何回も転生した奴が名もない世界に転生しました。 (オット)
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プロローグ

良し、今回の分はコレで終わりかな、夜月、次の転生はもうそろそろのはずだ、どこに転生するんだ?

 

「あー、今回はアニメとか漫画の世界じゃなくて普通の世界だね。」

 

なるほど、ある程度の事前知識ってのは無理か、まぁ良いさ、どういう世界なんだ?まぁ今までの傾向からしてまた凄い世界なんだろうが。

 

「えーっと、魔法があって、魔力があって、冒険者ギルドなんかがあるっていう、良くあるファンタジー。」

 

まぁ割と比率多いから仕方無いか。

 

「最近は特典なんかは全然使ってないけど、大丈夫?」

 

言っても魔力がある程度あればそんなに苦労はしないし、最悪家宝か国宝扱いで紅黒龍作り出せばいける、コピー品でも良いからな。

 

真打は威力が高すぎていけねぇ。

 

「あはは、あれ元々神殺し出来るスペックだからね。多分エヒトの時みたいに中級くらいまでだったら割と一方的に殺戮出来るよ。」

 

神は人間にしか殺せないっていう法則無かったら戦争だらけだもんな、良くも悪くも。

 

「まぁ、取り敢えず、行ってらっしゃい、ヒロインは勝手にこっちで用意しとくね。」

 

要らんわ!!

 

自分が落ちていく感覚と共に暗闇に包まれる。

ーーーーーーーーー

「〜!!」

 

「・・・せ!」

 

いきなり騒がしいな、今回はどんな身分だ?それによって変わってくるぞ・・・。

 

背中が叩かれる。

 

激痛で思わず叫ぶ、苦しいと思ったら呼吸して無かった、危ねぇ。

 

「〜〜!!〜〜〜〜!!」

 

ヤッベェ、いつもの事ながら何言ってるかわっかんねえ。

 

気長に待つか。

 

毛布で包まれる、誰かに抱かれ、一気に眠気が襲いかかって来た。

 

こういう時は大人しく寝るに限る。

 

スヤァ。

 

ーーーーーーーーー

そして俺が生まれてから数日経った、暫くは婆さんや、女性が俺の世話をするようで色々と話しかけられている、俺の母親は多分まだ寝込んでいるだろう、というか、そうでなくては困る。

 

俺の目もちゃんと開き、腕や足が無いということもなく、至って健康な男子として生まれた。

 

コレで女だったら絶望してたがちゃんと息子があるのを確認した、愚息よ、世話になるぞ。

 

ただ、赤子の視力では目の前の人物すら分からないので自然と眼を細める事になった。

 

言語すら分からないのだ、せめて顔ぐらい覚えないと俺の貧困な記憶力では関係性すら持たせられん。

 

そして安定の母乳チューチューでは無心になった、今は息子なので別に恥ずかしがらなくて良いのだが免疫をつける為にも母乳は飲まなければ俺が死ぬ、というか家の色や布の質から平民とか村人の身分っぽいので余計に体を丈夫にしないと最悪捨てられる、せめて幼児くらいになるまで保護下にいなければ。

 

そしてまた数日経つと何か違和感を覚えた。

 

と言うのも余り汚れていないのだ、俺だって筋肉が育っていないからおねしょや大の方を漏らしているのに布が常にある程度の質のものが出てくる、まぁ部屋着を切って布にしたりしている所もあるので不思議では無いのだがなんて言ったら良いのだろう、その布が緑色の絹のようなものなのだ、絹のようなやつとかいくら何でも金が足りない。

 

現代で言うならふかふかのバスタオルのようなものだ、魔法があるとはいえこのレベルがあるのはおかしい、帝国や王国の首都などならともかくここは部屋の内装からして田舎の木造の家だ、そんな物があるのは生産地でもなければおかしい、その筈なのに時たま訪れる婆さんなんかの服はガサガサっぽいのだ、流石に推測しかできないからキツイ。

 

体が育つのを待つしか無いか。

 

母親と思われる女性が胸を晒した、また母乳タイムか・・・。

 

ーーーーーーーーー

数ヶ月経った、おかしい、魔術が発動出来ねえ。

 

俺の魔術は転生した世界にある魔法の適正によって左右される。

 

例えば火を放つ魔法があったとしよう、魔法の法則はほとんどの場合2つか3つ、魔法陣なんかを使えばもう少し複雑に効果を発揮させられる。

 

法則の1つ目はまず適性がある事、これはステータスプレート、魔力の資質などに現れる。

 

スキルの様な形ならば魔法《火》とか火魔法とか表示は色々ある、そして俺の魔術は世界によってそれが変わる、大前提としてその分類の『魔法』が使える事が前提なのだ。

 

では魔法が無い世界ではどうなるのか?使おうと思えば使えるが魔力消費なんかが馬鹿でかい、ハジメの作ったクリスタルキーの燃費がアホみたいに悪いのもこれが原因だ、世界を渡る事自体は魔力はそこまで必要ではない、せいぜい勇者ほどの魔力があれば良い、だが行った先の異世界で魔法を使おうとするには適正を取得する必要がある、伊丹や帝国の奴らに行った魔術の言い訳もここから来ている。

 

俺の場合は天使だからか負荷はそこまで無いが命を削って小さな魔術1つ、何て事もざらにある様なので何も言わない。

 

話を戻そう、俺が使える筈の魔術を常用のものを使えないという事はまず、魔術での物量戦が出来ない、俺の適性が無いからだ。

 

次に荷物を魔術で作った空間に入れられない、そういう魔法を付与した入れ物があれば良いんだがな。

 

そしてこれが一番ヤバい。

 

俺の眷属含め武装などの戦力類が使えない。武器は現地調達、つまり新しく俺が作るか誰かに紅黒龍の様な専用装備を作ってもらわないと満足に暴れる事もできない。

 

ヤッベェ、コレでこの世界がスキルレベル制とかだったら少しずつレベル上げとか出来るんだが・・・自我があるのも厄介だな。

 

・・・どうしようか。




間違ってあとがき無しのやつあげちまったよ・・・

プロット無し、世界設定のみ、というかぶっちゃけ行き当たりばったりのノリで出来た作品だぜ。

そして私は懲りずに自分の面白いんじゃね?という直感とノリで書き上げる日々に戻るぜ。

そういう点ではありふれって色々自由に書けるから良いよね、アレが完結したらこっちの小説の更新速度が下がると思ってくれ、ある意味繋ぎだ。


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カルト

1歳になった、時間がとても長く感じる。

 

ハイハイができる様になった。

 

鍛えよう。

 

そして寝ながら色々見てると俺の世話をしている女性は金髪の女の人で美人だった、顔の半分くらいやべえ火傷してたけど。

 

その女性は俺の母親で、たまに来るお婆さんは何かの魔法職?見たいで少しずつ俺の事も分かってきた。

 

俺の名前はゼルという名前らしい、呼びにくい。

 

婆さんは母さんを大事にしている様で来るたびにいろんな話をしている、その会話を聞きながら言葉を覚えていった。

 

そして俺はいつも使っている回復魔術をしながらの高速筋肉増強法が出来ないので地道に努力する事にする。

 

ーーーーーーーーー

半年くらい経った、母さんが泣いていた、何も言えねぇ、俺にご飯くれたらそのまま泣き疲れたのか寝てしまった。

 

仕方ないのでじっと見ていた。

 

そう言えば父親居ないけどどこ行ったんだろうか。

 

少しずつ扉が開き、婆さんが俺を見て悲痛そうな顔をして母さんの近くで立ち尽くしていた。

 

マジでどういう事ですかね。

 

ーーーーーーーーー

次の日、よく分かった、これ多分生贄かなんかにされた、だって男の集団が俺を抱えて祭壇みたいなところに連れてこられて供物みたいに置かれてるもん、どういう事だってばよ。

 

そしてそのまま暫く経つと誰かの足音がした、獣とかそんな感じの足音じゃないから人かな?

 

「・・・ほう、何事かと来てみれば、幼子が一人で生贄にされているとは・・・なかなかどうして。」

 

黒い細長い人・・・人かこれ。

 

えっマジで何これ、絶対こいつ人間じゃねえぞ、絶対人外の類だぞ、美人な魔女とかだったらいいなとか思ってたけどこれマジで人じゃねえ、何だこいつ。

 

「これはまさか私への供物か?だとすればなんとも言えぬな、お主にも迷惑を掛けるな、勝手に生贄になどされて。」

 

本当にそうだな、ところであんた誰よ。

 

「・・・興が乗った、お主を少しばかり育ててみよう、人間など育てるのは初めてだ、許せ、幼子よ。」

 

「・・・。」

 

離乳後で良かったな、あんた、赤子だったら死んでたぞ。

 

「そうそう、名を名乗っていなかったな、私は聖霊のカルトという、覚えておきなさい。」

 

カルトとか嫌な予感しかしないんですけど。

 

「まずは言葉から教えてみるか、私の家へ来るがいい、稽古くらいならば付けてやろう。」

 

戦闘前提っすかカルトさん。

 

ええ、キツイですよこれ、マジで、だってこのエ○ダーマン見たいなこのカルトさんなんか絶対手出ししたらやばい系統だろ。

 

「お主が大きくなった時が楽しみじゃな。」

 

俺としてはものすごく怖いのが意見でありますカルトさん。

 

俺の内面など露知らず、カルトは暗闇へ歩き始めた。

 

カルトに抱えられている俺は予想以上に高い視点に少しばかり恐怖しながら暗闇の向こうを見ようと躍起になった。

 

「私は闇を操作する事が出来る、特別にお主にも加護を与えてやろう、暗闇の中でもよく見える様になる。」

 

そう言って頭に触られた瞬間情報量が増えすぎて気絶しそうになった。

 

というか一瞬気絶した。

 

「すまんな、加護を与えるなど初めてであったから加減間違えてしもうた、だが、無事な様だな、問題なかろう。」

 

独り言多いっすね。

 

「さて、見えてきたぞ、あれが私の、お主の家になる家じゃ。」

 

家の外見は暗闇の中にポツンと立っている木造の家、だろうか、山奥のコテージといった方が分かりやすいか。

 

「まずはお主の服からじゃの、ほれ、軽く作ってやろう。」

 

そう言った瞬間俺の体にピッタリと合う着脱可能な緑色の絹のようなふくが纏わり付いた。

 

「どうじゃ?私特製の聖霊布じゃぞ、貴重な物じゃ、嬉しかろ?」

 

それうちの村で腐るほど使われてたんですけど、というか制作元あんたかよ。

 

という事はアレか?俺の村はカルト教団の村とかってる貼られてる?うわ嫌すぎる。

 

何はともあれそれから俺とカルトの共同生活が始まった。




狂信者とか異常者の代名詞の様なカルトではなく普通に聖霊の名前です、名前はノリで決めました。


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成長記録

三歳ほどになった、俺はカルトの教えでみるみるうちに知識をつけていき、俺の中身とカルトの喋り方強制(矯正ではない)で大人っぽい?喋り方になった。

 

俺も大分喋れるようになったので普通に話せるのはありがたい。

 

そして俺が言葉を喋られるようになると同時にこの辺りの地理と歴史を習うことになった、五千年前からの歴史知ってるってカルトの歳がわかんねぇな。

 

因みにそれにともない精霊と聖霊の違いも何となくだが分かってきた、精霊は聖霊より行使できる力量に限りがあり、支配領域のようなものは群れで管理する、大精霊と呼ばれる者達も各地に散らばってそれぞれが管理しているので精霊の強化版と考えていいらしい。

 

そしてカルトは精霊ではなく聖霊、精霊や大精霊の上位者であり、一つの個体で全てを管理できるほどのスペックを持つ、カルトが司るのは闇、穢れなどのおよそ人間が持つ悪性のようなものを司っているらしい、人間が恐怖を感じる事柄全てを司るため、夜の暗闇や地の底など光の届かない場所なら自由に移動でき、少し薄暗い程度ならば影を利用して顕現することも可能らしい。

 

俺が生け贄に捧げられていた祭壇も夕方位に発見し、転移したのだと言う。

 

「私は光の一側面じゃからな、光が強いから闇が強いのではない、闇と光が強いのだ。」

 

何を言いたいのか分からんがそう言うことらしい。

 

そしてカルトがほぼ常に顕現しているこの森は昔聖霊を手懐けようとした国を滅ぼしたら光の聖霊が管理を手放したせいで暗闇一色に染まったらしい、灯りは灯せるし、ちゃんと場所さえ分かれば普通に通り抜け出来るが、魔物なども暗闇の中での狩猟手段を持っているため、冒険者達があまり来たがらないらしい。

 

その為人間達からは黄昏の森と言われている。

 

鉱石掘らなきゃと思った俺は悪くないと思う。

 

だが灯りは灯せると言っても光がない訳じゃないらしい、もう少し奥地に行けば光る苔やキノコなど、主に植物が光を放っているらしい、ただし、まばらな上にその光を利用して狩りを行う魔物も多いため危険度は高い。

 

「それがこの光ってるキノコとか苔なのか。」

 

「ぬ?ああ、それは私がいつでも消せるように品種改良したものじゃな、生存競争が激しいためか一ヶ月ほどで生まれて育ってを繰り返す種が多くての、それをかなり遅くさせ、光を放つ時間を長くしておるのだ。」

 

「はー、よくもまぁ。」

 

因みに、繁殖期には蛍のような光がフワフワと風に乗るらしいので幻想的なのだそう。

 

そして、俺を生け贄にした村はというと、まだ森の近くにあるらしい、たまに襲ってくる魔物等が嫌がるように威圧してやったとどや顔で言われた。

 

「じゃが山賊などは対処できぬからの、そのときはお主がやっつけて参れ。」

 

「うわぁ、微妙に役にたたねぇ・・・。」

 

「人間とか私の司る悪性の塊じゃぞ、一つでも操作してみよ、大混乱じゃ。」

 

それもそうか。

 

「わかった、俺が十歳以上になってからな。」

 

「それでよいのじゃ。」

 

このエ○ダーマンめ・・・。

 

因みに、魔物を司る聖霊は居ないらしい、創造神が魔物を統べるものとして群れの長を魔族や獣人など、人間の亜種を統べるものとして魔王と獣王を造り、人間は完全にフリーらしい、カルト曰くすぐ増えたから半分実験台扱いじゃの。らしい。

 

創造神は作ったものに愛などなく、今人間が掲げている聖神教会とか言うのはただの人間のエゴじゃ、とも言われた、何もしないうちからこの世界の秘密が暴露されまくっている気がする。

 

今は獣王が亡くなってから二百年ほど経ち、人間からは被差別種族とされているらしい、獣王が生まれ、人間と戦争をして勝てば逆の立場になるのだから擁護などしないらしい。

 

魔族や獣人等は生存するには厳しい場所で暮らさなければいけなくなり、創造神に直談判に来た人間が居たらしく、道のりやべぇのにお前よくここまでこれたな、御褒美あげよう、こっち来て、みたいなノリで種族を変えたらしい、そして旗頭として魔王と獣王が生まれた、というのが真実らしい、何でカルトが知ってるかって?魔族に限っては変更担当だったらしいからだよ。

 

つまり、俺もカルトに加護を与えられた関係で半分魔族の特徴を持っているらしい、魔族の特徴は身体能力か魔法がなにか一つだけ資質が現れる事らしい。

 

俺の場合は身体能力強化の魔法らしい、ただし、魔力も年齢ゆえにまだ少なく、十歳位まではまともに発動も出来ないだろうと言われた、悲しい。

 

そして魔術起動しようとしたら気絶しかけた、本当に魔力ないんだな。

 

ただ発動は出来たのでプロテインみたいな使い方で身体能力を伸ばして行こうと思う。

 

言うて筋肉痛になることが多くなるだけだからな。

 

そしてこの黄昏の森がある俺の出身国はアルダハイド王国、この森を挟んでアルカディア帝国があり、森の回りは冒険者達が勝手に作った都市国家がいくつかある、その一つに学園迷宮都市ポリスがある、創設者は異界の都市の名前だとか言っていたらしいが真偽は定かではない。

 

というかポリスって都市国家の名前だったよな、地球で、影響残しすぎでは?

 

「ところで戦闘訓練なのだがの、私との模擬戦は保留でどうじゃ?」

 

「何でだ?」

 

「いやなに、体も育って居らぬのだから手加減に慣れていない私ではほぼ確実に殺してしまうやもしれん、死なない程度の攻撃にはするつもりではあるがお主は台風や津波、噴火などに特別な手段なく立ち向かえるか?」

 

「無理だな、魔法があるならともかく、ただの人の体で天災に勝負なんて挑めない。」

 

「それが答えじゃ、そして私は人が恐怖を感じるものはほぼ全て操れる、精神的にも、概念的にも、聖霊の中でも特に支配領域が多い私では手加減など望めるはずなかろうて。」

 

カルトさん支配領域は広く浅くだったみたいだしまぁそうなるか。

 

「了解、模擬戦は止めておくよ。」

 

そして俺は簡単な長剣を渡された、三歳に与えるようなもんじゃないだろう。

 

こちとらやっとこさ歩いたり走ったりする段階だぞ、まずは筋トレさせろ。

 

ーーーーーーーー

5歳になった、筋トレの効果は出ているが、子供なのでそこまで筋肉が付いているような見た目ではない。

 

が少なくとも短剣程度ならば触れるくらいには大きくなった。

 

カルトの家には暗黒面を綴った書物があり、そのなかに暗器とか護身用の武器が載っている本があったのでねだった。

 

というか、この家から殆ど出せてもらっていないので生き残るもくそも無いのだがたまにカルトは何処かへふらっと行くときがある、その隙に本を読んでいたのだが一度官能小説を見つけてあるんだなと思った。

 

帰ってきたカルトがまだお主には早いものだとか言ったけど既に全部見てたから憶えて朗読してやった。

 

カルトが何かすごい顔してたけど面白かった。

 

そして俺はカルトが買ってきた鈍く光る短剣を渡された、きっと光を放っているので俺の位置が分かりやすいからだろう。

 

そしてカルトから渡されたランタンを手に黄昏の森へ出陣した。

 

数分後に後悔した、魔物がうじゃうじゃいて戦闘しかしてない。

 

狼の魔物だったりコウモリだったりトレントだったりの魔物が休憩もしないうちに襲ってくる。

 

俺の歩き方が悪いのかランタンが悪いのか、多分前者だな、冒険者は普通にこの森に入ってるらしいし。

 

念のためランタンを消して腰に装着する。

 

近くの木を駆け上がり、木から木へ跳ぶ。

 

だがそんなことをしていたら大物にも会うわけで、

 

岩だと思ってふんずけたものはすげぇでかい熊だった。

 

熊は俺をみて咆哮した。

 

熊の大きさは四つん這いの今でさえ八メートルほど、でかすぎる。

 

俺はまた木に登ろうとして木ごと地面を抉りとった熊の一撃をみて諦めた。

 

短剣を逆手に持って熊の横を通りすぎ様に足を切る、血が出たが筋肉を切るには至らない。

 

毛をつかんで上へ跳ぶ。

 

背中にのり、とりあえず突き刺すと熊は立った。

 

ヤバイと思って離れると背中から倒れ込んできて短剣が背中にずっぷりと突き刺さった。

 

熊は全然痛みを感じていない?ようで構わずに起き上がり俺をみた。

 

威圧感もそうだが殺気の質がヤバイ。

 

俺が持ってきていたのは短剣とランタンのみ、ランタンは武器じゃないから除外すると俺には武器がない。

 

熊は短剣の痛みすら耐えられる程度っぽいからな、取り出すには少し無謀すぎる。

 

熊の突進が迫る。

 

横に避けようとすると熊は一瞬で横へ移動した、何がなんでも俺を殺すつもりらしい。

 

「チッ。」

 

まだあまり制御できないが・・・使うか。

 

『身体強化』

 

まだ無意識に出来るほど使い慣れていないのでわざわざ声に出して使わなきゃいけない。

 

「まずは一発、ブッ飛べ!」

 

突進に合わせて大きく振りかぶった右ストレートは熊の勢いをかなり削ったが俺の体は簡単に吹き飛んだ。

 

だが、生き残った。

 

右手が動かないのできっと骨が折れている、だが足と左手は無事。

 

熊は既に振り返って俺を爪で引き裂こうと腕を振りかぶっている。

 

落下を始めた俺にピッタリと重なる軌道だ、野球ならホームランとでも言いたくなる。

 

だが、軌道が合っているということは熊は俺を見ているという事でもある。

 

「ランタン!」

 

ランタンに火が灯る。

 

暗闇のなかで戦っていた熊は急に灯ったランタンの光に目をやられた。

 

その隙に短剣を背中から力ずくで抜き出し脇の下から一気に切り上げた。

 

「ッシャオラァ!左腕は貰ったぜ!」

 

肩から先が身体強化によって大人の数倍の身体能力になった俺の攻撃で腱が切れたのか動かなくなった。

 

熊は依然として立ったままだ、四つん這いでは大きな隙を晒すことになる。

 

熊は唸っている、諦めてくれると助かるがそんなうまい話はなかった、明らかに負傷が多いのも俺、武器が貧弱なのも俺、気を抜けば死ぬのは最初から同じ。

 

対して熊は俺の会心の一撃で何とかギリギリ左腕を使用不能にした程度、確かに隙はできるが逆に言えば大事な場所を守っていれば負けることはない、逃げようにも熊の大きさ的に数歩もあれば事足りるし、何なら体当たりを当てるだけで勝てるのだ、閃光も対策さえ知っていればまず敗けはない。

 

この森の魔物はほぼ全て考える頭があった。

 

だから戦闘で有利なのは人間にもひけを取らない魔物側なのだ。

 

さて、次はどうやるか。

 

俺がそんなことを考えていると熊は左腕を噛み千切った。

 

俺が驚いているとすぐに左腕が再生した。

 

「おいおい、嘘だろ・・・!」

 

バケモンかコイツは!?

 

腕は貧弱ではあるがそれでも熊の体重を支え、更に攻撃で俺を殺すには十分すぎるほどの力はあるようだ。

 

「絶望的すぎるだろ、でもやるしかないか。」

 

短剣を構え、熊をじっと見る。

 

「おい。」

 

その時、俺が聞き慣れた筈の人物の声が聞こえた。

 

「私の子供に何をしている?」

 

カルトだった。

 

熊は既に怯えきっていて俺のとなりに現れたカルトに恐怖している、俺が何とか左腕を奪うに過ぎなかったあの熊がだ。

 

「失せろ。」

 

カルトがそう言った瞬間、熊の体はネジ曲がり、血を噴き出して絶命した。

 

「なっ・・・。」

 

聖霊というのはここまで圧倒的な力を持つものなのか。

 

俺は安心したのかへたりこむ、力がもう全く入らない。

 

カルトは安心したようにため息を吐いた。

 

「このバカタレが!」

 

そしてめっちゃいたい拳骨を貰った。

 

「っづぁあああ!?」

 

「誰が奥地まで行けと言った!?ランタンをつけていればすぐに帰ることができたであろうが!?」

 

そんなことも言っていたか、全く記憶にない、というか泣きそう。

 

「そもそもなぜロックベアになど挑んだ!?あれはまだ子供だ!お前では子供にすら勝てぬと分かった時点で逃げる選択をせんか!」

 

マジで?あのでかさの奴が子供?

 

そのあとも延々とカルトは俺に説教を続けると思ったが俺の傷を見て一旦飲み込んだようだ。

 

「その傷を治すぞ、説教はそのあとじゃ、バカタレが。」

 

「・・・ごめん。」

 

「フン、自分の命も守れぬものに、何が守れるものかね。」

 

カルトは家まで俺をおぶって歩き始めた。

 

カルトは人間じゃないが、何故か安心できる、だからだろう、俺はすぐに眠ってしまった。




魔術無かったらこんなものですね、遠距離攻撃が無いと途端に弱くなるチート主人公の図。


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人間

八歳になった。

 

身体強化もかなりの割合で操れるようになり、体に成長に合わせて魔力量も増えはじめて来たのでカルトとの戦闘訓練も追加された。

 

そして結果だが俺の身体能力では雷を斬ることも風の刃を避けることもできないのであっという間に負けた。

 

しかもほぼ真っ暗な森の中だからか雷の光が予想以上に目に刺さる。

 

閃光で視界が潰されると同時に地面に倒れていたのだ最初は何が起こったのか分からなかった。

 

そして戦闘訓練に伴いいつぞやの長剣を使ったのだが一瞬で壊れた。

 

俺の服もすぐに駄目になるので最近では真っ裸で戦っている状態だ。

 

流石に終わったら寒いので服は着ている。

 

何だか順調に蛮族への道を歩んでいる気がする。

 

そして最近では剣ではなく大剣を素振り用の得物としている、筋力がつくし何より大剣レベルのものを持てるのなら何を持っても武器として使えるだろう。

 

カルトが家の地下倉庫から取り出してくるので中身はなんだと聞くと此処を襲った人間達の死体とか武器が大量に保管されていると言われた。

 

そしてカルトは最近ではよく何処かに行くようになった、帰ってきたら泣きそうになっていたり酔っているかのように笑っていたりし始めたからきっと誰かと会っているのだろう。

 

今日もカルトは何処かへ行っている、俺は家から出て狩りをしようと思って短剣と素振り用の大剣を背負って家を出た。

 

ランタンは持っている、ランタンを灯して掲げれば家の前に転移できる。

 

熊の時は俺が興奮しすぎてそれを頭から放り出していたらしい、説明したがすぐに忘れていた辺り俺の興奮具合がよく分かる。

 

「さて、今日は何にするかな、狼、猪、蜂でもいいが、そうだ、ウサギなんかもあるな。」

 

勿論全部魔物なので俺より何かしら秀でている、ウサギに至っては撹乱が得意なので気を抜けば頭が消し飛ぶ。

 

「~!」

 

「ん?」

 

いつもとは違う声が響いてきた。

 

「~けて!」

 

「まさか人間か?何だってこんなところに。」

 

木に登り、声の方向を探る。

 

俺からみて右、走るか。

 

木の枝を足場に跳ぶ。

 

叫び声の主は女のようで甲高いからこそ位置が変わればよく分かった。

 

所々から狼の声がするので狼の集団に追いかけられているとみた。

 

叫んでいる人間の元へたどり着いた、大きな幹にもたれ掛かり、手に何かのシンボルを握りしめている。

 

「助けてください、神よ、助けてください。」

 

人間は俺と同じくらいの女の子だった、このくらいの女の子がここまで来れるはずも無いのできっと森に入った辺りからつけられていたのだろう。

 

真っ暗な森の中でやたら滅多に走り回るのがどれだけ自殺行為か、今も少女の回りに狼が集まっているが少女はそれに気付かない。

 

「仕方無い、か。」

 

少女のもたれかかっている木の上に着地する、それの音で少女は怯えているようだ。

 

狼も焦ったのだろう、群れの一匹が少女に飛びかかった。

 

「全く、何でこんなところに、俺が言えた義理じゃないんだがな。」

 

大剣を地面に刺して壁を作る、狼がそれを避けようと体を反らしたが空中で姿勢を帰ることもできずに大剣にぶつかる。

 

刃が立っている訳でもないので切れたりするわけではないが俺の出現と共に警戒心を露にした狼達は動かない。

 

「おい、今から灯りを渡すから照らせ、良いな?」

 

「は、はい!」

 

いい子だ。

 

ランタンを少女の手に渡すとすぐにランタンを照らした少女は驚いていた。

 

俺は大剣をそのままにして短剣を構える。

 

「来いよ、犬ッコロ、肉にしてやろう。」

 

狼が飛びかかってくるのに時間はかからなかった。

 

大きく開いた口に短剣を差し込み、身体強化を使って無理矢理引き裂く。

 

裂けた頭部が後ろに飛んでいく。

 

「ヒッ!」

 

「次ぃ!」

 

狼の群れの中に飛び込み、複数の爪や牙が迫ってくるが鼻っ面に掌底を食らわせると吹き飛んでいく。

 

狼の手を掴んで背負い投げをする、すると他の飛びかかった狼の攻撃を背に背負った狼が全て受けてくれた。

 

盾にした狼を地面に倒し、腹を出した狼の腹を踏み台にして飛び上がる、俺を見て上を見ていた狼の顔に向かって短剣を投げる。

 

短剣は狼の目に深く刺さり、狼は叫び声をあげた。

 

地面に降り、短剣が刺さっている狼の首を掴んで短剣を引き抜く、抜いた短剣で俺の後ろに居た狼の顔を両目ごと切り裂いた。

 

目が使えなくなった狼はがむしゃらに噛みつこうとしてきたので短剣を刺していた狼の首を噛ませて俺は上から狼の首を短剣で削いだ。

 

狼達はまだ30匹ほど居るが仲間が三体死に、もう一体も時間の問題なので諦めたようだ、大量の足音が響き、静かな空間が戻ってきた。

 

「ふぅ、おい、無事か?」

 

少女を見ると股から黄色い液体を漏らしていた。

 

「・・・はぁ、着いてこい、家に案内してやる。」

 

「あ、ありがとう。」

 

大剣を引き抜き、狼達の死体を集めてランタンを掲げる、すると狼の死体と俺達は家の前に転移していた。

 

「え!?」

 

「とりあえず中には入れ、あと、風呂沸かすからさっさと入ってこい。」

 

「お風呂!?お風呂があるの!?」

 

・・・そうか、風呂ってそんなについてないよな、というか下手したら水浸しになるか。

 

風呂沸かしながらどうしようと頭を抱える、何となくで助けたがカルトにどうやって説明しよう、と。




戦闘シーンみてやっぱ技術もった蛮賊だなと思った作者は悪くないと思います。


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アト

少女を風呂に叩き入れ、その間にカルトが帰ってくることを願う。

 

そして手持ち無沙汰だったので大剣の整備をし、短剣がそろそろ壊れかけていたので仕方無いが処分する。

 

何だかんだ何年間も使っていたものだ、素材も何か貴重なものっぽかったのでいつか鍛冶屋に行って新しくしてもらおうと思う。

 

「お、お風呂出ました。」

 

少女が出てきたようだ、布は置いていたから流石に体を拭くくらいはしててほしいな。

 

少女は布を体に巻き付けて胸元で押さえていた。

 

「そうか、お前、名前は?」

 

「・・・アト。」

 

アトね、了解了解。

 

この家はカルトによって色々な改造が施されている、地下に農園があったり薬草の群生帯に繋がる洞窟があったり、あとは何故か山羊がいたり、それのお陰か森の奥にある辺鄙な家でもある程度の生活水準はあった。

 

なので適当に飲み物を出すこともできる。

 

「緑茶か抹茶か紅茶かミルク、どれがいい?」

 

緑茶と抹茶など無い。

 

「ミルクでお願いします。」

 

「はいよ。」

 

冷えているわけではないがミルクをアトに渡す、アトもミルクを受け取って静かに飲み始める。

 

やっべぇ、何も話すことがねえから気まずいぞ。

 

「あの・・・。」

 

「ん?」

 

「何で、助けてくれたんですか?」

 

アトがそう言って俺を見る。

 

ぶっちゃけ俺も分からん、カルトが人助けはしておいて損はないと言ってはいたが、最悪この家で一生暮らしたとしても俺は不都合はないわけで。

 

「気まぐれ、だな。」

 

「気まぐれ?ですか。」

 

「ああ、だから忘れろ、もうすぐカルトも帰ってくる。」

 

「カルト?」

 

「ただいまじゃな、お主、もう少しおとなしくできんのか?」

 

エ○ダーマンが帰ってきた。

 

「お帰り、カルト、外への道を作ってくれ、こいつを返して来る。」

 

「今外は夜じゃ、今外に出しても獣に喰われて終わりじゃぞ?」

 

「・・・チッ。」

 

カルトの言葉はあまり信用出来ない、昼も夜もないこの森では眠たくなったら寝て起きたら運動するの繰り返しだ、陽の光すら無いのだ、カルトの言葉を信用するしかない。

 

「あの、迷惑だったら出て行きますけど・・・。」

 

「「行かんでいい。」」

 

「あっはい。」

 

アトはカルトを見て少しおびえている様だ。

 

「私の名前はカルトという、もしかしたらこれっきりかもしれんが、よろしく頼むぞ。」

 

「よろしくお願いします・・・?」

 

「カルト、魔物の解体するから手伝ってくれ、アトはベットが奥にあるからそれを使ってくれ。」

 

「分かりました、本当に泊まっていいんですか?」

 

「くどいぞ、カルトが朝になったと言ったらたとえ真夜中だろうが外に放り出す、それまで寝ておけ。」

 

アトはしょんぼりとしながらベットのある部屋へと向かった。

 

「お主、当たりがきついのう。」

 

「そうか?こんな場所に一人で来る様なアホなんざあれで十分だろ。」

 

「何か理由があったのかもしれんぞ?」

 

「それでも一人では無謀過ぎる、自分にできることの区別もつかん奴は破滅する、あんたが教えたことだぞ、カルト。」

 

カルトは頭を手でポリポリとかいていた。

 

「・・・ふむ、先ほどホルスに言われたのだがな、子供には旅をさせてやるがいいと言われた。」

 

「ホルス・・・確か光の聖霊だったな。」

 

「うむ、ちょうど良い、お主、あのアトという少女と共に外へ行ってみてはどうじゃ?」

 

「・・・なんで?」

 

「だから旅をさせろと言われたからじゃ、お主にはもう少しくらい世界を広くした方が良い。」

 

カルトは自分でうんうんと頷いており、満足そうだ。

 

「・・・わかった。」

 

「うむ?素直じゃな、いつものお主なら顔を顰めて言い訳を並べるというのに。」

 

「うるさい、条件がある。」

 

「・・・なんじゃ?言ってみよ。」

 

「・・・・・・・・・何かカルトを感じさせる物が欲しい。」

 

正直な所すげえ恥ずかしいが今の俺はカルトが近くにいるだけで安心するのだ、少なくとも、挫けない為に何か欲しい。

 

「・・・クッ。」

 

「く?」

 

「クァッハッハッハ!!そうかそうか!私からのプレゼントが欲しいと言うか!あっははははは!!」

 

「クッソ黙れ笑うな指差すな腹黒聖霊!」

 

カルトはツボに入った様で暫くの間笑い声が響いた。

 

「クソッ言わなきゃよかった。」

 

「フフッ、いやまぁ、問題は無いぞ、フハッ、特別な物をやろう、フフッ。」

 

「今すぐ笑えない様にしてやろうか腹黒聖霊さんよぉ・・・!」

 

「そう恥ずかしがらんでも良い、むしろ、お主の年齢でそんな控えめな願い事など・・・まだまだわがままを言っても良いのだぞ?」

 

「じゃあ・・・またこの家に来る、その時は土産話をしてやる。」

 

「フッ、私は闇の聖霊だぞ?少なくとも夜の土産話など、すぐにでも分かるぞ?」

 

「なら昼の土産話を楽しみにしてろ、なんならたまに俺のところに来て鍛錬をしてくれ。」

 

俺の言葉にカルトは薄く笑うばかりだ。

 

「・・・なんだよ。」

 

「・・・赤子から少しだけ成長した様な幼子が、既に親離れするほどに大きくなったのだと思ってな。」

 

「親離れ、ね、俺を生贄にした奴等も俺からすればどうでも良い。」

 

「自分を産んだ母親にくらいは感謝しておいた方が良かろう、私が変質させたとはいえ、お主を腹を痛めて産んだのには変わり無い。」

 

きっとカルトは母さんの居場所を知っているのだろう、それでも黙っていたということはいずれ俺を外に出すつもりだったという事でもある。

 

「それでも、カルトは俺にとって親の一人だよ、カルトの知識のおかげでここまで賢くなれたんだ、ありがとう。」

 

「・・・そうか、もうそろそろ寝ておかないと明日の朝に出発できぬぞ、ほれ、さっさと寝るがよい、少女の隣で寝るとよかろう、ベッドにもまだ広さはあったはずじゃ。」

 

「そうしよう。」

 

俺はアトの横で眠りについた。

 

ーーーーーー

「ホルスよ、お主の言った通りだったな。」

 

会って数年、我ら聖霊からすれば瞬きにも等しい時間なのに、いつの間にか息子だと思ってしまっている自分が居る。

 

最初はただの気まぐれだった、まだ二本の足で歩くこともままならない子供を、ただの気まぐれで育て始めた、大きくなり、動き始めるとそこからの成長はとても早い。

 

未だ数回しかこちらの手札を見せていないにも関わらず、幾つかの手札は既に攻略されつつある、それはあやつが天才であるという証でもあるのだが、親として、これほど誇らしいものはない。

 

(君は既に親の顔をしているよ、カルト、でも、可愛いだろう?人間は。)

 

「ああ、私は腹を痛めて産んだわけでも、ましてや奪った訳でもない、それでも、私の息子だと、そう言ってくれるのなら、全力を尽くすまでよ。」

 

暗所でのみ育つ緑藻を混ぜ込んだ布ではなく、私の血を混ぜ込んだ聖霊布を作る。

 

「すまぬな、我が息子の母よ、お主の息子もすぐに行く、私は影から見守っていよう。」

 

地下の湖に血を垂らし、魔法陣を描く。

 

緑藻は黒く染まり、黒い光とでもいうような光を光らせる。

 

「私の知識はもうほとんど授けた、技術も知らない間に身につけていた、あやつは誠の鬼よ、だがなあやつを鬼にせぬ為に私の一部を封印として使わせてもらう。」

 

光が落ち着き、湖の中に出現したのは黒い布束、これを束ね、服にする。

 

「これを着たあやつはきっと、とても男らしいのだろうな、いや、まだ子供、そんなことを考えるような物でもあるまいか。」

 

魔法でサイズも完璧に合わせるようにする。

 

およそ3時間に及ぶ精密作業を終わらせ、一息つこうとした時、カルトは気付いた。

 

「ぬ?」

 

湖の中で精霊が出現していた。

 

「私の眷属か・・・あやつのお供にもちょうど良いのかもしれぬなぁ。」

 

精霊を近寄らせ、名前を授ける、種族名インプだ。

 

個人名はあやつに決めさせようと心に決めて、カルトは服を畳んだ。

 

「あやつの武器はここで私が作るよりかは、身の丈に合ったものを使った方がよかろうて、選別はこれだけじゃな、まだまだ足りぬ気がするわい、これでも十分過ぎるほどなのになぁ・・・。」

 

(君はいつか、息子の為にその身を投げ出すかもしれないよ?いくら聖霊でも命を一つ無くせばもう別人と言っていい、それでも君は自分の息子に手を貸すのかい?)

 

「ホルスよ、あの時、お主が何故そんな事を知っているとそう思ったが、そうか、お主は既に幾度も、身を投げ出しその身を滅ぼしてきたのだな、光は不滅、故に記憶を持ったまま転生し、ほぼ同じ人格で生まれ変われる、しかし、私は闇、光が強ければ強いほど、私は強くこびりつく、願わくば、息子の生きる道が闇で覆われぬよう、祈るしかあるまいな。」

 

カルトはゆっくりと目を閉じる、カルトは闇こそが権能であり、眠りなどは意味を成さない、しかし、今だけは息子が遠くに行ってしまう親の夢へと向かって微睡んで行った。

 

ーーーーーーー

「起きなさい。」

 

カルトに起こされ、眠くなりながらも起き上がる。

 

アトも既に起きており朝ごはんにがっついていた。

 

「あんまり急いで食べるなよ・・・ふぁ。」

 

「だって・・・おいひい・・・もん!」

 

案の定すぐに喉に詰まらせていた。

 

カルトが慌てて水を飲ませている。

 

「カルト、プレゼントは?」

 

「フッフッフッ、私の力作を見よ。」

 

カルトがそう言って取り出したのは外套だった。

 

「雨を弾き、ついでに血も弾き、衝撃を吸収し、風化もせず、更に自動的に修復される上に衝撃すら緩和する!どうじゃ!?私の会心の出来じゃ!」

 

「・・・・・・・・・。」

 

俺の隣でアトも驚いている。

 

「やり過ぎだバカルトォ!」

 

「何故じゃ!?」

 

そのあと一悶着あったが結局押し付けられた。

 

外套をつけると真っ黒な割に他の色と合うため、隠れる時にもあまり邪魔にならない。

 

「こっちじゃ、私について来ればすぐに外に取られる故な、足を取られぬよう気をつけよ。」

 

「全く、何でこんな高性能にしたんだよ。」

 

「年甲斐も無くはしゃいだ結果じゃ、老婆心故のものじゃ、大人しく受け取るが良い。」

 

「ありがとうございます、大事にしますよ。」

 

「それで良いのじゃ。」

 

カルトがご機嫌すぎる。

 

エ○ダーマンの癖に。

 

アトはビクビクしながら後ろを歩いている。

 

「そろそろ森を抜けるぞ、土産話を楽しみにしているぞ?」

 

「はっ、待ってろ、たっぷり聴かせてやる、嫌になるまでな。」

 

「はっはっは、楽しみじゃ。」

 

森を抜けると俺からすれば数年間ぶりの陽の光だ、少し目に眩しい。

 

「眩しいな、ちょっと慣れるまで時間がかかりそうだ。」

 

「まずはアト少女の村に向かうのじゃ、ゆっくりしていけば良い、ではな。」

 

「ああ。」

 

さよならなんて要らんだろう、多分なんだかんだですぐに会うはずだ。

 

「えっと、道があそこだから・・・よし!」

 

「アト、道はわかってるんだな?」

 

「バッチリ!」

 

そうか。

 

「道案内、頼むぞ。」

 

「まっかせて!暗いところじゃないし大丈夫!」

 

森での怯えようは嘘だったかのように元気に歩き始めたアトに俺は後ろからついて行った。




序章?プロローグ?まぁ何はともあれ導入終わりやで、こっからは色々と話を展開しつつゆっくり進めていくことになります。

元々拙い文なのは警告してるからそんなに気負わずにかける分なかなか作者にとって面白いのが書けている気がします。

一応かなり先の方の伏線とかも貼ってるから続けようと思えばいくらでも続けられるという。


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アトの村

「着いたよ!ここが私の村!」

 

森からそう遠くない場所にあった村は穏やかな場所だった。

 

「そういえば聞き忘れていたな、お前はなぜあの森に?」

 

「・・・笑わない?」

 

「多分な。」

 

「じゃあ言わない。」

 

そうか。

 

アトはチラチラとこちらを見ているが俺は放置する。

 

それに、アトを見つけた大人が般若の形相で此方に向かって歩いてきているのだ、俺は退散する。

 

「アト!!」

 

「ヒッ!」

 

売店でもあれば魔物でも狩って金にするんだがな。

 

「た、助けて!」

 

「断る。」

 

アトから差し出された手をはたきおとし、村に入っていく。

 

俺の髪が灰色だからなのだろうが子供達が俺を遠巻きに見ている。

 

雑貨屋はあったがめぼしいものは無さそうだ。

 

「店主、この辺りに売れるような魔物は居ないか?」

 

「うん?ああ、素材になる魔物かね?この辺りはあまり魔物もおらんでのぉ、ああそうだ、ちょっとした薬があるんだが買っていくかい?」

 

爺さん・・・。

 

「大丈夫だ、薬というほどの物ではないが、怪我を治すものくらいはある。」

 

そんなものは無い。

 

「そうかそうか、しばらくしたら魔女さんがくるでのぉ、何か打診してみてはどうじゃ?」

 

「魔女?」

 

「魔女さんじゃよ、傷があるがべっぴんさんじゃ。」

 

「それは聞いてない。」

 

「ホッホッホ。」

 

店主の爺さんは笑いながら店の奥へと消えていった。

 

「大分ガタ来てんなあの爺さん。」

 

爺さんを少し気にしつつ店内を物色していると誰かが近付いてきた。

 

「おい!それ本物か!?」

 

「あ?」

 

そこには悪ガキという言葉が似合いそうなガキとその後ろに二人くらいの取り巻きがいた。

 

「こんなでっかい剣持てるとかすげェな!」

 

「あ、ああ。」

 

こんなガキだと嘘だと決めつけて襲ってくると思ってたんだが、存外純粋らしい。

 

「かっけーな!俺にも持たせてくれよ!」

 

「そうか、持てるかは分からんが、しばらくここの村にいる、少しくらいなら持たせてやろう。」

 

「やったぜ!」

 

目の前のガキが喜んでいると後ろの二人も期待するような目を向けていた。

 

「はぁ、分かった分かった、お前らにも持たせてやる、だからそんな目を向けるな。」

 

「やった!」

 

「お前は今日から俺の子分な!」

 

「おいてめぇ、それ本気で言ってんのか。」

 

「当たり前だろ?」

 

頭が痛くなる。

 

「なら、俺が今日泊まれる場所を教えてくれ、アトも今頃は説教されてるだろう。」

 

「ゲッ!?」

 

ガキはアトの名を出すと驚いていた。

 

「お前アトの仲間かよ!あんな男女のどこがいいんだ!」

 

あれそんなに男っぽいか?

 

「知らん、助けたら成り行きで来ただけだ。」

 

「そうかよ、子分ならあいつと別れろ!いいな!」

 

「そんなまた横暴な・・・。」

 

ガキは何処かへ歩いていってしまった。

 

「アホかよ、いや、アホだな。」

 

「見つけた!」

 

噂をすればなんとやら、だな。

 

「アト、宿はあるか?」

 

「無いよ。」

 

「無いのか。」

 

まぁ規模も小さいし、そんなもんかな。

 

「だから今日から私の家に泊まりなさい!」

 

「親には言ったのか?」

 

「今から!」

 

こいつら揃いも揃って・・・。

 

「何でそんな残念そうな人をみる目なのさ。」

 

「お前の言った通りだからだよ。」

 

名前、ゼルかなー、やっぱ。

 

「また一悶着ありそうな予感がするわー。」

 

「失礼な!お母さん達だったら許してくれるもん!」

 

「俺は明日になれば適当に魔物狩る予定なんだが?」

 

「じゃあ今日は泊まれるじゃん。」

 

この子押し強くない?疲れるわこのテンション。

 

「分かった分かった、そら、家行くぞ。」

 

「私の家だからね!あの家じゃないからね!」

 

「分かってるっての!」

 

アドニス連れられてアトの家まで来る、アトは扉を叩き、少し待っていた。

 

「誰だ?」

 

「お父さん!アトだよ!」

 

今気付いたけどこの家でかいな。

 

「何!?」

 

扉が大きく開き、中からアトと同じ青い髪の男性が出てきた。

 

「このバカが!」

 

あ、めっちゃ懐かしい、対応が完全にカルトと同じだ。

 

「お前には次期村長としての自覚が「アーアーアー!とりあえず話を聞いてお父さん!」・・・。」

 

お父さん凄い青筋たててるけどこの状態で俺と話してもいいのかコレ?

 

「黄昏の森で私を助けてくれた恩人で、名前は・・・。」

 

頭を押さえる、教えてないからいいんだが、親の顔くらい見ろよ・・・。

 

「ゼルです、森で狼に教われてたところを保護しました。」

 

「そうそうゼル!ゼルには今日ここで泊まって貰うから!」

 

「アァ!?」

 

そうなるよなぁ、分かるでお父さん、俺も通った道だ。

 

「お父さん!ゼルって凄いんだよ!狼の首を素手で千切り取ったりしてたんだよ!」

 

「おいなに口走ってるアト、短剣を口に差し込んで切り取っただけだ。」

 

「それにカルっ・・・。」

 

全力で口を防いだ、こいつ放置してたら要らんことばら蒔きそうだ。

 

「モゴモゴモゴ。」

 

「・・・まぁそんな感じで訳ありなんですよ、一晩だけでいいんで、泊めてください、あと、必要なら森の魔物の素材も渡しますんで。」

 

「・・・まずはアトを預かるぞ、奥の客室を使え。」

 

お父さんは目を血走らせてそう言った。

 

「有難うございます。」

 

「それでねお父さん!「お前はまず説教だ!」うわぁ!助けてゼルぅ!」

 

「おとなしく怒鳴られろ戯け。」

 

「裏切り者おおおお!!」

 

アトの叫びを聞かなかった事にして俺はアトの家に上がった。




ゆっくり更新していきます。


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狩り

「盛大にやってんなぁ。」

 

部屋の中で色々と雑事を済ませているとアトのお父さんの怒鳴り声が未だに響いているのに驚いた。

 

そういえばアトのお父さんの名前知らないんだよね。

 

暇だし、何か適当に訓練でもしとくかな。

 

そしてこの家、やはり風呂はなかった。

 

ーーーーーー

「ゼル、ご飯だよ。」

 

「もうそんな時間か、了解。」

 

「せめて汗は拭いてね。」

 

「分かってるよ。」

 

もう既に日は降りかけている、いつも訓練にはカルトとの模擬戦をイメージしているのだが大体三十秒くらいで俺が倒れる。

 

俺のカルトとの勝負ではほとんど勝つことはできない、カルトの方は円から出てはいけない、ひとつだけでも当たれば負け、道具を使ってはいけない。

 

というハンデがありながらも圧勝なので似たような戦法を取る魔術ありの俺はヤバイよね。

 

でも今はそんなこと言ってられないから本気で挑むけど負ける。

 

アトの家に入るとキッチンに一人の女性がいた。

 

「あら、貴方がゼル君ね?初めまして、私はハルっていうの。」

 

チラチラと垣間見える日本人の影響よ・・・。

 

「はい、これから数日間よろしくお願いします。」

 

「ええ、あの子のこと、よろしくね。」

 

何か違う意味で言ってませんかね。

 

「もうご飯は出来ているから、リビングに行って待っててね。」

 

「わかりました。」

 

リビングに行くとアトのお父さんがムスッとした顔で待っていた。

 

「・・・。」

 

「うちの娘を助けてくれたこと、感謝する。」

 

「ただの気まぐれだ、それに、俺は自分の事すらよくわかっていない、信用する方がおかしいだろう。」

 

「それでも、感謝は受け取っても問題無いだろう。」

 

「なら、適当に狩りするんで、素材になる物があれば買い取って貰いたい。」

 

「小さな村だ、金があるとは思うなよ。」

 

「分かってる。」

 

どうしよう、ついタメ口で喋っちゃったけどどうしよう、失礼じゃないよな?

 

「チッ、何でアトはお前を気に入ったんだろうな。」

 

「知るかよ・・・。」

 

そこからは無言で食事をする、あ、うまい。

 

「あー!先に食べてる!ずるい!」

 

後ろからアトに抱きつかれた、そのせいで飲み込もうとした食べ物を喉に詰まらせた。

 

「ハグッ!?」

 

胸を叩いて吐き出す。

 

咳をしながらアトを睨むとアトは目をそらした。

 

「あらあら、仲良しなのね。」

 

ハルさんあんたこの状況見て言うことがそれか?

 

「アト、お前後で覚えてろよ・・・。」

 

「・・・ごめんなさい。」

 

飯を食い終わったら日が暮れないうちに水を貰って体を拭く、風呂ほど綺麗になる訳じゃないが無いよりマシだ。

 

夜中の方が俺にはよく見えそうだが俺は寝る、流石にアトの強襲には疲れた、上半身裸になった時にノックなしで入ってくんのマジやめろ。

 

ーーーーーー

朝になり、大剣と短剣を持って家から出る。

 

村の入り口から出ていき、近くの森とか草原とかを探索する。

 

「いた、ゴブリンかな、初めて見るな。」

 

黄昏の森では基本的に目を使わない、目が無かったり、蛇のピット器官やコウモリの超音波のような技能を持っている魔物が多い、だから基本的に奇襲は困難、逆に彼方から奇襲されやすい。

 

だからか基本的に目に頼る人型の魔物は居ない。

 

黄昏の森の難易度が高いのはそれのせいもあるのだろう。

 

だが外では普通に光もあるし視界もある、だから俺は初めての人型の魔物との戦闘だ。

 

草むらからゆっくりと近付いていく、ゴブリンは三体ほどで固まっていて、羊のようなものを食べていた。

 

「シッ!」

 

一気に近付いて大剣で一人を切る。

 

気付いた二体のうちの片方に短剣を投げ、投げなかった方に大剣を上から叩きつける。

 

縦に両断されたゴブリンから目を離し、短剣を投げたゴブリンを見ると腹に刺さっていた。

 

「グギャ!」

 

「すまんな、死ね。」

 

首を切る。

 

頭は胴体と別れ、ゴブリンは3体死んだ。

 

「ゴブリンは確か金にならないな、町だと違うんだろうが。」

 

出来れば狼とかを殺したいが。

 

そう思って森に入るとすぐに戦闘音が聞こえてきた。

 

「助けるか。」

 

この辺りならアトの村に行くこともあるだろう、他に村があるかは知らないが。

 

音のする方に走る。

 

森の少し開けた場所で狼の群れと荷馬車を中心に何人かが固まっている。

 

狼の数は十、人間の数は4かな。

 

走りながら何をするかを決める、まず何体か狼を減らす、次に負傷者の確認、んで出来そうなら狼の全滅、この辺りか。

 

「助太刀する!」

 

狼の後ろからの強襲、攻撃は当たらなかったが大剣のインパクトはそう簡単に消せるものじゃない。

 

予想通り慌てた狼達は攻撃する前に俺を警戒し始めた。

 

「助かった!」

 

「あれくらいならヘマをしなければ問題ないさ、すぐに片付けるぞ。」

 

『応!』

 

狼に斬りかかると乱戦になるため迎撃だけにする。

 

たまにフェイントをかけて誘い出すがなかなか見つからない。

 

こうなりゃ一体だけ速攻で倒して撤退させるか。

 

身体強化で一気に狼の群れへ突撃する。

 

大剣を地面にめり込ませ、上へ力ずくで振り抜いた、すると地面が割れ、細かくなった土や石が散弾のように狼達を襲う。

 

何体か負傷し、狼達は撤退していった。

 

傷ついている狼達を始末し改めて護衛達と話すことにした。

 

「すまねぇな、あれならあんたらだけでも対処はできただろう?」

 

「それでも負傷者がでたら意味ねェよ、ありがとな。」

 

「それで?誰を護衛してたんだ?場合によっちゃもうすこしくらい手伝えるぞ。」

 

「いくら強くても子供が無理言っちゃいけねぇよ、まぁ、婆さんだからな、男二人いれば十分だ、坊主は気にすんな。」

 

冒険者とはみんなこんなに親切なのだろうか、それともこの人が稀少なだけなのだろうか、どちらにしろいい人そうで安心した。

 

「この先の村に用があるならまた会うかもな、俺の名前はゼル、よろしく。」

 

「ゼル坊、元気でな。」

 

「ああ、またな。」

 

あいつら面白いな、話してたのは一人だけだったが他の奴も中にいた婆さんと話してたり世話してたりしたし、いい人たちだ。

 

「さて、狩りを続けるかね。」

 

今日の戦果は鳥と猪一匹ずつだった。




早く進みたいけど進みすぎたらエタりやすくなるこのジレンマ、まぁゆっくりとやってくかー。


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親と婆さん

「ゼル、客人だ。」

 

「魔女さんか?」

 

「ああ、お礼がしたいんだそうだ。」

 

「別にしなくても良いんだがな、まぁ、会おうか。」

 

魔女は客間に居るらしく、アトが話していた。

 

アトが話していた相手は婆さんでフードを被っていた。

 

「あ!ゼル!おかえり!」

 

「おう、それでだ、婆さん、さっきの礼なら別に要らないんだが、何か用か?」

 

「・・・。」

 

婆さんは何も言わずに俺を見ている。

 

「おい婆さん、喋れないのか?」

 

「いや、そんな事はないんじゃ。そうか。」

 

婆さんの様子は何かを思い出しているようで俺は記憶を思い出そうとしていた。

 

「お主の名前はゼル、で合っておるのだな?」

 

「ん?ああ、俺の名前はそうだな。」

 

「そうか、そうか・・・。」

 

なんか俺の名前になんか関係あったか?

 

「お主は、私の孫だ。」

 

「・・・・・・・・・ん!!?」

 

あ、ああ!!!?そういう事か!?母さんのところに来てた老婆か!?

 

「・・・俺が・・・婆さんの孫?」

 

「私の名はマーリン、魔女と呼ばれておる、お主の母は私の娘じゃよ。」

 

「えぇ・・・。」

 

じゃあなんで俺は生贄になったんや・・・マジで何があったんや。

 

「・・・今のお主にはあまり関係ない話さね、でももし、知りたいと思うなら、あの子の村に、来て欲しい。」

 

「・・・。」

 

俺まだ森から出てきて2日くらいなんだが?何でこんなに厄介ごとが・・・。

 

「・・・。」

 

「ゼル?」

 

「2人で話したい、アト、少し部屋から出て行ってくれ。」

 

ハルさんが無理やりアトを部屋から出して扉を閉めた。

 

「婆さん、俺は何で森に捨てられた?」

 

「・・・当時村の中で疫病が流行っていた、処置も簡単で薬さえあれば気にせずとも良い疫病じゃ。」

 

「それで疫病を止めるために婆さん達は奔走したと?」

 

「うむ、そして同じく奔走していた婿殿・・・お主の父親が倒れた。」

 

「・・・。」

 

「薬を作っていたのは婿殿だったのじゃよ、人里に下りて薬の作り方を教え回っていた心優しき者じゃった。」

 

「それで倒れてたら意味無いだろうに。」

 

「・・・そして婿殿はお主を身籠ったキャロル・・・お主の母に知らせずに治療を続けた。」

 

そして死んだ、か。

 

「それで死んでたら意味が無いだろう、自分を守れない奴に何が守れるものか。」

 

カルトはいちいち真理をついてくる気がするわ、こういう話を聞いていたら。

 

「・・・キャロルは夫が死んだ事を知ると一晩中泣いた。」

 

その辺りはまだ記憶に残っている。

 

「その次の日、村の男達がやってきた、薬がたんまりあると思って私たちの家に襲いかかってきたのだ。」

 

俺その状況で寝てたのか、度胸あるな。

 

「そして、何が起こったのか黄昏の森に居る異教の神に生贄として捧げようという話になった。」

 

「だから俺が捨てられた・・・いや、生贄にされたのか。」

 

「お主が生きているという事は黄昏の森に住むのは異教の神などでは無いのだろう?」

 

「ある意味合ってるけどな、カルトだし。」

 

「!・・・そうか・・・闇の聖霊・・・なるほど、かの者が・・・。」

 

カルト本当に知名度あるんだなぁ。

 

「それでだ、俺を産んだ母さん、キャロルは・・・生きているのか?」

 

「ああ、生きておる、お主が顔を見せればきっと喜ぶ!」

 

「だから,会えと?」

 

「・・・。」

 

俺の母さんは多分、精神が死んでる、だから魔女としてこの婆さんが村を回って隊商染みた事をやっているし、薬も売っている。

 

「俺の母さんは、既に生きる活力を失っている、そこから俺があったとして、それで活力が戻ったところで一度壊れた精神が歪なまま固まれば今度こそ母さんは死ぬ、それがわからないほどじゃ無いだろう。」

 

魔術があれば、と何度も思ったが、本当に、何も出来ないこの状況は、嫌いだ。

 

「・・・俺は魔法が使えない、使えるのは身体強化のみ、それもかなり限定された状況のみだ、魔力が育てばまた別なんだろうが、母さんを救えるほどの力は俺には無い。」

 

「・・・だから、キャロルに会わないと?」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

どうする?俺は魔術が使えない、何も出来ない。

 

なのに、少なくとも、血が繋がっていて、少なくとも短い期間だったとはいえ愛を与えてくれた相手に何かできることはないのか?

 

カルトなら、いや、カルトは闇の濃度を上下させるだけで無くすことはできない、闇を払うのは光の聖霊ホルスの領分。

 

「・・・チッ。」

 

「ゼル?」

 

「文通ならどうだ?」

 

「キャロルが本物と信じるかどうか。」

 

「やってみなきゃ分からん、取り敢えず、何か書いてみる、ここに寄ったら手紙を一通書く、それをあんたが母さんに届けてくれ、そうすれば、運が良ければ、治る可能性だってあるだろう。」

 

俺は何度も転生するにあたってある程度の線引きを引いている。

 

家族は大事にする事、損を被せて利を与えよ。

 

貰った分の恩は全て返せ、と何があっても大事な者を守れ、の四つだ。

 

女だろうが男だろうが、果ては化物だろうが、それだけは守ってきた、それだけ苦しむ羽目になろうが、死にたくなろうが、それだけは。

 

だからこそ、救えるとも思えない、俺が個人で何かをできるとも思わない、それでも何かをしたい。

 

悩む時間はとっくの昔に終わった、苦しみなんざ大事な奴の笑顔で全部吹き飛ぶんだからいくらでも苦しんでやる、だから俺は他人から幸福を奪い取ってでも大事な奴を笑顔にさせる、幸せにしてみせる。

 

今すぐは無理かもしれない、でもいつかは親子として、顔を会わせる事ができるように願う。




まぁ大事な人を立て続けに2人失ったら精神崩壊くらいするよねと、しなかったらそれはそれでなかなか精神力ヤバイと思うの。

因みに2作目からの主人公の行動基準が上の四つやで。

その結果が覇王とか魔王とか死神とか言われてるんですけどね!


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魔族襲来

「よし、そろそろ魔物は少なくなってきたな。」

 

俺が狩りをしているのでゴブリン含め魔物も少なくなってきた、魔石なんかも一応集めていたが数が多いので途中から集めていない。

 

「ゼルー!」

 

村の外で大剣を振っているとアトが出てきた。

 

「おう、なんだアト。」

 

「私に剣を教えて!」

 

「無理、諦めろ。」

 

「何で!?」

 

お前大剣持ち上げようとして腰をやったじゃねえかよ。

 

「お前がところかまわずわめき散らすからだバカ者め。」

 

アトは弓はちゃんと標的に当てるんだけど近接はなぁ。

 

「とりあえず、今日は狩りするほど魔物がいる訳でもなし、帰るか。」

 

「剣を教えてよー!」

 

村も俺の狩りの成果でなかなか潤った、少なくとも一年分位は備蓄できているだろう。

 

「さて、そろそろどっかにいくかねぇ。」

 

「え!?」

 

アトいたなそういえば。

 

「俺はずっとここにいるとは言ってないぞ。」

 

「私もいく!絶対そっちの方が楽しいでしょ!?」

 

「俺が言えた義理じゃねえけどお前子供じゃねえかよ。」

 

「お父さんくらい説得する!」

 

「ハッハッハ、抜かしおる。」

 

何週間かたったけど未だに敵視されてんだからな。

 

「うぅ~!」

 

アトが唸る、やっぱ子供だなぁ。

 

一人でほんわかとしているとあのガキ共が俺達を見ていた。

 

「おう親分、何だ?」

 

「な、何もねぇよ!」

 

そうか。

 

「じゃあな。」

 

ガキ共が少し気になったがとりあえず後回しだ、ガキ共はいったい何を?

 

家につくとアトはすぐにハルさんに飛び付いた。

 

「ゼルが村から出ていくっていってるの!止めてよお母さん!」

 

「あらあら、そうなの?」

 

「はい、流石にここにずっといるわけにもいかないので。」

 

「この子の世話を任せられるから居てくれても良いのよ?」

 

「お断りです。」

 

アトが無言で脛を蹴ってきた。

 

「痛いぞ。」

 

「痛くしてるんだよ!」

 

俺はその後もアトに纏わりつかれた。

 

ーーーーーー

「おい、ゼル!」

 

寝ていると誰かにたたき起こされた。

 

「何だ?魔物でも見たのか?」

 

「違うんだよ!何か翼の生えた人が来たんだよ!」

 

え?なんで?

 

「自分の事誇り高き魔族の一人とか言ってたんだけど意味分かる?」

 

「それを早く言えバカ!」

 

俺がそういった瞬間爆発音が聞こえてきた。

 

「チッ、お前は他の手下とアトをつれて近くの町まで行け!良いな!?絶対に殺されたりすんじゃねえぞ!」

 

俺はそう言って大剣を担いで飛び出した。

 

外に出ると爆発したのは広場の様で、既に村長とハルさん、そして雑貨屋の爺さんと思われる死体があった。

 

真っ黒に変色していて誰が誰か分からない。

 

「魔術が使えれば解決できたのに、クソッ!」

 

爆発音を聞いた村人達が外に出てきて叫び声をあげる。

 

「おいおい、さっさと逃げてくれよ、人間、特別に子供は生かしてやるからよぉ!」

 

大剣を投げつけて走る。

 

魔族は飛んできた大剣を弾くが俺は下まで潜り込んでいた。

 

下から顎に掌底を撃つ、発勁も使って体にダメージを与える。

 

だが魔族は上を向いたまま一気に回転し回し蹴りを叩き込まれた。

 

咳き込む時間も無く弾かれていた大剣が俺の上に落ちてきた。

 

このままでは大剣が体に刺さる。

 

地面に接するタイミングで身体強化の度合いを上げて上へ飛ぶ。

 

大剣を掴み、俺を見ていた魔族と目を合わせる。

 

魔族は氷の槍を構えていた。

 

「見込みあるやつもいんじゃねぇかよぉ!」

 

氷の槍は一瞬で俺に当たる、俺はギリギリで大剣を間に滑り込ませる事に成功した。

 

だが衝撃が強すぎて大剣を離してしまった。

 

体勢を崩しながら地面に立つ。

 

「ッゲホッゴホッ。」

 

口から血が大量に出てきた。

 

「おいおい、大人かと思ったら子供じゃねえかよ。」

 

魔族はゆっくりと歩いてくる。

 

「お前、何でこんな辺鄙な村なんかにいるんだよ?お前の実力ならどっかの街でも行けば強くなれたはずだろう?」

 

「お前に教える義理は無いな。」

 

大剣が地面に突き立つと大剣を掴む。

 

「・・・俺にはまだ守らなきゃいけない奴がまだいるから・・・な!」

 

大剣を構えて切り掛かる。

 

「・・・ハッ、誰かを守る?出来てねえじゃねえかよ。」

 

遠くで爆発音がした。

 

そして叫び声も。

 

「・・・何をした!?」

 

「いや、ただ逃げた奴の中に爆弾を仕掛けた奴がいただけ、そんな簡単な事分かってるだろう?」

 

アトたちが死んだかもしれない、今すぐに確認しなければ、いや、まずはこいつをどうにかしないと。

 

「チッ。」

 

「ほらほらどうした?守らなきゃいけないんだろ?」

 

「・・・。」

 

精神を集中させろ、格上、なら短期決戦が一番。

 

「お?やるか?」

 

「・・・身体強化。」

 

クロックアップ発動、時間がゆっくりになっていく、色が無くなり、魔族の動きもかなり緩慢になる。

 

大剣で袈裟斬りに斬りかかるが弾かれる、手を離し短剣を投げる。

 

左手でもう一つの短剣を取り出し、刺突を繰り出す。

 

魔族は刺突を避け、手を伸ばしてきた。

 

右手で大剣を逆手に持ち、水平に切る。

 

腹に衝撃、景色が遠くなる。

 

景色に色が戻ってくると同時に骨まで響く衝撃が来た。

 

身体の節々がズキズキと痛む、身体強化の反動だ、そして、骨が折れている、コレは、キツイぞ。

 

「チッ、少し掠ったか、おい褒めてやるよ。お前の名前は?」

 

しゃべろうにも喋れないっての、くっそ、魔術が無ければ俺はこんなもんかよ。

 

「まぁ、ほっといても死ぬだろうし、俺の名前はあの世まで持って行っても良いぞ、俺の名前はアークラ、もしお前が生きてたら今度は正真正銘の本気で殺りあおうぜ?」

 

魔族、アークラは笑いながらどこかへ歩いて行く。

 

「行かせるかよ。」

 

アークラが止まった。

 

「こんな子供でも、出生すら知らない俺でも受け入れてくれたこの村のみんなを、これ以上殺させるものか。」

 

「・・・良いね、お前はここで殺してやるよ、クソッタレな戦争を始める第一回戦なんだ、盛大にやろうぜ?」

 

「腕の一本は切り落とす。」

 

魔族は心底楽しいという風に笑う。

 

「もう一回聞くわ、お前、名前は?特別に覚えておいてやる。」

 

「前兆なく襲いかかってきたクソッタレな魔族様に教えるような名前じゃないがな、ゼル。」

 

「だって目に付いたからな、本来ならこの先の街で暴れる予定だったし。ゼルか。」

 

戦闘再開。

 

同時に地面を蹴る。

 

大剣は盾として使う、一瞬で大剣が歪み真っ二つに折れる、アークラが拳に魔力を纏わせていた。

 

「ッヅァアアア!!」

 

俺も見よう見まねで同じ事をする。

 

魔力を纏わせた拳は、届いた。

 

「ガッ!?」

 

そして仰け反った隙に腹に蹴りを入れる。

 

それだけでアークラは吹き飛ぶ、だが背中から翼が生え、くるりと回転して地面に立った。

 

既に俺の下の地面は出血で赤く染まっている。

 

見覚えがある、焼けた匂い、血の匂い、叫び声と怒鳴り声。

 

「アッはは。」

 

ああ、安心した、結局俺はもう、取り繕わない。

 

「ヒャハハハハハハハ!!」

 

アークラは唐突に笑い出した俺を訝しげにみる。

 

「気が狂ったか?」

 

「いや、思い出させてくれたのさ、俺がどうしようもない殺戮者で、ぬるま湯に浸った馬鹿だったって事をな。」

 

天使としての権限発動、一部制限解放。

 

俺の体に許される限り魔力を生み出し続ける。

 

「!?」

 

身体強化の比率を加減など考えずに上げる。

 

「ヒャハハハハハハハ!!お前の言う通り!楽しもうぜ!ナァ!」

 

俺の拳が地面を削り、風を打つ。

 

「化け物が!」

 

アークラは飛び上がり上から魔法を展開した。

 

氷の槍が大量に降り注ぐ。

 

クロックアップ発動、足場が出来たのだからいける。

 

半分に折れた大剣を掴み、槍の雨の中を跳ぶ。

 

氷で遮られているのかアークラの姿は確認出来ない。

 

氷の槍が一度無くなり、アークラが掃射を止めた時、俺はアークラの上に飛んでいた。

 

折れた大剣の切っ先の部分を足に合わせる。

 

これだけ面積があれば、あとは身体能力さえあげれば地面に向かって急降下できる。

 

月明かりに照らされたアークラが俺を見る、今俺の後ろに月があり、俺は光で照らされた標的を良く見ることができる。

 

アークラは汗をかいていた。

 

「化け物・・・!」

 

「うおおおおおああああ!!!」

 

アークラは腕で大剣を受け止めた。

 

大剣が食い込み、腕を少し切った所でアークラはもう片方の腕で俺を殴ろうとしてきた。

 

「死っ・・・。」

 

横から飛んで来たものにアークラの腕が貫かれた。

 

アークラは痛みで固まり、俺は更に大剣を食い込ませた。

 

「ヅェアア!!」

 

アークラの腕を切ることに成功した。

 

「あっがあああああ!!?」

 

俺の体が自由落下を始める、地面まではかなりある、高くて200メートルといったところか。

 

「死んだかな。」

 

空から村を見るとほぼ全域が燃やされており、生き残っている村人は少なくとも目の届く範囲では居ない。

 

そして死体の数は村人のほぼ全員だった。

 

「・・・。」

 

守れなかった、か。

 

ー天使権限の使用を確認しました、代償は昏睡20日ですー

 

俺の意識がプツリと消えた。

 

意識が完全に消える前、男の声が聞こえた気がした。




魔族の襲撃の前兆は魔物が少なくなった事です、強い奴が来たから逃げたみたいな。

次はアト視点を予定しています。

多分数話くらい進まないかも。


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村から逃げ(アト視点)

「起きろ!起きろ!男女!」

 

「え!?何!?何が起きてるの!?」

 

私は夜中に叩き起こされた、目の前にはあの馬鹿やろう、アルがいた。

 

「私の家に忍び込むなんていい度胸してるじゃない。」

 

思わず拳を握る、ゼルにだって拳の威力は評価されているのだ、暴漢もどき程度どうとでもなるわ。

 

「そんな事言ってる場合か!逃げるぞ!」

 

「は?何言ってるの?」

 

「時間がない!早く!」

 

いきなり手を引いて村の外へ走り始めたアルはチラチラと広場の方を気にしていた。

 

「ねぇちょっと!?何が起きてるのよ!?」

 

「そんな事言って場合じゃないって言ってるだろ!?」

 

広場の方で大きな音がした、身体の奥まで響くような音だ。

 

「まさか、大きな魔物でも襲ってきたの?」

 

「・・・魔族だ。」

 

魔族、それは長い間人類と敵対した人の形をした魔物、聖神教会が神敵と定めた化け物。

 

「嘘・・・だよね、ねぇ!」

 

「嘘じゃねぇ!だから逃げるんだよ!」

 

「他のみんなは!?一緒に逃げられないの!?」

 

「固まったら狙われる!分かりきってるだろ!」

 

「いや!離して!お父さん達も一緒に逃げるの!」

 

アルと2人で力比べをしていると近くに傷だらけになったゼルが降って来た。

 

「ッゲホッゴホッ。」

 

大量に血を吐いている、アルの様子を見る限り戦ってからそこまで時間が経っていないようだ。

 

ゼルはすぐに広場の方向に向かって走って行った。

 

「・・・逃げるぞ。」

 

「・・・。」

 

逃げる?何処に?

 

「・・・アル、黄昏の森に行こう。」

 

「正気か?」

 

「私がゼルと会った場所は黄昏の森だよ、そこにゼルの家がある、そこに行く事ができれば。」

 

「・・・賭ける価値はある・・・か?」

 

頷く。

 

「・・・分かった、行こう。」

 

村から離れる、街道を歩き、黄昏の森への道を静かに歩いた。

 

遠くから見た村は火の光で照らされ、やけに小さく見えた。

 

村の上空ではキラキラと光っているものが雨のように降り注いでいてこんな時でなければ見惚れてしまいそうなほど綺麗だった。

 

「何か来る!隠れろ!」

 

アルは私を押し倒して草むらに隠れた。

 

「ふむ、逃げた子供はこの辺りのはずなんですが・・・見当たりませんね。」

 

魔族の1人なのだろう、歩いている音が近くまで来ている。

 

「まぁ良いでしょう、子供ですし、何処かでのたれ死んでいる事を祈りましょうか。」

 

バサバサと音を出しながら魔族は何処かへ行ってしまった。

 

「・・・アル?」

 

「あいつ、俺たちに気付いてた、気付いてて見逃した。」

 

「え?」

 

「アレが・・・魔族?化け物じゃねえかよ。」

 

アルの体が震えている。

 

「全く、珍しい者が居ると思ったら、お主か、アト。」

 

「え?」

 

アルの後ろ、木の陰に真っ黒な人影があった。

 

とても小さな体に長い手足、私達の倍ほどはある身長をもつ人影。

 

それは、ゼルが親として見ている聖霊の一柱、カルトだった。

 

「カルト・・・さん。」

 

「お主らは何がしかに秀でておるようじゃ、私の家で保護しよう、ランタンの使い方は分かるな?」

 

「は、ハイ!」

 

ゼルと会った日の穏やかなカルトではなく、確かに怒気を滲ませて村を見ているカルトは村に向かって歩いていた。

 

「ありがとうございます!」

 

「・・・。」

 

アルはカルトを見て怯えていた。

 

「よい、私に怯えぬこのこやつらが特別なのじゃよ、行け、あの家で待っておる。」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

アルを引きずりながら道を歩く、私達が黄昏の森に着いたのはそれから2日後のことだった。




次はカルト視点です、そして多分すぐに投稿されます。

そしてうちの主人公に隠れてますがアルは実は普通に主人公属性を持っているのですよ。

そうじゃないと状況判断能力やばすぎる子供が多い世界になるので。


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私の愛し子よ

二話更新してます、前話から見てね。


闇に生きる聖霊、カルト、闇を制御し、光と対立する事もある、故に勢力図は簡単だ、夜は私の独壇場で、昼はあやつの、ホルスの独壇場、力の制御が出来ておる故に私達のどちらかが制御を間違えた瞬間世界が死にかける。

 

そうであるはずなのに、私は制御を手放してでも今すぐそこに向かって行きたかった。

 

世界を捨ててでも助けたいと、そう思ってしまいそうになった。

 

私が育てたゼルという名の人間、気まぐれで育てたがいつの間にか愛というものを捧げていた。

 

ゼルはあの年齢の子供にしては成熟している、既にその精神は大人と遜色無い、だが、子供故の無鉄砲さで物事を見るようにもなり始めた、きっかけはアトという少女だ、何故か森に入り込み、餌になりかけているところをゼルが助けていた。

 

あの少女には感謝している、ゼルは誰かと関係を持つという事を知らなかったからだ、ゼルは興味があれば積極的だがそうでない場合には欠片たりとも意識を向けない、初めて会った自分の同族という、何処か狂っているような興味の持ち方であっても外へ連れ出していく口実をくれたことに私は感謝していた。

 

そして外に行って1ヶ月ほどが経った今。

 

私の愛したゼルは魔族によって傷だらけになっていた。

 

村で過ごした時間は短くても守らなければならない者が出来たと、ゼルの母親にしたためた手紙に書いてあるのだ、あの村はゼルにとってとても大事なものになったはずだ。

 

それをほとんど何の前兆も無く壊したのだ、魔族は。

 

闇の中を移動している途中、アトと1人の少年を見つけた、ゼルが気に入っていた少年は私を見て怯えているようだったが安心するように伝えて村へ急ぐ。

 

ゼルを外に行かせたことに後悔は無い、いずれ大事な者ができたり悲しむことがあったりもするだろう、だが、これはいくら何でも哀れにすぎる、少なくとも私は飛ぼうとする鳥を飛ぶ前に落とすような真似を許せるほど寛大では無い。

 

ゼルは二つに折れた大剣を駆使して魔族の1人に斬りかかる。

 

だが魔族はそれを左腕で受け止め、右手でゼルを攻撃しようとしていた。

 

「ダークバレット。」

 

古の勇者が使っていた闇の弾丸という意味の魔法を使う、弾丸が魔族の腕を貫き、魔族の動きが止まる。

 

ゼルはそこを見逃さずに左腕を一気に切り落とした。

 

産まれて8年であれば英雄の如き所業、だが、魔族は未だ健在、現実は非情だった。

 

「ゼエェェェェルゥゥゥゥゥ!!」

 

既にゼルは力を出し切ったのか動かずに落下している。

 

激昂している魔族はその顔を怒りに染め、氷の槍でゼルを貫かんと氷の槍を作り出す。

 

「召喚、『スカルパラディン』」

 

ゼルの隣に骨の鎧を纏った大男が出現しゼルを保護した。

 

ゼルは地面に激突することなく地面に寝かせられる。

 

スカルパラディンに氷の槍が幾つも刺さるが鎧の防御力は勿論中身は骨しか無いので動くのに問題が出る事もなく、魔族の男は叫び、激昂していた。

 

「お止めなさい、アークラ。」

 

上ではもう1人の魔族が激昂している魔族に話しかけていた。

 

「アァ!!?ただの人間如きに俺様が負けたと言いてぇのか!?」

 

「少なくとも、あの少年がそれにふさわしい戦士であったのは間違い無いと思いますがね。」

 

「何だと!?」

 

「それに見なさい、奴が居ます。」

 

話しかけていた魔族はスカルパラディンの横に居る私を見る。

 

「あいつは・・・。」

 

「カルト、闇の聖霊です、貴方では1秒たりとも戦える相手ではありません。」

 

「チッ・・・。」

 

「それに、貴方は情報を与えすぎです、私が炎を操れなければ貴方はほとんどハッタリをかます羽目になったのですよ?」

 

「分かってるよ!」

 

魔族2人は何処かへ飛んで行った。

 

「・・・。」

 

ゼルは傷だらけだった、誰かを守るための強さというものを手に入れたのだろう、私ではここまで本気になれない、立場があるからだ、私が死ねば小さくとも影響が残る、故に本気で戦えることは無い。

 

「・・・お主に私の本当の加護を与えよう。」

 

きっとゼルの人生は波乱万丈になるだろう、私と会っている時点で今更ではあるだろうが。

 

私の本当の加護、それは夜限定の回復能力の上昇だ。

 

「私の愛し子よ、その人生が幸福であることを祈る。」

 

私の作った外套を被せ、スカルパラディンに世話を任せて森へと帰った。

 

ゼルが起き上がるまでかなりの時間が掛かるだろう、それまでにアト達を返すことは出来るのだろうか。




後書きで用語解説的なのを作ろうかなー。

というのは置いといてカルト視点、チラチラとヤンデレ臭がする。

というかカルトって性別無いはずなのに一人称が私なので女っぽくなるんですよね。

小さい胴体に長い手足の人外作ろうでエ○ダーマンが一瞬で思いついてしまった作者の頭の中よ・・・。


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スカルパラディン

黒い空間でゆっくりと沈んでいく感覚、目を開けると目の前に小さな光が見えた。

 

「・・・。」

 

死んだわけではないのは分かっている、だがこの温もりに包まれているこの感覚は・・・。

 

『おい、ゼル。』

 

いつの間にか立っているという感覚と共に背後から話しかけられた。

 

「・・・。」

 

そこに居たのはアトのお父さんだった。

 

『俺は死んだ、だがアトは生きている、アトを頼んだ。』

 

「すみませんでした、守れなくて。」

 

『魔族に襲われたから、仕方無い、そう言って諦めるのは簡単だ、だがお前は諦められないんだろう、なら苦しめ、死ぬまで苦しめ、それで許してやろう。』

 

「・・・ありがとうございました。」

 

アトのお父さんは靄のように消えた。

 

『あの人ったら、言いたい事全部言っちゃったわ。』

 

「・・・ハルさん。」

 

『アル君も生きてるみたいだし、あなたも生きている、生きて幸せになりなさい、じゃないと怒っちゃうわよ?』

 

「すみませんでした、俺にもっと力があれば・・・。」

 

『自分を責めないで、きっと、幸せに暮らす事ができるわ。』

 

ハルさんの肩にアトのお父さんが手を置く。

 

『行こう、言いたい事は言った。』

 

『ええ、頑張ってね、ゼル君。』

 

思わず手を伸ばす、すると光が大きくなり、俺は目を覚ました。

 

俺が目を覚ましたのはボロボロのベッドの上。

 

『起きたか、少年よ。』

 

「!!?」

 

声がした方を向くと骸骨の鎧?のような魔物がいた。

 

『我の声が聞こえているな?我はカルトの眷属が一人スカルパラディン、元聖騎士である。』

 

「・・・俺は、カルトに助けられたのか?」

 

『少年が魔族の腕を切り、それに激昂した魔族の攻撃をカルト様が払われた、少年よ、剣をやる、強くなりたければ我と剣で戦うが良い。』

 

「カルトが残した試練か。」

 

『肯定する、我を倒した時、少なくとも魔族ともまともに戦えるであろうという事は保証する。』

 

スカルパラディンは少なくとも現時点の俺より強い、そのスカルパラディンを倒しても魔族と互角程度だっていうのか、化け物かよ。

 

「やってやる、俺はもう、誰も守れないのは嫌なんだ。」

 

そう言って立とうとすると全身の筋肉がビキビキと痛んだ。

 

『少年は約一月の間眠っていた、まずは筋肉をつける事から始めるが良い。』

 

一月、かなり寝ている。

 

「・・・武器は大剣で良い、俺は身体能力しか取り柄がないからな。」

 

『肯定する、身体能力を高める事が一番強くなりやすい。』

 

「・・・スカルパラディン、世話になるぞ。」

 

『了解した、聖騎士の剣をとくと見るがよい。』

 

こいつ、中々面白い奴みたいだな。

 

『ところで少年、少年の目つきの悪さはかなりのものだ、それでは人間は怯えるのではないか?』

 

「喧嘩売ってんのかテメェ!クッ、全然動かねえ。」

 

『急激に筋肉を動かすと危険である、やめたほうが良い。』

 

絶対倒してやるからなお前・・・!




アトのお父さん、本名はオウル、ただし自己紹介してないので主人公は覚えていない、悲しみ。


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鍛練

「ハッ!」

 

『ぬぅん!』

 

「そぉら!」

 

俺とスカルパラディンの鍛練は既に1年ほどの年月が経っていた、婆さんも一度来ていて俺の生存を涙を流して喜んでくれた。

 

俺がいたこの国の王都は魔族達に襲撃された、という事だけは聞いた、それ以外は情報が無いらしい、そもそも地方の行商人が情報をそう簡単に手に入れられるはずも無いので仕方無い。

 

スカルパラディンにも驚いていたがスカルパラディン自体中々親しみやすい性格である事もあってかすぐに馴染んだ。

 

『鍛練中に考え事か!?』

 

「チッ。」

 

元聖騎士というから基本に忠実なのだと思っていたら変則に変則を重ねた結果獣じみた動きで迫ってくるのだ、戦い辛くて仕方無い。

 

ゲームで例えるならボスキャラをプレイヤーが操作して格ゲーじみた反応速度とエイムで迫ってくる、というよくわからない事を平然としてくる。

 

大剣を盾にして弾き飛ばされる。

 

「そこぉ!」

 

『でぇい!』

 

スカルパラディンの鎧に擦り傷がつくのと俺の首に剣が当てられたのは同時だった。

 

「・・・参りました。」

 

『ふむ、中々上達して来た、コレならば数ヶ月もあれば戦えそうであるな。』

 

俺の戦闘時間はかなり制限しても1時間が限度、全力戦闘ならば数分で終わる。

 

一応大人になれば全力戦闘でも数時間は戦えるらしいのだがいかんせん子供なのだ、その状態で戦えると言ったところで少しも嬉しくない。

 

勝てるではなく戦えるだけなのだから。

 

『それでは狩りをするぞ少年よ、今日は何を食べるのだ?』

 

「野菜はある・・・肉もある・・・、調味料でも取りに行くか?」

 

『塩か?』

 

「それくらいしかないよなぁ・・・それで良いや。」

 

『うむ!では岩塩を取りに行くぞ!』

 

「そもそも塩を取れるところなんか近くになかっただろう、だから今までそのまま食ってたんだし。」

 

『いやそれがだな、老婆殿が言うならば岩塩を装甲として使う魔物がこの近くを通るらしいのだ、それを狩れば塩は調達出来るとは思わんか?』

 

「大丈夫なのかその魔物・・・。」

 

結局行くことになった。

 

数もかなりの大軍勢のようで遠くの丘から見るだけですぐに分かった。

 

薄いピンク色の小さなものが地面を這っているのだ、気持ち悪過ぎて吐きそうになった。

 

『うむ!やはりあれは蟹だな!今日の飯は蟹を所望する!』

 

「アレ1匹1匹が1メートルくらいのバケモンじゃなきゃ同意するんですがねぇ!?」

 

アシダカ蟹のようなものではなく毛蟹のような丸いピンク色の1メートルくらいの蟹、それが地面を覆い尽くすくらいの量で迫ってくるのだ、気持ち悪い。

 

『何を言う!あれらの装甲は全て塩だぞ!倒しやすい上に量自体も多い!』

 

「あれ確実にスタンピード起こってるから言ってんだよスケルトンアーマー!」

 

この聖騎士ワイルド過ぎて怖い、一度死んだ身だからとはっちゃけているのか自分から無茶無謀に突っ込んでいくのだ、俺としても戦う度に少しずつ強くなっているのが分かるので殺されたくない、だからそれを補助するのだがこの聖騎士、当たり前の様に生還してくる、俺が放置していたら鍛練を増やされる。

 

死ねよ。

 

俺の使う大剣が何本も折れた、その度に何処かから大剣を調達してくるのだから鍛練に休みはない。

 

『いくぞぉ!』

 

「待てっつってんだろうがドグサレアンデッド!」

 

蟹のハサミを避けまくって数十匹程倒して息切れしているとスカルパラディンは何百匹も倒していた。

 

「どうやって消費すんだよこれ・・・。」

 

『ハッハッハ!狩りすぎてしまったな!』

 

「・・・ところでコレは誰が持って帰るんだ?」

 

『少年だ。』

 

「お前絶対生前ろくな生き方してないだろ・・・。」

 

スカルパラディンは大笑いしていた。




主人公はダクソで言ったら不死隊、スカルパラディンはウーラシールでの闇堕ちアルトリウス、実際スカルパラディンはこの世界でもヤベェやつ。


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お前・・・お前・・・。

大剣が俺の体を斬ろうと迫る。

 

それを飛んで避けると回し蹴りが飛んで来る。

 

腕で防御するが数メートル程弾かれる。

 

腕が痺れる、かなり本気で打ったな。

 

左腕で背中に回した大剣を持つ。

 

『今更武器を出せると思っているのであるか?』

 

「チッ。」

 

大剣が地面を削りながら迫る。

 

横に転びながら避けるが上から断頭台の様に大剣が迫っているのが見えたので迎撃する。

 

「そら!」

 

『ぬぅ!?』

 

大剣に発勁をあて弾きかえす事に成功した、その代わり俺の掌は大惨事だが。

 

左腕で大剣を取り出し自分の周りを薙ぎ払う。

 

右手に持つと痛みが走ったが問題は無かった。

 

「斬る。」

 

大剣で抜刀術など出来ない、だがその代わり似たような方法は使えるようになった、鞘からの最高速ではなく、ありとあらゆる場所からの最高速、大剣の重さを片手で完全に支える程の身体能力とタイミングを合わせれば何とか放てる、と言ったかなり難しい技術ではあるがかなり使える。

 

その結果はすぐに出た。

 

『真に天才であるな、少年は。』

 

「秀才だよ、天才であればあんたとこんなに時間を過ごすこともないだろ。」

 

今の俺は12歳、スカルパラディンはかなり手加減していたようで全然剣で勝てなかった。

 

魔族と同列と言っていたがマジで魔族の身体能力おかしすぎるだろ。

 

『それであっても我の剣を斬るなど、曲がりなりにも竜の素材を使っていたのだがな。』

 

「マジか。」

 

『剣ではもう戦えぬな、では次は格闘でするとしよう。』

 

「は?」

 

目の前に拳が迫る。

 

無意識に体を曲げて拳を避ける。

 

後ろに飛び地面に手を置いて体勢を整える。

 

『滾ってきたぞ!少年!』

 

「アンタ剣だけじゃなかったのかよ!?」

 

『興が乗った!もう少し付き合ってもらう!』

 

「あっぶねぇ!」

 

『倒して見せるのである!』

 

この腐れ骸骨絶対遊んでやがる。

 

「やってやるよおおおおお!!」

 

伸びてくる腕を横に弾き右手で胴に衝撃を通す。

 

『ぬぅ!やはり強いな!もっとやるのである!』

 

「口調崩れてんぞクソ野郎!」

 

『ハッハッハ!!』

 

こいつ大男の癖にかなり俊敏だからマジで本当に。

 

兜も殴り上から踵落としを食らわせる。

 

足を掴まれ投げられる。

 

瓦礫に突っ込み埃が舞う。

 

「・・・気は済んだか?」

 

大剣が無いから瓦礫が背中に刺さって痛い、多分血が出てるなこれ。

 

『うむ!我の技のほとんどを吸収されたのは悔しさが残るのであるな!』

 

「こっちは毎日必死だよスカルパラディン。」

 

『数百年生きている・・・死んでから気が楽になったのだ!この程度で焦るほど若者では無いのだな!』

 

「毎日毎日殺す気で来やがって・・・恨むぞ。」

 

『そうでなければ成長しないと思ったのである。』

 

途中からお前も成長してた気がするのは気のせいか?

 

「まぁ感謝するよ、かなり強くなった。」

 

『うむ、本来ならば我を殺す事で試練は達成となるのだが得物がなくなった時点で負けである、武器に頼りすぎた我の負けである。』

 

俺の目的バレてるわ。

 

「曲がりなりにも世話になった奴を殺したくは無かった。」

 

『分かっているのである、カルト殿にもまた世話になるのであるな。』

 

12歳、成人がたしか15歳だからかなり時間がかかったな。

 

「明日から近くの町に向かう、婆さんにはお前から言ってくれないか?」

 

『うむ、めでたいついでに一度我の切り札を見ると良いのだ。』

 

「は?」

 

スカルパラディンは赤いオーラのようなものを纏った。

 

赫化(ルベド)という、特殊能力では無いのだ、どう言えばいいのであるか・・・身体強化を限界を超えて使うだけである。』

 

絶対に違う事だけは分かった。

 

気が付いたら俺はまた瓦礫に突っ込んでいた、腹から木の柱が突き出ているのでかなりの大怪我だ。

 

『しまったのである!やってしまったのである!』

 

何も見えなかったな。

 

スカルパラディンが必死に瓦礫を除去し、カルトがぶちぎれたのだろう、ボッコボコにされている声を聞きながら眠りについた。

 

ーーーーーーー

目を覚ますと怪我は完全に無くなっていた。

 

「スカルパラディン、カルトは何を使った?」

 

『伝説の霊薬、エリクサーである、貯蔵されているものを使ったらしいのである。』

 

「・・・その結果がそれか。」

 

スカルパラディンは兜だけが残っていた。

 

『鎧は持っていかれたのである。動かせないのであるな。』

 

「アホかよ・・・。」

 

『何、コレでも数百年間アンデッドとして活動しているのである、動けなくても50年ほどなら何とかなりそうなのである。』

 

「・・・婆さんといたら良いじゃねえか。」

 

『おお!それは気が付かなかったのであるな!そうするのである!』

 

もうやだこのアンデッド。

 

次の日、俺は纏めた荷物を背負って婆さんから貰った地図を見た、最寄りまでの道を描いているものらしいのだがあまり詳しくないようで分からないところがちらほらとある。

 

置き手紙は残して来たので居場所は分かるだろう。

 

「よーし、出発〜!」

 

『行ってらっしゃいなのである!』

 

俺たちの戦いはこれからだとか言ったら打ち切りだな。




物語は多分ここから始まる。


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生者と屍人

うむ、中々筋が良いどころか化け物なのだな!

 

今我の前には齢8歳の子供が大人と変わらない程の大剣を構えて立っている。

 

うむ、我も中々強者達と戦ってきたが子供の強者など手で数えられる程度、それゆえに最初は手加減をしていた。

 

だが違った、この子供、ゼルは文字通りの化け物だった、人では考えられぬ膂力、判断力、敵と定めた者の全てを見透かすような目、全ての動きが次の瞬間に読まれてギリギリのところを大剣が滑っていく感覚、およそ人が到達出来る様な境地ではない。

 

我がアンデッドでなければ我は既に2回ほど出血で死んでおるであろう傷を既に入れられておる、こやつは化け物よ。

 

『うむ!次に移行するのだ!』

 

「今しがた終わったばっかだろうがクソッタレ!」

 

悪態を吐く姿は良く見る子供なのだがその技量は既に達人の一歩手前、戦闘出来る時間が少ないのと圧倒的な身体能力に任せたゴリ押しによって強者となっているに過ぎない、我も勿論戦法を取っ替え引っ替えし対抗しているが、我が倒されるまで2年もあれば十分であろう。

 

『ハッハッハ!少年!頑張るのだ!』

 

「覚えてろよ畜生!」

 

アンデッドとなり、世界を彷徨い歩いて、摩耗し、カルト様に拾われた、生前は聖騎士と謳われた我は死ぬ間際に死にたくないと望み、結果、屍人として生き返った、死は絶対のもの、最初はただ嘆いた、何故死にたくないと思ってしまったのかと。

 

しかし、カルト様は溜息と共に言った。

 

「死にたくないと思う事の何が悪い、それを言うならば、死にたくないと思い、生き返ったアンデッド達を不浄の者だと、神に逆らった化け物だと言って討伐する人間達はどうなる?罪など、人間が勝手に作ったもの、創造神は死から生き返る理すら作られている、であれば、正邪の区別無く、屍人と生者がわかりあう事も可能であろうて。」

 

初めて聞いたときは何を言っているんだと本気でそう思った。

 

神は人間を愛していて、獣人や魔人を駆逐する為に聖なる力を与えたのだと、本気で思っていたから。

 

結局は人間の身勝手な思考によるものだと気付いた時には愕然とした、聖騎士出会った時から変人だと言われてきた私がこんな事を考えるなんて思いもしなかった。

 

アンデッドも人間も、魔人も獣人も、結局のところ弱肉強食の世界に生きているに過ぎないと。

 

それに気づいた時、我はカルト様に仕える事を誓った、永遠とまではいかずとも、恐らく考えうる限り長い間従者となれるのならば本望だと。

 

カルト様も笑いながら了承してくれた。

 

それがどんな因果か、我は子供の世話をしている、暗闇から目を覚ましてみれば目の前には焼け落ちた村と傷だらけの子供、そして激怒しているカルト様の姿があった。

 

子供を保護し、カルト様の存在を知った魔人達は何処かへ消え、代わりに我は子供に殺されろと言われたのだ、理不尽だとも思う、だが、それに笑いながら承諾してしまう自分の能天気さにも呆れている。

 

しかしこの子供が化け物の類だと分かった瞬間に我の中から何かが顔を出した。

 

アンデッドになってからかなりの時間を過ぎてから思い出した感情、熱意、というものだ。

 

育ててみたい、自分の技を一つ残らず継承させてみたい、この子供が自分の技をどこまで高められるのかを見てみたい。

 

そんな思考が次から次へと溢れ出てきたのだ。

 

『我も、変わったものよ。』

 

「なんか言ったか腐れガイコツゥ!」

 

『何も言っておらん!ほれ!追加である!』

 

「テメェマジでぶっ飛ばしてやるからなあアァァァァァ!!!?」

今は・・・まだこの子供、そして化け物である我の一番弟子、ゼルの世話をするとしよう。

 

ーーーーーーー

遠くに見えるゼルの背中は小さい点のようになっていた。

 

『行ってしまったか、寂しくなるなぁ。』

 

ゼルは優しい子供だ、人間でありながら魔物のような膂力を持ち、鬼人のようにタフで粘り強い。

 

我も、錆び付いたとはいえ聖騎士、剣の強さではそう簡単に勝てる者は居らぬという自負がある、その我ですら最上位の魔族には異世界からの勇者の力が無ければまともに戦えぬのだ、だがもしかしたら、ゼルは勇者と同じと言える強さを・・・いや、これはまだ予想でしかない。

 

「もしもし、骨騎士さん、ゼルはどこに行ったのかね!?」

 

『おお!老婆殿!少し考え事をしていたのだ!』

 

ゼルの祖母であるマーリン殿、しがない薬屋ではあるがその薬はかなり質の良いものだ。

 

『あやつは我を倒し、街へ向かいました、手紙は今まで通りに出すと言っておったが返信は届かないであろうな。』

 

「・・・そうかい、あの子は行ったのかい。」

 

『老婆殿もいつかこの日が来ると分かっていたでしょう。』

 

「ええ、骨騎士さん、あの子は私達の村の者がカルト様に生贄を捧げた時から既に他人様さ、それを、まだ家族として関係を持てているのはあの子の優しさ故さね。」

 

『うむ、ゼルは身内にはかなり甘いですからなぁ、我も殺されるつもりでいたのをただ世話になったというその一点だけで技の全てを盗み、格上となった上で剣をだけをポッキリと折られてしまいました。』

 

「あの子らしいねぇ、どうだい?骨騎士さん、あの子は。」

 

『うむ、誇らしい限りである。』

 

「そうかい、あの子の旅が、尊いものでありますように。」

 

老婆殿は祈っていた、子供を思う親の姿はどの時代でも変わらぬものなのかと思いながら、スカルパラディンは静かに黙った。

 

祈りが終わったのを見計らい、スカルパラディンは切り出した。

 

『老婆殿、行商人であるのも疲れるであろう、馴染みの冒険者パーティがいるとはいえ、一人腕っ節の強い者がいるだけでだいぶ楽ではありませんかな!?』

 

「そうだねぇ、じゃあ骨騎士さん、護衛になってくれるかい?」

 

『うむ!なるとも!という訳なのだカルト様、我の体を返して欲しいのである!』

 

そう言って兜だけになった顔から声を出す。

 

「全く、タイミングの良い・・・次は無いぞ、スカルパラディン。」

 

『うむ!了解した!』

 

カルト様が暗闇から我の体を取り出す。

 

『戻ったぞ!これで元どおりである!』

 

「・・・お調子者め。」

 

『ハッハッハ!では行こうぞ老婆殿!次の村は何処でござるか!?」

 

「その前にカルト様に一言よろしいですかな?」

 

「なんだ?」

 

カルト様の前で深くお辞儀をして老婆は言った。

 

「私の孫を、あの子の息子を、育ててくれてありがとう、老い先短い老婆だけれど、これだけは言っておきたかった。」

 

「・・・よい、面を上げよ、私も親元から離れさせてしまった事を気に病んでいた、本人では無いにしても、その言葉が聞けて安心した。」

 

カルト殿は少し恥ずかしがっているようで少し照れが見える。

 

今は流石に無粋か。

 

荷馬車の近くでダレている冒険者たちに向かって歩き出した。

 

「誰だ!?」

 

「ゼルと戦ってた魔物!?」

 

「待てお前ら!ゼルと婆さんも言ってただろうが、友好的な者だと。」

 

『うむ!ゼルは旅に出たのでな!今しばらくの間世話になるのである!』

 

「「「嘘だろ!?」」」

 

『ハッハッハ!毎日少しずつならば稽古をつけてやってもよい!ゼルほどとはいかなくてもお主達もまだまだ荒削りなのでな!綺麗に研いでやろう!』

 

「ゼルの奴ヤベェやつ置いて行きやがった!」

 

これからも退屈はしなさそうだ。




スカルパラディン、育成に目覚める。

次はアトの視点にするか主人公の視点にするか・・・。

プロット無しでも案外いけるもんだな。


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悲しみ

取り敢えず道を歩いて早一週間、一向に街に辿りつかねぇ、というか街の影すら見えねぇ、どういう事だ?

 

「・・・せめて地図くらい買っときゃよかった・・・。」

 

まぁなんとかなるだろう、今までもそうだった。

 

そんな事を思って数日間粘ったが未だに街が見えない、何でだ?流石におかしい、かなりの距離を歩いている筈なんだが。

 

そう思いながら周りを見ると小さい人間の様なものが見えた。

 

「お、人間か?おい!ちょっと道を聞きたいんだけど!」

 

そう言いながら近づいていくと矢が飛んできた。

 

身体強化がなくても掴める程度の速度だったので使わずに掴むとガサガサと音を立てながら逃げられた。

 

「おい。」

 

こちとら食料無くなっても彷徨ってるんだよ、話くらい聞けよ。

 

「逃げんな。」

 

揺れている木を大剣で攻撃すると人間は落ちてきた。

 

その人物は緑色の肌をしていて枝で作った杖を片手に持っていた小さな人間・・・人間か?コレ。

 

「ギャギャ!」

 

うんコレゴブリンですわ。

 

「ゴブリンって友好的な奴だったっけ、覚えてねぇ・・・。」

 

そう呟くと炎が目の前に出現した。

 

「あっつ!?」

 

咄嗟にゴブリンを炎に向かってぶん投げる。

 

熱がいきなりきたから思わず投げちゃった、死んでる?あ、死んでるわこれ。

 

「やっちまった。」

 

ゴブリンを倒すと景色が変わった。

 

街道が延々と続く景色から遠くに街が見える様になっていた。

 

「・・・ゴブリンの幻術か!?魔法の知識もつけときゃよかったかな・・・。」

 

というかよく使えたなあのゴブリン。

 

俺は街に向かって歩き出した。

 

ーーーーーーー

「ん?あ、お前生きてたのか。」

 

街に来て門番にいの一番に言われた言葉がコレってどういう事。

 

「・・・何となく察しましたけど聞いときます、どういう事ですか。」

 

「お前ゴブリンメイジに幻覚見せられてたろ、一週間くらい前からこの辺りをずっと徘徊してたんだよお前。」

 

「助けろよおおおお!!?」

 

「だってゴブリン程度に魔法かけられる奴なんて初めて見たからな、少し面白がって放置した。」

 

切れそう。

 

「・・・取り敢えず街に入りたいんですけど。」

 

「おういいぞ、入るのに銅貨一枚を貰うぞ。」

 

「了解。」

 

村長宅から金貨1枚分の銀貨数枚と銅貨数十枚は持ってきてあるのですぐに出す。

 

「あとお前の腕なら冒険者も出来るだろ、この大通りをまっすぐ行って三つ目の十字を右に曲がれば冒険者ギルドあるから、多分いじられるだろうけど我慢しろよー!」

 

「いじられるのはお前らのせいだろうが・・・!」

 

取り敢えず俺は知らない内に売名は出来ていたようだ・・・遊び道具として。

 

門から入ると俺を見て何人かの大人が苦笑いで通り過ぎて行く、何で俺の事がこんなにたくさんの人に知られてるんだろうな、ゴブリンのせいだよな畜生。

 

冒険者ギルドは三つ目の十字を右だったよな?

 

「・・・うわぁ。」

 

ギルドの外側はかなり綺麗にされていた、が、端の方に赤い染みがあったり看板が少し傾いていたりと古いのと喧嘩でボッロボロになっているのが分かった。

 

「これはひどい。」

 

中に入ると酒の臭いと酒に酔った呑んだくれ達が俺を見た。

 

「よっしゃ!俺の勝ちだな!銀貨1枚ゲットだ!」

 

「くっそー!」

 

いきなり盛り上がり始めた、何でお前ら賭けなんかやってんの?

 

「ハッハッハ!坊主!お前ゴブリンメイジに幻覚見せられてたんだって!?どうだった?」

 

うっぜえ!

 

「・・・延々と続く街道を人一人見つけられずずっと歩くとかいう修行を味わったよ。」

 

俺がそう答えると酒場の全員が大笑いした。

 

「災難だったな!でも泣いたりしなかったのは偉いぞぉ!」

 

俺はもう切れてもいいと思う、子供扱いはまだしも賭けの対象になるのはちょっと違うだろう。

 

「・・・。」

 

取り敢えず飲んだくれ達の手を払いながらカウンターに向かう。

 

そこにいた受付嬢は恰幅のいいおばさんだった。

 

「冒険者になりたいです。」

 

「・・・災難ねぇ、文字は書けるかい?」

 

「書ける。」

 

「ゴブリンメイジに幻覚見せられてるのにかー?」

 

イライラしながら名前を書く。

 

「ゼル、ね、じゃあちょっとだけ待っててね、すぐにカード持って来るから。」

 

「俺は暫くゴブリンメイジに街道を延々と歩かされていた。」

 

「ハハハハハ!!」

 

大剣に手が伸びそうになる。

 

「・・・ほら煩いよ飲んだくれ共!子供いじめてんじゃないよ!」

 

「・・・。」

 

「そうは言ってもこれは面白すぎるからなぁ!」

 

「だったらあんたらが新米に基本的なルールを教えてやりな!」

 

おばちゃんがそう言うと飲んだくれ達は動きを止めて俺を見た。

 

「・・・何?」

 

「冒険者カードを発行するときにね、他の冒険者と戦って成績次第でランクを上げる事が出来るんだよ、やるかい?」

 

「勿論。」

 

そう言うと飲んだくれ達はニヤリと笑った。

 

『負けたら奢りな!』

 

「俺が勝ったらどっかの宿紹介してくれよ。宿賃お前ら持ちな。」

 

「楽しくなってきたぜ!」

 

「どっちが勝つか賭けするぞ!どっちに賭ける!?」

 

「俺は新米に1銅貨!」

 

「俺も新米に1!」

 

こいつら・・・。

 

ギルドの建物の裏にある少し広い広場で大剣を構える。

 

「そんな思い武器でまともに戦えると思ってんのかぁ?」

 

「俺としては酒入ってるお前らが同士討ちしないかと割と本気で心配してるんだけど。」

 

「なぁんだとぉ?ちょうしにのりゅなあ!」

 

「ねぇちょっと待って危険域一人いるんだけど誰か退場させろよ!」

 

先輩冒険者達は千鳥足や比較的まともな動きで近づいて来る人などがいた。

 

が。

 

「ウゴッ!?」

 

「アガ!?」

 

「グペッ!?」

 

「酒入ってないやつ連れてこいや!!!」

 

同士討ちどころか近づいて来る過程でほぼ全員が転んで気絶していた。

 

生き残っている数人の攻撃を捌きながら叫ぶ。

 

「何なんお前ら!?せめて危ないやつ入れんなよ!後これ本来なら一対一だろ!?何やってんの?何させてんの!?馬鹿かよ!?お前ら酒入ってんだろ!?無茶すんなよ!」

 

「お、大人の意地ってやつがあるんだよ、子供には分からないだろうがな!男にはやらなきゃいけない時があるんだよ!」

 

「少なくとも今のアンタは吐きそうになって顔面蒼白の危険域到達してるバカだよ!そんなセリフ言える状況じゃねえだろうが!さっさとどっか行けバカが!」

 

暫く耐えていると残っていた連中も吐きそうな顔になったので強制的に下がらせた。

 

というかこいつら揃いも揃ってバカしかいねぇ!

 

本当に大丈夫かよ・・・このギルド・・・。




曲聞きながら書いてたらアシスタント起動して耳から血が出た、だから遅くなった。

急にポロンって音したと思ったら耳に痛みが発生した、マジでアシスタントとかいらねぇ、しかも連続で煽るようにポポポポロン!ってなったからマジで死ねばいいと思う。

イヤホン片耳だけで助かったぜ。

アシスタントは消したい、基本無効にしてるくせに何がアシスタントが違いますだよ、キレそう、携帯壊さなくてよかった。


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