案外、彼女の夫が一回りも年上であるのは間違っていない。 (リバポから世界へ)
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第1話「3ヶ月経っても彼女は心を開かない。」

何故かパッと思い付いたので一時間ちょっとで書いてみました。
今書いてる別の物語の箸休め的な感じです。

このストーリーは、ゆきのんにとっては十二分に有り得る未来だと思います。

しかしタグにもある通り、彼女には幸せになってもらいます!
ええ、そりゃあもうブラックコーヒーが甘く感じるくらいにね(笑)

それではどうぞ!


『夫婦』

 

皆さんは、この言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか?

結婚している一組の男女で、同じ屋根の下で暮らしているパーナー。

二人の仲が良いかどうかはともかく、一般的にそのようなイメージがあるだろう。

 

「雪乃さん、おはよう」

「おはようございます、清治さん」

 

だからこうして、毎日起床する度に”違う”寝室から出てくるなんて事は……おかしい。おかしい……はずだ。

 

 

清川清治(きよかわきよはる)の一日は、毎朝このように始まる。妻と別の寝室で起床し、彼女の作った朝食を一人で食べる……。その繰り返し。出勤するまで同じ行動をとることはない。

 

「な、なあ雪乃さん」

「……何でしょう?」

 

ある朝、そんな現状を打破するため彼は遂に行動に出た。恐らく今動かねば、自分たちは一生このままだろう。そんな危機感を抱いて。

食欲がそそられる妻の料理に手を付ける前に、清治が声をかける。雪乃は彼にコーヒーを淹れると、静かに返事をした。しかし彼と目は合わせない。それは毎日のことだった。

 

「その……たまには一緒に食べないか? 毎日別々というのは流石にね……」

 

そう言うと、雪乃は一瞬ビクリと震えた後で弱々しく反論を始めた。

 

「あ、朝は時間が無いからこちらの方が良いでしょう?」

「それはそうだけど、夫婦なんだから食事くらいは……」

「第一『夫婦だから』と言って、一緒に食べなければいけないということ事態が時代錯誤なのよ。二人分の食事やお皿を用意すれば、それだけ時間が掛かるしそれに―――――」

「わ、分かった。僕が悪かった」

 

この流れはいけない。彼女の口調から敬語が消えた。籍を入れてから約3ヶ月が経ち、それが照れ隠しではなく"拒絶"であるということが最近になって漸く理解出来たのだ。

勿論、妻には普段から今のような口調で話して欲しい。夫婦であるのに敬語というのは、些か他人行儀すぎる。

清治は雪乃より一回りも歳上だが、威張り散らすつもりは毛頭無かった。二人の立場が対等でなければ、愛し合うことなど夢のまた夢である。

しかし自分達は少しばかり状況が特殊なため、多少の時間は必要なのかもしれない。

そうやって自分を無理矢理、納得させるしかなかった。

 

「まだ、半年も経っていないんだ。すまない、急かしすぎたね」

 

清治が自嘲気味に笑うと、

 

「いえ……」

 

雪乃は小さく呟き、再びキッチンへと戻っていった。

 

『いえ……』

 

その後に本来続く言葉が「あなたが悪いわけではない。もう少しだけ待って欲しい」なのか「時が経っても、あなたとは無理」なのかは……流石の清治でも分からなかった。

今の彼に出来るのは「頼むから前者であって欲しい」と願うことばかりである。

しかし彼女と知り合って以来、唯の一度も笑顔を向けられた記憶が無いことを考えれば……その願いが叶う可能性は限り無くゼロに近かった。

 

 

 

 

 

その後、皿くらいは自分で洗うという清治をキッチンから追い出した雪乃は彼の弁当を作り始めた。

いくら夫とギクシャクしているとはいえ、妻としての最低限の務めは果たすつもりでいる。

そして完璧主義を自称する彼女は忙しい朝でも手を抜かない。弁当箱に詰める料理、その全てが手作りだった。

手間が掛かるから適当で構わないと彼は言うが、妥協はしたくない。それにこの程度は大して苦にもならなかった。

この日も夫が身支度を済ませ、自室から出てくる頃には弁当箱は既にバンダナで包まれていた。

それを見た清治は嬉しそうに微笑む。

 

「毎日ありがとう。いつも楽しみにしてるんだ」

「適当に詰めただけです。喜んで頂けるような事はしていません」

 

精一杯の感謝の気持ちを伝えても、彼女の様子は一向に変わらない。

 

「…………」

 

突き放した態度に、とうとう彼は黙り混んでしまった。無言になった夫を見た雪乃は極めて事務的に話を続ける。

 

「今日は何時頃、お帰りになりますか?」

「……7時くらいだ」

 

玄関で靴を履く清治も先程と比べ、不機嫌そうに返事をした。やはり自分の態度に怒っているらしい。

 

「分かりました。夕食は何が良いでしょう?」

「何でも構わない」

 

今度は夫の突き放すような言い方に雪乃は困惑する。夫からこのような言い方をされるのは初めてだった。

しかし、そんな様子を悟られないようにムッとした表情を作る。

 

「……それでは困ります」

「君が作ってくれるなら何だって構わない。僕は……」

 

そう言いかけた清治は一瞬だけ言い淀むが、次の瞬間―――――

 

「"俺"は2人で一緒に食えるなら……それだけで満足なんだよ」

「…………」

 

今まで丁寧な口調だった夫の感情むき出しの言葉に、雪乃は思わず目を見開いた。

 

「……行ってきます」

 

返事を聞く前に清治は外に出た。

マンションの中庭では雨が降っているのが見える。今日は気分良く仕事をするのは難しいなと彼は溜め息を吐いた。




如何でしたか?

ゆきのんツンケンし過ぎですかね? けど、心を開いていない相手にはこんな感じだと勝手に思っています。

彼女の心に積もった雪を如何に溶かしていくのか……。それがこの物語のテーマになりそうです。
そして溶けきった後は一体どうなるのか? お楽しみに!

読み辛かったら言ってくだせえ汗

思い付きの見切り発車なのでクオリティーはかなり低いです……。ですが感想でも批評でも頂けたら、モチがベーションします笑

俺ガイルの二次は大変そうなので、先行きは不透明ですが……。

もうすぐ資格のテストなので、時間の更新は暫く先かもです。申し訳ありませんm(_ _)m

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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