何回も転生した奴が名もない世界に転生しました。 (オット)
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プロローグ

良し、今回の分はコレで終わりかな、夜月、次の転生はもうそろそろのはずだ、どこに転生するんだ?

 

「あー、今回はアニメとか漫画の世界じゃなくて普通の世界だね。」

 

なるほど、ある程度の事前知識ってのは無理か、まぁ良いさ、どういう世界なんだ?まぁ今までの傾向からしてまた凄い世界なんだろうが。

 

「えーっと、魔法があって、魔力があって、冒険者ギルドなんかがあるっていう、良くあるファンタジー。」

 

まぁ割と比率多いから仕方無いか。

 

「最近は特典なんかは全然使ってないけど、大丈夫?」

 

言っても魔力がある程度あればそんなに苦労はしないし、最悪家宝か国宝扱いで紅黒龍作り出せばいける、コピー品でも良いからな。

 

真打は威力が高すぎていけねぇ。

 

「あはは、あれ元々神殺し出来るスペックだからね。多分エヒトの時みたいに中級くらいまでだったら割と一方的に殺戮出来るよ。」

 

神は人間にしか殺せないっていう法則無かったら戦争だらけだもんな、良くも悪くも。

 

「まぁ、取り敢えず、行ってらっしゃい、ヒロインは勝手にこっちで用意しとくね。」

 

要らんわ!!

 

自分が落ちていく感覚と共に暗闇に包まれる。

ーーーーーーーーー

「〜!!」

 

「・・・せ!」

 

いきなり騒がしいな、今回はどんな身分だ?それによって変わってくるぞ・・・。

 

背中が叩かれる。

 

激痛で思わず叫ぶ、苦しいと思ったら呼吸して無かった、危ねぇ。

 

「〜〜!!〜〜〜〜!!」

 

ヤッベェ、いつもの事ながら何言ってるかわっかんねえ。

 

気長に待つか。

 

毛布で包まれる、誰かに抱かれ、一気に眠気が襲いかかって来た。

 

こういう時は大人しく寝るに限る。

 

スヤァ。

 

ーーーーーーーーー

そして俺が生まれてから数日経った、暫くは婆さんや、女性が俺の世話をするようで色々と話しかけられている、俺の母親は多分まだ寝込んでいるだろう、というか、そうでなくては困る。

 

俺の目もちゃんと開き、腕や足が無いということもなく、至って健康な男子として生まれた。

 

コレで女だったら絶望してたがちゃんと息子があるのを確認した、愚息よ、世話になるぞ。

 

ただ、赤子の視力では目の前の人物すら分からないので自然と眼を細める事になった。

 

言語すら分からないのだ、せめて顔ぐらい覚えないと俺の貧困な記憶力では関係性すら持たせられん。

 

そして安定の母乳チューチューでは無心になった、今は息子なので別に恥ずかしがらなくて良いのだが免疫をつける為にも母乳は飲まなければ俺が死ぬ、というか家の色や布の質から平民とか村人の身分っぽいので余計に体を丈夫にしないと最悪捨てられる、せめて幼児くらいになるまで保護下にいなければ。

 

そしてまた数日経つと何か違和感を覚えた。

 

と言うのも余り汚れていないのだ、俺だって筋肉が育っていないからおねしょや大の方を漏らしているのに布が常にある程度の質のものが出てくる、まぁ部屋着を切って布にしたりしている所もあるので不思議では無いのだがなんて言ったら良いのだろう、その布が緑色の絹のようなものなのだ、絹のようなやつとかいくら何でも金が足りない。

 

現代で言うならふかふかのバスタオルのようなものだ、魔法があるとはいえこのレベルがあるのはおかしい、帝国や王国の首都などならともかくここは部屋の内装からして田舎の木造の家だ、そんな物があるのは生産地でもなければおかしい、その筈なのに時たま訪れる婆さんなんかの服はガサガサっぽいのだ、流石に推測しかできないからキツイ。

 

体が育つのを待つしか無いか。

 

母親と思われる女性が胸を晒した、また母乳タイムか・・・。

 

ーーーーーーーーー

数ヶ月経った、おかしい、魔術が発動出来ねえ。

 

俺の魔術は転生した世界にある魔法の適正によって左右される。

 

例えば火を放つ魔法があったとしよう、魔法の法則はほとんどの場合2つか3つ、魔法陣なんかを使えばもう少し複雑に効果を発揮させられる。

 

法則の1つ目はまず適性がある事、これはステータスプレート、魔力の資質などに現れる。

 

スキルの様な形ならば魔法《火》とか火魔法とか表示は色々ある、そして俺の魔術は世界によってそれが変わる、大前提としてその分類の『魔法』が使える事が前提なのだ。

 

では魔法が無い世界ではどうなるのか?使おうと思えば使えるが魔力消費なんかが馬鹿でかい、ハジメの作ったクリスタルキーの燃費がアホみたいに悪いのもこれが原因だ、世界を渡る事自体は魔力はそこまで必要ではない、せいぜい勇者ほどの魔力があれば良い、だが行った先の異世界で魔法を使おうとするには適正を取得する必要がある、伊丹や帝国の奴らに行った魔術の言い訳もここから来ている。

 

俺の場合は天使だからか負荷はそこまで無いが命を削って小さな魔術1つ、何て事もざらにある様なので何も言わない。

 

話を戻そう、俺が使える筈の魔術を常用のものを使えないという事はまず、魔術での物量戦が出来ない、俺の適性が無いからだ。

 

次に荷物を魔術で作った空間に入れられない、そういう魔法を付与した入れ物があれば良いんだがな。

 

そしてこれが一番ヤバい。

 

俺の眷属含め武装などの戦力類が使えない。武器は現地調達、つまり新しく俺が作るか誰かに紅黒龍の様な専用装備を作ってもらわないと満足に暴れる事もできない。

 

ヤッベェ、コレでこの世界がスキルレベル制とかだったら少しずつレベル上げとか出来るんだが・・・自我があるのも厄介だな。

 

・・・どうしようか。




間違ってあとがき無しのやつあげちまったよ・・・

プロット無し、世界設定のみ、というかぶっちゃけ行き当たりばったりのノリで出来た作品だぜ。

そして私は懲りずに自分の面白いんじゃね?という直感とノリで書き上げる日々に戻るぜ。

そういう点ではありふれって色々自由に書けるから良いよね、アレが完結したらこっちの小説の更新速度が下がると思ってくれ、ある意味繋ぎだ。


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カルト

1歳になった、時間がとても長く感じる。

 

ハイハイができる様になった。

 

鍛えよう。

 

そして寝ながら色々見てると俺の世話をしている女性は金髪の女の人で美人だった、顔の半分くらいやべえ火傷してたけど。

 

その女性は俺の母親で、たまに来るお婆さんは何かの魔法職?見たいで少しずつ俺の事も分かってきた。

 

俺の名前はゼルという名前らしい、呼びにくい。

 

婆さんは母さんを大事にしている様で来るたびにいろんな話をしている、その会話を聞きながら言葉を覚えていった。

 

そして俺はいつも使っている回復魔術をしながらの高速筋肉増強法が出来ないので地道に努力する事にする。

 

ーーーーーーーーー

半年くらい経った、母さんが泣いていた、何も言えねぇ、俺にご飯くれたらそのまま泣き疲れたのか寝てしまった。

 

仕方ないのでじっと見ていた。

 

そう言えば父親居ないけどどこ行ったんだろうか。

 

少しずつ扉が開き、婆さんが俺を見て悲痛そうな顔をして母さんの近くで立ち尽くしていた。

 

マジでどういう事ですかね。

 

ーーーーーーーーー

次の日、よく分かった、これ多分生贄かなんかにされた、だって男の集団が俺を抱えて祭壇みたいなところに連れてこられて供物みたいに置かれてるもん、どういう事だってばよ。

 

そしてそのまま暫く経つと誰かの足音がした、獣とかそんな感じの足音じゃないから人かな?

 

「・・・ほう、何事かと来てみれば、幼子が一人で生贄にされているとは・・・なかなかどうして。」

 

黒い細長い人・・・人かこれ。

 

えっマジで何これ、絶対こいつ人間じゃねえぞ、絶対人外の類だぞ、美人な魔女とかだったらいいなとか思ってたけどこれマジで人じゃねえ、何だこいつ。

 

「これはまさか私への供物か?だとすればなんとも言えぬな、お主にも迷惑を掛けるな、勝手に生贄になどされて。」

 

本当にそうだな、ところであんた誰よ。

 

「・・・興が乗った、お主を少しばかり育ててみよう、人間など育てるのは初めてだ、許せ、幼子よ。」

 

「・・・。」

 

離乳後で良かったな、あんた、赤子だったら死んでたぞ。

 

「そうそう、名を名乗っていなかったな、私は聖霊のカルトという、覚えておきなさい。」

 

カルトとか嫌な予感しかしないんですけど。

 

「まずは言葉から教えてみるか、私の家へ来るがいい、稽古くらいならば付けてやろう。」

 

戦闘前提っすかカルトさん。

 

ええ、キツイですよこれ、マジで、だってこのエ○ダーマン見たいなこのカルトさんなんか絶対手出ししたらやばい系統だろ。

 

「お主が大きくなった時が楽しみじゃな。」

 

俺としてはものすごく怖いのが意見でありますカルトさん。

 

俺の内面など露知らず、カルトは暗闇へ歩き始めた。

 

カルトに抱えられている俺は予想以上に高い視点に少しばかり恐怖しながら暗闇の向こうを見ようと躍起になった。

 

「私は闇を操作する事が出来る、特別にお主にも加護を与えてやろう、暗闇の中でもよく見える様になる。」

 

そう言って頭に触られた瞬間情報量が増えすぎて気絶しそうになった。

 

というか一瞬気絶した。

 

「すまんな、加護を与えるなど初めてであったから加減間違えてしもうた、だが、無事な様だな、問題なかろう。」

 

独り言多いっすね。

 

「さて、見えてきたぞ、あれが私の、お主の家になる家じゃ。」

 

家の外見は暗闇の中にポツンと立っている木造の家、だろうか、山奥のコテージといった方が分かりやすいか。

 

「まずはお主の服からじゃの、ほれ、軽く作ってやろう。」

 

そう言った瞬間俺の体にピッタリと合う着脱可能な緑色の絹のようなふくが纏わり付いた。

 

「どうじゃ?私特製の聖霊布じゃぞ、貴重な物じゃ、嬉しかろ?」

 

それうちの村で腐るほど使われてたんですけど、というか制作元あんたかよ。

 

という事はアレか?俺の村はカルト教団の村とかってる貼られてる?うわ嫌すぎる。

 

何はともあれそれから俺とカルトの共同生活が始まった。




狂信者とか異常者の代名詞の様なカルトではなく普通に聖霊の名前です、名前はノリで決めました。


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成長記録

三歳ほどになった、俺はカルトの教えでみるみるうちに知識をつけていき、俺の中身とカルトの喋り方強制(矯正ではない)で大人っぽい?喋り方になった。

 

俺も大分喋れるようになったので普通に話せるのはありがたい。

 

そして俺が言葉を喋られるようになると同時にこの辺りの地理と歴史を習うことになった、五千年前からの歴史知ってるってカルトの歳がわかんねぇな。

 

因みにそれにともない精霊と聖霊の違いも何となくだが分かってきた、精霊は聖霊より行使できる力量に限りがあり、支配領域のようなものは群れで管理する、大精霊と呼ばれる者達も各地に散らばってそれぞれが管理しているので精霊の強化版と考えていいらしい。

 

そしてカルトは精霊ではなく聖霊、精霊や大精霊の上位者であり、一つの個体で全てを管理できるほどのスペックを持つ、カルトが司るのは闇、穢れなどのおよそ人間が持つ悪性のようなものを司っているらしい、人間が恐怖を感じる事柄全てを司るため、夜の暗闇や地の底など光の届かない場所なら自由に移動でき、少し薄暗い程度ならば影を利用して顕現することも可能らしい。

 

俺が生け贄に捧げられていた祭壇も夕方位に発見し、転移したのだと言う。

 

「私は光の一側面じゃからな、光が強いから闇が強いのではない、闇と光が強いのだ。」

 

何を言いたいのか分からんがそう言うことらしい。

 

そしてカルトがほぼ常に顕現しているこの森は昔聖霊を手懐けようとした国を滅ぼしたら光の聖霊が管理を手放したせいで暗闇一色に染まったらしい、灯りは灯せるし、ちゃんと場所さえ分かれば普通に通り抜け出来るが、魔物なども暗闇の中での狩猟手段を持っているため、冒険者達があまり来たがらないらしい。

 

その為人間達からは黄昏の森と言われている。

 

鉱石掘らなきゃと思った俺は悪くないと思う。

 

だが灯りは灯せると言っても光がない訳じゃないらしい、もう少し奥地に行けば光る苔やキノコなど、主に植物が光を放っているらしい、ただし、まばらな上にその光を利用して狩りを行う魔物も多いため危険度は高い。

 

「それがこの光ってるキノコとか苔なのか。」

 

「ぬ?ああ、それは私がいつでも消せるように品種改良したものじゃな、生存競争が激しいためか一ヶ月ほどで生まれて育ってを繰り返す種が多くての、それをかなり遅くさせ、光を放つ時間を長くしておるのだ。」

 

「はー、よくもまぁ。」

 

因みに、繁殖期には蛍のような光がフワフワと風に乗るらしいので幻想的なのだそう。

 

そして、俺を生け贄にした村はというと、まだ森の近くにあるらしい、たまに襲ってくる魔物等が嫌がるように威圧してやったとどや顔で言われた。

 

「じゃが山賊などは対処できぬからの、そのときはお主がやっつけて参れ。」

 

「うわぁ、微妙に役にたたねぇ・・・。」

 

「人間とか私の司る悪性の塊じゃぞ、一つでも操作してみよ、大混乱じゃ。」

 

それもそうか。

 

「わかった、俺が十歳以上になってからな。」

 

「それでよいのじゃ。」

 

このエ○ダーマンめ・・・。

 

因みに、魔物を司る聖霊は居ないらしい、創造神が魔物を統べるものとして群れの長を魔族や獣人など、人間の亜種を統べるものとして魔王と獣王を造り、人間は完全にフリーらしい、カルト曰くすぐ増えたから半分実験台扱いじゃの。らしい。

 

創造神は作ったものに愛などなく、今人間が掲げている聖神教会とか言うのはただの人間のエゴじゃ、とも言われた、何もしないうちからこの世界の秘密が暴露されまくっている気がする。

 

今は獣王が亡くなってから二百年ほど経ち、人間からは被差別種族とされているらしい、獣王が生まれ、人間と戦争をして勝てば逆の立場になるのだから擁護などしないらしい。

 

魔族や獣人等は生存するには厳しい場所で暮らさなければいけなくなり、創造神に直談判に来た人間が居たらしく、道のりやべぇのにお前よくここまでこれたな、御褒美あげよう、こっち来て、みたいなノリで種族を変えたらしい、そして旗頭として魔王と獣王が生まれた、というのが真実らしい、何でカルトが知ってるかって?魔族に限っては変更担当だったらしいからだよ。

 

つまり、俺もカルトに加護を与えられた関係で半分魔族の特徴を持っているらしい、魔族の特徴は身体能力か魔法がなにか一つだけ資質が現れる事らしい。

 

俺の場合は身体能力強化の魔法らしい、ただし、魔力も年齢ゆえにまだ少なく、十歳位まではまともに発動も出来ないだろうと言われた、悲しい。

 

そして魔術起動しようとしたら気絶しかけた、本当に魔力ないんだな。

 

ただ発動は出来たのでプロテインみたいな使い方で身体能力を伸ばして行こうと思う。

 

言うて筋肉痛になることが多くなるだけだからな。

 

そしてこの黄昏の森がある俺の出身国はアルダハイド王国、この森を挟んでアルカディア帝国があり、森の回りは冒険者達が勝手に作った都市国家がいくつかある、その一つに学園迷宮都市ポリスがある、創設者は異界の都市の名前だとか言っていたらしいが真偽は定かではない。

 

というかポリスって都市国家の名前だったよな、地球で、影響残しすぎでは?

 

「ところで戦闘訓練なのだがの、私との模擬戦は保留でどうじゃ?」

 

「何でだ?」

 

「いやなに、体も育って居らぬのだから手加減に慣れていない私ではほぼ確実に殺してしまうやもしれん、死なない程度の攻撃にはするつもりではあるがお主は台風や津波、噴火などに特別な手段なく立ち向かえるか?」

 

「無理だな、魔法があるならともかく、ただの人の体で天災に勝負なんて挑めない。」

 

「それが答えじゃ、そして私は人が恐怖を感じるものはほぼ全て操れる、精神的にも、概念的にも、聖霊の中でも特に支配領域が多い私では手加減など望めるはずなかろうて。」

 

カルトさん支配領域は広く浅くだったみたいだしまぁそうなるか。

 

「了解、模擬戦は止めておくよ。」

 

そして俺は簡単な長剣を渡された、三歳に与えるようなもんじゃないだろう。

 

こちとらやっとこさ歩いたり走ったりする段階だぞ、まずは筋トレさせろ。

 

ーーーーーーーー

5歳になった、筋トレの効果は出ているが、子供なのでそこまで筋肉が付いているような見た目ではない。

 

が少なくとも短剣程度ならば触れるくらいには大きくなった。

 

カルトの家には暗黒面を綴った書物があり、そのなかに暗器とか護身用の武器が載っている本があったのでねだった。

 

というか、この家から殆ど出せてもらっていないので生き残るもくそも無いのだがたまにカルトは何処かへふらっと行くときがある、その隙に本を読んでいたのだが一度官能小説を見つけてあるんだなと思った。

 

帰ってきたカルトがまだお主には早いものだとか言ったけど既に全部見てたから憶えて朗読してやった。

 

カルトが何かすごい顔してたけど面白かった。

 

そして俺はカルトが買ってきた鈍く光る短剣を渡された、きっと光を放っているので俺の位置が分かりやすいからだろう。

 

そしてカルトから渡されたランタンを手に黄昏の森へ出陣した。

 

数分後に後悔した、魔物がうじゃうじゃいて戦闘しかしてない。

 

狼の魔物だったりコウモリだったりトレントだったりの魔物が休憩もしないうちに襲ってくる。

 

俺の歩き方が悪いのかランタンが悪いのか、多分前者だな、冒険者は普通にこの森に入ってるらしいし。

 

念のためランタンを消して腰に装着する。

 

近くの木を駆け上がり、木から木へ跳ぶ。

 

だがそんなことをしていたら大物にも会うわけで、

 

岩だと思ってふんずけたものはすげぇでかい熊だった。

 

熊は俺をみて咆哮した。

 

熊の大きさは四つん這いの今でさえ八メートルほど、でかすぎる。

 

俺はまた木に登ろうとして木ごと地面を抉りとった熊の一撃をみて諦めた。

 

短剣を逆手に持って熊の横を通りすぎ様に足を切る、血が出たが筋肉を切るには至らない。

 

毛をつかんで上へ跳ぶ。

 

背中にのり、とりあえず突き刺すと熊は立った。

 

ヤバイと思って離れると背中から倒れ込んできて短剣が背中にずっぷりと突き刺さった。

 

熊は全然痛みを感じていない?ようで構わずに起き上がり俺をみた。

 

威圧感もそうだが殺気の質がヤバイ。

 

俺が持ってきていたのは短剣とランタンのみ、ランタンは武器じゃないから除外すると俺には武器がない。

 

熊は短剣の痛みすら耐えられる程度っぽいからな、取り出すには少し無謀すぎる。

 

熊の突進が迫る。

 

横に避けようとすると熊は一瞬で横へ移動した、何がなんでも俺を殺すつもりらしい。

 

「チッ。」

 

まだあまり制御できないが・・・使うか。

 

『身体強化』

 

まだ無意識に出来るほど使い慣れていないのでわざわざ声に出して使わなきゃいけない。

 

「まずは一発、ブッ飛べ!」

 

突進に合わせて大きく振りかぶった右ストレートは熊の勢いをかなり削ったが俺の体は簡単に吹き飛んだ。

 

だが、生き残った。

 

右手が動かないのできっと骨が折れている、だが足と左手は無事。

 

熊は既に振り返って俺を爪で引き裂こうと腕を振りかぶっている。

 

落下を始めた俺にピッタリと重なる軌道だ、野球ならホームランとでも言いたくなる。

 

だが、軌道が合っているということは熊は俺を見ているという事でもある。

 

「ランタン!」

 

ランタンに火が灯る。

 

暗闇のなかで戦っていた熊は急に灯ったランタンの光に目をやられた。

 

その隙に短剣を背中から力ずくで抜き出し脇の下から一気に切り上げた。

 

「ッシャオラァ!左腕は貰ったぜ!」

 

肩から先が身体強化によって大人の数倍の身体能力になった俺の攻撃で腱が切れたのか動かなくなった。

 

熊は依然として立ったままだ、四つん這いでは大きな隙を晒すことになる。

 

熊は唸っている、諦めてくれると助かるがそんなうまい話はなかった、明らかに負傷が多いのも俺、武器が貧弱なのも俺、気を抜けば死ぬのは最初から同じ。

 

対して熊は俺の会心の一撃で何とかギリギリ左腕を使用不能にした程度、確かに隙はできるが逆に言えば大事な場所を守っていれば負けることはない、逃げようにも熊の大きさ的に数歩もあれば事足りるし、何なら体当たりを当てるだけで勝てるのだ、閃光も対策さえ知っていればまず敗けはない。

 

この森の魔物はほぼ全て考える頭があった。

 

だから戦闘で有利なのは人間にもひけを取らない魔物側なのだ。

 

さて、次はどうやるか。

 

俺がそんなことを考えていると熊は左腕を噛み千切った。

 

俺が驚いているとすぐに左腕が再生した。

 

「おいおい、嘘だろ・・・!」

 

バケモンかコイツは!?

 

腕は貧弱ではあるがそれでも熊の体重を支え、更に攻撃で俺を殺すには十分すぎるほどの力はあるようだ。

 

「絶望的すぎるだろ、でもやるしかないか。」

 

短剣を構え、熊をじっと見る。

 

「おい。」

 

その時、俺が聞き慣れた筈の人物の声が聞こえた。

 

「私の子供に何をしている?」

 

カルトだった。

 

熊は既に怯えきっていて俺のとなりに現れたカルトに恐怖している、俺が何とか左腕を奪うに過ぎなかったあの熊がだ。

 

「失せろ。」

 

カルトがそう言った瞬間、熊の体はネジ曲がり、血を噴き出して絶命した。

 

「なっ・・・。」

 

聖霊というのはここまで圧倒的な力を持つものなのか。

 

俺は安心したのかへたりこむ、力がもう全く入らない。

 

カルトは安心したようにため息を吐いた。

 

「このバカタレが!」

 

そしてめっちゃいたい拳骨を貰った。

 

「っづぁあああ!?」

 

「誰が奥地まで行けと言った!?ランタンをつけていればすぐに帰ることができたであろうが!?」

 

そんなことも言っていたか、全く記憶にない、というか泣きそう。

 

「そもそもなぜロックベアになど挑んだ!?あれはまだ子供だ!お前では子供にすら勝てぬと分かった時点で逃げる選択をせんか!」

 

マジで?あのでかさの奴が子供?

 

そのあとも延々とカルトは俺に説教を続けると思ったが俺の傷を見て一旦飲み込んだようだ。

 

「その傷を治すぞ、説教はそのあとじゃ、バカタレが。」

 

「・・・ごめん。」

 

「フン、自分の命も守れぬものに、何が守れるものかね。」

 

カルトは家まで俺をおぶって歩き始めた。

 

カルトは人間じゃないが、何故か安心できる、だからだろう、俺はすぐに眠ってしまった。




魔術無かったらこんなものですね、遠距離攻撃が無いと途端に弱くなるチート主人公の図。


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人間

八歳になった。

 

身体強化もかなりの割合で操れるようになり、体に成長に合わせて魔力量も増えはじめて来たのでカルトとの戦闘訓練も追加された。

 

そして結果だが俺の身体能力では雷を斬ることも風の刃を避けることもできないのであっという間に負けた。

 

しかもほぼ真っ暗な森の中だからか雷の光が予想以上に目に刺さる。

 

閃光で視界が潰されると同時に地面に倒れていたのだ最初は何が起こったのか分からなかった。

 

そして戦闘訓練に伴いいつぞやの長剣を使ったのだが一瞬で壊れた。

 

俺の服もすぐに駄目になるので最近では真っ裸で戦っている状態だ。

 

流石に終わったら寒いので服は着ている。

 

何だか順調に蛮族への道を歩んでいる気がする。

 

そして最近では剣ではなく大剣を素振り用の得物としている、筋力がつくし何より大剣レベルのものを持てるのなら何を持っても武器として使えるだろう。

 

カルトが家の地下倉庫から取り出してくるので中身はなんだと聞くと此処を襲った人間達の死体とか武器が大量に保管されていると言われた。

 

そしてカルトは最近ではよく何処かに行くようになった、帰ってきたら泣きそうになっていたり酔っているかのように笑っていたりし始めたからきっと誰かと会っているのだろう。

 

今日もカルトは何処かへ行っている、俺は家から出て狩りをしようと思って短剣と素振り用の大剣を背負って家を出た。

 

ランタンは持っている、ランタンを灯して掲げれば家の前に転移できる。

 

熊の時は俺が興奮しすぎてそれを頭から放り出していたらしい、説明したがすぐに忘れていた辺り俺の興奮具合がよく分かる。

 

「さて、今日は何にするかな、狼、猪、蜂でもいいが、そうだ、ウサギなんかもあるな。」

 

勿論全部魔物なので俺より何かしら秀でている、ウサギに至っては撹乱が得意なので気を抜けば頭が消し飛ぶ。

 

「~!」

 

「ん?」

 

いつもとは違う声が響いてきた。

 

「~けて!」

 

「まさか人間か?何だってこんなところに。」

 

木に登り、声の方向を探る。

 

俺からみて右、走るか。

 

木の枝を足場に跳ぶ。

 

叫び声の主は女のようで甲高いからこそ位置が変わればよく分かった。

 

所々から狼の声がするので狼の集団に追いかけられているとみた。

 

叫んでいる人間の元へたどり着いた、大きな幹にもたれ掛かり、手に何かのシンボルを握りしめている。

 

「助けてください、神よ、助けてください。」

 

人間は俺と同じくらいの女の子だった、このくらいの女の子がここまで来れるはずも無いのできっと森に入った辺りからつけられていたのだろう。

 

真っ暗な森の中でやたら滅多に走り回るのがどれだけ自殺行為か、今も少女の回りに狼が集まっているが少女はそれに気付かない。

 

「仕方無い、か。」

 

少女のもたれかかっている木の上に着地する、それの音で少女は怯えているようだ。

 

狼も焦ったのだろう、群れの一匹が少女に飛びかかった。

 

「全く、何でこんなところに、俺が言えた義理じゃないんだがな。」

 

大剣を地面に刺して壁を作る、狼がそれを避けようと体を反らしたが空中で姿勢を帰ることもできずに大剣にぶつかる。

 

刃が立っている訳でもないので切れたりするわけではないが俺の出現と共に警戒心を露にした狼達は動かない。

 

「おい、今から灯りを渡すから照らせ、良いな?」

 

「は、はい!」

 

いい子だ。

 

ランタンを少女の手に渡すとすぐにランタンを照らした少女は驚いていた。

 

俺は大剣をそのままにして短剣を構える。

 

「来いよ、犬ッコロ、肉にしてやろう。」

 

狼が飛びかかってくるのに時間はかからなかった。

 

大きく開いた口に短剣を差し込み、身体強化を使って無理矢理引き裂く。

 

裂けた頭部が後ろに飛んでいく。

 

「ヒッ!」

 

「次ぃ!」

 

狼の群れの中に飛び込み、複数の爪や牙が迫ってくるが鼻っ面に掌底を食らわせると吹き飛んでいく。

 

狼の手を掴んで背負い投げをする、すると他の飛びかかった狼の攻撃を背に背負った狼が全て受けてくれた。

 

盾にした狼を地面に倒し、腹を出した狼の腹を踏み台にして飛び上がる、俺を見て上を見ていた狼の顔に向かって短剣を投げる。

 

短剣は狼の目に深く刺さり、狼は叫び声をあげた。

 

地面に降り、短剣が刺さっている狼の首を掴んで短剣を引き抜く、抜いた短剣で俺の後ろに居た狼の顔を両目ごと切り裂いた。

 

目が使えなくなった狼はがむしゃらに噛みつこうとしてきたので短剣を刺していた狼の首を噛ませて俺は上から狼の首を短剣で削いだ。

 

狼達はまだ30匹ほど居るが仲間が三体死に、もう一体も時間の問題なので諦めたようだ、大量の足音が響き、静かな空間が戻ってきた。

 

「ふぅ、おい、無事か?」

 

少女を見ると股から黄色い液体を漏らしていた。

 

「・・・はぁ、着いてこい、家に案内してやる。」

 

「あ、ありがとう。」

 

大剣を引き抜き、狼達の死体を集めてランタンを掲げる、すると狼の死体と俺達は家の前に転移していた。

 

「え!?」

 

「とりあえず中には入れ、あと、風呂沸かすからさっさと入ってこい。」

 

「お風呂!?お風呂があるの!?」

 

・・・そうか、風呂ってそんなについてないよな、というか下手したら水浸しになるか。

 

風呂沸かしながらどうしようと頭を抱える、何となくで助けたがカルトにどうやって説明しよう、と。




戦闘シーンみてやっぱ技術もった蛮賊だなと思った作者は悪くないと思います。


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アト

少女を風呂に叩き入れ、その間にカルトが帰ってくることを願う。

 

そして手持ち無沙汰だったので大剣の整備をし、短剣がそろそろ壊れかけていたので仕方無いが処分する。

 

何だかんだ何年間も使っていたものだ、素材も何か貴重なものっぽかったのでいつか鍛冶屋に行って新しくしてもらおうと思う。

 

「お、お風呂出ました。」

 

少女が出てきたようだ、布は置いていたから流石に体を拭くくらいはしててほしいな。

 

少女は布を体に巻き付けて胸元で押さえていた。

 

「そうか、お前、名前は?」

 

「・・・アト。」

 

アトね、了解了解。

 

この家はカルトによって色々な改造が施されている、地下に農園があったり薬草の群生帯に繋がる洞窟があったり、あとは何故か山羊がいたり、それのお陰か森の奥にある辺鄙な家でもある程度の生活水準はあった。

 

なので適当に飲み物を出すこともできる。

 

「緑茶か抹茶か紅茶かミルク、どれがいい?」

 

緑茶と抹茶など無い。

 

「ミルクでお願いします。」

 

「はいよ。」

 

冷えているわけではないがミルクをアトに渡す、アトもミルクを受け取って静かに飲み始める。

 

やっべぇ、何も話すことがねえから気まずいぞ。

 

「あの・・・。」

 

「ん?」

 

「何で、助けてくれたんですか?」

 

アトがそう言って俺を見る。

 

ぶっちゃけ俺も分からん、カルトが人助けはしておいて損はないと言ってはいたが、最悪この家で一生暮らしたとしても俺は不都合はないわけで。

 

「気まぐれ、だな。」

 

「気まぐれ?ですか。」

 

「ああ、だから忘れろ、もうすぐカルトも帰ってくる。」

 

「カルト?」

 

「ただいまじゃな、お主、もう少しおとなしくできんのか?」

 

エ○ダーマンが帰ってきた。

 

「お帰り、カルト、外への道を作ってくれ、こいつを返して来る。」

 

「今外は夜じゃ、今外に出しても獣に喰われて終わりじゃぞ?」

 

「・・・チッ。」

 

カルトの言葉はあまり信用出来ない、昼も夜もないこの森では眠たくなったら寝て起きたら運動するの繰り返しだ、陽の光すら無いのだ、カルトの言葉を信用するしかない。

 

「あの、迷惑だったら出て行きますけど・・・。」

 

「「行かんでいい。」」

 

「あっはい。」

 

アトはカルトを見て少しおびえている様だ。

 

「私の名前はカルトという、もしかしたらこれっきりかもしれんが、よろしく頼むぞ。」

 

「よろしくお願いします・・・?」

 

「カルト、魔物の解体するから手伝ってくれ、アトはベットが奥にあるからそれを使ってくれ。」

 

「分かりました、本当に泊まっていいんですか?」

 

「くどいぞ、カルトが朝になったと言ったらたとえ真夜中だろうが外に放り出す、それまで寝ておけ。」

 

アトはしょんぼりとしながらベットのある部屋へと向かった。

 

「お主、当たりがきついのう。」

 

「そうか?こんな場所に一人で来る様なアホなんざあれで十分だろ。」

 

「何か理由があったのかもしれんぞ?」

 

「それでも一人では無謀過ぎる、自分にできることの区別もつかん奴は破滅する、あんたが教えたことだぞ、カルト。」

 

カルトは頭を手でポリポリとかいていた。

 

「・・・ふむ、先ほどホルスに言われたのだがな、子供には旅をさせてやるがいいと言われた。」

 

「ホルス・・・確か光の聖霊だったな。」

 

「うむ、ちょうど良い、お主、あのアトという少女と共に外へ行ってみてはどうじゃ?」

 

「・・・なんで?」

 

「だから旅をさせろと言われたからじゃ、お主にはもう少しくらい世界を広くした方が良い。」

 

カルトは自分でうんうんと頷いており、満足そうだ。

 

「・・・わかった。」

 

「うむ?素直じゃな、いつものお主なら顔を顰めて言い訳を並べるというのに。」

 

「うるさい、条件がある。」

 

「・・・なんじゃ?言ってみよ。」

 

「・・・・・・・・・何かカルトを感じさせる物が欲しい。」

 

正直な所すげえ恥ずかしいが今の俺はカルトが近くにいるだけで安心するのだ、少なくとも、挫けない為に何か欲しい。

 

「・・・クッ。」

 

「く?」

 

「クァッハッハッハ!!そうかそうか!私からのプレゼントが欲しいと言うか!あっははははは!!」

 

「クッソ黙れ笑うな指差すな腹黒聖霊!」

 

カルトはツボに入った様で暫くの間笑い声が響いた。

 

「クソッ言わなきゃよかった。」

 

「フフッ、いやまぁ、問題は無いぞ、フハッ、特別な物をやろう、フフッ。」

 

「今すぐ笑えない様にしてやろうか腹黒聖霊さんよぉ・・・!」

 

「そう恥ずかしがらんでも良い、むしろ、お主の年齢でそんな控えめな願い事など・・・まだまだわがままを言っても良いのだぞ?」

 

「じゃあ・・・またこの家に来る、その時は土産話をしてやる。」

 

「フッ、私は闇の聖霊だぞ?少なくとも夜の土産話など、すぐにでも分かるぞ?」

 

「なら昼の土産話を楽しみにしてろ、なんならたまに俺のところに来て鍛錬をしてくれ。」

 

俺の言葉にカルトは薄く笑うばかりだ。

 

「・・・なんだよ。」

 

「・・・赤子から少しだけ成長した様な幼子が、既に親離れするほどに大きくなったのだと思ってな。」

 

「親離れ、ね、俺を生贄にした奴等も俺からすればどうでも良い。」

 

「自分を産んだ母親にくらいは感謝しておいた方が良かろう、私が変質させたとはいえ、お主を腹を痛めて産んだのには変わり無い。」

 

きっとカルトは母さんの居場所を知っているのだろう、それでも黙っていたということはいずれ俺を外に出すつもりだったという事でもある。

 

「それでも、カルトは俺にとって親の一人だよ、カルトの知識のおかげでここまで賢くなれたんだ、ありがとう。」

 

「・・・そうか、もうそろそろ寝ておかないと明日の朝に出発できぬぞ、ほれ、さっさと寝るがよい、少女の隣で寝るとよかろう、ベッドにもまだ広さはあったはずじゃ。」

 

「そうしよう。」

 

俺はアトの横で眠りについた。

 

ーーーーーー

「ホルスよ、お主の言った通りだったな。」

 

会って数年、我ら聖霊からすれば瞬きにも等しい時間なのに、いつの間にか息子だと思ってしまっている自分が居る。

 

最初はただの気まぐれだった、まだ二本の足で歩くこともままならない子供を、ただの気まぐれで育て始めた、大きくなり、動き始めるとそこからの成長はとても早い。

 

未だ数回しかこちらの手札を見せていないにも関わらず、幾つかの手札は既に攻略されつつある、それはあやつが天才であるという証でもあるのだが、親として、これほど誇らしいものはない。

 

(君は既に親の顔をしているよ、カルト、でも、可愛いだろう?人間は。)

 

「ああ、私は腹を痛めて産んだわけでも、ましてや奪った訳でもない、それでも、私の息子だと、そう言ってくれるのなら、全力を尽くすまでよ。」

 

暗所でのみ育つ緑藻を混ぜ込んだ布ではなく、私の血を混ぜ込んだ聖霊布を作る。

 

「すまぬな、我が息子の母よ、お主の息子もすぐに行く、私は影から見守っていよう。」

 

地下の湖に血を垂らし、魔法陣を描く。

 

緑藻は黒く染まり、黒い光とでもいうような光を光らせる。

 

「私の知識はもうほとんど授けた、技術も知らない間に身につけていた、あやつは誠の鬼よ、だがなあやつを鬼にせぬ為に私の一部を封印として使わせてもらう。」

 

光が落ち着き、湖の中に出現したのは黒い布束、これを束ね、服にする。

 

「これを着たあやつはきっと、とても男らしいのだろうな、いや、まだ子供、そんなことを考えるような物でもあるまいか。」

 

魔法でサイズも完璧に合わせるようにする。

 

およそ3時間に及ぶ精密作業を終わらせ、一息つこうとした時、カルトは気付いた。

 

「ぬ?」

 

湖の中で精霊が出現していた。

 

「私の眷属か・・・あやつのお供にもちょうど良いのかもしれぬなぁ。」

 

精霊を近寄らせ、名前を授ける、種族名インプだ。

 

個人名はあやつに決めさせようと心に決めて、カルトは服を畳んだ。

 

「あやつの武器はここで私が作るよりかは、身の丈に合ったものを使った方がよかろうて、選別はこれだけじゃな、まだまだ足りぬ気がするわい、これでも十分過ぎるほどなのになぁ・・・。」

 

(君はいつか、息子の為にその身を投げ出すかもしれないよ?いくら聖霊でも命を一つ無くせばもう別人と言っていい、それでも君は自分の息子に手を貸すのかい?)

 

「ホルスよ、あの時、お主が何故そんな事を知っているとそう思ったが、そうか、お主は既に幾度も、身を投げ出しその身を滅ぼしてきたのだな、光は不滅、故に記憶を持ったまま転生し、ほぼ同じ人格で生まれ変われる、しかし、私は闇、光が強ければ強いほど、私は強くこびりつく、願わくば、息子の生きる道が闇で覆われぬよう、祈るしかあるまいな。」

 

カルトはゆっくりと目を閉じる、カルトは闇こそが権能であり、眠りなどは意味を成さない、しかし、今だけは息子が遠くに行ってしまう親の夢へと向かって微睡んで行った。

 

ーーーーーーー

「起きなさい。」

 

カルトに起こされ、眠くなりながらも起き上がる。

 

アトも既に起きており朝ごはんにがっついていた。

 

「あんまり急いで食べるなよ・・・ふぁ。」

 

「だって・・・おいひい・・・もん!」

 

案の定すぐに喉に詰まらせていた。

 

カルトが慌てて水を飲ませている。

 

「カルト、プレゼントは?」

 

「フッフッフッ、私の力作を見よ。」

 

カルトがそう言って取り出したのは外套だった。

 

「雨を弾き、ついでに血も弾き、衝撃を吸収し、風化もせず、更に自動的に修復される上に衝撃すら緩和する!どうじゃ!?私の会心の出来じゃ!」

 

「・・・・・・・・・。」

 

俺の隣でアトも驚いている。

 

「やり過ぎだバカルトォ!」

 

「何故じゃ!?」

 

そのあと一悶着あったが結局押し付けられた。

 

外套をつけると真っ黒な割に他の色と合うため、隠れる時にもあまり邪魔にならない。

 

「こっちじゃ、私について来ればすぐに外に取られる故な、足を取られぬよう気をつけよ。」

 

「全く、何でこんな高性能にしたんだよ。」

 

「年甲斐も無くはしゃいだ結果じゃ、老婆心故のものじゃ、大人しく受け取るが良い。」

 

「ありがとうございます、大事にしますよ。」

 

「それで良いのじゃ。」

 

カルトがご機嫌すぎる。

 

エ○ダーマンの癖に。

 

アトはビクビクしながら後ろを歩いている。

 

「そろそろ森を抜けるぞ、土産話を楽しみにしているぞ?」

 

「はっ、待ってろ、たっぷり聴かせてやる、嫌になるまでな。」

 

「はっはっは、楽しみじゃ。」

 

森を抜けると俺からすれば数年間ぶりの陽の光だ、少し目に眩しい。

 

「眩しいな、ちょっと慣れるまで時間がかかりそうだ。」

 

「まずはアト少女の村に向かうのじゃ、ゆっくりしていけば良い、ではな。」

 

「ああ。」

 

さよならなんて要らんだろう、多分なんだかんだですぐに会うはずだ。

 

「えっと、道があそこだから・・・よし!」

 

「アト、道はわかってるんだな?」

 

「バッチリ!」

 

そうか。

 

「道案内、頼むぞ。」

 

「まっかせて!暗いところじゃないし大丈夫!」

 

森での怯えようは嘘だったかのように元気に歩き始めたアトに俺は後ろからついて行った。




序章?プロローグ?まぁ何はともあれ導入終わりやで、こっからは色々と話を展開しつつゆっくり進めていくことになります。

元々拙い文なのは警告してるからそんなに気負わずにかける分なかなか作者にとって面白いのが書けている気がします。

一応かなり先の方の伏線とかも貼ってるから続けようと思えばいくらでも続けられるという。


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アトの村

「着いたよ!ここが私の村!」

 

森からそう遠くない場所にあった村は穏やかな場所だった。

 

「そういえば聞き忘れていたな、お前はなぜあの森に?」

 

「・・・笑わない?」

 

「多分な。」

 

「じゃあ言わない。」

 

そうか。

 

アトはチラチラとこちらを見ているが俺は放置する。

 

それに、アトを見つけた大人が般若の形相で此方に向かって歩いてきているのだ、俺は退散する。

 

「アト!!」

 

「ヒッ!」

 

売店でもあれば魔物でも狩って金にするんだがな。

 

「た、助けて!」

 

「断る。」

 

アトから差し出された手をはたきおとし、村に入っていく。

 

俺の髪が灰色だからなのだろうが子供達が俺を遠巻きに見ている。

 

雑貨屋はあったがめぼしいものは無さそうだ。

 

「店主、この辺りに売れるような魔物は居ないか?」

 

「うん?ああ、素材になる魔物かね?この辺りはあまり魔物もおらんでのぉ、ああそうだ、ちょっとした薬があるんだが買っていくかい?」

 

爺さん・・・。

 

「大丈夫だ、薬というほどの物ではないが、怪我を治すものくらいはある。」

 

そんなものは無い。

 

「そうかそうか、しばらくしたら魔女さんがくるでのぉ、何か打診してみてはどうじゃ?」

 

「魔女?」

 

「魔女さんじゃよ、傷があるがべっぴんさんじゃ。」

 

「それは聞いてない。」

 

「ホッホッホ。」

 

店主の爺さんは笑いながら店の奥へと消えていった。

 

「大分ガタ来てんなあの爺さん。」

 

爺さんを少し気にしつつ店内を物色していると誰かが近付いてきた。

 

「おい!それ本物か!?」

 

「あ?」

 

そこには悪ガキという言葉が似合いそうなガキとその後ろに二人くらいの取り巻きがいた。

 

「こんなでっかい剣持てるとかすげェな!」

 

「あ、ああ。」

 

こんなガキだと嘘だと決めつけて襲ってくると思ってたんだが、存外純粋らしい。

 

「かっけーな!俺にも持たせてくれよ!」

 

「そうか、持てるかは分からんが、しばらくここの村にいる、少しくらいなら持たせてやろう。」

 

「やったぜ!」

 

目の前のガキが喜んでいると後ろの二人も期待するような目を向けていた。

 

「はぁ、分かった分かった、お前らにも持たせてやる、だからそんな目を向けるな。」

 

「やった!」

 

「お前は今日から俺の子分な!」

 

「おいてめぇ、それ本気で言ってんのか。」

 

「当たり前だろ?」

 

頭が痛くなる。

 

「なら、俺が今日泊まれる場所を教えてくれ、アトも今頃は説教されてるだろう。」

 

「ゲッ!?」

 

ガキはアトの名を出すと驚いていた。

 

「お前アトの仲間かよ!あんな男女のどこがいいんだ!」

 

あれそんなに男っぽいか?

 

「知らん、助けたら成り行きで来ただけだ。」

 

「そうかよ、子分ならあいつと別れろ!いいな!」

 

「そんなまた横暴な・・・。」

 

ガキは何処かへ歩いていってしまった。

 

「アホかよ、いや、アホだな。」

 

「見つけた!」

 

噂をすればなんとやら、だな。

 

「アト、宿はあるか?」

 

「無いよ。」

 

「無いのか。」

 

まぁ規模も小さいし、そんなもんかな。

 

「だから今日から私の家に泊まりなさい!」

 

「親には言ったのか?」

 

「今から!」

 

こいつら揃いも揃って・・・。

 

「何でそんな残念そうな人をみる目なのさ。」

 

「お前の言った通りだからだよ。」

 

名前、ゼルかなー、やっぱ。

 

「また一悶着ありそうな予感がするわー。」

 

「失礼な!お母さん達だったら許してくれるもん!」

 

「俺は明日になれば適当に魔物狩る予定なんだが?」

 

「じゃあ今日は泊まれるじゃん。」

 

この子押し強くない?疲れるわこのテンション。

 

「分かった分かった、そら、家行くぞ。」

 

「私の家だからね!あの家じゃないからね!」

 

「分かってるっての!」

 

アドニス連れられてアトの家まで来る、アトは扉を叩き、少し待っていた。

 

「誰だ?」

 

「お父さん!アトだよ!」

 

今気付いたけどこの家でかいな。

 

「何!?」

 

扉が大きく開き、中からアトと同じ青い髪の男性が出てきた。

 

「このバカが!」

 

あ、めっちゃ懐かしい、対応が完全にカルトと同じだ。

 

「お前には次期村長としての自覚が「アーアーアー!とりあえず話を聞いてお父さん!」・・・。」

 

お父さん凄い青筋たててるけどこの状態で俺と話してもいいのかコレ?

 

「黄昏の森で私を助けてくれた恩人で、名前は・・・。」

 

頭を押さえる、教えてないからいいんだが、親の顔くらい見ろよ・・・。

 

「ゼルです、森で狼に教われてたところを保護しました。」

 

「そうそうゼル!ゼルには今日ここで泊まって貰うから!」

 

「アァ!?」

 

そうなるよなぁ、分かるでお父さん、俺も通った道だ。

 

「お父さん!ゼルって凄いんだよ!狼の首を素手で千切り取ったりしてたんだよ!」

 

「おいなに口走ってるアト、短剣を口に差し込んで切り取っただけだ。」

 

「それにカルっ・・・。」

 

全力で口を防いだ、こいつ放置してたら要らんことばら蒔きそうだ。

 

「モゴモゴモゴ。」

 

「・・・まぁそんな感じで訳ありなんですよ、一晩だけでいいんで、泊めてください、あと、必要なら森の魔物の素材も渡しますんで。」

 

「・・・まずはアトを預かるぞ、奥の客室を使え。」

 

お父さんは目を血走らせてそう言った。

 

「有難うございます。」

 

「それでねお父さん!「お前はまず説教だ!」うわぁ!助けてゼルぅ!」

 

「おとなしく怒鳴られろ戯け。」

 

「裏切り者おおおお!!」

 

アトの叫びを聞かなかった事にして俺はアトの家に上がった。




ゆっくり更新していきます。


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狩り

「盛大にやってんなぁ。」

 

部屋の中で色々と雑事を済ませているとアトのお父さんの怒鳴り声が未だに響いているのに驚いた。

 

そういえばアトのお父さんの名前知らないんだよね。

 

暇だし、何か適当に訓練でもしとくかな。

 

そしてこの家、やはり風呂はなかった。

 

ーーーーーー

「ゼル、ご飯だよ。」

 

「もうそんな時間か、了解。」

 

「せめて汗は拭いてね。」

 

「分かってるよ。」

 

もう既に日は降りかけている、いつも訓練にはカルトとの模擬戦をイメージしているのだが大体三十秒くらいで俺が倒れる。

 

俺のカルトとの勝負ではほとんど勝つことはできない、カルトの方は円から出てはいけない、ひとつだけでも当たれば負け、道具を使ってはいけない。

 

というハンデがありながらも圧勝なので似たような戦法を取る魔術ありの俺はヤバイよね。

 

でも今はそんなこと言ってられないから本気で挑むけど負ける。

 

アトの家に入るとキッチンに一人の女性がいた。

 

「あら、貴方がゼル君ね?初めまして、私はハルっていうの。」

 

チラチラと垣間見える日本人の影響よ・・・。

 

「はい、これから数日間よろしくお願いします。」

 

「ええ、あの子のこと、よろしくね。」

 

何か違う意味で言ってませんかね。

 

「もうご飯は出来ているから、リビングに行って待っててね。」

 

「わかりました。」

 

リビングに行くとアトのお父さんがムスッとした顔で待っていた。

 

「・・・。」

 

「うちの娘を助けてくれたこと、感謝する。」

 

「ただの気まぐれだ、それに、俺は自分の事すらよくわかっていない、信用する方がおかしいだろう。」

 

「それでも、感謝は受け取っても問題無いだろう。」

 

「なら、適当に狩りするんで、素材になる物があれば買い取って貰いたい。」

 

「小さな村だ、金があるとは思うなよ。」

 

「分かってる。」

 

どうしよう、ついタメ口で喋っちゃったけどどうしよう、失礼じゃないよな?

 

「チッ、何でアトはお前を気に入ったんだろうな。」

 

「知るかよ・・・。」

 

そこからは無言で食事をする、あ、うまい。

 

「あー!先に食べてる!ずるい!」

 

後ろからアトに抱きつかれた、そのせいで飲み込もうとした食べ物を喉に詰まらせた。

 

「ハグッ!?」

 

胸を叩いて吐き出す。

 

咳をしながらアトを睨むとアトは目をそらした。

 

「あらあら、仲良しなのね。」

 

ハルさんあんたこの状況見て言うことがそれか?

 

「アト、お前後で覚えてろよ・・・。」

 

「・・・ごめんなさい。」

 

飯を食い終わったら日が暮れないうちに水を貰って体を拭く、風呂ほど綺麗になる訳じゃないが無いよりマシだ。

 

夜中の方が俺にはよく見えそうだが俺は寝る、流石にアトの強襲には疲れた、上半身裸になった時にノックなしで入ってくんのマジやめろ。

 

ーーーーーー

朝になり、大剣と短剣を持って家から出る。

 

村の入り口から出ていき、近くの森とか草原とかを探索する。

 

「いた、ゴブリンかな、初めて見るな。」

 

黄昏の森では基本的に目を使わない、目が無かったり、蛇のピット器官やコウモリの超音波のような技能を持っている魔物が多い、だから基本的に奇襲は困難、逆に彼方から奇襲されやすい。

 

だからか基本的に目に頼る人型の魔物は居ない。

 

黄昏の森の難易度が高いのはそれのせいもあるのだろう。

 

だが外では普通に光もあるし視界もある、だから俺は初めての人型の魔物との戦闘だ。

 

草むらからゆっくりと近付いていく、ゴブリンは三体ほどで固まっていて、羊のようなものを食べていた。

 

「シッ!」

 

一気に近付いて大剣で一人を切る。

 

気付いた二体のうちの片方に短剣を投げ、投げなかった方に大剣を上から叩きつける。

 

縦に両断されたゴブリンから目を離し、短剣を投げたゴブリンを見ると腹に刺さっていた。

 

「グギャ!」

 

「すまんな、死ね。」

 

首を切る。

 

頭は胴体と別れ、ゴブリンは3体死んだ。

 

「ゴブリンは確か金にならないな、町だと違うんだろうが。」

 

出来れば狼とかを殺したいが。

 

そう思って森に入るとすぐに戦闘音が聞こえてきた。

 

「助けるか。」

 

この辺りならアトの村に行くこともあるだろう、他に村があるかは知らないが。

 

音のする方に走る。

 

森の少し開けた場所で狼の群れと荷馬車を中心に何人かが固まっている。

 

狼の数は十、人間の数は4かな。

 

走りながら何をするかを決める、まず何体か狼を減らす、次に負傷者の確認、んで出来そうなら狼の全滅、この辺りか。

 

「助太刀する!」

 

狼の後ろからの強襲、攻撃は当たらなかったが大剣のインパクトはそう簡単に消せるものじゃない。

 

予想通り慌てた狼達は攻撃する前に俺を警戒し始めた。

 

「助かった!」

 

「あれくらいならヘマをしなければ問題ないさ、すぐに片付けるぞ。」

 

『応!』

 

狼に斬りかかると乱戦になるため迎撃だけにする。

 

たまにフェイントをかけて誘い出すがなかなか見つからない。

 

こうなりゃ一体だけ速攻で倒して撤退させるか。

 

身体強化で一気に狼の群れへ突撃する。

 

大剣を地面にめり込ませ、上へ力ずくで振り抜いた、すると地面が割れ、細かくなった土や石が散弾のように狼達を襲う。

 

何体か負傷し、狼達は撤退していった。

 

傷ついている狼達を始末し改めて護衛達と話すことにした。

 

「すまねぇな、あれならあんたらだけでも対処はできただろう?」

 

「それでも負傷者がでたら意味ねェよ、ありがとな。」

 

「それで?誰を護衛してたんだ?場合によっちゃもうすこしくらい手伝えるぞ。」

 

「いくら強くても子供が無理言っちゃいけねぇよ、まぁ、婆さんだからな、男二人いれば十分だ、坊主は気にすんな。」

 

冒険者とはみんなこんなに親切なのだろうか、それともこの人が稀少なだけなのだろうか、どちらにしろいい人そうで安心した。

 

「この先の村に用があるならまた会うかもな、俺の名前はゼル、よろしく。」

 

「ゼル坊、元気でな。」

 

「ああ、またな。」

 

あいつら面白いな、話してたのは一人だけだったが他の奴も中にいた婆さんと話してたり世話してたりしたし、いい人たちだ。

 

「さて、狩りを続けるかね。」

 

今日の戦果は鳥と猪一匹ずつだった。




早く進みたいけど進みすぎたらエタりやすくなるこのジレンマ、まぁゆっくりとやってくかー。


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親と婆さん

「ゼル、客人だ。」

 

「魔女さんか?」

 

「ああ、お礼がしたいんだそうだ。」

 

「別にしなくても良いんだがな、まぁ、会おうか。」

 

魔女は客間に居るらしく、アトが話していた。

 

アトが話していた相手は婆さんでフードを被っていた。

 

「あ!ゼル!おかえり!」

 

「おう、それでだ、婆さん、さっきの礼なら別に要らないんだが、何か用か?」

 

「・・・。」

 

婆さんは何も言わずに俺を見ている。

 

「おい婆さん、喋れないのか?」

 

「いや、そんな事はないんじゃ。そうか。」

 

婆さんの様子は何かを思い出しているようで俺は記憶を思い出そうとしていた。

 

「お主の名前はゼル、で合っておるのだな?」

 

「ん?ああ、俺の名前はそうだな。」

 

「そうか、そうか・・・。」

 

なんか俺の名前になんか関係あったか?

 

「お主は、私の孫だ。」

 

「・・・・・・・・・ん!!?」

 

あ、ああ!!!?そういう事か!?母さんのところに来てた老婆か!?

 

「・・・俺が・・・婆さんの孫?」

 

「私の名はマーリン、魔女と呼ばれておる、お主の母は私の娘じゃよ。」

 

「えぇ・・・。」

 

じゃあなんで俺は生贄になったんや・・・マジで何があったんや。

 

「・・・今のお主にはあまり関係ない話さね、でももし、知りたいと思うなら、あの子の村に、来て欲しい。」

 

「・・・。」

 

俺まだ森から出てきて2日くらいなんだが?何でこんなに厄介ごとが・・・。

 

「・・・。」

 

「ゼル?」

 

「2人で話したい、アト、少し部屋から出て行ってくれ。」

 

ハルさんが無理やりアトを部屋から出して扉を閉めた。

 

「婆さん、俺は何で森に捨てられた?」

 

「・・・当時村の中で疫病が流行っていた、処置も簡単で薬さえあれば気にせずとも良い疫病じゃ。」

 

「それで疫病を止めるために婆さん達は奔走したと?」

 

「うむ、そして同じく奔走していた婿殿・・・お主の父親が倒れた。」

 

「・・・。」

 

「薬を作っていたのは婿殿だったのじゃよ、人里に下りて薬の作り方を教え回っていた心優しき者じゃった。」

 

「それで倒れてたら意味無いだろうに。」

 

「・・・そして婿殿はお主を身籠ったキャロル・・・お主の母に知らせずに治療を続けた。」

 

そして死んだ、か。

 

「それで死んでたら意味が無いだろう、自分を守れない奴に何が守れるものか。」

 

カルトはいちいち真理をついてくる気がするわ、こういう話を聞いていたら。

 

「・・・キャロルは夫が死んだ事を知ると一晩中泣いた。」

 

その辺りはまだ記憶に残っている。

 

「その次の日、村の男達がやってきた、薬がたんまりあると思って私たちの家に襲いかかってきたのだ。」

 

俺その状況で寝てたのか、度胸あるな。

 

「そして、何が起こったのか黄昏の森に居る異教の神に生贄として捧げようという話になった。」

 

「だから俺が捨てられた・・・いや、生贄にされたのか。」

 

「お主が生きているという事は黄昏の森に住むのは異教の神などでは無いのだろう?」

 

「ある意味合ってるけどな、カルトだし。」

 

「!・・・そうか・・・闇の聖霊・・・なるほど、かの者が・・・。」

 

カルト本当に知名度あるんだなぁ。

 

「それでだ、俺を産んだ母さん、キャロルは・・・生きているのか?」

 

「ああ、生きておる、お主が顔を見せればきっと喜ぶ!」

 

「だから,会えと?」

 

「・・・。」

 

俺の母さんは多分、精神が死んでる、だから魔女としてこの婆さんが村を回って隊商染みた事をやっているし、薬も売っている。

 

「俺の母さんは、既に生きる活力を失っている、そこから俺があったとして、それで活力が戻ったところで一度壊れた精神が歪なまま固まれば今度こそ母さんは死ぬ、それがわからないほどじゃ無いだろう。」

 

魔術があれば、と何度も思ったが、本当に、何も出来ないこの状況は、嫌いだ。

 

「・・・俺は魔法が使えない、使えるのは身体強化のみ、それもかなり限定された状況のみだ、魔力が育てばまた別なんだろうが、母さんを救えるほどの力は俺には無い。」

 

「・・・だから、キャロルに会わないと?」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

どうする?俺は魔術が使えない、何も出来ない。

 

なのに、少なくとも、血が繋がっていて、少なくとも短い期間だったとはいえ愛を与えてくれた相手に何かできることはないのか?

 

カルトなら、いや、カルトは闇の濃度を上下させるだけで無くすことはできない、闇を払うのは光の聖霊ホルスの領分。

 

「・・・チッ。」

 

「ゼル?」

 

「文通ならどうだ?」

 

「キャロルが本物と信じるかどうか。」

 

「やってみなきゃ分からん、取り敢えず、何か書いてみる、ここに寄ったら手紙を一通書く、それをあんたが母さんに届けてくれ、そうすれば、運が良ければ、治る可能性だってあるだろう。」

 

俺は何度も転生するにあたってある程度の線引きを引いている。

 

家族は大事にする事、損を被せて利を与えよ。

 

貰った分の恩は全て返せ、と何があっても大事な者を守れ、の四つだ。

 

女だろうが男だろうが、果ては化物だろうが、それだけは守ってきた、それだけ苦しむ羽目になろうが、死にたくなろうが、それだけは。

 

だからこそ、救えるとも思えない、俺が個人で何かをできるとも思わない、それでも何かをしたい。

 

悩む時間はとっくの昔に終わった、苦しみなんざ大事な奴の笑顔で全部吹き飛ぶんだからいくらでも苦しんでやる、だから俺は他人から幸福を奪い取ってでも大事な奴を笑顔にさせる、幸せにしてみせる。

 

今すぐは無理かもしれない、でもいつかは親子として、顔を会わせる事ができるように願う。




まぁ大事な人を立て続けに2人失ったら精神崩壊くらいするよねと、しなかったらそれはそれでなかなか精神力ヤバイと思うの。

因みに2作目からの主人公の行動基準が上の四つやで。

その結果が覇王とか魔王とか死神とか言われてるんですけどね!


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魔族襲来

「よし、そろそろ魔物は少なくなってきたな。」

 

俺が狩りをしているのでゴブリン含め魔物も少なくなってきた、魔石なんかも一応集めていたが数が多いので途中から集めていない。

 

「ゼルー!」

 

村の外で大剣を振っているとアトが出てきた。

 

「おう、なんだアト。」

 

「私に剣を教えて!」

 

「無理、諦めろ。」

 

「何で!?」

 

お前大剣持ち上げようとして腰をやったじゃねえかよ。

 

「お前がところかまわずわめき散らすからだバカ者め。」

 

アトは弓はちゃんと標的に当てるんだけど近接はなぁ。

 

「とりあえず、今日は狩りするほど魔物がいる訳でもなし、帰るか。」

 

「剣を教えてよー!」

 

村も俺の狩りの成果でなかなか潤った、少なくとも一年分位は備蓄できているだろう。

 

「さて、そろそろどっかにいくかねぇ。」

 

「え!?」

 

アトいたなそういえば。

 

「俺はずっとここにいるとは言ってないぞ。」

 

「私もいく!絶対そっちの方が楽しいでしょ!?」

 

「俺が言えた義理じゃねえけどお前子供じゃねえかよ。」

 

「お父さんくらい説得する!」

 

「ハッハッハ、抜かしおる。」

 

何週間かたったけど未だに敵視されてんだからな。

 

「うぅ~!」

 

アトが唸る、やっぱ子供だなぁ。

 

一人でほんわかとしているとあのガキ共が俺達を見ていた。

 

「おう親分、何だ?」

 

「な、何もねぇよ!」

 

そうか。

 

「じゃあな。」

 

ガキ共が少し気になったがとりあえず後回しだ、ガキ共はいったい何を?

 

家につくとアトはすぐにハルさんに飛び付いた。

 

「ゼルが村から出ていくっていってるの!止めてよお母さん!」

 

「あらあら、そうなの?」

 

「はい、流石にここにずっといるわけにもいかないので。」

 

「この子の世話を任せられるから居てくれても良いのよ?」

 

「お断りです。」

 

アトが無言で脛を蹴ってきた。

 

「痛いぞ。」

 

「痛くしてるんだよ!」

 

俺はその後もアトに纏わりつかれた。

 

ーーーーーー

「おい、ゼル!」

 

寝ていると誰かにたたき起こされた。

 

「何だ?魔物でも見たのか?」

 

「違うんだよ!何か翼の生えた人が来たんだよ!」

 

え?なんで?

 

「自分の事誇り高き魔族の一人とか言ってたんだけど意味分かる?」

 

「それを早く言えバカ!」

 

俺がそういった瞬間爆発音が聞こえてきた。

 

「チッ、お前は他の手下とアトをつれて近くの町まで行け!良いな!?絶対に殺されたりすんじゃねえぞ!」

 

俺はそう言って大剣を担いで飛び出した。

 

外に出ると爆発したのは広場の様で、既に村長とハルさん、そして雑貨屋の爺さんと思われる死体があった。

 

真っ黒に変色していて誰が誰か分からない。

 

「魔術が使えれば解決できたのに、クソッ!」

 

爆発音を聞いた村人達が外に出てきて叫び声をあげる。

 

「おいおい、さっさと逃げてくれよ、人間、特別に子供は生かしてやるからよぉ!」

 

大剣を投げつけて走る。

 

魔族は飛んできた大剣を弾くが俺は下まで潜り込んでいた。

 

下から顎に掌底を撃つ、発勁も使って体にダメージを与える。

 

だが魔族は上を向いたまま一気に回転し回し蹴りを叩き込まれた。

 

咳き込む時間も無く弾かれていた大剣が俺の上に落ちてきた。

 

このままでは大剣が体に刺さる。

 

地面に接するタイミングで身体強化の度合いを上げて上へ飛ぶ。

 

大剣を掴み、俺を見ていた魔族と目を合わせる。

 

魔族は氷の槍を構えていた。

 

「見込みあるやつもいんじゃねぇかよぉ!」

 

氷の槍は一瞬で俺に当たる、俺はギリギリで大剣を間に滑り込ませる事に成功した。

 

だが衝撃が強すぎて大剣を離してしまった。

 

体勢を崩しながら地面に立つ。

 

「ッゲホッゴホッ。」

 

口から血が大量に出てきた。

 

「おいおい、大人かと思ったら子供じゃねえかよ。」

 

魔族はゆっくりと歩いてくる。

 

「お前、何でこんな辺鄙な村なんかにいるんだよ?お前の実力ならどっかの街でも行けば強くなれたはずだろう?」

 

「お前に教える義理は無いな。」

 

大剣が地面に突き立つと大剣を掴む。

 

「・・・俺にはまだ守らなきゃいけない奴がまだいるから・・・な!」

 

大剣を構えて切り掛かる。

 

「・・・ハッ、誰かを守る?出来てねえじゃねえかよ。」

 

遠くで爆発音がした。

 

そして叫び声も。

 

「・・・何をした!?」

 

「いや、ただ逃げた奴の中に爆弾を仕掛けた奴がいただけ、そんな簡単な事分かってるだろう?」

 

アトたちが死んだかもしれない、今すぐに確認しなければ、いや、まずはこいつをどうにかしないと。

 

「チッ。」

 

「ほらほらどうした?守らなきゃいけないんだろ?」

 

「・・・。」

 

精神を集中させろ、格上、なら短期決戦が一番。

 

「お?やるか?」

 

「・・・身体強化。」

 

クロックアップ発動、時間がゆっくりになっていく、色が無くなり、魔族の動きもかなり緩慢になる。

 

大剣で袈裟斬りに斬りかかるが弾かれる、手を離し短剣を投げる。

 

左手でもう一つの短剣を取り出し、刺突を繰り出す。

 

魔族は刺突を避け、手を伸ばしてきた。

 

右手で大剣を逆手に持ち、水平に切る。

 

腹に衝撃、景色が遠くなる。

 

景色に色が戻ってくると同時に骨まで響く衝撃が来た。

 

身体の節々がズキズキと痛む、身体強化の反動だ、そして、骨が折れている、コレは、キツイぞ。

 

「チッ、少し掠ったか、おい褒めてやるよ。お前の名前は?」

 

しゃべろうにも喋れないっての、くっそ、魔術が無ければ俺はこんなもんかよ。

 

「まぁ、ほっといても死ぬだろうし、俺の名前はあの世まで持って行っても良いぞ、俺の名前はアークラ、もしお前が生きてたら今度は正真正銘の本気で殺りあおうぜ?」

 

魔族、アークラは笑いながらどこかへ歩いて行く。

 

「行かせるかよ。」

 

アークラが止まった。

 

「こんな子供でも、出生すら知らない俺でも受け入れてくれたこの村のみんなを、これ以上殺させるものか。」

 

「・・・良いね、お前はここで殺してやるよ、クソッタレな戦争を始める第一回戦なんだ、盛大にやろうぜ?」

 

「腕の一本は切り落とす。」

 

魔族は心底楽しいという風に笑う。

 

「もう一回聞くわ、お前、名前は?特別に覚えておいてやる。」

 

「前兆なく襲いかかってきたクソッタレな魔族様に教えるような名前じゃないがな、ゼル。」

 

「だって目に付いたからな、本来ならこの先の街で暴れる予定だったし。ゼルか。」

 

戦闘再開。

 

同時に地面を蹴る。

 

大剣は盾として使う、一瞬で大剣が歪み真っ二つに折れる、アークラが拳に魔力を纏わせていた。

 

「ッヅァアアア!!」

 

俺も見よう見まねで同じ事をする。

 

魔力を纏わせた拳は、届いた。

 

「ガッ!?」

 

そして仰け反った隙に腹に蹴りを入れる。

 

それだけでアークラは吹き飛ぶ、だが背中から翼が生え、くるりと回転して地面に立った。

 

既に俺の下の地面は出血で赤く染まっている。

 

見覚えがある、焼けた匂い、血の匂い、叫び声と怒鳴り声。

 

「アッはは。」

 

ああ、安心した、結局俺はもう、取り繕わない。

 

「ヒャハハハハハハハ!!」

 

アークラは唐突に笑い出した俺を訝しげにみる。

 

「気が狂ったか?」

 

「いや、思い出させてくれたのさ、俺がどうしようもない殺戮者で、ぬるま湯に浸った馬鹿だったって事をな。」

 

天使としての権限発動、一部制限解放。

 

俺の体に許される限り魔力を生み出し続ける。

 

「!?」

 

身体強化の比率を加減など考えずに上げる。

 

「ヒャハハハハハハハ!!お前の言う通り!楽しもうぜ!ナァ!」

 

俺の拳が地面を削り、風を打つ。

 

「化け物が!」

 

アークラは飛び上がり上から魔法を展開した。

 

氷の槍が大量に降り注ぐ。

 

クロックアップ発動、足場が出来たのだからいける。

 

半分に折れた大剣を掴み、槍の雨の中を跳ぶ。

 

氷で遮られているのかアークラの姿は確認出来ない。

 

氷の槍が一度無くなり、アークラが掃射を止めた時、俺はアークラの上に飛んでいた。

 

折れた大剣の切っ先の部分を足に合わせる。

 

これだけ面積があれば、あとは身体能力さえあげれば地面に向かって急降下できる。

 

月明かりに照らされたアークラが俺を見る、今俺の後ろに月があり、俺は光で照らされた標的を良く見ることができる。

 

アークラは汗をかいていた。

 

「化け物・・・!」

 

「うおおおおおああああ!!!」

 

アークラは腕で大剣を受け止めた。

 

大剣が食い込み、腕を少し切った所でアークラはもう片方の腕で俺を殴ろうとしてきた。

 

「死っ・・・。」

 

横から飛んで来たものにアークラの腕が貫かれた。

 

アークラは痛みで固まり、俺は更に大剣を食い込ませた。

 

「ヅェアア!!」

 

アークラの腕を切ることに成功した。

 

「あっがあああああ!!?」

 

俺の体が自由落下を始める、地面まではかなりある、高くて200メートルといったところか。

 

「死んだかな。」

 

空から村を見るとほぼ全域が燃やされており、生き残っている村人は少なくとも目の届く範囲では居ない。

 

そして死体の数は村人のほぼ全員だった。

 

「・・・。」

 

守れなかった、か。

 

ー天使権限の使用を確認しました、代償は昏睡20日ですー

 

俺の意識がプツリと消えた。

 

意識が完全に消える前、男の声が聞こえた気がした。




魔族の襲撃の前兆は魔物が少なくなった事です、強い奴が来たから逃げたみたいな。

次はアト視点を予定しています。

多分数話くらい進まないかも。


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村から逃げ(アト視点)

「起きろ!起きろ!男女!」

 

「え!?何!?何が起きてるの!?」

 

私は夜中に叩き起こされた、目の前にはあの馬鹿やろう、アルがいた。

 

「私の家に忍び込むなんていい度胸してるじゃない。」

 

思わず拳を握る、ゼルにだって拳の威力は評価されているのだ、暴漢もどき程度どうとでもなるわ。

 

「そんな事言ってる場合か!逃げるぞ!」

 

「は?何言ってるの?」

 

「時間がない!早く!」

 

いきなり手を引いて村の外へ走り始めたアルはチラチラと広場の方を気にしていた。

 

「ねぇちょっと!?何が起きてるのよ!?」

 

「そんな事言って場合じゃないって言ってるだろ!?」

 

広場の方で大きな音がした、身体の奥まで響くような音だ。

 

「まさか、大きな魔物でも襲ってきたの?」

 

「・・・魔族だ。」

 

魔族、それは長い間人類と敵対した人の形をした魔物、聖神教会が神敵と定めた化け物。

 

「嘘・・・だよね、ねぇ!」

 

「嘘じゃねぇ!だから逃げるんだよ!」

 

「他のみんなは!?一緒に逃げられないの!?」

 

「固まったら狙われる!分かりきってるだろ!」

 

「いや!離して!お父さん達も一緒に逃げるの!」

 

アルと2人で力比べをしていると近くに傷だらけになったゼルが降って来た。

 

「ッゲホッゴホッ。」

 

大量に血を吐いている、アルの様子を見る限り戦ってからそこまで時間が経っていないようだ。

 

ゼルはすぐに広場の方向に向かって走って行った。

 

「・・・逃げるぞ。」

 

「・・・。」

 

逃げる?何処に?

 

「・・・アル、黄昏の森に行こう。」

 

「正気か?」

 

「私がゼルと会った場所は黄昏の森だよ、そこにゼルの家がある、そこに行く事ができれば。」

 

「・・・賭ける価値はある・・・か?」

 

頷く。

 

「・・・分かった、行こう。」

 

村から離れる、街道を歩き、黄昏の森への道を静かに歩いた。

 

遠くから見た村は火の光で照らされ、やけに小さく見えた。

 

村の上空ではキラキラと光っているものが雨のように降り注いでいてこんな時でなければ見惚れてしまいそうなほど綺麗だった。

 

「何か来る!隠れろ!」

 

アルは私を押し倒して草むらに隠れた。

 

「ふむ、逃げた子供はこの辺りのはずなんですが・・・見当たりませんね。」

 

魔族の1人なのだろう、歩いている音が近くまで来ている。

 

「まぁ良いでしょう、子供ですし、何処かでのたれ死んでいる事を祈りましょうか。」

 

バサバサと音を出しながら魔族は何処かへ行ってしまった。

 

「・・・アル?」

 

「あいつ、俺たちに気付いてた、気付いてて見逃した。」

 

「え?」

 

「アレが・・・魔族?化け物じゃねえかよ。」

 

アルの体が震えている。

 

「全く、珍しい者が居ると思ったら、お主か、アト。」

 

「え?」

 

アルの後ろ、木の陰に真っ黒な人影があった。

 

とても小さな体に長い手足、私達の倍ほどはある身長をもつ人影。

 

それは、ゼルが親として見ている聖霊の一柱、カルトだった。

 

「カルト・・・さん。」

 

「お主らは何がしかに秀でておるようじゃ、私の家で保護しよう、ランタンの使い方は分かるな?」

 

「は、ハイ!」

 

ゼルと会った日の穏やかなカルトではなく、確かに怒気を滲ませて村を見ているカルトは村に向かって歩いていた。

 

「ありがとうございます!」

 

「・・・。」

 

アルはカルトを見て怯えていた。

 

「よい、私に怯えぬこのこやつらが特別なのじゃよ、行け、あの家で待っておる。」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

アルを引きずりながら道を歩く、私達が黄昏の森に着いたのはそれから2日後のことだった。




次はカルト視点です、そして多分すぐに投稿されます。

そしてうちの主人公に隠れてますがアルは実は普通に主人公属性を持っているのですよ。

そうじゃないと状況判断能力やばすぎる子供が多い世界になるので。


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私の愛し子よ

二話更新してます、前話から見てね。


闇に生きる聖霊、カルト、闇を制御し、光と対立する事もある、故に勢力図は簡単だ、夜は私の独壇場で、昼はあやつの、ホルスの独壇場、力の制御が出来ておる故に私達のどちらかが制御を間違えた瞬間世界が死にかける。

 

そうであるはずなのに、私は制御を手放してでも今すぐそこに向かって行きたかった。

 

世界を捨ててでも助けたいと、そう思ってしまいそうになった。

 

私が育てたゼルという名の人間、気まぐれで育てたがいつの間にか愛というものを捧げていた。

 

ゼルはあの年齢の子供にしては成熟している、既にその精神は大人と遜色無い、だが、子供故の無鉄砲さで物事を見るようにもなり始めた、きっかけはアトという少女だ、何故か森に入り込み、餌になりかけているところをゼルが助けていた。

 

あの少女には感謝している、ゼルは誰かと関係を持つという事を知らなかったからだ、ゼルは興味があれば積極的だがそうでない場合には欠片たりとも意識を向けない、初めて会った自分の同族という、何処か狂っているような興味の持ち方であっても外へ連れ出していく口実をくれたことに私は感謝していた。

 

そして外に行って1ヶ月ほどが経った今。

 

私の愛したゼルは魔族によって傷だらけになっていた。

 

村で過ごした時間は短くても守らなければならない者が出来たと、ゼルの母親にしたためた手紙に書いてあるのだ、あの村はゼルにとってとても大事なものになったはずだ。

 

それをほとんど何の前兆も無く壊したのだ、魔族は。

 

闇の中を移動している途中、アトと1人の少年を見つけた、ゼルが気に入っていた少年は私を見て怯えているようだったが安心するように伝えて村へ急ぐ。

 

ゼルを外に行かせたことに後悔は無い、いずれ大事な者ができたり悲しむことがあったりもするだろう、だが、これはいくら何でも哀れにすぎる、少なくとも私は飛ぼうとする鳥を飛ぶ前に落とすような真似を許せるほど寛大では無い。

 

ゼルは二つに折れた大剣を駆使して魔族の1人に斬りかかる。

 

だが魔族はそれを左腕で受け止め、右手でゼルを攻撃しようとしていた。

 

「ダークバレット。」

 

古の勇者が使っていた闇の弾丸という意味の魔法を使う、弾丸が魔族の腕を貫き、魔族の動きが止まる。

 

ゼルはそこを見逃さずに左腕を一気に切り落とした。

 

産まれて8年であれば英雄の如き所業、だが、魔族は未だ健在、現実は非情だった。

 

「ゼエェェェェルゥゥゥゥゥ!!」

 

既にゼルは力を出し切ったのか動かずに落下している。

 

激昂している魔族はその顔を怒りに染め、氷の槍でゼルを貫かんと氷の槍を作り出す。

 

「召喚、『スカルパラディン』」

 

ゼルの隣に骨の鎧を纏った大男が出現しゼルを保護した。

 

ゼルは地面に激突することなく地面に寝かせられる。

 

スカルパラディンに氷の槍が幾つも刺さるが鎧の防御力は勿論中身は骨しか無いので動くのに問題が出る事もなく、魔族の男は叫び、激昂していた。

 

「お止めなさい、アークラ。」

 

上ではもう1人の魔族が激昂している魔族に話しかけていた。

 

「アァ!!?ただの人間如きに俺様が負けたと言いてぇのか!?」

 

「少なくとも、あの少年がそれにふさわしい戦士であったのは間違い無いと思いますがね。」

 

「何だと!?」

 

「それに見なさい、奴が居ます。」

 

話しかけていた魔族はスカルパラディンの横に居る私を見る。

 

「あいつは・・・。」

 

「カルト、闇の聖霊です、貴方では1秒たりとも戦える相手ではありません。」

 

「チッ・・・。」

 

「それに、貴方は情報を与えすぎです、私が炎を操れなければ貴方はほとんどハッタリをかます羽目になったのですよ?」

 

「分かってるよ!」

 

魔族2人は何処かへ飛んで行った。

 

「・・・。」

 

ゼルは傷だらけだった、誰かを守るための強さというものを手に入れたのだろう、私ではここまで本気になれない、立場があるからだ、私が死ねば小さくとも影響が残る、故に本気で戦えることは無い。

 

「・・・お主に私の本当の加護を与えよう。」

 

きっとゼルの人生は波乱万丈になるだろう、私と会っている時点で今更ではあるだろうが。

 

私の本当の加護、それは夜限定の回復能力の上昇だ。

 

「私の愛し子よ、その人生が幸福であることを祈る。」

 

私の作った外套を被せ、スカルパラディンに世話を任せて森へと帰った。

 

ゼルが起き上がるまでかなりの時間が掛かるだろう、それまでにアト達を返すことは出来るのだろうか。




後書きで用語解説的なのを作ろうかなー。

というのは置いといてカルト視点、チラチラとヤンデレ臭がする。

というかカルトって性別無いはずなのに一人称が私なので女っぽくなるんですよね。

小さい胴体に長い手足の人外作ろうでエ○ダーマンが一瞬で思いついてしまった作者の頭の中よ・・・。


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スカルパラディン

黒い空間でゆっくりと沈んでいく感覚、目を開けると目の前に小さな光が見えた。

 

「・・・。」

 

死んだわけではないのは分かっている、だがこの温もりに包まれているこの感覚は・・・。

 

『おい、ゼル。』

 

いつの間にか立っているという感覚と共に背後から話しかけられた。

 

「・・・。」

 

そこに居たのはアトのお父さんだった。

 

『俺は死んだ、だがアトは生きている、アトを頼んだ。』

 

「すみませんでした、守れなくて。」

 

『魔族に襲われたから、仕方無い、そう言って諦めるのは簡単だ、だがお前は諦められないんだろう、なら苦しめ、死ぬまで苦しめ、それで許してやろう。』

 

「・・・ありがとうございました。」

 

アトのお父さんは靄のように消えた。

 

『あの人ったら、言いたい事全部言っちゃったわ。』

 

「・・・ハルさん。」

 

『アル君も生きてるみたいだし、あなたも生きている、生きて幸せになりなさい、じゃないと怒っちゃうわよ?』

 

「すみませんでした、俺にもっと力があれば・・・。」

 

『自分を責めないで、きっと、幸せに暮らす事ができるわ。』

 

ハルさんの肩にアトのお父さんが手を置く。

 

『行こう、言いたい事は言った。』

 

『ええ、頑張ってね、ゼル君。』

 

思わず手を伸ばす、すると光が大きくなり、俺は目を覚ました。

 

俺が目を覚ましたのはボロボロのベッドの上。

 

『起きたか、少年よ。』

 

「!!?」

 

声がした方を向くと骸骨の鎧?のような魔物がいた。

 

『我の声が聞こえているな?我はカルトの眷属が一人スカルパラディン、元聖騎士である。』

 

「・・・俺は、カルトに助けられたのか?」

 

『少年が魔族の腕を切り、それに激昂した魔族の攻撃をカルト様が払われた、少年よ、剣をやる、強くなりたければ我と剣で戦うが良い。』

 

「カルトが残した試練か。」

 

『肯定する、我を倒した時、少なくとも魔族ともまともに戦えるであろうという事は保証する。』

 

スカルパラディンは少なくとも現時点の俺より強い、そのスカルパラディンを倒しても魔族と互角程度だっていうのか、化け物かよ。

 

「やってやる、俺はもう、誰も守れないのは嫌なんだ。」

 

そう言って立とうとすると全身の筋肉がビキビキと痛んだ。

 

『少年は約一月の間眠っていた、まずは筋肉をつける事から始めるが良い。』

 

一月、かなり寝ている。

 

「・・・武器は大剣で良い、俺は身体能力しか取り柄がないからな。」

 

『肯定する、身体能力を高める事が一番強くなりやすい。』

 

「・・・スカルパラディン、世話になるぞ。」

 

『了解した、聖騎士の剣をとくと見るがよい。』

 

こいつ、中々面白い奴みたいだな。

 

『ところで少年、少年の目つきの悪さはかなりのものだ、それでは人間は怯えるのではないか?』

 

「喧嘩売ってんのかテメェ!クッ、全然動かねえ。」

 

『急激に筋肉を動かすと危険である、やめたほうが良い。』

 

絶対倒してやるからなお前・・・!




アトのお父さん、本名はオウル、ただし自己紹介してないので主人公は覚えていない、悲しみ。


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鍛練

「ハッ!」

 

『ぬぅん!』

 

「そぉら!」

 

俺とスカルパラディンの鍛練は既に1年ほどの年月が経っていた、婆さんも一度来ていて俺の生存を涙を流して喜んでくれた。

 

俺がいたこの国の王都は魔族達に襲撃された、という事だけは聞いた、それ以外は情報が無いらしい、そもそも地方の行商人が情報をそう簡単に手に入れられるはずも無いので仕方無い。

 

スカルパラディンにも驚いていたがスカルパラディン自体中々親しみやすい性格である事もあってかすぐに馴染んだ。

 

『鍛練中に考え事か!?』

 

「チッ。」

 

元聖騎士というから基本に忠実なのだと思っていたら変則に変則を重ねた結果獣じみた動きで迫ってくるのだ、戦い辛くて仕方無い。

 

ゲームで例えるならボスキャラをプレイヤーが操作して格ゲーじみた反応速度とエイムで迫ってくる、というよくわからない事を平然としてくる。

 

大剣を盾にして弾き飛ばされる。

 

「そこぉ!」

 

『でぇい!』

 

スカルパラディンの鎧に擦り傷がつくのと俺の首に剣が当てられたのは同時だった。

 

「・・・参りました。」

 

『ふむ、中々上達して来た、コレならば数ヶ月もあれば戦えそうであるな。』

 

俺の戦闘時間はかなり制限しても1時間が限度、全力戦闘ならば数分で終わる。

 

一応大人になれば全力戦闘でも数時間は戦えるらしいのだがいかんせん子供なのだ、その状態で戦えると言ったところで少しも嬉しくない。

 

勝てるではなく戦えるだけなのだから。

 

『それでは狩りをするぞ少年よ、今日は何を食べるのだ?』

 

「野菜はある・・・肉もある・・・、調味料でも取りに行くか?」

 

『塩か?』

 

「それくらいしかないよなぁ・・・それで良いや。」

 

『うむ!では岩塩を取りに行くぞ!』

 

「そもそも塩を取れるところなんか近くになかっただろう、だから今までそのまま食ってたんだし。」

 

『いやそれがだな、老婆殿が言うならば岩塩を装甲として使う魔物がこの近くを通るらしいのだ、それを狩れば塩は調達出来るとは思わんか?』

 

「大丈夫なのかその魔物・・・。」

 

結局行くことになった。

 

数もかなりの大軍勢のようで遠くの丘から見るだけですぐに分かった。

 

薄いピンク色の小さなものが地面を這っているのだ、気持ち悪過ぎて吐きそうになった。

 

『うむ!やはりあれは蟹だな!今日の飯は蟹を所望する!』

 

「アレ1匹1匹が1メートルくらいのバケモンじゃなきゃ同意するんですがねぇ!?」

 

アシダカ蟹のようなものではなく毛蟹のような丸いピンク色の1メートルくらいの蟹、それが地面を覆い尽くすくらいの量で迫ってくるのだ、気持ち悪い。

 

『何を言う!あれらの装甲は全て塩だぞ!倒しやすい上に量自体も多い!』

 

「あれ確実にスタンピード起こってるから言ってんだよスケルトンアーマー!」

 

この聖騎士ワイルド過ぎて怖い、一度死んだ身だからとはっちゃけているのか自分から無茶無謀に突っ込んでいくのだ、俺としても戦う度に少しずつ強くなっているのが分かるので殺されたくない、だからそれを補助するのだがこの聖騎士、当たり前の様に生還してくる、俺が放置していたら鍛練を増やされる。

 

死ねよ。

 

俺の使う大剣が何本も折れた、その度に何処かから大剣を調達してくるのだから鍛練に休みはない。

 

『いくぞぉ!』

 

「待てっつってんだろうがドグサレアンデッド!」

 

蟹のハサミを避けまくって数十匹程倒して息切れしているとスカルパラディンは何百匹も倒していた。

 

「どうやって消費すんだよこれ・・・。」

 

『ハッハッハ!狩りすぎてしまったな!』

 

「・・・ところでコレは誰が持って帰るんだ?」

 

『少年だ。』

 

「お前絶対生前ろくな生き方してないだろ・・・。」

 

スカルパラディンは大笑いしていた。




主人公はダクソで言ったら不死隊、スカルパラディンはウーラシールでの闇堕ちアルトリウス、実際スカルパラディンはこの世界でもヤベェやつ。


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お前・・・お前・・・。

大剣が俺の体を斬ろうと迫る。

 

それを飛んで避けると回し蹴りが飛んで来る。

 

腕で防御するが数メートル程弾かれる。

 

腕が痺れる、かなり本気で打ったな。

 

左腕で背中に回した大剣を持つ。

 

『今更武器を出せると思っているのであるか?』

 

「チッ。」

 

大剣が地面を削りながら迫る。

 

横に転びながら避けるが上から断頭台の様に大剣が迫っているのが見えたので迎撃する。

 

「そら!」

 

『ぬぅ!?』

 

大剣に発勁をあて弾きかえす事に成功した、その代わり俺の掌は大惨事だが。

 

左腕で大剣を取り出し自分の周りを薙ぎ払う。

 

右手に持つと痛みが走ったが問題は無かった。

 

「斬る。」

 

大剣で抜刀術など出来ない、だがその代わり似たような方法は使えるようになった、鞘からの最高速ではなく、ありとあらゆる場所からの最高速、大剣の重さを片手で完全に支える程の身体能力とタイミングを合わせれば何とか放てる、と言ったかなり難しい技術ではあるがかなり使える。

 

その結果はすぐに出た。

 

『真に天才であるな、少年は。』

 

「秀才だよ、天才であればあんたとこんなに時間を過ごすこともないだろ。」

 

今の俺は12歳、スカルパラディンはかなり手加減していたようで全然剣で勝てなかった。

 

魔族と同列と言っていたがマジで魔族の身体能力おかしすぎるだろ。

 

『それであっても我の剣を斬るなど、曲がりなりにも竜の素材を使っていたのだがな。』

 

「マジか。」

 

『剣ではもう戦えぬな、では次は格闘でするとしよう。』

 

「は?」

 

目の前に拳が迫る。

 

無意識に体を曲げて拳を避ける。

 

後ろに飛び地面に手を置いて体勢を整える。

 

『滾ってきたぞ!少年!』

 

「アンタ剣だけじゃなかったのかよ!?」

 

『興が乗った!もう少し付き合ってもらう!』

 

「あっぶねぇ!」

 

『倒して見せるのである!』

 

この腐れ骸骨絶対遊んでやがる。

 

「やってやるよおおおおお!!」

 

伸びてくる腕を横に弾き右手で胴に衝撃を通す。

 

『ぬぅ!やはり強いな!もっとやるのである!』

 

「口調崩れてんぞクソ野郎!」

 

『ハッハッハ!!』

 

こいつ大男の癖にかなり俊敏だからマジで本当に。

 

兜も殴り上から踵落としを食らわせる。

 

足を掴まれ投げられる。

 

瓦礫に突っ込み埃が舞う。

 

「・・・気は済んだか?」

 

大剣が無いから瓦礫が背中に刺さって痛い、多分血が出てるなこれ。

 

『うむ!我の技のほとんどを吸収されたのは悔しさが残るのであるな!』

 

「こっちは毎日必死だよスカルパラディン。」

 

『数百年生きている・・・死んでから気が楽になったのだ!この程度で焦るほど若者では無いのだな!』

 

「毎日毎日殺す気で来やがって・・・恨むぞ。」

 

『そうでなければ成長しないと思ったのである。』

 

途中からお前も成長してた気がするのは気のせいか?

 

「まぁ感謝するよ、かなり強くなった。」

 

『うむ、本来ならば我を殺す事で試練は達成となるのだが得物がなくなった時点で負けである、武器に頼りすぎた我の負けである。』

 

俺の目的バレてるわ。

 

「曲がりなりにも世話になった奴を殺したくは無かった。」

 

『分かっているのである、カルト殿にもまた世話になるのであるな。』

 

12歳、成人がたしか15歳だからかなり時間がかかったな。

 

「明日から近くの町に向かう、婆さんにはお前から言ってくれないか?」

 

『うむ、めでたいついでに一度我の切り札を見ると良いのだ。』

 

「は?」

 

スカルパラディンは赤いオーラのようなものを纏った。

 

赫化(ルベド)という、特殊能力では無いのだ、どう言えばいいのであるか・・・身体強化を限界を超えて使うだけである。』

 

絶対に違う事だけは分かった。

 

気が付いたら俺はまた瓦礫に突っ込んでいた、腹から木の柱が突き出ているのでかなりの大怪我だ。

 

『しまったのである!やってしまったのである!』

 

何も見えなかったな。

 

スカルパラディンが必死に瓦礫を除去し、カルトがぶちぎれたのだろう、ボッコボコにされている声を聞きながら眠りについた。

 

ーーーーーーー

目を覚ますと怪我は完全に無くなっていた。

 

「スカルパラディン、カルトは何を使った?」

 

『伝説の霊薬、エリクサーである、貯蔵されているものを使ったらしいのである。』

 

「・・・その結果がそれか。」

 

スカルパラディンは兜だけが残っていた。

 

『鎧は持っていかれたのである。動かせないのであるな。』

 

「アホかよ・・・。」

 

『何、コレでも数百年間アンデッドとして活動しているのである、動けなくても50年ほどなら何とかなりそうなのである。』

 

「・・・婆さんといたら良いじゃねえか。」

 

『おお!それは気が付かなかったのであるな!そうするのである!』

 

もうやだこのアンデッド。

 

次の日、俺は纏めた荷物を背負って婆さんから貰った地図を見た、最寄りまでの道を描いているものらしいのだがあまり詳しくないようで分からないところがちらほらとある。

 

置き手紙は残して来たので居場所は分かるだろう。

 

「よーし、出発〜!」

 

『行ってらっしゃいなのである!』

 

俺たちの戦いはこれからだとか言ったら打ち切りだな。




物語は多分ここから始まる。


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生者と屍人

うむ、中々筋が良いどころか化け物なのだな!

 

今我の前には齢8歳の子供が大人と変わらない程の大剣を構えて立っている。

 

うむ、我も中々強者達と戦ってきたが子供の強者など手で数えられる程度、それゆえに最初は手加減をしていた。

 

だが違った、この子供、ゼルは文字通りの化け物だった、人では考えられぬ膂力、判断力、敵と定めた者の全てを見透かすような目、全ての動きが次の瞬間に読まれてギリギリのところを大剣が滑っていく感覚、およそ人が到達出来る様な境地ではない。

 

我がアンデッドでなければ我は既に2回ほど出血で死んでおるであろう傷を既に入れられておる、こやつは化け物よ。

 

『うむ!次に移行するのだ!』

 

「今しがた終わったばっかだろうがクソッタレ!」

 

悪態を吐く姿は良く見る子供なのだがその技量は既に達人の一歩手前、戦闘出来る時間が少ないのと圧倒的な身体能力に任せたゴリ押しによって強者となっているに過ぎない、我も勿論戦法を取っ替え引っ替えし対抗しているが、我が倒されるまで2年もあれば十分であろう。

 

『ハッハッハ!少年!頑張るのだ!』

 

「覚えてろよ畜生!」

 

アンデッドとなり、世界を彷徨い歩いて、摩耗し、カルト様に拾われた、生前は聖騎士と謳われた我は死ぬ間際に死にたくないと望み、結果、屍人として生き返った、死は絶対のもの、最初はただ嘆いた、何故死にたくないと思ってしまったのかと。

 

しかし、カルト様は溜息と共に言った。

 

「死にたくないと思う事の何が悪い、それを言うならば、死にたくないと思い、生き返ったアンデッド達を不浄の者だと、神に逆らった化け物だと言って討伐する人間達はどうなる?罪など、人間が勝手に作ったもの、創造神は死から生き返る理すら作られている、であれば、正邪の区別無く、屍人と生者がわかりあう事も可能であろうて。」

 

初めて聞いたときは何を言っているんだと本気でそう思った。

 

神は人間を愛していて、獣人や魔人を駆逐する為に聖なる力を与えたのだと、本気で思っていたから。

 

結局は人間の身勝手な思考によるものだと気付いた時には愕然とした、聖騎士であった時から変人だと言われてきた私がこんな事を考えるなんて思いもしなかった。

 

アンデッドも人間も、魔人も獣人も、結局のところ弱肉強食の世界に生きているに過ぎないと。

 

それに気づいた時、我はカルト様に仕える事を誓った、永遠とまではいかずとも、恐らく考えうる限り長い間従者となれるのならば本望だと。

 

カルト様も笑いながら了承してくれた。

 

それがどんな因果か、我は子供の世話をしている、暗闇から目を覚ましてみれば目の前には焼け落ちた村と傷だらけの子供、そして激怒しているカルト様の姿があった。

 

子供を保護し、カルト様の存在を知った魔人達は何処かへ消え、代わりに我は子供に殺されろと言われたのだ、理不尽だとも思う、だが、それに笑いながら承諾してしまう自分の能天気さにも呆れている。

 

しかしこの子供が化け物の類だと分かった瞬間に我の中から何かが顔を出した。

 

アンデッドになってからかなりの時間を過ぎてから思い出した感情、熱意、というものだ。

 

育ててみたい、自分の技を一つ残らず継承させてみたい、この子供が自分の技をどこまで高められるのかを見てみたい。

 

そんな思考が次から次へと溢れ出てきたのだ。

 

『我も、変わったものよ。』

 

「なんか言ったか腐れガイコツゥ!」

 

『何も言っておらん!ほれ!追加である!』

 

「テメェマジでぶっ飛ばしてやるからなあアァァァァァ!!!?」

今は・・・まだこの子供、そして化け物である我の一番弟子、ゼルの世話をするとしよう。

 

ーーーーーーー

遠くに見えるゼルの背中は小さい点のようになっていた。

 

『行ってしまったか、寂しくなるなぁ。』

 

ゼルは優しい子供だ、人間でありながら魔物のような膂力を持ち、鬼人のようにタフで粘り強い。

 

我も、錆び付いたとはいえ聖騎士、剣の強さではそう簡単に勝てる者は居らぬという自負がある、その我ですら最上位の魔族には異世界からの勇者の力が無ければまともに戦えぬのだ、だがもしかしたら、ゼルは勇者と同じと言える強さを・・・いや、これはまだ予想でしかない。

 

「もしもし、骨騎士さん、ゼルはどこに行ったのかね!?」

 

『おお!老婆殿!少し考え事をしていたのだ!』

 

ゼルの祖母であるマーリン殿、しがない薬屋ではあるがその薬はかなり質の良いものだ。

 

『あやつは我を倒し、街へ向かいました、手紙は今まで通りに出すと言っておったが返信は届かないであろうな。』

 

「・・・そうかい、あの子は行ったのかい。」

 

『老婆殿もいつかこの日が来ると分かっていたでしょう。』

 

「ええ、骨騎士さん、あの子は私達の村の者がカルト様に生贄を捧げた時から既に他人様さ、それを、まだ家族として関係を持てているのはあの子の優しさ故さね。」

 

『うむ、ゼルは身内にはかなり甘いですからなぁ、我も殺されるつもりでいたのをただ世話になったというその一点だけで技の全てを盗み、格上となった上で剣をだけをポッキリと折られてしまいました。』

 

「あの子らしいねぇ、どうだい?骨騎士さん、あの子は。」

 

『うむ、誇らしい限りである。』

 

「そうかい、あの子の旅が、尊いものでありますように。」

 

老婆殿は祈っていた、子供を思う親の姿はどの時代でも変わらぬものなのかと思いながら、スカルパラディンは静かに黙った。

 

祈りが終わったのを見計らい、スカルパラディンは切り出した。

 

『老婆殿、行商人であるのも疲れるであろう、馴染みの冒険者パーティがいるとはいえ、一人腕っ節の強い者がいるだけでだいぶ楽ではありませんかな!?』

 

「そうだねぇ、じゃあ骨騎士さん、護衛になってくれるかい?」

 

『うむ!なるとも!という訳なのだカルト様、我の体を返して欲しいのである!』

 

そう言って兜だけになった顔から声を出す。

 

「全く、タイミングの良い・・・次は無いぞ、スカルパラディン。」

 

『うむ!了解した!』

 

カルト様が暗闇から我の体を取り出す。

 

『戻ったぞ!これで元どおりである!』

 

「・・・お調子者め。」

 

『ハッハッハ!では行こうぞ老婆殿!次の村は何処でござるか!?」

 

「その前にカルト様に一言よろしいですかな?」

 

「なんだ?」

 

カルト様の前で深くお辞儀をして老婆は言った。

 

「私の孫を、あの子の息子を、育ててくれてありがとう、老い先短い老婆だけれど、これだけは言っておきたかった。」

 

「・・・よい、面を上げよ、私も親元から離れさせてしまった事を気に病んでいた、本人では無いにしても、その言葉が聞けて安心した。」

 

カルト殿は少し恥ずかしがっているようで少し照れが見える。

 

今は流石に無粋か。

 

荷馬車の近くでダレている冒険者たちに向かって歩き出した。

 

「誰だ!?」

 

「ゼルと戦ってた魔物!?」

 

「待てお前ら!ゼルと婆さんも言ってただろうが、友好的な者だと。」

 

『うむ!ゼルは旅に出たのでな!今しばらくの間世話になるのである!』

 

「「「嘘だろ!?」」」

 

『ハッハッハ!毎日少しずつならば稽古をつけてやってもよい!ゼルほどとはいかなくてもお主達もまだまだ荒削りなのでな!綺麗に研いでやろう!』

 

「ゼルの奴ヤベェやつ置いて行きやがった!」

 

これからも退屈はしなさそうだ。




スカルパラディン、育成に目覚める。

次はアトの視点にするか主人公の視点にするか・・・。

プロット無しでも案外いけるもんだな。


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悲しみ

取り敢えず道を歩いて早一週間、一向に街に辿りつかねぇ、というか街の影すら見えねぇ、どういう事だ?

 

「・・・せめて地図くらい買っときゃよかった・・・。」

 

まぁなんとかなるだろう、今までもそうだった。

 

そんな事を思って数日間粘ったが未だに街が見えない、何でだ?流石におかしい、かなりの距離を歩いている筈なんだが。

 

そう思いながら周りを見ると小さい人間の様なものが見えた。

 

「お、人間か?おい!ちょっと道を聞きたいんだけど!」

 

そう言いながら近づいていくと矢が飛んできた。

 

身体強化がなくても掴める程度の速度だったので使わずに掴むとガサガサと音を立てながら逃げられた。

 

「おい。」

 

こちとら食料無くなっても彷徨ってるんだよ、話くらい聞けよ。

 

「逃げんな。」

 

揺れている木を大剣で攻撃すると人間は落ちてきた。

 

その人物は緑色の肌をしていて枝で作った杖を片手に持っていた小さな人間・・・人間か?コレ。

 

「ギャギャ!」

 

うんコレゴブリンですわ。

 

「ゴブリンって友好的な奴だったっけ、覚えてねぇ・・・。」

 

そう呟くと炎が目の前に出現した。

 

「あっつ!?」

 

咄嗟にゴブリンを炎に向かってぶん投げる。

 

熱がいきなりきたから思わず投げちゃった、死んでる?あ、死んでるわこれ。

 

「やっちまった。」

 

ゴブリンを倒すと景色が変わった。

 

街道が延々と続く景色から遠くに街が見える様になっていた。

 

「・・・ゴブリンの幻術か!?魔法の知識もつけときゃよかったかな・・・。」

 

というかよく使えたなあのゴブリン。

 

俺は街に向かって歩き出した。

 

ーーーーーーー

「ん?あ、お前生きてたのか。」

 

街に来て門番にいの一番に言われた言葉がコレってどういう事。

 

「・・・何となく察しましたけど聞いときます、どういう事ですか。」

 

「お前ゴブリンメイジに幻覚見せられてたろ、一週間くらい前からこの辺りをずっと徘徊してたんだよお前。」

 

「助けろよおおおお!!?」

 

「だってゴブリン程度に魔法かけられる奴なんて初めて見たからな、少し面白がって放置した。」

 

切れそう。

 

「・・・取り敢えず街に入りたいんですけど。」

 

「おういいぞ、入るのに銅貨一枚を貰うぞ。」

 

「了解。」

 

村長宅から金貨1枚分の銀貨数枚と銅貨数十枚は持ってきてあるのですぐに出す。

 

「あとお前の腕なら冒険者も出来るだろ、この大通りをまっすぐ行って三つ目の十字を右に曲がれば冒険者ギルドあるから、多分いじられるだろうけど我慢しろよー!」

 

「いじられるのはお前らのせいだろうが・・・!」

 

取り敢えず俺は知らない内に売名は出来ていたようだ・・・遊び道具として。

 

門から入ると俺を見て何人かの大人が苦笑いで通り過ぎて行く、何で俺の事がこんなにたくさんの人に知られてるんだろうな、ゴブリンのせいだよな畜生。

 

冒険者ギルドは三つ目の十字を右だったよな?

 

「・・・うわぁ。」

 

ギルドの外側はかなり綺麗にされていた、が、端の方に赤い染みがあったり看板が少し傾いていたりと古いのと喧嘩でボッロボロになっているのが分かった。

 

「これはひどい。」

 

中に入ると酒の臭いと酒に酔った呑んだくれ達が俺を見た。

 

「よっしゃ!俺の勝ちだな!銀貨1枚ゲットだ!」

 

「くっそー!」

 

いきなり盛り上がり始めた、何でお前ら賭けなんかやってんの?

 

「ハッハッハ!坊主!お前ゴブリンメイジに幻覚見せられてたんだって!?どうだった?」

 

うっぜえ!

 

「・・・延々と続く街道を人一人見つけられずずっと歩くとかいう修行を味わったよ。」

 

俺がそう答えると酒場の全員が大笑いした。

 

「災難だったな!でも泣いたりしなかったのは偉いぞぉ!」

 

俺はもう切れてもいいと思う、子供扱いはまだしも賭けの対象になるのはちょっと違うだろう。

 

「・・・。」

 

取り敢えず飲んだくれ達の手を払いながらカウンターに向かう。

 

そこにいた受付嬢は恰幅のいいおばさんだった。

 

「冒険者になりたいです。」

 

「・・・災難ねぇ、文字は書けるかい?」

 

「書ける。」

 

「ゴブリンメイジに幻覚見せられてるのにかー?」

 

イライラしながら名前を書く。

 

「ゼル、ね、じゃあちょっとだけ待っててね、すぐにカード持って来るから。」

 

「俺は暫くゴブリンメイジに街道を延々と歩かされていた。」

 

「ハハハハハ!!」

 

大剣に手が伸びそうになる。

 

「・・・ほら煩いよ飲んだくれ共!子供いじめてんじゃないよ!」

 

「・・・。」

 

「そうは言ってもこれは面白すぎるからなぁ!」

 

「だったらあんたらが新米に基本的なルールを教えてやりな!」

 

おばちゃんがそう言うと飲んだくれ達は動きを止めて俺を見た。

 

「・・・何?」

 

「冒険者カードを発行するときにね、他の冒険者と戦って成績次第でランクを上げる事が出来るんだよ、やるかい?」

 

「勿論。」

 

そう言うと飲んだくれ達はニヤリと笑った。

 

『負けたら奢りな!』

 

「俺が勝ったらどっかの宿紹介してくれよ。宿賃お前ら持ちな。」

 

「楽しくなってきたぜ!」

 

「どっちが勝つか賭けするぞ!どっちに賭ける!?」

 

「俺は新米に1銅貨!」

 

「俺も新米に1!」

 

こいつら・・・。

 

ギルドの建物の裏にある少し広い広場で大剣を構える。

 

「そんな思い武器でまともに戦えると思ってんのかぁ?」

 

「俺としては酒入ってるお前らが同士討ちしないかと割と本気で心配してるんだけど。」

 

「なぁんだとぉ?ちょうしにのりゅなあ!」

 

「ねぇちょっと待って危険域一人いるんだけど誰か退場させろよ!」

 

先輩冒険者達は千鳥足や比較的まともな動きで近づいて来る人などがいた。

 

が。

 

「ウゴッ!?」

 

「アガ!?」

 

「グペッ!?」

 

「酒入ってないやつ連れてこいや!!!」

 

同士討ちどころか近づいて来る過程でほぼ全員が転んで気絶していた。

 

生き残っている数人の攻撃を捌きながら叫ぶ。

 

「何なんお前ら!?せめて危ないやつ入れんなよ!後これ本来なら一対一だろ!?何やってんの?何させてんの!?馬鹿かよ!?お前ら酒入ってんだろ!?無茶すんなよ!」

 

「お、大人の意地ってやつがあるんだよ、子供には分からないだろうがな!男にはやらなきゃいけない時があるんだよ!」

 

「少なくとも今のアンタは吐きそうになって顔面蒼白の危険域到達してるバカだよ!そんなセリフ言える状況じゃねえだろうが!さっさとどっか行けバカが!」

 

暫く耐えていると残っていた連中も吐きそうな顔になったので強制的に下がらせた。

 

というかこいつら揃いも揃ってバカしかいねぇ!

 

本当に大丈夫かよ・・・このギルド・・・。




曲聞きながら書いてたらアシスタント起動して耳から血が出た、だから遅くなった。

急にポロンって音したと思ったら耳に痛みが発生した、マジでアシスタントとかいらねぇ、しかも連続で煽るようにポポポポロン!ってなったからマジで死ねばいいと思う。

イヤホン片耳だけで助かったぜ。

アシスタントは消したい、基本無効にしてるくせに何がアシスタントが違いますだよ、キレそう、携帯壊さなくてよかった。


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おっさん

酒の入った連中を伸して、俺は受付で冒険者カードが作られるのを待っていた。

 

その間、俺は大剣を横に置いて腹ごしらえをしていた。

 

暫くするとおばちゃんが冒険者カードを持って来てくれたので受け取る。

 

「あんたの成績は・・・まぁ相手が弱すぎたってのもあるけど、そこまで成績に入る程のものじゃなかったから、最初はコツコツと依頼を受けていきな。」

 

「・・・昇格の条件などは?」

 

「依頼を受けてりゃいずれ上がるさ、詳しい事なんかそうそう覚えるもんでも無いさ。」

 

「じゃあ宿の場所を教えて下さい。」

 

「少しボロいけど黄金の豚亭って宿があるよ。」

 

なんだその名前、すげえ覚えやすい。

 

「・・・じゃあ其処にします、依頼は明日からでも良いですか?」

 

「あんたまだ子供なんだから、無理すんじゃないよ。」

 

「了解。」

 

叔母さんは信じられなさそうな顔をしていた。

 

「そう言えば、武器屋などは何処にありますか?」

 

「はぁ・・・地図渡してあげるよ。」

 

手を差し出したので銀貨1枚を渡す。

 

それを見てまた溜息をつかれた。

 

「・・・足りなかったんですかね。」

 

「サラッと高額出すんじゃないよ、全く、カモられるんじゃないよ。」

 

義理堅いな、珍しい。

 

「ありがとうございます。」

 

外に出ると先ほどまでのどんちゃん騒ぎが周りにも伝わっていたのだろう、店先にいる客などが見つめてくる。

 

外套を被って溜息をつく。

 

地図を見てある程度の方角を特定する、というかめっちゃ詳しいなコレ、街の中全部書かれてんじゃねえの?

 

上に飛び、空気を蹴ることで移動を開始する、森の中と違って木などは無いので屋根を渡る事になる。

 

街の屋根は平坦なものが多く、戦闘するのにはあまり問題は無さそうだ。

 

えっと・・・なんだったか。

 

「黄金の豚亭・・・ここか。」

 

見た目は少しボロいと言うか、古いのか。

 

中に入ると渋いおっさんが俺を見た。

 

「・・・いらっしゃい、泊まっていくか?」

 

「はい、部屋は空いていますか?」

 

「いつでも空いてる、あのババアめ、俺への当てつけか?」

 

ひっどくないですかね、まぁ良いけど。

 

「世話になります。」

 

「飯は作る、だが夜は止めろ。」

 

「分かりました。」

 

案内された部屋は女の子の私物の様な物が大量に置かれていた。

 

「すまん、間違えた。」

 

「あんたの家だろ、間違えんな。」

 

俺が案内されたのはその部屋の隣の部屋だった。

 

ベッドとある程度の広さだけがある、案内されるとおっさんは静かに切り出した。

 

「一晩銅貨一枚だ、どれくらい泊まる?」

 

「まずは一週間、其処からは多分稼げたらもう少し泊まるかもしれない。」

 

「そうか。」

 

おっさん・・・商売慣れてないだろあんた・・・まあ良いけど。




ひっさしぶりすぎて後の展開忘れた、もしかしたらぐっちゃぐちゃになるかもしれないけど許して。


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初めての依頼

翌日、おっさんが慣れない客商売をしているのを見ながら顔を洗っているとおっさんからある物を投げられた。

 

「昼飯だ、腹減ったら食っとけ。」

 

「・・・干し肉?」

 

「今日の昼飯くらいにはなる。」

 

干し肉かったいな。

 

「まぁ、持ってくよ。」

 

「頑張れよ。」

 

大剣を背中に回して俺は冒険者ギルドに向かった。

 

俺が起きたのはかなり遅い時間だったみたいでめぼしい依頼は既にほとんどなくなっている様だった。

 

「あるのは恒常の物と・・・街道の魔物退治?なんじゃそりゃ。まぁ良いか。」

 

紙に書いてあるのを見るには街道上を通過する商人達から魔物の数が増えているらしいとの報告があり、騎士団を派遣し、掃討したがそれでもこの先徐々に増えていくことが予想される為、恒常依頼に値するかの調査と共に、駆除を頼みたい・・・らしい。

 

いやまぁ書いてあるのは恒常云々だけなのだが、裏を読もうとするのはハジメ達の影響かな。

 

まぁ、これにしようか。

 

「・・・アンタ・・・いきなり難しいのを・・・。」

 

「まぁ、軽く見てみて行けそうだったらやるさ。」

 

「そっちがあんたの素かい、まぁ、頑張るんだよ。」

 

街道の名前はアルカダ街道、この街は黄昏の森に比較的近い事もあって魔物の種類もそれなりに多い、草原であっても所々に林がある為、それなりに大きい魔物も出現する様だ。

 

ただ俺が死にかけたロックベアの幼体の様な奴は出て来ない、と言うか今でもあれが幼体だと思えない。

 

アルカダ街道はその中でも王都に向かう為の街道だ、道中には幾つかの街があり、商人達がよく使う、鉄や塩などの補給もこの街道を使う為、かなり重要な街道である。

 

魔物が来ている原因が何であれ、被害が多くなれば街も無視できない、対処出来ずに大事にするよりかは予防しておいたほうが後が楽だ。

 

「まぁ、魔物狩って素材売ってけば旅の資金程度くらいは稼げるだろう。」

 

まぁ、数日間行くことになりそうなので定期的に街に戻る必要はあるか?

 

門から出てアルカダ街道を歩く、三時間おき位に休憩所の様に切り開かれた場所があるので野営などは此処で集まって警備するのだろう。

 

何人か既に商人などがいるので小さい市場の役目も果たしている様だった。

 

俺もウルフやゴブリンの小隊などを狩っていたので何か素材になるかと質問してみたがウルフの皮1頭分で銅貨一枚だと言われた。

 

ウルフの皮だけ売り、肉などは後で料理して食おうと思う。

 

「さて、この辺りは林か?」

 

黄昏の森程木が密集していないからか、視界が広い。

 

「原因があるとすればこの辺りっぽいが・・・。」

 

そう呟くと共に叫び声が聞こえて来た。

 

「原因がいるかは分からんが、向かうか。」

 

ーーーーーーーーー

「ハク!マル!」

 

俺の周りには仲間のハクとマルが倒れている、目の前に居るのはランクDの魔物、オーガだった。

 

「グオオォォォォォォォ!!」

 

オーガは近くの木を掴んで即席の武器としていた、木は薙ぎ払ったりしているうちに少しずつ小さくなっていったがオーガの攻撃はその度に速度を上げ、人間よりも何倍もある力で振り回されればそう簡単に制御出来るものではない。

 

そして目の前にいたオーガはその棍棒サイズにまで折れた木を振り上げて迫って来た。

 

(ごめん・・・皆。)

 

だが、衝撃は来なかった、とてつもない風と共に俺の体が吹き飛ばされ、尻餅をついてしまった。

 

目を開けると其処には鉄塊のような大剣を棍棒とその人物との間に挟んでいた。

 

その人物は

 

「・・・子供?」

 

「全く、なかなか力が強い、少しばかり時間を稼いでやろう。」

 

ーーーーーーーーー

「全く、なかなか力が強い、少しばかり時間を稼いでやろう。」

 

道中で五十ほどのゴブリンが三人の男を囲んでいたので排除していたら死にかけたので間に入った。

 

と言うかナメプしててすまねぇ。

 

残りの数体のゴブリンが林から出てきた。

 

それぞれ弓や粗悪な剣などを持っていて、久しぶりの真正面からの勝負に柄にもなく熱くなる。

 

オーガと俺は未だに鍔迫り合いをしている、オーガ、確かランクD、ランクD冒険者のパーティー一つと同等の戦闘能力、ランクCなら倒せる、だったかな。

 

「なるほど、この膂力ならそう言われるのも頷ける。」

 

俺の身体強化のレベルは今は成人の6倍程、それでも拮抗がギリギリである、筋肉の塊だから何時ぞやのミノタウロスを思い出す。

 

「軽く撃ち合おうか。」

 

棍棒を弾き飛ばす。

 

オーガの態勢が一気に崩れ、がら空きになった胴に蹴りを叩き込む。

 

オーガにはさほど聞いていなかったようでそのまま棍棒を上から叩きつけてきた。

 

「脳筋一辺倒、技術は其処までない。」

 

後ろに下がり飛んでくる破片を防ぐ。

 

オーガはそのまま狂戦士のように俺目掛けて走りながら棍棒を振る。

 

周りの木がぼきぼきと折れていくのをみて少しマズイかと思う。

 

開ければそれだけオーガの武器と振りまわせる領域が広がるのだ、オーガがそれを察しているかはともかく、そうなりかねない。

 

逆に踏み込み、大剣の柄でオーガの肘を叩く、オーガの右腕は肘から折れて使えなくなった。

 

左手で木を掴んで投げて来るが、俺にとって大きな投擲物は足場と同じだ。

 

木に足を置き、一気に上へ跳ぶ。

 

俺を見失ったのか下でキョロキョロしているオーガの真上から大剣で一気に引き裂いた。

 

頭の天辺から股下まで一気に切り裂くことに成功し、二つに分かれたオーガは絶命した。

 

「・・・あやべ、大剣抜けねぇ、ふっ・・・アレ?ヌグググ・・・やっべ。」

 

身体強化を割と本気でかけてやっと抜けた大剣を担いで周りを見ると俺の助けた3人組の内1人が俺をじっと見ていた。

 

「・・・勝ったのか・・・?」

 

「ハッ、安心しろ、オーガは死んだ、確かにな。」

 

「・・・夢みたいだ。」

 

「まぁそうだろうな、近くの野営地まで向かう、立てるか?」

 

「あ、ああ、助けてくれてありがとう。」

 

俺は鎧を着ていた男を担ぎ、近くの野営地にパーティーを送り届けた後街へ歩き出した、まだ日は落ちていない、と言うか、飯食ってないから腹減ったな、干し肉食うか。

 

「・・・しょっぱいな。」

 

塩っ気が強すぎるぜおっさん・・・。




用語解説的なの載せようと思います、制度とか、まぁテンプレが多いんで其処まで変な物はないと思いたいですが。

ーーーーーーーーー
冒険者ランク
E→D→C→B→A→S
の順にあり、一人前として認識されるのはDランクから、Eは言うなれば子供や孤児などのためのお小遣いクエストばかりの依頼が多いです。
Dランクからは魔物を相手にしたり、危険性がある程度判明している場所への調査が主な仕事。
Cは盗賊退治や危険性がどれほどか分からない場所への調査が主な仕事
Bから上は基本的に人間辞め始めてる奴等、Aから本格的におかしくなる。
Sは1人で騎士団と戦って勝てる、ワンマンアーミー、ただし火力は魔物用。

基本的にワンクの一つ下が1人でクリア出来る基準、基本的にパーティーを組まないと死ぬ。

3人組の男達

モブ、それ以外の何物でもない。

受付嬢(おばさん)

実は元B級冒険者、本編ではあんまり関わらないかも知れないけどなんだかんだ裏で世話になる予定。

宿屋のおっさん

黄金の豚亭の店主、実は主人公が初めての客だった、受付嬢(おばさん)の計らいで初めての顧客ゲット、1人娘もいるけど関わるかは現時点では不明。奥さんがいない理由は察しろ。

ーーーーーーーーー
アカン、これただの設定集や。


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報告

街に着き、ギルドへ向かう。

 

受付は空いており、誰もいない、日没前だからだろうか、基本的に誰もいないようだ。

 

「坊主、どうした?」

 

受付の奥から大柄な人が出てきた。

 

「あ、いえ、街道の調査の進捗を報告しに来たんですよ。」

 

「ふむ、少し待て。」

 

渋いおっさんだったな、いい人そうだ。

 

「よし、街道はどうだった?」

 

「まず確かにゴブリンやウルフが多くなってます、襲撃回数も資料より少し多い程度、ですが一年前の物と比べると約1.8倍ほど増えてます、林にはオーガも出現し、新人のパーティーが一つ壊滅仕掛けていました。」

 

「何?」

 

「オーガは既に討伐し、新人パーティーには近くの野営地で休息を取らせています、次に襲撃回数ですがオーガほどの魔物が単体で出現すると言うのは些か不自然です、人型の魔物は基本的に複数で行動します、オーガだけが違うような記述も無いので、恐らく、オーガの群れを討伐できる程度の危険度があると思われます。」

 

「いつの間に資料を・・・。」

 

「恐らくですがランクDのオークの群れか巣があると思われます、危険度は少なくともC、上位種が居た場合はCランクパーティーが三つほど、と言ったところでしょうか。」

 

「上位種が居ると言う根拠は?」

 

「一年前の資料を見る限り、相手はかなり人間を警戒しているようです、獲物が減りはじめてからも同じ場所に留まっていると考えられ、そうなると人間に見つからないと言うのは相当知恵が回るものがいます。」

 

「街道は王都まで続いている、どの辺りに巣があると思う?」

 

「恐らくですが、次の街アッピアとのちょうど中間、ヒューイの谷辺りを根城にしていると思います。」

 

「どうやってそこまで絞った?」

 

「人目につかないのであればまず人間がいかない場所、危険度が高く、そこまで旨味の無い場所ならば、冒険者が向かって殺されたところで行方不明にしかなりません、それに、人間の子供であろうと食料は食料、骨になるまで食われでもしたらまずわからない。」

 

あとは一度見に行ってどのくらいの規模があるのかを偵察しないといけないが、もしオークならば上位種が居る可能性は高い。

 

「・・・。」

 

「ですが、オーク以外にもコボルトの大群や、ただの野良のオーガである可能性も勿論あるので、その辺りはギルドに考えてもらいたいです。」

 

「有益な考察を考えた褒美として資料室に忍び込んだことは不問にする、助かった。」

 

「・・・すいません。」

 

有耶無耶にしようとしてたことを言われて駄目だったかと反省する。

 

「今を持って君を暫定的にCランクとする、もし偵察部隊に非常事態が起こった場合、君には掃討のために参加してもらう。」

 

「了解、あと・・・そんな権限持ってるってことはもしかして。」

 

「俺がここのギルドマスターだ、そろそろ帰ろうと思ってた所にお前が来たんでな。」

 

とんだ厄ネタが来やがったと呟くギルドマスターは悲しそうだ。

 

何かホントにすんません、でも緊急の案件でも無いんで、ゆっくりで良いんで。

 

「取り敢えず次の会議で言うべき問題だな、クソ、次の会議いつだ?」

 

「少なくとも年単位で増えてるんでそう急ぐ必要もないと思いますよ、数は尋常じゃないと思いますけど。」

 

「好き勝手言いやがって・・・取り敢えず今日の所は帰れクソガキ、絶対に一人で谷に行こうとすんじゃねえぞ。」

 

俺は幼児かよ・・・言いたくなる気持ちは分かるけど。

 

「分かりました。」

 

「俺だってガキが死ぬところ何て見たくねぇ、生きろよ。」

 

何回も言わなくても分かってるって。

 

宿に帰るとおっさんに厳重注意を受けた、せめて夕方には帰ってこいと。

 

だから俺は幼児かよ・・・子供だけど幼児じゃねえよ・・・




ギルドマスター

渋いおっさんってカッコいいよね、子供を見ると世話を焼かずにはいられない。

ーーーーー
章的なものが終わるたびにこの設定集まとめようかな、プロット無いからキャラ設定だけははっきりさせておきたい。


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鍛冶屋

翌日、朝におっさんとの朝食を済ませてから武器の点検をする。

 

俺が武器の点検をするのは晩と朝、晩は暗いのもあってそこまで詳しく見ることはできないが、朝になれば日もよく当たり、詳しく見える。

 

「・・・やっぱり歪んでたか。」

 

昨日のオーガ戦、最後の一撃を入れて抜くときに歪んだのだろう、サブも欲しいところなので今日は休みかな。

 

普通はこんな簡単に歪むもんじゃないんだけどなぁ。

 

武器屋の位置を調べて武器を担いで歩き出す。

 

そういえばギルドマスターに金もらってないな、手持ちで足りるか?

 

武器屋の前に到着した、がコレはダメだ、武器屋であって鍛冶屋じゃねぇ、どっかにねえかな。

 

地図を広げて鍛冶屋を探す。

 

少し所ではなくうろうろしているとやっと目的地らしき場所に出た。

 

「・・・一時間くらいかかったな。」

 

適当に閑古鳥鳴いてるところにでも行って預けてみようか。

 

フラフラと歩きながら火事場を覗いて居ると後ろからでかいおっさんに肩を叩かれた。

 

「坊主、俺の仕事場に何のようだ?」

 

「・・・大剣が歪んだので直せるかを聞きに来ました。」

 

「客か、なら中に来い、どうせ日に何人もくるわけじゃねぇ、見てやる。」

 

「あざっす。」

 

中に入ると煤だらけの道具が大量に置いてあった。

 

店主は俺の大剣を片手で持つと暫くじっと見つめていた。

 

「かなり使い込んでるな、坊主、コレはいつから使ってる?」

 

「一年前からだ、その前のは修行で折れた。」

 

「大剣を折る子供か、おもしれぇ、原因はお前の力だな、芯からネジ曲がってやがる。」

 

やっぱりか、いや、まだ持った方か。

 

「坊主、この大剣を新調してやる、変わりに珍しい魔物の素材を手に入れたら俺のところに持ってこい、武器だろうが何だろうが作ってやるよ。」

 

「・・・もしかしてドワーフか?」

 

「ああ、少なくとも人の手で作れるもんは何だって作ってやる。」

 

普通はドワーフでもそんな事言えないと思うがな。

 

ドワーフは寿命が百年単位である種族だ、エルフと起源を同じとし、エルフは自然を、ドワーフは火を尊ぶ、両者は特別仲が悪いなどはあんまりなく、エルフの武器や日用品をドワーフが、エルフの薬や狩りなどで取れた素材を交換しあって生活しているらしい。

 

ただエルフやドワーフは魔族とも獣人とも言えない存在なので一応は人間に近い部類である。

 

聖神教会からは魔物や獣と混ざりあった種族として教えられているので迫害がある、と言うか主要な国家のほとんどが聖神教会を国教としているのでこのおっさんはかなり腕がたつのだろう、迫害されてもなお店が出来る程なのだから。

 

「了解だ、もし倒せたらドラゴンの素材でも持ってきてやるよ。」

 

「カッカッカ、大きく出たな坊主、だが嫌いじゃない。」

 

ドワーフのおっさんは笑っていた。俺も笑った。

 

「完成までどのくらいの時間がかかる?」

 

「3日くれれば新品同様ピッカピカにしてやるよ。」

 

「了解。」

 

「それまではこの短剣でも使っときな、一本しかないがアルバタイト製だ。」

 

アルバタイト、確か重くて硬い金属の代表格。

 

「流石に短剣だから軽いな。」

 

「それでも鉄の直剣位の重さはあるんだがな、もしアルバタイトを大量に持ってこれるならこれで大剣を作ってやれるが?」

 

「マジかよ、頑張って集めて来るわ。」

 

今日の所は短剣で軽く練習してみよう。

 

「ちょっとだけ庭借りてもいいか?」

 

「構わねえよ、帰るときは言えよ、調整すっから。」

 

「分かった。」

 

庭で短剣を逆手に構える。

 

大人の人型の影を思い出しながら膝、首、肩、脇に短剣を刺していく。

 

「・・・うん、充分使える。」

 

おっさんに短剣を預けて居る間に格闘の型をできるだけ速く行う。

 

(体に何か異常とかがあるわけでもなし、流石に一日くらいじゃガタは無いか)

 

「坊主、出来たぞ。」

 

「ありがとな、おっさん。」

 

「おっさんじゃねぇ、アロウズだ、今度から間違えんじゃねえぞ。」

 

「わかった。」

 

短剣を受け取ると持ち手の革が変わっているように見えた。

 

「これは?」

 

「先行投資って奴だな、壊れるまで使ってやれや。」

 

このおっさん株とかやったら義理人情で破産するタイプだな。

 

「ありがとう。」

 

「大剣が出来上がるのは3日後位だ、そのときに取りに来てくれ。」

 

「了解。」

 

短剣だけ持ってギルドに向かう、今日は適当にどっかの家の掃除とかやってみるかな。




投稿してたと思ったらしてなかった


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慈善事業

俺がギルドに入ると受付嬢は俺を見て溜息を吐いた。

 

「おいおい、酷いな。」

 

「あんたもう取り繕うことすら辞めたのかい、全く、もうまともな依頼は無いよ。」

 

「知ってる、残ってるのは街の雑用だろう?」

 

「それが狙いかい。」

 

「まぁな。」

 

依頼は確かに少ないが雑用の依頼は腐るほど貼ってあると言った有様だった。

 

「この街の人達はやっぱり識字率は低いのか?」

 

「そうだね、特に子供なんかは文字すら分からない子が多いね。」

 

「ふむ。」

 

孤児院などは領主からの命令で何とか保ってはいるようだが、スラム街や日陰者が集まる場所はどうしても出てしまう。

 

「面白い、少しばかり探ってみるか。」

 

「あんたまた変な事考えてんじゃないだろうね。」

 

「ハハッ、それは分かってからのお楽しみってな、取り敢えずこれとこれ受けるわ。」

 

そう言って受付嬢に渡したのは孤児院の子守りと貨物運搬の手伝い、孤児院のガキ共を使うついでにコネ作りの場を作ろうという考えだ。

 

「あとこれの写しをくれ。」

 

基本的にこの時代の孤児院のほとんどは子供達が荒んでいるから時と場合によっては1人になるけど、夜まで粘ればいける。

 

「・・・分かったよ、失礼な事言うんじゃないよ!」

 

「分かってる。」

 

まず孤児院に向かう、そこにはお婆ちゃんと小さい子供達が小さな庭で遊んでいる所だった。

 

婆さんになるまで生きてるのは珍しいな、そりゃ体力面で不安にもなるか。

 

「どうも、依頼を受けて来たものなんですけど。」

 

「あらあら?冒険者の方かい?ごめんねぇ、わたしは目が見えないんだ、少し触らせておくれ。」

 

お婆ちゃんが手を伸ばしてきたので握手する。

 

「あらあら、お若いのに御立派ねぇ、うちの子供達と遊んでくれるかい?」

 

「分かりました、俺も若いんで、気のすむまで遊んであげますよ。」

 

「ありがとうねぇ。」

 

お婆ちゃんは子供達を集めた後、孤児院の中へ入っていった。

 

子供達が警戒全開で俺を見ている、まぁそうなるよな。

 

「あー、頼りないかもしれんけどお前らの遊び相手になったゼルだ、よろしく頼む。」

 

俺はそう言って手を差し出した。

 

「兄ちゃん、冒険者か?」

 

「ああ、まだ新人だけどな。」

 

「何かお金になる仕事はある?」

 

ある、その為の勉強も必要だが。

 

「ある、腐るほど、だがその分、危険も多い。」

 

「俺達でも出来るものはある?」

 

「そこでだ、こういう依頼がある。」

 

俺が持ってきた依頼の写し(おばちゃんに書かせた。)を見せる、そこに書かれていたのは貨物の運搬、荷物は鍛冶屋への鉄の運搬、それだけで子供が数人腹一杯に食える程度の金は貰える。

 

その他にも自警団への食糧運送等があったが食べ物の恨みは恐ろしいものがあるので止めた、その点鉄なら落としてもそこまで大きな怪我はせず、子供が二人居れば大人一人分位の仕事は出来る、今度ギルマスにでも打診してみようと思う。

 

「何はともあれ、まずはこういうのをやっていきな、お前らじゃ魔物と戦ってもすぐに死ぬ、俺なんかはどうしようもない事情があってこうなってるからな、参考にするのは止めておけ。」

 

「雑用じゃねえか。」

 

「鍛冶ってのも良いもんだぞ。」

 

「・・・今日は従う。」

 

「良い子だ。」

 

孤児院のリーダーが頷いた事で他の子達も雑用をすることになった、ここまでは狙い通り。

 

「あぁ!?ガキだと!?」

 

「はい、鉄の運搬を手伝ってもらっています。」

 

「ガキが鉄運べるってのか?」

 

「小さく分ければ問題ないでしょうし、危険な事がないように見張ってます。」

 

「てめぇも対して変わらんと思うが?」

 

俺は無言で5人分の荷物をどうにかこうにか持ち上げる、一人分でも結構な量なので目の前が見えない。

 

「分かった、分かったから降ろせ、危なっかしくて見てられねぇ。」

 

「了解です。」

 

取り敢えず2人分を両手に持ってにっこりと笑う、俺達が話している途中も子供達は頑張って運搬を続けており、既に目減りするくらいには減っていた。

 

「・・・結構減ってやがんな。」

 

「あんたら商人の思う以上に孤児は多い、力が無くても2人3人で協力すればそれなりに仕事は出来るさ。」

 

「・・・。」

 

「冒険者ギルドに頼むのも良いが、それよりも安上がりで、更に従業員を雇う金も減らせる良い案がある、乗るか?」

 

商人のおっさんは少し悩んだ後明日話があると言ってそのまま店に帰って行った。

 

「計画通り。」

 

「・・・おい、次はどこに運べば良い?」

 

「こっちのはこの先にある倉庫に送ってくれ、ゆっくりで良いからな?」

 

「分かった。」

 

孤児達もリーダー格は数人居て、それなりに連携が上手い、やはり人手を増やして教育するなら孤児だな。

 

「次は鍛治師達との交渉だな、アロウズにも協力して貰うか?」

 

いや、アロウズが周囲からどう思われてるか分からんし、止めておくか。

 

地道にやってくか、どうせ領主とかいない街だろ、王都までそんなに距離ないらしいし、多分王都で貴族達と色々やってるだろ、知らんけど。

 

その後も鍛治師達と相談したり子供達と相談したりしている内に依頼が終わったので俺が依頼の報酬を受け取りに言って全額孤児院に寄付した。

 

が。

 

「あんた達何やってるの!?」

 

門限を過ぎていたらしくてめっちゃ睨まれた。

 

うん、なんかゴメン。

 

マジでゴメン。




スヤァ


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仕事

翌日、ギルドマスターが冒険者を集めて谷へ簡単な調査に行った。

 

俺はもし問題があった時の予備突撃部隊の一人だ。

 

そしてギルドマスターが居なくなったところで受付嬢から大量の書類を渡された。

 

「ギルドマスターからの八つ当たりだよ。」

 

「嘘だと言ってよ。」

 

「残念ながら本当だよ、さっさと仕事に取りかかりなさいな。」

 

くっそ、逃げられねぇ。

 

書類に目を通すとギルドマスターの承認が要るものは省かれており、その代わり、今後のこの街の冒険者ギルドがするべき事を出来うる限り詳細に書き記せだとか、ギルマスお前読んでたな。

 

仕方無いのでスラムの貧困層を雇って仕事、特に清掃と製造業を中心にしてもらおうと考えた。

 

なぜ製造業なのかと言うと、単純に覚えやすいからだ、少なくとも基礎は。

 

この世界、と言うかこういう世界の鍛冶技術は鋳造(液体にして固める)か鍛造(日本刀の様に叩いて強度などを増した状態で冷やしたりする)かのどちらか、鋭さを求めるなら鍛造、重さや普段使いなら鋳造と使い分ける所もあるようだが基本的にここは鍛造だ。

 

鍛造は一人の作業量がとてつもなく多いからかどうしても町ひとつ分の作業をするとなると人数がかなり居る。

 

ではそこに新人としてスラムの子供達等を含めるとどうだろうか、単純に材料などの運搬にかかる時間も少なくなり、子供特有の記憶力の良さで鍛冶に詳しくなるかもしれない、そうなると自然と弟子も出来るだろうし何なら金だって落ちるだろう。

 

そうなれば街は大きくなり、それだけスラム等も多くなりまた吸収しの繰り返し、確かにそれにともなって闇も深くなるだろうが、それでも一定の速度での発展は望める。

 

鍛冶だけじゃなくても、どの仕事でも小さいことからコツコツとやっていればそこまで大きな問題はないはずだしな。

 

ギルドの仕事も悪くない、さりげなくこちらの考えている事を権力上位者に伝えられる。

 

まぁ、まずはこの書類の山を終わらせるのが先だな。

 

うへぇ、下水に魔物が入り込んだからどうにかしてくれ。知るか、依頼で出せや。

 

林で犬を見つけた、保護してくれ、知らんて。

 

ーーーーー

「終わった。」

 

肩が凝ったのか腕を回すと少し気持ちいい。

 

「お疲れ様、はい、紅茶。」

 

「どうも。」

 

時間は夜、昼過ぎてた。

 

自覚するとお腹が鳴った。

 

受付嬢も笑っておやつを出してきた。

 

クッキーなどではなく小さなブルーベリーの様なものだが。

 

「飯食いに行ってきます。」

 

「あー、今はもうどの店も開いてないから家寄ってきな、一食位分けてあげるよ。」

 

「・・・すみません。」

 

受付嬢の家に行くと台所がかなり汚れていたが飯はまともなのが出てきた。

 

出てきたのは米でもパスタでもなく普通の固いパン、と肉。

 

野菜も多めなので大丈夫だと信じる。

 

食べると旨かった、流石にパンは固かったが野菜を切り刻んで煮たのだろうか、スープがとてもうまい、と言うか火はどうした、薪代凄いだろうに。

 

「ああ、これかい?これはね、昔の学者さんが作った魔動機だよ、魔力を貯められる装置を作って火を起こせるようにしたのさ、名前はコンロって言うんだよ。」

 

・・・この世界転移者とか転生者多くねぇ?

 

めっちゃ残ってんじゃん、何なら重要なところに絶対居るじゃん、何かしらの偉業残してんじゃん!

 

いやまぁ多分食事関係はほぼ確実に日本人だろうけどさ!舌肥えてるもんな!分かるよ!パサパサのパンと塩っからい水しか与えられなかったときはブチキレそうになったから分かるよ!

 

でも、何か違うだろ?お前らならわざわざ知識チートしなくても色々できただろ?

 

・・・俺も人の事は言えないか。

 

「美味しかったかい?」

 

気付けば皿の中は無くなっていた。

 

「美味しかったです。」

 

「このスープはね、私のひいお婆ちゃんが作った物らしいんだよ。」

 

めっちゃ近くに居たわ転移者か転生者か知らんけど。

 

「はぁ。」

 

「まだまだあるから、たんとお食べよ。」

 

マジで?良いの?コンソメスープと違う味だから飽きなさそうなんだけど良いの?

 

そのあとめちゃくちゃ食った。

 

帰ったらおっさんにめちゃくちゃ怒鳴られた。

 

ごめんなさい。




徹夜して友達の家でフォーオナーしてたら書きたくなった、フォーオナーって対人戦の動きとか物凄く参考になるんじゃあ~、でも崖とか水に落とすのは止めろ、お前らホントにNPCか?


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オーク襲来

翌日、俺は大剣を回収しに鍛冶屋に向かっていた。

 

「おう、来たか。」

 

「どうもアロウズ、剣はできてる?」

 

「ハッハッハ、バッチリだ、重くて硬くて簡単には壊れてねぇ。」

 

まぁ素材要求量はとんでもなかったみたいだが。

 

請求書として出されていたのは金貨10枚、少しずつ払えば良いローン仕様だったのが幸いした。

 

庭を借りて少し素振りをすると、空気を裂く音が前より格段に良くなった。

 

「・・・うん、いい剣だ。」

 

「どうだ?今度も使ってくれるか?」

 

「ああ、これなら充分使えるよ。」

 

俺がそう言った瞬間、遠くから銅鑼の音が響いてきた。

 

「敵襲!?そんな、どこの国も戦争なんか始めてねぇはずだ!」

 

「ああ、やっぱ敵襲か・・・。」

 

街の正面から敵は襲って来ているらしく正門がすぐに閉じられているのが見えた。

 

「アロウズ、ちょっと試し斬りに行ってくる。」

 

「お、おい!」

 

身体強化。

 

家の屋根に飛び移り城壁の上を見る。

 

「反応から見て相手は人間じゃねえな、魔物か?」

 

屋根を走りながら状況の把握を始める。

 

正門は破られていない、だが既に少数が入り込んでいるのか中で戦闘が起こっている。

 

建物の隙間から見えた敵の姿は・・・。

 

「オーク、何で、ギルマスがミスしたのか!?」

 

城壁の上に飛び移ると兵士達が弓を構えて正門前にいるオーク達に矢を浴びせている途中だった。

 

「状況は!?」

 

「突然森からオークの大群が押し寄せてきたんだ!オークを倒せるような奴らはギルドマスターが全員連れて行った!」

 

「留守を狙った!?何でそんな奴が相手にいる!?」

 

「知るかよ!ぐぁ!?」

 

投石で話していた兵士の頭が消し飛んだ。

 

「チッ。」

 

城壁の上から正門前を見ると正門前に大きな個体がいるのが見えた。

 

「ランクC冒険者!ゼルが加勢する!」

 

俺はそれだけ言うと城壁から飛び降りた。

 

上からの奇襲で破城槌の様に棍棒を振り上げていたオークを叩っ斬る。

 

数メートルほどの大きなオークの巨体が崩れ落ち、正門前に小さな空間が出来た。

 

「・・・。」

 

敵も味方も、突然現れた俺を見て固まっている。

 

遠くに兜の様なものをつけたオークを発見した。

 

「・・・オークの上位種は調べてねぇな、だが、やるしか無いか。」

 

大剣を構える。

 

オークが咆哮する、豚の様な鳴き声を一斉に挙げて俺を殺そうと迫る。

 

「行くぞぉ!」

 

俺も走り、先頭のオークの頭を刎ね飛ばす。

 

幾つもの槍や剣が俺に追いすがってくる。

 

「そぉい!」

 

オークの頭や肩、武器などを足場にして群れの中を進んでいく。

 

身体強化して地面にオークを叩きつける。

 

その風圧でかなりのオークが体勢を崩し、その隙に大剣を振る空間を確保する。

 

「クッ。」

 

全方位を薙ぎ払ってもオークの勢いが止まる様子は無い、単純に数が違い過ぎるのだ。

 

しかもかなり不思議なのがこのオーク達、いやに統制が取れている、いや、元々人型の魔物はある程度統率が取れているのだがそうでは無い、オークの一番前に盾を配置し、その上から槍で突き、盾に近づいたら剣が盾の隙間から出て来ると言った戦術を駆使して来るのだ。

 

これは明らかに知恵のある何かがいる、ギルドマスター達が死んでいた場合、この街は終わりかもしれん。

 

「チッ・・・魔術があれば・・・。」

 

何故適性がなかったのかと本気で思う。

 

その時、遠くから岩が飛んできた。

 

その他にも炎なども飛んで来ている。

 

「街からの援護か、助かるな・・・!」

 

街からの援護も既に膨大な数がいるオーク達相手にはそこまでの意味は無いはずだ、今の所、正門前にいるのは本当に俺だけ、その俺も少しずつ正門から離されてきているのが現状だ、援護が届く位置から離れれば、俺はあっという間に死ぬことになるだろう。

 

オークの上位種は門から2キロほど遠くにいる、今の俺ではどう頑張っても無理だ。

 

「うおおおおらああああああ!!!」

 

正門前を俺1人で支えている現状、俺がこの街の要だ。

 

予備もいないし、粘るしかない。

 

「かかって来い!豚共、全員挽肉にしてやるよぉ!」

 

早く帰ってきてくれよ・・・ギルマス。




防衛側一人(援護あり)、攻撃側無数。

こんなのやりたくないっすわ。

なお制限時間はランダムとする。


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懐かしい?2人

肉を切れば血が出る、骨を砕けば血が出る、首を切れば血の噴水が出来上がる、どのくらい切っただろう、オーク達の攻勢は未だに止まらない、気が遠くなるほど切り刻んだ筈なのに全くと言っていいほど減っている気がしない、

 

血の匂いで既に鼻はイカれている。

 

俺の大剣は脂に塗れてかなり切れ味も落ちている、ふき取れればいけるだろうが、そんな暇はない。

 

俺の足元には既に血河屍山の有り様だ。

 

俺の身体は既に血で真っ赤になっていることだろう、血が服に入り込んで気持ち悪い。

 

こういう時、あの腐れ骸骨ならどう言うだろうか。

 

まぁそれは良い、どうせまだまだなのである!とかいうに違いない。

 

「さぁ、殺戮だ。」

 

ーーーーーーーーー

「敵の情報はどうなってる!?街を襲ってる魔物の数は!?」

 

「約1万ほどです!」

 

「一万!?クソが!王都でも攻めてろよクソッタレ!」

 

「ギルドマスター!俺達に指示を!命令されればすぐにでも動けます!」

 

「・・・。」

 

少し小高い丘の上でギルドマスター以下Bランク冒険者達が固まっていた。

 

総数は約一万、それがフロックスの街に向かって進軍しているのが見えた為だ。

 

防衛部隊はその数の前に何かが出来る訳でもなく、あっさりと門の前に辿り着かれ、門も挙げられようとしている光景すら見て取れた。

 

だが、その時、門を破壊しようと棍棒を振り上げたオークが倒れたのだ。

 

そして倒れたオークの前にいるのは。

 

「クソガキ・・・?」

 

そして、1人対一万の戦争が始まった。

 

戦いが始まってから、あの子供はずっと動き続けている、軍の真ん中で仁王立ちしているオークロードという災害級の化け物も、油断無くあの子供を見つめている。

 

そして、数時間が経った今、あの子供は約二千ほどのオークを討ち取った。

 

それを見ていた誰もが言った、英雄だと。

 

「おい、お前ら。」

 

攻めるなら、あのクソガキを生き残らせるには。

 

「英雄を、助けるぞ。」

 

全員が静かに熱狂した、自分達が英雄の1人になれる喜びと窮地の英雄を助けるという、一種の物語の様な展開に、冒険者という人種はこれ以上無いほどに燃え上がった。

 

動かなかったギルドマスターに思う所もある、何故最初から参加しなかったと糾弾したい気持ちもある、だがそれ以上に、何の義理も無い筈の街の為にその命を賭けて最終防衛線を1人で維持している英雄の助けとなりたいと、そう思ったのだ。

 

この世界において、一番のバカで愚か者の代名詞、冒険者。

 

彼等は、どのランクも基本的に自分の生きたいように生きて、夢の為に死ぬ、なるほど、理屈ではなく感情で動く人種など、確かに馬鹿馬鹿しくて愚かだ。

 

しかし、感情で動く分、やる気になれば、びっくりするほどの強さとなるのも、また愚か者であることも忘れてはいけない。

 

「テメェら!一世一代の正念場だ!全員気張れぇ!」

 

『うおおおおおおおお!!!』

 

ギルドマスターは感謝する、ギルドマスターになってから、冒険すら満足に出来ず、しかし代わりの自分の欲求を満たす物も見つけられず、燻っていたところにコレだ、全てはあの子供の影響だろうか。

 

「あの厄病神で英雄のクソッタレを助けに行くぞ!全員、突撃!」

 

地面を鳴らして突撃していくのは一人一人が人間の区分を超えた化け物達、それでも一万の魔物を相手に持ちこたえられる者はそうは居ない、彼等にも嫉妬の情はある、それでも心躍る愚か者でもある。

 

ジャンヌダルクがジルドレェなどと共に国を救った時、彼等の強さは当時では考えられないほどの強さだった、確かにジャンヌダルクの当時からすれば非常識な戦術などのお陰でもあったのだろうが、少なくとも、死に体にあった国を救うくらいには彼女達は英雄だった。

 

彼等は英雄に恋い焦がれた少年の様な気持ちで戦いに参加した、少なくとも、今ここにいる愚か者は。

 

オークの集団は予想外な方向からの攻撃に混乱し、オークロードも驚いて指示を飛ばせない状況になった。

 

「ねぇ、助けてほしい?」

 

「何?」

 

ギルドマスターの横に居たのは丁度クソガキと同じくらいの小さな男女。

 

「まぁ、聞かれなくても助けるけどね。」

 

「アル、ゼルを助けてね。」

 

「その前にアト、頼むよ。」

 

「分かってる。」

 

アトと呼ばれた少女が、古い木を削った様な杖を掲げる。

 

「・・・闇夜を照らす古の光、全てを覆う夜の闇、何もかもを見通す賢者の知恵の一端を今ここに、『グラビトンブラスター』!」

 

闇色の光がオーク達に向かって飛んでいく、それは、一瞬でオークの群れの半分以上を地面に這いつくばらせた。

 

「やっぱり全力で放てると楽だね!」

 

「結構制御出来てないから多分後で師匠に怒られるよ。」

 

「・・・やめておけば良かったかな。」

 

「あはは、行ってくる。」

 

四つん這いになった少女を置いてアルと呼ばれた少年は走り出す。

 

「光を纏え、浪脚!」

 

足に光が集まり、その速度を一気に上げ、オーク達の中に突撃した。

 

「君達は、一体・・・。」

 

「やっぱり怒られるかな、いやでも師匠ゼル大好きだし、でも・・・。」

 

少女は欠片も聞いていなかった。

 

ーーーーーーーーー

「次。」

 

オークを腕を斬りとばす。

 

「死ね。」

 

大上段から大剣を叩きつけてオークを真っ二つにする。

 

次から次へと!周りを見る暇すら無いぞ!

 

「闇を浄化する聖なる光よ!我が剣に纏い薙ぎ払え!『聖龍斬!』」

 

周りのオークが光に飲み込まれて消えていった、光は俺も巻き込んだが、俺には被害は無く、むしろ傷が塞がって行った。

 

「・・・これは。」

 

「久し振り、助けに来たよ、ゼル。」

 

光を放った奴は俺を知っている様だった。

 

金髪に青い瞳、全体的に程よく筋肉がつき、剣もかなり上等な物の様だ。

 

「・・・どちら様で?」

 

相手はずっこけた。

 

「ゼルが俺を助けてくれたんだろうが!忘れてんじゃねえよ!」

 

「・・・・・・・・・あのクソガキか!」

 

「やっぱり名前覚えて無かった!というか忘れるくらい俺の存在感無かったのかよ!」

 

「はは!今までどこにいたんだ?俺はてっきり死んだのかと。」

 

「アトと一緒にカルト様の所にね、ただ、ホルス様がやって来て2人で煽り合いを始めた時は焦った。」

 

「うわぁ。」

 

「まぁ、いろいろあったんだけどそれは後で!今はこのオークの群れをどうにかするよ!」

 

「了解、ただ大剣を切れ味が落ちててな、脂拭くために30秒持ちこたえてくれないか?」

 

「了解、守るから早くしてよ!」

 

元クソガキが剣を構えてオーク達と対峙する。

 

威圧でもしているのか、それとも単純に敵が増えたから警戒しているのか、それは分からないがとにかく俺は脂を拭き取ることにした。

 

「布持っていて良かったわ、うわ、布が切れた、これ本当に大剣かよ。」

 

というか歪みもしてなければ刃が欠けてもない、というか斬れ味が下手な刀より良いんだけど、アロウズは化け物か?

 

大剣についた血と脂を全て拭き取ると、大剣の刃先に白い光が見えた。

 

「よし、これならいけるかな、元クソガキ、名前は?」

 

「アルだよ、あとアレは俺の黒歴史だから止めてくれ、マジで。」

 

「了解アル、合わせる、好きにやれ。」

 

「分かった、まずはオークロードまでの道を一気に突破する、その後オークロードを撃破、異論は?」

 

「無い、行くぞ!」

 

同じカルトの所で育ったからか、それともアトとの連携でもしていたのか、アルはなかなか良い動きをしていた。

 

俺も身体強化でブーストした身体能力で追走し、撃ち漏らしとカバーをしていた。

 

オークロードの前まで突っ込み、2人でオークロードに斬りかかる。

 

オークロードは無言で骨で出来た剣で俺とアルの剣を止めた。

 

「まさか、片手で止められるとはな!」

 

オークロードの剣を蹴って後退する、アルもオークロードに追撃しようとしたが殺気でも感じたのだろう、慌てて背後へ飛び退いた。

 

「ちょっと2人とも!調子乗らない!」

 

「「アト!」」

 

アトは灰色のローブを着て上空から降りてきていた。

 

アトの黒い髪は綺麗に伸びており、背中に届くほどの長さになっている様だった、というか、アルの時も思ったけどお前ら美男美女かよ。

 

「カルトから伝言!オークロードはロックベアの幼体と同じくらいの強さだから3人で倒して見せて、だって!」

 

「嘘だろ!?」

 

「俺とアトじゃ傷をつけるので精一杯だったやつじゃん!」

 

「俺は死にかけで腕一本取ったな。」

 

「「え、つよ。」」

 

3人ともオークロードに目を向けながら会話する。

 

「やっぱりこの中で一番ゼルがおかしいよね。」

 

「分かる。」

 

「おい、俺が狂人みたいな事言うのやめろ。」

 

「だって血塗れだし。」

 

「それは仕方ないだろうが、ったく、行くぞ。」

 

「「了解!」」




因みに、アルとアトの2人がロックベアの幼体と戦ったのは最近であり、その時点で傷をつけるのが精一杯。

主人公が腕一本取ったのは5歳の時である。

やっぱほぼ森で育った人は違うんすねぇ!


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黒化

大剣とオークロードの持つ骨の大剣がぶつかる。

 

「闇の弾丸よ!貫け!『ダークバレット』!」

 

「光の槍よ!敵を穿て!『ホーリーランス』!」

 

闇の弾丸と光の槍がオークロードに向かうが、オークロードは俺を一瞬で弾き飛ばし、二つの魔法を力任せに大剣で薙ぎ払った。

 

「・・・。」

 

先程から同じ様な光景しか続かない、俺の攻撃はオークロードの圧倒的な膂力に敵わず、2人の魔法は威力こそ大きいものの、オークロードに届かせることが出来ない。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

「魔力切れ?嘘でしょ・・・。」

 

やっぱり、一騎討ちしか無いよなぁ。

 

『・・・小童共が我に立ち向かってくるから何かと思えば・・・。』

 

「「「!!?」」」

 

オークロードが喋った?嘘だろ。

 

『見込みはあるが、今は雑魚だな、しかし、そこの剣使い、お前はなかなか強いぞ、我も久しぶりに血が騒ぐ。』

 

「そりゃどうも、こっちとしては今すぐにでもアンタに死んでもらいたいもんだがね。」

 

『良い、それが人間の答えだ、構えろ。』

 

空気が変わった。

 

今までは様子見だったことがよく分かる、こいつは・・・俺でも簡単に勝てるかどうか。

 

ロックベアの幼体と同レベルってのも頷ける、だからこそ3人だった訳か。

 

「キッツイねぇ、本当にさぁ!」

 

大剣を構えるとオークロードは車の様に突撃してきた、オークロードの身体は大きい、俺の体のどこかに当たるだけで致命傷だ。

 

「そら!」

 

オークロードの身体をかすめる様に大剣を横に流して勢いを減らす。

 

それでも俺の身体が浮き上がり、地面が割れた。

 

「グッ。」

 

『まだだ。』

 

オークロードは俺の斜め後ろから体勢を変え、背後に飛ぼうとしている俺の身体を斬ろうと大剣を横に倒してなぎ払おうとしていた。

 

ゆっくりと大剣が迫ってくる、俺も出来うる限り大剣を盾にしようと腕を動かすが少しばかり間に合いそうに無い。

 

次の瞬間、俺とオークロードの間に火花が飛んだ。

 

『ぬぅ!?』

 

「目が!?」

 

向けていたのが片目だけで助かった、が、今の内にアルとアトの所まで下がる。

 

「・・・今のは!?」

 

「おう坊主、危なかったな。」

 

俺たちの背後から現れたのはギルドマスターだった。

 

て言うか、持ってる武器何だそれ。

 

「鎖鎌・・・じゃ無いよなぁ、何だそれ?」

 

片手剣に分銅鎖をつけて、更にその先に探検のようなものがある、ぶっちゃけそれ武器として機能するの?と言いたくなるような武器だった。

 

「さっきは助かったぜガキ共、後は大人に任せな。」

 

「残念ながら。」

 

「それで満足できるほど。」

 

「大人しい子でも無いんですよ!」

 

2人も少しくらいは魔力が回復したのだろう。

 

「はぁ・・・クソガキに似て生意気だな・・・。」

 

「俺とギルドマスターが前衛、アルは中衛、アトは後衛、これでいいな?」

 

「「「了解!」」」

 

『敵の前で作戦会議とは、余裕だな。』

 

「そうでもない。」

 

身体強化、今の時点でのレベルMAX!

 

俺はオークロードの大剣を一太刀で弾き飛ばした。音が自動車が事故起こしたみたいな音したけど問題ない。

 

『何!?』

 

「油断しすぎだ、豚面将軍。」

 

オークロードの足に分銅鎖が巻き付き、ギルドマスターの斬撃が始まった。

 

足を基点にして股下や背後に回り込み、健や大腿など、機動力を中心に割いて行った。

 

「聖なる光の加護を、我らと共に、歩む力を!『ホーリーサークル』」

 

光の波が空間を揺らす、地面が少し波打っているように見えている、傷が少しずつ言えていくのが分かった、俺は細いが傷だらけだったからな。

 

「闇の極光、全てを包む母なる闇よ、その全てを暗闇に染め、光なき哀れな子らに祝福を、『カースエンチャント』!」

 

アトが俺の大剣に赤い魔力を纏わせた、何だこりゃ。

 

『ぬぅら!』

 

脚を切られながらもしっかりと俺を狙って放たれた拳をバク転して避ける。

 

足に組み付き、捻らせようかとも考えたが、そこまで効果もなさそうだったので諦める。

 

「おっさん!」

 

「ついにギルドマスターから呼び方変わったなクソガキィ!」

 

オークロードの周りに大量の鎖が彼方此方に巻き付き、足場を作った。

 

「一気に行くぞクソガキィ!」

 

「ぶっ飛べ豚面ァ!」

 

俺が足場を使って勢いを乗せた大剣で攻撃し、その隙にギルドマスターが片手剣や短剣でじわじわと削っていく、筈だった。

 

俺がかちあげた骨の大剣が降ってきたのだ、それも、オークロードの目の前に。

 

オークロードが笑った。

 

『天運は我にあり!』

 

骨の大剣を逆手に持つと、真正面から突撃していた俺に投げつけた。

 

俺は空中に浮いており、避ける暇も無かった。

 

大剣を盾にする暇もなく、俺の身体が切り裂かれる。

 

肩から横腹まで、かなり深く傷が走った。

 

「・・・マズイな。」

 

骨が逝ったとかの次元じゃない、息苦しい、血が出まくってる。

 

「・・・強いな。」

 

ギルドマスターも片腕を無くして吹っ飛んできた。

 

「ガハッ、チッ、やられた・・・。」

 

オークロードを見るとギルドマスターの・・・左腕か?を持って嗤っていた。

 

『どうした?早く来るがいい。』

 

アルもアトも既に精神がギリギリだった、確かに魔物と戦う経験は豊富なのだろうが、人の言葉を喋る魔物など、珍しいどころの話ではない。

 

俺だってあの腐れ骸骨が居なければ戸惑っていたかもしれないのだ、責められない。

 

「やるしかない・・・か。」

 

『奥の手か?それも良い。』

 

「奥の手なんて言えるようなもんでもないがな、出来るかもわからん。」

 

『良い、待ってやろう。』

 

「ありがとよ、あと、出来た時、もしかしたら一瞬で終わるかもしれん、許しは請わん。」

 

身体強化を最大で展開する。

 

「・・・すぅ・・・。」

 

身体の奥で何かが動く、血のようで血ではない、あの腐れ骸骨が最後に見せたアレを思い出せ。

 

・・・名前は確か

 

「『緋化(ルベド)』」

 

身体から何かが噴き出る感覚と共に全てが遅くなる。

 

世界がモノクロに変わる。

 

身体から噴き出ている黒い瘴気のようなオーラも・・・黒?

 

手を見ると俺の手の周りには黒いオーラが纏わり付いていた。

 

動かすのに影響は無い、腐れ骸骨が緋色だっただけか?

 

なら、コレは黒化(ニグレド)と名付けようか。

 

俺は大剣を構えて走り出す、ここまで来てやっとオークロードは反応した、腕を伸ばし、俺を握り潰そうとしていた。

 

俺は腕を斬り飛ばし、そのまま一回転して首を切り落とした。

 

そこでモノクロの世界から戻ってきた。

 

世界に色がつき始めたのだ。

 

オークロードを斬った俺の動きが3人とも見えなかったのか、全員が呆然としていた。

 

「・・・勝ったぞ。」

 

「すげぇ。」

 

「・・・。」

 

「流石だね・・・。」

 

全員が無事なのを見て安心したのか俺は倒れ込む。

 

顔に暖かい液体が触れるのが分かった。

 

あー、そう言えば俺大怪我負ってたなー・・・。

 

俺の意識は暗転した。




この主人公ボスと戦う度に気絶してるのどうにかしなきゃなー、と言っても戦力的には序盤で強いNPCポジなのが辛いところ。


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起きた

目の前が明るくなってきた。

 

「・・・。」

 

頭がぼうっとする、ここは何処だ?

 

「・・・すぅ・・・すぅ・・・。」

 

俺の寝ていたベッドの横でアトが寝ていた。

 

「アト・・・なら、アルもいるのか。」

 

俺がそう言った時、部屋の扉がガチャリと開いた。

 

「起きた?」

 

アルだった。

 

「あー、まぁな?どのくらい経った?」

 

「一週間ってとこかな、俺達も冒険者として活動を始めたよ、一応ギルドマスターからランクCの冒険者カードを渡された。」

 

「そうか。」

 

「俺達はチームを組む事になったけど、良いよね?」

 

「問題ねぇよ、オークロードはどうなった?」

 

俺がそう言うとアルは何かを少し悩んだがゆっくりと言葉を吐いた。

 

「・・・ゼルがオークロードの首を刎ねて気絶した後、オークロードはまだ生きていたんだ。」

 

「・・・は?」

 

「俺もビックリしたよ、急に首だけになったオークロードから言葉が出て来たんだから、そして言われた、魔王が復活したぞと、数十年かけてお前達を殺しに来るぞ、地獄で待っている、その三つだけ宣言して死んだ。」

 

「・・・なるほど。」

 

「・・・魔王が復活したって・・・本当かな。」

 

どうだろうな、冥土の土産にしちゃ相手は強過ぎた、ギルドマスターもあっという間に戦闘不能になっていたし、知能も高かった。

 

「・・・多分本当だと思う、ただ、数十年掛けてってのが少しわからない、魔人族は確かに魔物との混血だとか言われてはいるが、魔物を従えるような魔法はまだ発見されていないはずだ、オークロードを一から育てるにもかなりの時間が掛かるはずだし、交渉したとしてもみすみす死ぬ意味が無い。」

 

「・・・ゼルは・・・魔人族が憎くないの?」

 

俺は考察を止めてアルをじっと見る。

 

アルの目は魔人族と言う言葉が出る度に昏くなっている様だった。

 

「思うところはある、が、相手は戦争を仕掛けてきている、俺は冷静に、確実に相手を倒す事以外に、誰かを助けられる手段を知らない。」

 

「だからって!」

 

俺は口に人差し指を立てて静かにする様に伝えるとアルは素直に静かになった。

 

「・・・アル、復讐は何も生まない何て言葉は言わねえよ、自分の思うままに行動して良い、ただし、復讐が生きる目的になる様な事があれば、俺はお前を殺してでも助ける。」

 

「俺が、ゼルに殺される・・・?」

 

「そうは言ってない、が、場合によっては・・・。」

 

「・・・わかった、その時は、俺を殺してくれ、ゼル。」

 

「俺に友を切らせるなよ。」

 

アルはフラフラと部屋を出て行った。

 

「オイ、起きてんだろお転婆魔法少女。」

 

「待って、その言葉は聞き捨てならないよ。」

 

溜息が出る、俺が静かにしろとアルに言う前、アルがオークロードについての話をした辺りでアトが目覚めたのは分かった。

 

「・・・それで?アト、お前は魔人族は憎いのか?」

 

「・・・分からない、私はアークラって魔人族は憎いと思う、でも魔人族自体を憎んでるかって言われると・・・分からない。」

 

狸寝入りしている途中も、考える事は止めてなかった様だ。

 

思わず頭を撫でてしまった。

 

「んっ・・・。」

 

「出来れば一緒くたにせずに個人で判断してくれると助かる、アルを止められるのは多分俺とお前だけだからな。」

 

「フフッ、ゼルったら、お父さんみたい。」

 

「えっ・・・。」

 

それは老けてるって言いたいのか?

 

「お父さんも同じ様な事言ってたんだ、出来るだけそいつ自身を見てあげなさいって。」

 

「・・・いの一番に死んだから、かなり罪悪感感じてたところもあったんだがな。」

 

「気にしなくて良いよ、私も、もうあんまり、覚えてない。」

 

・・・あー、ダメだ、湿っぽい話は嫌だ。

 

「・・・あと思ってたんだけど、アルとアトってもしかして付き合ってたりするのか?」

 

俺の言葉にアトは目を見開いていた。

 

「・・・・・・えっ。」

 

「・・・少しだけだけど、お前の体からアルの匂いがする。」

 

「えっえっ。」

 

「・・・俺の勘違いか?でもそれにしては結構はっきりしてるだが。」

 

「待って!」

 

起きた時から思ってたけどこいつらヤッてんな?

 

「ゼルにはほとんど会ってないからバレてないと思ってたのに・・・!」

 

「あ、やっぱり付き合ってんだ。」

 

「アルから告白されて、そのままズルズルと・・・。」

 

「まぁ良いや、興味無いし。」

 

「私が恥ずかしいだけじゃん!ずるい!」

 

「そんな事言われてもな、と言うか、よくもまぁそんな子供同士でやるわ・・・男女の体の事習わなかったのか?」

 

「習ったけど!習ったけど!私達は・・・その・・・あの・・・勢いでやっちゃったから、ね?」

 

「そうか、幸せになる様に祈ってるよ。」

「・・・時々思うんだけど、ゼルって女の子に興味あるの?」

 

「知らね。」

 

いろんな意味でな。

 

「もしかしてホm「そんなわけねぇだろぶっ飛ばすぞ。」・・・ゴメン。」

 

何て恐ろしいことを・・・。

 

「まぁなんだ、今は夜だし、さっさと寝ろ、と言うか、お前は最悪アルをその女の体全部使って変なことしない様に繋いどけ、最終的にお前とアルがドロドロに溶ければ俺が裏から色々と手を回せる。」

 

「さっきから蒸し返さないでくれるかな・・・!」

 

アトはそう言って俺にグーで顔面パンチを繰り出した後顔を赤くして出て行った。

 

「・・・よし、みんな居なくなったな。」

 

ベッドから降りると体の全身がバキバキになってすごく痛かった。

 

「やっぱり筋力落ちてやがる、筋力強化トレーニング、やるか・・・。」

 

大剣を背負ってトレーニングを始めた。




今まで出たのってどのくらいあったっけな。

ーーーーー
グロックスの街
主人公達が現在いる街、王都への街道が通っており、比較的重要な拠点の一つ。

オークロード
今回のボス枠、本来ならばグロックスの街にいる冒険者全員で挑んでも勝てない、がスカルパラディンの緋化を真似した主人公によって首だけになった、がそれでも数分間は生きており、魔王復活と魔王は知略で来ることと、先に地獄で待ってるぜクソ野郎!と捨て台詞を残した。

緋化、又は黒化
身体強化を極めた先にある秘術、の様なもの。本来は血のような緋色なのだが、主人公のものは黒である。何故かは多分ずっと先で判明する、そこまで作者のやる気とかが持てば。

スカルパラディン
これ書くのもう少し前の方が良かったかなと思わなくも無い人、過去の大雑把な回想で大体察せる人、主人公曰く腐れ骸骨、数年間ずっと扱かれてたから仕方ない、がそのおかげでオークロードとの戦いに多少なりとも対抗出来た。因みにオークロードと戦うことになれば一太刀でオークロードは死ぬ。因みに今は王都で百人組手をしている。

アル
主人公を子分にすると言っていたクソガキ、実はあの時点ではアークラ襲撃時にアトを守って死ぬ役割だった。ただ、勢いとノリと話の流れで彼の運命は変わった、今では金髪に青い瞳の光の御子に、どうしてこうなった。魔人族絶対殺すマンになるかは未定、シリアスルート書きたくなったら遠慮無く主人公が殺すと思います。

アト
本来ならばヒロインだった筈の人、ノリで今回アルとカップルに、ぶっちゃけこの先もいっぱい女の子出てくるから適当にくっつけたとも言う、本来ならアトが光属性を使うはずだった。ぶっちゃけ詠唱考えるの面倒くさいから一気に無詠唱とか覚えさせようかと思っている人、尚覚えさせるかは未定。

アークラ
アル、アト、ゼルの3人がいた村を襲撃し、舐めてゼルに片腕取られた人、3人の復讐対象にして抹殺対象にしてある意味目標。彼からすればゼルはともかくアルとアトは知らないので会ってもガン無視、ゼルを見た瞬間バーサーカーになるはず、多分、恐らく。

もう1人の魔族
説明出来ない、と言うかまだ出るか決まってない、アルとアトに気付いたけど見逃した人、どうせ出る頃にはこんな序盤の文章なんかみんな忘れてるやろ!多分!

ギルドマスター
オークロード戦では実は機動力削ぎまくったおかげで3人の戦闘をかなり楽にしていた立役者、ただしその代償に片腕をもぎ取られた、役に立っている筈なのに描写すらされない悲しみの戦士、描写されたかったら名前をつけられろ、流石にもう無理そうだけど、名称的な意味で。

カルト
実は今回の戦いでハラハラしながら見ていた。
が、何とか耐えて子供達の健闘をほっとしながら祝福した。

ゼルの生みの母親
手紙が届かなくなったので少し寂しい、婆ちゃんと2人で暮らしていたが最近スカルパラディンが家に住み着いたからか精神状態が少しずつ回復してきた。さすパラ。

ゼルの婆ちゃん、マーリン
決して過労死メンバーではない、妖艶な魔女のレジェンドカードでもない、実は凄腕の薬師、アルとアトの避妊薬を作っているのもこの人、尚2人はゼルの関係者だと知らない模様。

ーーーーー
抜けがあったら気が向いたときに出てくるこの設定集で追加されるかも。

次はどこに行こうか。

と言うか気がついたら本編レベルで文字数多いんだけど、やっぱ設定考えてる時が一番楽しいんですねぇ!


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ギルドマスターの依頼

3日ほど経過した、俺の筋力低下もアトの回復魔法で即回復させていたのであと1日ほどあれば元の筋力に戻りそうだ。

 

「待って・・・もう少し回復させて・・・。」

 

「あと五分でもう一回出来るか?」

 

「出来ないよ!筋肉バカ!」

 

「ひっでえなおい。」

 

大剣が同時に二つ放たれたように見えた、そして刀身がぶれて空気を切った。

 

「・・・これ増やせるかな。」

 

「もうやめなさい!」

 

アトに頭を殴られた。

 

オークロードやオーガといった人型との戦いは確かに俺の力になっているようだった。

 

「・・・仕方ねえな。」

 

「仕方ないじゃないと思うんだけど?」

 

宿からアルが出てきた、苦笑いでそう言っているのでさっきまでの訓練を見られていたのだろう。

 

「昼前から大事な回復役を疲労困憊にしないでくれよ?」

 

「もう既になってるよ!」

 

時刻は昼前、朝から付き合って貰っているので流石に止めにしておこう。

 

「ゼルはギルドマスターから呼ばれてるから、ギルドに行ってきてね。」

 

「マジかよ。」

 

「ギルドマスター曰く、パーティリーダーのお前が決めろ、だってさ。」

 

つまりお前らは何の用件が知ってると?

 

「・・・行ってくる。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

ギルドに着くと片手で葉巻を吸っているギルドマスターが座っていた。

 

俺がギルドに入るのを見ると奥を顎でさす。

 

俺は奥にある部屋に入るとギルドマスターもすぐに部屋に入ってきた。

 

「片腕、結局治らなかったのか。」

 

「アレだけ派手に潰されて、治る筈もねぇ、ま、俺としちゃ満足だがね。」

 

「まぁ、その話は追々、俺への用件は何だ?」

 

「あー、まぁ、お前からすれば色々と変な事かもしれないんだが、今学園から教員になるか?っていう打診があってな。」

 

「・・・おい、それってつまり・・・。」

 

「俺は見ての通りこの身体だからな、お前が良ければ臨時教師役としてお前らのパーティに行って貰いたい。」

 

「うわメンドクセェ。」

 

「テメェ・・・。」

 

「まぁ、俺にも責任があるし、受けよう、だから、資料を、くれ。」

 

「お、おう、切実そうだな。」

 

当たり前だ畜生め、オークロード戦では情報が無かったからまともな戦闘すら出来なかった、と言うか前兆が欠片も分からなかったから予測を見誤った、俺の責任だとは言えないだろうが、それでも何がしかの情報が拾える筈だったんだ。

 

「情報が無いことでえらい目に遭ったのはこれで3度目だ。」

 

「なんでそんなに多く・・・。」

 

黄昏の森でロックベアと死闘を繰り広げ、村ではいきなりの奇襲でアークラに滅ぼされるわ、街に行ったらオークロードの軍勢に襲われるだと?何?何で俺こんな人生ハードモードなの?

 

「取り敢えず、位置はどこよ?」

 

「迷宮都市ポリスのほぼ真横だ、ぶっちゃけ暇なら迷宮に潜っときゃいい。」

 

「OKOK、アルとアトは知ってるのか?」

 

「笑顔でリーダーに任せる、だとよ。」

 

「・・・。」

 

あいつら絶対面倒くさいから思考放棄したな?

 

「受ける・・・クッソ。」

 

「・・・ドンマイ。」

 

「いつ向かえばいい?」

 

「来年までに行けば問題無いぞ。」

 

「期間長過ぎるだろ何が起きた。」

 

後何ヶ月だ?年跨いでそうたってねえぞ今の時期。

 

「いや、臨時って付いてるだけあってな、非常時以外はただの冒険者とそう変わらん、だからまぁ。来年までに、な?」

 

・・・ギルドマスターも大変なんだな。

 

「まぁ、色んなところ旅してたらいいだろ、ゆっくり行くさ。」

 

・・・なら、少し思うところはあるが、母さんのところに行くか。



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疫病神

俺の母さんの居る村は黄昏の森外縁部に近い場所、黄昏の森自体一つの国を丸ごと覆えるくらいの大きさなので外縁部と言っても精々が10キロ程度、更に黄昏の森は山に囲まれた中心にあるので外縁部といえば三つほどの谷になっている部分だけなので防衛自体はかなり簡単だ。

 

・・・まぁその山も上に行けば行くほど化け物が増えていくから何とも言えないが。

 

黄昏の森自体が魔物の楽園みたいな状態なので人間の軍隊が森に入っても逆に物量で喰い殺される。

 

「まぁだからこそたまに転生者とかも居るみたいなんだが・・・。」

 

カルト曰くここ数百年で転生者は数人魔物として来ているらしい、全員化け物レベルの強さらしいので会った時は気を付けなさいと言われた。

 

ただ今では全員獣人だったり人間に化けて旅をしているらしいので会うことは無いだろうとも。

 

と言うかカルトがその度にニヤニヤ笑ってたところを見るにカルトに挑んだ奴絶対何人かいる。

 

「まずは準備だな。」

 

「食べ物は?」

 

「現地調達。」

 

「飲み物は?」

 

「袋が予備も含めて五つくらいで良いだろ。」

 

「道中は街も村も無いからゆっくり行けるけどどうする?」

 

「定期的に村に立ち寄って適当に魔物の素材売ろうぜ、それで行ける、最悪森に入って獲物取ればいける。」

 

「・・・それが出来るのはゼルだけだよ。」

 

「俺らは2人だとあっという間に囲まれて死に掛けたからな。」

 

まぁ、そうだろうな。

 

アルはそもそも森に入ったこと無いだろうし、アトは隠れるのが苦手だろうという印象はある。

 

「俺らだけだし、適当に歩いてたら着くだろう。」

 

門を出て街道を歩き始める。

 

村まで一週間程度、遠いが、まぁ行けるだろう。

 

ーーーーーーー

道中、ちょっと厄介なことが判明した。

 

俺は魔法がかなり効きやすいらしい。

 

そう、またもやゴブリンシャーマンの幻術に引っかかったのだ。

 

原因は分からない、俺の魔法は身体強化なので強化すれば問題は無いのだが、この世界において魔法はかなり強い立ち位置だ、魔法が使えない種族などほとんど居ないし向き不向きはあっても全く使えないなどは無い。

 

俺の場合は身体強化に着いてならば世界でたった1人と言えるレベルで適性は高いが他が絶望的なまでに向いていない、アトもアルも闇や光の魔法が得意というだけで他の魔法が使えないというわけでは無いのだ。

 

だから近接専門の俺はリーチ的な意味でとても不利な立ち位置である。

 

雑兵ならば問題は無いだろう。

 

攻撃魔法は使う魔力が多く、生活に使う様な火種を生み出す魔法なんかは使えても人を丸焦げにする様なものは使えないのだから、だが俺の場合は効果が増幅される。

 

それは防御魔法や付与魔法なんかの魔法も増幅されるみたいだから良かったが・・・まぁ、要するに、死にやすいという事だ、ゲームで言えば魔法防御力0のダメージ2倍みたいな強制縛りプレイ、悲しいにもほどがある。

 

まぁ、ゴブリン自体は吼えて見つけて叩き斬った。

 

アル達は幻術掛けられたのを察して警戒しようとしたら急に俺が吼えて走って行ったからまたオークロードみたいな化け物が現れたのかと思ったらしい。

 

幻術があったところで地形なんかはそう簡単に変わらないんだから音で探せるんだよなぁ。

 

とまぁ、こんな出来事があった一週間であった。

 

というわけで村がやっと視界に入ったんだが、様子がおかしい。

 

今は朝なんだが、騒がしい?

 

火の手が上がっているわけでもなく、村人達はみんな普通に畑を耕していたりするのだが森が、というか動物達が騒がしいのだ。

 

ザワザワと見知らぬ何かが来たみたいな・・・すこし嫌な予感がするな。

 

すぐに原因が分かった、壁の影に20人ほどの人間が伏せていたのだ。

 

「・・・アレ、山賊?」

 

「・・・多分。」

 

「・・・俺ってもしかして疫病神だったりするのか?行ってくる。」

 

「え、でもまだここ崖の上・・・。」

 

崖から飛び降りる。

 

「「ええぇぇぇぇぇぇ!!?」」

 

身体強化発動。

 

地面に着地する時にクルリと一回転し、走る。

 

この辺りには詳しく無いが、木の上を走れば問題は無いだろう。

 

動物に体を当てそうになりながらも何とか木の上を渡って行った。

 

ーーーーーーー

「行っちゃった・・・。」

 

「・・・やっぱり、一番人間辞めてるのってゼルだと思う。」

 

「・・・私も。」

 

「取り敢えず急ごう、多分村の中はゼルがなんとかしてくれるでしょ。」

 

「うん。・・・重いけど。」

 

「水の量をもう少し減らせば良かったかな。」

 

私達はゼルが持って行った重装備以外を背負って小走りで山を下り始めた。

 

ーーーーーーー

「奪え!こんな辺鄙な村なんて領主でも見向きしないだろうからな!」

 

私が外に出ると、そう言っている山賊が目に着いた、男達は全員彼方此方で戦っていて、私達女は長老の家の中で山賊達が撤退するのを待つという決まりなので私も外に出て長老の家まで走る所だった。

 

お母さんも今はスカルパラディンさんと一緒に王都まで薬を届けに行っているから1ヶ月も待てば山賊達は居なくなる、その間を耐え凌ぐくらいの食料は長老の家の地下に溜め込んであるし、仕事が出来ないのは困るがその間に私達女が何とか売れるものを作る事で耐え凌ぐのだ。

 

少なくとも餓えは防げる。

 

「居たぞ!女だ!」

 

背後から男達が迫って来る。

 

「はっ・・・はっ・・・きゃっ!?」

 

最近までベッドの上だったからか足が余り動かせない、すぐにこけてしまった。

 

「ははっ、女だ、しかも上玉じゃねえか。」

 

服が剥ぎ取られ、裸にされる、ああ、私は犯されるのね。

 

夫が死んで、子供も生贄にされた、子供は闇の聖霊様が拾ってくれたらしいけれど、今はどこかの街にいるらしい、でも、死ぬにはいい日ね。

 

そんな事を考えてしまった自分が嫌になる。

 

「ごめんなさい、貴方・・・。」

 

「あ?」

 

私を捕まえた男は嗤ったのだろう。

 

だが睨みつけようとした瞬間頭が無いのが分かった。

 

「・・・少し間に合わなかったか。」

 

その声は、夫に少し似ていた。

 

「さて、立てるか?」

 

「・・・ぜる?」

 

「・・・あ?」

 

ーーーーーーー

「・・・ぜる?」

 

「・・・あ?」

 

この女なんで俺の名前知って・・・あっ、母さんじゃないか?

 

金髪の・・・顔の半分くらい火傷してる・・・うん、多分母さん。

 

上半身全裸なんだけど、取り敢えず外套被せるか。

 

「これ着て、話は後。」

 

まだあちこちで戦闘が続いている、すでに何人か死んでるみたいだからすぐに終わると信じたい。

 

大剣を片手で持って走る、農具を槍のように使っている人やナイフで応戦している人などがちらほらといる、お前ら本当に農民かよ。

 

通りすがりに脚を切り落としたり背中から蹴って農具に突き刺したり、自警団のような人達がそれなりの使い手だったからかなり楽だった。

 

そんなこんなですぐに広場にいた山賊達は全滅した。

 

「・・・ありがとう。」

 

「山賊に襲われるとは、不運だったな。」

 

「ああ、助けてくれて本当にありがとう。」

 

「ああ。」

 

母さんが玄関前で待っていた。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

・・・気まずいにも程がある、ジッと見つめないでくれ。

 

「・・・ゼル、よね?」

 

「・・・あー、まぁ、うん。」

 

「来てくれたのね。」

 

「来たって言うよりかは、本来の俺の家に戻ってきたって言った方が正しいのかもな。」

 

「・・・ふふっ、ええ、お帰りなさい、ゼル。」

 

「・・・・・・・・・ただいま。」

 

俺は少し遅めの再会をここにしたのだった。

 

「ゼールー!」

 

「アト!ちょっ!?早いって!」

 

「お友達?」

 

「あー、パーティー仲間、かなぁ。」

 

「そうなの?じゃあ今日のご飯は豪勢にしなきゃ!」

 

「いや、しなくて良いから。」

 

なんか、こういうタイプはやりにくいな。




戦闘描写すら無く処理される山賊、これがモブの定めよ。


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母さん

「ゼルー、暇ー。」

 

「俺は暇じゃねぇ、アルと一緒に居とけよ。」

 

「襲っちゃいそうだもん。」

 

「お前は盛った猿か?あ?」

 

山賊の襲撃から暫く経ち、山賊の死体や戦闘による負傷者の治療で時間がとられた。

 

俺は簡単な治療法、応急処置等を受け持ち、重傷者はアルが回復魔法を使って傷をふさいでいっていた。

 

「お母さんが帰ってきたらビックリするでしょうね。」

 

「母さん、俺達はすぐに村を出ていく予定だよ。」

 

「分かってるわ、でもそれなら尚更よ。」

 

母さんは気を病んでると婆さんに言われていたので危険かもしれないと思っていたのだがまだましっぽい。

 

ただ、今までずっと俺が居なかった反動か、めちゃくちゃベタベタしてくる。

 

他の人の前でも愛してるわとか好きよとか、色々と言っているので少し、いや、かなり恥ずかしい。

 

村の皆も俺が息子というのと、生け贄にしようとしたという事実から何も言えないようだ、子供はキャッキャと話題にしているが。

 

まぁ恨んだりもしてないし、問題ないだろう。

 

「ゼル!見てくれ!」

 

「ん?おお!?なんだそれ!?」

 

「多分この辺りの主だと思う、でかいよねぇ。」

 

アルがズシンと音を立てて下ろしたのは三メートルほどある熊だった。

 

「おお、でかいな。」

 

「という訳で、宴だ。」

 

「しかたねぇなぁ、夜に村人全員に配るか。」

 

という事で、熊鍋をすることになった。

 

作るのも俺、配るのは母さん達、普通に美味しかったから良かった。

 

そして夜、皆がそろそろ寝始めて静かになった頃、母さんがふらっと外に出ていくのを感じた。

 

「・・・。」

 

「んー?ゼル?」

 

アルが寝ぼけながら俺の名前を呼ぶ。

 

「ちょっとトイレに行ってくるわ。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

俺も大剣は持てなさそうなので短剣だけもって母さんのあとを着いていった。

 

「・・・墓?」

 

母さんが何で墓に?

 

俺が音を立てずに木の上から母さんを見ていると母さんは一つの墓の前で祈るように手を合わせていた。

 

「神よ、私を最期に息子に会わせてくれたこと、感謝しています。」

 

・・・最期?

 

嫌な予感がする、飛び出す準備だけはしておくか。

 

「夫も居なくなり、母しか居なくなったと思い込んでいた私に、死んだはずの息子を送り届け、共に暮らすという幸せを私に恵んでくれましたことを感謝いたします。」

 

「・・・。」

 

「私の体はもうボロボロです、もう数日も生きてはいけないでしょう、ですが、それでも最期に、あの子に贈り物をしたいのです。」

 

なんの話だ?母さんの体は至って正常のはず、何が起こってる?

 

母さんは墓の近くで祈っていた。

 

それと最期?薬も何も無いはず、母さんは、何を持って最期と言った?

 

明日にはここを出る、その時に分かるのか?

 

一人で悶々としながら家に帰った。

 

ーーーーーー

翌日、朝に起きたが昨日の出来事が頭から離れなかった、どうしても俺には原因が分からなかった。

 

・・・母さんは相変わらず俺にベッタリだ。

 

そろそろ村を出る、母さんが贈り物をするならこのタイミングしか無いはず。

 

「ゼル、ちょっと来てくれる?」

 

「何だ?」

 

母さんが俺を呼んだ、どうしても口調は変えられなかったが母さんは嬉しそうだった。

 

「これをゼルにあげるわ。」

 

「・・・ネックレス?何でこんなものが。」

 

「私とあの人の大事なものよ、今の私が持っているより貴方が持っていた方が良いわ。」

 

そんな大事なもん俺に渡しても良いのか?

 

「・・・分かった。」

 

ネックレスを受け取り、首にかける、母さんは本当に嬉しそうに笑っていた。

 

「俺は行く、母さんも元気で。」

 

「ええ。」

 

ーーーーーー

一週間後、留まっていた街で婆さんから手紙が届いた、貴方の会った母さんは亡霊だった、村も三年ほど前に滅んでいたらしい、母さんは婆さんに似て魔法がとても上手かったらしく、自分の死体を代償に呪いを掛けたらしい、自分の息子に会った数日後にあの世に送られる、祈祷魔法と呼ばれている類いの物らしい。

 

村も元々母さんが再現したものらしく、村人達の魂に語りかけて一時の生を与えていたらしい。

 

母さんの属性は闇、幻術が特に得意だったそうだ。

 

俺の手の中には母さんからもらったネックレスが今もある。

 

思うところはある、もう少しあの村で過ごしておけば良かったと思うことも、ただ、哀れむことだけは、してはいけないだろう、あと少しで次の街だ、せいぜい面白おかしく生きて親孝行するとしよう。




ゼルの母さん
自分が死ぬ事を理解し、ゼルに会えば死ぬという呪いを掛けた、彼女視点でそれに一言も触れていないのは自分が死んだという記憶を思い出すのがゼルと会うことだったから、思い出してからはいつ死ぬかも分からない恐怖を表に出さずにゼル達を送り出した。

因みに、山賊達はゼルが村を発見したという警報のようなもの、この辺りは婆さんが協力した。

と言うかぶっちゃけこの路線で行くか数日悩んだ、でも出番もなくなりそうだからこのままにした。


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迷宮都市ポリス

「着いた。」

 

「此処まで何日経った?」

 

「私達の歩きで二週間弱?」

 

「俺らが野生児で助かったと本気で思ったがな。」

 

街は道中いくつもあり、俺達もそこを通ったのだが観光、宿など、金を使っていたら食料を買うことが出来なかったのだ。

 

仕方ないので道中で小動物などを狩って食料としていた。

 

まさかこんな事になるとは・・・おっさんに念の為とか言って金貨渡さなきゃ良かった。

 

何はともあれ学園に最寄りの街、ポリスへ到着した。

 

「やっとまともに金が稼げるな、さっさと稼いで宿入るぞ。」

 

「「おー!」」

 

門番に冒険者である事を証明し、通行許可を貰う。

 

門の前に並んでいる列にいる時も俺の背中にある大剣やアルやアトの美貌に興味を持った輩が近付こうとしていたが俺が気付いた段階で殺気を放つとすぐに退散して行った。

 

アルは分かってなさそうだったがアトはやはり視線を感じていたのか露骨にホッとしていた。

 

「ん〜、どうしようか。」

 

「何が?」

 

「いや、迷宮都市ポリスって言うからには迷宮があるだろうって思ってさ。」

 

「そう言えば迷宮ってどんなところだろう。」

 

「古の勇者が生み出した概念で別名ダンジョン、異空間に繋がる穴や場所を起点として魔物や鉱石などがいたるところに点在する巨大な空間を探検出来る、だったか、地図とかも売られてると嬉しいが、まぁ、問題無いだろう。」

 

「学園へはどうするの?」

 

「俺が明日ポリスに居るって連絡だけ言ってくる、何かあれば非常勤講師として協力しますってな。」

 

事前連絡は大事なものよ、マジで。

 

別にアポ無しでも俺は良いが出来ればあった方がありがたい。

 

ギルドに行くと迷宮を攻略している冒険者達か大量にいた、雰囲気はいつぞやのオラリオだ。

 

俺達が扉を開けた瞬間に全員の目が此方に向いた。

 

アルとアトはビクビクしていたが俺は慣れたものだ、当たり前のように受付まで歩いていった。

 

「ハイハイー!なんですか?」

 

・・・若いな、それに珍しい。新人か?

 

「宿を探しに来た、向こうの・・・フロックスって街のギルドから来た。」

 

「王都近くの坊っちゃん達が何しに来たんだ!?」

 

「迷宮はそんなに甘くねぇぞ!」

 

やっかみにも子供だからとかなり優しい言い方の者がかなり居る。

 

誰でも子供が死ぬのは見たくはないだろう、俺達はほとんど成人前の子供だからな。

 

「だからゆっくり攻略するよ。」

 

「なら良いんだよ!」

 

「俺らの目の前で死ぬんじゃねぇぞ坊主!」

 

コイツらツンデレか何かか?

 

「えっとー?ランクは・・・C?」

 

「うむ。」

 

「偽造?いやでも・・・うーん。」

 

無言でアルとアトも冒険者カードを出した。

 

「両方ランクC・・・。」

 

受付嬢は悩んでいたがまあいいや!という声と共に元の顔に戻った。

 

「宿はーこことーこことーここにあります、空いてるか分からないからそこは勘弁してね。」

 

「了解した、ありがとう。」

 

「はーい。」

 

という事で宿を取る事にした。

 

宿といっても何だかんだ暇だったおっさんと違って飯も作らないし、荷物を置いて寝るだけの場所だった、飯がない代わりに宿暮らしという事で割り引きがされたり、宿に泊まる商人等とコネを持てるという利点もある。

 

何はともあれ俺達にはかなり都合が良い、金がなかったのでかなり安いこの宿は都合がとても良かった。

 

「俺は寝る、お休み。」

 

「お休みー。」

 

俺はベッドに横になる、流石に敵襲を警戒してかなり経つ、体も疲れているが何より精神的な意味で疲れた。

 

程なくして俺の意識は微睡みの中へと消えていった。



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学園

翌日、寝ぼけている2人を尻目に大剣を背負う。

 

外套を着込んで夜の内に学園に向かう事にした。

 

「・・・森とは、やっぱり違うな。」

 

流石にもうすぐ朝とはいえまだまだ暗い、それでもカルトの加護がある俺は昼のように暗闇の細部が見える。

 

門の前に着くと門番が訝しそうに見てきた。

 

「通れないか?」

 

「なんでこんな夜中に来た。」

 

「学園に用があるんだ。」

 

「何の用だ。」

 

「フロックスのギルドマスターから学園への非常勤講師としての移動を命じられた、事前に報告しておいた方が何かと楽だろう。」

 

「・・・まぁ、理解できないことも無いが、こんな早くから行くこともないと思うが?」

 

「夜に出歩くのは慣れてる、問題無いさ。」

 

「・・・そうか。」

 

門横の扉を開けてくれた。

 

「良い旅を。」

 

「ありがとう。」

 

門から出て草原を歩いた。

 

「くぁ・・・よし、ちょっと走るか。」

 

身体強化を発動して走る、草原を走っていると魔物にも会うのだが、魔物が俺を攻撃するよりも早く俺は遥か彼方へと移動している。

 

立ち塞がったやつは蹴り砕いたり叩き斬ったので問題無い。

 

その調子で走っていると日の出が出た辺りで学園に着いた。

 

学園には門番は居らず、5メートルほどのゴーレムが二体、向かい合わせに設置されていた。

 

試しに門をくぐろうとすると背中から大剣を持ち出してきて俺に向かって叩きつけてきた。

 

「・・・石の大剣で助かったな。」

 

大剣を受け止めながらそう呟く程度には攻撃が重かった。

 

だが。

 

「動くな、不審者。」

 

背後から剣を突きつけられちゃうと何も出来ないよね。

 

「・・・好奇心のつもりだったんだが、こんな夜更けに起きている人が居るとは思わなかったな。」

 

「無駄な話はよせ、用件を聞こうか。」

 

「フロックスのギルドマスターから学園への非常勤講師としての移動を命じられた、今回は受け入れのために時間があった方がいいだろうと思い、連絡に来た。」

 

「・・・来るのはフロックスのギルドマスターの筈だが?」

 

「フロックスのギルドマスターは先のオークの襲撃でオークロードと戦い片腕を失った、俺はその代わりだ。」

 

「何?あいつが?」

 

知り合いか、ギルドマスターってもしかしてこの学園の生徒だったのか?

 

「あと、もうそろそろこの二体収めてくれないですかね、流石に二体分の大剣を受け止めるのはそろそろきつくなってきてるんですけど。」

 

「学園長に報告する、少し待て。」

 

「あっちょっと待って!拘束してもいいから!抵抗しないから!何ならどっかの部屋に閉じ込めてていいからさ!こいつら何とかしてくれ!キッツイ!」

 

「悪いな、私にはその権限が無いんだ。」

 

「じゃあ壊してもいい?」

 

「何?」

 

クッソ振り向けないから相手の感情がほとんど読めねぇ!

 

「出来るものならやってみろ。」

 

「・・・了解。」

 

黒化(ニグレド)を発動する、大剣から手を離し二つの大剣の間に入り込む。

 

片方の大剣を足場にして一体のゴーレムの顔面に向かって蹴りを入れる。

 

俺が蹴りを入れたゴーレムは吹き飛び、その間に俺は大剣を背中から引き抜いた。

 

・・・少し試す価値はあるか。

 

この状態なら出来るかもしれん。

 

ゴーレムは大剣を振りかぶって迫ってくる。

 

「・・・幻影剣『双牙』」

 

技名とか呟いたけどその場で考えた。

 

やる事は至極単純、ほぼ同時に上と下から斬るだけ。

 

まぁそれをするには大剣だと身体能力以前にほとんど出来ないんだが、この黒化(ニグレド)を使用しているならば出来るかもしれないと思ったからやった。

 

ゴーレムは一瞬にしてXの様な斬撃を食らった後、4等分に切り分けられた。

 

「・・・もう少し威力は上げられそうだ。」

 

俺がそう呟くと俺が蹴り飛ばしたゴーレムが壊れた大剣を投げつけてきた。

 

俺は上へとジャンプして上から状況を見る。

 

俺に剣を突きつけていたのであろう人物は女性で耳が長い人だった、エルフか。

 

ゴーレムは俺をずっと補足していたのか上へと頭部を向ける。

 

「嘘!?」

 

そして着地地点に向かって突進してきた。

 

俺は自由落下を止めることも出来ずゴーレムの突進に直撃した。

 

「やっぱり空中にはそんなに出るべきじゃねぇなあ!」

 

まぁ直撃しても相殺くらいはできたのが救いか。じゃなきゃ死んでた。

 

ゴーレムは相殺されて勢いを無くし、俺は相殺する為に使った大剣が何処かへ吹っ飛んでいった。

 

ゴーレムは背後へ飛び、また突進するための態勢に入った。

 

「正面突破だ、吹きとべ。」

 

突進して来るゴーレムを身体強化で受け止め、片方の拳を振りかぶる。

 

「終わりだ。」

 

思いっきり振りかぶってゴーレムを殴る。

 

ゴーレムは粉々に砕かれ、再生する事もなく沈黙した。

 

「ハッハッハ!やっぱ思いっきり暴れられるってのは楽だ!」

 

学園に着いたのは朝方であり、この世界では朝にはほとんどの人間が起きている事を俺は完全に忘れていた。

 

「ハッハッ・・・あっ。」

 

ゴーレムはこの学園において対外的にはかなり強い部類の防衛装置に値する、少なくとも、B、Aランクの冒険者などであれば問題無く対処出来るが逆に言えば、ゴーレムを倒せるような強者は学園において最大限警戒する相手であるのは自明であった。

 

つまり

 

「あの人何?犯罪者?」

 

「ゴーレム倒された、化け物だ。」

 

生徒達が起きていたのである。

 

そして、ゴーレムとの戦闘を見ていた生徒達は既に怯えきっている。

 

「・・・来てもらうぞ。」

 

エルフの女性から呆れた様な様子でそう言われる。

 

「・・・はい。」

 

かなりハイになっていたのは間違いないので素直についていった。

 

・・・やっちまったなぁ。




そろそろありふれたも更新したいところ。


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学園長

俺は学園の一室、客室と言うべき場所で反省していた、外套を脱いでソファに置き、背もたれに持たれながら天を仰いでいた。

 

「・・・やっちまったなぁ。」

 

大剣はすぐに持ち出せる場所に置いているため戦闘が起きても問題は無い、だから何もおこんないで。

 

そんな事を延々と考えていると部屋の扉が開いた。

 

「貴方が、フロックスのギルドマスターの代わり、ですね?」

 

「ああ、はい、そうです、ゴーレム壊してごめんなさい。」

 

入って来たのは人間の男だった、かなり若い人だが雰囲気は老練と言える、どういう事だ?

 

「え?子供?」

 

エルフの女性はびっくりした様子で俺を見ていた。

 

「分からなかったんですか?まだまだですよ、アルダ。」

 

「学園長に追いつくのは難しいので。」

 

「・・・あの。」

 

2人はこちらを見るとそう言えばと言うような顔で話を持ち出した。

 

「貴方はゴーレムを倒しましたね、それは私も確認しました、戦闘の様子も見ていましたし。」

 

「「見てた!?」」

 

「ええ、魔法を使って少し見学させてもらってました、大剣を回収したのも私です。」

 

「だから部屋に入った時これがあったのか。」

 

学園長の雰囲気が誰かに似ている気がするんだけど誰だろう。

 

「其処でです、貴方を本格的にこの学園の実技教師として雇いたいと思っています。」

 

「要らないです、臨時教員ではダメなんですか?」

 

「それをするには貴方の力は強過ぎる。」

 

「俺と同レベルの同年代がポリスに二人いるんすけど。」

 

「へぇ?」

 

学園長から殺気が飛んできた。

 

狙いは俺の額。

 

「ッ!」

 

反応が遅れたせいで大剣を取るのは不可能、防御するには空間も足りない、なら。

 

俺は机を蹴り上げ攻撃自体のタイミングをずらそうとした。

 

だがその前に俺の額に杖の先が寸止めで出現していた。

 

「合格です、君は強い。」

 

「ハッ・・・ハッ・・・。」

 

死んだと思った、本気で、殺されると思った。

 

「が、学園長!?」

 

「アルダ、問題はありません、彼は私より弱い、何かが起こっても、私がどうにか出来ます、心配は無いでしょう。」

 

こいつ・・・!

 

「絶対超えてやる・・・。」

 

「ええ、君にはそれが出来る強さがあります、頑張って下さい。」

 

学園長は部屋の扉を開けると振り向いてこう言った。

 

「教師としての仕事はあまりしなくても構いません、貴方方の年齢を考えて、この学園を卒業するまでの期間中、貴方方には生徒兼臨時教師としての活動を許可します、来年から、よろしくお願いしますね。」

 

「え!?あの、学園長!?」

 

アルダは慌てながら学園長について行った、彼女はあの一瞬で俺が出来た行動がほぼひとつしか無かったのは分からなかったに違いない、俺が机を蹴り飛ばそうとした瞬間、足先が光り、足首に向かって魔法の刃が出現したのだ、俺が足を少しでも動かせば足が千切れていた。

 

俺が取るべき選択肢は、何もしない事。

 

「・・・性格悪過ぎるだろ、クソッ。」

 

汗だくになった体を拭く為にフラフラと客室に取り付けてあるシャワー室に向かった。




圧倒的お前が言うな案件である。


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帰ってきました。

俺がシャワーを浴びている途中に誰かが来るという事もなく、俺が全員からビビられてるのを除けば概ね問題なく学園は立ち去る事ができた。

 

立ち去った後に鳥が飛んできて手紙を貰った、学園長だった。

 

『君が言っていた2人も見ていました、彼等も生徒としての特別枠を上げるので是非3人で来てください。』

 

怖すぎて叫びそうになった。

 

学園長絶対人類最強格だぞこれ。

 

鳥は帰って行った。

 

「・・・学園長怖すぎる。」

 

ポリスに着くと門番がもう戻ってきたのかという顔で俺を見た。

 

そうは言ってももう昼だ、何も食べてないし、昼飯を食いたい。

 

何処かの食堂に行くか。

 

食堂で出て来たものは黄昏の森に生息しているものと似通っていた、が個々人で違う味付けがあったりするので美味しい。

 

食堂の飯に満足しながらも道を歩いていると小さな女の子がぶつかって来た。

 

「おっと、すまんね。」

 

財布をすってきた女の子から財布をすりとり、銀貨だけ握らせてあげた、まぁ、自己満足ではあるんだが、困ってるみたいだし、敵対するならその時はその時だ。

 

それに、女の子がそういう事をするなら、覚悟もいるだろうしなぁ。

 

女の子は銀貨を握っている事に気づかずに走り去っていった。

 

さてと、ギルド行くか。

 

ーーーーーーー

ギルドに入るとまた全員の視線が集まった。

 

そして目の前にナイフが飛んできた。

 

「オイオイ、危ないぞ。」

 

「ゼル!?」

 

「あ?あんたがこいつらのパーティーリーダーか?」

 

アルとアトは2人で拳を構えていて、構えている相手はチンピラそうな、粗暴な顔をしている男だった。

 

「そうだが、誰だ?」

 

というかナイフの速度からして完全な不意打ちだったら人殺してたんじゃねえか?

 

「俺はBランク、『黒刃』のライクスだ、覚えとけ。」

 

「はぁ、それでその黒刃様が何の用ですか?」

 

「命令だ、あの女を俺に寄越せ。」

 

えぇ・・・。

 

アトの年齢は誤差を考慮しても13歳程、この世界での成人が15歳からなのでまだ子供だ。

 

「・・・ロリコンだったか。」

 

「は?」

 

ギルドに居た全員が噴き出した。

 

アルも思いっきり笑い転げている。

 

この世界でもロリコンという言葉はあるし、というか言語は違うのにチラチラとネットスラングとか意味が違う言葉があったりとかする辺りに地球の人が来ているのがよく分かる。

 

「殺す。」

 

「まぁまぁ、その辺りで、取り敢えず、こちらの意思としては3人のパーティーなんで、1人でも抜けられるとかなりきついんでね、貴方の要求は受け入れられません。」

 

「うるせぇ、寄越せって言ってんだよ!」

 

ムキになってるしもう・・・。

 

「じゃあこうしましょう、こっちもパーティーなんで、パーティー同士で戦うってのは。」

 

「・・・。」

 

「それに、これは賭けです、こちらは負ければ1人がそちらに行く、代わりに、こちらが勝てば貴方のパーティーの誰かをこちらに下さい、それを飲めなければ、ここで遠慮無く、戦闘開始、という事になりますね。」

 

「・・・分かった。」

 

「理解が早くて何よりです、では貴方のパーティーメンバーをここに呼んで下さい、それから、裏の訓練場で、試合と行きましょう。」

 

ライクスは舌打ちをしてギルドを出て行った。

 

「お前ら、祭りだ、楽しめ。」

 

俺がそう言った瞬間ギルドから歓声が上がった、この際だ、証人は多いほうがいいだろう。

 

「と言うわけで、許可は貰えるかね?」

 

「あげるしかないでしょう。」

 

「ですよねー!」

 

受付嬢が違う様で額に手を当てていた。



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試合開始

訓練場で俺たち3人は固まって作戦会議を開いていた、内容は勿論今から行うパーティー戦についてだ。

 

「取り敢えず言っておく、俺は負けることはないと言ったが相手のメンバーによっては普通に負ける。」

 

「「えっ。」」

 

「まぁあいつがリーダーなら考え無しの馬鹿なんだが、一番最悪なのがリーダーとしてまとめる事だけ任せて実務は他の奴がやるってのだ、そんな奴は基本的に賢いからな、俺らじゃまず抵抗できん。」

 

「じゃあ、私あいつのところに行かないといけないってこと・・・?」

 

「それは俺が許さん、一番の欠点は俺らは格上相手のパーティー戦をした事がないって事だけだ、お前らのは連携、俺はそれの穴を埋めるフォロー役だった訳だが今回はどんなに嫌でも全員で全員をフォローして貰う。」

 

まぁ、脅しておいてなんだが、俺はそう深く考える必要もない。

 

「基本戦術は同じ、俺が突っ込んで穴を開け、お前らが穴を直させない様に立ち回る。何時もと違うのは相手もよく考えて動くという事だけ、オークロードの時みたいに相手も1人じゃない、不意打ちを食らう可能性も考えておけよ。」

 

「・・・分かった。」

 

「じゃあ簡単な目的を言うぞ、目的は三つ、仲間は助ける、倒れない事、相手が隙を見せたら傷つかない程度に攻撃する、他にも細々としたのはあるが・・・こんなもんだろ。」

 

基本戦術は守り、俺の攻撃性能が突出している以上守ったほうが効率が良い。

 

訓練場にさっきのライクスが入ってきた。

 

「「・・・!」」

 

「まぁ、お前の性格からそんな事だろうとは思ってたよ。」

 

ライクスが連れてきたのは、奴隷だった。

 

それも、子供の。

 

この世界には機械が無い、基本的に現代日本かそれに近い世界から来ている異世界人が多く、機械ができれば銃やそれに類似したものが開発される可能性が高いからだろう。

 

それの弊害として、奴隷、人の労働力はどうしても売り買いされる結果となっている、身売りする勝負も奴隷も剣闘士も、全てこの世界にはある。

 

許せないと言う人も居ただろう、だがこれは人がどうにかできる問題じゃない。

 

でも、気分は良くない、少なくともポリスを含めてこの王国には戦争はここ数十年起きていない、だから奴隷の数もかなり少なかった、だがポリスでは肉壁としての役割を果たせるが、ここに居る冒険者のほとんどは奴隷を見た事も無く、更には自分の腕っ節で成り上がった者も多いので奴隷を使っていると言うのは歓迎されない。

 

それが他国で当たり前の事であっても。

 

それに。

 

「君とはさっきぶりか。」

 

「!」

 

俺がさっき銀貨をあげた女の子だった。

 

「生意気にも飯なんか食ってたからな、人様に迷惑掛けてんだから躾するのは当たり前だ。」

 

見物人達がザワザワとし始める。

 

アルとアトも表面上は冷静を装ってはいるが力が余分に入っている。

 

「お前、この国についての勉強が足りなかったようだな。」

 

「何?」

 

「この国では奴隷はどれほど身分が低くても人として扱われている、表面上だけでもそうするべきだったな。」

 

「奴隷が?ふざけるなよ。」

 

「・・・じゃあ交渉といこう、俺たちが勝てば奴隷達を解放してもらおう、代わりに、お前が勝てば俺たち全員がお前のパーティーに入る。」

 

「奴隷に命かけるとか狂ってやがるな。」

 

「言うだけ言っておけ、それがこちらの意思だ。」

 

俺が銅貨を指にかける。

 

「これが落ちたら戦闘開始、そちらは何をしても良いし、殺さなければ何をしても良い、それはこちらも同じ事、奴隷も人数に含めた四体三、これで異存はないな?」

 

「無い。」

 

「了解、じゃあ戦闘開始だ。」

 

銅貨を指で弾く。

 

それと同時に大剣に手をかける。

 

アトは魔力を高め、アルは足に魔法を纏わせる。

 

相手の奴隷達はそれぞれの武器を構えているが女の子だけはナイフを両手に持って震えている。

 

銅貨が地面に当たり、音を出した。

 

「『黒刃』」

 

「『黒化(ニグレド)』」

 

黒い刃が俺たちの目に向かって飛んで来る、その速度は速い、アルはともかく、アトは目で追う事がやっとなくらいだ。

 

「幻影剣『双牙』」

 

俺がアルとアトに当たる黒刃を相殺する。その代わりに俺の目が潰れた。

 

「「ゼル!?」」

 

「問題無いさ。」

 

視界はゼロ、両目が使えなくなった、口に血が流れ込んでくる。

 

俺はリズムを刻んで舌打ちをしようとするが声や爆発音が多過ぎて位置が分からなかった。

 

なので視線を頼りに動く事にした。

 

足に来る、一歩下がって薙ぎ払う、首に視線が移り、後ろに一歩下がる。

 

「ゼル!回復するよ!」

 

「頼むわ。」

 

目の前が白く染まる。

 

「片目だけ!?何で!?」

 

「問題無い、さて、反撃開始だ。」

 

この世界では欠損は時間が経ってなければ回復魔法でゴリ押せるが、まさか片目だけとはいえ完全に治すとはな、腕が良い。

 

目の前ではアルがライクスと戦っていた。

 

「オラオラ!どうしたひよっ子!」

 

「くっ。」

 

俺の周りには残りの奴隷3人が取り囲んでいた。

 

「頼みがある。」

 

剣を構えた男の奴隷が切り掛かりながらそう言った。

 

大剣で受け止めて返事をする。

 

「何だ。」

 

「俺たちは奴隷だ、この国以外では差別され、最悪の場合殺される、俺は良い、だが、この子だけは絶対に死なせてはいけない、子どもが死ぬ世界など、あってはならない。」

 

「確約は出来ない、場合によっては死ぬ事もあるだろう。」

 

「それでも、ライクスに従うよりかはマシだろう。」

 

「私からも頼みます。」

 

大人の男女の奴隷が戦闘をしながらそう頼み込んでくる。

 

「・・・やるだけやってみる、だからゴメンな、気絶させる。」

 

大剣を使わず二人の腹にグーで殴る。

 

鳩尾を殴ったので苦しいだろうが気絶してたら楽だろう、多分。

 

女の子を見る。

 

「っあ・・・。」

 

身体は震えているし、そもそも戦闘が得意なようにも見えない。

 

女の子の頭を撫でる。

 

「!」

 

ワシャワシャと撫でてから地面に刺した大剣を抜く。

 

「待ってろ、すぐに終わらせる。」

 

黒化(ニグレド)は使えるのは一瞬だけだ、そう簡単に何回も使えるような技じゃないし、使い過ぎると動けなくなる。

 

相手は腐ってもBランク、オークロード並みに強いと考えたほうが良いか。

 

ただ、俺は許さん。




小さい女の子が頼ってきたらやる気出すのは当たり前だよなぁ!ロリコンじゃなくても本気出すよなぁ!だから主人公はロリコンじゃない。

今までのヒロイン全員幼い時から惚れてる事については言わないで。


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ライクス

「防いでばっかの玉無しか!?オラァ!」

 

「フッ!」

 

俺がゼルに言われた役目は足止め、ゼルが来れば2人になるし、攻撃に移る余裕も出る。

 

「腰抜けが!」

 

盾にした剣越しに強い衝撃が俺の体を突き抜ける。

 

剣の間から見るとライクスは足を突き出した姿勢で止まっていた。

 

今のが、ただの蹴り?ハハッ、笑える。

 

ただの蹴りで俺の防御を抜いてくるなんて。

 

「ヒール!」

 

体に緑色の光が纏わりつく、傷はすぐに回復した。

 

「・・・頑張れ!」

 

「・・・やるしかない。」

 

「チッ、さっさと倒れろよ。」

 

俺は剣を構える、ゼルみたいに技が強い訳でもアトみたいに引き出しが多い訳でもない俺は、多分俺たちの中で一番弱い、だから、今自分に出来ることを、必死にやるだけ。

 

「すぅ・・・。」

 

深呼吸する。

 

「行くぞ。」

 

「面構えが変わったか、なら、俺も本気でやる。」

 

ライクスの持っている剣が黒い剣に変わる。

 

「俺の異名である黒刃の妙を味あわせてやる。」

 

「そうかい、せいぜいやってみせろ!」

 

ライクスの剣と俺の剣が交わった瞬間剣が腐った。

 

そうとしか思えないほど手応えが変わった。

 

「アホかよ、俺が馬鹿正直に正面から挑むわけねぇだろうが。」

 

腹に剣が突き刺される。

 

「あっがああああああ!!?」

 

「あっはははは!さいっこう!もっと叫べよ、なぁ!」

 

そう言ってライクスは剣を引き抜く。

 

「次は腕〜!」

 

左腕が刺される。

 

痛みで気絶出来れば良かったがライクスは慣れているのだろう、気絶しないギリギリで剣を抜いている。

 

「次は足「オイ。」・・・チッ。」

 

俺が涙で濡れた視界で見えたのは、黒い外套を着たゼルだった。

 

ーーーーーーー

片目を治してもらうためにアトと俺はアルが痛めつけられるのをじっと見ていた。

 

曲がりなりにも友達だ、痛めつけられるのは見るに堪えない。

 

だが、数分近く稼いでくれたおかげでアトの魔法で俺の身体は治った。

 

「・・・ゼル、殺って。」

 

「それは出来ねぇな、ルールを最初から殺し合いにしてればギルドが止めたろうし、だが、すぐに終わらせる、お前はアルを回復させてやってくれ。」

 

「・・・こういう時、何で近接戦が苦手なんだろうって心底思うよ。」

 

「・・・俺は何も言えねぇよ。」

 

「・・・分かってる。」

 

俺はライクスに近づいていく。

 

「次は足「オイ。」・・・チッ。」

 

「俺を忘れてないか?」

 

「役立たずの奴隷が・・・。」

 

「おいおい、舐めてもらっちゃ困るぞ、こっちだってパーティーリーダーとしての矜持位はあるんだ。」

 

大剣を構える。

 

「何の因果か一騎討ちになったな、俺はお前を許すことは出来そうにない。」

 

「正義の味方面した子供が粋がりやがって、気にいらねぇから潰してやるよ。」

 

「はっ、頭が愉快に沸騰している輩は感情だけで動く獣でもあったというわけだ、狩ってやろう、来い。」

 

「『黒刃』」

 

「見ていたよ。」

 

大剣で地面を削り、砂の散弾で黒刃を打ち消す。

 

それと同時に大剣を上に投げ、俺は太ももに付けていた小さい短剣と幾つかの投げナイフを持って走った。

 

「『身体強化』」

 

一歩で砂の壁の側面へと回り、もう一歩でライクスの足を斬りつける、そして足元に投げナイフを突き刺して半回転後逆手に持ち替えた短剣でライクスの背中を深く斬り裂きながら上へと飛んだ。

 

「ガ!?」

 

大剣は訓練場のかなり上まで飛んでおり、日も少し傾いているとはいえ上を向けば太陽が見える位置なので問題は無い。

 

地面に突き刺した投げナイフが魔法陣を展開する。

 

「何!?」

 

「アト特製、アースクエイクってな。」

 

ライクスは自分の足元から向かって来る土の柱に押されて空中に飛ばされた。

 

空中では踏ん張りも効かず、姿勢も変えられない。

 

対して俺は落下を始め更には大剣で叩き斬る姿勢に入っている。

 

まぁ、クルクルと回っているから既に酔いそうな視界ではあるわけだが。

 

「落ちろ。」

 

ライクスを真っ二つにするわけにもいかないので右足と右腕を切断する程度に留める。

 

五体満足では無い限り冒険者は出来ないだろうから問題無い。

 

それに、個人的にアルにされた事の仕返しも込めている。

 

ライクスは何も言うことは無い、足で蹴ってみると気絶しているようだ。

 

「ライクスは気絶している、コレで勝負は終わりでいいな?」

 

周りに視線を送ると全員が頷く。

 

良かった、コレで俺はあの子を救えるわけだ。

 

俺がそう思いながら女の子の方に振り返ると腹に痛みが走った。

 

「あっ・・・違う、違うの・・・ごめ・・・なさ・・・。」

 

「なるほど、ライクス、やっぱりお前クズだわ。」

 

「は、はは!分かったか青二才!そいつは奴隷で、その首輪の所為で俺の命令は絶対に聞かなくちゃいけない!誰が渡すか!そいつは俺のもんなんだよ!」

 

「なるほど、アト、解析頼んだ。アル、頼むよ。」

 

「「了解。」」

 

「それで?どうすんだよお前は、あの奴隷はくれてやってもいい、その代わりあの女は貰うぞ。」

 

「残念ながら、奴隷の首輪は宿主が死ねば初期化される機能がある、奴隷本人には宿主に被害を加えることはできないが、他者が宿主を殺せば奴隷の次の宿主は奴隷本人から一番近いものに変更される。」

 

「おい、まさか、待ってくれ。」

 

「少なくとも、お前が先に約束を破った。」

 

ライクスの首を切り落とした。

 

「お前ら、証人になってくれるな?」

 

周りの冒険者達はいきなり人が死んだのを苦い顔をして見ているもの、俺に怯える者、多種多様な者がいたが全員が頷いた。

 

「よし。」

 

女の子に近づいて行く。

 

アトが首輪を持っていた為、解除はできたようだ。

 

「宿主が私になったからすぐに解けたよ。」

 

「ありがとよ。」

 

俺が気絶させた2人の男女は後にしてまずは女の子を落ち着かせよう。

 

俺の腹には未だにナイフが刺さっており、血がどくどくと流れている。

 

「もう安心だ、大丈夫、頑張ったな。」

 

そう言って頭をゆっくりと撫でると女の子は安心したのか寝てしまった。

 

「取り敢えず俺はこの子を宿に連れて帰る、丸洗いして適当に服縫えばいいだろ、アト達は向こうで苦しんでる2人を頼む、俺は疲れた。」

 

今回は黒化こそあまり使わなかったものの精神的に疲れた。

 

宿に入った瞬間気絶するかもしれん。

 

「あー、きっつ。」

 

因みに、宿に入ると同時に気絶してその所為で腹に刺さったままだったナイフが内臓にまで届き、何気に命の危機になっていたがすぐに帰ってきたアトが叫びながら全力の回復魔法を使ったので一命は取り留めた。




書いててノーカウントさんの台詞入れるか悩んだ。


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オリヴィア

俺は女の子を連れて帰り、全身を水と布で拭いたあと掛け布団にくるませて俺は寝た、色々と精神的に限界だったのだ、起きてからアトに顔面パンチを食らったことは自然な流れだっただろう。

 

ライクスの奴隷だった男女二人は暫くギルドが預かるらしい。

 

なんでも俺と戦っているときは力の殆どを出せないような状態だったらしく、二人で連携することが出来ればアルとまともに戦えるほど強いらしい。

 

いつかポリスお抱えの戦力兼事務員になることだろう。

 

この国は人を理不尽にこき使うような人物は目の敵にされるしな。

 

だがあの二人は生活にも困っているし、暫く二人で行動する、だが女の子を世話できるほど裕福になれる自信もないのでそっちで引き取ってくれないか?

 

そういってきたらしい。

 

「まぁ問題ないだろう、年齢的に、先に金を貯めておくことが出来れば学園にも一緒に来れるだろう。」

 

「そうだね、私達と一緒に居るんだし。」

 

なんで俺がこんな歳から親代わりをせにゃならんのか。

 

「アルはどうした?」

 

「何か訓練場で特訓してくるとか言ってギルドに行った。」

 

「なにやってんだあいつ。」

 

「さぁ?」

 

まぁ良い、俺もやることはある。

 

「あの・・・。」

 

「ん?起きたか、昨日はすまなかった。」

 

「・・・ごめんなさい。」

 

「なんで謝るんだ?」

 

女の子は俯いて黙ってしまった。

 

「こういう時はな、ありがとうって言うんだよ。」

 

「あり、がとう?」

 

「おう、誰かに助けて貰ったらありがとうって言えば良い、それが感謝を一番伝えられる。」

 

俺はそう言って女の子の頭を撫でる。

 

「アト、取り敢えず3日分で良い、この子の服を買って来てくれ、サイズはこの子が着れるようならなんでも良い、その辺りはお前に任せる。」

 

「了解、金貨一つある?」

 

「待て、お前どんな服買ってくるつもりだ。」

 

「小銭が無いんだよ、銀貨が無いんだよ!」

 

「・・・。」

 

アトは無言で手を差し出してくる。

 

「・・・はぁ。」

 

金貨を渡し、女の子に向き合う。

 

「名前はあるか?」

 

「無い、奴隷、いの一番に名前無くされる、奴隷は理不尽な目、合うから、元々の名前、消え去る。私、奴隷と奴隷の子供、だから無い。」

 

「親はあの2人か?」

 

「違う、偶々一緒に居ただけ。」

 

「そうか。」

 

名前が無い・・・うーん、名前なぁ。

 

「ネーミングセンスは無いんだがなぁ・・・。」

 

「名前、無くても、問題無い。」

 

そういうわけにはいかんだろう。

 

「そう言えば、君は何の種族なんだ?人間にしては髪質が・・・。」

 

「分からない、人間と何かの子供。」

 

猫耳とか狐耳になってる訳でもないみたいだしなぁ。

 

まぁ見た目は普通の人間の女の子だし、問題無いか?

 

「何歳なんだ?」

 

「分からない、でも多分十歳以上。」

 

「なら年齢は10歳って事にしとくか。」

 

「うん。」

 

「それで名前なんだが・・・。」

 

女の子の姿を見る。

 

今はアトの服を着ている為少しぶかぶかで胸の谷間などが見えている、まぁそこは置いておいて、髪は青い、目は赤と青のオッドアイ、まぁ見た目も悪く無い。

 

蒼炎、違うな藍華?ん〜、なんか違う。

 

横文字だとどうだ?

 

・・・オリヴィア。

 

「・・・オリヴィアなんてどうだ?」

 

「・・・オリヴィア。」

 

女の子・・・オリヴィアは満足そうに小さく笑った。

 

「ありがとう、お父さん。」

 

「おいおい・・・。」

 

俺は2歳年下の娘が出来たようです。




予め予防線を張っていくスタイル。

奴隷の女の子改めオリヴィアちゃんです、何の種族かは多分判明する、続けば、そろそろ設定集出さなきゃ、多分編集で追加される。

ーーーーーー
この世界での奴隷
ファンタジー小説と大体一緒、頑丈な獣人が主に奴隷にされているが人間も普通に居る。

オリヴィア
ライクスの奴隷だった女の子、産まれたときから奴隷なので主人公達に助けられたという実感はない。

二人の男女の奴隷
設定上名前を持たせる事が出来ないけど結構関わるかもしれない二人、恋愛的なものは欠片もない。

学園
一応平民と貴族の区別はなく、毎年一クラス分ほぼ無料で入学できる、ただしその基準は学園長に完全に任されている。

平民からは貴族並みの教育が受けられる場所として、貴族からは平民の視点でどう写るかなどを学べる、国際的には中立なので他の国からも貴族は来るが王国特有の国風から外国の貴族はあまり歓迎されない。

学園長
分かりやすく言えば化け物、イメージは他の世界での主人公。

スカルパラディン
婆さんと村に帰ってお酒飲んでる。

アルダ
エルフの不憫枠、学園長に惚れてるけどヘタレて何も出来ていない。


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お世話

オリヴィアと話したりしていたら俺にくっ付いて離れなくなった、オリヴィアはその理由を話してくれないし、俺がトイレに行こうとした瞬間に泣きそうになっていたのでどうしようもなかった。

 

その場面を帰ってきたアトがバッチリ見ていて無言で魔法を展開した事に焦って事情を説明していた。

 

「・・・。」

 

「と言うわけなんだが・・・。」

 

「ずるい。」

 

「は?」

 

「私達に何も言わずに名付けなんてずるい!私だって考えてた名前あるのに!」

 

「どんな名前なんだ?」

 

「ゴンザレス。」

 

「ぶっ飛ばすぞテメェ。」

 

オリヴィアはこの間ずっと背後でアトを見ている。

 

・・・心なしか怯えてるように見えるのは気のせいだろうか。

 

「まぁ何だ、取り敢えず、服見せろ、お前の感覚がイマイチ信じられん。」

 

「何で!?」

 

「当たり前だ!」

 

オリヴィアは既に服を物色していたようで服がグチャグチャになっていた。

 

「あーあー、ったく。」

 

脱ぎ捨てられたアトの服をアトのバッグに入れる、アトが顔を真っ赤にしているがお前らの服とか何時も俺が管理してること忘れてる訳じゃねえよなと聞きたくなってくる。

 

「オリヴィア、パンツはかぶるもんじゃねぇ、下半身に履くものだ。」

 

途中からめんどくさくなってオリヴィアにつきっきりで着替えをさせた。

 

「おいアト、これはお前の仕事の筈だが?」

 

「ごめん、私だって結構色んなことしてたのに、ゼルにプライドをボロボロにされた気がして・・・。」

 

えぇ・・・。

 

「お父さん、これで良い?」

 

「お父さん!?」

 

「おう、取り敢えず形にはなったな。」

 

時間は・・・朝を少し過ぎたあたりか。

 

外を確認すると目の前から可愛いお腹の音がした。

 

「・・・。」

 

オリヴィアからだった。

 

「アト、ギルド行ってアル拾ってこい、飯にしよう。」

 

「了解、お父さんって呼ばれてる事、後で詳しく聞かせてもらうから。」

 

「はいはい。」

 

アトは俺を睨みながら部屋から出て行った。

 

「・・・おとうさん、ごめんなさい。」

 

「謝らなくて良いって、取り敢えず飯食いに行くぞ。」

 

「はい!」

 

ーーーーーーー

「・・・アト、そんなに怒らなくても良いんじゃないか?」

 

「アルまでそんなこと言って!私だって名前考えてたのに。」

 

ギルド前まで歩くとアルとアトが言い合っていた。

 

あるが俺に気付き、手を挙げる。

 

俺も手を挙げるがオリヴィアは背後から2人をじっと見ているだけだった。

 

「来た!」

 

「おう、取り敢えず適当に食堂入るぞ。」

 

「おはよう、かな?俺はアル、知ってると思うけど一応ね。」

 

「オリヴィア、です、おとうさんに名付けてもらいました。」

 

「ゼル、君のセンスは抜群だな。」

 

「・・・お前・・・。」

 

アルが遠い目をしているところから見るにアトのネーミングセンスは酷いものらしい。

 

近くの食堂に入り、何を頼むか決める。

 

「俺はパンとスープで良いや、オリヴィアは何にする?」

 

俺がそう言ってオリヴィアを見るとオリヴィアは地面に座っていた。

 

「・・・オリヴィア?」

 

「わ、たしは・・・。」

 

オリヴィアの頭を撫でる、元奴隷ってのは難しいな。

 

「もう奴隷じゃない、地面に座らなくて良い。」

 

「ですが。」

 

「あと、敬語。」

 

「あっ・・・ごめんなさい。」

 

やっちまったか?

 

「良いんだよ、ゆっくり慣れていったら良い、俺はおとうさん、だからな。」

 

取り敢えず何時までも地べたはまずいので俺の横に座らせる。

 

「・・・アル、お父さんだよ、ゼルがお父さんしてるよ。」

 

「完全に保護者だなぁ。」

 

対面に座っていた2人の言葉で2人が居たことを思い出したのだろう、オリヴィアは顔を真っ赤にして小さくなっていた。

 

念の為水も頼む、元奴隷ってのは割と反応が素直なところがあるし、用心しといて問題は無い。

 

オリヴィアはスプーンの使い方など、色々と知らなかったが俺が一緒にゆっくりと説明するとスプーンでスープを飲み始めた。

 

スープを一口飲んだ瞬間目を輝かせて俺を見た。

 

そこで俺はパンをスープを染み込ませてオリヴィアの口に突っ込んだ。

 

オリヴィアは美味しさで笑顔になっていた。

 

そしてパンを飲み込むと声を大きくして美味しいと言った。

 

俺も思わず頭を撫でてしまう。

 

「「・・・おとうさん。」」

 

「止めんか気持ち悪い。」

 

2人の頭にチョップを入れるのを楽しそうにオリヴィアは見ていた。




人って美味しいもの食べたら精神年齢下がりませんか?少なくとも作者の親戚の子達はそうでした。

オリヴィアは一応ゼルと同い年のはずなんですがねぇ。


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