Q.エクシーズ次元って? (オッ酢)
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Q.エクシーズ次元って?

ギャグです。深く考えてはいけない。
主人公は割とポンコツ。


「日直、楠……っと、出来た」

 

我ながら綺麗に書けたんじゃないか、なんて思いながら日誌を閉じる。

 

「終わったの?」

 

それに気が付いたのか、窓を閉めていた少女ーー幼馴染が振り向き問いかけてくるので、筆記用具を片付けながら返事をする。

 

「ああ、ありがとう。それじゃあ帰ろうか」

 

これでもう施錠して職員室に返却するだけだ。日直ではないのに手伝ってくれた彼女と共に教室を後にする。

 

「これからカードショップに行くんだったよな?」

「そうよ。…でも、兄さんはもう待ってるかもね」

「あいつはいつも学校が終わったらすぐに来るからな。だが今日は私達が遅いのがわかっているんだ。ゆっくり来るんじゃないか?」

 

兄さん、とは文字通り目の前の彼女の兄であり、私の幼馴染でもある男のことだ。

中学生である私達と違い彼は高校生なのだが、何だかんだ理由付けてこの学園まで迎えに来る。……まあ、端的に言うと過保護なのだ。

 

 

 

 

「それでね、この前なんかーーー」

「はは、あいつらしいな」

「もう、笑い事じゃないのよ」

 

女三人寄れば姦しいなんて言うが、2人だけでも話は盛り上がるもので職員室に寄った後も沈黙なんてなかった。とはいえ、私達の仲が良いのが一番の理由であると思うが。

わざとらしく頬を膨らませる彼女に軽く謝れば、何となく視線を感じる。さりげなく周りを見渡すと、まだ校舎に残っていた生徒ーー男子生徒たちの視線だったようで、『ああ、幼馴染に見惚れていたのか』と、一人納得した。

彼女はそれくらい可愛いのだ。性格だっていいし、幼馴染兼親友である私も胸を張って自慢できるほどだ。…えっ?張るような胸があるのかって?……それは精神的にダメージを負うので聞かないで欲しい。

とにかく、彼女はモテる。…まあ告白なんてする猛者はほぼいないのだが。理由は簡単、あのシスコンに猛禽類のような鋭い目つきで睨まれれば大抵の奴は諦めるからだ。ちなみに稀にいる強メンタル男子は、『今はまだ彼氏とか欲しいと思わないの』という言葉に玉砕している。

 

「やはり恋人は欲しいと思わないのか?」

 

まだチラチラと視線を感じるので、奴等が聞いて欲しいだろう質問を投げかける。

 

「あら、またその話なの?」

 

ぱちくりと瞬きをして首を傾げる。…また視線が集まったぞ。

 

「私はね、貴女や兄さんと一緒にいるのが好きなの。彼氏なんていたら時間が減っちゃうじゃない」

 

調子に乗るだろうから兄さんには内緒よ、なんて微笑む姿はとても愛らしい。が、今の発言は嬉しいが結構恥ずかしいぞ…。

照れ臭くてそっと顔を逸らすがすぐに覗き込まれる。

 

「そっちはどうなの?」

 

キラキラとした目でジーっと見られる。兄さんはどう?なんて聞かれるがそれこそ『またその話?』だ。

あいつのことは大切な幼馴染だと思っているが、そこに恋愛感情なんてない。向こうだってそう思っているだろう。

 

「好きだがそういう好きじゃない。君のことだってあいつと同じように好きだ」

「だよね、知ってた」

 

なら聞かないでくれ、と言いたいところだがこれはお互い様だ。

彼女は少し間を開けてから、

 

「他にいないの?この人カッコいい!みたいな人」

 

と問いかけてくる。

格好良い人か。

 

「私は格好良さよりも…」

「優しくて、自分よりデュエルが強くって、心の底からデュエルを楽しんでて、見ているこっちまでワクワクするデュエリスト、でしょ?そういう人がいないの?って聞きたかったの」

 

こう言うのはわかっているぞ!と言わんばかりに被せて言われる。まあ、聞かれる度にそう答えているから覚えていてもおかしくはない。

 

そういう人、か。デュエルを楽しんでいる人間は沢山いるが、印象に残るほどではない。と、いうと何だか上から目線のようで駄目だな。良い表現が思いつかないのだが、一般のデュエリストなのだから見ている人たちまで楽しませよう、なんて人はそういない、といったところか?

 

そんな風に悩んでいる私を見ていた彼女はいないのね、とぼそっとつぶやくとちらりと何処かへ視線を送る。何を見ているのか気になってそちらを見るが何もなかった。気のせいか。

 

「でも、本当に貴女ってばデュエルに恋してるって感じね」

「まあ、否定はしないさ」

 

デュエルに恋をしている。なかなかにセンスがあるし、言い得て妙だ。これからそう自称しようかな。

しかし、何処かで聞いたことがあるような、ないような……?

 

ところで話は変わるのだが、彼女とその兄はあまり似ていない。髪の色も、顔のパーツも、雰囲気も全然違う。幼馴染である私から見れば、ふとした時の仕草はちょっと似てるな、なんて思うが本当にその程度だ。何なら私の方が妹と勘違いされることが多かったりする。彼女と姉妹だと思われることも多いな。ごく稀に弟だと思われることもあるが、それについては遺憾の意を表明したい。

何が言いたいのかというと、幼馴染の兄の方はデュエルは強いし身内には優しいし、割とさっきの条件を満たしている。だが、それほどこの兄妹に馴染むくらいずっと一緒にいるのだから、今更異性として意識しろ、だなんて難しいのだ。

 

私から始めた訳ではあるがようやく色恋沙汰の話題から、これからの話に移り変わる。これから、といってもカードショップでどんなカードが欲しいか、とかそういうのだ。

私にデュエル云々などと言っていたが何だかんだこの幼馴染もデュエルが大好きなのだ。

 

他愛もない会話をしていれば、校門の前にいた噂のあいつを見つける。

 

「あっ、兄さーん!」

「やっと来たか。遅かったな」

 

彼は随分と待っていたようで、うんざりとした表情をしている。

今日は日直なのだから遅くなるって……言ってなかったか?

 

「すまない、今日は私が日直だったんだ」

「もしかして言ってなかった?」

 

2人で顔を見合わせる。……うん、言ってなかったな。

 

「いや、何かあった訳じゃないならいい。行くぞ」

 

そう言って歩いて行くが私達の歩く速さでも問題なく追い付けるくらいだ。

隣の彼女と目が合う。どちらからともなく頷き、その後を追った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ーーねえ、そういえば最近何か悩んでない?」

「ッそうなのか!?何故俺たちに相談しない!!」

「えっいや、大袈裟だな」

 

ぐりんっ!!なんて音がしそうな程の勢いで振り向かれ苦笑する。

さっきまでずっと2人でいたんだから私に訊ねるのはいつだってよかったはずだが……わざとこの男の前で聞いたな。こいつにそんなことを聞かれれば、どこまでも追及されるに決まっている。

うらめしげに見つめれば、目を逸らされる。

それでも、私のことを思ってのことだとわかっているので渋々、大したことないんだが、と念を押しつつも話すことにした。

 

 

「ーーおかしな夢?」

「ああ、起きたら忘れているんだが、何か引っかかるんだ。何日も何日も、ずっと続いてるからちょっと、な」

 

1週間くらいだろうか。

何かこう、思い出せそうな、思い出せないような、すっきりしない気分が続いている。

それが気になって何も手につかないわけでも、夢を見たくなくて寝不足なわけでもない。少し気になるだけだ。

 

「内容は全然思い出せないの?」

「嫌なことだったような気もするが、全く思い出せないな。毎回同じ夢、というか続いている、と思う。多分」

 

憶えてもいないのに続いているだなんて、とは変なことを言っている自覚はある。

 

「でも、気にするほどじゃないさ」

「……だが夢とはいえ、悩んでいるんだろう。心配にもなる」

 

彼女もそれに同意するように何度も頷く。

こんなくだらないことでも親身になって聞いてくれるのは正直ありがたい。普通なら軽く聞き流されるんじゃないだろうか。

 

「君たちのような親友がいるなんて私は幸せ者だな、ありがとう」

「……もう、そうやって格好良いこと言っちゃうんだから」

 

 

照れ臭そうにそう彼女ーーー瑠璃は呟き、

今度は彼ーーー隼が頷く。

 

 

 

 

うん?

 

 

「瑠璃に、隼……?」

「どうしたの?」

 

 

 

「黒咲、隼。黒咲瑠璃……」

「ああ。…どうしたんだ?」

 

 

 

「ここって、ハートランドだな」

「ほ、本当にどうしたの、大丈夫?」

 

 

 

ハートランド、黒咲隼、黒咲瑠璃。

そして私はーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、()()()。しっかりしろ。やはり寝不足か?」

 

 

ーー楠遊都。性別は違うが、黒遊矢だのナスだのと呼ばれるユートそのものだ。

 

 

今まで思い出せなかった夢と夢(誰かの記憶)が繋がっていく。

もしかしてここは、この世界は、

 

 

 

「デュエルで笑顔を………?」

「瑠璃!!これ本当にヤバいやつじゃないか!?」

 

彼女は瑠璃では……瑠璃だ!!(無言の混乱)

 

2人ともが大慌てで私を近くの公園のベンチに座らせ額に手を当て熱を測ったり、例の夢が原因じゃないか、なんて話し合ったりしている。

だが、私も正直それどころではない。脳内の処理が全く追いつかないのだ。

 

 

 

 

「しかしそこでは黒咲が大活躍をしていた!」

「してないぞ!?…そもそもどっちの黒咲だ!?」

「ユート、しっかりして!」

「うう…この融合の手先め……」

 

ーーもう迷言botみたいになっている。

そんな私を見て更に動揺する黒咲兄妹。普通は気でも狂ったかと引くはずだが、この2人はそんなことはない。何故か私に甘いし。

しかし、こんなに仲が良いのに隼はいずれあんな気持ち悪……粘着シスコン発言するのか。世も末だな。

 

 

って、違う!!そうじゃない!!

この世界はARC−Vの世界なのか!?

エクシーズ次元なのか!?とんだ絶望空間じゃないか……

 

「ど、どうしよう……」

「落ち着くんだ。何か不安にでもなったのか?…俺と瑠璃がついている、大丈夫だ」

 

幼い子どもでも慰めるように、隼は私に語りかける。

目つきは悪いし、他人にはドライで、でも根は優しい親友。なのにどうしてあんな目にあってしまうんだろうか。あと短パン。

 

 

「隼がひとりぼっちになってしまう……」

「兄さんに友達はいないけど、私たちがいるじゃない、大丈夫よ」

「瑠璃…お前、俺のことそんな風に思ってたのか…?」

 

そんなかなり失礼なことを言いながらも瑠璃は私の手を両手でそっと握り、優しく微笑みかけてくれる。私達しかいないからこそ問題なのだが、取り敢えずそれは置いておく。

ひとりぼっちではないか。色々と詰んでるけど。

 

平常心、平常心。この優しい2人の為にも冷静になるんだ。一旦、もう大丈夫なのだと伝えーーー

 

「私はナストラルに、隼は戦場に果てる隼に、瑠璃は柚子になるんだ」

「えっ俺死ぬのか?ってそこじゃない!本当に落ち着いてくれ…」

 

やはり私はとんでもなく混乱している。




前世の記憶を取り戻したらユート(♀)だった人。
これから原作に巻き込まれつつ幼馴染2人と過ごす話。尚、原作(ヒント:タグ)


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A.ああ!それってナストラル?

降りかかる悲劇その2。
その1は何処にあったのかって?夢の内容を思い出したときじゃないですかね?


突然だがこれ、どう思う?

 

 

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

レベル4モンスター×2

(1):このカードのX素材を2つ取り除き、

相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力を半分にし、

その数値分このカードの攻撃力をアップする。

 

 

 

皆ご存知、殺意マシマシレベル5以上絶対殺す龍こと、私の相棒なんだが、その、…すごく…OCG効果です……。そう、()()()効果じゃないんだ。

つまり!ここは!ARC-Vではない!!(集中線)

 

 

こじつけが過ぎると思うだろうが、理由は3つある。

そもそも、あの時は急に色々と思い出して混乱してしまったが、よく考えればこの世界にARC−Vの要素なんてなかったのだ!!

ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!?

1つ、前にも言ったが私は女だ。まあ、正直これだけなら誤差の範囲だろうとは思っていたが。

2つ、黒咲兄妹とは幼馴染で、私と瑠璃はハートランド学園に通っている。クローバー?スペード?何のことやら。ちなみに隼は全国児童暗算選手権優勝なんてしていない。

そして3つ、なにより融合がある。例としてはカルボナーラ。

シンクロやペンデュラムはないが(リンク召喚?知ら管)、エクシーズ以外の召喚法がある、ということが重要だからさして問題はない。

無理矢理3つにまとめてみたがどうだろうか。

正直自分と同じ顔の人間を見てみたかったという気持ちもないこともないが、故郷の崩壊なんかを考えれば、会えなくて正解だ。…アニメでは同じ顔に見えなかったからどう見えるか気にな…いや何でもない。

 

 

閑話休題。

先程、『色々思い出して』と言った件だが、どうやら私には前世の記憶?のようなものがあるらしい。ズァークではないぞ。

記憶といっても『シャケ召喚』だの『だが俺はレアだぜ』だの、所謂遊戯王ネタばかりで、名前や職業、年齢などはわからない。わからないことばかりで意味がないように思えるかもしれないが、私としてはこれで良かったと思う。下手に思い出して人格に影響が出たりしたら嫌だろう?我とか言い出しても困るからな。

フリーお願いします龍の扱いが酷い?他人事だったら良かっただろうが、なまじ関係があるから嫌なんだ。奴の〈哀〉ポジションになっていたかもしれないんだぞ。私は哀しい…ポロロン…。

 

 

「ユート。おい、…ユート?」

 

………現実逃避はこれくらいにしよう。そう、今までのは現実逃避だ。

 

「ああ隼、どうかしたのか?」

「どうかしたのか、など此方の台詞だ。遠い目をしてどうした?またあの悪夢か?」

 

結論から言えば、前回の一連の奇行はすべて悪夢のせいである、ということになったんだ。

この街が崩壊し、戦禍に巻き込まれ、瑠璃は攫われ、私自身もとんでもない目に遭う。そんな夢ならば精神的な苦痛を感じても仕方がない、という結論に至ったらしい。…うん。間違ってはないが、これはひどい。

そんなこんなで、今までも過保護だった隼はさらに過保護になった。ネオ過保護咲隼だ。ニューにならないことを祈っている。

今だってシスコンのくせに、瑠璃が先に下校しても我関せずとばかりに私とずっと一緒にいる。

 

「いや、ぼうっとしていただけだ」

「そうか。だが、最近は妙な事件も多い。お前には俺がついているとはいえ、気をつけるに越したことはないだろう」

「うん?事件?カードにされたり?」

「カードにされるって何だ」

 

怪訝そうに聞いてくるが、別の世界線の君はアカデミアとかLDSとかをカードにするんだぞ。…いや本当にカードにするって何なんだ。意味がわからない。

なんてことは置いておいて、事件について訊ねると、隼は事件について軽く教えてくれる。

 

ーー曰く、身体は何の問題もなく健常であるのに意識だけがないという人々が複数発見されていて、今も原因不明のまま入院しているらしい。

真偽はともかく、彼らの中には事件が起こる前に性格がガラリと変わってしまっていた人もいる、という噂もあるそうだ。

他にも隼が集めた情報では、被害者がデュエルディスクを着けたまま倒れていたり、現場にはカードが散らばっていたりと、まるでデュエルの際に何かあったのではとも推測出来るような状態のときもあった、とのことだ。

 

 

え、嘘だろ…すごく聞いたことあるぞ…。特に2番目のやつ。

あれ?やっぱりこれってZEXAL?今まで目を背けていた衝撃の真ゲス…じゃない真実を突き付けられた気分である。

いや、だってこの事件ってナンバーズハンターのアレじゃないか。口笛吹いてハントするやつ。兄さんは病気なんだ…。

この前だってテレビに赤馬社長、じゃなくてトーマスさんじゅうななさいが出てたし、隣のクラスには某札付きの不良もいる。

いや、もう本当に認めるしかないな。完全にZEXALです、ありがとうございました。楠遊都先生の次回作にご期待ください。

 

あのシリーズでは私も黒咲兄妹も出てこないはずだからこの世界にゼアルは関係ないと思っていたんだが。ほら、アークファイブでのゲストキャラはカイトだけだっただろう。

しかし、出演していないということは私たちはゼアルでの騒動に巻き込まれることなく日常を過ごせるということだ。……だよな?

だが、今はどの辺なんだ?1年目?

WDCはまだで、真月が来るのはその後だったから、バリアン関連はまだ。カイトがハントを辞めて仲間になるのは……。

私が見ていた最新のシリーズはVRAINSだからな、ZEXALとか何年前だ。覚えてるわけないだろう。

 

 

なんて色々と考えていると、隼は周りを確認しながら、小声でとんでもないことを言い出した。

 

「ユート、俺はな、その事件には悪夢と関連があるんじゃないかと思っている」

「どういうことだ?」

 

ナンバーズハントと私の記憶の問題に共通点なんてないと思うんだが…?

 

「性格が豹変する、とあっただろう?お前は変わらないが、お前が見たような夢を連日見てしまえば、精神を病む者が出てもおかしくはない」

 

あっ(察し)

 

「え、じゃあ君が私とずっと一緒にいるのは私が狙われると思ったからなのか」

「ああ、瑠璃と話し合って決めたことだ。そんな非現実的なことが本当にあるかはわからないが、警戒して損はないだろう」

「瑠璃がなにも言わなかったのはそういう……」

 

いやもう何だか全ての謎が解決した感じがするぞ。

確かに言われてみれば、第三者からすればそういう印象を受けるかもしれない。私の奇行と事件とのタイミングは悪い意味で完璧だ。非科学的だけど、因果関係がありそうに思える。実は隼も瑠璃も結構オカルトとか信じる方なんだよなぁ。

ところがどっこい、心配してくれるのは嬉しいんだがこれ、私とは全く関係ない。あの事件の発端はナンバーズな訳だから。

とはいえ、素直に話しても、

 

『隼!この事件、全部わかったぞ!!』

『何!?』

『被害者は皆、カードに取り憑かれて、それを犯人であるハンターに魂ごと奪われているんだ!!』

『ユート……』

『だから私は関係ないぞ!!大丈夫だ!!』

『お前は疲れているんだ……一度ゆっくり休め。帰るぞ』

『HA☆NA☆SE!!』

 

みたいなことになるのは想像に難くない。奇行力で隼の胃にダイレクトアタックだ。…ところで、この想像上の私ってちょっとセレナに似てないか?似てないか。彼女はポンコツかわいい系キャラだもんな。こんなの只のヤバい奴だ。

 

ーーそんなことより、やはりカードが原因じゃないか!

許さない!ドン千!!…ってこの世界にはドン・サウザンドいるのか。それならば鴻上博士のせいにでもしておくべきかな。

 

 

「ユートは何も案ずることはない。俺が守ってやる」

「あー、うん、そうだな。ありがとう」

 

物凄く真剣な表情での台詞だったが、生返事になってしまう。仕方がないだろう。いや、隼は何も悪くないんだが…。

あと、今更だがそういう言い方は誤解を招くんじゃないか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ニュー過保護咲隼爆☆誕の理由が発覚してから数日経った現在。やはり彼は()過保護のままだった。

瑠璃経由で説得を試みたものの、結局隼による護衛は続いている。瑠璃ェ…。登下校は勿論のこと、休日に出掛けるときだって着いてくる。

隼しかいないのを不思議に思っていたが、襲われた際に私と瑠璃の両方を護るのが難しいかもしれない、という理由だそうだ。狙われるのはユートだが、咄嗟に瑠璃を人質にされるかもしれない、と複雑な表情で言っていた。瑠璃を先に誘拐される可能性を示してみたが、今までの犯行を見る限りその線はないとのことだ。隼はこの件をかなり慎重にしっかりと調べているらしく、確信めいた言い方だった。確かにカイトはそんな卑劣なことはしないだろうな、魂は奪うけど。

 

それにしても、四六時中誰かと共にいるというのは存外、ストレスが溜まる。

善意で、よかれと思ってやってくれているのはわかっている。わかっているのだが…。

 

「なあ、隼」

「どうした、敵襲か?」

「違う。あとここ家だから多分敵なんて来ないぞ。ってそんなことが言いたかったわけではなく。……非常に言い辛いんだが、その、君の護衛が鬱陶しいんだ」

 

あ、これでは言い方がキツかっただろうか?念のためフォローはしておこう。

 

「隼が私のことが心配で一緒にいてくれていることも、親友として大事にしてくれていることもわかっているし、ありがた……」

 

いつになく静かだ。食い下がってくると思ったのだが、具合でも悪いのだろうか。

 

「しゅ、隼?」

 

しんでる……

 

「俺はお前のことを思って……だが、それが重荷に…?」

「隼、私はだな、…おい、こら」

 

聞こえてないな、コイツ。

私からの文句がよっぽど堪えたらしい。私も瑠璃も隼の過保護に対してあんまり苦言を呈したりしないからか?

しかし『やっぱり…お前、うざいよ』とか言わなくてよかった。絶対再起不能になるもんな。

 

 

「隼、少し外の空気を吸ってくる。……うん、返事がないな」

 

取り敢えず書き置きをしておく。例の事件も私は別に関係ないし大丈夫だろう。

Dパッドを手に家を出る。ちなみにここ、私の家である。

ああ、一応言っておくが両親は普通にいるし普通の人だ。失踪とかしてない。

 

隼には悪気は一切ないのは知っているが、毎日毎日押しかけられていると気が滅入るんだ。もしかして、アニメでの瑠璃も実はこんな気持ちだったりしたのか…?

ARC-Vの黒咲兄妹がどんなだったからよくわからないが、現実での兄妹仲は良好だと思う。隼は瑠璃の交友関係に口出しするような束縛じみたことはしていないし、デッキにあれこれ口出しもしない。そもそもプロ志望でもなんでもない趣味の範囲だから、というのも大きいと思うがな。

 

 

 

久しぶりに1人で街を歩いてみれば、清々しい気分になれた。少しずつ心に余裕が生まれてくる。

いくらうんざりしていたとはいえ、心配してくれているのだ。黙って出て来たようなものだし、コンビニに寄ってアイスでも買って帰…いや財布持って来てないんだった。仕方ない、お詫びの品は何もないが謝ろう。うん。……詫びデュエルとかどうだろうか?

 

 

ーーふと、視界の端にあるものが見えた。

 

「カード…?」

 

裏側で種類すらわからないが、それは確かにデュエルモンスターズのカードだった。

 

「カードは拾った。…ふふ」

 

それにしても、遊星って何で拾ったカードであんなデッキ構築できるんだ?運命力?

しかし、私も流石にRUMはないが、幻影騎士団はばっちり揃っている。闇鍋パックしか売ってないというのに、これはすごいことじゃないか?主人公(と瓜二つ)クオリティというやつかもしれない。

まあ隼も瑠璃も普通にテーマデッキを組んでるけど。これが普通なんだろうな。思い出すまで違和感なんて微塵もなかったからな。

 

世界の違いを実感しながらもカードを拾い、表側を見る。

 

「うん…?」

 

なんと真っ白である。これは光の結社もにっこり。印刷ミス?

とかなんとか考えていれば、突如として光に包まれる。

 

 

 

 

 

ーーこ、これがハノイの崇高なる力……!?

なんてふざけた事が思い浮かぶくらい思い切り光っていた。

しかし、対閃光防御って現実世界でも必要だったんだな。ミラフォ太郎さん、ネタ扱いしてすまなかった。

 

と、思っていると、光が収まる。

光が収まったことに安堵していたが、真っ白だったはずのカードが目に入る。

 

 

 

 

〈No.76 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン〉

 

なぁにこれぇ




「我が書き換えたのだ!!」
これはカードのナンバーズ化みたいな注意書きが必要になるんだろうか…。
あとダリべはアニメの2回効果使うやつが好きなんですけど、エクシーズ相手だしocg効果です。
本世界線の黒咲氏は遊都が幼馴染で年下の女の子である分、過保護度やら兄心やら執着心やらが瑠璃と遊都で分散してます。別に恋心とかは微塵もないです。瑠璃はそれがわかってるけど親友に兄を勧める。

道順健碁くんの事故の話で、事故〜?はいはい鴻上博士のせい。って思ってたけど、やっぱり鴻上博士のせいだったじゃねーか!!許さねえ!ドン・サウザンドォオオ!!!


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何?覇王黒竜ならPモンスターではないのか!?

悲劇その3。
サブタイ通り非Pモンスター化されてたりNo.化されてたりしてます。
「ナンバーズによる憑依?心の闇の増幅?もちろん反逆するで?牙で」
念のためレベルですけどタグ追加したんで、嫌な予感する人は注意です。


No.76 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター

ランク7/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

ドラゴン族レベル7モンスター×2

(1):このカードがXモンスターを素材としてX召喚に成功した場合に発動する。

相手フィールドのレベル7以下のモンスターを全て破壊し、破壊した数×1000ダメージを相手に与える。

このターンこのカードは1度のバトルフェイズ中に3回攻撃できる。

(2):このカードは『No.』と名のついたモンスター以外との戦闘では破壊されない。

 

 

突っ込みどころ満載なのは一旦置いておく。

…が、お願いだからこれだけ言わせてくれ。

 

ーーアイエエエエ! ナンバーズ!? ナンバーズナンデ!?

 

 

「え、ナン…、覇王…え?」

 

まあ、実際に口から出たのはこれだったわけだが。

正直理解が追いつかないが、ずっとこのままいるわけにはいかない。理性を総動員して拾ったままの体勢から立ち上がり、あまり目立たないような落ち着いて座れる場所を探す。

奇しくもそこはこの前の公園だったが、気にしている暇などない。

 

 

ベンチに座り、深呼吸を数回。両手で持ち直したカードを見る。

もう一度深呼吸をする。

カードの枠は黒一色だしペンデュラム効果もない。ここまでなら許容範囲内だ。

そして問題のNo.という表記………ある。

 

 

(少々お待ちください)

 

 

何度確認しても見間違いではなかった。

〈No.76 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン〉

ナンバーズだし、覇王だし、オッドアイズだ。意味がわからない。なんでや不動。答えてみろルドガー!!

 

しかしこれはどう召喚するべきなのか。エクシーズでエクシーズしないといけない。RUMはない。

ーレベル7のドラゴンは一応持ってるし、あのカードと使えば…。

ーーフィールド魔法も採用してみるか?それなら効果も使える。意外と良い組み合わせかもしれない。

ーーーそうなると速攻魔法…のあれは持ってないな。代わりになるのは…いや、そもそも幻影騎士団は魔法罠率が高い。

ーーーーデッキとの親和性を考慮するとなると

やめろユート(デュエル脳)(無言の手刀)

うわっ…すまない、脳内の隼。カードを見るとどう使うべきかを考えてしまう、悪い癖だ。今考えなければならないのはそんなことではないというのに。

 

話は戻るが、そもそも私はただカードを拾っただけだった筈だ。別に悪いことはしていない。拾ったのが悪い?…ほら、カードとかみんな拾ってるから。

カードが落ちている→拾う→ハノイの崇高なる力→ナンバーズな覇王黒竜<来ちゃった♡

こんなのおかしいって……。g○ogl○先生、助けてください…。

 

問題のカードを見つめながら現実逃避を続ける。

K○NM○Iでもいいぞ…ん?【調整中です】って?そうか………。

折角穏やかな気分になれたというのにこれでは逆戻りどころか、むしろマイナスに突入だ。私の心は氷河期到来だ。さようなら、心のサマーシーズン。頭を抱えて蹲りたい気分だ。

気分。気分?何か忘れてるような……?

 

「あっ」

 

そうだ、隼を置いて来たんだ。放心状態のあいつが頭に浮かぶ。

……べ、別に忘れてなんかないぞ?ナンバーズが衝撃的なだっただけなんだからな!!…なんて脳内でツンデレても意味がないだろう。

とにかく、こんなところで長居するわけにはいかない。

 

「うえ……」

 

あいつは怒ってるだろうな。気が付いたら誰もいないとかびっくりなんてものじゃないだろう。

待ちきれなくなって探しに出掛けてなければいいが……。

連絡がないかどうか、恐る恐るDパッドを確認する。

『黒咲隼 43件、黒咲瑠璃 2件』

 

 

「『今すぐ帰るから待っててくれ。』…っと、よし」

 

とりあえず返信したが、もう手遅れだろう。確実に説教コースだ。想像するだけで恐ろしい。…まあ、全面的に私が悪いわけだが。

私はその手のカードをそっとEXデッキに仕舞って公園を後にした。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

遊都が出掛けた後も、彼ーー黒咲隼は精神的なダメージによりショートしたままだった。

 

「鬱陶しい……まさか瑠璃も…」

 

放心状態の隼の脳内には『兄さん、ほんっっとうにウザいよ』と吐き捨てるように言う冷たい目の瑠璃の姿があった。考えれば考えるほど悪い方へと想像は加速していく。

放課後迎えに行けば、露骨に嫌がる2人(妹と親友)

ショッピングだ、と出掛ける2人について行くと提案するとドン引き……

 

ーーいやいやいや、親友も妹もそこまでは思っていないはずだ!!……多分。

 

「なあ、ユート、………はっ?」

 

彼は若干の不安を抱きつつも真意を訊ねるべきだろう、と遊都に向き直ったはずがそこには誰もいなかった。

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを模したぬいぐるみがぽつんと座っているだけだ。ちなみにこれはハンドメイドな一点物である。誰によるものかはご想像にお任せしたい。

 

「ユート?…ど、どどどこに行ったんだ…!?」

 

隼はダメージ計算を間違えたときよりも焦り、あたりを見回す。もう一度目の前を見れば、ぬいぐるみにメモが貼り付けられていることに気が付いた。

 

「『隼へ。ちょっと散歩してくる。すぐ帰ってくるから探さなくていいぞ、心配するな。』…ユートの字だ」

 

心配するな、とはいくらなんでも無理があるだろう。お前のご主人は何を考えているんだ…?なんて思いながら彼は溜息を吐き、ぬいぐるみを見つめる。

連絡を入れてみる。が、散歩しているのなら気付かないか。頭ではわかっているが落ち着けない。

そしてまたメッセージを送る。『ユート、大丈夫なのか?』送る。『どの辺にいるんだ?迎えに行くぞ』……送る、送る。

いちいち過剰になるところが鬱陶しく思われる原因ではあるのだが、本人は全く気付いていない。今の状況ならば多少大袈裟でも仕方はないかもしれないが。

 

「しかし、入れ違いになっても困るな…」

 

隼は探しに行くかどうか悩んだものの、瑠璃のところにいる可能性もある、と妹に電話をかけてみることにした。

 

「瑠璃…ああ、俺だ。ユートが1人で出て行ったんだが連絡はないか?……だが心配だろう。…………そうだな。頼んだ」

 

かわいい妹に『心配し過ぎよ、鬱陶しいんじゃない?』『私からも連絡を入れておくから』とまで言われれば流石の過保護も引き下がる。

 

手持ち無沙汰になり、ぬいぐるみをつつく。

ーーそういえばダークリベリオンはユート以外に持っている奴を見たことがないな。アイツはいつから持っていたんだったか?

なんてぼんやりと昔を思い出しつつ、(彼の主観では)偶にメッセージを送りながら遊都が戻って来るのを待った。

 

『P.S 最高に高めた私のフィールで最強の力を手に入れてやるぜ!』

メモの裏にふざけて書かれた特に意味のない追伸には最後まで気付かなかった。仮に気が付いたとしても突っ込む気力はないだろうが。

 

言うまでもないが、しばらくして帰って来た遊都は隼により正座で説教されることとなった。その説教は、なかなか自宅に戻って来ない兄に痺れを切らした瑠璃からの連絡が来るまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー妹が泣いている。

滅多なことでは泣いたりしない。いつもなら焦った親友が妹を宥めているというのに。

ユート、お前の大切な親友(瑠璃)が地面に座り込んだまま泣いてるんだぞ、何をしているんだ。

 

「…ト……ねえ、ユート」

 

無論、俺も瑠璃が泣いていればいつだってすぐに駆け寄る。だというのに、今日に限って何故だか足が動かない。

 

「寝てるんだよね?…起きて、起きてよ。ねえ!」

 

いくらなんでも揺すられればすぐに起きるはずだ。というか、強く揺らし過ぎだろう。…それでも親友は起きない。揺さぶられることで、だらんと垂れ下がった腕が瑠璃の動きに合わせてゆらゆらと揺れる。

これではまるでーー

 

「……兄さん、ユートが、」

 

瑠璃は、親友をーー傷だらけのユートを抱き起そうと抱えたまま、縋るように此方に視線を向ける。

無理矢理にでも足を動かし2人の側へ向かう。言うことを聞かない体は崩れ落ちるように膝をつくが、不思議と痛みなど感じなかった。震える手をユートへと伸ばす。手を取って握っても握り返されることはない。

 

「……ユート」

 

『隼、どうかしたのか?』

そう返ってくる筈の声が聞こえない。

 

 

ーーこれではまるで、人形じゃないか。




次回から『(ハヤブサ)の怨讐』スタート。……しません。今後もシリアスは添えるだけ。書きたいのはギャグなんで。
何も考えずに書いてたら黒咲兄妹視点でとんでもないことになってた。闇堕ちするわこんなの…って感じで修正しました。
何かこう、テンポが悪い感じがするんで後々描写とか直すかもしれません。
デュエルシーンは入れたいけどデュエルスフィンクスがからっきしだからなあ…。あと使いたいカードがくっそややこしい。

そういえば容姿についてあんまり言及してなかったなーと思ったんで一応。弟に間違われたことも〜ってあるけど早乙女さん家のレイちゃん(小学生)よりは女の子に見える。あと全く違うゲームにはなるけど、アサシン・パライソちゃんをパッと見で男だと思った人は遊都も男に見えるかもしれない。
髪の色は本家と同じ…くらいしか考えてないですね。絵とか描けたらよかったんですけど。


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だが奴は…着替えた

そろそろデュエッ!ヽ(`Д´)ゝ……とか思ってたけど日常回だよハルトォオオオオ!!!
黒咲兄妹ってこんな感じでええんかな〜?とか思いつつ書いてる。

評価バーが赤色なことに震えております。ありがとうございます。


出来心で散歩に行って滅茶苦茶怒られた楠遊都です。すごく足が痛かった。正座は…苦手だな。

 

あれから数日経ったがまだ覇王黒竜を手放せてなかったりする。遊馬先生に渡してしまいたいのだが、なかなか彼に会えない。というか、会うにしても怪しまれないように偶然を装う必要がある。学年も性別も違う、同じ委員会や部活に所属しているわけでもない。この現状から知り合いになり、ナンバーズを持っていることをそれとなく気付いてもらって、軋轢を生むことなく渡す?それなんて無理ゲー?

 

そんなことより前回のシリアスな展開はなんだったのか?……何の話だ。もしかして未来の……いや、メタい話はやめよう。私は何も聞いていない。

 

気を取り直して、私は今何処にいるでしょう?

正解はーー(ここでドラムロール)

 

 

「これなんかどう?可愛いわよ」

「…………いや、私には似合わないだろう」

 

にこやかにパステルピンクの可愛らしいスカートを勧めてくる瑠璃。(ナス)のカラーリングに絶望的なまでに合っていない。隼は妹の暴走を止めろ。……おい、露骨に顔を背けるんじゃない。

 

今のでヒントになったかはわからないが、最近オープンしたばかりのショッピングモールに来ている。もちろんwith黒咲兄妹。

息抜きが出来ず鬱憤が溜まっている私を思ってか瑠璃が誘ってくれたのだ。これ、完全に(瑠璃)()じゃないか?とか思ってはいけない。いけないったらいけない。いいな?

服を見てみたり雑貨を見てみたりと結構楽しんでいる。この施設、かなり広くて探索しがいがあるのだ。これからも休日には遊びに来ることになるだろう。

 

「瑠璃、そのワンピースもやめてくれ。せめてもっとシンプルなのに……」

 

絶対瑠璃が着た方が似合うじゃないか。

どんどん服を勧めてくる瑠璃にタジタジになってはいるものの、何だかんだで楽しかったりする。これでも女子だからな。

しかし隼は本当に退屈なんじゃ……えっ?それはスカート丈が短いからこっちにしろ、だと?何故お前まで参戦するんだ……。

 

 

 

 

 

彼ら(9割は瑠璃)との攻防を繰り広げながらも、色々な店を見て回る。あまりこの街になかったような系統の店も多く、眺めるだけでも楽しい。軽く見て回るだけでもすぐに時間が経ってしまいそうだ。

ーーそこでふと、とある店が目に入った。

 

「あ、あれは……!」(カン☆コーン)

「うん?何かいいものでもみつけたの?」

 

瑠璃が首を傾げて尋ねてくるが、そんなんじゃない。あれは……

 

 

「都会の商業施設とかにたまにある『いつ着るんだ?』って服が売ってる店だ!」

「いくらなんでも偏見が過ぎるだろう」

 

隼に正論を言われた。田舎に住んでたことなんてなかっただろう、と呆れた顔で続けられる。それもそうだ。

だが、私たちの普段の服装を思い出してもらいたい。主にARC-Vの回想シーンとか。

 

 

 

 

 

どうだろう、思い出していただけただろうか?

GUート、ユニクロ咲、むじるり良品。

 

ーーそう、あまりにも普通なのだ。

アニメなんかでは、平和だった時は地味で無難な服、非日常の時にはインパクトのある服という対比が良いのだろう。が、これではただ単に普通の服装の子だ。瑠璃は割とオシャレだが、私と隼はアレだ。

まあ、そんな無難ファッションしかしない人間からすればいつ着るのかがよくわからない服、と称せるだろう。

二宮○鳥が着てそう(偏見)な服。熊本弁の方っぽい服や、理由(ワケ)あってな暗黒シェフっぽいのもある。……この世界で誰かに言っても通じないが。

 

色々並べ立てて見たものの、言いたいことはひとつ。……実はそういう服が少し、ほんの少しだけ気になるんだ。

自分で言うのも何だが若干患ってる感じのものが好きだ。14歳だし別にいいじゃないか、と開き直っている。

だってほら、幻影騎士団(ファントム・ナイツ)!!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!!!カッコいいだろう?

幻影で騎士団って……ファントムでナイツって……最高じゃないか。†幻影騎士団†……いや、なんでもない。一部の人の胸を抉るような事はやめよう。

……話が逸れてしまったな。とにかくあの店が気になるんだ。

ときめく感情を隠しつつ、2人にそれとなく提案してみることにした。

 

「瑠璃、隼。ちょっと見てきていいか?」

「そこまでそわそわしながら言われて断ったりしないに決まってるじゃない。一緒に見ましょ。ほら、兄さんも」

 

全然隠せてなかった。恋ではないが、『しのぶれど』というやつかな。

瑠璃がにこにこと応えてくれるものの何故か胸が痛い。私はまだ中学2年生だから大丈夫だ、きっと。

隼も嫌なそぶりひとつせずに頷く。あれは、明らかに女物しかないような店よりはマシって顔だな。

 

 

 

「おぉ…」

「へぇ〜こういうお店ってあんまり見たことなかったわね」

 

ほんの少しだけ(強調)感動していると、瑠璃も未知との遭遇といった様子で見渡している。

隼はどうだろうと振り向いてみると、

 

「隼?どうかしたのか」

「これは動き辛いんじゃないか?」

「あー……こういうのは機能性は二の次なんだろう」

 

マネキンが身に纏ったゴスロリのような衣服を見て不思議そうにしていた。

若干私に聞かれても困る、と思ったのは秘密だ。複雑な構造な上コルセットもあるから着るのにも時間がかかりそうだ。不便そうだがオシャレは忍耐ってやつかもしれないな。

 

隼から離れて色々と商品を見てみる。

アクセサリー系も置いてあるな。

 

「腕シル、だと……?」

 

腕に巻くシルバーを見て、つい口に出してしまった。聞かれてないからセーフ。だが腕シルはちょっと欲しい。

よくわからないデザインの格好いいリングとかネックレスとかもいいな。眼帯……は日常生活どころかデュエルの邪魔にもなるから絶対にダメだ。

小物系だけでなく衣服も悪くない。腕の部分の無駄にたくさんベルトが付いている服や新品なのに裾がボロボロになっている上着。うん。

 

ーーこれは、もしかしなくとも、もしかするのでは?

ひとつひとつでは、私好みの系統だとしか思わなかったが『おや……?』と思うものもあり、色々と揃えて見る。

あと必要なのは……あれだな。

お目当の物も手に取り、瑠璃たちに声を掛ける。

 

「瑠璃、隼。ちょっと試着してくるな」

 

2人が頷いたのを横目にすぐに試着室へ入った。早く着てみたい。

 

 

 

「ユートってば随分とはしゃいでたわね〜」

「ああ、試着室は逃げないのにな」

 

おもちゃを手にはしゃいでいる幼い弟妹でも見守るような2人の様子には気が付かなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ん……よし」

 

上着に少々手間取ったが、着替えることができた。

鏡に映る全身を確認すれば達成感に思わず口元が緩んだ。何故かって?

 

深緑のワイシャツに黒のスラックス。黒い外套。手に持ったままのネクタイを胸元に当ててみる。

ーーユートの完成だ

 

細かいところは違うだろうがそこまではわからないし、気にならない。

くるりと回ってみればふわりと外套の裾が揺れるのが視界の端に映った。我ながら、見れば見るほど物凄く似合っているのがわかる。

2人にもお披露目したい。

 

シャッ、とカーテンを開け近くにいた2人を呼ぶ。

 

「これ、どうだ?似合っているか…!?」

「わっユートってそういう格好も似合うのね!素敵よ」

「うわっ何だそれ」

 

同じ『わっ』が含まれていてもこの温度差である。瑠璃はありがとう、めちゃくちゃ嬉しい。

 

「…………駄目なのか?」

「いや、違う。悪くはないと思うが。何というか男っぽくないか?」

「んー。じゃあどれか変えてみない?……これとか」

 

彼女はそう言って近くにあったスカートを手渡してくれる。

 

「いいな。ちょっと着てみる」

 

試着室に戻り、改めてスカートを見る。

黒を基調としたミニスカートで決闘王っぽい鎖も付いている。さす瑠璃。

 

 

 

「どうだろうか」

「似合う、似合うわ!首元が寂しいと思って持ってきたんだけど、」

「ああ」

 

瑠璃はウキウキした様子でチョーカーを見せてくる。黒のベルトチョーカーだ。それっぽい。さす瑠璃(2回目)

 

「ユート、その長さのマントはいくらなんでも目立つだろう。こっちにしないか?」

 

ケープを手にした隼がそう問いかけてくる。レースはついているが黒一色でシンプルなものだ。ボタン1個で留めるタイプでネクタイも隠れない。

 

「そうだな、貸してくれ」

 

外套から着替えてみれば案外悪くない。良きチョイスだ。

 

「うん、最初のも良かったけどこっちの方がいいわね」

「ああ、新鮮だがいいと思うぞ」

「……褒められたら褒められたで照れ臭いな」

 

少し顔が熱くなっているのがわかる。ベタ褒めはやめてくれ、調子に乗るぞ。

 

「このまま着て行く?」

「いや、流石に全部は買えないな……これとこれと、これだけ買おうかな」

 

瑠璃にそう訊ねられるが、金銭的な問題がある。散財してストレス発散しようとお金はいつもより持ってきたが、使い過ぎも良くない。

ワイシャツとネクタイとスカート。この組み合わせだけでも着れそうだ。

 

「えっ」

「えっ」

 

何故そんなに驚くんだ?隼も目を丸くしているし。

 

「私がこれ買うわ」

「なら俺はこれだな」

「どういう…ことだ…」

 

チョーカーを握り締めた瑠璃が言えば、隼もケープを指差す。こういうとき息がぴったりなんだよな、この兄妹。ってそうじゃない。

 

「いやいやいや。私の分は私が買うべきだろう」

「だって似合うんだもの!買わなきゃ損よ?むしろ買わせて」

「誕生日も近いしそれ用でどうだ?」

 

その執拗なまでのゴリ押しは何なんだ……?

ーーハッ!?まさかこれが修正力?私を原作(服装)に近付けようという……?

とかなんとかふざけてないとやってられない。その情熱を他に注いでくれ。

とにかく説得だ。私なら出来る。2人だってしっかり説得すれば考えを変えてくれるはずだ……!

 

 

 

 

 

 

2人の勢い(ストロング)には勝てなかったよ……。

頑張って説得してみたものの暖簾に腕押し、豆腐に鎹。変化といえば隼の担当がケープからブーツに変わったことくらいだ。

軽く揉めていることに気付いた店員が話を聞いてくれたんだが、

『そのコーデに合う靴も必要だと思います』

なんて全く関係のないアドバイスをしてきた。それっておかしくないかな?

今着てるもの(何やかんやケープも自分で買った)とチョーカーをお買い上げ後、他の店舗で合う靴を購入という流れになってしまった。

いやまあブーツの方が安かったし、次の2人の誕生日に私も奮発すれば……いや流されたら駄目だろ私。

こうして私はユートスタイルとなったのであった。

 

-完-

 

 

 

……いや本当にこれで終わって欲しい。ナンバーズ争奪戦とかバリアンとの戦いとか関わりたくないからな。黒竜持ってる時点で手遅れな気もするが。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

とある店で商品を受け取りレジから離れようとした時だった。

 

「わっ……」

 

焦ったような声とともに小銭特有の金属音が響く。

どうやら誰かが財布の中身をぶちまけてしまったようだ。私の足元まで散らばってくる。

足元の小銭を拾い集め、同じようにしゃがんでいた少年に声を掛ける。

 

「はい。これで全部だろうか?」

「あっ、ありがとう……!」

 

小銭を手渡し顔を上げてみれば、水色の髪に可愛らしい顔立ち。

 

 

は、ハルト!!??

何故ハルトがここに…逃げたのか、自力で家出(?)を?

彼はハルトではない(無言の腹パン)

勿論ハルトじゃないぞ。龍亞でも零羅でもない。

髪は水色だが、それくらいの髪色は割とよくいる。1色な時点でかなり普通だ。事実、身近なところでも(2色)(2色)瑠璃(2色)……あれ?

というか目の前の彼は私と同じくらいの歳なんだからハルトなわけがなかった。

などと頭の中でふざけていると、彼は眉を下げ困ったように頰をかく。

 

「……えっと、僕の顔に何かついてたりする?」

「ん、いやすまない。誰かに似てる気がしただけだ」

 

その少年はそっか、と納得がいったとばかりに頷く。不審者扱いされなくてよかった。

……本当に誰かに似てる、というより見たことがあるような顔の気がする。いや、こんな育ちの良さそうな美少年に似た知り合いなんていないな。どこで見たんだろうか?……っと、これ以上じろじろと見るのは失礼だな。

 

「それじゃ、落とさないように気をつけて」

「うん、ありがとう」

 

また礼を言われるが、本当にそれほどのことじゃない。軽く首を振りその少年と別れ、親友たちの元へ向かった。

 

 

その後?それまでと同じように色々見て回ったぞ。すごく楽しかったし、ストレス発散にもなったな。




流れ的にこんな話挟んでいいのか?とも思いつつ、地味な服で決闘させるわけにはいかねえ!みたいな気持ちが勝ちました。明らかに尺の使い方間違ってるけどいいのかこれ……?だらだら長くなりそうだったんで最後はぶつ切りみたいにしてしまった。
加減を間違えると遊都が黒咲サーの姫みたいになってしまう……。裏話としては遊都がストレスが溜まって元気ないのとその理由を知った黒咲家の親が、隼がものすごく迷惑かけてるんだからお詫びに何か奢って差しあげろ(意訳)みたいな感じで諭吉を2人に渡してたみたいな。ハクションの世界とかならよくありそう。

アニメで使ってないカードの口上とか考えるのは楽しいがクソダサい。どうにかしろ遊作!


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アリガトウ、ワタシノデッキ

色々あったけどぼくは元気です。あ、でもまだVRAINSが3、4話くらい見れてない。

デュエル回(嘘)です。OCGほぼ素人なんで色々と注意。
「捻りのないデュエル展開だと?ふざけるな、俺は部屋に戻る!」って方は非推奨。


メリーズァーク、してえなぁ……(ゆゆゆゆケーキ見ながら)


――ナンバーズ所持者はナンバーズ所持者に引かれ合うとでもいうのだろうか?

気が遠くなるような現実に打ちひしがれそうになりながらも、目の前のちょっとアレな青年を見据える。

 

「フハハハハハハ!!これが俺の力だ!!現れろ、No.68 魔天牢サンダルフォン!!」

 

 

《No.68 魔天牢サンダルフォン》

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/闇属性/岩石族/攻2100/守2700

レベル8モンスター×2

(1):このカードの攻撃力・守備力は、お互いの墓地のモンスターの数×100アップする。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

相手ターン終了時まで、このカードは効果では破壊されず、お互いに墓地のモンスターを特殊召喚できない。

(3):このカードは『No.』と名のついたモンスター以外との戦闘では破壊されない。

 

 

魔天牢(摩天楼)という名の通り天に達するほどの高さを誇る、まるで建造物のようなモンスター。中央部には真っ赤な《68》が不気味にひかめいている。

――特有の威圧感と不快感。紛う方なきナンバーズだ。

しかしランク8で攻撃力2100か。どう考えてもステータスが低すぎる。原作に出ていたかどうかは思い出せないが、こういうモンスターは大体が何かあるだろう。

 

「魔天牢サンダルフォンの効果だ!こいつの攻撃力と守備力は互いの墓地のモンスターの数×100上昇する!!」

「ッ!?互いの墓地、だと!?」

「そう、墓地のモンスターは合計で17体。つまり1700アップだ!!」

 

【No.68 魔天牢サンダルフォン】(ORU 2)

ATK 2100→3800

 

ゴゴゴ、と音を立て建物じみたモンスターが変形する。それと同時に禍々しさも増していき、悪寒さえ感じる。やはりナンバーズはそれだけ異質なものなのだろう。

ちらりと視線を眼前の敵から自分のEXデッキへと移す。

 

「……やけに墓地を肥やすと思えばそういうことか」

 

彼の手札抹殺やメタモルポット、ブラックホールなんかの使い方には違和感を感じていた。手札事故(完璧な手札)やデッキ破壊を疑っていたが、どうやらこれが目的だったらしい。

 

「俺はオーバーレイユニットを1つ使い、こいつの効果を発動する!相手ターン終了時まで効果では破壊されず、互いに墓地のモンスターを特殊召喚できない。念には念を、だ」

 

【No.68 魔天牢サンダルフォン】(ORU 2→1)

ATK 3800→3900

 

戦闘での破壊も効果での破壊もできない。これでは伏せておいた円卓裂波もだめだ。Xモンスター相手だからロスト・ヴァンブレイズが使えないのも痛い。

しかし、100とはいえ更に攻撃力が上がったか。と、なると…

 

「これで終わりだと思ったか?さらに装備魔法、エクシーズ・ユニットを発動する!!」

「えっ」

 

 

《エクシーズ・ユニット》

装備魔法

エクシーズモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は、装備モンスターのランク×200ポイントアップする。

また、自分フィールド上の装備モンスターがエクシーズ素材を取り除いて効果を発動する場合、このカードは取り除くエクシーズ素材の1つとして扱う事ができる。

 

【No.68 魔天牢サンダルフォン】(ORU 1)

ATK 3900→5500

 

こいつ……脳筋ってレベルじゃない。私だったからよかった(?)ものの、リボルバーなんかだったら魔法の筒で終わりじゃないか。伏せカードを警戒しろ。いやブラフの可能性もあるし、警戒し過ぎるのもよくないのはわかるが、ほらもっと、こう……(ろくろを回す手つき)。なんて考えている場合じゃないか。意識を目の前の青年に戻すと、奴はバトルフェイズに移っていた。

 

「これで終わりだ!魔天牢サンダルフォンでダイレクトアタック!!」

「……墓地の罠カード、幻影騎士団シャドーベイルの効果を発動する」

「墓地から罠、だと!?」

「ああ。相手が直接攻撃宣言した時、墓地にあるこのカードを特殊召喚できる。これはモンスターではないから墓地からの特殊召喚は可能だ」

 

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)シャドーベイル》

通常罠

(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

(2):このカードが墓地に存在する場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。このカードは通常モンスター(戦士族・闇・星4・攻0/守300)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する(罠カードとしては扱わない)。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 

此方を排そうとする強大なナンバーズの前に墓地から蘇った騎兵が立ち塞がる。――尤も戦闘に敗れ斃れたわけではないため、蘇るという表現は不適切かもしれないが、こういうのは格好良ければいいのだ。

 

「攻撃を続行する!魔天牢よ、あの化生の者を蹴散らせ!!」

 

命令を受け、その禍々しいモンスターはシャドーベイルへと攻撃を放つ。……破壊光線かな?

圧倒的な力の差の前に為すすべもなく幻影の騎兵は消えていく。

 

「……シャドーベイルはフィールドから離れたとき除外される。だがここで、手札から幻影騎士団 フラジャイルアーマーを特殊召喚する」

 

【幻影騎士団 フラジャイルアーマー】

DEF 2000

 

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)フラジャイルアーマー》

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1000/守2000

「幻影騎士団フラジャイルアーマー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの表側表示の「幻影騎士団」モンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

(2):墓地のこのカードを除外し、手札の「幻影騎士団」カードまたは「ファントム」魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

平然を装ってはみたものの、こんなのを受ければライフ云々の前に闇のゲーム的リアルダメージで死ぬ。なにせ初期ライフを軽く超える攻撃だ。普通に怖い。

 

「フン……長引いただけだな。俺の勝ちは揺るがない」

 

もしあのダメージを受けてしまえばどうなってしまうのか、と想像して顔色でも悪かったのだろうか?目の前の男は私を見て余裕げに笑い、ターンエンドを告げる。

 

「私のターン、ドロー!!」

 

気合いを入れて勢いよくカードを引き、確認する。私の思いにカード達が応えてくれればいいんだが。星4で頼む。……星4、ピックアップ、すり抜け、……。

 

「……あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

相手のモンスターから奪い取った力でそのまま力押し。表現が悪い上に、脳筋じみているが、これが私の戦い方だ。

ダークリベリオンの牙による(顎ではない)攻撃は魔天牢を破壊することは叶わないものの、その衝撃は目の前の男へダメージとなって降りかかった。

 

「ぐああぁぁぁあ!?」

 

 

LP 2000→0

 

 

青年はそのまま倒れ込んだ。多分怪我はない……と思う。

 

「ナンバーズモンスター以外での攻撃では破壊出来ない、が。まあ関係ないな」

 

緊張の糸が切れ、溜息をついているところへ突然手裏剣のように此方に飛んでくる物体がひとつ。

 

「……ッ」

 

パシリ、と人差し指と中指で飛来物を受け止める。

ナンバーズが彼のEXデッキからひとりでに飛び出してきたのだ。この仕組みは全くわからないが、闇のゲームのお約束みたいなものだろう。

手にしたカードを仕舞い、うずくまったままの青年に駆け寄る。

 

「……ん」

「大丈夫ですか?」

「誰だ?……いや、俺は何を、」

「さっきまで貴方とデュエルしていた相手です。……終わった途端うずくまってそのままだったんですけど、大丈夫ですか?」

 

我ながら白々しいがこれまでも()()()()()()()()()()()()、直前のデュエルをしっかりと覚えている人はいなかった。そんな相手に『闇のデュエルしてました!!』なんて言えるはずもない。適当に誤魔化すのが最善だろう。

 

「そうだったか?…ああ、いや大丈夫だとは思う」

「なら良かったです。立てますか?」

 

手を貸そうとしてみたが彼は、あんたみたいな華奢な女の子に引っ張り上げて貰わねばならんほど弱っちゃいない、とすぐに立ち上がる。元気そうだ。

ナンバーズについて何も覚えていないことをそれとなく聞き出してから青年と別れる。……この確認は重要だぞ。下手したらナンバーズカードを強奪したみたいになるかもしれないからな。

 

 

 

周囲に誰もいないのを確認し、EXデッキから数枚のカードをそっと取り出す。

 

〈No.48 シャドー・リッチ〉

〈No.24 竜血鬼ドラギュラス〉

〈No.22 不乱健〉

〈No.85 クレイジー・ボックス〉

そして〈No.68 魔天牢サンダルフォン〉

 

突っ込みどころ満載だと思うかもしれないが、色々あったんだ。ダリべで脳筋攻撃したり、コンマイ語の被害者が出たり。あ、覇王黒竜さんは使ってはいない。ナンバーズ相手ではいまいちだし。

最初に拾ってしまったナンバーズな黒竜を含めずとも5枚。これだけでスピードデュエルでのEXデッキ埋まるレベルにまで集めてしまった。

――もうこれ、私がナンバーズハンターなんじゃないか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ナンバーズハント(不本意)しつつも、ちゃんと学校には通っている。

ナンバーズ所持者と合わないためにも引きこもっていたい気持ちがない訳でもないが、皆勤賞がかかっているのだから休むわけにはいかない。周りに迷惑をかけるのも悪いし。

別に『2年の楠何某が最近ずっと休んでいるらしいぞ』『そういえば、近頃様子がおかしかった……ハッ!』→家を訪ねると狩られた後だった、みたいなのを危惧した訳ではない。君島くんポジションはいらないです。北斗ポジはもっといらない。

などといつものようにどうでもいいことを考えていると、誰かとぶつかる。うわっ…私の索敵値、低すぎ…?

 

「っ…すまない」

「チッ何処見て、……」

「ナ……神代か」

 

ナッシャークでした。何でや武藤。

しかもじっと見つめられて……というよりも、ガンつけられている。私は知り合いに目つきの悪い人間(黒咲隼)もいるから構わないが、他の子なら怖がるんじゃないだろうか。そういうのよくないぞ。

などと思いつつ様子を伺っていれば目が逸らされる。

 

「お前……いや、何でもねぇ」

「?そうか。悪かったな」

 

なんだか歯切れの悪いところが引っかかるが知り合いでもないのだから追及すべきではないだろう。落とした物を拾いその場を後にする。

メインキャラクターとぶつかるのはフラグじゃないか、だって?ノートなんかを落としただし、『拾い間違えてカードが入れ替わってた!』みたいなのはないから大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

――去っていく背を目で追う。

隣のクラスだということはあいつの友人共々知っていた。あの兄妹を見ていると…いや、これは関係ない。……名字は知らないがユート、と呼ばれていたのも覚えていた。

とはいえ、オレとぶつかっても怯えることのない女だとは思っていなかったのだが。取り巻き共がいなくなった今でも大体の奴は怖がってくるため、どこか新鮮だった。

しかし、一瞬だけ見えた寒気のするような()()()()は気のせいだったのだろうか?

後ろ姿はもう見えなかった。

 




ヒント:2話のあとがき

禁止制限は一応2013年9月(征竜が瀕死のとき)準拠のDCを参考にしてますがあまり気にしてないです。

サンダルフォンの人は
「フハハハハハハ!!これが!!俺の!!実力だ!!!現れろ、No.68 魔天牢サンダルフォン!!!」
「あっ昇天の黒角笛で」
「ひょ?」
みたいな予定だったんですけど、試しに書いてみるために軽くデュエルしてもらった……んですが、納得のいく描写が全然書けなかったのと処理が微妙な部分があったので色々カットしました。原作キャラとのデュエルじゃないし。
あと墓地から罠!?は入れたかったので入れてみました。普通あのタイミングより前にも使ってそうなもんだけど仕方ないね。


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【番外編】遊都ぉ?誰それぇ?

前回の投稿からめちゃくちゃ時間経ってますね。そろそろ年号変わっちゃうじゃねーか。
また1ヶ月分くらいVRAINS溜まってるよ……。
それもこれもグラブルってやつの所為なんですよ。本当に趣味の時間消えますね、アレ。

今回はちょっと短いです。


いっけな〜い!遅刻遅刻!!あたし、榊遊弥。エンタメデュエルが大好きな何処にでもいる中学2年生!!

最近、自分がとある世界を壊滅状態に陥れた悪魔の分身の内の1人かもしれないって気付いちゃった。どうすればいいの〜!?

でも、そんな事よりもあたし、ずっと悩んでることがあるの!!

 

 

 

 

 

 

EXデッキからペンデュラム召喚が出来ません!!ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!!!ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!!

EXモンスターゾーンって何!?リンク召喚って?ああ!…じゃないよ!!

ペンデュラム(笑)みたいな扱いやめたげてよお!!

アクションデュエルは?リアルソリッドヴィジョンは??

りんくゔれいんずってなんですか?もぉむり…全て壊すんだしょ…。。。

 

 

[しばらくお待ちください.....]

 

 

 

取り乱しましたごめんなさい。

あたしは榊遊()。あ、女だよ。ちなみに幼馴染は柊柚(男)。

意味わかんないよね。LDSはないし、赤馬零児も見たことない。沢渡とかもどこ行ったんだよ。あいつら一目見たら確実にわかるだろうに……。ああ、父さんが失踪してないのは嬉しいんだけどね。

そんなんだし、正直ここARC-Vじゃないな?とは思ってる。アクファ要素ないもん。やったぜ。ユウヤちゃん大勝利〜!

とはいえ、滅茶苦茶デュエルモンスターズ流行ってるし、何かネット上に敵みたいなのいるし、絶対遊戯王だよね。カードゲームで世界滅亡の危機が訪れちゃう系のアレだよ。

そもそもあたしと柚ってポジション的にゲストキャラみたいなの?神月アンナ→神月アレンみたいな。……性別以外そのまま過ぎるし流石にないか。

なんて、昔から悩んでいることではあるが、ハノイの騎士(あからさまな敵組織)が出てきたことで最近は尚更だ。悩み過ぎて8時間しか寝れてない。

 

 

「ぉわっ……!?」

「っ……」

 

ぐるぐると色んな考えが頭の中を巡っていたせいか目の前が疎かになっていた。誰かとぶつかり、思い切り尻もちをつく。グキッだかグニッだか判別のつかないような音がした気がするけど気のせい気のせい。

ちなみに『ぉわっ』とか女子力の欠片もない声を出したのはあたしです。

 

「ご、ごめんなさい!」

「いや私も余所見をしていた。すまない」

 

慌てて謝ると、その人は怒った様子もなく此方に手を差し伸べてくれる。良い人だ。ユウヤちゃん的にポイント高い。

ていうかめちゃくちゃ声がいい……。

 

「ありがとうございま……」

「?……どこか痛めたのか?」

 

お礼を言って手を借りようとすると、そこにはイケメンがいた。あたしも遊矢顔(ただし女)だし、それなりの美少女だと思ってたけど。……顔がいい。

心配そうに見つめるので、慌てて手を取って起き上がる。起き上がろうとした。

 

「いえ、大丈夫です!……んぐ、」

 

が、また座り込んでしまう。

あっこれ足やっちゃった系だわ。しかも結構がっつり。グキッてのは幻聴じゃなかったのか。

 

「捻ったのか?」

 

ですよね。バレますよね。

彼の表情がさらに憂いを帯びる。顔が良くて性格まで良いってか?SSRを超えてもはやUR。

 

「いや、その…問題ないです」

「そんなわけないだろう。かかりつけはどこだ?」

「えっと……ちょっと遠いし、学校の保健室行けば大丈夫です」

 

病院は学校とは逆方面にある。距離を考えれば養護の先生に診てもらった方がいい。

患部は熱を持った感じもするけど大丈夫でしょ(慢心)。

なんて思っていると、彼はふいに端末を取り出し何処かへ連絡をし始めた。

 

「あの、」

「知り合いの医者に連絡をした。すぐに来るはずだ」

「えっ?わざわざ呼んじゃったんですか!?そこまでしなくても……」

「知り合いでもない男が車で連れて行くのは流石にな。かといって救急車も嫌だろう」

 

なるほど、そういうアレだったか。気遣いの鬼かな?

『ここでは通行の邪魔だから』と、道端のベンチまでスマートに連れて行ってくれる。おおデュエルマッスル……!

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

暫くすると綺麗な女の人がやって来た。どうやらこの人がお医者さんらしい。理想の女医……。男子だったら病院通ってる自信ある。

 

「……結構酷いわね」

 

眉をひそめながらもテキパキと処置をしてくれる。うわ、なんかいい匂いする。

 

「折れてはないと思うわ。しっかり固定しておいたけど、念のため放課後にでも病院に行くこと。いい?」

「あ、はい」

 

立ち上がってみても痛みはさっきよりかなりましだ。

そんな様子を見守っていた彼は安堵の溜息をつき、再度謝る。いやいや、全面的にそっちが悪いみたいな空気はおかしいって!!あたしが『遅刻遅刻~』とかしてたのが悪いから!!

 

出来る男オーラといい人感の満ち溢れる彼は、タクシーまで手配してくれていた。もちろん先払い。

流石に遠慮したが、お姉さんにまでゴリ押しされれば断るのも失礼、といったところかな。

タクシーに乗ると外ではお姉さんがひらひらと手を振ってくれていた。振り返す。

 

 

 

 

 

 

 

--ピンときた。

彼はアレだ。海馬から始まり、ヘルカイザー、ジャック、カイト、赤馬まで。敵じゃないけど……みたいなポジションの人だ。ライバルとも言う。ヘルカイザーより万丈目だろって?サンダーは基本ギャグ要員じゃない?

いや、それにしてはすっごい優しいし頼れる年上枠かもしれない。さっき挙げたのも大体年上だけど。

 

ただの一般人の可能性?

CV武内で蟹みたいな髪型した白髪イケメンが一般人なわけないんだよな~~!!

一般市民だった場合、キャスティングミスでしょ、某魔法学校のゲームレベルの。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

此処が遊戯王の世界であると確信(?)してしまい、ゴリっとSAN値を削られつつも教室に辿り着く。丁度休み時間だから入りやすい。……主人公がこの学校にいたりしないよな?遊戯王の主人公になれそうな髪型の生徒…………あたし(トマト)だ。ヒロインになれそうな髪型……やっぱりトマト(あたし)か。いや、十代みたいな感じの可能性もあるし……。

自ら更にSAN値を削りながら教室に入れば柚(※男)と目が合う。

 

 

「あっ、遊弥!!怪我して遅れたって聞いたけど、大丈夫か?」

「…………」

「怪我したんじゃなかったのか?……おい、本当に大丈夫か?」

「っ柚~~~!!」

「えっあっ、いきなり抱き着くなよ!!」

 

あたしの顔を覗き込んでいた柚にしがみつけば少しだけ冷静になれた(当社比)。焦っているみたいだけど、固定された足首を気にしてか無理に引き剥がそうとはしない。

 

「そんなに痛いのか……いや、走って来たしな。じゃあ怪我したときに他に何か、」

 

柚は独り言をぶつぶつと言っているが、あたしもそれどころではない。

とにかく巻き込まれませんように。ホント、切実に!!この中学校に主人公いませんように……!

 

そう言えば、さっきの顔がいい人、もしかしなくてもここまでしてもらったのに名前も聞いてない?人間としてどうなんだあたし。巻き込まれるのは御免だけど次会ったらもう一回お礼を言おう。

あ、でも聞いてみて名前が『リョウ◯◯』みたいなのだったら嫌だな。だってほら、亮とか凌牙とかライバルみがあるじゃん。

 

 

 

 

 

数ヶ月後、ニュースであの医者のお姉さんがハノイの騎士の1人として捕まったのを知ることになる。おいどういうことだ説明しろ苗木ィ!!




「…………ZEXALでよかった」
「悪い、ユート。何か言ったか?」
「なんかこう、別の次元の電波を受信したような、その……。いや何でもない」



エイプリルフールネタでした。本編じゃなくて申し訳ないです。
急いで書き上げたので修正が必要かもしれない。
2日には番外編表記にします。
遊弥ちゃんの話の続きは(多分)ないです。VRAINSのストーリーに一切関わらない気がしますし。どれくらいかというと、初期のプレメVS鬼塚とかの見物客として一瞬映るレベル。
フォント変えるの楽しいけど見にくいですね。あんまり変えない方がいいのかな。


【設定】
ゅぅゃ♀
振り子メンタルってほどじゃない。アバターにズァーク使ってるくらいにはぶっ飛んでる。
一番リアリスト。知識はARC-Vまで。
特に理由もなく柚子は柚くんになってる。他は知らん。

【おまけの設定】
ユーリ♀on GX
剣山とかと同学年の慇懃無礼な僕っ娘。
相手のフェイバリットモンスターで融合して泣かせるのが趣味。たのしー。
超越融合?何それ?
一番ド鬼畜デュエルジャンキー。
セレナはレッド生なポンコツ娘。

ユーゴー♀
「流石伝説の(ry」「や め ろ」
5D'sの満☆足☆街にいる。withリン。リンは男かもしれない。
オレっ娘。双子よりは多分年上。
憧れはチーム・サティスファクション。鬼柳さんかっけー!!
一番アホの子。
≠ユーリ♀の世界線


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