推しは剣持。あのシャープネスな人となりに痺れて憧れるぅぅ!
古今東西様々な未来人が存在し世間を騒がせたが、結局は嘘であることが発覚しその流れで謝罪などよくある話だ。
僕は未来人なんか信じていない。
いや、少し語弊があった。
僕は自分から未来人と言う未来人を信じていない。
だって本当に未来人がいたのならば、そんなことを言うのだろうか?
例えば、織田信長を救うために過去に戻って来た人物がいたとしよう。
その人が馬鹿正直に「あんたは本能寺で明智光秀に殺される。だから今のうちに殺しておけ」と言って果たして信長は信じるのだろうか?
答えは否だ。
阿保の戯言と受け流されてまず処刑されるだろう。
あっそうそう。僕がどうしてこんなことを考え始めたのかは。
僕の前に自分から未来人と言うやつが現れたからだ。
☆ ☆ ☆ ☆
「ーーーいーーーーーせんーーー先輩ッ!聞いてますか!!」
「あ、ごめん。ヘルシェイク矢野こと考えてました」
「いや、ヘルシェイク矢野って誰ですか!?」
ヘルシェイク矢野、あいつはいい奴だったよ。
「で、いつまで僕は厨二病ごっこに付き合えばいいんですか?用事があるんでもう帰りたいんですけど」
具体的には昨日録画した。マジカル少女マギ☆マドを見ると言う用事が。
「どうせ帰ってマギ☆マド見るんですよね」
「うん。だからバイバイ」
「反応薄ッ!どうしてわかったんだ!!ってくらい驚いてくださいよ」
「無駄ですよ。その流れでマウント取るのが見え見えでなんだよ」
そういうと自称未来人は顔をしかめて
「はぁ…可愛い子の言うことは聞くべきなんですよ。もう信じないと先輩の恥ずかしい過去をみんなにバラしますよ」
「あー、はいはい。勝手にやってください」
どうせハッタリだろうとそう言った僕は次の瞬間後悔することになった。
転校生は周りを一目見渡すと
「…先輩の顎の秘密を知ってますよ」
そう呟いた。
………。
「ま、まさか…」
やっぱりこれしか考えられない。
「ふふ、やっと信じてもらえましたか」
僕が言葉に詰まっているのを見て自称未来人はドヤ顔を決めていた。
相手が油断しているのを見計らって僕は周りに聞こえるように大きな声で
「ぼ、僕のストーカー!!」
そう言ってやった。
「あっ、ちょっと話は終わってーー」
もう面倒ことはごめんなので僕は一目散に駆け出した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ーーーってことがあったんですよ。ガクくん」
あの後ガクくんの家に転がり込んだ僕はガクくんに愚痴っていた。
「ほぉー。それは大変でしたね」
よく見たら伏見のやつスマホ弄ってる。
「ガクくん聞いてる⁉︎」
「あー、ごめん。ヘルシェイク矢野の事考えてた」
やっとこっちを向いたと思ったらコイツ…。
「伏見ィ…」
「冗談っすよ!刀也さん。にしてもその子どうして顎の事知ってたんでしょうね?」
あからさまに話題逸らしてきたぞ。
「僕のファンなんですよ。きっと」
僕はドヤ顔でそう言った。
「それはない」
伏見ィ…可哀想な子を見るような目でこっちを見るな。
「ま、それはともかくガクくんにはあの自称未来人のことについて調べて欲しいんです」
「駄目っす」
一拍も置かず断られた⁉︎
「僕とガクくんってそんな仲悪かったっけ!?」
出会ってから僕とガクくんの紡いだ半年の日々はそんな薄っぺらいものだったのか。
ある時はヴァンパイアを退治したり、
ある時は森を燃やしたり、
ある時はロリを語り合い、友情を深めた。
友達だと思っていたのは僕だけだったのか…。
「刀也さん、半分以上記憶にないものがあるんだが…」
「うるさい!ケチな伏見のことなんてもうしらん!」
腹いせに伏見をぽこぽこ殴る。
「まぁ、まぁ。落ち着いてください。俺にも事情があるんです」
「ほぉぉ?」
今なら眼光だけで熊さえも倒せそうだ。
「刀也さんが言ってたその女の子俺のところにも来てたんですよ」
驚き、思わず殴る手を止めた。
「それで女の子が言うには私のことを調べるのはやめたほうがいいですよ。さもなくば狐……どうなるかわかりますねって」
ガクくんのこともばれている?
一体どこから…。
「ともかく今回は俺は力になれないです。申し訳ない…」
「まあ、それだったら仕方ないです。…それにしても一体何者なんでしょうね」
「本当に未来人とか」
「だとしたら世界を救うために、先輩…!私と戦ってくださいとか言って欲しいですよね」
ガクくんと笑い合っていたその時の僕は、明日同じ事を言われるとは露にも思っていなかった。
読んでいただきありがとうございます。誤字脱字ありましたらお知らせください。
感想ほちぃ…。
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