あらがみの日常 (はるる)
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あらがみの日常

識別名:はるる
種類:ハンニバル・幼種
概要:アラガミでありながら人間に対して協力的、または友好的であり、今までに例を見ない存在。手乗りサイズの見た目に反しその力は並のアラガミを凌駕しているようでウロボロスを瞬殺しているところも目撃されている。
好物は人間、特に女性の血液。肉は好まないらしくあまり食べようとしない。アリサ・イリーニチナ・アミエーラ、神薙ユウ、雨宮リンドウなど第一部隊の者に良く懐いている。
また、はるるの唾液には回復錠Sと同等の回復力、オラクル細胞には神薬に勝るとも劣らない効果があり、その外皮には超視界錠、筋力増強錠、体躯増強錠などなど様々な効果があることが榊博士の研究によって明かされている。簡単に採取できる部分だけでこれだけの効果があるのだからコアなどは一体どれだけ凄いのか気になっているようだが、アリサ・イリーニチナ・アミエーラを筆頭に台場カノンなど女性ゴッドイーターによって止められている。流石の彼も女性陣の怒りは買いたくないようだ。


 

「はるー? はるるー? ご飯ですよー?」

 

 誰かが自分の名前を呼ぶ声に目を覚ます。声のした方向を見れば、銀皿に入れた"食べ物"と"飲み物"を持つ女性が一人。

 ちらっと時計を確認してみれば12時半を指していた。どうやら寝ている間に食事の時間が来たようだ。

 くくるぅっと小さく鳴いて自分がいる場所をアピールする。ちなみに私が今いる場所は布団の中だ。ぬくい。

 

「あぁ、そんな所に居たんですか。ふふっ、可愛いですね」

 

 鳴き声に反応して私を見つけたその人は布団の上に2つの銀皿を置いて、くすりと笑みを浮かべながら私の頭を人差し指で優しく撫でてくる。そのまま首、顎下と撫でてくるその指は手慣れていて、思わず気持ち良さに目を細めてしまうほどだ。

 数秒ほどして満足したのか、その人は撫でる指を離し持ってきた食べ物を食べるように促してくる。私はソレに逆らうことなく銀皿に近づき中に入っている物を食べ始めた。

 黒い羽根のような物をガリゴリと、大凡食べ物を食べているようには聞こえない音をたてながら完食し、次に真っ赤な飲み物を猫のように舌で掬いながら飲み干す。

 お腹いっぱいになったせいかけふっとゲップが出たのはご愛嬌だ。

 

「今日も完食ですね。食欲があるのは良いことです」

 

 そんな私の一部始終を自愛の表情で眺めていた女性がそう言いながら綺麗に空になった銀皿を回収した。

 ちなみに食べ滓を溢すなどというはしたない事はしていない。私は礼儀正しいアラガミなのだ。……まあ、溢した時にしょうがないなと笑いかけられながら掃除されるとナケナシのプライドが悲鳴を上げるから細心の注意を払っているだけなのだが。

 

 くぅっと鳴いてお腹いっぱいになった上機嫌に任せ、女性の肩に一飛びで飛び乗る。そのまま髪を支えに頭の上に登れば私の定位置……ベストポジションだ。

 初めて乗り始めた頃は帽子があって乗りづらいことこの上なかったが、幾度が繰り返す内私に配慮してくれたのか、最近では帽子を被ってないことが多い。

 頭に乗っている時間が多すぎて、私が頭上に居ないと落ち着かないと言われたときは自重しようかと思ったが……まあ、結局自重できなくて良くこの人の頭の上に乗せてもらっている。

 体幹がしっかりしているせいか揺れることはほぼ無いし、私と同種の気配を身体から発しているのだからしょうがないと諦めてもらうことにしよう。……伝えることは出来ないが。

 

「おーい、アリサ。居るか?」

 

 私が彼女の頭の上で微睡み始めていると、ノックもせずに黄色いバンダナを頭に巻いた少年が部屋に入ってきた。女性の部屋にノックもなしに無断で入ってくるとはデリカシーのない奴だ。

 まあ、その女性の布団で堂々と寝ていた私が言える立場でもないのだが。……いや、一つだけ弁解させてもらうとするならば、最初に私を布団に招き込んだのは彼女だ。私は悪くない。……はずだ。

 

「……はぁ、なんですか? というか勝手に部屋に入らないでください」

「ごめんごめん……今日のそいつの当番はアリサだったのかぁ……」

「そいつ、じゃありません。はるるです。いい加減名前くらい覚えたらどうですか?」

「お……おう。ごめん……いや、どうも前に指の肉を噛み千切られてから苦手意識が……」

 

 ……ふむ。そんな事もあったものだな。しかし私は謝らない、嫌がっても執拗に頭を撫でてくる貴様が悪いのだ。

 現に私は少し窘められる程度で怒られることはなかった。逆に貴様のほうが怒られていたことを思い出せ。

 そんな思いを込めながら威嚇するように唸り声をあげる。それだけで顔を引き攣らせ後退りするのだから、苦手意識というのも根深いようだ。だが、私は、謝らない。

 

「それで、どうしたんですか?」

「あぁ、えっと……さっき榊博士から俺とユウ、アリサに任務がアサインされててさ、それを伝えようと……ってやべぇ! もう時間無いじゃん!」

「ちょっ、そういうことは早く言ってくださいよっ!」

 

 どうやら二人は任務に出掛けるようだ。私は勝手に外出することが出来ないので、一旦ここでお別れということだろう。……ベストポジションが……ちょっと悲しい。

 名残惜しくもしょうがないと諦め、私が頭の上から飛び降りるのと同時に二人は慌ただしく部屋を出ていった。ついでに私も扉が閉まる前に部屋から出る。

 余程急いでいたらしく、私が部屋を出る頃には二人はエレベーターに乗り込んでいる所だった。

 ……私は身体の大きさ的に誰かが一緒じゃないとエレベーターに乗れないのだが、どうしようか。部屋から出てしまったため部屋にも入れないし……取り敢えず、自販機の近くにあるソファーで惰眠をむさぼることにしよう。次起きた時は誰かの部屋の中だろう、多分。そうだと良いなぁ……。

 

 

▲▽

 

 

 ここ、フェンリル極東支部では他の支部に知られていない、知られてはいけないことが一つある。

 それは支部内にアラガミを飼っていること。決して狩っているわけではない。いえ、日夜数多のアラガミを狩ってはいますが……。

 まあ、そのアラガミを榊博士主導のもと秘匿しながら飼っているのです。

 珍しく人を襲うことがなく、逆に人を助けようとする奇異なアラガミ。しかもそのサイズが普通のアラガミとは違っていて、手の平サイズ。

 昔は数多居たリスやハムスターと呼ばれる生き物と同じサイズのそれを私達は飼っている。

 しかもゴッドイーターが率先して世話をしているのだから、他の支部に知られるなど以ての外。斯く言う私も率先して世話をしているその一人だ。

 

「はるー? はるるー? ご飯ですよー?」

 

 いつも常備している希少素材(今日はディアウス・ピターの帝王神翼)と私の血液を銀皿に乗せ、部屋に居るはずのその子に声を掛ける。血を食事として出しているのは他のどのアラガミ素材よりも好んで飲んでいるからだ。榊博士によればゴッドイーターの投与されているオラクル細胞を摂取したいのだろう、とのこと。それを証明するようにリッカさんなどゴッドイーターではない人の血はあまり飲もうとしない。ちなみにはるるは雑食で出されればなんでも食べるが、一応アラガミ特有の偏食傾向があるようで、男性ゴッドイーターの血もあまり好まないようだ。一部例外はいるが。リンドウさんやソーマ、ユウなど。

 

 数秒して、可愛らしい鳴き声が布団の中から聞こえてきた。声の方を向いてみれば、布団から手乗りサイズのハンニバルに似たアラガミが顔を出していた。

 通常のハンニバルと違いデフォルメされたように愛らしい瞳に小さな角。けれど獰猛さを感じさせる鋭い牙などがあるが、それもはるるがゴッドイーター……特に女性に人気の一旦だ。

 その身体は透き通ったような水色で、オッドアイのように右目が赤、左目が青とアラガミでは基本ありえない色をしている。

 

 銀皿をはるるの前に置いてしゃがみ込む。頭を指の腹では出てあげると気持ちよさそうに目を細めてくれる。きゅるきゅると小さく鳴いているのは数少ない癒やしの一つ。これもゴッドイーターに好かれている理由の一つだ。

 ……まあ、コウタはやりすぎて指の肉を噛み千切られましたが……。

 

 嫌がられる前に撫でるのを止め、食べるよう手で促すと、小さな口で一生懸命に食事を始める。

 

「ふふっ、可愛いですね……」

 

 その姿に笑みをこぼしてしまうのはまあ、仕方のないことだろう。このご時世、娯楽や癒やしというものは極端に少ない。頭でははるるがアラガミであるということは分かっているが、それもゴッドイーターや人間を捕食することが()()()ないと言い切れるため問題ない。

 故にこそ、仕方ない。仕方がないのだ。

 

 数分ほどして銀皿にだされたものを完食したはるるは小さく(おくび)を吐く。これもアラガミとは思えない行動だ。榊博士曰く人間並みの知能があるか、もしくは元々人間だったのかも知れないねぇ、なんて冗談っぽく言っていた。

 後者の方はすぐに否定していましたが。仮に元が人間だとしたら手乗りサイズなのは明らかにおかしいですしね。

 

「今日も完食ですね。食欲があるのは良いことです」

 

 はるるはアラガミでありながら食欲がない時が多々ある。理由は未だに判明していない。そのせいで私を含め世話をしているゴッドイーターはその度に心配になってしまうのだ。榊博士も早く解明してくれればいいのに。無駄に良いその頭で。……そんなこと口が裂けても言えませんが。なら解剖させてくれないか、なんて言われるのが目に見えていますし。

 ちなみに、はるるの食事は非常に上品だ。いや、正確には上品になった、でしょうか。最初は他のアラガミ同様食い散らかしていたのですが、いつからか食べ滓をこぼすことなく食べるようになっていたんですよね。榊博士曰く学習能力もずば抜けているのだろう、らしい。いえ、人間の言葉を理解して行動している時点でそういうのは分かりきってますから。

 

「おーい、アリサ。居るか?」

 

 などと瑣末なことを考えながらはるるを見て癒やされていると、突然声と共に誰かが入ってきた。まあ、声とこのデリカシーのない行動で誰かなんて見なくても分かるのですが。

 というか、ですね。いつも思うのですが女性の部屋にノックもなく入ってくるのはどうかと思うんですよね。そんなことじゃ妹さんに嫌われますよ? 決して言いませんが。そのまま嫌われてしまえば良いんです。

 

「……はぁ、なんですか? というか勝手に部屋に入らないでください」

「ごめんごめん……今日のそいつの当番はアリサだったのかぁ……」

「そいつ、じゃありません。はるるです。いい加減名前くらい覚えたらどうですか?」

「お……おう。ごめん……いや、どうも前に指の肉を噛み千切られてから苦手意識が……」

 

 全く、本当に全く。コウタに学習能力は無いのでしょうか。コウタよりずっと小さいはるるですら学習しているというのにこの男は……。それに噛み千切られたのは自業自得、正直噛み千切られる程度で済んでいることに感謝しても良いと思うのですが? はるるの脅威度は人間に対して友好的であり滅多なことで攻撃してこないとはいえ、通常のハンニバルよりも力もスピードも勝っているのですから、下手すれば殺されていた可能性もあるんですよ? 少しは考えないんですか? ……無理ですか、コウタ(バカラリー)ですし。

 

「それで、どうしたんですか?」

「あぁ、えっと……さっき榊博士から俺とユウ、アリサに任務がアサインされててさ、それを伝えようと……ってやべぇ! もう時間無いじゃん!」

「ちょっ、そういうことは早く言ってくださいよっ!」

 

 バカ、このバカっ! なんでそんな大切なことを忘れてるんですか! あぁもうっ、はるる、行ってきますっ!

 




ゴッドイーターでなにか書こうと思って書いた……けど、最後らへん力尽きた。むり。


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