GGOで凸砂する (MKeepr)
しおりを挟む

番外:凸侍のスペック

10万UA超えたので主人公のスペックをば、これの次の話が投稿されたら最上段に移動させます。

GGOで凸砂する、をご覧いただきまことにありがとうございます。

光剣の部分を更新


凸侍 (とつさむらい)

 

 

アバター

M2000番台

身長175cm体重65kg

 

capacitychart

見た目2

銃剣術4

射撃3

素早さ5

判断力4

凸砂6

 

 AGIによる速度とSTRによる装備可能重量の多さを生かした近~中距離型のプレイヤー。GGOゲーマーとしてのスキルは闇風に並びトップクラスで、BoB本選でも毎回上位に食い込むトッププレイヤーの一人。

 大胆かつ繊細な射撃技術や高いAGIを生かしたライン避け歩法などは初心者にもわかりやすく、闇風と並んで回避の仕方の参考にされる。すこし癖のあるAGI型プレイヤー…………

 で  は  な  い。

 その正体は凸砂。ボルトアクション式で威力に補正があるライフルを接近戦で撃ちこむ謎ムーブをかます男である。対物ライフルを手に入れて謎ムーブ感がパワーアップした。

 高めのAGIや武器を持つためのSTRが高いのは良いとして、撃ち合いで安心感を高めてくれる耐久を高めるVITが初期値、DEXも低くお前なんで狙撃銃持ってるんだと第二回BoBまで言われ続けた。

 それ以降はなんかもう凸侍だから……と諦められた。銃剣術も使えるが射撃戦が主なGGOではほぼ無用の長物である。ただ本人は第一回BoBの経験から必要だと思っている模様。

 プレイスタイルの特性上、AGI特化型に弱く、STR-VIT型の天敵。

 また持っている武器で解説勢や銃マニア勢のメンタルに精神攻撃を仕掛け続ける男でもある。

 全GGO凸砂の会というチャットグループに狙撃手を見境なしに勧誘しているため知り合いは多い。しかしプレイスタイルが特殊すぎて一緒に狩りには行ってもらえない。狙撃手を凸砂に再教育しようと試みるも狙撃手が接近された時の対処の一種として勉強されるだけで凸砂はやってもらえない。AGI型がスナイパーに近づいても撃ち殺される事案が増えたという噂がある。

 変な友好関係が多い。第二回スクワットジャムの後ダインに何故か襲撃され返り討ちにした。

 

 

装備

AW50凸砂カスタム

コガラスマルG9X銃剣カスタム

特殊弾諸々

 

 

装備詳細

 

AW50凸砂カスタム

 

 イギリスの銃器メーカー、アキュラシー・インターナショナルが製造したL96A1の50口径再設計モデル。

高精度長距離狙撃用ライフルとして設計され、前床には二脚、後床にも補助脚が装着され遠隔目標に対する正確な狙撃を可能としている。

 

 というのは建前、前床にはフォアグリップが設置され補助脚のついた特徴的な後床は立射にマイナス補正が入るため取り外されている。

 代わりにM4系のストックに取り替えられ、外見的シルエットは1000歩譲ってAX50に近くなっている。後床の長さが短くなり取り回しは若干よくなった(?)

 上部にはまさかのアイアンサイト。斜めにスコープが付けられている。

 マズルブレーキはレールシステムで斜めに備えられたスコープと干渉しないよう初期のタイプから変更されている。本人としては取り外したいが取り外し不可のパーツなので形状を変更したのみ。

 さらに銃口下部にもマズルブレーキと干渉しないよう光剣が取り付けられている。グリップの薬指の部分に連動スイッチが取り付けられ適宜銃剣として使用可能。

 GGO内ではかなり珍しい対物ライフルであり、BoB本線出場者の中ではシノンと凸侍の二名のみの銃器なのだが、凸侍のは対物ライフルと認識されていないのかBoB特集記事などではシノンがBoB出場者唯一の対物ライフル使いと紹介されることが多い。

 またBoB中に凸侍が持つ姿が映るとうんちくを語ってくれる解説勢が強制ログアウトする事案が多発することから切断銃と不名誉な名称がついている。

 

 

コガラスマルG9X銃剣カスタム

 

光剣の一種で、1mほどの赤い刀身を形成する。バッテリー容量が大きく使用可能時間が長いかわりオーバーヒートしやすい。

 光剣の解説には老舗の光学銃メーカーがトチ狂って作ったビームガンとしても使える光剣と書いてあるが、残念ながらビームガンとしての機能は未実装である。

 20万クレジットと馬鹿みたいな値段と光剣の説明文からロマンを感じで買った光学銃マニアがキレてザスカー本社に電凸したという伝説がある曰く付きの光剣種。

 ちなみに銃剣として刀身を形成すると全体の長さがAW50の全長と相まって2m半ばを越える大惨事だが、光剣自体は重量がないので取り回しは変わらない。

 過剰威力だが意外と障害物の破壊やらワイヤーの切断などが音もなくできるので便利。

 火星の王から手に入るドロップ品により強化クエストを受けることで刀身の長さとビームガンとしての機能を獲得し説明文通りの性能になった。光剣としては最上位に位置する性能を持つ。

 ビームガンとしての機能はシステムの兼ね合いなのかバレットサークルが出ないのでとても当てづらい。凸侍は銃剣として装着しているためAW50のバレットサークルである程度代用可能だが撃つくらいなら直接AW50撃った方が早い。

 また刀身も最大2m近くまで形成できるようになったが、長すぎて逆に邪魔なので結局1m形成に設定し直されている。実質出力が上昇しただけである。

 

 

特殊弾諸々

 凸侍が弾頭製作スキルで作った弾。.50BMGの弾の大きさから割りといろいろできる。

 

徹甲炸裂弾

 凸侍がつくった中でも最高傑作を自認している弾。高性能炸薬と徹甲弾を内蔵した弾で現実の徹甲焼夷弾を参考に作った。弾頭の緑と白はその影響。

 スプリングフィールド時代から試作していたがスプリングフィールド10丁を無きものにし完成しなかったが、.50BMGとコピー銃によりようやく完成させた。

 命中すると徹甲作用とともに爆発し周囲に衝撃と火を撒き散らす非常に高い殺傷力と衝撃力を持ち、エムの盾を吹き飛ばしたりもできる。

 が、高精度.50BMG弾の500倍の費用が掛かるヤベーヤツ。

 

戦艦装甲弾

 弾頭全部を宇宙戦艦の装甲で作ってみた狂気の産物。5万クレジットのほとんどは宇宙戦艦の装甲を弾の形に加工するための費用。

 あまりにも固すぎてライフリングを逆に食い潰して弾詰まりを発生させ射手と使用銃を即死させるヤベーヤツ。

 撃つとよりにもよって破裂が顔面に直撃する。ちなみにブルタップ式だと側頭部に破裂が直撃する殺意高い仕様。

 

プラズマグレネード弾

 弾頭の中にプラズマを詰めた一品。なんとプラズマグレネード1個と.50BMG弾一つで作れるのでお値段もとてもお手軽。ただし発砲の衝撃で弾頭内部のプラズマが誘爆し半径1mにプラズマの奔流をまき散らす。つまり射手は死ぬ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

STR-VIT型の天敵は凸スナだったんだよ!!

第二回BoB上位3人は三すくみだった(白目)
誤字報告ありがとうございます修正しました!


「おっすゼクシード!! なんだその装備新装備か!? まーたリアルマネーで何とかしたのかこの金持ちが!!」

 

 白を基調にした目立つ格好をしたゼクシードに、廃墟の壁を利用しながら接近する影があった。その動きはAGI型が行う挙動に近く、それらが装備可能な短機関銃程度は無力化する防具を装備してきたゼクシードは、自己の脇の壁をやすやすと貫通した大穴を見て少しだけ冷や汗を流した。

 

(煩いぞ凸侍! お前こそなんだその銃は!)

 

 ゼクシードは思わず叫びそうになった。

 それはあまりにも大きく、それでいて精緻だった。だが使ってる奴が全く持って精緻じゃなかった。凸侍と呼ばれた金髪の男はすごくいい笑顔を浮かべながらドでかい銃を腰だめにして、足だけ別の生物のようにシャカシャカと動かしながらゼクシードが待ち構える廃墟へ接近する。

 ゼクシードとてトッププレイヤー、その動きに合わせ銃撃を敢行し、数発が命中した。凸侍はその変な構成の代償に体力が低い。あの数発の命中でもかなり痛手となるはずだ、とゼクシードはほくそ笑んだ。

 しかしそれと同時に赤いバレットラインがゼクシードをカバーする壁に向けて発生した。視線の先には、めっちゃいい笑顔の凸侍。それを認識した瞬間、その瞬間が彼の最後の景色だった。至近距離故にほぼタイムラグ無しでバレットラインをなぞる凸侍の放った銃撃が、ゼクシードがカバーに使った壁をいともたやすく貫通し、その胸部に叩きこまれたのだ。本来1000m級の距離から放たれるべき物が僅か50mもない距離から放り込まれた破壊力は絶大で、ゼクシードの上半身と下半身が泣き別れし、一撃でHPを全損させたのだ。

 

「よっしゃ! あとは森林の方の闇風か?」

 

 死亡アイコンを確認した凸侍は、肩に銃を担いで、懐の端末をとりだし、自身と闇風の一騎打ちになったことを確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その中継を見ていたどこかの酒場にて。

 ゼクシード、一撃でHPを全損、その衝撃に中継映像を見ていた観戦者達は騒然となった。優勝候補であったゼクシードの新装備に対する話題もさることながら、それを倒した男、凸侍が構える銃を見て、騒然とならざるを得なかった。

 大きい、140㎝近くの全長に武骨な銃身、その先端には大型のマズルブレーキが装着されている。上部レールには高倍率のスコープが装着されたソレ、この第二回BoBにおいて初確認されたアンチマテリアルライフルと呼ばれる最高クラスのレアアイテムである。

 

「おいおい、マジかよあの野郎……」

 

「お、どうした? 何時もは知っているのかライデーンって感じで解説してくるお前が」

 

 映像を見ながら嘆息する男に、酒場内の注目が集まる。

 

「アレを見てみろ」

 

 男の指差す映像の先には、凸侍の持つあのアンチマテリアルライフルがあった。そこにはスコープが本来あるべき場所より脇45度の角度で備えられ、スコープが収まる場所にはアイアンサイトが、そして左手は銃床先端に備えられた”フォアグリップ”を握りしめている。弾倉も12.7mmであろうと10発程度入るほど長く、伏せ撃ちをするには邪魔になるような代物だ。狙撃銃大好きな奴には冒涜的な装備の仕方だった。

 

「あの野郎……あの野郎……!! 愛しのアンチマテリアルライフルちゃんで凸砂してやがる!!」

 

「いや、元からあいつそういうプレイスタイルだったろ」

 

「前はスプリングフィールド使ってなかったか」

 

「うるさいやい! 対物ライフルは遠距離狙撃がかっこいいんだい! だいたいAW50じゃねえか!! AWのAの意味知ってるのか! アキュラシーだぞ!! 正確って意味なんだぞそれを凸砂だとおおおおお!?」

 

「うわああああライデーンが乱心したぞ!!」

 

 ライデーンがあまりの事態に乱心してMk23拳銃を抜いて暴れまわり酒場は騒然となるのだった。

 

 

 

 なお、凸侍は無謀にも闇風とAGI合戦に突入し、ただでさえ少ないHPをボコボコにされ第二回BoBの優勝者は闇風となったのだった。

 




凸侍(トツサムライ)

AGI-STR偏重型、DEXもそこそこしかないため遠距離狙撃が哀しみを背負っているが、凸砂するための構成なので残当。
初期からやっている
狙撃銃なのに凸砂のため速射スキルやらを習得してる。
以前はスプリングフィールドで凸砂していたが対物銃をゲットして凶悪化した。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

凸砂は重い武器も持てて速度もでる最強のビルドだよ

凸砂が対物凸砂へと進化する話です

AGI誤字修正
誤字報告ありがとうございます。


 凸侍の朝は早い。大学生故の講義が昼からという時間的余裕を以てアミュスフィアを被り、SBCグロッケンに降り立つのである。朝早くからでは仲間内での時間あわせが面倒なのでは? と思うかもしれない。しかし心配はない。たとえ上手くても凸砂とかいうポジショニングが謎の奴と一緒にやりたがる奴はそういない。つまりほぼぼっちなので気にする必要が無いのである。

 ぼっちの心得、死してランダムドロップ回収してくれる者無し。凸砂というロマン構成の癖に質実剛健なプレイを心がけねばならぬのだ。凸砂と同列に扱われた隠密同心に土下座して謝るべきだろう。

 とりあえずといっては何だがもうすぐ第二回のBoBが開催される。うっかり死んで装備アボンという事態は避けたいため、エネミー狩りもあまりしたくはない、等という思考は凸侍には、無い。そんな思考があるなら凸砂なんてやらずにAGI特化か狙撃手をやっている。

 というわけではないが凸侍がやって来たグロッケン地下ダンジョン。ここは罠に引っ掛かると連れ込まれる高難易度エリアで、初心者の間に訳もわからず死んでグロッケンに送り返された奴も結構いる。罠自体はそこまで発見困難ではないので、実力者は逆にダンジョンを発見できず、初心者は訳もわからず蹂躙される部屋に転送される罠としか認識できないやらしい仕様である。

 なぜ凸侍が知っているかというと、DEXが低くて罠発見に失敗して飛ばされたからである。凸砂ビルドの無理っぷりが如実に出ている。

 

「今日も今日とて、やってやるか!」

 

 ゴツい見た目が多いGGOの中では比較的貧弱そうな外見の凸侍が低い声で気合いをいれた。

 名前らしく防弾プレートを装備し、銃を手にもつ。それはスプリングフィールドと呼ばれるライフルだ。木造風の曲銃床に無理やりレールシステムを導入し、アイアンサイト脇斜め45度にライフルスコープを備え、ボルトアクションはストレートプルに改造、コンペンセイターと銃剣を装着した好きな人が見たら発狂する冒涜的な凸砂仕様スプリングフィールドだ。この世界観でウッドストックは逆に高価なのではと疑問に思うかも知れないが、実は木の質感を再現したプラスチックストックらしい。根拠は銃の説明文。

 それはさておき、罠を起動し中にはいると、まずは機械の近接攻撃型エネミー達のお出ましだった。初心者はここでまず死ぬ。結構広い空間なので、AGIの速度を生かせば近接で殴られることもない。おそらく殴られると機械に拘束され、あの輝く光剣と同エネルギーブレードを突き刺してくるので、逃げ回りつつ確実に急所のエネルギーコアに当てることでそれを処理していく。

 複数回入って分かったが、ランダムダンジョンなのかパターンがかなり多いのか最初の洗礼もやって来ることは同じでもエネミーが毎回違う。前回凸侍が遭遇したのは人造生物が丸呑みにしてこようとする感じのものだった。

 ここを突破し、通路を進むと破損した配線やパイプが壁を伝う量がどんどんと増えていき、途中何かの動作を繰り返す黄色く塗られた工業用のロボットに襲われたり、近未来的な作業着を着た白骨死体などが散見されるようになった。

 パーティープレイだと調べられずスルーされることの多い設定的なオブジェクトたちからは様々なメッセージが出てきた。

 

『亜空間跳躍のエネルギー残量が』

 

『母なる星への帰還を願う』

 

『区画閉鎖、動力区画の汚染による人体異常』

 

『SBCストーンビレッジとの連絡途絶』

 

 

「なるほどなあ、おおよそここはグロッケンの元動力設備だったって感じか」

 

 凸侍が納得したように呟きながら最深部に到達する。

 巨大な円筒状の空間、その中央に決戦のバトルフィールドと言わんばかりの広場があり、周囲の外郭からはメンテナンス用であったのか多くの足場や機械アームの残骸が広場の方へ続いていた。上部には血管のように束ねられたパイプ群の中心に、明滅する何らかの装置が埋め込まれていた。

 

「うっわどう見てもあれなんかのギミックでしょ」

 

 そんな独り言をのたまいながら、足場を伝って広場に降り立つ。

 凸侍が思った通り、警報が広い空間を反響し、周囲の赤色灯が回転しながら点灯する。

 そうして真ん中の地面が割れ、競り上がってきたのはドデカイ人型のロボットだった。元は青や赤など、鮮やかに塗装されていたであろう各部には錆が浮かび、経年劣化したパイプがまるでマントのように垂れ下がっている。おそらくV字型だっただろうアンテナも半ばで折れてしまっておる。

 

『重要施設への侵入者を確認。直ちに排除します。管理者は緊急事態報告をブリッジへ伝達してください』

 

 グポーンとカメラアイが輝き、凸侍を見据える。

 

「お前その外見でモノアイはダメだろ!!」

 

 凸侍の叫びは無視され戦闘が始まった。

 結果だけを言えば、凸侍が勝った。ホーミングするものの速度の遅いミサイルや脚部付近にいると撒き散らされる機銃の掃射、またロボ自体が大質量を活かしたパンチや踏みつけを行ってきたのだ。普通の少人数パーティーなんかでは苦戦しただろう。

 が、この凸侍。凸砂である。STRとAGI偏重のため、高火力を(当たるかは別として)高機動で運用できる(理論上は)強ビルドだ。

高いSTR故の装備重量余裕で防弾プレートを装備しているお陰で機銃掃射に耐え、高いAGI故の回避力でミサイルと近接攻撃をホイホイ避けながらロボ胸部の錆びた装甲の隙間から覗く弱点のコアを高い威力のライフルで撃ち抜き続けたら勝ったのである。

 パーティープレイだとミサイルなんかは巻き込み事故の原因になる。ホーミングの割に弾速が遅いのはこれを狙っていたのだろう。

 相手の想定の外側をいく男凸侍であった。

 

『ガーディアン・マキナ沈黙、緊急シーケンス実行準備…………不可、不可、エラー。グロッケンは航行を中断。エネルギー供給不要の伝達。重要施設から現地区を除外、侵入警報を解除します』

 

 そうアナウンスが流れると共に崩れ落ちていたロボ、ガーディアン・マキナはポリゴンのひかりとなってはじけ、そこにドロップアイテムが残されていた。

 

「なんだこのでっかいの……AW50? 対物ライフル!?やべえこれで凸砂するしかねえな!!」

 

 そうしてテンションの上がりすぎた凸侍は昼過ぎの講義をサボったのだった。




凸侍
STR-AGI偏重型
突撃仕様のスプリングフィールドを使用。
ストレートプルボルト化されているため、速射スキルと相まってセミオート並みの勢いで射撃可能。
装備重量の余裕から防弾プレートを装備し、AGI特化型に準ずる速度を発揮できる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

装備過重ペナルティーがヤベー奴とビルド構成がヤベー奴

勢いのまま本当に書きたいように書いてます。

誤字報告ありがとうございます!

この時期にロケットランチャーが未実装と判明したので修正しました。


「何だったんだあのでっかいの……」

 

 マルチカム迷彩を着た屈強な男は、グロッケン総督府エリアの一階ホールで、ぼそりと呟いた。何が起きたのか、正直意味が分からなかった。

 

「相手の名前は……凸侍か」

 

 六角形の待機エリアで、1分の準備期間を与えられていた男はぼそりと呟いた。フィールドは雨天の平原タイプ。STR-VIT型の男はマルチカム迷彩を施した防弾プレートを着用しその手にはM249、ミニミ軽機関銃の弾倉をセットする。装弾数100発は予選で使い切ることは無く、リロードの心配はない。

 対して敵の凸侍は、ロールプレイ? 変態プレイ? で有名なプレイヤーだ。銃剣をくっつけた冒涜的なスプリングフィールド狙撃銃をAGI型に迫る速度で動き回りながら当ててくる変態である。そこそこ性能の高い防弾プレートも装備しており、それがサムライ、というか武士を思わせるプレイヤーだ。

 だが、このミニミ軽機関銃の弾はほぼ防弾効果を無視する。拳銃弾を使用するタイプではなく、これはアサルトライフルの弾を使用するタイプだからだ。そして雨天の平原では頼みのAGI機動も厳しいものがあるだろう。

 

「フハハハハ! 凸侍破れたり!」

 

 どっかの二刀流の侍が言いそうなことを言いながらフィールドに降り立った男。状況を確認しようとした瞬間自身の直ぐ脇が爆発するように水が弾け、スプリングフィールドと思えない馬鹿みたいに巨大な銃撃音がすぐ後に続いた。

 咄嗟に伏せようとして、男は思いとどまり音の発信源の方へミニミをまき散らす。毎分725発の発射レートでまき散らされる弾幕をバレットラインを見ながら回避して突っ込んでくる凸侍の姿があった。

 その容姿は男の予想した物と違う。スプリングフィールドでない馬鹿みたいにでかい銃と、防弾チョッキすら着てないただのレザーの服と金髪の頭を晒した凸侍がいい笑顔で突っ込んできてたのだ。具体的に言うと意味が分からな過ぎて地獄絵図である。

 銃口からすっとバレットラインが出て、男がとっさに回避をするが、AGI型ではない故に回避も遅い。体の芯を外すよう避けた男の太ももを50.BMGが容易く食い破り、右脚を易々と切断しVIT型の潤沢な体力を接射のインパクトダメージでほぼ全損させ、足の欠損ペナルティで動けなくなった男の後頭部に銃床を叩きつけてポリゴンの集合体に霧散させた。

 男が最後に聞こえたのは凸侍の呟きだった。

 

「サムラーイ」

 

予選準決勝、凸侍が当たったのはMP5A2のAGI極振り、つまり闇風と同タイプの敵だ。しかし、動きが闇風ほど頭おかしい動きをしていなかったため何とか倒せた。

 その青年は消える寸前凸侍の呟きを聞いた。 

 

「サムラーイ」

 

 決勝戦はテンガロンハットのSIG550の男だったが、胴体ど真ん中をぶち抜かれるのであった。

 凸侍は引き金を引く瞬間こう言った。

 

「ブシドー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこのプレジデントサムライ」

 

 護衛の仕事を請け負ったものの、暇だったので相方に予選のログを見せたらそんなことを言われた凸侍。不服である。

 

「知らないのかサイクロップスガトリングマン。これを言いながら撃つと弾道予測円が縮小するんだ」

 

「おいおいチャッ●・ノリスすごいなというかお前撃ち終わった後言ってるじゃないか」

 

「撃ちながら言うと言ったな、あれは嘘だ」

 

「「HAHAHAHAHA!!」」

 

 光学銃を持ってたんまりドロップ品を抱えた依頼主たちの結構後方で、サイクロップスみたいなマスクした大男と金髪が笑いながら歩いていた。

どっちも持っている銃が馬鹿みたいにでかい。

 

「というか、お前スプリングフィールドの方が絶対強いだろ。この間の放送でも聞いたが装備が変になってるじゃないか」

 

「いやいやいやいや、そんなことねーし、対物銃の方が絶対強いしというか過重ペナルティ背負ってるお前に言われたかない」

 

「集団戦最強って言われてるんだよなぁ変態ビルド君」

 

「……そうだなぁそろそろその最強の出番かもなぁ」

 

「……ああ」

 

 前方の護衛対象6人がそろそろ廃ビルのあるエリアに到達する。仕掛けてくるならここだろうと睨んでいる。

 その予想は正しかったということを証明するように一発の豪快なスターターピストルの音が木霊した。

 それによってバトルライフルを装備していた一人の頭が吹きとび、そのままポリゴンの塊に霧散する。

 

「おい、正しい使い方の奴が来たぞ」

 

「イヤ、マチガッテルのムコウダカラ、コノジュウはコレがタダシインデス」

 

 

 護衛対象がやられたのにもかかわらずこの余裕。実は護衛対象の無事は依頼に入っていない。

 二人は獰猛な笑みを浮かべる。マントを翻し、片や6本の電動式ガトリングガンの装備一式を背負った巨漢。片や身長に迫る巨大な狙撃銃を持った男。暴れるのは大好きである。

 この護衛の目的は”二度と襲う気が起きないよう、襲ってきた敵を殲滅する”ことだ。

 残った5人を狩るためか、続々と敵対者たちがやってくる。そして、巨漢の男、ベヒモスに気付き、顔を驚愕させた。

 ベヒモスのまき散らすバカみたいな量の弾幕と、5人の銃撃。もっともたちが悪いことにこれの援護を受けながら防弾プレートだのなんだのを無視して即死させてくる頭おかしい凸砂のせいでダインのメンタルが折れる間もなく一人を残して全滅するのだった。

 

 

「残り一人だが、さすがに対物狙撃銃を持ってる奴が無謀な攻撃はしてこないだろう、死んでランダムドロップしたら困るし」

 

 銃撃戦の結果2人に減った護衛対象は、ドロップ品と襲撃者のランダムドロップ品でもうパンパンである。過重ペナルティが入っている様で、ベヒモスと同じような速度でしかもう動けないらしい。

 

「俺達が一緒にこれ見よがしにいれば襲ってくることはそうそうないだろう」

 

「イイナー集団戦最強は憧れるなーおかわりで対物狙撃銃を持った奴も追加だ」

 

 軽口を言う二人に、護衛対象の男が苦笑した。

 

「それはもう襲う気しませんね」

 

 むしろこれからどこか襲いに行くのかという布陣に見えることだろう。

 グロッケンまで帰り、報酬から弾薬費を抜いて、仲良く分けた二人はホクホク顔でそのまま別れるのだった。

 




ベヒモス
集団戦最強の男。先に仲間を潰されて上を取られると射角問題から死ぬフラグが立つ。

凸侍
変態ビルド扱いされる男。余裕あった積載力をすべて対物ライフルに持って行かれた男。

ベヒモスと仲間の弾幕の中動きがAIG型に迫る奴が対物ライフル接射で振り回してくる恐怖


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

凸砂とスナイパーの邂逅

BF4の20倍スコープ付けた凸砂凄いと思うんです
誤字修正しました!


「こんにちは。私がシノンよ、よろしく」

 

「ドーモ、シノン=サン。凸侍です。とりあえずこのチャットグループに招待しておくわ」

 

 両手を合わせ凸砂のエントリーを済ませてからコンソールを凸侍が弄るとシノンの視界に右下にチャットグループへの招待を表すアイコンが点灯した。

 

”全GGO凸スナの会”

 

 名前を見て凄く入りたくないと思ったシノンであった。とりあえず招待を保留にして凸侍に向き直った。

 二人がいるのはSBGグロッケン内に存在する試射場と呼ばれる空間で、マイルーム群のエレベーター脇のテレポーターから移動できる場所で、かなり広い屋内空間であるがどこにあるかは謎である。一片が2キロ近くある正方形の部屋で、テレポーター側の辺から射撃する台やら動く的やらがいっぱいある。

 北側にはチュートリアル専用のエリアも存在し、試射場の管理人役もやってる色々なタイプのNPCに手取り足取りGGOの基本を教えてもらえる。そしてここ、なんといっても弾薬が減らなくなるのである。正確にはこのエリアからテレポーターで脱出すると使った分の弾薬が元に戻っているという仕様だ。これが特に、凸侍とこの水色髪の女性アバターシノンには嬉しい。

 精密射撃用.50BMGは高いのである。

 

「さて、挨拶も終わったところで、シノンさんも狙撃銃を持ってるみたいだが、この凸侍をこんなところに呼びだして何用かな」

 

 これが郊外への呼び出しだったらどう考えても再びの襲撃なのでいかなかったが、試射場で死んだとしても装備ドロップとかしないので特に警戒せずにやってきたのだ。

 

「狙撃銃で接近された時の対処法を教えてほしいの」

 

「つまり凸砂をしたいと」

 

「えっ」

 

 違う、そうじゃない。そう言う前に凸侍がシノンの持つヘカートⅡと同系統のでかい銃を掲げて歓喜をあげた。

 

「遂に! 遂に! 全GGO凸スナの会に狙撃銃使ってる奴片っ端から誘って誰も凸砂に転向してくれずチャットグループもただの狙撃銃使いの情報交換の場と化して定期的に名前を変更されてもめげず直し続けたかいがあった!! 故に!!」

 

 感動した表情のまま、凸砂がぐるんとシノンの方を見る。好きなことを全力で楽しんでそうないい笑顔だった。

 

「凸侍流テクニックを教えよう」

 

 凸侍が立ったまま、銃、AW50を的に向けて構えている。彼我の距離は50m。アサルトライフルやサブマシンガンの主戦場であり狙撃銃が戦う位置ではない。銃もなんかアタッチメントが変えられてネットで見た画像とシルエットが別物になっている。グリップと一体化していたストックがM4系の物に変えられグリップが分離し、銃身の先端近くにレーザーサイトみたいな筒までついている。そうしてスコープは斜めに配置された冒涜的な狙撃銃だ。

 AW50本来のストックは伏せ撃ちを補助する為の物だから凸侍には要らないとはいえあんまりにもあんまりな改造であった。

 第二回GGOの時より悪化した改造の様はライデーンが見たら泡を吹いて強制ログアウトするレベルの狂乱をしていただろう。

 

「まず、狙撃銃で接近された時最大問題であるバレットラインをいかに誤魔化すか問題」

 

 凸侍が引き金に手をかけると銃口部分からバレットラインが、すごいブレまくりながら、もうなんか的の縁どころかかなりの広範囲にまき散らされるようにグルんグルん動き回っている。最早ショットガンの射撃予測線の様だ 

 

「バレットラインがすごいことになってるんだけれど」

 

「DEXが低いからな、まあ見てろって」

 

 凸侍が引き金を引くと、なぜか的のど真ん中よりやや外れた位置に着弾した。

 

「何で!?」

 

 シノンも思わず声をあげる。

 

「これが凸侍流、篠突く雨だ」

 

 凸侍が斜めに構えていた銃を降ろしてドヤ顔でシノンの方を見た。

 この試射場の管理NPCであるパツキンのド派手な恰好したお姉さまが厭味ったらしく拍手をしてくれている。このNPC、チュートリアルだとハートマン軍曹ばりにスパルタで怖い。

 

「まあ、シノンさんもすぐできるぞ。原理はすごく簡単だからな、とりあえず俺に、銃の改造依頼を出してくれ」

 

 言われるままシノンが銃の改造依頼を出すと数分もせず、ヘカートⅡの左側にレールシステムごとアイアンサイトが取り付けられたヘカートⅡが返ってきた。

 

「とりあえず銃を斜めにしてアイアンサイトで狙いをつけてみな」

 

 まず伏せようとして、伏せたら意味がないと気付き立ったまま銃を斜めに構える。

 アイアンサイトとヘカートの大型マズルブレーキが干渉していて、アイアンサイトが役に立っていない。銃を傾けるという慣れないことをしているせいで構えが歪み、ブレのペナルティまで入りバレットサークルがシノンが普段見たことがないほど大きくなっている。

 

「その状態が最初のすごい勢いでブレまくるバレットラインの状態だ。バレットサークルがでかすぎてそれに連動するバレットラインもブレまくってるってことよ。で、そこからおおよそ照準の真ん中あたりを向けたまま即座にスコープを覗いて射撃してみな」

 

 言われるまま銃を回してスコープに切り替えると、狙撃に使う高倍率スコープ故、視界全てが的であった。引き金を引くと見事的に命中する。

 

「そうそう、あとはそれをいかに早く切り替えられるかだなそれが凸侍流燕返しだ」

 

「さっきと名前変わってるんだけど」

 

「凸砂仲間が現れなくて誰にも教える機会なかったからテクニックの名前考えてなかったんだ銃をくいっと回すのが燕返しっぽくない?」

 

 照準を切り替えるのはシステムアシストが存在しないので自力で行わなければいけないため、どうしても練習が必要だ。それをAGI型並みに走り回りながらやってるのはかなり無理があるのでは? とシノンは思ったが突っ込まないことにした。

 

「とりあえず、概要としては撃つまでバレットラインを荒ぶらせて予測線を予測不能にしつつ、アイアンサイトで大まかな照準を合わせてから、高倍率スコープで撃つっていうテクニックだ」

 

 なるほど、頷き再び同じことを繰り返す。先ほどよりうまく切り替えができた。

 

「少し離れた所だと視界いっぱいに敵の体を入れるのは無理じゃない?」

 

「体のどこかに当たればインパクトダメージと欠損ダメージ不可避だから大丈夫」

 

 

 

「ちなみに、先日やられたけど初弾以外でバレットラインを出さない狙撃テクニックもあるらしい」

 

「どういうこと? 本当に初弾以外?」

 

 意味が分からないと言わんばかりのシノンだが、凸侍は真面目な表情だ。

 

「いーや、当たらなかったとはいえあれは一発目じゃなかったし……どういう原理だったんだろうなぁ」

 

「というかなんでそんなのに」

 

「いや愛銃金積まれて売ってくれってしつこく言われたからリアルラックでゲットしてどうぞwwwwってとりあえず煽っといたら後日徒党組んで襲われた」

 

 煽ったら襲われるのは当然では? とシノンは思ったが再び突っ込まないことにした。

 

「それでそのバレットライン無しの奴にボコボコにされて逃げ帰ったと」

 

「なんでだ返り討ちにしたわ出費がヤバかったけど」

 

 そう言ってストレージから取り出したのは一発の弾丸だ。精密射撃用.50BMGである。しいて違いをあげるなら先端が緑と白に塗られている。

 

「これすごい弾頭なんだけど、これ、なんとお値段、普通の弾の500倍」

 

「た、高い」

 

 ただでさえ高い高精度用.50BMGの500倍の値段と聞いてシノンの表情が引き攣った。

 

「それを4発も使った……とりあえず餞別にどうぞ」

 

「ヒエッ」

 

 思わずシノンが両手で表彰状でも受け取る様に丁寧に受け取ってしまった。

 

「ほんとどうしようもないときに使うとたぶんどうにかなるレベルのヤベー弾だから……アバター可愛いし凸砂やってくれるとは思ってないけど凸砂の話を聞いてくれたサービスサービス」

 

 本当は後でアイアンサイト外そうと思っていたシノンだったが、着けておくことにしたのだった。

 余談であるが二人の銃、共に対物銃であるが特色が違う。AW50の方は弾の直進性の補正が高いのだが、ヘカートⅡはインパクトダメージの威力が高く設定されており実は凸砂に最適な狙撃銃(?)なのである。凸砂に最適というのは名誉ではなく不名誉なことではあるが。

 

 テクニックを教わり試射場を後にしたシノンはとりあえずチャットグループに入ってみたが、意外にもチャットの様子は歓迎ムードで定期的にチャットルーム名が変わっては凸侍がそれを直すログが流れる以外ただのスナイパーの交流チャットグループで、変なのがいなくて安心するシノンであった。




~~とある時のシノン~~

シノン「500倍の値段って、納得だわ……」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

毒鳥を煽ったら襲われる凸砂

銃撃戦描写難しすぎて作家さんへの尊敬を深める

誤字修正しました



「いや罠だろ」

 

「いや罠でしょ」

 

「なんでやこの凸砂の愛に溢れる初心者のメッセージが見えないのか」

 

 凸侍がコンソールを操作してグレヲンとシャーリー、凸侍が全GGO凸砂の会の二人にそのメッセージを見せる。

 

『こんにちは! 凸侍さん先日GGOを初めてプレイし始めた際に第二回BoBで活躍した凸侍さんの姿が忘れられずご連絡させていただきました!

凸侍さんのプレイスタイルを参考に私も凸砂をはじめたのですが、凸侍さんのようになかなかうまくプレイできていませんなのでお時間が合うようでしたらX月⚫️日の夜21時頃にグロッケン郊外の廃退の都市の座標12.91辺りでお会いしませんか? よいお返事をお待ちしています!』

 

 スッとほぼ同時に読み終えた二人は遠い目をした。

 

「「罠じゃん」」

 

「なんでだ凸砂を志す初々しい奴の文章だろ!」

 

「凸砂なんてネタビルドをやる初心者はそういない」

 

 グレヲンに指摘されボディーブローを受けたように腹を押さえて後ずさる凸砂。

 

「第二回BoB見てて憧れるなら闇風でしょう」

 

 晒し出されたその首にシャーリーのギロチンの刃が落ち凸侍はその場で物言わぬ屍となった。

 

「……思い当たるフシはある」

 

 地面に顔をつけピンと背筋を伸ばしたうつ伏せのまま凸侍がか細い蚊のような声を出す。

 

「一昨日にめっちゃ高額なマネーで銃売ってくれないかってヤツが来たんだが売らない言ってるのにしつこいからつい煽った」

 

「どんな感じで」

 

「リアルラックを鍛えてどうぞwwww」

 

「それは怒るわ」

 

「俗にいうお顔真っ赤だな」

 

 凸侍はゆっくり立ち上がった。さすがにグロッケンのエントランス付近でずっとうつ伏せになってるのは恥ずかしくなってきたのだ。

 

「だがまあ、凸砂志望でなくとも、別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

((あっ死んだなこいつ))

 

どや顔しながら向かう凸侍に二人の思いが重なるが、続けてこう思った。

 

((まあ凸侍ならどうにかなるでしょ))

 

 罠とわかっていても助けに行かない。それが全GGO凸砂の会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってた」

 

 廃退の都市、それは広野付近に存在する廃ビル群の総称だ。グロッケン近郊にあることもあり、PKがよく行われる場所でもある。

 その廃ビルのうちの一つの一階、柱を背にした凸侍はそう呟いた。

 指定されていた座標はここより少し離れた開けた広場のど真ん中だったのだが、狙撃が飛んできたのだ。

 ビルから出るスコープの反射光が見えてなかったら凸侍は死んでいた。さらに狙撃を認識したにも関わらずバレットラインが出ない謎の狙撃をされ、物陰から沸いてきた五人を一射一殺して回避動作を繰り返しながらなんとか狙撃手のいるビルに突っ込んだのである。

 ビル入り口にもご丁寧にバリケードが用意されていたが対物銃らしくバリケードごとその裏の敵もぶち抜き爆散させた。

 そうして上に上がる階段前で軽機関銃のヤツに牽制射撃され続けている訳である。対多数のなか無傷でここまでやれるあたり第二回BoB準優勝者の面目躍如だが、その表情は泣きそうである。

 

「し……知ってた」

 

 罠ではなく凸砂志望の初心者さんがやって来るのを本気で楽しみにしていたのである。フルダイブゲームで鉄面皮は作れない。感情のままに表情は変化するのみである。

 この先、かなりのワイヤートラップ、しかも爆発するとかではなく単純に足をひっかける為にしっかり張られた物がかなりの数張り巡らされている。この柱に追い込まれたのもワイヤートラップが邪魔で走り抜けられなかったからだ。外のやつらを一掃できていなかったら動くこともままならず蜂の巣にされていただろう。

 

「おら出てこいよ! それでも侍か!?」

 

「ウルセー! 武士道とは死ぬことと見つけたりだけど死にたかねーわバーカバーカ!」

 

 仲間を倒されて怒り心頭な軽機関銃使いの野次に子供みたいな言い返しをしつつも、機関銃のリロードのタイミングを計る。

 面倒なことに軽機関銃の弾倉はベルト給弾方式ではなく、片側50発、合計100発の弾丸を放てるダブルドラムマガジンである。ベルト給弾方式に比べると高い値段と対応した銃が少ないため面倒は掛かるが、システムアシストのリロードも早くアシスト無しでもやりやすい。つまりリロードの隙が少ないのである。

 突如、3発程度をタップして撃っていたのがフルオートに変わり大音響がビルの中を満たす。

 嫌な予感のままにバレットラインが柱で遮蔽される形のまま離れるように走り出すと柱が青いプラズマの火球に包まれた。さらにぶちまけるような9つのバレットラインが凸侍の進路を妨げるように現れる。

 あとは狙撃手だけだと思っていたがまだ居たのか、と凸侍は残り4発となっていた10発のロングマガジンをその場で落とし、5発入る長さのマガジンを装着、薬室の弾を排出し構える。バレットラインの内4つがヒットし、HPがすごい勢いで減るが、VITが低い凸侍には日常茶飯事である。

 凸侍の体力を削った散弾の主、水平二連のショットガンを構えた男と視線が交錯する。

 引き金を引くのは凸侍の方が早かった。

 大口径対物銃特有の巨大な発砲音、そうして弾丸は吸い込まれるように男の胴体へ入り込み、内から爆炎を発生させ体を粉々に飛び散らせた。瞬間的に室内が明るくなるほどの爆発に、思わず機関銃の男も呆気にとられる。それが良くなかった。その爆発の次の餌食はその男だったからだ。

 

「……50BMG1000発分」

 

  勝ったのに死んだ目で凸侍が呟いた。死亡ドロップ品を後で回収して売っぱらってやると強く決意した。

 

「もはやこれまで……あの狙撃手を凸砂に改宗させねば死んでも死ねぬ……」

 

 回復薬を首に打込み、ワイヤートラップをぼそぼそと呟きながらAW50先端の“銃剣”で切って階段をしばらく上に登ってみると、もぬけの殻である。屋上か、と思ったが柱にくくりつけられたワイヤーを見て身を隠す。対面のビルから狙撃が飛んできた。

 

「ジップラインで隣のビルに移って狙撃か」

 

 どうするべきか、正直あの狙撃手を倒さないのは消化不良なので倒したいが、あまり時間をかけると漁夫の利狙いのハイエナも寄ってきそうだ。こうなれば凸砂の本領を発揮するしかあるまい、そう思いながら斜めに添えられたスコープを外し、より大型のスコープをストレージから取り出して装着した。さらに缶コーヒーのようなアイテムを二つ、一つを腰に下げ、もう一つを安全ピンを取り外し左手に握りこんでおく。

 上の階の手頃な窓からアイアンサイトで狙いをつける。スナイパーに不利な判定であるスコープの反射もアイアンサイトだと発生しにくくなり、150メートル程度先のビルで、盾をカバーにして伏せる大男が見えた。

銃を傾け、スコープに切り替えれば倍率25倍の超拡大された顔が弾着予測円の先にうつっている。

 大男と凸侍の目がスコープ越しに合った。

 大口径故の撃った反動のまま後ろに倒れ込むと、肩の辺りを銃弾が掠った。

 一回転してそのまま覗き込むと、着弾の爆発が大男を守っていた盾を吹っ飛ばし、男も負傷している様ではあったが、致命傷ではない。

 

「ああー、2000発分……」

 

 そう言いながら下層のジップラインに飛び乗り走り出す。

 150mあるジップラインの上を疾走しながら一度特殊弾をぶっ放す。今度は大男のつま先程に当たったが、その破壊力で無理やり体力を削り飛ばす。

 

「飛んで火に入る夏の虫って奴ね!」

 

「あ、やっべ」

 

 凸侍は狙撃手の男がラストかと思ったが、彼が煽った本人がいた。黒い防弾ボディースーツを着たタトゥーの女である。あの所持金の量から傭兵を雇って襲撃してきたのだと思ったのだが、本人も居たとは凸侍も予想外だった。持っているのはAK47と思われ、ジップライン上を走ってるため回避は困難だ。予定と違うが左手に握りこんでいた手榴弾を放り捨てる。

 バレットラインが現れず足に銃撃が命中するが、前方で閃光が発生する。投げられたソレは閃光手榴弾だスコープ越しの目を焼いてやろうと思って持っていたものだが、目くらましに使う羽目になった。

ジップラインから外れ、勢いのまま下の階にダイビングする。AGI特化の闇風ならばここから1秒で撃たれる前にジップラインを走破するだろうが凸侍はさすがにそこまで速くない。

 飛び込んだままに階を上っていき、丈夫なコンクリートを背に凸侍は叫んだ。

 

「おいあんた! なんかもう疲れたしやめない!?」

 

「えぇーもっと楽しもうよぉ?」

 

「狙撃銃出る狩場教えるからぁ」

 

「乗った!」

 

「軽いなおい! じゃぁなんで俺襲われたの!?」

 

「煽ったから」

 

「正直すまんかった」

 

 姿は見えないが、笑っているような気配が凸侍の背中に伝わる。こいつはゲームを全力で楽しんでいる。狙撃手の大男が爆散したことでさえ楽しみの一つなのだろう。

 

「最期は景気よく一騎打ちと行きましょうか!」

 

 その声と共に凸侍の足元に何かが転がってきた。凸侍の顔が引き攣る。

 硬質な球体で緑に点滅するそれは。

 

「グレネーダー!!」

 

 そう叫びながら部屋に無理やり突っ込みプラズマの奔流を回避、バレットラインが意味をなさない室内での接近戦だ。互いが狂ったような笑顔でビルの中を走りまわり、ほぼ意味をなさないバレットラインをまき散らしながら、女は柱から柱へ、凸侍は止まることなく疾走し続ける。

 しかし狭い故に最高速度を維持するのが困難な凸侍の方が不利なのか詰将棋のように徐々に端へ端へと追い込まれていく。

 そうして、ついに来た。逃げ場のない隅に凸侍が押しこめられた。

 柱をカバーにAKを構えた女の視界に映ったのは銃を構えず、再び閃光手榴弾が宙を舞っている光景だった。

 引き金が引かれAKの連射が始まるのと閃光と爆音が空間を塗りつぶしたのは同時、逃げ場はなく閃光で視界を潰されても当たる距離だ。しかし視界が戻る前に女の腹部に激烈な熱が走った。視界の端にある自身の体力バーがまるでバケツの底が抜けたように減り、ゼロに至る。

 女が消える寸前、僅かに戻った視界で自分の腹部から光る棒が突き出ていることだけが認識できた。

 闇風など高AGIプレイヤーの行う壁走りで上方へ弾幕を回避、“銃剣”を女に突き刺したのだ。

 

「さっすがトッププレイヤー殺し甲斐がある……」

 

 狂気的な笑みを浮かべ、女はそのままポリゴンになり弾ける。装備品のAK47がランダムドロップし床に転がる。

 

「さ、さすがにもう勘弁してくれ」

 

 凸侍も疲れたらしく、よたよたとビルを降りてグロッケンの安全地帯に逃げ込む。ハイエナと遭遇しなかったのは運が良かったか。

 グロッケンの自室で先ほどのクレイジー女に狙撃銃の狩場を教えつつ狙撃手の大男を全GGO凸砂の会に勧誘するため、メール送信の画面を開き、宛名を打ち込んだ。

 Pitohuiという毒鳥の名前を。

 




ヘッドギア込みとはいえ頭を狙撃されても死ななかったとしても光剣やら対物銃の直撃を貰ったらさすがに死ぬと思うんだ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外:エクスプロージョン・バレット

闇風最強説


「こっちの光点は……ええ、いいわ放っておきましょう」

 

 洞窟内でサテライトスキャンの結果を見たシノンが遠い目をしながら呟いた。光点の数が足りないこと以上におびただしい死体の光点とその中心の都市部にいる光点2つ、闇風と凸侍の名前を見て放っておくのが懸命だと判断したのだ。

 

「この闇風と凸侍が死銃の可能性は?」

 

「ないわよ、あなたのいう死銃事件の時、この二人は同じ番組にゼクシードと一緒に出てたのよ」

 

 あと凸侍なら拳銃じゃなくて狙撃銃でやるだろうなどと謎の信頼が沸いてきた。

 

「そういえば」

 

 一発の弾丸をストレージから取り出す。先端が白と緑に塗られた.50BMG用の弾だ。

 

「どうしようもないとき使え、か今こそそれよね」

 

 シノンはボルドを解放し、薬室にそのとっておきを装填する。

 必ずあの死銃を撃つ。その決意に答えるようにヘカートが光を反射したようであった。

 

 

(見つけた!!)

 

 キリトがシステム外スキルの第六感で死銃、ステルベンの狙撃を避け疾走を開始した瞬間、シノンのスコープが死銃の姿を捉えた。赤く光るフルフェイスマスクに死神のようなマント、自身の罪の象徴のようなその姿に動悸が、それの影響を受け弾着予測円が大きくなる。

 それでも、キリトが信じてくれている。ならば答えなければトッププレイヤーシノンの名が廃る。

 動悸が収まる。氷の如くしかし熱が体全体を支配し、シノンはヘカートⅡと一つになる。

 急速に縮小し、点となった弾着予測円と共に引き金を引いたのは、死銃と同時であった。

 弾同士が掠めるように交錯し、弾速が若干速い死銃の弾がヘカートのスコープを木っ端微塵にしシノンの耳を弾がわずかに切り裂く。

 一瞬遅れてシノンの弾が死銃の銃、L115A3サイレントアサシンの機関部に滑り込むように入り込み―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大爆発を、起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい?」

 

 シノンがすっとんきょうな声を上げた。脳内で凸侍の声がつぎはぎで再生される。

 

『500倍の値段のヤベー弾』

 

 あの時は500倍の値段の意味が分からなかった。なんでそんなに高いんだと思っていた。しかしその弾がもたらした結果を見て、呟かざるを得なかった。

 

「500倍の値段って、納得だわ……」

 

 スコープを失ったシノンにも疾走を続けるキリトからも易々と認識できるほど爆発だ。

 死銃が投げだされるように砂の上を転がり、獣のごとく立ち上がろうとし、転倒した。辺りにはサイレントアサシンであったものとその付属品が焼け焦げた破片として散らばり、ポリゴンに還元され消えていく。

 その身を覆っていた光学迷彩は七割近くが焼け飛び、左手と右足に至っては欠損ペナルティが発生している。

 たとえキリトに匹敵するプレイヤーであろうと、そんな状態でなにができるわけもなく光剣カゲミツの餌食となったのだった。

 

「これからどうする?」

 

「どうするって……嵐が来るわよ」

 

「ん? もう死銃は終わったはず……」

 

 シノンの元にやってきたキリトの問いに、そう返しながらサテライトスキャン端末を取り出して見せる。

 シノンとキリトを表す二つの点とおびただしい死体を示す点の間辺りに二つ、すごい勢いで移動している点があった。

 

「これから来るのは正真正銘のGGOのトッププレイヤー、せっかくだし試してみる?」

 

「いや、なるべく早くログアウトして現場に……」

 

「5分も掛からないと思うわよ」

 

 シノンが遠い目をした瞬間、キリトの第六感が作動し咄嗟に光剣を払う。ヘカートⅡと同質の弾が二つに割れ砂丘を穿った。

 向こうから闇風と凸侍がすごいスピードで走ってきた。おそらくバイクやロボット馬と同等以上の速度があるだろう。さすがAGI型である。

 なんとこの二人、共闘してるわけではなく道中殺し合いしながら決着がつかずこっちまで来たのである。互いが早すぎて当たらないのである。

 

 

「おっすシノン凸砂してるか!? 洞窟の方で隠れ戦法は卑怯だから闇風釣りながらこっちまで来てやったぞ!!」

 

 キリトを押しのけてシノンが前に出る。闇風の吐き出す短機関銃のバレットラインを躱しながら凸侍とシノンが同時に構える。凸侍はいつもの照準切り替えを、シノンはアイアンサイトでそのまま狙いをつけ、互いに即死した。シノンはDEXが高いので狙いが早いのである。

 

「えっえっ」

 

 シノンと凸侍が消えたいま、残るはキリトと闇風である。

 もはややけくそ気味であるが闇風に向けファイブセブンを撃っても掠めることさえできない。最初の攻撃を光剣で切り払ったもののそれを見た闇風のAGI特化によるごり押し全方位射撃の前にキリトも沈むこととなったのだった。

 

 

 そうして第三回BoB優勝者は再び闇風が手にするのだった。




ヘカートⅡのダメージ補正と特殊弾の爆発が合わさり着弾近くの左手と爆発の突き抜けた近くの右脚が吹っ飛ぶ不幸。名前すら思い出せてもらえない模様。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

たたかえ!ぼくらの パーフェクトとつさむらい!

登場キャラで凸砂できそうな人とニアミスしておきたい


 凸侍、由々しき問題に直面する。

 銃剣が装着できないのである。正確にはAW50の銃剣の条件が厳しく凸侍が求める長さを達成できないのである。

 長さは銃剣製作の最大値で行きたいのだが、銃剣を装着する際は一つの数値があるのだ。

 それは銃身荷重ペナルティ。一定数値以上の銃剣を装着すると銃身が変形してしまうという設定で命中率が低下するというもので、なんとこの状態だと弾道予測円の外に玉が飛ぶことがあるかなり重いペナルティである。

 凸侍が使っていたスプリングフィールドなど旧式の銃やショットガンなどでは上限が高く実質有ってないようなペナルティなのだが、このAW50、スプリングフィールドに使っていた銃剣の重量の3分の1程度のものしか装着できないのだ。具体的にいうと大型ナイフくらいである。原因は既についているマズルブレーキ。形状は変更できるのだが外せない固定アタッチメントである。

 ステータスの向上と軽量化でようやく以前の物より性能は落ちるものの防弾プレートを装備できるようになったのだ。AW50は軽量化のためストックをM4系に変えたせいで既に本来のシルエットから逸脱し、マニアが見たら憤死ものの状態になっている。

 ここで凸侍、発想の転換である。

 

「逆に考えるんだ。銃剣が重いなら重くない銃剣をつければいいんだ」

 

 全く転換できていない。銃剣を着けるのをやめるという選択肢は無かったのか。

 そうして金をはたいて買ったのは、筒だった。軽く、アタッチメントとしてペナルティが入らない重量に収まっている。特殊弾約8発分の値段は安いのか特殊弾が馬鹿みたいに高いのか、そんなのは今の凸侍の眼中にはない。

 意気揚々と銃剣と同じように装着し、グリップに握り込み式のスイッチを設置する。このスイッチ、レーザーポインタなどと連動するためのカスタムスイッチなのだが、銃に装備できてオンオフができるならば何でも使えるのだ。

 ブオオン、と赤い刀身が形成される。1m近い長さのそれは光剣と呼ばれる部類のアイテムだ。なんかもう侍ではない。凸ジェ⚫️イである。

 黒いマントを装着し頭にガスマスクでも被れば暗黒面に飲まれたジェダ⚫️ムーブが出来そうではあるが、光剣を銃剣術のノリで振り回す様は凸ジ⚫️ダイどころかビーム蛮族である。またはΖガン⚫️ム。

 しかし、ここに現状のパーフェクト凸侍が完成した。第二回BoBとそのあとの生放送でゼクシードにボロクソに言われた対物ライフルポン付けからちゃんと対物ライフルを凸砂として使う装備構成に持って行けたわけである。

 見る人が見たらこう言うだろう。変態構成だと。

 

 調子に乗ったパーフェクト凸侍、今日はモブ狩りじゃあと言わんばかりに砂漠へと繰り出した。AGIが高いとこういうときの移動が早くすませられるので便利なのである。ノリはモブ狩りであるが殺るのはモブではなくプレイヤーである。

 

「ヒャハー獲物だー!」

 

「うわあああ変態だ! 変態が出たぞ!?」

 

 もはやただの蛮族と化した凸侍が三人組のに襲いかかる。サーモンピンクの砂漠をアンブッシュもなにもない突撃だ。でかい銃を抱えてすごいスピードで走ってくる様ははっきり言って怖い。

 砂漠ゆえの足場の悪さをものともせず、足だけキモいペースでシャカシャカバレットラインをかわして爆発のような発砲音ごとに蛮族に襲われた命が散っていく。無慈悲!

 その間凸侍はとってもいい笑顔である。襲われてる方は阿鼻叫喚である。

 砂漠であることも相まって世紀末のヒャハー感が半端ない。

 サーモンピンクに染まった砂漠へ蛮族に襲われた村人のドロップ品が散った。

 

「とったどーーーー!」

 

 三人を爆散させランダムドロップ品を拾うと、銃を掲げ銃剣を形成して勝ちどきをあげる。まさに蛮族。それに合わせ背後で爆発がおき完全に凸砂戦隊バルバロス(1人)となっていた。

 

「ん? 爆発?」

 

 どこかのヤツが仕掛けたモブ狩り用の爆弾だろうか、と凸侍は思った。さすがにモブ狩り後は襲うがモブ狩り中を邪魔するのは失礼だ。掲示板に我々のモブガリとか書かれて因縁つけられるのは嫌である。

 ちなみに凸侍がプレイヤーキルをしたあとされた側が相手を特定しようとすると速攻で凸侍がやったとバレる。凸砂人口の少なさがうかがえる。

 

「おっと!! 狩りの邪魔失礼!!」

 

 それはさておき適当に脇に向け手を上げて大声で謝ったとたんクラウチングスタートの姿勢をとってダッシュする。

 走り出しの衝撃で起きた砂煙の跡、逃走する凸侍がいた脇10mの所で伏せていた小柄なピンクは呟いた。

 

「楽しそう……私もやってみようかな……」

 

 この後正体不明のプレイヤーキラーが砂漠に現れるようになるのはしばらくしてからだった。

 




真似しようとしてもしかしSTRが足りない!
よしんぼ足りたとしたもパツキンのハートマム軍曹が助走をつけてクソ虫!!って拳骨してくるレベル。

普通の構成のモブ狩りの人たちが発見できないんだから襲われないかぎりピンクを凸侍が発見できるわけがない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

全GGO凸砂の会と出落ちXさん

マスケティアさん防弾性能どうなってんだあれ

0が一個多かったので修正しました。


 全GGO凸砂の会、それはガンゲイルオンラインの狙撃手達が集い情報交換を行うチャットグループである。

 凸砂であるかは別としてかなりの人数が参加する結構な規模のグループチャットだ。最初は定期的に凸侍が凸砂の良さとアドバンテージを説き、成長の仕方のアドバイスをしたりした凸砂養成の為のチャットだったが、ゲーム発売からしばらく経ち成長指針がおおよそテンプレ化したため単純に狙撃銃を持ってるヤツに凸侍が片っ端から勧誘し今のグループとなった。

 ちなみに凸砂英才教育を受けた奴はショットガンにスコープを着けてスラッグ弾で狙撃する奴とグレネードランチャーでヘッドショットを狙う奴の二人を除いて立派な狙撃手になった。

 そんなグループ創設者である凸侍、ヒエラルキーにおいては今、最下層である。

 

『凸侍さんがチャットグループ名を全GGO凸砂の会に変更しました』

 

『あ、同率3位さんが来たぞ』

 

『こんばんは同率3位さん』

 

『早速だけれどサークルスイッチの練習に付き合ってもらえない? 同率3位さん』

 

「その言い方はヤメロォ!!」

 

 凸侍がGGOにログインしたところ、チャットグループ名が狙撃手情報交換会に変わっていたのですぐさまいつもの名前に戻すと同率3位でいじられ、マイルームの床に空中三回転してから倒れこみ打ち上げられた魚のようにビタンビタンしているこれが凸侍である。

 第三回BoBの終盤、都市部で闇風とのドンパチの小休止中にシノンとキリトなる人物が洞窟で芋っていることに気付き、凸の真逆をいくそれに天誅を下すべく闇風の追撃から逃げ回りながら砂漠地帯までやって来たのだ。

 そこでシノンと相打ったので同率3位といじられているのである。

 初めは

 

『ンンwww凸砂がスナイパーに接近戦で相討ちとはアリエナイですぞwww』

 

 とか言われたので大分落ち着いた方である。

 憐れ凸侍、第四回BoBで優勝でもしない限り延々と同率3位と言われ続けるだろう。

 不運はまだあった。

 芋かと思いきや第三回の最後でアイアンサイトで凸砂のムーブをしたシノンに気を良くした凸侍は、篠突く雨だの燕返しだの呼んでいたシステム外スキルをチャットグループに提唱してみたのだ。

 凸砂はシノンだってできるんだハードルは意外と低いぞというアピールである。

 しかし想いと裏腹に名前がダサいと何故かスキルの命名合戦に発展した。

 ショットガンラインだのクズ優先だのいろいろな名前が出たが結局はシノンが提示した『サークルスイッチ』という常識的な名前になった。憐れ凸侍。

 しかもやり方を教えてと申し込んで来たのは二位の光剣ガールに斬殺された銃士Xだけである。名乗りを妨害され問答無用で切り殺された怨念が先日の練習中にも吹き出ていた。

 今日もログインしたら早速練習を手伝えとお達しが来る辺り相当である。

 噂では二位の光剣ガールとシノンが洞窟で百合ムーブをかましたらしくガンゲイルオンラインに百合の花とキマシタワーが建設されたらしい。

 そのせいか二位はあれ以来ログインしていないらしいのだが、銃士Xが負ける未来しか見えない。試射場で合流して、銃士Xの頑張りを眺めつつ凸侍は思う。

 まさか背後から撃った50BMGが切られるとは思わなかった。思わず心のなかで俺の50クレジットがっ!? と思う見事な剣捌きだった。

 あの様子を見ると銃士Xは今からひたすらAGIをあげ続けないと厳しいのではないだろうかM14EBRがセミオートとはいえ、むしろセミオート程度では正面からだと全部切り落とされる気がする。

 正面からぶち破るならベヒモス位じゃないと無理じゃないだろうか。それ以外の生半可な連射速度では切り落としからの接近されてアボンだ。

 闇風、いやAGI型なら追い付かれることなく一方的に撃ち続けられるから平地でなら負けることはないだろう。

 唯一の遠距離攻撃手段であるファイブセブン位なら凸侍の防弾装備である程度防げる。

 だが、隣で一生懸命やってる彼女。ビキニホットパンツとかいうヤベースタイルで今まさに撃つ度にビキニに包まれた胸が小刻みに揺れる、こやつ、防弾性能ゼロではあるまいか。

 

「マスケティアって俺よりヤバくない?」

 

「なにそれどういう意味!?」

 

 ヤベーヤツからヤバイ認定されそうになる理不尽に銃士Xが狼狽えた。

 ちなみに銃士Xの装備、防御をかなぐり捨てた代わりに非常に静穏性が高く、走ってもほぼ音がしないスナイパーなら喉から手が出るほど欲しい装備なのだ。

 凸砂には正直要らない。防御を捨てて足音を消すならまず凸砂を辞めてスナイパーになるべきである。

 

「そういえば、今度ミニ大会があるらしいんだけどだれか誘って出てみるかな」

 

「トップ勢が行ったら荒らしになるわコンセプト的に」

 

「荒らしは……良くないな同率3位より辛いいじりが始まりそうだ」

 

 やーい荒しー! 士道不覚悟ー! とチャットグループ内でいじられるのが目に見えてる。精神に来て膝をついた。

 

「というか貴方開催毎に順位落ちてない?」

 

 唐突な追撃である凸侍は倒れた。

 

「イヤーソレヨリソノミニタイカイグループノヤツラデアツマッテカンセンスルノタノシソウダナー」

 

「確か同率1位から準優勝で今回同率3位……じゃあ次は4位?」

 

「ヒャメロン!!」

 

 話題誘導も無視される無慈悲な攻撃に凸侍は死んだ。

 

「それはさておき、チャットにその話出しておくわね。皆で見る方が楽しいもの」

 

 試射場で浜辺に打ち上げられたアザラシのようになった凸侍に管理NPCのパツキンハートマム軍曹が蹴りを入れてくる。もう凸侍のライフはゼロである。こんなでもトッププレイヤーの1人である。

 

「練習見てくれたお礼も何かしないとね。じゃあ今日はありがとう」

 

「あ、ハイ、オツカレッシタ」

 

 凸侍が蹴られるのを無視して出ていく銃士Xだった。




全GGO凸砂の会
けっこう大規模なチャットグループ。実力は変態から混沌までで狙撃銃で突撃する奴から狙撃手??な装備で狙撃する奴まで多岐にわたる。

サークルスイッチ
違う照準を装備することでバレットサークルもスイッチされることからサークルスイッチと名付けられた。
篠突く雨や燕返しは提唱者除き全会一致で否決された。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一回BoB:武士の一分グレネード

ハンドガンナイフ縛りとかいう凸砂より修羅の道

誤字修正いたしました


 「闇風が、やられた……だと?」

 

 サテライトスキャンを眺めながら凸侍は独り言を呟いた。勝手にではあるが終生のライバルに認定している闇風が消えてもの悲しい気分になった凸侍はスプリングフィールドを構え直しサテライトスキャンで判明した名前を呟く。

 

「サトライザー、俺のライバルを倒した天誅を下してやる」

 

 まさか天に代わって誅罰を下すのではなく天から笑いの神が降りてくるとはこの時の凸侍は思っていなかった。

 当世具足のような防弾チョッキを揺らしながらとりあえず部屋に立てこもった奴へプラズマグレネードをプレゼントした。芋は良くない。

 ただどこからか流れてきたAGI万能論のせいか大会出場者皆が足が速くて難儀しているので楽に倒せて逆にありがたくもある。

 部屋の内で死体がデッドのアイコンを点灯させているのを確認し息を吐く。

 

「ダイングメッセージ……いやうんふざけてないで真面目にやろう」

 

 サテライトスキャンの際に生きていた光点の残り二つはゼクシードとサトライザー、距離が近かったろうし潰しあってくれているだろう。

 

「そういえばゼクシードの奴、人の銃を指してAGI型に擦らせることもできない産廃銃呼ばわりしてやがったな」

 

 ゼクシードが勝ってたらお前が産廃以下と証明してやる等と意気込みながら消費したプラズマグレネードを右足太股に巻いたベルトにつけ足す。

 その上部の腰のベルトにはホルスターに入った拳銃が下げられていた。いまだに一回も使ったことのないリボルバー、M29だ。44マグナムとも呼ばれる銃で早撃ちカスタムを施した一品だ。全部スプリングフィールドで足りてるので無用の長物と化しているが。

 次のスキャンまで身を潜め、状況確認をする。

 

「しっかしサトライザーって誰だ? 噂にも聞いたことないんだが」

 

 カメラが寄ってきたので地面に棒で『スナイパー最強』と書いてどや顔する。観戦者のみなさんがお前狙撃一回もしてないだろとツッコミを入れまくっているのが聞こえないのは凸侍には幸いか、サテライトスキャンが開始される。

 

「なんじゃこりゃ?」

 

 ゼクシードが死んでたのはいいザマアミロと思った凸侍だが、生き残ったサトライザーのいる光点の位置が不可解だ。

 障害物のない広場のど真ん中にスキャン中動かず表示され続けていた。

 

「どう考えても釣りだよな」

 

 広場から少し離れた場所には森林地帯がある。広場を囮にしてそちらから撃つ作戦か。しかし、初っ端のスキャンならまだしももう一対一だ。釣られるバカは居ない。

 

 

 

 

 

「うわまじかよ」

 

 さらに十五分が経ってもサトライザーは動かず、試しに森林地帯までやって来て覗いてみたら広場ど真ん中で仁王立ちである。

 丁度背中を向けておりこれは撃つしかないなと構え、撃つ。

 普通にサトライザーの先の地面に着弾した。

 驚くことなかれ、この時の凸侍、DEX初期値。バレットサークルが縮小しきってても6倍スコープではサークルから相手がはみ出すのである。

 サトライザーは別段驚いた様子もなくナイフとハンドガンを取り出し肩を竦めた。

 

「なんだこいつナメプか!?」

 

 客観的に装備で見れば初弾を当てなかった時点でお前がいうなだが当たらなかったのだから仕方ない。AGIとSTRばかりにステータスを振っているのが悪い。

 当たらないので森から飛び出し広場に走り出す。下手な鉄砲数打ちゃ当たるに則り撃ちまくるが命中しそうな弾は易々と回避され逆にサトライザーのハンドガンの玉がビシビシと凸侍の当世具足風防弾チョッキに当たる。

 残り30m、ここで大きくサトライザーが動いた。身を低く折り予測線と同時襲来する弾丸を回避すると一足に凸侍の首にナイフを振った。

 凸侍は危ういところでスプリングフィールドで防ぎ、逆に銃剣を利用して足払いを行う。

 驚いたように下がったサトライザーにどや顔する。

 

「へへ、元薙刀部嘗めんなよ!」

 

 サトライザーはなに言ってるんだと言わんばかりに首をかしげた。観戦しているみんなも音は拾ってないのでなに言ってるんだと思った。

 再びの疾走、銃剣と射撃を併せ迎撃する凸侍だが、異常な身のこなしと勘の良さで懐に潜り込み、合気道のような技でスプリングフィールドを上空へ弾き飛ばした。

 無手となった凸侍が咄嗟に後ろに跳ぶが読んでいたと言わんばかりにハンドガンとナイフで徐々に凸侍のHPを削っていく。凸侍をなぶり殺しにする気なのかもしれない。

 

「んにゃろ!」

 

 無手ではどうしようもないと44マグナムを引き抜こうとした腕をサトライザーが押さえ込み、逆手のナイフが凸侍の首を狙った。

 この時、運命のいたずらが起きた。

 笑いの神が舞い降りたのはサトライザーか凸侍か、それとも両方か。卓越した動きを持つサトライザーでなければ発生し得なかっただろう。

 ところで、プラズマグレネードには誘爆条件がある。プラズマグレネードはプラズマグレネードの爆発に連鎖して誘爆する以外にも、弾丸による衝撃でも誘爆する。対物弾である.50BMGはもちろん低威力で知られる22LR弾でも至近距離で当たったなら誘爆する。

 そうして別の話題だがM29は早撃ち仕様である。引き金にちょっとでも触れただけで発射されるレベルの。引き金を引かない限りゲームゆえ暴発の危険がなく、撃鉄もへたれることもないので起こしっ放しだ。

 さらに海外のガンマンが早撃ちの練習をしていてよく起こる事故も紹介しよう。

 ファッキンショットマイセルフである。

 

 閑話休題

 

 腕を押さえられたことで引き抜けなかったが、指は引き金にかかっていた。放たれる44マグナム弾はホルスターを突き抜け、その下にある二つのプラズマグレネードの内一つに直撃した。

 

プラズマの奔流が広場の真ん中を満たす。もう一発のほうも誘爆したのか本来の二倍の時間広場を焼き、それが収まった後に残ったのはこんがり焼けるどころか粉々になった凸侍とサトライザーだった物だった。

 粉々の状態からゆっくり人型に戻って二人とも仲良く頭にdeadのタグを点灯させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのままでは負ける、ならば武士の一分として相討ちに持ち込みたかった」

 

 後に遠い目でインタビューでそう答えた凸侍。

 その後二度とプラズマグレネードとハンドガンを持つことはなかった。

 ガンゲイルオンラインにおいては第一回の大会は爆発オチになるというジンクスと武士の一分グレネードという謎ワードが生まれた瞬間であった。




真面目に勝つビションが浮かばないサトライザーさんには笑いの神に降臨してもらうしかなかった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

VRの申し子なヤベー奴と凸砂のヤベー奴とランガンのヤベー奴

ヤベー奴は惹かれあう


「そうかー今度のミニ大会にレンちゃんも出るのかー」

 

「ミニ大会じゃなくてスクワッド・ジャムだよ! 凸侍さん」

 

「どうして俺はここに呼ばれたんだ……?」

 

 グロッケン内にある試射場、凸侍が凸砂の実験に使ったりする何時ものパツキンハートマム軍曹が管理している試射場と違い走る、撃つのランガンを練習できるかなり広いタイプの試射場で、その真ん中にこじんまりとしたテーブルを置いて折り畳みの椅子に座る三人がいた。

 壁の銃掛けにはそれぞれ、異形と化したAW50、極彩色のドピンクP90、普通に黒いキャリコM900Aが置かれている。

 

「あっそのっなんというか凸侍さんの動きを参考にさせてもらおうと思って声をかけてみたら凸侍さんがもっといいのがいるって」

 

 あまり男性と喋ったことがないのか、しどろもどろに喋るレン。わちゃわちゃする様が子供っぽい外見をさらに子供っぽく見せている。

 強面の鶏冠ヘアーがチャーミングな男、闇風が得心が行ったように頷いた。

 

「懸命だな……とは言っても……俺が教えることか……」

 

 そう言って足を開きすぎな闇風はバイオグリーンティーとパンキッシュに書かれた缶から湯呑に茶を移し、啜る。

 わざわざ湯呑に移して飲む意味はあるのだろうか、と魔法瓶から出した紅茶を飲むレンは思った。

 成分調整安全牛乳(総督府保障書付き)と厳格なフォントで書かれた缶を一気飲みした凸侍が何か思いついたように缶の底を闇風の方に向ける。

 

「闇風アレは? ホレ第三回の時俺の銃撃避けたヤツ」

 

「<インビジブル>か? ……たしかに、それが最適だな」

 

 大股開きのまま立ち上がり、マントを正す闇風にレンが目を向ける。

 

「いいんですか? そんな技術を私なんかに――」

 

 闇風が手でレンを制する。その顔には父性的な微笑が浮かんでいる。

 

「いいんだ、AGI型全体のレベルが向上することは切磋琢磨するうえで良いことだからな……」

 

「ほいほいレンちゃん闇風が実演してくれるらしいぞ」

 

 それに合わせて立ち上がった凸侍がAW50を手に取る。

 

「……待て、なぜそれを持った?」

 

「え? 実演するんじゃないのか?」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

「「…………」」

 

 闇風があきらめたと言わんばかりに溜息を吐いて座っているレンに向き直る。

 

「今からやる、インビジブルは非常にシンプルな歩法だ。AGI型の速度で走る中一瞬地面を他方向に蹴り、再びその逆方向に蹴る。ただそれだけだ」

 

 言葉で聞くと非常に簡単そうに感じる。それは闇風も思っているのかすっと手をあげてから試射場の中を走り回り始める。

 AGI型として速度に結構自身のあったレンはその速度に顎が落ちそうになった。

 

「ほいじゃーいくぞー」

 

 高速で動く闇風の進行方向に凸侍のバレットラインが発生し、それになぞって闇風に吸い込まれていく。闇風の姿が一瞬ブレ、何事もなかったかのようにそのまま走り続ける。背後でけっこう大きな爆発が起こったところで闇風が止まった。

 

「アアアアアア俺の二万五千クレジットがあああああ!!」

 

「……おい一体何を撃った」

 

 黒く焼け焦げた壁を一瞥してから凸侍に詰め寄る闇風の図である。

 

「いやDEX前より上がったし第三回の憂さ晴らしに回避失敗したらそのまま爆散してもらおうかと思って、イイジャン別に死んでもランダムドロップしないしここ」

 

「「…………」」

 

 笑顔を向けあう二人の空気が歪んでいることを無視して暢気にクッキーを食べる。蛍光色のどう見ても体に悪そうなクッキーだが味はふつうである。

 

(さっきから第三回って何の話だろう?)

 

 レンはGGOの事情にそう詳しくない。PVPやらPVEしながら神崎エルザの曲を聴くゲームと化している。リアルマネーをゲットするため本気で稼いでるわけでもないのでAGI型の強さに関しても小柄なレンっぽさを追求した結果である。最初凸侍を見たときの真似をしようとレミントンM700をチュートリアルで凸砂風に使ってみたのだが金髪のお姉さんNPCにこのクソ虫が!! とパワーボムを仕掛けられる結果に終わったので、凸侍の遊び方は変な遊び方してるんだろうなぁとは認識している。

 まさか目の前の二人がレンがヤベーヤツ認定しているピトフーイよりヤベーヤツらだとは思いもよらないのはきっと幸せなことなのだろう。知らぬが仏である。

 

「で、レン……さっきのを見ていてどう思った?」

 

「えっ、えっと、闇風さんが弾丸をすり抜けた様に見えました」

 

「その通りだ。これは対狙撃手と相対したときに用いる歩法で、当たったと錯覚させることが肝だが、それ以上にアバターの精密コントロールの練習にもってこいだ」

 

 闇風がマントの裾をめくり、足の動きをゆっくりと見せる。瞬間的な反復横跳びを走ったままやっているような動きだと、ゆっくり見せてもらえてようやくレンは理解した。

 

「俺たちAGI型は走り、止まらないことが最も被弾が少ない、そのためにはただ速度を出すだけではだめだ。高速で動く足の動きを把握し、速度を落とさない方向転換、急制動が必要になってくる。AGI型で伸び悩んでいる奴らはここに問題があることが多い……直進が速いだけではただの的だ……」

 

 ただ走るだけでロボット馬やバイク並に速い闇風が言うのだからきっと間違いないだろう。レンも具体的根拠は示されなくても信頼できる言葉だった。

 

「さっきのコイツの動き、俺が狙いやすいように直進だっただろう? 前なんか動きが不規則すぎて意味が分からんかったわ」

 

 レンの身長とほぼ同等のでかい銃を担ぎながら凸侍が補足する。

 

「確かチーム組む奴と会うのは明日なんだろ? とりあえず闇風とここで鬼ごっこでもすれば嫌でも歩法は良くなるだろ」

 

 凸侍が馬の被り物を被ったNPCに話しかけると、平地だった試射場に窓枠の付いた壁や低い段差などが追加される。

 

「レンちゃんが凸砂をやろうとしてたことにこの凸侍、感動いたしました故に、闇風を鬼ごっこで捕まえたら豪華景品を差し上げます」

 

「先にインビジブルの練習を少ししてからだ……」

 

 最初歩法の練習を少ししてから、闇風に言われたことをしっかりと守りながら障害物の中を鬼ごっこで駆け回っていくレン。しばらくしてだいぶ足への意識ができてきたところで、P90を持たせられた。足を意識しつつスナップショットで闇風をぶち抜けとのことで、闇風が被弾すればタッチ扱いになるとのことでレンは奮起する。

 黒い風となり疾走する闇風のあとをバレットラインを引きながら疾走するピンクはレンだ。元来の運動神経の良さと闇風の真似により足の動きがかなり改善され、AGI本来の速さを発揮しだしている。

 STRで優れているとはいえ重い狙撃銃を持っている凸侍には無理な、身長の小さいが故の非常に小回りの利いた速さだ。

 一発、一発が闇風の頬を薙いだ。

 驚きの表情から笑みを浮かべた闇風、ギアを一個上げて逃げ回る大人げなさを発揮しその後は弾が掠ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 大の字に床に寝っころがって溶けてしまいそうになっているレンに凸侍が声をかける。足の動きを意識することとそれをこなしながら銃を撃つことを考えていると脳が沸騰しそうな気分のレンだった。

 

「これ、豪華景品のハンドガンです」

 

 そんな気分を吹き飛ばし勢いよく起き上がって受け取ったそれは、ハンドガンと呼ぶには重い。具体的に言うとレンの持つぴーちゃんより普通に重い。全長はピーチャンより短いのに、重い。

 

「は、ハンドガン?」

 

 レンがチュートリアルで見たハンドガンや映画とかで見たハンドガンとあまりに見た目が違う。なんかこう、筒にグリップをくっつけたような印象だ。

 

「はいこれ弾、後ろのここをスライドさせて突っ込むのです」

 

「ちょっと弾が大きくないですか!?」

 

 レンの細い指より普通にでかいどころか手首から中指の先よりも普通に長い。意外と装備重量的には問題ないらしく弾を込めてすんなりと構えることはできた。

 構えて引き金に手を掛けたことでバレットサークルがレンの視界に現れる。

 

「とりあえずこれ撃ってみ?」

 

 凸侍がストレージから出てきたのは色彩を反転させたスイカ、スイカ・オルタであった。闇風は生暖かい目でその様子を眺めている。

 

「それじゃあ、うちます!」

 

 バレットサークルがスイカ・オルタを捉え、引き金を引いた瞬間、爆音と共に激烈な衝撃が腕にかかり、鈍い音と共にダメージエフェクトが発生しレンの視界が天井を向いた。レンの視界の端のHPが2割ほど減った。

 ガインッという音に後ろを見ると自分の手にあったはずのハンドガンが地面に落ちていた。前を向きなおすとスイカ・オルタはかけらも存在せず青色の汁と皮のかけらが置いてあった場所から爆散したように飛び散っていた。ついでにスイカオルタの在った場所の先に弾痕があった。

 

「「…………」」

 

 闇風とレンの沈黙に、気まずそうに凸侍がストレージから弾が5発入った箱とむき出しの緑と白に先端が塗られた弾を出す。

 

「なんとお得セットでこちらの弾丸5発とお詫びに特殊弾を1発贈呈です」

 

「ななな……」

 

「ナナナ?」

 

「なんてもの撃たせるんですかー!!」

 

「うわああああ!! レンちゃんが怒ったあああああ!!」

 

 ピーちゃんを振り回しながら凸侍を追い掛け回すレン。普通に発砲してくるので凸侍、AW50を持ったまま闇風と同じように障害物の中を逃走を開始する。当然闇風より遅いので被弾はするのだが防弾アーマーのお蔭で死なずに済んだのだった。

 闇風はその様を楽しむ様に椅子に座りなおしてバイオグリーンティーを啜るのだった。

 レンはしっかりそのハンドガンと弾セットと特殊弾を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくですし、お二人も一緒に出ませんか!? スクワッド・ジャム!」

 

「「いや……」」

 

 お二人なら活躍できると思うんです! と顔を輝かせるレンの顔を見て困ったような笑みを浮かべ。

 

「……無理だな」「そう言うのはちょっと」

 

 凸侍は肩をすくめ闇風は顔をそらした。

 想像してもらおう、男性と喋り慣れてないレンと一緒に出るということはおそらく女性、場合によってはレン並の身長俗にいうロリっぽい外見。その両脇に凸侍と闇風。

 事案である。ついでにオメーラ出張ってくるなと文句を言われまくるのが目に見えている。

 その様を想像して二人は遠い目になった。

 

(二人とも意外と恥ずかしがり屋さんなのかな……)

 

 レンは見当違いなことを考えていた。




エム(なんかすごい動き良いな……)
レン「次はどうすればいいですかエムさん?」
エム「あ、ああ、次は銃を撃ちながら――」






急にUAが伸びて散弾のバレットラインばりにビビり散らしてますがご覧いただきありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

世紀末侍と✝️ターバンダークウィンド✝️の観戦

装備変えて偽装は大事

誤字修正しました。


 荒野を駆ける男性アバター、その後ろをバイクに乗った複数人が追い掛け回している。土煙をあげ走るバイクの速度に遮蔽物の無い荒野で、AGI特化ではない男性アバターは遂に逃げることをあきらめ迎撃態勢を取る。

 

「ヒャッハー! ドロップ品と種もみを寄越せ―!」

 

「ヒャッハー! 水を出しやがれ―!」

 

 それはモヒカンであった。皮鎧風の防具に肩パッド、剃りこんだ頭の頂点に輝く金髪のロングモヒカン、世はまさに世紀末だった。

 ちなみにバイクと手に持っている棍棒はモヒカンたちが探してきたフィールドアイテムだ。

 

「くそ! だれがお前達に渡すものか!」

 

 ピュヒュンと放たれた光学兵器の軌跡はモヒカンの少し前の空間に生まれた膜に阻まれ霧散する。

 すぐさま光学銃もバイクに乗ったままのモヒカンのショットガンで叩き落とされてしまった

 

「なんでモヒカンなのにハイテク装備してるんだよ!」

 

 思わず慟哭する村人。

 外見がモヒカンであってもGGOプレイヤー、光学防御フィールドは標準装備である。

 もうだめか、そう思ったとき、ショットガンを持ったモヒカンの乗るバイクが爆発した。

 

「な、なんだ!?」

 

「ヒィィイィヤッハアアァァァァ!」

 

 荒野の先から変なのが走ってきた。あの速度はAGI型か、いいや手に持っている武器が大きい、STR型か、いいえ、凸侍です。

 

「なんだてめっ」

 

 獲物を前に舌なめずりしていた、いやロールプレイをしていたら世紀末救世主みたいなのが襲ってきたの図である。

 再び変なのから銃撃が飛んでくる。.50BMGがバイクの機関部を貫き、乗っているモヒカンもろとも爆散させる。

 

「ヒャッハー! 野郎共敵だー!」

 

「「「ヒャハー!」」」

 

 モヒカン達も応戦するが、あくまで光学兵器メタ装備でヒャッハーロールプレイをしている影響で銃はショットガンだけだ。対物ライフルという射程が倍以上ある遠隔武器に勝てるわけがない。接近しなければどうしようもないのでモヒカン達が距離を詰める。

 

「ヒャッハー! 近づけばこっちのもんだー!」

 

 そこで本来なら距離を離そうとするはずのスナイパーが猛スピードで突っ込んできた。

 ここでモヒカンに嫌な予感が走った。おんなじようなことをしている変態がBoBで暴れていなかったか、と。

 幸か不幸かモヒカン大正解であった。

 

「へ、変態だッーー!」

 

 村人が思わず叫んだ。

 ショットガンのように荒ぶるバレットラインから確実に命中させてくるのでより変態感が増している。

 村人はもはや伏せて流れ弾が当たらないことを祈るしかない。

 モヒカン達はとても楽しそうに悲鳴をあげながら死んでいく。モヒカンロールプレイをやっているなら強い奴に一方的にやられるのも一つの楽しみなのだ。

 十分も経たず、7人もいたモヒカンが全滅し戦闘は終了した。助けてくれた優しい変態にお礼を言おうと村人もとい光学銃使いが顔をあげると、いい笑顔をし変態もとい凸侍がいた。

 

「水を寄越せ……一つや二つではない、全部だ」

 

「ファーー!」

 

 世紀末救世主ではなく世紀末シアターであった。ヒャッハーから変態に状況が悪化したことに気付いた光学銃使いはがっくりと項垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

 光学銃使いから350クレジット分のドロップ品を巻き上げると急ぎグロッケンに帰還した凸侍は顔がわからないようフードポンチョとスカーフを巻き酒場に急いだ。

 人でごった返す酒場の一角、大股開きで席を確保していたターバン男に軽く手を挙げ礼をしてから隣に座った。

 

「……遅かったな」

 

「悪いね、ちょいと人助けしてたのさ」

 

「……何の暗喩だ?」

 

「暗喩じゃねーし事実だし。とりあえずなんか飲むか」

 

 コンソールで注文するとバニーガールのNPCが飲み物をテーブルの前に二人のいつも飲む成分調整安全牛乳(総督府保証書付き)と、バイオグリーンティーが置かれる。

 

「いやー、レンちゃんの活躍が見たいだなんてダークウィンドも丸くなったなあ?」

 

「単純に今のAGI型の中堅層の戦いとチーム戦を見たいだけだ」

 

「チーム戦は確かに見たいなあ」

 

 背後で『ハグウ!? 何故だか対物銃を卒倒レベルに改造した奴の気配が! ウガッガッガッ』『ライデーン落ち着け! 凸砂の変態は今日の大会は出てないぞ!』等と乱闘が起きてるのはお構い無しである。

 

 大会に酒場は大盛り上がりである。地味に二人ともこういう盛り上がりには参加したことがない。単純にBoBで出る側だったからだが。

 

「総発砲数の下一桁か、じゃあ俺は0で」

 

「……なら俺は1だ」

 

「さすが1位」

 

 二人ともニッコニコウキウキである。

 

「レンの相棒、狙撃銃使いか、なかなかの」

 

「ボフゥッ」

 

「オイゴルァ!?」

 

 レンの仲間のエムを見た瞬間凸侍が牛乳を吹き出しテーブルの対面付近で観戦している奴に直撃した。

 

「す、すまん詫びになんかおごるよ」

 

「合成オレンジカクテルで」

 

 凸侍が注文するとただちにNPCがカクテルを持ってきた。オレンジの名に恥じるくどいほど真っ青なカクテルであった。

 

「で、何にそんな驚いたんだ?」

 

 カーキ色の防弾ベストを着たPMC風の男はカクテルを片手にテーブルに腰掛けた。目立たないように座る二人を初心者と思ったのか気さくに話しかけてくる。

 ちなみに二人とも普段の格好だとバレそうなので初ログイン時に着ていた初期装備である。

 

「ちょっと見知った顔がいて……」

 

 正確には知り合いと知り合いがブッキングである。世間は意外と狭い。

 

「ああ、こういう大会の中継を見るの初めてか。フィールドで会ったりしたやつらが出てると驚くよな」

 

 区切るようにカクテルを飲み干し、男は名刺を取り出した。

 

「ちょっとした傭兵ロールって奴でね、それに書いてあるアドレスに連絡くれれば金次第で探索の手伝いからPKまでなんでも請け負うぜ」

 

 BoB本選にも出場したんだぜ! と二人が名刺を覗き込めば確かに第二回、第三回BoB本線出場と書いてあった。名前はブルーノ。

 

「それじゃご贔屓によろしくな! カクテル美味かったぜ」

 

 ブルーノが爽やかに去った後、闇風はぼそりと呟いた。

 

「……思えば、前回都市部で見た覚えがある」

 

「奇遇だな、撃ち殺した覚えがあるわ……」

 

 凸侍が机に突っ伏しながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおーああいう風にロープで降りるの憧れるわーやってみたい」

 

「…………ある程度だと壁は走り降りるものだからな」

 

「AGI型あるある過ぎる」

 

 

 気を取り直して観戦を再開する二人であった。何か起きる度に酒場内で知っているのかライデーンが発生し解説してくれるので観戦初心者にも安心の酒場である。

 

 

 

 

「あの盾……硬いな」

 

「正面からの突破は大火力で基部破壊するしか無いんじゃないか? 折り畳み式だしそこそこ脆いだろ」

 

「そういえばあれの一枚を片手に盾に持って反対の手でサブマシンガン撃ってくるAGI型に襲われたぞ今日」

 

「どう対処したんだ?」

 

「撃ったら盾で受け止めようとしたらしいんだけど盾ごと腕が欠損した。盾自体は無事だったけどな」

 

 .50BMG喰らったの初めてだったんたろうなあと凸侍は呟いた。

 

 

 

 

 

 

「おっドラグノフとはいい趣味してるぅ! 勧誘しなきゃ……」

 

「貴重な女性プレイヤーを魔境に引き込むのはやめた方がいい」

 

「魔境じゃないですーというかあげた銃使われないの悲し…………」

 

「喜べ盾に使われたぞというか壊れてなさそうなんだが」

 

「あれで5キロある鉄の塊だからな。なんかドピンクになってマジカル★トンファーって見た目だけど」

 

「…………おい引き金ひいた反動でぶん殴ったぞ」

 

「どういうことだってばよ」

 

 画面ではレンがぶん殴りエムが狙撃をし、優勝を決めたファンファーレが流れている。

 総発砲数49,811発であった。

 困惑しつつもレンの優勝を祝う二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、1にしておけば良かった弾代が浮いたのに」

 

「上限7.62までだぞ」

 

「なん……だと、……? やめろその笑顔と賞品抱えて残酷な事実を言うんじゃない」

 突然の闇風に賞品交換の人が腰を抜かすことになった。




ジンクスを打ち破るレンちゃん
ご覧いただき誠にありがとうございます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

弾頭製作は修羅の道。ぶち抜けねえ宇宙戦艦の装甲板とぶっ飛ぶHP

弾頭製作ってかなり大変そうな印象がある。
自由度が高すぎる上にダメな条件も提示されない印象がある。
凸砂たるものあらゆる状況を想定して準備することが大切。


 アタッシュケースから工作機械が飛び出したような外見のアイテムを前にウンウンと唸りながら奮闘する男の姿があった。凸侍である。あーでもないこーでもない言いながらストレージからアイテムを取り出しては工作機械に突っ込み、取り出しを繰り返している。格好も防弾服ではなく作業着風のオーバーオールだ。

 それを無視してベンチに座る6人と折り畳み椅子に座る水色髪の少女アバター、シノンの姿があった。一見するとシノンが恐喝かなにかされてるかのような外見的威圧感持つが、少し緊張しているのかもぞもぞしていたり、憧れのキラキラした目をシノンに向けている彼女らはSHINCと呼ばれるGGOでは珍しい女性チームである。

 

「そう、対物ライフルを入手する方法ね……」

 

 壁に立てかけられたヘカートⅡを見てからシノンは口を開いた。

 

「トラップで転送される高難易度ダンジョンがあるんだけれど、それをクリアすれば手に入る可能性もあるわよ」

 

「「「「「「おお……」」」」」」

 

「そのダンジョン知ってる気がする。あそこ対物ライフルの出土率ヤバくない?」

 

 全サーバーに十数丁あるか無いかの対物ライフルの内二つがあそこからドロップしていると考えると確率は恐ろしいものがある。光明が見えたことに6人の顔に笑顔が浮かんだ。

 

「代わりに難易度はとても高いわね、私も偶然狙撃ポイントで一方的に撃てたから勝てたような物だし」

 

「芋は死すべし」

 

「話の腰を折らないで、それでもとれる中では一番確率が高いと思うわよ。帰りも外部を移動するわけじゃないからPKに襲われる心配も少ないし」

 

「「「「「「ありがとうございます! シノンさん!」」」」」」

 

 いいのいいの、と軽く手を振って礼に応える。すごく女子会の雰囲気がある。そして場違いな凸侍であるが、居るのはいつものパツキンハートマム軍曹NPCの試射場なので凸侍が居るのはいつも通りである。むしろなんでここで話し合いしてるんだと凸侍は思っている。

 

「にしてもエムの盾なぁ、あれズルいよなぁ、しかし見てくれ。そのエムの盾を正面からぶち抜く弾が完成した」

 

 工作機械から離れいい笑顔でやってきた凸侍が普通のフルメタルジャケット弾風の.50BMGを見せびらかす。先端は黒く塗られている。

 

「何作ったのよ」

 

「宇宙戦艦の装甲板を加工して作った弾頭。なんとジャケットとかではなく全部装甲板」

 

「だ、大丈夫なんですかそれ……?」

 

 銀髪ベリーショートのターニャが声を上げ、他5人も心配そうな顔で見てくる。

 

「大丈夫ダッテブルガリアヨーグルト」

 

 AW50を壁際に備えられた台座に置くと、隣にそれをのっぺりと、まるでテクスチャを全部鉄の質感にしたかのような同じ形の銃が出てくる。これは第二回BoBの後に実装されたコピー銃と呼ばれるもので、弾頭製作で作った弾を試射するときに使うように実装された物だ。

 セットされた銃と同じ性能ののっぺりした銃を生み出してくれる。さらに内部にセンサーを搭載しているという設定でどこに負荷がかかっているのかをデータログとして出してくれる優れものだ。

 弾頭製作された弾は設定がおかしかったりすると弾詰まり、暴発などが起きるのだがそれによって銃自体が全損することもある。作って試し打ちするだけでそのリスクは辛く、弾頭製作をしている人々は実装直後大歓迎の狂喜乱舞である。凸侍も何度か試しスプリングフィールドを爆散させていたため、代えの利かない対物ライフルの弾頭製作はこの機能実装までやっていなかった。

 

「しゃー行くぜ見てろよ見てろよ」

 

 ストレージから宇宙戦艦の装甲板を取りだし、的の所に固定すると、弾を込めて構える。

 これが成功したなら対物ライフルをゲットした際に依頼して作ってもらうのもありかも知れない、とリーダーのエヴァは真剣な目で見ている。

 銃口からバレットラインが発生し、設置された装甲板の真ん中を射抜く。そうして凸侍が引き金を引いた瞬間、AW50のコピー銃が爆裂した。

 

「ゴバハッ!!」

 

 弾けたコピー銃の破片が7人の辺りまで飛んできて光となって消えていく。ついでに吹っ飛んだ凸侍も消えていく。HPを全損したのである。

 

「「「「「「えええええええええええええええ!!?」」」」」」

 

「あらっ……と、あちち……ってこれは……ふうん……」

 

 驚愕の絶叫が響き渡る中シノンが放物線を描いてゆっくり飛んできた物ををキャッチし、納得いったように頷いた。

 試射場はグロッケン内部にある設定なので、入口の所で凸侍がリスポンしてきた。顔を両手で覆ったままやってくる。

 

「違うんですよ。違うんだ。こう、暴発の危険性をみんなに知ってもらいたくて……いやマジでなにが起きた???」

 

 言い訳を取り繕う以上に困惑が上回り首をかしげる。自分的に最高傑作の徹甲炸裂弾を試行錯誤で作っている時ほどの威力ではないが、なんで爆発した原因が思い当たらない。

 コンソールを開いてログを見ると薬室付近から銃身の途中までとても圧力が掛かっている。破裂の原因はこれであることは明らかだった。

 

「原因はこれね、はい」

 

 渋い顔でコンソールを除きこんでいる凸侍に金属が投げ渡される。

 シノンが投げたのは、さっき製作された弾頭である。あの爆裂の中であっても“傷一つない”宇宙戦艦の装甲板の加工品の面目躍如な姿を晒している。

 

「ああ……察し……大丈夫じゃなかった」

 

「ど、どういうことですか?」

 

 おそらく対物ライフルを手に入れたら使うであろう、ドラグノフ使いのトーマが問う。

 

「絶対に壊れないから、ライフリングで詰まった」

 

 ライフリングは弾丸が“食い込む事”で回転を与え安定させる物だ。傷一つつかない最強の弾丸はライフリングによる線状痕がつくことさえ拒否、途中までライフリングを逆に食いつぶしながら無理やり発射されようとしたものの圧力が限界に達し破裂したという訳である。

 

「まあ弾頭製作だとよくあることだうんそう納得しよう今ので材料費で五万クレジットぶっ飛んだのは必要な犠牲だったんだ」

 

「ヒエッ」

 

「実際使うにしてもコストが厳しすぎない?」

 

「割と自由度が高いのがズルい。……えっちょいまって素材にプラズマグレネードまで突っ込めるのはダメだと思う」

 

 弾頭製作の魔境っぷりに戦々恐々するSHINCを尻目に凸侍は次の合成の仕方を考えつつ工作機械に向き戻った。

 シノンは慣れた。某二位黒いビームサーベルネカマと同じく気にしたら負けである。

 

「それじゃ、難しいダンジョンだろうけれど、貴女達六人ならきっと大丈夫。私やあいつだって一人でクリアできたんだから」

 

 シノンのその励ましに感謝しつつ、SHINCは精鍛な顔をしながら試射場から退出していった。これから早速ダンジョンに向かうのだろう。

 後ろで再び爆発音がして悲鳴が聞こえるのを彼女たちは努めて無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あとアンナさんとトーマさんは是非とも“全GGO凸砂の会”に入って欲しいから招待送っておこ」

 

「それいま“狙撃銃使いの集い”よ」

 

「ファッ!?」

 

 アンナとトーマの元に『狙撃銃使いの集い』のチャットグループへの招待が来て、二人は入るかどうするかリーダーを交えて結構悩むこととなった。




エヴァ「情報収集によさそうだから入っておきましょう」
トーマ・アンナ「イエス・ボス」







たくさんの評価ご感想ありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二回SJ:お米様フカ次郎

主人公不在です。

そしてなんと初めての分割編ですよろしくお願いします

なぜ投稿してから誤字が見つかるのか誤字修正しました


 酒場の連中は困惑していた。

 スクワッドジャムで有名になったピンクの新星レンが、金髪美少女フカ次郎を連れてやってきたのはいい、酒場の連中も大盛り上がりだった。だがその後ろにいる黒い顔の見えないフルフェイスヘルメットを共通で被り片や白いマントを巻き片や黒いハーフマントを付けた男二人はなんだと。

 チーム名はLFTY。命名法則から見てこの四人の頭文字であろう。

 

「フカ、ヤーさん、トーさん、行こう!」

 

((((((((((ヤクザとお父様!!!?))))))))))

 

転送されていく4人を見ながら酒場全体が困惑し、深く掘り下げないことにした。

 

「あの二人、動きがぎこちないな、他のゲームからコンバートしてきたのか?」

 

 家の中で待ち伏せ作戦に決めたLFTYチーム、なんと白マフラーのヤーさんが取り出したるは対物ライフル、AW50だ。伏せ撃ちを補助する特徴的なストックに三脚、長距離狙撃のためのスコープ、先端には円形の大型マズルブレーキが装着されており、それを見た酒場のライデーンは思わず涙を流した。

 変な奴じゃないのに出会えた対物ライフルの幸運を祝った。直後に扉の縁にストックと銃口の辺りを衝突させる様を見て怒ったが第二回BoBの頃ほどではない。狙撃手が屋内じゃシカタナイネ! と笑って許せるほどだった。

 黒いの二人はなんだかぎこちない動きでレンの作戦を聞いて頷く。

 LFTYの作戦はフカのグレネードで混乱を誘い、ヤーさんが狙撃で相手を仕留める。そこにレンとトーさんがとどめを刺しにかかるという完璧な作戦である。

 レンがピンクのP90を、トーさんが艶消しされた黒のMP7二丁を、フカ次郎がダネルMGLを持ちながらじりじりと敵にばれない様移動していく。

 既にヤーさんは位置に付き、あとはフカ次郎がばれない様にこっそり移動し、絶好のグレネードポジションに着こうとしたとき、フカ次郎の足元が炸裂した。

 

「囮任せる」

 

「ごめーんっ!」

 

 しまった! とレンが思うより早くトーさんが走り出した。謝りながらひっくり返ったフカ次郎をそのまま抱えてすごい勢いで逃走しだしたのである。

 さらにヤーさんの声が聞こえてくる。

 

「……バックアップ準備完了、タイミングはレンに任せる」

 

 そして隣にある小屋。やるべきことをレンは理解した。

 レンは小屋の中にすぐさま入りこむと小屋の外が騒がしくなってくる。どこにもいない! 足が吹き飛んだ奴を抱えて遠くに逃げられるはずがない! と叫び、レンが隠れる小屋に目星をつけた。なお彼等には残念なことに足を吹き飛ばされた奴は抱えられて遠くに逃げている。

 

「行きます!」

 

 レンが外に飛び出すタイミングでヤーさんが発砲、それと同時にピンクの塊が窓を突き破って現れた。

 まず吹き飛んだのは狙撃による大威力を直撃させた1人目。胴に大穴を開け吹き飛ばし手に持つショットガンが地面に落ちた。動揺が広がるより早く、三人をレンがP90の装弾数を活かし薙ぎ払い射殺、何が何だか分からない5人目に狙いをつけ突っ込むレンとそれを狙う6人目、再びの強烈な発砲音と共に五人目が大穴を開けて吹き飛び、フレンドリーファイア覚悟で6人目が放った弾はまるで壁に当たったかのように進行方向を変えたレンの軌道を読めず地面に着弾、代わりにレンのP90から放たれる5.7×28mm弾の雨が男の顔をダメージエフェクトでびしょ濡れにした。

 

「うわぁ……」

 

「おおぅ」

 

 あまりの速さで全滅したため酒場の皆さまは目をぱちくりさせている。が、憐れな五人目の吹き飛んだ場所を見て引き攣った顔をしている者もいる。何人かは股間を抑えていた。

 太ももの付け根とへそより下あたり、具体的に言うと股間あたりを中心に大穴があいていた。

 

「あの狙撃手、レンちゃんが居るのによく恐れず二人目撃てたな、俺じゃビビって撃てないぜ?」

 

「いや、あの狙撃手は撃ってないな」

 

「どういうことだライデーン」

 

「ピンクのあの腰の得物を見てみろ」

 

 ライデーンと呼ばれた男がジョッキをカウンターに置き呟く。レンが腰から吊られたピンクのトンファーみたいな物を手に取っている。それの後部を開くと、大きな薬莢が排出され、地面に落ちて光になり消えていく。

 

「うわああああ鈍器だあああああ」

 

「でっか!? なんだあれ」

 

「ヤベー奴だ! 拳銃のヤベー奴だ!」

 

 酒場の反応が収まるのを待ってライデーンが続ける。

 

「大穴を空けたのはアレの一発だ。それの反動とAGI型の敏捷性を生かしてあんな動きをしたわけだな」

 

「なにそれ怖い」

 

「レンちゃんマジ怖い」

 

 酒場ではレン怖いの合唱が始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんよぉレン、捕まったー! 私のことは気にせず先に行くんだー!」

 

「ククク、レンよ、フカ次郎を救いたくば我が城に来るがいい……もし救えたならば世界の半分をお前にくれてやってもいい」

 

「二人一緒にボケないで!!」

 

「ぬわー!!?」

 

 安全な場所まで一旦逃げていた二人が戻ってきた。

 トーさんとソレにお米様抱っこをされたフカ次郎が同時にボケてレンが憤慨しながら応急治療キットをフカの尻に突き刺した。それは別として体力が4分の3程度までしか減っていないフカ次郎の耐久はすごいと感心せざるを得ない。レンだったら全損手前だろう。

 時間が惜しいのでフカ次郎は欠損が治るまでの間グレネードランチャーを手にプラプラさせたままお米様だっこで移動し、2回目のサテライトスキャンを確認する。

 

「駅のチームは叩かないとね、影伝いに移動して近づく」

 

「レンさんやレンさんや、さっきのポカのお詫びをさせてくれぬかい?」

 

「いいけど、何するの?」

 

「うぇひひひ、レンもトーさんヤーさんも誰も撃たずに駅の奴等、ぜんめつさせてやる」

 

「芋は死すべし」

 

「……弾着観測なら俺でもできるだろう」

 

 フルフェイスヘルメットの二人は行動方針には口は出さず、サポートに徹するような口ぶりで答えた。

 サクッと駅の芋を刈り取るLFTYであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃――――――

 

「ふう……なんとか初戦果だ」

 

「よかった……」

 

「なんとかなるもんだな」

 

 林の中で思わず汗をぬぐうスナイパーチームの男の面々がいた。深く吐き出された息は、まるで爆弾の赤い線と白い線の二択に成功したかのような解放感に溢れていた。

 

「シャーリーが手を下すまでもなかったな」

 

「撃てなかったのは少し不満だけれどね」

 

 少し不満を漏らしながら鮮やかな緑髪の女性、シャーリーは双眼鏡で相手の行方を探る。

 

「山の方に三人逃げてる。帽子が少し見えてるけれど狙撃は難しそう」

 

 シャーリーの報告に胸をなでおろすような声がチームから上がった。

 

「対人戦は通算二度目だが、俺たちは運がいいな」

 

「GGOの対人は恐ろしい物だからな……」

 

「俺たちの腕でどこまでいけるかやってやろうぜ!」

 

 敵を倒し奮起する仲間たちに少し微笑つつシャーリーは狙撃に有利そうな場所の選定を地図を眺めながら始めるのだった。

 彼等の名前はKKHC。全員が“全GGO凸砂の会”のチャットグループに“お誘い”を受けた狙撃手スコードロンである。




勧誘(物理)

シークレットな匿名希望がLFTYとPM4合わせて6人いる件について。





たくさんのご感想と評価ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二回SJ:俺のストレージがパンパンだぜ

キス阻止


前回の続きです。よろしくお願いします。
相変わらず主人公は不在です(白目)

誤字修正いいいい(狙撃される)


「な、何だこりゃあああああ!」

 

「うひゃああああああっ!!」

 

「「ジャングルだ……!」」

 

「森は燃やさなくちゃ……」

 

「……流石にこの場所で狙撃銃は厳しいな」

 

 荒涼たる世界からドーム内の通路を抜けた先は、一面の緑。とても生命力あふれる空間を目の前にしたLFTY。それぞれが感嘆とうわ言と状況分析をつぶやく先は、青空が照らす南国の世界であった。おそらくはバイオスフィアのなれの果てような物なのだろう。

 視界は5mから30m程度しかなく、狙撃銃には厳しい場所であった。とりあえずポンチョを取り出し目立つ色だったピンクをレンが隠す。

 そんな南国感あふれる空間にドピンク少女とグレネード少女、暑そうな黒男二人がどうするか作戦会議を始める。

 

「中には三チーム、しかし銃撃戦の音が聞こえないのは妙……」

 

「えっなんで俺に銃渡すの今回お前が狙撃手やるんだろ」

 

「……この状況で普段の二倍以上の過重ペナルティを受けてお前みたいに銃を振り回せとでも?」

 

「正直すまんかった」

 

 ヤーさんが押し付けた対物ライフルをストレージに格納する。逆に二丁拳銃のように持っていたMP7を一つ渡し、100発ドラムマガジンをボトボトと3つストレージから出してヤーさんに渡していく。サプレッサーも受け取り、ヤーさんはねじ切りを回して銃口に取り付けていく。

 

「うへぇ、ストレージが銃と弾薬でパンパンだよぉ」

 

「やめてっ! 私に乱暴する気でしょうグレネードみたいに! グレネードみたいにっ!」

 

「…………」

 

「やめてそんな目で見ないでメットで見えないけど」

 

「悪乗りしてごめんヤーさん」

 

「よし! これだったら気づかれず抜けられるかもしれない!」

 

 フカ次郎とトーさんがヤーさんに土下座している脇、レンが思いついた作戦を提案する。

 

 

 

 

 

「分かった! これ罠だ!」

 

 バレットラインを利用した直進の途中、突然始まった銃撃の演奏会にレンが違和感を感じ、原因を感じ取ったレンは右角度に向きをずらしながら進行することを決定する。残念ながら演奏を聴いている余裕はない。

 

 

 ちなみに陣形はインペリアルクロス風である。バレットラインを利用しレンを先頭にフカ次郎がそれを追う、そして左右にヤーさんとトーさんが配置されてフカ次郎の脇を固めるような動きだ。ちなみに男二人にはレンのバレットラインのアシストが無いがどうやってついてきているかはレンには理解不能であった。

 

「フカ! 30m減らして撃って!!」

 

 突然の叫びにフカ次郎がグレネードを発射する。レンと敵がカチあったのである。レンが撃たれる前に着弾し、驚いた敵4人を即座にハチの巣にする。

 

「レン? 大丈夫?」

 

「無傷マガジン半分敵四人援護ありがとうこっち来れる??」

 

「うんうんいけそうっふやああああ!?」

 

 一口ですべて言ったレンにフカ次郎が応えていると、それが悲鳴に変わり少し離れた所で発砲音が再び響き始めた。

 

「うひゃああ撃たれてるっ! ライン飛んできてるっ! なんか窪み落っこちた!」

 

 レンは発砲の音源から三方向に分かれてこちらを囲い込んで来ようとしているのが分かった。

 

「左右お願いします! ごめんフカ! 耐えて!」

 

「ええええまってぇ!むり掠った怖いいいい!」

 

「……少し我慢してくれ」

 

「フカちゃんは犠牲になったのだ……」

 

「ヤダー! 犠牲になりたくないー!」

 

 レンが発砲音を頼りに駆けていくと演奏団であった4人がフカの居る方向に向け制圧射撃を行っている。それを回り込むようにしてサプレッサーを取り付けたP90で撃ち抜きすぐさま絶命させた。4つの【dead】が浮かぶ。全員頭がダメージエフェクトで真っ赤である。

 

「殺した4!」

 

「おっとすまんねこっちも5」

 

「……5だ」

 

 レンの4の叫びから、最初雨あられの様だったバレットラインが徐々に減り、ヤーさんの5の声以降、再び静寂が訪れた。

 見ればフカ次郎から離れた50mほどの所で【dead】のマーカーが4と5ずつ浮いていており、フカ次郎を中心とした半径50m圏内は死屍累々のありさまだった。くぼみに落っこちていたフカ次郎を中心にまるで水の字を書くように草が弾丸で薙ぎ払われ除草されている様は、くぼみが無ければフカ次郎が死んでいたことを表していた。

 

「全滅だと思うけれど、一応数数えておくね」

 

 直進性で結構見晴らしの良くなった空間でレンが【dead】数えていくが、13しかない。

 

「おや? さっきの報告の合計だと14のはずじゃない?」

 

 レンが気付いて腰の拳銃を抜くと、4mあたりで折り重なったように死んでいる死体にぶっ放した。かなり練習したが反動で腕が思いっきり跳ねあがる。

 本来死体は破壊不能オブジェクトとして撃たれてもエフェクトがでるだけだ。

 

「あいだっ!!」

 

 しかしレンが撃った死体は断末魔をあげると吹っ飛んで【dead】を点灯させるのだった。その顔はとてもイケメンであった。

 

「……トーさんのやった所だぞ」

 

「すまん威力が慣れない銃でな」

 

「それは確かに……」

 

 レンが遠い目をした。

 

「で、どうする? たぶん外の二チームのうち……たぶんSHINCは入ってくるだろうが」

 

「その心は?」

 

「あいつら室内戦好きでリスクとるの嫌いだから。特にデヴィット。ただでさえ前回優勝のレンに正体不明の3人が居るジャングル地帯、しかも近くにSHINCが居るのにわざわざ入ってこないよ」

 

 じゃあ、と今後の作戦方針をレンが決定する。

 

「SHINCとは再戦の約束があるんですが、出来れば今戦闘は避けたいです。やるなら最後、先に確実にピトさんぶっ殺したい」

 

「確かに、今ここで決着をって雰囲気でもないね」

 

 AGI型の脚力で思わず飛び跳ねてしまったレンが背後を見ると三つ編みアマゾネスのエヴァが茂みから現れた。バレットラインがレン以外を射抜くように現れ、トーさんヤーさんフカ次郎が両手をあげる。

 姿を現したのはSHINCの面々だ。

 

「ごきげんようチビ助、どうして戦闘できないんだい?」

 

「えっその、詳しく理由はいえないんだけれど今はズルしててそれでSHINCと戦うのは真っ向勝負と違くて……」

 

「いやねー、ピトフーイさんをレンが倒さないと、大変なことになるのさー。SJ2優勝できずに死ぬと、リアルでも死んじゃうんだって。唯一レンがそれを止められるってわけ」

 

 両手をあげるのをやめいつもの調子に戻ったフカが、レンの隣にやってきてネタバレをする。

 あっさりばらしたフカにピンクを上回る勢いで赤くなったレンの後ろ、フルフェイスで顔の見えない男たちが、小さく頷きました。

 

「すまないな、レンを信用してやってくれ」

 

 男二人はメットを外さないものの頭を下げた。 

 その声に何故かトーマとアンナが吹き出しかけたがギリギリのところで堪え空気を壊さないようにする。

 レンとエヴァが握手すると丁度サテライトスキャンのタイミングだった。

 

 二つのチームはもう既に戦闘態勢を解きつつ、AW50を持ったヤーさんとPP19を持ったターニャ、ドラグノフを持つアンナが周囲を警戒している。

 南西からゆっくりスキャンが開始され、端末に映し出されていく。タッチをしまくって急かしながら北東のPM4の光点を真っ先にタッチし、生きているのを確認して安どのため息を吐いた。

 他には中央西の森にMMTMと少し離れた位置にKKHC、北部丘陵地帯にはZEMAL、そうして北西壁際にT-Sというチーム。LFTYとSHINCを含め7チームが残っていた。

 その脇でトーさんがストレージからポンポンレン用の50発マガジンを出してフカ次郎がレンの腰のマガジンケースに格納する作業をしていた。エヴァはその様子を二度見したが見なかったことにして、見栄を切る。

 

「互いに最後の殺し合い、そのお膳立てをさせてもらわないとね」

 

「この二チームなら絶対最期まで残って殺し合いだよ!」

 

 レンとエヴァが再びがっちり握手をして別れる。

 SHINCは行動方針に従って、エヴァを主導として北へドームを抜ける為走り去っていく。

 

「よし! ピトさんぶっ殺す!」

 

「「ぶっころーす!」」

 

 元気よくドームを抜けるLFTYだった。

 

 

 

 

「レンちゃん怖い、しかしうん」

 

「ピトフーイもヤバい、しかしうん」

 

「かわいい子と美人」

 

「可愛い怖い子が美人ヤバイ人の所に向けて進行を続ける、これは実質告白では?」

 

「最近は大会でキマシタワーが建築されるのはやってんの??」

 

「おっ謎の光剣使いとシノンちゃんのキマシタワーとツインタワーブリッジ!?」

 

「何言ってんだお前らとりあえずレンちゃん攻めかな」

 

「オオン!? ピトフーイが攻めだろ長身美人攻め」

 

「オオン!!? 鬼畜レンちゃんがピトフーイにあんなことやこんなことを●●●!!」

 

「オンオンオン!!?!?」

 

「うわーやめろ撃つなー!!」

 

「誰だ撃ち始めた奴は!!」

 

「わー!!」

 

「ギャー!!」

 

 酒場ではレンちゃん怖いからピトフーイヤバいとなっていたところにレンちゃんのチームすげえ! が乱入し、状況確認と大騒ぎで酒場は大混乱に陥った。結果的にレン×ピトかピト×レンかという論争が勃発、酒場で次の戦闘が発生するまでの間効かない銃撃戦が繰り広げられることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その少し前――――――

 

「うわぁ……」

 

「やっぱりああいうのいっぱいいるんだなぁ」

 

「アレを倒すにはまず、状況を整えないと無理だな」

 

 ピトフーイ達の虐殺劇を遠距離から見ていたKKHCは転進を決定していた。アレは強大なヒグマに匹敵する代物だ。

 倒すならばまず周りをうろつく狼たちを駆除しなければならない。狙撃も射程的には負けている故に分散して多方向から狙わなければ返り討ちに合うだろう。

 そう決めたKKHCは丁度PM4と戦った場合背後になってしまう方角に居たMMTMに狙いを定めた。

 林を抜けて北にすすみ、マップ中央やや東よりの森に陣地を構築し、MMTMを待つ。正面には駐車されたハンヴィー、第一回SJを見ていたシャーリーの言葉から、MMTMは乗り物を確保する癖があるのではという推測からの待ち伏せだ。

 狩人達は待つ。MMTMにその名の通り死を思い出させるために。

 




人手が居るっていうのは強さですよね。一人だと対処不能でも複数人居れば割とすぐ何とかなるのは良くあること。





ご感想と誤字報告誠にありがとうございます。励みになっております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二回SJ:特に理由のあるレンのぶっとい物がピトフーイを襲うー!

3話目なので前回前々回から話がつながっております。ご注意ください。

主人公一瞬だけ出ます。

文章が変なところあったので修正しました。
誤字修正いたしました報告ありがとうございます!


「来た……来た来た来た来た!!」

 

「おっおい!」

 

 双眼鏡から眼球がこぼれそうなほどの笑みを浮かべ、エムを蹴り跳ね飛ばしてバレットM107A3を奪い取ると意気揚々とその場に伏せて狙撃態勢を取った。太った関取のような覆面男が、やれやれとでも言った風に蹴られて転がったエムに手持ちのサベージ110BAを渡した。

 

「すまない、感謝する」

 

「じゃあ俺は裏の警戒でもしますかね」

 

 関取男はM4を取り出し背後の警戒を始めた。

 エムはシールドを展開し地面に置く。以前固定されていなかった影響で端に当たった際に盾自体がずれ動いてしまった教訓から、しっかりと地面に杭を打ち込み固定する。

 

「あの三人は不明だが、1200から迎撃する」

 

「りょうかーい」

 

 とても嬉しそうな雰囲気で、恋に浮かされ愛に痺れたような表情で、ピトフーイは今か今かと畑の先のレンに焦がれるのだった。

 

 

 

「……現在1600、盾を展開」

 

「もう?」

 

 レンが双眼鏡を覗くと確かにエムの盾が展開されている。エムらしくない行動だ、とレンは思った。わざわざ存在を晒す必要がない。万一7.62級の狙撃銃を警戒しているとしてもそれなら1000から盾を展開すればいい。そういえば、と以前のピトフーイとの会話が思い出される。

『対物ライフル売ってもらおう思ったんだけど断られちゃった』と言っていなかったか、ならば手に入れていない保証はない。

 

「ヤーさん、作戦変更。1400から盾を撃てる?」

 

 通信機から返答が返ってくる。

 

「初弾はライン無しで撃てるだろう」

 

「ウッソ俺だとたぶん無理なんだけど?」

 

「……DEX上げろ」

 

 相手がこちらを発見していなければ発生する初弾のライン無し射撃。システムアシストを受けつつバレットラインを表示させない物だ。まずエムの盾を破壊しなければ話にならない。いや、話になる手段はあるのだが、それはレンの本意ではない。思いついた時は悪魔的発想過ぎてフカ次郎に引かれたレベルだ。そしてそれはレンの力で成すものではない故に取るべき手段ではないと全員が承知していた。

 故に、ピトさん決戦仕様作戦を決行するのである。

 

「フカ、ヤーさんが二発撃ったら、決戦仕様行くよ! あとトーさんは渡しておいた奴被って!!」

 

「ガッテン承知の助!」

 

「うわぁこの外見でこれはうわぁ」

 

 黒いフルフェイスヘルメットにピンクのポンチョ。これは変態であった。フカ次郎のポンチョは可愛らしいのにどうしてこうなったと言わざるをえない。とりあえずと言わんばかりにトーさんはヤーさんの脇、1400m地点でコンソールを開き待機する。レンとフカは前進をじりじりつづけ、1300m地点までやってきた。

 

「今!」

 

 爆発音に近い発砲音が炸裂する。ライン無しで放たれた射撃がエムの盾中央に直撃し爆発が発生する。銃座のため切り取られた上部部分から爆発の衝撃が侵入しエムのスカウト帽子を吹き飛ばしライフルスコープを損壊させる。もう一撃のダメ押しが、今度はラインありで射撃される。狙いがややそれ盾の左側面に着弾、それと同時にヤーさんのヘルメット側面が弾け飛んだ。ピトフーイのカウンタースナイプが掠ったのだ。すぐさまそこで側転し、銃を放り捨てた。地面にしっかりと固定された盾は左側面の装甲板を根こそぎもぎ取られ、見るも無残な姿をさらしている。弾け飛んだ装甲の一つがエムの左足に突き刺さり欠損判定をもたらすほどだ。立って居たなら確実に即死していただろう。転がった男を追撃しようとするピトフーイの視界がピンクに染まる。

 フカ次郎が放ったグレネードが炸裂しピンクの煙をまき散らしたのだ。遮蔽の無い空間は視界を遮蔽する空間へと早変わりし、めくら撃ちをおこなったが【dead】が点灯することはなかった。

 まだスモークは1000m近く離れた位置で発生した物だ。しかし、定期的に前に放たれるそれは接近しているであろうLFTYの姿を隠し、ついでに酒場からも姿を隠す。

 

「援護する!」

 

 MG3を抱え走ってきた覆面仲間の一人がすぐさま地面に伏せ、煙に向け制圧射撃を開始する。煙というだけで遮蔽として機能しない以上、ラッキーヒットと動きの抑圧を狙うなら機関銃が一番であった。ポポポポン、と煙の中から一直線になる様にグレネードが着弾し、PM4の50m手前までの道を構築した。

 伏せ撃ちではなくしゃがみ撃ちに移行し、なお制圧射撃を続ける男と、スコープを破損したサベージ110BAを置いてM14EBRを構えるエム。ピトフーイもすでにKTR09を構え油断なく、そして笑みを湛えて待っていた。

 スモークが揺れた。まるでショットガンのようなバレットラインの直後、MG3の射手が炸裂し吹き飛ばされる。煙の中から一瞬飛び出したフルフェイスメットにピンクポンチョを着た男はすぐさまエムの狙撃とピトフーイの射撃を躱し煙の中に戻っていく。この瞬間、一瞬のことで何が起きたか分からなかった酒場でライデーンが一瞬で顔を赤くして、アミュスフィアの安全装置起動によりログアウトした。

 トーさんが煙の中に戻った瞬間煙から飛び出してきたレンがエムを射殺した。爆炎と衝撃を頭部に受けていたせいで体力の減っていたエムを殺すには腰の50BMGでは過剰だったか、とも思いながら反動を生かした加速でピトフーイに接敵する。

 ピトフーイのショットガンが炸裂するが、レンは体を捻ってバレットラインを腰のP90弾薬に当てダメージを減らす。広範囲に拡散するそれはストッピングパワーが低くレンの体力を4割削るだけにとどまった。

 

「ピトさんぶっ殺す!!」

 

「アッハッハッハッハ!!」

 

 命を助けるための殺し合いがスタートした。

 

 

 

 二人の戦闘を邪魔しないため、煙から再び飛び出してきたピンクポンチョは二人を一瞥することもなく、正しくショットガンのバレットラインを避けながらさっきと違う両手のMP7から弾をばら撒き小柄の男を撃ち殺すと、小太りの男と痩せた男の射撃を易々と躱し照準を絞られない様動く。

 反撃に動きながら弾をばらまくが、相手も強豪。ラインをしっかり読み、最低限の回避で命中するものは手に持った物で弾いた。

 それは吹き飛ばしたエムの装甲板。ひん曲がった接続パーツを持ち手のようにして盾として利用しているのだ装甲板相手にMP7での貫通は不可能であり、破壊力で無理やり盾を弾き飛ばすこともできない。

 

「おいまじかよ速すぎだろ!」

 

 的であるトーさんの動きに悪態をつきながらこれ以上接近させまいと攻撃を続ける。

 しかしその弾がトーさんに当たることは無く、膠着状況のそこに、“トーさんにしか見えない”バレットラインが放物線を描いて二つ現れる

 

「もう少し右、そちらは固定、左手はそのまま…………撃て」

 

 煙から出ていたヤーさんが双眼鏡で1400m地点から観測射撃を行いフカ次郎が指示に従って弾を放つ。目の前の強敵に注目せざるを得なかった二人の頭上へ落下してきた、半径5mを焼く二つの弾が炸裂し二人を焼きつくし粉々にするのであった。

 

 

 

 PM4がほぼ壊滅状況に追い込まれる中、レンとピトフーイの殺し合いは紙一重であった。P90の薙ぎ払いを寸で躱し逆にピトフーイのレン対策ショットガンは逆に接近されすぎたことによって発射方向を変えられ、P90の射撃で手首欠損と共に弾き飛ばす。技量が変態的になったレンにピトフーイは歓喜した。死をみた。レンの背後に甘美な死を。だが、とピトが笑ったのをレンは見逃さない。右手で何かを仕掛けてくる。それより早くぶっ殺す!! と足が動く。

 

(待ちな、嬢ちゃん。はやれば死ぬもんだぜ)

 

(そうだよレンちゃん! インビジブルだ!)

 

 腰のカーネルさんと手に持ったピーちゃんの言葉を、レンは信じた。

 突っ込むレンの姿が一瞬止まる。狙撃に対してはほぼ意味をなさない後方へのインビジブル。その瞬間を、ピトフーイの高速の一閃が薙ぎ払った。

レンの腹部、ベルトとピンクの衣装が切られ、僅かにダメージエフェクトを散らす腹が露出するが、そんなことお構いなしである。

 防弾性の高い服を着つつ耐久お化けなピトフーイを殺すにはこれしかない、とレンはP90のマガジンに残った全弾を使いピトフーイの右手に握られた光剣ごと手首を千切り飛ばし、そのままP90を放り捨て腰のナイフを抜く。

 

「ピトさん、女の約束です。本気の勝負で私が勝ったら、リアルで会うって言う約束」

 

 レンの愛くるしい笑顔に、そしてこれから行われるであろう行為のギャップに、ピトフーイは噴き出してしまった。

 

「守ってくださいね!」

 

 金打。は、レンが全力で振り抜いたナイフの一撃がピトフーイの口を突き抜け延髄と小脳の部分にまで突き刺さり捻りこむことでピトフーイのHPを全損させることでなされたのだった。

 そして行われるサテライトスキャンの時間、結果、残っているのは2チームだけだった。LFTY、そしてSHINCだ。

 

「ピトさんぶっ殺せました……! ありがとうございます!」

 

 泣きそうな顔をしながらお礼を言うレンに男二人は照れ臭そうにメットを掻くかそっぽを向いた。

 

「ハハハ、レンちゃんの望む結果になってよかったぜ。じゃあ契約はここまでってことでこれを渡しておこう」

 

「……人が死ぬのは、悲しいことだからな」

 

 二人の中で、うざい青髪のライバルが思い出された。二度と会えない煽り野郎の顔が。

 

 トーさんがストレージから何かを取り出してレンに渡していく。それは一応で持ってきたP90の弾倉とグレネード弾だ。倉庫の役割終わりの大放出である。レンとフカ次郎がいそいそとそれを受け取るのを確認してから少し離れる。

 

「トーさん、ヤーさん、私の無理なお願い聞いてくれて本当にありがとうございました!」

 

「またどっかで合おうなー二人ともーシーユー」

 

「それじゃぁこれで……オラァ!!」

 

 トーさんがストレージから取り出したるはデカグレネード凄い強力なプラズマグレネードである。具体的に言うと今レン達が立って居る位置は殺傷圏内である。思ってたのと違うグレネードにレンとフカ次郎は顔をひきつらせながらも笑って逃げだした。

 そうして二人が離れたのを見るやそのドでかいグレネードでヤーさんの頭を殴打した瞬間、大爆発が起きた。

 その場には弾け飛んだ二人の死体がゆっくりと人型を成し、綺麗になって【dead】を点灯させた。

 

 

 

「おいライデーンが戻ってこないぞどうしたんだ」

 

「おっまた死銃事件か?」

 

「それよりやはりレンちゃん攻めじゃないですか」

 

「うんうんピトフーイの口にでっかい物ぶち込んだな」

 

「しかし、SHINCとどっちが勝つかね……」

 

「まあ距離が離れてるから接敵は10分より先だろう。楽しみだぜ」

 

「あの男二人なんで死んだんだ?」

 

「酒場帰ってきたら聞けばいいだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 酒場に戻ってきたフルフェイス二人が尋常じゃない速度で酒場から逃走することになるまであと8分。




ピトさんが死んだ!! 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KKHCの受難

第二回SJ編は終わったのでまた好き放題投稿しようと思います!!


 ソレ、との初めての出会いはフィールドだった。みんながみんな、ああ、またか。と言った風にストレージにアイテムをしまいこみログアウトする。襲撃者の残念がる顔を想像しながら、翌日の夕方にみんなでまたログインしたとき、異変に気付いた。

 

「死んでない?」

 

 昨日ログアウトした位置から一歩も動かず、体力さえ減っていない。今までの襲撃には無いものだった。

 最初はみんな、ああ、やる気が削がれたのかな運が良かったんだな、と思っていたのだが、その襲撃? が10回を越えた辺りでイライラしだし、20回を越えたところで遂にキレた。特にシャーリー。

 これが毎回殺されていたならもっと早く堪忍袋の緒が切れていただろう、粘着で通報するなりなんなりだったが戦うこともなくログアウトしていたので、それもしにくかった。

 

「……実質熊だな」

 

「……ええ、熊よ」

 

 いつ襲いかかるかわからない熊。それがKKHCの襲撃者? に対する共通認識となった。

 

「「「「「「狩らなきゃ…………」」」」」」

 

 ならばどうするか、KKHCは悩んだ。

 今までモブ狩りしかしてきたことがなく、対人戦の経験がない。まずは攻略サイトなどで対人戦のコツ、バレットラインの避けかたを調べるうちに自分達の練習のため行っていたシステムアシスト無し撃ちが、非常に有効であると理解した。さらに仲間内で模擬戦をし、連携を高めていく。

 狩りの練習とは違うが、やはりゲーム、遊びは楽しいものだ。特にシャーリーはセンスが良く、立ち回りの研究などを買って出て、ぐんぐんと実力を伸ばしていく。スコードロン一丸となって狩りの準備を整え、決戦の日を日曜日夜22時と定めた。

 熊はこの時間帯によく襲って? くる。それを万全の構えで迎え撃つ作戦である。

 いつも通り、いつも通りと意識しつつ、狩りの帰りを装って熊が罠にかかるのを待つ。

 

「来た……」

 

 誰かがポツリ、と呟いた。

 距離にして2000m、平坦な地形だからこそ発見できた、いや発見できるようKKHCが誘い込んだのだ。先の小高くなった丘の上に急いで上ると双眼鏡を取り出し姿を確認する。

 金髪に黒い防弾服を着た男性アバターだった。AGI型と思われるすごい勢いで走っていた。背には何か背負っている。

 シャーリーがまず伏せて射撃体勢をとった。その脇でスポッターを覗くのはリーダーである。彼はこの日のためにスポッターとしての練習もしてきた。機材も目標距離を表示してくれる優れものだ。

 シャーリーの構える銃も普段と違う。

 この日のために愛銃をリアルでは必要ない長距離射撃用の.338ラプア・マグナム弾バージョンに改造し射撃練習をしてきたのだ。

 すべてはあの迷惑熊を駆除するためである。

 

「私が1200から攻撃を始めるから、みんなは800から射撃開始」

 

「了解!」

 

 指示をしながらもシャーリーは楽観視していた。あれだけ練習したんだ、800にいたる前、初撃で決着がつくと。そうしたらゲーム内でもリアルでもいい、飲み会がしたいなどとシャーリーは思った。

 

「1200までもうすぐ………………いまっ!」

 

 リーダーの声と共に引き金を引いた。

 空気を引き裂く炸裂音を置き去りに凶悪な速度で発射された弾が獲物の腹を抉る姿を、シャーリーは見ることができなかった。

 

「え?」

 

「は?」

 

 シャーリーとリーダーはすっとんきょうな声を出した。

 絶対に命中すると思っていた、予測線すらない必殺の一撃。それを避けられた。

 何かの間違いと、偶然と不安を拭うようにすぐさまリロードし、二射目を放つも同じように避けられる。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「おいおいおい」

 

 背筋が凍るとはこの事だった。発砲と同時に避けるとは距離があるとはいえどういう神経をしているんだと。

 

「もう800だ! みんな撃ち始めろ!」

 

 リーダーの号令でKKHCが射撃を開始する。それを獲物はなんだその動きと言わんばかりの変則機動で回避していく。

 

「なんだあれ!? なんだあれ!? ……な、なんだよあれ!?」

 

 熊が背中に背負っていた物を構えた。それは狙撃銃であった。しかしでかい。シャーリーの銃も長距離狙撃用の改造で大型化しているが遥かにでかい。なに撃つ気だと思ったKKHCの面々だったが、どう考えても自分達だと必死で射撃する。

 緊張で照準がぶれる、撃った場所にもう熊はいない。なぜ当たらないのかが意味がわからない。

 100mを切ったところで遂に熊が牙を剥いた。止まることなく放たれた、シャーリーの物より強力な発砲音と共にリーダーがまっぷたつになり光に霧散する。

 

 

「みんな動いて! 止まったらダメ!」

 

 シャーリーの指示でとっさに動いた仲間の一人の腕を熊の射撃がかすり弾き飛ばす。

 熊が撃ったあとの移動経路の先にシャーリーがいた。至近距離であの長い銃は撃てまいと剣鉈を抜き切りかかる。

 

「止まったら私ごと撃って!!」

 

 緊張する、恐ろしい、でも、楽しい。そんな感覚がKKHCに芽生えていた。

 シャーリーが剣鉈を振りかぶり突撃する。当たれば御の字、当たらなくとも、少なくとも足止めをできれば確実に仲間がやってくれる。

 その期待は剣鉈が半ばから切り飛ばされることで吹き飛んだ。断面は赤熱化し、煙を出している。

 その先には例の熊。銃の先端からビーム熊であった。

 

 

「次は倒す……!」

 

 

 決意新たに笑みを浮かべるシャーリーもリーダーと同じ真っ二つになることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後グロッケンでリスポンしていつもの集合場所で反省会をしようと待っていると、ランダムドロップを全部抱えて最後の一人が帰ってきた。

 また買い直すのは面倒だからありがたい、どうやって逃げ切ったんだと、言おうとして全員がフリーズした。

 

「ドーモ、皆さん。凸侍です。とりあえずこのグループチャット入りません?」

 

「アイエッ」

 

 

 KKHC全員が“全GGO凸砂の会”に入ることとなった。選択権は正直なかった。

 ちなみに狩猟シーズンの成果がみんなかなり良くなっていた。全員が口々にアレよりマシと死んだ目で呟いたことを見なかったことにすれば良いことなのだろう。




たくさんのご感想評価誠にありがとうございます。ライデーンに対する反応も多く彼も本望でしょう(目そらし


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二回SJ番外:クレイジーレンちゃん

第二回SJ本編は終わったので番外編です。

10万UAありがとうございます!

誤字修正しました!!(ナイフで刺されながら)誤字報告ありがとうございます!


「カーネルさんの声が聞こえました……!!」

 

「……今日は終わりにするか」

 

「そうだな根の詰め過ぎは良くないもんな。おつかれレンちゃん」

 

「おいおいレンよぉ、大丈夫かー?」

 

「まって!?」

 

 二週間でレンを、ピトフーイとエム相手に真っ向勝負で殺せる領域に持っていく。大量のモンスターを狩り、道行くプレイヤー達を片っ端からぶち殺し、歩法と身のこなしの反復練習の後に闇風がキャリコ片手に追い掛け回してくるのを必死で逃げ回る多忙な日々を送って第二回SJまで一週間を切ったあたりで、レンがそんなことを言い出した。

 レンがカーネルさんと呼んだのは、左側のマガジンケースを潰して装着されたぶっとい棍棒みたいな拳銃である。5kgありピーちゃんことP90より普通に重い。あと馬鹿みたいに反動がある。

 反動の強さはキャラクターの体格、STR、VIT、DEXあたりの影響を受けるのだが、レンはどれも低めなので、かなり強力な反動が発生する。特に体格の影響がかなり大きく、両手で構えて撃っても両手が真上に跳ねあがるほどだ。フカ次郎が撃つとそうでもない反動に見えるが、ゲーム的に言えば能力値で反動を抑えている扱いである。

 それはさておき、連日ログインして疲れが溜まっているのだろう、と終わりにしようとしている凸侍と闇風とフカ次郎にレンが抗議する。

 というかカーネルさんって誰だ。その腰の銃はサンダーだろと三人は思っていた。

 

「聞こえたんです、カーネルさんの声が! ピーちゃんと一緒です!」

 

 三人の中で白い部分を全部ピンクに染められた憐れな姿のカーネル・サン●ースの姿が浮かんで、何とも言えない微妙な表情をした。

 

「ピトさんをぶっころすには! いろいろできないとダメだと思うんです! その天啓をカーネルさんが呟いてくれたんです!」

 

「おおぅ、クレイジーレン……」

 

 東京のストレスと色々あり過ぎで可笑しくなったのだろうか、神崎エルザのライブチケットもゲットできなかったし東京に行ったときは全力で慰めてやらねばと思うフカ次郎だった。

 

「とりあえず、腰につけたまま撃てる留め具買ってきます」

 

「お、おう行ってらっしゃいレンちゃん」

 

「……その間フカ次郎は目隠しで指示された場所にグレネードを落とす練習だ」

 

「……りょうかーい」

 

 フカ次郎は練習を懸命にこなすことで変なことを言っていた親友の姿を忘れようとした。

 

 

 

 

「……遅いな」

 

「ああ遅いな」

 

「今なら見ないでレンにグレネード落とせる気がしてきたよ」

 

 グレネードの爆発でぐちゃぐちゃになった試射場が再生されていく。地形リセットが利くのは便利だ、特にフカ次郎のグレポン最大12連撃を考えると。

 

「戻ってきたら銃の接近戦での奪取か回避の仕方教えようと思ってんだけどなぁ」

 

「どういう技術よそれ凸さん。というかお二人とも何者?」

 

 お前は何を言っているんだと言わんばかりのフカ次郎だが、凸侍からすると大真面目である。前持ってた銃を接近戦で上に弾き飛ばされて以来対策に練習していた。ついでに大学の薙刀部に入り薙刀のやり方を思い出し銃剣に応用したりしてる。講義はサボるがソレはサボってない。

 

「なになに、しがない一般GGOプレイヤーですよフカちゃん。レンちゃんの可愛らしさにほだされただけのね」

 

「えぇー、じゃあ私の可愛さに免じてステータス見せてよぉ、レンにどうしたのかメッセ送るから返信くるまでの暇つぶしー」

 

「まあ隠すもんじゃないしな、情報屋に売っちゃだめだぞ☆」

 

「……欲しがる奴いないんじゃないか?」

 

「オンオンオン!? どういう意味だ闇風ぇ!」

 

 レンにメールを送ったフカ次郎が凸侍と闇風のステータスを覗かせてもらう。気軽に見せてもらっているが、断片でも情報屋に売れるレベルの代物だとフカ次郎は知らない。

 パッと見、わかることは合計ステータスがとても高い。ALOをやりこんでいるフカ次郎だが合計成長回数で結構負けている。

 

「お二人とも……成長歪過ぎませんかねぇ?」

 

 そうして、とても歪なステータス構成をしている。

 フカ次郎が思わず苦笑した。AGIが尋常じゃなく高くそれに続いてDEX、VITと続く闇風とAGIとSTRが高く、DEXも伸ばしているがVIT初期値の凸侍である。歪過ぎて変な笑いが出てくる。

 メールが返ってきた。開くと、今戻るとだけ書かれている。 

 

「すいません遅くなりました!」

 

「おかえり、なんか配置変えてきたな」

 

 帰ってきたレンの腰の装備が結構移動していた。左側に拳銃を吊った影響で減っていたマガジンポーチを右側に増設、ついでにナイフも柄が背中側を向くように配置されている。件のカーネルさんは留め具に固定されてるものの、ホルスタータイプではなく抜き身で腰につけたまま、ある程度射角の自由度を確保できるようになっていた。重さを支える為かベルトも増設されている。

 

「見ててください!」

 

 レンが左足をやや後ろにして腰につけたままのサンダーを構える。バレットラインが出て発射されるも、足で踏ん張ったことと腰で支えられているので発射時の両手が跳ねあがるような事態は無い。腰だめで撃つのもバレットサークルがあるので問題なくあてられる。

 

「「「おおー」」」

 

「カーネルさんの本領はここからですよ!」

 

 弾を込めたレンが今度は走り出した。的に狙いをつけ発砲と同時に、今までにない急速な方向転換をした。

 

「キャシャ……」

 

「フカちゃんそれ以上いけない、とはいえ大火力を発揮しつつ動きに足せるってのはイイネ」

 

「……銃の反動を利用した方向転換か、一発だけとは言え良い発想だ」

 

「えへへ、前回の試合で撃った時偶然殴っちゃったのを参考にしました」

 

 嬉しそうにするレンを見ながらフカ次郎が思う。いやその発想はおかしい、となんだここは狂人しかいないのか、どう考えても発想もおかしいがそれを使おうと思うのもおかしいだろう。AGIが高いと発想が変になるのだろうか。

 

「それの練習も踏まえて、超接近時の銃撃のいなし方だな。経験はしておいた方がいいでしょ」

 

「はい!」

 

 闇風と凸侍のAGI型ブートキャンプの結果、いろいろ吹っ切れすぎて時折ピーちゃんカーネルさんと呟きながら超反応するレンを見たフカ次郎曰く、ボーパルバニーを今なら愛でられる気がするらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピトフーイとレン、二人で岩場の上でのんびりとしていた。

 レンの魔法瓶から出した紅茶を飲みつつ、ピトフーイが楽しそうに背を伸ばした。

 

「あーやっぱりゲームは楽しいねぇ」

 

「そうそう! 命をかけるなんて馬鹿らしい!」

 

「うんうん、もうあんな馬鹿なことしないよ、レンちゃんとゲームできるだけでもう幸せの絶頂だわぁ」

 

 ピトフーイは苦笑しながらそれを肯定した。

 

「いやーそれにしてもまさかPM4が完封されるとは……あの覆面四人には結構なお金積んだんだよ? なんと全員BoB参加者」

 

 レンが首をかしげた。前にも話してもらったことを忘れている様で、ピトフーイはそれを察して説明を追加する。

 

「ほらほら、私が予選二回戦で狙撃されて死んじゃって負けた奴。バレットオブバレッツって言うんだよ」

 

「そうなんですねー、あ! そう言えば二人もそんな感じのことを言ってたかも?」

 

「あの覆面二人? いやーまさかPM4とLFTYでシークレットメンバーが6人もいて、いま思えばおかしいよね! シークレットチーム作った方が速いんじゃないかな! あっはっは!!」

 

 お腹を抱えて笑うピトフーイはもう一つ疑問を呈する。

 

「そう言えばレンちゃんめちゃくちゃ技量上がってたけど、なんかもう容赦なさ過ぎて怖いくらいだったんだけどエムの奴から話聞いた後何やってたの?」

 

「え? そんな容赦なかったかなぁ……」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 容赦が無いを否定するレンにピトフーイが固まりレンも固まる。

 

「え、ええとね、フカ次郎を誘って、それで知り合いだった二人にも協力してもらって二週間ずうううううううっと特訓してた!」

 

「レンちゃんにもあんな知り合いが居るんだなぁーお姉さんちょっと嫉妬しちゃうわぁ……ちなみにその二人の名前は?」

 

「うーん……あんまり名前出しちゃだめだよって言われてるけど、ピトさんの事情話して協力してもらったのに、名前をピトさんに言わないのは失礼だよね?」

 

「うんうん失礼! だから名前は?」

 

 特定してぶち殺しに行ってやる。愛しのレンちゃんと2週間も一緒だと? ギルティ、という狂気的な笑みだと気付かないレンは続けた。

 

「凸侍さんと闇風さん」

 

「……はい?」

 

 ピトフーイ、再びのフリーズ。

 

「え、凸侍さんと闇風さんだよ。恥ずかしがりだからSJで目立ちたくないんだって」

 

「えぇ……ちなみにレンちゃん? その二人なんだと思ってる?」

 

 ピトフーイの質問の意図が読めないレンが首をかしげながら答える。

 

「砂漠で変なPKしてた人とそのお知り合いさん?」

 

 ピトフーイは悩んだ。ちげーよ! なんかもうちげーよ! その二人を金で雇おうとしたら自分が雇った4人をセットにしてダース単位で雇えるわ!! と言うべきか悩んだ。どういう人脈をしているんだこれがラッキーガールか、とピトフーイはキャラを崩壊させるほど戦々恐々した。

 

「……レンちゃん、賞金首ランキングとか見てる? もしくは大会の映像とか」

 

 レンが首を横に振るのは予定調和であった。大会? 位の怪訝な顔をした首の振り方であった。

 その時、背後で爆発が起きた。

 

「かかったああああああぶっ殺してやるううううう!」

 

「うわっピトさん気合一杯!」

 

 鬱憤を罠に引っかかったモンスターで晴らすべく、ピトフーイはKTR-09を引っ掴むとやけくそ気味に走りだすのだった。




フォーススクワットジャムの下巻まだかなぁまだかなぁとしております。





いつもご感想本当にありがとうございます。楽しく読ませていただいております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四回BoB:凸ライザー

どうあがいてもナメプしどうあがいても笑いの神が舞い降りてくるサトライザー、徒手空拳で銃奪いながら暴れた以上の描写がなくサイコザクライザーと化す

誤字修正いたしました。ご報告ありがとうございます


 第三回目のサテライトスキャン、その際に自身の近くにサトライザーの名前を見つけたとき、凸侍は思わず凶悪な笑みを作った。凸侍のいるエリアから森林エリアまで少し距離があり、何個か光点があるが、問題は無い、と言わんばかりに走り出す。

 

「うわぁぁぁっ! 凸侍だあああああ!!」

 

 第一回と第二回予選決勝、ついでにフィールドで殺されたことで割とトラウマになっていたダインの正気度を削り体力を全損させつつ、凸侍はサトライザーの元へと急行する。

 

「ようサトライザー! 第一回の借りを返しに来たぞ金髪被り!!」

 

 凸侍が木々を突き抜けると、今まさに一人の首の骨を折り【dead】を点灯させたサトライザーが居た。死体からSPAS12を抜き取って発砲するも、AGIの高い凸侍が木々を盾にして被弾を避ける。バックショット弾の貫通力では木々を突き破ることはできない。

 彼我の距離は50m、凸侍のサークルスイッチに惑わされることなく迫る大口径弾を回避し、大量に背負っていた銃群から一丁を引き抜く。

 それはG3ライフル。世界四大アサルトライフルに数えられる有名な銃だ。それを正確な狙いで凸侍に向けて放つ。凸侍は発砲炎の数とバレットラインの数が一致しないことからライン無し射撃が使えると想定し、ラインではなく発砲炎に合わせた回避行動をとった。21発撃ったところでサトライザーは銃を捨て、今度はサブマシンガンの金字塔、スコーピオンを抜き接近しながら弾をばら撒く。

 

「てんめまたナメプか!」

 

 武器に統一性がなく、弾を使い切ればどんどんと捨てていく、それは今まで倒した奴らからはぎ取ってきたものということだ。木々が多くAW50の全長では不利なものの、木を遮蔽に、自身の攻撃は巨木ではない限り届くという優位性も捨てがたい。

 そこの悩みに付け入る様に、凸侍の発砲に合わせサトライザーが落したのは閃光手榴弾。とっさに左手で目を覆い視野を潰されるのは回避した凸侍。

 サトライザーは徒手格闘を仕掛けてきた。銃身を掴まれそうになった瞬間、サトライザーの左手が宙を舞った。

 横に振られたAW50の銃身の下、まるでレーザーポインタのように備えられた筒から赤い刀身が形成されている。コガラスマルG9と呼ばれる銃剣だとは、知る者はほぼいないだろう。

 サトライザーが後ろに下がりながら右手で銃を抜いた。クリス・ヴェクターと呼ばれるサブマシンガンで、非常に反動制御が容易という触れ込みの銃だ。片手でなお安定したフルオート射撃を行い、凸侍の追撃を.45ACP弾の高いストッピングパワーで押しとどめる。防弾服を着ている故にダメージはほぼ通らないのは幸いである。9mmパラベラムだとストッピングパワーは低いものの防弾貫通性が高いと設定されているためだ。

 

「しゃおら薙刀部入部舐めんな!」

 

「ちっまたお前か」

 

「おっ喋れんのかよ! 死ね!」

 

 少し不快そうな顔をしてからヴェクターから手を離す。スリングを掛けたままで捨てないということはアレはサトライザーの持ち物なのだろう。

 左手の欠損が入っている内に決着をつけたいが、巧みな動きは闇風とはまた違う回避力の高さを発揮し、必殺の一撃が当たることがない。逆にサトライザーも凸侍に対して片腕を失い攻めあぐねいている様で、湯水のごとく今まで貯めた銃器を放出しながら腕が回復するまでの時間稼ぎとする。

 漁夫の利を狙ったプレイヤーの首を蹴りの一撃でへし折り、破壊不能オブジェクトとして凸侍の.50BMGからの遮蔽として利用することも忘れない。結局、サトライザーの腕の欠損が回復してなお、四回目のサテライトスキャンの時間が過ぎてなお決着することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 狙いを定める。1ドットまで縮んだバレットサークルに誤りなく、.50BMGが対象の体力を全損させ【dead】を点灯させた。それを確認しつつ足早にその場から去るのは水色の髪の狙撃手、冥界の女神シノンだ。

 3回目のサテライトスキャン時点で三人を射殺し、今日も絶好調である。周囲を警戒しながら4回目のサテライトスキャンを確認する。

 

「おやあ?」

 

 冥界の女神が悪い顔をした。シノンから北西エリアで、凸侍とサトライザーという名前が重なっている。

 残る光点はシノン、闇風、銃士X、凸侍、サトライザーだけだ。そうして凸侍の性格からして結託はあり得ない。どうせ変なこと考えて銃剣で刺し殺そうとでもしてるのだろう。

 闇風と銃士Xも距離が近くにらみ合いになると考えると、シノンは完全フリーの状況というわけだ。

 どうするか――――漁夫の利である。

 誰が頭おかしい動きをするAGI型二人も対応しなければいけないのだ。狙撃手としてはごめん被る。

 確実に凸侍を潰し、あわよくば銃士Xが闇風を潰し狙撃合戦に持ち込めれば最近練習しているライン無し射撃の出番である。

 サトライザーとか言う聞いたことない奴がどこまで持つかわからないシノンは急いで狙撃位置へ移動を開始した。

 たどり着いて双眼鏡越しに見えた光景はシノンの正気を削るような状況であった。

 まさかの徒手空拳である。腰にサブマシンガンを差しているものの、ソレ以外はなにもない。張り付けたような笑みが不気味に感じる。

 対する凸侍ははいい笑顔だ。とても楽しそうである。全長が光剣の刀身と合わせ2m近いAW50を巧みに振り、突きの代わりと言わんばかりに発砲する。当たれば即死のそれをサトライザーは避け、背後の木の幹が破裂する。凸侍も組み付かれそうになると半歩体を後ろにずらしサトライザーに掴ませない。

 とても現代戦ではない。戦国時代か何かに無理やり銃を突っ込んだみたいな状況だ。

 

「……なにやってるのよあいつら」

 

 なんだこのゲームの金髪には変なのしか居ないのかと今更ながら思った。お気づきだろう、変なのしか居ない。

 バカらしくなってきたシノンは二枚抜きを狙い、ヘカートⅡを構える。狙うは二人の体が重なった瞬間、ヘカートⅡの威力なら易々と二人とも貫通して終わりである。

 凸侍とサトライザーが近づいた瞬間、引き金をひいた。

 その瞬間、サトライザーが身を引き凸侍だけが突出する。サブマシンガンをサトライザーが抜き放ち、凸侍の前進を妨害する。そこへジャスト、シノンの狙撃が直撃し、HPの低い凸侍に【dead】が点灯した。

 

「なっ」

 

 狙撃を読まれていた? すぐさま追撃にライン無し射撃を敢行。狙い過たずサトライザーに突き刺さるはずだったが、サトライザーはそれを容易く避けた。

 シノンは思わずその背後に死銃を幻視した。いや、アレに“死銃程度”では役不足だ。

 どす黒く底抜けの恐ろしいなにかがあのアバターに憑いている。それが何故か凸侍の死体を引っ張って隠れた。

 茂みの中からサトライザーが飛び出してくる、闇風や凸侍程の速度がないにもかかわらずシノンのライン無し狙撃を容易く避ける。

 その手には、とんでもない物が握られていた。思わず冥界の女神の顔が引き攣った。

 サトライザーの手にあるソレ、AW50凸砂カスタム銃剣仕様を手に持っていた。光剣の起動スイッチの位置が良くわかってないのかグリップを握りこむたびに銃口下の光剣から刀身がびよんびよん形成されたり消えたりしている。

 どす黒い何かという印象は消えたが、なんかこう別のモノが浮かんできた。キリトが凸侍の足を掴んで振り回しながら凸侍が狙撃してくる構図である。

 シノンが知る限り、凸侍はGGO内で格闘戦のできる珍しい人物である。

 以前見た集団戦の大会などでナイフを使ったり光剣を使う人物もいたが、基本そういうのは希少な存在だ。シノン自身、サブアームにグロック17かMP7を携帯し、ナイフや光剣を持つことはほぼない。

ファンタジーで剣で戦うタイプのVRMMOからコンバートしてきた人物や、キリトみたいな存在がバグみたいなのには及ばないとはいえ、その技術はGGO内随一である。その随一の奴を倒せる奴が.50BMGの対物ライフルを振り回している。なんかもうギャグか何かか。

 そう呆気にとられていると、すごい手軽にサトライザーが発砲した。その構えは熟練者と言った風情だった。大威力の.50BMGは狙いを逸らし、シノン手前の地面に着弾。木の根を砕き木片を舞いあがらせる。

 シノンの手前に着弾したのは、装着されたスコープのゼロインが0mに設定されていたからだ。そしてシノンが認識しているにもかかわらず、ラインが発生しない。つまりシノンと同じ技術を取得しているわけだ。つまるところ変態である。

 

「やっば!!」

 

 あんな変なのの上に変な銃を持ち変態が変態で変態と化したサトライザーの相手などやってられないとばかりに体を起こす。

 木を遮蔽にして一時撤退を決め込むシノンの背後の大木に狙撃が着弾し爆発が起きた。どうやら凸侍の弾薬まで拝借している様である。大威力とはいえ大木は貫けなかったらしく、そのあとの爆発には目も向けず逃走する。

 そうして二度の爆発で抉られた大木の穴から見える、シノンの背をサトライザーの狙撃が襲い、大爆発を起こし【dead】を点灯させた。

 第四回BoBにして凸侍が望まぬ形で凸砂最強説が浮上することになるのだった。ちなみに凸侍は四位だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに凸砂最強説はロマンが過ぎたため三日で廃れることとなった。




なんかサトライザーさん描写見ると強すぎてギャグ

「徒手空拳でだとぉ!?」(強制ログアウト)

「ら、ライデーン!!」

「徒手空拳と凸侍だとぉ!?」(強制ログアウト)

「ら、ライデーン!!」

「徒手空拳野郎が凸砂だとぉ!!?」(強制ログアウトして帰ってこない)

「ら、ライデーーーーーーーン!!」




たくさんのご感想、評価ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二回SJ番外:MMTKMKHC

メメント北のモリ国ハンターズクラブ
スタイリッシュゥに銃撃戦が書けない……技量が欲しい

そして評価が一定数を超えると色が変わって次のが始まると初めて知った……たくさんのご評価ありがとうございます!

そして誤字を修正
誤字報告ありがとうございます


「……怪しいな」

 

 スウェーデン軍の迷彩の上からウッドランド迷彩のポンチョを被ったチーム、MMTMのリーダー、デヴィットが呟いた。

 木の陰と茂みの中から見える前方には駐車場に停められたハンヴィーが3台。

 移動力の確保と一撃で全滅を避けるため3台はMMTMにとって好都合だった。ピトフーイを倒すためにもこれの確保は必須だ。

 ただ―――デヴィットの経験からしてハンヴィーがあるこの駐車場のようなランドマークは警戒せざるを得ない。

 脇の小屋から飛び出してくるか、それともすこし見上げる形になっている小高い森から撃ち降ろされるか。

 ハンヴィーに接近する際、致命的なのは森からだ。

 

「ジェイク、援護射撃、同時にラックス、スモークグレネードを投擲、残りは俺に着いてこい」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 ジェイクが体を乗りだし、制圧射撃を開始しようとした瞬間、森の先で発砲炎が煌めいた。とっさに体を捻ったジェイクの肩にダメージエフェクトが発生する。同時にデヴィットからグレネードが発射され、ジェイクは意地と言わんばかりに腕だけで機関銃をささえ、弾をばら撒く。グレネードが森の手前に着弾し爆発した。連鎖的に爆発が発生し、そこにトラップがあったことを示していた。

 

「ちっ行くぞ!!」

 

 投擲されたスモークグレネードに紛れ、森に向け回避行動をとりつつ前進を開始する。その間、視認できない銃撃が顔の横を掠めた。

 

「……ライン無し射撃だ! 訓練通りの動きで行け!」

 

 前回SJで受けたライン無し射撃対策の不規則な回避運動を全員が取る。恐れることなく回避動作をしながら前進していく。

 足や手に銃撃が掠ったりもしたが、STR-VIT型の面々故に頭に当たらない限り、対物ライフルでも持ち出されなければ即死することは無い。

 そう、対物ライフル級の破壊力が無ければ。

 少しの間、射撃に間が開いた。これ幸いにと距離を詰め、煙の中から飛び出すと木の陰から飛び出してきた頭を撃ち抜き【dead】を点灯させる。

 直後に発砲、ケンタの足がボン、という小規模爆発と共に弾け飛んだ。デヴィットは驚愕した。撃たれたケンタも驚愕の表情のまま無い足でたたらを踏むこともできず倒れ、さらに爆発によって頭全体にダメージエフェクトを煌めかせながら【dead】が輝く。

 

「なん……だと……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ」

 

「さすがはここまで生き残った奴らだ!!」

 

「ごめん、ラプアマグナムだったら倒してたのに」

 

「良いんだ、むしろスマン」

 

 シャーリーがそう謝罪するが、だれも責めはしない。狩りのシーズン、全員の成果がうなぎ上りであったのに、シャーリーだけ伸び悩んだ。思い当たる原因は簡単だ。銃弾を変更したせいで変な感覚を混ぜ込ませてしまったせいである。故に、元の7.26mm弾仕様に戻して練習しなおしていた。

 ちなみにスマンの意味は違う。

 顔を出した瞬間の狙撃を身を捻って肩の被弾で済ませられた。飛来したグレネードで接近時対策のワイヤートラップ類がほぼ全滅した可能性がある。接近される前に全滅させる必要があった。予想ではハンヴィーに飛びついていくかと思っていたが、予想が外れてしまった。

 しかし相手もスモークグレネードで煙を発生させ、KKHCの視界を妨害してくる。

 

「全員、一斉射だ!」

 

 煙で見えづらいとは言っても、完全に見えないわけではない以上狙うことはできる。そしてそれなら一斉に撃つ方が命中確率が高い、ライン無し射撃による一斉射は命中こそあるものの敵の高いHPを貫くことができなかった。さらにライン無し射撃を見た途端動きが変わり、さらに当てづらくなる。

 

「奥の手を使いましょう」

 

「PM4用に温存しておきたいが……」

 

「……やむを得ないな、まずはこいつらを倒さないと俺たちがやられる」

 

「酢飯弾を使う!!」

 

「その名前やめない!!?」

 

 製作者のシャーリーは命名者をあとで殺すと再び決意した。流石に背後から接射で撃ち抜けば死ぬだろう。

 KKHCの面々が新たなマガジンを取り出して装着する。入っている弾頭はシャーリー製作の7.62mm弾。全員が撃つためシャーリーが延々と弾頭を造り続ける作業をする羽目になった以外は最高の逸品である。ちなみにスマンと言った原因である。

 撃とうと頭を出したリーダーが逆に撃ち抜かれる。

 

「リーダーが死んだァ!」

 

「この人でなし!!」

 

「なんか毎回リーダー最初に死んでない!!?」

 

 そう言いながらもライン無し狙撃を再開。一発が敵の足に掠り、足を切り飛ばした。即座にメンバーが追撃をおこなって【dead】を点灯させる。これこそライン無し射撃でも相手を殺せる弾、酢飯弾である。敵に与えるダメージ量は対物ライフルにも匹敵し、四肢に当たった際のインパクトダメージは低いものの、結構な確率で欠損ペナルティを与えることができる。

 

「偽ライン!」

 

 シャーリーの号令で1人が指に手をかけ、視界にバレットサークルを発生させながら敵を狙う。狙われたのはムキムキのサモン。ライン無し射撃対策の挙動を放棄して咄嗟に回避をしたところをシャーリーの狙撃が炸裂し胴体がダメージエフェクトで真っ赤になる。

 本来胴体を撃ち抜くのは肉の味を落としたり、死にゆく命を逃してしまうなどの問題があるが、人間に食べる部位は無いのでノー問題である。実質撃つことが食べることなので美味しい。とひたすら弾頭製作をしていたシャーリーは悟りを開いていた。

 同じく偽ラインで動きを乱したのラックスの胴体を爆発が蹂躙し【dead】を出現させる

 相手もただではすまさず、偽ラインを出していた一人が撃ち抜かれる。

 そこへ、前進してくる残り2名の後ろから大量のラインが発生した。回復剤を打ち込んだジェイクが支援射撃を開始したのだ。

 毎分900発のこちらの狙撃銃と同じ7.62mmがまき散らされ、木の陰に隠れざるを得ない。

 

「クッソ! 俺たちが隙を作る! シャーリーは逃げて最期のチームを倒せ!」

 

 ラインが途切れた瞬間木の陰から銃を構え弾を放つ。三人同時の攻撃はジェイクを掠めただけなものの、炸裂のダメージが3つ重なり、最初の回復しきらないダメージも合わせ体力を全損させた。

 しかし目の前に色黒ボルドが既に迫っていた。どれもボルトアクションライフル故にリロードが間に合わずぶん殴ってでも応戦しようとするが、アサルトライフルの連射を前に次々と【dead】を点灯させていく。

 

「う……ううおおお!!」

 

 視界端の仲間たちの体力が減っていくのを見たシャーリーは足を止めた。咆哮をあげながら振り返り銃を構え、三人を殺した下手人であるボルドを撃ち抜かんとした。

 間違いなく、絶対に当たる距離で放たれた弾が外れた。見れば、デヴィットがボルドにタックルするようにして直撃を回避させていた。ストレートプルボルトですぐさまリロードを行うが、それより先、デヴィットの手から放たれた5.56弾がシャーリーの胴を何度も穿ち、体力が全損する。

 

「あーもう……戦略失敗しちゃったけど……楽しかった」

 

 戻ったら失敗を見返そう、もっと連携を練習しよう。そう言いながら視界が暗くなり、シャーリーを最後にKKHCは全滅するのだった。

 

 

 

「おいおい、これ以上減っちまったら困るだろうが」

 

「いや、スイマセン」

 

 ボルドと笑いあいながら森から出てくる。ハンヴィーを調べると、ドアを半分まで開けたところで作動するワイヤートラップが仕掛けられていた。アレを無視してハンヴィーに駆けこんでいたらおそらく引っかかっていただろう。強敵だったが、勝ったのはMMTMだ。

 

「さあ行くぞ! 狙うはPM4か? SHINCか? それともLFTYか? 次で弾薬全部使い切る勢いで行ってやろうぜ!」

 

 笑顔で気合を入れ助手席に乗り込むデヴィットと二人は怖い物は無いと言ったように笑いながらエンジンをかける。

 そうして南へ向けて走り出したハンヴィーの背後。それを狙う巨大な槍のような“対戦車ライフル”デグチャレフPTRD1941の射撃が一閃、ハンヴィーの装甲を後部から串刺しにするようにぶち抜き爆発炎上させた。

 

「悪いねMMTM、漁夫の利っていうものでございますわよ」

 

 ストレージにデグチャレフを仕舞いなおしたSHINCは残る3チームの内1つ、丘陵地帯に居るZEMALに向け進行するため、罠を外すとトーマの運転するハンヴィーに乗って移動を開始した。

 




『炸裂弾つくってみたー』

『おおー』

『弾頭製作勢増えたね、狙撃手の会でも』

『凸侍さんがチャットグループ名を全GGO凸砂の会に変更しました』

『シャーリーが作ったんなら酢飯弾だな』

『えっ』

『語感よすぎじゃないですかね』

『ちょっと』

『酢飯弾いいですね』

『後で殺す』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

凸侍被害者の会の襲撃(誤解)

アリシゼーション記念
サトライザーが出るとギャグ

なんかスイマセン

オーディナルスケールを忘れてたので修正しました


「俺なんか悪いことしたっけなー!! なんか悪いことしたっけな―!! 身に覚えしかねえなぁ誰だあああああ!!」

 

 グロッケンから結構な距離がある遺跡地帯。このあたりは過去の秘密軍事施設が地殻変動で地上に露出し、そこを木々が生い茂り始めたという設定のエリアである。しばらく西に行くと森林地帯となり、大きめの河を抜けると人工衛星の墜落地点というグロッケンに転移できる安全地帯がある。

 このあたりはキモイ生物が結構強く、木々が生い茂っているせいで射線も通りにくいわ、湿気が多いせいで光学兵器も威力減衰が早いなど悪いことづくめのエリアだが、アタックと称してスコードロンが探索にやってくることも多い。

 遺跡という名の軍事基地からは銃火器の製造データやら素材やらが落ちているし、ダンジョンのボスを倒せば結構いい装備が出ることも多いからだ。

 最近はPKが流行っているからこの辺りで人が減ってると聞いて、せっかくだし覗きに行くかとやってきたのが間違いだったか、むしろ凸侍がきたからあんな全力で襲いかかってくるのか。なんか殺意高すぎてヤバかった。

 

「しっかしあいつ等何人いるんだ、あきらめてくれないっかなぁー!」

 

 後ろから追いかけてくるので光剣で木を切り倒し進路妨害しつつ、一発ぶっ放す。木を易々と貫通したが障害物に当たった影響で進路がズレ、追跡者には命中しなかった。

 お返しと言わんばかりにアサルトライフルをまき散らしてくるのでそのまま木を蹴って立体的に走り回りながら逃げ惑う。

 普段の経験から言って、ここまでやる前にいつも諦められるのだが、というか速力のごり押しで逃げられるのだが、進行方向を完全に把握したみたいに回り込んでくる。

 

「ん? スモークグレネード?」

 

 進行方向からスモークグレネードの煙が流れてきたため進路を変更する。さすがに煙の中でこの木の密度の中を全力疾走する自信は無い。

 

「……これ誘導されてね?」

 

 木々が切れて少し開けた空間に出る。前方に二人、手に持つアサルトライフル下部、放物線のバレットラインが発生し、グレネードランチャーからポンと小気味良い音でグレネードが発射された。

 

「まじか!!」

 

 今から止まれば逆に爆発の餌食だ。逆に身を屈めトップスピードに乗る。二人がアサルトライフルを連射し、バレットラインが先を塞ぐ。地面を思いっきり蹴り、そのままスライディングで地面を滑り、グレネードとバレットラインの下を抜ける。背後の爆発をそのままに、滑ったまま一発撃ち、相手のマントを爆ぜさせ片腕を切り飛ばした。ついでに持ってた銃も.50BMGの威力で破損しポリゴンに帰った。

 そのまま驚異的にキモイ速度で横にローリングしバレットラインを躱しそのまま立ち上がって逃走を再開する。

 

「うひょー! 死ぬかと思った!! もう勘弁してくれな!!」

 

 これでも闇風の顔写真に落書きしてグロッケンにばら撒いた時の鬼の形相で追いかけてくる闇風よりはマシである。サングラスの奥が赤く輝いてるように見えるレベルだった。

 しかししつこさはその闇風レベルらしく、すでに5人くらい欠損か爆散させているのにあきらめる気配がない。突然プラズマグレネードが降ってきたりもするから油断でき無さ過ぎる。安全地帯に向かうのを妨害されているからこのままだと集中力が切れてそのうち負けるか、相手が全滅するか、だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボス、なんか一人に対してめっちゃ執拗じゃありません? というかあの動き相手じゃ訓練にならないんじゃ」

 

「フ……黙っていろ」

 

「アッハイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 また15分ほど逃げ回りながら、グレネードの爆発や襲撃で進路を変え続けた。

 結局森の中に突っ込んでしまいどうするんだという感じである。追いかけてくる奴も徐々に速度に慣れてきたのか、結構危ういタイミングで回避することもある。というか予算どうなってるんだ。と凸侍は言いたい。

 途中飛んできたプラズマグレネード、あれグレネードランチャー用のクッソ高い弾頭じゃなかったか。どれだけ恨まれてるんだ俺、と凸侍は思った。

 PKされた時、PKした奴の特定は難しいのだが、スレッドなどだと手法が分かりやすすぎて凸侍だと速攻でばれる。ちなみに特定スレッドではBoB上位者にPKされた時は自然災害扱いされる。

 前方になんか居た。何かを探しているようだがそれどころではない。

 

「だ……だれかしらんけどすまん―――!!」

 

「えっ何!? 凸侍!?」

 

 ドップラー効果を残しプレイヤー、シノンの脇を高速で抜けて行った凸侍にシノンが呆気にとられていると、後ろから銃撃で襲われた。完全な擦り付けである。凸侍、ぐう畜である。

 そのままシノンを置いて走っていく様はモンスタートレインならぬピーケートレイン。すこし広がった広場を抜け段差を超え、一気に安全地帯に向けて走る。

 と、脳裏にあの銃、シノンでは? という疑問が凸侍に浮かんだ。水色の髪にヘカートⅡ、シノン以外いないだろう。

 

「しまった、凸砂の卵を置いていくのはサムラーイとして駄目だろ!」

 

 大切なことを思い出した凸侍は急ブレーキをかけて方向転換する。シノンが若干涙目で走ってきている。振り向きざまに腰のグロックではなくヘカートⅡをそのまま撃つ凸砂ムーブに凸侍は感動した。擦り付けて逃げようと思った自分を恥じた。

 故に、木々をぶち抜いてくる車に気が付かなかった。

 というか森の中から車が出てくると思ってなかった。

 というか、もう1時間近く追い回されていて疲れていた。

 大切なことをこの瞬間その場にいる皆が思い出した。

 

 車 は 急 に 止 ま れ な い

 

 悪路で跳ね上がった車のバンパー部分に凸侍がめり込んだ。強化ガラスでつくられたフロントガラスに叩きつけられ頭にもダメージエフェクト。そのまま屋根上のM2に引っ掛かるも既にHP全損しているのでそのままM2に防弾服をランダムドロップで引っ掛けてポリゴンとなって消えた。

 

「あっ誰か轢いた」

 

「PK野郎轢いた!? お仲間もあの世に送ってやるー!」

 

「うりゃりゃりゃー!」

 

 憐れ、防弾服は引っかかったM2の射撃でズタズタにされ耐久値を喪失させ、破損アイテムとして残るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば撥ね飛ばした奴、そいつからどんな奴か特定できないんか?」

 

「撥ね飛ばした奴?」

 

「そうそう、ランダムドロップでこれ落っことして行ったんだけど」

 

 リズがポンと出したのは耐久値を全損した防弾プレートだ。シノンにはすごく、見覚えがある。

 

「……そのアイテムの持ち主知ってる」

 

「なにぃ!?」

 

「ほんとぉ!!?」

 

「アッハイ俺のです」

 

「「「んんんんんんん!!?」」」

 

 そこにはシノンにグループチャットで呼ばれ傷心のままやってきた上半身裸のインパクト抜群の凸侍が居るのだった。

 

 2か月ぶりくらいに会ったがクラインと仲良くなった。

 

 

 




アリシゼーション1話を見るとGGOのバレットラインってかなり避けやすいのではと変な錯覚を起こす


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勝ち組さんいらっしゃい! 信号機編!

風邪で死んでいましたが元気です。この季節しつこい風邪が流行っているので皆様もお気を付けください。

誤字報告ありがとうございます!


 これはゲームであって遊びである。

 遊びだからこそ人は熱くなり、持てる力を尽くす。それが楽しいからだ。

 何で凸砂をやるかなんて、楽しかったからだ。煽り魔に煽られたり変態機動に蜂の巣にされることもあったが、逆にそいつらをぶち抜いた時の楽しさといったら無かった。これこそPvPの醍醐味だろう。

 持てる力と技術を使った、誰も死なない全身全霊の殺し合い。死ぬ覚悟は必要ない。それこそゲームであって遊びの特権だ、ただ負けて死んでドロップ品をバザーに売り払われ、泣きそうになりながら愛銃を探し回る羽目になる覚悟は要る。

 高度な情報戦に踊らされるのだってある種の祭りであるし、踊らせながら裏でほくそ笑むなんてことができればとても楽しいだろう。なんといってもゲームだ。人が死ぬことは無い。だれもがそう思っていた。

 

 

 

 

 もう秋を過ぎ、現実世界は冬へ一歩一歩を踏み出している。しかし仮想現実世界は逆に熱を帯びていた。特にVRMMORPG、もしくはFPSであるガンゲイル・オンラインの主要都市、グロッケンは荒廃した風景と世界観とは裏腹に酒場には多くの人が集まり、生放送の中継を雑談を交えながら今か今かと待っていた。

 なんと先日のGGO内イベント、バレットオブバレッツの上位陣が再現アバターで生出演するというのである。

 放送時間になると、空中や柱などに設置された画面が切り替わり、MMOストリームのオープニングが流れだす。待ってましたと言わんばかりに荒くれ者どものアバターの皆様が集まってくる。

 

「はーいみなさんこんばんは! 本日のMMOストリーム、勝ち組さんいらっしゃいのコーナーは、GGO特集! そして本日のゲストは、先日行われた第二回BoB一位から三位までのこちらの方々!」

 

 司会の女性アバターの横に置かれた三つの椅子一つ、最も司会に遠い位置にポリゴンが集結し青いロングヘアにサングラス、白い防弾服を着たイケメンアバターが現れる。

 

「正確無比な射撃の貴公子! ゼクシードさん!」

 

「こんばんは、本日はどうぞよろしくお願いします」

 

 ニヒルに笑みを浮かべ、ゼクシードが恭しくカメラ側に礼をする。背景に流れるコメントが一気に増え始めた。

 

「狙撃銃持ったヤベー奴! 凸侍さん!」

 

「おいちょっと待ってなにその二つ名聞いてないんだけど」

 

 自分の二つ名に困惑を示す凸侍を無視して司会は席から立ち上がる。

 

「そして! 本日のメインゲスト! 第二回BoB優勝者、ランガンの鬼!! 闇風さんです!」

 

「……よろしくお願いします」

 

 司会の隣、画面中央に堂々と現れたのは、赤い鶏冠のような髪をした闇風だ。上位三人がそろい踏みとなると、背景コメントが爆発し濁流のように流れていく。中でも多いコメントは信号機であった。なるほど、左からゼクシード、凸侍、闇風で丁度髪の毛の色が青黄赤でまさしく信号機だった。司会の女の子は補助信号か何かか。

 それぞれが椅子に着席していく。ゼクシードは足を組み、凸侍は椅子の上で胡坐。闇風は股開きすぎである。全員行儀が悪い。

 

「それではゼクシードさんから、今のMMOストリームを見ているGGOの皆様に何か一言を!」

 

 一位のコメントは最後に取っておくものなのでまずは三位のゼクシードからである。といってもこの三人の中で一番口が上手いのはゼクシードだ。闇風は寡黙で、凸侍は凸砂馬鹿である。

 

「まず、GGOの一部の廃人の方々に、ご愁傷様とだけ」

 

 ひどく嫌らしい、嘲るような口ぶりと仕草でゼクシードは口を開いた。

 

「その心は?」

 

「情報に踊らされて8ヶ月の間AGIばかり上げていた方々への弔辞ですよ」

 

 それに凸侍と闇風がピクリと眉を顰めた。二人ともAGIは上げているステ振りである。

 

「AGI万能論なんてありもしない幻想を追い求めて崖から転落した憐れな方々へのね」

 

「えっ万能では?」

 

「……いや万能だろ」

 

「ええい話の腰を折ろうとするなそこの二人! コホン、AGIは確かに重要なステータスです、速射と回避が突出していれば強者たりえた! しかしそれは過去の話です! これからの強い武器はどんどんと要求STRは上がっていくんですよ! AGI型はもはや強者たりえない!」

 

「……でもねえ、ゼクシードさん……三位じゃないですか」

 

 演説に熱を出し始めたゼクシードに現実の秋風よりなお寒い闇風の一言が吹きすさんだ。南極に放り込まれたカップメンが如くゼクシードが固まった。そしてそれを中継でも、GGO内酒場でも見ていた全員が思った。おっそうだな、と。

 

「つまりAGI、STR偏重型の凸砂が最強と言うことだな!」

 

 凸侍がドヤ顔をするが、それ以外の全員が末期患者に余命宣告する医者の如く力なく首を振った。

 

「……いや無い」

 

「君は黙っていてくれないかな」

 

 凸侍が怒って立ち上がった。闇風もゼクシードも自前の戦闘服を着てきているのに凸侍だけなぜかショップで安く売っている重量ほぼゼロの皮のスーツだ。ただこれ、BoB本戦中の外見をちゃんと反映しているのである。

 

「ゼクシードお前第一回前に人のボルトアクションの銃をAGI型には当たらないクソ武器呼ばわりした恨み忘れてないからな青タコォ!」

 

「うるさい! だいたいなんだあの銃は!! あれはああ使う武器じゃないでしょうが! 凸侍さんこそ全国の銃マニアに謝った方がいいんじゃないですかねえ!! というか普段の防弾装備すら着れない重量的な惨事になってるのバランス考えなさいよって話ですよ!! このアホ侍がぁ!」

 

「オンオンオン!? そのアホに真っ二つにされた癖に何言ってるんですかねえ!!」

 

「……と、二位と三位が醜い争いをしているが、やはりプレイヤースキルだな。二度三度やって同じ結果になるとは限らない」

 

「いやぁ、AGI型の闇風さんが否定したくなるのはわかりますけどぉ現実として来てるんですよ! AGI万能論の終焉がね!!」

 

「でもお前三位じゃん」

 

 ドヤ顔で凸侍が指を三本立てわざとらしく口からプフっと息を出した。小学生以下の煽りであるが、自分より順位が上の奴に言われてこれほど腹が立つ物もなかった。

 

「凸侍ッ―――!!」

 

「なんだこらやるのかゼクシードッ――!!」

 

「いやーいま最もハードなMMOだけあって、上位の方々もなかなかハードな方々ですね!」

 

 席を立ちあがって殴り合いを始めたゼクシードと凸侍だが、外見だけでステータスは反映されてないので動きは鈍い。そんななか平気で座っている闇風は王者の風格と言った感じである。司会さんはフォローを入れつつも遠い目をしている。完全に放送事故だが視聴数は鰻登りなのでなんか注意しにくい。コメントも滝のごとく流れ続けていた。

 

「はっなっせ!! と、とにかくですね!! 次のBoBでは僕が優勝ですよ! なんたって僕の持論はまちがっがっ………がっ!!?」

 

「おっ、どうした?」

 

 凸侍のデンプシーロールをガゼンパンチで弾き飛ばして追撃に蹴りを入れ、引き離して演説を再開しようとしたゼクシードが突如表情を歪めた。口が酸欠の鯉のようにパクパクと開き、両手が何かを求めるように胴に押し当て、倒れながら回線が切断される。

 

「あら、どうやら回線が切断されてしまったみたいですね、ちょっとハッスルしすぎちゃったんでしょうか?」

 

「トイレか?」

 

「凸侍さん番組中なのであまりそういう発言は」

 

「すいませんでした」

 

 ケンカする相手が居なくなったのですごすごと席に戻って胡坐をかく凸侍であった。ゼクシードが消えたものの、その後凸侍のコメントと闇風のコメントを貰い、最後に記念撮影をして番組はお開きとなった。

 しかしそれを最後にゼクシードは二度とGGOにログインしてくることはなかった。事の真相を凸侍と闇風が知るのは第三回BoBのあと、死銃事件が明るみになってからだった。

 




『信号機』『凸侍はAI社に謝るべき』『×AGI万能論○闇風最強伝説』『あたらなければどうということは無い!』『でもお前三位ジャン』『武士の一分ぶっこみ』『ゼクシード論に賛成』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今日も凸砂のするからよ、だから止まるんじゃねえぞ……

SJ最新刊たのしみい!saoの方も最新刊と聞いてじたばたしております


誤字報告ありがとうございます!


 荒涼たる大地、吹きすさぶ砂は汚染された毒を孕み一切の植物の生存を許さない。毒はそこで暮らす生物たちに蓄積され、異形へと変化させる。細菌さえほぼ残らない、毒の無菌空間にして異形生物達の蟲毒。赤い光に照らされる砂漠はそういうところである。あと正体不明のPKプレイヤーが定期的に出る恐怖の場所でもある。

 

「あったんね」

 

 爆発のような発砲音で射出された.50BMGは狙い過ち当たらない。コッキングで排出された薬莢が砂に落ちると、砂に跡だけ残しポリゴンになって消える。すでに何個も薬莢が落ちたような跡がある。

 

「あったんね!」

 

 砂漠で対物狙撃銃を伏せながら発砲しまくっている男がいた。凸侍である。狙うは500m先で優雅に砂漠浴を楽しむ蠍の上半身にムカデの胴体をくっつけたようなキモイ生物である。名前は『火星の王』。成る程赤く照らされる砂漠を火星の赤に見立てているのだろう。

 

「あたった!」

 

 そのムカデの節足の一つが.50BMGにもぎ取られ悲鳴、いや咆哮をあげた。蚊の羽音を拡声器で撒き散らしたような不快な鳴き声をあげながら、攻撃者である凸侍に狙いを定める。ムカデの名の通りの莫大な数の足が巨体を砂に埋没させることなく高速で凸侍の方に迫る。やっと当たった凸侍は小躍りである。最近DEXも上がってきたのである。

 

「ウヒョー! やっと当たった! 次当たんなかったら殴り込むところだった!」

 

 突進してくるムカデを前に凸侍は余裕綽々だ。だが正面から見れば大型トラックが突っ込んで来ているようでかなり恐い。

 小躍りする凸侍の余裕などしらないとばかりに全力疾走する火星の王が残り100mを切った辺りで、水面を切るように進んでいたムカデ胴の前方で大爆発が発生し前部の節足を吹き飛ばす。前方部の足を失ったムカデ部分は後部側に押される形でつんのめり、くねり上に持ち上がっていた蠍部分を地面に叩きつける。

 

「やっぱりモブは楽だなあ」

 

 体力の量は莫大だが火星の王は罠を警戒するという発想がない。ヘイトを一番稼いだキャラクターに全力攻撃するのみだ。初期攻略時は突進でAGI型以外が轢かれて全滅する惨事が多発したが、今は複数人での攻略法が確立されている。凸侍は一人だが。

 ボルトアクションで薬莢を排出しつつ地面に落ちた蠍部に飛び乗り頭の部分を撃ち抜く。さらに光剣を形成して蠍の尾の部分を切り落とした。

 転倒状態から復活した火星の王からの最大ヘイトを凸侍が受ける。動作として上に乗ったキャラクターに対するヘイトが最大になるように設定されており、ここでパーティプレイならAGI型が飛び降りてヘイトを維持しつつ逃げ回り、その隙に光学銃なりなんなりで倒すのが定石だ。

 が、飛び降りない。すると乗っている凸侍を振り落とそうと体をねじり回転を始めた。たま転がしの上を走るように上に乗ったままでいると、本来は回転が終わると蠍の尾からビームが撒き散らされるはずなのだが、尾はすでにない。

 故に4秒程度の空白の時間が発生する。それを待ってましたと言わんばかりに光剣を形成したまま銃を下、つまり火星の王に向け撃つ。接射と光剣が突き刺さったことによるダメージが火星の王の体力を削っていく。そのまま頭から胴に走り出した。

 50mはあるムカデ部分を走破するのに凸侍であれば4秒で十二分だ。

 対物弾の衝撃を高STRで抑え光剣を刺したまま頭から尾までを切断する。尾に到達する頃にはもう火星の王の体力はゼロになっていた。

 そうして表示されるドロップ品の中に目当てのものを見つけると凸侍はガッツポーズをした。

 

「とったどー!」

 

 喜んでばかりもいられないとさっさとグロッケンに戻る凸侍であった。

 そして目立つ大暴れをしていたので寄ってきていたハイエナはいつも通り人狩りしていたピンクの餌食になっていた。合掌。

 

 

 第三回、第四回と順当に順位を落としていた。ついでになんか変な奴らに襲われ車にひかれる失態を犯した。なんか侍仲間と再会できたのは良かったが、それはそれこれはこれである。つまり自身を強化する必要がある。

 先程の火星の王との戦闘開始も普段の突撃を抑えて搦め手を使う練習である。あと必要な素材があのモンスターからドロップするといった事情もある。大学の単位が少しやばかったが何とかクリアしたので憂いなくゲームできると言うものだ。

 

『やあ、君! その手にあるのは光学増幅器Τ型ではないか!? ぜひそれを譲ってくれ! 礼にお前のコガラスマルを最強の状態にしてやる!』

 

「あ、ハイハイお願いね」

 

 コンソールでイエスを選択すると素材が渡され銃剣としてくっついているコガラスマルをAW50ごと持っていく。どう見てもAW50が無いような動きで科学者がコガラスマルを持っていく。バグか。

 

『見ろ! 完成したぞ! これこそコガラスマルG9Xだ!』

 

「おおバグってるバグってる。スクショ撮って運営に送っておこ」

 

 銃剣として装着されてるのを無視して持つNPCに変な笑いが出そうになる凸侍であったが、バグ報告は大事なのでスクショを撮っておく。

 

「で、肝心の何が変わったんだ?」

 

『よくぞ聞いてくれた! バッテリー容量が増加し単純に出力と稼働時間が伸びた! 形成できる刀身の長さも伸びた! そしてビームガンとしても使用可能になったぞ! 柄の部分を回して切り替えればビームガンになる!』

 

 受け取ってとりあえず刀身を形成すると、以前より出力がありそうな感じて時折刀身からバリバリと雷みたいなエフェクトが出ている。そして長さが倍くらいあるこれはいい、ちょっとかっこいいではないか。ただ柄を回して切り替えるの無理では? と凸侍は思った。フォアグリップよりかなり先の方にくっついているのである。

 

『ちなみにビームガンは光学防御フィールドに霧散させられるから気を付けるのじゃぞ!』

 

「言うのおっそいわ!?」

 

 強化内容が思ったより微妙であった。武器説明文通りの性能になっただけだった。ビームガン撃つならそのままAW50撃った方が強い。

 火星の王がポップする度に倒してた苦労を返してほしい。他にドロップしたサブマシンガンやらなんやらを売って防弾服の性能を上げるかAW50を強化でもするかとショップに繰り出し店主に売り付ける。

 今月の接続料は余裕をもって確保できそうで、さらにAW50もチタン仕様に改造もできるらしいが、そこはどうするか少し悩む。重量が減るのはいいが全長が少し変わるのが使用感が変わってしまわないか悩ましいところである。スプリングフィールドの時はものが違いすぎて逆に楽だったのだが。

 しかし、とりあえずボスモブ独占やめろのファンメールが飛んでくる前に素材がドロップして本当に良かったと思う凸侍だった。

 視界の端でメールが届いたアイコンが出た。コンソールを開くとKKHCのリーダーからだった。チャットグループがあるのにわざわざメッセージにする意味はあるのだろうか、と凸侍は思ったが、KKHCからするとチャットにはライバルとも言えるSHINCやPM4のメンバーもいるのでKKHCからすると意味がある。

 

『凸侍さん、今度第三回SJの為、凸砂の練習をさせてください』

 

『マジか いいよお!』

 

 KKHCからそんなメッセージが来たので快諾した。神速の返信だった。そう言えばレンもリベンジの為特訓を続けてると言っていたし、ついでに呼ぶのもありか、等と考えながら他に誰かやるか善意で聞こうと『全GGO砂の会』にチャットを打ち込み始めるのだった 。

 

「…………んん?」

 

『凸侍さんがグループ名を全GGO凸砂の会に変更しました』




コガラスマルG9X
マッドサイエンティストが改造し真の性能を引き出したコガラスマル。必要素材の要求に対して性能がそうでもない。それでも光剣のなかでは上位に位置するレアな武器である。ビームガンとしても機能するので光剣縛りをするならよだれの垂れる逸品だが光学防御フィールドで防がれるので直接ダメージを与えるのは厳しい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

if/春うららかなある日の一日1

お久しぶりです。
投稿間隔がかなり空いてしまいすいません。



「どうですか? 治療には有効な手段だと思いますが」

 

「ああ、アリだとは思う。リアリティは十分、死ぬ瞬間って言うのをこれ以上ないくらい再現はしていた。ただ……」

 

「ええ、わかりますとも」

 

「NPCの設定をどうにかしてくれ、特にあの美少女剣士の場違い感が凄まじいぞ。というか弾丸に反応して全部弾くとか超高速で走り回る奴とか狙撃銃に銃剣くっつけて突撃してくる無茶なNPCはなんかもう世界観崩壊ってレベルじゃなかったぞ」

 

 死んだ目で男は文句を言った。夢のような無茶な設定を予定しているのは知っているが、敵NPCの挙動まで非現実的で無茶な設定にしては駄目だろうと至極真っ当なことを思っていた。

 

「そこは夏までにはなんとかしてもらいます」

 

 そのことに関しては重々承知しているのかその言葉には酷く重みが込められている。

 

「頼んだ」

 

 縋るようにも信頼しているようにも聞こえる声で、一言を口にする。

 二人の男はそれぞれ別の理由で目が死んでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだこの招待メール」

 

 第三回BoBを終え、この間は第二回スクワッドジャムでレンが惜しくも二位に終わった残念でしたパーティー(硝煙の香り)を砂漠で開催したりした後。

 大学が午後から授業の為、長期の課題をVR空間でやっていた所GGO運営から新着でメールがやってきた。

 

『日頃よりガンゲイルオンラインをプレイ頂き誠にありがとうございます。ザスカー日本支部運営事務局の薬師寺でございます。一部のプレイヤーの方に向けてメッセージを送信しております。今月4月26日に当社で開発された新型AIを搭載したNPCの戦闘能力を計測するテストプレイの参加者を募集しております。ご予定が合うようでしたら是非ご参加ください。資料は参加の場合のみ送付させていただきます』

 

 といった内容である。

 たしか今月の26は日曜日だったか、暇なことを脳内で適当に確認した凸侍はメッセージに了承を返した。するとすぐさま資料が送付されてきた。承認されると自動送付されるようになっていたのだろう。

 凸侍、課題を放棄しテストプレイの資料を読み漁る。

 

「うーんと何々……ラッシュ系のゲームモードか。うん? 凶悪テロ組織に制圧された研究所に秘匿された地球破滅爆弾を奪取するねえ」

 

 ラッシュは目標物を使ったFPSのゲームモードだ。攻撃側と防御側に分かれて目標物を破壊するなり防衛するなりで殺しあう。

 散らばった課題資料を表示したウィンドウを避けるように地面に寝っころがりながらタップでメールを下にスライドさせていく。変な姿勢をしていても痺れないし疲れないのはVRの特権である。

 

「三回死んだらアウトなのか。まあサバイバル式だとテストプレイには不適格っぽいもんな」

 

 一回死んだらアウトではテストとしては不十分なので納得がいくものだった。

 

「うお、景品豪華だな。参加だけで指定口径弾五十マガジンか」

 

 この場合の凸侍がもらえるのは通常タイプのAW50の五発マガジンなので二百五十発である。かなり羽振りがいい。

 さらにNPCに勝利すればアサルトライフル、サブマシンガン、スナイパーライフル、拳銃、ショットガン、光学銃のカタログの中から一品をプレゼントと書いてあった。

 さらに勝利後に特定の人物には追加で景品が出るらしい。恐らくMVPのことだろうと凸侍は納得しつつ、納得できない震えた声でつぶやいた。

 

「なぜ対物銃が無い?」

 

 レア度が非常に高いからである。カタログにも最高レア度の銃はほぼ入っていない。対物ライフルは全部が全部最高レアであった。

 少し落ち込みつつ参加者一覧をタッチすると別ウィンドウが立ち上がる。ユーザーインターフェースはGGOのものだった。

 

「ワーオ、一部の方って第三回BoB参加者に送ってるのか」

 

 参加者一覧と出ているが、既に獅子王、闇風、銃士X、デヴィッド、ペイルライダー、ダイン、ブルーノ、夏侯惇の名前が表示されている。どれも第三回BoBに参加した敵達である。並びは単純に参加表明順か。

 ショットガン使いのペイルライダーなんかは都市部での三次元戦闘でかなりの強敵だった。味方になれば接近戦ではかなりの戦力だろう。

 銃士Xの中遠距離狙撃と隠密性の高さや獅子王の火力に闇風の機動性、意外とバランスがいいチームになるのではないだろうか。

 

「めっちゃ楽しそうだし憂いを無くすためにも課題は今日中に終わらせるんじゃあ‼︎」

 

 とても楽しみになってきたので頰をVRの中でとはいえ叩くと気合を入れ直した。

 メール画面を閉じて画面とキーボードを出し課題作業を再開する。資料なんかもスキャンしておいた奴や電子化された奴を好き放題に空間において置けるのでVRは本当に様々であった。

 

 

「やっ、やっと終わった」

 

 課題を中断して大学へいき、出席点だけで単位取れる授業を座ったまま寝て過ごし、薙刀部に顔を出して汗を流す。という何時ものローテーションを終え、帰って課題を終わらせた時にはもう深夜になっていた。

 

「お、メールが新しくきてる」

 

 参加者確定のお知らせというメールで内容もそのままテストプレイに参加するメンバーが決定したというだけの簡単な報告メールだ。

 参加者一覧を開くと、十五人が参加表明をしたようだった。

 当然であるが、死銃事件の首謀者のステルベン、本戦中に殺されてしまったギャレットは参加しているはずがない。ただ一番下、最後に参加を決定した人物の名を見て、凸侍は思わず目をこすった。

 

『kirito』

 

 第三回BoBでシノンと百合の塔を建てつつ洞窟で芋してた芋剣である。芋ってるだけのザコと思いきや不意打ちの狙撃を光剣で斬りはらうヤベー奴であり、ほぼ目撃情報もない謎が謎を呼ぶ女性プレイヤーだ。

 ちゃっかりその前にシノンがエントリーしているあたり恐らくシノンに説得されて参加することにしたのだろう。

 

「これは楽しくなりそうだな」

 

 どう猛な笑みを浮かべたまま、凸侍はアミュスフィアを外して布団に入って寝るのだった。課題で疲れたのである。

 




オーディナルスケールとダダかぶりしてしまったので一応イフをつけてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

if/春うららかなある日の一日2

人外魔境BoB参加者

常識の壁

SJ参加チーム



誤字報告ありがとうございます!


 予定時刻に、GGOにログインしていれば自動的に転送されるとのことで、凸侍は酒場で茶をしばいていた。数日以上が過ぎ、課題を終わらせた故に何の憂いもなくプレイすることができるというものだった。

 時間はもうすぐだというのに不思議と凸侍はまったりとしていた。

 最強を決めるBoBの時ほどの闘志はなく、失敗すれば人が死ぬと知っていたSJの時ほどの緊張感はない。ただ、最強を競った敵たちと共闘できるワクワクが溢れて笑みが止まらない。側から見ると酒場でずっと一人ニヤニヤしている不審者だが、凸砂の変態で有名なので気にする奴はいない。

 刻限が来て、転送が開始される。視界が白くなり気がつくと、廃墟の広場の前に立っていた。

 

「んーーー? 待機ルーム無しかい!」

 

「えっ待機無し!?」

 

「襲うなよー! 味方だ!」

 

 ガヤガヤしつつ周囲で装着音が鳴りまくる。全員待機ルームがあると思っていたのか装備を全くしていなかったようであった。

 凸侍もウィンドウを出してタッチすると装備されたいつもの防弾プレート付きの服にAW50を握りしめて周囲を見回す。

 十五人全員がこの廃墟に転送されてきたようだ。

 知り合い同士で固まったり一人で突っ立っていたりと好き放題している。凸侍はとりあえず闇風のところに行くことにした。

 

「よう闇風、一位なんだから音頭取れよ。っと皆の者、静まれぇ!静まれぇ!」

 

 凸侍の奇声に全員の注目が集まる。シノンは頭痛そうな顔をしていた。

 

「このトサカヘアが目に入らぬか! 畏れ多くも先のBoB優勝者、水戸闇風公にあらせられるぞ‼︎」

 

「水戸はどこからきたんだどこから」

 

「おおー闇風!」

 

「なにやってんだ三位」

 

「オン⁉︎ 誰だ三位って言った奴は⁉︎ 素直に手を挙げたら一発だけで許してやる‼︎」

 

 ギャーギャー言っている凸侍の金髪にチョップを入れると近場にあった瓦礫の上に闇風は立った。

 BoB本戦参加者達どころか日本サーバーにおいて知らぬ人はいない知名度を誇る闇風が口を開くのを皆が待ち望んでいた。

 凸侍がふざけたお陰で変な硬さも抜けておりほんの少しだけ闇風は感謝した。

 

「……今日、本戦を争った敵達と肩を並べて戦えること、嬉しく思う」

 

 闇風のサングラス奥の鋭い眼光が全員を一瞥する。

 

「俺達は今、最強の連合チームだ。……勝つぞ‼︎」

 

 長い言葉は要らない。これはゲームだ。ならば勝つのみである。

 闇風がキャレコを掲げると、指笛を吹いたり拍手をしたり歓声をあげたりで若干お祭騒ぎである。さすが本戦参加者、こういうのは大好きなのだ。黄色い歓声を一生懸命上げる女性プレイヤーを冷めた目で見るシノンも楽しそうではあった。

 

「というわけで、まず作戦を決めよう、みんな、いい案はあるか?」

 

 下に降りてきた闇風が問うと、数名が悩んだ顔をして唸いだす。どれも集団戦ができるタイプの人達である。この人外魔境における常識人枠とも呼ぶ。この面子で連携をと考えて胃が痛くなっているのである。

 涼しい顔やいつも通りの顔をしている奴らはワンマンアーミー単独プレー上等の奴らである。リーダー役となった闇風もここに入るので手に終えない。

 

「ともかく、敵の構成を知るためにも偵察が必要だ。全員マップの確認もしておこう」

 

 スェーデン軍の迷彩を着ているのに周りがド派手な格好のやつばかりで逆に目立っているデヴィッドが端末を取り出しながら意見を出す。スコードロンを運営しているだけあり連携を含めた立ち回りの経験は本戦出場者の中でも上位だろう。

 各々がそれに従いマップを確認する。残念ながらサテライトスキャンは無いが、味方の位置はいつでも確認できる仕様だ。

 

「中央のこの建物が地球破壊爆弾が置いてある研究所だろう」

 

「デヴィ太くん地球破滅爆弾だぜ。俺としては北部の丘からの偵察がいいと思うんだが」

 

 ダインがハットの端をクイっとやりながら提案をした。

 中央に存在する研究所は上空からの映像を写しているマップからは五角形の塀に二重に囲まれているように見えた。

 北部には丘、西から南にかけて飛行場の滑走路に管制塔、東はなにやら爆心地みたいな複数のクレーターが空いている。全員が今いるこのホームはクレーターよりさらに南東の廃墟群の中であった。

 丘からの偵察は移動に廃墟群を遮蔽にできるため有効だろう。距離が結構離れていることを除けば。

 

「それにしよう、誰が行く?」

 

 全員が互いを見渡す。この場合、要求されるのは敏捷性と咄嗟の攻撃力の高さと死んでも特に困らない奴である。

 

「凸侍、そのスコープ、倍率は?」

 

 ダインが急にいい笑顔でそんなことを聞いてきた。

 

「なんだ急に。25倍だが?」

 

「偵察にはもってこいだな?」

 

「そうだな?」

 

 ダインが闇風の肩を叩くと連動するように闇風が凸侍の肩をたたいた。

 

「……行って来い」

 

「まーじで? やったぁ一番槍だぁ」

 

「おい!? 話聞いてなかったのか偵察だって言っているだろ!?」

 

 デヴィッドがキレた。

 

「それじゃ、あたし達は南の滑走路側を偵察しに行ってくるわよ」

 

 シノンが肩にヘカートを担いだまま歩み出てきた。脇に例の美少女剣士キリトちゃんがおずおずと着いてきている。

 

「それなら私も行くわ」

 

「それだったら私も!」

 

 銀髪の銃士Xと桃髪のクレハが名乗り出てきてデイヴィッドも頷く。

 

「女性同士なら気安い所もあるんだろう、ただ、四人とは言っても油断するなよ」

 

「ですってよ、キリトちゃん?」

 

「ハ、ハイ。気を付けさせてもらいますぅ」

 

 美少女剣士が若干冷や汗を流していたがシノン以外に気付いたものはいなかった。だいたいの奴等はキリトちゃんって声低目なんだなぁと思ったのみだ。アレが銃撃を剣で弾くヤベー奴なのを忘れてしまいそうになる位である。

 

「えっ俺、一人?」

 

 凸侍の速度について行けるのは闇風だが実質総大将な闇風が偵察に行ってはダメだろうという配慮である。凸侍への配慮は存在しない。

 

「三人とも?せーの」

 

 シノンが銃士X、クレハ、キリトに耳打ちをしてから凸侍の前にやってくる。

 

 

「「「「凸砂のカッコイイ偵察がみてみたいな~」」」」

 

「うっしゃおら任せとけってんだガッテン承知のスケイ!!」

 

 AGI型の速力を持って凸侍は廃墟の先へ消えていく。だれかのチョロイというつぶやきを残して。ちなみに女の子に応援してもらえたからではなく凸砂のかっこいい所が診たいと言われたから奮起しただけである。ダインが血涙を流しそうな勢いで悔しがった。

 

 

 

 

「というわけでやってきたぞ丘の上。距離はだいたい2000。思ったよりもペンタゴンの塀が高いなあれじゃ塀というか城壁だ。頂点の所にトーチカみたいなのが見える」

 

『間に遮蔽物は』

 

「破損した戦車がいっぱいあるな。遮蔽には使えると思うぞ。ただ……200を切ったあたりから撃ちおろされると遮蔽として使えなくなると思う」

 

 丘の上へ研究所側から見えないように登って伏せるとまずはスコープも構えずに見た限りを伝える。無線は15人共用らしく緊急時は大混戦してしまうこと不可避なので緊急時は高度な連携を維持しつつ柔軟な対応をすることになっている。

 

「ちょいとスコープで覗いてみるぞ」

 

 本来であれば双眼鏡とかを用意しておけばよかったのだが、してないのである。そんなもの見てる暇があったら突撃する男凸侍である。

 

「えーと、あそこのトーチカの切れ目はッッとおおっほう!!?」

 

 スコープを構えた瞬間、発砲炎がトーチカの奥の薄暗い空間で輝き、とっさに身を転がすと数瞬前まで凸侍が居た場所が大きくえぐれる。

 

「撃たれた! いったん下がる。トーチカに敵一人! 威力から見てたぶん対物ライフル!」

 

 立ち上がらずそのままバク天して丘の影に隠れある程度まで駆け下りた。対物銃だとある程度の地面では貫通してくる恐れがあるからだ。というか自分が壁抜きとかよくやっているのでそのあたりは本能である。

 

 

『南より、こっちは遮蔽に航空機の残骸が複数、接近中に狙撃を受けたわ。対物ではなさそう』

 

『大丈夫だったか?』

 

『ええ、女騎士様が全部弾いてくれたわよ』

 

 一つ作戦を思いついた凸侍だ。正直偵察しているのが飽きただけだが、三ライフ制、つまり二回まで死ねるのならやる価値はあるだろうと思った。

 

「ひとつ、良い作戦を思いついたぞ」

 

『……なんだ?』

 

「とりあえず全員一回づつ死ぬつもりで突撃しない?」

 

『……それもそうか』

 

 画面の向こうで小さく闇風がこういうのは性に合わないと呟いていたが、無線で拾われることは無かった。

 

『全員、まずは好きに暴れるぞ』

 

『フゥー!!』

 

『ヒャッハー!』

 

『突撃ダァ!』

 

『とりあえず、可能なら撃っちゃおうかしら』

 

 連携もなにもない突撃作戦が敢行されることになった。




イカれた15人を紹介するぜ!

まずはBoBを二連覇! ランガンの鬼、闇風!
無音の狙撃手! 大胆ビキニだ、銃士X!
立てこもりマシンガンナー! 獅子王リッチー!
対物銃の使い方間違ってんだよ! 凸侍!
動く弾薬庫! アルフォン!
眼帯が活かすぜ! 夏候惇!
ピンクの回避盾! クレハ!
三次元機動の熟達者! ペイルライダー!
死を記憶せよ! デヴィッド!
難攻不落の鉄騎兵! シシガネ!
俺はヘタレじゃねえ! ダイン!
拳銃で本選まで来るヤベー奴、ブルーノ!
ショットガンは俺の魂! クリント!
謎の美少女剣士! キリト!
そして冥界の女神!! シノンだ――――ッ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

if/春うららかなある日の一日3

前々回、前回、から続いていますのでお気を付けください。

毎度誤字報告を誠にありがとうございます。


『……これより作戦名、フォークボールを開始する。全員、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するように』

 

 

『おい誰だこの作戦名考えた奴』

 

『失敗する未来しか見えないんですけれど!?』

 

 凸侍の提案が採用され、偵察に出た凸侍と女性分隊に労いの言葉をかけ、作戦が始動した。またの名をとりあえず一回死ぬまで暴れ強行偵察作戦である。

 

『じゃ、俺はこのまま北から襲撃を仕掛けるぜ』

 

『俺も行こう、獅子王と夏候惇、ペイルライダー、ダインを連れていくから待っていろ。この分隊をアルファとして無線を分けるぞ。全分隊、合図と同時に一斉突撃だ』

 

『デルタにしようぜ。デルタフォース』

 

『待ってました! プレジデントマン!』

 

『おい、無線で遊ぶな夏候惇に凸侍』

 

 凸侍の方に闇風ズが合流した。武器種類だけ見ればアサルトライフル、ヘビーマシンガン、アンチマテリアルライフル、ショットガン、サブマシンガンでとてもバランスが良く見える。なおアンチマテリアルライフルが突進することは無視する。

 このチームは獅子王とダインが足が遅い部分がネックなポイントだ。

 

『俺は東クレーター地帯から攻撃をしてみよう、シシガネ、ブルーノ、クリント、アルフォンで行く。俺たちはベータだ』

 

 こちらはアサルトライフル、サブマシンガン、ハンドガン、ショットガン、マシンガンで、面子も一人がVIT偏重の耐久型なの以外はSTR-VIT型で一番挙動が人間に近い面子である。ブルーノ、クリント、アルフォンが何とも言えない生暖かい笑みを互いに向けあっていた。

 足の速さはおおよそ揃っているため、分隊としては一番連携が取りやすチームであろう。

 

「じゃ、私たちはガンマね」

 

 女性陣が無線の設定を弄る。全体にではなくガンマにだけ通話が飛ぶように変更したのだ。

 航空機の残骸の遮蔽で待機していた女性チーム、アンチマテリアルライフル、スナイパーライフル、フォトンソード、サブマシンガンと一番編成がヘンテコではあるが、それを補って余りあるプレイヤースキルの持ち主たちだ。

 

「とりあえずキリトちゃんと私で安全確保しつつ、二人がついてくる感じで行きましょうか!」

 

 クレハがキリトに庇護欲を爆発させている様だった。美人なアバターなのにおどおどしているのはクレハ的にポイントは高い。

 

「ええ、そうしましょう」

 

 真実とはいかに残酷か、今から伝えるべきかとはシノンは思ったがこれは本人が言わないのが悪いので真実は言わないことにした。

 

「よ、よろしくおねがいしますぅ」

 

 そうして高耐久のキリトとクレハによる飛行機の残骸群のカバーからカバーへの移動は問題なく進行し、塀まで三百メートルのところで残骸が全くない平地となったことで停止した。

 後部の飛行機の翼の上に伏せて塀の上を警戒し、狙撃態勢を取ったシノンと、それより前でキリトの光剣で機体に穴をあけてもらいそこから侵入した旅客機の窓で、援護射撃の姿勢を取っている銃士Xと配置が完了した。

 

 

『……全分隊、突撃開始』

 

 無線から全員に闇風の攻撃開始が下る。基本時間合わせが必要な訳ではないので、今から突撃して良いよと言う程度の簡単な合図である。

 

 

「ここから平地だ…ですわね。門の手前に有刺鉄線の柵があるけれど、フォトンソードなら切れる……わよ!」

 

『了解、ただキリトちゃん、ちょっと待ってね』

 

 キリトとクレハが飛び出そうとするのを銃士Xが制止。

 同時にXが発砲。有刺鉄線より少し手前に着弾した瞬間、カンッと甲高い金属音が鳴り筒のような物が跳ねあがった。それは瞬時に炸裂して金属弾をまき散らす。

 キリトは唾を飲み込んだ。何も考えず突っ込んでいたらあっという間に死んでいただろう。

 

『トーチカ、屋上に変化なし』

 

『さっさと処理しちゃいましょうか』

 

 規則正しいタイミングで発砲音が鳴るたびに、筒が跳ねあがって鉄球をまき散らす。それが三回続いてXから安全のお墨付きが出た。

 

 

「よし、今度こそ行くぞ……わよぉ!」

 

「ええ! 行きましょう!」

 

 キリトとそれに追従するクレハを守るためXとシノンが塀上を警戒する。

 

「……!? 門が開いた!?」

 

 取りついてキリトが光剣ででこじ開けようと思った門が少し横にスライドしたのだ。中からひょっこり人が出てくるのを視認し、Xが狙撃を、クレハがキリトに当たらない様UZIのフルオートでの牽制を敢行する。

 

『ツッ、硬いわ! 一旦引いて!』

 

 過たず頭部を直撃したはずの7.62ミリが弾き飛ばされる。当然クレハのUZIの9ミリパラベラム弾も弾き飛ばされ意味をなさない。シシガミと同等クラスのアーマーを着込んだNPCらしく、左手には盾まで持っており硬さは凄まじいだろう。

 

『私の位置からじゃ射線が通らない! 引いて立て直して!』

 

 貫通を狙えるヘカートⅡのシノンも、塀の上とトーチカを警戒する位置に着いてしまっていたため射線が開かれた門に対して通っていない。

 

「いや、門が開いた今がチャンスだ! 押し通る! クレハ! 俺の後ろに!」

 

「えっはい!」

 

『キリト!!』

 

 シノンの叫びに少し申し訳なさそうな顔をしつつも有刺鉄線を融解させ蹴り飛ばし、キリトが前進を続ける。

 ピロン、と持っている端末から音がしたがそれどころではない。

 構わず突っ込んでくるキリトにNPCは持っていた盾を地面に突き立てると、そこを銃架の代わりにして手に持っていた機関銃からバレットラインをまき散らしだした。知る人が見ればM60E4とわかるがキリトには分からない。

 

「ぐっ!!」

 

 人を易々と殺傷する運動エネルギーの塊を光剣で斬り飛ばす。すると一瞬、NPCが射撃を停止させたが、すぐさま射撃を再開した。

 

『M60、装弾数は百発から二百発、無茶よ!』

 

「いや、いけそうだ!」

 

 装弾数は二百発のベルト給弾式の為、弾切れを狙うのはかなりの無理がある。だがキリトも尋常じゃない動きで迫る命中弾を斬り前進していく。

 

 

「これじゃ私が邪魔! 後ろにこのまま下がるから!」

 

 クレハが自分が邪魔になっていることを察して即座に後退を開始する。

 自分と後方のクレハに命中弾が出ない様、自分に当たらない弾もある程度弾く必要があった。

 ただタップ撃ちで三発から四発づつ発射される7.62ミリは狙いが良く、バレットラインはほぼキリトへの命中軌道を取っていた。

 故にさすがのキリトでも前進速度が落ちた。銃士Xが片づけたとはいえまだ左右には多くの地雷が埋まっているであろうことから左右に逃げられないのだ。

 

 

『耐えて、もうすぐ射線が通る位置にッ!? くっ今頃トーチカに!!』

 

『シノン、こっちからだとトーチカに射線が通らない!』

 

 全員の認識として、AIはあまり性能が良くない印象を持っていた。特に連携関連でだ。以前シノンとキリトがエクスキャリバーを手に入れる際に共闘した雷神トールも、共闘とは言うがその実こちらにフレンドリーファイアしないだけでスリュムを好き放題ぶん殴っていただけであった。

 だが今回のNPCのAIは違う、しっかりと連携を取りキリトを孤立させることに成功していた。

 

『くっせめて少しでも隙をッ!』

 

 抵抗の如くXが機関銃NPCに弾を撃ち込むが、意に介した様子は無い。だがクレハがかなり下がったことで、キリトの自由度が上がり前進速度は上昇していた。残り100を切った瞬間、突如NPCがタップをやめ全力で火を噴いた。

 毎分550発のレートで発射される弾幕は大量のバレットラインを発生させるものの、ブレにより命中弾は減りキリトの切り払いもより楽になった。

 

「これならっ!」

 

『キリト!!』

 

 さらに加速したキリトにクレハとXの叫びが入る。赤い多量のバレットライン、それに沿って高速で飛来する弾丸の中に一つだけ低速で、巨大な物体が紛れ込んでいた。

 門の奥から発射されたことでXからは見えず、かなり後方に居たクレハがギリギリ視認し、とっさに叫んだのだ。

 

『アールピージー―――!!』

 

 咄嗟にそれを切り裂いてしまったキリトに向け、炸裂した弾頭からモンロー・ノイマン効果で発生したメタルジェットがカゲミツG4に弾かれ飛び散り、爆発と四散する破片が切り払われ無事な腹部を除きキリトの上半身と下半身に真っ赤なダメージエフェクトを発生させた。

 対戦車用兵器を高耐久とはいっても生身のキリトが受けて無事なはずがなく、体力を全損させポリゴンとなって霧散する。

 霧散する前に黒い煙を吐きながらウッソでしょみたいな顔をしていたキリトは、このマップ全体においては三人目の犠牲者であった。

 




ブラッキーダウン! ブラッキーダウン!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

if/春うららかなある日の一日4

主人公空気気味です。
ご覧いただきありがとうございます。
こちら続き物となっておりますので、どうぞよろしくお願いします。
誤字報告誠にありがとうございます


「ヒャッハー! 騎兵隊だー!」

 

「……無駄口を叩いてる場合か?」

 

 戦車と戦車の隙間を縫うように二人の男が高速で疾走していた。現状十五人の中で単純ステータスで最速の二人、凸侍と闇風である。それを見下ろす丘の上には獅子王、機関銃を設置し簡易的な防盾を設置。トーチカに向け牽制射撃を敢行している。

 他はゆっくり安全に戦車の遮蔽をしっかり使いながら移動している。三人とも流石本戦出場というだけありスムーズに進行していく。

 

「おっなんか踏んだ」

 

 疾走の勢いと高速でシャカシャカと回る足で気づけるのは流石であるが、そのシャカシャカした足に踏まれる地雷は気の毒であった。

 踏んで少ししてからしてポンッとジャンピング地雷が跳ねあがる。しかし跳ね上がり破裂した時には既に凸侍は加害範囲から走り去ってしまっていた。

 

『大丈夫か? なにが起きた?』

 

 戦車をカバーにした影から夏侯惇が通信を寄越してくる。

 

「地雷だな、普通の踏んだら即爆発だったらヤバかったなって」

 

 あまり大量に仕掛けられているわけではないのと速力でゴリ押せるので気にせず進んでいるが、大人数で行くなら非常に邪魔なので処理は視野に入れておくべきだろう。

 後方、凸侍が踏んで跳ねあげられた地雷を闇風が躱し、左に大きくそれた。

 速力の高い二人でもこういうことが起きるので全処理してしまうのが一番である。

 

 

『凸侍、塀の上に二人出た!』

 

 走りながら上を見ればこちらを狙っているNPCが居た。バレットラインが照射されてくることからおそらくはアサルトライフルであった。凸侍の持つ端末がピロン、と鳴ったがそれどころではない。

 避けた先に着弾し地面が小さく弾ける。

 

「ちっ」

 

 正確な偏差撃ちで進行方向をガッツリふさがれた凸侍が跳ね飛びバレットラインを飛び越し前転で衝撃を殺しつつ着地、左右ジグザグにバレットラインを避けながら門へと接近していく。

 

『ダイン! 凸キチと闇風を援護しろ! 撃たせるな!』

 

『分かってるよ!』

 

 闇風は避けながら短機関銃を撒いているが、射程の関係で加害できるだけの威力はなく牽制にもなっていない。獅子王は狙撃を警戒したトーチカへの制圧射撃の為二人の援護はできないので、共にアサルトライフル使いのダインと夏侯惇がそれぞれ援護射撃を行う。

 

「フゥー! あったんね!」

 

 凸侍も走りつつ塀の上の敵を狙い撃つが、引き金を引いた瞬間さっさと陰に引っ込んでしまう。そもそもこの距離を走りながら当てるのは無謀きわまる。

 壁に直撃した弾は大きく罅と窪みを生み出すが貫通には至っていなかったので壁抜きをすることも困難だろう。

 ジグザグの回避運動に移行したせいでこの速度では地雷を走り抜けられない為、自分の進行方向にある地雷を走りながら撃ち抜く。

 対物ライフルの大威力で地雷が跳ねあがることもできず爆発する。

 埋まったまま発生した爆発は上方への指向性を発揮し、金属球はほぼ真上に飛び散るのみで加害範囲はぐっと狭くなった。

 二人の牽制射撃のお陰でバレットラインもほぼ飛んでこなかったお陰でもある。

 

「フゥー! この私! 凸侍が敵内部に一番乗りだっ!」

 

 壁際まで走ると射角が取れなくなったのか銃撃が止む。

 閉じられた門は鋼鉄製でがっちりロックされ開かないようになっているが、凸侍には関係ない。

 中指の連動スイッチを押し込むと、先端付近に付けられた筒から赤い光が出る。

 コガラスマルG9凸砂カスタムである。対人でもワイヤー切断でも過剰威力の光剣であるが、この鉄製の扉を破るには最適であった。厚さが二十センチ近い鉄の扉が容易く溶断されていく。

 

「おっと、こういうのは即入るのは良くない」

 

 ストレージから一個、通常の破砕手榴弾を取り出すとピンを引っこ抜きレバーを弾き飛ばす。

 溶断され立って居るだけになった鉄板を蹴り倒すと爆発寸前の手榴弾を投げ込んだ。

 こういう時よくある待ち伏せ爆弾を誘爆させ中に突入するつもりであった。

 

「にょほっ?」

 

『なんだ!?』

 

『おわっ⁉︎』

 

 しかしまさか、待ち伏せ爆弾の破壊力が鉄の扉そのものを吹き飛ばすレベルだとは想像だにしていなかったのである。背を預けていた鉄の扉ごと弾き飛ばされ、爆風の直撃こそ受けなかったもののそもそも耐久値が低いため体力を全損して無念の初死亡となってしまった。

 爆風で吹っ飛んできた鉄の塊に当たればそりゃ死ぬのである。

 その爆炎を潜り抜けるように迫るのは闇風だ。最高速度を維持したまま煙を突き抜け内部に侵入すると。直線通路の先に一人NPCが銃座を構えてこちらを待ち構えていた。

 

『……くっ、内部にマシンガンナー!』

 

『ああーー死んだ! 俺死亡一番乗り!? イヤァァァァァ』

 

 無線で叫ぶ凸侍を全員が無視しつつ闇風も仲間にならないよう神経を張り詰める。

 銃座単体であれば左右の広い通路故に回避しきることもできたが、両サイドから先ほどのアサルトライフルを持ったNPCが追従し攻撃を加えてくる。

 急制動で反転、その際に数発被弾してしまったものの死ぬことなく門の外へ闇風は脱出する。

 外へ出ると援護するダインと夏侯惇、既に壁に張り付いているペイルライダーの姿があった。

 

『ダイン、踏み台になってくれないか』

 

『ハッ? ……分かったよ!』

 

 戦車と壁までの遮蔽のない区間をダインが全力疾走。なりふり構わない一番速度の出る速さで駆け寄るのを夏侯惇が援護する。

 

『くそっまた塀の上にアサルト使い!』

 

『こうなりゃ、俺に任せな!』

 

 トーチカへの牽制を中断し塀の上のNPCに向け獅子王が牙を剥いた。遠隔でも十分な殺傷力を保持した汎用機関銃の弾丸を避ける為に塀の裏に隠れたことでダインが安全に踏破。

 

『ガァ!』

 

 代償にトーチカから放たれたラインのない初弾ボーナスを乗せた狙撃が獅子王の肩に着弾し、運動エネルギーが胴体から足までをぶち抜き体力を全損させられた。

 

『夏侯惇も来るんだ』

 

 ペイルライダー、ハンドルネームの通り夏侯惇を死に誘ってるようにしか見えない。

 

『いやいや援護なしで走り抜けられるわけないだろ!』

 

『いやうん、このペイルライダー君のやりたいことはわかってしまったぞ夏侯惇君、囮になりたまえよ』

 

『くっそダインにペイルライダー、覚えてろよ!』

 

 夏侯惇が走り出すと当然堀の上のアサルト使いとついでに狙撃手まで夏侯惇を狙い出した。初弾ボーナスが消えているのでラインが出ているのが救いか、ラインを避けてなんとか進んでいるものの、時折被弾し体力が削られる。

 致命的なダメージは受けない辺りはへたれたことを言っててもトッププレイヤーの一人である。

 

『行くぞ』

 

『来い!』

 

 バレーのレシーブのような姿勢をとったダインの手にペイルライダーが飛びつき上に跳ねあげられる勢いと合わせた大跳躍を見せた。投げられたのはフック付きのワイヤーだ。

 塀の角に引っかかったそれを支点にさらに跳躍、フルフェイスのショットガン使いが塀の上に躍り出た。

 目の前にいるのは夏侯惇に集中していたNPCだ。

 無慈悲に胴体に向け引き金を引くと、12ゲージバックショット弾が銃口から解放され至近距離ゆえにすぐさま着弾、怯むことなくアサルトライフルを掃射するNPCを飛び越えるように跳躍。

 同時にその顔面に2発目のバックショットが叩き込まれた。

 そのまま背面に着地し、リロードしながら動こうとして、足を止められた。

 

『なっ』

 

 油断していなかったといえば嘘になる。残るアサルト使いと狙撃手には、最大の警戒をしていた。

 その胴体に背後から顔面をダメージエフェクト塗れにしたNPCが抱きついてきたのだ。軽量装備で三次元機動をブーストするペイルライダーには致命的な荷重であった。あくまで死ぬ間際、体力バーが全損するまでの短い時間だが、狙撃の弾頭はそれよりもはるかに早い。

 対物弾と高速弾の挟み撃ちに会いペイルライダーも体力全損となった。

 

『悪い』

 

『こうなりゃやけだ! どうせ逃げようにもうしろから撃たれるなら特攻じゃぁ!』

 

 壁に体をぴったりつけたままダインが叫んだ。脇では精神的に疲れた夏侯惇が厳つい顔に似合わない疲労困憊顔をしている。

 体力を半減させた夏侯惇は回復アイテムは使わない。どうせ特攻で死ぬのだから後での大事な場面で使うのだ。

 

『みんなはよ死ぬんだよぉ、キリトちゃんもこっちにきたぞぉ、デヴィッドチームは撤収するらしいゾォ、ほらダインもはやくダインイングするんだよ』

 

『うるせえ凸侍! 闇風、お前は突っ込む必要ないからそのまま戻れよ! お前の足なら逃げ切れるだろ!』

 

 哀れ、夏侯惇とダインは戦車の陰に移動する前に確実に撃ち抜かれて死ぬ。

 

『アルファ、実質全滅だ、他はどうだ?』

 

『ベータ、耐久バカ以外グレポンで全滅、耐久バカもそのうちこっちにくる』

 

『ガンマ、剣ガールが死亡、クレハが軽症な以外は問題なし、撤退中よ』

 

 闇風が状況を把握して撤退を開始する。夏侯惇とダインは内部確認と一人殺せればのワンチャンと闇風が逃げる時間稼ぎの為の特攻である。3回分あるので命は軽い。

 完全に射線から逃れると、ホームベースに全力で疾走を開始する。

 

『……ひとまず、ホームベースで情報交換と行こう』

 

 第一次とりあえず突撃作戦は新型AIチームの損害1、地雷原壊滅、北部鉄扉木っ端微塵、チーム魔境は死者多数の大損害という結果に終わった。




ペイルライダー
三次元機動を駆使するショットガン使い。デスガンの殺害候補だったが、ビル群での乱戦に巻き込まれ埋もれ死をしてしまいデスガンに襲われる機会を逃れる。
事件後電子ロックを買い換え扉にチェーンをつけるようになった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。