日本国召喚 ミスリル級開発録 (KAIZU)
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年表1
神聖ミリシアル帝国海軍最新鋭戦艦、ミスリル級戦艦。彼の戦艦がいかにして建造されたか。
今でこそ問題なく建造が可能となった訳だが、最初は苦難の連続であった。それを解決し、ミスリル級を完成させたある人物にスポットを当てながら、語っていくとしよう。
そういって老人は椅子に深く座り直すと、パイプを口に咥えて火をつけた。
老人の視線の先に広がるのは、巨大なクレーンをいくつも備えた巨大なドックだ。そこでは今まさに、新たなミスリル級魔導戦艦が進水式を行っていた。
ミスリル級魔導戦艦年表1
中央歴1583年
ラヴァーナル帝国の遺跡からミスリルを用いた戦艦の資料が発見される。しかし著しく損壊していたため、修復作業を開始。
中央歴1589年
議会で開発予算が承認。ミスリル計画として正式に始動する。
中央歴1595年
仮称ミスリル級戦艦の資料の整理・修復が完了、国内の有力研究者のリストアップを開始。
中央歴1597年
仮称ミスリル級戦艦開発計画へ協力を要請する研究者のピックアップを完了、関係各研究機関へと要請状を送付。
中央歴1598年
ガーライヒ、研究所所長に呼び出される。
以上が物語の始まるまでのミスリル計画の動きである。
※原作にはミスリルの性質についての記述が見当たらなかったので(もしあったら教えてください。お願いします)、この小説のなかで独自に設定して書いていきます。なので、原作のミスリル級とは色々と性能などが違ったりする場合が考えられます。もちろんできるだけオリジナルに近づけます。
さて、ここで一応、この小説でのミスリルについての性質を列挙していきたいと思います。ただし、物語の進みかたによっては設定は変わる可能性があります。
ミスリル Mi
銀と外観はとてもよく似ているが、素手でさわると魔力が大気中に少しずつ放出されるため、気分が悪くなることがあり、魔力をもつ種族にとっては扱いがかなり難しい。
合金にすれば放出されなくなるが、合金を製造するのにも現在は多くの時間とコストを必要とするため、あまり製造されていない。銀よりは固い。ただし、展性や延性は銀に少し劣る。
召喚世界にのみ存在する特殊金属。銀の
この内、最初の段落がミリシアルの人たちが分かっている情報です。下のはまだ研究中です。分かっていません。
まずは年表1です。次から本格的に話を進めていきます。
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1話
当時、最新鋭の戦艦と言えば、ゴールド級戦艦であった。その名の通り、金に魔術回路を施し、魔力を流すことで強靭な装甲へと変化するという性質を活用したものだった。
ルーンポリス魔導高等学術研究所
「失礼します、ガーライヒ・ルーズです。アルーマ所長はいらっしゃいますか?」
「入りたまえ」
ドアを開けて現れたのは、一人の研究生だった。眼鏡をかけ、髪は少しくすんだ金髪、身長はミリシアル人の平均よりやや高い。
「君の論文は読ませてもらった。素晴らしい論文だった。確かにミスリルを用いた合金が安定して生産できれば、列強のトップの座を確固たるものにすることができるだろう」
「ありがとうございます」
ガーライヒはそんなことで呼んだのかと訝しく思いながらも、頭を下げる。研究バカなガーライヒにとって、呼び出しなどはありがたくないものだったが、所長からの呼びだしとあっては無視するわけにもいかなかったのだ。
「さて・・・。では、本題に入ろう。その前に、これから話すことを聞いたならやめることは許されない。また、内容を他人に話すことも許されない。いいかな」
「...。わかりました、大丈夫です」
ガーライヒは一瞬ためらったあと、話を聞く覚悟を決めた。自分にこんなことを言うということはおそらく極秘の研究への参加を薦めるものではないかと推測したからだ。
「まあ聡明な君なら何となくわかっているかもしれないが、我々の上位組織である、対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部から君に是非とも参加してほしい研究があるそうだ」
「私にですか?」
自分はめぼしい成果を挙げているわけではない。有名な研究者はまだまだ多くいるし、それこそミスリルの研究者だっている。なぜ自分に・・・?
「まあ、なぜ自分にこの話が来たのか、不思議に思っているかもしれないが、きちんと理由がある」
「理由、ですか?」
「君が造船技師の資格を持っているということだよ」
確かに自分は第一級造船技師の資格を持っている。
「今研究しているのは、ミスリルを用いた戦艦だ。元はラヴァーナル帝国のものだそうだ」
「ラヴァーナル帝国のものですか?」
はるか昔、世界を統べていたと言われるラヴァーナル帝国。今の神聖ミリシアルよりも更に進んだ魔導技術を持っていたといわれる国である。以前から神聖ミリシアル帝国は国を上げてラヴァーナル帝国の技術解析に力をいれており、世界ではラヴァーナル帝国の兵器を備えた列強として認識されている。
「設計図や機関、兵装の解析が来年から本格的に始まる。しかしミスリルという金属はそもそも扱いが難しい上に、研究者が少ない。ついでに言えば研究者が造船技師の資格を持っていることも少ないのだよ」
「なるほど、それで私を推薦していただいたという訳ですね」
「そういうことだ。できるだけ早く来てほしいとのことだ。もう研究室も準備済みだそうだ」
「いきなりですか?私にも準備時間がほしいのですが」
そんなに早く研究室を移るのは残っている研究もあるので難しい。
「いやいや、実際に移るのは今の研究が一段落した後でよいそうだ。まだ発掘が終わっていないようでな」
「わかりました。では今の研究が一段落した後、移るということで良いですか?」
「ウム、では私は報告にいってくる。急に呼び出してすまんかったな」
「いえ、失礼しました」
ミスリル級は本当はすごいんだよ。たぶん。
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2話
一年後、ガーライヒが対魔帝運用部の研究所へと移った。研究が一段落したためである。またミスリル計画の第二次発掘も終盤を迎え、初期研究も始まっていた。
「ようこそ、対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部ルーンポリス統合研究所へ。私が所長のアーキメディスだ」
「ルーンポリス魔導高等学術研究所から来ました、ガーライヒ・ルズゥです。これからよろしくお願いします」
ガーライヒはいま、所長室にいた。神聖ミリシアル帝国のこういった研究機関では、所長からセキュリティ認証用の共鳴石(魔石の一種。特定の魔力波動を放つため、重要施設などに使用される。また階級も表す)を初めに渡されるのだ。
「君の共鳴石だ。レベル8までの入室が可能だ」
「レベル8ですか?私にそこまでの情報をあたえてもよいのですか?」
レベル8は、課長クラスか、専任研究員である。責任者として予算会議への出席や研究方針の独自決定を行うことができる。
「フム...。26年前、ルーンポリスにて誕生。8歳の時にルーンポリス初等学校へと入学、飛び級し16歳で卒業、高等学校へと進学した後、首席で卒業、ルーンポリス魔導高等学術研究所へ。現在配偶者はおらず独り暮らしだが実家には両親と祖母がおり、妹は寮暮らし。簡単なことはわかっているんだ。今さらリスクを考えても仕方がない」
「よく調べたものですね」
共鳴石を受け取り、ポケットにいれる。
「我々だって適当に選んでいる訳じゃない。怪しげな連中や他国との繋がりのある学者は排除している」
アーキメディスは深く椅子に座り直す。引き出しを開けて書類を取り出すと、ガーライヒに手渡す。
「この書類にサインをしてきてくれ、一週間後までに頼む」
「何ですかこの書類?」
「研究費や設備許可証なんかの書類だ。それと誓約書だな」
「誓約書ですか」
「外に漏らさないとかそういうことだ。取り敢えず今やることは終わりだな。君の研究室に案内させるから後ろにいる女性についていってくれ」
アーキメディス所長の指差す方を見ると、研究服を着た若い女性が立っていた。
「私の娘だ。君と同じミスリル計画に参加している」
「はじめまして、リヴァ・アーキメディスです。本日から研究員兼秘書としてミスリル計画に参加します。よろしくお願いいたします」
「は、はぁ...。こちらこそよろしくお願いします」
「では研究室に案内してくれ」
「わかりました」
研究室は、二階の一番奥だという。それまでに複数のセキュリティロックを通過する必要があるという。
「そういえばリヴァさんは何で研究員に?」
「昔から、父を見ていたので自然に。専攻は金属の魔力伝導です」
「魔力伝導か...。結構研究されてる分野だけど、どんな研究をしていたんだい?」
「金属の精錬温度による魔力伝導の変化が主です。特にやっていたのはミスリルですね」
この娘もミスリルを研究していたのか。これは頼もしい。今度互いの研究分野についてじっくり話したいな。
その後研究室について、説明を少し受けたあと夕方になってきたため、今日は解散した。
何も言わないで....
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