ターニャちゃんが体を売る話 (セイラム)
しおりを挟む

プロローグ

 異世界に転生したターニャ・デグレチャフを悩ませる問題は数多い。

 

 性別も、時代も、文化も違う。

 そんな世界で一生を過ごす羽目に陥った彼……彼女の思考は常に稼働していた。

 

 ただでさえ現代日本は独特なのだ。

 劣悪な治安と衛生、食文化に慣れるまでは地獄のような日々だった。

 

 戦争など、知識の中にしかない遺物である。

 しかも魔法などという、空想上の産物までこちらの世界には実在しているとは。 

 

 徴兵で一般兵として使い潰されるのは御免だ。

 だから早期に志願し一日でも早く出世してやる。

 

 使えるものはなんでも使う。

 数十年の人生経験、会社勤めで培ったコミュニケーション能力。

 全てを駆使し、目指すは後方勤務で安全なエリートコース。

 

 

 

 だが、彼女は失念していた。

 いくら中身が成熟していようとも、周囲からの扱いは齢一桁の幼女である。

 成人男子が悲鳴を上げる軍学校で文武両道成績優秀など、傍目から見ればどうなるか。

 

 ターニャがどれだけ幼女の姿を利用し周囲からの同情を買おうとしても無駄だった。

 死神や悪魔に例えられる畏怖の対象が、さり気なく己の体を主張するのだ。

 軍内部からの反応は当然、こうなる。

 

(この年で女の体を武器にするとは……!)

 

 ターニャ自身は無論小児性愛者ではない。

 故に、己の体に欲情する人間が一定数存在するという発想に至ることができなかった。

 

 だが、誤解した上官はターニャをそういう目で見ているのだ。

 同意の上だと勘違いし、さり気なくスキンシップの傍らに胸や尻へと手が伸びる。

 

 そしてターニャ自身も、長年のサラリーマン生活が災いした。

 上司に逆らうという発想が、そもそも存在しなかったのだ。

 

 内心で唾を吐きつつも、セクハラを甘受する。

 そしてその反応に、上官はますます誤解する。

 

 すれ違いが大きなすれ違いを誘発し、いつしか誤解は周知の事実に改変される。

 

(どうして、どうしてこうなった?!)

 

 ターニャがそれに気づく頃には、すでに修正など不可能だった。

 実利があるだけに、ターニャ自身が迷っていたというのも大きい。

 

 様々な優遇は、幼女の体で軍に入ったターニャへの同情だと思っていた。

 まさか知らず知らずのうちに体を売っていたなどとは。

 

(いや、だが……)

 

 “プレゼント”されたチョコレートを齧り、ターニャは逡巡する。

 ようはリスクとリターンの問題だ。

 

 セクハラに耐えれば、今後も様々な優遇が待っている。

 代用ではないコーヒーやチョコレート、優先的な休暇に暖かい食事。

 それは耐え難い甘美な欲求だった。

 

(そうだ、胸や尻を触らせるだけでこれだけの配当。迷う必要などないではないか!)

 

 前世では利用したことはないが、ターニャに娼婦等の職業を否定する気は無い。

 己の武器を使用し給金を得る。なにも恥じることなどない。

 

 そしてターニャは己の武器を再確認した。

 年齢以上に小さな、骨が浮きかけるほどに細く膨らみに乏しい体。

 女としての魅力などないと考えていたが、こんな肉体にも需要はあるということだ。

 

 まして軍は男社会。

 女に飢えた軍人たちは、妥協という言葉も知っている。

 

 いける。

 そうターニャは確信した。

 

 女の武器を利用し、エリートコースへ一直線だ。

 少々汚い気もするが、己の欲望には逆らえない。

 

 ターニャの野望が、この日から本格的に始動した。

 

 

 

 ……そして数週間後。

 そこには日々エスカレートし続ける男共の性的欲求に悲鳴を上げるターニャの姿があった。

 

 胸や尻を揉まれる程度と高を括っていたターニャの甘い考えは、あっという間に打ち砕かれることとなるのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小児性愛者との遭遇

 秘密を秘密のまま保つのは、想像以上に難易度が高い。

 一部上官の間でのみ交わされていたターニャの噂も、いずれ他者の耳に届くのは当然の事実とも言える。

 

 故に、ターニャは防ぐのではなく管理を行った。

 明確な制度を決め、上官以外の……例えば同期にも体を売る。

 

 命令ではない、要望には対価を払えば答える。

 そうしてターニャは顧客を増やし、軍学校での生活を充実させていった。

 

 今日もターニャは、複数の客に対応していた。

 個室で服を脱ぎ、裸体を男に晒す。

 

 こんな体のどこに興奮できるのかターニャには理解できなかったが、配給券が手に入るのなら文句を言う気にもならない。

 指示された通りに扇情的なポーズを取り、男の劣情を煽る。

 十数分後、軍服を再着用したターニャは渡された報酬を手に部屋を出る。

 

「おや、奇遇だな」

 

 そこで、不意に遭遇した相手に慌てて敬礼の姿勢。

 相手は上官で、かつ上客でもある。

 

 ターニャは作り笑顔を浮かべ、普段より高い声を作りしばし談笑する。

 自然な流れで上官の部屋に誘われ、ターニャは美味いコーヒーが飲めると内心でほくそ笑んだ。

 

 

 

 相手の話を聞き、適度に相槌を返す。

 営業トークは慣れたものだ。

 

 本物のコーヒーとケーキという贅沢を味わい、ターニャは労働に邁進する。

 滅多に味わえない幸福に頬を緩ませると、上官の反応も色良くなった。

 

 これぞウィンウィンの関係。

 だと、思っていたのだが。

 

「……その、この手はなんでしょうか」

 

 困惑の声を上げるターニャ。

 いつの間にか上官はターニャの背後から両肩に手を置いていた。

 

 いや、ターニャも理解はしていた。

 だが、いざその時ともなると躊躇いが出る。

 

 ゆっくりと、上官の喉が動く。

 発せられた言葉は想定通りで、ターニャに拒否権はない。

 

「……上官の命とあらば、断れるはずもありません」

 

 本意ではないが、仕方ない。

 そうした嫌味を込めた一言も、残念ながら相手には伝わっていない様子だった。

 

 雰囲気を大切にしている、慣れた言葉だ。

 そんな都合のいい勘違いに、上官は唇を歪ませた。

 

「んっ……」

 

 肩に置かれた右手が、滑るようにターニャの肌を伝う。

 服の中へと潜り込んだ右手は胸部で停止し、ターニャの乳房を刺激していく。

 

 元が男だとか女の体だとかは関係なく、息を荒げた中年に肌を触られているという事実がターニャの生理的嫌悪感を増幅させる。

 サラリーマン時代にセクハラ被害を涙ながらに訴えてきた部下の気持ちが、ターニャは今になってようやく心から理解できた。

 

 意識的に呼吸を深くし、意志を持たぬ人形であれと心に命じる。

 相手が満足するまで耐えるだけだと、心中で繰り返す。

 

 幸い、上官は幼女の小さな乳房に夢中だ。

 喘ぎ声の演技をする必要もなく、顔を醜悪に歪ませながら息を荒げている。

 

 十数分の時間が経過し、ようやく上官はターニャの肌から手を放す。

 軍服越しにもわかる股間の膨らみを一瞥し、ターニャは静かに席を立った。

 

「どうも、ご馳走さまでした。軍に身を置くとはいえ女の身ですからな、個室で男と二人ではどうも緊張してしまいます。気の利いた対応が出来ず、申し訳ございません」

 

 あえて平坦に、心にもない台詞を吐く。

 見返りがあるうちは黙認するが、それを怠ればどうなるかは分かっているなと。

 そんな脅迫を言葉の裏にたっぷりと滲ませて、ターニャは退出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人間としての本能

 ターニャの人生はおおむね充実していた。

 幼女の外見を最大限に利用し、数少ない娯楽を堪能する。

 

 廃棄予定の衣服を提供すれば、山のような配給券が手に入る。

 下着一枚が酒に代わる姿など、現代の錬金術のようだとターニャは笑う。

 

 多少の生理的嫌悪感はあるが、報酬は破格のものだ。

 ならば問題はない。

 

 そのはずだったのだが。

 

「くそ、どうなっている……」

 

 日も変わった深夜。

 ベッドの中でターニャは一人頭を抱えていた。

 

 明日も早朝から講義がある。

 さっさと眠り体と心を休めるべきだというのに。

 

「眠れない……!」

 

 そう、ターニャは神経の興奮を抑えられていない。

 呼吸は浅く、頬がうっすらと赤くなった姿は風邪でも引いたかのようだ。

 

 だが、ターニャはいたって健康である。

 単に、興奮しているというだけで。

 

 幼女の身になってから、性的興奮を覚えたことはなかった。

 しかしここ最近の胸や尻への刺激の連続が、ターニャを一足早く女にしていたのだ。

 

 認めたくはないが、ターニャ自身も理解した。

 今時分は雌のように盛っているのだと。

 

「とにかく、鎮めねば」

 

 ターニャはベッドから出ると、机の下に隠していた道具を取り出した。

 それは男性器を模した、率直に言えばバイブだ。

 

 ヌードの撮影会を行った際に持たされた物だが、まさか本当に使用するとは。

 数分の葛藤の後、意を決したようにターニャはその場に座り込む。

 

「んっ……」

 

 服を脱ぎ、露わになった己の秘部。

 ターニャはそこにバイブを当て、ゆっくりと挿入する。

 

 すでに濡れだしていた秘部は、大した抵抗もなくバイブを飲み込みだす。

 初めて感じる、体内に異物が入り込む感覚。

 喉から小さく声が漏れ、ターニャは慌てて口元を枕で塞いだ。

 

 異物が入ってくる嫌悪感は、次第に快楽へと変換されていく。

 時間をかけじっくりと開発されていた幼女の体は、ターニャの予想以上に快楽を求めていた。

 

「ん、あっ、あぁっ……!」

 

 次第に声量は増し、バイブを握る右手に力が込められていく。

 前後にバイブを動かす度、ぐちょぐちょという水音が部屋に木霊した。

 

 もう止まらない。

 ターニャは自分の精神が男であることも忘れ、女の快楽に身を委ねる。

 

「あ、あっ、ああっ、ん、いぃっ」

 

 小さな膣一杯にバイブをねじ込む。

 細く小さな形状とはいえ、幼女の体には大きすぎるそれは、半分程度しか入ってはいない。

 だが、それでもターニャを喘がせるには十二分だった。

 

「───ッ!」

 

 声にならない声が、ターニャの喉から溢れ出る。

 硬直した体が三度ほどビクビクと痙攣し、一気に脱力した。

 

「ハァ、ハァ……!」

 

 バイブを突き刺したまま、ターニャは陶酔感に溺れる。

 そしてそのまま朝を迎え、多大な自己嫌悪に陥るのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロパガンダのその裏で

 ターニャ・デグレチャフは、襲い掛かる吐き気と嫌悪感を飲み込んで任務を全うした。

 幼女の外見を利用すると決意したものの、任意と強制では段違いだ。

 

 自国のプロパガンダ戦略の一種として下された、宣伝任務。

 それがターニャに下された命令だった。

 

 要するに綺麗なドレスで飾り立てた女の姿を写真に残すということ。

 体のいい偶像としてのアイドル活動を強要されたターニャの胃は既に限界だ。

 

 人形以外が着ている所を見たことが無いようなフリフリのドレス。

 山のように積まれた化粧道具。

 

 担当の女性は目を輝かせてターニャを必要以上に飾り立てた。

 抵抗も出来ず死んだ目で対応するターニャはまさに人形のようだった。

 

 フラッシュの残像が目に焼き付いて離れない。

 とっとと衣服を脱ぎ捨ててベッドで眠りたいターニャだが、そうもいかない事情がある。

 

 撮影を終えて、ターニャは廊下を歩き、二つ隣の部屋をノックする。

 入れ、と許可が聞こえると同時に扉を開き、再び微笑みの仮面を顔に張り付ける。

 

「申し訳ありません、撮影が予想以上に長引いてしまって」

 

 媚びたように高い声が己の喉から出ているという現実に、吐き気が沸き上がる。

 室内で待機していたのは三名の小児性愛者。

 全員がターニャより遥か上の立場と権力を持っている以上、拒否権など存在しない。

 

(クソッ、サービス残業などこの世で最も醜悪な風習だッ!)

 

 山のような罵倒を心の中で喚き散らしながら、ターニャは再び微笑んだ。

 

 

 

 一応建前としては、軍内部に記録する用の撮影という話になっている。

 だがここには撮影機材やカメラマンの影も形も存在しない。

 

 あるのは合計六つの醜悪な瞳だけ。

 それら全てがターニャへと注がれている。

 

 指示に従い、ターニャは下着を脱ぎ捨てる。

 ドレススカートの中に両手を入れ、純白のショーツを脱いで地面へ放る。

 

 羞恥は無い。

 ただ、幼女の痴態にだらしなく鼻の下を伸ばす中年男の視線が、本能的に気持ち悪い。

 

 幸い、戸惑う仕草や表情は向こうが勝手に勘違いしてくれている。

 恥じらう姿も素晴らしいと、鼻息を荒げているのがターニャには滑稽だった。

 

 ターニャはスカートを両手で捲り上げる。

 下着を脱ぎ捨てた以上、当然秘部は男たちに丸見えだ。

 

 男たちはターニャに近づくと、露になった太股を撫でまわした。

 人形を検分するかのような仕草に、ターニャの全身に怖気が走る。

 鳥肌が出てはいないかと心配するが、どうやら嫌悪感はターニャの内心に留まっているようだった。

 

 動かないように、と命じられればその通りに我慢するしかない。

 プルプルと震える両手でスカートの裾を掴んだまま、ターニャは耐え続ける。

 

(心を無にしろ……私は人形、人形だ……!)

 

 張り付いた微笑みは、口元がヒクヒクと動いて崩れそうだ。

 必死に堪えるターニャを余所に、男たちは幼女の肉体を堪能していた。

 

 太股を撫でていた手は、尻や胸、脇や首筋へと移動していた。

 起伏の乏しい肉体を、男たちは丹念に撫でまわす。

 

「んっ、あっ……!」

 

 乳首や首筋を刺激され、ターニャの喉からは小刻みに声が漏れ出ていた。

 顔を赤くしながら声が出ないよう耐えるターニャの姿は、小児性愛者である男たちをより強く興奮させる。

 

 実際は怒りに震えているのだとは、本人以外は誰も知らない。

 

「ひっ?!」

 

 ゾクリとした感触に、ターニャの喉から悲鳴が上がる。

 

(舐め、舐めたか今?!)

 

 内腿が濡れた感触が、どこまでもターニャの精神を攻撃する。

 十キロの装備を背負っての行軍訓練は地獄のように辛かったが、コレに比べればまるで天国のようだったとターニャは心中で叫ぶ。

 

 ああ全く、理解に苦しむ。

 こんな幼女の体のどこがよいのだと、ターニャの心は毒を吐き続けていた。

 

 

 

 時間にしておよそ三十分。

 たっぷりと弄ばれたターニャは自室に帰ると死体のようにベットへと倒れ込んだ。

 

 疲れた。

 肉体もそうだが、精神がこれでもかと凌辱された。

 

 引き換えに手に入れた高官とのコネクションを思い、沈んだ心を何とか持ち上げる。

 そして、ターニャは一つの可能性に思い至った。

 

「知り合いを紹介すると言われ喜んだが、小児性愛者の知り合いは小児性愛者なのでは……?」

 

 強まるコネと比例してセクハラが頻度を増すと宣言された気分に陥り、ターニャは叫んだ。

 獣の咆哮に似たそれは、ストレスを多少は解消したらしい。

 ぱたりとターニャは倒れ、寝息を立てた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

脱衣ギャンブル

 ターニャにとっては幸いなことに、偶像利用のプロパガンダ戦略は程なくして凍結された。

 帝国は幼い少年兵……もとい、幼女兵が世間からどういった目で見られるのかということにようやく思い至ったらしい。

 

 いつも上は失態に気付くのが遅いのだと、コーヒーを啜りながらターニャは一人吐き捨てた。

 心を癒すはずのカフェインも、これだけ心労が続いては効果が薄い。

 

 ターニャはストレスの解消を必要としていた。

 少々気の毒ではあるが、生贄が必要だ。

 残ったコーヒーを一息に飲み干すと、ターニャは席を立つ。

 

 

 

 軍人は、とにかく娯楽に飢える。

 戦時中であれば尚更だ。

 

 士官学生であってもそれは変わらない。

 自由時間には定期的に賭け事の集まりが作られることをターニャは知っていた。

 

 これまでもターニャは度々参加しては、配給のチョコレートを同期から巻き上げている。

 負ければ服でも脱いでやると言えば、男共は目の色を変えて熱中する。

 冷静さを失った相手など、ターニャの敵ではなかった。

 

 の、だが。

 

(ふざけるなよ、私は呪われているのか?!)

 

 ギャンブルの内容はポーカーだ。

 配られたカードを利用し、虚実を巧みに使い分ける。

 推察と押し引きはターニャの得意分野だ。

 

 だが、この日のターニャは凄まじく運が悪かった。

 配られるカードはイカサマを疑うほどに弱い。

 今日はツイていると、同期の笑い声が輪唱のように部屋へ響く。

 

 これだけ差があれば戦略など無意味。

 一度も勝つことなく、ターニャは手持ちのチップを吐き出した。

 

「……仕方あるまい。約束だ」

 

 まずは一枚。

 ターニャは着ていた上着を脱ぎ捨てた。

 飾り気が皆無の白いブラジャーが露になり、同期たちの歓声が上がる。

 

 配給券の代わりに脱いだだけ、ターニャは損をしていない。

 そう自分に言い聞かせるターニャだが。

 

 数十分後、そこには全裸に剥かれたターニャの姿があった。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 上着、ズボン、ブラジャー、パンツ。

 都合四回、ターニャは大敗北を喫した。

 呪われたかのような運の悪さは一切変わることが無かった。

 

 同期たちは、これは神の恵みだと歓声を上げてターニャを凝視している。

 鼻息は荒く、股間の膨らみは服越しからでも丸分かりだった。

 

 上官たち中年親父の下卑た笑みよりはまだマシだが、それでも抵抗感は強い。

 ターニャは右手で両胸、左手で股間部分を隠しながら顔を赤く染めている。

 

「このままでは終わらんぞ……早く次のカードを配れ!」

 

 完全にターニャは冷静さを失っている。

 脳内は羞恥と屈辱で埋め尽くされていた。

 

「次に負けたら、一位の奴の願いを叶えてやろうとも!」

 

 だから、ターニャはそんな約束を勢いでしてしまい。

 お約束のように負けたのだった。

 

 

 

 幸いだったのは、一位を取った男が奥手な人間だったことだろう。

 これで本番行為でも強要されていれば、どうなっていたことか。

 

「一度だけ、一度だけだぞ……!」

 

 ターニャは男のズボンを下ろすと、露出された男根へと手を伸ばす。

 手淫奉仕。それが勝者の願いだった。

 

 男の身であった頃は見慣れたものだが、自分の物でないというだけで抵抗感は段違いだ。

 男だろうが女だろうが、他人の性器など好き好んで触れたいと思うようなものではない。

 

「うっ……」

 

 柔らかく固い感触が、ターニャの手に広がる。

 指が動くたびに生き物のように脈動する様に、ターニャは顔をしかめた。

 

 さっさと終わらせよう。

 そう決意し、ターニャは右手で男の男根を扱いていく。

 

 まったく、なにが気持ちいいのやら。

 これでは自慰のほうがマシではないのか。

 

 そんなターニャの心中とは裏腹に、男は天国へ上っているかのような幸福を感じていた。

 しかめっ面の幼女が全裸で己の男根を扱いているという状況を、男は堪能している。

 

(まったく、世の中には奇特な性的趣向を持つ者がいるものだな……)

 

 男が射精に達するまで、そう時間はかからなかった。

 

「――ッ!」

 

 勢いよく飛び出した白濁液はターニャの手と胸を汚す。

 その熱さに驚き、ターニャは反射的にのけ反った。

 

「熱い、臭い、気色が悪い……最悪の気分だ……」

 

 差し出されたタオルをふんだくるように取り、肌に付着した白濁液を拭き取っていく。

 また一歩、上りたくもない階段を上った気がしてターニャはため息をついた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

行軍訓練の一幕

 帝国軍は能力主義だ。

 老若男女問わず、才能を持ち結果を出す者を重宝する。

 

 だからこそターニャのような幼女でも適切にその力を評価されている。

 良くも悪くも、“幼い女だから”という区別が無いのだ。

 

 そう、良くも悪くも。

 

(クソ、これは児童虐待の一種ではないのか?!)

 

 総重量十キログラムを超える装備を抱えての行軍訓練。

 どう考えても幼子に背負わせる重さではないが、帝国は男女平等である。

 

 倍近い年齢の男が息を荒げる訓練に、ターニャは必死で耐えていた。

 行軍訓練で一人遅れるなど、評価がどれだけ下がるか分かったものではない。

 

 尚、幼女の身で軍の訓練を完遂する様がどれだけ異常なのかについては、ターニャは把握してはいなかった。

 こうしてまた、ターニャ・デグレチャフに畏怖を抱く帝国軍人が増えていく。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 汗と泥に塗れた軍服を脱ぎ捨て、ターニャは一息ついた。

 男女を同じ場所で眠らせるという問題を解消するため、ターニャは他の士官とは違い民間の宿泊施設を利用することが許されている。

 

 男性士官が塹壕の中で身を震わせている中、清潔なベッドとパジャマで眠れるというのは数少ないターニャが優遇されている部分だ。

 

「……ん?」

 

 窓の外から視線を感じ、視線だけをそちらに寄せる。

 そこには数名の男性士官が虫のように張り付いていた。

 

(疲れている身で何を……いや、これも男の性か)

 

 つい十数年前までは己も男だったことを棚に上げ、ため息を一つ。

 注意するのも馬鹿馬鹿しいと、ターニャは気づかない振りをして着替えを続行した。

 

 濡れタオルのように汗が染み込んだ下着を脱ぎ、全裸になる。

 濡らしたタオルで汗と泥を拭き取り、気休めとはいえ清潔な体を取り戻す。

 

 用意されていた新しい下着とパジャマを身に纏い、後は眠るだけだ。

 と、そこでターニャは思考した。

 

 私だけこのような厚遇を受けている状況を、外で眠る士官たちはどう感じているのか。

 無駄な恨みや妬みを買いたくはない、と。

 

 

 

「白湯をどうぞ、体が温まりますよ」

 

 翌日。

 ターニャは営業スマイルを体に受かべると、塹壕の中で起床した士官たちへ白湯を配っていく。

 

 本人にしてみれば恩を売る以外の意図はない。

 そもそも誰も恨みや妬みを抱いてなどいないのだが、残念ながらターニャは読心術を身に着けてはいなかった。

 

 行軍訓練中もさり気なく他者を気遣う発言を行い、点数稼ぎに邁進する。

 ここにいるのは将来ターニャの上司になるかもしれないエリートたち。

 今のうちに恩を売っておいて損はない。

 

 だから、着替えを覗いていた士官たちにも笑顔で微笑む。

 

「私も男を知らぬ生娘ではないつもりです。娯楽も癒しもない訓練中であれば仕方ないかと」

 

 そんな口調で、ターニャは裸のまま男たちに向き合う。

 

「こんな貧相な体であれば、ご自由にご覧ください」

 

 男たちは己の股間を弄り、自慰を開始した。

 ターニャが元居た世界で、見抜きと表現されるものだ。

 

(うっ……)

 

 内心で抱いた嫌悪感を隠すため、ターニャは両手で顔を隠す。

 他者からは、初心な乙女が恥ずかしがる様子に見えたのだろう。

 下ろされたズボンから飛び出た男根は一つ残らずそそり立っていた。

 

 男性士官たちは、ターニャの裸体を凝視しながら己の一物を扱き続ける。

 ターニャは両手で顔を隠している以上、その胸も秘部も、すべてが丸見えだ。

 

 傍から見れば、ターニャは気恥ずかしそうに微笑む少女だ。

 いくら心中で幼女の全裸に興奮する変態へ毒を吐いていたとしても、誰に伝わるわけでもない。

 

 すみません。

 ごめんなさい。

 ありがとうございます。

 

 謝罪や感謝の言葉を述べながら、男たちは射精した。

 本能を発散した彼らは、気恥ずかしそうに去っていく。

 

(少しやり過ぎたか……? いや、未来のためにこの位は我慢しなければ!)

 

 ズレた価値観と基準の狂ったハードルを指摘できる者は誰もいない。

 性欲処理まで買って出る女神のようだと、ターニャはまた一つ伝説を増やしていたのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

対尋問訓練

 行軍訓練を終えたターニャだが、その表情は未だ暗い。

 上層部から届いた連絡は、休暇を楽しむターニャの希望を根こそぎ攫っていた。

 

 行軍訓練において、ターニャは全てにおいて高い成績を残している。

 ただ一つ、参加していない訓練を除いて。

 

 対尋問訓練。

 捕虜として捕まった場合の尋問を想定した訓練だが、ターニャはこれを受けていない。

 

 男女平等を掲げる帝国も、流石に男の群れの中で幼女を裸に剥くのはどうなのだと考える良心は持ち合わせていたのだった。

 

 だが、それを口実に呼び出されるターニャからすればどちらにせよ同じことだった。

 

 

 

 深夜の訓練施設。

 ごく一部の上官が取り囲む中心で、ターニャは縛られている。

 

 “自主的”に訓練へ参加したターニャは“自分の意思”で服を全て脱ぎ捨て、“訓練の一環”として拘束されていた。

 両腕は後ろ手に縛られ、両足は正座の姿勢で固定されている。

 口には枷が嵌め込まれ、動くことはおろか話すこともできない有様だ。

 

(訓練であれば、仕方ないと割り切ることも出来るのだが……)

 

 周囲の男共の視線はどう見ても教官が指導を行うようなものではない。

 下卑た笑みと荒い鼻息は嫌気が差すほどターニャが見てきたものだ。

 

 尋問訓練で最も辛いのは人間扱いされないことだ。

 絶え間ない罵倒で徹底的に人格を攻撃され、人としての尊厳を削り取られる。

 

 肉体ではなく精神を鍛える訓練。

 の、はずなのだが。

 

 形式的な罵倒こそ飛んでくるものの、子供が猿真似をしているかのような内容では効果はない。

 やはり、とターニャが心中で唾を吐き捨てると同時に、ターニャの柔肌へと手が伸びる。

 

「――んっ……!」

 

 暴力ではない。

 撫でまわすような手つきで全身を弄られ、ターニャの喉から声が漏れた。

 

 感じたのではなく反射的な嫌悪から来るものだったが、上官たちは都合よく解釈したのか醜悪な笑みを一層深くしている。

 

(女性が捕虜となればこうした性的な目に会うこともある、だと? ふざけるなよ、いったい何世紀前の話をしているんだこいつらは!)

 

 怒りに震え、顔を赤くするターニャ。

 そんな様子にますます勘違いを深める男は軽薄な口調のままターニャの胸を両手で揉みしだく。

 

「う、うぅっ……!」

 

 性感帯を直接刺激されれば、感じるのは自然の摂理だ。

 そう自分に言い訳をしながら、ターニャは沸き上がる快楽に反抗を続けている。

 

 だが、太股に垂れだした液体の感触にターニャは己が身を呪った。

 数瞬遅れで男たちはそれに気づくと、股から溢れ出るそれを指で掬い取る。

 

 全裸で縛られている今の状況で、ターニャは性的な興奮を感じている。

 それを知った男たちの手は、より激しくターニャを愛撫し始めた。

 

「んぅ、んっ、ぉッ……!」

 

 枷を嵌められた口の端から、泡を吹くように涎が零れる。

 優しい、と言うよりは粘っこいと表現するのが適切だろうか。

 男たちの愛撫は撫でるように、延々と繰り返されている。

 

 全身を撫でていた手はいつしか性感帯のみを狙っている。

 秘部を擦られ、乳首を抓られることでターニャの快感はどんどん増していく。

 

「――ッ!」

 

 ビクン、とターニャの体が反り返る。

 絶頂を迎えたターニャの体は短く痙攣を繰り返し、力が抜けていく。

 

 小さな音を立ててターニャは突っ伏すように倒れる。

 股からは愛液ではない黄色の液体がチョロチョロと流れ出ていた。

 

 ターニャは絶頂に意識を失い、体だけが痙攣し反応している。

 その姿に上官たちは満足気な笑みを浮かべていた。

 

 そして訓練は終了し、ターニャの心には多大な羞恥心と殺意が渦巻くことになる。

 ターニャは出世への階段と同時に、死刑台へと歩を進めている感覚に囚われていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強制開発

 今日もターニャ・デグレチャフは上官に呼び出され、性的な要求を突き付けられている。

 最近になって要求の変態性が日に日に増していることに気付いたターニャは、あれこれと迂遠な理由付けで回避に尽力した。

 

 体はともかく、精神が持たない。

 疲弊した心でそう確信を抱いたターニャは、幼女の外見を最大限に利用した必死の懇願により肉体接触を控える約束を取り付けることに成功する。

 

「くっ、ふぅッ……!」

 

 だが、頻度はより一層増えた。

 借りを作ってしまったことを心底後悔しながら、今日もターニャの肉体は弄ばれている。

 

 ターニャは三名の上官に、己の秘部を見せつけている。

 身に纏う軍服は上だけで、下はショーツも脱ぎ捨てた裸の状態だ。

 

 秘部には細い鉄の棒が突き刺さっており、入りきらない半分ほどが秘部からぶら下がって見えている。

 重力に従って揺れ動く鉄の棒の動きに合わせ、ターニャの喉から苦悶の声が漏れ出ていた。

 

「ん、あぁっ、くぅぅッ……」

 

 両手で上着の裾をたくし上げ、ターニャは己の秘部を見せつける。

 指示に従っているだけとはいえ、紅潮した顔も性器も隠すことができないという今の状況はターニャにとって多大な精神的苦痛となっていた。

 

 快楽によって、全身の力が抜けていく。

 ターニャは必死に両の足へと力を籠め、直立の姿勢を保ち続ける。

 

 この姿勢で秘部を見せつけることが命令なのだ。

 快楽に負け膝でも付けば、罰と称して何をされるか分かったものではない。

 

「フゥー……フゥー……!」

 

 手のひらや顔面にじっとりと滲む汗。

 秘部に突き刺さる鉄の棒に愛液が伝い、水滴となって床に落ちる。

 

 生殺しのような時間は、ターニャが絶頂するまで続く。

 だが、ターニャの無為なプライドと無駄に強靭な精神が終わりの時を遠ざけ続けていた。

 

 

 

「ヒィ、あ、グゥッ……!」

 

 数時間が経過した。

 ターニャの両足は赤子のように震えている。

 足元には愛液の水溜まりが形成され、今も広がり続けている。

 

 カラン、と音を立て、鉄の棒がターニャの秘部から抜け落ちた。

 愛液で滑ったそれは、地面で跳ね転がる。

 

 即座に上官はターニャへ、抜け落ちた棒を戻すよう命令した。

 

「――ぐ、うぅッ……」

 

 己の手で挿入するという屈辱。

 それと同時に、この手を使えばいとも容易く自分は達することができるという誘惑がターニャの脳内を駆け巡る。

 

 すでにこのやりとりは五度目だ。

 そして、ターニャはついに限界を迎えていた。

 

「あ、あぁっ――」

 

 ターニャの手が、本能のままに動く。

 理性に反して、その手に持った棒で秘部をかき乱す。

 数時間快楽を貯め込んだ末の自慰は、瞬時にターニャを絶頂させた。

 

「――あ、ひ、グゥッ!」

 

 音を立てて愛液が噴射された。

 白目を剥いて快楽に身を任せるターニャの姿に、上官たちは満面の笑みを浮かべる。

 

 だが、約束通り指一本触れはしない。

 ターニャは己の意思で、男たちに秘部を見せつけながら自慰を行い絶頂したのだ。

 

「ひ、あ、あぁ……」

 

 秘部に棒を突き刺したまま、ターニャの体は痙攣を繰り返す。

 

 また明日。

 そう不吉な言葉を残し去っていく上官たちに目を向けることもなく、しばらくの間ターニャは解き放たれた快楽の渦に身を任せていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期的な展望とその成果

 ターニャ・デグレチャフは予定通りに士官学校を次席で卒業した。

 成績は優秀、愛国心もアピール済みとあれば文句の付けようもない。

 

 だから、賄賂が有効利用されたのはその後だ。

 危険な前線を嫌うターニャは今までのコネをフル活用し、後方勤務という安全を希望した。

 

 彼女を“利用”する上官らも、疑似娼婦が戦地で死ぬことを望んではいない。

 幼女を戦地に送るのに抵抗がある者も多い。

 想定よりも簡単に、ターニャは安息を手に入れた。

 

 だが、それは同時に多大な借りを作ったということでもある。

 過激になるだろう今後の要求を思えば、ターニャも手放しで喜ぶことはできなかった。

 

 

 

 実際、今もターニャへの調教は続いている。

 新たな職場への移行やその手続きで忙しいとアピールすれば、上官らの呼び出しはターニャの目論見通りに減少した。

 

 代わりに命令されたのがコレだった。

 ターニャの目の前には、パチンコ玉ほどの大きさがある複数の球が置かれていた。

 

 命令は簡潔だった。

 入れろ。そうすれば、一週間新たな命令はしないと約束すると。

 

 明確な利益まで目の前でちらつかされては、部下が逆らえるはずもない。

 ターニャは上官の目の前で下半身の衣服を脱ぎ、秘部を晒す。

 すでに何度もしてきた行為だ、今更この程度では赤面もしない。

 

「んっ、うぅっ……」

 

 一つずつ、球形の異物を己の体内へとねじ込んでいく。

 快楽や痛みより、体の中に異物が入り込むことへの嫌悪感の方が大きかった。

 

 股をM字に開き、目の前の相手に股間を突き出す。

 球が己の膣へと入っていく様を、上官はニヤニヤと眺めていた。

 

「くっ、うぅ……」

 

 一つ一つは小さいが、複数ともなれば幼女の狭い膣には辛い。

 最後の一つは無理矢理押し込んだせいで、ターニャの指は第二関節までが濡れていた。

 

「んっ、ふぅっ……!」

 

 快楽は薄い。

 だがターニャにとって、この程度のことで顔を歪める上官の顔は気持ち悪いし、この程度のことで濡れている自分の体は恨めしい。

 

 

 

 それから、数日は呼び出しが無い。

 約束は守られるだけ、まだ救いがあるとターニャは無理矢理に自分を励ました。

 

(しかし、これは……!)

 

 想定していた以上にキツイ。

 書類整理の仕事をしながら、ターニャは己の下腹部を抑えて蹲った。

 

 歩くだけで、膣内の玉が動き回る。

 あらゆる動作に快楽が付随する。

 他者に露見していないか、時折服越しに股を触る自分自身の手が自慰を行いそうになる。

 

 快楽自体は微細で、我慢は容易だった。

 だが、それが余計に辛い。

 いっそ絶頂してしまえば楽になるだろうが、己の手で果ててしまえばそれこそ変態の仲間入りだ。

 

「──ヒッ?!」

 

 背後から肩を叩かれ、ターニャは小さく悲鳴を上げる。

 蹲っていたターニャを見て心配したのだろう、振り返ると若い男が不安げな瞳を向けていた。

 

「あ、ああ。心配ない、少し疲れていたようだ……」

 

 当たり障りのない言葉で相手を追い返し、仕事を続行するターニャ。

 今ターニャに出来ることは、一刻も早く仕事を終わらせて私室に戻り、誰もいない場所で心を休ませることだけだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

提供するサービスの向上

 最近、ターニャ・デグレチャフを“使用”する客の数が増加している。

 軍内部で公然の秘密と化している幼女の売春行為は、すでに利用していない男性士官の方が少数派と成り果てる始末である。

 

 理由は明白。

 ターニャが提供するサービスにより過激なものが追加されたからだ。

 

 今までは肉体接触は御法度で、ターニャのストリップを見ながら自慰を行う程度だった。

 だが今は、軽度の性的奉仕もターニャは認めていた。

 無論、相応に対価は必要だが。

 

 

 

「……酷い香りだな」

 

 眼前に突きつけられた肉棒の匂いに、ターニャは露骨に顔を顰めた。

 汗や垢の混ざった肉棒は、悪臭をターニャの鼻先へと届けている。

 

 嫌悪感を丸出しにして、ターニャは手淫を開始する。

 右手で肉棒を扱きながら、亀頭を親指で撫でまわす。

 

 男のくぐもった呻き声と共に、肉棒は固くそそり立つ。

 ターニャの指先が動くたび、ピクピクと脈打つ肉棒。

 

 愛想を見せず、ターニャは事務的に肉棒を刺激する。

 奉仕という単語からはかけ離れた様子だが、なぜか客からの評判は上々だ。

 幼女に興奮する小児性愛者の思考回路を詳しく考えると気が滅入りそうだったので、ターニャは面倒が無くていいと思考を打ち切ったが。

 

「――ッ!」

 

 悲鳴に似た声と同時に、男は射精する。

 肉棒を包み込むようにしていたターニャの右手が白く汚れた。

 

「終わりだな」

 

 あらかじめ用意していた濡れタオルで手を拭き、立ち去ろうとするターニャ。

 だが男は懐から追加の料金を取り出すと、申し訳なさそうにターニャへと差し出す。

 ターニャは大きくため息をつくと、新しいタオルを用意するために動き出した。

 

 

 

「一度出しているというのに、なぜ先程より元気なのだ……」

 

 追加料金を受け取ったターニャは衣服を脱ぎ下着姿になると、目の前でそそり立つ肉棒を見て呆れた様子で呟いた。

 

「んっ……」

 

 男はターニャの両肩を優しく己の両手で抑え、ターニャの柔肌に己の肉棒を擦り付ける。

 生暖かい奇妙な感触が肌を這い回る感覚に、ターニャは思わず声を漏らした。

 

 ターニャは動かない。

 男は息を荒げながら、ターニャの素肌を自慰の道具として使用していた。

 

 幼児体形特有の膨らんだ腹や、普段重火器を持ち歩いているとは思えぬほどに細い腕。

 だらしなく腰を動かして、男は一人興奮を高め続けている。

 

「――ッ!」

 

 先程よりも早く、男は射精に達した。

 ターニャの腹と胸、着用していたブラジャーが白濁液に染まっていく。

 

「どれだけ興奮しているのだ貴様は……」

 

 二度目とは思えぬ量の精液を全身で受け止め、ターニャは愚痴のように言葉を零す。

 ある種の罵倒でもあるそれは、しかし男の興奮をより高める結果しか生まなかった。

 

 差し出される追加の料金。

 そして未だ固くそそり立つ男の肉棒。

 

「……うわぁ」

 

 幼女の体に、さらには幼女の罵倒に性的興奮を覚える目の前の男。

 営業スマイルなどどこへやら。

 もはやターニャは軽く引いていた。

 

 同期や上司に変態が数多いという事実に帝国の未来を憂いながら、ターニャの仕事は続いていく。 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期的展望、その中途報告

 一週間ぶりに、ターニャ・デグレチャフはその扉を潜る。

 中では上官が待ちかねたと言わんばかりの笑みでターニャを迎えていた。

 

 ターニャは後ろ手に扉を閉めると、言われるがままに服を脱ぐ。

 手慣れた調子で脱衣を見せつける自分自身に嫌気が差しながら、全ての服を脱いだ。

 

 全裸になったターニャは己の脱ぎ捨てた衣服を綺麗に畳み、脇へ置く。

 そして蹲踞に似た姿勢でM字に足を開き秘部を上官に見せつけながら、ターニャは己の秘部へと指を挿入した。

 

「んっ……!」

 

 乱れた吐息と共に、ターニャは己の膣内をかき回す。

 ポトリと、膣の中から小さな球状の物体が転がり落ちた。

 

 一週間、命令でターニャの体内に仕込まれていた物だ。

 そしてそれは一つではない。

 

「ん、くぅっ……!」

 

 次を排出するために、ターニャの指はより奥へと入っていく。

 異物の摘出が目的であろうとも、実質的にそれは自慰となにも変わらない。

 

 ターニャの声はどんどん甘く淫猥な声へと変化していく。

 快楽によって愛液が分泌され、ぐちゅぐちゅとしたいやらしい水音が聞こえてくる。

 

「ふぅっ、く、んぅっ……」

 

 二つ、三つと、産卵でもしているかのようにターニャの膣から球が零れ落ちていく。

 両足がガクガクと震えだし、口端からは涎が垂れている。

 

「――ッ!」

 

 ビクン、とターニャの体が大きく跳ねる。

 長期間の調教を受け続けたターニャの体は、いとも容易く絶頂した。

 

「ぐっ、ふ、ぐぅっ……」

 

 小刻みに痙攣を繰り返しながら、ターニャの股から多量の愛液が噴き出す。

 その勢いで残っていた球は全て排出され、愛液で生成された水溜まりへと落ちていく。

 

「ぐ、うぅ、ふぅっ……」

 

 薄れる意識を必死で繋ぎ止めるターニャの前に、上官が歩み寄った。

 懐から何かを取り出すと、上官はそれをターニャへと放る。

 

「え、あ……?」

 

 ターニャの頬が引きつり、視線が足元に落ちたそれと上官の顔へ交互に移動する。

 それは先程苦労して膣から取り出した球に酷似していた。

 

 違いは、今度の球は紐のような物で全てが連結されていること。

 そして、一つ一つが先程まで入れていた物より僅かに大きいことだ。

 

「は、ははは……」

 

 小さく、ターニャは笑う。

 笑うしかない。

 

 命令はわざわざ聞くまでもない。

 そして、逆らえるはずもない。

 

「ぐ、うぅっ……」

 

 震える手で、ターニャは己の膣に再び異物を挿入していく。

 ご丁寧に片方の端には大きな持ち手のような輪が付いている。

 輪の付いていない側を秘部に押し当て、ターニャはゆっくりとそれをねじ込んでいく。

 

「あ、、あぁっ、ぐぅ……!」

 

 以前とは比較にならない感覚。

 大きさは然程変わっていないが、全ての球が連結されているせいで一つの球が動けば全ての球が動き内部がかき回される。

 

 愛液が潤滑剤になっているため、滑るように膣は異物を受け入れていく。

 しかし内部から襲い来る圧迫感と刺激は、どこまでも容赦なくターニャを襲っていた。

 

 

 

「ふぅっ、ぐ、うぅっ……!」

 

 長い時間をかけ、ようやくターニャは根元まで連結されている球を膣内へと収めきる。

 足元には愛液と汗と涎で水溜まりが形成されていた。

 

 ターニャの秘部からは取っ手代わりの輪が兎の尻尾のように飛び出している。

 その上からターニャは下着を穿き、裸の恰好から入室時の軍服に身を戻す。

 

 上官からの許しを得て、一礼の後にターニャは部屋を後にした。

 その心中は怒りに震え、煮えたぎるマグマのように心は暴れている。

 

 しかし顔を赤くして息を荒げる様は、傍目からでは発情した雌の顔にしか見えない。

 立ち去るターニャを、上官たちは醜悪な笑みで見送っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

束の間の休暇

 今日は安息日。

 ターニャ・デグレチャフは、立ち寄った教会で神へ祈りを捧げている。

 

 毎週欠かさず教会へと足を運ぶターニャを、周囲の人々は信心深い敬虔な人間だと評価していた。

 膝をつき目を閉じる幼女の姿には、奇妙な神々しささえ感じられるほどだ。

 

 この幼女が溢れんばかりの憎悪と殺意を神へ向けていることは、誰も知らない。

 そして、その幼女が今性的な快感を感じていることも。

 

 

 

 休日のターニャは勤勉な軍人だ。

 街を散策し買い物を済ませ、家に戻れば大人が敬遠するような書籍を読み耽る。

 

 だが、最近の彼女は違う。

 窓ガラスに映っている僅かに赤く染まった頬を忌々しそうに撫でると、誰もいない自室で乱暴に衣服を脱ぎ捨てた。

 

 折角手に入れた穏やかな休暇だというのに、ターニャの心中は荒れ狂っている。

 原因は、今履いている濡れた下着だ。

 

 上官の命令で膣内に挿入されたままの異物は、絶え間なくターニャの性を刺激し続けている。

 本人は強く否定しているが、彼女は着実に調教されていた。

 

 愛液が染み込んだショーツを脱ぎ、漏れ出た愛液をタオルで拭き取る。

 そんな動作にも敏感に反応する己の体に、ターニャは酷く苛立っていた。

 

 いっそのこと堕ちてしまえば楽になる。

 しかしターニャの無駄に高いプライドや自尊心がそれを許さない。

 

 異物が入り込んでいるという不快感は、すでに殆ど感じない。

 膣を刺激されることによる快楽が、精神的な不快感をかき消していた。

 

 だが、それで気分がいいかは別の話だ。

 性的な快楽が沸き上がるたびに、ターニャの心は怒りで満ちていく。

 

「んっ……」

 

 誰も見ていない自宅で、ターニャは己を慰める。

 両手を疼いた股へ向けて伸ばす。

 

「んっ、うぅ、あ、あぁっ……」

 

 甘い声を断続的に響かせながら、ターニャの秘部は愛液を垂れ流す。

 溢れ出る愛液と共に、ターニャは己のストレスを排出する。

 

「ふっ、ぐ、ぐぅっ……!」

 

 興奮が高まるにつれ、ターニャの自慰は激しさを増していく。

 手の動きはより早く、より強く快楽を求めて動き続ける。

 

「――ッ!」

 

 ターニャが絶頂に達するのに、そう時間はかからなかった。

 

 愛液を噴き出し、痙攣する肉体。

 薄れる意識と、脳内を埋め尽くす幸福感。

 蕩けるような感覚に、ターニャは数分の間浸り続けた。

 

 

 

「……ふぅ」

 

 もはや自慰に抵抗を覚えなくなったことを自覚し、ターニャは若干の苛立ちを覚えた。

 体内で動く異物は今もターニャの性欲を煽り続けている。

 

 精神的なハードルが撤去されている感覚。

 一方通行の道を強制的に歩かされているような……。

 

「――いや」

 

 考えすぎだ。

 そうターニャは己を納得させる。

 

 そうだ、自慰程度誰だってしている。

 むしろ潔癖を気取って嫌悪しているほうが少数派で、異常と言えるはずだ。

 

 心中でそう己を納得させ、ターニャは自分自身を虚飾する。

 本物のコーヒーと甘いチョコレートを堪能し、束の間の安寧を享受した。

 

 今も疼いている己の股から、意識を遠ざけるように。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

撮影会

 ターニャ・デグレチャフは写真が嫌いだ。

 特に幼女の身になってからは。

 

 プロパガンダ目的で行われた、煌びやかなドレスを着せられての撮影会は、今でも軽くトラウマだった。

 望まぬ肉体である幼女の姿を記録されるというのが、ターニャには耐えられない。

 

 だが、どの時代にも撮影好きというのは存在するものである。

 それが権力を持った相手ならば、断ることも出来ない。

 

 

 

「ぐ、うぅっ……!」

 

 上官の命で己の姿を撮影されているターニャは、苦悶の声を漏らしながらカメラのライトを浴びていた。

 着せられたドレスは、ドール用ドレスのように装飾過多だ。

 どちらかといえばロリィタファッションに近く、ターニャの肉体も相まって人形のような印象が強く残っている。

 あえて違いを探すのなら、隠すべき部分だけに布地が用意されていないことだろうか。

 

 特注で作成されたのであろうその衣装は、スカートの前半分と胸元の布地だけが消失しているようなデザインだ。

 必然それを着用したターニャの両胸と秘部は、カメラを構える上官たちに丸見えとなっている。

 

 中に別の服を着ていれば珍しいファッションとしてもギリギリ成立するのだろうが、今のターニャは下着すら着用していない。

 両手で隠すことも許されず、己が痴態を晒すしかなかった。

 

 今もターニャの秘部には異物である連結された球が入ったままだ。

 秘部から飛び出た持ち手のような輪が、ゆらゆらと揺れている。

 そしてその輪には、新たに分銅のような重りがぶら下げられていた。

 

「ん、ぐぅっ……!」

 

 ターニャの足が震え、重りが揺れる。

 するとターニャの喉から悲鳴じみた声が漏れ、全身がビクビクと震えだす。

 

 膣に力を入れて、ターニャは必死に耐える。

 力を抜けば膣内で連結された球は一斉に排出されるだろう。

 その衝撃に今の体が耐えられるとは、ターニャには思えなかった。

 

「ひっ、ぐ、うぅっ……」

 

 苦悶の表情を、カメラのライトが定期的に照らす。

 このような痴態が写真に残るという事実を、ターニャは受け入れたくない。

 だが、今現在襲い掛かる快楽と苦痛は、それ以上に問題だった。

 

「ぎ、いぃっ!」

 

 薄く嗜虐的な笑みを浮かべながら、上官は新たな重りを追加する。

 ターニャの両足が小鹿のように弱々しく震え、それが合図だった。

 

「――ッ!」

 

 限界を迎えたターニャの膣から、全ての球が一気に排出される。

 声にならない声を上げながら、ターニャは絶頂した。

 

 ターニャの膝が地面に付き、そのまま正面へ顔面が落下する。

 絨毯が衝撃を吸収し怪我はしなかったが、ターニャは完全に気を失っていた。

 

 尻を突き出したような姿勢でピクピクと繰り返し痙攣するターニャの姿を、カメラのフラッシュが何度も照らす。

 栓が抜き取られた秘部からは愛液と尿が溢れ、足元の絨毯を濡らしていた。

 

 

 

「う、うぅっ……」

 

 顔面に冷水を浴びせられ、ターニャは再び意識を取り戻す。

 目を覚ましたターニャを待っていたのは、上官の下卑た笑み。

 そして、更に大きくなった挿入具。

 

 もはや表情を変える気力もない。

 肉体も精神も疲労し切ったターニャは、自力で立つことも出来ない状態だった。

 

「ひ、あ、ぐっ……!」

 

 されるがままに、ターニャの膣は新たな異物を受け入れた。

 今度の性具は男根を模した張形だ。

 大人の一物ほどの大きさもあるそれは、ターニャの膣を容赦なく押し広げる。

 

 愛液に溢れた状態ですら、ターニャに襲い来るのは快楽よりも痛みが強い。

 強制的に穴を拡張されている現状に、ターニャも危機感を覚える。

 

(本番行為だけはなんとしてでも避けなければ……!)

 

 襲い来る痛みと快楽に荒らされる脳内で、ターニャは必死に思考する。

 エスカレートし続ける上官からの要求を、どのようにして食い止めるかを。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新規開拓を兼ねた実務訓練

 ターニャは予定していた時間通りに、自室へと一人の男を招く。

 男は周囲を見回し誰もいないことを確認してから、部屋の中へと入った。

 

 ターニャを“買った”その男は、指定された報酬をターニャへと支払う。

 その顔は半信半疑といった様子だった。

 

「よし、では始めよう」

 

 報酬に不足が無いことを確認すると、ターニャは男のズボンを下ろし、肉棒を露出させる。

 そして躊躇いなく手を伸ばし、右手で扱きだす。

 

 それはターニャにとって、そして客にとってもいつも通りの光景だ。

 だが、今日はここからが普段と違う。

 

 ターニャは己の舌先を肉棒に触れさせると、チロチロと舐めだしたのだ。

 口淫奉仕。

 新たにターニャが売り出したそれには、ある思惑がある。

 

(臭い、苦い……最悪の気分だ……)

 

 ターニャは訓練のためにこの行為を行っていた。

 上官からの要求はどんどん過激になっている。

 そう遠くないうちに口淫奉仕や本番行為を要求されるかもしれないと、ターニャは内心で危惧を抱いていた。

 

 故にある程度の妥協を行おうと決意し、ターニャは譲れない一線である本番行為以外を許容することにした。

 口淫奉仕で上官を満足させられれば、それ以上の要求も跳ね除けやすい。

 商売で練習すれば、報酬も貰えて一石二鳥だ。

 

 そう考えたターニャの神経は危ないラインにまですり減っている。

 自分で過激な性的奉仕の道を進んだという事実に、本人が気づいていない。

 

「ん、れろぉ……」

 

 舌先を動かし、肉棒を舐め回す。

 控えめでぎこちない動きだったが、ターニャが舐めているという事実で男は十二分に満足していた。

 みるみるうちに肉棒は固く大きくなり、男は沸き上がる快楽に顔を歪める。

 

「ふむ、これが気持ちいいのか?」

 

 満足させられているか不安だったのだろう。

 ターニャは男の表情に満足気な笑みを浮かべると、そのまま口淫奉仕を続行する。

 

「――ッ!」

 

 そのような台詞を上目遣いで言われたことで、男は限界を超えた。

 解き放たれた精液は、一滴残らずターニャの口元に注がれる。

 

「熱い……もう終わりか、情けない」

 

 挑発するような口調へ対抗するように、男は追加料金をターニャへと差し出した。

 獲物が餌に飛びついたと、ターニャは笑みを深く浮かべる。

 

「いいのか? 料金はかなり高額に設定したつもりだったが……」

 

 まったく、と表面上だけは呆れたように、ターニャは再び男根を舐める。

 相変わらずぎこちない動きだが、それでもかまわない。

 ターニャは己の服をはだけさせ、乳房を男に見せつけた。

 

 効果は言うまでもない。

 出したばかりの男根はすぐさま固さを取り戻し、ビクビクと脈動する。

 

「ここまで露骨だと、馬鹿にする気も起きんな……」

 

 こんな体のどこが良いのだ。

 今度は本心から、ターニャは予想以上の効果があったことに呆れて息を吐く。

 

「んっ、ちゅ、んぐっ……」

 

 少し慣れてきたのか、ターニャは肉棒の先を咥え口内へ納めた。

 そのまま口を窄め、口内で舌を小刻みに動かして肉棒の割れ目を刺激する。

 

「――ッ!」

 

 先程とは違う、技術による快楽。

 男が再び果てるのにそう時間はかからなかった。

 

 二度目の射精をターニャは舌と喉で受け止め、すぐに口内へ入り込んだ精液を吐き出した。

 道端に生えた野草をそのまま食べたようなとでも例えられそうな、形容しがたい表情のままターニャは口元を拭いている。

 

「苦い、臭い……この味だけは当分慣れそうにないな……」

 

 ターニャは用意していたタオルで顔にかかった精液を拭き取り、グラスに注いだ水で口内を洗浄する。

 二度の射精で財布も性欲も綺麗になくなった男は、しかし満足気な笑みを浮かべながら部屋を去っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間 ある男性士官の日常

 ターニャ・デグレチャフが男を相手に体を売っているという噂を聞いた時は、ずいぶんと笑えないジョークだと思ったものだ。

 軍学校で先輩として彼女と出会った身から言わせてもらえば、あれは女ではない。

 軍人という規範が形を成して歩いているような、怪物だ。

 

 軍学校を卒業し上官として再開した彼女も同じだ。

 幼女の見た目を除けば理想的な軍人そのものといった様子には、あの時と比較しても一切の変化が無かった。

 成長の見られない身体の様子を見ると、本当にあれは人間なのかと疑いたくもなったが。

 

 

 

 書類整理の雑用を命じられ向かった資料室に、彼女はいた。

 幼女へ敬礼を行い、敬語を使うのも慣れたものだ。

 指示された通りの持ち場へと向かう。

 

 チラリと、私は彼女の姿を目で追った。

 小さな体で書類の山を抱えているからだろうか、その表情は微かに赤く火照ったように染まっている。

 幼女の身ではなく女の体であれば、色っぽいと表現できるかもしれない。

 

 馬鹿な考えが脳をよぎり、私は慌てて任された仕事へと意識を向ける。

 いやいや、どう考えてもありえない。

 噂はあくまでも噂だ。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 キリのいい所まで仕事を終わらせ、一息ついた。

 部屋の隅に置かれた水差しから飲み水を注ぎ、一気に飲み干す。

 

 熱の籠った頭が冷やされる感覚に陶酔していると、隣に彼女が立っていた。

 

 慌てて別のグラスに水を注ぎ、上司に手渡す。

 短い礼と共に彼女はグラスを受け取ると、同じように一気に飲み干した。

 

「ぷはっ」

 

 息を吐く彼女の様子に、彼女が女であることを再認識する。

 こんな幼女になにを感じているんだと自分を責めるが、そう感じても仕方のないほどに彼女の様子は妖艶だったのだ。

 ただ水を飲んだだけだというのに、まるで娼婦が男を誘っているように見えてしまう。

 

「……何か?」

 

 視線を感じた彼女に睨まれ、慌てて持ち場に戻る。

 身長差のせいで見下ろすようになってしまったが、服と胸元の隙間からピンク色の肌が見えたのは気のせいだろうか。

 

 ……いや、流石に気のせいだろう。

 あるいは虫に刺された痕かもしれない。

 幼女とはいえ、下着を着けずに生活しているわけもあるまい。

 

 

 

 結局、仕事が終わったのは日が完全に沈んだ頃だった。

 最後の確認を終え、不備が無いことを二人で再確認する。

 

 形式的な労いの言葉をかけられ、こちらもマナーに従って頭を下げる。

 そこで、ふと視線が彼女の下半身に向いた。

 丁度股のあたりが、不自然に濡れている。

 

「ん……? ああ、水を飲んだ時に零してしまったのか、これは気恥ずかしい話だ」

 

 顔を赤く染め、早口で捲し立てると彼女は足早に去っていった。

 ああそうか、そうなのかと自分を納得させる。

 まさかそんなことはあるわけはないと、脳内に浮かんだ下世話な妄想を断ち切るように。

 

 所詮は噂だ、真実であるわけはない。

 いや、そうであって欲しいと願うばかりだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

断崖の淵に立つ精神

 上官に呼び出されたターニャは、いつものように痴態を晒している。

 一週間もの間男根を模した挿入具が入っていたターニャの膣からは、すでに愛液が溢れ零れるように垂れていた。

 

 その愛液を掻き出すように、ターニャ自身の指が己の秘部を刺激している。

 立ったまま左手で服を捲り、右手の人差し指で膣の中をかき回す。

 自慰を見せつけるように行うターニャの頬は、怒りと羞恥で真っ赤に染まっていた。

 

「うぅ……く、あぁ……!」

 

 沸き上がる快楽に、ターニャの両足は震えていた。

 気を抜けば今にも崩れ落ちそうな状態のまま、ターニャは自慰を続けている。

 

 上官たちはそんなターニャの滑稽な姿を肴に、口端を吊り上げて笑う。

 下卑た笑みはターニャの怒りを買い、彼女の顔がより濃く赤色に染まっていく。

 

「――ッ!」

 

 声にならない声と共に、ターニャの全身が大きく痙攣する。

 両足から力が抜け、ターニャはその場に崩れだす。

 

 直立の姿勢から膝立ちに変化しながら、ターニャは絶頂の快楽に溺れていた。

 泡状の涎を唇から零しながら、肉体が細かく痙攣し続ける。

 

「ぐ、うぅっ、うぁぁ……」

 

 うわごとのように声が漏れ、肉体はすでに理性を無視して動作し続ける。

 長期間の調教で飼いならされたターニャの両腕は、薄れる意識の中でも自慰を止めない。

 右手はより強く膣内をかき回し、溢れ出る愛液を増加させていた。

 

「ひ、い、あぁっ……!」

 

 絶頂の直後で感度の増しているターニャの肉体がさらなる刺激に耐えきれるはずもない。

 二度目の絶頂は、僅か数十秒後の出来事だった。

 

「――ッ!」

 

 のけ反った肉体が姿勢を保つこともできなくなった。

 尻が、背中が、そして後頭部が地面に密着し、そのままターニャは仰向けに倒れる。

 

 ヒュウヒュウとか細い呼吸音を鳴らしながら、ターニャは動作を停止した。

 愛液と涙と涎が大量に流れ、床と服を汚す。

 新たに黄色い液体がその中に混じる音を聞きながら、ターニャは気を失っていった。

 

 

 

 額に垂れる冷水で、強制的にターニャは意識を覚醒させられた。

 そして形式上、ターニャは職務中に気を失ったことになる。

  

「く、うぅっ……!」

 

 故に、上官がターニャに求めたのは謝罪だ。

 ターニャは指示通り地面にひれ伏し、平伏する。

 土下座の姿勢で、ターニャは謝罪の言葉を口にした。

 

「も、申し訳ありません……」

 

 軍人の資格である軍服を脱ぎ、全裸の状態でひれ伏す。

 屈辱、恥辱といった言葉では表せないほどの感情が、ターニャの心を埋め尽くした。

 

 上官が許しを出すまで、ターニャは姿勢を変えることができない。

 己の体液に塗れた地面に顔を近づけ、ターニャは謝罪の言葉を繰り返す。

 

 見下され、嘲笑され、罵倒される。

 そんなプライドを万力でへし折るような時間は決して長くはなかった。

 しかし、そんな時間もターニャには永遠に感じられただろう。

 

 

 

 ようやく許しを得た時、ターニャは今までの比ではないほどに憔悴しきっていた。

 幽鬼のような表情を浮かべながら衣服を着て、フラフラと退出する。

 

 醜態の埋め合わせは後日改めて。

 普段であれば引き攣った笑みを浮かべるであろうそんな宣告も、今のターニャにはようやく終わったという安堵の合図であった。

 疲れ切った虚ろな笑みが、無意識のうちにターニャの顔から浮かぶ。

 

 そんな様子に、上官たちは満足気な笑みを浮かべていた。

 ターニャが堕ちる日は、そう遠くないと確信したが故に。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再度の決意と無言の宣戦布告

 その日、公的にはターニャは久々の一日休暇だった。

 内情は丸一日上官からの要求を受け続けるという意味であるが。

 

 前日受けた屈辱から未だ回復し切っていない己の精神に鞭を打ち、ターニャは上官の元へと重い足を運ぶ。

 待っていたのは先日に続く、精神の凌辱だった。

 

 

 

 入室したターニャは受けた指示の通り行動する。

 その様は己の意思が介在しない、人形のような動きだった。

 

 慣れた手つきで服を脱ぎ、全裸を晒す。

 腰を落とし、土下座の姿勢を取る。

 

 社会人として最大級の謝罪を示す姿勢。

 だがターニャは知識としてそれを知っていても、実際に行ったことは前世でも無い。

 全裸の状態ともなればなおさらだ。

 謝罪の気持ちを示せと命じられ、ターニャは自然と土下座の姿勢を取っていた。

 

「ぐっ、くうっ……!」

 

 ひれ伏しているターニャの後頭部を、上官は己の右足で踏んだ。

 体重は乗せず、踏むというよりは足を置いているような状態だ。

 

 靴を履いたままのせいで、靴裏の汚れがターニャの髪を汚す。

 そして物理的な汚れ以上に、ターニャのプライドが汚されていく。

 

 上官は己の靴に付着した汚れをターニャの髪に擦り付け続ける。

 ターニャの喉からは苦悶の声が漏れ、全身はプルプルと震えていた。

 

「……うぅっ」

 

 しばらくそうした後、満足したのか上官は足を地面へと下ろす。

 そしてそのまま、靴先をターニャの眼前へと突きつけた。

 

 その動きだけで、ターニャは相手の要求を理解できてしまう。

 躊躇いがちに舌を伸ばし、突きつけられた靴を舐める。

 

「んっ、れ、ろぉ……」

 

 上官の靴がターニャの唾液で湿り、濡れていく。

 舌から広がる形容できない不快感に、ターニャは涙を堪えて舌を動かす。

 口淫奉仕で男性器を舐める時以上の屈辱を、ターニャは感じていた。

 

「――ん、ぐっ?!」

 

 背後からの突然の刺激に、ターニャはビクンと体を跳ね上げた。

 別の上官が、ターニャの尻を撫でまわしている。

 時折秘部に指を入れ、膣内をかき回し、ビクビクと震えるターニャの反応に噛み殺した笑い声が漏れていた。

 

「ぐ、うぅっ……!」

 

 度重なる調教で広げられた秘部は、上官の指を容易く飲み込んでいる。

 徐々に大きくなる水音を響かせながら、ターニャは沸き上がる快楽に抵抗する。

 

 土下座の姿勢を必死に保ち、目の前の靴を舐めるターニャ。

 全身を悶えさせるターニャの姿に、上官たちは満足気な笑みを浮かべていた。

 

 これだけの屈辱を味わされれば、ターニャも理解する。

 上官たちはターニャの心を折ろうとしているのだ。

 

 必要以上に屈辱を与えているのも、彼らが特殊なサディストに目覚めたわけでもない。

 いや、それもあるのかもしれないが。

 重要なのは、ターニャの極めて強大な自尊心を砕くこと。

 

 若く、優秀で、聡明で、傲慢なターニャは、組織の上下問わず敵が多い。

 己の体を売って味方を増やす考えは悪くないが、敵がそれを利用しないとは限らない。

 

 一挙両得。

 上官たちはこれを機にターニャを従順な組織の駒にしようと考えているのだろう。

 

 そこまで思考し、ターニャは内心で意志の炎を燃やした。

 ならば根競べだ。どのような辱めも受け止めてやろうと。

 

 ターニャは優秀だ。

 しかし、時折単純な事実を忘却する。

 耐えれば耐えるほど、未来は地獄に近づいていくのだということを。

 

「うぐっ、うぅ……くぅっ……!」

 

 上官が満足するまでの数十分。

 ターニャは絶頂という屈辱だけは見せないように耐えきった。

 

 しかし、蕩けたような表情を浮かべ、紅潮した頬を残して退出する姿はそう遠くない未来の破滅を予感させるに十二分だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

変質した肉体の自覚

 珍しく、と言うべきか。

 ここ数日は上官からの呼び出しもなく、ターニャは久しぶりに安寧の日常を手に入れた。

 

 戦争中なのだから安寧という表現も妙だが、後方勤務のターニャにとっては安らげる日々であるのは間違いない。

 

 砲声など聞こえない本国の自室で、書類に目を通すだけの仕事。

 代用ではない本物のコーヒーを味わいながら、ターニャは己の仕事を手早く終わらせる。

 

「くっ……」

 

 静かで、平穏であるからこそ、ターニャは苦悩する。

 己の秘部が言い訳のしようがないほどに疼いて濡れているという現実に。

 

 執拗に続く調教で雌の体を手にしてしまったターニャは、精神と肉体の祖語に苦しんでいた。

 精神が男で、肉体が幼女。

 それがターニャを悩ませる齟齬であったはずが、新たに雌の体が加わった。

 本能が求める性的欲求を、理性は未だ拒否している。 

 

 しかし、禁欲は欲求を肥大化させる。

 触れていないはずの秘部は蜜を生み出し、下着を湿らせていた。

 

「仕方あるまい……」

 

 そう呟き、ターニャは服を脱いで下着姿となった。

 そしてそのまま、己の右手を秘部へと這わせる。

 誰もいない自室で、左手で口元を抑えながらターニャは自慰を開始した。

 

「う、くぅっ……!」

 

 ターニャの肉体は鋭敏に反応していた。

 微かな刺激ですら、声を上げそうなほどの快楽が押し寄せる。

 

 性的快楽は麻薬に等しい。

 撫でるような指先の動きは次第に激しさを増していく。

 

「ん、うぅ、あぁっ……」

 

 小さな水音が、静かな部屋に響いていく。

 激しく乱暴な指先による愛撫は、そう時間をかけずターニャを絶頂させた。

 

「――ッ!」

 

 のけ反るように体が伸び、ビクンと大きく跳ねる。

 ぜいぜいと息を荒げながらターニャはその場で仰向けに倒れた。

 

 顔は興奮で真っ赤に染まり、汗と涎が肌を汚す。

 ショーツは愛液でぐしょぐしょに濡れて、すでに下着としての機能を失っていた。

 

「――う、くぅっ」

 

 倒れたままの姿勢で、ターニャは自慰を再開する。

 ショーツを脱ぎ、完全に露出された己の秘部へ指を挿入する。

 そのままかき回すように指を動かし、快楽を貪った。

 

「あぁ……くっ、ぐぅ……!」

 

 足りない。

 調教され続けたターニャの肉体は、一度の自慰による絶頂では物足りなくなっていた。

 

 発情期の動物であるかのように、ターニャは己を慰め続ける。

 声を抑えることも忘れ、誰かに気付かれるかもしれないという思考すら忘却して。

 

 結局、ターニャは連続絶頂で気を失うまで自慰を止めなかった。

 

 

 

「……まずい」

 

 これはまずい。

 まさかここまで己の体が変質していたとは。

 意識を取り戻し幾分か冷静さを取り戻したターニャは、先程の行動に戦慄した。

 

 絶対に堕ちてなるものかと決意したはいいが、その決意も揺らぎかけている。

 生物が皆等しく持つ性欲を、ターニャは完全に侮っていた。

 

 この様子を自覚させることまで上官連中の思惑だとしたら。

 そんな過程が頭に浮かび、ゾッとしない話だとターニャは震える。

 

 そして早速疼きだしている己の肉体に、軽い驚愕と絶望を感じていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

浸食される価値観

「ん、ぐっ、じゅるッ……!」

 

 ターニャは目の前に立つ男の男根を咥え、舌で丹念に舐め回す。

 以前は嫌々行っていた口淫奉仕も、今ではむしろターニャが喜びを感じているかのようだ。

 

 数日ぶりの性的奉仕。

 不安げに金を差し出してきた初々しい新兵に、ターニャは内心で涎を垂らしていた。

 

 あくまで表面上は事務的に、冷静に。

 だが金を受け取り、男根を露出された瞬間にターニャは雌と化した。

 

「――ッ!」

 

 男の体がビクリと震え、多量の精液がターニャの口内へと注がれる。

 慌てて男はターニャの口から己の男根を抜き取った。

 

「ん、ぐっ……」

 

 しかし目の前にいる恐ろしい上官であったはずのターニャは、恍惚とでも表現されそうな表情で注がれた精液を味わっている。

 舌を懸命に動かし、音を立てて喉を動かし嚥下していた。

 

「ぷはっ」

 

 全ての精液を零すことなく飲み込んだターニャ。

 その様子に、男の男根は固さを取り戻す。

 

 ターニャは顔を紅潮させたまま、己の服を脱いでいく。

 膨らみに乏しい幼女の裸。

 だというのに、妙な色気を漂わせたその姿は男の劣情を掻き立てた。

 

「んっ……」

 

 再び、ターニャは男根を咥える。

 奥まで一気に咥えたことで、ターニャの喉にまで男根は届いていた。

 

「むぐっ、んんっ……!」

 

 苦し気に、しかし喜びに満ちた表情を浮かべるターニャ。

 そして口淫奉仕を行いながら、ターニャは己を慰める。

 

 ターニャは右手で胸を、左手で秘部を愛撫する。

 己の体に沸き上がる情欲を、男根を咥えた状態で発散している。

 

「――ッ!」

 

 しかしターニャが絶頂に達する前に、男の方が限界を迎えた。

 先程に比べれば少量だが、それでも相当な量の精液がターニャの口内を埋め尽くす。

 

 二度の射精で息も絶え絶えな様子になった男を尻目に、ターニャはどこか悪戯気な笑みを浮かべだした。

 口内の精液を両手で作った手皿に落とし、その精液を己の体に塗りだした。

 

 ターニャの胸や腹が、男の精液によって汚されていく。

 唾液と精液の混合物に塗れるターニャの肉体は、幼女の体とは思えぬほどに淫靡だった。

 

「さて、あと一発だったな」

 

 もう無理だと視線で訴える男に、ターニャは容赦なく事前の取り決めを告げる。

 男はもはや立っていられず尻餅をついていた。

 

 精神的にも動けなくなった男に、ターニャは這いよった。

 そしてフニャフニャに縮んだ男根に、己の秘部を密着させる。

 

「勘違いするなよ、本番行為は禁止だ」

 

 あくまでも挿入はせず、密着させたままターニャは妖しく体を揺らす。

 淫魔が男を誘うような動きと小さく柔らかな割れ目の感触に、男根はみるみる固さを取り戻していく。

 

 傍から見れば騎乗位のような恰好だ。

 その姿勢のまま、ターニャは割れ目と腹で男根を刺激していく。

 その刺激は微かだが、興奮を煽る効果は格別だった。

 

「――ッ!」

 

 ビクンと、男の体が震える。

 精液はほんの少ししか排出されず、ターニャの腹へと降りかかった。

 

「さて、限界のようだし今日は終わりかな?」

 

 息を荒げたまま頷く男を尻目に、ターニャは事前に用意したタオルで体に付着した精液を軽く拭き取る。

 そのまま部屋を去っていくターニャは、男の目には悪魔かそれよりたちの悪いなにかにしか見えてはいなかった。

 

 

 

 悪くない。

 ターニャは率直にそう感じていた。

 

 上官連中に媚びを売り屈辱を味わうのは勘弁願いたいが、己が上位に立つというのは中々に快感だった。

 口内に残る精液の味に舌なめずりをしながら、ターニャは次の客が己を買いに来るのを待ち望んでいた。

 

 もはやその様子に、嫌々といった過去の感情は感じられない。

 自覚のないまま、ターニャはゆっくりと堕ちていっていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

羞恥調教・序章

 その日、ターニャ・デグレチャフの額には多量の汗が浮き出ていた。

 体調でも悪いのかと周囲の人間が心配するが、本人は問題ないと言うばかり。

 

 事実、少し顔が赤いもののターニャの肉体は健康そのものだ。

 汗の原因は緊張と、羞恥である。

 

 通常業務をこなしているターニャは現在、下着を着用していなかった。

 無論、上官の命令である。

 

「くっ……」

 

 なるべくいつも通りに振舞おうとしているターニャだが、足取りは重く頼りない。

 軍服は丈夫で分厚く、多少の汗で透けるような素材ではない。

 だが、下着を着けていないという事実はターニャの顔を紅潮させる。

 

 男性士官が話しかけてくるたびに、その視線が胸に向いているような気がしてならない。

 実際は身長差で見下ろすせいで、そう感じてしまうのだとわかっていても。

 

 背後からヒソヒソと聞こえる噂話に、尻のラインが見えてしまっているのではないかと足取りが早くなってしまう。

 実際は幼女でそれなりの地位にいるという希少性を囁かれているだけだとしても。

 

 自分にしか分からない。

 だが、ターニャ自身が知っている以上気にするなというのも無理な話だ。

 

 じっとりとした汗が全身を覆い、不快感がターニャの神経を逆撫でする。

 もしも気づかれたらという想像が、顔を赤く染めていた。

 

「――ひゃっ」

 

 背後から肩を叩かれ、ターニャの喉から気の抜けた悲鳴が上がる。

 慌てて振り返ると、一人の男性士官が戸惑いと困惑を混ぜ合わせたような表情を浮かべていた。

 様子のおかしいターニャを心配したらしい男性士官は、すみませんと頭を下げている。

 

「ああ、いや……どうやら思った以上に心配をかけている様子。丁度仕事も終わったことだし、今日は早めに帰らせてもらうとしよう……」 

 

 やや早口にターニャはそう口にして、逃げるように去っていった。

 

 

「ああ、くそっ……!」

 

 誰もいない自室に戻ったターニャは、汗だくになった衣服を脱ぎ捨てると不快感を隠すこともなく吐き捨てた。

 全身に多量の汗を浮かべながら全裸で怒りに震える幼女。

 需要はありそうだが、悪鬼のような表情を見て性的興奮を抱ける人間はごく一部だろう。

 

 手を変え品を変えターニャのプライドを踏み躙る上層部の連中に、彼女の心は乱されている。

 呆れることはあっても、決して慣れることはなかった。

 

「……ん?」

 

 タオルで乱雑に汗を拭き取り、ターニャは首を傾げる。

 手に持ったタオルは汗の他に、別の液体も吸い取っていた。

 

 透明で粘り気を持ったそれは、性的興奮時に分泌されるはず。

 そこまで思考が回った瞬間に、ターニャは慌てて首を振って思考を打ち切った。

 

「いや、いやいやいや……!」

 

 ありえん。それだけはありえん。

 そう何度も呟きながら、ターニャは真実から目を逸らしベッドへと飛び込んだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強制露出

 今日もターニャ・デグレチャフは上官に呼び出され、その肉体と精神を凌辱される。

 怒りと屈辱に震えながら頭を下げ、ようやく終わったと深く息を吐いた。

 

 さっさと帰ろうと、ターニャは脱ぎ捨てた自分の服を探して視線を動かす。

 部屋の脇に置いていたはずの軍服が、いつの間にか消え失せていた。

 

「――は?」

 

 上官はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、ターニャの軍服は本人の部屋に戻しておいたと言い放つ。

 “落とし物”を届けておいたと、嘲笑を隠しもせずに上官は笑っていた。

 

 服も下着も上官の命で脱ぎ捨てたターニャは、現状一糸纏わぬ姿だ。

 胸の中に広がる怒りが殺意に変化するのを感じながら、せめて皮肉たっぷりに感謝の言葉を述べてターニャは退出した。

 

 

 

「まずい、まずい、まずい……!」

 

 ほのかに顔を赤く染めながら、誰もいない深夜の廊下をターニャは全裸で歩く。

 両手で身を隠し、足音を立てないようにゆっくりと。

 

 時刻は深夜、廊下には当然誰もいない。

 だが、誰かが気まぐれに扉を開けて廊下にでてきただけで、ターニャの全ては終わる。

 

「うぅっ……」

 

 今この瞬間にも、左右の扉が音を立てて開くかもしれないという恐怖。

 ターニャの両足は竦み、亀の歩みのような速度しか出せずにいた。

 

 筋肉や骨の軋む微細な音すら、今のターニャには爆音のように聞こえる。

 些細なはずの呼吸音が、何倍にも増幅されているかのようにターニャの耳を刺激していた。

 

「はぁッ、はぁッ……」

 

 滝のような冷や汗が、ターニャの全身を濡らす。

 顔は羞恥で赤く染まり、熱に浮かされたように熱い吐息が漏れる。

 

「――ッ!」

 

 ガチャリと音を立て、一つの扉が開かれる。

 一人の男性士官が瞼を擦りながら姿を現し、そのまま廊下の奥へと消えていく。

 どうやらトイレにでも向かったようだ。

 

「あ、ひゃっ……」

 

 気の抜けたような悲鳴を上げ、ターニャは蹲る。

 幸い男性士官はこちらを向かなかったが、もしもこちらへ目線が向けられていたら。

 そう想像してしまい、ターニャの足は震えて立ち上がれない。

 

「く、うぅっ……!」

 

 なんとか、部屋に戻らなくては。

 ターニャは使い物にならなくなった両足を見限り、這うように先へと進む。

 犬のように廊下を這う姿は滑稽で、無様であった。

 

「ふぅっ、くっ……」

 

 体を引きずるように前へと動かすターニャ。

 歩みは非常に遅く、残り数メートルで自分の部屋に付くというのに一向に終わりが見えない。

 

「――ひ、いッ」

 

 自室の隣の部屋から、足音が聞こえる。

 ターニャは目尻に涙を浮かばせながら、最後の力を振り絞り己の肉体を動かす。

 脳内で懇願を繰り返し、そのまま自室の扉へと駆け込んだ。

 

 

 

「ぜっ、はぁっ、ひぃっ……!」

 

 間一髪。

 ターニャは無事に、誰にも見つかることなく帰還を果たした。

 

 息は上がり、心臓は拘束で鼓動を刻んでいる。

 右手を心臓へと添えると、ドクドクと振動が全身に伝わってくる。

 

「……ん?」

 

 左胸に添えた手に、違和感を覚えるターニャ。

 固い感触。

 ターニャの左胸の乳首が立っていた。

 

 恐る恐る、左手を下腹部へと伸ばす。

 股の間からは、糸を引く透明な液体が指先へと付着した。

 

「嘘、だろう……?」

 

 いつの間に私は露出狂の変態になったんだ!

 絶望と怒りと混乱、そして確かに感じる快感に思考をかき回され、ターニャは全裸のまま悶え苦しんだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自主的な堕落

 週に一度の安息日。

 ターニャ・デグレチャフは、いつものように教会へ足を運び祈りを捧げていた。

 

 心中で神へ呪いの言葉を吐くのが日課と化しているターニャ。

 周囲からは若いのに敬虔なお方だと感心されているのを、本人は知らない。

 

 だがその日のターニャは普段と少し違った。

 微かに赤く染まった頬が、乙女のような色気を醸し出している。

 

 周囲の人間は知る由も無い。

 現在のターニャが、露出プレイに興じていることなど。

 

 

 

(以前のはきっと何かの間違いだ、それを証明せねば気持ちが悪い……!)

 

 そう自分に言い訳をするターニャ。

 しかしどう言い訳をしたところで、全裸に薄手のコートを一枚羽織っただけの姿で街を出歩く様は確実に露出狂の変態である。

 

 コートはターニャの幼く小さい体を一応覆ってはいる。

 だが丈はせいぜい膝程度までだ。

 

 自主的に下着を着用せずミニスカート姿で外出しているような状態。

 それが変態でなくて何だというのだろうか。

 

 コートの生地が乳首を擦るたび、ターニャの吐息は熱くなる。

 道行く人々がターニャへ視線を向けるたび、彼女の股は愛液を生成する。

 

 教会を出て町中を散歩しているというだけで、ターニャは確かに感じていた。

 

(違う、これは何かの間違いだ……そうに決まっている……!)

 

 心の中で何度も言い聞かせるが、肉体は確実に反応している。

 それどころかターニャの右手はコートのボタンを二つほど外し、首元を露出させ始めた。

 

 このままではマズイと分かっていても、一度肉体が覚えた快楽にターニャは逆らうことが出来なかった。

 

 視線を浴びるたびに、ターニャ自身にもわからない類の快感が脳を突き抜ける。

 もし気づかれたらという恐怖が、今のターニャには麻薬のような快感へと変貌していた。

 

 コートのボタンへ、ターニャの手が伸びる。

 更にボタンを外されたコートは、既に腹部近くまで開いていた。

 

 少しの振動や衝撃で、コートはターニャの胸元を大胆に露出するだろう。

 ふと誰かとぶつかるだけで、大惨事になりかねない。

 

「くっ、ふぅっ……!」

 

 だというのに、ターニャの表情は喜悦に歪んでいる。

 すでに誰かが気づいているかもしれない。

 一瞬後には、変態だと叫び声が響くかもしれない。

 そう悲劇を想像する度に、ターニャの心はどうしようもなく高まっていく。

 

「――ッ!」

 

 幸い、ターニャの異常を察知した者は存在しなかった。

 ターニャは一切の外的刺激なく、妄想だけで絶頂に達する。

 

 町中という日常の世界で、人知れずターニャは快楽を貪った。

 今まではゆっくりと歩んでいた戻れない一本道を、この日ターニャは全力で走り出したのだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

深夜の耐久訓練

「ぐ、うぅぅぅッ!」

 

 深夜の執務室に、ターニャ・デグレチャフの悲鳴が響く。

 目尻に涙を浮かべ、口端からは涎を垂らし彼女は声にならない声を叫ぶ。

 

 ターニャは椅子に座った状態で拘束され、上官からの愛撫を受け続けていた。

 ご丁寧に口枷まで付けられたせいで、ターニャは人の言葉を話すことも出来ない。

 

 胸を弄られ、膣内を指で掻き回される。

 それは今までにも散々受けてきた責め苦だった。

 だが、今回はその時間が桁違いだ。

 

 ターニャが絶頂に達しても、上官は責めを止めなかった。

 秘部から噴き出す愛液を潤滑剤に、ターニャの膣はより深く上官の指を飲み込んでいる。

 

 ターニャの膣内で指が動く度に、彼女の全身は電流が流れたかのように震えだす。

 与えられる快楽はすでに苦痛に近い感覚にまで増幅されていた。

 

 拘束されている椅子がガタガタと音を立てて揺れる。

 ターニャの肉体が、なんとかして逃れようと暴れ回る音だ。

 

「――ッ!」

 

 何度めかも分からないほどの回数、ターニャは絶頂を繰り返す。

 その度に肉体は敏感になり、僅かな刺激で快楽を増幅させる。

 

 床にはターニャの体液で小さな水溜まりが形成されていた。

 汗と涙と愛液が絶え間なくターニャの肉体から生成され、排出される。

 

「あ、が、あぁっ……!」

 

 上官の愛撫が、ターニャに獣の悲鳴を上げさせた。

 秘部を弄るたびに、部屋中にいやらしい水音が響き渡る。

 乳首を抓られるたびに、ターニャの悲鳴は増幅される。

 

 しかし、ターニャは快楽を感じている。

 悲鳴を上げ、逃れようと体を揺すってはいるが、肉体は性的快感を確かに感じている。

 そしてなにより、今のターニャは夢に微睡むような表情だ。

 

 痛みはある。

 苦痛もある。

 早く逃れたいと、ターニャは本心でそう思っている。

 

 だが、それと同時に快楽に溺れた今の状況を幸福だとも感じているのだ。

 

 

 

「ぜ、はぁっ……」

 

 一時間を超える愛撫から、ようやくターニャは解放された。

 拘束は解かれ、力の入らないターニャの肉体は椅子に全体重を預けている。

 

 乱れた呼吸は一向に収まる様子がない。

 全身はターニャの意に反して痙攣を繰り返している。

 

 ターニャは気づいていない。

 いや、気づかないようにしているのか。

 

 初めのころのターニャであれば、乱れた息のまま即座に服を着て退出したに違いない。

 上官のにやけた笑みには殺意を覚えただろうし、全裸の姿を晒し続けることをターニャのプライドは許さなかっただろう。

 

 だが今のターニャは長い時間をかけて呼吸を整えると、ゆっくりと体を拭き、脇に置かれた己の衣服に手をかける。

 そして形式上の礼を済ませ、ようやく退出した。

 

 裸を晒すことに対する羞恥心や性的な行動に対する嫌悪感が薄れている。

 その結果を上官は満足気に認識し、立ち去るターニャを見送った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

必勝にして必負の賭博

 久しぶりにターニャは賭け事に興じていた。

 士官学生時代にはよくやっていた、配給券を賭けたギャンブルだ。

 

 同期や後輩連中から甘味やコーヒーの配給券を巻き上げる。

 そのはずだったのだが。

 

「……仕方ない、発言には責任を持たねばな」

 

 事前の取り決め通り、負けたターニャは上着を脱いだ。

 周囲から観客のどよめきと歓声が上がる。

 

 場を盛り上げるためと言って、ターニャは配給券の代わりに自分の脱衣を賭けていた。

 勝てば配給券、負けても服を脱ぐだけ。

 損の無い話だとターニャは内心でほくそ笑む。

 理性は確かに、そう認識していたのだ。

 

 これが運の絡むギャンブルだということを、ターニャは忘れている。

 ターニャの勝率は七割を超えている。

 だが当然、十割勝てるわけではない。

 

 この取り決めでは、脱いだ服をターニャが取り戻す手段が存在しない。

 運悪く負ける度、ターニャは己の衣服に手をかける。

 

 ズボンを脱ぎ、下着を晒す。

 上下で揃った飾り気の薄い純白の下着が観客の興奮を煽る。

 

 昔であれば、顔色一つ変えなかっただろう。

 しかし見られることの快感を覚えてしまった今のターニャの頬は、微かに赤くなっていた。

 

「むっ……」

 

 ターニャの勝負手を超える手役に、向かいの男が拳を振り上げる。

 ため息を深く吐き、ターニャは胸元を守るブラを脱ぎ捨てた。

 

 先程とは比較にならないほどの熱狂。

 膨らみに乏しい乳房に、観客の視線が一斉に注がれた。

 視線に熱が伴っているのように、ターニャの吐息もまた、熱を持ち始める。

 

 片手で胸を隠しながら、ターニャは勝負を続行する。

 一度、二度と勝利したものの、そこまでだ。

 

 最後の一枚であるショーツを、ターニャは脱いだ。

 全裸を晒したターニャは、羞恥と快感に震えだす。

 

 熱に浮かされた男たちには気づかれていない。

 だが確かに、今のターニャは裸を見られて感じている。

 

「負けたままでは帰れん、続行だ」

 

 もっともらしい理由を付けて、脱ぎ捨てた服を放置したままターニャはその場に残る。

 本音を隠し、仕方がなくという言い訳をしてターニャは公然と露出行為に興じている。

 指すような視線を三百六十度から浴び、言いようのない快感を感じていた。

 

 次の敗北で、手で体を隠すことを禁じられる。

 その次の敗北で、両足を閉じることを禁じられる。

 運悪く敗北する度に、ターニャの裸体はより大胆に露出される。

 

 

 

「さて、もう時間か」

 

 お開きの時間になる頃には、ターニャはこの場の全員の配給券を毟り取っていた。

 痴態を鑑賞するために、男共も勝負を繰り返した結果である。

 

 無論、ターニャの払った代償も大きい。

 最終的にはM字に足を開き、机の上で腰を突き出して秘部を見せつけていた。

 

 歓楽街の娼婦と変わらない仕打ちだが、しかしターニャに不満はない。

 嫌々という様子で、内心を隠していたにすぎないのだから。

 

 己の痴態に興奮する男共。

 その浅ましさを内心で見下しながら、しかし同時に好感に似た感情を抱く。

 

 合法的に自身の変態的欲求を満たしたターニャは、満足気に配給券を抱えて帰宅した。

 一切の外的刺激無く濡れだした秘部を、最後の理性が隠しながら。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

剥奪の時

 少しやりすぎた。

 ターニャ・デグレチャフは、内心で過去の自分を糾弾する。

 

 殆ど合法とはいえ、厳密に言えば軍人の賭博は違反行為である。

 せいぜい釘を刺される程度と思っていたが、ターニャの予測は甘かった。

 

 まさか上官連中、それすらも調教にしてしまうとは。

 いつものように呼び出しを受けたターニャを待っていたのは、上官とのギャンブルだった。

 

 無論、通常の配給券を賭けたようなギャンブルではない。

 ターニャが負ける度、彼女の体は弄ばれる。

 

 更に奴らは全力だ。

 三人がかりでターニャを負けさせることだけに注力され、流石のターニャも負けを繰り返す羽目になっていた。

 

 

 

 開始から一時間。

 ターニャは惨めな姿を三名の上官に晒している。

 

 すでに服は全て剥ぎ取られ、部屋の隅に投げ捨てられていた。

 全裸で椅子に座り、ターニャは目の前のカードに視線を集中させている。

 

 勝てば衣服を取り戻せる。

 そうなればお開きにすると、言質も取った。

 

 しかし、勝てない。

 なんらかのイカサマが行われていることは明白だが、ターニャはそれを認識できていなかった。

 

 カードは新品で、汚れや折り目は見当たらない。

 すり替えや通しのサインも、少なくともターニャからは見て取れない。

 

 巧妙な不正はターニャの意識外で行われ、無情にも黒星を積み重ね続ける。

 脱ぐ服が無くなり、すでにターニャは対戦相手ではなく商品扱いだ。

 

 一位を取った上官が醜悪な笑みを浮かべ、ターニャの肢体を弄ぶ。

 膨らみに乏しい胸を撫でまわし、小さな秘部の割れ目を指でなぞる。

 

 そして仕切り直し、ターニャは再開に沈む。

 何度も何度も繰り返されるカード遊びは、ターニャを逃がすことは無い。

 

 

 

 賭け事の終了を上官が提案する頃には、ターニャの人権は大方消失していた。

 全てを賭け全てを失ったターニャに待ち受けるのは、上官連中の奴隷という役目のみ。

 

 積み上げたコネやキャリアなど、この場では逆効果にしか働かない。

 振りかざす権力は、向こうの方がより上手なのだから。

 

 これから待ち受ける未来に、ターニャは震えることしか出来ない。

 今までの調教は所詮遊戯の一種だったのだと、嫌でも理解させられるのだから。

 

 目の前では、上官連中がターニャの長期休暇を申請し受諾している。

 自作自演もいいところだが、文句を付けることのできる人間はこの場に存在しない。

 

 ターニャはこれから一週間、二十四時間休みなしに調教される。

 最後の仕上げとばかりに、上官連中はターニャの心を折ろうとしていた。

 

「ぐっ、くぅっ……!」

 

 手始めに、ターニャは二足での歩行を禁じられる。

 隷属の証として犬用の首輪を嵌められ、四つん這いの姿勢で屈辱に震えていた。

 

 ターニャの地に伏した惨めな姿を見下ろしながら、上官連中は嘲笑う。

 ターニャは決意した。

 意地でも一週間を耐え切り、それ以上の復讐を遂げて見せると。

 

 隠しきれない殺意と憤怒の感情を浴び、上官連中はニヤリと笑う。

 そうでなくては面白くないと、目の前の幼女が壊れる未来を夢見ていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 一日目

 日が昇り昼の到来を告げる頃。

 ターニャ・デグレチャフは、封鎖された執務室で地獄を体験していた。

 

「ん、ぐぅ、じゅっ……!」

 

 朝から今まで、一切の休みなく強要される口淫奉仕。

 ターニャの背後には鞭や銃がいつでも使用できるように置かれており、暴力の恐怖を見せつけることでターニャを従わせていた。

 

 事実、ターニャの背中にはいくつか鞭の痕が刻まれている。

 裸に首輪だけの恰好で四つん這いになり、眼前へ突き出された肉棒へ奉仕を繰り返すターニャ。

 少しでも休んだり手を抜けば、容赦なく鞭はターニャの柔肌へと振り下ろされる。

 

 その様はまさに躾と表現するのが相応しい。

 ターニャへ下されるのはもはや上司から部下への命令ではなく、ペットへの躾なのだ。

 

「――ッ!」

 

 肉棒から白濁液が飛び出し、ターニャの口内へと注がれる。

 むせ返るような臭いと息苦しさに、反射的に吐き出そうとするのをターニャは必死に堪えた。

 一滴でも床に零せば躾と称した暴力が振るわれる。

 既に三度経験した痛みに震えながら、ターニャは口内を満たす白濁液を飲み込んだ。

 

「んぐっ、ぐっ……けほっ……」

 

 喉の奥に張り付く感触に咳き込みながら、なんとかターニャはその全てを胃の中へと収めていく。

 そして休むことを許されず、新たな肉棒がターニャの眼前へと突きつけられる。

 

 朝から昼まで、ひたすらこの繰り返しだ。

 快楽もない、ただひたすらに尊厳と精神を破壊され自慰用の道具であるかのような扱いを受け続けるターニャ。

 決意に燃えていた瞳はあっという間に濁り、死んだ魚のように生気を失っていた。

 

 

 

「は、発言の許可を求めます……」

 

 食事も水も与えられず、ただひたすらに嬲られていたターニャ。

 初めての発言は、尿意の限界を訴えるものだった。

 

 しかし、上官は容赦をしない。

 ターニャの下半身に予め用意していたある道具を装着させた。

 

「これ、は」

 

 そう、ターニャはそれをよく知っていた。

 この世界へ転生してから何度かお世話になった経験もある。

 

 ターニャに付けられた物、それは児童用のオムツであった。

 自分で排泄をコントロールできない赤子が付ける、あれである。

 

「は、はははは……」

 

 ターニャの喉から渇いた笑いが漏れる。

 ヒクヒクと笑みは引きつり、楽しくも嬉しくもないのに笑うしかないといった様子だ。

 

 全裸で首輪のみの姿でさえ、人としての尊厳は底辺だったというのに。

 排泄の休憩すら与えられず、オムツを付けて垂れ流せと。

 

 上官連中が心を折りに来ているというのはターニャも理解はしていた。

 しかし、ここまでとは。

 

「んっ……」

 

 気が抜けた拍子に、ターニャの全身が脱力する。

 ターニャに装着されたオムツは早速その役目を果たし床を汚すことは無かった。

 

 とことんまで尊厳を無視した行為に、ターニャは四つん這いの恰好を崩して倒れ伏す。

 そんなターニャの様子を無視して、使用済みのオムツは新品へと取り替えられ、新たな肉棒がターニャの目の前に現れる。

 

 地獄だ。

 そうターニャは認識し、床に振り下ろされた鞭の音から逃げるように口淫奉仕を再開した。

 

 

 

 日が暮れた頃、ようやく終わりを告げられた。

 無論、ターニャの立場は未だ変わらない。

 

 水と食事はきちんと支給された。

 しかし、ターニャは四つん這いで、手を使うことを許されない。

 犬のように餌皿に盛られたビスケットを齧るたびに、人として大切な何かが壊れていく音がターニャには聞こえていた。

 

 申請、及び受諾された休暇という名の地獄は一週間。

 初日が終わり残りは六日。

 長い休暇は、まだ始まったばかりなのだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 二日目

 公的に一週間の休暇を得たターニャだが、彼女を調教する上官連中全員が纏めて休暇を取るのは現実的ではない。

 彼らは入れ替わり立ち代わりながら、ターニャを嬲り続ける。

 

 丸一日の奉仕で汚れたターニャの肉体を洗浄するため、上官は彼女をシャワールームへと連れていく。

 今のターニャの姿を他者へ見せるわけにはいかないので、ターニャは大型のバッグに詰め込まれて運ばれた。

 人権やその他の権利を蔑ろにする行為だが、今更青筋を立てて文句を言う余裕も気力もターニャには残っていなかった。

 

 

 

「ぐっ、うぅっ……!」

 

 抵抗を許されないまま、ターニャは上官の手によって洗浄されていく。

 スポンジやタオルを使わずに素手で汚れを落とそうと撫で回す手つきに、ターニャの喉から堪え切れない声が漏れ出ている。

 

 胸や尻を重点的に撫でていた手は、やがてゆっくりとターニャの秘部へと向かう。

 割れ目を何度も擦り、一通り反応を楽しんだ後に人差し指と中指の二本が挿入された。

 

「く、あぁっ……!」

 

 上官の指は男根やバイブに比べれば細いが、その代わり自由自在に動く。

 生き物のように動き回る指に膣内をかき回され、ターニャの秘部からは蜜のような愛液がダラダラと滴り落ちだしていた。

 

「――ッ!」

 

 限界を超えた瞬間、ターニャは大きくのけ反りながら絶頂する。

 噴き出す愛液が床に落ち、シャワーの湯によって流されていく。

 

 ぜいぜいと息を切らすターニャ。

 しかし上官はそんな様子を考慮することもなく、膣から抜き取った指を今度は陰核へと添えた。

 上官の指によって剥かれたターニャの陰核は、高まった興奮のせいで幼女のものとは思えないほど大きく肥大化している。

 

「い、ぎぃっ!」

 

 直接陰核に触れられた刺激に、再びターニャの肉体が大きくのけ反った。

 絶頂直後で敏感になった肉体は、先程の愛撫とは比較にならないほどの刺激をターニャの脳へと届けている。

 獣の鳴き声にも似た悲鳴のような声が、ターニャの喉から絞り出されている。

 

「――ッ!」

 

 二度目の絶頂はあっという間だった。

 一度目以上の愛液を噴水のように噴き出し、ターニャの肉体は痙攣する。

 

「あ、あぁっ、あぁ……!」

 

 上官の愛撫は激しさを増すばかりで、ターニャには休む暇すら与えられない。

 親指と人差し指で陰核を摘みながら、中指で膣内をかき回す。

 意識も虚ろと化したターニャは、譫言のような嬌声を部屋に響かせることしか出来なかった。

 

 ターニャが十数回目の絶頂で意識を失うまで、上官の愛撫は続けられた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 三日目

 ターニャへの調教はどんどん苛烈さを増している。

 

 新たにターニャの両乳首と露出した陰核には、ピアスに似た直径一センチほどの小さい金属製の輪が装着されていた。

 輪の中を通すように細いピアノ線のような糸で、三つの輪は繋がれている。

 

「ぐ、くぅっ……!」

 

 上官が乳首の輪を摘まみ引っ張ると、ターニャの薄い胸が形を変えて歪みだす。

 糸で繋がれた輪が連動して動き、陰核を直接刺激されターニャの全身に痛みが走った。

 

 しかし、ターニャの秘部からは決して少なくない量の愛液が漏れだし太股を伝っている。

 今は痛みが勝ってはいるが、確かな快楽をターニャは感じていた。

 

「くっ、ふ、ぐぅっ、あぁっ……!」

 

 こねくり回すように両の乳首を長々と弄ばれ、ターニャの声は徐々に甘く蕩けるようなものへと変化していた。

 その変化を見逃さず、上官はターニャの眼前へ己の肉棒を突きつける。

 

「あっ――」

 

 初めのころはあれだけ嫌悪していたはずの汚らしい肉棒。

 だが今のターニャはその臭いに表情を歪めている。

 嫌悪ではなく、恍惚の感情にターニャの秘部が疼いていた。

 

 

 舐めろと、上官からの命令が下る。

 待ての済んだ犬のように、ターニャはその肉棒を咥えた。

 

「んっ、ぐっ、じゅっ……!」

 

 ターニャは喉奥まで使い、根元までを一気に飲み込んだ。

 頬を一杯に膨らませ、口内でせわしなく舌を動かし続ける。

 

 命令だから仕方がない。

 そう大義名分こそ立てているものの、その様子は色に狂った雌犬にしか見えなかった。

 

「――ッ!」

 

 上官はターニャの後頭部を右手で押さえると、喉の奥に流し込むように射精した。

 充満するむせ返るような臭いと喉を塞がれた息苦しさに、ターニャは全身を震わせる。

 

「むぐっ、んん……!」

 

 強制的に精液を流し込まれ、苦し気に喘ぐターニャ。

 しかし涙を流しながらも、その表情は歓喜に満ちている。

 快楽によって理性を剥がれたターニャは、完全に雌犬としての表情を晒していた。

 

「かはっ、ぐっ……」

 

 ターニャが全ての精液を飲み干したことを確認してから、上官は肉棒を抜き取った。

 ぜいぜいと息を荒げながら、ターニャは口内に残った精液を舌で舐め回している。

 味を味わうように舌を動かし、残った少量の精液も残さず嚥下していた。

 

 ターニャの秘部からは言い訳の効かない量の愛液が溢れ、床を汚していた。

 苦痛や痛みは、もはやターニャにとって快楽へと変換される。

 

 戯れに上官がターニャの頭を踏みつけたとしても、屈辱を感じながらもターニャは確かに股を濡らしているのだ。

 虐げられながらも快楽を与え続けられた結果、ターニャの脳はその両者を同一の物であると認識するようになっていた。

 

 怒りや不快感が勝っていたはずが、いよいよもって快楽が勝るようになっている。

 気づいていないのはターニャ本人だけだ。

 

 ターニャ・デグレチャフだけが、屈辱に耐えれば元の日常に戻れると妄信している。

 掃除を命じられ射精したばかりの肉棒を舌でチロチロと舐めながら、ターニャは次の餌を待ちわびていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 四日目

 ターニャ・デグレチャフは肉欲に堕ちた。

 僅かばかりの理性を残し、その精神は快楽を求める雌犬へと変貌している。

 

 上官はそれを理解し、だからこそ苛烈極まる調教を一旦休止させる。

 今のターニャに痛みや苦痛を与えても、それは褒美になるだけだ。

 屈辱に塗れながら墜ちていく様を楽しみたい上官連中は、彼女を丸一日放置した。

 

 

 

 執務室から数分、廊下の端に存在する男子便所の中。

 清掃員以外は滅多に立ち寄らないその中に、ターニャは放置されていた。

 

 最奥の個室の便器に座る形で、ターニャは厳重に縛られている。

 四肢を高く掲げ、秘部と尻穴を見せつけるような恰好。

 口は鉄製のボールギャグ、視界は目隠しで塞がれており、今のターニャは周囲の様子を音でしか推測することができない。

 

 誰もいない空間で一人。

 誰かが来るかもしれないという感情のみを抱きながら、ターニャは便器に座っていた。

 

「く、ふぅっ……」

 

 息は自然と荒くなり、口を閉じられないせいで涎は垂れ流し。

 乳首と陰核は淫靡な様を強調するように金属製の輪が装着され、僅かな振動にもターニャの肉体は敏感に反応している。

 

 朝から一切の調教を行われず放置され続けたターニャの体は、快楽を求めて疼いている。

 僅か数時間の安息すら我慢ができないほどに、彼女の肉体は淫らに変貌していた。

 

「……ッ!」

 

 コツン、と。

 ターニャの耳に、靴音が届く。

 

 便所の利用者か、あるいは清掃員か。

 誰であろうと確かなことは、ターニャが拘束されている個室の扉が開かれた瞬間にターニャが破滅するということだ。

 

 今まで公然の秘密と化していた売春行為とは桁が違う。

 雌犬としか表現のしようがない今の姿は、上官以外の誰かに見られるわけにはいかない。

 

 コツ、コツと繰り返される靴音に、ターニャの心臓は高鳴り続ける。

 来るな来るなと願う心とは裏腹に、秘部からはとめどなく愛液が溢れ続けている。

 

 見られたくないという理性と、見て欲しいという本能。

 両方が葛藤する中で、永遠にも感じる一瞬をターニャは震えながら待つことしかできない。

 

「――ッ!」

 

 カチャリと扉を開ける音が聞こえると同時に、ターニャは絶頂した。

 全身を痙攣させくぐもった声を上げながら、噴水のように愛液を便器の中へと吐き出す。

 外部からの刺激無く、ターニャは達してしまった。

 

 その様子に靴音の主である上官は満足気に頷いている。

 軍人から雌へとターニャの肉体は作り変えられた。

 あとは無駄に強靭な精神だけだと、目の前で痴態を晒す幼女を見下しながら上官はほくそ笑む。

 

 目隠しをしたまま、声も出さず。

 上官は己の正体をターニャに知らせることなく、その場を去る。

 

 ターニャの座っている個室の扉には故障中の偽張り紙が張られている。

 彼女自身が物音を立てない限り、この状況が露見することは無い。

 

 無論、ターニャ本人はそんなことは知らされていない。

 夜までの残り数時間、来るはずもない来客に体を震わせながら、ターニャは放置され続けた。

 

 

 

 そして一日の終わりにターニャは回収される。

 誰にも触れられなかったはずの肉体は今日だけで三度の絶頂を経験していた。

 

 全てを明かされたターニャは怒りに震え、しかし同時に感じた未知の快感を忘れられずにいる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 五日目

 ターニャ・デグレチャフは、今日も上官への奉仕を繰り返している。

 眼前に突きつけられた肉棒を口に頬張り、丹念に舐め回す。

 

「――ッ!」

 

 そして注がれる精液に咳き込み、苦し気に精液を吐き出した。

 初日と同じような、人としての尊厳など存在しない地獄のような一日。

 しかし今のターニャは違う。

 

 命令される前に自発的に竿を舐め、玉を吸う。

 喉奥に注がれた精液を苦し気に飲み下し、床に落ちた精液も残すことなく舌で舐め取った。

 

 以前も上官から命令されれば顔を顰めて行っていたことではある。

 どうせ結果は同じなのだから折檻を受ける前に行動するという論理は、いかにもターニャが好む合理主義と言えるかもしれない。

 

 だが、今までのターニャであればプライドが邪魔をしていただろう。

 今のターニャは、連日続く調教に心がへし折れかけている。

 そして同時に、快楽に墜ちかけてもいた。

 

 虐げられるということに、ターニャは苦痛ではなく快楽を感じ始めている。

 

「くっ、ふぅっ……」

 

 犬のように四つん這いになりながら、ターニャは眼前の肉棒を咥え続けていた。

 喉奥にまで頬張ったそれを一心不乱に舐め回しているターニャを、背後から別の男が執拗に責め立てている。

 

 ターニャの秘部には男の指が第二関節まで挿入され、指が動く度にぐちょぐちょという水音が大きく響いていた。

 水音に連動するかのように、ターニャは苦し気な嬌声を漏らしている。

 

「ぐっ、うぅ、く、ふっ……!」

 

 ターニャの四肢は、生まれたての小鹿のように頼りなく震えている。

 溢れる愛液や涎が床に落ち、小さな水溜まりが形成されていた。

 

「――ッ!」

 

 ターニャの顔面に精液が浴びせられると同時に、彼女は絶頂に達する。

 ビクビクと体を震わせながらも、四つん這いの姿勢を崩すことは無かった。

 

 そんなターニャへと、上官は新たな玩具を提供する。

 ターニャの頭に犬の耳を模したカチューシャを被せると、背後に回り尻穴へ先端が犬の尻尾になっているアナルプラグを突き立てた。

 

「ぐ、うぅっ……!」

 

 プラグ自体はそこまで大きくはないが、幼女の身であるターニャはその衝撃に苦悶の声を上げた。

 両腕が自重を支えきれなくなり、四つん這いの姿勢が崩れる。

 

 膝を立て尻を突き出したままターニャはうつ伏せに床へ伏し、ぜいぜいと息を荒げている。

 その動きに合わせて尻尾が動き、今のターニャはまさしく褒美を待つ犬のようだった。

 

 人としての衣服を着用せず、家畜のような扱いを受け続けてきたターニャだが、いよいよもって恰好が雌犬としか表現できない物へと変貌している。

 全裸で首輪・犬耳・尻尾を身に着け、乳首と陰核には金属製の輪がピアスのように張り付き、四つん這いで男の肉棒へ奉仕する。

 

 傍から見て、軍人どころか人であるという要素が皆無。

 場末の娼婦ですら、これよりは人間扱いされているだろう。

 

「くっ、ぁ……」

 

 命令を受け、ターニャは未だ震える体を無理矢理起こした。

 蹲踞に似た姿勢で両手を胸の横に付けた、所謂“ちんちん”の恰好を取る。

 

「んっ、くぅっ……」

 

 眼前に肉棒を突きつけられ、ターニャは待てと宣告される。

 まるで犬の躾でもしているかのようだ。

 

 その状態で背後から胸を揉みしだかれ、ターニャは小さく喘ぎ声を漏らす。

 両胸の輪に繋がった糸越しに陰核への刺激も同時にターニャを責めている。

 

 当初は嫌悪感で満ちていた雄の臭いも、もはや慣れたというようにターニャは顔を逸らさず鼻先に突きつけられた肉棒の臭気を嗅いでいる。

 口端から涎を垂らしていることに、本人であるターニャだけが気づいていなかった。

 

 よし、舐めろ。

 そう命令されると同時に、ターニャは眼前の餌を咥えだす。

 がっつく様子は空腹の犬のようで、上官を喜ばせるだけなのだが。

 淫欲に支配され出したターニャの思考は、そのことを認識できてはいなかった。

 

「――ッ!」

 

 喉奥に注がれた精液の臭いと味に、ターニャは再び絶頂する。

 愛液に混じって黄色い液体まで垂れ流しながら恍惚に耽るターニャの姿に、上官たちは満足気な笑みを浮かべながら彼女の頭を撫でる。

 ターニャの心に微かに残った人としての尊厳が消え去る時は、もはやすぐそこにまで迫っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 六日目

 長い長期休暇も、今日で六日目。

 日々執拗に調教を受け続けてきたターニャは、朝目覚めると同時に今日はどのような趣向なのだと想像を膨らませていた。

 

 しかしターニャの想定とは裏腹に、朝から昼まで調教と呼べるような出来事は何もなかった。

 性的な奉仕を強要されることもなく、肉体への接触も皆無。

 

 相変わらず雌犬のような恰好はそのままだが、それだけだ。

 部屋の隅で待機を命じられたまま、既に一日の半分が経過している。

 

 初めは警戒した。

 次に訝しんだ。

 そして上官が昼食を取りに部屋を出ていった頃、ターニャの心に沸き上がった感情は焦燥だった。

 

 体が疼く。

 今日はどんな調教が待っているのかと想像していただけで、ターニャの秘部は濡れていた。

 

 ターニャは決して認めないが、その肉体は既に調教され尽くしている。

 ゆえに最後の一押しのため、上官連中はターニャを放置したのだ。

 

 これまでの調教結果を見れば、ターニャが被虐を望むようになっているのは明白。

 望んだ物が手に入らない雌犬がどのような行動に出るのか、それは分かり切っている。

 

「……誰も、いない」

 

 呟くように、ターニャは己に言い訳を重ねる。

 誰も見ていない。

 どうしようと問題は無い。

 

 そう言い訳をしながら、ターニャは恐る恐る己の秘部へと指を這わせる。

 誰もいないのなら、己で慰めるしかないのだと。

 

「んっ……」

 

 調教によって肥大化した乳首と陰核は、敏感に反応した。

 ターニャが軽く刺激するだけで、愛液がとめどなく溢れ出ていく。

 

 初めはゆっくりとしたターニャの指は、次第に激しくより強い快楽を求めて動作する。

 あっという間に理性を超えた本能がターニャを支配した。

 

「あっ、くぅっ……!」

 

 右手で乳首を摘まんで弄り、左の人差し指で膣内をかき混ぜる。

 だらしなく歪んだ表情は幸福に満ち、抑えきれない喘ぎ声が部屋中に響き出した。

 

「――ッ!」

 

 ターニャは自慰で果て、絨毯を多量の愛液で汚す。

 絶頂に肉体を震わせながらも、両手の動きは止まらない。

 

「はぁっ、はぁっ……く、あぁっ……!」

 

 足りない。

 幼女の指では細すぎる。

 今まで受けた鬼畜外道の調教に慣れてしまったターニャの肉体にとって、両手を使った自慰行為など子供騙しにもならない。

 

 獲物を探す野生動物のような動きで、ターニャは周囲を見渡す。

 その間も自慰行為は止まらず、荒々しい動きで快楽を求めていた。

 

 しかし、この部屋にターニャの肉欲を満たす道具は存在しない。

 あらかじめ上官が全ての性具を隠していたからだ。

 

「あ、あぁ、くぅっ……」

 

 切なげな声を漏らしながら、ターニャは苦悩する。

 あれだけ嫌っていたはずの肉棒が、今は欲しくてたまらない。

 喉を、秘部を、あらゆる穴を貫かれたいという渇望が、ターニャの理性を溶かしていく。

 

「――ッ!」

 

 二度目の絶頂。

 愛液を撒き散らしながら部屋中を徘徊しながらも、ターニャの行動は変化しない。

 早く帰ってきてくれと、上官の帰還を待ちわびる。

 

 

 

 六時間後。

 満を持して扉を開け入室した上官を待っていたのは、完全に堕ち切ったターニャ・デグレチャフの姿だった。

 

「あ、あぁっ……!」

 

 救いを得た修道女のような視線が、ターニャから上官へ注がれる。

 だが、まだもう一押し。

 

 今日は終わりだと簡潔に告げ、上官は去る。

 完膚なきまでにターニャの精神を破壊するその一言は、上官の想像以上に成果を発揮した。

 

「あ、え……?」

 

 ターニャの瞳が、絶望に染まる。

 呆然とするターニャを尻目に、上官は去っていった。

 明日の光景を、どこまでも心待ちにしながら。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

長期休暇 最終日

 最終日。

 ターニャ・デグレチャフは解放の日を震えて待った。

 

 全裸で地面に正座するターニャの前には、ターニャを調教してきた小児性愛者の上官たちが勢揃いしている。

 乳首と陰核に取り付けられた金属の輪も、犬耳を模したカチューシャも尻尾も首輪も、今のターニャは身に着けていなかった。

 

 そして今、ターニャには二つの選択肢が突きつけられていた。

 ターニャの目の前には、己の軍服が畳んで置かれている。

 これを身に着け部屋を出れば、晴れて元の日常が待っているのだ。

 

 悩む理由などない。

 そうすれば終わるのだとわかっているのに、ターニャは動けない。

 “これで終わってしまう”と考えている自分自身に、肉体が硬直している。

 

「う、うぅ……」

 

 軍服の横には、先程までターニャを縛っていた首輪が置かれていた。

 それは、一週間続いた隷属の証。

 今すぐにでも粉砕しこの世から消し去りたい過去であると思っているはずなのに、ターニャはその首輪から目が離せない。

 

 上官たちはターニャに選ばせようとしているのだ。

 軍人として生きるのか、墜ちたまま人としての生き方を捨てるのか。

 

「あ、あぁぁ……」

 

 今までのように、言い訳はできない。

 この首輪を手にしてしまえば、ターニャは自分自身でその道を選んだということになる。

 

 這うように、ターニャは前へ進む。

 伸ばした右手が掴んだのは、隷属の証だった。

 

 それでいいのか。

 上官は、再度確認する。

 意地悪く、ターニャ自身の口から聞かせろと命令する。

 

「――はい」

 

 ターニャは小さく頷くと、己の手で首輪を再び装着した。

 首輪から延びる鎖を差し出し、ターニャは卑しく懇願する。

 

「私は、皆さまの雌犬になります」

 

 違う。

 上官は訂正を要求し、ターニャの髪を鷲掴みにした。

 もっと無様に懇願しろと、ターニャの心を更に責め立てる。

 

「は、はぃ……!」

 

 上官がターニャの髪から手を放す。

 ターニャは涙を浮かべながら、地べたに這いつくばって土下座の姿勢で懇願する。

 

「どうか、醜く卑しいこの私を、皆さまのペットにして下さい……! 命じられれば、なんだってします。だからどうか、この貧相な肉体で存分に精処理して下さい……!」

 

 尻を突き出して必死に懇願を繰り返すターニャに、上官はようやく満足したのだろう。

 今度は優しくターニャの頭を撫でるとその眼前に一錠の薬を差し出した。

 

「あ、あぁ……」

 

 説明をされなくても理解できてしまう。

 それは違法に取引されている、麻薬の類だ。

 性行為の際に服用する馬鹿どもが後を絶たないと、過去のターニャは愚痴を零していた。

 

「――ん、ぐっ」

 

 ターニャは躊躇うことなく、その薬を嚥下した。

 疼いたまま放置され続けた今の肉体に、薬の作用が加わって。

 こんな状態で嬲られればどうなってしまうのか。

 その先を想像するだけで、ターニャの秘部は洪水のように濡れている。

 

「はぁ、はぁっ……!」

 

 ターニャの眼前に、上官は肉棒を露出させる。

 鼻先に擦り付けるようにターニャを焦らし、ターニャの思考を染め上げる。

 

「く、ください、早く、お願いです……!」

 

 ひとしきり遊んで満足した上官は、いよいよターニャの秘部へとその肉棒を密着させる。

 今まで、ターニャは本番行為を行っていない。

 初の体験に、ターニャの口端からは涎が垂れだしていた。

 

「――ひ、ぐぅっ!」 

 

 上官は一息に、ターニャの膣へ肉棒を最奥まで突き入れた。

 首を絞められたような悲鳴がターニャの喉から零れ出る。

 

 パンパンと音を立てて、肉棒はターニャを乱暴に犯す。

 一突きごとにターニャは苦し気な悲鳴を上げるが、その表情は完全に蕩け切っていた。

 

 薬の効果で何倍にも膨れ上がった快感が、ターニャを襲う。

 一突きごとに絶頂しているのではないかと錯覚するほどに、ターニャの肉体は鋭敏に反応を繰り返していた。

 

「――ッ!」

 

 幼女の狭い膣は、容赦なく精を搾り取る。

 あっという間に上官は射精し、狭い膣内は精液に満たされる。

 溢れ出た精液を床に滴らせながら、ターニャは失神寸前だ。

 ピクピクと痙攣を繰り返しながら、薄れる視界が目の前の光景を捕らえる。

 

 全ての上官連中が、己の肉棒をそそり立たせながらターニャを見つめている。

 今からこの全てが自分を貫くのだと理解し、ターニャは歓喜に包まれた。

 

 

 

 「おっ、ほぉっ……!」

 

 数時間が経過した頃。

 ターニャは騎乗位の体位で激しく腰を振り続けていた。

 

 動物のような唸り声を上げ快楽を貪る姿は獣、いや雌犬としか言いようがない。

 鼻先に肉棒を突きつけられれば喜んで咥え舐める。

 注がれた精液は膣と喉で余さず受け止め、愛おし気に微笑んでいる。

 

 ターニャ・デグレチャフは、肉欲に堕ちた。

 厳格で効率を求める理想の軍人というターニャの過去は消え去り、快楽を貪るために隷属を選んだ雌犬としてのターニャが新たに誕生したのだ。

 

「――ッ!」

 

 絶頂に震えるターニャの顔は、だらしなく歪みきっている。

 首輪に繋がった鎖が揺れ、小さく音を鳴らす。

 その音にすら快感を感じるターニャは既に末期だ。

 今までの日常に帰れないことを改めて自覚したターニャは、歓喜に震えながら目の前の男たちへと奉仕を繰り返す。

 

 誰がどう見ても悲劇的な結末という他無い結果だが、ターニャ自身だけがこの終焉を悦んで受け入れていた。




キリのいい所で一旦完結とします。
墜ちた後のエピソードをオマケで書くかもしれませんが時期は未定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。