正真正銘無個性少女! ヒーロー目指してやったるわぁ!! (めありい)
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トラックに跳ねられて神様転生ってめちゃくちゃベタだよね?なんでトラックなの?他のじゃダメなの?どういう縛り?呪いなの?もうこの際名前はトラック転生で良くない?

 

初投稿です!

評価、アドバイス、誤字報告などなど諸々よろしくお願いするわな

 

──────────────────────────────

 

 

 

死んだ。

 

 

いや、テストとか冗談とかそういうのじゃないよ?

自慢じゃないけどテストは古典、現代文、幾何、代数、英語、歴史以外大丈夫だから……………ぁあんまり大丈夫じゃないな、やばいな、

いや、そうじゃない、話が逸れたな。

とにかく私は物理的に死んだっぽい、なんて言われても困るよね

『こいつ何言ってんだ』って奴正直に手ェあげい!…うん、虚しいだけだった

 

状況を説明しよう!

珍しく朝早く目が覚めた私はのんびり朝食を食べてのんびり学校の準備をしてたのだ、しかし外出3分前にゴミ出しの日だったと思い出して急いでゴミをまとめて家を出た。

そこでトラックにバッタリ遭遇!!

ベタだ!!ベタなやつだ!!!

そしてまとまる君の消しピンの如く撥ねられた私は当たりどころが悪くて死んでしまいましたとさ。

めでたし、めでたし。

 

じゃねぇわ

 

何これ!?何この展開!?おかしくないおかしくない?

は?何で死んでんの?何で意識あるの?

死んだら状況説明なんざ出来んよね!?

とにかく五感だ五感!

うーん改めて違和感がすごい。見事に何も感じない。やっぱ死んだのかな。つか死んだよね?

教えて!銀八先生!!!

 

「何やうるさい奴っちゃの」

…あんた誰やねん

「ゴットです」

「…」

 

「…グスッ」

 

ああごめん泣かないで!みんなには言わないでいてあげるから!

黒歴史なんて広めないから!私にもそういう時期あったからさあ!!

 

「…いやマジじゃマジ」

…マジ?

「マジです」

マジか

「認めるの早」

 

状況的にね。それで何の用でありましょうチクワ様。

 

「うむ、時間もないのでもう説明するとしよう。単刀直入に言えばお前さんは死んだ。何か質問は?」

 

めっちゃあります。

 

「よし、話を続けよう。」

 

聞けじじい!!

 

「お前も聞いたことはあるだろう。神様転生というやつだ。」

 

無視かよ。

それにしても…ん?神様転生?あのご都合なやつじゃんマジであるんだ。で?それがどしたん?

 

「お前もこれから自由な世界に転生できる」

 

はーなるほどー

 

マジですか?

 

「マジです。では早速選んでもらおう。お前さんが望む世界のイメージをそのままっていうのは正直難しいしめんどいから物語に出るやつで選んでね。」

 

おいお前本音出てたぞ

 

…にしても転生かー現実味がないなー

普段からネット小説は好きだったから馴染み深いけど、早々に死を認めちゃうあたり私人生捨ててたのかもなー。

いや、鬱な意味じゃないよ?断固違うから

私の人生はほぼごく普通…とは言えないか…両親が他界してて生活保護費で生活している学生だった。とは言ってもコミュ障だったけど普通に友達もいたし、それ以外ではありふれた学校生活を送っていた。コミュ障だったけど(二回目)

こんな早く死ぬとは思ってなかったなーギリギリ親不孝ではないよね?

で、世界選ぶんでしたっけ?妄想なら私の得意分野!!

勉強に妄想という教科があれば世界一の点数を取れることでしょう!!

というわけで、もともと夢見ていたやつがあるのだ。

 

「『僕のヒーローアカデミア』の世界でお願いします」

 

「おっけぇ…じゃ個性は?」

 

「無個性で頼んます」

 

「おけおけりょーかい無個性ね…て、え?…無個性かいな?」

 

はいそうですが何か?

 

まあ耳を疑うのも仕方ないだろう。あの原作において無個性は差別の対象だ。

だが私は知っている!!!

そういうところからスーパー主人公は生まれるものなのだ!!

無個性万歳!!!(ただのバカ)

 

「…お前さん面白い奴っちゃの。だがそれだとやっぱり…そうじゃそれならお前さんぴったりの特別な特典をやろう」

 

え?いらんてそんなん!無個性な意味無いやないか!

あたしゃゼロから頑張るんだよ!

 

「ははは、安心せい。お前さんの力には直接は関わらん。

──────主人公補正、知っとるよな?」

 

あ、なるほど、もらっときます。

 

こうして私は無個性のまま、ヒロアカ世界に転生するのだった。

 

 

 

『俺たちの戦いはこれからだ!!』(フラグ)

 



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寝っ転がって暇だとよくゴキブリ体操やるよねー!え?やらない?やらないの?やるでしょ!?私だけ?何それ悲しいやつじゃん!

二話目です(^ω^)

基本不定期更新だけどエタることだけはないと言いきるよ!
よし!言い切った!!
私は嘘はつかない!!

慣れないけど頑張るから応援してちょ(о´∀`о)




 

 

どーも!

転生完了しますた!!

無個性美少女ツルギちゃんでーす!!!

 

えっ?なんだって?

名前初耳??

やーごめんごめんご。

いうタイミング逃しちゃったんだよーお、、、

まーそれはさておき……

 

動けん

 

二次小説読み慣れてる人なら分かるだろうけど、赤子のうちから記憶とか意識とかがあるパターンって基本こうなんだよね……

まあどこも痛いとことか無いし不満は無いよ?

むしろ格子に囲まれたベッドはふかふかで心地がいいくらいだよ!

 

ただね…超っ絶っ暇!!

やば、マジでやることないわ。

5時間前に目が覚めてから色々試して試行錯誤したけど特に何もできることがない。でもね、でもね、数分前までは我慢してたの。

手と足を天井にのばしてバタバタ振って、ゴキブリ体操して暇をやり過ごしてたの。

 

でもね、飽きちゃったの、、、

 

だああああああああひぃいいいいいいまあああああ!!

こちらの世界の母様は結構忙しい人みたいで、たまに遊んではくれるものの、基本近くで内職してる。

あれだ、よくある造花作りだ。

 

…ベタだなぁ

 

とまあ呑気に見てたわけですよ。

ここでみんなに教えちゃう。

 

母様超美人!!!

 

なんだろ、別に私チートは目指してないんだけどさ絶対神の仕業だよね?

別にさ、ルックスがいいに越したことはないよ?

むしろ大歓迎だよ?

でもさーこういうの見ちゃうと神が理想を叶えようとしてるだけのように思えて胸が痛いんだよー

だってチート作りたい人って所詮自己満じゃん?

 

…なんか今いろんな人に呪われた気がする

 

うん話を戻そう。

取り敢えず私はルックス美形コースにされてしまったわけだ。

これは主人公補正とは関係ないよね?

現にこの原作の主人公は地味目の設定だしさ。

 

そして2次創作よく読む方々皆ご存知、転生直後の情報収集と行きましょう!!

まず、ここはかなり狭めのアパートで、まさに借りてる部屋感がある。

母様は先程申した通り、超絶美人である。

父親は未だ見ていない。母は内職が多く、日中は私を置いて出て行くので仕事だろう。てか赤ん坊置いてくなよ!

 

母は書物が好きなのだろうか、それとも父が読むのだろうか。ただでさえ狭いと言うのに大きな本棚が存在感を放ち、所狭しと本が並べてある。

 

うーん今度あさるか。

 

それと一番大事な確認ポイント!!

みんなも転生する時は忘れちゃダメな項目だよ!!

ズバリ性別だ。

よくある話で、前世で男だった人が転生したら女だったパターンがある。

てか何で大体のケースで男から女なんだ?

考えてみれば女から男の作品見たことないぞ?

えっ?このままだと大人の事情が関係してくる?

うん、関わるのやめたほうがいいね、突っ込まないでおこう。

 

とまあ考えを巡らせたんですよ。確認したんですよ。

 

無事、下はありませんでした。

 

いやあ、安心しましたよぉ〜!

これで男とかマジ勘弁だわ

 

あー色々考えてたら眠気が…赤子体質か

 

とにかく今日は寝よ

せっかくこの世界に来たんだから雄英高校に入りたいし、その為には無個性な私はめちゃくちゃ頑張んないとなんだ!!

 




書いてて楽しいけど今は眠いから寝ますねー

決して適当ではありません!
マイペースです!
これは長所なのです!!
↑ここ大事!!!


今後とも応援よろしくお願いするぞ!やろーどもー!!!


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意味ないように思えた行動って結構意味があるもんなんだよ!そう!その通り!!だからさ、グダグダしてるように見えるけどこれも将来への行動の一環なんだよーーー止めないで!!!!!

時系列かなり進みます!

だって仕方ないじゃん!原作に追いつかないし!!

原作までまだかかるやもしれん(^ω^)
気長に頼んます!!!


はろはろー!

 

久しぶりではないか諸君!!

ん?冬眠?季節外れにもほどがあるってんだ

こちとら一気に赤ん坊から幼女になったぜ

 

そう、只今私は早3歳、この狭っ苦しいアパートに来てから三年になるんだ。

 

そして、この世界で3歳といえば、

そう、多くの人は個性が発言する年だ。

 

とは言っても私は元々無個性と分かっているので、幼稚園の同級生に『楽しみだね』て言われても精々相槌をうつ感じだ。

しかも前にも言ったが私はコミュ障だ。

基本会話はほぼしない。できないわけじゃないよ、決してね。

しないだけだから。

する気がないだけだから。

やろうと思えばいつでもできるから。

私はYDKなんだ!

 

まあさっきも言ったが分かっていたのだから、赤ん坊の頃からトレーニングは始めていた。

そう、赤ん坊の頃から、、、

ゴキブリ体操がただの暇つぶしだといつ錯覚していた…!!!

ぶっちゃけて言えば歩き始めは早かった。運動神経ぐらいはいいのをくれたのだろう。常人の範囲で。

身体機能に関しては才能が無くても努力でどうにかするつもりだったが、まああるに越したことはないかもしれない。

 

なんか釈然としないが受け取っておこう。

もちろん努力の成果でもあるだろうしな。

 

あの後、地道に始めた情報収集で、私の父が既に他界していることを知った。なにこれ重っ

お祓い行ったほうがいいんだろうか?

だってこれで二連続やで?

こんな軽い感じに私は言ってるけど、数年この家にいたせいか感情移入で心が痛いん

 

切り替えよー

それ以外にも発見はあった。

私の表情筋がお仕事をジャスタウェイしているのだ。

なにこれ?

これも普通に要らないんですけど、、、

チクワ野郎色々追加し過ぎじゃね?

何?

私に何を求めているの?

どういう属性かもはっきりしてないじゃん

まあ私の人格が入ってる訳だから全てが野郎の思い通りににはなんないだろ。ざまあw

 

続いては最近の身体能力成長度についてお話ししよう。

 

まず、全力疾走、早く鍛えればやっぱ違うね!

50メートルで7秒台叩き出したぞ!

えっしょぼって思う人いるかもだけど、これ三歳の幼女だからな?

忘れんな?

次に腹筋とか含めた体幹諸々!

これは元々歩き始めるのも早かったから結構丈夫だった。

バク転とか宙返りとか最近出来るようになったしな!

あっこれ脚力もか

そして体力面、母様が幼稚園に迎えに来るまでの間、敷地内を数十周できるぐらいにはなった。

えー詳しい記録?測れないもんそれ。

そしてそして、私が割と重視している柔軟性。

皆よく小さい頃の方が柔らかいとか言うじゃん。

あれ試してみたかったんだよー!

で、実際続けてみたら伸びる伸びる!!

家で気持ち悪い姿勢してたせいでパートから帰ってきた母様に悲鳴をあげられてしまった。

解せぬ。

 

そんなこんなで齢三歳にしてそれなりに常軌を逸した身体能力の掌握に成功した

 

でもやっぱり増強系の個性持ちには敵わん。

 

そこは母様がわざわざ習い事のために貯金してくれていたので、格闘技や合気道、体術諸々を習って補うつもりだ。

生活を女手ひとつで支えている上に、子供の習い事にまで気を使うとは、母様にはつくづく頭が上がらない。

 




家庭環境の話で気分悪くした方がいましたらごめんなさい。
最大限描写には気をつけていく所存です。
これからも応援頼むぜー!


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人に優しい言葉をかけるのは物凄く難しい、分かるよ、でもね!気づけよ!!それは優しさじゃない!!人に優しくしてると思い込んで自身に酔いしれてる奴の自己満なんだよこんちくしょおおお!!灰になれい!!

原作まで追い上げてくぞー!

ちなみにこのあたりは全然原作キャラたち出てこないんす!
まっことすんません!!

でも設定に関わってくから読んでて損はないでー(^ω^)


ほんならこれからもよろしくぅ!!


ブンブン、ハロー

ツルギちゃんワールドへようこそ!!

 

今回は、ツルギちゃんの無個性発覚案件について、見ていくぞー!

 

準備はいいかーみんなー?

これもお決まりだよね…。

世界はもう少し私に優しくてもいいと思うの。

ああ、なんということだ

神に様々なものを与えられたこの私もコミュ障の柵から逃げる事は消してできない…!

 

とまあ茶番はここまで、

そう、先程言った通り四歳の誕生日を迎えた私は個性審査へと赴いた。

そこからの展開をご覧のスポンサーの提供でお送りします。

 

医者のやぶさん「はーいレントゲン撮るからねー。奥さんはこっちで待っててちょ」

マザー「んなことよりさっさとやれやこのやろう」

医者のやぶさん「んーウェイトねウェイト。ジャスタモーメントプリーズ。」

私「」

医者のやぶさん「あーこれ骨が1個多いわーダメだねーむこせーだ。諦めましょー。」

マザー「シャラップだクソジジイ。 毛ぇ抜くぞコラ。」

医者のやぶさん「やーマジマジ。マジなんだってば。これ見てちょ」

マザー「おうまーいがーん!!」

私「」

 

と言った具合でございまし

 

この後めちゃくちゃ慰めた。

 

私が、母様を。

 

いや逆だろとかそんな野暮なことは言わんわな。

だって私と違って初見だもんね

仕方ないのさ

でもな、問題はその後よぉ!

ショック大きいのは分かるで?

でも予め買っといたお赤飯出ないのなんで?ねえなんで?

ん?嫌味になる?

そーんなこの歳の子供が気にすることちゃうわな!

全く、優しすぎる母様も考えものやね

 

とまあコミュ障乍らに頑張れば2%は伝わったらしい。

 

「そうね、ツルギ今まで頑張ってきたもんね!

お赤飯今からでも炊いちゃう?」

 

もちろんやて!!

 

赤飯うまうま

 

 

翌日ー幼稚園にてー

 

噂広まるのはや

ご近所さんの情報力には戦慄せざるを得ないな。

侮れねえ奴らだ

つか人権侵害やで、おばはんども

 

なんとなく予想はできてたけど、ここまでとはね(小並感)

周囲の大人は腫れ物を扱うような態度だ。

なんやオラァ!あたしゃバッリバリに元気だよ!

失礼な!!

 

最初はかなりきつい空気だったけど、いつも通りしてたらガキンチョ共はいつも通りにいつの間にか戻っていた。

幼児共忘れるの早いな

先生は未だに少し堅いが、時間が経てばマシになるだろう。

と、収まりかけていた現場で爆弾魔が現れた。

 

「ねえ、ママから聞いたんだけど、つーちゃんむこせーなの?」

 

うっこの子直球で来やがった…!

また視線が集まってくる。コミュ障にこれはきつい。

ねーサヨちゃん、そういうのは直接言っちゃダメなやつだよ?

つーちゃんじゃなかったら泣いてるよ?

 

「どうしてダメなの?」

 

…これめんどいやつだ

無視したい…!

けど純粋無垢な子を傷つけたくはない…!

考えろ!

考えるんだ!

この状況を最も平和的に打開する方法を…!

 

結論を言おう。

助け舟が出た、ように思えた。

 

幼稚園で私の組には幼児にして卑猥な行動をとる少年がいた。その少年が下心丸出しに私を庇うようなことを言った。

 

ちょっと言っていい?

正直なんの解決にもなってない

 

もうその時がショック過ぎてそいつがなんて言ってたかも覚えてねえよ!!

 

一人で下品な行動をしているのはまだいいよ?良くないけど。

ただな、私を巻き込むんじゃねえ!

その行動は私を庇うどころか私自身の品位を貶めてるんだよ!!

 

どうすりゃいいんだこの状況

 

私はな、「失言をしてしまった無垢な少女の心を傷つけず、かつその発言が良くないものであることを的確に伝えられる方法」を探してたんだよ!!

誰も「言葉を失った無個性美幼女の心を痛めつけて、かつその状況をさらに悪化させる方法」なんか探してねんだよぉ!!

 

最終的に先生が割って入り、微妙な感じでその一件は幕を閉じた。

 

幼稚園つらたん。

マジ無理

マリカしよ

 

因みに言っとくとそいつ峰田じゃ無い

全く関係ないモブキャラだ

期待した奴いただろう

違うかんな?

絶対あんなのとは縁持ちたくないかんな?

はしもとかーんな

 

はあ、疲れた…

 

このサヨちゃん爆弾投下事件及び、峰田もどき名誉毀損事件はつーちゃんの心に大きな傷を残したのであった。

 

 





まあこんな感じで引き続き応援よろしく頼むぜーみんなー!!

感想待ってるぜ!!


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アニメ世界って何でもありだよね?明らかにキャラ設定としか思えない語尾とかあるしさ!私だって負けやせんぞ!毎回挨拶のたびに無粋な輩をビンタしたるわぁああ!!

そもそもの始まりが「結局デク無個性じゃないやんけ」というツッコミからだったのだよ
でもあたしゃこの作品続けるぜ

今日も元気にやっていこ!!


おいっすぅ!

どーもみなさんツルギでーす!!

今日も今日とてやったるわー!!

 

やーそれにしても前回の仕打ちは酷かったでー

 

そこでだ!

私はあることを思いついたのだ!!

 

この作品はヒロアカ世界、つまり多少設定っぽくすれば何しても恥ずかしくないんではないかと!

 

皆さんもご存知だろう先日のサヨちゃん爆弾投下事件とエロブドウもどき名誉破損事件、その二つの大事件の被害者となった私は二度と悲劇を繰り返すまいと誓ったのだ

そして考えた

 

とりあえずもうここはダメだ、完全に周りから見た私の品位がゼロだ。

だから小学校は出来るだけ知り合いのいない所に行くのだ。

そしてここからが重要だ。

これから私は基本男児として振舞うことにした。

私服は全てズボンにし、式典の際なども男物を着ることにした。

髪も切りたかったのだが、母様に止められてしまった。

仕方がないのできつめにポニーテールをする事で目つきを少し鋭く見せるようにした。

とは言っても、目つきに関しては露ほどの変化しかなかったので私や母様ぐらいしかわからないかもしれない。

まあとにかく、女の子らしい行動をしないようにした

口調は元より対して問題なかったが一人称を僕に変えた。

 

これを現代日本でやればアニメ見過ぎの変な奴に見えるだろうが、こちとらマジもんのアニメ世界だ。

何でもありだぜ

 

まあとりま今は効果なくてもこれからだこれから!

まだ高校までは長いのだ!

それまでにこの弊害はなくしたる!!

 

なお、顔が見えるとちょいバレるんで、前髪は長めに切るようになりましたとさ

 

まあこれはもう良いだろう、本格的に機能するのは2年後なのだ。

小学校にあがるまでの辛抱だ。

少し遠い小学校で母様も少し心配しているようだが、まあ大丈夫だ。

今の私はその辺の奴に誘拐されるほどか弱いヒロイン要素なんて持ち合わせちゃいない。

指捻りからの股間蹴り上げでスタコラサッサと逃げれる自信がある。

 

まだまだ身長が低いため、当初は体が安定しなかったものの、体幹は明らかにに前世よりある。最近は飛び蹴りしても着地に困らない。殴ってこようものなら最近習い始めた挌闘技や本で読んだやつで事足りる。

それでも心配なものは心配なのかもなー

そもそも我儘で遠い小学校にしてもらったのだ。心配は極力かけないように心掛けよう。

 

…そういえば家の本に武道に関するものが多かった。

チクワの補正だろうか?

母様は読んでいる感じはしないので、父関連なのだろう。

今度母様に聞いてみよう。

 




次の話までの間に時系列飛ぶんで、短いですが切ります!!
半端ですまんのみんな
これからも頑張るんば!!
応援よろ


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フラグってどこにでも立っているような気がするんだ、折っても折っても折ること自体がチクワの手の上の気がして腹立つわあ!いつかはチクワを躍らせたるわな、首洗って待っとき?

原作入りたーい!!

だから頑張る!
頑張って急ぐ!
そして夢のアオハル生活をして書きまくるのだァァァア!!


どもども、

チクワ大明神こと転生の元凶くそやろう(笑)に日々振り回されるツルギちゃんでーす!

 

まず最初に近況報告ー!

 

無個性発覚日から数日。僕はマザーに、幼稚園や習い事以外での外出許可を条件付きで勝ち取り、めっちゃくちゃ鍛えまくったのだ。

ん?今まで何でやらなかったかって?

そんなん決まっておるではないか

マザーが天性の心配性なのだよ

一人での外出なんて以ての外!

僕は幼女だぞ?

多少めんどくさく感じることもないこともないが、僕を心配してのことだし、不満はない。

むしろ僕の為を思ってのことだし、どちらかといえば嬉しい方だ。

ただ、やりにくいかと言われれば、そうではないとは言い切れないような気がしないでもない。

そんな心配性モンスターなマザーが条件付きとは言え一人での外出を認めた

 

流石のマミーも無個性の発覚した娘に夢を追わせず縛り付けるような行動には気が引けたのかも知れん

 

必死に訓練する為の大義名分はばっちしゲットした

 

社会的に無個性が発覚して早一年弱。

今日、僕はマザーに連れられて買い物なのだ。最近生活に余裕ができてきたのと、小学校入学に必要な道具とかを一式揃える必要も出てきたのが理由で特別にショッピングにトュギャザーなのだ。

生活に余裕ができたとは言ってもやっぱり大きな買い物なのでまずは銀行に行かなきゃなのだ。

 

 

そう、この時既に僕は勘付いておくべきだったのだ。

 

『銀行』

 

というフラグに

 

ん?なぜフラグかって?

だって今までか明らかにイベントが少なさすぎたもん。

確かに僕の精神的ダメージマックスな事件は多々あったけど、世間では何ら問題になってない。

 

あのチクワがツバつけてる世界なんだからそろそろ何かないとおかしい、とそう感じるべきだったのだ。

 

そしてお約束のように、到着した銀行には銀行強盗がいらっしゃいましたとさ。

 

ふざけんなぁああ!

くっこれがチクワの策略と分かっていながら、歯向かえないとは…!

呪うぞチクワ

 

ただ全く対策してなかった訳じゃ無い。

もしもの時のために何度もシミュレーションしたヴィラン遭遇時の確認事項を頭の中に入れていく。総勢だったり、出入り口や、人質のいる位置であったり、項目が多い上、緊張して少し時間がかかる。それでも時間にして一拍ほど。初めてにしては上出来かもしれない。

いずれはこれを一瞬、もっと言えば、行動しながらでもできるようにならなければな。

 

唯一、救いがあるとすれば、今回は幼児の見た目というハンデが効いているということだろう。ヴィランが僕を敵として認識しないからだ。

今後はこれが通用しなくなっても問題ないようにしなければ。

 

マザーが僕を庇おうとするけど僕は大丈夫!

僕はYDKだからさ!!

 

マザーの手から逃れマザーの前に立つ

 

「何だガキ?」

 

モヒカンなヴィランの一人が話しかけてきた。

今時流行んないよ?

なにその髪型わはは

 

モヒカン君の声を聞いて銀行内にいた職員の一人が「ひっ」と悲鳴をあげる。

 

「そこのガキンチョ!逃げなさい!!」

 

いやそれよりモヒカンの顔から目が離せない。

なにあれ、おでこの真ん中にハートの刺青入れてやんの、わはは

笑いそうになるのを必死に我慢する。なお、表情筋は例の通りおサボり中だ

 

「おうおう怖えのかチビ?ひゃひゃっ!」

 

まずい、ツボに入った。この人笑う時におでこにしわ寄るんだよ。お笑い芸人に転職しよーぜオッサン!

 

「よし、人質はこいつで決まりだ。車を用意しろ!

さもなくばこいつを…フガッ!?」

 

セクハラ、ダメ、絶対。

この野郎僕の真っ白い細腕を掴んできやがったぜ。

いいか?僕は下品な輩には容赦しない主義なんだよ。

因縁があるもんでな!!

 

鳩尾に細腕を粘りこむように入れた。僕の腕は刺し込まれるように入っていく。痛そう(小並感)

 

他のヴィランはまだ状況が飲み込めてない感がある。

まー無理もないか

面倒にならないうちに片付けちゃえ!!

 

我が腕の恨みーい!!!!

(※ただの八つ当たり)

 



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大人って汚い。みんな腹黒いものなんだよ?大人にはなりたくないなー。一生小学生がいい!一生のんびりしたいのだ!!

またちょっと短いかもです!
でも投稿止めるよりはマシなのであーる!!

それでは行ってみよー!


 

みんなが大好き!超絶美幼女ツルギちゃんだよー!!

 

突然ですが、ここで状況説明です!

 

前回の通り、幼女に対するボデータッチに激怒したつーちゃん!

過去の因縁を薙ぎ払うべく、セクハラ野郎とその徒党に天誅を下した!

深夜テンションのようにハイになっていたつーちゃん、お得意の体術と逃げ足で見事にその場を収めました

 

と、そこまでは良かったんだよ。

でもね、やっぱ慣れてないから。慣れてないんだよ。

だからさ、当たり前なのにすっかり忘れてたんだよ。

ポリ公と地元ヒーロー共が駆けつけるっていうこと!!

 

あの後1分も経つか経たないかってとこで地元ヒーローに続いてポリ公も駆けつけてきやがったんでふ。

見事に捕まっちゃったんでふ。

マザーが泣きついてきて逃げ場ナッシングだったんでふ。

 

まあ、マスコミーズを遠のけてくれたのには感謝だぜ

報道なんかされた日にゃ性別誤魔化し計画がパーの助なのさ!

感謝の証に協力ぐらいはしたろうかの。

 

だから只今絶賛事情聴取受付中なのだ。

 

色々聞かれるなー

ん?個性無断使用?

してないしてない、できないもん。

え?嘘じゃないってばぁ

ガチもんの無個性なめんなよ、おまわりさん?

ほらーマザーもなんか言ってやってよーん。

 

ー10分後

 

マザーが激おこスティックファアナリアリティーぷんぷんドリーム形態に移行したところで流石のポリ公も僕の説教を中断して諌めにいきますた。

 

ーそのまた20分後

 

念のため署まで同行いたしまして戸籍の確認も済み無個性も無事証明できたのだが、ポリ公には厳重注意を受けたのだー。

しかもここに来て問題発覚!

このままポリ公から解放されたらマスゴミーズがやってくるぜお嬢ちゃん、と署の人に言われてしまったのであります。

 

 

それは困る

何とかならんかね?おっちゃん、とマザーが言うとポリ公から提案があったぜよ。どうやら戸籍がいじれるらしい。個性社会でうんたらかんたら理解する気も起きないような長い話に母上も思案顔。

いやいや、ポリ公がそんなのに手ー出してええんですかと、しかも何故にこんなガキンチョのために特例的なことをやろうとするのだと、ツッコミましたよそりゃあ。

 

そしたらそこのお偉いさんが許可出したんだと。

なんでなのかは全然分からんし、特例扱いする理由も分からんけど、とりあえずこれ以上なく有難いことなのでオッケーさせてもらった。

後から考えたら絶対チクワの補正だろっていう出来事でした、まる。

 

〈追伸〉

例のお偉いさんから後日面会しましょーとのお達しがきました

フラグだねー

 

 




評価及びお気に入り登録、まっことありがとうございます!

当初はこんなに評価してくださるとは思っておりませんでしたもので、ついつい寝る前ベッドの上で一人叫んでしまいます。

もし良かったら感想も是非ください!
いつでも待ってるぜ!!


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なんかたまに無理矢理な設定人物いない?気のせい?チクワか!チクワのせいなのか!!(作者のせいです)

おはよーみんなー!!

久しぶりではないかー!

かれこれあれから7年が経ち、中学校に入ったよ!

 

さて、まずはあの事件の後からの話といこう。

なんやかんやでお偉いさんに気に入られてしまったつーちゃんは無事、戸籍を変更致しましたー!

性別は男、名前はそのままで苗字が渚から薙崎に変わりましたー

…あんま変わってないな…

お偉いさんの気遣いで家賃安めの他の家を紹介してもらえたのだぁ。

ママさんもハッピーモードだったのだ。

ただ、性別を変えたいと言った時、某犬顔のお偉いさんに事情と理由を話したら、「性別隠しても意味ないんじゃねぇのかい、バカじゃね?」との指摘を遠回しにに受けた。たしかによく考えてみても、犬顔さんの言ってたことの一つ一つが正鵠を射ていて自分でも意味ねーじゃんバカだなと思ったわけである。

戸籍はもう変えちゃったし別にいいけど、今後、生物学上でのほんとの僕の性別はバレてもいいかーってなりますた。

まあ一人称には慣れたし面白そうだから変えないけどさー

 

とまあ、そんな感じで戸籍の件は終了。

マスゴミーズの方は、犬顔さんが手を回してくれて、

『齢五歳の無個性の少年がヴィランを沈静化させた』

という、ただそれだけの情報を流すように仕向けた。

全然だめじゃん。性別以外バレてんじゃん。事実じゃん。

まあ無理も無いかもしれない。あの日は目撃者が多かったので仕方なかったのだろう。

顔が報道されなかっただけでも奇跡かもなぁ

マスゴミーズは容赦ないからなー

 

無個性がヴィランをどうとかって話にしばらくはメディアがうるさかったし、無個性に対する世論にも多少の影響が出てたみたいだけど、僕にの知ることではなかった。これでこの事件は一件落着。

3ヶ月もすれば周りも落ち着いていた。

もう犬顔さんがチクワより何億倍尊いわ

 

そしてまた時は戻るが、某モヒカン爆笑事件の数日後、マザーから「つーちゃんマジでヒーロー目指してるからね!今度紹介したい人おるんよ!」

とオッサンを紹介してもらいますた。

なんかママンの兄貴だそうで。つか親戚いたんかいって当時は思いますだぜ。

話し忘れてたけど、ママンの個性はやっぱり切る個性だった。とは言っても手の一部が剣みたくなるぐらいで、しかも範囲が狭い。

言っていいのか微妙だけど正直しょぼい。没個性だ。

オッサンは無個性だったよ。マザーの世代では言うほど珍しくもない。でもね、なんとオッサン剣術できたのだ!

なんでもオッサンとマザーが小さかった時から、切る系の個性を持つ家族に影響されて剣術やり始めたらしい。

めちゃくちゃ強い。

剣教えてもらった。和風の。あっそれ剣じゃなくて刀かも。

7年経った今でも謎の多いオッサンだけど仲はいいぜ!

 

でもねー、あれだよ、ヒーローってさ、切るというより大体殴るじゃん。血が飛び散ったりしたら人気出ないかもだし

刃物を武器にするヒーローもいないことはないけど、メジャーな人たちはみんな違うんだよね

 

まあそんなことは気にしなーい!

かれこれ7年間小学生生活の傍ら、めっちゃ頑張ったのである。

結構強くなったと実感できる。

無個性というハンデも、武器を使えば少しは補えよう!!!

 

って言ってももちろん素手でしか戦えない時用の対策は必要。

相手はあのチクワだからね。どんなフラグにも対応する心構えでなければ…!

僕の素手での戦闘スタイルは基本足だ。脚力の方が腕力より強いのは結構知ってる人も多いと思う。でも多くのヒーローとかヴィランが拳を使うのは何故か。それはズバリ、バランスが足りないのだ。足を使う時は片足で立つか、飛び上がるかしないといけないから安定しない。それに、不安定な体勢から次の攻撃を繰り出す時に柔軟性が必要になってくることは多い。だから拳の方がやりやすいって人の方がいっぱいいるのだ。

でも僕は違うのだぁ!

小さい頃から柔軟性は自分でも気持ち悪いと思うほどついてるし、バランスも割といい。バランスがいいって言っても常人で手に入る程度しかないのだが、柔軟性でカバーしている。

 

この身体能力に合わせて、刀の使い方も知ったのだ。

結構強くなってる実感がある。

鍛えたのだ、7年間!

個性持ちとの差をカバーするのは難しいからね。

かなりガチで頑張った。

褒めてー!!

 

そして今、僕は12歳。中学一年生だ。

未だに原作との関わりナッシング

早く主人公たちに会いたい!!

 

チクワー僕の邪魔は今後とも許さんからなー!

無個性ヒーローなったるでー!!

 




以前書いておいた、ツルギの家の大量の書物ですが、このオッサンの所有物だったものです。

犬顔のお偉いさんは原作に出てきますけど、つーちゃんバカなので忘れてます。
勉強面はチクワ補正でどうにかなっているようです。




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原作はーじまーるよー!準備はいいかー?やろーどもー!!!シリアスさんが活気づき始めるからみんなも気をつけておくんだぞー!足元救われたって知らんからなー!

今回はツルギちゃんお休みです。
何かゲーセンのパンチゲームにハマったとか言ってたな、、、

原作主人公の独想回です。心境とかにつーちゃんも影響しているよ!
小心者な性格は変わってないけどね!





 

 

人は生まれながらにして平等じゃない。

僕は齢4歳にしてそれを知り、最初で最後の挫折を味わった。

 

ヒーローになるという夢の、大きな弊害となる事実。

 

僕には力がなかった。

 

僕の世代に個性がない人なんてほぼいない。周りの人たちはみんな、幼稚園の時に色んな個性を発現させていたし、ヒーローだってみんな、すごい個性を使って活躍している。

 

『オールマイト』

 

僕の最も憧れているヒーローだ。彼は超人的な増強系の個性で瞬く間にヴィランを倒し、No. 1ヒーローとして世間で人気を博していた。

僕はこの人のようになるのが夢だった。

 

恐れ知らずの笑顔で困っている人たちを助ける。

 

かっこいいと思ったんだ。

そうなりたいと思ったんだ。

個性が出ればきっとヒーローを目指せる、そう思ってたんだ。

 

でも現実は違った。僕には個性がなかった。

医師から「諦めた方がいい」という言葉を聞いた瞬間、硬直した。

医師が母と何か話していたけれど内容が全く頭に入ってこなかった。でも受け入れるべき、本当の事だというのだけは分かった。あの時の気持ちは今思っても筆舌に尽くしがたい。

苦しくて仕方がなかった。

 

無個性のヒーローなんて聞いたことがない。これから僕はどうしていけばいいんだろう。

ヒーローになりたい。それ以外になるなんて考えられなかった。

 

だから夢を捨てきれなかった。

母さんに『ごめんね』と抱きしめられた時だって、それが暗に

『無個性はヒーローになれない』

ということを肯定するようなものであることには気づいていた。

気づいていたのだ。

気づいてきたのに諦めきれなかった。

結果、引き際を失った夢を未練たらしく追い続けるようになっていた。

 

でも、イレギュラーが現れた。

僕は今でもその子を僕の心の救世主だと、ヒーローだと、思っている。

僕はあのニュースを見た日を忘れはしない。

一生できないだろう。

そこには、当事者がスマホか何かで撮ったのだろう、縦長の画面が映っていた。

その動画から僕は目が離せなかった。

僕と同じくらい…いや、少し背は小さめな、一見普通の少年が映っている。帽子を深くかぶっていて、カメラの角度的にも顔はあまり見えない。

彼はごく自然にヴィランに近づき、次々と完封していた。小さな体を活かした俊敏な動きをして、一挙一動に無駄がない。

 

映画を見ているかのような気分で、当時は何が起こっているのか全然分からなかった。

そのニュースに見入っていると、アナウンサーが、僕にとっての爆弾的な発言をした。

 

『無個性の少年』

 

衝撃と興奮でその日は寝られなかった。

ヒーローになれるかもしれない。

そんな、僕にとっての眩しすぎる希望が頭で渦を巻いた。

一年前に味わった挫折、苦痛、屈辱。酷いものだった。よく心が折れなかったと今でも思う。

 

「少しでも、努力しよう」

 

この日僕は、初めて夢への第一歩を踏み出したんだ。

 

そして現在に至る。

いくら体を鍛えたと言っても、個性所持者への劣等感は変わらないし、向こうからの蔑視も全く無くなったわけじゃない。

むしろ、無個性のくせに景気付けられちゃって、と、快く思わないような人も少なくなかった。

でも逆に、母さんや先生、他にもほんの少しだけだけど、とっても応援してくれる人もいた。僕の努力を暖かく見守ってくれた人たちだ。

夢を馬鹿にした人は何人もいたけど、それ以上に、ほんの少しの支えてくれる人がいたっていう事実が僕にとっては大きかった。

あの日から僕の世界はガラリと変わったんだ。

 

きっとこれからもやっていける。絶対ヒーローになってみせる。

たくさんの支えてくれた人たちの期待に応えるためにも。

 

僕はオールマイトを目指す。彼は僕の目標の全てだ。

いや、もう一人いる。彼もとても大事な人だ。

あの無個性の少年。

あの後ネットでその少年の情報を必死になって集めまくった。

本人からしたら冗談じゃないかもしれない。自分でも自身を少し気持ちの悪いやつだと思う。

 

でも僕は憧れてしまったんだ。

オールマイトの動画を何回も見たように、彼の、たった30秒にも満たない、たった一つの動画を何回も見て、分析した。コンピューターの扱いには自信があったのだが、彼の情報はほとんど出てこなかった。

それでも、僕と同い年だとわかって、なんだか気分が高揚した。

 

 

彼に会いたい。

会って話かしたい。

会ってお礼を言いたい。

君が心を救ってくれたこと。

希望をもたらしてくれたこと。

たくさんのことを伝えたい。

 

だって

 

本当に憧れたんだ。

 

もし彼がいなかったら、本当に心が折れていたかもしれない。

何もかも諦めてしまっていたかもしれない。

夢を未練たらしく追うままの木偶の坊だったかもしれない。

 

彼がいたから僕は変われた。

前を向くことができた。

努力ができた。

周囲の反感にも耐えられた。

 

夢に向かって走り続けられた。

 

彼もきっとヒーローになるだろう。そんな気がする。

夢を追い続ければいつかは会えるかもしれない。

目指すからにはトップを目指す。

そのために、オールマイトの母校、雄英高校に入学することを第一目標にした。

 

 

今僕は中学二年生。

来年には受験への追い上げが始まる。

ヒーロー科は勉強も訓練も欠かせない。

勉強面は、完璧とまではいかないけれど、模試の結果から見ても雄英に受かれる可能性は充分にある。

怠けなければ、この調子で問題ないだろう。

 

実技は、全力を尽くす。

ただそれだけだ。

正直言ってしまうと確証が持てないのが本音だ。

確かに、あの少年のおかげで夢を追いかけ続けることはできた。早いうちから少しずつだけど体を鍛えていった。体の使い方もたくさん調べて勉強して、研究した。

 

それでも絶対の自信なんて持てそうにない。

鮮烈だった彼の活躍も全ては画面の向こう側。

 

母さんは「いずくはきっといいヒーローになれるよ」と繰り返し言うが、聞き飽きてしまった。まるで言い聞かせているような言い草で。

それどころか、最近では元気づける理由で言っているような気もする。

 

何より、『ヒーロー志望だ』と言った時の周囲の反応の中に見られる、憐れみの目。

決して本人たちに悪気があるわけじゃない。

むしろ善意だ。

それでも僕の心を確実に抉っているものだった。

 

個性がないって言うのは大き過ぎるハンデだ。

僕だってそれくらいよく分かってる。戦闘向きではない個性のヒーローは大体が後方支援、サイドキックだ。サポートアイテムでカバーするにしても限度がある。

僕が目指す最高のヒーロー像はそれとはちょっと違う。

No. 1にはなれなくても絶対になると決めているヒーロー像が僕の中にはある。

サイドキックは通過点、僕は必ずその先に行って活躍したい。

 

険しい道ってことはよく分かってる。

現実はそう甘くはない。ヒーローは戦闘中であれば死と隣り合わせだ。

 

でも決めたんだ

 

絶対に諦めない

 

「僕はなるんだ。最高のヒーローに。」

 

そう自分に言い聞かせて玄関から一歩、外に出た。

遠くて大きな破壊音がした。

 

 




原作開始!!
だけどまだオリ主との関係は出てきません、、、
追い上げ始めるでー


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今まで静かだった奴が突然ハイテンションで話しかけてきたらなんかしたら当然テンパるに決まってんじゃん!!逆にも言えることだよ?キャラ付を馬鹿にするんじゃないぞ野郎共ォ!!!

お気に入りがもう少しで50件…((((;゚Д゚)))))))

まさか初投稿でここまで皆様に評価していただけるとは思ってもいませんでした…
当初は正直不安しかなく、青バーとかも覚悟していたんですけど、凄く安心しました。嬉しすぎて嬉しすぎて、ヒアリに刺されたところもちっとも痛くありません!!
本当にありがとうございます!


今後とも、応援よろしくお願いします!


今回もつーちゃんお休みやって(・ω・`)

つーちゃんもヒアリに刺されたんかな?(^ω^)






玄関を開けたら少し遠いところから大きな破壊音が聞こえた。

 

 

僕は反射的にその方向へと駆け出す。

高ぶる気持ちや、早る気持ちを抑えて信号を待つ。早く向かいたくてしょうがない。信号を待ちながらも、足は一人でに足踏みを繰り返す。

信号が青になってすぐ、再び僕は地面を蹴った。

向かう先はもちろん音がしたところだ。だんだんと喧騒が聞こえるようになってきた。これはきっと当たりだ。

 

目的地に着くと思った通り、そこではヴィランが暴れていた。

 

「でっけぇヴィラン!」

 

今日は運がいいなぁ!

生でヴィランを見れるなんて!

 

少し興奮気味になりながら少しでも近くで見ようと、通勤中の人たちが集まっているところに野次に入る。

近くの人の会話を聞く限り、あのヴィランは『怪物化』の個性を持っているみたいだ。

もっと近くで見たいけど、僕の身長の関係で前の人に隠れてしまう。仕方がないので野次の隙間を通って一番前まで出てきた。

 

 

 

「誰戦ってます!?」

 

 

 

ヴィランから目はそらさずに近くの人に尋ねるつもりで喋る。

とは言っても、オタクとも言えるほどヒーローマニアな僕はその辺にいる人たちよりもずっとヒーローに詳しい。現場を一目見るとすぐに解説を始める。

その様子を隣で見ていたおじさんにその事を指摘された。しかもオタクと言われて少しあたふたしてしまう。

 

そうしているうちにもヒーローはヴィランと戦いを続ける。そしてまさに今、ヒーローがヴィランに必殺技を打つメイン場面だ。絶対に見逃せない

 

ヒーローが技を打つ瞬間、ついつい興奮してしまった僕はヒーローと一緒に必殺技の名前を叫んでいた。

 

決まる!と誰もが思ったその瞬間、全く予想外の第三者が介入してきた。個性で巨大化した別のヒーローがヴィランを蹴り飛ばしてしまったのである。

あまりに突然のことでヒーローも含め、その場にいた皆が固まってしまった。あれが手柄の横取りってやつだろうか

なんだか釈然としない…

 

 

一悶着はあったが、この件は無事解決したようだ。

 

通勤中の人たちが再び会社に向かい始め、野次馬は散る。取り残されていることに気づきもしない僕は先程のヒーローの個性をまとめていた。僕は凄いと思ったヒーローのことはノートにまとめている。

『将来のためのヒーロー分析』

訓練をする傍ら、趣味から始めた分析だ。オタクと言われるかもしれないが、きちんとすれば、分析だってこれから先で立派に役に立つはずだ。

 

「おいおいメモって…ヒーロー志望かよぉ!いいねぇ!頑張れよ?」

 

突然かけられた発破に嬉しい気分になる。僕は元気よく答えた。

 

「はい!!頑張ります!」

 

* * *

 

 

中学三年生の春。

青春真っ盛りのこの時期、僕らにとっては将来への進路を決める大事な時期である。

 

「みんなぁ!大体、ヒーロー科志望だよねー!」

 

担任がそう言いながら進路希望調査の用紙を教室中に散らしている。

それに合わせるように教室中の生徒たちが盛り上がり、個性を発動しだした。

 

「うんうん、みんないい個性だぁ。でも校内での個性発動は原則禁止な?」

 

みんなが個性を発動している今、僕はあまり目立ちたくなかった。すごく気不味い。なんというか、惨めだ。

先生ももう少し気を使ってはくれないのだろうか…

何もしないのは負けた気がするので、目立たないよう、そっと手を挙げておく。

先生はその様子に気づいているようだ。

 

そしてある生徒が先生に反論を入れた。

 

「センセェ!!みんなとか一緒くたにすんなよ。俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんざ…行かねえよ。」

 

爆豪勝己、僕の幼馴染だ。

 

途端に教室全体からブーイングが響く。彼はその様子を気にも留めずにせせら笑う。

それを見ていた先生が教室の空気にもう一つの波紋を入れる。

 

「あー…確か爆豪は雄英高だったなぁ…」

 

それを聞いてブーイングはざわめきへと変わった。まあ、それだけ雄英高校とは受けるだけでも名誉な凄い学校だ。その学校に在籍しているというだけで一つの大きなステータスになる。偏差値、倍率ともに、尋常じゃない数値を誇っているマンモス校なのだ。

 

そのざわめきを聞いた彼は机の上に立ち上がり、自慢気に語り出す。

かっちゃんはやっぱり凄いなぁ…

模試の結果や人生設計を自信満々に語るその姿、僕には真似できそうにない。

それよりもさっきから話が嫌な方向に向いてきている。先生が仕向けているように思えるのは気のせいだろうか。

 

「そう言えば、緑谷も雄英志望だったな。」

 

…気のせいじゃなかった。

 

一瞬時が止まったかのように思える時間が過ぎる。

次の瞬間教室中で笑いが広がった。

 

突然話の中心に置かれた僕は、周りの人の馬鹿にするような発言におどおどとする。

 

かっちゃんもなんだか凄く機嫌が悪そうだ。

舌打ちしながらこちらを睨んでくる。

やばい!そう思って恐る恐る様子を伺う。するとかっちゃんはこれ以上ないくらい低い声でこういった。

 

「無個性のテメェに何ができんだよ」

 

普段のかっちゃんになら、多少取り乱している今の僕にも少しは反論できたかもしれない。

でもなんだかいつもと雰囲気が違った。

いつもなら言葉より先に手を出してくるだろうし、気に食わないなら大声で怒鳴ってくるだろう。

それが今回は、はっきりとはしていたものの、いつもよりずっと小さな声で苦い言葉を言われただけだったのである。

そんな幼馴染の様子に違和感が拭いきれず更に動揺した。

 

後ろの席にいた僕にはついぞ彼の顔を窺い知ることは出来なかった。

 




次回もこんな感じかなー…

ううっギャグがない!!
シリアスのガチ勢が恐ろしき!!
次回からかっちゃん視点の話も書いていきたいです、まる。

初投稿っていうのもあってか、実を言うと不安しかないのです、、、
反応が欲しい…
毎度のようだけど、感想いつでも待ってるからね?よろしくね?





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出久:オリジン

お気に入り増えたーーー!!
もうやばい。今なら筆舌に尽くしがたいの意味がよくわかる…!!

今回、投稿が遅くなった分めちゃくちゃ多いです。
それと、かっちゃん視点結局書けませんでした
期待してくれていた読者がいたなら本当にすまぬ!

それと、お待たせしてしまって悪かった!!

それでは、シリアスドストライクでいってみよう!



あの後、結局学校が終わるまで何事もなかった。

 

僕はスマホでヒーローニュースのサイトを確認する。どうやら、今朝の事件は今日のニュースのトップになっているようだ。

 

「家に帰ったら今朝のことをまとめなきゃ」

 

家に着くまでの間、今朝ノートに書いたメモを読み返しておこうと思い、鞄からノートを取り出す。

すると、突然ノートが手から離れた。

 

「かっちゃん…」

 

「あれは何のつもりだ?デク?」

 

『デク』はかっちゃんのつけた僕への蔑称だ。かっちゃんは昔からいつも僕を蔑んでいる節がある。今回も強烈な自尊心から行動を起こしているのかもしれない。あちらからすれば、無個性でずっと前から弱者として扱ってきた奴が自分と同じ学校を受けると聞いたのだから突っかかりたくなるのも仕方がないのかもしれない。

僕にはかっちゃんに対抗する気なんてさらさらないんだけど、かっちゃんの迫力に圧されてうまく言葉がまとまらない。

 

「カツキ何それ?」

教室に残っていた取り巻き達が、かっちゃんが取り上げたノートを覗き込む。取り巻き達は表紙を見るなり笑い出した。

 

「い…いいだろ?なんだって…!返してよ…!————って、ああああー!!」

 

その言葉を言い終えぬ内にかっちゃんはノートを爆発させてしまった。それを見て僕は悲鳴をあげる。

ノートは原型は留めていたけど所々が焼け焦げて黒くなっていた。それどころか、かっちゃんはそれを窓から投げ捨ててしまった。

 

「フン……一線級のトップヒーローは大抵学生時から逸話を残してる。俺はこの平凡な私立中学から初めて、唯一の雄英進学者って箔をつけたいわけよ————っつう訳で、一応さぁ…雄英受けるななぁ?デクゥ?」

 

なんだかもうみみっちいとしか言いようがない。別に僕が受からないと思っているなら脅す必要なんてないはずだ。要はただの愉快犯だろう。

僕の肩に置かれたかっちゃんの手から制服の焦げる匂いがする。短いようで長いその間、僕はかっちゃんから目を逸らす事しかできなかった。

かっちゃんは僕の小さい頃からの夢を知っている。そのために僕が努力しているのも知っている。それでも彼はそれが叶わなないものであると疑わない。

 

言いたいことはたくさんあるけど、今日はどうも口論などする気になれない。かっちゃんが怖いって言うのも少しはあるが、他に気になることがあった。

 

「いやいや…流石になんか言い返せよぉ」

「言ってやんなよ、かわいそーに————彼はまだ現実が見えてないのです。」

 

 

「———現実なら、見てるよ。痛いほどに。…僕は本気だ、かっちゃん。記念受験なんかじゃないよ……絶対、ヒーローになるって決めたんだ。それに——「それになんだよ」——ッ」

 

ようやく途切れ途切れに話し始めた言葉を遮られる。

 

「言っておくが今俺がテメェに声掛けたのはただの愉快犯じゃねえ、暇つぶしでもねぇ。」

 

そこまで話して、彼は声のトーンを低くする。

 

「——どうせテメェのことだから何年前の無個性の奴のことでも引きずってんだろう?夢見てんじゃねえよ。まだあんなの信じてんのか?ああ?」

 

弾けるような感情は感じられず、寧ろ底冷えするような響きに思わず身を震わせた。いつもの彼なら怒鳴り散らしたような声を出すはずだ。

 

「ッそれってどういう…」

 

「あの無個性はハッタリだっつってんだよ。大方、国のお偉いさんかなんかが無個性差別をどうにかしようとしてやった、でっち上げだ。」

 

…え…

 

あり得ないことじゃ、ないかもしれない。

 

今までのことを思い返す。確かにあの事件は不可解な点が多かった。目撃者も多い大きな事件だったはずなのに情報は全然手に入らなかった。

…でもあの動画は?…いや、最近の映像加工技術はすごい。それこそ超常のお陰で発達した技術なら、あの程度全く難しいことではないだろう。

だけどそれだったら僕はすぐに分かったはずだ。

じゃあ何で今まで気づかなかった…?いや、違う。本当はうっすらと気付いていたのかもしれない。きっと気づきたくなかったんだ、僕は。

あまりにも輝いて見えた虚実に縋りたかっただけだったんだ。

 

頭がガンガンする

 

考えれば考えるほど辻褄が合ってしまう

いやだ、認めたくない。

あれが嘘だったなんて。

だって、あの出来事のお陰なんだ、全部。

あれがなかったら今まで僕は、

 

あの子はあの日からずっと僕の心の支えで、

 

 

「…そもそもあんな奴いなかったんじゃねーの?」

 

 

—————ッ!!!!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

あの後、頭がぐらぐらしてしばらく教室で机に突っ伏していた。

 

もう何もかも壊されてしまった気分だ。

…いや、実際何もかも壊されてしまったのかもしれない。

 

……考えていても仕方ない。

 

そう思った僕はフラつきながら席を立った。

と、そこで、先生に呼び出されていたことを思い出した。時計を見ると、もう随分と待たせてしまっている。僕の担任の先生は、基本生徒に優しい先生だ。それは無個性の僕に対しても変わらない。僕がよく努力しているということも考えて、授業中に僕がうとうとしてしまっていた時もそっと起こすような配慮をしてくれた。今日の会話の誘導は、さり気なく僕のことをみんなにアピールしてくれようとしただけかもしれない。決して悪い先生ではないから。…まあ今回は裏目に出たわけだが、そこまで気にしていない。今日の呼び出しはきっと先生からの謝罪だろう。

 

でもなんだかもう行く気になれなかった。

 

「…帰ろう」

 

正直もう必要のないものかもと思いながらノートを拾いにいった。鯉の溜め池に寂しげに浮ぶノートを掴む。

 

ノートは冷たかった。

 

家までの道中、まとまらない思考を無理やり隅に追いやった。

今は何も考えたくなかったから、オールマイトを真似して大声で笑った。側から見たら相当変な人だろう。でもほんの少しだけ気晴らしになったかもしれない。

 

僕は不幸にも近づいてくる水音に気がつかなかった。

 

「…Mサイズの隠れ蓑…」

 

背後からした不気味な声を聞いてようやくその存在に気づく。反射的に荷物を全て散らばして、振り向かず逃げた。すごい悪寒がしたのだ。予感は当たっていて、距離を十分にとってから見てみると、それは悪臭を放つ泥のような何かだった。それはビチャビチャと動き出す。僕に危害を加えようとしているのは一目瞭然だった。

いくら筋肉をつけたといっても力が多少上がっただけで、戦闘慣れなんか全くしていない。ヴィランに直接悪意を向けられたのだってこれが初めてだ。

 

ここはトンネルの中、周囲からは殆ど見えないし、助けを呼ぼうとしても聞こえないだろう。携帯で通報すればいい話だが、その余裕は与えてくれそうにない。

 

「…詰んでる…」

 

今は直ぐに逃げたから、少しの間は相手と距離があるが、相手は流動体。天井や壁をつたってこられたら捕まる。走って距離を取り続けながらそう考えて、とにかくトンネルを抜けるのを優先した。

だか出口まで間に合うだろうか…

今の僕が全力で走っても微妙なところだ。

逃げ切れる保証はないけれど、これぐらいしか今できることはない。こういう時個性があったら、と少しでも考えてしまった自分が嫌だった。

 

もう少し…!

もう少しでトンネルを抜ける…!

 

その時、天井をつたってきたヴィランが頭上から襲いかかった。

 

間に合わなかった…?

 

しかしそこに思いもよらぬ救世主が現れる。大柄なシルエットがトンネルの出口に泛かんでいた。

 

「少年、伏せてくれ!!」

 

必死になってその言葉の通りに伏せる。

 

「テキサス—————スマァアアッシュ!!!」

 

直後起きた突風で流動体のヴィランは吹き飛んで飛び散った。

 

 

僕は夢を見ているのかもしれない。今日かっちゃんに言われたことがショックで、憧れのヒーローを思い描いているのかもしれない。

トンネルの外からの光が逆光になって、オールマイトの姿がはっきりとは見えない。

それでも確かな存在感を持つその人、憧れの人は、僕のもう一人の憧れだった人を思い出させる—————また頭がガンガンしてきた。

 

僕は意識を保ちきれなくなって、そのまま倒れ込んだ。

 

 

* * *

 

 

「————-ey,hey,hey!!!」

 

…う……

 

「うおああああああぁ!!!」

 

「よぉかったぁ!元気そうで何よりだぁ!」

 

「うお、お、」

 

「いやぁすまなかったねえ。ヴィラン退治に巻き込んでしまった…怪我はないようだね————って君大丈夫?喋れるかい?」

 

 

…間違いない、本物だ…!

さっきのは夢じゃなかったんだ…!

 

「おっオールマイト…さ、さっきはありがとうございます…!」

 

「いやいや、君のおかげさ!ヴィランもこうして無事詰められた!」

 

そう言って彼は変な色をしたペットボトルを掲げる。

思わぬ形で遭遇したため、少しばかり…いやかなり混乱してしまった。でも先程までの経緯を思い出して少しずつ冷静さを取り戻す。

今日は本当に忙しい日だ。

 

そのあと急いでサインを求めようとしたら既にしてあった。流石、何事もはやい。これには再び興奮してしまい、自分でもやばいと思う速度でお辞儀を繰り返す。

 

「じゃ、これから私はこれを警察に届けるので———液晶越しにまた会おう!!」

 

あ…待ってよ、待ってくれ、まだ聞きたいことがたくさんあるんだ、

 

声が出ない。心のどこかで自分が拒否しているのかもしれない。

 

それでも、彼が飛び立つ瞬間、僕は懸命に手を伸ばした。

 

***

 

 

こ…怖かった…

高すぎて死ぬかと思った…

 

「全く…熱狂にもほどがあるぞ…今はマジで時間ないからここからは階下の人に頼んで降ろしてもらいなさい?」

 

「———ッひ、ひとつだけ———!…一つだけ、聞きたいことがあるんです…」

 

無個性が発覚したその日からの記憶、今日の出来事がフラッシュバックして、だんだん声が震えて小さくなる。無個性がヒーローになれるのか———今日、たったひとつだけの確証が失われてしまった。

だからこそ憧れのヒーローに肯定してほしかった。もう、縋れるものがこの人の存在以外に残っていなかったから。

 

「個性が、無くてもッ…ヒーローはできますか——?」

 

オールマイトが立ち止まる。

 

「…個性がない人間でも…!あなたみたいになれますか!?」

 

 

僕の全てをかけた言葉だった。僕はそのまま自分の今までのことをぽつぽつと話した。様々な思いが巡って言葉に熱が入る。

 

とそこまできて今一度問いかけるように彼の方を見た。

するとそこには…

 

 

* * *

 

 

「カツキよぉ、お前緑谷とは幼馴染なんじゃねの?今日のはだいぶ応えてたみたいだったけど大丈夫なのか?」

 

勝己はあの後取り巻きたちと一緒に帰路についていた。

 

「俺の道にいたのが悪い」

 

そう言って足元のゴミを蹴り飛ばした。

 

「ガキみてえに夢見心地の馬鹿はよぉ…見てて腹がたつ!」

 

勝己は普段から不機嫌なことは多いが、今日は取り巻きたちでも不自然に思うほど機嫌が悪かった。地面に爆破された空き缶が転がる。取り巻きは気分転換にでもと思いゲーセンに誘うが、これまた眉間にしわを寄せられ一蹴りされた。

——その時だった

 

 

「いい個性の隠れ蓑…!!」

 

 

* * *

 

 

「うおあああああぁぁぁああ!!!!」

 

本日何回目の奇声だろうか…

かなり裏返った声が出てしまった。

 

無理もない。目の前で憧れのヒーローが煙を上げながらガリガリになったりなんかしたら衝撃を受けない人なんていないだろう。その後、かなり取り乱しながらもオールマイトの事情を聞かされることになった。

彼の背中を見送りながら思い返す。

それは今の僕には苦すぎる話だった。

 

『私が笑うのは、ヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺くためさ』

 

『ごめんね、出久…ごめんね…!』

 

『プロはいつだって命がけ、力が無くとも成り立つとは、とてもじゃないが口にできないね』

 

『無個性のテメェに何ができんだよ』

 

『夢見るのは悪いことじゃない。だが、相応の現実は見なくてはな、少年』

 

『そもそもあんな奴いなかったんじゃねーの?』

 

 

嗚呼、疲れたなぁ…

今までの努力はなんだったんだろう

 

ちょっと整理する時間が必要みたいだ。いつもならこの時間はトレーニングをしているけど、1日くらいやらなくたってバチは当たらないよね。

 

 

暫しぼんやりと空を眺めていると、大きな物音が遠くから響いた。キョロキョロと見渡せば黒煙が上がっている箇所が目についた。

 

「ヴィラン!?どのヒーローが現場に…あ、」

 

はは、いつもの癖だな…

さっきあんなこと言われたばかりじゃないか、

 

走り出そうとしたが思い直してトボトボと歩き出す

 

今日一日ですっかりボロボロになったノートを何気なく捲る。ついつい泣きそうになってしまった。

泣くな…分かってただろ…現実さ…

分かってたから今まで気づかないように、見ないようにしてたんじゃないか

 

「あれ…?ここ…さっきの爆発の…」

 

…おいおい、癖でつい来ちゃったってか?

やめとけ今は。虚しくなるだけだ。

 

野次馬の隙間からヴィランが暴れているのが見えた。そしてすぐに理解する。あれは今日僕を襲ったヴィランだってこと、つまりオールマイトが逃してしまったってこと、そしてそれが自分のせいだってこと。

 

人質になっている中学生がいると聞いて、とてもいたたまれなかった。謝ることしかできなかった。

だって、ぼくには力がないから。

力がなければ人なんて救えやしないんだ。

 

でもその中学生の顔を見た途端、ぼくは爆発の中心に飛び出していった。

 

* * *

 

はぁ…

オールマイトに謝りたかったけど、取材が続いてたし…帰ったらホームページからメッセしてみよう…

 

今回の事件、突如現れたオールマイトの手によって無事解決した。

 

あの時、自分でも理由が分からないまま飛び出した僕は、ヘドロの中に自分から突っ込んでかっちゃんを引っ張り上げた。かっちゃんが粘り強く抵抗してくれていたおかげで、引っ張り上げるまでの間にヘドロヴィランからの攻撃を受けることはなかった。

僕にはあそこまでが限界だったけど、そのあとオールマイトが来てくれて本当に運が良かった。

 

まあ、結局僕はヒーローたちにこっぴどく叱られたわけだけどね。

 

かっちゃんのことだって…

 

「デクゥ!!」

 

あ…噂をすればだ。

 

「俺は…テメェに助けを求めてなんかねえぞ……! 助けられてもねえ!! あ!? なあ!? 一人でやれたんだ

無個性の出来損ないが見下すんじゃねえぞ

恩売ろうってか!? 見下すなよ俺を!! クソナードがぁ!!」

 

そこまで言うと彼は踵を返し去っていく。

 

…本当に彼らしい。

かっちゃんの言う通りだ。

何ができたわけでも変わったわけでもない。

もともと記憶の整理だって気持ちの整理だってするまでもなかったんだ。いくら何に縋ってもなんの意味もなかった。全部嘘だったんだから。

たとえハッタリでも、あの無個性の少年のおかげで、僕は8年間頑張ってこれたのは事実なんだ。だからもういい。夢は十分見させてもらった。

良かったよ。

これで僕もようやく、身の丈にあった将来を————————

 

「私が来た!!!」

 

「え!お、オールマイト!? なんでここに…さっきまで取材で…」

 

「抜けるくらいワケないさ!! なぜなら私はオールマ——ゲボォっ!!!」

 

「わーーーーーー!!!」

 

中略

 

「少年…礼と訂正、そして提案をしに来たんだ。」

 

「君がいなければ…君の身の上を聞いていなければ、私は口先だけのニセ筋になるところだった——ありがとう」

 

面と向かって言われた感謝の言葉に、目を合わせることが出来なかった。

 

「そ、そんな…そもそも僕が悪いんです…仕事の邪魔して…無個性のくせに、生意気なこと言って…」

 

言っているだけでも暗い気持ちになっていく。どこまでいっても卑屈は拭えない。

 

「そうさ。あの場の誰でもない、小心者で無個性の君だったからこそ、私は動かされた」

 

「トップヒーローは学生時から逸話を残している———彼らの多くがこう結ぶ、『考えるより先に体が動いていた』 と」

 

 

僕はなぜか、母の言葉を思い出していた。

『ごめんね出久……ごめんね…ごめんね……!』

『出久、あんたはきっといいヒーローになれるよ』

 

「——君も、そうだったんだろう」

 

抑え込む間も無く目頭が熱くなる。

 

「———ッぅん…うん……!」

 

嗚呼、違うんだ…違うんだ、母さん、

あの時、僕が言ってほしかったのは、謝罪でも、慰めでもない、

僕が、本当に言ってほしかったのは、

 

「『君は、ヒーローになれる』」

 

たった、それだけ。

それだけだけど、ぼくにとってはとても大事なこと。

 

やっと掴んだ、確かな希望だ

 





次回からやっとつーちゃんが書けます!!

実を言うと、今回のお話の最後の方とか、シリアスに耐えきれなくなって若干ギャグかも怪しいのが入ってたかもです


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葉隠ちゃんって服の形でしか容姿が分からないけど凄く可愛いんだろうなってことだけは分かる…憎たらしきかな、そのお胸(・ω・)

先程感想欄の方からご指摘がありまして、目次の説明文のところを少し訂正致しました!
それとタグに勘違いのタグも付け足しておきました

評価バーの色を見て鳥肌立ちました…!
このような作品を、どうもありがとうございます!!

感想ももらえて…やばい、テンションがあぁああ!




みんな久しぶりだなー!つーちゃんだよー!

 

さて、状況を説明しよう!

今僕は足を木の枝に引っ掛けて逆さま…つまりは宙ぶらりんになり腹筋しているのだ!

中学二年生の夏休み、人生で一番はっちゃけちゃう時期だ。僕はと言うと、例年のように叔父さんに誘われて、毎年恒例山籠もりをエンジョイしているよ!

訓練も遊びも兼ねてのことなので多少ハードでも文句はないのだ!だって楽しいもん。

 

昔から鍛えているおかげで僕はムキムキ…と言うわけでもない。実際やろうと思えばなるにはなれたのだが、将来的にヴィランと戦闘することを考えるとムキムキだけじゃ足りない。単純な力だけじゃ個性持ちには押し負けてしまう。そう思って、格闘術、剣術諸々、要は『技術』を身につけていたわけだが、これもプロのヒーローとかの個性持ちとなると通用しないことも少なくない。だからそれじゃあ足りないんだなぁ…

 

そこでです!私は鍛える方向をスピード重視にしたのです!

速さがあれば凄い個性とかの攻撃とかも躱せるし、そうでなくても何かしらの対処ができる。

今では小柄な体格を活かしてめっちゃ速く動けるぞ!

 

小柄な体格の理由、小さい頃から鍛えた影響で160にギリギリ届かないぐらいで身体が止まってしまった、でもね、気にしてないからね?全ッ然気にしてないから!むしろ嬉しいくらいだってばね!

この方が?動きやすいし?不意だって憑きやすいし?隠密行動もできるし?

ほら!メリットばっかりじゃん!!バンザーイ!!

 

…はぁ

やめよう、虚しくなってくるわな

 

閑話休題

 

この夏の訓練内容は叔父さんに付き合ってもらって実践形式でやっている。

それと、これは無個性故に絶対ぶち当たる壁なんだけど、私は近距離戦闘しかできない。これは物理的にも仕方ないのだ。

でもその対策として叔父さんが色々考えてくれましてですね、今まで使っていた刀もどき(棒切れ)に加え、飛び道具も取り扱うことにしたのだ!

形状はちょっと変わったやつで、新品の鉛筆サイズの針みたいな感じ。針とは違って両側が尖ってるんだけどね!

後の方から始めたものだけど、この道具にも結構慣れた。最近は一点を狙っての投擲も五分五分以上の確率で当たるようになってきた。

刀の方は物凄く得意、そりゃああんな歳から始めたらね、流石にね、、、刀握らなかった日なんて数えるほどしかないし

 

おっそろそろ終わりだ、僕の腹時計に狂いはないぞ!

もちろんお腹が空く方の腹時計だけどね!

 

実践を終えて休憩に入る。

この休憩が終わっても、実は次にやることは決まってない。今日のノルマは終わってるし、この休憩でご飯食べた後は自由時間なのだ。

 

もちろん訓練の自由な?ゴロゴロはしない、というかしたら叔父さんにしばかれちまうぜ…

今日は取り敢えずブランコにしよう

おじさーん、ロープ貸してちょー?

このブランコは一本のロープを腰に括り付けて色んなポーズをとる遊b、訓練だ。うん、訓練だ。よく知らないけど空中の機動力を高めるとか何とか、うんきっとそうだ、よく知らないけど。

そんなブランコにおいて、僕はお気に入りのポーズがある。寝っ転がってポテチ食べてる人のポーズだ。これがさー初めてやった時めちゃくちゃキツかったんですよー。脇腹がロープに糸鋸やられるかと思っちゃったぜぃ…今では楽々キープできますけどね?

最近ハマってるのは、足を時計の針に見立てて延々と動かすこと。それと叔父さん言われて始めた芋虫運動だ。腰を支点にしてグニャグニャもがくだけだけど、体が柔らかいから一部の人には閲覧注意だな…

人の形をしてる分、芋虫よりも気持ち悪いかもしれない。

 

体の筋肉がついたって言っても、あまりゴツゴツしているわけじゃない。そりゃあ力を込めればめちゃくちゃ筋とか浮き出てくるけどそれでも細い方だ。最初はその体質のせいで全然強くなってる自覚が出なかったものだ。どうせチクワの補正だろうが、あまり気にしていない。僕が最も気にしているのは『着痩せする』ことに関してだ。別に胸の大きさを気にしているわけじゃない!断じて違う!でもね、原作の葉隠と同じくらいにはあるはずのものが服を着た途端影もなくなるのだ…

おのれ神…!!

貴様をこれほどまでに憎んだことはない…!

 

考えているとちょっとイライラしてきたのでブランコを中断して他のことを考えようとした。

 

そこで思い出した

 

————そういえば原作っていつからなんだろう?

 

 




つーちゃんはぶっちゃけ言うと、ちくわ大明神の主人公補正のおかげで学力はカバーしているけれど、所々抜けちゃってます。要はマヌケです。

今のつーちゃんはかなりの体力お化けです
そらそーだわな…((遠い目
現に、作者こと私は小6の時とか受験勉強ばっかりやってたせいでヒョロヒョロでして、持久走の時なんか走馬灯が見えちゃうくらいだったのに、中学でチアダンス部に入って鍛えたら3年くらいでシャトルラン100周いきましたからね(^^)…自慢になっちゃっててすみませんです(^_^)

鍛えると変わるよ!マジで!


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入試の直前まで色々と拗れてる奴よくいるよねー! え?僕? いやいや何も問題無いに決まってんじゃーん! 舐めんなよ?爆発さん太郎めがぁ!!

オ、オ、おおおおおお気に入りが100超え……!?!?!?

(((o(*゚▽゚*)o)))
放心状態です、、、

これが夢オチだったとかだったら泣くわ(^.^)
ありがとうございますっ!!!!

追記
前の話の時系列がズレてたみたいだからちょいと変更するぜー
指摘してくれたマイ姉貴に感謝だぜ☆




————そういえば、原作っていつからなんだろう?

 

そもそも、僕はヒロアカの原作にそこまで詳しくない。では何故僕は転生先をここにしたのか、

それにはいくつか理由があるんだ。

まず一つ目、バトルがある世界であることだ。

これはもとより絶対条件。だってこうじゃなきゃ転生するにはつまらないじゃん。

二つ目は、人が死にすぎないこと。あまりにものハードモードなんて僕は求めちゃいない。これは共感してくれる人も多いと思う。

そして三つ目、青春を謳歌できるくらいには環境がいいこと。

僕の未練にも直結することだ。譲る気はないよ?

 

それらの全ての条件に当てはまったのが『僕のヒーローアカデミア』の世界だった。好きなアニメや漫画なんて他にもいっぱいあったんだけどね…。

僕が原作に詳しくないのは、前世の僕とこの作品との接点というのが、友達に勧められてアニメを見たことだけだったからだ。ましてや、既にあれから10年以上経っている。原作のキャラの一人一人なんて、主要人物さえ思い出せないことが多い。なお、好きなキャラなんかは例外である。可愛い女子とかいっぱいいたからね。

 

そして冒頭にもどる

 

…確かオールマイトに出会ってから雄英に入るんだったよなぁ

どれくらいの期間特訓してたんかとか全然覚えてないけど入試までの日数とか考えてみるともう始まってるのかも、

 

3日後には山籠もり訓練も終わるし、家に帰ったら今覚えてることだけでもまとめておこう

 

 

* * *

 

憧れのヒーローに認めてもらえたあの日の2日後、僕はオールマイトの提案で受け継ぐこととなった個性の訓練のために呼び出されていた。オールマイトが言うには、僕の身体は既に個性を受け取れる器に達しているらしい。受験までの10ヶ月間は、器をさらに大きく頑丈にして、個性を扱いやすくする期間に宛てるそうだ。

今まで鍛えてきた努力も無駄じゃなかったと改めて思い、心の中で幻像のように浮かぶ少年に感謝する。

 

今すぐ個性を受け取ることもできるみたいだが、もう少し鍛えてからでも遅くはないと言われた。今までは無理のない範囲で鍛錬をしていたが、これからは少しハードなメニューを行うことになった。

でも、必ず成し遂げてみせる…! 期待にだって応えてみせる

 

明日も朝早くから海岸のゴミ掃除だ。勉強の方も早めに切り上げて寝よう。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『こ、これ以上は、、、ぼっ…僕が許さなえぞ!!』

 

デクは昔からそうだった。力がないくせに、無個性のくせに。いつもビビりながら、

 

今までのことを思い返す。

俺の中ではアイツが一番ダメなやつだ。無個性で気が小さい上に弱っちくて、

でもアイツは一番努力してるやつだった。周囲の反感もあってなお諦めずに。それでもその内直ぐに潮時ぐらい分かると思ってた。アイツもそこまで馬鹿じゃない。

なのに、

ポッと出た虚構に踊らされて、アイツは夢の諦め時を失った。

 

昔から俺は一番凄いやつだった。みんな俺より凄くなかった。同じヒーローに憧れたはずのデクと俺との違いはここだ。

『俺が一番』

今でも疑うことはない。

それでも、一度だけそれが揺らいだことがあった。年齢もさして変わらない無個性の奴が銀行強盗を退治したとか言う事件を聞いた時だ。それを聞いた時、俺は自分が一番であることを疑った。息が苦しくなって、今までで一度も感じたことがないくらいに落ち着かなかった。後から、これが劣等感だと言うことを知った。

身近な奴じゃあないけど、俺より凄い奴がいると思っちまった。

その事件を聞いたデクが努力し始めたのを見て、凄く気に食わなかった。

違う、一番は俺だ。俺が最強なんだ。

 

だからあの日、ヘドロの事件の日、俺はデクが雄英志望だって聞いて物凄く腹が立った。

 

「俺の道を行くんじゃねえ」

 

今日は雄英の入試。

朝から一番見たくない奴を見つけちまった。あたふたしながら俺に話し掛けてくるのを無視して通り過ぎる。

 

アイツマジで来やがったぞ入試、

何考えてんだよ本当…

アイツは偶に何考えてんのか分かんねえことがある。頭は悪くないはずなのにどうなってんだよ。ヘドロの時だってそうだ。何で俺を助けようとしたのか、結局何がしたかったのか。

それでもここ10ヶ月あいつの様子を見る限り、本気で受かるつもりでいるのは分かっていた。

 

あの時、俺の口は勝手に動いた。きっとあれは俺の本心だったんだろう。

 

『まだあんなん信じてんのか』

 

俺は信じねえ

 

『あんな奴————』

 

一番は俺だ。俺の方が上なんだ。

 

『———いなかったんじゃねえの?』

 

——ああ、そうか…! あんな奴もともといなかったんだ。そうだ。きっとそうに違いない…!

 

そう考えると落ち着いた。

ただ、俺のその言葉を聞いて青ざめているデクを見て、何故かまたイライラした。

 

そして今日、デクはここにいる。どうやって立ち直ったのかは知らない。けど、昔からそういうやつだったからもう気にしてない。それに何より、今日デクが落ちれば今度こそ諦めるかもしれない。

もう道端の石ころなんか蹴らなくても勝手に退いていくだろ。

 

…何で俺は安心してるんだろうか

 

つくづくデクを見ていると調子が狂うな…

 




主人公の容姿の描写は雄英入学後に書きまーす

これからもこの作品を応援してくれよな!!
((番組宣伝テンション


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ほれっ、魚嫌いのチビっこ共! 食卓に並んだものは残さず食べるんだぞ〜!…んっ?何?トマトゥ?いやいや、、、だってあれ食いもんじゃねーし…ちょ、ま、マジで! つーちゃん死んじゃう!死んじゃうからああ!!

かっちゃんの感情描写していると胸が痛い作者です。。。
実は私にもかっちゃんみたいな経験がありまして、、、
自分がすごいと思ってた痛い時期が私にもあったんです
色々現実に気づいた私はそれはそれは醜く泣いたものでふ
今思い出しても恥ずかしい…

タグに『多視点』を追加したよ〜!



やっはろー!

無個性美少女ツルギちゃんだぇーー!

 

今日は待ちに待った入試当日なのだ。

ただいまの時刻は7時半、つまり、、、

 

「遅刻すりゅぅううう!!!」

 

舌が回らんわな!

マザーに一度起こされたはずなのに二度寝しちまったぜい…家を出る時間になって呼びに来たマザーの悲鳴で目はぱっちり!

 

40秒で支度して家を出ました…

 

何とかギリギリ電車には間に合ったぜよ。こういう補正はちくわ大明神に感謝しなくては…いやそもそもの二度寝の原因がチクワな気がしてきたぞ…!

フッそうさ!! これは僕のせいでは無い! 断じてないのだ!! 無いったら無い!

 

今日の僕の服装は急いで準備したから結構適当。まあ、普段から動きやすい服ばっかしか着ないから問題はないんだけども。

…にしても人が多いなー

実は僕、割と方向音痴なところがあって駅から学校までのところはナビに頼る予定だったのだ。まあ様子を見る限りその必要もなさそうだけどね。周りを見てみたが主人公は見当たらない

取り敢えず中に入る。

アニメ見た時も思ってたけど、めちゃ広! この敷地内、僕は何十周走ったらバテるだろうか…今度試してみたいなあ…

 

午前の筆記試験、社会の記述とか途中から自分でも何書いてんのか分からんなったけど手応えはありますぜ、旦那

昼飯にマザーが作った赤飯おにぎりを頬張りながら自己採点を終えた。

赤飯うまうま

マザーは試験を受ける前から激励の意味を込めて一足先に赤飯を用意してくれたのだ。受かった時も赤飯が待っていると思うと午後の試験へのやる気も出てくるよ!

 

まだ少し時間があったので携帯の電源を入れてみる。

うわっメールめっちゃ着とるやんけ…んーなになにー?

…おっサヨちゃんからだ!

実は、引っ越してから5、6年くらいの時にネットで気が合った人にあって見たらサヨちゃんだった!ってなことがあったわけですよ…

 

あの日、出会って早々めちゃくちゃ謝られた、んだけど何のことかさっぱり…

そう言って理由を聞いてみたら『マジか』って言われただけで教えてもらなかった泣

結局何だったんだろ…すごく見離された気分だ

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

うぉっアナウンスだ…メールの中身確認できなかったけど説明会場に行かなくては…! ごめにょんサヨちゃん! 後で必ず見るから! だから見離さないでね!

 

 

***

 

 

 

 

ふあぁ眠かったー…少しだけ寝てしまった…

人の説明聞くの慣れてない…

確か『制限時間10分くらいでポイント制のロボット破壊』、とかだったと思う。

説明会場で一悶着あったみたいだけど無事終わり、僕は割り振られた受験会場に向かった。僕はBだな。

 

と、そこで気づいた。

 

 

 

———あれ? 僕、刀は?

 

 

…わ、、、わ、、、、わすれたぁ!?

え、、、えっえっ、、、え!?

い、一旦落ち着こう、、、整理だ整理!

 

えーと一番新しい記憶で考えると、電車の中で持っていた記憶が無い、となると、やっぱり家に忘れたみたいだ

なんか使い慣れ過ぎて自分の体と一体化してるぐらいの気持ちでいたから完全にど忘れしてたのかも

つか、もしかして結構まずい事態?

いや、大丈夫だ、やることは結局変わらない。刀が無くてもスデゴロ時対策として鍛えておいた足技がある。刀を使う時よりスピードは落ちちゃうけど計画してる分の点数は大丈夫なはずだ。

 

計画というのは、もちろん、僕の少ない原作知識を活かした、『ポイントと時間の配分計画』だ。僕の目標はヴィランポイントが60、救助ポイントが10。原作のかっちゃんってたぶん80ぐらいだったと思うから一位を避けるならこれが妥当。

ヴィランポイントを多めに見繕ってるのはちゃんと理由があって、無個性が理由で、合格をはねられたりしないようにと考えてアピールだ。ま、無いとは思うけど念のためね?

そのポイントを取るためには、最低でも15秒に一体ずつくらいは破壊しないといけない。ポイント配分や、救助ポイントのことも考えながらやらないといけないから大変だ。標的を探す時間とかを考えると結構ギリギリ。でもできないわけじゃ無い。15秒あれば200m弱ぐらいまで走れるんだからいけるさ! よし! ダイジョブ!

 

ぷるるるるるるる

ぷるるるるるるる

 

にょーん!? 電源切ってなかったぁ!? けーたいけーたい! 誰から!?

 

———oh マイマザー…!!

 

なんてタイミングにかけてきてんだ全く! ——十中八九忘れ物の件だろうし無視したいところだけど、マザーは歴代最強と畏れられる心配性モンスターなのだ…

僕が前髪を自分で揃えようとした日には連想に連想を重ねて、果てにはサンマを食卓に並べないとすね毛がボウボウになるとまで想像したほどだ。なんか何言ってるのかよく分かんないね! まあ兎に角ヤバいんだよ!

そういうことで、僕はこの電話で僕が大丈夫であることを伝えなければならない。

 

ピッ

 

よし、スリーコールもしないうちに出たぞ…ここからは慎重に言葉を選んで…

 

『ハイスタートォ!』

 

——クッソがっ…!!

審判のマイク先生の合図に反射的に反応し、走り出した。

マジでタイミング悪すぎるよーんママン!!

走りながら携帯をイヤホンモードにし、ロボを見つける。そして回転して蹴りで頭部を破壊。此奴らは頭部を壊せば動けない。ここまで10秒弱。まだみんな入り口を出たところみたいだけど、構っている暇はないのでロボを見つけに再び走り出す。最後の方とかでロボが見つかんなくなるとかになったら詰むから最初からスピードMAXで時間配分を前倒しにしておかないと…!

そこでマザーが話しかけてきた。以下、ご覧のスポンサーの提供でお送り致します。

 

マミー『へーい!!マイどーたー!!! 家にあるこの刀はナンデスノー! 』

つーちゃん『ノンノン、ぼんじゅー! それは予備の刀でーす』

マミー『おうまいゴーン!! 嘘おっしゃい! 我が魔眼に狂いはナッシング』

つーちゃん『ちゃうちゃうちゃうわな今僕が持ってるのが予備ー!』

マミー『にょーん!? じゃー今の電話迷惑だった系!?』

つーちゃん『ちゃうちゃうちゃうわな今は休憩だから気にせんとこよー!』

マミー『にょーん!? じゃー今の休憩時間潰しちゃってる系!? 』

つーちゃん『ちゃうちゃうちゃうわな今は休憩時間長いんけー! 』

マミー『にょーん!? じゃー今からちょいとお話ししよーぜマイどーたー!』

つーちゃん『にょーん!? …ま、まあええよ、ダイジョブやで…』

 

試験中だなんて言ったら倒れちゃうからね、誤魔化すの大変。

世話のかかるマミーだと深く感じました、まる。

結局試験が終わるまで会話を終わらせてくれないマザーであった(泣)

 

話しながらだったから秒数数えられなかったけど大丈夫だろうか…

チクワのみぞ知る

そう言えば最後の大揺れの元が壊されたみたいだけど、主人公同じ会場だったのかぁ…忘れ物に動揺してて全然気付かんかったわ。

途中で全然道が分かんなくてがむしゃらに壊しまくったのだ。奥に来過ぎてしまったのだろうか、出口がわからんぜよ…周り誰もおらんし…助けて誰かー!

広すぎるってばここ!

 

その後現れたちっこいお婆様に手を引かれ、内心半泣き状態だったつーちゃんは無事生還いたしましたとさ。

 

つーちゃんはその時のことを後日こう語った。

『ばー様がまるで天使にみえた』と…

 

 




ばー様の天使…や、やべえ、想像しただけでも吐き気が(ry)

感想待っとるぜええ!!!


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人助けって難しい。。。

実はつーちゃんはずっとギャグやっているように見えて、深い行動原理を持ってたりします。軽く見えますけどねー…
ネタバレになるので言えませんけど、つーちゃんも人間だってことです
それについて書くのは結構先かもね…

おぎにぃりぃがぁあああ!!!
お気に入りがひ、ひ、150越えょーん!?
身に余る評価だ
ありがとうございます!



 

 

《出久視点》

 

 

雄英から試験の評価が届いた。母さんがものすごい勢いで四つん這いやりながら教えてくれたのだ。

 

「イズッイズッイズズズズズ、出久!! 来てた!! 雄英から来てた!!」

 

凄い慌てっぷり…かく言う僕もそわそわして仕方がない。筆記は自己採点で合格ラインをギリギリ越えていたけれど、実技には絶対の自信なんてとてもとても持てない。

 

僕はこの10ヶ月、オールマイトの付き添いのもと、個性——ワンフォーオールの訓練に励んだ。

ワンフォーオールは兎に角パワーが凄い。行使するたび衝撃で身体が壊れてしまくらいには。つまり、リスクが大き過ぎるのだ。だからどうしてもコントロール能力をつける必要があった。このままでは対人戦どころか物体破壊にも使えない。

オールマイトは以前、個性のコントロールは感覚だ、と言っていたのだが、どうにもそれを掴むことができなかった。しばらくの間はずっとコントロール訓練をしていた。しかし途中で、このまま行くと入試までに間に合う保証が無い可能性を考えた。そこで、訓練の方向を変えた。

ではどんな訓練をしたのかという話だが。

話は変わるが、僕はヒーローオタクだ。様々なヒーローの情報を集め、分析し、考察に考察を重ねてきた。この訓練にはその知識が活きた。

僕が鍛えたのは、『衝撃の逃し方』だ。

オールマイトが偶にヴィラン退治に行く時、必ずついていって間近で戦闘———つまり、個性を行使する様子を見させてもらった。すると、何回か見るうちに疑問点が出てきた。オールマイトは確かに屈強な体つきをしているが、結局は生身の人間であるのだから耐久性には限界があるはず。ワンフォーオールに肉体の保護という機能がない限り、あのパワーに体が耐えられるのはどうにも不自然と感じた。オールマイトにその事を聞いてみると『確かに…』とは言われたものの、本人もよく分かっていないようだった。仕方がないので色々と試行錯誤を繰り返してみたところ、オールマイトは無意識のうちに衝撃を逃しているんじゃないかという考えに行き着いた。感覚型の人とか、センスだけでやっている人にはありがちなのかもしれない。本人にそれを指摘したら『言われてみれば、そのままやると痛い時とかあるし、もしかしたら地面とか背中とかに流してたのってそれかも』とのこと。

 

もっと早く言ってほしかったよ…

 

とまあ取っ掛かりを掴めた僕は、オールマイトの戦闘シーンの動画を見たり実際にオールマイトに聞いてみたりしながらその術を学んだ。

それでも100%衝撃を逃がせる訳ではない。限度はある。粉砕骨折は免れたとしても、重度の打撲程度のダメージが行使部位の全体を襲う。同じ部位は2、3回程使った程度でバキバキになって使えない。それでも最初よりはずっとマシになった。

 

 

実技試験ではこうして手に入れた技術を活かし、ロボ5体ほどの破壊に成功した。合計で確か9ポイントほど。最初に出遅れたのはかなり痛かった。少し破壊した後、焦って探し回ったのだがロボは見つからず、

 

0ポイントヴィランが現れた

 

物理的な力というのは働く際、その働かせる動力源に同じだけの力を押し返す。所謂、垂直抗力だ。

つまり、衝撃を逃してしまっている僕の力は実は100%には満たないのだ。それでも大きな力には変わらないので、今までは大丈夫だった。しかし、これほど大きなロボとなると当てる的を考えないと破壊できるか怪しいところだった。他のロボがかわいく見えてくるほどデカかった。

破壊してもリスクが大きい上に、ポイントは出ない。そう思ってその場を離れようとしたその時、見てしまった。

 

『いったあ…』

 

その日の朝、僕が転びそうになったところを助けてくれた女の子が、瓦礫に挟まれて動けなくなっていたのだ。僕は無意識に走り出していた。

その時のことを思い出すと、なんだかヘドロの時と似ていたように感じる———足が、勝手に動いていた

 

もう既に2回ほど行使した個性の反動で腕はギリギリだったが、躊躇なく無理をしてしまった。

0ポイントの頭部の高さまで自分の足を犠牲にして跳び、拳を繰り出した。足は衝撃を逃す訓練をしていなかったせいで一発で壊れてしまった。ロボは破壊できたけれど、そのまま落ちていった僕は例の女の子に助けられることとなった。

そこで試験は終了。

 

これではとても受かっている自信はない。周りの人が呟いていたポイントを考えて見ても絶望的だ。

だからその結果を母さんと一緒に見るのはなんだか気が重かった。結局母さんは落ち着かないながらも気を使ってくれて、一度一人で見てから母さんに見せるということになった。

机の上に封筒を置き、しばし見つめる。

 

「…はあ、」

 

悩んでいても仕方がないよな。とそう思い、思い切ってその封筒を破いた。

勢いよく破いたせいで中から円いなにかが飛び出して机の上に転がった。すると突然その円盤状のものからスクリーンが映し出された。

 

 

『私が投影された!!』

 

…ほわっ?

 

「お、オールマイト!? なんで? これ雄英から…だよなぁ…? …えぇええ…?」

 

『諸々手続きに時間がかかって連絡が取れなくってね、、、いやぁすまない、ゴホン、実は私がこの街に来たのは他でもない———雄英に勤めることになったからさ!』

 

「えっ…オールマイトが、雄英に…?」

 

『うむ、さて、後が閊えているみたいなので早速結果発表といこう。

…筆記は取れていたが、実技ではたった9ポイント…当然、不合格だ。』

 

…分かってた、分かってた、けど、

 

…悔しい……

 

『それだけならね』

 

…?

 

『まずは、このVTRを…どうぞ!』

 

そこには、あの時助けられた例の女の子がプレゼントマイクに直談判する様子が映っていた。彼女の話は、自分のポイントを僕に分けられないかという内容だった。

 

『…あの人…助けてくれたんです!!』

 

それを見たとき、僕はとても嬉しかった。今まで僕は何度も人を助けようとした。でも力が無くて、失敗して、結局はいつも僕には何もできなかった。今回は、今回こそは、ようやく人を助けることができた。

プレゼントマイクにポイントの譲与を必死にお願いしている様子を見て胸が熱くなり、思わず椅子から立ち上がる。

そこでVTRは終わり、再びオールマイトが話し始めた。

 

『個性を得て尚、君の行動は人を動かした。』

 

…そっか

…オールマイトは…きっと、僕を慰めているんだ。合格はできなかったけど、僕の行動は間違っていなかったと…。

そう考えると微笑がこぼれた。

…結局ダメでも、僕はあの時の行動を後悔はしていない。

小さくため息が出る。

 

『先日の入試、我々が見ていたのはヴィランポイントのみにあらず!!』

 

……え?

 

『人助け———正しい事をした人間を排斥しちまうヒーロー科など、、、あってたまるかって話だよ!』

 

——!!

 

『綺麗事? 上等さ!! 命を賭して綺麗事を実践するのがヒーローのお仕事だ!!』

 

…あ、ああ、まさか———!

 

『レスキューポイント!!———我々雄英が見ていた、もう一つの基礎能力…!!』

『緑谷出久、60ポイント!!』

 

全身に鳥肌が立つのを感じる。

こんな事って…こんな事って、あっていいんだろうか…?

 

『合格だってさ 』

 

「…むちゃくちゃだよ………!」

 

『来いよ、緑谷少年…』

『ここが———君のヒーローアカデミアだ!!!』

 

「———ッはい…!!」

 

***

 

にょーんハローウ!!

入試の成績及び、合否判定が届きました!

つーちゃんでーす!!

 

早速、結果発表といこか!

筆記はもちろん合格、ぶっちゃけチクワの補正いらなかったんじゃねえのかな…いえ、冗談ですよん

そして実技、

忘れ物に気づいた時とかはめちゃくちゃ焦ったけど無事合格したぜ!!

しかも2位で!!

 

———クッソあっぶな!!

 

危うく一位になるとこだったぞ…

試験中だと悟られないように母様と通話して、ロボ見つけて破壊して、且つ時間を把握しながらポイント計算———なんて芸当が僕にできるわけがないじゃないか!

1位は原作キャラと決まっているんだよ

なんで一位になったらまずいのかは残念ながら覚えてないんけど、僕のレーダーが白目剥きながら「ヤバい」連呼してたからきっと相当ヤバいに違いねえ

 

詳しい点数なんだけど、ヴィランポイントが69、レスキューポイントが6だった。

人助けが全然できなかったのだー

理由としてはまず、色々と余裕がなかった事。これは仕方ない、僕は人見知りコミュ障なのさ!

もう一つは道に迷って狭いところを通ってたせいで誰もいなかった事。…一人は寂しいよ…お母さん…(某ロリっ子感)

 

…そう言えばこの6ポイントはいつ稼いだんだろう…?

記憶にございません(政治家感)

 

あーそれとコミュ障っつっても全く喋れない訳じゃないんだからね! 勘違いしないでよね!!

 

結果発表はこの辺でいいだろう。

雄英からの封筒に入ってたのは、オールマイトがインしてる円盤だけじゃないのだ。

『コスチューム申請のご案内』

この手紙を叔父さんにも見せたら銃の申請をしろと言われますた。

現代日本にもまだ銃刀法は健在。簡単に手に入らなかったのもあって、今まではわざわざ飛び道具を使っていたんすよ。

これからは合法的に使えるから射撃も練習せねばな。

なお、使い慣れてるから飛び道具にはこれからも引き続きお世話になるのだ。銃に慣れるまでの辛抱じゃえー

 

 

 

***

 

 

《出久視点》

 

合格通知を聞いた僕はしばらくその余韻に浸っていた。

だけど部屋の前で母さんが待っていたのを思い出して慌てて呼びに行く。僕の気の小ささは母譲りだからあんまり待たせてしまうのは酷だ。

 

これでもかというほど泣いている母さんと一緒にもう一度映像を見た。

…しばらくは泣き止まなそうだな

そう思って小さく微笑んだ。

僕だって嬉しくて仕方がないんだ、しかも実技が5位だなんて想像もしていなかった。今でも信じられない。

今までの努力してきた日々を思い出して感慨深くなった。

 

投影されている実技の順位表を見る。

左の一番上に記載された『爆豪勝己』の文字。

…やっぱりかっちゃんはすごいなぁ

首席で合格かぁ…

 

と、そこで丁度その下に表示されている名前が目に留まった。

 

『薙崎 剱』

 

…苗字は知らないけど忘れもしない名前だ。

今でも憧れで、何処にもいない人、久しぶりに思い出しちゃったなあ…

折角だし今日はあの動画を見てから寝よう。

 

僕は彼の情報をまとめたノートを本棚の奥から取り出して、埃を落としておいた。

 

…あれから10年、僕のパソコンにはまだ動画が残ってる。

 

もう必要ないかもしれないけど、彼のおかげで今の僕がいる。

だからさ、

大切にとっておくよ——————

 

 

 

————僕が、最高のヒーローになる日まで

 




つーちゃんの戦闘シーンのイメージは、『銀魂』に出てくる夜兎族みたいな感じです。
っていうか、みんなめちゃくちゃ鍛えたら夜兎族みたいになれるんちゃうやろか…?


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自分の通る道に目障りな物があったら蹴りたくなるのが本性なのだ! 僕は悪くないぞ!! 謝ってほしければ芋虫体操を全力で踊るがいい!!

もうすでに薄々気づいてる人がいるかもしれませんが、主人公はあくまで『自称』コミュ障です。実際は少し質が違います。他視点が少ないから少し分かりにくかったかも…
もしそうであればすまんです

読者の方から感想欄にて『視点が分かりづらい』とのご指摘をいただきました!
大変失礼致しましたm(_ _)m
小説書くの初めてなのもあって気付かない穴は多いかと思います、その時は教えてくださると非常に助かりますんで今後ともよろしくお願いしますです!!

遅れてすまんの



《勝己視点》

 

 

俺はこの日、雄英合格のことでセン公に呼び出された。

そして同時にデクも受かっていたことを知った。

 

倍率300、偏差値79、国立のヒーロー名門校で、No. 1ヒーローオールマイトの母校————雄英高等学校

 

俺はその学校のヒーロー科に首席で合格した。

当たり前だ。

俺よりすごい奴なんて同年代なんかにいるわけねえ。

俺以外はただのモブ、所詮俺の引き立て役でしかない。

 

——だから、他の奴に俺が気を惑わされるなんて腹が立って仕方がねえんだ。

 

「どんな汚ねえ手使やあテメェが受かるんだよ!! 『デク』!」

 

そう言ってそいつを壁に突き飛ばす。

 

『デク』———それは俺がこいつにつけた蔑称だ。

何もできない木偶の坊、そんな意味が込められている。デクはその言葉の通り昔っから何にもできない奴だった。いつもビビってばっかで見てるとイライラする。気に食わねえのは何もそれだけじゃねえ。

何もできねえくせして何処までもヒーローに憧れて、何処までも諦めねえ奴だった。本当に何もできねえはずなのに、なんでもできるはずの俺を他の奴と同じように扱う。こいつだけは昔っからずっと、今だって気に食わなかったんだ。

 

俺には分からねえ。分かりたくもねえ。何がこいつをそうさせる。なんでこいつはこんなにも俺の気に障る事ばかりする、分からねえ。

 

なんでそんなに夢を諦めきれねえ

 

よく分かってんだろうが。

…テメェが一番、分かってる事だろうが…!

テメェの力じゃヒーローなんかに成れやしねえ。テメェは分かってるはずだろうが…!

 

「テメェはッ———」

 

デクのことを自分で呼び出しておきながら言葉に詰まる。

 

周囲の奴らの貶す声にいつもおどおどして、それでも努力を続けるコイツにたまらなく腹が立ったのを思い出す———なんでそうしていられんだよ

 

「…俺の道を行くんじゃねえ」

 

結局出た言葉はこれだけだった。

 

「…かっちゃん」

「あ゛?」

「…僕はッ……僕は………」

 

変わらずおどおどとする癖に再び苛立ってくる。

 

「僕は…決めたんだ…! やっと…確証が持てたんだ、、、認めてもらえたんだよ。僕は、ヒーローになる。今までだって今だって、これからだって、曲げるつもりはない…!

だから、僕は、行くんだ……!!」

「…………」

 

——俺には……分からねえ……!

 

 

***

 

 

《出久視点》

 

今日は雄英の初登校日。

僕と母さんは学校の準備で朝からドタバタしていた。

 

「出久! ティッシュ持った?」

「…うん」

「ハンカチも? ハンカチは! ケチーフ!」

「…んん持ったよ! 時間がないんだ、急がないと——」

 

母さんが玄関で慌ただしく靴を履く僕に何度も確認するものだからつい大きな声を出してしまう。本当に時間がないので急いで家を出ようとすると、

 

「出久!!」

 

「何?」

 

振り返ってみるとと母さんは僕を見て目を潤ませていた。

 

「『超…カッコいい』よ」

 

「———あ」

 

それを聞いて僕は小さい頃のことを思い浮かべていた。

 

『どんな困ってる人でも…すぐに、助けちゃうんだよ…?

———『超カッコいい』ヒーローさ……

…僕も、なれるかなぁ…?』

 

母さんも同じようにあの日のことを気に病んでいたらしい。

僕は今の言葉が、今まで母さんから何度も聞いてきた慰めの言葉なんかより何倍も嬉しかった。

やっと母さんの口から本当のことを聞けた気がした。

 

「うん! 行ってきます!!」

 

今日から僕の夢の高校生活が始まる。

 

 

 

と思ったんだけど、

 

「机に足をかけるな!!」

「ああん?」

「雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか?」

「はッ!思わねえよォ、テメェどこ中だよ端役がぁ!」

 

教室内では見知った顔の二人が既に口論を始めていた。

かっちゃんと、もう一人は入試の時の眼鏡の人だ。そして突如、かっちゃんがドアから入ってきた僕に気がついてこちらを見てきた。それにつられて席についていた他の生徒たちも視線を向けてきたので、ついつい慌ててしまう。

 

「おはよう! 俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ」

「…ああ…と…僕、緑谷…よろしくね、飯田君!」

「…緑谷君、君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな、、、」

 

ほえ?

 

「俺は気づけなかった…君を見誤っていたよ。悔しいが、君の方が上手だったようだ…」

 

…ごめん、気づいてなかったよ、

 

とは思っても、口には出せず…ただただ申し訳ないと感じた僕が返答に困っていたところ、後ろから声がかかった。

 

「そのモサモサ頭は…! 地味目の!」

「うわっ」

 

あの時助けてくれたあの女の子だ!

制服姿やっべー!

 

「ああ、えっと…僕はあなたの直談判のおかげで…その…」

 

女子に耐性がないせいか、その姿を直視できずにあたふたしてしまう。

近い近い…!

とその時、

 

「————お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」

 

その女子のそのまた背後から声がした。

突然のことに驚いてそちらに目を移すと、男子制服を着て高めに髪を結わえた人が無表情で立っていた。長い前髪のせいで顔はよく見えないが、イケメンオーラって言うんだろうか…なんか凄い。

ただ、先程の無気力そうな声にその容姿が噛み合わず違和感を覚える。

ついつい顔をじっと見てしまい当たり障りもないことを考えていると、その人は目線だけで下を見るように促してきた。その通りにその人の足元を見てみると、、、

 

「「「何かいるーう…!!!」」」

 

黄色い寝袋(?)に入った何かがいた。

 

「ここは…ヒーロー科だぞ…」

 

そう言ってその物体は立ち上がり黄色いのを脱ぎ始める。

 

「はい…静かになるまで8秒かかりました…時間は有限、君達は合理性に欠くね……」

 

その言葉を聞いて、その人が先生だと気づく。けど、雄英の教師は皆プロヒーローだったはずだが…こんな草臥れた人は見たことがないな…

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね。」

 

聞こえるかどうかも微妙なほど小さな声でそう言われ、更に驚いた。

この人が担任…?

 

「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」

 

聞きたいところというか、ツッコミどころというか、いろいろ多すぎてもう何も言う気になれない。

…大丈夫なんだろうか…?

 

***

 

どもども〜!!

つーちゃんの高校生活、初の登校日だー!!

ついに前世よりも年齢が高くなりますだぜ!

ん? 聞いてない? 前世の僕中学生だったんだがなぁ…言ぅてなかったかいのぉ

 

それはさておき!

僕は初の登校日にワクワクし過ぎて昨夜は夜更かししてしまい、またまた寝坊したのだ

もう二度目だったもんだからマザーにヴィンタをくらわされて、僕の真っ白ほっぺに赤い紅葉が出来たのだ

寝坊したのでもちろん電車はギリちょん、駅に着いた後はナビを必死に駆使して学校に到着したのだー、頑張った、僕頑張った!誰か褒めてー!!

学校に到着して1-A教室を探す…が僕が見つけられるわけもなく、諦めムードで廊下をたよたよと歩き始めた。

そこで目の前にどデカイ黄色い芋虫が目に入った。邪魔やコンニャロつーちゃんのお通りでい!!

八つ当たりにつーちゃんキックをお見舞いしてその場を立ち去る。つもりだったのだが、

 

「おいそこ…」

 

にょーん? 空耳やろか? ワシも歳をとったからのぉ…

芋虫から声が聞こえたんだがそんなわけ…

 

「何蹴り飛ばしてる」

 

…ないよねぇ、

そのまま振り向きもせずに立ち去ろうとすると、足元に気配が…

すぐにそこを飛び退くと白いひもかわうどんみたいなやつがふわふわしてた。

はっはあ!そんなものにこのつーちゃん様がかかるとお思いか? 残念だったな!ひもかわうどん使いの芋虫めが!!

この表情が動いていれば今世紀最高のドヤ顔をお見せできただろうに、全く勿体ない!

 

…じゃないよなぁ。

やべえ、入学初日から人蹴っちまったよ…いや、これ気づかなかっただけなんだしノーカンになんないかな? しかもこんなとこに転がってた方も悪いじゃろがい…

 

「お前薙崎か…俺のクラスだな…担任の相澤消太、よろしく」

 

ふぁい?

今この人担任って言った? 言ったよね? ひょーん?

 

「1-Aなら逆方向だぞ、時間もギリギリだろ…何やってんだ…?」

 

あーそうだったのかー道教えてくれてあざましたーそれではお暇ー

 

「そっちは違う…こっちの道だ、お前には見つけられなそうだから着いてこい」

 

グスン

なんと哀れなことでしょう…!

つーちゃんは芋虫に連行されてしまいました!

しかも早速『見つけられなそう』とか方向音痴のレッテル貼られまくりではないですか!!

おおチクワ大明神よ!!

 

つかチクワのせいかなこれも…うんそんな気してきたわ、

 

その後、1分とかからず教室に着いた。

——くそぅ僕の長い苦労は何だったんだい!

プンスコしながら教室の入り口に目を向ける。するとそこには

原作主人公とヒロインがいらっしゃいました…!

ウオォ!やっと会えた感じか!

 

内心小さく感動していると某芋虫先生から皆様にお言葉が

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」

 

にょーん!? なに急に話してんですか! 今あの二人いい感じだったのに!! 全くもう! あれですか、もしかしてあれですか? リア充爆ぜろ的な? あれはいいんだよ! リア充爆ぜろには僕も共感するけどもあれはいいんだよ!!

 

いけないいけない、かなり取り乱してしまった

けどね、仕方ないと思うの。だってさ、さっきの芋虫先生の一言で僕の方にみんなの視線が集まってきてるんだよ? 取り乱したくもなるよ!

コミュ障保護法展開!!

 

「ここはヒーロー科だぞ…」

 

そんな僕の心の叫びも無視して芋虫先生は続ける。ゼリー飲むのはっやいなー、そう言えば現代日本には10秒飯の進化版があったんだな…

取り敢えず主人公くんと目が合ったので全力でアイコンタクト。僕から視線を外したまえ民よ!!

僕の全力のアイコンタクトは無事通じたようだな、うん、ならいいわ、とりま教室入らせてちょ

 

「はい…静かになるまで8秒かかりました…時間は有限、君たちは合理性に欠くね…」

 

おお! 感動シーンだよ! 命懸けの脱皮シーンだよ!! 見た?みんな見た?

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね。早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」

 

へっ?

まさかとは思いますけど、これっていうのはその寝袋から取り出したやつのことでしょうか…?

うん、気にしたら負けかな?

うん

 

あ、女子が更衣室に歩いていくわ…男子は教室か、

それじゃあこのままだとまずいんでトイレでスピード着替えしてくんぜ!!

 

***

 

グラウンド広いなー

つーちゃん何百周したらバテるかなー?

おっみんな来たぞ

僕は一番乗りで芋虫先生とグラウンドに着いたのだ。僕がこの15年間で極めた速着替え技術は並みじゃないぞー!

男どもから不審に見られてるけどまあダイジョブだろ

 

「全員集まったな…それではこれから…個性把握テストを行う」

「「「個性把握テスト!?」」」

 

うんそう言えばそうだったな、この辺の原作知識ならちょっとは覚えてる。

 

「入学式は? ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事する時間ないよ。」

 

にょーん…ヒロインを一蹴りとは許すまじ

つか芋虫先生って今のセリフ言いたかっただけじゃね?

かっこいいと思ってんのかな、わはは

 

「雄英は自由な校風が売り文句…そしてそれは先生側もまた然り、」

「「「……?」」」

「お前らも中学の時やってるだろ、個性使用禁止の体力テスト。国はまだ画一的な記録を録り続けてる。合理的じゃない。文部科学省の怠慢だよ。」

 

…軽くディスってるねー

周りの反発にここまで抑え込むとは恐るべし、僕なんか目を向けられただけでアウトだぜ。

 

「爆豪、実技トップはお前だったな…中学ん時ソフトボール投げ何メートルだった?」

「…67メートル」

「じゃあ今からこれ投げてみろ、個性使っていい。はよ、思いっきりな…」

 

おおお!成る程! 入試一位がダメなのはこれか!!

納得&安心したにょ、みんなの手本とかマジ無理ゲー

 

「…んじゃまあ———死ねぇええ!!」

 

おーう威勢がええの、

爆豪勝己だったかな? 確か主人公となんか深い関係があったような…家帰ってメモ見なくてはな。

ん?その前に、この後なんかトンデモ発言しちゃう人がいたんだよねー誰だったっけ?

 

———ピピッ

 

「「「おおお!!」」」

「すげぇえ」

「705メートルってマジか!」

「何これ面白そう!」

「個性思いっきり使えんだー!」

 

問題発言の犯人が判明!

『芦田三奈』こいつが元凶やー!!

…何のだっけ?

 

「『面白そう』…か……」

「「「……?」」」

「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、『除籍処分としよう」

 

うん、覚えてたよ?勿論!嘘じゃないってばぁ…

取り敢えず芋虫先生が除籍魔ってことはなんとな〜く覚えてたし?

 

にしてもトータル最下位かー

これアニメ見た時も思ったんだけど、全員が全員超人的な記録を出してるわけじゃないはずなんだよねー、となると、それぞれの種目で平均ちょい上あたり録っとけばいけんじゃん!

解決!!

 

 

「なお、薙崎は下位5名に入らないように」

 

 

…にょーん!?

 




ヴィランデクにハマっておりまーす!

追記
そう言えば相澤先生ってあの個性でどうやって布動かしてんだろ、、、
むっちゃ気になるわー



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特別扱い? やったー!! 他の人と違うのが嫌とか言って辞退しちゃう程僕は清き人間ではないのだよ!! 特別枠!喜んで引き受けよう! …ん?何?これってそっちの意味のハンデなの!?え、ちょ、ま!!

最初の頃に自分が書いたやつ読み返してみたんだが空白多過ぎたな……
皆すまぬ

原作葉隠ちゃんの個性把握テストの記録ってどんなんだったんだろ、
凄く気になります

10月2日
流石に反復横跳びやり過ぎかなと思い直して修正しておきました



 

 

 

『薙崎は下位5名に入らないように』

 

 

これは除籍魔芋虫からきた差別的通告でし

むちゃくちゃ抗議の視線を送ったのだが絶対気づいてないなアンニャロ

 

「なっなんで薙崎君だけなんですか!?」

 

おお! なんとお優しいヒロインだ!!

その慈愛に満ちた姿はまるで女神のよう……!

 

「さっきも言ったろ、生徒の如何は俺たち教師の自由だ」

 

ん? ちょっと待て?

 

僕だけそうなったのは『無個性』を分かった上ではないのか?

今の芋虫の発言を聞く限りだとなんだか違うような……

———ッまさかあれか!?

今朝蹴ったこと根に持ってやがんのか!

心狭いな!! しかもあれは僕のせいじゃないて言うとるではないか!

 

そう思って先程以上に目力込めて睨んでやったらドヤァってされた。

ムカツクゥ!!!

 

クッソやってやろうじゃないか!

つーちゃんの本気見せたる!!

 

「ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ……!」

 

そう言って芋虫が嗤う。

…これ以上ないくらい気持ち悪い笑顔を見た気がするわな

 

***

 

 

つーちゃんの〜

個性把握テスト開始されたり〜

 

第一種目:50メートル走

 

距離が短すぎて最高速度に到達しないにょーん!

《3秒98》

んまあ4秒切れたしいっか!

山とか荒地ばっかり駆けずり回ってたから平地なんて楽勝なのだ!!

メガネ君には敵わんかったけどなー…

 

 

第二種目:握力測定

 

これは得意やで

なんでって? 誘拐されそうになったら股間握りつぶしたろと思って昔むっちゃ鍛えたんよ☆

まあ結局戦闘においては足主体になったから意味ないんねんけど。

《89kg》

うん? ショボい? これでも凄い方なんですよー

そもそも握力っていうのは結構鍛えにくい部位の力だからこんなもんやろがいな!

 

 

第三種目:立ち幅跳び

 

脚力は僕の専売特許だぜーい!!

機動力には欠かせない力やね

ジャンプ力は高さ、距離、スピード、パワー全てに重点置いて鍛えてきたからかなり自信あるにょ

《5.68m》

うむうむ、上々。

素の身体能力としては上出来だろ

…まあ個性で跳ぶというより飛んでる人たちよりかは劣るけど中位以上だしいっか!

 

 

第四種目:反復横跳び

 

ふっふっふー!

スピードが取り柄の僕にかかればどうって事ないんだヨォ!!

これは20秒間だから…だいたい80越えを目指す!!

《69回》

いやー躓いちゃってさぁーー

でもね?たったの11回出来なかっただけだしね?

そんな嘘でもないし?

勘弁してちょ?

 

 

第五種目:ソフトボール投げ

 

やけにメカメカしいボールを使うのねー

慈愛の女神、ヒロインの麗日お茶子ことウララコが無限というヤバめな記録を出してたにょ

流石にどんなに鍛えてもそれはないにょ

マッハ23出せば人口衛星になれるから、出せればいけるかもだけどマッハ23なんてどっかの暗殺ターゲットにされてるタコ先生でも出せんよ

 

みゅーん……

肩はやっぱ比較的鍛える時間少なめにやってきたからあんま自信ないぜ……

とりま最善スローイング!!

《100m》

うおおお!!!

ピッタ!ピッタ!ピッタリだよ!!

凄くない!? ミラクル!

小数点までピッタとは…いや、これはわざとなのだ!

もっと遠くまで投げれたけど、ピッタにしたくてそうしたのだ!もっと遠くまで投げれたけど!!(2回目)

そうだ!決して偶然じゃないからな!? 嘘じゃないってば!信じてよ!!

 

…そう言えば、さっきから爆発さん太郎こと、かっちゃんさんが様子がおかしいのだ、なんか主人公——マリモ君のことを凄い形相で見てて今にも食いつきそう…

ん? ていうか主人公って原作でこんなに良い感じに記録残してたっけ?

やべえ、記憶がねぇ…

ソフトボール投げでなにかイベントがあったはずなのに結局何も起こんなかったしな…

 

第六種目:上体起こし

 

体幹なら負けないでー!

腹筋は身体の基本!!

無酸素性なんとかっていう力が必要らしいけど、僕とは兎に角相性がいいのだ。宙ぶらりん腹筋の成果、見せたろ!!

《62回》

うん、常人なら60超えるだけでも超人的と言えるよな、うん。

だって1秒に二回はやらないといかんのだよ!?

しゃーない!

 

あーああのブドウが使えれば楽かもだにょ…

 

 

第七種目:長座体前屈

 

これは言わずとも分かるだろうにょ

必殺!芋虫ぃ!!

《87cm》

見事に足と上体がぺったんこ。

一枚の板のようだな…いや、違うからね? 別に上半身が平たいわけじゃないから! 葉隠ちゃんくらいはあるから! 見えてないだけだから! 着痩せしちゃってるだけなんだから!!

…ちくわめ…

 

 

 

第八種目:持久走

 

フハハハハ!

この競技は僕の独断場なのだぁ!!

跪け愚民がぁあ!!

最初から最後まで全力疾走したので結構いい感じなのでは? まだまだ体力有り余ってるのだ!

 

詳しい数値はハイになってしまって覚えていないにょ…反省するにょ……

でも一位とった!褒めてちょ!

 

ふーむ全種目終わったなー

にしても、かっちゃんさんの顔がヤバし。眉間の皺はすでに日本中の嫁姑問題よりも深く刻まれておる…

 

「んじゃーパパッと結果発表ー、トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ……。口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する。」

 

———ピピッ

 

こりゃまたハイテクなもん用意してるねぇ

空中に文字表示するなんて前世では見てないぜよ

 

んー?なになにー?

僕の順位は……

フッざまあーw

残念だったな除籍魔芋虫めがぁ!

 

僕は見事に上位5位にランクイン!

4位だったお! 除籍なんか回避可能だってんだ!!

ん?『上位5名』じゃなくて『下位5名』!?

にょーん!? 間違えてた?

そんじゃあ、つーちゃんの努力は何だったの!?

 

「……」

 

完全に放心状態となったつーちゃんであった……。

 

 

 

***

 

 

 

《勝己視点》

 

 

なんだあの力は……!?

 

俺は今日、胡散臭い担任によって行われた個性把握テストに参加している。自分の力を試すには良い機会、それに少し気になることもあって、俺はかなり乗り気だった。

 

気になることというのは、デクのことだ。入学前にインチキ入学を疑って突っかかった時、俺はこいつに初めて強い反抗をされた。今までも何回かは反抗してきたものの、いつもビビりながらで『対抗意識』なんてもんは少しも感じられなかった。なのにあの時、俺はそれを確かにこいつから感じた。

どう考えても裏がある。そう感じていた。あの絶対の自信の根源となるものが何なのか、確かめようと思ったんだ。

 

いざ、テストが始まるとどうだろう?

こいつは訳の分からん力を発揮し始めた。

———こいつ無個性じゃなかったのかよ!?

かなり混乱した。こいつはそうそう嘘をつく奴ではなかったはずだ。だが現に、個性としか思えないような記録を出し続けている。

———明らかに様子もおかしい

種目が進むごとにデクの表情は苦しげになっていく。よく見ると、両手を庇っているようにも見えた。そしてそれは、ソフトボール投げで確信に変わった。

 

ソフトボール投げの時、あいつは一度平凡な記録を出した。今までのデクの記録を鑑みるとその平凡な数値は違和感がある。どう考えても今のは相性がいい競技だった筈だ。

その後担任から何やら指導を受けたようで、少し考え込むように俯いた後、第2球を投げた。

思った通り、大記録だった。そして——デクの指が変色しているのが見てとれた。

そのあとの種目は再び平凡な記録を録っていたようだが、その最中にもデクに問いただしたくて仕方がなかった。

 

結果発表、俺は3位だった。

一位ではなかったことに内心舌打ちする…いや、半分以上内心ではなかった。

デクは12位、あんな小っせえ時から鍛えてんだから最下位はねえと思ったが、あの力を使って中位あたりにのめり込んでいやがる。

 

「因みに除籍は嘘な?」

「「「はあああああああ!?」」」

「君らの個性の最大限を引き出すための合理的虚偽」

 

はっどうでもいい、俺には関係ねえ。

俺はデクの方に向かった。感情が抑えきれず、そのまま胸ぐらを掴む。

 

「さっきっからあの力はなんだ!? わけを言え! デクテメェ!!」

 

すると何処からともなく長い布が伸びてきて俺を押さえ込む。

 

「な、んだ…!この布は…固え……!!」

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器だ。……たく…何度も何度も個性使わせんな、俺はドライアイなんだ…!」

(((個性凄いのにもったいない!!)))

 

「……時間がもったいない。緑谷、保健室で婆さんに治してもらえ。」

 

布が俺から外れ、担任はデクに何やら紙を渡して去っていった。結局何も聞けず終い、不完全燃焼だった。

 

何だったんだよあの力はよ……!

突っかかった日の事を思い出す。

道端の石っころの癖して…俺に対抗するつもりかよ…!!

 

 

***

 

 

 

《出久視点》

 

ようやく体力テストが終わった。僕は中位あたりに落ち着いたけど、まだまだダメだ。今日だって相澤先生から指導を受けてしまった…。

今回のテスト、僕の個性ワンフォーオールは瞬間的な力しか出せないのもあって、使える種目は限られていた。その上、一つの部位につき行使回数の限界はたった二、三回。握力測定で両手それぞれ二回ずつ使ってしまったせいで、あとのソフトボール投げでは粉砕骨折覚悟でやらなければならなかった。そこで先生に止められた。

その時の事を思い出す。

 

『見たところ、個性の制御が出来ないんだろ。今から使うので限界の筈だ。また行動不能になって、誰かに助けてもらうつもりだったのか?』

『——ッそ、そんなつもりじゃ…!』

『どういうつもりでも、周りはそうせざるを得なくなるって話だ。お前の力じゃ、ほんの少しの人を助けて木偶の坊になるだけ。俺は最下位除籍と言ったが、見込みがないと判断すれば誰でも容赦なく除籍する。お前もその対象だ』

 

相澤先生の言う通り、僕にはその時すぐに個性を制御する力なんてなかった。だから被害を最小限にして、人差し指のみに個性を発揮させた。

指はバキバキになってしまったけれど行動不能は避けることができ、僕は除籍を免れた。

その後、結果発表にて相澤先生から除籍の話は嘘だと聞かされた。それを聞いて最下位となっていた小柄な男子が泣きながらムンクのようになっていた。けれど、僕が言われた事を考えるにそれこそが嘘、その男子——峰田くんには見込みがあったから除籍を取りやめたということだろう。僕もこれからも油断はできない。

……これは峰田くんに教えておいた方がいいのだろうか?

おそらく、最初に名指しで扱いを分けられていた薙崎くんも同じ理由であのような事を言われていたのだろうし…

 

とまあ、それはさておき。

順位が表示された後、なんとなく予感はしていたが———というよりよく今まで突っかかってこなかったと今でも思う———かっちゃんが掴みかかってきた。相澤先生の捕縛武器によって一時取り押さえられ、取り敢えずは場が収まったがかっちゃんは全く納得していない様子だった。無理もない。僕だって、かっちゃんに嘘をついているようで落ち着かない。堪らなく歯痒かった。

 

それでも話せない。

 

もどかしくて仕方がなかった。

 

 

 

僕はあの後、相澤先生の言った通りに保健室に行って、指を治してもらった。

それにしても、僕にはできないことが多過ぎた。今日は改めてそれを実感した。リカバリーガールによる治療の影響もあって尋常ならざる倦怠感を抱えつつトボトボと歩いていると、誰かが肩に手を置いた。振り返ると飯田くんがいた。

 

「い、飯田くん!」

 

突然のことだったので驚いてしまう。

 

「緑谷くん、指は治ったのかい?」

「う、うん! リカバリーガールのおかげで…」

「そうか、それは良かった。…しかし相澤先生にはやられたよ。教師が嘘で鼓舞するとは…」

 

飯田くん…入試の時のこともあって怖い人かと思っていたけど、真面目なだけなんだなぁ…

 

「あれは、嘘じゃなかったと思うよ。」

「?それはどういうことだい?」

 

僕はソフトボール投げの時の事を飯田くんにも話した。

 

「…成る程、そういう事だったのか…って、結局それは嘘をついているではないか…!」

「…あはは。まあまあ…」

 

そうして僕が飯田くんをなだめていると…

 

「おおーい!!」

 

ん?

 

「お二人さーん!駅までー? 待ってー!!」

 

入試の時に助けてくれた人———麗日さんだ…!

 

「麗日さん…!」

「…君は、無限女子!」

「麗日お茶子です!…えっと、飯田天哉くんに、緑谷…デクくん!だよね?」

「ッデクぅ!?」

 

突然そう呼ばれたものだからびっくりしてしまった。

 

「あれ? 違った?…でも体力測定の時、爆豪って人が『デクテメェ!』って」

「あ、うん、まあ、ほ、本名は…いずくで…あーデ、デクは、かっちゃんが馬鹿にして……」

 

あたふたしながらも説明する。

 

「蔑称か…」

「あーそーなんだ!…ごめん!……でも、デクって、『頑張れ!』って感じで、なんか好きだ私!!」

「デクです!!」

「み、緑谷くん!? 浅いぞ!蔑称なんだろう?」

「コペルニクス的転回、、、」

「…こぺ?」

 

まさかこの名前にそんな事を言ってくれる人がいるとは思わなかった。今まではあまり好きではなかったあだ名に、なんだか愛着が湧いた。

そうして僕らが他愛もない話をしていると、後ろから今朝の無表情の人がついてきているのに気がついた。

 

「どうしたの? 君も駅? 一緒に帰る?」

 

麗日さんがそう声をかけると、彼は頷いて僕たちと並んだ。喋る様子はないが名前は何だろうか…

 

「同じクラスだったよね!名前なんて言うの?」

「…薙崎、ツルギです……よろしく」

 

…この人がそうだったんだ…!

ついつい反応してしまう。

 

「薙崎くん体力テスト凄かった人だよね!」

「ああ! 50m走で俺の他に3秒台がいたが君だったな!」

「……どうも」

 

それにしても、改めて近くで見てみても凄いイケメンだ。髪で顔が隠れているのが勿体ない……女の子だったら惚れてるんだろうか?

艶のある白髪を後ろで高く結わえ、後ろ髪と同じくサラサラとした前髪は目下の位置で横一文字に切られている。前髪の隙間から微かに覗く瞳は真っ黒で、日本古来の美人を彷彿とさせる。

彼は何故だかずっと黒い薄手の手袋をしている。個性が関係あるんだろうか? 今日の体力テストを見る限りでは増強系かと思ったんだが…

 

「それじゃあ、僕はこっち方面だから」

 

あ、行っちゃった…というか、もう駅に着いてたのか。

考え事をしているとあっという間だな

 

「じゃあまた明日ねー!!」

「明日また学校で会おう!3人とも!」

「う、うん!それじゃあ!」

 

飯田くんと麗日さんも方面が違うみたいだ。雄英はみんな色んなとこから通ってるんだなぁ…

 

もし僕と同じ増強系であれば薙崎くんに相談したいことがたくさんあったんだけどまた今度でいいか、明日も学校あるんだし。

 

 

 

友達ができた喜びで明日を見る目は明るかった。

…前言撤回だな、最高の高校生活になりそうだ!

 

 




かっちゃんは別にデクの事を心配しているわけではありません。かっちゃんはそんなに甘い奴ではないじょ?
誰よりもできない雑魚だったはずの奴がめげずに努力している姿を痛々しいとは思ってるものの、何より自分の目に付くのが気に入らないのだと思います




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突然よくわからない電話がきてよくわからない説明されてよくわからない提案されてよくわからないままに断ろうとしたらよくわからないままに決定されちゃうよくわからないお話

遅れてすまんにょ
相澤先生のひもかわうどんに一度巻かれてみたいと思う今日この頃


《相澤視点》

 

今年俺が担当することになったクラス、1-A。

まだ粗が目立つもののなかなか優秀な生徒は多かった。今のところは除籍の必要はなさそうだ。

 

特に驚いたのは、歴代で初めて無個性での雄英ヒーロー科合格を果たした生徒だ。

個性所有者にも勝るほどの身体能力を有しており、並々ならぬ努力が窺える。下手な増強系なんかより余程できるとみえる。今朝の件を見る限り社交性に多少難があるようだがな。

当初から興味は持っていた。流石ハンデ持ちで合格しただけはあったようで、今の体力テストでも上位に入っていた。

個性を持っているか持っていないかの違いというのは大きい。それを今まで必死に埋め合わせてきたのだろう。見ていて感心してしまった。

おそらく、10年前の強盗未遂事件で報道されていた少年だと踏んでいる。当時はその報道自体疑わしいものと感じていたが、本当にいたとは。

 

そんな事を考えながら職員室へと向かおうとすると、建物の影にオールマイトが立っていた。

 

「相澤くんのウソつき!」

「……オールマイトさん…見てたんですね。暇なんですか」

 

正直彼とは馬が合わない。話なら早めに切り上げたいところだ。

やけに緑谷出久について話してくるが一体なんなのだろうか…取り敢えず言いたい事を言って会話を終わらせようとする。しかしそこで話題が変わった。

 

「それにしても、薙崎くんには驚いたね。生徒情報を見たときは目を疑ったが無個性でここまでとは…」

「ええ、それ相応の時間を努力に費やしてきたんでしょうよ。」

 

オールマイトの指摘で先程の彼の身のこなしを思い出す。

 

 

全く、あんなになるまで努力するなんてどんな執念の持ち主なんだか……

今回のクラスはどいつもこいつも世話が焼けそうだ

 

 

 

***

 

 

 

どうもー

体力テストで『下位5名になったら除籍』と『上位5名じゃなきゃ除籍』を勘違いしたつーちゃんでーす!

 

何かイベントが足りないと思っていたら…

ソフトボールの時に何も無いなーと見ていたんだけど、あのあと結果発表でかっちゃんさんがマリモくんに掴みかかったのを見て、だいたいの展開を思い出したぜ!

どういうわけか原作と場面が違ったなーなんでやろ?

マリモくんの記録も最下位じゃなかったし……

 

まあいっか!

 

とりま終わったし帰りましょー

んーと駅までの道を覚えてないからスマホナビを……にょ?

 

電源0%!?

充電ォヨヨヨヨ

おおお、落ち着けい! 僕ぅ!

そもそも雄英から一番近い駅なんだから誰か一緒の人がいる! きっといる!

だから道なんか聞かなくていいのだ! よし、これでOK万事解決

 

ん? あれは…マリモくんとメガネ君ではないか!

そう言えばこういう場面もあったっけかな? 主人公のマリモくんは電車通学だった記憶があるし、あの二人についていこう

こういう時は距離が大事!

相手を駅に着くまで見失わず、かつ相手に気づかれないようについていける…7m! ラッキーセブンだにょ

 

 

「おーい、お二人さーん!駅までー? 待ってー!!」

 

にょっあれは慈愛の女神ウララコじゃ!

なんや楽しそうに話しとるわな、グスン

ワイも明日こそは誰かと話さんと置いてかれる……

誰と仲良くしたらええんだろうかな…おしゃべりな人だとやっていける自信皆無だし、ボッチは逆に目立つから嫌だし…

こんな時原作知識が豊富だったら入りやすいグループとか分かるのにな

 

「どうしたの? 君も駅? 一緒に帰る?」

 

にょ!? ウララコ!?

つか僕いつの間にこんな近くまで来てんのさ! いくら考え事してたからってこの僕が気づかんとはチクワの仕業としか思えん!! きっさまぁ!

とりま頷こう、無視はよくない。

 

「同じクラスだったよね! 名前なんていうの?」

 

コミュ力の塊やんけ女神…

 

「…薙崎、剱です……よろしく」

 

日本語には『よろしく』という実に幅広く使える便利な言語があるのだ! 『よろしく』の発明者に感謝!!

 

「薙崎くん体力テスト凄かった人だよね!」

「ああ!50m走で俺の他に3秒台がいたが君だったな!」

「……どうも」

 

一気に話されても反応むずしですにょ…

なんかめっちゃ陰気野郎みたいじゃん僕……あ、陰キャだったわ実際

それとさっきっからマリモくんが凝視してくるんだがなんだろ?……まさか男趣味ですか?まさかの?惚れちゃった系?

いえ冗談だってば

だいたい主人公がホモの少年漫画なんて聞いたことないわな

お、駅着いた、サヨナラチャンス☆

 

「それじゃあ、僕はこっち方面だから」

 

颯爽と立ち去るぜ

さっきの会話成立してたかな? 自分の返答一つ一つに自信がないぜよ…

明日から話し相手に関してはよく考えておかねばな……

 

 

***

 

 

……最近の訓練がハードな件について。

 

どうも、つーちゃんです。

夕飯なう

とりま愚痴聞いてー

ウチのオジサンがさー僕が雄英受かってから気合い入ってしまってね、訓練に使える時間が早朝と夕方と夜しかないってのに無駄につめるもんだから…

 

具体的に何やってるかっていうと、某訓練用の山で目隠し&耳栓しながら実戦形式訓練。ガチで。

もちろん見えないしほぼ何も聞こえない。三年前くらいから目隠しのやつはやってたけど聴覚なくなるのはきついわー

だって視覚と聴覚なかったらもう風圧を感じるぐらいしかできないし…物理攻撃は辛うじて避けられるけどかなりギリギリ

個性持ちが相手だったら完全アウトじゃん!

オッサン鬼畜やね

『勘だ!勘を鍛えろ!』とか言われても無理やんけ……

 

とか言っといて実はもう感覚が掴めてきておるにょ

限界突破、恐るべし!

 

実を言うとオッサンには未だに勝ったことないのだわね、、、この人ナニモン? 人間ちゃうやろ……

 

にしても今日の麻婆豆腐うまうま

 

「ツルギ? 面構さんからお電話!」

 

にょ?

珍しいなー犬顔さんからかい…後から知ったことなんだが犬顔さん実は警察署長さんだったそうでし

 

『もしもし剱君ワン?』

 

おう、なんや改まって?

 

『今日は君の戸籍のことで話があってね。』

 

…まさか戸籍変えたことが誰かにバレた的なあれですかね…?

 

『いやいやそんなことではないワン。そもそも、もうバレるとか言う心配は要らなくなるワン』

 

と言いますと?

 

『超常社会になってからというもの、異形型の個性所持者にはたまにイレギュラーが出るようになってね。何年か前にも「体が変形する個性」とかで性別不詳の子供が生まれる例がいくつかあるんだよ。そういった人たちの戸籍は指定が保留になっていたんだけど、最近になって正式に変更できるようになったんだワン』

 

ほお成る程、分からん

 

『君の戸籍の変更は合法ではなかったことは知っているね? 元々君の戸籍を戻すことは検討していたワン。こちらで手を回しておくので君は話を合わせてほしいワン。』

 

えっそれって性別とかも戻るってことっすか!? マジか!!

 

『それではお母様に代わってもらえるかい?』

 

あっはい了解でふ

んーなんかもう今更って感じするなー

そもそもあの時はマスゴミから逃げるために変えてた戸籍だし。

性別にはもう既にこだわりないし、むしろ男子の方がやりやすいかもだし…

 

よし、マザーに言って断ってもらおう、それか性別だけでも変更したままで—————

「ツルギ! よかったじゃない! 性別戻せるんですって?」

 

お、おう、マザーちょい待って、

なぜにそんな乗り気なん?

 

「だってツルギのスカート姿だって見れるのよ?」

 

す、すすすスカート!?

いや無理ですママ様ご勘弁! 今更あんな足出す勇気ないっちゅうの!

 

「え、、、でもツルギのコスチュームのデザイン女の子にしちゃったんだけど…?」

「ふぁ!?」

 

何やってんのマザー!? 確かにコスチュームの申請任せるとは言ったけどそんなの聞いとらんわ!!

しかもそれ性別戻す前じゃん! マジで何やってんの!?

 

「い、いやだった……?」

 

あ、まずい、マザーからドス黒オーラが…これ落ち込んじゃうパターン

すまんすまん、大丈夫だから、気にしないから

 

「そう?よかった!」

 

…全くウチのマザーは世話がやけるにょ。

 

こんなわけで戸籍が無事戻りましたとさ

 

どうしよう、コスチューム明日着るよな?

……どうしよう

 

 




社会的には性別がバレることとなりました。相澤先生とかは知らされると思いますが、制服とかは男子用をそのまま着るんでほぼ全員気づきませんにょ

今後の展開にもご期待よろしゅうね!!


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自分の知らないところで自分が苦労人扱いされる気持ち!分かる!?僕は分かんない!!

誰がエタると言った!?
私は生きている!強く生きておるぞー!!

遅れてほんとすみません!
言い訳させてもらうと、先日ヒアリに刺されたところが悪化しまして、皮膚科に行っておりました……
痒し!

ご指摘、ご感想、ありがとうございます!
読んでくださってる実感が湧いてめちゃ嬉しいです!
これからもよろしく頼もー!



おはよーみんなー!

朝練が終わったつーちゃんでーす!

昨日マザーから衝撃的な事を聞いてしまったつーちゃん、あの後マザーにどんな要望を出したのか問いただしたにょ

マザーのやることに油断はできんぜよ…

まとめるとこんな感じかな?

・白黒でシンプルに

・和服をモチーフに

・肌の露出は少なく

・機能性重視に

・断熱性、耐寒性、非通電性、耐刃性、摩擦軽減、不燃性、完全防水

・靴裏の硬いブーツ

・非致死性拳銃

・柄のない刀

・飛び道具

・ホルスター

・上に着る長めの羽織

・耐毒マスク

・スカート

 

うん、最後のやつ以外は問題ないね、最後のやつ以外は。マザーはこういうところはしっかりしてるから任せたんだけど今回は後悔したにょ…メンドくさくても自分で出すべきだったにょ

マザーの気遣いで付け足された長めの羽織というやつだが、かなり長いらしい。内側のコスチュームはほぼ隠れるそうだ。

そこはナイス!!

しばらくはその羽織は手放せなさそうだにょ!

ただ、その羽織を着ている状態だと太腿に設置したホルスターが取り出せないから刀と足技オンリーになってしまうのだ…

今は銃の扱い慣れてないし使わないからいいんだけど、使うようになったら脱がなきゃだよねー…いつまでも足技と剣技だけでいられるほどヒーロー科は甘くないだろうから性別のことは早めに話しといたほうがいいかもだにょ……

まあコスチュームの件はこの辺にして、もう一つ大事なことがあるのだ。ズバリ、話し相手の件でし。

これね! いいこと思いついたんよ!

少ない原作知識を絞り込んで思いついたのだ!

原作の『かっちゃん』、この人と基本行動することにいたしましたぜ

確かかっちゃんさんは『クソを下水で煮込んだような性格』と称されていたはず、なんか印象的で覚えてたフレーズだ。その某クソ煮込みくんならきっと他の人は寄ってこないに違いない。

これなら話す人が多過ぎない&ボッチではないの条件を完璧クリアだにょ!!

僕天才!

 

それでは今日も学校に行ってきまする!

…そういえば犬顔さんに『話を合わせてくれ』って言われてたけど、今日何か話されるんだろうか…?

 

 

***

 

 

 

《出久視点》

 

よし、今日は余裕を持って電車に乗れた。

昨日は初日からドタバタだったからな…

 

学校に着き、記憶を辿りながら1-Aの教室へ向かう。一度来たとはいえ校舎が広いのであまり慣れない。教室に入ると既に生徒が何人かいた。まだ全員の顔と名前が分からないな…早めに覚えないと

駅から学校までの道で昨日の三人の誰かと一緒にならないかなと思っていたけど結局顔見知りとは誰とも会えなかった。今度は誘ってみようかな

 

席についてからそんな事を考えているといつのまにか予鈴は鳴っていて、ホームルームが始まった。

 

「おはよう、全員出席だな…なぎさき、あとで話がある。職員室に来い。」

 

…なんか薙崎くん昨日からずっと絡まれてないだろうか…

事情でもあるのかな?

 

「今日から通常授業だ。昨日よりもっと過酷な試練の目白押しだ。覚悟しとけ」

 

そう言って相澤先生は出ていった。

 

 

***

 

 

芋虫先生に呼び出し受けますたーつーちゃんでーす!

おそらく十中八九戸籍のことだろうなぁ…入学2日目に名前が変わるとか色々手続き面倒くさそう…

お、ここが職員室か、

 

「失礼します、相澤先生いらっしゃいますか」

「…薙崎か…職員室の場所は分かったようだな。それじゃあ早速だが本題に入る。警察の方から話は聞いた。大変だったそうだな。」

 

なんかよく分かんないけど話を合わせろって言われてるからとりま頷いとこ

 

「名前は戻るそうだが制服の件はどうする?もし変えたければこちらで手続きを済ましておくが…「そのままでお願いします」……そうか、わかった。詳しい事情については生徒達にも話して大丈夫か?」

 

これも頷いとこ

 

「了解した、午後の訓練の際にオールマイトから全体に話してもらえるよう言っておこう。もう帰っていいぞ」

「失礼しました」

 

おお!なんか何も聞いてなかったけど普通に会話が成立した!すげえ(小並感)

とりま終わったし教室戻ろっと……えーとまだ道覚えてないからナビナビ

さっきは芋虫先生の後を急いでついていったからここが分かったけど覚えてるわけではないのだよ

 

 

校内でナビを使うつーちゃんであった…

 

 

 

***

 

 

《出久視点》

 

今日から普通授業が始まった。

雄英高ヒーロー科のカリキュラム、午前は必須科目や英語などの普通の授業……正直思ってたよりも普通だった。

また、昼食には大食堂にてプロヒーローのランチラッシュの料理を安価で購入できる。僕は飯田くんと麗日さんに誘われてそこで食べた。薙崎くんも誘おうかと思ったのだけれど何故だか見当たらなかった。

そして午後の授業、ヒーロー基礎学…ヒーロー科の生徒だけが受けられる特別な科目だ。ここにいる全員がこの授業を受けるために雄英に来ている。

 

「ワーターシーがー…」

「来っ…!」

「普通にドアから来たー!!」

 

オールマイトの登場に教室中が沸き立つ。

今ばかりはかっちゃんも嬉しそうだな…

かく言う僕も結構盛り上がってる。ヒーローになるための授業、単位数の話をされてるけどそんなもの関係なく重要なものだ。

 

「今日は早速だが、戦闘訓練だ!!」

「戦闘…!」

「訓練…」

 

戦闘という言葉を聞いてかっちゃんがさらに嬉しそうに声を上げた。……少しヴィランっぽいと思ってしまったのは内緒だ。

 

「そしてそいつに伴ってー……こちら!!入学前に送ってもらった個性届けと要望に沿って誂えたコスチューム!」

 

なんかオールマイトが来てから興奮の連続だな…

ん? 薙崎くんのコスチュームだけオールマイトから手渡しされてるな…というか、教室の壁に設置されたコスチュームケースに空きがないみたいだ。

あれ?そう言えばおかしいぞ? クラスの籍は入試の時に20と聞いていたのに在籍者が21人…ケースに空きがないのはそのせいみたいだけど、なんで一人多いんだろう?

昨日から何か不自然だとは思ってたし、薙崎くんに何か関係がありそうな気がする…

 

そんなことを考えながら更衣室に移動した。ふと気になって周りを見てみたが薙崎くんは見当たらず、オールマイトに指示されたグラウンドに行くと既に彼はそこにいた。

……謎が多過ぎるな…籍のことはオールマイトが知っているかもしれない。聞いてみるか。

 

「あっデクくん!カッコいいねぇ!!地に足ついた感じ!」

「う、麗日さ…ぅおお…!」

「要望ちゃんと書けばよかったよぉ…パツパツスーツんなった……恥ずかしい…」

 

眩しいとも感じるその姿を初めは直視できなかったが、直ぐに目が離せなくなる。

小柄な男子こと、峰田くんが何やらサムズアップをしていたのを見てつい『えっ』となってしまった。

 

「さあ、戦闘訓練のお時間だ」

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

 

飯田くんが質問をする。

このコスチュームは飯田くんだったんだ…カッコいい…!

 

「いや、もう二歩先に踏み込む。ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ。監禁、軟禁、裏商売…真に賢しいヴィランは闇に潜む。

君らにはこれから、ヴィラン組とヒーロー組とで分かれて二対二の屋内戦を行ってもらう。」

「基礎訓練無しに?」

「その基礎を知るための実践さ!…ただし!今度はぶっ壊せばオーケーなロボじゃないのがミソだ。」

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ぶっ飛ばしてもいいんすか?」

「相澤先生の時みたいな除籍とかあるんですか…?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?」

「このマント、ヤバくない?」

 

立て続けに質問が飛び、オールマイトもタジタジになっている。

……最後のは質問の内なのだろうか…?

 

オールマイトも教職は慣れないのだろう。どこからかカンペを取り出して読み始めた。

 

「いいかい? 状況設定はヴィランがアジトのどこかに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは時間内にヴィランを捕まえるか、核兵器を回収すること。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえること」

 

設定がアメリカンだな!

 

「コンビ及び、対戦相手はくじだ!」

 

「……先生! 先程『二対二』とおっしゃっていましたが、このクラスは21名です!」

「あ、そうだった! 始まる前に君らに話さなきゃいけないことがあったんだった」

 

それは僕も先程から気になっていたことだ。なんだかオールマイトの授業始まったばかりから少しグダグダだな…頑張ってくださいね。

心の中で密かに応援の言葉を送る。

 

「実は、今年の1-Aは在籍者が特例で例年より一人多いんだ」

 

オールマイトの言葉に周囲がざわつく。

 

「君たち、10年前に無個性の子供がヴィランを沈静化させた強盗未遂事件は知っているかい?」

 

知ってる。忘れもしない。でも、一体何の関係が…?

 

「その時の子供が薙崎少年だ」

 

 

……は?

 

 

「あの事件で捕縛されたヴィランが大きなヴィラン組織の所属だったため、組織に狙われないよう、彼は今まで証人保護プログラムを受けていたんだ。つい先日その組織がヒーローと政府の間で内密に解体されてね、彼の戸籍を戻せるようになった。そうだね、『なぎさ少年』?」

 

オールマイトの言っていることが上手く頭に入らない。薙崎くんがオールマイトの言葉に頷いているのを見て視界が歪んできた。

 

「入学二日目で名前が変わるなんて、と思うかもしれないが手続きが忙しくて仕方がなかったそうだ。それと、この話は基本他言無用で頼むぞ、みんな! あくまで内密に片付けられた事件だ。君らならきちんと理解してくれるね?」

 

そんな……こんなことって……

 

「彼の本名は『渚 剱』! 」

 

ずっとずっと探し続けてきた名前……

 

 

僕は気がついたら泣いていた。

 

 

***

 

 

 

《出久視点》

 

周囲の目があることを思い出して、一度深呼吸をして落ち着く。泣いているところを見られるのは流石に恥ずかしい。

運のいいことにクラスメイト達はすっかり盛り上がっていて、僕には気がついていないようだった。そっと安堵の息を吐く。

 

「まあ、そういうことで、彼は国からの推薦で雄英を受験した。もちろん特別枠ということで少しばかり狭い門だったがな……。実技で3位以内という条件付きだ。」

 

その言葉に再びみんなが騒ついた。

オールマイトは『少しばかり狭い』というが、雄英には全国から入学希望者が集まってくる。その中で無個性で3位以内なんて僕に言わせれば驚異的だ。

 

と、少し冷静になったところで不自然な点が多々あることに気がついた。証人保護プログラムというものはそもそも対象者を別人と偽装することで保護を行う。それなら元の名前『渚 剱』と適応後の『薙崎 剱』のように似た名前になるのはおかしい。それに解体された大組織というものだが、証人保護プログラムを施行しなければいけないほど大きい組織だったのなら、いくらヒーローと政府で内密に行ったからと言って全く事件が報道される事態にならないのもおかしい。

 

僕は憧れの存在を喜ぶ反面、確かな違和感を感じていた。

 




某国民的アニメの設定に激似ですね……

オールマイトが主人公を『少年』と呼んでいるのは誤字ではありません! つーちゃんが一生懸命直談判した結果です!!












自分の知らないところで裏設定が次々と付け足されてしまう主人公!
一体全体どうなってしまうのか……!?

次回!爆豪爆死す!

デュエルスタンバイ!!


(嘘ですw)


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今までいないと思ってた奴がひょっこり出てきた! さあどうする? 1、逃げる 2、戦う 3、無視する 僕は4番! 『餌を与える』!!

主人公が周囲に男と認識されているうちにきちんとフラグを立てまくらねば!!
立てるなら今のうちなのだ!!





《勝己視点》

 

あの無個性の奴は存在した

 

昔なら俺はこの事実だけで苦しめられただろう。だが今は違う。

今の俺は強え、コイツよりも絶対に。

ガキの頃のコイツなんて関係ねえ。昔は目障りで仕方なかった。けど今はもう違うんだ。ここの入試も体力テストも俺はコイツより優っていた。

俺は負けてねえ。

だからコイツが今更本当にいたかどうかなんてもうどうでもいい。

 

最初聞いた時は確かに動揺した。俺の人生で一番大きなコンプレックスはコイツだったからな

けど考えてみればもう昔の話だ。

 

そう考えた。

俺は平静でいられた。

 

「それじゃ、渚少年の話はここまで! 取り敢えず人数は、1チームだけ三人編成としよう。なお、基本的にヒーロー側が不利な状況としたいので三人チームとなったところは自動的にヴィラン側とする。それでは時間もないので早くやろう!!」

 

オールマイトの声を聞いて先程の思考を隅に追いやる。俺はDチーム、メガネのやつとだった。なんとなく気になってデクと無個性野郎のチームを見た。デクは「A」、無個性野郎は「I」だ。

 

全員のチームが決まったところでオールマイトが対戦相手のくじを引く。

 

「最初の対戦相手はー…コイツらだ!!」

 

オールマイトの引いた球に書かれた文字を見て口角を吊り上げる。AとD、デクと俺だ。…上等じゃねえか

 

「Aチームがヒーロー、Dチームがヴィランだ!! 他の者はモニタールームに向かってくれ」

 

他のチームの奴らがオールマイトに続き、その場には俺のチームとデクのチームが残った。

脅しの意味も兼ねてデクの方を睨む。それを見たデクがすぐさま自信なさげに目線を外した。そして少しの間俯き拳を握ったかと思うと、今度は真っ直ぐ俺を見返してきた。睨んでいるというほどではないが、その目は強い光を持っていた。

 

……変わったな、デク

 

今まで俺が睨みを利かせてもビビるばっかだった奴が俺に対抗しようとしている。ムカついたが、無理もないとも思った。

つい先程あの話を聞いたんだ。多少の発破はかかっているんだろう。

 

でも俺には勝てねえよ

デクが昨日使ってたのが何の力かは知らないが、その力をも超えて俺はお前を捩じ伏せる…

 

一番は俺だ……!

 

 

***

 

「それでは、AチームとDチームによる屋内対人戦闘訓練……スタート!!」

 

オールマイトがスタートの合図を出してすぐ、俺はすぐに核の部屋を出た。メガネの奴が何か言っていたが俺は今そんなのどうでもいいんだよ。

 

俺は明らかにデクの個性に動揺していた。俺より強えんじゃねえかと一瞬でも思っちまっていた。デクが個性を隠して俺を騙していたという事実にも苛立った。デクが人を騙すような奴だったかと考えれば違和感はある。けど実際デクは個性を使えたんだ。それは騙してたってことだろう。

腹が立って仕方がねえ、木偶の坊のくせしてよ……!

 

俺の方が強えってこと証明してやる。

 

「ぅううらああああ!!!」

 

奇襲を仕掛けたがすんでのところで避けられた。何となく予想はしていたがやはりイラつくもんはイラつく。

 

「こらデク……避けてんじゃねえよ」

「かっちゃんが敵なら、まず最初に僕を殴りにくると思った…!」

 

チッ相変わらずだな、そのクソナードっぷりは……!

 

「中断されねえ程度にぶっ飛ばしてやらぁ!!」

 

そう言って再び爆破を起こそうとした時だった。デクが俺の出した右手をガッチリと掴んだ。

デクに動きが読まれた……!?

 

「ガッ……!」

 

突然のことで反応ができず、俺はそのまま床に打ち付けられた。肺の空気が一気に吐き出させられる。

 

「…かっちゃんは…大抵最初に右の大振りなんだ。どれだけ見てきたと思ってる…」

「……あ゛あん?」

「すごいと思ったヒーローの分析は…全部ノートにまとめてあるんだ…! 君が爆破して捨てたノートに…!」

 

……当てつけのつもりってか、デク?

 

「いつまでも雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ…! 僕は、『頑張れって感じ』のデクだ!!」

 

…デク…!

ビビりながらよ…そういうとこがムカつくんだよ、昔っから…! ビビってるくせに、何もできねえくせに……!

 

「そういうとこが…ムカつくなぁ!!」

 

***

 

 

『おい、爆豪君! 状況を教えたまえ!どうなってる!?』

「黙って守備してろ!……こいつは俺がやるって決めてんだ…!」

『話し合って決めるべきだったはずだ! 俺が今か———』

 

ブチッ

 

鬱陶しい。俺はこいつに個性使わして勝つ。邪魔すんな

 

手を後ろに向け爆破させ加速して前進する。そしてデクの頭目掛けて蹴りを入れた。デクはそれをもう一人の奴に先に行くよう合図しながら腕でガードする。

今回蹴りを使ったのはデクに動きを読まれることを警戒してのことだ。コイツのクソナードっぷりは侮れねえ。

 

「余所見か、余裕だな…!」

 

次の攻撃を繰り出そうとして、デクが先程蹴った俺の足に確保証明テープを巻きつけようとしているのが見て取れた。まずいと思って即座に反応する。

が、その動きも読まれた。

流石にここまで当たらないとは思わなかったので少し認識を変える。今度はあれを使う。

そう考えてもう一度爆破で前進しようとしたのだが、それより早くデクは撤退を始めた。おそらく再び間合いに入り込むためだろう。このまま正面戦闘を続ければそれは難しい上にデクは圧倒的に不利になる。

デクはこういうところの判断は的確だ。訓練のことを考えれば、デクは俺と戦わずに引きつけて逃げ回ることだってできる。けど俺の目的はコイツに個性使わせて勝つことだ。撤退なんかさせねえ。

 

急いでデクの後を追う。角を曲がった所でデクはすでに見当たらず俺は今日何度目かも分からない舌打ちをした。

 




一旦きりまーす!
次回もかっちゃん視点でやってくよー!
かっちゃんの言動はこれから少しずつ変えていきますので楽しみにしててね!

今後の話
アオハルを書くつもりでいますが、その過程でつーちゃんは一時的に病みます。
もちろん最終的にはほっこりするように作ります

今後もよろしくにょー!


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やっぱり『よろしく』は素晴ら!ね?作者もそう思うでしょ?これ一言付け加えただけであら不思議!好印象なコミュ障となるのです!!(結局コミュ障)

USJ編を早く書きたくて仕方がないです!!
かっちゃああああん!!。・゜・(ノД`)・゜・。


……見つけた。

デクを見つけたと同時に籠手にニトロが溜まったことを確認する。今度はこれを使う。

遠距離攻撃を可能にするためにサポート会社に要請した機能だ。普段の爆破とは規模が違う。本来なら人に向ける威力じゃあない。

それほどの威力ならデクは個性を使わざるを得なくなるはずだ。個性使わせるにはこれしかねえ。

 

「……溜まった」

 

デクが俺の声でこちらを振り向く。

 

「なんで個性を使わねえ? 使わなくても勝てるってか? 舐めてんのか、デク?」

 

デクは再び僅かに震えながらこちらに向かい合った。

 

「もう…君を怖がるもんか……!!」

 

そうかよ…使わねえなら使わすまでだ

籠手の取っ手を手前にずらし、ピンの標準を真っ直ぐデクに合わせる。

 

『爆豪少年!ストップだ!!殺す気か!?』

「個性使やあ死にゃしねえよ!!」

 

そのままピンを引き抜いた。

直後、俺の体は壁まで吹き飛ばされた。

……やっと使いやがったか…

今の攻撃はほぼ相殺

デクも俺も建物の端まで飛ばされたようだ。

…随分と派手な個性じゃねえかよ

 

次でやる

 

双方の攻撃によってデクと俺の間の壁は全て消し飛ばされひらけていた。中央の柱とはずれていたためギリギリ建物は崩れていない。

俺はそのまま距離を詰め、今度は至近距離で左の籠手のピンを引き抜いた。

これを凌がれたら再びニトロが溜まるのを待たなければならない。これで決める。

が、デクはこれにも反応してきた。二度目の個性発動だ。

 

「————く……!」

 

デクが苦しそうに表情を歪める。体力テストの時と違ってデクの腕は変色はしておらず今はダラリと垂れ下がっている。重傷でなくともおそらくは其方の腕はもう使えないだろう。

先程と同じように両者とも衝撃で飛ばされた。

 

『爆豪少年!緑谷少年!次それを打ったら試験を中止する!』

「あ?」

『大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く。ヒーローとしてもヴィランとしても愚策だそれは! 大幅減点だからな』

 

クソが……!

ならもう決まってる。

 

「殴り合いだぁ!」

 

後方に爆破を起こし急接近、右手を振りかぶりフェイクをかけ左手で目くらましを兼ねた軌道変更。その勢いを使って背後に回る。再び右手で爆破を起こして減速し、左手の爆破をデクの背に浴びせる。デクは反応できていない。

 

「行くぞぉ! テメェの大好きな右の大振り!!」

 

右の籠手を思い切り叩きつけ、腕を掴み取って床に打ち付けた。状況を不利と判断したデクは四つん這いになりながらもその場を逃げる。

 

デクはもう既に片腕は使えないはずだ。だがもう片方が残ってる。そっちを使わす。

 

「テメェ本気でやってねえだろ……なんでだ。俺を舐めてんのか?」

 

壁に追い詰められたデクが俯き呟く。

 

「違う…」

 

「ガキの頃からずっとそうやって!俺を舐めてたのかテメェはぁ!!」

 

「違うよ……君が……!

君が、凄い人だから…勝ちたいんじゃないか……!!」

 

さっきよりも強い調子でデクはそう言う。

 

「勝って…超えたいんじゃないか!!馬鹿野郎!!!」

「そのツラやめろや、クソナードぉ!!」

 

デクが俺の方に真っ直ぐに走ってくる。俺も右手に全力を込めて、攻撃しようと駆け出した。

デクが残った片腕を振りかぶる。

 

『双方中———「行くぞ!麗日さん!!」——!!』

 

両者の攻撃が正面衝突した……かのように見えた。

なんだ?先程の衝突と違ってこちらに少しも衝撃が来ない。

直後、頭上で天井の割れる音がした。

 

デクは天井に向けて残りの一撃を打っていたのだ。上では核を回収されたらしくメガネの悲鳴が聞こえる。

見上げれば何階分もの天井が吹き飛ばされており大きな穴が空いていた。

 

こんな……こんなに威力あんじゃねえかよ本当は……! さっき俺に使ってた威力の何倍もよ!なんで今まで俺に使ってこなかったんだよ……! 今のもそうだ…!

 

「そう言う…ハナっからテメェ……やっぱ舐めてんじゃねえか……!!」

 

デクの方を震えながら睨む。

俺の爆破でできた煙が晴れ、デクの姿が見えてきた。

 

「使わない……つもりだったんだ…」

 

ようやく聞こえた返答はあまりにも弱々しく、思わず絶句した。少しずつ見えてくる煙の向こうに痛々しく変色した腕が見えた。

 

「使えないから、体が…衝撃に、耐えられないから……」

 

そして変色していないもう片方の腕のみで俺の爆破を防いだことが見て取れた。ボロボロになったデクを見て息をのむ。

 

……なんつー…執念だよ…俺の全力の爆破だったんだぞ…!?

それを勢いも殺さずに、訓練を優先して真正面から受けるとかよ、

 

「相澤先生にも、言われて、た……だけど…これしか、思いつかなかった…」

 

俺も認めざるを得なかった。

 

『完全敗北』だ

 

そのまま倒れていくデクを、俺は呆然と見つめていた。

 

 

***

 

 

 

 

 

 

《出久視点》

 

 

 

 

オールマイトからの話が終わって気持ちを戦闘訓練の方に切り替える。

戦闘訓練、僕のコンビは麗日さんで、対戦相手は飯田くんとかっちゃんになった。

 

……かっちゃん

 

かっちゃんは今、僕の個性のことで疑いを持ってる。僕もそのつもりは微塵もないけど実際かっちゃんを騙していたかのようで引け目を感じていた。

それに、正直言うと僕にはかっちゃんに勝てる絶対の自信はない。かっちゃんは昔っから凄い人だ。僕の身近ではそれこそ勝利の権化と呼べる存在。

先のことを考えてつい悲観的になってしまった。

 

他のチームの人たちがオールマイトに連れられてモニタールームへと去っていく。

ふと、かっちゃんがこちらに睨みを利かせてきた。目が合った僕は萎縮して反射的に目を逸らした。しかし直ぐに思い直し、もう一度かっちゃんの目を真っ直ぐ見据える。

 

かっちゃんは凄い人だ。僕はそれをよく分かってる。でも、だからこそ負けたくない。

勝つよ、かっちゃん…!

 

 

***

 

 

『それでは、屋内対人戦闘訓練スタート!』

 

オールマイトの合図の後、僕は麗日さんと共に窓からの侵入に成功した。

僕は今回の訓練では個性は使えない。調整ができないせいで建物が壊れる可能性があるからだ。衝撃を逃がすことで100%よりかは威力がおちるけどそれでもなかなか人には向けられるものではないんだ。そうなると、今回は今の僕の力と麗日さんの無重力しか手札がない。

フルで頭を回さないと…! 僕が今まで分析してきた、屋内や狭い中での戦いの記録…思い出せ…!

 

その時だった。

 

「ぅううらあああ!!」

 

かっちゃんの奇襲…!

曲がり角の陰から飛び出し僕に向かって爆発を打ってきた。咄嗟に麗日さんを庇いながら避ける。少し掠ったようで、コスチュームの顔半分が破けていた。

爆煙が晴れてきてかっちゃんの姿が目に入る。

 

「こらデク、避けてんじゃねえよ…」

「かっちゃんが敵なら、まず僕を殴りにくると思った」

 

追撃を警戒しつつ、立ち上がる。かっちゃんは初撃で右の大振りが多い。分析を元に動きを予測した。

———当たり!

僕はかっちゃんの右手をがっちりと掴み、そのまま背負い投げをした。かっちゃんはそれに反応できず、背を床に強かに打ち付けた。

 

「……いつまでも、雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ!かっちゃん! 僕は……『頑張れって感じ』のデクだ!!」

 

昔からコンプレックスだったこの呼び名、麗日さんに意味を変えてもらえたんだ。

 

もう僕は、木偶の坊なんかじゃない!

 

 

***

 

建物が壊れる音がする。

 

結局僕は個性を使った。最初の2回は左腕…かっちゃんの大技を防ぐためにやむを得なく打った。衝撃を逃して威力を弱めたものの、二回で左腕は使えなくなった。

最後の1回は右腕…作戦遂行のためには玉砕覚悟の威力でなければならなかったため、見事に腕は変色した。

作戦は成功したが充分とはとても言えない結果だ。まあ、これくらいしてでも今回は譲りたくなかったのだからこの傷はそれ相応の代償だろう。

痛みで視界が霞む。

一瞬かっちゃんがらしくない顔してたように見えたけど気のせいか…

 

僕はその場に倒れて目を閉じた。

 

***

 

ハロハロー!!

むちゃくちゃ久しぶり!みんな!

元気してたかい?

 

さて、先程の通り僕は色々と設定を付け足されてしまったのだ!!

ていうかあんなエピソード犬顔さんが全部考えたんだろうか…?

やべえ、頭が上がらねえ……

証人保護プログラムとかスケールが映画だよ!!

 

まあ兎に角これで戸籍の件は誤魔化しが利いたみたいだし一安心、

あ、それと何となくまだ性別バレたくなかったもんで、マッハで着替えた後オールマイトに性別のこと隠してもらうように直談判したのだ!!

正直オーケーされるとは思ってなかったけどねー

そういやイボ頭のチビがさっきから血走った目を向けてくるんだがなんだにょ? ヤクでも決めたかにょ?

 

ん? 早く展開進めろ? ああはいはいごめちょ!

そんじゃあ早速コスチューム紹介!

僕のコスチュームは前にマザーから聞き出した要望に大体合ってる。スカートが思ってたよりミニで思わず白目なったけど、スカートの中が見えないようにするやつとかあったからまだオッケー……いや、ちょっとだけオッケーじゃないかもだ…

でもしばらくは上に羽織を着ておくし、銃が使えるようになるまではだいじょぶ。

『露出を少なめ』って出しておいたからコスチューム会社の人も多少譲歩してるみたいでし。ブーツが太ももの半分より上まである。なっが!! まあでもフィットタイプだから動きやすいし大して戦闘には問題ナッシング

蹴りをするから靴底は分厚く丈夫にってことにしといたんだけど、マジで分厚い…あ、でも身長盛れるからあり! ナイス! もっと分厚くてもいいかも!!

羽織の方はなんかナ○トに出てきた「暁」とかいう人たちが着てたのに似とるな…パクリか? 雲の模様はないけどそれ以外は色違いだにょ

羽織の内側はすごい数の飛び道具とか刃物とかが収納できる。数が多いのは別に構わんが僕じゃなかったら重過ぎて動けなくなるんちゃうかなこれ……サポート会社は鬼畜な人が多いんだろうか? 変態ぞろいとは聞いてたけんね…

うん、とりまコスチュームは結構気に入った。スカート以外は。

 

 

お、コスチューム紹介してたらもうクジ引きが始まっとるわ、んーと? 僕は……『I』チームだ、ペアは…葉隠ちゃんこと、インビジブル痴女様でございます。そのCカップが憎いぜコンニャロ

痴女様はチームが決まった途端、手袋振り回して「よろしくね」って言ってきたお、「よろしく」って返したお。やっぱ『よろしく』の万能性は素晴らしいお、まる。

 

最初の試合は誰かなーと……お、マリモ君とかっちゃんさんだ。頑張れよー(棒)

原作では凄い熱い戦いだったはずなんだがほぼ覚えとらんわ…

 

お二人のチーム以外は全員モニタールームへと呼ばれますた。つか定点カメラの画質良過ぎだろ…金使ってんなー戦闘中に壊れたらどうすんねん

 

それでは、お二人のお熱い戦いを、ご覧のスポンサーの提供でお送りします!

 

マリモ『 絶対勝っちゃるぜ、かっちゃん!』

爆ゴン『ムカつくなぁ!』

マリモ『「ガンバ」って感じのマリモだぜ、かっちゃん!』

爆ゴン『ムカつくなぁ!』

マリモ『左腕が疼くぜ、かっちゃん!』

爆ゴン『ムカつくなぁ!』

マリモ『右腕がゴミのようダァ、かっちゃん!』 バタン( ˘ω˘ )

爆ゴン『(O_O)』

 

THE END

 

にょ?

別に主人公を馬鹿にしとるわけじゃないってばね…定点カメラの音声無いからよう分からんかっただけにょ!許してちょ!

 

でも色んな意味で凄い試合だったから周囲の盛り上がりがヤバし…みんな気合い入ってガチになる系だね、分かる

 

さて、筋肉おじさんが次のチームのクジを引きますたぜ

どれどれー? Oh マイチーム! しかもヴィランだぜ!

対戦相手は……握力ゴリラこと障子くんと、中二病オーラがヤバイ轟くんだね!

にょーん……この世界では中二病をナメてはいかんぞ小僧

こっちで中二病やってる奴は結構ヤバめな人が多いんよ!これ知っ得!

 

さっきのボロボロビル使うのかと思ったら他のやつに移動だとよ…とほほ……せっかく見取り図覚えたのに…一階だけ()

なんか道とか覚えんの無理だにょ姉御!!

こういう時こそチクワの補正が必要だと思うん…

ま、しゃーない!とりま核を隠す場所は痴女様にお任せあれだにょ!

 

***

 

『それでは! 屋内対人戦闘訓練、第二戦スタート!!』

 

お、始まった始まった。

核は五階の角部屋に設置したぜー

この部屋に来るまでの道全然分からんかった……痴女様がいて良かったでし…

ヒーローチームじゃなかったことにも感謝!!

 

「ツルギさん!」

 

にょ?

 

「私、ちょっと本気出すわ! 手袋もブーツも脱ぐわ!」

 

……お、おやめください痴女様! このままでは貴女はこの作品にR-18タグを付けさせることになります!どうかご考慮を!!

 

僕は全力で首を振ったにょ、横にね!

 

「え?ダメだった?でも見えないし……まあいっか!とりあえず頑張ろ!」

 

ふう、全くだにょ……

にょ、僕が鍛えたスーパー聴覚にパキパキ音が反応したぜ!

 

その音は少しずつ近づいてくる。

とりま痴女様を抱えてベストタイミングでジャンピーン!

氷がカビみたいに広がってくのを避ける。

滞空時間は壁と天井と核を駆使してどうにかしたぜ!……その後それらは全て凍ってたけどねー…

つか凍るための水分どっから出てくんのや?

まー大人の事情だろし突っ込まんでおくわ

 

氷の侵攻が止まった、というか全部凍った。そろそろオケかな?痴女様降ろすぞ

急に男子に抱えられるとか抵抗あるよね…

 

「ごめん」

 

「ん?ううん全然!寧ろ助けてくれてありがとうだし、こんなイケメンに抱っこされちゃうなんて嬉しいの極みだよー!」

 

…マジか、『ごめん』一言で通じたぞ、超能力者かよ

しかも軽いな!悪い人に騙されないようにね!!

 

……にしても痴女様寒そうやね、流石に可哀想になってきた…さっきの直談判は無駄になるけど羽織を貸そうかな。。。

 

そう考えた僕が羽織を脱ごうとすると痴女様が止めてきた。

 

「だいじょぶ!これが終わるまでぐらいは我慢する!」

 

おお!なんと!

さっきは止めてごめんなさい!そこまで裸でいたかったのなら大変失礼を言ってしまったぜ!

……いや、冗談、マジで見てらんないから着ようぜ痴女様……

 

もう一度羽織を脱ごうと手をかけると今度は僕の腕を掴んでまで止めてきた。

 

「ホントだいじょぶだから!それに透明って言うアドバンテージを無くしちゃうし! 今脱がれても絶対着ないからね!」

 

お、おう……そこまで言うか…

しゃーない、渡すのはこれ終わってからにしよう

 

ん、下から足音二人分。響き的に三、四階の間の階段を登ってる

……早いな、割と

てっきり先程の凍結で油断してると思ったんだけど、多分こっちが動けてることが分かったんだろうな

となるとヒーローチームには索敵ができる個性持ちがおるな

 

この部屋の入り口は一つ、核の場所は僕たちの足音でバレてるだろうから今からでも警戒するべきやね、痴女様にアイコンタクトだにょ

……痴女様の目がどこにあるのか分からん、いや、心の目だ!悟りを開くのだ!我が呼びかけに応えよ、魔眼!!

うん、通じたらしい。靴の向きが入り口に向いとるね

 

そしてようこそ、お二人さん

 




葉隠ちゃんがつーちゃんのことを『ツルギさん』と呼んでるのにはきちんと理由があります!
今後の展開もご期待よろしゅー!!

追伸
尾白くんはピンクガールのチームに入ったそうです


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全然関係ないはずの登場人物って割と意味がある! 後になって分かって後悔しても遅いのだぁ!! 推しキャラ登録1番は作者がいただくぜ(`・ω・´)

サヨちゃあああん!!!。・゜・(ノД`)・゜・。

やっと書けた!!



 

 

《???視点》

 

私は、生まれた時から透明だった。

 

こちらから干渉しないと分かってもらえない。服は着てても表情は見えない。誰にも分かってもらえないことばかり。

 

『透明人間になれたら何がしたい?』って言うやつがよくある。私は皆に理解してもらいたい。皆に見てもらいたい。透明人間なのに矛盾してるよね

周りの人には凄く羨ましがられた個性だけど、私はこの個性が大嫌いだった。私だってみんなみたいに姿が見えればいいのに。その為だったら無個性だって構わないのに。そう思ってるのに。

 

私の願いが叶うことはない。これは私の『個性』なんだ。

 

そう思ってた。

幼稚園の頃、私には一人だけ仲のいい友達がいた。

一般的な『仲のいい』とは少し違うかもしれない。私はその子がいなければ独りだったし、その子も私がいなければ独りだった。

そんな些細な共通点だったけど、たったそれだけの理由でもその子と一緒にいられたのだから構わなかった。

その子はあまり表情を動かさない子だった。最初は何を考えてるのか全然分からなかった。

彼女を見ていて、『きっと周りから見た私もそんな感じなんだろな』と思った。でも私と違うのは、他の人から顔が見えること。最初は凄く腹が立った。だって、私と違って周りに見てもらえる顔があるのにずっと無表情だったから。

でも、しばらく一緒にいて分かった。この子はどこかが欠けている。きっと表情が動かないのもそのせいなんだろうなって。幼いながらにも何かを感じ取っていた。

それに気づいてからはその子がとても可哀想になった。

 

そして事件は起きた。

彼女が『無個性』だっていう話をお母さんに聞いた。その頃はその言葉の意味をよく知らなかった。だから特に意図せずにその事を尋ねてしまった。彼女はその時に至っても表情をピクリとも動かさなかった。悪い事を言ったと気づいたのはずっと後のことだ。

 

彼女は自分が無個性だと分かったその日から、おかしな行動を取り始めた。みんなが遊んでる時は鉄棒にぶら下がって芋虫みたいな事をしてたし、家に帰る時間になると幼稚園の周りをひたすら走り回っていた。心配になって聞いてみたら『トレーニング』と言っていた。よく分からなかったけど、彼女はその頃随分と無理をしていたと思う。表情には出さない子だった。否、出せない子だった。

 

私だけがその子の苦しみを知っていた。

 

迎えに来てる彼女のお母さんは凄く優しそうだったけど、その人も何も気づいてなかったから。

そんなまま一年が経って、彼女は幼稚園をやめて引っ越していった。

同じ頃、無個性の男の子が悪い人達を倒したっていう話を聞いた。絶対に彼女だと確信した。ビデオを見てみても彼女で間違いなかった。

 

 

私だけが知っている

 

彼女が何かを欲している事を

 

そればかりを求めて何も見えなくなっている事を

 

無理ばかりして苦しんでる事を

 

無表情の裏にはたくさんの感情がある事を

 

彼女が自分を騙し続けている事を

 

そう、私だけ

私だけなんだ。だから、私が助けなきゃいけない。支えてあげなきゃいけない。彼女はきっと『欲しているもの』を決して諦めない。だから、せめてそれが叶うまで側にいてあげたい。

 

私はあの後彼女を探し回った。お母さんや色んな大人の人にネットの使い方を教わって、できる限りの分かることを集めて、彼女の引っ越しについて知っていそうな人には片っ端から話を聞きまわり、心当たった場所は実際に自分の足で探した。勝手に探しに行ったからお母さんに凄く怒られた。でも本当に彼女が心配だったから、諦めきれなかった。

 

そしてついに数年経って、彼女のネットのアカウントを割り出した。さも偶然知り合ったかのように偽装して、直接会う予定を立てさせてもらった。

『ネットで知り合った人にあんまり無防備に会っちゃダメだろ』とか最初は思ったけど、彼女に危害を加えようとしたところで返り討ちにされるだろうし突っ込まないでおいた。

 

ようやく会えた。私は彼女に会ってすぐに、幼稚園での私の失言を謝った。彼女は全く覚えてなかったみたいで拍子抜けだったけど、ちょっと抜けてるとこも変わってなくてなんだか微笑ましかった。

彼女はやはり性別を隠していたようで、他には言わないようにと言われた。何か理由があるんだろうし、素直に返事をしておいた。

あれからずっと彼女とはメールで頻繁に話す仲だ。たまに直接会ったりもする。

 

彼女がヒーローを目指してることは知ってたから私もそうしようと思って努力した。流石に彼女ほどじゃないけど、最善は尽くした。

後に彼女の志望校が雄英だと知り、訓練のペースはかなりあげたんだけどね

ギリギリだったけど、どうにか合格した。彼女も合格していた。

 

そうだよね、あんなに頑張ってたもんね

 

いざ雄英に入ることになって、昨日は私がいることを教えて彼女をおどかしてみようと思った。けど、『葉隠透』として会って、なぜか躊躇ってしまった。

帰り道でも声をかけようとしたけど、他の人と一緒に歩いているのが見えてやっぱりやめた。

初日から知らない人と話せるようになるなんて、と、なんだか彼女が変わってしまって遠くに行ってしまったように思えたんだ。

 

今日、葉隠透として彼女と接する機会ができた。結局まだ正体を言えないでいるけど、もうしばらくはこのままでいいかもしれない。本当に彼女が変わったのなら、無理をし過ぎなくなっていたのなら、私は側にいる必要はない。

 

私の名前は葉隠透

私は彼女をつーちゃんと呼ぶ

『サヨちゃん』はつーちゃんが付けてくれたあだ名だ

昔、つーちゃんの無表情を馬鹿にして笑った男の子がいた。今考えてもあれほど腹わたが煮えくり返ったことはない

 

何も知らないくせに

 

私は怒鳴っていた。透明人間として生まれて此の方、周りの人の目には気をつけてきた。今まではずっと好印象な女の子を演じてきてたんだ。だけどこの日始めて私は激情を見せた。

 

『うるさいよ!!』

 

これ以上ないくらい大きな声でそう叫んだ。その言葉を聞いていたつーちゃんは、なぜか「うるさいよ」の「さ」と「よ」だけ取って『サヨちゃん』と呼ぶようになった。私はその名前が大好きになった。今までどこか一線を引いていたつーちゃんとの距離を、初めてつーちゃんから近付けてくれた気がしたから。

 

つーちゃんはやっぱりどこかポンコツで、あだ名呼びをしていたら完全に私の本名なんか忘れてた。そのポンコツもきっとつーちゃんのいいところなんだろうな

 

 

今日の訓練、この機会に見定めよう

私がつーちゃんに正体を明かすべきか否か

つーちゃんが本当に大丈夫そうなら私は必要ない

 

でももし、崩れそうだったなら————

 

 

————必ず私がつーちゃんのヒーローになる

 

 

 

***

 

 

《焦凍視点》

 

『それでは! 第二戦、屋内対人戦闘訓練スタート!!』

 

オールマイトの合図で訓練が始まった。

 

俺のチームはヒーロー側だ。対してヴィランチーム、メンバーは異形型の透明な奴と、先程オールマイトから話を聞いた無個性の奴。

後者の話には正直驚いた。もともと体力テストの時に気になってはいた。何かを発動する素振りもなく大きな記録を出していたからだ。常時発動であれば異形型のはずだが、見た感じそうではなかった。不思議に思っていたが、まさか無個性だとは思わなかった。

彼は昨日の記録を見た限りだと身体能力が非常に高い。が、動きを封じてしまえば関係がない。

同じチームの障子という奴の個性で索敵をしてもらい核の部屋を割り出し、その部屋へと徐々に氷を侵食させていく。あいつの身のこなしから言って、気づかれてしまえば躱されるだろう。だから、その部屋に近付くまでは凍らすスピードを落とすことで音を抑え、勘付かれないようにと心掛けた。そして部屋に入るところで最速にする。

 

おそらく掛かっただろうと思い、悠々と建物に入ろうとする。

 

「……待て、足音が聞こえる。おそらく壁や天井をうまく蹴り上がって避けたんだろう。」

 

それを聞いて目を見開く。今の氷結は俺のできる限りの発動速度を至近距離から使ったのだ。例え部屋に到達するまでに音に気がついたとしても避けられる時間なんて一瞬も無かった筈だ。

 

……認識を改めねえとこれはやべえな

 

正直、障子が索敵・近接対応で助かった。俺が「渚」とかいう奴を抑えたとしてもその間に透明の奴に確保テープを撒かれたらお終いだ。無個性の奴は遠距離戦は向かないだろうから本来なら距離をとって拘束したいが、先程の氷結を避けられたあたりそれは難しい。第一この訓練は屋内だ。距離をとるのも困難だろう。

 

…となると俺が近距離戦で抑え続けるしかないな

障子は肉弾戦になるため刀を持っている彼とは相性が悪い

 

時間はたっぷりあったが、この訓練を実戦と考えるなら早いに越したことはない。目標がいる部屋へ急いで上がっていった。

 

 

 

彼らは俺らを待ち構えていたのだろうか?

足音はできるだけ押し殺したつもりだったが、まるで予期していたかのように相手チームはこちらを向いていた。

 

 

 

 

ようこそ

 

 

 

 

そう言われた気がして俺は気を引き締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

《透視点》

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトの合図で戦闘訓練が始まった。

 

「ツルギさん!私、ちょっと本気出すわ!手袋もブーツも脱ぐわ!」

 

早速つーちゃんに明るく話しかけると、つーちゃんは凄い勢いで首を振りだした、横に。

 

「え?ダメだった? でも見えないし……」

 

あ、そっか。つーちゃんは今私の正体を知らないから男と認識されてると思ってるんだっけ?

気を使ってるのか、なるほどね

 

「まあいっか! とりあえず頑張ろ!」

 

話題を切り上げて訓練へと意識を戻す。

直後、つーちゃんが何かを感じ取った。つーちゃんは耳がいい。おそらく何かが起こる。

そう思って身構えると、つーちゃんは突然私を姫抱きにして飛び跳ねた。少しびっくりしたけど、壁や床に氷が張り始めたのを見て納得した。

……それにしてもこの格好だとつーちゃんの胸が当たるんだよな…ホントにポンコツ…このままだとすぐに性別バレるんじゃないかな。。。

 

氷結が終わり、つーちゃんが私を下に下ろした。

 

「ごめん」

 

ん? ああ、男の子として遠慮してんのかぁ

つーちゃん結構気にするからねーこういうの

幼稚園で一緒だったエロ男子にトラウマ持ってたみたいだし

 

「ううん全然! 寧ろ助けてくれてありがとうだし、こんなイケメンに抱えられちゃうなんての嬉しいの極みだよー!」

 

後半はほぼ本音、一瞬たじろいたのが可愛い

するとつーちゃんは今度は私が寒そうだと思ったらしく、コートを脱ごうとした。

 

え、前にメールで文句言ってなかったっけ?

『マザーがコスチュームの羽織の下をスカートにしちゃったにょ』って!

まさか性別バレるの覚悟? 優し過ぎだろ!

 

「だいじょぶ!これが終わるくらいまで我慢する!」

 

慌てて引き止めましたとも!

しかしそこで止まるつーちゃんではない。

今度こそ羽織の留め具に手をかけた、ので百人一首のクイーンの如く手を伸ばして止めた。今までで一番マジな反射だった。

 

「ホントだいじょぶだから! それに透明っていうアドバンテージを無くしちゃうし!」

 

そしてもう一押しが大事!

 

「今脱がれても絶対着ないからね!」

 

ここまで言えばだいじょぶ。とは言っても多分この訓練が終わったらすぐにでも渡してくるだろうしどうしよう…

 

ん、つーちゃんがなんか伝えようとしてる……なるほど、来てるってことね

 

不思議なもので、つーちゃんとはよく目が合う。あちらからは見えない筈なのに、他の人よりも目が合う頻度がすごく多いんだよね

それが結構嬉しかったりする

 

 

さてと—————

 

 

 

 

 

 

 

 

———ようこそ、お二人さん

 

 

 

 

 

 

 

 




*つーちゃんサヨちゃんのミニストーリー*


《透視点》


〜幼少の記憶〜

私は透明人間、姿は見えない。
だから、何かを伝えたければ全身で表現しなくちゃいけなかった。でもすごく疲れてしまった。
私はつーちゃんに聞いてみた。


「つーちゃんは疲れたことってある?」

質問の意味が分かりにくかったのかもしれない。

「走って疲れるとかじゃなくて、何もしたくなくなっちゃうの」

「…あるよ」

「…!……じゃあ、そういう時さ、つーちゃんならどうしてるの?」

「我慢する」

「どうやって…?」

「目標を持つ」

「……もくひょう?」

「やりたいこと、欲しいものとかはある?」

「あるよ…私はね、皆に見てもらいたい」

私は姿しか見えないから、いつもフードやマスク、とにかく肌を覆うものをたくさん身につけていた。だから、つーちゃんは私の個性を透明人間だなんて覚えてなかったんだろうな……

「それならヒーローになろうよ。サヨちゃんは可愛いし、きっと皆に見てもらえる」

「!そっか…! そうだね!」

一瞬明るい気持ちになった。けれど、つーちゃんがヒーローの話をした時、どこか雰囲気が変わった気がしてなんだか気になった。

「…つーちゃんもヒーローになりたいの?」

「…うん」

「どうして?」

「……ごめん、分からないや」

私はこの時気付いた。つーちゃんがつーちゃん自身を騙している事に。
つーちゃんは、何かやりたい事や欲しいものがあるからヒーローを目指してる。
それが分からないなんて嘘に決まってる。だけどつーちゃんは今まで嘘をついたことなんて一度もない。それに嘘を付いているそぶりもなかった。
あのポンコツのつーちゃんが嘘なんてつき続けられるわけがない。だから、これはつーちゃん自身がつーちゃん自身に騙されてるんだ。


つーちゃんが何をしたいのか、何を欲しがっているのかは分からない。だけどつーちゃんはそれの為だけにすごい努力…無理をしてる。つーちゃん自身、それに気付いてない。

また、私だけ

知ってるのは私だけ

救えるのも、私だけかもしれない






———この日、私はつーちゃんを救うヒーローになると決めたんだ








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痴女様のあだ名が『マザーJr.』に変更されそうだ! これ以上シンパイショウィルスを蔓延させてはならん! 殺虫剤だ!殺虫剤を持ってこーい!!

前回のお話は『葉隠 : オリジン』でしたー!

透明人間に対する私の見解が昔からあったので、ヒロアカの葉隠ちゃん見た時に「よく葉隠ちゃん性格曲がらないな〜」って思いました…

葉隠ちゃんの明るい人柄が辛い




 

ようこそ、お二人さーん!

つーちゃん&痴女様ワールドへようこそ!

 

それでは早速アトラクションの紹介だよー

このアトラクションは、悪寒は急上昇、戦意は急降下、思考が急停止する、スリル満点の核の部屋です。大変危険ですので僕からは目を離さないように心がけましょう!

最も、僕がそうはさせませんけどねー

 

今回の訓練、味方である痴女様は透明で見えないため、自動的に僕の方に敵の視線が集まる。先制攻撃を受けやすいのも僕だ。人気者は辛いね☆

いえ冗談!コミュ障が人気者のわけがないやんけ

 

当初はもう少し油断してくると踏んでいたんだけど思ったより警戒されてんなー……油断してよん。

まあ、こっちも油断しているわけではないし、運が悪くなければ充分渡り合えるんじゃね?

 

僕は二人が部屋に入ってくる前から彼らの接近に気がついてた。二人が部屋に入ってくる一拍前に動き出す。思った通りの位置から姿を現した彼らのうちの一人—————腕がたくさん生えた大柄な少年めがけて最速で前進する。彼の足の間をくぐり抜け、付近の壁を蹴ってわずかに跳躍、そのまま反応できていない彼の後頭部に踵を蹴り入れた。

頭蓋骨が割れてはいけないのでそれなりに加減はしたつもりだ

でも多分気絶はしてる

とりま確保テープを巻いておいた

 

なんか初っ端からこんな攻撃して申し訳ないけど、初見殺しだったってことです、許してちょ?

最初に標的にしたこととかも謝るからさ

 

なぜ彼を優先したかというと理由は単純、見るからに近接向きの体格だったから

どっちが索敵個性持ちだったのかは判らないけど、少なくとも氷結の方は中二もどき君だと思う

初見殺しが二人分できれば楽なんだろうけど、壁の角度があまり好ましくなくてできなかった。流石に物理法則を無視できるほど僕はチートじゃないんで

 

ここまでの展開、実を言うと彼らが部屋に姿を現してから数秒と経ってないんだよね

 

一瞬、沈黙が部屋を覆ったかと思うと、無線からオールマイトの声が聞こえてきた

 

『…しょ、障子少年…確保。』

 

その声を聞きながら中二もどき君を視界に入れようとすると、僕の斜め後ろ———僕にとっての完全な死角に冷気を感じ、すぐさま飛び退く。その位置に氷塊ができているのが見て取れた。

あっぶな! 間一髪ってやつだ

今のはかなり危ない

初見殺しに怯んでくれたりとかしてくれないかなーとか一ミリくらいは期待してたんだけど、流石は雄英生やね…状況判断と行動が早すぎる。それにさっきの攻撃も範囲がめちゃくちゃ正確だった。

しかも顔面偏差値たっか! チートかよ!

もしかしてヒロアカの原作ってこんな凄い人ばっかりなのかな?

やべえ、つーちゃんの自信が急降下だよ…

 

痴女様に目配せをしつつ、先程の握力ゴリラ君と同じように中二もどき君に接近する。

と、そこで凄い悪寒がしたので天井にぶつからないギリギリのところまで跳躍した。先程まで僕がいた位置には、憎いことに僕の身長を軽く超えるほどの大きさの氷が生成されてた。

くっそうぅ! 氷塊ごときがつーちゃん様を見下してんじゃねえ!

 

羽織の袖の内側から飛び道具を取り出して天井に突き刺し、勢い良く弾いて着地地点の調整をする。

正直少し舐めとったわな…

壁とか床を伝わせてからの氷結しかできないもんかと思っとったんだけど、まさか一瞬にしてこんなでかい氷を出せるとは…なんと憎い

しかも人に打って大丈夫なのかよ…

 

「容赦ないね」

 

と僕が思わず呟くと、中二君はこちらに攻撃をしながら返答

 

「初訓練で気絶させる奴が言うかよ」

 

はい、ごもっともでございまし。

 

跳躍高度はそこまで高くなかったので受け身は取らず、着地と同時に再度彼に向かって駆け出した。

打たれるアイス達はぴょんぴょんとうまく躱すじょー

……なんかさっきの攻撃と違って違和感がある…一応警戒だね!

 

彼は今部屋の隅にいる。壁が直角になってる位置だ。

 

成る程、考えたね

これなら壁を使った氷結を警戒しなきゃだから下手に手を出せない

違和感を感じたのは中二もどき君がこちらへ誘導しながら攻撃してたからか…

でも、裏をかかせてもらうよ

 

僕はそのまま突っ込み攻撃を試みた、が、氷結で牽制され攻撃を中断した。蹴りに対応されるのは想定済みだったけど、ここまで個性の扱いが上手いとは思ってなかったぜ

 

間合いに入った

僕はさっき突っ込んだ勢いを殺さず、再び壁を蹴り上がろうとした。やっぱし中二君はこの瞬間を狙ってたみたいだ

壁から丁度片足だけ離れたタイミングで足と壁を氷結で固められてしまう。今度こそ僕の拘束に成功したと思ったのだろう。だけど残念、今の僕の体勢なら股関節と足首を総合しても260度ほど身体を捻れる。

中二君の頭部へと攻撃するなら270、275度くらい必要だろうが、鳩尾なら270度弱で済む。

許容範囲を少しばかり超えているけれど、これくらいなら我慢できないわけでもない。

 

鋭く響く足首の痛みを無視して、中二君の鳩尾につーちゃんキックをお見舞いした。

 

「う゛ッ…!」

 

中二君が表情を歪めてえずく。

関節の限界の関係で蹴りの威力は多少落ちていたし、調整もしてたから内出血とかは起こってないと思う。でも急所はやはりきつかったのだろう

 

上手く怯んだタイミングで、確保テープが中二君の足に巻きついた。一見、確保テープがひとりでに動いたかのようにも見えるがその実態は先程からチャンスを伺っていた痴女様である。

…ていうか結局手袋もブーツも脱いだのかよこの露出魔が!!

 

『轟少年確保!ヴィランチーム、WI〜N!!』

 

…おわった

 

あ、戦闘訓練が終わったことを言ってるわけじゃないよ? 確かにそっちも終わったけどね

今僕が言ってんのはオワタの方ね?

何がオワタって?

 

あのね

 

足が取れねえ

 

わあ

この格好めっちゃかっこ悪いよ

片足だけ壁にくっついてるとか何? 罰ゲーム?

僕ら勝ったんだよね!? これが勝者の姿かよ!

グリコー◯ンよりダサいよ!

泣くぞ、チクワめ!!

 

内心涙目になりながら固まっていると、中二君が回復したらしくこちらになんとも言えない目線を向けてきた。

 

なんだその目は!? バカにしてんのかああん?

 

「いや、なんか可哀想に見えただけだ…」

 

THE 哀れみの目!!

え、やだ、なんかそれはそれで辛い。

 

「待ってろ今溶かす」

 

ほわっ?

 

おおすげえ!

左手から湯気出てきてんな! そんなこともできんのか!

いやー突然足掴んでくるものだから身構えてしまったよ

そういや鳩尾大丈夫か?

 

「問題ねえ、それはそうと、お前最後の攻撃———」

 

足の氷が溶けたので僕は普通に立とうと足を下ろした。と、その時、足首に痛みが走って転びそうになった。

アウチだぜ…

近くにいた中二君が咄嗟に支えてくれたので転びはしなかったが、しばらくは歩けそうにないな……

 

「——やっぱり最後のやつ捨て身だったんだな」

 

おう、よくご察しで

片足潰れるくらい捨て身ってほどでもないけどね

もともと痴女様にサポート頼んでおいたから特に問題は無かったでしょ?

 

「……そうか…」

 

にょ? そう言えば痴女様はご無事で…?

おお、いたいた、なんや俯いとるやないか

腹でも壊したか?さっきの寒さでピーなったか?

 

「わっ違う違う! 全然そんなんじゃないよ! 今なんか暑いくらいだしねー!」

 

……ほんとに大丈夫かいな?

目の当たりに水っぽいの浮かんでるが、泣くほどなんかい?

 

「いやー昨日眠れなくってさー欠伸欠伸!」

 

あーわかる、ゲームのイベント重なったりするとついつい完徹しちゃうよねーん、 同志よ!

ん、そういや氷溶けたから羽織貸さなくてもだいじょぶやんけ

よかったぜー(小並感)

 

「最後のやつ足捻っちゃったよね!保健室行く?私おぶるよ!」

 

ん?足はちょいと痛いだけだから保健室行くほどでもないよ?

気にしなくてもええねん、モニタールームに戻りましょー

道が分からんから痴女様頼んだぜ

 

「え、あ…でも……」

 

ええんてええんて!

心配性やな〜将来マザーみたいになりそうだにょー

心配してくれるお心は嬉しいのだけども女の子におぶられる男の子ってかっこ悪いし

しかも裸の痴女様に密着することになるにょ!遠慮しとくにょー!

 

「なら俺がおぶる、それでいいだろ? ———無理すんな」

 

にょーん!?

どっから出てきた乱入者ぁあ!!

や、男子におぶられるのもそれはそれでご勘弁……

それに握力ゴリラ君も気絶してるんだからそっちを運んであげてちょ!

 

「あ?ああ、障子ならさっきオールマイトに連れてかれたぞ」

 

にょーん!?

筋肉おじさんーー!?!? なんで皆そんなにも僕から逃げ道を奪うんだい?

 

「や、やっぱり私がおぶるよ!轟君もお腹あれでしょ?」

「いや、問題ねえ、お前も腹冷えたんじゃねえのか?」

 

なにこれ、目の前でよくわからない話が展開されとる

こ、これ僕関係ないよね…?

さーモニタールームに戻りましょ————

 

「「どこ行くの(んだ)?」」

 

ひょーん…同時に肩を掴まれるとかもう物理的にも逃げ場ナッシングだ

 

しかーし!この僕、つーちゃん様が片足使えないくらいでこの状況を逃げられないわけではないのだ!

足の力を一瞬抜くことで重力に従って体勢を低くする。もちろんこの時肩から手は離れるぜ!

そのまま階段の方へーれっつらごー

 

———ッと

 

 

「……だから言ったろ」

 

 

その後、無事僕は二人に捕獲されましたとさ

めでた死めでた死

 

 

***

 

 

 

《焦凍視点》

 

 

『ようこそ』

 

俺は核の部屋に入った時、白髪の奴の相手をするつもりだった。透明な女子は、索敵のできる障子に任せたほうがいい。無差別に氷で攻撃すれば拘束できるかもしれないが、それでこちらの動きまで鈍れば白髪の奴に十中八九やられるためリスクが高い。

当初はそいつを行動不能にするつもりでいたが、室内ではおそらく向こう側が有利だ。昨日から見ていても一筋縄でいきそうな相手ではない。確実に条件を達成させるなら、『足止め』ぐらいに考えておく方がいい。俺がそいつを抑えている間に障子に核を任せる。透明な女子が止めに入るかもしれないが、障子の体格なら対応は可能だろう。

障子が透明の女子を突破すれば、当然白髪の奴は核を守るために障子の妨害に行く。その隙を見て攻撃すれば良い。たとえ隙がなかったとしても、少なくとも2対1の状況には持っていける。

最善策は立ててある。

あとは実行するのみ、そう思っていた。

油断はしていなかった。

 

障子とタイミングを合わせて部屋に入った。両者の警戒が最も高まる瞬間だ。視界が室内へと切り替わった途端、まるで予期していたかのように待ち受けていた二人が目に入る。

 

…こいつらは索敵の個性なんかないはずだが、まあ考えてても仕方ねえか

 

相手を甘く見ていたわけでも、自分に慢心してたわけでもない。だけど、少なからず俺は自分に自信を持っていた。小さい頃から散々扱かれて努力してきたのだから、そこらの奴らよりかはできる。

 

けれど流石に予想外だった。

 

俺たちが部屋に入って来た時には白髪の奴は動き出していた。完全に背後に回られて初めて俺は反応した。が、標的は障子だった。白髪の奴は流れるように動き、障子の後頭部に躊躇なく蹴りを入れた。

ようやく状況を悟ったのは、障子が確保テープを巻かれている時だった。もし標的が俺だったとしたら、俺は果たして避けられただろうか? …いや、これはどう考えても初見殺しというやつだろう。経験を積んでいなければとても反応できそうにない。

 

部屋を沈黙が支配し、数瞬遅れて無線でオールマイトが何かを言い始める。それを聞く暇もなく、俺は戦闘に意識を集中させた。

 

既に状況は1対2、白髪の奴は一騎討ちだとしても油断できる相手じゃない。無線が終わるより先に白髪の奴に氷結を打った。加減はほぼ無い。最速だ。

完璧に死角を狙ったつもりでいたがそいつはこちらを振り向きもせずに床を一蹴りして避けた。

頭の後ろに目でも付いてるんじゃねえのか…?

氷結を避けたそいつが着地する位置に氷結を出したかったが、流石に警戒されているらしい。滞空時間が短過ぎて攻撃のタイミングを失った。個性の分析をしっかりとされている。まずいな。

やはり接近戦に特化しているこいつをあまり近づけたくはない。氷で牽制しようにも上手く躱されてしまうため拉致があかない。相手もそれが分かっているらしく、一息も付かずに間合いを詰めてきた。

……これなら加減は要らなそうだ

相手はまだ俺の大氷結を見ていない。軽く必殺技とも言えるこれを捨て駒に使う。おそらく避けられるからな

出し惜しみする余裕はない。氷結で壁まで誘導する。誘導には向こうも気づくかもしれないが、相手も接近しなければ攻撃はできないため壁に近づかざるを得ない。そこを拘束する。

大氷結を出す。予想通り反応された。

 

「容赦ないね」

 

お前が言うかそれ…

 

今回は高く跳躍したようなので滞空時間は長くなるはず。着地地点もしっかり狙おうと氷結を起こすが、天井を使って軌道変更をされたらしい。上手く避けられてしまった。が、先程よりも距離を遠くすることには成功した。

ようやく開いた距離のお陰で、部屋の隅に移動する余裕ができる。

思った通りだ。距離を詰めるのをやめない。壁への接近のリスクを承知でこちらに来ている。

初撃の蹴り、氷結を駆使してギリギリで躱した。

そいつは初撃の勢いを殺さず、壁を蹴り上がり間髪入れずに追撃をかけようとした。

 

———ここ…!

 

極限の集中状態、一瞬視界がゆっくりになる。そいつの片足が壁に付くタイミングを狙い、氷結を発動。

 

かかった…!

 

体が不安定な体勢になったところを狙ったので追撃はされないだろう。氷を壊される可能性を鑑みて警戒は続けた。こいつが氷から抜け出すより先に核にタッチすればこちらの勝利、そう思った。

 

直後、こいつは有り得ない動きを見せた。

どう考えてもおかしいぐらいに下半身を捻り、こちらに足先を飛ばしてきたのだ。向かうは鳩尾。完全に意表を突かれた俺はモロにそれを受けてしまった。

 

「う゛ッ……!」

 

息がつまり、激痛が走る。どうにか意識を保とうと舌を噛み締める。辛うじて蹲らないようにするので精一杯だった。

 

『轟少年確保!ヴィランチーム、WI〜N!!』

 

どうやら隙を見て透明の奴が確保テープを巻いたようだ。流石にもう意識が寄せられるほどの余裕が残されていなかったので、そちらに視線を送ることもできなかった。

 

しばらくすると落ち着いてきたので一度深呼吸し、白髪の奴、渚に向き直る。

と、こいつは先程とは違う意味で思いがけない格好をしていた。その姿になんとなく目が離せずにいると、あちらも視線に気がついたらしくこちらをじっと見返してきた。何か言いたげだ。

 

…ああ、やっぱこいつ気づいてたんだな

俺が炎も使えること、そしてそれを任意で使っていないこと

分かってて何も言ってこなかったのか、今まで…

 

「待ってろ今溶かす」

 

俺が部屋を溶かし始めても全く驚くそぶりはない。戦闘以外でなら使うっていうことも気づいてたってことか、流石だな

 

そんなことを考えていると、そいつは鳩尾に視線を向けてきた。あの一撃は綺麗に入ったのもあって心配してくれているのだろう。

 

「大丈夫だ、問題ねえ、それはそうと、お前最後の攻撃————」

 

気になって尋ねようとすると、足の氷が取れたらしい。渚は普通に立とうとした、が、足が地面についた瞬間何かに突かれたように倒れ込む。それを俺は咄嗟に支え、一度床に座らせる

 

「———やっぱり最後のやつ捨て身だったんだな」

 

そう、捨て身。

こいつは無理を分かった上でやった。

 

今回の訓練、こいつは刀を全く使わなかった。無個性としての対抗手段であると踏んでいたのだが。

実際、刀を使っていればこいつは最後の場面で氷から抜け出すこともできただろう。では何故使わなかったのか。

おそらく俺の左側の個性と同様、訳ありな理由があるのだと思う。こいつが炎について言及してこなかったのも、何かしら共感を抱いたからなのかもしれない。

『使うくらいなら捨て身に走る』

俺以上に覚悟が固い、が、こうなりたいとは思えない。

なぜなら、こいつは捨て身を使うことをなんとも思っていないようだったから

 

何かおかしい

 

ふと、こいつの姿が歪んで見えた。

無表情の裏では何を考えているのだろうか…

オールマイトから聞いたこいつの話が本当かどうかは知らないが、過去に何かしら抱えているのは確かだ。

 

ついつい考え込んでしまった。思考を戻し、周りを見ると障子がオールマイトに連れ出されているのが見えた。透明の女子が困ったように渚に何か話している。内容を聞くと、渚をおぶるかおぶらないかで渚が遠慮しているようだ。

 

「なら俺がおぶる、それでいいだろ?———無理すんな」

 

渚は一瞬こちらを見て固まる。

怪我の原因は俺でもあるのだし、お詫びの意もあって言ったのだが…何がいけなかったのだろうか? こちらからは見えないはずなのに妙に透明の奴からもすごい目で見られている気がする。渚はというと、先程まで障子が倒れていた位置に目線を向けたのでそちらも説明しておく。

とりあえず後の訓練が閊えるかもしれないので早々に退散しようと思い、渚をおぶるために屈もうとする。

 

そこで透明の女子———葉隠に止められ、一悶着あったのだが突如逃げ出した渚が階段で転びそうになったところで無事捕獲。

 

 

……だから言ったろ

 

無理すんなって

 





障子ふぁんの方、ほんとにごめんなさい!
障子が嫌いなわけでは決してありません!
ただのモブキャラだとか全く考えてないです!
これからもきちんと書いていきますんでこれからもよろしゅー!!

つーちゃんは見えなくても葉隠ちゃんが俯いてるのに気がつきました

描写ミスではありませんよー




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言わなくても分かってもらえるってなんて素敵!!どの世界もここまでコミュ障に優しかったらいいのにな!


お気に入り登録あんがとおおお!
前回の更新が遅れたせいで忘れられたかもと思ってたんだけどひと安心です

とっても励みになってますんでこれからも応援よろしく!

原作なかなか進まなくてごめんです



 

終わった

 

戦闘訓練が終わった

無線からオールマイトの終了の合図が聞こえてくる。

 

私は、今回の訓練でほぼ何もできなかったな

最後に確保テープを巻いたぐらいしかしていない。それに、結局最後の場面、つーちゃんは無理をした。

 

無理をして

怪我をした

私は何もできなかった

私はヒーローになりたいと、つーちゃんを守りたいと思ってここまできたのに

何もできなかったんだな

 

つーちゃんとの努力の差はやはり埋められなかった。対戦相手の轟君もすごく強かった。私との実力差は容易に伺えた。

 

ダメだ、こんなんじゃ

こんなんじゃここまできた意味がない。

 

私はこの訓練でつーちゃんが無理をしないかを見極めようと思った。けど、それはつーちゃんを守るために見極めようと思っただけ。今の私は守るどころか守られてしまってる。

 

情けない

 

目頭が熱くなる。泣いてるところは見られたくなかったから顔を伏せておいた。とは言っても、透明だから伏せる意味があるのかは正直微妙なところ。

それでも伏せるのは私の気持ちの問題だ。

 

でも、それでも気がついてしまうのがつーちゃんなんだよな…

つーちゃんが心配そうに声をかけてこようとしたので慌てて返答した。

 

つーちゃんは最後ので足を捻ってしまったようだ。おぶろうと思ってつーちゃんにそう言うと、つーちゃんはその提案を遠慮してきた。なんとなく予想はしてたけど流石にここは譲れない。もう一度声をかけようとした。

 

「なら俺がおぶる、それで問題ないだろ」

 

…!

まずい、それは困る。おぶったりなんかされたら十中八九つーちゃんの性別がバレてしまう……!

なんとか止めようと思ったところ、途中でつーちゃんがその場から抜けようとしたので肩を掴んで止めた。けれど、つーちゃんはマジだったみたいで、ちょっとした体術を使ってまで逃げようとした。

最終的に、つーちゃんが階段に差し掛かったところで転びそうになったのを轟君が捕まえて、無事に捕まえた。無事じゃないけど。

結局轟君がおぶることになってしまった。

つーちゃんがおぶられた時、轟君が一瞬不自然に静止したのでおそらくもう気づかれたと思う。

…これはモニタールームでじっくりお話タイムだな

 

 

***

 

 

《焦凍視点》

 

結局渚をおぶるのは俺になった

渚の方も転びそうになっていたこともあってか流石に観念したらしく、渋々体を預けてきた。

 

と、そこで俺は背中にありえない感触を感じ、静止してしまった。

 

「轟君?」

 

そう言葉を発する葉隠、たった一言名前を呼ばれただけのはずなのにどこか威圧を感じる。その上、視線も凄くなっている気がする。葉隠の様子を鑑みて地雷の匂いしかしなかった。おそらくこの問題には関わらないほうがいい。

一瞬の逡巡の後、とある考えに行き着き、考えるのをやめた。

 

「後で少しお話ししましょうか?」

 

俺は何かまずいことをしてしまったのかもしれない。

 

 

 

***

 

 

どうもー

マザーJr.痴女様&隻眼コス中二もどき君に連行されました、つーちゃんです

 

おんぶは免れなかったけど、辛うじて『保健室にはいかない』との要望は通してもらえたぜー

モニタールームに戻った途端皆んなから目を向けられたんだがなんじゃ…?

まさかあれか? 足取れませんポーズを笑ってやがんのかこんちくせう

 

コミュ障が多くの視線に晒されるなんて残酷なことに耐えられるはずもなく瞬時に痴女様を盾にしようとしたのだが、某痴女様は中二君の手を引いてさっさと部屋の隅に消えてしまった。

さすがは痴女様、訓練初日でイケメンに色仕掛けか

 

みゅーん…逃げ場はないのでしょか。なんと絶望的…

 

「あなた…渚…ツルギちゃんと言ったかしら?」

 

にょ? そうだにょ?

 

「ケロ…どう考えてもおかしな方向に体が曲がっていたように見えたのだけれど…」

「問題ないよ。ところで君は?」

「……蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

 

うむ!レベルがちょいと高いんでケロちゃんと呼ばせとくれ!

 

「よーし、全員集まったな!二回戦の講評を始めよう!」

 

お、講評始まった…なんかパイ乙やばしな痴女様二号がなんか言っとるな…

よく分からん単語がいっぱい出てくるぜよ

別に聞かなくてもええよねー分からんし

 

その後ふつうに講評が終わり、三回戦が始まった。

ふーむ、やっぱり皆レベルが高いなー、中二君ほどではないけど厄介な個性の人とかめちゃ多し

 

「なあ、渚、ちょっといいか?」

 

ん?なんだい、イボ頭君?

相変わらず目が血走っとるぜ?目薬いるか?

 

そちらに視線を向けるとイボ頭君は小声で何やら言ってきた。

 

「お前、女だよな?」

 

……にょーん!?

どこでバレたん?

やばいかなこれ……? あ、でももう戸籍戻ったんだしバラしても良かったんだっけ?

じゃあ言ってもいいか、

 

「うん、僕実は———?」

 

言おうとしたらすごい勢いで口を塞がれた。

その身長差でここまで飛び跳ねて口を塞ぐとは…なかなか脚力あるではないか

どしたん?

 

「た、多分皆もう気づいてるから言わなくてもいいと思うぜ!」

 

お?ああ、言われてみたらそうかもだな……

皆気づいてそうだわ、先程の中二君みたく頭いい人とか多そうだし、現にイボ頭君に気づかれとるし

成る程な、頭いい人たちには話さなくても分かってくれるんだぁ、便利やね!

さっきの皆の視線もきっとそーいうことかー納得!

 

「と、ところでさ、お前訓練で足痛めてたろ? 座ろうぜ?」

 

にょ、それもそうか

今は壁に寄っかかってる状態だけど正直その方が楽そうだしね

 

言われるがままに床に座り、再びモニターに目を戻した。

その後、イボ頭君が痴女様一号に連れていかれてしまったがなんだったのだろか?

わからんにょー

 

 

***

 

 

 

《峰田視点》

 

オイラは入学初日、ある奴に違和感を感じた。

男子の制服を着てたはずなのにオイラのセンサーは反応しまくりだったんだ。言い訳するみたいだが、個性把握テストで記録が落ちたのはそちらに気が散ったのもある。

その時はまだ疑いだったんだけど、今日、そいつのコスチューム姿を見て確信に変わった。

『こいつ絶対女だ』

超人社会だし、長髪の男なんていっぱいいたけどこいつの髪は違う。揺れるたびに目が離せなくなる。コスチュームは重ね着してるせいで肩幅の違いが分かりにくかったがよく見てみれば狭い。こいつが足技を使った時に羽織がめくれ、モニターにはフィットしたブーツが映し出された。足のラインに丸みがあった。女だ。間違いない。

 

オールマイトはそいつのことを『少年』呼びしてたから、強盗事件関係で性別を伏せてるんだろう。

 

モニタールームに戻ってきたそいつは壁に寄りかかって講評を聞いてた。

長い前髪のせいで顔がよく見えねーな…

何となく声をかけたくなったのだが話題が見つからない。あ、性別のこと聞けばいいか。もうオイラは確信してるけど、こいつが言われた時にどう誤魔化すのかもちょっと見てみたい。

 

「なあ、渚、ちょっといいか?————お前、女だよな?」

 

周りに聞こえねえように出来るだけ小声で尋ねる。

さあ、どういう反応をする?

 

「うん、僕実は————」

 

ななな、何言おうとしてんだよおお!!?

バレちゃダメなんじゃねえのかよ!?

すっげえ焦ったぞ!口塞ぐために気合いでオイラの人生史上で一番高く飛んだぞ!?

オイラは別に他の奴にバラしてほしいんじゃない、むしろ逆だ。『オイラとこいつだけ知ってる』ってやつのほうが興奮するだろうが!

そういうもんだろうが!

 

「た、多分もう皆気づいてるだろうし、言わなくてもいいと思うぜ!」

 

オイラがそう言うとどうやら納得したらしい。

全く一安心だぜ…

 

「と、ところでさ、お前訓練で足痛めてたろ? 座ろうぜ?」

 

こちらも素直に反応し、渚は床に座った。

渚は体育座りをしているのだが、この角度がいい!

オイラの身長だとちょうど襟の隙間から首筋がよく見えるんだよ! 長髪がポニーテールにされてるからうなじがすげえ映える

 

顔はモニターに向けながらも、全力でそちらに目線だけを送ることしばらく………なんか凄い目で見られてる気がすると思ったら全裸の透明女子に引っ掴まれて部屋の隅に連れ出されてしまった。

引きずり出された先には透明女子の他に、オイラの宿敵であるイケメン野郎もいた。

 

「峰田君気づいたね?」

「な、なんのことか———「気づいたね?」———……はい…」

 

透明な分、表情が見えないからさらに怖い。素直に返事をすれば威圧的な雰囲気は消えた。

 

「申し訳ないんだけど、放課後話したいことがあるから教室残っててもらってもいいかな、峰田君?」

 

「…お前も轟もなんか知ってるってことなのか?」

 

「いや、俺は知らねえ。こいつに呼び出されただけだ」

 

「取り敢えず、放課後全部話すから二人とも残ること、以上!」

 

放課後のはどうでも良かったけど、あいつの性別を知ってる奴がオイラの他にもいたのが不満だった。

 

 







講評シーン書きませんでしたけど、ベストは轟君です!
つーちゃんは最後のキックをディスられてしまいましたー

そういえば初期のヤオモモって毒舌だったんですね。





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『ヴィジョン』って単語、なんか響きがかっこいいよね! 僕も使いたかっただけだから!言われると恥ずかしいからあんま言わんといてな(`・ω・´)

土下座

ほんっとごめんなさい!
クッソ遅れました!!
言い訳させてください!
あるひ、作者はとある小説を執筆していた。思ったよりも評価がもらえて喜んでいた作者は案の定調子に乗り、15000文字越えの原稿を書きあげる。そこで事件は起こった。ある日の12時きっかりに投稿してドヤ顔をしてやろうと目論んでいた作者マリンゴに死の鉄槌が下ったのである…そう、データを全部消しちゃったのだ…

作者の悲しい物語、これにて……



どもー!

やっと放課後…二日目おわたよ! つーちゃんでふ!

 

せっかく話せたイボ頭君も痴女様に拉致られてしまい、見事にぼっちを謳歌しておりますです…駅までぼっち……グスン

 

なーんて嘘なのだ

皆もう知ってるとは思うがつーちゃんはヴィジョンを持っておるのだよ! ぼっち回避のためのなぁあ!

はっはっは残念だったなチクワぁ!

いつまでも弄べると思ったら大間違いだぞー

 

それでは、つーちゃんは作戦実行のために下水煮込みのとこに行ってくるぜェ

にしても下水煮込みってゲスい煮込みともとれるぞ?

洒落たあだ名だなー()

ところで某爆ゴンはどこ行ったんかな

ホームルーム終わって皆教室でだらりんちょしてるからそこにおると思ったったんけど

 

「皆ー!入学早々なんだけど、友好も兼ねて今日の訓練の反省会しねえか?」

 

にょ? 君はタテガミ君だね、すごい髪型ーいつもセットしてから学校来んのかな…

反省会って話し合う系?話し合う系だよね?

無理無理すまぬ無理。つーちゃんさっさと帰りたいん

 

「いいね!それ!三年間同じクラスになるわけだし!」

「やるやる〜!」

「俺もー」

 

グフゥオ!!

これ断れないやつやん!これやんなきゃ取り残される的な

どうしよチクワ…助けて…(上目遣い)

 

ガラガラ

 

「おお!緑谷来たあ!お疲れ!」

 

にょにょ!?マリモ君ではないか!仮病は楽しかったか?

 

「おお!?」

 

「いやー何喋ってっか分かんなかったけど、凄かったぜお前!」

「入試一位の爆豪と互角に渡り合うなんてなぁ!」

「よく避けたよ!」

「1戦目であんなのやられたらなぁ!俺らも気合入っちまったぜ!」

「エレガントには程遠かっ「よく避けたよ!」…☆」

「…え、えっと…」

 

な、な…なんということじゃ…! 午後の授業全て保健室ですっぽかしてたような奴がまるで人気者やんけ…

あれが原作主人公というものか…いいな、裏山。どしたらあんな風になれるん?理解できなす、や、ああなりたいわけじゃないんだけどね、けどさ、やっぱね?ほら?うん。

チクワにああいう補正を頼めばよかったかな…

 

ガラガラ

 

にょ、女神様だ。なんやその大量の書類は。さては芋虫先生に雑用やらされてるな? 安心してくだされ女神様、あとであいつは捌いたるからね、爆ゴンが。

 

「——なあ、麗日今度めし行かね?何好きなん?」

「ん?うーん…おもち…あ、あれ!?デクくん怪我治してもらえなかったの?」

 

あ、パツキン君乙。ナンパはうせやがれ〜

 

「あ、ああこれは僕の体力のあれで…あ、な、渚君…!」

 

ん、なんや?僕になんか用かいな?

僕これから爆ゴン君とこ行くんけど

 

「え、えーと………か、かっちゃんどこですか!?」

 

…ふぇ?

それ僕が聞きたいねん

何ゆえ僕に聞くん? 心読めんのか?怖っ

 

「『かっちゃん』って…あ、爆豪君のこと?」

 

にょ、女神様の救いの声が…!

 

「…みんな止めたんだけど…さっき黙って帰っちゃったよ…」

 

みょーん!?

訂正!救いの声じゃなかった!最後の審判的なやつだった!

 

それは聞いてない!てか帰ってたん?気づかんかった…追いかけなきゃ

マリモ君一緒に靴箱まで…て、マ、マリモくうううん!?

ちょ、待ってマリモ君!僕も行くからちょ、待って!

 

警視庁への取材によりますと、その後、案の定道に迷ったつーちゃんは校舎内を1周ほどしてからようやくマリモ君に追いついたとのことです。つーちゃんニュースをお伝えいたしました。

 

***

 

 

《出久視点》

 

 

「…はあ、はあ、はあ」

 

僕は保健室で目を覚ましたあと、時間を確認してすぐ保健室を飛び出した。

 

結局怪我のせいで午後の授業をすっぽかしてしまった。明日相澤先生に縛り上げられるかもしれないけど、今はそれどころじゃない。

 

ずっと気掛かりなことがあった、二つほど。

一つはかっちゃんのこと。

かっちゃんはきっと僕が無個性を偽ってたと思ってる。

僕の個性、絶対の秘密を話すことは出来ない。けど、このままだと僕がまるで今までかっちゃんのことを騙してたみたいだ。そんなの嫌だ。良く思われたいとか偽善者ぶりたいとか、そういうことじゃないけど、やっぱりこれじゃ嘘をついているみたいだ。かっちゃんと僕の仲はずっと前から捻れているけど、これは絶対に超えてはいけない一線だと思う。嘘はつきたくない。

 

もう一つは…

 

ガラガラ

 

「あ、あの…!」

「おお!緑谷来たあ!お疲れ!」

「おお!?」

 

す、すごい髪の人だな…いや、それより…

 

「いやー何喋ってっか分かんなかったけど、熱かったぜお前!」

「入試一位の爆豪と互角に渡り合うなんてなぁ!」

「良く避けたよ!」

「え、えっと…」

 

あ、見つけた。

良かった、まだ帰ってなかったみたい。

 

「な、渚君…!」

 

そう、僕は渚君と話したいことがたくさんあった。だって、今までずっと探し続けてきた人だったから。それにお礼もたくさん言いたかった。さっき言ってたもう一つっていうのはこれ。

だけどそこでかっちゃんのことを思い出した。少し迷ったけど、渚君のことは今日は我慢することにした。話なら明日からいくらでもできる。でも、かっちゃんとのことは今すぐにでもどうにかしないといけないと思った。

 

「……か、かっちゃんどこですか!?」

 

渚君はそれを聞いてコテンと首を傾げる。揺れた前髪の隙間からふいに黒い澄んだ目が覗き、一瞬ドキッとしてしまった……イケメンコワイ

 

「『かっちゃん』って…あ、爆豪君のこと?」

 

あ、麗日さん

 

「…みんな止めたんだけど…さっき黙って帰っちゃっ————」

 

麗日さんが言い終わる前に僕は走り出していた。心の中で謝りながらも急いで階段を降り、靴箱に向かう。

 

「はあ、はあ、はあ……ぁ…」

 

校舎を出た辺りでかっちゃんを見つけた。今校門を出ようとしてる…!

 

「かっちゃん!!」

 

僕は意を決して呼び止める。ゆっくりと振り向くかっちゃんの目は鋭く感じた。

 

「あ゛…?」

 

気圧されて少したじろぐ。

 

……この秘密はお母さんにも話していない。でも、きっとかっちゃんには言わなきゃいけない、僕はそう思う。

 

「…これだけは、君には、言わなきゃいけないと思って」

 

僕の本音だ

 

「僕の個性は…人から授かったものなんだ、誰からかは絶対言えない…」

 

君には誤解されたくない

 

「でも、コミックみたいな話だけど、本当で…おまけに、まだロクに扱えもしなくて…全然モノにできてない状態の、借り物で…」

 

少なくとも、僕は君を…

 

「言い訳のつもりはないんだけど…これは、伝えなきゃって思ったんだ…今まで、言えなくて、ごめん…!でも、僕は…————」

 

「もういい…!」

 

「…え…?」

 

「トロトロ話してんじゃねえよ、うぜえ……借り物…?…訳分かんねえこと言って…ンな馬鹿な話を信じるとでも思ったのかよ…あ?…別にお前のことはもう疑っちゃいねえ…」

 

「…かっちゃん…?…」

 

「一遍勝っただけでコケにしてんじゃねえよクソが…!

俺は…今日、テメェに負けた…そんだけだろが、そんだけ…!!

……俺は、テメェがずっと夢ばっか見てるただの石っころだって、そう思ってた

現実見てねえのは、俺の方だった……!

ずっと…言い聞かせてたんだよ…あんな奴居ねえって、居るわけねえって——俺が一番だって……!…クソが……!クソが……!!

———なぁ、デク…!」

 

「こっからだ!

俺は、こっから…!——俺はここで一番になってやる!!」

 

……かっちゃん

最初で最後の挫折。それを嘗て味わった僕はその辛さを知っている。だからこそ、僕はかっちゃんを心の底で心配していた。

かっちゃんは昔から凄い人で———負けるのなんて初めてだと思ってたから。例え僕が今日使ったのが捨て身で為した技だったとしても、かっちゃんが負けたのは事実。たった一度の敗北でも、かっちゃんの最初の挫折くらいにはなるかもしれないと思ったんだ。

でも、やっぱりかっちゃんはすごい……一人で立ち直っちゃったよ

 

僕も負けないよ、かっちゃん

 

僕だってトップを目指してるんだ。たくさんのものを背負ってる。負けるわけにはいかない。僕はまだまだだ。だから、僕は必ず、僕自身の力でかっちゃんを超える。そう誓う。

 

「白髪野郎…!テメェも聞いてんだろ…!? テメェが一番気に入らねえ、絶対テメェもぶちのめす!分かったな!?」

 

それを聞いて慌てて後ろを振り返ると靴箱の辺りに渚君が立っていた。かっちゃん以外にさっきの僕の個性の話を聞いてる人がいたと思って焦ったが、よく考えたらかっちゃんにも信じてもらえなかった訳だし心配するだけ無駄だと思い直した。

 

「それとデク…」

 

ん…?

 

さっきと打って変わって妙に低い声をしたかっちゃんに少しビクリとする。かっちゃんのこの声のトーンには覚えがあった。

 

「テメェ、まだ腕治してもらってねえだろ…?」

 

…あ。

 

よく考えて見たら右腕は治療が済んでおらず固定されているだけである上、左腕は血が流れていた。点滴を無理矢理引き抜いて来てしまったせいかもしれない。

目が覚めた時、時計を見て直ぐに保健室を飛び出したのを思い出した。

リカバリーガールを振り切って来ちゃったんだ…

…てことは、僕ずっとこの状態で走ってたってことか…?

 

そこまで思い至り、突如目眩が起こった。焦点が定まらず、足元もフラつく。立っていられずガクリと座り込んでしまった。その時、かっちゃんがこちらに手を伸ばそうとしたように見えた。いや、錯覚かもしれない。こういう時、人を心配するような柄だっただろうか。

咄嗟に手のひらを向けて大丈夫であることを伝える。

でもぶっちゃけ大丈夫じゃない。視界は安定しないし足も力が入らない。地面に手をつきながら座っているのがやっとの状態、やばい。

徐々に意識が薄くなっていく中、ふと、誰かの話し声が聞こえた。かっちゃんの怒鳴り声も聞こえる。何を言っているのかは分からなかったけど、ふいに僕の体が持ち上がる。誰かにおぶられたみたいだ。

とても安心感があった。

僕はそのまま身を預けて意識を手放した。

 

 

***

 

 

 

「……あ…」

 

この天井も3度目だな…いい加減どうにかしないと

 

「目は覚めたね?…全く人の話を聞きもしないで点滴引き抜いて倒れるなんてとんだお間抜けさんがいたもんさね…運んでくれた子は渚ちゃんと言ったかね?ありがとうねぇ…お前さんもお礼言うんだよ?」

「…ご、ごめん…渚君…」

「こういう時は謝罪より先に感謝だろうに…」

 

どうやら運んでくれたのは渚君だったようだ。勝手に飛び出して、リカバリーガールにも悪いことしてしまったな…

 

「体力戻るまで治癒できないから寝かせといたのにまた体力消耗して寝込むなんて…師匠が師匠なら弟子も弟子ってわけかい…」

 

ちょ…!

渚君がいるのにその話は…というかリカバリーガールも知って…?

 

リカバリーガールの発言にあたふたしていると渚君が保健室のドアに向かうのが見えた。今まで保健室にいたのは僕の意識が戻るまで待っていただけだったのだろう。本当に悪いことをしてしまった。頭が上がらない。

 

「それでは、僕、帰るので、」

「あ、渚君…!ちょっと待って!」

 

と、突然のことでつい呼び止めちゃった…特に今日済ませなきゃいけないことなんかないのに、えっと…どうしよ…

 

「あ…えと…ありがとう!…」

 

ようやく出た言葉

すごく簡潔にまとめてしまったけど今一番伝えたかったこと

渚君は頷いたかと思うと直ぐに前を向き直して保健室のドアを開いた。

 

と、そこに丁度トゥルーフォームのオールマイトが立っていた。

 

 

 

***

 

 

ふいーやっと追いついたにょー!

マリモ君が先行っちゃうもんだから道分かんなかったぜ

 

マリモ君は何か悪いことでもしたんかな?

爆ゴンにめちゃくちゃ怒鳴られてる、泣きながら。ん?そういや原作にこんなシーンあったような……やべ、関わっちゃいけないやつかもしれ————「白髪野郎!」———にょ!?

 

「テメェも聞いてんだろ…!? テメェが一番気に入らねえ、ぜってえテメェもぶちのめす!わかったな!?」

 

と、飛び火やぁあ!!

やっぱ関わっちゃダメなヤツだったぁあ!!

やべ、どしよ、ちょ、チクワぁ!?

 

目付きの凄い珍獣に睨まれて目のやり場をなくしていたのだが、突如マリモ君が糸が切れたように座り込んでしまった。

 

どした?トイレか?もれるか?

 

野次馬精神で駆け寄ってみるとやけに呼吸が荒い。

 

「…はあ…はあ…は……」

 

そんなに間に合わないか、立てんのか?もれちゃうか?

しゃーない、トイレまでおぶったる!ちょいと待ってろぃ…

 

「テメェ、何してんだ…?」

「おぶって連れてく」

「けど足怪我して…「問題ない」……!」

 

あれ、返事は簡潔に完璧に返したはずなんだけどなんか爆ゴンの様子がおかしい?

なんや用でも?コイツ早めに連れてかんと人としての尊厳失ってしもうんで手短に頼もー

 

「チッ…!そういうとこが気にいらねんだよ!」

 

あで…何か嫌われちゃった…?

何か悪いことしたかな…家帰って日本語会話術学び直した方がいいかもしれん僕、何か気に入らないこと言っちゃったっぽいな

 

「爆ッ豪ッ少年!!」

 

うおっつ…

筋肉ダルマ先生だー

ん?そいつに話か?長くなりそうならお暇するぜー背中のマリモ君が色々とやばそう

このままもらされたらたまらんのでとりま校舎に急ぐ。

と、そこで大事なことを思い出したつーちゃん、ここから一番近いトイレが分からん、

早着替え用に死ぬ気で覚えたトイレの場所は自教室から一番近いとこ一つだけなんよ…他は知らん…

 

仕方がないので一階の真ん中廊下を突っ走る。つーちゃん目は良いからこうしてればそのうち見つかる、多分。見つかんないと困る

というか後ろでマリモ君が静かすぎて怖い!生きてるか!?もらすなよ!?(切実)

 

「おや!緑谷君じゃないかい!?運んでくれたのかい!?」

 

婆様が現れた▼

無視すると言う選択肢を持ち合わせていない僕はそこで急ブレーキ

なんや婆様?今急いどるんよ!用なら後で頼もー!

 

「さ、さ、急いで入って!その子突然飛び出したんだよぉ丁度探しに行こうと思ってたんだけど…運んでくれたのかい?何があったのか聞かせとくれんかね?ああ、ハリボーを上げよう、ホレ」

 

ちょ、ちょ、待って婆様、コイツもれそうだって!もれそうだって!

 

「まさかまた倒れたのかい? ついさっきまで気絶してたのが走り出すなんて…全く…無茶したもんさね…ホレ、寝かせてやんな」

 

婆様!あなたは鬼ですか!?

それでシーツに日本地図でも描いてしまったら…そしてそれで皆の晒し者などになったりしたら…!

考えるだけでも悍ましき!

 

「そう慌てるんじゃないよ…心配いらないよ、午前の訓練との疲労が重なって寝てるだけさね。あとは少し貧血気味かね、直ぐに運んできてくれて助かったよ。点滴引き抜いて行くなんて誰が思うかい…」

 

にょ?ちょっと待って婆様、そいつって漏れそうだったんじゃないん?

 

「これは今日じゃ済まそうにないね…日を跨いで治癒するしかないさね…」

 

oh…なんか…うん

いや、僕は良いことをしたんだ!

結果オーライってやつだ!うん!虚しくなんかないぞ!!

 

「……あ…」

 

マリモ君目覚めるの早っ

僕が運んだ意味…

というかなんか凄い惨めだ。だってさっきの婆様の話を聞く限り勘違いしてたってことやんけ、はずっ!

 

「それでは、僕、帰るので、」

 

やってられっかよ…グスン

お暇…

 

「あ、渚君…!ちょっと待って!」

 

ん?なん?

 

「あ、えと…ありがとう!…」

 

うん、それはお礼の皮を被った慰めだよ、更に惨めになるやつだよ、うう…優しさが辛い…

慰めないで…勘違いしてたの分かってるから!

 

とりま頷いて今度こそここからおさらばだ

一日長かった……もう心が持ちそうにないから反省会はすっぽかすぜ

 

ガラガラ

 

「おお、渚少年!」

 

ほぇ?どちら様でしょう?骸骨みたい…

 

「さっきは緑谷くんを運んでもらってしまってすまなかったね、足の怪我を見てもらってたのかい?」

 

な、なんで知ってるんですの…!?ストーカーでありまして!?

 

「え、あ、そうか…えっと…」

 

骸骨さんが言い淀んでいるところに婆様が何やら耳打ちしに行った。

 

婆様や、そいつに近づくと危ないで!痴漢や痴漢!

ん?なになに?だいじょぶなん?雄英の関係者?や、怪しいて怪しいて…

 

「ところで、お前さん足を怪我してたのかい?ちょいと見してみんさい」

 

大したことないて

お、ちょ、ちょっと何勝手に見とん

 

「おやまあ!変色してるじゃないかい!こんな状態で緑谷くん背負ってたのかい?早く座んな!今すぐ治すから…」

 

にょ?言うほど重症かの?修行してたらこんなのしょっちゅう———

 

「口答えしない!さ、さ、座って!」

 

お、おう…

 

チユーーーー!

 

効果音ダジャレかいな、寒ぅ

…治療時のヴィジュアルが色々とあれだから男子としてはもう受けたくないかもだ…

 

「治療、ありがとうございます、失礼しました、」

 

今度こそ帰る、もう帰る!

帰り道結局ぼっちだけどもういいもん!

寂しくなんかないんだからね!?

 

追伸

ターゲットにしていた爆ゴンに早速嫌われてしまった予感。明日からどうしましょん

 

 




本当にすみませんでした……真面目に申し訳無かったです。メンタル崩壊したくらいで執筆ストップするなんてクソですよねー

何度も言うようだけれどエタりはしない!!
いいか?エタりはしないぞ!!
出来るだけ間開けずに尚且つエタらない!これが作者の理想である!!



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ことわざってとっても為になる良い言葉ばかりだよね!!古代の歴史と人々の知恵が詰まった最高傑作!教えに従ってる自分カッコいい!ん?この2つのことわざ矛盾してない?あれれ??

(大の字に寝転ぶ)

さあ!なんなりと責めるが良い、諸君!
今回は流石の私も言い訳はしないさ!
最高記録だからなぁあ!

なんかもう速度重視やめますですハイ…
この先実行し続ける自信が波平さんの毛髪の長さくらいしかない

あ、それと、タグ付けしてある通りこのお話はオリジナル展開ですので、原作とかけ離れまくることがこれから先で多少あるかと。作者は原作大好きなので変えないところは変えませんけどね!
(実を言うと、原作の葉隠ちゃんがマジで内通者なんじゃないかと最近思い始めたので、もしそうだった時のための保険です)




「……朝ですか…メンテナンスを始めなくては」

 

声の主はそう呟いて寝台から足を下ろす。カーテンを開けてみればまだ日は登っていないが、空は薄っすらと明るくなっている。

 

「新作のベイビーの調子はどうでしょうかね〜」

 

何やら図面の描かれた書類やら機材やらで散らかった部屋。鼻歌混じりにも少女は僅かな足場を器用に渡り歩き机の位置に到達する。

 

「さて、今日の確認事項はーと…おや、今日は連絡をとる日でしたね。危うく忘れるところでした」

 

少女が何かを作動したのだろうか、一見何でもないように見える引き出しから板状のものが複数展開される。彼女はヘッドホンをつけながら電源を入れた。

 

ヴーヴーヴーヴー

 

カチッ

 

『おはよう』

 

生きたままのような造形の手を顔に貼り付けた、怪しげな風貌の男が映りこんだ。

 

「おはようございます」

『雄英には無事に入れたようだな』

「ええもちろんですよ。これでも先生の研究に一役買っているのですから」

 

気味の悪い機械音声に物怖じもせず、寧ろ自慢気に話し出す少女には一切気遅れした様子はなかった。

 

『そうかそうか。じゃあ早速本題といこう。こっちも何かと忙しくてな。連絡事項は手短に頼もう』

「それもそうですね、私にも登校時間というものがありますしね。」

 

先方はどうにもせっかちだ。彼は何が愉しいのか、飄々した気配が抜けない。

 

「今日は教師用のカリキュラムを取りに行くのでしょう? 詳しい時間帯と人員の把握がしたいのでしたら私に任せてくれれば良いじゃないですかー…私のベイビーで、ハッキングならちょちょいのちょいですよ?」

『ああ、その方が楽ではあるな。だが、お前のハッキングじゃあ証拠も残らねえだろ?』

 

少女は男の真意を測り兼ねる。暫しの逡巡の後、相手の性質に思い至り納得の声を上げた。

 

「…?……ふーん、なるほど、わざわざ派手に行って宣戦布告ってとこですか」

『ふ、話が早くて助かるよ』

「弔くんは相変わらず趣味が悪いですね〜」

『お前がいうなよ、変人』

「口もほどほどにしてくださいねー、それでは私は学校の準備があるので」

『ああ』

 

トゥン

 

小気味良い音を立ててモニターは収納されていく。少女は何も無かったかのように愛する機械たちを弄び始めた。

 

 

***

 

 

 

今日の普通授業。特に寄を衒ったものもなく、これからは日常となるであろう時を過ごしていた。クラスの者達もその多くがこの場に馴染みつつあった。

 

「今朝のマスコミ凄かったねー」

 

「それ!!ちゃんと受け答えできたか不安だよー」

 

突如押し寄せたマスコミによって校舎の正門では登校時の生徒を巻き込んだトラブルがあったそうだ。ちらほらと聞こえるそんな会話に多くが共感の意を示していた。

 

「時間だぞーお前ら。席に着け」

 

ガラガラと音を立てながら開くドアから1人の草臥れた男が入ってくる。

つい先日の件で彼を厳格な教師として認識していた生徒達はその声を聞き動き始めた。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった。」

 

生徒に緊張が奔るが、彼は予想に反して一部の生徒に叱責と激励をするのみだった。尤も、その双方を受けた生徒は肩を跳ね上げたわけだが。

 

「さて、ホームルームの本題だ。急で悪いが君らに…」

 

解けた緊張は再び戻る。

 

「学級委員長を決めてもらう。」

「「「学校っぽいの来たー!!」」」

 

一瞬にして騒然とする教室。学級の役職など雑用扱いされるのが定番だが、ことヒーロー科に限っては異なる。誰もが挙手し、自己を主張した。

そんな中、己の腕を聳え立たせながらも投票を発案したものが一人。眼鏡を掛けた実直そうな生徒だ。

自薦ありの投票に意味を問うものもいたのだが、

 

「時間内に決めりゃ何でもいいよ」

 

と言う無責任な担任の鶴の一声で取り敢えずは投票を始める。

結果としては、緑谷出久に三票、八百万百に二票で、其々が委員長と副委員長に治った。いざ選ばれた委員長と言えば戸惑い過ぎて挙動不審になっていて、横に並んだ副委員長はそれを頼りなさげに眺めたのだった。

 

 

***

 

 

いやっふぅーー!

 

なんかいろんな意味で久しぶり!皆!

今日も今日とて寝坊したつーちゃん、マザーに誓った三度目の正直は果たせずーん

二度あることは三度あるの方が合ってたってわけだにょ!

 

今日も今日とてマザーに尻を叩かれながら家を出る。忘れ物はー…多分あるけど大丈夫大丈夫!なんとかなる!朝から張り切りマックスまーん!

 

今回も電車はギリギリ、流石に遅れちゃ拙いかなーと思って電車のドアが開くと同時に飛び出す。小走りに行くとわりかし直ぐに学校は見えた。三度目にして漸く通学路を覚えたのだ。

 

フッフーン!もう通学路で迷子になどなりはしない!これぞ三度目の正直と言うものよ!!

 

お分かり頂けただろうか。この時つーちゃんはとんでもなく調子に乗っていたのである。それはそれは暴れ馬のように。非リアの友人にマウントを取る恋人持ちのように。

 

『思い上がった愚か者どもに制裁を下し、身の程を分らせてやる』と言うイベントへのフラグは、既に悠々と立っていたのである。

 

***

 

な、ななな、な何ということだ…!

 

何だあの人混み地獄は!!

 

い、いやだ。僕は、僕は絶対にここを通りたくない…!ガチャで爆死する方がまだマシや!

大体なんで高校の校門前に人ゴミがうじゃうじゃしてるん!?

こんなトラウマルな光景見たら、かのスパルタ王、レオニダスでさえ諸手を挙げて降伏することだろう

例えそうじゃないとしても僕は300の戦士なんかもっちゃいないのでスタコラサッサさせてもらうとしよう!

 

「あ!あなた雄英生よね!?取材をお願いします!!オールマイトの…

 

「う、」

 

「ど、どうされました?」

 

うぎゃあああああ!!!

 

僕はこの日を忘れることはないだろう(諦念)

 

 

 




人見知りを舐めちゃああかんでぇ
初対面アレルギー症候群!!

それはそうとて
USJ編書きたい……




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足りない〜足りない〜あなたが〜もっともっとねぇ〜え〜ごーめーんーなーさーいーあ゛あ゛〜

この話は全く原作通りなので読まなくても大丈夫です。状況整理には良いのだろうか?

ぶっちゃけ出久視点疲れる泣
思い描いたストーリーが一人でに文章になるマシーンってないかなあ()
今なら何でもするからマシーンをくれ(何でもするとは言っていない)



《出久視点》

 

 

昨日は本当に大変だった。学校着いたらまたリカバリーガールのところに行かなきゃなぁ…

 

「ん?あれ…」

 

何やら校門前に人だかりができていた。カメラやマイクを持っている人たちばかり…何かの取材…?

そこまで思い至ってハッとする。

世間からすればオールマイトの教師就任は大変大きなニュースだったのだ。昨日で完全に発覚したということだろうか。身近に感じ始めてはいるものの、トップヒーローはやはり遠い存在に感じられた。

 

あーやめやめ!

卑屈になりやすいのは僕の悪い癖だ。

とにかくここを通り抜けないと…

 

次々と浴びせられる質問におどおどしながらも断って抜けてゆく。

どうやら敷地内には流石に入らないようで、抜けるのに苦労したものの保健室には時間通りに行けそうだった。

 

その後リカバリーガールに叱言を聞かされ謝り倒し、治療を終えてもらった。

オタク気質というものは抜けないもので、リカバリーガールの個性について思考を巡らせながら教室に向かう。

あ、皆既に席に着いていたみたいだ。僕が最後か…

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみてえなマネするな。能力あるんだから。」

「……分かってる」

 

後ろの席からはかっちゃんの顔は見えない。ただ、絞り出すような声だった。

 

「それと緑谷」

 

何か言われることは予想はしていたけどついつい肩を跳ねさせてしまう。

 

「『個性』の制御…いつまでも『できないから仕方ない』じゃ通さねえぞ。」

 

かれこれ3回目なこともあって、後ろめたいにも程がある。

先生の言うことは尤もだ。

 

「俺は同じ事言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれることは多い。焦れよ緑谷」

「!っはい!!」

 

思いがけない激励に僕は気合を入れ直した。

 

「さて、ホームルームの本題だ。急で悪いが今日は君らに…」

 

不穏な言葉に教室には緊張が奔る。

 

「学級委員長を決めてもらう」

「「「学校っぽいの来たー!!」」」

 

「委員長!やりたいですそれ俺!!」

「ウチもやりたいス」

「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」

「ボクの為にあるやt「リーダーやるやるー!!」

 

わー皆すごい勢いだ。これはヒーロー科ならではの風潮なんだろうな

因みに僕も挙げている。

 

「静粛にしたまえ!!」

 

みんなの視線が声の方向に向かう。

 

「多を牽引する責任重大な仕事だぞ…!『やりたい者』がやれるものではないだろう!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うなら…」

 

視線の先にいたのはこれ以上ないくらい真剣な顔をして右腕を掲げる飯田くんだった。

 

「これは投票で決めるべき議案!!」

「「「そびえたってんじゃねーか!!何故発案した!!」」」

 

ついつい突っ込んでしまう人がちょくちょく。真面目な飯田くんらしくはある。

ただ、この案は実際のところ上手く受け取られていない。

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

 

クソて…蛙水さんクソて…

 

「だからこそ、ここで複数票を獲った者こそが真に相応しい人間という事にならないか!?」

 

なるほど…説得力が…

 

「どうでしょうか先生!!」

 

「時間内に決めりゃ何でもいいよ」

 

…ええ……

 

とまあ、納得しかけていたところに釈然としない言葉をさされつつ、投票は始まった。

 

結果は…

 

「僕三票…!?」

 

希望はしていたがまさか他に二つも票が集まるとは思っていなかった。

 

一方、

「0票…分かってはいた!!流石に聖職といったところから…!!」

 

他に入れたのか…律儀な性格が裏目に出てしまったみたいだな…

飯田くんは他の人に入れたということだ。

 

クラスからはそれなりに好意的に受け止められてはいたのだが、飯田くんの本当に悔しそうな表情は印象的だった。

 

***

 

 

《出久視点》

 

昼食の時間、僕は飯田くんと麗日さんと一緒に校内の食堂に来ていた。

 

「いざ委員長やるとなると務まるか不安だよ…」

「ツトマル」

「大丈夫さ」

 

どうやら僕に入っていた二票はこの二人が入れたらしい。

 

「緑谷くんのここぞと言う時の胆力や判断力は多を牽引するに値する。だから君に投票したのだ。」

「でも飯田くん委員長やりたかったんじゃないの?メガネだし!」

 

飯田くんが説明すると、その横で麗日さんが何気にざっくりとしたことを言う。

 

「『やりたい』と相応しいがは別の話…僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ。」

 

と、そこまで聞いて気づく。

 

「「『僕』?」」

 

「ちょっと思ってたけど、飯田くんって坊ちゃん!?」

「坊っ!!」

 

またもやざっくりと言った麗日さんの悪意なき口撃

 

「…そう言われるのが嫌で一人称を変えていたのだが…」

 

 飯田くんは僕らの好奇の目を見て仕方がないと言うふうに話し出した。

 

「僕の家は代々ヒーロー一家なんだ。僕はその次男だよ。」

「ええー凄ー!!」

「ターボヒーローインゲニウムは知ってるかい?」

 

名前を聞いてピンと来た。元より飯田くんのコスチュームのデザインに何かしらの既視感は覚えていた。

 

「勿論だよ!!東京の事務所に65人ものサイドキックを雇っている大人気ヒーローじゃないか!!」

「それが俺の兄さ!!規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!!俺はそんな兄に憧れてヒーローを志した。」

 

飯田くんはそれは楽しそうに、そして自慢げに語った。

 

「人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。上手の緑谷くんが就任するのが正しい!」 

 

僕らは顔を見合わせた。

 

「なんか初めて笑ったかもね、飯田くん。」

「え!?そうだったか?笑うぞ俺は!!」

 

なんだか少し距離が縮まった気がする。僕にとってのオールマイトが飯田くんにとってのインゲニウムなのだと思うと親近感が湧いた。

 

でも、彼は勘違いしてる。僕は飯田くんの上手なんかじゃない。言うタイミングを逃して勘違いのままにしてしまったが、僕は入試の構造なんか欠片も気付いていなかった。

 

「ねえ、飯田くん、やっぱり…」

 

声をかけようとしたその時だった。

 

ウウーーーーー

 

校舎内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。次いで直ぐさま館内放送が流れる。

 

『セキュリティIIIが突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。』

 

近くの席にいた先輩に聞けば、セキュリティIIIというのは校舎内に何者かが侵入してきたという意味だとのことだった。

食堂から続く出入口にはあっという間に人が殺到し、すし詰め状態になっていた。このままでは怪我人が出てしまうかもしれない。

どうにかしなければと思ったが、自分も大衆に流される結果になってしまった。

二人とはぐれちゃったけど大丈夫かな…?

 

小柄な身長も相まり群衆からは抜け出せたものの、同じ理由で状況の把握ができない。

その時、突然エンジン音のようなものが聞こえ、何やら飛来物が回転しながら入り口上の壁にベシャリと衝突した。

 

「皆さん…大丈ー夫!!」

 

飯田くんのよく通る声だ

 

「ただのマスコミです!何もパニックになることはありません。大丈ー夫!!ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」

 

 

***

 

 

 

結局あの後、警察が到着した為マスコミは撤退したそうだ。

 

放課後のホームルームの委員決め、僕は昼の一件もあって決心した。

 

「委員長は、やっぱり飯田くんが良いと思います!

あんな風にカッコよく人をまとめられるんだ。僕は…飯田くんがやるのが正しいと思うよ」

 

僕の主張に、周りの反応も良好だった。昼に食堂にいた面々だろう。

彼も好意的に受け止めてくれたようだった。

 

 

 




原作通りのところはパパッと終わらせまーす。
次回は同じ時系列をつーちゃん視点でお送りするぜ!
そろそろつーちゃん不足で禁断症状が出そうだにょ


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今日は寝坊すると言う悪夢を見たんだ!今度こそは起きてやる!目覚ましは複数設定!でもいざ起きるとなると殺意が湧いて仕方ないよね!そんな時のための秘密道具さ!朝まで騒ぎ続ける松○修造をプレゼントしよう!

今日は良い感じだぜ


お前ら人間じゃねぇ!!

 

某台詞が頭の中を駆け巡り、全速力で人垣を突破したところまでは覚えている。うん。

 

どうしてこうなった

 

 

***

 

 

 

8時だよー全員しゅうごー!!

どーもこんちはつーちゃんです!

ようやく復活めでたしめでたし!

 

いやー今朝のはほんとトラウマ。冗談じゃないぜー

なんでそんなにコミュ障を虐めたがるんだろね?寄ってたかって悪魔か奴らめ

マスゴミはマスゴミ(常考)

 

取り敢えずあの後はがむしゃらに人波を突破して教室に辿り着けたっぽい。「っぽい」って言うのはちょっと記憶が曖昧だからねー

まあ逃げ切れたことだしよしとしよう、うん!

それにしても…むー眠い…

つーちゃんが何度も何度も寝坊しちゃうのがチクワのせいなのは言うまでもないことではあるのだが、実はそれだけが理由でもなかったりするのだ。

真犯人を庇ってあげちゃうつーちゃんカッコいい!素敵!抱いて!

 

フン、そうだ。理由があるのだ。実はな…

 

叔父さんが寝かせてくれねんだよぉ…

 

おん?今なんか卑猥な妄想した奴おる?おるか?おるよな?あとで表出ろよ?捌き倒したる!

寝かせてくれないって言うのはまあ文字通りの意味なんだけど、深夜の訓練を…

おいそこ!また変な妄想しただろ!今度こそ誤魔化せないぞ!?今聞こえたからな!「夜の運動会」がどうたらこうたらって!

 

違う、違うんだよ、普通の訓練なんだよ。普通じゃないけどさあ

とにかく!夜も夜でお忙しいつーちゃんは最近になって超寝不足なのだ!

そろそろ神も僕に休めと言っている!あ、チクワじゃない神な?あれは実質神じゃないから、ただの黒歴史鋳造機だから(白目)

 

というわけで僕は寝る!幸い前髪が長いので上体を起こしたまま寝てれば早々バレやしないだろー(ドヤ顔)

 

 

と、

ここまでが回想な?

ここから再び記憶が飛ぶんだにょ

 

まず、夢の世界に落ちていったのは教室の机で頬杖ついてた時。ここは間違いない。内なるつーちゃんも甲高い声で「ソウダヨ!」って言ってるから絶対そう。今日の午前、時間割は移動教室無しだったから思う存分居眠r…いや、正当な手続きを踏んだ合法的な休息をとっていたのだ。びっくりなことに一ミリも聞いてない授業のノートをマイつーちゃんゴッドハンドは寝ながらにして取り続けていた。

 

何この体怖い

 

 

ところがところが!

午前終わるじゃないですか、お昼になるじゃないですか。気持ちよーく夢の中漂っていたら突然とんでもなくでかい音の目覚ましが自己主張してくるわけですよ!そんでいつまで経っても目覚ましの頭が見つからないんですよ!目覚ましは頭のボタンを押さないことには喚き続ける頑固者だからこっちも必死で探すんです!でも見つかんないんです!そりゃもー腹が立って腹が立って、

でもね!必ず努力は報われるんです!そうするべくできているんですよ!

遂に目覚ましの頭を見つけて今世紀最高に殺意を込めてチョップを振り下ろしたんです。

 

そこで目が覚めたのさ。

おかげで目はぱっちりだ。

ただ問題点を挙げるとすればだな。

 

 

目の前に人が倒れているんだよ。

 

 

そして冒頭に戻る。

 

どうしてこうなった(純粋)

 

いや、待て。僕がこの人を寝ぼけてチョップしちゃったのはきっと確かだ。認めざるを得ないと思う。けどね、これは不可抗力だと思うの。つーちゃん何にも悪くないもん。うるさい目覚まし時計と紛らわしい夢がいけないんだと思うんだー

 

ダメだ、うん。

これでは法廷では勝訴なんてできない。むぅ、取り敢えずこの人起こすか。まさか死んでないよね?

ちょっと不安になってさっきチョップしちゃったであろう箇所を今一度軽くチョップしてみる。

 

「う゛…」

 

お!良かった生きてる!

ちょっと嬉しくなって今度はちょっと強めに叩いてみる。

 

「ゔぁ!?」

 

おお起きた起きた

大丈夫かーげんきかーいきてるなー?

 

「チッこんなとこでバレるとか…教師陣は対応に追われてても生徒がいちゃ意味ねぇだろうが…」

 

おん?なんかよくわかんないこと言ってるにょ

取り敢えずファーストコンタクト大事!差し出された手を掴み、友好的に握手を交わす。

えーとこんな時は…『【初対面向け】上手なコミュニケーション収録』第三章…確か…

 

「『あなたのことを教えて下さい』」

「あ?」

 

確か、『言葉に詰まりやすくて上手く喋れない人は聞き手側に回るべし』だったかな?

 

「素直に情報渡すと思うかよ?沸いてんじゃねえの?」

 

うーん、あまり好感触じゃない…これはつまり警戒されてるってことだよね?こういう時は…

 

「『さっきのは謝ります。僕は貴方の仲間です。貴方に危害を加えるつもりはありません。』」

 

うむ、我ながら完璧な回答!最初の一発への謝罪と共に、警戒心を解くための『仲間ワード』

さて、反応は…?

 

「っは!それを信じろってか?益々バカだろ」

 

うーん信じてもらえない…こういう時は…えっとー

『共通の話題』!

 

「『最近オールマイトが教師になりましたね!』」

 

ふむ!流石YDKつーちゃん!今知らぬ人はいない超有名人のBIGニュースだ。間違いなく共通の話題だろう!

 

「お前、まさか…!」

 

お、やっぱり心当たりがあるようだ。この調子で初対面との会話ミッションを成功させる!失敗したとしても恥ずかしさに悶絶するだけだ!失うものは何もない!

 

「『やっぱりご存知でしたね。彼のことについて話しませんか?』」

 

お互いの知ってることから話題を広げていけば話にお花が咲くと本に書いてあった。見事に満開にさせるためにもこの機会は逃すまい。

 

「情報の交換が条件か…なるほどな」

 

ふむふむ、知ってることを教え合うことから会話は始まるって書いてあったからあながち間違いでもないな、これはいけるぞ!

 

「だが無理だ。時間がない。気が向いたら連絡してやってもいいだろう。お前はこちら側の人間だ」

 

そっかー

流石にお時間邪魔するわけにもいかないし、ここらで妥協するとしよう。どうやらお仲間認定してくれたようだしね!

 

「『分かりました。それでは、また、お会いしましょう』」

 

『別れる時は、次に会うことを前提とした挨拶をすることで相手との離縁を防ぐ』らしい。

 

 

***

 

 

 

《弔視点》

 

 

俺は今日、忌々しいヒーローの卵どもが通う学校に訪れていた。校門の前には思い描いた通りの光景が広がっている。

黒霧の言うにはマスコミが騒動を起こせば教師陣は対応に追われるだろうとのこと。今日の目的は宣戦布告とカリキュラムの入手だ。

喚く報道陣に紛れ、封鎖された物々しい門に手を触れる。その瞬間それは崩壊を開始した。

連中は何が起こったのかいまいち呑み込めない様子だったが、期待を裏切る事なく敷地内に足を踏み入れ始めた。校内のブザーが鳴り響くがお構いなしと言ったところだろう。

オールマイトの取材のため躍起になっている。実に滑稽なものだ。何がトップヒーローだ。気に食わない。

平和の象徴と謳われるそいつに嫌悪感が燻る。

 

「では職員室近くにとばします。今なら人はいないでしょう。」

 

***

 

「…ゔ……」

 

頭頂部に痛みを感じ、呻き声が洩れた。

記憶があやふやだ。俺は、確か、

 

「ゔぁ!?」

 

今度は強い調子で叩かれたのを感じた。後を引く痛みにはっきりと状況を思い出させられる。

咄嗟に顔を上げ、距離を取る。とは言ってもここは完全に俺の間合いだ。

だが俺に打撃をお見舞いした張本人といえば、俺を拘束するそぶりもなければ教師に知らせに行くそぶりもない。制服を着ていることから一生徒であることは確かだが、それにしては行動が不可解だ。

 

「チッこんなとこでバレるとか…」

 

初っ端からうまくいかない計画に愚痴を零す。バレてしまっては仕方がないと思い、始末をつけようと手を伸ばす。

 

パシッ

 

「…は?」

 

こいつ躊躇いもなく俺の手を取ったぞ?

相手の真意を測り兼ね、攻撃を中断した。不気味に思い、思わず自分から手を離す。

なんなんだこいつ…

 

「貴方の事を教えてください」

 

その言葉を聞き今度こそ身構える。直ぐに手を出さないのは情報を取るためか?だとしても先程の行動は明らかにおかしい。ピクリとも動かない表情も相まって何を考えているのかさっぱりだ。

 

「さっきのは謝ります。僕は貴方の仲間です。危害を加えるつもりはありません。」

 

ヒーローの学校の生徒に似つかわしくない言動に瞠目する。益々わからない。さっさと終わらせたい用事だったが、『仲間』と強調する様子に引っ掛かりを覚えた。

 

「最近オールマイトが教師になりましたね!」

 

突然声の調子を上げたこいつを見て確信する。こいつはこっちの目的を掴んでいる。

 

「やっぱりご存知でしたね。彼のことについて話しませんか?」

 

こいつは知った上で情報の提示を提案しているのだ。

はっ、面白い。最高峰のヒーローの学校にとんだじゃじゃ馬が紛れていたもんだ。髪に隠れてはいるがその瞳は濁りに濁って見える。よく見ればくっきりと刻まれた隈があり、とても日の下を歩む人種には見えなかった。

 

「気が向いたら連絡してやってもいいだろう。お前はこちら側の人間だ。」

 

いい、いいなあ。正義を掲げるヒーロー共も一枚岩じゃあない。

今に不満を抱える者はいくらでもいる。

 

「分かりました。それでは、また、お会いしましょう」

 

そう口にするなりそいつはそこを去っていった。

面白いものが見れた。信じていた生徒に裏切られる平和の象徴というのもまた良いかもしれない。

 

 

 

 




本当はこのストーリー後付けだったんですけど、思ったよりも脳内シガラキくんが暴れてくれたので投稿!是非お笑い芸人に転職させたい!
筆がブレイクダンスを踊っているかのようだ!!


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探し物はなんですかー?いつまで探す気ですかー?夢の中へ〜夢の中へ〜行ってみたいと思いませんか〜?それはそうとてSEC○Mしてますか?

ハピハピにゅーいやー!新年の初占いだよー

葉隠ちゃんはつーちゃんに執着しがちな一年になるかも!?

令和版、つーちゃん占いでしたー!



短いですが、一応投稿(生存報告)


《透視点》

 

登校日3日目にして、みんなそれぞれが教室に馴染み始めていた。

私ときたら未だに決心が付かず、つーちゃんに話しかけるか否か思い悩んでいる。

つーちゃんはいつものように教室に遅刻ギリギリの時間に入ってきて、席についていた。もう少し早くきてくれれば話しかける時間もあったかもしれないのにと思いつつ、もしそうだったとして自分が本当に声をかけられたかと言われればはっきりとそうとは言えないのが本音

 

今までサヨちゃんとして隣にいた私だったけど、彼女のパーソナルゾーンは少し特殊だからクラスメイトとしては上手くくっつけるかあやしい…

『クラスメイト』と言う名前の関係がダメなようなら、いっその事私の正体はバラさなくてもいい気もする。

人と接することに関しては彼女はあり得ないほど抜けているから、いざ変な人に絡まれちゃっても私が守ってあげたい

その為にも私は何としても彼女の隣に陣取っていたいのだ。

…言い方ちょっとおかしかったかも

でも大体そんな感じ。

入学早々、もう既に秘密を知られた人が2名ほどいたけど、彼等には口封じも兼ねて延々と『おはなし』してあげた。今では彼らも立派なつーちゃん教の信者だ。間違っても無粋な輩を彼女に近づけさせたりなどしないだろう。洗脳は完璧だ。

 

つーちゃんは席に着くなり、頬杖をついて何処かを真っ直ぐ見つめていた。

ああいけないいけない。気づけば彼女にばかり目がいっている。担任の相澤先生は厳しいし気をつけないと!透明だから気をつける意味はないけどね!

 

相澤先生は昨日の実技の授業で問題行動の多かった二人に注意と発破をかけていた。先生の目線は一瞬つーちゃんにも向いたが、悩ましげに目頭を抑えただけで何も言わなかった。おそらく昨日の蹴りのことで苦言を呈そうと思ったのだろうが、何故何も言わないのだろう。正直あの行動にはこちらも肝を冷やしたのだ。次に同じ様なことで重い怪我でもしたら大変だ。『教師ともあろう者が…』と自分を棚に上げて頬を膨らませる。

 

相澤先生は結局彼女には何も言わず手短に話を終え、学級委員長決めが始まった。殆どの人が立候補する中、静かに様子を俯瞰していると他にも私と同じ様にしている人がいた。訓練で一緒だった轟くんと、つーちゃんとつーちゃんとつーちゃんだ。元々分かってはいたことだが、つーちゃんはこの手の物に全く興味がないらしい。同じポーズのまま微動だにしない上、何処か眠たそうにも見える。

最終的には投票を行うことになり、委員長も副委員長も綺麗に決まったのだが、つーちゃんは投票に参加してすらいなかった。自由人な分、彼女は人一倍に人格としての個性が濃い気がする。変わらない彼女に小さく笑いが洩れた。

 

***

 

お昼。食堂に行く人たちがバラバラと教室を出てゆく。今朝委員長に選ばれていた緑谷くんがつーちゃんを食堂に誘っていたが、彼女が何も言わず徐に弁当を取り出したのを見て意図を汲み取ったらしい。彼は肩を落として去っていった。

一方私はお弁当を持ってきていたので教室で食べることにした。つーちゃんに正体を打ち明けるかは別にして、葉隠透としても仲良くなりたいと思った私は思い切って一緒に食べようと誘ってみることにした。

 

「ねえねえ、ツルギさん一緒にご飯食べようよ!」

 

彼女は緩慢な動きでコクリコクリと頷く。彼女は自分から話すのは得意ではないので、私が話し、彼女が逐一頷く構図が出来上がっていた。

途中でちゃっかり峰田くんが隣に座っていたりしたが、昨日のおはなしが効力を発揮しているようで迂闊に手を出す様子はなかったので放置した。

 

穏やかな時間が過ぎていく。

 

***

 

突如警報が鳴り響いた。

 

教室に残っていた者は突然の事に戸惑う。放送によると校内に侵入者が出たらしい。外を見てみれば所々騒がしかった。他の教室にいたらしい教職員が、教室で待機するようにと指示をすると慌ただしく去っていく。どうやら他の教室にも同じように指示をして回っているらしい。放送のみを聞いたものはマスコミが原因であることを把握していないようで、対応に追われているのだ。

 

ただのマスコミであったことに安堵しつつも相変わらずトラブルを起こす連中には呆れてしまう。

 

ふいにつーちゃんがふらりと立ち上がる。教室を出てどこかに行こうとしていたので驚いて声をかけたのだが生返事しか返ってこなかった。一体どうしたのだろう?危険がないことは分かったが、こんな時に行く必要のある用事なんてあるのだろうか?

 

彼女の何かを探すような仕草を見ても特に心当たりはなかった。

 

 

 





セコム怖い



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