鬼人達のドタバタ物語 (ポストマン)
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金魚草が導くは

恋愛もの初挑戦です
拙い文章ですが、よろしくお願いいたします


「お疲れ様です、マキさん」

控え室に戻った私を、鬼灯様が出迎えてくれた。

「あ、ありがとうございます鬼灯様。えーと、この後の打ち合わせのためですよね?」

そう、私たちはこの後『金魚草展覧会イベント』の打ち合わせがあるのだ。

「えっと、カマーさん達はまだなんでしょうか?」

「申し訳ありませんが他の皆さんは少々遅れるそうです」

何で?

「どうもカマーさん達の仕事にトラブルがあったようで、一時間ほど遅れるそうです。マキさんがいらっしゃる少し前に連絡がありました」

それってそれまでこの鬼神様と二人きりってこと?

「そうなんで『prrr…prrr…』すいません」

何よこんな時に。って、おかあさん?

「もしもし?お母さん?」

 

 

 

「もしもし?お母さん?」

おかあさん、ですか…

「うん、うん、大丈夫だって。ちゃんと食べてるよ」

このような時に思い出すのは、私が人間だった頃……

いけませんね、自分の心に動揺が広がるのがわかります。

「それじゃ、また連絡するから。じゃねお母さん」

 

 

 

「それじゃ、また連絡するから。じゃねお母さん」

おかあさんからの連絡を終わらせて、鬼灯様の方を見る。

うん、さっきからなぜか視線がビシバシ突き刺さってるんですけど…

私何かしたかなぁ?

「す、すいません鬼灯様。話の途中で電話に出てしまって…」

「いえ、謝る必要はありませんよ」

「ソウデスカ……」

うう、沈黙が重い…

「つかぬ事を伺いますが、先ほどの電話は親御さんからで?」

「ええ、母からです。母から言わせると『元気確認』だそうです」

「そうですか……」

だから黙り込まないでください鬼灯様!

今ならお得意の金魚草の話でもちゃんと聞きますから!

「あの、私ちょ「マキさん」は、はい!」

「マキさんにとってご両親はどのような方ですか?」

両親?なんで?

「よろしければ教えていただきたいのですが」

「両親、ですか?そうですね、『何よりも大切な人達』で『いつでも帰ることのできる場所』ですかね。なんたって家族ですから」

以前、アイドルとしてぜんぜん売れなかった時に帰った時なんて、泣いちゃったくらいだからなぁ。

「『帰る場所』、ですか……」

鬼灯様はそうつぶやくと、わずかに顔をゆがませて黙り込んでしまった。

その姿が、私にはなんだか幼く見えた私は……

「あの、よかったら愚痴のひとつも伺いますよ!ほら、私も以前鬼灯様に聞いていただきましたし!」

つい、そう言ってしまった。

「そうですね……、すみませんが少しお付き合いいただけますか?」

 

「私には、両親というものを持った事がないのです」

そうして鬼灯様が語ったことは、彼の過去だった。

人間に生まれた事。両親の顔すら知らない事。村人達から邪険に扱われた事。

生贄として死んだ事。鬼として黄泉へ来た事。黄泉で友達が出来た事。

閻魔大王から名前を貰った事。その後の生活の事。

「そしてさっき、マキさんが親御さんと話しているのを聞いて思ってしまったんです。『羨ましい』と」

「そうだったんですか…」

そんな話をしている鬼灯様がなんだか小さく見えて、

「頑張ってきたんですね…」

つい、頭を撫でてしまっていた。

 

 

 

閻魔庁への帰り道。

(なぜ、あんなことを言ってしまったのでしょうか?)

思い返されるのは、あの手の温もり。

「そういえば、あんなことをされたのは初めてですね」

そして、彼女のあの表情……

「?」

わかりませんが、とりあえず不快ではありませんね。

とりあえずは

「金魚草大使はもうしばらくマキさんに続けていただきますか」

 

閻魔庁への帰り道、微かに浮かぶ微笑みに気付く人は誰もいなかった。

 

 

 

~オマケ~

 

「ねえ唐瓜、最近鬼灯様楽しそうだよな」

「そうか?いつも通りだと思うけどな」

「絶対何かあったって。だってカカポやチベスナにあった時の雰囲気に似てるからさ」

「珍しい動物でもいたのかな?」



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不穏な影が導くは

~地獄テレビ 楽屋~

 

「マキちゃん、最近何かあった?」

「へ?何かって?」

ある日のお昼時、一緒にご飯を食べていたミキちゃんからの一言に思わず首をかしげる。

「最近のマキちゃん、少し雰囲気が優しく感じるんだよね」

そうなのかな?自分じゃわからないけど。

最近あった事といえば…

「あ…」

そう、鬼灯様の事だと。

もしかして気付かないうちに母性に目覚めた?

「え?ホントに何かあったの?」

「う~ん、たぶんあったのかな?」

そういって、私はあの日のことを曖昧に伝えた。

「…っていう事があったんです」

「へえ、そんなことが~」

「それでひょっとしたら母性に目覚めたのかな、と」

思い当たる節はそれくらいだから。

「ねえマキちゃん、それって男の人にしたの?」

「う、うん、そうだけど?」

…ミキちゃん、なんでそんな顔をするのかな?

「…ちなみに、その人の名前を聞いてもいい?」

「さすがにそれは…(私も命が惜しいし)」

 

 

 

~閻魔庁 食堂~

 

「鬼灯くん、鬼灯くん!ねえ鬼灯くんってば!」

「何度も呼ばないでください大王。聞こえてますから」

「じゃあ何で返事してくれないんだよぉ」

「鬱陶しいからです」

食事時に少しうざったいので真っ向から切って捨ててみる。

まあ、大して堪えないだろうが。

「お昼時くらいいいじゃないか。それよりも君ってさぁ、最近少し丸くなったよね?」

「いつも大王をぶっ飛ばしているので余分な肉はついてないはずなのですが?」

「ワシってダイエット感覚で殴られてたの?!いやそうじゃなくて、性格面の話だよ」

私が丸くなった?

「自分じゃ気づいてないかもしれないけど、ワシはそう感じているよ」

「ふむ…、ひょっとしてあれですかね?」

最近変わったことといえばあの事しかない。

「少々知り合いに愚痴をこぼしてしまったんです。向こうは以前のお返しだと笑って許して下しましたが」

「愚痴?君が?いっつもワシに文句を言ってる君が?」

「何が言いたいんですか大王。いいではないですか。私だって言いづらい愚痴のひとつやふたつはあります」

まあ、さすがにもう言う気はありませんが。

「まあいいや。でもほんとにそれだけ?まだ何かあるような気がするんだけど」

「ありませんよ。それよりそろそろ午後の開廷時間です。行きますよ」

まったく、きちんとしていれば尊敬できる上司なのに。

……父親、か…

「どうしたの鬼灯くん?」

「いえ、何でもありません」

 

 

 

~大焼処 伊邪那美殿~

 

「いったい昨日の騒ぎは何だったのじゃ」

イザナミは昨夜に起きた騒ぎを思い出しながら自らの寝床を抜け出す。

「ま、おそらくはどこぞのはねっ返りが、わらわの屋敷で度胸試し「失礼します、イザナミ様は居られますか!」を、何じゃ騒々しい」

「失礼いたします。私は鴉天狗警察の義経と申します。昨夜の事件についてお話を伺いに参りました」

「ふむ、昨夜の事件、と申してもわらわは何も知らぬのじゃ。屋敷に勝手に入ることはできぬようになっているのでな、少々の騒ぎでは動きたくないのじゃ」

「え?!で、では屋敷の入り口が今どうなっているのかも?」

「知らぬ」

 

後に入り口の外にイザナミが見たものは、何者かによって破壊された数本の柱の残骸だった。



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罪人達が導くは

~鴉天狗警察 本部~

 

「いきなり押し掛けて申し訳ありません鬼灯様」

「いえ、お役目ご苦労様です義経様。して、今日はいったいどのような?」

ここ閻魔庁に来られるとは、いったいどのような事があったのでしょうか?

「実は先日、大焼処にある伊邪那美殿にて器物損壊事件がありまして」

「器物損壊?」

「はい。破壊されたのは屋敷の入り口の柱、と言えばお分かりでしょうか?」

「柱、ということは」

「はい。柱に括られていた亡者が脱走しました。器物損壊のほうは我々が捜査しますが、亡者は鬼灯様に対処していただかなくてはなりませんので」

確かに、あの亡者達は私にすべての責任がありますからね。

「わかりました。亡者は私が何とかいたします。ちなみに、何人逃げたかわかりますか?」

「それでしたらわかります。一番外側の三人です」

外側の三人ですか…

位置から考えると、村長とその息子、それに…‼

「ど、どうかしましたか?」

「申し訳ありません、少し昔の事を思い出したたけです」

「そうですか。では、私はこれにて」

さて、それでは亡者狩りと参りますか。

「ん?そういえば確か今、焦熱地獄の辺りは…」

いけませんね、嫌な予感がしてきました。

 

 

 

~焦熱地獄~

 

「はい到着~、んじゃ二人とも衣装に着替えてね。終わったらすぐに撮影始めるから」

「わかりました」

「わかったにゃ~ん」

今日はここにドラマの撮影にやって来た。

まあこういう仕事はたまにあるからいいんだけど

「こっちの『獄卒・金盞花(キンセンカ)』の衣装が私ので、こっちの『獄卒・竜胆(リンドウ)』のがマキちゃんの衣装だね」

「ありがとうミキちゃん。じゃさっさと着替えちゃおっか」

そうして私達は楽屋代わりに建てられたテントに向かった。

まあ、ロケ朧車での着替えはダメって言われているからなんだけど。

「…これでいいかな?ミキちゃんは?」

「ちょっと待ってて。何か小物が多くて」

「じゃ、先に外行ってるね」

 

ガサガサッ ガツッ

 

「おまたせ、マキちゃん。あれ?マキちゃん?」

 

 

 

「あと一人、よりによってあいつですか」

何とかつかまえた村長親子を引摺りながら、最後の一人を探した。

「「グムー、ムグー!」」

しかしまあ、見苦しく抵抗しますね。

「ああ。その縄は黒縄地獄て使われている特別製です。多少擦れた位では切れませんよ」

そう言うと、親子はガックリとしてようやく大人しくなる。

「さて、あいつは何処に」

「あ、鬼灯様!」

後ろからの声に振り向くと、見知った二人が駆け寄ってきた。

「おやミキさん、マネージャーさん。どうしました?」

「ああすみません鬼灯様。実は、」

「マキちゃんが行方不明なんです!」

 

 

 

「ハア、ハア、ハア、ぜ、絶対逃げ切ってやる!」

ふと気が付くと、私はいつの間にかこの亡者に捕まって担がれていた。

しかもご丁寧にきっちり拘束されて。

「ンー、ンンー!」

「うるせぇ、黙れこの阿婆擦れが!」

「ンッ!」

いきなりの事に身をよじっていたからって、怖い顔で怒鳴らないで欲しい。

「へへっ、こいつさえいりゃあ、丁の奴も手は出せねぇ。いざとなりゃあ…」

さっきからイッた目で何かを呟くのやめてくれないかな!?

「もう少しだ、もう少しで俺は」

「終わりですよ。あなたは」

後ろから、聞き慣れた声が聞こえた。

「ちっ、丁か!てめぇもう追い付きやがったか!」

「ええ。あなたで最後なんです。大人しく捕まって下さい」

そこには、金棒を突きつける鬼灯様がいた。

あれ?丁?

「それと、あなた達の解放した愚か者についても話していただきます」

「はっ、てめぇこそこいつが見えねえか!」

「ンンー!」

「ぐっ…」

鬼灯様は、私に突きつけられた刃物を見て、動きを止める。

「へっ、それでいいんだ。おら、その物騒な物を捨てな」

その言葉に、鬼灯様は金棒を投げ捨てた。

「言う通りにしましたよ。そろそろ彼女を離しなさい」

「誰が離すか!こいつにはまだまだ使い道があるからな!」

使い道ってなんなのよ!

「てめぇは其処で黙ってみてるんだな!てめぇの母親が死んだ時みてえによ!」

 

「!?」

その言葉に、私の中で封じ込めてきた記憶が蘇ってくる。

まだ幼かった私を養うために、仕方なく身体を売っていた母。

そして、そんな母を犯しながら殺したこの男…

「キサマアッ!」

「ひっ!?そ、そんな声出しても無駄だ!こいつが」

「マキちゃん!」

横からかけられた声に、あいつの意識がそれた。

「ンン!」

そしてその隙に、マキさんが背中に蹴りを入れる。

「グアッ!くそっ、この阿婆擦れが!」

「…そこまでです」

マキさんが背中を蹴って気を反らせた事で、ようやく捕まえる事が出来た。

「やめろ、離せ、離しやがれ!」

「マキちゃん!大丈夫!?」

「ンンン、ンンン!」

隣から聞こえた声に、少しだけ冷静さが戻ってくる。

「貴様にあの場所は温かったようですね」

「くそっ、あと少しだったのによ!またか、また俺を殺すのか!」

「ええ、殺します。斬った刺したは当たり前、焼いて潰して煮て揚げて、食わせて沈めて腐らせて。私の気がすむまで永遠に殺し続けます」

 

 

 

「私の気がすむまで永遠に殺し続けます」

物凄い殺気に、私達さえも動きが固まる。

向けられた本人は、すでに気絶して縛られている。

「さてマキさん、今日は本当に申し訳ありませんでした」

「えっ?」

「えっと、なんで鬼灯様が謝るんですか?マキちゃんが拐われたのは別に鬼灯様のせいじゃ」

「いえ、今回の事は確かに私の不手際によるものなのです」

「不手際って、亡者は地獄の管轄ですよね?なら、別に鬼灯様だけのせいじゃないじゃないですか」

ひょっとして管理責任ってやつのことかな?

「そうではないのです。あの亡者達に関しては地獄に関係しない存在なのです。私に全責任があるのです」

「そうなんですか?」

「ええ。そうなのです」

それだけ言うと、鬼灯様は口を閉ざす。

…うう、またしても沈黙が…

「じゃ、じゃあ私は他の皆に見つかったことを報告してきますね。鬼灯様、マキちゃんのことお願いしますね!」

「ちょ、ミキちゃん?!」

「じゃね~」

ほんとに帰っちゃったよ!

「では、私たちも帰りましょうか。送ります」

「あ、ありがとうございます」

 

帰り道。沈黙に耐えられなくなった私は、鬼灯様にあのことを聞いてみた。

「あの、鬼灯様。あの亡者、鬼灯様のことを丁って…」

「ああ、簡単なことです。あいつは私が人間だったころを知っていたのです」

「あの時の、ですか」

「そうです。特にあの男は私の母を殺した男であり、私が手にかけた最初の相手でもあります」

そう言われて、私は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った。

「ごめんなさい鬼灯様。聞いてはいけない事を」

「いえ、マキさんには以前恥ずかしいことを聞いていただきましたから。今更ですよ」

「そうですか」

「ええ、だから気にすることはありません」

鬼灯様…

「しかし本当、あなたに怪我がなくてよかったです」

そういいながらわずかに微笑む鬼灯様、ほんの少しだけ可愛く見えたのだった。

 

 

 

「ふう…」

大浴場の湯船につかりながら、今日の出来事を思い返す。

今日の誘拐騒ぎはおかしい所がいくつかあった。

あいつが持っていたナイフ、拘束に使われていたロープ、さらには脱走経路…

あのまま走って行けば、確かに焦熱地獄から脱走されていただろう。

「手に入らないもの、手に入らない情報。さらには見え隠れする黒幕らしき存在…」

「お、なんだ?今日の話か?」

「烏頭さん、それに蓬さん。いったいいつの間に?」

「いやいつの間にじゃないよ。鬼灯が考え事で俺たちに気づかなかっただけだよ」

「おやそうでしたか」

いけませんね、考えることに集中しすぎてましたか。

「すみません。それで、お二人はもう今日の話をご存知なのですか」

「まあある程度は聞いているよ。何でも誘拐されたピーチ・マキを助けたんだって?」

「んで、彼女の恋人になったって?」

「はあ…、そんなことあるわけないじゃないですか」

「またまたぁ、実は気になってるんだろ?」

「ありません」

まったくこいつは。

蓬さんも隣で呆れているじゃないですか。

「本当にか?付き合うことは絶対に無いと言えるか?」

「ええ、絶対に付き合うことは……」

絶対に……?

「もういいだろ烏頭。そろそろあがろうぜ」

「なんだよ、しゃーねーな。んじゃ、俺たちはそろそろ行くぜ」

「私はもう少しゆっくりしていきます」

なぜ、私は即断できなかったのか?

いつしか私は、その事に思考を巡らせていた。



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失言が導くは

notシリアス
yesコメディ


~???~

 

とある薄暗い一室にて、二人の人影が何事かを話し合っていた。

「失敗か」

「申し訳ありません……様」

「まぁいい。どうせ探りと嫌がらせがメインだったんだ。それに、」

「それに?」

「簡単に終わったらつまらない、だろ?」

 

 

 

~閻魔庁 審判の間~

 

裁判が終わって書類整理をしていたら、鬼灯君が何かを眺めていた。

「黒いローブの人物で顔は不明、声から性別はおそらくは男。会話内容から、私に何らかの個人的な恨みがある、ある程度以上の情報収集能力の持ち主か…」

「鬼灯くん、それって先日の事件の?」

「はい。奴らから引き出した情報とプロファイリングによって出した結論です」

「そうなんだ。でも、それだけで犯人を特定できるもんなの?」

「普通は無理ですね。該当者は三桁はいます。オマケにこの事で烏天狗警察は動いてもらえそうにありませんし」

「そうなんだ。大変だねぇ」

「いえ、そうでもありません。犯人に目星はついていますから」

え、そうなの?

「大王もご存知でしょう。あの方ですよ」

「あの方?」

「ほら、以前『なんであの世の統治者が母上じゃないんだ!』とか『どうして母上が補佐官を辞めさせられるんだ!』とか言ってきた方ですよ」

「ああ、スサノオさんね」

確かに個人的な恨みはあるよねぇ。

「厄介だねぇ。あの人何人か部下も居るから、そっちも警戒しなきゃなんないしさ」

「ええ、本当にそうですね。それよりも大王、書類はできましたか?」

「え、あ、ちょ、ちょっと待ってね。すぐに終わらせるから」

「はぁ。もうすぐ唐瓜さんたちが来ますから、彼らに渡してください。私は私でそろそろ視察に行かなければなりませんので」

「わかったよ。ごめんね鬼灯君」

「いえ、では失礼します」

鬼灯君が退席して、こっそりとため息をつく。

「やっぱり少し丸くなってるよね。それもこれもピーチ・マキちゃんのおかげかな?」

 

 

 

「鬼灯様~、書類もって来ました~」

「おい馬鹿、そこはお持ちしましただろ!」

まったく、少しは敬語を使えよな。

「ああ、ご苦労様。そこにおいといてくれるかな?」

「あれ?鬼灯様はいらっしゃらないんですか?」

「さっき視察に出掛けたんだよ。あ、これ終わったから持ってってくれる?」

「そうなんですか?残念だな~」

「わかりました」

鬼灯様は視察に行ったのか。惜しかったな、もう少し早く来てればついていけたのに。

「それはそうと二人とも、ちょっといいかな?」

「あ、はい、なんでしょう?」

「最近の鬼灯君って、少し丸くなったと思わない?」

「あ~、確かになってますね」

「俺もそう思います」

お香さんの話だと、厳しい時は相変わらず厳しいけど、それ以外では愛想が出てきたらしいもんな。

すんげぇ解りづらいけど。

「二人は理由知ってる?わしの予想だと恋人でも出来たんじゃないかなって思ってるんだけど」

「恋人ですか?」

『あの』鬼灯様に恋人?

……………だめだ、全然想像できない。

「俺はあるとおもうな。鬼灯様の周りって結構女の人いるし」

「たとえば?」

「お香さんとか?」

「いやいやいや、それはないと思うぞ。鬼灯様とお香さんに何かあったらわかるはずだし!

 

……何引いてるんだよ茄子」

「唐瓜、必死過ぎてちょっと怖い」

「今の言葉、ちょっとストーカーっぽいから気を付けなよ?」

ほっといてください大王。

「まあいいや。んじゃ唐瓜は誰だと思う?」

「うーん?」

考えてはみるけど、やっぱり思いつかない。

「まあ、いくらなんでも座敷わらしの二人はないと思うな。鬼灯様ロリコンじゃないし」

「そりゃそうだ」

 

 

 

後日、

「ロリじゃない」ゲシッ

「訂正しろ」ゴスッ

「ロリじゃない」ガスッ

「訂正しろ」ドゴッ

「鬼灯様は私達の婿」ゴガッ

「覚えとけ」ゲスッ

「痛っ、ちょっ、足蹴らないで痛いから!」

「ねえ唐瓜、今何かさらっと凄いこと言ってなかった?」

「そんな事より助けてくれよ茄子!」



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