそこにいたのは学校にいるはずのない生物だった。

牛と熊が廊下を疾走してこちらへと向かってきている。

・・・うん、ちょっと待とうか。

牛が二本足でボディビルダーのようなポーズを取ったり、

熊がアッパーカットやローリングソバットで学生達をなぎ倒しながら来ているのは普通じゃない。

 

 

「え、何?またコテツのせいなの?」

 

「部長、さすがに何でも八代先輩のせいにするのはどうかと思いますよ」

 

 

そうだよな、せいぜいが小屋から逃げ出したとかだろう。

学校であんなアグレッシブな牛と熊を飼っているのかは知らないが。

 

 

「こら2匹とも!トラ先輩はそっちにはいないってば!」

 

「ネコさん・・・と言う事は八代先輩のせいですね」

 

 

頭にネコ耳を生やした子が追いかけながら言った言葉にやっぱりコテツが悪いと判断する。

とにかく俺が前に出て止めるか、と思ったが2匹は華麗に俺を避けて背後へと襲い掛かった。

 

 

「なっ!何なのよっ!」

 

「おっと」

 

 

牛はリアスへ、熊はリアスの騎士、ユウトへと襲い掛かる。

・・・あぁ、リアスの髪は赤いからな。

しかしユウトの方は何故だ?

 

 

「その構え、格闘をするのかい?」

 

「貴様に誠の一文字を背負う覚悟があるか試してやろう」

 

「熊が喋りましたわ!?」

 

「!?・・・分かった。相手になろう」

 

「祐斗先輩、本気ですか?」

 

「あぁ。どんな因縁か知らないけれど、誠の一文字を問われれば闘わないわけには行かない!」

 

「お姉さんにも分かるように言ってちょうだい祐斗ちゃん」

 

 

俺達を置いてけぼりにして熊と向かい合うユウト

その手には神器である魔剣が握られている。

相手も熊なのに2本足でしっかりと立ち何かの構えを見せる。

熊が喋るのは以前ニュースで見た事があるが格闘の心得がある熊は初めてだな。

 

 

「ちょっとこっちを助けなさいよっ!」

 

「心配しないでください部長。僕は負けませんから」

 

「あぁ、リアス。魔力弾を撃つなよ、校舎が壊れるからな」

 

「こっちの心配をしてっ!」

 

 

叫ぶリアスを他所に緊迫した闘いが今、幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムカイ先生に石化した状態で駒王学園に連行され先生方から説教を受ける事数時間。

ようやく家に帰ることができるぜ・・・

結局試合は俺達が勝ち、総合得点でも俺達A組が優勝となった。

後片付けはしなくて助かったが教室には既に誰もいないため一緒に喜ぶやつらがいなくて若干寂しい。

半蔵達も疲れた様子で帰ったと最後まで残っていた委員長である神月に聞いた。

当の本人は相変わらず高笑いをしながらリムジンで帰宅していったが。

 

 

「そういえば一人で帰るのって久しぶりだな」

 

 

家が近所の半蔵もそうだし分かれ道につくまでは誰かと一緒に帰っていたからな。

夕飯までは時間もあるし商店街に寄り道でもしていくか。

さすがに平日だから面白いイベントはやってないだろうが漫画の新刊が発売していたはず。

 

 

「ヘイ!そこのボーイ!」

 

「んあ?」

 

 

商店街に辿り着き、本屋に向かおうとしていたときだった。

やたらと明るい声に俺は足を止めた。

声の主は店と店の間にある細道、そこの奥にいた。

易占い師の格好をしている外国人の中年のおっさんだった。

外国人のおっさんが何故、日本の占い師の格好をしているのか突っ込みたかったがよく見れば知り合いだった。

 

 

「おー、おっさん。久しぶりだな」

 

「ハハハ!ユーも元気そうで何よりダヨ!」

 

 

薄暗い路地へと向かえばたどたどしい日本語でしわがれた声で話すおっさん。

お前は何処の大柴だよ、と突っ込みたいが本人は元ネタを知らないだろうから止めて置こう。

 

 

「しかしボーイも水臭いネ、ミーが教えたサモンをユーズしたなら見せてくれなくチャッ!」

 

「・・・ん?サモン?」

 

 

馬鹿な俺でも分かるレベルの英語を話してくれるおっさんだったが知らない単語に首をかしげる。

サモン、さもん、査問?ニュースとかで聞いた事があるが多分違うだろう。

おっさんとは俺が小学校の頃からの知り合いで悪戯の相談にも乗ってもらっている。

だから多分相談した悪戯の事だろうが、どれの事だろうか?

 

 

「ウォターンをサモンしたダロ?魔力でスグに分かったヨ」

 

「うぉたーん?まりょく?」

 

「オー、ソーリー。ボーイにも分かりやすく説明するヨ」

 

 

おっさんは昔から俺には分からないような専門用語を話すので困る。

まぁ、その後に分かりやすいように説明してくれるからいいんだけど。

 

 

「以前ユーがライトしたコレを覚えているカイ?」

 

 

そういって見せたのは古臭い紙だった。

そしてそこには変な模様の絵が描かれている。

丸い外枠の中に五芒星っぽい形の奴だ。

そういえば以前、おっさんに言われて書いた事があったな。

 

 

「このペンタクルが発動したんだヨ」

 

「何!?そうだったのか!」

 

 

おっさんからは面白い事が起こる、としか教えてもらっていない。

確か中学校のどこかの扉に貼り付けておいた気がする。

一応他のポスターで隠していたが何処だったかな。

 

 

「はっ!そういえば・・・」

 

 

そこでムカイ先生が半蔵達が罠を解除してまわっていたことを思い出した。

試合中に俺が駒王第二中学校にある全ての罠を発動させた事もだ。

きっと誰かが、その面白いはずの罠を発動させたんだろう。

 

 

「くっ、おっさん。俺もその面白い罠を見れなかったんだ・・・」

 

「オー!残念ネ・・・それならワンモア教えてアゲルヨ!」

 

「本当か!サンキュ、おっさん」

 

「オーケー!それならこんなペンタクルを見つけてミテヨ」

 

 

先ほどと同じ古臭い紙にかかれた模様を出す。

俺はその絵を見ながら自身の能力である本を取り出した。

ドサドサッと地面に落ちた本の一冊を取ってペラペラとめくる。

おっさんの書いた絵に似たようなものを探す。

 

 

「おっ、これか・・・いや、何か違うな」

 

「やっぱりボーイにしかルックできないネ・・・」

 

 

俺と同じようにおっさんが地面に落ちた本を拾い上げてページをめくる。

相変わらず謎だが俺以外が見ると白紙だ。

それから2冊、3冊と探していき、ようやく同じ絵柄を見つける事ができた。

 

 

「見つけたぜ、おっさん」

 

「ネクストはそこにライトされているワードをここに写してネ」

 

「よし来た」

 

 

おっさんが差し出した古臭い紙に鞄からシャーペンを取り出して写していく。

当然、日本語じゃない文字なので意味はさっぱりだがおっさんは分かるらしいので問題ない。

俺が苦戦して写していく中、対面にいる爺さんは俺の書いた文字を真剣な表情で読み取っていた。

こうしていると変な威厳と言うか、こっちも畏まっちまう。

まるで厳しい先生を目の前にしているような気分だ。

まぁ実際は得たいの知れないエセ占い師だが。

 

 

「こんなもんかな」

 

「フムフム。トゥナイト、午後11時にこのペンタクルにトカゲの尻尾、蝙蝠の羽を置けばイイヨ!」

 

「そんなもん持ってねーよ」

 

「ムム、それなら2つで1000円でイイヨ!」

 

 

そういって、おっさんは机の下でがさごそとした後に取り出した。

何で占い師がトカゲの尻尾と蝙蝠の羽を持ってるんだ。

いや、それよりもだ。

 

 

「高い!そんなの10円で十分だ!」

 

「オー、これでもサプライズな値段ネ。ボーイは我がままヨ」

 

 

むむむ、とはいえ先日のリーアランドでの出費で小遣いも残り少ない。

おっさんの事だから本当に面白い事が起こるんだろうが1000円は高いぜ。

 

 

「あら、また悪巧みでもしているのコテツ?」

 

「へ?グリ子さん?」

 

 

俺が悩んでいると後ろから声をかけられる。

そこにいたのはグレモリーに似た容姿を持つ女性、グリ子さんだった。

いつも会うのは夜中だったから夕方に出会うとは珍しい。

 

 

「グリ子さん!1000円くれ!」

 

「この子はいきなり何を言い出すの・・・」

 

 

借りるくらいなら初めからもらった方がいい。

そう思ってグリ子さんに頼むと呆れた顔をされてしまった。

そしておっさんがココまで至った経緯を説明する。

あれ?この二人知り合いだったのか。

 

 

「・・・そうね、面白い未来も視えるし。コテツ、いいわよ」

 

「マジで?」

 

 

いや、言ってみるもんだな。

俺はグリ子さんにもらった1000円札をおっさんに渡した。

そしてトカゲの尻尾、蝙蝠の羽を小さな巾着みたいな袋に入れて受け取る。

 

 

「完成したらセンターにホールを空けたら発動するヨ!」

 

「で、どんな面白い事が起こるんだ?」

 

「それは実際に起きてからの楽しみダヨ!ノープロブレム!ハウザーを見ればボーイもエキサイティングするヨ!」

 

 

おっさんがそこまで言うって事は相当なんだろう。

仕方ない、駒王学園のどこかに仕掛けて楽しむ事にしよう。

中心に穴を開けたらいいって事は針で開けれるようにしないとな。

 

 

「っつーかグリ子さん。何でこんなところにいるんだ?」

 

「ふふっ、それは貴方に会いに来たからよ」

 

 

そう言って俺の頭を撫でるグリ子さん。

えーい!無駄に恥ずかしいんだから止めろっ

頭を振るって撫でていた手を跳ね除ける。

グリ子さんは笑みを止めずに、あら残念、と言って手を下ろした。

 

 

「昔は可愛かったのに・・・反抗期かしら」

 

「ボーイも難しい年頃ヨ、気を落とさない事ネ」

 

「あんたらは俺の親か!」

 

 

結局、その後弄られつつも家に帰った。

ただ、そこで終わっていれば楽しく騒がしい日だったのだが・・・

 

 

「虎徹!あんたはまた先生方に迷惑かけてっ!」

 

 

学園から電話があったのかお袋から厳しい説教と小遣い減額が言い渡されてしまったのだった。

おのれ、緑軍人に影の薄い先生めっ!

 

 

 



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1年 1学期日常編
第32話


ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~
英雄派の日常3

「はぁ、今日も皆を取りまとめられなかった・・・」

「曹操、疲れているようだな。紅茶でも淹れよう」

「あぁ、済まない」

「構わんよ。では失礼する」

パタンッ

「・・・あの白髪オールバック、誰だ?」


英霊エミヤは英雄派に入るのだろうか・・・




球技大会から暫く経ち、梅雨に入ったのか雨の日がよく続く。

今日も傘を差して登校してきた。

やれやれ、こんなに雨が降っていたんじゃ、外で遊べないじゃないか。

 

 

「では殿、失礼するでござる」

 

「おう。お、琢磨はよーっす」

 

「あぁ」

 

 

扉に近い半蔵と別れて途中で琢磨に挨拶をする。

しかし何やらパソコンを睨むようにして挨拶もおざなりだった。

ついにガ○ダムを作る気になったか?

・・・駄目だ、ディスプレイを見ても難しい数式ばかりでさっぱりだ。

他のクラスメイトにも挨拶をしながら席に着く。

 

 

「おはよう八代君」

 

「おーっす結城」

 

 

後ろの席の結城に挨拶をする。

グレモリーと姫島はまだ来ていないようだ。

鞄から筆記用具を出そうとしたところで結城が更に声をかけた。

 

 

「ねぇ八代君」

 

「ん?」

 

「昨日の夜、学校に来てたでしょ」

 

「・・・サァ、ナンノコトヤラ」

 

 

馬鹿な、何故結城がそれを知っているんだ。

俺がトラップを仕掛けようとすると何故か結城やグレモリー、姫島に気づかれてしまう。

そのためにわざわざ、夜中に学園中に仕掛けて回っていると言うのに、どこでバレたんだ?

 

 

「嘘、だって高藤君から貰ったコレがあるからすぐに分かるんだから」

 

「何だそりゃ」

 

 

結城が手にしていたのはスマホに似た何かだった。

あれ、何かどこかで見たことがあるような・・・

 

 

「八代君の居場所を特定するGPSだよ」

 

「げっ!」

 

 

そうだった、球技大会の時に琢磨が渡していたのをすっかり忘れていた。

通りで俺の仕掛けようとする場所に3人が都合よく現れるわけだ。

それじゃあ夜中に出かけたのは意味がねーよ・・・

 

 

「結城、お前も暇人だな。何で夜中に俺の居場所なんて見てるんだよ」

 

「わ、私だって見るつもりは無かったよ。八代君が勝手に出歩いたりするのが悪いんだもん」

 

 

あれ?これは俺が悪いのか?

確かに夜中にトラップを仕掛けはしたけどよ。

 

 

「うん、八代君が悪いの」

 

「ふふん。だが、さすがに夜中は出歩けまい!つまり結城が俺を止める手段は無いって事だ!」

 

「うーっ、フェ、フェルちゃんが止めてくれるよね!」

 

「何デス?」

 

 

幾ら俺が出歩いている事を知ってもそれを止められる結城ではない。

これでも結城は、しつけの厳しい家だから門限とかもある。

これで俺を止める奴が一人減ったと思っていると結城はデス様へと救援を求めた。

既に恒例となりつつあるクラスメイトから餌と言う名のお菓子を貰っていたデス様がこちらにやってくる。

 

 

「八代君が夜中に出歩いているのは悪い事だよね?」

 

「?別に悪いとは思わないデス」

 

「ほら見ろ、デス様は俺の味方だ」

 

「え・・・やっぱり悪いデス」

 

「どういうこったっ!」

 

 

それは俺の味方が嫌だって事か!

デス様の頬を両側から引っ張る。うわ、すげぇ柔らかいな。

 

 

「ひゃへふへふー!」

 

「ほら!フェルちゃんもこう言ってるんだし・・・あ、リアス!」

 

「おはよう二人とも。どうしたのアスナ?」

 

 

デス様を堪能していれば敵が増えていた。

やってきたグレモリーは結城から話を聞くと暫く考え込んだかと思うとこちらを見た。

ふっ、所詮はグレモリー。沸点の低いお前など相手にならねーぜ。

 

 

「コテツ、夜中に出歩くのは止めなさい」

 

 

やたらと凄んで俺を見るグレモリー。

その目はやけに赤く光っている。

あれ?こんな事、前にもあったような・・・・

 

 

「・・・しょうがないな。夜中に出歩くのは止めるとするか」

 

「え、本当に?」

 

「二人がそこまで言うなら止めるって」

 

「そうして頂戴。ただでさえ、最近はぐれ悪魔が増えて危ないんだから」

 

「はぐれ悪魔?」

 

「うぅん、何でも無いの。こっちの話」

 

 

はぐれ悪魔、なるほど。

名前からして経験値が高そうな悪魔だな。

何のゲームだ?今度貸してもらうか。

・・・あれ?何で夜中に出歩いては駄目なんだっけ?

 

 

「それよりもコテツ。古典の宿題はやってきたんでしょうね?」

 

「そうだよ八代君。昨日、先生に言われていたよね」

 

「宿題、だと?昨日に古典なんてあったか?」

 

「コテツは爆睡していたデス」

 

「何でそれを早く言わねーんだよ!」

 

 

古典は壬生月先生じゃねーか!

もし忘れたとバレちまったらバッサリ斬られるな。

 

 

「昨日寝ていて出席簿で叩きつけられたの忘れたの?」

 

「すまん、昨日一部記憶が無いんだが・・・もしかしてそれのせいか」

 

「アレは凄かったデス」

 

「出席簿で衝撃波って出るのね・・・」

 

 

どうやら俺が寝ていた間に壬生月先生が俺を叩き起こしたらしい。

が、何故か記憶が無い。

気づけば放課後だった。

 

 

「と、とにかく二人とも。宿題見せてくれ!」

 

 

でないと俺の身体が真っ二つになってしまう!

俺のお願いに結城とグレモリーの二人はため息を吐いてノートを出してくれた。

 

 

「サンキュ!お礼は出世払いで頼むぜ」

 

「駄目だよ。お礼はちゃんとしてくれないと」

 

「そうね。まぁお礼はアスナと考えておくからコテツは宿題を写しなさい」

 

 

ぐっ、さすがに勢いで誤魔化せなかったか。

とは言え背に腹はかえられない。

俺はお礼については考えない事にして必死に宿題を写していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1限目の数学が終わった休憩時間。

・・・コテツさんの姿が見えませんわね。

タクマさんから頂いたコテツさんの居場所を特定するGPSを起動させると・・・

 

 

「化学室、ですか」

 

 

今日は化学は無いのに化学室にいるという事は。

また悪戯をしていますのね。

 

 

「朱乃、どうする?」

 

「今回は私が伺いますわ」

 

 

アスナさんに言って教室を出る。

全く、コテツさんも懲りるという事をしませんわね。

ふふふっ、ですがコテツさんの驚いたり悔しそうな顔を見るのも心地よいから構いませんが。

程なくして化学室の前へと来ました。

 

 

「あら?」

 

 

扉に手をかけたところで中から声が聞こえてくる。

コテツさん一人かと思いましたが他にもいらっしゃるようですわね。

先生に呼び出されたのかしら?

静かにして耳に意識を集中させる。

悪魔に転生したおかげで五感が高まり、扉を隔てていても中の声がはっきりと聞こえますわ。

さて、一体何を・・・

 

 

「ぐっ。先生、止めてくれ」

 

「ふふっ、貴方がいけないのですよ。ほら、これで丸裸です」

 

 

・・・・えっ?

聞こえてきたのはコテツさんの唸るような焦った声。

次いで先生の笑い声でした。

 

 

「だ、だが先生も隙だらけだぜ!」

 

「おや、珍しい。貴方から攻めてくるとは・・・」

 

 

こ、これはもしかして・・・そ、そういう事ですの?

た、確かにコテツさんも年頃の男性。

とは言え、これは予想しませんでしたわ。

まさか教師とそのような関係だったなんて・・・

私も悪魔ですのでそういう事には興味があります。えぇ、悪魔ですので。

 

 

「そ、そうですわ。これも後学のため」

 

 

これは覗きではありません。そう!人生の社会見学ですわ!

ドキドキとする気持ちを抑えて、そっと扉を開けて中を覗いてみます。

視界が扉から化学室の中へと移り、そこに広がっていたのは・・・・

 

 

「しかしこれで終わりです」

 

「ぎゃーっ!また負けたーっ!」

 

 

ズルッ

 

 

「おや?貴女は確か姫島さん。どうしました?」

 

「あん?何やってんだ姫島」

 

 

・・・私のドキドキを返してください。

教室に倒れるようにして入った私にお二人は首を傾げるばかり。

私は直ぐに立ち上がりお二人の元へと向かいます。

 

 

「何をしてらっしゃったのですか?」

 

「見ての通りチェスだ。くそーっ!これでタバサ先生に12連敗か」

 

「八代君。貴方はもう少し考えるという事をしなさい」

 

「そんな事言ってもルールを覚えたばかりだぜ。で、何で姫島は顔を赤くさせてんだ」

 

「な、何でもありませんわ」

 

 

穴があったら入りたい。

まさかそのような気持ちを実際に体験することになるとは思いませんでしたわ。

羞恥と落胆と安堵を同時に味わいながらもコテツさんから視線を逸らす。

・・・安堵?何故私はホッとしているのかしら?

 

 

「次の授業が始まりますよ」

 

「おっと、そうだな。行こうぜ姫島」

 

「え?えぇ、そうですわね」

 

 

何故こんな感情が湧いたのか考えようとしたのですが仕方有りませんわね。

また今度考えるとしましょう。

コテツさんと一緒に化学室を後にする。

 

 

「この短い時間にタバサ先生とチェスを指していたのですか?」

 

「あぁ、短い時間ならタバサ先生も集中しきれずにミスをすると思ってな」

 

「それはコテツさんも同じ条件ではありませんの?」

 

「・・・おー、その発想は無かったぜ」

 

「コテツさん、もう少し考えて行動しましょうね」

 

「ぬぐぐ、タバサ先生と同じ事を言いやがって」

 

 

うふふ、やっぱりコテツさんは色んな表情をしてくださるから楽しいですわ。

思わず私は手をコテツさんの頭に置いて撫でてしまった。

途端にコテツさんは私から距離を取り顔を赤くさせる。

その表情を見た途端、私の胸が疼きました。

 

 

「な、ななな、何しやがるっ!」

 

「何って、頭を撫でてみましたの。もしかしてコテツさん」

 

「な、何だよ」

 

「頭を撫でられるのが苦手ですの?」

 

「苦手って言うか、いい年して恥ずかしいだろ・・・って何だその笑みは!」

 

 

あらあら、思わず笑みが浮かんでしまいましたわ。

これはコテツさんの弱点を発見したようですわね。

私が再度コテツさんの傍に寄ろうとするとササッと距離を取る。

 

 

「・・・・・」

 

 

ずいっ

 

 

「っ!」

 

 

ささっ

 

 

「うふふ、コテツさん。そのような顔をされると溜まりませんわ」

 

「だーーっ!やってられっかーーっ!」

 

 

そう叫ぶと脱兎の如く逃げて行かれました。

コテツさんとお会いして3ヶ月、ようやくコテツさんから一本取った気がしますわね。

あの羞恥に赤くした顔、今なら以前に本で読んだ言葉も納得と言うものです。

 

 

「あの顔でご飯三杯はいけますわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿、姫島嬢と喧嘩でもされたでござるか?」

 

「いや、とにかく姫島の視界に俺を入れるなよ半蔵」

 

「よく分からぬでござるが承知」

 

 

先ほどから拙者を壁代わりにして姫島嬢の視界に入れまいとしている殿。

ふむ、喧嘩ではないとすると一体どうされたのでござろうか?

姫島嬢は微笑んで殿を見ているようなので仲がよいのなら問題ないでござるな。

 

 

「それでは今日は男女合同で体育を行う」

 

 

空手先生の声に拙者は視線を前に向ける。

雨でグラウンドが使えないため拙者達は女生徒と共に授業となったでござる。

しかし特に準備もされてはおらぬが何をするのでござろうか?

 

 

「今日の授業は防御について教える」

 

 

そう言ってホワイトボードを使いながら説明していく空手先生。

防御、でござるか。

忍びの里では戦闘についても教わっていたでござるが回避を主体にしたもの。

故に防御については疎かにしがちでござる。

 

 

「既に知っているものもいるとは思うがキチンと身を守れば刀だろうが銃弾だろうが防げる」

 

「あー、そういえばそうだな」

 

 

拙者の背に隠れている殿が思い出すように呟く。

確かに中学時代でもマシェッタ嬢の鉈のような刀を素手で防ぐネコ嬢など普通に防いでいたでござるな。

なるほど、防御とはとても重要なのでござるな。

 

 

「防御は疎かにしてしまいがちだが防御しつつ戦うといった戦法も編み出されている」

 

「ふむ。カウンターで勝つという事か?」

 

「そうだ高藤、とある軍人はその闘い方で長い間闘っている」

 

 

何と、そのような軍人がいるとは。

 

 

「衝撃波で距離を取り、近づけばサマーソルトで迎撃と口にするのは簡単だが難しい戦法だ」

 

 

むむっ、飛び込むタイミングを誤れば撃墜されるという事でござるか。

しかし拙者達忍びは速度が命でござる、動けぬ状態と言うのは死んだも同然でござるよ。

 

 

「これは噂だがレッドサイクロンを悉く苦しめてきたらしい」

 

「何だって!?」

 

 

空手先生の言葉に殿が反応する。

れっどさいくろん、とは確か殿が好きなプロレスラーだったはずでござる。

他にも鳥の覆面を被ったプロレスラーが好きと申されておった。

 

 

「また、防御と言っても最近では様々な方法がある」

 

 

ふむ、空手先生は格闘王を名乗るだけあって詳しいでござるな。

直前に防御して被害を限りなく無くす、相手を押して距離を取るなど。

これは拙者も習得せねば!

 

 

「では各自ペアを組んで真面目に取り組むように。遊んでいる奴はこの格闘王KENJIが相手になるぞ!」

 

 

さすがにもう空手先生の相手をしたくはないでござる。

殿や琢磨、結城嬢は格闘の心得のある生徒達とペアを組むようでござる。

となれば拙者はどうするべきか・・・

 

 

「ソコの忍者、アタシの相手するヨロシ」

 

「ぬ?蔵土縁嬢でござるか。うむ、よいでござるよ」

 

 

確か蔵土縁嬢は中国からの留学生でござったな。

よく教室で飛び回っていて元気の良い印象があるでござる。

 

 

「ジャア早速行くアルヨ!」

 

「む!」

 

「フォワッチャー!」

 

「いきなりでござるか!?」

 

 

青い気を足に纏いこちらへと飛び蹴りをしてくる。

急な事に驚きながらも後ろへと飛び避ける。

蔵土縁嬢は拙者の頭上を飛び越えたのを確認しながら懐に手を入れる。

手裏剣やクナイは危ないでござるな・・・ならばっ!

 

 

ひゅんっ!

 

 

縄のついた分胴を彼女が着地した瞬間目掛けて投げつける。

当たると思われた分胴は彼女から発した緑色の膜によって防がれてしまう。

ぬぅ、あれも防御の一種でござろうか。

 

 

「激甘ヨ!暗器使いは慣れてるネ!」

 

「ならばこれで!」

 

 

再度懐から手にしたのは鎖鎌。

右手に鎌を持ち、左手に鎖を持つ。

しかし相手はニヤリと笑うと姿勢を低くして滑るようにこちらへと近づいてくる。

 

 

「たぁっ!」

 

「見える・・・!」

 

「何と!?」

 

 

投げた鎌を、するりと避けると背後に回りこまれてしまったでござる!

こちらは鎌を投げて隙だらけ・・・まずいでござる。

 

 

「千里神掌!」

 

「ぬぅっ!」

 

 

気を纏った拳が拙者の体に叩きつけられる。

振り向いて鎖を前に出して防ぐもその威力に吹き飛ばされる。

 

 

ズサァッ

 

 

「ソレも見た事アルネ」

 

「蔵土縁嬢は忍びと闘った経験があったでござるか」

 

「ウーン、暗器も鎖鎌も忍者も全部違う人アル」

 

 

一体どういう事でござろう?

まさか暗器使い、鎖鎌使い、忍びと言った連中と闘った経験があるとは思えぬ。

ぬぅ、こうなると拙者も迂闊な忍具が使えぬでござるよ。

この様子だと鉄扇も止めておいた方がいい気がしてきたでござる。

 

 

「ならば体術で勝負でござる」

 

「望むトコロアル!」

 

 

中国四千年の妙技、見せてもらうでござる!

・・・ぬ、そういえば何故このような勝負をしていたのでござろうか?

考えていても始まらぬでござる、修行の成果を出し切るのみでござる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、結城とグレモリーを連れて商店街にある喫茶店に来ていた。

と、言うのも朝に宿題を写させてもらった礼をする羽目になったからだ。

まぁ、おかげで壬生月先生に斬られる事も無かったし助かったんだが・・・

 

 

「じゃあ、ショートケーキとチーズケーキとモンブランとレモンティーで」

 

「私も同じのでいいわ」

 

「お、俺の小遣いが・・・」

 

 

タダでさえお袋に小遣いの減額をされているというのに、こいつらは鬼だろうか。

俺はウェイトレスにコーヒーだけを頼もうとしたが値段を見て水だけにする。

ちくしょう、何で喫茶店のコーヒーは無駄に高いんだ。

 

 

「これに懲りたら宿題を忘れずにやる事ねコテツ」

 

「そう言われてもな、寝ていたんだから覚えてねーよ」

 

「だから授業中に寝るのが駄目なんだってば」

 

「球技大会の時はあんなに活き活きとしていたのに・・・」

 

 

そりゃ面白くない勉強より面白いイベントの方が楽しめるってものだ。

どうやら目の前の優等生二人にはそれが分からないらしい。

折角の放課後だと言うのに二人から説教をされていたところへ注文したケーキが来て解放される。

説教はヨハン先生だけで十分だぜ。

 

 

「うーん、美味しい!」

 

「本当ね、驚いたわ」

 

 

本当に美味しそうに食べる結城にグレモリー。

俺は氷の入った水で喉を潤しながらそれを眺めていた。

それを見てか結城の奴がフォークに刺したケーキをこちらに向けて来た。

 

 

「八代君も一口食べる?」

 

「いらねーよ」

 

 

ナチュラルに何やってんだコイツは。

恋人でも中々やりそうに無い事を平然とやってのけるとは。

一連の行動を見て今度はグレモリーが同じような事をしてきやがった。

 

 

「ふふっ、アスナ。コテツは照れてるのよ。ほら、遠慮せずにあーんしなさい」

 

「何だ、そうだったんだ。八代君のお金で注文したんだから照れなくてもいいのに」

 

 

おい、待て。何だこの状況は。

周囲の客もこっちをガン見してんじゃねー!

結城は天然だからいいとして、グレモリーの奴は絶対からかっていやがる。

普段意識しないようにしているとは言え二人とも美少女だ。

そんな二人にこんな事をしてもらってる時点で世の男達からすればアウトだろう。

いやいや、この二人は気遣いと悪戯の心からやっているだけでそういった(・・・・・)感情が無いのは分かる。

おのれ、男心を弄ぶとは何て奴らだ。

 

 

「・・・じゃあ遠慮なく頂こうか」

 

 

俺は二人のケーキではなく、テーブルに置かれているフォークを手に取る。

そして結城の手が付けられていないモンブランへと突き刺すと食べた。

 

 

「え・・・?あーーーーっ!」

 

「モグモグ・・・んぐ、んじゃこっちも」

 

「ちょ、ちょっと私のショートケーキ!楽しみにしていたのに!」

 

 

ふははは!馬鹿め!俺をからかうからこうなるんだ。

しっかし甘い、しかもほとんど噛まずに飲み込んだから胃にもたれる。

水を流し込むようにして飲んで一息つく。

 

 

「・・・ふぅ。うん、美味いな」

 

「八代君のばかーっ!」

 

「なんてことしたのよコテツ!」

 

「一口いいって言ったのはお前らだろ」

 

「うぅ、私のモンブランが」

 

「ショートケーキ・・・」

 

 

俺の反論を聞くこともせずに空になった皿を見て落ち込む二人。

あれ?何かこれ俺が悪い流れになってねーか?

おかしいな、俺は悪く無いはずなのに。

 

 

「どうぞ、追加のご注文でございます」

 

 

そんな声と共に先ほどのウェイトレスがモンブランとショートケーキを持ってきた。

紫の髪をしていて前髪で目が隠れている。

 

 

「え?いや、頼んでな・・・」

 

「以上で全てお揃いでしょうかぁ?」

 

「いや、だから」

 

「お揃いでしょうかぁ?」

 

「・・・・はい」

 

 

馬鹿な、何だあの笑顔の重圧は。

俺が引き下がるしか無かっただと・・・

何か最後は雷を纏っているように見えたぞ。

 

 

「ほ、ほら悪かったな。これも奢るから許してくれ」

 

 

ケーキ一つで涙目になって唸る二人に差し出す。

すると笑顔になりケーキを頬張る。

・・・やっすいな二人とも。

 

 

 



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第33話

ifシリーズ~対戦前会話っぽい何か~

里中千枝(P4U2) VS ゼノン・ゼシフィード(タイトル未定 DS)

「女を捨てた肉食獣。美少女なのにもったいない事をしますわね」

「何でその事知ってるの!?」

「花村殿、肉食獣とはどういう意味でござろうか」

「あー、何てーの?普段から肉ばっかり食ってるからじゃね?」

「外野は黙ってて!」

>落ち着け



「虎徹、できたぞ」

 

「は?」

 

 

梅雨がまだまだ続く6月、3時限目が終わり休憩時間に琢磨が開口一番言ってきた。

俺と一緒にいた半蔵も何の事か分からず首を傾げている。

できたって琢磨に何か頼んでいたっけ?

 

 

「できたって何がだ?」

 

「あぁ。ビームサーベルだ」

 

 

そう言って何か短い棒を俺に差し出す。

とりあえず受け取ってみる。

拳二つ分ぐらいの長さの棒だ。

 

 

「底の部分にスイッチがある。押してみるといい」

 

「スイッチ、これか。どれどれ」

 

 

ポチッ

 

 

ブゥンッ

 

 

「おぉっ!すげぇっ!」

 

「光の剣でござったか。どれどれ・・・痛いでござるっ!」

 

 

馬鹿だな半蔵。

ビームサーベルを手で触ろうとするからだ。

・・・でも実際触ったらどうなんだろう?

試しに俺も触ってみよう。

 

 

バチッ

 

 

「いてっ!触る前に痛かったぞ」

 

「プラズマカッターだからな。周囲の大気に自由電子が漂っているから当然だ」

 

「つまり・・・どういう事でござるか?」

 

「もっと分かりやすく頼む」

 

「・・・はぁ。要するに静電気の凄い版が周囲に漂っていると思えばいい」

 

「なるほど、あのビリッとくる感覚は確かに似ているでござるな」

 

 

なんだよ、それならそうと早く言えばいいのに。

軽くビームサーベルを振って感覚を確かめる。

うん、いい感じだ・・・よく分からんが。

とにかく面白い事になって来たことは分かる。

 

 

「よし、半蔵・・・試し斬りに行くぞ!」

 

「承知でござる」

 

「虎徹の腕ならば被害も出ないだろう。それで、誰にするんだ?」

 

 

そうだな、誰にしようか。

よく考えればこのクラスって剣士がいねーな。

この学園で俺の知っている剣士といえばトッキー先輩と・・・大自然も一応剣士になるのか?

他に誰がいたっけな・・・

 

 

ガラガラッ

 

 

「ほら、授業始めるぞ。とっとと席に着けよ」

 

「ちぇすとーっ!」

 

 

ギンッ

 

 

「な、何しがる虎徹!」

 

 

とりあえず斬りかかってみたがあっさりと防御されてしまった。

・・・あれ、プラズマって普通に防げるのか。

入ってきたのは臨時教師となった地理を担当するラグナさんだ。

 

 

「だってラグナさん、剣士じゃん」

 

「はぁ?それと斬りかかってくる事に何の関係が・・・」

 

「斬れば分かるって誰かが言ってた!」

 

「辻斬りかお前は!」

 

 

そう言いつつもデカイ剣を構えるラグナさん。

うん、やっぱりなんだかんだで付き合いがいいよな、ラグナさんって。

 

 

「ったく。ほら、お前の腕じゃ無駄だろうがかかって来いよ」

 

「ふふん、確かに剣の腕はへっぽこだがビームサーベルの力を侮るなよ」

 

 

当然、次の授業が始まる時間なのでクラスメイト達は全員揃っている。

まぁ野次やら応援などが飛び交っているので特に問題は無いな。

 

 

「どりゃーーっ!」

 

 

剣の技術なんてさっぱりなので思いっきり上に振りかぶって振り下ろす。

しかしそれはラグナさんが一歩下がるだけで簡単に避けられてしまった。

 

 

ギャリッ

 

 

「・・・何て危ねぇ武器を持ってんだお前は」

 

 

おぉ、床に結構深い斬り傷ができたぞ。

改めてビームサーベルの威力を思い知った。

 

 

「よし、これならいける!」

 

「はぁ、こんな事なら安請け合いするんじゃなかったぜ」

 

「このビームサーベルで天下を目指すぜ!」

 

「お前って本当にバカだな虎徹」

 

 

ブォンッ!

 

 

「お前じゃ無理だ虎徹」

 

 

今度はラグナさんから斬りかかってきた。

避けれない速さじゃないが、ここはビームサーベルで防いでみよう。

ラグナさんの剣とバツの字になるように合わせる。

 

 

「バーカ」

 

「教師がバカバカ言うなっ」

 

 

キィンッ!

 

 

しかしラグナさんの剣の方向が下から上にすくい上げるように変化した。

ビームサーベルの柄の底の部分を的確に狙われて俺の手からすっぽ抜ける。

しかも柄の底にあるスイッチを狙われたので自然とビームサーベルのプラズマが消えてしまった。

 

 

「ったく、さっさと授業始めるぞ。席に着けバカ」

 

「えー、もう一回やろうぜラグナさん」

 

「断る。その危ねぇ武器も片付けとけよ」

 

 

うーん、やっぱり俺には無理だったか。

まぁちゃんとしたビームサーベルになってたし俺としては満足だ。

しかしこのビームサーベルどうするかな。

どうするか考えながら席に着く。

 

 

「コテツ、本当に下手ね」

 

「うっせぇ、分かってんだよ・・・あ、そうだグレモリーの知り合いに剣を使う奴はいないか?」

 

「剣?祐斗が使うけど。まさか今度は祐斗と闘うなんて言わないでしょうね」

 

「んな事言わねーよ。んじゃコレを木場に渡してやってくれ」

 

 

俺はグレモリーにビームサーベルを渡した。

先ほどの闘いと呼べない闘いを見ていたグレモリーは頷くと受け取った。

 

 

「えぇ、渡しておくわね」

 

 

今度木場に会ったら黒い覆面とマントをプレゼントしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼、私は会社に戻って食堂で昼食を取っていた。

今日の営業は社長が着いてこなかったおかげで随分とスムーズに進める事ができた。

 

 

『尚、被害は大多数に渡りアメリカ政府はシャドルーとの徹底抗戦の構えをみせるとの事です』

 

 

ニュースを見てまたか、と思う。

シャドルーと呼ばれる昔から存在するテロ組織。

今度はアメリカでテロ活動を行ったようだ。

 

 

「八代さん。相席いいですかな」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

 

そう言って私の向かいに座ってきたのはアルバイトの男性だ。

髪をオールバックにしていて年齢は私よりも上のように見える。

本来は別の仕事をしているのだが、不況の煽りを受けて夜間の仕事のほかに日中もアルバイトをしているそうだ。

 

 

「ニュース、ですか」

 

「えぇ、シャドルーがまたテロ活動をしたようですね」

 

「ふむ。日本でも動きが活発と聞きますからな。八代さんも気をつけてください」

 

「そうですね」

 

 

とは言え、どう気をつければよいのだろう?

シャドルーは各国政府が調べているとは思うが私達一般市民には情報が渡ってきていない。

何度か日本にも現れたとニュースで知っている程度だ。

まぁ、私のような一般市民をわざわざシャドルーのようなテロ組織が狙うことは無いだろう。

 

 

「そういえば・・・夜間の仕事の方はどうなんですか?」

 

「えぇ、部下もよくやってくれています。先日、大仕事が片付いたところでしてな」

 

「それはおめでとうございます」

 

 

こうして会話するのは初めてではないが彼は結構な上級職のようだ。

私も営業の課長をしているが自ら営業に出ていて平社員の頃と変化は余り無い。

まぁ書類の判子を押してもらう立場から押す立場になったぐらいだろうか。

しかしそんな彼でも不況の波には逆らえないとはままならないものだ。

 

 

「八代君!どうして私を置いて行ってしまったのだね!」

 

「社長が来ると話しがまとまらないからです」

 

「はっはっは、八代君は冗談が好きだね」

 

 

昼食の乗ったトレイを机にダンッと置きながら社長が現れた。

何かにつけて運送について語ったり自爆の魅力について語ったりと困った人だ。

社長は席に着くと私の正面にいた彼に視線を向ける。

彼は社長に向けてぺこりと会釈をすると再び私に話しかけてきた。

 

 

「そういえば以前に小耳に挟んだのですが、八代さんは殺意の波動をお持ちだとか」

 

 

ピクリッ

 

 

「ほぅ、そうなのかね八代君」

 

 

彼と社長が何故か私を凝視している。

サツイノハドウか。随分と懐かしい名前が出たものだ。

 

 

「ははは、お恥ずかしい。下手の横好きですがね」

 

 

私の野球観戦以外の数少ない趣味は競馬だ。

そして、とある事情から私はサツイノハドウと言う馬の馬主になったのだ。

さすがに個人ではなく何百人と集まってできた組合の馬主だが。

だがサツイノハドウは10数年も前に引退したのだが、何故知っているのだろう?

 

 

「いや、さすが八代君だ。やはり私の目に狂いは無かったようだ」

 

「は、はぁ・・・」

 

「ちなみにそれは完全に制御下に置いているんですか?」

 

「え?いえ、結構な暴れん坊ですからね」

 

 

サツイノハドウは気性の荒い馬だったのは覚えている。

レース中に騎手を何度落としたか分からない。

まだ虎徹が小さかった頃にレースを見せに行った事がある。

しかしレースよりも馬が暴れているのを見て喜んでいた記憶がある。

 

 

「ふむ。それで今こうしていられるのは殺意の波動の力をモノにした結果、と言うことですか」

 

「まぁ、そうですね」

 

 

例え気性の荒い馬だったとしてもサツイノハドウの実力は確かだったのだ。

私も馬主として、競馬ファンとしてサツイノハドウには数少ない小遣いを賭けて小遣いを増やそうとしたものだ。

尤も、そう簡単に上手くいかないのが競馬だ。

的中させた数なら私よりも・・・

 

 

「そういう事は私よりも虎徹の方が才能はありますよ」

 

「何とっ!虎徹君がかね!」

 

「ほぅ、八代さんの息子さんですか」

 

 

虎徹が小学生の頃、妻には内緒で何度も競馬場に連れて行ったことがある。

試しに虎徹に好きな馬券を購入させたところ6、7割の確立で的中させていたのだ。

中には万馬券を当てた事もある。

その日は虎徹に好きなおもちゃを幾つも買ってあげたのも懐かしい思い出だ。

 

 

「なるほど。色々と教えていただき、ありがとうございました。私はこれで」

 

「いえいえ」

 

 

最後に頭を下げて彼は席を立った。

それを見送って彼の姿が見えなくなった頃、社長が彼が去った方を見て呟いた。

 

 

「・・・八代君、ところで彼は一体誰かね」

 

「誰ってまぁ、社長がご存知なわけないですね。アルバイトのベガさんですよ」

 

 

しかし社長にベガさんも競馬好きだったとは知らなかった。

うーん、久しぶりに虎徹を誘ってみるか。

近々、私達の保有している馬がレースにでるはず。

確か名前は・・・ゲオルグ14世だったか。

名前は馬主の一人が決めているはずだけど今回は誰が名づけたんだろう?

 

 

「しかし八代虎徹君か。やはり、ぜひとも私の力としたいものだ」

 

「だから虎徹はまだ未成年ですよ社長」

 

 

ルガール運送の力にしたいというのは分かるが虎徹に運送業が勤まるだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャンピオンさん、一緒に相撲やりませんか?」

 

「えー。四条、強すぎるから俺じゃ相手にならねーよ」

 

「ちゃんと教えますから大丈夫ですわ」

 

「俺が教えて欲しいのは飛び道具の出し方だ」

 

 

午後の授業、先生がお休みのため現在は自習中。

前に座る八代君は雛子ちゃんとおしゃべりをしているみたい。

まぁ他の皆も五月蝿くならない程度におしゃべりをしているから別にいいんだけど。

何だか胸がもやもやするような・・・なんだろう?

 

 

「モグモグ・・・アスナ、ティナはまだ戻らないデスカ」

 

「え、ティナ先輩?うーん、どうだろう。まだ帰ってないんじゃないかな」

 

 

お菓子を食べながらフェルちゃんが質問してくる。

ティナ先輩は何処かに旅に出ているらしく最近は部活も休みがち。

でもそれは中学時代でも同じなので特に心配はしていなかった。

 

 

「フェルちゃん、ティナ先輩に何か用事があるの?」

 

「ゴクン。ティナにお兄ちゃんへの手紙を届けるよう頼んだデス」

 

 

一瞬、フェルちゃんが何を言っているのか理解できなかった。

でもそれが理解できた瞬間、思わず大声を出してしまっていた。

 

 

「フェルちゃんお兄ちゃんいたの!?」

 

「あれ?言ってなかったデスカ?」

 

「う、うん。そうだよね、フェルちゃんも向こうでの生活があったんだもんね」

 

「2ヶ月も経ってるデスカラ、きっと心配しているデス」

 

「うーん、そっか。ごめんねフェルちゃん」

 

「アスナのせいじゃないデス」

 

 

フェルちゃんの頭を撫でながら考える。

フェルちゃんがこんなに可愛いって事はフェルちゃんのお兄さんもきっと可愛いよね?

うーん、どんな子なんだろう。

 

 

「・・・まずいわ、すっかり忘れていたわね」

 

「えぇ、どうしますのリアス。下手したら冥界が壊滅していますわよ」

 

「だ、大丈夫よ。お兄様達、魔王様方がいるもの」

 

 

何だか横でリアスと朱乃が顔を青褪めさせているけど、どうしたのかな?

フェルちゃんは私に撫でられて気持ちよさそうな顔をしている。

 

 

「お兄ちゃんなら優しいからきっとコテツを許してくれるデス」

 

「そっか。でも八代君も謝ると思う・・・うぅん、謝らせるから」

 

「ボクとしてはタクマに謝って欲しいデス」

 

 

八代君の不思議な力、普通じゃ起こりえない事を起こす本。

八代君は面白いからいいや、って言ってるけどやっぱり変だよね?

今回みたいに誰かを無理やり呼び出しても悪い事をしたとは思ってないみたいだし。

うん、やっぱり八代君はフェルちゃんのお兄さんに謝ってもらわなくちゃ。

きっと心配して怒ってもゲンコツ一つくらいで許してくれるよね。

 

 

「ですがリアス、最近冥界と連絡がつかないですが知りませんでしたの?」

 

「え・・・」

 

「それに最近はぐれ悪魔が多く冥界から流出しているようですし・・・」

 

「ま、まさか・・・ね」

 

「リアスどうしたの?さっきから顔が青いけど」

 

「な、何でもないわっ!えぇ、何でも無いのよ」

 

 

心配して声をかけても全然落ち着いた様子は無い。

まるで故郷で怪物が暴れまわっているような顔をしているみたい。

 

 

「時々アスナの直感が恐ろしい時があるデス」

 

「うん?何かいったフェルちゃん?」

 

「何も言ってないデス」

 

 

そういえば夏休みまで後1ヶ月。

と言うことは夏休み前のテストが迫っているわけで・・・

うん、八代君と服部君が泣きついてくるだろうからノートをもう少し分かりやすく書いておこうかな。

あの二人が土壇場で私と高藤君を頼ってくるのは恒例だしね。

本当に仕方がないなぁ。

 

 

「違うよ、こう愛を込めて撃つんだよコテッちゃん!」

 

「愛って何だっ!」

 

「いいか八代。うっとおしい八神を思い浮かべて薙ぎ払う感じでいいんだ」

 

「八神って誰だよ!」

 

「自分が最も格好いい姿、それを体現したのが幻影ハリケーンよ。さぁ八代もやってみなさい」

 

「だからそのやり方を教えろよっ!」

 

 

・・・うん、あの様子じゃ完全にテストの事は忘れてるね。

昨日、ヨハン先生から連絡があったんだけどなぁ。

 

 

「春日野、搭城に教えたお前ならできる!」

 

「教えたけど駄目だったよね。私の友達に通信教育で炎が出た子がいるけど・・・」

 

「それだっ!」

 

 

幾らなんでも怪しいと思うけど・・・

そこは八代君、形振り構わないね。

飛び道具が出せるようになったとしてどうするつもりなんだろう?

まぁ八代君の事だから面白そうだから、って理由だと思う。

 

 

「と、とにかく帰ったらグレイフィアに連絡してみましょう」

 

「それがいいですわね」

 

 

それにしてもリアスたちは何の話をしているのかな。

困っているようだし力にはなりたいけど・・・

 

 

「多分、アスナが心配しても仕方が無いデス」

 

「そうなの?」

 

「それよりもお菓子の袋を開けて欲しいデス」

 

「ふふっ、うん。ちょっと待っててね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ、全く甘いぜ。グレモリーに結城!

確かに夜中には出歩かないと約束はした・・・だがなっ!

 

 

チリンチリンッ

 

 

誰も自転車で走り回らないとは言っていないぜ。

深夜、俺は自転車を漕いで駒王学園に向かっていた。

さすがにこの時間帯は誰もいないのかひっそりとしている。

 

 

ピタッ

 

 

自転車にブレーキをかけて停止する。

耳を済ませても静かな夜だ。

まるで俺以外誰もいないような静寂が広がっている。

・・・何だかわくわくするな!

 

 

「よし、違う道から行ってみるか」

 

 

普段通学路として使っている道ではなく細い路地へと入り込む。

街灯の数も少なく、より一層暗い道になっているようだ。

何だか知らない街に来たみたいで俺の冒険心がくすぐられるぜ。

 

 

「そこの貴方!止まりなさい!」

 

「ん?」

 

 

折角のわくわく感に水を差したのは誰だ?

目の前で剣をぷるぷると震えながら持っている金髪の女性だった。

はて、俺よりは年上だとは思うが何の用だろうか。

とにかく知らない人なんで言うことを聞く必要も無いだろう。

 

 

チリンチリンッ

 

 

「ほら、危ないぞー」

 

「だから・・・止まりなさい!」

 

「だから危ないってっ!」

 

 

両手を横に開くようにして立ちふさがってきた。

仕方なくブレーキをかけて止まる。

 

 

「で、どちらさん?」

 

「コホンッ、私はICPO所属のカイと言うものです」

 

「俺は八代虎徹。それにしてもICPO?警察なのか」

 

「そうです。これが証拠です」

 

 

手帳みたいなのを差し出してきた。

そこには顔写真があるが写っているのは金髪のイケメンだった。

え、違うじゃねーか。もしかして偽者か?

 

 

「分かって頂けたようですね」

 

「いや、顔写真ちげーし」

 

「え?・・・あ、こ、これは理由がありまして」

 

 

挙動不審に手を横に振って言い訳をする女性。

ますます怪しい。

そうだ、ICPOと言う事はクラスメイトの鬼子母神に聞けば分かるな。

 

 

「ちょっと失礼」

 

 

カシャッ

 

 

「な、何を・・・」

 

「俺の知り合いにICPOの鬼子母神ってのがいてな。本物か聞いてみる」

 

 

目の前の女性の写真を取りメールで聞いてみようとする。

が、素早い動きで俺の携帯を取り上げられてしまった。

 

 

「おいおい、返せよ」

 

「そ、そんな事をしなくても大丈夫です」

 

「んー、まぁいいか。で、何の用?」

 

 

もう既に俺の中ではICPOに成りすました女性と結論付けて話を聞くことにした。

俺が話を進めた事でほっと胸を撫で下ろしたのか剣を抱えた状態で口を開いた。

そんなに重たいなら降ろせばいいのに・・・

 

 

「最近、この辺りは物騒ですから大通りを歩いてください」

 

「物騒?そんなの今更だろ」

 

 

この辺りには鳴鏡館と呼ばれる人殺しの剣術道場がある。

平気で人をバッサバッサと斬り殺している事で有名だ。

 

 

「強盗など貴方が想像しているよりも遥かに物騒なのです」

 

 

うん、それも知ってるよ。

以前にも強盗犯が鳴鏡館に押し入った時も嬉々としてで斬り殺したって話だしな。

おふくろや先生達も近寄るなって言っているしな。

 

 

「とは言ってもな、俺はこの先にある駒王学園に用があるんだよ」

 

「学校ですか・・・分かりました。私が護衛を兼ねて行きましょう」

 

「え、アンタが?」

 

「はい。ですから用事を済ませたら直ぐに家に帰ると約束してください」

 

 

どう見ても弱そうなんだが・・・

剣すら持てないような女性を護衛にしてもなぁ。

しかしここで頷かないと先に進めないみたいだし。

 

 

「はぁ、分かったよ。とりあえずその剣、捨てたらどうだ?邪魔じゃねーの?」

 

「これは神器ですよ、そんな事ができますか!」

 

「いや、知らないし。じゃあどうするんだ」

 

「当然、このまま行きますとも!」

 

 

ズリズリと引きずるようにして歩き出すカイとか言う女性。

えーい、じれったいな!

 

 

「っ!下がってください!何かが近づいてきています」

 

「ん?」

 

 

薄暗い道へ目を凝らしてみる。

のし、のし、と確かに何かが近づいてきている。

やがて少ない街灯に照らされてその正体が姿を現した。

 

 

「く、熊!?どうしてこんな街中に・・・」

 

「与作!与作じゃないか!」

 

「うむ、やはり虎徹の匂いだったか」

 

「熊が喋った!?」

 

 

中学時代、俺が飼育小屋で世話をしていた熊の与作だった。

結城はクマちゃんなんて可愛らしい名前を付けていたが・・・

 

 

「与作、また小屋を抜け出したな」

 

「人は襲っていないので問題は無かろう」

 

「え、あの・・・虎徹君。この熊と知り合いなのですか?」

 

「そんなところかな。これから駒王学園に向かうけど与作も来るか?」

 

「ほぅ、虎徹の新たな学び舎か。いいだろう」

 

「あの、何で熊が喋っているんでしょうか」

 

「知らねーよ。面白いから別にいいだろ」

 

 

与作に重たそうな剣を持ってもらい俺達は学園を目指した。

途中、何か変なのが出たらしいがカイの飛び道具と与作の豪腕で蹴散らしていく。

暗くて見えないんだけど何だったんだろう?野犬とかか?

っつーか、コイツも飛び道具を出せるのか。何て羨ましい・・・

 

 

 




色んな死亡フラグを立てた気がしますが気のせいですね。


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第34話

ifシリーズ~対戦前会話っぽい何か~

ジル(MARVEL VS. CAPCOM 2) VS 両津勘吉(Jスターズビクトリーバーサス)

「その生命力、まさかアンブレラの手先!?」

「何だ貴様、わしはこの先のパチンコ屋に用があるのだ。どけっ!」

「あれが警官なんて世も末だわ」

「ロケットランチャー構えてる方も警官みたいだぞ」



「ここ、ですか?」

 

「あぁ。ここが俺の通う駒王学園だ」

 

「棲みかとしては申し分無いな」

 

「いや、与作が棲みかとするなら、あっちの飼育小屋だからな」

 

 

俺とカイ、与作の二人と一頭は何事も無く学園に辿り着いた。

正確には何か邪魔してくる奴がいたみたいだがカイと与作が蹴散らしていた。

道中が暗くて結局正体は分からずじまいだ。

 

 

「それで何の用事があるのですか?」

 

「うーん、そうだな」

 

 

今日はどんな悪戯をしようか。

職員室にはこの間忍び込んだしな。

校長室か?いや、あそこは俺でもかなりの難易度を誇る場所だ。

卒業までには何とかして忍び込みたいが今は止めておこう。

 

 

「では私は新居訪問と行こう」

 

「飼育小屋ですか。うさぎとか可愛い動物がいるんですか?」

 

「うさぎはいないな」

 

 

飼育小屋で飼っている動物を思い出しながら質問に答える。

白いゴリラや紫色の変な動物ならいるが。

 

 

「よし、プールだな」

 

「まだ少し早いのでは?」

 

「だからいいんじゃないか。掃除に来る奴らを驚かせる仕掛けをしよう」

 

「ふむ、では別行動だな。用事が済んだら来るといい」

 

「おう、じゃあな与作」

 

 

与作と別れて俺達はプールを目指す。

校門からだとグラウンドを突っ切って行った方が早いな。

 

 

カッ!

 

 

「うお眩しっ!」

 

「な、何ですか一体!?」

 

 

突然、校舎のライトが一斉に光り、目が眩む。

腕で防ぎながら辺りを見回すと・・・

 

 

『ふっふっふ。ようやっと餌に飛びつきおったな』

 

「だ、誰だっ!」

 

『日中の悪戯が減っているから深夜に待っておれば案の定じゃ』

 

『会長、考えたのはウチや』

 

 

だから誰だよ。

啖呵を切るのはいいんだが眩しくて誰が喋ってるか分からないっての。

マイクを使っている事は分かるが、それだけだ。

 

 

『ふふふ、驚きのあまり声も出ぬようじゃな』

 

「いや、眩しいのと誰か分からないから声の出しようもないんだが」

 

『む、それもそうじゃな』

 

『照明さん、ウチらの周囲以外消しといて』

 

 

パチンッと音がして幾つかのライトを残して暗くなる。

さて、会長とか言っていたがどんな奴だ?

グラウンドにある朝礼台の上にソイツは立っていた。

銀髪をお団子にして背の小さい女生徒だ。

隣には水色の髪をポニーテールにしている変な髪飾りをつけた女生徒がいた。

 

 

「・・・あれ?見覚えないな」

 

『八代虎徹と言ったか。1年じゃから入学式以来と言うことになるのぅ』

 

 

入学式?あぁ、サボって色々と探索していたからな。

通りで生徒会長って言われて顔が思い浮かばないわけだ。

 

 

『まぁ先日の球技大会でも姿はちらっと確認しておるんじゃがの』

 

 

はて、いたっけな。

あの時は場所を転々としていたからな。

 

 

「まぁ、確認はその辺でいいやろ」

 

「それもそうじゃな」

 

 

マイクを降ろしてこちらへとやってくる。

結局、こいつら何がしたかったんだ?

どうやら俺を待っていたようだが・・・まさか俺のファンか?

 

 

「どうやら虎徹君と同じこの学園の生徒のようですね」

 

「む?そちらは・・・うーむ、どこかで見た気がするのぅ」

 

「会長はおばあちゃんやからな。忘れとるだけやって」

 

「誰がおばあちゃんじゃ!こんなにピチピチしておるわっ!」

 

「うわ、もうその言い方で年がバレるで」

 

 

生徒会長と言い合いをしている奴も生徒会っぽいな。

そうか、何か会長の喋り方に違和感があると思ったが田舎のばあちゃんみたいなんだ。

 

 

「ともかく、わしが駒王学園生徒会長のイングリッドじゃ。こちらは会計のラビリスじゃ」

 

「で、結局何の用だ?」

 

「おっと、忘れるとこじゃった。お主に頼みたい事があってな」

 

「頼みたい事?」

 

「キミには生徒会公認でイベント実行委員をして欲しいんや」

 

 

イベント実行委員、言葉だけ聞くと何とも惹かれる役職だ。

つまりは俺のやりたいようにやっても構わないって事だろ?

 

 

「最近はマンネリ化してきて、つまらんからのぅ。そこで1年にして駒王学園の問題児であるお主に白羽の矢が立ったのじゃ」

 

「別にいいけど、それだったら夜中に待ち伏せする必要無くね?」

 

「だってキミ、放送で呼んでも素直に来るとは思えへんもん」

 

「まさかそこまで読まれているとは・・・」

 

 

確かに放送で呼ばれても生徒会からの呼び出しなんて行こうとは思わない。

中学校では風紀委員と並んで敵対組織の一つだったからな。

どうやら俺のリサーチをかなりしてきたみたいだ。

 

 

「よし、じゃあ俺に全て任せておけ!まずは授業を全て撤廃だ」

 

「それイベントちゃうから無理やで」

 

「そんなっ!それじゃあ何のためのイベント実行委員だっ!」

 

「せやからイベントを考えて欲しいんやけど。あ、風紀に違反するものは駄目やで」

 

 

俺に頼むくせに注文が多いな。

うーん、こうなったら生徒会を騙しつつ楽しめるものを考えないと駄目だな。

 

 

「うむ。期待しておるぞ・・・む?」

 

 

グラッ

 

 

「うおっ、地震か!?」

 

「いえ、これは・・・あちらの方です!」

 

 

どんなイベントにするか考えていると突如地面が揺れた。

カイが指摘する方向を見てみれば旧校舎の前に変なのができていた。

あれは・・・門?

 

 

「何と!何故ここにあの門が!」

 

「会長は何か知っとるん?」

 

「禍々しい気配を感じますね」

 

 

会長が驚くと難しい顔をする。

何だろう、ヤバイ類のものなのか?

はっ、もしや夢の国に繋がっているんじゃないだろうな。

 

 

「あれは地獄門。現世と常世を繋ぐ忌まわしき門じゃ」

 

 

言っている意味がさっぱり分からないんだが・・・

よし、ここは困った時の琢磨頼みだ。

俺はスマホを操作して電話をかけた。

 

 

「・・・あ、もしもし琢磨か?」

 

『こんな時間にどうした虎徹・・・学園にいるようだが』

 

 

何で琢磨も俺の居場所が分かるんだよ。

例のGPSは他にもあるって事か。

 

 

「琢磨、地獄門って知ってるか?」

 

『?・・・時代劇の映画のようだな。だが僕達が生まれる前の話だぞ』

 

「あれ、そうなのか。何か地獄門って門が出たみたいなんだけど」

 

『もしかするとリメイク版のロケかもしれないな』

 

「よし、じゃあエキストラとして出演できないか交渉してみるぜ」

 

『エキストラか。剣の才能が無いお前には無理じゃないか?』

 

 

ぐっ、そうだった。

この間もラグナさんに言われたばっかりだったな。

殺陣って奴を一度でいいからやってみたかったが諦めるか。

 

 

「はぁ、何か面白そうだけど俺は帰るとするか」

 

「うむ、それがいいじゃろう。危険じゃからな」

 

「では、帰りも私が送りましょう」

 

 

やっぱり素人がやると危険なのか。

あ、そういえば与作を忘れていたな。

帰る前に飼育小屋に寄っていこう。

 

 

「おう、じゃあな二人とも」

 

「気をつけてなー」

 

「後の事はワシ等に任せておくがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小猫、朱乃!今よ!」

 

「やあぁっ!」

 

「そこですわっ!」

 

「11011・11100」

 

 

ドサッ

 

 

「部長、こっちも終わりましたよ」

 

「えぇ、皆お疲れ様。それにしても妙ね」

 

 

最近増えてきたはぐれ悪魔。

しかし今日は悪魔ではない存在が私達を襲ってきていた。

白い人型で手足を鋭く変化さたり空を滑空してきたり妙な言葉を話してくる。

強さはそこまででも無いけれど数が多かったわね。

 

 

「姿が消えた時は焦りました」

 

「しかし今のは悪魔では無かったみたいですわ」

 

「この後どうしますか?はぐれ悪魔を探しますか?」

 

「そうね、今日に限って現れていないというのも不自然だし探しましょう」

 

 

魔力を探れば大体は見つかるものなのだけど・・・

案の定、小さな魔力反応が多数見つかった。

ただ、何故か全てが一箇所に集まろうとしている。

これは・・・駒王学園?はぐれ悪魔達にとって魅力的な価値があるとは思えないけど。

 

 

「あら、あれは・・・」

 

「どうしたの朱乃?」

 

「いえ、先ほどロックさんが見えましたので」

 

「駒王学園の方に向かったみたいですね」

 

 

ロック、確か隣のクラスにいる男子生徒の一人だったわね。

隣のクラスにはもう一人男子生徒がいたと思うけど・・・どっちがロックだったかしら?

 

 

「金髪でしたのでロックさんだと思いますわ」

 

「他にも二人ほど一緒にいましたけど、どうしますか部長?」

 

「彼らの向かう方向には、はぐれ悪魔が集まっているわ。心配だから追いかけましょう」

 

「10011・10100・01111・10000・11011」

 

「・・・また現れましたね」

 

 

本当に次から次へとキリが無いわね・・・

数はざっと5体、時間をかければ倒せるだろうけど。

 

 

「やれやれ、様子を見に来てみれば・・・こっちもか」

 

「またこいつらが相手か」

 

「ライザーッ!それにソルまで」

 

 

現れたのはライザーにソル、そして知らない男の人だった。

いいタイミングで現れてくれたものだわ。

初めて見た人がいるけど二人と一緒なら戦力になるわよね。

 

 

「旦那、何時の間にこんな可愛い子達と知り合いになったのか詳しく知りたいねぇ」

 

「メンドクセェ、さっさと片付けるぞ」

 

「あらら、旦那は相変わらずお堅い性格なんだから。それじゃサクッと行きますか!」

 

 

大剣を構えたソルと鎖鎌を持った男が白い人型に立ちはだかる。

その間にライザーがこちらにやってきた。

 

 

「はぐれ悪魔が駒王学園に集まっているみたいだが、そっちに向かうのか?」

 

「えぇ。ニンゲンが数人ほど学園に向かったみたいだから追いかけるわ」

 

「そうか。じゃあこっちは任せて・・・って、また増えたな」

 

 

見れば白い人型が更に10人増えていた。

本当、何処から湧いて出てくるのかしら。

 

 

「おい、ライザー。一匹につき報酬上乗せ忘れるんじゃねぇぞ」

 

「マジでっ!俺様も張り切っちゃうよ」

 

「ちょ、ちょっと待て!それは、はぐれ悪魔の話だっ!えーい話を聞けっ!」

 

 

なるほど、何故ソルがいるのか不思議だったけど雇ったみたいね。

もう一人の方もソルと同じ賞金稼ぎかしら?

 

 

「くそっ、こうなったら・・・出でよ!我が眷属達!」

 

 

ライザーが腕を振るうと炎が飛び散り幾つもの魔法陣を形成していく。

そして魔法陣から多数の悪魔が転移してきた。

あれがライザーの眷属なのね。

 

 

「どうされましたライザー様?」

 

「いきなりで悪いがあいつらが相手だ。全員いけるな?」

 

「もちろん、我らライザー様のお声があればいかなる時でも戦い勝利して見せましょう」

 

「頼むぞお前達。後輩が見ているからな、下手なところは見せられないぞ」

 

「リアス・グレモリー様とその眷属ですか。では張り切って行くとするか」

 

「修行の成果を見せてやるにゃっ!」

 

 

まさか報酬を支払いたくないから呼ばれたとは思わないでしょうね。

それにしても数が多いわね。14人か。

質より量を取ったのかしら?

 

 

カランッ

 

 

ライザー達の戦い方を見るべきか追いかけるべきか考えていたところで集中を邪魔する音が響く。

それはタクマからもらったコテツの居場所を知らせるGPSだった。

コテツは暗示をかけて家で大人しくしているから今は必要な・・・い?

・・・何故コテツの居場所を知らせる光が駒王学園で点灯しているの?

 

 

「部長?僕達も加勢しますか?」

 

「っ!すぐに駒王学園に向かうわよっ!」

 

「とは言っても簡単に行かせてもらえそうには無いみたいですけど」

 

 

気づけば回りこまれてしまっている。

くっ。こっちは急いでいるって言うのに邪魔な奴らね!

 

 

「何かあったんですか?」

 

「コテツが学園にいるのよ。急がないと!」

 

「コテツさんがっ!?」

 

「はぁ!?何でコテツが?」

 

「そんなの私が知りたいわよっ!皆、急ぐわよっ!」

 

「ちっ、カーラマイン!雪蘭!リアス達の道を切り拓け!」

 

 

ライザーの眷属が行く手を阻む白い人型へと攻撃する。

今がチャンス!

 

 

「皆、行くわよっ!」

 

 

何故暗示をかけたはずのコテツが駒王学園にいるのか。

疑問が湧き上がるけれど一つだけ言える事がある。

本当にいつも私の予想を裏切ってくれるわねコテツは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいですか虎徹君。私は貴方の年上なのですから少しは敬意を持ってですね・・・」

 

「あーはいはい。ほら、飼育小屋に着いたぜ」

 

「全く君と言う人は・・・・虎徹君」

 

 

深夜、妙な気配を感じて出歩いたところで出会った少年、八代虎徹君。

そんな彼が学校に向かうというので護衛をかって出たのはよかった。

ただ道中に喋る熊や、ギアとも異なる異形の生物がいたのは驚いた。

いや、異形の生物は以前に聖騎士団のデータベースで見覚えがある。

確か・・・アクマだったか。

そんな驚きがあったにも関わらず私は今日一番の驚きを体験していた。

 

 

「どうした?」

 

「何故飼育小屋にビッグフットやエイリアン?がいるのですか」

 

「サスカッチとFinalだろ。珍しいよな、何て言う種類の動物なんだろうな」

 

 

駄目だ、虎徹君には私の常識が通用しない。

未だ驚きから立ち直れていない私を置いて虎徹君は飼育小屋へと入っていく。

危険だから止めるべきだろうか?

いや、しかし仮にも飼育小屋で飼っているのだから危険ではないのでは?

 

 

「おいおい、血塗れだな。与作が暴れたのか?」

 

「ふむ。新参者への礼儀だそうだ。皆、手強い相手ばかりで心が躍ったぞ」

 

 

また喋る熊ですか。

それよりも血塗れ?虎徹君が危ない!

飼育小屋に入り虎徹君の無事を確かめると・・・

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

「何が?」

 

 

虎徹君は紫色のエイリアンの触手を蝶々結びして遊んでいました。

おかしい、私が聖騎士団に入ってICPOの長官となったのはこんな光景をみるためでは無いのに。

何故、こんな場所で異様な生物達と戯れているのだろうか。

身体も女性へと姿を変えられてしまったし。

 

 

「どうだ与作。面白い奴らばかりだろ?」

 

「あぁ。今の棲みかに勝るとも劣らぬ強者ばかりで心が躍る」

 

 

まずは優先事項としては私の姿を変えた者を探し元の姿に戻してもらう。

次にICPOに連絡を取り私がいなかった間の雑務処理ですね。

もちろんソルを見つけた場合はそれが最優先事項です。

 

 

「あれ?布団があるな」

 

「・・・確かに布団ですね」

 

 

今後の考えを新たにしたところで虎徹君の言葉に意識を戻す。

布団自体はありふれた物だ。

ただ、それが飼育小屋にあるというだけで途轍も無い違和感を感じる。

じっと見ていると布団がもぞもぞと動く。

誰か寝ているのだろうか?

 

 

「うるさいなぁ、静かに寝かせてよ」

 

「ミヅマん!ミヅマんじゃないか!」

 

 

ドゴォッ!

 

 

「静かにして」

 

「ぬおぉぉっ、あ、頭が揺れる」

 

 

何処から取り出したのか巨大なライターで虎徹君の頭を殴る彼女。

どうやら虎徹君の知り合いのようですが何故こんなところに?

 

 

「もう夜中ですよ。家に帰って寝てはどうですか?」

 

「帰るのが面倒臭い。雨が降った後で地面がぐちゃぐちゃだし」

 

「じゃあしょうがないな」

 

「いやいや。しょうがない、で済ませては駄目ですよ」

 

 

こうなったら彼女も家まで送らないと。

先ほどの地獄門と言い今夜は異常だ。

私も身体が変化しており本調子ではない。

せめて封雷剣が使えれば多少はマシになるのだが・・・

 

 

「とは言ってもな。寝ちまったぞ?」

 

「ZZZ・・・」

 

「困りましたね」

 

「俺にいい考えがある」

 

「・・・普通に起こすのでは駄目ですか?」

 

「普通なんて面白くないだろ」

 

 

そう言って先ほどと同じように何処かへと電話をかける。

あぁ、出来れば平穏無事な起こし方でありますように。

 

 

「あ、タクマ?あのさ、この間大量に仕入れたって言っていたアレまだあるか?」

 

 

話し声は聞こえないながらも虎徹君がわくわくと楽しそうに話している。

先ほどのイングリッドさんの話と言い彼は悪戯の常習犯のようだ。

まぁ学生の悪戯ぐらいなら可愛いものだろう。

 

 

「ニンゲン、そこのバナナとってくれよ」

 

「え?あ、はい。これですか」

 

 

私は白い毛皮で覆われたビッグフットに言われてバナナを取り渡す。

それを大きな手を使い器用に皮をめくって食べる。

美味しそうに食べる姿は心が和む。

ビッグフット族は好戦的な種族ではないとは言え飼育小屋に入れられるような扱いでいいのだろうか?

以前に見たデータベースでは数も少なく友人として扱うように記載されていたのだが・・・

 

 

「モグモグ」

 

「・・・・・・」

 

 

うん、まぁ今はそのような些事に拘る必要は無いですね。

この光景を見ることが出来ただけでも良しとしないと。

 

 

「よし、後は準備するだけだな。カイ、屋上に行くぞ!」

 

「え?何ですか突然。彼女は起こさなくてもいいのですか?」

 

「そのために屋上に行くんだよ。与作はどうする?」

 

「今の棲みかから荷物を取ってくる。二人で問題ないな?」

 

「おう、じゃあ気をつけて帰れよ。カイ、行くぞ」

 

「仕方ありませんね・・・虎徹君!まだ危険は去っていないのですから勝手に行かない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶好の見晴らしじゃないか・・・昼間だったらな。

夜中なのでグラウンドの方は何も見えやしない。

残っているライトの下には誰もいないようだ。

何か金属音がするけど会長と書記の二人だろうか?

うっすらと旧校舎の前に門が見えるって事はロケはまだ続いているようだ。

 

 

「それで屋上に来ましたけど何をするつもりですか?」

 

「まぁ落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない」

 

 

まずは準備をしないとな。

俺は三度、琢磨へと電話をかけた。

 

 

「おーい琢磨。転送よろしく」

 

『あぁ。すぐに送ろう』

 

 

返事と共に屋上に7台のミキサー車が現れた。

おぉ、これだけの数があると迫力あるな。

 

 

『転送完了。配置については問題無いか?』

 

「うーん、多分大丈夫だろう。やっちゃってくれ」

 

『了解だ』

 

 

7台のミキサー車の後ろにあるミキサーが動き始める。

やがてミキサー車の背後からドロッとしたものがグラウンドに向けて流れ出した。

 

 

「・・・虎徹君、何をしているんですか」

 

「何ってセメントを流し込んでいるんだけど?」

 

「いえ、そうではなく。それと彼女を起こす事と何の関係が?」

 

「いいかカイ。ミヅマんは雨でぬかるんだ地面を歩くのが嫌で飼育小屋で寝ていたんだ」

 

「まぁ、そうですね」

 

 

つまり、ただ起こせばいいってもんじゃあない。

そこでグラウンドをセメントで固めてしまえばミヅマんも大人しく帰るって事だ。

ミヅマん自身は琢磨に考えがあるって言うから任せるとしよう。

 

 

「どうだ、完璧だろ?」

 

「完璧におかしいですよ!何故、一人を起こして帰すだけでこんな事になるんですか!」

 

「なるほど、つまりはもっと派手に行こうぜ、って事だな?」

 

「違いますっ!規模が大きすぎると言っているんです!」

 

 

やれやれ、注文の多い奴だな。

俺なんてシャドルーとかに比べれば大した規模じゃないだろうに。

 

 

『さすがにグラウンドだけあって範囲が広いな。このままだと斜面になってしまうぞ』

 

「ん?どういうことだ?」

 

 

琢磨の話では使用しているセメントは直ぐに固まる物を使っているそうだ。

そのためセメントを流し込んで暫くすれば固まり先へとセメントが流れ込み固まりの繰り返しを行う。

結果的に校舎側のセメントは高く、グラウンドの端の方は低くなるとの事だった。

 

 

『もう少し時間をかけて固まるものにすればよかったか』

 

「まぁ滑らかな地面になるならいいんじゃないか?」

 

 

それに巨大な滑り台が出来たと思えば、こっちの方が都合がいい。

駒王学園が巨大なアスレチックに、なんてニュースが明日流れたら面白いな。

 

 

ぐらっ

 

 

「おっと」

 

『どうした虎徹』

 

「また地面が揺れたな」

 

「地獄門の方で動きがあったようですね。門が消えていきます」

 

 

どうやらロケは終わったのでセットを片付けているようだ。

その割には音も立てたりしないなんて、さすがプロだな。

 

 

「こ、虎徹君っ!」

 

「今度は何だよ、そんなに慌てて」

 

「あ、足元見てくださいっ!」

 

「足元?・・・うおっ!?」

 

 

足元にはセメントが流れ込んでいる。

慌ててミキサー車を見る。

一番奥のミキサー車の位置が悪いようでグラウンドに流れ込むと同時にこちらにも流れ込んでいた。

 

 

「やべぇっ!もう動けないぞっ!」

 

『ふむ。転送に失敗したか?いや、何か障害物でもあったか。どちらにせよ僕にはどうしようもないな』

 

「こうなったら法術で壊すしかありませんね」

 

「琢磨!ドリルでもハンマーでもいいから転送してくれっ!」

 

 

ぴちゃっ

 

 

「騒いでいるところ失礼します」

 

 

セメントが流し込まれている屋上に誰かがやってきた。

黒い帽子を被ってひらひらした布をまとった女性だ。

服のサイズが合っていないのかぱっつんぱっつんだな。

 

 

「間も無く地震が・・・」

 

「いいから助けてくれ!」

 

「と言うよりも貴女も直ぐに離れてください」

 

「はい?・・・こ、これは!」

 

 

時既に遅しとはこういう事を言うんだな。

いや、ミイラ取りがミイラにだったか?

どちらにせよ俺とカイに続いて被害者が増えただけだった。

何て役に立たない助っ人だ。

 

 

「・・・壊す時間もありませんか。すみません、一言だけ構わないでしょうか?」

 

「別に構いませんが。こうなっては動く事もできませんし」

 

「ありがとうございます。では・・・数秒後に局所的な地震が起こります」

 

「はぁ?」

 

 

突然何を言い出すんだこのお姉さんは。

何でそんな事が分かるんだよ。

天気予報師なのか?

 

 

ぐらっぐらぐらっ!

 

 

「お、おぉっ!ほ、本当にきやがったっ!」

 

「これは大きいですよっ!?」

 

「後は総領娘様のご機嫌次第です。天に祈るとしましょう」

 

『ふむ。こちらでは地震は起きてはいないが、大丈夫なのか?』

 

「大丈夫なわけ、ねぇだろ!」

 

『ふむ。グラウンドのセメントも固まった。次のフェイズに移行するぞ』

 

「と、とにかくやってくれ!」

 

 

さすがに地震でミヅマんも起きているだろうがな。

万が一の事を考えて次の手を打っておこう。

 

 

『では、ソーラ○イを起動する。グラウンドに人がいるが・・・まぁいいだろう』

 

「おい、今何て言った?」

 

『研究には犠牲が付き物だと言っただけだ』

 

 

今更だが琢磨に頼ってよかったんだろうか?

何か今日は裏目に出る事が多い気がするな。

さすがに殺すような真似はしないと信じたい。

 

 

『安心しろ。衛星から太陽光エネルギーを吸収、圧縮した光線を放つだけだ。死にはしない』

 

 

なんだ、じゃあ眩しいだけって事か?

日焼けサロンみたいなもんだろう。

 

 

「二人ともこれから眩しくなるから目を覆っていろ」

 

「え、はい。分かりました」

 

「空気を呼んだ方が良さそうですね。分かりました」

 

『カウント5秒前。5、4、3、2、1・・・発射』

 

 

カッ!

 

 




タイトルに偽り無し(マテ。
虎徹にとっては多少騒がしい日常です。


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第35話

ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

前話飼育小屋にて

「グオオオォォンッ!!」

「虎徹君。この黒い影は一体・・・」

「エルクゥって言うらしいぞ。しっかし五月蝿いな」

「他にもツッコミどころはあると思うのですが」




「ど、どうなったんでしょうか?」

 

「あー、眩しかった」

 

『ふむ。凡そ計算通りだな』

 

「目がチカチカします」

 

 

屋上で足をセメントで固められた俺達。

一応視界を腕で覆ってはいたが予想以上に眩しかったな。

先ほどまでの眩い閃光が嘘のように再び真っ暗になる。

地震も収まったようだし、まずはこの状態を何とかするか。

 

 

「琢磨、ミキサー車の回収とドリルの転送よろしく」

 

『了解した。幾つ必要だ?』

 

「そっちの二人もドリルいるか?」

 

「いえ、私は法術で破壊しますので必要ありません」

 

「ドリル・・・折角ですので頂けますか?」

 

「じゃあ琢磨。ドリル二つで。あと懐中電灯と双眼鏡もな」

 

『分かった。転送するぞ』

 

 

ミキサー車が回収され俺の直ぐ傍に転送される。

あ、このドリルどうやって渡そうか。

そう思っていると役に立たなかったお姉さんの変な布がドリルに巻きついていく。

そして軽々と浮かびお姉さんの手に渡った。

すげぇ、何だアレ。マフラー?ストール?便利そうだな。

 

 

「これは・・・素晴らしい一品ですね」

 

 

何故かうっとりとした表情でドリルを持ち上げて様々な角度から見ている。

ドリルの良し悪しなんて分かんねーよ。

変なお姉さんは放って置いてドリルで慎重に足元のセメントを削っていく。

扱い方は中学時代に色々とお世話になったから心得ている。

10分程で足元のセメントを削り終えて自由になった。

 

 

「あぁ、疲れた」

 

「全く。これに懲りたら今後このような事はしないように!いいですね虎徹君」

 

「安心しろ。今度はもっと派手にするぜ」

 

「少しは反省しなさいっ!」

 

 

同じように自由になったカイが小言を言って来るので聞き流す。

お前は小姑か。

そういえばカイの奴はどうやってセメントを削ったんだろうか?

ほーじゅつ、とか言っていたが・・・まぁ異能関連だろう。

気にするだけ無駄だな。

 

 

「さーって、グラウンドはどうなったかなーっと」

 

「あ、まだ話は終わってませんよ」

 

 

屋上の端に立ち懐中電灯でグラウンドを照らす。

あれ?思ったより滑らかじゃないな。

何かところどころに穴が空いている。

門があった箇所には会長と書記らしき姿がある。

後は何故か4人ほど増えていた。誰だ?

 

 

「彼女達も逃げられなかったようですね」

 

「お、こっちに気づいた」

 

 

光を照らしているので当然相手も俺に気づくか。

双眼鏡で覗き込んでみると何か叫んでいるようだ。

当然、距離が離れているので何を言っているかまではわからない。

とりあえず手を振っておこう。

後、4人組の方は一人だけ知っている奴がいた。

 

 

「あれ、何でロックがいるんだ?」

 

「知り合いですか?」

 

「あぁ。隣のクラスの奴だ」

 

 

他にはロックと同じ金髪で青い鉢巻を巻いた女の人。

赤い髪をした侍っぽい人。

後は、ふさふさした毛皮っぽい帽子を被った人だ。

こっちは目元まで隠れて毛皮も背中の足元まで伸びていて性別が分からない。

 

 

「うーん、どんな関係かさっぱりだな」

 

「あれ?先ほどの女性がいませんね」

 

「え?」

 

 

カイの言葉に双眼鏡から外して後ろを振り返る。

本当だ、いつのまにかいなくなっているな。

・・・あ、ドリル持っていきやがった!

まぁ、俺のじゃないからいいか。

 

 

「よし、それじゃあミヅマんが起きたか確認しに行くか」

 

「その前に彼女達を助けるのが先決です」

 

「えー」

 

「えー、じゃありません。自分がしでかした事なのですから最後まで後始末は・・・」

 

「どうしたカイ?」

 

 

小言が途中で止まりカイを見れば明後日の方向を見ていた。

街の方を見ているようだが何か見えるのか?

 

 

「この法力は・・・探しましたよソル!」

 

「ちょ、おまっ!」

 

 

こっちが止める間も無くカイは屋上から飛び降りた。

空中をダッシュするという離れ業をしながらあっという間に学園から遠ざかっていく。

ソルって事はソルさんの知り合いだったのか。

 

 

『とにかく、今回はいいデータが取れた。明日、いや今日は遅刻しないようにな虎徹』

 

「おう、サンキュ琢磨」

 

 

琢磨との長い電話も終える。

さて、この後どうするかね。

 

 

スタッ!

 

 

「コテツ!」

 

「あん?・・・うおっ!?」

 

 

ドサッゴツッ!

 

 

ぐおおぉっ!あ、頭が痛ぇっ!

声に振り向いたと同時に誰かに体当たりを喰らい後頭部を地面に打ち付ける。

だ、誰だこんな事をする奴は!

 

 

「ってグレモリー?」

 

「大丈夫コテツ!?どこか怪我してない?」

 

 

俺を押し倒すようにして見下ろしながら聞いてくるグレモリー。

何だこの状況、って言うか何でそんな心配そうな表情をしているんだコイツは。

それに顔が近い!

・・・まぁ、とりあえずはグレモリーの質問に答えるか。

 

 

「怪我ならたった今したとこだっ!何しやがる!」

 

「なっ!せ、折角心配してあげてるのにその言い草は何よっ!」

 

「うっせぇっ!重たいんだからどけっての!」

 

「何よこっちは心配して駆けつけてきたのに!」

 

 

ぐにぃっ

 

 

「いひゃい!ひゃひひははふ!(痛い!何しやがる!)」

 

 

ぐにぃっ

 

 

「ひゃっ!ひゃひふふほほ!(きゃっ!何するのよ!)」

 

 

お互いに頬っぺたを両手で引っ張り合う。

おかげでグレモリーが何を喋っているのかさっぱりだ。

誰か通訳を呼んでくれ。

 

 

「あら、リアス。先に向かったのはコテツさんとイチャつくためだったのですわね」

 

「その様子だと無事みたいですね」

 

「大丈夫ですか八代先輩」

 

「ほう、ほはへは(よう、お前ら)」

 

「もうっ!バカな事言わないで朱乃!」

 

 

何時の間に姫島達まで来ていたんだ。

俺の手を振りほどいてグレモリーだけ自由になる。

おいこら、俺の頬を掴む手を離せ。

 

 

「学園に駆けつけたら真っ白な光が天から降ってきたりグラウンドがセメントで固められていたり凄い魔力が霧散したりはぐれ悪魔がいなかったり・・・全部コテツのせいなんだから!」

 

 

ぐにぐにっ!

 

 

真っ白な光は琢磨のせいだ。あんなものを用意するなんて俺は聞いていない。

グラウンドは俺のせいだが何か問題でもあるのか?

後半は言葉の意味が分からん。

 

 

「あらあら楽しそうですわ。リアス代わってもらってもいいかしら?」

 

「そうね。心配をかけたんだから当然よね」

 

「はひをふふーっ!(何をするーっ!)」

 

「あ、朱乃先輩。次は私がします」

 

「あはは、八代先輩。頑張ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八代先輩と合流して僕達はグラウンドに出た。

来たときは飛んで来たけど八代先輩がいるから歩いてだ。

でも八代先輩が無事で本当によかった。

はぐれ悪魔の餌食になっていたらどうしようかと思っていたからね。

 

 

「ったく、散々引っ張りやがって」

 

「ふん、コテツのせいよ」

 

「そうですわ。心配をかけた分は遊ばせて頂かないと」

 

「結構面白かったです」

 

 

部長達も八代先輩の無事な姿を見てか落ち着いている。

さて、色々と気になるところだけど八代先輩に話を聞いても答えが帰ってくるか分からない。

まずは着いて行き何をしていたかを確認した方がいいと言う事になった。

 

 

「それで何処に行くつもりですか?」

 

「あぁ。会長達のところだな」

 

「旧校舎の前に誰かいるわね・・・足首までセメントで固められているけど」

 

「それは別に構わないんだがよ・・・木場、それ見えづらくないのか?」

 

「あぁ、これですか?最初は苦労しましたけどコツを掴めば大丈夫ですよ」

 

 

やはりと言うべきか八代先輩も僕について聞いてきた。

部長達も僕の姿を見て何事かと聞いてきたしね。

 

 

「しかし夜中にサングラスとは中々やるな」

 

「全く、祐斗も誰に影響を受けたのかしら」

 

「あはは、友人と買い物に行った時に薦められたんです」

 

 

クラスメイトのケイと買い物に行った時に見つけたサングラス。

ケイがやけに薦めてくるので買って付けてみたけど自分でも中々気に入っている。

そんな話をしている内にセメントで身動きできない人たちの下に辿り着いた。

確かこの辺りから大きな魔力を感じたはずだけど・・・

 

 

「よぅ、会長」

 

「よぅ、ではない!お主の仕業じゃな。さっさと何とかせんか!」

 

「何だよセメントで足が動かないぐらいで」

 

「誰もこんな事するとは思わへんわっ!」

 

「俺のいた中学じゃ首から下が石になった事が無い奴なんていないぜ?」

 

「何それこわい」

 

 

そういえば球技大会の時も先輩は中学校の先生に石にされていた。

しかも連帯責任とかで在学生達も皆、首から下が石化していたっけ。

よくよく考えればとんでもない中学校だ。

 

 

「虎徹、テメェの仕業か!」

 

「ロック。お前何か口調悪くなったな」

 

「俺はロックじゃねぇっ!楓だ!」

 

「ふふん、俺を騙そうたってそうは行かないぜ。黒髪が楓で金髪がロックだろ」

 

「いや、普段はそうなんだが・・・あー!とにかく何とかしやがれ!」

 

 

球技大会でも見かけた金髪の男性。確かロックと言う名前のはずだ。

自分は楓と名乗っているみたいだけどどういう事だろう?

 

 

「仕方ないな。まずロック達を解放するか。じっとしてろよ」

 

 

手に持っていたドリルでセメント部分を削りだす八代先輩。

すると八代先輩が会長と呼んでいた人が部長に話しかけた。

 

 

「お主は魔界、いや冥界の住人じゃな」

 

「っ!よく知ってるわね。生徒会長と言うことは貴女も?」

 

「いや、わしは知り合いがおるだけじゃ」

 

「そう。この辺にはぐれ悪魔が集まっていたはず。何か知らないかしら?」

 

「うむ。どうやら地獄門が放つ魔力に引き寄せられたようじゃな」

 

「地獄門?」

 

 

地獄門とは常世と現世を繋ぐ門で、開かれると魔人が現れて現世を破壊する危険な代物であること。

それを番人である黄龍と言う人とロック先輩達が封印をした事が分かった。

なるほど。強大な魔力は地獄門ではぐれ悪魔はその魔力に引き寄せられたのか・・・あれ?

 

 

「あの、ではそのはぐれ悪魔達は?貴女達が退治したのでしょうか?」

 

「幾つかはそうやけど。空から白い光が降ってきたと思ったら、消えよったで」

 

「白い光。コテツさん、いえタクマさんの仕業ですわね」

 

「あの時言っていた太陽光を使った武器ってこの事だったのかしら・・・」

 

 

部長達には心当たりがあるようだ。

しかし高藤先輩か。あの人の発明は本当にトンデモ無いものばかりだ。

 

 

「よし、これでいいだろ」

 

「ええ、ありがとう」

 

「雪、元凶に礼を言う必要は無い」

 

「本当だぜ・・・何だよ、お師さん。もう行っちまうのか」

 

「あぁ。門が開く前に封ずる事ができた。犠牲も無く今回は最良の結果と言ってよいだろう」

 

 

どうやら八代先輩がロック先輩達の足場を壊したようだ。

しかし一人、獣の毛皮を纏った男の姿が消えようとしている。

門番と言っていたから地獄門の門番なのだろう。

一緒に門が開くのを防いだって事は味方・・・でいいのかな?

 

 

「さぁ帰るとするか」

 

「待たんかい!ウチらを忘れとる!」

 

「あぁ、そうだった。いやーうっかり」

 

「・・・お主、自由になれば覚えておれよ」

 

 

今度は会長さん達の足元を壊していく八代先輩。

何はともあれ疑問に思っていた事は全て解決、かな。

いや、あの白い人型に関してはよく分かっていない。

 

 

「部長、僕達はどうしますか?」

 

「ここはもう問題ないみたい」

 

「そうね・・・いえ、まだコテツに聞きたい事があったわ」

 

「何かありましたの?」

 

「コテツには夜中に外を出歩かないように暗示をかけたのよ」

 

 

なるほど。暗示をかけているのに、こうして出歩いている事は不思議だ。

でも八代先輩なら何とかしそうな気がするのはどうしてだろう?

 

 

「八代先輩なら普通に無視しそうです」

 

「もしくはリアス。貴女失敗したのではありませんの?」

 

「ちゃ、ちゃんと効果はあったはずよ」

 

「まぁまぁ部長。直接聞いた方が早いですよ」

 

「そ、そうね」

 

「そこじゃ!」

 

 

ゴツッ!

 

 

「ぐぇっ!」

 

「オイタが過ぎたようじゃな」

 

 

鈍い音に振り返ってみれば八代先輩が蹲って頭を抑えていた。

どうやら解放された会長さんにやられたようだ。

・・・うん、まぁここは自業自得って事で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ。虎徹との電話が終わったと思ったら今度は呼び出しか。

僕は深夜、ある人物に呼び出され向かっていた。

道中、白い人型のナニカがいたがメンテナンスの終わったスーパー8の稼動チェックで終わった。

この様子ならお姫様に返しても良さそうだ。

 

 

「来たか」

 

「それで用件とは何だソル」

 

「こいつらに見覚えは無いか」

 

 

前置きも無く着いた途端に聞かれる。

その場には呼び出したソルだけではなく、バンダナを巻いた見知らぬ男。

そしてライザーさんとライザーさんを取り囲む女性達の姿があった。

僕の姿を見たライザーさんの顔が分かりやすく歪む。

 

 

「げっタクマ!?あ、いやその・・・こ、これはだな」

 

「なるほど。つまりバティン先輩の事は諦めたと」

 

「ち、違う!そうじゃないんだ!」

 

「まぁどちらでも構わないが。それでコイツ等のことだったな」

 

 

ライザーさんが慌てて釈明しようとしているが抱きつかれては説得力が無い。

まぁなんらかの事情があるようだしバティン先輩への報告は止めておこう。

気を取り直してソル達の足元にいる白い人型を見る。

先ほど僕を襲ってきたモノと同型か。

 

 

「機械ではないな。人造生命体の類か」

 

 

見覚えは無い、と言う事は僕の所有しているデータベースでもヒットしないだろう。

となれば誰かに聞くのが一番か・・・彼女にするか。

早速、仕事用の電話で相手にかける。

深夜だというのに相手は程なくして出てくれたようだ。

 

 

『何だ、こんな時間に。私の時間を奪うなど何様だ貴様は!』

 

「随分な物言いだな大道寺博士」

 

『ふん。この私の声を聞けるだけでも有り難いと思え』

 

 

こうして話すのはゴールデンウィーク以来だろうか。

この機嫌からして研究中か寝ていたかのどちらかだろう。

となれば手短に話すとしよう。

 

 

「白い人型の人造生命体を見つけたが心当たりはあるか?」

 

『・・・何?固体識別などは?』

 

「ふむ。軽く見た程度では判断できないな。どうする?」

 

『寄越せ。私の元まで持ってくるがいい』

 

 

住所を教えてもらい電話を切る。

新たな研究対象を見つけた事で怒りは収まったようだ。

さて、遅くなって怒られても面倒だ。

 

 

「現段階では分からないから調査してもらえる場所に持って行くぞ」

 

「あぁ。その前にライザー。報酬を寄越せ」

 

「はぁ・・・仕方ないな」

 

「俺っちの分もお忘れなく」

 

「くっ、出費が・・・」

 

 

いつの間にかライザーさんの周囲にいた女性がいなくなっていた。

僕と同じ転送技術でも持っているのだろうか。

 

 

「そうだ!早くコテツのところに急がないと!」

 

「む?虎徹がどうかしたのか」

 

「あ・・・いや、コテツが危ないんだ」

 

 

何処か言いよどむようにして話すライザーさん。

虎徹が危ない?

 

 

「先ほど電話では元気そうだったが?」

 

「それは何時頃だ?」

 

「10分も経ってはいないな。僕も実験が出来て素晴らしい成果だった」

 

 

ライザーさんに先ほどまでの虎徹の悪戯を話してやる。

ソルともう一人の男も呆れ顔になりライザーさんは項垂れた。

 

 

「し、心配して損した」

 

「あの坊主、タチの悪い事しかしねぇな」

 

「将来有望な坊ちゃんじゃないの。あ、そうだ」

 

「どうした?」

 

「アンタが旦那の言っていた情報屋でいいんだよな?」

 

「そうだが。そういえば名前を聞いていなかったな」

 

「おっと、俺はアクセル・ロウ。それで聞きたい事があってね」

 

 

ふむ。ソル経由で僕の事を知っているのは構わない。

しかし何の用事だろうか?

 

 

「タイムスリップできる方法って知らないか?」

 

「・・・何?」

 

 

聞けば彼は突発性タイムトラベル体質で突然タイムスリップするそうだ。

それで自分のいた時代に帰ろうと何とかしているが上手く行かないと。

・・・研究しては駄目だろうか?

 

 

「まぁ・・・何度かタイムスリップはした事がある」

 

「マジでっ!?」

 

 

虎徹と意外にも結城さんに迫られて、だがな。

どのタイムスリップも大変だった印象しかない。

何よりも転送技術が使えないのが痛かった。

だというのに虎徹と半蔵のお気楽二人に加えて結城さんまで大はしゃぎだった。

今思えばよく現代に戻ってこれたものだ。

 

 

「だが安全にタイムスリップする手段はまだ研究中だ」

 

「そっか。でも出来る可能性があるのは大きいぜ」

 

「ちなみにどれくらい前にタイムスリップしたんだ?」

 

「確か・・・およそ700年ほど前だな。移動手段が馬か徒歩と言うだけで苦痛だった」

 

「さすがにそれほど昔は知らねぇな」

 

「旦那も生まれてないもの、当然っしょ」

 

 

ソルも100年は生きているがそれよりも昔だからな。

まぁ今は昔話を話している場合ではないな。

時代転移技術の優先度を若干上げるとして大道寺博士に研究サンプルを届けるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿!おはようでござる!」

 

「おう!半蔵、おはようさん!」

 

「普段の殿にしては朝から調子良さそうでござるな」

 

「まぁな!何せ寝てないからな!」

 

 

朝、いつもの如く迎えに来た半蔵と挨拶をかわす。

会長だけでなく書記からも報復を受けて何とか家に帰った。

しかし帰ったのは3時、4時間なんて中途半端な睡眠時間を取るぐらいなら起きてしまえと徹夜していた。

おかげでテンションマックスだぜ!

 

 

「む、では今日は授業はどうするでござるか?」

 

「そうだな。保健室で寝るとするか」

 

「承知。昼餉の時間には起こしに向かうでござる」

 

「頼んだぜ」

 

「全く、朝から元気だな二人とも」

 

「おう、親父」

 

「これは殿の御父君。おはようございまする」

 

 

親父もこれから出勤のようで鞄を持っていつものスーツ姿でいた。

まぁ今日は俺が寝てないからいつも家を出る時間より早いからな。

途中まで一緒なので親父も含めて3人で歩く。

 

 

「あ、虎徹。社長が今度お前に会いたいと言っていたぞ」

 

「ルガール社長が?何で?」

 

「社長はお前にルガール運送に来て欲しそうにしていたからな。勧誘の類じゃないか?」

 

「さすがは殿、既に注目を浴びるとは」

 

 

おいおい、俺はまだ高一だぜ。

大学に行くか就職するかも決めてないって言うのに。

しかし俺みたいな一般人がテレビでも見る社長と話す絶好の機会でもあるしな。

 

 

「うーん。じゃあオッケーって伝えてくれるか?」

 

「分かった・・・頼むから失礼な真似だけはしないでくれよ?」

 

「ふふん、当たり前じゃないか。全く、親父は俺の事を何だと思っているんだ」

 

「お前だから心配なんだよ・・・」

 

 

失礼な親父だ。

少しは息子の事も信用して欲しいぜ。

 

 

「それじゃあ私はここで。いいか虎徹、学校でも問題を起こさないようにな」

 

「はいはい。じゃあな親父」

 

「頑張ってくだされ」

 

 

親父、暴力すら振るわない優等生の俺にその心配は杞憂だぜ。

軽い悪戯はするが問題なんて起こした覚えは無いからな!

 

 

「あ、八代君に服部君」

 

「お、結城」

 

 

分かれ道にきて親父と別れようとした時だった。

別の道から結城が登校してきた。

 

 

「あ、小父様。おはようございます」

 

「うん、おはよう。それじゃあな3人とも」

 

「はい。お仕事頑張ってください」

 

 

親父と別れて結城も合流して学校への歩みを進める。

ちょっとした世間話をしている内に俺が徹夜したことも話した。

しかしミヅマん、飼育小屋に戻ったらいなかったな。

まぁ起きて家に帰ったなら良しとしよう。

 

 

「もぅ、ちゃんと寝ないと駄目だよ」

 

「いや、中々面白い情報を手に入れたから問題ないな」

 

「面白い情報でござるか?」

 

「あぁ、今年の秋に発売されるゲームなんだけどな。何でも自分で体を動かすRPGらしいぜ」

 

「えっと・・・どういうこと?」

 

 

うーん、何て説明したものだろうか。

俺もネットのニュースでたまたま知っただけだからな。

 

 

「ナーヴギアを使って実際に体を動かす感覚で冒険できるゲームらしい」

 

「ぬぅ。あの機械でござるか」

 

「あれ?でも八代君、ナーヴギア持ってないよね?」

 

 

そう、そこが問題だ。

ゲーム機以外にも用途があるためか無駄に高い。

少ない小遣いしか貰っていない俺ではまず買えないだろう。

 

 

「そこでだ!バイトをしようと思う」

 

「何と!」

 

「え、八代君が?・・・や、止めた方がいいんじゃないかな」

 

「ふっふっふ。俺の底力を侮ってもらっちゃ困るぜ」

 

「では拙者もあるばいとをするでござるっ!」

 

「よし、じゃあ頑張って貯めてナーヴギアを買うぞ!」

 

 

しかし発売まで3ヶ月くらいか。

時給のいいバイトを探さないとな。

 

 

「結城はどうする?」

 

「私はお兄ちゃんが持ってるからいいよ」

 

「え、あの人が?ゲームするような人には見えないけど」

 

 

あまり会った事は無いが、会うといつも道場にいるイメージだ。

そんな人が何故ナーヴギアなんて最新ゲーム機器を持っているんだ?

 

 

「うん。ナーヴギアの性能テストに協力したみたいでお礼に貰ったんだって」

 

「へぇ、俺もやりたかったぜ」

 

 

そんな事があればバイトなんてしなくても良かったのに。

いや、これもいい経験だと思う事にするか。

 

 

「それで八代君。どんなアルバイトにするの?」

 

「そうだな。やっぱり普通のバイトじゃ面白くないよな」

 

「・・・その時点で嫌な予感しかしないよ」

 

「では殿、早速探すでござるよ!」

 

「そうだな、こうしちゃいられないぜ」

 

「ちょ、ちょっとその前に授業があるんだから!」

 

 

ちっ、バレたか。

このまま授業をサボる作戦は通じないようだ。

 

 

「それに今日はお弁当を作って来たんだから。ちゃんと食べてよね」

 

「おっ。それは楽しみだ」

 

「拙者も楽しみでござる」

 

 

グレモリーや姫島はまだまだだが結城の奴、本当に美味くなっているからな。

初めの頃なんて食べれたもんじゃなかった。

お袋によくやったと言いたい。

 

 

「と、殿!大変でござる!」

 

「どうした半蔵」

 

「グラウンドが・・・巨大な滑り台になっているでござるよ!」

 

「うわっ、本当だ」

 

 

半蔵と結城が学園の様子に気づいた。

ふっ、この驚きを見ただけでもやった甲斐があるってもんだぜ。

 

 

「来おったで会長!」

 

「うむ。皆の者、八代虎徹を確保じゃ!」

 

「何っ!?うおっ、離せ!」

 

 

気づけばあっという間に生徒達に捕まり動きを封じられてしまう。

くっ、まさか生徒会がここまで早く動くとは。

そしてゆっくりとした動きでこちらに来るのは夜中に出会った生徒会長だ。

 

 

「さぁ八代虎徹よ。おぬしの言い分は後でしっかりと聞かせてもらうぞ」

 

「俺が何をした?」

 

「アレだけの事をして何を言うか!」

 

「あ、やっぱり八代君なんだ」

 

「さすが殿、拙者も見習わねば」

 

 

あっさりと誰がやったかバレてしまった。

しかも助ける気は無いらしい。

 

 

「まずは校長が話があるというので行くぞ。ほれ、連れて行け」

 

「ぎゃーっ!アイツだけは勘弁してくれーっ!」

 

 

 




ちょっとした話

「ソル、そこで寝ている彼女は?」

「気にすんな。ウルセェから気絶させただけだ」

「いやぁ、俺様もビックリ」


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第36話

どうもお久しぶりです。

前回の更新から半年が経ってしまうとはすみませんでした。
遅れた理由としてはまぁ仕事です。
出張→転勤命令→引継ぎ、引越し→転勤先でも海外出張
ようやく身の回りが落ち着いてきました。

これからは以前のように毎週更新を目標に頑張ります。



 

 

ガキンッガキンッ

 

 

「ほれ、キリキリ動かんか」

 

「ちくしょーっ!」

 

 

放課後、俺は部活にも出ずにツルハシ片手にセメントを破壊していた。

校長に滅茶苦茶痛いお説教を喰らった後、セメントを片付けるまで部活禁止を言い渡されたためだ。

ちくちょう。生徒のお茶目な悪戯じゃないか。

 

 

「全く、悪戯をするなとは言わんがせめて可愛げのあるものにせんか」

 

「可愛げのある?」

 

 

見張りとしているイングリッド会長に言われて考える。

ただ見張っているだけでなく手には大量の書類を抱えて確認しながらだから恐れ入る。

別に生徒会の方を優先してくれても俺は一向に構わないんだがな。

それにしても可愛げのある悪戯か・・・

 

 

「校長の髭を剃り落とすとかどうだ?」

 

「・・・別に止めはせぬが、お主死にたいのか?」

 

「あれ?」

 

 

何故か真面目な顔でこちらを見て聞き返されてしまった。

おかしいな、俺としては可愛げのある悪戯のつもりだったんだけど。

じゃあ落とし穴を仕掛けてそこにサイダーを大量に仕込んでおくか。

きっとべとべとになって着替えざるを得ないだろう。

あの校長いつも緑色の軍服を着ているからな。他にどういった服を持っているのか気になっていたところだ。

 

 

「どりゃあっ!」

 

 

ガキンッ

 

 

「うむ、今日はこの辺でよいじゃろう。このペースなら来週には終わるじゃろう」

 

「うへー、マジかよ。バイトも探さなくちゃ行けないってのに」

 

「バイトじゃと?まぁ別に禁止はしてはおらんが勉学に影響が出ないようにするのじゃな」

 

「はっはっは、これ以上影響は出ないから大丈夫だ」

 

「そこは誇るところでは無かろう・・・しかし意外じゃな」

 

 

意外?どういう事だ?

 

 

「悪戯する癖にこういった後始末をきちんとするとは思わなかったぞ」

 

「あー、まぁ、な」

 

 

本来ならこんな面倒な事は琢磨にでも頼んで片付けてもらうはず、だったんだがなぁ。

グラウンドに敷き詰められたセメント、その下のグラウンドには俺が仕掛けた罠が大量に埋まっている。

下手に弄れば罠ごと壊してしまうからな。こうしてこまめにやっていくしかない。

 

 

「まぁ反省するのは良い事じゃ。砕いたセメントは一箇所に固めて置くように。では先に帰るぞ」

 

「あぁ、じゃあな会長」

 

 

会長を見送って砕いたセメントを言われた通り一箇所に固める。

しかし・・・簡単に片付ける方法はないものかね。

火薬を使って爆破するか?でもそれだと罠がなぁ・・・

 

 

スタッ

 

 

「何だか変な事になってるわね。てっきり倒壊しているものと思ったのだけど」

 

「ん?」

 

 

後ろから聞こえてきた声に振り返る。

そこにいたのは桃のついた帽子を被った青髪の少女だった。

いや、少女・・・?天野並に洗濯が捗りそうな胸をしているし少年の可能性もある。

 

 

「あんた、今失礼な事考えてなかった?」

 

「考えてない。洗濯が捗りそうな胸をしていると考えていただけだ」

 

「それが失礼な事って言ってんのよ!」

 

 

何やらパールみたいなものを振り回して抗議してきた。

何でそんなもの持ってるんだ。

七不思議の開かずの扉でもこじ開けに行くんだろうか?

 

 

「で、生徒じゃ無いみたいだけど誰かに用事か?」

 

 

制服を着ていないところから誰かの妹だろうな。

青髪って言うと・・・廿楽か?

 

 

「ふん、天人の私が誰かのためにこうして出向くわけないでしょ」

 

 

無い胸を踏ん反り返って言われてもな。

テンニンって何だよ・・・転任?

あぁ、転入生か。

 

 

「職員室なら校舎に入って右に進めばあるぞ」

 

「しょくいんしつ?何で私が行かなくちゃいけないのよ」

 

「いや、多分先生がお前の事待ってると思うぞ」

 

 

放課後まで来ない転校生なんて聞いた事ない。

いや、今日来る事になっているかは知らないが。

 

 

「そう。誰だかは知らないけれど私を持て成そうとは良い心がけね」

 

「この時間だと誰がいたっけな?まぁ2、3人はいるから大丈夫だろう」

 

 

ここから職員室の窓越しに何人か先生がいるのが見える。

あれは教頭とルシア先生とサイキカル先生か。

 

 

「少ないわね。私を持て成すならもっと大勢で持て成しなさいよ」

 

 

転校生なら先生一人でも十分だろう。

目の前のこいつが何処のクラスになるのかは分からないが。

お、閃いた。

 

 

「いいか。この学園に新しく来たら、やらなくちゃいけないルールがあるんだ」

 

「ルール?何よそれ」

 

「職員室に着いたら扉を思いっきり開けて名前を名乗って決闘を申し込むってルールだ」

 

「決闘?へぇ、面白そうじゃない。所詮はニンゲン、天人との格の違いってものを見せてやるわ」

 

 

これはまた随分と自信家だな。

もしかして本当に強いのか?見た感じは気の強い少女って感じなんだが・・・

・・・まぁいいか。

 

 

「おー、頑張れよー」

 

 

ずんずんと校舎に向かっていく転入生を見送る。

さて、じゃあ俺も帰るとしますかね。

そうだ、ゲーセンで新作が出てたな、寄ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あれは?」

 

 

部活が終わり家に帰る途中でコテツさんが歩いているのを見かけました。

駒王学園のグラウンドをセメントで固めた罰として片づけを命じられていたはずですが・・・

それに見たことの無い女の子と一緒ですわね。

 

 

「そうか。お前もまだか。先は遠いな」

 

「はい。でも私は諦めないわ!先輩だってそうでしょ!」

 

「当たり前だ!」

 

 

な、何やら白熱しているようですわね。

思わず声をかけるのを躊躇ってしまいましたわ。

それにしてもあの女の子・・・赤くて長い髪、いえ長すぎですわ。

地面に着くか着かないかぐらいの長さですもの。

 

 

「あの、コテツさん?」

 

「ん?おぉ、姫島じゃないか」

 

「先輩の知り合い?」

 

「あぁ。俺のクラスメイトで友人だ」

 

「初めまして、恵曇 愁子(えとも しゅうこ)って言います」

 

「あら、ご丁寧に。姫島朱乃ですわ。よろしくお願いしますわね」

 

「は、はい」

 

 

コテツさんの知り合いにしては礼儀正しくてよい子ではありませんの。

と、思っていたら私に勢いよく背を向けてコテツさんと何やら話している。

コテツさんは彼女が急に振り返ったため髪の毛が顔面にヒットして悶えていますが。

 

 

「先輩、何か絵に描いたような大和撫子って感じじゃないですか」

 

「ぐおぉ、テメェ髪を凶器に使うとは考えたな・・・目に入っちまったじゃねぇか」

 

「さすが元お嬢様学園である駒王学園だね!」

 

「バカヤロウ、あれはお前を騙そうと面の厚い猫を被っているんだよ。後、髪切らせろ」

 

 

・・・聞こえてますわよ。

悪魔は耳は良い事が今回役に立ちましたわね。

私はスカートのポケットから糸を取り出す。

そのままコテツさんに向けてクイッと手のひらを返すようにすれば・・・

 

 

ガシッ、キュッ

 

 

このように、あっという間にコテツさんの両手両足を縛る事ができますわ。

これもグスタフさんの教えの賜物ですわね。

 

 

「どわっ!?な、何だコリャ!?」

 

「うふふふ、コ・テ・ツ・さ・ん?」

 

「どうした姫島、目が笑ってねーぞ」

 

「誰が面の厚い猫を被っているのか教えて欲しいですわね」

 

「はっはっは。そりゃ姫島の事に決まってるじゃ・・・」

 

「えいっ」

 

「どわっ!?」

 

 

糸をこちらに引く。

身動きの取れないコテツさんは簡単にこちらへと倒れこんできます。

・・・あら、力加減を間違えましたわね。

 

 

ぽふっ

 

 

「もがっ!」

 

「コテツさん、こんな公衆の面前でなんて・・・大胆ですのね」

 

 

私の胸に倒れこむコテツさんを抱える。

もがいていたコテツさんが顔を上げて恨めしそうな目で私を見てくる。

ふふっ、その目つき堪りませんわ。

 

 

「姫島、俺の両手がふさがってよかったな。空いていたら揉みしだいてやるところだったぞ」

 

「あらあら、それは残念ですわね」

 

 

コテツさんはこういったことが苦手と思っていたのですが、違うみたいですわね。

色仕掛けに弱いのではないとしたら何でしょうか?

でも顔は赤くしていらっしゃいますし、全く効かないというわけでもなさそうです。

 

 

「す、凄い。あっという間に先輩を無力化するなんて・・・」

 

「ふふふ、それほどでもありませんわ」

 

「だから騙されるな恵曇。こいつは・・・俺達の敵だぞ!」

 

「っ!?」

 

 

ザッと距離を取り構える恵曇さん。

俺達の敵、と仰いましたか。

今度は一体何を吹き込んだんですのコテツさんは。

 

 

「ま、まさか先輩・・・この人は」

 

「あぁ、そうだ。こいつは修行をしなくても飛び道具が使える」

 

「っ!!」

 

「・・・あぁ、そういう事ですのね」

 

 

コテツさんが日頃から仰っている飛び道具。

魔力や気など超常的な力で成し遂げているはずが、何故かポピュラーな技となっている。

しかしコテツさんは神具を持っているとは言え、それ以外は一般人。

当然そんな技が使えるはずもありません。そしてそれは恵曇さんも同様なのでしょう。

 

 

「くっ、ありがとう先輩。危うく騙されるところだったわ」

 

「任せておけ。俺達の絆はこんな程度じゃ壊れないさ。いつか共に飛び道具を撃てるようになろうと誓っただろ」

 

「先輩!」

 

 

私も修行は積んでいますわよ。

それはそれとして、感動的なところ悪いのですが・・・

 

 

「コテツさん?私の胸に埋もれていては、とても格好がつかないですわ」

 

「だったらさっさと解放しろよ!」

 

「嫌ですわ」

 

「即答!?」

 

「そういえばコテツさんは頭を撫でると喜んでいましたわね」

 

「はっ?ちょ、バカやめろ!」

 

 

そう、その表情が見たかったのですわ。

うふふ、今日は存分に堪能させてもらいますわね。

 

 

「ぎゃーっ!やめろーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!殿の助けを呼ぶ声がするでござる!」

 

「そんな事より早く逃げるわよっ!」

 

「服部君、呆けてる場合じゃないよ!」

 

「ぜぇぜぇ、こ、こんな事なら移動系の補助具を開発しておくべきだった」

 

「もう疲れたデスカ、軟弱デスネ」

 

 

気のせい、でござろうか?

いや、これは間違いないでござる!

とは言え、さすがにこの状況では困難と言わざるをえないでござるな。

何故なら先の会話で分かるように拙者達は現在逃走中でござる。校門が遠いでござるよ。

 

 

「待ちなさい!逃げるんじゃないわよっ!」

 

 

後方から飛び交う光の弾幕。

拙者は琢磨、結城嬢、グレモリー嬢、デス様を先導しつつ、当たりそうな弾は手裏剣で相殺していく。

 

 

「ぬぅ、しかし何故、拙者等は追われているのでござろうか。

 

 

殿とバティン嬢もおらぬ故、早々に部活を切り上げた。

途中でグレモリー嬢とも合流し、姫島嬢は買い物のため先に帰ったと聞いた時でござった。

校舎からやけにボロボロな姿の娘と出会ったのは。

それから幾つか会話をしていたら突然プルプルと体を震わせて襲い掛かってきたのでござる。

 

 

「大体コテツのせいだと思うデス」

 

「うん、八代君の事聞いて目の色が変わったもん」

 

「いてもいなくても迷惑をかけるわね、コテツは・・・」

 

「えーい!ちょこまかと逃げる、なぁっ!」

 

 

ドゴンッ

 

 

「何と!?」

 

 

追って来ている娘が剣を地面に突き立てると拙者等の目の前の地面が隆起する。

地面を蹴り跳躍、娘の方へと振り返り懐から煙球を投げ、同じ軌道で分銅付き投げ縄を投げる。

 

 

ぼふんっ

 

 

「あいつのせいで・・・あいつのせいで」

 

 

煙球をその手にした剣で切り裂かれ煙が周囲を覆う。

二投目は同じ軌道故、気づかれず娘を拘束したでござる。

が、娘は俯いた表情でその場から動かないでござる。

 

 

「やっと・・・終わり、か?」

 

「どうかしら、あれだけの実力を持っていながら簡単に捕まったのが怪しいけど」

 

 

琢磨もこれ以上は動けそうにないでござるな。

今にも座り込みそうでござる。

拙者達も足を止めて娘に注視する。

ぶつぶつと何かを呟いていた娘は顔を上げて叫ぶ。

 

 

「こんな面白い場所に通う羽目になっちゃったじゃない!」

 

『・・・え?』

 

 

目をキラキラと輝かせ、興奮からか頬を赤らめて叫ぶ娘。

む?怒っていたわけではござらぬのか?

 

 

「面白い弾幕を使う紫色の妖怪や脂肪の塊をぶら下げた錬金術師に見えない弾幕を使う魔法使い、こんな面白い奴等がいたなんてね!」

 

「は、はぁ・・・」

 

「それにあの緑色のヒゲよ!あの踏み付けは一朝一夕では出来ないわ。相当踏みなれているわね」

 

「えっと・・・」

 

「聞けば他にも一杯いるそうじゃない!あぁ、何でもっと早くここに訪れなかったのかしら」

 

「どういうことデス?」

 

「怒っていたわけでは無いのなら何故、拙者達を追いかけてきたのでござるか?」

 

 

興奮冷めやらぬ様子の娘に思わず疑問が声を出る。

それに娘は簡単な事だと言わんばかりに胸を張り声を上げた。

 

 

「そんなの当然でしょ、この私が話しかけてきたのよ。大人しく聞くのが礼儀ってものでしょ」

 

「そんな礼儀、ドブにでも投げ捨ててしまえ。無駄な体力を使わされた・・・」

 

「ふん、この天人である私に話しかけられたのだから光栄に思いなさいよ」

 

「先ほどは突然の奇襲で準備する暇も無かったが今は別だ・・・ホウオウ、ワーロック、テムジン」

 

 

琢磨も相当怒りが溜まっている様子でござる。

普段から体を鍛えていないからこうなるのでござるよ。

ともあれ、琢磨の周囲が光り、3機が現れる。

む?1機は初めて見るでござるな。何よりも巨大でござる。

 

 

「何よ、アンタも面白いもの持ってるじゃない!いいわ、相手になってあげる!」

 

「威勢はいいようだが、あの教師陣からリンチを受けてボロボロのお前にこいつらが倒せるとは思えんがな」

 

「ふん、耐久力には自信があるのよ」

 

 

確かに話に聞けばあの校長や教師陣を相手にまだ動けると言うだけで奇跡でござる。

そこで隣で難しい顔をしているグレモリー殿に気づく。

 

 

「どうしたでござるか?」

 

「いえ、あの子・・・さっき天人って言っていたわよね」

 

「そういえば・・・何でござろうか?」

 

 

てんにん・・・天忍?何処かの忍びでござるか。

あのような忍びがいたとは、どこの里の者でござろう。

 

 

「天界の者が何故この学園に・・・余程の世間知らずでもない限り悪魔の領域を知らないはずは無いのだけど・・・」

 

「アスナ、ボクも参加してきていいデスカ?」

 

「え?うーん、程ほどにしてねフェルちゃん」

 

「やったデス!デッスーン!」

 

 

結城嬢の許可を得てデス様も戦闘へと参加していく。

うむ、拙者も他所の里の術を知るいい機会でござる。

 

 

「では拙者も行くでござるよ」

 

「あれ、服部君も?珍しいね」

 

「あの身のこなしから中忍以上と見たゆえ、勉強するでござる」

 

「ちゅうにん?よく分からないけど怪我をしない程度に頑張ってね」

 

「これは・・・一応お兄様に報告しておいた方がいいのかしら」

 

 

まだ悩んでいるグレモリー嬢を置いて拙者は戦闘の場に向かった。

 

 

「あはははっ!いいわ、その調子よ!どんどん来なさい!」

 

 

な、何だか笑顔で攻撃を受けているでござるよ、この娘。

末恐ろしい忍びでござる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トラちゃーん!」

 

「よぉ先輩。帰って・・・ってどうしたんだ!?」

 

 

梅雨が明けだして数日、

先輩が休憩中の教室に入ってきた。

今回はやけに遠出だったなと思いながら先輩の姿を見て驚く。

 

 

「ミイラのコスプレか?」

 

「おぉ、本格的でござるな」

 

「うぅ、これ全部怪我なのよ」

 

 

よよよ、と泣き崩れる先輩。

全然痛そうには見えないぞ。

しかしここまで包帯まみれとは一体何があったんだろうか?

 

 

「うん、ちょっとデス様のお兄様のお怒りに触れちゃってね。まぁこの程度で済んだだけでもラッキーよ」

 

「ティ、ティナ。本当によく無事だったわね」

 

「もう駄目かと思いましたわ」

 

 

何故か顔を引きつらせているグレモリーと姫島。

何だ、デス様の兄貴ってそんなに強いのか?

・・・ん?デス様の兄貴?

 

 

「・・・デス様って兄弟がいたのか!?」

 

「初耳でござる!?」

 

「と言う事は一体ぐらい実験に使っても問題ないという事だな」

 

「どうしていつも怖いコトしか言わないデスカ!?」

 

 

怯えながら結城に抱きつくデス様。

うぅむ、デス様の兄貴って言うぐらいだから愉快な奴なんだろうな。

見てみたいぞ。

 

 

「先輩、写真とか無いのか?」

 

「うむ。拙者も見たいでござるよ」

 

「何処で捕獲できますか?」

 

「あ、写真ならあるわよ。タクマちゃん、捕獲は諦めてね」

 

「何で写真があるのよ!?」

 

「うふふ、それがデス様の可愛さ談義で1週間は盛り上がっちゃって仲良くなっちゃったのよ」

 

 

さすがは先輩だ。

例え闘った相手でもすぐに仲良くなるのは本当に得意だよな。

いや、そんな事よりもまずは写真だな。

 

 

「私も見せてください。フェルちゃんのお兄さんか・・・どんな子なんだろう。きっと可愛いんだろうなぁ」

 

「あー・・・アスナちゃんの想像しているような姿じゃないから気をしっかり持ってね。はい、これ」

 

 

先輩がスマホを操作して写真を俺達に見せた。

・・・何かパンツ一丁で腕を組んでいて頭に聖火台を載せている変態がいた。

え?これ?これがデス様の兄貴?

 

 

「・・・・・・・」

 

「アスナ!しっかり気を持って!」

 

「はっ!何か眩暈がしたんだけど何があったの?」

 

「アスナさん、現実を直視し過ぎたのですわね・・・」

 

「つまりデス様も成長すれば将来こうなると」

 

「嫌ーーっ!フェルちゃんはこのままの姿なの!」

 

 

結城が絶賛混乱中だ。

まぁ気持ちは分からないでもない。

幾つ年が離れているか分からないが兄弟って事は将来こうなるって事だもんな。

 

 

「拙者、生命の神秘を知ったでござる」

 

「あぁ。僕も世の中知らないことがあるものだと思い知った」

 

「二人ともバカにしているデスネ?」

 

「ちょっと地球から離れた惑星を破壊したけどいいお兄さんだったわよ」

 

「ははは。相変わらず先輩の話す冗談は面白いな」

 

 

惑星を壊すとかスケールがでかいぜ。

とりあえずは結城を落ち着かせる事が先決だな。

俺は未だ取り乱している結城の肩に手を置く。

 

 

「安心しろ結城」

 

「八代君・・・何を安心しろって言うの?」

 

「確かにデス様と写真の変態は兄弟かもしれない」

 

「お兄ちゃんのことを悪く言うなデス!」

 

「シャラップ!いいか結城、兄弟とは言え・・・血が繋がっていない可能性がある!」

 

「っ!?」

 

 

そう。さすがにこんな球体から変態へとクラスチェンジするとは思えない。

つまりデス様と変態兄貴は血が繋がっていないって事だ。

 

 

「そ、そうだよね!フェルちゃんと血が繋がっていれば、もっと可愛いよね!」

 

「うぅ・・・アスナまで酷いデス」

 

「やはりあのような白い人型よりもデス様の生態の方が魅力的だな」

 

「白い人型って何でござるか?」

 

「いや、気にするな半蔵。ティセが焼いたクッキーをやるから忘れろ」

 

「わーい、でござる!」

 

 

ふぅ、何とか結城は落ち着きを取り戻したようだぜ。

それにしても半蔵、クッキーぐらいではしゃぐなよ。

あ、琢磨。後で俺にもクッキーくれ。

 

 

「コテツさんも十分子供ですわよ」

 

「同感ね」

 

「ふふっ。やっぱり皆を見ていると飽きないわね。あら、トラちゃん。これは?」

 

「ん?あぁ、これか」

 

 

俺は机の上に広げていた雑誌を先輩に見せる。

バイトの求人誌だ。

何せナーヴギアを買うにはお金が必要だからな。

小遣いを前借しても買えないからバイトするしかないだろう。

俺が事情を知らない先輩や琢磨達へと説明すると感想が二つに分かれた。

 

 

「あら、トラちゃんがバイトなんて面白そうじゃない」

 

「ほぅ。何処で働くか決まったら教えてくれ。ぜひとも見学に行こう」

 

「え・・・コテツが?冗談でしょう」

 

「えっと・・・止めておいたほうがよろしいのでは?」

 

「コテツがまともに働けるワケが無いデス」

 

 

これは俺は怒るべきなんだろうか?

結城といい、どうも俺を危険人物と見ている節があるよな。

 

 

「でも面白そうね。そうだ!皆で買って遊びましょう。私も買おうと思っていたのよ」

 

「ぬぅ、そうなると拙者も勤労せねばならぬでござるな」

 

「私はお兄ちゃんのを借りるからいいけど・・・」

 

「小猫達の分も必要だからまとめて買おうかしら」

 

「私は既に持っていますわ」

 

「僕も一応持ってはいるな」

 

 

どうやらナーヴギアを持っていないのは俺以外には先輩、半蔵、グレモリーのようだ。

しかし琢磨が持っているのは不思議でもないが姫島も持っているとは意外だ。

 

 

「オロチ様が毎日遊んでいますわ」

 

「おろちんが?あぁ、好きそうだもんな。ああいうの」

 

「ボクも遊べるデスカ?」

 

「うーん、デス様は難しいわねぇ。タクマちゃん、何とかならないかしら」

 

「・・・そうですね。特注で作る事は可能ですよ。ただ、色々と計測する必要があるので2日、いえ3日はデス様を預かりますが」

 

「やっぱりいいデス!」

 

 

身の危険を感じたのか他のクラスメイト達へと逃げていくデス様。

まぁ計測と言って何をされるか分かったもんじゃないもんな。

 

 

「そうだ。私がいない間に何か面白い事はなかったかしら?トラちゃんと朱乃ちゃん以外はやけに疲れているみたいだけど?」

 

「えーっとそうですね・・・」

 

「色々ありすぎて何処から話したものやら・・・」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「あら、それじゃあ放課後に部室で聞こうかしら。リアスちゃんに朱乃ちゃんもいらっしゃいな」

 

 

そういって教室を出て行く先輩。

あー、俺は今日もセメント撤去しなくちゃいけないんだよな。

バイトも探さなくちゃいけないし、何処かに面白いバイトは転がってないものかね。

 



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第37話

先輩が去ってからつまらない授業は聞き流して昼休み。

いつものように学食で飯を食い終わり教室に戻ってきた。

 

 

「次は何の授業だっけ?」

 

「えっと・・・!つ、次は英語だよ」

 

「げっ、マジか。サボろっかな」

 

「え?確か次はか・・・もごっ!?」

 

 

結城の言葉に屋上でサボろうかと算段を立てる。

グレモリーが何故か結城に両手を使って口を塞がれていた。

・・・何してんだこいつら?

 

 

「と、殿!よろしければ拙者もお供いたしますぞ!」

 

「あぁ、そうだな。半蔵も連れて行ったらどうだ虎徹」

 

「うん、それがいいよ!」

 

 

半蔵と琢磨、結城の言葉に俺は疑問がわいた。

確かに半蔵は英語が苦手だが授業を自らサボるほど不真面目じゃない。

それに普段は小言を言う結城まで勧めてくるとは怪しい。

・・・さてはこいつら何か隠してるな。

それも面白そうな事と見た!

 

 

「いや、たまには英語の授業を受けてみたくなってきた」

 

「コテツさんから出てくる言葉とは思えませんわね」

 

「やかましい。えっと英語の教科書はっと」

 

 

俺は教室の後ろにあるロッカーから英語の教科書を探す。

あれ?無いな、ここに教科書の類は全部仕舞ってあるはずなんだが。

・・・んん?そういえば1時間目の授業って英語じゃなかったか?

自分の席に戻り机の中を見ると英語の教科書があった。

 

 

「一日に同じ科目の授業ってあったっけ?」

 

「っぷはっ!何するのよアスナ」

 

「あ、ご、ごめんねリアス」

 

 

俺が疑問に思っていると結城の拘束から逃れたグレモリーが声を荒げる。

結城も咄嗟の事だったのだろう、直ぐに謝った。

しかし結城のやつ、何考えてんだ?

そこへデス様が俺の机の上に飛び乗ってきた。

 

 

「次は調理実習デスネ、何を作るのか楽しみデス!」

 

「あーあ・・・」

 

「ふっ、短い平穏だったな」

 

「拙者、胃薬を貰ってくるでござる」

 

 

デス様の期待の篭った言葉と共に結城、琢磨、半蔵が言葉を漏らす。

調理実習?そういえばこれまで家庭科の授業に出た記憶が無いな。

と、言うかあったのか。いや、それよりもだ・・・

 

 

「調理実習か、それは俺も腕が鳴るってもんだぜ」

 

「コテツは料理の自信があるデスカ?」

 

「おうよ!おふくろから、あんたに教える事はもう無い、って言われるくらいだぜ」

 

「それは楽しみデス!」

 

 

そういえばこの学園で料理の腕を振るうのは初めてだな。

よし、気合を入れて行くか。

 

 

ガラッ!

 

 

「虎徹!」

 

「ん?」

 

 

気合を入れていたところへ勢い良く扉が開き名前を叫ばれる。

そこにいたのはガーネットの奴だった。

何でそんなに怒ってんだ、あいつは。

 

 

「よぅ、ガーネット。どうした」

 

「どうしたじゃないわよ!これ、アンタの知り合いでしょ何とかしなさいよ!」

 

「はぁ?」

 

 

扉の後ろ側を指差して怒鳴るガーネット。

はて、ガーネットのクラスで知り合いなんてウィンドぐらいしかいねーぞ。

そう思っているとガーネットの奴が扉の後ろに隠れていた奴を引きずりだして教室の中に入れた。

桃のついた青い帽子に青い髪、まな板の如くぺったんな胸・・・あれ、こいつは。

 

 

「あははは!いいわよ、もっと私を楽しませなさい!今度は誰が私の相手になってくれるのかしら!」

 

 

随分とご機嫌な様子だが、こいつは昨日の転入生か。

なるほど、ガーネットのクラスに転入してきたのか。

俺が納得した様子で頷いていると結城達があからさまに顔を顰めた。

あれ、知り合いだったのか?

 

 

「あら、アンタ達もいたのね・・・それに、八代虎徹だったわね」

 

「何で俺の名前知ってんだ」

 

「そこのニンゲン達から聞いたのよ。まぁ、アンタには礼を言ってあげる。感謝しなさい」

 

「どういうこった?」

 

「こんな面白い学園を教えてくれるなんてね、退屈しなくて済みそうだわ」

 

 

って事は職員室に突っ込んできたのか。

よく無事だったな。

っつーか制服とかボロボロなんだが元気だな。

 

 

「アンタのせいで今朝から付きまとわれて大変なのよ!」

 

「まぁ、落ち着いてアルティ。何で付きまとわれてるの?」

 

「こっちが聞きたいわよ明日奈。何度ぶっ飛ばしても懲りずに付いて来るのよ」

 

 

ガーネットがぶっ飛ばしてもって・・・こいつかなり強くなかったっけ?

中学時代に開いた格闘大会で妹とタッグを組んで猛威を奮っていたのを思い出す。

 

 

「そういうわけだから何とかしなさいよ虎徹」

 

「しゃーねーな・・・おい、転入生」

 

「何よ。私は比那名居 天子(ひなない てんし)って名前があるのよ、覚えておきなさいニンゲン」

 

「ひななないか。もう一歩前に出てくれ」

 

「?これでいいわけ?後、"な"が一個多いわよ」

 

 

疑問に思いながらも一歩足を踏み出す。

俺はズボンのポケットに入れているボタンを押した。

 

 

ガコンッ

 

 

「へ?ちょ、ちょ、何よこれーーーーっ!?」

 

「昨日作ったばかりの落とし穴だ。これでいいかガーネット」

 

「いいけど・・・これ、どこに繋がってるの?」

 

 

落とし穴を覗き込むガーネット。

未だに転入生の叫び声が聞こえる。

 

 

「何処って・・・今日はゴンザレス先生のところだな」

 

「へ?」

 

「大竜巻落とし!」

 

 

島津先生だったら手加減してくれるだろうが、残念だったな。

さて、家庭科室に急がねーとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大将、ごちそうさん」

 

「毎度あり」

 

 

昼休憩の合間、俺はいつものように寿司屋"瀬流万手寿"で天玉うどんを食べ学校に戻ろうとしていた。

裏路地を通りもう少しで大通りに出るといったところで足を止める。

目の前に誰かが倒れているのが見える。

猫耳のついたフード付きコートを目深に被り顔が見えないがこいつは・・・

 

 

「おい、タオ。オメェ、何でこんなとこにいやがる」

 

「ん、んぅ・・・おぉ、いい人!助けて欲しいニャス」

 

「あ?」

 

「タオは・・・タオは・・・おなかが空いたニャス!」

 

「・・・はぁ、腹空かしてるだけかよ」

 

 

ったく、こんな裏路地で倒れているから怪我でもしてんのかと思ったぜ。

カカ族のタオ、階層都市の知り合いと日本で会うとは思ってもみなかった。

 

 

「もう一歩も動けないニャス!いい人、何か奢ってくれニャス!」

 

「ちっ、しょうがねぇ。コンビニで何か奢ってやるよ」

 

「おぉ、さすがいい人!早く行くニャスよ!」

 

 

先ほどまで倒れていたくせに飛び起きて我先に大通りへと向かうタオ。

ったく、現金な奴・・・

俺は頭をガシガシとかきながらタオを追って大通りへと出る。

何でコイツが日本にいるか気にはなったが飯の後でいいか。

 

 

「あら、ラグナ君。こんにちは」

 

「あ、こんにちは」

 

「ふん・・・」

 

「・・・おぉ、アンタ等か。買い物か?」

 

 

話しかけられて振り向くと見覚えのある二人と見覚えの無い男がいた。

虎徹の母親と確か、ディズィーとか言ったか?後一人、黒い露出の激しい衣装に身を包んだ男がいた。

前半二人はともかく、この男・・・肩にカラスが止まっているが何者だ?明らかに人間の気配じゃねぇ。

それぞれ、両手には買い物袋を持っている。

 

 

「そうなのよ。特売日だったから張り切っちゃったわ。ディズィーちゃんとテスタメント君がいてくれて助かったわ」

 

「感謝するのだなニンゲン、ディズィーがいなければどうして私がこのような・・・」

 

「そんな、小母様にはいつもお料理を教えていただいて私のほうが助かってます」

 

「いいのよ、それくらい。おかげで一人限定の卵と牛乳が安く買えたんだもの・・・あら?」

 

「いい人~!何してるニャス、タオはおなかぺこぺこで死にそうニャスよ~」

 

 

そこまで言って虎徹の母親は俺を見る。

正確には俺の背中に張り付いてきたタオだが。

 

 

「ラグナ君のお友達?」

 

「あ?あぁ・・・駒王町に来る前の知り合いだ」

 

「タオは~タオって言うニャス」

 

「あらあら、可愛い子ね」

 

 

可愛いって・・・フードで顔は見えねーはずだが。

まぁ細かい事に突っ込むのは野暮か。

 

 

「いい人、何か変なのがいるニャス」

 

「はぁ?・・・何だソレ」

 

 

タオが背中に張り付いたまま指差された方を見る。

ディズィーの背後に緑色のフードを被った髑髏と水色の半透明な女の姿があった。

術式、いや事象兵器(アークエネミー)か?

そいつらは俺達、いや正確には俺を見て睨みつけている。

ディズィーも俺達の視線に気づいたのだろう。首を傾げていたが背後の存在に気づいたようだ。

 

 

「え?・・・あ、だ、駄目!今は出てこないで」

 

「二人が警戒しているだと?おいニンゲン、キサマは何者だ!」

 

「うざってぇ、そりゃこっちの台詞だ」

 

 

警戒?まさか蒼の魔道書に警戒していやがるのか?

ディズィーの背中の二人から力が集まるのが分かる。

コイツは、ソルと同じ?法力って奴か!

 

 

「あらあら、どうなってるのかしらこれ」

 

「あ、あの小母様?きゃ、さ、触らないでください」

 

「・・・おい、アンタ。今の状況理解してんのか」

 

 

虎徹の母親が一触即発の空気を一切合財無視してディズィーの背中にある二人に触れている。

テスタメントもギロリと睨みつけるようにしているが全く気づいていねぇ。

 

 

「ん?あら、そうだったわね。ディズィーちゃん」

 

「は、はい・・・」

 

 

虎徹の母親の真剣な表情をした呼びかけにビクリと震えるディズィー。

今まで隠してきたって事は何らかの事情があるんだろうが・・・

俺としても虎徹の家には厄介になってきた身だ。

こいつらが危険な目に合わせるなら俺が相手になろうと腰の剣に手をかける。

 

 

「その子達は苦手な食べ物って無いかしら?」

 

「・・・はい?」

 

 

だからか全く見当はずれな事を聞き出した虎徹の母親に俺達の空気が一瞬止まった。

・・・な、何言ってんだコイツは。

 

 

「ちょっと変わってる子達だけど私達と同じ食べ物は食べる事が出来るのかしら?」

 

「え、あ、はい。それは大丈夫ですけど・・・小母様?」

 

「よしっ!それじゃあ存分に腕を奮うわよ。食材も買い足さないと・・・」

 

「待て待て!何でそうなるんだ!」

 

「あら、どうしたのラグナ君?」

 

「どうしたじゃねぇ!あんたはこいつらが危険な事に気づいてねぇのかよ!」

 

「危険って・・・この子達が何かしたの?」

 

「それは・・・」

 

 

確かに法力を集めてはいるようだが特別何かをしたわけじゃねぇ。

だがこの力、放たれたらタダじゃ済まねぇぞ。

かと言って一般人に言うわけにもいかない。

 

 

「その小母様、この子達は私の身を案じてくれているだけで・・・」

 

「うーん、よく分からないのだけど、確かなのは食い扶持が増えたって事よね」

 

「料理作るニャスか?タオもおなか空いたニャス」

 

「あらあら。じゃあ、おばさん一杯作るからタオちゃんもいらっしゃいな」

 

「本当ニャスか!?いい人、この人のごはんは美味しいニャスか?」

 

「え、あぁ、そりゃ美味いが」

 

「楽しみニャス!ごはんの人、早く行くニャスよ!」

 

「ふふっ、じゃあ行きましょう。ほらディズィーちゃんも、ね?」

 

 

そう言って虎徹の母親はディズィーとタオを連れて歩いていく。

残されたのは俺とテスタメントとか言うカラスヤローだけ。

 

 

「・・・ふん、ニンゲン。命拾いしたな。だが今度ディズィーに手を出すようならばコロス」

 

「そーかよ、それはこっちの台詞だカラスヤロー。正義面なんて柄じゃねぇが虎徹の母親に手を出してみろ。相手になるぜ」

 

 

一睨みしてから3人の後を追っていくカラスヤロー。

法力、か。確かソルはまだこの町にいたはずだな。

探して聞いてみるか。あいつも八代家には世話になった事があるから協力はしてくれんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・リアス、ごめんね。何も出来ない私は無力だよ」

 

「えっと、アスナ?よく分からないのだけど・・・」

 

「グレモリー嬢、これを。特製の胃薬でござる。気休めにはなるでござろう」

 

「ハンゾー?どうしてこれが必要なのかしら」

 

「グレモリーさん。君と言う友人がいた事を僕は忘れない。だから安らかに眠ってくれ」

 

「タクマ?何で私が死ぬ事前提で話しているのかしら」

 

 

授業開始直前にそんな3人とのやり取りがあった。

確かコテツは料理が苦手と聞いた事はあるけれど、この反応は苦手ってレベルじゃなさそうね。

でも所詮は調理実習。決められた食材で決められた料理を作るだけ。

作る料理もクッキーだしね。そんなに酷い事にはならないわよ。

 

 

「よし、それじゃ頑張ろうぜ」

 

「うん、お菓子作りは任せてよコテッちゃん」

 

「私も得意ですので任せてください」

 

 

他の二人は料理が得意なのかしら。

桃色の髪のハート型にぴょこんと出ている髪の毛をしたはぁと。

同じく桃色の髪で両サイドに青いリボンをつけているユキナ。

髪の色以外共通点は無いけど・・・と、言うよりもこの班分けは一体何かしら?

二人に加えて私とコテツ。名前順でもないし・・・まぁ、あの先生のやる事だから気にしても無駄そうね。

どうせその場のノリで決めたに違いないわ。

 

 

「はぁい、それじゃ皆準備は出来たかしら?」

 

 

家庭科室の前でエプロンをつけて生徒達に聞いているのがルナ姫木先生。

モリガン先生といい、露出の激しい先生が多い気がするわね。

 

 

「作り方は黒板に書いてあるから分からないところがあったら見て頂戴ね」

 

「じゃあ始めましょうか」

 

「うん、まずはバターを溶かさないと」

 

「湯煎しながら溶かしましょう。私がやりますね」

 

「んじゃ準備しておきますかね」

 

 

ユキナにヘラを渡してバターを溶かしてもらう。

その間に私達はグラニュー糖、卵、砂糖、薄力粉と基本的なものを揃える。

 

 

「さて、クッキーと言っても色々あるのだけれど、どういったものにしようかしら?」

 

「そりゃお前、面白いクッキーに決まってるだろ」

 

「愛があればどんなクッキーでも美味しいよ」

 

 

うん、まぁ二人からまともな答えが返って来ることは期待していないわ。

そうね、アスナ達の懸念もあるし簡単にチョコチップクッキーにしておきましょう。

追加でチョコチップを用意したところでユキナがバターを溶かし終えたみたい。

 

 

「じゃあ今度は私がやるね」

 

 

はぁとが溶かしたバターの入ったボウルを受け取り泡だて器でクリーム状にしていく。

そしてグラニュー糖を分けては混ぜを数度繰り返す。

うん、ここまでは順調よね。

じゃあ次は卵黄を用意しましょう。

 

 

コンコンッカパッ

 

 

「しっかし、これを片手でやるのは難しいよな。出来たら格好いいんだが」

 

「まぁ、プロの人なら出来るんじゃないかしら?」

 

 

私は卵を割って卵の黄身と白身を分けながら横で見ているコテツに答える。

クリーム状となったバターに卵黄を混ぜ合わせる。

よく混ぜ合わせたら薄力粉を加える。

そこで、はぁとがボウルをコテツに渡した。

 

 

「はい、コテッちゃん。愛情を持って混ぜるんだよ」

 

「ふふん。任せな、料理の鉄人と呼ばれたい俺の実力を見せてやるぜ」

 

「呼ばれたいんだ」

 

 

ヘラで掻き混ぜる手つきは危なっかしい事も無く普通に混ぜている。

まぁ、ただ混ぜるだけだしアスナ達の心配も無用よね。

 

 

「ユキナも家では料理するの?」

 

「はい。事情があってお屋敷でメイドしてますから」

 

「あら、そうなの。大変なのね」

 

「そんな事無いですよ」

 

 

その後、何事もなくチョコチップも混ぜ終えたボウルを受け取り皆で生地を乗せた。

オーブンに入れて暫く待てばキツネ色のチョコチップクッキーが完成していた。

うん、まぁ簡単だからいいのだけど・・・何か拍子抜けね。

 

 

「お、いい感じに出来上がったな」

 

「はい。やっぱりお菓子作りは楽しいですね」

 

「うんうん、やっぱりそうだよね」

 

 

そこへデス様がこちらに来て私達の作ったクッキーを見る。

 

 

「出来たデスカ?もう食べていいデス?」

 

「今から食べるところです。じゃあ皆食べてみましょう」

 

「ふふん、美味くて腰を抜かすなよデス様・・・腰どこだ?」

 

 

それぞれクッキーを手に取る。

何か急に幾つかの視線を感じるわね。

これは・・・アスナ、タクマ、ハンゾーの3人ね。

そんなに心配しなくても、たかがクッキーじゃない。

そう思いながら私達はクッキーを一つ食べた。

 

 

「もぐもぐ。うん、中々いけるんじゃないか?」

 

「はい、成功みたい・・・で、す?」

 

「本当、美味し・・・い、ね?」

 

「言うだけの事はあるデス・・ね」

 

 

美味しそうに食べるコテツ。

ただ、ユキナとはぁと、デス様、そして私は違和感を感じていた。

確かに味はいい。だけど身体から沸々と湧き上がってくる力は何かしら?

ドーピング的な要素は一切無かったのだけど?

自身の魔力が際限なく高まる・・・ってこれまさか魔力の暴走!?

 

 

「あ、あ・・・ちょ、ちょっと待って!」

 

「これは・・・まずいです。力が・・・!」

 

「無性に暴れたいデス!」

 

「くっ、皆同じみたいね。とにかくここじゃ危険だわ。外に出るわよ!」

 

「ん?おいおい何処に行くつもりだ、お前ら?」

 

「うぅ、何だか魔力が暴走してます」

 

「こっちもパルちゃんが暴れそうだよ」

 

「あーもう!どうしてこうなるのよ!コテツ!後で話しは聞かせてもらうからね!」

 

「何故俺!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、セメントの破壊と言う今日のノルマも終えて俺は帰宅していた。

しっかし調理実習のあいつらの行動は何だったんだろうか。

授業そっちのけで外に出たかと思うとひたすら飛び道具をぶっ放していた。

デス様に至ってはでかくなってゴロゴロと転がっていた。何人か轢いていたな。

帰って来た時に聞こうかと思ったが疲れた様子で体が動かないようで早退してしまった。

結城は何故か俺を責めるような目で見るし。

うん、よく分からん・・・っと家に着いたな。

 

 

ガチャッ

 

 

「ただいまー」

 

 

自分の部屋に戻り着替えてリビングに入る。

お袋は台所で夕飯の支度をしているみたいでライザーさんは何やら手紙を見ていたようだ。

 

 

「お、コテツ。帰ったのか」

 

「おー、何ソレ?」

 

「あぁ。実家からの手紙だ。早く嫁さん見つけろだとよ」

 

「ふーん」

 

 

ライザーさんの向かいのソファに腰を下ろしてテレビをつける。

嫁って、ライザーさんの場合は先輩に普通に話せるようになるのが先決だろ。

今のままじゃ告白なんてまだ先だろうしな。結婚となると何時になることやら・・・

 

 

「そう言えば親父は?」

 

「親父さんならまだ帰ってないぞ」

 

 

大体同じくらいの時間に帰って来るのに珍しいな。

残業でもしているんだろうか。

 

 

「そうだ、調理実習で作ったクッキーがあるんだけど。ライザーさんいる?」

 

「え!?あ、あぁいや。ほ、ほらもうすぐ夕飯だろ?遠慮しておく」

 

「そうか?まぁいいか」

 

 

何故か慌てた様子のライザーさん。

後で適当に摘むか。

 

 

「あら、お帰り。もうすぐでご飯できるわよ」

 

「うーい・・・あ、そうだお袋。これ学校からのプリントな」

 

「・・・授業参観ね。お洋服用意しないといけないわね」

 

 

ピクリ

 

 

「お袋さん、俺にも見せてもらっていいですか?」

 

「いいわよ、はい」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

真剣な表情でお袋から手渡されたプリントを見るライザーさん。

あー・・・もしかして来る気だろうか?

駒王学園の授業参観は何と一日中あるらしい。

何でも理事長が子供の普段の姿を見るためと言う理由らしいが・・・

噂じゃ自分の子供だか妹だかガ入学した時のためとか出回っているしな。

ん?そういえば理事長って俺見たことないな。誰だろう?

 

 

「よし、親父さんは仕事だろうし俺が行ってやるよコテツ!」

 

「ははーん、なるほどね。先輩の授業風景を見るつもりだろうライザーさん」

 

「ななな、何を言うかなお前。俺はただコテツがちゃんと授業を受けているかをだな」

 

「この子がちゃんと授業を受けているわけないでしょライザー君」

 

 

さすがはお袋、俺の事をよく分かっている。

そしてライザーさん、バレバレだから。

授業参観は来週から。その頃にはセメントの撤去も終わっているだろうし・・・

後はいかにお袋にバレないように悪戯をするかだな。

お袋の脅威度は凄まじいからな、家の中で悪戯をしようとする前にバレてしまう。

 

 

「これ一日中ってなってるけどお昼は持ち込んでもいいのかしら」

 

「食堂や中庭があるからいいんじゃねぇの?」

 

「そう、それならいいわ。どうせアンタのことだから先生達に迷惑かけているんでしょ」

 

「ハハハ、何を馬鹿な」

 

「馬鹿なのはアンタよ。全く」

 

 

そういえば、当然他の親も来るんだよな。

琢磨は一人暮らしだが、ティセでも連れてくるんだろうか。いや、でも普段から部室にいるしな。

半蔵は天然な両親が来るだろう。会うのは久々だ。

結城は・・・来れてお袋さんくらいか。親父さんは社長で忙しそうだし。

グレモリーと姫島はどうだろう?

グレモリーの両親は知らないが姫島の方は母親のほうは知っている。

おろちんとグスタフさんは来ないだろうか。

 

 

「虎徹、この日は何をするんだ?」

 

「ん?水曜日か・・・知らね」

 

 

教科書なんて全部机とロッカーの中だ。

何の授業があるかは周囲に聞けば分かるからな。

後は大体サボったりしているし。

 

 

「あ、でも体育はあったな」

 

「体育ね。球技大会を見る限り大変な事になりそうだな」

 

 

何処か遠い目をして話すライザーさん。

そうか?結構面白いけどな。

体を動かすのは好きだし。

 

 

ガチャッ

 

 

「ただいま・・・はぁ」

 

 

と、そこへ親父が帰って来たようだ。

お袋が玄関へと向かう。

何か疲れてるみたいだな、そんなに仕事が辛かったんだろうか?

 

 

「あら?あらあら、お久しぶりです」

 

 

ん?親父の他に誰か来ているのか?

ライザーさんも気になるのか席を立った。

俺とライザーさんでリビングから玄関へと顔を出すとそこにいたのは・・・

 

 

「いや奥さんもお変わりなく。今日は八代君から夕飯のご招待を受けましてね」

 

「社長が勝手についてきたんでしょう・・・そういうわけなんで一人分追加してもらえるか?」

 

「えぇ構いませんよ。さぁ狭い家ですけどどうぞ」

 

 

地元のCMでも顔を出しており駒王町では知らない者は殆どいない。

親父の勤めているルガール運送のルガール社長がいた。

 

 

 




虎徹作成クッキー
効果:ゲージ常時MAX
   10F毎にゲージ技が発動する。


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第38話

「どうぞ、社長」

 

「おっと、すみませんな奥さん」

 

 

とくとく、とルガール社長の持つコップにお袋がビールを注いでいく。

続けて親父とライザーさんにも注ぐ。俺?俺は未成年なので当然お茶だ。

突然の事で驚いてしまったが何事も無く夕食は進む。

お袋がルガール社長の分も追加で作っている間に俺はルガール社長のサインをもらっていた。

へへっ、明日皆に自慢してやろう。

 

 

「そういえば社長。何で家に来たんですか?」

 

「あぁ。それなんだが前々から言っていただろう?虎徹君と話してみたいと」

 

 

・・・俺?そういえば親父も言っていたな。

大企業の社長が一般市民の俺に一体何の用だろうか。

遠目から見たことはあるが、こうして話すのは初対面だぞ。

はっ!もしや俺は運送業の才能があるのか!?

参ったな、まだ高校1年なのに将来有望とか困ったぜ。

 

 

「虎徹君、どうかね。将来我が社に来てくれないか」

 

「ふっ、俺に目をつけるとは社長もお目が高い」

 

「何でそんな偉そうなんだお前・・・」

 

「社長、だから虎徹にはまだ早いと思いますが」

 

「そうね、せめて一般常識を身につけてからにしなさい」

 

 

折角俺が格好つけて言ったのにライザーさんに駄目出しされてしまった。

親父はまだ分かるがお袋、それは俺に一般常識が無いとでも言うつもりか。

実の息子に何て言い草だ。

 

 

「何も直ぐにはとは言わない。どうだろう、まずはバイトとして我が社の仕事を体験するというのは」

 

「バイト?って事はお金もらえるんですか?」

 

「もちろん、仕事に対する給金は払おう」

 

 

こんなところでバイトにありつけるとは。

でもルガール運送でバイトって何をすればいいんだろうか?

 

 

「えっと、具体的に仕事って何をすればいいんですかね」

 

「運送に仕分け、梱包作業にチラシ配り・・・あとは営業もどうだろうか八代君?」

 

「駄目に決まっているでしょう、バイトにやらせる仕事じゃありませんよ」

 

「コテツに営業とか出来るわけないもんな」

 

 

失敬な。

それにしても色々あるんだな。

でもほとんどが一箇所でやる仕事だな。

となれば自然と俺のやりたい仕事も決まってくる。

 

 

「じゃあ運送で」

 

「ほぅ!さすがは虎徹君。よく分かっているね」

 

 

酒も入っているからか、上機嫌になるルガール社長。

そういえばルガール社長自身、運送する事もあるもんな。

 

 

「お袋、バイトならいいだろ?」

 

「うーん、そうねぇ。勉強の方を疎かにしないと約束できるならいいでしょう」

 

「それなら安心してくれ、初めから疎かにしているから・・あいてっ」

 

「仕方ないわね、明日奈ちゃん達に頼むとしようかしら」

 

 

パシッとお袋に頭を叩かれる。

呆れながらとんでもない事を言い出すお袋。

止めてくれ、受験前の勉強地獄を思い出す。

あんな日々はもう嫌だ。

 

 

「ふむ、それで八代君。彼は?」

 

「あ、はい。家にホームステイしているライザー君です」

 

「初めまして、ライザー・フェニックスと申します」

 

「もしや君も何か特別な力を持っているのかね?」

 

 

ん?君も?

あれ、ルガール社長って俺が出す本の事知ってたのか?

まぁ特に隠すようなものでも無いし、いいか。

 

 

「・・・いえ、俺は一般人ですよ」

 

「何言ってんだ。ライザーさん炎出せるじゃん」

 

「ちょ、バカコテツ!」

 

「そうねぇ、キャンプする時に色々と助かったもの」

 

「お袋さんまで!?」

 

 

緊張した様子でルガール社長と話すライザーさんを見て助け舟を出す。

しかし何故か怒られてしまった。

お袋の言うようにキャンプに行ったら火種が無くて困っていたがライザーさんのおかげで助かった事もある。

別に炎が出せたからって変でもないのに、何で隠すような事を言うんだろう?

 

 

「ほぅ、炎!どうだろうライザー君と言ったか。君も・・・」

 

「あ、いやその!俺はもう就職先は決まっているようなものでして!」

 

「そうか・・・残念だ」

 

 

一目見て分かる程にがっかりするルガール社長。

炎を出してみたいんだろうか。その気持ちはよく分かる。

 

 

「そうだ、俺の知り合いって言うかクラスメイトに炎出せる奴がいるんですけど紹介しましょうか?」

 

「本当かね!ぜひともお願いしたいが、名前は?」

 

「草薙京って奴です」

 

「!?何と言う巡り合わせだ。いや、やはり力あるところに集まると考えるべきか」

 

「社長?」

 

「あぁ、すまない。虎徹君、お願いできるかね?」

 

「任せといてくださいよ」

 

 

早速明日にでも草薙に聞いてみるとしよう。

そしてそれを口実にルガール社長から飛び道具の出し方を聞く、完璧な作戦だ。

 

 

「草薙の力、諦めていたがこんなところに縁があるとは分からないものだね。ふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルガール・バーンシュタイン。

その名は長らく人間界にいた俺は何度も聞いた名前だ。

幾つもの格闘大会で優勝した経験を持つ総合格闘家。

最近は出場する機会は少ないが自ら格闘大会を開催している。

まぁ、その大会は幾つものきな臭い噂が流れているが。

 

 

「授業参観、そうか。では私も当日は予定を空けておかなくてはな」

 

「マジで、ルガール社長来るの?半蔵達も喜ぶぞ」

 

 

コテツはすっかりルガール社長と打ち解けているようだ。

だが俺は未だ警戒したままだった。

それは数ヶ月前まで旅をしていた時に聞いた噂。

ルガール・バーンシュタインは特殊な力を持つ者から力を奪っている。

それを聞いて俺は悪魔の力を狙っているのではないかと思い隠そうとしたのだが・・・

 

 

「ライザー君。どうしたの?お代わりいるかしら?」

 

「え?いや大丈夫です」

 

 

何で言っちゃうかね、コテツにお袋さんは・・・

まぁ悪魔である事は3人には言っていないからバレようがないからいいんだが。

問題はコテツの神器だ。

先ほどの会話からしてコテツに何か力があるのは知っているみたいだが、何処まで知っているかだ。

 

 

「八代君と虎徹君の殺意の波動、ぜひとも私の力としたいものだ」

 

「サツイノハドウ?親父、何の事だ?」

 

「ほら、お前が小学生の時に連れて行った事あっただろう」

 

「小学生の時?・・・あぁ、アレ()ね」

 

 

ん?何の話だ。

サツイノハドウ?殺意の波動、か?

名前からして危険な名前だが・・・

 

 

「ほぅ!やはり虎徹君も殺意の波動を使えるのかね!」

 

「え?使う?うーん、でも気性荒いですから人を選びましたよアレ()

 

「あぁ、何人もの人が振り回されたって聞くな」

 

「ふむ、やはり私の目に狂いは無かったようだ」

 

 

コテツの神器の話じゃないようだが、まさかコテツと親父さんにしか使えない力があるのか?

俺が眉を寄せて話題について考えているとお袋さんが小声で説明してくれた。

 

 

「競馬の話よ」

 

「え、競馬、ですか?」

 

「そうなのよ。あの人ったらまだ小さい虎徹を競馬場に連れて行ってね。全く、困ったものよ」

 

「ははは、何だ。そういう事ですか」

 

 

はぁ、心配して損したぜ。

しかし馬主も変な名前をつけるなよ。

何だよ、サツイノハドウって。

 

 

「あなた。さすがに虎徹をそっちの道(ギャンブル)に連れまわしてないでしょうね」

 

「え!?あ、あははは。あ、当たり前じゃないか」

 

「あれ?でも先週に、久しぶりにどうだって・・・もが!?」

 

「ははは、虎徹。何を言っているんだ。私がそんな事を言うわけないだろう!?」

 

「・・・あ、な、た?お話があります。ちょっと来て頂戴」

 

「・・・はい」

 

 

パタンッ

 

 

お袋さんにずるずると引きずられていく親父さんを見てとりあえず合掌しておく。

親父さん、そりゃお袋さんも怒りますよ。

俺も実家の親父から女遊びはしてもギャンブルだけは止めておけって言われていたからな。

同時に思い出すのは俺の眷属達、そしてティナ。

・・・だ、大丈夫。女王の駒はまだあるし!女遊びしているわけじゃなく自然に駒が揃ったようなものだし!

 

 

「虎徹君。彼はどうしたんだい?」

 

「あー、いや実はライザーさんはですね。好きな人がいるんですよ」

 

「ちょ、コテツ何言ってんの!?」

 

「まぁまぁ。ここは経験豊富な大人に聞くのも手ですって」

 

 

こ、この野郎。お前は好きな人すらいないだろうに。

しかしコテツの言っている事も分かる。

ルガール・バーンシュタインは息子と娘がいたはずだ。

 

 

「なるほど、つまり好きな子がいるが目の前に立つと緊張して話す事が出来ないと」

 

「そう。要はライザーさんはヘタレなんですよ」

 

「身も蓋も無い事言うなよ、こっちは真剣なんだぜ?あー、それでどうしたらいいですかね?」

 

「はっはっは。青春だね」

 

 

何で俺は警戒している相手に恋愛相談なんてしているんだろう。

くっ、乗りかかった船だ。

こうなったら意地でも聞き出してやる。

 

 

「よし、表に出たまえライザー君」

 

「はい?」

 

「私が直々に君の男意気を審査するとしようじゃないか」

 

 

待て、何か雲行きが怪しくなってきたぞ?

何で恋愛相談した結果が表に出る事になるんだ。

 

 

「フフフ、業務提携しているネスツ製塩の科学技術によりパワーアップしている私を相手に何処までできるか楽しみだ」

 

「おー、スゲェ迫力だ。頑張れライザーさん!男を見せろ!」

 

「お前見てるだけだろ!」

 

 

結果?聞かなくてもわかるだろ。

何だよアレ、人間じゃねぇよ・・・

カイザーウェーブとか言う溜めの長い技を使ってきたんで後ろに回りこんだのはいい。

けど何故かよく分からない力にガリガリと体力を削られて最後にお得意の運送技でダウンしてしまった。

何度も立ち上がり挑んだが攻撃の発生も早く上空から奇襲をかけようとしても刃のような蹴りで打ち落とされる。

フェニックス家の者であることに助けられると同時に何時まで続くんだと絶望も覚えたぜ・・・

 

 

「勝利など容易い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そらそら!あーもうちょこまかと逃げないでよ!」

 

「いきなり襲いかかってこられたら逃げるわよ」

 

「ノウェンベル、対象は一人です。冷静に行動しなさい」

 

 

まったく、何で人間界に戻ってきた日に襲われなくちゃいけないのかしら。

それもはぐれ悪魔じゃなくてニンゲンに。

同じ服装の女の子が3人、私の行く先を阻んでいる。

こっちはまだデス様のお兄様のお怒りで怪我した状態なんだけど・・・

 

 

「一応聞いておくわね、人違いじゃないかしら?」

 

「どっちでもいいよ、そんなこと。それに捕まえてしまえばこっちのもんだしね」

 

 

ノウェンベルちゃんと言ったかしら?

あまり難しいことは考えないなんて闇討ちに向いて無いわねぇ。

まだ後ろの二人は冷静にこちらを観察しているみたいだからマシだけど。

まぁ、どちらにせよ・・・

 

「向かってくるなら叩き潰すだけよねー」

 

「対象から戦意を確認」

 

「よーし遊んじゃうよ」

 

「ユーニ、ノウェンベル。目標捕獲を第一に」

 

 

人間界で暮らしているとは言えど私も上級悪魔。

向かってくるなら容赦はしないわ。

手に魔力を集め相手に牽制しようとした時だった。

 

 

ドガーーーーンッ!!

 

 

ちょっと、今度は何よ。

私と彼女達の間に何かが落ちてきた、までは分かった。

相当な質量なのか煙が広がってその正体が分からない。

彼女達も警戒しているのか気配は動いてないわね。

 

 

「で、一体何なのかし・・・ら?」

 

 

手に集めていた魔力を風に変換して煙を吹き飛ばす。

そこにいたのは、さらりと流れる金色の髪に白いコートを羽織った・・・ロボね。

何かしらアレ、タクマちゃんが作ったの?

それに何処かで似たような姿を以前に見たような気がするわ。

 

 

「ギギ、自己点検開始・・・感電、打撃ニヨル損傷、約80%・・・オノレ駄目人間メ!」

 

 

そんな事を言いながら上空に向かって叫ぶ変なロボット。

私もつられて視線を上げれば先ほどのように降りてくる一人の姿があった。

今日は千客万来ねぇ。

 

 

スタッ

 

 

「電光機関を解放して尚、耐えるとは。異国の機械人形、侮れぬものだ」

 

 

ツンツンとしている黒髪に白い軍服に身に纏った男性。

見たところ日本人のようだけど周囲にバチバチと電気のようなものが弾けている。

って暢気に解説なんてしてる場合じゃなかったわ。

正体不明の敵対している二人が混ざっちゃったから余計にややこしい事になっているし。

 

 

「未確認の敵勢戦力を確認。データ照合中」

 

「戦闘続行」

 

「遊び相手が増えるなら文句ないね」

 

 

あらら、向こうさんはやる気満々みたいね。

まぁ私としても襲ってきた理由とか気になるし闘うのは構わないのだけど。

怪我もしているし、楽できるなら楽しないと損よね。

 

 

「はぁい、そこのお兄さん」

 

「む。私の事か」

 

「ちょっと手助けして欲しいんだけどいいかしら?」

 

「・・・なるほど、多勢に無勢。か弱き女性を放ってはおけない」

 

 

か弱き女性なんて初めて言われちゃったわ。

まぁ今後の展開が面白そうだからそのままにしておきましょう。

実際、ほとんど包帯巻いている状態で本来の動きは出来ないしね。

 

 

「それであの変なロボットは?」

 

「うむ、意味不明な事を叫びながら襲ってきたので返り討ちにしたところだ」

 

「ギギ、機械二電気ハ駄目トイウ常識モ知ラナイノカ駄目人間!・・・オォ!」

 

 

ようやく立ち上がる変なロボット・・・アレ、欲しいわね。

私の隣に来た男の人に変な駄目出しをしたと思ったら視線がこちらに向かうのが分かった。

 

 

「理想の♀ハッケン!我輩ノ妻ニナッテクダサイ!」

 

「え?ごめん無理ね」

 

「即答トカ、機械ヲイタワレ」

 

「じゃあ理由を言っていいの?・・・本当に本気で言っていいの?」

 

「勘弁シテクダサイ!」

 

 

ドドドドドドドッ

 

 

「何だったのかしら・・・逃げちゃったけどいいの?」

 

「気にはなるが眼前の敵をどうにかせねば動けまい」

 

 

それもそうね。

気にはなるけれど今は放っておくことにしましょう。

面白い反応を見せてくれるからもうちょっと遊んでみたかったのだけどね。

 

 

「データ照合確認。日本帝国陸軍所属、アカツキ試製一號と判明」

 

「日本帝国って何時の話よ」

 

「どちらにせよ我々の任務に支障は無い。捕獲する」

 

 

なーんか気になる事言ってたけど全部後回しにしましょう。

怪我をしているから接近戦は禁物。

となれば後方から支援と行きましょう。

 

 

「我に七難八苦を与え給え!」

 

「さすが軍人さん、私は楽できる方がいいけどねー」

 

 

お堅いわね、もっと気を抜いた方が人生楽しめるって言うのに。

ともあれ2対3の変則タッグマッチ。

油断は出来ないけれど余裕を持って楽しませてもらおうじゃない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿、ずるいでござるよ」

 

「へへーん、いいだろ」

 

 

翌日の登校中。

俺は昨夜にもらったルガール社長からのサインを半蔵に見せていた。

しかし昨日は楽しかったな。

バイトも決まったし、ルガール社長とライザーさんの対戦も見れた。

まぁルガール社長が帰った後、ライザーさんは屍のようになっていたが。

後、親父も小遣いを減らされたらしく気落ちした状態で仕事に出かけていた。

 

 

「お、先輩。はよっす!」

 

「おはようでござる!」

 

「あら、おはよう二人とも。相変わらず元気でお姉さんも嬉しいわ」

 

 

前方に先輩の姿が見えたので追いかけて声をかける。

俺達が挨拶すると朗らかに笑って挨拶を返して来る先輩。

昨日よりは包帯は取れているみたいだけどマジで怪我していたのか?

 

 

「そうだ見てくれよ先輩コレ!」

 

「あら色紙?・・・これ、ルガール運送の社長のサインじゃない。どうしたの?」

 

「いやー、実はな」

 

 

俺は先輩に昨日あった出来事を話した。

先輩は終始笑顔で聞いていて最後には腹を抱えて爆笑していた。

 

 

「あははは!あぁ、何で私はその時にいなかったのかしら。残念だわ、変な居候が出来ちゃったし」

 

「拙者もその場にいたかったでござるよ・・・っ?!」

 

 

居候?確か先輩はマンションで一人暮らしだったよな?

それと半蔵、お前は寝てる時間だろ。

心の中で突っ込んでいると急に半蔵がビクリと震える。

 

 

「どうした半蔵?」

 

「どうしたのハンゾーちゃん?」

 

「・・・いるでござる」

 

 

神妙な面持ちで俺と先輩にぽつりと伝える半蔵。

その頬には汗が流れている。

ここまで緊張している半蔵は見た事は・・・・いや、あったな。

先輩も俺と同じ事に思い至ったのだろう二人で半蔵を挟むようにして立ち止まる。

俺は相変わらず謎な本を取り出すと一冊を先輩に渡した。

 

 

「・・・そこね!」

 

 

ビュンッ

 

 

「あ痛っ!」

 

 

絶妙なコントロールで先輩が投げた本が何者かに当たる。

まぁ何者かって言っても予想はついているがな。

 

 

「おら、さっさと出てきやがれ変態ストーカー」

 

「ストーカーじゃありません!半蔵先輩の事を知りたくて追いかけているだけです!」

 

「それを世間一般ではストーカーって言うのよ夕麻ちゃん」

 

 

あと変態も否定しろよ。

予想通り、半蔵の緊張の原因は変態ストーカー天野だった。

 

 

「おはようございます半蔵先輩!さぁ、学校の事なんて忘れましょう。恋人同士が出会えばヤる事は一つです!」

 

「こ、恋人ではござらん!」

 

「えっ!?あぁ、そうですよね、私達夫婦ですもんね」

 

「全然違うでござるっ!」

 

「ふふっ、今日は紺色のふんどしでバッチリ決まってますよ半蔵先輩」

 

「ひぃっ!た、助けてくだされ!」

 

 

ささっと俺と先輩の背後に隠れる半蔵。

寧ろここまでよく会話してやったと言いたい。

俺だったら即座に天野の腹に一撃くれてやるところだ。

球技大会で久しぶりに会ったが変わらず、いやグレードアップした変態になっていた。

 

 

「私が卒業してから随分と成長したわね夕麻ちゃん」

 

「いや、あれは成長といっていいんだろうか」

 

「えっへん、愛の進化です。さぁ虎徹先輩にティナ先輩、どいてください」

 

「あら、どいてもいいのかしら?」

 

「・・・どういう事ですか?」

 

 

ニッコリと笑う先輩。

あ、これは面白い事を思いついた顔だな。

よし、便乗しよう。

 

 

「昔の人はこう言ったわ。会えない時間が二人の愛を強くする、と。つまり夕麻ちゃんはまだまだ進化できるのよ!」

 

「っ!?」

 

「天野、今のままのお前は半蔵を愛せるかもしれない。けど、その程度の愛でお前は満足なのか?」

 

「なるほど。つまり私にもっともっと愛があれば当然、半蔵先輩も私に対する愛が深まると・・・えへへ」

 

「天野、よだれよだれ」

 

「はっ!こうしてはいられません!半蔵先輩。会えないのは辛いですけど、これも二人の愛のため!我慢してくださいね!」

 

「いや、もう拙者には関わってほしくないでござる・・・」

 

 

よだれを垂らしたままで陶酔した表情で俺達の背後にいる半蔵に声をかける。

まぁ、当然の如く半蔵は怯えた表情で拒絶したが今の天野には何を言っても駄目だろう。

そこへ天野の背後から一人の女生徒が現れた。

駒二中学の制服を着ているがやけに背丈が小さい、天野の後輩だろうか?

 

 

「はぁはぁ、夕麻先輩・・・や、やっと追いついた」

 

「綾野さん遅いです。早く学校に向かいますよ」

 

「えぇっ!ちょ、ちょっと待ってくださーい!」

 

 

後輩を置いてスタスタと歩いていく天野とふらふらしながら追いかけていく後輩。

まぁ、何はともあれ危機は去った。

 

 

「た、助かったでござる」

 

「これで当分は大丈夫だろ」

 

「問題は次に会った時だけどな。そこは自分で何とかしろよ半蔵」

 

「殺生な!」

 

「ふふっ、でも二人はその前に重大な事を忘れてるんじゃない?」

 

「重大な事?もしかして来週の授業参観でござるか?」

 

「まぁそれも楽しみではあるけど、その後ね」

 

 

その後?はて、何かイベントでもあったっけ?

そういえばイベント実行委員なのを忘れてたな。

そっちの方も何か考えないと・・・

 

 

「テストまで後2週間よ、勉強の方は大丈夫なの?」

 

「「・・・・・・え?」」

 

 

 




ライザーVSルガール
この時のルガールは2002仕様です。
あのバグ技は酷かった・・・


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第39話

ifシリーズ~駒王小学校の日常

「ドラえも~ん」

「もう今度はどうしたのさ、のび太君」

「ゼノンちゃんと、なのはちゃんが喧嘩してるんだ!止めてよ」

「全力全壊で行くの!」

「オーッホッホッホ!全ての美少女は私に跪くのですわ!」

「君はバカだなぁ。まだマシだよ、未来はもっと酷い事になっているよ」

「アレよりも!?」


何て恐ろしい小学校だ。
と言うかメンツ的にハイスクールDxDである必要性が全く無いですね。


「あー、痛ってーな」

 

 

1時限目の授業をサボり俺は自分の頬を撫でつつ3年生の教室から出てきた。

自分の教室に着いて草薙にルガール社長のことを話したまではよかった。

だが何故か余計な事するなと殴られてしまった。わけがわからん。

咄嗟に俺も拳を出したがあっさりと避けられてしまったし。

 

 

「とにかく、こっちは完成したし・・・次はどうするかな」

 

先ほどまでいた3年生の教室を振り返る。

丁度、体育だったのか誰もいなかったので、ついやってしまった。

机を積み立ててピラミッドにしてみた。

途中でバランスが崩れそうだったが瞬間接着剤で何とかなったぜ。

きっと戻ってきた3年生は供物を捧げるに違いない。

 

 

「あら?」

 

「お?」

 

 

階段に差し掛かったところでモリガン先生に出会った。

教材を持っているところから美術室に向かうみたいだな。

 

 

「あら、授業をサボるなんてイケない子ね」

 

「まぁまぁ、今更じゃないっすか」

 

「それもそうね。それで今度はどんな悪戯をするのかしら?」

 

「んー、ラグナさんの机を段ボール箱にするって言うのはどうっすか」

 

「駄目よ、それは私が先週やったもの」

 

 

何てこった。先を越されてしまっていたとは。

さすがモリガン先生だ。

堅物の多い先生達とは違って話の分かる先生だけはある。

 

 

「校長の髭を剃りたいんだけどどうしたらいいと思う?」

 

「そうね、命が100個あれば出来るんじゃないかしら」

 

「ぐぬぬ、仕方ない。今()諦めるとするか」

 

 

さすが俺の天敵だ。隙が無いぜ。

悔しいが今のところは勝ちを譲ってやる。

だが何時か絶対に一泡吹かせてやるからな。

っと、その前に次の悪戯の話だったな。

 

 

「じゃあ職員室のカーテンを変えよう」

 

「いいわね、どういったデザインにするの?」

 

「この前は照明をピンクにしたから・・・キャラクター物にしよう!後、ヨハン先生の席は目立つように金ぴかだな」

 

「ふふふ、私の席は廊下側だから構わないわよ。それじゃあ楽しみにしておくわね」

 

「ういーっす」

 

 

モリガン先生と別れて階段を降りていく。

今度の土曜日にでもカーテンを用意しておかなくては。

確か窓際の席はヨハン先生、タバサ先生、橘先生、壬無月先生、サイキカル先生か。

あー、橘先生は直ぐに血を吐くから赤いカーテンの方がいいか?

 

 

ガラッ

 

 

「では失礼するよ」

 

 

丁度階段を降りて角を曲がったところで誰かが部屋から出てきた。

あれは校長室?先生かと思ったけど見覚えないな。

真っ赤な髪をしたイケメンだ。

 

 

「おや?君はここの生徒だね」

 

「え?あ、はい。そうですけど・・・どちら様?」

 

「あぁ、私は理事をしているサーゼクスと言うものだ」

 

「はぁ、サージェクスさんですか」

 

「・・・サーゼクスだよ」

 

「サーゼクシュ」

 

「・・・サーゼクス」

 

「サッちゃんだな、おっけー」

 

「サッちゃん!?」

 

 

えーい!ややこしい名前をしやがって。

それにしても理事って言ったかこの人。

駒王学園のパンフレットなんてほとんど見てなかったし入学式もほとんど寝てたしな。

 

 

「そうだ、サッちゃん。今、暇?」

 

「一気にフランクになったね。まぁ丁度打ち合わせも終わった事だし暇だね」

 

「じゃあちょっと手伝ってくれ。人手がいるんだ」

 

「構わないが何をするんだい?」

 

 

まぁいいから、とお茶を濁して俺は先を行く。

サッちゃんも大人しく俺の後に着いて来ていた。

その後世間話を兼ねて話を振ったら驚くべき事が分かった。

ゴールデンウィークに行ったリーアランド、そのオーナーがサッちゃんだったのだ。

 

 

「すげぇなサッちゃん。何処の大富豪だよ」

 

「いや、大したことではないさ。あのテーマパークも元々はリーアたんのために作ったのだからね」

 

「リーアたん?」

 

「そう!年の離れた妹なんだがね。これがもう可愛くて仕方ないのさ!」

 

 

と、先ほどまでの落ち着いたそぶりからは考えられないほどに興奮した様子で話し出す。

なるほど、シスコンか。

生憎とガーネットと言う前例がいるので対処は慣れている。

同時に先ほどの話に納得がいった。

リーアって言う妹がいるからリーアランドって名づけたのか・・・ん?待てよ。

 

 

「もしかして駒王駅近くにあるリーアホテルも?」

 

「あぁ、それも私だよ」

 

「じゃ、じゃあ市街地にあるリーアデパートも・・・」

 

「それも私だね」

 

「もうすぐテストがあったり俺が悪戯しても直ぐにバレるのも・・・」

 

「それも私だ」

 

 

何てこった。俺が思った以上に凄い人だった。恐るべしサッちゃん。

だが、同時にノリがいいようで安心した。

一先ずサッちゃんの凄さが分かったところで目的の場所に着いた。

 

 

「こんなところに来て何の用があるんだい?」

 

 

サッちゃんが言うのも尤もな話だ。

屋上に繋がる扉の前で俺は立ち止まった。

このまま屋上で昼寝をしてもいいんだが今は違う。

 

 

「まぁ見てな」

 

 

サッちゃんに言って俺は屋上の扉、ではなく壁に向かって手を当てる。

ガコンと言う音と共に壁が外れた。

そしてその中に体を潜り込ませるとサッちゃんに入ってくるように言った。

中は空洞になっており人が一人通れる程の広さしかない。

サッちゃんも入ったのを確認して壁をはめ込み真っ暗になる。えっとスイッチは・・・ココだったかな。

 

 

カチッ

 

 

「お、点いた点いた」

 

「いやはや驚いた。こんな事になっているとは」

 

「いいかサッちゃん。俺達がいるのは今ここだ」

 

「・・・何故君が駒王学園の見取り図を持っているかは聞かない方がいいみたいだね」

 

「察しがよくて助かるぜ」

 

 

見取り図には既に俺と半蔵、琢磨、先輩による手が加えられている箇所が書かれている。

校内で罠を仕掛けたり追いかけられた際の逃げ道を作っているわけだ。

結城とグレモリーと姫島は邪魔をすると簡単に予想されるので教えていない。

 

 

「今日は地下室の拡張をするかね。サッちゃん、力仕事はできるか?」

 

「あぁ問題ないよ。何だか年甲斐も無くわくわくしてきたさ」

 

「ふっ、さすがだサッちゃん。俺の目に狂いは無かった」

 

 

本来なら他の悪戯を手伝わせようと思っていたが変更した。

妹一人のためにあそこまでやるサッちゃんならこのノリに着いて来れると思っていたぜ。

よし、それじゃあ中学同様にとことん改造してやろうじゃないか。

 

 

「コテツ君。リーアたん用の監視カメラを仕掛けてもいいかな?」

 

「え?まぁ、いいんじゃないか?」

 

 

サッちゃんの妹ってここの生徒だったのか。

どんな奴か見てみたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりだ。トッピングとサイドメニュー、この二つを組み合わせる事で天玉うどんは更に美味くなるわけだ」

 

 

そう言って黒板に『天玉うどんを美味く食するためには!』と言うお題目で語った内容を僕は聞き流した。

何故、統制機構に追われている犯罪者ラグナ・ザ・ブラッドエッジが地理の教師をしているのか。

何故、地理の教師が天玉うどんについて熱く語っているのか。

色々と考えさせられる事もあるが、虎徹風に言えば面白ければどうでもいい、と言う結論に至った。

地理の教師をしている理由については虎徹の母親が原因だろう。

あの人には僕も逆らいがたい何かを感じる。

 

 

「下々の料理と思ってはいましたが奥が深いのですわね」

 

「何だか私も天玉うどん食べたくなってきちゃった。今日のお昼は天玉うどんにしようかな」

 

 

隣に座る我がクラス委員長であり神月財閥のご令嬢、神月かりん。

その後ろに座る何故か洗濯棒の扱いが得意なリリィ・カーン。

二人が授業と言っていいものか分からない内容に真剣な表情で頷くのを横目で見て視線を下に移す。

スマートフォンのコミュニケーションアプリ『LINK』で虎徹が連絡を取ってきたのだ。

 

 

『やべぇ、サッちゃんが有能すぎてやべぇよ』

 

 

さて、どう回答したものだろうか。

この連絡をしてきたのはグレモリーさん達を含めたいつものメンツだ。

ちらっと窓際の後ろの席を見てみるがグレモリーさんと結城さんの姿は確認できるが虎徹はいない。

授業が始まる前にサボって出て行ったのだから当然だ。

グレモリーさんと結城さんも虎徹のLINKに気づいた様子は無い。

まぁ授業中だから真面目な彼女達の事だ、すぐに見るような真似はしないのだろう。

続いて廊下側の前の席へと視線を移す。

半蔵と姫島さんが律儀に教師の話を聞いている。

こちらも同様に虎徹のLINKに気づいた様子は無い。

 

 

「ふぅ、やれやれ」

 

「どうしたタクマ。今ので分からない箇所があったか?」

 

「いえ、薬味はどうなのかと思いまして」

 

「あぁ、心配すんな。それについてはこれから説明してやる」

 

 

運悪く僕のため息を聞きとがめられてしまったが矛先を逸らす事で逃げた。

さて、LINKの内容に戻るとしよう。

まず、サッちゃんとは誰か?大方虎徹が勝手に名づけたのだろう事は分かる。

頭が"サ"で始まる人物、しかもこのクラスではない。

簡単に思いつくのは球技大会で出会ったサイキカル教諭だ。

しかしそこまで話していた記憶は無いな・・・

 

 

『サッちゃんて誰かしら?』

 

『また面倒ごとでも起こしたんですか?』

 

 

どうやら僕が質問する前にバティン先輩が質問したようだ。

搭城さんも段々と虎徹に対する遠慮がなくなってきたようだ。

そこで再度周囲を確認すると半蔵、結城さん、グレモリーさん、姫島さんの4人も気づいたようで視線を下に向けていた。

 

 

『何か理事の人らしくてさ、校舎前のセメントの大半があっという間に消えちまった』

 

 

ガタッ!

 

 

「どうした?」

 

「あ、いえ何でもありません」

 

 

突然立ち上がったグレモリーさんに犯罪者教師が怪訝な顔を向ける。

しかし直ぐに席に座ったためか興味を無くしたようで薬味とうどんについてのご高説が再開された。

僕がグレモリーさんの不審な挙動に眉を潜めて考えようとするとメッセージが流れた。

 

 

『理事でござるか。殿!ぜひとも食堂に"でざーと"を増やすようお願いしてくだされ』

 

『あ、それいいね。八代君、私からもお願い』

 

 

半蔵と結城さんか。二人は何をお願いしているんだ・・・

それにしても理事、か。

虎徹とは違い僕はパンフレットは熟読済みだし入学式でも挨拶をしていた男の顔と名前を思い出した。

サーゼクス、だったか?

短い時間で大量のセメントの大半を消すとは一体どんな手品を使ったのだろうか。

轟音も特に聞こえはしなかった事から爆発物ではないと推測できるが・・・

 

 

『デザートの件、オッケーだってよ』

 

 

ガタガタッ!

 

 

「・・・今度は何だ?」

 

「あ、あはは。何でも無いです」

 

「うむ。つい興奮してしまったでござる」

 

「そうか。お前達も天玉うどんに惹かれちまったか。まぁ無理もねぇな」

 

 

教壇に立ち頷く、うどん愛好家と化した犯罪者。どんなB級コメディだ。

半蔵と結城さんが座ったのを見て再び話し始めるのを聞き流す。

しかし、それ以降は皆だんまりを決め込んでいるな。

グレモリーさん、姫島さん、バティン先輩、塔城さん、木場、あとはライザーさんもいたな。

誰もが何故か沈黙したままだ。他にも興味は尽きないだろうに。

そう思いながら僕はスマホを操作して内容を打ち込んだ。

 

 

『それでサーゼクス理事と一緒のようだが今は何処にいるんだ?』

 

 

打ち込んだメッセージが表示されると同時にスタンプが張られる。

苦笑とも取れる表情のスタンプを張ったのはバティン先輩、木場の二人。

ジト目の表情をした猫のスタンプを張ったのは搭城さんだ。

木場と塔城さんは相手が理事だからだろう。

だがバティン先輩はどういった意味だろうか?

虎徹が今更、理事如きに態度を変えない事など分かりきっているだろうに。

 

 

『飼育小屋。サッちゃんVS動物達って感じ』

 

 

虎徹のメッセージと共に写真が添付されている。

それをタッチして拡大してみる。

そこに映っていたのは飼育小屋で飼われている動物達相手に物騒なエネルギーを放つ赤髪の男がいた。

さすがは駒王学園の理事を務めるだけあって戦闘は可能なようだ。

 

 

ガタガタッ・・・ガタッ

 

 

「ったく、いい加減にしろよテメェ等。後、上の階でも誰か立ち上がらなかったか?」

 

「え?あ、えーとほら、アレよ。ね、朱乃!」

 

「そ、そうですわ。もうすぐチャイムが鳴りますわよラグナ先生」

 

「あ?もうこんな時間か。話してたら腹減ってきたな。今日は終わるか、日直」

 

 

グレモリーさんと姫島さんの言葉にようやく授業が終わる。

日直の号令と同時に二人は直ぐに教室を飛び出して行った。

十中八九、飼育小屋に行ったのだとは分かるが問題は誰を心配していったのかだな。

虎徹か、理事か動物達か。

僕としては動物達の中にはデス様と同じくらい興味深い動物もいるため、そちらを心配してしまう。

理事については他人だし虎徹に関しては面白がっている相手に心配など無駄でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーらよっと!」

 

 

ガキンッ

 

 

放課後、八代君がツルハシをグラウンドのセメント部分に向けて振り下ろすのを私はベンチに座って見ていた。

何故かと言うと部活に行こうとしたところでイングリッド会長に八代君の見張りを頼まれちゃったから。

でも午前中に理事の人が手伝ってくれたみたいで残りも今日中に終わりそう。

 

 

「でさ、私のことはいいから先に行きたまえって見事な台詞を言うもんだから思わず従っちまったぜ」

 

「あはは、ノリがいい人だったんだね」

 

 

作業を進めながら笑顔で飼育小屋であった事を話す八代君に私も笑顔で返す。

飼育小屋の動物達も変わった姿の子もいるけど危険なんて無いのに。

 

 

「でも何でリアスと朱乃は飛び出して行ったんだろ?」

 

「さぁ?俺が教室に戻って暫くしたら帰って来たけど疲れた表情してたな」

 

「うーん、二人に聞いても教えてくれないし。気になるなぁ」

 

「・・・お前、何かうちのお袋に似てきてねぇか」

 

「え?そうかな」

 

「首を突っ込もうとするところが、な」

 

 

そういって八代君はセメントを破壊していく。

リアスと朱乃の反応にそこまで興味は無いみたい。

本当に興味ないことにはとことん反応を示さないよね八代君は。

でも確かに小母様なら遠慮なく踏み込んで聞いてくるんだろうな。

そのおかげで当時は知り合いでもない私とお母さんの問題も解決されちゃったし十分に想像できた。

 

 

「よっし、これで最後だな」

 

 

ふと意識を戻すとグラウンドにはセメントの欠片だけが残されていた。

傍にあった荷車にセメントの破片を載せていく八代君。

やがて全ての欠片を荷車に載せると大きく伸びをしてこちらに近づいてくる。

私は鞄から水筒を出してコップにお茶を注いで八代君に渡した。

 

 

「はい、お疲れ様」

 

「おー、サンキュ」

 

 

私の隣に座って中身を一気に飲み干す八代君を見て苦笑を浮かべる。

そもそも八代君がグラウンドにセメントに流し込むなんて事をしなければこんな事はならなかったのに。

でもそれが八代君なんだと理解してしまっているだけに諭そうとしても無駄だと分かってしまう。

本当にしょうがないなぁ。

 

 

「ん?何だよその笑みは。何かイラッとするんだが」

 

「ううん、なんでもないよ。お代わりいる?」

 

「おう、じゃあもらおうか」

 

 

八代君からコップを受け取って注ぎなおして渡す。

今度は一気に飲まずにチビチビと飲んでいる。

 

 

「そういえばデス様はどうした?今日は見てないんだけど」

 

「フェルちゃんなら今日は家にいるよ。お兄ちゃんと稽古してるの」

 

「・・・あのデス様と稽古ってスゲェな」

 

 

お兄ちゃんもフェルちゃんも楽しそうに家の道場で稽古をしていた。

フェルちゃんも思いっきり体を動かしたいって言っていたし稽古なら危なくないよね。

 

 

「そうだ結城。今度の日曜って空いてるか?」

 

「え?うん、空いているけど・・・どうしたの?」

 

「ちょっと買い物に付き合ってくれ」

 

「買い物?いいよ。何を買うの?」

 

「カーテンだ。後、ヨハン先生が目立つ色だって何だと思う?」

 

「え?ヨハン先生に?うーん」

 

 

カーテンと聞いて八代君のお部屋の模様替えをするのかと思ったけど違うみたい。

ヨハン先生にプレゼントするのかも。

うんうん、普段ヨハン先生には苦労をかけているんだからお詫びの意味で贈り物をしようとしたんだね。

でもヨハン先生か。髪が赤だったから・・・あれ、青だっけ?茶色だっけ?

ぼんやりとした姿は頭に浮かぶけど詳細が全く頭に入ってこない。

 

 

「八代君。ヨハン先生の髪の色って何色だか覚えてる?」

 

「は?おいおい、薄情な生徒だな結城。そんなの・・・アレ?」

 

 

思わずジト目で八代君を見てしまう。

確かに私も担任の先生の容姿を覚えてないのは悪いとは思うけど八代君だって一緒でしょ。

そう思って八代君を見ていると、うーんと唸ってポンと手を鳴らして私の方を見た。

 

 

「そうだ、紫って事にしよう」

 

「事にしよう、って思いつきでしょソレ」

 

「どうでもいいじゃないか。ヨハン先生の髪の色なんて」

 

「髪の色の反対色のカーテンなら目立つかなって思ったんだけどね」

 

「なるほどな。けど覚えてないのはしょうがない。いっそスケルトンにしたらどうだろう」

 

「ただでさえ存在感の無いヨハン先生がまずます薄くなっちゃうよ?」

 

「・・・結城、さらっと酷い事言うなよ」

 

 

うん?何で八代君は呆れた顔をしているんだろう?

ともかく日曜日はヨハン先生にプレゼントするカーテンを買いに行くんだね。

となると場所はリーアデパートかな。あそこなら品揃えも多いだろうし。

 

 

「殿ー!結城嬢ー!」

 

「お、半蔵。部活は終わったのか」

 

「あ、忘れてた」

 

 

服部君がこちらに向かってくるのを見て部活の事を思い出す。

後ろからは高藤君とティナ先輩も向かってきた。

 

 

「うむ。今日はティセ嬢の作った"たると"を頂いたでござる」

 

「え、そうだったの?いいなぁ」

 

「おいずるいぞ、俺が汗水垂らして頑張っていたのに」

 

「そういうと思って切り分けておいた。帰って食べるといい」

 

「ありがと高藤君」

 

 

高藤君からケーキの入った箱を受け取る。

ティセちゃんもお菓子作りは上手だから楽しみ。

 

 

「ふふっ、トラちゃんとアスナちゃんったら。こんなところで逢引なんてお姉さん妬いちゃうわ」

 

「合挽き?」

 

 

ハンバーグでも作るのかな?

こちらを見て笑うティナ先輩に首をかしげる。

八代君は分かっているのかため息を吐いた。

 

 

「いやいや、見張りですって」

 

「そうだ、明日のお弁当はハンバーグにしよう」

 

『・・・・・・・』

 

「あれ?どうしたの皆?」

 

「バティン先輩。結城さんにその反応を求めるのは時期尚早にも程があります」

 

「えぇ、そうね。アスナちゃん、ごめんなさいね」

 

「いや、まぁ弁当作り、頑張れよ結城」

 

「拙者も明日は食堂で"はんばーぐ"食べるでござる!」

 

 

何で謝罪と励ましを受けているんだろう?

高藤君、ティナ先輩、八代君が生暖かい目で見てくるのが気になる。

服部君と私だけ分かってないのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セメント破壊と言う作業がサッちゃんのおかげで思ったよりも早く終わった。

部活の皆と合流して一緒に帰っている時、先輩が俺に思い出したように言った。

 

 

「そういえばトラちゃん」

 

「ん?」

 

「授業参観が終わるとテスト週間だけど調子はどうなの?」

 

「愚問だな先輩。既にテスト用紙の奪還計画は進めているぜ」

 

「さすがねトラちゃん。早々に勉強する手段を捨てるなんて」

 

 

残り2週間でテスト対策なんて無理に決まっている。

それなら本番に使われるテスト用紙を奪って丸暗記に当てた方が賢い選択って奴だ。

問題は誰を仲間に引き入れるかだが・・・

草薙を引き入れようと思ったが朝に社長の事を話したら殴られたしな。

 

 

「さすがじゃないでしょ!こうなったら受験の時みたいに勉強あるのみ。高藤君も手伝って」

 

「まぁ仕方ないな」

 

「殿、頑張ってくだされ」

 

「服部君も対象者だよ」

 

「何と!?」

 

「げっ、もう勉強なんて嫌だ!俺は自由に生きるんだ」

 

 

おのれ、結城め。琢磨もあっさりと承諾するんじゃねー!

半蔵が道連れなのは当然だ。成績は俺と同等レベルだからな。

 

 

「虎徹、いいのか?このままだと夏休みが補修で潰れるぞ」

 

「だからテスト用紙をだな」

 

「無理だな」

 

「何?」

 

 

琢磨の断定する言葉に俺は眉を寄せる。

琢磨が無理と言う事は相当厳しいって事か。

確かに先生達は一筋縄じゃいかないような先生達だが諦めるには早いんじゃないだろうか。

 

 

「テスト用紙はね、金庫で保管しているのよトラちゃん」

 

「金庫ぐらい楽勝じゃないか」

 

「番号は校長しか知らないのよ」

 

「解析してみたが球技大会で使われたバレーボールと同じ材質らしい」

 

「って言うかすでに確認していたのか」

 

「虎徹の事だから予想はついていたからな」

 

 

先輩と琢磨の説明を聞いて納得が言った。

校長から聞き出すのは無理。破壊するのも無理となると開ける手段が無い。

オノレ、やはり校長が俺にとって一番の障害か。

このままだと補修で夏休みが・・・

 

 

「くっ、やはり勉強するしかないのか」

 

「だからそう言ってるでしょ。リアスや朱乃にも手伝ってもらえば分かりやすいと思うよ?」

 

「そうだな。複数の意見を取り入れていけば虎徹と半蔵にも分かりやすく教える事ができるかもしれない」

 

「そうね。私も去年のテスト範囲でよければ教えてあげるわよ?」

 

「ぬぅ・・・どうするでござるか殿?」

 

 

くっ、もう諦めるしか無いのか?

受験したときの勉強すら忘れている。

普段の授業さえサボるか寝てるか悪戯のプランを考えている。

そんな俺が勉強したところでテストを乗り切れるだろうか?いや無理だ!

せめてテストの代わりになるようなものがあれば・・・

 

 

「はっ!こ、これだ!」

 

「殿!もしや名案が!?」

 

「あぁ、安心しろ半蔵。そうだ、閃いたぜ」

 

「さすが殿でござる!」

 

「うわぁ、嫌な予感しかしないよ」

 

「ふふふ、面白そうな予感がするわね。いいわ、やってみなさいトラちゃん」

 

「えっ、いいんですかティナ先輩?」

 

「真面目に勉強するよりは楽しそうだもの」

 

「あぁ、それについては僕も同感だな」

 

「高藤君まで・・・」

 

 

よし、帰ったら計画の詳細を考えるとするか。

ふぅ、とりあえずの危機は乗り越えれそうだ。

安心したら小腹が空いたな。ケーキはあるが今食べるわけには行かないし。

 

 

「小腹が空いたから屋台で食べようぜ」

 

「賛成でござる!」

 

「私も賛成」

 

「いいわね、最近食べてなかったし」

 

「僕は遠慮しておこう」

 

 

相変わらず琢磨は少食だな。

一先ず皆で屋台のたい焼き屋へ向かう。

確かこの辺りに・・・あった。

商店街の外れ、そこに去年から出来た屋台がある。

毎日、売るものが変わるが今日はたい焼きを売っているみたいだ。

 

 

「男のたい焼き屋へよく来たな。どれにする」

 

 

その後、粒あんを食べて帰宅した。

男のたい焼き、さすがに外れが無いな。美味かった。

男の焼き傍、男のたこ焼き、男のお好み焼き、男のクレープと熱い食べ物ばかりだけど・・・

とにかく計画を考えて明日、校長室に乗り込むとしよう。

 

 



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第40話

ifシリーズ~英雄派の日常

「曹操様大変です!」

「・・・俺に安寧の日は無いのか」

「曹操様(恋姫)がアーサー様(Fate)を勧誘しようとして」

「闘技場が壊れたか?」

「それがギルガメッシュ様が乱入してしまい・・・」

「・・・建物半壊か」

「その騒ぎを聞きつけたシャントット様とストーム1様が皆様を止めるため・・・」

「すまんがこれから休暇を取る」

「見捨てないでください曹操様!」

「ええい離せ!」


曹操に平穏が訪れる日は無い。




「ほら、八代君。早く行こうよ」

 

「・・・あぁ」

 

 

おかしい、何故こんな事になった。

日曜日の昼前、俺と結城は二人で市街地にあるリーアデパートに来ていた。

確かに約束はした。が、俺は半蔵や琢磨、先輩も一緒に来るものだと思っていた。

だが何故か3人とも用事があると言い出して結果、俺と結城二人だけになっていた。

悪戯のネタを買うと言う目的は変わっていないがこれじゃあ・・・デートじゃねぇか!

 

 

「どうしたの?」

 

「あー、いや、何でもねーよ」

 

 

せめてもの救いは結城が天然鈍感だって事だ。

おかげで俺が内心慌てるだけで済んでいる。

さすがは中学時代に数々の告白されたにも関わらず笑顔で見当違いの回答をして粉砕した奴だ。

・・・いやいや、おかしいだろ。

何で俺と結城がデートしなくちゃならねぇんだ!

お、落ち着け俺・・・そう、これはデートじゃない。

ただ友人と買い物に来ただけだ。そう思え、いや思い込め!

 

 

「・・・よし、行くぞ結城!」

 

「え?うん。何で急に張り切ったの?」

 

「やかましい!いいから行くぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ八代君」

 

 

恐るべし結城。

だが俺はこんな事じゃ動じないぜ。

小走りで着いて来る結城が隣に並ぶと俺は入り口にある案内板の前で立ち止まる。

 

 

「で、カーテンって何処に売ってるんだ?」

 

「えっと・・・8階みたい」

 

「じゃあエレベータで向かうか」

 

 

入り口からエレベータ乗り場へと向かう。

丁度、1階で停止していたようで直ぐに乗り込めた。

途中で止まるというアクシデントがあるはずもなく、無事に8階へと辿り着く。

 

 

「さーて、カーテンは・・・あっちか」

 

「あ、可愛い小物もあるね」

 

 

インテリア用品が並ぶフロアで壁にかかっているカーテンが奥に見えた。

そちらへと向かう途中で結城が色々と目移りしているのを見て俺も色々と見ながら歩く。

あんまりこの辺って立ち寄らないからな。

ライザーさんが本格的に居候する事になって以来だから3年振りだろうか。

 

 

「うーん、私も何か買って行こうかな」

 

「まぁ今のところはカーテンくらいしか買う予定無いしいいんじゃねーの?お、この置物変な形してる」

 

「あ、本当だ。全身真っ黒、でも猫耳がついているから猫さんじゃないかな」

 

「いや、この白い丸は目じゃないか?一つ目って事は猫じゃねーよ」

 

 

お洒落な小物が並ぶ中で変わった形の置物を手にとって楽しむ。

買いたいがカーテンの値段も分からないしお袋に無駄遣いするなと怒られそうなので元の場所に戻した。

その後、幾つか賞品を見ては結城と感想を言い合いながらカーテン売り場に到着した。

 

 

「やっぱ色々と種類があるな」

 

「うん、ヨハン先生に似合うカーテンってどれだろう?」

 

 

壁にかかっているものから商品棚にあるものまで揃っている。

ヨハン先生のカーテンは職員室にかける一部だ。

まずは他の先生達用のカーテン、キャラ物のカーテンを探さなくては。

と、俺と結城がきょろきょろとしていたからか店員が話しかけてきた。

 

 

「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」

 

「えっと幾つか探しているんですが・・・」

 

 

キャラクター物、赤と言ったカーテンを探している事を伝える。

赤は橘先生用だ。赤い装飾品とかは身につけてはいないのでイメージには合わないと思う。

が、あの先生は気づいたら血を吐いている気がするからピッタリな気もする。

しかしこの店員、無表情で聞いてくるなよ。もうちょっと愛想よくしてもいいと思う。

 

 

「キャラクター物のカーテンはこちらになります」

 

「あ、アテナだ。可愛い」

 

「麻宮じゃねーか」

 

 

メガネを押し上げて探しているカーテンを教えると直ぐに歩き出すので追いかけた。

そこには俺達のクラスメイトであるアイドルの麻宮アテナがプリントされたカーテンがあった。

デフォルメされていて色んな表情や動きをしている麻宮が散りばめられている。

誰がこんなものを部屋に飾るんだろうか。

しかしこれが職員室にあると考えると面白いな。

 

 

「よし、これにしよう」

 

「これをヨハン先生に?大丈夫かな」

 

 

これはヨハン先生用じゃないんだが、まぁ訂正するのも面倒だしいいか。

値段は5000円、痛い出費だが仕方ない。

次は赤いカーテンだな。

俺が商品を手に取ったのを見て店員が再び歩き出す。

 

 

「赤いカーテンはこちら」

 

 

何か段々と接客が雑になってきた気がする。

店員が持ってきたカーテンを受け取ると赤い、としかいえない普通のカーテンだった。

うーん、確かに赤いけどもうちょっとインパクトのあるものは無いだろうか。

 

 

「ワインレッドよりも鮮やかな方がいいと思うよ」

 

「これワインレッドって色なのか。赤なんて同じだろ」

 

「違うって。ほら店員さんの髪の色と全然違うでしょ」

 

 

色に対して拘りの無い俺が言うと結城は店員の髪を指して言った。

んー、確かに違うけど・・・どうでもいいや。

結城に指を指されている店員は俺と同じように興味無さそうに俺達のやり取りを見ていた。

 

 

「あーじゃあ鮮やかな色の方があればそっちをお願いします」

 

「全く・・・こんな事に時間を費やしたくはないのだが」

 

 

完全に接客と言うものを放り投げた眼鏡店員はあからさまにため息を吐きやがった。

やれやれ、と首を横に振るたびにパイナップルみたいな髪が一緒に揺れる。

何でこんな奴を雇った。

 

 

「ほら、これでどうだ」

 

「あ、これならいいと思う」

 

「んじゃこれでいいな」

 

 

接客を忘れ去った眼鏡店員がぽいっと俺達にカーテンを放り投げる。

結城は気にした様子も無くカーテンの色を俺が先ほどから持っているカーテンと見比べて頷く。

値段は3000円か、さっきのと合計で8000円・・・高い。

 

 

「じゃこれも決まりっと。後一つだが、ヨハン先生に似合う色って決まったか?」

 

「え?これじゃないの?」

 

「バカだな結城。どれが合うか分からないんだから種類は多い方がいいだろ」

 

「それもそうだね。じゃあ次は・・・」

 

 

あっさりと信じる結城に俺は心の中でガッツポーズを取る。

今まで選んできたカーテンがヨハン先生じゃないと知れば悪戯のためだとバレてしまうかもしれない。

そうなれば結城の事だ、警戒して俺の企みがバレてしまう。

天然だから騙した状態なら一緒に悪戯もできるが頭がいいからか警戒しているときは悪戯ができなくなってしまう。

結城と初めて会った時は誰に対しても警戒して冷たい奴、と言う印象を持っていた。

しかし人間、変わるもんだな。まぁ大半はお袋の影響だろうが。

 

 

「ほら、八代君。次の場所行こう?」

 

「ん、あぁ分かった」

 

「時間の無駄だ。早く来い、投げ飛ばすぞ」

 

 

結城に言われて俺は後を追う。

そして眼鏡店員、完全に俺達を客として扱ってねーだろ。

胸元にある名札、そこに書かれている名前はしっかり覚えたからな。

す、す、すぴねる?おのれ、英語で俺を騙そうとは何処までも接客のなってない女だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむ、動いたでござるよ」

 

「はぁ・・・もう帰ってもいいですか?」

 

「駄目よタクマちゃん。ほら追いかけるわよ」

 

 

何故僕はこんな事をしているのだろうか。

考えたところで原因は横にいるバティン先輩しかありえないのだが。

虎徹と結城さんが買い物をしているのを僕達は隠れて尾行している。

本来ならば虎徹の買い物に僕と半蔵も付き合う予定ではあった。

しかしバティン先輩が止めたので何事かと思えば・・・

 

 

「今回は一体何を考えているんですか」

 

「失礼ね。可愛い後輩を助けようと思うお姉さんの優しさが分からないの?」

 

「どういう意味でござるか?」

 

「アスナちゃんの鈍感さを克服させるためにトラちゃんと二人っきりにしたに決まっているじゃない」

 

「むむむ、と言う事は結城嬢は殿のことを?」

 

「うーん、そこまでは分からないけれど。男の子と二人っきりならアスナちゃんの鈍さも治るかなって」

 

 

確かに結城さんの鈍感レベルは尋常ではない。

中学時代に告白して玉砕された数は山ほどいる。

虎徹達と出会うまではクールな印象な社長令嬢と言う事で高嶺の花として人気を博していた。

そして虎徹、いや虎徹の母親と何かがあった時から彼女は変わった。

明るい笑顔が増え、虎徹の悪戯に巻き込まれ、時には虎徹を驚かせる悪戯に発展した事もあった。

人付き合いのしやすい性格になったからか人気は高まり告白するものが耐えなかった。

しかし、彼女の恐ろしさは恋に対する鈍さにあった。

付き合ってくれと言えば買い物に付き合うと勘違い。

二人で遊びに行こうと誘われると虎徹や僕達を誘って皆で行こうとする等、挙げればキリが無い。

 

 

「今までその鈍感さを見て笑っていた人の言葉とは思えませんよ」

 

「こういうのは面白・・げふん、数々の犠牲を生み出したから必要だと思ったのよ」

 

「しかし相手が殿であるのは何故でござるか?」

 

「ふふっ、分かってないわねハンゾーちゃん。それはトラちゃんの弱点だからよ」

 

「何と!殿に弱点があろうとは!」

 

 

胸を張って言うバティン先輩に僕は納得した。

要するに面白いから結城さんの鈍感脱出計画を実行したと。

そしてその相手役に虎徹を選んだのもまた面白いから、と言う事だろう。

 

 

「そう、それを見て楽し・・・じゃなくて一緒に克服するのよ」

 

 

虎徹の弱点。まぁ弱点と言えるのかは微妙なところだが。

恋人同士がやるような甘い状況に酷く弱いという事だ。

姫島さんが隙あらばやろうとしている虎徹の頭を撫でる行為。

恋人同士がやるかは微妙だが虎徹が狼狽するのを見る限り、その範囲に含まれるのだろう。

以前に虎徹が例の力で本を枕にして眠っている時にバティン先輩が膝枕をした事がある。

目が覚めた虎徹は顔を真っ赤にしてゴロゴロと転がりわけのわからない言葉を発して逃げ出した。

まぁ逆に欲情する方向に持っていこうとすると嬉々としてやる辺り虎徹の線引きは僕でもよく分かっていない。

 

 

「そういえば球技大会でガーネット姉と面白い空気になっていましたね」

 

「何それ、私聞いてないわよタクマちゃん!どうして呼んでくれなかったの!」

 

「僕も遠目に見ただけでしたからね」

 

 

まぁこうして何だかんだ話しているが。

僕も虎徹の狼狽する姿を見るのは面白いという事だ。

ならばバティン先輩の行動に協力するのも吝かではない。

 

 

「ぬぅ。しかし殿にも黙って加担するのは・・・」

 

「ハンゾーちゃん。これもトラちゃんのためなのよ」

 

「殿のため、でござるか?」

 

「あぁ、そうだ。虎徹が弱点を克服すれば怖いものなしだろう?」

 

 

実際、虎徹の弱点など山のようにあるが。

例えば校長であったり虎徹の母親であったり、中学の教師達であったり。

人物以外で言えば勉強であったり簡単に考え付く。

 

 

「確かに、殿の弱点が何かは分からぬが無敵となれば拙者も嬉しいでござる!」

 

「そうよ。だから私達は二人の行方を見守る義務があるのよ!」

 

「拙者、鱗から目が落ちた気分でござる!」

 

「目から鱗だ」

 

 

あっさりと騙されて陥落する半蔵。

しかしこれが半蔵のいいところでもあるし僕としても文句は無い。

半蔵が協力すれば監視がしやすい。

忍びだけあって暗躍する術については僕よりも詳しいからな。

 

 

「そうと決まればお二人とも行くでござる。その前に先行させておくでござる」

 

 

隠れていた物陰から出て分身体を1体出現させると二人の後を追った。

相変わらず良く分からない技術だ。

ホログラムでもない実体を持った自分の分身。

忍者だから、では説明が出来ないのだが・・・

ん?半蔵のポケットから何かが落ちたな。

 

 

「半蔵。何か落としたぞ」

 

「おぉ、すまぬ琢磨」

 

 

落ちたものを拾って見れば一枚のチラシだった。

妙な文様が描かれており、困った時に念じて下さい、と書かれていた。

これでは何のチラシかさっぱり分からないな。

 

 

「これは何だ?」

 

「うむ、ココに向かう途中で貰ったのでござる」

 

「へぇ、どれどれ・・・って、あらら」

 

「何か知っているんですか?」

 

 

バティン先輩が僕の持っている紙を見て笑みを浮かべる。

その様子から何か知っているようだが彼女は首を横に振って紙を奪った。

まぁ僕の物ではないから構わないのだが。

 

 

「半蔵ちゃん、ちょっとこれ貰うわね」

 

「うむ。構わぬでござるよ」

 

「じゃあちょっと待ってて。直ぐに戻るわ」

 

 

そう言って先ほどまでいた物陰に向かった。

僕と半蔵は何の事か分からず首をかしげるしかない。

 

 

「どうしたのでござろうか」

 

「分からん。虎徹と結城さんは?」

 

「ふむ、17階のレストラン街に向かったようでござる」

 

「そういえばお昼か」

 

 

腕時計を見て頷く。

僕達も何処かで食事をした方がいいだろう。

 

 

「はーい、お待たせー」

 

「うむ。では早速向かうでござ・・?」

 

 

大して時間もかけずバティン先輩は戻ってきた。

それに半蔵が声をかけるが不思議そうな顔をしている。

その気持ちは僕も同じだ。

 

 

「何故グレモリーさんがいる?」

 

「そんなの私が知りたいわよ・・・」

 

 

どこか疲れた表情のグレモリーさんがバティン先輩に手を引かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日に悪魔の勤めを果たそうとしたのがいけなかったのかしら・・・

私は家にいながら使い魔に命令して街中で契約の魔法が込められたチラシを配っていたはず。

途中でハンゾーに出会い、迷ったけれど渡すように命令したのも覚えている。

けれど実際に召喚されてみればティナだったなんて誰が思うのよ。

結果的に、ティナと契約をして内容は一緒について来い、なんて曖昧なもの。

はぁ、悪魔と悪魔が契約をかわすなんて思いもしなかったわ。

 

 

「で、何でこんな事しているの」

 

「おぉ、この牛肉は味が染みて美味いでござるな」

 

「うん。パスタも悪く無いな」

 

「ハンゾーちゃんのすき焼き御膳も美味しそうね。私のと一口交換しましょう?」

 

「・・・話を聞きなさいよ」

 

 

私を完全に無視してお昼を食べる3人に私はうな垂れながらカルボナーラを食べた。

あら、美味しいじゃない。

レストラン街にあるとは言え、チェーン店のファミレスなのに。

大方お兄様が力を入れているから美味しくなったのでしょうけど。

何せ私がいる場所はリーアデパート。オーナーが誰かなど簡単に想像できるのが悲しいわね。

 

 

「ふむ、グレモリー嬢は事情を知らぬのでござるか?」

 

「そういえばリアスちゃんには何も説明してなかったわね」

 

 

一体何の事かしら?

誰かを追っているというのは、これまでの話の流れで推測は付くのだけれど。

 

 

「虎徹と結城さんだ」

 

「コテツとアスナ?」

 

「そう、ほらあそこの席にいるでしょ?」

 

 

そう言ってティナが指差した箇所へと視線を動かす。

そこにはテーブル席に座るティナの言った二人の姿があった。

コテツが身振りで何かを話していて、それをアスナが楽しそうに笑みを浮かべている。

・・・何かしら。何だか楽しくないわね。

胸の奥に痛みのような言葉に表しづらい感覚。

それを知ってか知らずかティナが説明をしてくれた。

 

 

「つまり、アスナが鈍いのを治すのとコテツの弱みを見て楽しもうって事?」

 

「平たく言えばそういう事だな」

 

 

アスナが鈍いというのはイマイチ分からない。

コテツ達以外の男の子と話しているのを見たことが無いし。

でもコテツの弱みを聞いて思わず笑みを浮かべてしまう。

なるほど、ね。コテツも可愛いところがあるじゃない。

ふふふ、これまで散々振り回された借りを返すのにいい考えが浮かんだわ。

これ以上コテツの好き勝手にはさせないわよ。

 

 

「機嫌が悪くなったと思えば機嫌がよくなったな」

 

「ぬぅ、この短い時間で何があったのでござろうか」

 

「二人とも。女心は複雑なのよ」

 

 

愛に関しては一家言も二家言もあるグレモリー家にとっては格好の獲物でしかないわ。

あはは、考えるだけでコテツが羞恥で真っ赤な顔をしているのが目に浮かぶわね。

 

 

「あ、出て行くわよ」

 

「追いかけるでござる」

 

「グレモリーさん。行くぞ」

 

「え?あぁ、そうね。行きましょう」

 

 

タクマの言葉で我に返り慌てて皆を追いかける。

コテツとアスナを後方から見て付かず離れずの距離を保つ。

二人は3階の婦人服売り場に来ていた。

 

 

「・・・居辛いな」

 

「女性達の視線を感じるでござる」

 

「気にしたら負けよタクマちゃん、ハンゾーちゃん」

 

「ティナの言う通りよ。もっと堂々としていなさい」

 

「尾行しているのに堂々としてもまずいだろう」

 

 

タクマとハンゾーが居心地悪そうにしているけれど関係ないわ。

見ればコテツも居心地悪そうにしながらアスナの問いかけに答えている。

うーん、距離があるから悪魔とは言え、声が聞こえ辛いわね。

 

 

「ティナ。二人の会話とか聞こえない?」

 

「そうね。タクマちゃん、どうせトラちゃんに盗聴器付けているんでしょ?」

 

「まぁ付けていますが・・・」

 

 

そういって私達にイヤホンを渡してくる。

それを耳につければコテツとアスナの会話が聞こえてきた。

 

 

「・・・何だかんだ言ってノリノリだなグレモリーさん」

 

「伯母上が女性は勢いで何とかなるって言っていたでござるよ」

 

 

何か言っている二人は置いて耳を澄ませる。

そう、これはコテツがアスナに迷惑をかけないか心配しているだけ。

別に疚しい事なんてこれっぽっちも無いわ。

 

 

『これなんてどう?』

 

『知らねーよ』

 

『もぅ、ちゃんと考えてよ』

 

『男の俺に女物の服の意見を求めているのが間違いだっての』

 

 

コテツをからかうのはこういった路線で行くのがいいのかしら?

その前にアスナ、コテツに聞こうって時点で間違いだって気づきなさいよ。

そんな会話をいているとまるで・・・

 

 

『あ、カップル用のTシャツだって』

 

『・・・アホか。誰が買うんだこんなの』

 

『だよねー。あ、こっちの服可愛い』

 

『はぁ・・・つ、疲れる。結城の奴、まさか狙って言ってんじゃねーだろうな』

 

『何か言った?』

 

『何でもねーよ』

 

 

・・・やっぱりイラッと来るわね。

イマイチ、自分でも分からない感情を持て余してしまう。

 

 

「服なんてある程度、動きやすければどうでもいいだろうに」

 

「拙者としては懐にたくさん入るのが望ましいでござる」

 

 

コテツと言いどうして私の知り合いにはこんな男の子しかいないのかしら。

いえ、祐斗はまだマシね。

 

 

『あ、殿様だー!』

 

『あん?お前は・・・どっかで会ったっけ?』

 

『あ、球技大会であった子だ』

 

 

イヤホンから聞こえてきた声に視線をコテツ達に向けると女の子がいた。

あれは・・・小学校にいた子だったかしら?

 

 

『殿様、今日は忍者はいないの?』

 

『忍者?半蔵か・・・おーい、半蔵ー』

 

 

シュタッ

 

 

『お呼びでござるか殿!』

 

「え?」

 

「はぁ・・・」

 

「あーあ、やっちゃったわね」

 

 

イヤホンから聞こえてきた半蔵の声に思わず隣を見る。

ため息を吐くタクマと苦笑するティナ。

話題に出てきたハンゾーの姿が無く、コテツ達の傍にいた。

何やってるのよハンゾーは・・・

 

 

『おー、忍者の兄ちゃんだ』

 

『むむむ、お主はいつぞやの・・・誰でござったか?』

 

『レヴィ!レヴィ・ザ・スラッシャーだよ!』

 

『服部君も買い物に来てたの?』

 

『いや?拙者は皆と一緒でござるよ』

 

「仕方ない、行くとするか」

 

「そうね、今日は作戦失敗みたいだし。行きましょうかリアスちゃんも」

 

 

いや、何でハンゾーがあの場にいるのか説明しなさいよ。

空間転移?それとも高速移動?ギャスパーみたいに時間を止めたの?

もう出会って4ヶ月になるけど全然分からないわ。

 

 

「まぁいいわ、早速コテツに借りを返すときが来たと思いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ、今日は何か疲れたぜ。

家に帰って来た俺はリビングで寛いでいた。

結城と悪戯のネタであるカーテンを買いに行って昼飯を食ったまでは良かった。

カーテン代は思いのほか高かったが諦めた。

しかし付き合ったお礼にと結城の買い物に付き合ったのは間違いだった。

女の子の服なんてさっぱりな俺は居辛くてしょうがない。

女性客の視線が飛んできて正に敵地に挑む兵隊のような気持ちだった。

 

 

「へぇ、それでデートは楽しんだのか?」

 

「デートじゃねぇよ。結局その後は皆と合流してゲーセンとカラオケに寄って遊んできたからな」

 

 

何故かレヴィとか言うチビッ子も混ざっていたが。

あのチビッ子、やけに歌が上手かったな。

 

 

「おいおい、こういう時は男性がリードしてあげなきゃ駄目だろ」

 

「んな事言われてもな。服のセンスなんて本人が満足してればそれでいいだろ」

 

「女心が分かって無いな。こういうのは一緒に選ぶだけでも楽しいもんなんだよ」

 

「大体、先輩をデートに誘えないようなライザーさんに女心をとやかく言われたくは無いぜ」

 

「ぐっ、それを言うなよ・・・」

 

 

ニヤニヤと俺の話を聞いているライザーさんにジト目で返す。

あっさりとへこんでしまうライザーさん。

何てヘタレなんだ。

 

 

「で、でもリアスが積極的になったとは面白い事になったな」

 

「面白くねぇよ。くっ、グレモリーの奴め。姫島に続いて俺の敵になるとはな」

 

 

何故か来ていたグレモリー。

まぁ、遊んでいて合流でもしたんだろう。

問題はやたらと俺に絡んできた事だ。

腕を絡んでこようとしたりとスキンシップにしては度が過ぎている。

その度に俺は慌てて距離を取ったりと翻弄されっぱなしだった。

ぐぬぬ、まさかグレモリーに手玉に取られるとは一生の不覚!

 

 

「虎徹、明日来て行く服だけど。これでどうかしらー」

 

「あー、いいんじゃねーの」

 

「いや、お袋さん。派手過ぎやしませんかね」

 

「そう?じゃあ別のにしようかしら」

 

 

やたらキラキラしたラメの入った服を持って俺に感想を求めてくるお袋。

それに俺は適当に返し、ライザーさんがまともに感想を言った。

明日は授業参観日だからって気合入れすぎだろお袋。

普段どおりの服でいいんだよ。

 

 

「親父はやっぱ無理なのか?」

 

「一日中やっているみたいだから何処かで合間を縫って行くつもりだ」

 

「親父さん、注ぎますよ」

 

「お、悪いねライザー君」

 

 

ビールジョッキ片手にバラエティー番組を見ている親父に聞く。

まぁ小学校、中学校とは違い今回は一日中授業参観だもんな。

親父も来る事が出来るのは嬉しいやら恥ずかしいやら。

 

 

「そういえば結局ライザーさんも来るのか?」

 

「もちろん!」

 

「やれやれ、この間言っていた妹さんの方を気にしろよ」

 

「え、レイヴェルか?あの子はコテツと違って優秀だからな」

 

 

ライザーさんには二人の兄と一人の妹がいるらしい事は聞いている。

妹のほうは搭城と同い年の中学2年らしい。

以前に写真を見せてもらった事があるが見事なまでのドリルだった。

まさかあんな髪型をした奴がいるとは・・・いや、良く考えたら結構いるな。

 

 

「あ、そうそう虎徹。ディズィーちゃんとソル君も連れていくからね」

 

「はぁ?何で?」

 

「今日二人と会った時に誘ったのよ」

 

 

いや、そんな気軽に言うなよ。

元が付くが名門女学園だぜ?

警備的に家族以外が入って大丈夫なんだろうか。

 

 

「ディズィーはまぁ分かるとして何でソルさんが?」

 

「よく分からないけれどディズィーちゃんが行くと知って着いて来るって言ってたわよ」

 

「何かソルの奴様子がおかしかったな。ディズィーの事を聞いて考え込んでいたし」

 

 

まさかソルさん・・・ディズィーの事が好きなんじゃないだろうか。

思えば球技大会の時もやけにディズィーの事を見ていたような気がする。

保護者であるテスタメントさんと仲が悪そうだったのも気になるな。

俺も合間を見ては大自然と一緒に遊びに行っているがソルさんについては話題も上がらなかったら気づかなかったぜ。

 

 

「ほぅ、虎徹が欲しがっているのはこれか」

 

「え?あぁ、そうそう。親父買ってくれ」

 

「高すぎる。自分でバイトして買いなさい」

 

 

親父の声にテレビを見ればナーヴギアのニュースが流れていた。

この人、最近よくテレビや雑誌で見かけるな。

か、かやば、だっけ?

そしてさりげなく強請ってみたが流されてしまった。

 

 

「これが欲しいのか?」

 

「そう。ナーヴギアのソフト、ソードアートオンラインってゲームが欲しいんだ」

 

「ふーん、ジャンルは?」

 

「RPGで実際に身体を動かせるみたいなんだよ」

 

「んー、まぁ俺は最近忙しくなって来たし無理かな」

 

 

残念、ライザーさんも誘ってゲームの中で野球をしようと思っていたんだが。

しかし忙しくなってきたってライザーさん、仕事してんの?

大学生じゃなかったっけ?あれ、でも何処の大学か知らないな。

 

 

「レーティングゲームも近々日程が組まれたからな」

 

「って事はゲーセンか。プロゲーマになるのか?」

 

「・・・まぁ、大きく外れてはいないな」

 

 

そんな、ゲームしているだけで金がもらえるなんて最高じゃないか。

格闘ゲームのプロは聞いた事あるがレーシングゲームのプロっているんだな。

初めて聞いたが日程が組まれているって事は結構いるんだろう。

 

 

「3人とも、これなんてどうかしら?」

 

「紅白にでも出場する気かお袋」

 

「お袋さん、そんな衣装持ってたんですか」

 

「止めておきなさい」

 

 

服よりも背中の羽やら飾りが大半を占める衣装を持ち出したお袋に俺達は全力で止めた。

 

 



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1年 1学期騒動編
第41話


最近気づきました。
何で私は制限をかけていたのだろうか、と。
毎回モブキャラ登場させる度に制限にかかっているかを考えるのが面倒になってきました。

直ぐには制限解除しませんが、頃合を見計らって制限を解除します。

制限解除後のモブキャラに関しては下記の予定です。
・2D/3D全ての格闘ゲームのキャラクター
 但し、版権キャラに関してはプレイアブルキャラ、またはボスキャラのみ。
 (MUGENでキャラとしている場合は可)

 格闘げーむの定義は以下の通りとします。
 ・ジャンルが格闘ゲームとなっているゲーム。
 ・お互いのライフが見えており1対1で対戦するゲーム

うん、2つめの定義は色々と解釈できそうですね。




「今日は皆の知っての通り授業参観だ」

 

 

月曜日のSHRで相変わらず存在感の薄いヨハン先生が言うのを俺達は集中して聞く。

いや、集中しないと姿や声が薄れて聞こえないんだよ。

 

 

「1時限目から来られる保護者の方もいるだろうが普段どおりに真面目に授業を受けるように。ただし八代、お前は駄目だ」

 

「何故!?」

 

「お前は普段から真面目じゃないからな。今日は特に真面目にしろ。いいな?」

 

「あー、りょーかいです」

 

 

さすがにお袋に怒られたくはない。

これ以上小遣いを減らされたら溜まった物じゃないからな。

大人しく頷く俺にヨハン先生は怪訝な視線をしやがる。

その目はまるで何を企んでいるんだ、と言う疑いの目だった。

少しは生徒の事を信じろよ!

 

 

「まぁいいだろう。今日の日直は・・・姫島か、号令だ」

 

「はい。起立、礼」

 

 

姫島の号令に俺達が席を立って一礼する。

それに頷いて教室を出て行くヨハン先生。

同時に騒がしくなるクラスの中で俺は机に上半身を預けた。

 

 

「あー、授業めんどくせー」

 

「小母様も来るんだから真面目に受けないと駄目だよ」

 

「コテツが真面目に授業を受ける姿が想像できないデス」

 

「はぁ・・・」

 

「ん?どうしたグレモリー」

 

 

俺が結城、デス様と話していると後ろからため息が聞こえた。

振り返れば机に肘を立てて頬杖をつくグレモリーの姿があった。

 

 

「いえ、私の両親も来る事にはなっているのだけれど・・・」

 

「ん?じゃあ何でそんなため息ついてんだよ」

 

「いい事じゃないの?」

 

「それが兄夫婦も来る事になっているのよ」

 

「グレモリー、兄ちゃんがいたのか。結城のところと一緒か」

 

「うん。でもお兄ちゃんは来ないと思うよ。昨日、中国に出かけたし」

 

 

自由で羨ましいぜ。

俺も授業を抜け出して世界中を旅したいもんだ。

 

 

「それで兄貴がどうしたんだ?仲が悪いとか?」

 

「仲はいいわよ。可愛がってもらっているし」

 

「うーん、じゃあ喧嘩しちゃったとか?」

 

「いえ、最後に会ったのは・・・まぁ先週だけど喧嘩はしてないわ」

 

 

先週?グレモリーって留学して一人暮らしじゃなかったっけ?

たまたま遊びに来てたりしたんだろうか。

しかしグレモリーが何でため息をついているのかさっぱりだ。

 

 

ガラガラッ

 

 

と、教室の扉が開き誰かが入ってくる。

その人物を見て真っ先に反応したのは扉に近い半蔵だった。

 

 

「お、伯母上!?どうしたでござるか一体?」

 

「おぉ、保長(やすなが)。元気そうじゃの」

 

「うむ!拙者は元気でござるよ!伯母上も壮健なようで何よりでござる」

 

「うむうむ、保長は素直でよい子じゃの。それに比べて兄上と来たら」

 

「む?伯母上、何故父上を引きずっているでござるか?」

 

 

よく分からないが半蔵の知り合いのようだ。

保長って誰かと思ったが半蔵の名前だったな。

普段呼んだりしないから一瞬誰の事か分からなかったぜ。

しかし何故、半蔵の親父さんを引きずっているんだろうか?

 

 

「う、鮎香(うるか)。いい加減離してくれないかい?」

 

「何を言う。抜け忍である兄上にかける情けはなかろうて」

 

「鮎香ちゃんー、お父さんを離してあげてー」

 

「ぬぅ、義姉上の頼みとあらば仕方ないのぅ」

 

 

話の流れからして半蔵の親父さんの妹、伯母さんか。

しっかし初っ端から濃いメンツが来たな。

 

 

「あれがハンゾーの家族なの?」

 

「そういえば私も初めてみたかも」

 

「あれ?そうだっけか。俺も半蔵の両親は会った事あるがもう一人は初めて見たな」

 

 

そして続々とやってくる保護者達。

朝っぱらから張り切り過ぎだろ。

 

 

「虎徹!恥かかせるんじゃないよ」

 

「アスナさん。普段どおり、気負わずに頑張りなさい」

 

「朱乃、しっかりね」

 

「朱乃よ、童どもなど一捻りにしてしまえ」

 

「オロチ様、そういった趣向ではございませんよ」

 

「が、頑張ってください!」

 

「・・・メンドクセェ、何で俺が」

 

 

俺のお袋、結城と姫島の母親、おろちん、グスタフさん。

ディズィーとソルさん。

揃いも揃って自らの子供達や知り合いに声援を送っている。

だがお袋、アンタのは声援じゃねぇ。

けど逆らえない。ちくしょー。

 

 

ゴオオオォォォッ!

 

ドガーーーンッ!

 

 

突如鳴り響く轟音。

教室内だって言うのに風の音と何かを叩き付ける音が聞こえた。

熱いから窓は開けているが、そこまで強い風は吹いてねぇぞ?

 

 

「コテツ、今度は何やったの!」

 

「待てグレモリー。さすがに俺じゃねーよ」

 

 

全く、人を疑うとはなんて奴だ。

しかし本当に何なんだろうな、この音は。

授業まで数分あるので教室の外に出て音の正体を確かめる。

そこにいたのは・・・

 

 

「さぁ神に祈りなさい!」

 

「何時ぞやの借り、返させてもらおう!」

 

 

見覚えのある牧師と社長の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、ではここの問題を・・・服部君」

 

「分からぬでござるっ!」

 

「うむ、潔い答えじゃ。教師殿、これはもはや正解と言っても過言では無いであろう」

 

「いや過言です。服部君、もう少し考えてから発言してください」

 

 

1時限目の国語の授業、島津殿に言われて拙者は答えたでござる。

分からぬ事は分からぬと正直に言えと常々言われていたでござるから正直に答えた。

席の後ろに立っている伯母上も褒めてくださるが島津殿は納得が行かぬ様子。

ぬぅ、何がおかしかったのでござろうか?

 

 

「では春日野さん、代わりにお願いします」

 

「は、はい」

 

 

春日野嬢の回答に耳を傾けながら黒板に書かれた内容をノートに写していく。

書かれている内容は頭に入らぬが後で琢磨か結城嬢に教えてもらえば問題なかろう。

当然その間、保護者達の視線は席を立っている春日野嬢へと視線が集中するでござる。

 

 

「おっしゃあ!さくら、一発かましてやれ!」

 

「えっ!?何でここに・・・」

 

「弟子の活躍を見ない師匠はいないぜ!」

 

「いや、弟子じゃないし・・・」

 

 

うーむ、やはり国語はよく分からぬでござるな。

漢字の読み書きならば問題は無いが、拙者は書物をあまり読まぬでござる。

故に筆者の気持ちを考えよ、などと言った事は難しいでござるよ。

 

 

「えー、春日さんの代わりにロシュフォールさん。お願いします」

 

「えぇ、分かりましたわ」

 

 

スラスラと読み上げていくロシュフォール嬢。

グレモリー嬢といい異国の言葉なのに大したものでござる。

拙者など異国の言葉は読み書きすら碌に出来ぬ。

しかし、先ほど春日野嬢と話していた御仁。

ピンクの胴衣とは如何なものか。

 

 

「はい、ありがとうございます」

 

「ふっ、当然ですわ」

 

 

自信たっぷりに答えて席に着くロシュフォール嬢。

殿は石油王、などと呼んでいるでござるが確か父親が石油王ではござらんか?

生憎、今のところ来てはおらぬ様子。

ふむ、石油王と聞くとヘルメットを被っている印象が浮かぶのは何故でござろう。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「キリがいいですね。では今日の授業は終わります。日直、号令を」

 

「はい、起立。礼」

 

 

後ろに座る姫島嬢の号令に従い席から立ち、一礼する。

本来なら途端に賑やかになるのでござるが保護者達がいるからか静かに次の準備を行っていく。

 

 

「ふむ、次は社会の授業でござったか」

 

「えぇ、ラグナ先生の授業ですわ」

 

 

机から次の授業で使う教科書を取り出しながら姫島嬢と話す。

先ほど使ったノートを机にしまい込み姫島嬢は後ろをチラッと見て答えた。

1時限目の授業が始まる前に姫島嬢の母君とグスタフ殿、オロチ殿が来ていたのは見えた。

そういえば姫島嬢の父君にはお会いした事は無かったでござる。

 

 

「姫島嬢の父君は来られるのでござるか?」

 

「父も仕事がありますし、分かりませんわね」

 

「ふむ。仕事ならば仕方ないでござるな」

 

「ハンゾーさんのお父様は来ているのですよね?」

 

「うむ!父上ならばあの通り、伯母上に持ち上げられているでござる」

 

「・・・個性的な方ですわね」

 

 

後ろを見れば伯母上が父上を持ち上げているところでござった。

それを母上が微笑みと共に見ておられる。

うむうむ、相変わらず仲のよいようで結構な事ではござらんか。

 

 

ガラッ!

 

 

「お、おはようございまーす」

 

「おぉ、麻宮嬢。おはようでござる」

 

「アテナ、おはようございます。お仕事はもうよろしいですの?」

 

 

扉が開き中に入ってきたのは麻宮嬢でござった。

普段は仕事があるため欠席など多いでござるが今日は珍しく早い時間に来たでござるな。

拙者達や他のクラスメイトに話しながらも麻宮嬢の席である拙者の隣に座る。

 

 

「うん。プロデューサーが上手く調整してくれたみたいなの。でも・・・」

 

「頑張れよアテナ」

 

「あはは、頑張りますプロデューサー」

 

 

麻宮嬢の後から入ってきて一声かけて後ろへと向かう御仁。

ふむ、この御仁がぷろでゅーさー、でござるか。

鉢金をして鍛え上げられた身体からは一種の武人のような立ち振る舞い。

ぬ?以前にリーアランドで見かけたような気もするでござるな。

 

 

「あら、麻宮アテナちゃんじゃない。後でサインもらおうかしら」

 

「八代さん、さすがにプライベートを邪魔しては駄目ですよ」

 

「それもそうね。結城さんの言うように放課後に貰う事にするわね」

 

「いえ、私が言っているのはそういう事ではなく・・・」

 

 

後ろで殿の母君と結城嬢の母君の会話を聞いて思い出したでござる。

ルガール社長のサインを貰わねば。

1時限目が始まる前に何者かと乱闘をしていた様子。

駆けつけた教師陣によって止められたようでござるが闘う様を見られなかったのは残念でござるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、普段ならクラスの仲のいい子達と一緒に昼食を取っている時間。

私はそんな日常のサイクルは行わずに、とある方々を案内するため廊下を歩いていた。

 

 

「すまいねティナ君」

 

「申し訳ありませんティナ様」

 

「あはは、いや別に構わないですよ」

 

 

私が案内しているのは魔王サーゼクス様とその女王であるグレイフィア様。

後、何故か私のクラスを見学していたライザー君。

サーゼクス様は理事をしているから案内はいらないんじゃ、と思ったけど頼まれたのなら仕方ない。

 

 

「あぁ、大人しくお袋さんについて行けばよかった・・・」

 

「何か言ったかい?」

 

「い、いえ何でもありません!」

 

 

既にリアスちゃんの様子は見に行ったみたいだけど何故私のところに来るのかが分からない。

まぁ私の家であるバティン家は没落しているから半分グレモリー領になっているようなものだ。

それでサーゼクス様が気遣ってくれのかしらね。

 

 

「食堂でいいんですよね?」

 

「あぁ。コテツ君にもデザートの数を増やすと約束したからね。事前にリサーチは必要だよ」

 

「あのバカ、何て事を頼んでいるんだ・・・」

 

 

ライザー君が頭を抱えるのも分かるわ。

私もLINKの会話を見て驚いたもの。

リアスちゃんも報告はしていないみたいだしトラちゃんに神器があるとは気づいてはいない。

けどトラちゃんとサーゼクス様が接触したとなると時間の問題かしら?

うーん、トラちゃんを眷属にするのは気が進まないわね。

かと言ってリアスちゃんや他の悪魔に取られるのはもっと嫌。

・・・まぁこの事について後で考えましょう。

 

 

「ところで、先ほどから賑やかですが何があるのでしょうか」

 

「え?そういえば何時もよりは騒がしいですね」

 

 

サーゼクス様の後方を歩いているグレイフィア様の声に私は足を止めて周囲を確認する。

色んなところで闘う子達がいるのは別に何時もの事だから珍しい事じゃない。

それにしても闘っている数が随分と多いような・・・

 

 

「保護者の方たちが闘っているんじゃないですかね」

 

「あ、それはあるかも。まぁ結局は何時もの事ですよ」

 

「そ、そうですか・・・」

 

 

私とライザー君が大したことじゃないと判断して返答する。

グレイフィア様は何処か納得行かないような表情をしながら頷いた。

 

 

ピンポンパンポーン

 

 

と、チャイムとは違う音が校舎に鳴り響く。

保護者の方たちへの連絡とかかしらね。

そう思い私は止めていた歩みを再開しようとした・・・

 

 

『ちょ、おろちん。邪魔すんなよ。え?マイクもう入ってる?』

 

 

聞こえてきたのは聞き覚えのある声。

私とライザー君はシンクロしたかのように放送の流れる声に顔を上げた。

トラちゃん。普段なら大歓迎なんだけどサーゼクス様達がいる中で勘弁して欲しいのだけど。

それに貴方もお母さんからお仕置きを受けても知らないわよ?

そんな私の心配を他所にトラちゃんは平常運転だったようだ。

 

 

『あー、1年A組の八代虎徹だ。今回授業参観と言う事もあり格闘大会を開く!』

 

「この学校はそんな催しがあるのですか?」

 

「いや、私も初耳だね。だが面白そうじゃないか」

 

 

怪訝な表情のグレイフィア様と対照的に面白そうな表情のサーゼクス様。

さすがサーゼクス様、早くもトラちゃんの性格を掴んできている。

 

 

『詳細は後で掲示板に張っておいたから見てくれ。あ、グレモリー。悪いが茶くれ』

 

『何で私が注がなくちゃいけないのよ!』

 

『お前がポットに一番近いだろ』

 

『大体こんな事をしてお兄様達に知られたら・・・』

 

『そうか。グレモリーの兄貴も来ているんだったな。おーい、グレモリーの兄貴。よかったら参加してくれー』

 

 

・・・そういえばトラちゃん、リアスちゃんのお兄さんがサーゼクス様って事知らないのね。

ライザー君はもう完全に顔を青ざめて口をパクパクとさせているし。

グレイフィア様は従者として来ているとは言え、放送の内容に眉をひそめている。

そして肝心のサーゼクス様といえば・・・

 

 

「はっはっは。面白そうじゃないか。よし、では私も参加を・・・」

 

『あ、ちなみに校長も参加するから参加者は気合を入れて挑むように』

 

「・・・まぁ理事と言う立場もあるから今回は見学に回ろうかな」

 

 

逃げた、と思うと同時に校長先生とサーゼクス様の力関係が見えたわね。

それに私達悪魔の頂点に立つような方が人間に怯えるというのもどうなのかしら?

・・・うん、校長先生なら仕方ないわね。

 

 

「そうだ。ライザー君も参加したらどう?」

 

「え?ちょ、ティ、ティナ?」

 

「ふむ。いい機会だ。この1年を旅していた成果を見せてくれないか」

 

「最近のレーティングゲームの活躍を見る限りライザー様の圧勝とは思われますが」

 

「お二人まで・・・は、はい」

 

 

サーゼクス様は校長先生のことを知っているように人間界についてはある程度詳しいみたいね。

けどグレイフィア様はよく知らないのが分かるわ。

だって、ライザー君が圧勝なんて言ってる時点でありえないもの。

でもライザー君の現段階での実力を知るいい機会かもしれないし。

 

 

「頑張ってねライザー君」

 

「お、おうっ!任せておけ、ティナ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く。お昼ごはんぐらい静かに食べれないのかい虎徹」

 

「いやー、思い立ったが何とやらって言うじゃねーか」

 

 

放送室から戻ってきた俺とグレモリー、おろちんは食堂に来ていた。

いつものメンバーに加えて保護者達も追加して結構な大所帯となっている。

そんな中で俺はお袋から小言を貰いながらお袋の作った弁当を食べていた。

 

 

「お、美味しい。やはり八代さんには敵いませんね」

 

「あははは。そりゃ簡単に追いついかれたら溜まったもんじゃないわよ結城さん?」

 

「そうよー。でも結城さんも追いつけるから頑張ってねー」

 

「いつも家の朱乃がお世話になっております」

 

「いえ、逆にリアスがご迷惑をおかけしていないか心配です」

 

 

お袋の持ってきた重箱から卵焼きを食べて結城の母親がしみじみと呟く。

結城の母親は仕事一筋だったらしくて数年前まではお手伝いさんが料理をしていたらしい。

それで長年、専業主婦をしていたお袋に勝とうってのが無理な話だ。

半蔵の母親は相変わらず間延びした声で気がゆるむな。

姫島の母親である瑠璃さんはグレモリーの母親と頭を下げあっていた。

 

 

「ディズィーちゃんは何処まで習ったの?」

 

「は、はい。一昨日は肉じゃがを教わりました」

 

「あら、では次は親子丼あたりですわね」

 

「ロールキャベツもいいんじゃない?」

 

 

女性陣は料理について盛り上がっていた。

たまにある料理の品評会で腕が上がるなら俺も嬉しいし願っても無いことだ。

 

 

「ソル。お前、まだこの街にいたのか」

 

「シャドルーの幹部がいるって聞いたからな。結構な賞金首だから暇つぶしには丁度いい」

 

「なるほど、人間の犯罪組織か・・・リアスに注意するよう言っておかねばな」

 

「これ保長よ。口元が汚れておるぞ、吹いてやるからこっちを向くのじゃ」

 

「むむ、かたじけない伯母上」

 

「グスタフよ。普段世話になっている礼だ。受け取るが良い」

 

「オロチ様。好き嫌いはよくありません、ピーマンも栄養はあるのですよ」

 

 

と、まぁ男性陣はご覧の通り好き勝手している。

半蔵のおばさんを男性陣に含めていいのか分からないが、やけに男前な性格だし問題ないだろう。

グレモリーの父親も初対面にも関わらずナチュラルに会話に参加している。

 

 

「しかし社会の授業は面白かったな」

 

「あぁラグナの奴、完全にあのお嬢ちゃんに手玉に取られていたな」

 

 

俺が午前中の授業を思い返して喋るとソルさんが珍しくニヤリとした笑みを浮かべてノッてきた。

社会の授業中、一人の少女が教室に入ってきた。

金髪ツインテールでゴスロリ衣装の少女は堂々と教室の前の扉から入ったかと思うと後ろへと向かったのだ。

それを見てラグナさんは酷く狼狽した様子でそのまま少女と口論。

終始、弄られた状態で授業どころではなく苛立ったラグナさんと少女がグラウンドにでて闘いが始まった。

 

 

「でもあの子凄かったな」

 

「あぁ、ラグナの戦いを熟知しているのか戦闘のペースを握ったままだったな」

 

「俺もあんな蛙欲しいな」

 

「やめとけ。一般人のお前じゃ一生かかっても無理だ」

 

「やぁ、虎徹。ここにいたのか」

 

 

と、俺とソルさんが話していると声をかけてきたのは親父だった。

午前中は仕事をすると言っていた割にはパリッとしたスーツを着こなしている。

そして俺達の空いている席に座るとお袋が重箱を幾つか寄せた。

 

 

「お疲れ様。はい、お茶どうぞ」

 

「あぁ、悪いな」

 

 

阿吽の呼吸と言うべきかお袋が準備をあっという間にして親父も食事に参加する。

そして気になっていたのか何故か俺に視線を向けた。

 

 

「虎徹。お前今度は何をやらかしたんだい」

 

「いきなり失礼な親だな。まだ何もしてねーよ」

 

 

疑問系でないところに俺の信用度が伺えるってもんだ。

放送で言った格闘大会は放課後だし、休日に買ったカーテンはまだ仕掛けていない。

うん、まだ何もしてないな。

 

 

「掲示板前に凄い人だかりがいて虎徹の名前が出ていたからな」

 

「あぁ。そっちか」

 

「そっち?」

 

「いや、なんでもない」

 

 

危うく他の悪戯がバレるところだった。

親父に今回の格闘大会を開く事になった経緯を説明する。

経緯は1時限目が始まる前の騒動にある。

何故かルガール社長とゲーニッツさんが闘っていた。

それぞれの背後ではウィンドと神月みたいな金髪ドリルが止めようとしていた。

多分、娘なんだろうが闘っている理由が分からないが親同士の仲が悪いという事はわかった。

 

 

「それでどうして格闘大会に繋がるのかさっぱりなんだが」

 

「いっその事、勝敗はっきり着けちまえば納得するかなって」

 

 

元総合格闘技のチャンピオンとお別れ牧師の一戦だ。

俺も興味はあるし補習回避計画の前哨戦考えると丁度よかった。

夏休みの補習を回避する計画、要はテスト期間中に格闘大会を開こうぜ、と言うことだ。

校長に話して俺が運営を務めれば赤点を取っても補習は回避するという事を約束させた。

校長も自分の生徒達がどのように成長しているかみたいと思っていたそうで二つ返事で了解を得たのだった。

イベント実行委員として生徒会長にも事情を説明すると生徒会のメンバが何人か手伝いに来てくれることになった。

そして今回、その練習として突発的ながらも格闘大会を開催する事になったってわけだ。

 

 

「当然、1回戦はルガール社長とゲーニッツさんだぜ」

 

「はぁ・・・社長。後でマチュア君とバイス君に報告だな」

 

 

自分の会社の社長が勝手に大会に出ようとするからか頭を抑える親父。

まぁ正直な話、二人の対戦以外は俺が本番で運営するための練習だ。

そのために校長が参加するって言って参加人数を絞ったわけだしな。

とは言え、校長の強さは知っている人は知っている程度だ。

まぁ俺のクラスメイトは、よく俺が愚痴を溢しているから知っているだろうが他のクラスは分からない。

上級生は恐らく知っている、はず。

 

 

「でもこの学園の生徒だからなぁ。命知らずってのは怖いぜ」

 

「虎徹。お前が言うな」

 

 

親父のツッコミを聞き流し俺は既に放課後の事を考えていた。

 



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第42話

どうもお久しぶりです。
遅れた理由は、まぁ興味があれば活動報告を見てください。

とは言え、今回は説明会と言った感じですが。



サクッと午後の授業も終わり放課後。

眠気との戦いは熾烈だったが何とか勝てた。

まぁお袋と親父にはバレていたようで休憩時間に小言を言われてしまったが・・・

結局、授業参観はクラスの人数を越す保護者達が教室の後ろに整列していた。

夏だって言うのに人口密度で熱気が凄まじかったな。

普段は温度が高めのエアコンを低い温度にするとは思わなかったぜ。

 

 

『さぁ凄まじい先手の取り合い!勝つのはルガール選手か、はたまたゲーニッツ選手か!』

 

 

そして目の前のグラウンドに用意した試合場で先手の奪い合いを行っている二人の知り合いが闘っていた。

ルガール運送社長にして元格闘技世界チャンピオンのルガール社長。

お別れ牧師として名が広まっている駒王教会のゲーニッツさん。

試合開始の合図から凄まじい攻防にグラウンドに集まった観客達も歓声を上げている。

 

 

『ルガール選手の烈風拳!しかしゲーニッツ選手も風を巻き上げて相殺していく!』

 

 

遠距離から、近距離からと立ち位置が目まぐるしく変化していく。

いやー、久しぶりにここまでの激しい闘いを見たな。

しかし俺はそれを黙って集中するわけには行かない理由があった。

 

 

『白熱した闘いになってきたな。どっちが勝つと思うよ解説のおろちん?』

 

『・・・何故私がこのような場にいるのだ童よ』

 

『その場のノリだ。あーそうそう、実況は俺、八代虎徹。解説はおろちんでお送りします』

 

 

そう、準備はわずかな休憩時間を突貫作業で何とか間に合ったのだが実況と解説役をオファーするのを忘れていた。

生徒会メンバも乗り気じゃなかったので仕方なく俺がやっている。

解説役は毎試合変えていこうと思っている。

 

 

「オロチ様の見ている前で無様な真似はできませんね」

 

「神の力か。面白い、以前のような半端ではなく完全に私が取り込んでくれよう」

 

 

試合中にも関わらず会話をかわす二人。

けれども油断なく隙あらば攻撃をしかけようとしているのが分る。

って言うか何であの二人仲が悪いんだ?

運送業の社長と教会の牧師だろ?関連性が判んねーや。

後、どこからかKOFでやれという野次が飛んできたがどういう意味だ?

 

 

『おい、動くぞ童』

 

『え?おーっと、ルガール選手!ついにゲーニッツ選手の風に捕まったーっ!」

 

「そこですか?」

 

「ぬぅっ!」

 

『ルガール選手たまらずダウンッ!』

 

 

あの風は厄介だな。

ゲーニッツさんの近くじゃなくても発生するから何処から出てくるか判らない。

ひたすら動き回って狙いをつけさせないようにするしか無いんじゃないだろうか。

 

 

『さぁルガール選手、すぐさま立ち上がり・・・おっと、二人とも何かしています。おろちん、アレは?』

 

『見てのとおり、自らの気を溜めている』

 

『気?へー、あれが気かぁ』

 

 

二人の周囲には風が巻き起こりオーラっぽいのが見える。

ふむふむ、初めて見たな。

 

 

『童よ。本当に只のヒトなのだな』

 

『はぁ?どう見ても俺は人間だろ、何言ってんだ。中二病は後にしろ』

 

『そのチュウニビョウが何かわからぬが馬鹿にされている事はわかるぞ!』

 

 

おろちんの中二病ごっこに構っている場合じゃない。

気を溜め終わったのかルガールさんがゲーニッツさんに向けて飛び込んだ。

そして着地間際へと向けてゲーニッツさんが再度風を巻き起こすが・・・

 

 

『おーっとルガール選手、風を防いだっ!ついにゲーニッツ選手の懐に入り込んだーっ!』

 

 

アレが以前に空手先生が言っていたジャストガードって奴か。

確かに相手が隙だらけになるけどタイミングが難しいって言ってたよな?

それを簡単にしてしまうとはさすがルガール社長だ。

 

 

『掴んだぞ!』

 

『ルガール選手!ゲーニッツ選手を掴んだ!これは皆さんご存知の・・・』

 

 

俺が実況している間にもルガールさんがゲーニッツさんを掴んだまま横へと動く。

そしてそのまま試合場端へとスライドするように走る。

これこそ相手を壁にたたきつけるルガール運送伝統の技!・・・あれ?壁?

 

 

「ふんっ!」

 

「がっ!?」

 

ギガンテックプレッシャー(運送技)決まった!さらに追撃のゴッドプレス!・・・って何でだよ!?』

 

 

試合場を作ったと言っても壁なんて無いぞ?

それなのにゲーニッツさんは場外にならずに試合場の端に叩きつけられている。

 

 

『ふん、場外など面白くもない。余興ならば存分に闘わせてこそだ。感謝するのだな』

 

 

どうやらおろちんの仕業らしい。

・・・まぁいっか。

確かに場外判定しても面白くないもんな。

 

 

『よくやった、おろちん。さぁそして一度離れるルガール選手。続いてゲーニッツ選手も立ち上がった!』

 

「ふっ、やりますね」

 

「あぁ、だが今度こそ勝つのは私だ」

 

『ここまではルガール選手有利ですがどうよ、おろちん』

 

『これほどの技巧者達ならば今ので勝敗を分ける一手には至らん』

 

『・・・もうちょっと判りやすく頼む』

 

『・・・まだ判らん、と言えば満足か?』

 

『オッケー、さぁそうこうしている間に再びゲーニッツ選手の風が襲い掛かる!』

 

 

先ほどと同じようにゲーニッツさんが風を巻き起こす。

しかし社長も慣れてきたのかジャストガードで飛び込む機会を図っているようだった。

むむむ、これは中々白熱してきたぜ。

 

 

『ルガール選手仕掛けた!ゲーニッツ選手の風を防ぎ飛び込んだーっ!』

 

「もらったぞ!」

 

「甘いですねぇ」

 

 

ガシッ

 

 

「何っ!?」

 

「さぁ、お別れです!」

 

『お別れ牧師の代名詞だーっ!掴まれ身動きのできないルガール選手に竜巻が襲い掛かる!』

 

 

ドサッ

 

 

「ぐぅっ、まさか狙っていたとはな!」

 

「貴方が隙を伺っていたように私も伺っていただけの話です!」

 

『しかしただでは終わらない!ルガール選手が下段中段と怒涛の攻めを見せる!』

 

『あやつは近くに寄られるのを嫌っているからな。何とかして離れたいはずだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出たー!ジェノサイドカッター!』

 

『うむ!私もテレビのCMで見た覚えがあるぞ!』

 

八代君とオロチさんの声とともに歓声が上がる。

その観客たちから外れた場所に私とフェルちゃんはいた。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。本当に出るの?」

 

「あぁ、強い奴と闘えると聞いては出ないわけにはいかないだろう?」

 

「そんな事言われても知らないよ」

 

 

いつのまに来ていたのか私のお兄ちゃん、結城 晶(ゆうき あきら)が何故か大会にエントリーしていた。

目の前で屈伸して準備運動しているお兄ちゃんの鉢巻を私はぐいっと引っ張る。

私の弱い力でもさすがに頭を引かれてこちらを見た。

 

 

「何するんだよ、明日菜」

 

「止めて置いた方がいいと思うよお兄ちゃん」

 

「ボクもそう思うデス、アキラ。悪い事は言わないから辞退したらどうデスか?」

 

「おいおい、フェルナンデスまで。元女子高とは言え、強い奴がたくさんいるんだろう?」

 

 

全く私の危機感を判ってもらえていない。

校長先生やルガール社長、他にも強い人は確かに一杯いると思う。

でも、その格闘大会を開いているのが八代君というだけで普通に終わらないのは確かだよ。

 

 

「そんなに心配しなくても大丈夫さ。今から負けてちゃ何も始まらないぜ」

 

「アキラはコテツの奇天烈さを知らないから言えるデス」

 

「虎徹?あの実況の子だろう?確か以前に家に来た事あったよな」

 

「あれ?お兄ちゃん、八代君と会った事あったっけ?」

 

「あぁ、道場で親父にボコボコにされていたぞ」

 

「お父さん・・・何やってるの」

 

 

そういえば遊びに来た時に動きがぎこちない時があったっけ?

何か悪戯を仕掛けようとしているのかと思って警戒した記憶がある。

今度お父さんにお話をしないといけない。

 

 

「暫く見ていたが驚く程、才能が無いな。親父の開胯から右端脚、登脚、斧刃腿、鉄山靠と綺麗に決まってたな」

 

「見てないで助けてよ!」

 

「普通はどこかで崩れるもんだが意外にタフだったからつい」

 

 

つい、でお父さんの得意コンボが決まるのを見ているお兄ちゃんはどうかと思う。

八代君も色んな人に闘う術を学んでいるのは知っていたけどお父さんに教わっているとは思わなかったな。

あれ?教わってたのかな?もしかしたら本当に悪戯しようとしてお父さんに見つかっただけかもしれない。

寧ろそっちの可能性の方が高い気がする。

 

 

「それであの少年がどうかしたのか?」

 

「コテツは格闘の才能は無いデスが悪戯の才能は天才、いや天災級デス」

 

「うん、だからこの大会も碌な事にならないと思うの」

 

「うーん、とは言え強者との闘いをみすみす逃すって言うのは・・・」

 

 

お兄ちゃんも私とフェルちゃんの話を聞いて考えてくれる気になったみたい。

八代君だから危ないことはしないとは思うけど・・・しないよね?

普段や中学時代の事があるから弁護できない。

 

 

『いやぁ、実に白熱した闘いでした。どうだった、おろちん?』

 

『うむ。我が眷属の闘い、テレビで見ていた社長の闘い、どちらも満足のゆくものだった』

 

「お?終わったみたいだな」

 

『さぁ、これでエキシビジョンマッチは一旦終了!ここから本選開始だ!』

 

『ふむ。具体的には何が違うのだ?』

 

『おっと、その説明をする前に選手の人たちは集まってくれよな!』

 

「・・・スマン、明日菜!行ってくる!」

 

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?考えてくれるんじゃなかったの?」

 

「強者との闘いが俺を呼んでいるんだ!」

 

「・・・バカにつける薬は無しデスネ」

 

「もぅ、お兄ちゃんのバカーーっ!」

 

 

八代君の呼びかけに数秒悩んで駆けて行くお兄ちゃんに叫んだ。

まったく、いつも強くなる事にしか興味が無いんだから・・・

 

 

『さて、昼間に脅しの放送をかけたにも関わらず参加したい命知らずな奴らがいるわけだが』

 

「参加者を募っておいてその言い方はどうなの?」

 

「あのコテツがそんな事気にするわけないデス」

 

 

最近フェルちゃんも八代君の事が分って来たみたい。

相変わらず高藤君に近づくときは警戒しているみたいだけど。

服部君はお菓子をあげているみたいだから仲もいいよね。

そんな軽い現実逃避をしている間にも話は進んでいく。

 

 

『生徒、保護者どちらも多すぎたんで適当に選んだ8人で決定したぜ。あ、校長は入っているんで構えないで!』

 

『強気なのか卑屈なのかどちらかにしたらどうだ童』

 

『うるせー!と、とにかく選手紹介を始めるぜ。では・・・選手入場!』

 

 

パァっと夕方とは言え陽も出ているのに光源が試合場にライトアップされる。

これは・・高藤君の仕業かな?って事は服部君も一枚噛んでるよね。

ティナ先輩にライザーさんは実況席の後ろで理事長の横にいるけどどっちだろう?

私は何も聞いてないんだけど仲間外れにされたみたいでなんか寂しい。

 

 

「アスナさん・・・よかった。今回は貴女は関わってないようですね」

 

「え?あ、ナコルル。うん、私は何も聞いて無いよ」

 

 

名前を呼ばれて振り返れば同じ中学校出身のナコルルと知らない女生徒の姿があった。

ここにいるって事は参加者じゃないのかな。

テスト期間に格闘大会を開くとは聞いていたけど今回に関しては聞いて無いから嘘じゃない。

 

 

「はぁ、八代さんにも自重というものを覚えて欲しいです」

 

「あの・・・ナコルル?」

 

「あぁすみません。アスナさん、こちらは同じクラスメイトで生徒会役員の支取 蒼那(しとり そうな)さんです。」

 

「初めまして。結城明日菜さんよね、リアスから聞いているわ」

 

「リアスから?」

 

「えぇ。私とリアスは幼馴染なの」

 

 

そうなんだ。そういえば幼馴染が同じ学園にいるって聞いた気がする。

赤いフレームの眼鏡がキラリと光って真面目そうな印象を受ける。

私も眼鏡をかければ真面目そうに見えるかな・・・って私は真面目だよ?

 

 

「あれ?生徒会役員って事はこの件も関わっているの?」

 

「会長命令でしたので仕方なくですが・・・学内で格闘大会を開くなんて前代未聞よ」

 

 

はぁ、と深いため息を吐く支取さん。

私とナコルルは顔を見合わせて首を傾げた。

私たちのいた中学校では日常茶飯事だったんだけど他の学校は違うのかな。

 

 

「さすがにここまで手伝ったんだから成功はして欲しいけど、一度会長にも説教をしてもらわないと駄目かしらね」

 

「その会長が出場しているんですけど」

 

「なっ!?」

 

 

ナコルルの指す方向には試合場で観客に手を振っている生徒会長のイングリッド先輩がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ出場選手、生徒と保護者が入り乱れているわけだが・・・』

 

『何人かどちらにも属さぬ奴がおるがよいのか?』

 

『いいんじゃね?楽しければ』

 

 

試合場に一番近い実況席でコテツさんが適当な実況をこなしていく。

私の隣ではお母様達が近くで開かれていた屋台の品物を手に賑やかにしています。

 

 

「ふふふ、お祭りみたいで楽しいわね」

 

「本当、あの子ってば・・・校長先生も一緒に騒いでいるし仕方ないわねぇ」

 

「晶さんまで。あの子には今回の事は伝えてないはずなのに・・・」

 

 

お母様、コテツさんのお母様、アスナさんのお母様が3者3様の感想を漏らす。

お母様は除くとして一見、憂いの表情をしているけれどもその手に持ったかき氷で台無しですわ。

 

 

「いやはや面白そうな事をしているなサーゼクスの学校は」

 

「虎徹に社長まで・・・どうして身内には私の言うことを聞いてくれない人ばかりなんだ」

 

「まぁまぁ八代さん。辛いことは飲んで忘れましょう~、あははは」

 

 

グレモリー卿、コテツさんのお父様、ハンゾーさんのお父様の3人はビール片手に騒いでいます。

本当にお祭りか何かと勘違いされているような・・・

 

 

「リアス、あの実況の子は眷属にするのは考え直した方がいいと思うわよ」

 

「お母様!?べつに私はコテツを眷属にするつもりはありません」

 

 

リアスもグレモリー夫人と何やら小声で話している様子。

ティナさんは実況席の後ろでサーゼクス様といらっしゃいますし、タクマさんとハンゾーさんの姿が見えませんわね。

アスナさんとデス様ともはぐれてしまいましたし。

これだけの人数を裁ける方は私を含めておりませんし・・・

うん、私も好きにするとしましょうか。

 

 

『じゃあルールの説明をするぜ。ルールはシンプルにトーナメント方式で進めて行く。こんな感じでな』

 

 

コテツさんの言葉で空中にディスプレイが試合場を囲むように四方に展開される。

これは・・・タクマさんの仕業ですわね。

ディスプレイにはトーナメント表が表示されており選手の名前がそれぞれ書かれています。

1回戦の結城晶、というのはアスナさんの関係者でしょうか?

 

 

『当然、最後までトーナメントを勝ちあがった奴が優勝なわけだが・・・普通にやったんじゃ面白く無い』

 

『うむ。よくわかっているではないか』

 

 

あぁ、今度は一体どんなことを仕出かすつもりですの。

オロチ様まで一緒に楽しんでいらっしゃるようですし・・・

 

 

『選手にはそれぞれカードを引いてもらう。カードには試合のルールが書かれていてそれを満たした状態で相手に勝てば勝利だ』

 

 

『ちなみにルールの一部はこのようになっているぞ』

 

 

ディスプレイにカードへ書かれる予定のルールの例が幾つか表示される。

ゲージ増加、英語禁止と言った意味の分からないものから飛び道具禁止、攻撃力2倍などどうやって実現するのか分からないものまで。

よくもまぁ考え付くものですわ。

 

 

『有利な条件もあれば不利な条件もあるな』

 

『どれを引くかは運次第って事で。んじゃまずは1回戦の選手から引いてもらおうか。半蔵』

 

『了解でござる!では1回戦の選手!結城晶殿、ミランダ謝華殿。前に出てくるでござる!』

 

 

ハンゾーさんが大きめの箱を持って試合場に現れる。

そして呼ばれた選手の方々がハンゾーさんに近寄る。

 

 

『ちなみに結城晶は1年A組の結城明日菜の兄貴。ミランダ謝華は3年A組のグリフォン先輩、じゃなかったレイミ謝華の母親だぜ』

 

『さっそく保護者同士の争いというわけだな』

 

 

やはりアスナさんのお兄様だったのですわね。

それにレイミ先輩は確か球技大会でコテツさんと同じチームだったはず。

 

 

「よし、引いたぜ」

 

「こちらも引いたわよ」

 

『ではこちらに・・・まずは結城晶殿の引いたカードはこちら!"超必殺技を当てると星がひとつ減る"でござる!』

 

「超必殺技?普通の必殺技じゃ駄目なのか?」

 

『カウンターヒットならオッケーだ』

 

 

それは・・・良い条件なのか悪い条件なのか判断付きませんわね。

まず超必殺技が何なのかも分かりませんし星が減ったらどうなるのでしょうか?

 

 

「えっと・・・ちなみに星が減るって言うのは何だ?」

 

『七つ減らした状態で技を当てれば問答無用で勝利でござる』

 

「え?問答無用で?」

 

『うむ。拙者にはよく分からぬが相手は死ぬ、だそうでござる』

 

 

物騒にも程がありますわ。

コテツさんの考えたルールですから実際に死ぬ事は無いとは思いますが・・・

いえ、大丈夫ですわよね?タクマさんの科学力で何とかしそうな気もするのが怖いところですわ。

 

 

『さて、続いてミランダ謝華殿の引いたカードは・・・"スピード2倍、飛び道具の威力半減"でござる!』

 

「飛び道具というのは何処までが含まれるのかしら?」

 

『身体から発せられる時点で飛び道具だ。ちくしょう羨ましいぞ』

 

『・・・だ、そうでござる』

 

「なるほどね、よく分かったわ」

 

 

コテツさん、何処まで飛び道具に執着しているんですの。

ですがどちらも純粋な人間のようですし思ったよりはまともな格闘大会になりそうで安心しましたわ。

最近、私の周囲がおかしいのか私がおかしいのか分からなくなって来ましたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1回戦 結城晶 VS ミランダ謝華

結城晶:超必殺技のヒット、または必殺技のカウンターヒットで星一つ減少。

    七つ減らした状態で必殺技を当てれば勝利

ミランダ謝華:スピード2倍、飛び道具のATK-50

 

第2回戦 比那名居天子 VS カイン・R・ハインライン

比那名居天子:攻撃を受けるとダメージの1/2回復

カイン・R・ハインライン:飛び道具3倍、ATK-60

 

第3回戦イングリッド  VS シェン・ウー

イングリッド:コードホルダー1P、英語を話すと爆発する

シェン・ウー:ゲージ自動上昇(小)、5F毎に5%の確率で超必殺技が暴発

 

第4回戦 美猴 VS ジェネラル

美猴:ATK+50、3秒毎に場外から攻撃を受ける

ジェネラル:CCジェネラル、時間毎にライフ減少

 

 

『どうよ、おろちん?』

 

『生徒がほとんどいないではないか』

 

『いや、適当にクジを引いたらこうなっちゃったんだよ。まぁ生徒達は来週末にもやるからいいかなって』

 

『他にも何人か学園関係者ではないようだが?』

 

 

うん、それは俺も参加者のプロフィールを見て思った。

結城の兄貴やロックの叔父はまだマシだろう。

シェン・ウーと美猴、この二人は家族がいるわけでもないのに参加してきたのだ。

よくいるバトルジャンキーって奴だな。

 

 

『大会が盛り上がればそれでいいんじゃね?』

 

『それもそうだな』

 

『それでは15分の休憩の後、1回戦を始めるからなー!』

 

 

マイクの電源を切って一息吐く。

いやー、実況って喋ってるだけなのに疲れるもんだな。

机に置いてある水で喉の渇きを潤して背後を振り返る。

 

 

「よーサッちゃん、楽しんでるかい?」

 

「あぁ、随分と物騒、いや楽しそうな大会だね」

 

「そうだろ?この後も条件のカードを引いて行くからな。順当には進まないんじゃないかと思うぜ」

 

「トラちゃんったらテストの最後に大会を開くって言ってたのに。お姉さんに黙って隠し事は駄目よ」

 

「いや、思いついたのは最近だし。本番の方は手伝ってもらうからさ先輩・・・それで」

 

 

サッちゃんと先輩と話しながらも俺は気になった箇所へと視線をやる。

サッちゃんの隣にいるメイド服の人はまぁいいとしよう。グレモリーの家も金持ちだからメイドぐらいいるだろうし。

問題はさらに隣のライザーさんだ。

緊張しているのか汗がダラダラと頬を伝っているのが傍から見て分かるくらいだ。

 

 

「どうしたんだライザーさん?」

 

「うぇっ!?あ、いや何でもないぜ?そう、何でも無い!」

 

「お、おう。そんな力説しなくても」

 

 

どうしたんだろうか?先輩と一緒で緊張しているってのとは違うよな?

サッちゃんとメイドさんを挟んでいるわけだし。

となると・・・サッちゃんが原因か。

 

 

バシッ

 

 

「こらサッちゃん、ライザーさんを苛めるなよ」

 

「はは、別にそんな事はしてないよ」

 

「ちょ、お、おまっ!な、なんて事を!」

 

「ト、トラちゃん!?さすがにそれはお姉さんもどうかと思うなー」

 

「ん?言っている意味が分かんねー」

 

 

突然取り乱すライザーさんと先輩の二人に首を傾げる。

ただ、サッちゃんに漫才風に突っ込みを入れただけなんだが・・・

 

 

「おい、童。私はもう戻ってもよいのか?」

 

「おう、サンキュおろちん。次の試合は他の人に頼むから戻ってもいいぜ」

 

「では・・・む?」

 

「あ、貴方はまさか・・・」

 

 

戻ろうとした、おろちんだったがサッちゃんと見つめあったかと思うと黙り込んでしまった。

ま、まさか二人は生き別れの兄弟だったとか!?

いやいや、こんな半裸白髪な中二病と赤髪イケメン理事長が兄弟なんてあるわけねーか。

 

 

「今は祭りの時間だ。お互い身分など忘れて楽しめばよいと思うがどうだ?」

 

「・・・はい、そのとおりですね。お止めして申し訳ありません」

 

「ふん・・・童よ。朱璃の元へ案内せよ。行くぞ」

 

「え?ちょっと待てよ!」

 

 

先へと歩いていくおろちんを慌てて追いかける。

俺、実況があるから遠くへ出歩けないんだが。

そんな事も知らず歩くおろちん、案内いらねーじゃん。

つーか何時の間に出店とか出来たんだろうか?

周囲から漂う美味そうな匂いに惹かれつつもおろちんに並ぶ。

 

 

「いい人、次はアレ!アレが食べたいニャス!」

 

「あら、そこの子猫には奢って私には奢ってくれないのかしら?随分と冷たい男だこと」

 

「だーっ!テメェは人の給料だと思ってばかすか食いやがって!ちったぁ遠慮しやがれ!それとウサギ!何でテメェがいやがる!」

 

「ディズィーから離れろそこの怪しいニンゲンめ!」

 

「おいおい、かわいい子に話しかけるのはイイ男の礼儀、ってもんだぜ」

 

「ジョニー!次はあっち行こうよ!」

 

「お兄ちゃん、たこ焼き食べたいッチ!」

 

「待てよユリ。バイクだと中々移動しづらいな、こうなったら覇王翔吼拳を使わざるを得ない!」

 

 

ちょっと歩いただけでカオスな会話が繰り広げられている。

何人か知り合いがいたような気がしたがスルーしておこう。

と、おろちんが立ち止まって何かをじっと見ていた。

 

 

「焼きそば食いたいのか?」

 

「ぬぅ、しかし朱璃から買い食いすると夕飯抜きと言われておるのだ」

 

「子供かよ。いいかおろちん、いい言葉を教えてやろう」

 

「む?」

 

「ルールとは破るためにある!」

 

「なんと!?」

 

「それに黙っていればバレやしないって」

 

「うむ、そうよな。童と私が話さねば朱璃とて分かるはずが無かろう!」

 

 

そう言って意気揚々と焼きそばを買いに行くおろちん。

何故だろうか、物知らずな子供と話している気分だ。

買い食いなんて俺が小学校に上がる前にはしていたぜ。

 

 

「殿!1回戦の準備が整ったでござる!」

 

「やれやれ、まったくこき使ってくれるものだ」

 

「助かるぜ二人とも」

 

 

おろちんを待っていると半蔵と琢磨の二人がやってきた。

いや、今回は随分と助かったぜ。

半蔵には分身をして裏方を、琢磨には投影ディスプレイやスポットライトの準備などを頼んでいた。

もちろん他の生徒会役員達にも手伝ってもらってはいるが比率的には二人の方が仕事量は多いだろう。

 

 

「そう思うならもう少し計画を組んでから実行したらどうなんだ」

 

「あっはっは。まぁ本番ではそうするかいーじゃねーか」

 

「うむ。殿の助けとなるのが拙者の務め、いくらでも手伝うでござるよ」

 

 

いやー、いい親友を持ったもんだ。

どうしても力仕事が多いから結城や先輩達には手伝わせるわけには行かないしなぁ。

グレモリーや姫島は俺の親父やお袋を引き止めてもらわねば困る。

まぁどちらにしろ家に帰ったら説教が待ってるんだけどな!

説教が怖くて悪戯が出来るかってんだ。

 

 

「そうだ、最後の仕上げはちゃんと出来ているんだろうな?」

 

「そちらのほうはいつでも問題なしでござる」

 

「今回の大会の締めだからな抜かりは無いさ」

 

「よし、じゃあ後は助っ人達に挨拶をしておくか」

 

 

憂さ晴らしや楽しそうだからという理由で手伝ってくれる人達もいる。

夕方とは言えまだ暑いし冷たいジュースでも差し入れしよう。

 

 

「さぁ、楽しみになってきたな!」

 

 





ちなみにルガールVSゲーニッツはMUGENで対戦させた行動です。
CPU同士だと変な場所でゲージ溜めをしますね。

ルールについては今回はマイルド仕立てになっております。


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第43話

どうもお久しぶりです。

この約半年の間に海外出張2回、国内出張5回と全く休まる日がありませんでした。
年末休みやゴールデンウィークとは何だったのか・・・

ようやく仕事の方が落ち着いてきましたので続きを書いてみました。




『第1回戦を始める前に今回の解説者はこちらだ』

 

『メンドクセェ』

 

『ちょっとソルさん、自己紹介ぐらいしようぜ』

 

『急に引っ張り出されたと思ったら何でこんな事しねぇとならねぇんだ』

 

『はい、というわけで流れの賞金稼ぎソル・バッドガイさんです。皆、失せ物や浮気調査はガンガン頼むようにな!』

 

『俺は探偵じゃねぇよ』

 

 

むぅ、ノリが悪いぜソルさん。

賞金稼ぎってアレだろ?

人を探して尾行してとっちめる、ほら合ってるじゃねーか。

それにせっかくの格闘大会なんだ、もっと盛り上がらなくちゃ駄目だろ。

 

 

『はい、じゃあ第1回戦を始めるぜ。選手入場!ついでに条件の再確認だ』

 

 

設置していたスモークが巻き上がり選手が入場してきた。

実況席を通過する時に何故か二人とも俺を見て笑みを浮かべながら礼を言ってきたが何だ?

あぁ、なるほど。どんだけ戦いに飢えているんだこの人達。

晶さんは世界を渡り歩くくらいだから分かるがグリフォン先輩の母親までその類だったとは・・・

 

 

第1回戦 結城晶 VS ミランダ謝華

結城晶:超必殺技のヒット、または必殺技のカウンターヒットで星一つ減少。

    七つ減らした状態で必殺技を当てれば勝利

ミランダ謝華:スピード2倍、飛び道具のATK-50

 

 

『そういえばメリットだかデメリットになるカードがあったがどうやっているんだ?』

 

『実際のところ知らない。特に変な事をした覚えは無いし・・・あ』

 

『何だ、そのあ、ってのは』

 

『いや、琢磨に頼まれて料理をたくさん作ったくらいだな』

 

『料理だ?まさか料理でカードの内容を実現するってんじゃねぇだろうな』

 

『ははは、まさか。激励の意味をこめて選手にご馳走するって言ってたぜ』

 

 

料理を食べて攻撃の威力が上がったり下がったりしてたまるかよ。

まったく、ソルさんも変な事を言うなぁ。

しかしこれでさっきの選手二人の笑みと礼の理由が判明したな。

笑みを浮かべるってことは美味かったって事だよな。

伊達に毎日、お袋の飯は食べてないぜ。

 

 

『さぁ結城晶選手とミランダ謝華(じゃはな)選手、ソルさんどちらが勝つと思う?』

 

『両方知らねぇから分かるか』

 

『はい、何とも解説者らしからぬコメントありがとうございました』

 

 

誰だ、ソルさんを解説に選んだバカ野郎は。

 

 

『結城晶選手は自身の家で受け継がれる結城流八極拳という日本だか中国だかよくわからない発祥の武術の使い手です』

 

 

晶さんの実力をその目で見たことは無いが噂は色々と聞いている。

様々な格闘大会に文字通り殴り込みをかけているだの、秘密組織を潰しただのキリが無い。

 

 

『一方でミランダ謝華選手は謝華グループの総帥として知られていますがその実力は謎に包まれています』

 

『よくそんな情報知っているな』

 

『さっきの休憩時間に某検索サイトで調べました』

 

『・・・聞かなきゃよかったぜ』

 

 

さて、実況席はこれくらいでいいだろう。

俺は実況席の映る眼鏡と音を拾うためのイヤホンを外して目の前の光景を見る。

見事に職員室に潜入成功だ。琢磨もこういった物があるなら早く渡してほしかったぜ。

今頃実況席では俺に変装した半蔵の分身が実況を務めてくれているから問題無い。

何故か半蔵は変装すると「ござる」の口調が無くなるんだよな。

 

 

「ふっふっふ。格闘大会なんて教師の目を欺くためのフェイク!全てはこの時のため!」

 

 

今や校長も格闘大会に釘付けだからな。

この千載一遇のチャンス、ばっちりと決めてやるぜ。

 

 

「まずはカーテンだな」

 

 

以前に結城と買ったカーテンを付け替えていく。

所々に散りばめられたラメが目に痛い。

うん、これでヨハン先生も職員室で目立つこと間違いなしだな。

橘先生もこれからはカーテンにどんどん血を吐いていけば皆に迷惑はかからないだろう。

さて、残ったのはデフォルメされた麻宮アテナがプリントされたカーテンだが・・・

 

 

「これは校長室だな。うん?」

 

 

校長室に足を向けようとしたところでヨハン先生の机の上にあるプリントが目に入る。

1学期期末試験用紙、と書かれている。

・・・いや、まぁ、その何だ。俺はテスト期間中に格闘大会を開けば免除になっているから関係は無いんだが。

ちらっと見るくらいならいいよな?

 

 

「・・・うん、さっぱり分からん」

 

 

よく考えればテストを見ても答えが分からないからまるで意味がなかったな。

いや、待てよ?これを他の生徒達に秘密裏に売り捌くと言うのはどうだろうか。

・・・駄目だ、俺の知り合いで買ってくれそうなのが草薙ぐらいしか思い浮かばない。

他の奴らは成績悪くても人が良いから挙動不審になるか先生に告げ口、もしくは説教されてしまいそうだ。

 

 

「あら、やっぱりここにいたのね」

 

 

ビクッ

 

 

テスト用紙を机の上に戻したところで声をかけられ肩が震えた。

恐る恐ると目線を扉の方に向ければモリガン先生が何時の間にやら職員室の中にいた。

 

 

「何だ、モリガン先生か脅かさないでくれよ」

 

「ふふふ、随分と素敵な職員室になったわね。特にヨハン先生のは素敵よ」

 

 

さすが教師の中で俺の悪戯擁護派だけあって俺のお茶目な悪戯も容認してくれているようだ。

そんなに褒めても何も出ないぜ。

 

 

「それで、そのカーテンはどうするの?」

 

「校長室にかけるつもり」

 

「それは・・・面白そうだけど大丈夫?」

 

「何が?」

 

「頭が」

 

「ヒデェなおい」

 

「だって見つかった場合どうなるかなんて、考えるまでもないでしょう?」

 

「おいおい、そんなの見つからなければ大丈夫だって。ほら、こうしてアリバイもあるんだしさ」

 

「確かにあの変装はよくできているわね」

 

 

モリガン先生も面白い事には大抵目を瞑ってくれるから問題なしだ。

おっと、もうひとつあるのを忘れていたぜ。

 

 

「モリガン先生、これ取り付けるの手伝ってくれよ」

 

「・・・そんなもの何処で見つけたの」

 

「家の倉庫にあったぜ」

 

 

親父かお袋のものだとは思うんだがな・・・

何だっけ、ミラーボールって言うのか?

隠しながら学校に持ち込むのに苦労したぜ。

 

 

「なるほど。前回がピンクの照明だったから次はコレってわけね」

 

「そーゆーこと。何か派手に光るんだろ?見たことはないけど」

 

「・・・これがジェネレーションギャップって奴かしらね。面白そうだから手伝ってあげるわ」

 

「サンキュ、結構重いんだよなこれ」

 

 

まだ時間はたっぷりあるからな。後はどんな仕掛けをしておこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやー、中々白熱した試合でしたねソルさん』

 

『そうだな。条件が違っていたら結果も違っていただろうよ』

 

 

ふむ、虎徹は上手くやっている頃か。

僕は試合会場の下で演出を担当しつつ時間を確認する。

虎徹に変装した半蔵とソルの会話を聞きながらも先ほどの試合を思い返した。

ミランダ・謝華の全方位のバリアはかなり強力と聞いていたが虎徹の料理により威力は半減。

しかし突進攻撃などスピードのある攻撃は多彩で結城晶はかなりの苦戦を強いられていた。

だが要所で的確にカウンターなどでダメージを与えて行き、七つの星を減らす。

その状態で結城晶お得意の崩撃雲身双虎掌が決まり勝利となった。

 

 

『では次の試合が整うまで5分間の休憩とするぜ。ソルさん、解説ありがとな』

 

『やれやれだぜ』

 

 

僕の準備は既に終了しているので後は生徒会メンバと次の解説者だけだな。

次の試合は例の転校生と誰かの保護者か・・・ん?

カイン・R・ハインライン?ふむ、ロックの叔父なのか。

僕のデータベースで検索した結果だが、ロックの周囲も随分と濃い人間関係だな。

 

 

「は、博士。耐衝撃フィールドの形成完了しましたー」

 

「ご苦労ティセ。いや、もう10%ほど出力を上げてくれ」

 

「え?でもこれ以上出力を上げるとエネルギーの消費が・・・」

 

「追加のジェネレータがあっただろう。一緒に増設するんだ」

 

「はいー、わ、分かりましたっ」

 

 

ロックの叔父ということはハワード家の者ということだ。

それに転校生の攻撃を考えるともう少し頑丈にしないと危険だろう。

最初のルガール社長とゲーニッツ牧師の闘いでもギリギリ保ったと言えるからな。

さすがに観客に危険が及ぶようではこちらの信頼関係に影響しかねない。

オロチさんがどういった手段を用いたのかは分からないが助かったことには変わりない。

 

 

「あ、高藤君。ここにいたんだ」

 

「結城さん?」

 

 

ティセを送り出し次の試合の準備に漏れが無いか確認していたところで名前を呼ばれて振り向く。

そこにはデス様を連れた結城さんの姿があった。

てっきり兄の結城晶の下へ向かっていると思ったが・・・

 

 

「ふむ。ついに協力してくれる気になったということか」

 

「え?何の事?」

 

「デス様を実験に使ってもいいと言うことだろう?」

 

「違うよ!」

 

「ついに堂々と実験って言ったデス!」

 

 

震えるデス様を抱きかかえてこちらから身を背ける結城さん。

おかしいな。僕としてはこれ以上無いくらいのラブコールだと言うのに。

一体いつになったらデス様は尊い犠牲になってくれるのだろうか。

 

 

「それでは一体何の用かな?」

 

「あ、うん。高藤君にもらったコレなんだけど」

 

「これは・・・」

 

 

結城さんから受け取ったそれは以前に渡した虎徹の居場所を特定する受信機だった。

電源を入れてみるが特に異常は無いようだが?

 

 

「八代君が実況席にいるのに校舎の中を示していて・・・壊れちゃったのかな?」

 

「・・・あぁ、そういうことか」

 

 

確かに半蔵の変装は完璧だ。よく虎徹をトレースしている。

しかしこの受信機は虎徹についている発信機から受信されているため欺くことはできないか。

さて、どうするか。別に結城さんなら正直に話したところで問題は無いだろう。

どうせこの後で彼女にも手伝ってもらうことがあるしな。

結城さんにも勝ちが上がった結城兄の応援をしたいと思うだろうが、どうせ校長が勝つに決まっている出来レースのようなものだ。

ここで嘘をついてバレて機嫌を損ねたとしても虎徹あたりに任せておけば僕に被害が来ることは無いが・・・

 

 

「あの、もしかして私何か変な事したかな?それで壊しちゃった?」

 

「タクマ、さっさと直すデス」

 

 

不安そうな結城さんとそれを見てやけに強気なデス様。

まぁ別に女性を困らせて喜ぶ趣味も無いし正直に話すとしようか。

後、デス様はイラッと来たので個人的に復讐を考えよう。

 

 

「いや、壊れてはいないさ。あそこにいるのは半蔵で本物は校舎の中にいるからな」

 

「え?え?どういうこと?服部君ならさっき見かけたんだけど」

 

「・・・あぁ、そうか。結城さんは見たことがなかったな。アレは半蔵の分身が変装した姿だ」

 

 

半蔵の本体は別の仕事があるからな。

今頃はあっちこっちに飛び回っているだろう。

 

 

「よ、よかった。壊しちゃったと思ったよ。あれ?何で八代君は校舎にいるの?」

 

 

僕は虎徹の悪戯の事は伏せて今後の予定を話した。

実際どういった悪戯をしているのかは僕も知らないからな。

 

 

「また変な事をするつもりデスカ」

 

「変な事?季節に見合ったことをするだけだ」

 

「うん。面白そうだし私も協力するよ。でもそういうのって資格とかいらないの?」

 

「ふっ。シミュレーションならば既に幾度も試している。何の問題もないな」

 

「う、うーん。いいのかな」

 

 

やれやれ、資格だの持っていなくても使えるのだから何の問題も無いだろうに。

これまでだって何度資格が必要な事をしてきたと思っているのやら。

 

 

「とにかく結城さんはバティン先輩とグレモリーさん、姫島さんに協力を取り付けておいてくれ」

 

「うん、分かった。それじゃあ早速行って来るね!」

 

「分かっているとは思うが、くれぐれも外部の者には漏らさないように」

 

「任せて」

 

 

さて、手伝いも増えた事だし僕も、試合に集中するとしようか。

試合が盛り上がれば盛り上がるほど虎徹も動きやすくなる事だしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、これがハナビ?打ち上げる前はこうなっているのね」

 

 

アスナに呼ばれて朱乃と屋上に来てみれば変な筒が一杯置いてある。

テレビで夜空に咲くハナビは見たことあるけど、どうやって打ちあがるのかは知らないわね。

 

 

「うむ。今、拙者の分身達が総力を上げて運搬中でござるよ」

 

「ハンゾー、貴方また分身できる数が増えてない?」

 

「これも修行の成果でござるな!」

 

 

既に10人以上はいるのだけれど・・・そんな簡単に分身の数って増えるものなのかしら?

そう思いながら屋上の下を覗いてみる。

 

 

『いやぁ、先ほどの転校生は中々面白かったな。ライザーさん』

 

『何で攻撃を受けて回復してるんだよ・・・しかも攻撃を受ける度に気持ちよさそうにして回復していたぞ』

 

『人体の神秘って奴だな!』

 

『いや、それで片付けていいのか?』

 

『何か最後は満足そうに倒れたからいいんじゃねーの』

 

 

まさかアレがハンゾーの変身とはね。

魔力が無いから一般人のコテツとハンゾーは見分けが付き辛いとは言え、本当に分からないわね。

そういえば当の本人は何処にいるのかしら?

 

 

「やっぱり花火と言えば線香花火ですわね」

 

「あーそうだよね。庭でやったりするよね」

 

「拙者の里では手作りでござったな」

 

「ねぇ、ハンゾー。タクマは大会の運営でいないのは分かるけどコテツは何処にいるの?」

 

「殿でござるか?殿は現在、仕掛け中でござるよ」

 

 

仕掛けって・・・また碌でもない事をしているんじゃないでしょうね。

大体手伝ったほしいって言ってる本人はいないのはおかしいでしょ。

 

 

「では拙者と分身で打ち上げ花火を運ぶので、お三方にはこの配置図通りに打ち上げ花火を設置して欲しいでござる」

 

「うわ、多いね」

 

「5000発って基準がよく分からないのだけど多いものなの?」

 

「大きな花火大会では1~3万発ですから、このような学校単位の規模でやる数ではありませんわね」

 

 

よくこれだけの数を集めてきたものね。

呆れを通り越して感心するわよ。

 

 

「うむ!殿と拙者だけではなく家で兄者や姉者達に手伝ってもらったでござるよ」

 

 

打ち上げ花火を運んできた別のハンゾーが胸を張って言い出した。

そういえばハンゾーの家は故郷から何人かホームステイしているんだったわね。

 

 

「じゃあ早速この通りに置いていこうよ」

 

「そうですわね。花火を見る機会はあれど見せる機会は初めてで、わくわくしますわね」

 

「私は見るのも初めてよ。でもこういうイベントは好きよ。コテツも中々いい提案をするじゃない」

 

「何だかんだ言って八代君も皆で楽しめる事は結構してきているからね」

 

 

確かに今回の格闘大会にしても学園の生徒達は参加したり観客として楽しんでいる。

中学時代もそうだったのでしょうね。でないと球技大会にも行ったけど、あそこまで人気がでるわけないものね。

 

 

「はぁ、やっと抜け出せたわ。はろー、皆進んでるかしら?」

 

「ティナ先輩。今からするところですよ」

 

「丁度よかったわね。私も手伝うわね」

 

 

疲れた様子でティナがやってきた。

まぁお兄様の相手をしていたみたいだし気持ちは分からないでもないわね。

家でならいいのだけど人前で愛称を呼ばれたりすると私だって恥ずかしいもの。

特にティナの家はバティン家が取り壊されそうになったところをお兄様に助けて頂いて無碍にもできないだろうし。

 

 

「あらら、凄い数ね。これって屋上に等間隔に置いても入りきらないわよ」

 

「打ち上げたら直ぐに置き換えるように傍に置くみたいね」

 

「でもそれだと危ないですわね、火が引火したら一面火の海ですわよ」

 

「そうだよね。ちょっと離して置こうか」

 

 

これだけの数が引火したら私や朱乃、ティナはともかくアスナ達は危険ね。

建物は外からの衝撃には魔法で強化しているみたいだし大丈夫でしょう。

それから眼下で行われる格闘大会の歓声を聞きながらハナビの玉を設置していく。

というか男手が全然いないのだけど、どういうことよ。

タクマは格闘大会の運営、ハンゾーはハナビの運搬、ライザーは・・・火気厳禁だから寧ろ邪魔ね。

そうなると残るはコテツなのだけど、ハンゾーいわく仕掛けって言っているけど何をしているのか分かったものじゃないわ。

 

 

ガコンッ

 

 

「え?」

 

「おーう、黒い。誰だ?」

 

 

突然、足元で何か音がしたと思ったらコテツの声が聞こえた。

足元を見れば一枚のパネルが外れており虎徹が顔を覗かせている。

それは良くないけれど百歩譲ってコテツは今なんて言った?黒?・・・・つまりは。

 

 

「えいっ!」

 

 

ぐりっ!

 

 

「ぐえっ!て、てめっ、グレモリー!思いっきり顔を踏みやがったな!」

 

「私の下着を見ておいてその程度で済んだのだから喜びなさい!」

 

「いや、確かにラッキーだけどよ。じっくり見る暇すらなかったぜ」

 

 

思わず踏みつけた顔を抑えながらコテツが屋上に上がってきた。

な、なんてところから出てくるのよ!

 

 

「いやーん、トラちゃんのエッチ。私たちが無防備になる瞬間を待っていたのね」

 

「いやいや、完全に不可抗力っすよ先輩・・・おい、こら何だ結城に姫島。その視線は」

 

「・・・八代君のえっち」

 

「あらあら、コテツさんも男の子ですわね」

 

「うがーっ!わざとじゃねーって言ってんだろーが!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おー、痛ぇ。グレモリーの奴、思いっきり顔面を踏みつけやがって。

鏡を見たらグレモリーの靴底があるんじゃないだろうか。

 

 

「で、何処まで進んでるんだ?」

 

「殿!こちらもこれで最後でござる!」

 

「まだ半分も終わってないよ」

 

「私も合流したばかりだしね」

 

 

えーっと決勝が終わるのが19:00頃のはずだから・・・うん。

まだ花火を打ち上げるには時間があるから大丈夫だな。

女性陣にはそのまま花火の玉を置いてもらって俺と半蔵とその分身達で筒の固定に取り掛かる。

 

 

「コテツさん、手馴れていますが何度か経験がおありなのですか?」

 

「いや、初めてだぜ?」

 

「・・・えっと。私、凄く不安になってきたのですが」

 

 

姫島の奴、失礼だな。

俺だっていつも仕掛けを作るのに火薬を使っているんだから心配しなくてもいいのによ。

 

 

「格闘大会の方をハンゾーの分身に任せるなんて責任感が無いわね」

 

「あん?・・・あぁ、格闘大会ね」

 

 

まだ先ほどの件で怒っているのか機嫌悪そうに言ってくるグレモリー。

しかし責任感?あぁ、そうか。格闘大会はダミーだって知ってるのは琢磨ぐらいだったな。

怪訝そうな表情をしてしまったが、咄嗟に誤魔化して更にからかえるネタを思いついたで思わずにやけてしまった。

それを見たグレモリーは先ほどの件を思い出したのか警戒した。

普段は大人ぶった言動でこっちをからかう癖に突発的な事には弱いようだ。

 

 

「な、何よ。今度は何を企んでいるの」

 

「いや、べっつにー。ただ、グレモリーは海外からの留学生だから花火を見たことが無いんだな、と思ってな」

 

「え、映像では見たことあるもの!」

 

「あら、それはいけませんわリアス」

 

「そうよリアスちゃん。やっぱり花火は直に見ないとダメよ」

 

「朱乃にティナまで・・・」

 

 

ふふんっ、所詮グレモリーは知識のみ。

体験したことのある俺達の意見に自分の味方がいないことを悟ったらしい。

 

 

「いつでも開催できる格闘大会と夏しかできない花火大会、どっちを優先するかなど一目瞭然でござるよ」

 

「やっぱり夏の風物詩だもんね」

 

 

半蔵と結城の言葉で気づいた。

確かに夏といえば花火が思い浮かぶが、別に夏にしなくてはならないルールはないよな。

よし、今度は冬にでも花火をしてみよう。

そんな事を考えていると姫島が何かを思い出すように言った。

 

 

「私が小さい頃は神社でも毎年のように花火大会がありましたわね」

 

「・・・あぁ、"あった"な」

 

「・・・うむ、"あった"でござるな」

 

「・・・うん、"あった"ね」

 

「・・・えぇ、"あった"わね」

 

「"あった"?・・・ちょっと待ってくださいな。なんで過去形なんですの?いえ、何をしましたの?」

 

 

暫く日本にいなかった姫島は知る由も無いだろう。

だが当時現場にいた俺達は言葉を濁したのだが鋭い嗅覚で俺達に懐疑的な視線を送った。

かと思うと直ぐに問い質すような視線へと変化した。

まるで俺達に原因があるようじゃないか。まぁ間違ってないが。

 

 

「あれは2年ぐらい前か。花火大会と同時開催で格闘大会が開かれてな」

 

「こら、トラちゃん。物事は正確に言わないとダメよ。トラちゃんのせいで姫島神社で格闘大会が開かれたんでしょ」

 

「まぁそうとも言う」

 

「まだ慣れないけど格闘大会を開くのは別に珍しくないのよね?それと何の関係があるのよ」

 

「えっとね、その格闘大会っていうのが火をテーマにした格闘大会だったの」

 

 

あれは中々白熱した大会だったな。

飛び交う超常的な炎や重火器の弾丸。

隣接していた花火や露店に引火して焦土と化した姫島神社の境内。

夜中だって言うのに真昼のように明るかったぜ。

 

 

「途中まではちょっと気を付ければ問題なかったんだけど八代君が、もっと過激にしようって言って・・・」

 

「殿と拙者と琢磨で闘技場の上に火薬を撒いたでござる」

 

「何て事をしてくれますの!」

 

「いや、普通にやってたらつまらなかったからさ」

 

「はっ!お母様達は止めようとしませんでしたの?」

 

「朱璃さんは笑顔のまま気絶していたわね。グスタフさんは朱璃の介護でおろおろしていたわ」

 

 

そういえば、おろちんは当時はまだ知り合っていなかったが姫島神社にいたんだろうか?

出会った時は俺の事を知っているような口振りだったけど。

おろちんの事を考えていて遅れたが気づけば姫島が手にデッカイ雷みたいなのを構えていた。

 

 

「あ、朱乃落ち着いて!そのよく分からない雷を閉まって!」

 

「どいてくださいなアスナさん!コテツさんには姫島家を代表してキツイお仕置きをしなくてはいけませんの!」

 

「だ、大丈夫でござる姫島嬢。殿のお力のおかげで焼け野原もすぐに戻ったでござるよ」

 

「や、焼け野原・・・」

 

「あちゃー、ハンゾーちゃん。それはちょっと失言だったわね」

 

「焼け野原にしたのもコテツの神器の力だったらよかったのに・・・」

 

「おいおい、今は花火を仕掛けているんだぞ?そんなの構えてれば危ないって常識でわかるだろ」

 

「離してくださいな!一番、常識という言葉を使ってはいけないコテツさんに当てなければ気が済みませんわ!」

 

「落ち着いて朱乃!」

 

「深呼吸でござる!深呼吸すれば何とかなるでござる姫島嬢!」

 

「コテツもこれ以上朱乃を挑発しないで!」

 

「知らんがな」

 

 

賑やかなのは大歓迎なんだが、一応隠れて設置しているって自覚してくれよ。

こんなんで全ての作業が終わるんだろうか。

 

 

 



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第44話

 

『さぁなんやかんやあり、いよいよ決勝戦!解説はこの学園の理事であるサッちゃんです!』

 

『どうも、理事のサーゼクスです』

 

 

時刻は19:00、夏だからようやく日も落ちてきたな。

やれやれ、何とか花火の設置も間に合ったぜ。

しかし、決勝は予想通り校長が勝ち上がってきているな。

対戦相手はカイン・R・ハインラインか・・・へぇ、ロックの叔父さんなのか。

 

 

『とりあえずここまでの結果を見てみましょう!』

 

 

第1回戦 結城晶 VS ミランダ謝華

結城晶:超必殺技のヒット、または必殺技のカウンターヒットで星一つ減少。

    七つ減らした状態で必殺技を当てれば勝利

ミランダ謝華:スピード2倍、飛び道具のATK-50

勝者 結城晶

勝因 ミランダ謝華の弱体化と星7つによる一撃

 

第2回戦 比那名居天子 VS カイン・R・ハインライン

比那名居天子:攻撃を受けるとダメージの1/2回復

カイン・R・ハインライン:飛び道具3倍、ATK-60

勝者 カイン・R・ハインライン 

勝因 圧倒的な弾幕による面制圧、ただし今大会最長時間がかかる

 

第3回戦イングリッド  VS シェン・ウー

イングリッド:コードホルダー1P、英語を話すと爆発する

シェン・ウー:ゲージ自動上昇(小)、5F毎に5%の確率で超必殺技が暴発

勝者 シェン・ウー

勝因 調子に乗ったイングリッドが挑発をして英語を話して爆発

 

第4回戦 美猴 VS ジェネラル

美猴:ATK+50、3秒毎に場外から攻撃を受ける

ジェネラル:CCジェネラル、時間毎にライフ減少

勝者 ジェネラル

勝因 秒殺

 

準決勝1回戦 結城晶 VS カイン・R・ハインライン

勝者 カイン・R・ハインライン

勝因 堅実な防御をする結城晶に対して多彩な飛び道具で寄せ付けなかった。

 

準決勝2回戦 シェン・ウー VS ジェネラル

勝者 ジェネラル

勝因 秒殺

 

 

『まぁ一言、試合シーンが全然無かった生徒会長はざまぁみろと言いたい』

 

「なんじゃとー!おぬし、後で覚えておれー!」

 

 

ははは、ナウなヤングとか意味の分からない事を言って爆発したくせに。

あれは屋上から見ていて笑い転げてしまったぜ。

さぁ負け犬の遠吠えは聞き流すとしてさっさと進めるか。

 

 

『さて早速選手入場と行こう!まずは無数の飛び道具で相手を苦しめてきたカイン・R・ハインライン選手!』

 

 

ちくしょう、俺にも飛び道具一つ分けてくれよ。

そんな事を思いながらロックの叔父さんが入ってきた。

と、観客席の一角で一際大きな声が聞こえてきた。

 

 

「いいぞカイン!そのまま優勝だっ!ほら、ロックも叔父さんに応援してあげなさい!あ、どうもこれは私の自慢の息子のロックです」

 

「恥ずかしいから止めろよ親父!」

 

「あの親子は・・・」

 

 

『カイン選手、頭を抱えております。さぁ続いてはご存知!我らがチートなジェネラル校長のご登場です!』

 

 

カァンッ

 

 

「ふむ、生徒達と闘えないのは残念だが・・・保護者の方たちの実力を見るいい機会ですな」

 

「校長、よろしくお願いします」

 

「えぇ、よき闘いにしましょう」

 

 

『片方が瞬間移動してきたとは思えないほど紳士的な会話だね』

 

『あのカァンって音が聞こえてきただけで思わず身構えてしまう俺は悪くない』

 

『それだけ校長先生が出てくるほどの悪戯をしてきたというわけか』

 

『そんなことは置いて早速試合開始と行こう!』

 

 

サッちゃんの鋭い指摘は無視して宣言する。

同時に選手二人も距離を取り、各々が構えを取った。

 

 

『では決勝戦、開始!』

 

 

俺の言葉で真っ先に動いたのはカイン選手だった。

これまでの試合のように無数の飛び道具で校長の動きを封じ込めるつもりだろう。

校長は相手の動きを見るつもりなのか身を固めている。

 

 

『怒涛の弾幕だカイン選手!一方で防御するしかないジェネラル選手!』

 

『絶対何かたくらんでいるね』

 

『さすが理事、校長の事をよく知っているな』

 

『少なくとも彼は黙ってやられる男ではないのは、これまでの試合結果と経験から分かるよ』

 

 

そりゃ今までの試合は秒殺だったからな。

何でスラインディングにあんな威力があるのかわからない。

 

 

『止まらないカイン選手!一方でジェネラル選手の方に動きがあるか!?』

 

『おや、どうやら動くようだよ』

 

 

サッちゃんの言葉に校長に注目する。

身を固めていたのを解いたかと思うとその場からカァンッと甲高い音と共に消えた。

現れたのはカイン選手の背後。

 

 

『出たーっ!瞬間移動でいともたやすくカイン選手の背後を取った!カイン選手万事休すか!?』

 

「ヒムリッシュアーテム!」

 

「ほぅ、見事ですな」

 

 

『なんとカイン選手!上空からの飛び道具でジェネラル選手の反撃を止めたっ!』

 

『一撃でも受けると負けると分かっているからこその動きだね』

 

『さぁ再び上段下段へと揺さぶりをかけて飛び道具の乱射だっ!』

 

『しかしコテツ君。どうやってこんなルールを再現したのか興味があるんだが。いくら気の使い手とはいえこれだけの数だと疲労は避けられないよ?』

 

『俺も知らない。大会スタッフの誰かか、おろちんが何かやったんじゃねぇの?』

 

 

大体、最初の方しか実況していなかった俺が分かるわけがない。

そうこうしている内に再び校長がカイン選手の背後に瞬間移動した。

 

 

カァンッ

 

 

「少しはやるようだが・・・まだまだ」

 

「ぐっ!」

 

 

『ジェネラル選手がカイン選手を踏みつける!これは早く起き上がらないと危険だ!』

 

『そうだね、あれは心が折れそうになるからね・・・』

 

『お、おいサッちゃん、どうした?何か目が虚ろだぜ?』

 

『ははは、いや気にしないでくれたまえ』

 

 

校長の踏みつけ攻撃を見た途端にサッちゃんの様子がおかしくなった。

以前に闘った事があるとか言っていたし、よっぽどトラウマになったんだろう。

 

 

『カイン選手!起き上がりざまの分身攻撃に気を付けるんだ!』

 

『おいぃっ!サッちゃん、気持ちは分かるが片方の選手の応援するなよ』

 

『そう!次はワープで背後に回る!そこを先手を打って攻撃・・・あぁ、危ない!』

 

『えー、サッちゃんはどうやら他人事じゃなくなったみたいだが実況を続けるぜ』

 

 

実況席の机をバンバンと叩きながら声援を飛ばすサッちゃん。

背後で控えていたメイドさんがどうしようかと俺に視線を飛ばしてきたんで放っておくように言った。

 

 

『カイン選手も防御していますがダメージは受けています・・・おっと、何やらカイン選手の体が光ったぞ?』

 

『あれは一部の方が持つ能力でタクティカル・オフェンシブ・パワー。略してT.O.Pと言います』

 

『おぅ、メイドさん。詳しいな』

 

『皆さま初めまして。グレイフィアと申します。サーゼクス様が解説役を放棄しましたので代理で解説を致します』

 

 

なんだか初めてまともな解説役が来た気がする。

サッちゃんは既に観客席の最前列に陣取っていた。

 

 

『で、そのT.O.Pってのはどうなるんだ?』

 

『はい。攻撃力1.2倍、体力の回復、ゲージ増加量の増加そして何よりもTOPアタックが使用可能になります』

 

『???えーと、じゃあカイン選手がジェネラル選手に勝てる見込みもあるって事か?』

 

『そうですね、所謂ワンチャンあれば勝てるという奴です』

 

『わ、わんちゃん?』

 

 

物凄く冷静に解説しているが専門用語なのか分からない言葉が幾つか出てきた。

しかしメイドさんはそんな俺を置いてけぼりにして解説を続けている。

わんちゃんって何で犬の話が出てくるんだ?

 

 

『カイン選手が勝つには小足でもいいのでジェネラル選手に当てる事が大事です』

 

『お、おう』

 

『しかい相手は小足の速度で通常技を出してきますので生半可な覚悟では勝てません』

 

 

誰だまともな解説役が来たって言ったのは。

今までで一番わけのわからない解説だぜ。

 

 

『投げの間合いも広く、油断していると吸われますよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まぁ、その何だ美猴。お前もあれくらい粘ればマシだっただろうに」

 

「うるせい。俺っちが油断したのは敗因だってのは分かってるっての」

 

 

背後の観客席の声を聴きながらヴァーリと歩いていく。

格闘大会って言うから勇んで出たのはいいが1回戦負けなんてみっともなくて泣けてくるぜ。

大体何だよあのおっさん。絶対人間じゃねぇよ。

 

 

「ヴァーリだったらどう戦うよ?」

 

「見たところあの転移も短距離限定のようだから距離を取って戦うか。いや転移のラグが無いようだから連続で使えば意味がないか」

 

白龍皇の力を使うにしても10秒持つか怪しいものだしな。

運がよくないと勝てないってどんな奴だよ。

 

 

「まぁそれも全てはまともに戦えたら、の話だよな」

 

「さすがにアレはどうかと思ったぞ」

 

 

げんなりしながらも試合の事を思い出す。

試合前に食べた肉まんの味は美味かったが全て吹き飛んだ。

試合開始と同時に背後に転移され、分身攻撃をくらって吹き飛ばされたので起き上がろうとした時だった。

 

 

『では美猴選手の条件、場外から攻撃を受けてもらいましょう!バレッタの姐さんよろしく!』

 

「報酬分は働いてやるよ。どっかーん!」

 

「え、ちょ、おい!?」

 

 

場外から乱れ飛ぶバズーカやミサイルにマシンガン。

それを掻い潜って襲い掛かる対戦相手。

あれは試合じゃない、思い返してもひどいもんだった。

 

 

「で、何処に向かうんだ?決勝まで待てばいいじゃないか」

 

「俺もそうしたかったんだが相手が指定した時間だからな。この奥だ」

 

 

そういってヴァーリが言ったのは学園の奥にある森林だった。

未だに誰と会うかも知らないまま着いて来たんだが・・・さて誰が待っているのやら。

まぁ口振りからして知り合いじゃないのは確かだな。

っていうか早く神の子を見張る者(グリゴリ)を抜ければいいのによ。

 

 

「・・・これから彼を仲間に入れようと思っている」

 

「ほぅ、強いんだろうな?」

 

「間違いなく強い。少なくとも今の俺よりもな」

 

 

ヴァーリの言葉に俺っちは驚くと同時に興味を持った。

こいつにここまで言わせるとは一体どんな奴なんだろうか。

森の中だろうか、ヴァーリの表情はどこか暗く落ち込んでいるようにも見える。

 

 

「おいおい、何をそんなに落ち込んでいるんだ。仲間になったら勝負を挑めばいいだけだろう?」

 

「そうなんだが・・・見た目のギャップでショックが大きくてな」

 

 

見た目のギャップって事は弱そうな外見をしているって事か。

しかしヴァーリがそれぐらいの事で落ち込むか?

強いと分かれば相応に接して積極的に勝負を挑みそうなものだが・・・

 

 

「着いたぞ、美猴。気を抜くなよ」

 

 

あれから10分ほど歩いただろうか。

終始、落ち込みながら緊張しているという貴重なヴァーリを見ていたのであっという間だった。

着いたのは周囲を森に囲まれた開けた場所だった。

日も落ちてきたので暗いが月の明かりで何とか見える程度だ。

 

 

「で、相手って言うのは何処だ?」

 

 

周囲を見渡してもそれらしき人影はない。

自分で時間を指定しておきながらどういうことだ。

 

 

「何を言っている、目の前にいるぞ」

 

「目の前?」

 

 

ヴァーリの言葉で視線を前に向けるが人影はない。

こんな時にヴァーリが冗談を言うわけもないので意識を集中させる。

すると視界に何かが動いたのが分かった。

更に目を凝らして確認すれば・・・

 

 

「黒い・・・線?」

 

「こんな時間に悪かったね」

 

「いや、それは構わない。それより良い返事がもらえると期待してもいいんだな?」

 

「ふむ、そうだな・・・」

 

「いや待て待て!」

 

 

平然と話すヴァーリと黒い線で描かれた、まるで子供の落書きのような何か。

悪魔、じゃないし妖怪・・・でもない当然人間でもない、天使・・・いやいや、一番ありえない。

 

 

「連れが騒がしくてすまないナナーマン」

 

「いや構わないが彼は?」

 

「俺の仲間の美猴だ。俺と同じく今の実力では貴方には叶わないだろう」

 

「ほぅ、その向上心。いい心構えだ、以前に戦った時よりも強くなっているね」

 

 

何で俺が悪いみたいな感じで進んでるんだ。

ナナーマンって名前は分かったが結局何なんだよ、この存在は。

っていうかヴァーリの奴、こんな変な奴に負けたって言うのか?

 

 

「悪いが仲間になるって言うならその前に俺っちと一勝負してもらおうか!」

 

「む?よく見れば先ほど試合に出ていた君か」

 

「見てたのかよちくしょう、とにかく戦ってもらうぜ!」

 

 

こんな歩く棒人間を仲間に入れるなんてヴァーリの奴、頭がおかしくなっちまったのか。

やっぱり神の子を見張る者(グリゴリ)禍の団(カオス・ブリゲード)の二重苦でストレス溜まってたんだな。

後で信長の旦那に雷を使ったマッサージをお願いしてもらおう。

 

 

ドーンッ

 

 

「ん?花火?」

 

「じゃあ次の花火が打ちあがったら開始って事でいいな?」

 

「いいだろう。かかってきなさい」

 

 

 

 

 

 

☆ナナーマンがヴァーリの仲間になった!

 

 

「おいっ!俺の戦闘カットかよ!?」

 

「先の見えた戦いほどつまらないものはない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、惜しいところだった」

 

「いえ、差は歴然としていましたので、粘ったほう、というのがよい言い方だったかと」

 

 

試合は惜しくも(・・・・)ジェネラル校長の勝利となった。

私は感想を漏らしながら席に戻るとグレイフィアが辛口なコメントを漏らしていた。

背後の方で彼女が解説をしていたのは知っていたが、あそこまで詳細に解説するとは私も知らなかった。

やはり血が騒いだんだろうか。しかし1フレが勝敗分けるとか言葉の意味が分からなかったな。

 

 

「おや、コテツ君は何処に?」

 

「さきほどマイクを持って校舎へと入っていかれました」

 

 

実況席に実況がいないとなるとどうやって締めるのだろう。

もう暗くなってきたことだし皆も帰りたくなっているはずだ。

そんな事を思っていると校舎に取り付けられているスピーカーからコテツ君の声が聞こえてきた。

 

 

『さぁ、白熱した試合も終わりました。しかーし!最後の仕上げが残っています!』

 

 

「最後の仕上げ?はて、何だろうか」

 

「おや校長。お疲れ様です」

 

「あぁ。サーゼクス理事はこの後の事は?」

 

「いえ、私も聞いていません。何をするのか楽しみですね」

 

「・・・まぁ、若気の至りで済むことを祈っているよ」

 

『みなさん、上空をご覧ください!』

 

 

ジェネラル校長の最後のつぶやきが気になったがコテツ君の声に私を含めた皆が一斉に上空を見る。

暫く見ていると視界の端から何かが昇ってきているのが分かる。

 

 

ひゅるるるるる・・・どーんっ!

 

 

「ほぅ、花火か」

 

 

一発が打ちあがると暫し待って次々と花火が打ちあがっていく。

色とりどりの綺麗な花火に見惚れていると同時に学園内にて魔力が高まっている場所を感知する。

グレイフィアが動こうとするのを手で押さえる。

大方、格闘大会の熱気にやられた観客の誰かが闘っているのだろう。

実際、花火そっちのけで炎や氷、雷などが飛び交っている。

 

 

「素晴らしいですね。最後の締めにはぴったりじゃないですか」

 

「う、うむ。そうだね、夏の風物詩というだけはある」

 

 

顔を上げていたのを戻してジェネラル校長の顔を見る。

見ればジェネラル校長だけではなく周囲の先生方もどこか腑に落ちない表情をしていた。

 

 

「あの八代が普通に花火をあげるだけで済むのか?」

 

「確かに盛り上がっているが・・・いや、待て。この花火は誰が上げているんだ?」

 

「それは普通は花火師が・・・そうだった、普通じゃない奴が企画しているんだった!」

 

 

何故か別の意味で大盛り上がりだった。

それにしても随分と多く打ち上げている。

かれこれ20分は続いているが一向に花火が止む気配はない。

そういえば校舎の隠し地下室に火薬がいっぱい置いてあったな。

それも花火を作るためのものだったのか。何だ問題児というより皆の事を考えているいい生徒じゃないか。

リアスもいい友人を持ったみたいだ。

 

 

「どうもサーゼクスさん。まさかこの学園の理事だったとは驚きました」

 

「八代さん。いえ、隠すつもりはなかったんですよ」

 

 

騒ぎだした先生方は無理やり気にしない事にして再度、花火を見上げているとコテツ君のお父さんがやってきた。

保護者達で飲酒していたためか、やや顔が赤い。

 

 

「はい、これをどうぞ。あ、メイドさんも」

 

「え?これは・・・ヘルメット?」

 

 

渡されたヘルメットに一瞬どうすればいいのか迷う。

八代さんを見れば頭にヘルメットをして腰を落としていた。

 

 

「あの、いったいどうされたのですか?」

 

「虎徹が花火を打ち上げるってことは爆発するって事ですからね。何が起こってもいいようにしないと」

 

「八代様、それはさすがに親としてどうなのでしょうか?」

 

「親だから、誰よりも虎徹の事を分かっているからこうしているんですよ」

 

 

そういうものなのだろうか。

幾らなんでも爆発なんて、気負いすぎな気がするが・・・

 

 

『え、ちょ、おまっ!こっちくんな!?』

 

『きゃっ、トラちゃん。火がついちゃってるわよ!?』

 

『こっちよティナ。コテツが入ってきた場所に落としなさい!』

 

『あーっ!待つでござる!その下は火薬庫・・・』

 

 

そんな矢先に不穏な声がスピーカー越しに聞こえてきた。

えっと思う間もなく大きく鈍い爆発音が響く。

続けて何かが崩れる音が響き渡る。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「ね?言ったでしょう?」

 

 

八代さんの声もまともに聞けず、目の前の光景に開いた口が塞がらない。

先ほどまであった校舎が見事に倒壊している。

校舎にあった地震がこようと崩れない結界を張ってあったにも関わらずだ。

リアスが通うと知って、文字通り耐神構造にしたというのにどうしてだ?

 

 

「・・・あ」

 

「どうされました?」

 

「あの秘密通路か・・・」

 

 

以前にコテツ君に案内された校舎の壁と壁の間にできた秘密通路。

魔法陣や結界の要などが設置されていると以前に報告で読んでいたのを今更思い出してしまった。

その状態で更に建物の地下に部屋を作るなどの大改造を施しては崩れるのも当然だった。

 

 

「そ、それよりリーアちゃんは無事なのか!?」

 

 

幾ら悪魔でもあれほどの爆発と倒壊をして心配になる。

他の方たちもようやく事態を理解したようで私は先生方と崩れた校舎へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げほげほっ!ったく、何て事しやがる!」

 

「何よ!あんた達が花火を上げさせてくれないのが悪いんでしょ!?」

 

 

ガラガラと崩れる瓦礫を押しのけて身体を起こすと騒動の原因につかみ掛かる。

転校生にして先ほどの格闘大会にも出ていた、ひななないてんこ、とか言う奴だ。

こいつが大きな石に乗って現れたかと思うと私にもやらせろと言ってきた。

ちょうど、花火を打ち上げるところだったので待っていろと言ったのが運の尽きだった。

突然癇癪を起したコイツが飛び道具で打ち上げるために火をつけた花火の筒を倒してしまったのだ。

そうなってからは慌ててグレモリーが俺が使っていた隠し通路に蹴り落して地下室の火薬室に引火して大爆発。

 

「けほっ、み、皆大丈夫?」

 

「うぅ、ひどい目に会ったでござる」

 

「ぜぇぜぇ、朱乃、ティナ。生きてる?防御壁は間に合ったみたいね」

 

「つ、疲れましたわ。瞬間的に大量の魔力が持っていかれましたもの・・・」

 

「こんな大事になるとは思わなかったわ。お姉さんくたくたよ」

 

「ボクも封印のせいで魔力が少ないから疲れたデス」

 

 

どうやら飛び道具持ち3人+1匹が何かして俺達を守ってくれたらしい。

まぁ皆無事だからこっちはいいとして、だ。

 

 

「飛び入りで来たんだからちょっと待つぐらいできねーのかよ」

 

「ふん、この私が来てあげたんだから優先するのは私以外に何があるのよ」

 

「お前どんだけ偉そうなんだ」

 

 

前はあんまり話さなかったがこれ程の傍若無人っぷりとは。

まぁ過ぎた事は仕方ない。

確かポケットに入れてあったはず・・・

 

 

「お、これだこれだ」

 

「何よそれ」

 

「これも花火だ。俺は地味だからあんまり好きじゃないんだけどな」

 

 

転校生にソレを持たせて先に火をつける。

火のついたそれは小さな火の玉となって静かに弾け出した。

うーん、やっぱり線香花火って地味だな。

幾つも束ねて大きな火の玉を作ってみるか。

 

 

「綺麗、だけどパッとしないわね」

 

「我儘な奴だな」

 

「って何を呑気に遊んでるのよ!」

 

「なんだグレモリー、混ざりたいなら言えよ」

 

「そうじゃなくって。コレどうするの八代君」

 

 

結城に言われて転校生で現実逃避をするのをやめる。

転校生は気づけば両手に線香花火を同時につけて遊んでいた。

こちらは放っておくとして、だ。

 

 

「どうするって・・・どうにかできるかコレ?」

 

 

さすがに学校を半壊させたことはあっても全壊させたことはない。

琢磨なら何とか・・・できないか。

 

 

「さすがに拙者の忍法でも時間は戻せないでござるよ」

 

「これは何とかできるレベルを超えていますわ」

 

「大丈夫よ朱乃ちゃん。それでもデス様なら・・・デス様ならきっと」

 

「ボクは壊す専門デス」

 

 

やっぱ無理だよな。

さすがに知り合いに大工はいねーな。

後は困ったときの俺の本ぐらいだが・・・肝心なところで役に立たないからな。

 

 

「まぁ、全員無事だったんだし良かったって事で・・・痛いっ!」

 

「何が良かっただ八代っ!」

 

「げぇっ、ヨハン先生!?」

 

 

誰かに後頭部を叩かれて後ろを振り返ればヨハン先生が仁王立ちしていた。

いつの間にいたんだ。まるで気が付かなかったぞ。

 

 

「今日と言う今日はタダでは済まさんぞ」

 

 

ぐいっと首元を持ち上げられて宙吊りになる。

く、苦しい。やばい、ヨハン先生の目が完全に本気だ。

何か普段は出ない黒いオーラみたいなのが身体中から吹き出てるし。

 

 

「さすがに今回ばかりは八代だけではなく、この場にいる他の者も全員だ」

 

「ま、待ってくれ。俺今回は悪くなくね!?」

 

「往生際が悪いぞ八代」

 

 

引火させたのは転校生だし、火薬庫に花火を突っ込んだのはグレモリー。

ほら、俺は悪くないじゃないか。

俺が首元を絞められながら言うと分かってくれたのか力を若干緩めてくれた。

 

 

「ほぅ、そうなると一つ疑問が残るな」

 

「疑問?」

 

「うちの学校にはいつから火薬庫なんてものが出来たのか、だ」

 

「・・・さ、さぁ何でだろうなぁ」

 

「ヨハン先生、火薬庫を作ろうと言い出したのは虎徹が原因です」

 

「琢磨!?」

 

 

格闘大会のサポートを行っていた琢磨からのまさかの裏切り。

琢磨は頭を抱えながらも瓦礫の上を歩いて近寄りながら話を続けた。

 

 

「虎徹、さすがにこの騒動は僕には許容できないな」

 

「お、おいどうしたって言うんだよ」

 

「地下室に作っていた新作の機体、AngleDrawSphere・・・通称ADSの開発が全てパーだ。そして何よりも」

 

 

いつもの琢磨とは違い珍しく怒りの表情を浮かべていた。

よほど大切なものを作っていたんだろうか。

 

 

「秘密裏に作っていたデス様専用解剖兼解析室まで壊すとはどういうことだ!」

 

「・・・あれ?もしかしてボク知らない内にコテツに助けられていたデス?」

 

「くっ、折角ホルマリン漬けにする準備も整っていたというのに!」

 

「コテツありがとうデス!」

 

 

よく分からないが俺はデス様を助けたらしい。

 

 

「ほ、ほら人助け?もしたんだからヨハン先生、ここは温情に!な?」

 

「いや、駄目だね」

 

「サッちゃん!?」

 

 

今度はサッちゃんまで現れて助けを拒否してきた。

何だよ、秘密通路に入れた仲じゃないか。

更には続けて武闘派の先生たちまでやってきた。

・・・あれ?この学園って武闘派じゃない先生って誰がいるんだろうか。

 

「八代虎徹。君に聞きたい事がある」

 

「右京先生、その前に口元の血を拭ってくださいよ」

 

「すまない・・・けほっ、君たちがいる場所はどこか分かるかね」

 

「何処って・・・」

 

 

それよりもヨハン先生を何とかしてほしいんだけど。

宙ぶらりな状態で周囲を確認する。

見事なまでの瓦礫、座り込んでいる半蔵達、線香花火を束ねて遊んでいる転校生。

ド派手なカーテン、散乱した机、俺達を取り囲んでいる教師陣。

特におかしなところは無いな。

 

 

「ここは職員室があったと思うのだが見覚えのないカーテンを見つけてね」

 

「・・・あ」

 

 

し、しまった。折角悪戯で仕掛けたのにお披露目の機会がこんな状態なんて誰が思うだろうか。

もっと自然な感じで朝、学校に来たときに見つけてもらおうとしたというのに!

 

 

「こんな事なら格闘大会が終わった後、職員室に誘導するようにすればよかった・・・」

 

「反省の色、無しと・・・」

 

「小童がそこに直れい!叩き斬ってくれるわ!」

 

「さすがに悪戯じゃ済むことと済まない事がありますからね」

 

「ふむ、どうしますかジェネラル校長」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

先ほどから、じっと俺を見据えて喋らなかった校長が口を開く。

 

 

「君達は明日から30分早く学校に来るように」

 

「・・・え?それだけ?」

 

 

校長にしては随分と温情な罰だ。

前の学校で校舎を半壊した時なんて半年雑用係にされたぐらいなのに。

・・・が、当然そう上手くいく話じゃなかった。

 

 

「その30分間、私達教師陣と闘ってもらおうか」

 

「・・・はい?」

 

「君は以前から飛び道具になりたい(・・・・)と言っているそうじゃないか。その気分を味合わせてあげよう」

 

「い、いや、俺は飛び道具を出せるようになりたいって言ってるだけで」

 

「それはいい提案ですな」

 

「最近、体が鈍ってきているからいい運動になりそうだわ」

 

 

ちょっ、何でそんなにやる気なんだ先生達!

もっと博愛の精神を持って生きていこうぜ!

 

 

「あぁ、ヨハン先生。もういいですよ、やってください」

 

「え?」

 

「分かりました。仕置きレベルだ、強めに行くぞ。黒龍の力をとくと味わえ!ふんっ!」

 

「ぎゃーーーーーっ!」

 

 




次回か次々回から制限解除となります。
よりカオスな虎徹の学園生活をお楽しみください。


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第45話(制限解除)

この話から出てくるキャラ達の制限が解除となります。
今後、どうなってしまうのか(ノープラン)



「あーもう帰りてー」

 

「うぅ、八代君のせいだよ」

 

「もう拙者動けぬでござるよ」

 

「命がけで逃げるってこういう事を言うのね・・・」

 

「先生方も生き生きとしていましたわね・・・」

 

「もっと暴れたいデス」

 

「あー楽しかった。こんな事が続くなら最高ね」

 

 

朝、早速教師陣の暴力を受けた俺達は教室で一匹と一人を除いて満身創痍だった。

琢磨なんて先ほどからピクリとも動かない。

俺達を裏切って逃れようとしたみたいだが無駄だったみたいだな、ざまーみろ。

って言うか何で転校生の奴はあんなに元気なんだ。

心なしか肌がつやつやしていたような・・・

 

 

「あのコテツさん。一つ気になったのですが」

 

「なんだよ姫島」

 

「この拷問、ではなく躾、でもなく補習?はいつまで続くんですの?」

 

「・・・聞いてないな」

 

 

姫島の言葉に考えるが、そういえば期限は聞いてなかった。

ま、まさか無期限なんて事は無いしな。

学校が建つまでの辛抱だろう。

姫島も同じ考えに至ったのか自分に言い聞かせるようにして首を横に振っていた。

 

 

「それにしても大学の構内は初めて来たでござるな」

 

「学園だからこそできた対処よね。こっちは爆破されてないもの」

 

「でも大学で高校の授業を受けるとは思いもしなかったよ」

 

「こっちの方が広いデスネ」

 

 

そう、駒王学園高等部の校舎は壊れてしまったが大学部は無事だ。

そのため、臨時でキャンパスの一部を借りて授業やテストを行うことになっていた。

高校とは違い席も決まっていないため普段は離れている半蔵や姫島も近くの席に座っている。

そしてなぜか隣のクラスにいるコイツも・・・

 

 

「ねぇ、アンタ。八代とか言ったっけ?」

 

「なんだ転校生」

 

「ソレよ、その転校生って言うの止めてくれないかしら。私は比那名居天子って名前があるんだから」

 

「おーけー。呼びにくい名前だからこっちで変えていいか?」

 

「えぇ、いいわよ。どうせなら華麗で雄大な私に相応しい呼び名にすることね」

 

 

ふーむ、とは言っても何だろうな。

ドMだとか洗濯板だとかそんな感じの名前しか思い浮かばない。

後は・・・帽子に桃が付いているくらいか。

桃・・・偉そうな態度。ピ○チ姫なんてどうだろう。

・・・何かどこかのゲーム会社に怒られそうだな。

 

 

「よし、考える前に腹減ったからコレもらうな」

 

「あ、ちょっと!何するのよ!」

 

 

ひょいっと桃を取って齧る。

何だコレ!?めちゃくちゃ美味いぞ!

今まで食べたのが本当に桃だったのかってくらい美味い。

 

 

「あ、八代君。拾い食いはダメだよ。桃は傷みやすいんだから」

 

「拾い食いって何よ!毎朝、もぎ取って来てるんだから新鮮に決まってるでしょ!」

 

 

もぐもぐ、んー、こいつって代名詞というか決めセリフ的な奴は無いのかね。

確かテンジンとか言ってたな。あんまり思いつかないな。

 

 

「もう転校生だからテンコでいいんじゃねーか?」

 

「・・・そっちの意味なら許してあげるわ」

 

 

どっちの意味なら許さないつもりだったんだ。

まぁ腹も膨れたし後はこの大学の見取り図を見ながら次の悪戯のネタを・・・

 

 

スパンッ!

 

 

「いてっ!何しやがる!」

 

「全く、アンタのせいで教室までの距離が遠くなっちゃったじゃないの」

 

「あはは、おはよう虎徹」

 

「ガーネットにウィンド。何だ、テンコを回収しに来てくれたのか」

 

 

俺の頭を容赦なく叩いたのはガーネット。

そしてその後ろで手を振っているのはウィンドだった。

 

 

「大学の教室は広いからクラス合同でやることになったのよ」

 

「そういえば楓やロックもいるでござるな」

 

 

言われてみれば他のクラスの奴らが座っている。

これだけの生徒を集めての授業となれば一人や二人居眠りしたりしてもバレないだろう。

 

 

「あんまり人様に迷惑かけるんじゃないわよ」

 

「お前は俺の保護者か!」

 

 

言いたい事だけ言って近くの席に腰を下ろすガーネット。

ぐぬぬ、覚えてやがれ。

 

 

ぐぅ

 

 

それよりも腹が減った。桃だけじゃ足りないぜ。

まだ時間はあるし早弁でもするか。

 

 

「ん?これは?」

 

「殿、どうしたでござるか?」

 

 

俺が早弁しようとカバンから弁当箱を取り出そうとすると一枚の手紙が入っていた。

隣にいた半蔵が俺の声に反応して覗き込んできた。

 

 

「うーむ、こんなの一体いつのまに入っていたんだ?」

 

「むむ、殿が家を出てから一緒にいたのに気づけぬとは不覚!」

 

「親父かお袋、それかライザーさんだとは思うんだがな」

 

 

そう言いながら手紙の中身を見てみる。

ふーむ、3人とは違うようだった。

商店街の路地裏で占いをしていた変な日本語のおっさんからだ。

最近会って無かったな。

 

 

「それでどのような内容だったのでござるか?」

 

「何でも放課後にある場所へ来て欲しいそうだ。ん?注意書きがあるな」

 

「何見てるの?」

 

「殿の旧知の御仁からでござる」

 

「旧知の御仁?僕も知っている人か?」

 

「うーむ。そういえば殿と拙者しか知らぬでござるな」

 

「・・・おいグレモリー」

 

 

俺は注意書きを読んでいたが、とある文面を見てグレモリーを呼んだ。

俺の前の席で姫島と話していたグレモリーはこちらへと振り返る。

 

 

「何?」

 

「いや、俺の知り合いからの手紙なんだがお前も来てほしいって書いてあるぞ」

 

「え?」

 

 

グレモリーへと呼んでいた手紙を渡す。

すると何故か険しい顔になる。グレモリーも知り合いだったんだろうか。

確かに変な日本語を使うから出身は外国だったんだろうとは思うが。同郷だったのか?

 

 

「コテツ、これどうしたの?」

 

「知らねー。カバン見たら入ってたんだよ」

 

「そう。私も連れて行きなさい」

 

 

おっさんのご指名だから初めからそのつもりなんだが。

何でそんなに偉そうなんだお前は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段とは違う授業を経て放課後。

私は虎徹と一緒に手紙の差出人の待つ場所へと来ていた・・・のだけど。

 

 

「・・・コテツ、ここって」

 

「見て分からないか?山奥だ」

 

「そんなの見れば分かるわよ。そうじゃなくって約束の場所はココであってるの?」

 

「大体おっさんが呼び出すって言ったら昔からココだったからな」

 

 

歩いて2時間ほど、山の中でも開けた場所。

こんなところに昔から来ていたってコテツは少しも疑問に思わなかったのかしら。

 

 

『リアス・グレモリー。ユーの滅びの魔力にも興味がアリマース、ボーイと一緒に来てくだサーイ』

 

 

ふざけた文面だけど私の事を知っているということはコッチ側の関係者って事よね。

コテツの昔の知り合いって事はコテツの神器についても知っているのかしらね・・・

 

 

「おっさーん、来たけど何処だー?」

 

「Hey!久しぶりデース、ボーイ」

 

「だからボーイは止めろって・・・あれ、グリ子さんもいたのか」

 

「えぇ、こんにちは。いえ、もうこんばんはの時間帯かしらね」

 

「!?」

 

 

壮年の男、口調からこの男が手紙を出したのだと分かる。

そしてもう一人、私に似た顔の女性。

どちらも何故今まで気づかなかったのか分からない程の膨大な魔力を感じる。

 

 

「どうしたグレモリー?あぁ、お前にすっげぇ似てるだろ。こっちはグリ子さんで、おっさんと同じく俺の知り合いだぜ」

 

「ふふふ。初めましてグレモリーさん?」

 

「・・・何者なの貴女達は」

 

 

コテツの前に出て彼女達へと問い質す。

いざとなったらコテツを守ってあげないと。

 

 

「オー!今代、ではなく次代のグレモリーは物事をスピーディーに進めすぎデース」

 

「まぁ、いいんじゃないかしら?皆、出てきたら?」

 

 

ガサッ

 

ドスッ

 

 

物陰から大勢の魔力反応!?

その内の一人が背後からコテツへと襲い掛かった。

 

 

「コテツ!?」

 

「コテツー!元気にしてまちたかー!」

 

「ぐはっ!?こ、この声はフェニ坊?何でお前小さいままなんだよ」

 

「失礼でちね。ボクちんはジェントルマンでちよ」

 

 

・・・単に抱き着いただけみたい。

コテツも子供のやることだからか頭を撫でていて微笑ましいわね。

・・・ってそうじゃなくって!

 

 

「くっ、コテツから離れなさい!」

 

「なんでちか、コテツの女でちか?」

 

「ちげぇよ。っつーか何でピリピリしてんだグレモリー?」

 

 

あーもう!何でコテツはこう危機感ってものが無いのよ!

ずらりと私達を囲む老若男女の人の姿をした彼ら。

やっぱりこいつらは・・・悪魔ね!

 

 

「坊や。貴方には難しい話をお嬢さんとするけど気にしないでね」

 

「人を呼びつけておいて俺を置いて話とかどんなイジメだ」

 

「メインディッシュは最後にとっておくものデース」

 

 

コテツにそういって先の二人はこちらへと振り向いた。

どちらも余裕そうな笑みが癪に障るわね。

魔力が大きいだけで私の力を侮らないでもらいたいわ。

 

 

「まず最初に自己紹介デース。ミーはバアル、ユーに分かりやすいように言うとゼクラム・バアル、の分霊デース」

 

「私はグレモリー。貴方の・・・お婆ちゃん?にでもなるのかしらね。その分霊よ」

 

「・・・はい?」

 

「おっさん達の名前って初めて知ったな」

 

 

それから次々と名乗る彼ら。

出てくる名前は知っているけれども予想外すぎる。

そして彼らに共通して分かるのは・・・

 

 

「・・・ソロモン72柱の、それも初代の分霊、ですか?」

 

「オー、その通りデース。とは言え、分霊なので当時の1割程の力しか持ちませんがネー」

 

 

1割でこの魔力・・・初代の人たちはどれだけ強かったって言うのよ。

それに彼がゼクラム・バアルの分霊だとするなら以前に会った本物の威厳が崩れていく気がするわ。

 

 

「何だソロモンって核でも打ち込むのか?」

 

「コテツはボクちんと遊んでいればいいでち」

 

「やかましい、ちびっ子」

 

 

コテツの戯言は放っておくとして。

でもその話が本当だとすれば彼らの魔力が大きいのは分かる。

でも今じゃ絶滅した家系もあるソロモン72柱の分霊達が一同に介するなんて普通はありえない。

あるとすればそれはソロモンの・・・

 

 

「っ!?まさかコテツの神器ってソロモンの鍵、なの?」

 

「ワッツ?何ですかソレ?」

 

「え?」

 

「ソロモンの家にキーなんてありませんネー」

 

「・・・あぁ、アレじゃないかしら。後世になって何処かの魔術師が書いた本の」

 

「フム、グリモワールですカ。アレとボーイの神器とは一切関係アリマセーン」

 

「じゃあコテツの神器は一体・・・」

 

「日記デース」

 

「は?」

 

「ソロモンが書いた悪戯日記デース」

 

「やっぱり引き継ぐ者の性格にも関係するのかしらね。坊やにぴったりな神器だわ」

 

 

あの凝縮された魔力を持つ本がただの日記?

いえ、あのソロモンなら納得が・・・

 

 

「行くわけないでしょー!!」

 

「うおっ、今日のグレモリーはヒステリックだな」

 

「坊や、女の子にも色々あるのよ。放っておいてあげなさい、それもまた優しさよ」

 

「深いような深くないような分からない話だな」

 

 

デス様を召喚したり中学校に水の魔物を召喚したり朱乃の神社の神様を受肉させたりとしたのに結果が日記?

どうなってるのよソロモンって人は!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、難しい話は終わったか?」

 

「イエース、おおまかな話はオワリマシタヨー」

 

 

さっぱり何の話をしていたのか分からなかったが。

終始、フェニ坊と遊んでやったり時折聞こえてくる聞き覚えのある単語に突っ込んだりしていただけだ。

まぁ長い前座が終わった事だし・・・

 

 

「で?今日は一体どんな面白い事を教えてくれるんだ?」

 

「フッフッフー、さすがボーイ。その後ろを振り返らない姿勢は好感が持てマース」

 

「褒めるなよ、照れるじゃないか」

 

 

おっさんが俺を呼んだ事は今までにも何度かあった。

その度に、トラップの設置方法や火薬の使い方を教えてもらったり変な道具をもらっていた。

 

 

「今日は久しぶりにビッグな事に挑戦してみまショーウ」

 

「ほうほう・・・ん?久しぶり?」

 

「覚えてナイデスカー?ユーが5歳の時にチャレンジしたことがアリマース」

 

 

5歳、うーん。全然覚えて無い。おっさんに会った時期とすると小学校に入った時ぐらいか。

そういえばその時期から格闘ブームって火が付いたんだっけ?

今じゃ火が付きっぱなしで至る所で燃え広がっているが。

 

 

「マー無理もないネー。幾多もの世界をフュージョンさせたのデスカラ」

 

「まぁ面白い事になるならどうでもいいや。で、何をすればいいんだ?」

 

「まずは本を出してクダサーイ」

 

「あいよ」

 

 

言われるがままに本を出す。

ん?以前にもここでこんな感じで本を出したような気がする。

これがおっさんが前に言ったチャレンジしたときってやつか?

確か前はこのページの・・・

 

 

「オー?思い出しましたカー?」

 

「何となく。で、ここに模様を描けばいいんだよな」

 

「イエース。このナイフを使うといいデース」

 

 

おっさんからナイフを借りて本に書かれた模様を描いていく。

思い出してきたぞ。これ滅茶苦茶大変な奴じゃねーか。

俺が子供の時、何度も途中で投げ出しそうになったな。

人間、嫌な事って中々忘れないもんだな・・・いや、まぁ忘れてたけど。

けれど、そのおかげでスラスラと模様が描けていった。

 

 

「これでよし、と。73個、うん。合ってるな」

 

「サンキュー。ではここにミー達がスタンドシマース。ユーはソッチの上にスタンドしてクダサーイ」

 

 

言われた場所に立てばぞろぞろと他の連中も俺の書いた模様の上に立った。

一人グレモリーは未だに頭を抱えて何やら考え事をしている。

結局、あいつを呼んだ理由は何だったんだろうか。

俺がバカだからたまには頭のいい奴を呼んで会話でもしたかったのか?

 

 

「良し、では汝は何を我らに望む」

 

「・・・頭でもおかしくなっちまったか?」

 

 

突然口調が変わったおっさんに、つい口が出てしまう。

が、やけに真剣な表情なので俺も一応真面目に考えることにした。

以前にも似たような事があった。

確かあの時は格闘ゲームにはまっていて、そのキャラに会いたいとか言ったっけ。

結局その願いは叶えられなかったみたいだが。

 

 

「うーん、望みって言われてもな」

 

 

望みと言えば俺が子供の頃からの夢である飛び道具。

出せるようになって何をしたかったのか思い出せないが。

飛び道具を出せるようにしたいって願いも悪くはないが、折角なんだ。

もっと面白い事にするか。

 

 

「もっと闘える人を見たい、かな。そうすれば俺にも飛び道具を出せるヒントが見つかるかもしれねーし」

 

 

悪戯のヒントもな。

それにこういうのは自分で出せないと意味無いしな。

 

 

「それは一人か?それとも数人か?」

 

「は?そんなの多い方がいいに決まってんじゃん」

 

「具体的な数は言えぬと?」

 

「細かい事言うなよ。じゃあMUGENだっ!」

 

 

しまった。おっさんの口調がうつった。

 

 

「・・・残念だが望みは限定されればされるほど叶いやすい。それでは望みを叶える事は・・・何?」

 

 

おっさんが言いかけたところで俺達の立っている模様が輝きだした。

ひゃっほう!願いが叶ったって事か?

 

 

「はっ!?コテツ、これは一体どういうこと?」

 

「よくわからないが願いを叶えてもらった」

 

「悪魔に対価なしで願いを言うなんて貴方バカでしょ!」

 

「お前は何を言ってるんだ」

 

 

こんなに親切なおっさん達に向かって悪魔は無いだろう。

グレモリーと話している間にも足元の模様の輝きは強さを増していく。

 

 

「我とグレモリーの血を継ぐ者よ。お主にはこの世界の行く末を我らと同じ視点で見てもらおうか」

 

「え?」

 

「本来融合された世界では等しく元の世界ではなく融合された世界が当たり前になってしまう。それは天界も今で言う冥界もだ」

 

「つ、つまり?」

 

「お主と我らは融合された世界での変化を共に見続けるという事だ」

 

「前回も面白かったから楽しめるわよ」

 

 

展開だの明快だのもうちょっと俺にも分かりやすく言ってほしい。

後、光が強すぎてなんだか耳鳴りが聞こえてきた。

グレモリーの甲高い悲鳴かもしれないが、気にしたら負けな気がする。

 

 

「では八代虎徹よ。汝の望みは叶った。我らの想定外な事をするところはソロモンと同じで面白い人間だ」

 

 

カッ!

 

 

だからソロモンって何だよ。

私は帰ってきたって言って欲しいのか。

そんなくだらない事を思いながら俺は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む?この魔力は・・・ソロモン?何故今頃になって?」

 

「ミカエル様、会議のお時間です」

 

「ありがとう。他のミカエル達は?」

 

「あの方達は・・・」

 

「うおおお!あっちいいい!!!」

 

「Chaos Over!」

 

「・・・メタトロンは?」

 

「忍者の方ですか?問題ない方ですか?」

 

「問題のある問題のないイーノックの方です」

 

 

おかしい、何故急にこんな疲れを・・・

遥か昔からこういった事はあったはずなのに。

 

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん?こんなんだっけ?」

 

「どうしましたファルビウム」

 

「いや、冥界の地図ってこんなだっけ?」

 

 

特に以前と変わりないような気もしますがどうしたのでしょう?

 

 

「こっちは誰の領土だっけ」

 

「エクスデス城ですね。アトモスのせいで中には入れませんが」

 

「冥界ってこんなに広かったっけ?もう少し狭かった気がするんだけど」

 

「何を言っているんですか。我々7大魔王がどれだけ苦労をしたか・・・ねぇ、ゾーマ」

 

「ふむ。過ぎた話だな」

 

「あっれー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あのよ嬢ちゃん。こんな事は言いたくねぇんだが、帰ってくれねぇか?」

 

「どうしてですがアザゼルさん!」

 

「いや、嬢ちゃんは魔王の側近だろ?ココは堕天使陣営なわけだ」

 

「同じ堕天使の仲じゃないですか。それに愛の力の前にそれは些細な事です!」

 

「嬢ちゃん。あんた天界寄りなのか冥界寄りなのか堕天使寄りなのか、はっきりしてくれ」

 

 

突然乗り込んできて食料をたらふく食ったかと思えば上司の愚痴って・・・

俺ってそんなに暇そうに見えたかねぇ。

 

 

「フロンよ。言われた通り買ってきたぞ」

 

「ありがとうございます!待ってました、ゼットンVSゴジラの幻の対戦DVD!」

 

「シェムハザ。お前いつのまに・・・」

 

「当然、お前の給料から天引きだ」

 

「マジかよ。やっぱ帰ってくれねーかな嬢ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、曹操様!こ、このような請求が」

 

「請求額1000万?一体なぜこのようなものが」

 

「それが・・・」

 

「えーい!何故出てこぬのだ!この我が呼んでおるのだ。疾く出てくるのが道理であろう!」

 

「ギルガメッシュ様がその・・・課金した結果です」

 

 

どうなってるんだこの英雄は。

いや、コレクター魂が出たのは分かりたくないが分かってしまう。

 

 

「曹操様!アーサー様と孫悟空様の食事で食料がもうありません!」

 

「曹操様!サイクロップス様のバイザーが壊れ、部屋中にビームをまき散らしています!」

 

 

胃、胃が・・・胃薬を飲まなくては。

そのあとに金策と食料の確保とバイザーの修理をしないと・・・

 

 

 

 




虎徹の神器については元々考えてあったのですが、
ここまで大事にする予定はありませんでした。
まぁ今までのキャラとの関係とかが一部変更されたと思っていただければ問題ないです。

後、堕天使陣営は本当に該当キャラが見当たらない・・・

次回からは夏休み編に入ります。


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1年 夏休み開始編
第46話 アルバイト


どうもお久しぶりです。


「おっしゃー!夏休みだーーっ!」

 

「朝からうるさいぞコテツ」

 

「何言ってるんだライザーさん!これが騒がずにいられるかよ!」

 

 

現在、朝の8時を過ぎたばかり。

夏休み初日となり俺のテンションは朝からマックスだった。

あの忌まわしい生徒指導という名の暴力も無いなんて最高じゃないか!

 

 

「学生は羨ましいな」

 

「はい、コーヒー」

 

 

親父は普通に仕事なのでスーツで新聞を読んでいた。

お袋はその親父の朝食を準備中だ。

ライザーさんは俺に注意しながらテレビを見ている。

ふむふむ、今日の怪獣予報はバルタン星人か。

 

 

「虎徹、ちゃんと宿題もやるのよ」

 

「分かってるって」

 

「まったくこの子は・・・そうだ、ライザー君は実家に帰るのかしら?」

 

「そうですね。来週あたりに一度帰りますよ、何か実家の方から呼び出しを受けまして」

 

 

朝食の準備が終わったお袋がライザーさんと会話している。

その横で俺は本来なら我が家にいるはずのない奴に視線を向けた。

 

 

「・・・で、何でお前がいるんだ搭城」

 

「部長命令でお目付け役です」

 

「グレモリーが?何でだよ」

 

「八代先輩は相当な危険人物だと分かりましたのでこれから毎日、私たちが交代制で見張りすることになりました」

 

「意味がわかんねー」

 

 

グレモリーの奴、一体どういう事だ?

あの時・・・森の中で俺の望みを叶えてもらった後におっさんやグリ子さんと話していたみたいだが関係しているんだろうか。

まぁ、毎日遊び相手が増えたと思えば・・・

 

 

「おっと、今日の俺は搭城みたいに暇人じゃないんだぜ」

 

「暇と言う服を着た塊みたいな人が言いますか」

 

「搭城、お前本当に口が悪いな」

 

「先輩ほどじゃありません。で、何があるんですか?」

 

「ふふん、今日はルガール運送でバイトする日なんだ」

 

「バイト?・・・あぁ、ナーヴギアとか言うのを買うためでしたっけ」

 

 

そう。かねてから約束をしていたナーヴギアを買うためにルガール運送でバイトをするのだ。

ここ最近、色々と忙しかったからな。

 

 

「それはそうと搭城」

 

「なんですか?」

 

「・・・お前、その猫耳と尻尾は何だよコスプレか?」

 

 

先ほどからずっと気になっていたことを聞いてみた。

搭城の頭の上と腰あたりから猫の耳と尻尾らしきものがある。

尻尾はさっきからゆらゆらと動いている事から本物かと思ったぐらいだ。

搭城は頭の上にある耳に触れて尻尾を見てこちらに向き直ると・・・

 

 

「いえ、私猫又の妖怪ですから」

 

「・・・何だそうだったのか。じゃあ何で今まで隠していたんだ?」

 

「それが自分でもよく分からないんですよね。今時妖怪なんて珍しくもありませんし・・・」

 

 

確かに今時妖怪なんて珍しくもねーな。

人を襲う妖怪もいるらしいが人間社会に溶け込みすぎな妖怪もいるぐらいだ。

・・・あれ?何か違和感がするが何故だ?

 

 

「じゃあグレモリーや姫島、木場なんかも妖怪だったのか?」

 

「いえ、部長たちは違います。・・・悪魔です。まぁ今の私もですが」

 

「はぁ?悪魔?おいおい搭城、どんだけ頭の中ファンタジーなんだよ」

 

「物凄い理不尽を感じました」

 

 

搭城もそんな冗談が言えるとはな。

ファンタジーの世界じゃねーんだから、悪魔だなんているわけないだろ。

 

 

ゴツッ

 

 

「いてっ!何すんだよライザーさん」

 

「いや、ここは代表して殴っておかなくちゃいけないと思ってな」

 

「ありがとうございます。もう少しで私が殴るところでした」

 

「意味わかんねーよ」

 

 

どういう事だよ。ライザーさん達の故郷で流行っているギャグなのか?

俺は悪魔だぁ、って・・・あれ?どこかでそのセリフを聞いた覚えがあるな。

 

 

「さて、虎徹。そろそろ行くぞ」

 

「あいよー。で、搭城も来るんだよな?ライザーさんは?」

 

「お目付け役ですから」

 

「俺は遠慮しておく。頑張ってこいよ」

 

「社長さんに迷惑かけないようにね虎徹」

 

 

こうしてお袋とライザーさんに見送られて俺は親父と搭城と一緒にバイト先であるルガール運送へと向かった。

しかし夏休みだってのに仕事とは社会人は大変だな。

その辺を親父に言ってみたところ変に哀愁を漂わせていた。

 

 

「虎徹も大人になれば分かるさ・・・頼むからお前は早く大人になってくれ」

 

「うぉい。どういう意味だ親父」

 

「子供っぽいって事だと思います」

 

「はん、搭城に言われたらお終いだな。うおっ!危ねっ!」

 

 

搭城の奴思いっきり足を踏みつけようとしやがった。

反応が少しでも遅かったら危ないところだったぜ。

 

 

「私だって成長すれば部長達みたいになりますから」

 

「お前が?グレモリー達みたいに?」

 

「そうです。だからこのまま成長すればいいんです」

 

 

どうだ、と言わんばかりに今は無い胸を張っている塔城。

ふむ。搭城がグレモリーや姫島並みの成長を遂げる、ねぇ。

・・・・・・無いな。

 

 

「・・・何ですかその憐憫の視線は」

 

「いや、まぁ何だ。希望を持つのはいいことだぞ」

 

「こほんっ。そろそろいいか虎徹?」

 

 

搭城をからかっていると親父に止められた。

一歩前を歩く親父がこちらに視線をちらりとやると前に戻す。

ルガール運送の本社まであと少しってところだ。

 

 

「仕事内容は運送、とは言っても虎徹の場合は自転車で届けてもらう」

 

「まぁ確かに本職の人たちみたいにスライド移動なんてできないからな」

 

「全員がそういう人たちばかりではないんだがな。勤務時間は9時から12時までの3時間だ。日給は1万円」

 

「マジで!?」

 

「随分と好待遇ですね」

 

「社長は何故か虎徹には甘いからな。まったく、抗議しても聞く耳を持ってくださらない」

 

 

午前中働くだけで1万円か。何だ、随分楽な仕事じゃないか。

って事は10日も働けばナーヴギアを買う金が溜まるな!

 

 

「それとバイト期間中、指導してくれる人を付ける」

 

「親父じゃないのか?」

 

「私は営業だからな。安心しろキャリアで言えば最年長だ」

 

 

ふーむ。初めての事だからその道のプロがいるのは安心できるな。

 

 

「そ・れ・と!いいか虎徹、くれぐれも荷物をダメにしないようにな!」

 

「おいおい、俺を何だと思っているんだ」

 

「お前だから言っているんだ」

 

「先輩だから言っているんだと思います」

 

 

親父と搭城が見事に同じ言葉を言い出した。

俺ってそんなに信用が無いんだろうか。

 

 

「小猫ちゃん。虎徹の事頼んだよ、社長にかけあってバイト代を出してもらうようにするから」

 

「いいんですか?ありがとうございます。八代先輩、そういうわけですのでキッチリ働いてくださいね」

 

「こんな善良市民を危険人物みたいな扱いしやがって・・・お?あそこにいる人か?」

 

 

ルガール運送の門の前に誰かが立っているのが見える。

初老のおさげに結んだ髪を後ろに垂らした男性だ。

遠目からでも凄そうな人だと思えるオーラ的ものを放っている。

 

 

「あぁ、そうだ。私はこっちだから頑張れよ」

 

 

そう言って親父は社員用の入り口から入ってしまった。

とりあえず俺と搭城は腕を組んで立っている人の前まで向かった。

 

 

「どうも、八代虎徹です。今日はお願いします」

 

「付き添いの搭城小猫です。お願いします」

 

 

俺たちがぺこりとお辞儀をするとジロリとこちらを品定めするかのように見つめた。

 

 

「貴様が八代の倅か。ふむ、社長達が言うような強さは見受けられんが・・・」

 

「えーっと?」

 

「いや、こちらの話だ。わしは東方不敗、バイトとはいえ手加減はせぬから覚悟するがよい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら次ですよ八代先輩、頑張ってください」

 

「ぜぇぜぇ。そう思うなら降りろよ・・・」

 

 

私は今、八代先輩の漕いでいる自転車の後ろにある荷台に座っています。

東方不敗とか言う人は八代先輩に幾つかの荷物を渡して先に行っちゃいました。

面倒を見るという話はどうなったんでしょうか?

 

 

「あのクソジジイ、絶対嫌がらせだぜ」

 

「まぁ確かに」

 

 

これまで届けた荷物は駒王町の端から端まで。

自転車で漕ぐ先輩も本当に常人離れしてますね。

いくら荷物が封筒など小さな荷物とは言え、距離がおかしいです。

 

 

「あ、これで最後ですよ」

 

「おぉ、時間的にも昼だな。ならラストスパートするか、それで何処だ?」

 

「・・・悪魔の森って書いてますけど」

 

 

聞いたこと無い場所ですね。

悪魔に悪魔の森に届けろとは皮肉でしょうか?

まぁ届けるのは八代先輩ですが。

 

 

「なんだ、ディズィーの家じゃないか」

 

「ディズィーさんのですか?」

 

 

ディズィーさんと言えば何度か会った事のある女性ですね。

悪魔とも違う何か異様な力を感じてはいましたが。

そんな事を思いながら荷物を送った人の名前を見る。

高藤琢磨・・・あれ?

 

 

「しかも高藤先輩からですよ」

 

「はぁ?琢磨から?」

 

 

自転車を漕ぐのを止めてこちらを見る。

私は八代先輩に高藤先輩の荷物を渡した。

荷物というよりも何かの書類が入っている封筒みたい。

 

 

「んー?届け先はディズィーじゃなくてテスタメントさんか」

 

「あぁ、あのカラスさんですか」

 

「カラスて・・・まぁ確かに黒い服ばっかりだったな」

 

 

やたらと人間を嫌っている発言をしているディズィーさんの保護者ですね。

発言内容から人間ではないのは分かりますが正体までは分かりません。

この街に来てから一般人に会った記憶があまり無いのは何故でしょうか?

皆、私よりも強そうな人たちばかりですし。

・・・ここは祐斗先輩のように誰かに師事を受けた方が良さそうです。

 

 

「八代先輩。聞きたいことがあるんですけど」

 

「あ?何だよ」

 

「私の戦闘スタイルってどうやったら強くなれると思いますか」

 

「知らね。っていうかお前闘えたのか」

 

「・・・そういえば八代先輩は見た事ありませんでしたね」

 

 

迂闊でした。でも八代先輩の人脈なら誰か一人くらいは知っているかもしれないです。

私は悪魔であることは伏せて戦車の能力を説明した。

 

 

「はぁ、搭城。お前見かけによらず怪力バカでタフネスなんだな」

 

「バカは余計です」

 

「うーん。奇声を上げる喧嘩殺法のチビが同級生にいるぐらいか」

 

「それ、大丈夫なんですか?」

 

「心配するな。普段は・・・普段からキョエーとか言ってるな」

 

 

心配する要素が一つもありません。

やっぱり八代先輩の知り合いには碌な人がいませんね。

 

 

「後は以前にお袋が拾ってきた京都の兄ちゃんかな」

 

「京都の兄ちゃん?京都の人なんですか?」

 

「いや、京都に行くって言って彷徨っていたところをお袋に拾われたんだ」

 

「なんですかその人」

 

「黒い鹿を出したりパンチして拳の骨が折れたりと面白い人だったぞ」

 

「・・・やっぱり自分で探すことにします」

 

「そうか。ならいいけどよ」

 

 

自分で探した方がよさそうな気がしてきました。

その辺を歩いていた方がまだマシな人がいそうです。

 

 

「しかし最後の最後でこの森の中を抜けなくちゃ行けないのかよ・・・」

 

「八代先輩、ふぁいとです」

 

「ぐぬぬ、仕方ない。行くぞ搭城!しっかり捕まってろよ!」

 

「はい」

 

 

自転車の後ろで八代先輩に掴まる。

最初よりは力が落ちていますがそれでもまだ力強い漕ぎですね。

 

 

「おりゃああぁっ!」

 

「うるさいですよ。静かに漕いでください」

 

「叫ばないと、力が、出ないんだよ!」

 

「ほぅ、意外に頑張るではないか」

 

「え?」

 

 

突然の声に横を向けば東方不敗さんが八代先輩の自転車に並走していました。

ルガール運送に勤めているだけあって、この人も一般人じゃないですね。

 

 

「人を、放っておいて、言う、セリフじゃ、ねーだろ!」

 

「ふん、まだ時間がかかるとは思ったが・・・まぁよい、褒美だ手伝ってやろう」

 

 

ガシッ

 

 

「あいた!何しやがる!」

 

「どれ、おぬしを直接運送してやろう。行くぞ!」

 

「どわああぁあっ!」

 

 

正面からこめかみをを掴まれた八代先輩が東方不敗さんにそのまま運送されて行きました。

そして残された私と自転車。

・・・どうしましょう。やっぱり追いかけた方がいいのかな?

一先ず自転車を押して追いかけつつ、考える。

それは先ほども悩んだ強さについて。

以前にティナ先輩に言われた事を思い出す。

 

 

『小猫ちゃんの場合は駒の強みを生かすか種族の強みを生かすか、どっちがいいかしら?』

 

『それは・・・』

 

『まぁ私は小猫ちゃんの主でもないから、別の選択肢を選んだとしても文句は無いわよ?』

 

 

ティナ先輩に鍛えられたおかげではぐれ悪魔相手でも苦戦する事無く勝てるようにはなってきた。

ただ、それは皆も同じ・・・いやそれ以上に強くなってきている。

特に朱乃先輩、以前に腕を交差させて浮き上がったかと思うと光が降り注ぎ、はぐれ悪魔達が文字通り消え去っていた。

堕天使の力でも悪魔の力でもない、敢えて言うなら無色の力?を感じた。

 

 

「はぁ・・・」

 

 

溜息一つ、何だか皆から置いて行かれたような気になる。

まぁあの引きこもりの彼はどうなっているのかわかりませんが。

ふと、八代先輩の自転車を押していたのを止める。

目の前には男性が二人立ち話をしていた。

一人はインドの修行僧のような出で立ちで頭にターバンを巻いている男性。

もう一人はアロハシャツにサングラス、そして亀の甲羅を背負った奇妙な出で立ちをした老人。

男性が老人に向かってしきりに頭を下げている。

そして老人が鬱陶しそうにしているのが分かった。

 

 

「全く、お主は何年も前の事を・・・」

 

「そういうわけにも行きません!貴方のおかげで故郷は救われたのですから、むて・・・亀仙人様」

 

 

ピクリ

 

 

男性の言葉に耳が反応する。

仙人?にしては随分と恰好がらしくない気がする。

いえ、仙人なんて見た事ないですけども。

とは言えこれはチャンスではないだろうか?

奇しくも仙道を極めた仙人が目の前にいる。

私は思わず声をかけてしまっていた。

 

 

「あ、あの・・・」

 

「む?・・・なんじゃ娘さん(可愛い子じゃが胸が残念じゃのぅ)」

 

 

私を上から下まで見て、ある一点を見て生暖かい視線を送ってきた。

思わず殴りかかりそうになりつつも頭を下げた。

このまま皆から置いていかれるのは嫌だ。ならば私も強くなっていくしかない。

 

 

「お願いします。私を弟子にしてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディズィーは渡さん!」

 

「賞金はアタシが頂くアル!」

 

「おっとヒロインを助けるのはヒーローの定めと決まっているんだぜ」

 

 

チッ、メンドクセェ。

目の前には大量にいる賞金稼ぎどもの姿。

そして俺は情報屋からの依頼でディズィーの警護をしていた。

こちらの戦力は俺以外にはテスタメントと俺と同じ依頼を受けているジョニー。

戦力としては申し分ないが数が多すぎる。

それにあの娘からギアの反応はないが、何かが引っかかる。

情報屋からの依頼ってのも何処か胡散臭いしな。

 

 

「オラッ!」

 

「甘ぇっ!」

 

 

ギィンッ

 

 

考え事をしていたのを隙と捉えたのか賞金稼ぎの一人がこちらに斬りかかってくる。

それを封炎剣で防ぎ蹴りを一発お見舞いしてやるが、すぐに後ろに飛び避けられてしまう。

 

 

「そう簡単には行かないか。しかし賞金稼ぎのお前がこんなところにいるとはどういう風の吹き回しだ?ソル・バッドガイ」

 

「ふん、そっちこそ賞金稼ぎは止めてアイドルのプロデュースをしていたんじゃネェのか、ハヤト・カンザキ」

 

 

炎の賞金稼ぎとして有名だったコイツが突如、賞金稼ぎを止めたのはコッチの世界じゃ騒ぎになったんだが・・・

何故また復帰しているのか、それともデマだったのかはどうでもいい。

ピンからキリまで揃った奴らの相手をするのがウザッテェだけだ。

 

 

「賞金を独り占めしようったってそうはいかないぜ」

 

「あん?・・・っと、テメェまで」

 

 

突如の銃撃を避けてみれば赤いフードを被った嬢ちゃんがマシンガンを構えていた。

バレッタだったか、どうして有名な賞金稼ぎばかり俺のところへ群がって来やがる。

しかし、先に対面していたハヤトの奴が怪訝な表情を見せた。

 

 

「賞金?何を言っている」

 

「あん?アンタも賞金首をとっ捕まえに来たんだろ」

 

「知らん。俺は以前に学校で見かけた少女に会いに来ただけだ」

 

「・・・会ってどうするつもりだ?」

 

「当然、アイドルとしてスカウトするに決まっているだろう」

 

「「・・・・・・・・は?」」

 

 

今、コイツは何て言った?

アイドルをスカウト?

 

 

「なんだ?俺は何か変なことを言ったか?」

 

「変な事しか言ってねぇよ」

 

「なんだ、お前アイドルプロデューサになったってのは本当なのかよ」

 

「本当だ。あぁ、これは俺がプロデュースしている麻宮アテナの新シングルだ。元同業者の仲だ、やるよ」

 

 

目つきは鋭いままで何処からか紙袋を取り出したかと思うとCDを配りだした。

・・・人間変われば変わるもんだな。

警戒はしたままその様子を眺めていると何処からか声が聞こえてきた。

 

 

「む?何だこの声は?」

 

「あん?」

 

「どわああぁぁっ!」

 

「ん?この声は・・・虎徹か?」

 

 

コテツ?バレッタの声に眉を顰める。

あの坊主が何でこんなところに・・・ってディズィーに会いに来たのか。

よりによってこんなややこしい時に来るんじゃねぇよ。

全員が坊主の声が聞こえてくる森の奥へと視線を向ける。

 

 

「はーなーせーっ!このクソジジィ!!」

 

「やかましい小僧だな。よかろう、覚悟しておけよ」

 

「え、覚悟って?待て、何で力込めてんの?何で俺を前に突き出してんの?」

 

「しかと見よ、これがダークネス・・・」

 

「嫌な予感しかしねーんだけどーーっ!?」

 

「フィンガーーーッ!!」

 

「ぎゃーーーーっ!」

 

 

おさげにした爺さんが坊主を片手で掴んでこちらに突撃してきた。

そのまま賞金稼ぎ共の山へと突っ込んで行く。

そして爺さん一人がこちらへと構えた姿勢で止まった。

 

 

「爆砕!」

 

 

ドッゴーーーンッ!!

 

 

「シッショーッ!」

 

 

・・・今のは気か?賞金稼ぎ共は爆発して数が減って助かるが坊主はどうなったんだろうか。

後、どこかで聞いた声が聞こえた気がするが気のせいだろう。

 

 

「見たか。お主も運送業をするなら、ここまでして見せよ」

 

「いや、ありゃ聞こえてねーぞ」

 

 

バレッタの声が恐らくこの場にいる全員の声だった。

そんな誰もが呆然としている中、坊主を爆発させた爺さんが悠然と歩いてきた。

 

 

「ふむ、テスタメントというのはお主か?」

 

「・・・なんだニンゲン」

 

「わしはルガール運送の運び屋だ。ほれ、ここに名前を書くがいい」

 

 

そういって何事もなかったかのように封筒と受領書、ボールペンを出した。

警戒していたテスタメントのようだが話が進まないと思ったのか、諦めたのか大人しく受領書にサインをする。

 

 

「では、しかと受け取った」

 

 

そういって両腕を組んだままその場から消え去る。

・・・運送屋ってのは変な奴らばかりか。

そんな事を想いながら封筒を受け取ったテスタメントを見る。

既に封筒から中身を見たようだが目を見開いていた。

 

 

「これは・・・」

 

「なんだ、何を驚いて・・・なるほどな」

 

 

ジョニーの奴が後ろから覗いて中身を確かめ理解したようにうなずく。

見た方が早いと思い俺もテスタメントが見ている封筒の中身を見る。

そこにはディズィーの賞金首が解除されたこと、そして謝罪としての小切手が入っていた。

国際警察からの正式な印章まであることから偽物とは考えにくいが何故このタイミングで?

俺はテスタメントの握っている封筒を奪い裏返す。

そこには高藤琢磨、と書かれた名前。・・・あの情報屋、これを狙って俺達に護衛なんて依頼をかけやがったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ・・・イッテェ!」

 

 

あー頭っていうか体全体が痛ぇ。

どうなったんだっけ?確かあのクソジジィに運送されたんだっけ。

それで・・・?爆発が起きたところまでは覚えているんだがどうなってんだ。

 

 

「大丈夫ですか虎徹さん?」

 

「んあ?ディズィー?」

 

 

囁くような聞き覚えのある声に目をゆっくりと開く。

そこには何故かディズィーがこちらを見下ろしている・・・って顔が近ぇよ!

これは・・・膝枕?何でこんな事になってんだ!?

 

 

「どわぁっ!?」

 

「きゃっ!」

 

 

ゴチンッ

 

 

「ぐおおぉぉっ!」

 

「あいたたた、だ、大丈夫ですか?」

 

 

なでなで

 

 

「だああぁっ!大丈夫!大丈夫だから!ちょ、ちょっと離れてみようか!」

 

「?」

 

 

いきなりの事で何がなにやらだが、とにかく一度は離れて落ち着かねば・・・

って身体中が痛くて動けねぇ!?

 

 

「虎徹さん、顔が赤いですよ?やっぱりどこか痛いんですか?」

 

「待て、ディズィー。お、おおおお落ち着け、クールだ。クールになるんだ」

 

「よくわかりませんけど落ち着いた方がいいのは虎徹さんでは?」

 

「少年。役得は味わえる内に味わっておくもんだぜ」

 

 

何とかしてディズィーの膝枕から脱出しようとしていたところへ渋い声が届く。

見上げるようにして相手を確認してみれば黒い帽子にサングラス、おまけに黒いコートに黒いズボンと靴の・・・半裸の男がいた。

 

 

「ディズィー、逃げろ。変態だ、変態がいるぞ」

 

「おいおい、こんなハンサムを見て嫉妬したい気持ちは分かるが言い様ってもんがあるだろう?」

 

「そうですよ。この方はジョニーさんと言って私を助けてくれたんですよ」

 

「ねーよ・・・って助けた?」

 

 

ジョニーと呼ばれた男からディズィーへと視線を向ける。

膝枕されたままなので自然と見上げるようになり、ディズィーの顔が見え・・・ない

さっきは背筋を伸ばしていたから顔がよく見えたが今は前かがみになっているらしい。

・・・うん。ぶっちゃけ二つのおっぱいが邪魔で顔の上半分くらいしか見えない。

 

 

「賞金稼ぎ?の方達が襲ってきて、ジョニーさん達が守ってくれたんです」

 

 

顔のほとんどが見えないが悲しそうな眼を見て本当の事なんだろうと思った。

・・・ジョニーさん達?他にもいるのかと思い視線を巡らせてみると。

 

 

「おのれニンゲン!ディズィーに、ディズィーに膝枕されるなどユルサン!!」

 

「坊主、ちぃとばかし灸を据えてやる」

 

 

鎌を持って今にもこちらに飛び掛かりそうなテスタメントさん。

周囲に炎を纏わせて両腕を組んでいるソルさんがいた。

テスタメントさんはまだしも何でソルさんまで怒っているんだ。

だがこの状態はまずいのは分かっている。

しかし意識的なのか無意識なのかディズィーが俺の肩を抑えているおかげで逃げることができない。

えーい、何だこの恥ずかしい状況は!

 

 

「よぉ、虎徹。アタシの獲物を横取りした挙句にいいご身分だな」

 

「へ?バレッタの姐さん。なんでここにいるんだ」

 

 

見れば何時ぞやの格闘大会でお世話になったバレッタの姐さんがいた。

しかも機嫌悪そうに普段から悪い目つきが悪化して更に酷い顔になっている。

見た目が童話の赤ずきんみたいなのに子供が見たら泣くぞ。

 

 

ジャキッ

 

 

「ここで死ぬか、アタシに金を寄越すか選びな」

 

「なにその理不尽」

 

 

額に銃を突きつけられて意味不明な脅しを受ける。

うん、とりあえず整理をしよう。

ディズィーは賞金稼ぎに追われていたって事は賞金が掛けられていた。

バレッタの姐さんは賞金稼ぎだからディズィーを捕まえようとしたんだろう。

んで、横取りと言われた俺。

・・・なるほど、分からん。

 

 

「この天才的な発想力を持つ俺でも分かんねぇ、教えてくれ姐さん」

 

「はぁ、脅す相手を間違えたか。気にすんな。賞金首が解除されたんでアタシも気が立ってた」

 

「おぉ、よくわかんねーけど、よかったなディズィー」

 

「はいっ」

 

 

銃が額から退かされた。

そして満面の笑みを浮かべたディズィーが何故か俺の頭へと手を・・・

 

 

「危ないっ!主に俺の心が・・・イデェッ!」

 

「きゃっ」

 

 

ほとんど条件反射でゴロゴロと転がってディズィーの魔の手から脱出する。

全身に傷みが走るが窮地を脱したようだ。

再度こちらに向かって来ようとしたディズィーを半裸の男が止める。

 

 

「で、嬢ちゃん。俺の提案に乗るかい?」

 

「あ、はい。森に棲んでいる動物や他に住んでいる人たちにも迷惑をかけてしまいましたし」

 

「待てディズィー!ニンゲンの罠だ!」

 

「そうだ、そんな事より俺と一緒にトップアイドルを目指さないか?」

 

「テメェらがいると話が進まねぇ。消し飛ばすぞ」

 

 

おーいてぇ。痛みに耐えつつも倒れこんだ状態から身体を起こして何とか座り込む。

ディズィーと半裸の男が話している横でまた一人どこかで見たような男が言い争っている。

どこで見たのか思い出そうとすると近寄ってきた姐さんに目を向けて別の事を思い出した。

 

 

「そういえば姐さん。聞こうと思ってたんだけど」

 

「なんだ?」

 

「姐さんって妹いるか?」

 

「・・・テメェ、まさかマシェッタに手をかけたんじゃネェだろうな」

 

 

再度ジャキッと銃が俺の目の前に降臨した。しかも今度は二丁だ。

どうして俺の知り合いの姉は全員シスコンなんだろうか。

姐さんといいガーネットといい・・・

 

 

「はん、見くびるなよ!既に知的探求部の部員だ!」

 

「よし分かった。命は要らねぇって事だな」

 

「あれ、おかしいな会話が成立しないぞ」

 

 

姐さんの妹だと分かったマシェッタは俺の1個したの後輩だ。

その頃には姐さんは中学を卒業していたんで聞く機会はなかった。

が、姐さんを彷彿とさせる赤ずきんっぽい恰好をしていて気にはなっていた。

 

 

「おーけー、姐さん。その前にアレ、どうにかしようぜ」

 

「はっ、その手に乗るか」

 

「いやいや、マジで」

 

 

俺を逃がさないという意志が強いのはよくないが、いい。

ただ、現実は認識した方がいいと思う。

 

 

ずんっ

 

 

「ん?影?」

 

 

日が差していた中、俺達を影が覆う。

そこでようやく姐さんは気づいたようだ。

見ればディズィー達も空を見上げている。

 

 

「んなっ!?」

 

 

そこにいたのはセミみたいな顔にハサミを持った・・・巨大な怪獣だった。

あれか、朝に怪獣予報でやっていたバルタン星人ってやつか!

すげー、でっけー!

 

 

「フォッフォッフォ!」

 

「くそっ、逃げるぞ虎徹!」

 

「あいよー」

 

 

とは言え、俺は動けないので姐さんに引きずられるようにしてその場を離れた。

とりあえず地球防衛軍に連絡しておくか。

ちなみにこの後、バルタン星人は光の巨人が現れて腕を十字にして出したビームで撤退したらしい。

 



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第46.5話 小ネタ集

第46話に登場していなかったキャラ達の小話です。



 

■ 小ネタ1 琢磨の事情と疑問

 

 

『どういう事だねドクタータクマ』

 

「何がだ?そちらのお望みの品は納入したはずだが?」

 

 

夏休み初日、僕は自室にて通信をしていた。

ふむ、そろそろ彼女の元へ届いている頃か。

 

 

『我々が欲していたのはジャスティスの外骨格だ』

 

「だから望み通りだろう?」

 

『確かにアレはそうだろう。だが肝心のものが無いではないか!』

 

 

辟易としつつも相手に返す。

僕と同じ研究家だが純粋な研究家である彼は交渉事はお得意ではないようだ。

だからそうやって自らの首を絞めている事に気づけない。

 

 

「ほぅ、肝心のものとはなんだ?」

 

『そ、それは・・・そう!耐法術が施されているはずが全くないではないか!』

 

「あいにくとギア細胞による汚染が怖かったのでね。一度すべて洗浄(・・)させてもらった」

 

『何!?』

 

 

ディズィーにかけられていた賞金をかけたのは今、通信している彼の所属する機関だ。

ギアのハーフと疑わしき彼女なので普段なら僕も特に何かをするはずもなかったのだが・・・

虎徹が関わっているとなれば話は別だ。

だからこうして、こいつらが喉から手が出るほど欲しがっていたジャスティスの外骨格を提供したのだ。

その代わりにディズィーの賞金を取り消させたがな。

 

 

『と、ともかくそういう事なら以前の交渉は白紙に戻させてもらうぞ』

 

「さて、そう上手く行くかな」

 

『・・・どういう意味かね』

 

「プライド高い国際警察が一度撤回したものを白紙に戻すなど考えられん」

 

 

嘗ては聖騎士団だのと呼ばれていたお堅い連中だ。

元団長であるカイ・キスクは別としても他の連中は無駄に高いプライドが邪魔をするだろう。

今や奴らは醜聞を気にしてばかりだからな。

 

『くっ、もういい!』

 

 

ぷつん、と通信が切れ僕はため息を吐く。

ジャスティスの外骨格を失ったのは痛いが解析は既に済ませてあり同じものを作ることも可能だ。

さすがに法術の知識はないので耐法術といったコーティングはできないが。

まぁ、ソルに知られたらどうなるか分からないがな。

ソルが破壊したものを秘密裏に回収し復元したのだから場合によっては僕の命が危ない。

 

 

「お、おつかれさまですぅ博士ー」

 

「ありがとうティセ」

 

 

頃合いを見計らっていたのか紅茶を淹れてくれたティセに礼を言う。

普段はコーヒーなのだが偶にはいいだろう。

そして紅茶を一口含んだところで騒がしい足音が聞こえてくる。

 

 

「ヘイ!ドクター!ティータイムの時間デース!」

 

「・・・既に始まっているぞ。金剛」

 

「私だけのけ者なんて酷いネー」

 

 

現れた彼女に僕はしれっと返す。

金剛と呼んだ彼女は僕の作品、のはずだ。

というのも戦艦を作成しようとして産まれたのが人の型を成した戦艦金剛なのだ。

こうして金剛という存在がいることや戦艦を作成しようとした記憶やデータはある。

が、その過程が全くといっていいほどわからないのだ。

まるで何者かが強引に記憶を割り込ませたようでイラッと来る。

 

 

「ン~、やっぱりティセの紅茶は美味しいデース」

 

「あ、ありがとうございます金剛さん」

 

 

まぁいい、気になるのは確かだが結果としてあるものを気にしてもしょうがない。

幸い、発注依頼も来ている事だ。

僕はディスプレイを空中に展開し依頼内容を再確認する。

それを見てか金剛がこちらへと近寄りディスプレイを見てきた。

こいつのパーソナルスペースはどうなっているんだ。近すぎだ・・・

 

 

「オー、今度はどんな依頼デスカ?」

 

「・・・音響機器を手掛けている会社からだな。何でも自社開発の歌声合成技術ソフトウェアを用いたアンドロイドの作成依頼だ」

 

「それは素敵デスネー。私も歌いたいネー」

 

「勝手に歌え」

 

「ドクター冷たいヨ」

 

 

やれやれ、これなら町中を警備しているレプリロイドの方がまだマシというものだ。

もっとも金剛は僕が作成したと言ってもティセと同じアンドロイドではない。

検査をしたところほとんどが人間と同じといってもいいほどだ。

それでどうして戦艦と同程度の威力を誇る兵器を使えるのか謎でしかない。

金剛がいうには妖精が僕のところまで戦艦金剛の魂を引っ張ったと言っているが眉唾ものだ。

確かにこの世に魔法があることは認めよう。また、妖精といった存在が確認されていることも認める。

が、魂など視認もできなければ確認する術もない存在など認めるわけにはいかない。

よって謎は謎のままだ。金剛を怪我をすれば風呂に入れば直るといったふざけた存在だ。

僕にできることは金剛の艤装を整備する事が精々だ。

 

 

「まったく、どうして僕の事なのに非常識に見舞われなければならない」

 

「ドクター、難しい顔してもいいことないデース。スマーイル!」

 

「やかましい、さっさと離れろ」

 

 

ディスプレイを消して僕に頬を持ち上げようとしてきた金剛を突き放す。

むぅ、と代わりに頬を膨らませる戦艦娘を横目で見て紅茶を飲む。

 

 

「ティセ。ドクターが冷たいネー」

 

「あ、あの。博士も悪気があったわけじゃないんですよ、きっと」

 

「うぅ、ティセはいい子ヨー」

 

「あわわ」

 

 

金剛がティセに抱き着くのを尻目に僕は今日何度目になるかわからない溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■小ネタ2 カイ・キスクの受難

 

「さぁ観念しなさい、デミトリ・マキシモフ!」

 

「くっ、負けは負けか・・・」

 

 

私をこのような姿にした元凶をようやく追い詰めた。

倒れ伏した彼に私は雷を纏わせた手刀を突きつける。

 

 

長かった・・・こんな姿になり、国際警察に頼るわけにも行かず単独で探すこと数カ月。

ようやく中国の秘境まで追いかけてその念願はついに叶った。

 

 

「ふん。これでいいのであろう」

 

「おぉ!」

 

 

先ほどと比べ低くなった声、高くなった身長。

そして数カ月前に見慣れた自身の身体が至る所にある泉の水面に私が映し出されていた。

 

 

「これに懲りたら今後、このような事は止めることです」

 

「それは約束できんな」

 

 

バサバサッ

 

 

「くっ!」

 

 

突如、倒れていたデミトリが幾つもの蝙蝠の姿へと変化し逃げ去る。

思わず腕で顔を覆ってデミトリを逃がしてしまう。

すぐさま、その場に置いていた封雷剣を手にとり追いかけようとする。

 

 

「パフォ!」

 

「どわーーーっ!」

 

「なっ!?」

 

 

見れば上空から一人の男性がこちらへと落ちてきていた。

そしてその男性を叩き落したのは・・・パンダ!?

 

 

「危ないっ!」

 

 

私は飛び上がり男性を抱える。

落下先は地面ではなく泉とはいえ、打ちどころが悪かったら危険だ。

男性を抱えたまま私はその池へと落水した。

 

 

ざぶんっ

 

 

「っぷは!大丈夫ですか!?」

 

「あ、あぁアンタも修行中だったのに悪いな」

 

「いえ、礼には及び・・・ま」

 

 

そこまで言って私は抱えていた男性を見て固まる。

おかしい、私は黒髪のお下げをした男性を抱えていたはずだ。

しかし私の目の前にいるのは赤髪のお下げをした女性がいる。

お下げしか共通点が無いのだがこれは一体どういう事だろうか。

 

 

「アイヤー!お客さん!そこは娘溺泉!昔、若い娘が溺れたいう悲劇的伝説があるのだよ!」

 

 

ここまで私を案内してくれたガイドがそんな事を言ってきた。

しかしそれと目の前の何の関係が・・・

そこまで考えて自分の身に起きた変化にも気づく。

 

 

「以来ここで溺れた皆・・・若い娘の姿になてしまう呪い的泉!」

 

「「なっ!?」」

 

 

先ほどまで戻っていた私の姿がデミトリに呪いをかけられた時と同じ姿になってしまっていた。

そしてガイドの話を聞く限り私が助けた彼もまた女性になったという事なのだろう。

 

 

「ど、どうなっているんですかーーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■小ネタ3 リアス・グレモリーの異文化交流

 

「遅いわよハンゾー!」

 

「ぬぅ。申し訳ござらんグレモリー嬢」

 

 

私はハンゾーの家の前で待っていた。

謝りながら玄関から出てきたハンゾーを見て私は不満だった。

 

 

「ハンゾー、私は貴方に何て言ったかしら?」

 

「む?確か・・・正装で、と言われていたでござるな」

 

「それで何で制服なのよ!」

 

 

彼が来ているのは見慣れた駒王学園の制服だ。

だが、私が言った正装というのは異なる。

今日は、たまたま時間が空いたので私が以前から気になっていた事を調べようと思ったのだ。

だと言うのにハンゾーは・・・

 

 

「しかし拙者、礼服など持っていないでござるよ」

 

「違うでしょ」

 

「んん?」

 

「あなた、シノビならこう、あるでしょ。そういった正装が」

 

「なんと、忍装束の事でござったか。しからば!」

 

 

バサッ

 

 

制服に手をかけたかと思うとあっという間に紺色のテレビで見た事のある衣装へと変化した。

これがニンポー!やっぱりニンジャは実在したのね!

お兄様の眷属の言う通りだった。この国ではサムライやニンジャが闊歩していると言っていたもの!

 

 

「そう、それよ!何で勿体ぶっていたのよ!いえ、もういいわ。さぁ、早く行くわよ」

 

「いつになく盛り上がっているでござるな。して、行くとはどこへ?」

 

「ニンジャと来たら今度はサムライに決まっているじゃない!」

 

「ふむ。まぁよく分らぬがグレモリー嬢が楽しそうなので問題ないでござるな」

 

 

逸る私にハンゾーはうんうん、と納得したように頷いた。

しかし、何かを思い出したのか歩き出そうとした私に待ったをかけた。

 

 

「待たれよグレモリー嬢。その前に週刊誌を買いに寄ってもよいでござるか?」

 

「週刊誌?別にいいけど」

 

「殿に頼まれていたのでござるよ」

 

 

そう言ってコンビニへと足を進める。

何でもコテツはアルバイトでいないため午後から合流する時に渡してほしいとの事だった。

まったく、それくらい自分で買いなさいよコテツは・・・

そして近くにあるコンビニへと着き中に入る。

ハンゾーは本が置いてあるコーナーへと迷うことなく進んでいく。

私はコンビニに入るのは初めてのため多種多様な品揃えを見ながらついていく。

 

 

「おぉ、危ない。最後の1冊でござ・・・」

 

 

ハンゾーが目的の週刊誌を手に取ろうとしたところで別の手がその週刊誌に手をかけた。

キナガシと呼ばれる和服に白髪のパーマを当てたであろう男だ。

 

 

「あ?悪いな少年。これは俺が先に取ろうとしたんでな」

 

「何を言うでござるか。拙者が先に取ったでござるよ」

 

「おいおい。何?人のものは俺のものとでも言いたいわけ?」

 

「誰もそんな傲慢な事は言ってはいないでござる。お主の目は節穴でござるか」

 

「何言ってくれてんの。銀さんの輝く眼が見えないってか」

 

「どう見ても死んだ魚の目をしているわよ」

 

 

思わずハンゾーと男の会話に突っ込んでしまった。

 

 

「いや、違うんだよ。銀さんはやればできるからね。いざとなれば爛々と輝くよ?」

 

「むむ、お主。侍でござるか」

 

「このご時世に何言ってくれてんの少年」

 

「いや、その木刀飾りではなかろう?」

 

 

見れば腰に木刀が差されていた。

持ちてのところには洞爺湖とかかれているけどどういった意味かしら?

 

 

「サムライ?こんな奴が?ハンゾー、冗談はやめて頂戴」

 

「ぬぅ、確かにこのような御仁が侍とは侍に失礼でござったな。申し訳ござらん」

 

「あれ、これって喧嘩売られてるよね?少年少女たちとは言え銀さんも温厚なままじゃいられないよ?」

 

「とにかくジャンプは拙者が頂くでござるよ」

 

「バッカ言ってんじゃないよ。人の楽しむなって親御さんから教えられなかったのか」

 

「少年ジャンプでござるよ?いい年した大人が読むよりも拙者に譲るべきでござる」

 

「いやいや、銀さんも子供だからね。子供の心を持った大人だからね」

 

「「・・・・・・」」

 

 

ギリッとお互いが週刊誌を離さない。

このまま力を入れたら破けたりするんじゃないかしら。

というか、たかが週刊誌にムキになることもないと思うのだけど?

 

 

「ハンゾー。もう別のところで買いましょうよ」

 

「ならぬ!これはもう拙者の維持でござる!だからその手を離すでござるよ!」

 

「だぁれが離すか!俺が先に取ったって言ってんだろ!」

 

「拙者の方が一手、早かったでござる!」

 

「じゃあ俺の方が一瞬早かったね!」

 

 

駄目だ。完全に二人の世界だわ。

溜息を吐いて視線をコンビニの外へと向ける。

そこには紺色の豪華な羽織を身に着けた美丈夫がいた。

そして腰には長大なカタナが差されていた。

それも目の前の男とは違いしっかりとした目つき。

そうアレよ!あれこそイメージ通りのサムライだわ!

 

 

「ハンゾー!先に行ってるわよ!」

 

「ぬ?承知。とにかく離すでござる。このままでは破けてしまうでござるよ」

 

「お前が離せよ。お前が離したら俺も離してやるよ」

 

 

不毛な争いをしている二人を放って私はコンビニから出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■小ネタ4 オーフィスの依頼

 

コンコンッ

 

 

「曹操様、少しよろしいでしょうか」

 

「・・・入れ」

 

 

久しぶりに自室で寛いでいると部下が扉をノックしてきた。

あぁ、もう休憩は終わりか。

今度は一体どこの英雄様がどんな被害を出したのだろうか。

最近常備している胃薬を飲み入室を促す。

 

 

ガチャッ

 

 

「失礼します。実はオーフィス様が面会を求めているのですが」

 

「何?」

 

 

禍の団に協力している無限の竜神の名に眉を顰める。

普段こちらには顔を出すこともない奴が一体何の用だ。

 

 

「分かった。通せ」

 

「はっ!」

 

 

部下が退室、入れ替わりに入ってきた少女。

少女の姿をしているが仮初の姿であり途轍もない力を持っているため油断はしない。

いざとなれば竜殺しの英雄が何人もいる。

 

 

「それで、何用だ」

 

「ん。お願いがある」

 

「お願い?」

 

「聞いてくれたらこの組織、あげる」

 

「・・・何?」

 

 

確かに禍の団は目の前のオーフィスを頂点としているのは事実だ。

だがスタンスは協力者というもののはず。

にも拘わらず禍の団を上げる?

つまりは相応の難易度を誇るお願いなのだろう。

彼女のお願いを聞いた場合のメリットとデメリットを考えるが内容を聞いて判断しても遅くはないだろう。

 

 

「それでそのお願いとは何だ」

 

「ある人にお礼がしたい」

 

「お礼?」

 

 

コクリと頷き事の詳細を話す。

何でも彼女がかつていた無の世界が広がりグレートレッドドラゴンがいようが自由に過ごせる程の広さとなったらしい。

それでグレートレッドドラゴンを討伐しなくも問題なくなったとして彼女は無の世界に戻る事にしたと。

そしてその無の世界を広げた相手に礼をしたいとのことだった。

何だそれは・・・無の世界を広げる?そんなバカげた話があってたまるか。

だが目の前の龍神が人と同じように権謀術数に長けているとは考えにくい。

 

 

「それで、その人・・・でいいのか?相手はどんな奴だ」

 

「それが分からないからお願い」

 

「つまりどこにいるかも分からない相手を探し出せと?」

 

「手がかりならある。古い、魔力感じた」

 

 

古い魔力?とすれば古代魔法道具でも使用したのだろうか。

 

 

「たぶん3000年くらい前?」

 

「・・・は?」

 

 

それこそ神々が世を闊歩していた時代だ。

そんな時代の魔力を現代で感じただと?

一瞬、自分の派閥にいる英雄の事が思い浮かんだがすぐに消去した。

確かにその時代の英雄はいるが魔力は今、存在している身から放つものだから当てはまらない。

そうなると道具、という事になるだろうが各地で保管されている魔法道具が使用されたのならば情報として挙がってくるはず。

未発見の魔法道具か、もしくは・・・

 

 

「神器、か」

 

「たぶん。あと、ちょっと離れた場所にヴァーリの魔力感じた」

 

「ヴァーリだと?」

 

 

奴は今、堕天使陣営に潜入中のはずだが?

いや、ここ最近、美猴の姿もいない事から勝手に抜け出したな?

美猴の行先は・・・ふむ

 

 

「日本の駒王町か」

 

「お願い聞いてくれる?」

 

「ふん、いいだろう。確認するがそいつに礼を言えたら禍の団は譲ってくれるんだろうな」

 

「うん」

 

 

まさかこのような形で一派閥から団の長になれるとは思いもしなかった。

だがこれは好機。幸いにも俺の派閥には人材は多くいる。

街とは言え人海戦術で探せばすぐに見つかるだろう。

・・・問題はその人材が俺の言うことを聞いてくれるか、だが。

 

 



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第47話 年頃のバカな男子と夢見る女子

「あー疲れた」

 

「何でそんなぼろぼろなんですか八代先輩」

 

 

無事とは言い難いが何とかアルバイトを終えた。

気づけば搭城の奴も自転車と一緒に戻ってきていた。

アルバイトが終わり俺たちは我が家へと帰ろうとしているところだった。

 

 

「そういう搭城。お前、何でそんなもの背負ってんだ」

 

「修行です」

 

 

俺の質問に一言で返す搭城。

いや、修行といわれても何で亀の甲羅を背負っているんだろうか。

猫耳に猫の尻尾に亀の甲羅ってめちゃくちゃ違和感があるんだが・・・

 

 

「それよりお昼ご飯を食べたらどうするつもりですか?」

 

「あー、家で皆と宿題をする羽目になってる」

 

「宿題?八代先輩が?」

 

 

午後の予定を素直に教えたはずなのに怪訝な表情をしてくる搭城。

まるで俺が言ってはいけない事をいったような感じになるんだが・・・

いや、まぁその気持ちは分かる。

だが結城や琢磨、先輩に言われては俺も渋々納得せざるを得ないんだ。

早めに宿題を終えて残りを楽しもう、ってな。

まぁ、宿題なんて始めからやるつもりはなかったんだがなぁ

 

 

「そういえばグレモリー達に声をかけるの忘れてたな。搭城も一緒にどうだ・・っと」

 

 

ドンっ

 

 

搭城に一緒に宿題をやるかと誘ったと同時に曲がり角で誰かとぶつかる。

午前中のおかげでぼろぼろな俺はあっさりと尻餅をついてしまった。

ったく、誰だよ・・・

 

 

「わ、悪い。大丈夫か?」

 

 

慌てて立ち上がり右手を尻餅をついている俺に差し出す男。

どうやら俺と同い年ぐらいで夏休みにも拘わらず学生服の半袖を着ていた。

 

 

「いや、いいけど」

 

 

そう言いながら男の右手を左手で握り起こしてもらう。

 

 

パキンッ

 

 

「ん?」

 

 

男の右手を握った途端に何かが割れたような音が聞こえた。

しかし周囲を見ても何かが割れたような物は見当たらない。

それに先ほどのはどちらかというと内側から聞こえたような・・・

 

 

「ほんっと悪い。あと急いでるから!」

 

 

そういって足早に立ち去っていく男。

急いでいるって言うか何かに追われてる感じだったが何だったんだろうか?

まぁ、気にしても相手は行っちまったし別にいいか。

 

 

「不幸だーーーっ!」

 

 

と、先ほど男が行った方向から叫び声とバチバチッとした音が聞こえた。

・・・本当に何だったんだ。

 

 

「まぁいいか。それでどうする搭城?お前も俺の家に来るか?」

 

「・・・そうですね。部長達にも声をかけてきます」

 

「あいよー。後はデス様が大人しくしているか・・・」

 

 

そこまで言って疑問が湧いてきた。

ん?デス様?何で俺はあの黒玉の事をデス様なんて呼んでいたんだ?

確か当初は黒玉って呼んでいたような?

・・・まぁデス様って呼びやすいからいいか。

 

 

「デス様の場合、お菓子があれば静かにしてもらえるかと思いますよ」

 

「それもそうだ。お袋に何か作ってもらうか。搭城はリクエストあるか?あれば言っておくぜ」

 

「ではクッキーでお願いします」

 

「クッキーね。あいよー」

 

 

家の前で一旦、搭城と別れて玄関を潜り抜ける。

すると、丁度ライザーさんが靴を履いていた。

 

 

「あれ、ライザーさん出かけるのか?」

 

「あぁ、そうだけど。コテツはアルバイトは終わったのか」

 

「まぁね。しっかし疲れた・・・」

 

「ははは、コテツもこれで親父さんの苦労が分かったんじゃないか?」

 

 

そう言ってぽん、と俺の肩を叩いてくる。

いや、親父は営業だから俺がやったような配達はしていないって言っていたぞ。

でも俺が営業みたいな事できるわけもないしな。

そう考えると親父の仕事は大変な事なんだろうと、ぼんやりと思う。

 

 

「それで午後からはどうするんだ?」

 

「いつものメンツで集まって宿題を片付けるってさ。別にそんなのいらないってのに」

 

「・・・それはティナもいるのか?」

 

 

ガシッと俺の両肩を掴んで聞いてくるライザーさん。

さっきの肩を叩いたと同じ人物とは思えないほど力強い。

 

 

「そりゃ当然来るけど・・・つーか痛いぜライザーさん」

 

「そ、そうか。それじゃあこうしちゃいられないな!」

 

 

何を思ったか俺の肩から手を離すとくるりと踵を返して靴を脱いでいく。

あれ?ライザーさん、出かけるんじゃなかったのか。

 

 

「お袋さん!お茶とお菓子の用意ってありますか!?」

 

「あら、ライザー君。そうね、ちょっと足りなくなってきたかしら」

 

「じゃあ俺が買い出しに行ってきます!」

 

「あらあら、助かるわ。それじゃあお願いね」

 

 

昼飯の支度をしていただろうお袋と話したかと思うと俺のいる玄関に急いで来た。

再び靴を履いた後はあっという間に外へと飛び出していた。

 

 

「・・・何であのアグレッシブさが先輩の前で発揮できねーのか」

 

 

先輩が来ると分かってあの態度、本当に誰が見ても分かりやすい。

しかしその当人の前となると途端にぽんこつになるライザーさん。

これは二人がくっつくのはまだまだ先になりそうだ。

これで幾度目になるか分からない結論を出して俺は居間へと入った。

 

 

「お袋ー、メシー」

 

「もうすぐで出来るから手を洗ってきなさい」

 

「へーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがどうしてこうなったのか」

 

「どうしたライザーさん?」

 

「半蔵、そこ間違っているぞ」

 

「む?拙者は正直に『分からない』と答えを書いたでござるよ」

 

「えっとこの公式はこっちでいいんですよね高藤先輩」

 

 

コテツの部屋で俺はコテツ、タクマ、ハンゾー、ユウトの4人と一緒にいた。

4人は部屋の中央にある机の上で学校からもらった宿題をこなしている。

とは言ってもタクマは既に終えたらしくコテツとハンゾー、ユウトに教えている立場だが。

 

 

「いや、ティナが来ているのに何で俺達はここにいるんだろうなーと」

 

「そんなの先輩が面白がって男と女に別れて勉強しましょう、って言ったからだろ?」

 

「うむ。何ら不思議な事ではござらんな」

 

「僕としては教師役が少なくなって苦労しているんだがな。む、木場。ここは引っかけだ、こっちの公式を当てはめるといい」

 

「あ、なるほど。ありがとうございます」

 

 

何が悲しくて男たちだけでこんな事をしないといけないんだ。

折角ティナが来ると思ってお袋さんからのお使いを進んでやったって言うのに。

いや、お袋さんから頼まれたらお使いぐらい進んでやるけど。

 

 

「はぁ。コテツ、ハンゾー。俺もみてやるから早く終わらせようぜ」

 

「いや、別に俺は始めからやるつもりは無いし」

 

「うむ。殿や拙者を宿題如きが計ろうなど無駄な事でござる」

 

 

予想通りと言うべきか全くやる気を見せない二人。

俺が旅を出ている間にタクマとアスナはよくこの二人を勉強させる気になったもんだ。

 

 

「そんな事より木場。前から聞きたかった事があるんだけどよ」

 

「はい、何ですか?」

 

 

机の上に頬杖をついてコテツが口を開く。

それに答えながらユウトがお袋さんの用意したアイスティーを口に含んだ。

 

 

「お前、グレモリーのおっぱい揉んだのか?」

 

「ブーーーーっ!げほっ、ごほっ!」

 

「ふむ。確かに気になるな」

 

「なんと、そうでござったか」

 

「おいおい、マジか。いや、まぁ当然だよな」

 

 

ユウトの反応に俺達も思わず口に出す。

しかしユウトは俺達の思っていた事とは対極の答えだった。

 

 

「な、なんでそうなるんですか!無いですよ!」

 

「え、マジで?あ、無い方が好みなのか。じゃあ搭城の方か?」

 

「それも違います!何でそういう話になるんですか!」

 

「いや、だってなぁ?」

 

「木場はグレモリーさんと搭城さんと3人で暮らしているんだろう?」

 

「年頃の男性一人に女性二人。これで疑うなというのが無理でござるよ」

 

「そうだ、実は既に揉んだりしているんだろ?」

 

「し、してないですよ!」

 

 

どうやらユウトの反応を見るに本当に何もないらしい。

いくら女王と騎士と言った主従の関係、戦車と騎士と言った同僚の関係とは言えどうなってるんだ。

 

 

「だいたい何でそんな話になるんですか・・・」

 

「バカだなユウト。年頃の男なんてこんなくだらない事ばかり話しているに決まっているだろ?」

 

「え、じゃあ部長や朱乃先輩といるときも皆さんはこんな話を?」

 

「できるわけねーだろ。あの高1とは思えないスタイルをしている二人だぞ?自然と目が行きそうになるのを我慢してんだよ」

 

「そこまで育っていて本当に僕たちと同い年か疑問に思うがな」

 

「うむ。結城嬢やティナ嬢も発育具合が尋常ではないでござる」

 

「何、そうなのか!?そうか、ティナもまだ大きくなるのか・・・」

 

 

ハンゾーの思いがけない情報を記憶の奥底にしまっておく。

そもそも女性陣といるときにこんなバカ話ができるわけもない。

俺だってティナに惚れているとはいえ他の女性に目が映るし何も思わないわけじゃない。

 

 

「そ、それじゃあ小猫ちゃんも?」

 

「あー、あいつ変なところで無防備だよな」

 

「うむ。以前も一緒に"けーきばいきんぐ"に行ったでござるが見ていてはらはらしたでござる」

 

「半蔵とは食の好みも合うからとはいえ、一度気を許すとスキンシップが増えるのはどうだろうか」

 

「っていうかリアスが主な一因じゃないか」

 

 

グレモリー家は昔から悪魔なのに愛を謳う一族だ。

一度家族と認められるとまるで態度が異なると言われているぐらいだ。

ユウトも心当たりはあるのか視線を逸らした。

あの様子じゃ胸は揉んではいないが抱き着くぐらいはされたな。

 

 

「グレモリー嬢が一因というのはよく分からぬがティナ嬢も同じではござらんか?」

 

「そうだな。知り合って年々とスキンシップが増えているな。隙でも見せようものならからかってくるから油断ならない」

 

「何、羨ましいぞお前たち!」

 

 

俺なんて、俺なんてティナと隣同士の家でそれこそティナが生まれた時から一緒だったんだぞ!?

・・・ま、まぁあの頃はティナの事が好きだなんて自覚もなくて俺も今とはまるで違う性格だったしな。

あの頃の性格のままだとティナに嫌われていたかもしれない・・・

この性格を矯正してくれたお袋さんには感謝しても足りないぜ。

 

 

「結城の奴もな。あの天然、どうするよ」

 

「もういっそあきらめた方がいいんじゃないか?」

 

「コテツとデートしても意識していなかったんだろう?」

 

「結城嬢はもう一目惚れをするか、意中の者が命の危機に陥らぬ限り気づかぬでござるよ」

 

「そ、そこまで言いますか・・・」

 

 

あーうん。コテツとアスナのデートは以前に聞いたことがある。

ティナが面白半分、そして異性との扱いを教えようとした意味も半分含めてはいるんだろう。

アスナもどこかリアスと一緒で他の男連中には冷たいがコテツ達にはどこか甘い部分がある。

・・・あれ、そうすると周囲の人間が全員似たような連中のような?

 

 

「へいへい、それで木場はどうなんだよ」

 

「ど、どう、とは?」

 

「そんなものは決まっているでござろう」

 

「要するにリアス達のおっぱいを揉みたいのかって事だよ!」

 

「そら、さっさと白状した方が身のためだぞ?」

 

「そ、それは・・・言えるわけがないじゃないですかーっ!」

 

 

ユウト、それは言ってるようなものだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何か上が騒がしいわね」

 

「もう宿題が終わったのかしら?」

 

 

トラちゃんの家のリビングで女性陣だけで宿題を行っていると二階が騒がしいのに気づく。

んー、面白そうだからって別れたけど失敗だったかしら?

 

 

「そんな、八代君と服部君がこんなに早く終わるなんてありえないよ」

 

「事実ですけど辛辣ですねアスナ先輩」

 

「え?何か言った?小猫ちゃん」

 

「いえ、ここが分からないんですけど」

 

 

私は夏休みが始まる前に宿題は終わらせたから結構暇なのよね。

校舎が壊れても宿題を死守した学校側を褒めるべきなのか呆れるべきなのかは分からないけど。

うん、時間も頃合いだし私の本当の目的を話すとしましょうか。

 

 

「さぁ、一旦休憩にしましょう」

 

「そうですわね。ちょっと集中して疲れましたし」

 

「んー!肩が凝っちゃったわ」

 

 

皆が背筋を伸ばしたりトラちゃんのお母さんの作ったクッキーに手を伸ばす。

さすがトラちゃんのお母さんね。とっても美味しいわ。

私も教えるために話し続けていたためアイスティーで喉を潤す。

 

 

「さーって、そ・れ・じゃ・あ」

 

「何か企んでないティナ?」

 

「んふふー、そんな事は無いわよリアスちゃん」

 

「そんなあからさまに企んでいますって顔をして言われても説得力がないですよ」

 

「よよよ、私の事が信じられないのね。お姉さん悲しい!」

 

「だ、大丈夫ですよティナ先輩。私は信じてますから」

 

「ありがとうアスナちゃん。私の味方はアスナちゃんだけよ!」

 

「あ、あははー・・・」

 

 

最近リアスちゃん達の反応が冷たいの。

夜中に修行と称してはぐれ悪魔狩りに連れまわしているからかしら?

ちゃんと格下だけど皆の弱点を攻めるような相手を任せていたのに何が不満なのかしら。

 

 

「それでどうしましたの?」

 

「男性陣を上に追いやって女性陣だけになったのよ?話す事なんて決まっているじゃない」

 

「それは何ですか?」

 

 

首を傾げて頭の上の猫耳をピクピクと動かす小猫ちゃんを抱きしめたい衝動を必死に抑える。

駄目よティナ、今は耐えるとき。やろうと思えばいつでもできるのから今は我慢するのよ。

・・・でも何で亀の甲羅を背負っているのかしら。

 

 

「恋バナに決まってるじゃない!」

 

『え?』

 

 

欲求に耐えて本当にしたかった話をすると4人が不思議そうな顔をした。

あ、あら?私間違えたかしら?

いえ、ちゃんと恋バナって言ったわよね?

 

 

「皆も中高生なんだし恋の一つや二つはしたいとは思わないの?」

 

「うーん。よく分からないんですよね。私の場合、男の子の知り合いってあんまりいないし」

 

「わたくしも興味はありますがオロチ様のお守で手一杯ですし」

 

「今は強くなるって明確な目標がありますので」

 

「そうね、グレモリー家として思うところが無いわけではないけれど」

 

 

・・・あらら?

この子達、本当に年頃の女の子なのかしら?

私の想像していたキャッキャウフフな会話は何処に行ってしまったと言うの。

 

 

「そういうティナはどうなの?」

 

「え、私?それはもちろん恋してみたいと思うわよ」

 

「ライザーさんとか?」

 

「ライザー君?ライザー君は無いかなぁ。気のいいお兄さんって感じ」

 

 

私がそういうと何故か皆が上を生暖かい視線で見ていた。

んん?どうしたのかしら?

ライザー君は私が幼い頃から近所に住んでいた人で年の差もあってかお兄さんみたいな人だ。

暫く年を重ねてライザー君は女垂らしだとか女の敵だとか噂を聞く事もあった。

でも私が中学校に上がってトラちゃん達と会ってライザー君と再会した時、そんな噂は嘘だとすぐに分かった。

まぁライザー君の存在を忘れていたってのもあるんだけど・・・

私を見るなり挙動不審にちらちらと見てきたりする様子はまるで母親に叱られる子供みたいだったんだもの。

 

 

「うわぁ・・・ティナに掛かればライザーも形無しね」

 

「同情しますわ」

 

「じゃあどういった男の人がいいんですか?」

 

「それはもちろん!一緒にいて楽しい人よ。トラちゃんとかハンゾーちゃんとかタクマちゃんとか」

 

 

言い切って私は4人の様子を伺う。

驚いている4人の内、アスナちゃんと小猫ちゃんは至って普通。

 

 

「え、そうなんですか?」

 

「まぁあの3人の先輩方なら一緒にいて退屈はしないでしょうね」

 

 

小猫ちゃんはいいとしてもアスナちゃん・・・

さっき言った男の子の知り合いってトラちゃん達3人の事なのに。

どうしてそこで諦めるのよ!もっと食いついてきなさい!

くっ、私のアスナちゃん鈍感矯正計画はまだまだって事ね。

トラちゃん、ハンゾーちゃん、タクマちゃんの誰かに恋をしてくれたらますます楽しい事になったかもしれないのに!

 

 

「ふ、ふぅん。そうなの」

 

「そ、それはティナさんにぴったりですわね」

 

 

一方でリアスちゃんと朱乃ちゃんの反応に私は思わず笑みを深めそうになるのを堪えた。

いえ、まだ慌てるような時間じゃないわ。

これはまだ友人が好きと言われて戸惑っているような感じと見たわ。

もしリアスちゃんと朱乃ちゃんが3人の内、誰かを好きなようなら二人の性格ですもの。

もうちょっと反応がよくてもいいはずよ。

 

 

「さぁ私は話したんだから皆も聞かせてちょうだい!」

 

 

しかし反応は全く変わらず。

むぅ。まさかこの子達がここまでとは思わなかったわね。

いえ、恋愛面について話題が無かったわけではないはず。

さっき言ったように興味も無いわけではない。

それなら今度から異性を意識させるようなイベントをすれば問題は無いわね!

 

 

「ふふふ。さーって何から始めようかしらー」

 

「また良からぬことを考えていますわね」

 

「無駄よ朱乃。ああなったらティナは止められないわ」

 

「ま、まぁティナ先輩だから八代君とは違って酷い事にはならないよ」

 

「アスナ先輩、あまり説得力はありませんよ」

 

 

そうだ!最近吸血鬼が住んでいる館があるって噂があったわね。

まぁここ数年私が住んでいる街で本当だったとしたら私の耳に入らないわけがないから多分ガセでしょう。

折角の夏だし肝試しという事で行ってもらいましょう。

でもこの後は普段行っている、はぐれ悪魔の討伐じゃなくて妖怪の依頼があったから・・・

うん。明日にでもトラちゃんとハンゾーちゃん、タクマちゃんにアスナちゃんで行ってもらいましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うげぇ。もう腕が動かねーよ」

 

「もぅ、普段から勉強しないからだよ」

 

 

夕日も沈みだしようやく宿題という名の地獄が終わった。

リビングに降りてソファに寝そべった俺に結城が相変わらずの小言を言い出す。

それを聞き流しながらテレビを点ければニュースが流れていた。

 

 

「おい明日はスペースゴジラが来るらしいぜ。見に行こうぜ」

 

「そうなると外出は避けた方がいいか」

 

「今回は誰が出撃するかな」

 

「ロンドベル隊か鋼龍戦隊か・・・大穴でEDFか」

 

 

見には行きたいが問題は何処でみるべきか。

俺が見晴らしのいい場所を幾つかピックアップしていると先輩が声をかけてきた。

 

 

「トラちゃん。お願いがあるんだけど」

 

「ん?お願い?」

 

「そう。今回の知的探求部のミッションよ!」

 

 

そう言って一枚の紙を俺に渡してきた。

知的探求部と言うことで半蔵と琢磨、結城も俺の持っている紙を見ている。

とりあえず開いてみないと分からないので二つ折りになっている紙をペラっと開く。

 

 

「吸血鬼を探せ?」

 

「吸血鬼って・・・これはまた前時代的な」

 

「えー、本当にいるんですか?」

 

「それが分からないからお願いしているのよ」

 

「吸血鬼ねぇ。天使や悪魔じゃあるまいし、妖怪がいるぐらいだから吸血鬼がいても不思議じゃないか」

 

「コテツ、お前のその基準はどうなってるんだ・・・」

 

 

何故かライザーさんとグレモリーが複雑そうな顔をしている。

いや、子供じゃないんだし天使と悪魔がいないなんて分かりきった事だろうに。

 

 

「誰か吸血鬼の知り合いとかいないのか?」

 

「・・・さぁ、知りませんわ」

 

「・・・えぇ、見たことも聞いたこともありませんね」

 

 

俺が聞くとふいっと視線を逸らす姫島に搭城。

グレモリーや木場も同じく視線を逸らしていた。

なんだ、4人とも窓の外を見て。暗くなったから帰りたいんだろうか?

 

 

「そうですわね。もしいたら危険ですので吸血鬼の苦手なものを持って行ってはどうでしょう?」

 

「吸血鬼の苦手なもの?にんにくと十字架とか?」

 

「確か流水と太陽も苦手と知り合いの者が言っていたでござるよ」

 

「え、服部君。吸血鬼に詳しい忍者さんとかいるの?」

 

「忍ではござらんが、キシン流なる剣士が武者修行で忍びの里へ来た時に伺ったでござる」

 

 

うーむ、意外と弱点が多いんだな吸血鬼ってのは。

デメリットばかりでメリットが一つも無いじゃねーか。

 

 

「吸血鬼ってのは可哀そうなんだな」

 

「えっと、でも人間よりも身体能力は高いんですよ?」

 

「マジでか!」

 

 

木場の重要な言葉に俺は驚愕を隠せなかった。

人間よりも身体能力が高いって事はどの人間よりも高いって事か?

 

 

「だとしたら市長よりも身体能力が高いのか・・・これはヤベェな」

 

「そんな・・・思っていたよりも危険なんだね」

 

「ぬぅ、さすがに市長程の身体能力があるとは思いたくないでござるが・・・警戒しておいて損はないでござるな」

 

 

俺達は木場のおかげで気を引き締める事が出来た。

これは今までの知的探求部の中でも一、二を争う危険度だ。

 

 

「・・・コテツ。私が言うのもどうかと思うけど警戒し過ぎじゃない?」

 

「何言ってんだグレモリー!市長よりヤベェんだぞ!」

 

「そうだよリアス!運がよくて死んじゃうんだよ!」

 

「え・・・貴方達の言う市長って誰の事よ」

 

「そんなのブロリー市長に決まっているだろ」

 

「人参を目の前にしなければ良き市長なのでござるが・・・ぶるる、思い出しただけで恐ろしいでござる」

 

「ブ、ブロリー?そんな市長だったかしら?」

 

「何言ってるんですのリアス。前からそうだったではありませんの」

 

 

おかしいな。グレモリー達が来て数カ月も経っているのに市長の事を知らないとは。

テレビとか見てないんだろうか?

ほとんど出ない日は無いと言ってもいいぐらいなのに。

駒王市に住んでいる奴なら市長の岩盤叩きつけは見ない日はないぜ。

 

 

「おっとそうだ先輩。肝心な事を聞き忘れていた」

 

「あら、何かしらトラちゃん?」

 

「その吸血鬼がいるってのはどの辺りなんだ?」

 

「そうだな。もう少し情報の開示をして欲しいのですが?」

 

 

駒王市はとても広い。その中心にある駒王町に絞ったとしても範囲が広すぎる。

もう少し情報は無いのかと思ったが、そこは先輩。しっかりと調べていた。

 

 

「あぁ、場所はもう分かっているのよ」

 

「ならば明日の朝から行けば問題ないでござるな」

 

「それでティナ先輩それってどこなんですか?」

 

「えぇ。アスナちゃんの家の近所にある紅魔館って呼ばれている場所よ」

 





本作のヒロインについては今のところ特に考えていません。
一人になるのか複数人になるのか全くのゼロかは、
今後の話の展開次第でノリで決めようと思います。


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第48話 紅き魔の館 訪問

「ふふん、ここだな吸血鬼がいる仔馬館ってのは」

 

「紅魔館だ虎徹」

 

 

先輩からミッションを受けた翌日、俺達は結城が住む高級住宅街に来ていた。

そして問題の館へと来たわけだが・・・

 

 

「赤いな」

 

「赤いね」

 

「赤いでござる」

 

 

赤い壁に赤い屋根、何故か少ない窓の中から見える壁紙も赤い。

早くも目がチカチカしてきたぜ。

吸血鬼ってのは趣味が悪いんだなぁ。

 

 

「それで、この人どうするの?」

 

「むぅ、さっきから身動き取らないでござるな」

 

 

俺達がこうして騒がしくしても全く変わらない姿勢の女性がいた。

門の前にいる事から守衛なのかもしれない。

チャイナドレスを着た守衛ってのがいるか分からねーけど。

 

 

「あのーすみませーん」

 

「瞑想しているのでござろうか」

 

「気絶しているのではないか?」

 

「寝てんじゃねーの?」

 

 

結城が声をかけてみるが全く反応が無い。

眼を瞑っているんで寝てんじゃねーかな。

まぁ立ったまま寝る事ができるのか知らないけど。

結城は更に一歩踏み込んで女性へと近づき耳を澄ませる。

そして何かに気づいたのかこちらへと戻ってきた。

 

 

「皆、あの人寝てるよ」

 

「マジでか」

 

 

冗談で言ったのにまさか本当だったとは。

しかしこんな炎天下の中で立ったまま寝るなんてな。

よく見れば頬に薄っすらと汗が流れている。

今日はあの元テニスプレイヤーも日本にいるからな、まだまだ暑くなるだろうし。

 

 

「よし琢磨。簡易ベッドがあったろ、あれに寝かせて上げようぜ」

 

「そうだな。ちょっと待て」

 

 

琢磨がパイプベッドを門の横に転送させる。

ご丁寧に冷感の敷きパッドも用意していた。

俺と半蔵で彼女を起こさないようにベッドへ寝かせて結城がタオルケットをかぶせた。

守衛の女性は先ほどよりも心地よいのかすやすやと眠ったままだ。

 

 

「後は日除け用にビーチパラソルでも立てれば問題ないだろう」

 

「日射病は怖いからね」

 

「うむ。これで安心でござるな」

 

 

琢磨の出したビーチパラソルでベッドを日陰に入れて完成だ。

俺たちはよく分からない達成感に気分よくしていると後ろから声をかけられた。

 

 

「・・・何をしているの貴方達」

 

「ん?」

 

 

振り返れば買い物袋を持ったメイドさんがいた。

眉を顰めて困惑した表情をしている。

この館で働いているメイドさんだろうか?

 

 

「あれ、咲夜?」

 

「明日菜まで何をしているの」

 

「なんだ結城、知り合いか?」

 

 

結城が知っていそうなので聞いてみると何故か呆れた顔をされてしまった。

半蔵は何か思い出そうと、うんうんと唸っている。

琢磨の方を見ると結城と同じく知っているのか俺と半蔵を呆れた様子で見ていた。

 

 

「僕たちと同じクラスの十六夜咲夜さんだろう」

 

「同じクラス?」

 

「そうよ。本を出す問題児の八代虎徹君」

 

 

どうやら俺の事を知っているって事はそうなんだろう。

しかし十六夜咲夜なんてクラスメイトいたっけ?

だが脳裏に入学初日の親睦会で手品を披露している彼女の姿が浮かんだ。

って事は本当なんだろう。どこか腑に落ちないが。

 

 

「いやー悪い悪い。それで十六茶だっけ」

 

「十六夜よ」

 

「お前、この館のメイドなのか?」

 

「そうだけど貴方達、紅魔館に何か用かしら?」

 

「あぁ。できれば館の主人と話をさせて欲しい」

 

「・・・まぁ、いいでしょう。少し待っていてちょうだい」

 

 

買い物袋を持って十六茶が館の中へと入っていく。

吸血鬼を探しに来たんだから館の主人に話を通さなくちゃいけないのは当然だ。

別に勝手に入っても構わないとは思うが主人の許可が出るなら、そっちの方がいいしな。

 

 

ガチャッ

 

 

「お待たせしました。どうぞこちらへ」

 

 

1分も経たない内に戻ってきた十六茶。

早くね?

こいつ、どんだけ足が早いんだ。

 

 

「ところで・・・」

 

 

俺たちが門を潜ろうとしたところで十六茶の奴が視線をずらす。

その視線へと向けると未だにベッドですやすやと寝ている守衛さんがいた。

 

 

「貴方達がこの現状を造り出したの?」

 

「そうだけど何か?」

 

「このような日差しで眠るのも体力を使うでござるよ」

 

「はぁ・・・甘やかさないで頂戴」

 

 

溜息一つ吐いて何処からか取り出したナイフが寝ている女性の額へと突き刺さった。

そして何事もなかったかのように館の中へと入っていく。

 

 

「すげーな。まだ寝てるぜ」

 

「あわわ、ぬ、抜いてげないと」

 

「まて結城さん。下手に抜けば血が噴き出すぞ」

 

「気づいておらぬからそのままにしておくでござるよ」

 

 

人体の神秘を垣間見た俺たちは十六茶に続いて館の中へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ」

 

「すげーな」

 

 

館の中へと入るとその広さに思わず声が漏れる。

八代君もきょろきょろと辺りを見回して驚いていた。

エントランスにしてはやけに広い。また奥に続く道や左右へと繋がる道も先が見えない程に続いている。

あれ?そこで疑問に思う。

外から見える敷地の広さと目の前に続く通路の先が見えない状況に。

 

 

「どうなっている?空間を歪ませているのか?いや、しかしそんな装置も見当たらないが・・・」

 

 

高藤君も私と同じ事を思ったのか眉根を顰めて周囲を観察していた。

そうだよね、幾らなんでもこの状況が普通じゃない事は分かる。

 

 

「殿!これだけ広ければ運動会もできるでござるよ!」

 

「バカだな半蔵。家の中で遊ぶならかくれんぼだろ、ここなら隠れるところに悩みそうにないぜ」

 

 

私と高藤君の悩みも知った事かとばかりにはしゃぐ二人。

うーん、考えすぎなのかなぁ。

 

 

「そろそろいいかしら?」

 

「あ、ごめんね咲夜」

 

 

先ほどと同じ呆れた表情の咲夜が私たちを先に促す。

メイドさんの姿をしているって事はここで働いているのかな?

学校もあるのに大変そうだと思わず感心してしまう。

 

 

「貴方達なら危害を加えられないだろうけれど、お嬢様に粗相のないようにね」

 

「お嬢様?」

 

「この紅魔館の主人であるレミリア・スカーレット様よ」

 

 

咲夜の案内で奥へと進みながら注意を促される。

どうやらこの館の主人は女性らしい。

 

 

「なぁ十六茶」

 

「十六夜よ」

 

 

八代君の間違った名前に即座に返す咲夜。

あ、これはもう変えられないな。ナコルルの例があるため私は即座に悟った。

八代君のニックネームのセンスの無さはどうしようもない。

しかも止めさせるなら本当に強くしつこく言わないと止めてもらえない。

咲夜にもアレぐらいじゃあ八代君は止めないって言った方がいいのかな。

 

 

「最近変な事とか無かったか?」

 

「変な事?」

 

「そうそう、化け物がうろついたりとか」

 

「別に今に始まった事じゃないでしょう」

 

「んー、それもそうか」

 

 

咲夜の言葉に八代君も納得して引き下がる。

今、こうしている間にも駒王市郊外でスペースゴジラが出現しているしね。

 

 

「さぁ、この扉の向こうにお嬢様がおられます」

 

「よし、任せておけ」

 

「あ、ちょっと!」

 

 

ずいっと八代君が咲夜の前に出て扉を思いっきり開け放った。

 

 

「犯人はこの中にいる!」

 

「あら、随分と元気のいいお客様ね」

 

「あれ?」

 

 

部屋に入れば小さな女の子がいた。

まるでお城の謁見の場みたいになっていて奥の椅子に腰かけて私たちを見下ろしている。

椅子に座っていながら彼女の背中から蝙蝠の羽みたいなのが見えている。

あ、もしかして蝙蝠の妖怪なのかも。

 

 

「ようこそ紅魔館へ。それで咲夜のクラスメイトとの事だけど私に何の用かしら」

 

「お、おう。あれ?おっかしーな」

 

「殿、殿。まずは説明をせねば」

 

「おっとそうだった。実はな・・・」

 

 

何故か首を傾げて不思議そうにしている八代君が服部君に促されてここに来た目的を説明する。

もしかして吸血鬼が館の主人と思ったのかも。

私も最初はそう思ったけど、さすがにそれは違うんじゃないかな。

 

 

「そう、吸血鬼をね。それでその吸血鬼を見つけたらどうするの?」

 

「どうって・・・考えて無かったな」

 

「僕としては生態に興味があるがな」

 

「なるほど、貴方達がここへ来た目的は理解したわ」

 

 

顎に手を置いて考えるような仕草をするレミリアちゃん。

暫くの間そうしていたかと思うとニヤリと子供が悪戯を思い浮かべたような顔をした。

そして悩まし気に溜息を吐く。

 

 

「隠そうとしていたけど貴方達ならいいわね。実はこの館は吸血鬼に支配されているの」

 

「何と!」

 

「毎夜、どこからともなく現れては館の住人が血を吸われているのよ」

 

 

そんな!それって大変な事だよ。

私たちが驚きながらレミリアちゃんの話を聞く。

 

 

「現在、この館には私の客人も数名滞在しているのだけど・・・」

 

「もしや、その中に吸血鬼がいるかもしれないと?」

 

「えぇ、彼らは私の旧くからの友人だから疑いたくはないのだけど」

 

「で、でも!その人たちとは全く関係ない人が吸血鬼かも」

 

「そうね、別に吸血鬼がいてこの館に入り込んでいる可能性も否定できないわ」

 

 

悲観そうな顔をしながら口元を手で押さえ、肩を震わせるレミリアちゃん。

こんな小さな子が主人だと言うだけでも大変そうなのに吸血鬼に支配されるなんて。

 

 

「よし、それなら俺たちで吸血鬼を捕まえてやろうぜ!」

 

「うんそうだね!」

 

「拙者も微弱ながら力を貸すでござるよ!」

 

「そういう事なら僕も力を貸そう」

 

「いいの?見たところ貴方達は一般人。吸血鬼にかかれば一溜りも無いわよ?」

 

「細かい事は気にするな!俺たちに任せな!」

 

 

八代君が胸を叩いて宣言する。

やっぱり吸血鬼がいるという事に恐怖していたのか、レミリアちゃんの目元に涙が浮かんでいる。

小さな女の子を泣かせるなんて吸血鬼は何としても捕まえないと!

こんな事ならフェルちゃんも連れてくるべきだったかも。

 

 

「・・・お嬢様、本当によろしいので?」

 

「あら、咲夜。彼らの心意気は立派よ。私も笑い転・・・じゃなくて心を打たれたわ」

 

 

これまで黙っていた咲夜が神妙な面持ちで言うのに対して、

バンバンと椅子のひじ掛けを叩きながらレミリアちゃんが言ってくる。

 

 

「咲夜。早速だけど、この館の住人全員に彼らと顔合わせをしてあげなさい」

 

「はぁ。分かりましたお嬢様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・凄い蔵書の数だな」

 

 

拙者達が十六夜嬢に通されたのは図書館のような場所でござる。

うぅ、本を見ていると眠くなるので苦手でござるよ。

 

 

「こちらに2名程、お嬢様のご友人が滞在しておられれます」

 

「なるほど、容疑者ってわけだな」

 

 

殿の言葉に拙者も気を引き締めなおす。

いたいけな少女であるスカーレット嬢を苦しめる吸血鬼め。

拙者達が成敗してやるでござる!

 

 

「パチュリー様。少しよろしいでしょうか」

 

「えぇ、レミィの使い魔から事情は聴いているわ。小悪魔、休憩しましょう」

 

「はい。あ、咲夜さん手伝います」

 

 

十六夜嬢と話しているのは二人。

一人は拙者達に礼をして十六夜嬢と奥へと向かっていた赤髪の女性。

スカーレット嬢と同じ蝙蝠の妖怪でござろうか?

そしてもう一人は寝間着のような服を着ている紫髪の女性。

ぬぅ、拙者ふぁっしょんには疎いでござるが一般的な服装なのでござろうか。

 

 

「私はパチュリー・ノーレッジ。基本的にはココで本を読んでいるわ。お茶を汲みにいったのは司書の小悪魔よ」

 

「パチュリーさん。幾つか質問があるんだけどいいかな」

 

「えぇ、どうぞ。レミィの言う吸血鬼を早く捉えてくれるのなら協力も吝かではないわ」

 

 

結城嬢が幾つか質問していく中で拙者は気になる事があった。

ノーレッジ嬢の肌は白い。それはまるで日陰に出たことがないまでに。

吸血鬼は日の光の下を歩くと太陽の光で肌が焼けただれるという。

もしや、ノーレッジ嬢は吸血鬼なのでは?

 

 

「琢磨、お主どう思う?」

 

「・・・半蔵にしてはまともな推理じゃないか」

 

「そうでござろう?」

 

「しかし、吸血鬼は夜まで眠るものじゃないのか?まぁ噂なので本当かは知らないが」

 

「そうなのでござるか」

 

 

となると今起きている館の住人は吸血鬼では無いのでござろうか。

 

 

「なぁ、俺からも一つ質問があるんだけど」

 

「何かしら?」

 

「アンタ達、普段ココにいるなら知識もあるんだろ?結局吸血鬼の特徴って何なんだ?」

 

 

確かに殿の言われる通りでござるな。

拙者達が知っているのは噂程度の情報ばかり。

正しき情報と言えばこの館を吸血鬼が支配しているという事のみ。

 

 

「概ね貴方達の考える吸血鬼像であっていると思うわよ」

 

「ではやはり日中は出歩いたりしないでござるか」

 

「但し、日の光を克服したハイ・デイライトウォーカーと言ったタイプもいるから注意ね」

 

「そうなんだ。じゃあこうしている間にも出かけているかもしれないね」

 

 

むむむ、逆に言えば目の前のパチュリー嬢も吸血鬼の可能性があるでござるか。

と、子亜隈嬢と十六夜嬢が紅茶を持って戻ってきた。

 

 

「お待たせしました。お茶請けにマドレーヌもご用意しましたよ」

 

「おぉ!かたじけない!」

 

 

子亜隈嬢は吸血鬼ではござらんな!

斯様な親切な娘がこの館を支配するなど考えられぬでござる!

 

 

「一先ずお茶会としましょう」

 

 

ふむ。そういえばココに来る前に放った分身はどうしているでござろうか。

意識を分身へと飛ばしてみる。

どうやら何処かの部屋にいるようでござるな。

 

 

「あ、半蔵!お前俺より一個多く食いすぎたぞ!」

 

「何の!殿といえども譲れぬでござる!」

 

「二人とも!もぅ恥ずかしいなぁ」

 

「まだ必要でしたら追加でご用意しますが?」

 

「あのペースだとすぐに無くなるから申し訳ないが用意してもらえると助かる」

 

 

殿と、まどれーぬの熾烈な奪い合いをしつつも分身から送られてくる情報に意識を傾ける。

部屋の壁にかけられていたのは駒王学園の女性用の制服。

となれば十六夜嬢の部屋でござろうか?

 

 

「なぁなぁ。アンタの羽って空飛べるのか?」

 

「確かによく見ればデス様の耳にある羽と同じだな。少し解剖させてくれないか?」

 

「ダメに決まってるじゃないですか!」

 

 

ベッドの横に置かれている紙袋から何か出ているでござるな。

丸み帯びた形状のものが2つ、ビニールで封をされており、商品名が書かれている。

むむ、何者かが部屋に近づいてきているでござるな。探索を打ち切り拙者は分身を消す。

しかし先ほど書かれていた商品は何でござろうか?ぴーえーでぃー?

後で誰かに聞いてみるでござる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館から退室した俺達は十六茶の案内で次の場所へと進んでいく。

図書館の奥に下へと続く階段があったので十六茶に聞いてみたところ。

 

 

「そちらは長らく使っていないし暗いから近づかない方がいいわよ」

 

 

との事で別の場所へと向かっていた。

何でも他の友人たちは丁度一か所に集まっているらしい。

 

 

「さぁ、ここよ」

 

 

ここに来るまで何度か道を曲がったりしたので帰り道がさっぱり分からない。

おっと、そんな事より吸血鬼を早いところ見つけないとな。

十六茶が扉をノックして声をかけて中へと入る。

俺たちもそれに続いて入れば全部で6人ほどいた。

 

 

「おや、彼らがレミリアの言った子達かね」

 

「えぇ。お手を煩わせて申し訳ありませんがお嬢様のお遊びにお付き合いください」

 

「ふん、別に構わんがな」

 

「いいわよー。私もちょうど暇してたところだし」

 

 

こうしてみれば全員が怪しく思えるから困ったもんだ。

とりあえずお互いに自己紹介をする。

容疑者である6人はそれぞれ、スレイヤー、シャロン、ディオ、アルクェイド、アーカード、ギャスパーと名乗った。

んー、吸血鬼のイメージって黒いマントとか身に着けてそうなんだけど誰もいないな。

 

 

「少年、吸血鬼を見つけたとして抗う手段はあるのかね」

 

「え?ニンニクが嫌いらしいからニンニクラーメンとか出してやれば一発じゃね?」

 

「あ、私ニンニクラーメン食べたーい」

 

 

アーカードとかいう赤ずくめの男が聞いて来たので素直に答える。

するとアルクェイドとかいう女が呑気に手を挙げてきた。

アーカードにアルクェイド、何か似たような名前だな。兄妹だろうか?

 

 

「ならば銀や法儀済みの道具があれば傷をつけられる、とでも言っておこうか」

 

「銀、後何だって?ほーぎずみ?琢磨、分かるか?」

 

「後半は知らないな。しかし銀製か、弾丸にするにしても若干効率が悪いな」

 

 

いっそ銀の杭なんて作ってしまえばいいんじゃないだろうか。

でも大きいと振り回すのに苦労しそうだな。

いざとなれば琢磨の衛星からの太陽ビームで何とかなるだろう。

 

 

「ところで皆さん吸血鬼を見かけた人はいますか?」

 

「いや、知らんな」

 

「み、見た事ないです・・・」

 

「ドンナヤツナンダロー」

 

 

結城が聞いても誰も吸血鬼を見たことが無いようだ。

ハートマークのついた服を着ているディオって人を始め、口々に知らないと言ってくる。

やっぱり夜中に皆が寝静まった時に現れるのかもしれない。

 

 

バチンっ

 

 

突如、そんな音と共に周囲が真っ暗になる。

何だ?ブレーカーでも落ちたのか?

この部屋には窓は無いようで日中にも拘わらず全く周囲が分からない。

 

 

「何だ、どうした?」

 

 

ガサッ

 

 

「きゃっ!」

 

「わわわ、今の声はシャロンさん!?」

 

「ちょっとは落ち着けギャスパー」

 

「ふふふ、面白い展開ではないか」

 

 

真っ暗闇の中で物音と声だけが反響する。

暗視ゴーグルでも持ってくればよかったな。

 

 

バタンッ

 

 

パッ

 

 

そんな事を考えていると復旧したのか部屋に光が灯る。

全く、何だったんだろうか。

 

 

「シャロン!どうした!?」

 

 

一目見ただけでわかるナイスミドルな紳士、スレイヤーさんがシャロンさんに駆け寄る。

見れば青白い顔をして倒れていた。

俺たちも駆け寄り気づいた。

 

 

「あ、首のところに小さな穴が!」

 

「こ、これはもしや吸血鬼!?」

 

 

そう、シャロンさんの首元に小さな穴が開いていて血が流れていた。

シャロンさんを抱えているスレイヤーさんの口元からは悔しさからか血が零れ落ちていた。

はっ、こうしちゃいられない!

俺はすぐさま開いている扉を抜けて通路へと出る。

 

 

「ちっ、何処に行った?」

 

「この通路では足音も消されてしまうでござるな」

 

 

俺の後を追ってきた半蔵が屈んで説明する。

高級っぽいカーペットが敷かれていて足を踏み鳴らしても音が聞こえない。

 

 

「八代君!見つかったの!?」

 

「いや、どっちに逃げたかも分からないな」

 

「ちっ、ナインボールでも先に配置しておくべきだったか」

 

 

続けて結城と琢磨も追いかけてきた。

こうなっては一刻も早く吸血鬼を見つけないとな。

 

 

「よし、手分けして探すぞ。琢磨、通信機を」

 

「あぁ、人数分用意しよう。使い方は分かるな」

 

「うん、大丈夫」

 

「拙者も問題ないでござる」

 

「貴方達、何かあったの?」

 

 

そこへ十六茶が通路からやってきた。

そういえばコイツ気づいたら部屋にいなかったな。

まぁいいや。

 

 

「俺達は吸血鬼を追う。部屋の中にシャロンさんが血を吸われたみたいだから後は頼んだぜ」

 

「あ、ちょっと」

 

「ごめん咲夜。急いでるから!」

 

「やれやれ、もう少し情報を得たかったのだがな」

 

「しからば御免!」

 

 

後の事は十六茶に任せて俺たちは吸血鬼を探し求めて長い通路を走って行った。

 

 

「・・はぁ、館を壊さないか心配だわ」

 

 




ハンニンッテ、ダレダロー

容疑者リスト(虎徹視点)
容疑者A:パチュリー・ノーレッジ
容疑者B:小悪魔
容疑者C:スレイヤー
容疑者D:シャロン  ×:被害者
容疑者E:ディオ・ブランドー
容疑者F:アルクェイド
容疑者G:アーカード
容疑者H:ギャスパー・ヴラディ


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番外編
番外編 その1  制限全解除版


1周年記念

早いもので気づけば投稿して1年が経ちました。
6~8月は色々と忙しく更新できずに申し訳ありません。
お話の中ではまだ3ヶ月くらいしか経っていない始末・・・
皆様の感想なども読ませて頂き大変励みになっています。
そこで記念として本編の制限全解除版を執筆しましたのでお楽しみ下さい。


はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常 inフリーダム編


本編との変化点
・格闘ゲーム、MUGENでの二次創作キャラが登場します。
・本編とは関係ありません。
・本編よりもカオスな仕上がりです。



なんやかんやあり、俺達も3年となった。

先輩は卒業してしまったが俺達は大して変わりない日々を送っている。

 

 

「八代!廊下に罠を仕掛けるなと何度言ったら分かるんだっ!」

 

「何度言っても分からないから仕掛けるんだよっ!」

 

 

既に何度目か分からないヨハン先生との追いかけっこ。

どうせ後で放送で呼ばれて説教が待っていると分かっていても逃げてしまう。

と、今日は他の奴も俺を追っているようだ。

 

 

「待たんかいっ!生徒会室の扉を溶着するなんて何考えとんねんっ!」

 

「久しぶりの学校やのに自分の席に花瓶を置くとはどういうコトやっ!」

 

 

生徒会長のラビリスと1年の八神はやての関西弁コンビだ。

関西の血を宿しているだけあってか打てば響くノリで中々面白い二人だ。

グレモリーの幼馴染が生徒会長だった気がしたが気のせいだったぜ。

追っ手が増えたのでスピードを上げようと思ったところで見知った奴を見つけた。

 

 

「霧雨!行くぞ!」

 

「ん?・・・げっ!またかよっ!」

 

「報酬はこの間、赤い配管工からもらった1UPキノコをやろう」

 

「早く後ろに乗るんだぜっ!」

 

 

箒を持った魔法使いみたいな格好の1年、霧雨魔理沙。

マジで箒に乗って空を飛べるらしく逃走手段としてよく頼っている。

霧雨が箒にまたがったのを見て俺も後ろに乗る。

 

 

「わーっはっはっはっ!さらばだ諸君!」

 

「待て八代!」

 

「待たんかいっ!」

 

「逃がさへんでっ!」

 

 

窓から空へと逃げる。

ヨハン先生と生徒会長の悔しそうな声が心地いいぜ。

だが、八神の奴は空が飛べるためそのまま追って来ていた。

 

 

「どうする?振り切るか?」

 

「いや、ここはグラウンドに行くとしよう」

 

 

霧雨に指示を出してグラウンドに向けて飛んでもらう。

昼休みの今ならアイツがいるはずだ。

俺の予想通り、見知った奴がいた。

 

 

「よし攫うぞ!」

 

「任せるんだぜ!ちょっと借りていくぜっ!」

 

「にゃにゃっ!ネコ天国にまっしぐら!?」

 

 

グラウンドで暇そうにしている猫っぽいナマモノを掴んで上空に上がる。

まずは懐柔しよう。

 

 

「ナマモノ、本マグロを使用した猫缶欲しくないか?」

 

「にゃんと、さすがボーイ。心の友よ、何でも話してみにゃさい。そしてプリーズ!」

 

 

誰も上げるとは言っていない。

とにかく協力してくれるみたいなので後でまたたびぐらいは上げよう。

 

 

「後ろの奴を何とかできないか?」

 

「にゃにゃにゃ、そんなもの何処かのツンデレをからかうくらい容易いにゃ」

 

 

よし、それじゃあ任せるとしよう。

俺は追いかけてきている八神を見て・・・・あれ、何か増えてね?

 

 

「ラグナといい、貴方といい本当に見ていて飽きないわね」

 

「誰か知らへんけど、ちょっと手を貸してや!」

 

「まぁ暇つぶしにはなりそうだから構わないわよ」

 

 

ラグナさんの知り合いのウサギの人じゃねーか。何でいるんだよ。

仕方ない、まずは一人確実に脱落させよう。

 

 

「行け、ナマモノ!」

 

「どっちも"あかいあくま"の匂いがするにゃ、なんでかにゃ?」

 

 

分からない事を言っているナマモノを投げ飛ばす。

足からジェット噴射を飛ばしながら八神へと向かっていくその姿はキモいの一言に尽きる。

 

 

「出でよ我が眷属達!」

 

「うおっ!キモいのが一杯出てきたっ!」

 

「・・・センスの悪い生き物ね。でもいいものが見れたから許すとしましょう」

 

 

ウサギの人はすっと避けて八神は無数に現れたナマモノの群れに巻き込まれていった。

ウサギの人が見ているのは地上でラグナさんと闘っているハザマ先生にナマモノの本体がしがみついている姿だった。

しかし、追いかけて来ているのは変わらない。

 

 

「おい、このままじゃ追いつかれるんじゃねーか?」

 

「この速さに追いついてくるとは厄介だぜ。誰かいれば・・・」

 

「うはwwwwwおkkkkwwwwwwwww いまここにww最強の俺様降臨!!!!wwwwww」

 

 

空を飛んでいる俺達よりも更に上から声?が聞こえてきた。

見上げてみれば学園一アホな内藤がいた。

 

 

「・・・おい、何か上から降りてくるぞ」

 

「見ちゃ駄目だ。あれは放っておこうぜ」

 

「うはwww可愛い子がいるww」

 

「何、貴方。騎士の格好をしているようだけど邪魔よ。失せなさい」

 

「ツンデレktkrwwwみなぎっっってwきwたwぜーーー!wwwwwwwww」

 

 

どうやら内藤はウサギの人に目をつけたようだ。

そのウザさが今はとてもありがたい。

今のうちに逃げるとしよう。

 

 

「じゃーなー!」

 

「あ、こら待ちなさい!」

 

 

逃げながら疑問に思った。

何で内藤の奴、空飛んでいるんだ?

しかしそれは地上を見ればすぐに分かった。

臼姫が落ちてくる内藤を殴って打ち上げていた。あぁ、飛ぶじゃなくて跳んでるのか。

 

 

ドドドドドドドッ!

 

 

「今度は何だ!」

 

「この程度の弾幕楽勝だぜ」

 

 

多数の炎の弾がこちらに向かって飛んで来た。

それを余裕で避ける霧雨。

しかし再度炎の弾の群れが襲ってくる。

 

 

「よし霧雨、薙ぎ払え!」

 

「任せな!弾幕はパワーだぜっ!」

 

 

霧雨が愛用している謎アイテムを前方に掲げたところで炎の弾を撃っている相手が見えた。

俺はその相手の姿が見えた瞬間に霧雨の箒から飛び降りていた。

 

 

「お、おい何やってんだよっ!」

 

「すまん、霧雨。骨は拾ってやる」

 

「え?」

 

「アイテムなぞ・・・使ってんじゃ、ねえぇぇっ!!」

 

「う、うわあぁっ!」

 

 

さようなら霧雨、お前の事は忘れないぜ。

そんな事より・・・どうやって着地するべきかが問題だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休憩、コテツは相変わらず騒ぎを起こしている。

そして私は昼間なのに旧校舎に来ていた。

私の他にもオカルト研究部の皆が来ている。

 

 

「よーし、全員揃ったな」

 

「アザゼル先生、一体何なんですか?」

 

「まぁ落ち着け。これから変則的なレーティングゲームを行うぞ」

 

「何ですって?」

 

 

いきなり何を言うのかしら、この堕天使は。

こんな昼間からレーティングゲームを行うなんて・・・

あら?もしかして駒王学園でやっても誰も気にしない?

 

 

「既に相手チーム達は散らばっているからな。頑張れよ」

 

「あ、ちょっと!」

 

「・・・行っちゃいましたね。どうしますか部長?」

 

「そうね、始まっていると言っていたし相手チームが誰なのかを確認しましょう」

 

「分かりました。でも変則的って言ってましたけどどういう意味ですかね」

 

 

それは確かに気になるところだ。

一先ずゼノヴィアとギャスパーで偵察に行ってもらう。

 

 

「レアス部長。ここは僕が行くべきだと思います。何故ならば彼女達には情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さは足りてはいますが何よりも・・・速さが足りません!」

 

「落ち着きなさい。それとリアスよ。何度も間違えないで頂戴」

 

 

誰よ祐斗に変な事を教えたのは・・・

あぁ、何でこんな面倒臭い子になっちゃったのかしら。

最近は髪を逆立ててサングラスをかけて紫色のブーツを履いている。

また変な人から師事を受けているらしく、速さにかけては私の目では捉えられない程になっている。

 

 

「あ、それと小猫。結界は壊さないように気をつけなさい」

 

「分かりました。手加減しておきます」

 

「あらあら、今日も背中に鬼が現れていますわね」

 

 

服越しだというのに小猫の背中には鬼のような顔が見える。

一体どこで修行してきたら、結界をジャブで壊せるほどの怪力を手に入れるのかしら?

その反動か仙術に関しては一切使えなくなっていたのだけど・・・

 

 

「イッセーさん、頑張りましょう!」

 

「おう、先週の三世界会議では何もできなかったからな」

 

 

駒王学園に入って出来た私の後輩でもあるイッセーとアーシア。

何故かしら二人を見て物凄くほっとするのは。

イッセーは神滅具である赤龍帝の篭手、アーシアは神器である聖母の微笑をそれぞれ持っている。

どちらも能力としては有能である、のだけど・・・

インパクトに欠けると思ってしまうのは私がこの学園に染まってしまったせいかしら?

 

 

ドゴーーーンッ!!

 

 

「な、何?」

 

『グレモリーチーム、僧侶一名脱落』

 

「僧侶って事はギャー君ですか」

 

「戻ったぞ!」

 

「ゼノヴィア、相手は?」

 

 

勢いよく戻ってきたゼノヴィアに私は手短に聞く。

ゼノヴィアも一つ頷くと私達の相手を話した。

 

 

「まずこの変則的なルールとして複数のチームが混在しているのは確定的に明らかだ」

 

「なるほどね」

 

「確認できたのは金色の髪を逆立てた武闘着を来た男が中心となったチーム。こちらは近づいただけで気配を察知された」

 

「・・・空孫悟みたいな容姿だな」

 

「他には牧師と竜人、鬼の四天王、バランスの悪いポーズで腕を組んでいる男、クマっぽい着ぐるみなどがいたな」

 

 

レーティングゲームはいつから仮装パーティになったのかしら?

他にも話を聞けば聞く程、出てくるわ。

一子相伝の暗殺拳を使う兄弟達や胡散臭い妖怪やら部下を大量に連れた緑色の甲冑を着た男などなど。

 

 

「で、結局何人くらいいるの?」

 

「ざっと100人はいると思われる」

 

「それで悪魔は何人いるの?」

 

「・・・我々と生徒会長の組を除けば10人くらいか?あ、いや違った。9人でいい」

 

「そう、大変だったでしょう。ありがとう」

 

「それほどでもない」

 

一体何を考えているのよ、あの堕天使は。

悪魔同士で行われるのがレーティングゲームなのに。

それとゼノヴィアはまだ教会の騎士の言葉を真似しようとしているようね。

正直、あの話し方をされても何を言っているか分からないから真似しないで欲しいのだけど。

 

 

「何だ、大多数が悪魔じゃないなら何とかなるな」

 

「イッセー先輩は頭が平和でいいですね」

 

「え?何でだよ。まぁ見てな、軽く蹴散らしてくるさっ!」

 

「あ、待ちなさいイッセー!」

 

 

私の制止も聞かずに飛び出してしまった。

その後、1分もしない内にイッセーの慌てたような声が聞こえてくる。

 

 

「ぐあ!ぜ、全然効かねぇ!ば、化け物か!?」

 

「俺が化け物?違うな・・・俺は悪魔だ」

 

「ぐあああーーっ!」

 

 

\デデーン/

 

 

『グレモリーチーム、兵士脱落』

 

 

これでこちらは二人脱落。

ギャスパーはともかく、イッセーは転生悪魔となって日が浅いので仕方ない。

これからどう戦って行くか考えていたところで誰かが近づいてくる気配を感じた。

 

 

「お、お前達は・・・」

 

「貴方は・・・ヴァーリ・ルシファー」

 

 

ヴァーリ・ルシファー、元堕天使派のメンバーで先週に行われた三世界会議で裏切った男。

後はイッセーに執着している白龍皇ってくらいしか知らないわね。

裏切ったと知ったのも会議が終わって暫くしてからだったし。

あの時は校長が乱入したりコテツ達が乱入したりで、それどころじゃ無かったもの。

 

 

「貴方も参加者かしら?それにしては随分と弱っているようだけど」

 

 

やけに疲れている様子ね、顔も青白いし目元には隈が出来ている。

それに先ほどから両手を後ろの方に隠しているのも気になるわ。

彼は私達を見て何故かほっと胸を撫で下ろしているようにも見える。

 

 

「何だ、お前達か。赤龍帝はいないようだな」

 

「イッセーに用事でもあるの?」

 

「ふん、お前達雑魚に用は無い」

 

 

さすがにカチンと来たわね。

白龍皇が幾ら神滅具の一つだからと言って調子に乗っているんじゃないかしら。

 

 

「朱乃、彼にはおしおきが必要みたいね」

 

「あらあら、そうみたいですわね」

 

「ふん、堕天使と人間のハーフのお前では相手にならないぞ」

 

「それは分かりませんわよ?」

 

 

ヴァーリ・ルシファーと朱乃が対峙するのを私は余裕を持って眺めていた。

私の駒の中でも最強の女王である朱乃。

この学園生活で私も知らない内に強くなっていた。

腕を振りかざしただけで広範囲に光を放ったり、相手の攻撃を絶妙なカウンターで返したりと卑怯なくらい強い。

 

 

「何処からその自信が来るのか分からないが・・・っ!?」

 

「あ、何処へ行くのよっ!」

 

 

さぁ、始まるといった時、突然駆け出して行く。

こちらを振り返ることなく駆け出す、と言うよりは逃げ出していく。

残されたのはわけも分からない私達だけ・・・いえ、後ろから誰かが近づいてくるわね。

 

 

「よぅ。こっちに銀髪のいい男が来なかったかい?」

 

「え?いい男かは知らないけれど、さっきまではいたわよ」

 

 

やってきたのは青いツナギを来た男だった。

見たところ一般人みたいだけど彼も参加者なのかしら?

 

 

「そうか、邪魔したな。そっちの彼もいい男だがまずは逃げた方を追うとしよう」

 

 

祐斗に視線を送りながらヴァーリ・ルシファーの逃げて行った方へと姿を消した。

何だったのかしら。祐斗に興味がある様子だったけど・・・

 

 

「祐斗先輩、汗が凄いですけどどうしたんですか?」

 

「い、いや。さっきの人と目が合った途端に鳥肌が・・・」

 

「ほぅ、経験が生きたな。ジュースを奢ってやろう・・・今のはいい感じだったぞ!」

 

「折角、オロチ様とグスタフさんから教わった技を試すいい機会でしたのに・・・」

 

「皆さんに怪我が無くてよかったです」

 

 

折角の緊張感も薄れちゃったわね。

さて、相手も強敵ばかりみたいだし気を引き締めて行きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、もう疲れた・・・

自室のベッドに倒れこむ。

ここは禍の団の派閥、英雄派の本拠地。

そこで俺、曹操は疲労困憊な状態にあった。

それはもう体力的にも精神的にも疲れている。

 

 

バタンッ!

 

 

「曹操様!大変です!」

 

「・・・今度は何だ」

 

「ギルガメッシュ様とアーサー様がまた喧嘩をっ!」

 

「・・・どのアーサーだ?」

 

「じょ、女性の方です。とにかく早くしてください、このままでは周辺が灰燼と化してしまいますっ!」

 

 

言いたいだけ言って部下が俺の部屋を出て行く。

正直今でも意味が分からないのだが我々英雄派に本物の英雄が次々と集まってきている。

戦力としてもこれ以上無いくらい頼もしい方ばかりなので当時は喜んだものだ。

だが物語として語り継がれるだけあって一癖も二癖もある方ばかり。

現在、俺の疲労の9割は本物の英雄の方達のせいだ。

 

 

バタンッ!

 

 

『曹操様!大変です!』

 

「・・・今度は大勢で何だ」

 

「ジークフリート様と雷神化した伊達政宗様が!」

 

「ヘラクレス様とヘラクレス様が!」

 

 

次から次へと俺の部屋へとやってくる部下達。

俺はもう休憩時間が終わったのだと絶望しつつも起き上がる。

 

 

「分かった。これから向かう」

 

『お願いします!』

 

 

そう言って一目散に逃げていく部下達。

部屋を出た途端に轟音が響き渡る。

常に誰かが争うので自分の部屋を完全防音に変えたのは正解だった。

まぁ、部屋にいる時間も少ないので根本をどうにかしないといけない。

 

 

「おや、曹操君。早速仲裁かな」

 

「あぁ、どうもウッドロウ様」

 

 

部屋を出た俺に声をかけてきたのはウッドロウ・ケルヴィン様。

今は無きファンダリア王国の賢王で彼もまた本物の英雄だ。

英雄の中では性格的にも大人で他の英雄の方々の仲裁も行ってくださる素晴らしい方だ。

 

 

「先ほど天草四郎時貞君と石馬戒厳君、プレデター・ウォリアー君と槍を持ったアーサー君の諍いを止めてきたところだよ」

 

「本当にありがとうございます」

 

「何、気にする事はない」

 

 

何と懐の深い御仁だろうか。

他の方々も見習って欲しいものだ。

少なくともこれで多少は苦労が減ったと思っていると厄介の種がこちらに向かってきた。

 

 

「あら、いたのね曹操」

 

「・・・どうも曹操様」

 

 

俺と同じ名前を持つ曹操と言う女性。

決して本物の曹孟徳ではない。

色々と話を聞いたところ、どうやら異世界の三国時代の人物と言う事が分かった。

しかもその世界では有名な武将や文官は全て女性だというのだ。

彼女もその一人であり、異世界の曹操と言う事になる。

 

 

「ウッドロウもいたのね。我が陣営に下る準備はできたかしら?」

 

「はは。私に頼らねばならぬほど君は部下に困ってはいないようだがね」

 

「優秀な人材は何人いても困らないもの」

 

 

そしてこちらの世界と同様に人材コレクターであるのは同じだ。

特にここには世界各国の英雄や英雄の末裔がいるのだ。

彼女にとっては絶好の場所だろう。

しかし英雄の方々や俺達英雄の末裔にも上に立つという気概はある。

それを知った上で軍門に下れというのだから争いが無くなるはずがない。

 

 

「いよぅ。戻ったぜ」

 

「美猴か」

 

 

俺達とは異なるチームの美猴、闘戦勝仏の末裔である猿の妖怪だ。

天使、堕天使、悪魔の3種族間の会議を邪魔しに向かったはずだが戻ってきたのか。

連絡では失敗のような成功のような、と要領を得なかったので直接聞くために待っていた。

しかし一人か?美猴達のチームのリーダーでもあるヴァーリ・ルシファーの姿が見えない。

 

 

「お、曹操の嬢ちゃんもいたのか。どうだ?俺っちを部下にしてみるかい?」

 

「いくら優秀でも猿を部下にするつもりはないわ」

 

「はっはっは、こりゃ手厳しい」

 

「ふん、私はもう行くわよ」

 

 

曹操様が去って俺と美猴の二人になる。

これで俺も少しは楽になる。

さすがに異世界とは言えど祖先のような人だからか曹操様は俺に対してチェックが厳しい。

 

 

「それでヴァーリはどうした?」

 

「あぁ、それなんだがな」

 

 

美猴の話によると公園に寄るので先に行けと言ったので先行で戻ってきたらしい。

公園に用事、まぁ聞くのが野暮と言うものだろう。

 

 

「だが何故戻ってこない。他に公園に誰かいなかったか?」

 

「んー、青いツナギを来た男がベンチに座っていたぐらいだな」

 

 

その辺にいる男がヴァーリに勝てるとは思えんが万が一と言う事もある。

 

 

「美猴、念のためヴァーリを迎えに行くんだ。報告はその後でいい」

 

「じゃあひとっとび行ってくるぜ」

 

 

美猴を見送り一人になる。

ヴァーリがここで抜けるデメリットを考えると回収した方がいいだろう。

戦力的にもそうだが何よりも英雄の方々へのイケニエとしてだ。

誰も好んであの方々と訓練をしようと言う気にはならないからな。

 

 

「Coolじゃねェか俺の走りに着いて来るとはな!」

 

 

ドドドドドドドッ

 

 

「クックック・・・雑種にしては中々やるではないか。だが、我の愛馬に挑むとは身の程を知れ」

 

 

・・・今、馬が二頭駆け抜けて行った気がしたが気のせいだよな。

ここは室内だしそんな事があるはずがない。

乗っていたお二人がいたような気がしたがこれも気のせいだ。

 

 

「アーサー、良き剣の腕だ。俺も見習わなくてはな」

 

「いえ、アーサー。多種多様な武器が扱える貴方にも感服しました。しかしあの黄金の鎧だけは駄目だ」

 

「さすがはお二人ですね。あそこまで訓練所を破壊するなんて真似できません。ぜひお話を聞かせて戴きたいのですが」

 

「では食堂で話を聞こう。気にするな俺が奢るぞ」

 

「いいのですか!?遠慮はしませんよ?」

 

「はい、お願いします」

 

「はっはっは、では行こうか」

 

 

今のはアーサー様とアーサー様とアーサーか。

えぇい、ややこしい。

しかし聞き捨てならない言葉があったな。

訓練所を破壊だと?これで一体何度目だ、また修繕費が・・・

 

 

「ぐっ、胃がキリキリする」

 

「大変そうだな、訓練所の修繕は私が手配しておこう。曹操君は休んでおくといい」

 

「え?」

 

 

俺が胸元を押さえていると降りかかってくる声。

そこにいたのはウッドロウ様だった。

・・・そういえば先ほどからずっといたのを忘れていた。

 

 

「何、気にする事は無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴオオオオオォォォッ!

 

 

や、やっと教室に戻って来れたぜ。

外から響く轟音が気になりながらも俺は教室に戻ってこれた。

着地には失敗して暫く動けなかった。

しかし漫画みたいな人型のクレーターって本当に出来るんだな。

 

 

「殿!大丈夫でござるか!」

 

「ふっ、楽しませてもらったぞ虎徹」

 

「おー、さすがに今日は疲れたな」

 

 

半蔵と琢磨が真っ先に声をかけてきた。

それにしても先ほど鳴っていた轟音は何だ?

 

 

「なぁ、さっき五月蝿い音がしたけど何かあったのか?」

 

「あぁ。欧州にゼットンが襲来したらしくてな。ロンドベル隊が出撃したところだ」

 

「何だいつものことか」

 

 

宇宙から怪獣は頻繁にやってくる。

それで全てが魅力的な大型ロボット達や銀色の巨人などが撃退に向かうのも日常となっていた。

地球に群がる怪獣達、そこまで魅力的なものがあるのかねぇ。

 

 

「あれ?結城達は何処に行った?デス様はいるみたいだが」

 

 

教室を見渡したところ女性陣の姿が無い。

デス様は頭に炎を載せた兄貴と飯を食っているみたいだが。

 

 

「グレモリー嬢と姫島嬢は所用で出かけるとの事でござる」

 

「結城さんは・・・あそこだ」

 

 

琢磨がグラウンドを指差すので窓から身を乗り出してみる。

んー・・・お、いたいた。

グラウンドの片隅で細剣を振るっている結城の姿があった。

ナーヴギアを使ったゲームをクリアして以来、結城の奴は剣士として覚醒したらしい。

それからは学園でも対戦をしている姿を良く見かける。

闘っているのは・・・中学生か?ビリビリと電気っぽいのが見えている。

 

 

「ふっ、あの様子だと飛び道具は覚えてないみたいだな。安心したぜ」

 

「もう銃や物を投擲すればどうだ?」

 

「駄目だそんなのじゃ!こう、何か違うんだよ」

 

 

3年になったというのに未だに俺は飛び道具を覚える事ができない。

一体俺に何が足りないって言うんだ。

色んな人に教えてもらったけど全く駄目だ。

けれども諦めきれないから今もこうして何とかならないか考えている。

 

 

「試合を多く見てはどうでござるか?見て盗むのも一つでござるよ」

 

「・・・それだっ!」

 

 

半蔵の言葉に俺は食いつく。

そうだ、飛び道具出せる奴を見ていれば一々教えてもらわなくてもいいじゃないか。

俺は時計を確認する。

 

 

「よし、まだ時間もあるみたいだし。いっちょやるか」

 

「む、では機材を転送しよう」

 

「頼んだぜ琢磨。さて、後は・・・」

 

 

これからやるために必要な機材を琢磨に用意してもらう間に俺もやる事がある。

俺が半蔵に視線を送れば心得たように大きく頷いて教室へと振り返った。

 

 

「皆の者!これより殿主催の格闘大会を開くでござるっ!参加者はグラウンドに集まるでござるよ!」

 

「へぇ、格闘大会か。面白そうじゃないか。八代、アタシも参加するぜ」

 

「チャンピオンさん、私も参加しますわー」

 

 

次々と立候補してくるクラスメイト達。

大勢参加してくれるのはありがたいが・・・

四条、飛び道具持ってないからなぁ。

うーん、でも何かヒントにはなるかもしれないし構わないか。

 

 

「虎徹、準備は出来たぞ」

 

「サンキュ」

 

「校舎にも放送できるようにしておいた」

 

 

琢磨が用意したマイクの電源を入れてスピーカーを窓の外に向ける。

琢磨が用意したのは簡易実況席だ。

 

 

『あー、あーマイクテストマイクテスト。よしばっちりだな』

 

 

試しに発声練習を行い音量を確かめる。

俺の声にグラウンドにいた連中が闘いの手を止めて一斉に俺に視線を向けてくる。

お、おぅ。ここまでの視線を集めるとは。

若干ビビりながらも続ける。

 

 

『これから格闘大会を開くぜ。今から10分以内にグラウンドに集合!』

 

 

マイクの電源を切って教室内に視線を戻す。

既にうちのクラスメイト達はいなかった。

行動が早いな、うちのクラスメイト達は。

デス様にデス様の兄貴もいないな。

 

 

「では僕は参加者のリストを作るため先に行っておくぞ」

 

「おう、頼んだぜ」

 

 

カツンッ

 

 

「ん?」

 

 

後は参加者を待つだけとなった時、何かが俺の足に当たる。

はて、何だ?こりゃ?

琢磨が転送したのか?聞こうにも行っちゃったしな。

 

 

「殿、どうしたでござるか?」

 

「あぁ、これ何だと思う?」

 

「ふむ・・・スイッチに見えるでござるな」

 

 

拾い上げて確認してみる。

四角い箱に何かのスイッチがぽつんと一つだけついている。

しかしそれ以外何も無い。

 

 

「・・・押せば分かるか」

 

「お、押すのでござるか?琢磨の作ったものでござるよ」

 

「もし何かのロボットの起動ボタンだとしても琢磨の家で動き出すだけだろ」

 

「ふむ、それもそうでござるな」

 

 

琢磨の事だから面白い事になるだろう。

俺は迷わずスイッチを押した。

 

 

ポチッ

 

 

「・・・・何にも起こらないな」

 

「ぬぅ、やはり琢磨の家で起こっているのでござろうか」

 

 

ガシャンッ

 

 

「お?何だ?」

 

「鉄柵が現れたでござるな」

 

 

グラウンドを見れば大きな鉄柵が出現していた。

学園の入り口から壁伝いに鉄柵で囲まれていく。

まるで閉じ込められているみたいだな。

まぁここまで広い範囲だと閉じ込められているって感じはしないが。

 

 

ガコンッ

 

 

「今度は何かが開いたでござるな」

 

「あぁ、何だろうな」

 

 

あれは飼育小屋の方か。

暫くして飼育小屋の方から動物達が次々と出てきた。

・・・うん、ここまで来れば思い出した。

俺が入学式の日に仕掛けたトラップだな。

グラウンドに動物達を解き放ったら面白いだろうなっと思って仕掛けたんだった。

そういえば琢磨に一発で起動できるスイッチを作ってもらっていたのを忘れてたぜ。

 

 

「殿、どうするでござるか?」

 

「・・・面白いからこのまま行こう」

 

 

ヒューーーッガシャンッ

 

 

「おぉ、琢磨の作ったロボ軍団も来たぞ」

 

「うむ。こうして見ると壮観でござるな」

 

 

ワーロックやホウオウの他にも初めて見た機体もあるな。

改めて参加者を確認すると学園では見たことが無い奴がちらほらといる。

墓に手足がついているのは一体何だろう?

お、あの小さいのはスペランカー先生。何ですぐ死ぬのに参加するかな。

 

 

『おい、虎徹。どういう事だ』

 

『八代君、また何かしたでしょ!』

 

 

グラウンドにいると思われる琢磨と結城の声が通信機から聞こえてきた。

まぁ、あの二人なら何とかしてくれると信じよう。

 

 

「ちょ、ちょっと何よこれ!?」

 

 

ん?聞き覚えのある声を見ればグレモリーが叫んでいた。

あいつら旧校舎にいたのか。って言うか大勢いるな。

ちょうどいい、あいつらも巻き込むか。

俺はマイクの電源を再度入れた。

 

 

『・・・・・あー』

 

 

そういえばルールとかその辺を一切考えていなかった。

えーっと、いいや。好きにしよう。

 

 

『ルールは最後に立っていた奴が優勝だ、簡単だろ?』

 

 

俺の言葉を理解しているのか雄たけびを上げる動物達。

そして絶句している参加者達。

数秒後には俺に向かってくる飛び道具の数々、文字通り飛んでくる参加者達。

実にカオスな光景だ。

 

 

「よし、逃げるぞ半蔵!」

 

「承知!しかし逃げ切れるでござるか?」

 

「ふっ、舐めてもらっちゃ困る。既にこの校舎内の至るところにあるトラップを仕掛けてあるぜ!」

 

「さすが殿!」

 

 

ただ、問題は何処に仕掛けたのか忘れたって事なんだよな。

なーに、そんなのその辺を適当に押したり踏んだりすれば発動するだろう。

その後、かつて無い逃走劇を繰り広げるのだが多勢に無勢。

捕まった俺が袋叩きにあったのは言うまでも無い。

 





カァンッ

「学園を巻き込んでの騒動とは感心しませんな」

「げぇっ!校長!」




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第49話 紅き魔の館 探索

虎徹→ボケ
半蔵→ボケ
琢磨→悪乗り
明日菜→天然

誰か突っ込みを、突っ込みのリアス早く来てー


「ちっ、何処に行きやがった」

 

「殿。こういった場合、一度落ち着いて考えるのでござる」

 

 

半蔵の言葉に足を止める。

途中で十字路に差し掛かり他の連中とは別れた。

さすがに一人だと危険なので半蔵の分身を連れて行かせた。

なので今は俺と半蔵(本体)、結城と半蔵(分身)、琢磨と半蔵(分身)で別れている。

 

 

「吸血鬼ってこんなに足が早いのか?」

 

「拙者も出会ったことが無い故に分からぬでござるよ」

 

「うーん、そのまま歩くのも芸が無い、困った時はコレだな」

 

 

ポンッと自身の能力である未だによく分からない本の群れを出す。

バアルのおっさんが何か言ってたような気がするがあの時は子供に構っていて聞いてなかった。

ともあれ、これで派手な爆発が起きれば吸血鬼も姿を現すだろう。

 

 

「さてっと・・・あれ?」

 

 

適当な本を手に取ってパラパラと捲り勘に任せて止める。

開いたページに描かれている絵を床に持ってきていたチョークで描こうとしたところで気づく。

床は赤いカーペットが敷かれておりチョークでは描きづらい。

 

 

「しっかしこの館、外からも中からも赤いって悪趣味だな」

 

「うむ。あの娘っ子の趣味でござろうか」

 

 

やけに高級っぽい床のカーペットと言い、俺が描いている壁や天井に至るまで見事に赤一色だ。

あのちびっ子、よほど変な趣味をしているに違いない。

まぁ年の割に大人ぶった感じだったしな。相当捻くれているんだろう。

 

 

「描かないのでござるか?」

 

「いや、これ描きにくいんだよ・・・」

 

「ならば壁に描けばよいのでは?」

 

「おぉ、それもそうだな」

 

 

改めて壁に描こうとした時だった。

 

 

ドッゴーーーンッ

 

 

騒音と共に天井を壊して何かが俺達の目の前に落ちて来た。

衝突により舞い上がる煙で正体が分からない。もしかして吸血鬼?

やがてその煙が晴れた場所には・・・

 

 

「問おう、お主があちしのミスターか?我がグレートキャッツビレッジは永遠に不滅にゃ!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

 

猫耳の生えた・・・何だコレ?

ぬいぐるみ?あ、いや妖怪か?

出てくるなりテンションの高い奴に俺達は思わず沈黙してしまった。

 

 

「にゃにゃ?ちょっと少年たち。アタシのような真のヒロインが遠路遥々来たのに何、この仕打ち。高級ネコ缶を所望する!」

 

 

俺達は無言で互いを見て頷くと目の前の奴を抱える。

すげー、なんだこの・・・何か!

見れば見るほど珍妙な姿だ。

 

 

「おっと少年、レディへのお触りは高くぜー。にゃにゃ!?」

 

「うはー、何だこれ何だれ!なぁなぁ耳取れんの?本物か?いや、妖怪かも、って事は搭城と同じって事か!」

 

 

ガクンガクンッ

 

 

「うおぉぉっ!?シェイク、圧倒的シェイク!セクシーキャットに劣情を催すのは仕方にゃいが落ち着き給え少年!」

 

「ずるいですぞ殿!拙者も触らせてくだされ!」

 

「少年二人を狂わせる自分の美貌が憎いにゃ!はっ!もしかしてここが理想郷(アヴァロン)!?」

 

「おぉ、見れば見るほど面妖な!オスでござるか?メスでござるか?」

 

 

変な動物、ぬいぐるみ、いやナマモノ。うん、ナマモノがしっくり来るな!

半蔵と二人でナマモノを弄り倒す。

 

 

「シャーっ!だがそこで甘えてはネコが廃る!」

 

「どわっ!」

 

「なんと!?」

 

 

突然、大人しくしていたナマモノが暴れ出し離れてしまう。

 

 

「やれやれ少年。見知らぬ人を弄ってはいけにゃいと習わなかったのかにゃ」

 

「人じゃないから問題ないよな」

 

「シャラップ!あちしはいいのだよ。きっと」

 

「納得いかない・・・まぁいいや、なぁナマモノ」

 

「こんな麗しいネコを見てナマモノとは。目が腐ってるんじゃないかにゃ」

 

「ナマモノ殿、いやナマモノ嬢・・・ナマモノはどうしてここに来たでござるか?」

 

「性別すら否定!?にゃんと失礼にゃニンジャ。どこぞの割烹着も真っ青」

 

 

つい興奮してしまったが半蔵の言ったように、このナマモノは何で天井から降って来たんだろうか?

 

 

「いやアレよ?英霊が嫌う魔力を感じたから我先にとキャットの導きによって来たとか来ないとか、そんな感じにゃ」

 

 

言ってる事が意味不明だった。

えーれーってなんだよ。

俺達が首を傾げているとナマモノは俺の足元に散乱している本を見た。

 

 

「にゃるほどにゃー、これが魔術王の魔力の正体かにゃ。アタシとしたことが勘違い、許せ!」

 

「よく分からんが許さん。ナマモノ()遊ばせてくれたら許してやる」

 

「ネコ権侵害!?高級ネコ缶を奢ってくれたら、その案乗ってあげにゃくもにゃい」

 

「マジで!?半蔵、ちょっとネコ缶買ってきてくれ」

 

「うむ、その際には拙者もお供させてくだされ!」

 

「あっれ意外に好意的?いつのまに好感度稼いだのかコレガワカラニャイ」

 

「・・・貴方達、これは一体どういう事?」

 

 

と、半蔵が買い出しに行こうとした時に俺たちに声をかけてくる奴がいた。

そこには腕を組んで笑顔ながらも頬が引きつっている十六茶の姿があった。

 

 

「にゃんとメイドまで完備とは今までの善行が報われたんじゃね?」

 

「そこのナマモノは置いて、誰がこんな事をしでかしたのかしら」

 

 

ナマモノを無視して俺達に問いかけてくる十六茶。

いつの間にやら手にはナイフを持っていた。

言われて周囲を見渡す。

天井が壊れ、瓦礫があたりに散乱している。

そして無視されたナマモノが壁で爪とぎをして赤い壁紙が剥がれていく。

 

 

「「そこのナマモノです」」

 

「そう。ナマモノは生ゴミで捨てないとダメね」

 

「まさかの裏切り!?あちし達の愛はその程度だったのいうのかねチミ達!」

 

 

俺は半蔵と一緒にそう返しながら本を回収した。

ナマモノは不満なようでこちらへと訴えてきた。

 

 

「大丈夫。ちょっとナイフが額にオプションとして付いてくるくらいだろ」

 

「うむ。その程度でナマモノの面白さは損なわれるどころか強化されるでござるよ」

 

「この今が面白ければ明日の事は考えない。ハッ!アタシと同タイプのスタンド!?」

 

「どうでもいいけど客人なら大人しくして頂戴。それ以上騒ぐなら侵入者として対処させてもらうわ」

 

 

何て心の狭いメイドだろうか。

琢磨のところのティセを見習えよ。

 

 

「ハッ!SOS信号キャーーット!しーきゅーしーきゅー、待ってろにゃ幸薄そうな知らないけど知ってる人、今助けに猫が行くー!」

 

 

妙な叫び声の後、足からジェット噴射を飛ばしながら上へと昇っていく。

そのまま天井をぶち抜いてキラリと輝きを残して消えてしまった。

 

 

「あっ!ちくしょう、逃げられちまった!追いかけるぞ半蔵!」

 

「さすがに無理でござるよ。殿、諦めるでござる」

 

「くぅっ!千載一遇のチャンスを逃してしまった。また何処かで会えねーかなぁ」

 

「結局何だったのよ。ともかく貴方達が原因っぽいから片付け手伝いなさい」

 

「うーん、吸血鬼も出てこなかったし仕方ないか。いいぜ手伝ってやるよ十六茶」

 

「十六夜よ」

 

 

吸血鬼誘き出し作戦は失敗してしまったため、十六茶指示の元で瓦礫の撤去を始めた。

こうなれば琢磨と結城が捕まえてくれることを祈るだけだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ・・・・・・」

 

「・・・貴方は館の中を駆けまわったりはしないのね」

 

 

皆と別れ幾つか曲がり角を曲がったそこは来たことのある図書館だった。

僕は体力方面よりも頭脳方面が性に合っているので吸血鬼に関する本を読んでいた。

ノーレッジさんは読むのを止めたのか手にしていた本を閉じてこちらに話しかけてきた。

 

 

「僕が走ってもすぐに体力が尽きてしまうからな。こうして虎徹達のサポートに回らせてもらう」

 

「そう。騒がしくしなければ別にいいわ」

 

「護衛も問題が起きなければ騒がしくしないと約束しよう」

 

 

一応彼女も吸血鬼の疑いがあるのだが司書の子亜隈さんとココにいたとのアリバイがある。

二人とも吸血鬼であるという可能性もあるが今回は事前にナインボール=セラフを護衛につかせてあるので読書と会話に専念する。

ついでに半蔵の分身には別の場所を探索させている。

 

 

「機械ねぇ。やっぱり世の中は進んでるわね、驚きだわ」

 

「僕としては魔法という不可解な過去の技術を研究するノーレッジさんの方に驚くがな」

 

「あら、技術である以上研鑽を重ねていく事は驚く事でもないでしょう」

 

「そうだが・・・先天的技能が必要な技術というのが気に入らないだけだ」

 

 

そう、何と彼女は魔女と呼ばれる魔法使いだったようだ。

彼女は魔法ではなく魔術と、よく分からない拘りを見せているが。

魔法とは現代で実現不可能な事象を起こす技術を魔法と呼ぶらしい。

今では1つ、又は2つしか存在しないとのこと。

まぁ、死者蘇生など嘗ては到底出来ないことが普通にあり得る今では実現不可能な事を探す方が難しいだろう。

 

 

「主観が大いに混じっているけどまぁ、いいわ。私も科学を多少齧ってみたのだけど意見を聞いてみたいわね」

 

「ほぅ。それは面白い」

 

 

魔女と呼ばれる科学と対極の立場にいるだろう彼女の言葉に興味を持ち、本から顔を上げる。

 

 

「小悪魔。相手をしてあげなさい」

 

「はい、パチュリー様」

 

 

そう言って姿を現したのは司書の子亜隈さん。

ノーレッジさんが何かを呟くと彼女の印象が変わる。

馬鹿な、この僕が今まで気づかなかっただと?

子亜隈さん、彼女は・・・サイボーグか!?

 

 

「ターゲット確認、排除・・・開始」

 

「戦闘モード起動します」

 

 

子亜隈さんの髪がふわりと押し上げられブースターが出現する。

手にはマシンガンにブレードが現れる。恐らくは魔術による転送技術だろう。

ナインボールも敵と認めたのか排除を始めようとするが、あちらの技術を見るためにも止める必要が無い。

そして僕は大会でも使用した周囲に被害を及ぼさないフィールドを張る。

ノーレッジさんも何かの魔術だろう。二人、いや二体を覆うような膜を張った。

 

 

「魔力を駆動エネルギーに変換した技術を転用したアーマードこあ、あなたの機体で何処まで闘えるか楽しみね」

 

「なるほど、大した技術だ」

 

 

魔力の存在は今でも僕にはどういったものか分からない。

しかし体内を巡るエネルギーを別のエネルギーに変換する技術を編み出した事は素直に称賛する。

科学を齧ったどころではない、恐らく彼女は魔術と科学の融合、言わば魔科学とでも言おうか。

その第一人者とも言えるだろう。

これは負けていられないな。最近、小島博士が新たな粒子を発見したと学会で報告していたな。

コジマ粒子と呼ばれるそれを特定の物質に供給することで安定した電気エネルギーへと変換される素晴らしい内容だ。

ただ生体活動に影響を及ぼす環境汚染源でもあるからまずはそこから解消していくか。

 

 

「そうは言うけど貴方の方も凄いじゃない。何よアレ、グレネードを空中で撃つなんて非常識にも程があるわよ」

 

「そのためのナインボールであり、AIでありハスラーワンだ」

 

 

AIハスラーワン。まっさらな人口知能を買い取り、1から育てた自慢のAIだ。

人の脳では成しえない速度で動態制御、相手の動向から瞬時に判断を行う事ができる。

そして機械と直接リンクしているからこそ可能な機動を成し遂げている。

図書館のような閉鎖的な空間で銃が飛び交いエネルギー刃が交差する姿を見て思いのほか興奮しているようだ。

ハスラーワンについては虎徹達にすら話したこと無かったと言うのに。

 

 

「さぁ、そろそろこちらも始めましょうか」

 

「・・・何?」

 

 

ナインボール達の闘いから視線を移す。

そこには立ち上がったノーレッジさんの姿があった。

彼女の言葉に僕はもしや、と言う思いと聞き間違いであるという思いから問いかける。

 

 

「まさか、闘うというのか?僕は戦闘などできないぞ」

 

「あら、私も喘息持ちよ。それに一般人に魔術をお披露目するわけないじゃない」

 

「それなら安心だ、とでもいうと思ったか。だとすれば闘う必要性は無いじゃないか」

 

 

日の光を浴びていない為か肌白く弱弱しくも見える彼女と相対するも僕は闘う気はこれっぽっちも無い。

僕の身体能力の低さは何よりも僕が一番自覚している。

その僕が断言しよう、僕は例え彼女であろうとも負けるだろうと。

 

 

「軽い遊戯だと思えばいいの。それだけ私も小悪魔の闘いに中てられたかしらね」

 

 

そう言って分厚い本を左手に、空いた右腕をぐるぐると回し始めるノーレッジさん。

そこで僕は違和感を持った。

何気なく身体を解すために腕を回しているのだろう。

しかし、どこか年季の入った腕の回し方だ。

 

 

「さぁ、行くわよ」

 

「は?」

 

 

彼女が声をかけた瞬間、気づけば僕は襟首を掴まれていた。

速いとかそういう問題ではない。

まるで彼女に吸い込まれるように僕は捕まっていたのだ。

そのまま非力な姿からは想像できない怪力で飛び上がりながら腕をぐるぐると回す。

当然襟首を掴まれている僕も無理やり周回運動をさせられる。

 

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 

ドゴォンッ!

 

 

地面にたたきつけられ、僕はあっさりと意識を手放した。

 

 

「『投げは弾幕より強し』ンッン~名言よねこれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、やっぱり広いなぁ」

 

「吸血鬼はどこに逃げたのでござろうか」

 

 

ひょいっと大きな壺の中を覗いたりして探しているけど見つからない。

私と服部君の分身で皆と別れた後2階に来ていた。

大体、姿が見えない相手を追いかけるのってどうなんだろう。

 

 

「そもそも何で私たち追いかけているんだったけ?」

 

「それは吸血鬼が逃げたからではござらんか」

 

「うん、確かに停電が復旧する直前に扉が開いた音を聞いたんだけど・・・」

 

 

どうもそこが引っかかる。

暗闇の中でスレイヤーさんとディオさんに挟まれていたシャロンさんをピンポイントで狙うなんて出来るのかな。

扉の手前にいた人を狙うのが普通なんじゃ・・・

 

 

「あれ?そういえば扉の音が聞こえたんだよね」

 

「うむ。それで誰かが出ていくのが分かり殿が追いかけようと」

 

「じゃあ入ってくる時は?」

 

「む?」

 

「入ってくる時の扉の音は聞こえなかったよ?」

 

「むぅ、言われてみれば確かに」

 

 

という事は吸血鬼は突然現れて停電の際にシャロンさんの血を吸ってそのまま部屋を出た事になる。

もしかして吸血鬼ってあの部屋にいた誰かなのかも。

 

 

ガチャッ

 

 

実は吸血鬼は近くにいたのかと推察していたところで近くの部屋の扉が開く。

思わず身構えて服部君の分身が私を庇うためか前に一歩出て手裏剣を構える。

そしてそこから出てきたのは・・・

 

 

「あなたたち、だぁれ?」

 

「わ、可愛い」

 

 

寝ていたのか目元を擦りながら金髪の小さな女の子がいた。

背丈はレミリアちゃんくらいで背中には宝石みたいな羽が生えている。

この子も妖怪の子かな?

 

 

「もしかして侵入者?」

 

「違うでござるよ。拙者達は怪しいものではござらん」

 

「うん、お姉ちゃん達ね。ちょっと人を探しているの」

 

 

女の子の前でしゃがんで視線を合わせて会話する。

目の前の女の子はきょとん、として首を傾げる。

吸血鬼が人でない事は分かってるけど目の前の女の子を不安にさせないように嘘をつく。

 

 

「んっと・・・あ、それシュリケン!という事はニンジャね!」

 

 

女の子の視線が服部君の分身が持っているものに注目して声をあげる。

眠そうな目が大きく見開き喜色満面な笑みで服部君の分身を見上げた。

 

 

「そうでござるが・・・娘っ子、お主もこの館の住人でござるか?」

 

「ワタシ、フラン。フランドール・スカーレットよ。ニンジャとお姉さんは?」

 

「拙者、服部半蔵でござる」

 

「私は結城明日菜っていうの。よろしくねフランちゃん」

 

「ワタシ、咲夜と魔理沙以外で動いているニンゲンを見るのって初めて!」

 

 

嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねるフランちゃん。

ニンゲンって言い方をするって事はやっぱり妖怪みたいだ。

でもそれって初めてじゃなくて3人目、4人目って言うんだと思うよ。

 

 

「ねぇねぇ、弾幕ごっこして遊びましょ!」

 

「え!?」

 

「なんと!?」

 

 

フランちゃんの提案してきた遊びに思わず私と服部君の分身は驚きの声を上げる。

弾幕ごっこ、ってあの弾幕ごっこだよね?

こんな小さな子が提案するには危なすぎる遊びに私はフランちゃんの肩に手を置いて説得する。

 

 

「ほ、他のじゃダメかな?ほらフランちゃんもまだ小さいから危ないよ?」

 

「むー!バカにして!ワタシだって強いんだから!」

 

「結城嬢、ここは娘っ子の言う通りにしてみてはどうでござろうか?もしや弾幕ごっこの英才教育を受けているかもしれぬ」

 

 

弾幕ごっこの英才教育って何だろう。

とは言えフランちゃんも考え直す気はないみたい。

丁度、高藤君からもらった高性能通信機もあるし・・・

これは普段高藤君が身に着けている転送装置の腕輪と同じ機能が付いている。

つまりは私達でも高藤君の倉庫にあるものを転送できるって言う事。

 

 

「分かった。けどルールは一発でも当たったら負けだよ?」

 

「うん、分かった。でもお姉ちゃんがコンテニューできないのさ!」

 

「大丈夫。遊びとなれば私だって手加減はしないから!」

 

 

バッと背にしている不思議な羽を広げて私達から距離を取るフランちゃん。

私は通信機から、高藤君の倉庫から弾幕ごっこに必要なモノを転送した。

 

 

「・・・え?」

 

 

現れたのは紫と青をベースとした機体、センチネルって名前だっけ?

そして核弾頭に顔が描かれたA-Bombって呼ばれてる・・・何だろ爆弾?

・・・が、全部で10体づつ。あれ、1体づつにしたつもりだけど桁を間違えちゃったかな。

まぁいいか。私や八代君でも全部で20体なら避けられるし何とかなるよね。

 

 

「え、あ、あの・・・お、お姉さん?」

 

「行くよフランちゃん!」

 

弾幕ごっこ、それは中学時代に八代君が考えた遊びであらゆるものを飛ばして避ける遊びだ。

いかに緻密に避けて進み、相手の目の前まで辿り着けるか。

目の前はもちろん、後ろや横、上空や地面から様々なものが飛び掛かってくる一歩間違えれば危険な遊び。

学校の先生公認で見事乗り切った生徒は1日授業が放免、宿題も無しというため挑戦する生徒は後を絶たなかった。

まぁ挑戦者以外の全員が弾幕を飛ばしてくるので達成者はほとんどいなかったけど。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!これはさすがに・・・」

 

「総員、撃っちゃってーーっ!」

 

「にゃーーーーっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ちびっ子と最初に出会った広間に集まった俺達。

が、集合してみれば何やら他の奴らの様子がおかしい。

 

 

「ぐふっ、あばらがイッたか・・・」

 

「やっぱり貴方達、侵入者じゃないかしら」

 

「あ、あはは・・・ごめんね咲夜。つい」

 

「つい、で館を壊されてたまりますか」

 

「東洋に来てニンジャに会えなくて落胆していたのに、まさか本物に出会えるなんて!これはもう運命だわ!」

 

「大げさでござるよ」

 

 

琢磨は何故か瀕死の重体だし、結城は十六茶に説教されている。

そして見知らぬボロボロな姿のちびっ子が俺の後ろに隠れて震えながら結城達を覗いていた。

更にはキラキラと目を輝かせて半蔵の周りをぐるぐると回っているこの館の、ちびっ子当主。

 

 

「なんだこれ。お前たち、人様に迷惑かけるなよ」

 

「虎徹に、言われたくは、無い」

 

「八代君に言われたくないよ!」

 

「貴方も館を壊した一人だという事忘れてないでしょうね」

 

 

俺が呆れて言えば非難が一斉にかかってきた。

琢磨や結城はともかく十六茶に言われるのは心外だ。

あれは俺じゃなくてナマモノのせいだってーの。

 

 

「で、お前は何時までひっついてるんだ」

 

 

グイッと俺の背後に隠れているちびっ子の襟首を捕まえ俺の視線まで持ち上げる。

大人しくされるがままに何故か怯えた目で俺を見ていた。

 

 

「ニンゲンって怖いのね。貴方も怖いニンゲン?」

 

「・・・はぁ?」

 

 

ちびっ子の言っている意味が分からない。

コイツも変な羽?が生えてるし妖怪らしいことは分かる。

が、何故俺達、というより結城に怯えているのか分かんねー。

また変な天然でもやらかしたか?

 

 

「何のことか知らねーけど、妖怪なんだろ?もっと太々しく構えていろよ」

 

「はっ、そうよフラン。スカーレット家の娘たるもの堂々と・・・あ、ニンジャ分身して分身!」

 

「そうせがまれるとむず痒いでござるな」

 

 

ちびっ子当主は良い事を言おうとして忍者の魅力に勝てなかったようだ。

俺は目の前のちびっ子を降ろして帽子の上から頭を強めに撫でてやる。

 

 

「わぷっ」

 

「おら、笑え。ガキなんて後先考えずに目の前の面白い事に首を突っ込んでいればいいんだよ!」

 

「う、うん。ありがと・・・でも!レディに対する扱いがなってないよ!」

 

 

そりゃそうだ、レディじゃねーし。

いや、レディだとしても扱い方なんて知らないが。

ともあれ、頬を膨らませているが元気になったようなんで手を離して全員を呼ぶ。

 

 

「結局、吸血鬼は見当たらなかったけど何処に行ったんだ?」

 

「あ、その事なんだけどね八代君」

 

 

結城の推察ではあの部屋にいた誰かが吸血鬼なんじゃないかと言う話だった。

うーん、確かに結城の言うように扉が開いたのは聞こえたが停電直後は聞こえなかったな。

 

 

「ここは名探偵虎徹の出番だな」

 

「迷う方、だよね」

 

「迷う方、だな」

 

 

余計な事を言う二人は放って俺は通信機の転送機能を使って琢磨の倉庫からあるものを転送する。

鹿撃ち帽にインパネスコート、後はくわえパイプと。

これぞシャーロック・ホームズなりきリセットだ。

 

 

「貸しなさい」

 

「あ、こら!返せ!」

 

 

早速身に着けようとしたところで、ちびっ子当主に奪われてしまった。

やけにウキウキとしながら、なりきりセットに身を包み、くわえパイプを口にくわえて俺達を見回す。

 

 

「よろしい。ならば私が見事事件を解決してみせましょう!」

 

「おい、コラ。あの場にいなかったくせに出来るわけないだろ」

 

「ふふ、今の私は安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)、レミリア・スカーレットよ」

 

 

あ、あーむちぇあ?意味が分からないが凄い自信だ。

小さいナリで当主をしているだけあって実は凄く頭がいいのかもしれない。

 

 

「助手の貴方達から集めた情報を元に私が吸血鬼を見つけて上げるわ」

 

「お嬢様、またそんな思いつきで・・・」

 

「さぁ!この館に来て疑問に思った事は無いかしら?」

 

「図書館にいる肉体派魔女について」

 

「魔女ってパチェの事?彼女は動かない図書館とも呼ばれる引きこもりよ。肉体派だなんて言葉は対極に当たるわよ」

 

「・・・解せぬ」

 

 

魔女ってあの図書館にいたもやしっ子か?

琢磨、あいつにも負けたのかよ。どんだけ貧弱なんだ。

 

 

「あ、シャロンさんは大丈夫だったの?」

 

「シャロン様なら貧血程度で済んで今は別室でお休みになられておりますわ」

 

「そうね、咲夜と貴女は被害者から話を聞くといいわ。残った貴方達は容疑者から話を聞いてきなさい」

 

 

てっきり干からびるまで血を吸うのかと思ったけど手加減でもしたのかもな。

結城も思ったより大丈夫だと判断したのか胸を撫でおろしていた。

しかしこの館での質問ねぇ。

俺としてはあのナマモノについて聞きたいがたぶん知らないだろうしなぁ。

 

 

「・・・では拙者からも良いでござろうか」

 

「えぇいいわよニンジャ」

 

「事件が起こる前に、とある部屋に入った時に気になった事があったのでござる」

 

 

事件が起こる前に入ったと言えば図書館か?

だとすればその場で聞くだろうし・・・

分身でもして一足先に探索でもしていたんだろうか。

これは重要な情報かもしれない。俺達は真剣な表情で半蔵の話を聞く。

 

 

「それで何が気になったの?」

 

「うむ・・・ぴーえーでぃー、とは何でござろうか」

 

 



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