艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん (黒瀬夜明 リベイク)
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EP1 出会いの日

降りつける雨の中を一人の少女が走っていた。長い茶髪を揺らしながら何処に向かうわけでもなく走っていた。髪と同じ色の瞳には光がなく、ただただ道の先を見つめる。
「はぁはぁ」
少女は逃げたかった。何かから逃げたかった。しかしそれが何なのか、もはや少女にはわからなかった。そして…

バタッ

少女は道に倒れ、そのまま意識を手離した。


キーンコーンカーンコーン!

学校の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。生徒たちはそれぞれこの後のことを話していた。部活に行く者、下校する者、それぞれであった。

ここは私立暁学園(しりつあかつきがくえん)。別にガンダムSEEDDestinyのアカツキガンダムに関係があるわけでも、駆逐艦暁に関係しているわけでもないがこういう名前なのだ。この学園にも数人の艦娘が入学しており、中等学部1年2組の窓側最前列に座っている茶髪の少女(いなづま)もその1人である。引っ込み思案で、ちょっとのことで驚いてしまうが心優しい元艦娘である。電は椅子に座ったまま俯いていたが、やがて何かを決心したような顔で教室を出て行った。

廊下をビクビクしながら歩く電。すれ違う生徒たちが不思議そうに通り過ぎる中、電はゆっくりゆっくり歩を進めていた。

「はわわわ…と、遠いのです…」

電が目指している場所。そこは別に1年2組の教室から遠くはない場所であった。中等部校舎の裏手に存在する小さな小屋がそうである。ちなみにこの小屋、1年2組の教室の窓から見えているので窓から出れば10秒で着いてしまう。それでも電はゆっくりゆっくり歩みを進め、小屋の入り口前にたどり着いた。しかし電は相変わらずビクビクしたままで扉を開けようとしなかった。両手を自分の胸の前で握りしめてしばらく立ち尽くしていた。そしてゆっくりと右手を扉に伸ばした。

ところ変わって数分前の小屋の内部。そこには2人の少女がいた。アホ毛のある焦げ茶色の髪を三つ編みにして茶色とオレンジ色の髪留めをした青い瞳の少女と、髪の先が少し赤みがかった長くて白い髪に黒いリボン、真っ白のマフラーをまいた赤い瞳の少女だ。部屋の中には大きなガンプラバトルができる装置と、プラモデルの組み立てができるブース、人1人が寝っ転がれるような大きなソファがあった。そんな時、白髪の少女が口を開いた。

「新入部員来ないっぽいね~時雨」

時雨と呼ばれた焦げ茶色の髪の少女。彼女もまた元艦娘である。白露型(しらつゆがた)駆逐艦の2番艦で自分のことを「僕」と呼ぶ少し変わった物静かな少女である。そんな彼女も戦争終結で退役し、暁学園に通っている。

「仕方ないよ。僕たちの部活、そんなにすごい活躍もしてないからね…それはそうと夕立…」

「ぽい?」

夕立と呼ばれた白髪の少女。彼女も元艦娘である。白露型駆逐艦の4番艦、人懐っこく語尾や自分の言葉のほとんどに付く「っぽい」が口癖の少女だ。

「そろそろ勧誘に行かないかい?いつまでもここにいても仕方ないと思うんだ」

「え!お散歩に行くっぽい!?」

「散歩じゃなくて部員勧誘だよ夕立。まあ、散歩も兼ねて行こうか」

「了解っぽーい!」

ソファから夕立が飛び上がって歩き出した。それに続いて時雨も扉へ向かった。そして、夕立が扉に手を伸ばした。

 

そして、扉が同時に凄い勢いで開いた。ビシャンッ!ととてつもない音をたてた。

「はにゃぁぁぁー!?」

突然の出来事に電は、今学期最高の絶頂ビックリをした。そして―――

「おっさんぽ、おっさんぽ~!」

飛び出してきた夕立と正面衝突。電は衝突の反動でその場に尻もちをついた。そして、電の絶叫と、衝突の衝撃に気付いた夕立がキョロキョロと辺りを見回した。

「ぽい?」

絶叫を聞きつけて時雨が慌てて夕立のもとに駆け寄る。

「どうしたの夕立!?凄い声が聞こえたけど!」

「何かにぶつかったっぽい」

「え?」

時雨が前を向いたときそこには半泣きになりかけの電が座り込んでビクビクオドオドしていた。

「ん、君は?」

それが3人の出会いであった。

 

続く



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EP2 電、入部す

夕立との衝突で地面に尻もちをついて半泣きの顔の電を、不思議そうな顔で見下ろす時雨と夕立。そして、時雨はハッとした表情になる。

「ごめんね。驚かせちゃったかな?ほら夕立、謝らないと」

「あ、ごめんなさいっぽい」

「大丈夫?立てるかい?」

時雨は尻もちをついたままの電に手を差し伸べた。すると電は、ゆっくりと手を伸ばした。二人の手が互いを掴んだのを確認して時雨はゆっくりと電を起き上がらせた。

「あ、あの、ありがとう…」

「ううん気にしなくていいよ」

お礼を言う電に時雨は優しく笑ってみせる。しかし、この辛気臭い空気に耐えられない者が1人いた。

「時雨~早くお散歩に行くっぽい~」

「まったく君って子は…ぶつかった本人なんだからもう少しこの子に気を遣ったらどうなんだい?」

「あ、あの、もしかして何処かに行かれるところだったですか?」

「ぽい!お散歩っぽい!」

夕立が元気いっぱいの声で電に説明した。そこへ時雨が、違うでしょ。と突っ込む。

「部活の勧誘だよ…そういえば君、何か部活には入ってるのかい?」

「え、えっと入ってないのです。だから、その…ボソボソ」

「ん?」

電が何か言っていたことに気付いた時雨。しかし、電の答えが来るのを待った。

「その…電を、ガンプラバトル部に入部させてほしいのです」

「ぽい?時雨、これって…」

「君…いや、電でいいのかな?それは本当かい?」

電はゆっくりと首を縦に振った。すると夕立が時雨に飛びついた。

「やったね時雨ぇ!新入部員っぽいー!」

「ちょっと夕立、引っ付きすぎだよ。でも、僕も嬉しいな」

「あ、あの――」

「積もる話は中でするっぽい!」

そう言うと夕立は笑顔で電の背中を押して小屋の中へ連れ込んだ。時雨も後に続いた。

部室に入ると早速夕立が口を開いた。

「じゃあじゃあ、電のガンプラ見せるっぽい!」

「はわわ!」

「夕立。いきなり大きな声で喋っちゃ電がびっくりしてるよ…まあ、僕も電のガンプラ見てみたいかな」

「…は、はいなのです」

すると電は自分の肩にかけていたカバンから一つのガンプラを取り出して、それをガンプラバトルの装置の上に置いた。少し細身の体のガンプラがそこにはあった。

「これは…インパルスガンダムかな?」

「強そうな感じがするっぽい!」

「そうだね。胸上部のマシンキャノンと、肩アーマーの形が少しガンダムエクシアに似てるのと、腰横のビームサーベルをマウントしたアーマー以外はほとんどインパルスガンダムと変わらないけど…電、君はガンプラ作り上手なんだね」

「えへへ…お姉ちゃんたちのガンプラを見ながら作ったのです。」

「色付けも上手いっぽい!黄色と紺色のカラーリングが目に光るっぽい!」

「えっと、これが電のガンプラ…イナヅマガンダムなのです!」

電のガンプラバトル生活が今始まった。

 

続く



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EP3 衝突とか気を付けますね

「じゃあ早速ガンプラバトルするっぽい!」

「!?」

夕立の言葉にビクッとした電は、身体を震わせながら俯いて、目に少し涙をためていた。夕立はそんな電のことを気にかけている様子はなかったが、その表情を見た時雨は電の肩に優しく手を置いて顔を覗き込んで口を開いた。

「大丈夫だよ電。僕たちがバックアップするから」

「し、時雨さん…」

「夕立、新入部員の初バトルなんだからはしゃぎ過ぎないでね」

そしてニコッと笑顔を作ってみせた。その笑顔に電は励まされたのか、目にためていた涙を拭くと大きく頷いた。三人が部室中央の台の前に立つ。システム音声がガンプラバトルの準備を始める。

「Gun-pla Battel stand up! Model damege level set to C.」

ガンプラバトルの内容設定が行われる。練習を兼ねた今回のバトルはガンプラが一切のダメージを受けないレベルである「Cレベル」にセットされた。

「Please set yuar GP base」

システム音声の指示は続き、3人がガンプラバトルをするのに必要なアイテム「GPベース」を台座から飛び出た部分にセットする。

「Begining Plavsky particle dispersal. Field 04 City!」

台から幾百万のプラフスキー粒子があふれ出し、バトルフィールドを形成する。今回は高いビル群が立ち並ぶ街がフィールドとして選択された。

「Please set yuar Gun-pla」

そして、その音声と共に3人はそれぞれのガンプラを目の前の台座にセットする。システムが3機のガンプラを読み込み、ガンプラのメインカメラである眼が光を放つ。3人の前にホログラフィーで再現された球体操縦桿と正面と左右のカメラモニタ、残弾数や各部のダメージ表示を示すメモリなどが映るモニタが現れる。球体を3人が握り、そして―――

「Battel start!!」

バトルスタートの合図が鳴り響く。台座にセットされたガンプラの周囲がカタパルトで覆われ、ガンプラが膝を曲げ発進体制に入る。

「い、電。イナヅマガンダム、出撃です!」

電の掛け声とともに高速で動き出したカタパルト、イナヅマガンダムがフィールドへ向け出撃した。

街の中央、広場となっていたそこに2機のガンプラが降り立つ。1機は長大なライフルと、バックパックに大きなシールドを2枚背負った紺色と白色のガンプラ。もう1機は全身黒色で肩に装備された大きなビーム砲と、ビーム砲と同じくらいの2枚の長刀とブーメランを装備した金色の一本角を持つガンプラ。

「…電ちゃん、来ないっぽいね」

先に口を開いたのは黒い一本角のガンプラの操縦者、夕立だった。夕立の操縦するガンプラ「ユニコーンガンダムナイトメア」はRG(リアルグレード)のユニコーンガンダムの赤いサイコフレームとバンシィの外装を用いて作られたガンプラである。特徴は両肩部に装備された大型のビームサーベルを展開できるビームキャノンと、ソードインパルスガンダムのバックパック、そしてRG(リアルグレード)の特性を生かしたデストロイモードならぬナイトメアモードへの変形だ。そしてもう1機のガンプラの操縦者である時雨が今度は口を開いた。

「迷ってはないだろうけど…」

時雨の操縦するガンプラ「ガンダムレインバレット」デュエルガンダムをベースに肩部のシヴァとミサイルをセンサー類に換装し機体各所にもセンサーを増設しそれを強化したガンプラだ。その特徴は右手に持つ長大なビームライフルと、バイポットを兼ねたシールド、フェネクスのバックパックを流用した大型シールド、頭部にある自分の髪留めを模したセンサーだ。

「でも、流石に遅すぎ―――」

その時出撃してきた方向とは逆の方向のモニタから接近警報が鳴り響いた、2人はその方向に目を向ける。

「敵さんの登場っぽい?」

「いや、今回は出ない設定のはずだけど…」

何かが物凄いスピードで接近してきた。2機のガンプラが身構えたその時、その声が響くと共にそれは来た。

「はにゃぁぁー!!」

「「え―――」」

 

 

ガシャーン!!

 

 

イナヅマガンダムが2人のガンプラに物凄い勢いで衝突したのだった。

 

続く



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EP4 ガンプラとファイター

電の衝突もあり、練習は一時中断となった。バトルシステムを切った時雨は電に問いかけていた。

「い、電。まさか、さっきビクビクしてた訳って・・・」

電は泣きそうな顔で何度もコクコクと頷いていた。これには時雨も夕立もかなり驚いたようで、夕立に関しては「訳わからん」と言いたげな顔をしていて、時雨も汗を流して苦笑いである。

「夕立、あんな目にあったの初めてっぽい…」

「ご、ごめんなさいなのです。い、電は…」

時雨はガンプラバトルの台に向き直って、そこで倒れ伏せていたイナヅマガンダムを拾い上げて機体の観察を始めた。そして電へと振り向いて口を開いた。

「電、この機体の推進力って相当高いんじゃないかい?」

「え、時雨さん。わかるのですか?」

「まあ少しはね。で、どうなんだい?」

電はコクリと深くゆっくり頷いた。やっぱり、と言いたげな顔になる時雨。夕立にはまだわからないようで時雨に問いかけていた。

「時雨、どういうことっぽい?」

「この機体の推進力…つまりは総合的な機動力が高すぎるんだ」

「ぽい?」

そう言うと夕立はイナヅマガンダムの各所を観察してみた。そして、見つけた。

「あ、肩の空洞部分と、背中のコアスプレンダーにスラスターが増設されてるっぽい!…ん?てことはつまり…」

「そう。電の操縦スキルがまだ機体に追いついていないんだ。電、どうしてこんな機体に仕上げたのか聞かせてくれるかい?」

「は、はいなのです…」

電は淡々と話し始めた。電の姉たちの機体がかなりの高機動性を持っていること、それに憧れてこの機体を作ったこと、そして完成したこの機体での初バトルが散々だったことも。話を聞いた夕立と時雨。普段はこういった話をあまり好かない夕立だったが、今回は真剣な表情で話を聞いていた。そして、時雨もまた真剣に話を聞いていた。

「と、いうわけなのです…」

話し終わった電。そこからしばらく沈黙が部室を包んでいたが、やがて時雨が口を開いた。

「そうだったんだね電。だったらこの機体、なおさら崩すわけにはいかないね」

「時雨の言う通りっぽい!そんなに思いを込めていたガンプラ、崩したらバチがあたるっぽい!」

「し、時雨さん!夕立さん!」

2人の言葉に感激した電。そして夕立が大声で言い放つ。

「じゃあ早速練習するっぽい!」

「そうだね。慣れるのは早いほうがいいから、始めるよ電!」

2人の掛け声にパァと顔をさせた電は答えた。

「なのですっ!」

 

 

 

「…」

「…」

ガンプラバトル部の部室の外、そこに2つの影があった。その影は賑やかな部室の中を窓からジッと見つめていた。部室内で始まった練習、3人ともとても楽し気な表情だった。その光景を見た1つ目の影が歯ぎしりをしながら口を開く。

「あの野郎…楽し気(たのしげ)にしやがって…」

それに答えるように2つ目の影が軽い口調で返す。

「まあまあ、そう怒らないでよ」

「うるせぇ、テメェにはわからねぇだろうが…」

「あれ?残念だなぁ~私もかなりあなたの気持ちわかるんだけどなぁ~」

そんな会話を見せる2つの影。1つ目の影が舌打ちをして続ける。

「チッ、なんで奴の見張りがお前なんだよ…」

「さぁね?ま、任せちゃってよ」

「チッ」

もう一度舌打ちをして、1つ目の影は消えていった。そして、残った2つ目の影はまだ部室内を見ていた。

 

 

 

「…フフフ楽しみだな」

 

 

 

続く



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EP5 特訓なのです!

電がガンプラバトル部に入部してから4日が過ぎていた。電は時雨、夕立2人の協力の元特訓に励んでいた。部活の時間帯だけでなく、長い休憩時間がある昼休みも使って特訓をし、電は時雨と夕立が帰った後も一人で特訓をしていた。時間外の特訓もあって電の操縦スキルは少しずつではあるが上昇していった。

「電、イナヅマガンダム出撃なのです!」

そして、電は今日も部室で練習に励んでいた。峡谷が表現されたフィールドをイナヅマガンダムが飛ぶ。右手にはインパルスガンダムのビームライフル、左腕にはインパルスガンダムの盾である機動防盾(きどうぼうじゅん)(未展開)を装備している。

「電、今回は僕たちの手助けなしでどれくらいできるようになったか見せてもらうよ」

追いついた時雨のガンダムレインバレットがイナヅマガンダムの右側を飛行し、時雨の顔が電の正面右の通信モニタに映る。戦闘時はこういった手段で通信を行って連携をとったりする。

「何かあったらすぐに駆け付けるから安心するっぽい!」

続いて夕立の笑った顔が通信モニタに映し出された。残念ながら飛行能力を持たないユニコーンガンダムナイトメアは峡谷をジャンプしながら2機を追随していた。

「準備はいいかい?電」

「はい!大丈夫なのです」

「それじゃあ始めるよ」

時雨がそう言うとレインバレットはイナヅマガンダムから離れていき、フィールド内で一番大きな峡谷の頂上に降り立った。そこにユニコーンガンダムナイトメアが追いついて先行していくイナヅマガンダムを見ていた。

 

イナヅマガンダムが少し開けた台地に降り立った。するとすぐにイナヅマガンダムは腰を少し落として構えの姿勢をとった。そして遠くから砂煙が立ち上りそれらが現れた。緑色をした機体色に、桃色の1つ目、右肩の逆L字のシールド、左肩には三本角があるスパイクアーマーを装備して大きな円形マガジンがついたマシンガン「ザクマシンガン」を持ったガンプラ「ザクⅡ」、青色の機体色と1つ目、両肩に湾曲した大きな角と頭部に1本のブレードアンテナ、左腕には大型のシールドと内臓式のバルカン「フィンガーバルカン」を装備したザクⅡによく似ているガンプラ「グフ」、そしてその大きな体躯からは想像しにくいスピードで地上を滑走し手に巨大なバズーカを装備した黒と紫の機体色の1つ目のガンプラ「ドム」各1機ずつがイナヅマガンダムに向かってきた。(全てホログラフィーです)

「来たよ電!」

「な、なのです!」

先頭を行くドムが手持ちの巨大なバズーカ「ジャイアント・バズ」を撃ち放ってきた。それに反応して電は機動防盾を展開し、スラスターを全開で噴かして動き始めた。ジャイアント・バズの砲弾を回避し、高速で地面スレスレを移動しながら電は相手の動きを見定めていた。ザクⅡが手にしたザクマシンガンをフルオートで撃ち続けて来る。グフとドムも続いてフィンガーバルカンとジャイアント・バズを撃ちつつイナヅマガンダムへ接近してくる。

「はわわ!凄い弾幕なのです!」

その弾幕に翻弄される電とイナヅマガンダム。展開した機動防盾で防御しながら動き回ることが精一杯の電。しかしその時、夕立の声が通信モニタから届いた。

「電ちゃん落ち着くっぽい!この程度の弾幕激しくなんかないっぽい!」

「!?」

「そうだよ電。相手をよく見るんだ!」

時雨の言葉が続き、電は近づいてくる2機のガンプラに目を付けた。グフから放たれるフィンガーバルカンの弾はよく見ればかなり飛んでくる場所にバラつきがあった。対してドムのジャイアント・バズは一度撃つと再発射に少しのタイムラグが発生していた。

「!?見えたのです!」

そう言うと電は、手元の操縦桿を操作する。すると、イナヅマガンダムが装備している武装が表示されたスロットが数枚表示される。その中から電はマシンキャノンを選択し、機動防盾を収束させてドムとグフに向かった。グフのフィンガーバルカンを掻い潜り、さらに接近する。そこにドムがジャイアント・バズを放った。

「そこなのです!」

それを待っていたかのように電は操縦桿の引き金を引いてマシンキャノンを発射した。高速で打ち出されたマシンキャノンの銃弾はジャイアント・バズの弾に吸い込まれるように命中し、弾丸が爆発しドムの視界を奪った。ドムは慌てて旋回し爆煙を回避した。しかし、イナヅマガンダムの攻撃はまだ終わっていなかった。

「電、命中させちゃいます!」

イナヅマガンダムのビームライフルが火を噴いた。放たれた緑色のビームがドムのコックピット部分を直撃、直後にドムが爆発、消滅した。

「や、やったのです!敵機撃墜なのです―――」

「電!次が来てるよ!」

「え?」

電の目の前には赤く光る刀身を持つ剣「ヒート剣」を掲げたグフがいた。

「あっ!」

慌てた電は、イナヅマガンダムのスラスターを全開で噴かして高速後退した。そして、先程までイナヅマガンダムがいた場所にヒート剣が振り下ろされた。体勢を立て直した電は慌ててビームライフルを構えるが、グフの援護に来たザクⅡがザクマシンガンを放ってきたため急遽機動防盾を展開した。グフがイナヅマガンダムに向かってフィンガーバルカンを撃ちながら突撃を始めた。それを見た電は、ハッと何かを思いつきビームライフルを構えた。

「隙ありなのです!」

放たれたビームはグフへ向かって飛ぶがグフは余裕でビームを回避し、グフには命中しなかった。しかしその数秒後、グフの後方で爆発が起こった。グフが回避したビームがザクⅡに命中したのだ。ザクⅡは爆発、四散した。その爆発に動揺して振り返ったグフが見せた隙を電は見逃さなかった。ビームライフルを捨て、腰横に装備されているビームサーベルを抜き放ちグフに突撃した。そして―――

「これで終わりなのです!」

右上段から放たれたビームサーベルの袈裟斬りはグフを肩から両断。イナヅマガンダムがビームサーベルを切り払うと共にグフは爆発、消滅した。

 

続く



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EP6 パワーアップを目指して

見事にザクⅡ、グフ、ドムの3機を撃墜した電。そして、電の耳にバトル終了のアナウンスが届く。

「Battle Ended!」

操縦スペースのホログラフィが消え、電の目にビームサーベルを切り払った姿で立つイナヅマガンダムと、3機の残骸が映る。しかし電はその「初めての勝利」を自分が手に入れたことに気づかなかった。そんな電をよそに、夕立はお構いなしに飛びついた。

「電ちゃん凄いっぽい!カッコよかったっぽい!」

「はわ!ゆ、夕立さんビックリしたのです!」

案の定電は夕立の飛びつきにビックリした。そこに時雨がゆっくり歩いてきて口を開く。

「凄いね電。あんな戦い方が出来るなんて、僕ビックリしたよ」

「夕立も夕立も!」

「君が掴んだ初めての勝利だよ。おめでとう、電」

「電が掴んだ初めての勝利…」

ようやく状況を把握した電は、イナヅマガンダムをゆっくりと持ち上げた。そして小さく涙を浮かべながら―――

「あ、ありがとうなのです!」

笑ってみせたのだった。

 

それから数日が流れた。電たちは今日も練習に打ち込み、ガンプラバトル部の部室はいつも通り賑やかだった。そして、大まかな練習が終わって休憩に入ったとき時雨の一言でその話は持ち上がった。

「そう言えば電…」

「なのです?」

「インパルスガンダムは元々シルエットシステムが使えるよね?君のイナヅマガンダムには装備しないのかい?」

 

 

シルエットシステム

 

 

それはイナヅマガンダムのベース機になっているインパルスガンダムが持つ「武装換装システム」のことである。基本的にはバックパックを変更するもので、種類は高機動戦闘用の「フォースシルエット」、近接格闘戦用の「ソードシルエット」、遠距離砲撃戦用の「ブラストシルエット」の3種類(他にも多数存在するがここでは割愛)、これらを母艦から運んでくるシルエットハンターと呼ばれる無人機から受け取り、様々な戦況に対応することが出来るものだ。そして現在、イナヅマガンダムはその内のどれも装備していないのだ。

「えっと、本当は装備するつもりなのです。でも、どの装備を付けたらいいのか決められなくて…」

「なるほどね。確かに3種類全部のシルエットを使い分けれれば対応力は格段に上昇する。でも、母機とは別にシルエットハンターを操作するのはかなり上級者向けのテクニックだしね…僕も出来る自信がないよ」

「夕立さんはどう思いますか?」

「夕立ならソードシルエットっぽい!…まあ、もう装備してるっぽいけど…」

夕立は、自分に聞かないで。と言わんばかりの苦笑いで答えた。時雨も、それに同意したのか苦笑いしながら頷き、腕を組みながら口を開く。

「うーん。イナヅマガンダムはこのままでも十分に強いけど、やっぱり戦力強化のこともあるしね…」

「なのです…」「っぽい~」

ハ~。と3人がため息をつく。そして、賑やかだった部室が一気に静まり返り、電と時雨はバトル台の前で腕を組んで、夕立はソファに寝転がって考えていた。そして夕立が寝返りを打った時、その目にそれは入ってきた。夕立はそれをしばらく見ていたが、やがて何かを悟ったのか大声で叫んだ。

「あー!」

突然の大声に電と時雨はビクッとして、時雨が慌てた口調で夕立に声をかけた。

「ど、どうしたの夕立!?まさか、明日提出の宿題終わらせてないとか!?」

「はわわわ!それは大変なのです!」

「夕立、ちゃんと終わらせたっぽい!電ちゃんも失礼っぽい!…じゃなくて、あの袋!」

「「え?」」

夕立が床に落ちていたあるプラ袋を指さす、こげ茶色で店の名前が書かれている何の変哲もないプラ袋。しかし…

「ネリタ模型店のプラ袋?あ、この前パーツ買いに行った時の……あ!」

時雨も夕立の言う、このプラ袋の持つ意味をようやく理解した。

「時雨!こういう時はこれしかないっぽい!」

「お手柄だよ夕立!早速出発だ!」

「え!?え!?」

自身のガンプラをカバンに詰め部室を飛び出した時雨と夕立、電は2人の後を必死に追いかけ走った。

 

続く



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EP7 模型店の神様は厄介です

部室を飛び出した時雨と夕立を追って電は走った。校門を抜け、時雨と夕立を必死で追いかけ2人が信号につかまったところでようやく電は2人に追いついた。息を切らし膝に手をつきゼェゼェと言いながら電は口を開いた。

「し、時雨さん。夕立さん。ゼェゼェ、ま、待ってほしいのですぅ~」

背後から聞こえた電の声に、時雨と夕立はようやく電を置いてけぼりにしていたことを思い出した。2人が慌てて電に駆け寄る。

「い、電!…そっか、僕たちが置いてけぼりにしちゃったんだね…ごめんよ電」

「電ちゃん、大丈夫っぽい!?あ、お水飲むっぽい?」

「あ、ありがとうなのです…ゼェゼェ…」

夕立が鞄に入れていたペットボトルを差し出し、電はそれを受け取るや否や、グビグビと物凄い勢いで飲み干した。そしてしばらくしてようやく落ち着いた電に、夕立が声をかけた。

「電ちゃん。落ち着いたっぽい?」

「はぁはぁ…大丈夫なのです」

丁度その時信号が青に変わった。それに気づいた時雨は電に手を差し伸べ、電もゆっくりとその手を掴んだ。時雨に起き上がらせられる形で、電は体を起こした。そして、信号を渡って更に歩を進める。

「そう言えば、そのネリタ模型店には何があるのですか?」

「ん?ああ、話していなかったね…実は―――」

「バックパックの神様がいるっぽい!」

「…え?」

夕立の言葉に、電は首をかしげることしかできなかった。

 

電と時雨、夕立の3人は小さな2階建ての建物の前に立っていた。

「ここがネリタ模型店なのです?」

「うん、そうだよ」

きっちり掃除された店頭と、「ネリタ模型店」と書かれた大きな看板、そして店頭のショーウィンドウに飾られたガンプラと―――

「これは…バックパックなのです?」

多数のバックパックがそこには飾られていた。原作に登場する機体が装備するバックパックばかりではあるが、その出来栄えはどれを見てもかなりの高さであった。しかし、電は気になることがあった。

「あれ?でも、なんでここにバックパックが飾られているのです?」

「それは中に入ればわかるっぽい!」

「そうだね。とにかく入ろう」

「な、なのです」

ネリタ模型店へ入っていった3人。ピンポーン、とお客の入店を伝えるチャイムが鳴り店員が奥の扉から出てきた。

「いらっしゃいませ―――あ、時雨に夕立じゃない。またパーツ買いに来たの?」

出迎えてくれたのは右目が隠れるほど真っ白の長い髪を右側でサイドテールで纏め、黒色のノースリーブワンピースと同じ色のロングブーツ、そして「ネリタ模型店」と書かれたエプロンを着けた青白い目の店員だった。

「こんにちはネ級さん」「こんにちはっぽい!」

彼女の名前は「ネ級」元々は艦娘たちと戦争をしていた深海棲艦(しんかいせいかん)の1人である。戦争が終結したこともあり陸へと移住してきた。今ではこの通り、ネリタ模型店の店員として働いている。

「相変わらず元気だね夕立。ん?初めて見る子が混じってるね…」

少し低い声のネ級に指摘され少しビクッとした電であったが、何とかビクつくだけに留まった。時雨がネ級を紹介する。

「この人はネ級さん。ちょっと低い声で怖そうだけど、いい人だから安心していいよ電」

「い、電です。どうか、よろしくお願いします」

「電ね。ネ級よ、よろしくね…ところで、今日は何の用で来たの?」

ネ級の言葉に、本題を思い出した時雨が口を開く。

「実はこの電のガンプラについて相談があって来たんだ。ほら、電?」

「なのです」

電はそう言うと鞄からイナヅマガンダムを取り出してネ級に見せる。ネ級はイナヅマガンダムをジーっと見て、やがて口を開いた。

「インパルスガンダムのカスタム機だね。見た感じだと、機動性がかなり高いみたいだけど…シルエットが装備されてないのはそういう理由なの?」

「いえ、シルエットは元々装備するつもりだったのですが。どのシルエットにするか、決められなくて…」

「なるほど。それでネリタ模型店(うち)に来たわけか…」

電たち3人はゆっくりと頷く。そして、ネ級は腰に手を当てるとニコリと笑って言った。

「わかった。じゃあ付いてきて!」

そう言うとネ級は店の奥にある部屋へと向かった。そこの扉には「使用中」と書かれた看板が吊るされていたが、ネ級はそんな看板を気にする素振りも見せずに扉を開けた。真っ暗な部屋の奥に明かりが1つだけ灯っていて、そこに1人の髪の長い女性が背を向けて座っている。

「タ級姉さま。お客さんですよー」

「……」

「タ級」と呼ばれたその女性はネ級の言葉に全く反応を示さなかった。ネ級がもう一度声をかける。

「タ級姉さま~」

「……」

やはり反応がない。

「お昼寝中なのですか?」

電の心配そうな言葉をよそに、ネ級は普通にまじめな口調で返答する。

「ううん。部屋は暗いけど、タ級姉さまはこの部屋では絶っ対に寝ないから……仕方ない。時雨、夕立」

「うん」「ぽい」

ネ級の合図に時雨と夕立は、これから何をやるのかすぐに察しが付いたのかネ級に返事を返す。そして―――

「コホン。あー!時雨のガンプラのバックパック、新調したんだ~!」

と、超わざとらしい口調でネ級が時雨のガンプラのバックパックについて話し始めた。それに時雨が答える。

「うん。そうなんだよ~今まで遠距離で攻めてたから近距離用のバックパックに変えてみたんだ~」

しかし、当の時雨の口調もどこかいつもの冷静さを欠いていた。そして夕立だけはいつも通りの口調で―――

「ねぇねぇネ級さん!夕立の機体のバックパックも見て見てー!」

会話をしている。この話の内容は完全に嘘であることは話の意味が理解できていない電でもすぐに分かった。何故なら―――

(時雨さんも夕立さんもガンプラ出してないのです…なのになんで?)

「お、凄い凄い~タ級姉さまの作ったバックパックに引けを取らない作りこみだ~」

ピクッ―――

(あ!ちょっと、反応したのです!)

少し肩をピクリとさせたタ級。しかし、まだ動く気配はない。ダメか!という顔をして、ネ級は話を続ける。

「あ~よく見たらこのバックパック分離して飛行できるんだ~」

「ぽいー!じゃあじゃあ、そこのショーウィンドウに飾られてる飛行できるバックパックとバトルするっぽいー!」

ピクピクッ――

(また反応したのです!)

話はさらに続き―――

「名案だね~じゃあ、ダメージレベルはAでいいんじゃないかな~」

「賛成っぽい!夕立のバックパックで素敵なパーティー見せるっぽい!」

「よーし!ネ級が相手するよ~」

ガタガタガタッ!

(お、来てる来てる!)

(もう少しだね)

(じゃあ、ラストスパートっぽい!)

傍で見ていた電もようやくこの会話の意味を理解して、ちょっと大げさなのです。と思った顔をしたがネ級が笑顔で首を横に振ってみせる。そして―――

「タ級姉さま~!バックパック借りますね~あ、聞こえてないから勝手に借りちゃお~」

「駄目だぁー!!」

ガッタン!と物凄い音と声を立てて、部屋の奥に座っていたタ級が遂に立ち上がった。そして、あらぶった声&ハイスピードで喋りだした。

「駄目に決まってるだろネ級!あれは展示用に作ったものであってバトルのために作ったんじゃないぞ!あれ1個作るのに1ヵ月以上掛かるのはお前も知ってるはず!それをましてや、操縦スキルのないお前がダメージレベルAでバトルするなどこの私が絶っ対に……あれ?」

「タ級姉さま?全く、呼ばれたらすぐに返事してください。姉さまを起こすのって大変なんですよ?」

こうして、タ級はようやくこちらの世界に帰還したのだった。

 

続く



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EP8 タ級の嵐

ようやくタ級を現実世界に引き戻すことが出来たネ級たち。まだ、叩き起こされた(?)ことに対する苛立ちを持ったままの上下ジャージ姿のタ級は少し怒りの混じった口調で話し始めた。

「クソ、折角いい出来に仕上がりそうだったのに…全く、私を起こすならもう少し落ち着いた起こし方は出来んのか…ブツブツ…」

未だ現状に納得がいっていないタ級、しかし本人の私情のことなど気にする様子もないネ級は淡々と本題を話し始めた。

「早速なんだけど姉さま。この子のガンプラを見てあげてください」

「おいネ級。私の話くらい聞け――」

「電ちゃん。ほら?」

「なのです!」

(ネ級め…覚えてろおけよ)

ネ級へのちょっとした復讐心的なものを心の中に閉まったタ級は、電が取り出したイナヅマガンダムに目を向けた。それをジーっとしばらく見るタ級。一通り見終わったタ級は率直な感想を話し始めた。

「ふむ、悪くはない出来だな。素組を生かしつつ胸部上方にマシンキャノン、肩アーマーにはスラスターを内蔵、両腰のサイドアーマーにビームサーベル、シールドの展開機能に機動性も申し分ない…ふむ…ところで貴様」

「は、はい!」

突然指摘され電はビクッと背筋を伸ばした。するとタ級の白い顔が電に急接近した。青白い両目が電を睨みつける。ジーっと見つめられる電は恐怖で震えが止まらなかった。そして、タ級が口を開く。

「何故バックパックを装備していない?バックパックはガンプラの出来栄えを左右するほどに重要なものなのだぞ?」

「あ、えと、その…」

真剣な表情で睨みつけられる電の目には既に涙が溜まってきていた。慌ててネ級が助けに入る。

「姉さま電ちゃんが怖がってますよ!そんなに睨みつけないで―――」

「ここは退けん。退くわけにはいかないんだよ…こいつはバックパックを蔑ろにした愚か者だ。この私が処断する!」

「「しょ!?」」

「姉さま!電ちゃんはそのバックパックのことで姉さまを訪ねてきたんですよ!処断しちゃったら駄目ですよ!」

「!?」

その言葉を聞いた瞬間、え!嘘!?ホント!!と顔で言っているかのような表情でネ級に振り向いた。ネ級は額に汗を流しながら苦笑いで頷く。

「そうだったのか!?そんなこととはつゆ知らず!任せておけ!このネリタ模型店のバックパック神がこの機体にピッタリのバックパックを見つけてやろうではないか!」

「へ?…へ?」

「そうと決まれば早速探すとしようじゃないか!おい貴様、このタ級にしっかりついて来い!」

「え?はにゃぁぁー!」

電の手を掴んだタ級はそこまで広くない店内を走り回り始めた。流石「高速戦艦タ級」と言われただけあってかなりの速度だ。

「しかし、何がいいだろうか!やはり高機動性に特化させるべきか、いや単純な火力強化も捨てきれん、いやいや、ここはあえて敵を捕獲できるような…んー!一撃必殺の火力を持たせることも可能なはず!いや待てよ、オールレンジ攻撃もいいんじゃ……」

 

「「「…………」」」

その光景を眺めるネ級と時雨と夕立。三人はただただ、その光景を呆然と眺めるしか出来なかった。すると時雨がポツリと呟いた。

「流石タ級さん…」

その言葉にネ級がため息交じりに返答する。

「はぁ…全く、タ級姉さまは…」

「バックパックのことになるとヤバイっぽい…あ、電ちゃんが目ぇ回してるっぽい…」

夕立もその光景に飛び込む勇気は持ち合わせていないようで、ただ眺めて実況(?)をしている。そして今もタ級は走り続けていた。

「はにゃぁぁ……と、止めてぇなのでしゅ~」

電は完全に目を回して、タ級に引きずられていた。

 

 

それから数時間後、ようやく足を止めたタ級は電を掴んだまま腕組をして真剣な表情で考え込んでいた。電はもはや干物寸前のようにペラペラになっていた。

「うーむ、こいつにピッタリのバックパックはなかなか見つからないものだな…」

「いやいや、姉さま。まず先に電ちゃんを放してあげて?」

ネ級はマンガにでも出てきそうなほどの大粒の汗を流してタ級に声をかけた。

「おお。すまなかったな」

タ級の手から落ちた電はそのまま床に倒れ、目は渦巻、頭にはひよことお星さまがクルクルと回って気絶した。

「ふぇぇぇ~電…(判読不可能)なのです~」

電に駆け寄る時雨と夕立。

「電、大丈夫…じゃないね…」

「これで大丈夫だったら電ちゃんは無敵だと思うっぽい…」

「同感だよ夕立…」

結果、電は大破。本日はお開きとなったのだった。幸い、イナヅマガンダムは無傷だった。

 

続く



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EP9 熱血のOG(前編)

ネリタ模型店事件の翌日、電たちはいつも通り部室にいた。しかし、今日はいつもと違って更に賑やかだった。理由はすぐに分かった―――

「うわー!負けたっぽいー!」

「うっしゃー!これがオレ様の力だ!見たか!」

来客が来ていたのだ。1人は紫のショートヘアに黒色の制服とスカート、そして黄色の右目と左目の眼帯がトレードマークの元艦娘。

「オレが1番強いんだからこれくらい余裕だっての!何ならもう一回勝負するか夕立!」

「グググ…もっかいするっぽい!今度は覚悟するっぽい天龍!」

「ちょっと夕立。呼び捨ては駄目だよ」

「はわわ…」

天龍。暁学園の卒業生で、昨年卒業した暁学園ガンプラ部の部長でもある。今日は練習試合を兼ねてこの部室に来ていた。そしてもう一人。

「天龍ちゃん。可愛い後輩なんだから少し手加減してあげたらどう?」

天龍と同じ色のセミロングヘア―と目、胸元だけ出ている白地のシャツと黒いワンピースを着たもう1人の来客者が口を開く。

「わかってねぇな龍田。手加減したんじゃ、練習にならねぇだろ?」

「それもまぁそうかもしれないわねぇ~」

彼女の名は龍田。天龍の妹でありこの暁学園の卒業生でもある。今日は天龍に付き添う形でガンプラ部の部室に来ている。

「ま、天龍は手加減ってもんを知らねぇから仕方ねぇだろ?龍田」

「うふふ…そう言えばそうだったね」

「おい木曾!簡単な嘘つくなよ!」

木曾と呼ばれた、緑みがかった黒髪に帽子をかぶり、薄い青色の右目と左目にある眼帯、水色のラインが入ったセーラー服を着て肩から羽織っている黒いマントがトレードマークの少女は、嘘じゃねぇだろ。とドストレートの返答をした。彼女もまた元艦娘であり、この学園の卒業生でもある。ここにきている理由も天龍、龍田と同様だ。

「大体、1対1でバトルしてどうすんだよ?この2人の事ほったらかしだぞ?」

「うっ…それはこれからやるに決まってんだろ!おい時雨とそこのちんちくりん、準備しろ!」

「うん。わかったよ」「は、はいなのです!」

「たくっ…」「ウフフ…天龍ちゃんったら」

 

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to B.」

バトルシステムが立ち上がりダメージレベルが伝えられる。今回はある程度のダメージを抑えることのできる「Bレベル」が選択された。

「夕立、君のユニコーンは大丈夫?」

「大丈夫!バッチリ活躍するっぽい!」

「Please set your GP base.Begining Plavsky particle dispersal.Field 14 Base!」

大量のプラフスキー粒子が放出され、海岸線に存在する基地のフィールドが形成される。燃料タンクや倉庫が各所に点在し、巨大な基地司令部施設も確認できる。

「お、港湾基地か!面白れぇとこ選んでくれんじゃねぇか」

「天龍はどこでも同じこと言ってる気がするんだがな」

「気にしたら負けだよ~木曾ちゃん」

「please set your Gun-pla」

システム音声がガンプラ設置の指示を出した。6人がそれぞれのガンプラをセットする。

「Battle start!」

セットした6機のガンプラのメインカメラ光り、それぞれの機体が発進体制に入る。

「天龍。リヴァサーゴ、出撃するぜ!」

「龍田。ガンダムドラグノフィア、出撃します」

「木曾。クロスボーン・ガンダムバーストX1、出るぞ!」

「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

電にとって、初のチーム対抗バトルが始まる。

 

 

「……」

部室の外に、またしてもあの影がいた。そして、その影のニッと笑う。

「フフッ…ちょっと遊んでいこっかな…」

 

 

続く



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EP10 熱血のOG(後編)

港湾基地の一角。基地施設に囲まれた場所に3機のガンプラが集まっていた。電のイナヅマガンダム、時雨のガンダムレインバレット、夕立のユニコーンガンダムナイトメアだ。どうやら、時雨を中心に作戦会議をしているようだ。本来作戦会議は、試合前に行うものであるが今回は事前の作戦会議を出来なかったためにこのようなことになっているのだ。

「電。君は天龍先輩たちと戦うのは初めてだから先に言っておくね」

「え?」

時雨が作戦会議を開くにあたり、電に忠告を告げた。

「天龍先輩、龍田先輩、木曾先輩の機体は格闘戦にかなり強いセッティングがされているんだ」

「…コンピューター戦みたいに突撃するとやられてしまうということですか?」

「察しがよくて助かるよ。だからまず―――」

「夕立が先行して天龍たちの注意を引くっぽい!」

夕立が元気よく囮を引き受けることを告げた。時雨は夕立の言葉に、やれやれとため息をつくも自分の考えていた作戦を見事に言い当てた夕立に、流石だねと心の中で呟くのだった。

「そこに僕が狙撃を加えて撃破していくのが今回の作戦だ。電?」

「はい!」

「君は先行する夕立を援護してあげて。僕は単独で狙撃ポイントに向かう」

「電ちゃん。夕立の援護、しっかりお願いするっぽい!」

電は自信に満ちた顔で、なのです!と言ってみせた。その顔を見た時雨は、しっかりと頷くと―――

「じゃあ、作戦開始だ!」

3機のガンプラはそれぞれの戦場へ向かった。

 

バトルシステムが作り出したフィールドの端、そこにそびえるひと際背の高い倉庫に時雨のレインバレットは近づいていた。ここに来るまで基地のいりくんだルートを進んできた時雨は接敵することなく、割とスムーズにこの場所にたどり着いていた。

「周囲に敵反応はない、か…よし!」

倉庫の目の前に立っていたレインバレットはスラスターを使ったハイジャンプで倉庫の屋根に飛び移った。そして、シールドを倉庫の屋根に打ち付けシールドの上部にある窪みに長銃身のロングバレルビームライフルをセットした。ジェガンのシールドから作られているこのシールドはバイポットとしても使用できるように上部に窪みが付いているのだ。狙撃ポイントに到着した時雨は夕立たちに連絡を入れる

「こちら時雨。狙撃ポイントに到着したよ」

「こちらも予定ポイントに到着したところなのです!」

夕立と電は基地施設の一角で臨戦態勢に入っていた。

「時雨、了解っぽい!電ちゃん、行くよ―――」

夕立が攻撃を仕掛けようとしたその時だった―――

「っ!?」

時雨の操縦スペースにアラートが鳴り響き、黄色い閃光がレインバレットに向かって飛んできたのだ。それに気づいた時雨は、バックパックにアームで接続された大型シールドで受け止めた。爆発が機体の周りを覆う。その爆発は夕立と電のいた場所からもハッキリ見ることが出来た。突然の攻撃に戸惑った夕立は、時雨に大声で呼びかけた。

「時雨!時雨!大丈夫っぽい!?」

「…大丈夫だよ夕立」

「良かった~」

しかし喜ぶ夕立にもそれは飛んできた。

「ぽいっ!?」

今度はオレンジ色の閃光だった。慌ててそれを避ける夕立のユニコーンガンダムナイトメア。機体の態勢を立て直すと閃光の飛んできた方向を向いた。夕立が見たのは紅い胴体が腰から浮き上がった1つ目の機体と、ビームの刃を持つ薙刀を構え右腕に巨大なドラゴンハングを持つ黒い機体だった。

「あの機体は!」

「そう、天龍様だ!驚いたか夕立とちんちくりん?」

夕立と電の操縦スペースに天龍の声がこだまする。その声を聴いた夕立は背中に装備されている2本のエクスカリバー対艦刀を抜き放ち、大声で天龍に返事をした。

「さっきの貸し、100倍にして返すっぽい!」

「おい!オレの質問無視すんな!」

「夕立、突撃するっぽいー!」

そう言うと、夕立はユニコーンガンダムナイトメアのスラスターを全開にすると赤い1つ目の機体目掛けて突撃を開始した。

「ちょっと夕立さん!」

慌てて電が後を追った。一方の天龍と龍田は―――

「天龍ちゃん~あなた、どっちを相手にするのかな~」

「夕立に決まってんだろ!…と、言いたいところだが」

天龍はちらりと、イナヅマガンダムを見た。そして言った。

「あのちんちくりんの実力を見せてもらおうじゃねぇか。龍田、夕立の足止めを頼めねぇか?」

「了解だよ~それじゃ、先に行ってるからねぇ~」

そう言うと、龍田の駆る黒い機体「ガンダムドラグノフィア」は先行していった。それに続いて天龍も自分の愛機である「リヴァサーゴ」の胴体部を元に戻すとスラスターを噴かしイナヅマガンダムに迫った。

「見せてもらおうじゃねぇか…新入部員の力ってやつを!」

 

その頃、爆煙から出てきた時雨のレインバレットは体制を起こして周囲の確認を行っていた。

「さっきの攻撃は…」

レインバレットの頭部を左右させていると、再び黄色い閃光。いや、黄色いビームがレインバレットに迫った。

「くっ!」

時雨はレインバレットを飛翔させ、ビームを回避してビームが飛んできた方向にロングバレルビームライフルを構えた。そこに再度ビームが放たれた。それを空中ローリングで回避した時雨は操縦桿の引き金を引いた。

「見つけたよ!」

桃色の収束されたビームがビームの発射地点に向けて放たれた。それは、狙いたがわずの場所に直撃した。そこに爆煙が立ち昇ると、そこからビームライフルを撃ちながら急接近してくる機体を時雨は目撃した。背中にあるX字のスラスターと二振りの剣そして、黒マントを羽織った額にドクロレリーフが刻まれた黒と紺色の機体。

「相変わらず、いい狙撃のセンスだな時雨…だが!」

「あ!」

時雨は慌てて空いていた左手で背中にマウントされたビームサーベルと抜き放った。それに合わせて黒い機体もビームライフル「ザンバスター」を分割し、銃身を左手に持ち替えてライフルのストックとなっていた部分から海賊刀(カトラス)の刃を思わせるビームを発生させた。レインバレットのビームサーベルと、そのビームサーベル「ビーム・ザンバー」がぶつかり合う。バチバチッ!と激しいビームの火花が飛び散る。

「近接格闘戦を疎かにし過ぎてるな!」

「クッ!木曾先輩の機体…やっぱり凄いパワーだ」

木曽の駆るガンプラ「クロスボーン・ガンダムバーストX1」のパワーに徐々に圧倒されていく時雨のレインバレット。

「その程度なのか時雨?なら俺が、本当の格闘戦ってやつを教えてやるよ!」

大きく振り払われたクロスボーン・ガンダムバーストX1のビーム・ザンバーの勢いに押され、レインバレットは基地の地面に激しく叩きつけられた。

「うわっ!」

しかし、時雨はすぐにレインバレットを立ち上がらせるとスラスター全開でロングバレルビームライフルを撃ちながら後退していった。

「それで逃げたつもりなのか!?」

(クッ、夕立たちと合流しないと!)

分割した銃身部分であるピストル型のバスターガンを撃ちながらクロスボーン・ガンダムバーストX1がレインバレットを追った。

 

夕立のユニコーンガンダムナイトメアは抜き放ったエクスカリバー対艦刀を振り回しながら龍田のガンダムドラグノフィアと戦っていた。しかし、ユニコーンガンダムナイトメアの放つ攻撃をドラグノフィアは易々と避していた。

「うー!なんで当たらないっぽいー!?」

「そんな攻撃当たらないわよ夕立ちゃん?ほらほら、どうしたのかしら~?」

「ぽいー!!」

自棄になった夕立は対艦刀を大きく振りかぶってそれを上段からすさまじい勢いで振り下ろした。しかし、それを読んでいたかのように龍田はスラスターを少しだけ噴かしてサイドステップで回避すると、通り過ぎ際にユニコーンガンダムナイトメアの足を払った。

「あっ!?」

足を払われたユニコーンガンダムナイトメアは盛大に転倒、慌てて起き上がろうとした夕立はユニコーンガンダムナイトメアを反転させた。しかし、夕立の目にユニコーンガンダムナイトメアの喉元に突き付けられたビーム刃が映っていた。

「まだまだねぇ~夕立ちゃん」

「ぽい~」

 

一方その頃、電はというと―――

「おいおい、もう終わりかちんちくりん?」

天龍の駆るリヴァサーゴに圧倒されてしまっていた。ビームライフルも破壊され、ビームサーベルで何とか応戦するが、完全に天龍の手玉に取られていた。

「まだ、まだ電は戦えるのです!」

電は大声で叫ぶと、イナヅマガンダムのスラスターを全開で噴かしリヴァサーゴに迫った。右下段から左上段へ斬り払われたイナヅマガンダムのビームサーベルはしかし、リヴァサーゴを捉えられず大きな隙を作ってしまった。

「動きが単調だ!」

イナヅマガンダムの攻撃をギリギリのタイミングでバックステップで避けた天龍はすかさず反撃を加えた。強烈な飛び蹴りがイナヅマガンダムの胴体を捉え、吹っ飛ばす。そしてイナヅマガンダムは、基地施設の壁に叩きつけられた。

「ううう…」

「勝負ありだなちんちくりん?」

電は負けを認めようとしたその時だった―――

 

 

ピーピーピーピー!

 

 

バトルをしている6人の操縦スペースに接近警報が鳴り響いた。

「なんだ!?」

「接近警報なのです?」

「方向は…海の方っぽい」

「え?そっちのは誰もいないはずよ?」

「僕たち以外にバトルはしていないよね?」

「ああ。それじゃあ…」

接近警報はフィールドの果てに広がる海のほうを示していた6人と6機のガンプラが一斉にその方向を向いた。

 

 

あのガンプラは、いったい何なんだ――――

 

 

フィールド内の時間が進み夕陽に照らされる海の上。夕陽を背にしてそこに1機のガンプラがいた。

 

続く



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EP11 unknown

夕陽を背にして現れた謎のガンプラ(以降unknown(アンノーン)と表記)。この場にいる誰も見たことない機体の登場にバトルは一時中断となり6人はただ茫然とunknownを眺めていた。そんな中で天龍が口を開いた。

「あんな機体、システムに組み込まれてないだろ…いったい何だってんだ」

「わからん。だが、奴からは物凄い威圧感を感じるな…」

「夕立も同じっぽい…あんな威圧感は今まで感じたことないっぽい」

「僕たちは6機だけど、迂闊に動けばやられるかもしれないしね」

「どうするの~天龍ちゃん」

「なのです……」

お互いが動きを見せないままフィールド内の時間は更に進み、やがて夜を迎えた。夕陽が沈み、月明かりがフィールドを照らし始めた。そして、夕陽からの逆光で影しか見えなかったunknownが月明かりに照らされて姿を見せた。そして、6人がその姿を見て動揺したのは誰の目にも明らかだった。

「!?なんだよ、あれ…」

全身を真っ白に染め上げ、深紅に発光するツインアイと左右非対称の腕と頭部のマルチブレードアンテナ、4対の翼と腕・膝・翼部先端の深紅に発光する装甲。

「うへぇ~夕立の趣味じゃないっぽい~」

「確かにあのデザインは、ないかもね~」

「いや、そんなことも言ってられないかもしれないよ…」

「ああ、時雨の言う通りだろうな。あの左腕は…」

そして、unknownの姿で一番の異様さを放っていたのがその左腕だった。その形はまさに―――

「…まるで、深海棲艦。なのです…」

かつて彼女たちが幾度も戦火を交えた深海棲艦のまるで機械とも生物とも思えない艤装のような形をしていた。手の部分は大きく広がった爪になり、それを覆うように腕本体には数多のガンプラパーツが、腕自体に取り込まれたかの様に食い込んでいた。ガンダム頭部のマルチブレードアンテナ、長い刀身を持った刀、シュトゥルムファウストに、ヤクト・ドーガのファンネルラック、何の機体の物かもわからないほど変形したビームライフルとシールド。もはやそれは、腕と言えるのだろうかと思うくらいの異形だった。6人が衝撃を受けていた時、遂にunknownが動き出した。

「動いたぞ、気をつけろ!」

その異形な左腕を前へと伸ばして静止した。動きはそれだけだったが6人はそれぞれ身構えて警戒していた。その様子を見ていた影の口元が小さく笑った。そして―――

「まずはこれでご挨拶しようかな」

そう一言呟くと、unknownの左腕がまるで劇場版のガンダムOO(ダブルオー)に登場した金属異生体「ELS(エルス)」が形を変形させるようにうごめきだした。

「な、なんだよあれ!?」

「腕の形が…変形してるのです!?」

「でもあんなこと、プラスチックじゃ出来ない筈だよ!?」

「あ!あの形は―――」

変形が終了した左腕。その形はガンダム界でも屈指の殲滅力を有する兵器にそっくりだった。

「さ、サテライトキャノン!?」

 

サテライトキャノン

 

ガンダムXが装備する、月の太陽光発電施設からのマイクロウェーブをガンダムXが持つ背中のリフレクターでこれを受け、それをエネルギーに変え発射する強力な戦略級兵器。その威力の高さから「コロニー殲滅兵器」とも呼ばれている。

「!敵機のエネルギー反応が増えてるのです!」

「マイクロウェーブ無しで撃てるのかよ!?まずい、避けろっ!!」

狙われたのは天龍と電のガンプラだった。リヴァサーゴと、イナヅマガンダムはスラスターを全開で噴かしてサテライトキャノンの射線から退避を図った。そして―――

「それじゃあ、まず1発!」

 

ズドーン!!

 

サテライトキャノンの砲口から、巨大なビームが発射された。いや、もはやそれがビームなのか光の帯なのかさえわからないほど巨大だった。その光景は他の4人からも見えていた。そして、しばらくすると光の帯は消えた。

「天龍!おい、返事をしろ!」

「電ちゃん!電ちゃん!」

木曾と夕立がそれぞれのチームメイトの名前を呼んだ。すると、弱々しい声が通信で聞こえてきた。

「あ、ああ。聞こえてる…だが、オレは動けそうにねぇかもしれねぇ。機体の左半身をやられた」

基地施設の一角に左半身を失ったリヴァサーゴと、イナヅマガンダムがいた。左半身を失ってもなお溶けかけている足で立っているリヴァサーゴではあったが、動くこともままならないのは電でもわかった。天龍が弱々しい声で続ける。

「おい、ちんちくりん。俺にかまわず奴を叩くんだ」

「天龍先輩…」

「悔しいが、奴はオレより強い。だがな、この世に倒せねぇ敵はいねぇ…」

「……」

「ガンプラバトルはチーム戦だ。仲間を信じて戦うんだ、わかったらさっさと行けちんちくりん」

リヴァサーゴの右手がイナヅマガンダムの肩を掴んだ瞬間、リヴァサーゴはガシャン!と音を立てて崩れた。

「天龍先輩…」

崩れたリヴァサーゴを見下ろしながら、イナヅマガンダムは振り向いた。そして―――

「時雨さん、夕立さん」

「わかってるよ電」

「こっちはいつでも大丈夫っぽい!」

「俺たちも手伝うぞ」

「天龍ちゃんの仇、ちゃーんと取らないとだもんね」

5機のガンプラがそれぞれ武器を構える。そして―――

「皆で、あいつをやっつけるのです!」

こうして、unknownとの本格的な戦闘が始まるのであった。

 

続く



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EP12 始まりの決戦

「行くぞ!」

木曾の一声で5機のガンプラが一斉に動いた。まず、木曾のクロスボーン・ガンダムバーストX1と龍田のガンダムドラグノフィアがunknownの懐に向かって突撃していった。夕立のユニコーンガンダムナイトメアと、電のイナヅマガンダムが後に続き、時雨のガンダムレインバレットはその場にしばらく留まるとその場から少し離れた場所に陣取り、ロングバレルビームライフルを構えた。

「俺から仕掛けさせてもらう!」

「一撃撃破はナシでね~」

「一撃で仕留めるに決まってるだろ!」

クロスボーン・ガンダムバーストX1がビーム・ザンバーを横に薙ぎ払うように構え、一気に加速する。クロスボーン・ガンダムバーストX1の攻撃モーションに身動き一つ起こさないunknown。それを怪しそうに睨みつける木曾だったが、既にunknownとの距離はもうほとんどなく、ビーム・ザンバーを握った右腕もあと少しで胴体を真っ二つに出来る位置にまで来ていた。

「もらった!」

「フッ…」

影がニヤリと笑い。ビームの刃が胴体に直撃するその瞬間、それは起こった―――

 

スカッ―――

 

直撃するはずの胴体はそこになくビーム・ザンバーが空を切ったのだ。

「っ!?」

木曾が慌てて振り返ると、そこには上半身と下半身を分離させたunknownの姿があった。

「あれはインパルスガンダムの!チッ、龍田!」

「は~い」

次に接近していた龍田はドラグノフィアが右腕のドラゴンハングを展開すると勢いよくそれを打ち出した。

「いただきね~」

ドラゴンハングが分割された上半身に命中する瞬間、unknownは上半身を下半身と合体させると凄まじい速度で移動した。

「えっ!早―――」

目にも止まらない速さで動いたunknownは龍田の視界から完全に消えた。そして龍田がunknownを見失った僅か2秒後、ドラグノフィアの背部を衝撃が襲った。

「きゃあ!」

衝撃の正体はunknownが放ったキックだった。そのキックをもろにくらってしまったドラグノフィアは、木曽のクロスボーン・ガンダムバーストX1と衝突した。

「龍田―――グッ!」

「木曾先輩!龍田先輩!」

電の声がこだました。しかしドラグノフィアとクロスボーン・ガンダムバーストX1は衝突の衝撃で地面へ落ちて行った。それを眺めていたunknownの左腕が今度は四角い箱状の物体に変形し、そこから円筒状のミサイルが次々に打ち出されて2機が落下して行く方へと飛んで行った。

「しまった、この体勢じゃ!クソォ!」

地面に叩きつけられたクロスボーン・ガンダムバーストX1とドラグノフィアにミサイルが次々に降り注ぎ爆発する。

「ぐわぁぁ!」「あああ!」

しかし、爆煙を見下ろしていたunknownにユニコーンガンダムナイトメアが迫った。

「背中がお留守っぽいー!」

ユニコーンガンダムナイトメアはエクスカリバー対艦刀を大きくX字に振り下ろした。しかし、unknownはそれを急上昇で回避してみせた。その間にunknownの左腕がまた変形した。今度は肘までの部分が変形し、肘を発信源とした大型のビームソードの形になった。それが振り下ろした所でそれに気づいた夕立は操縦桿の武器スロットを操作して大きな三角形の絵柄が書かれたスロットを選択した。

「ぽいー!」

すると、肩に装備されたビームキャノンの砲身の先端部が切り離され、そこから長大なビームサーベルが発振されるとunknownのビームソードを受け止めた。バチバチバチッ!と凄まじいビームの火花が散っていた。しかし、徐々にユニコーンガンダムナイトメアはunknownのビームソードに圧されていった。そして―――

「ぽいぃー!!」

ユニコーンガンダムナイトメアは地面に向かって落ちて行った。そう、ユニコーンガンダムナイトメアは、空を飛ぶことは出来ない。それはこの機体を作った夕立が一番よく知っていたし、夕立が本機の製作でどうしても克服することが出来なかったことでもある。

「夕立さん!」

電が夕立の名前を叫ぶ。すると夕立ちは―――

「夕立の落としたビームキャノンを使って!ライフルになるっぽい!」

「はい!」

イナヅマガンダムは地上へ方向転換すると、地面スレスレでビームキャノンをキャッチした。すると砲身の下部からグリップが現れた。それを右手に持ち変えるとイナヅマガンダムはスラスターを噴かしながら180度全身を反転させビームライフルを上空へと向けた。しかし―――

「あれっ!?」

そこにunknownの姿はなかった。そして次の瞬間、電の操縦スペース正面の接近警報が鳴り響いた。

「えっ!?」

「電、避けるんだ!」

時雨の声が電に聞こえたのと、正面モニターにunknownの顔が映ったのはほぼ同時だった。

「あっ――――」

イナヅマガンダムはunknownの放ったパンチを顔面に受け、激しくふっ飛ばされた。

「はにゃぁぁー!」

「ふー、危なかったぽ―――きゃあっ!」

そして、丁度着地に成功した夕立のユニコーンガンダムナイトメアも巻き添えをくらって基地施設の壁に叩きつけられた。

「電!夕立!」

操縦スペースで叫ぶ時雨。しかし、そんな時雨の耳にも接近警報が届く。

「クッ」

慌てて身構えたその瞬間、レインバレットのバックパックに装備されたシールドとロングバレルビームライフルが突然爆発した。突然の爆発で驚く時雨が、操縦スペースのモニターで見たのは四枚の羽根を付けた円筒状の物体だった。

「ふ、ファンネル!?」

爆煙からよろめきながら立ち上がってきたレインバレット。しかし、接近警報が鳴りやむことを知らないかのように鳴り続けていた。そして、正面モニターが真っ黒に染まった。

「うわっ!」

いつの間にか零距離まで接近していたunknownの巨大な爪と化した左腕がレインバレットの頭部を鷲掴みにしていた。ミシミシ、とレインバレットの頭部にヒビが走る。

「く、まだ…」

レインバレットが胸上部のマシンキャノンで反撃するも、unknownは気にする素振りすら見せずレインバレットを真横にあった倉庫の壁へ向けて放り投げた。ガシャーン!と大きな音を立て倉庫が崩れ落ち、その下敷きになるレインバレット。

「あ――うわぁぁぁー!」

そして、基地施設で立っているものはunknownだけになってしまった。

「……拍子抜けしちゃうな~」

影がポツリと呟く。

「ま、いっか。それじゃあ最後の仕上げと行こうかな」

unknownが基地施設から飛び立ち上昇していく。そして、左腕を再びサテライトキャノン変形させた。それを地上へ向けて構える。ゆっくりとサテライトキャノンのチャージを始めるunknown。眼下の基地施設では大破乃至中破した5機のガンプラが倒れていた。

「クッ…クソ…」

「許さない。絶対に許さないから!」

「動いて!動いてよユニコーン!」

「ううう…僕らの完敗だ」

「アハハ、それなりに楽しかったよ」

しかしそんな中、夕立があることに気付いた。自身の目の前、正面モニターがゆっくりと明るくなっていったのだ。

「え?」

自身の目の前にいたイナヅマガンダムがゆっくりと動き出したのである。イナヅマガンダムは、壁から抜け出すとよろよろと歩きバランスを取ろうとしていた。

「い、電ちゃん?」

「ん?」

ゆっくりと地面に足を付け、ようやくバランスを取り戻し立った。それに気づいた影は、機体をイナヅマガンダムの方へと向けた。

「い、電は…」

そして、電はモニター越しに上空のunknownを見据えて叫んだ。

「電は、諦めないのです!」

電は、イナヅマガンダムのスラスターを全開で噴射させると上空のunknown目掛けて飛び立った。

「フフフ…いい根性だね。でも、もうお終いだよ」

そういった影は、サテライトキャノンの引き金を引いた。青白い光の帯がイナヅマガンダムに向けて走り、そして光の先端がイナヅマガンダムのシールドに直撃した。

「アハハハ!無駄なのに自らを盾にするなんて本当に――――」

「……でも……」

「ん?」

「それでも……それでも!電はぁぁぁー!!!」

「なっ!?」

光の先端はイナヅマガンダムのシールドで止まっていた。操縦スペースの各所が深紅に光り、アラートが激しく鳴り響いて機体がもう持たないことを知らせている。しかし、電は諦めようとしなかった。

「ググググ……」

「そ、そんな!サテライトキャノンを普通のシールドで受け止めるなんて!」

影はその光景に困惑していた。そして、あることに気づく。

「な!サテライトキャノンが―――」

「それでもぉぉー!!!」

(押し返されている!?)

普通ならあり得ない。だが、イナヅマガンダムはサテライトキャノンの放った光の帯を徐々に押し返していた。徐々に、徐々に――――そして―――――

「いっ、けぇぇぇぇぇー!!!!」

「!?」

基地施設の上空―――そこで巨大な爆発が起こった。

「電ぁぁー!!」

 

 

 

そして、巨大な爆煙の中から1機の黄色いガンダムが落ちてきたのだった。

 

 

 

unknownとの戦闘から1週間が過ぎた。この1週間、ガンプラ部のメンバーは各々の機体の修復に努めていた。中破程度の損傷で済んだ時雨と夕立は、4日かけて機体を完全修復出来たが、特に機体が壊れる直前までのダメージを受けた電はこの1週間部室に来ることもなかった。そして今日もまだ、電は来ていない。

「電ちゃん。大丈夫かな…」

「大丈夫だよ夕立。怪我をしたわけじゃないんだから、気長に待っておこうよ」

「ぽい~」

「……」

時雨と夕立はなかなか顔を見せない電の事が心配だった。しかし、心配をしたとしても自分たちには何も出来ない。そんな現状に置かれている自分たちが悔しくてしょうがなかったのである。

「……」

「……」

重い沈黙が部室を包み込んだ。そんな時だった――――

 

ガララッ!

 

部室の扉が勢いよく開き、薄い茶髪の少女が入ってきた。時雨と夕立が、2人揃って扉の方を向いた。そして、時雨は小さく微笑み、夕立は少女に飛びついた。

「ただいまなのです!」

「「―――おかえりっ!」ぽいー!」

 

続く



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EP13 バージョンアップ

最終回さながらの再会を果たした3人。しかし前回が最終回である訳はないし、電があの爆発で死んだわけでもないので、普通にお話は続きます。

「1週間丸々部室に来ないから本当に心配したんだよ?」

「ごめんなさいなのです。でも電、イナヅマガンダムのバージョンアップを思いついたのです…だから…」

「え!バージョンアップ!?」

「なるほど。それなら確かに1人部屋に籠って作っちゃうよね」

電の返答に納得する時雨。以前から電がイナヅマガンダムのパワーアップについて悩んでいたのは彼女も知っていたし、そして何より現部長としてガンプラバトルの全国大会地区予選までの戦力強化にも悩んでいた時期だったため、この前のunknownとの戦闘も機体が損傷しただけではなかった事に思えてきていた。そんな時雨の心境を知ってか知らずか夕立は電の新しいイナヅマガンダムに興味津々だった。

「電ちゃん電ちゃん!早くバージョンアップしたイナヅマガンダムを夕立に見せてほしいっぽい!」

「夕立、そう急かさなくてもイナヅマガンダム逃げないよ。でも僕も、イナヅマガンダムのバージョンアップは気になるかな」

「丁度いいからみんなの強化した機体を見せ合うっぽい!」

「なのです!名案だと思うのです!」

3人の意見が一致し、unknown戦での損傷から復活しバージョンアップを果たしたそれぞれの機体を見せ合うことになった。すると、時雨がある提案をした。

「どうせなら、実際に動かしながらお披露目にしないかい?じっくり見るよりも、連携の事とかも考えやすいと思うんだ」

「おー!ナイスアイデアっぽい時雨!」

「電も賛成なのです!」

「それじゃあ早速始めよう!」

システムを立ち上げる時雨。それに合わせて3人も準備を始める

「Gun-pla Battle stand up! Model damage level set to C.」

「please set year GP base.Beginning Plavsky particle dispersal. Field 01 Space!」

「Please set year Gun-pla」

音声に従って3人はそれぞれのガンプラを発進台にセットする。システムがそれぞれのガンプラを読み取り、3機のガンプラのメインカメラが光りを放つ。3人が操縦桿を掴み、システム音声が告げる。

「Battle start!」

3機のガンプラが発進体制に入り、発進台がカタパルトに覆われる。

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」

「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

3人の掛け声に応じたシステムが3機のガンプラをフィールドへと発進させた。カタパルトを飛び出すと誇大な宇宙空間が待っていた。奥には巨大な蒼い星、地球が煌めいていた。漆黒に包まれた広大な宇宙空間に3機のガンプラの現れる。ユニコーンガンダムナイトメア、ガンダムレインバレット、イナヅマガンダムだ。

「それじゃあまずは、僕がお披露目するね」

横一列に並んだ3機の中から時雨のガンダムレインバレットが飛び出す。しばらくして180度のターンをする。

「まず、胴体回り以外にアサルトシュラウドを取り付けて装甲を強化、肩には新しくセンサーも追加したんだ」

デュエルガンダムは原作中に中破した際にアサルトシュラウドと呼ばれる増加装甲を装着していた。勿論それはプラモデルでも実装されており、時雨は今まで両肩とバックパックにしか装備していなかった物を胴体回りを除いた全身に装備し、両肩横に更にセンサーを追加したのだ。

「全体的な重量が増加をしたけど、機動力はそのままって流石時雨っぽい!」

「元々のアサルトシュラウドが装甲強化と機動力強化を同時に行っていたからね。あとは、腰横にビームピストル2丁とビームダガーをシールドの裏面に追加したよ」

「ロングバレルビームライフルは何も触ってないのです?」

「うん。このままでも、威力は十分にあるからね。僕の機体強化はこれくらいかな」

「凄いのです時雨さん!」

「ありがとう電」

「じゃあ次は夕立がお披露目するっぽい!」

今度はユニコーンガンダムナイトメアがイナヅマガンダムの隣からから飛び出す。そして、時雨と同じように少し離れたところで180度ターンをする。

「外見はそんなに変わってないから省くから、まずは追加装備っぽい!」

そう言った夕立は、ユニコーンガンダムナイトメアの両腕を腰裏に回し、回した腕を勢いよく前へ向ける。その手には小ぶりのナイフが握られていた。夕立は逆手にナイフを握ったユニコーンガンダムナイトメアでナイフ連撃を披露してみせた。

「夕立の追加装備はこのナイフだけっぽい!」

「確かにこれ以上の格闘武器は逆にいらないだろうからね。それと流石夕立だね、見事なナイフ捌きだよ」

「えへへー接近戦法は夕立の得意分野だからね~」

「そう言えば陸上戦闘時の単独飛行は出来るようになったのかい?」

「うっ…時雨ってば鋭いところつくっぽい…」

「その様子じゃあダメだったんだね…まぁ、仕方ないか」

夕立の返答にため息を吐く時雨。元々、ユニコーンガンダムが飛べないことは本人も含めこの場にいる全員が知っていたし、それを飛べるようにするのもかなり至難の業であることも全員が知っている。しかし、夕立は慌てた口調で再び口を開いた。

「でもでも!それを補うくらい凄いことがあるっぽい!」

「な、何なのですかそれって!?」「そうなのかい?」

「見せてあげるっぽい!さぁ!素敵なパーティーしましょ!」

夕立は手元の操縦桿を操作し、武器スロットの一番端「SP」と表示されたスロットを選択した。するとユニコーンガンダムナイトメアのメインカメラが赤い光を放ち、そこから広がった赤い光が全身からあふれ出したのだ。そして次の瞬間―――

「これがユニコーンガンダムナイトメアの本当の姿――――」

夕立の言葉と共にユニコーンガンダムナイトメアの両足、腰、両腕、両肩、胴体の装甲が展開しそこから真っ赤に光るフレームが露出した。更にバックパックも変形し、収納されていたビームサーベルが展開し、頭部の両頬を覆っていた装甲が反転、バイザータイプになっていた顔面部が上へスライドし頭部内に隠され、金色の獅子の(たてがみ)のようになっていた角がゆっくりと開いてV字の形へと姿を変え、頭部の奥に隠されていたツインアイの顔――――ガンダムが姿を現した。ガンダムのツインアイが赤く光り輝く。

「ユニコーンガンダムナイトメア、ナイトメアモードっぽい!!」

全身の真っ赤なサイコフレームを光らせた、漆黒の身体と金色に光り輝く角を持つガンダムがそこにはいた。

「これは…」

「凄いのです…本当に変形したのです!」

「どう時雨?驚いたっぽい?」

今までのムー、とした表情から一変した夕立の自慢げな顔が時雨のあっけどられた目に映る。単独飛行が出来ないことに残念な顔をしていた時雨も、このユニコーンガンダムナイトメアの変形を見てしまった以上何も文句は言えなかった。

「ハハハ…僕の完敗だね。とても単純に驚いたよ」

「ふっふ~ん!夕立の完勝っぽい!」

とても得意げな表情の夕立。時雨も、やれやれと言いたげな表情でユニコーンガンダムナイトメアを眺めていた。

「夕立の強化はこれでお終いっぽい!最後は電ちゃんっぽい!」

「なのです!」

電はイナヅマガンダムをその場から飛翔し、クルクルと回転するとバッと身を翻らせ――――

「電の本気を見るのです!」

と叫び、説明を始めた。

「まず両肩のパーツはインパルスガンダムの物に戻して、その上にガンダムエクシアの肩パーツを改造したものを追加して装甲を強化したのです!あと、胸のマシンキャノンは完全な内装式にして、脹脛の横部分にスラスターユニットと3連装ミサイルポッドを装備したのです!」

「肩の形状に変化は見られないけど、まさか二重構造になってるとはね」

「マシンキャノンも完全に胸に埋め込まれてるっぽい!でもなんで?」

「それは電が作ったこの特製のバックパックなのです!」

イナヅマガンダムを180度ターンさせた電。今までは何もバックパックを装備していなかったイナヅマガンダムの背中に巨大な6枚のウイングと折りたたまれた2枚のウイング、下部ウイングに取り付けられたビームキャノンを付けたバックパックが装着されていた。

「そのバックパック…見た感じ(インフィニット)ジャスティスガンダムのファトゥム-01(ゼロワン)がフォースシルエットの基部に埋め込まれて主翼になってるように見えるけど…」

「でも、折りたたまれたウイングとビームキャノンもあるっぽい…夕立わからないっぽい」

「見ててください…」

そう言うと電は、手元の操縦桿の武器スロットを操作して初代ガンダムのバックパックのアイコンが表示されたスロットを選択した。

「バックパック射出なのです!」

電の声に応じるようにフォースシルエットに埋め込まれていたファトゥム-01がフォースシルエット基部から後ろに抜けると、スラスターを噴し自立飛行を始めた。

「!?ファトゥム-01が!」

「凄いっぽい!自立して飛んでるっぽい!」

「更に…主翼展開!」

すると今度は、折りたたまれていたウイングが展開されウイングの位置が少し下ではあるがフォースシルエットとなった。更に電が続ける。

「夕立さん!電のファトゥム-01に乗ってください!」

電は射出したファトゥム-01を旋回させユニコーンガンダムナイトメアの後方に向かわせた。

「ぽい!?」

「そうか!ファトゥム-01に乗れば、夕立の機体も陸上戦闘時に飛行ができるし、フォースシルエットならイナヅマガンダム自体の自立飛行も可能だ。電、お手柄だよ!」

「なのです!操縦は乗ったガンプラのファイターに受け渡されるから安心してほしいのです!」

「じゃあ、遠慮なく借りるっぽいー!」

そう言った夕立は、ユニコーンガンダムナイトメアをファトゥム-01に乗せ、飛行をする。それに続くようにレインバレットが後を追い、イナヅマガンダムが続く。

「ぽい!本当に夕立が操縦出来るっぽい!」

「凄いね電。夕立のナイトメアモードと言い、今日は驚かされっぱなしだよ」

「なのです!」

ファトゥム-01に乗り飛行するユニコーンガンダムナイトメアに、レインバレットとイナヅマガンダムが追いつき3機が共に並んで走る。

「これなら地区予選は余裕だね時雨!」

「あはは、そうかもしれないね夕立」

「電たちならきっと突破できるのです!」

「そうだね!必ず全国大会に行こう!」

「なのです!」「ぽい!」

共に並ぶ3機は、フィールドの向こうに見える蒼く輝く地球に向かって飛んで行った。

 

続く




いつも、「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。
さて次回は、これまでに登場した艦娘や深海棲艦、機体の解説を合わせて行いたいと思います。続きが気になっている読者の方には申し訳ありませんが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。


だからよぉ…止まるんじゃねぇぞ……


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EP13.5 登場人物&ガンプラ解説pt1

今回は登場したガンプラ、登場人物の解説です。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、もしご不明な点などがありましたら感想にてこっそり教えてください。また、挿絵などは使用しませんのでご了承ください(作者の画力はない)。
(初登場話については機体の姿が描写された話数を表示します)


機体名 イナヅマガンダム

型式番号 ZGMF-X56S-INDM

ファイター 電  初登場話 第2話  ベース機 インパルスガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 17.76m 重量 64.54t 

解説

電が姉たちのガンプラを見て、インパルスガンダムをベースに作り上げたガンプラ。元々優秀なインパルスガンダムの汎用性を更に高めることをコンセプトに設計されており、腰部のサイドアーマーにビームサーベルをマウントできるように改造、両肩のアーマーもガンダムエクシアに類似した形状の物に変更されている。また、胸上部にマシンキャノンを装備している。カラーリングは白と黄、山吹色そして紺色。当初は電の操縦力が機体の機動性に追いついていなかったためたびたび僚機に衝突していたが、電の操縦力上達により扱えるようになった。

 

武装

ビームライフル

インパルスガンダムのビームライフルをそのまま使用している。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル 2基

インパルスガンダムのフォースシルエットに装備されていた物を、腰部サイドアーマーにマウントできるようにした物。発振するビーム刃は桃色。

マシンキャノン 2基

胸上部に設置されている近接防御機関砲。ウイングガンダムゼロの物だが、防弾カバーが取り外されている。飛来するミサイルなどの迎撃、敵への牽制に使用する。

機動防盾

インパルスガンダムの装備していたシールド。電の改造により、原作同様の展開、縮小が出来る。

 

ファイター 電  容姿(艦これにおける)電

暁学園中等部1年生の元艦娘。気弱な恥ずかしがり屋でドジっ子でもある。その一方で、頑張り屋な一面を持ち、バトルになると少しアクティブになる。「~のです」という口癖があり、よく語尾にくっついてくる。ガンプラ製作においてはかなり高い技術を持っているが、操縦力はからっきしで当初は自らが製作したイナヅマガンダムを操縦できないほどだった。しかし、時雨と夕立との特訓により上達を見せイナヅマガンダムを操縦できるまでに成長した。

 

 

機体名 イナヅマガンダム(バージョンアップ版)

型式番号 ZGMF-X56S-INDM/Bup

ファイター 電  初登場話 第13話  ベース機 イナヅマガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 19.1m 重量 68.67t 

解説

unknownとの戦闘で頭部と胴体、腰部のみを残して大破してしまったイナヅマガンダムを修復、強化した機体。強化するにあたり、両肩をインパルスガンダムの物に戻しその上からイナヅマガンダムの装甲を重ね肩部の装甲を強化、両脹脛にはペイルライダーのスラスターユニットと3連装ミサイルポッドを移植している。また胸上部にむき出しになっていたマシンキャノンは完全に胸に収めらている。これは、電が新しく製作した専用バックパックが元々マシンキャノンのあった場所を覆ってしまうためである。更にこのバックパックは(インフィニット)ジャスティスガンダムのファトゥム-01(ゼロワン)とフォースシルエットを組み合わせて制作されており、ファトゥム-01はバックパックから切り離して僚機の支援が可能で、切り離し後はフォースシルエットの主翼を展開し機動力低下を防いでいる。また、フォースシルエット下部のウイングにはビームキャノンが装備されているが、これはウイングとは別々に駆動できるため空中でも安定した状態で使用できる。カラーリングはイナヅマガンダムと同じ。

 

武装

ビームライフル

イナヅマガンダムと同様の物。

ビームサーベル 2基

イナヅマガンダムと同様の物。

マシンキャノン 2基

完全に胸に収められた場所に移動してあるイナヅマガンダムと同様の物。

ファトゥム-01シルエット

(インフィニット)ジャスティスガンダムのファトゥム-01と、フォースシルエットを合わせたバックパック。フォースシルエットの主翼部分にファトゥム-01が入り込んだようになっている。このファトゥム-01はフォースシルエットの後部から抜くことが出来、その後は自立飛行で飛ぶ。また、僚機を上面に乗せることでサブフライトシステムとしても使用できる(この際の操縦は乗ったガンプラの操縦者に譲渡される)。

ハイパーフォルティスビーム砲 2門

ファトゥム-01の固定装備。強力なビームを撃つことが出来、分離時はビーム刃を展開できる。発砲ビームの色は緑色、発振ビーム刃は桃色。

グリフォンビームブレイド 2基

主翼部に装備されているビームブレイド。通り過ぎ際に敵機を攻撃できる。発振するビーム刃は桃色。

ビームキャノン 2門

フォースシルエットの下部ウイングに装備されているビームキャノン。下部ウイングとは別々に動かすことが出来、空中で使用する際も安定した姿勢で使用できる。発砲ビームの色は赤色の軸に白い帯。

3連装ミサイルポッド 2基

両脹脛のスラスターユニットに取り付けられた3連装のミサイルポッド。

機動防盾

イナヅマガンダムと同様の物。

 

 

機体名 ガンダムレインバレット

型式番号 GAT-X102R

ファイター 時雨  初登場話 第3話  ベース機 デュエルガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 72.3t

解説

時雨がデュエルガンダムをベースに狙撃に特化、夕立との連携を想定して製作した射撃特化のガンプラ。狙撃の精度を上げるために、右側頭部、右首元、シヴァ・ミサイルポッドを取り外したアサルトシュラウドを装着した両肩前面にセンサーを装備している。特に右側頭部のセンサーは高性能で、自身の髪留め意識した形がそれを物語っている。下半身にも追加装甲アサルトシュラウドが装着されており、片膝立ちでの狙撃姿勢安定を図っている。シールドにもバイポットとしての機能も付属されている。バックパックはアサルトシュラウドを装着し、そこから伸びるコネクターを介してフェネクスのシールド「アームド・アーマーDE」を装備している。これは、狙撃中の不意打ちを防ぐことを目的にしている。機体色は紺と水色、白でアームド・アーマーDEと頭部V字アンテナに山吹色を使用している。「レインバレット」という名前から「乱れ撃ちが得意」を勘違いされたことがあるらしい。

 

武装

ロングバレルビームライフル

シナンジュのビームライフルをベースに更に銃身と銃底部を伸ばしたビームライフル。本機最大の威力を誇り、射程距離もかなり長く更にビームを収束させることが可能。狙撃時はシールドをバイポットとして使用する。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

本機唯一の格闘装備。デュエルガンダム本来の固定兵装をそのまま使用している。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたデュエルガンダム本来の固定兵装のバルカン砲。ミサイルの迎撃などで使用する。

マシンキャノン 1基

左胸上部に装備された機関砲。零距離で使用すれば薄い装甲程度なら破壊できる。

アームド・アーマーDE 2基

バックパックから伸びるコネクタに装備された大型のシールド。狙撃中に不意打ちを受けた時にシールドとして使用する。また、先端部からビームも撃てる。ビームの色はオレンジの芯に水色の帯。

2連装ミサイルランチャー 1基

シールド側面に装備されたミサイルランチャー。

バイポットシールド

ジェガンのシールドをベースに作られたシールド。シールド最上部にはロングバレルビームライフルをセットできる窪み、シールド裏面の二脚、これらを使用し射撃を安定させるが可能。

 

ファイター 時雨  容姿(艦これにおける)時雨改二

暁学園高等部1年生の元艦娘。物静かで自分より他者を優先することが多い性格の持ち主で、現暁学園ガンプラバトル部の部長。一人称は「僕」。ガンプラ製作の腕はそこそこで、射撃に関しての改造・カスタマイズが得意。頭の回転が速く優れた洞察力を持ち、チームの作戦立案などリーダーとしての才能を持っている。いつもは夕立の世話をしていることが多いが、夕立の行動にツッコミを入れたり、呆れたりとよく夕立に振り回されている。しかし当の本人とはとても仲良しなので、素直に夕立のことを認めていることもしばしばあるようだ。

 

 

機体名 ガンダムレインバレット(バージョンアップ版)

型式番号 GAT-X102R/C

ファイター 時雨  初登場話 第13話  ベース機 ガンダムレインバレット

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 74.1t

解説

unknownとの戦闘で中破したガンダムレインバレットを修復、武装を追加して強化したガンプラ。今までのレインバレットでは両肩と下半身、バックパックだけに装備していたアサルトシュラウドを腕全体にも装着し装甲を強化、更に両横肩部には新たにセンサーを増設している。また腰部サイドアーマーにビームピストル2丁、シールド裏面にビームダガーを1基追加装備されている。

 

武装

ロングバレルビームライフル

ガンダムレインバレットと同様の物。

ビームサーベル 2基

ガンダムレインバレットと同様の物。

頭部バルカン 2門

ガンダムレインバレットと同様の物。

マシンキャノン 1基

ガンダムレインバレットと同様の物。

ビームピストル 2基

腰部サイドアーマーにマウントされたビームピストル。ストライクノワールガンダムのビームライフルショーティーを改造した物で、取り回しと連射速度に優れているが射程距離は短い。発砲ビームの色は緑色。

アームド・アーマーDE 2基

ガンダムレインバレットと同様の物。

2連装ミサイルランチャー 1基

ガンダムレインバレットと同様の物。

ビームダガー 1基

バイポットシールド裏面に装備されたビームダガー。刃渡りの短いビーム刃を発振し、緊急時における近接戦での使用を前提に装備された。発振ビーム刃の色は桃色。

バイポットシールド

ガンダムレインバレットと同様の物。

 

 

機体名 ユニコーンガンダムナイトメア

型式番号 RX-0-NTM

ファイター 夕立  初登場話 第3話  ベース機 ユニコーンガンダム(フレーム)バンシィ(外装)

機体データ(製作者の設定)全高 21.2m 重量 24.5t

解説

夕立がRG(リアルグレード)のユニコーンガンダムと、バンシィを使用して作り上げた近接格闘用のガンプラ。ユニコーンガンダムの赤いフレームに、バンシィの黒い外装を組み合わせたシンプルな構造をしており、ベース機からの大きな変更点は両肩部に設置された大型ビームサーベルを展開できるビームキャノンと、バックパックにソードインパルスガンダムのソードシルエットを装備していることの2点くらいだ。近接格闘戦に特化したカスタマイズが施されており、全身に多くの剣タイプの武装を持つ。その最大使用本数は6本で、肩部ビームキャノンからの大型ビームサーベル2基と両腕のビームトンファー2基、そして両手で保持している剣2本である。ただし、遠距離兵装においては肩部のビームキャノンのみ、自立飛行が出来ない、シールドを持たない事による防御力の低下などの問題点も持つ。夕立は本機を時雨との連携を想定して製作した。ただし「ナイトメアモード」の発動は調整中で使用できない。機体色は漆黒と、角部の金色。

 

武装

頭部バルカン 2門

頭部に設置された2門の機関砲。近接戦での牽制などに使用する。

肩部ビームキャノン 2門(大型ビームサーベル)

両肩にそれぞれ1基ずつ装備されているビームキャノン。ガンダムAGE-2ダブルバレットのツインドッズキャノンをそのまま移植しており、砲身部を取り外すことで大型ビームサーベルを展開でき、取り外した砲身部はビームライフルとしても使用できる。本機唯一の遠距離射撃武器。発砲ビームと発振ビーム刃の色は桃色。

ビームサーベル 4基

両腕部とバックパックに2基ずつ装備されたビームサーベル。腕部の物はホルダーから展開することでビームトンファーとして使用できる。発振ビーム刃の色は桃色。

ソードシルエット

ソードインパルスガンダムのバックパック「ソードシルエット」をそのままユニコーンガンダムのバックパックに装着した物。エクスカリバー対艦刀2基とフラッシュエッジビームブーメラン2基を装備している。任意でパージが可能。

エクスカリバー対艦刀 2基

バックパックのソードシルエットに装備された2振りの対艦刀。ビーム刃と実体刃の2種類の刃を持つ。柄同士を連結させることも可能だが、夕立は二刀流での戦闘を好むため滅多に使用しない模様。発振ビーム刃の色は桃色。

フラッシュエッジビームブーメラン 2基

ソードシルエットに装備されている2基のビームブーメラン。持ち手を握るとビーム刃を発振し、投げると弧を描いて手元に戻ってくる。発射ビーム刃の色は桃色。

 

ファイター 夕立  容姿(艦これにおける)夕立改二

暁学園中等部3年生の元艦娘。姉の時雨とは対照的な、元気溢れる性格をしておりまれに周囲のことが見えなくなることがありトラブルを起こすことがしばしばあり、更に先輩である天龍たちに対しても溜口。「~っぽい」と言う口癖が特徴で、事あるごとに連呼している。ガンプラ製作の腕は少し低めで、細かい改造などは少し苦手な一方で、ガンプラの操縦センスは荒削りながらなかなかの模様。だが天龍と龍田に軽くあしらわれる等、未熟な点が目立つが負けず嫌いな性格が幸いして何度も挑戦する粘り強さを持っている。

 

 

機体名 ユニコーンガンダムナイトメア(バージョンアップ版)

型式番号 RX-0-NTM

ファイター 夕立  初登場話 第13話  ベース機 ユニコーンガンダムナイトメア

機体データ(製作者の設定)全高(ユニコーンモード)21.2m(ナイトメアモード)23.1m 重量 24.9t

解説

unknownとの戦闘で中破したユニコーンガンダムナイトメアを修復し、武装を追加したガンプラ。と言っても、外見の変更はほとんどされておらず腰裏にナイフを新たに装備したくらいしか視覚では確認できないが、本機はunknownとの戦闘以前では使用できなかった「ナイトメアモード」を使用できるようになっており、これにより機体の出力を120%まで引き上げることが出来るようになった。ナイトメアモードを発動すると、両足、腰、両腕、両肩、胴体の装甲が展開し、内部の赤いフレームが露出する。バックパックの装甲も展開し格納されていたビームサーベルも展開する。最後に側頭部装甲が反転、バイザータイプの顔面部を内部に収納し、アンテナをV字に展開してガンダムタイプの顔面が出てきて完成する。本モードを発動したユニコーンガンダムナイトメアの姿は、赤く発行するフレームと漆黒の外装、金色の獅子の鬣を思わせる角も相まって、悪夢に出現する悪魔のような姿を連想させる。

 

武装

頭部バルカン 2門

ユニコーンガンダムナイトメアと同様の物。

肩部ビームキャノン 2基(大型ビームサーベル)

ユニコーンガンダムナイトメアと同様の物だが、ナイトメアモード発動時には大型ビームサーベルの刃渡りを延長することが出来る。

ビームサーベル 4基

ユニコーンガンダムナイトメアと同様の物。ナイトメアモード発動時にはビーム刃の延長が可能。

ナイフ 2基

腰裏に新たに装備されたナイフ。刃渡りが短く、小振りのため取り回しに優れている。敵の関節部や装甲の隙間などを狙うために装備された。

ソードシルエット

ユニコーンガンダムナイトメアと同様の物。

エクスカリバー対艦刀 2基

ユニコーンガンダムナイトメアと同様の物。

フラッシュエッジビームブーメラン 2基

ユニコーンガンダムナイトメアと同様の物。

ファトゥム-01

イナヅマガンダムのファトゥム-01に乗ることで使用出来る。ファトゥム-01の武装を使用可能。

 

 

機体名 リヴァサーゴ

型式番号 NMX-1083R

ファイター 天龍  初登場話 第10話  ベース機 リバウ

機体データ(製作者の設定)全高 19.9m 重量 47.5t

解説

天龍がリバウをベースにガンダムヴァサーゴの高威力武器を組み込んだガンプラ。近接格闘戦に特化させたカスタマイズが施されている。機体名に「ヴァサーゴ」と入っているがジオン系のガンプラも使用しており、上半身はシナンジュやリバウの面影を多く残っており、頭部はリバウの面影を残したモノアイとなっている。一方で下半身はガンダムヴァサーゴの特徴を残しつつ、ジオン系の脚部に多く見られる丸みを模した造りになっている。特に膝から下の部分は多数のバーニアを組み込んだゲルググやドムの(ゲルググやドムほど大きくはないが)脹脛部に似ている。更にシナンジュの肩アーマー部内側にビームブーメラン。ウイングバインダーを増設したバックパックに双刀を、そして胴体部を上へ動かすことで本機最大威力の武器「ギガソニック砲」を使用出来る。機体色は深紅を基調に、黒と黄色。

 

武装

ビームライフル

リバウの物ではなく、ジェスタのビームライフルを短銃身化した物。発砲ビームの色は黄色。

ギガソニック砲

ガンダムヴァサーゴのメガソニック砲を強化した武装。原形機と同じく、収束率の調整が可能で、収束モードと拡散モードを使い分けて使用する。発射時に姿勢安定をする必要がなくなったため汎用性が上昇している。発砲ビームの色はオレンジ色。

ビームブーメラン 2基

肩部内側に装備されているビームブーメラン。デスティニーガンダムの物をそのまま移植している。発振ビーム刃の色は黄色。

2連ビームトンファ― 2基

腕部に装備されているビームトンファー。シナンジュの装備していたものを増設した装備。

ビームサーベル 1基

ガンダムヴァサーゴの装備していた長大なビーム刃を発振するビームサーベル。腰裏にマウントされている。発振ビーム刃の色は緑色。

刀 2本

バックパックに鞘ごとマウントされている刀。アストレイレッドフレーム改のガーベラ・ストレート/タイガー・ピアスをそのまま使用している。天龍はこれをメイン武器としてよく使用する。

拡散ビーム砲内臓シールド

シールド表面にドムの固定兵装であった拡散ビーム砲を搭載した円形のシールド。近接戦時の目くらましなどに使用出来るよう出力はかなり低めの設定になっている。

 

ファイター 天龍  容姿(艦これにおける)天龍

暁学園の卒業生にして前ガンプラバトル部部長の元艦娘。好戦的で男勝りな性格をしており一人称も「オレ」となっている。高火力と、ジオン系の機体を好んで使用する傾向があり特に格闘戦の得意な機体が好き。ガンプラの製作技術と操縦センスは結構高く、特にリヴァサーゴは彼女の最高傑作でガンプラバトル部時代から長く愛用している。更に学生時代は地区予選準優勝を果たしている実力者である。龍田とは姉妹であり相棒、というほど仲が良い。

 

 

機体名 ガンダムドラグノフィア

型式番号 XXXG-000S

ファイター 龍田  初登場話 第10話  ベース機 シェンロンガンダム(アーリータイプ)

機体データ(製作者の設定)全高 17m 重量 7.7t

解説

龍田がシェンロンガンダムをベースに汎用性の強化を目指して製作したガンプラ。ベースとなったシェンロンガンダムは格闘戦に優れた機体だったが、射撃武装と火力が不足しておりこれを第1の改修点にしたカスタマイズが施されている。特に右腕部のドラゴンハングは射程距離の延長と威力向上を兼ねて大型化され、更に火炎放射の機能を2連装ビームキャノンに変更されている。胸上部にビームマシンキャノン、左腕にビームスポットガンを装備し、ビームライフル系の武装を使用しにくい本機の射撃力を補っている。また、近接戦闘で使用するビームグレイブトライデントは、薙刀状のビーム刃と三俣槍状のビーム刃を形成できるように改修されている。シールドも円形状の物から、シールドの縁をブレードとして使用できる楕円形状の物に変更され、防御と同時に攻撃を繰り出せるカスタマイズが施されている。機体色は黒とグレー、各所に金色を施してある。

 

武装

頭部バルカン 2門

シェンロンガンダムに元々装備されていたバルカン砲。敵機への牽制などに使用する。

ビームグレイブトライデント

バックパックに懸架している本機の近接格闘兵装。薙刀状のビーム刃を発振させるグレイブモードと、三俣槍状のビーム刃を発振させるトライデントモードを使用できる。発振ビーム刃の色は緑色。

ビームマシンキャノン 2基

通常のマシンキャノンとは違ってビームの弾を発射する。射程距離は短いが威力はかなりの物。発砲ビームの色は緑色。

ドラゴンハング

右腕部装備された特殊兵装。腕の形状を変更することなく使用でき、オリジナルよりも射程距離が延長している。敵機を捕捉し粉砕、もしくは零距離で2連装ビームキャノンを撃ち込むことが可能。

2連装ビームキャノン 1基

元々は火炎放射器だったがその機能をビームキャノンに変更した物。本機最大の射程と火力を持つ武器。発砲ビームの色は緑色。

ビームスポットガン 1門

左腕に装備されたビームガン。単射と、速射が可能で場所も取らない万能武器。発砲ビームの色は黄色。

ブレードシールド

縁をブレードとして使用できる攻防一体の楕円形シールド。

 

ファイター 龍田  容姿(艦これにおける)龍田

暁学園の卒業生にして、ガンプラバトル部のOGである元艦娘。大人びていて物静かだが、サラッとえげつない台詞を吐いたりする事がある裏番長みたいな性格をしている。ガンプラ製作技術は天龍と並んで結構高く、ガンダムドラグノフィアは暁学園高等1年生の頃から使い続けている機体である。また、操縦センスも高く単調な攻撃ならニコニコ笑いながら簡単に回避してみせる腕の持ち主。天龍と違って遠近を両立できるカスタマイズを得意としており、彼女が製作したガンプラは大半が汎用性を高めた機体が多い。怒らせるとかなり怖い。

 

 

機体名 クロスボーン・ガンダムバーストX1

型式番号 XMB-X1

ファイター 木曾  初登場話 第10話  ベース機 クロスボーンガンダムX1

機体データ(製作者の設定)全高 16m 重量 11.2t

解説

木曾が製作した格闘戦重視のガンプラ。元々格闘戦に優れたクロスボーンガンダムを更に格闘戦に特化させた機体で、武装はクロスボーンガンダムの物を多く流用してはいるものの全ての武装の出力が強化されている。素組を生かした設計がされているが、胸にある髑髏マークは高出力のメガ粒子砲へ換装され、左腕がソードストライクガンダムのソードストライカーに置き換わっている左右非対称の外見を持つ。頭部のV字アンテナも2本追加され計4本のアンテナを持っている。更にX字状のバックパックはコア・ファイターとしての機能をオミットし付け根の部分にコネクターを介した鞘状のマウントラッチを増設しており、これに2振りの大型の長剣を収納する。また、腰部フロントアーマーのスクリュー・ウェップとシザー・アンカーは右腕に装備されているパンツァーアイゼンにより外されている。機体色は黒と白、紺色のトリコロール。

 

武装

バスターガン

海賊が使用する古式拳銃を模したビームピストル。取り回しに優れるが威力は低い。発砲ビームの色は桃色。

ビーム・ザンバー

海賊刀(カトラス)の様なナックルガードと刃を思わせる長大なビーム刃を形成するビームサーベル。発振ビーム刃の色は桃色。

ザンバスター

バスターガンを銃身に、ビーム・ザンバーを銃底として使用するビームライフル。バスターガンよりも威力があり射程も長い。発砲ビームの色は桃色。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制などに使用する。

ビームバルカン 2門

胸上部に設置されたビームバルカン。ビームの為、頭部バルカンより威力は高い。

発砲ビームの色は桃色。

胸部メガ粒子砲 1門

本機最大の威力を誇る兵装。これの取り付けによって胸の髑髏マークは取り外されている。出力を調整することで、連射と照射を使い分けることが可能。発砲ビームの色は黄色。

マイダスメッサ― 1基

左肩部のソードストライカーに取り付けられているビームブーメラン。グリップを握るとビーム刃が形成され、投げると弧を描きながら手元に戻ってくる。発振ビーム刃の色は桃色。

パンツァーアイゼン 1基

左腕部に装着された小型のシールド兼ロケットアンカー。アンカー部はシールドとワイヤーで繋がっており、これをロケット推進で撃ち出す。アンカーは敵機の捕捉から自機の固定などに使用する。また、シールド表面にはビームコーティングが施されている。

ヒート・ダガー 2基

足裏部に内蔵された小型の実体剣。蹴りと合わせての攻撃が可能。

大型長剣 2基

X字状のバックパック付け根にコネクターを介した鞘状のマウントラッチに収められている大型の長剣。ソードストライカーのシュベルトゲベールを両刃状の実体剣に改造した物。ビーム刃は形成できないが、鋭い切れ味を持つ。

ABC(アンチ・ビーム・コーティング)マント

ビームコーティングが施されたマント。ビームに対して高い防御力を発揮するが、ビームサーベル系の直撃には耐えられない難点を持つ。

 

ファイター 木曾  容姿(艦これにおける)木曾改二

暁学園の卒業生にして、前ガンプラバトル部副部長の元艦娘。天龍同様男勝りで好戦的な性格をしている。その反面、天龍にほったらかしにされている電たち後輩を気遣うなど面倒見が良く、常に余裕を持った言動をしている。ガンプラ製作技術は天龍たちよりも高く、特に武器類に関しての改造と出力強化が得意。操縦センスも高く、特に高機動格闘戦闘を得意とし学生時代の撃墜スコアは天龍と龍田を凌ぐ実力の持ち主。ちなみにクロスボーン・ガンダムバーストX1はつい最近完成させた機体とのこと。

 

 

機体名 Unknown(アンノーン)

型式番号 No data

ファイター No data  初登場話 第11話  ベース機 No data

機体データ(製作者の設定)全高 No data 重量 No data

解説

電たちがバトル中に突如出現したガンプラ。機体色は白と黒。左右非対称の腕、頭部のマルチブレードアンテナ、4対の翼と腕・膝・翼部先端の深紅に発光する装甲を持つ。頭部のマルチブレードアンテナから推察するにガンダムタイプと想定され、下半身はZ(ゼータ)系の面影がある。そして、本機最大の特徴は数多くのパーツを取り込んだ巨大な爪を思わせる左腕である。その異形さから「まるで深海棲艦」と電から言われていた。更にこの左腕は劇場版ガンダムOO(ダブルオー)に登場した金属異性体ELS(エルス)がその形状を変化させるように変形をさせることが出来、その種類は歴代ガンダム作品に登場した兵器の数だけ存在すると予想される。第12話にて電とイナヅマガンダムの働きにより撃破されたが、バトル終了後にパーツの破片が確認されていない為、全く謎に包まれた機体となっている。

 

武装

No data

 

操縦者 影  容姿(艦これにおける)No data

黒いフードをかぶり顔を隠している為正体の確認が取れないが、口調からして少し幼い少女なのかもしれない。誰かの監視役を担っている模様。

 

 

登場人物解説

ネ級 容姿(艦これにおける)ネ級

「ネリタ模型店」で基本的に店番をしている元深海棲艦。陸に上がったことをきっかけにそれまで着ていた服を新調し、鋭利感が半端なかったブーツを普通のロングブーツに履き替えた模様(店番中はネリタ模型店のエプロンを着用している)。怖い見た目と低い声に反して、礼儀正しく心優しい性格をしている。店の前にあるショーウィンドウに飾られているガンプラは彼女が組み立てた物で、イナヅマガンダムを一目見ただけで性能を把握する優れた洞察力を持っている。組み立て室に引きこもりがちのタ級の目覚まし係でもある。

 

タ級 容姿(艦これにおける)タ級

「ネリタ模型店」の店主を務める元深海棲艦。一緒に陸に上がったリ級、ネ級と共にネリタ模型店を立ち上げた。最初は店頭で働いていたらしいが、いつの間にかバックパックに魅了され組み立て室に引きこもってバックパック製作にふけっているようになった。服装は汚れてもいい様に上下ジャージの半分ニートな服装をしている(勿論正装も持っている)。バックパック製作に入ると完全に周りが見えなくなり、ネ級の声もほぼほぼシャットアウトされている。ただし、現実世界に引き戻すには「バックパックの破壊」に関する会話をする必要がある模様。

 

影 容姿(艦これにおける)No data

黒いフードをかぶって誰かを見ていたもう1つの影。口が悪い模様。




いかがでしたでしょうか?これで1回目の登場人物&ガンプラ解説は以上となります。
次回からは今まで通りのお話の続きを投稿していくので楽しみにしていてください。


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EP14 地区予選前夜

「夕立さん。ファトゥム-01の調子はどうですか?」

ガンプラバトル部の部室で今日も練習に打ち込む3人。特に夕立は、イナヅマガンダムのバージョンアップに伴って使用できるようになったファトゥム-01の特訓を重点的に行っていた。今まで夕立が実現すらさせていなかった陸上フィールドでの自立飛行。それが出来るようになった以上、電と時雨の足手まといにはならないようにとの硬い決心と、自分のプライドが夕立を突き動かしていた。

「だいぶ上達したっぽい!大丈夫、足手まといにはならないっぽい!」

「確かに初めてファトゥム-01に乗った時より上手くなってるね。それに、夕立の腕は電も知ってるでしょ?」

「なのです!」

そして、一通りの練習を済ませた3人は明日に控えたガンプラバトル全国大会地区予選に向けて最終確認をしていた。

「じゃあ、明日は朝の8時に県立体育館に集合だよ。遅れないようにね」

「わかりました」

「よーし!今年こそ、「ソロモンの黒い悪夢」の異名轟かすんだから!」

「ソロモンの黒い悪夢?」

「そう言えば電は知らないんだったね。夕立の異名だよ」

「駆逐艦としての異名じゃなくて、ガンプラファイターとしての異名っぽい!」

夕立は過去に、この地区一帯で行われたガンプラバトル協会が開催した無双バトルロワイヤルバトルのイベントにおいて完成したばかりのユニコーンガンダムナイトメアで時雨と共に出撃。そのバトルの舞台になったのがジオン公国軍の宇宙要塞「ソロモン」で、夕立はこのバトルでCPU制御のガンプラを64機、戦艦を6隻、敵対ガンプラファイターのガンプラを4機撃墜する戦果を挙げたのだ。そしてユニコーンガンダムナイトメアの機体色と暗い宇宙空間での視認性低下が相まって、イベント参加者や、観客、更には地区の住民から「ソロモンの黒い悪夢」の異名を付けられたのだ。そして当の本人も満足しているようで、今年は特に去年の予選敗退の汚名返上に燃えているのだ。

「夕立さん凄いのです!そんな戦果、電絶対達成できないのです!」

「僕も姉として鼻が高いよ。おっと、話が脱線してしまったね。じゃあ、明日の相手について話しておくね」

「明日の相手はどこっぽい?」

「県立第1中学校だよ。去年も当たってる相手だけど、油断したら駄目だよ夕立」

「わかってるっぽい!」

「電はよく知らないのですが、がんばるのです!」

「それじゃあ、また明日。まずは初戦突破しよう!」

「「おー!」」

 

帰路についた電。時雨たちとはつい先ほどの交差点で別れ、1人自分が住んでいるアパートを目指した。3人の姉たちは遠くの学校へ通っている為、実質の一人暮らしである。

「いよいよ明日。地区予選なのです…」

そう呟いた電は、バックからイナヅマガンダムを取り出し両手でギュッと握りしめた。

「イナヅマガンダム。どうか、電に力を貸してください」

そして、イナヅマガンダムをバックに戻すと再び歩き出した電。しばらくして、アパートに到着した電は階段を上がり玄関の鍵を開けた。ガチャンという音が響き、扉を開けた電。その時、電の後ろから足音が近づいてきた。

「あ、電ちゃん。今帰ってきたところ?」

電が振り向くと、そこには少し茶色がかったセミショートの黒髪、黒に赤茶色の線が入った襟と青色のリボンを付けたセーラー服の少女が立っていた。

「吹雪さん。ただいまなのです」

彼女の名前は吹雪。電たちと同じ退役し一般人としてこのアパートに暮らしている元艦娘だ。姉たちが家を空けている為、いつも電のことを気にかけている優しい性格の持ち主である(艦これでは駆逐艦としての型は別々ではあるが、一応特型駆逐艦としては姉妹である)。

「おかえり。学校にはもう馴染めた?」

「なのです!友達も出来て、とっても楽しいのです!」

「そっか!なら、心配なさそうだね」

電はニッコリと笑って頷いてみせた。そして、ハッと地区予選のことを思い出すと、吹雪を誘おうと口を開いた。

「あ、そうだ!明日、ガンプラバトルの地区予選があるのです。吹雪さん、良かったら見に来てください」

「うーん。明日はちょっと用事があって行けそうにないかな…ごめんなさい」

吹雪は少し苦笑いして断った。電は、そうですか。としょんぼりした声で答えた。すると吹雪が小声で呟いた。

「………いよ」

「え?吹雪さん、何か言いましたか?」

「ううん何でもない!それじゃあ電ちゃんは明日の準備しないとダメなんじゃないの?」

「あ、そうだったのです!吹雪さん、失礼します!」

「頑張ってね。応援してる」

「ありがとうなのです!」

そう言って電は自分の部屋へと入っていった。吹雪は電を見届けると小さく微笑見部屋に入っていった。

 

続く



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EP15 地区予選開始

次の日、地区予選当日。県立体育館には物凄い人だかりが出来ていた。大会に出場する者、選手を応援する者、地区大会を見学しに来た者と、集まる人々はそれぞれだ。そして県立体育館の入口へと続く階段の前、そこには時雨と夕立が立っていた。つい数分前に到着した2人は電の到着を待っていたのだ。

「電ちゃん遅いっぽいー」

「まだ僕たちも着いて少ししか経ってないんだよ夕立…」

「ぽい~」

待つことが苦手な夕立は、その場にしゃがみ込んでしまった。その姿を見た時雨はやれやれとした顔をして腕時計を確認した。その時だった―――

「おーい時雨ー!夕立ー!」

2人の名前を呼ぶ声がして時雨と夕立その方に顔を向けた。すると、向こうから時雨たちと似た黒字に赤いラインの入ったセーラー服を着た明るい茶髪のボブヘアーに薄い赤色のカチューシャを付けた少女と、芦黄色の長いツインテールの少女、そして白地に青色のラインと黒い襟のセーラー服を着た青色のロングヘアーの少女が駆け寄ってきた。

「あ!白露たちっぽい!」

「ホントだ。おーい!」

手を振りながら駆け寄ってくる茶髪の少女、白露に手を振り返す時雨。すると、白露は周りの目を気にする素振りすら見せずに時雨に飛びついた。その勢いがすさまじかったのか、白露の突然の行動に驚いてか、時雨はその場に尻もちをついた。

「うわぁ!ちょっと白露、いきなりどうしたんだ―――」

尻もちをついた時雨の言葉を遮るように、白露は時雨の口の前で人差し指を立てて口を遮った。その白露の行動に時雨時雨は思わず口を閉じた。

「ふっふーん!言わなくてもわかるもんねー。いきなりどうしたいんだい?って言いたいんでしょー?」

「いや、そう言ったんだけど…」

「あらら、白露姉さんったら…」

続いて現れた芦黄色のツインテールの少女、村雨がかがみこんで尻もちをついた時雨と飛びついた白露を見てニコニコと笑う。

「村雨も見てないで助けてほしいな」

「久しぶりに会ったんだから、ちょっとは我慢してあげたら?」

「はいはーい!なら夕立に任せるっぽーい!」

「あらら、村雨の口癖盗られちゃった」

「ちょっと、白露姉さん。村雨姉さん。待ってー」

最後に駆け寄ってきた青色のロングヘアーの少女、五月雨。しかし、かなりの速さで駆け寄っていった白露に追い付こうとして走っていた五月雨は道路に落ちていた小石につまづき―――

「きゃあぁぁー!」

「へ?きゃあっ!」

盛大に村雨に衝突した。そこからドミノ倒しの要領で村雨が倒れ白露と時雨が巻き込んで倒れる。

「あー!」「ちょっとま―――」

「ぽいー!」

そして最後に夕立も巻き込まれて、そこには1つの山が出来上がった。

「すいません!遅れたので―――え?」

その場に電が到着したのはちょうどその時だった。

 

「えっと…これはどういう状況なのです?」

「あはは…こ、これはね…」

「五月雨が突っ込んできたっぽい!」

「ううう…ドジっ子解消への道のりは遠いよ~」

と、山を何とか脱出した時雨たちと話をする電。しかし、明らかにガンプラバトル全国大会の地区予選会場で起こることではないということなので、もはや意味が分からない。と言いたげ表情をしていた。流石の時雨もこの時ばかりは恥ずかしそうに頭の後ろを搔いていた。

「と言うか、この人たちは誰なのです?」

「あ、紹介するよ…僕と夕立の姉妹だよ。右から―――」

「はーい!1番先に自己紹介しちゃうよー!」

と、白露の元気はつらつとした声が時雨の言葉を再び遮る。時雨は、はぁ。とため息を1つ吐く。白露の自己紹介は続く。

「時雨のお姉ちゃんとはまさにこの私!1番の申し子、白露だよー!」

時雨の姉である白露。元艦娘で、白露型駆逐艦のネームシップでもある。とにかく1番が大好きな長女だ。

「はいはーい!村雨だよ!よろしくね」

次に自己紹介したのは村雨だ。時雨の妹で、夕立の姉でもある元艦娘である。世間では、白露よりお姉さんと言われることがあるが、当の本人はそこまで気にしていない模様。

「五月雨って言います!よろしくお願いします!」

最後に自己紹介したのは五月雨だ。艦娘の頃から続くドジっ子を何とか解消しようと努力する元艦娘だ。しかし、解消までの道はまだまだ遠い。

「あれ、春雨は何処っぽい?」

「そう言えば、いないね。どうしたんだろ?」

時雨たちにはもう1人妹である春雨がいるが、今この場にはいなかった。そのことが気になったことを悟ったのか、五月雨が口を開いた。

「春雨姉さんなら、今回の大会に出場するって言って受付をしに行きましたよ」

「え?春雨がかい?」

「はい!確か、県立第1中学校のガンプラ部として出場するって…」

「ん、県立第1中学校?」

その数秒後に、えぇー!!という絶叫が県立体育館にこだましたのだった。

 

開会式が終了し、AとBブロックに分かれた試合が始まった。第1試合となる今日は特に試合が多く、4台置かれているバトルシステムは既に満員状態だった。電たち暁学園ガンプラバトル部は観客席から各ブロックのバトルを観戦していた。しかし、制限時間が設定されているとはいえ、かなりのハイスピードで試合は進んでいく。出場している学校の中には電たちと同じ元艦娘の姿も見えた。

「あ!あれ金剛さんに島風と天津風じゃない?」

「本当だ…と、あっちには陽炎に不知火がいるね。確かあの2人は同じブロックだからもしかしたら当たるかもしれないね」

「あ、向こうの観客席に比叡さんに榛名さん、霧島さんもいますよ!金剛さんの応援かな?」

「それ以外思い浮かばないっぽい…」

時雨たちが喋っている間にも試合は進み、大会の進行アナウンスが暁学園と県立第1中学校の名前が呼ばれた。電たちは観客席から立ち上がり、1階へ降りて行った。階段を降り、1階の通路を歩く3人。

「よーし時雨!春雨が相手でも手加減なしだからね」

「わかってるよ。勿論さ」

「い、電も頑張ります!」

時雨と夕立がバトル会場に入った時だった。

「あれ、電?」

電が後ろから声をかけられた。その声は電がよく聞き親しんだ声で、電はハッとして後ろを振り返った。そこには癖のある茶色のボブヘアーと電とよく似た制服を着た少女が立っていた。

「い、(いかづち)ちゃん!?」

電はそこに立っていた自身の姉、雷に驚きを隠せなかった。

「どうしたのよ電。こんな所に居るなんて…あ!またガンプラバトルの見学?」

「え、えっと…実は電」

電が、雷の質問に答えようとしたとき、背後から時雨の声が聞こえてきたのに気がつき慌てて雷に一言言うと走っていった。

「雷ちゃん。ごめんなさい、またあとでお話しするのです!」

「あ、電!」

雷は走っていく電に手を伸ばすが、電はそのまま走り去ってしまった。

「電……」

電は扉から溢れる光に消えていった。

 

続く



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EP16 空に輝く光

体育館の1階に設置されているバトルシステム台の前に電と時雨、夕立は立っていた。そしてその台を挟んだ向かい側に紅い瞳と、鮮やかなピンク色と毛先が水色がかった髪を左側でサイドテールにして、白いベレー帽をかぶった時雨たちと同じ制服を着た少女が立っていた。

「春雨。まさか、こんな所で出会うとは思わなかったよ」

春雨と呼ばれた少女はニコリと笑って口を開いた。

「はい!時雨姉さん、夕立姉さん。お久しぶりです」

「時雨さん。こちらの方は?」

「僕たちの妹の春雨だよ。君とはゆっくり話がしたかったけど―――」

「春雨が相手でも夕立は手加減しないっぽい!」

と夕立は時雨の言葉を遮って、早くバトルがしたい。と言わんばかりに垂れた犬耳の様な髪をピョコピョコと動かしていた。時雨は、はぁ。とため息を吐くが、春雨も苦笑いになって口を開いた。

「あはは…相変わらずですね夕立姉さん…でも―――」

すると今度はキリッとした表情になった春雨は続けた。

「勝負ですから、春雨も全力で挑ませてもらいます!」

「春雨もやる気満々っぽい!さぁ、バトル開始っぽい!」

夕立の言葉に反応したかのようにバトルシステムが起動した。

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to B」

バトルシステムが起動し、ダメージレベルが設定される。全国大会地区予選ではこの「Bレベル」が原則として決められている。

「please set your GP base.Beginning Plavsky particle dispersal.Field 03 Forest.」

幾億万のプラフスキー粒子がバトルシステムから放出され、巨大な密林のフィールドが形成される。青々と生い茂る木々あちこちに点在する小さな高台と中央のひと際大きな高台が存在するフィールドだ。

「Please set your Gun-pla」

電たち3人と、春雨とそのチームがそれぞれのガンプラを目の前の台座にセットする。システムがそれぞれのガンプラを読み取り、ガンプラのメインカメラが光る。そして、ホログラフの操縦スペースが展開され球状の操縦桿をそれぞれが握りしめる。

「Battle Start!」

システムがバトル開始を宣言し、ガンプラが設置された台座がカタパルトに変貌する。それぞれのガンプラが発進体制に入り、そして―――

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」

電たちの3機のガンプラがフィールドに向かって発進する。そして、台の向こう側でも――――

「春雨。5.12(スプリアルレイン)ガンダム、出撃です!」

春雨のガンプラ「5.12(スプリアルレイン)ガンダム」が発進した。

 

「夕立さん使ってください!」

発進して早々、イナヅマガンダムはバックパックのファトゥム-01をパージしていた。パージされたファトゥム-01はユニコーンガンダムナイトメアを追いかけて飛び、その上にユニコーンガンダムナイトメアを載せると急上昇、イナヅマガンダムと、レインバレットに追いついた。

「さて、どう出てくるかな…」

「ジッと待ってるのは夕立苦手っぽい」

「空を飛んでる以上、ジッとなんかしてられないのです!」

「そうだね。電、夕立と一緒に先行してくれるかい?僕は一旦地上に降りて狙撃ポイントに向かうよ」

「了解なのです」「了解っぽい!」

作戦が決まった3人は、それぞれに行動を開始した。電と夕立はそのまま先行して中央の高台を目指し、時雨は地上に降下しフィールドが形成されたときに見つけていた狙撃ポイントへと向かった。

高台の中腹の台地に到着した電と夕立は、そびえたつ崖に背を当て周囲を警戒していた。ここに来るまで相手と接敵することはなかったことから、電は相手がまだこの高台を越えていないと思いそのことを夕立と相談していた。

「夕立さん。ここまで相手のガンプラと出会わなかったことを考えると…」

「うん。春雨はまだ、この高台を越えてないっぽい」

「高台を迂回してると思いますか?」

「迂回してるなら、時雨が攻撃してると思うっぽい」

「そうですね…」

そこからしばらく静寂が続いたが、その静寂は電と夕立の操縦スペースに鳴り響いたアラートによってかき消された。

「上!?」

太陽を背にし、長大なライフルを構えたガンプラが現れた。太陽の光に目を細めた電と夕立、そしてその目には長大なライフルを三角形上に取り囲むバインダーが赤い電撃を放っている光景が映った。

「命中させます!」

「!電ちゃん、避けて!」

「!?」

イナヅマガンダムと、ユニコーンガンダムナイトメアが飛び退くのと同時に、その場に長大な桃色のビームが直撃し大爆発を起こした。

「夕立さん!」

「ムムム…春雨、やるっぽい!」

 

電はバックパックに戻していたファトゥム-01を射出した。そしてすかさずフォースシルエットの主翼を展開しその場を離れた。そして、爆煙の向こう側にユニコーンガンダムナイトメアが飛んでいるのを確認しホッと安堵する。しかし、そんなイナヅマガンダムにオレンジ色のビームが迫った。電の目の前にX字状の4つの目とバインダーを持ったガンプラが見えた。ガンダムOO(ダブルオー)に登場した量産機、GN-X(ジンクス)だ。

「ハッ!」

電は機動防盾を展開させると、それを機体前方に構えビームを防いだ。

「電ちゃん!」

そこにファトゥム-01に乗ったユニコーンガンダムナイトメアが駆け付け、肩部のビームキャノンでGN-Xを追い払った。その隙にイナヅマガンダムは態勢を立て直した。そして、先程太陽を背にして現れたガンプラが姿を現した。背中のコーン型スラスターから淡い緑色のGN粒子を放出する、4枚のウイングバインダーと長大なライフルとシールドを持った鋭利的な頭部と細身の外見が目を引くピンクと白のツートンカラーで彩られたガンプラ。

「これが、春雨のガンプラ。5.12(スプリアルレイン)ガンダムです!」

 

「「あの機体は、1.5(アイズ)ガンダム?」」

観客席でバトルの様子を見ていた村雨と操縦スペースの電が呟く。観客席では村雨に続いて五月雨が口を開いた。

1.5(アイズ)ガンダムのカスタム機みたいですね。オリジナルと違って背中のウイングバインダーが4枚になってます!」

「それに見てあのGNバスターライフル。銃口が2門になってるし、おまけに機体の隅々が細くなってるわ」

「なんか元々の1.5(アイズ)ガンダムよりもっとスマートに見えますね!」

「う~あたしにはさっぱりわからん…」

と、解説をする村雨と五月雨の話に全く付いていけない白露だった。

 

「あれが春雨のガンプラか…」

狙撃ポイントから先程の光景を見ていた時雨。先程の5.12(スプリアルレイン)ガンダムの攻撃を見て春雨のガンプラのある程度の性能を予測していた。スコープ越しに見える中央の高台で起こっている戦闘。イナヅマガンダムがGN-Xと戦闘を始め、ユニコーンガンダムナイトメアが5.12(スプリアルレイン)ガンダムと、ドッグファイトを繰り広げていた。すると時雨は、レインバレットを中央の高台とは別方向である真横へ向けスコープを覗いた。

「気づかれずに接近しているつもりだったようだけど…残念だったね」

そして一言呟くと、操縦桿の引き金を引いた。桃色のビームが森の中へ吸い込まれていき数秒後―――

 

ドカーン!!

 

森の奥で爆発が起こった。

「え?」「ぽい!?」

「爆発?…まさか!」

突然起こった爆発は時雨を除く4人を驚かせるには十分すぎた。そして、時雨はレインバレットを再び中央方向に向けて呟いた。

「悪いね春雨。僕の機体のセンサー有効範囲は並みのガンプラを凌いでるんだよ…」

「くっ、流石時雨姉さん」

「隙だらけだよ!」

そう言うと再び時雨は操縦桿の引き金を引いた。放たれたビームは爆発に動揺して動きを止めていたGN-X目掛け飛んでいく。そしてそれは、咄嗟の反応で回避を行ったGN-Xの左腕を直撃し腕部を根元から弾き飛ばした。直撃はま逃れたものの左腕を失ったGN-Xは態勢を崩していた。

「電、今だよ!」

時雨の言葉が電の耳に届く。未だに爆発に驚いていた電だったが、時雨の言葉でハッと我に返り体勢を崩したGN-Xに照準を合わせる。

「もらったのです!」

イナヅマガンダムはビームライフルと、ビームキャノン同時発射した。緑と赤色の3本の閃光がGN-X目掛けて飛び、そしてそれらは胴体部を貫いた。GN-Xが爆発を起こし、消えた。

「あっという間に…でも、まだ終わってません!春雨は、1人になっても―――」

そう言うと、春雨は武器スロットの中から「SP」を選択した。

「絶対に諦めたりなんかしません!トランザムッ!!」

5.12(スプリアルレイン)ガンダムの目が光り、背中にある2枚のウイングバインダーがL字に折りたたまれ残りの2枚は下方へ大きく展開された。そして、コーンスラスターから放出されるGN粒子の放出量が増え、5.12(スプリアルレイン)ガンダムが赤みを帯びる。

「あれは、トランザム!?」

観客席で村雨が立ち上がって叫ぶ。

「村雨、トランザムって?」

白露がすっとぼけ多様な表情で村雨に聞く。

「トランザムって言うのはガンダムOO(ダブルオー)に登場するガンダムや一部の量産機なんかが使用できる機体性能を一定時間、基本スペックの3倍に引き上げることが出来るシステムなの」

「基本スペックの3倍!それってかなり凄いよね!?じゃあ、あの赤く光ってるのは?」

「あれは、機体内部に蓄積された高濃度圧縮粒子が全面解放されて機体が赤く発光する現象、更に発動中は残像が残るほどの高速移動が出来るようになるけど、限界時間を過ぎると、粒子の再チャージまで機体性能が大幅に低下してしまってまともに動けなくなっちゃうの」

「行きます!」

赤い衣を纏った5.12(スプリアルレイン)ガンダムは、目にも止まらない速度で夕立のユニコーンガンダムナイトメアに迫った。5.12(スプリアルレイン)ガンダムは右肘のGNコンデンサーに取り付けられたGNビームサーベルを抜き放ち上段から一気に振り下ろす。

「すごっ!何あの速さ、島風ちゃん以上に見える!」

「えーい!」

「なんのー!」

ユニコーンガンダムナイトメアはビームトンファーを展開し5.12(スプリアルレイン)ガンダムの攻撃を受け止める。しかし、5.12(スプリアルレイン)ガンダムの圧倒的なスピードに押し込まれ、ユニコーンガンダムナイトメアはそのまま地上へと落ちて行った。

「あ~!」

「まだまだぁー!」

飛ぶことの出来ないユニコーンガンダムナイトメアを追撃しGNダブルバスターライフルを放つ春雨の5.12(スプリアルレイン)ガンダム。夕立も近づかせまいとビームキャノンの引き金を引く。両者の間に桃色のビームが飛び交う。

「夕立さん!」

「!電ちゃん!」

そこにイナヅマガンダムがビームライフルを撃ちながら割って入ってきた。しかし、イナヅマガンダムが放ったビームを5.12(スプリアルレイン)ガンダムはそのスピードで見事に回避してみせた。春雨は機体を方向展開させイナヅマガンダムへ向かった。電は高速で空中を駆ける5.12(スプリアルレイン)ガンダムに何とか照準を合わせビームライフルを放つが、それは全て赤い残像の彼方へと流れていくだけだった。

「は、早すぎるのです!」

「ロックオン…そこです!」

5.12(スプリアルレイン)ガンダムのGNダブルバスターライフルから、集束されたビームが放たれる。

「あ!」

咄嗟に機動防盾を構え防御するイナヅマガンダム。しかし、攻撃を防ぎきることには成功するも機体はビームの勢いに押され後方へと飛ばされた。

「「電!」ちゃん!」

「うう…だ、大丈夫なのです―――」

「やぁぁー!」

態勢を立て直したイナヅマガンダムにGNビームサーベルを上段に構えた5.12(スプリアルレイン)ガンダムが迫った。

「電、避けるんだ!」

「っ!」

時雨が全力の声で叫ぶが時既に遅し、GNビームサーベルは上段から振り下ろされていた。イナヅマガンダムは機動防盾を構え防御姿勢を取った。そして――――

 

バキンッ!!

 

鈍い割れる音と共に機動防盾がGNビームサーベルによって両断された。

「やった――――あれっ!?」

 

 

しかし、そこにイナヅマガンダムの姿はなかった。

 

 

「いくらスピードが速くても…」

春雨の操縦スペースに電の声が届き、後方のアラートが鳴り響いた。春雨はハッとして後ろを振り向いた。そこにはビームライフルを構えたイナヅマガンダムの姿があった。電は、直撃の瞬間機動防盾を手離すとスラスターを一旦切って降下、そして5.12(スプリアルレイン)ガンダムが通り過ぎたのを見計らい上昇し後ろを取ったのだ。

「そんな!」

「真っ直ぐ進んでたら普通の的なのです!」

イナヅマガンダムが放ったビームライフルの光が春雨の目に入り、そして次の瞬間―――

 

5.12(スプリアルレイン)ガンダムは胴体部を撃ち抜かれ墜落、爆発した。

 

 

「Battle Ended!」

バトル終了を告げるアナウンスが鳴り響いた。バトルシステムがシャットダウンされ、フィールドと操縦スペースが消える。バトルシステムの台中央に胴体部を撃ち抜かれた5.12(スプリアルレイン)ガンダムが倒れていた。春雨は横たわる5.12(スプリアルレイン)ガンダムを見下ろし、ふぅ。とため息を吐いた。

「負けちゃいましたか…」

「春雨ー!」

「へ?きゃあ!」

バトルが終了するなり、夕立は春雨に駆け寄りそして飛びついた。飛びつかれた春雨は体育館の床に尻もちをついた。

「ゆ、夕立姉さん…」

「春雨!良いバトルだったっぽいー!夕立ったら、久しぶりに焦ったっぽい!」

「夕立…すぐ飛びつく癖は直した方がいいと思うよ?でも、僕もあそこでトランザムを使ってくるとは思わなくてビックリしたよ」

「なのです!トランザムが使えるほどのガンプラ作るなんて春雨さん凄いのです!」

電と時雨も春雨に歩み寄って口を開いた。尻もちをついたままの春雨は、えへへ。とテレ顔で頭を搔いていた。

「春雨、またバトルするっぽい!」

夕立が春雨に満面の笑顔で、再戦を願い出た。そして、それに答えるように春雨も満面の笑顔を作り、はい!と高らかに答えた。そして、体育館2階の隅っこからその様子を眺める影がいたことに誰も気づいていなかった。

「フフッ…いい道具(もの)見つけちゃった…」

 

 

 

夕暮れに照らされる住宅街を春雨が歩いていた。地区予選の1回戦で敗北を喫した彼女だったが、その心の中は晴れやかだった。夕立たちと交わした再戦の時が、待ち遠しくてたまらないと言わんばかりの表情だった。

「よし!今度は姉さんたちに負けないようにもっと強いガンプラ作らないと!」

そんなにこやかな表情で歩いていた春雨の表情は、横道から出てきたフードかぶった黒のロングコートを羽織った人物の言葉で一瞬にして険しいものへと変わった。

「待ってたよ。春雨ちゃん」

「!誰ですかあなたは!」

その人物から放たれるおぞましい何かを感じた春雨は慌てて身構えた。そして、しばらくの沈黙の後ロングコートが口を開いた。

「名乗るほどの者でもないよ。ただちょっと、春雨ちゃんの力を貸してほしいんだよね」

「っ!な、なにを言っているんですかあなたは!」

「まあでも、顔もわからなかったら普通は付いてこないよね――――」

そう言うと、その人物はフードをまくってみせた。そして、春雨に衝撃が走った。

「あ、あなたは――――」

その次の瞬間、その人物は春雨の首の裏をトンと叩いた。すると、春雨は気を失いその場に倒れてしまった。そしてその人物は、フードをかぶりなおすと春雨を担ぎ上げ路地裏へと消えていった。その口元は笑っていた。

 

続く




次回の投稿は、来年1月の2週目とさせていただきます。何卒、ご了承ください。


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EP17 荒野を裂く炎

ガンプラバトル全国大会地区予選、暁学園ガンプラバトル部2回戦の相手は水陸両用タイプのガンプラを使用する水面(みずめ)学園だった。水面学園は1回戦で水中からの奇襲で相手チームのガンプラを殲滅するという活躍を見せた。そして2回戦である今回のバトルも、彼らは運よく湖が存在する夜の森林地帯フィールドを引き当て水中で電たち暁学園ガンプラバトル部のガンプラを待ち構えていた。しかし―――

 

 

ドゴォォォーン!!!

 

 

バトル開始から数分後、フィールドの上空にある月から一筋の光が差し込んだと思うとその4.03秒後、湖が天に届くほど巨大な水柱を立てて爆発したのだった。そして―――

「Battle Ended!」

バトルは終了した。

 

「はぁ…まさか、ガンダムXを使ってあの方法をするとは時雨姉さんも変わってるわね」

「あはは…まあ、上手くいってよかったよ」

「村雨姉さん。さっきの爆発はいったい何だったんですか?」

試合終了後、体育館入り口付近で観戦に来ていた白露たちと話していた電たち。そんな中、五月雨に質問された村雨は苦笑しながら答えた。

「あれは、ガンダムX劇中で使われた戦法(?)よ。ガンダムXは背中のリフレクターで月から送られてくるスーパーマイクロウェーブを受信してエネルギーに変換するの、でも月から地上までは距離があるから4.03秒のタイムラグが生じるわ。それをあえて逆手に取って湖面にスーパーマイクロウェーブを当てて水蒸気爆発を起こし、敵部隊を全滅させたシーンがあったのよね。まさか、あれをやる人がいるとは思わなかったわよ…」

「じゃあ、あの月から伸びてきた光が…えっと…」

「あれは、マイクロウェーブを受信する前に受信するガイドレーザーよ。あれを機体が受信しないとマイクロウェーブを受けれないの」

「村雨さんって、凄く詳しいのです」

「???」

村雨の説明を真剣に頷きながら聞く五月雨、そして相変わらず白露の頭には?が浮かんでいた。そんな様子で会話を弾ませていた電たちに近づいてくる2人の姿があった。

「あら、白露型の面々で揃って何話してるの?」

声をかけてきたのは狐色のセミロングの髪を大きなツインテールにして黄色のリボンを付け、白のカッターシャツの上に緑がかった黒色のブレザーベストを羽織って黄緑のリボンを付けた目尻がキリッとした狐色の目をした少女だった。その声を聴いた白露が振り向く。

「あ、陽炎と不知火はっけーん!」

「久しぶりね白露!」

声の主は陽炎と呼ばれた少女だった。彼女もまた退役し最照光(さてらいと)学園の高校1年生として生活している元艦娘である。明るく楽天的な性格の持ち主であり、17人姉妹の長女である。

「白露さん、時雨さん、村雨さん、夕立さん、五月雨さん、電さんお久しぶりです」

次に口を開いたのは陽炎と同じ服装に赤いリボンをしてピンク色の髪をリボン型プラスチック飾りのゴムで短いポニーテールにしたスカイブルー色の目の少女、不知火だ。陽炎の1つ下の妹で、非常にクールで礼儀正しい性格をしている。陽炎同様、最照光学園高校1年生として生活している元艦娘である。

「陽炎、不知火、久しぶりだね」

時雨が1歩前へ出て陽炎と不知火に声をかけた。陽炎も、久しぶり!と返すと人差し指を時雨に突き付けて口を開いた。

「明日のバトル、悪いけど私たちが勝たせてもらうわ!」

「その様子だと、相当自信があるっぽい?」

「当り前よ!去年の様に行くと思わないでね!」

「去年の屈辱、今年こそ晴らさせてもらいますっ」

去年の地区予選でも、時雨たち暁学園は陽炎たちの最照光学園と当たっていたが結果は暁学園が勝利していたのだ。その為、陽炎と不知火の2人はリベンジに燃えていたのだ。

「はわわ!電たちも気合入れていかないとなのです!」

「残念だけど、今年も僕たちが勝たせてもらうよ。僕たちにも負けられない理由があるからね」

「全力でお相手するっぽい!」

5人はお互いの執念をぶつけ合っていた。

 

翌日、体育館では地区予選3回戦が行われていた。電たちはその3回戦の第1試合で、既に体育館のバトル台の前に立っていた。

「Please set your Gun-pla」

システムがガンプラのセットを指示し、5人がそれぞれのガンプラをセットする。セットされたガンプラのメインカメラが光りを放ち、操縦スペースが展開される。

「Battle Start!」

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」

電たちが出撃を終える。陽炎たちも出撃態勢に入っていた。

「今年こそ必ず勝つわよ不知火!」

「もちろんです陽炎。不知火。ガンダムXブルーフレア、出撃します!」

「必ず勝ってみせる!陽炎。ガンダムDX(ダブルエックス)イフリーティア、出撃しまーす!」

 

今回バトルの舞台となったのは砂塵が舞い、高く上がった太陽が照らす荒野だった。周囲には大小様々な岩山が存在し、その中を電たちの3機のガンプラが飛んでいた。

「このフィールドは見通しが良すぎるな…さて、どうしたものかな…」

時雨がポツリと呟く。今回のフィールドである荒野は非常に見通しの良い地形となっていた。狙撃機体である時雨のガンダムレインバレットとは相性が良いとは決して言えないだろう。

「とりあえず、夕立が先行するっぽい!」

そう言ってファトゥム-01に乗ったユニコーンガンダムナイトメアが全速で前進を開始した。慌てて電が制止をかける。

「夕立さん無理に突っ込んだら危険なのです―――」

電がそう言い切った瞬間。荒野の果てから青白い大きな光の塊が向かって来た。その光に気付いた3人は機体を急速に降下させた。3機のガンプラは何とかその光を回避したが、地面への衝突を余儀なくされた。

「はにゃー!」「うわっ!」「うへ~」

荒野の先、そこには6枚の黄金に輝くリフレクターを展開し、肩に2門の長大なキャノンを担いだ鋭利的な外見を持つ赤いガンダムと、淡い青色に輝くX字のリフレクターと赤いガンダムと同じく長大なキャノンを肩から担いだ青いガンダムがいた。

「第1射、失敗です。陽炎」

「あちゃー避けられちゃったか…仕方ない、前に出て攻撃よ!」

「了解!」

赤いガンダムを駆る陽炎と、青いガンダムを駆る不知火が、一気に電たちに向け前進を開始した。

「ううう…一体何が?」

「サテライトキャノンの奇襲を回避するなんてなかなかやるわね!でも―――」

赤いガンダムが腰の両サイドアーマーに装備されたビームサーベルを抜き放ち、柄同士を連結させて薙刀のようにするとようやく起き上がったイナヅマガンダムに迫った。

「ハッ!?」

立ち上がったイナヅマガンダムも咄嗟にビームサーベルを抜き放ち、両ビームサーベルが衝突した。桃色の火花がビームの刃から飛び散る。

「私のガンダムDX(ダブルエックス)イフリーティアは倒せないわ!」

陽炎のガンプラ「ガンダムDXイフリーティア」。ガンダムDX(ダブルエックス)をベースにずんぐりした外見を鋭利でスマートな外見に変更し、格闘戦に特化させる為ビームサーベルや、膝から足首にかけて発振するビームブレイド等が装備されている。

「ガンダムDX!そうか、さっきの光はサテライトキャノンの!」

「不知火、電はあたしが相手するわ!時雨と夕立を頼むわよ!」

「了解。徹底的に追い詰めてやるっ!」

鍔迫り合いをするイナヅマガンダムとイフリーティアの横を、サテライトキャノンの後部から抜き放った大型ビームソードを握りしめた青いガンダム「ガンダムXブルーフレア」が駆け抜けていく。ガンダムXをベース機とした不知火の機体、ガンダムXブルーフレア。素組を生かしながらも、下半身に重点的なカスタマイズが施されている。特に乱戦を想定して増設されたスラスターは、ガンダムX本来の装備であるリフレクトスラスターと合わせて凄まじい推力を発揮する。その凄まじい速度で、レインバレットに迫るガンダムXブルーフレア。レインバレットはロングバレルビームライフルで牽制をかけながら後退していく。しかし徐々に2機間の距離は縮まりブルーフレアが右側中段から、大型ビームソードを振るった。レインバレットは咄嗟にバイポットシールドでこれを防ぐが耐ビームコーティングが施されていなかったバイポットシールドは呆気なく両断されてしまった。

「クッ!」

両断されたバイポットシールドを手離し、後方にバックステップをしたレインバレットはロングバレルビームライフルを地面に捨てるとビームサーベルと、ビームピストルを抜いた。

「そこっ!」

再びレインバレットに大型ビームソードが襲い掛かった。今度は左下からの斬り上げで、時雨はそれをビームサーベルで受け止めた。

「くうぅぅ…」

「流石ですね時雨さん。しかし、どれだけ耐えられますか?」

「まだだよ!」

レインバレットの胸元に装備されたマシンキャノンが火を噴き、高速連射で発射された銃弾がブルーフレアの胴体に雪崩れ込んでいく。ブルーフレアが少しだけ態勢を崩すとその隙にとレインバレットはブルーフレアに蹴りをお見舞いする。ブルーフレアは両足を地面に当て、ブレーキをかけて態勢を整えていた。

「チッ!」

「時雨っ、今行くっぽい!」

そこに、エクスカリバー対艦刀を両手に装備したユニコーンガンダムナイトメアが迫った。右上段に担いだエクスカリバー対艦刀を袈裟斬りで振り下ろすユニコーンガンダムナイトメア。しかしその攻撃はブルーフレアがバックステップすることで回避されてしまった。エクスカリバー対艦刀の刃が地面を激しく抉る。

「甘いですよ。夕立さん」

「まだ夕立の攻撃は終わってないっぽーい!」

スラスターを噴かして再度ブルーフレアに迫ったユニコーンガンダムナイトメアは左手に握ったもう1本のエクスカリバー対艦刀を左から横一文字に切り払う。しかしこれもバックステップで回避されてしまう。しかし、夕立は攻撃の手を休めようとせず、今度は横一文字に斬り払った勢いをそのまま利用してユニコーンガンダムナイトメアを一回転させ左上段から斜め斬りを放った。この攻撃もブルーフレアに当たることはなかったが、遂に鍔迫り合いとなった。

「やりますね夕立さん…ですがっ!」

「え?キャア!」

鍔迫り合いの中、ブルーフレアの右手がユニコーンガンダムナイトメアの左肩を掴んだ。そしてその瞬間、ユニコーンガンダムナイトメアの横をブルーフレアが通り過ぎたと思うと、ユニコーンガンダムナイトメアが激しく地面に叩きつけられた。

「「夕立!」さん!」

「フフンッ悪いわね、もらったわ!」

「あっ―――」

電が一瞬みせたよそ見を陽炎は見逃さなかった。ビームサーベルを握っていない左の拳をイナヅマガンダムの顔面にお見舞いしたのだ。拳の直撃を受けたイナヅマガンダムは吹き飛ばされ、地面に仰向けに倒れこんだ。倒れたイナヅマガンダムを何とか立ち上がらせようとする電だったがそれより先に陽炎のイフリーティアが目の前に現れた。電は、目の前のイフリーティアの姿に恐怖したのか目に涙が浮かんできていた。

「そ、そんな…」

「これで終わりよ電!」

イフリーティアは分断したビームサーベルの片方を逆手に持つと、イナヅマガンダムのコックピット部分に狙いを定めた。そして、腕が下りる直前――――

 

パシュンッ!

 

「なに!?」

「陽炎、時雨さんがそっちに行きました!」

ビームサーベルを握っていたイフリーティアの手に緑色のビームが直撃した。残念ながら手からビームサーベルを弾いただけだったが一瞬の隙を作るのには十分だった。

「電、今だ!」

ビームを放ったのは時雨のレインバレットだった。不知火のブルーフレアに追われながらも電を助けるため、放った1発は見事目標に命中したのだ。

「時雨さん!?は、はい!」

言葉の意味を悟った電は、イナヅマガンダムのスラスターを全開で噴かし地面に機体を擦りつけながら離脱し、少し離れたところで機体を起こして地面に着地する。

「しまった!」

しかし、着地したイナヅマガンダムはそのまま膝をついて座り込んでしまった。

「き、機体が!?」

「電―――うわぁっ!」

「チッ、浅い!」

電の窮地を救った時雨だったが、後方から迫っていた不知火のブルーフレアが放った大型ビームソードの斬り上げをバックパックに受けてしまった。しかし、浅めに入った攻撃はバックパックを少し斬っただけだった。後ろからの勢いに押され、レインバレットがうつ伏せに倒れてしまった。

「時雨さん!」

「クッ!ううう…」

倒れ伏したレインバレットの隣にブルーフレアが着地する。不知火は申し訳なさそうな声で陽炎に話しかけた。

「すいません陽炎。不知火の落ち度です」

「いいっていいって!それより、時雨。どうする?」

不知火の言葉に明るい口調で答えた陽炎は、今度は時雨に通信で呼びかけた。

「な、何がだい?」

時雨が弱々しい声で陽炎に聞き返す。

「もう3人ともボロボロなのよ。降参するなら、ここで終わりにしてあげるわよ?」

「あはは…笑えない冗談だね陽炎」

「悪いけど冗談じゃないわ」

陽炎の提案を聞いた時雨は引きつった笑顔で答えてみせた。しかし、いくら時雨が強がっても今の電たち3人のガンプラは大破寸前、どう考えても勝利は果てしなく遠い場所にある。

「し、時雨さん…もう電たちじゃ…」

電もまたこの状況がどういう物かはハッキリとわかっていた。しかし、時雨は諦める素振りすら見せず、ポツリと一言呟き目を閉じた。

「ううん。まだ終わりじゃない……」

 

 

 

そうだよね――――

 

 

 

「夕立っ!!」

そして目をカッと見開き、夕立の名を叫んだ。

「―――あったりまえっぽぉーいっ!!」

ブルーフレアが立つ遥か後方から、大きな土煙を上げながら何かが迫っていた。慌てて不知火が機体を反転させる。そして気づいた。

「!?あれは!」

 

迫ってくる物の正体―――ナイトメアモードを発動したユニコーンガンダムナイトメアに―――

 

「な、何あの姿…」

「陽炎!」

ナイトメアモードを発動したユニコーンガンダムナイトメアの姿に衝撃を受けた陽炎が思わずたじろぐ。しかし、不知火の声で我に返り臨戦態勢に入った。

「全部のビームサーベル、出力最大っぽぉーい!」

ユニコーンガンダムナイトメアの肩部ビームキャノンの砲身が外れ、そこから超巨大なビームサーベルが発振される。その大きさはユニコーンモード時の数倍のと言っていいほど巨大だった。更に腕部のビームトンファーと、両手に握ったビームサーベルもそれぞれに刃渡りが延長していた。

「クッ、不知火!サテライトキャノンでやるわよ!」

「わかりました!サテライトキャノン、用意!」

そう言うと、陽炎と不知火は武装スロットからサテライトキャノンを選択した。背中のリフレクターが展開し、砲口がユニコーンガンダムナイトメアに向けられる。

「まだ撃てるのです!?」

「最初の1射目が撃てたんだ!きっと付近のプラフスキー粒子をエネルギーに変えるソーラーシステムを使ってるんだ!」

「流石時雨ね。でも、もう終わりよ!」

イフリーティアのリフレクターが黄金色に、ブルーフレアのリフレクターが淡い青色に発光する。そして――――

「サテライトキャノン、発射っ!」

青白い光の帯が、ユニコーンガンダムナイトメア目掛け進んでいく。

「夕立ぃー!」「夕立さーん!」

ユニコーンガンダムナイトメアが光の中に消えた。電と時雨の2人が、夕立の名前を叫ぶ。

「ふぅ…ビックリしたけど、距離があり過ぎたみたぃ―――」

「陽炎、上!!」

「え――――」

 

陽炎とイフリーティアが上を見上げる。荒野の上空。そこに奴はいた――――

 

「もらったぁぁー!!」

それは一瞬だった。地上に降り立ったユニコーンガンダムナイトメアはその場で一回転。桃色の光の中に2機のガンプラは消えたのだった。

 

 

「Battle Ended!」

 

 

バトルの終わりを告げる言葉が体育館に響き渡った。

 

 

続く




新年あけましておめでとうございます。新年早々、週終わりの投稿となったこと申し訳ありません。どうか本年も、「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」をよろしくお願いいたします。


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EP18 救済の魔弾

バトルシステムがシャットダウンされバトル台の上には腹部を両断されたイフリーティアとブルーフレアが倒れ、ボロボロになったイナヅマガンダム、レインバレット、ユニコーンガンダムナイトメアが立っていた。陽炎と不知火は未だに起きたことを理解出来ずにたじろいでいたが夕立の喜びに満ちた歓声で状況を把握した。

「やったぁー!!夕立たちの大勝利っぽーい!」

「そ、そんなぁー!」

陽炎が体育館全体に響くような大声で叫び、そのままガックリと項垂れた。項垂れた陽炎に不知火がゆっくりと近づくと、陽炎の身体を起こさせた。

「陽炎。負けてしまった以上認めるしかありません」

「し、不知火…」

「不知火たちも自分の出来る最大限のことをしました。しかし今回は、時雨さんたちが一枚上手だったんです」

「…クッ!うう…」

「陽炎さん…」

不知火に支えられ涙をぽろぽろ零す陽炎。そんな陽炎の手をギュッと握りしめ不知火が呟く。

「泣かないでください陽炎。陽炎型駆逐艦のネームシップの名が泣きますよ?」

「う、うん…!」

陽炎は涙で溢れる目をグシグシ、と拭き取り不知火の手を握ったまま顔を上げた。そして、ニッと笑った顔を作って電たち3人を指さしありったけの力を込めて叫んだ。

「今回は負けたけど、次に戦うときは3度目の正直!絶対に私たちが勝つんだから!」

陽炎のその目はキラキラと輝きを放っていた。それは再戦での勝利を誓うものと、少しの悔し涙による輝きだった。時雨も、フッと小さく笑みを浮かべ返した。

「その再戦、謹んで受けさせてもらうよ!」

「また夕立たちがコテンパンにしてあげるっぽい!」

「電も、全力でお相手するのです!」

3人の言葉を聞いた陽炎は口元で小さく笑うと――――

「フフンッ!返り討ちにしてやるんだから!」

そっと涙を流した。

 

ロビーとバトル会場を繋ぐ細い廊下を歩く3人。

「いやー陽炎。相当悔しそうだったぽいー」

「それは当たり前だと思うよ。夕立だって、負けたら悔しいだろう?」

「それは勿論っぽい…」

「なら、僕たちはあの2人の悔しさを馬鹿にしちゃ駄目なんだよ」

夕立との会話をただ聞いていた電は頷きながら口を開いた。

「電も同じ思いなのです。陽炎さんたちの分も、電たちが頑張るのです!」

「そうだね!電の言う通りだよ」

「ぽい!」

3人が会話を弾ませていると、目の前から別の3人組が歩いてきた。その内の1人が、(いかづち)だと気づいた電は、一瞬ハッとした表情になりその場に立ち止まった。それに気づいた雷は電に声をかけた。

「あ、電!さっきのバトル見せてもらっていたわよ!」

「い、雷ちゃん…」

「電どうしたの―――て、雷に最上、綾波じゃないか!」

「ん?あ、久しぶり時雨!」

時雨の言葉に気付いた最上と呼ばれた少女は手を振ってみせた。黒髪のショートヘアに、小豆色の生地に白線が入った襟のセーラー服に茶色のショートパンツと、非常に動きやすそうな服装の少女だ。彼女も元艦娘で、時雨とは旧海軍時代に共に戦った仲である為かなり仲が良い。

「まさか、こんな所で優勝候補の白守(しろもり)学園に出会えるとはね」

「あはは、そう警戒してくれないでよ時雨」

「お久しぶりです!時雨さん、夕立さん!」

「綾波、久しぶりだね」

綾波と呼ばれた栗色の長髪を黒く細いリボンでポニーテールにして、焦げ茶色のセーラー服を着た少女だ。彼女もまた元艦娘で、退役後は白守学園に通っている。

「綾波ちゃん!ここであったが百年目っぽい!」

「夕立さん、相変わらず元気ですね。それと先程の試合凄かったです!」

夕立の挑発に乗ることなく、話す綾波。そんな綾波に、無視するなっぽいー!と叫ぶ夕立。すると綾波は、すいません。と謝って夕立と話し出した。

「それにしても、電がガンプラバトル始めてるなんて驚いたわ!」

雷が一歩前へ出て電に話しかける。電はまるで申し訳なさそうな表情で口を開いた。

「あ、あの時は教えられなくてごめんなさいなのです」

「ううん!良いのよ電、それにしても電は上手なのね操縦」

「え?そ、そうですか」

「流石、「救済の魔弾」である雷の妹ね!誇っていいのよ?」

「「え?」」

時雨と夕立は雷の「救済の魔弾」の言葉を聞くと彼女の方を勢いよく振り向いた。

「え?い、雷が救済の魔弾?どういうことだい?」

時雨は完全に呆気取られていた。

「雷ちゃんがきゅ、救済の魔弾?え、ええ!」

夕立は衝撃を受けていた。

「ええそうよ、この雷様が「救済の魔弾」よ!驚いた?」

「「ええぇー!!」」

 

 

救済の魔弾

 

 

それは、雷の二つ名だ。以前に使用していた「ミゲル・アイマン専用モビルジン」のカスタムガンプラ「雷専用カスタムジン」での活躍が大きく影響しガンダムSEED(シード)に登場するキャラクター「ミゲル・アイマン」の二つ名である「黄昏の魔弾(たそがれのまだん)」と、「対戦相手のガンプラの武装のみを破壊して無力化する」という戦闘スタイルが合わさり「救済の魔弾」という雷の二つ名が生まれたのだ。時雨と夕立の2人も地区のバトルイベントに参加した際に目撃していたが、彼女の顔までは把握できていなかったのだ。そんな中で時雨は彼女の「的確過ぎる射撃」を目標として練習に励み、夕立もまたいつか彼女とバトルをして勝利してみたいという思いを持っていたのだ。

「ま、まさか。僕が憧れていたのが雷だったなんて…」

「夕立、驚きで心臓が爆発しそうっぽい…」

「あらら、全く仕方ないわね」

「あ~雷ちゃん。もうすぐボクたちの番だよ、そろそろ行こっか」

「あ、最上さんごめんなさい。じゃあね電、時雨、夕立」

「では皆さん。失礼します」

そう言って雷たち3人は会場へと歩いていった。電たち3人は雷たちの背中を眺めていた。

 

数分後、電たちは観客席にいる白露たちと合流し雷たちのバトルを観戦することにした。

「あ、時雨に夕立!お疲れ様!」

「う、うん。白露ごめん、白守学園のバトルが始まるからちょっと静かにして」

「ん?どうしたの時雨、真剣な顔なんかして」

「白露姉さん!」

村雨の言葉に、あ。と一言呟いた白露は口を閉じて会場に向き直った。

「あ、始まりました!」

五月雨が小さく呟いて白守学園のバトル台を指さす。電と時雨、夕立は固唾を呑んでバトルの様子を見ていた。

「最上たちの相手は私立黒城(こくじょう)高校みたいだね…黒城高校のガンプラはデストロイガンダムか」

「結構しっかり作りこまれてるっぽい」

「……」

デストロイガンダムは「ガンダムSEED DESTINY(シードデスティニー)」に登場する戦略級の性能と火力を有するMA(モビルアーマー)だ。円形状のバックパックと4門の大型ビーム砲がとても目を引く漆黒とグレーの巨大な機体だ。その圧倒的な巨大さに会場がどよめきを見せる。対する白守学園はと言うと―――

「デスティニーガンダムのカスタム機にガンダムサンドロックのカスタム機の様ね」

青と赤、そして白色のトリコロールで彩られたガンダムSEED DESTINYの後半主役機のデスティニーガンダムのカスタム機と、赤とグレーで塗装された大きなマントを羽織った「ガンダムW(ウイング)」に登場する局地戦ガンダム。ガンダムサンドロックのカスタム機、そして―――

「あ!あのオレンジの機体って!」

「間違いないのです。雷ちゃんのガンプラなのです…あれは、ガンダムキュリオスのカスタム機?」

オレンジと白、そして黄色のトリコロールで塗装されたガンダムキュリオスのカスタム機だ。バトルシステムが表現した今回のフィールドは、レンガ造りの建物が立ち並ぶ欧米風の市街地だった。その空をデスティニーガンダムとガンダムキュリオスが飛び、ガンダムサンドロックはスラスターを噴かし市街地を駆け抜けていた。そして、3機の目の前に漆黒の影が現れる。デストロイガンダムは、出撃早々に円形バックパックに装備された全方位ビーム砲と、指先のビーム砲をばら撒きながら接近してきていた。

「す、凄い射撃ですね!」

「うわ~あれ回避できるの?」

デストロイガンダムの全方位射撃に驚く白露と五月雨だったが、驚いたのは2人だけでそれ以外の電、時雨、夕立、村雨は何も言わずにその様子を見ていた。

「あれを回避するのは至難の技だ。でも…」

「きっと、意味がないっぽい」

時雨と夕立がポツリと呟きそして電が続ける。

「あの程度じゃ雷ちゃんは倒せないのです」

「「え?」」

白露と五月雨がそう呟いたのと、弾幕を全て避けデストロイガンダムの懐に入り込んだ3機がデストロイガンダムの武装を破壊し始めたのは丁度同じだった。デスティニーガンダムが赤く輝く翼を広げ大型対艦刀である「アロンダイトビームソード」で背面の4門のビーム砲を両断、ガンダムキュリオスが手にしたGNビームサブマシンガンを改造したライフルでバックパック側面の全方位ビーム砲を次々破壊していき、ハイジャンプで切り込んだガンダムサンドロックの赤熱化したヒートショーテルが指先のビーム砲を削ぎ落しそれに続いてデスティニーガンダムがもう片方の指先を斬り落とす。

「す、凄いね時雨…」

「うん。凄く息の合った連携だ。流石去年の予選突破校だね」

「ぽい…」

そしてガンダムキュリオスがデストロイガンダムの口吻部と胸部のビーム砲を全て破壊しデストロイガンダムが背中から崩れ落ちると、バトルは終了した。

「これが、雷ちゃんたちの力…」

電は真剣な表情で雷たちを見ていた。

 

 

 

 

 

暗く光の射さない階段をフードを被った黒いロングコートの人物が下りていく。肩には白いベレー帽にピンク色のサイドテールの少女が担がれていた。春雨である。完全に気を失った彼女はピクリとも動かず、目を閉じていた。やがて、黒コートの人物は突き当りの扉を開け中に入っていった。部屋の中はゴウンゴウンという奇怪な音が響き、薄暗い消えかけの蛍光灯で照らされていた。しかし部屋全体を見渡すには完全に不十分な光の量だ。そして黒コートの人物が口を開く。

「おーい!居る―?」

部屋の中にいる誰かに向けられた言葉、しかし返答はない。が、コツコツと足音が響いてやがて黒コートの人物の前にもう1人の人物が現れた。その人物も黒いフードを被っていて素顔は見えない。

「なんだよ?」

一言だけ呟くその人物の言葉に春雨を背負った人物は笑いながら答えた。

「連れてきたんだよ、これでメンバーが揃うんじゃない?」

「フンッ奴はオレ1人いれば十分なんだよ」

すると、そのフードを被った人物が荒れた口調で呟いた。

「まあまあ、ここは素直に私の案に賛成しといてよ」

フンッ、とそっぽを向いたその人物はそれ以降何も喋らなかった。すると春雨を背負った人物は、愛想がないね。と呟くと部屋の奥へ向かって行った。

「さて、この前の子たちはどうかな?」

部屋の奥に並んだ数基のカプセルの前で春雨を背負った人物が口を開く。数基あるカプセルの内、2基のカプセルは黒い液体で満たされ中に2人の少女が浮かんでいた。薄暗い室内ではその2人の少女が誰なのか把握できないが、春雨を背負った人物は1基のカプセルを見上げながら口元をニヤリとさせ更に続ける。

「こっちの子はいい感じに侵食されてるみたいだ。これなら、全国大会に間に合いそうだよ」

そして今度はもう1基のカプセルを見上げる今度は少し悩ましそうな口調で呟きだす。

「うーん、こっちの子はまだもう少し掛かりそうかもしれないな。ま、元々バトルは3人以上連れてけないから良いだけどね」

そして2基目のカプセルの隣、空のカプセルの前に立つとその人物は春雨を肩から降ろしてカプセルの台座の上に座らせると少し離れた場所のスイッチを押した。すると上に上がっていたガラス張りのカプセルが降りてくると台座と接続され、黒い液体が台座からあふれ出しカプセルを満たしていく。

「フフフ……これで春雨ちゃんも私たちの仲間入りだよ」

黒コートの人物が不敵な笑みを浮かべる。カプセルが黒い液体で満たされたその時ほんの少し意識を取り戻した春雨の虚ろな目にその笑みは映った。

(どうして…あなたが…)

そして、春雨はまた意識を手離した。

 

 

続く



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EP19 もう1人の…

準決勝まで駒を進めた暁学園ガンプラバトル部は、先の陽炎たち最照光学園とのバトルで傷ついたガンプラの修復に取り組んでいた。地区予選では準決勝以降になると、機体の修繕期間として1週間の猶予が与えられるのだ。これは、準決勝まで進んだ大会参加者のガンプラがそれまでのバトルで消耗し、ダメージが蓄積して本来の性能を発揮出来なくなってしまう。とのガンプラバトル協会の判断によりこのルールが定められているのだ。これは、全国本戦でも設けられており、全国本戦では5日間になっている。そして例によらず、暁学園の面々も修復作業を行うために部室にて作業をしていた。比較的損傷の少なかった夕立は1日で修復を済ませたが、電と時雨のガンプラはかなりのダメージを受けていたため既に3日も作業が続けられていた。

「夕立、ちょっとここ抑えててくれる?」

「了解っぽい!」

「ありがとう。よし、後は接着剤が乾くのを待つだけだね。電、君の方はどうだい?」

「はい!電も、後はこのパーツだけなのです」

「そっか、お疲れ様…ふぅ…」

時雨は一息つくように椅子の背もたれにもたれかかった。机の上には仕分けされ修復されたレインバレットのパーツが綺麗に並べられていた。時雨は少し目を瞑ると、後ろから夕立が時雨の両肩に手を置いて落ち込んだ表情で話しかけた。

「時雨ごめんね。夕立があの時不知火を倒せていたら…」

どうやら先の陽炎たちとの戦闘で時雨のレインバレットを損傷させてしまったことを悔やんでいる様だった。レインバレットに迫ったブルーフレアに真っ先に攻撃を仕掛けるも逆に返り討ちを受け、時雨のレインバレットは大破寸前までされてようやく助けることが出来たのだ。

「時雨のガンプラ、こんなにすることもなかったのに…」

更にボソボソと続ける夕立。すると時雨は椅子からゆっくりと立ち上がると、夕立の方に向き直り落ち込んだ夕立の頭に手を置いた。そして、小さな笑顔を作るとその頭をゆっくり撫でた。

「し、時雨?」

「夕立ありがとうね。僕のことをそんなに思ってくれて…でも、僕も夕立に謝らないといけない」

「え?」

「僕も、最後の最後で夕立に頼ってしまった、ごめんね」

時雨も最後の最後で夕立に全てを頼ってしまったことを悔やんでいたようで、小さく俯いてしまった。そして、時雨の言葉を聞いていた夕立は少し涙目になっていた。

「木曾先輩の言った通り、接近戦にも対応出来るようにならないと…」

「時雨ぇ…」

「夕立、僕たちはもっと強くならないと駄目なんだ。だから、力を貸してくれるかい?」

時雨のその言葉を聞いた夕立は、目元をゴシゴシと拭くと満面の笑みを浮かべ―――

「あったりまえっぽいっ!!」

と大声で宣誓してみせた。

「時雨さん、夕立さん。電も修復作業終わりました!」

夕立の宣誓とほぼ同時に電も機体の修復を終わらせ、椅子から立ち上がった。そして、2人の方を振り向くと円陣を組むように作戦会議を始めた。

「じゃあ、作戦会議を始めるよ。2人も知ってるように次の対戦相手は金剛さん率いる風天(ふうてん)学園だ」

陽炎たちとの試合の日、白守学園のバトルの観戦を終えた3人は次に控えていた自分たちの次の対戦相手を決める試合も観戦していた。そしてその試合で勝ち上がったのが金剛率いる風天学園だったのだ。風天学園はハイスピード、高機動なガンプラを使用してくる学園としてこの周辺地域では有名な学園だった。そして案の定、試合を見ていた電たち3人はそのバトルを見て驚愕したのだ。高速で行われるそのバトルは一方的な風天学園の勝利で幕を閉じたのだ。対戦チームのガンプラはスピードに翻弄され、あっという間に全機撃破されたのだ。

「時雨、どんな作戦で行くの?」

「高機動機体の対処法はいろいろあると思うけど、僕は敢えて受け身の作戦で行こうと思うんだ」

「受け身ですか…でもそれだと、ガンダムAGE(エイジ)のゼダスみたいになっちゃうじゃないですか?」

ガンダムAGEの劇中で主人公機であるガンダムAGE-1(エイジワン)は、高機動戦闘を得意とする装備「スパローウェア」を装備し、敵機であるゼダスに四方八方から攻撃を仕掛け機体の四肢を斬り撃破するという攻撃をしたのだ。つまり、固まって受け身の状態になれば、そう(・・)なってしまう可能性があるのだ。しかし、時雨は首を小さく横に振ると口を開いた。

「いや、金剛さんと島風の戦いを見たんだけど。どうも、その心配はないかもしれない」

「時雨?それって、どういう意味っぽい?」

「島風の機体はどうも射撃特化の機体みたいだったし、金剛さんの機体は格闘機体だけど何でかビームサーベルを使おうとしないんだよね」

「じゃあ、しっかり引き付けて狙い撃てば良いってことですか?」

「そう言うこと。じゃあ早速練習に入ろっか」

「あ、あの時雨さん、夕立さん!」

そう言って練習を始めようとした2人を止めた電。電の制止を聞いた時雨と夕立は電の方に振り向いて同時に、どうしたの?と言った。すると電は、自分の鞄から1冊のノートを取り出し2人に見せる。

「あの、雷ちゃん対策としてこれを考えたのです」

「ぽい?…し、時雨!これって…」

「なるほどね。たぶん、ルール的にも大丈夫な筈だ。わかった、協力するよ!」

「あ、ありがとうなのです!」

こうして、残りの4日を練習と電の提案を進めることに費やすことになった暁学園ガンプラバトル部。そして、準決勝戦の日を迎える。

 

体育館のバトル会場は、今まで4台置かれていたバトルシステムは1台を残して全て捌けられ、会場は更に観客が多くなったようにも思える。そして、準決勝第1試合である暁学園対風天学園の試合が始まろうとしていた。暁学園の3人が立つ反対側には白と焦げ茶色の巫女服の様な服を着て、アホ毛が目立つブラウン色のロングヘアーを両サイドでお団子にして金色のヘアバンドを付けた背の高い女性「金剛」と、大きなうさ耳リボンを付けた銀髪ロングヘアーに、ノースリーブのセーラー服に鼠径部がギリギリ隠れるようなミニスカートを履き、白と青の長い手袋と白と赤の縞々ストッキングを履いた少女「島風」と、銀色の長い髪をツーサイドアップで狐耳にしたような髪に、白地に黒い線が入った襟と焦げ茶色のシースルーワンピースを着て白い線が2本入った赤色の長い靴下を履いた少女「天津風」たちが立っていた。そして後方の観客席からは金剛と色違いではあるがほぼ同じ巫女服を着た比叡、榛名、霧島が応援をしていた。しかし、会場の歓声に3人の声はかき消されていた。

「金剛さん、島風、天津風…」

「Hey!時雨ぇ!そんな怖い顔するなんてせっかくの美人が台無しネー!」

「オウッ!電ちゃん、時雨ちゃん、夕立ちゃん、ひっさしぶり―!」

「久しぶりね3人とも!」

「島風ちゃん、天津風ちゃん、金剛さん、久しぶりっぽい!」

「お、お久しぶりです!」

「Youたちには悪いデスが今日のbattle、勝つのは私たちデース!」

金剛がビシッと電たちを指さし勝利宣言をする。しかし、時雨と夕立も負けじと強気の返事をする。

「夕立たちにも負けられない理由はあるっぽい!」

「だから、今回のバトル。勝つのは僕たちだ!」

「な、なのです!」

慌てて電も加わり、バトル前の緊張が一気に高まる。そして金剛が小さくニッと笑うと―――

「では!Battle startネー!」

「Gun-pla Battle combat mode stand up!model damage level set to B」

金剛の掛け声でバトルシステムが起動し、会場から大きな歓声が沸き上がる。

「Please set year GP base.Beginning Plavsky particle dispersal.Field 01 space」

大量のプラフスキー粒子が散布され、広大な宇宙空間フィールドが形成される。宇宙の中でも建造物の残骸が点在する暗礁宙域が今回のフィールドの特徴だった。

「Please set year Gun-pla」

電たち3人と金剛、島風の2人がそれぞれガンプラをセットする。システムがガンプラを読み込み、メインカメラが発光する。ホログラフの操縦スペースが現れ、それぞれが球状の操縦桿を握りしめる。

「Battle Start!」

ガンプラの周りがカタパルトで囲われ、それぞれのガンプラが発進体制に入る。

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」

暁学園の3機のガンプラが射出される。そして、バトル台の反対側。金剛たちも出撃を開始しようとしていた。

「島風、今回の相手は特に強いわ。大丈夫だとは思うけど、無茶はしないでよね?」

「任せて天津風ちゃん!島風。ウィンドガンダム、出撃しまーす!」

「ぜかましぃも気合十分ネー!私も負けてられないデース!金剛。ビルドバーニングラブガンダム、Take-offデース!」

島風のウィンドガンダムと、金剛のビルドバーニングラブガンダムが発進した。

 

「暗礁宙域か、ちょっと厄介だなぁ…夕立。」

暗礁宙域に入るなり、時雨はポツリと愚痴を呟いた。そして夕立に何かの合図を送ると夕立はそれに反応して、操縦桿の武装スロットから大型ビームサーベルを選択した。パージされた砲身部をレインバレットが確保すると、ロングバレルビームライフルを腰裏にマウントし2丁のビームライフルを握りしめる。電も、イナヅマガンダムの全射撃武器を構えた。

「電ちゃん、時雨、行くよ!細かいのは任せたっぽい!」

「なのです!」「うん!」

夕立がそう言い放つと同時に、ユニコーンガンダムナイトメアが前衛となって全速力で前進を開始した。大型ビームサーベルに次々焼き切られていく暗礁宙域に点在する残骸。

「いっけぇー!」

尚も前進するユニコーンガンダムナイトメアの後を追うイナヅマガンダムとレインバレットは、ユニコーンガンダムナイトメアが破壊しきれなかった残骸を次々に射抜いていく。そして、金剛たちの操縦スペースに接近警報が鳴り響く。

「早速来ましたネー!」

「待って金剛さん!何か様子がおかしいわ!」

「Waht!?」

島風のセコンドとして付いていた天津風が、接近する3機に違和感を感じたのだ。金剛もそのことを感じ取ったのか、天津風を一弁すると正面を向き直った。すると正面から大型ビームサーベルを展開しながら突っ込んでくるユニコーンガンダムナイトメアが見えた。

「ぜかましぃーひとまず回避デース!」

「ぜかましじゃなーい!」

そう言って回避行動を取った2人は後ろに続くイナヅマガンダムとレインバレットを確認し、ようやく3機が通り過ぎるのを見届けた。それは電たちも同じで金剛の燃える炎の様な頭部アンテナと、背中の6枚のスタビライザー、手甲を備えた両腕、脚部に備わった大型スラスターユニットと赤、白、金のトリコロールが目を引くガンプラ「ビルドバーニングラブガンダム」と、島風の白、青、赤のトリコロールカラーに、両側合わせて計10枚の白と青の背部ウイングバインダー、丸びを帯びながらもどこか角張った外見を持つガンプラ「ウィンドガンダム」を確認した。

「夕立、これくらいで十分だ!急いで密集隊形を作るよ!」

「ぽい!」「なのです!」

ビルドバーニングラブガンダムと、ウィンドガンダムを通り越してしばらくしたところで時雨は夕立にストップをかけた。その言葉を聞いた夕立は瞬時に機体を停止させ大型ビームサーベルも停止させた。それに続いて、イナヅマガンダムとレインバレットも停止しお互いの機体が背中合わせになった。

「村雨、時雨たちはいったい何やってるの?」

観客席で観戦する白露が、時雨たちの行動を村雨に聞いていた。村雨は白露に顔を向けることなく話し始めた。

「暗礁宙域で戦う場合。障害物が多いと敵が何処から攻撃される可能性があるの、時雨姉さんはその障害物を先に無くして、相手が攻めてきてもしっかり把握出来るようにしたのよ」

「…なるほど!海みたいにしたってことか!」

「…もうそれでいいわ」

白露の反応にため息交じりに呟く村雨。そんな中、背中合わせになった暁学園の3機に風天学園の2機が襲い掛かった。ビルドバーニングラブガンダムは両手の拳による接近戦で、ウィンドガンダムは両手に保持した2丁のビームライフルで攻撃を始める。

「速攻で決めちゃいマース!ぜかましぃ、援護は任せたデース!」

「よーし、ウィンドガンダムの射撃見せちゃうよー!って、ぜかまし言うなー!」

「島風、しっかり狙って一撃で仕留めてよ!」

まず狙われたのはガンダムレインバレットだった。レインバレットはユニコーンガンダムナイトメアのビームライフルに変わってビームピストルを装備し、ビルドバーニングラブガンダムに照準を合わせていた。ビルドバーニングラブガンダムの大きく振りかぶった拳が放たれる。

「これでFinishデース!」

「計算通りだ、電!」

「はい!任せてください!」

時雨の掛け声で、電はイナヅマガンダムをレインバレットの正面に飛び出させた。イナヅマガンダムは縮小させた機動防盾を構えた。

「Waht!」

ガキーン!と大きな音を立てて放たれた拳を受け止めたイナヅマガンダム。防御した時の反動でイナヅマガンダムは後ろに大きく飛ばされたが、その隙にビルドバーニングラブガンダムの真横に移動していたレインバレットは両手に握ったビームピストルを連射する。

「もらったよ金剛さん!」

しかし、金剛はビルドバーニングラブガンダムのスラスターを全開で噴かし、時雨の攻撃を回避してみせた。

「クッ、流石の速さだ」

「この程度じゃ私は討ち取れないネー!」

「時雨っておっそーい!」

「あっ!?」

レインバレットの上空からウィンドガンダムがビームライフルを放ちながら降下してくる。それをバイポットシールドを構えながら回避するレインバレット。ウィンドガンダムはそのままレインバレットに突撃し、すれ違いざまにレインバレットと衝突し駆け抜けた。

「うわぁ!」

「時雨!」

夕立が時雨の名前を叫びながら操縦桿の武装スロットからビームブーメランを選択した。ユニコーンガンダムナイトメアが右腕を背中にまわし三角形のビームブーメランを握ると、その腕を払うようにビームブーメランを投擲した。弧を描きながらウィンドガンダムを追いかけるビームブーメランだったが、島風はそのビームブーメランを回避してみせた。手元に戻ったビームブーメランをキャッチしたユニコーンガンダムナイトメアは左手にもビームブーメランを握ると、右手の物と同時に投擲した。

「もう1回っぽい!」

「へん!止まって見えるよー!」

ウィンドガンダムはビームライフルを左右に構えると、ビームブーメラン目掛け放った。そのビームは狙い違わずビームブーメランを破壊した。ウィンドガンダムが爆炎に照らさせる。

「あー、夕立のブーメランが…」

「へっへーん!私より遅いとこうなっちゃうんだよー」

操縦桿を握りしめながらドヤ顔をする島風。しかしそこに1機のガンプラが襲い掛かった。

「隙ありなのです!」

ウィンドガンダムの上空から、イナヅマガンダムがビームサーベルを振り下ろしながら現れたのだ。

「へ?きゃあ!」

反応が遅れた島風のウィンドガンダムは、右肘から下を斬り落とされてしまった。イナヅマガンダムは高速降下から反転、再度ウィンドガンダムに迫った。危険を感じた島風はウィンドガンダムを180度反転させ逃走を開始した。イナヅマガンダムは逃げるウィンドガンダムにビームライフルを放ちながら追撃を開始した。

「くっそー私が被弾するなんて…」

「逃がさないのです!」

「電、深追いは禁物だ!戻って―――」

時雨の言葉が切れる前にレインバレットの前を赤い影が通り過ぎた。時雨はハッとして、赤い影を追ったが追いつけない。

「しまった!電、避けるんだ!」

「え―――」

ウィンドガンダムを追っていたイナヅマガンダムの頭部に赤い拳が命中した。拳を放った正体は、金剛のビルドバーニングラブガンダムだった。ビルドバーニングラブガンダムの拳をもろにくらったイナヅマガンダムは激しく飛ばされ、宇宙を漂っていた。

「はにゃぁぁー!」

「ぜかましぃはやらせませーん!」

「金剛さん!」

そう言い放った金剛は、ビルドバーニングラブガンダムの各部スラスターを噴かし、イナヅマガンダムを四方八方から攻め立てた。それはまるで電が危惧していたガンダムAGEのゼダスのあり様と瓜二つだった。

「「電!」ちゃん!」

何とか救助に向かおうとする時雨と夕立だったが、そこにウィンドガンダムが残ったビームライフルを放ちながら割って入った。

「ここは通せんぼだよ!」

「島風ぇ!」

「意地でも押し通るっぽーい!」

ガンダムレインバレットと、ユニコーンガンダムナイトメアがウィンドガンダムに正面から攻撃を開始した。

 

四方八方から攻撃を受けボロボロになっていくイナヅマガンダム。ビルドバーニングラブガンダムの高速移動からの拳の叩き込みは止まることなく続けられていく。

「ああぁぁ!」 

「まだまだぁ!私は喰らい着いたら離さないワ!」

操縦スペースに電の悲鳴がこだまする。機体の操縦もままならずただただ、攻撃を受け続けるイナヅマガンダム。機体の各所にはヒビが入り、装甲の縁は徐々に欠けていく。そして遂にビルドバーニングラブガンダムが、止めを放とうとしていた。

「これでFinishデース!」

ビルドバーニングラブガンダムの右手が赤く輝きを放ち、ビルドバーニングラブガンダムは腰を落として構えの姿勢に入った。その赤い輝きは時雨たちにもハッキリと見えた。

「あれは、まさか!?」

「電ちゃん!」

2人の言葉も虚しく、ビルドバーニングラブガンダムは右手を前方へ突き出しスラスター全開でイナヅマガンダムに迫った。

「バァァァニングラブ、フィンガァァァー!!」

そんな中で正面モニターへ顔を向けた電。赤く輝くバーニングラブフィンガーはすぐそこまで迫っていた。

「あ、ああ……」

電が涙を流した。敗北を受け入れることが辛かった。悔しかった。そして何より、こんな時になっても何故か思っていた。

(負けたくない…負けたくないよ…)

その時だった――――

 

 

 

単純なのです――――

 

 

 

その言葉が4人の耳に届いたのは、イナヅマガンダムがビルドバーニングラブガンダムのバーニングラブフィンガーを零距離で回避した時だった。

「ナッ!」

金剛が驚愕した表情になり、声を上げた。そんな中、操縦スペースの電はニッと笑っていた。そして、高速と言って良い程の手捌きで武装スロットを操作しビームサーベルを選択した。そして、そのビームサーベルを――――

「消えちゃえなのです…」

その言葉と共にビルドバーニングラブガンダムに投げつけた。バーニングラブフィンガーを回避され困惑と驚愕に支配された金剛は回避できず、投擲されたビームサーベルはビルドバーニングラブガンダムの胴体中央部に根元までグサリと刺さった。更に電は武装スロットを操作し、今度はビームライフルを選択した。そして、照準をビルドバーニングラブガンダムに合わせると、連続で引き金を引き続けた。

「あははははははは!!消えろ消えろ消えろ消えろぉぉっ!!」

正確無比と言える連続射撃は次々ビルドバーニングラブガンダムに吸い込まれていった。

「ああぁぁぁっ!」

「「「………」」」

その光景に時雨と夕立、そして島風は言葉を失っていた。そして、ビームライフルを放ちながらビルドバーニングラブガンダムに接近していくイナヅマガンダム。

「終わりなのです…」

そして、零距離まで近づくとビームライフルの銃口をビルドバーニングラブガンダムの首元に当て引き金を引いた。緑色のビームがビルドバーニングラブガンダムを貫通する。そして、胴体に刺さったビームサーベルを勢いのまま引き抜き横一文字に切り払ったイナヅマガンダム。そして、ビームサーベルが抜けたのと同時にビルドバーニングラブガンダムは炎に包まれ、爆発した。爆炎に照らされたイナヅマガンダムのメインカメラが、キュピィン!と輝く。

「あんな…あんな戦い方…」

「まるで、悪魔だ…」

ビルドバーニングラブガンダムを撃墜した電は、操縦スペースで操縦桿を握りしめながら俯いていた。

「……フフフ………アーハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

そして、突然大声で笑いだした。

「い、電?」

「ど、どうしちゃったの…?」

「フフフフ…」

そして笑い終わった電は顔を上げ正面モニターに目を向けた。その顔はまるで獲物を見つけた悪魔の様に、口角を大きく上げニヤリと笑っていた。そしてその瞳は金色ではなく――――

 

 

 

深紅に輝いていた。

 

 

 

「次はお前なのです…」

ウィンドガンダムをニヤリと睨みつけた電は、イナヅマガンダムをウィンドガンダムに向け突撃させた。青白いスラスターの尾を引いて、イナヅマガンダムがウィンドガンダムに迫る。

「ハッ!島風、降参するんだ!」

その咄嗟の瞬間、時雨は島風に大声で叫んだ。

「えっ!時雨ちゃん何を!?」

「早く!でないと島風のガンプラまで金剛さんのみたいになっちゃうよ!」

「そうだよ!島風ちゃん、お願い!」

「島風!私からもお願い!」

このバトルに参加している全員の意見が一致した。島風の頭に先程のビルドバーニングラブガンダムの姿がフラッシュバックする。島風の額に汗が流れ、ゴクリと唾を飲み込む。そして、島風は降参を宣言した。

「Battle Ended!」

プラフスキー粒子が消滅し、スラスター全開で動いていたイナヅマガンダムはその勢いのまま台の外へと転がっていった。操縦スペースが消えていくことに気付いた電は、顔を上げ再びニヤリと笑った。

「フンッ。こんなんじゃつまらないのです…」

そう言い放った電。そして、その言葉を言い終わった電の瞳から赤みが消え、元の金色の瞳に戻ると電はその場に崩れるように倒れた。

 

 

続く



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EP20 秘密と決勝への先駆け

電が会場で倒れ時雨と夕立が慌てて助け起こされ、救護室に運ばれていった。その様子を見ていた観客席の雷たちや白露たち、金剛や島風、天津風も慌てて後を追いかけていった。

 

救護室のベットの上に横たわり目を瞑る電を心配そうに見つめる時雨たち。静まり返った救護室で夕立が口を開いた。

「電ちゃん、いきなりどうしたんだろ?急に人が変わったみたいに…」

「確かに…あんな電、僕も初めて見たよ。雷、何かあの電に心当たりはある?」

時雨に問いかけられた雷は、静かに首を横に振った。

「ううん…私もあんな電を見たことはないわ。私たちと暮らしてた時も、こんなことにはならなかったし…」

「そうなんだ…」

再び静まり返る救護室。電の小さな寝息と時計の針の音だけが、救護室にこだまする。それからしばらく時間が流れた時、何かを考えていた最上が静かに一言呟いた。

「まるでさ…」

「最上さん?」

最上の隣に立っていた綾波が最上の言葉に反応し聞き返す。綾波の声に気付いたその場にいた全員が一斉に最上の方に振り向いた。最上は右手を口元に当て考えながら口を開いた。

「…まるで、ガンダムOO(ダブルオー)のアレルヤとハレルヤみたいだよね。二重人格?って言うか、あの戦い方って言うか」

「え?」

最上が言った人物、アレルヤこと「アレルヤ・ハプティズム」はガンダムOOに登場する心優しい性格のガンダムマイスターの1人で、二重人格の持ち主だった。そして彼のもう1つの人格、ハレルヤこと「ハレルヤ・ハプティズム」は非常に好戦的な性格で、それがガンダムに搭乗した時もそのような戦い方をしていた。そのハレルヤの戦闘スタイルと、先の電の戦闘はまさにそれ(・・)と重なっていたのだ。そこに、時雨が何かに気付いたかの様に口を開いた。

「確かに…あの時の電の言動は、ハレルヤとよく似ていた。それに電の普段の言動を見ていると―――」

「アレルヤとハレルヤにそっくりっぽい!」

3人の言葉に周囲がざわつく。その場にいた全員が小声で口論をし始めていたその時だった―――

「うるさくて眠れやしないのです」

「!?」

不意にベッドから声がした。口論をしていた全員が慌ててベッドに振り返った。そこには体を起こした電がいた。慌てて雷と時雨がベッドに駆け寄り声をかける。

「い、電!大丈夫かい!?」

「どこか体が痛いところとかある!?」

2人の声掛けに、あぁん?と口を開く電。その言葉を聞いた2人は慌てて電の目を見た。そしてその目は深紅に輝いていた。

「そ、そんな…」

「おいおい、どうしたのです?」

先程のバトル中程ではないが、口の悪い言葉で話す電。そして、雷は両手で口を押えながら目に涙を浮かべていた。その場にいた全員が絶句していた。

「い、電……電ぁ」

「い、雷。どうして泣いてるんです?」

その言葉を聞いた雷は、一瞬ハッとすると泣きそうな表情で歯を食いしばりながら電に飛びつき、喉元に掴みかかった。

「い、雷っ!!」

「返してっ!私の…私の電を返して!」

「ちょ!離してくださいなのです!」

「黙りなさい!その声で…電の声で喋るなぁ!」

「ま、待て!電なら大丈夫なのです!」

すると、電の右目が深紅から金色になった。そして、その目がまるで憎むべき相手を見据える様な表情の雷を覗き込んだ。そして、ビクビクした声で慌てながら口を開いた。

「い、雷ちゃん…い、痛いのです、離してほしいのです…うぇ…」

「ハッ!?」

慌てて胸倉から手を放した雷。そしてよろよろと後ろにたじろぐと、大粒の涙を流しながら電を見据えて震える声で尋ねる。

「い、電…電、なの?」

「ど、どうしたのです雷ちゃん?電の顔に何か付いてますか?」

「…う、うわぁぁぁん!電ぁ―!」

すると今度は大泣きをしながら安堵に満ちた表情で電に飛びつく雷。そしてそれを見ていた全員が安堵する。そして今の状況が飲み込めない電は、慌てた表情で周囲にいる全員に声をかけた。

「あ、あの…この状況はいったい何なのですか?」

「あ~話すと複雑っぽい…」

夕立の言葉に周りの全員が、うんうんと頷く。電は頭の上に?を浮かべながら泣きついて離れようとしない雷の頭を撫でていた。すると時雨が口を開いた。

「簡単に説明すると、君はバトルの途中で倒れたんだよ。だから慌ててここ(救護室)に運んだんだ」

「え?じゃ、じゃあバトルはまだ終わってないのですか!?」

「あ、いや…バトルは―――」

「バトルならワタシが終わらせてやったのです」

「っ!?」

不意に再び、口の悪い(?)電の言葉が救護室に響いた。慌ててその場にいた雷以外の全員が身構えたが、時雨だけは電の目の色が変わっていないのを発見した。

「っ!目の色が変わっていない?」

「時雨どうしたっぽい?」

夕立の言葉に答えることなく、真剣な表情でその電(・・・)に話しかけた。

「君は…いったい誰なんだ?」

「ん?あんたはこいつ()が、時雨さんって呼んでた奴なのです?」

「そうだよ…僕は時雨。君が憑いている電とはチームメイトだ」

「おいおい、憑いているなんて失礼なのです。これでもワタシはこいつ()なのですよ?」

「君が電?どういう事か説明してくれるかな?」

表情一つ変えず、真剣な表情で電を見据える時雨。そしてその時雨を見ていた彼女の姉妹と、時雨をよく知る最上以外は、こんな時雨は見たことがないと驚くあまり絶句していた。すると電は、やれやれなのです。と呟き話し出した。

「簡単に言えば、ワタシはこいつ()のもう1つの人格。あんたらがさっき言ってた奴と、まぁ似たようなモノなのです」

「い、電の…もう1つの人格っ!?」

「そうなのです。まあ、ワタシもなんでこうなったのかはわからないですが」

「そ、そんな…電が二重人格なんて…」

電の話を聞いて雷は相当なショックを受けていた。そんな中でも、時雨は依然表情を変えず更に会話を続ける。

「じゃあ、1つ聞きたい。君が表に出ている時、電はどうなっているんだ?」

「完全に表に出た時は眠ってるのです。ま、今は半分出てきてるから起きてるよ。なぁ、電」

「は、はいなのです!」

「「電!?」ちゃん!?」

突然いつもの口調に戻って話した電。それは先程までの荒っぽい口調とは違う、彼女たちがよく知るいつもの電の口調だった。すると今度は電が喋り出した。

「確かにもう1人の電が出てる時は眠ちゃってるのです。でも、電にも何でもう1人の電がいるのかはわからないのです」

「そうなんだね。で、もう1人の電は今は起きてる…」

「ご名答なのです時雨!」

と、再び口調が変わる。なるほどね。と、納得した時雨はようやく強張った表情を解いた。すると今度は夕立が口を開いて尋ねた。

「片目が赤いままなのもそのせいっぽい?」

「たぶんそうだと思うのです」

と言って電が笑ってみせた。それを見てか、それまで泣いていた雷は再び電を抱きしめた。

「はわわ!い、雷ちゃんどうしたのです!?」

「そうよ電は電。うん、大丈夫…」

どりた表情を一瞬見せた電だったが、やがて穏やかな表情になり雷を抱きしめ返した。

「雷ちゃん…」

それから少しして、白守学園の3人は準決勝の為救護室から出ていき、電たちは救護室でしばらく話をしてその日は解散となった。

 

準決勝から4日、機体の修復作業を完璧に終わらせた暁学園ガンプラバトル部の3人は、決勝戦の相手となった白守学園とのバトルを想定した練習に励んでいた。そして、それと並行して電は「対雷用のある物」を3人の協力を得て制作していた。

「後は、ここのパーツを…よし!」

「ふぅ…やっとできたね電」

「でもまさか、こんなことを思いつくなんて。電ちゃん、案外頭が切れるっぽい!」

「えへへ、ありがとうなのです!」

夕立に褒められた電は照れ笑いしながら答えた。すると、電の左眼が深紅に変わった。

「お!ワタシの新しい機体の完成なのです?」

「あ、もう1人の電ちゃんが出てきたっぽい!」

「全く、いきなり出てくるのはやめてほしいな。もう1人の電」

「う…もう1人の電って言い方なんか腹立つのです」

「はわわ…喧嘩しちゃダメなのです!」

と、時雨はついさっき思い出したかのような口調でもう1人の電に尋ねた。それを聞いて、ぐぬぬ…と呟いたもう1人の電だったが、実際自分が名前を名乗ったことなど無かったしな…と思い両腕を組み目を閉じて何か考えだした。

「うーん…そうだな~裏の電…ウラノイナヅマ…ウライナヅマ…ウラヅマ…」

「君って頭の中で物事を考えられないタイプなんだね…」

「思いっきり声に出てるっぽい…」

もう1人の電が両腕を組みながら目を閉じてはいるが、声に出して考えているその光景に時雨と夕立は、苦笑しながらその様子を見ていた。案の定、2人の後頭部には漫画に出てきそうな大粒の汗が流れていた。

「ウラヅマ…ウラヅマ…あ!」

何かを閃いたのかもう1人の電が声を上げた。その声に、ピクッと反応する時雨と夕立。すると、もう1人の電が声高らかに宣言した。

「じゃあワタシの事は、ぷらづまって呼んでくれなのです!」

「君もなかなか…面白いこと言うんだね…」

「む、失礼なのです…」

「でもでも、ぷらづまっていい名前だと思うっぽい!」

「だよなぁ!」

「電もとってもいいと思うのです!」

結果、電のもう1つ人格の名前は「ぷらづま」に決定したのだった。はしゃぎ立てる夕立とぷらづま、やれやれとため息を吐く時雨、そしてニコニコと笑う電。今日も暁学園ガンプラバトル部は平和です。と区切りを付けたくなるような場面だはあったが、時雨が1つ咳ばらいをすると一気に部室は緊張感漂う空間へと変貌した。そして、全員が静まったのを確認して時雨が口を開いた。

「3人とも知っていると思うけど。決勝の相手は、白守学園だ」

その言葉に夕立と電がこくりと頷く。そして時雨がさらに続ける。

「あの3人を相手取る以上、まず障害となるのが雷の存在だろう」

「確かに、あの3人の中でも率先して前に出てくるもんね」

「なのです…そうなるとこちらは固まっていると危険なのです」

「そう言うことだね。だから今回は電―――」

突然名前を指摘された電は、少し驚いた表情で時雨の顔を見た。すると、目が合ったのと同時に、時雨は真剣な表情で電に話し出した。

「君に雷の相手を任せたいんだ」

時雨の口から語られた言葉は、電の想像していたものとは全く違った。電は一瞬驚くがやがて弱気な声で、でも…と一言呟き続きを話そうとしたが時雨の言葉がそれを遮った。

「勿論、危険なことに変わりはない。リスクも大きいよ。でも、雷の相手が出来るのは電しかいないんだ」

「え?い、電しか…ですか?」

そうだよ。と時雨がハッキリと頷き、続ける。

「電のガンプラ…イナヅマガンダムには雷と戦える力がある」

「い、雷ちゃんと戦える力…」

「大丈夫。電なら、きっとできるよ!」

「その為に今から練習するんでしょ?電ちゃん」

「夕立さん……わかりました。雷ちゃんは、電がお相手します!」

「ありがとう!よし…これで行けるね!」

「なぁに、いざって時はワタシもいるのです!大丈夫なのです!」

「ぽい!夕立も全力で頑張るよ!」

こうして、決勝までの残り3日間。暁学園ガンプラバトル部はこれまでにない練習に打ち込んでいったのだった。

 

 

そして、遂に決勝戦当日―――――

 

 

体育館の中央、バトル台を挟んで6人の少女たちが立っていた。そして、彼女たちお互いの瞳は、バトルの先にある勝利だけしか見つめいないような物だった。

「交わす言葉はない。って感じだね3人とも」

バトル台の向こうで最上が口を開いた。それに答えるように時雨が頷き、言葉を返す。

「うん。最上たちもそうみたいだね」

最上が頷き返すと、今度は最上の隣に立っていた綾波が口を開く。

「綾波たちにも、負けられない。譲れないものがあります!」

それに答えるように夕立が叫ぶ。

「夕立たちもそれは同じっぽい!」

そして、電が続く。

「今日勝つのは、電たちなのです!」

その言葉を聞いた雷がニッと笑ってみせ叫んだ。

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらうわ!」

6人の表情が一層引き締まる。そして、その全員が叫んだ――――

 

 

 

さあ…始めようっ!!

 

 

 

「Gun-pla Battle combat mode stand up!Model damage level set to B.Please set year GP base.」

6人がそれぞれのGPベースをセットする。

「Beginning Plavsky particle dispersal.Field 01 space.」

幾億万のプラフスキー粒子が散り、広大な宇宙空間と6つの棘の様な岩壁を持つ巨大な宇宙要塞「ソロモン」が形成させる。

「Please set year Gun-pla.」

6人がそれぞれのガンプラを台にセットする。システムが機体を読み込み、メインカメラが発光する。それぞれが出現した操縦桿を握りしめる。

「Battle Start!」

台座がカタパルトで囲われ、6機のガンプラが発進体制に入る。

「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」

時雨のガンダムレインバレットが出撃し、それに続いて夕立のユニコーンガンダムナイトメアが発進する。

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」

そして、バトル台の反対側で最上たち3人が出撃を始める。

「最上。アンティリーデスティニーガンダム、出撃するよ!」

「綾波。ガンダム鬼羅(キラー)サンドロック、出撃します!」

最上、綾波が出撃し、残っていた雷のガンプラも発進体制に入る。

「電…私に貴方の力を見せてみなさい……雷。ガンダムキュリオスアーチャー、いっきまーすっ!」

雷のガンダムキュリオスアーチャーも、出撃し残すは電のみとなった。電は、操縦桿をギュッと握りしめた。

「…必ず、このバトルに勝つのです…そして、皆で全国大会にっ!」

勢いよく顔を上げた電に呼応して、イナヅマガンダムが発進体制に入った。そして――――

 

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

 

電の声と共にイナヅマガンダムは、広大な宇宙の広がるフィールドに飛び立った。ガンプラバトル地区予選決勝の火蓋が今、切って落とされたのだ。

 

続く



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EP21 悪夢と鬼神

ソロモンの外、そこでは既に戦闘が起こっていた。確認できる光点は4つ、時雨のガンダムレインバレットと、夕立のユニコーンガンダムナイトメア、最上のアンティリーデスティニーガンダム、綾波のガンダム鬼羅(キラー)サンドロックだ。電のイナヅマガンダムと、雷のガンダムキュリオスアーチャーの姿はなかった。

「夕立、この2人は僕たちで抑えるよ!」

「了解っぽい!」

戦闘開始と共に雷を2人から遠ざけた電の邪魔をさせないため、時雨と夕立は今ここで戦っていたのだ。

「そこだ!」

アンティリーデスティニーガンダムが背部から伸ばした高エネルギー長射程ビーム砲を発射する。赤色のビームがレインバレットに向かって飛ぶ。

「当たらないよ!」

ビームを急上昇で回避した時雨は、ロングバレルビームライフルの照準をアンティリーデスティニーガンダムに合わせ引き金を引く。

「もらった!」

放たれたビームはしかし、光の翼を輝かせたアンティリーデスティニーガンダムに簡単に回避されてしまった。その後も高速移動を続けるアンティリーデスティニーガンダムに何度か照準を合わせロングバレルビームライフルの引き金を引くが、命中する気配はなかった。

「くそ…」

「背後が隙だらけです!」

不意に時雨の操縦スペースに背後からの接近警報が鳴り響く、時雨が慌てて振り返ると2本の大きく湾曲し、赤熱化した刃を持つ剣「ヒートショーテル」を上段に構えたガンダム鬼羅サンドロックがいた。ヒートショーテルがレインバレット目掛け振り下ろされる。

「しまった!」

反応が遅れた時雨は回避操作が追いついていなかった。

「時雨っ!」

ヒートショーテルが振り下ろされるが、その一瞬の間にユニコーンガンダムナイトメアがレインバレットの背後を取り、手にしていたエクスカリバー対艦刀でヒートショーテルを受け止めた。ガキーン!という大きな金属音が鳴り響きユニコーンガンダムナイトメアと、ガンダム鬼羅サンドロックが火花を散らしながら鍔迫り合いとなっていた。

「時雨はやらせないっぽい!」

「…流石ですね夕立さん!」

「夕立!」

「時雨は、最上に集中して!ここは夕立が抑えるっぽい!」

夕立の言葉を聞いた時雨は小さく頷き、どこかに飛び去ろうとするアンティリーデスティニーガンダムを見据えた。そして、ロングバレルビームライフルを腰裏にマウントするとビームピストルを抜きスラスターを噴かしビームピストルを連射しながらアンティリーデスティニーガンダムを追った。ビームピストルから撃ち出されたビームがアンティリーデスティニーガンダムに襲い掛かる。

「くそぉ、雷の援護に行かせない気だな!」

「電の為にも…ここは譲れない」

 

遠ざかっていくレインバレットを確認した夕立は、鍔迫り合いとなっていたガンダム鬼羅サンドロックを押し返した。押し返されたガンダム鬼羅サンドロックは、すぐさま態勢を立て直した。夕立は改めてガンダム鬼羅サンドロックを見つめた。赤とグレー、白色のトリコロールに赤色の耐ビームコーティングマントを羽織って、背部に大きなX字のバックパックを装備したがっしりとした外見と、鬼の面を思わせるV字アンテナを持つ機体だ。夕立は、小さな汗を流しながら口元少し笑わせた。

「それじゃあ、今日こそ決着を付けるっぽい!」

「思わぬ始まりだったけど、そのお話乗らせてもらいます!」

「夕立、最初っから本気出すっぽい!」

夕立は手元の操縦桿の武装スロットから「SP」と書かれたアイコンを選択した。すると、ユニコーンガンダムナイトメアのメインカメラが発光し足元から徐々に装甲が展開していき各所から赤色のフレームが出現していく。そして、1本の状態だった角が開き獅子の鬣を思わせるV字アンテナになると、ガンダムタイプの顔面部が頭部の奥から現れた。

「これが夕立の本気っぽい!」

ユニコーンガンダムナイトメアがナイトメアモードを発動したのだ。黄色のメインカメラがガンダム鬼羅サンドロックを見据え発光する。

「わかりました。なら、綾波も本気で行かせてもらいます!」

そう言うと綾波も手元の操縦桿を操作し武装スロットから「SP」を選択した。すると、ガンダム鬼羅サンドロックの、鬼の面を思わせるV字アンテナがメインカメラを覆いかぶさるとそこに存在する眼が赤く発光した。

「っ!?」

「これが綾波の本気、ガンダム鬼羅サンドロック・鬼モードです!」

「そう来なくっちゃ!ソロモンの赤い鬼神、今日こそ討ち取らせてもらうから!」

「綾波も、ソロモンの黒い悪夢。今日ここで断ち切ります!」

2人の関係。「ソロモンの黒い悪夢」夕立と「ソロモンの赤い鬼神」綾波は、互いに少し昔に行われたソロモンを舞台とした無双バトルロワイヤルバトルのイベントで高い戦果を挙げたことが関係していた。夕立はこのバトルでの戦果、CPU制御ガンプラを64機と戦艦6隻、敵対ガンプラファイターの機体を4機撃墜しガンプラの黒い機体色も相まって「ソロモンの黒い悪夢」の異名を付けられた。これに対し綾波は同イベントで完成したばかりのガンダム鬼羅サンドロックで出撃、CPU制御ガンプラを71機、戦艦5隻、敵対ガンプラファイターの機体を6機撃墜する戦果を挙げ、赤い機体とその戦闘ぶりから「ソロモンの赤い鬼神」と呼ばれるようになりこの時から、2人は互いをライバル視するようになったのだ。そして、事あるごとに戦闘となり現在互いの勝敗数が49戦49分と、1度も決着が付いたことがなかったのだ。2人の間に緊張が走る。そして――――

「突撃するっぽい!」「行きます!」

2機のガンプラは同時に全速力で突撃していった。

「ぽぉーい!」「やあぁー!」

右上段から斬り降ろされたヒートショーテルと、左中段から横に斬り払われたエクスカリバー対艦刀が交差する。火花を散らしながら鍔迫り合いとなるがそれは一瞬で、密着した状態でお互いに次々剣を繰り出す。ガキン!ガキン!と剣がぶつかる度、激しい音が響く。

「うわぁ!」「くぅっ!」

15回目の剣の交差で互いが弾き飛ばされ、2機の間に距離が出来る。しかしこの程度で止まる2人ではなく、今度は夕立も綾波もスラスター全開で突っ込みその勢いで剣を前方へ突き付けていた。

「なんのー!」「えぇーい!」

ガキィン!と、すれ違い様に互いの剣が擦れ合い火花を散らす。そして2機のガンプラはお互い同時に旋回すると、再びスラスター全開でぶつかる。そしてソロモンの周辺宙域には2本の赤い尾を引く閃光が何度もぶつかり合っていった。何度も何度も赤い閃光がぶつかり合う。

「うりゃぁー!」

ユニコーンガンダムナイトメアがエクスカリバー対艦刀を右上段から振り下ろす。

「…見えた、そこぉー!」

左下段からヒートショーテルを振り上げるガンダム鬼羅サンドロック。ガキーンとひと際大きな音をたててユニコーンガンダムナイトメアのエクスカリバー対艦刀が右手から弾き飛ばされた。

「あっ!」

エクスカリバー対艦刀を弾き飛ばされた反動で体勢を崩したユニコーンガンダムナイトメア。そこに斬り上げの反動を生かし機体を一回転させたガンダム鬼羅サンドロックのヒートショーテルがユニコーンガンダムナイトメアの左側上段から襲い掛かる。

「もらいました!」

「まだ終われないっぽぉーい!」

叫んだ夕立は、ユニコーンガンダムナイトメアの左手が握るもう1本のエクスカリバー対艦刀を思い切りヒートショーテルに突き付けた。エクスカリバー対艦刀の剣先がヒートショーテルの刃に突き刺さり、そしてヒートショーテルをバキーンと言う音と共に砕け、折れた。

「なぁ!?」

「てやぁー!」

そしてすかさず、ユニコーンガンダムナイトメアがガンダム鬼羅サンドロックに左足の払い蹴りを放つ。それを胴体中央部に喰らったガンダム鬼羅サンドロックは後方に飛ばされ、手にしていたもう1本のヒートショーテルを離してしまった。ユニコーンガンダムナイトメアは追撃の手を緩めず空いた右手でビームブーメランを掴むと、大きく振りかぶり投擲する。弧を描いたビームブーメランがガンダム鬼羅サンドロックに迫るが、綾波はそのビームブーメランを回避せず、機体を横にスライドさせビームブーメランのグリップ部分を掴んでみせた。

「ぽい!?」

「お返しですっ!」

そして掴んだ勢いのまま機体を一回転させビームブーメランをユニコーンガンダムナイトメアに返すように投擲し、背中のX字バックパックの上部先端にマウントされたビームソードを抜き放つとユニコーンガンダムナイトメアに向かって突撃する。

「このぉー!」

夕立は左上段からの袈裟斬りでビームブーメランを切り裂いた。しかし、ビームブーメランの勢いに押されエクスカリバー対艦刀は折れてしまった。

「くそぉ…」

折れてしまったエクスカリバー対艦刀を投げ捨て、ビームトンファーを展開し迫ったガンダム鬼羅サンドロックと再び切り結ぶ。

「てぇーい!」

「やぁぁー!」

何度かの鍔迫り合いの後、互いの機体が同時に突き攻撃を放った。ユニコーンガンダムナイトメアの放った突きはガンダム鬼羅サンドロックの右肩に突き刺さり、ガンダム鬼羅サンドロックの突きはユニコーンガンダムナイトメアの頭部の右半分をかすめた。すれ違い様にユニコーンガンダムナイトメアが突き刺したガンダム鬼羅サンドロックの右腕がユニコーンガンダムナイトメアの勢いに押されもぎ取られ、ユニコーンガンダムナイトメアは頭部の右半分を失った。

「くそぉ…顔の右側をかすめただけなんて…」

ガンダム鬼羅サンドロックは、すれ違ったそのまま方向転換することなくユニコーンガンダムナイトメアから距離を取るべく退避した。

「あ!逃がさないっぽい!」

そして、機体を反転させガンダム鬼羅サンドロックを追うユニコーンガンダムナイトメア。2つの赤い閃光が再びぶつかり合いながら宇宙を駆け、激しい斬り合う。その末夕立と綾波、2人の機体は各所が欠けそこから小さなスパークを出しながらも、尚斬り合いを演じていた。ぶつかり合い火花を散らすビームソードとビームトンファー、激しく機体をきしませる拳と拳、蹴りと蹴りの衝突。

「ま、まだ、夕立は…諦めないっぽい!」

荒い息を吐く夕立。

「あ、綾波も、まだ負けていません!」

尚も諦めない綾波。そして、2機のガンプラは剣を振り下ろす。

「まだまだぁー!」

ユニコーンガンダムナイトメアの、左腕ビームトンファーの突きがガンダム鬼羅サンドロックの頭部を貫く。

「この程度でぇー!」

ガンダム鬼羅サンドロックのビームソードの縦斬りがユニコーンガンダムナイトメアの左肩を斬り落とす。

「てやぁぁー!」

ユニコーンガンダムナイトメアのビームトンファーでの薙ぎ払いが、ガンダム鬼羅サンドロックの左足を斬り、ガンダム鬼羅サンドロックが放った突きがユニコーンガンダムナイトメアの残っていた頭部を弾き飛ばす。反撃するようにユニコーンガンダムナイトメアが右脇腹に蹴りを放つと、2機の間にようやく空間が生じた。

「はぁ…はぁ…も、もう機体が持たない…っぽい」

夕立の操縦スペースが赤い警告表示で溢れかえっていた。しかし、それは綾波も同じで綾波の操縦スペースもアラートが止まることを知らない様な勢いで鳴り響いていた。

「機体各部に警告表示…もうダメかも…」

しかし、互いに譲ることの出来ない物を背負った2人は諦めようとしなかった。夕立は手元の操縦桿を操作し武器をビームトンファーからビームサーベルに持ち替え、綾波は全神経を集中させ、操縦桿を握りしめる。ユニコーンガンダムナイトメアがバックパックからビームサーベルを抜き放ち構え、ガンダム鬼羅サンドロックもビームソードを構えた。そして、2人同時に叫んだ。

 

 

この一撃で…決めるっ!!

 

 

2人がスラスターを全開に噴かし、2機のガンプラが互いに手にした剣を前方に大きく突き出し突撃する。

「うぅりゃぁぁー!!」

「はああぁぁぁー!!」

そして――――

 

 

 

ガシャァァン!

 

 

 

ユニコーンガンダムナイトメアのビームサーベルが、ガンダム鬼羅サンドロックの胴体を貫き、ガンダム鬼羅サンドロックのビームソードがユニコーンガンダムナイトメアの胴体を貫いた。互いに胴体を貫かれた2機は小さな爆発を繰り返しながら、寄り添っていった。

「ごめんなさい…最上さん、雷ちゃん…綾波はここまでみたいです…」

「もうダメっぽい…電ちゃん、時雨、後はお願いするっぽい…」

そして2機は爆炎に包まれた。

 

続く




間違って投稿してしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。今度こそ完成です。どうか、読んでいただけると幸いです。


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EP22 運命は雨音と共に

綾波を夕立に任せた時雨は、雷の援護に向かおうとしていた最上のアンティリーデスティニーガンダムに戦いを挑んだ。

「くそぉ、雷の援護に行かせない気だな!」

「電の為にも…ここは譲れない」

ビームピストルの引き金を引きながら、光の翼を輝かせるアンティリーデスティニーガンダムを追いかけていた。しかし、アンティリーデスティニーガンダムの素早い動きに時雨はなかなか正確な照準を合わせることが出来ず、ビームピストルのビームは宇宙の闇へ吸い込まれていくだけだった。

「クッソ、早いっ!」

しかし、時雨は諦めずに引き金を引き続けた。

(今電の元に最上を行かせるわけにはいかない…)

時雨はバトル開始時の出来事を思い出す。

 

出撃した暁学園ガンプラバトル部の3機は固まってソロモン宙域を進んでいた。

「そろそろ来るかもしれないね…電、大丈夫かい?」

「大丈夫なのです。ちゃんと、役割を果たしてみせます!」

「うん。夕立、僕たちも電の足を引っ張らないようにしよう」

「勿論!…と、さっそくお出ましっぽい!」

3機の真正面に、3機のガンプラが現れた。白守学園のメンバーが駆るガンプラに間違いなかった。

「よし、予想通り3機で固まってる。夕立、行くよ!」

「了解っぽい!」

時雨と夕立が先行し、戦闘が始まった。それに反応するように白守学園の3機も反撃を始めた。少し遅れてイナヅマガンダムも戦闘に加わる。激しい射撃戦を繰り広げる6機だったが、時雨がその途中叫んだ。

「電、今だ!」

「なのです!」

すると、イナヅマガンダムが射撃戦から抜け出すとものすごい勢いで宙域から離れていった。

「電のガンプラが!」

「逃がさないわよ電!」

「追いかけましょう!」

離脱したイナヅマガンダムを追いかけようと飛び出した雷のガンダムキュリオスアーチャー。それにアンティリーデスティニーガンダムと、ガンダム鬼羅サンドロックが続こうとしたがそこにガンダムレインバレットとユニコーンガンダムナイトメアが割って入り、後の2機の進路を塞いだのだ。

「ここから先は行かせないっぽい!」

「僕たちが相手だ!」

そして、戦闘が再開されたのだ。

 

「このぉー!」

アンティリーデスティニーガンダムが再び高エネルギー長射程ビーム砲を構えて発砲する。それをローリングしながら回避するレインバレット、そしてビームピストルを連射する。

「村雨姉さん。最上さんのデスティニーガンダムって、素組じゃないですか?」

観客席で観戦していた五月雨が、村雨にアンティリーデスティニーガンダムについて尋ねていた。すると村雨は、うーん。と少し考えた後口を開いた。

「たぶん違うと思うわ。所々形状が違うけど…でも、パッと見は素組に見えるわね」

「どうなんでしょうか…素組の性能だけでここまでは来ていない筈ですが…」

「うーん。これは村雨にもわからないかな…」

ガンプラの性能は製作者の機体完成度の高さで決まり、素組の場合は最低限の性能しか発揮できないのである。しかし、そんな会話をしている中でも試合は進み、アンティリーデスティニーガンダムが手甲に装備されたビームシールドでビームを防ぐとビーム砲をバックパックにしまいビームライフルを構えて引き金を引く。そしてそこはいくつものビームが飛び交う激しい銃撃戦の場となった。アンティリーデスティニーガンダムの放ったビームライフルを回避しながら撃ち返すレインバレット。

「時雨ってこんなにしつこかったけっ?」

「今回は特に、ね!」

ビームピストルを乱れ撃つレインバレット。それを回避するアンティリーデスティニーガンダム。

「クソ、射撃戦じゃ埒があかないな…よしっ!」

最上が武装スロットを操作し、大きな剣のマークが表示されたスロットを選択した。アンティリーデスティニーガンダムが両手を右後ろに伸ばし、そこにマウントされた折り畳み式の大型の剣「アロンダイトビームソード」を引き抜いて機体の前で構えた。剣の根元から剣先にかけてビーム刃が展開される。

「!?」

アロンダイトビームソードを構えたアンティリーデスティニーガンダムを見た時雨は思わず驚いてしまった。しかし、すぐに正気を取り戻すと武装スロットの中から新たに「アームド・アーマーDE」を選択した。アームド・アーマーDEが肩の上から正面を向くと、アンティリーデスティニーガンダムはアロンダイトビームソードを前方へ大きく突き出すと光の翼を展開した。そして、アロンダイトビームソードを右上段に構えると一気にレインバレットに突撃した。

「いっけぇー!」

「くっ!」

時雨はビームピストルとアームド・アーマーDEの引き金を引き続けた。アンティリーデスティニーガンダムを近づけまいと必死に引き金を引く。しかし、アンティリーデスティニーガンダムは放たれた全てのビームを回避しレインバレットに迫っていく。

「はあぁー!!」

そして、アンティリーデスティニーガンダムがアロンダイトビームソードを大きく上に掲げ、そこから剣の重さと機体の推進力を載せた渾身の縦斬りを放った。

「当たるわけには、いかないんだ!」

時雨はレインバレットを横にスライドさせ縦斬りを回避した。しかし、アンティリーデスティニーガンダムは斬り降ろした状態から左に一回転すると左手に持ち替えたアロンダイトビームソードを右下から左上に向かってに斬り払った。アロンダイトビームソードの刃はレインバレットの両方のアームド・アーマーDEの上部先端を切り裂いた。

「しまった!」

「まだまだぁ!」

最上は再び武装スロットを操作し、足の絵柄が書かれたスロットを選択した。そして、選択が完了すると同時に左足を右側へ蹴り上げた。すると、その蹴りがレインバレットの左足に命中する瞬間、膝から爪先にかけてビーム刃が展開されたのだ。そして、ビーム刃によってレインバレットの左足は膝から下を斬り落とされてしまった。

「うわぁ!」

斬り落とされた衝撃で完全にバランスを崩してしまったレインバレットをアンティリーデスティニーガンダムは今度は右足で蹴り飛ばした。

「うわあぁー!」

「時雨姉さん!!」

「あれは、(インフィニット)ジャスティスガンダムのグリフォンビームブレイド!」

観客席で五月雨と村雨が席から立ち上がって叫んだ。それに驚いた白露は、なになに、どうしたの!?と思わず声を上げた。そして五月雨が、村雨の言葉に反応して口を開く。

「グリフォンビームブレイドって、あの膝から爪先にかけて発振出来るビーム刃でしたよね村雨姉さん!」

「そうね…アンティリーデスティニーガンダム…「運命に抗うガンダム」なるほどね」

しかし、3人の驚きはそれだけに留まらなかった。時雨と最上が戦闘を行っている宙域から少し離れた宙域で小さい爆発が起こったのだ。その爆発に最初に気付いたのは白露で、爆発を見るなり席から立ち上がりその方向を指さし口を開いた。

「あ!村雨、五月雨、あそこ見て!」

時雨と最上の戦闘に見入ってしまっていた村雨と五月雨は、白露が指さした方へ顔を向けた。すると、爆発は次第に大きくなりやがて一際大きな爆発を起こした。そして、その爆発はバトル中の時雨と最上にもハッキリと見えていた。そしてその爆発の元が何なのか、2人はすぐに分かった。

「夕立が、やられた…?」

「まさか、綾波ちゃんが墜とされるなんて…」

2人はその爆発に一瞬だけ気を取られていたが、すぐに考えていた物を振り払うとバトルを再開した。時雨はレインバレットのビームピストルを乱れ撃ち、最上はアンティリーデスティニーガンダムの光の翼を展開し再びレインバレットに迫る。

「もう時雨の射撃は見切ったよ!」

「……」

最上の言葉通り、レインバレットの放ったビームは簡単に回避されてしまっていた。しかし、時雨は何も喋ることなく歯を食いしばってただ引き金を引き続けた。そして遂にアンティリーデスティニーガンダムがレインバレットの目の前に迫りアロンダイトビームソードを高く掲げた。するとその時、時雨は手元の武装スロットからミサイルの形をした絵が表示されたスロットを選択した。そして、額を一粒の汗が流れたのと同時に――――

「零距離ならぁっ!!」

バイポットシールドに装備された2連装ミサイルランチャーが発射されたのだ。

「なっ!?」

発射されたミサイルは零距離まで迫っていたアンティリーデスティニーガンダムに直撃した。時雨はここぞとばかりにビームピストルを乱射した。

「いけぇー!」

爆煙に次々吸い込まれる緑色のビーム。しばらくして爆煙の中からアンティリーデスティニーガンダムが弾き出された。ミサイルの零距離直撃とビームピストルの乱射をもろにくらったアンティリーデスティニーガンダムの身体は傷つき、アロンダイトビームソードも折れてしまっていた。

「くぅぅ…」

「はぁはぁ…まだだ!」

時雨は最上に休む暇を与えない。手元の武装スロットを操作しビームサーベルを選択する。レインバレットの右腕が後ろに伸ばされビームサーベルを握ると、それを勢いよく抜き放つ。バチィッ!とビーム刃が展開される音が響くと、時雨はレインバレットをアンティリーデスティニーガンダム目掛け突撃させた。

「たあぁぁー!!」

しかし一直線に向かってくるレインバレットに最上は少し焦ったが高エネルギー長射程ビーム砲を構え、照準をレインバレットに定めた。

「これでぇ!」

高エネルギー長射程ビーム砲が火を噴き、発射されたビームがレインバレット目掛け飛ぶ。咄嗟にレインバレットはバイポットシールドでそれを防いだが、高エネルギービームの直撃を受け機体は爆炎に包まれた。

「ふぅ…何とか倒せたか――――」

最上が安堵のため息を吐いたその時だった――――

 

 

 

爆炎の中から橙色の髪留めを付けたデュエルガンダムが飛び出してきたのだ。

 

 

 

「あ―――」

飛び出してきたデュエルガンダムの正体はアサルトシュラウド等の追加装備を全てパージしたガンダムレインバレットだったのだ。しかし、最上が気付いた時には既に遅く――――

「やぁぁぁー!!」

レインバレットは左手に握ったビームサーベルを振るいアンティリーデスティニーガンダムの両肘から先を斬り落とし、そして右手に握ったビームサーベルをコックピットを突き刺した。コックピットを貫かれたアンティリーデスティニーガンダムはゆっくりと後ろに流れると、爆炎に包まれた。

 

続く



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EP23 救済を討つ者

不意を突いた攻撃でアンティリーデスティニーガンダムを撃破した時雨は、荒い息を整えながらレインバレットを先程爆発が起きた場所へと向かわせていた。先程の攻撃でアサルトシュラウドを全てパージしてしまったため、現在のレインバレットは無防備状態と言っても過言ではなかったが時雨はそんなことを考えることすらせずにレインバレットを走らせた。

「夕立…」

しばらくして、爆発の起きたポイントにたどり着いたレインバレット。時雨はモニター越しにその場の惨状を目の当たりにした。自分の周囲には破壊されたり、欠けたりしたガンプラのパーツが漂っていた。時雨はキョロキョロとモニターを見渡し、ユニコーンガンダムナイトメアを探した。そして、見つけた。

「!?夕立っ!」

時雨の目に飛び込んできたのは右足と胴体だけを残したユニコーンガンダムナイトメアだった。赤く発光していたフレームは輝きを失い、全身がまさに真っ黒に染まっていた。

「そんな、夕立…」

ガンプラバトルでは現実の戦闘のようにパイロットであるファイターが死ぬことはない。しかしそれでも、時雨は悔しさと悲しさのあまり目に涙を浮かべていた。しかし、時雨はすぐに涙をぬぐうと、ユニコーンガンダムナイトメアの周囲を漂う残骸から使えそうなものを探していた。その時、ソロモンの上空でひと際大きな爆発が起こった。

「電っ!?」

時雨が爆発に気付いたのは、丁度ユニコーンガンダムナイトメアの肩部ビームキャノンを見つけた時だった。時雨はビームキャノンの砲身部を取り外すとソロモンを目指した。

 

時間は少しばかりさかのぼる。

 

バトル開始からしばらくして始まった射撃戦から抜け出した電は、全速力で雷のガンダムキュリオスアーチャーから逃げていた。チラリと電が後ろのガンダムキュリオスアーチャーを見る。雷のガンプラ「ガンダムキュリオスアーチャー」ガンダムOO(ダブルオー)に登場するガンダムキュリオスをベースとしたカスタム機で変形機構をオミットし、両肩にはライトニングガンダムの肩を思わせる大型のセンサーユニット、ベース機の特徴だった膝のウイングは取り外されプラ板を使って装甲を強化されている。そしてバックパックはGNビームキャノンを装備したGN(ガン)アーチャーの物をガンダムハルートの様に動かせるようにしたものを装備していた。

(流石雷ちゃんのガンプラ…気を抜いたら追いつかれちゃいそうです)

「うまい具合に離されたけど…電の力を確かめるにはいい機会かもね」

そう言った雷はGNビームライフルでの攻撃を始めた。それを回避しながらなおも逃げるイナヅマガンダム。雷は攻撃の手を休めることなくGNビームライフルの引き金を引いたが、電はと言うと一切攻撃をすることがなかった。その攻撃の中、雷はイナヅマガンダムにある違和感を感じていた。

(それにしても、バックパックに乗っているあれは何かしら?)

イナヅマガンダムのバックパック「ファトゥム-01(ゼロワン)シルエット」その上部に大きな箱状の物が乗っていたのだ。今日までの電たち暁学園のバトルを全て見てきた雷だったが、その箱状の物など今まで装備しているところなど見たことはなかった。だから雷は余計気になっていたのだ。しかし、雷のその不安はしばらくしたその後にかき消された。イナヅマガンダムとガンダムキュリオスアーチャーがソロモンの上空に到達した時だった。電はイナヅマガンダムを360度回転させファトゥム-01シルエットに乗せていた箱を弾き飛ばしたのだ。そして、方向転換するとビームライフルを放ちながらキュリオスアーチャーに攻撃を開始したのだ。

「やあー!」

(なるほど、あれはプロペラントタンクだったのね。それなら説明がつくわ)

イナヅマガンダムの放ったビームを回避しながら箱状の物の正体に確信を持った雷。確かにスラスターで推力を得る機体とGN粒子を推力に使う機体ではスピードにかなりの差が出てしまう。「推進剤を多く蓄えたプロペラントタンクを使えば、少しは差を縮めることが出来る」と納得した雷は反撃を始める。ビームライフルが飛び交う激しい射撃戦が展開されるソロモン上空。放たれたビームを回避したり、シールドで防いだりと激しいバトルを繰り広げるイナヅマガンダムとキュリオスアーチャー。

「もらったわ!」

「命中させます!」

イナヅマガンダムとキュリオスアーチャーが同時にビームライフルを放った。放たれたビームは互いにぶつかり合い激しいスパークを散らして爆発する。爆風により2機のガンプラが飛ばされる。

「危ない危ない」

最初に態勢を立て直したのはキュリオスアーチャーだった。雷がモニター越しにイナヅマガンダムを見ると、電も態勢を整えることを完了していた。

「なかなかやるわね電」

そして、雷が攻撃を再開しようとしたその瞬間、ソロモンから少し離れた宙域で爆発が起きた。例によってそれは夕立と綾波の相打ちによるもので、雷はそれがすぐに分かるとすぐさま行動を開始した。キュリオスアーチャーが180度反転しソロモンから去ろうとしていることに気付いた電はすぐさま攻撃を仕掛けた。ビームライフルとハイパーフォルティスビーム砲、ビームキャノンの全てを発射し移動するキュリオスアーチャーの前方を遮る。

「逃げるななのです!」

「電っ!?」

ブレーキを掛けられたキュリオスアーチャー。その隙をついてキュリオスアーチャーの進行方向に割って入りビームライフルを放ちながら追撃するイナヅマガンダム。迫るイナヅマガンダムから後退しながらビームを回避するキュリオスアーチャー。

(どうあっても行かせない気ね…くそぉ)

「えぇーい!」

電は再びハイパーフォルティスビーム砲と、ビームキャノンを選択し斉射する。それを回避し武装スロットの中からGNビームキャノンを選択する雷。バックパックの2本のバインダーが前方へ向けられる。

「これでっ!」

「当たらないのです!」

キュリオスアーチャーがGNビームライフルも合わせたビームキャノンを斉射する。しかし放たれたビームをイナヅマガンダムは左ローリングで回避し、ビームライフルとハイパーフォルティスビーム砲を放つ。放たれたビームをGNシールドで防ぎビームの直撃はま逃れるも少し体勢を崩してしまうキュリオスアーチャー。その時雷は目の前にあるモニターの奥にまた爆発を見た。

「クッ!最上さんも―――」

「もらったのです!」

電はここぞとばかりに再びビームライフルとハイパーフォルティスビーム砲、ビームキャノンを斉射する。5本のビームがキュリオスアーチャー目掛け飛んでいく。

「甘いわよ電!」

態勢を整えるキュリオスアーチャーも、反撃するようにGNビームライフルとGNビームキャノンを発射する。そして、放たれたビームが再び交わる。ビームライフルがぶつかり合った時とは比べ物にならないほどのスパークと爆発が起こり、2機のガンプラは爆風でかなりの距離を離された。

「きゃあっ!」

「はにゃっ!」

爆風に飛ばされた2機のガンプラが態勢を立て直す。

「もう、ワタシ1人だけみたいね…」

「はぁはぁはぁ…」

睨みあうイナヅマガンダムとキュリオスアーチャー。そんな時、キュリオスアーチャー目掛け何処からともなくビームが飛んできた。接近警報に気付いた雷は慌ててそれを回避する。

「なにっ!?」

そして電の方には聞きなれた声の通信が入った。

「電!」

「!?」

現れたのは時雨のレインバレットだった。レインバレットはユニコーンガンダムナイトメアの肩部ビームキャノンから取り外したビームライフルを放ちながらキュリオスアーチャーに迫った。しかし、放たれるビームを全て回避するキュリオスアーチャー。しかし、電は時雨の乱入を慌てて制止する。

「駄目です時雨さん!こっちに来ちゃ!」

「あの機体。時雨ね!」

「電はやらせないよっ!」

レインバレットはビームサーベルを抜き放つとスラスター全開でキュリオスアーチャーに突撃した。しかし―――

「クッ、2機相手は厳しいわね…なら!」

そう言うと雷はGNシールドをレインバレット目掛け投擲した。ひし形のGNシールドがクルクルと回転しながらレインバレットに飛んでいく。

「え―――」

時雨の反応は完全に遅れていた。そして――――

 

 

グシャァンッ!

 

 

キュリオスアーチャーのGNシールドがレインバレットの胴体部を直撃した。胴体部を捩り切られたレインバレットは大きな軋む音をたてながら逆くの字に曲がるように折れると―――

「あ、あああ…」

大きな爆発と共に消滅した。

「時雨さぁんっ!!」

電が操縦スペースで時雨の名前を叫んだ。その隙にキュリオスアーチャーは宙に浮かんでいたGNシールドを回収しGNビームライフルを放つキュリオスアーチャー。

「これで決着をつけるわ!」

 

※注意、ここからガンダムSEED Destiny「PHASE-34 悪夢」のワンシーンをアレンジ付きで再現します。キャラ崩壊等が含まれますのでご注意ください。

 

「てやぁー!」

放たれたビームを機動防盾で防ぎながら距離を詰めるイナヅマガンダム。キュリオスアーチャーがイナヅマガンダムの頭部を狙ったビームを放った。しかし電はそのビームを頭部を少し反らすことで回避した。

「あっ!?」

「いっつもそうやって…やれると思うなぁー!!」

その時電の片眼が深紅に染まった。その行動に驚く雷だったが攻撃の手を緩める事なく再び武装や頭部を狙ってGNビームライフルを放つ。しかしイナヅマガンダムはそれを機体を上昇させたり降下させたりしながら際どいギリギリのタイミングで回避してみせる。

「クッ!」

再びGNビームライフルを放つキュリオスアーチャー。だがやはり、イナヅマガンダムは機体を反らしたり、少しスピードを落としたりして回避する。イナヅマガンダムとキュリオスアーチャーが互いにビームライフルを放ちながら円を描く。そこからキュリオスアーチャーはGNビームライフルを放ちながらイナヅマガンダムから距離を取る。ビームライフルと頭部を狙って放ったビームはイナヅマガンダムが腕を少し上げたり、機動防盾でビームを弾くことで防がれた。電はニヤリと笑みを受けべながら未だに攻撃を回避し続けていた。しかし、ここまで完璧に攻撃を回避され続けた雷はついに驚愕の表情を浮かべた。電の脳裏に決勝戦までに特訓していた時の光景が蘇る。

 

「キュリオスアーチャーは確かに動きが速い。射撃も正確だ。だけどあの機体は、絶対にコックピットを狙わない」

「え?」

時雨の言葉に驚く電、時雨はさらに説明を続ける。

「撃ってくるのは、決まって武装かメインカメラだ。そこにイナヅマガンダムの勝機がある!」

 

イナヅマガンダムがビームライフルを放ち距離を詰める。キュリオスアーチャーはそれをGNシールドで防ぎ、撃ち返す。イナヅマガンダムもビームを回避し撃ち返すが回避されてしまう。キュリオスアーチャーがGNビームサーベルを抜き放ち、応えるようにイナヅマガンダムもビームサーベルを抜き放つ。互いの縦斬りがぶつかり、更に2機が同時に切りかかり互いの相手のビームサーベルをシールドで受け止める。

「くぅ!」「クッ!」

そして再び2機が距離を離す、キュリオスアーチャーはそのまま態勢を整えたがイナヅマガンダムは左腕に装備してある機動防盾を投擲し、機動防盾の表面目掛けビームライフルを放った。放たれたビームが機動防盾の表面を直撃すると、光がまるで鏡に当たって跳ね返る様に弾かれ、キュリオスアーチャーの左肩の先端上面を掠めた。

「なっ!?」

その突拍子な行動に驚きを隠せない雷。そこに空いた左手にビームサーベルを握ったイナヅマガンダムが迫り、左中段から右上段へ斬り払った。しかしその攻撃をキュリオスアーチャーは機体をかがませることで回避し、右中段から斬り払った。無防備となっているイナヅマガンダムの左肘から下と頭部を斬り落とした。大きくバランスを崩したイナヅマガンダム、しかし電は手を休めなかった。武装スロットの中から「SP」を選択する。

「今だ!チェストフライヤー、ファトゥム-02(ゼロツー)シルエット射出!」

そう叫んだ電はイナヅマガンダムをコアスプレンダー、上半身「チェストフライヤー」、下半身「レッグフライヤー」に分離させファトゥム-01シルエットを装着したままのチェストフライヤーを斬り払いから立ち直ったキュリオスアーチャーに目掛け射出した。

「なにっ!?」

咄嗟にGNシールドを構えるがチェストフライヤーはキュリオスアーチャーに吸い込まれるように衝突し、そこにコアスプレンダーが機首部に装備されたバルカン砲を撃ち込む。バルカンの弾が次々にチェストフライヤーに直撃する。そして銃弾に耐えきれなくなったチェストフライヤーが爆発すると、その爆発の衝撃に押されキュリオスアーチャーがソロモンの岩壁へと落ちて行く。

「きゃあぁぁっ!」

その時、戦闘の最初にパージし宙域を漂っていた箱の外装が全てパージされ中からイナヅマガンダムの上半身とファトゥム-01シルエットによく似ているシルエット「ファトゥム-02(ゼロツー)シルエット」が飛び出してきた。ソロモンの岩壁に向かって更に落ちて行くキュリオスアーチャー。雷は態勢を整えることも出来ずにいた。そして、箱から飛び出してきたイナヅマガンダムのチェストフライヤーが宙域にたどり着くのに合わせブロック状に変形したコアスプレンダーがレッグフライヤーとドッキング、続いて飛んできたチェストフライヤーにドッキングする(演出では無く、電たちの完全カスタマイズです)。折り畳まれていた両腕が展開し、イナヅマガンダムの頭部が姿を現すそして最後にファトゥム-02シルエットをバックパックに装着してキュリオスアーチャーを追った。キュリオスアーチャーは岩壁に着地しようとするが、バランスを崩して岩壁に擦りつけられるように着地してしまった。

「くっうう!」

何とかキュリオスアーチャーの動きを止めることが出来た雷だったが、そこに接近警報が響く。慌てて上空を見るとそこにはビームサーベルを抜き放ち、斬りかかってくるイナヅマガンダムの姿があった。

「うおぉぉー!!」

勢いよく振り下ろされるビームサーベル。それを咄嗟の上昇で回避するキュリオスアーチャー。斬り降ろしが外れたと分かった電はすぐさまキュリオスアーチャーを追ってイナヅマガンダムを上昇させた。互いにビームサーベルを構えながら並走するイナヅマガンダムとキュリオスアーチャー。

「逃がさないと言ったろっ!」

「クッ、電!」

イナヅマガンダムがビームサーベルを左へ斬り払い、更に右へと斬り返す。それを後退しながら回避するキュリオスアーチャー。

「あんたが時雨さんを殺したっ!!」

電の脳裏に、胴体部を捩じ切られ爆発するレインバレットの光景がフラッシュバックする。

「止めようとしたのにぃー!!」

イナヅマガンダムが全力の縦斬りを放つ。しかしキュリオスアーチャーはそれをバク宙で回避し、GNビームサーベルを真横に構えてイナヅマガンダムに突っ込んだ。しかし、キュリオスアーチャーの攻撃は空を斬った。イナヅマガンダムが、上半身と下半身を分離させ空洞を作って回避したのだ。

「っ!?」

「うおぁぁぁー!!」

追撃を加える電。放った縦斬りはキュリオスアーチャーのバックパック左側を直撃し爆発する。その勢いに押されキュリオスアーチャーは体勢を崩すが、すぐにそれを整えイナヅマガンダムに背を向けて逃走を始めた。

「くっそぉ…」

それを追うイナヅマガンダムをチラリと見る雷。尚も追撃を止めない電は、ビームライフルの照準をキュリオスアーチャーに定め引き金を引く。

「あんたは電が討つんだっ!!」

電の脳裏に雷と過ごしていた日々が浮かぶがそんなことを気にする様子もなく更に引き金を引く。

「今日、ここでぇっ!!」

尚もビームライフルを放つイナヅマガンダム。それを180度回転し、GNシールドで防ぎながら撃ち返そうとする雷だったが、その内の1発がGNビームライフルに直撃し爆発してしまう。慌ててGNビームライフルを離すキュリオスアーチャー。

「こんな…これは…!?」

「ファトゥム-02、射出!」

電が叫ぶと同時にバックパックのファトゥム-02が射出され独立して飛行し始め先行してキュリオスアーチャーを追った。尚も逃げるキュリオスアーチャー、そこにファトゥム-02と並走したイナヅマガンダムが迫り、手に持っていたビームライフルと機動防盾を投げ捨てると、ファトゥム-02のメインウイング上面にあるグリップの様なものを握りしめ、それを抜き放った。グリップの反対部分から短いビーム刃が形成される。抜かれた物の正体はフラッシュエッジビームブーメランを改造した物だったイナヅマガンダムはそれを大きく振りかぶるとキュリオスアーチャー目掛け投擲する。

「クッ!」

慌ててGNシールドでブーメランを防ぐキュリオスアーチャー。しかし、衝突の衝撃はすさまじく完全に体勢を崩してしまった。そこにファトゥム-02が本体上部に取り付けられていたエクスカリバー対艦刀を改造した大型ビーム対艦刀をパージする。それをガッシリと握りしめ、右へ切り払うと同時に切っ先までビーム刃が形成される。

「うりゃぁぁー!」

それを握りスラスター全開でキュリオスアーチャー目掛け特攻するイナヅマガンダム。

「ハッ!?」

「うおぉっ!!」

キュリオスアーチャーのすぐ傍まで迫るイナヅマガンダム。電は手元の操縦桿を大きく前へ突き出す。

「うわぁっ!」

咄嗟にGNシールドを構え、GNビームサーベルを正面に向けるキュリオスアーチャー。

「てぇやあぁぁぁ!!!」

イナヅマガンダムは大型ビーム対艦刀を身体の前面に構え全開にしたスラスターを更に噴かす。そして、次の瞬間――――

 

 

バキィィィンッ!!!

 

 

イナヅマガンダムの大型ビーム対艦刀がGNシールドを突き抜け、キュリオスアーチャーの胴体中央に深々と突き刺さった。キュリオスアーチャーのGNビームサーベルはイナヅマガンダムの頭部を捉えていたが、もはや手遅れだった。

「―――――!?」

「ああぁぁぁぁ!!!!」

大型ビーム対艦刀を胴体部に喰らったキュリオスアーチャーは大爆発を起こした。

 

 

 

そして、爆煙の中から全身がボロボロになり色も全て抜け落ちたイナヅマガンダムが姿を現した。操縦スペースの電は涙を目に貯めながら何かが砕けたような笑みを浮かべていた。

 

 

 

「ふっ、あはは…やった…時雨さん……やっとこれで…ふふっ…あはは………」

その瞬間、バトル終了のアナウンスが流れた。

 

続く



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EP24 切符

バトルシステムがシャットダウンされプラフスキー粒子が消えていく。バトルシステムの台の上には大破した6機のガンプラが転がっていた。そしてそれを操っていた6人、電、時雨、夕立、雷、最上、綾波はただ茫然とバトルシステム台を眺めていた。その時体育館内にアナウンスが流れた。それは勝者が暁学園ガンプラバトル部であることを伝えるものだった。そのアナウンスが聞こえると会場は一気にスタンドフォーメンションになり、歓声と拍手が巻き上がった。それに未だ困惑が残る暁学園の3人は頭をキョロキョロさせていた。そして暁学園の3人の前に白守学園の3人が歩いてきて拍手をした。最上が口を開く。

「おめでとう!電ちゃん、時雨、夕立ちゃん」

「綾波たちの完敗ですね…皆さん、おめでとうございます!」

「最上、綾波…」

未だに驚いている時雨だったが、横から飛びついてきた夕立との衝突でようやく全てを悟った。

「時雨ぇ―!やった、やったね!地区予選優勝だよ!県代表戦に行けるんだよ!」

「うわっ夕立!?ちょっと、思いっきり抱き着かないでよ!」

「アハハ!やっぱり2人は仲が良いね!」

「本当、見ていて面白いですね」

「ちょ、最上も綾波も止めてよ!」

バトル台の片隅でそんなことが起こっていたが、電はと言うとただジッと雷を見つめていた。バトル台には胴体部を貫かれたキュリオスアーチャーと、全身ボロボロのイナヅマガンダムが転がっていた。すると雷が口を開いた。

「完敗だわ、電。いい勝負だった」

「い、雷ちゃん…」

そう言うと、雷はゆっくりと電の元へ歩み寄った。そして、右手を前へ差し出した。

地区予選(ここ)で負けたワタシたちの分も、勝ってくるのよ?」

電は雷の差し出した右手をしばらく見つめていたが、やがてその手をギュッと握りしめた。

「なのです!」

 

そしてその1週間後、県代表を決めるもう1つの地区を勝ち上がったチームとの試合。暁学園の3人は自分のガンプラを急ピッチで修復し、見事に勝利を収めた。こうして暁学園は見事に県代表のチームとして全国大会への切符を手に入れたのだ。県代表戦に勝利し、バトル会場で抱き合って喜ぶ3人を観客席の隅から影が見ていた。口元をニヤリと笑わせ、ポツリと一言呟くと観客の波へと消えていった。

 

 

「予定通りだね…」

 

 

暁学園が県代表チームに決まってからさらに1週間が過ぎた。電たち3人は今日も部室で練習……していなかった。

「ねぇ、頼むよタ級さん」

「断る!私はバックパック無し生活を3日も続けるなど不可能だ!」

「そこを何とか…お願いしますっぽい~」

「電からもお願いします!」

電たちはネリタ模型店にいた。そこで何やらタ級と交渉しているようだが、話は上手く纏まらない様子。タ級は3日間もバックパック無しの生活が送れないと、断じて引く様子を見せず、電たちもまた一歩も引く気配はない。

「良いじゃないですか3日くらい。たまには外に出て日光浴でもしてくださいよ、作業室にずっと籠ってるままだと体に悪いですよ?」

「黙っていろネ級。私はバックパックが手元にない状態が10秒でも続くと耐えられなくなるのだ!」

「うん。嘘はよくないよ~タ級姉さま」

「グ、私の嘘を見抜くとは流石だなネ級…」

はぁ、と呆れた溜息を吐くネ級。そこに時雨が再び口を挟む。

「お願いですよタ級さん。僕たち、どうしてもガンプラバトル日本協会主催の合宿に行きたいんだ!」

「そこで、全国大会参加者のみんなとあそ―――じゃなくて、みんなの実力を見て見たいっぽい!」

「電も、行ってみたいのです!」

説明しよう。ガンプラバトル日本協会主催の合宿とは、全国大会への出場を決めたガンプラファイターが一堂に会し、互いに切磋琢磨しファイターとビルダーとしての腕を磨こうというものだ!まぁ、パーティーみたいなものなんだけど…

「だから断る!と言った筈だー!」

全然話が進む気配がない会話がそこから5分続いた。そんな時ネリタ模型店の扉が開き、来店チャイムが鳴る。

「あ、いっらしゃいませ―――え?」

ネ級の不思議なものでも見たかのような言葉を聞いた4人が一斉に入口の方へと顔を向ける。そこには外からの逆光で黒く染まった人影が1人いた。

「ふっふっふっ…そのお話、聞かせてもらっちゃいました!」

「だ、誰だ!」

タ級の言葉に反応した人物は、何故か手に持っていた懐中電灯の様なものをチカチカさせてきた。

「うわ!まぶしっ!」

「ちょ、こんなところでやめてください!」

「……ぽい?あれって…」

夕立がその光り方に何か閃いた様子を見せた。そして、ブツブツと何かを呟き始めた。

「わ………ば…?わ……あ…ば…?…われ…あお…ば?……っ!?」

そしてそれが、あれ(・・)であることに気付いた夕立は叫んだ。

「ワレアオバ!?青葉さんっぽい!?」

夕立の言葉に影が反応し懐中電灯を消灯する。そして店の中に入ってきた影は、にっこりと笑って口を開いた。

「どぉも恐縮です!青葉ですぅ!」

すると、懐中電灯を直に当てられなおかつ発光信号まで送られた引き籠もり深海棲艦のタ級は怒りのたけを込めて叫んだ。

「アオバワレェェ!!」

こうして、電たちはガンプラバトル日本協会主催の合宿に参加することに成功したのだった。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はEP14~EP24までに登場したガンプラと登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。


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EP24.5 登場人物&ガンプラ解説pt2

今回も前回同様に登場人物とガンプラの解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。また、前回同様挿絵は使用しないのでご了承ください。


機体名 5.12(スプリアルレイン)ガンダム

型式番号 CB-005.12

ファイター 春雨 初登場話 第16話 ベース機 1.5(アイズ)ガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 23.5m 重量 69t

解説

春雨が1.5(アイズ)ガンダムをベースにカスタムしたガンプラ。機体名の「5.12(スプリアルレイン)」は「5」を春を意味する「Spring」の「S」、「12」を雨を意味する「Rain」の「R」に見立てた物である。本機のカスタムは元々高かった1.5(アイズ)ガンダムの攻撃力、防御力、機動力をバランスよく上げることをコンセプトに行われており、元々のウイングバインダーの内側に追加装備された3枚目、4枚目の1.5(アイズ)ガンダムのウイングバインダーがその大きな特徴となっている。これは1.5(アイズ)ガンダムで使用出来たアタックモードとディフェンスモードを同時に発動できるようにした為である。また従来の運用法を強化した「バスターモード」と「ガーディアンモード」の使用が可能となっている(アルヴァアロンキャノンモードはオミットされた)。また、全体的にスマートな形状へとパーツが製作されており、特に腕と足回りはベース機より細くなっている。機体色は白と、ピンクのツートン、各所にスカイブルーのラインが入っている。放出するGN粒子の色は1(アイ)ガンダムのコーン型スラスターを使用している為緑色。

 

武装(各特殊モード含め)

GNダブルバスターライフル

1.5(アイズ)ガンダムのGNバスターライフルの銃口を2門に増やした物。威力向上と連射性の向上を図って製作された。発砲ビームの色は桃色。

GNビームサーベル 2基

両肘のGNコンデンサーに1本、GNシールドの裏面に1本ずつ装備されているビームサーベル。発振ビーム刃の色は桃色。

バインダーライフル 4門

ウイングバインダー先端に内臓された武装。主に対地戦に使用する。

GNシールド

左肘に装備されている大型のシールド。シールドの縁が少し延長されている。

フライトモード

1.5(アイズ)ガンダム従来のモード。バインダーを折ることで空中での安定飛行を可能とする形態。

ハイスピードモード

1.5(アイズ)ガンダム従来のモード。バインダーを後ろに大きく伸ばしてGN粒子を効率的に制御し、高速飛行を可能とした形態。

スタンバイモード

1.5(アイズ)ガンダム従来のモード。1枚目と2枚目のバインダーを右にもしくは左に寄せた形態。右側ではアタックモード、左側ではディフェンスモードに即座に変形可能。

アタックモード

1.5(アイズ)ガンダム従来のモード。バインダーを右に寄せることでGNダブルバスターライフルの威力を向上させる形態。

ディフェンスモード

1.5(アイズ)ガンダム従来のモード。バインダーを左に寄せることでGNシールド表面のGNフィールド効果を高める事の出来る形態。

ハイマットモード

1枚目と2枚目のバインダーを折り、3枚目と4枚目を後ろに大きく伸ばしたモード。フライトモードの安定性と、ハイスピードモードの高速性を合わせ高機動かつ安定した機動を実現したモード。トランザム発動時の基本形態。

ニュースタンバイモード

スタンバイモードを左右同時に使用したモード。アタックモード、ディフェンスモードを即座に同時発動できる形態。

ネオスタンバイモード

全てのバインダーを右もしくは左に寄せたモード。降順のバスターモード、ガーディアンモードに変形可能な形態。

バスターモード

4枚のバインダーを右に全て寄せ、GNダブルバスターライフルの攻撃力を格段に上げる形態。その威力はアルヴァアロンキャノンに匹敵するほど。

ガーディアンモード

4枚のバインダーを左に全て寄せ、GNシールドの防御力を格段に上げる形態。メガ粒子砲や、ハイメガビームの連続直撃にも耐えるほどの効果を発揮できる。

トランザム

機体内に蓄積された圧縮粒子を完全開放した形態。機体が赤みを帯び、機体スペックの3倍の性能を出せる。

 

ファイター 春雨 容姿(艦これにおける)春雨

県立第1中学校3年生の元艦娘。非常におとなしく礼儀正しい性格をしており、県立第1中学校ガンプラバトル部の部長でもある。ガンプラ製作技術は夕立以上時雨未満と言ったところで、バトルの腕もそこそこだが最後まで諦めない心の持ち主。好きなガンダム作品は「ガンダムOO(ダブルオー)」だが、最近宇宙世紀シリーズにハマり出したらしい。

 

機体名 ガンダムDX(ダブルエックス)イフリーティア

型式番号 GDX-9901-IF

ファイター 陽炎 初登場話 第17話 ベース機 ガンダムDX(ダブルエックス)

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 8.3t

解説

陽炎がガンダムDXをベースに近接戦闘に特化させたカスタマイズを施したガンプラ。ガンプラの外見の変更点はずんぐりした下半身をスマートにすることと、放熱フィンを収納するカバーを丸みを帯びた鋭利な形状に変更した程度であり、武装面もガンダムDXの物を多く使用している。しかし、本機最大の特徴は「月が出ていなくてもツインサテライトキャノンが撃てる」ということだ。この特性は、ガンダムビルドファイターズに登場した「ガンダムX魔王」が使用した「ソーラーシステム」をイフリーティア様にした物で、周囲のプラフスキー粒子を放熱フィンと背面リフレクターで吸収することでそれらをエネルギーに変換するというものだ。これにより月からのマイクロウェーブ無しでツインサテライトキャノンが撃てるということだ。もっとも、この変換したエネルギーをツインサテライトキャノンに使用せず、通常武装への供給に回すことで長い継戦時間を獲得することも可能となっている。機体色は、白と赤、黒のトリコロール、アンテナ部に黄色が使われている。イフリーティアは、炎の魔人「イフリート」をもじったもの。

 

武装

イフリーティア専用バスターライフル

DX専用バスターライフルの出力を上げ、カラーリングを白と赤に改めた武装。バスターライフルという名前ではあるが、形状はビームライフルに似ている。発砲ビームの色は桃色。

ハイパービームソード 2基

ツインサテライトキャノンの砲身後部にそれぞれ接続されたビームソード。ガンダムDX従来の装備で、長大なビーム刃を形成することが可能。主に大型敵に対して使用する。発振ビーム刃の色は緑色。

ビームサーベル 2基

両腰横に装備されているビームサーベル。ジャスティスガンダムのラケルタビームサーベルを改良したもので、柄同士を連結させることで薙刀の様に使用することが可能。主に小型敵に対して使用する。発振ビーム刃の色は緑色。

ヘッドバルカン 2門

側頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制などに使用する。

ブレストランチャー 2基

胸部インテーク下に装備された3砲身の大口径機関砲。マシンキャノンより高い威力を誇り単体での敵機撃破を狙える。

マシンキャノン 2基

胸上部に装備された中口径機関砲。ブレストランチャーより威力は低いものの、それでも十分な火力を有する。

ニービームブレード 2基

膝から爪先にかけて展開されるビームブレード。蹴りと合わせて攻撃ができる。発振ビーム刃の色は緑色。

ツインサテライトキャノン

ガンダムDXイフリーティア、最大の火力と射程を誇る武装。2門の砲口からスペースコロニーすら破壊できるほどのビームを発射する。原作同様、月からのマイクロウェーブを受ければ連射が可能だが、ソーラーシステムを使用する場合は連射が出来ない欠点を持つ。発砲ビームの色は白みがかった青色。

ソーラーシステム

ガンダムビルドファイターズに登場する「ガンダムX魔王」が使用するエネルギー変換システムをイフリーティア様に改良した物。正確には太陽光ではなく、周囲のプラフスキー粒子をエネルギー変換して使用している。

ディフェンスプレート

ガンダムDXの従来の装備。陽炎の改造により、何枚ものプラ板を重ねたチョバムアーマーとしての機能を有している。

 

ファイター 陽炎 容姿(艦これにおける)陽炎

最照光(さてらいと)学園高校1年生の元艦娘。熱血じみた言動の多い元気な性格をしている。昨年の地区予選では暁学園に敗北し、今年こそリベンジしようとしていた。ガンプラのカスタマイズは近接戦闘に特化させることを好みつつ、ベース機の長所を引き延ばそうとする傾向がある。17人いる姉妹の長女で何かと面倒見もよく、姉妹揃っての暮らしはしてはいないものの、いつかその夢を叶えようとか思っているらしいが上手く進んでいないらしい。そして、姉妹たちの前でのみ「炎のガンプラファイター」を自称している。好きなガンダム作品は勿論「ガンダムX」。

 

機体名 ガンダムXブルーフレア

型式番号 GX-9900-BF

ファイター 不知火 初登場話 第17話 ベース機 ガンダムX

機体データ(製作者の設定)全高 17.5m 重量 7.7t

解説

不知火が陽炎のサポートをするべく製作したガンプラ。ガンダムXの汎用性を残しつつ、実態剣である「太刀」の追加装備が行われているが、不知火は機体の初動の隙をなくすため下半身を特に強化している。足裏を少し底上げし、膝裏には小型バーニア、脹脛の側面にはスラスターを装備している。これらをガンダムX従来の装備であるリフレクトスラスターと併用することで高速性能も獲得している。そして本機にもガンダムDXイフリーティア同様「ソーラーシステム」が搭載されており、月からのマイクロウェーブ無しでのサテライトキャノンの発射が可能となっている。しかし、イフリーティアと違ってマイクロウェーブを受けてもサテライトキャノンの連射は出来ない弱点も存在する。機体色は青とメタリックスカイブルー、白のトリコロール。名前のブルーフレアは「不知火を色で例えたら青よね!」と陽炎が言ったことに由来する。

 

武装

シールドバスターライフル

シールドと一体化したビームライフル。シールドとしても機能するため不知火によって装甲面の強化が行われている。発砲ビームの色は桃色。

大型ビームソード 1基

サテライトキャノン後部に装備されたビームソード。長大なビーム刃を形成することが可能。発振ビーム刃の色は緑色。

ブレストバルカン 4門

胸部インテーク下に4門供えられたバルカン砲。敵機の破壊から牽制など、幅広い用途を持つ。

ショルダーバルカン 1基

本来は外付けのオプション装備。右肩上のバックパックハードポイントに装備。

太刀 1本

ショルダーバルカンの下部に取り付けられた実態剣。ガンダムバルバトスの物をそのまま使用しているが、不知火が刀身をヤスリで削りまくったせいでかなりの切れ味を持つ。

サテライトキャノン 

本機最大の火力と射程を持つビーム兵器。肩から担ぐ形で発射態勢を取るためその間は無防備状態になりかねないが、イフリーティアとの連携発射でそれをカバーしている。発砲ビームの色は白みがかった青色。

ソーラーシステム

ガンダムDXイフリーティアに装備されているをガンダムXブルーフレアように調整した物。性能面もイフリーティアと同様。

 

ファイター 不知火 容姿(艦これにおける)不知火

最照光(さてらいと)学園高校1年生の元艦娘。陽炎姉妹の次女で、常に礼儀正しい性格をしており誰に対しても敬語で話すが、戦闘時に見せる眼光は凄まじく、艦娘時代には「戦艦殺しの眼光」と呼ばれていた時期もあったそうだ。現在でもその眼光は健在ではあるが、ガンプラバトルで効果を発揮したことはないらしい。昨年の地区予選では、陽炎同様暁学園に敗北を喫しており今年はリベンジに燃えていたが再び敗北してしまった。常に陽炎のことを気にかけており、何かあればすっ飛んでくると言った事があるとかないとか。

 

機体名 ビルドバーニングラブガンダム

型式番号 BG-012LOVE

ファイター 金剛 初登場話 第19話 ベース機 ビルドバーニングガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 17.7m 重量 78t

解説

金剛が使用する近接格闘戦用のガンプラ。ベース機であるビルドバーニングガンダムの得意とする拳を使った戦法を引き継ぎつつ、戦法の多様化と高機動性の向上を目指してカスタマイズされている。両腕を大型化し手甲と肩部装甲の追加と背部に装備された6枚のスタビライザー、そして炎を思わせる頭部アンテナが外見的な特徴を見せる。しかし射撃性能はからっきしとなっており、頭部のバルカン砲が唯一の射撃武装となっている。これは金剛のバトルスタイルと本機の基本戦法による射撃武装の必要性を極限まで削ったことによるものだ。そして本機最大の特徴は機体内のプラフスキー粒子を手に集約し放つ「バーニングラブフィンガー」である。この技は機体内にフレームが存在したとしてもフレームごと粉砕してしまう程の威力を誇る。機体色は白と深紅、各所に金糸雀(かなりあ)色を使用している。尚本機の製作は金剛4姉妹で行った模様。

 

武装(必殺技含み)

格闘

両の拳による格闘攻撃。本機のメインウェポンで、相手を直接粉砕可能。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制に使用する。

ビームサーベル 2基

腰横にマウントされたビームサーベル。ビルドストライクガンダムの物を流用した物。発振ビーム刃の色は桃色。

バーニングラブフィンガー

機体内のプラフスキー粒子を手に集約し放つ必殺技。ゴッドガンダムの「爆熱ゴッドフィンガー」を参考にした技で、掴んだ対象の内部まで破壊する威力を誇る。

 

ファイター 金剛 容姿(艦これにおける)金剛

風天(ふうてん)学園高等部3年生の元艦娘。英国生まれなだけあって英語の混じったカタコトなデース口調で喋る。明るく人懐っこい性格の持ち主で艦娘時代では何かと提督への愛を叫んでいたが、退役後にようやく落ち着きを見せた模様。ガンプラ製作の腕は姉妹全員の力でカバーしているようなので本人の実力は不明。元々高速戦艦であったことからガンプラバトルでも高速性のある機体を好む傾向があり、特にガンダムAGE-1スパローのゼダス戦での動きに惚れ込んでしまった過去を持つ。しかし好きなガンダム作品は「G」や「ビルドファイターズ系」だったりする。

 

機体名 ウィンドガンダム

型式番号 BNW-87S

ファイター 島風 初登場話 第19話 ベース機 スクランブルガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 20m 重量 67t

解説

島風の操縦する高い運動性と機動力を有するガンプラ。本機の製作は天津風が担っており、バトル時にセコンドとして天津風がいたのはその為である。ベース機を凌駕する機動性の獲得しようと天津風によってスラスター面の強化が大きく行われているが、ベース機に存在した変形機構はオミットされている。腕部にあったビーム砲は小型化されて腰横に移され、バックパックのウイングは左右4枚だったものを6枚に追加し、更にバックパック中央にアメイジングレヴAを改造したスタビライザーを備えており合計13枚のウイングで高機動時の安定性向上を図っている。また、腰裏にはビームライフルを格納するためのホルダーを備えている。尚、機体各所にあったプラフスキー粒子放出用のクリアパーツはウイングバインダー先端部を残して全て外され通常装甲かビームサーベルのホルダーに変換されている。天津風は本機の基本戦法を一撃離脱と定めているが、これはファイターである島風の艦娘時代から続ける戦い方を参考にしていることに由来する。機体色は白と青、赤のトリコロール。

 

武装

ビームライフル 2丁

取り回しに優れたピストル型のビームライフル。ビームライフル並みの威力を残しつつピストル並みの取り回しの良さを生み出そうと製作された。非使用時は腰裏のホルダーに格納される。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

両腕のホルダーに格納されたビームサーベル。咄嗟の格闘戦に対応出来るように格納状態でも発振できるように収められている。発振ビーム刃の色は桃色。

ビーム砲 2基

腰横に装備されたビーム砲。スクランブルガンダムの物を小型化した物。発砲ビームの色は桃色。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制などに使用する。

アメイジングレヴA

平時はバックパック中央にマウントされスタビライザーとして機能するが、取り外してシールドとしても使用できるようになっている。

 

ファイター 島風 容姿(艦これにおける)島風

風天学園中等部3年生の元艦娘。勝ち気で無邪気な性格の持ち主な為、学校で何かと問題を起こしているらしい。ビルダーとしての腕はからっきしでガンプラを説明書通りに作ることがやっとだが、性格が災いし飽きてしまうことが多い。早いものなら何でも好きなので、彼女が天津風に注文する内容も大抵が高機動性の向上に関係するものだとか。しかし、バトルの腕前はかなり高く金剛から支援を任されるほどだ。因みに学校ではちゃんと制服を着ているのでそこは問題になっていない。

 

機体名 ガンダム鬼羅(キラー)サンドロック

型式番号 XXXG-01KSR2

ファイター 綾波 初登場話 第18話 ベース機 ガンダムサンドロック改(EW(エンドレスワルツ)版)

機体データ(製作者の設定)全高 16.6m 重量 8t

解説

綾波の使用する近接格闘特化のガンプラ。近接格闘戦に優れたガンダムサンドロック改の性能を引き継ぎつつ運動性の更なる向上を図ることをコンセプトにカスタマイズがされている。大型だった両肩の装甲は敢えて小型に変更し可動範囲拡大を図り、足回りは堅牢かつしなやかにスクラッチされている。またバックパックはヒートショーテルを機体と水平にマウント出来るようにしその後部にX字状のスラスターとビームソードを備えたバインダーを装備している。そして頭部のV字アンテナには鬼の面を思わせる装飾を施しスライド機構を採用、これをメインカメラに被せることで特殊モード「鬼モード」が発動可能となる。格闘戦に主眼を置いた機体の為、射撃武装は少なめに設定されている。本機は数年前に行われたソロモンを舞台にした無双バトルロワイヤルイベント時に完成していた機体であり、綾波はこの機体で多大な戦果を挙げ「ソロモンの赤い鬼神」の異名を獲得した。機体色は白と赤、グレーのトリコロール。

 

武装

ヒートショーテル 2基

本機のメイン武装。大きく湾曲した刃を持ち、刀身を赤熱化させて相手を溶断する。非使用時はバックパック左右に機体と水平にマウントされる。

ビームソード 2基

X字状のバックパック上部に装備されたビームソード。ガンダムXの物を流用した物で、出力を任意で調整可能。発振ビーム刃の色は緑色。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制などに使用する。

腕部グレネードランチャー 2基

腕部に装備されたグレネードランチャー。計4発の弾を装填している。

耐ビームコーティングマント

ガンダムサンドロックEW版の装備していた物を動きやすいように改造した物。ビームサーベルなどの直撃には耐えられないが、それでも十分な防御力を発揮する。

鬼モード

ガンダム鬼羅サンドロックの持つ特殊モード。その正体はゼロシステムを応用した戦闘補助システムで、鬼の面を思わせる頭部のV字アンテナをメインカメラに被せることで発動し機体の反応速度を向上させることができる。尚、赤い目になるのは頭部アンテナに赤いデュアルカメラを装備している為である。

ビームサブマシンガン

出撃前にオプション装備として選択するビームサブマシンガン。綾波は基本的に使用しない模様。発砲ビームの色は黄色。

 

ファイター 綾波 容姿(艦これにおける)綾波

白守(しろもり)学園高等部1年生の元艦娘。おっとりして礼儀正しい性格をしている。夕立とは数年前に行われたソロモンを舞台にした無双バトルロワイヤルのイベントから互いにライバル視し合っている間柄である。その時の戦果、CPU制御のガンプラ71機、戦艦5隻、敵対ガンプラファイターの機体を6機撃墜と完成したばかりのガンダム鬼羅サンドロックの機体色も相まって「ソロモンの赤い鬼神」の異名で呼ばれるようになった。ガンプラの制作技術、操縦技術ともに高い能力を持っている。

 

機体名 アンティリーデスティニーガンダム

型式番号 ZGMF-X61S

ファイター 最上 初登場話 第18話 ベース機 デスティニーガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.5m 重量 78.9t

解説

最上の使用する高機動性と汎用性に優れたガンプラ。デスティニーガンダムの高い汎用性を残しつつ、最上がSEEDDestiny(シードデスティニー)劇中でデスティニーガンダムが直面した敗因について研究し自身が出した答えをもとに再設計が行われている。その為パッと見は素組に見えてしまうが中身はかなり別物となっている。特に最終決戦時の大破の原因となったことにはかなり重点が置かれており、両腰横にインパルスガンダムのビームサーベルなどをマウントするなどの改良が加えられている。基本的にデスティニーガンダム同様に豊富に装備を持っており苦手とする距離はハッキリ言って無いと言えるだろう。機体色はベース機の物をそのまま踏襲している。名前の「アンティリー」とは抗う者の意味を持つ「A resist」をもじったもの。

 

武装

高エネルギービームライフル

デスティニーガンダムの物をそのまま使用している。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル 2基

両腰横に装備されているインパルスガンダムのビームサーベル。アロンダイト紛失の使用を想定し装備された。発振ビーム刃の色は桃色。

17.5㎜CIWS 2門

側頭部に装備されたバルカン砲。本機唯一の実弾武装。

フラッシュエッジ2ビームブーメラン 2基

両肩に装備されたビームブーメラン。デスティニーガンダムの装備していた物をそのまま使用している。投げると弧を描いて手元に戻ってくる。発振ビーム刃の色は桃色。

アロンダイトビームソード 1基

バックパック右側に懸架された大型対艦刀。ビーム刃と実体刃を併せ持つ。発振ビーム刃の色は桃色。

高エネルギー長射程ビーム砲 1基

バックパック左側に懸架された大型のビームランチャー。本機最大の火力と射程を誇る武装。発砲ビームの色は赤い軸に白い帯。

パルマフィオキーナ 2門

掌に装備されたビーム砲。敵を掴んだと同時に発砲し確実に敵機を破壊、咄嗟の不意打ちなど広い用途で使用できる。

グリフォンビームブレイド 2基

膝下から爪先にかけて展開されるビームブレイド。デスティニーガンダムの敗因研究の結果から装備が決定した。発振ビーム刃の色は桃色。

ビームシールド

両の手甲から発生させることの出来るビームシールド。通常の実体盾よりあらゆる攻撃を防御できる優れた装備。

光の翼

デスティニーガンダムの代名詞とも言える武装。背部ウイングから虹色の翼を発生させ残像を発生させると共に高い機動力を得ることが出来る。

 

ファイター 最上 容姿(艦これにおける)最上

白守学園高等部2年生の元艦娘。非常にボーイッシュでハツラツとした性格の持ち主。一人称は「ボク」。よく男の子と勘違いされることがあるらしくそれが目下の悩みらしい。時雨とは艦船時代からの仲で、何かと面倒を見ていたことがある。退役後も時雨を白守学園に誘ったそうだが失敗したようだ。ガンプラ製作技術は少し低いが戦闘技術は一級品。好きなガンダム作品は「SEEDDestiny」

 

機体名 ガンダムキュリオスアーチャー

型式番号 GN-003A

ファイター 雷 初登場話 第18話 ベース機 ガンダムキュリオス

機体データ(製作者の設定)全高 19.4m 重量 57.1t

解説

雷が使用する射撃戦に特化したガンプラ。雷の戦法である「敵機を破壊せず無力化する」という戦法に合わせて徹底的なカスタマイズがされている。ベース機の変形機構はオミットされ、それに伴って膝にあったウイングは取り外されそこにプラ板を貼り装甲面を強化、両肩の付け根部分にはライトニングガンダムの物を思わせる大型のセンサーユニットを装備し射撃の命中精度を高めている。また、従来のバックパックはGN(ガン)アーチャーのバックパックにGNビームキャノンを装備した物を360度回転できるようにした物を装備している。雷の戦法に合わせ、ミサイルなどの面制圧に適した武装は全てオミットされている。機体色は白とオレンジのツートン、各所に黄色が施されている。名前の「アーチャー」は「正確に撃ち抜く者」という意味を込めて付けられた。

 

武装

GNビームライフル

ガンダムキュリオスのGNサブマシンガンを改造し、連射力を犠牲にして一撃の威力を高めた武装。発砲ビームの色は桃色。

GNビームサーベル 2基

ガンダムキュリオスの標準装備の武装。マウントの位置にも変更はない。発振ビーム刃の色は桃色。

GNバルカン 2基

腕部に新たに装備されたビームバルカン。雷はあまり使用しないが牽制などに使用するために装備された。発砲ビームの色は桃色。

GNビームキャノン 2基

GNアーチャーのバックパック先端にある窪み部分に装備されたビームキャノン。単射と薙ぎ払うように発射することも可能。発砲ビームの色は桃色。

GNシールド(GNクロー)

ガンダムキュリオスの物をそのまま使用している。勿論クローとしても使用できるが、投擲して攻撃することもできる。

 

ファイター 雷 容姿(艦これにおける)雷

白守学園中等部2年生の元艦娘。電の姉であり、活発であり何かにつけて他人に頼りにされたがる性格の持ち主。そういう性格であるがため1番上の姉である暁と何かと意地を張り合ったりすることがあるらしい。以前使用していたミゲル・アイマン専用ジンのカスタム機「雷専用カスタムジン」で「敵機を破壊せず無力化する」という戦い方をした結果「救済の魔弾」という通り名が出来た過去を持つ。

 

機体名 イナヅマガンダム(インパルスカスタムバージョン)

型式番号 ZGMF-X56S-INDM/INPS

ファイター 電/ぷらずま 初登場話 第23話 ベース機 イナヅマガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 19.1m 重量 68.67t (コンテナ装備時 76.3t)

解説

電が地区予選決勝にて雷対策としてカスタマイズを施したイナヅマガンダム。イナヅマガンダムのベース機であるインパルスガンダムの合体分離機構を本機に採用したのがこのイナヅマガンダム(インパルスカスタムバージョン)である。本機は原作同様、コアスプレンダー、チェストフライヤー、レッグフライヤーで構成されており、予備のチェストフライヤーとレッグフライヤー、新型シルエット「ファトゥム-02シルエット」が格納されたコンテナを装備して出撃することで機体の各部を破壊されてもすぐに戦線復帰出来るようになっている。この合体分離機構の再現は暁学園ガンプラバトル部のメンバー3人で協力し製作された。ガンプラバトルのルールである戦闘機は10機まで使用可能というルールをギリギリ縫った使用である。

 

武装(追加装備のみ表記)

コアスプレンダー

本機の核となる戦闘機。機首にバルカン砲を装備している。原作と同じ変形機構を有している。

チェストフライヤー 2基

イナヅマガンダム(インパルスカスタムバージョン)の上半身を構成している戦闘機。飛行時はインパルスガンダムのチェストフライヤーと同様の形状になる。

レッグフライヤー 2基

イナヅマガンダム(インパルスカスタムバージョン)の下半身を構成している戦闘機。飛行時はインパルスガンダムのレッグフライヤーと同様の形状になる。

ファトゥム-02シルエット

ファトゥム-01シルエットをベースに近接戦闘に特化した変更がなされた装備。基本的にコンテナに格納されており、ファトゥム-01シルエットが使用不能となった時の予備として使用することを想定している。

大型ビーム対艦刀 2基

ファトゥム-02シルエット上部にマウントされたエクスカリバー対艦刀を改造した対艦刀。剣先までビーム刃を展開できるようになっている。発振ビーム刃の色は桃色。

フラッシュエッジビームブーメラン改 2基

ファトゥム-02シルエットの翼上部に並列して設置されたフラッシュエッジビームブーメランを改造したビームブーメラン。投げると弧を描き手元に戻ってくる。発振するビーム刃は桃色。

ビームキャノン 2門

ファトゥム-02シルエットのフォースシルエット下部ウイングに装備された物。発砲ビームの色は赤い軸に白い帯。

コンテナ 1基

ファトゥム-01シルエットの上に載っているコンテナ。中には予備のチェストフライヤーと、レッグフライヤー、ファトゥム-02シルエットが格納されている。武装スロットから使用が可能。

 

ファイター ぷらづま 容姿(艦これにおける)今作オリジナル設定なのでなし(検索したらとりあえず出てきます)

電の中に存在したもう1人の人格。極端に口は悪いが、根は優しい性格をしている。電の両眼が深紅になっている時は完全に彼女が人格を完全に電からとっている状態で、片目のみが深紅の場合は電と人格を半々に分けている状態である。バトルでは残虐極まりない戦闘を行うがその腕は金剛を簡単にあしらってしまう程。

 

登場人物解説

吹雪 容姿(艦これにおける)吹雪改二

電の住んでいるアパートの隣の部屋に住む元艦娘。隣人である電の事をいつも気にかけているが何処か暗い雰囲気を放っている様子。

 

白露 容姿(艦これにおける)白露改

白露型ネームシップにして白露型姉妹の長女である元艦娘。何かにつけて「1番」と言ってくる1番さん。ガンダムの知識は全くと言っていい程ない為、村雨にいつも解説を求めている。

 

村雨 容姿(艦これにおける)村雨改

白露型3番艦で白露、時雨の妹で夕立、五月雨の姉である元艦娘。ガンダムの知識はかなりあるようで、白露と五月雨の会話にほぼ完璧に返答している。

 

五月雨 容姿(艦これにおける)五月雨

白露型6番艦で物語現在における白露型の末っ子。ドジっ子レベルがかなり高いが、ガンダムの知識は村雨に次ぐレベル。

 

天津風 容姿(艦これにおける)天津風

陽炎型9番艦の元艦娘。ガンプラの制作技術は一級品で彼女の制作したガンプラはどれも完成度の高いものばかりとなっており、島風とは同じ姉妹では?というほど仲が良い。しかし何故かバトルの腕は立たないらしい。




いかがでしたでしょうか?これで2回目の登場人物&ガンプラ解説は以上となります。
次回からは今まで通りのお話の続きを投稿していくので楽しみにしていてください。
尚、青葉については次回の解説にて紹介します


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EP25 合宿

山と山に挟まれた盆地に伸びる1本の道に他の車に交じってピンク色の軽自動車が走っていた。その軽自動車の運転席には薄いピンク色の髪をポニーテールにした襟と袖が青いセーラー服を着て、青いキュロットを履いた青い瞳の少女が座っていた。そして、助手席には時雨、後部座席には電と夕立が座っていた。歴代ガンダムのオープニング曲やエンディング曲、挿入歌やテーマソングが流れ続けている車内で時雨が口を開いた。

「青葉さん。今日は車運転してもらってありがとう」

「いえいえ、お気になさらずぅ!」

車を運転していたのは青葉だった。彼女も戦争終結とともに退役した元艦娘で、現在は艦娘時代の行動力を生かしたジャーナリストと私立探偵事務所「青葉探偵所」を営んでいる。2日前、ネリタ模型店を襲撃した(?)青葉は時雨たちが行きたがっていたガンプラバトル日本協会主催の合宿の会場までの「足」を買って出たのだ。

「それにしても、なんであの時タ級さんに運転をお願いしてたんですか?青葉気になっちゃいますねぇ」

「うん。今顧問の先生が長期出張で車運転してくれる人がいなくって…」

「だからタ級さんにお願いしに行ったっぽい!タ級さんしか夕立たちの近場で運転できる人いないっぽいし」

「ふむふむ、なるほどなるほど!って、案外普通の理由ですね…」

運転しながら少し肩を落とす青葉。何を期待してたんですか?と呆れて呟く電。しかし、青葉はすぐにいつもの口調で再び話し出した。

「でも、青葉は全国大会出場者の顔を見てみたいって思ってましたからWin-Winってことにしましょう!」

「アハハ!青葉さんらしいっぽい!あ、今の曲リピートして欲しいっぽい!」

「恐縮です!」

車内が笑い声で包まれる。その中で青葉が一言、それに。と呟き少しして口を開いた。

「最近、元艦娘の失踪事件が発生してるんですよ。人が多く集まる場所なら何か情報が掴めるかもしれませんしね!」

「え?元艦娘の、失踪事件…?」

笑い声に包まれていた車内の空気が一気に凍り付く。青葉はそのままの口調で続ける。

「はい!最近本当に多くって、それに何も情報がないんですよ…失踪の理由とかも全然心当たりがないって依頼者は言ってきますし…これは、私立探偵としてもジャーナリストとしても気になっちゃうんですよね!」

「あ、青葉さん…それってその口調で話す内容じゃないですよね?」

電がビクビクしながらながら口を開いた。しかし、青葉は話しを切ろうとせず続ける。

「今日までにもう3人も失踪してるんですよね~名前は上げれないですけど、秋月型、陽炎型、白露型からそれぞれ1人ずつ依頼が上がってるんですよー」

その青葉の言葉を聞いた瞬間、時雨と夕立に衝撃が走った。そして荒げた声で時雨が口を開く。

「青葉さんその話本当なの!?」

「はい本当ですよ!3週間ほど前でしたか?県立第1中学校のガンプラバトル部の皆さんが事務所に駆け込んできたんですよ~」

「え…じゃ、じゃあ、失踪した白露型元艦娘って春雨さんってことですか?」

「ご名答ですね~電さん。まさしくそうですよ!」

「そ、そんな…春雨が…」

「ぽい……」

時雨と夕立が絶句してしまう。完全にぐったりと項垂れてしまった2人に、これは言い過ぎましたね。と慌ててフォローを入れる青葉。

「でも心配しないでくださいよ!この青葉が絶対見つけてみせますから!」

「そ、そうですよ。きっと見つかる筈です!それに、春雨さんが約束を放り投げる筈ありませんよ!」

電も青葉に続いてフォローを入れる。少し顔を上げた時雨と夕立、すると時雨が少しだけ皮肉そうな声で喋り出した。

「春雨は約束を放り投げない。か…確かに、そうかもね」

「時雨さん…」

それに続いて夕立も口を開く。

「電ちゃんの言う通りっぽい。春雨は真面目だからきっと約束は守るっぽい!」

「青葉さん。春雨のことお願いします」

「はい!この青葉に任せちゃってください!と、見えてきましたよ!」

ようやく明るさを取り戻した車内。そして、その窓には合宿の会場である「大和旅館」が見え始めていた。3人は旅館の方向を見つめていた。いよいよ、合宿の始まりである。

 

だったのが、4人の目の前には出迎えに来てくれた2人の背の高い女性だけ立っていただけで広い玄関と隣接する広間はもぬけの殻と言ってもいいぐらい静まり返っていた。

「あ、あれ?誰もいないっぽい?」

「お待ちしていました。暁学園ガンプラバトル部の皆さんですね」

「あ、大和さん!お久しぶりです!」

「時雨さんに夕立さん、電さんじゃないですか!お久しぶりですね」

「大和さん久しぶりっぽい!」

「お、お久しぶりです」

大和と呼ばれた、白地に桜の花と花びらが描かれた浴衣に艦底色を思わせる帯を巻いたとても長い茶色の髪をポニーテールにした髪と同じ色の瞳の女性がニコリと笑って、いらっしゃい。と返した。彼女もまた退役した元艦娘で、今では妹の武蔵と共にこの旅館を営んでいる。

「よく来たな3人…いや4人か、今日からしばらく私たちが世話をすることになるがよろしく頼むぞ」

「ありゃりゃ、見つかっちゃいましたか~流石武蔵さん!」

「フッ、お前も元気そうだな青葉」

暁学園の面々を出迎えたもう1人の背の高い女性は武蔵だった。褐色色の肌にかなり薄い金髪をツインテールかつ獣耳みたいにして、かなり薄めのグレーに紅葉の絵柄が入った浴衣を着て大和と同じ色の帯をしていた。彼女もまた元艦娘であり、現在ではこの通り大和と共にこの旅館を営んでいる。

「それではお部屋に案内しますね。中へどうぞ」

「あの、大和さん。1つ聞きたいんだけど」

4人を部屋へ案内しようとした大和に時雨が問いかけた。何を聞こうとしているのかを、まるで分っているように返してくる大和。

「なんで他県の皆さんがいないか。ですか?」

「凄い!大和さんなんで分かっちゃうっぽい!?」

「ここに来た参加者の皆から同じ質問ばかり来るのでな。今のお前たちで41回目だ」

「そ、そんなに聞かれてるんだ…と言うか、武蔵さん数えてたんだ」

帰ってきた答えに完全に呆気取られてしまった時雨。そして大和が時雨の問いかけに答えた。

「今、ここの県代表を決める試合が近くの体育館で行われてるんですよ。それを皆さん見に行ったので今、こんな状況なんですよ」

「「「え?」」」

結局その場にいた青葉を除く全員が呆気取られてしまったのであった。

 

続く




次週の投稿はお休みさせていただきます。申し訳ありません。


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EP26 月華団

旅館で貸し出し自転車を借り、体育館へと急ぐ電たち。この県の代表を決めている試合となれば観戦しそのチームの戦力を見ておかないわけにはいかないと、と言う3人全員の意見一致でこの状況になったのだ。

「それにしても、結構遠いっぽい体育館」

「そうだね。こぎ出してもう10分は経つかな」

「でも、これくらい余裕っぽい!」

「あはは、流石だね夕立」

自転車を漕ぎながらお喋りをする時雨と夕立。その2人の後を追いかける電。元々、そこまで体力のない電にとって2人の、特に夕立のスピードに追い付くのはかなりの苦の様で―――

「はぁはぁ…ま、待ってくださーい!」

「あ、また電を置き去りにするところだったよ。夕立、少しペースダウンするよ」

「ぽーい!」

やがて体育館の駐輪場にたどり着いた3人。そこにはやはり大和旅館の貸し出し自転車が大量に止まっていた。それはもう駐輪場の3分の2を埋め尽くす程だった。

「よし、急ごうか」

「ぽい!」「なのです!」

そして体育館を目指し、3人は駆けていった。

 

そして体育館の2階への階段を上がり、3人の視界が開ける。体育館の中央ではガンプラバトルが既に始まってはいたが、会場はバトル中だというのに静まり返っていた。そのことに気付かない3人ではなかったが時雨が、とりあえずどこかに座ろう。と言うと階段のすぐ傍の空いていた席へと腰を下ろした。そして、席に座ると遠目に戦況の確認を始めた。

「フィールドは街みたいだね。広い草原と、都市部の2つのエリアに分かれてるみたいだ」

「今動いてるガンプラは都市部で戦ってる2機だけみたいなのです。あれは…ガンダムバルバトスの第6形態と…グレイズアイン!?」

月の満ち欠けを表すような線が描かれた黄色い円を背景に黒縁に黄金色の鉄華団マークを胴体部につけた白い外装を身に纏った巨大な恐竜の頭部を思わせるを鈍器(レンチメイス)振るう機体「ガンダムバルバトス第6形態」と、2本の大斧を振るう漆黒の装甲を纏うバルバトスよりもひと回り程大きさを誇る機体「グレイズアイン」両機は互いに手持ちの武器をぶつけ合う激しい戦闘を繰り広げていた。

「でもあの戦闘、バルバトスのファイターが押され気味っぽい」

「バルバトスのファイターは……あ!あれ三日月だよ!」

時雨は操縦スペースでバルバトスを動かしているのが、元艦娘の三日月であることに気付いた。癖のあるセミロングの髪に大きなアホ毛、黒いセーラー服に三日月のペンダントを付けた金色の目をした背の低い少女、三日月は歯を食いしばりながらバルバトスを操縦していた。

 

※注意、ここから鉄血のオルフェンズ「#25 鉄華団」のワンシーンをアレンジ付きで再現します。キャラ崩壊等が含まれますのでご注意ください。

 

グレイズアインが右手に握る大斧を上段から振り下ろす。バックステップでそれを回避するバルバトスに、左手の大斧で連撃を加えるグレイズアイン。

「グッ!」

三日月はバルバトスの態勢を整えながら、相手をモニター越しに睨みつける。そこに右手の大斧を振り下ろしてくるグレイズアイン。それを今度は機体を横に移動させることで回避する三日月はすかさず手にしたレンチメイスを横に振るしかしその攻撃はグレイズアインが機体を少し反らすことで回避し空振りとなってしまった。レンチメイスを振りきり、隙を見せたバルバトスにグレイズアインが蹴りを放つ。その蹴りをくらってしまったバルバトスは地面に尻もちをついてしまった。

「グッ!クッ…」

すると、グレイズアインのファイターから通信が入る。

「これがアシムレイトの完全なる姿…」

地面に突き立てた大斧を拾いながらさらに続ける。

「貴様の様な半端な物ではない。文字通り人とガンプラを1つに繋ぐ力!」

尻もちをつくバルバトスに大斧を突き立て、三日月を挑発するグレイズアインのファイター。三日月はその言葉に少し驚きながら呟いた。

「完全な…アシムレイト」

アシムレイトとは、ファイターがガンプラに強い自己暗示をかけて五感を共有し、機体性能を向上させる現象のことで簡単に言えば「ガンプラとファイターの一体化」である。プラシーボ効果により、ファイターの精神が続く限り使用できるもののノーシーボ効果により機体のダメージがファイターに伝わってしまう副作用の様な物も存在する。三日月はどう言うわけかアシムレイトの才能があったためこの技を使用出来るようになっているのだ。するとその時、三日月はバトル開始前の事を思い出した。

(確か、相手の人数は3人でした…でも出てきたのはグレイズアイン1機…なるほど、そう言うことでしたか)

「貴様など…」

何かに気付いた三日月だったが、グレイズアインが大斧を大きく振りかぶったのが目に入るとバルバトスを宙返りさせてそれを回避した。見事な着地を成功させたバルバトスは落としていたレンチメイスを拾い上げ両手で構えるが、グレイズアインが投擲した斧が右肩側面の装甲を直撃し装甲が弾き飛ばされてしまった。バルバトスも直撃の時の衝撃で少しバランスを崩すも、しっかりと両足を地面に打ち付けることでバランスを保った。

「ただの出来損ないにすぎない!!」

グレイズアインはバルバトスに大斧で薙ぎ払い攻撃を放った。三日月はそれをバルバトスをしゃがませることで回避し接近してきたグレイズアインにレンチメイスでの薙ぎ払いで反撃した。しかし、その攻撃は相手のジャンプで回避されグレイズアインはそのまま踏み付け蹴りを放ってきた。バルバトスはすぐさまその場を動き回避する。舞い上がる土煙の中から現れたバルバトスは、レンチメイスの長い持ち手を両手で握りしめ機体を1回転させてグレイズアイン目掛けて放った。グレイズアインも大斧を振り下ろしこれを迎え撃つ。ガキーン!という金属音と共に2機の目の前でレンチメイスと大斧がぶつかり互いを弾き合う。バルバトスとグレイズアインが互いにバランスを大きく崩す。

「くっそ…」

 

ところ変わって「月華団(げっかだん)」と書かれた部屋の中では、セミロングの茶髪を紅白縞模様の布でポニーテールにして同じ模様の鉢巻を巻いた弓道着の少女と、薄紫色のもみ上げの長いボブヘアーに三日月の髪飾りを付けた紺色のセーラー服を着た少女が荷物を整理していた。

「これでみんなの荷物整理は終わりですね」

薄紫色の髪の少女が、茶髪の少女に話しかける。すると、茶髪の少女は―――

「うん、終わる。終わらせる…」

「団長?」

茶髪の少女の言葉に疑問を持った薄紫色の髪の少女が茶髪の少女のことを「団長」と聞き返す。すると団長と呼ばれた少女は薄紫色の髪の少女へ振り向くと口を開いた。

「弥生ちゃん、頼みがある」

「頼みですか。でも、団長は?」

弥生と呼ばれたその少女はさらに団長に聞き返す。すると団長はすぐに答えた。

「ミカを1人にさせておくわけにはいかないんだ…」

「まさか!県代表戦の会場に!?」

驚愕した声で返す弥生。しかし、団長はフッと笑ってみせ言葉を続ける。

「団長としての私の仕事だ。見届ける責任があるんだよ…全部をね」

そう言うと団長は部屋の扉を勢いよく開け飛び出していった。そして止めてあった自転車に跨ると全力でこぎ出した。

 

夕焼けに染まりだした都市部の一角から大きな砂煙が上がる。その煙の中には倒壊したビルにもたれかかるバルバトスと、それを見下すように立つグレイズアイン。三日月は荒い息を吐きながら現状を確認していた。

「罪深き子供…オレの兄はお前たちと戦うつもりなどなかった。お前たちを救うつもりでいたのに…その慈悲深き思いがなぜ伝わらない!」

(スラスターの残量は残り僅か、ガトリングの残弾も…どっちにしろこれじゃ倒しきれない…)

完全に有利に戦闘を進めるグレイズアインのファイターは、にやけた表情で三日月を挑発する。その言葉に三日月が疲れ気味になった口調で返す。

あそこ(地区予選1回戦)で負けたくはありませんでしたからね…」

その言葉が発せられるとグレイズアインの頭部センサーが赤い光を放った。そして大斧をひと際大きく振り上げた。その隙にバルバトスも背面のスラスターを全開で噴かした。

「やはり貴様は出来損ない!」

斧が振り下ろされそうになったその瞬間バルバトスがスラスターで砂煙を舞い上げた。そして、バルバトスは手にしていたレンチメイスをグレイズアイン目掛け放り投げた。しかし、レンチメイスはグレイズアインの左手で受け止められてしまいそこに装備されたパイルバンカーで粉々に粉砕されてしまった。

「不意打ちなど、効かん!」

しかし、その先にバルバトスはいなかった。

「零距離ならっ!」

グレイズアインの後方から現れたバルバトスは右手を、グレイズアインのコックピット目掛け大きく突き出し零距離での機関砲を発射しようとした。しかしバルバトスの伸ばした腕はグレイズアインの左手に握られそのまま放り投げれた。

「清廉なる正しき神童を理解しようとしない野蛮な獣!」

「クウッ!」

三日月は何とかバルバトスの態勢を整えさせ地面に着地する。

「はぁはぁ…あっ!」

「なのに!」

しかしそこにグレイズアインが足をドリル状に回転させたドリルキックを一直線に胴体部目掛けて放ってきた。バルバトスはその攻撃を少しだけ受けたが咄嗟に後退し、連撃で放ってきた大斧の縦振りを回避する。そして、壊されてしまったレンチメイスに変わってバックパックにマウントされた太刀を抜く。咄嗟に太刀を構えたバルバトスにグレイズアインが更に大斧を横一文字に放ってくる。その状態で鍔迫り合いとなった2機だったが、グレイズアインのファイターはさらにもう1本の大斧も振り下ろしてきた。バルバトスは太刀の背を手で押さえながら何とかこらえていた。

「あろうことか、その救いに手をかけ冷たい墓標の下に引きずり込んだ!」

「単純な速度…じゃなく反応速度か。これがアシムレイトの差って訳ですか…」

三日月は少し焦りを見せながらも冷静さを保ち続けていた。しかし、グレイズアインの追撃は止まることを知らないかのように機体の全重量を乗せ始める。

「もう貴様は救えない!その身にこびりついた罪の穢れは決して救えはしない!」

「はぁはぁ…」

「貴様も!あの女も!お前の仲間も!」

「ッ!!」

三日月の脳裏に、茶髪の少女の笑顔がよぎった。しかしグレイズアインの全重量を乗せた押し込みに遂に両膝をついてしまったバルバトス。

「消して!貴様の、貴様らの敗退をもって、罪を払うっ!!」

「…罪?救う?……それを決めるのは貴方じゃないんですよ…ねぇ、バルバトス…良いからよこせ貴方の全部っ」

バルバトスのメインカメラが大きく光り始めたのはその時だった。しかし、グレイズアインの放った蹴りで体勢を崩されてしまったバルバトスはそのまま2撃目の蹴りを喰らい大きくふっ飛ばされてしまった。

「負けて贖えぇ!!」

その隙にグレイズアインはバルバトスの背後に回り込み、右手の大斧を振り抜いた。しかし――――

 

 

ガキィーン!!

 

 

大きな金属音と共に大斧が宙を舞ったのだ。その現象の理由はバルバトスだった。バルバトスが右手に握った太刀を大きく振り抜いていたのだ。咄嗟の出来事にグレイズアインのファイターは驚きに満ちた言葉を発した。

「な、なんだ、今の反応は!?」

「まだです……」

操縦スペース内にいる三日月の右手がうずきだし、右目からだくだくと血が流れ始める。

「もっと……もっと………もっとよこせ!バルバトスッッ!!!」

バルバトスのメインカメラがより一層光り輝いた。

 

一方その頃、自転車をこぎ体育館へと急ぐ団長。その時、自身のスマホに電話が入った。発信者は弥生だった。自転車をこぎながら電話に出る団長。

「団長、聞こえますか?出発準備が出来ました。みんなにこの事を伝えてください!」

「よくやった!」

すると団長は自身のスマホを操作し、月華団の全員と通話を始めた。

「みんな、聞こえるか!?合宿への出発準備は整った!」

そして、その言葉を聞いていた月華団の団員たちが衝撃を受けニヤつきだした。

「私たちの仕事はあと1つだけだ!だから…こっから先は負けるな!」

荒げた声で団長が続ける。

「もう負けんじゃねぇぞ!こっから先に負けた奴は、団長命令違反で私がもっぺん負かす!だからいいか!?何としてでもっ、這ってでもっ、それこそ負けても勝ち上がれっ!!」

自転車をこぎ続け、遂に体育館へたどり着いた団長。自転車のスタンドを勢いよく止め体育館へと駆けていく。そして階段を駆け上がり、団長の視界が開けバルバトスとグレイズアインの戦闘の砂煙が目に映る。

「ミカッ!?」

そして団長が駆け上がった階段は電たちが座る席のすぐ隣だった。

「え?瑞鳳さん!?」

グレイズアインが横一文字に大斧を振るい、それをしゃがんで回避するバルバトス。その隙に懐に入ったバルバトスは太刀を振り上げてグレイズアインを攻撃した。しかし身体を少し反らされ回避されてしまう。そこにグレイズアインの振り下ろしが放たれるがバルバトスはさらにその攻撃を避け、再び太刀を振り上げる。その太刀の振り上げは遂にグレイズアインの左肩を掠めた。

「こいつ急に動きが!?」

「あああっ!!」

更に斬りこんだバルバトスは再び斬り上げを放つ。しかしこれはグレイズアインに横スライドで回避されてしまった。斬り上げの隙を突かれスクリューパンチを顔面に喰らってしまった。

「なめるなぁー!」

「グゥッ…グアッ!」

更にドリルキックを胴体部に受けたバルバトスはノックバックされてしまい、胴体部を覆っていた装甲をパージしてしまった。その装甲を踏み付け頭部のカメラをギラリと光らせるグレイズアイン。

「鼠の悪あがきも…これで終わりだぁー!」

地面に両膝をついて崩れ落ちるバルバトス目掛け、グレイズアインが大斧を上段から一気に振り下ろそうとした。もはや万策尽きてしまった三日月は静かに目を瞑り、負けを認めようとした……その時―――――

 

 

 

何やってんだミカァァァー!!!

 

 

 

「っ!?」

瑞鳳の心からの叫び声を聞いた三日月は勢いよくその目を見開いた。そして、両肩の装甲を咄嗟にパージするとその場から目にも止まらない速さで一気にグレイズアインの背後に回り込んだ。振り下ろされた大斧がパージした装甲を捉えたことにようやく気付いたグレイズアインのファイターは驚愕の言葉を放った。

「なにぃ!?」

その一瞬の隙を突きバルバトスはグレイズアインの真後ろから、太刀を最上段に構えて斬りかかった。機体の全出力を乗せた三日月とバルバトス、渾身の一太刀はグレイズアインの左肘をバッサリと切り裂いた。

「このグレイズアインの装甲を…フレームごと…!?」

「これの使い方…やっと覚えれた…」

瑞鳳が来たことに何か安堵したかのような少し弱い声で三日月が呟く。しかし、これに完全にキレてしまったグレイズアインのファイターは大声で叫びながらスクリューパンチを仕掛けた。

「この…化け物がぁー!!」

しかし、そのスクリューパンチもバルバトスが放った横一文字斬りによって手首を切断され阻止されてしまった。そして、三日月が一言嫌そうな口調で呟く。

「貴方にだけは言われたくないですよ…」

遂に冷静さを失ったグレイズアインのファイターは荒げた声で喋り出す。

「兄さん!先生!」

しかし三日月はその言葉に耳を貸そうともせず、太刀をバルバトスの胸の正面に構えさせ―――

「オレは、オレの正しさ――――」

 

 

ガキィィィン……

 

 

グレイズアインのコックピット部分をピンポイントで突き刺した。グレイズアインがゆっくりと機能を停止させる。

「うるさいなぁ…」

赤く染まり出した太陽が太刀の刀身と重なり輝く。そして、三日月がゆっくりと口を開く。

「瑞鳳の声が…聞こえないじゃないですか……」

三日月がそう言い終わるのと同時に瑞鳳は体育館の天井を向き、ニッと笑ってみせた。

「Battle Ended!」

バトルが終了し、三日月の元へ駆けつけた瑞鳳。

「ミカ…」

瑞鳳が三日月の名前を呼ぶと、三日月は一言聞き返した。

「ねぇ瑞鳳…」

「ん?」

「ここがそうなんですか?私たちの本当の居場所?」

瑞鳳は少し考えた後、体育館の窓から見える本物の夕焼けを見つめ、答えた。

「うん。ここもその1つだよ…」

三日月も瑞鳳と同じ夕焼けを見上げ、満足した表情で呟いた。

「そっか……綺麗だね……」

 

続く



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EP27 パーティーナイトin合宿(前編)

県の代表が月華団。もとい、月光華(げっこうか)高等学校に決まったことで合宿は本格的にスタートした。合宿初日となる今日は大和旅館の大宴会場を使ったパーティーが模様された。全国から集ったガンプラファイターたちも今日はバトルを忘れてパーティーを楽しんでいた。それは勿論暁学園の3人も同じで今はついさっき全国出場が決まった月華団のメンバーの所にいた。

「全国出場まずはおめでとう。月華団」

「それにしても、今日のバトルは凄かったっぽい!なんか、ガンプラがヌルヌル動いてたからビックリしたっぽい!」

「電もあれは初めて見たのです」

「ああ、あれはアシムレイトと言ってな私と睦月、三日月の3人が使えるものだ」

緑色のセミロングヘアに黒いセーラー服を着た黄緑色の目をした少女、長月が淡々と説明をした。彼女もまた元艦娘で、現在は姉妹揃って月光華高等学校の中等部に通っている。しかし、時雨はアシムレイトについては知っていたようで、うん、知ってる。とスパッと返してしまった。

「知っているのなら仲間に教えておけ。情報の共有は戦術に左右するからな」

「あはは…今度から気をつけるよ」

「まぁまぁ!ここはこの睦月に免じて許してくれにゃしぃ!」

長月の隣で独特な語尾を持ったショートヘアの茶髪と同じ色の目、襟とスカートが緑色のセーラー服の上に黒の上着を着た少女が口を開いた。彼女の名は睦月。元艦娘であり、睦月型12人姉妹の長女である。

「バトルする時があったら睦月の実力見せてあげるにゃしぃ!」

「じゃあじゃあ、明日バトルするっぽい!」

「ムム!夕立ちゃんやる気みたいだね。睦月の「睦月号」の錆になるがよいぞぉ!」

「睦月ちゃん。張り切るのはいいけど、あまりガンプラを壊さないでね?整備が大変なんだから?」

睦月の隣に立っていた栗色のロングヘアーにピンク色の玉と三枚の羽根飾りが付いた髪留めを付け、睦月と同じ制服を着た紫色の目をした少女が口を開いた。

「わかってるよ如月ちゃん!」

「うふふ…まったく睦月ちゃんったら」

彼女の名前は如月。元艦娘であり、睦月型姉妹の次女にして月華団においてはガンプラの整備を担当している1人である。そして何より、姉である睦月のことが大好きなのだ。

「でも、睦月ちゃんの睦月号は今日の試合で壊れちゃったし、明日のバトルはお預けかなぁ~」

「う…そうでした~」

ハッとした睦月はその後すぐにぐったりと項垂れた。すると今度は癖のある長い金髪を後ろで2つにまとめて黒色に黄色線が入った襟の白いセーラー服を着て濃紺色の長袖を着た金色の目をした少女が口を開いた。

「自分のガンプラの状況は常に把握しとかないとダメだよ睦月?」

「う~皐月ちゃんまで…2人揃って睦月をいじめるにゃ~」

「ボク。おかしなこと言ったかな?」

皐月と呼ばれたその少女は首を傾げる。彼女も元艦娘で、睦月型姉妹の五女である。月華団においては瑞鳳に次いで作戦指揮が旨いらしく、瑞鳳のサポートからストッパーまでこなしている。

「でもでも~楽しみはあたしも同じだから~気にしたら駄目かも~」

皐月が首を傾げ切ったのと同時に膝くらいまである長い茶髪をポニーテールにした、少しタレ目の茶色の目をした皐月の制服のラインが赤い2本ラインになった物を着て濃紺の上着を羽織った少女がほわほわした口調で口を開いた。

「ふわぁ~!文月ちゃんはわかってくれるんだね~流石なのね!」

彼女の名は文月。睦月型姉妹の七女で元艦娘である。ほんわかした口調で喋るため月華団のマスコット的立ち位置でありながらバトルも出来るある種バランスの取れた少女だ。

「ぷっぷくぷー!うーちゃんもふみちゃんの意見に賛成ぴょーん!」

今度は文月の隣から、緋色の癖のある長い髪をウサギのアクセサリーで毛先を纏めて、弥生と同じ服装の緋色の目をした少女が飛び出してきた。

「卯月ちゃんもそう思うんだね~えへへ、お揃いだね~」

文月が飛び出してきた少女を卯月と呼んだ。彼女も睦月型姉妹でその四女だ。そして元艦娘である。「ぴょん」が付く語尾や、一人称が「うーちゃん」など何かと兎をイメージした口調が特徴的な少女だ。そして、常にハイテンションである。

「えへへー!うーちゃんは月華団のみんなと強い絆で結ばれてるから当然ぴょん!そうそう、さっきから黙ってるきくちゃんはどう思うぴょん?」

卯月が隣で沈黙を保っていた白銀の長髪に赤い目、長月と同じセーラー服を着た少女に話をふった。するとその少女が口を開いた。

「強い絆を結んでいるならその変な呼び方はやめてもらえないか?私は菊月だ」

「ぷっぷくぷー!硬いこと言いっこなしぴょーん!」

卯月にからかわれている少女の名は菊月。冷静沈着で、口数が弥生と並んで少ない睦月型姉妹の九女だ。すると、菊月の隣に立っていた右側が少し長い青色のショートヘアに弥生や卯月と同じセーラー服にフリルの付いたショートパンツを履いた青い目の少女が口を開いた。

「ねぇみんな!あれって、団長さんたちじゃない!?」

「あ、ほんとだ~」

「流石水無月だな。三日月たちを見つけるのはやはりお前が一番早いらしい」

「ちょ!そんな特技持ってないよー」

照れ隠しをしながら駆けだした彼女の名は水無月。月華団が遠征した時などにメンバーの食事などを作ったりする手先の器用な睦月型姉妹六女の元艦娘の少女だ。そして、三日月のことをいつも気にかけている。水無月の接近に気付いた三日月は、水無月に声をかけた。

「水無月!」

「三日月、身体はもういいの?」

「はい。右目(こっちの目)がよく見えないのと、右腕(こっちの腕)が動きにくくなっただけです」

「だけって…」

水無月は瑞鳳の隣に立つ三日月を見たが、右目からは色が消え、右腕はブランと垂れ下がって動かなくなっていた。少し焦った水無月は隣に立つ瑞鳳に問いを投げかけた。

「団長さん。三日月はどうなっちゃったんですか!?」

「うん。今日の試合でアシムレイトを強くし過ぎたみたいなの…それで…」

「ロストシーボ現象が発生したみたい。体の一部の神経が使用していたガンプラに捕られてしまったって、お医者さんが」

瑞鳳から説明を引き継いだ弥生が淡々と説明をする。ロストシーボ現象(本作のオリジナル設定)とは、アシムレイトを使用した時、機体とのリンクを限界まで高めそれを超える。もしくは長時間バトルを行うことによってファイターの身体の一部の神経をガンプラ側に捕られてしまう現象のことだ。こうなってしまうと、ファイターはバトルを行わない平時はその部位の神経を完全に失った状態になってしまうのだ。

「そんな…」

「でも、左腕(こっち)はお守りが護ってくれました。ありがとうございます水無月」

三日月は左腕の手首に着けている紺色のブレスレットを揺らしてみせた。それを見た水無月は両手の指を合わせながら照れてしまった。

「えへへ…」

「とは言え、新しく作ってたバルバトスは今日使ってた奴に装甲を張り替えないと駄目かぁ~ちょっと、めんどーだなぁ」

「あ、もっちごめんね」

「謝るな~。ミカに出来ないことは私らみんなでやりゃ良いんだけどさ。ま、バルバトスの方は私に任せなよ」

瑞鳳の傍に立っていた明るめのロングヘアーの茶髪に同じ色の目、三日月と同じ服を着てアンダーリム眼鏡をかけた三日月から「もっち」と呼ばれた少女、望月は後頭部をボリボリと掻いていた。彼女もまた元艦娘で睦月型姉妹の十一女で、月華団では整備班である如月や弥生を取りまとめ、メンバー全員のガンプラの整備と修理指揮を執っている。面倒くさがりな発言が多いが、腕は月華団の全員が認めている程だ。

「瑞鳳さん、三日月、望月、弥生久しぶりだね」

「久しぶりっぽい!」

「お、お久しぶりです!」

瑞鳳たちの前に来た電たちはその場にいた4人に声をかけた。すると、一番最初に気付いた三日月がすぐに返事を返してきた。

「お久しぶりです時雨さん、夕立さん、電さん」

「久しぶり…」

「あ~おひさ~」

弥生と望月も続いて返し、そして最後に瑞鳳が――――

「私は…月華団団長、瑞鳳だよぉ…」

「う、うん。知ってるよ…」

「おー!オルガっぽいー!」

「な、なのです…」

ある種の自己紹介をした。夕立には受けたようだが、時雨と電には苦笑させるのがやっとの様だった。

 

続く



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EP28 パーティーナイトin合宿(後編)

月華団のメンバーと別れた電たちは、辺りを見回しながらパーティーを楽しんでいた。

「それにしても、こんなパーティーは久しぶりだね」

「ぽい!やっぱり、パーティーは楽しいっぽい!」

「電も、今日のパーティーはとっても楽しいのです!」

3人で会話を弾ませながら料理を食べ、ジュースを飲む電たち。すると、パーティー会場の一角からひと際大きな歓声が上がった。それに驚いて歓声が聞こえた方に向き直った電たちは、いつの間にか出来ていた人だかりの中にある人物を見つけた。

「ねぇあれって翔鶴さんと瑞鶴さんじゃない?」

「あ、ホントだ!行ってみるっぽい!」

電たちは人だかりへ向かって歩いていった。

 

人だかりの一番端に2人の女性が立って話をしていた。

「翔鶴姉ぇ、これどうすんの?」

翔鶴と呼ばれた銀髪ロングヘアーの白の弓道着の上を着て赤いミニスカートをはいた背の高い女性が答える。彼女も元艦娘で戦争終結によって退役し現在は百年記(みとしき)高校に通う3年生だ。

「瑞鶴。楽しんでる加賀さんを邪魔してはいけないわ」

「そ、ならほっときましょ」

瑞鶴と呼ばれた黒髪ツインテールの翔鶴と同じ服を着た少しだけ背の高い少女が呆れた口調で答えた。彼女もまた元艦娘であり、翔鶴の妹である。現在は翔鶴と同じ百年記高校に通う2年生だ。

「翔鶴さん、瑞鶴さん、お久しぶりっぽい!」

と翔鶴と瑞鶴の背後から夕立が声をかけた。それに気づいた2人は後ろを振り向くと、翔鶴がニコッと笑顔を作って口を開いた。

「あら、夕立さんに時雨さん、電さんじゃない。久しぶりね」

「ここにいるってことはアンタたちも全国への切符持ちなのね」

「うん、そうだよ!」

「もし当たることがあったらその時は容赦しないからね!」

「望むところだよ…それより、この人だかりはいったい何なんだい?」

時雨が瑞鶴に質問を投げかけた。すると瑞鶴は呆れた口調で答えを返してきた。

「あれよ」

瑞鶴が人だかりの中央を指さした。そこには茶髪を短いサイドテールにした白の弓道着に青色のミニスカートをはいた髪と同じ色の目をした女性と、真っ白な揉み上げの長いショートヘアーに白のカッターシャツに黒いネクタイを締め、黒のミニスカートをはいた右目が黄色で左目が水色の少女がテーブルに置かれた料理をのめり込む様に食べていた。

「なるほど、加賀さんか…」

「まったく、あの大食いバカは…」

白のショートヘアーの少女の隣で料理を食べているのは加賀だった。彼女も退役した元艦娘で、現在は百年記高校に通う3年生だ。艦娘時代からの大食いは未だに健在で、そして何より―――

「ゴクンッ…聞こえてるわよ五航戦」

「うげっ」

地獄耳である。加賀はゆっくりと椅子から立ち上がると瑞鶴目指し一直線に歩いてきた。

「いつからそんな口が利けるようになったのかしら。五航戦?」

「ちょっ、いい加減その呼び方止めてよね!」

「これは訓練のやり直しが必要かしら…」

「なにをー!」

と、この様に艦娘時代から続く2人の仲はぎくしゃくしたままである。加賀と瑞鶴が睨みあっていると、加賀の隣で料理を食べていた白のショートヘアーの少女が両手を上に突き上げ、歓喜の声を上げた。

「やったヲー!加賀に大食い勝負で勝ったヲー!」

「ハッ、しまった!?」

今歓喜の声を上げた少女の名はヲ級。戦争終結により陸に移り住んだ元深海棲艦である。現在は百年記高校の姉妹校である龍北(りゅうきた)高校に通っている2年生だ。

「クッ!五航戦に目がくらんで勝負を逃すとは…」

「ちょ、あたしのせい!?」

「ヲッヲー!負け惜しみかな加賀~」

「…頭に来ました。もう一戦ですヲ級」

「ヲッヲー!何度でもかかってこいヲー!」

椅子に座った加賀とヲ級は再び大食い対決を始めた。すると時雨はヲ級の隣に立っていた黒のショートヘアーにヲ級と同じ服装をした水色の目の少女に気付いた。

「おいヲ級。まだ食べるのか?」

「食べるのはいいが無理はする―――て、駄目だな聞こえてない」

「おーいリ級さーん!」

時雨の声に気付いた黒髪の少女は、顔を時雨たちに向けるとハッとした表情をした。3人が少女の元に駆け寄る。

「ん、時雨に夕立じゃないか。お前たちも全国大会に出るのか?」

「うん!リ級さんも、全国出場してたんだね」

彼女の名前はリ級。ネリタ模型店最後の従業員(?)で、現在はヲ級と共に龍北高校に通っている2年生だ。ちなみに龍北高校はネリタ模型店から遠いので寮で生活しているらしい。

「あ、あの、この前はネ級さんとタ級さんにお世話になりました!」

すると電が少し脅えながら口を開いた。電の声を聴いたリ級は電を見下ろしながら、電の頭をゴシゴシと撫でながら口を開いた。

「お前が電か。話はネ級から聞いてる、うちのバカ姉が世話をかけたな」

「おいリ級、知り合いか?」

リ級の隣に立っていた黒のロングヘアーに灰色の半袖Tシャツの上に黒いノースリーブの服を着て同色のズボンをはいた背の高い水色の目をした少女が、リ級に尋ねてきた。

ネリタ模型店(うち)の常連客だ。紹介する、私のチームメイトのル級だ」

「ル級だ。以後よろしくな」

ル級と名乗ったその少女も戦争終結に際して陸に移り住んだ深海棲艦である。現在はヲ級、リ級と共に龍北高校に通っている2年生だ。

「僕は時雨。これからよろしくね」

「夕立よ!よろしくっぽい!」

「電です。どうかよろしくお願いします」

「と、ル級。ヲ級の奴がダウンしそうだ」

「了解した。ではまたな」

「またねっぽい!」

ヲ級の元に慌てて駆け寄っていったリ級とル級を見届けると、電たちは人だかりから抜け出した。

 

それからしばらくまた時間をつぶした電たち。すると今度は夕立が誰かを見つけたようだ。

「あ、あれ秋月たちじゃない!」

夕立が見つけた人物は料理の置かれたテーブルの前で互いの頬をつねり合っている少女3人組だった。

「あ、本当だね…て、何やってるんだろ」

「とにかく行ってみましょうよ」

3人はその少女たちの元に歩いていった。

「おーい秋月、初月、涼月ー」

「ねぇ、これって夢じゃないよね?食べていいんだよね?」

ポニーテールに纏められたダークブラウンの髪と、同じ色の襟と白の半袖セーラー服に柿色のスカーフを付けたダークグレーの目をした少女「秋月」が、両隣の少女の頬をつねりながら目の前の光景を疑うような口調で喋っていた。

「夢じゃないし、食べていいに決まってるだろ。秋月姉さん」

秋月に右頬をつねられている黒髪を後ろ髪一箇所とペンネントで前髪を二箇所、計三箇所を括った、ハネた前髪が獣耳か角を思わせる独特な髪型をして秋月と黒色の襟だが同じ服装をした首から下は黒の全身インナーを着て黒色スカーフを付けた少女「初月」が、秋月の左頬をつねりながら淡々とした口調で答える。

「でもこれ、身体に悪いものじゃないかしら…」

秋月に左頬をつねられているセミロングの銀髪に、指先まで覆う白インナーの上に秋月と同じ服を着用して白のスカーフを付けた、灰色のケープコートを羽織っている青灰色の目の少女「涼月」が、秋月の右頬をつねりながら何かを考えているような口調で喋る。

「もしもーし?」

電が声をかけるも、しかし秋月たちは3人に気付かず未だに頬をつねりながら料理に釘付けになっていた。

「でも、これ食べないと勿体ないんじゃ…」

「だから食べていいって言ってるだろ。秋月姉さん」

「これ程のものを見てしまうって、まさかこれは夢?」

「おーい!」

今度は夕立が声をかけるが、やはり反応がない。

「ねぇ、これって夢じゃないよね?食べていいんだよね?」

「夢じゃないし、食べていいに決まってるだろ。秋月姉さん」

「でもこれ、身体に悪いものじゃないかしら…」

「駄目だ…全く聞こえてない…」

とうとう時雨は彼女たちに声をかけるのを諦めた。元々艦娘時代から秋月たちは食習慣がかなり貧しいため、この様なパーティーで出てくる料理を見ると、ショックで倒れるか現在の様な、幻を見ているので?と言わんばかりに釘付けになって動かなくなるのだ。そして今も同じ言葉をループしたまま動かないでいた。時雨は仕方なく、少し離れよう。と言って秋月たちから少し離れた。そして少し歩いた時、夕立が時雨の肩をポンポンと叩いた。

「どうしたんだい夕立?」

「時雨、今はあんまり動き回らない方がいいかもっぽい…」

「え?それはどうしてだい」「どういうことですか夕立さん?」

電と時雨の2人が同時に夕立に尋ねる。すると夕立は少し苦笑して口を開いた。

「だって、あそこにはグラス片手に顔真っ赤にした川内さんが「夜っ戦!夜っ戦!」って叫びながら狂気の乱舞を踊ってるし、あっちには凄い形相で睨みあってる阿武隈さん、北上さん、大井さんがいるっぽいし、その隣では伊勢さんと日向さんがラジコン瑞雲飛ばしてはしゃいでるし―――」

「うん。動かない方がいいね」

と、時雨はキッパリと言い切った。すると、3人に近づいてくる2人の少女がいた。

「やっぱり電じゃない!」

「ん、この声は…」

電が声のした方を振り向くとそこには電のよく知る人物が立っていた。

「やあ、久しぶりだね電」

腰まである銀髪に電と同じ服を着て、前鍔の付いた紺の帽子をかぶったブルーグレイ色の目をした少女が落ち着いた口調で口を開いた。

「響ちゃん!久しぶりなのです!」

彼女の名は響。電の姉であり、艦娘を止めてからは種守(たねもり)中学校に通っている3年生だ。

「雷から聞いてはいたけど、まさか全国合宿(ここ)に来てるなんてね!一人前のレディである私の妹であることを誇りに思いなさい!」

次に、腰まである紺色のロングストレートに電と同じ服、響と同じ帽子をかぶったを薄紫色の目をした少女が口を開いた。

「ふふっ、暁ちゃんも相変わらずなのです!」

彼女の名は暁。電たち姉妹の一番上の姉で今は響と共に種守中学校に通っている3年生だ。

「やあ、暁、響。元気そうだね」

「暁ちゃん響ちゃん久しぶりっぽーい!」

「時雨、夕立、久しぶりだね」

「久しぶりね!」

そしてそこから、5人の会話は更に弾みを増し彼女たちはパーティーが終わるその時間までお喋りを続けていた。

 

 

パーティー会場の一角、そこで5人を眺める1人の少女がいた。真っ白なショートヘアーで、白地のシャツの上に胸元が少し空いたところまでチャックを上げたフード付きの黒い上着を着て、黒いミニスカートをはいた血の様に赤い目をした少女だった。フードをかぶったまま5人を見つめるその少女は、「チッ」と舌打ちをした。

「そんなにキレないの」

「うるせぇ、クソが」

少女の隣には黒いフードを目深にかぶった黒いロングコートの人物が立っていた。そしてその隣には、紫がかった白い髪を長いサイドテールしてに黒い帽子をかぶった、黒のノースリーブセーラー服を着た髪と同じ色をした目の少女と、白の長髪に白地に黒い縦ラインが入った半袖Tシャツと黒地に白いラインが入ったミニスカートをはいたどす黒い赤色の目をした背の高い少女が立っていた。

「貴女たちもこの子が暴走仕掛けたらちゃんと止めてあげるのよ?」

「「はい。マスター」」

黒フードの人物の言葉に、まるで感情を失くしたかの様な言葉で返す二人の少女。すると、赤い目の少女がイラついた口調で口を開いた。

「テメェがマスターなのは気に入らねぇが。ちゃんと使えんだろうなこいつら?」

「気に入らないなら外してもいいんだよ?ま、その場合「偽物」の貴女に「本物」であるあの子への勝ち目なんてないけどね!」

「黙れっ!!」

黒フードの人物の胸倉を掴み暴言を吐く少女。しかし、フードの人物は慌てる様子も見せずいつもの軽い口調で謝罪をした。

「はいはい。ごめんごめん。言い過ぎたよ」

「フンッ!」

赤い目の少女は踵を返してパーティー会場から出ていった。そして、フードの人物が残った2人の少女に、貴女たちも行きなさい。と言うと2人は赤めの少女の後を追って会場を後にした。

「……」

そして残されたフードの人物は、もう一度5人を一弁すると小さくニヤついて呟いた。

 

 

 

もう1度、遊んでこっかな

 

 

 

続く



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EP29 その名は鉄底

パーティーが終了し、自分たちの客室に戻った電たちは入浴の準備をしていた。先程パーティーが開かれていたと言えどやはり合宿、入浴の順番はきっちり割り振られていた。

「皆準備できた?」

「オッケーっぽい!」「大丈夫なのです」

そして準備が完了したのと同時に部屋のドアをノックする音が響きドア越しに誰かが声をかける。

「暁学園の皆さん。お風呂の順番ですよ!」

その声に時雨が、今行きます。と答え3人はドアを開けた。すると、そこには3人のよく知る人物が頭を下げて立っていた。

「あれ?もしかして清霜に雪風?」

「ん?」

腰まである長い銀色の髪を上下に分け、耳より上の髪はアンダーでお団子にし、下の髪は一枚の淡黄色のリボンで後ろで二房に別れるようにくくり、白地に赤紫色のサクラソウが描かれた浴衣を着た髪と同じ色の目をしたアホ毛の少女が顔を上げた。

「あー!電に時雨に夕立だー!」

「久しぶりっぽい清霜ちゃん!」

「お久しぶりなのです!」

彼女の名前は清霜。元艦娘で今ではこの大和旅館で働いている少女だ。

「まぁ、知り合いにはもうたくさん会ってるからそんなに驚かないんだけどねー!」

「あはは…まあ、確かにそうだね」

「清霜ちゃん。早くお風呂に送ってあげないと武蔵さんに怒られるよ?」

「おお、そうだったね!」

「雪風も、久しぶりだね」

茶髪のショートヘアーに白地に青紫色のヤガラマギクの模様が入った浴衣着た髪と同じ色をした目をした少女がニッコリと笑って答えた。

「久しぶり時雨ちゃん!電ちゃんと、夕立ちゃんも久しぶりです!」

彼女の名前は雪風。彼女も元艦娘で、今ではこの大和旅館で働いているのだ。

「じゃあお風呂に案内するから清霜についてきて!」

「わかったよ。行こっか電、夕立」

「ぽーい!」「なのです!」

清霜と雪風について歩く電たち。会話を弾ませながら浴場に向かっていると、会話の内容が戦争終結についての話になった。

「それにしても、まさかあんな形で戦争が終わるなんて夕立思わなかったっぽい!」

「うん。僕もそう思うよ」

「雪風もそう思います。あの戦争は雪風たちか深海棲艦のどちらかが滅びるまで続くと思ってましたし…鎮守府でも、敵の殲滅が戦争終結になる。って習いましたから」

「電も同じ意見なのです」

「あんな人がいるとは思わなかったもんね」

「うん。あの人「黒野深海(くろのみかい)」さんが居なかったら、きっと今も…」

 

 

黒野深海

 

 

人類と深海棲艦の果てしなく続いていた泥沼の戦争を終結させた人物である。彼は正規の提督では無いにも関わらず、廃墟になりかけていたある鎮守府を拠点に人類側に与することもなく、ましてや深海棲艦側に与することもなく、当時戦争を指導していた海軍上層部が長年隠していた艦娘と深海棲艦に関する真実を公開し上層部を崩壊させ、深海棲艦と和平を結び戦争を終結させ、そして人類と深海棲艦の関係が一段落した時期を皮切りに忽然と家族と共に姿を消し、今では「行方不明の英雄」と呼ばれている。

「清霜たちの今の生活があるのもあの人のおかげだしね!」

「ぽい!…そう言えば時雨は本人と直接会ったことがあったんだっけ?」

「…うん。艦娘だった時に上層部の人たちに襲われて、その時助けてもらったんだ…ちょっと恥ずかしいけど…僕にとっては命の恩人なんだ」

「時雨ちゃんそんなことがあったんだね。どんな人だったの?」

「とっても優しい人だったよ。その時は名前を聞けなかったけどね」

「黒野深海さん。一度会ってみたいのです」

そんな会話をしている間に浴場に到着した電たち。清霜と雪風は、じゃあごゆっくり。と言って3人を送り出した。

 

お風呂から上がった電たちは、浴場の隣にあった売店で買った牛乳のパックを片手に自分たちの部屋を目指していた。

「ゴクゴク…プハーお風呂上がりの牛乳はやっぱり美味しいっぽいー!」

「こらこら夕立。そんな一気飲みしたらお腹壊しちゃうよ?」

「もうちょっとゆっくり飲んでみるのいいかもしれないのです。ゴクゴク…」

それから少しして部屋にたどり着いた電たち。

「明日は早いから、あと少ししたら寝ようか」

「えー!」

「夕立、朝は弱いんだから諦めるんだね」

「ぐ、反論できないっぽい…」

夕立がドアの取っ手に手をかけた時、最後尾を歩いていた電の後ろから誰かが走ってきていた。それに気づいた電は後ろを振り向くと、そこには先程浴場へ送ってくれた清霜と雪風が荒い息を整えながら両膝に手をついていた。

「え!?清霜さんに雪風さんどうしたのですか!?」

「はぁはぁ…い、電ちゃん!」

「さ、さっきね。なんか黒いフード被った人に、電ちゃんをガンプラバトルルームに連れて来い。って言われたんだよ!」

「な、なんだって!?」「!?」

突然のことに思わず声を上げる時雨と驚く電。それに続いて夕立も声を上げた。

「ガンプラバトルルーム…どっかの学校が勝負を仕掛けてきたっぽい!?」

「それは明日でも可能な筈です。それに、その黒いフードを付けた人の声笑っていたのに凄く殺気を帯びてました」

「ますますきな臭いね。よし、夕立。僕たちも準備するよ!」

「待ってください!」

時雨たちが部屋に入ろうとしたその時、雪風が慌てて2人を止めた。

「その人こうも言ってました。電ちゃん以外の人を連れてきちゃだめだからね?って」

少し脅えた口調で雪風が話した内容は、更に謎を呼ぶような内容だった。しかし、時雨はそれに応じようとはしない事を宣言した。

「なるほど。電1人を潰そうって魂胆なんだね…残念だけどそれには応じられないな」

「当然っぽい!電ちゃんを1人だけで行かせるなんてチームメイト失格っぽい!」

夕立も時雨に続いて宣言した。しかし、その当の電は―――

「わかりました。その条件、飲むのです」

「え!電!?」

その得体の知れない相手の条件を承諾することを決意した。

「なんで、そんな条件飲むの!?夕立たち全員で戦えば――――」

「今、この状況で電たちのガンプラが傷ついちゃったらそれこそ大変です。だから、今回は電だけで行きます」

「でも、あいつの雰囲気はマジでやばかったよ!」

電は、一息ついてコクリと頷くと言葉を続けた。

「電は大丈夫なのです。それに、いざとなったらぷらづまちゃんにバトンタッチしますから!」

電の言葉に首を傾げる清霜と雪風。しかし、電の言葉を聞いた時雨と夕立はしばらくの沈黙の後ゆっくり頷いた。

「わかった。電、ここは君に任せるよ」

「でも、負けて帰ってきたら許さないっぽい!」

「ありがとうなのです…清霜さん、雪風さん。道案内をお願いするのです」

「う、うん。わかった」

電は寝間着からいつもの制服に着替えると、イナヅマガンダムの入ったカバンを持ちガンプラバトルルームに向かった。

ガンプラバトルルームの入り口前に電と清霜、雪風が立っていた。

「電ちゃん。何度も言うけど…気をつけてね。あいつの殺気本当にヤバかったから」

「ありがとうございます清霜さん。行ってきます」

電がガンプラバトルルームの扉を開きそして中に入っていった。

 

部屋の中は真っ暗だった。しかし、何故かガンプラバトルの台が起動しており青い光を発していた。電はゆっくりとバトル台に近づいた。そして、バトル台に最接近した時その声は部屋に響いた。

「待ってたよ。電ちゃん…」

「!?」

咄嗟に身構える電。バトル台の反対側、そこには先程清霜たちが言っていた黒いフードを被った人物が立っていた。

「いきなり呼び出してごめんね。でも、電ちゃんを見つけた時どうしてもバトルがしたくなっちゃってね。それで――――」

「貴女は、誰なのですか!」

フードを被った人物の言葉を遮り電が声を上げた。しかし、その人物は口元をニヤつかせながら再び口を開いた。

「誰。か…まっ、まだ教えるつもりはないよ。電ちゃん勝ってすらいないしね。でも、電ちゃんはもう私と会ったことあるんだよねこれが」

「会ったことが、ある?」

「うん!これ…この機体…忘れてるわけないもんねぇ!」

するとフードを被ったその人物は、自分の右手を前に向けた。そしてその掌には――――

「!?」

「そうだよね…忘れるわけないもんね。自分ガンプラをバラバラにされた…私の愛機を!」

その掌の上には、左右非対称の腕に頭部のマルチブレードアンテナ、4対の翼と腕・膝・翼部先端の深紅に発光する装甲を持ち、そして数多くのパーツを取り込んだ巨大な爪を思わせる左腕を持った白と黒のガンプラ。Unknown(アンノーン)が立っていた。

「そのガンプラ…貴女のだったのですね」

「そうだよ!」

その人物はフードの下で無邪気に笑ってみせた。そして――――

「じゃあ始めよっか!」

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A.」

その人物の声に反応してバトルシステムが立ち上がる。そして、ガンプラへのダメージレベルが一段階上の「Aレベル」に設定される。

「長話は無しってことですね…」

「電ちゃんが私の話切ったんだから当たり前じゃない?」

「Please set your GP base.」

「ほら、早くGPベースセットしなよ?」

「……」

促されるまま、電はGPベースを台座にセットした。

「Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 space.」

広大な宇宙空間のフィールドが形成され、バトルシステムは更に進む。

「Please set year Gun-pla.」 

電はカバンからイナヅマガンダムを取り出し台座にセットした。そして相手もUnknownを台座にセットした。システムが機体を読み込み、ガンプラのメインカメラが発光する。それぞれが出現した操縦桿を握りしめる。

「Battle Start!」

そしてバトルスタートの合図が下り、2機のガンプラが発進体制に入る。

「……」

電の額に汗が流れる。それもそうだ。なぜこの人物が自分に勝負を仕掛けてきたのか、その理由が皆目見当もつかなかったからだ。しかし、既にバトルは始まっている。電は意を決して声を上げた。

「電。イナヅマガンダム、出撃です!」

イナヅマガンダムを乗せたカタパルトが動き出し、イナヅマガンダムを宇宙空間へと出撃させる。そして、フードを被った人物もニヤリと口元を笑わせ――――

「さーて、楽しい楽しいゲームの始まりだ。ガンダム・アイアンボトムサウンド、いきます!」

Unknown改め、ガンダム・アイアンボトムサウンドは宇宙へ飛び出していった。

 

続く



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EP30 ガンダム・アイアンボトムサウンド

宇宙空間へ飛び出したイナヅマガンダムを操る電は索敵を始めた。戦闘の基本はまず索敵から始めることが大体だが、今日の電はいつも以上に神経を研ぎ澄まして目の前のモニターを見ていた。

(今回の相手は、何をしてくるかわからない…慎重に進まないと)

電がそう思ったその時、自分の後方から接近警報が鳴り響いた。電は、後ろ!?と驚いた表情をし警報の鳴った方向にイナヅマガンダムを向けた。すると、丁度イナヅマガンダムの機動防盾が向けられて所に桃色のビームが直撃した。耐ビームコーティングが施された機動防盾が放たれたビームを相殺すると、電はそのまま機体を回転させビーム飛んできたの方向に向けビームライフルを放った。

「そこです!」

放たれたビームは一直線にその方向へ飛んでいき、そしてそれに命中した。赤い爆炎が電の目に映った。しかし電は、何かの違和感を感じた。

(おかしい…手応えがないのです)

すると、また接近警報が鳴り響いた。今度は電の丁度真横、左側からの物だった。

「っ!?」

咄嗟に機動防盾を構えるとそこに再び桃色のビームが命中した。例によって耐ビームコーティングのおかげで大きなダメージは入らない。すかさずイナヅマガンダムがビームライフルを撃ち返す。イナヅマガンダムのビームライフルはやはり目標に命中したが、電はやはり手応えのない事を感じていた。電はその方向にイナヅマガンダムのメインカメラを向け拡大表示を使おうとした。しかし再び接近警報が鳴り響いた。その方向は真後ろ、電は急いでイナヅマガンダムを後方へ向け機動防盾を構えた。襲ってきたビームは機動防盾で防いだ電はすかさず撃ち返し、その方向へ拡大ズームをした。そして電はある物を発見した。

「あ、あれは小型砲台!?」

そこには円形状の小型砲台が漂っていた。ようやく攻撃してきたものの正体を突き止めた電は周囲の警戒を更に続けた。すると電のいる操縦スペースにあの声が響いた。

「あ~あ、見破られちゃったか!」

「貴女は!?」

その声に反応した電は思わず声を上げた。しかし、その人物は口元をニヤつかせながらすぐに言い放った。

「でも次のは避けられるかな?」

その言葉を聞いた電の耳に接近警報が届く。次に来る方向は!と、電が叫んだが電はあることに気付いた。

「え!ぜ、全方位!?」

その言葉の通り、イナヅマガンダムを取り囲むように8つの方向からビームが飛んできた。慌てて回避行動にとった電は、イナヅマガンダムの全スラスターを全開で噴かし急上昇しビームの飛んできた方向に向け次々ビームライフルを放った。その間にもビームは飛んできたが機動防盾で全て防ぎきった。

「あらら、全部破壊されちゃったか…」

「よし。これで全部なのです」

「んじゃあ、第2弾行ってみよー!」

フードの人物は顔を笑わせながら次の攻撃を放ってきた。電が再び周囲を警戒しているとその目に今度はビームとは別の物が映った。白い尾を引いて飛んでくる円筒状の物体だ。

「ミサイル!?」

幾百のミサイルの弾幕がイナヅマガンダム目掛け飛んできていた。電は慌ててミサイルの方向と逆方向にイナヅマガンダムを走らせ、ある程度離れると機体を180度回転させてビームライフル、ハイパーフォルティスビーム砲、ビームキャノン、マシンキャノンの引き金を一斉に引いた。放たれた弾幕はミサイル群へと吸い込まれていき命中、周囲を巻き込む大爆発となった。

「ほーら、まだまだ行くよー!」

再びイナヅマガンダムにミサイル群が迫った。今度はイナヅマガンダムを挟み込む様に左右から飛んでくる。

「くぅ!」

電は方向転換が利くビームキャノンを2本とも後方へ向け、再び全門斉射でミサイルを薙ぎ払った。爆発したミサイルが周囲のミサイルも巻き込んで大爆発を起こす。

「はぁ…はぁ…」

「あれ、もう息切れしちゃったの?私まだまだ楽しみ足りないんだけど?」

その時、イナヅマガンダムにある物が迫っていた。そして電がその物体に気づいたのは丁度、物体がイナヅマガンダムのファトゥム-01の左翼をへし折った時だった。ガキーン!と、大きな音をたてファトゥム-01の左翼は根元から完全に折れてしまった。

「きゃあ!」

「へへへ、左翼いただき!」

衝撃で大きく体勢を崩してしまったイナヅマガンダム。電は慌てて態勢を整えて、左翼を破壊した物体を探した。しかし、飛んで行った方向に目をやるもそこには何の痕跡もなかった。

「え、いったい何が―――」

「もう1枚いただき!」

ガキーン!再び大きな金属音が鳴り響いた。

「はにゃぁ!」

再び襲ってきた物体が、今度はファトゥム-01の右翼を根元から折っていった。両翼を折られてしまったイナヅマガンダムのファトゥム-01。イナヅマガンダムの態勢を整え終わると、電はファトゥム-01をコンテナごとパージし、フォースシルエットの主翼を展開その場からの離脱を測った。離脱する中、電は気づいた。

(電は、弄ばれてるのですか!?)

そして、移動していた電の耳に前方に対する接近警報が鳴り響いた。電が正面を向くと、そこには幾つもの細いビームが張り巡らされたビームカーテンがあった。

「あ!」

気づくのが遅れてしまった電は慌ててイナヅマガンダムを止めたがタイミングが完全に遅れ、前方へ向けてスラスターを噴射していた両足を足首まで斬られてしまった。イナヅマガンダムは残った脹脛のスラスターとフォースシルエットのスラスターで何とか止まることに成功し、慌てて元来た方向へと反転していった。

「はぁ…はぁ…」

見えないガンダム・アイアンボトムサウンドから逃げるイナヅマガンダム。以前戦った時と違う戦法で攻めてくる相手に、電はどんどん追い込まれていった。息は上がり、額には大粒の汗が流れる。そして再び電の耳に接近警報が届く。

「上!」

電はイナヅマガンダムを止めることなく頭部のみを動かし上空を見た。その瞬間緑色のビームがイナヅマガンダム目掛け飛んできた。それを回避し動き続けるイナヅマガンダム。

「あ、避けられた」

イナヅマガンダムの遥か上空、そこにはビームライフルを構えたガンダム・アイアンボトムサウンドがいた。更にビームライフルを連射するガンダム・アイアンボトムサウンド。それを最小限の回避行動で避けるイナヅマガンダム。

(やっぱり、懐に飛び込むしかないのです!)

遠距離で撃ち合っていては埒があかないと思った電は、イナヅマガンダムを大きくカーブを描きながら方向転換させ、ガンダム・アイアンボトムサウンドに迫った。接近するイナヅマガンダム目掛け尚もビームライフルで迎撃するガンダム・アイアンボトムサウンド。

「貴女のビームの軌道は見えました!」

そう言った電は左手の武装スロットにビームサーベルを選択した。イナヅマガンダムが右腰のビームサーベルを抜き放ち、ビームライフルを放ちながら一気に接近する。しかし、これだけの接近を許して尚ガンダム・アイアンボトムサウンドは微動だにしなかった。

「もらいました!」

イナヅマガンダムが左手に握ったビームサーベルを上段から振り下ろす。しかし、微動だにしなかったガンダム・アイアンボトムサウンドはビーム刃が機体に命中するその瞬間、禍々しい形状の左腕を少しだけ動かし、そして――――

「え!?」

ビーム刃をその指で防いでしまった。

「…どうしたの?もっと力入れなよ」

確かにビーム刃は指を捉えていた。しかし、電がどれだけイナヅマガンダムに力を込めてもその場からビーム刃は動かなかった。

「そ、そんな!」

電は完全に動揺してしまった。それもその筈だ、いくら対ビームコーティングを施したとしてもガンプラの指がビームサーベルの刃を受け止めることなどほぼ不可能だからだ。動揺する電をよそにガンダム・アイアンボトムサウンドはイナヅマガンダムの胴体中央に蹴りを放った。微動だすることも出来なかったイナヅマガンダムは大きく吹き飛ばされてしまった。

「はにゃぁぁー!」

クルクルと宙を回転し飛んでいくイナヅマガンダム。そこからしばらくして、電はようやく態勢を整えることに成功した。

(おい電!ワタシに代わるのです)

「ぷ、ぷらづまちゃん…」

(いや、お前の意見なんか聞かねぇのです!)

電が目を瞑ったその瞬間、ピシッと電の脳に電撃が走った。そして開いた両目が深紅に輝く。

「行くぞなのです!」

ぷらずまは中破しかけたイナヅマガンダムのスラスターを噴かし、飛ばされた方向へ一直線に向かって行った。高速で飛ぶイナヅマガンダム、そしてぷらづまは早々にガンダム・アイアンボトムサウンドを発見した。自分と並走して現れたことには少し驚いたものの、ぷらづまは攻撃を開始した。

「見つけたのです!そこぉ!」

ぷらづまはビームライフルとビームキャノンを斉射した。ガンダム・アイアンボトムサウンドはそれをローリングしながら回避してみせ、手にしたビームライフルで撃ち返してきた。イナヅマガンダムもそれを回避しながらビームライフルを撃ち返す。

「へぇー貴女がぷらづまちゃんかぁ…」

「(ワタシを知っている?)どういうことなのです!」

ビームライフルを撃ち合いながら尚並走する2機。

「ん~?さて、どういう意味だろうねぇ…それと熱くなりすぎて前方が見えてないんじゃないの?」

「なに――――」

 

ガシャーン!

 

イナヅマガンダムは勢いよく漂っていた小惑星に衝突してしまった。

「ぐわっ!」

「アハハ!本当に衝突しちゃったよ!まるで本物の電ちゃんみたいだね!」

高笑いするフードの人物。激しく舞い上がる砂煙。しかし、その時舞い上がった砂煙の中から青白い尾を引いてイナヅマガンダムが飛び出してきた。イナヅマガンダムがくるりと反転し、ガンダム・アイアンボトムサウンドを見下ろす。

「はぁ…はぁ…まだ、勝負は終わってないのです」

「流石ぷらづまちゃん。根性は電ちゃん以上かもしれないね!」

「ハンッ!ワタシは何をとっても、全部電以上なのです!」

ガンダム・アイアンボトムサウンドに再び突撃するイナヅマガンダム。それを見たフードの人物はニヤリと笑みを浮かべ、小さく呟いた。

「フフッ、なら私がやっつけちゃうよ」

すると、ガンダム・アイアンボトムサウンドは再び微動だにしなくなった。もう1本のビームサーベルも抜き放ち、ガンダム・アイアンボトムサウンドに迫るイナヅマガンダム。

「くらえぇー!」

右手に握られたビームサーベルを右上段から袈裟斬りで放つイナヅマガンダム。しかし、やはりその攻撃はあの左手で受け止められてしまった。しかし、ぷらづまの攻撃は止まらない。

「もう一発ー!」

今度は左手に握ったビームサーベルを横一文字に放った。これは確実に直撃だ、と確信するぷらづま。しかし――――

「な、なに!?」

ビームサーベルは何処からともなく現れていた盾に防がれ、その表面を斬りつけていただけだった。

「変化できるのは左腕だけだと思った?残念、右腕も変化できるんだよね!」

すると、ガンダム・アイアンボトムサウンドの右手がイナヅマガンダムの左腕を掴んだ。そして、その腕と同時に体を大きく回転させ始めた。回転の勢いに乗せられてしまったイナヅマガンダムの右手からビームサーベルが離れてしまった。尚も回転の勢いを強めるガンダム・アイアンボトムサウンド。そして――――

「飛んでけー!」

ガンダム・アイアンボトムサウンドがイナヅマガンダムを頬り投げた。その勢いでイナヅマガンダムの左腕は肩の根元から引きちぎれてしまった。

「うわあぁぁー!」

投げられたイナヅマガンダムは、再び同じ小惑星に衝突してしまった。先程よりも大きな砂煙が舞い上がる。

「う、あぁ…電、すまないのです…」

そしてぷらづまは意識を手離してしまった。電がゆっくりと目を開けると、目の前には赤く光る操縦スペースと、そしてガンダム・アイアンボトムサウンドの姿が映っていた。

「あ、ぁぁ……」

すると、ガンダム・アイアンボトムサウンドはその禍々しい左腕でイナヅマガンダムのボロボロになった頭部に掴みかかった。動くことの出来なかったイナヅマガンダムはその手で鷲掴みにされてしまった。

「ううっ!」

「アハハ!電ちゃん、そんな腕じゃあの子に勝てないんじゃないの?」

「え?あの子…」

高笑いしながらフードの人物が電に話しかけた。しかし電には何のことなのか全く分からなかった。更にフードの人物が続ける。

「ま、とりあえず電ちゃんには私からプレゼントを贈ってあげるね」

「プレゼント?」

その言葉が言い放たれた瞬間、ガンダム・アイアンボトムサウンドの左手周辺が変形し「細長い管」の様な物へと姿を変えた。そして、その管はイナヅマガンダムの頭部に付着するとまるで絵の具が高いところから落ちたように頭部に張り付いた。そしてその瞬間――――

「あああぁぁぁぁぁー!!!」

 

 

電は、両手で額を抑えながら絶叫した。

 

 

「アハハハハハハハ!!!どうかな?私からのプレゼントは!」

フードの人物が今までに聞いたことのないような高笑いをした。イナヅマガンダムの頭部に張り付いた管の周辺が次第に黒く染まっていく。

「ああああぁぁぁぁぁー!!!」

「フフフッ、これが私の力…「内部浸食」!」

(な、内部浸食?)

苦痛に悶えながら必死に相手の言葉を聞こうとする電。そしてフードの人物は淡々と続ける。

「これはガンプラを通して相手の身体に直接苦痛を与えることの出来る力。たとえ相手がアシムレイトを使っていなくても、苦痛を与えれるんだよ!……そして―――」

イナヅマガンダムの頭部が段々と黒く染まっていた。そして、変化は電にも起きていた。

「これを受けたガンプラはアイアンボトムサウンドに吸収されて(沈められて)、ファイターは次第に私と同じ体になっちゃうんだよねー!」

電の目の前に鏡の様なモニターが点灯し、そこに電が両手で額を抑える姿が映し出された。そして電は気づいた。

「っ!?」

 

 

自分の手で抑えている右目付近の肌と髪が白くなっていたのだ。

 

 

電がそのことに気づいたことを知ったフードの人物は再び高笑いをした。

「アハハハハハハハ!!苦しみに悶えながら、深海に沈んでしまえー!」

「ああああああぁぁぁぁぁー!!!」

より強い痛みが電を襲った。もはや電にはどうしようもなかった。額を抑える手でイナヅマガンダムを操縦することは出来ないし、この痛みにどう抵抗していいのかも彼女が知るわけがない。ただただ、電の絶叫とフードの人物の高笑いがその場にこだましていた。

 

 

 

 

ようやく見つけたぞ

 

 

 

 

その時、一筋の黄色の閃光がイナヅマガンダムを侵食する腕を貫き、爆発した。

「っ!?な、なに!?」

その突然の事に驚きを隠しきれないフードの人物は、閃光の飛んできた方向に目をやった。そこには1丁の長銃身のライフルを構えた、赤と黒、白のトリコロールで彩られ背中に金色の8枚の翼を持ったガンダムがいた。

「っ??」

ようやく痛みから解放された電もその方向を向いた。しかし、今の電には何が何なのか全く分からなかった。だが、自分が助けられた。と言うことだけはハッキリとわかった。

「………」

「お前か!私の邪魔をしたのはっ!」

フードの人物が声を荒げて叫ぶ。そして、そのガンダムの操縦スペースに立っていた少年の様な顔立ちをした右目が隠れてしまっている真っ白の髪を1つに纏めて、黒地に右胸を中心点にした銀色の十字線の入ったTシャツに、黒いジーンズをはいた男が立っていた。男は、真剣な表情で口を開いた。

「今日で最後にさせてもらう!」

 

 

続く



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EP31 鉄底に届く光

電は未だぼんやりとしか見えない目で突然現れたガンダムを見ていた。そのガンダムは長大なライフルの構えを解くとジッとガンダム・アイアンボトムサウンドを見つめていた。

「私の邪魔する気?」

「まぁ、そんなところだ…ついでにお前を捕まえるつもり」

「なに?」

通信回線は未だに開いたままで、電の耳にフードの人物と男の少し高い声が聞こえてくる。そして、男の言葉に疑問の言葉をこぼすフードの人物。男は更に言葉を続ける。

「青葉と手を組んでおいて正解だったな。まさかこんなに早く手掛りを見つけられるとはな」

「青葉…あいつはまた余計なことをっ!」

「ともあれ…」

男は一呼吸おいて言った。

「行くぞ…アウェリアス!」

そのガンダム「ガンダムアウェリアス」はメインカメラを発光させると、長大なライフルを中央線の部分で分割し片方を左手に握るとそれを連射しながらガンダム・アイアンボトムサウンドに迫った。ガンダム・アイアンボトムサウンドはそれを急上昇で回避し、距離を取る。ガンダムアウェリアスもガンダム・アイアンボトムサウンドを追いかける。しかし、ガンダムアウェリアスの放つビームは全て回避されてしまっていた。

「チッ…素早いな」

そう言うと男は武装スロットの中からファンネルの絵柄が描かれた物を選択した。

「行け!アウェリアスウイング!」

ガンダムアウェリアスのバックパックにある金色の物が基部から外れるとひとりでにガンダム・アイアンボトムサウンドを追いかけて飛んでいった。雫状の形をした縁に緑色の刃を持つ金色のそれはガンダム・アイアンボトムサウンドに追いつくなり四方八方からビームと斬撃で攻撃を開始した。その攻撃を何とか回避しながら逃げ続けるガンダム・アイアンボトムサウンド。そしてフードの人物は気づいた。

「これは、スーパードラグーン!」

金色の羽根の正体はストライクフリーダムガンダムのスーパードラグーンだった。接近戦が可能になる改造が施されてはいるが、その形状とコンピューター頼りの単純な動きではない複雑な動きとドラグーン同士の連携。

「もう気づいたか…ま、流石と言えば流石だな。だが、逃がすか!」

アウェリアスウイングでの攻撃を苛烈させ、更に長大なライフルで追撃を加えるガンダムアウェリアス。

「クソ…なら!」

フードの人物がそう呟くとガンダム・アイアンボトムサウンドの左腕の一部が変形し、そこから円筒状に4枚の羽根を持ったファンネルが次々飛び出してきた。そしてそのファンネルはガンダムアウェリアスに向かって飛翔し先端部からビームを放って攻撃を始めた。男はガンダム・アイアンボトムサウンドへの攻撃を止めることなく、そのファンネルからの攻撃を回避していた。

「なるほど、それで俺に対抗するつもりなんだな」

その様子を見ていた電は呟いていた。

「す、凄いのです」

宙を漂うイナヅマガンダムの遥か彼方で起きているその戦い。電はその激しさと凄さにただただ、圧倒されていた。しかし電は自分にも何かしたいと思い、イナヅマガンダムの状態を確認し始めた。各所に光る赤色の警告表示、この(・・)イナヅマガンダムでは足手まといになってしまうだろうと思った電は、イナヅマガンダムを静かに分離させた。上半身と下半身が分割されそこからコアスプレンダーが姿を現した。コアスプレンダーはスラスターを噴かし、先程パージしたコンテナの元へ向かった。電が移動を始めて少ししたときに手元の操縦桿を操作し、コンテナを開いた。中からチェストフライヤーと、レッグフライヤー、そしてファトゥム-02シルエットが飛び出してきた。

「よし、あと少しなのです…」

先を急ぐ電。しばらくして遠くから3つの光点が近づいてくるのが見えた。電はその光点に合わせるようにコアスプレンダーを動かしそして、コアスプレンダー、チェストフライヤー、レッグフライヤー、ファトゥム-02シルエットが直線状に並ぶと、コアスプレンダーは変形しレッグフライヤーと合体する。折り畳まれていた両足が展開し、次いでチェストフライヤーと合体する。両腕が機体正面から離される。そして、後方からファトゥム-02シルエットが近づき背中に装着される。イナヅマガンダムは左腕の機動防盾を展開しガンダムアウェリアスとガンダム・アイアンボトムサウンドが戦う宙域を目指した。

 

「しつこい!いい加減に沈め!」

「そうはいかないな…そこだ!」

ファンネルを掻い潜り長大なライフルを放つガンダムアウェリアス。それを回避するガンダム・アイアンボトムサウンドは手にしたビームライフルを撃ち返し、方向転換すると腕から赤いビーム刃を発生させガンダムアウェリアスに迫った。

「接近戦か」

男は武装スロットからビームサーベルを選択した。ガンダムアウェリアスは長大なライフルを再び合体させて左手に握ると、空いた右手を肩の上に伸ばした。そこにあったハッチが開き中からビームサーベルが出てきた。右手がそれを握ると緑色のビーム刃が形成された。

「沈めぇ!」

フードの人物の叫びと共にガンダム・アイアンボトムサウンドの左腕が振り下ろされる。

「させるか!」

ガンダムアウェリアスもビームサーベルを振り下ろし、ビーム刃が衝突して火花を散らす。ビーム刃を合わせながらクルクルとその場で回る2機のガンダム。そこにお互いのオールレンジ攻撃端末がビームを放ち、回避行動を取った2機の間に距離が出来る。しかし2機はまたビームサーベルを掲げて接近戦を始めた。ガンダムアウェリアスが左中段から右上段に向けて切り払い、ガンダム・アイアンボトムサウンドは身を反らして回避しそのまま勢いをつけて縦斬りを放つ、それをガンダムアウェリアスは手首を180度回転させてビームサーベルを逆手持ちの様にして防ぎ肩部のマシンキャノンと頭部バルカンを斉射する。ガンダム・アイアンボトムサウンドは急上昇で弾幕を避わし、左腕をまた変形させてミサイルポッドを作り出した。

「沈んじゃえ!」

大量に放たれるミサイル。後を追って上昇したガンダムアウェリアスは頭部バルカンでミサイルを迎撃する。飛来するミサイルを次々撃ち落とし、ガンダム・アイアンボトムサウンドに接近するガンダムアウェリアスは次々に出来る爆煙に向け連結させた長大なライフルを構えた。

「ヴァリアブルライフル、バーストモード!」

その言葉に反応するかのように周囲を飛翔していたアウェリアスウイングが長大なライフル「ヴァリアブルライフル」の銃口付近の銃身上部、側面、下部に6基片側3基ずつ接続された。そして、その銃口にエネルギーが集まり出し黄色い球形を形作った。すると、爆煙の中からガンダム・アイアンボトムサウンドが飛び出してきた。左腕は未だに赤いビーム刃を形成されていた。全速力でガンダムアウェリアスへと向かって行く。

「沈めぇー!!」

「っ!」

すると男はキッとした表情を作ると照準をガンダム・アイアンボトムサウンドに合わせ、そして引き金を引いた。アウェリアスウイングを纏ったヴァリアブルライフルが超特大な黄色いビームの帯を撃ち出した。

「甘いよー!」

しかし、ガンダム・アイアンボトムサウンドはその帯を簡単に避けてしまった。思わず男が舌打ちをする。

「チッ…」

接近してきたガンダム・アイアンボトムサウンドはガンダムアウェリアスに向け右上段から斜め切りを放った。それをシールドで受け止めるガンダムアウェリアス。するとガンダム・アイアンボトムサウンドはシールドの上からビームライフルをガンダムアウェリアスに向けた。

「フフフッ、この距離なら避わせないんじゃないの?」

「……」

「これで終わりだねっ!」

ガンダム・アイアンボトムサウンドが引き金を引こうとしたその時、何処からか飛んできた緑色のビームがガンダム・アイアンボトムサウンドの右肩に命中し、更に飛んでくる。慌てて離脱するガンダム・アイアンボトムサウンド。

「クッ…な、なに!?」

ガンダム・アイアンボトムサウンドがビームの飛んできた方向に顔を向ける。そこにはビームライフルを放ちながら近づいてくるイナヅマガンダムの姿があった。

「はぁ…はぁ…は、初めて命中したのです」

「電か?」

イナヅマガンダムがガンダムアウェリアスの隣にたどり着き、ガンダム・アイアンボトムサウンドに向き直った。すると男は電に忠告をした。

「下がってるんだ電。とてもじゃないがお前の腕で倒せる相手じゃないぞ」

「大丈夫なのです。はぁはぁ、電も戦えます!」

「良いから俺の忠告を聞いておけ」

「援護くらいなら…電にもできます」

しかし電は男の忠告を聞こうとはしなかった。するとそのやり取りを聞いていたフードの人物は笑い出した。

「アハハハハハ!!電ちゃんもバカだね!もう1度アイアンボトムサウンドに沈められに来るなんてね!アハハハハハハハ!!!」

「もう負けない…絶対、貴女に勝ってみせるのです…はぁはぁ」

フードの人物の言葉に大きな言葉で言い返す電。しかし、その人物は未だに笑い続けていた。

「アハハハハハハハ!!なら私に勝ってみなよ。ま、無理なんだけどねぇー!」

「………」

その人物が笑い続ける中、男はただ沈黙していた。そして、フードの人物は言った。

「それじゃあ、もう1度鉄の底に行こっかー!アハハハハハハハ!!」

その時だった。

 

 

 

ドクンッ―――――

 

 

 

「――――っ!?」

「ん?」

突然フードの人物が片膝をついてしまった。

「はっあぁぁ…こ、こんな時に―――うっ、くっ」

そしてそれに呼応するようにガンダム・アイアンボトムサウンドが動きを止めた。

「ふぅ…ふぅ…アガッ!」

「なんだ!?」

「ううううっ!あああああっ!」

するとその人物は突然悶え始めた。何かに苦しんでいたことは明白だが、それが何故なのか電にも、そして男にもわからなかった。そしてその人物は台座からGPベースを無理矢理剥がし取るとガンダム・アイアンボトムサウンドを台の上から引っ張り出し悶えながら走って部屋を出ていった。

「なっ!待て!」

男もその人物を追って部屋を飛び出そうとした。しかし、走りだそうとした瞬間。男の背後から何かが倒れる音がした。男は振り向くと、電が倒れているのが目に映った。男は慌てて電に駆け寄りその体を起こした。

「おい!しっかりしろ電、電っ!」

 

 

「うウウぅぅゥ!」

月明かりが照らし出す窓の空いた部屋にその人物はいた。風がフードをなびかせる中、その人物は悶えながら机の上に置いてあった白と赤に色分けられたカプセルが入ったケースを取り、中から取り出したカプセルを勢いよく呷った。掌に収まりきらずに出てきたカプセルがパラパラと床に落ちて行く。ドン!と床を思い切り叩いたその人物の悶え声は次第に落ち着いていきやがて荒い息をしながら、口を開いた。

「はぁ…はぁ…はぁ…くそっ…どうして、どうして私は、こんなことに…」

そう言い切ったその時、ひと際強い風が部屋に入ってきた。フードが脱げ、後ろで短く纏めた白い髪が月明かりに照らされた。そしてその人物、いや少女は歯ぎしりと共に口を開いた。

「…絶対に殺してやる……あいつも、あの完成した奴もっ!!」

そして一拍おいて続けた。

 

 

「みんな、みんな……殺してやるっ!!」

 

 

 

続く



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EP32 行方不明の英雄

フードの人物を取り逃してしまった男は、一先ず自分たちが泊っている部屋へ向かった。腕の中には気絶した電が小さく息をしていた。男は電の顔を一弁した。電の右目付近と髪の一部が白くなっていた。男は電の顔を見ながら呟いた。

「クソ…あの野郎」

 

男は部屋の扉を開き、そして中に入る。すると――――

「おとーさーん!」

「どわぁっ!?」

男に1人の少女が飛びついてきた。黒地に青いラインの入ったセーラー服っぽい襟元が特徴的なワンピースを着て青色のスカーフをネクタイ代わりにつけ、黒い髪を後ろで三つ編みにした青い右目と赤い左目をした少女だった。ドッシーン!と言う音は立て、男は電を抱えたまま廊下に尻もちをついてしまった。

「いっつつつ…」

「おとーさんお帰り!お帰り!お帰り!」

少女は男に抱き着くなり頬をすりすりと体に擦り付けていた。

「ててて…いい加減そのお出迎えはやめてくれ雨葉(あめは)

「だってだってだって!雨葉、おとーさんが大好きなんだもん!」

「だとしてもだなぁ…」

彼女の名前は雨葉。この男の実の娘で三女だ。とても元気ハツラツとした性格の持ち主で、そして見ての通り完璧なまでのファザコンである。やれやれ。と頭を掻こうとした男だったが今は両手が塞がっていることを思い出し、自分に呆れる男。すると、部屋からもう1人別の少女が出てきた。

「こらっ、雨葉。またそんなことして…お父さん困ってるでしょ!」

出てきた少女は黒い襟に赤いラインの入った黒地の長袖セーラ服を着て青色のネクタイを締めた右目を少しだけ覆っている髪の部分だけが白い黒髪を三つ編みにして左肩から垂らしている青い目の少女だった。

「でもでもでも!秋雨(あきさめ)おねーちゃんだって、ホントはおとーさんにダイブしたいんじゃないのっ?」

「良いからお父さんから離れるの雨葉。でないと、また雨葉のお父さんコレクション破壊するよ」

「ちょっ!それはやめてやめてやめて!」

「ふぅ…(てか、お父さんコレクションってなんだよ…怖ぇよ…)」

彼女の名前は秋雨。彼女もこの男の実の娘で長女だ。物腰のしっかりした頼りなるような姉気質の性格の持ち主でもある。しかし―――

「でもでもでも!秋雨おねーちゃんも、おとーさんの事大好きだよねー!雨葉知ってるよ、この前秋雨おねーちゃんが雨葉のコレクション見ながらニヤニ――――」

「わぁあああー!!待って待って待って待って!!!」

雨葉程ではないが父であるこの男のことが好きなのである。そしていじられキャラでもある。

(うぉぉぉ…秋雨までも怖ぇ…)

「2人とも、廊下で騒いだら駄目だよ。ほら、中に入って」

「お、お母さん…ごめんなさい」

「ご、ごめんなさーい」

そう言うと秋雨と雨葉は、渋々部屋に入っていった。男はようやく立ち上がり腕に電を抱え直すと目の前に立つ自分と同じくらいの身長の少女に声をかけた。

「助かったよ時雨。ありがとうな」

「うん。どういたしまして」

男の目の前に立っていたのは時雨だった。しかし、電たちといつも一緒にいる時雨と違って、彼女の左手の薬指には銀色に輝く指輪がはまっていた。すると時雨は男の腕の中にいる電に目が行った。

「あれ、その子電ちゃんだよね?」

「ああ、さっきまでのあいつとの戦闘で気を失ってしまったんだ」

「わかったよ。梅雨葉(つゆは)と妹さんがたぶん寝る部屋にいると思うから」

「あいつらなら大丈夫だろ。梅雨葉は初めての相手でも面倒見ちまうし、(しろ)も梅雨葉とは仲が良いしな」

そう言って男と時雨は部屋へ入っていった。部屋に入った男は広い部屋の居間で言い争っている秋雨と雨葉に、静かにな。と言って奥の寝室へ向かった。寝室に入った男の目に本を読む2人の少女の姿が映った。1人は左目が隠れてしまう程長い白いショートヘアーに雨葉と同じではあるが襟のラインとスカーフの色が赤色のワンピースを着た赤い右目をした少女で、もう1人は腰まである青みがかった右目が隠れている白いロングヘアーに、真っ白のワンピースの上にグレーの長袖上着を着た額の左右に1本ずつ黒い角がある真っ赤な目をした少女だ。ショートヘアーの少女が男に気付いた。

「…お父さん、おかえり」

「梅雨葉。ただいま」

梅雨葉と呼ばれたその少女は、ジーっと男の腕の中の電を見ていた。彼女の名前は梅雨葉。この男の実の娘で次女だ。非常に口数が少ないが、面倒見の良さでは3姉妹の中でも最高クラスの持ち主である。

「頼めるか?」

「ん」

「白もいいか?」

そして白と呼ばれた青みがかった白のロングヘアーの少女は無言で男の顔を見ていた。その顔は何かをねだる様な表情だった。

「………」

「あーわかったよ。後でいくらでも頭撫でてやるよ」

「………!」

少女が喜んだ表情になる。彼女の名前は浅瀬白(あさせしろ)。男とは血の繋がっていない妹だ。以前の大戦の中で男と出会い彼を兄と慕うも、男と生き別れになり、その後深海棲艦となって兄である男と再会し普通の生活に戻ることが出来た少女だ。額の角は深海棲艦になった時の名残である。そして再会してから彼女は一言も喋らなくなった。しかし、表情はある為それから何を言っているのかを判断することは出来る。と言ってもそれが出来るのはこの男と梅雨葉、そして時雨だけである。すると今度は少し不思議そうにした表情になる白。

「………?」

「ああ、俺が追ってる奴とのバトルで気絶したんだよ。と、これで良し」

男は電を布団の上に寝かせ、そっと掛け布団を掛け部屋を出ていった。それを確認した梅雨葉と白は電の傍に2人でよって行った。

男はゆっくりと入り口と隣接する部屋にある椅子にもたれかかった。それを見た時雨も椅子に腰かけた。

「提督、大丈夫?」

「ああ、俺は大丈夫だよ。それにしても…」

「ここで捕らえられなくて残念だ。って言いたいんですよね」

すると部屋の中に青葉が入ってきた。男は一言、流石だな。と呟き青葉もまた、恐縮です!とニコリと笑ってみせた。それを見て男も小さな笑みを浮かべたが、すぐに険しい顔を作った。

「それで、奴の動向は?」

「駄目ですね。完全に逃げられましたよ…どうしますか司令官?」

「お前は今まで通り捜索を続けてくれ。俺もしばらくしたら捜索を再開するつもりだ」

「了解です!」

そう言った青葉はすぐに部屋を出ていった。そして部屋はシーンと静まり返った。しかしそんな中秋雨がとても心配している様な口調で口を開いた。

「お父さん。本当に無理してない?私…またお父さんがずっと居なくなるんじゃないかって…」

胸の前で手を合わせ俯く秋雨。すると男は椅子から立ち上がり秋雨の傍に来ると、優しく頭を撫でた。

「心配するな秋雨。お父さんが帰ってこなかった事なんてあったか?」

「ううん…なかった。でも…」

「おとーさん…雨葉も、凄く凄く凄く心配…」

秋雨に続いて雨葉も心配そうな顔で男を見ていた。すると、男は空いていたもう1つの手で雨葉の頭を撫でた。

「雨葉も心配してくれてありがとうな。でもな、お父さんが居ない時は雨葉がお母さんや秋雨や梅雨葉、白を元気づけないと駄目なんだぞ?これは、いつも元気なお前にしか出来ない事なんだ」

「おとーさん…」

2人の娘の頭を撫でる男を見て、座ったままだった時雨は小さく笑った。フフッ、と言う時雨の声に気付いた男が時雨に顔を向ける。

「な、なんだよ?」

「ううん。やっぱり提督は優しいんだね。って思って」

「……照れるからやめてくれ」

男は頬を少し赤くしてそっぽを向いた。それを見て時雨はまた小さく笑う。その時、寝室の襖が開いてそこから梅雨葉が顔を出した。

「…お父さん、あの人、起きた」

「わかった。今行く」

そう言った男は寝室へ向かって歩いて行った。そして部屋に入る前、梅雨葉の顔を見るとそっと頭を撫でた。

「お父さん…恥ずかしい…」

「秋雨と雨葉にもしてやったからな。梅雨葉にもしないと不公平だろ?」

「ん…」

頭を撫でられた梅雨葉は顔を少し赤くして小さく笑った。そして、男は梅雨葉の頭から手を離すと部屋に入っていった。部屋には白がジッと電を見ていた。男は、あいつ電に興味津々だな。と心の中で呟いて電に近づいていった。電は白の顔に目を奪われ男に気付いていなかった。男は電に声をかけた。

「気分はどうだ、電?」

「はわっ!?」

男の声に驚く電。しかし驚いたのは電だけで、白は相変わらず電の顔を凝視していた。電は慌てた様子で部屋の中をクルクルと見回していた。そしてようやく男を見つけた電は落ち着きを取り戻した。しかし、男は自分が未だに電から警戒されていることに気付いていた様で、まずは誤解を解こうと口を開いた。

「慌てるなよ。別に取って食おうなんてしないし、お前に危害を加えるつもりもない」

「………!」

「…お兄ちゃんはそんなこと絶対しない。安心していいよ?いや、そこは自分の口で伝えろよ」

「な、なのです…」

白が確信に満ちたキラキラした表情になり、それを見た男が呆れて口を開く。すると、少し電の警戒心が解けた。それに気づいた男は、腰裏に着けてあるポーチから何かを取り出した。それは電が先程のバトルで見たあの機体だった。

「あっ!そのガンプラ!」

「ああ、こいつは俺のガンプラだ。機体名は「ガンダムアウェリアス」。俺の中での「アウェリアス」の意味は「朱金(しゅきん)の月を背負う者」だ」

「え?朱金の月を背負う者…ですか?」

「ああ。ほら、バックパックの翼を広げると「太陽を背にして(あか)くも金色に光る満月」に見えるだろ?」

男はガンダムアウェリアスのバックパックの翼を展開してみせた。すると、赤色の翼本体と、金色のアウェリアスウイングがそれぞれ(あか)い太陽と金色の満月に――――

「………」

「え?見えないって?」

と、白が呆れた表情で首を横に小さく振った。その表情の意味を読み取った男は少しガクリとする。すると2人のやり取りを見ていた電がクスリと笑って口を開いた。

「とっても仲が良いんですね」

「ん、まあな…と、自己紹介がまだだったな…」

男は一拍おいて口を開こうとしたが、白が右手をピシッと上げてハツラツとした笑顔を作った。男は一旦自分の自己紹介を止め、白を紹介した。

「………!」

「と、こいつの名前は白。俺の妹だ…よろしくだって」

「電です。よろしくお願いします白さん」

「………!」

白はその表情のままより右手をピシッと伸ばした。すると男は、ようやく喋れる。とため息を吐いてようやく自己紹介をした。

「俺の名は黒野深海。世間じゃ、「行方不明の英雄」って呼ばれてる男だ」

「っ!?」

男の言葉に電は衝撃を受けたのだった。

 

続く



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EP33 失踪の仮説

その男「黒野深海」の正体を知った電は驚きを隠せなかった。電の顔を見て小さく笑った深海は口を開いた。

「まぁ、いきなり俺が現れたら誰でも驚くよな…世間じゃ英雄呼ばわりされてるしな」

「は、はい…本当に驚きました」

未だに驚いた口調で喋る電に深海は、ははは。と苦笑しそして、優しげな表情になった。

「体の方は大丈夫か?」

「体ですか?」

深海の言葉に不思議そうな顔をする電。その表情を見た深海は、右手を顎に当て少し何かを考えてから口を開いた。

「電。さっきフードを被った奴とバトルしていたのは覚えてるか?その時、奴の「内部侵食」をくらっただろ。その傷は大丈夫か聞いたんだ」

「えっと…ごめんなさい、よく覚えてないのです。でも、身体は大丈夫なのです。ちょっと右目の辺りが変な感覚があるけど…」

「そうか…とりあえずこれを渡しておくな」

電は右目を手で押さえながら答えた。電の言葉を聞いた深海は、ズボンのポケットから白と青に色分けされたカプセルの入ったケースを取り出した。そして、電の手を取るとそれを掌に置いた。電は不思議そうな表情でケースを一弁すると、深海に尋ねた。

「これはなんですか?」

「細胞の深海化を抑制する薬だ。お前が言った「変な感覚」はお前の細胞が徐々に深海棲艦と同じ物に変わっていってる現象だ」

深海は真剣な表情で口を開いた。その言葉に動揺を隠せない電。

「え…深海棲艦と同じ―――」

「ああ。それも以前の戦争でお前たちが目の当たりにした「破壊を求める」という衝動を駆り立てる物にな。奴がどういう訳でお前に自分と同じ細胞を植え付けたのかはわからないが、このまま放っておけばお前は数ヶ月で破壊を求める深海棲艦になってしまう」

「そ、そんな…電は、深海棲艦になるのですか?」

深海の言葉に恐怖を感じた電は、顔から血の気が引いたように青ざめてしまった。そして恐怖心を抱いたままの表情で深海にまた尋ねた。

「い、電は…どうすれば良いのですか?」

「…悪いがそれは自分で決めてくれ。こうなってしまった以上、俺にもどうしようも出来ないんだ。でも――――」

深海は一拍置いて続けた。

「奴らの計画について、ある程度の仮説を立てられる確信が今持てた」

「え、奴らの計画?」

「ああ。まぁ、仮説の域を出ないがな…と、その前に―――」

深海は背後の襖に顔だけを向け一言呟いた。

「何やってんだ?お前ら」

すると、襖がゆっくりと開き秋雨と梅雨葉、雨葉が出てきた。

「み、見つかっちゃった…」

「お父さんに隠し事出来ない。そう言った」

「梅雨葉の言う通りだね。あはは…」

出てきた3人を見た電は驚いた。その中でも秋雨には1番驚いたようで――――

「し、時雨さん?…ううん、ちょっと違う?」

「ははは、秋雨。お前、お母さんによく似てるってよ」

「え!?そ、そう?」

電のその驚いた言葉に茶々を入れる深海。しかし、深海の言葉は電を更に混乱させることになった。それもそうだ、電は時雨と一緒にいるのだから勘違いをしても当たり前だ。

「し、時雨さんが深海提督のお、奥さん!?」

「どうした電?そんなに驚くことか?」

「だ、だって時雨さんは誰かと結婚はしてないですし!それに会ったことがあるだけって!」

(あ、こりゃ勘違いしてるな)

電の勘違いに気付いた深海は、秋雨たちを紹介し現状と電の勘違いについて説明した。そしてようやく電は混乱から抜け出した。

「と言うことだ」

「はわわ…そうだったのですか」

「ねぇねぇねぇ!おねーちゃんはガンプラバトルってするの!?」

「はわっ!と、飛びつかないでなのです!」

と、話に割り込んできた雨葉が電に飛びついてきた。当然驚く電で、そこにさっきの再現と言わんばかりに秋雨が止めに入る。

「コラー雨葉!さっき、すぐに飛びつくのは止めなさいって言ったとこでしょー!」

「良いでしょ良いでしょ良いでしょ!初対面の人にこそ、スキンシップってとってもとってもとっても大事だと思うなー!」

「雨葉、度が過ぎてる。その人驚いてる」

「雨葉、今電と大事な話をしているんだ。飛びつくなら終わってからにしろ」

「うー、おとーさんがそう言うなら…」

「まぁ、お前たちにとっても少し関わってくるかも知れないからな、一緒に聞いてくれ。…白、お前もだぞ」

「!?」

その言葉を聞いた白はビクッと体を震わせ、外に出ようとするのを止めた。難しい話が苦手な白は、こういう時コソコソとその場から逃げようとするのを深海は知っているのだ。そして案の定捕まってしまった白は嫌な表情をしたまま畳の上に座った。白に続いて、秋雨たち3人も座り最後に深海が腰を下ろす。その場にいた全員が少し真剣な表情になるのを確認して深海は口を開いた。

「さて、まず俺の目的から話すとしよう…」

「深海提督の目的。ですか?」

「ああ…電。お前は最近相次いでいる失踪事件について知ってるか?」

「はいなのです。この旅館に来るまでに青葉さんから聞きました。確か、元艦娘の失踪が相次いでるって…」

深海の質問に答える電。深海は、そうか。と一言呟くと、一拍おいて話を進めた。

「簡単に言うと、俺の目的は艦娘を失踪…いや拉致している犯人の拘束と、拉致された奴らの救出だ」

「ちょっと待ってお父さん。拉致してる犯人ってどういうことなの!」

深海の言葉に驚きを隠せない秋雨。それもそうだ深海の言ったのは「失踪」ではなく「拉致」。ハッキリ言って失踪とは真逆の言葉だ。

「「失踪事件」って言うのはあくまで世間を騒がせないようにとの措置だ。今この国のトップには提督時代の友人が多いからな。それに…また人類と深海棲艦とで戦争になったらたまったもんじゃない」

「お父さんの友達、皆いい人。心配しなくていい、秋雨お姉ちゃん」

「う、うん」

深海と梅雨葉の言葉を聞き少し安心する秋雨。すると雨葉が深海に抱き着いて上目遣いで深海の顔を覗き込みながら口を開いた。

「つまりつまりつまり、おとーさんは影からこの国と皆を護るヒーローなんだね!」

「よしてくれ。ヒーローなんて、俺のガラじゃない」

「………!」

「おいおい…白までよしてくれ」

と、今度は白が深海に抱き着いた。それを見て秋雨がまた2人、特に雨葉を叱る。しかし、雨葉と白は離れる素振りすら見せなかった。やれやれ、と深海は呟いて話を進めることにした。

「そして、ここからが重要だ」

「重要なこと?」

「ああ。拉致した犯人の思惑…そう「何故、人を…艦娘をさらうのか」だ」

「理由、よくわからないね」

「ああ。だが、仮説は立てられる。恐らくだが……」

その場にいた雨葉と白を覗いた3人がゴクリと唾を呑んだ。そして深海は口を開いた。

 

 

 

あの大戦を再び始めることだろう

 

 

 

「!?」

深海の言葉を聞いた3人は物凄い衝撃を受けた。しかし、3人の反応を気にすることなく深海は話を続ける。

「この答えにたどり着いた理由は2つ。1つはさっき言った「艦娘を狙った拉致」だ」

「で、でも、あの大戦をまた始めるには自分たちと戦う相手が必要なのです!深海棲艦の戦力はどうにか出来たとしても、相手になる艦娘を何故狙うのです?」

「いや、今回の拉致は人類側の戦力の減衰も狙っての物だろうが…それだけじゃないだろう」

「え?」

深海から返ってきた返答は電の予想を大きく外れた内容の物だった。驚いた電に顔を向けた深海は口を開いた。

「その答えはお前自身だ。電」

「え、電が?」

「ああ。お前はさっきあのフードの奴に深海細胞を植え付けられた。そしてその効果はさっき言った通り…つまりだ…」

「そっか!自分たちと同じ存在を増やして深海棲艦としての戦力にするんだ!」

秋雨が咄嗟のひらめきを見せ、深海の言おうとした言葉を代弁した。深海はニッと笑ってみせ言葉を続ける。

「そう言うことだ。艦娘の中にも深海棲艦になりやすい奴も居るからな…今回拉致された艦娘たちもそれに近い存在なのだろう。これが1つ目の理由だ」

「なるほど…それで梅雨葉たちにとっても関わってくる話」

「梅雨葉は頭の回転が速いな。流石だ」

「お父さんは人間と深海棲艦のハーフ。その血を引いている梅雨葉たち、狙われるかも。でしょ?」

「そうだ。まぁ、俺が命を懸けて護ってやるから安心しろ」

(黒野提督って人間と深海棲艦のハーフだったんだ。初めて知ったのです)

梅雨葉の言葉に驚く電。すると、電の驚いた顔を見た深海が口を開いた。

「ん?俺は海軍上層部を崩壊させたあの日の演説で、自分が人間と深海棲艦のハーフだ。って言った筈だが?」

「はわっ!黒野提督さん、なんで電の考えてることが分かったのです!?」

「いや、顔がそう言っていたからな。それにしても、お前は俺みたいな奴に対して「司令官」って言わないんだな。俺の知ってる電はみんな司令官って言ってたが…お前は変わってるな」

「え?」

「まぁ、この話は置いといて。もう1つの理由を言おう」

その瞬間、電に引っかかる何かが頭を過った。

(電は何で知らなかったんだろ?暁ちゃんたちと一緒に終戦を迎えたはずなのに…何か、何かが引っかかるけど……今は考えないようにしよう)

(電の奴、何かが引っかかってるみたいだな。まぁ、俺には何とも言えないしそっとしておいてやるか)

「お父さん。もう1つの理由は?」

電と深海の2人が何かを考えていたのに気づいた梅雨葉は、2人を会話に戻す為に声をかけた。深海は、すまん。と言って喋り始めた。

「もう1つの理由は、おそらく「犯人のバックにいる人物があの大戦を望んでいる」と俺は予想しているからだ」

「え?それってどういうことなの、お父さん」

「戦争なんて、誰が望むのです?」

「簡単だ。ガンダムSEED DESTINYに出てきた軍需産業複合体「ロゴス」みたいな奴ら…いや、少し違うか」

深海は少し間を開けて口を開いた。

「恐らく、失脚された以前の海軍上層部の連中だろうな。奴らは戦争で食っているって言っても間違いじゃないからな。それと、俺への復讐…も含まれるかもな」

「あり得るかも…お父さん、提督になる前にたくさんの軍の人、殺したし」

「いや、あれは…関係あるかもな…」

「ねぇねぇねぇ、おとーさん。結論から言うとどーなるの?」

「………!」

「ハハ…2人して同じ意見かよ」

雨葉と白に急かされた深海は、やれやれ。と言いたげな表情を一瞬作るとやがて真剣な表情になって口を開いた。

「結論…いや、今後について言うぞ。まずは電だ」

「は、はい!」

「お前は自分のチームメンバーと共に全国に出るんだ。お前を襲ってきた以上、奴らも同じ中高の部に出て来る筈だ。可能なら奴らに勝利し、その場で拘束する手伝いをしてくれ。大丈夫だ、お前のチームメイトにはこの後言いに行く」

「電たちで大丈夫でしょうか…少し心配なのです」

「安心しろ。その為に俺がいるんだ。次に俺たちだ。俺たちは一般の部で大会に出場する。もう切符も持っているしな」

「秋雨たちは、お父さんと梅雨葉のお手伝いとバックアップだね」

「ああ。当てにしてるぞ4人とも」

「まっかせてよ!雨葉と白が作った「ナラティブガンダムE装備」があれば、ぜったいぜったいぜったい負けたりしないもん!」

「………!」

「うん。乗りこなしてみせるよ、白」

と、秋雨たち4人はお互いを鼓舞しあった。すると再び、雨葉が電の方を見た。そして、キラキラした目でその口を開いた。

「ねぇねぇねぇ!おねーちゃんのガンプラってどんなガンプラなの?雨葉、すっごくすっごくすっごく気になるなー!」

「………!」

「梅雨葉たちのも見せるから、見せてほしい。って言ってる」

「な、なのです!えっと、イナヅマガンダムは…」

「ああ、俺が預かってた。ほら」

すると深海が自分の腰についているもう1つのポーチからファトゥム-02シルエットを装備したイナヅマガンダムを取り出した。4人は深海の手に握られたイナヅマガンダムに目を奪われてしまっていた。

「わぁー!すっごいすっごいすっごい完成度だね!」

「ベース機はインパルスガンダム。おぉ…ベース機と同じで合体と分離が出来る」

「す、凄いです…これ程の完成度、秋雨には真似できないよ」

「………!」

「白も凄いって言ってる。雨葉、ナラティブガンダム出して」

はーい!と元気のいい返事をした雨葉はバックの中からそのガンプラを出した。白とグレーで彩られ、機体の胸や両肩、両腕、腰に両膝、バックパックに取り付けられた赤いクリアパーツが目を引くガンプラだ。

「これが、雨葉と白が作ったガンプラ「ナラティブガンダムE装備」だよ!」

「…あの、見た感じナラティブガンダムC装備の、フレームが剥き出しになってる部分に装甲を取り付けただけに見えるのですが…」

「外見はそう。でも、E装備は換装式。状況に応じてバックパックを変えれる」

そう言った梅雨葉はバックからもう1つのガンプラを取り出した。それは戦闘機の様にも見える小さなガンプラだった。それを見た電は一言呟いた。

「これはリ・ガズィ…あれライトニングガンダムのバックパックにも見えるのです?」

「はい!これは秋雨が操縦するE装備本体「エクストラパック」です!」

白と青色で塗られたライトニングパックウェポンシステムとリ・ガズィのバックパックを上下に合わせ後部を延長して大型のスラスターを備え、機首部はそのままの形を残し180度に稼働されるようになっている。そして、バックパック上面左右には大型のビームキャノンと、その内側に2基のバズーカを装備していた。

「これを使えば、なんとなんとなんと!ナラティブガンダムが簡易変形できるんだよ!それにそれにそれに!バックパックをジャスティスガンダムみたいに首元に起こせば火力だって底上げ出来るしね!」

「そ、それは凄いのです!」

「でしょでしょでしょ!雨葉、すっごいすっごいすっごい頑張ったんだよ!」

それからしばらく、その部屋からは賑やかな声が途切れることはなかったのだった。

 

続く



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EP34 立ち込める暗雲

電たちの今後についてが決定し、ガンプラ閲覧会も終了すると、電と深海は部屋を出て旅館の正面玄関の外に向かった。そして部屋を出たのと時を同じくして、電は時雨たちに連絡を入れ玄関の外に来るように伝えた。玄関の外に立つ電と深海。半月の光が2人を照らしていた。するとしばらくして、旅館の玄関が開き時雨と夕立が出てきた。電はその2人に声をかける。

「おーい、時雨さーん!夕立さーん!」

その声に気づいた時雨と夕立は電の元へと駆け寄ってきた。2人の表情はとても心配した表情だった。

「電、大丈夫だったんだね!まったく、バトルが終わったなら連絡しないと駄目じゃないか」

「そうだよ!夕立たち凄く心配してたっぽい!」

「ご、ごめんなさい…連絡できる状況じゃなくって」

「わかったよ。でも、これからは気をつけるんだよ……って、電。その白くなった髪はどうしたんだい!?」

電の髪の一部が白くなっていることに気づいた時雨は慌てた表情で電の肩に両手を乗せた。すると、電の隣に立っていた深海が時雨に声をかけた。

「それは俺から話そう」

時雨と夕立が聞いたことのある声に気づいてその方に顔を向けると、次の瞬間2人は叫んでいた。

「「み、みみ、深海提督!?」さん!?」

それからしばらく2人はパニック状態(?)になっていた。落ち着けよ。と深海が声をかけるも2人は落ち着きを取り戻せなかった。はぁ、とため息を吐いた深海は2人が落ち着くのを待って話すことにしようとその時決めたのだった。

 

「落ち着いたか?」

「う、うん。大丈夫…」

「夕立も落ち着いたっぽい…」

ようやく落ち着きを取り戻した時雨と夕立。深海は2人が十分に話を理解できる状態と判断し、そして口を開いた。

「単刀直入に言うと、電の髪の一部が白くなったのは、さっき電に勝負を挑んできた相手に深海棲艦の細胞を植え付けられてしまったからだ。このまま放っておくと、電はただ破壊を求めるだけの深海棲艦になってしまう」

「い、電が深海棲艦に!?」

深海の言葉を聞いて時雨は衝撃を受けた。無理もない。と深海は一言呟くと今度は夕立が口を開いた。

「深海棲艦化…もしそうなったらどうなるの?深海提督さん」

「そこまではわからない。だが、今は大丈夫だ。電には深海細胞の侵食を抑制する薬を渡してある」

「深海提督、電を助けることは出来ないのかい?」

「今の技術力じゃ、深海細胞を適切に取り除くことは出来ない。だが、何も出来ない訳じゃない」

額に汗を流しながら脅えた表情で話を聞いていた時雨の顔が少し和らいだ。それと同時に、夕立が目に涙を浮かべながら深海に飛びついた。

「深海提督さん、その方法夕立に教えて!夕立、電ちゃんの為なら何でもやるっぽい!」

「僕からもお願いするよ深海提督!お願いだよ、その方法を僕たちに教えて!」

「時雨さん…夕立さん…」

電は2人の必死さに涙を浮かべていた。その電の顔を見た深海は、フッと小さく笑って口を開いた。

「俺たちに出来ることは1つ。今日、電に勝負を仕掛けてきた奴を捕まえることだ。奴なら、深海細胞を除去出来る術を知っているかもしれないからな」

時雨と夕立が驚愕の表情を浮かべる。それを予想していたのか、深海はその表情のまま言葉を続けた。

「恐らくだが、奴は今年のガンプラバトル全国大会に出て来る筈だ。その時に奴の身柄を抑える。2人も手伝ってくれるか?」

深海の言葉を聞いた時雨と夕立の2人は、互いに顔を見合わせ目に浮かんでいた涙を拭うと深海の方を向いて自信満々の表情で言った。

「「勿論だよ!」っぽい!」

こうして時雨と夕立の2人も、深海の作戦に参加する事になったのだった。

 

その翌日、旅館の大宴会場ではフリーバトルが行われていた。大宴会場の至る所に設置されたバトル台には幾つものチームが全国から集まったチームと練習を行っていた。このフリーバトルはダメージレベルをCにセットし、ガンプラが壊れないようにして戦うと言うルールで全国大会前のこの合宿のメインイベントと言ってもいい物だ。そして参加は自由つまり、バトルをして相手の動きを見極めるも良し、参加せずに自分の手の内を隠すも良し、とかなり計算されている内容のイベントなのである。そして電たちはと言うと……

「時雨さん。今日のフリーバトルは参加しないのです?」

「うん。深海提督の言ってた事もあるからね…手の内を見せるのは危険だ」

「まだ誰が電ちゃんを襲った人なのかもわからないっぽいしね」

「そう言うことだよ」

バトル台が置かれた場所から少し離れた場所に3人は立っていた。昨日、深海からの言葉を聞いた3人は自分たちに今出来ることを使用と決めたのだった。

「………」

「どうしたんだい、電?いつになく暗い顔だね」

電が暗い顔をしていたのに気づいた時雨が声をかけた。電は少し暗い顔をしたまま口を開く。

「あ、えっと…これは…」

「でも、無理もないって思うっぽい。電ちゃん、その薬を飲んでないと深海棲艦になっちゃうんだもんね」

「あ、はい…やっぱり怖いのです。もし深海棲艦になっちゃって皆に危害を加えるのが……」

(ごめんなさい……電、2人に嘘をついてるのです。本当に気になってるのは……)

電の顔をは一向に晴れないままだった。しかし、何かを決めたのか電は少しだけ明るい顔を作ると2人に、暁と響の所に行ってくると言いその場を離れた。

時雨たちと離れた電は、人混みの中で暁と響の姿を探した。そしてしばらく歩いていると2人の姿が電の目に映った。慌てて駆け寄る電。

「暁ちゃん!響ちゃん!」

電の声に気づいたのは響だった。後ろにくるりと振り返り、その声の主が電であったのに気づく。

「あ、おはよう電。どうしたんだい?そんなに慌てて」

「響どうしたの?て、電じゃない。おはよう!」

「暁ちゃん、響ちゃん。おはようなのです…」

その時電の様子がおかしいことに気づいたのは響だけだった。響は、どうしたんだい。ともう1度聞こうとしたが、暁にその言葉を阻まれてしまった。

「朝から暁の事を探すなんて、もしかして怖い夢でも見たの?」

「ううん、そうじゃないのです。暁ちゃんと響ちゃんに聞きたいことがあるのです」

「電がこんなに慌ててるのは久しぶりに見たよ。もしかして、髪が白くなってるのと関係するのかい?」

響は電の様子がおかしいのと同時に、電の髪が白く変色していることに気づいていた。響がそれについて言った事で、暁もようやく電の髪が白くなっていることにようやく気づいた。

「あ、本当ね。電、駄目じゃない。髪なんか染めるなんてレディーとして相応しくないわよ?」

「あ、あの…その事じゃないのです。電が2人に聞きたいのは…終戦の日の事なのです!」

「終戦の日の事?」「!?」

「終戦の日」と言う言葉を聞いた響は、ピクッと肩を震わせた。その事に電は気づいていない様で、淡々と言葉を続けた。

「電、昨日深海提督さんに会ったのです!そしたら、深海提督さんは自分が人間と深海棲艦のハーフだ。って言ったのです!でも、電はその事を知らないって言ったら終戦の日の演説でその事を話したって言ったのです!」

「!?」

この時、遂に暁もピクッと肩を震わせた。だが電は、その2人の様子に気づく素振りも見せず言葉を続けようとしたが、そこに響が割って入った。

「電、昨日はちゃんと早く寝たのかい?」

「え?」

「電の話を信じてない訳じゃないけど、深海提督がもしここにいるならきっと大騒ぎになってる筈だ。でも、騒ぎは起きていない」

「ひ、響?」

(話を合わせて、暁)

響は暁に顔を向け、真剣な表情を作った。暁はその響の顔が伝えていることを理解したのか暁も響に弁上するように話し始めた。

「そうよ!まったく、嘘を吐くなんて駄目じゃない電」

「あ、暁ちゃん…響ちゃん…電の事を…信じてくれないのですか?」 

「そうは言ってないよ。ただ、深海提督に会ったって証拠がないじゃないか」

「それは…そうですけど…」

「残念だけど証拠がない以上、話にはならないよ。電」

「………」

響からの言葉にガックリと項垂れた電は、ゆっくりと踵を返し元来た道を歩いて行った。そして、残された暁と響は去っていく電の背中を見ていた。電の姿が人混みの中に消えたのを確認した響は、暁に声をかけた。

「暁、助かったよ。スパスィーバ」

「ううん。暁は何もしてないわ、響のおかげよ」

「うん。電にはまだあの事(・・・)を話すわけにはいかない」

「……うん。言えるわけないよね…」

 

 

 

電は、終戦を迎えてなんかいないんだもん

 

 

 

それから2日が過ぎ、合宿は終了となった。電はその間、暁たちと言葉を交わすことは無かった。そして、電たちは旅館を後にし自分たちの住んでいる街に帰ってきた。

「楽しかったね合宿!夕立、とっても満足っぽい!」

「夕立、本当はここからなんだよ。気を引き締めてね?」

「わかってるっぽい!」

「あ、電はこっちなので!」

「うん。電ちゃん、またね!」

「なのです。それでは!」

そう言って電は、時雨たちと離れ自分の家へと向かったのだった。電を見送り時雨たちも自宅を目指した。電を見送ってからしばらくは2人は何も口を開かなかった。すると夕立が突然口を開いた。

「電ちゃん。暁ちゃんたちと喧嘩したまま帰って来ちゃったけど…大丈夫かな?」

「……きっと大丈夫だよ。それに、僕たちには何も出来ないんだ…どうしようもないよ」

「うん…」

時雨と夕立は再び歩を進める。しかし、2人の間にまた静寂が訪れた。2人して何も喋らない帰り道ではあったが、しばらくして時雨と夕立が姉妹で暮らしている家が見えてきた。白い壁に赤色屋根の2階建ての一軒家だ。玄関のドアを開け、家の中に入った時雨と夕立は一息つこうとしたが現実はそうはさせようとしなかった。

「な、なんだ……これ?」

時雨は自分が見たその光景(・・・・)に絶句した。

「家が、荒らされて…うう…なんか、すっごい嫌な感じがするっぽい…」

夕立も家のその現状に嫌な予感を感じていた。

「白露!村雨!五月雨!」

靴を脱いで家のリビングへと向かう時雨、その後を夕立が追いかける。そして、2人にリビングの惨状が目に映った。

「こ、これは…」

「玄関よりもっとひどいっぽい…それに―――」

「あの黒い染みって…」

リビングは更にひどい状態だった。家具は散乱し、所々に黒い水が跳ねた様な大きな染みが出来上がってた。そして、時雨と夕立がリビングに足を踏み入れ辺りを調べ始めた時、テーブルの上に置いてある1枚の紙を見つけた。時雨その紙に書いてあるは文章を読んでみることにした。

「なになに……おかえり2人共!白露と五月雨は貰って行くわ…探すことなんて無駄だから、諦めてね……これって!?」

「ん?時雨、何か見つけたっぽい?」

「うん。ちょっとこれを見てよ」

時雨は、夕立にその紙を渡した。そして、その紙をしばらく読んでいた夕立だったがやがてその紙を両手でくしゃりと握りしめた。

「嘘でしょ?」

「……僕も信じたくないけど。これは…この紙に書いてある字は―――――」

 

 

 

村雨の字だ

 

 

 

2人は紙を見ながらただ立ち尽くしていた。

 

アパートに到着した電は、階段に上がり自分の部屋に向かった。階段を上りきった電は、自分の目の前に立っていた白地のシャツの上に胸元が少し空いたところまでチャックを上げたフード付きの黒い上着を着て、黒いミニスカートをはいた白いショートヘアーに血の様に赤い目をした少女に気づいた。その少女は、その血の様な赤い目で電の顔をジッと見つめていた。電は、とりあえず声をかけることにした。

「あ、あの…電に何か御用ですか?」

「……お前」

電の言葉に反応するようにその少女は口を開いた。そして、電が口を開こうとするのより早く少女は口を開いた。

「ガンプラバトル全国大会の決勝で、必ず負かしてやるからな」

そう言った少女はゆっくりと電の方へと歩きだし、やがて電とすれ違った。その時、その少女は一言呟いた。

「オレの名はレ級。覚えておけ、偽物」

「!?」

電はピクリと肩を震わせたその時、一瞬だけ頭に何かの光景が過った。しかしそれは本当に一瞬で、電にはその過ったものが何なのかわからなかった。電は慌てて振り返るが、レ級の姿は既にそこにはなかった。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はEP25~EP34までに登場したガンプラと登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。

また、解説の投稿と並行してアンケートを実施いたします。良ければ、回答をお願いします。


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EP34.5 登場人物&ガンプラ解説pt3

今回も前回同様に登場人物とガンプラの解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。


機体名 ガンダムバルバトス(月華団使用第6形態)

型式番号 ASW-G-08

ファイター 三日月 初登場話 第26話 ベース機 ガンダムバルバトス(第6形態)

機体データ(製作者の設定)全高 18.8m 重量 30.5t

解説

三日月が県代表戦で使用した素組のガンダムバルバトス第6形態。素組の為、機体の性能は最低限となっているが、三日月の能力「アシムレイト」によって生身に近い挙動を行うことが出来る。素組と唯一異なる点は、胸部に装備されている追加装甲中央にあった鉄華団マークが月華団マークに変更されているということぐらいである。月華団マークは元々の鉄華団マークを黄金色に塗り直し、その後ろに月の満ち欠けを示す5本の線が入った黄色の円が描かれたものだ。

 

武装

レンチメイス

本機のメイン装備となっている大型の特殊メイス。無改造であるため純粋な破壊力のみを生み出す。先端部の開閉機構は残っているがチェーンソーはない。

太刀

レンチメイスを破壊された時に使用する装備。ガンダムバルバトスの太刀をそのまま使用している。

機関砲 2門

両肘に装備された機関砲。射程距離は短いが格闘戦と織り交ぜて使用することで真価を発揮する。

 

ファイター 三日月 容姿(艦これにおける)三日月

月光華高等学校の中等部2年生の元艦娘。礼儀正しく真面目な努力家で、普段から何事に対しても全力で挑む性格の持ち主。ガンプラバトルをする者の中でも珍しい「アシムレイト」を使うことができ、操縦するガンプラは彼女の動きと連動するようにして動く。月華団の団長、もとい月光華高等学校ガンプラバトル部の部長である瑞鳳とは艦船時代からの付き合いがあり、絶大な信頼を寄せている。県代表戦では機体とのリンクを通常時よりさらに高めて月華団を勝利させたが、右目と右腕の感覚をガンダムバルバトスに捕られてしまった。が、本人はあまり気にしてない様子。瑞鳳と望月からは「ミカ」と呼ばれている。

 

機体名 ガンダム・アイアンボトムサウンド

型式番号 No data

ファイター フードの人物 初登場話 第29話 ベース機 No data

機体データ(製作者の設定)全高 No data 重量 No data

解説

以前、第11話で電たちの前に立ちはだかったUnknownの正体。第11話より姿は変わってはいないが、以前よりもかなりの能力強化が行われていると思われる。腕をELS(エルス)の様に変形させる事も依然可能だが、今回から両腕での使用が出来るようになったことが確認された。また、腕を細長い管上に変形させることで対戦ファイターに直接ダメージを与えることが可能な様でイナヅマガンダムと電はこれを受け大破、深海細胞を植え付けられた。この技を受け続けた相手のガンプラは本機に吸収される。と、フードの人物は言っていたが真相は定かではない。機体名の「アイアンボトムサウンド」とは、ソロモン諸島のサボ島、フロリダ諸島の南方、ガダルカナル島の北方に存在する海域(海峡)の通称からとられていると推測される。

 

武装

サテライトキャノン

左腕を変形させ作り出された大量破壊兵器「サテライトキャノン」を模した物。月からのマイクロウェーブ無しでも発射が可能で威力も本物とほとんど同じである。発砲ビームの色は青白い帯。

多連装ミサイル

右腕もしくは左腕を変形させ作り出された多連装ミサイルポッド。ホーミング性がかなり高い。

大型ビームソード

肘から先を変形させ肘部を発振源として出力される大型のビームソード。かなりの高出力なビームソードと思われる。発振ビーム刃の色は赤色。

ファンネル

右、もしくは左肩を変形させ作り出されたファンネル。形状はサザビーや、ヤクト・ドーガの物と同じ。発砲ビームの色は水色。

クロー

左手首を変形させて使用するクロー。鷲掴みした相手を粉砕するまで掴み続ける。

小型砲台

右、もしくは左腕から生成されたと思われる小型砲台。発砲ビームの色は桃色。

ビームカーテン

発生源不明の武装。恐らく、プロヴィデンスガンダムの大型ドラグーンに類似したものだと予測される。ビームの色は緑色。

ビームライフル

右手に装備していた長銃身のビームライフル。腕を変形させた物なのか、携帯武装なのかは不明。発砲ビームの色は緑色。

大型盾

右腕を変形させて作り出された大型の盾。その装甲はビームサーベルの直撃にも耐える程である。

 

ファイター フードの人物 容姿(艦これにおける)No data

電の前に姿を現した謎の人物。以前から電の事を監視していたと思われるが詳細は不明である。また、電と誰かの事を比べるような台詞を吐き、ぷらづまについても知っていた。電、深海との戦闘の途中で謎の発作を起こして逃走し、その後は行方を晦ましたようだ。

 

機体名 ガンダムアウェリアス

型式番号 MKI-A00

ファイター 黒野深海 初登場話 第30話 ベース機 頭部・下半身 ストライクノワール 胴体・両腕 ウイングガンダムゼロ バックパック ストライクフリーダムガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 67.3t

解説

黒野深海が使用する全領域対応に特化したガンプラ。他機種とのミキシングで作られてはいるが、その性能と深海の操縦センスが重なりガンダム・アイアンボトムサウンドと互角に渡り合える力を持つ非常に強力なガンプラである。ミキシングされた機体でベース機は存在しないが、エクストリームガンダムtype-レオスのEXA・フェースをモデルとして使用している。その為カラーリングもそれに準ずる赤、白、黒のトリコロールになっている。また、機体の反応速度がどういう訳かバトルシステムが認識できる領域を超えているようだが、それでも機体が何の負荷も受けずに動ける理由は現在のところ全く不明である。機体名の「アウェリアス」は深海曰く「朱金(しゅきん)の月を背負う者」らしいが、あまりそう認識されたことは無いらしい。

 

武装(各特殊モード含め)

ヴァリアブルライフル 2丁

ウイングガンダムゼロ(EW版)のツインバスターライフルをベースに製作された合体機構と銃身にオレンジ色のクリアパーツを持つ長銃身のライフル。1丁につきアウェリアスウイングを銃口付近の銃身に4つまで装着でき、合体状態では計6つのアウェリアスウイングを装着した「バーストモード」がある。発砲ビームの色は黄色。

ヴァリアブルライフルバーストモード

ヴァリアブルライフルを合体させ、銃口付近の銃身にアウェリアスウイングを6つ装着したモード。この状態で発砲すると、ヴァリアブルライフルの高出力にアウェリアスウイングのビームが重なり、大規模な宇宙基地ですら撃ち抜く威力を得ることが出来る。発砲ビームの色は黄色い帯。

ビームサーベル 2基

両肩上部のハッチに1本ずつ、計2本収納されているウイングガンダムゼロの物を強化したビームサーベル。高出力のビーム刃が形成されあらゆる物を両断する。発振ビーム刃の色は緑色。

頭部バルカン 2門

側頭部に装備されたバルカン砲。低威力だがマシンキャノンと異なり、射角が広いため多用途で使用できる。

マシンキャノン 2基

首元に装備された機関砲。射角は狭いが威力は高く、装甲の薄い部分へ向けて発砲すれば破壊も可能。基部を覆うカバーを開閉させることで使用できる。

アウェリアスウイング 8基

バックパックの翼に装備されているストライクフリーダムガンダムのスーパードラグーンを改造した武装。従来のオールレンジ射撃に加えて、ガンダムAGE-FXの「Cファンネル」の様に通り過ぎ際に斬撃攻撃を繰り出せる緑色のクリアパーツの刃を持ち、それをユニットの前方付近に持っている。また、ヴァリアブルライフルとの合体機構を有している。これを使用するには高度な空間認識能力が必要となっている。

シールド

ガンダムキュリオスのGNシールドを少し小型化した武装。GNフィールド効果はないが、表面には対ビームコーティングが施されている。先端部の開閉機構は健在で、対象を挟むことが可能。

 

ファイター 黒野深海

本作のオリジナルキャラクター。人間と深海棲艦の間に生まれたハーフで、戦争中は「穢れた存在」として軍から追われていた。その為、高度な観察力、動体視力、サバイバル術、戦闘術を持っている。所属していた鎮守府から逃げてきた時雨と偶然出会い、彼女の鎮守府の提督を殺して居ついた。その後時雨をお嫁とした迎え、彼女との間に秋雨、梅雨葉、雨葉の3人の娘を儲けた。また、放浪時代に偶然白と出会い彼女の兄となっている。以前はかなりピリピリした誰も信じようとしない性格だったが、時雨と結婚してからはかなり丸くなったらしい。人類と深海棲艦との戦争を終結させた人物だが、戦争終結からしばらくして家族とともに行方を晦ました為「行方不明の英雄」と世間にあだ名されている。途中から歳を数えることを放棄したので年齢不詳。

 

機体名 ナラティブガンダムE装備

型式番号 RX-9/E

ファイター 梅雨葉 初登場話 第33話 ベース機 ナラティブガンダムC装備

機体データ(製作者の設定)全高 22m 重量 23.2t(本体)53.2t(E装備装着時)

解説

雨葉と、白が製作したナラティブガンダムC装備をベースに総合的な火力と機動力を向上させたガンプラ。見た目はナラティブガンダムC装備のフレームが剥き出しになっている部分(上腕部と大腿部)にプラ板や他機種のパーツを用いて装甲を追加した姿となっており、大まかな改造はされていないように思われるが本機の最大の特徴はリ・ガズィとライトニングパックウェポンシステムを組み合わせた高機動兵装「E装備」をバックパックに装備出来るということだ。この装備によって、本機は大気圏内飛行や簡易変形による長距離輸送、火力と機動力の向上が可能となった。また、バックパックにはジャスティスガンダムのバックパックの流れを汲んだ展開機能が付いており、E装備本体を前方へ向けることが出来る。カラーリングも主だった変更はされておらず、ナラティブガンダムC装備の白、グレー、赤3色のトリコロールとなっている。

 

武装(エクストラパック未装着時)

ビームライフル

ナラティブガンダムC装備のビームライフルをそのまま使用しているが、エネルギー問題をE装備によって克服したためEパック方式はオミットされた。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

バックパックに装備されているビームサーベル。E装備を装着しても干渉せず使用できる。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部バルカン 2門

ナラティブガンダムC装備、従来の武装。ミサイルの迎撃などに使用する。

ビームキャノン 1門

シールド裏面中央に装備されたビームキャノン。ビームライフルよりも高い火力を誇るが射角は固定されている為、少し使い勝手が悪い。

シールド

ナラティブガンダムC装備従来のサイコフレームを装着した大型の実体盾。裏面にビームキャノンを装備している。

 

ファイター 梅雨葉

本作のオリジナルキャラクター。黒野深海と時雨の次女で、雨葉とは双子の姉。口数が少ないが、面倒見の良さでは3姉妹の中でもトップクラスである。その面倒見の良さは初めて会った相手にも通用し、電の介抱を手伝った。深海の妹である白とは気が合い、口を開かずともコミュニケーションが取れてしまう特技の持ち主。ガンプラの操縦技術は深海には及ばないもののかなりの腕前で、雨葉と白が製作したナラティブガンダムE装備を華麗に乗りこなす。物静かではあるが父である深海の事が大好きである。

 

機体名 エクストラパック(E装備本体)

型式番号 SAMHpack/05

ファイター 秋雨 初登場話 第33話 ベース機 リ・ガズィバックパック

機体データ(製作者の設定)全長 20m 重量 30t

解説

雨葉と白が製作したナラティブガンダムE装備の本体。リ・ガズィのバック・ウェポン・システムをベースにライトニングパックウェポンシステムをその上に張り付けたナラティブガンダムE装備の専用バックパック。ナラティブガンダムE装備本体のバックパックに合体することで、ナラティブガンダムに大気圏内飛行能力と高速機動、火力上昇の能力を付与することが出来る。また、ナラティブガンダムの長距離輸送も可能にしている。平時は支援機として使用出来るように機首部を180度動かせるようになっている。カラーリングは本体を青、翼と各所を白で塗装されている。型式番号のSAMHpackは「白、雨葉パック」の略。

 

武装

機首部大口径ビーム砲 1門

本機最大火力を誇る機首部のビーム砲。ナラティブガンダムE装備と合体すると180度回転できることを生かした後方からの不意打ちなどにも対応できる武装となっている。連射は出来ないが、照射は可能。発砲ビームの色は黄色。

大型ビーム砲 2門

本体部上面に装備された大型のビーム砲。機首部大口径ビーム砲との威力の差はそこまで変わらないが照射は出来ず、代わりに連射が可能。本体の向きに砲口が固定されている為射角は機体の向きに左右される。発砲ビームの色はオレンジ。

ハイパーバズーカ 2基

2つの大型ビーム砲の間に装備されているバズーカ。ユニコーンガンダムのハイパーバズーカをそのまま装着している。砲口が後方を向いているので、支援機状態でのドッグファイト対策として装備されているが、ナラティブガンダムE装備も勿論使用可能。

 

ファイター 秋雨

本作のオリジナルキャラクター。黒野深海と時雨の長女。物腰がしっかりしており、母親である時雨に似て他人のことを第一に考えることが多い性格をしている。3姉妹の中で唯一料理が出来るので家族は毎日、彼女と時雨の作る食事が楽しみなんだとか。しかしガンプラの制作技術はからっきしで、ガンプラ関連は妹たち頼みとなってしまっている。そして、手のかかる妹である雨葉をいつも注意しているが逆にいじられてしまって遊ばれることもしばしばあるようだ。特に、雨葉がこっそり集めているお父さんコレクションを見てニヤニヤしていることをよくネタにされている。そして、普段は表に出さないが父である深海の事が大好きである。

 

登場人物解説

青葉 容姿(艦これにおける)青葉

艦娘を狙った失踪事件について調査をしている探偵兼ジャーナリスト。艦娘時代からの行動力を生かして捜査していたところを深海と偶然出会い、以後協力関係になった。普段からテンションが高いのは艦娘時代から変わらないが、探偵としての腕はかなり高いらしい。旅館にて深海と一度合流するも、ターゲットに逃げられてしまっている。ガンプラバトルは基本しないが、バトル中の映像を録画できるようにガンプラは持っている。機体名は「アストレイアウトフレームシャッチャー」

 

大和 容姿(艦これにおける)大和

大和旅館の支配人を務めている。退役したのをきっかけに艦船時代から呼ばれていた「大和ホテル」を皮肉としてではなく、誇りとして受け止めることを選び、武蔵と共に大和旅館を開業した。旅館の支配人ではあるが常に業務の最前線に立って指揮を執っている。一応ガンプラバトルは少しだけかじっているのでバトルは可能だが、どういう訳かガンプラ製作だけに関しての手先の器用さは皆無な為、製作は武蔵に任せっきりの状態となっている。使用機体の名前は「ドレッドノートスターゲイザー」

 

武蔵 容姿(艦これにおける)武蔵

大和旅館の副支配人を務める大和の妹。退役後、大和と共に大和旅館を開き、そこの副支配人になった。彼女も艦船時代には「武蔵屋旅館」と呼ばれてはいたが、本人はあまり気にしておらず、旅館の名前を決める時にも「大和旅館にすればいいだろう」と自分から旅館と言う言葉を使ったらしい。大和と同じく、常に最前線で指揮を執っている。ガンプラの製作技術に関してのかなり高いが、何故かバトルの腕前はからっきし。しかし、大和に頼まれた内容の物をきっちり製作出来る為、姉妹でWinWinの状態となっている。

 

瑞鳳 容姿(艦これにおける)瑞鳳改二乙

月光華高等学校のガンプラバトル部部長で、月華団の団長。月光華高等学校の中等部に揃って入学してきた睦月型姉妹の全員をガンプラバトル部に入部させた高いカリスマ性(?)を持つ。そしてどういう訳か、会話の合間合間にオルガ・イツカの台詞を交えてくる。しかし、団員たちからはかなり信頼されている。一応バトルに出るために、ガンプラを所持しているが基本は戦闘指揮を執っている。使用機体の名前は「瑞鳳専用獅電」

 

睦月 容姿(艦これにおける)睦月改二

月華団の団員で常に変わった口調(にゃしぃとか、よいぞよいぞ)で喋っているノリのいい性格をしている。アシムレイトが使用できる為月華団においては3番目に強いとよく言われている。バトルでは文月とよく組んでいる。自分の使うガンプラは必ず自身のパーソナルカラーである黄緑1色で塗り、名前も色と同じ必ず「睦月号」にしている。本人曰く、「かっこいい」らしい。使用機体の名前は「睦月号」

 

如月 容姿(艦これにおける)如月改二

月華団で整備班を担当している。姉である睦月の事が大好きで、実質睦月の専属整備士である。睦月のガンプラである「睦月号」は彼女が製作したガンプラで、睦月の要望をきっちりと再現した機体となっている。ガンプラバトルには基本的に参加しない為、バトルの腕前は高くない。

 

弥生 容姿(艦これにおける)弥生

月華団で整備と卯月の暴走ストッパーを担当している。非常に物静かであまり口を開かないが、仲間を思いやる気持ちはかなり強い。卯月の暴走ストッパーをしているだけあって卯月とはかなり仲が良い。基本的に整備を全般で行動しているが、バトルにいつでも出れるように自身のガンプラは持っている。しかし、あまり腕は立たない。使用機体の名前は「ランド・マンロディパーチカル」

 

卯月 容姿(艦これにおける)卯月

月華団で戦闘とムードメーカーを務めている。ムードメーカーを務めつつ、バトルでは無茶ながらも切り込み隊長を務めることがあるとかないとか。睦月のガンプラである「睦月号」に少しばかりの憧れを持っているようで、対向してか彼女の使用するガンプラは赤色1色で塗られた「卯月号」となっている。バトルの腕もさることながら、製作技術もそれなりに高い。バトルでは長月、菊月とよく組んでいる。

 

皐月 容姿(艦これにおける)皐月改二

月華団で瑞鳳の不在時などに戦闘指揮を担当している。アクティブな性格をしてはいるがバトルの腕はあまりたたず、部内の練習で常にボコられているらしい。実質「月華団で1番バトルが苦手なバトル参加者」である。しかしその戦闘指揮能力は瑞鳳に次いで高く、瑞鳳がいたとしても指揮を任せられることがよくある。この理由から、小さいながらも瑞鳳に憧れを抱いている。

 

水無月 容姿(艦これにおける)水無月

月華団で炊事係を担当している。バトルと整備には一切手を出さないが、炊事係として月華団を支える縁の下の力持ち。料理全般は基本的にマスターしている為、団員たちからはいつも料理を楽しみにされている。月華団の最前線でバトルをこなす三日月の事をいつも心配している為、三日月が県代表戦で右目と右腕の感覚をなくした時焦る姿を見せた。また、月華団の全員にお守りとしてそれぞれのパーソナルカラーのブレスレットを作った。

 

文月 容姿(艦これにおける)文月改二

月華団で戦闘を担当している。睦月とよくペアを組んでバトルに参加する。そのほんわかした性格から、月華団のマスコット的立ち位置でいじられることがある。何事をとっても楽しいことを一番に選ぶ癖があり、バトルでガンプラが壊れる時も「バトルは楽しいから仕方ない」と割り切っている。無茶な動きをしない分、睦月よりマシだ。とよく望月に言われているが本人は知らない。使用機体の名前は「文月・スペシャルマンロディ」

 

長月 容姿(艦これにおける)長月

月華団で戦闘を担当している。持ち前の性格とバトルの腕前が功を奏し、三日月と共に最前線でバトルをすることが多い。月華団内でアシムレイトが使用できる人物の1人。バトルでは菊月、卯月とよく組んで出撃し、その時はリーダー的立ち位置になる。艦娘時代に所属した鎮守府の提督から色々と酷い目にあったことを少し根に持っているらしい。使用機体の名前は「ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティ」

 

菊月 容姿(艦これにおける)菊月

月華団で戦闘を担当している。長月、卯月とよく組んでバトルに参加している。ペアの3人でバトルに出た時は主に先頭を切る長月のサポートをしている為、時たま無茶をしようとする長月のストッパーでもある。何事も慎重に行動するタイプだが、ここぞという時には突拍子な行動で仲間を援護する癖がある。使用機体の名前は「ランド・マンロディ改」

 

望月 容姿(艦これにおける)望月

月華団で整備班の指揮を担当している。非常にめんどくさがりではあるが、整備に関しての腕前は月華団の中で誰よりも上で、特に三日月のバルバトスと、長月のグシオンを中心的に見ている。その手先の器用さから、自身で製作した武器や装備などは月華団のメンバーに愛用されている。バトルには参加しない為、とくに使用しているガンプラはない。三日月からは「もっち」と呼ばれ慕われている。

 

翔鶴 容姿(艦これにおける)翔鶴改二甲

百年記高校のガンプラバトル部部員。元航空母艦であることから、空間認識能力には少しの自信がありファンネル系の武装をよくバトルで使う。妹である瑞鶴が加賀と仲が悪いのでその橋渡し役的な立ち位置にいることが多い。本当は大食いであることを隠している。使用機体の名前は「ガンダムAGE-3FX」

 

瑞鶴 容姿(艦これにおける)瑞鶴改二甲

百年記高校のガンプラバトル部部員。姉の翔鶴と違い、空間認識能力はそこまで高くないのだが使用機体には必ずファンネル系の武装を装備している。その為、ファンネル操作はあまり上手くない為、よく相手に破壊されている。艦娘時代から加賀とは仲が悪いので、加賀からのファンネル系の武装を外すようにとの進言も未だに聞いていない。使用機体の名前は「ガンダムAGE-2ホーキンス」

 

加賀 容姿(艦これにおける)加賀改

百年記高校のガンプラバトル部副部長。部長の赤城は今回の合宿には参加していなかった為、ヲ級から大食い勝負を挑まれていた。退役後に交通事故に遭い、空間認識能力を失ってしまった。その為、高機動戦闘に適したガンプラを使用している。ガンダムAGEに出てくるウルフ・エニアクルの論理に心を打たれ、それ以降ウルフの様に生きてみようといつも心掛けている。瑞鶴に対しての言葉は、彼女の成長を思っての事のつもりだがどうしても強く当たってしまうことに悩んでいる。使用機体の名前は「ガンダムAGE-1バウンサー」

 

ヲ級 容姿(艦これにおける)ヲ級改flagship

龍北高校ガンプラバトル部部員。戦争終結で陸に上がった深海棲艦の1人。元航空母艦と言うだけあってかなりの大食いで、百年記高校ガンプラバトル部部長である赤城に敗北して以来、彼女を執拗に付け狙っている。バトルの腕前もさることながら、製作技術もなかなか高い。使用機体の名前は「オギュルディアアストレイ」

 

リ級 容姿(艦これにおける)リ級

龍北高校ガンプラバトル部部員にして、ネリタ模型店の最後の従業員(?)。模型店から龍北高校は遠いので寮から通っている。ネリタ模型店ではネ級に続く常識人で、タ級の事を「バカ姉」と呼んでいる。ガンプラの製作技術は模型店で働いているだけあって高いが、本人はシンプルなカスタマイズを好んでいる。使用機体の名前は「ペイルライダーリギリンド」

 

ル級 容姿(艦これにおける)ル級

龍北高校ガンプラバトル部部員。淡々とした口調で喋る礼儀正しい性格の持ち主。リ級と共にヲ級のストッパーをよくしているが、本人も元戦艦なだけあって結構大食いだがその事を隠している。本人曰く「恥ずかしい」らしい。現在は少食になる為の修行中。使用機体の名前は「ルギリスヴァサーゴ」

 

秋月 容姿(艦これにおける)秋月

平守(ひらもり)高校ガンプラバトル部部員。食習慣がかなり貧しい為、パーティーなどの会場では倒れているか、料理にくぎ付けになっているかのどちらかで参加している。食習慣の貧しさは食事だけに止まらず、ガンプラも最初に買った「ウイングガンダムゼロ」を今でも使用し続けている。その為使用しているガンプラ「ウイングガンダムゼロアラン」はかなりの損傷を受けた状態となっている。行方不明になった妹「照月」を探す為、全国大会を目指していた。

 

初月 容姿(艦これにおける)初月

平守高校ガンプラバトル部部員。秋月同様、食習慣がかなり貧しい為、パーティーなどの会場では倒れているか、料理にくぎ付けになっているかのどちらかで参加している。しかし、ガンプラについては別でしっかりと手入れと修復をしている為、使用するガンプラ「ガンダムダブルオーエクシア」は割と綺麗に保管されている。秋月同様、行方不明になった姉「照月」を探す為、全国大会を目指していた。

 

涼月 容姿(艦これにおける)涼月

平守高校ガンプラバトル部部員。秋月、初月同様、食習慣がかなり貧しい為、パーティーなどの会場では倒れているか、料理にくぎ付けになっているかのどちらかで参加している。しかし、食事の栄養価に関してはかなりこだわりを持っている。初月同様、ガンプラについては食習慣とは別でしっかりと手入れと修復をしている。使用機体の名前は「ガンダムデュナメス・ハイスナイプ」

 

川内 容姿(艦これにおける)川内改二

言わずと知れた、夜戦バカ。パーティーに参加したノリで酒を手にした為、夕立に発見された際には「夜っ戦!夜っ戦!」と叫びながら狂気の乱舞を踊っていた。使用機体の名前は「風魔スサノオ」

 

阿武隈 容姿(艦これにおける)阿武隈改二

パーティー会場で北上、大井と睨み合っている所を夕立に発見された。どういう理由で睨み合っていたかは不明。使用機体の名前は「ビルドストライクガンダムノワール」

 

北上 容姿(艦これにおける)北上改二

言わずと知れた、スーパー北上様。パーティー会場で阿武隈と睨み合っている所を夕立に発見された。阿武隈同様、どういう理由で睨み合っていたかは不明。使用機体の名前は「ヘビーアームズバスターガンダム」

 

大井 容姿(艦これにおける)大井改二

言わずと知れた、北上さん大好き少女。パーティー会場で阿武隈と睨み合っている所を夕立に発見された。阿武隈、北上同様、どういう理由で睨み合っていたかは不明。使用機体の名前は「ガンダムバスターヘビーアームズ」

 

伊勢 容姿(艦これにおける)伊勢改二

パーティー会場でラジコン瑞雲を飛ばしてはしゃいでいる所を夕立に発見された。恐らくはパーティーのノリでラジコン瑞雲を飛ばしていたと思われる。使用機体の名前は「ブルーディスティニーFb」

 

日向 容姿(艦これにおける)日向改二

言わずと知れた、そうなるなさん。パーティー会場でラジコン瑞雲を飛ばしてはしゃいでいる所を夕立に発見された。恐らくはパーティーのノリでラジコン瑞雲を飛ばしていたと思われる。使用機体の名前は「ガンダムシナンジ」

 

暁 容姿(艦これにおける)暁

電の姉で種守中学校ガンプラバトル部部員。相変わらず一人前レディーを目指して修行中。レディーとしての道はまだまだ険しいがガンプラバトルにおいてはかなりの上級ファイターで雷同様、二つ名を持っている。空間認識能力が使えるため、ファンネル系の武装を使用している。また、彼女の知らない所で「親衛隊」なる物が発足しているとかいないとか。使用機体の名前は「アカツキ・ハイペリオンマスター」

 

響 容姿(艦これにおける)響

電の姉で種守中学校ガンプラバトル部部員。常日頃から暁と行動を共にしている。暁同様、ガンプラバトルにおいてはかなりの上級ファイターで、暁、雷同様二つ名を持っている。しかし、空間認識能力は使えない。暁の親衛隊には気づいているが、今のところ無害なので知らないふりをしている。使用機体の名前は「ガンダム・ヴェールフェニックス」

 

黒い帽子を被ったサイドテールの少女 容姿(艦これにおける)No data

フードの人物を「マスター」と呼ぶ少女。その正体は全く不明である。

 

白い長髪にどす黒い赤色の目をした少女 容姿(艦これにおける)No data

フードの人物を「マスター」と呼ぶ少女。その正体は全く不明である。

 

雪風 容姿(艦これにおける)雪風

大和旅館で働いていて、主に接客を担当している。旅館を立ち上げる際に大和から声を掛けられて、ここで働くようになった。いつかは、大和のような立派な女性になることを夢見ている。

 

清霜 容姿(艦これにおける)清霜

大和旅館で働いていて、雪風と共に主に接客をしている。雪風同様、旅館を立ち上げる際に武蔵から声を掛けられて、ここで働くようになった。戦艦になる夢はようやく諦めがつけられたが、今は武蔵の様なかっこいい女性になりたいと思っている。

 

雨葉 

本作のオリジナルキャラクター。黒野深海と時雨の三女で、梅雨葉とは双子の妹。単語を3回続けて言う癖があり、常日頃から父である深海にアピールを繰り返している。そのアピールは場所を選ぶことは無く、いつでもどこでも可能である。しかし、度が過ぎる為か秋雨と梅雨葉、母の時雨にいつも注意されている。深海に隠れて秘かに「お父さんコレクション」を集めており、これは秋雨にも秘かに見られているらしい。手先が器用で、ガンプラの製作技術も高い。白とは言葉がわからないながらもコミュニケーションを取り合って「ナラティブガンダムE装備」と「エクストラパック」を製作した。

 

時雨 容姿(艦これにおける)時雨改二

黒野深海のお嫁さん。電たちといつもいる時雨とは別人である。戦争中に鎮守府から逃げ出した所を深海に助けられ、その後彼を鎮守府に案内し提督として迎え入れた。その後、深海と結婚し秋雨、梅雨葉、雨葉の3人の娘を儲けた。戦争が終結した後も深海に付いて行き、家族と共に旅を始めた。ガンプラに関しての知識はあまりない為、ガンプラ関連で深海の力になれないことを少し悔しがっている。しかし、彼女の存在は深海にとってこの世の何物にも代え難い存在になっている様だ。

 

浅瀬白

本作のオリジナルキャラクター。黒野深海とは血の繋がらない妹。戦時中に偶然深海に助けられ、以降深海のことを「お兄ちゃん」と呼ぶようになった。しかし、旅の途中で軍に捕まり艦娘に改造されてしまい、深海と生き別れてしまう。その後、深海棲艦へと姿を変え深海と再会、どうにか人間に戻れたが喋ることが出来なくなってしまった。しかし、表情と行動で何を言っているのかはわかる為、本人はあまり気にしていない様子。手先が器用で、雨葉と協力して「ナラティブガンダムE装備」と「エクストラパック」を製作した。彼女の額にある角は深海棲艦だった時の名残である。そして秋雨たち3姉妹同様、深海の事が大好きである。

 

レ級 容姿(艦これにおける)レ級elite

突如電の前に現れ、全国大会での勝利宣言をしていった深海棲艦。フードの人物と一緒にいるのが確認されたり、電の事を「偽物」と呼んでライバル視をしているようだがその理由は不明。

 




いかがでしたでしょうか?これで2回目の登場人物&ガンプラ解説は以上となります。
次回からは今まで通りのお話の続きを投稿していくので楽しみにしていてください。

また、アンケートを用意しておりますので答えていただけると幸いです。


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EP35 全国大会へ

全国大会当日の朝、電は自室で手荷物の最終チェックをしていた。旅行鞄の中身を1つ1つ確認していき、そして最後のイナヅマガンダムを机から取りジッと見つめた。

(今日までに出来ることは全部やったのです。だから…)

「イナヅマガンダム。どうか、お願いしますね」

イナヅマガンダムをケースに入れ、鞄に入れる。そして立ち上がった電は旅行鞄の取っ手を握ると、部屋を出た。玄関の扉を開けて外に出て、玄関に鍵をかける。鍵がカチャンと言う音を鳴らした扉をロックしたその時、隣の扉が開いた。電は、開いた隣の扉に顔を向けるとそこには吹雪が電と同じく戸締りをしている姿があった。電は、吹雪に声をかけた。

「吹雪さん。おはようございます!」

「あ、電ちゃん。おはよう…そう言えば、今日から全国大会だったね。頑張ってね!」

「なのです!……あれ?吹雪さん、髪の毛染めたのですか?」

電は吹雪の髪の色が依然と違うことに気づいた。以前の様な茶色がかった黒髪ではなく、雪のように真っ白だった。

「ん?ああ、仕事で一緒の深海棲艦さんに勧められてちょっと染めてみたんだ!電ちゃんも、髪の毛染めたんだね」

「は、はい!」

自分の身体が深海細胞に犯されていることを電は言う訳にはいかなかった。吹雪には何かといつも心配をかけている。と思ったのと、自分が自分で無くなることを誰にも知られたくはなかったのだ。

「電ちゃーん!」

すると、アパートの入り口の方から電の名前を呼ぶ声が届いた。電は声のした方に顔を向けると、そこには時雨と夕立が立っていた。電は、今行きまーす。と言うと吹雪に向き直った。

「吹雪さん。行ってきます!」

「うん。気をつけてね」

吹雪とすれ違った電は階段を降り、2人の元へ歩いて行った。そして、電は1度振り返ると吹雪に手を振った。吹雪もそれに応えるように手を振り返した。やがて、電たち3人は歩いて行った。3人が見えなくなるまで手を振っていた吹雪はやがて、階段を下りて電たちと逆の方向に歩いて行った。

「さて、私も頑張ろっと!」

 

3人が学校の前に着いてしばらくしたその時、3人の前に1台のキャンピングカーが走ってきて停まった。それはもうかなり大きなキャンピングカーで、そしてその運転席の窓からはあの男が顔を出した。

「おい、3人とも。早く乗れ」

「「「………」」」

3人は突然現れた巨大キャンピングカー驚き、同時に声を上げた。

「「「なんなんだよ!この車はぁっ!!」なのです!!」っぽいー!!」

「キャンピングカーだ。早く乗れ、大会に遅れるぞ」

3人の反応を見事に受け流した深海は、窓からスッと顔を引っ込めた。3人にとっては、ある意味波乱の船出となった。

 

キャンピングカーの車内。そこは外部から見たのと同じでかなりの広さがあった。そして何故か、さっきまで車の運転をしていた深海が電たちの前に座ってコーヒーを飲んでいた。電がその事について尋ねる。

「あの、黒野提督さん。車の運転は……」

「時雨がしてもらってる。あいつには悪いがな」

「は、はい…」

「さて、そろそろ本題…もとい、全国大会での作戦の再確認をするぞ」

深海は手に持っていたコーヒーカップを机に置くと、一呼吸置いて話し始めた。

「まず、お前たちは普通に全国大会に参加してくれ。目標が現れるとしたらお前たちの方だ」

「うん。わかったよ」

「それに、奴らが何をしてくるかわからん。選手村では息抜きするのも良いが、抜き過ぎは止めておけよ」

「う、難しい注文っぽい」 

まあ、確かにな。と深海は呟き、コーヒーをひと口呷ると更に言葉を続ける。

「次は俺たちだな。俺と梅雨葉、秋雨は一般の部に参加しながら奴らの動向を探るつもりだ。家族をこんな事には巻き込みたくはなかったが、青葉と俺だけでは手が足りないんでな」

「任せてよ、お父さん!」

「梅雨葉も頑張る」

ハッキリと答える秋雨と梅雨葉。

「ああ、頼むぞ。雨葉と白は、観戦客として奴らを探してくれ。出来るか?」

「だいじょぶだいじょぶだいじょぶ!雨葉にお任せー!」

「………!!」

雨葉と白も、ハッキリと答えた。よし。と言った深海は、全員の顔を一弁すると言い放った。

「あの大戦を再び起こす訳にはいかない。何としても、ここで奴らを捕らえるぞ!」

「おおー!!」

と言ったのは雨葉だけでそれ以外は全員頷くだけだった。すると、運転席から、時雨の声が聞こえてきた。

「提督、もうすぐ到着するよ」

「わかった。皆、頼んだぞ」

そして車は全国大会の会場へと走っていった。

 

続く




投稿が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。今月の投稿はこのような調子になってしまいますがご了承ください。


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EP36 新しい剣

車を降り、大会会場である建物「国立ガンプラバトル競技場」の前に立った3人。大きな青色の屋根と真っ白な建物本体、そしてその建物の前に立つガンダムのラストシューティングを模した銅像。その地に立った電たちは武者震いにも似た感覚を味わっていた。

「ここが、国立ガンプラバトル競技場……全国大会の会場!」

「いよいよ、だね。この前の合宿でのフリーバトルは見ていたけど……」

「一体どんな強敵が待っているかわからない。でしょ?」

「うん。でも、僕たちは必ず勝つ。勝って、優勝を掴むんだ!」

「なのです!」「っぽい!」

3人は競技場へと歩いて行った。

 

大会の開会式が終わると、遂に全国大会が開始された。今電たちは、バトルステージを取り囲む観客席で大会初日のバトルを観戦していた。電たちのバトルは大会初日の最終試合となっていた為、今は気を抜かずに刺客の探索とバトル観戦で全国のチームの力量を調べていたのだ。しかし、大会初日に彼女たちの知り合いがバトルをする試合はない為なのか、夕立は時雨の隣でコクリコクリと眠たそうに首を振っていた。

「うーん…ちょっと、眠いっぽい」

「ちょ、ちょっと夕立!こんなところで寝ないでよ!」

「うう~後15分だけぇ~」

夕立が時雨にもたれかかろうとした時、背後から雨葉が声をかけてきた。

「いたいたいた!電おねーちゃんたちだ!」

「あ、雨葉さんに、白さん。もう来たんですね」

「早かったね。て、夕立もう寝ちゃったよ」

「………!」

「え、えっと…」

だが電には白の言っていることはわからなかった。そしてそれはその場にいた全員が同じで、そのことに気づいた白はあたふたし始めた。身振り手振りで自分の言葉を伝えようとした白だったが、それでもやはりその場の全員に自分の意思を伝えることは出来なかった。やがて白はガックリとうつむいてしまった。しかしそこに2人の人物が現れた。

「あ!電じゃない!」

「やあ電。しばらくぶりだね」

「あ、暁ちゃん!響ちゃん!」

現れたのは暁と響だった。突然現れた2人に驚く雨葉と白だったが、やがて雨葉が2人に声をかけた。

「ねぇねぇねぇ!おねーちゃんたちって、電おねーちゃんのお友達?」

「いや、私たちと電は姉妹なんだ。ん?…君たち何処かで会ったことあったかい?」

「ん~きっときっときっと勘違いじゃない?」「………?」

「そうよ響!暁が知らないのに響が知ってるなんてありえないわ!」

「暁ちゃん、それはちょっと理不尽だと思うのです…」

暁の台詞に電がツッコミを入れた時、響は白をジッと見つめて何かに気づいた。

「あれ、君もしかして喋れないのかい?」

「………!?」

「やっぱりそうなんだね…」

「え!響、もしかしてこの子の言ってることわかるのかい!?」

「うん。何となくだけどね…それで、何か電たちに伝えたいことがあるんだよね?」

「………!」

響は白の言葉(?)に、コクリコクリと頷きながら聞いていた。無論、響以外の誰も白の会話の内容をくみ取ることは出来ないのでその時、響と白以外全員が同じことを同時に思った。

(響ちゃん、やっぱり凄いのです)(響、君って凄いんだね)(響って、す、凄いわ…)(この人、凄いなー!)

そして、話(?)を聞き終わった響が口を開いた。

「なるほどね。電、時雨、夕立、彼女は君たちのガンプラを見てあげるよ。って言ってるみたいだ」

「………!」

白が笑顔で右腕を勢い良く掲げた。しかしその時、電たち暁学園の名前がアナウンスで呼ばれた。

「あ、もう行かないとなのです!」

「そうだね。ほら夕立、行くよ」

「むにゃむにゃ…りょうきゃいっぽい~」

ふらふらと立ち上がる夕立。それを支えながら立ち上がる時雨。そして最後に電が立った。

「夕立、早く起きて!」

「ぽい~」

「はぁ、仕方ない。暁、響、雨葉、白、また後でね」

そう言った時雨は夕立を引きずりながら観覧席を降りていった。そして電も、4人に声をかけた。

「暁ちゃん、響ちゃん、雨葉さん、白さん。行ってきます!」

「うん!絶対絶対絶対、勝ってね!」

「………!」

「頑張ってね!って言ってるよ。私からも同じ言葉を送っておくね」

「絶対暁たちと当たるまで負けちゃ駄目なんだからね!」

「はい!必ず、勝ってくるのです!」

そう言って電は時雨の後追いかけて観覧席を降りていった。

 

電たちはバトル会場への道をゆっくりと歩いていた。そんな中で時雨が口を開いた。

「今日の相手は全国常連校だ。2人共油断しちゃ駄目だよ」

「了解っぽい!」

「確か、私立…大久田高校でしたっけ」

「うん、そうだよ。でも、たとえ誰が相手でも必ず勝つよ」

「勿論です!」「当り前っぽい!」

3人はバトル会場から照らされる光の中へと消えていった。

 

バトル会場のバトル台に1つに3人の姿はあった。3人の向かい側には対戦相手である私立大久田高校のファイターが余裕そうな表情をして立っていた。睨み合う6人。観覧席の一角では暁たちが電たちを見守っていた。真ん中に立つ電が右隣の時雨に顔を向ける。時雨はそれに応えるように頷き、電も頷く。更に夕立にも顔を向ける電。そして夕立も頷き、電も頷き返す。そして、電が前を向いて叫んだ。

「時雨さん。夕立さん。行きましょう!」

「うん!」「ぽい!」

「Gun-pla Battel stand up! Model damege level set to A.」

バトルシステムが立ち上がり、ダメージレベルが設定される。

「Please set yuar GP base」

6人がそれぞれGPベースをセットする。

「Begining Plavsky particle dispersal. Field 01 space.」

プラフスキー粒子が舞い散りフィールドが形成される。そして、円形のコロニー周辺の宇宙空間が姿を現した。

「Please set year Gun-pla.」

大久田高校の3人が先にガンプラをセットし、電たちも揃ってガンプラをセットする。それぞれのガンプラが読み込まれ、メインカメラが発光する。

「Battle Start!」

それぞれのガンプラが発進体制に入り、カタパルトが機体周囲を覆う。

「夕立の新しい悪夢、見せてあげる!」

夕立はニッと笑い、発進コールをする。

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメアパーティー、出撃よ!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが、漆黒の宇宙へと飛び立つ。

「止まない雨はない…でも、今日からは止ませないよ!」

時雨が真剣な表情で、発進コールを上げる。

「時雨。ガンダムアサルトレインバレット、行くよ!」

ガンダムアサルトレインバレットが、星が輝く宇宙へと発進する。

「きっと勝てる。ぷらづまちゃんも、皆もいる…」

(早く行こうぜなのです電!ワタシたちの新しい力、見せてやろうなのです!)

電の頭にぷらづまの声が聞こえた。そして電はそっと目を閉じて呟いた。

「大丈夫。電は、電たちは絶対に―――」

そして目を見開き、叫んだ。

「勝つのです!電。イナヅマガンダム(セカンド)、出撃です!」

イナヅマガンダムⅡが、広大な宇宙へと飛び立っていった。

 

先陣を切って駆けるのはユニコーンガンダムナイトメアパーティーだった。漆黒のユニコーンガンダムナイトメアパーティーを操作する夕立は、さっそく見つけた。

「電ちゃん、時雨!見つけたっぽい!」

夕立の目の前に現れた赤色に塗り替えられたゲルググJ(イエーガー)、オレンジ色に塗られた大型ヒート剣を装備したリックドム(ツヴァイ)、青色に塗られたジオングの3機だった。

「了解だよ夕立。僕が牽制をかけるから、散開した各機をそれぞれ相手して!」

「はい!」「お任せっぽい!」

ガンダムアサルトレインバレットがロングバレルビームライフルを構え、3機の中心を目掛けて数発撃ちこんだ。そして、3機が回避しそれぞれの機体に距離ができ散開したのを確認し突撃を伝える。

「今だ!行くよ!」

「突撃っぽーい!」

「やあー!」

突撃してきた3機に驚いた大久田高校のファイターたちはそれぞれバラバラに逃げ始めた。

「クソ、離されたしまった!」

「各個に散開しろ!後で合流するんだ」

「りょ、了解!」

そして、その光景を見た時雨は真っ先に言葉を発した。

「ジオングは僕が追う!夕立はリックドムⅡを。電はゲルググJを追うんだ!」

「格闘戦っぽい!楽しみだなぁ」「わかりました!」

それぞれの相手を追いかけ、電たちのガンプラは散開した。

 

リックドムⅡを追いかけるユニコーンガンダムナイトメアパーティーは、コロニーからかなり離れた宙域に来ていた。しかし、リックドムⅡとユニコーンガンダムナイトメアパーティーとの推力の差は歴然で、リックドムⅡは今にも追いつかれそうだった。

「クソ、振り切れない!」

「先手必勝っぽーい!」

そう言った夕立は手元の操縦桿を操作し、ビームサーベルのアイコンが描かれたスロットを選択した。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが両手に握ったグリップを、腰に装備された長い箱状の物へと差し込んだ。そして、ガチィン!という音が聞こえグリップが引き抜かれると、グリップの先端部に黒い刀身と銀色の刃を持つ剣が取り付けられていた。夕立は更にスラスターを噴かしてリックドムⅡに迫った。

「やるしかない!」

リックドムⅡのファイターは振り切ることを諦め、大型ヒート剣を抜いてユニコーンガンダムナイトメアパーティーに迫った。

「うおぉー!」

大型ヒート剣を両手で掲げたリックドムⅡがユニコーンガンダムナイトメアパーティーに上段から斬りかかった。しかし―――

「これは島風ちゃんの台詞だけど、おっそーい!」

その一撃を右スライドで避けたユニコーンガンダムナイトメアパーティーは、そのままリックドムⅡの背後を取った。背後を取られたことに気づいたリックドムⅡのファイターは慌てて大型ヒート剣を薙ぎ払った。それを2本の剣で受け止めるユニコーンガンダムナイトメアパーティー。

「む、ちょっと反応が早いっぽい」

「やられてたまるかー!」

リックドムⅡはユニコーンガンダムナイトメアパーティーに蹴り上げを放とうとしたが、それに気づいた夕立は大型ヒート剣の刃に自身の剣を擦りながら移動し、蹴り上げを回避した。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの剣が大型ヒート剣から離れ、大型ヒート剣に機体の体重を乗せていたリックドムⅡは大きくバランスを崩してしまった。

「うわっ!」

「隙ありっぽい!」

そこにユニコーンガンダムナイトメアパーティーが右手の剣を右上段に構えて迫った。

「まだだぁ!」

振り下ろされたユニコーンガンダムナイトメアパーティーの剣と、左下段から振り上げられた大型ヒート剣がぶつかり合いガキーンと大きな音をたてる。ぶつかった衝撃で2機の間に空間が出来た。リックドムⅡは体勢を崩してしまっていたが、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはすぐに動いていた。

「夕立のとっておきの技、見せてあげる!」

するとユニコーンガンダムナイトメアパーティーは相手に背を向け逃走を始めた。

「な!待ちやがれ!」

慌てて追うリックドムⅡ。しかし、推力差があり過ぎて追いつけない。そしてしばらくするとユニコーンガンダムナイトメアパーティーはその場で宙返りをすると一気にリックドムⅡに迫った。咄嗟の出来事に驚いたリックドムⅡのファイターは完全に反応が出来ていなかった。するとユニコーンガンダムナイトメアパーティーは通り過ぎ際少し手前で体を横に向け両の剣を右上段に構え、大きく足を曲げた。そして――――

「もらったっぽーい!」

それを一気に左中段へと振り切った。夕立が狙ったのは大型ヒート剣を持っていない右腕の肘で、狙いは寸分違わず命中し肘から下を斬り落とした。

「うわっ!」

「まだ終わりじゃないっぽーい!」

方向転換したユニコーンガンダムナイトメアパーティーは、グリップに取り付けられた刀身をグリップを振り下ろしながら相手に投擲した。刀身のみがグリップから外れ、それはリックドムⅡのバックパックから胸へと突き抜けて刺さった。すると、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは鞘にグリップを回し、鞘の1番内側に収められた刀身を抜いた。抜かれた刀身は極端に短い物だった。それを逆手に握ったユニコーンガンダムナイトメアパーティーは更にスラスターを噴かしてリックドムⅡに迫り、両腕を横に大きく広げ、通り過ぎ際にリックドムⅡの両膝から下を切り裂いた。

「ぐわっ!」

「まだまだぁ!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが再び振り返り、今度も刀身だけを投擲した。投擲された剣はリックドムⅡの頭部に突き刺さった。

「メインカメラが!?」

「これが見えない恐怖!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは今度は両腕横のビームトンファーを展開し、リックドムⅡに迫った。右腕を横へと切り払い大型ヒート剣の刀身の上半分を斬り落とし、左腕のビームトンファーはリックドムⅡの右肩を根元から斬り落とした。

「なんだ!?次々アラートが!」

「もういっちょー!」

左腕のビームトンファーの斬り降ろしに合わせてユニコーンガンダムナイトメアパーティーをリックドムⅡの上にスライドさせた夕立は、手元の武装スロットをビームトンファーから再び剣へと変えた。そして鞘の1番外側から今度は長大な刀身が抜かれた。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは右手の剣を下段に、左手の剣を上段に構えてリックドムⅡに斬りかかった。それぞれの剣が上段と下段に向かって放たれ、リックドムⅡの左腕の肘と肩を切断した。

「あ、アラートが…鳴りやまない!!」

「これが斬り刻まれる恐怖っ!」

そして遂にリックドムⅡは文字通り丸裸にされてしまった。もはやリックドムⅡに動く部分は存在しない。そして、悠々とリックドムⅡの正面に止まったユニコーンガンダムナイトメアパーティー。夕立は武装スロットを大型ビームサーベルに変更した。両肩の砲身部が外れ、そこから大型ビームサーベルが出力される。

「そしてこれが――――」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが機体を右に一回転させた。すると大型ビームサーベルがリックドムⅡの上半身と下半身を分断した。尚も止まらないユニコーンガンダムナイトメアパーティーは今度は機体を真横にし一回転。頭部から下半身までを真っ二つに切り裂いた。

「全てを消し去られる恐怖っ!!」

十字に切り裂かれたリックドムⅡは爆発、四散した。爆炎に照らされながら、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの大型ビームサーベルが消え、赤いメインカメラが輝く。

「これが夕立の…ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの必殺技――――」

 

 

ナイトメアパーティーブレイクっぽい!!

 

 

夕立はどやぁとした顔で叫んだ。

 

 

ところ変わって時雨のガンダムアサルトレインバレットはジオングの有線オールレンジ攻撃を回避しながら相手の隙を探していた。

「くっ、有線とは言えやっぱりオールレンジ攻撃は強力だね。何とか隙を見つけないと」

「どうしたどうした!逃げてばかりでは勝てないぞ!」

右上方から襲ってきたビームを回避し、更に真下から襲ってきたビームも回避する。更にジオング本体から放たれるビームも回避していくガンダムアサルトレインバレット。

「くそ、どうしよう…」

尚も回避行動を取り続けるガンダムアサルトレインバレット。四方八方から飛来するビームを避け続け、さらに加速する。

「逃げるだけしか出来ないとは、哀れだなぁ!」

ジオングのファイターが攻撃を続けながら時雨をあざ笑うように叫ぶ。しかし、時雨は答えることなく回避行動を取り続けていた。しかし、逃げ続けている時雨の顔に汗は流れていなかった。しかしやがて、ガンダムアサルトレインバレットはコロニーの外壁に追い込まれてしまった。

「し、しまった!」

「ハハハ!これで何処にも逃げれまい。勝負ありだなぁ!」

ガンダムアサルトレインバレットの周囲と正面を抑えたことで大声をあげて笑うジオングのファイター。しかし、時雨はそこであの言葉を一言呟いた。

「君には失望したよ」

「なに―――」

ジオングのファイターが時雨に聞き返そうとしたその時、ジオングの有線攻撃端末と腕との接合部が桃色のビームによって撃ち抜かれたのだ。

「な、なんだ!?」

「ふぅ…これで形勢逆転だね」

ジオングの遥か上空、そこには黒色に塗られた「コの字型」をした物が浮かんでいた。

「な!フィン・ファンネルだと!?」

「僕にそんな高度な空間認識能力はないよ」

「なんだと!?」

その時、その物体から伸びる何かが太陽の光に照らされて光った。

「あれは、インコムだと!?」

「インコムの操作って結構疲れるなぁ。さて、そろそろ終わらせようか」

「ぬかせ!攻撃端末を失って墜ちるジオングではない!」

苦し紛れにジオングのファイターが吐き捨て、機体に搭載されたメガ粒子砲を放とうとした。しかし、時雨は口を利くことなくロングバレルビームライフルの照準をジオングに向け引き金を引き、胴体を撃ち抜いた。胴体が爆発し、爆炎が上がる。しかしその爆炎の中から何かが飛び出してきた。

「ハハハ!本当のコアはこの頭だ。「機動戦士ガンダム」を見直してくるんだな!」

「はぁ…」

ジオングのファイターの言葉にため息を履く時雨。

「このメガ粒子砲でコックピットを貫いて、逆転勝ちしてやる!」

「君には本当に失望したよ…インコム!」

ジオングの口部にあるメガ粒子砲が発射されようとした時と、時雨が一言言い放ったのと同時にジオングの頭部を桃色のビームが貫いた。そして、ジオングの頭部は一瞬にして爆炎に包まれ消えた。

ジオング(それくらい)の事は誰でも知ってるよ。僕を馬鹿にしないでくれるかな」

時雨は、インコムのケーブルを巻き戻しそれがガンダムアサルトレインバレットの腰横にある接合部に戻ったのを確認すると、その宙域から離脱した。

 

一方の電は、ゲルググJと激しい射撃戦を演じていた。イナヅマガンダムⅡのビームライフルと、ゲルググJの大型ビームマシンガンがお互いを撃ち抜こうと火を噴く。

「そこなのです!」

「当たるか!」

イナヅマガンダムがビームライフルを放つ。しかし、ゲルググJはそれを見事に回避して大型ビームマシンガンを撃ち返す。イナヅマガンダムも高速移動でゲルググJの攻撃を回避し撃ち返す。

「ちっ、素早い奴だな!」

(電、このままじゃ埒が明かねぇのです!懐に入りこめなのです!)

「ぷらづまちゃん…やってみるのです!」

ぷらづまの声を聴いた電は手元の操縦桿を操作し、武装スロットからミサイルを選択した。電が引き金を引くと両脹脛に装備された3連装ミサイルポッドから6発のミサイルが発射された。ゲルググJ目掛けて飛ぶミサイル。しかし、ゲルググJは大型ビームマシンガンと腕部のバルカン砲でミサイルを撃ち落としていった。

「ダメ出しのミサイルなど、通用するものか!」

ゲルググJとイナヅマガンダムⅡの間を黒い爆煙が覆いつくした。すると、爆煙の向こうから2本の緑色のビームが飛んできた。しかし、そのビームをゲルググJは簡単に回避してみせた。そして、爆煙に向け大型ビームマシンガンを連射した。しかし、イナヅマガンダムⅡからの反撃は一切なかった。

「やったか?」

大型ビームマシンガンの引き金から指を話したゲルググJ。しかしその時、ゲルググJの背後からビームが飛来した。

「なに!?」

飛来したビームは大型ビームマシンガンに命中し、それを爆発させた。そして、爆発が起こったのと同時に爆煙の中から何かが飛び出してきた。飛び出してきたそれは、ゲルググJを通り越していった。

「あれは…奴のバックパックか!」

飛び出していったのはイナヅマガンダムⅡのバックパックであるファトゥム-01だった。ファトゥム-01を追いかけるように振り向いたゲルググJはあることに気づいた。

「な、いつの間に背後に!」

そこにはビームライフルを構えたイナヅマガンダムⅡの姿があった。そして、その周囲をファトゥム-01がクルクルと飛んでいた。イナヅマガンダムⅡを発見したゲルググJのファイターはすかさずビームサーベルを武装スロットから選択した。ゲルググJはリアスカートの内側に手を回すとそこからビームサーベルを取り出した。黄色いビーム刃が形成されると、ゲルググJはイナヅマガンダムⅡに向かって突っ込んできた。それを見た電は叫んだ。

「ぷらづまちゃん、一緒に行くのです!」

「当たり前だなのです!行くぞ電!」

電の左眼が深紅に染まった。そして、手元の武装スロットの中から「SP」を選択する。すると、イナヅマガンダムⅡの周囲を飛んでいたファトゥム-01が変形を始めた。翼が収納状態になりながら背を合わせると、翼の前面にビーム刃を展開されて機首部が折り畳まれ、そこから長いグリップが出てきたのだ。そのグリップを両手で握ったイナヅマガンダムⅡはそれを右上段に構え、ゲルググJにスラスター全開で迫った。

「やあぁー!!」

「くそぉー!」

ゲルググJはビームサーベルを横に振って、剣と化したファトゥム-01の縦斬りを受け止めた。だが、ゲルググJのファイターはその時あることに気づいた。

「な、ビームの刃が斬られているだと!」

剣と化したファトゥム-01のビーム刃が徐々にゲルググJのビームサーベルの刃を切り裂いていっていたのだ。

「ば、馬鹿な!」

「「いっけぇー!!」」

バキィーン!という音をたて、遂にゲルググJのビームサーベルの刃は斬られてしまった。そしてそのまま、剣と化したファトゥム-01を一気に振り下ろしたイナヅマガンダムⅡはゲルググJを両断した。両断されたゲルググJ。イナヅマガンダムⅡは両断されたゲルググJを背にファトゥム-01を右下に切り払ってみせた。

「これが電と…」

「ぷらづまさまの――――」

 

 

 

ガンプラだぁぁー!!

 

 

 

そして、ゲルググJは大きな音をたてて爆発した。

 

続く




長い間投稿できなくて申し訳ありませんでした。今週からまた投稿を再開しますので、どうか今後とも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」をよろしくお願いいたします。


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EP37 黄金の神盾と白不死鳥

「Battle Ended!」

バトルの終了を告げるシステム音声が電たち3人と大久田高校のファイターの耳に届いた次の瞬間、会場から至る所から大歓声が沸き上がった。どうやら他の1回戦のバトルは終了していた様で、電たちはしばらくその歓声を聞きながら会場を見渡していた。そして、にっこりとした表情で互いに向き合うと――――

「「「やったぁー!!」」」

と3人がそれぞれにハイタッチを交わしたのだ。

「やった!やったっぽい!初戦突破っぽーい!」

「やったね電、夕立!」

「はい!電たちの完全勝利なのです!」

「時雨ー!」

「うわっ!ちょ、飛びつかないでよ夕立!」

夕立はあまりの喜びに時雨に飛びついた。電は飛びついた夕立に頬をすりすりする時雨を苦笑いしながら見ていた。

「あはは…」

(仲間と勝利を喜び合う…ワタシも電とハイタッチしてみたいのです)

と、ぷらづまも2人の姿を見てちょっと羨ましいそうな言葉を漏らした。その言葉が聞こえているの電だけで、勿論ぷらづまが電とハイタッチ出来る訳はない。だが電はあることを思いついた。そして両腕を上に掲げた。

(何やってるのです電?)

「ぷらづまちゃん、ちょっと出てきて欲しいのです。こうすれば、ハイタッチ出来るのです」

「ああ、なるほどなのです」

そして電とぷらづまは、そのまま右手と左手をパチンと鳴らした。普通のハイタッチとは違うが、2人は確かにハイタッチをした。

「ちょっと違うが、これもいいハイタッチなのです」

「はい!電も、ぷらづまちゃんとハイタッチ出来て嬉しいのです!」

「そうだな……っ!電、あそこを見ろ!」

ぷらづまは観客席の一角に顔を向けた。ぷらづまに続いて電もそこを見た。そしてそこには――――

「あれは、レ級!」

電とぷらづまの視線の先にフードを被ったレ級の姿があった。レ級はその深紅の眼で電を見下ろしていた。そしてその隣には黒い帽子を被ったサイドテールの少女と、白い長髪にどす黒い赤色の目をした少女が立っていた。その2人もまた、電たちを観客席から見下ろしていた。

「電、どうしたんだい?」

その時、ようやく夕立から解放された時雨が電に尋ねてきた。そして真剣な表情で観客席の一点を見つめる電に釣られて時雨もその方を見た。

「電?」

「………」

「ん?あれは、レ級?」

「時雨、どうしたの?」

そして夕立もまた、電と時雨の見ている方を向いた。

「あれってレ級っぽい?」

「何だろう…とてつもない、殺気?みたいなのを感じるよ」

「……夕立もちょっと感じるっぽい」

「時雨さんと夕立さんも感じるのですね。あれ?レ級の隣に立ってるサイドテールの人、何処かで見たことあるような…」

電がレ級の隣に立っているサイドテールの少女を見て呟いた。時雨と夕立もその少女に目をやったが、そのすぐ後にレ級たちはその場から去っていった。

「あ~行っちゃったっぽい」

「電、あのレ級と何かあったのかい?」

「…宣戦布告をされたのです。決勝で必ず負かす、って」

「……そう」

3人はレ級の消えていった方をジッと見つめていた。

 

そして、翌日から本格始動した全国大会はどのバトルも白熱した物が展開されていた。2日目の第1試合では月光華高等学校の三日月と睦月、文月の3人が瑞鳳の指揮の元全国常連校を圧倒していた。

「睦月ちゃん、文月ちゃん、ミカが突っ込むから援護を!」

「睦月に任せるにゃしぃ!文月ちゃんいっくよー!」

「はーい!援護するねぇ~」

文月のガンプラ「文月・スペシャルマンロディ」が、両手に握ったサブマシンガンと両肩に装備された可動式機関砲、腰横の迫撃砲を発射し、それに合わせて獅電改をベースにした睦月のガンプラである睦月号がライフルとバズーカを発射する。

「くそ!」

その攻撃を回避しながら迎撃するM1アストレイのファイター。するとそこに無数の岩石群の中を一筋の青い閃光が駆けた。

「よし、これなら」

青い閃光の正体は黒と白、そして銀で彩られ、両肩側面の月華団マークと右肩正面に左曲がりの三日月のエンブレムを持ち背部に大型のテイルブレードとその横にソードメイスを装備した三日月のガンプラ「ガンダムバルバトスルプスレイト」だった。バルバトスルプスレイトは相手のガンプラと一気に距離を詰めていった。

「やられるかぁ!」

「甘いです!えいっ」

M1アストレイはビームサーベルを抜き放ち振り下ろすが、それを読んでいた様に三日月はバルバトスルプスレイトをバク転させて回避し、そしてその勢いのまま右手のツインメイスをM1アストレイの頭頂部目掛け振り下ろし、もう1本のツインメイスをコックピットに突き刺した。ツインメイスの直撃を受けたM1アストレイはグシャという音をたて頭部付近を破壊されコックピットを潰された。バルバトスルプスレイトはコックピットに突き刺したツインメイスを引き抜くようにM1アストレイを蹴り飛ばし、その後方にいてM1アストレイを援護していたウィンダムにぶつけた。

「うわっ!」

ウィンダムへの命中を確認した三日月はすかさず大型テイルブレードを射出し、M1アストレイごとウィンダムのコックピットを貫いて後方へ放り投げた。

「睦月ちゃん、文月ちゃんお願いします」

そして放り投げられた2機を睦月号と文月・スペシャルマンロディが集中砲火を浴びせる。

「相変わらず容赦ないねぇ~三日月ちゃん」

「でもそのおかげで睦月たちは勝ち続けられているのにゃしぃ!」

頬り投げ蜂の巣にされた2機には構うことなく最後の1機へと向かって行く三日月のバルバトスルプスレイト。そして三日月は紫に塗られたフリーダムガンダムを見つけた。

「あれで最後ですか」

「やっちまえ!ミカァー!!」

瑞鳳の叫びが三日月に聞こえた。

「よくも…仲間を!」

ビームライフルを撃ちながら後退するフリーダムガンダムにビームを回避しながらバルバトスルプスレイトは腕部の200㎜砲で牽制射を加えながら接近する。

「くそ!フルバーストでぶっ飛ばしてやる!」

フリーダムガンダムはバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲とクスィフィアス・レール砲を展開し、それを一斉射した。その一斉射はバルバトスルプスレイト目掛け飛んだが三日月はバルバトスルプスレイトを寝かせてそれを回避した。そしてそのまま機体を起こすと更に接近した。

「なんて動きなんだよ!」

ビームサーベルを抜き放ったフリーダムガンダムはバルバトスルプスレイトに対して左右に斬り払いながら攻撃を加えた。しかし、三日月はそれを簡単に回避しながら後退しフリーダムガンダムの隙を伺っていた。そしてフリーダムガンダムがビームサーベルを上段から斬り降ろしたのを回避したバルバトスルプスレイトはフリーダムガンダムを近くの岩石に向けて蹴り落とした。

「なにぃ!?」

「結構痛いですよ」

岩石に倒れるフリーダムガンダムを足で踏みつけながら、バルバトスルプスレイトは手にしたツインメイスを次々フリーダムガンダムに叩きつけていった。ガキン!ガキン!とツインメイスがフリーダムガンダムを壊していく。

「クソ…まだ―――ぐわぁ!」

どんどん壊されていくフリーダムガンダム。三日月は気にすることなくツインメイスを振り下ろし続ける。そして遂にフリーダムガンダムのファイターは降参を宣言した。

「降参だ!降参する!」

「Battle Ended!」

そしてバトルは終了した。バトルシステムがシャットダウンされフィールドと操縦スペースが消える。すると、三日月の右腕がだらりとなり右目から光が消えた。

「ミカ、大丈夫?」

「はい、大丈夫です瑞鳳」

「睦月ちゃん、文月ちゃん。ミカのガンプラをお願い、ミカは私が連れていくから!」

「了解にゃしぃ!」「はぁーい」

瑞鳳に連れられて三日月は会場を出ていった。

 

その様子を観客席から電たちが見ていた。

「三日月ちゃん、よ、容赦なかったっぽい」

「うん。まるで本物の三日月みたいだったよ」

「うう…ちょっと怖かったのです」

3人がそれぞれ試合の感想を述べていると、電は手元にあった試合予定表を確認した。そして気づいた。

「あ、もうすぐ暁ちゃんたちの試合が始まるのです!」

するとバトル会場入り口から暁と響が出て来た。そして1つのバトル台に立ち、バトルが開始された。

「暁。アカツキ・ハイペリオンマスター、出撃します」

「響。ガンダム・ヴェールフェニックス、出撃する」

全身金色に彩られ、シラヌイアカツキと腰回りにガンダムAGE-FXのCファンネルを装備して肩をストライクフリーダムガンダムの物に変更した4本のアンテナを持つ暁のガンプラ「アカツキ・ハイペリオンマスター」と、全身を純白に染め、淡い金色の不死鳥のとさかを思わせるアンテナと、両肩に4枚とバックパックに2枚の羽根を持ちツインバスターライフルを装備した響のガンプラ「ガンダム・ヴェールフェニックス」が宇宙空間へと発進していった。

「あれが暁と響のガンプラ」

「2人共、凄い完成度なのです」

「あ!響ちゃんのガンプラ、変形したっぽい!」

発進して早々に響はガンダム・ヴェールフェニックスを変形させた。鳥の顔を思わせるシールドの側面にツインバスターライフルを付け、頭部と腰を180度回転させて足先を折り、肩部上面装甲が側面に移動し肩部のウイングが展開、シールドをバックパックのウイング間に取り付けると、ガンダム・ヴェールフェニックスはアカツキ・ハイペリオンマスターと共に敵機を探して飛んでいった。

「あの変形…アニメ版のウイングガンダムゼロに似てるっぽい」

「でも肩のウイングはAGE-2ノーマルみたいなのです!」

「あ、会敵したみたいだ!」

会敵した暁と響は戦闘を始める。

「相手のガンプラは、ガナーザクウォーリアに、FAZZ(ファッツ)、ガンダムヴァーチェか…どれもビーム主体の機体だ」

「なら暁の出番ね!響、あとは任せたからね!」

「わかったよ暁」

そう言った暁は、アカツキ・ハイペリオンマスターを先行させた。アカツキ・ハイペリオンマスターの接近に気づいた相手の3機は、その高火力兵装を全門斉射した。

「狙い通りね。A(アカツキ)L(・リュミエール)ユニット展開!」

暁は手元の武装スロットから遠隔攻撃端末を示すアイコンが描かれたスロットを選択した。すると、バックパックから誘導起動ビーム砲塔が射出されそれが五角形状に展開するとそこに五角形のビームバリアが展開、相手の放ってきた全てのビームを打ち消した。

「なんだと!?」

「よし。響、攻撃するからね!目標、FAZZ!」

「うん。わかった」

そう言った暁は今度はビームライフルのアイコンを選択、ビームバリアを展開したままその後ろからマシンガンモードに切り替えたヒャクライを発砲した。

「ヒャクライ・スティグマトからは逃げられないわ!」

緑色の小さなビームが次々ビームバリアに向かって飛んでいく。

「馬鹿め!ビームバリアを貼った状態でビームで攻撃するとはな!」

暁の攻撃を馬鹿にするFAZZのファイター。しかし次の瞬間――――

「ぐわぁ!」

FAZZは、ヒャクライ・スティグマトの発砲したビームにより被弾した。

「な、なんだ!?」

「な!ビームが…バリアを通り抜けている!」

アカツキ・ハイペリオンマスターが放つヒャクライ・スティグマトから放たれたビームが次々にバリアを通り抜けて3機に襲い掛かってきたのだ。

「くそ!散開だ!散開しろ!」

「逃がさないよ!」

散開しようとした3機にガンダム・ヴェールフェニックスがツインバスターライフルを放ちながら迫った。そしてそのまま散開した為に出来た各敵機との間を通り抜けていった。

「撃ち落としてやる!」

ガンダムヴァーチェがGNバズーカを胴体のGNドライブと直結させてガンダム・ヴェールフェニックスに向けて発射した。巨大なビームがガンダム・ヴェールフェニックスに迫るが、そこに再びALユニットが現れると今度は四角形状にビームバリアを展開した。そして案の定ガンダムヴァーチェの攻撃はそのビームバリアによって防がれてしまった。

「暁、スパシーバ」

ALユニットがガンダムヴァーチェの攻撃を防いだのを確認した響は変形を解除し、ツインバスターライフルを連結、ガンダムヴァーチェ目掛け発砲した。

「ウラァー!」

黄色のビームがバリアを通り抜け、ガンダムヴァーチェを撃ち抜いた。胴体部を貫かれたガンダムヴァーチェは爆発、四散した。

「やったわね、響!」

「うん……っ!暁、後ろだ!」

「もらったぜ!」

アカツキ・ハイペリオンマスターの後方にいつの間にか回り込んでいたガナーザクウォーリアはオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲をアカツキ・ハイペリオンマスター目掛け発砲した。動きを止めていたアカツキ・ハイペリオンマスターは完全に回避動作が遅れていた。

「しまった!」

「よし、これは完全に直撃だ!」

しかしオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲のビームがアカツキ・ハイペリオンマスターに命中したその時、そのビームはアカツキ・ハイペリオンマスターの装甲に当たると鏡に当たった光が反射するように反射し、逆にガナーザクウォーリアを撃ち抜いた。

「なんてね!暁のガンプラにそんな攻撃効かないわ!」

「暁、また来るよ」

「クソがー!」

ガンダム・ヴェールフェニックスがアカツキ・ハイペリオンマスターの隣に現れると、最後に残ったFAZZがハイパー・メガ・カノンを発射した。今までにない巨大なビームが発射されたがしかし、これもALユニットのビームバリアによって防がれてしまった。

「防いだわ!」

「暁、一気に行くよ!」

ガンダム・ヴェールフェニックスが再度変形した。そしてその上にアカツキ・ハイペリオンマスターが乗ると、暁はALユニットを操作して2機の周囲を内側から取り囲むように展開し、ビームバリアを張った。

「アカツキ・リュミエール、展開!」

正八面体状に展開されたアカツキ・リュミエールが2機を取り囲んだのを確認すると、響はガンダム・ヴェールフェニックスを発進させた。アカツキ・リュミエールに覆われた2機に向けてFAZZは持てる全ての武装で応戦した。しかしFAZZのミサイルも、ビームも全てアカツキ・リュミエールの前に全て消え去っていった。アカツキ・ハイペリオンマスターが試製双刀型ビームサーベルを抜き放ち、その下でガンダム・ヴェールフェニックスがツインバスターライフルと肩部ビームバルカン、シールドに装備されたビームガンを撃ち続けていた。そして次第にガンダム・ヴェールフェニックスのビームがFAZZに直撃し始めていった。ビームの直撃を受け続けたFAZZはやがて体勢を崩した。

「今だよ暁!」

「これで終わりよ!」

体勢を崩したFAZZとすれ違い様にアカツキ・ハイペリオンマスターは試製双刀型ビームサーベルを横一文字に振り切った。ビーム刃はFAZZの上半身と下半身を分断し、爆発した。そして暁はALユニットを回収しガンダム・ヴェールフェニックスから降りると変形を解除したガンダム・ヴェールフェニックスの隣に並んだ。2機のメインカメラが、キュピィン!と発光し太陽が2機のアンテナを照らしだした。

「Battle Ended!」

バトルが終了すると会場から大歓声が起こった。そんな中電は口を開いた。

「流石、暁ちゃんと響ちゃん……」

「凄いバトルだったっぽい!」

「暁と響…勝ち進めばいつか当たることになるね」

時雨と夕立が会話をする中、電は先程の言葉の続きを話すように言った。

「ううん……流石、「黄金の神盾」と「白不死鳥」の異名を持つ2人なのです」

電は、姉とのバトルがより一層楽しみになっていた。そしてそれは、声に出さずとも電のニッと笑った顔を見れば一目瞭然だった。

 

続く



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EP38 全国大会1回戦(前編)

全国大会が始まって3日目、今日もまた白熱したバトルが行われていた。電たちは観客席にて本日のバトルを観戦していた。

「今日は僕たちの知ってる人のバトルが多いみたいだね」

「えっと…あ、加賀さんたちの百年記高校に、阿武隈さんたち、リ級さんたちの龍北高校、あとは川内さん…あれ?川内さんは1人だけみたいなのです」

「ぽい?味方が居ないってことっぽい?」

「そういうことなんじゃない?あ、そんなことを言ってたら川内さんのバトルが始まったよ」

 

プラフスキー粒子が形成した広大で深い夜の森の中を3機のガンプラが歩いていた。左からドートレス、ガンダムレオパルド、ジェニスと、どれも空中を飛ぶことの出来ない機体ばかりだった。周囲を警戒しながらゆっくりと前進する3機。しかしそれは唐突に訪れた。突如、ガンダムレオパルドの右隣を歩いていたジェニスが真っ二つに両断されたのだ。

「なんだ!?」

「敵は一体何処から―――ぎゃあ!」

すると今度はドートレスに何処からか飛んできたヒートダートが突き刺さり、その場に倒れ伏して動かなくなった。

「ち、ちくしょー!姿を見せろー!」

動かないのは危険と判断したガンダムレオパルドは弾幕を貼りながらその場からの離脱を測った。そして少し移動した時にガンダムレオパルドの後方から黒い大きな兜をかぶった様な頭部に、両肩に大きな角を装備した背部に2対のウイングと刀を背負ったガンプラがガンダムレオパルドに向かって来ていた。背中から白い粒子を履きながら一気に距離を詰めるそのガンプラにガンダムレオパルドのファイターは一切気づいている様子はなかった。そして――――

「一刀両断よ!」

その言葉と共に勢いよく抜かれた背中の刀によってガンダムレオパルドは両断されてしまった。

「フフン!私に夜戦を挑もうなんて、百年早いのよ!」

ガンダムレオパルドを両断した刀を左に切り払い、背中の鞘に戻してカチンッ!と刀が嵌まったのと同時に、そのガンプラが倒した全てのガンプラが爆発した。

「Battle Ended!」

バトルシステムがシャットダウンされ、川内は台の上に立つガンプラを拾い上げた。そして笑顔でそのガンプラに言った。

「次の夜戦も楽しみね!風魔スサノオ!」

川内は全国大会1回戦を無傷で通過した。

 

「せ、川内さんのガンプラ。まったく見えなかったっぽい」

「うーん。姿が見えなかった…てことはハイパージャマーを使ったのかもしれないね」

「ハイパージャマー…ガンダムデスサイズH(ヘル)が装備していた姿を消すことの出来る装備ですね」

「肩の形状がEW版のデスサイズHに似ていたから可能性は高いかもね。と、加賀さんたちが入ってきたみたいだ」

 

「いいわね五航戦。作戦通り動くのよ」

「わかっているわよ!あと、その呼び方止めて!」

「瑞鶴、集中して!」

円筒状のコロニー内部市街地を進む3機のガンプラがいた。1機は全身真っ白に染め上げられた背部に2門のビームキャノンとスラスターを内蔵したバインダーを装備して、左腕に先端部に緑のクリアパーツの刃を持ったGバウンサーに似たシールドを持つガンプラ「ガンダムAGE-1バウンサー」。もう1機は、両肩に緑色のクリアパーツを備えた4枚のバインダーを装備したツインドッズキャノンを備え、長大なライフル「ハイパードッズライフル」を持ったスマートな外見のオレンジと白のツートンカラーのガンプラ「ガンダムAGE-2ホーキンス」。そして最後の1機は、ずんぐりした外見に両肩と肘、バックパックにCファンネルを装備して大型のビームキャノン「シグマシスライフル」を持った赤と白のツートンカラーのガンプラ「ガンダムAGE-3FX」。

「まず敵への牽制射を掛けます!加賀さん、瑞鶴、お願いしますね!」

「わかったわ翔鶴ねぇ!」「了解したわ」

翔鶴の言葉を聞いた加賀と瑞鶴はお互いにガンプラを止めた。そして翔鶴は、シグマシスライフルの引き金を引いた。大きな桃色の帯が連続で撃ち出されると、遠くに散開しながら3機に向かってくる光が現れた。

「行くわよAGE-2!」

瑞鶴はAGE-2ホーキンスを飛行形態であるストライダー形態に変形させた。顔が胴体に隠れ、腹部が90度に降り曲がると両腕を後方へ向けてツインドッズキャノンを前方に向ける。そして足を折り畳みウイングを展開、ハイパードッズライフルを胸部に差し込んで一気に敵機へと向かって行った。それを追うようにAGE-1バウンサーも前進を開始した。射撃を止めたAGE-3FXも2機の後を追った。

「一気に決めるわ!ファンネル!」

AGE-2ホーキンスのウイングバインダー先端にある緑のクリアパーツ部分が基部から離れると、一斉に敵機へと向かって行った。相手チームのガンプラ、ガーベラ・テトラ、ジム・カスタム、ガンダム試作3号機へとファンネルが襲い掛かった。しかし―――

「何だこの動きは?舐められたものだな」

「この程度で墜ちたら笑われるな」

「余裕だ」

と言って、全てのファンネルを撃ち落とす相手チームのガンプラ。それはファンネル射出から1分くらいしか経っていなかった。

「な!また!?」

「取り囲め!後続が来る前に仕留めるぞ!」

瑞鶴はファンネルの全機消失を知るとすぐにストライダー形態を解除、モビルスーツ形態になってハイパードッズライフルとツインドッズキャノンをそれぞれの敵機に向け発砲した。しかし、突出した瑞鶴のAGE-2ホーキンスに対し敵は3機がかりで仕留めにかかってきていた。散開してAGE-2ホーキンスを全方位から滅多撃ちにしていたのだ。必死に応戦する瑞鶴だが、3対1の数的不利ではどうにもならず少しずつ被弾が増えていっていた。

「くっそぉ…これじゃまたあいつに!」

「あと少しだ!撃ち続けろ!」

そして、ガンダム試作3号機のフォールディングバズーカがAGE-2ホーキンスを捉えた。AGE-2ホーキンスはバランスを崩し、地表へと落ちて行った。

「グッ…くそぉ」

何とか着地に成功したAGE-2ホーキンスだったが、その場に肩膝をついてしまった。そしてそこにビームサーベルを大きく掲げたジム・カスタムが現れた。

「これで終わりだ!」

「し、しまった!」

しかしその時、1本のビームがジム・カスタムの左肩を射抜いたのだ。左肩を射抜かれたジム・カスタムのファイターは驚いてビームの飛んできた方向を向いた。そこには白いガンダム。AGE-1バウンサーがドッズライフルをジム・カスタムに向けていたのだ。ドッズライフルの銃口から白い煙が上がる。

「全く、世話が焼けるのね」

「な、何をー!」

「瑞鶴、避けて!」

「!?」

突然の翔鶴の言葉に驚いた瑞鶴だったが、咄嗟にその場から飛び退いた。するとそこに桃色のビームの帯が飛び込んできて、ジム・カスタムを飲み込んでいった。

「く、後続が来たか」

「仕留めるわ」

そう言った加賀は、AGE-1バウンサーの背部のバインダーに内蔵されたスラスターを展開しハイジャンプをした。そして、高いビルの上に辿り着くともう1度ハイジャンプをした。するとAGE-1バウンサーの眼下にガンダム試作3号機の姿が現れた。

「上だと!?」

「鎧袖一触よ」

するとAGE-1バウンサーは降下しながら手にしたドッズライフルをガンダム試作3号機に撃ち込んだ。ドリル状に回転した桃色のビームがガンダム試作3号機を頭の上から撃ち抜き、そして爆発させる。その場に着地したAGE-1バウンサーはすぐさま動き、残りの1機ガーベラ・テトラを探した。

「瑞鶴、行くわよ!」

「あ、うん…」

ガンダム試作3号機の爆発を確認した瑞鶴と翔鶴もガーベラ・テトラを探すべく行動を始めた。再びストライダー形態に変形したAGE-2ホーキンスは周囲を散策していると、移動しているガーベラ・テトラを発見した。

「よし、見つけたわ」

変形を解いたAGE-2ホーキンスはガーベラ・テトラにハイパードッズライフルの銃口を向けた。だが、その次の瞬間――――

「もらったわ」

AGE-1バウンサーのドッズライフルが移動していたガーベラ・テトラを撃ち抜いたのだった。

「ああっ!?」

「Battle Ended!」

そこでバトルは終了となったが、そこからしばらく会場の一角で瑞鶴と加賀は言い争っていた。

 

「あ、また言い争いを始めちゃったっぽい」

「はわわ!た、大変なのです」

「と言って、僕たちには止める事なんて出来ないんだけどね」

「う、そうだったのです」

「あ!あれ、リ級さんたちっぽい!」

 

「ヲッヲー!あの程度で喧嘩するなんて今回の勝負勝てるヲー」

「おいおいヲ級。気が早いぞ、まずは目の前のバトルに集中してくれ」

「私もリ級の意見に賛成だ。軽率な行動はやめてくれよヲ級」

「分かってるヲ!ま、ヲ級のXラウンダー能力があれば余裕ヲー!」

ため息を吐いたリ級とル級。そしてバトルが始まる。

「ヲッヲー!先手必勝ヲー」

荒野を行く龍北高校の3機のガンプラの中から1機、突出していく機体があった。大きく湾曲したアンテナを持ち、胸部にオレンジ色の円形クリアパーツと、両肩の長方形型シールド、ハイヒール状の脚部、そして大きなマントを思わせるバックパックを装備した黒と白のツートンカラーのガンプラ「オギュルディアアストレイ」だ。オギュルディアアストレイは両脚部に装備されたGNファングを改造した「Xファング」射出した。Xファングは周囲を飛びながらオギュルディアアストレイを追随していたが、やがてヲ級が何かを見つけると一斉に飛んでいった。

「ヲッヲー!動きが見えるヲー!」

そしてしばらくしてオギュルディアアストレイの進行方向に1つの爆発が起こった。

「ヲ級の奴め…ル級、奴をバックアップするぞ」

「了解だ。くそ、少しは調和を取ってほしいものだ」

オギュルディアアストレイを追っていた、両腕に巨大なドラゴンハングを装備し、バックパックに片刃の折り畳まれた大剣を背負った、ツインアイをバイザーで覆った白と黒、光沢を付けた黄土色のガンプラ「リギリンドペイルライダー」と、両肩、両肘に大型のビームランチャーを装備し、バックパックのレールキャノンと全身に装備したミサイルポッド、そして悪魔の顔を思わせる胸部が特徴の黒と深紅で彩られたガンプラ「ルギリスヴァサーゴ」が全速力でオギュルディアアストレイを追っていた。しかし、ヲ級は後続の2機を待つことなく攻撃を続けていた。

「そっこヲー!」

胸部のクリアパーツから黄色のビームが発射され、もう1機の相手チームのガンプラ「ガンイージ」を撃ち抜いた。撃ち抜かれたガンイージは爆散してしまった。

「弱い!弱いヲー!」

そして最後の1機のガンプラの少し先を狙って手にしたビームライフルを撃った。相手の動きを読んだ様な射撃は狙い違わず命中、相手のガンプラ「V2ガンダム」を撃ち抜いた。そして、リギリンドペイルライダーと、ルギリスヴァサーゴがオギュルディアアストレイに追いついた時バトルは終了した。

「Battle Ended!」

「おいヲ級!いい加減周りと動きを合わせてくれ!」

「でないと、これから先勝てなくなるかもしれなくなる!」

「ヲッヲー!ヲ級に追いつけないのが悪いんじゃないかヲー?」

「お前なー!」

と、こちらでも言い争いが始まったのである。

 

「リ級さんたちまで言い争い始めちゃったのです!」

「たぶんヲ級の連携を無視した突撃が原因だね」

「それにしても、あの先を読んだ射撃。相手にしたら厄介っぽい」

「リアルなXラウンダー…まさかね。と、阿武隈さんたちが入ってきた―――て」

 

阿武隈、北上、大井の3人は言い争いながら会場に入ってきた。

「いい!北上さんに1発でも被弾させたら許さないからね!」

「なら、機動力を高めたカスタマイズをしてよ!火力ばっかり高くて、重いだけじゃない2人のガンプラ!」

「攻撃こそ最大の防御だー!って昔言ってたのは誰だったっけねー?」

「うぐっ…て、昔の事掘り返さないでよ!今はバトルに集中!」

「わかったよぉ、阿武隈ってやっぱ五月蠅いな~そんなんじゃ早く老けちゃうよ~」

「そうですね北上さん!ほら、早く行くわよ前髪女!」

「前髪女言うなー!」

そしてようやくバトルが始まった。ちなみに、3人が言い争っている間相手チームのファイターが凄い気難しい顔をしていたのはまた別のお話。

今回の戦場は荒廃した廃都市だった。度々砂煙が上がり、かなり視界を制限されそうなフィールドを阿武隈たちが駆る3機のガンプラが駆けていた。先頭を行くのは白と青、赤のトリコロールで彩られた大きく横に突き出した鋭利な形状の両肩アーマーと、戦闘機の翼の様な左右2枚のウイングバインダーを持ったガンプラ「ビルドストライクガンダムノワール」だ。そして、後方からビルドストライクガンダムノワールをホバーで追いかけるのは、非常にずんぐりした外見と右肩の可動式レールガン、そして左肩上部と左脹脛横に大量のミサイルポッドと腰裏に2丁の大型ビームライフルを装備した深緑とグレー、黄色で彩られたガンプラ「ヘビーアームズバスターガンダム」と、同じく非常にずんぐりした外見で、両肩と、右腰、右脹脛横に大量のミサイルポッドを装備し、腰裏に2丁の大型散弾ライフルを装備した紺色と白のツートンからのガンプラ「ガンダムバスターヘビーアームズ」だ。

「えっと…相手チームのガンプラは~」

「あ、見えたね。て、うわ~サイコガンダムMk-2だ」

砂煙の中から現れたのはとても巨大な紫色をした悪魔の様な外見のガンプラ「サイコガンダムMk-2」だった。

「ふん!図体がデカいばかりで北上さんと私に勝てると思ってるの?行きましょう北上さん!」

「そうだね。阿武隈~あたしらいつも通り後方からミサイル撃つからさ。当たんないでよねぇ?」

「わ、わかってるよ!しっかり撃ち込んでよね!」

そう言った阿武隈はビルドストライクガンダムノワールをサイコガンダムMk-2に向かって突撃させた。サイコガンダムMk-2は全身のメガ粒子砲で応戦してきたが、阿武隈は巧みな機体動作でビームとビームの間を潜り抜けていった。そして隙を見てビームライフルを撃ち込むが、放ったビームはサイコガンダムMk-2の直前でかき消されてしまった。

「やっぱり、Iフィールドがあるな~」

阿武隈はIフィールドの存在を感ずいてはいたが、やはり少しショックだった。しかし、攻撃しなければ勝つことは出来ない。阿武隈はバックパックの左右のウイングバインダーに装備されたリニアガンを前方に展開した。そして、相手の砲火を回避しながらビームライフルと織り交ぜてそのリニアガンを装甲が薄いと思われる場所に撃ち込んでいく。

「ガラ空きなんですけどぉ!」

そしてようやくビルドストライクガンダムノワールのリニアガンがサイコガンダムMk-2の左膝の関節に命中した。少し体勢を崩したサイコガンダムMk-2だったがしかし、決定打にはやはり程遠い物だった。むむむ、と唸る阿武隈だったがその時よく知る声の通信が入った。

「行くよ大井っち!」

「はい!北上さん!」

ビルドストライクガンダムノワールとサイコガンダムMk-2の左側面から、ホバー移動しながらヘビーアームズバスターガンダムと、ガンダムバスターヘビーアームズの2機が一斉に全身のミサイルを一斉発射したのだ。

「だから撃つ時はちゃんと言ってよー!」

慌ててその場から離れたビルドストライクガンダムノワールはギリギリの所でミサイルの直撃をま逃れた。そして、2機の出現に驚き反応が遅れてしまった相手チームのファイタは回避行動が間に合わず、膝と足首の関節にミサイルの全弾直撃をくらってしまった。ミサイルの爆炎が次々上がり、サイコガンダムMk-2を包んでいく。やがて、激しく軋む音がした後、ミサイルの全弾発射で関節を破壊されてしまったサイコガンダムMk-2はその場に倒れてしまった。

「阿武隈ー止めよろしくねー」

「言われなくてもわかってるわよー!」

そしてビルドストライクガンダムノワールがバックパックから2本の大剣「フラガラッハ3ビームブレイド」を抜き突撃、サイコガンダムMk-2の頭部をX字状に斬り裂いた。頭部を4分割されたサイコガンダムMk-2。そしてその後方に両腕を広げて、ビルドストライクガンダムノワールは着地した。着地と同時にサイコガンダムMk-2は巨大な爆発を起こした。

「Battle Ended!」

「やった!初戦突破ー!」

グッとガッツポーズをする阿武隈。

「ま、北上さんと私の働きあってこそよ。喜ぶ前にまず北上さんに感謝しなさい前髪女さん?」

「んまぁ、そうだねー今回も活躍できて良かった良かったー」

「もぉー!アタシだって頑張ったのにー!」

そして結局また言い争いを始める3人であった。

 

「今日のバトルはこれで終わりですね!」

「うん。明日は秋月たちと、伊勢さんと日向さん…あとは――――っ!」

「ん?どうしたの時雨?」

日程を見ていた時雨は何かを見つけると、そこから目線を外せなかった。夕立と電が時雨の持っている日程表に目をやる。

「これは…レ級!?」

「間違いない。明日のバトルにレ級は出てる」

「電ちゃん…」

電はそこから目を外すことが出来なかった。

 

続く



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EP39 全国大会1回戦(後編)

翌日、電たちは再び観客席にて観戦をしていた。3人の表情はいつになく険しかった。それもそうである。今日は、電に宣戦布告をしたレ級たちのバトルが行われる日だからだ。

「今日先にバトルするのは秋月たちだね」

「合宿の時、お話しませんでしたけど…どれくらい強いのでしょう?」

「全国大会に来てるからきっと強いっぽい!」

「あ、秋月たちが出て来たよ」

 

「いい?照月を見つけるまでは絶対に負けたら駄目だからね2人共」

「わかってるよ秋月姉ぇ」

「勿論です。必ず、照月姉さんを見つけましょう!」

バトル台の前で意気込む秋月たち3人。そしてバトルが始まる。

 

今回バトルシステムが構築したフィールドは砂漠地帯だった。重油備蓄基地と広大な砂漠、墜落した大型輸送機が目を引くステージだ。その広大な砂漠を、全身傷だらけの右肩に丸みを帯びた大型シールドと右膝に他の機体の装甲板を取り付けられた、右側の2本のアンテナが折れ、柿色と緑色のオッドアイの様なメインカメラを持つ柿色と白のツートンカラーのガンプラ「ウイングガンダムゼロアラン」と、背部に2つのGNドライブを装備して、右腰には長い刀身を持つ剣、左腰には短い刀身の剣を備え、緑色のクリアパーツの刃を持つ楕円状のシールドとGNソードを装備した青と赤、白のトリコロールカラーのガンプラ「ガンダムダブルオーエクシア」、両肩に大型のGNシールドと両膝と腰裏に計7つのGNシールドビットを装備し、ケルディムガンダムのバックパックを備え、ガンダムデュナメスとケルディムガンダム両機のGNスナイパーライフルを両手に握った、白とグレーのツートンで彩られたガンプラ「ガンダムデュナメスハイスナイプ」の3機が飛んでいた。

「そろそろ相手のガンプラと接敵すると思うから、涼月は狙撃で援護、初月は私に付いてきて」

「了解。初月姉ぇ、いつも通りよろしく」

「任せてください秋月姉さん、お初さん」

そうしてガンダムデュナメスハイスナイプは別方向へと飛び、ウイングガンダムゼロアランと、ガンダムダブルオーエクシアはそのまま直進していった。やがて、直進した2機は相手チームのガンプラと接敵した。

「敵機確認。アヘッド、AEUイナクト、GNバスターソード装備のGN-XⅣだ」

「よし、初月はGN-XⅣをお願い。私はアヘッドとイナクトを相手するから!」

「秋月姉ぇ、その機体はもうかなり傷んでるんだ。無理したら駄目だ」

「大丈夫。私を信じてよ!」

「元から信じてるよ――――っ!来た!」

先制攻撃を仕掛けてきたのは相手チームの3機だった。それぞれが自身の手持ち射撃武装で2機に襲い掛かった。しかし、ウイングガンダムゼロアランとガンダムダブルオーエクシアは素早い身のこなしで回避していった。そしてウイングガンダムゼロアランはツインバスターライフルを分割し、ガンダムダブルオーエクシアはGNソードのライフルモードで撃ち返した。激しい射撃戦が始まったが、すぐに初月のガンダムダブルオーエクシアは一気にGN-XⅣに向かって行った。

「僕の相手をしてもらうよ」

ガンダムダブルオーエクシアの接近に気づいたGN-XⅣは左肩に装備されたGNバスターソードを抜き放った。ガンダムダブルオーエクシアはGNソードライフルモードで牽制しながら左腰の短い刀身の剣を逆手に握ると機体のスピードを乗せて一気に抜き放った。

「そこだ!」

GN-XⅣはGNバスターソードの刀身でそれを受け止めたが、ガンダムダブルオーエクシアのスピードに押されてその場から押し出されてしまった。

「初月はそのままGN-XⅣを押し出して!よし、私も行くよ!」

その場に残ったウイングガンダムゼロアランはアヘッドとイナクトと対峙したが、すぐに行動を起こし、ツインバスターライフルを撃ちながら左肩の上部ハッチからビームサーベルを抜き、2機に接近を始めた。散開したアヘッドとイナクトは射撃武装を撃ちながら後退していった。

「散開されましたか…でも、大丈夫、大丈夫」

ウイングガンダムゼロアランはまずアヘッドを仕留めるべくアヘッドを追いかけた。アヘッドは相変わらずGNビームライフルを撃ちながら後退していった。

「良い弾幕ですね。でも、この程度でウイングガンダムゼロアランは――――」

そして一気にアヘッドに接近した。アヘッドもGNビームサーベルを抜き放って左側向かって斬り払ったが、ウイングガンダムゼロアランは機体を右側にスライドさせそれを回避、アヘッドの背後に回り込むと左上から袈裟斬りを放った。ビームの刃はアヘッドを両断した。

「止められません!」

アヘッドはその場で爆発した。しかしアヘッドを撃墜したウイングガンダムゼロアランにイナクトがリニアライフルを撃ちながら接近してきた。爆炎の中から飛び出してきた弾丸はウイングガンダムゼロアランの右肩前面と、左のマシンキャノンに命中してしまった。

「きゃあ!」

被弾してしまったウイングガンダムゼロアランは大きく体勢を崩してしまった。墜落する程ではなかったがそれでも、ウイングガンダムゼロアランはイナクトの接近を許してしまった。ソニックブレイドを正面に向けたイナクトは一気にウイングガンダムゼロアランのコックピットを狙った。

「秋月姉さん!」

すると、イナクトの遥か後方から桃色のビームが飛んできてイナクトの左肩を撃ち抜いた。ビームの直撃を受けたイナクトはバランスを崩した。すると立て続けにそのビームは飛んできてイナクトの右肩、両膝を撃ち抜いた。そして落下して行くイナクトに最後のビームが命中しイナクトは爆散した。ビームの飛んできた方向でガンダムデュナメスハイスナイプが2丁のGNスナイパーライフルを構えていた。

「あ、ありがとう涼月。助かったよ」

「良かった…間に合ったみたい」

「ハッ!そう言えば初月は!?」

「今確認しますね―――って秋月姉さん!?」

態勢を整えたウイングガンダムゼロアランは慌てて初月のガンダムダブルオーエクシアの飛んでいった方へ全速力で向かった。

 

「クッ…強い!」

GN-XⅣのGNバスターソードと、ガンダムダブルオーエクシアのGNソードが激しくぶつかり合う。ガンダムダブルオーエクシアが攻撃を加えれば、GN-XⅣはGNバスターソードでそれを防ぎ、GN-XⅣが攻撃を仕掛ければガンダムダブルオーエクシアはGNソードでそれを防ぐ。その剣戟はなかなか終わることは無かったがやがて、そこにウイングガンダムゼロアランがツインバスターライフルを放ちながら近づいてきた。

「初月!」

「秋月姉ぇ!?」

「命中させます!」

ウイングガンダムゼロアランが放ったツインバスターライフルの1発がGN-XⅣの右膝から下を撃ち抜いた。するとそこに今度は別方向からビームが飛んできた。飛んできたビームはGN-XⅣの左腕を撃ち抜いた。

「お初さん、今です!」

「涼月姉ぇ!わかった、僕に任せてくれ!」

ウイングガンダムゼロアランとガンダムデュナメスハイスナイプの援護をもらったガンダムダブルオーエクシアは一旦GN-XⅣから距離を取るとGNソードを展開し、一気に機体の真上から振り下ろした。振り下ろされたGNソードはGN-XⅣを真っ二つに切り裂いた。

「これで終わりだ!」

ガンダムダブルオーエクシアがGNソードを収納するとGN-XⅣは爆発した。

「Battle Ended!」

バトルシステムがシャットダウンされると、秋月たちは互いにハイタッチをして喜び合っていた。

 

「す、凄い連携だったのです!」

「流石秋月たちだね。あれほど息の合った連携は雷たちと同じくらいに思えたよ」

「でも、夕立たちはその雷ちゃんを倒したっぽい!きっと大丈夫っぽい!」

「なのです!」

「盛り上がってるところ悪いんだけど、秋月たちと戦うとしたら決勝しかないんだよ?」

時雨の言う通り、秋月たちとはトーナメントブロックが別のブロックとなっているのだ。その言葉を聞いた電と夕立は、あ、そうだった。と苦笑いしながら言ったのだった。

「あ!伊勢さんと日向さんが入ってきたのです…って、あれ?」

 

会場の出入り口から伊勢と日向の2人が出て来て中央のバトル台へと歩いていた。そして2人の手には、何故か合宿のパーティーで飛ばしていたラジコン瑞雲があった。

「行くぞ伊勢。私たちの手で瑞雲をこの世に広めるぞ!」

「分かってるわよ日向!行くわよ!」

2人の瑞雲を世に広めるバトルが始まった。ちなみにこの時、大会に参加していた元艦娘と元深海棲艦は全員呆れて溜息を吐いていた。

「ヲヲー!瑞雲ヲー!ヲ級も飛ばしてみたいヲー!」

約1人を除いて…

 

バトルの舞台は凍える吹雪が舞う氷河地帯だった。その中を高速で移動する2つのガンプラがあった。白と黒のツートンカラーで彩られたバックパックに4枚のウイングバインダーの付いた円形のバーニアを装備したそれ以外はとてもシンプルな形状をしたガンダムタイプのガンプラ「ブルーディスティニーFb」そして、もう1機は全身を真っ赤に染め上げた鋭利かつスマートな胴体と背部に6基のファンネルを入れたラックと大型のプロペラントタンク、そして長大なライフルと大きなシールドを持ったガンプラ「ガンダムシナンジ」だ。

「むう…視界が悪いな。油断しないでよ日向!」

「わかっている伊勢。ん?相手の接近を確認した」

視界ゼロと言ってもいい中で、日向は敵機の接近を確認した。

「流石レーダー系統を強化したシナンジね。ホント頼りになるわ」

「まあ、この状況で捕捉できるとは思っていなかったがな…どうやら、相手はまだこちらに気づいてないようだ」

「よーし、一気に決めるよ!」

そう言った伊勢はブルーディスティニーFbを先行させていった。後にガンダムシナンジが続く。

「そこよ!」

先行していたブルーディスティニーFbは右手に装備したビームライフルを撃った。相手が伊勢達に気づいていなかったこともあり、正確な照準を定めることの出来た伊勢の射撃は狙い違わず相手のガンプラ、リ・ガズィを撃ち抜いて爆散させた。突然の攻撃と味方の喪失に慌てる相手チームは手持ちの射撃武装で狙いを付けず周囲に撃ちまくった。しかしその攻撃はブルーディスティニーFbとガンダムシナンジに命中する筈もなく、ただただその場から遠ざかっていくだけだった。

「よし!まず1機ね」

「まあ、そうなるな」

その間に日向のガンダムシナンジは円形を汲む様に展開していた相手チームを大きく迂回し、背後を取った。

「そこだな!」

ガンダムシナンジはその長大なライフルを構えると、引き金を引いた。そして今度も狙い違わず相手のガンプラであるクランシェを撃ち抜いた。吹雪の中に爆発が起こる。その爆発を見た最後の1機であるZプラスC1はウェイブライダー形態に変形するとその場から離れていった。

「伊勢!」

「わかってるわ。日向、追いかけるわよ!」

そして、離脱していくZプラスC1を追いかけ始めたブルーディスティニーFbと、ガンダムシナンジ。重力が存在するステージでの単独飛行の出来ないブルーディスティニーFbとガンダムシナンジは地上からZプラスC1を見上げながら進んでいった。やがて、ある程度たった所でZプラスC1は変形を解除し、地上に降り立とうとした。しかし、その隙を見逃す程、伊勢と日向は甘くなかった。

「今だ伊勢!同時に仕掛けるぞ!」

「了解日向!これで決める!」

ブルーディスティニーFbがバックパックからビームサーベルを抜き、ガンダムシナンジはシールドからビームアックスを取り出した。そして同時に空中へとジャンプすると、降下していくZプラスC1を左右から切り裂いた。

「Battle Ended!」

そしてバトルは終了した。

 

「す、凄いね…伊勢さんと日向さん」

「天候を味方につけた戦闘…これは僕たちも見習わないとだね」

「なのです…あ、相手チームの人にラジコン瑞雲をあげてるのです…」

と、伊勢と日向のよくわからない瑞雲配りを見ていた3人だった。そして―――

「っ!レ級!」

会場にレ級が姿を現した。そして、黒い帽子を被ったサイドテールの少女と白い長髪にどす黒い赤色の目をした少女もレ級の後ろを歩いていた。電がレ級の登場に唾をゴクリと飲み込む。しかし、その中で時雨と夕立はあることに気づいた。2人の視線は黒い帽子を被ったサイドテールの少女に向けられていた。

「時雨、あのサイドテールの女の子。どことなく、春雨に似てない?」

「う、うん。でも、あの人からは異常なまでの殺気を感じるよ…」

(まさかとは思うけど……あれは、春雨なのか?)

 

一方その頃、会場にまだ残っていた秋月たちは現れたレ級たちに視線を送っていた。

「あれが、今大会のダークホースって言われてるチーム…」

「ガンプラバトルだと言うのに、なんだこの凄まじい殺気は?」

「勝ち続けていけば、準々決勝で当たることになるね……ん?」

その時、秋月がレ級たち3人の中の1人白い長髪にどす黒い赤色の目をした少女に何か違和感の様な物を感じた。

(何だろう…どことなく照月と似てるような気がする…)

秋月はしばらくその少女から視線を外すことは出来なかった。そしてレ級たちがバトル台の前に並んだ。

「いいか、1分で終わらせるぞ。こいつらに手間取るようならここで切り据えるからな…わかったか駆逐棲姫、防空棲姫」

「「はい。レ級様」」

「Gun-pla Battel stand up! Model damege level set to A.」

バトルシステムが立ち上がり、いよいよレ級たちのバトルが始まる。

「Please set yuar GP base」

「Begining Plavsky particle dispersal. Field 04 City.」

バトルシステムがフィールドを形成し雨の降る廃都市が現れた。

「Please set yuar Gun-pla」

そしてレ級たち3人がそれぞれのガンプラを台座にセットした。バトルシステムがガンプラを読み込み、各ガンプラのメインカメラが発光する。

「Battle Start!」

レ級、駆逐棲姫、防空棲姫それぞれのガンプラが発進体制に入った。

「駆逐棲姫。2.12(ダークネスレイン)ガンダム、出撃する」

「防空棲姫。ガンダムボークルス、出ます」

駆逐棲姫と防空棲姫のガンプラが出撃した。そして最後にレ級のガンプラが発進する。

「待っていろ…偽物野郎……レ級。ガンダムレギュルス、出る」

 

雨の中を紫色の粒子を履いて飛ぶ背部に4枚ある黒色のウイングバインダーとバックパック中央と両肘に備え付けられたGNドライブ、前面に大きく突き出したクリアパーツを備えた胸部と、スマートな下半身を持ち、長大な連装ライフルと大型シールドを装備した灰色と濃い紫のツートンカラーで彩られた駆逐棲姫のガンプラ「2.12(ダークネスレイン)ガンダム」と、円筒状の大型ビームランチャーとレールキャノンを備えたバックパック、両肩と胸部前面の大型センサー、そして爪の付いたハイヒールの様な脚と、2丁のビームライフルを装備した白と黒、各所を深紅に彩られた防空棲姫のガンプラ「ガンダムボークルス」、そしてドラゴンの様な頭部を持ち、胸部に前方へ大きく突き出した紫のクリアパーツといびつな形状の両手、そしてドラゴンの尾を思わせる巨大で鋭利なバックパックを備えた漆黒のガンプラ「ガンダムレギュルス」が廃墟の街の中を駆けていた。そしてバトル開始早々、その場に止まった2.12ガンダムとガンダムボークルスはそれぞれ自身の長射程武器を展開した。2.12ガンダムは外側2枚のバインダーを肩越しに、内側2枚のバインダーを脇下から展開し、ガンダムボークルスはバックパックの大型ビームランチャーを展開、そして駆逐棲姫と防空棲姫の2人は同時にその引き金を引いた。2.12ガンダムの胸部のクリアパーツと連動するようにバインダーの内側に紫色のプラズマが走り、そして超巨大な紫色のビームが発射された。ガンダムボークルスも、大型ビームランチャーを最大出力で放った。赤と紫のビームが廃墟のビル群を焼き払いながら進んでいく。そしてそのビームの隣をガンダムレギュルスが駆けていく、両の掌から黄色のビームサーベルを展開し紫色の光波を履きながらビームと並走するスピードで突撃していった。しかし、目視でも簡単に発見出来てしまう様な超巨大なビームを回避しないファイターなど存在する筈もなく、2.12ガンダムとガンダムボークルスが放ったビームは簡単に回避されてしまった。しかし――――

「邪魔だ」

ビームを回避した相手チームのガンプラであるカット・シーが、ガンダムレギュルスのビームサーベルによって一瞬にして頭から胴体を両断された。しかしレ級は撃墜の余韻に浸ることなく次の目標であるガンダムエアマスターに迫った。両手のバスターライフルで迎撃したガンダムエアマスターだったが、そのビームは全て回避されコックピットをビームサーベルで貫かれた。そして、ガンダムエアマスターを最後の1機であるフォビドゥンガンダムに激突させると、胸部のビームバスターを発射。

「終わりだ」

2機のガンプラを易々貫いたビームバスター。そしてガンダムエアマスターとフォビドゥンガンダムは爆散した。

「Battle Ended!」

レ級の宣言通り、バトルは1分も経たずに終了した。そのあまりの速さに会場がワッと沸き立ったが、電たちをはじめとするファイターたちはただただ絶句するしかなかった。

 

続く



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EP40 雨雲の姫

レ級たちのバトルを見た電たちは、そのあまりのスピードと戦闘力に絶句していた。そしてレ級たちは歓声に耳を傾けることなく会場を後にした。こうして、今日のバトルは全て終了したのだった。

 

バトルが終了し、電たちは会場がある広場から少し離れた公園にいた。3人揃ってベンチに座りながら缶ジュースを飲んでいたがその場は静寂に包まれていた。しかし、しばらくして電が口を開いた。

「あれが…レ級の実力…」

電の言葉を聞いた夕立が今度は口を開いた。

「夕立たちより、確実に強かったっぽい…本当に…勝てるのかな?」

いつになく夕立も弱気だった。すると時雨が、無理もないよ。とポツリと呟いてから間を空けて話し始めた。

「僕たちが今までに戦ってきた人たち、戦いを見てきた人たちの中でも、あの強さは最強クラスだ。きっと、秋月たちや、伊勢さんたちも…」

「時雨さん…」

そして再び静寂がその場を包み込んだ。この状況下で前向きに解決策を考えることなど彼女たちには到底不可能に近かった。しかしそんな時だった。

「おーい!時雨姉ぇー!夕立姉ぇー!」

濃い青髪のロングヘアーを紫色のリボンで二つ結びにした五月雨と同じ服装を着た緑色の目をした少女が、癖のある緑色の長い髪を高い位置でハーフアップにして動物の耳のような形の黒いリボンを付け、前髪は左右に黒いヘアピンを2つずつ留めている青いラインの入った黒と灰色のノースリーブセーラー服を着たエメラルドグリーンの目をした少女を引っ張りながら公園に入ってきた。時雨と夕立の2人が顔を上げると、そこには2人がよく知る顔があった。

「涼風に山風!?ど、どうしたの!?」

夕立が駆けてきた2人の元へと駆け寄った。それに続いて時雨と電も2人の元に駆け寄った。山風は両膝に手をついて荒い息を吐き、涼風は息を整えていた。やがて、呼吸を整えた涼風は3人に話し始めた。

「頼む時雨姉ぇ、夕立姉ぇ!あたいたちを匿ってくれ!」

「………え?」

涼風の言葉に時雨と夕立は動揺するしかなかった。匿ってくれ。涼風は確かにそう言った。しかし、今この現状でその言葉の意味は全くもって意味が分からないと電たち3人は思った。しかし、時雨はすぐに涼風に聞き返した。

「す、涼風…匿ってくれ。ってどういう意味だい?」

「あ!いきなり意味わからないこと言ってごめん!実は―――」

「全く~相変わらず足だけは速いんだから~」

するとその時、公園の入り口から今度は、真っ白な三つ編みツインテールの髪に白い雲の様な帽子を被って半袖の白いワンピースを着た黄色い目をした少女が、銀色の髪を足首まで届きそうな長さの1本の三つ編みにして山風と同じセーラー服を着た青緑色の目をした少女を抑える、真っ黒のボブヘアーと赤いカチューシャを付けた時雨たちと同じセーラー服を着た水色の目をした少女と、赤紅色の髪を後ろで紅いリボンでおさげ髪にしてある白と赤のヘアバンドをした山風と同じ服装を着崩してお腹とへそを見せている青緑の目の少女を抑える、白髪のロングヘアに涼風と同じ服装をした赤い目の少女を従えながら入ってきた。

「放してください!お願いです!」

「このっ!放せってンだよー!」

「ハッ!海風姉ぇ!江風!」

ようやく息を整えた山風が抑え込まれもがく2人の名前を呼んだ。そしてその時、時雨と夕立は気づいた。

「っ!?し、白露に五月雨!?」

「ど、どうして2人がここにいて、海風と江風を抑え込んでるっぽい!?」

時雨と夕立、2人に見分けられない筈がなかった。髪と目の色こそ違えど、海風と江風を抑え込んでいる2人の正体は彼女たちがとてもよく知る自分たちの姉妹、白露と五月雨だった。

「「………」」

時雨と夕立の言葉に何も答えない2人。すると2人の前に立っていた白い三つ編みツインテールの少女が笑いながら口を開いた。

「アハハ!ムリムリ、もう白露姉さんも五月雨も2人のこと忘れてるんだしね!」

そして2人は再び気づいた。目の前の人物、白い三つ編みツインテールの少女の正体を。

「そ、その声…む、村雨……なの、かい?」

「ハイハーイ!白露型駆逐艦「村雨」だよ!な・ん・て・ね―――」

そう言い放ったその少女は不敵な笑みを浮かべ、更に続けた。

「懐かしい名前ねー!でもワタシ、もう「村雨」じゃないから!」

「「「え?」」」

時雨と夕立、そして電までもが少女の言葉に唖然とした。そして少女は言った。

「生まれ変わったワタシの名前は「深海雨雲姫(しんかいにむぶすき)」みんな、よろしくね!……なんちゃって!」

「おい!村雨の姉貴、何でこんなことすンだよ!いいから放してくれよ!」

「それは無理な相談ね。貴女たちは捕縛対象だから!」

「捕縛…対象?」

深海雨雲姫の言葉を聞いた時雨が、ポツリと呟いた。そのことに気づいてか深海雨雲姫はニヤリと笑い、そして人差し指で涼風を指さした。

「それと涼風。貴女もね!」

涼風が驚いた表情を作る。しかしその瞬間、時雨はあることに気づいた。

(涼風だけを指名した?どういうこと?)

しかし、時雨の表情を見抜いた深海雨雲姫は答えた。

「相変わらず、時雨姉さんは勘がいいわね!教えてあげるわ、何で山風だけ捕縛対象外なのかを、ね!」

(僕の考えを見抜かれた!?)

「私だけ…ち、違う?どういう、意味なの?」

「それはね――――」

深海雨雲姫は、ひと際不敵な笑みを浮かべるとこう言い放った。

 

 

 

貴女は、いらない子だからよ

 

 

 

その言葉に周囲が完全に静まり返った。しかしその中で1人、ポツリと口を開いた者がいた。

「私が…いらな、い子…」

山風だ。山風は深海雨雲姫の言葉に完全に動揺し、目に涙が溜まり始めていた。

「そ!貴女はいらない子なのよ。誰かに頼らないと生きていくことも出来ない、戦うことも出来ない、皆の足を引っ張ちゃう、いらない子なの!」

「私が…私、は…いら、ない?いら、ない、子?い、いら、いらないっ!?」

「ちょっ、山風姉ぇ!」

「うわあああぁぁぁぁー!!!」

その瞬間、山風は大きな叫び声をあげその場に頭を抱えて座り込んでしまった。叫び声は止まることなく、そして山風のその目からは光が消えていくようだった。

「山風っ!!村雨姉さん、なんてことを言うんですか!」

「ん~事実を言っただけなんだけどな~?だってあの子、何も出来ないいらない子じゃない!」

「い、いらない!?私は……いら、いらな、いい!い、いら、ららなな、い!」

「「「山風っ!」」姉ぇ!」

山風の傍にいた時雨と夕立、涼風が慌てて山風を抑えに行った。その光景を見ていた電は、ただあたふたすることしか出来なかった。山風の叫びはやがて情緒不安定な言動へと変わっていった。必死に山風を抑える時雨たちを見て、深海雨雲姫は笑う。

「アハハハハッ!!ホント、おかしいわ!アハハハ!」

深海雨雲姫の言葉を聞いた時雨と夕立は、目に涙を浮かべながら歯をギリッと言わせて深海雨雲姫を睨みつけた。

「許さないっ…絶対に許さないよ村雨!」

「夕立も…絶対許さないっぽい!!」

「アハハハハ!本気にしちゃったんだ!アハハハハッ!!おバカさんっ!」

高笑いする深海雨雲姫。すると、時雨と夕立はゆっくりと立ち上がった。そして――――

「「村雨ぇぇー!!」」

時雨と夕立は、同時に深海雨雲姫に向かって走っていった。

「時雨さん!夕立さん!」

しかし、深海雨雲姫はニヤリとした笑みを浮かべながら呆れた声で言った。

「よせばいいのに…おバカさんっ!!」

深海雨雲姫に殴りかかろうとした時雨と夕立だったが、しかし深海雨雲姫は2人を簡単に殴り飛ばして返り討ちにしてしまった。

「ううっ!」

「きゃあっ!」

「時雨姉さん!夕立姉さん!」「時雨の姉貴!夕立の姉貴!」

公園の地面に倒れ込んでしまった時雨と夕立。叫ぶ海風と江風。そして笑う深海雨雲姫。

「アハハハハハッ!!このみなぎる力、やっぱり最高だわ!……さぁ、涼風。これ以上、お姉ちゃんたちを傷つけてほしくなかったら、ワタシの所に来なさい?」

「ううう……」

「怖くなんかないわよ?こっちに来ても寂しくなんかないからね。時雨姉さんと夕立はいないけど、みんな一緒だから!」

(み、みんな一緒…?)

時雨は少し薄れた意識の中で深海雨雲姫の言葉に何かの違和感を覚えた。しかし、時雨はそこまで来て意識を手離してしまった。涼風はそんな中で公園の中にいる姉たちに戸惑いの表情で目を向けた。そして、目を瞑ってしばらくして目を開くとゆっくりと深海雨雲姫の方へと歩いていった。

「「涼風!!」」

海風と江風が涼風の名を叫んだ。

「いい子ね涼風。何処かのいらない子ちゃんとは大違いだわ」

深海雨雲姫がうずくまって倒れている山風を一弁すると、今度は電に目を向けた。電は深海雨雲姫のその殺意に満ちた怪しげな目に恐怖し、一歩たじろいでしまった。

「電ちゃん。あの方は貴女を殺したいほど憎んでいるわ」

「あの方?…っ!大和旅館で電にバトルを申し込んできたあの人の事なのです!?」

「そ、大正解!だからせいぜい、殺されないように頑張ってね~」

そして、その時涼風が遂に深海雨雲姫の目の前までたどり着いた。

「涼風止めて!村雨姉さん、涼風だけは!お願いです!」

「やめろ涼風!クソッ五月雨の姉貴、いい加減に放してくれ!」

「ごめんな。時雨姉ぇ、夕立姉ぇ、海風姉ぇ、山風姉ぇ、江風姉ぇ…」

「謝ることなんてないのよ涼風。みんな一緒にいるって言ったじゃない?さ、行きましょ!」

深海雨雲姫が手を差し伸べ、涼風はその手を取ろうとした。しかし、その時だった――――

 

 

 

グシャッ

 

 

 

「………え?」

何処からともなく飛んできた何か(・・)が深海雨雲姫の横腹に突き刺さった。深海雨雲姫はその何かに目を向けたそしてそこに刺さった物の正体に気づいた。

「これは、ナイフ?」

深海雨雲姫の横腹に刺さっていたのは1本のナイフだった。刺さった箇所からダクダクと真っ黒な血が流れ出ていた。そしてその次の瞬間、ものすごいスピードで通り過ぎた別の何か(・・)が横腹に刺さったナイフを抜きながら、彼女の目の前に立っていた涼風を攫っていった。そして、深海雨雲姫はその通り過ぎたものの正体にすぐに気づいた。そして、歯をギシッと言わせるとその男を睨みつけた。

「また邪魔をする気なのね……黒野深海!!」

「邪魔とか、人聞きの悪いこと言うな深海雨雲姫」

そこにはナイフを逆手に持ち、涼風を左肩に担いだ黒野深海が立っていた。すると、深海は早々に口を開いた。

「先に言っておくが、俺に敵うと思うなよ深海雨雲姫。理由は、お前の主から聞いてるからわかるだろう?」

「くそっ!」

深海の言葉を聞いた深海雨雲姫はすぐにその場に何かを叩きつけた。すると、その場が煙に覆われ早々に視界はゼロとなった。

「けほっげほっこ、これは!?」

「くそっ!煙幕か!」

「ゲホゲホ!なんも見えねぇじゃねえかー!」

「お、おい!暴れるな涼風!」

やがて煙が晴れたが、そこに深海雨雲姫、そして白露、五月雨、海風、江風の姿は無かった。

「チッ!逃げられたか…」

敵を取り逃したことに舌打ちをする深海。そこへ、電が慌てて駆け寄ってきた。

「深海提督さん!だ、大丈夫なので――――」

「ああ、だいじょぅ――――どわぁっ!!」「はにゃぁぁー!!」「ぎゃあー!」

そして電がこけた拍子に深海に衝突、ドミノ倒しの要領で肩に担がれていた涼風も巻き込み3人揃って転倒したのだった。

 

「痛つつつ……電、涼風、大丈夫か?」

しばらくして、転倒から立ち直った深海は自分の周りを見渡した。そして――――

「はにゃわわわ………」

「てやぁんでぇ~涼風は平気だじぇ~」

「………」

頭上に星とヒヨコ、そして目をクルクルと回して気絶した電と涼風を見つけてしまったのだった。

 

「そりゃねぇだろ……」

 

深海はガックリと肩を落としながら呟いた。

 

続く



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EP41 戦慄

深海雨雲姫の襲撃から3日が経っていた。電たちは全国大会2回戦も見事に突破し、今は深海のキャンピングカーにいた。3日前の深海雨雲姫の言葉で気を失ってしまった山風と涼風は現在、深海に保護され今はこのキャンピングカーで生活している。

「まさか行方不明の英雄に会えるなんて思わなかったぜ!」

「まだ言ってるのか涼風。いい加減聞き飽きたな」

「深海提督さん。涼風と山風を助けてくれてありがとうっぽい!」

「夕立、お前もいい加減聞き飽きることを言い続けるんだな。それより、山風は大丈夫なのか?」

ふと、深海は山風を寝かせているベットの方を見た。そこには時雨がベットで寝る山風を見ていた。しかし山風は、未だにうなされながら眠っていた。ゆっくりと首を振る時雨。

「そうか…」

その場に静寂が訪れたがそれはすぐに時雨の言葉でその静寂は打ち消された。

「………あの村雨が、こんなことをするなんて…」

「時雨…」

「未だに僕は信じられない――――」

「諦めろ時雨。奴はお前の知っている村雨じゃない。深海雨雲姫、お前と俺たちの敵だ」

「………」

深海の言葉に時雨は黙ってしまった。深海はそんな時雨を見て心の中で、仕方ないことだ。と呟いた。そしてまたしばらく静寂が辺りを包んだ。山風のうなされ声がキャンピングカーに響いていたが誰も口を開かなかった。しかし、そんな時だった。

 

バタァン!

 

キャンピングカーの扉が勢いよく開いたのだった。キャンピングカーの中にいた山風を除く全員がその方へ顔を向けた。そこには雨葉が両手を膝について荒い息をして、白が雨葉を支えていた。

「どうした?雨葉、白」

「はぁ…はぁ…」

「………!!」

まだ息を整えられていない雨葉に変わって白がおろおろした表情で深海の方を向いた。

「……伊勢と日向がレ級たちに負けた。そう言いたいのか白?」

すると白は勢いよく首を縦に振った。

「え!伊勢さんと日向さんが!?」

白の頷きを見て、電が驚きの声を上げた。そしてようやく息を整えた雨葉が口を開いた。

「はぁ…はぁ……ふぅ、ほ、報告するねおとーさん!」

雨葉は伊勢と日向の敗北についての報告を始めた。

 

「…なるほど。伊勢と日向の2人は反撃もままならずレ級たちの攻撃に晒され、奴らの1回戦同様バトル開始1分で撃破された。と言うことだな」

「そうそうそう!レ級のチーム、容赦なかったもん!」

「………!」

雨葉と白の報告を聞いた全員に戦慄が走った。少し脅えた口調で、夕立が口を開く。

「い、伊勢さんと日向さん、かなり連携の取れたチームだったのに…1分でやられちゃうなんて…」

「電も同じ意見なのです」

「うん。ますます、レ級たちとのバトルが怖くなってきたよ」

「俺は伊勢と日向のバトルを見たことは無いが…夕立と電の言葉を聞けばチームワークの良いチームだったんだろうな」

そして、秋雨もまたレ級に対して恐怖を覚えていた。

「お父さん。秋雨も、ちょっと怖くなってきたよ」

「秋雨、梅雨葉たちはレ級と戦わない。落ち着いて」

「う、うん。頼りないお姉ちゃんでごめんね梅雨葉」

脅える秋雨を落ち着かせる梅雨葉。すると、深海が口を開いた。

「今はまだ戦う時じゃないが、いつか俺たちも戦うことになる。秋雨、怖いのはわかるが今から心積もりはしておいてくれよ」

「う、うん」

「電、時雨、夕立。お前たちはもう戻れ。山風と涼風の事が心配なのはわかる。だがここにいたら、レ級の対策は立てられないぞ」

「う、うん。わかったよ深海提督―――」

時雨がそう言ったその時だった。深海のスマートフォンに着信が入った。それに気づいた深海はスマホを取り画面を見た。そこには青葉の名前があった。

「青葉からか…どうした青葉?」

「深海司令官大変です!今すぐテレビをつけてください!」

「?」

深海はスマホを耳に当てながらテレビのリモコンを手に取り、テレビを付けた。

「速報です。現在日本全国で、元海軍の将校を狙った殺人事件が発生しています。本日だけでも16件の報告が上がっています!」

「!?」

そのニュースの内容とその被害者の写真を見た深海は一瞬だけ目をギョッとさせたがすぐに冷静な顔に戻った。テレビは依然、事件の内容を淡々と語っていた。

「深海司令官!これって!」

深海は電話で話す青葉の声に一言、ああ。と言った。そして、少し間を空けて口を開いた。

 

 

 

俺が予想していた今回の事件の首謀者の奴ら、その全員だ

 

 

 

その場に再び戦慄が走ったことは、誰が聞いても明白だった。

 

続く



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EP42 今はまだすれ違い

時間は少しばかり遡る。

 

 

深海が青葉の電話を受け取った頃、2回戦のバトルに勝利した加賀と翔鶴、瑞鶴。しかし今回も、バトル終了時に加賀と瑞鶴は口喧嘩をしていた。

「今回も上手くいかなかったわね。五航戦」

「うるさいわね!次のバトルこそは絶対やってみせるんだから!」

「もうこれで8回目ね五航戦。いい加減認めなさい」

「あんたは黙っててよ一航戦!」

そう吐き捨てた瑞鶴は、足早に会場を後にした。

「あ、瑞鶴!」

翔鶴は慌てて瑞鶴の後を追いかけていった。そして残された加賀はと言うと、瑞鶴と翔鶴が出ていった出入口の方を向いて一言呟いた。

「……またやってしまったわ」

そして、ゆっくり歩いて会場を後にした。

 

会場を先に出た瑞鶴は、その足を止めることなく大会会場の近くにある海浜公園を目指した。瑞鶴は海浜公園にたどり着くと、近くにあったベンチに腰を下ろして広がる海を眺めていた。そしてため息を1つ吐いた。

「はぁ……自分でもわかってるのに…何で意地なんか貼ってるんだろ。私?」

そう言った瑞鶴は再び海を眺めていた。すると、瑞鶴の後を追ってきた翔鶴がようやく追いついてきた。

「はぁ…はぁ…やっと追いついたわ!」

「翔鶴姉ぇ…」

「隣、座るわね」

そう言って翔鶴は瑞鶴の隣に座った。しばらく何も口を開かなかった2人であったが、やがて翔鶴が口を開いた。

「瑞鶴、加賀さんが言っていたことなんだけど…」

「何よ?翔鶴姉ぇまで、ファンネル使うのやめろって言うの?」

「ううん。私は、瑞鶴に文句を言うことはしないわ。でも……」

「でも、何?」

翔鶴は一呼吸おいて口を開いた。

「加賀さんは、瑞鶴の事を思って言っている時があるんじゃないかしら?」

「私の事を?あの堅物大食い女が?翔鶴姉ぇ、冗談にしても笑えないんだけど」

「私は冗談で言ったつもりはないわ。瑞鶴」

「どういう事?」

瑞鶴が聞き返すと、翔鶴は瑞鶴の手を握り優しい表情で言った。

「以前、加賀さんがこんな事を言っていたわ。「私は、あの子が羨ましいわ。私には出来ないことが、出来てしまうのだから」って」

「え?」

「そしてこう続けたわ「でもその事が、あの子のらしさ(・・・)を邪魔してしまっている」」

「………」

翔鶴の言葉を聞いた瑞鶴は黙り込んでしまった。翔鶴は海の方に向き直ると、更に続けた。

「この言葉の意味、私には何となくわかる気がするわ。でも、私は瑞鶴にあえてその意味は言わないわ。その意味は貴女が見つけなさい、瑞鶴」

「………」

「さて、私は部屋に戻ってガンプラの手入れをしてくるわ」

そう言って立ち上がった翔鶴は、海浜公園を後にした。残された瑞鶴は、しばらく翔鶴の後姿を見ていたが、やがて自分のガンプラを入れているポーチからファンネルの外れたガンダムAGE-2ホーキンスを取り出して、それをジッと見つめた。瑞鶴の脳裏には「あの子のらしさ」と言う加賀の言葉が何度も響いていた。

「私らしさ……か」

 

一方その頃、加賀は会場の一角にある休憩所にある椅子に座っていた。その顔は何処か悔しそうな表情だった。

「………」

加賀はただただ口を開くことなく俯いていた。そんな時、加賀のよく知る声が耳に届いた。

「あら、加賀さん。こんな所に居たのね」

加賀が顔を上げるとそこには自分の弓道着とは色違いの、赤い弓道着を着た少し茶色がかった黒髪ロングヘアーと髪と同じ色をした目の加賀と同じくらいの背をした女性が立っていた。

「赤城さん。もう体の方はいいの?」

「ええ、上々よ」

彼女の名前は赤城。百年記高校ガンプラバトル部の部長を務める元艦娘で、加賀の一番の理解者且つ、親友である。以前の合宿では、体調不良(食べ過ぎによる腹痛)を訴え参加できなかった。そして、その後ろから今度も加賀のよく知る女性が現れた。薄紅色の和服の袖をタスキで縛り、紺色の袴を履き、下には白い長靴下を履いている。ダルグレーの瞳と、同じ色の長い髪をポニーテールにし、若干癖の付いた前髪を七三分け気味に整えた女性だ。

「加賀さん。お久しぶりですね」

「これは鳳翔さん。お久しぶりです」

彼女の名前は鳳翔。彼女もまた元艦娘で、現在は艦娘時代に結婚した提督と居酒屋を経営している。そして、赤城や加賀の艦娘時代からの先輩でもある。

「ここにおられるということは、月光華高等学校の応援ですか?」

「ええ。瑞鳳ちゃんから、三日月ちゃんが右目と右腕の感覚を失った。って聞いたものだから、私も微力ながらお手伝いをしてあげないと。と思ってね」

「それで、入り口でバッタリ会ったものだから一緒に来たということね」

月光華高等学校の近くで居酒屋を営む鳳翔は、何かと月華団と面識があるのだ。勿論その事は後輩である赤城も加賀も知っていた。

「そうでしたか」

そう一言呟いた加賀は少しだけ顔を落とした。そのことに気づいた鳳翔は、優しい口調で尋ねた。

「どうしたの加賀さん。何か悩み事?」

「あ、えっと……はい。少し悩み事が」

他人の考えている事を読み解くことが得意な鳳翔に嘘をついても仕方ない、と思った加賀は素直に口を開いた。

「実は瑞鶴とまた喧嘩をしてしまって…」

「フフッ、貴女たち昔からよく喧嘩していたものね」

「わ、笑わないでください」

「ごめんなさい。それで、今回はどんな喧嘩をしてしまったの?」

そして加賀はゆっくりと話し始めた。鳳翔は加賀の話を相槌を打ちながら静かに聞いていた。しばらくして、加賀は話すのを止めた。話の内容を聞いた鳳翔は小さく笑って口を開いた。

「フフッ、貴女たちは昔とちっとも変ってないのね」

「そ、そうなのでしょうか?」

「ええ。今聞いた内容の喧嘩、艦娘だった時の内容とほとんど同じだもの」

「フフッ、確かにそうですね」

「………」

加賀の話を聞いた赤城もまた、鳳翔と同じように小さく笑った。加賀は2人の笑った顔に少し困惑したが、やがて今までにしてきた喧嘩を思い出して、顔を赤くした。その顔を見た鳳翔は、加賀の両肩に優しく手を乗せた。

「大丈夫よ加賀さん。貴女の言っていることは、彼女を思っての事なのでしょ?ならきっと、届けることが出来るわ。前もそうだったじゃないですか。たとえすれ違っても、道はいつか交わるもの。なのだから!」

「鳳翔さん…」

「頑張って加賀さん!貴女ならきっとできるわ!」

「赤城さん…」

鳳翔の隣から赤城も顔を出し、加賀を元気づける。赤城の顔を一弁した加賀は、鳳翔の方にもう一度向き直った。そこには、昔に何度も見た鳳翔の変わらない優しい笑顔があった。

「頑張ってね加賀さん。大丈夫、貴女は本当は優しいって私も、赤城さんも知っているもの!」

「……はい!」

加賀は鳳翔の言葉を聞いて小さい声ながらもハッキリと答えた。するとその時、鳳翔は壁にかかっていた時計が目に入った。

「あ、もうそろそろ瑞鳳ちゃんたちの試合が始まるみたいね。ごめんなさい、私はこれで失礼させてもらうわね」

「はい…」

「それじゃあ、また後でね」

そう言って鳳翔は観客席へ歩いていった。その後ろ姿を加賀と赤城は、見えなくなるまで見ていた。

「それじゃあ、私たちも行きましょうか。加賀さん」

「ええ」

加賀と赤城は、ゆっくり歩いてその場を後にした。加賀の脳裏には「きっと、届けることが出来る」という言葉がリピートされていた。そして、加賀はポツリと呟いた。

 

 

「決心と言うものは、こんなに難しくて簡単なものなのね」

 

 

 

続く



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EP43 いつものように…

観客席への階段を上がっていく鳳翔。やがて、視界が開け暗くなっているバトル会場に出た。

「えっと、瑞鳳ちゃんたちは……あ!あそこね」

観客席に座っている瑞鳳たちを見つけた鳳翔はゆっくりとそこへ歩いていった。そして、歩いてくる鳳翔の姿を瑞鳳が見つけた。

「鳳翔さん!来てくれたんですね!」

「ええ。三日月ちゃんの事を聞いたら来ない訳にはいかないもの」

瑞鳳と鳳翔の話し声を聞いた月華団のメンバーが次々に鳳翔の方を向いて口を開いていった。

「こんにちはですわ鳳翔さん」

「あ、もしかして!睦月たちの応援に来てくれたにゃしぃ?」

「睦月ちゃん。まずは挨拶しないと駄目よ?」

「あ、ごめんなさいにゃしぃ」

「鳳翔さん、こんにちは。今日のバトルに出るのは長月と卯月、弥生だ。弥生の枠に本当は私が出る筈だったんだが…望月に、調整がまだ終わってないから今回は駄目だ。と言われてな」

「整備の手が早い望月ちゃんにしては珍しいよねぇ~」

「いつものさぼり癖のせいじゃないかな?」

「ちょっとみんな、もっちに対して言い過ぎですよ。今だって、1人残って調整してくれてるんですから?」

「うふふ。みんな元気で安心したわ。三日月ちゃん、貴女も」

そう言った鳳翔は三日月の頭を優しく撫でた。三日月は少しだけ照れた顔を作ると、や、やめてください。と言った。すると、菊月が長月たちのバトルが始まったことに気づいた。

「みんな、長月たちのバトルが始まったぞ」

「うおぉー!頑張るにゃしぃ3人ともー!」

睦月の声援が上がると月華団の全員が応援を始めた。

 

「作戦は頭に叩き込んであるな2人共?」

「もっちろんだぴょん!」「弥生も、大丈夫」

「よし!では行くぞ!」

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A.Please set your GP base.」

バトルシステムが立ち上がり、対戦相手も含めた全員がGPベースをセットする。

「Beginning Plavsky particle dispersal.Field 03 Forest.」

バトル台から大量のプラフスキー粒子が放出され、森が広がるフィールドが形成される。その時、卯月は弥生に声をかけた。

「弥生、久しぶりのバトルで緊張してるぴょん?」

「卯月?」

「弥生って緊張してるといつもより顔が強張るから!」

「え、そうなの?」

弥生が少し困惑した表情になった。すると卯月はニッと満面の笑みを浮かべて言った。

「大丈夫だぴょん!いつもみたいにやればきっとうまくいくぴょん!」

その言葉を聞いた弥生の顔に少しだけ緩みが生じた。そして、小さく微笑んで口を開いた。

「そうだね。卯月となら…大丈夫だね」

「えへへ!まっかせるぴょん!」

「………」

その2人のやり取りを見ていた長月は口元に小さく笑みを浮かべた。

「Please set your Gun-pla」

そして、それぞれがガンプラをセットする。システムがガンプラを読み込みメインカメラが発光し、発進体制に入った。

「Battle Start!」

「長月。ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティ、行くぞ!」

「卯月。卯月号、出撃でぇ~す!」

「弥生。ランド・マンロディパーチカル、出撃します」

 

生い茂る森の一角に3機のガンプラがしゃがんでいた。1機は薄茶色とダークグリーンのツートンカラーで彩られた直線的な外装を多用した外見と、大型になった両肩に追加されたスラスターとバックパックにある2つのスタビライザユニット、下半身後方を覆う程に大きな大斧を懸架したリアスカート、そして1つのカメラのみが存在する頭部と、両肩に計8本、腰横に計4本、両脹脛横計10本に装備されたヒートダートが特徴の長大なライフルを装備した長月のガンプラ「ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティ」

「よし。ここで二手に分かれるが…卯月、弥生を任せたぞ」

「りょーかいぴょん!うーちゃんにお任せ!」

もう1機は全身を赤色で染め上げ、セフティアリベイクフルシティ同様直線的な外装と両肩の大型バスターソード、ガントレットシールドと機関砲を装備した前腕部、スラスターが増設された脚部、そしてガンダムの頭部アンテナを思わせるV字アンテナを備えたバイザーを持つ頭部が特徴の卯月のガンプラ「卯月号」

「うん。卯月、よろしく」

そして最後の1機、紫と白のツートンで彩られた他の2機と違い曲線的な外装と、ヒール状になり安定性の増した両脚部に内装されたホルスターが特徴の弥生のガンプラ「ランド・マンロディパーチカル」

「長月、1人での行動だけど大丈夫なの?」

「大丈夫だ皐月。私は問題ないし、バトルに不慣れな弥生を1人にさせることの方が危ないからな」

今回は瑞鳳に変わって皐月が指揮を執っていた。皐月は一言、流石だね長月。と言うと作戦開始の音頭を取った。

「それじゃあ二手に分かれて作戦開始!」

「了解した!弥生、卯月、また後でな!」

「はーい!んじゃあ弥生、うーちゃんたちも行くぴょん!」

「うん」

こうしてガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティと、卯月号とランド・マンロディパーチカルの二手に分かれた月華団は行動を開始した。

 

森林地帯を駆け抜ける卯月号とランド・マンロディパーチカル。未だ2機は接敵してはいなかったが弥生と卯月、2人の間には少しだけ緊張が走っていた。森林地帯は生い茂る木々によって視界を奪われる可能性が高い。故に敵機からの奇襲を受けることも十分にあり得るのだ。そんな中で弥生は手元の武装スロットから銃のアイコンが表示された物を選択した。すると、左の脹脛部から1丁のアサルトライフルを取り出した。

「卯月、これ使って」

そう言った弥生は卯月号にそのアサルトライフルを渡した。見た目は獅電のアサルトライフルと同じだが、次にランド・マンロディパーチカルがサイドスカートから取り出した4色に塗り分けられた1本のラインがそれぞれ入ったマガジンを見て卯月は、それが何かを察したのかニッと笑みを浮かべた。

「やっと完成したんだね弥生!」

「うん。卯月が頼んでた、多用途アサルトライフル「アサルティットライフル」だよ」

「弾もかぴょん!?」

「勿論。白が通常弾、赤が焼夷弾、黄色が散弾、青が貫徹弾。銃身も耐えらるようにしてあるから大丈夫だよ。はい」

「弥生ありがとうだぴょん!……って!うわぁ!」

ランド・マンロディパーチカルが卯月号にマガジンを渡したその瞬間、2機の進行方向から相手チームの攻撃が飛んできた。ビームと実弾を織り交ぜた弾幕だ。何とかギリギリで初弾を回避した卯月号とランド・マンロディパーチカルは一旦後退した。

「弥生、援護は任せたぴょん!」

「了解、卯月」

卯月はそう言うと、武装スロットから左肩の大型バスターソードを選択し卯月号を先行させた。その後方からランド・マンロディパーチカルが、サブマシンガンを撃ちながら追随する。先行してくる卯月号に気づいたのか、森林の中からティエレン全領域対応型と、レギンレイズがそれぞれの射撃武装を放ちながら飛び出してきた。

「目標確認!アサルティットライフル、発射ぴょん!」

それに答えるように卯月号も通常弾を装填したアサルティットライフルを放ちながらティエレンとの距離を詰めていく。ティエレンはビームライフルを撃ちながらライフル下部のビームサーベルを取り外し左手に装備させ、卯月号に向かって行った。2機間の距離が縮まっていき、そして接近戦が始まった。先に仕掛けたのは卯月号だった。

「えぇい!」

左手に握られた大型バスターソードを横一文字に切り払う。ティエレンはそれを右ステップで回避した。そしてビームサーベルを左上段からの袈裟斬りを放った。

「反撃する!」

「おっと!」

卯月号はその攻撃を身体を右に反らせることで回避し、その隙に隙だらけとなったティエレンの胴体にアサルティットライフルを撃ち込んだ。通常弾とは言え零距離でアサルティットライフルの銃弾を浴びたティエレンは大きくバランスを崩した。その隙に卯月号はティエレンの背後を取った。アサルティットライフルのマガジンを通常弾から貫徹弾に変更した。

「これで終わりぴょん!」

しかし、アサルティットライフルはカチン!と言う音だけを放ち、貫徹弾は発射されなかった。

「あれっ!?」

もう一度引き金を引く卯月。しかし、弾は出ない。それを見たティエレンのファイターはニヤリと口元に笑みを浮かべ卯月号に迫った。

「こんな時に弾詰まりとは、運のない奴だな!覚悟しろ!」

「あわわ!ど、どうすればいいぴょん!?」

どんどん距離を詰めてくるティエレン。そして勢いよく飛び上がり卯月号にビームサーベルを斬り降ろそうとした。

「とどめだー!」

しかし―――

「なーんちゃって!うっそぴょーん!」

卯月は元気いっぱいのニンヤリとした顔で操縦桿を操作した。すると、卯月号はアサルティットライフルの引き金上部にあるセイフティを外し、上空のティエレンに目掛け連射した。放たれた貫徹弾の弾幕はティエレンに多くの風穴を開けた。そして、卯月が引き金から指を放しその場からジャンプで離れると、ティエレンは大爆発を起こした。操縦スペースでは卯月が全快の笑顔でピースを掲げていた。

「さっくせんだいせーこーだぴょーん!って、弥生と逸れちゃったぴょん!?」

 

一方の弥生、ランド・マンロディパーチカルはレギンレイズと射撃戦を繰り広げていた。卯月が先行した後を追っては来たが、途中でレギンレイズが卯月号とランド・マンロディパーチカルの間に割って入ったため卯月と離されてしまったのだ。木の陰に隠れながら移動しては射撃を繰り返すランド・マンロディパーチカルとレギンレイズ。

「私だって!」

サブマシンガンを放ちながら木から飛び出すランド・マンロディパーチカル。しかし、その瞬間を待っていたかのように真横から現れたレギンレイズのタックルをもろにくらってしまったランド・マンロディパーチカル。

「きゃあっ!」

体勢を崩したランド・マンロディパーチカルは尻もちをついてしまった。そこにゆっくりと近づいてくるレギンレイズ。ランド・マンロディパーチカルが立ち上がるより前にレギンレイズは銃口を向けた。しかし、弥生は諦めなかった。

「勝負ありだな」

「まだ諦めないよっ」

すると、ランド・マンロディパーチカルは胸部の装備した4門のバルカンを斉射した。ほぼ零距離まで接近していたレギンレイズはこの攻撃を全弾くらった、しかし撃破はま逃れた。その隙にランド・マンロディパーチカルはレギンレイズから距離を取った。サブマシンガンをリロードし、レギンレイズに向けた。その瞬間だった――――

 

ガキーン!

 

という音と共にレギンレイズの腹部から剣の切っ先が出て来た。

「え?」

レギンレイズはそのまま機能を停止し、崩れ落ちた。そしてレギンレイズの背後から大型バスターソードを肩に担いだ卯月号が姿を現した。

「ふぅー間に合ったぴょん!」

「う、卯月?」

「ごめんごめん!先行しすぎちゃったぴょん!」

通信モニターに映った卯月の困ったような笑顔を見た弥生はホッとして一言言おうとした。しかしその時、唐突にそれは現れた。

 

 

ガキィィン!

 

 

唐突にランド・マンロディパーチカルの背後に現れた機体が、ランド・マンロディパーチカルの右腕を斬り飛ばした。

「え?」

「遅いっ!」

右腕を斬り飛ばされたランド・マンロディパーチカルはそのままその機体のキックを受け、弾き飛ばされた。

「きゃあぁぁ!」

「弥生!」

卯月の言葉が響いた瞬間、その機体は空高くジャンプした。そして遂に卯月がその正体に気づいた。

「あれは、ガンダムバエル!?」

2本の長剣を携え、背部に2枚の大型ウイングバインダーを装備した純白のスマートな形状をしたガンプラ「ガンダムバエル」そして、バエルは上空で手にした長剣の1本を逆手に持つと、ランド・マンロディパーチカル目掛けて一気に急降下していった。

「弥生!」

急降下し始めるその瞬間、卯月は操縦桿をめいいっぱい前へ向けた。そしてランド・マンロディパーチカルの元へ急いだ。

「う、ううう…」

弥生の目の前のモニターには剣を逆手に持ち降下してくるバエルが映っていた。

(避けないと…避けないと!)

弥生は必死に頭の中でその言葉を連呼していた。しかし、ランド・マンロディパーチカルは動かなかった。蹴られて今もたれかかっている木にたどり着くまでに脚部を損傷していたのがその理由だった。動くことの出来ないガンプラはただの的である事など弥生はわかっていた。しかし、やはりランド・マンロディパーチカルは動かなかった。

(負けるの?そんな…嫌だよ…そんな)

バエルの剣が目の前に迫ったその時、弥生の視界に映るモニター越しの映像が突然動いた。そして遅れてグシャッ!という音が聞こえてきたのだった。ようやく動きを止めたモニター。そして、その先に映っていたのは――――

「え?う、うづ……き?」

胴体を首元から突き刺された卯月号の姿だった。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。新しいアンケートを今回から出しますので、お答えいただける方はお答えください。


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EP44 怒りの長月

その頃、単独行動を取っていた長月はひたすらに森林地帯を駆けていた。卯月と弥生の2人と離れ、皐月が経てた作戦を信じて長月は森林をかき分け進んでいた。長月は今一度、作戦内容を思い返していた。

「単独行動を取ることで敵の狙いをこちらに向け、その後に2人と合流して敵を叩く」

そう口にした長月はセフティアリベイクフルシティを更に進めたが、いつまでたっても接敵することは無かった。そして、余りにも不自然過ぎる現状に長月はセフティアリベイクフルシティを停止させた。

「妙だな…かなり敵陣深くまで来たつもりだが……」

現在位置を確認しながら呟く長月。その時、セフティアリベイクフルシティの遥か後方の上空で爆発が起こった。そのことに気づいた長月は慌てて振り向いた。

「あれは……」

「長月大変だ!卯月と弥生たちの反応が消えた!」

「何だとっ!まさかあの爆発は!」

「ボクにもわからないよ!……ハッ!?まさか、ジャミング弾!長月、急いで爆発の起こった方へ向かって!もしかしたら、2人が戦ってるかもしれない!」

「わかった!」

長月はセフティアリベイクフルシティを慌てて反転させ、スラスター全開で爆発が起こった場所を目指した。木々を叩き折りながらセフティアリベイクフルシティは走った。

(クソッ!弥生、卯月、間に合ってくれ!)

 

そして、セフティアリベイクフルシティがそこに辿り着いた時、長月の目の前にはガンダムバエルの長剣「バエルソード」に首元から胴体を貫かれた卯月号と中破したランド・マンロディパーチカルの姿があった。

「な、ん、だと…」

その光景に立ち尽くす長月とセフティアリベイクフルシティ。すると、バエルは卯月号からバエルソードを引き抜いた。支えを失った棒の様に、卯月号はその場に倒れ伏した。引き抜いたバエルソードを横に斬り払い、ランド・マンロディパーチカルに向き直ったバエル。

「動けもしない相手を庇って戦闘不能か…フン。マヌケな奴だな」

そしてゆっくりとランド・マンロディパーチカルに向かって歩いていく。

「だが、まあいい。おかげで戦闘の手間が省けた」

「そんな、う、卯月…卯月っ」

弥生が目に涙を浮かべながら卯月の名を呼んだ。しかし、撃破された相手との通信は不可能。卯月からの返事はない。そしてその声は長月の耳にも届いていた。その声を聴いた長月は、体の奥底からとてつもない怒りがこみ上げてくるのを感じていた。そして――――

「貴様ぁぁー!!」

長月はセフティアリベイクフルシティをバエル目掛け突撃させた。手に装備した大型のライフル「200㎜レールライフル」をバエル目掛けて放った。高速で放たれた200㎜弾はしかし、バエルに簡単に回避されその場から離脱されてしまった。しかし、長月はレールライフルを撃ちながらバエルの後を追いかけていった。

「逃げるなぁぁー!!」

「落ち着いて、長月っ!」

皐月の制止も完全に振り払った長月は、卯月を仕留めたバエルをただひたすら追いかけた。宙を舞って逃走するバエルはセフティアリベイクフルシティの放ってくるレールライフルを華麗に回避し続けていた。地上から追いかけるセフティアリベイクフルシティからすれば直撃させるにはかなり難しい物だった。

「ちょこまかと!」

長月は武装スロットからリアスカートにマウントされている大斧を選択し、レールライフルを解除した。セフティアリベイクフルシティの左手が後ろに回り、大斧「セフティアリベイクハルバード」の柄を掴んで抜き、レールライフルはセフティアリベイクハルバードがマウントしてあった場所にマウントされた。長月は武装スロットを更に操作し「SP」を選択した。すると、セフティアリベイクフルシティの頭部が稼働し、ツインアイとV字のアンテナが展開されガンダムタイプの頭部へと変形した。現れたツインアイがギラリと発光する。そして長月はセフティアリベイクフルシティを空高く跳躍させた。

「はあぁぁー!!」

上空を飛ぶバエル目掛け突進するセフティアリベイクフルシティ。それに気づいたバエルは振り返るとバエルソードを構えた。セフティアリベイクフルシティはセフティアリベイクハルバードを最上段から一気に振り下ろした。この攻撃をバエルはバエルソードで受け止めたが、セフティアリベイクフルシティのパワーに圧され地面へと墜ちて行った。そして大きな土煙が舞い上がり、その中ではセフティアリベイクフルシティとバエルが鍔迫り合いを演じていた。セフティアリベイクハルバードの柄をバエルソードの刀身が抑え、激しい火花を散らしていた。

「うおぉぉぉっ!」

長月は更に操縦桿を前に突き出し、セフティアリベイクフルシティを前へと押し出す。

「チッ!」

バエルのファイターは鍔迫り合いでは勝てないと分かると、その場から大きく飛び退いた。鍔迫り合いになっていたセフティアリベイクハルバードは相手であるバエルソードが無くなると、そのままの勢いを乗せ地面に叩き下ろされ大きな砂煙を舞い上げた。バエルはそこから少し離れたところで態勢を整えたが地面に足を付けたその瞬間、砂煙の中から3本のヒートダートが飛び出して来た。バエルは飛来したヒートダートを左手のバエルソードで撃ち落とした。すると次の瞬間砂煙からセフティアリベイクハルバードを片手で持ち、左上段に振り上げたセフティアリベイクフルシティが突進してきた。

「沈めぇぇ!」

「ッ!」

左上段から縦一直線に振り下ろされたセフティアリベイクハルバードを右手のバエルソードで迎え撃ったバエルだったがセフティアリベイクハルバードの勢いに圧され、バエルソードを手から放してしまった。バエルソードを弾き飛ばしたセフティアリベイクハルバードだったが、バエル本体を仕留めることは出来ずバエルは再びそこから飛び退いた。再び砂煙が上がると、バエルはウイングバインダーに内装された電磁砲を砂煙に向かって連続で撃ち込み、そして残ったバエルソードを構え突進していった。

「なにっ!?」

「そこだっ!」

砂煙から出て来たセフティアリベイクフルシティと長月は、突然目の前に現れたバエルに驚きながらもセフティアリベイクハルバードで防御態勢を取った。しかし、手元を狙ったバエルの攻撃は見事に命中、セフティアリベイクフルシティの手からセフティアリベイクハルバードを落とすことに成功した。そして先程落としたもう1本のバエルソードを拾ったバエル。しかし、その一瞬の隙を突いて長月はセフティアリベイクフルシティの態勢を立て直し、機体を反転させバエルに向かって再度突進していった。

「うあぁぁぁー!」

「単純な動き。故に狙いやすい!」

電磁砲をセフティアリベイクフルシティ目掛け発砲するバエル。その弾丸から両腕で上半身を守りながら尚距離を詰めるセフティアリベイクフルシティ。セフティアリベイクフルシティの接近を許したバエルは左手のバエルソードを左上段から振り下ろした。しかし、バエルソードの刀身はセフティアリベイクフルシティの右手にガシリと掴まれた。

「なにっ?」

「ぬあぁぁぁっ!」

そしてそのまま、セフティアリベイクフルシティの右手はバエルソードの刀身を握りつぶした。バキバキ!という音をたてバエルソードは折れていく。

「フン。随分私情に囚われた攻撃だな。さては、さっきの奴は身内か何かか?」

「っ!?黙れっ!!」

そう叫んだ長月はセフティアリベイクフルシティのサブアームを展開した。

「敵を討つ。それもまた良いことだ。だがしかしっ――――」

「うおぉぉぁぁっ!」

長月は操縦桿を何度も前に突き出し、サブアームも使用してバエルを殴りつけた。何度も何度も上半身目掛け殴りつけた。

「砕けっっ!グシオンッッッ!!」

「クッ!」

咄嗟に砕かれたバエルソードから手を放し、セフティアリベイクフルシティにキックを放って距離を取ったバエル。セフティアリベイクフルシティは少しバランスを崩したが砂煙を上げながらすぐに態勢を立て直した。バエルも肩膝をつきながら停止し、右手のバエルソードを右上段に構えた。

「ガンプラバトルでは、マヌケな奴からやられていく!仲間の為なんかに行動する奴から、排除されるのだぁ!」

バエルはスラスターを噴かし、再度斬りかかった。右上段から放たれた袈裟斬りは――――

 

 

バキィィンッ!!

 

 

「――――なっ!?」

セフティアリベイクフルシティが構えていた巨大なハサミ「リベイクシザーシールド」の刀身に直撃し、そして砕け散った。

「良かったな……」

セフティアリベイクフルシティがバエルの眼前でその巨大なハサミを広げ、そして長月は今までの恨み全てを込めて叫んだ。

 

 

 

貴様はマヌケでぇっ!!!

 

 

 

勢い良く突き出されたリベイクシザーシールドはガッチリとバエルの胴体を挟み、地面に叩きつけた。そして長月はセフティアリベイクフルシティの両手でリベイクシザーシールドの縁を、サブアームでグリップをそれぞれ握り、一気にバエルを押し潰していった。バエルのボディがバキバキバキ、と圧壊されていく音を上げながら壊れていく。そして―――

「終わりだぁぁぁ!!」

長月のその言葉と共に、バエルは破壊された。

「Battle Ended!」

損害を出しながらも月華団は全国大会2回戦を突破した。

 

続く



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EP45 責任と黒い面影

バトルが終了すると、長月はすぐにセフティアリベイクフルシティを回収するとその場から立ち去っていった。皐月は、長月を止めようと名前を呼ぼうとしたが彼女のいかにも物悲しそうな背中を見て、口を開くのを止めた。その一方で弥生は、涙を流しながら卯月に抱き着いて謝罪をしていた。

「ごめんっ!ごめんね卯月!私、わたし…また何も、出来なかったっ!」

「ちょ、ちょっと弥生。流石に泣きすぎだぴょん。勝ったんだから、泣いちゃダメぴょん!って聞こえてないぴょん…」

その様子を見ていた観客席の月華団メンバーは弥生が崩れることを何度か見たことがあるが、あそこまで崩れた弥生は見たことがなかった為、驚きを隠せなかった。

「弥生ちゃん。あんなに泣き崩れることあるんだね」

「私も初めて見たわ」

「文月も、初めてかも~」

「しかも相手は卯月だからな。余計に…なのだろう」

「今日の晩ご飯は2人の好きなものにしよう。うん」

「でも、あの状態じゃずっと泣いちゃうかもしれないなぁ。みんな、3人を迎えに行こっか」

瑞鳳の音頭で月華団メンバーは一斉に立ち上がり会場を後にした。

「じゃあ、長月は私が探してきますね」

「ちょ、無茶しないでミカ!」

「いや、三日月。ここは私が行こう。すまないが譲ってくれないか?」

「菊月…わかりました」

そう言って三日月は引き下がった。1階に降りたところで菊月はメンバーと別れ、長月を探しに行った。

 

菊月は会場から外に出ると会場周辺で長月を探した。しばらくして階段でうずくまる長月を見つけた。菊月は長月の隣に座った。すると、隣に座った菊月に気づいた長月は口を開いた。

「菊月…」

「さっきのバトル見ていたよ」

「…また仲間を助けられなかった…フッ、私の腕も落ちたものだな」

「長月姉さん。県予選の時も同じこと言ってたな、それにあの時も今みたいに気落ちしていた」

「……そうだったか」

菊月の言葉に皮肉を込めた返答をする長月。菊月はその皮肉の内容をよく知っていた。故に彼女も淡々と言葉を続けた。

「長月姉さんは、私より腕が立つんだ。卯月姉さんを助けることが出来なかったことは残念だが、それは長月姉さんのせいじゃない」

「いや、あれは私が相手の動きを見極められなかったことが原因だ。全て、私の―――」

「それなら皐月姉さんにも言えたことだ。指揮を執っていたのは皐月姉さんだったからな」

「違う!皐月はしっかり指揮を執っていた!作戦もほとんど完璧――――」

「だが、いくら良い作戦を立てても作戦通り戦闘が進むなんて稀なこと。それくらい長月姉さんも知っているだろう?だとしたら、長月姉さんはあの時最善の行動が取れ――――」

「いい加減にしろ菊月っ!!」

菊月の言葉を聞いた長月は思わず激情して、そのまま菊月を突き飛ばしてその場に仁王立ちした。その目には涙が溜まっていた。菊月は体を起こすと仁王立ちする長月を見上げた。長月が必死に涙をこらえながら叫んだ。

「私の気持ちも知らないでペラペラと!あの場にいなかったお前に何がわかるっていうんだ!弥生と卯月のガンプラをあそこまで損傷させてしまって…何が最善の行動がとれていた。だっ!!」

「………」

すると長月は、菊月の胸ぐらを掴むと更に叫んだ。

「あれだけの損傷を受ければ、2人の機体の修理を担当している望月や如月にも負担がかかる!そうすれば、この先の試合で2人の出番まで奪ってしまったことになるんだぞ!」

「っ――――」

その言葉を聞いた菊月は、今度は長月を突き飛ばした。菊月に突き飛ばされた長月は、その場に倒れ菊月がゆっくりと歩き寄ってくる。

「いい加減にしてくれ長月姉さん…」

「なにっ!」

「さっきのバトルでの責任を感じるのならそれでもいいが、私たちには次の試合があるんだ。ふさぎ込むのは止めてくれ」

「菊月っ!」

長月は体を勢いよく起こすと叫んだ。

「私の知っている長月姉さんは、確かに弱音を吐くこともある責任感のある姉さんだ。でも長月姉さんは、それ以上に強い心の持ち主だった筈だ!」

「!?」

すると菊月は困惑した表情を浮かべる長月の胸ぐらを掴んだ。

「そんなに責任を感じるのなら、今すぐ全員に謝って来い!だが、謝ったのならそれっきりにしろ!いつまでも落ち込んでたら、団の士気に関わるからな」

そう言って菊月は長月から手を離すと踵を返した。そして、一言呟いた。

「強い長月姉さんになってから、戻って来てくれ」

菊月はその場から離れていった。残された長月は何も言わず、菊月が去っていくのを見ていた。

 

ところ変わって会場の近くに存在するカフェに2人の少女がいた。窓際の角の席に座っていたのは秋月と、防空棲姫だった。

「あの、道案内してもらってありがとうございます!」

「………」

先に口を開いたのは秋月だった。しかし、防空棲姫は秋月をジッと見つめるだけで口を開こうとしなかった。しかし、秋月は彼女の無口に動じることなく話しかける。

「お礼にご飯奢りますから何でも注文してください!」

「………」

「うーん。どれにしようかな」

「……おい」

すると、口を開かなかった防空棲姫が口を開いた。突然、防空棲姫が口を開いたことに驚いた秋月。しかし、すぐに気持ちを持ち直し答えた。

「あ、何にするか決まったんですか?」

「お前、何故私に声をかけた。他にも声をかける人間はいた筈だ」

「あ、もしかして本当はご迷惑でしたか?」

「そんなことは無いが、理由を聞かせろ」

淡々と会話が進む2人。声をかけられたことがかなり気になっている防空棲姫は何度も秋月にその質問を投げかけた。

「理由は、確か貴女ってガンプラバトル全国大会に出場している人ですよね?だから、声も掛けやすいかな。って思って」

「お前、何故それを知っている?」

「え?だって、貴女たちのチーム私たちと同じグループでしょ?まさか、気づかなかったんですか?」

「まあな。戦闘の相手のことなど考えたことないからな」

「そ、そうですか………っ!?」

その時秋月が何かに気づいた。一瞬秋月の見せた驚いた表情を防空棲姫は見逃さなかった。

「なんだ?」

「あ、いえ何でもありませ――――て、帰っちゃうんですか!?」

秋月が答えた瞬間に防空棲姫は席から立ち上がり、出口へ向かおうとしていた。秋月の言葉を聞いた防空棲姫は足を止め、顔だけを秋月に向けた。

「別にお礼などいらないからな」

そう一言だけ言った防空棲姫は店を出ていった。残された秋月は去っていった防空棲姫が見えなくなると、両手をテーブルの下でギュッと組むと口を開いた。

「あの動き……もしかして………」

防空棲姫が先程とった行動「右の前髪を右手の中指でクルクルと巻く」この行動が秋月の中の何か(・・)とかなり近い形で一致したのだ。だが秋月は確信に近い何かを感じていたのだった。

 

続く



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EP46 動き出す3人の作戦

翌日のガンプラバトル全国大会3回戦は、暁たちと阿武隈たちのバトルから始まった。渓谷を舞台にしたフィールドでのバトルだったが、阿武隈たちの攻撃はアカツキ・ハイペリオンマスターのAL(アカツキ・リュミエール)ユニットが展開するビームシールドによって殆どが防がれていた。

「また防がれたかー」

「クソッ何で攻撃が通じないのよ!」

特に北上と大井のガンプラ、ヘビーアームズバスターガンダムとガンダムバスターヘビーアームズの攻撃は当たり前の様に通用していなかった。2人は機体を移動させながら

愚痴っていた。

「そんな攻撃じゃ、私のアカツキ・ハイペリオンマスターには傷1つ付かないわ!」

「だからって、私たちにも負けられない理由はあるの!」

アカツキ・ハイペリオンマスターの後方からビルドストライクガンダムノワールがフラガラッハ3ビームブレイドを上段に構えて襲い掛かった。アカツキ・ハイペリオンマスターはALユニットで後方をカバーしながら試製双刀型ビームサーベルでそれを迎え撃った。右上段から放たれたビルドストライクガンダムノワールのフラガラッハ3ビームブレイドと試製双刀型ビームサーベルがぶつかり火花を散らした。しかし、そのすぐ後に暁は機体を横にスライドさせた。するとビルドストライクガンダムノワールはバランスを崩してしまった。すかさずそこに蹴りを放つアカツキ・ハイペリオンマスター。

「きゃあっ!」

「もらった―――て、射程外まで飛ばしちゃった!」

墜ちて行くビルドストライクガンダムノワールに向かってヒャクライ・スティグマトを構えたアカツキ・ハイペリオンマスターだったがあろうことか、ビルドストライクガンダムノワールはヒャクライ・スティグマトの射程外に行ってしまった。しかし――――

「ちょ、阿武隈こっち来ないでよー!」

「前髪女ぁー!」

運が良かったのか、墜落したビルドストライクガンダムノワールは地上を移動するヘビーアームズバスターガンダムとガンダムバスターヘビーアームズの進行方向に墜ち、2機を足止めを成功させた。

「暁、私がまとめて仕留める。あれ(・・)を頼む!」

「任されたわ響!アカツキ・リュミエールトラップモード!」

暁は手元の操縦桿を操作し武装スロットからもう1つの(・・・・・)ALユニットを選択した。すると、アカツキ・ハイペリオンマスターの周囲を飛んでいたALユニットが一斉に阿武隈たちのガンプラに向かって飛んだ。そして、阿武隈たちの周囲に到着すると3機を囲む様に赤いビームバリアを貼った。

「なにこれ?暁の機体のバリアが私たちを囲んだ?」

「いつまで私の上に載ってるのよ、前髪女っ!」

「うわっ!暴れないでよ、降りれないでしょ!」

「響、捕捉完了よ!」

「了解。ツインバスターライフル、チャージ100%」

遥か上空では響のガンダム・ヴェールフェニックスがツインバスターライフルを合体させ照準修正を行っていた。しかし、阿武隈たちも黙ってはおらず内側から攻撃をしていた。

「このバリア、内側からならビームは抜ける筈!」

「あーなるほどねぇ」

ビルドストライクガンダムノワールとヘビーアームズバスターガンダムはビームライフルをバリアに向かって放ったが、しかし――――

「あ、あれ!?ビームが通らない?」

2機の放ったビームはバリアを通り抜けることなく打ち消された。そして、ツインバスターライフルの銃口は阿武隈たちへと向いた。

「ロックオン完了……ウラァー!」

響はツインバスターライフルの引き金を引いた。黄色の巨大なビームが阿武隈たちのガンプラに向かって一直線に飛んでいく。

「バリアに向かってビームを撃つなんて、あの子ってもしかして馬鹿なの?」

「大井っちそれは流石に言い過ぎだよ……ん?」

「さっきと違って、ビームが内側から通らない?あれ…」

(ビームを防ぐバリアに向かってビームを撃つ?)(ビームが内側から通らない?)

その時。北上と阿武隈、2人の中で何かの違和感が思い浮かんだ。そして、それが何なのか気づいた時、2人は―――

「「外側からなら通るんだぁー!!」」

そう叫びながら、大井のガンプラも含む3機纏めてツインバスターライフルのビームに飲み込まれたのだった。

「Battle Ended!」

 

その後、バトルが終了したので阿武隈たちに声を掛けようとした暁と響だったが、阿武隈対北上&大井の全力口喧嘩が始まったため声をかけるのは諦めてその場から退散した。会場からの帰り道、響が口を開いた。

「阿武隈さんたち、チームワークはよかったけど…」

「響…無理して言わなくていいと思うわ?」

「う、うん」

阿武隈たちに気を使おうとした響を暁が制止した。こうなると響は無理に話を進めようとすることを暁はわかっていたからである。暁たちはそのまま宿泊先である選手村へ戻った。選手村に着いた2人はその入り口で、よく知り顔の少女を見つけた。

「雷じゃないか。雷も全国大会に来てたんだね」

「もしかして暁たちの応援に来てくれたの?」

「それもあるけど、電の応援もしなくちゃいけないでしょ!」

少女の正体は雷だった。電たちとの地区予選決勝でのバトルに敗退してしまった雷だったが、他の姉妹全員が参加する全国大会ともなると1人ジッとしていられることなど出来なかったのだ。

「玄関で話すのもなんだし、暁たちの部屋に行きましょ!」

「そうだね。雷、案内するよ」

選手村に入っていった暁と響は雷を部屋に案内した。そして、部屋に着くと3人は中へ入った。しばらくはくだらない会話などをしていた3人だったが、やがて響が切りだした。

「雷、ここに来たのは応援って言ってたけど…本当の目的は別なんだよね?」

「流石、響ね。ってその顔は暁もわかってた感じね」

「まあ、ね……雷も、電の事が気になってここに来たんでしょ?」

「………うん」

暁たちの言葉に、肯定の返事を返す雷。雷本人も、今回の全国大会までに何度か電と顔を合わせていて電の変化に気づいていたのだ。そして、姉妹全員が集まることの出来る場所「ガンプラバトル全国大会」へやって来たのだ。

「それで雷、何か考えはあるのかい?」

「ううん。電、自分の変化について何も言わなかったから…」

「そうね…合宿の時も何も話してくれなかったし」

「あの時は私たちも聞こうとしなかった。当然と言えば当然だよ、暁」

「そ、それはそうだけど!」

響の言葉に暁が少し荒げた声を上げたが、すぐに俯いてしまった。それに釣られて雷も俯いてしまった。部屋の中は静寂に包まれ、3人の誰も口を開こうとしなかった。しかし、表情一つ変えずにいた響が口を開いた。

「でも、私たちに何も出来ない訳じゃない。手はあるよ」

「「本当!」」

響の言葉に暁と雷は同時に声を上げた。そして、響は2人の顔を一弁するとコクリと頷き、そして口を開いた。

「暁、合宿の時、電が黒野深海提督に会ったって言っていたのを覚えているかい?」

「うん、覚えてるけど…でもあれは電の勘違いって、響言ってたじゃない」

「あの時は話を逸らす為にそう言ったんだよ。でも私は、電の言葉は本当の事だと思っているんだ」

「雷はその場にいた訳じゃないからわからないけど、電が嘘をつくなんて今までなかったもんね…雷は電の言葉、信じてもいいと思うわ!」

「そうね…暁たちの大切な妹だもんね。暁も信じる!それで響、どんな作戦なの?」

響は自身の帽子をクイッ、と上げるとガンプラバトルをする時のような真剣な顔になって話始めた。

「まず、電の話から推測すると黒野深海提督は電の事を何か知っている筈だ。だから、深海提督に会えば何かわかると思うんだ」

「でも、深海提督って今は行方不明なんじゃなかった?響、そんな簡単に会えると思ってるの?」

「残念だけど思ってるよ。理由もちゃんとある」

「やっぱり響って何においても抜かりないわね…雷も見習いたいな」

「じゃあ、響の言うその理由って何なの?」

「理由は全国大会初日に私たちの前に現れた2人の女の子だよ。確か、雨葉と白って電が言ってたかな」

暁は少し首をひねって考えると、すぐにハッとした顔になった。響が更に言葉を続ける。

「あの2人。何処かで見たことあると思って、少し調べてみたんだ。そしたらビンゴ(・・・)だったんだよ」

「ビンゴって?」

「あの2人。雨葉と白は、黒野深海提督の娘と妹だったんだよ」

「……ええっ!!」

響の言葉に驚きを隠せない暁。すると響は、ポケットからスマートフォンを取り出すと1本の映像を流した。それは、黒野深海が最初にして最後の公共の場に姿を見せた「終戦の日の演説」の映像だった。その映像に喰らい着くように見入る暁と横からそれを見る雷。そして見つけた。

「ほ、ホントだわ!雨葉と白が映ってる!」

深海の後ろに雨葉と白の姿が映っていたのだ。そして、映像の終盤に深海は自分の家族である彼女たちを紹介したのだ。

「凄いわね響。まさか、こんなに人探しが旨いなんて…」

「まあね…ともかく、この2人を追いかければ…きっと深海提督に辿り着くはずだ」

「よーし!そうと決まったら、早速探すわよ!」

「ちょっと!それ暁が言う台詞なんだけど!」

「暁、雷、喧嘩は駄目だ。この作戦は、電にも感づかれちゃ駄目なんだから」

こうして、3人の作戦は動き出したのだ。

 

続く




1週間投稿を開けてしまって申し訳ありませんでした。今日から再び投稿を再開しますので、よろしくお願いします。

宜しければ、アンケートにも答えていただけると助かります。


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EP47 気持ちの先へ

白い煙に覆われた荒野地帯を風魔スサノオは立っていた。

「うーん。この煙、やっぱり私のハイパージャマーを警戒して電たちが蒔いたんだろうね。どうしようかな…」

今後の行動を考えていた川内。ハイパージャマーを警戒してか、未だに攻撃を受けてない川内はしばらく考えていたが、やがて何かを見つけた。

「ん?あの反応は…」

川内が見たのはレーダーに映る2つの光点を見つけた。そして川内はその光点が相手である電たちのガンプラだと判断すると、風魔スサノオを最高スピードで向かわせた。そしてしばらく風魔スサノオを走らせると、白い煙が突然晴れ、開けた場所にたどり着いた。しかしそこには何もなかった。

「あれっ?反応は確かにこっちで合ってたのに!」

ハイパージャマーを起動したまま周囲を見渡す風魔スサノオと川内。しかしその時だった―――

「見つけたよ!」

その言葉が川内の耳に届いた僅か1秒後、上空から現れたビームに風魔スサノオは撃ち抜かれてしまい、崩れるように両膝をついてその後爆散した。その遥か上空、雲すらも抜けた空の上でイナヅマガンダムⅡのファトゥム-01に乗るガンダムアサルトレインバレットが落ちそうな程にギリギリの態勢でロングバレルビームライフルを構えていた。その後、バックパックを外したイナヅマガンダムⅡと、肩のビームキャノンとバックパックを外したユニコーンガンダムナイトメアパーティーが地面と同じ色の布を持ち上げて現れた。

「Battle Ended!」

観客席から歓声が上がると、プラフスキー粒子が消えバトル台の上にガンプラが現れた。

「やったー!3回戦突破っぽーい!」

「だぁー!!夜戦なら負けなかったのにー!」

「残念だったね川内さん。悪いけど今回は僕たちの作戦勝ちだね」

「なのです!」

頭を抱えて絶叫する川内と、3回戦突破に喚起する電たちだった。

 

「あと2回勝てば決勝っぽーい!」

観客席に戻った電たち。席に着くなり夕立が口を開いていたが、すぐに時雨がその話を切った。

「気を抜いちゃだめだよ夕立。今日、この後の試合に勝った相手が次の準々決勝の相手なんだ」

「今日の組み合わせは…加賀さんたちの百年記高校とリ級さんたちの龍北高校なのです…どっちも強いのです!」

すると会場が一気に歓声に包まれた。バトルの会場に加賀と瑞鶴、翔鶴が入ってきて、それに続いてヲ級、リ級、ル級が入ってきた。

 

バトル台に向かって歩く加賀と翔鶴、その後ろを瑞鶴が歩いていた。すると、瑞鶴が突然口を開いた。

「ねえ、一航戦」

声をかけた相手は加賀だった。加賀は足を止めて振り返ると、なに?と一言だけ返した。瑞鶴は少し言葉に詰まりながらも口を開いた。

「この前は、ごめん」

「え?」

瑞鶴の突然の謝罪に驚く加賀。瑞鶴は更に言葉を続ける。

「あんなこと言って……」

「………」

瑞鶴の言葉を聞いた加賀は口を開かず、瑞鶴の言葉を聞いていた。瑞鶴は俯きながらも、喋るのを止めなかった。

「あんたの事、少し勘違いしてた。だから…悔しいけど、謝るわ」

「………そう」

加賀は一言呟くと、ゆっくりと瑞鶴の方へ歩いていった。瑞鶴は俯いたままで加賀の顔を見ようとしなかった。やがて、加賀は瑞鶴の前まで来ると立ち止まり―――

「こちらこそ、ごめんなさいね」

謝った。突然謝ってきた加賀に、瑞鶴は驚いて顔を上げた。そして瑞鶴の視線の先にはいつもと違う、優しい笑顔の加賀の顔があった。

「私も謝るわ、五こ―――瑞鶴」

「え?」

「本当は貴女が羨ましかった。だから、羨ましがって貴女に強く当たっていた」

「一航戦…」

すると加賀は、瑞鶴の頭をそっとひと撫でした。瑞鶴は加賀の行動に驚きながらも、その手を振り払おうとはしなかった。そして頭から手を離した加賀は口を開いた。

「でも、それも今日で終わり。だから……瑞鶴」

「なによ?」

加賀は優しくも真剣な表情で、口を開いた。

 

 

私の背中、貴女に預けるわ

 

 

「!?」

加賀の言葉に再び驚く瑞鶴。

「任せたわね」

加賀はそう言ってバトル台の方へ歩いていった。瑞鶴はその場に佇んでいたが、やがて翔鶴が瑞鶴に言葉をかけたことで調子を取り戻した。

「良かったわね瑞鶴」

「翔鶴姉ぇ…」

「さあ、行きましょ!私たちで加賀さんの思いに応えましょう!」

「……うん!」

そう言って、翔鶴と瑞鶴は加賀の後を追っていった。

 

バトル台には既にヲ級たちがスタンバっていた。翔鶴と瑞鶴が遅れて台の前に来た時、ヲ級が挑発をかけた。

「ヲ~ヲ~、熱いね~3人とも」

「うるさいわね。あんたは黙ってなさいよ」

「フッフッフ…その自信、後悔させてやるヲー!」

「それはどっちかしらね」

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A.Please set your GP base.」

バトルシステムが起動し、6人がGPベースをセットする。

「Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 Space.」

プラフスキー粒子が放出され、広大な宇宙空間を形成する。

「Please set year Gun-pla.」

6人がそれぞれのガンプラをセットする。システムがガンプラを読み込み、ガンプラのメインカメラが発光し、それぞれが現れた操縦桿を握りしめる。

「Battle Start!」

ガンプラが発進体制になり、各々が発進していく。

「ヲ級。オギュルディアアストレイ、出るよ!」

「リ級。リギリンドペイルライダー、出る!」

「ル級。ルギリスヴァサーゴ、行くぞ!」

「翔鶴、ガンダムAGE-3FX、出撃します!」

そして、残るのは瑞鶴と加賀の2人だけとなった。瑞鶴が発進しようとした時、通信モニターに加賀の姿が映った。加賀は真剣な表情で言った。

「行くわよ、瑞鶴!」

その言葉を聞いた瑞鶴は、ニッと笑みを浮かべて答えた。

「ええ!勝つわよ、一航戦!」

加賀は瑞鶴の言葉を聞くと小さく笑みを浮かべ―――

「加賀。ガンダムAGE-1バウンサー、出撃します」

加賀のガンダムAGE-1バウンサーが宇宙へと出撃していった。そして――――

「瑞鶴。ガンダムAGE-2ホーキンス、出撃よ!」

瑞鶴のガンダムAGE-2ホーキンスも、ガンダムAGE-1バウンサーを追って出撃した。

 

続く



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EP48 目覚め

出撃した百年記高校の3人は、密集して行動していた。いつもなら無断突撃する瑞鶴だったが、今回はメンバーと息を合わせた行動を取っていた。

「まだ攻撃が来ないですね加賀さん」

「ええ。ヲ級の事だからまた無謀突撃してくるかと思ったけど…今回はそうじゃ―――」

その時、加賀たちの前方から黄色いビームが飛んできた。

「っ!散開っ!」

「くっ!」「いきなりなんて!」

加賀の咄嗟の指示により、そのビームの直撃をま逃れた3機。しかし、立て続けに黄色のビームは飛んでくる。狙いは正確で相手の動きを先読みするような攻撃だったが、3人は何とかそれを回避し続けていた。そして回避行動中の瑞鶴が、あることに気づいた。

「しまった!翔鶴姉ぇと離されてる!」

「くっ…はめられたわ」

「一航戦!早く翔鶴姉ぇと合流―――」

「見っつけたヲー!」

だがそこにヲ級が駆るオギュルディアアストレイが戦闘を仕掛けてきた。オギュルディアアストレイはビームライフルを撃ちながら左腕のビームサーベルを展開、AGE-1バウンサーと、AGE-2ホーキンスに襲い掛かった。

「よし!ここはファンネルで――――」

瑞鶴が武装スロットからCファンネルを選択しようとした時、ふと脳裏に今までのバトルの光景が蘇った。戦闘開始と同時にCファンネルを射出、だがファンネルはすぐに全基撃破されてしまった。

(今は駄目だ。こいつ(ヲ級)相手じゃ、また破壊される!)

その事を思い出した瑞鶴は、武装スロットをCファンネルから外しハイパードッズライフルを選択した。

「もらったヲー!」

ヲ級はオギュルディアアストレイの胸部ビームカノンをAGE-2ホーキンス目掛け発射した。

「なんのー!」

黄色いビームがAGE-2ホーキンス目掛け飛んだが、瑞鶴も負けじとハイパードッズライフルの引き金を引いた。オギュルディアアストレイのビームカノンとAGE-2ホーキンスのハイパードッズライフルのビームはバチィッ!と激しい電撃を放ちながら衝突、大きな爆発を起こした。

「くぅ!」

「チッ!」

直撃を回避されたヲ級は小さく舌打ちをした。するとそこに、ドッズライフルを撃ちながら加賀のAGE-1バウンサーが迫った。

「どこを見ているのかしら?」

「ヘンッ!そんな攻撃当たらないヲー!」

しかしヲ級はAGE-1バウンサーの攻撃を全て回避し、ビームサーベルを右上段に構えて斬りかかった。AGE-1バウンサーはシールド先端に装備されたシグルブレイドでそれを受け止めた。バチバチッ、と火花を散らすビームサーベルとシグルブレイド。

「ヲ級が用があるのは赤城だヲ!さっさと赤城を出すを!」

「残念だけど、ガンプラバトルは3人しかバトルに出場できないわ…諦めてちょうだい。それに、赤城さんは忙しいの」

「舐めるなぁー!」

加賀の発言にキレたヲ級は、加賀のAGE-1バウンサーを蹴り飛ばした。

「くっ!」

「ならまずは、お前から沈めてやるヲ!」

オギュルディアアストレイはビームライフルを腰裏にマウントし右腕からもビームサーベルを展開すると、AGE-1バウンサーに対して突撃した。しかし、オギュルディアアストレイの前を3発のビームが通り過ぎ、足を止めた。

「そう簡単にやらせないわ!ヲ級」

AGE-1バウンサーの前に、上昇してきたAGE-2ホーキンスが立ちふさがりハイパードッズライフルを向けた。

「邪魔するなヲー!」

オギュルディアアストレイは再度2機に向かって突撃していった。

 

その頃、翔鶴のAGE-3FXは1機でリ級のリギリンドペイルライダーと、ル級のルギリスヴァサーゴと対峙していた。翔鶴は戦闘開始早々に全てのCファンネルとシールドビットを射出、数の不利を手数で補って戦闘をしていた。

「当たってCファンネル!」

翔鶴は、Cファンネルを操作しリギリンドペイルライダーとルギリスヴァサーゴを全方位から攻撃していた。

「クッ!流石ファンネル使い…やるな!」

「だが、やられっぱなしは性に合わん!全砲門、ファイヤー!」

ルギリスヴァサーゴは両肩と両腕に備えたビームキャノンをAGE-3FX目掛け一斉掃射した。

「!?しまった!」

回避行動が遅れたAGE-3FXは慌てて全てのCファンネルを集め、シールドビットと合わせて大型のシールドを作った。迫る黄色いビームの帯を受け止めたシールド。しかし、ビームの威力は凄まじくシールド隅のCファンネルが爆発してしまった。爆風でAGE-3FXは吹き飛ばされてしまった。

「きゃあ!」

「もらったぞ!翔鶴!」

吹き飛ばされ体勢を崩したAGE-3FXに展開した大剣を左上段に構えたリギリンドペイルライダーが迫った。

「まだ、やられるわけにはいきません!」

体勢を崩しながらもCファンネルを操る翔鶴。リギリンドペイルライダーを集中的に狙った攻撃は、回避され続けていたが足止めには成功していた。そして遂にCファンネルはリギリンドペイルライダーの大剣の刀身を捉えた。

「しまった!」

「よし!」

「リ級!」

リ級の見せた隙をすかさずル級がカバーした。リギリンドペイルライダーの正面へ出たルギリスヴァサーゴが両肩のビームキャノンを放つ。AGE-3FXはそのビームを回避し、シグマシスライフルを連続で撃ち返した。ルギリスヴァサーゴはリギリンドペイルライダーの右腕を掴むとビームを回避するためその場から離脱した。

「逃がしません!」

すかさずCファンネルとシグマシスライフルで追撃するAGE-3FX。その攻撃を回避しながら距離を取ろうとするリギリンドペイルライダーとルギリスヴァサーゴ。

「ル級。もう大丈夫だ!」

「わかった!」

ルギリスヴァサーゴから離れたリギリンドペイルライダーは、腰からビームサーベルを抜き放ちAGE-3FXに再び迫った。それを見た翔鶴もビームサーベルを選択し、リギリンドペイルライダーを迎え撃った。ビームサーベルでの鍔迫り合いを繰り返しながら、リギリンドペイルライダーは左腕のドラゴンハングを撃ち出しAGE-3FXを強襲する。ドラゴンハングを右ローリングで回避したAGE-3FXはシグマシスライフルを撃つが、リギリンドペイルライダーはそれを後退しながらの回避で避け、その後ろからルギリスヴァサーゴがビーム砲を撃ち込む。AGE-3FXがビームを急上昇で回避し、Cファンネルでルギリスヴァサーゴを攻撃した。回避するルギリスヴァサーゴだったがCファンネルの1つが肩部ビーム砲の砲身を捉えた。

「しまった!」

「ル級!」

「よし、追撃よ!」

その攻撃でバランスを崩したルギリスヴァサーゴに翔鶴はCファンネルで更なる追撃を加えた。そして、続けてCファンネルはルギリスヴァサーゴの肩部のもう1つのビーム砲の砲身も斬り落とし、左足も斬り落とした。

「ル級はやらせんぞ!」

すかさずカバーに入るリギリンドペイルライダーはルギリスヴァサーゴの正面で頭部バルカンを撃ち、Cファンネルを牽制する。その牽制を受け翔鶴はCファンネルを自機の周囲に後退させてしまった。

「やりますね!」

「そっちこそな!ル級、機体のダメージはどうだ?」

「ああ。肩のビーム砲と左足のミサイルが使えないだけだ。まだ行ける」

「一度ヲ級と合流するか?」

「いや、まだ少し粘れる。心配するな」

「わかった。援護頼んだぞ!」

そう言ったリ級はリギリンドペイルライダーをAGE-3FXに向け突撃させた。

「これでどうだ!」

リギリンドペイルライダーは再び左腕のドラゴンハングを射出させたが、不意打ちでもないその攻撃を回避できない翔鶴ではなく、再び回避され通り過ぎていくドラゴンハングに向けシグマシスライフルを放った。シグマシスライフルのビームはドラゴンハングの本体を捉え、それを消し去った。

「チッ!」

「惜しかったですね!」

「よそ見をする暇があるのか?」

するとそこに、ルギリスヴァサーゴが残った腕部ビーム砲とバックパックに装備されたレールキャノンを同時に発射した。ビーム砲はAGE-3FXの右足をレールキャノンは肩アーマーを捉えた。

「きゃあ!」

「そこだ!」

バランスを崩したAGE-3FXにリギリンドペイルライダーが残った右腕のドラゴンハングを射出した。凄まじい速度でドラゴンハングがAGE-3FXに迫ったが翔鶴は咄嗟に2基全てのシールドビットをドラゴンハングの進行方向に展開した。

「シールドビット!」

ドラゴンハングはシールドビットを捉えるとシールドビットを圧壊させたが、そのせいで推進力が無くなってしまった。

「なに!?」

「今度は当てます!」

態勢を整えたAGE-3FXはそのドラゴンハングとシールドビット目掛けシグマシスライフルを撃った。狙いは違わず、ドラゴンハングとシールドビットを撃ち抜きそのままリギリンドペイルライダー目掛けて直進した。

「くぅ!」

リギリンドペイルライダーは何とかそのビームを回避したが、完全な回避には失敗しシグマシスライフルが右腕を撃ち抜いた。

「当たった!」

「くそっ、右腕がやられたか!」

「リ級!」

「すまないル級。一旦、ヲ級と合流させてくれ」

「わかった!殿は私が勤めよう」

するとルギリスヴァサーゴとリギリンドペイルライダーはその空域から離脱を始めていった。

「あっ!」

それに気づいた翔鶴は、Cファンネルで2機を追撃しようとしたがファンネルの残基数が残り少ないことに気づくとその考えを破棄し、残ったCファンネルをAGE-3FXに戻し後を追いかけた。

 

一方その頃、加賀のAGE-1バウンサーと瑞鶴のAGE-2ホーキンスはオギュルディアアストレイのXファングの攻撃を回避しながら戦闘を続けていた。Xファングを回避しながらAGE-1バウンサーがシグルブレイドで斬りかかり、それに続いてAGE-2ホーキンスもビームサーベルで攻撃するがオギュルディアアストレイはAGE-1バウンサーの攻撃を少しの上昇で避わして蹴り落とし、AGE-2ホーキンスのビームサーベルも横スライドで回避しAGE-2ホーキンスも蹴り飛ばす。

「なんて動き!」

「くぅぅ!」

「こんなんじゃ飽きちゃうヲー」

ヲ級は加賀と瑞鶴の連携攻撃にも動じることなく、2機の攻撃を次々捌いていく。そしてXファングで2機を追撃し、オギュルディアアストレイは胸部ビームカノンをそれぞれに向かって連射していく。

「くそぉ」

瑞鶴はAGE-2ホーキンスをストライダー形態へ変形させるとその場を離脱した。

「逃がさないヲー!」

ヲ級は離脱するAGE-2ホーキンスをXファングで追撃したが、AGE-2ホーキンスはストライダー形態時に推力が人型形態時の3倍になる為、Xファングは追いつけずにいた。

「ちょこまかとー!」

「そのスピードじゃ、私のAGE-2ホーキンスには追いつけないわ!」

「私を忘れてないかしら?」

そこにAGE-1バウンサーがドッズライフルを撃ちながらオギュルディアアストレイへ接近していった。

「チッ!」

接近したAGE-1バウンサーは再びシグルブレイドで斬りかかった。左からの横一閃をオギュルディアアストレイは右腕のビームサーベルを展開して防ぐが、すぐさま左腕のビームサーベルでAGE-1バウンサーに上段から斬りかかった。しかし、AGE-1バウンサーはオギュルディアアストレイの左腕を自身の右腕で押さえつけた。ギギギギ!と2機の腕が軋み合う。

「やるわねヲ級」

「フンッまだ面白くないヲ!」

「それはどうかしら?」

「どういう意味ヲ!?」

その時、オギュルディアアストレイとAGE-1バウンサーの上空を大きな桃色のビームが通り過ぎ、それに続いて小さな爆発が乱発した。

「なに!?」

「待たせたわ一航戦!ヲ級のファングは全部破壊したわよ!」

そして何処からともなく現れたストライダー形態のAGE-2ホーキンスがオギュルディアアストレイの直前で人型形態に戻るとオギュルディアアストレイを蹴り飛ばした。

「ぐぅぅ!」

「今だ、Cファンネル!」

瑞鶴はオギュルディアアストレイの隙を確信し、Cファンネルを4基全て射出した。両肩のツインドッズキャノンから分離したCファンネルが4方向から同時にオギュルディアアストレイに襲い掛かった。しかし―――

「見え見えヲー!」

蹴り飛ばされていたオギュルディアアストレイは瞬時に態勢を立て直し、迫ったCファンネルを両腕のビームサーベルによる回転斬りで全基撃破してしまった。

「なっ!?」

するとオギュルディアアストレイは180度方向転換するとその場から逃亡していった。

「あっ!待ちなさいよ!」

逃亡するオギュルディアアストレイを追い、AGE-2ホーキンスは移動を開始した。

「瑞鶴っ!」

慌ててAGE-1バウンサーもAGE-2ホーキンスの後を追いかけた。逃走するオギュルディアアストレイに向け、AGE-2ホーキンスはツインドッズキャノンとハイパードッズライフルを撃ち、AGE-1バウンサーもドッズライフルを撃ちながら後を追った。

「あいつ、しつこいヲ……ん?」

AGE-1バウンサーとAGE-2ホーキンスに追走されながらポツリと呟くヲ級。すると、進行方向の先からリギリンドペイルライダーと、ルギリスヴァサーゴが向かってくるのが見えた。

「丁度いいヲ。ついこの間完成したあれ(・・)を使ってみるヲ!発振器オン!」

すると、リギリンドペイルライダーとルギリスヴァサーゴのメインカメラが一瞬発光すると、突然二手に分かれた。

「な、なんだ?」

「機体が勝手に動くだと!?」

その事に瑞鶴たちは気づいておらず、未だに追撃を続けていた。

「くそ!」

オギュルディアアストレイに追いつけないままAGE-1バウンサーとAGE-2ホーキンスは射撃を続けていた。追いつけもせず、攻撃も当たらず、ファンネルすら破壊された瑞鶴は焦っていた。

「落ち着きなさい、瑞鶴!」

「あいつくらいやれるわ!」

そして遂に瑞鶴はAGE-2ホーキンスをストライダー形態に変形させ、オギュルディアアストレイの追撃を本格化させた。先行していくAGE-2ホーキンスを見た加賀は、慌てて瑞鶴を呼び止めた。

「やめなさい瑞鶴!」

そしてようやくオギュルディアアストレイに追いついたAGE-2ホーキンスは変形を解き、ビームサーベルで斬りかかった。オギュルディアアストレイも左腕のビームサーベルを展開し鍔迫り合いとなった。しかし、オギュルディアアストレイはそのまま腕を振り切ると、AGE-2ホーキンス目掛けビームカノンを連射した。

「くぅぅ!」

負けじとツインドッズキャノンで反撃するAGE-2ホーキンス。するとその内の1発が、オギュルディアアストレイの右肩アーマーに直撃した。オギュルディアアストレイは少し体勢を崩してしまった。それを見た瑞鶴は攻撃のチャンスと判断した。

「今だ!」

AGE-2ホーキンスが、ビームカノンを撃ち続けるオギュルディアアストレイに襲い掛かった。

「お前なんかー!」

そして、AGE-2ホーキンスとオギュルディアアストレイの距離があと少しと言うところで、何かが乱入しAGE-2ホーキンスを抑え込んだ。

「な!リ級とル級のガンプラが何でここに!?」

乱入してきたのはリギリンドペイルライダーとルギリスヴァサーゴだった。その2機はAGE-2ホーキンスをガシリと捕まえたまま離さなかった。するとそこに、オギュルディアアストレイが両腕のビームサーベルを展開して襲い掛かってきた。

「赤城とうるさい加賀の前に、まずはお前だー!!」

「うわぁぁー!?」

瑞鶴の叫びがこだまました時、追いついてきたAGE-1バウンサーがドッズライフルを構えて現れた。AGE-1バウンサーはドッズライフルを続け様に2発発射し、AGE-2ホーキンスに組み付いていたリギリンドペイルライダーとルギリスヴァサーゴを撃ち抜いた。

「な、なに!」「な!うわぁぁっ!」

撃ち抜かれた2機は同時に爆発。AGE-1バウンサーは爆発の中からAGE-2ホーキンスを抱えて現れた。

「い、一航戦!?」

「まったく、世話が焼けるのね」

加賀の救助にホッと安堵した瑞鶴。しかし、爆炎の中からオギュルディアアストレイが現れ、2機に迫った。

「っ!?」

そのことに気づいた加賀は、咄嗟にAGE-2ホーキンスを放した。そして、次の瞬間――――

 

 

バチィッ!!

 

 

AGE-1バウンサーは胴体部をビームサーベルで貫かれてしまった。

「―――――え?」

突然目の前で起こった出来事に驚くあまり絶句してしまう瑞鶴。

「加賀さんっ!!」

するとそこにリギリンドペイルライダーとルギリスヴァサーゴを追っていたAGE-3FXがシグマシスライフルを撃ちながら現れた。AGE-3FXの攻撃を回避するために距離を取るオギュルディアアストレイ。

「瑞鶴、早く加賀さんを!」

 

※注意、ここから機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDENのワンシーンをアレンジ付きで再現します。キャラ崩壊等が含まれますのでご注意ください。

 

翔鶴の言葉を聞いた瑞鶴は慌てて、加賀に呼び掛けた。

「一航戦大丈夫なの!?返事しなさいよ!!」

すると、瑞鶴の正面モニターに真っ黒な通信モニターが現れると加賀の弱々しい声が瑞鶴の耳に届いた。

「あまり…大丈夫じゃ…なさそうだわ」

「一航戦!今すぐに―――」

「来ては駄目よ…瑞鶴」

「!?」

加賀の言葉に驚く瑞鶴。そんな瑞鶴をよそに加賀は言葉を続けた。

「この損傷(きず)では…もう、駄目だわ」

「まさか!?早く動きなさいよ!操縦桿を動かして!」

何とか加賀を助けようと言葉を紡ぐ瑞鶴。しかし、加賀は話し続ける。

「聞きなさい…瑞鶴…」

「じゃあ私の機体で引っ張るわ!出来るだけ負荷がかからないように―――」

「聞きなさいっ!瑞鶴っ!!」

「!?」

加賀は突然、大声で瑞鶴に自分の話を聞くように叫んだ。瑞鶴はその言葉に動揺し、遂に口を閉じた。

「……確かに、貴女はどうしようもなく世話の焼ける子よね………」

周囲からいくつものアラートが鳴り響く操縦スペースで加賀は瑞鶴に語り掛けた。

「でも、良いのよ……貴女はそれで……」

加賀の言葉を聞いた瑞鶴は操縦桿をギュッと握りしめ呟いた。

「そんな…私がもっと、上手くやれていたのなら…こんな事には……」

「私にはわかるわ…貴女は凄い子よ。ファンネルが操れなくても、凄いんだって」

そして加賀はモニター越しに映る瑞鶴の顔を見てこう言った。

 

 

 

瑞鶴、スーパーファイターになりなさい

 

 

 

涙を目に溜めた瑞鶴は何も言うことが出来ず、加賀の言葉を聞くことしか出来なかった。

「誰よりも…この私よりも凄い……世界一のファイターにね………」

「加賀さんっ……」

その時、AGE-1バウンサーの傷口から激しいスパークが起こり始めた。

「期待…している…わ……」

「加賀さんっ!!」

瑞鶴は咄嗟にモニター越しの加賀へ手を伸ばしていた。その動きに、AGE-2ホーキンスも連動してAGE-1バウンサーに向け手を伸ばした。しかし、時は既に過ぎてしまった。ひと際激しいスパークを放ったAGE-1バウンサーは、遂に爆発しその姿を爆炎の中へと消してしまった。凄まじい爆風に飛ばされ、AGE-2ホーキンスは遥か後方に飛ばされてしまった。その中で瑞鶴は加賀の名を叫んでいた。

「加賀さぁぁーんっ!!」

そして、瑞鶴とAGE-2ホーキンスは遥か前方で起こるAGE-1バウンサーの爆発を眺めていた。

 

一方、オギュルディアアストレイを追撃していたAGE-3FXだったが、ヲ級は全ての攻撃を避け続けていた。AGE-3FXがシグマシスライフルを放てば瞬時に回避し、ビームサーベルで斬りかかれば、弾き返されてしまう。

「くぅぅ!か、加賀さんっ」

「弱い…弱すぎるヲ!」

翔鶴の攻撃を全て避けたヲ級は、ニヤリとした笑みを浮かべていた。だが、その時だった―――

「あああああぁっ!!!」

1つの叫び声と共に、一筋の閃光がオギュルディアアストレイに迫り右手のビームサーベルで斬りかかった。咄嗟に右腕のビームサーベルを展開し攻撃を防いだオギュルディアアストレイ。そしてその正体は、瑞鶴のAGE-2ホーキンスだった。

「な、なんだこいつ!?」

「許さないっ!お前だけはぁぁー!!」

AGE-2ホーキンスはビームサーベルを握ったままの左手で、オギュルディアアストレイの顔面を殴りつけた。その攻撃で弾き飛ばされたオギュルディアアストレイを更にAGE-2ホーキンスは追撃する。

「はあぁぁぁぁっ!!」

態勢を整えたオギュルディアアストレイは、AGE-2ホーキンスの右上段からの縦斬りを再びビームサーベルで抑えたが、先にビームサーベルを離したAGE-2ホーキンスが放った蹴り落としを受け再び体勢を崩した。

「ぐわぁっ!」

弾き飛ばされた体制のままオギュルディアアストレイは胸部のビームカノンを照射した。しかし、AGE-2ホーキンスはそれを右へのスライドで回避しそのまま薙ぎ払われたビームカノンを避け続けた。ヲ級はビームカノンを連射モードに切り替え次々撃ち出すが、高速で動くAGE-2ホーキンスはその速度を保ったまま次々迫りくるビームを避け続けていた。

「くぅっ!」

ここに来て、ようやくヲ級は焦りを見せ始めた。ビームカノンを撃ち続けてはいたが、やはりAGE-2ホーキンスは機体をスライドさせ、上昇させ、下降させ、そのビームを避け続けている。

「よ、読めない!何故だ!ファンネルすらろくに使えないくせにっ!」

どんどん迫ってくるAGE-2ホーキンスにオギュルディアアストレイは再びビームサーベルで斬りかかった。AGE-2ホーキンスは右手のビームサーベルでそれを受け、スラスターを全開で噴かしオギュルディアアストレイを押し込んだ。

「お前はっ…お前はっ!」

鍔迫り合いの中、ヲ級が叫んだ。

「何なんだぁぁー!!」

そして左腕のビームサーベルを展開すると、それを一気に左上段から振り下ろした。しかし、ビームサーベルを振り切った先にAGE-2ホーキンスの姿は無かった。AGE-2ホーキンスはオギュルディアアストレイのビームサーベルを振り下ろされたその瞬間、オギュルディアアストレイと入れ違ったのだ。オギュルディアアストレイの背後を取ったAGE-2ホーキンスは振り向きざまに右手に握ったビームサーベルを右上段からの袈裟斬りで一気に振り下ろした。

「私は……」

ビームサーベルがオギュルディアアストレイの右腕を切り裂いた。

「私はっ……」

左上段から再びビームサーベルを斬り降ろすAGE-2ホーキンス。ビームサーベルがオギュルディアアストレイの両足を切り裂く。

「スーパーファイター………」

左手のビームサーベルを再び左上段に払い、再度右手のビームサーベルで袈裟斬りを放つAGE-2ホーキンス。そしてそれは、最後に残されたオギュルディアアストレイの左腕を切り裂いた。そして――――

 

 

 

 

瑞鶴だぁぁぁぁー!!!!

 

 

 

 

思いの丈を込め叫ぶ瑞鶴。そして、AGE-2ホーキンスは左手のビームサーベルを大きく斬り払い、右手に握ったビームサーベルをオギュルディアアストレイの首元目掛けて全力で振り下ろした。身動きの取れないオギュルディアアストレイはAGE-2ホーキンスの斬り降ろしを真正面から受け、胴体を真っ二つに切り裂かれてしまった。そして、ビームサーベルを振り切ったAGE-2ホーキンスはオギュルディアアストレイから離れると、真っ二つにされたオギュルディアアストレイに向けツインドッズキャノンを放った。撃ち出された2つのビームは、狙い違わずオギュルディアアストレイに命中した。撃ち抜かれたオギュルディアアストレイは爆発し、その爆炎は次第に大きくなっていった。操縦スペースにいたヲ級は操縦桿を未だに動かし続けていた。

「何故だ!?このヲ級が負ける筈がない!」

そして、オギュルディアアストレイが完全に爆炎に包まれた時、ヲ級は最後の断末魔をあげた。

「負ける筈がぁぁー!!」

オギュルディアアストレイは爆炎の中に消えていき、AGE-2ホーキンスと瑞鶴はその爆炎を見下ろしていた。

 

続く



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EP49 思いと連鎖

「Battle Ended!」

龍北高校の最後のガンプラであるオギュルディアアストレイが撃破され、百年記高校と龍北高校のバトルは終了した。バトルシステムがシャットダウンされ、プラフスキー粒子が消えていきバトル台の上にはAGE-2ホーキンスとAGE-3FX、そして撃破された4機のガンプラの残骸が散らばっていた。特にAGE-1バウンサーとオギュルディアアストレイは見るも無残な姿となっていた。

「はぁ…はぁ…」

先程の戦闘で何度も叫んでいた瑞鶴は荒い息を整えていた。そして瑞鶴が、バトルが終了したことに気づいた瞬間、会場から一斉に歓声と拍手が上がった。

「……え?」

瑞鶴はその歓声と拍手に戸惑いながら会場を見渡した。そして、会場を見渡すうちに加賀の顔が瑞鶴の目に映った。瑞鶴はハッとして加賀の顔を見ながら赤面した。瑞鶴は、今思うとかなり恥ずかしい事を喋っていたことを思い出してしまった。

「あ、あの…い―――加賀、さん」

瑞鶴は加賀から目を逸らしながら言葉に詰まりながらなんとか話そうとしていた。すると加賀はゆっくりと瑞鶴に近づき、そして――――

 

優しく瑞鶴を抱きしめ、頭を撫でた。

 

「!?」

「よく頑張ったわね瑞鶴」

加賀の行動に驚愕して上手く口が動かせない瑞鶴。しかし加賀はそんな瑞鶴をよそに話しかけた。

「やっぱり貴女は凄いわ。もう私から教えることは無さそうね」

「あ、あのっ……」

「これからも…私の背中、預けさせてもらうわ」

「加賀さんっ!すっごい恥ずかしんだけど!」

「ハッ!わ、私としたことが…つい我を忘れてしまったわ。ごめんなさい」

そして我に返った加賀はようやく瑞鶴から離れた。その様子を見ていた翔鶴は目に少し涙を溜めながら微笑んでいた。しかし、そこにヲ級が声を荒げながら歩いてきた。

「ヲーヲー!!いい雰囲気になりやがってー!もう1回勝負しろお前らー!」

「ヲ級っ!?」

「今すぐに再戦だヲ!さっさと準備しろヲッ!」

しかし、ヲ級がそう言い放ったところで後ろからヲ級の手をリ級が掴んで引き戻すとヲ級が振り向いた瞬間、リ級の右手がヲ級の左頬をパチンッ!と言う音と共に直撃した。そしてそのままヲ級は床に座り込んでしまった。ヲ級は左頬を抑えながらリ級を見上げた。

「いい加減にしろヲ級っ!!」

「な、何するんだヲ!」

「今まで何度も目を瞑ってきてやったが、今回ばかりは許さんぞっ!!」

「そうだな。今回ばかりは私もお前を許さないぞ…ヲ級」

「ル級まで…ヲ級が一体何をしたって言うんだヲ!」

その言葉を聞いたリ級は、床に座り込んでいるヲ級の胸ぐらを掴んで持ち上げた。

「お前、どの口がそんなことを喋っているのか。本当に分かっているのか?」

「な、なに!?」

「私たちのガンプラに勝手に細工し、自分の都合で勝手に操縦を奪って仲間である私たちのガンプラを壊しておいて、よくそんなことが言えるなっ!!」

「全てはヲ級が勝つためだヲ!その為に2人のガンプラを利用しただけヲ!それの何処がいけないって――――」

するとその次の瞬間、ヲ級の右頬にリ級の拳がぶつかった。そしてヲ級は吹き飛ばされた。

「好き勝手にペラペラと!私たちがどんな思いであのガンプラを組んだと思っているんだっ!!」

「この大会に参加している全ての人物が、それぞれのガンプラに思いを込めているんだぞ!それを踏みにじるような発言をするなど……お前、それでもガンプラビルダーかっ!!」

「…………!」

ヲ級は2人を睨みつけながら何も言い返すこと出来なかった。やがて、2人が会場を去ろうと歩き出した時、リ級はヲ級に振り返って言い放った。

「私たちが言った事をよく考えてから戻ってこい!これは戦争ではない。ガンプラバトルなんだからな!」

リ級はそのまま歩き去っていった。

「………」

ヲ級はその場に取り残されてしまった。すると加賀が座り込むヲ級に言った。

「初めてガンプラを作っていた時の事を思い出してみなさい」

そして加賀たち3人も会場を後にした。

「ふーん…あの子良いじゃない」

黒いフードは人混みに消えていった。

 

部屋に戻った瑞鶴たちは早速、大破したAGE-1バウンサーの修復を始めた。AGE-1バウンサーは加賀が組み上げた機体ではあったが、瑞鶴は自分の機体を助けてくれた加賀に恩を感じて修復の手伝いを申し出たのだ。そしてそれは翔鶴も同じであり、結局3人でAGE-1バウンサーの修復を開始したのだった。

「それにしても、もう原型留めていませんね。加賀さん」

「ええ…爆散してしまったものね。これは完治に時間が掛かりそうね」

「それか新しいのを作るのもいいと思うわ」

「瑞鶴の言葉も一理あるわね」

加賀は破壊されたAGE-1バウンサーの頭部を指で摘みながら少しだけ動かした。AGE-1バウンサーの頭部はカチャリと音をたてた。その時だった――――

「へー!3人とも仲が良いんですねー!」

部屋のベランダから少女の様な声がした。3人は驚いて一斉にベランダに顔を向けた。そこには黒いフードを被った人物が立っていた。

「あなた、誰なの?」

「名乗るほどの者でもないですよ。それにしても怖い顔ですねー綺麗な顔が台無しですよ?加賀さん」

「ここは選手村ホテルの5階。どうやってここに!?」

「まあちょっとしたテクニックってやつですねぇ……てか、さっきから五月蠅いですよ加賀さんと翔鶴さん。私が用があるのは貴女たちじゃないんですよ」

「「え?」」

フードの人物はそう言うと、人差し指をまっすぐ伸ばした。その先にいたのは――――

「え……」

瑞鶴だった。フードの人物は口元をニヤつかせ、話し始めた。

「そうです瑞鶴さん。貴女の力を貸してほしいんですよ」

「な、なんで私なの!?」

「簡単ですよ。貴女がこの3人の中で1番強いからです。他の2人なんかどうでもいいくらいに、ね!」

「「!?」」

その言葉に驚く加賀と翔鶴。フードの人物は更に言葉を続ける。

「だからほら、こっちに来てください。でないと、2人が酷い目に遭いますよ?」

「っ!」

その言葉を聞いた瑞鶴は肩をビクつかせた。瑞鶴は目だけを動かし、加賀と翔鶴2人の顔を一弁した。そして、瑞鶴はその人物に話しかけた。

「ひとつ教えて…」

「ん?」

「あんたの目的は……いったい何なのよ?」

「んーそうですねぇ……一言で言えば――――」

一瞬だを開けたフードに人物は笑みを浮かべながら言った。

 

 

復讐

 

 

「復讐…ですって?何に?」

「教えるのはひとつだけですよ?瑞鶴さん、ひとつ教えてって言ったじゃないですか」

笑いながら、と言っていいような話し方をするフードの人物。瑞鶴はその人物を警戒したまま頭を回転させ、考えた。そして、瑞鶴の出した結論は―――

「断るわ」

「………何でです?」

「あんたの復讐に手を貸す理由がないからよ」

「………」

瑞鶴の返答に黙り込んだフードの人物。しかしそれはほんの数秒の間だけで、すぐに口を開いた。

「そうですか…なら少し強引なやり方をしないとですね」

フードの人物がそう言い切ると1歩踏み出した。そして、フードの人物が2歩目を踏んだ次の瞬間、突然異常なほどの加速し3人に迫ったのだ。

「「「!?」」」

瑞鶴は突然の事に驚き反応が完全に遅れてしまっていた。しかしその後、瑞鶴を痛みや衝撃、苦痛が襲うことは無かった。その理由はすぐに分かった。

「しょ、翔鶴姉ぇ!?」

瑞鶴の眼前、そこにはフードの人物の真っ白な手で首を握りしめられた翔鶴の姿があった。

「あ、あが…ずい……か…」

「あ、失敗しちゃった。まいったなーこの技、1日に1回が限界なんだよねー」

すると、翔鶴の掴まれている首から紫色のアザが全身へ広がっていきそのアザは次第に真っ白な物へと変わっていった。

「そんな…翔鶴姉ぇ」

変わりゆく姉の姿を見てしまった瑞鶴はその場に座り込んでしまった。

「ズイ……カ…ク……ニゲ…」

翔鶴の言葉も虚しく、瑞鶴は動くことが出来なかった。それは加賀も同じで、仲間の危機であるにも関わらず加賀の身体は動かなかった。

「嘘…まさか……そんな」

そして翔鶴の全身がアザに包まれた時、フードの人物はその手を首から離した。翔鶴は崩れるように倒れた。

「うーん…目標達成じゃないけど、まぁいっか!」

フードの人物は無邪気な声でそう言うと、倒れた翔鶴を肩に担ぎベランダへ向かった。そして、残された瑞鶴に振り返って言った。

「とりあえず、翔鶴さんを貰って行きますね!あっ、もう来ないから安心していいですよ!」

そして翔鶴を抱えたフードの人物はベランダから一瞬で消えたのだった。残された瑞鶴と加賀はフードの人物が消えたベランダを、ただ見つめるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

国立ガンプラバトル競技場のドーム状の屋根の上。そこに1人のフードを被った人物が立っていた。風になびくそのフードの色はしかし、黒ではなく白だった。

「………」

そのフードの人物はただ黙って選手村ホテルの方を眺めていた。そしてひと際強い風が吹き、そのフードを捲った。真っ白なを2つ括りにしたセミロングの髪が風でなびいた時、その人物は口を開いた。

「また……やってしまったんだね」

その人物の声もまた、少女の様な声だった。そしてその人物はゆっくりと右手を正面に向けその手を開いて言った。

 

 

あなたは、必ず私が止めるよ

 

 

 

続く



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EP50 彼女たちの行方

翌日、百年記高校の辞退が試合開始前に告げられた。その報告を聞いた大会参加者たちは皆一斉に衝撃を受けた。その中でも特に、次の試合で当たることになっていた暁学園の3人は他の誰よりも驚いていた。

「どういう事なんだ?あの加賀さんたちが、何で今になっていきなり…」

「加賀さんのガンプラは確かに結構損傷してたっぽい!でも、それだけで優勝を諦めるなんて…夕立には信じられないっぽい!」

「なのです――――っ!!」

ふと電が何かを思いついたように観客席から立ち上がり、走って会場を出ていった。

「い、電!?」

電の突然の行動に驚いた時雨。

「電ちゃん、一体どうしたんだろ?」

夕立も電の行動に気づいて電が人混みに消えた方向を見ていた。

「っ!電を1人にしたら危ない!急いで追いかけるよ夕立!」

「ぽ、ぽいっ!」

合宿の時、電が謎のフードの人物に襲われたことを思い出した時雨は慌てて電の後を追いかけた。夕立もそれに続いて走った。

 

選手村ホテルの玄関前に電は立っていた。電はホテルを見上げたままその場に立っていたが、やがて追いついてきた時雨と夕立に気づいて振り返った。

「電どうしたんだい?ホテルなんかに来て…」

「……嫌な予感がしたのです」

「嫌な予感?」

電の答えに首を傾げる時雨と夕立に向け、電は話し始めた。

「確証はないのですが…今回の加賀さんたちの辞退。もしかしたら、深海提督の言ってた「奴ら」が絡んでいる気がするのです」

「「奴ら」…電に深海細胞を植え付けた人たちの事だよね」

「なのです…だから、それを確かめたくて加賀さんたちにお話を聞きに―――」

「私たちがどうかしたの?」

その時、会話を進めていた3人は後ろから声を掛けられた。そこには荷物を持った加賀と瑞鶴の姿があった。

「か、加賀さん!瑞鶴さん!」

「いいえ。言わなくても大体わかるわ…何で試合を辞退したか?じゃないかしら」

「……うん」

「まあ理由なんて大したことじゃないわ。あんたたちが気にすることじゃないでしょ?」

「ぽ、ぽい…」

加賀と瑞鶴の言葉に完全に抑え込まれ下を向いてしまう時雨と夕立。しかしそんな中でも、電だけは加賀と瑞鶴を見据えていた。そのことに気づいた加賀は一言電に尋ねた。

「どうしたの電?辞退した理由についてはこれ以上何も言わないつもりよ」

「なのです……でも電、1つだけ加賀さんたちに聞いておきたいことがあるのです」

「なによ?」

電はビクビクした表情ではあったが、勇気を振り絞り口を開いた。

「加賀さん、瑞鶴さん……黒いフードを被った人に会いませんでしたか?」

「「っ!?」」

電の言葉に肩をビクつかせた加賀と瑞鶴。その様子を見た電は確信を得てさらに話を進める。

「電。それはどういうことなの?」

「加賀さん、瑞鶴さん。何があったのか話してほしいのです。電たちは、その人物を追いかけているのです!」

「良い冗談ね電。でも、そんな見え見えの嘘信じる気にはなれないわ!」

「い、電は嘘はつかないのです!」

瑞鶴は電の言葉を信じようとはしなかった。電も瑞鶴の言葉に一瞬たじろいだが、諦めずに自分が嘘をついていないことをアピールした。すると加賀が――――

「………わかったわ」

一言、そう言った。

「ちょ!加賀さん、もしこの子たちがあいつの仲間だったらどうするの!」

「もしそうだとするなら、合宿の時にも襲えた筈よ瑞鶴。それに……彼女をよく見て見なさい瑞鶴」

「え?」

瑞鶴は加賀の言葉に反発したが、電の頭髪と顔の肌の3分の2が白くなってその隅には紫色のアザが浮かび上がり、赤くなっていた右目を見ると驚愕の表情を浮かべた。

「これって!」

「ええ。だから、信じてもいいと私は思うわ」

「………わかったわ」

「あ、ありがとうなのです!」

電は、自分を信じてくれた加賀と瑞鶴に感謝を述べると2人を深海のキャンピングカーへ案内した。

 

キャンピングカーに連れてこられた加賀と瑞鶴は、さっそく中で深海と対面し昨日起こった事を話した。深海はその話を聞きながら表情を変えずに握り拳にグッと力を込めていた。そして話を聞き終わった深海は口を開いた。

「……すまない。加賀、瑞鶴」

「な、何で深海提督さんが謝るのよ?」

「…お前たちは近頃頻発している艦娘を狙った誘拐事件を知っているか?」

「ええ、知っているわ」

「ま、まあ翔鶴姉ぇから少しは聞いているわ。それが今回の事と関係が――――あ!」

「そう言うことだ。だから、すまない2人共」

「私からも謝るわ瑞鶴」

そう言うと、深海と加賀は瑞鶴に頭を下げた。その2人の行動を、瑞鶴は黙って見ていたがやがて頭を上げるように言った。

「深海提督さん、加賀さん。頭を上げて…私、怒ってないから」

「瑞鶴……」

頭を上げた加賀は、いつもの表情ではあるが瑞鶴の悲しそうな目を見てやるせない気持ちなった。すると、瑞鶴は深海の方を振り向いて尋ねた。

「深海提督さん、私たちに出来ることってあるの?」

深海は少し口を閉じていたが、やがて真剣な表情を作る口を開いた。

「今の状況で誘拐された奴ら…翔鶴を助けるのは無理だ。だが、何も出来ない訳じゃない」

「どうしたらいいの!私、翔鶴姉ぇを助けられるなら何でもするわ!」

「私にもそれを教えてもらえるかしら?」

「わかった。少し長くなるが、聞いてくれ」

深海は一呼吸置いて話し始めた。

「まずお前たちはこの後、俺の昔居た鎮守府に向かってくれ。奴がまた襲ってくる可能性があるからな。行き方はあとでメモを渡す」

「わかったわ」

「鎮守府に着いたら、奴の襲来に備えつつバトルの腕とビルダーの腕を磨いておいてくれ。奴が何かに復讐しようとしている以上、ガンプラを使った何かがある筈だからな」

「深海提督、1つお願いしてもいいかしら?」

「何だ?」

「私たち、百年記高校の残りの部員、赤城さん、蒼龍と飛龍も連れて行っていいかしら?あの3人も襲われないとは限らないから…」

「わかった。そこはお前たちに任せよう」

「ありがとう」

こうして、彼女たちの行方が決まったのだった。

 

続く




ここまで「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」をご愛読いただき、本当にありがとうございます。ここまで本作を書いてこられたのも、最新話を読み続けていただいている皆様のおかげです!「50話完成」と言う節目をお借りしてお礼申し上げます。

これからも、黒瀬夜明リベイクと「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」をよろしくお願いいたします。


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EP51 閃光走る宇宙

加賀たちが深海と話していた丁度同じ頃、月華団は3回戦の準備をしていた。今回のバトルに出るのは、睦月と文月、そして菊月。瑞鳳の指示で三日月は今回もメンバーから外されていた。

「菊月ちゃん。ランド・マンロディ改の整備は終わった~?」

「ああ。望月にも手伝ってもらってすぐに終わった」

「そっか~じゃあ後は睦月ちゃんだけだね~」

「そうだな…しかし、睦月は何をあんなにそわそわしているんだ?」

菊月の言ったように、今の睦月はいつも異常にそわそわしていて落ち着きがなかった。まるで何かを待っているように見えてはいたが、2人にはそれが何なのかわからなかった。

「まだかなぁ……」

「睦月。少し落ち着いたらどうなんだ?」

「落ち着いてなんかいられないのね!早くしないと3回戦が始まっちゃうにゃしぃ」

「何を待ってるの~睦月ちゃん?」

「新型にゃしぃ!」

「新型?」

「睦月ちゃーん!」

すると、会場の入り口から如月が駆け込んできた。それに気づいた睦月は如月に手を振り返した。

「如月ちゃーん!」

「はぁはぁ…お待たせ睦月ちゃん!頼まれてた新型、持って来たわ」

「ありがとーにゃしぃー如月ちゃーん!!」

そう言って如月に飛びつく睦月。如月は、ウフフッ。と睦月を受け止めニコニコと笑っていた。

「如月。それで睦月の新型と言うのは?」

「おおっ!そうだったにゃしぃ!如月ちゃん、早く見せてよー!」

「あはは!せっかちね睦月ちゃん。はい、これが睦月ちゃんの新しいガンプラ―――」

如月はそう言うと、腰裏のポーチから1機のガンプラを取り出した。

「ガンダムフラウロス・改!」

「うおぉぉぉ!!こ、これは…凄い完成度にゃしぃ!!」

「これは…凄いものだな」

「凄い凄い~さすが如月ちゃんだね~」

「3代目の睦月号は獅電・改がベースになってたけど。前から睦月ちゃん、ガンダムフレームのガンプラ使いたいって言ってたからね。ガンダムフラウロスをベースに何とかついさっき完成したところなの」

「如月ちゃん如月ちゃん!早く新しい睦月号について教えてよ!」

如月から受け取った4代目睦月号を見て目をキラキラと輝かせる睦月。睦月のその顔を見た如月は笑顔で、わかったわ。と言って話し始めた。

「じゃあ、ガンダムフラウロス・改について説明するわね」

「違うよ如月ちゃん!これは睦月号だよ!」

「あ、ごめんね睦月ちゃん。まず、ベース機のガンダムフラウロスの角張った部分を丸くしてあるの。両腕と両脚は特に頑張って曲面性を高めてあるからね。睦月ちゃん、腕とか脚によく被弾するから…」

「流石、如月ちゃん!睦月のことよくわかってるにゃしぃ!」

「それとバランスを悪くしてしまう両肩のキャノン砲はバックパックに駆動パーツを増やして両脇下から撃てるようにしてあるし、場所もバックパックの両端に下を向いて装備してあるからね。ガンダムバエルのウイングユニットも装備して、フラウロスの尻尾に当たる部分の裏にもスラスターを追加して、腕のガントレットも外してあるから高い機動性を生み出せると思うわ。格闘武器はリアアーマーに可動式の鞘を持つ実体剣2本のみだけど」

「バックパックのウイングユニットにガントレットの取り外し……となると、この機体は変形出来ないのか?」

「ううん。勿論できるわ…原形機の四脚形態じゃなくてこのガンダムフラウロス・改は――――」

「睦月号!」

如月が再び機体名をガンダムフラウロス・改と呼んだ時、睦月はそれを睦月号だと再び言った。如月も、睦月の言葉にハッとして改めて説明を続けた。

「睦月号は地上ステージでも飛行できる、飛行形態に変形できるの!」

「飛行形態に変形できるのかにゃしぃ!さっそく次のバトルで使ってみるのね!」

「それと…菊月ちゃん」

「ん?」

菊月に声をかけた如月は、ポーチの中からガンプラとは別の物を取り出し菊月に渡した。それは先端が鋭利な円筒状になっている槍だった。

「ん?私はこんな武器を注文はしていないが?」

「ごめんなさい。睦月号にそれを装備させると機体がアンバランスになっちゃうから…元々左右非対称のガンプラを使ってる菊月ちゃんに持ってもらおうと思って…」

「なるほど。この武器はそう言う代物か……ならばこの菊月、喜んで引き受けよう」

「ありがとうね!はいこれ、マウント用のパーツよ」

「礼を言うぞ、如月」

その時、月光華高等学校の名前が呼ばれると睦月は受け取った4代目睦月号を慌てて腰裏のポーチにしまい、如月の手を握った。

「じゃあ、行ってくるね如月ちゃん!」

「うん。気をつけてね睦月ちゃん!」

「よーし!文月ちゃん、菊月ちゃん、いっくよー!」

「は~い!」「わかった」

睦月たち3人は会場へと向かった。

 

「今回の相手は、1、2回戦を圧倒的な物量で押し切ったそうだ。気をつけることに越したことは無いぞ」

バトルの始まる直前、菊月が睦月と文月の2人に声をかけ注意を促した。

「圧倒的物量にゃ?」

「それってどんなの~?」

「詳しくはわからんが…どのガンプラも一撃だった。と聞いたな」

「Gun-pla Battel stand up! Model damege level set to A.」

すると、バトルシステムが立ち上がりダメージレベルが通達される。

「とにかく2人共、気をつけてバトルするにゃしぃ!」

「わかったよ~」「ああ」

「Please set yuar GP base.Begining Plavsky particle dispersal. Field 01 space.」

プラフスキー粒子が放出され、広大な宇宙空間が生成された。

「Please set year Gun-pla.」

そしてバトルに参加する6人がそれぞれのガンプラを台座に設置する。システムがガンプラを読み込み、メインカメラが発光する。

「Battle Start!」

それぞれのガンプラが発進体制に入り、カタパルトが形成される。

「睦月!4代目睦月号、いざ参りますよー!」

「文月。文月・スペシャルマンロディ、出撃ですぅ!」

「菊月。ランドマンロディ・改、出る!」

睦月は、発進して早々に睦月号の変形を試した。すると、バックパックの先端部が頭部を覆い、その横に左右に突き出した肩アーマーが据えるように合わさり、両腕と下半身が180度回転、足先も折り畳まれた。そして、ウイングユニットの下に存在するマシンガンをセットするマウントラッチとキャノン砲が前方を向いて、バックパック背面とウイングユニットのスラスターが一気に噴射された。

「おお~飛行形態に変形したよ~」

「凄い加速力にゃ!やっぱり如月ちゃんは凄いのね!」

「追随するのがやっとだな…しかし、機動性低下とバランスを考えれば…確かにコレ(・・)は僚機に持たせた方がいいな」

変形した睦月号に何とか追随する文月・スペシャルマンロディと、ランドマンロディ・改。すると、進行方向から2機のガンプラ「ガンダムキマリスヴィダール」と「レギンレイズ・ジュリア」が現れた。

「2人共敵が来たよー」

「行くよ~!攻撃開始~」

睦月号は変形したままキマリスヴィダールに対してマシンガンを撃ちながら攻撃し、文月・スペシャルマンロディは装備している射撃武器全てをレギンレイズ・ジュリアに向かって放った。

「……妙だな。2機だけとは?」

菊月は襲ってきたガンプラの数が2機だけであることに違和感を感じていた。しかし戦闘は始まっており、菊月も文月を援護するため左肩にマウントされた大型実体剣である「デモリッションバスタードソード」を右腕の大型サブアームで抜き放ちレギンレイズ・ジュリアに迫った。

「よーし!変形解除にゃしぃ!」

変形を解除した睦月号は両手にマシンガンを持ち、それをキマリスヴィダールに向けて放った。キマリスヴィダールもドリルランスに装備された射撃武器で応戦した。そこからしばらく両者の間では射撃戦が繰り広げられたが、キマリスヴィダールは何故か接近戦を挑んでこなかった。

「どうしたのかなー!睦月の4代目睦月号に恐れおののいたかにゃー!」

マシンガンをマウントし、2本の剣を抜き放ちキマリスヴィダールに迫る睦月号。睦月号はキマリスヴィダールに右上段から袈裟斬りを放った。キマリスヴィダールはそれを回避し更に距離を取るように後退していく。

「むむむ!逃がさないのね!」

睦月号はキマリスヴィダールを追って追撃を開始した。

一方その頃、文月・スペシャルマンロディとランドマンロディ・改は2機でレギンレイズ・ジュリアと戦闘をしていた。

「直撃させるよ~」

文月・スペシャルマンロディが両手のサブマシンガンと両肩の可動式機関砲、腰横の迫撃砲を斉射しそれに続いてランドマンロディ・改がデモリッションバスタードソードを大きく左に大きく振りかぶって斬りかかった。

「これでっ」

振り払われデモリッションバスタードソードを急上昇で回避するレギンレイズ・ジュリア。そして、肩部の機関砲を撃ちながら後退していった。

「あ~また逃げたー!」

「………」

後退して行くレギンレイズ・ジュリアを追って文月・スペシャルマンロディが先行してき、ランドマンロディ・改もそれに続いて追いかけていった。しかし、菊月は度重なるレギンレイズ・ジュリアの行動を見て不信感を抱いていた。菊月は頭の中で志向を巡らせ考えていた。

(何だ?奴らの動き、何か妙だな。まるで私たちを誘っている様に見える)

レギンレイズ・ジュリアを追いかけていると、キマリスヴィダールを追いかけていた睦月と合流してしまった文月と菊月。

「あれ!2人も相手を追いかけていたのかにゃ!?」

「うん!すぐ逃げるから追いかけてるの~」

「ああ。しかし、まさか逃げてる相手を追っていると合流してしまうとは……ん?」

その時、菊月の頭の中で何かが引っかかった。

(逃げているのなら、私たちに合流されることを相手は望まない筈…なら何故わざわざ私たちを合流させた?)

レギンレイズ・ジュリアとキマリスヴィダールを追いかけながら更に思考を巡らせる菊月。そして、5機のガンプラがフィールド端付近までたどり着いた時、菊月が突然叫んだ。

「睦月っ!文月っ!今すぐ回避行動を取れっ!!」

「「え――――」」

その次の瞬間だった。

 

 

 

ガキィィィィィィィン!!!!

 

 

 

一筋の閃光が宇宙を駆け、その閃光は睦月号と、文月・スペシャルマンロディを貫いた。

「ぎにゃあぁぁぁぁ!!!」

アシムレイトを使用している睦月は、睦月号が被弾した左腕を抑え込み絶叫した。アシムレイトのノーシーボ効果でガンプラが受けたダメージがファイターである睦月を襲ったのだ。

「わあああー!!!」

文月もまた、機体である文月・スペシャルマンロディが吹き飛ばされたことで目の前のモニターがグルグルと回転した為悲鳴を上げた。

「睦月っ!文月っ!」

何とかその閃光を回避した菊月は、慌てて2人のガンプラを追いかけた。

「なんだ!あれほどの威力と初速、一体何が――――」

そして、その時後方を振り向くと、そこにあった物に菊月は驚愕した。

「なっ!!あれは―――」

 

 

ダインスレイブだとっ!!!

 

 

そこには両肩にダインスレイブをそれぞれ3基ずつ連結して装備したグレイズがそこにはいた。菊月は急いで睦月と文月の機体を回収してその場から離脱した。

 

続く



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EP52 宇宙に走る閃光

ダインスレイブの直撃を受けた睦月号と文月・スペシャルマンロディを岩陰に退避させることにしたランドマンロディ・改。菊月はモニター越しに2機の被害状況を観察した。ダインスレイブを左腕に直撃された睦月号は、左腕とその後ろのバックパックを根元から持っていかれて胴体左側には幾つものひびが入っていた。

「ううう……い、痛いのね…」

「睦月、大丈夫か?」

「だ、大丈夫じゃないにゃ……」

(かなりひどい損傷だ。これ以上の戦闘継続は、難しいかもしれん)

すると菊月は、今度は文月・スペシャルマンロディを観察した。どうやら胴体の右下部を掠っただけの様だが、それでもその衝撃で右足を関節から破壊されていた。

「文月、動けそうか?」

「う~ん。動くだけならいけるかも~」

「わかった」

(睦月号程ではないが、こちらもかなりひどいな)

2機の損傷を見た菊月は現状がどれだけ不味いかと言うことをハッキリと理解した。現状、まともに動けるのは自身のランドマンロディ・改のみ。文月の文月・スペシャルマンロディも動くことは出来るだろうが、100%の性能を出すことは不可能。ましてや睦月号と睦月を行動させるなど論外に等しい。菊月は必死に頭を回転させ、思考を巡らせた。

(クッ…どうすればいい?何かいい手はないか!)

更に考える菊月。しかし、その時だった。菊月たち3人の操縦スペースに接近警報が鳴り響いた。

「あわわ!もう近くまで来られちゃったよ~!」

「ううう…まだ痛むのね。どうしよう…」

「………」

睦月と文月が慌てる中、菊月は遂にあることを思いついた。そして、睦月に問いかけた。

「睦月。キャノン砲の残弾はあと幾つだ?」

「え?あと2発だけど…」

「わかった。睦月、文月、私が囮になる。文月は睦月の護衛を頼む」

「ちょっと菊月ちゃん!相手にはダインスレイブがあるんだよ!1人で出ていくなんて危ないよ!」

「悪いが議論している暇はない。睦月、私が奴らの隙を作る、その隙に狙撃してくれ。文月、これを渡しておく」

すると、菊月はダインスレイブ用の弾頭である槍を文月に渡した。そして、機体を180度回転させると、一言呟いた。

「1発でも外せばお終いだ。睦月、頼んだぞ」

そしてランドマンロディ・改は岩の影から飛び出して、単機でキマリスヴィダールとレギンレイズ・ジュリアと交戦を始めた。キマリスヴィダールとレギンレイズ・ジュリアの2機は飛び出してきたランドマンロディ・改に驚きながらも攻撃を開始した。

「私が相手だ!来るなら何処からでも来いっ!」

ランドマンロディ・改はマシンガンを放ちながらデモリッションバスタードソードを抜き放ちキマリスヴィダールに迫った。キマリスヴィダールはドリルランスを構え突撃した。ドリルランスを使った突貫攻撃だと、菊月はすぐに把握できた。

(やはりもう釣りのぶせはしてこないか…それならありがたい!)

ランドマンロディ・改の上空からはレギンレイズ・ジュリアが機関砲を撃ってきてはいたが、菊月はそれを回避しつつ少しずつ後退していった。そして、キマリスヴィダールのドリルランスが目前に迫った時だった。

「あまい!」

菊月はドリルランスの直撃寸前でランドマンロディ・改を左スライドさせた。そして、その瞬間右腕のサブアームが握ったデモリッションバスタードソードを振り下ろした。デモリッションバスタードソードはキマリスヴィダールのドリルランスを捉えそれを弾き飛ばした。そして、バランスを崩してしまったキマリスヴィダールにランドマンロディ・改は追撃としてキマリスヴィダールを蹴り飛ばした。弾き飛ばされたきキマリスヴィダールは何とか態勢を整え、太刀を引き抜いた。しかし、その時だった――――

「睦月、今だ!!」

「作品は違うけど、狙い撃っちゃうのね!!」

キマリスヴィダールの後方から1つの閃光が飛来。キマリスヴィダールの胴体部を貫き、機体を爆散させた。そして僚機が一撃で破壊されたことに気づいたレギンレイズ・ジュリアは閃光が走ってきた方向に目を向けると、そこには文月・スペシャルマンロディに護られながらキャノン砲を構えた睦月号がいたのだった。

「助かったぞ睦月」

「へヘン!睦月に任せるにゃしぃ!」

「あわわわ!敵がこっちに気づいちゃったよー!」

狙撃をしてきた睦月号を見つけたレギンレイズ・ジュリアは超加速で睦月号に迫った。

「っ!待てっ!」

レギンレイズ・ジュリアを追いかけるランドマンロディ・改だったが、加速力が違い過ぎて完全に置いていかれてしまっていた。

「くそ、早い!ならば!」

すると、ランドマンロディ・改はデモリッションバスタードソードを頬り投げた。激しく回転しながら飛ぶデモリッションバスタードソード。しかしレギンレイズ・ジュリアは後方から飛んでくるデモリッションバスタードソードに気づいていなかった。だが……

「くそ!あれでは当たらない!」

ランドマンロディ・改が投げたデモリッションバスタードソードは僅かに右にずれていた。

(あ、あれじゃあ大きな剣が当たらないな~よーし!)

そのことに気づいた文月は文月・スペシャルマンロディを岩陰から飛び出させ、レギンレイズ・ジュリアに向け機体の全ての射撃武器を放った。すると、レギンレイズ・ジュリアは僅かに右に移動した。そして――――

 

ガキーン!

 

デモリッションバスタードソードがレギンレイズ・ジュリアに直撃、レギンレイズ・ジュリアはバランスを大きく崩されてしまい、そのまま岩に叩きつけられてしまった。

「睦月ちゃん!」

「まっかせるにゃしぃ!」

そして身動きの取れないレギンレイズ・ジュリアの正面に降り立った睦月号は、キャノン砲をレギンレイズ・ジュリアに撃ち込んだ。胴体中央に風穴を開けられたレギンレイズ・ジュリアは、そのまま機能を停止した。

「やったのね!これで残すはあと1機!」

「だが、油断するな。相手はダインスレイブを装備している」

「大丈夫だよ!文月ちゃん、その槍装填してほしいのね!」

「う、うん。でも睦月ちゃん、突撃すると危ないよ?」

「平気平気!」

そう言った睦月は、中破した睦月号を前進させていった。睦月号のキャノンには、試合前に如月に渡された槍が装填されていた。

「睦月、待てっ!」

慌てて睦月を追いかける菊月と文月。そして、突出した睦月号を追いかけている間、菊月は睦月を必死に止めようとした。

「前に出過ぎだ睦月!」

「問題ないのね!さっきのお返し、しっかり返して―――――」

「っ!睦月ちゃん危ない!」

 

 

 

 

ガキィィィィィィィン!!!!

 

 

 

 

睦月号を再びダインスレイブの閃光が襲ったのだ。

「ああああああああ!!!」

睦月号の左足にダインスレイブは命中し、左足を根元から吹き飛ばされ睦月号も再び弾き飛ばされてしまった。睦月も、アシムレイトのノーシーボ効果で左足に激痛が走り必死に押さえつけていた。

「うっ…うあ、あああ……」

「「睦月っ!」ちゃんっ!」

弾き飛ばされた睦月号を何とか止めたランドマンロディ・改と、文月・スペシャルマンロディ。睦月号はもはや戦闘が出来るような状態ではなかった。しかし――――

「うっ、うう……まだ……まだ終われないのね………」

ガガガ、という音をたて尚も動こうとする睦月号。やがて、睦月は痛みを堪えながら操縦桿を前へ伸ばした。それに連動し睦月号は残ったスラスターを全て噴して、突撃していった。

「睦月っ!」

菊月は、睦月を止めようとしたが叶わず睦月号は残りの2機を置いていくようにどんどん遠ざかっていく。

「まだ…睦月は、終われないっ……諦めない……あいつに一泡吹かせる…まではっ!」

宇宙に走る閃光の様に、睦月号は相手チームの最後の1機であるグレイズの元へ向かった。睦月は自身の痛む体を歯を食いしばって耐え、睦月号は全速力で前へ進んでいく。しかし――――

「あ――――」

睦月のかすみかけたその目に映ったのは、グレイズが放ってきた無数のミサイルだった。ミサイルの直撃を次々受ける睦月号。

「うっ!うわっ!ううっ!」

ミサイルが直撃する度に睦月の体にも激痛が走る。しかし、それでも前を見据えて進み続けようとする睦月と睦月号だったが、遂にミサイルの内の1発が胴体中央に命中した。激しい爆発に包まれていく睦月号。そして睦月は叫んだ。

 

 

 

 

 

ちっくしょぉぉぉぉぉおおおおおー!!!!!

 

 

 

 

 

その瞬間、睦月は気を失い睦月号は大破した。

 

「そ、そんな……む、睦月ちゃん……」

「………」

大破した睦月号をただただ茫然と見つめる文月と菊月。文月は涙を溜め、菊月はグッと歯を食いしばっていた。そして、ギリっと歯ぎしりをした菊月はランドマンロディ・改を先行させていった。

「菊月ちゃん!」

「………」

菊月を止めようと手を伸ばす文月。やがてミサイルの射程圏内に入ったランドマンロディ・改だったが、その全てを回避し尚もグレイズに接近していく。そして、グレイズの元に辿り着いたランドマンロディ・改はグレイズに組み付き、身動きを封じた。それを見た文月は菊月に問いかけた。

「菊月ちゃん何してるのっ?」

「……文月」

少しの沈黙の後、菊月は文月に言った。

 

 

 

そのダインスレイブで、私の機体ごとこいつを撃ち抜け

 

 

 

「き、菊月ちゃん?」

「早くしろ文月!」

「駄目だよ!それじゃあ、菊月ちゃんのガンプラが!」

「壊れても直す!私に構わず、撃てっ!」

「………」

すると文月・スペシャルマンロディは大破した睦月号の元へ向かった。そして、睦月号に辿り着いた文月は、大破しても残っていた睦月号のキャノン砲と弾である槍を、ランドマンロディ・改とグレイズに向けた。

「急げ文月!」

「で、でも!」

「睦月の残したチャンスを無駄にする気か!」

「っ!?」

菊月の言葉にドキッとした文月。そして、必死に思考を巡らせた文月は――――

「ううう……うわぁぁー!」

 

 

ガキィィィィン!!!

 

 

発射された槍は、ランドマンロディ・改とグレイズを貫いた。

 

続く



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EP53 確信の涙

バトルが終了した時、観客席に座っていた月華団のメンバー全員は慌しく1階の会場へ走っていった。その中でも特に、如月は誰よりも焦っている表情だった。

「睦月ちゃんっ!」

後を追うメンバーを置いていくように如月は走った。

 

会場に着いた如月は、足を止めることなく睦月の元へ向かった。そして、如月の目に映ったのは―――

「睦月ちゃんっ!!」

バトル台にもたれかかった睦月の姿だった。

「如月?」

「如月ちゃん、早く早く!」

如月は睦月の元に駆け寄り、その体を抱えた。

「睦月ちゃんっ!睦月ちゃんっ!返事してよ!」

必死に睦月に呼び掛ける如月。しかし、意識を失った睦月からの返事は無くその腕はだらりと床に落ちた。

「お願いだよ睦月ちゃん!如月を1人にしないでよっ!睦月ちゃぁん!!」

如月は遂に泣き崩れてしまった。如月の泣き声が会場にこだまし始めた時、後を追いかけてきた残りの月華団メンバーがようやく現れた。意識を失った睦月と泣き崩れる如月を見た瑞鳳は声を荒げて言った。

「急いで2人を部屋に連れていって!!」

「は、はい!」

その場にいた月華団メンバーは2人を抱えて会場を後にした。運び出されていくメンバーを三日月と長月、そして瑞鳳は眺めていた。

「あの被害を見るに…次の準々決勝、出られるのは私とお前だけだな。三日月」

「はい。それに……」

「準々決勝の相手は暁ちゃんと響ちゃん…」

「そうですね。瑞鳳、次はどうすればいいですか?」

「部屋に戻って考えよう。出来ることは何でもやっておかないと……」

3人は会場を後にした。

 

翌日、会場ではレ級たちの3回戦が行われていたが、そのバトルもまた開始1分で決着がついていた。

「はわわ!また1分で決着なのです!」

「夕立たち、本当に勝てるのかな…」

「僕も正直、自身が無くなってきたよ」

3試合全てを開始1分で終了させていくレ級たちに、スタジアム全体が恐怖していた。そして、その隣では秋月たちが相手チームの最後の1機を相手取っていた。

「そこです!」

ウイングガンダムゼロアランはツインバスターライフルを放ち、大気圏内用バックパックを装備したGセルフを追い詰めていたが、Gセルフは見事な回避術を見せ秋月たちの攻撃を避け続けていた。

「もらったぞ!」

Gセルフの上空からガンダムダブルオーエクシアがGNソードで斬りかかったが、その攻撃もバックスライドで回避されてしまう。

「くそっ!」

斬り降ろしたGNソードを今度は横一線に斬り払ったダブルオーエクシアだったが、これも急上昇で回避されてしまう。

「この照準なら!」

そこにガンダムデュナメス・ハイスナイプがGNスナイパーライフルで狙撃を試みた。そしてようやく、GNスナイパーライフルのビームがGセルフの左腕に命中した。

「今です秋月姉さん!」

「了解!」

ゼロアランは再びツインバスターライフルを最大出力で放った。体勢を崩していたGセルフはそのままツインバスターライフルのビームに飲み込まれた。

「Battle Ended!」

最後の1機を撃破した秋月たちは3回戦を見事に突破した。

「やったな秋月姉ぇ。3回戦突破だな」

「これであと2回勝てば決勝ですね。秋月姉さん!」

「う、うん。そうだね…」

しかし、秋月は何処となく元気がなさそうだった。そのことに気づいた初月が、不思議そうな表情で尋ねた。

「どうしたんだ秋月姉ぇ?嬉しくないのか?」

「ううん。嬉しいよ!嬉しいんだけど……」

「「?」」

「ご、ごめんね!ちょっと私、用事があるから先に行くね!」

そう言って秋月は、走って会場を出ていった。残された涼月と初月は首を傾げていた。

「どうしたのでしょう秋月姉さん?」

「わからない……次の準々決勝までに元に戻っていてくれればいいんだが……」

 

会場のエントランス。そこで秋月は何かを探すように走っていた。そしてしばらく走ったところで秋月は探していた者を見つけた。

「あ!防空棲姫さーん!」

秋月が探していた人物、防空棲姫が秋月の前を歩いていたのだ。急いで防空棲姫に声をかけ駆け寄る秋月。防空棲姫も、自分の名前を呼ばれたことに気づき振り返った。しかし彼女は、秋月の姿を見つけたが表情は変わらなかった。

「防空棲姫さん!会場から出ていくの早すぎですよ!」

「またお前か…今度は何の用だ?」

「これ、大した物じゃないんですけどこの前のお礼です!」

そう言うと秋月は、肩から掛けていたカバンの中から1つの袋を取り出してそれを防空棲姫に渡した。

「………何だこれは?」

「私が作ったいちご大福です!良かったら食べてください!」

「………」

防空棲姫は袋から取り出した包み紙に包まれたいちご大福を取り出してジッと見つめた。そしてしばらくして、ゆっくりと包み紙を開けいちご大福をひと口かじった。

「ど、どうですか?お口に合うといいんですけど……」

「………美味い」

「!!」

その言葉を聞いた秋月はとても嬉しそうな表情になった。

「良かったー!頑張って作った甲斐がありました!」

「これ程に美味い物を食べてしまうと、他の物は食べれなくなってしまいそうだ……」

「!?」

その防空棲姫の言葉を聞いた秋月は肩をビクつかせた。しかし防空棲姫は、いちご大福を食べていてその秋月の行動に気づいていなかった。

「………だが、次の準々決勝。手加減するとは思うな」

「は、はい!それはこちらもです!」

「用件が済んだなら、私は行くぞ?」

「あ、はい!ごめんなさい。引き留めてしまって!」

そう言って防空棲姫は去っていった。その場に残された秋月は、防空棲姫が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。その時、秋月の脳裏にある光景が蘇りある言葉(・・・・)が何度も繰り返されていた。

 

 

 

 

秋月姉ぇのいちご大福食べると、他の物が食べれなくなっちゃうなー!

 

 

 

 

「そうだったんだね……ようやく………ようやく見つけた――――」

秋月はその目に涙を浮かべながら防空棲姫が歩いていったを見つめ、言った。

 

 

 

 

 

 

照月………

 

 

 

 

 

 

秋月は涙を流しながら、いつまでもその場に立ち尽くしていた。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。

今日まで皆さんが読み続けていただいたおかげ様で、本作のUAが1万件を超えました!

人気が高い作品に比べたらまだまだ少ない件数かもしれませんが、この小説の作者としてとても嬉しいです!これからも、より良い作品を作ることが出来るよう頑張りますので、よろしければ温かい目で応援していただけると嬉しいです!
これから先も、黒瀬夜明リベイクと、本作「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を、どうぞよろしくお願いいたします!


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EP54 2つの月

秋月たちの準々決勝進出が決まった日からさらに日が進み、電たちの不戦勝もあって大会の予定が少しだけ繰り上がった準々決勝2日目。会場の中央には、今までのバトルで使われていた台の何倍も大きなシステム台が設置されていた。そしてその台を挟む様に秋月、涼月、初月、レ級、駆逐棲姫、防空棲姫の6人は立っていた。

「いいか?今回も1分で終わらせるぞ」

「「はい。レ級様」」

レ級たちは今回もバトル開始1分でこの試合を終わらせるつもりで、既に臨戦態勢であった。そして一方、秋月たちは……

「いよいよ、奴らとのバトルか…」

「勝てるかどうかわからないですが、私も全力で挑みます」

「ああ。照月姉ぇを見つけるためだ…僕も全力で行く。そうだろう秋月姉ぇ?」

「………」

初月に声を掛けられた秋月だったが、当の本人は無言であった。

「どうしたんだ秋月姉ぇ?」

「え!?な、なに初月?」

「しっかりしてくれ。これからバトルなんだからな」

「まだ、本調子じゃないんですか?秋月姉さん」

妹2人の言葉を聞いて何とか我を取り戻した秋月。そして、秋月は口を開いた。

「ううん。私は大丈夫……初月、涼月、お願いがあるんだけど…聞いてくれる?」

「なんだ?」「何ですか秋月姉さん?」

聞き返してくる妹の目をしっかりと見据えた秋月は、決心を固め話し始めた。

「レ級さんと、駆逐棲姫さんの足止めをお願いできないかな?」

「「………え?」」

「2人共、よく聞いて……」

動揺する涼月と初月をよそに、秋月は話を続けた。

「照月を…見つけたの私」

「…な、なんだって秋月姉ぇ」

「照月姉さんを…見つけた?」

「うん。照月を見つけた。そして、今から私たちは照月と戦うことになる」

「ちょ、ちょっと待ってくれ秋月姉ぇ!いきなり何を言っているんだ!理解が追いつかないぞ!」

「そ、そうですよ!1からちゃんと説明してください!」

「ごめんなさい。ちゃんと説明している暇はない……けど、これだけは言えるわ」

秋月は一呼吸置いて、言った。

 

 

 

あの防空棲姫が照月だよ

 

 

 

その言葉を聞いた涼月と初月は、防空棲姫の方に慌てて顔を向けた。2人はしばらく防空棲姫の顔を見ていた。やがて秋月は、今までとは違った弱々しい声で言った。

「突然変なこと言っちゃったことはわかってる。でも――――」

「相変わらず水臭いな。秋月姉ぇは」

「え?」

その言葉を聞いた秋月は初月を見た。そこには口元にフッと笑みを浮かべた初月がいた。

「まったく、今日まで元気がなかったのはそれが理由だったんだな…」

「初月……」

「秋月姉さんは何でもかんでも背負いこみ過ぎなんです。少しは私たちを頼ってくださいよ」

「涼月……」

今度は涼月を見た秋月。そこには優しい笑みを浮かべた涼月がいた。

「さあ、秋月姉ぇ。いつまでも泣いていられないぞ。照月姉ぇを取り戻すんだろう?」

「行きましょう秋月姉さん。私たちにしか出来ないことなんですから!」

「………」

秋月は目に少しだけ溜まっていた涙を拭うと――――

「うん!行くよ涼月っ、初月っ!!」

「はい!」「ああ!」

「Gun-pla Battel stand up! Model damege level set to A.Please set your GP base.」

システムが起動し、ダメージレベルが設定され6人がGPベースをセットする。

「Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 Space.」

大量のプラフスキー粒子が放出され、アステロイドベルト帯の宇宙空間が形成される。

「Please set year Gun-pla.」

6人がそれぞれガンプラを設置し、システムがそれを読み込みメインカメラが発光する。6人は続いて現れた操縦桿を握りしめる。

「Battle Start!」

6機のガンプラがそれぞれ発進体制に入る。

「レ級。ガンダムレギュルス、出る」

「駆逐棲姫。5.12(ダークネスレイン)ガンダム、出撃する」

「防空棲姫。ガンダムボークルス、出ます」

先に出撃したのはレ級たちだった。それに続いて秋月たちも出撃を開始する。

「秋月姉ぇ。レ級と駆逐棲姫は任せてくれ。初月。ガンダムダブルオーエクシア、出るぞ!」

「はい!秋月姉さんは照月姉さんを!涼月。ガンダムデュナメス・ハイスナイプ、出撃致します!」

「ありがとう2人共……待っててね、照月っ」

秋月は操縦桿をより一層握り締め、出撃した。

「秋月。ウイングガンダムゼロアラン、出撃です!」

ウイングガンダムゼロアランが宇宙へと飛び立った。

 

宙域に点在する大小様々な岩石群を避けながら前進するレ級たちのガンプラ。

「オレが片付ける。お前たちは援護だけしろ」

「「わかりました―――」」

その時、レ級たちの進行方向から黄色いビームの帯が迫ってきた。レ級たちは唐突な攻撃ではあったもののそれを回避した。

「この程度でオレを墜とせるとでも思ったか?」

しかしその次の瞬間、先程の射線上をウイングガンダムゼロアラン、ガンダムダブルオーエクシア、ガンダムデュナメス・ハイスナイプの3機が一直線に並んで向かって来たのだ。

「なに?」

「やられに来るとは…馬鹿な奴らだ」

5.12ガンダムが先頭を行くゼロアランにGNダブルバスターライフルを向けた。しかし、5.12ガンダムの動きよりも早くデュナメス・ハイスナイプは5.12ガンダムに攻撃を仕掛けた。

「秋月姉さんの邪魔はさせません!」

「チッ」

デュナメス・ハイスナイプが放ったGNスナイパーライフルのビームを回避した5.12ガンダムは迫ってくるデュナメス・ハイスナイプにターゲットを変え、戦闘が始まった。

 

「逃がす訳ないだろっ」

デュナメス・ハイスナイプが離脱した戦列にガンダムレギュルスがビームサーベルを展開し、背後から迫った。一気に接近したガンダムレギュルスが放った右上段からの袈裟斬りは、咄嗟に反転しGNソードを構えたガンダムダブルオーエクシアによって防がれた。

「秋月姉ぇはやらせないっ!」

ダブルオーエクシアは、ガンダムレギュルスを蹴り飛ばそうと回し蹴りを放ったがそれは回避されてしまった。少しだけ後退したガンダムレギュルスは態勢を整えるとダブルオーエクシアを睨みつけた。

「ならまず、お前から潰してやる!」

再びダブルオーエクシアにガンダムレギュルスが迫った。

「照月姉ぇを取り戻すためにも……ここを通す訳にはいかないんだ!」

GNソードを構えたダブルオーエクシアはガンダムレギュルスを迎え撃つ。

 

ダブルオーエクシアとデュナメス・ハイスナイプの足止めで、戦線の突破に成功したゼロアランは正面からくるガンダムボークルスの攻撃を左前腕部のビームシールドで防ぎながら距離を縮めていった。

「クッ、流石照月のガンプラ。相変わらず凄い弾幕!」

「ビームシールドか…」

「でも!」

ビームシールドを消しツインバスターライフルを構えたゼロアランは、ガンダムボークルス目掛け放った。黄色いビームの帯がガンダムボークルスを襲ったが、それは難なく回避された。しかし、ボークルスの攻撃の止んだ一瞬をついてゼロアランはボークルスへの接近を果たし左肩から抜き放ったビームサーベルで斬りかかった。

「照月!」

「チッ!」

ガンダムボークルスは左前腕部から出力されたビームサーベルでゼロアランの上段斬りを防いだ。秋月は防空棲姫に呼び掛けたが反応は無かった。バチバチッ、とビームの火花が飛ぶ。そしてボークルスは胸部に装備されたバルカンを放った。ゼロアランはそれを緊急上昇で回避し、再びツインバスターライフルを放った。ボークルスは急上昇でそれを回避し、両手に握ったビームライフルをゼロアランに撃ち返した。放たれたビームを回避とビームシールドで防ぎながら再び接近していった。

「クッ!」

左上段からの袈裟斬りを、再び左前腕のビームサーベルで防いだボークルス。

「照月っ!」

そして再び、秋月が照月の名前を呼んだのだった。すると……

「さっきから何だ!私は照月なんて名前ではない!」

防空棲姫は秋月の言葉に反応を示した。しかし、ボークルスはすかさずゼロアランを蹴り飛ばした。

「くぅ!」

ゼロアランは態勢を崩しかけたが何とか態勢を整えることが出来た。しかしそこにボークルスのビームの一斉射が襲い掛かった。

「墜ちろっ!」

ゼロアランはスラスターを全開で噴かし、ビームを回避した。そしてボークルスはゼロアランに対しての一斉射を止めようとしなかった。

「照月っ!私がわからないのっ?秋月だよ!」

「貴様の事など知らん!その五月蠅い口を閉じろ!」

「照月っ!」

ボークルスの一斉射を回避しながら、再度接近を試みようとするゼロアラン。しかし、ボークルスの放つビームに隙は殆ど無く接近しようとしては回避をゼロアランは続けていた。

「止めて照月!なんで私たちが戦わないといけないのっ!?」

「貴様が私の敵だからだ!それ以上の理由が必要か!」

ビームが激しく飛び交う中、秋月は防空棲姫へ語り掛けることを止めようとしなかった。

「くっそぉー!」

ビームを回避しながら、逆さまになった態勢でツインバスターライフルを放った。ツインバスターライフルのビームをボークルスは機体をスライドさせることで回避しそのまま両手のビームライフルを高速連射で撃ち返した。ゼロアランはそれをビームシールドで防ぎ、一斉射が止んだ瞬間を狙ってボークルスの懐に入り込もうとした。

「照月思い出してよ!私たちの思い出……あの戦争を乗り越えた時の事!」

「さっきから照月、照月と。私は照月では―――」

「違う!貴女は照月よ!」

ボークルスの攻撃を防ぎながらなんとか懐に入り込んだゼロアランは、再びビームサーベルで斬りかかった。ボークルスは左上段から斬り降ろされたビームサーベルを左スライドで回避したが、ゼロアランはビームサーベルを振り切ったところでボークルスの避けた方向に向かってビームサーベルを斬り上げた。ボークルスは咄嗟にビームサーベルを展開し、これを防いだ。

「貴女は……私の、可愛くて、とっても頼りになる。妹っ!秋月型駆逐艦二番艦、照月っ!!」

「相変わらず、しつこぃ――――え?」

その時、防空棲姫が一瞬だけ疑問の言葉を呟いた。そして防空棲姫は小さく続けた。

「今、私は…相変わらずと……いっ、た?」

「思い出して照月っ!照月ぃー!!」

「っ!?」

その瞬間、防空棲姫の目の前に何かの映像がフラッシュバックした。そのフラッシュバックした映像「晴れ渡った空の下、防波堤に立つ自分の裏から聞こえてくる声」は、防空棲姫が知らない。しかし、いつか見たような光景だった。

「な、何だこれは?私の知らない……きお、く?」

防空棲姫は額に右手を当てながら汗を一粒流した。その時前方から接近警報のアラートが鳴り響いた。

「なにっ!」

「照月ぃー!!」

ボークルスからいつの間にか距離を取っていたゼロアランがビームサーベルで斬りかかってきた。しかし、防空棲姫の反応は完全に遅れてしまっていた。ビームサーベルの刃はボークルスの右肘を斬り裂いた。

「照月お願い!私たちの元に戻ってきて!また姉妹みんなで、一緒に―――」

「黙れぇ!!さっきから…私の、頭に響く声を出す!」

「頭に声が響くのは、本当の照月が思い出そうとしている証拠だよっ!思い出して照月っ!!」

「黙れぇぇぇ!!!」

ボークルスは残った全てのビーム砲をゼロアラン目掛け発射した。

「私は黙らない!黙るわけにはいかないんだぁぁぁ!!!」

ゼロアランもツインバスターライフルを最大出力で撃ち返した。2機が放ったビームはやがて激突。そして、前代未聞と言ってもいい様な大爆発を起こした。

「あああっ!!」

「照月!!」

ボークルスはその爆風に飛ばされてしまった。そして飛ばされた先には巨大な岩石が浮かんでいた。

「なっ、しまった!」

防空棲姫が気付いた時には既に岩石に衝突寸前だった。そして、次の瞬間――――

 

 

ガシャーン!!!

 

 

ボークルスは岩石に衝突し、大きな土煙が舞い上がった。

「機体の状況は?………被害、無し。だと…………」

防空棲姫が目にしたのは、何の被害報告も出ていない操縦スペースだった。防空棲姫は困惑した様子で周辺を見渡した。そして、レーダーの表示を見た時に彼女は驚きを隠せない言葉を口にした。

秋月(やつ)の反応が背後にある。だと?」

ボークルスの背後、そこにはゼロアランの姿があった。ゼロアランはボークルスを受け止めたまま岩石に衝突し、機体の各部から小さなスパークが上がっていた。すると、防空棲姫のいる操縦スペースに秋月の声が響きだした。

「よ、よかった…間に合ったみたい」

「………何故、助けた?」

「…照月を、傷つけたくなかったから」

「私は敵なんだぞ?」

「関係ないよ。貴女は私の妹…照月なんだから」

「………」

お互いが下を向いたまま話を続けた秋月と防空棲姫。そして防空棲姫は秋月に尋ねた。

「お前は……誰、なんだ?」

秋月はゆっくりと、優しい声で答えた。

「私は秋月。貴女の……照月のたった1人のお姉ちゃん」

「秋月………私の、たった1人の――――」

防空棲姫が最後の一言を言いかけたその時だった。

「爆発………?」

岩石群の遥か彼方で、2つの爆発が起こった。そして同時に、その爆発の起こった方向から紫色の光を放ちながら、1機のガンプラが向かって来た。

「この程度の奴相手に、そこまでの損傷を受けるとはな……」

そしてそのガンプラの胸部が光った次の瞬間――――

「貴様はもう必要ない」

ゼロアランとボークルスの2機はガンダムレギュルスのビームバスターによって撃ち抜かれ、爆散。

「Battle Ended!」

バトルは終了した。



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EP55 白の道標

味方をも巻き込んだレ級たちの勝利は会場全体を震撼させ、場に静寂をもたらした。秋月も防空棲姫も現状を理解出来ていなかった。

「え?バトルがおわ、った?」

秋月はガンダムレギュルスを見た瞬間に撃破されてしまったため、突然バトルが終了した様に思えてしまっていた。すると、秋月の隣に立っていた初月が肩をゆすって声をかけたことで秋月はようやく現実に戻ってきた。

「秋月姉ぇ!しっかりしてくれ!」

「は、初月!……そうだ!バトルの結果は!?」

「残念ながら僕たちの負けだ。それで、どうだったんだ照月姉ぇの方は?」

「照月は―――」

秋月がレ級たちの方を向いた時だった。

「何故私のガンプラまで撃ち抜いたのですか!」

防空棲姫がレ級に怒鳴り声をあげた。レ級は表情一つ変えず防空棲姫に言った。

 

 

 

貴様はもう用無しだからだ

 

 

 

「よ、用無し………?」

絶句する防空棲姫をよそにレ級は言葉を続けた。

「相手を速攻で倒せないような奴は、オレのバトルの邪魔になる。わかったら今すぐ消えろ」

話終えたレ級は、踵を返すと会場から去っていった。そしてその場には項垂れる防空棲姫と秋月たちが残されたが、秋月は慌てて防空棲姫に駆け寄っていった。

「照月っ!」

「あ!秋月姉さん!」

「僕たちも行こう!」

涼月たちも慌てて秋月の後を追った。

防空棲姫の元に辿り着いた秋月は地面に両手をついて項垂れた防空棲姫の傍に来て両膝をついて、防空棲姫の顔を覗き込んだ。

「お、お前は……」

「大丈夫、照月?」

「私は…大丈夫だ。だが……」

防空棲姫はやや言葉に詰まりながらも、口を開いた。

「もう私には…存在価値がなくなってしまった………」

「ど、どういうこと!?」

「レ級様は、私を用無しだと言った。私はレ級様のサポートをする為に生み出された存在。その相手が用無しを宣言したのだ……もう…私に存在価値は――――」

「そんなこと言わないで照月っ!!」

無い。と防空棲姫が言いかけたその時、今度は秋月が荒げた声をあげた。その言葉を聞いた防空棲姫は俯いたままではあったが少し驚いた表情を作った。

「存在価値がないとか、言わないでよ照月……」

すると秋月は涙を流しながらゆっくりと防空棲姫を抱きしめた。これには流石の防空棲姫も驚いた表情を隠せなかった。

「な、なにを!?」

「大丈夫。照月は大丈夫だから……」

そこに涼月と初月が到着し、防空棲姫を抱きしめる秋月を見つけた。

「こ、これはどういう状況だ?」

「お初さん。今は少しだけ待ちましょうか」

「え?あ、うん」

すると、抱きしめられていた防空棲姫は秋月に問いかけた。

「なぜお前は、そこまでして私を助けるんだ?」

「まただね。その質問」

「………」

「答えは一緒だよ…照月が私の妹だから……」

「………」

防空棲姫は秋月の言葉を黙って聞いていた。そして、防空棲姫は気づいた。

(え?これは……なみ、だ?)

自身のどす黒い赤い瞳から、一粒の涙が零れ落ちたのを。

(なん、で?私は……泣いて、い、るの?)

「私はずっと、貴女と一緒に居たい。だから、一緒に帰ろう?照月」

「あき、づ、き……姉ぇぇ………」

防空棲姫もまた涙を流し、秋月を抱きしめ返した。秋月は、その時に言った防空棲姫の言葉を耳にすることは出来なかったが、彼女はもう一度防空棲姫を抱きしめた。

 

その光景を観客席から見ていた電たちもまた、何も喋ることなくその光景を眺めていた。しかし、その中で時雨だけは別の事を考えていた。

(……秋月は何故、防空棲姫を守ったんだろう)

時雨が気にしていたのは、秋月がバトル中に見せた「ガンダムボークルスを身を挺して守ったこと」と言う行動だった。お互いが敵同士の関係となっているバトル中で、あのような行動を対戦相手にする人物など時雨は知らなかったから余計であった。しかし、時雨は更に考えを進めた。

(そして今。秋月と防空棲姫は、お互い抱きしめ合っている。これは…どういう事なんだ?)

そしてバトル終了後の2人の行動が尚の事時雨には理解できなかった。時雨の額に汗が一粒流れる。

「―――れ?時雨!」

深く考え込んでいた時雨は、夕立の声に驚いた声をあげた。

「ゆ、夕立!?ど、どうしたの?」

「夕立、電ちゃんと部屋に戻るけど、時雨はどうするっぽい?」

「え、あ…ああ。僕はちょっと深海提督の所に行ってくるよ」

「え?深海提督さん所ですか?」

「うん。ちょっと、個人的に相談したことがあって……」

「ふーん。じゃあ、気をつけてっぽい!」

「では、また後でなのです!」

そう言って電と夕立は観客席を後にした。そして時雨も2人が見えなくなったのと同時に立ち上がり、観客席を後にした。

 

しばらく時間が経ち、深海のキャンピングカーに到着した時雨。時雨はキャンピングカーのドアをノックした。すると、深海がドアを開けて出て来た。

「時雨じゃないか。どうかしたのか?」

「うん。ちょっと、相談したいことがあって」

「わかった。上がれ」

そう言って深海を追うように時雨は車内に入った。車内には、秋雨たち姉妹と白がいた。

「あ!おか――じゃなくて、時雨さん。いらっしゃいです!」

「いらっしゃいいらっしゃいいらっしゃい!時雨おねーちゃん!」

「いらっしゃい。お茶、入れるね」

「…………!」

「やあ、秋雨、梅雨葉、雨葉、白」

すると、車内を見渡した時雨は山風と涼風の2人がいないことに気づいた。

「あれ?深海提督、山風と涼風は?」

「ああ。あの2人なら、昨日俺の前いた鎮守府に行ってもらった。伝えるのが遅くなってすまない」

「ううん。大丈夫だよ…ありがとう」

そして、2人は机を挟んで椅子に座った。

「それで相談ってのは何だ?」

深海は早々に切りだした。時雨は単刀直入に今日のバトルの事を伝えた。

「なるほど…そんなことがあったんだな」

深海のキャンピングカーで机を挟んで話す深海と時雨。時雨の話を聞いた深海は驚きを見せながらも、真剣にその事を考えていた。

「うん。僕たちファイターの立場からしたら…あんな行動、意味が分からないよ」

「ああ。俺にもさっぱり意味が分からん」

だが、深海も秋月のとった行動の理由はさっぱりだった。

「お父さんにもわからないんじゃ、秋雨たちにも分かる訳ないよ」

「うんうんうん!雨葉にもさっぱりだよ!」

「………!!」

秋雨と雨葉の2人はそう言い、白も、さっぱりわからない!!と言うことを、首を全力で横に振って表現した白。すると、黙っていた梅雨葉が口を開いた。

「本当は姉妹。とか?」

そして梅雨葉がそう言った時だった。

 

コンコンコン!

 

「!?」

キャンピングカーの扉をノックする音が車内に響いた。車内にいた全員が少し驚いたが、やがて深海がゆっくりと立ち上がりドアを開けた。

「ん?お前たちは……」

深海の目の前にいたのは秋月と涼月、初月、そして防空棲姫の4人だった。

「あ、あの…深海提督のキャンピングカーはこちらですか?」

「そうだが……何か用か?」

「どうしたの、深海提督――――て、秋月たちじゃないか!」

ドアから顔を覗かせた時雨は、目の前にいた秋月たちに驚いた。

「し、時雨!?どうしたの、こんなところで!」

驚き返す秋月。しかし、深海はドアの目の前(こんな場所)での長話が嫌だったのか。

「秋月。用事があるならを早く言え」

深海の言葉に再び驚いた秋月は、ようやく本題を言った。

「え、えっと…何か、突然現れた白いフードを被った人に「急いで黒野深海のキャンピングカーに向かってください!」って写真を渡されてここまで来たんですけど……」

「「!!」」

秋月の口から出てきた「白いフードを被った人物」の言葉を聞いて、深海と時雨はビクッと肩を震わせたのだった。

 

続く



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EP56 手掛り

秋月たちの口から発せられた「白いフードの人物」を聞いた深海は、慌てて4人をキャンピングカーに乗せた。そして秋月を、先程時雨が座っていた場所に座らせると話し始めた。

「秋月、俺からいくつか聞きたいことがある。いいか?」

「ひゃ、ひゃい!な、なんなりと!」

「おいおい、落ち着けよ秋月。じゃあ、1つ目だ」

「ひゃ、ひゃい!な、なんなりと!」

「秋月姉ぇ、いい加減落ち着きなよ」

(お前はお前で、落ち着きすぎだろ初月)

と、この様にとても秋月は答えられるような状況ではなかったが、深海は秋月に問いかけた。

「まず、お前たちにこの写真を渡した白いフードの人物についてだ」

「え、えっと!突然秋月たちに声をかけてきて!いきなり写真を渡されて!このキャンピングカーに行くように言われました!」

「いや、それはわかってるんだが……」

「僕が答えるよ。今の秋月姉ぇにはちょっと答えられそうにないし……そうだね。ハッキリ言って、知らない人物だよ。会ったこともないと思う」

秋月の緊張しまくりの言動を見かねて初月が話し始めた。

「そうか…涼月はどうだ?」

「いえ…私も知らないお方でした」

涼月にも問いかけた深海。そして最後に―――

「防空棲姫」

「私も知らない。信じてもらえるとは思っていないが、な」

「いや、信じさせてもらう。お前は照月として戻って来れたんだからな」

「人格まではまだ戻ってはいないが……その、ありがとう」

と、防空棲姫は少しだけ照れながら答えた。深海は一言、気にするな。と言って話を続けた。

「次にこの写真についてだ」

深海はそう言って写真を全員に見せた。写真に写っていたのは、何処にでもありそうな自然公園だった。木々に囲まれた草原が写真の殆どを占め、隅の方には白い壁の建物がポツンとあった。

「何処にでもありそうな公園の写真だよね?お父さん」

「梅雨葉も、そう思う」

「雨葉も雨葉も雨葉も!」

「………!」

写真を見た秋雨たちは4人とも全員同じ答えを言った。深海も、そうだな。と一言だけ呟いた。しかし、深海はその後すぐにこう言った。

「だが、この写真の裏面に書かれているこの文字を見たらどう思う?」

深海はそう言って写真を裏返した。写真の右下の端、そこにはボールペンで「右に2回、左に6回、全開にして、左に4回、最後に××」と走り書きされていた。

「最後の方が消えかけて読めないが。これは…何かの暗号か?」

文字を見た防空棲姫が呟いた。

「そう考えるのが妥当だろうな。位置の特定は、この後青葉に頼んでおくつもりだ」

「それじゃあ……」

「ああ。お前たちは普段通りの生活をしてくれて構わない」

「わ、わかりましたっ!!」

「まだテンパってるのか秋月……と、忘れるところだった」

すると、深海は何かを思い出し秋月に話しかけた。

「お前たちは、このまま俺の前居た鎮守府に向かってくれ」

「え?それはどういう……」

「防空―――いや、照月がこの状態でいる以上、また奴らがお前たちを襲いに来る可能性がある。このキャンピングカーでは全員を保護することは難しいからな」

秋月はテンパっているせいなのか、完全に思考が追いついていなかった。すると、初月が―――

「なるほど。確かに深海提督の居た鎮守府なら身を隠すにはもってこいだしな」

「そうですね。私も賛成です」

「照月も異論はないな?」

深海から尋ねられた防空棲姫はすぐに答えた。

「ない。私のマスターから秋月たちを守れるならな」

「わかった。場所を教えよう。(フッ、いい妹を持ったな秋月)」

「じゃあ、僕は部屋に戻るよ。気になることも解決したし」

「ああ。気をつけてな」

時雨はキャンピングカーを後にし、秋月たちは深海の鎮守府に向かうことになった。

 

「だー!こんなんじゃ、いつまでたっても終わらねーぞー!」

ところ変わって、準々決勝を翌日に控えた月華団の部屋では慌ただしく準備が行われていた。先程の言葉は、連日ガンプラのメンテと修理に追われている望月が放ったものだ。

「そう言わないでお願いだよ望月ちゃん」

「愚痴くらいいーわーせーろー!」

「もっち、何か手伝おうか?」

「ああ、ミカは明日の為に休んどいていいぞ。バルバトスの調整は終わってるからな」

望月の言葉を聞いた三日月は、う、うん。と言って後ずさりしていった。望月は後頭部を掻きながら、修理用のパーツを入れているケースに目を向けた。その時―――

「ああー!修理用のパーツが無いっ!!」

「「ええー!!!」」

望月の絶叫に続いて、その場にいた三日月と瑞鳳が同時にをあげた。3人の絶叫を聞いた睦月と如月以外のメンバーが、まるで野次馬の様に3人の元に集まってきた。

「どうしたんだ望月。大きな声をあげて?」

望月の元に歩き寄ってきた長月が不思議そうな顔で尋ねた。

「無いんだよ!修理用のパーツがっ!」

「なんだとっ!」

「あわわ!一大事だよ~!」

「でも、どうするのさ!修理パーツがないとかなりヤバいんじゃないの!?そこのところどうなのさ望月!」

「バルバトスとグシオンは修理の必要はないが、明日の試合に間に合わせられそうな卯月号がこれでじゃあ間に合わないな」

「ま、まずいぴょん!戦力はどうあれ、うーちゃんのガンプラが直らないのはまずいぴょん!」

「卯月、戦力はどうあれ。ってちょっと違うと思う」

「弥生の言う通りだ。戦力が1機少ないだけでも、かなりバトルに影響が出るからな」

「どうする?瑞鳳」

「うーん」

すると、メンバー各々の言葉が飛び交う部屋の中で、水無月がゆっくりと手をあげた。

「あ、あの~みんなで買いに行くってのはどうかな?」

水無月の提案に最初に食いついたのは文月だった。

「あ!それいいかも~」

「だが、全員では行くわけにはいかないな。特に私と三日月は……団長、意見的には私も賛成だが?」

「長月ちゃんの言う通りだね。なら、2班に分かれるってのでどうかな?」 

「そうだな。なら、班分けは団長に任せよう」

「わかったよ!みんな異論はない……みたいだね」

その場にいた全員が真剣な表情だった。そして、瑞鳳はそれからしばらく考えて―――

「じゃあ班分けを言うね。まず、ここに残るのはミカ、長月ちゃん、睦月ちゃん、如月ちゃん、望月ちゃん、それと皐月ちゃん」

「ん?ボクはここに残るのかい?」

「うん。今回は私も行くつもりだからね」

「え?瑞鳳も行くんですか?」

「ミカ、話はあとで聞くから今は待って。次に買い出しA班、弥生ちゃん、水無月ちゃん、文月ちゃん。最後にB班が、私、卯月ちゃん、菊月ちゃん。いい?」

瑞鳳の言葉に団員それぞれが肯定の言葉を口にした。

「じゃあ、早く行こ~!」

「うん!三日月の為だもんね!」

「弥生は必要なもの聞いてから行くから、先に行ってて」

そして話が終わると、室内は先程より慌しくなった。そんな中、三日月は隣に立っていた瑞鳳に声をかけた。

「本当に行くんですか瑞鳳?」

「当り前だよ!ミカの為でもあるんだから!」

「そうですけど…瑞鳳、私がいないと無茶しますから……」

「あははっ!ミカは心配し過ぎなんだよ……そうだ!ミカの持ってる(お守り)を貸してよ。今も持ってるんでしょ?」

「え?あ、わかりました……」

すると三日月は自分の旅行鞄の中から1丁の銃を取り出した。銃と言っても、プラスチックの弾を撃ち出すガスガンである。三日月は自身が退役する時、今まで使っていた艤装の一部を使ってこの銃を作ったのだ。それ以降はお守りとして、重いながらも常に持ち歩いているのだ。

「ありがとう、ミカ」

「返してくださいよね?私のお守りなんですから」

「わかってるよ!」

「おーいだんちょー!早くしないと置いてくぴょーん!」

すると、部屋の入り口から瑞鳳を呼ぶ卯月の声がした。瑞鳳は慌てて卯月に答えた。

「今行くよー!じゃあ、また後でねミカ!」

「はい!瑞鳳を気をつけて」

卯月と菊月、そして瑞鳳はそのまま部屋を出ていった。

 

続く



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EP57 指し示す先

選手村ホテルのエントランスを卯月、菊月、瑞鳳の3人が歩いていた。菊月の手には望月から頼まれた修理パーツのリストが書かれた紙が握られていた。菊月はそのリストを見ながら呟いた。

「望月め、色々と頼み過ぎだ」

「ぴょん?」「え?」

「見てくれ」

そう言って菊月はリストを2人に見せた。

「えーっと、HGの獅電にHGのマンロディ、鉄血のオプションセット一式、接着剤……」

「塗料が数種類と、筆2本、艶消しトップコートに墨入れペン、おやつ………おやつ!?」

「全く、調子に乗り過ぎだ…」

「うーちゃんもおやつ食べたいぴょん!」

「あははは………」

そんな会話をしながら瑞鳳たちはホテルを出ていった。

そして瑞鳳たちがホテルを出た数十秒後、エントランスの椅子に座っていた私服姿の男たち4人が立ち上がった。すると彼らは、何やら相談を始めた。

「奴らが月華団か」

茶髪の男が口を開く。

「ああ。明日、あのお方と対戦する相手だ」

茶髪の男の言葉に今度は金髪の男が答える。

「奴らはただ者ではない。特にあの三日月とかいう奴は……」

黒髪の男が言う。

「俺たちでは倒せないだろう。なら、やることは1つだ」

最後に銀髪の男がそう言うと、残り3人が一斉に頷いた。そして瑞鳳たちの後を追うようにホテルを走って出ていった。彼らの胸には「Ⅲ」のバッジが輝いていた。

そしてそれを、通路の端っこに立っていた響が見ていた。

「今の人たち。暁の、自称「親衛隊」の人たちか……何か良からぬことをしなければいいんだけど……」

響はそのまま部屋へと戻っていった。

 

ホテルからしばらく歩いたところにある大きな電気製品店のプラモデル売り場に瑞鳳たちはいた。手に持つ買い物籠の中には、獅電とマンロディの箱と、数種類の塗料に艶消しトップコート、筆と墨入れペンが入っていた。プラモデルの箱が数多く置かれた棚の前で必死になってオプションセットを探す一行だったが、それはやはり見つからなかった。

「うーん。やっぱりないぴょん…」

「ここまで探して無いのなら、諦めるしかないだろう」

「うん。そうだね……仕方ない別のお店に行こっか」

そして、瑞鳳たちがプラモデル売り場を後にしようとした時、何処からか3人のよく知る声が聞こえてきた。

「ここで買える頼まれたものは全部。だね」

「うん!なら早く次の所に行かなきゃ!」

「じゃあレジに行こ~」

「あれ?この声って……」

そして瑞鳳たちの目の前に、同じく買い物籠を手に提げた弥生、水無月、文月が現れた。

「もしかして、弥生!」

思わず声をあげた卯月。その声に、前を歩いていた弥生が後ろを振り向いた。

「え、卯月?」

「弥生!こんなところで何やってるぴょん!?」

慌てて弥生に駆け寄る卯月。すると、弥生の先を歩いていた文月と水無月も瑞鳳たちに気づいた。

「何やってるって…望月に頼まれた物買ってただけだけど」

「あ!団長に卯月、菊月もいる~」

「ありゃりゃ…どうやら同じ店に来ちゃったみたいだね」

「あはは…そうみたいだね」

「そっちは順調なのか?」

各々の状況を言い合う6人。そして、しばらく話が続いたところでお互いが本来の目的をようやく思い出した6人。

「ああ!買い物の途中だってこと忘れてた!」

「あわわ~そうだったよ~」

「じゃあ、買い物に戻るとしよっか。望月ちゃんを待たせるわけにはいかないしね」

「わかった。じゃあ、早くレジに行こう」

「ああ。そうだな」

レジへ向かって歩き出した6人。するとその時、瑞鳳が水無月を呼び止めた。

「あ!水無月ちゃん!」

「なんですか団長?」

瑞鳳の元に駆け寄った水無月。すると瑞鳳は、少し心配した表情で水無月に話しかけた。

「こんなこと聞くのも何だけど…本当に良かったの水無月ちゃん?」

「え?何がです?」

「ミカの傍にいてあげた方がよかったんじゃないの?」

「水無月は大丈夫だよ!三日月の為って思えば、辛くなんかないから!」

「そっか!じゃあ、残りの買い物もよろしくね!」

「うん!」

お互いに会計を済ませ、店を出た6人。

「じゃあ、私たちはお菓子を買って帰るから。残りはよろしくね!」

「うん。わかった」

「じゃあ~また後でねぇ~」

6人はそれぞれの班に分かれ、瑞鳳たちは残りの修理パーツを、弥生たちはお菓子を買いに行くべく、歩いていった。

 

そして残りの修理パーツを買うべく歩き続けていた瑞鳳たち。だが、歩き続けても近くに模型屋の様な施設が見当たらず、ある意味では「漂流中」というような状況だった。

「だー!なんで都会なのに模型屋的施設がないぴょんっ!?」

「かなり長い時間歩き続けて、もう私もヘトヘト………」

「ああ……さ、流石に私も疲れた……」

しかし、そのような施設が見当たらないのも当然である。何故なら今瑞鳳たちがいる場所は、住宅街の一角だからである。

「え~っと今の時間は……うわ~もう17時だよ……」

「ああ~…うーちゃんの目の前に小さいプラモデル屋さんの幻覚が見えるぴょ~ん…」

「ううう…この私にも、プラモデル屋の幻覚が見えるとは……」

「私も~………って!幻覚じゃないよあれ!」

疲れ果てていた瑞鳳たちの目の前、そこには何とプラモデル屋が存在したのだ。何とかフラフラと足を進め、3人はプラモデル屋に辿り着いた。

「あ~や、やっと着いたぴょ~ん」

「なんだかんだ?で30分くらい歩いたか?」

「時間は……あ、10分しか経ってない……」

時間の感覚までも麻痺してしまう程に疲れていた瑞鳳たちは、プラモデル屋の正面にヘタヘタと座り込んでしまった。すると、プラモデル屋の中から1人の少女が出て来た。

「え?瑞鳳に卯月、菊月まで…こんなところで何してるんだい?」

「あれ?その声は……時雨ちゃん?」

瑞鳳が顔をあげると、そこには秋刀魚漁支援の時の私服を着た時雨が立っていた。時雨は手に大きな買い物袋を提げたまま、座り込んだ瑞鳳たちを驚いた表情で見ていた。

「えっと、これってどういう状況なの?」

瑞鳳たちは弱々しい声で現状と現在に至るまでの経緯を時雨に話した。そして、その内容を聞いた時雨はクスッと小さく笑みを浮かべ、瑞鳳たちは慌てた表情になっていた。

 

「ええっ!時雨ちゃんってあの深海提督の奥さんだったの!?」

修理用のパーツを買い終え、帰路につく瑞鳳たち。帰路の中で瑞鳳たちは時雨と喋っていたが、瑞鳳は完全に暁学園の時雨と勘違いをしていた。

「えっと、たぶん瑞鳳の知ってる僕は…きっと暁学園の僕じゃないかな?」

「え?……あ、そう言えば私の知る時雨ちゃんはケッコンしてなかったっけ…」

「団長って案外抜けてるぴょーん!うーちゃんは一発で見抜いたもんねー!」

「ああ。私もだ」

「え、え?そ、そうなの?」

「あはは……」

そこから少し歩いた時、買い物袋を確認した時雨が口を開いた。

「あ!しまった…買い忘れが!」

時雨が買い忘れに気づいたのだ。

「時雨ちゃん?」

「ごめん。僕、ちょっと買い忘れがあるから!」

そう言った時雨は元来た道を少し戻っていったが、しばらく行ったところで振り返って瑞鳳たちに言った。

「何かあったら、全国大会の駐車場に来るといいよ!提督も力になってくれると思うからー!」

「うんっ!ありがとー!」

時雨の言葉に、瑞鳳は笑顔で返事をした。そして時雨は曲がり角を曲がって行った。

 

※注意、ここから鉄血のオルフェンズ「#48 約束」のワンシーンをアレンジ付きで再現します。キャラ崩壊等が含まれますのでご注意ください。

 

時雨と別れ、夕焼けが照らす静寂な住宅街を進む瑞鳳たち。すると、卯月が突然口を開いた。

「何か静かだぴょん。町の中にはだーれもいないし、会場とは凄い違いだぴょん」

すると瑞鳳が苦笑いしながら卯月に言った。

「あはは……住宅街と大会の会場を一緒にしちゃ駄目じゃないかな……」

「でもっ、そんなの今は関係ないけどねー!」

機嫌良さげに答えた卯月に瑞鳳が、上機嫌だね。と言うと、卯月は上機嫌のまま答えた。

「そりゃそうだぴょん!みんなも喜ぶし、弥生も頑張ってたし!うーちゃんも明日のバトルを頑張らないと!」

「そうだね」

住宅街を進む瑞鳳たちは十字路に近づいていた。すると瑞鳳は何を思ったのか、頭の中で言葉を紡いだ。

(そうだ。今まで私たちが積み上げてきたものは、全部無駄じゃなかった。これからも、私たちが立ち止まらない限り、道は続く……)

そして、瑞鳳たちが十字路に差し掛かった時だった。

 

キィィー!!

 

瑞鳳たちの歩いていた右側から車のブレーキ音が聞こえたのだ。不思議に思った瑞鳳は、チラリとその方向を向いた。その時、瑞鳳たちの先を歩いていた菊月が、咄嗟に瑞鳳の前へ飛び出そうとした。そして同時に――――

 

パァァンッ!!

 

乾いたガスガンの銃声が辺りに響き渡り、菊月は右肩に1発のペイント弾を当てられた。その瞬間を見た瑞鳳は隣を歩いていた卯月を、猛スピードで抱え込んだ。その数秒後に連続でガスガンの銃声が響いた。瑞鳳たちの居た十字路の右側の十字路に突然現れた車から降りてきた、胸に「Ⅲ」のバッジを付けた男たちが電動ガスガンを瑞鳳たちに向かって撃ったのだ。電動ガスガンから放たれた赤いペイント弾は、瑞鳳たちに襲い掛かった。そして、咄嗟に卯月を庇った瑞鳳に、次々ペイント弾が命中した。

「団長?……何やってるぴょん!団長っ!!」

「くぅっ……グウッ!!」

焦る声をあげる卯月の言葉に耳を貸そうとしない瑞鳳は、やがて歯を食いしばり胸元から三日月から借りたガスガンを取り出し、振り返りざまに――――

「ヴアアアアアアッ!!」

 

 

ダァン!ダァン!ダァンッ!

 

 

叫び声をあげ撃った。3発放たれたプラスチック弾の内、1発は外れ、2発目は男の1人に命中し、最後の1発は車に命中した。思わぬ反撃に驚いた男たちは慌てて車に乗り込むと、急発進しその場を去っていった。

「はぁ…はぁ…はぁ……」

男たちを退けることに成功した瑞鳳。瑞鳳はガスガンを握っていた右手から力が抜け、だらりと垂れた。

「なんだよぉ……結構当たるじゃない……ヘッ…」

瑞鳳は皮肉じみた声をあげながら、小さく笑った。

「だ、団長……」

焦りを隠せなかった卯月が、弱々しい声で瑞鳳の名を呼んだ。すると、瑞鳳の体に命中した赤いペイントがダラダラと地面に流れ、瑞鳳の周囲に小さな水たまりを作る。

「あぁ……ああっ!」

「なんて声……出してるのぉ?………うーちゃんっ!」

弱々しい声で瑞鳳は顔を戻し、卯月の名を呼んだ。

「だって……だってぇ!!」

瑞鳳は左膝に手をついてよろよろと立ち上がり、言った。

 

 

私はぁ……月華団団長………瑞鳳だよぉ………

 

 

フラフラとよろけながら瑞鳳は更に続ける。

「これくらい……なんてことないっ………」

「そんな……うーちゃんなんかの為に……」

地面に両手をついて目に涙を浮かべながら卯月が言った。荒い息をしながらもしかし、瑞鳳は――――

「団員を護るのは私の仕事だからっ……」

その光景に菊月も遂に涙を流した。その隣で卯月が叫ぶ。

「でもぉっ……」

「いいから行くよぉっ……みんなが…待ってるんだっ………」

すると瑞鳳は、ふらつく足をゆっくりと前へと伸ばした。そして、非常にゆっくりとした足取りで前へと進んでいく。

「それに……」

歯を食いしばり尚も前へ向かって歩く瑞鳳。そして瑞鳳はあることに気づいて頭の中で言葉を走らせた。

 

 

 

ミカ…やっとわかったんだ………私たちには辿り着く場所なんていらない……

 

 

 

瑞鳳は歩き続けながら更に言葉を続ける。

 

 

 

ただ進み続けるだけでいい!……止まらない限り…道は……続くッ!!

 

 

 

そして瑞鳳の脳裏に、三日月の言葉が走る。

 

 

 

―――――返してくださいよね?私のお守りなんですから

 

 

 

その言葉に、瑞鳳が答える。

 

 

 

うん……わかってる!

 

 

 

瑞鳳は夕焼けに染まった空を見上げて言った。

「私は止まらないからねぇ……」

そして瑞鳳は最後の力を振り絞って叫んだ。

 

 

 

 

みんなが立ち止まらない限り……その先に私は居るよぉっ!!

 

 

 

 

遂に瑞鳳は崩れるようにその場に倒れてしまった。卯月は瑞鳳の名を叫び、菊月は大粒の涙を流した。倒れた瑞鳳は左手の人差し指をまっすぐに伸ばし、薄れゆく意識の中で言った。

 

 

だからよぉ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

止まるんじゃねぇぞ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鳳の伸ばした人差し指から赤いペイントが流れていった。

 

 

「瑞鳳?」

ホテルで窓の外を眺めていた三日月は、ふと瑞鳳の名を口にするのだった。

 

続く



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EP58 決意の戦場へ

その日の夜19時。

「遅いな団長……どうかしたのかな?」

団長たちの帰りを待っていた皐月。弥生と文月、水無月は数時間前に帰って来てはいたが、瑞鳳たちは未だに帰ってきていなかった。そんな時だった。

「さっちん!団長たちから電話が来たよ!」

「ホントッ!?」

水無月が皐月の元にスマホを持ってきた。皐月は迷うことなくスマホを握りしめ、耳に当てた。しかしその数秒後、皐月は手を震わせながら驚愕の表情になった。やがて、一連の事件は月華団の全員に知れ渡った。そして、三日月にも……

「三日月……団長が………」

ベランダから外を眺めていた三日月は、水無月の口から発せられた言葉を静かに聞いていた。

 

その夜。ホテルの一室では、文月と長月、皐月の3人が揃って話し合っていた。しかし、室内はとてつもなく重い空気に包まれていた。

「どうしてなの団長。こんなところで……こんなところでっ」

「やめろ文月」

「でもっ!」

少し荒げた声をあげる文月を長月がいさめる。

「三日月の為って言ったじゃないか……倒れちゃったんじゃ、三日月の為にならないじゃないかっ………こんなんじゃ、ボクたちは………」

頭を押さえながら項垂れる皐月が口を開く。

「なら、次は私たちの番だ」

「長月!団長の最後の言葉、キミも聞いたでしょ?」

「わかっているッ!だが―――」

その時、部屋のドアが開き水無月が顔を出した。

「ね、ねぇ。さっちん、ふみちゃん、ながなが……」

「どうしたの水無月?」

「それが…三日月がみんなを集めてほしいって……」

「「「!?」」」

その場にいた全員がその言葉を聞き、肩をビクつかせた。

 

そして、三日月の居るベランダの前に集まった月華団メンバー。三日月は集まったメンバーに背を向けて、ただ曇った夜空を眺めていた。そして―――――

「……前に瑞鳳が言ってた。辿り着いた場所で、皆で馬鹿笑いしたいって……」

三日月は全員に背を向けながら口を開いた。

「……瑞鳳は帰ってこなかった。でも……私の中に、瑞鳳の命令がまだ生きている……

「「「っ!」」」

三日月の言葉を聞いたメンバー全員に電流が走る。すると三日月はメンバーに振り返って続ける。

「瑞鳳の命令が生きている……なら、私は全力でそれをやりますっ!……私の、瑞鳳の命令の邪魔をする人たちは……どこの誰だろうと、全力で倒すっ!」

 

 

何処の……誰でもですッ!!

 

 

三日月がそう言った時、強い風が空に走った。その風は、曇っていた空の雲を流し夜空に月を現せた。

「わかりました?………なら――――」

三日月は少し間を開け、言った。

 

 

 

 

負けを認めるまで戦って………命令を果たせっ!!

 

 

 

 

三日月の言葉を聞いたメンバーは、揃って肯定の言葉を口にした。そして、三日月の言葉に皐月は笑みを浮かべ思った。

(そうだね、三日月……止まるな。か………)

三日月は、左手をグッと握りしめた。

 

そして、彼女の背後の夜空には黄金色の満月が輝いていた。

 

その後、月華団のメンバーは夜通し交代しながら作業をしたが、残念ながら修理が間に合ったのガンプラは1つもなかった。結果として、準々決勝は三日月のガンダムバルバトスルプスレイトと、長月のガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティの2機での出撃となった。そして試合開始1時間前となった午前9時、皐月が三日月と長月を呼んだ。

「ごめんよ三日月、長月。間に合わせられなくって……」

「謝らないでくれ皐月。私たちに任せてくれ」

「だから皐月は私たちにしっかり指示を出してくださいね!」

「……わかった!まっかせてよっ!」

「さて、そろそろ行くぞ」

「はい!」「うん!」

そして部屋を出ようと歩き出す3人。すると、三日月が水無月の眠っているソファの前を通った時、不意に水無月が目を覚ましたのだ。

「あれ?三日月、もう行くの?」

「あ、水無月。起こしちゃいました?すみません」

「ううん。大丈夫だよ三日月……ねぇ、三日月……」

水無月は心配そうな表情で三日月に何かを言いかけた。三日月が、なんですか?と尋ねると水無月はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと笑顔を作って口を開いた。

「無事に帰って来てね……」

「………」

三日月は水無月の言葉を聞いて少しだけ驚いたが、紺色のブレスレットが揺れる左腕を水無月に見せて言った。

「大丈夫ですよ!水無月のお守りが、きっと護ってくれますから!」

「………」

水無月は少し顔を赤くして、うん!と言ったのだった。

 

そして、遂にバトルが始まろうとしていた。バトル会場は一層に盛り上がりを見せていた。そして会場の中央に、三日月と長月、皐月の3人と、暁と響、そして何故か全く見ず知らずの黒髪の男が1人立っていた。

「あれ?暁ちゃん。その人、どうしたの?」

「今日急に入部させてほしいって言って来た人なの!断るのもレディらしくないから、喜んで入部させてあげたのよ!」

「私は反対したんだが、暁がどうしてもと言ったのでな……」

久条純一(くじょうじゅんいち)と言います。よろしく頼みます」

「あはは……どうも」

響の言葉を聞いて苦笑する皐月。だが、三日月と長月は既に臨戦態勢だった。

「なるほど。数ではこちらが不利と言うわけだな……だが、負けるわけにはいかない!」

「はい!私たちは負けません!絶対に―――」

(絶対に辿り着くんだ……私たちの…本当の居場所にっ!)

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A.Please set your GP base.」

システムが起動し、ダメージレベルが設定されて3人がGPベースをセットする。

「Begining Plavsky particle dispersal.Field 02 Desert.」

プラフスキー粒子が放出され、荒野のフィールドが形成される。

「Please set year Gun-pla.」

6人がそれぞれのガンプラを台座にセットする。システムがガンプラを読み込み、メインカメラが発光する。

「Battle Start!」

ガンプラが発進体制になり、発進していく。

「暁。アカツキ・ハイペリオンマスター、出撃します!」

「響。ガンダム・ヴェールフェニックス、出撃する」

「久条純一。イオグレイズ、出ます!」

種守中学プラスαが出撃していった。一方の三日月たちは―――

「本当は私1人でやるつもりだったから、長月もよかったのに……」

「言ってくれるな三日月…妹が戦っているのに、私が退けるか!」

長月の言葉に小さく笑った三日月。

「じゃあ足引っ張らないでくださいよね?」

「おまっ!?…………これ終わっても一緒に帰ってやらないからな!」

三日月の言葉に複雑な気持ちになる長月。そして――――

「ふぅぅぅ……長月!ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティ!!」

「三日月!ガンダムバルバトスルプスレイト!!」

2人が自身のガンプラの名を叫び――――

 

 

 

行くぞっ!!

 

 

 

2人同時にそう言うと、2機のガンプラのメインカメラが再度発光した。三日月のガンダムバルバトスルプスレイトと、長月のガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティが荒野に向かって飛び立った。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます!

さて、次回の投稿は「来年1月の2週目」とさせていただきます。何卒、ご了承ください。

少し早いですが、今年1年間ありがとうございました!来年もどうかよろしくお願いいたします。それでは良いお年を!!


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EP59 命令を果たす為に

荒野に降り立ったバルバトスルプスレイトとグシオンセフティアリベイクフルシティはすぐに臨戦態勢になった。ルプスレイトはツインメイスを構え、セフティアリベイクフルシティはセフティアリベイクハルバードと、サブアームに装備した「150mmロングレンジライフル・改」を構えた。

「気をつけろ三日月。いつ相手が仕掛けてくるかわからないからな」

「はい!……と、見えましたよ長月。空から2機、地上から1機ですね」

三日月が荒野の先から来るアカツキ・ハイペリオンマスターとガンダム・ヴェールフェニックス、そして黄色と黒で塗装された角付きのグレイズ「イオグレイズ」を発見した。皐月が即座に指示を飛ばす。

「地上から来ているのは恐らくあのグレイズだ!なら、先にそっちを仕留めるんだ!」

「了解です皐月!行きましょう長月!」

「ああ!」

ルプスレイトとセフティアリベイクフルシティは、スラスターを噴かし地上を滑走していった。

「そこです!」

先頭を切っていたルプスレイトはすぐに接敵、肘のハードポイントにマウントされた200mm砲で牽制射を掛けながら一気に距離を詰めていく。

「このっ」

攻撃を受けたイオグレイズは右腕に装備した120mmライフルを撃ち返しが、アシムレイトを使う三日月のルプスレイトに命中することは無かった。そして、数秒で間合いを詰められてしまったイオグレイズにルプスレイトがツインメイスを振り上げ襲い掛かった。

「もらいました!」

「やられるか!」

イオグレイズは咄嗟にバトルアックスを構えてツインメイスの直撃を防いだ。

「やりますね…」

「三日月!」

するとそこに長月のセフティアリベイクフルシティが上空からセフティアリベイクハルバードを最上段に構えて降ってきた。それを見た三日月は、ルプスレイトを急速後退させた。

「くらえぇぇっ!」

一気に振り下ろされたセフティアリベイクハルバードが激しい砂煙が上げたが、イオグレイズへの命中は叶わなかった。舞い上がった土煙の中からイオグレイズが現れ、その数秒後にルプスレイトとセフティアリベイクフルシティが現れた。

「あのファイター、なかなかやるな!」

「そうですね……っ!」

すると、三日月たちの耳に後方からの接近警報が届いた。

「後方の警戒が甘いよ2人共」

ルプスレイトとセフティアリベイクフルシティの後方上空で、ヴェールフェニックスがツインバスターライフルを構えていた。

「あれは響のガンプラか!まずい…ロックオンされた!」

「っ!!2人共、前からも来てる!」

「流石響ね!こっちは任せなさい!」

イオグレイズの後方からはアカツキ・ハイペリオンマスターがヒャクライ・スティグマトを撃ちながら迫っていた。前方と後方を塞がれてしまった三日月と長月。しかしその時、三日月のルプスレイトは突然方向転換、後方のヴェールフェニックスへと向かって行った。

「三日月が方向転換した?…なら、照準は変えるべきだな」

ルプスレイトの方向転換を見た響は、ツインバスターライフルの照準をルプスレイトに変更した。

「「三日月っ!?」」

三日月の行動に驚く長月と皐月。しかし、三日月が長月に向かって放った言葉で2人はハッとする。

「長月、前の2つは任せていいですかっ?」

「っ!?ああ…任せろっ!!」

すると長月も前方から向かってくるアカツキ・ハイペリオンマスターとイオグレイズに向かって行った。

 

「たった1機で来るとはね!覚悟しなさい長月!」

「長月、来るよ!」

「わかっている皐月!」

地表を高速移動するセフティアリベイクフルシティに向かってヒャクライ・スティグマトと砲撃モードのAL(アカツキ・リュミエール)ユニットを連射するアカツキ・ハイペリオンマスター。しかし、緑色の光弾は次々に地表に吸い込まれていくばかりで、セフティアリベイクフルシティには1発も命中しなかった。

「照準が甘いな!」

長月は通常モードで稼働していた頭部を照準モードに変更した。展開していた2本のアンテナが回転しツインアイも頭部に収納されると、長月はサブアームに装備した150mmロングレンジライフル・改をアカツキ・ハイペリオンマスターとイオグレイズに向けて発射した。

「そんなの、アカツキ・ハイペリオンマスターには効かないわ!」

「クッ!」

イオグレイズは150mm弾を回避し、ALユニットの砲撃で150mm弾を何発か撃ち抜いたアカツキ・ハイペリオンマスターだったがその内の1発が砲撃を掻い潜りアカツキ・ハイペリオンマスターに迫った。アカツキ・ハイペリオンマスターは左腕のビームシールドを展開しこれを防いだ。しかし、ビームシールドに接触した150mm弾は爆発し、一瞬だけ暁の視界を奪って機体の動きを止めさせた。

「じ、実弾!?」

「もらったぁ!」

暁の隙を見た長月はセフティアリベイクフルシティをハイジャンプさせた。そして頭部を通常モードに戻すと、右上段に構えたセフティアリベイクハルバードをアカツキ・ハイペリオンマスター目掛け一気に振り下ろした。

「へ、ヘン!アカツキのビームシールドならヘッチャラだし!」

アカツキ・ハイペリオンマスターはその攻撃を先程の体勢のまま、ビームシールドで受け止めた。しかし―――

「ビームシールドの防御を過信し過ぎだな、暁!」

「何よ!強がりもほどほどに―――って、ええ!?」

ビームシールドで防いだ筈のセフティアリベイクハルバードが、徐々にシールドにめり込んで来ていたのだ。そのことに気づいた暁は驚きを隠せていなかった。

「ビームシールドが!」

「うおおぉぉ!」

そしてその次の瞬間、セフティアリベイクハルバードが完全にビームシールドを突破しアカツキ・ハイペリオンマスターの左前腕部を叩き斬った。そして、セフティアリベイクフルシティはセフティアリベイクハルバードを振り下ろした態勢からアカツキ・ハイペリオンマスターに空いた左腕でパンチを放った。

「きゃあー!!」

「暁ちゃん!」

パンチが直撃し遥か後方へ弾き飛ばされたアカツキ・ハイペリオンマスター。やがて荒野の地表に落下したアカツキ・ハイペリオンマスターは二転三転したが、何とか態勢を立て直した。

「く、くっそぉ~」

「追撃などさせるものかー!」

地表に降り立ったセフティアリベイクフルシティ。しかしそこにイオグレイズが120mmライフルを撃ちながら迫ると、長月は休む間もなくヒートダートを選択し、イオグレイズに向かってヒートダートを投擲した。

「邪魔をするなぁ!」

「なにっ!」

セフティアリベイクフルシティのヒートダートはイオグレイズの120mmライフルに直撃し、ライフルを爆発させた。

「足止め出来たな。先に暁を仕留めさせてもらう!」

イオグレイズが怯んだことを確認した長月は、セフティアリベイクフルシティをアカツキ・ハイペリオンマスターへ向かわせた。150mmロングレンジライフル・改をアカツキ・ハイペリオンマスターに向け何度も放ちながら接近する。対するアカツキ・ハイペリオンマスターもヒャクライ・スティグマトとALユニットを連射し牽制をかけていたが、セフティアリベイクフルシティはその光弾を全て回避していった。

「予測射撃も甘いな、暁!」

「くっそぉ!」

そして遂に、零距離までの接近を許しかねない距離まで接近されたアカツキ・ハイペリオンマスター。暁は武装スロットの中からビームナイフを選択し、接近戦に備えた。ヒャクライ・スティグマトの銃口下から短いビーム刃が発生した時、セフティアリベイクフルシティのセフティアリベイクハルバードが上段から振り下ろされた。ヒャクライ・スティグマトを前方に掲げ、アカツキ・ハイペリオンマスターは攻撃を防いだ。

「長月がここまで強いなんて!」

「いや、貴様がガンプラの防御力に依存し過ぎているだけだっ!」

「それってどういうことよ!」

「私に勝てたら……教えてやる!!」

鍔迫り合いをするセフティアリベイクフルシティとアカツキ・ハイペリオンマスター。しかし、パワーで劣っているアカツキ・ハイペリオンマスターは次第に圧されていった。アカツキ・ハイペリオンマスターの脚が荒野の土を押し上げ後退していく。

「パワーでも負けているなんて!」

「隙あり!」

隙を見た長月は、すかさずサブアームの150mmロングレンジライフル・改を脇下からヒャクライ・スティグマト目掛け撃った。150mm弾をまともに受けたヒャクライ・スティグマトはやがて爆発した。

「しまった!?」

「もらったぞっ!」

そこにセフティアリベイクフルシティが全力のキックを放った。そのキックを胴体部の中心に受けたアカツキ・ハイペリオンマスターは激しくふっ飛ばされた。

「きゃあぁー!!」

ふっ飛ばされたアカツキ・ハイペリオンマスターは、再び地面を転がり回った。そして、セフティアリベイクフルシティがセフティアリベイクハルバードを両手で構え、突進態勢に入った。

「次で止めだ!」

しかし、その時だった――――

「暁ちゃんはやらせんぞー!」

セフティアリベイクフルシティの左方向から突然イオグレイズが現れ、セフティアリベイクフルシティに全力のタックルをした。

「なに―――ぐわぁ!」

イオグレイズの強襲を受けたセフティアリベイクフルシティは突き飛ばされ、大きく体勢を崩した。

「暁ちゃん今だ!」

久条が叫んだ時、アカツキ・ハイペリオンマスターは既に攻撃態勢だった。機体の周辺には7基のALユニットが浮遊し、そして―――

「これは今までのお返し……アカツキをここまでボロボロにさせるなんて、許さないんだからッ!!」

ALユニットの全砲門から一斉にビームが撃ち出された。

「なっ!しまった!!」

態勢を崩されてしまってセフティアリベイクフルシティと長月は完全に反応が遅れていた。そして、ALユニットから放たれた21本のビームがセフティアリベイクフルシティの全身を襲った。

「ぐっ!わあぁぁぁー!!」

更にビームが続けて発射され、セフティアリベイクフルシティは砂煙の中へ消えていった。

「な、長月ぃぃー!!」

皐月の悲痛な叫びがこだました。

 

時間は少し遡り、進路変更をして響のヴェールフェニックスの元に向かった三日月のルプスレイト。響はルプスレイトが進路変更をしたすぐ後にツインバスターライフルの引き金を引いた。黄色い帯状のビームは、高速で荒野を駆けるルプスレイトを追うように薙ぎ払われたが、ただ荒野を抉るだけに終わった。

「その攻撃はお見通しです!」

「流石三日月だ。この程度じゃ駄目みたいだね」

合体させていたツインバスターライフルを分割すると、スラスターを噴かして連続射撃を繰り出しながら荒野の空を駆けた。

「逃がしません!」

ルプスレイトは腕部200mm砲を放ちながらヴェールフェニックスを追いかけた。しかし、ルプスレイトから放たれた200mm弾を、ヴェールフェニックスは正確な照準で次々撃ち抜いていった。

「さっきの言葉、そのままお返しするよ」

「正確な射撃。手強いですね!」

その後もヴェールフェニックスとルプスレイトの上空と地上のドッグファイトはしばらく続いた。

(何とかして隙を作らないと!)

「もらったっ」

「当たりません!」

ヴェールフェニックスに何とか隙を作ろうと行動する三日月。しかし響は一瞬として隙を見せようとはしなかった。空を行くヴェールフェニックスを尚も追走するルプスレイト。しかし、相手との速度差があり過ぎるように見えるその追走は徐々に三日月を焦らせていった。

「くそっ、このままじゃ埒があかないよ!」

「三日月落ち着いくんだ!相手のペースに乗せられちゃってる!」

「でもっ」

「直撃させる!ウラァー!」

上空で再びツインバスターライフルを合体させたヴェールフェニックスは、再度ルプスレイトに向け引き金を引いた。ツインバスターライフルの銃口から発射された黄色い帯のビームは、ルプスレイトを追随しながら地面を抉っていく。回避に専念する三日月のルプスレイト。

「くうぅぅぅ!」

するとその時、三日月は何かを閃いた。

(っ!これならいけるかもしれない!)

そして回避に専念していたルプスレイトは突然、大型テイルブレードを射出した。大型テイルブレードは射撃中で身動きの取れないヴェールフェニックスに向かって飛んでいく。

「ハラショー、このタイミングでテイルブレードを使うとはね。でも、予測済みだ!」

ヴェールフェニックスは咄嗟に射撃を止め、接近してくる大型テイルブレードを回避した。しかし、三日月は大型テイルブレードでの攻撃を止めず更にヴェールフェニックスを追いかけた。

「当たって!」

ルプスレイトの大型テイルブレードによる再攻撃を横スライドで回避したヴェールフェニックス。そして通り過ぎていった大型テイルブレードに、遂にツインバスターライフルの銃口が向いた。

「残念だったね三日月。でも、いい攻撃だったよ」

そしてヴェールフェニックスがツインバスターライフルの発射態勢に入った時、遂にルプスレイトが動いた。

「そこぉぉー!!」

三日月の叫びと共に、ルプスレイトはバックパックに懸架されていたガンダムバルバトスの「メイス」をヴェールフェニックス目掛け投擲した。物凄いスピードで投げられたメイスはヴェールフェニックスに向かって一直線に飛んでいった。

「っ!?」

そしてその事に慌てて気づいた響は、ツインバスターライフルの発射を諦めシールドを構えた。しかし完全な防御態勢を取ることの出来なかったヴェールフェニックスは、メイスの直撃を受けて地上へと墜落していった。

「くっ!」

「やっと…捕まえました!」

墜落していくヴェールフェニックスの元に急いで向かうルプスレイト。そして、ヴェールフェニックスが完全に墜落するよりも早く、ハイジャンプからの攻撃を仕掛けたルプスレイト。

「墜ちろぉー!」

「させないよっ!」

右手に握ったツインメイスを大きく振りかぶり、攻撃しようとしたが既にバランスを取り戻していたヴェールフェニックスはシールドを正面に構えて攻撃に備えていた。ガキィィーン!とひと際大きな金属音が鳴り、2機はそのまま地上に落ちて行った。大きな砂の柱立ち上る中で、ルプスレイトとヴェールフェニックスの2機は先程の体勢で組み合っていた。

「はぁ…はぁ…往生際が悪いですね、響さん」

「ふっ…それはお互い様じゃないかな。三日月」

「そうですね…なら、そろそろ……終わりに―――」

その時だった。

 

「な、長月ぃぃー!!」

 

皐月の悲痛な叫びがこだました。

「っ!?」

三日月がその声に気づいた時、遠くの方で大きな砂煙が上がっているのが三日月の目に入った。長月のセフティアリベイクフルシティが、アカツキ・ハイペリオンマスターの一斉射撃を受けている光景がそこにはあった。しかし、その一瞬だけ見せた三日月の隙を響は見逃さなかった。

「隙を見せたね三日月!!」

「あ―――」

一瞬の隙を突いた響は、ルプスレイトにスラスター全開でのタックルを放った。そして、大きく体勢を崩したルプスレイトが砂煙の中から出て来たその更に数秒後だった。

「はあぁー!!」

現れたヴェールフェニックスの手に握られていたビームサーベルが、ルプスレイトの左腕の接合部を斬り落したのだ。そしてその痛みが三日月を襲った。

「うああぁぁぁっ!!!」

痛みに悶える三日月。それは、自身が今まで味わったことのない程に強烈な痛みだった。

「これで終わりだよ!」

「――――!?」

痛みに耐えていた三日月の目の前が真っ黒になった。そしてその次の瞬間、ルプスレイトは背後にあった岩山に背中から激突し、更にそこへヴェールフェニックスのシールドに装備された2連装バルカンの弾幕が襲い掛かった。行動出来ずにいたルプスレイトは次々に銃弾の嵐を浴びてしまい、三日月の悲痛の叫びが続いていた。

「ぐっ!うあっ!あああっ!!」

そして銃撃が止み、周囲は静寂に包まれてしまった。

「あ、あああ……」

 

 

三日月ぃぃぃー!

 

 

 

 

続く




新年明けましておめでとうございます。どうか本年も、「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」をよろしくお願いいたします。


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EP60 彼女たちの居場所

優勢に思えていた月華団の戦闘が、一瞬にして終わってしまった事に会場は大賑わいとなっていた。ところかしこから歓声が上がり続けていたが、電は暁たちの無事を見てホッとしていた。

「よ、良かったのです。暁ちゃんたちが勝てたのです」

「電ちゃんは相変わらずの姉妹思いっぽい!」

「えへへ…それ程でもないのです!」

しかしそこに時雨が口を挿んできた。

「そうなったら次は暁たちが相手なんだよ電?それをわかって言ってるのかい?」

「も、勿論なのです!暁ちゃんたちとは一度戦ってみたいって思ってましたから!」

「夕立もだよ!」

「それなら良いんだけど……あれ?」

時雨が何か違和感を感じた。

(バトル終了のアナウンスが流れていない?)

会場は依然物凄い熱気に包まれていたが、そのほとんどの者がそのことに気づいていなかった。しかし時雨と、電たちの座っている場所から遠く離れた場所でバトルを見ていた雷だけは違っていた。時雨が小さく、そうか!と言ったすぐ後に2人は揃えているかのように言った。

 

 

「「バトルはまだ、終わってない」」

 

 

「「え?」」

電と夕立が時雨の言葉に反応した時、地中からそれ(・・)は現れた。

 

時間は少し遡る。

「ううう……っ!」

深海のキャンピングカーのベットの上で1人の少女が悶えながら立ち上がった。少女の全身に包帯が巻かれていたが、少女は気にする素振りも見せず立ち上がってふらつく足取りでゆっくりと歩き出した。近くのソファでは緋色の髪の少女と白髪の少女が眠っていた。2人を起こさないようにと、少女はキャンピングカーの扉を開け外に出ていった。

(行かないと……私の……私にしか出来ない仕事が………)

「まだ……残ってるんだっ」

少女はゆっくりと全国大会の会場を目指し歩いていった。

 

※注意、ここから鉄血のオルフェンズ「#50 彼等の居場所」のワンシーンをアレンジ付きで再現します。キャラ崩壊等が含まれますのでご注意ください。

 

「………」

朦朧とする意識の中、三日月は目を覚ました。彼女の目の前は真っ暗だった。ほとんど何も見えないくらい真っ暗だった。

(暗い………これ、死んじゃったのかな?)

まるで深い海の底に沈んでいくかの様な感覚を三日月は感じていた。しかし―――

(でも、私はこの場所を知ってる………そうだ……これは、あの時の…)

朦朧とする意識の中、三日月の脳裏にあの時(・・・)の光景が過った。

 

戦時中のある日、鎮守府の裏手で座り込んでいた自分。そこに通りかかった1人の少女。少女の顔を見上げる自分。すると少女は笑って、自分が延ばした手を掴んでグッと引っ張り上げてくれた。

(私が、生まれ変われた時の…記憶……)

そしてその手はしっかりと握りしめられていた。

 

(今の私は瑞鳳に貰った……)

ゆっくりと顔をあげる三日月。

(なら………そうだ……)

グッと操縦桿を握りしめる。

(決まってる……)

そして三日月は目覚めた。

 

 

砂煙が舞う荒野にガガガガ、と何かが軋む音がこだまする。

「何の音だ?」

その音にいち早く気づいた響。響は落ち着いた様子で周囲を見渡す。音は自身の前方、砂煙の中から聞こえてきていた。

「まさか―――」

砂煙の中から、大型テイルブレードが現れるとうつ伏せから起き上がってくる何かが見えた。そして、淡い緑色の光が砂煙の中からヴェールフェニックスを見据えていた。

「ああああっ……」

そして、その場から少し離れたアカツキ・ハイペリオンマスターがALユニットを全発射した所でも、地中からなにか(・・・)が出て来た。それを見た暁は、思わず脅えた声を口にした。

「そんな……」

姿を現したのは、左腕と頭部左側の装甲をほとんど失ったルプスレイトと、右上半身のほとんどと左側のスタビライザユニット、そして頭部アンテナ失った大破寸前のセフティアリベイクフルシティだった。会場は今までの喧騒を打ち消され、誰もが完全に絶句していた。

「三日月も長月も……本物の悪魔なの!?」

「ビビったら駄目だ暁ちゃん!」

暁の耳に久条の言葉が届いた。すると、久条の操るイオグレイズはバトルアックスを背中にマウントしていたバトルブレードに持ち替え、セフティアリベイクフルシティに向かって行った。

「所詮死にぞこないだ!暁ちゃんは響ちゃんと合流してもう1機の方を!」

「わ、わかった!」

そう言って暁は、アカツキ・ハイペリオンマスターをヴェールフェニックスの元へ向かわせた。イオグレイズは尚もセフティアリベイクフルシティに向かっていく。

「引導を渡してやる!」

フラフラとよろめきながら立ち上がるセフティアリベイクフルシティ。すると長月の耳に、弱々しいながらもしっかりとした三日月の声が聞こえてきた。

「生きてますかぁ……?」

長月もまた、荒い息を吐きながら答える。

「あ、ああ。どうにかな……はぁはぁ……」

するとやがてイオグレイズの接近を伝える接近警報が鳴り始めた。長月は残った気力と体力を振り絞る。

「しょうがない………」

激しくなった接近警報の音が長月の耳に届く。

「負けを認めるまで…戦って………」

そして、長月は叫んだ。

「命令を……果たしてやろうじゃないかっ!」

イオグレイズのバトルブレードが振り上げられたのと同時に、セフティアリベイクフルシティは全力の右ストレートを放った。

「ぬぅああああ!!!」

大破寸前のルプスレイトもようやく立ち上がる。弱々しい声で三日月が口を開いた。

「そうですね……まだ、止まれない……」

そして三日月はルプスレイトに問いかけた。

「ねぇ…バルバトス。あなただって、止まりたくないですよね?」

するとルプスレイトはガクリと一瞬バランスを崩しながらも立ち上がり、そうだ。と三日月に答えるようにメインカメラを輝かせた。そしてその輝きはやがて、深紅へと変わり、メインカメラから激しい稲妻が走り始めた。そしてルプスレイトは狼の遠吠えの様な音を発した。それを聞いた三日月は右目から流れ落ちてきた血を舌で舐めとると、ニッと笑いルプスレイトに言った。

「じゃあ行こうかッ!!」

ルプスレイトが地面を1歩踏んだ次の瞬間、ルプスレイトは今までに誰も見たことのない様なスピードでヴェールフェニックスに迫った。

「なっ!?」

余りにも早すぎるルプスレイトのスピードに響が驚愕の声をあげた次の瞬間、ヴェールフェニックスの右腰のサイドアーマーをルプスレイトの右手が掠めた。

「くっ!」

ヴェールフェニックスはビームサーベルを薙ぎ払い、ルプスレイトを追い払ったがすぐそこに大型テイルブレードが上空から襲い掛かった。一直線にヴェールフェニックスへと向かう大型テイルブレード。ヴェールフェニックスがシールドを構えると大型テイルブレードはそのままシールド目掛けて直進し、表面から裏面まで貫いた。しかしそこで大型テイルブレードは止まり、しばらくするとシールドに風穴を開けて抜かれた。

「く、シールドが」

しかしその間に後方に回り込んでいたルプスレイトは背後からヴェールフェニックスを強襲し、その右手はヴェールフェニックスの左肩背面のウイングバインダーを破壊した。慌ててビームサーベルを後方へ向けて斬り払ったヴェールフェニックスだが、そこにルプスレイトの姿は無く空を斬る。

「くそ、早い!」

そこへ再び大型テイルブレードが向かって来た。背後から迫った大型テイルブレードに響が気付いた時には左肩前面のウイングバインダーが破壊されていた。

「わっ!」

次々にルプスレイトの攻撃を受け、損傷していくヴェールフェニックス。すると今度は上空からルプスレイトが迫ってきた。

「はあっ!」

「上っ!!」

ヴェールフェニックスはバックステップで何とか回避したが、反応が一瞬だけ遅れたためヴェールフェニックスの右側のアンテナが折られた。

「まずいな……」

響がそう言った時、前方から大型テイルブレードが再び迫った。響は直撃の瞬間に機体をしゃがませてシールドを掲げた。大型テイルブレードはシールドの表面を削りながら滑り、ヴェールフェニックスは何とかこれを受け流し、凌いだ。しかしルプスレイトはそのまま大型テイルブレードを追うようにヴェールフェニックスに向かって突撃してきた。咄嗟にビームサーベルを前方へ向けたヴェールフェニックス。

「っ!」

ビームサーベルの存在に気づくのが遅れた三日月は慌ててルプスレイトを左に逸らしたが、ギリギリの所でビームの刃がルプスレイトの右腰を掠めていった。

「うっ!」

「当たった!」

ここに至って、ヴェールフェニックスの攻撃が初めてルプスレイトを捉えたのだった。

 

「くぅぅっ!」

「ふんっ!」

イオグレイズがバトルブレードを斬り上げ、セフティアリベイクフルシティの左前腕の装甲を弾き飛ばす。

「ぐ、くぅぅ!」

「この死にぞこないめ!」

イオグレイズは斬り上げたバトルブレードを斬り降ろし、今度は左腕を弾いた。そして、地面に膝をついて倒れてしまうセフティアリベイクフルシティ。長月は荒い息をしながらも、何とかその場に踏みとどまっていた。そしてイオグレイズがバトルブレードを払い、久条が言った。

「この久条純一の裁きを受けろ!」

「っ!?その名前……」

その時、長月の脳裏に「久条純一」という昔聞いたことのある言葉が過った。長月にとっては忘れようもない言葉…いや、名前。セフティアリベイクフルシティのメインカメラがより一層強く光るが、イオグレイズはその脚で踏みつけてくる。

「グッ………ぬぅぅぅううううう―――」

踏みつけられた痛みを受けながら、長月は唸りだす。そして――――

 

 

 

久条政義(あの男)の息子かぁぁぁぁぁッッッー!!!

 

 

 

長月は自身の全てを込めて叫んだ。艦娘だった頃、長月を「使えないクズ」と言い続け、その息子にも彼女を弄ばせていた長月の提督「久条政義(くじょうまさよし)」。その男の息子が目の前にいる。長月が激怒するのに、それは十分な理由だった。セフティアリベイクフルシティは背後に転がっていたリベイクシザーシールドの左の持ち手を掴むと、目にも止まらない速さでそれをハサミ状に展開し、イオグレイズを挟み込んだ。右側のサブアームで右側の持ち手を握ったセフティアリベイクフルシティは、そのままリベイクシザーシールドを抑え込んでいった。

「なんだとっ!?うわあぁぁ!」

挟まれたまま地面に押さえつけられたイオグレイズは、成す術も無くリベイクシザーシールドに圧壊されていく。

「貴様がぁぁぁぁぁッッッー!!!!」

更に叫ぶ長月。久条のいる操縦スペースが次第にブラックアウトになっていく。

「あっあああ!そ、そんな俺は…こんなところで!!」

「潰れろぉぉぉぉぉぉぉッッッー!!!!」

リベイクシザーシールドがイオグレイズを真っ二つにしていく。久条の断末魔が操縦スペースにこだまし、長月は弱々しい声で今の気持ちを口にした。

「はぁ……勝ち続けてれば…良いことある物だなぁ…」

「あ、暁ちゃーん!」

「貴様にこんな形で、仕返しできるとは………」

しかし、長月の意識は段々と遠のいていった。

「ああ…あいつらに……いい土産話が………でき、た、な………」

長月は操縦スペースの中でバタリと倒れ、意識を手離した。

 

長月がイオグレイズを相打ちで倒した頃、キャンピングカーから抜け出してきた少女はゆっくりと階段を上っていた。ふらつく足をどうにか前へ伸ばし、少女は1段ずつ上っていく。やがて開ける視界。聞こえてくる歓声。少女は遂に観客席に辿り着いた。会場の中心を見下ろす少女の目に、ルプスレイトが単機でヴェールフェニックスに挑む姿が映った。

「み、ミカぁ…」

 

ルプスレイトがヴェールフェニックス目掛けて右手を伸ばす。ヴェールフェニックスの回避で左肩に命中した右手は、そのまま肩アーマーを丸ごと吹き飛ばした。そこに大型テイルブレードで攻撃を仕掛ける三日月だったが、大型テイルブレードはヴェールフェニックスの右腕でいなされ、シールドのバルカンで反撃をくらってしまった。三日月はヴェールフェニックスから距離を取ろうしていく。すると響が三日月に問いかけた。

「何故なんだい三日月!何故まだ戦おうとするんだ!もう勝敗が決まったような無意味な戦いに、どんな理由があるっていうんだ!」

すると三日月は弱々しく聞き返した。

「理由?なんですかそれ?……意味?………そうですねぇ……私には意味なんてありません………でも………」

するとそこに、別方向から暁の駆るアカツキ・ハイペリオンマスターが迫ってきた。暁は響に通信で呼びかけた。

「響っ!」

「っ!暁っ!」

「今助けるからね!」

アカツキ・ハイペリオンマスターがALユニットを展開しようとした。しかし――――

「駄目だ暁っ!今、三日月に近づいたら―――」

響が制止した。しかしそれは既に遅かった。目の前から高速で移動したルプスレイトは目にも止まらない速さでアカツキ・ハイペリオンマスターに接近、右腕を大きく振り払って胴体部を抉り。

「わっ!」

背後に回り込んで大型テイルブレードを左肩に打ち込んで踏み付け。

「きゃあっ!」

倒れたアカツキ・ハイペリオンマスターの顔面を掴んで岩壁へと放り投げる。

「いやぁぁー!響ぃー!!」

大型テイルブレードを追撃させてコックピット部分を串刺しにした。コックピットを貫いた大型テイルブレードが勢いよくルプスレイトのバックパックへと戻り、ガチィィィンという大きな音をたてて動きを止める。一瞬にしてアカツキ・ハイペリオンマスターを撃破したルプスレイトの手には、アカツキ・ハイペリオンマスターの黄金色の頭部が握られていた。それを見た響が呟く。

「三日月……君は………」

すると三日月は、穏やかな表情を浮かべながらゆっくりと喋り出した。

「けど……今は……」

三日月の脳裏に今日までの思い出が次々フラッシュバックしていく。

「私には……瑞鳳がくれた意味がある………」

艦娘時代に共に戦った思い出。人間に戻ってからの思い出。

「何にも持っていなかった……私のこの手の中に………こんなにも多くのものがあふれてる」

みんなとの思い出。仲間たちとの思い出。そして――――

 

 

瑞鳳との思い出

 

 

そして三日月がヴェールフェニックスを見つめて呟いた。

「そうだ……私たちもう…辿り着いてたんだ………」

胴体から爆発が起こり、更にふらつきながらもヴェールフェニックスを見つめるルプスレイト。

「何故なんだい三日月。何がそこまで君を突き動かすんだ!」

響の言葉など、もやは三日月の耳には届かずルプスレイトは大型テイルブレードを射出させ、ヴェールフェニックスに迫った。ヴェールフェニックスはビームサーベルを構えて受けの体勢に入っていた。しかし、三日月の意識は既に途切れかけていた。朦朧とする意識、定まらない視界、三日月がそれらを手離そうとした時、その声は轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なに止まろうとしてんだミカァァァァァァァッッッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席に立っていた包帯だらけの少女。瑞鳳が思いの丈と持てる全ての力を込め叫んだ。

瑞鳳の魂の叫びは、喧騒に包まれていた会場を一瞬にして静寂へと変え、観客たちが一斉に瑞鳳の方を向いた。それは電たちも同じだった。

「あれは……瑞鳳さんなのです!?」

「あの姿…いったいどうしたんだ!?」

「でも、とってもヤバそうっぽい!」

そしてその声は、三日月の耳にもしっかりと届いていた。

「ずい、ほう?」

ゆっくりと顔を上げ、意識を取り戻していく三日月。

「み、三日月!団長だ!団長だよ!!」

慌てて皐月が観客席に立つ瑞鳳の姿を三日月の居る操縦スペースの正面に映した。目の前に映った瑞鳳の姿は、三日月を呼び戻すには十分だった。確かに聞こえた瑞鳳の声と姿が、三日月を虚ろの世界から蘇らせたのだ。ヴェールフェニックスへと向かって行くルプスレイトだったがしかし、瑞鳳の姿を目にした三日月はヴェールフェニックスまであと少しという位置でヴェールフェニックスの真横を通り抜けた。大型テイルブレードがヴェールフェニックスの真正面に砂煙を作り、響の視界を奪う。

「目隠し!?」

荒野を先程とほぼ同じ速度で駆けるルプスレイト。

「そうだ……私はまだ止まれない。瑞鳳と一緒に、ここじゃない(・・・・・・)その場所を見たい!」

そして三日月はルプスレイトに再び問いかけた。

「あなたはどうなのっ!バルバトス!!」

するとルプスレイトは、再び狼の遠吠えの様な音を発した。それを聞いて三日月は言った。

「わかったよ、バルバトス………なら……行こう――――」

 

 

私たち、みんなでッ!!

 

 

荒野を駆けたルプスレイトは、やがて荒野のど真ん中に落ちていた1本のメイスを拾った。それはバトル序盤、ルプスレイトがヴェールフェニックスに隙を作る為に投擲したメイスだった。荒野を走りながら、メイスを振り払うルプスレイト。

「見つけたよ三日月!」

そこに響のヴェールフェニックスが向かって来た。三日月はヴェールフェニックスに背後を取られながらも、ルプスレイトを走らせた。しかし、大破寸前のルプスレイトは徐々に距離を詰められていった。

「もう逃げても仕方ありませんね」

そう言って三日月はルプスレイトを反転させた。反転したルプスレイトに若干驚いた響だったが、ビームサーベルをしまうことなくそのまま距離を詰めていく。

「テイルブレード!」

ルプスレイトが大型テイルブレードを放ち、牽制をかけたがヴェールフェニックスはシールドバルカンで大型テイルブレードの動きを止めると右からの袈裟斬りで大型テイルブレードを両断した。

「これでもうテイルブレードは使えないよ!」

「だからどうしたというのですか!」

ビームサーベルを振り切ったヴェールフェニックスにルプスレイトがメイスを右上段から振り下ろす。メイスはヴェールフェニックスの左肩を根元から叩き壊し。

「くっ!まだだぁー!!」

ヴェールフェニックスはビームサーベルを握ったままの手でルプスレイトの顔面を殴りつける。

「グウッ!……この程度でぇー!!」

のけぞってしまったルプスレイトだったが、負けじとヴェールフェニックスを蹴り返す。

「わっ!……まだ…終わってない!」

更に負けじとヴェールフェニックスもルプスレイトを蹴る。

「ああっ!」

遂に弾き飛ばされてしまったルプスレイト。何とか地面に片膝をついて動きを止めたが、目の前には既にビームサーベルを高く掲げたヴェールフェニックスが迫っていた。

「これで終わりだよっ!三日月ぃー!!」

しかし三日月には、諦める気など毛頭なかった。

「私は止まれない!止まる訳には……いかないんだぁぁー!!」

三日月は、武装スロットの中から「ビームサーベルとSP」と表示されたスロットを選択した。するとメイスの先端部後方のロックが外れ、メイス後部からスラスターが噴射された。そしてメイスは一直線にヴェールフェニックスの胴体中央、コックピットを目指してルプスレイトのメイスを握った右腕と共に飛び出した。

「なっ!?」

突然のルプスレイトの行動に響が気付いた時には、既に遅かった。

 

 

 

 

ガキィィィィン―――――

 

 

 

 

胴体中央の装甲に直撃したメイスの先端からパイルバンカーが射出され、ヴェールフェニックスのコックピットを貫通したのだ。貫通したパイルバンカーはバックパックをも突き抜け、ヴェールフェニックスはそのまま倒れ込む様に機能を停止した。

「Battle Ended!」

「流石……ミカ…だ、ね………」

観客席でバトルを見届けた瑞鳳は、そのまま倒れて気を失った。

「ありがとう……バルバトス………ありがとうございます……ずい、ほぅ………」

三日月もまた、崩れるようにその場に倒れ伏し意識を手離した。

 

続く



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EP61 彼女たちについて

バトルシステムがシャットダウンされ、会場が再び歓声に包まれた。一発逆転を果たした月華団には惜しげもない拍手と歓声が送られていたが、現場はそれどころではなかった。

「三日月!長月!」

意識を失って倒れる三日月と長月を起こそうと皐月が2人を交互に揺すっていた。しかし、2人が起きる気配は一切なかった。それを見た暁と響もまた、3人の元へ駆けていった。

「皐月!三日月は!?」

「ダメだよ!2人共うんともすんとも返事がないよ!」

「と、とにかく医務室に運ぶわよ響!皐月は、長月を右から支えて!」

「わ、わかった!」

「暁、あの久条って人は?」

「今はそんなことどうでもいいわ!響は三日月をお願いね!」

「―――!!」

暁の言葉に、久条は黙ってその場を後にした。暁たちは三日月と長月を担ぎ、医務室に向かった。

 

一方その頃、電たちは瑞鳳の元へ向かっていた。瑞鳳もまた、バトルの決着を見てそのまま倒れてしまったのだ。それを見て、放っておくなど彼女たちにはできなかった。

「瑞鳳さん大丈夫っぽい?」

「たぶん大丈夫じゃないと思うのです!」

「うん。だから急ごう!」

そう言って3人は観客席を走った。そして瑞鳳の元に辿り着いた時、そこには別の場所でバトルを見ていた雷の姿があった。雷は一生懸命に瑞鳳の肩を揺すって声をかけていた。

「ず、瑞鳳さん!しっかりしてよ!」

「あ、あれ!?雷ちゃんなのです!?」

「い、電!?なんでここに?」

そこにいた雷の姿に驚く電。しかしそんな中で瑞鳳の元に駆け寄った時雨の言葉が2人を現実へと呼び戻した。

「瑞鳳さん聞こえるかい!………駄目だ。返事がない」

「し、時雨。どうするっぽい!」

「とにかく医務室に運ぼう!雷、君も手伝ってくれるよね?」

「も、勿論よ!人命救助は雷様の十八番なんだから!」

「電も手伝うのです!」

「雷と電は左から支えてくれ!夕立は僕と右側だ!」

「了解よ!」「なのです!」「ぽい!」

4人は瑞鳳を肩で支えながら目の前の階段を下りていった。ただ、瑞鳳の脚は引きずられていた。

 

そして医務室に辿り着いた4人は、扉を開け医務室に入った。そこには既に暁たちが辿り着いていて、三日月と長月の眠っているベッドの隣に立っていた。ガラっという扉の音に気づいた響が電たちの方を向いた。

「あれ?電に時雨、夕立じゃないか……て、雷もいたんだね」

「ちょっと!雷の事をついでみたいに言わないでよ!」

「ちょっと雷!静かにしなさいよ!ここ医務室なのよ!」

「あ、ごめん」

雷が謝ったところで、電たちも瑞鳳をベッドに寝かせた。全身包帯だらけの瑞鳳を見た皐月以外の全員はとても不思議に思っていた。昨日までガンプラバトルの準備に奔走していたのなら、まずこんな大怪我をどこでするのかが謎である。

「それにしても、何で瑞鳳さん。全身包帯グルグル巻きっぽい?」

「確かにちょっと変だよね……皐月、君は何か知らないのかい?」

「あ、えっと……昨日、突然知らない人たちに襲撃されて団長が倒れたってことしか……」

「しゅ、襲撃ですって!?」

皐月の言葉を聞いた雷が驚きの声をあげた。皐月は、驚くのも無理ないよね。と小さく言った。

「実際、ボクも驚いたんだ…いきなり、団長が倒れた!なんて信じられないしさ」

「そうだったのね……だから三日月も長月もあんな戦い方をしてたんだ」

「うん……団長の悲報で士気が落ちてたボクたちを奮い立たせてくれたのは………他でもない、三日月だったから…」

「………」

響はこの瑞鳳襲撃事件の首謀者が「暁の親衛隊」によるものだと確信を持っていたが、ここは言わなかった。

「でも……誰が瑞鳳さんを手当てしたのでしょう?」

「うん……ボクもそれが気になってたんだ」

「考えられるのは、襲撃された場所の近くに住んでいた人。かな……」

「それは無いかも……襲撃された場所。ここから結構離れてるし」

「そうなんだ……」

すると、室内が一気に静まり返った。瑞鳳と三日月、長月の呼吸の音だけが医務室内に響いていた。しかし、そんな時だった。

 

ガラッ!

 

不意に医務室の扉が開いたのだ。突然の事で驚く電たちは、一斉に扉の方へ顔を向けた。

「やれやれ……車に瑞鳳が居ないと思ったら、こんな所に居たとはな」

「あれ?深海提督さんなのです。何でこんなところに?」

扉に立っていたのは深海だった。深海は頭をポリポリと掻きながら、医務室に入ってきた。

「なんでも何も、瑞鳳が車から消えてたからこうして探しに来たんだよ……まったく、そんな身体で勝手に出歩きやがって……」

「ええ!?し、深海提督って…あの深海提督!!い、電!ちゃんと説明しなさい!」

「そ、そうよ!雷にも教えなさい!!」

「はわわ!お、落ち着いてほしいのです!」

「うわぁ!!ほ、本物の深海司令官じゃん!なんでこんな所に居るの!?」

と、若干の遅れはあったものの突然本物の深海が現れたことに驚く暁と雷そして、皐月。響だけはいたって冷静だった。深海は、やれやれ。と溜息を吐いた。深海は順を追って説明を始めた。

 

「なるほどね。倒れた団長と卯月、菊月を深海司令官の奥さんが見つけて、深海司令官の車に連れていった。ってことだね!」

「そう言うことだ。瑞鳳は全身に打撲と、頭に軽い切り傷があったが治療はしたから大丈夫だ」

「ありがとう深海司令官!みんなを代表してお礼を言うよ!」

「じゃあ、深海司令は何でここに瑞鳳さんが居るってわかったんだい?」

「簡単だ。痕跡を辿った」

「こ、痕跡を辿った!?」

「俺は昔からサバイバルをして生きてきた。だから自然と身に付いた技能だ。何より、瑞鳳は怪我人。痕跡がすぐに見つかったな」

「み、深海提督さんって半端なく凄いっぽい……」

「な、なのです……」

「そうだね……」

すると深海は、ふぅ。と息を吐くと皐月に声をかけた。

「ところで皐月。お前たちはこの後どうするんだ?」

「どうするって……大会の事だよね?」

「ああ。瑞鳳と長月は大丈夫だろうが……三日月はドクターストップをくらったんじゃないか?」

「え!?な、なんでわかったの!」

皐月の言う通り、電たちより先に医務室に来た皐月たちはその場にいた医師に三日月を見せた。そして医師は、再び三日月にロストシーボ現象が起こっていると言い、ドクターストップを言い渡したのだ。深海はその理由を淡々と答えていった。

「俺も一応アシムレイトが使えるからな…ある程度の知識は一応持っている。ファイターがアシムレイトを通じて過剰に機体とリンクした時、身体のある場所から血がにじみ出てくる……そして三日月の目元に血を拭った跡がある。ここまで言えば、わかるだろ」

「う、うん……」

「深海司令官。その場所ってまさか……」

「ああ。右か左、どちらかの眼だ」

「そ、そんな……」

驚愕し言葉を失う暁と雷。

「青葉から、県代表戦の時の事も聞いた。その時もこんなだったらしいな」

「うん。三日月は気にしてなかったけど、団のみんなは全員心配してた……水無月は特にね」

「そうか……それで、どうするんだ皐月?」

深海の言葉に沈黙する皐月。ただ黙って彼女の言葉を待っていた深海と電たち。

(今の戦力……みんなの力を当てにしてないって訳じゃないけど、三日月も長月も睦月もいないこの状況で、果たして電たちに勝てるのかな……)

皐月はただただ静かに考えていた。深海も電たちは彼女の言葉を待ち続けていた。すると、3つあるベットの内の1つから声がした。

「うう……さ、皐月ちゃ、ん」

「!?」

その声は瑞鳳のものだった。突然目を覚ました瑞鳳に驚く一同。何とか身体を起き上がらせようとしている瑞鳳に慌てて皐月が駆け寄る。

「だ、団長、無理に動いちゃダメだよ!」

皐月は起き上がろうとしていた瑞鳳を何とかベットに横たわらせた。すると瑞鳳は弱々しい声で口を開いた。

「無理を押し付けて、ごめんね…皐月ちゃん」

「な、なに言ってるのっ…ボクは…ただ…団長が……瑞鳳さんが心配でっ……」

「そんなことを言ってもらえるなんて、私は幸せ者……だなぁ」

「瑞鳳さんっうう……」

瑞鳳と話しているうちに目に涙を浮かべていく皐月。瑞鳳は皐月の髪を撫でながら告げた。

「皐月ちゃん。私は、しばらく前線に行けないから……月華団のみんなをお願いできるかな?」

「瑞鳳さん?」

「死ぬわけじゃないから、安心はしてほしいな……」

そう言って瑞鳳は精一杯作った笑顔を皐月に見せた。皐月はその笑顔見て、ようやく目に溜めていた涙を拭った。

「じゃあ、指示をお願いするよ。団長!」

皐月はいつものハツラツとした調子を取り戻し、瑞鳳に指示を仰いだ。瑞鳳は、わかった!と少しだけ元気を取り戻した声で言った。

「現在をもって…月華団は全国大会を棄権。深海提督の鎮守府に向かうことにします!」

「了解だょ―――え?ええ!深海司令官の鎮守府に行くの!?」

瑞鳳の出した指示に驚き声をあげる皐月。暁たちもそれは同じだった。

「ず、瑞鳳さんってそんな突拍子なこと言う人だったのね……」

「暁も驚いたわ……レディらしくは無いかもだけど」

「ハラショー」

「だ、団長。なんでまたそんな突拍子なことを言ったの?」

「深海提督の奥さんから聞いたんだ。「深海提督は月華団の力を貸してほしい。って言ってたことがある」って」

「え?月華団の力?」

瑞鳳の言葉に更にポカンとする皐月。すると、今度は今まで沈黙を保っていた深海が、俺が説明する。と、口を開いた。

「俺は今、この全国大会で戦っている奴らをスカウトして回っているんだ」

「スカウト?」

「ああ。そう遠くない未来、これからのガンプラバトルに大きな影響を及ぼす事件が起こる。と俺は思っている」

「これからのガンプラバトルに大きな影響を及ぼす事件?」

「そんなことが起こるっぽい?」

深海の言葉に不思議になる時雨と夕立。しかし数日前、加賀たちをキャンピングカーに連れていった時に、深海が「ガンプラを使った何かがある」といっていたのを思い出した。

「あ!深海提督、それってもしかして!」

「思い出したか時雨……つまりはそう言うことだ」

「ちょっと、ボクにもわかるように説明してよ!」

皐月がそう言うと、深海は、すまなかったな。と言って続けた。

「つまりはその事件が起こった時に、月華団の力を貸してほしいということだ。頼めるなら、暁たち3人もお願いしたい」

「え?暁たちも?」

深海の突然のスカウトに驚く暁と雷。すると響が深海に切りだした。

「深海司令、1つ聞きたい。その事件が起こるって確証はあるのかい?」

「………ある」

「ほぅ…その理由は?」

響の質問に、深海はすぐに答えた。

「この大会の中で、加賀たち百年記高校が奴らに襲われ、翔鶴が拉致されたからだ」

「………」

「瑞鶴の話によれば、本当に狙われたのは瑞鶴だったらしい。その時にそいつがこう言ったらしい「貴女がこの3人の中で1番強いからです」とな」

「………つまりその事件を企んでいる人たちも、戦力を集めているから深海司令もそれに備えてるってことだね?」

「ああ。そう言うことだ」

「なるほどね……」

と、納得する響だったが暁と雷は依然ちんぷんかんぷんな顔だった。それを見て頭をポリポリと掻く深海。すると響は依然ちんぷんかんぷんな顔をする2人に、簡単に説明をした。そして説明を聞き終わった暁と雷は、元気よく答えた。

「わかったわ!暁の力、深海司令官に貸すわ!」

「この雷様にかかれば楽勝よ!任せて深海司令官!」

「ああ。ありがとうな3人とも」

「暁が決めたことさ。私はそれに従うだけだよ」

少しだけ賑わう医務室。すると、今までの会話を聞いていた時雨が何かに気づいてか、口を開いた。

「あれ?と言うことはぁ………僕たちまた不戦勝?」

「「………あ」」

時雨の言葉に拍子抜けした声を放つ電と夕立。結果として、医務室は再び静寂に包まれた。

 

続く



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EP62 彼の者との対決

翌日、選手村ホテルの部屋で待機していた電たち。準々決勝と、準決勝を不戦勝で勝ち抜いた彼女たちだったが当の本人たちはあまり良い気持ではなかった。

「なんか……全国大会に出てるのにつまんないっぽい」

「電もそう思うのです…加賀さんや三日月ちゃんたちと戦ってみたかったのです」

「無効に事情がある以上、どうしようも出来ないけど……僕も同じ気持ちだよ」

「「「………はぁ」」」

3人は揃ってため息を吐いた。その時、不意に時雨のスマホが鳴り出した。机の上に置いてあったスマホに手を伸ばし、着信を確認する時雨。

「深海提督から?」

時雨は電話に出た。

「もしもし、深海提督?……え?今から、近くのデパートに来てほしい?………うん。うん」

電と夕立は黙って時雨の言葉を聞いていた。しばらくして―――

「うん、わかったよ。今から向かうね」

時雨はそう言って電話を切った。夕立が、どうしたっぽい?と聞くと時雨は電話の内容を手短に説明した。

「な、なるほど……電たちの腕が鈍らないように、深海提督さんがバトルをしてくれるのですね!」

「あの深海提督さんとバトルなんて、とっても楽しみっぽい!」

「一応特訓なんだからね、夕立?勘違いしないでよ?」

「大丈夫っぽい!」

「なら、急いでそのデパートに向かいましょう!遅刻はいけないのです!」

「そうだね!」

電たちはそれぞれの鞄にガンプラを入れ、部屋を出ていった。

 

「………」

廊下の隅で黒いフードが3人を見ていた。そして――――

「そろそろ、いいかもしれないね……」

黒いフードは3人を後をつけていった。

 

デパートに着いた電たちは、深海の姿を探した。しかし、デパートの入り口でいくら探しても深海の姿は見つからなかった。やがて捜し疲れた夕立が根を上げた。

「うあ~深海提督さん、全然見つからないっぽ~い!」

「おかしいなぁ…デパートの入り口で待ってるって言ってた筈だけど……」

「もしかして電たちが遅すぎたから、帰っちゃったのです!?」

「いや、そんな訳ないだろ……」

「「「うわあっ!!」」」

背後から突然声を掛けられ、驚く3人。そこにはフード付きのグレーの上着を羽織り、サングラスをかけた右目が隠れている程長い白髪の男が立っていた。3人は振り向いてすぐさま臨戦態勢の構えを取った。

「お、おい、俺だ!深海だ!」

男はサングラスを外した。すると、そこには深海の青い眼があった。

「み、深海提督!?」

「シー!俺だとばれると厄介だ!俺の事は黒野って呼べ、良いな?」

「え?あ、うん……」

そして4人はデパートへと入っていった。そしてしばらく歩き、ガンプラを売っているエリアまでやってきた。

「あ、お父さん!」

「おっそいよ、おとーさん!」

「待ちくたびれた。かな」

「………!!」

そこでは秋雨、梅雨葉、雨葉、白が待っていた。

「悪かったって……」

渋々謝る深海。それを見て苦笑いする電たち。しかし、深海はすぐに切り替えた。

「さて、早速始めるぞ」

「あ!おとーさん流した!」

雨葉の声を深海はスルーしてバトルエリアに向かって行った。ふてくされて頬を膨らませる雨葉。

「雨葉、来ないなら置いてくよ?」

「もう!梅雨葉までひどいひどいひどい!!」

「あはは……」

「………!!」

4人はお互いに笑いながら深海たちの後を追っていった。

 

バトルエリアにある台を挟んで電、時雨、夕立と、深海、秋雨、梅雨葉が対峙する。そして先に口を開いたのは深海だった。

「全国の決勝が控えているからな。今回だけはダメージレベルCでやるぞ」

「流石深海提督さん!わかってるっぽい!」

「ただし、俺は最初から本気でいく。お前たちも俺たちを全力で墜としに来い。手を抜くことは許さん…いいな?」

「はい!」「わかったよ」「夕立の本気、見せたげる!」

「バトルシステム、立ち上げるね」

深海の隣に立っていた梅雨葉がバトルシステムを立ち上げた。システム音声が起動を告げる。

「Gun-pla Battel combat mode stand up! Model damege level set to C.Please set yuar GP base」

深海の宣言通り、ダメージレベルはガンプラに一切のダメージが入らない「レベルC」にセットされた。6人がそれぞれ、GPベースをセットする。

「Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 Space.」

プラフスキー粒子が形作った宇宙が、6人の目の前に広がる。

「Please set year Gun-pla.」

6人はガンプラを目の前の台座にセットする。システムがガンプラを読み込み、メインカメラが発光する。

「Battle Start!」

発進体制に入った6人のガンプラ、そして6機のガンプラはファイターの掛け声と共に出撃していった。

「電。イナヅマガンダムⅡ、出撃です!」

「時雨。ガンダムアサルトレインバレット、行くよ!」

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメアパーティー、出撃よ!」

先に出撃したのは電たちだった。

「お父さん、先に行くね!秋雨。エクストラパック、行っきまーす!」

「梅雨葉。ナラティブガンダムE装備、行きますっ」

そして、最後になった深海は少しだけ口元に笑みを浮かべた。

「見せてもらおうか…今のお前たちの実力を――――黒野深海。ガンダムエグザアウェリアス、出る!」

深海が更に手を加えたガンダムエグザアウェリアスが、宇宙へと飛翔した。

 

続く



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EP63 実力

宇宙空間を飛ぶ電たちのガンプラ。3機は固まって行動することでそれぞれの死角をカバーする作戦だった。

「深海提督さんの実力は本物なのです。あのガンダム・アイアンボトムサウンドと互角以上に戦えていたのです!」

「それはかなりの強敵の予感っぽい!」

「だから油断せずにお互いをフォローしあうことを心掛けるんだ――――っ!?」

時雨がそう言った瞬間、前方から黄色いビームの光が迫ってきた。時雨が、散開!と言った次の瞬間、3機が元居た場所をそのビームは通過していった。そして3機はバラバラに離されてしまった。

「か、間一髪だったっぽい……」

「隙ありだよ。夕立さん」

「っ!」

安堵していた夕立の背後から、全身に赤いサイコフレームを装備したナラティブガンダムE装備がビームサーベルを振り上げて襲い掛かった。背後を振り返る暇のなかった夕立はスラスター全開でその場から退避した。ビームサーベルは宇宙空間の空を斬り、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーを捉えることは出来なかった。

「早いっ」

「梅雨葉ちゃんの接近に全く気づかなかったっぽい……でも、見つけちゃえばこっちのものっぽい!」 

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは両手のグリップを鞘へと伸ばし、真ん中に入ったミドルサイズの刀身を抜いた。

「夕立。接近戦なら負けないっぽい!」

そして、再びスラスター全開でナラティブガンダムE装備に迫った。ナラティブガンダムE装備はビームライフルを撃ちながら高速で後退していく。それを必死に追うユニコーンガンダムナイトメアパーティー。その距離は段々と縮んでいき、やがて近接戦闘が可能な距離にまでなった。

「捉えたっぽーい!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはナラティブガンダムE装備目掛け、全力の縦斬りを放った。

「あまいよっ」

しかし、ナラティブガンダムE装備はその場でバク転をして縦斬りを回避した。

「くっそー避けられたっぽぃ――――っ!?」

だがその次の瞬間、夕立のいる操縦スペース全方位から一斉にアラートが鳴った。夕立は慌てて周囲を見渡した。するとそこには、いつの間にか金色の本体に緑のクリアパーツの刃を持つ「アウェリアスウイング」がユニコーンガンダムナイトメアパーティーを取り囲み、ビームを一斉射しようとしていた。そして正面からは梅雨葉のナラティブガンダムE装備がビームライフルを向けていた。

「深海提督さんのドラグーン!?い、いつの間に!?」

驚愕する夕立。するとそこに深海の声が聞こえてきた。

「相手を見つけると周りが見えなくなる。相手の陽動に気づけない。自分の力を過信し過ぎている。」

「その声は、深海提督さん!?」

夕立の正面モニターに、ガンダムエグザアウェリアスと深海の顔が映った。

「それがお前の弱い部分だ。降参しろ夕立。この状況では、お前の撃墜は確実だ」

「ううう……悔しいっぽい」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは手にした全ての武器を捨て両手を上げた。夕立の正面に降参を現す「Submission」の文字が映った。

「よし、次に行くぞ梅雨葉」

「うん。秋雨が心配」

ガンダムエグザアウェリアスと、ナラティブガンダムE装備はユニコーンガンダムナイトメアパーティーをその場に残して飛び去って行った。

 

宇宙空間をエクストラパックがイナヅマガンダムⅡに追いかけられながら飛んでいた。イナヅマガンダムⅡはビームライフルを放ちながら追いかけ、エクストラパックはハイパーバズーカを撃ちながら逃げる。

「流石秋雨ちゃんのガンプラ、早いのです!」

「ちょっとでも気を抜いたら追いつかれる!」

「もらったよ!」

そして時々、遥か後方から時雨のアサルトレインバレットの狙撃がエクストラパックを襲ってくる。しかし秋雨は今まで、何とかその全ての狙撃を回避し続けていた。

「くっそー!」

しかし秋雨にも限界と言うものはある。2機を同時に相手取る現状が続けば、疲労もたまりガンプラの操作も荒くなっていく。

「電!そのまま追い込むんだ!」

「なのです!」

イナヅマガンダムⅡとアサルトレインバレットの攻撃は未だ続いていた。しかしその時だった。

「秋雨!」

エクストラパックの左方向からナラティブガンダムE装備がビームライフルを放ちながら割って入ってきた。

「梅雨葉!」

「あれは梅雨葉ちゃんのガンプラ!」

電は慌ててイナヅマガンダムⅡを後退させた。そしてその隙にエクストラパックはナラティブガンダムE装備に近づきそのままバックパックにドッキングした。

「待たせてごめん」

「待たせ過ぎだよ梅雨葉!」

ドッキングが完了したナラティブガンダムE装備はビームライフルと大型ビーム砲を放ちながらイナヅマガンダムⅡに迫った。イナヅマガンダムⅡは機動防盾で防ぎながら回避を繰り返す。

「クッ!強いのです!」

「電!」

迫ったナラティブガンダムE装備に向けロングバレルビームライフルを放つ時雨。

「おか――じゃなくて、時雨さんの狙撃。凄い正確だ」

「一旦距離を取ろう梅雨葉!」

時雨は何とか電の窮地を救うことは出来たが、それ(・・)は上空から迫ってきた。

「メガフルバースト!」

アサルトレインバレットの遥か上空から12本のビームと、無数の実弾が物凄いスピードで迫った。

「上!?」

時雨は突然の不意打ちに驚きながらもアサルトレインバレットを緊急反転させてその不意打ちを回避した。回避しながら上空を振り向いたアサルトレインバレット。しかし既に、深海のガンダムエグザアウェリアスはすぐそこまで来ていた。ガンダムエグザアウェリアスは腰からビームサーベルを抜き放ち、アサルトレインバレットに斬りかかった。

「深海提督のガンプラ!?」

アサルトレインバレットも慌ててビームサーベルを抜き、ガンダムエグザアウェリアスの右からの袈裟斬りを受け止めた。しかし、ガンダムエグザアウェリアスはビームサーベルを斬り払って少し後退しヴァリアブルライフルの銃身を縮小させ連結状態で放った。小さな光弾が次々にヴァリアブルライフルから撃ち出され、時雨はそれを必死に回避していた。

「くそっ」

「遅いっ!」

ガンダムエグザアウェリアスは背部のウイングユニットから2基のバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を撃ちながら迫った。アサルトレインバレットはそれを何とか回避したが、再び接近を許してしまいガンダムエグザアウェリアスに近接戦を挑まれた。

「もらった!」

ガンダムエグザアウェリアスはビームサーベルを左から横一文字に斬り払った。アサルトレインバレットはそれをバックして回避し、左からの袈裟斬りを放った。

「やあー!」

「単純な攻め方過ぎだ!」

そう言った深海は、アサルトレインバレットのビームサーベルを握った腕を蹴り上げた。アサルトレインバレットの手からビームサーベルが弾き飛ばされる。

「うわっ!」

時雨が一瞬だけ目を瞑ってしまった。そして、時雨が目を開けたその先には逆さ状態のガンダムエグザアウェリアスがヴァリアブルライフルの銃口を向けている光景が広がっていた。

「索敵範囲の狭さ。格闘戦の不慣れ。それがお前の弱い部分だ」

「………」

時雨はすぐに次の行動を考えた。周囲を見回し、深海の隙を探った。しかし―――

「次の行動をすぐに考えようとする事は、流石部長と言えるな。だが、お前の行動よりこいつ(ヴァリアブルライフル)がお前を撃ち抜く方が早いぞ」

「……参ったよ深海提督。降参だよ」

時雨の正面モニターにも「Submission」の文字が現れた。

 

その頃電は梅雨葉と秋雨のナラティブガンダムE装備を追いかけていたが、エクストラパックと合体したナラティブガンダムE装備はイナヅマガンダムⅡの速さを上回り、その距離は開いていくばかりだった。

「は、早すぎて全然追いつけないのです…」

「まさか、電さんのガンプラを軽々と突き放しちゃうなんて……」

「それだけ推進力が違うってことだね。行くよお姉ちゃん」

「うん!」

そう言ってナラティブガンダムE装備を反転させた梅雨葉。ナラティブガンダムE装備はビームライフルと大型ビーム砲を撃ちながら再接近してきた。

「くっ!」

イナヅマガンダムⅡはそれを左側のスラスターを全開で噴かして回転回避し、通り過ぎていったナラティブガンダムE装備に向けビームライフルとハイパーフォルティスビーム砲を放つ。

「当たってください!」

「そんなものにっ」

「くらえー!」

通り過ぎたナラティブガンダムE装備はエクストラパック機首部の大口径ビーム砲をイナヅマガンダムⅡに放った。照射されたビームを機動防盾で防いだが、勢いに圧されて吹き飛ばされた。

「くぅ!」

「そこっ」

ビームライフルを左手に持ち替えたナラティブガンダムE装備は右手でビームサーベルを抜き、イナヅマガンダムⅡに斬りかかった。

「やられるもんかー!」

左手でビームサーベルを抜き放ったイナヅマガンダムⅡ。ビームサーベルは居合斬りの要領でナラティブガンダムE装備の縦斬りを受け止めた。ぶつかったビームサーベルが火花を散らす。

「流石、不戦勝と言っても全国ファイナリストだね」

「隙ありなのです!」

鍔迫り合いの状態からイナヅマガンダムⅡはバックパック下部のビームキャノンを零距離で撃ち出した。しかし、発射よりも梅雨葉の反応の方が早くビームキャノンは回避されてしまった。

「くそぉー」

「ふぅ…今のはちょっと危なかった」

(っ!電、奴が来るのです!)

「っ!?」

イナヅマガンダムⅡの右上方から2本のビームが飛んできた。イナヅマガンダムⅡはそれを急上昇で回避し、その方向にビームライフルを撃ち返した。

「あれは深海提督さんのガンプラなのです!」

「避けたか。良い反応だ」

ガンダムエグザアウェリアスはイナヅマガンダムⅡのビームライフルを回避しながら連結させたヴァリアブルライフルを撃ち返す。巨大なビームの帯を右回転で回避するイナヅマガンダムⅡは回転しながらビームライフルを撃ち返していく。深海はヴァリアブルライフルを短銃身にすると右手で腰のビームサーベルを抜いて近接戦闘をイナヅマガンダムⅡに仕掛けた。イナヅマガンダムⅡもビームサーベルを構えて待ち受ける。

「しっ!」

「やあ!」

ガンダムエグザアウェリアスの右袈裟斬りとイナヅマガンダムⅡの右からの斬り上げがぶつかり、火花を散らす。

「お父さん!」

そこにナラティブガンダムE装備がビームライフルを放ちながら割って入った。2機は慌てて距離を取った。

「ファトゥム-01、射出!」

イナヅマガンダムⅡはバックパックからファトゥム-01を射出し、ビームライフルを放った。

「梅雨葉、後ろから電さんのファトゥムが来てるよ!」

「一旦回避に専念するよっ」

ファトゥム-01は通り過ぎていったナラティブガンダムE装備を追撃し、イナヅマガンダムⅡはバックパックの折り畳んでいた主翼を展開してガンダムエグザアウェリアスにビームライフルを放ちながら向かって行った。

「深海提督さんッ!」

「チッ」

ガンダムエグザアウェリアスは後退しながら短銃身のヴァリアブルライフルを放つ。しかし、少しずつ距離を詰めたイナヅマガンダムⅡはビームサーベルを左上から袈裟斬りを放った。ガンダムエグザアウェリアスは急上昇でそれを回避し、攻撃を回避されたイナヅマガンダムⅡはガンダムエグザアウェリアスの方向に振り返った。

「アウェリアスウイング!」

イナヅマガンダムⅡの上空でガンダムエグザアウェリアスはアウェリアスウイングを展開した。

「ぷらづまちゃん!」

「任されたのです!」

咄嗟に電はぷらづまと意識を交換した。電の両眼が深紅に変わると、イナヅマガンダムⅡは先程とは全く違うアクロバットなマニューバで四方八方から襲ってくるアウェリアスウイングのビームを回避していった。

「動きが変わった?」

「そこぉ!」

イナヅマガンダムⅡが放ったビームライフルがこの時ようやくガンダムエグザアウェリアスのシールドを捉えた。ビームは対ビームコーティングが施されたシールドによって打ち消されたが、アウェリアスウイングに攻撃される中でシールドにビームを命中させた事に深海は驚いていた。

「あの状況で当ててきただと!?」

「流石スーパードラグーンベース。隙がほぼ無いのです!」

(アウェリアスウイングがスーパードラグーンベースであることも見抜いている。こいつが電の裏人格ってやつか…)

ガンダムエグザアウェリアスはアウェリアスウイングを回避するイナヅマガンダムⅡに向け短銃身のヴァリアブルライフルを撃ちながら迫った。

「クッ!」

イナヅマガンダムⅡはバク転しながらビームライフルを撃ち返して回避する。ガンダムエグザアウェリアスもビームライフルを回避し、イナヅマガンダムⅡに斬りかかった。しかしイナヅマガンダムⅡはマシンキャノンでガンダムエグザアウェリアスを牽制しながら後退した。

「やる!」

ガンダムエグザアウェリアスを牽制することは成功したが、1基のアウェリアスウイングが放ったビームが、イナヅマガンダムⅡのビームライフルに命中した。

「しまった!」

損失判定を受けたビームライフルは武装スロットから消えてしまった。イナヅマガンダムⅡは慌ててビームライフルを投げ捨てたが、その隙を突かれガンダムエグザアウェリアスに接近を許した。

「はぁっ!」

「なんの!」

右からの袈裟斬りがイナヅマガンダムⅡに放たれたが、左手に握ったビームサーベルを逆手で構えたイナヅマガンダムⅡはこれを防いだ。そして、空いた右手でもう1本のビームサーベルも抜き放ち、ガンダムエグザアウェリアスに右方向からの袈裟斬りを放った。ガンダムエグザアウェリアスは高速バックでそれを回避し、マシンキャノンと頭部バルカンをイナヅマガンダムⅡに撃った。イナヅマガンダムⅡはそれを機動防盾で防ぎながらアウェリアスウイングの砲撃を交わしつつガンダムエグザアウェリアスに迫っていった。

「はあぁー!!」

「くっ!」

左右の上段から放たれたイナヅマガンダムⅡのビームサーベルを急上昇で回避したガンダムエグザアウェリアス。そのまま機体を反転させた深海は、バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を撃った。イナヅマガンダムⅡは右への緊急回避で避わし、そのまま弧を描く軌道でガンダムエグザアウェリアスに迫った。

「うりゃあー!」

「せあっ!」

迫るイナヅマガンダムⅡにガンダムエグザアウェリアスは左からビームサーベルを斬り払った。しかし次の瞬間、ビームサーベルは空を斬った。

「なに!?」

「もらったーなのです!!」

そして、ガンダムエグザアウェリアスの後方にいつの間にか回り込んでいたイナヅマガンダムⅡが右手のビームサーベルを右上段から一気に斬り降ろした。

「チィィ!」

遂に焦り声をあげた深海は、ガンダムエグザアウェリアスの左手に握ったヴァリアブルライフルをイナヅマガンダムⅡに向けた。そして次の瞬間――――

 

「Time up!」

 

システムの制限時間が経過し、バトルは終了となった。イナヅマガンダムⅡのビームサーベルはガンダムエグザアウェリアスの喉元を捉えかけ、ガンダムエグザアウェリアスのヴァリアブルライフルもまた、イナヅマガンダムⅡのコックピットに銃口が向けられていた。

システムがシャットダウンされると、深海はバトル台の上に立つイナヅマガンダムⅡと、ガンダムエグザアウェリアスを見終えろしながら言った。

「まさか電があそこまで強いとは思わなかったな…ある意味良い誤算だ」

「あの深海提督さんと渡り合えるなんて、電ちゃん凄いっぽい!夕立なんかすぐ降参させられたっぽい……」

「僕も少しは戦ったけど…勝てなかったよ」

「電だけじゃ負けてたのです。ぷらづまちゃんのおかげなのです!」

「電もいい線いってたのです!」

と、電とぷらづまは互いを褒め合った。

「い、電さんが2人いるみたいだよ……」

「裏人格だからしょうがない」

と、秋雨と梅雨葉の2人は若干ながら驚いていた。

「よし、今日はここまでにするぞ――――っ!?」

訓練を終えようと深海が言った時、天井の通気口が開きそこから筒状の何かが落ちてきた。

「な、なに!?」

「ゲホッ、これは……な、んなの…で……」

「ガ、ス?……」

筒状の物が発する煙は一瞬で部屋を包み込んだ。

「おとーさん!!」

「………!!」

部屋の外にいた雨葉と白は慌ててガラスに張り付いた。

 

 

煙の中、深海は何とか意識を保っていた。自身の目の前には倒れて寝息を立てる5人の姿と、黒い影が見えた。

「クッ……貴、様は……!」

「ごめんね深海司令官!」

「何を……する…気、だ………」

「悪いけど、電ちゃんたちとつゆ―――――」

「ぁ………」

そこで深海も意識を手離し、床に倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――さ――――――とーさ――――おと―――ん―――――

 

 

 

 

(………あめ、は?)

深海は揺らぐ意識の中で雨葉のを聞いた。そしてその声はだんだんと大きくハッキリと聞こえてくるようになっていった。

「おとーさん!!」

「ハッ!?」

深海は慌てて体を起こした。荒い息を吐きながら、少しずつ意識を取り戻していく深海。

「お、おとーさん……良かった……よがっだよぉー!!」

「あ、雨葉……」

「お父さん!!」「………!!」

「っ!!秋雨!白!」

深海は自分の胸元で涙を流しながら抱き着く雨葉と、自身を見下ろす秋雨と白の姿を確認した。深海は額の汗を拭って、深呼吸をした。落ち着きを取り戻した深海は、泣きじゃくる雨葉に問いかけた。

「雨葉、何があった?」

「ううう!ヒック、おとーさん………」

(ダメだこりゃ)

雨葉はとても会話が出来る状態じゃないとわかった深海は、今度は秋雨に問いかけた。

「秋雨、何があったか教えてくれ」

「う、うん!」

秋雨は慌てながらもどうにか頭の中で状況を整理し、深海に伝えた。

「突然天井から筒が落ちてきて、その煙でみんな眠らされちゃって……それで―――」

「ん?電と時雨、夕立。梅雨葉はどうしたんだ?」

ふと深海は、口にした4人がいないことに気づいた。それを聞いた秋雨はか細い声で口を開いた。

 

 

電さんたちと、梅雨葉が連れ去られてしまったの

 

 

「なん…だと……」

深海は絶句した。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はEP35~EP63までに登場したガンプラと登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。


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EP63.5前編 登場人物&ガンプラ解説pt4

今回も前回同様にガンプラの解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。
なお、今回は前後編で投稿させていただきます。ご了承ください。

今回は、電、時雨、夕立、三日月、長月、睦月、弥生、卯月、文月、菊月、暁、響、秋月、涼月、初月のガンプラを解説します。



機体名 イナヅマガンダム(セカンド)

型式番号 ZGMF-X56S-INDM/Ⅱ

ファイター 電  初登場話 第36話  ベース機 イナヅマガンダム(インパルスカスタムバージョン)

機体データ(製作者の設定)全高 19.1m 重量 68.67t

解説

電が全国大会様にイナヅマガンダム(インパルスカスタム)をベースに更なる改良を加えたガンプラ。外見や大まかな装備の変更点は無いが、インパルスカスタムで存在していた分離・合体機構はオミットされ、それに伴ってコンテナも未装備となった。また、格闘戦用シルエット「ファトゥム-02シルエット」はファトゥム-01をビーム刃と実体剣を複合させた大剣「ファトゥム-01ソード」に変形させることによって補われている。

 

武装(追加装備のみ表記)

ファトゥム-01ソード

イナヅマガンダムⅡになってから新たに製作されたビーム刃と実体剣を複合させた大剣。普段はファトゥム-01シルエットとして機能し、シルエットから分離して単独飛行させる機能も依然残されている。大剣への変形プロセスは「翼が背を合わせる様に収納状態になり、翼の前面にビーム刃を展開されて機首部が折り畳み、そこから長いグリップが出てくる」と言う物なっている。発振ビーム刃の色は桃色。

 

機体名 ガンダムアサルトレインバレット

型式番号 GAT-X102R/A

ファイター 時雨  初登場話 第36話  ベース機 ガンダムレインバレット(バージョンアップ版)

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 79t

解説

時雨が全国大会様にガンダムレインバレット(バージョンアップ版)を元に更なる強化を図ったガンプラ。胴体部にもマシンキャノンを増設したアサルトシュラウドを装備することで防御力強化も図られているが、最大の特徴は腰部側面に追加装備された「インコム」の存在で、これはナラティブガンダムB装備に用いられていた物をそのまま使用している。これに伴ってビームピストルは腰裏のケーブルリール裏面へとマウント位置が変更されている。また、シールド裏面に装備されていたビームダガーは使用頻度の少なさとシールド自体がバイポットの役割が大きいと判断した時雨によってオミットされた。

 

武装(追加装備のみ表記)

マシンキャノン 2基

胴体にアサルトシュラウドを装備したことで2基に増設された武装。威力は以前と同様。

インコム 2基

腰部側面に新たに追加された有線式オールレンジ攻撃端末。ナラティブガンダムB装備のインコムをそのまま使っているが、腰裏のケーブルリールは小型化されている。時雨はまだ扱いに慣れていない。発砲ビームの色は桃色。

 

機体名 ユニコーンガンダムナイトメアパーティー

型式番号 RX-0-NTMP

ファイター 夕立  初登場話 第36話  ベース機 ユニコーンガンダムナイトメア(バージョンアップ版)

機体データ(製作者の設定)全高 (ユニコーンモード)21.2m(ナイトメアモード)23.1m 重量 26.3t

解説

夕立が全国大会様に更なる格闘戦バリエーションを増やすことを目的にユニコーンガンダムナイトメア(バージョンアップ版)をベースに強化したガンプラ。最大の特徴は、今回から新たに装備したロング、ミドル、ショートの3本の刃を収めた鞘を両腰に2振り備えていることで、状況に応じてこれらの刀身を使い分けての格闘戦を繰り出すことが出来るようになった。これに伴い本機は、出撃時から刃を付け替える為のグリップを所持しなくてはならなくなったが依然とし手持ちの射撃武器やシールドを持たない為、さほどの影響はなかった。なお、両腰裏のナイフはオミットされた。

 

武装(追加装備のみ表記)

ロングソード 2基

鞘の外側に収められたGNソードから製作された長大な刃をグリップと連結させた武装。3本の刃の中で1番の重量を誇る為、斬撃だけでなく打撃武器としても使える。

ミドルソード 2基

鞘の真ん中に収められたGNロングブレイドから製作されたロングソードより若干短い刃をグリップと連結させた武装。ロングソードとショートソードの中間的な長さの為、使い方は広い。

ショートソード 2基

鞘の内側に収められたGNショートブレイドから製作された短い刃をグリップと連結させた武装。刀身が短い為、乱戦などで真価を発揮する。

ナイトメアパーティーブレイク

夕立が本機を使用するようになってから編み出した必殺技。本機の持つ剣をほぼ全て使用して相手を切り刻む。技の内容は相手と夕立の気分によって変わる為、キチリとした型は無い。

 

機体名 ガンダムバルバトスルプスレイト

型式番号 ASW-G-08R

ファイター 三日月  初登場話 第37話  ベース機 ガンダムバルバトス(月華団使用第6形態)

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 30t

解説

県代表戦において右目と右腕の感覚をバルバトスに捕られてしまった三日月の為に、望月が以前のバルバトスのフレームを利用して製作した三日月の専用機。機体の形状はバルバトスルプスによく見られた曲線的な装甲が多く。両肩や前腕、足回りが特に重点的に曲線化され、フレームにも改修が加えられて前腕部の延長と肘にハードポイントが儲けられこの部分に射撃武装を搭載する形を取っている。バックパックにあったマウントラッチも健在であらゆる装備をマウント可能とし、その中央には大型テイルブレードを備えている。また、三日月の専用機と言うこともあって武装は格闘兵装をメインにし、機体色も三日月をイメージした黒と白のツートン、両肩側面に月華団マークと右肩正面に左曲がりの三日月のマークが設けられている。

 

武装

ソードメイス 

ガンダムバルバトスルプスが装備していた物に分厚いプラ板を加えて、強度と威力を強化したルプスレイトのメイン武装。の筈なのだが劇中では未だに使用されていない。表面には対ビームコーティングを施している。

ツインメイス 2基

ガンダムバルバトスルプスが装備していた物を更に高威力にした武装。せり出した4つの先端には鉄パーツが使用されている。取り回しやすく、威力もある為に三日月はよく愛用している

メイス

ガンダムバルバトスが装備していたメイス。武装中央のパイルバンカーのみ鉄パーツが使用されている。

腕部200mm砲 2基

両肘のハードポイントに装備される本機唯一の射撃武装。使用時は砲身が180度回転し前方を向く形になっている。ビーム兵器ではない為、一撃の威力は低いが牽制や隙を消すなど、用途は広い。

ルプスネイル

両手の指先に装備された鋭利なネイルカバー。先端がかなり鋭利な為、敵機を刺し貫くことも可能。

大型テイルブレード

バックパック中央に装備されたガンダムバルバトスルプスレクスのテイルブレードを大型化した装備。三日月の感覚と同調して動くため、使い勝手がとても良い。

 

機体名 ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティ

型式番号 ASW-G-11S

ファイター 長月  初登場話 第43話  ベース機 ガンダムグシオンリベイクフルシティ

機体データ(製作者の設定)全高 18.9m 重量 37t

解説

長月が望月とガンダムグシオンリベイクフルシティをベースに更なる格闘能力向上を目指してカスタマイズを施したガンプラ。ベース機の平面的な外見をそのまま流用し、スラスターを増設した両肩のアーマーは大型化され推進関連のパーツ性能をかなり高められている。そして本機最大の特徴は両肩に8本、腰横に4本、両脹脛横に10本装備された多数のヒートダートと、アニメのグシオンに存在した頭部の展開機構だ。これはイフリート・シュナイドの物を本機に合わせて調整した物で、刀身が少しだけ大型化している。また、ヒートダート取り外した後のラッチはリベイクシザーシールドのマウントラッチとしても機能するよう製作されている。頭部の展開機構は完全に望月の製作で、原作と同じ展開方で起動する。カラーリングは長月本人によるもので、薄茶色とダークグレーで彩られている。名前の「セフティア」とは英語の「September」をもじった物。

 

武装

200mmレールライフル

グシオンリベイクフルシティが使用していたレールガンをベースに銃身の上面と下面に銃床を取りつけ、強度を向上させた本機最大の威力を誇る武装。しかし銃事態に大きさがある為、取り回しには難がある。リベイクシザーシールドにマウントが可能。

セフティアリベイクハルバード

本機のメイン格闘武装。グシオンリベイクハルバードの刀身部分に対ビームコーティングを施し、防御も出来る武装となった。また斧の刀身内部には鉄板が入っており、威力向上も図られている。リベイクシザーシールドにマウントが可能。

150mmロングレンジライフル・改 2丁

ロングレンジライフルをベースにカスタムが施された本機のサブ射撃武装。威力は200㎜レールライフルより劣るが、連射性があり銃身も少し短くなっているがロングマガジンを装備したことで装弾数も向上している。

ヒートダート 22基

両肩に8本、腰横に4本、両脹脛横に10本装備された武装。短刀としての他、相手に投擲して牽制や武器破壊などに使用できる。イフリート・シュナイドの物を改造した物で、長月はよく投擲武器として使用している。

サブアーム 2基

バックパックのスタビライザ内に格納されているサブアーム。メインアームと全く同じパワーを発揮できる。

ナックルシールド 4基

手甲として従事装備されているナックルガード。殴打攻撃の際の威力向上に一役買っている。

リベイクシザーシールド

リアスカートにマウントされた大型の実体盾。盾の全面に対ビームコーティングが施され、盾の分厚さもあってかなりの防御力を誇る。大型シザースの変形機構はそのままで、敵機を鋏み潰す事も可能。また大型シザース状態でも盾として使用でき、ヒートダート使用後のラッチに装着も出来る。

 

機体名 睦月号

型式番号 STH-16/mc

ファイター 睦月  初登場話 第37話  ベース機 獅電・改

機体データ(製作者の設定)全高 19.8m 重量 40t

解説

睦月と如月が協力して組み上げたガンプラ。獅電改をベースに更なる汎用性強化を目指してカスタマイズを施されており、左肩アーマーはグレイズ改で使用されていた専用マウントラッチになっており、様々な武装を搭載可能となっている。またこのマウントラッチは回転式で、後ろ向きの武装を正面に向けることも可能となっている。また、腰部にガンダムバルバトス(月華団使用第6形態)で使われていたスラスターを追加している。機体色は柳色1色で塗装されており、側頭部に上を向いて曲がっている黄色の三日月のマークがついている。

 

武装

ライフル

通常の獅電が使用していた130mmアサルトライフルをロングマガジン化した武装。

ハイパルチザン

睦月号の為に専用にカスタマイズが施された獅電が使用していたパルチザン。柄の伸縮機構はそのままに、刃の部分は片側を鈍器、片側をソードメイスの様な鋭利な形状に変更され、先端部は打突攻撃用に尖っている。普段は腰裏に柄を短くした状態で格納されている。

バズーカ

左肩のマウントラッチに懸架する320口径のバズーカ。グレイズ改が使用していた物をそのまま使用している。

 

機体名 睦月号(ガンダムフラウロス・改)

型式番号 ASW-G-64/mc

ファイター 睦月  初登場話 第51話  ベース機 ガンダムフラウロス

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 25t

解説

如月が「ガンダムフレームを使ったガンプラを使いたい」という睦月の要望に応えて完成させたガンプラ。原形機であるガンダムフラウロスから変形機構を受け継ぎ、角張ったパーツを曲線的にし、前腕のガントレットも外されている。肩から担ぐ形だったキャノン砲はバックパックに駆動パーツを増やして脇下から撃てるようになっている。また、バックパックを中心にガンダムバエルのウイングユニットと、背部にスラスターを増設し機動力向上を図っている。変形機構に関してはベース機の様なし四足歩行形態ではなく、地上ステージでも飛行が可能な鳥を思わせる物へと変わっている。この変形は「もし、悪魔フラウロスが人と鳥の姿をしていたら」という如月が秘かに秘めたコンセプトが元となっている。機体色は引き続き柳色だが、艶やかさを出す為、V字アンテナ、肩、肘、膝、爪先の先端部に黄色が加えられている。これに伴って側頭部の上を向いて曲がる黄色の三日月はアンテナ先端部へ移り色も黄緑に変更となった。

 

武装

マシンガン 2丁

本機のメイン射撃武装。ガンダムフラウロスが使用していた従来のマシンガンの銃身とマガジンを延長し、威力と装弾数を向上させた武装。変形時は機首を挟む様にバックパックのマウントラッチにマウントとされる。

実体剣 2基

ガンダムバエルのバエルソードをホルダーごと移植した武装。本機唯一の格闘武装で腰裏にマウントとされている。

キャノン砲 2基

肩から担ぐ方式を脇下から展開する方式に変更したフラウロス元来の武装。脇下から発砲するが発射する弾頭を改造し、射程距離の低下は最小限に抑えられている。変形時は駆動アームが稼働しマシンガンの更に外側から展開される。

ダインスレイブ

本機最大の威力を誇る武装。キャノン砲の砲身に専用に槍を収めて発射をする。威力、射程共に他の月華団のガンプラの武装を凌ぐが、1発撃つ度の装填に時間がかかる為使いどころがかなり限られている。

 

機体名 ランド・マンロディパーチカル

型式番号 UGY-R41PC

ファイター 弥生  初登場話 第43話  ベース機 ランドマン・ロディ

機体データ(製作者の設定)全高 17.4m 重量 42t

解説

弥生がランドマン・ロディをベースに支援機としての能力を持たせるべくカスタマイズしたガンプラ。その為格闘武器は装備していないが、ランドマン・ロディから受け継いだ曲面装甲はそのままに、脚部周りを重点的にカスタマイズされている。特に地上ステージでの行動を想定し脚部は地面との接地面を増やしたヒール状の物へと変更され、両脹脛には大きな足回りを生かしてホルスターとして使用され、様々な射撃武器を内装可能としている。また、サイドスカートにはあらゆるマガジンをアサルトライフルなら左右合わせて計4つ、サブマシンガンなら計8つまで携行可能とし、胴体回りには4門のバルカン砲が内蔵されている。機体色は紫と白のツートンカラーで、名前の「パーチカル」は元の「パープル」を卯月の趣味で文字った物らしい。

 

武装

サブマシンガン

本機のメイン射撃武装。ランドマン・ロディが使用している物をそのまま使用しているが、ストックが延長できるようになっている。マガジンに関しても、ロングマガジンを使用し携行弾数を向上させている。

胸部バルカン砲 4門

胸部に装備された近接防御火器。威力こそないが、牽制などには最適な武装。

マガジンラック

マガジンを内装出来るサイドスカート。主に僚機のマガジンを内装している。アサルトライフルのマガジンなら左右合わせて計4つ、サブマシンガンのマガジンなら計8つまで携行可能。

脚部ホルスター

両脹脛に備えられたホルスター。主に僚機の射撃武装を収めており、劇中では卯月号の「アサルティットライフル」を収めていた。

 

機体名 卯月号

型式番号 STH-16/uyc

ファイター 卯月  初登場話 第43話  ベース機 獅電・改二

機体データ(製作者の設定)全高 20m 重量 50t

解説

卯月が弥生の協力の元完成させたガンプラ。ベース機がほぼ同じの3代目睦月号と違い、本機はより格闘戦を想定したカスタマイズが施されている。最大の特徴は両肩に装備された大型バスターソードで、これはオプションセットのバスターソードよりもさらに巨大で、刀身で機体を隠せるほどのサイズとなっている。その為防御用の盾としても使用できるがその反面巨大過ぎて機体にかなりの負荷をかけてしまう為、本機は各所に金属パーツを使用した専用のフレームに使っておりある意味でワンオフ機の様な仕様となっている。また、両前腕部にはガントレットシールドと機関砲を装備し、脚部には増加した重量を補うためのスラスターを備え、頭部はガンダムフェイスをイメージしたV字アンテナを装備している。カラーリングは全身赤一色で、名前が睦月号と似ているが卯月自身は「パクってない」と言っているらしい。

 

武装

大型バスターソード 2基

両肩にマウントされている大型の実体剣。巨大な刀身は自機を覆えるほど巨大だが、その分機体への負荷がかかってしまう為、似たような武装を持つ菊月のランドマンロディ・改でもこの武装は使用できない。実質的な卯月号専用武装。

機関砲 2基

両肘に装備された機関砲。三日月がバルバトスルプスレイトに乗り換えた為、使用しなくなった機関砲を本機に合わせて装着した物。威力、射程、外見に変更点は無い。

ガントレットシールド 2基

両前腕に装備された小型シールド。先端に爪があり、格闘兵装として使用可能。

アサルティットライフル

卯月が弥生に依頼して作成された「多用途アサルトライフル」。外見こそ、獅電が使用するライフルだが、4種存在する各種弾頭を高速連射で発射できそれに合わせて銃身も耐えられるように改造されている。弾の種類はマガジンに塗られた色で判別でき、白は通常弾、赤は焼夷弾、黄色は散弾、青は貫徹弾となっている。

 

機体名 文月・スペシャルマンロディ

型式番号 SPUGY-R41

ファイター 文月  初登場話 第37話  ベース機 ランドマン・ロディ

機体データ(製作者の設定)全高 17m 重量 39.9t

解説

文月が製作した射撃武装のみでカスタマイズされたガンプラ。射撃武装のみを装備している為、格闘戦能力はランド・マンロディパーチカル同様かなり低い。しかしその分、装甲を削ることで防御力と引き換えに機動力が向上され、支援機によく見られる弱点である重量もかなり減らすことに成功している。武装は頭部に2門のバルカン砲、両肩に可動式の機関砲と腰横に迫撃砲を装備し、サブマシンガンを両手に携行することで高い火力を誇っている。機体色は白と黄色のツートンで、左肩正面には右上を向いて曲がった三日月とその上を流れ星がクロスしているマークが描かれている。

 

武装

サブマシンガン 2丁

本機の携行射撃武装。マン・ロディが使用しているサブマシンガンを月華団共通のロングマガジンを使用している。

可動式機関砲 2基

両肩に装備した可動式の機関砲。ある程度なら仰角の変更は可能で、胴体部に多くの弾丸を搭載できる。また、機関砲の為連射も可能。

迫撃砲 2基

両腰に装備された迫撃砲。ガンダムバルバトスが使用した迫撃砲と異なり、バルバトスが使用していた滑腔砲で使われていた砲弾を使用している為、本機最大の威力を誇っている。

頭部バルカン砲 2門

頭部に内装されているランドマン・ロディ従来の装備。敵機に接近を許した際に主に使用する。

 

機体名 ランド・マンロディ改

型式番号 UGY-R41

ファイター 菊月  初登場話 第51話  ベース機 ランドマン・ロディ

機体データ(製作者の設定)全高 17.5m 重量 46t

解説

菊月が組み上げた格闘重視のガンプラ。卯月号と非常に近いコンセプトではあるが、本機は格闘戦に重きを置きつつも汎用性とのバランスを崩さないように設計されている。それでも、本機最大の特徴である左肩にマウントされた大型実体剣「デモリッションバスタードソード」はかなりの異彩を放っている。また、右腕にはガンダムアスタロトのサブアームを装備し、これを使用しデモリッションバスタードを扱っている。これによって左右非対称のシルエットとなったが、これによって多少トリッキーな機動が出来るようになった。

 

武装

サブマシンガン

月華団共通のロングマガジンを使用したサブマシンガン。銃身下部にグレネードランチャーを装備している。

グレネードランチャー

サブマシンガンの銃身下部に装備された武装。本機専用にカスタマイズされた特注品で、左側のエジェクションポートから自動排莢、専用マガジンを装備するなど、他の武装とは一線を掻いた特殊なグレネードランチャーとなっている。

デモリッションバスタードソード

左肩にマウントされたデモリッション・ナイフとバスタード・チョッパーを分割できないようにした武装で、単純な形状ではあるものの鉄パーツを使用することで威力と強度はかなりの物となっている。右手のサブアームによって保持され使用される。

パイルバンカー

デモリッションバスタードソードのバスタード・チョッパーの部分に装備された炸薬式のダインスレイブ。零距離での使用ならば威力は高い。

頭部バルカン砲 2門

ランドマン・ロディ従来の武装。牽制などで真価を発揮する。

 

機体名 アカツキ・ハイペリオンマスター

型式番号 CAORB-X01

ファイター 暁  初登場話 第37話  ベース機 シラヌイアカツキガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.75m 重量 80t

解説

「黄金の神盾」の異名を持つ暁が組み上げた、今作最高の防御力を誇ると言っても過言ではない黄金色のガンプラ。その最大の特徴は全身のビームを反射する装甲と、バックパックに搭載されたシラヌイアカツキをベースとしたAL(アカツキ・リュミエール)ユニットの存在で、前者は機体に直撃したビームを相手に向かって反射させ、後者はユニットを展開し自機や僚機をビームバリアで覆うことで防御を行うことの出来るものである。そして両者の恩恵を受け、本機の装甲はかなり削り込まれておりベース機よりも10tもの軽量化に成功している。また、腰部に装備されたCファンネルと腕部のビームシールドによって間接的な防御も可能となっている。しかし、これによって機体のエネルギーを全てALユニットに回さなければならず、武装であるヒャクライ・スティグマトや試製双刀型ビームサーベルは全て内装エネルギーパックからのエネルギー供給となっている。機体名の「ハイペリオンマスター」はアカツキガンダム同様、高い防御力を誇る「ハイペリオンガンダムを超える者」という意味が込められている。

 

武装

ヒャクライ・スティグマト

本機のメイン射撃武装。ヒャクライをベースに、50発分のエネルギーパックを内装したマガジンを装備した武装。基本はフルオート射撃で使用される。発砲ビームの色は緑色。

試製双刀型ビームサーベル

アカツキガンダム従来の武装をエネルギーパック方式に変更した格闘武装。威力はそのままだが、使用時間に制約がある。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部バルカン砲 2門

頭部に装備されたバルカン砲。アカツキガンダム従来の武装。

ビーム反射装甲

本機の全身を覆うビームを反射させる装甲。その正体は、暁がまだ異名を持つ前に対ビームコーティング塗料と鏡面加工塗料を間違って混ぜ合わせてしまった物で、これがビームを反射させる効果を生み出している(今作のオリジナル設定)。ただし、実弾に対しては無力である。

AL(アカツキ・リュミエール)ユニット 7基

本機最大の特徴と言える武装。シラヌイアカツキをベースに砲撃と防御を可能とする無線式オールレンジユニット。ユニット1基に対して3門のビーム砲を装備し、ビームバリアを展開可能で、このバリアは相手の攻撃を防ぎつつ自分から攻撃できるモノフェーズで出来ている。また、ユニット自体もビーム反射装甲で守られている。これを全機稼働させて取る防御態勢を暁は「アカツキ・リュミエール」と呼んでいる。しかし、使用するために多大なエネルギーを消費してしまい、また対ビームコーティングが施された武装はこのバリアを突破してしまう。発砲ビームと発振ビームの色は緑色。

Cファンネル 4基

腰部正面と側面に装備されたロングタイプのCファンネル。相手に斬撃を加えるだけでなく、間接的な防御も可能としている。

腕部ビームシールド 2基

前腕部に装備されたビームシールド。ALユニット未展開時での使用を前提にしているがその性能は高く、実弾、ビーム共に高い防御力を持つ。

アカツキ・リュミエール

ALユニットを全機稼働し、自機と僚機を囲んで防御する形態。ビームバリア展開中であっても内側からの攻撃は通るようになっている。またユニットはバリアの内側にいる為破壊はほぼ不可能。

アカツキ・リュミエールトラップモード

ALユニットを全機稼働し、相手を取り囲んで拘束する形態。ビームバリアによって相手の動きと攻撃を封じ、外側から攻撃を加えて相手を倒すことが出来る。

 

機体名 ガンダム・ヴェールフェニックス

型式番号 XVG-01P

ファイター 響  初登場話 第37話  ベース機 ウイングガンダム、ガンダムAGE-2ノーマル

機体データ(製作者の設定)全高 17m 重量 15.3t

解説

「白不死鳥」の異名を持つ響が組み上げた純白のガンプラ。響によって機動力を極限近くまで高められており、その機動力は並のガンプラを凌駕している。最大の特徴はベース機であるウイングガンダムの変形機構を踏襲しつつバックパックのウイングを上へ向ける本機オリジナルの飛行形態で、この形態では僚機であるアカツキ・ハイペリオンマスターを上に乗せても飛行が可能な程の推進力を発揮できる。また頭部はガンダムバルバトスの様に丸みを帯びた鋭利な形状をしており、後頭部には不死鳥のとさかを思わせる様なパーツを持っている。しかし、その機動力を獲得するため響は武装の数を減らしている。

 

武装

ツインバスターライフル 2丁

ウイングガンダムゼロのツインバスターライフルに独自のカスタマイズが施されており、ベースの武装より銃身が延長され各所にクリアパーツが使用されている。変形時はシールド両端にマウントされる。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 1基

シールド内部に格納されたビームサーベル。ウイングガンダムの物をそのまま使用しているが、柄の部分の色が白色に変更されている。発振ビーム刃の色は緑色。

マシンキャノン 2門

胸部上面に搭載された近接防御武装。威力が高い為、近接防御だけでなく敵機の破壊も可能。

シールド

ウイングガンダムとウイングガンダムゼロのシールドの特色を合わせた専用シールド。変形時は機首となる為、鳥の顔を思わせる形状をしている。また、中央部を折り曲げることでビームサーベルを収納、抜刀することが出来る。また両端にはツインバスターライフルをマウントすることが出来るマウントラッチとシールドバルカンを装備している。

シールドバルカン 2門

シールド両端に装備された2門のバルカン砲。口径はマシンキャノンより大きく威力は高いが、シールドに装備されている都合上やや取り回しに難がある。

 

機体名 ウイングガンダムゼロアラン

型式番号 XXXG-00W0Ar

ファイター 秋月  初登場話 第39話  ベース機 ウイングガンダムゼロ

機体データ(製作者の設定)全高 16.9m 重量 12t

解説

秋月がウイングガンダムゼロを損傷する度に修復と改修を繰り返し続けていたガンプラ。その為、機体各所には他機種のパーツなどによって補修された箇所や、傷が残ったままの箇所などが多数存在し、はたから見たらほぼ満身創痍の様な外見をしている。特に頭部は右側のアンテナが折れ、右肩アーマーの先端は丸みを帯びた楕円形の大型シールドが設置され、右腕に装備されていたビームシールドも失われて他機種の装甲が追加されている。また、メインカメラも損傷を受けてか右のメインカメラは柿色に近いオレンジ、左のメインカメラは緑色となっている。これらの仕様変更によってベース機に存在した変形機構は失われたが、逆に左右非対称となったためトリッキーな機動を生み出すことに成功している。カラーリングは柿色と白色のツートンで、名前の「アラン」は秋を意味する英語「Autumn」から付けられているが、秋月が発音を聞き間違えたことに気づいていない為「アラン」となった。

 

武装

ツインバスターライフル 2丁

ベース機から引き継いだ武装。ただしカラーリングが白とオレンジに変更されている。それ以外の能力はそのままとなっている。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 1基

左肩アーマーに内装されたビームサーベル。こちらもベース機から引き継いだ武装だが、右肩アーマーが損傷している為この1基しか装備されていない。しかし、出力が向上している為、威力は高い。発振ビーム刃の色は緑色。

マシンキャノン 2基

胸部上面に装備された機関砲。損傷により本体を覆うカバーは外れているが威力はベース機のそのままとなっている。

ビームシールド 1基

左腕に装備されているビームシールド。損傷が進み、ネオバード形態への変形が出来なくなった際に新たに装備された武装。

 

機体名 ガンダムデュナメスハイスナイプ

型式番号 GN-0026

ファイター 涼月  初登場話 第39話  ベース機 ガンダムデュナメス、ケルディムガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 59t

解説

涼月がガンダムデュナメスをベースに更なる狙撃能力と、対多数を相手にした狙撃を可能にするべくカスタマイズしたガンプラ。ガンダムデュナメスとケルディムガンダムの両機のGNスナイパーライフルを装備しているのが最大の特徴にして本機の機体コンセプトを物語っていると言っていいだろう。また涼月自身が狙撃と索敵に集中するため、自動で防御を行えるGNシールドビットを両膝と腰裏に計7つ装備している。しかし、2丁のGNスナイパーライフルでの狙撃が基本攻撃となる為、ビームサーベルなどの格闘武装は装備していない。機体色は空中での活動を想定し視認性低下を目指したグレーと白のツートンとなっている。

 

武装

GNスナイパーライフル

右手で保持するガンダムデュナメスのGNスナイパーライフルからバイポットとサブグリップを取り外したスナイパーライフル。威力と連射性の向上を図られている。発砲ビームの色は桃色。

GNスナイパーライフルⅡ

左手で保持するケルディムガンダムのGNスナイパーライフルⅡからサブグリップを取り外したスナイパーライフル。こちらも威力と連射性の向上が図られている。発砲ビームの色は桃色。

GNカスタムビームピストル 2丁

バックパック両側面にマウントされたGNスナイパーライフル2基の予備兵装。ケルディムガンダムのGNビームピストルⅡを長銃身化している為、スナイパーライフルには劣るが一応の狙撃が可能となっている。しかし、銃身下部のブレイドは廃されている。発砲ビームの色は桃色。

GNミサイルポッド 6基

腰部フロントアーマーとサイドアーマーに内蔵されているミサイルポッド。敵機の接近を許しかねない状況での使用を想定し装備数を増やされている。

GNビームバルカン 2門

頭部に内装されたビームバルカン。敵に接近を許した際の緊急用の武装として装備された。発砲ビームの色は桃色。

 

機体名 ガンダムダブルオーエクシア

型式番号 GN-00001

ファイター 初月  初登場話 第39話  ベース機 ガンダムエクシア

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 58t

解説

初月がガンダムエクシアをベースに、ダブルオーガンダム系のパーツを使いエクシアをツインドライブ稼働にしたガンプラ。カスタマイズが施された当初からツインドライブは安定稼働していた為、初月のカスタマイズテクニックの高さが伺える機体となっている。そして、ガンダムエクシアの代名詞である「セブンソード」も強化されて受け継がれ、メイン武装であるGNソードや、GNロング、ショートブレイドと言った実体剣は刀身を研ぎ澄まして切断力が向上され、GNビームサーベルも出力向上が図られて、GNシールドにも緑色のクリアパーツで製作された刃が追加されて大型化している。また、機体各所にゴムパーツを組み込み本機はアニメに登場したベース機と同等の運動性能を獲得している。機体色はベース機からそのまま引き継がれた青、赤、白のトリコロールとなっている。

 

武装

GNソード

ガンダムエクシアから引き継ぎ、ビーム射撃と強力な斬撃攻撃を繰り出せる複合武装。刀身を研ぎ澄まし、大抵のガンプラを一刀両断出来る切れ味を誇る。しかし、武器の大きさはそのままな為取り回しにやや難がある。発砲ビームの色は桃色。

GNロングブレイド

右腰にマウントされたGNロングブレイドのカスタマイズモデル。刀身は延長されていないが、GNソード同様刀身を研ぎ澄ましたため鋭い切れ味を持つ。マウント状態でもマウントラッチごと回転させることで意表を突いた攻撃も可能となっている。

GNショートブレイド

左腰にマウントされたGNショートブレイドのカスタマイズモデル。GNソード同様刀身を研ぎ澄まされているため鋭い切れ味を持つ。初月はこの武装を逆手に持って使用することが多い。

GNビームサーベル 4基

両肩背面に2基、腰裏に2基装備されたビームサーベル。ベース機からそのまま使用されているが、出力強化により刀身をさらに延長可能としている。発振ビーム刃の色は桃色。

GNバルカン 2基

両腕に内装されたビームバルカン。牽制などで使用される。発砲ビームの色は桃色。

GNブレイドシールド

GNシールドに緑色のクリアパーツを使用した刀身を付け加えた武装。シールドとして機能しつつ、攻撃にも使用できる万能シールド。




いかがでしたでしょうか?これで3回目のガンプラ解説は以上となります。
1週間も投稿が空いてしまった事、本当に申し訳ありません。次回も引き続き、ガンプラの解説となっていますのでご了承ください。


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EP63.5後編 登場人物&ガンプラ解説pt4

今回も前回同様にガンプラと登場人物の解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。

今回は後編です。加賀、翔鶴、瑞鶴、ヲ級、ル級、リ級、阿武隈、北上、大井、川内、伊勢、日向、レ級、駆逐棲姫、防空棲姫、深海のガンプラを解説します。



機体名 ガンダムAGE-1バウンサー

型式番号 AGE-1B

ファイター 加賀  初登場話 第38話  ベース機 ガンダムAGE-1ノーマル

機体データ(製作者の設定)全高 19.2m 重量 45t

解説

加賀が自身の戦闘スタイルに合わせてカスタマイズを施したガンプラ。コンセプトは「もしもアセム編のウルフがAGE-1をフリットから託されて改造していたら」となっている。その為、機体の肩アーマーや腰回りがGバウンサーの物と酷似辞した形状となり、バックパックにはGバウンサーのスラスターバインダーがそのまま移植され、その間にビームキャノンが装備されている。また、シールドはGバウンサーの物を更に鋭利なデザインにした物を装備している。機体色はウルフ・エニアクルのパーソナルカラーである白1色。しかし、胸部のAのマークは残っている。

 

武装

ドッズライフル

本機のメイン射撃武装。ビームをドリル状に回転させ貫通力を高められており、エネルギー効率も加賀のカスタマイズによって最適化がされている。形状はAGE-1ノーマルの物ではなくGバウンサーの物に近い。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

両腰横に装備されたビームサーベル。出力調整による刀身の形状変化はオミットされている。発振ビーム刃の色は桃色。

ビームキャノン 2基

バックパックのスラスターバインダーの間に装備されたビームキャノン。本機最大の威力を誇る。ドッズキャノンと違い、ビームは回転しない照射タイプとなっている。発砲ビームの色は桃色。

シグルブレイド

シールド先端に装備された「レの字」型のブレード。刀身は研ぎ澄まされた緑のクリアパーツを使用している為、鋭い切れ味を誇る。

バウンサーシールド

左腕に装備するGバウンサーのシールドをより鋭利なデザインに変えた物。表面には対ビームコーティングが施されており、先端部にシグルブレイドが取り付けられている。

 

機体名 ガンダムAGE-2ホーキンス

型式番号 AGE-2H

ファイター 瑞鶴  初登場話 第38話  ベース機 ガンダムAGE-2ダブルバレット

機体データ(製作者の設定)全高 18.3m 重量 33t

解説

瑞鶴がAGE-2ダブルバレットにオールレンジ攻撃が可能になるようにとカスタマイズを施したガンプラ。最大の特徴は機体のコンセプトの通り、ツインドッズキャノンの銃身に4基のCファンネルを装備していることだ。このCファンネルはストライダー形態時の主翼も兼ねられている為、形状はAGE-2マグナムのFファンネルに近い形状をしている。武装に関してはガンダムAGE-2系の物を多く使用しているが、ハイパードッズライフルを携行している為かツインドッズキャノンを手持ちで使用することは前提されていないようだ。また、瑞鶴の手によってストライダー形態時でなくとも高速で移動できるよう機動力の向上が図られている。機体のカラーリングは白とオレンジのツートン。名前の「ホーキンス」は鷹の英語である「Hawk」を文字ったもの。

 

武装

ハイパードッズライフル

本機のメイン射撃武装。長身化した銃身によって、AGE-1バウンサーのドッズライフルより貫通力が向上している。更に最大出力で発射した際には貫通力は平時の3倍以上にもなる。ストライダー形態時には機首となりその状態でも使用できるが、ライフル自体が大型の為、取り回しの悪さのは解消されていない。非使用時はリアスカートにマウントされる。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

リアスカートの裏側に2基マウントされている近接格闘武装。瑞鶴は主に二刀流で使用することが多い。発振ビーム刃の色は桃色。

ツインドッズキャノン 2門

両肩に装備されているAGE-2ダブルバレット従来の武装。ハイパードッズライフルまたは、ビームサーベルとの併用を想定して連射性が向上している。しかし瑞鶴自身のバトルスタイルに合わせて大型ビームサーベルの機能は廃されている。発砲ビームの色は桃色。

Cファンネル 4基

AGE-2マグナムの「Fファンネル」に酷似した形状の無線式オールレンジ攻撃端末。ベースがロングタイプのCファンネルの為、名称はそのままとなっている。高速で敵機に斬撃攻撃を行えるが、瑞鶴の未熟な空間認識能力が災いしよく破壊されてしまっている。

カーフミサイル 4基

両脛後部に2基ずつ、計4基内蔵されているミサイルランチャー。敵機への牽制を目的に搭載されている。が、劇中では未使用。

シールド

左腕にマウントされている小型のシールド。形状はガンダムAGE-2ノーマルの物とほぼ同じ。

 

機体名 ガンダムAGE-3FX

型式番号 AGE-3FX

ファイター 翔鶴  初登場話 第38話  ベース機 ガンダムAGE-3ノーマル

機体データ(製作者の設定)全高 18.8m 重量 70.4t

解説

翔鶴が自身の空間認識能力を度合いを鑑みてカスタマイズを施したガンプラ。ガンダムAGE-FXのCファンネルを両肩アーマーの上と側面、両肘、バックパックにロングタイプ4基、ショートタイプ4基の計8基を装備しているのが本機最大の特徴と言えるだろう。本機はガンダムAGE-3ノーマルに似て非常にずんぐりとした外見で、翔鶴が追加したシールドビットも搭載している為、ベース機の重量より2tもの重量増加を招いてしまっている。しかし、重量が増加したことにより機体自体の防御力が向上し、機体の関節部付近の装甲やシールドビットは重圧な装甲と耐ビームコーティングによってビームの直撃を受けても簡単には破壊されない強度を誇っている。カラーリングは赤と白のツートンとなっている。

 

武装

シグマシスライフル

AGE-3ノーマルから引き継いだ大口径ビームキャノン。本機最大の威力を誇るが、ハイパードッズライフルを越える大きさの為、取り回しは劣悪。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

両肘から出力されるビームサーベル。設置個所からの取り外しは不可能となっている為、出力調整でリーチを変化させる調整がなされている。発振ビーム刃の色は桃色。

Cファンネルロング 4基

両肩アーマー側面とバックパックに装備されているロングタイプのCファンネル。ショートタイプに比べて大きい為、ビームライフル程度のビームなら防御できる。機体のカラーに合わせ、クリアパーツは黄色の物を使用しいている。

Cファンネルショート 4基

両肩アーマー上と両肘に装備されたショートタイプのCファンネル。ロングタイプに比べかなり小型な為、防御には向かないが個々のスピードはかなり速い。ロングタイプ同様、機体のカラーに合わせ、クリアパーツは黄色の物を使用しいている。

シールドビット 2基

バックパック背面に装備された大型のシールドビット。ケルディムガンダムのシールドビットより大型の為、防御力は高い。

 

機体名 オギュルディアアストレイ

型式番号 MBF-P01-Ow

ファイター ヲ級  初登場話 第38話  ベース機 アストレイゴールドフレーム・天

機体データ(製作者の設定)全高 18.9m 重量 73t

解説

ヲ級が自身の持つ先読み能力を最大限に生かす為にカスタマイズを施したガンプラ。最大の特徴は両肩のシールドと両脚部に内装されたアルケーガンダムのGNファングを発展させた「Xファング」で、これは形状こそGNファングと同じだが行動範囲の拡大とビームの射程距離、そして発振されるビームサーベルの刀身延長など、より攻撃力を向上させたカスタマイズが施されている。機体の形状はビームカノンが内装された胴体部以外は全体的に丸みを帯びており、脚部はローゼン・ズールの様なスマートなハイヒールとなっている。また、バックパックはアストレイゴールドフレーム・天のバックパックをそのまま使用しているが、マガノイクタチや、マガノシラホコなどの機能はオミットされている。カラーリングは黒と白のツートンとなっている。

 

武装

ビームライフル

右手に携行する射撃武装。形状はνガンダムの物に近く、威力は並のビームライフルを超えるが、ヲ級はやたらとビームカノンを使用するため使用頻度は少なかった。腰裏にマウント可能。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

両腕内に内蔵されたビームサーベル。近接戦を好むヲ級はこの武装の出力を上げており、対ビームコーティングが施されたシールドも容易く切断できる威力を誇る。発振ビーム刃の色は黄色。

ビームカノン 1門

胸部のクリアパーツに内装されたビーム砲。ゼイドラやクロノスのビームバスターを参考に完全な内装化を図った武装。威力の高い照射モードと、連射力のある連射モードの撃ち分けが可能。発砲ビームの色は黄色。

Xファング 16基

本機最大の特徴とも言える武装。それぞれの設置個所に4基ずつ内装されており、行動範囲の拡大、ビームの射程距離、発振ビーム刃の延長と言った攻撃力を強化された無線式オールレンジ攻撃端末。しかし、ここのスピードは強化されていない為、AGE-2ホーキンスのストライダー形態には追いつけなかった。発砲ビームと発振ビーム刃の色は黄色。

 

機体名 ルギリスヴァサーゴ

型式番号 NRX-0013-r

ファイター ル級  初登場話 第38話  ベース機 ガンダムヴァサーゴ・チェストブレイク

機体データ(製作者の設定)全高 17.9m 重量 80t

解説

ル級がガンダムヴァサーゴチェストブレイクの格闘能力を排除し、代わりに高火力の射撃武装を多数搭載させた重装備のガンプラ。両肩アーマーの空洞となっていた箇所は埋められ、アーマーの上と両腕に大口径のビームランチャー、バックパックの側面にはレールキャノンと21連装ミサイルランチャー、両脹脛には28連装ミサイルランチャーを装備し、胸部にはトリプルメガソニック砲と、これまでにない高い火力を誇るガンプラとなっている。しかし、これだけの武装を積んだが為に機体の重量はベース機の設定である8.3tの約10倍となってしまっている。しかし、脚裏の高出力バーニアとバックパックの高出力スラスターによってベース機と同等とまではいかないが、機動力低下はある程度抑えられている。機体色は黒と深紅のツートンとなっている。

 

武装

ビームランチャー 4基

両肩アーマーと両腕に装備された大口径のビームランチャー。本機の主兵装で、威力の高い照射モードと威力を抑えた連射モードの撃ち分けが可能で、どちらのモードでも高い火力を出すことが出来る。発砲ビームの色は黄色。

レールキャノン 2基

バックパックの側面に装備されたレールキャノン。高初速で弾丸を撃ち出し、弾丸は貫徹力に優れている為あらゆるガンプラの装甲を貫通する。

21連装ミサイルランチャー 2基

バックパック裏面に装備されたミサイルランチャー。誘導性の高いミサイルを撃ち出し、面制圧などで活用できる。

28連装ミサイルランチャー 2基

バックパックの21連装ミサイルと同じミサイルだが、装備数はこちらが多い。

トリプルメガソニック砲

本機最大の威力を誇る胸部と腹部のビーム砲。照射モードと拡散モードの2種のモードが存在する。発砲ビームの色は黄色。

 

機体名 リギリンドペイルライダー

型式番号 RX-80PR/r

ファイター リ級  初登場話 第38話  ベース機 ペイルライダー

機体データ(製作者の設定)全高 18.5m 重量 45t

解説

リ級が自身の深海棲艦時代の艤装をイメージして近接格闘機としてのカスタマイズを施したガンプラ。最大の特徴は両腕に装備されたガンダムナタクのドラゴンハングで、これは、内側にある程度の長さに達するとストッパーが働く小さな箱型のパーツを何個も繋げることで伸縮が可能となっており、スラスターが内蔵されている為かなりの高速で射出が可能となっている。また、背部には折り畳み式の大剣をマウントしており、それに加えてビームライフルなどの高威力な射撃武装を持たない為、完全な格闘機体となっている。残念ながら、ベース機に搭載された「HADES(ハデス)」は、使用時にリ級の追従が追いつかない為、本人の意思で外されている。カラーリングは白と黒、各所に光沢を付けた黄土色が施されている。

 

武装

ドラゴンハング 2基

両腕に装備された大型のクロー。ガンダムナタクの装備していた物にスラスターを内装したためベース機の物よりも高速に射出が可能となっている。クローを展開せずに射出すれば威力の高い槍へと攻撃方法を変更できる。

大剣

バックパックにマウントされているデモリッションナイフをベースにした片刃の大剣。折り畳み式の為ではあるが強度問題は、駆動パーツ付近に鉄パーツを使用することである程度改善されている。

ビームサーベル 2基

両腰にマウントされペイルライダー従来の武装。マウント位置などに変更はないが、リ級のカスタマイズにより出力が向上している。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部バルカン 2門

ペイルライダー従来の武装。本機唯一の射撃武装で、敵機への牽制などで使用する。

 

機体名 ビルドストライクガンダムノワール

型式番号 GAT-X105BE

ファイター 阿武隈  初登場話 第38話  ベース機 ビルドストライクガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 17.21m 重量 65t

解説

阿武隈が今までに見てきたストライクガンダムのノウハウをひとつに集約し、完成させたガンプラ。ベース機はビルドストライクガンダムではある物の、今までのストライクガンダム(ビルドストライク、ストライクE等)が固定装備していた武装を全て取り入れている為、バトルでの行動バリエーションが増えている。そして本機最大の特徴と言える、大きく横に突き出した鋭利な形状の両肩アーマーに内装された高出力大型スラスターは機体の機動性を飛躍的に向上させており、チーム間ではやたらと単独行動を強いられている。そして、ストライクガンダム最大の特徴であるストライカーパックにも対応している為、あらゆるストライカーパックを装着可能だが全国大会でのバトルに合わせ、ストライクノワールのノワールストライカーを装着している。カラーリングはストライクガンダム同じトリコロールなっている。

 

武装

ビームライフル

ストライクガンダムの57mm高エネルギービームライフルからフォアグリップを取り外した武装。アカツキガンダムのヒャクライに近い形状ではあるが別物。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル 2基

腰部側面のアーマーシュナイダーのホルダー上部にマウントされたビームサーベル。マウント位置の関係上、ビルドストライクガンダムの様にマウント基部を回転して使用することは出来ない。発振ビーム刃の色は桃色。

対装甲コンバットナイフ「アーマーシュナイダー」 2基

腰部両脇ホルダーに内装された折り畳み式のコンバットナイフ。強度に優れている為、関節部を狙っての攻撃に真価を発揮する。

ビームライフルショーティー 2基

両脹脛にマウントされたストライクEの拳銃型ビームライフル。威力、射程共に通常のビームライフルより劣るが取り回しの良さを生かして近接戦闘で使用を想定して装備されている。発砲ビームの色は緑色。

頭部バルカン砲 4門

ビルドストライクガンダムから引き継いだ武装。

シールド

ストライクガンダムが装備していたシールドにチョバムシールドの特性を合わせた多層構造のシールド。表面全てに対ビームコーティングが施されている為、実弾、ビーム共に高い防御力を誇る。

フラガラッハ3ビームブレイド 2基

ノワールストライカーに装備されているビームと実体刃を併せ持つ大型の剣。ビーム刃としての刀身が延長されている。発振ビーム刃の色は桃色。

リニアガン 2門

ノワールストライカーの翼部に装備された弾丸をより遠くへ撃ち出せるように、カスタマイズが施されている。

 

機体名 ヘビーアームズバスターガンダム

型式番号 GAT-X103/H

ファイター 北上  初登場話 第38話  ベース機 バスターガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 19.4m 重量 86t

解説

北上が艦娘時代からの戦闘スタイルと大井との連携を想定してカスタマイズを施したガンプラ。ガンダムヘビーアームズのミサイル系武装を左肩アーマー上部や左脹脛などに集中配置し、右肩にはレールガン、胸部にはガトリング砲、と言った実弾武装を多数装備している。そして腰裏にはバスターガンダムの94mm高エネルギー収束火線ライフルを改造した2丁の大型ビームライフルを装備している。本機の外見は非常にずんぐりしているものの、高出力のバックパックと足裏に大型バーニアを装備している為ホバー走行を可能としている為、ずんぐりした外見に反して高い機動力を有する。機体色は深緑とグレー、各所に黄色が配色されている。

 

武装

ビームアサルトライフル

本機唯一の携行射撃武装。右手に携行し高い連射性能を誇るビームを撃ち出す。発砲ビームの色は緑色。

大型ビームライフル 2基

腰裏にアームを介して接続されているバスターガンダムの94mm高エネルギー収束火線ライフルを改造した大型ビームライフル。高い威力を誇り、ビームを無効化する装備がなければあらゆる装甲を撃ち抜くことが出来る。発砲ビームの色は緑色。

レールガン

右肩アーマー上部に装備された可動式のレールガン。デュエルガンダムアサルトシュラウドのシヴァをベースに製作されており、広い可動範囲を持つ。

胸部ガトリング砲 2基

胸部左右の開閉式装甲カバー下に隠されたガトリング砲。小型ながらも高い連射性能を持ち、接近戦を挑まれた際などに使用する装備だが、面制圧にも適している。

マイクロミサイル 11発

左肩アーマー上部に装備されたミサイル。誘導性能は持たない為、精密射撃には向かない。

ホーミングミサイル 16発

左脹脛に装備された誘導ミサイル。精密射撃や多重ロックオンによる攻撃を可能としている。

シールド

左腕に装着する中型シールド。表面には耐ビームコーティングが施されている。

 

機体名 ガンダムバスターヘビーアームズ

型式番号 XXXG-103H

ファイター 大井  初登場話 第38話  ベース機 ガンダムヘビーアームズ(EW版)

機体データ(製作者の設定)全高 17.8m 重量 20t

解説

大井が艦娘時代からの戦闘スタイルと北上との連携を想定してカスタマイズを施したガンプラ。ミサイルなどの実弾武装を多数搭載しているが、ヘビーアームズバスターガンダムと違い設置個所が右側に集中している。しかし、本機は両肩にミサイルを装備おり、ヘビーアームズバスターガンダムよりも多いミサイル搭載量を誇る。そして、腰裏にはバスターガンダムの350mmガンランチャーを改造した2丁の大型散弾ライフルを装備している。また本機の外見は非常にずんぐりしたものではあるが、バックパックの高出力スラスターと足裏の大型バーニアによってホバー走行を可能としている。カラーリングは紺色と白のツートン。

 

武装

ビームアサルトライフル

本機唯一の携行射撃武装。右手に携行し高い連射性能を誇るビームを撃ち出す。発砲ビームの色は緑色。

大型散弾ライフル 2丁

腰裏にアームを介して接続されているバスターガンダムの350mmガンランチャーを改造した大型散弾ライフル。高密度で発射される散弾は零距離で使用すれば高い威力を誇り、遠距離であっても面制圧に適している。

胸部ガトリング砲 2基

胸部左右の開閉式装甲カバー下に隠されたガトリング砲。小型ながらも高い連射性能を持ち、接近戦を挑まれた際などに使用する装備だが、面制圧にも適している。

マシンキャノン 2基

両肩に内蔵された機関砲。ガンダムヘビーアームズの装備をそのまま使用している。

頭部バルカン砲 2門

頭部に内蔵されたバルカン砲。主に敵機への牽制に使用する。

マイクロミサイル 16発

右脹脛に装備されたミサイル。誘導性能は持たない為、精密射撃には向かない。

ホーミングミサイル 46発

両肩に装備された誘導ミサイル。ベース機から装弾数は減らされたが大型ミサイルを使用することで威力が向上している。精密射撃や多重ロックオンによる攻撃を可能としている。

シールド

左腕に装着する中型シールド。表面には耐ビームコーティングが施されている。

 

機体名 風魔スサノオ

型式番号 GNX-Y901TW/HUM

ファイター 川内  初登場話 第38話  ベース機 スサノオ

機体データ(製作者の設定)全高 20.3m 重量 60t

解説

川内がスサノオをベースに隠密強襲能力を付与したガンプラ。その為この機体にはガンダムデスサイズH(ヘル)の特殊兵装ハイパージャマーが搭載されており、これによって自機の姿を相手の視覚とレーダーから消すことで非常に高い隠密性能を誇っている。また、機体から放出されるGN粒子も白色の粒子を放出するように改造されている。外見はベース機のスサノオに非常に近いが、両腕がガンダムデスサイズH(EW版)の両腕を思わせる形状となり、大型化されたバックパックはメイン武装である太刀を鞘ごと収められて両端に機体のAMBAC(アンバック)を補助する2対のウイングバインダーを装備している。機体色はスサノオと同じ黒と白のツートンカラーとなっている。

 

武装

太刀

大型化されたバックパックに鞘ごと収められている本機のメイン格闘武装。シラヌイ、ウンリュウではなくガーベラ・ストレートがベースに使用している。とても鋭い切れ味を誇り、相手のガンプラを一太刀で両断することが出来る。

ヒートクナイ 4基

GNクローの内側に装備された刀身が赤熱化する苦無。敵機への接近時に牽制やフェイントなどで使用する。

GNバルカン 2門

胸部に内装されたビームバルカン。本機唯一の射撃武装であるが、ビームを使った射撃なのでバルカンと言えど威力は高い。発砲ビームの色は黄色。

GNクロー 2基

腰部バインダーに1基ずつ装備されたクロー。相手を拘束するためなどに使用されるが、川内自身はあまり使っていない。

 

機体名 ブルーディスティニーFb(フルバーニアン)

型式番号 RX-79BDFb

ファイター 伊勢  初登場話 第39話  ベース機 ブルーディスティニー3号機

機体データ(製作者の設定)全高 19.9m 重量 45t

解説

伊勢が完成させたブルーディスティニー3号機に、更なる機動力強化を施した機体。機動力強化に利用されたのはガンダム試作1号機フルバーニアンで、胸部や両肩アーマー、4基のウイングバインダーを備えたバックパックなどがフルバーニアンにかなり近い形状となっている。更に胸部正面にはメガ粒子砲が装備されている。また脚部には、ガンダムNT-1の大型スラスターユニットが搭載され、機動力がさらに引き上げられている。しかし武装面などは非常にシンプルで、ガンダムタイプの機体が標準装備している物が多く使われている。ブルーディスティニー3号機に搭載された「EXAM(エグザム)システム」は搭載されているものの、劇中では使用されなかった。カラーリングも、ガンダムタイプに多く見られる白、青、赤のトリコロール。

 

武装

ビームライフル

ガンダム試作1号機のビームライフルからビームジュッテを取り外し、Eパック方式を採用したビームライフル。Eパックは銃身後部に取り付けられ、予備のパックはシールド裏面にマウントしている。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

バックパックに懸架されたビームサーベル。設置個所などはフルバーニアンから継承している。発振ビーム刃の色は桃色。

2連装グレネードランチャー

右前腕に固定されたグレネードランチャー。弾倉には4発まで装填可能。

メガ粒子砲 

胸部正面に搭載された大出力ビーム砲。胸部に完全に固定されている為、射角は機体の向きに固定されてしまうが、スペースデブリを撃ち抜けるほどの威力は確保されている。発砲ビームの色は黄色。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制などに使用される。

シールド

ブルーディスティニー3号機のシールドを大型化し、裏面にビームライフルのEパックを2基マウントできる。

 

機体名 ガンダムシナンジ

型式番号 MSNG-06S

ファイター 日向  初登場話 第39話  ベース機 シナンジュ

機体データ(製作者の設定)全高 22.8m 重量 28t

解説

日向が「もしシナンジュ(・・・・・)がガンダムタイプMSだったら」と言うコンセプトを元に組み上げたガンプラ。最大の特徴は、コンセプト通りベース機でモノアイだったメインカメラをガンダムタイプと同じツインアイにし、V字アンテナが搭載されている。外見はシナンジュに非常に近いが、両肩アーマーの空洞部にスラスターを増設しバックパックのプロペラントタンクもより大型化している。また、バックパックのメインスラスターはサザビーと同様のファンネルラックに置き換えられ機動力は落ちてしまっているものの、各部のスラスターやバーニア群の強化によりその低下は最小限に抑えられている。カラーリングはベース機同様、深紅と黒のツートンで金のエングレーブがベース機と同じ個所に施されている。

 

武装

ビームライフル

シナンジュのビームライフルをそのまま使用しているが、威力の向上が図られている。発砲ビームの色は黄色。

ビームアックス 2基

シールド裏面に2基収納されるビームアックス。連結させることでビームナギナタとしても使用でき、シールドに収納された状態でも使用できる。

ビームトンファー 2基

両前腕に内装されたビームサーベル。両手をフリーにして使用できる為使い勝手が良い。発振ビーム刃の色は黄色。

ファンネル 6基

バックパックのファンネルラックに搭載されているファンネル。サザビーのファンネルと全く同じ性能を持つ。発砲ビームの色は青色。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。シナンジュから引き継いだ武装で敵機への牽制などで使用する。

シールド

シナンジュのシールドをそのまま使用している。表面に耐ビームコーティングが施されているが大型の盾の為、取り回しに難がある。

 

機体名 ガンダムレギュルス

型式番号 Xm-zX

ファイター レ級  初登場話 第39話  ベース機 ヴェイガン系ガンプラ

機体データ(製作者の設定)全高 18.6m 重量 50.3t

解説

レ級が電を倒す為だけにカスタマイズを施した超近接格闘ガンプラ。これと定めたベース機は存在せず、ガンダムAGEに登場したヴェイガンMSの特色が多く見られ、特に頭部は形状こそガフランに近いがガンダムタイプの特徴であるツインアイのメインカメラと、ブーメラン型のV字アンテナが取り付けられている。また胸部中央にはゼイドラのビームバスターに似た紫のクリアパーツが装備され、腕周りはゼダスの様な鋭利な形状となっている。下半身に関してはヴェイガン系MSの曲線的な形状から一転して直線的な形状に変化し足回りはガンダムバルバトスルプスの様なヒール状になっている。またバックパックには、機体のAMBAC性能を高めるスタビライザがビームキャノンに変わって装備されており、それがまるでドラゴンの尾をイメージさせる。武装は掌に内装されたビームバルカン兼ビームサーベル、胸部のビームバスターのみとなっている。シンプルなデザインではあるが、レ級の操縦センスによって全国大会を無傷で勝ち進んでいる。カラーリングは黒とグレーのツートンとなっている。

 

武装

ビームバルカン 2門

両掌に内装されたビームバルカン。ヴェイガン系のガンプラがこぞって装備している物をそのまま使用しているが、出力を上げることで威力の高いビームを撃ち出せる。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

ビームバルカンの砲門から出力されるビームサーベル。レ級の強化により、対ビームコーティングが施されたシールドやアーマーであっても斬り裂く威力を誇る。発振ビーム刃の色は黄色。

ビームバスター

胸部中央に装備されたクリアパーツから発射されるビームキャノン。本機最大の威力を誇り、最大出力時はガンプラ6機を貫通するとてつもない貫通力と火力を誇る。発砲ビームの色は黄色。

 

機体名 2.12(ダークネスレイン)ガンダム

型式番号 CBD-002.12

ファイター 駆逐棲姫  初登場話 第39話  ベース機 1.5(アイズ)ガンダム?

機体データ(製作者の設定)全高 23.5m 重量 70t

解説

駆逐棲姫の駆る1.5ガンダムに非常に酷似したガンプラ。スマートな下半身を持ち、1.5ガンダムの元々あったウイングバインダーの内側に追加装備された3枚目、4枚目のウイングバインダーを持ち、胸部中央には前面に大きく突き出した薄紫のクリアパーツを備えている。そして本機は、今までのGNドライブ搭載機には見られなかった3基のGNドライブをバックパック中央と両肘に搭載しており、その莫大に放出される粒子を使用した各種兵装はどれをとっても絶大な威力を誇る。そして1.5ガンダム同様、各種モードへの変形機構を有し、これによって平時でも強力な武装をより強化して使用できる。機体から放出される粒子の色はELSジンクスの様な紫色で、武装から撃ち出されるビームやビーム刃も紫となっている。カラーリングは灰色と濃い紫のツートンカラー。名前の「2.12」は「2」を「Darkness」の「D」に、「12」は「Rain」の「R」に見立てた物である。

 

武装(各特殊モード含め)

GNダブルバスターライフル

1.5ガンダムのGNバスターライフルの銃口を2門に増やした武装。右肘のGNドライブから直接粒子供給を行っている為、非常に高い威力と連射性を併せ持つ。発砲ビームの色は紫色。

GNビームサーベル 2基

右肘のGNドライブに1本、GNシールドの裏面に1本ずつ装備されているビームサーベル。特に右肘の物は出力が高い。発振ビーム刃の色は紫色。

GNビームバスター

胸部中央に存在する薄紫のクリアパーツを使用したビーム砲。この武装のみでも強大な威力を誇るが、ゼノバーストモードで使用すればコロニーを撃ち抜くほどの威力を発揮する。

GNシールド

左肘に装備されている大型のシールド。シールドの縁が少し延長され、GNビームサーベルがマウントされている。

フライトモード

1.5ガンダム従来のモード。バインダーを折ることで空中での安定飛行を可能とする形態。

ハイスピードモード

1.5ガンダム従来のモード。バインダーを後ろに大きく伸ばしてGN粒子を効率的に制御し、高速飛行を可能とした形態。

スタンバイモード

1.5ガンダム従来のモード。1枚目と2枚目のバインダーを右にもしくは左に寄せた形態。右側ではアタックモード、左側ではディフェンスモードに即座に変形可能。

アタックモード

1.5ガンダム従来のモード。バインダーを右に寄せることでGNダブルバスターライフルの威力を向上させる形態。

ディフェンスモード

1.5ガンダム従来のモード。バインダーを左に寄せることでGNシールド表面のGNフィールド効果を高める事の出来る形態。

ハイブラストモード

1枚目と2枚目のバインダーを折り、3枚目と4枚目を後ろに大きく伸ばしたモード。フライトモードの安定性と、ハイスピードモードの高速性を合わせ高機動かつ安定した機動を実現したモード。

ネオスタンバイモード

スタンバイモードを左右同時に使用したモード。アタックモード、ディフェンスモードを即座に同時発動できる形態。

ゼノスタンバイモード

全てのバインダーを右もしくは左に寄せたモード。降順のバスターモード、ガーディアンモードに変形可能な形態。

ゼノバスターモード

4枚のバインダーを右に全て寄せ、GNダブルバスターライフルの攻撃力を格段に上げる形態。その威力はアルヴァアロンキャノンに匹敵するほど。

ゼノガーディアンモード

4枚のバインダーを左に全て寄せ、GNシールドの防御力を格段に上げる形態。メガ粒子砲や、ハイメガビームの連続直撃にも耐えるほどの効果を発揮できる。

ゼノバーストモード

外側2枚のバインダーを肩越しに、内側2枚のバインダーを脇下から展開し、GNビームバスターの威力を格段に向上させるモード。アルヴァアロンキャノンモードをベースに設定されたと思われ、発射されるビームはコロニーを撃ち抜いてしまう程の威力がある。発砲ビームの色は紫色。

 

ファイター 駆逐棲姫 容姿(艦これにおける)駆逐棲姫

フードの人物の事をマスターと呼ぶ、黒い帽子を被ったサイドテールの少女。基本はかなり無口であまり喋らない。電は彼女を、どこかで見たような。と言っていたが未だに正体は不明。

 

機体名 ガンダムボークルス

型式番号 MB-001

ファイター 防空棲姫  初登場話 第39話  ベース機 ガンダムアストレイシリーズ?

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 67t

解説

防空棲姫の駆るガンダムアストレイに非常に酷似したガンプラ。本機は射撃戦を想定したカスタマイズが施されており、円筒状の大型ビームランチャーとレールキャノンを備えたバックパックが装備され、両肩と胸部前面にはその射撃精度を向上させる大型センサーが内装されている。更に脚部はガンダムアストレイとは似ても似つかない細身かつ、脚先に爪の様な装飾が施されたヒール状の物になっている。また、防空棲姫によるカスタマイズによって出力が強化されたバックパックのスラスターは本機を高速ホバー移動させるほどの物となっている。カラーリングは白と黒、各所に深紅が配色されている。

 

武装

ビームライフル 2丁

両手に1丁ずつ携行するビームライフル。ストライクフリーダムガンダムの物をベースに製作されている為、連射性能が非常に高い。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

両前腕から出力されるビームサーベル。「相手に格闘戦を挑まれた時の応急的武装」と防空棲姫は位置付けている為使用頻度は少ない。発振ビーム刃の色は黄色。

大型ビームランチャー 2門

バックパックに装備された円筒状のビームランチャー。ベースは恐らくブラストインパルスガンダムの「ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲」と思われる。脇下から展開し発射態勢を取る。発砲ビームの色は赤色。

4連装ミサイルランチャー 2基

大型ビームランチャーの砲口と正反対の位置に付いているミサイルランチャー。位置の関係上、大型ビームランチャーとの同時発射は出来ない。

レールキャノン 2門

バックパックのスラスターに沿うようにして装着された武装。肩越しに担いで射撃体勢を取る。弾丸は高初速、長射程の為遠距離から回避するのは難しい。

ビームマシンキャノン 2門

胸部に内装されたビームを撃ち出すマシンキャノン。ビームを高速連射するため、牽制のみならず敵機の撃破も可能としている。発砲ビームの色は黄色。

 

ファイター 防空棲姫(照月) 容姿(艦これにおける)防空棲姫

フードの人物をマスターと呼ぶ、白い長髪にどす黒い赤色の目をした少女。駆逐棲姫同様無口であるが、秋月との交流を深めることで徐々に感情豊かになっていった。その正体は秋月の妹である照月で、秋月は彼女を探す為全国大会を目指していた。そして準々決勝で秋月の呼びかけに混乱し、最終的にレ級に見放されしまい戻ることが出来ず秋月たちと共に深海の鎮守府へ向かった。記憶は戻っていないが、好物である「秋月特製いちご大福」は憶えていた。

 

機体名 ガンダムエグザアウェリアス

型式番号 MKI-A00-EXA

ファイター 黒野深海  初登場話 第62話  ベース機 ガンダムアウェリアス

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 68t

解説

黒野深海が全国大会一般の部に出場しながら組み上げたガンプラ。外見は以前までのガンダムアウェリアスと同じだが、バックパック裏面にフリーダムガンダムのバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を新たに装備し、両腰横には折り畳み式のビームライフルに相当する威力を持つビーム砲が搭載され、今まで肩アーマーに内装されていたビームサーベルはビーム砲の上部にマウントされた。また、メイン射撃武装であるヴァリアブルライフルは銃身を伸縮させて威力を調整できるようにカスタマイズが施された。機体名の「エグザ」とは「究極に近づく者」という意味(深海本人が勝手に思いついた)が込められている。

 

武装(追加装備のみ表記)

ヴァリアブルライフル 2丁

銃身を伸縮させることによって、威力の高い長身形態と、連射性に優れた短身形態の2つのモードに切り替えが可能となった。しかし、短身形態ではアウェリアスウイングを装着できない。

バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲 2門

バックパック裏面に追加されたビーム砲。砲の展開方法までも全て継承されている為、高速移動形態でも使用できる。ベース機と同等の威力を持つ。発砲ビームの色は赤色。

ビーム砲 2門

両腰横に追加された折り畳み式のビーム砲。フリーダムガンダムのクスィフィアスレール砲をベースに発射方式をビームに変更した武装。折り畳み式の為威力は並のビームライフル程度になっており、砲身劣化を抑えている。また上部にはビームサーベルをマウント可能。発砲ビームの色は黄色。

 

登場人物解説

海風 容姿(艦これにおける)海風改二

改白露型の長女。姉妹をとても大事にしている為、たまに自己犠牲を惜しまないことがある。深海雨雲姫と化した村雨の従えた白露によって拘束、拉致されてしまう。

 

山風 容姿(艦これにおける)山風

改白露型の次女。臆病な性格の為、艦娘時代から「いらない奴」と提督から言われ続けていた。それが災いし「いらない」という言葉が禁句となってしまったため、言われてしまうと発作を起こしてしまう。ガンプラバトルは一応してはいるが、負けることに恐怖を感じてしまい、バトルの才能を開花できずにいる。使用機体の名前は「ホロルドロッソ・イージスガンダム」

 

江風 容姿(艦これにおける)江風改二

改白露型の三女。男勝りで気が強い性格で、ガンプラバトルでもその勇猛さをいかんなく発揮している。しかし、海風同様深海雨雲姫と化した村雨の従えた五月雨によって拘束、拉致されてしまう。

 

涼風 容姿(艦これにおける)涼風改

改白露型の四女。江戸っ子口調が特徴ではきはきした性格をしている。深海雨雲姫と化した村雨に拉致されかけるが、深海に助けられ、山風と共に深海の鎮守府に向かった。艦娘時代から姉妹が誰もいない時に山風の面倒を見ていた為、何かと気にかけている。使用機体の名前は「ジェッズネロ・ブリッツガンダム」

 

深海雨雲姫 容姿(艦これにおける)深海雨雲姫

フード人物によって深海棲艦と化した村雨。フードの人物の命令を受け、同じく深海棲艦化させた白露、五月雨と共に海風、江風、涼風の3人を拉致しようとした。戦闘能力は並外れた領域に達しており、飛びかかってきた時雨と夕立を返り討ちにしている。しかし、深海に邪魔され涼風の拉致を諦めて逃走、行方を晦ました。

 

深海化白露 容姿(艦これにおける)白露改

フードの人物によって深海棲艦化されてしまった白露。服装は以前のままではあるが、髪は真っ黒に染まり、目は水色なっている。深海雨雲姫の命令で海風を拘束し拉致、行方を晦ました。

 

深海化五月雨 容姿(艦これにおける)五月雨

フードの人物によって深海棲艦化されてしまった五月雨。服装は以前のままではあるが、髪は真っ白に染まり、目は赤くなっている。深海雨雲姫の命令で江風を拘束し拉致、行方を晦ました。

 

鳳翔 容姿(艦これにおける)鳳翔

月光華高等学校の近くで居酒屋を営む元艦娘。その面倒見の良さとおしとやかさから周囲の人たちからの信頼は厚く、百年記高校のメンバーや、月華団のメンバーは特に彼女への信頼が厚い。彼女の中で、加賀と瑞鶴、三日月は特に気にかけている。

 

赤城 容姿(艦これにおける)赤城改二

百年記高校のガンプラ部部長。訳あって(食べ過ぎによる腹痛)合宿に参加できず、全国大会にも遅れて観戦をしに来た。加賀の一番の理解者且つ親友である。しかし、しっかりしているように見えて何処か抜けている所があるらしい。

 

久条純一

本作のオリジナルキャラクター。暁たちの準々決勝に突如入部を申し込んできた男。その正体は長月がかつて所属していた鎮守府で提督をやっていた久条政義の息子で、久条政義から「使えないクズ」と言われていた長月を弄んでいた張本人。使用機体はグレイズを黄色と黒で塗装し、バックパックにバトルブレードを追加しただけのガンプラ「イオグレイズ」

 

白フードの人物 容姿(艦これにおける)No data

黒フードの人物の行動を嘆いていた黒いフードを被った謎の人物。黒フードの人物を止めるべく、行動していると思われる。




いかがでしたでしょうか?これで4回目の登場人物&ガンプラ解説は以上となります。

次回からは今まで通りのお話の続きを投稿していくので楽しみにしていてください。


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EP64 真実への道

電球が1つだけ灯る部屋に2人の少女が倒れていた。天井からは水滴が少し滴っていて、その水滴が地面に何度も地面に向かって落ちていた。

「………」

そしてその内の一滴が1人の少女の頬を濡らした。

 

 

「……ぅ?」

水滴によって緩やかに意識を取り戻す時雨。薄れていた感覚が徐々に回復し、目が開いていく。

「……ぁ…あれ?」

やがて完全に目が開き、青い目が隣で倒れているもう1人の少女「夕立」を捉えた。時雨は慌てて体を起こし、夕立を揺さぶった。

「夕立!夕立!」

「……んぁ?」

時雨に揺すられた夕立も、やがて意識を取り戻していった。

「……し、時雨?」

「夕立、早く起きるんだ!」

「どうしたの時雨?何か、凄く慌ててるっぽい?」

ゆっくりと回復していく夕立の感覚を一刻も早く取り戻そうと、時雨は更に声をかけ揺さぶった。

「とにかく早く起きて!」

「うわわわ!お、起きるから!あんまり激しく揺さぶらないで!」

こうして夕立も完全に意識と感覚を取り戻した。その場に立ち上がった2人は、周囲を見渡した。コンクリート造りの部屋を1つだけある電球が照らし、近くには家具と呼べるものは何一つなかった。

「ここは何処なんだろう?」

「夕立たち、深海提督さんたちとガンプラバトルをしてて、終わったら突然真っ白な煙が出てきて……」

「意識を失ったんだ…」

夕立が時雨の言葉に無言で頷く。

「あれ?電ちゃんは?」

夕立が電がいないことに気づく、しかし時雨は首を横に振って言った。

「ここにはいないみたいだ。恐らくは別の何処かに……」

「そ、そっか……」

時雨は更に周囲を見渡し、この部屋を調べた。そして、壁の一角に1つの扉を見つけた。

「あれは…扉?」

「どうしたの時雨?」

「夕立、あそこのあるのは扉じゃないかな?」

時雨が指さした方向に目を向ける夕立。そこにはとても重そうな鉄扉があった。

「ホントだ。時雨、早く行ってみるっぽい」

「そうだね。ここにいても仕方ないし」

時雨と夕立は鉄扉へと歩いていった。そして鉄扉の前まで来た時、時雨は鉄扉に1枚の紙とボールペンが張り付けてあるの見つけた。

「紙とボールペン?」

「何でこんな所にこんな物があるんだろ?」

「何かに使えるかもしれない。持って行こう」

時雨は紙を綺麗に折り畳み、ボールペンを折り目に挿してポケットに入れた。

「よし!この扉を開けるよ夕立!」

「了解っぽい!」

時雨と夕立は鉄扉の取っ手に手を掛けると、声を掛け合ってその扉を引いた。すると扉は鈍い金属の音をたてて開き始めた。

「よし、もう少しだ!」

しばらくしてその鉄扉は完全に開いた。時雨がゆっくりと扉の先を確かめる。

「……廊下、か」

扉の先は廊下だった。今いた部屋にあった同じ小さな電球がそれなりの感覚を開けて天井から吊り下がったコンクリート造りの廊下が左右に続いていた。

「…時雨?」

廊下を確認していた時雨に続いて夕立も顔を出し、廊下を見渡した。

「これって廊下?」

「うん。どうやら、僕たちは何処かの大きな建物にいるみたいだ」

「し、時雨。どうするっぽい?」

「……右に行ってみよう。どっちにしてもここから抜け出せる場所を見つけないとだし…」

「そっちに出口があるっぽい?」

「わからない。でも、ここにいるよりは出口を見つけられる可能性があるしね」

「ぽい!」

廊下に出た時雨と夕立は、早速右へと続く廊下を歩いていった。電球のおかげで視界は良好で何も心配することは無かった。やがて、先程と同じ鉄扉が廊下の右側に現れた。

「扉だ」

「とりあえず近づいてみるっぽい」

「そうだね」

2人はゆっくりと扉まで歩いていき、扉の前に辿り着いた。

「さっきのと同じ扉っぽい」

「こんな部屋が何個もあるってことなのか……あ、横にプレートがある」

扉のすぐ横にプレートが張られていた。時雨はプレート覗き込み、書かれていた文字に驚愕した。

「なっ…」

「どうしたの時雨?」

時雨の表情の変化に気づいた夕立も、時雨の見ていたプレートに目をやった。そして、そこに書かれている文字を読んでいく夕立。

「えっと…なになに、死体…廃棄室っ!?」

夕立もまたそこに書いてあった言葉に驚愕した。

「し、時雨…し、死体廃棄室って」

「うん。もし言葉の意味のままだったとしたらこの中は……」

「ど、どうするの時雨ぇ…」

時雨は額に汗を流しながら考えた。なぜ死体廃棄室(こんな部屋)が存在するのか。しかし、時雨はすぐに答えを出した

「夕立、今は出口を見つける方が先だ。だから、とりあえず先に進もう」

「う、うん」

きっと出口はある筈だから、と夕立を励ます時雨。2人は死体廃棄室の前を通り過ぎ先へ進んでいった。途中で現れた左への曲がり角を曲がり2人はヒンヤリとした空間をさらに奥へと進んだ。

「時雨…」

「ん?」

突然夕立が時雨に少し脅えた表情で声をかけた

「夕立たち、もしかしてとんでもない所に連れてこられたんじゃ……」

「………」

夕立の言葉を聞き黙り込む時雨。

(恐らく夕立の言う通りだろう。でも、そうだと断定するにはまだ情報が少なすぎる…)

「時雨?」

「あ、ごめん。考え事をしてて…」

「この場所の事?」

時雨はゆっくりと首を縦に振った。すると再び、通路に扉が現れた。

「また扉だ」

「今度は何の部屋っぽい?」

「右と左に1つずつあるみたいだ。夕立は左のプレートを確認して」

「ぽい」

そう言って2人は扉のプレートを確認した。時雨は右の扉のプレートを確認し、夕立は左の扉のプレートを確認した。

「えっと…培養室?かな…ちょっと掠れてて読み取りにくい。夕立、そっちは?」

「こっちは薬品投与室って書いてあるっぽい」

「聞くだけで悍ましい部屋の名前だね……」

「時雨?」

「ううん、何でもないよ。まだ先がありそうだ。調べるのは後にしよう」

そう言って2人は部屋の前を通過していった。更に先へと進み再び左への曲がり角を曲がった。すると2人の正面に壁が現れた。

「あれ?行き止まりっぽい?」

「え?ここまで来て行き止まり―――いや、違う。これ壁じゃなくて扉だ!」

「え、扉?」

「恐らく上に開くタイプの自動ドアなんだ。この部屋にも……あった。プレートだ」

時雨は扉の周囲を見渡してプレートを見つけた。

「実験観察室…またこんな名前の部屋……」

「時雨?」

「これじゃまるで…何処かのけん―――」

「そ!ここはとある研究所だよ!」

「「っ!?」」

時雨がまさに発しようとした言葉を、何処からともなく聞こえてきた少女のような高い声が告げた。突然聞こえてきた声に驚きつつも、時雨と夕立はそれぞれ身構えた。するとその声が言葉を続けた。

「あ、身構えなくても2人の近くにはいないから大丈夫だよ!」

しかし時雨も夕立も、この程度の言葉に油断する筈もなく聞こえてくる声に聞き返した。

「お前が僕たちを攫った犯人なのか!」

「早くここから出してよ!」

2人の声が廊下に響いた。しばらくその場は静寂に包まれていたが、やがて―――

「クッ、クスクスクス」

と、小さな笑い声が響いてきて、次に声は言った。

「確かに私が2人を攫った犯人だよ時雨ちゃん。あ、それとね夕立ちゃん。それはまだ無理だよ。2人にはこれからやってもらいたい事があるからね!」

「やってもらいたい事?」

「2人も知りたいって思ってるんじゃないかな?」

「………何をだい?」

時雨がそう聞き返すと、間を開けてその声はニヤけた様な口調で言った。

 

 

電ちゃんの事だよ

 

 

「「っ!!」」

「2人もたまに思ったことあるんじゃない?電ちゃんのガンプラの操縦技術の向上がなんであんなに早いのか、とか。何で電ちゃんに裏人格があるのか、とか。って」

「「………」」

声が発した言葉に時雨と夕立は沈黙してしまった。すると声は笑った口調で、やっぱり!と言い、更に続けた。

「ここはそれらを知ることの出来る場所なんだよ!だからね、2人とも頑張って探って見なよ!電ちゃんの秘密をさ!」

時雨と夕立は声が発する言葉にただ耳を傾けることしか出来なかった。額からは汗が流れ落ちていた。

「それじゃあ、頑張ってね!あ、それと出口は封鎖してないけど、帰ろうなんて思わないことだよ!電ちゃんは私の所にいるしね!」

「「っ!!」」

その言葉に2人は更に衝撃を受けた。そして時雨が大声で聞き返した。

「電は無事なのかい!?」

「………」

しかし、時雨の声は廊下に響いただけで、その後声からの返答は無かった。

「くそっ!」

「し、時雨。どうするの?」

「………」

時雨は再び黙り込んで考え始めた。

(くそ…犯人の思惑が全くわからない。電の秘密を探せ?それを僕たちにさせて何をしようと言うんだ……出口は開いてるって言ってたけど、どれも罠の可能性もあるし……何より電を置いていく訳には……)

「――れ――――時雨!」

「あ。ゆ、夕立」

「しっかりするっぽい!夕立、難しいことわからないし無暗に突っ込みかねないっぽい!だから時雨はしっかりするっぽい!」

「あ、ああ……うん。ありがとう夕立!」

時雨はそう言うと元来た道の方へ振り返った。

「急ごう夕立!」

「ぽい!」

2人は元来た道を引き返していった。

 

「………」

そして電灯に照らされた部屋の中にいた黒いフードの人物は、部屋の中央にある椅子に座る1人の少女を見た。椅子に意識を失って座る少女、電は穏やかな表情で眠っていた。そして―――

 

 

 

こっちも始めよっか。電ちゃん

 

 

 

黒フードの人物は笑ってそう言った。

 

続く



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EP65 真実への扉(前編)

元来た道を走って引き返す時雨と夕立。そして先程素通りした「培養室」と「薬品投与室」の前まで戻ってきて、時雨は足を止めた。

「時雨、どうしたの?」

「まずはここにある部屋から調べよう。この施設の全体を知るには時間もかかるし、何より……」

「何より?」

「電を早く助け出さないと!夕立、扉に鍵がかかってないか確認しよう」

「ぽい!」

そう言って2人はそれぞれ扉を手に掛けて鍵の有無を確認した。

「むううう!……ダメっぽい。時雨、薬品投与室の方は鍵がかかってるっぽい」

夕立は薬品投与室の鉄扉を思いっきり引っ張り、更に押してみたが開くことは無かった。

「わかった……フッ!……っ!こっちはどうやら鍵はかかってないみたいだ」

一方、時雨が担当した培養室の方の扉が鈍い金属音をたてて開いた。夕立も手伝うっぽい。と言って夕立も扉の開閉を手伝い、何とか培養室の扉を開けることに成功する。

「ふぅ……ありがとう夕立。よし、中を調べよう」

「ぽい!」

そう言って培養室の中に入っていった時雨と夕立。部屋にはやはり薄暗くも照明があり、室内を照らしていた。時雨と夕立は部屋の中を見渡した。

「部屋中が機械だらけっぽい」

「うん。無人なのに動き続けているって言うのが不気味だよ」

部屋の至る所には、何の為の物なのかわからない背の高い機械が置かれ動いていた。そして、ゆっくりと室内を歩く時雨と夕立は、すぐに扉の正面にある機械の前まで辿り着いた。

「あれ?」

「夕立、どうしたの?」

「何かここの機械だけ背が低いっぽい」

「本当だ。……近くに椅子もある」

そこにあった機械。それは部屋の至る所で起動している機械と違い、腰くらいまでの高さしかなかった。そして近くには回転させる事の出来る椅子が数個置かれていた。

「この機械、もしかしたら何かの制御機器なのかも知れない」

「それはありえそうっぽい。ちょっと触ってみるっぽい!」

「あっ夕立!」

時雨が慌てて制止するが時既に遅し、夕立は自分の真っ正面にあったボタンを押した。すると、近くで何かが動き出す音が鳴り始めた。

「ちょっと夕立!勝って押したら駄目じゃないか!」

「ぽ、ぽいっ!?」

「もしそれが自爆装置のボタンとかだったらどうするのさ!」

「う……時雨、ごめんっぽい」

「まったく……あれ?」

時雨が夕立に怒っている間に、先程までの駆動音が鳴り止んでいた。そして時雨は、機械の上に位置していた壁がいつの間にか窓ガラスになっていたことに気づいた。

「これ、窓ガラスだ」

「時雨?」

「わざわざこんな仕掛けを作るなんて……いったい、どういう事―――っ!!」

窓ガラスを調べていた時雨が、その向こう側の光景を見て一瞬たじろいだ。それに気づいた夕立もまたその窓ガラスの向こう側を見た。そして―――

「……っ!?ひ、人が…液体の満たされたカプセルの中に……入ってる!」

そこには横に4つ並んだ謎の液体に満たされた円筒状のカプセルの中にそれぞれ人が入っている光景があった。

「……培養室。そう言うことだったのか……」

夕立は未だにショックを抑えきれず、時雨は額から汗が流れて真剣な表情でその光景を眺めていた。そして、ショックを受けた夕立が1歩後ろに後退りした時、夕立の靴が何かを蹴った。そのことに気づいた時雨が、ハッとしてその方を見た。そこには1冊の本が転がっていた。

「何だろう……この本」

「ヒャッ!し、時雨…いきなり脅かさないでほしいっぽい!」

「ごめんごめん」

時雨は本を持ち上げ、表紙を確認した。

「えっと……報告書……みたいな物かな?」

「―――て、時雨その本どうしたっぽい?」

「今そこで拾ったんだよ。ちょっと、中身を確認させてもらおうかな」

「夕立も見るっぽい」

時雨はそう言ってその本を捲った。

「……」

 

「×017年1月3×日 本日よりこの培×室の室長と××××で前任者に引××ぎ、この××書纏めることとする。しかし、×年前から始まっ×××画も×××××した事例はない。どうしたものか」

 

「2×17年×月11日 ××もまた成果を出せずに××××しまった。このままでは、××が危うくなってしまう」

 

「2017年3月2×日 今××めて成功体を生み×××とに成功し×。×えは簡単だった。××1から作れない××、今まで××わ×た物を利用すれば××のだ。艦×の×××ステムを×××た成功体として、この2体の×××をそれぞれ「×」「×」と名付けた」

 

「20××年×月31日 まず×××になった。×××である×の1体が×設か××亡した。早く、別の×××を生み出さ××れば!」

 

「2×17年5月×日 解××はす××完成した。逃亡した×××「×」の遺伝×からク××ン体を作ること××功した。これで万事上手く×××××。」

 

「………この後は白紙みたいだ」

「え?」

本を読み終えた時雨の言葉に夕立が違和感を覚えて口を開いた。

「時雨。この本の最後のきじゅつ?だっけ、それ3年前だよね。何でそんな昔に終わってるっぽい?」

「僕もそこは不思議に思ったんだよね。今もこの施設は稼働している。そう考えると不思議だ」

時雨は本を閉じながら考えを巡らせた。

(施設が稼働している。でも本の記述が3年前で終わっている。物凄く気がかりだけど、まだ情報が少なすぎて何とも言えないな)

「夕立、この部屋をもうちょっと調べよう」

「了解っぽい!」

その後数分、時雨と夕立は室内を調べたがこれ以上の手掛りが出て来ることは無かった。

「夕立、何か見つけたかい?」

「ううん。さっきの本以外何もないっぽい」

「そっか……よし、ならこの部屋はここまでにして次に行こう」

「ぽい!」

時雨と夕立は部屋を後にし、廊下に出た。

 

廊下へと戻った時雨と夕立は更に元来た道を引き返し、「死体廃棄室」の前へと戻ってきた。そして戻って来て早々に立ちが震えた声で時雨に尋ねた。

「し、時雨……この部屋…は、入るっぽい?」

「………」

時雨はすぐに答えることが出来なかった。それもそうだ、こんな名前の部屋は誰だって入ろうとは思わない。それが普通だ。時雨はしばらく死体廃棄室の扉を見つめていた。やがて、何かを決心したのかゆっくりと扉の取っ手に手を添えた。

「ちょっ!し、時雨本気っぽい!?」

「……うん。もしこの部屋にあの1番奥の扉を開ける鍵があったとしたら……後に入るより、今入ってしまった方がっ」

「………」

時雨の言葉に口を閉じた夕立。時雨はそんな夕立を気遣い、言った。

「この中には僕だけで行くよ。夕立は外で―――」

「夕立も行くっぽい!」

「え?」

夕立の言葉に驚く時雨。すると夕立は真剣な表情で時雨に言った。

「時雨を1人だけ行かせる事なんて、やっぱり出来ないもん!いつも時雨は夕立を支えてくれてるから……今度は、夕立が時雨を支える番っ!」

「夕立……うん。ありがとう」

「じゃあ、2人で協力して扉を開けるっぽい!」

「うん!」

そして扉は鈍い金属音を響かせ開いた。

 

室内へと入った時雨と夕立。あちこちに血が飛び散り、血生臭い悪臭が漂う空間を想像していた2人は入って早々に驚くことになった。

「あ、あれ?思ったより……綺麗っぽい?」

「ほ、本当だ。血生臭さも感じない……」

部屋の中はいたって普通だった。血が飛び散ったような痕跡も無ければ血生臭さも感じられない。それを知った2人は一気に緊張が途切れ、ぐったりと立ち尽くしてしまった。

「はぁ……緊張して損したっぽい」

「うん。僕もだよ……」

しかし、今はのんびりしている状況ではないことを思い出した2人は早速室内を調べ始めた。しばらくして、夕立が時雨の名前を呼んだ。夕立の呼びかけに気づいた時雨は夕立の元に駆け寄り、何か見つけた?と聞いた。

「時雨、これ何の袋っぽい?」

「黒くて大きいチャックが付いた袋………っ!これ、死体袋だよ!」

「し、死体袋!?あ!そう言えば、鉄血のオルフェンズで見たことがあるっぽい!」

「いくら部屋を綺麗にしても、やっぱりこの部屋はそういう部屋なんだ……そして死体袋があるってことは……」

時雨は脅える夕立をよそに周囲を見渡した。そして見つけた。

「やっぱりあった」

時雨の視線の先、そこにはゴミを捨てる時などに使用されるダストシュートが口を開けていた。しかし、ここは死体廃棄室(・・・・・)。となれば答えはすぐに出て来た。

「……確かにこの方法なら部屋(・・)は汚さずに済むね」

時雨は汗を流しながら皮肉の笑みを浮かべていた。そして時雨は視線の更に先である物を見つけた。

「ん?あそこにあるのは…本棚?」

「時雨、どうしたの?」

「本棚みたいなのを見つけたんだ。ほらあそこだよ」

時雨はその方向を指差してみせた。夕立も時雨が指差した方を見ると、本当だ。と呟いた。そして2人は本棚の元へ歩を進めた。時雨の予想通り、それは本棚でそこには黒い背表紙の本が収められていた。

「うーん。かなりの量だ」

「1冊ずつ調べてたら時間がいくらあっても足りないっぽい」

「そうだね。と、背表紙に年が書いてあるね。一番古い物は………あった。2014年……終戦の2年後か……」

「夏のガンプラバトル全国大会なら2回目、夏と冬の全部ひっくるめれば3回目と4回目の年っぽい!」

「内容は……うん。やっぱりこの部屋に関する内容だね。廃棄した日付なんかが書かれてる」

「あ!時雨、こっちに1番新しい本があるっぽい」

「どれ?」

夕立はその1番新しい(・・・・・)本を時雨に見せた。時雨はその本を受け取り、年を確認した。

「えっと……2017年から……20…20年!?」

そこに記されていた年は「2017年から2020年」だった。

「な、何で……今年の本が……」

時雨はそこに書いてあった「2020年」に衝撃を受けていた。その事を不思議に思った夕立が時雨に尋ねた。

「ねぇ時雨。何でそんなに驚いてるっぽい?」

「………」

「時雨?」

「………夕立。さっき、培養室で呼んだあの本。最後の日付を覚えてるかい?」

時雨はビクビクした様子で夕立に問いかけた。夕立は、んー?と少し考えてから答えを出した。

「確か、2017年だった――――っ!?」

「そう。あの本は2017年5月でページを残して(・・・・・・・)終わっていた。この場所でどういう事が行われてたかはハッキリとわからないけど、あの手の本なら、きっと毎日書いていた筈(僕はある程度飛ばして読んだけど)……となれば………」

「2017年の5月以降に本が書かれてないのに、今年の本がここにあるのはおかしいっぽい!」

「そういう事だよ。よし、中身を確認しよう」

「ぽ、ぽい!」

 

「2017年 半分廃棄します!」

 

「2018年 残り半分廃棄します!」

 

「2020年 今月にやっと計画の参加者を全員を廃棄出来ました!私、やりました!」

 

そこに記されていたのはその3文だけだった。これを見た時雨は先程よりも震えていた。そこに書かれている文字からは明らかに遊び心の様なものが感じられたからだ。

「し、時雨……」

「……そろそろ、外に出よう夕立」

「ぽ、ぽい………」

2人が部屋を出て行こうと本を閉じたかけた時、本の間から何かが落ち、チャリン!という音をたてた。その音は静かな室内で大きく響いた。時雨が足元を確認するとそこには1つの鍵が落ちていた。

「鍵か……きっとこの本に挟まっていたんだろう」

「時雨、それ何処の鍵っぽい?」

「えっと…プレートには「会議室」って書かれてる」

「なら次はそこに行くっぽい?」

「そうだね。恐らく反対側の未探索エリアにある筈だ」

「じゃあ早く行くっぽい!」

そう言って夕立は足早に部屋を出て行ったが、時雨は手に持ったカギを見て考えを巡らさせていた。

(この本からこの鍵が落ちてくるってことは、きっと仕掛けた奴がいる。それは恐らくあの犯人だ………もしかすると、僕たちは………)

そこまで考えた時、入口の方から夕立が時雨を呼んでいた。時雨は、今行くよ。と言って部屋を後にした。

 

廊下へと出た2人は更に廊下の先へと足を進めていった。目を覚ました部屋を通り過ぎ、未探索のエリアへと足を踏み入れてからしばらくすると、2人の前に3本に分かれた分かれ道が現れた。1つは右に向かって曲がり、もう1つは直進、最後の1つは左斜め前へと続いていた。

「どっちに行くっぽい?」

「とりあえず真っ直ぐ進もう」

「了解っぽい」

2人が最初に選択したのはそのまま直進する道だった。廊下には相変わらず等間隔で電球が吊るされていて廊下を照らしていたが、2人の表情は暗かった。しかし、その道はすぐに行き止まりとなっていた。

「あれ?行き止まりだ」

「時雨、ここにも扉があるっぽい」

「本当だ……「検体保管室」か……」

「またヤバそうな名前の部屋を見つけたっぽい」

「鍵は……駄目だ、かかってて開かない。仕方ない戻ろう」

「ぽい」

2人は元来た道を戻り、先程の分かれ道のところまで戻ってきた。時雨は、今度は右に行こう。と言い、夕立も了承して先へ向かった。するとやはり、1分も経たない内に道は終わりを迎え、そこにはまた扉が現れた。

「また扉だ……あ!ここが会議室みたいだ」

「早速鍵を使ってみるっぽい!」

「………よし、開いたよ!」

鍵はぴたりと鍵穴に一致し、カチャン!という音をたてて鍵を開けた。時雨と夕立は2人係で扉を開け、会議室へと足を踏み入れた。

 

部屋に入るとすぐ正面に巨大な机が現れ、その周囲には幾つもの椅子と書類が散乱していた。

「なんか、とっても散らかってるっぽい」

「普通ならキチンと整えられてる筈なんだけど……まあ今はいいか……」

時雨はそう言うと部屋の至る所に散らばった書類を集め始めた。

「時雨……もしかして散らばってる紙集めるっぽい?」

「うん。会議室なら何か情報があるかもしれないしね」

「うへぇ~」

夕立から一気にやる気が消えていった。しかし、時雨はもくもくと書類を集めていく。それから数分が経過し、あらかたの書類を集め終えた時雨と夕立はそれを机の上に置いた。机の上にはかなりの量の書類で埋め尽くされた。すると時雨はその書類1枚1枚に目を通し始めた。読むスピードはかなり速く、流し読みの要領で読んでいく。

「時雨ぇ~夕立疲れたっぽい~」

「………」

夕立の甘えにも反応を示さないほど時雨は集中していた。しかし、集めた書類は黒い染みによって汚れおり、その殆どは判読出来るものではなかった。すると時雨は、その書類の中から判読が出来るものを発見した。

「これは染みがないから読めそうだ」

 

「備品移動報告書 ナンバー付き金庫 実験観察室→資料室」

 

「て、これだけしか書かれてないや。でも「資料室」があるってことはわかったから良しとしよう」

それから更に書類を読んでいく時雨。しかし、そのどれもがやはり黒い染みによって判読が出来なくなっていた。それでも黙々と読み続けた時雨は最後の書類に手を伸ばした。

「………駄目だ。これも黒い染みで読めない」

最後の1枚を虚しく机の上に置き、ガックリと項垂れる時雨。しかし、そんな時雨の耳に夕立の声が届いたのは丁度その時だった。

「時雨っ!」

「っ!?」

慌てて顔を上げる時雨。夕立はいつの間にか会議室の奥に居て、時雨の顔を見ながら壁を指さして立っていた。時雨は夕立の元に慌てて駆け寄った。

「時雨、これ見るっぽい!」

「………ん?この黒い染み……何処かで……」

そこにあったのは、まるで黒い水が跳ねた様な大きな染みがあった。不思議そうにそれを見ていた時雨に夕立が更に続ける。

「ほら!合宿から返ってきた日、家のあっちこっちにあったあの黒い染み!」

「!!」

夕立の言葉に誘導され、記憶を蘇らせた時雨。まさに記憶にあった通りの光景がそこにはあった。黒い水が跳ねた様に出来上がった黒い染み。時雨も夕立も見間違える筈がなかった。

「それに、この部屋物凄く散らかってるっぽい!」

そして、この妙に散らかった会議室。これだけの条件が揃っていれば、時雨が答えを出すのは簡単だった。

「あの時と……同じだ」

「し、時雨……てことは」

「うん。会議中にこの施設の研究員たちは襲われたんだ。村雨……深海雨雲姫と同じ力を持つ何者かに……そしてその日付は………」

「2017年の6月以降……ってこと?」

「恐らくね……」

「「………」」

2人は黙り込んでしまった。今まで見つけてきた情報から導き出された答えはいたって簡単だった。しかし、時雨はあることが気になっていた。

(あの犯人「ここは電の秘密を知ることが出来る場所」って言っていた。でも、今まで見つけてきた資料に電の情報はなかった。いったいどういう事なんだ………)

時雨はそこで一度考えが纏まった。しかし、数分と経たない内にあることを思い出した。

(そう言えば培養室で見つけたあの報告書。何かを完成させたって書いてあったっけ……そして、その内の1体が逃亡したって書いてあって…………もしかしてその完成した「何か」って………いや、まだ断定するには情報が足らないか……)

「あまりこの答えを推したくはないけど……」

「時雨?何か言ったっぽい?」

「ううん、何でもないよ。さて、そろそろ外に出て最後の道へ行ってみよう」

「ぽ、ぽい」

時雨の言葉に違和感を覚えた夕立だったが、時雨が考え込むことはよくあることだから。と思い出し、そのまま揃って部屋を出て行った。

 

部屋を出た時雨と夕立は、そのまま残った分かれ道の先へと向かった。そしてしばらく行くと―――

「あ、階段があるっぽい」

2人は上と下に続く階段を見つけた。その階段の前で2人はしばらく立ち止まり、この後の事を議論し始めた。

「時雨……どうするっぽい?」

「恐らく上に続いている階段は出口へ直通してる筈だ……でも―――」

「電ちゃんを置いていけないっぽい!」

「うん。僕もそう思ってた……となると」

「自動的に下に行くことになるっぽい」

「そうだね。急ごう」

「ぽいっ!」

2人は階段を降り、更に地下へと足を踏み入れていった。

 

続く



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EP66 真実への扉(中編)

時間は少しばかり遡る。

 

何とかデパートから出ることが出来た深海たち。しかし、深海の表情はとても暗く、そしてとてつもない怒りに満ちていた。

「………」

「お、お父さん……」

「………なんだ」

深海の事を心配した表情で秋雨が声をかけるが、深海の発した憤怒の黒い炎を纏ったような低い声に思わずたじろぐ。

「っ!……つ、梅雨葉。み、見つかるか…な?」

「……見つけるさ。俺の全てにかけて、なっ」

「っ!おとーさん!」

深海がそう言ったその瞬間、雨葉が深海の額から黒い角が現れ、右目を隠していた前髪を持ち上げた。そして前髪の後ろから、真っ赤に染まった右目が姿を現した。

「必ず見つける……そして、誰であろうが梅雨葉を攫った奴は――――」

 

 

 

殺すッ

 

 

 

真っ赤に染まった右目はより一層赤みを増し、額の角は青白い炎が灯りだしていた。

「た、た、た、大変だよ秋雨おねーちゃん!!」

「ど、ど、ど、どうしよー!!」

「………!!」

深海の様子に慌てふためく秋雨たち。深海がここまでの怒りを発したのは彼女たちの知る限り、母親である時雨が何者かよって攫われた時のみだ。そしてその時は、たった1人で時雨を攫った犯人たちのアジトに殴り込み、残虐かつ惨たらしい方法で犯人全員を殺し、血まみれの姿で時雨を抱えて鎮守府に帰ってきたのだ。そしてこの状態になってしまった深海はもはや誰にも止められない「復讐の悪鬼」となってしまう。そんな時だった。

「きゃっ!」「ひゃあっ!」「………!?」

不意に深海のスマホが鳴り出した。深海の怒りからいきなりスマホの着信が来たことに秋雨たちは驚いたが、深海は気にする素振りを見せずスマホを取った。

「何だ…青葉」

電話の相手は青葉だった。深海はしばらく黙ってスマホを耳に当てていたが、やがて、わかった。と言って電話を切った。そして、秋雨たちの方へ振り返って言った。

「梅雨葉を取り返してくる。お前たちは先に車に戻っておけ」

そして猛スピードでその場を後にした。秋雨たちはただ立ち尽くすしか出来なかった。

 

階段を降り、1つ下の階へと辿り着いた時雨と夕立。階段に続きは無く、この階が1番下の階となっていた。しかし、その光景が変わることはなく今まで2人が見てきた廊下がそこには広がっていた。

「1つ下の階でも廊下は同じ造りっぽい」

「そうだね。とりあえず、道は1本しかないみたいだし進んでみよう」

時雨の言葉に夕立は頷き、階段から右に向かって伸びる道をゆっくりと歩いていった。そしてしばらくして、3本の分かれ道が2人の前に現れた。1つは真っ直ぐ、もう1つは右へ、最後の1つは左へと続いていた。

「今回は左に行ってみよう」

「ぽい」

そう言って2人は左の道へ歩いていった。しばらく歩いた2人の正面に再び扉が姿を現した。時雨は早速扉の近くにあったプレートを確認した。

「「寄宿舎」か……こう言う物はこういう場所は外に造ると思ったけど……」

「なんか、今までの中でマシな部屋っぽい!」

「そうだね。よし、入ってみよう」

2人はゆっくりと扉を開けて寄宿舎へと入っていった。すると、扉の先にも更に通路が続いていて通路の途中途中に向かいあった扉がいくつも存在していた。

「部屋がいくつもあるね時雨」

「寄宿舎だからね。さて、何処から調べてこうか」

「なら一番近い部屋にするっぽい!」

「わかったよ」

夕立の言葉に同意した時雨は、自分たちに1番近い部屋「101号室」の取っ手に手を掛けた。鍵はかかっておらず、2人は早速室内へ入った。

「結構こじんまりした部屋っぽい」

「部屋の殆どがベットで埋められてる。その前には机……まるでビジネスホテルみたいだ」

「ん~」

夕立は部屋の中をキョロキョロと見ていた。そして、何かに気づいた。

「あ!時雨、これってこの部屋の人が書いた日記じゃない?」

机の上に置いてあった1冊の本を拾い上げた夕立は、それを早速時雨に見せた。

「本当だ。さっそく読んでみよう」

 

「2017年 ×月30日 脱走した×××は依然とし×××かっていない。××から××月以上経っても××××れない所を見るに、××××××の××体に諦めを付けた××××れない。この計画×××なってしまうのだろうか」

 

「2017年 5月×× 今日、××××イプの実験体が××した。何でも、脱走×××功体の××胞から作××された×××ンらしい。これで、成功体に××性××持つ×間を安定×××産できるだろう」

 

「2017年 5月2日 ク××××性能は××らしいもの××成×××××に近い性能×××、それでいて簡単×××出せる。しかし、問×××残っている。それは×××胞への耐×××い事だ。ク××ン××の欠陥の×××××××、これ×××××かしていけるだろう。」

 

「2017年 ×月3日 ×××3体の××××が作られたが、×海××に耐えられず××が廃棄となった。もう1×××功体は成果を×××は×るが、や×××ローンの深××胞への耐×××は解×××ていない。これを×××るため明日××を開くことになった。そう言えば、1×4号室の××が薬品×××の鍵を××××とか言っていたが、どうせ自×の××かに落としたのだろう」

 

「あ、日記が終わってるっぽい」

「日記の日付は5月3日……となると、ここの人たちが会議室で何かに襲われたのは恐らく5月4日?」

「でも時雨、その襲った奴っていったい誰っぽい?」

「……わからない。情報が足りないからね……でも、日記の最後の記述から寄宿舎の何処かの部屋に鍵があるかもしれないってことはわかった」

「本当!」

「うん。もう少しこの部屋を調べたら、その部屋に行ってみよう」

「ぽい!」

その後、時雨と夕立は室内を細かく調べたがこれと言った物は出てこず諦めて部屋を出て行き、寄宿舎の廊下へと戻ってきた。

「じゃあ、鍵があるかもしれない部屋に行ってみよう」

「でも時雨、その部屋何処かわかるっぽい?」

「部屋番号の部分が途切れていたけど、おおよその予測は出来てる。さっきまでいたのは101号室で、あの日記の記述は「1×4号室」だった。部屋の数は全部で20部屋だし、鍵があると考えられる部屋は「104号室」か「114号室」のどっちかの筈だ」

「なら、近いところから当たってみるっぽい!」

「そうだね。寄宿舎の部屋全部を調べるには時間がないし、手掛かりがあるかもしれない部屋を調べて行こう」

2人は廊下を進み、104号室へ向かった。時雨は向かい合った反対側の部屋番号を確認しながら進んでいた。

「あった。104号室だ」

「じゃあ入ってみるっぽい!」

そう言って夕立は104号室の扉を開けた。そして中に入り、2人は早速部屋の探索を始めた。しかし、これといった情報が書かれたものは見つからなかった。

「うーん。この部屋じゃないみたいだ」

時雨がそう言って小さな溜息を吐いた時、夕立が時雨の元に1枚の紙切れを持ってきた。

「時雨、こんなもの見つけたっぽい」

「どれどれ……1739?」

夕立が持ってきたのは「1739」と書かれた紙切れだった。時雨と夕立はその紙をしばらく凝視していたが、お互い意味が分からず仕舞いだった。

「時雨にもわからないっぽい?」

「うん。何の数字なのか全くわからないよ」

「なら、次の部屋に行くっぽい!この部屋調べ終わっちゃったし!」

「うん。一応この紙は取っておくね」

「了解っぽい!」

そのまま104号室を出た時雨と夕立は、次に114号室へ向かった。すぐに114号室は見つかり、時雨は部屋の扉に手を掛けそのまま室内へ入ろうとした。しかし扉を開けた瞬間、2人は室内から漂ってくる匂いに気づいた。

「っ!!これは、血の匂いっぽい!」

「何でこの部屋から……っ!」

そして時雨は、室内が血塗れになっていることに気づいた。ベットと机、部屋の至る所に血が飛び散っていた。

「し、時雨……」

「……この部屋で何が起こったかはわからないけど、鍵があるのは恐らくこの部屋だ。手早く見つけて、この部屋を出よう」

「ぽ、ぽい!」

2人は扉を開けたまま部屋に入り、早速鍵を探し始めた。その間、2人は終始無言で出来る限り呼吸を抑えて探索をしていた。

「時雨!ベットの下に何か光る物があるっぽい!」

しばらくして、夕立がベッドの下に光る何かを見つけた。時雨は、本当かい!と言い返し夕立の隣からベットの下を覗き込んだ。

「おそらく日記にあったどこかの鍵だ。夕立、届きそう?」

「むううう!っ!届いたっぽい!」

そして夕立はとの下から鍵を1つ引っ張り出した。プレートには「資料室」と書かれていた。

「やったね夕立!資料室の鍵だ!」

「えへへ!夕立ったらお手柄っぽい!」

「よし、もうこの部屋に用はない。急いでここから―――ん?」

そして部屋を出ようとした時雨だったが、ふと視線を向けた先の壁に目が留まった。

「……ん?時雨、どうしたっぽい?」

「いや、あそこの壁。なんか、文字みたいなのが書かれてるような……なんだろう」

時雨は壁の元へと歩を進め、そこに書かれた文字の様な物を凝視した。

「………バラバラだけど…これは「ヲ」「雨」「ケ」「ロ」「人」って読めそうだけど……」

「?意味が分からないっぽい」

「うん。共通点も無さそうだし……一応メモしておこうかな。何かのヒントかもしれないし」

時雨はそう言って最初に拾ったペンと紙を取り出し、先程の5文字を紙に書きこんだ。そして書き終わった時雨は、待たせたね。と夕立に行って部屋を出て行った。

「じゃあ、さっき鍵を手に入れた資料室に行ってみようか」

「でも、何処にあるのかわからないっぽい時雨?」

「う~ん。ごめん、まだ見当はついてない」

「そっか……なら、さっきの分かれ道まで戻ってみるっぽい!」

「そうだね。もしかしたら、その先にあるかもしれないしね」

夕立の提案を受け、時雨と夕立は寄宿舎を後にした。そして先程の分かれ道まで戻ってきた。時雨はそこでほんの少しだけ行き先を考え、左へ行こうと時雨が言った。夕立も時雨の言葉に同意し、2人は左の道へと進んでいった。すると不意に夕立が時雨に話しかけた。

「時雨」

「ん?なんだい」

少し弱気な口調で夕立は言った。

「夕立たち、本当に帰れるのかな……」

「……夕立」

「本当に、電ちゃんの秘密を解き明かしたら帰れるの…ううん。そもそも、夕立たちは電ちゃんの秘密を知って―――」

「何の意味があるの?かい?」

夕立は時雨の言葉にただ一言、うん。とだけ答えた。時雨は少し考えてから口を開いた。

「それは僕にもわからない。でも今は、前へ進むしかないよ。帰るにしても、電は今犯人の手中だ。なら、今僕と夕立が電を助けるしかないんだ」

「時雨ぇ」

(艦娘での戦闘とはまた違う緊張感。それに今はこんな状況。流石の夕立も、弱気になってしまうのも無理ないよね)

覇気が消え、脅えた表情をした夕立を見た時雨の心は強く締め付けられていた。しかし時雨は、今は自分を維持しなければきっと夕立は倒れてしまうと思い、自らの心と体を奮い立たせた。

「大丈夫、きっと何とかなる筈だ。だからもう少し頑張ろう、夕立!」

「う、うん。夕立、頑張るっぽい!」

「その意気だよ!……と、行き止まりと扉だ」

そうこうしている内に、時雨と夕立の2人は通路の行き止まりへと辿り着いていた。曲がり道もなくただ直進するだけの道だったが、その先にはやはり扉があった。

「今度は何の部屋っぽい?」

「えっと……右が倉庫。左が……独房…か」

「ど、独房っ」

「鍵は……倉庫の方はかかってる」

「入るしかないっぽい?」

「そう…だね……行こう夕立」

「うん」

そして時雨は独房の扉を開けた。

 

独房へと足を踏み入れた時雨と夕立。部屋の正面には6つの扉があるだけの横に長い部屋だった。

「部屋が6つ…さて、どこから―――」

「しっ!時雨、静かにするっぽい!」

「!?」

部屋を調べようとした時雨を、咄嗟に夕立が制止した。夕立の言葉を聞き、口を閉じた時雨。室内が一気に静まり返り、やがて何処からか音が聞こえてきた。

「………すー………」

「なんだ?」

「時雨、音をたてないでほしいっぽい」

「あ、ごめん」

「………」

夕立の表情は先程までの脅えた表情から一変、神経を研ぎ澄ませた険しい表情になっていた。しばらくして、夕立は音をたてないように静かに1歩踏み出した。2歩目、3歩目とゆっくりと歩みを進める夕立。すると夕立は、ある扉の前で足を止め時雨にこっちに来るように手招きをした。時雨も音をたてないように、ゆっくりと夕立の元へ歩いていった。そして扉をジッと凝視する夕立に時雨が問いかけた。

「夕立、どうしたんだい?」

「この部屋から、呼吸音が聞こえるっぽい」

「え!?それって……」

「扉に覗き穴があるから確かめてみるっぽい」

「う、うん」

そう言った時雨と夕立は独房の扉にある覗き穴から中を覗いてみた。独房の中は暗く、全く中を見ることは出来なかった。

「うーん。見えないっぽい…」

「どうしようか……あれ?」

その時、時雨が手に持っていたボールペンを見てあることに気づいた。

「このボールペン。ライトに使えるっ」

「ぽい?」

「まさかこんな所で見るなんてね……これは使えそうだ」

時雨が手にしていたボールペンは、ライトとしても使えるボールペンだった。2回コッキングすると、ペン先付近が光るボールペンだったのだ。時雨は早速そのボールペンを覗き穴に通した。そしてライトが照らした先には――――

 

「「っ!!梅雨葉っ!!」ちゃん!」

 

床に横たわった梅雨葉がそこにいた。

 

続く



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EP67 真実への扉(後編)

牢屋の中で横たわる梅雨葉を見つけた時雨と夕立。2人はそこにいた梅雨葉に驚き、夕立は慌てて牢屋の扉を叩き、名前を呼んだ。

「梅雨葉ちゃん!梅雨葉ちゃん!」

「………ぅ?」

夕立の声と扉を叩く音に、梅雨葉が少し反応を示した。しかしまだ、ハッキリと意思を取り戻せていない梅雨葉は体をもぞもぞさせていた。

「反応はしてるけど、起きないっぽい……」

「うーん……そうだ。ライトを点滅させれば起きるかもしれない」

時雨はそう言うと、ボールペンを覗き穴に入れて何度もコッキングした。ペン先のライトが点灯と消灯を繰り返し、梅雨葉の顔を照らす。その間も、夕立は扉を叩き名前を呼び続けていた。そしてしばらくすると、梅雨葉の赤い右目がゆっくりと開いた。

「……んぁ?」

「あ、起きたっぽい!」

「梅雨葉!大丈夫かい!」

「この声は……お母さん?」

未だ寝ぼけている梅雨葉は、目をゴシゴシと擦りながら体を起こした。

「梅雨葉ちゃん!大丈夫っぽい!」

「あれ?夕立お姉ちゃんの声もする………て、ん?」

そこで梅雨葉はようやく意識を取り戻した。そして自身の目の前の壁、もとい扉の覗き穴から時雨と夕立が目だけを覗かせているのに気がついた。すると―――

「ひぃっ!四つ目のオバケッ!」

一目散の部屋の奥へと引っ込んでいった。

「「え?」」

梅雨葉の言葉と行動を目にした時雨と夕立は、互いに顔を見合わせて不思議な顔をした。そしてもう一度覗き穴に目を当てると―――

「やだっ!オバケ嫌い!あっち行ってよ!」

「「………」」

余計に怖がる始末。仕方なく2人は、困惑しながらも声をかけることにした。

「あ、あの…梅雨葉ちゃん?どうしてそんなに怖がってるっぽい?」

「ゆゆゆ、夕立お姉ちゃんの真似しても!だだだ、ダメなんだからね!つつつ、梅雨葉の目は、ごまごまごま、誤魔化せないんだから!」

「ちょっと落ち着くんだ梅雨葉!僕だよ、暁学園ガンプラ部の時雨だよ!」

「おおお、お母さんの真似で騙せるとおおお、思わないでよね!つつつ、梅雨葉は!ぜぜぜ、絶対、そそそ、そっちに、いいい、行ったり、ししし、しないんだから!」

梅雨葉は涙目になりながら、必死に強がっていた。そして時雨と夕立の2人は同じことを思った。

((これは説得に時間がかかるなぁっぽい

結果、梅雨葉を説得するのに10分かかったのだった。

 

「ご、ごめんなさい……おか―――時雨さん、夕立さん」

「ま、まあ、誰にでも苦手な物はあるから……」

「う、うん。出来れば忘れてほしいよ……」

「努力はするっぽい……」

何とか落ち着きを取り戻した梅雨葉は、顔を真っ赤にして扉越しに会話をしていた。

「ところで、ここは何処なんですか?」

「僕たちにもわからないんだ。何処かの研究所みたいなんだけど」

「そうですか。うーん、扉も開かないみたい」

「鍵はここまでに見つけてないっぽい……」

「探すしかないか……ごめん梅雨葉、少し待っててくれるかい?」

「うん。わかったよ。おか―――時雨さん、夕立さん」

「待っててね(お母さんがいないから寂しいんだろうなぁ……僕にはお母さんいないからわからないけど……)」

そう言って2人は独房を出て行った。

 

独房の扉を閉め、廊下へと戻った時雨と夕立。しかし、残った場所は最後の分かれ道の先のみとなった為、2人は迷わず廊下を分かれ道のところまで戻り最後の道を歩き出した。

「きっとこの先に資料室がある筈だ。急ごう夕立」

「ぽい!」

2人は急ぎ足で廊下を歩いていった。するとすぐに行き止まりへと辿り着き、扉を見つけた。

「扉だ!……よし、ここが資料室で間違いない!」

「じゃあ、鍵を使うっぽい!」

「………よし、開いた!」

2人は足早に資料室へと足を踏み入れた。

 

室内に入るとそこには幾つもの背の高い棚が置かれ、そこに数え切れない程のファイルや本が置かれていた。

「うわぁ……凄い量の資料だ」

「時雨、これ全部調べるっぽい?」

「きっと題名がそれぞれ振られてる筈だ。それで内容を判断しよう」

「了解っぽい」

そして時雨と夕立は手分けして資料室を調べ始めた。棚から棚へ次々目を通していく時雨と夕立。すると時雨があるファイルが目に入った。

「えっと、「再建計画概要資料」?何だこれ……」

時雨はそう言うと、そのファイルを開いた。

 

「壱 再建計画とは 再建計画は前海軍元帥、山本玄蔵閣下や、前海軍首脳部の人物主導の元、先の大戦の終結の折に失墜した前海軍首脳の権力を復活させるべく、計画された計画である」

 

「弐 主目的 本計画の主目的は前海軍首脳が再び我が国の主権を掴むことにある。しかし、以前の様に表立った行動が取れなくなってしまった今日において、大規模なクーデターなどを起こすことは不可能に近くなっている。そこで発案されたのが「GPB計画」である」

 

「参 GPB計画とは GPB計画とは現在世界中で熱狂を呼んでいる「ガンプラバトル」なる遊びを利用しようと言う物だ。まずガンプラバトル日本協会をこちら側の物とし、背後で実権を握る。その後に本計画の為に開発されたガンプラバトルに特化した人間「強化兵士」がその頂点に君臨することで、我が国のあらゆる産業体を我が物とすることで我々の規模を拡大し、最終的に主権を奪還し、かつての大戦を再び再発動させるのだ」

 

「肆 強化兵士研究 ガンプラバトルに特化させた人間「強化兵士」を開発するため、研究所を設けることとする。早急に開発を完了すること」

 

「伍 注意事項 本計画最大の敵は言うまでもなく、黒野深海だ。奴の行動力と人脈はもはや我が国全土に広がっていると言っても過言ではない。その為、本計画は隠密に行うこと」

 

「………」

ファイルを読み終えた時雨は、無言でファイルを閉じた。そして、しばらく考えを巡らせていた。

(これが深海提督が言っていたことで間違いないだろう。内容もピタリと一致してる。これは持ち帰る価値はある筈だ。でもまさか、元海軍元帥の名前をこんな所で見るなんて思わなかったよ………ん、あれ?山本玄蔵って名前、つい最近何処かで見たような……駄目だ。思い出せない。仕方ない、探索を再開しよう)

しかしそこで時雨は考えることを止め、更に資料室を探索した。そしてしばらく時間が経った時だった。

「時雨、これ何かな?」

不意に夕立が時雨を呼んだ。時雨は夕立の元に向かうと、夕立の指さす方へ顔を向けた。そこには1から9までの数字が書かれた金色の突起と、取っ手、そして数字が表示された小窓が付いた小さな黒い箱が置いてあった。

「これは…金庫かな?あ、もしかして会議室の書類にあった金庫ってこれかな?」

「時雨、開け方わかるっぽい?」

「数字が表示された小窓が4つ……あれ?4桁の数字ってどこかで……」

時雨が腕を組んで考えていると、夕立が思い出した。

「時雨、寄宿舎で拾った数字が書かれた紙は?」

「っ!」

時雨はハッとした表情になって、ポケットから紙を取り出した。「1739」と書かれた紙を見た時雨は、お手柄だよ夕立!と言って、突起を回し始めた。小窓に表示された数字が回転し、やがて全ての数字が揃うと、金庫はカチリと音をたてた。

「やった!開いたよ」

「中身は何っぽい!」

「これは、カードキー……あ、きっとあの部屋に入る為の鍵だ!」

「やったっぽい!これで電ちゃんを助けられるっぽい!」

カードキーを手に入れ喜ぶ夕立。しかし、時雨は未だ気になることがあったのか、夕立に尋ねた。

「夕立、もう少しここを探索させてもらっていいかい?」

「え?いいけど、でも少しだけにしてよね」

「わかったよ」

ご機嫌な夕立は時雨の提案を受けたが、一刻も早く電を助けたいという本心に突き動かされてしまっていた。それを感じ取った時雨は、急ぎ足で棚に目を通していった。そしてしばらくすると、時雨の目にあるファイルが止まった。

「ん?「実験体記録」か……」

時雨は早速そのファイルを開いた。そこには幾つもの英語と数字が表記され、そのことごとくに「廃棄」と書かれていた。そのページは何ページにも渡って続き、そこに書かれている内容は延々と同じことが書かれていた。

「………どうやらこのナンバーは実験で使われた被検体のナンバーか…そしてその結果は……」

そこから更にページを進めた時雨。そしてファイルのあるページに差し掛かった時、ふと時雨の手が止まった。そこに書かれていたのは今までの内容とは違うが書かれていた。今までの様な淡々とした記録ではなかった。

「他のページと違う……っ!これは!」

 

「被検体ナンバー INDM053729 被検体名 電 製造方法 艦娘建造システムを流用 評価ステータス 社会性 甲 操縦技術 甲 反応速度 乙 製作技術 甲 認知力 乙 精神安定 丙 深海細胞同調率 乙 記憶操作完成度 甲 備考 上層部の要求性能を満たす被検体として完成したが、2017年3月31日に逃亡。以降行方不明」

 

そして記録の横に金色の右目と深紅の左目をした茶色の長髪をアップヘアーにして束ねている少女の写真が付いていた。その写真に描かれている電の姿は「電がぷらづまと意識を共有している状態」そのものだった。写真を見た時雨は衝撃を受け、その場に立ち尽くしてしまった。

「いな……づま……」

「時雨?」

ファイルを見たままその場に立ち尽くす時雨の声を聴いた夕立。不思議に思った夕立は、時雨の元に駆け寄って声をかけた。

「時雨、何か見つけたっぽい?」

「………」

「時雨?」

時雨は無言で夕立にそのファイルを見せた。夕立はそのファイルを受け取り、ページに目を通した。夕立は所狭しと書かれた漢字に戸惑いながらも読み進め、そして、電の写真が目に映った。

「え―――これ、って…電、ちゃん……」

夕立もまたそこにあった電の写真に衝撃を受けた。そして時雨が言った。

「これが……犯人が言ってた「電の秘密」……」

「で、でも電ちゃんには暁ちゃんたちがいるっぽい!もし、ここで生まれたなら姉妹なんている筈ないっぽい!」

夕立が慌てて目の前にある事実(・・)を否定した。しかし―――

「……夕立の言ってることは正しいと思うよ。僕も最初はそう思った……でも、ここを見て」

時雨はページの文書の中からある一点を指さした。そこに書かれていた言葉は――――

「記憶操作完成度、甲……」

夕立はゆっくりとその言葉を口にした。そしてそこに書いてあった文章の内容が理解できない程、夕立は子供ではなかった。

「記憶操作……つまりはそういう事なんだろう。姉妹が「いない」ってことを「いる」って事に操作した。きっとそれ以外の記憶も……だから電は……」

「………」

黙り込んで項垂れる夕立。先程までの明るい表情は完全に失われていた。そんな夕立を見ていた時雨は、その隣のページにふと目を向けた。そこには電と同じような文書が書かれていた。

 

「被検体ナンバー INDM053730 被検体名 レ級 製造方法 艦娘建造システムを流用 評価ステータス 社会性 甲 操縦技術 甲 反応速度 甲 製作技術 甲 認知力 甲 精神安定 甲 深海細胞同調率 甲 記憶操作完成度 甲 備考 上層部の要求性能を満たす被検体として完成し、全てにおいて最高の性能を有している。完成当時は艦娘に似た姿をしていたが、翌日には深海棲艦の姿となったが特に問題なし」

 

そしてそこには、白いショートヘアーに血の様に赤い目をした少女の写真が貼られていた。時雨はこの写真の人物が、あのレ級であることはすぐに分かった。しかし、時雨は表情を変えることはせず、ページをめくった。

 

「被検体ナンバー INDM-CP01 被検体名 01 製造方法 クローン製造法 備考 性能を満たすも深海細胞に対する耐性が低い」

 

「被検体ナンバー INDM-CP02 被検体名 02 製造方法 クローン製造法 備考 性能を満たすも深海細胞に対する耐性が低い」

 

「被検体ナンバー INDM-CP03 被検体名 03 製造方法 クローン製造法 備考 廃棄」

 

「被検体ナンバー INDM-CP04 被検体名 04 製造方法 クローン製造法 備考 廃棄」

 

ここでファイルは終わっていた。時雨はこの表記を見ても表情を変えずただ黙っていた。そしてファイルを閉じ、言った。

 

 

答えを聞きに行こう……

 

 

それを見ていた黒いフードは笑っていた。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。

誠に申し訳ありませんが、来週の投稿はお休みさせていただきます。何卒、ご理解のほどお願いいたします。


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EP68 正体と真実

時雨と夕立は実験観察室の前まで戻ってきた。2人は口を開くことなく、ゆっくりとお互いの手を握り合った。そして時雨は、握りしめたカードキーを扉の横にある認証装置に通した。認証装置がピー!と音をたてると、その数秒後に正面の扉が天井へと吸い込まれるように開いた。2人はゆっくりと部屋の中へと入っていった。

 

部屋の中は今までの部屋同様の電灯で照らしていて、少し薄暗かった。そして部屋に入ってすぐ、時雨と夕立は部屋の中央の椅子に座る電を見つけた。

「「電!」ちゃん!」

急いで駆け寄る時雨と夕立。

「電!大丈夫かい!」

「電ちゃん!早く起きて一緒に逃げるっぽい!」

しかし電は意識を失ったままで、2人の呼びかけに答えることはなかった。すると、部屋の扉が閉まる音がした。それに気づいた2人は慌てて後ろを振り向こうとしたがしかし、時雨と夕立が首を動かすよりも先に2人を衝撃が襲った。

「うわっ!」

「きゃっ!」

2人は中央から少し離れた場所まで弾き飛ばされていた。急いで起き上がった2人がさっきまでいた方を向くと、そこには黒いフードを被った人物が立っていた。

「ごめんごめん!ちょっと、強かったかな?」

「誰だっ!」

「あはは!怖い顔しないでよ時雨ちゃん。一応手加減したんだし、許してほしいなぁ」

「そんなことは聞いていない!」

「名乗るほどの者でもないよ。それより、見つけることは出来たの?電ちゃんの秘密」

「っ!」

黒フードの人物の言葉に、ピクリと肩を震わせた時雨。それを見た黒フードの人物は、口元に笑みを浮かべて言った。

「そっかそっか!で、秘密を知った感想はある?」

「「………」」

黒フードの人物の言葉に黙り込む時雨と夕立。そんな2人を見た黒フードの人物は、まあ仕方ないよね!と言ってから更に言葉を続けた。

「でも、時雨ちゃんと夕立ちゃんが見つけた物は全部本物だよ。私面倒くさがりだから、あんな長い「実験体記録」なんて書けるわけないもん!2人も見たでしょ?死体廃棄室にあった記録」

「っ!……やっぱりあれはお前が書いたものだったんだね」

「まあね!ここで働いていた連中が書いた堅苦しい記録よりもわかりやすかったでしょ!」

依然として楽し気な口調で喋る黒フードの人物。時雨と夕立は、何も口を開くことなくただ黙って黒フードの人物の言葉を聞いていた。

「でも良いよね!あいつら、ここでの実験で作られた私たちを「道具」としか、見てなかったみたいだし!」

その言葉を聞いた時雨はふと、あることを思い出した。そしてそれが、自分の中で引っ掛かる感覚を覚えた時雨は口を開いた。

「なら何故、お前は僕たちの姉妹や翔鶴さんや照月を利用したんだ!」

「ん?」

「深海提督が言ってた。お前の目的は「復讐」だって!でも、お前を「道具」と見ていたここの研究員たちも、計画を立てた連中も全員いなくなった。なのに何でお前はこんな事をしているんだ!」

「………」

時雨の言葉を聞いた黒いフードの人物は、口を閉ざした。しばらく室内を静寂が包み込んだ。しかし―――

「―――フッ」

「っ!」

「フフフ……アッハハハハハハハ!!!」

黒フードの人物は突然大声で笑いだした。それは、狂気すら感じさせるほどの高い声で笑っていた。

「アハハハハハ!アーハッハッハッハッハ!!!」

「な、何がそんなにおかしいっぽい!?」

「ハハハハハ……ハハハ!だ、だって!まだ私の復讐終わってないんだもん!!アッハッハッハッハッハッハッハ!!し、時雨ちゃんって、面白い冗談言えるんだねぇ!アハハハ!」

「「――――」」

黒フードの人物はお腹を押さえながら笑い続けていた。時雨と夕立は衝撃を受け、笑い続ける黒フードの人物を眺めるしか出来なかった。やがて笑いが収まり始めた黒フードの人物は、再び口を開いた。

「アハハハ……ハハハ……ふ、ふぅ……こ、こんなに大笑いしたのは、ここの奴ら殺し回った時以来だよ!時雨ちゃんって、冗談のセンスは最高だね!恐れ入っちゃったよ!」

「………」

「さてと!」

すると黒フードの人物は、椅子に座る電の方へ振り向いた。そして――――

「これも、復讐の1歩!」

黒い服から、魚のヒレの様なものがついたおぞましい左腕を出した。

「なっ!」

「なに…あれ?」

その異形な左腕を見た時雨と夕立は恐怖した。しかし、黒フードの人物はそんな2人を気にする素振りも見せず、その腕で電の頭を鷲掴みにして持ち上げた。

「………ん」

そこで電は少しだけ意識を取り戻したが、今だ完全には戻っていなかった。黒フードの人物は、狂気を纏った笑みを浮かべながら言った。

「電ちゃんがいけないんだよ?勝手に逃げだしちゃうから、私がこんな身体になっちゃったんだもん……だからさ――――」

 

 

 

沈んでしまえお前もッ!光も、望みも、未来もない。私と同じ、絶望の水底へッ!!

 

 

 

黒フードの人物は突然狂気に満ち溢れた叫びをあげた。そしてその左腕から幾本もの真っ黒な触手が現れると、それは徐々に電を包み込み始めていった。

「やめろぉー!!」

それを見た時雨はいてもたってもいられず、飛び出した。そしてそれを止めようとした夕立もまた時雨を追って飛び出していた。しかし、間に合う筈はなかった。時雨は頭の中で、間に合わないと理解していたが、無意識がそうさせなかったのだった。

(駄目だ!間に合わない!)

そして、時雨の無意識に思考が追いついた時だった。

 

 

ドゴォーン!!

 

 

大きな爆音と共に、閉じていた扉が爆発したのだ。激しい爆風が室内に吹き荒れ、時雨と夕立は慌てて身を護った。

「な、何だ!?」

「きゃっ!」

「っ!?」

そしてその爆風を切るように1人の人間が黒フードの人物目掛け、目にも止まらない速さで飛びこんできた。咄嗟に黒フードの人物は左腕から電を離すと正面に向けた。電はそのまま床に倒れ、その衝撃で完全に意識を取り戻した。

「はにゃっ!」

「「電!」ちゃん!」

ガキーン!という金属音が鳴り響き、それに続いてギシギシという金属が軋み合う音が室内に響き続けていた。

「………」

「また、私の邪魔をするのか―――」

 

 

黒野深海ィ!!

 

 

そこには右の額に青白い炎を纏った黒い角をはやし、血の様に真っ赤な右目を光らせた深海が、黒フードの人物の左腕にナイフを突き立てていた。

「深海提督!?」

その深海の姿を見た時雨は驚きを隠せなかった。今まで見たことのないその深海の姿はまさに、ある種の深海棲艦と同じに近かったからだ。

「クッ!」

左腕を大きく振り払った黒フードの人物。その行動に合わせるようにバク転し、少し離れたところに着地する深海。深海は体をゆっくりと起こし、黒フードの人物を見据えた。

「何故私の復讐の邪魔をする!」

すると黒フードの人物は荒げた声で、深海に向かって叫んだ。

「国の為かっ?平和の為かっ?」

「………」

深海は黒フードの人物の言葉に何も答えなかった。そして地面を1歩踏み出すと、再び目のも止まらない速さで黒フードの人物に斬りかかった。しかしその攻撃は黒フードの人物の左腕に防がれたが、深海はそこから更にナイフを振り左腕に連撃を加えていく。ガキンガキン!と高い金属音がしばらく室内に鳴り響いていた。

「電!大丈夫かい!」

「電ちゃん!しっかりするっぽい!」

そんな中で、時雨と夕立の2人は床に倒れた電を何とか起こそうとしていた。

「え?時雨さんに、夕立さん?」

やがて時雨と夕立の存在に気づいた電。時雨はそれに気づいて、すぐに夕立に指示を飛ばした。

「夕立、左から電を支えるんだ!急いでここから出るよ!」

「わかったっぽい!急ぐっぽい時雨!」

電の両腕を肩で支え、時雨と夕立は部屋からの脱出すべく歩き出した。そして深海は連撃を止め1歩下がるとそこから黒フードの人物目掛け飛び上がった。

「しつこいっ!」

黒フードの人物は左腕で深海を叩き落とそうとした。しかし―――

「………シッ!」

「なっ!腕を踏み台にした!?」

深海はその腕を踏み台にして更に飛び、黒フードの人物の背後へ回った。そして空中で方向転換すると、天井を蹴って勢いを乗せ上空から斬りかかった。

「いい加減にしろぉー!!」

「っ!」

「あっ!!深海提督さん避けるっぽい!」

黒フードの人物は慌てて左腕を後ろへ向けた。深海は何とか体を横に逸らして左腕を回避したが、ナイフは左腕に沿うようにして当たると、切っ先が黒いフードに引っかかった。そして互いがすれ違い、深海は床に着地するとその勢いで前転し少し離れた場所で立ち上がった。その場にいた全員が黒フードの人物に振り向いた。そしてそこには――――

「なっ!」

「う、嘘……」

「………」

「そ、そんな……どう、して………」

真っ白な肌とセミショートの髪に真っ白なドレスを着て、首からは千切れた鎖が垂れ、額に2本の黒い角をはやし、魚のヒレの様なものがついたおぞましい左腕と、深紅の眼を持つ少女が立っていた。

 

 

 

吹雪………さん

 

 

 

そこに立っていたのは、吹雪だった。姿は違えど、そこに立っていた少女は明らかに吹雪だった。電が見間違えることなどなかった。

「久しぶりだね電ちゃん。驚いた?」

「何で……どうしちゃったんですか吹雪さん!どうしてそんな姿に!」

電は吹雪に向かって叫んだ。全国大会への出発日にあった時は、髪が白くなっていただけだった吹雪。それが、この短期間で肌は白くなり、額には角が生え、左腕は異形化してしまった。すると吹雪は一言呟いた。

「どうして、だって?」

そして次の瞬間―――

「うわっ!」「きゃあ!」

吹雪はとてつもない速さで電たちに向かい、その左腕で再び電の顔を鷲掴みにし壁に叩きつけた。その勢いで時雨と夕立は突き飛ばされ、地面に倒れた。

「あぐぅ!」

「よくそんなことが聞けるね電ちゃん……全部、電ちゃんのせいなんだよ?」

「!?」

「電ちゃんがこの研究所から逃げ出さなければ、私がこんな姿になることなんかなかったんだよ?」

「電!」

何とか起き上がった時雨が電の名前を叫んだ。しかし、顔を鷲掴みされた電は答えることが出来なかった。すると吹雪は、時雨に振り返って言った。

「邪魔しないでよ時雨ちゃん。これは私と電ちゃんの問題なの」

「何故なんだ吹雪!何故そこまで電を狙うんだ!」

「………」

時雨の問いに吹雪は時雨を見据えたまましばらく口を閉じていた。しかし、すぐにその口は開いた。

「なら、電ちゃんへの冥途の土産に教えてあげる。私と電ちゃんのこと……そして、私がこの世界でただ1人、全てを裁く権利があるってことをね!」

「なんだって!?」

そして吹雪は語りだした。

「ガンプラバトルを裏から操り、この国の主権を握ろうとした旧海軍の首脳たち。そして奴らの計画の為に艦娘と深海棲艦の細胞を合わせて生み出されたのが電ちゃんとレ級。でも電ちゃんは、その研究の途中でここから逃げ出した。でもここの奴らはすぐに解決策を出した。この施設にあった資料を読んだならわかるよね?時雨ちゃん」

「……脱走した実験体…電の細胞を使ったクローンの製造……か」

「そう。そして作り出されたのが私。でも上手くはいかなかった。実験に耐えることが出来たのは私ともう1人だけだった…私ともう1人以外は、みんな死んでしまった。そこまでなら良かった…そこまで(・・・・)ならねっ」

「……っ!まさか!」

「そう。時雨ちゃんも読んだよね、実験体記録。そこに書いてあったでしょ?」

「深海細胞への耐性が低い……」

「正解。そして深海細胞への耐性が低いとどうなるのか、答えはいたってシンプル。「ただ破壊を求めるだけの存在」に短期間(・・・)でなってしまう。そうなれば、制御は出来なくなり奴らの計画も意味を失う。それでも奴らは、計画を進めた。そしてこう言った」

 

 

 

所詮クローンだ。使えなくなったら廃棄して代わりを作ればいい。製造法が確立された今、いくらでも替えが効くからな

 

 

 

「!?」

「こんな事を言われちゃったら、もう怒りは爆発したね。手当たり次第にここの奴ら殺しちゃった!でも、それだけじゃ鎮まらなかったんだよね。そして私の怒りは、私をこんな体として生み出して捨てた旧海軍の首脳と、私のこの体を作り出した細胞の持ち主である電ちゃんに向けられた。でもその内、わかったんだよね」

「何が―――」

 

 

 

全ての元凶であるガンプラバトルが無くなれば良い。ってね!

 

 

 

「「!!」」

「ガンプラバトルに全部を奪われた、この私にしか出来ないってすぐに分かったよ!」

「………だから艦娘を拉致した」

「まあね!1人じゃ何にも出来ないし、それに深海細胞を分け与えることは簡単だったからね!」

「………それが」

「ん?」

その時、今まで沈黙を貫いていた深海が口を開いた。深海はゆっくりと歩きながら吹雪に言った。

「それがお前の言う「世界でただ1人、全てを裁く権利がある」と言う言葉の意味か」

「そうだよ黒野深海。どうせ私は消えてしまう。なら、この世界も道連れにして消えてやる。それが、私の復讐」

「そうか……」

「また邪魔をする気?」

「まあな。俺たち家族の生活に影響があると判断したから…なっ!」

深海は1歩踏み出し、ナイフを構えて高速で吹雪に迫った。しかし吹雪は焦ることなくその場で振り向き、電を鷲掴みした左腕を深海に向けた。

「いつまでも邪魔できると思うなぁ!」

「………」

すると深海は吹雪の直前でナイフを捨てた。深海の行動に驚く吹雪。しかし、カラァン!とナイフが地面に落ちた音が吹雪の耳に届いた時、既に深海は吹雪の懐に入り込んでいた。

「っ!?」

「読みが甘いな」

そして深海は吹雪の腹部に拳を叩きこんだ。その威力は凄まじく、先程まで電を叩きつけていた壁に今度は吹雪が叩きつけられていた。

「グッ!ぐはぁ……」

「はわっ!」

吹雪の左腕から電が落ち、床に倒れた。電は何とか立ち上がろうとしていたが、身体に力が入らず上手く立ち上がれずにいた。

「時雨、夕立。電を連れて先に行け。俺はこいつを片付ける」

「うん!」「ぽ、ぽい!」

時雨と夕立は慌てて電に駆け寄り、2人で抱えて部屋を出て行った。深海は吹雪の腹からゆっくりと手を離した。吹雪は崩れるように床に倒れ、荒い息で深海を見据えていた。

「黒野……深海ぃ!」

「1つ教えてやる」

深海は倒れ伏す吹雪を見下ろしながら言った。

「俺がお前の邪魔をするのは、国の為でも、平和の為でもない―――」

 

俺と、俺の家族の為だ

 

「家族か……フッ、アハハハ!私には、わからない感覚だよ。でも、それが分かったなら私が今生き残れる道が出来たなぁ」

「なに?」

すると吹雪は懐から1つの棒を出し、その先端部を押した。すると、室内にアラートが鳴り響きアナウンスが流れた。

「自爆装置が作動しました。これを解除することは出来ません。職員は速やかに退避してください。繰り返します―――」

「自爆装置か……お前の言っていた生き残れる道の意味とはかけ離れているように感じるが?」

「いつ出口が1つしかないって言ったのかな?それに、良いことを教えてあげるよ」

「何だ。話半分に聞いてやるが、梅雨葉はもう救出済みだ―――」

 

 

お前のお母さんもここに居るんだよねぇ

 

 

「………なに?」

「言葉の通りだよ?ここにお前のお母さん「空母水鬼」がいる」

「バレバレの嘘を吐くか。俺の母さんは戦時中に死んだ。それを俺が知らないとでも言うのか?」

「嘘じゃないですよ。試しにそこにあるモニターを見て見なよ」

「………」

深海は黙って吹雪の言葉に従った。自分の母である空母水鬼は、自身の目の前で撃ち殺された。それを深海が忘れることはなかったが、吹雪の異常なまでの自信を見て自身で確認することを選択したのだ。そして深海は壁にあるモニターの1つに目を向けた。

「………っ!?」

モニターを見た深海の表情が一変した。先程までの静かな表情から打って変わって、明らかに動揺した表情だった。そしてそのモニターに映っていたのは、緑色の液体が入ったカプセルに収められた銀色のロングヘアーにカチューシャらしき物をつけ、黒と白の縦縞が入った袖なしのセーターを着て、3段に分かれるブーツに縦縞の入ったニーソックスを履いた白い肌の女性だった。しかし、深海が驚いたのはそこではなかった。

「………桜の花の簪」

その女性「空母水鬼」が右前髪に着けていた桜の花を模した簪。それが深海の表情を一変させた原因だった。そしてその簪は、その女性、空母水鬼が深海の母親である証でもあった。

「かあ……さん」

すると深海の背後からチャリン。という音がした。深海が振り返ると床に1つの鍵が落ちていた。

「空母水鬼がいる「検体保管室」の鍵。ほら、早く行かないと今度こそ本当にさよならだよ?」

「……クッ!」

深海は鍵を拾うと部屋を飛び出していった。深海が部屋を出たことを確認した吹雪は何事もなかったかのようにすくりと立ち上がり部屋の奥にある扉を開けた。そして、部屋の出口の方を振り向いて言った。

「それじゃ、また今度ね!」

吹雪は扉の奥へと消えていった。

 

続く



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EP69 母と子の再会

電を担いで階段を目指す時雨と夕立。その途中で吹雪が作動させた自爆装置のアナウンスを聞いた時雨と夕立は、更に足を速めた。

「自爆装置…この施設を隠蔽する措置までしっかりやるなんてね」

「時雨?」

「何でもないよ。電、出口の階段まであと少しだ。頑張って!」

「なの…です」

しかし電の表情はすぐれなかった。それもその筈だ。と時雨は心の中で呟いていた。

(今まで親しかった人が、隣から消えたんだ。僕も、その経験はしているからよくわかるよ)

先を急ぐ3人はやがて、分かれ道のところまで戻ってきた。そして、時雨と夕立は迷うことなく右の道を選択し、歩き出したその時だった。

「時雨!」

「え!深海提督!」

背後から深海が時雨を呼び止めた。深海は荒い息をしていたがやがてすぐに時雨に問いかけた。

「検体保管室は何処だ!」

「深海提督!あの吹雪はどうなったの?」

「あとで教える!とにかく検体保管室は何処か教えろ!」

「深海提督さん?」

「早くしろッ!!」

「「!?」」

深海はこの時、初めて焦った顔を他人に見せた。時雨は慌てて検体保管室の場所を教えると、深海はすぐにその方向へと消えていった。

「深海提督さん。あんなに慌ててどうしたんでしょう?」

「わからない。でも今は出口を目指そう。自爆に巻き込まれるなんて、ごめんだしね」

「あ!階段が見えたっぽい!」

3人は階段を上がり、やがて出口に辿り着いた。

 

出口の扉を開けた3人。するとそこは、よくわからない計器やメーター、配管が巡らされた部屋だった。

「え?扉を開けたら外じゃないっぽい?」

「きっとこの建物…たぶん上下水道の施設に擬装しているんだ…」

「あ!時雨さん、夕立さん。あそこから出れそうなのです!」

電が部屋の先、光がこぼれ出ている扉を見つけた。そして、その扉を目指し歩を進めた3人は、ようやく外へ出ることが出来た。外は草が生い茂る、まるで森林公園の広場のような場所だった。そしてその広場には、梅雨葉が立っていた。

「あ!時雨さん、夕立さん、電さん!」

「梅雨葉!急いでここから離れるんだ!さっきの施設の自爆装置が起動したんだ!」

「えっ!」

「だから早くここから離れるっぽい!」

梅雨葉は、はい!とハッキリ返事をして踵を返し、走っていった。時雨と夕立もまた、電を支えながら歩き出した。その時。

「あの、時雨さん、夕立さん。電、もう大丈夫なのです」

電が時雨と夕立に話しかけた。時雨は、本当に大丈夫かい?と尋ねると、電は大きく頷いてみせた。

「わかったよ。でも、無理はしたら駄目だからね」

「なのです!」

「電ちゃんの傍には夕立が付くっぽい!」

「夕立さん、お願いします…」

2人の肩から離れた電は、ゆっくりと地面に足を付けて立った。着実に1歩ずつ歩を進めていき、やがて電はしっかりと歩けるようになった。そして3人は先行する梅雨葉を追いかけて走っていった。

森林公園の広場から、近くの木々が立ち並ぶ森へと入った4人。幸い、近くに人工の道があり、4人は真っ直ぐその道を進んでいった。すると、4人はその道の先にあった駐車場の様な空間へと足を踏み入れた。

「ここは……駐車場?」

辿り着いてすぐにその場を見渡した時雨。すると、駐車場の隅に1台のワンボックスカーが停まっていることに気づいた。

「みんな!あそこに車が!」

「…本当なのです!」

「もしかしたら使えるかも。行ってみます?」

「迷ってる時間はない!急ごう!」

4人はワンボックスカーへ向かって行った。そして車に近づき、時雨が運転席を確認した。すると―――

「え、人?」

そこには薄いピンク色の髪をポニーテールにした襟と袖が青いセーラー服を着て、青いキュロットを履いた人物が顔に本を乗せて寝転がっていた。時雨はその人物の顔に乗っている本に目を向けた。そこには「ネタ帳」と書かれていた。

「青葉さんだ!」

「「「ええ!?」」」

時雨は慌てて車の窓ガラスを叩いた。ゴンゴン!と窓ガラスの音に反応した青葉が、ゆっくりと顔に乗せていたネタ帳を顔から外した。

「深海司令官もう帰ってきたんで―――って!し、時雨さんじゃないですか!」

と、仰天する青葉。青葉は慌てて窓を開けると、時雨が物凄い勢いで話しかけてきた。

「青葉さん!僕たちをこの車に乗せてもらえないかな!」

「ど、どうしたんですか時雨さん?そんなに慌てて」

「説明してる暇ないっぽい!青葉さん、夕立からもお願いするっぽい!」

「梅雨葉からも、お願いします。青葉さん」

「電からもお願いなのです!」

「って、深海司令官が言ってた4人が全員いるじゃないですか!わかりました、乗ってください!」

青葉はそう言って、車中央の自動ドアを開けた。慌てて乗り込む、電たち。そして、全員が乗り込んだ時、先程電たちが森から出て来た道から深海が飛び出してきた。そしてその肩には、背の高い白髪の女性が担がれていた。深海は走りながら荒げた声で青葉を呼んだ。

「青葉!」

「深海司令官!」

青葉が深海の声に応えて窓から顔を出す。

「急いでエンジンを掛けろ!」

「は、はい!」

青葉は急いでエンジンキーを回し、エンジンを掛けた。深海がその数秒後に車に乗り込み、それを確認した青葉は、ドアを閉めた。そして深海は叫んだ。

「めいいっぱい飛ばせぇッ!」

「了解ですッ!」

青葉はアクセルを一番奥まで踏み込み、車を発進させた。駐車場を抜け、道に出るとそこからは一気に下り坂となっていた。そして、その坂を青葉の車は一気に駆け下りていった。

「………」

その様子を、坂の更に上から見ていた吹雪は手に持っていたリモコンのボタンを押した。そのボタンには「自爆解除」と書かれていた。そして施設内で響いていたアナウンスとサイレンは一斉に終息した。

「騒ぎになると面倒だからね。さて……私も準備を急がないと!」

吹雪は森の中へと消えていった。

 

そしてその夜、車はガンプラバトル全国大会の会場へと戻ってきた。青葉は、電たちを選手村まで送ると、次に深海と梅雨葉を彼のキャンピングカーまで送った。

「深海司令官。大丈夫ですか?」

車を降りた深海を、青葉は少し心配そうな表情で見ていた。すると深海は青葉に振り返って言った。

「大丈夫だ。お前も、しばらくはゆっくり休んでおけ」

「はい…その、おやすみなさい」

「ああ。おやすみ」

そう言って青葉は車を発進させ、去っていった。深海と梅雨葉はゆっくりと歩いてキャンピングカーに戻った。そしてキャンピングカーの扉を開け、車内へと入った深海を時雨が迎えた。

「お帰り。梅雨葉、提督」

「ああ。ただいま」

「ただいま。お母さん」

「秋雨たちはもう寝たのか?」

「うん。ついさっき、寝たところだよ。3人とも、2人が帰ってくるまで起きてる!って言ってたけど、睡魔に負けちゃったみたいだ」

キャンピングカーの奥では秋雨と雨葉、白が揃って眠っていた。すると梅雨葉のお腹が、グ~と鳴った。

「お母さん。梅雨葉、お腹すいた」

「わかったよ梅雨葉。提督も何か食べる?」

「ああ。頼むよ」

時雨がキャンピングカーのキッチンへ向かったのを確認した深海は、担いでいた女性、空母水鬼をソファの上に寝かせた。しばらくすると、時雨がキッチンからカレーを作って持ってきた。深海と梅雨葉はそれをゆっくりと味わって食べ、完食した。すると梅雨葉はたちまち眠気に襲われ、おやすみぃ~。と眠気に満ちた声をあげながら奥の部屋へ歩いていった。そしてその場には、深海と時雨、眠ったままの空母水鬼だけとなった。すると時雨が深海に尋ねてきた。

「提督。その空母水鬼さんって…」

「ああ。前にお前にも話した、俺の……母さんだ」

「……提督」

「………ああ。死んだと思ってたけど、生きていたんだ」

「………」

「………」

そしてしばらくの間、車内は静寂に包まれた。すると、時雨が何かを察したのかゆっくりと立ち上がり。

「僕、もう寝るね」

「…ああ」

ゆっくりと奥の部屋へと入っていった。そして、ベットに入った時雨は心の中で呟いた。

(良かったね。提督……)

その目からは涙が零れていた。

 

それから数時間が過ぎた午前3時。深海はソファで眠る空母水鬼の元を離れることなくずっと傍にいた。深海は空母水鬼の両手をギュッと握っていた。空母水鬼の手は凍てつくように冷たかったが、深海はただ黙って手を握り続けていた。

「……母さん」

深海が小さく呟いた時だった。

 

 

ピクッ

 

 

「!?」

深海が握っていた空母水鬼の手が小さく動いたのだ。それに気づいた深海はハッと顔を上げた。自然と視線が、空母水鬼の顔へと向く。そして―――

「………ぁ?」

空母水鬼の赤い両目が、深海の顔を映し出した。そして、空母水鬼は掠れた声で途切れ途切れに言った。

 

 

 

 

…み……か、ぃ……

 

 

 

 

その言葉を聞いた深海の両眼から大粒の涙が零れた。何十年ぶりに聞いた母の声は、掠れていても、深海が子供の頃に聞いたその声そのものだった。

「……かあ……さんっ」

深海は、堪えられない涙を流しながら空母水鬼に抱き着き、泣いた。空母水鬼は、そんな深海を優しく抱き締め返した。

 

続く



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EP70 夢と現実

翌日、決勝戦を翌日に控えた国立ガンプラバトル競技場は熱気に包まれながら前日祭の真っ只中だった。会場の至る所には食べ物やガンプラを扱う屋台が並び、ガンプラ製作ブースまでも設けられていた。そんな賑やかなお祭り会場内を、電たちは楽しそうに歩いていた。

「あっちにチョコバナナの屋台!こっちにはクレープとクロワッサンたい焼き!ふわぁー!迷うっぽーい!」

「ちょっと夕立はしゃぎ過ぎだよ……ま、こんな楽しい日は久しぶりだし、仕方ないっか」

「なのです!昨日のことは忘れて、お祭りを楽しむのです!」

「かなり重苦しい事だったけど…今日ばかりは僕も楽しもうかな…」

「時雨ー!今度はあっちに行くっぽーい!」

はしゃぎまわる夕立を見た時雨は、硬い表情を解して夕立の後を追いかけた。電も勿論その後を追い、3人はしばらく昨日のことを忘れてお祭りを楽しんだ。

「……今はそっとしておいてやるか」

その様子を遠くで見ていた深海は、静かにその場を後にし人混みの中へ消えていった。

 

そして日が暮れ始めた頃、電たちは海浜公園のべンチに座っていた。オレンジ色の夕陽が、3人を照らしていた。

「ふー、もうお腹いっぱいっぽい!」

「まったく、甘い物には目が無いんだから夕立は…でも、楽しかったね!」

「なのです!電もこんなに楽しい日は久しぶりだったのです!」

「またこの3人でお祭り行きたいっぽい!」

「あはは…気が早いよ夕立」

「でも、電も賛成なのです!」

「……僕も賛成だよ。また、行けるといいね」

「ぽい!」「なのです!」

3人はしばらく夕陽を眺めていた。するとそこに、深海がゆっくりと歩きながら近づいてい来た。

「楽しめたか?電、時雨、夕立」

「あ!深海提督さん!」

「その様子なら、大丈夫そうだな。明日の決勝戦、無理せず頑張れよ」

「ありがとうなのです!深海提督さん!」

「ありがとう、深海提督。…あ、深海提督のお母さんは大丈夫だった?」

ふと時雨が、昨日深海が助け出した空母水鬼の事を思い出した。すると深海は、苦笑いを浮かべて言った。

「あ、ああ……むしろ元気過ぎて、車から降りるのに30分掛かったな」

「「さ、30分!?」」

「いろんな意味で恐怖を感じたな…あれは」

「深海提督も、大変なんだね……」

「まあ、な…(俺も、母さんにまた会えて嬉しかったし)それじゃあ、俺は帰る。何かあったら、すぐに来るんだぞ」

「わかったよ深海提督」

そう言って深海は帰っていった。それからしばらくして、電たちも帰路についた。

 

 

光も差さないような真っ暗闇の空間で電は目を覚ました。

(……?…ここは…何処、なのです?)

何も見えないその暗闇の中、自身がゆっくりと下へ落ちて行くような感覚に気づいた電は、無意識に上へ上がろうと体を動かすが、電の身体はゆっくりと下へ向かって落ちて行くばかりで、何も変わらなかった。しかし体の向きは変えられた電。すると電の視線の先に白い何かが見えた。

(何だろうあれ?)

しばらくして電は、その白い何かへと辿り着いた。電がその場所に降り立つと、足元からふわりと白い粉が舞い上がり、ゆっくりとその場を漂って落ちていった。電はゆっくりとその周囲を見渡した。しかし、電が立っている場所以外はほぼ全て真っ暗闇で何も見えなかった。

(何も、ない……電は一体何処に来ちゃったの?)

 

――――タクナイ

 

(!?)

その時、電の耳が微かな何かの音を捉えた。電は再び辺りを見回したが周辺の風景は変わっていなかった。しかしやがて「その音」いや、「声」は鮮明に聞こえてきた。

 

シズミタクナイ…

 

(え?)

電の耳はその声をハッキリと拾った。低い女性の声。その声が「シズミタクナイ」と言った。すると―――

 

タスケテ…

 

(!?)

今度は違う言葉が聞こえてきた。声の音程も、先程より高かった。電は声のした方向に勢いよく振り返るが、やはりそこには暗闇が広がっているだけだった。

 

ドウシテナコンナコトニ…

 

更に聞こえてくる声。電は額に汗を浮かべながら戸惑いの表情で周囲を見渡すしかなかった。

 

コワイヨ…

 

不安と恐怖に満ちたその声は、次々に電の耳に届けられていく。しかし…

 

コンナハズジャナイ…

 

マダヤレルハズ…

 

ココデオワレナイ…

 

カエリタイ…

 

カエセ…

 

やがてその声は何処か怒りを纏った物へと変わった。電は聞こえてくる声に恐怖し、耳を塞いでうずくまった。しかし、いくら耳を塞いでも声は次から次へと聞こえてくる。

 

モウイチドアノバショニ…

 

タドリツキタイ…

 

カエルノ…

 

(やめてください!電は…電はそんな事知らないのです!)

電が心の底でそう叫んだ時だった。

 

コワレテシマエッ!

 

(!!)

先程までの声とは違う。怒りに満ちた声が響いてきた。更にその怒りに満ちた言葉は続く。

 

ツブレロッ!

 

ケシトベッ!

 

キエテシマエッ!

 

(いや!電は…そんなことしないのです!)

電の心が叫んだ。その時だった―――

今までいた白い場所が、一瞬で真っ赤に染まり、そこから伸びてきた真っ白な手が電の身体を掴むとその真っ赤に染まった場所の中へと引き込まれていったのだ。電は慌ててそこから抜け出そうともがくが、身体はみるみる吸い込まれていった。

(いや!電は…電はっ!)

その間も、電の耳には次々と先程の声が聞こえていた。そして、身体が半分まで沈んでしまった時、それまで聞こえてきていた別々の言葉が、一斉に同じ言葉へと変わった。

 

 

コワセ

 

 

(え、なに?)

そしてその「コワセ」という声は次第に連呼へと変わっていった。最初はゆっくりと間隔が開いていたが、電の首が飲み込まれる頃には間隔のない勢いだった。

 

 

コワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセ

 

 

(いやぁー!!)

 

 

 

ガシャーン!!

 

その音で時雨と夕立は目を覚ました。突然部屋の中に響き渡った衝撃音に2人は飛び起き、部屋を見渡した。そして目の前に見つけた。

「「電?」ちゃん?」

そこには真っ白な髪を下ろして猫背で立った電がいた。時雨は慌てて電気を付け、電に駆け寄って両腕を掴んだ。

「電、どうしたんだい?」

「………」

しかし電は、何も喋ることなく真っ赤に染まり青白い炎を放った両目で時雨を見据えた。その時、夕立が部屋の状態を見て驚いた。

「何でこんなに散らかってるっぽい!?」

「え?」

時雨が電の顔から眼を離し、部屋を見渡した。部屋の中は、自分たちの荷物や部屋の備品が散らかっていた。

「電!なんでこんなにも部屋を―――」

「……コワス」

「え――――うっ!」

時雨が電に尋ねようとした瞬間、電は時雨を突き飛ばした。時雨は壁に叩きつけられた。

「時雨!」

夕立が時雨を呼ぶと時雨は弱々しい声で、大丈夫だよ。と答えた。するとその時、電の眼がいつもの色に戻った。そして、慌てて室内を見渡した電。

「な、なに…これ……電、は……電が……これ、は……こんな…」

電はそう言うと、頭を両手で抱え込むと、絶叫した。

「ああああああああ!!!」

そして、そのまま意識を失って倒れてしまった。

 

続く



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EP71 電の決意

翌朝、時雨はすぐに深海をホテルに呼び夜中に起きた事を伝えた。電は気を失って以来未だに目を覚ましておらず、3人に見守られながらベットで眠っていた。すると夕立が深海に尋ねた。

「深海提督さん。電ちゃんは一体どうしちゃったのかな?」

「……」

深海は少しだけ考えて口を開いた。

「恐らく、前に植え付けられた深海細胞が本性を現し始めたんだろう。時雨の話を聞く限り、電の行動は深海細胞…もとい、かつての深海棲艦に見られた基本的な行動と同じだ」

「それって……」

「ああ…電の人格が消えてしまうのも、そう遠くないだろうな」

「深海提督さんが電ちゃんに渡した薬でも駄目っぽい?」

「あれは進行を遅らせるだけだ。完治は出来ない……ん?」

その時、深海の頭の中で何かが引っかかった。深海は右手を顎に当ててしばらく思考を巡らせた。

「深海細胞の進行……あの研究施設……母さんの証言……ブツブツ………」

「どうしたの深海提督?」

「………なるほどな。何で電がこうなったのかわかった」

「ほ、ホント!」

「ああ。長い話になるかもしれないが聞いてくれ」

「わかったよ」「ぽい!」

深海は語りだした。

「電がこうなったのはやはりあの吹雪のせいだろうな。恐らく奴はそこで電に深海細胞を更に植え付けたんだろう。俺の薬を飲んでいたのなら、容姿は変わってしまっても1年は人格を維持出来るからな。体内の深海細胞が増えれば、その分進行も早まる」

「でも電が吹雪に鷲掴みされた時、深海提督がすぐに攻撃して防いだ筈だし…僕たちが見つけた時に電に外傷なんて無かった…」

「俺たちが着く前に注射か何かでやったんだろう。それに母さんが言ってた。あの施設には私から採られた深海細胞が山ほど保管されてる。ってな。母さんは、深海棲艦の研究の為に旧海軍の連中によって捕獲されたんだろう。それがまわり回って、あの施設に連れていかれたんだろうな」

「……つまり、どういう事っぽい?」

長々説明を聞いていた夕立の頭上には幾つもの「?」が浮かんでいた。深海は夕立の表情から思考を読み取って答えた。

「電がこうなったのは、吹雪のせいだってことだ。難しい説明を省けばな」

「把握したっぽい!」

深海は続いて時雨に目を向けたが、時雨はハッキリと理解を示すように頷いていた。すると深海は2人に尋ねた。

「それでどうするんだ?決勝戦は」

「……電ちゃんがこの状況じゃあ…」

「うん。棄権した方が良いと、思う」

「………そうか」

そして室内に静寂が訪れた時だった。

「……時雨さん…夕立さん」

「「!?」」

ベットで眠っていた電が薄く目を開け、時雨と夕立の名を呼んだ。2人はハッとして電の傍に駆け寄り声を掛けた。

「電!気が付いたんだね!」

「大丈夫っぽい!?お腹空いてないっぽい!?」

「大丈夫…なのです」

電はゆっくりと体を起こした。

「時雨さん、夕立さん…」

「何だい?」

そして時雨と夕立に向け、言った。

 

 

決勝戦。電は…戦うのです

 

 

「……え?」

「電、こんな事で諦めたくないのです。時雨さんと夕立さんと電とで掴んだ日本一への切符、放したくはないのです!」

「でも電、また君が意識を失って暴れてしまったらどうするんだい!」

「そうだよ!安静にしてた方がいいっぽい―――」

「安静にしていたら治るのですか?」

「「っ!?」」

電の放った言葉に時雨と夕立の2人は絶句した。電は淡々と続けた。

「電の今の身体は、安静にしてても治らないのです。それはもう、今日までの日々で分かったのです……薬は飲んでいても、髪も肌もどんどん白くなっていくのです」

「電ちゃん……」

「そしてきっと、もうそう遠くない日に…電は……電は、電じゃなくなってしまう。ならせめて、電は時雨さんと夕立さんと優勝して日本一になりたいのです!」

「………」

「それに…電は吹雪さんを止めなくちゃ駄目なのです!」

「…電、それは……」

「吹雪さんがあんな事になっちゃったのは、電のせいなのです!なら、電が止めないと駄目なのです!」

「………電」

「「っ!!」」

淡々と続けていた電の言葉を深海が遮った。その事に驚く時雨と夕立だったが、深海は気にすることなく電に尋ねた。

「それは、お前の心が決めたことなのか?」

「………」

電は深海の問いにしばらく口をつぐんでいたが、やがて真剣な表情で、はい。と答えた。それを聞いた深海はただ一言、わかった。と言った。そして―――

「決勝戦には俺が同行しよう」

と言った。

「「「……え?」」」

突然の深海の言葉に、3人はただ驚くことしか出来なかった。

 

そして電たちは、国立ガンプラバトル競技場の中心点へたどり着いた。つい数日前までは、「ただ楽しい」という感情のみで埋めつかされていたその空間。しかし、今の電たちにその感情は無かった。遠くない未来に消えてしまうかもしれない電。そして吹雪によって消えるかもしれないガンプラバトル。ここまで歩いてきた道で知った事実が、3人の肩に重くのしかかる。そして、バトル台を挟んで対峙するのは最強と言ってもいい敵「レ級」。3人は、レ級の放つ殺意に満ちた闘志を受けながらも、それぞれの手に握られた自分の愛機を握りしめた。

「いよいよ、だね……」

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A.」

システムが起動し、ダメージレベルが設定される。

「勝っても負けても、これが最後なのです……」

「Please set your GP base. Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 space.」

3人がそれぞれGPベースをセットし、プラフスキー粒子が舞い上がる。そして、最後のフィールドである宇宙が形成された。

「でも、電ちゃんの為にも負けられないっぽい!」

「夕立さん……」

「Please set year Gun-pla.」

システムがガンプラのセットを指示した。レ級たちは早々にセットを済ませたが、電たちはすぐにはセットをしなかった。

「そうだね。僕たち3人で掴むんだ……」

「時雨さん……」

そして、しびれを切らしたのかバトル台の向こう側に立つレ級の殺意を纏った氷河のように冷たい視線が電を捉えた。それを見て肩を震わせる電。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。残り少ない自分に力を貸してくれた時雨と夕立。2人の為にも勝つ。そう先程誓った。そして電はイナヅマガンダムⅡをセットした。それに続いて時雨はガンダムアサルトレインバレットを、夕立はユニコーンガンダムナイトメアパーティーをセットする。システムが機体を読み込み、各機のメインカメラが発光し、出現した操縦桿を握りしめる3人。

「Battle Start!」

5機のガンプラがそれぞれ発進体制に入った。

「駆逐棲姫。5.12(ダークネスレイン)ガンダム、出撃する」

「必ず貴様を倒して、俺が本物だと証明してやる……レ級。ガンダムレギュルス、出る!」

先に飛び立ったのはレ級たちだった。そしてその直後、電が叫んだ。

 

 

必ず、勝ちましょう!!

 

 

「うんっ!」「ぽいっ!」

電たちは発進の時を迎えた。

「時雨。ガンダムアサルトレインバレット、行くよっ!!」

最初に時雨のガンダムアサルトレインバレットが飛び立ち―――

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメアパーティー、出撃よっ!!」

続いて夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーが飛び立った。そして――――

(時雨さんと夕立さんには感謝してもし切れないのです。だから……ここで全部恩返しするのです!!)

 

 

 

電。イナヅマガンダムⅡ、出撃ですっ!!

 

 

 

イナヅマガンダムⅡが飛び立ち、決勝戦は始まった。

 

続く



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EP72 決勝戦

観客席の最上段部の通路でフードを被って立っていた深海は、5人の出撃を見届けそのまま電たちの様子を見ていた。

「………」

そして形成された宇宙空間に1つの光が弾けた。

「始まったか…」

 

「そこっ!」

ガンダムレギュルスの先制攻撃を回避したイナヅマガンダムⅡがビームサーベルを右上段に構えてガンダムレギュルスに斬りかかった。

「無駄だ」

ガンダムレギュルスはその攻撃を最小限の左逸らしで避わし、イナヅマガンダムⅡが放った右への斬り上げも高速後退で難なく回避した。

「墜ちろっ!」

その状態から掌のビームバルカンを撃った。イナヅマガンダムⅡは機動防盾を構えてビームを防いだ。ビームバルカンは機動防盾の表面で次々かき消されていたが、やがてビームバルカンの銃撃が止むと、イナヅマガンダムⅡは左手を大きく払って視界を確保したが既に正面にはガンダムレギュルスが現れていた。

「えっ!?」

「遅いっ!」

ガンダムレギュルスはイナヅマガンダムⅡを蹴り飛ばした。ガンダムレギュルスのパワーが全て乗った蹴りを腹部にもろにくらったイナヅマガンダムⅡは弾き飛ばされてしまった。

「この程度!」

電はその態勢の中でハイパーフォルティスとマシンキャノンの引き金を引いた。しかしガンダムレギュルスはその弾幕の中を高速で飛び、掌からビームサーベルを展開してイナヅマガンダムⅡに迫った。

「クッ!」

「これで終わりだ!」

態勢を整えることが出来ないまま、ガンダムレギュルスの接近を許してしまったイナヅマガンダムⅡ。ガンダムレギュルスは左手のビームサーベルで袈裟斬りを放ち、イナヅマガンダムⅡは右手を半回転させてビームサーベルを逆手にしてこれを受け止めた。

「くぅぅ!」

「チッ…受け止められたか」

「電!」

するとそこに、遥か遠くの宙域から1本のビームがガンダムレギュルス目掛け飛んできた。しかしレ級は、この遠距離からの攻撃も高速バックで回避した。

「くそ!外した!」

「時雨さんっ!」

「邪魔だぁ!」

レ級はアサルトレインバレットの狙撃ポイントへ向け、ビームバスターを放った。たった1発だけの狙撃で、自身の位置を割り当てたレ級に驚いた時雨はすぐにその場を離れようとした。しかしそこに、ハイブラストモードの2.12ガンダムがGNビームサーベルを構えて斬りかかってきた。

「逃がしません!」

「なにっ!?」

時雨は咄嗟にバックパックのアームド・アーマーDEでGNビームサーベルを受け止めた。

「クッ!このままじゃ…」

2.12ガンダムの攻撃は受け止めたが、動きを封じられてしまったアサルトレインバレット。回避行動が取れなければ、このままビームバスターの直撃を受け撃破されてしまう。すると、迫るビームバスターの光とアサルトレインバレットの間に赤い光が高速で割って入った。

「大型ビームサーベル、出力最大っぽい!」

割って入った夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーが、右肩の大型ビームサーベルを出力最大で展開させた。片側での出力最大の大型ビームサーベルは超巨大なビーム刃を形成した。夕立はその状態でユニコーンガンダムナイトメアパーティーを縦回転させると、超巨大なビーム刃はビームバスターに直撃した。

「グググ……ぽぉーい!!」

そして大型ビームサーベルの勢いに負けたビームバスターはその場で消滅した。

「時雨!大丈夫っぽい!」

「くぅぅ…このっ!」

「クッ!」

その間にアサルトレインバレットは左手で抜いたビームサーベルを斬り払らい、2.12ガンダムを何とか突き放した。

「ありがとう夕立!」

「ビームバスターを斬って消すとはな…」

「隙ありなのです!」

そこへ再びイナヅマガンダムⅡが斬りかかった。ガンダムレギュルスは右手のビームサーベルで、イナヅマガンダムⅡの上段からの縦斬りを受け止めた。

「早い!」

「貴様が遅いだけだっ!」

「わっ!」

ガンダムレギュルスは、その状態から左足でイナヅマガンダムⅡを蹴り飛ばした。そしてそこにビームバスターを撃ち込んだ。

「まだなのです!」

イナヅマガンダムⅡは吹き飛ばされながらも展開していた機動防盾を縮小させ、それを正面に構えた。ガンダムレギュルスのビームバスターは縮小した機動防盾に直撃したが、対ビームコーティングによって打ち消された。しかし、蹴りの勢いにビームバスターをも受けたイナヅマガンダムⅡは吹き飛ばされてしまった。

「はにゃぁー!」

吹き飛ばされ態勢を立て直せていないイナヅマガンダムⅡ目掛けガンダムレギュルスはスラスター全開で迫った。何とか態勢を立て直すことが出来た電だったが、ガンダムレギュルスはすぐ目の前に迫っていた。

「もらった!」

「あっ!」

だがその時、レ級の耳に背後からの接近警報が届いた。

「電ちゃんはやらせないっぽーい!」

ガンダムレギュルスの背後に回っていたユニコーンガンダムナイトメアパーティーが、右手のロングソードで右上段からの袈裟斬りを放った。

「想定の範囲内だ」

しかしガンダムレギュルスはイナヅマガンダムⅡへの攻撃を瞬時にやめると急上昇し、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの攻撃を回避した。しかし夕立は急上昇したガンダムレギュルス目掛け、肩部のビームキャノンを背後の上空に向け連続で引き金を引いた。

「隙は見せないっぽい!」

「やるな」

「援護します夕立さん!」

そのまま180度方向転換する隙も、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの背後にいたイナヅマガンダムⅡが左手で保持したビームライフルとハイパーフォルティスを撃つことでカバーした。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはそのままガンダムレギュルスに再度の攻撃を仕掛けた。両手に保持したロングソードを次々振るが、ガンダムレギュルスはその全てを回避してしまう。

「まだまだぁ!」

「甘い!」

そしてユニコーンガンダムナイトメアパーティーが放った縦斬りをガンダムレギュルスは腕を掴んで止めた。

「ぽいっ!?」

「読みやすい攻撃など、オレには効かん!」

そう言ったレ級は、操縦桿を大きく振った。それによってユニコーンガンダムナイトメアパーティーは放り投げられてしまった。

「うわぁぁー!」

「夕立さん!」

「とどめだ!」

ガンダムレギュルスは即座にビームバスターの発射態勢に入った。しかし―――

「させないよっ!」

左後方からガンダムレギュルスをアサルトレインバレットの狙撃が襲った。チッ!と舌打ちをしたレ級はアサルトレインバレットの狙撃を左手のビームサーベルで消し飛ばした。

「よしっ!」

「時雨、助かったっぽい!」

「直撃させる!」

アサルトレインバレットの後を追っていた2.12ガンダムがバスターモードでGNダブルバスターライフルを撃った。オレンジ色の電撃を纏った紫のビームがアサルトレインバレットに迫った。しかし時雨は焦ることなく、アサルトレインバレットを右にローリングさせて回避し手を休めることなく武装スロットからインコムを選択した。

「インコムッ!」

アサルトレインバレットの両腰からインコムが射出され、2.12ガンダムに二方向から攻撃を仕掛けた。アサルトレインバレットも、身体の向きを反転させ左手に握ったビームピストルを構えて撃ち続けた。

「有線なんかに当たる私ではない!」

駆逐棲姫は二方向から来るインコムの射撃とビームピストルのビームを回避しつつ、射撃の間に隙を見つけてはアサルトレインバレットに連射モードのGNダブルバスターライフルを撃ち込んだ。

「なんて動きなんだ!」

「時雨後ろ!」

「え?」

アサルトレインバレットの背後からガンダムレギュルスがビームサーベルを構えて迫った。

「墜ちろ」

「しまった!?」

ガンダムレギュルスは左手のビームサーベルを上段に構え、アサルトレインバレットに斬りかかった。2.12ガンダムに気を取られていた時雨は完全に反応が遅れていた。振り下ろされるビームサーベルがアサルトレインバレットを掠めようとした時―――

「―――なにっ!」

ファトゥム-01がガンダムレギュルスの左肩に直撃したのだ。ファトゥム-01の衝突を受けたガンダムレギュルスは少しだけ吹き飛ばされたが、レ級はすぐさま態勢を整えた。

「やあー!」

そしてそこへ追撃を加えようとイナヅマガンダムⅡがビームライフルを撃ちながら斬りかかった。

「チッ!」

イナヅマガンダムⅡの縦斬りを受け止めるガンダムレギュルス。バチバチバチッ!とビームの火花が激しく散り両機を照らす。

「くうぅぅ……」「ちいぃ……」

バチィッ!と言うビームの弾き合う音と共に離れたイナヅマガンダムⅡとガンダムレギュルス。

「てやあぁー!!」「えぇいっ!!」

そしてイナヅマガンダムⅡとガンダムレギュルスはビームサーベルをぶつけながら何度もすれ違いを繰り返した。両機のビームサーベルがぶつかり合う度、ビームの火花が飛び散る。

「電っ!」

「もらったぁ!」

2機のぶつかり合いを一弁した時雨だったが、正面から2.12ガンダムがゼノバーストモードでGNダブルバスターライフルを放ってきた。

「クッ!」

アサルトレインバレットを急上昇させゼノバーストモードの攻撃を回避する時雨。

(援護に行きたいけど、こっちはこっちで手が離せないし…くそっ!)

「時雨っ!」

すると、アサルトレインバレットの後方から、弧を描くビームの刃が飛んできた。そしてその更に後方からナイトメアモードに変形した夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーが高速で飛来した。

「夕立っ!?」

「雨音の悪夢、見せてあげるっ!」

「!?」

「そんな攻撃!」

2.12ガンダムは弧を描くビームの刃「フラッシュエッジビームブーメラン」をシールドで弾き飛ばしてみせた。

「これでどうっ!」

2.12ガンダムがビームブーメランを弾いた隙を突いて接近したユニコーンガンダムナイトメアパーティーは両手のエクスカリバー対艦刀を最上段から一気に振り下ろした。しかし、駆逐棲姫は2.12ガンダムを急速後退させエクスカリバー対艦刀を回避しGNダブルバスターライフルをユニコーンガンダムナイトメアパーティーに向けた。

「避けれますかっ?」

「時雨ッ!!」

しかし夕立は時雨の名前を呼んだ。すると――――

 

 

そこぉぉッ!!!

 

 

時雨の叫び声と共に、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが顔を右に少しだけ逸らした。そして、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの背後にいたアサルトレインバレットがロングバレルビームライフルの引き金を引いた。ロングバレルビームライフルのビームはユニコーンガンダムナイトメアパーティーの頭部と左肩の間を抜けて2.12ガンダムに迫った。

「なにっ!?」

突然現れたビームに驚いた駆逐棲姫は反応が遅れながらも回避行動を取り、2.12ガンダムは胴体への直撃はま逃れたものの、右側頭部がビームによって抉られた。

「隙は逃さないっぽい!」

その後すぐさま、夕立は2.12ガンダムに攻撃を仕掛けた。右手のエクスカリバー対艦刀を袈裟斬りで放つと、2.12ガンダムは右肘にマウントされたGNビームサーベルを抜刀、そのままエクスカリバー対艦刀を受け止めた。

「「くうぅ…」」

バチバチ!と紫と桃色のビームの火花が飛び散りながら2機は鍔迫り合いとなった。するとその時だった―――

「流石、時雨姉さんと夕立姉さん……」

不意に駆逐棲姫がそんな言葉をこぼした。その言葉を聞いた夕立は、え?と、とても驚いた表情をした。しかし、それは駆逐棲姫も同じだった。

「な、何だ?私は今何を言って……」

そしてその態勢のまま2.12ガンダムはGNビームサーベルを振り切り、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーを弾き飛ばした。

「夕立、大丈夫かい!」

弾き飛ばされたユニコーンガンダムナイトメアパーティーに駆け寄ったアサルトレインバレット。

「………」

しかし、時雨の言葉に夕立は何も答えなかった。焦った時雨は、何処かやられたのかい!?と早口で尋ねた。すると夕立は、2.12ガンダムを見つめたまま震えた声で言った。

「…い、今。2.12ガンダムのファイターが夕立たちの事「姉さん」って……」

「え?」

時雨も2.12ガンダムを見つめ、衝撃を受けるのだった。

 

「やあぁー!!」「このぉー!!」

ぶつかり合うイナヅマガンダムⅡとガンダムレギュルス。もう何度目なのかもわからない程にぶつかり合いを繰り返した2機の装甲表面には、すれ違い様や弾き返し、返された時に出来た小さな擦り傷が浮かび上がっていた。

「くぅぅ!」「ぐっぅぅ!」

そしてお互いを弾き飛ばし合ったイナヅマガンダムⅡとガンダムレギュルス。バチィッ!と火花を散らす音が聞こえ2機はなおも止まらない。

「はあー!!」

ガンダムレギュルスに向け突撃するイナヅマガンダムⅡは右手のビームサーベルを右上段から袈裟斬りで放った。しかしガンダムレギュルスは急上昇でそれを回避し、イナヅマガンダムⅡの背後に回り込みそのまま右手のビームサーベルを一気に振り下ろした。

「墜ちろぉ!!」

しかしイナヅマガンダムⅡもこれを急上昇で回避し、マシンキャノンを連射しながら迫った。しかしガンダムレギュルスはマシンキャノンの直撃を気にする事もなくイナヅマガンダムⅡに突撃し、2機は再びすれ違い様にビームサーベルをぶつけ合った。

「電あぁー!!」

「あああー!!」

互いに上段から斬りかかった2機。イナヅマガンダムⅡは機動防盾でガンダムレギュルスのビームサーベルを受け止め、ガンダムレギュルスは空いていた左手のビームサーベルでイナヅマガンダムⅡのビームサーベルを受け止めた。そして2機は再びお互いを弾き返した。

「沈めぇー!!」

ガンダムレギュルスはビームバスターを照射したが、イナヅマガンダムⅡはそれを回避し再度突撃した。それに合わせるようにガンダムレギュルスも右手のビームサーベルを掲げて突撃してきた。

「レ級ー!!」

イナヅマガンダムⅡはそのビームサーベルを機動防盾で防ぐとそのビームサーベルを押し返し、その隙を突くようにイナヅマガンダムⅡはビームサーベルを下段から斬り上げた。斬り上げられたビームサーベルの刃はガンダムレギュルスの左腕を根元から斬り落とした。

「くうっ!」

そしてそのままイナヅマガンダムⅡはガンダムレギュルスの顔面を蹴り飛ばした。

「ぐぅぅ!」

「逃がさないのです!」

何とか態勢を整えたガンダムレギュルス。

「オレが……」

そこにイナヅマガンダムⅡがビームサーベルを構えて迫った。

「貴様を討つっ!!」

レ級は残った右手のビームサーベル出力を最大まで上げ、ビームサーベルを一気に振り上げた。その一撃はイナヅマガンダムⅡの左腕を根元から切断した。ガンダムレギュルスの攻撃を受けたイナヅマガンダムⅡだが、怯むことなくビームサーベルを突き出しガンダムレギュルスの頭部を貫いた。しかしガンダムレギュルスも怯むことなく右腕を真横に振り切ってイナヅマガンダムⅡのコックピット正面を掠めた。

レ級ぅぅー!!!

電ぁぁー!!!

そしてイナヅマガンダムⅡとガンダムレギュルスは互いにビームサーベルを掲げて突撃した。そして両機のビームサーベルが振り下ろされる直前―――

「ッ―――ぐわっ!」

イナヅマガンダムⅡはビームサーベルを振り下ろすことなく、ガンダムレギュルスに激突したのだ。

 

その様子を見ていた深海は、すぐに電の方に目を向けた。深海の目に映ったのは右手で頭を押さえている電の姿だった。

「……まずいな」

深海はそう呟くと、観客席を一気に駆け下り観客席の最前線にあるポールを踏み台にして飛び、会場へ足を踏み入れた。

 

続く



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EP73 駆逐棲姫

会場へ降り立った深海は、周りの目を気にすることなく電たちの元へ向かった。幸いにも戦闘は一時膠着していた為、深海には少しだけの猶予があった。深海はその間に、電の元に辿り着き頭を押さえる電の肩を叩き、声を掛けた。

「電、大丈夫か!」

「……て」

「?」

「やめて!電…は、壊したく…ないのです!」

「!?」

電の悲痛な叫びから、深海は電に再び深海棲艦の精神に乗っ取られかけていると悟った。深海は電の片手が握っていた操縦桿を操作し、その場にいる時雨と夕立に通信を開いた。

「電、どうしたんだい?」

「時雨か!今すぐバトルを降参しろ!」

「み、深海提督!?どうしてそこに!?」

「いいから早く降参を宣言しろ!このままだと、電がまた深海棲艦になるぞ!」

「「!!」」

深海のその言葉を聞き、驚く時雨と夕立。時雨はすぐさま操縦桿を操作し、降参を宣言した。会場からは突然の深海の乱入と、暁学園の降参で一気に冷め切った。しかし、時雨と夕立そして深海はそのことを気にする素振りも見せず淡々と動いた。

「電、少し我慢しろよ」

そう言った深海は電の首の裏筋を、少し強めの力で叩いた。電は、うっ!と言ってそのまま意識を手離し、深海の腕に倒れた。その間に時雨と夕立は3人のGPベースとガンプラを回収し終え、深海の元へ来た。

「深海提督さん、電ちゃんは!?」

「少し気絶させた。しばらくは起きないだろうから、お前たちは電を連れてホテルに戻れ。俺は残ってここの連中に言い訳してくる」

「わ、わかったよ深海提督!」

「あと、ホテルに着いたら荷物を纏めておけ。終わったら連絡をくれ、迎えに行く」

「ぽ、ぽい!」

「行くよ夕立!」

深海はそう言って電を時雨と夕立に預け、駆け付けてきた係員の元へ向かった。深海はその係員に淡々と今起きた内容を話した。しかし、この状況下で唯一1人だけ納得がいかない者がいた。

「おい貴様!」

レ級だ。

「……レ級か。なんだ?」

「貴様、何故オレと電の戦いを邪魔した!!」

係員と話していた深海に向け声を荒げながら質問を投げかけるレ級。しかし深海はレ級の元へ向かうと冷静に答えた。

「電が深海棲艦になりかけたからだ」

「……なに?」

「精神をコントロール出来るお前ならわかるだろ。もしあのままバトルを続けていたら、間違いなくこの会場や観客に被害が出ていた。厄介な面倒事を増やしたくないんでな…悪いが邪魔させてもらった」

「………」

レ級は黙り込み、そのままその場を後にした。深海はそのレ級の姿を見たまま、係員と話を続けた。

それからしばらくが経ち、係員との話を終えた深海は改めて会場を見渡した。すると、深海の目に1人の少女が入り込んだ。バトル台の前に俯いたまま立ち尽くしていた駆逐棲姫だ。深海はしばらく駆逐棲姫を見ていたが、やがてゆっくりと彼女の元へと歩いていった。

「どうした駆逐棲姫」

「っ!!」

駆逐棲姫はハッとして深海の方を向いた。強張った表情で深海を見つめる駆逐棲姫。

「お前は、黒野深海!」

「おいおい。いきなり俺に殺意を向けるな…ま、吹雪の命令なんだろうからしょうがないんだろうが」

「………」

「それよりお前、どうしたんだ?さっき俯いてただろ」

「!?」

「さしずめ、時雨と夕立に攻撃する直前にお前の動きが止まったことが関係しているんじゃないか?俺は見ていたぞ」

「………」

「……その答えを知りたいのなら、俺に付いてこい。まあ、強制はしないがな」

そう言って深海はその場を後にした。そして、そのしばらく後に駆逐棲姫は深海を追って会場を出て行った。

 

その後、荷物をまとめた時雨たちの前に深海の車が現れた。時雨たちは先に電を乗せると、荷物を持って車に乗り込んだ。

「よし、行くぞ」

全員が乗ったことを確認した深海は車を発進させた。すると時雨は、乗っていたどこかで見たような少女を見つけた。

「あれ?君って確かレ級と一緒にいた…」

「………」

時雨はその少女、駆逐棲姫に尋ねた。しかし駆逐棲姫は黙って時雨を見つめているだけだった。すると深海が運転しながら口を開いた。

「ああ。レ級の隣にいた駆逐棲姫。2.12ガンダムのファイターだ」

「2.12ガンダムのファイター!?」

「じゃ、じゃあ!あの時夕立の事、姉さん。って言ったのって!」

「………」

駆逐棲姫は黙って頷いた。しかし、頷くだけでそれ以上は口を開かなかった。そしてしばらく、車内は静まり返っていたがやがて深海が再び口を開いた。

「黙っていたらわからないだろ、駆逐棲姫。なぜ、お前がここにいるのか時雨と夕立に教えてやれ」

「………」

駆逐棲姫はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「…わ、私は…あ、あの時こぼした言葉の意味を知る為に、ここにいる。それ以上でも、それ以下でもない」

「「………」」

時雨と夕立は黙って駆逐棲姫の言葉を聞いていた。車内は再び静まり返ったが、突然その静寂は打ち消された。

「もー!いつまで暗いお話してるの!」

「わっ!!」「ぽい!?」

突然声を張り上げて喋り出した者がいた。

「お、おばあちゃん、急に大声出さないでよ!」

「あ!ごめんなさい…びっくりさせて秋雨ちゃん」

「おばあちゃん。それ、皆に言うべき」

「あはは……ご、ごめんなさいみんな」

「雨葉まで驚いちゃったよ…」

空母水鬼だ。元々暗い話が苦手な性格をしている彼女にとって、こんな話は出来れば聞きたくはない内容だったのでつい大声をあげてしまったのだ。

「く、空母水鬼…」

「駆逐棲姫ちゃん。私は詳しい事情は分からないけど、暗いお話はそこまでよ」

「え?」

「そ・れ・よ・り!こんなに人数がいるんだもの、皆でババ抜きして楽しみましょう!」

「………!!」

 

 

 

え?

 

 

 

結果、やるやる!!と表情で告げた白以外全員が困惑しながら車内でババ抜き(ほぼ強制参加)が始まった。その会話を聞いていた深海は苦笑した小声で言った。

「こりゃしばらく終わらないな…」

そしてその言葉を聞いた助手席の時雨が言った。

「でも、元気になってくれて嬉しいそうだね。提督」

「………ああっ」

深海は少しだけニッと笑ってみせた。

 

続く



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EP74 白い邂逅

深海が運転するキャンピングカーは会場を出発した翌日、草木が生い茂る山道を走っていた。キャンピングカーの車体を草木が打ちながら、ガタガタと揺れる車内では相も変わらず空母水鬼主催のトランプ大会が行われていた。しかし、ほぼ1日中続いていたこのトランプ大会に主催者である空母水鬼と、とにかく乗り気だった白以外の全員は飽きが来ていて、ある意味で車内は地獄絵図だった。すると、運転席から深海の声が響いてきた。

「もうすぐ到着するぞ。そろそろ、トランプをしまってくれ」

「はーい!」

と、元気よく子供のような返事をする空母水鬼はせっせとトランプを片付け始めた。ようやくトランプ大会から解放された時雨と夕立は、揺れる車内を運転席まで歩き深海に尋ねた。

「そう言えば、夕立たち何処に向かってるっぽい?」

「俺の鎮守府だ。まあ、時雨は予想出来ていたんじゃないか?」

「まあ、ね……うっ…」

「大丈夫か?少し顔色が悪そうだぞ」

「ごめん。トランプのやりすぎでちょっと気分悪い、かも……」

「時雨、とりあえず一回座るっぽい」

「うん。ありがとう」

時雨は夕立に連れられて近くの椅子に座った。そしてそれから3分もしない内に、キャンピングカーは舗装されたトンネル内を走っていた。

「あれ?こんな所からトンネルになってる」

車窓から顔を覗かせながら夕立が言った。すると、秋雨が答えるように言った。

「私たちの鎮守府()は山に囲まれた場所にあるんです」

「そうなんだー!」

「かなり僻地に存在している、と言うわけか」

すると、駆逐棲姫が話に割り込んできた。若干驚いた秋雨だったが、すぐに駆逐棲姫に答えた。

「はい!だから、買い物に出かけたりするの大変なんですよ…あはは…」

「そうか…」

やがて車はトンネルを抜け下り坂を降りていった。すると、車は鎮守府の門を抜けて開けた場所に出た。夕立たちの座る右側の車窓からはレンガ造りの工廠や倉庫、その奥には山が見えた。

「わっ!本当に鎮守府に来ちゃったっぽい!」

突然、昔見慣れた物が現れて驚く夕立。しばらくして車は止まり深海は、着いたぞ。と言って運転席から降りていった。それに続くようにして、乗っていた全員が降りた。車は鎮守府の本庁舎前に止まっていて、正面入り口の前には2人の女性が立っていた。1人は裾や縫い目に山吹色のラインが入っている黒いロングコートを羽織り、白地に黒いラインの入ったスカートと焦げ茶色のストッキングと同じ色の靴を履いた、腰まであるロングストレートの黒髪と深紅の瞳が特徴の女性で、もう1人は両側に突起が付いた白と黒のラインが入ったドイツ将校の帽子を被り、首には錨の輪部分を首に通した首輪のようなものをつけ、肩口から背中までを切り取ったような黒い前留式のボディースーツの様なシャツと腹部にポケットの付いた軍服のようなものを胸下から下だけを切り取って着て、灰色の地に黒縁のニーソックスと同じ色のブーツを履いた金髪ロングストレートと碧眼が特徴の女性だった。深海は2人の前に歩み寄り口を開いた。

「長い間、ここを開けてすまなかったな。長門、ビスマルク」

「まったくだ。何が、すぐに戻る。だ…1年間も戻らなかったこと、しっかり反省するんだぞ」

「それは本当にすまなかった…」

黒いロングストレートの髪の女性、長門が小さく口元に笑みを浮かべながら言った。深海は少しだけ頭を下げて謝罪をする。

「長門さん長門さん長門さん!おとーさんをそんなに怒らないでよ!」

「場合によっては、私たちも怒る」

「………!!」

「ちょ、ちょっと!そんなに熱くならないでよ3人とも!」

「ははは!すまないすまない。お前たちも全員無事に帰ってきたんだ。お説教はこれくらいにしておくか!」

と、長門は笑って秋雨と梅雨葉、雨葉と白の頭を優しく撫でてやった。

「本当よ!この私に連絡寄こさないなんて、どういうつもりよ!」

すると今度は金髪ロングストレートの女性、ビスマルクが両腰に手を当てて深海に物申した。

「いや連絡しただろ。2日前」

「毎日連絡しなさい!」

「まあまあ、ビスマルクさん。落ち着いてよ」

呆れた表情の深海の隣で時雨がビスマルクをなだめていた。すると長門が、車の前に立っていた空母水鬼に気が付いた。

「む?提督よ、そこにおられる空母水鬼、まさかと思うが…」

「ああ。前に話した俺の母さんだ。紹介するよ」

「初めましてね!私は空母水鬼、この子…深海の母親をやっている者よ!よろしくね!」

Überrascht(驚いたわ)アドミラルと同じで暗い人なのかと思ったわ!」

「悪かったな……」

深海は小さく舌打ちをした。そして長門は、続いて電を担いだ時雨と夕立、そして駆逐棲姫に目を向けた。

「そしてこっちの4人が、昨日話してくれた電、時雨、夕立、そして駆逐棲姫だな。初めまして…ではないかもしれないが、長門だ。提督が不在の時はビスマルクと共に、この鎮守府を任されている」

「ビスマルクよ。まあ、私の邪魔はしなければ何でもいいわ」

「うん。いつまでかはわからないけど、お世話になるよ」

「よろしくお願いしますっぽい!」

「………よろしく」

「まあ、こんな堅物な奴だが…仲良くしてやってくれ」

Laut(うるさいわね)

そして深海の放った言葉に、ビスマルクは少しだけ頬を赤くしたのだった。すると深海は突然、本庁舎から少しだけ離れると本庁舎の屋根の上を見上げて言った。

「いつまで隠れているつもりだ?早く出て来い!」

深海の突然の行動に驚く全員。すると、深海が声をあげた数秒後、深海の真正面に白いフード被った人物が降り立った。

「え!?い、一体何処から!」

「気配を完全に消していた。となれば、かなりの腕の立つ奴だぞ!」

突然現れた白いフードの人物に警戒する長門とビスマルク。しかし―――

「そうかな?結構気配はあったし、殺気は感じないから、大丈夫じゃないかな?」

 

 

ええぇ……

 

 

空母水鬼の言葉に深海と気絶したままの電以外、全員がそう思った。すると深海の目の前に立った白いフードの人物はフードに手を掛け、そのままフードをとった。

「!!」

そしてその場にいたほとんどの人物が驚いた。そしてその人物。額に2本の黒い角をはやした真っ白な2つ括りにしたセミロングの髪と蒼白い目の少女は言った。

「深海指令。私も、貴方の戦列に加えていただけますか?」

「………白雪か」

白いフードの人物の正体は、吹雪の妹「白雪」だった。

 

続く



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EP75 再始動

白雪の言葉を聞いた深海。しかし深海は、すぐに返事を返すことはなく白雪に聞き返した。

「それは、吹雪を止めたいからか?」

「はい」

白雪の返事にためらいはなく、覚悟が纏われていた。白雪は更に続ける。

「私も吹雪ちゃんと同じ、あの研究所で作られたクローン。私もこの体に埋め込まれた深海細胞の影響でもうあまり未来はありません。私は、この定めを受け入れました。でも吹雪ちゃんは―――」

「その定めを呪って、全てを壊そうとしている。だから、吹雪を止めたい……だな?」

深海の言葉にハッキリと首を縦に振った白雪は言った。

「それが私……ううん。一緒に生きることの出来なかった2人と私の…最初で最後の姉への孝行なんです」

「………」

白雪の覚悟は並大抵のことでは折れることのない物だった。その場にいた全員が、白雪の言葉に衝撃の様な物を受けていた。そして深海は言った。

「わかった。お前の力、当てにさせてもらう」

「ありがとうございます!」

「長門、4人を部屋に案内してきてくれ」

長門は、わかったと言って時雨と夕立、駆逐棲姫と白雪を呼んだ。すると時雨は、あることに気づいた。

「あれ?深海提督、電が抜けてるみたいだけど?」

「電は俺の部屋に連れていかせてもらう。不満はあるだろうが、お前たちの安全を考えての事だ。すまないが従ってくれ」

「………わかったよ」

「………ぽい」

時雨と夕立は、背負っていた電をビスマルクに預けた。ビスマルクが、電の小さな体を持ち上げたことを確認した長門は、行くぞ。と言って歩き出し、時雨たち4人は長門の後を追ってその場を後にした。

 

本庁舎から少し離れた山の麓にある寮の一室に案内された時雨と夕立。部屋は2人が昔、艦娘だった頃に住んでいた寮とよく似た、壁に埋め込まれた二段ベットと床から一段高くなって3畳分の畳が敷かれている湯呑と茶葉の入った缶が置かれたちゃぶ台とポットが置かれた生活スペースがある部屋だった。時雨と夕立は、荷物を部屋の隅に片付けるとちゃぶ台を挟んで座っていた。室内は壁に掛けられた時計の秒針の音だけが鳴る静寂に包まれていた。すると夕立が時雨に尋ねた。

「時雨。電ちゃんの事……」

「……わかってるよ夕立」

その言葉を聞いた夕立は声を張り上げて言った。

「じゃあ何で―――」

「僕たちにどうにか出来ることじゃないだろ!!」

「っ!」

時雨もまた、夕立の言葉に対して声を張り上げ言い返した。

「電の身体を治すことは、深海提督でも無理なんだよ!なら僕たちに出来る事なんて何にもないじゃないか!」

「………」

「あっ…ごめんよ夕立。いきなり声上げて」

「ううん。夕立も、ちょっと軽率だったっぽい」

そして再び、室内が静寂に包まれた。そしてそのまま時間が過ぎた時だった。唐突にドアをノックする音が室内に響いた。

「ん?だ、誰だろう」

「僕が出てくるよ」

時雨はそう言ってドアを開けた。するとドアの向こうには――――

「おっ!久しぶりだね時雨姉ぇ!」

「す、涼風!?」

「し、時雨姉ぇ…久しぶり」

「山風!」

涼風と山風の2人が立っていた。部屋の中で時雨の声を聴いた夕立は急いで扉へ向かった。時雨の隣からひょこりと顔を覗かせた夕立を見て涼風はニッと笑って言った。

「夕立姉ぇも元気そうで良かった!」

「夕立姉ぇ。久しぶり…」

「涼風に山風!元気だったっぽい!?」

「勿論さぁ!この通り元気いっぱいでい!」

「うん。私も、深海提督に良くしてもらってるから、大丈夫」

「良かった。2人共…」

時雨はうっすらと目に涙を浮かべたが、すぐにそれを拭きとった。すると廊下に誰かが駆けてくる音がした。その音に気づいた4人が音のする方に顔を向けると、秋雨が走ってきているのが見えた。

「時雨さーん!夕立さーん!」

走ってくる秋雨を見た山風は、ビクッとして涼風の裏に隠れた。涼風は、ちょっ!と驚くが山風にとってはいつもの事なので数秒後には気にしていなかった。

「秋雨ちゃん。どうしたのそんなに慌てて?」

「はぁ…はぁ…」

部屋の前まで来た秋雨は息を整えると、笑顔を作って言った。

「い、電さんが、目を覚ましたんです!」

「「本当かい!?」っぽい!?」

それを聞いた時雨と夕立は、扉を思い切り開けた。

「ギャッ!」

そして扉は涼風の顔面に直撃し、涼風は両手で顔を必死に抑えていた。

 

あ……

 

涼風以外の全員が口を揃えて呟いた。

 

それからしばらく時間が経ち、時雨と夕立は深海の部屋。もとい、旧執務室にいた。時雨と夕立の2人は、目を覚ました電とハグしあって喜び合っていた。

「大丈夫そうで安心したよ電!」

「ご心配をお掛けしてごめんなさいなのです。時雨さん」

「心配し過ぎて昨日寝れなかったんだから!」

「夕立さんも、本当にごめんなさいです」

「夕立、嘘はよくないよ?昨日1番寝てたの君じゃないか」

「ぽ、ぽい!?」

「寝言がバッチリ聞こえてたよ?夕立、こんな大きなパフェ食べれないっぽい~って」

「あははは!夕立さんらしいですね!」

「全くだよ…あはは!」

「もう!2人とも笑い過ぎっぽい!……プッ、あははは!」

そして3人は笑いあった。その穏やかな時間を、3人は心の底から楽しんでいた。3人の笑顔を見ていた深海は、口元に少しだけ笑みを浮かべたが隣で今にも飛び込んでしまいそうな空母水鬼を見て慌てて彼女を制止するのだった。空母水鬼は子どもの様に頬を膨らませて残念がっていたが、深海は気にせず目の前で笑う3人に声を掛けた。

「あー…盛り上がってるところ悪いんだが、少しいいか?」

「あっ!ご、ごめんなさいなのです深海提督さん」

「あはは…ついはしゃいじゃったよ」

「深海提督さんに声をかけられたら、はしゃいでたのがちょっと恥ずかしいっぽい…」

深海は、気にすることはない。と言うと、一呼吸おいて話し始めた。

「電。今から俺の言うことは、お前のここでの生活についてだ。2人も聞いてくれ」

3人はそれぞれ、首を縦に振って答えた。

「まず電が寝泊まりと基本的な生活をする部屋だが、この部屋に隣接してるあの部屋を使ってくれ。俺の個人的な寝室だ」

深海は旧執務室にある入り口とは別の部屋を指さした。電は、はい!とハッキリと答えた。

「そしてこの部屋から出る時は、俺の母さんを呼ぶように。これは絶対守ってくれ。いいな?寝る時と入浴の時も、母さんと一緒にいてくれ。流石に俺がいるのは不味いからな。それでいいよな?母さん」

「深海と寝れないのは残念だけど…深海の頼みだもの、私に任せて」

「サラッと怖いこと言わないでくれよ……あと、出来るだけ電を夜更かしさせないでくれよ」

「わかってるわよ」

「それじゃあ、この鎮守府を案内する。ついてきてくれ」

そう言って深海は部屋を出て行き、電たちも後に続いた。

 

深海は本庁舎から外に出ると、まず庁舎の東を指さした。

「あそこが旧艦娘寮。説明は……まあいらないか」

「うん。大丈夫っぽい!」

「電。僕と夕立の部屋は107号室だから。覚えておいて」

「なのです!」

「次に行くぞ」

深海はゆっくりと歩き出していった。電たちも深海の後を追って歩いていく。海を左手に見ながら、3人はしばらく歩き大きな建物に着いた。

「ここがこの鎮守府のちょうど真ん中、旧出撃ドックだ。と言っても、もうここは風呂場としてしか機能してないけどな」

「出撃ドックと入渠ドックが隣接していた。ってこと?」

「まあ、そんなところだ。中には間宮の甘味処と食堂もある。お代はかからないから自由に使ってくれ」

「お金無しで間宮のスイーツが食べれるっぽい!?ふはぁー!まるで天国っぽい~」

「夕立、お前だけお代有りにしてもいいんだぞ?」

「夕立、全力で自重させてもらうっぽい!」

ならよし。と深海は言って、その奥に見える山に沿って並ぶレンガ造りの建物を指さした。

「あっちの倉庫と工廠には行っても意味ないぞ。もう使ってないし、埃まみれになってるかもな」

「ほ、埃まみれの所には行きたくないのです…」

「そうしておけ。と、あれが最後の建物だ」

そして深海が最後に訪れた建物。その建物は旧艦娘寮と旧出撃ドック、本庁舎の丁度中間の場所に位置する半円の屋根を持つ建物だった。

「うわぁーおっきぃー!」

「深海提督。ここは体育館か何かなの?」

「まあ、そんな所だ。中に入るぞ」

深海はその体育館のような建物の入り口の扉を開けて、中に入った。そしてそこには―――

「わあー!人がいっぱいいるっぽい!」

大勢の人間の姿があった。

「皆ガンプラを持ってる…深海提督、これって……」

「ああ。俺の話を聞いて、集まってくれた奴らだ。お前たちも知ってるだろうが、暁に響や月華団のメンバー、加賀たちもいる。会ったら挨拶しておけ」

「深海提督さん。という事は……」

深海はコクリと頷き、言った。

吹雪たち(奴ら)が行動を起こすまで、ここで戦力強化を図る!」

 

続く



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EP76 集いし者たち(前編)

「早速だが、この施設について教える。まずこの施設は、4つの区画に分類してある」

そう言って深海は入り口近くにあった簡易的な地図を電たちに見せた。深海はまず地図の右上。電たちのいる場所から右奥に当たる場所を指さした。

「このエリアは対人戦専用のバトルエリアだ。ガンプラが壊れないようにダメージレベルはCに固定してあるから、好きなだけ腕を磨け」

「いろんな人とのバトル。楽しみっぽい!」

深海はそのまま地図の左上へ指を動かした。

「こっちは対CPU戦専用のバトルエリアだ。通常のバトルから、難易度の異なるミッション、ある程度なら自作のミッションも出来るようにしてある。通常のミッションの方にはパーツデータの報酬もある。まあ、いろいろ試すといい」

「いろんな状況に慣れることも大切だもんね」

深海は指をそのまま左下へと降ろした。

「ここは製作ブースだ、大それた説明はいらないだろう。ある程度の設備は揃ってるが、乱雑に使うことは許さんからな」

「電たちは乱雑に使ったりしないのです!」

そして深海は最後のエリアを指さした。

「ここが射出成形機とガンプラショップのエリアになる。品揃えの方は保証できるから安心しろ。それと射出成形機についてだが―――」

「あ!深海提督、帰ってらしたんですね!」

深海が少し口篭もりしそうになった時、入り口から少し緑がかった銀髪をセミロングのポニーテールにした、へそ出し半袖の黒いセーラー服にオレンジのリボンと緑のミニスカートを着て白のハーフブーツを履いた橙色の眼をした少女が入ってきた。

「ああ。そっちの方はどうだ?夕張」

「ええ!明石と2人でやってますから、もう少しで完成しますよ!」

夕張と呼ばれた少女は元気よく答えた。

「助かる。夕張、ここに来たという事は…」

「あ、はい!射出成形機の調子を見に来たんです」

「なら丁度良い。この3人に成形機の事を教えてやってくれ」

「こんにちはなのです!」「こんにちは夕張さん」「こんにちはっぽい!」

「電ちゃんに時雨ちゃん、夕立ちゃんね。話は聞いてるわ!しばらくの間、よろしくね!それじゃ、射出成形機を見に行きましょうか!」

そう言った夕張はスタスタと射出成形機のあるエリアへと歩いていった。どういう意味なのか、夕張はかなり嬉しそうに足早に歩いていった。やがて、5人は射出成形機の前まで来た。そこにあった射出成形機は「ガンダムビルドダイバーズ」に登場していた物とほぼ瓜二つだった。

「す、凄い…ビルドダイバーズにあった物とそっくりだ。なんか、右横に変わった台があるけど…」

「ここまで再現するの大変だったんだよね~と、説明しなくちゃね。この機械は、対CPU戦のミッションで手に入れたパーツデータから、パーツを成形するの!ここら辺はまあ普通なんだけど、私と明石が作ったこの射出成形機は特別な性能を持たせてあるの!」

「と、特別な性能なのです?」

「ふっふっふ…それはね……」

夕張は得意げな表情を作って言った。

「ある程度なら、自分で考えたオリジナルパーツを成形できるの!」

「ええ!?」

「相変わらず、こういう時は得意げだな」

「当り前じゃないですか!これにしかない機能なんですよ!」

「あ、あの~」

得意げに話す夕張とそれをからかう深海。するとそこに背の高い肩の露出した巫女風の着物に赤いミニスカートとロングブーツを履き、腰まで伸びる灰色がかった黒髪ロングの女性が声をかけてきた。

「あ、榛名さん。射出成形機、お使いになりますか?」

夕張に声を掛けた女性は、金剛四姉妹の三女である榛名だった。

「はい!あの、このパーツって成形出来ますか?」

夕張に対しスケッチブックを見せる榛名。そのスケッチブックをジィ~、と凝視する夕張。2人の間にしばらくの静寂があったが、やがて夕張が右手でオッケーサインを作ってニッと笑ってみせた。

「なるほど!狙撃用のスコープですね!やってみましょう!」

「はい!お願いします!」

夕張は榛名からそのスケッチブックを受け取ると、射出成形機の右手にある台の上にそれを置いた。すると、緑色の光がスケッチブックの表面を何周も往復した。すると夕張は、だけど注意して。と言って話し始めた。

「自分オリジナルのパーツは成形に時間がかかるし、それに成形に必要な形状データ…つまりスケッチがしっかり出来てないと正確には作れないから注意して。あと、オリジナルパーツを成形したいときは、私か明石を呼んでね」

夕張は成形機の隣にある赤色の「呼び出し」と書かれたボタンを指さしていった。

「はい!しっかり覚えておくのです!」

電はコクリと頷いた。すると夕立が何かを思い出したのか声をあげた。

「あ!榛名さんに挨拶するの忘れてたっぽい!こんにちはっぽい!」

「え?あ、ごめんなさい。榛名の方こそ、挨拶が遅れました!こんにちは電ちゃん、時雨ちゃん、夕立ちゃん」

夕立の元気いっぱいの挨拶に精一杯の言葉で挨拶を返す榛名。

「うん。こんにちは榛名さん!」

「こんにちはなのです!」

それに続いて挨拶を返す電と時雨。

「お話は出来ませんでしたけど、地区予選の時ぶりですね!」

「そうだね。榛名さんが居るってことは…」

「はい!金剛お姉さまに比叡お姉さま、霧島もみんなここに来ています!」

「それは凄いっぽい!」

「おーい榛名ー」

すると今度は榛名の名前を呼びながら、榛名と同じ巫女風の服を着て袴風のチェック柄の緑のミニスカートの上から茶色の帯を締めた茶色のショートヘアーの女性が走ってきて―――

「金剛お姉さまが呼んでますょ―――だあっ!!」

盛大のこけた。

「ひ、比叡お姉さま!」

榛名は慌てて、こけた女性もとい姉の比叡に駆け寄った。比叡はこけた拍子に顔面を床に強打した様で、顔面を手で抑えながらよろよろと起き上がった。

「ひえぇ……」

「慌てて走るからですよ、大丈夫ですか?比叡お姉さま」

「ううう……結構、痛い―――」

「比叡!さっき盛大にこけてましたガ、大丈夫デスカ?」

そして比叡の後ろから今度は金剛がゆっくり歩いてやってきた。

「はい!こんなのかすり傷です!!」

すると比叡はスクッと立ち上がって、真っ赤になった顔面のままニッと笑ってみせた。

(さっきまでめっちゃ痛がってたじゃねえか…)

「比叡お姉さまは走るとこける確率50%なんですから、気を付けてくださいね!」

「う…頭のいい霧島に言われると説得力あり過ぎ…」

そして金剛の後ろから黒髪のボブカットに、巫女服風の服を着用し藍色のスカートを穿いたフレームが緑色の楕円型の眼鏡を掛けている女性、霧島が眼鏡をクイッと上げながら言った。

(走ると半分の確率でこけるって…とっても大変そうなのです!)

(五月雨といい勝負してるっぽい!)

(いや、五月雨の方がもっとこけてた気がするけど…)

と、電たちは4人に聞こえない声でコソコソと話していた。

「Hey!時雨ぇー久しぶりネー!」

「うん!久しぶりだね金剛さん」

「地区予選以来ですね。お久しぶりなのです!」

「久しぶりっぽい!」

金剛との再会を喜び合う電たち、すると霧島が電の姿を見て驚いていた。

「深海指令から聞いてましたけど、まさか本当に髪も肌も真っ白だとは…」

「はい…榛名もびっくりしました」

「まあ、俺か俺の母さんが一緒に付いて回るから心配はするな」

「いてて…そ、それなら金剛お姉さまに被害は及ばないですね!私、安心しました!」

少しだけ暗い雰囲気になるその場だったが、金剛は電の頭にポンと手を置いて優しく撫でた。

「No problem!きっと大丈夫、何とかなる筈デース!」

「こ、金剛さん…」

電は頭を撫でられながら、少しだけ目に涙を溜めていた。すると、射出成型機から「ピー!」という音が鳴った。

「榛名さん!パーツの成形終わりましたよ!はい、どうぞ」

「はい、ありがとうございます!」

夕張は榛名に真ん中で分割されたスナイパーライフルのスコープの様な形状をしたパーツがくっついた灰色のランナーとスケッチブックを渡した。榛名はペコリと頭を下げて感謝した。そしてそのパーツを見た時雨が言った。

「榛名さんも狙撃が主体のガンプラを使ってるの?」

「ええ!榛名のガンプラ「ガンダムEz-AS」は近、中、遠どの距離でも攻撃が出来る射撃戦が持ち味なんです!」

「榛名の狙撃はとっても頼りになるのデース!」

「ええ!!お、お姉さま~比叡の「ガーディーフォビドゥンガンダム」だってお姉さまの力になれるのに~!」

「はいはい、そこまでですよ比叡お姉さま。榛名のパーツも出来たんですし、製作ブースに行きますよ」

「ええ~まだ私の話、終わってないのにぃー!」

(いや歩きながら話せばいいだろ…)

深海がそう思った時には既に金剛四姉妹はその場を離れていた。

「やっぱり仲いいですよね。金剛さんたち」

「………ああ」

深海と夕張がそんな会話をしていると、今度はCPU戦エリアから加賀と瑞鶴、赤城が歩いてきた。

「あら、電たちじゃない!貴女たちも来たんだ」

「あ、加賀さんに瑞鶴さん、赤城さんも。こんにちは、久しぶりだね」

「そうね。久しぶりね時雨、電、夕立」

「私は初めましてかしら?百年記高校ガンプラ部の部長をやっている赤城よ。これからよろしくね。電さん、時雨さん、夕立さん」

「こちらこそ、よろしくお願いするっぽい!」

「よろしくお願いしますなのです!」

「よろしくお願いするよ赤城さん」

笑顔で自己紹介する赤城に、電たちも笑ってそれに答えた。すると加賀が夕張に尋ねた。

「夕張さん。さっきミッションで手に入れたパーツを成形したのだけど、いいかしら?」

「あ、はい!どうぞ!」

「ありがとう」

そう言って加賀はGPベースを取り出すと、それを射出成形機の上にセットしパーツが出てくる場所の隣にあるパネルを操作した。「ピコン!」という音が鳴り、射出成形機が動き出す。しばらくすると、射出成形機から長い砲身を持つビームキャノンのパーツが付いたランナーが3つ出て来た。加賀はそのランナーを取り眺めていた。

「加賀さん、同じパーツを3つも作ってどうするの?」

その光景を見た時雨が不思議に思って尋ねた。

「飛龍と蒼龍に頼まれたのよ。ビームキャノンを3つ用意してほしいって」

「ビームキャノン3つ……きっととっても強い後方支援機体が出来るっぽい!」

「後方支援…その点においては合っていると思うわ。じゃあ私は2人にこれを渡しに行ってくるわ」

そう言って加賀は建物を出て行った。それを見送った瑞鶴は電に振り返ると、突然頭を下げた。

「電。この前は疑ってごめん」

「え!?ず、瑞鶴さん。いきなりどうしたのです!?」

瑞鶴は顔を上げると言った。

「私たちが大会を棄権した次の日の事よ。電は私たちを助けようとしてくれたのに私ったら、黒フードの仲間かもしれない。なんて言ってしまったんだもん」

「あ……」

「だから、ちゃんと謝っておきたかったの…ごめんなさい」

瑞鶴はもう1度、電に頭を下げた。電はそんな瑞鶴を見てあたふたとしていた。

「はわわ!!ず、瑞鶴さん!あ、頭を上げてくださいなのです!」

しかし瑞鶴は依然として頭を上げようとしなかった。電は更に慌て―――

「い、電も、いきなり変なこと聞いちゃったのです!い、電の方こそ、ご、ごめんなさいなのです!」

と言って頭を下げた。

「おいおい……2人して頭下げてどうするんだよ」

「「え?」」

深海の言葉に頭を下げたまま深海に顔を向ける電と瑞鶴。2人は互いに、驚きと困惑の混じった様な表情をしていた。それを見て夕立が笑った。

「あはは!電ちゃん変な顔!」

「た、確かに…ふふっ……」

「ゆ、夕立さん!時雨さんも、や、やめてください!」

「プッ…ず、瑞鶴さんも変な顔…」

「あ、ちょ!あ、赤城さん!」

赤城が小さく笑ったのを見た瑞鶴は赤面しながら慌てて顔を上げた。

(こんな楽しそうなこいつらを見たのは久しぶりだな…)

深海はその光景を見て、心の底で小さく笑っていた。

 

続く



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EP77 集いし者たち(中の前編)

瑞鶴たちと別れた電たちは今度は対CPU戦のエリアへ足を運んだ。すると早速、時雨が最上を見つけた。

「最上!久しぶりだね」

「時雨じゃないか!久しぶりだね…地区予選以来だっけ?」

「うん。最上も、深海提督に声を掛けられたの?」

「まあね!でも、僕だけじゃないよ。綾波ちゃんも来てるし、それに―――」

「イエーイ!完全勝利じゃーん!」

近くにあったバトル台の操縦スペースから薄緑色のセミロングの髪を左耳上あたりで鉄色のヘアピンで一部纏めた、白フリルの裏地が入った薄茶色のスカートと茶色のニーソックスを穿いた黄緑がかった目の少女が両腕をめいいっぱい上に突き上げて出て来た。

「勿論ですわ!私と鈴谷のコンビネーションは完璧ですもの!」

そしてその隣の操縦スペースから、栗色の髪をポニーテールに纏め、白いカッターシャツの上にブラウンのカーディガンを着てその上に茶色のブレザーを羽織り、白フリルの裏地が入った薄茶色のスカートと茶色のニーソックスを穿いた緑色の目をした少女がエッヘン!と胸に手を当てて出て来た。

「あ!鈴谷さんと熊野さんっぽい!」

「うん。あの2人も来てるし―――」

「おーいモガミーン!」

すると今度は製作ブースの方から、黒い前髪を七三分けにし赤いリボンでツインテールに束ねて臙脂色のセーラー服を着てプリーツスカートを穿いた少女が走ってきた。

「あんまり走ると危ないよ三隈ー」

(それ、君が言うかな…最上…)

走ってきた少女「三隈」は最上の前に来ると右手を前に出し、掌に乗せた物を見せた。

「出来ましたわ!モガミンのガンプラに装備する新しい武器!」

三隈の掌に乗っていたのは折り畳まれた状態のグレーの剣と、同じく折り畳まれたグレーのビームランチャーだった。

「ありがとうね三隈!」

「これくらいお安い御用ですわモガミン!」

「三隈さん。こんにちはっぽい!」

「こんにちはなのです!」

「こんにちは三隈さん」

「あら、電さんに時雨さん、夕立さん。こんにちは!」

「あれ?最上に三隈じゃん!こんなとこで何してんさー?」

すると、薄緑の髪の少女「鈴谷」と栗色の髪の少女「熊野」がバトルを終えてやって来た。

「鈴谷さん、熊野さん。こんにちはっぽい!」

「こんにちは鈴谷さん、熊野さん」

「おー!時雨に夕立じゃーん!ひっさしぶりだねー!」

「お久しぶりですわ!時雨さん夕立さん」

時雨と夕立の2人にハツラツとした挨拶を返す鈴谷と、お淑やかに挨拶をした熊野。すると、鈴谷が時雨と夕立の隣に立っている電に気づいた。

「へー!深海提督から聞いてたけど、ホントに真っ白じゃん!」

「電なのです!よ、よろしくお願いしますのです!」

「うんうん!ガチの深海棲艦と違って気持ち悪くないし、むしろこの電ちゃん可愛いっしょー!」

「鈴谷のセンスが言っているのですもの、間違いありませんわ!私もおしゃれと思いましてよ!」

「え?えへへ、電ちょっと嬉しいのです!」

鈴谷の言葉を聞いて笑顔になる電。

「んじゃ、鈴谷たちはさっき手に入れたパーツを成形しに行ってくるから、まったねー!」

そう言って鈴谷と熊野は成形機に歩いていった。すると最上も、僕たちも行こっか。と言うと時雨たちに手を振ってその場を後にした。電たちも手を振り返し、最上たちと別れた。そして、更に歩き出そうとした時だった。

「天津風ちゃんの作った新しいガンプラ、はっやーい!早すぎー!」

これまた電たちがどこかで聞いた声が聞こえてきた。電が声のする方に目を向けると、そこにはバトル台に向かう島風と天津風の姿があった。電は2人の方へと歩いていき、そして声を掛けた。

「島風ちゃん、天津風ちゃん、久しぶりなのです!」

「オウッ!電ちゃんだ!ひっさしぶりー!」

「久しぶりね電!あ、電がいるってことは…」

「夕立たちもいるっぽい!」

「夕立ちゃんに時雨ちゃん!ひっさしぶりだねー!」

「うん。久しぶり!さっき金剛さんに会ったよ。元気そうだね!」

すると島風は、バトル台の上に立つ1つのガンプラを取って電たちに見せた。

「ねえ見てよこのガンプラ!天津風ちゃんが作った島風の新しいガンプラ!とっても早いんだよ!早すぎて、島風まだ乗りこなせてないんだよ!」

島風の手に握られた、黒とグレー、白で塗装された鋭利な頭部のアンテナ、下へ向かって伸びたバインダーの付いた両肩アーマーと、左腰にビームソード、そして背中に大型化したファトゥム-01背負った。巨大なランスと、中央に金色の十字が象られた細長い六角形のシールドを装備したガンプラ。

「ジャスティスガンダムベースのガンプラかぁ……」

「ええ。地区予選で使ったウィンドガンダムの後継機のつもりよ。名前は「ガンダムウィンドジャスティス」見た目はちょっとガンダムジャスティスナイトに似てるけど、使ったのは普通のジャスティスガンダムね」

「それにしても大きなランスっぽい!前のウィンドガンダムと違って、今度は格闘がメインっぽい?」

「うん!天津風ちゃんにお願いしたんだ!」

「ファトゥムに乗ってランスで突撃…まるで西洋の騎士みたいなのです!」

「まあ、あながち間違いじゃないわ!……さて、島風!練習を再開しましょ!」

「うん!きっと乗りこなしてみせるよ!電ちゃん、時雨ちゃん、夕立ちゃん。またねー!」

島風と天津風は再びバトル台に向かった。すると、島風たちと入れ違いでバトルが終了した台があった。そこに立っていたのは、大和と武蔵だった。

「あ!大和さんと武蔵さんなのです!」

電は大和と武蔵の元へ向かって走っていった。

「どうだ大和。感覚は取り戻せてきたか?」

「ええ。久しぶりのガンプラバトルだったけど、何とか行けそうね」

「大和さん、武蔵さん!お久しぶりなのです!」

大和と武蔵の背後から電が元気よく挨拶をする。2人は電に気づくと振り返り、笑顔を作って挨拶を返した。

「電さん久しぶりですね!この前は、ありがとうございます!」

「久しぶりだな電。深海提督から聞いてはいたが、本当に髪と肌が白くなったんだな」

「あ、はい……」

「おっと、すまないな電。私としたことが軽率だった許せ」

「ううん。電は大丈夫なのです!」

すると追いついてきた時雨と夕立、深海がその場に現れた。

「大和さん、武蔵さん。しばらくぶりだね」

「うん!合宿の時はお世話になったっぽい!」

「時雨さん、夕立さん。久しぶりですね。元気そうで何よりです」

「それに深海もいるじゃないか。ははは!元気そうだな!」

武蔵はニッと笑いながら深海の頭をわしゃわしゃと撫でた。深海はムッとした表情になると、武蔵の手を掴んでいった。

「やめろ。前から言ってるが、俺はお前の息子でも弟でもないんだぞ」

「あははは!すまんすまん!なら、頑張って背を伸ばすことだ!」

「知ってて言ってるだろ…まったく、お前はここに居た頃から何も変わってないな」

深海は呆れ気味に呟いた。すると時雨が武蔵に尋ねた。

「え?武蔵さんって深海提督の鎮守府出身なの?」

「まあな。深海(こいつ)がこの鎮守府に来た時から知っている。なあ、大和」

「ええ。最初は誰も信じない、触れた物全てを斬ってしまう刃物のような人でしたけど私は、深海提督に色々とお世話になりました」

「何なら今から過去話でもしてやろうか?」

武蔵がそう言った時、深海がとてつもない殺気を放った。

「………」

それに気づいた武蔵は、すまなかった。と真面目に謝っていた。

(み、深海提督さん。めちゃくちゃ怖いっぽい!!)

これ程の殺気は、夕立も感じたことはなかった為、思わず身震えをしていた。時雨は慌てて話題を逸らす。

「そ、そう言えば、旅館の方は大丈夫なの?」

「お、おう!安心しろ、私が明日戻るからな!問題はないぞ!」

「な、なら大丈夫なのでしゅ!あ、噛んじゃったのです!」

「大丈夫ですか電さん!?」

「ゆ、夕立!じゅ、ジュース買ってくるっぽい!」

「……お前ら、少しは落ち着け…俺はもう怒ってないぞ?」

深海のその言葉を聞いた全員が一斉に胸を撫で下ろした。

「お!大和に武蔵じゃねぇか!こんなとこで何してんだよ!」

すると、電たちの背後から天龍、龍田、木曽の3人が歩いてきた。

「天龍さん、龍田さん、木曽さん!なんでここに居るっぽい!?」

天龍の声を聴き、振り返った夕立が3人に尋ねた。

「おお!お前ら、久しぶりだなぁ!元気そうじゃねえか!」

「久しぶりねぇ~全国大会、とっても惜しかったわね~」

「天龍さんたちも深海提督の呼びかけられたのかい?」

「いや、俺たちもそこにいる大和と武蔵と同じ、ここの出身なんだ」

木曾の返答に驚く時雨と夕立は同時に、え!?と声をあげた。

「そういや言ってなかったなこの事!ま、気にすんな!」

「深海提督の計らいなのよ~言わなかったことは謝るわ~」

「変に注目を浴びるよりはマシと思ってな…「戦争を終わらせた英雄の鎮守府所属の艦娘」なんて世間から言われてたからな。終戦からしばらくは…」

「まあ、そのおかげで俺たちは普通の生活が出来てたってわけだ」

「そ、そうだったんだ…」

4人の話を聞いた時雨と夕立、電は完全の呆気取られていた。すると天龍が電に目を合わせていった。

「それはそうと、あん時からかなり腕を上げたんだな電。後で一勝負付き合えよ?」

「は、はい!」

「んじゃ、また後でなお前ら!」

そう言って天龍たちはその場を後にした。

「じゃあ、私たちもこれで」

「ああ。またな電、時雨、夕立」

それに続いて大和と武蔵もその場を後にした。すると、大和たちと入れ違うようにCPU戦エリアに入ってきた者がいた。

「あ!時雨、久しぶり!」

「秋月!それに初月に、涼月、防空棲姫!」

「久しぶりだね。準々決勝の日以来か」

「え?時雨いつの間に秋月たちと会ってたっぽい?」

「あ、えっと…深海提督に相談しに行った時に、ね」

「そ、そうだったのですか!」

そして、3人の隣に立っていた深海に気づいた涼月。すると涼月は深海に向かって頭を下げた。

「深海提督、この度は私たちの事を匿っていただき、本当にありがとうございます」

「お礼を言われることはしていない。お前たちが気にする事じゃない」

「そんなことないです!深海提督には感謝してもし切れません!秋月からもお礼を言わせてください!」

「僕からも言わせてくれ。ありがとう」

「私も、秋月たちをマスター…いや吹雪から守ってくれて、感謝しているんだ。ありがとう」

秋月たち4人から一斉に頭を下げられ、流石の深海も後頭部をポリポリと掻くことしか出来なかった。

「そこまで言われたら、受け取らない方が悪いな…どういたしまして」

「ありがとうございます!」

秋月はそう言ってもう1度頭を下げた。もういいぞ?と深海は少しだけ困惑して言った。すると深海が、ある事を思い出して言った。

「防空棲姫。お前に言っておかないといけないことがあったな。駆逐棲姫もここに来ている。挨拶しに行ってやれ」

「駆逐棲姫がか!?…わ、わかった。後で行ってくる」

「それと、お前たちにあの写真を渡した白いフード…白雪もいる。後で白雪にもお礼を言っておけよ」

秋月は、はい!と元気よく言った。

 

続く



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EP78 集いし者たち(中の中編)

その後、電たちは秋月たちと別れ今度は対人戦専用エリアに向かった。すると早速、電たちが月華団を見つけた。

「あ、瑞鳳さんっぽい!」

「夕立ちゃん!それに時雨ちゃんに電ちゃん!3人もこっちに来たんだね!」

「うん。それより、瑞鳳さん。怪我は大丈夫なの?」

「団長の怪我は完治してるよ~こっちに来てから、みんなで看病したんだ~」

「ああ。本当なら、私たちで看病したかったんだがな。私も右肩を負傷してしまって怪我人扱いされてな」

「うーちゃんも休んでろって言われたぴょん!怪我してないのに!」

「卯月、嘘は駄目」

「あ、バレたぴょん?」

「弥生が相手じゃ、バレるに決まってるよ!今の、水無月でもわかったよ?」

「如月でもわかったわ……あ、バトルが終わったみたいよ」

如月がそう言うと、正面にあったバトル台のバトルシステムがシャットダウンし、左側からは阿武隈、北上、大井の3人が、右側からは三日月、長月、睦月、皐月と望月が出て来た。すると、三日月の全身が見えた瞬間、三日月はそのまま真後ろに力なく倒れた。

「み、三日月さん!?」

それを見た電が思わず声をあげた。隣に居た望月が、三日月の肩を支えて体を起こすと瑞鳳が言った。

「やっぱり、バルバトスにまた体の一部を持ってかれてるんだね。ミカ…」

「え?」

瑞鳳の言葉に時雨が思わず呟いた。

「大丈夫かミカ~」

「うん。ありがとうもっち!私もバルバトスも大丈夫ですよ」

「おいおい。そんな状態でよく大丈夫って言えるな三日月」

「右脚の感覚まで失っちゃうなんて、同じことが出来る睦月はちょっと怖いにゃしぃ」

「ボクたちが三日月に頼り過ぎたのがこうなった原因かもしれないね」

すると反対側から北上がゆっくりと歩いてきて言った。

「アシムレイト使いはやっぱ強いね~アタシらももっと戦略の幅、広げなきゃだね~」

「北上さん!こちらから申し込んだバトル。受けてくださってありがとうございます!」

「もっと感謝しなさい貴女たち!北上さんは忙しい中バトルしたんだから!」

「暇そうにしてたのアンタが言う?(ボソッ)」

「何か言ったかしら~?前髪女?」

「別に~何も言ってないよ~」

すると大井が小さく舌打ちをした。そしてそこに深海が制止を入れる。

「やめろ阿武隈、大井。周りにいるこいつらの迷惑になる」

「あ。ご、ごめんなさい深海提督」

「………」

「大井っち、深海提督睨みつけても意味ないから謝んなよ」

「北上さんがそう言うなら…すいません」

「んじゃそろそろ……あ。電に時雨、夕立じゃん」

北上はその時になって電たちの存在に気づいた。深海は、今更かよ。と心の中で呟いていた。

「へー、深海提督が言ってたけど本当に髪真っ白じゃん電」

「あ、はい」

「でも、意外に可愛いかもしれないなー!アタシ的にはOKかも」

「うげ、阿武隈と同じこと考えてたよ私」

「北上さんに謝りなさい前髪女!」

「理不尽にも程がない!?」

「おいお前ら…」

「行きましょう北上さん!ここに居たら時間が無駄に過ぎてしまいます!」

そう言った大井が北上の腕を掴むと無理矢理引っ張って行ってしまった。

「あ、行っちゃった。じゃあ、アタシもこれで」

そう言って阿武隈もその場を後にした。すると皐月が、深海に近づいてきた。

「深海司令官!」

「何だ皐月?」

「団長の手当ての事、ちゃんと改まってお礼を言おうと思って…本当にありがとう!」

「お礼はこの前受けたぞ―――」

深海がそう言った時、その場に居た月華団の全員が頭を下げてお礼を言った。

「ありがとうなのね!」

「如月も感謝していますわ!」

「ありがとう、ございます」

「ありがとねーぷっぷくぷー!」

「ありがとうだよ~」

「深海司令官、三日月の事もありがとう!」

「私からもお礼を言わせてくれ。ありがとう!」

「感謝する。深海司令」

「深海司令官、本当にありがとうございます!」

「ま、ありがとな~」

「おいおい。お前ら……」

「深海提督。みんなからの気持ち、受け取ってくれませんか?みんな、本当に感謝してるんですよ。勿論私も…ありがとうございます」

そして瑞鳳までお礼を言うと、流石の深海も少しだけ顔を赤くして視線を晒しながら後頭部をポリポリと掻いていた。

「ここまで言われて、受け取らない方が罰当たりだな…どういたしまして…だ」

「深海提督でも、照れる事あるんだね」

「言ってくれるな時雨…否定はしないが」

「あははっ」

そう言って時雨は小さく笑った。そしてそれに釣られて、その場に居た全員が笑った。するとそこに、1人の少女が歩いてきた。

「あら?提督、こんな所に要らしたんですね」

「ん?大鳳か、新型の機体調整か?」

大鳳と呼ばれたもみあげの長い、やや茶色みがかった黒髪のショートボブに、黒の薄手の上着と丈の短いミニスカートにスパッツを履いた茶色の目をした少女はニコリと笑って言った。

「はい!火力とスピードの調整が出来たのでそれの確認に…誰か相手してもらえる人はぁ……」

「あ!それなら私がお相手しましょうか?」

大鳳の裏から更に声が聞こえてきた。声の主は金色の髪を耳辺りで錨型の髪飾りでまとめておさげにした黒と灰の長袖と、両手には白手袋、黒のミニスカートに黒のハイソックスを着た少女、プリンツ・オイゲンだった。

「オイゲンさん!お願いできるかしら?」

Natürlich(勿論)!私も丁度、対戦相手を探してたんですよ!」

「プリンツ、お前もいたんだな」

「アドミラル!あ、もしかしてその3人が?」

深海は、ああ。と言って電たちに大鳳とプリンツ・オイゲンを紹介した。

「俺の鎮守府に残ってくれている大鳳とプリンツだ。顔くらいは知ってるだろ」

「初めまして、大鳳よ!提督から話は聞いているわ。よろしくね!」

「プリンツ・オイゲンです!気軽にプリンツって呼んでね!よろしく!」

電たちがそれぞれ挨拶を告げた。

「さあ、オイゲンさん!早速始めましょう!」

「わかりました!アドミラル、電ちゃん、時雨ちゃん、夕立ちゃん。またね!」

「なのです!」

大鳳とプリンツ・オイゲンはそう言ってその場を後にした。そして入れ違うようにして陽炎と不知火、綾波が歩いてきた。

「あ!陽炎、不知火、綾波!久しぶりっぽい!」

「電に時雨、夕立じゃない!まさか、貴女たちも来ているなんて思わなかったわ!」

「お久しぶりです皆さん。お元気そうで、安心しました」

「まさか、電さんたちも深海提督から声がかかっていたんですね!」

「うん。3人も元気そうだね…深海提督に声を掛けられたの?」

「ううん。私たちは自分たちで志願したのよ!」

「え?」

陽炎の放った想像しえなかった答えに驚く電。すると不知火が真剣な表情で話し始めた。

「実は私たちの妹「萩風」が、行方不明なんです」

「行方不明っぽい?」

「ええ。その捜索依頼を青葉さんにお願いしたら、深海提督の事を教えてくれたの!」

「………っ!陽炎!それって最近起こった「元艦娘の失踪事件」の事かい!?」

「え?そ、その通りだけど…時雨、知ってるの?」

時雨は陽炎にそう聞かれると、うん。とハッキリ頷いた。そして自分たちも、春雨がその被害に遭っていることを告げる。

「ま、まさか…時雨さんたちも被害者だったとは…」

「春雨だけじゃない。白露と五月雨、海風に江風が攫われた。それも、村雨の手によって、ね」

「え!村雨が!」

「全国大会の時、突然襲ってきたっぽい!その時は深海雨雲姫って名乗ってたけど…あれは間違いなく村雨っぽい!」

「そ、そんなことがあったんですね」

4人の会話がそこで終わった。すると、陽炎が時雨に向かって右手を差し出した。

「陽炎?」

「共同戦線になるわ。だから、お互いに頑張りましょう」

「…うん!ありがとう、陽炎」

時雨は陽炎と熱い握手を交わし、それを見た夕立と不知火も握手を交わした。

「電さん」

すると綾波が電に声を掛けた。電は驚きながら綾波に尋ねた。

「え!な、なんですか綾波さん!?」

「暁さんたちには会えました?少し前にこの鎮守府(ここ)に来ていたみたいですけど?」

「ッ!!」

綾波の言葉を聞いた電は肩をビクつかせた。そしてそのまま俯いてしまった。

「い、電さん?」

電はしばらく俯いたまま黙り込んでいたが、やがて少し暗い声で言った。

「今は……ちょっと…会いたくないのです…」

「え?」

 

続く



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EP79 集いし者たち(中の後編)

電の返答に思わず疑問の声をあげる綾波。しかし疑問に思ったのは、綾波だけではなくその場に居た時雨や夕立、陽炎と不知火も同じだった。

「い、電。暁たちに会いたくないってどういうことなの?」

陽炎が思わず電に切りだした。電はしばらく黙り込んでいたが、やがて必死に作ったような引きつった笑顔で陽炎に答えた。

「電は、本当の姉妹じゃない…のですっ」

そして電はその場から走り去ってしまった。時雨が電の名前を呼んで呼び止めようとしたが、電は振り返ることなく走って行ってしまった。

「…俺が追う。お前たちは、好きに行動していろ」

「深海提督!」

深海は速足で電を追ってその場を後にした。

「行っちゃった…」

「ね、ねえ、電が言ってたさっきの言葉。あれってどういう―――」

「陽炎。普段から笑顔の電さんがあんな引きつった笑顔をしたんです。きっと、辛いことがあったんでしょう。私たちが無理に聞くことは、やめた方がいいですよ」

「……そうね」

「電さん…」

 

陽炎たちと別れた時雨と夕立は、そのまましばらく対人戦専用エリアを歩いていた。すると、バトルの終了した台から、川内とヲ級、そしてオレンジと白のノースリーブシャツと白地に黒の三角線が入ったスカートを穿いた前髪の跳ねた長い茶髪に緑のリボンを巻いた髪と同じ色をした少女が出て来た。

「あ、川内さんに神通さんだ!」

「対戦相手は…あ、リ級さんたち―――」

「だぁー!!夜戦なのに負けたぁー!」

時雨がリ級たちに声を掛けようとした瞬間、川内が頭を抱えながら叫んだ。どうやら、先程のバトルはヲ級が勝利したようである。

「あんな単純な攻め方では、負けてしまいますよ川内姉さん」

「ハイパージャマーに頼り過ぎの部分があるみたいだな。神通の言う通り、基礎戦闘力を上げた方がいいんじゃないか?」

「う…観戦してたリ級にまで言われるとちょっとへこむ…」

そして川内はガクリと項垂れた。すると、対戦相手だったヲ級が川内に近づいて言った。

「川内!さっきのバトルでその機体の弱点を見つけたヲ!今から一緒に、直しに行くヲ!」

「え?ちょっ!」

そう言ったヲ級は川内の手を引いて、そのまま製作ブースへ向かって走って行ってしまった。その2人を残された神通とリ級、ル級が眺めていた。

「リ級さん、ル級さん、神通さん!こんにちはっぽい!」

「時雨ちゃん、夕立ちゃん。こんにちは」

「おお、時雨に夕立じゃないか。こんなところで会うとはな」

「久しぶり…と言っても数日ぶり程度か」

「リ級さんたちも来ていたんだね。深海提督に声を掛けられたの?」

「まあそんなところだ。そう言えば、神通。お前もそうなのか?」

「そうですね。川内姉さんが声を掛けられたみたいで、私は姉さんの機体の整備を手伝おうと思いまして…那珂ちゃんはアイドルの試験があるから、来れなかったみたいね」

「そうだったんですね…」

すると、リ級がヲ級が走っていった方を向いて思わず呟いた。

「それにしてもヲ級の奴、随分と変わったものだ」

「ああ。私としても、少し嬉しい事だ。何もかも、加賀と深海のおかげだな」

「本当なら、直接あってお礼を言いたいが…時雨、知らないか?」

「あ、さっきまで一緒に居たんだけど…電がどっか行っちゃって、それを追いかけていったよ」

「そうか…ありがとう。じゃあ、また後でな」

「うん」

そう言ってリ級とル級はその場を後にした。

「じゃあ私も川内姉さんを追いますね」

「うん。じゃあね神通さん」

そして神通も製作ブースの方へと歩いていった。すると神通とすれ違いながら伊勢と日向が歩いてきた。

「あ、伊勢さん日向さん!」

「おお、時雨に夕立じゃないか。お前たちもここに来ていたんだな」

「伊勢さんと日向さんも深海提督に声を掛けられたっぽい?」

「まあね!2回戦で負けた私たちにも声をかけてくれるとは思わなかったけどね」

「これも瑞雲への信仰のおかげだな…」

「そ、そうなんだ(それはたぶん、日向さんだけだと思うよ…)」「ぽ、ぽい…」

時雨と夕立は苦笑いをするしか出来なかった。

「さて、行くとしよう伊勢。もっと瑞雲を広めるぞ」

「そうね!じゃあ、またね!」

「う、うん」

そう言って伊勢と日向は去っていった。

「嵐のように去っていったっぽい…」

「そ、そうだね…」

2人は完全に呆気取られていた。すると伊勢と日向とすれ違いながら、肩が露出した紅白の巫女風の桜吹雪の入った着物に京和傘のような金糸模様が施されている赤いスカートを着用した腰まで在る黒髪ロングに緋色の目をした背の高い女性と、その女性と同じ服装をした軽いウェーブのかかった黒いボブカットの髪に緋色の目をした女性が歩いてきた。そしてその2人に気づいた時雨は、それぞれの名前を呼びながら走っていった。

「扶桑ぉー!山城ぉー!」

「時雨!久しぶりね」

「元気そうね時雨。また一緒に戦えるなんて、私は嬉しいわ」

「僕もだよ!2人とまた一緒に戦えるなんて…思ってもみなかったよ!」

するとようやく、夕立が時雨に追いついてきた。

「時雨ぇ…ちょっとはしゃぎ過ぎじゃないっぽい?」

「ああ…ごめんよ夕立。僕としたことが…ついはしゃいじゃったよ」

「あはは…時雨ってばこういう所も変わってないわね」

「そうねぇ、嬉しいときはすぐにはしゃいでしまっていたものね」

「う……ちょっと、恥ずかしいな」

時雨は少しだけ俯いて顔を赤くしていた。それを見て扶桑は優しい笑みを浮かべ、時雨の頭を撫でた。

「でも、あの頃と変わっていないことは嬉しい事よ…ありがとうね時雨」

「扶桑…」

「そんな暗い顔しない!シャキッとしないと勝ちが逃げてしまうわよ!」

「…うん!ありがとう山城!」

「それじゃあ、私たちは行くわね。また後で会いましょ」

「うん!またね扶桑、山城!」

そう言って扶桑と山城は歩いていった。すると、夕立のお腹が「グルルルゥ~」と鳴った。

「時雨ぇ、夕立お腹すいたっぽい~」

「そう?なら、深海提督の言ってた食堂に行く?」

「行くっぽーい!」

そう言って夕立は出口目指して走っていった。それを見た時雨が慌てて後を追いかけていったが、入り口近くですぐに追いついてしまった。

「夕立?どうしたの、いきなり止まって」

「時雨…あそこ……」

夕立が入り口の所を指さした。時雨が指さした方に目を向けるとそこには――――

「い、電…」

暁たちと対峙する電と深海の姿があった。

 

続く



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EP80 集いし者たち(後編)

少しだけ時間は遡る。

 

足早に去っていった電にやがて深海は追いついた。そして深海は電に声を掛けた。

「電。何処へ行くんだ?」

「深海提督さん…」

「お前の言いたいことはわかる。お前はあそこ…研究所で生まれた電だから、今いる暁たちの本当の姉妹じゃない。そうだろ?」

「………」

黙り込んだしまった電に深海は一言、図星か。と言った。そして―――

「なら、行くぞ」

「え?はわっ!」

電の手を引いて歩き出した。足早に歩みを進める深海に引っ張られる電は、少し声を荒げて言った。

「離してください深海提督!電は―――」

「駄目だ。そんな未練を持ったまま、作戦に参加される方が迷惑だ」

「迷惑って!なら電を作戦からはず―――」

「それも駄目だ。お前は俺たちの貴重な戦力だ、無駄には出来ん」

「なら―――」

電は咄嗟に深海から手を放し、叫んだ。

「なら何で電を―――」

「いつまで逃げるつもりだ?」

しかしその叫びを深海が遮った。その言葉を聞いた電は肩をビクつかせ、口を噤んでしまった。深海は更に続ける。

「今のお前は目の前の恐怖から逃げようとしているだけだ」

「っ!?」

「その恐怖に打ち勝たない限り、お前は永遠に前へは進めない。その恐怖を抱えて後悔したまま、自分が消えていくのを待つだけだ…」

「………」

「自分が消えてしまったら、もう謝れない。残された者たちに罪滅ぼしも出来ない。お前はそれで良いのか?」

深海は黙り込む電をよそに言った。

「それが嫌なら、俺の手を握り返してみせろ」

そう言って深海は左手を前へ差し出した。

「………っ」

電は恐る恐る右手を前へ伸ばしていった。やがてその手は深海の手に触れ、ゆっくりと握りしめた。そして深海はその手をギュッと握り返す。

「よくやったな電」

「……電は」

「ん?」

「電は、ちゃんと暁ちゃんたちとお話…出来るのかな」

「それはお前次第だな………もっとも…あいつらはきっとお前を姉妹だと思ってるだろうがな」

「え?深海提督さん、何か言いましたか?」

「何でもない。さ、行くぞ」

深海に連れられて歩き出す電。電の心中は未だに少し曇ってはいたが、それでもほんの少しの勇気が湧いていた。そしてそれは、すぐに訪れた。

「あ、電じゃない!やっと来たのね!」

「やあ電。随分と遅かったみたいだね」

「まったく!一人前のレディである暁を待たせるなんて、困った妹だわ!」

「あ――」

建物の玄関で、入ってきた暁たちとバッタリ鉢合わせたのだ。電は驚くあまり、つい黙り込んでしまった。すると雷が、電が元気のない事に気づき声を掛けた。

「どうしたの電?元気ないわね」

「い、雷ちゃん…」

「もう!前に言ったでしょ?そんなんじゃダメよって!」

「そうよ電!雷の言う通り、いつも笑顔でいなきゃレディ失格よ?」

「あ、暁ちゃん…」

「………」

暁と雷が電をいつも通りの調子で話しかけたが、響だけは何も言わず電を見つめていた。そして横目で深海を見た。すると深海は小さく頷いた。それを見た響はゆっくりと電に歩み寄っていった。

「電。知ってしまったんだね」

「「え?」」

響の言葉に驚きの声をあげる暁と雷。そして電は――――

「うん」

と頷いた。響は一言、そっか。と言い電を見つめたまま黙り込んでしまった。

「ひ、響……」

「そ、そんなこと、あ、ある訳ないじゃない!電とは、戦時中からずっと一緒に―――」

雷が暗くなった周囲をどうにか明るくしようと声を張り上げるが、しかし―――

「雷ちゃん」

「っ!」

「もう、いいのです…電…電は……」

全てを知ってしまった電にとって、その行為は意味を成さなかった。そして―――

 

 

全部、話そう

 

 

響がそう、静かに告げたのだった。

 

続く



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EP81 姉妹の真実

そして響は語り始めた。

「全ての始まりは終戦の前日……」

 

 

 

終戦の前日

遠征から返ってきた私の表情はとても暗かった。いや「私たち」と言った方がいいだろう。暁と雷はの2人は、低く抉付きながら涙で溢れかえった目を必死に拭っていた。そして暁が口を開いた。

「何で…何でぇ……」

暁の言葉に釣られてか雷が声を上げる。

「ウッウウウ……」

「………電」

遠征の帰り道――――

 

 

 

 

電は轟沈した

 

 

 

 

きっかけは唐突に現れた。潜水艦からの魚雷だった。一瞬の出来事、突然目の前に上がった水柱と爆煙が上がり煙に呑まれていく電。私の声は爆音にかき消され、暁と雷は動揺していた。黒煙が晴れるとそこに―――

 

 

電の姿は無かった

 

 

「電…電ぁ……」

暁が泣きながら電の名前を呼んでいた。通商破壊。私たちがまだ艦だった頃から存在していた物資輸送を狙った作戦。私たちが所属するこの鎮守府でも、何度も起こっている現象で被害に遭った艦娘は何人もいた。しかし、今までに轟沈した艦娘はいなかった。それ故の油断だった。

「暁、雷…」

「響?」

「先に部屋に帰ってていいよ。報告は…私がしてくるから…」

暁と雷は、うん。と低い声でそう言うと、寮へ向かって歩いていった。私はそれを見送ると、鎮守府の本庁舎へ歩いていった。

 

司令官の執務室に辿り着いた私は、少し言葉を詰まらせながらも遠征の結果を報告した。勿論、電が轟沈してしまった事も報告した。軍帽を目深に冠った司令官は一言、残念だ。と言って黙り込んでしまった。執務室がしばらく静寂に包まれていた。するとやがて、司令官が言った。

「響…しばらくは2人の傍にいてやれ。遠征の日程は、こちらで変えておくから」

「うん。わかったよ司令官………スパシーバ」

そう言って私は執務室を出た。そしてそのままの足で寮の自室に戻った。

 

室内は完全にどんよりした空気になっていた。2つの二段ベットに挟まれた畳3畳分のスペースには涙を拭いながら喘ぎ声をあげる暁と雷がいた。私はその光景を見て、しばらく動くことが出来なかった。しかし、いつまでも扉を開けたまま立ち尽くしているわけにもいかず、扉を閉め2人の元に歩み寄った。すると、俯いたまま暁が涙声で聞いてきた。

「司令官は……なんて、言ってた?」

「………」

私はすぐに答えを返せなかった。勿論嘘を言うつもりはない。でも、どうしてもすぐに口を開けることが出来なかった。だが、言わない訳にはいかなかった。

「残念だ。って言ってたよ……司令官も、凄く悲しいそうな表情をしていた」

「………」

そして暁は口を閉じてしまった。だが、私は言葉を続けた。

「しばらく…遠征は別の部隊がやってくれるって……」

しかし返答の言葉は帰ってこない。ただただ、2人の涙声が室内に響いてるだけだった。私は静かに暁と雷の間に座った。すると、雷が私に飛びついてきた。

「うわあぁぁ!なんで!なんで電なのよ!」

「雷……」

飛びついてきた雷は大声で叫んだ。

「あの時…1番資源を持ってたのはっ…雷だったのにっ!なんで…なんで電がっ!」

すると、雷の叫びに釣られて今度は暁が飛びついて泣き始めた。

「ううっ…旗艦は…暁だった!暁が1番っ…狙われる筈なのにぃ…うわああぁぁぁぁん!」

「暁……」

私は2人の頭を優しく撫でていた。でも……

「……うっ…うううっ……」

私も涙を堪えられることが、遂にできなかった。

「電ぁ……」

まただ。また私は、電を守ることが出来なかった。彼の大戦の時もそうだった。最後に残されたのは私と電だった。でも結局、本当の最後の時に残されたのは私だけだった。その事を思ってしまうと、涙が止まる筈はなかった。

「うわあああぁぁぁぁ……」

私たちはその日、ずっと泣き続けていた。

 

そして翌日の昼。食堂で私たちは昼食を食べていた。暁と雷の表情は相変わらず暗いままだったが何人もの仲間が私たちに気を使って話しかけてきてくれていつもの本調子が戻ってくるのも時間の問題だろうと思える程にはなっていた。私はそのことが嬉しかった。そして正午過ぎ、突然食堂に司令官が慌てて駆け込んできた。声を掛けようとした私だったが、司令官は足早に食堂中央にあるテレビを付けた。私たちは訳もわからずテレビを見た。そしてそこから流れてきたのは……

 

終戦を告げる深海司令官の声明だった

 

「………え」

私は…いや、その場に居た全員が同じように困惑していただろう。食堂は静まり返り、ただただ、深海司令官の声明が淡々と流れているだけだった。

結局、その日出撃していた艦隊は緊急帰投となり、司令官は1日中情報収集に追われていた。私たちは何も出来ず1日を過ごすことになり、そして翌日、全国の鎮守府に向け「艦隊の出撃停止と工廠施設の使用停止」が司令部から言い渡された。

「そん……な」

その話を司令官の口から聞いた時、私は思わずそう言ったのを今でも覚えている。戦い続けていれば、いずれまた何処かで電と会える。心の底で小さく願っていた私に突き付けられた現実はあまりにも残酷に思えて仕方なかった。そして司令官は、戦争終結に伴い艦娘を辞めてもいいと提示した。艦娘として鎮守府に残るか、人間として新しい人生を歩むか。答えはすぐに出た。

(もうここに居ても、電には会えない。会うことが出来ないのなら、私は……)

 

 

艦娘を辞める

 

 

心の中でそう決めた。そして部屋に戻った私は、暁と雷にその事を伝えた。私は止められると思っていた。2人は電との思い出がたくさんあるこの鎮守府から離れないと思っていた。でも違った。

「響が艦娘を辞めるなら、私も艦娘を辞めるわ!」

「雷…でも――」

「今1番辛いのは響でしょ?」

「っ!」

「私知ってるわ…電が居なくなったあの日から、響は毎晩夜中に部屋を出て行って海を眺めてるって…」

「何で…それを」

雷の言う通りだ。私は電が轟沈してしまった日からこっち、夜中に起きては港から海を眺めていたのだ。ひょっとしたら電は沈んでいない。だからもしかしたら帰ってくるんじゃないのか。と、馬鹿馬鹿しいにも程がある事を繰り返していた。我ながら、かなり恥ずかしいと思っていたが止めることが出来なかった。すると雷は、驚いていた私をギュッと抱きしめてきた。

「そんな響を1人には出来ないもん…」

「い、雷…」

「暁も同じこと思っているのよ!」

「え?」

「響は問題事をいつも1人で解決しようとするんだから、たまにはの一人前のレディである暁の事を頼ってほしいわ!」

「暁…」

そう言い放った暁の目はいつも以上に真剣な目だった。そして雷が言う。

「私たちが初めて4人揃った時、約束したじゃない!姉妹の誰かが、辛い時、悲しい時は、お互いを支え合うって!」

「あ………」

雷の言葉を聞いた時、私はハッとした。初めて4人が揃った時にした約束。あの日、今いるこの場所で、私たち4人で決めた大切な約束。

「だから、響が辛いときは私が支えてあげる!」

「一人前のレディである暁が、妹が辛そうにしてるのを見て見ぬふりする訳ないわ!」

「暁……雷……」

私はそれを忘れて1人で電の喪失を背負い込もうとしていた。2人の気も知らないで。でも、2人が思い出させてくれた。そう思った瞬間、私の目からは涙が溢れていた。

 

 

 

ありがとう

 

 

 

私は涙を流しながら、2人に笑顔で答えた。

 

それからしばらくして、私たちは鎮守府を出た。司令官は最後まで私たちの事を心配してくれていたが、それでも私たちの決意は変わらなかった。司令官はこれから住む家までも用意してくれたし、その他もろもろの手続きまでしてくれた。流石に悪いと思ったが、今回も甘えさせてもらうことにした。そして、新しい家の前で私たちは気持ちを新たにして新生活を始めた。

 

 

 

そして5年後…雨が降っていたあの日

 

 

 

私は夕食の買い出しの為に近くのスーパーに行っていた。そして買い物を済ませた私は傘をさして家を向かっていた。そして、家へと続く最後の曲がり角を曲がった時だった。

「ん?」

住宅街の道の真ん中に何かが倒れていた。私はゆっくりとその何かに近づいて行った。そして気づいた。

「人?」

そこに倒れていたのは長い茶髪の、私と同じくらいの背の人間だった。今にも衰弱死してしまうのではと思える程にか細い怪我だらけの体をボロボロの布1枚が隠していて、私はしばらくその人間を眺めていた。そして何を思ったのか、私は前髪で隠れていたその人間の顔を見た。そして私は―――

 

電!?

 

と、驚愕の声をあげたのだった。私の目に映っていたその顔はまさしく電だった。私は電の顔を見てしばらく固まってしまった。しかし、そのすぐ後に正気に戻り私は居ても立っても

居られず、電を抱えて家に向かった。気を失っていた電の身体はとても重かったが、私はそんなことを気にせず、走った。家に辿り着き、玄関の扉を思い切り開け玄関に転がり込む。その時になった大きな音に驚いて奥から暁と雷が飛び出してきた。

「ひ、響!どうしたのよ!」

「いきなり大きな音がしてビックリしたじゃなぃ……って、どうしたの響?その人」

電を担いでいた私を見て拍子抜けしている暁に顔を向け、私は言った。

「……電」

「「え?」」

「電がっ…家の近くで倒れていたんだ!」

「「!?」」

私は背負っていた電をゆっくりと床に寝かせた。そして気を失ったその少女の顔を見た暁と雷は絶句したまま、電の顔を見下ろしていた。

「「電……」」

そして2人が小さく呟いた。私もしばらく、その光景を眺めているしか出来なかった。

 

結局、電はそのまま1週間目を覚まさなかったが、私が電を助けてから8日目の朝、電はその目を開けた。金色のその目が、私たちを捉えた。

「こ、ここはぁ……」

「「「電!」」」

「……あなた、たちは―――ウッ!」

体をゆっくりと起こした電は唐突に頭を抑え込んだ。

「電っ!!」

「うっ…うあぁあ……」

「し、しっかりしてよ電!」

(いったい、どうしたというんだ!?)

そこからしばらく電は呻き声をあげながら頭を抑え込んでいたが、やがてハッとしたようになったかと思うと――――

「あれ?暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん。なんでそんなに慌ててるのです?」

「「え?」」(え?)

今まで苦しそうだったのが嘘のように元気を取り戻し、話し始めたのだ。

「も、もしかして電…お寝坊さんしちゃったのです!?はわわ!た、大変なのです!!」

「い、電?」

「早く起きないと―――あ、あれ?身体が旨く動かせないよ」

「………」

私はとてもその光景が変に思えて仕方なかった。恐らくそれは暁たちも同じだろう。

「動かないのも無理ないよ。昨日階段から落っこちて、気絶していたんだから」

私は思わずそんな嘘を言った。暁と雷が驚愕した表情で私の方を見ていた。私は2人に向かって小さく首を振った。すると2人は私の意思をくみ取ってくれたのか、話を合わせてくれた。

「そ、そうよ!あれだけ階段はゆっくり上らないと駄目って言ったのに!」

「まったく!電は本当にドジなんだから…心配したのよ!」

「ご、ごめんなさいなのです……」

「………」

私は黙ってその会話を聞いていた。明らかな嘘に、何の違和感も感じずに会話をする電。そして私は思ってしまった。

 

きっと、この少女は……電じゃない

 

でも、どうしてだろうか……

 

 

また電に出会えて、嬉しがっている

 

 

そんな自分がいる。と感じずにはいられなかった。

 

 

 

続く



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EP82 嘘だとしても

「そして今年、電は暁学園に入学した。それまでの2年間は私たちと一緒に何事もなく過ごしていたんだ………これが、私たちと電の真実の全部だよ」

電はずっと黙ったまま響の話を聞いていた。そして響の話が終わった時、一言呟いた。

「やっぱり…電は、皆と本当の姉妹じゃなかったのですね……」

「………」

電の言葉に響は何も言えなかった。

「…でも、いいのです!最後に本当のことを知れただけで……これで皆と、ちゃんとお別れ―――」

「そんな事ないわよ!」

「!?」

突然、暁が大声で叫んだ。電はそれの驚いて肩をビクッとさせた。そして暁は言った。

「電は暁たちの妹!例え本当の姉妹じゃないとしても、暁たちにとってはもう(・・)大切な妹よ!」

「そうよ電!わたしたちに初めて会った時、いきなり記憶が戻った?…のはよくわからなかったけど!それでも私たちは、電を本当の妹だって思ってるわ!」

「暁ちゃん…雷ちゃん…」

暁と雷の言葉に何も言うことの出来なかった。すると、深海が突然口を開いた。

「深海細胞の影響だろうな」

「え?」

深海が放った言葉を聞いて、その場に居た全員が深海へ振り向いた。

「大戦中だったか…時雨を拉致して俺に殺された深海棲艦側の科学者が言っていた。深海細胞は、他者の記憶を読み取りそれに合った記憶を、細胞を持っている者に与えるという特性を持っている。とな」

「……つまり今の電の記憶は、深海細胞が私たちの記憶を読み取って作られた、作り物という事か……」

「ああ」

その言葉を聞いた電は再び、やっぱり。と呟いた。しかし、深海がその先の言葉を遮った。

「だが…たとえ偽物の記憶だとしても………電」

「え?」

「暁の言う通り、お前はもう(・・)この3人の姉妹になっているんじゃないか?」

「っ!」

深海の言葉に電は衝撃を受け、何も言う事が出来なかった。その電の様子を見ていた響は、何かを言おうと口を開きかけた。しかし、それを暁の言葉が遮った。

「電!今から暁たちとバトルよ!」

「えっ!?」

暁の言葉を聞いた響は、開きかけていた口を閉じ小さく笑みを浮かべていた。

「電が口で言ってもわからないみたいだから!今から私たち3人とバトルするのよ!拒否権なんて、無いんだからね!」

「ええ!?」

「そうと決まったら早く行くわよ電!ほら!」

「はわわ!あ、暁ちゃん引っ張らないでほしいのです!」

暁に引っ張られていく電を見て、雷はニッと笑って後を追いかけ、響は小さく笑顔を浮かべていた。

「わたしが言うまでもなかったみたいだね…」

「そうだな……お前たちのバトル、刮目させてもらうぞ」

「うん。必ず電の心を掴みとってみせるよ」

そう言って響は歩いていった。

 

 

「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A」

暁と響、雷の3人と対峙した電。バトルシステムが起動し、ダメージレベルがAに設定される。

「本気でかかってくるのよ電!手を抜いたりしたら許さないんだから!」

「please set your GP base.」

システム音声に従い、暁たちがGPベースをセットする。しかし、電は一向にセットしようとしなかった。

(電は…電は……)

電の心の中は未だに曇っていた。自分は暁たちの本当の姉妹じゃない。その事がGPベースを握る電の右腕の動きを止めてしまっていた。だが―――

「電!」「電ちゃん!」

「っ!?時雨さん!夕立さん!」

そこに時雨と夕立が駆け寄ってきたのだ。2人の姿を見た電はタジタジしながら訪ねた。

「何でここに来たのですか!こんな事に時雨さんと夕立さんが付き合う必要なんて―――」

「そんなこと出来ないっぽい!」

夕立が大声で電の言葉を遮る。電はビクッとしたが、夕立は言葉を続ける。

「電ちゃんが辛い顔してるのに、それを放っておくなんてチームメイト失格だもん!」

「夕立さん……」

「僕も同じ意見だよ電」

すると今度は時雨が1歩、電に歩み寄って言った。

「僕たちはチーム…暁学園ガンプラバトル部っていう名前のチームなんだ」

「時雨さん……」

「だから電がバトルをするっていうのなら、僕たちも電と一緒に闘う……あのホテルの時は出来なかったけど……でもそれが、僕たちとは関係ない事だとしても…ね」

「時雨さん…夕立さん…」

「電ちゃん!このバトル、絶対に勝つっぽい!夕立たちの力、暁ちゃんたちに見せつけるっぽい!」

「僕もそのつもりだ。やるからには…勝つよっ!……はい、電のガンプラ」

そう言った時雨は、腰のポーチから綺麗に修復されたイナヅマガンダムⅡを電に手渡した。

「え?な、何で時雨さんが?」

「ここに来るまでに、僕と夕立で直しておいたんだ。電が直したようにできているかはわからないけど…」

「夕立、結構頑張ったっぽい!」

電は時雨の手に乗せられたイナヅマガンダムⅡをゆっくりと受け取った。そして、胸の前でギュッと握りしめ大粒の涙を流していた。

「ありがとう…なのです。時雨さん…夕立さん…」

時雨は小さく笑みを浮かべ、夕立はニコッと弾けた笑顔を浮かべていた。

「さあ行くよ。電!」

「夕立たち3人の力、見せてあげる!」

「……なのですっ!」

電と時雨、そして夕立がGPベースをセットする。

「待たせ過ぎよ電!そんな事じゃ、暁みたいな一人前のレディには100年掛かってもなれないわよ!」

「でも、いい顔になったじゃない電!」

「なのです!」

「それじゃあ…始めよう!」(いい仲間を持ったんだね…電)

暁が笑いながら電を怒り、雷がニコッと笑って、電が笑い返して、響が微笑む。そしてその時、響が1粒の小さな涙を流したことは誰も知らなかった。

「Beginning Plavsky particle dispersal.Field 03 Forest.」

大量に溢れ出したプラフスキー粒子が桜吹雪が舞う森のフィールドを形成する。

「Please set your Gun-pla」

そして6人がそれぞれのガンプラを台の上にセットした。システムがガンプラを読み込み、それぞれのメインカメラが発光し、6人が出現した操縦桿を握る。

「Battle Start!」

ガンプラが設置された台座がカタパルトに変貌し、それぞれのガンプラが発進体制に入った。

「行くわよ電!貴女たち3人の力、もう1度雷様に見せてもらうわ!雷。ガンダムキュリオスアーチャー、いっきまーす!」

雷のガンダムキュリオスアーチャーがカタパルトから桜吹雪の中へと駆け抜け。

「本当の姉妹って、絶対に認めさせてあげるんだからね!暁。アカツキ・ハイペリオンマスター、出撃しますッ!」

暁のアカツキ・ハイペリオンマスターが太陽輝く空へと飛び。

「電……今度こそ、私が君を助けてみせる!響。ガンダム・ヴェールフェニックス、出撃するッ」

響のガンダム・ヴェールフェニックスが高い風舞う青空へと飛翔した。

 

「2人共、今回は作戦なんてない。ただ最後の最後まで、暁たちとぶつかるだけだよ!」

「機体の最後のパーツが壊れても、夕立は闘うよ!」

「電も…暁ちゃんたちに、電の全部をぶつけるのです!例えイナヅマガンダムⅡが消えてしまっても――――」

 

 

 

3人で、必ず勝つ!!

 

 

 

「時雨。ガンダムアサルトレインバレット、行くよッ!」

時雨のガンダムアサルトレインバレットが晴れ渡る青空の中へと飛び立ち。

「夕立。ユニコーンガンダムナイトメアパーティー、出撃よッ!」

夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーが桜の中へと駆け。

「電。イナヅマガンダムⅡ――――」

電のイナヅマガンダムⅡが

 

 

 

 

出撃ですッ!!

 

 

 

 

 

 

 

桜吹雪の舞う空へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

続く



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EP83 力の限り

「そこっ!」

桜の木で埋め尽くされた森の上空で、アサルトレインバレットがロングバレルビームライフルを放つ。放たれたビームが散開した暁たち3機のガンプラの中央を通過し、そのまま地上に直撃する。

「ALユニット展開!」

「ロックオンッ!ウラー!」

アカツキ・ハイペリオンマスターがALユニットを展開し、その後方からヴェールフェニックスがツインバスターライフルを連結させて放った。黄色い帯状のビームがアサルトレインバレットに向かって飛ぶが、その正面に上空でファトゥム-01から飛び降りてきたユニコーンガンダムナイトメアパーティーが割って入り、大型ビームサーベルを展開した。

「させないっぽい!」

縦に振り降ろされた大型ビームサーベルがツインバスターライフルのビームを斬り裂き、弾き飛ばした。

「隙ありよ、夕立!」

「夕立さんはやらせないのです!」

ツインバスターライフルのビームを弾き飛ばしたユニコーンガンダムナイトメアパーティーにキュリオスアーチャーがGNビームライフルを構えて迫ったがそこにイナヅマガンダムⅡがビームライフルを放ちながらキュリオスアーチャーの前方を通り過ぎていった。イナヅマガンダムⅡが前方を通り過ぎたことに気づいた雷は、その場で慌てて止まりイナヅマガンダムⅡの方へGNビームライフルを向け引き金を引いた。それを振り返ることなく飛行したまま回避するイナヅマガンダムⅡ。キュリオスアーチャーのGNビームライフルは次々と地上に直撃し砂煙を上げる。

「直撃させます!」

そして振り向いたイナヅマガンダムⅡが、キュリオスアーチャーへ向けビームライフルを放つ。直撃コースを飛んでいたイナヅマガンダムⅡのビームはしかし、キュリオスアーチャーの周囲に現れた3基のALユニットが展開したビームバリアに防がれてしまった。

「ALユニットのバリアに死角はないわ!」

「くそぉ…」

「よそ見はさせないよっ」

今度はイナヅマガンダムⅡの背後から変形したヴェールフェニックスがツインバスターライフルを連射しながら迫ってきた。

「当たらないのです!」

電は機動防盾を縮小させて前方に向け、ヴェールフェニックスの攻撃を防いだ。

「やる!」

ヴェールフェニックスはそのままイナヅマガンダムⅡの横を通り過ぎ、その場から離脱していった。イナヅマガンダムⅡはその方向へビームライフルを向けたが、そこにアカツキ・ハイペリオンマスターがヒャクライ・スティグマトを連射しながら迫ってきた。

「追撃なんてさせないわ、電!」

「あっ!」

電は急いでイナヅマガンダムⅡを反転させ、機動防盾を展開した。ヒャクライ・スティグマトのビームが機動防盾の表面で次々打ち消されていく中、アカツキ・ハイペリオンマスターは試製双刀型ビームサーベルを抜刀し、片側のみビーム刃を出力すると左上段から斬りかかった。

「もらったわ!」

「っ!!」

「この位置なら…届くっ!」

アカツキ・ハイペリオンマスターがイナヅマガンダムⅡを斬りつけようとしたその瞬間、一筋のビームがアカツキ・ハイペリオンマスターの手甲を捉えた。しかし、ビーム反射装甲となっている手甲に直撃したビームはその場で反射し、放たれた方向へ走っていった。

「これも読み通りだ!」

「わっ!」

反射したビームの方向に居たのは時雨のアサルトレインバレットだった。アサルトレインバレットはそのビームを回避し、直撃をま逃れた。そして一方のアカツキ・ハイペリオンマスターは、ビームが直撃した時の僅かな衝撃で手から試製双刀型ビームサーベルを手から放してしまっていた。

「時雨さん、助かりました!」

この隙にイナヅマガンダムⅡはその場から退避、態勢を立て直した。

「隙は見逃さないっぽい!」

そしてアカツキ・ハイペリオンマスターが見せたほんの小さな隙を夕立は見逃さなかった。ファトゥム-01の上でロングソードを右上段に構えると、ファトゥム-01の勢いのままに袈裟斬りを放った。しかし、アカツキ・ハイペリオンマスターはまだ迎撃の態勢が取れていなかった。

「しまった!」

「暁!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが繰り出した右上段からの袈裟斬りはしかし、ロングソードが振り下ろされる一瞬の間にアカツキ・ハイペリオンマスターの前方に飛び込んだキュリオスアーチャーのGNシールドを捉えた。

「ぐぐぐ…えーい!」

ロングソードの刀身から火花が散る中、キュリオスアーチャーは左腕を振り払いユニコーンガンダムナイトメアパーティーを跳ね除けた。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーを乗せたファトゥム-01はそのままその場から飛び去って行った。

「くそぉーあと少しだったのにぃ~」

「逃がさないよ、夕立ッ!」

だがその背後から、変形したヴェールフェニックスがユニコーンガンダムナイトメアパーティーを追撃した。ツインバスターライフルを連射し迫るヴェールフェニックスに、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは両肩のビームキャノンを背後に向かって射撃し応戦する。しかし、ファトゥム-01と変形したヴェールフェニックスのスピード差は歴然で、2機間の距離は次第に縮まって行った。

「このままじゃ追いつかれちゃうっぽい!」

「この距離ならッ!」

ヴェールフェニックスの放ったツインバスターライフルがユニコーンガンダムナイトメアパーティーの背後に迫った。だがその時、夕立はある事を思いついた。

「一か八かだけど…これでどおッ!?」

「…っ!消えたっ!?」

響の視界から突然ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが消えた。ヴェールフェニックスは先程までユニコーンガンダムナイトメアパーティーが居た場所を通り過ぎていった。するとその次の瞬間、響の耳に上方からの接近警報の音が届いた。

「上っ!?」

「命中させるっぽーい!」

先程までユニコーンガンダムナイトメアパーティーが居たその上空から、桃色のビームが次々ヴェールフェニックス目掛けて飛んできた。響はそのビームを何とか回避しながら飛行を続けていたが、やがて変形を解くと背後にシールドを向けて飛んでくるビームを防御した。果たしてその先にはビームキャノンを向けたユニコーンガンダムナイトメアパーティーが居た。

「あの短時間でハイジャンプするなんて…驚いたよ!」

「今度はこっちの番っぽい!」

飛んできたファトゥム-01に着地したユニコーンガンダムナイトメアパーティーが今度はヴェールフェニックスを追いかけていった。しかし、追撃に入ろうとしたユニコーンガンダムナイトメアパーティーは、突如四方からビーム攻撃を受けた。

「ぽいっ!?」

「響は墜とさせないわ!行っけぇALユニット!」

アカツキ・ハイペリオンマスターのALユニットがユニコーンガンダムナイトメアパーティーに全方位から攻撃を仕掛けてきたのだ。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはファトゥム-01に乗ったまま、回避行動を取ることで精一杯だった。

「くっそぉー!このままじゃ……」

「夕立っ!くっそぉー!」

遠方からアサルトレインバレットがアームド・アーマーDE先端のビームキャノンを発射した。そのビームはユニコーンガンダムナイトメアパーティーの周辺を飛び回るALユニットを引き剥がすことに成功したがユニコーンガンダムナイトメアパーティーの離脱が間に合わず、再び襲い掛かった。アサルトレインバレットが開いた左手を腰裏に回しビームピストルを掴みながらユニコーンガンダムナイトメアパーティーの元へ向かおうとスラスターを噴かす。

(駄目かっ!)

「電が暁ちゃんを止めます!」

すると今度はビームサーベルを抜き放ったイナヅマガンダムⅡがアカツキ・ハイペリオンマスターに向かって突撃していった。イナヅマガンダムⅡの接近に気づいた暁は、試製双刀型ビームサーベルを構えて応戦の構えをとった。

「たあー!」

「やあっ!」

右側から袈裟斬りを放ったイナヅマガンダムⅡのビームサーベルを、左側からの袈裟斬りで受け止めるアカツキ・ハイペリオンマスター。ビームサーベルがぶつかり合い、激しいスパークとビームの火花が散る。

「いい攻撃ね、電!」

「くうう!」

数秒間の鍔迫り合いの後、2機のビームサーベルがお互いを弾き合い2機の間に距離ができた。イナヅマガンダムⅡはすぐに態勢を立て直すと、再びアカツキ・ハイペリオンマスターへ向かって突撃した。それに応えるようにアカツキ・ハイペリオンマスターもイナヅマガンダムⅡ目掛け斬りかかる。

「このー!」

「てぇーい!」

バチィッ!バチィッ!とビームサーベルがぶつけ合いながらすれ違うイナヅマガンダムⅡとアカツキ・ハイペリオンマスター。そして再び鍔迫り合いとなった時、雷のキュリオスアーチャーがGNビームライフルを放ちながら2機に迫った。キュリオスアーチャーのビームを回避し、アカツキ・ハイペリオンマスター、キュリオスアーチャーと対峙するイナヅマガンダムⅡ。

「暁っ!」

「助かったわ雷!」

すると突然、電が叫んだ。

「夕立さん、今なのです!」

「ぽーいッ!!」

「なにっ!?」

「暁っ!ALユニットを動かすんだ!」

電の叫び声を聞こえた時、今まで回避に専念していたユニコーンガンダムナイトメアパーティーが突然大型ビームサーベルを展開し、大きく旋回しながら方向転換した。両肩から出力された巨大なビームサーベルが、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーを攻撃していたALユニットを飲み込んでいく。いくらビームを反射できる装甲で覆われているALユニットでも、持続してビームが直撃するビームサーベルには耐えることは出来ない。しかし、響の声に反応した暁が、咄嗟にALユニットを操作したことでユニットは3基が消滅しただけに止まった。

「くそぉーやられたわ!」

「ごめん電ちゃん!全部壊せなかったっぽい!」

「大丈夫なのです!」

「クッ!これ以上の追撃はさせないよ!」

再び変形したヴェールフェニックスがユニコーンガンダムナイトメアパーティーを追いかけていく、ツインバスターライフルを放ちながら距離を詰めていく。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはファトゥム-01を操り、ヴェールフェニックスの攻撃を回避していく。

「響ちゃんしつこいっぽい!」

「暁たちはやらせない!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはビームキャノンを背後に向け応戦していた。だが、その上空から狙う者がいた。

「限界まで収束させたロングバレルなら……」

2機の上空、そこではアサルトレインバレットがロングバレルビームライフルのビーム収束率を銃が耐えられるギリギリまで高めていた。ロングバレルビームライフルの銃口に桃色のビーム球体が出現し、時雨はヴェールフェニックスに照準を合わせた。響のいた操縦スペースに、ロックオンアラートが鳴り響く。

「ロックオンされた!?っ!時雨!?」

「ここは…譲れないッ!いっけぇぇー!!!」

限界まで収束されたビームがロングバレルビームライフルの銃口から発射され、ヴェールフェニックスに迫った。

「あぁぁッ!!」

激しいスパークを纏いながら迫るビーム。響はヴェールフェニックスの変形を解き、シールドを構えた。シールドに直撃したロングバレルビームライフルの収束ビームは、対ビームコーティングに反応してひと際大きな光を放ち打ち消された。その衝撃を受けたヴェールフェニックスは遠くへ弾き飛ばされ更に体勢を崩してしまった。しかし、限界までビームを収束させたロングバレルビームライフルは、突然スパークを放ち出した。

「クッ!」

アサルトレインバレットがロングバレルビームライフルを投げたその数秒後、ロングバレルビームライフルは激しいスパークを一瞬纏い、爆散した。しかし時雨はそれに動じることなく、体勢を崩したヴェールフェニックスに全スラスターを全開にして突撃した。

「うおおぉぉぉぉー!!!」

「時雨!?」

「っ!突っ込んでくる気か!?ぐあっ!」

態勢を未だに整えられていなかったヴェールフェニックスにアサルトレインバレットはバイポットシールドを構えて突っ込んだ。そしてその勢いのままに衝突し、ヴェールフェニックス諸共地上へと墜ちていった。桜吹雪が舞いながら、同時に砂煙が一直線に舞い上がる。

「時雨!」

時雨を呼ぶ夕立は砂煙の晴れた地上で、互いの拳を掴みながら組み合うアサルトレインバレットとヴェールフェニックスを目にした。両機の両腕が、相手の腕を破壊しようとガタガタと震える。

「くうぅぅ……時雨がこんな戦法をとってくるなんてね…」

「機動力で響のガンプラには勝てないからね…悪いけど、動きを封じさせてもらったよ!」

「時雨、大丈夫っぽい!?」

「ここは僕に任せて!夕立は電を!」

「っ!了解っぽい!」

電を夕立に任せた時雨は、響を倒すことに意識を集中させていった。だがそれは響も同じだった。そして時雨は、機体右側のスラスターを全て噴かし左足を強く地面に打ち付け、ヴェールフェニックスを投げ飛ばした。

「はあぁぁー!!」

「なにっ!?」

この時雨の行動に、流石の響も驚いて声をあげた。投げ飛ばされたヴェールフェニックスは桜の木を折りながら地面に叩きつけられたが、響は咄嗟に受け身をとって態勢を整えアサルトレインバレットを見据える。アサルトレインバレットは右手でビームサーベルを抜き、腰を少し落として臨戦態勢を取っていた。これに応えるように、響も武装スロットからビームサーベルを選択した。ヴェールフェニックスの持つシールドが中折れし、そこに格納されたビームサーベルを抜き放ち、構える。ビームサーベルを構え、互いに睨み合うアサルトレインバレットとヴェールフェニックス。

「やああぁぁー!!」

「はあぁぁぁー!!」

そして両機は、同時にスラスターを噴かし1歩踏み込んだ

 

「逃がさないわ!」

「雷、このまま追い込むよ!」

「くそぉ…暁ちゃんと雷ちゃん……やっぱり強いのです!」

森の上空、そこではイナヅマガンダムⅡとアカツキ・ハイペリオンマスター、そしてキュリオスアーチャーがイナヅマガンダムⅡを追いながら射撃戦を繰り広げていた。しかし数的不利、イナヅマガンダムⅡはキュリオスアーチャーの正確な射撃とアカツキ・ハイペリオンマスターの全方位攻撃に押され、徐々に追い込まれていった。しかし電は諦めず2機の攻撃を回避しながら隙を突いて反撃していた。相手の動きを追うように、電の目が右往左往し汗が流れ落ちる。攻撃を回避し、隙を突いて反撃。しかし、このままでは埒が明かない。だが、これ以上に大きな反撃が思いつかない。電は段々と焦り始めていた。

(はぁ…はぁ…何とか、突破口を見つけないと…このままじゃやられちゃうのです!)

「電、もらったわ!」

「後ろ!?しまった!」

電が焦ったことで、機体の挙動に隙が出来てしまったイナヅマガンダムⅡを雷は見逃さなかった。イナヅマガンダムⅡの背後にいつの間にか回り込んでいたキュリオスアーチャーが、GNビームライフルとGNビームキャノンを発射した。だが次の瞬間、イナヅマガンダムⅡの上空から何かが急降下してきた。

「ぽぉーいぃぃ!!」

それはファトゥム-01に乗り、大型ビームサーベルを展開した夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーだった。そしてキュリオスアーチャーが放った3つのビームは、降下の勢いのまま振り下ろされた大型ビームサーベルの刀身にかき消された。

「なっ!またビームを斬った!」

「夕立さん!」

「電ちゃんは、やらせないよ!雷ちゃん、覚悟するっぽい!」

そう言った夕立は、再びファトゥム-01を走らせた。狙いは雷のキュリオスアーチャー。

「いいわ!この雷様が相手になってあげる!」

「いくよぉー!」

自分に向かってくるユニコーンガンダムナイトメアパーティーに、雷はすぐに迎撃を始めた。GNビームライフルを放ち、近づかせまいとするがユニコーンガンダムナイトメアパーティーはそれを回避しどんどんと迫ってくる。

「くっそぉ…案外早いじゃない!」

「………今ッ!!」

すると突然、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはファトゥム-01から飛び上がった。

「上!逃がさないわ!」

飛び上がったユニコーンガンダムナイトメアパーティーに銃口を向けたキュリオスアーチャー。しかし、雷が正面から目を離したその一瞬。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーが乗っていたファトゥム-01がスラスターを全開にしたままキュリオスアーチャーに突貫した。

「雷、前っ!」

「え―――きゃあ!」

隙を突かれた雷は回避行動が間に合わず、ファトゥム-01が機体に直撃。バランスを大きく崩されてしまった。そしてこの瞬間を待っていた夕立は、上空から一気にキュリオスアーチャーに迫った。

「うりゃあぁぁぁー!!!」

そして大きく右脚を前へ突き出すと、重力と機体のスラスターの勢いを乗せた脚先はキュリオスアーチャーの腹部中央を捉えそのまま地上へと墜落していった。

「きゃあああー!!」

地上に再び砂煙が舞い上がる。それ目掛け、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは追撃を敢行。地上へと降りながら、両手のロングソードを納刀すると、バックパックのエクスカリバー対艦刀を抜き放った。

「これでえぇぇー!!」

「痛たたた……あっ!」

両のエクスカリバー対艦刀を最上段に構えたユニコーンガンダムナイトメアパーティーはそのまま地面に対艦刀を叩きつけた。地面に亀裂が入り、砂煙が舞い上がる。しかしキュリオスアーチャーはバックステップで攻撃を回避し、咄嗟にGNビームサーベルを抜いた。そしてその舞い上がった砂煙を払い除け、柄同士を連結させたエクスカリバー対艦刀を斬り払いそれを頭上で回転させて体の正面に構えたナイトメアモードを発動したユニコーンガンダムナイトメアパーティーが、そこには立っていた。

「ナイトメアパーティーの本当の悪夢、見せてあげるッ!!」

「クッ!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは連結させたエクスカリバー対艦刀を大きく掲げながら、キュリオスアーチャーに斬りかかった。

 

そしてユニコーンガンダムナイトメアパーティーとキュリオスアーチャーが戦っている上空では、イナヅマガンダムⅡとアカツキ・ハイペリオンマスターの戦闘が未だ続いていた。アカツキ・ハイペリオンマスターのALユニットの攻撃を回避しながらビームサーベルで接近戦を仕掛けるイナヅマガンダムⅡ。その攻撃を試製双刀型ビームサーベルで受けるアカツキ・ハイペリオンマスター。ビームの火花が激しく散る。

「流石暁の妹…でも、暁も負けないわ!」

「それは電も同じなのです!」

「これでどう!」

アカツキ・ハイペリオンマスターは試製双刀型ビームサーベルを大きく振り払いイナヅマガンダムⅡのビームサーベルを弾くと、勢いよく蹴り飛ばした。イナヅマガンダムⅡは後方に飛ばされてしまった。

「わっ!」

そしてアカツキ・ハイペリオンマスターは周囲にALユニットを集め―――

「一斉射!」

ALユニットのビーム砲を一斉射した。計12発のビームがイナヅマガンダムⅡに襲い掛かった。

「防いでみせるのです!」

電は飛ばされながら機動防盾を縮小、そのビームを受け止めようとした。縮小した機動防盾に12発のビームが直撃、防御の反動を受けたイナヅマガンダムⅡは弾き飛ばされ、地上へ墜ちていった。

「はにゃぁー!」

そして12発ものビームを受け止めた機動防盾はその威力に完全に耐えきることが出来ず、武装スロットに盾マークで表示された機動防盾にアラートの表示が出る。そのことに気づいた電は、すぐさま機動防盾を破棄した。イナヅマガンダムⅡが落下しながら投げ捨てた機動防盾はしばらく飛んだ所で爆散した。

「逃がさないわ電!」

「暁ちゃん!?」

そして落下していくイナヅマガンダムⅡにアカツキ・ハイペリオンマスターが再び迫った。ヒャクライ・スティグマトを連射し、接近してくるアカツキ・ハイペリオンマスター。電はギリッと歯を食いしばると、武装スロットからファトゥム-01を選択した。

「ファトゥム-01!」

すると、先程までユニコーンガンダムナイトメアパーティーを乗せていたファトゥム-01がアカツキ・ハイペリオンマスターの上空から飛来した。

「上から!?」

暁の耳に接近警報が届いた時には既に遅かった。ファトゥム-01は勢いのままアカツキ・ハイペリオンマスターに直撃、アカツキ・ハイペリオンマスターは大きく体勢を崩してしまった。

「きゃっ!」

その隙を突いてイナヅマガンダムⅡは態勢を整えた。電は休むことなくファトゥム-01をソード形態へと変形させた。そしてそれを開いてしまっていた左手で保持し、ビームライフルを腰裏にマウントすると両手で構え、体勢を崩してしまっているアカツキ・ハイペリオンマスターに斬りかかった。

「これでぇー!」

「っ!まだ態勢が―――クッ…アカツキ・リュミエール!」

態勢を整え切れていなかった暁は咄嗟にアカツキ・リュミエールを機体前方のみに展開、防御態勢を取った。しかしイナヅマガンダムⅡはそのままファトゥム-01ソードをビームバリア目掛け振り下ろした。バチィィッ!とバリア表面に直撃したファトゥム-01ソード。バリアの電撃が散る中、アカツキ・ハイペリオンマスターは態勢を立て直しヒャクライ・スティグマトをイナヅマガンダムⅡに向けた。

「惜しかったわ電!でも、暁の勝ちよ!」

「そんなことはないのです!まだ勝負はついていないのです!」

電がそう叫んだ時だった。

「なっ!ビームバリアが!どうしてっ!?」

ファトゥム-01ソードの刀身が、徐々にビームバリアを斬り裂いていた。

「ハイペリオンガンダムと同じなのです!」

「っ!?」

「そのバリアは、対ビームコーティングが施された実体武器を防げないのです!(暁ちゃんたちと戦う時の為に対ビームコーティング塗料を塗っておいて正解だったのです)」

「アカツキ・リュミエールが…突破される!?」

そして次の瞬間、アカツキ・リュミエールをファトゥム-01ソードが斬り裂き、咄嗟にバックしたアカツキ・ハイペリオンマスターのヒャクライ・スティグマトを斬り裂いた。

「まだなのです!」

電はその勢いのままファトゥム-01ソードを薙ぎ払った。薙ぎ払われたファトゥム-01ソードが2基のALユニットを斬り裂いた。更に反転してマシンキャノンで追撃を加え、残っていたもう2基のALユニットまでも、電は破壊に成功した。

「ALユニットが!」

残っていたALユニットを破壊された暁は思わず動揺してしまった。しかし、暁はすぐに冷静を取り戻しすぐさま試製双刀型ビームサーベルで反撃に出た。

「まだ終わってないわ!やあっ!」

「あっ!」

反転したままのイナヅマガンダムⅡにアカツキ・ハイペリオンマスターが斬りかかった。右上段からの袈裟斬りはイナヅマガンダムⅡのバックパックを両断した。背面との接続部はギリギリ逸れたが、バックパックは両断されたと同時に爆発し、イナヅマガンダムⅡは単独飛行能力を失って真っ逆さまに墜落していった。

「うわぁぁぁー!!」

「逃がさない!」

そして墜落していくイナヅマガンダムⅡを、アカツキ・ハイペリオンマスターは追いかけていった。

「姿勢制御しないと!」

電は慌ててイナヅマガンダムⅡの姿勢を整えた。しかし、自由落下は止めることは出来なかった。イナヅマガンダムⅡはそのまま地上目掛けて落ちていき、地上近くで脚部全てのスラスターを噴かし何とか着地に成功した。すると電の背後に接近警報が鳴り響いた。

「暁ちゃん!?」

「はあぁぁー!!」

イナヅマガンダムⅡは振り向きながらビームライフルを抜いたが、上段から振り下ろされた試製双刀型ビームサーベルの刃は、ビームライフルを斬り裂いた。斬られたのと同時に爆発するビームライフルを投げ捨て、ファトゥム-01ソードを構えたイナヅマガンダムⅡ。対峙するアカツキ・ハイペリオンマスターもまた試製双刀型ビームサーベルを構える。

(………ファトゥム-01ソードじゃ、手数で負けてしまいそうなのです…なら!)

電は武装スロットを操作し、ファトゥム-01ソードを解除するとビームサーベルを選択した。ファトゥム-01ソードを地面に突き立て、左腰のビームサーベルを抜き放つイナヅマガンダムⅡ。

「………」

「………」

睨み合うイナヅマガンダムⅡとアカツキ・ハイペリオンマスター。電と暁。そして、桜吹雪が2機の前を通り過ぎ――――

 

 

 

決着をつけるッッ!!!

 

 

 

2人の言葉と共に、イナヅマガンダムⅡとアカツキ・ハイペリオンマスターのメインカメラが鮮やかに発光、そして2機は地面を蹴った。

 

続く



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EP84 想いを貫く

「はあぁー!!」

大きく前へ右脚を踏み込み、右手に握ったビームサーベルを横一直線に振り抜く時雨のアサルトレインバレット。それをかがんで回避する響のヴェールフェニックス。

「これでっ!」

攻撃を回避しヴェールフェニックスが、かがんだ状態からアサルトレインバレットの頭部を狙ってビームサーベルを突き出す。

「くぅっ!」

頭部を少し傾けビームサーベルを回避するアサルトレインバレット、そのまま急いで後退しビームサーベルを上段に構えて再び斬りかかる。

「あああっ!」

「このぉー!」

ヴェールフェニックスもビームサーベルを上段から振り下ろし、ビームサーベルがぶつかり合う。

「くっそぉ!」「くううっ!」

バチィッ!という音をたて、互いに距離を取った2機。地面に着地したのと同時にバイポットシールドを正面に向けたアサルトレインバレット。それと同時にミサイルランチャーの引き金を引く。

「当たれ!」

発射されたミサイルがヴェールフェニックスに迫るが、響は落ち着いてシールドバルカンでこれを迎撃。シールドバルカンを浴びたミサイルはたちまち爆発し、黒煙となった。しかし―――

「うおおぉー!!」

「っ!」

黒煙を裂いて、アサルトレインバレットがヴェールフェニックスに突っ込んできた。頭部バルカンと、マシンキャノンを連射しながら迫るアサルトレインバレットに驚き反応が遅れた響は咄嗟にシールドを構えた。バルカンとマシンキャノンの銃弾がシールドに吸い込まれるように次々命中し、そして次の瞬間―――

「ぐうぅっ!」

ヴェールフェニックスはアサルトレインバレットのタックルをもろにくらってしまった。ふっ飛ばされ、尻もちをついてしまうヴェールフェニックス。そして響の目にはスラスターを噴かして追撃してくるアサルトレインバレットが映った。

「まだまだぁー!」

「………ヴェールフェニックスは―――」

だが響は、その状態から各部のスラスターを全開で噴かしヴェールフェニックスを無理矢理前進させた。

「沈みはしないっ!!ウラァァァー!!!」

「あっ!!」

突然の響の行動に驚いてしまった時雨は完全に反応が遅れてしまった。無理矢理突っ込んできたヴェールフェニックスの突進を真正面からくらってしまったアサルトレインバレットは大きくノックバックし、そのままバランスを崩して背中から倒れてしまった。

「ううぅ…くそぉ…」

何とか起き上がろうとするアサルトレインバレット。しかしそこに、ヴェールフェニックスがゆっくりと歩きながら迫って来ていた。

「はぁ…はぁ…これで…勝負を決めさせてもらうよ!時雨!」

ヴェールフェニックスが大きくビームサーベルを掲げる。

「諦めるわけには…」

ヴェールフェニックスがビームサーベルを振り下ろしたその時、時雨の左手が操縦桿を強く握りしめた。

 

いかないんだぁー!!

 

時雨は左手の操縦桿をめいいっぱい前へ突き出した。アサルトレインバレットがその動きに合わせて左腕を前へと突き出す。

「なにっ!?」

振り下ろされたビームサーベルの刀身がアサルトレインバレットの左腕を捉え、左腕は手元から肘までを2つに斬り裂かれてしまった。しかし、時雨はすぐに行動を起こす。

「はあああー!!」

右手が握った操縦桿も、時雨は前へ突き出した。アサルトレインバレットのビームサーベルが握られた右腕が前へと突き出され、そしてそのままヴェールフェニックスの左肩を捉えた。まだ時雨とアサルトレインバレットは止まらない。

「うおおぉぉー!」

アサルトレインバレットの右脚が、ヴェールフェニックスの胴体中央を蹴ったのだ。

「ぐあっ!」

ヴェールフェニックスは両脚で地面を削りながらノックバックされた。そして態勢を整えた響は先程ビームサーベルを刺された左腕の状況を確認した。

(駄目だ…左肩の駆動パーツをやられてる……もう左腕は使えない、か…でも―――)

そして時雨もまた時を同じくして左腕の肘から先を確認していた。

(流石に無茶だったみたいだ…左腕はもう使えない……でも―――)

ヴェールフェニックスの左腕はだらりと垂れ下がり、アサルトレインバレットも左肘から先はもはや原形を留めない程に変形してしまっていた。だが、2人は止まらなかった。

 

 

たかが左腕が動かなくなっただけだっ!!

 

 

ヴェールフェニックスとアサルトレインバレットが再び地面を蹴った。

 

 

「うーりゃぁー!!」

連結させたエクスカリバー対艦刀を振り上げ、キュリオスアーチャーに斬りかかるユニコーンガンダムナイトメアパーティー。キュリオスアーチャーは身を反らしエクスカリバー対艦刀の初撃を回避したが、折り返され振り払われた二撃目は回避できずシールドで受け止めた。

「くうっ!」

エクスカリバー対艦刀の威力は凄まじく、後方へ大きく弾かれたキュリオスアーチャー。GNビームサーベルを握る右腕を前へ向け、腕部のGNバルカンでユニコーンガンダムナイトメアパーティーを牽制するキュリオスアーチャー。しかし、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは素早い反応で右へと動きGNバルカンを回避、ビームキャノンをキュリオスアーチャーに向ける。

「命中させるっぽい!」

「そうはいかないわ!」

放たれたビームを、スラスターで緊急回避するキュリオスアーチャー。ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはしつこくキュリオスアーチャーに向けて何度もビームキャノンを連射し、キュリオスアーチャーが地面に着地したその一瞬も逃さずビームキャノンを撃つ。だが、キュリオスアーチャーは大きくその場から飛び退き攻撃を回避した。

「危なかったぁ…さあ今度はこっちの番よ!」

キュリオスアーチャーは飛び退いた勢いのまま急旋回、大きく弧を描いた軌道でビームキャノンを躱しながらユニコーンガンダムナイトメアパーティーに迫った。GNビームサーベルを右上段に構えて斬りかかるキュリオスアーチャー。

「とりゃー!」

「ほぼ零距離…それならっ!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは連結させていたエクスカリバー対艦刀を分離、右脚で地面に強く踏みしめると、右手のエクスカリバー対艦刀を振り下ろした。GNビームサーベルとエクスカリバー対艦刀のビーム刃の部分がぶつかり激しく火花とスパークを散らす。

「まだ終わらないよ!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは鍔迫り合いの中、左手のエクスカリバー対艦刀を振り上げた。

「っ!」

それに気づいた雷は、鍔迫り合いを止めキュリオスアーチャーを大きくバックステップさせた。

「当てる!」

バックステップの状態でキュリオスアーチャーはGNビームキャノンを放った。

「防いでみせるっぽい!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーはすかさず大型ビームサーベルを展開、刀身を下から上へ振り上げ、キュリオスアーチャーのGNビームキャノンを斬って防いでみせた。

「へヘン!そう簡単には―――」

「もう一射!」

「ぽい!?」

キュリオスアーチャーは再度GNビームキャノンを発射した。一射目を防いで浮かれてしまっていた夕立は反応が遅れ、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーは棒立ちの状態となっていた。そして、GNビームキャノンはそんなユニコーンガンダムナイトメアパーティーの本体ではなく、肩とビームキャノンの接続部を撃ち抜いた。雷の正確な照準も相まって、ほぼ完璧に肩部との接続部分は破壊され、肩部ビームキャノンは地面に落ちてそのままバランスを取れず倒れた。

「くっそぉ…やられたっぽい~」

「まだまだこれからなんだからね!」

「それはこっちの台詞っぽい!ぽーい!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーがエクスカリバー対艦刀を振り払い、キュリオスアーチャーを追撃、スラスター全開で一気にキュリオスアーチャーとの距離を詰めようとするユニコーンガンダムナイトメアパーティーにキュリオスアーチャーはGNビームキャノンの出力を抑えた連射モードで応戦したが、夕立は巧みな操縦でこれを回避し続けた。

「電ちゃんみたいに細かくはいかないけど、避けるだけなら夕立にもできるっぽい!」

「流石、私の戦法を熟知しているだけはある!」

「もらったっぽい!」

「そんなものに!」

キュリオスアーチャーへ再び斬りかかるユニコーンガンダムナイトメアパーティー。両方のエクスカリバー対艦刀を左右の上段に構え、ジャンプしながら斜めに振り下ろした。キュリオスアーチャーはその場からジャンプしてユニコーンガンダムナイトメアパーティーと入れ違うように背後に回り込むと、180度回転しGNビームキャノンを放った。

「くっ!」

夕立は着地と同時にもう一度ユニコーンガンダムナイトメアパーティーをジャンプさせた。そしてジャンプしたのと同時に、その場にGNビームキャノンが命中し土煙が上がる。

「隙は見せないっぽい!いけぇー!」

ジャンプしたユニコーンガンダムナイトメアパーティーはその状態から右手を振り払ってエクスカリバー対艦刀をキュリオスアーチャーに投擲した。

「くぅっ!!」

咄嗟にGNシールドを構えたキュリオスアーチャーにエクスカリバー対艦刀が直撃、キュリオスアーチャーは大きく仰け反りながら弾き飛ばされてしまった。その隙に着地を果たしたユニコーンガンダムナイトメアパーティーは一歩踏み込んで、再びスラスター全開でキュリオスアーチャーに突撃した。

「うおぉー!」

「くっそぉ…」

地面を抉りながら着地し、何とか態勢を整えるキュリオスアーチャー。雷の目には、高速で迫ってくるユニコーンガンダムナイトメアパーティーの姿が映っていた。だが、その中で雷は視界端にユニコーンガンダムナイトメアパーティーの背後で、今まさに地面に刺さったエクスカリバー対艦刀を見つけた。

あの剣(エクスカリバー対艦刀)を壊すには、ビームサーベルじゃ……なら、一か八か!)

「うりゃあぁー!!」

左上段から袈裟斬りを放つユニコーンガンダムナイトメアパーティー。

「…今ッ!」

しかし雷は、刀身がギリギリ当たらない絶妙なタイミングで機体を右へスライドさせ、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの攻撃を回避した。

「ぽいっ!?」

流石の夕立もこんなタイミングで攻撃を回避されてしまい、驚いていた。

「お返しよ!」

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーの攻撃を回避したキュリオスアーチャーは、その場で右脚を上げるとユニコーンガンダムナイトメアパーティーの左脇腹を思い切り蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたユニコーンガンダムナイトメアパーティーは地面を抉りながら倒れてしまった。

「く、くっそぉ…油断したっぽい!」

そしてその蹴った勢いを利用し、キュリオスアーチャーはその場から離脱、大きく弧を描いた軌道で地面に刺さるエクスカリバー対艦刀を目指した。

「夕立のエクスカリバー、ちょっと貸してもらうからね!」

「ぽい!?」

雷の言葉に再度驚く夕立。そしてエクスカリバー対艦刀の元に辿り着いたキュリオスアーチャーは地面に刺さったエクスカリバー対艦刀を抜き、グリップを両手で握ると自分の正面で縦に斬り払いながら構え、それと同時にユニコーンガンダムナイトメアパーティーも起き上がりエクスカリバー対艦刀を左下段に構えて腰を落とした。睨み合うキュリオスアーチャーとユニコーンガンダムナイトメアパーティー。先に動いたのは雷だった。

「やああぁぁー!!」

エクスカリバー対艦刀を右下段に構え、ユニコーンガンダムナイトメアパーティーへ向かって突撃していく。そしてユニコーンガンダムナイトメアパーティーもまた、スラスターを噴かして斬り込んだ。

「ぽぉーいッ!!」

右下段から左斜め上へ斬り上げられるキュリオスアーチャーのエクスカリバー対艦刀と、左上段から斬り降ろされたユニコーンガンダムナイトメアパーティーのエクスカリバー対艦刀がぶつかり合い火花を散らす。

「ぐうぅっ!」

「むうぅぅっ!」

そのまま鍔迫り合いに持ち込んだ夕立と雷は、それぞれの操縦桿を力いっぱい前へと伸ばそうとその腕を震わせていた。そしてそれは2人のガンプラもそうだった。

 

 

ユニコーンガンダムナイトメアパーティーも―――

 

 

キュリオスアーチャーも―――

 

 

 

エクスカリバー対艦刀を握るその腕を震わせていた。そして―――

 

 

 

負けてたまるかぁぁぁー!!!!

 

 

 

夕立と雷が同時に叫んだ。それと同時に、2本のエクスカリバー対艦刀は折れてしまった。

 

 

バチィッ!バチィッ!と通り過ぎ際にぶつかり合うイナヅマガンダムⅡのビームサーベルと、アカツキ・ハイペリオンマスターの試製双刀型ビームサーベル。

「電ぁー!」

「暁ちゃーんッ!」

大きく弧を描く軌道で再びアカツキ・ハイペリオンマスターに突撃するイナヅマガンダムⅡ。それに応えるようにアカツキ・ハイペリオンマスターもまた、大きく弧を描く軌道で方向転換しイナヅマガンダムⅡに向かって突撃した。2機が振り降ろしたビームサーベルが再びぶつかり、火花を散らす。もはや中距離以上で戦える装備を殆ど失ったイナヅマガンダムⅡとアカツキ・ハイペリオンマスター。2機のガンプラが斬り合うことは必然だった。

「やあぁー!」

イナヅマガンダムⅡが右上段から振り下ろしたビームサーベルを左サイドステップで回避したアカツキ・ハイペリオンマスター。

「隙あり!」

アカツキ・ハイペリオンマスターが、試製双刀型ビームサーベルを突き出し、イナヅマガンダムⅡの頭部を狙った。イナヅマガンダムⅡもこの突き攻撃を右サイドステップで攻撃を回避し、アカツキ・ハイペリオンマスターに向け反撃。ビームサーベルを振り下ろした。しかし暁は、その場でアカツキ・ハイペリオンマスターのスラスターを緊急噴射させ前方へ緊急回避。地面を抉りながら着地し、背後を振り向いた。イナヅマガンダムⅡも、攻撃からの態勢を立て直し、ビームサーベルを構えてアカツキ・ハイペリオンマスターの様子を伺っていた。

「まさか、電がここまで強いなんて…思いもしなかったわ!」

「ALユニットを全部壊してもこの強さ…やっぱり、暁ちゃんは強いのです!」

「でも、そう簡単には勝たせてあげないからね!」

「電は絶対暁ちゃんに勝ってみせるのです!」

そう言ってアカツキ・ハイペリオンマスターをイナヅマガンダムⅡへ走らせる暁。そして電もまた、イナヅマガンダムⅡをアカツキ・ハイペリオンマスターへ走らせた。同時に振り下ろされた互いのビームサーベルがぶつかり合い、ビームの火花を散らす。

「はああっ!」

「あああっ!」

互いを弾き飛ばし、再び斬りかかる2機。イナヅマガンダムⅡの袈裟斬りと、アカツキ・ハイペリオンマスターの袈裟斬りがぶつかりまたも火花を散らせる。

「うおおぉー!」

するとイナヅマガンダムⅡが、アカツキ・ハイペリオンマスターの顔面を殴りつけた。

「きゃっ!…この程度ッ!」

弾き飛ばされながらもすぐに態勢を立て直しイナヅマガンダムⅡに攻撃を仕掛けるアカツキ・ハイペリオンマスター。試製双刀型ビームサーベルを右上段に構え接近するアカツキ・ハイペリオンマスターにイナヅマガンダムⅡは受けの姿勢をとった。振り下ろされる試製双刀型ビームサーベルを、ビームサーベルを掲げて防ぐイナヅマガンダムⅡ。しかし―――

「これはどう!」

鍔迫り合いの中、アカツキ・ハイペリオンマスターの右脚がビームサーベルを握るイナヅマガンダムⅡの右腕を蹴り上げた。

「わぁっ!」

右腕を蹴り上げられたイナヅマガンダムⅡは、その衝撃でビームサーベルを離してしまった。イナヅマガンダムⅡの手を離れたビームサーベルは刀身を失って宙を舞った。そして―――

「はあぁぁー!!」

刀身を受け止めていたイナヅマガンダムⅡのビームサーベルが失われたアカツキ・ハイペリオンマスターの試製双刀型ビームサーベルは、そのままイナヅマガンダムⅡの右腕を根元から斬り裂いた。

「しまっ―――」

「もう一発ッ!!」

そしてバランスを失ったイナヅマガンダムⅡの頭部を左の拳で追い打ちし、イナヅマガンダムⅡを弾き飛ばすアカツキ・ハイペリオンマスター。

「はにゃぁー!!」

弾き飛ばされたイナヅマガンダムⅡは地面を抉りながら倒れ、全身からは小さなスパークが発生していた。特に、腕そのものを失った右肩は一際激しいスパークを起こしていた。

「「電っ!」ちゃんっ!」

電の悲鳴に、時雨と夕立が思わず声をあげる。

「く…くっそぉ……まだ…まだ電はっ」

電は必死に操縦桿を動かし、よろめきながらも何とかイナヅマガンダムⅡを立たせた。しかし、先程受けたダメージは相当の物だったらしく立ち上がったイナヅマガンダムⅡはガクンとバランスを崩しかけた。そこへアカツキ・ハイペリオンマスターが試製双刀型ビームサーベルを構え、ゆっくりと歩いていた。

「流石ね電…電のその力、暁にもしっかり伝わった……」

「電は……」

1歩、また1歩と歩み寄ってくるアカツキ・ハイペリオンマスター。

「電は、暁たちと本当の姉妹じゃない……でも暁は、そんな事これっぽっちも思ってなんかないわ!」

「っ!!」

暁の言葉にピクリと肩を震わせた電。そして歩みを止めるアカツキ・ハイペリオンマスター。

「暁だけじゃない!響も!雷も!私たちみんなが、電を本当の姉妹だと思ってる!」

「………」「………」

互いの相手と睨み合う中、コクリと頷く響と雷。そして暁は涙を流し、言った。

 

 

 

だからっ!これからもずっと…ずっとずっと!暁たちと一緒にいてっ!!

 

 

 

「!!」

暁の言葉が電の心を貫いた。偽物の記憶で作り出された自分を求めてくれている。暁のその言葉に、電の目からは自然と涙が零れ落ちていた。とてもとても大きな、大粒の涙が、金色の目から溢れては零れ落ちていく。そして電は―――

 

 

 

ありがとう……なのですっ

 

 

 

全力の笑顔で暁たちの思い応えた。そして、イナヅマガンダムⅡは右腰からもう1本のビームサーベルを抜き放った。桃色のビームの刀身が小さく揺らめいた。

 

 

ラストアタック

 

 

暁は、次に放たれるイナヅマガンダムⅡの攻撃が「最後の一撃」だとハッキリと感じ取れた。そしてそれは、他の場所で戦っていた時雨と響、夕立と雷も同じだった。

 

 

 

これが―――

 

 

 

6人がそれぞれの相手をジッと凝視し、操縦桿を強く握りしめる。そして―――

 

純白に染まる不死鳥のガンダム(ガンダム・ヴェールフェニックス)が―――

 

雨音たてる銃弾を撃つガンダム(ガンダムアサルトレインバレット)が―――

 

正確を撃ち貫くガンダム(ガンダムキュリオスアーチャー)が―――

 

悪夢の宴を纏う一角獣のガンダム(ユニコーンガンダムナイトメアパーティ)が―――

 

暁へと昇り行くガンダム(アカツキ・ハイペリオンマスター)が―――

 

電を纏うガンダム(イナヅマガンダムⅡ)が―――

 

 

 

 

 

最後の一撃だぁぁぁー!!!!

 

 

 

 

 

大地を強く蹴って飛び出し――――

 

 

 

 

 

6人の世界は眩い光に包まれた

 

 

 

 

 

続く



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EP85 決着

閃光が晴れたその先には、6人のガンプラがそれぞれの対戦相手を支え合うように桜並木の中にいた。

 

時雨のアサルトレインバレットと、響のヴェールフェニックスはそれぞれのビームサーベルで相手の首元から胴体中央まで斬り裂き、そこで相打ちとなっていた。

 

夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーはキュリオスアーチャーの胴体部を斜めに斬り裂いていたが、雷のキュリオスアーチャーはユニコーンガンダムナイトメアパーティーのコックピットをビームサーベルで貫き、2機もまた相打ちとなって倒れていた。

 

そして―――

 

暁のアカツキ・ハイペリオンマスターの試製双刀型ビームサーベルは、イナヅマガンダムⅡのコックピットを貫いていた。しかし、電のイナヅマガンダムⅡが放ったビームサーベルは―――

 

 

 

アカツキ・ハイペリオンマスターの右肘を斬り落としているだけだった

 

 

 

イナヅマガンダムⅡのメインカメラが光をゆっくりと失い、右肘から先を失ったアカツキ・ハイペリオンマスターへと力を失ったように倒れていった。倒れてくるイナヅマガンダムⅡを受け止め、支えるアカツキ・ハイペリオンマスター。イナヅマガンダムⅡは、機能を停止した。

 

 

Battle Ended!

 

 

バトルシステムがバトルの終了を告げた。プラフスキー粒子が消え、バトル台の上には互いの想いをぶつけ合い、戦った6機のガンプラが立っていた。

「ああぁぁぁー!すっっごい悔しいっぽぉぉーい!!」

夕立が、うわぁー!と両手をめいいっぱい上へ上げて悔しがった声をあげる。

「僕もすっごく悔しいなぁ~………でも、とっても良いバトルだった!」

「うん!夕立、負けたのは悔しいけど…でも、後味の良い負け方っぽい!ねっ、電ちゃん!」

電は、夕立の言葉にゆっくりと顔を上げて言った。

 

 

なのです!

 

 

その表情はとても明るい笑顔だった。

「電ぁあぁああぁあ~!」

「へ?はにゃっ!!」

そしてそこに、大泣きした暁が飛びついてきた。電は、いきなり飛びついてきた暁に驚いた表情を作ることしか出来なかった。

「ごめんね!ごめんね電ぁ!」

「あ、暁ちゃん!?」

「姉妹が辛いどきは、びんなでざざえるってやぐぞぐしたのにぃ!暁は……あがづぎはぁ……うわぁぁぁああん!!」

「暁ちゃん……」

「私からも謝るよ。電」

「響ちゃん?」

そこにゆっくりと歩いてきた響が電に頭を下げて謝った。

「今思えば、電に辛い思いをさせたのは私だ。だから、ごめんなさい。電」

「ひ、響ちゃん!謝らないのでほしいのです!」

「私も謝らせて電!本当にごめんなさい!」

「そ、そんな雷ちゃんまで!電は…電だって―――」

電が、ごめんなさい。と言おうとした時、再び暁が泣きついてその言葉を抑え込んだ。

「うえぇぇーん!!ごめんなさい!ごめんなさい電ぁ!ごべんなざいぃー!」

そこへバトルを観戦していた深海がゆっくりと歩いてきて言った。

「とてもいい勝負だったな、お前たち」

「深海提督さん!?」

「暁たちの想い。お前にしっかり伝わったみたいだな……そうだな、電?」

深海の言葉に、ハッとした電。それを見た深海は、小さく頷いた。

「暁ちゃん…響ちゃん…雷ちゃん」

「「「!?」」」

電は話し始めた。

「電は、暁ちゃんたちとは姉妹じゃない……これは、変えられない事実……」

「………」

「でも、暁ちゃんたちは…電の事、本当の姉妹だって言ってくれたのです!だから……」

そして電は、涙を流しながら笑顔で言った。

 

 

 

電も!ずっと…ずっとずっとずっと!暁ちゃんたちと一緒に居たいのです!

 

 

 

それは電の、心の底からの言葉だった。

「いなづまぁぁ~!」

それを聞いた暁はまた泣きながら電を抱きしめた。

「「電っ!!」」

そして、響と雷も電に駆け寄って抱き締め、電も3人をギュッと抱きしめ返した。

「電ちゃん…良かったね……」

「…うんっ」

それを見た夕立と時雨は、思わず嬉し泣きをしてしまっていた。

こいつら(電たち)の様に、心に強さを持つ奴らは…やはり強い(・・)な)

深海は心の底でそんな言葉を呟き、そして電に言った。

「もう…無くすなよ……」

 

 

 

なのですっ!!

 

 

 

電は、元気よく答えたのだった。

 



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EP86 心の傷

同時刻。深海の部屋である旧執務室で空母水鬼はこれまでにない退屈な時間を過ごしていた。大好きな息子である深海はいないし、戦時中の逃亡生活時の様な緊迫感もない。ましてや、自身の夫がいるわけでもない。空母水鬼は退屈でしかなかった。

「ああー!退屈で退屈で仕方ない!こうなったら、深海の鎮守府の探検に出かけてこの退屈を解消するんだから!」

そう言って空母水鬼は子どもの様に部屋を出て行った。

 

「へー!ここが旧艦娘寮かー!」

空母水鬼は旧艦娘寮へ足を踏み入れていた。もっとも、今この寮に寝泊まりしている者はほとんど体育館へ出向いている為、廊下はとても静かだった。

「あの人と一緒に住んでた鎮守府の艦娘寮とよく似てるなー!………ん?」

廊下を歩いていた空母水鬼が廊下の先に開ききった扉と涼風の姿を目撃した。

「早く行こうよ山風の姉貴~いつまでも、ここに居ても仕方ないと思うけど…」

「嫌だよ!どうせ行ってもアタシ、誰にも勝てないもん!負けるのは嫌っ!そしたらみんなきっと―――」

「こんにちはー!」

空気を読めない空母水鬼はニッコリとした笑顔を見せ2人に話しかけた。

「うわっ!!く、空母水鬼じゃねぇか!」

「ヒッ!」

「あ!ごめんなさい!驚かせちゃったよね」

空母水鬼は慌てて山風と涼風に謝った。だが、目の前に突然現れた空母水鬼におびえて山風は余計部屋の奥へ引っ込んでしまった。涼風は、あちゃー。と頭を抱えたがしかし、空母水鬼はゆっくりと歩いて部屋の中へと足を踏み入れてしまった。涼風が慌てて制止しようとしたが、既に空母水鬼は部屋に入って山風の元へ歩いていってしまっていた。

「こ、来ないでよ!」

山風は脅えながら手をブンブンと振って、空母水鬼を拒絶しようとしたが相変わらず空母水鬼は気にする素振りを見せず山風に質問をした。

「ねぇねぇ!あなたって、ガンプラバトル?してるの?」

「…え?」

突然突拍子のない事をハイテンションで聞かれた山風は驚くあまり空母水鬼の顔をガン見してしまった。空母水鬼は笑顔のまま話を続ける。

「何か深海がね、今凄くハマってる遊びみたいなんだけど…教えてくれないの!」

「え?深海…?」

「だから退屈で仕方なくって鎮守府を探検してたら、あなたたちを見つけたって訳!」

「えっと…あ、えっと…」

「もしそのガンプラバトル?しているなら私に教えてくれないかな?」

「あ、あぁあっ……」

一方的に話を進められた山風の頭は混乱しかかっていた。気が付けば山風の目には涙が浮かび上がっていた。それに気づいた空母水鬼はまたしても突拍子な行動を取った。

「あっごめんごめん!いきなりペラペラ喋って怖がらされちゃったよね!ほら、泣かないで泣かないで!」

空母水鬼は泣き顔の山風の頭を優しく撫でると、続けてギュッと抱きしめた。山風は空母水鬼の抱き締めに目をパチクリさせ動揺してしまっていた。

「ごめんね…本当にごめんね。私、昔からどうにも空気読めなくって…お願いだから泣かないで…」

「…あぁぁ…あうう……」

空母水鬼はそれから山風が涙を流さなくなるまで優しく頭を撫でながら抱き締めていた。それからしばらくして山風は落ち着きを取り戻した

(や、山風の姉貴が…泣き止んだ!)

「良かった…泣き止んでくれて私嬉しいよ!」

「……うん。あなた…優しいんだね」

「悪いのは私だもん…あ!自己紹介忘れてたね!私は空母水鬼!気軽に水鬼って呼んでほしいな!」

「あ、え、えっと…アタシ、山風…よろ、よろしく……す、水鬼」

「うん!よろしくね山風ちゃん!」

空母水鬼は山風に向かって笑顔で応えた。すると空母水鬼は、あ!と何かを思い出した。

「そうそう!さっきの続きなんだけど、山風ちゃんはガンプラバトルしてるの?」

「う、うん……」

「そーなんだ!じゃあ、私にやり方教えてほしいな!」

「っ!」

空母水鬼の言葉に山風が肩をビクつかせた。それに気づいているのか気づいていないのか、空母水鬼は山風に言った。

「深海ばっかり楽しそうなことしてて、ちょっとずるいって思うんだよね私!」

「……楽しそうなこと?」

「うん!山風ちゃんはそう思わない?」

「………アタシは―――」

「そうだよ山風の姉貴!ガンプラバトルは楽しそうじゃん!あたい、久しぶりに山風の姉貴のガンプラバトル見たいな!」

そして、空母水鬼の言葉に便乗して涼風が話を盛り上げる。山風はキラキラとした目で自分を見つめる空母水鬼から目を逸らすと小さく呟いた。

「でもあなたも、アタシの操縦見たらきっと…「いらない」って言うでしょ」

「なんでぇ?」

空母水鬼の子どもの様な無邪気な言葉を聞いた山風は逆に驚いて、え?と思わず聞き返してしまった。すると空母水鬼は答えた。

「だって私、ガンプラ?がどんなものなのか、それ自体知らないんだもん!だから山風ちゃんの操縦が上手いのか下手なのかわかんないし!それに―――」

山風が2回目の、え?を言った時空母水鬼は言った。

「頑張ってる人を見てそんなことをいう人がいるなら、私がコテンパンにしてあげるからさ!こう見えて、体術には少し自信があるんだよ、私」

「そ、そうなの?」

「うん、約束する!だから、山風ちゃん!私にガンプラバトル、教えてくれないかな!」

「っ!」

その時山風は気づいた。今まで(・・・)自分を必要としてくれていなかった人たちと違って、目の前にいる空母水鬼は()自分を必要としてくれている。のだと。

 

そしてその時、山風の心の中で何かが動きだした音がした

 

「わかった、よ……じゃあ、ちょっとだけ…だから、ね?」

「ホント!ありがとう山風ちゃん!じゃあ、早く行こう!」

「わっ!」

そう言って空母水鬼は山風の手を握りしめると、部屋を飛び出し体育館へと向かった。その光景を涼風は嬉しそうに眺めていた。

 

そして体育館へと到着した山風と空母水鬼は早速散策を始めた。と言っても、山風は完全に空母水鬼に弄ばれている感じとなっていた。そして空母水鬼は、ガンプラショップのエリアでガンプラの箱を発見した。

「ねえねえ、山風ちゃん!この箱がガンプラって言うのっ?」

「ちょっと、違う…この箱の中にあるパーツを組み上げて出来上がったのが、ガンプラ」

「へぇー!じゃあガンプラ持ってない私は1から作らないといけないんだね!」

「時間、掛かっちゃうと思う……」

「そ、そっか……うーん、何かいい案ないかな………ん?あ、深海っ!」

すると空母水鬼は、遠くで電たちと話していた深海を見つけた。深海は、空母水鬼の声に反応して後ろを振り向いた。すると空母水鬼は、右手を大きく掲げてブンブンと振った。深海は心の中で小さく溜息を吐くと、ゆっくり空母水鬼の方へと歩いていった。

「母さん…こんな所で何してるんだよ?」

「深海が私にガンプラバトル教えてくれないから来たの!今から山風ちゃんにガンプラバトル教えてもらうんだよ。深海教えてくれないし…」

「悪かったな……というか、母さんガンプラ持ってないのにどうするんだよ?」

「だ・か・ら、深海のガンプラ貸して!」

深海は空母水鬼の子供っぷりに呆れながら、そんな事だろうと思ったよ。と呟くしかなかった。

「けど、俺のガンプラはかなりピーキーだ。少しだけ時間をくれ、母さんが動かせるように少しいじってくるから……」

「わかったよ深海!じゃあ、急いでやってきて!」

「借り物だって自覚ぐらいしてくれよ……」

そう言って深海は製作ブースの方へと歩いていった。

 

それから20分くらいたって深海はブースから戻ってきた。深海の姿を見つけた空母水鬼は、山風を連れて深海に駆け寄った。

「もう!深海遅すぎだよ!」

「そんなこと言うなら貸さないぞ?」

「ごめんってば!それで、どんなのが出来たのっ!」

やれやれ、と深海は腰裏のポシェットからバックパックのウイングと腰のビーム砲が取り外されたヴァリアブルライフルも1丁のみ装備したシンプルな形状となったガンダムアウェリアスを取り出した。

「わあぁ~!なんかとってもシンプルだね!」

「武装が多すぎても初めてやる母さんじゃ重りになるからな…前は空母だったとは言え、艤装は10年以上使ってないんだろ?」

「さっすが深海!お母さんのことわかってるね!後でいい子いい子してあげる!」

「やめろ、恥ずかしい」

「水鬼って、深海提督のお母さんなの?」

「うん!さっき言わなかったけど、そうなんだ!」

「へぇー」

山風は少しだけ興味を示したが、それだけに留まった。

「そうだ深海!このガンプラの名前って何なの!何かあるんでしょ?」

「あ~そうだな……シンプルにしたガンダムアウェリアスだから………ガンダムアリアス……か?」

「おおー!なんかカッコよさそうな名前!これ、私が貰っても―――」

「ぶん殴るぞ?」

「ごめんなさい」

「深海提督と水鬼……楽しそう…だね」

「勿論だよ!何十年ぶりの再会だもん!ね、深海!」

「……まあ、な…そんなことより、ガンプラバトルするんだろ母さん?ついて来いよ」

「うん!了解了解!ほら行こっ山風ちゃん!」

「う、うん…」

そして深海に連れられて、空母水鬼と山風はCPU戦の台へ案内された。残念ながら、涼風はバトル開始までに間に合わず、空母水鬼と山風の2人での出撃となった。

「ミッションの設定はこっちでしておいた。まあ、楽しんできなよ母さん」

「ありがとね深海!」

「起動するぞ」

深海がシステムを起動し、音声が流れる。

「Gun-pla Battle mission mode Stand up!Mode damage level set to B.」

「わっ!ビックリしたぁ…」

「Please set your GP base」

「えっと…このGPベース?をここにセットして……」

空母水鬼は深海から渡されたGPベースをセットした。

「Begining Plavsky particle dispersal.Field 02 Canyon」

「わぁ~!凄い…綺麗な光…」

台から大量のプラフスキー粒子が舞い上がり、渓谷のフィールドを形成した。そして空母水鬼はそのプラフスキー粒子の光に思わず魅入られてしまっていた。今までの人生の中で、これほどまでに綺麗な物は見たことがなかったから、余計だった。

「Please set yuar Gun-pla」

そして、山風と空母水鬼はそれぞれのガンプラをセットした。システムがガンプラを読み取り、それぞれのメインカメラが発光し操縦桿が出現する。

「えっと、これがガンプラを動かす為の……何だろ?玉?…まっ、いっか!」

「Battel start!」

空母水鬼のガンプラと、山風のガンプラがそれぞれ発進体制に入った。

「ガンダムアリアス、はっしーん!」

(全く…子どもじゃないんだから、少しは自覚してくれよ)

そして山風はグッと操縦桿を握った。

「山風。ホロルドロッソ・イージスガンダム、行くよ」

山風のガンプラ、鋭利な肩アーマーと両前腕と両爪先に長い爪を持つ4本のアンテナと頭頂部の大きく上へ伸びたセンサーが特徴の深紅のイージスガンダム「ホロルドロッソ・イージスガンダム」は荒野へ飛び立った。

 

続く



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EP87 山風と空母水鬼

発進した空母水鬼のガンダムアリアスと山風のホロルドロッソ・イージス。モビルスーツ形態でも大気圏内飛行の出来るホロルドロッソ・イージスはバックパックに3本存在する大型のスタビライザーユニットと両腰のバインダーからスラスターを噴かしそのまま空中を駆けていった。

「わー!艦載機みたいに空を飛んでる!凄い凄い!よーし、なら私も―――」

そしてそれを見た空母水鬼は、自分も追いかけようとガンダムアリアスのスラスターを噴かした。しかし―――

「母さん!アリアスは空を飛べないんだ!」

「え?わぁぁー!!」

深海の忠告が空母水鬼の耳に届く頃にはガンダムアリアスは地上目掛けて真っ逆さまに落ちていってしまっていた。空母水鬼は必死に操縦桿をガチャガチャ動かすが、ガンダムアリアスは両腕と両脚をパタパタと動かしただけで、姿勢制御は全くもって出来ていなかった。

「ああー!!止まらいよぉぉー!!!」

「あ―――」

目から溢れた涙が小さな滝を作った空母水鬼。そして、後方で起こっていることにようやく気づいた山風。山風はホロルドロッソ・イージスを急旋回させると、全速力でガンダムアリアスの元へ向かった。

「もうだめだぁ…このまま地面に激突しておしまいだぁ……」

一方空母水鬼は、目前に迫った地面を前に完全に戦意を喪失してしまっていた。しかし地面に直撃する瞬間、ガンダムアリアスの両肩がグイッ!と持ち上げられた。

「あ、あれ?地面に激突してない?」

突然の事に驚きを隠せない空母水鬼。すると、ガンダムアリアスはそっと地面に着地を果たし、空母水鬼はガンダムアリアスを振り返らせた。そこには山風のホロルドロッソ・イージスがいた。

「だ、だいじょう、ぶ?」

「や……」

 

 

やばがぜぢゃぁぁーん!!!!

 

 

大泣きしながら正面モニターに映った山風に思わず飛びつこうとした空母水鬼。しかし当然、そこに山風はいないので、空母水鬼の身体はそのまま正面モニターをすり抜けて本当の地面に顔面から激突したのであった。ガァァーン!!!という音が体育館中に鳴り響いて、その場にいた全員が一斉に同じ方を向いたのは必然的だった。

(………)

そんな空母水鬼の様を見て、深海はゴミを見るような目を向けていた。

 

それからしばらくして、ようやく復帰した空母水鬼と山風はミッションを再開した。空母水鬼のおでこには×印状に大きな絆創膏が貼られていた。

「よっし!!頑張って、みっしょん?達成するよー!」

そんなハイテンションな空母水鬼を見て、山風も困惑していた。地上をスラスターを噴かして進むガンダムアリアスを追って、ホロルドロッソ・イージスはその少し上空を追随していった。

「今回のミッション。コンピューター制御のガンプラを20機、倒す……あ、来た」

「よーし!いっくぞー!」

2機の正面から、ザクⅡやドム、ジムにリーオー、デスアーミー、ストライクダガーにウィンダム、ドートレスとジェノアス、フラッグにGN-Xなど、ガンダム作品に登場した多種多様な量産機が迫ってきた。空母水鬼はガンダムアリアスをそのど真ん中に突っ込ませていった。しかし、簡単に接近を許す程コンピューターも甘くはないので相手の量産機群は一斉に手持ちの射撃武器を発射してきた。

「わっ!凄い弾幕……こんな弾幕経験したことないよ!でも、避けられない訳じゃない!」

空母水鬼はガンダムアリアスを高速で横移動させ、攻撃を回避した。量産機たちは、そのままガンダムアリアスを標的にし追いかけるように射撃を繰り返していった。

「当たらないもんね!」

しかし、操縦のコツを掴んだのか空母水鬼の駆るガンダムアリアスは量産機の攻撃を優雅に回避してみせた。機体を左右に逸らしたり、急加速や急減速、ハイジャンプを繰り返したりと、先程までのポンコツぶりがまるで嘘のようなマニューバで攻撃を回避してみせた。

「今度はこっちの番!」

ガンダムアリアスが右手に握ったヴァリアブルライフルを構えた。短銃身のヴァリアブルライフルは連射が効くことを深海から聞いた空母水鬼は、照準を合わせ連続で引き金を引いた。

「いっけー!」

ヴァリアブルライフルから発射された5発の光弾が、グループから突出していたストライクダガー、ジェノアス、GN-X、ドム、デナン・ゾンの胴体を撃ち抜いた。

「山風ちゃん!」

「うん―――」

そして上空からは、ベース機であるイージスガンダムから引き継いだ強襲形態に変形したホロルドロッソ・イージスがスキュラを薙ぎ払うように発射し、後方にいたザクⅡ、ガフラン、デスアーミーの3機を撃墜した。

「このまま接近戦に―――」

山風は強襲形態からモビルスーツ形態に戻ると、両腕、両脚の爪から黄色のビームサーベルを展開し、頭部の4連装バルカンを連射しながら敵集団の中へ斬り込んだ。そして、敵機とすれ違った一瞬のうちに、シャッコー、ジム、グレイズ、ドートレスの4機を斬り裂き、そのまま再び上空へとホロルドロッソ・イージスは飛び去って行った。

「凄いよ山風ちゃん!よーし、私もやってみせるよ!」

空母水鬼も負けじと武装スロットからビームサーベルを選択した。ガンダムアリアスが左手で右腰のビームサーベルを抜き放ち、相手に近づこうとスラスターを噴かした。そして、先程のホロルドロッソ・イージスの攻撃に反応して背後を向いていたリーオーに斬りかかった。

「とりゃぁー!」

背後からの攻撃で頭から真っ二つにされ爆散するリーオー。それに気づいたハイザックと、グフイグナイテッドがヒートホークとテンペストビームソードを手にガンダムアリアスに斬りかかった。

「真っ向勝負、負けないよ!」

空母水鬼はヴァリアブルライフルを投げ捨てると空いた右手にもビームサーベルを握らせ、ガンダムアリアスをハイジャンプさせ上空から斬りかかってきたグフイグナイテッドに飛びかかった。先に攻撃をしたのはグフイグナイテッドでテンペストビームソードを右上段から斬り降ろしてきた。

「こっこだぁー!」

しかし空母水鬼はそこで先程まで噴かしていたスラスターを止め、その場で自由落下を始めた。グフイグナイテッドのテンペストビームソードは空を斬っただけで、ガンダムアリアスはそのまま体の向きを地上方向へ向けると、頭部バルカンとマシンキャノンをハイザックに向け発射した。咄嗟にシールドを構えたハイザックだったが、ガンダムアリアスとすれ違った瞬間―――

「とぉー!」

ハイザックはX字状に斬り裂かれていた。そしてガンダムアリアスは見事な着地を果たした。しかし、背後から先程のグフイグナイテッドが向かってきていた。

「これはどう!」

しかしガンダムアリアスはその場で背後に向き直りながら、右手のビームサーベルをグフイグナイテッドに投擲した。ビームサーベルは直進してきたグフイグナイテッドに突き刺さり、空母水鬼はそこへ頭部バルカンとマシンキャノンで追撃をかけグフイグナイテッドを撃墜した。

「よっし!」

空母水鬼がグッとガッツポーズをとったその時、上空に深紅の閃光が走った。

「山風ちゃん!」

山風のホロルドロッソ・イージスが高速で上空を駆けたのだ。立ちはだかったのはウィンダム、フラッグ、GN-XⅢ、カットシー、アンクシャの5機だったが、ホロルドロッソ・イージスはビームサーベルを展開して一気に距離を詰めていった。5機の量産機が一斉に射撃武器を発射したが、その全てを回避し零距離まで近づいたホロルドロッソ・イージスは―――

「あなたたちも…沈んでみる?」

左腕のビームサーベルでウィンダムの胴体を斬り裂き、そのまま機体を回転させカットシーを勢いのまま右脚を薙ぎ払って胴体を両断、更に回転を生かし背後にいたフラッグを右腕のビームサーベルで突き刺すと、右脚でフラッグを蹴り飛ばすとそのままバック転、右脚から出力されたビームサーベルでアンクシャを頭から真っ二つにした。そしてバック転の状態から強襲形態に変形し、GN-XⅢに組み付き―――

「これで終わり」

スキュラを零距離で発射、GN-XⅢを撃ち抜くとモビルスーツ形態に戻ったホロルドロッソ・イージスは、GN-XⅢの爆炎を眺めていた。

「Battle Ended! Mission Completes!」

20機の量産機を撃墜し、ミッション内容を完遂した空母水鬼と山風。プラフスキー粒子が消え、操縦スペースが消えると山風は、ふぅ。と小さく息を吐いた。すると―――

「山風ちゃぁーん!!」

「わあっ!」

空母水鬼が初ミッションクリアの嬉しさのあまり、山風に抱き着いた。

「すっごいよ山風ちゃん!早すぎてよくわからなかったけど、シュパッ!シュパパッ!って相手を倒したときなんか凄すぎだよ!あんな動きが出来るなんて、本当にすごいよ山風ちゃん!!」

「す、水鬼?」

「あんなに強いんだもん!誰も「いらない」なんていう訳ないよ!もぉー山風ちゃんは嘘つきなんだからー!」

「そ、そんな…お、大袈裟だよ…水鬼」

「大袈裟なんかじゃないよ!ホントに私、すっっっごく感動したんだから!」

「っ!!」

 

感動した

 

その言葉を聞いた時、山風の心臓が大きく音をたてた。「いらない」と言われた時に起こる激しくて長いものとは違う、大きくて力強く、そして胸の奥が熱くなるたった1回の心臓の鼓動だった。

「それじゃあ次のバトルに行こうよ!山風ちゃん、いいでしょ?」

空母水鬼が山風に向かって聞いた。すると山風は―――

 

 

うんっ

 

 

空母水鬼の顔を見てニコリと笑い、頷いた。

 

続く



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EP88 山風、覚醒

それからしばらく、空母水鬼と山風の2人はとても楽しそうにミッションモードをプレイしていた。ミッションをクリアするごとに腕を上げていく空母水鬼と、笑顔が増えていく山風。そして今回も―――

「Battle Ended! Mission Completes!」

「やったやった!今回も大勝利だよ山風ちゃん!」

「水鬼があそこで敵を引き付けてくれたおかげ…あ、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうね山風ちゃん!」

「うんっ」

笑顔で話し合う山風と空母水鬼を見て、時雨と夕立、そして遅れてきた涼風がとても驚いていた。

「凄いね…山風があそこまで笑顔なのは初めて見たっぽい」

「あれも空母水鬼さんの力なんだろうね…周囲を自然と明るくさせる……凄いよね」

「初めて会った時から、あたいも驚きの連続だよまったく!」

そして深海もまた、あそこまで楽しそうにしている空母水鬼を見て、小さく笑みを浮かべていた。

「楽しそうで何よりだよ…母さん」

そんな深海の元に山風の手を引いて空母水鬼が駆け寄ってきた。

「ねえねえ深海!次のミッション、ボスみたいな相手と戦ってみたい!」

「ボスみたいな相手?」

「うん!何かこう…とにかく強くて大きい奴!」

「な、なるほどな…ちょっと待ってろ」

深海はミッションリストに目を通していく、すると丁度よさげな機体を見つけた深海。

「これでどうだ母さん?」

「えーっと、さいこがんだむ……なんて読むの…この…英語?」

「サイコガンダムMk-Ⅱ……」

「……な、なんかおっかない顔してる…何かボスっぽくていいね!深海、この相手でお願い!」

「わかった…アリアスを少しいじってくるから貸してくれ」

「うん!ありがとっ深海!」

深海にガンダムアリアスを渡した空母水鬼。深海はそのまま製作ブースの方へ歩いていった。それを見送った空母水鬼は深海の背中を見て呟いた。

「本当、大きくなったね深海…お母さん、とっても嬉しいよ」

そして少しだけ俯いてしまった。それに気づいた山風が、どうしたの?と尋ねた。

「…ホントはね…あと娘が2人いるんだ……でもきっと、もう死んじゃってる……」

「ど、どうして?」

「私が深海と離ればなれになった後、夫といた鎮守府に隠してきた双子が見つかった。って海軍の連中が言ってたの聞いたんだ……深海棲艦との間に生まれた子供。深海がずっと殺されそうだったんだから…きっとあの子たちも……」

「す、水鬼…」

「あ、ごめんね山風ちゃん!いけないいけない…しっかりしないと私っ」

「無理したら、駄目だよ?」

「うんっ、ありがとうね」

 

それからしばらくして、深海が製作ブースから戻ってきた。

「待たせたな母さん。ほら」

そう言って深海は元の状態に戻したガンダムエグザアウェリアスを空母水鬼に渡した。

「何かさっきのアリアスより、翼が付いてカッコよくなったよ!」

「ガンダムアリアスを元の姿に戻したんだ。そいつは「ガンダムエグザアウェリアス・対MA仕様」元のエグザアウェリアスと違って、実弾武装を少し増やしてある。両腰のビーム砲をレールガンに変えて、両脚には12連装ミサイルを装備した。今回の相手は、ビームを無効にする防御帯を持っているからな」

「そうなんだね深海!わざわざ準備してくれてありがとう!」

「ああ………なぁ、母さん」

「ん、なに?」

「どうして作り笑顔なんだ?」

「っ………あはは…やっぱり私が教えただけあって、大した観察眼だよ。深海」

「何かあったのか?」

「まあ、ね……あとで話すから、今は気にしないでほしいな…ほらいこっ!山風ちゃん!」

そう言って空母水鬼はバトル台へ歩いていった。深海はそんな空母水鬼を少し心配そうな目で見送った。すると山風がポツリと言った。

「水鬼の事、何かあったら…」

「わかってるさ…」

「…うん」

そう言って山風は空母水鬼の後を追いかけていった。

 

雷雲が空を覆う荒野で、ガンダムエグザアウェリアス・対MA使用とホロルドロッソ・イージスが、サイコガンダムMk-Ⅱと激しい戦闘を繰り広げていた。サイコガンダムMk-Ⅱは全身のメガ粒子砲をばら撒きながら2機を寄せ付けない戦いぶりだった。

「くそぉ…懐に潜り込むすきがないよ!」

先程より機動力の上がった機体の動きに少し驚きながらも何とかサイコガンダムMk-Ⅱのメガ粒子砲を回避する空母水鬼。何重にも張り巡らされたビームの網を掻い潜りながら、ヴァリアブルライフルの引き金を引くが、Iフィールドを持つサイコガンダムMk-Ⅱにはその光弾は届かず、機体の表面で何度もかき消されてしまっていた。

「深海の言った通り、ビーム攻撃がかき消されちゃってる……どうしよう」

「関節なら……そこっ」

ホロルドロッソ・イージスが左肘関節を狙ってスキュラを放った。しかしそこにリフレクタービットが数基集まり、スキュラのビームを弾き返してしまった。跳ね返ってきたスキュラを回避し、ビームライフルで牽制射をかけながらメガ粒子砲を回避するホロルドロッソ・イージス。

「これじゃあ埒があかないよ!」

「っ……」

サイコガンダムMk-Ⅱがメガ粒子砲の発射を止める筈はなく、隙を見せない弾幕で2機は完全に有効打を打てずにいた。

「ならこれで……山風ちゃん、胴体中央に!合わせて!」

「わかった」

空母水鬼はアウェリアスウイングを6基のみ射出させると、ヴァリアブルライフルを長銃身化し連結、そこにアウェリアスウイングを合体させた。アウェリアスウイングを連結させたヴァリアブルライフルを両手で抱え、照準を胴体中央に定めた。

「いっけぇー!」

「いま!」

バーストモードで撃ち出されたヴァリアブルライフルと、ホロルドロッソ・イージスのスキュラのビームがサイコガンダムMk-Ⅱに向かって飛ぶ。メガ粒子砲の出力を越えるバーストモードのヴァリアブルライフルは、サイコガンダムMk-Ⅱが放っていたメガ粒子砲を弾き消しながら飛びその僅か後方からスキュラがそれを追いかけていく。そして胴体中央に、命中した2つのビームによってIフィールドが激しくスパークした。その衝撃を受けて、少しだけサイコガンダムMk-Ⅱの体勢を崩すことに成功した。

「崩せた!今なら!」

体勢が崩れたサイコガンダムMk-Ⅱにビームサーベルを抜き放ち突撃した。サイコガンダムMk-Ⅱのメガ粒子砲を回避しながら一気に接近していくガンダムエグザアウェリアス。

「もらった!」

そして、ビームサーベルを掲げ斬りかかろうとしたその時―――

「なっ!?」

サイコガンダムMk-Ⅱの左腕が射出された。不意を突かれた空母水鬼は完全に回避が遅れてしまった。そして射出された左腕が、エグザアウェリアスを捉えた。

「母さん!」

思わず深海が叫んだ。

「し、しまった!」

「水鬼―――あっ!」

拘束されたエグザアウェリアスに気づいた山風だったが、サイコガンダムMk-Ⅱが再びメガ粒子砲をばら撒き始めた。目標が1機に絞られたことで、より熾烈さを増したメガ粒子砲の弾幕に、山風は回避するので精一杯だった。

(さっきより弾幕が濃くなってる!水鬼!)

「くうう!動いて!動いてよ!」

必死に操縦桿を動かし脱出を測ろうとする空母水鬼だが、サイコガンダムMk-Ⅱの手はビクともしなかった。それどころかその手は、エグザアウェリアスを握りつぶそうと段々と握りしめられていった。鈍い音をたてて潰されていくエグザアウェリアス。全身にヒビが入り、バキバキとあちこちのパーツが欠けていく。

「水鬼!」

メガ粒子砲を回避しながら何とかエグザアウェリアスの元へ向かおうとする山風。しかし、サイコガンダムMk-Ⅱはそれを許さない。尚も続く砲撃の嵐、突き放されていく距離、壊れていくエグザアウェリアス。

(やだ!やだよ!もう無くしたくない!あたしを初めて認めてくれた人を、無くしたくないよ!)

その時の山風の脳裏には、空母水鬼から「いらない」と言われてしまう光景が浮かんでいた。

(助けられなかったら、きっと水鬼も………そんなのやだよ!)

「はっ!山風ちゃん前!」

「あ!?」

ホロルドロッソ・イージスの正面、メガ粒子砲が迫ってきた。山風の反応は完全に遅れてしまった。山風の視界が眩い光に包まれた。

 

 

諦めたくない

 

 

もう、無くしたくない

 

 

 

あたしは………

 

 

 

あたしはっ………

 

 

 

 

あたしはぁっ!!

 

 

 

 

その瞬間、山風の内からとても力強いものが溢れてきた。そして――――

 

こんな事で…あたしはっ

 

 

 

無くしたりするもんかぁぁぁー!!!!

 

 

 

山風の右へ大きく伸びた前髪の下から、黒い小さな角が現れ蒼白い炎を纏い、エメラルドグリーンの右目が深紅に染まった。その瞬間、ホロルドロッソ・イージスはサイコガンダムMk-Ⅱのメガ粒子砲を目にも止まらない速さで回避し、サイコガンダムMk-Ⅱの上空に現れた。そしてホロルドロッソ・イージスはビームライフルを右腰のサイドバインダーにマウントし、バックパックから左右に大きく伸びたスタビライザーユニットに格納された大型の剣「フラガラッハ改ビームブレイド」を抜き放った。

「水鬼を…やらせるもんかー!」

フラガラッハ改ビームブレイドを両手に握ったホロルドロッソ・イージスは、深紅の閃光となってエグザアウェリアスを捉えている左腕に迫った。そしてその刹那、深紅の閃光が左腕の前を通り過ぎたと思えば、エグザアウェリアスを捉えていた5本の指が一斉に爆散したのだ。

「きゃっ!」

地面に墜落したエグザアウェリアス。そして弧を描いてサイコガンダムMk-Ⅱに再び斬りかかるホロルドロッソ・イージス。

「よくも水鬼を……」

山風の額に現れた角の蒼白い炎が更に激しく燃え上がり――――

 

 

 

水鬼をやったなぁぁぁぁー!!!

 

 

 

(っ!?あの額の角は!)

更に速度を上げたホロルドロッソ・イージスは、サイコガンダムMk-Ⅱへ迫った。メガ粒子砲の嵐をかわし、サイコガンダムMk-Ⅱの足元から迫ったホロルドロッソ・イージスが一気に頭頂部まで登るとフラガラッハ改ビームブレイドを両メインカメラに向け投擲、狙いは寸分違わずサイコガンダムMk-Ⅱの両メインカメラを潰した。そしてそのまま上空へ飛び去るホロルドロッソ・イージス。距離を取って後退するホロルドロッソ・イージスをサイコガンダムMk-Ⅱはメインカメラを潰されても尚、メガ粒子砲で撃ち落とそうとした。

「全エネルギーを右手のビームサーベルに!」

そして再び弧を描いてホロルドロッソ・イージスが戻ってきた。サイコガンダムMk-Ⅱはホロルドロッソ・イージス目掛けメガ粒子砲を乱射、その内の1発がホロルドロッソ・イージスに迫った。しかし―――

「うおぁぁぁっ!」

ホロルドロッソ・イージスは左腕に装備した対ビームシールドでそれを受け止めた。スラスターが更に勢いを増し、メガ粒子砲は徐々に押し戻され―――

 

 

バチィィィ!!

 

 

弾き消された。そして――――

 

 

はああぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!

 

 

機体の全エネルギーを集約し、ホロルドロッソ・イージスの全長を越える程に巨大になったビームサーベルが振り下ろされ、サイコガンダムMk-Ⅱを頭から一刀両断。サイコガンダムMk-Ⅱの背後に着地し、その直後サイコガンダムMk-Ⅱは大爆発を起こして消滅した。

 

続く



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EP89 2人の娘

「Battle Ended! Mission Completes!」

サイコガンダムMk-Ⅱを撃破し、ミッションを成功させた山風と空母水鬼。しかし、山風が先程行ったマニューバはバトルを見ていた時雨たちに驚愕を与えるのに十分だった。

「す、凄い…山風…あんなマニューバが出来るなんて……」

「あんな動き…夕立でも出来ないっぽい…」

「アタイも驚いたよ…あれが、山風の姉貴の本気……」

そして山風は―――

「す、水鬼!大丈夫だった?」

先程までの激しい表情は消え、オドオドしながら空母水鬼に駆け寄った。

「ごめんなさい!すぐに助けられなくてごめんなさい!だからっ…お願い!言わないで!」

「………」

必死に謝る山風。しかし空母水鬼は一言も喋らず、ただ山風の顔を見つめていた。

「す、すい…き?」

自身の顔を見つめるだけの空母水鬼を見て山風は不思議そうな顔になった。すると空母水鬼はゆっくりと右手を山風の顔へと伸ばし、山風の前髪の下から生えてきた黒い小さな角に触れた。先程まで蒼白い炎を纏っていた角はその炎を消し、ただそこに存在していた。すると、空母水鬼が小さな声で何か言った。

「……ら」

「え?」

そして空母水鬼はハッキリと言った。

深空(みそら)…」

「………?」

 

 

深空(みそら)

 

 

空母水鬼の言ったその言葉の意味が山風には分からなかった。だが、そんな山風をよそに空母水鬼の目には涙が溢れてきていた。その涙を見て焦る山風。

「す、水鬼!どうしたのいきなり!?」

「良かった……良かった……深空…生きてた……うっうう……本当に…良かったよ……」

「水鬼?」

「母さん!」

そこに事情を知らない深海が駆け寄ってきた。すると空母水鬼は駆け寄ってきた深海と山風をギュッと抱きしめた。

「ちょっ!何するんだ母さん!」

「す、水鬼!?」

「本当に……ありがとう…深海も…深空も…本当にありがとう…」

空母水鬼は深海と山風をギュッと抱きしめたまま、ずっと「ありがとう」と言い続けていた。深海と山風は、何が何だかわからず顔を見合わせていた。

 

その後、その場にいた深海と山風、空母水鬼と時雨、夕立、涼風、そして電の7人が旧執務室に集まり先程の事を話し合っていた。

「で…母さんは、山風が自分の娘だって言うのか?」

「そうだよ!額に生えたこの黒い角、双子の妹の深空の物とおんなじだもん!」

空母水鬼は、山風の事をギュッと抱きしめたまま大声で言った。

「す、水鬼…苦しいよ」

「あ!ご、ごめんね深空!」

思わず山風を強く抱き締めてしまった空母水鬼は、慌てて腕を離した。山風の額には依然として黒い角が生えたままだった。それに目をやった深海は、今度は姉妹である時雨たち3人に質問を投げかけた。

「お前たちはどうなんだ?何か思い当たることはあるか?」

「うーん……僕と山風は、同時にあの鎮守府に着任になったんだよね…」

「確かそうだった気がするよ…いつの頃か忘れたけどさ……」

「あ、夕立憶えてるっぽい!確か、2010年の3月だったよ!」

「2010年に同時に……か…(俺と母さんが逃亡生活を始めたのが2年前の2008年だったな…)それ以外に何かあるか?」

するとまた夕立がある事を思いだし、口を開いた。

「そういえば時雨!鎮守府に来た時、練度がまだそんなに高くないのにもう今の格好してたっぽい!」

「あれ、そうだっけ?」

「そう言えばそうだ!時雨の姉貴、練度高くないのに改二の格好してた!」

「うん…山風も、憶えてる…」

「うう…ここまで言われると否定できないよ…でも、それと山風の話に何か関係あるかな?」

「今の情報量ではあまり関係ないな…あるとすれば…母さんが言ってた「2人の娘」にお前が入ってるかもしれない…って事にはなるかもしれないが」

「そ、そっか…(深海提督と兄妹か…ちょっと嬉しいかも…)」

(時雨も深海提督さんと兄妹?……あれ、何かが引っかかるっぽい…)

すると夕立が難しそうな顔をした。電がそれに気づいて、夕立に話しかける。

「夕立さん。どうしたのです?」

「ううん。何でもないっぽい!それより電ちゃんはどう思うっぽい?」

「うーん…電は皆さんとちょっと違うから何とも言えないのですが……」

「電。何か考えでもあるのか?」

唐突に深海に声を掛けられた電だったが、驚くことはなく、なのです。と言って話し始めた。

「電は艦娘の細胞に深海棲艦の細胞を埋め込まれて生まれたのです。だから、その逆もあるんじゃないかな…って」

「逆……深海棲艦の細胞を持つ奴に艦娘の細胞を埋め込む、か…ありえなくはない話だな……山風の額にある角は、完全に深海棲艦の物だろうし…旧体制の海軍ならやっていてもおかしくないか…」

(角?………あれ?何処かで聞いた気がするっぽい…)

「ねえ深海、信じてほしいなぁ~深空は可愛い可愛い深海の妹なんだよ?」

空母水鬼が山風をギュッと抱きしめて言った。しかし深海は難しい顔をした。

「信じてない訳じゃないけど、証拠がないからな…全部は信じきれないぞ?…今の現状で遺伝子検査なんてしてる暇もないからな…さて、どうしたものか…」

その時深海のスマホに着信が入った。深海はスマホの画面を見るなり、少しだけ驚いた。

「海軍本部だと?こんな時に一体何だ?…もしもし」

「久しぶりだな。深海よ」

「っ!その声、白河洋一(しらかわよういち)提督!?」

「え!白河さん!」

深海の言葉に空母水鬼も反応を示す。

 

白河洋一

 

深海の演説を後援した、深海の父ととても親しかった提督だ。戦時中に深海が接触してから、密かに親密になった唯一の人物でもある。勿論空母水鬼も、彼を慕っている。

「元気そうで安心したぞ。家族は壮健か?」

「はい。おかげさまで!白河さんもお元気そうでよかった!」

「お互いにな……で、早速本題なのだが。軍本部の秘密書類を処理していたら、面白い物を見つけてな…」

「面白いもの、ですか?」

「ああ。そのデータをそちらのパソコンに送った。確認してくれ」

「わかりました」

そう言って深海はパソコンを起動した。

(深海提督が敬語で喋ってるっぽい…)

敬語の深海に驚く夕立。そして1分ぐらいたって、深海がまた口を開いた。

「あっ。ありましたよ白河さん!」

「開いてみるといい。お前(・・)に関する面白い内容だ」

「え?俺に関して?」

深海は少し不思議そうな声をあげてそのデータファイルを開いた。内容に目を通す深海。そして深海が突然大きな声で、これって!と言った。

「深海深海、どうしたのそんな大声上げて?」

そう言って山風を連れて執務机に歩いてきた空母水鬼。それに釣られて、その場にいた残り4人も執務机に歩いていった。そして6人がパソコンの画面をのぞき込んだ。そこにはこう書かれていた。

 

 

○○鎮守府捜査報告書

反逆者である黒野海(くろのかい)が担当していた鎮守府の捜査が完了したことを報告します。敵と内通していた形跡は見受けられませんでしたが、今回の調査で、黒野海が隠していたと思われる女児の双子の確保に成功しました。確保した双子には深海棲艦の特徴である黒い角を確認しましたが、貴重な深海棲艦とのハーフであるこの双子は研究所へ移送し艦娘への改造を施すことになりました。 以上

 

艦娘改造報告書

先だって確保された深海棲艦とのハーフである双子の、艦娘への改造が完了致しました。両検体の適正は完璧に近いもので、完全に自身の事を艦娘であると認識しており今後は△△鎮守府へ2010年3月付で配属することと致します。つきましては、写真を同伴いたしますので確認をお願い致します。 以上

 

 

そしてそこの文章から少し下の写真に写っていた2人は「時雨」と「山風」だった。

「し、時雨姉ぇ……この鎮守府の名前……」

「……まさか…本当、に…」

鎮守府の名前と写真を見た時雨と山風は、息を吞み。

「どうだ?驚いたか黒野…お前には2人の妹がいたようだな……」

「「………」」

深海と空母水鬼は、この思わず絶句してしまった。

「黒野…黒野?」

「は、はい!その…あ、ありがとうございます」

「終戦から8年も掛かってしまってすまなかったな黒野…では、またな」

「あ、はい…失礼します」

深海は電話を切った。そして旧執務室は一瞬にして静寂に包まれた。その静寂は5分ほど続くことになったが、やがて夕立が言った。

「時雨…」

「うん。わかってるよ…鎮守府の名前……僕たちが前に居た鎮守府だ。って言いたいんだよね?」

「う、うん……」

「ははは……まさか、山風だけじゃなくて僕までもそうだったなんてね…」

「時雨姉ぇ……」

「………大丈夫、だよ…山風」

すると時雨は空母水鬼の隣にいた山風に微笑んだ。そして、空母水鬼に言った。

「空母水鬼さん。僕にも名前って、あるのかな?」

「………」

だが空母水鬼はすぐに答えることは出来なかった。先程までの子供のように明るかった表情は驚愕した表情になったままだったが、時雨の顔を見つめると大粒の涙を1粒流して、小さく言った。

 

 

夜空(よぞら)

 

 

と―――

「うん…ありがとう」

すると時雨は山風の手を握って旧執務室の扉へ歩いていった。思わず夕立が止めようとしたが、深海がそれを遮った。そして時雨は言った。

「少し、2人で話させてくれないかな?」

「…ああ。わかったよ」

「ありがとう…深海提督」

時雨と山風は部屋を出て行った。部屋は再び静寂に包まれたが、深海は夕立と涼風、電に席を外してほしいと言った。夕立は、うん。と二つ返事で2人を連れて部屋を出て行った。部屋には深海と空母水鬼の2人が取り残された。静寂が周囲を包んでいたがやがて空母水鬼が口を開いた。

「深海…」

「ごめん母さん…俺、ちょっと……泣きそうだ」

空母水鬼の隣に座る深海の目にはじんわりと涙が浮かんでいた。だが、それは空母水鬼も同じだった。

「ごめんね深海…私も、嬉しくて……う、ううう……」

その後しばらく、旧執務室で深海と空母水鬼はお互いを抱きしめ合いながら泣いていた。

 

続く



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EP90 2人の本心

深海と空母水鬼の2人はようやく泣き止むと、改めて自分たちの姿を恥ずかしいと感じた。

「なんか、凄い恥ずかしいな…母さん」

「うん…我ながらここまで恥ずかしいとは思わなかったよ」

そしてしばらく2人の間に静寂があったがやがて深海が口を開いた。

「しかし…いきなり俺と母さんが家族だ。って言われたら困惑するよな…」

「そ、そうだけど…私は……」

「わかってるさ母さん…でも、それを決めるのは俺たちじゃない。そうだろ?」

「うん」

そう言って深海と空母水鬼は再び黙り込んでしまった。

 

一方その頃、旧執務室を山風と共に出て行った時雨たち2人は鎮守府本庁舎にあった小さな倉庫に来ていた。そして時雨は山風に背中を向けたまま口を開かなかった。倉庫に来てから数分が経ち、気まずくなったのか先に口を開いたのは山風だった。

「ね、ねえ時雨姉ぇ…これから私たちどうするの?……時雨姉ぇ!」

「………山風」

すると時雨が少しだけ低い声で喋りながらゆっくりと向き直ってきた。その低い時雨の声に山風は思わずビクついたが、振り返った時雨の顔を見てその感情は宇宙の彼方へと消え去ってしまった。時雨の顔は今までに見せたことのない程キラキラと輝いた笑顔だった。というより、完全に目と顔の周囲がキラキラと光っていた。

「し、時雨姉ぇ?」

その時雨の表情を見た山風は完全に呆気取られてしまって目が・・(てん)になっていた。すると時雨はその表情のまま早口で語りだした。

「決まってるじゃないか山風!2人揃って深海の妹になるんだよ!僕はとても嬉しいんだよ!深海に助けてもらった時から僕はずっと深海の事が大好きでずっと隣に居たかったって思ってたんだ!それがこんな形で深海の隣にずっと居られるチャンスが来るなんて思いもしなかったよ!山風……ううん深空も勿論一緒だよ!早く深海の所に行ってこの事を伝えに行かないと!ほら行こ深空!」

「???」

山風は完全に話についていけていなかった。すると時雨は山風の手をもう一度握り直すと、倉庫を出ようとした。しかし山風がそれを拒んだ。

「ちょっと時雨姉ぇ…話が急展開過ぎだよ……それに何でさっきはあんな暗そうな表情してたのに今はそんなキラキラしてるの!?」

「あ、あの時は流石に恥ずかしくってついあんな状態になっちゃったけど…実は心の底から嬉しかったんだ!夕立や涼風も居たし、ちょっと気持ちを抑え込んだんだよ」

「そ、そうなんだ…でも、時雨姉ぇ…深海提督にはもう奥さんがいるんだよ?ずっと一緒にいるってことは…」

すると山風が、深海の妻であるもう1人の時雨の事を口にした。しかし時雨は―――

「大丈夫!僕、そんな事これっぽっちも思ってないから!」

と、時雨は両手を腰に当てて、フンッ!と鼻を鳴らした。

「えぇ………」

時雨の反応と言葉に、山風は完全に困惑していた。そして次の瞬間、今度こそ時雨の手が山風の手を掴んだ。

「ほら行くよ深空!」

「え―――ああっ!!」

バアァァンッ!!と倉庫の扉を勢いよく開け、山風の手を握りしめた時雨は旧執務室へ向け全力疾走した。

 

そしてその数分後―――

 

バアァァンッ!!という音と共に旧執務室の扉が勢いよく開いて時雨と山風が走り込んできた。突然の扉開放に流石の深海も驚き、だあぁぁぅ!!と訳の分からない声をあげた。

「深海!」

と、突然呼び捨てされる深海。深海は先程の驚きがまだ抜けていなかった為か、目を丸くした。

「ど、どうしたの夜空、深空……そんなに慌てて…」

空母水鬼の言葉をよそに、時雨は山風の手を握ったまま執務机に座る深海の前まで来ると物凄い勢いで机を叩いた。バアァァンッ!!と先程の扉と同じくらいの音が部屋に響くと、時雨は先程山風に見せたのと同じキラキラと輝いた笑顔を深海に見せて言った。

「僕たち、今日から深海の妹になるよ!」

「お、おお………」

満面のキラキラ付き笑顔での時雨の言葉に呆気取られる深海。そして、12秒間の沈黙ののち――――

 

 

 

え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘えぇぇぇぇぇぇー!!!!!!!!!

 

 

 

深海の超特大の大絶叫が鎮守府中に響き渡ったのだった。

「本当なの夜空!深海の妹だって事、認めてくれるの!?」

「うん!勿論深空もだよ!」

「え、私は何も言ってな―――」

「わあぁぁ~!私、すっごく嬉しいなー!」

「だからこれからよろしくね深海!お母さん!」

「うん!勿論だよ夜空!深空!」

時雨は再びキラキラ付き笑顔で深海に言った。時雨のキラキラは空母水鬼にまでうつり、空母水鬼は右頬の前でギョッと両手を握って目をキラキラとさせてときめいていた。どうやら、時雨の言った、お母さん。という言葉が効いたらしい。だが、当の深海は俯いたままフルフルと身震いしていた。

「あれ、どうしたの深海?」

「……………俺の」

「え、なに?」

 

 

 

 

俺の心配を返せええええええぇぇぇぇぇぇぇー!!!!!!!

 

 

 

 

深海は怒りのあまり、絶叫しながら執務机を叩き、中央で真っ二つに叩き割った。深海たち兄妹の初めての兄妹喧嘩は、大惨事を招いてその場に居た全員をドン引きさせて終了した。

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はEP64~EP87までに登場したガンプラと登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。


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EP90.5 登場人物&ガンプラ解説pt5

今回も前回同様にガンプラの解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。
なお、EP75からEP79で再登場し、以前に紹介したキャラクターは各キャラクターの今後使用する新機体と参加経緯を紹介させていただきます。(変更のないキャラクターも含まれます)



機体名 ガンダムアリアス

型式番号 MKI-A0

ファイター 空母水鬼  初登場話 第84話  ベース機 ガンダムエグザアウェリアス

機体データ(製作者の設定)全高 18.3m 重量 61t

解説

黒野深海が、ガンプラバトル初体験の空母水鬼の為にガンダムエグザアウェリアスをダウングレードし、武装と機体構造をシンプルにしたガンプラ。バックパックに装備されていたウイングユニットと両腰のビーム砲、単独飛行能力がオミットされ、総合的な戦闘力は低下したもののベース機の様なピーキー性が無くなり、7tもの軽量化にも成功。バランスの取れた機体性能を獲得した。

 

武装

ヴァリアブルライフル 1丁

ベース機のヴァリアブルライフルの性能をそのままにガンダムアリアスに合わせて装備数を減らされた武装。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

両腰の装備されているガンダムエグザアウェリアスのビームサーベル。性能は依然と同程度のままである。発振ビーム刃の色は緑色。

頭部バルカン 2門

ガンダムエグザアウェリアスの装備していたものと同様の武装。

マシンキャノン 2門

ガンダムエグザアウェリアスの装備していたものと同様の装備。

シールド

ガンダムエグザアウェリアスの装備していたものと同様の装備。

 

ファイター 空母水鬼 容姿(艦これにおける)空母水鬼

黒野深海の母親。大戦中に黒野深海の父親である黒野海の鎮守府付近の海岸に流れ着いたことで黒野海と出会い、後に深海、夜空、深空の3人の子供を儲けたが、その事が海軍上層部に露呈し深海と共に追われる身となった。逃亡生活の末に深海を残して軍に捕まり、その後軍研究所の実験体とされてしまっていたが第69話にて深海によって救出され再会を果たした。とても人懐っこく誰とでも分け隔てなく接することの出来る性格だが、深海と共に逃亡中の間はとても厳しい性格だったらしい。息子と娘である深海、夜空、深空の事が大好き。使用機体は単機での戦線突破能力に優れた「ナラティブガンダムAB装備」

 

機体名 ガンダムエグザアウェリアス・対MA仕様 

型式番号 MKI-A00-EXA/vsMA

ファイター 空母水鬼  初登場話 第86話  ベース機 ガンダムエグザアウェリアス

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 69t

解説

対MA戦用にカスタマイズされたガンダムエグザアウェリアス。ビーム兵器主体となっていたエグザアウェリアスの武装をIフィールド系装備を持つ対大型MAに合わせる為、実弾系の武装を新たに搭載しており、機体形状こそ以前のエグザアウェリアスと同じだが両腰のビーム砲はレールガンに変更され、両脚部にはガンダムヘビーアームズの12連装ミサイルポッドが追加装備されている。しかし、1tの重量増を招いている。

 

武装(追加武装のみ表記)

レールガン 2門

両腰のビーム砲を高初速で弾丸を撃ち出すレールガンに変更した装備。高い貫通性を持つ。

12連装ミサイルポッド 2基

両脚部に追加装備されたガンダムヘビーアームズのミサイルポッド。大型MAの重圧な装甲に有効打を与える為装備された。

 

機体名 ホロルドロッソ・イージスガンダム 

型式番号 GAT-X303AO

ファイター 山風  初登場話 第84話  ベース機 イージスガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.9m 重量 78t

解説

山風の使用する高機動と火力を両立したガンプラ。ベース機の形状をそのままに、バックパックの元からあったスタビライザーユニットを挟み込むように追加された左右上へ大きく伸びた2つのウェポンラック兼スタビライザスラスターユニットと4本に追加されたブレードアンテナが目を引く外見をしている。ベース機であるイージスガンダムの巡航形態、突撃形態はそのまま引き継いではいるが、ロッソイージスガンダムで採用されていた砲撃形態、飛行形態、多脚形態の3形態は採用していない。これは山風自身が通常形態時での戦闘を主眼に置いた為であり、飛行形態と砲撃形態に関しても非変形での単独飛行が可能な点と、人型状態でスキュラを発射した時の反動分散率を考えての結果となっている。機体色は深紅と漆黒、両腰バインダーのウイング先端などを白で塗装されている。型式番号の「AO」は、「アドヴァンスト・オリジン:Advanced Origin(進歩した原点)」の略であり、機体名の「ホロルドロッソ」はイタリア語で「深紅」を意味する。

 

武装

60㎜高エネルギービームライフル

ベース機であるイージスガンダムのビームライフルと同形状且つ高出力のビームライフル。非使用時は右腰のバインダーにマウントが可能となっている。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル 4基

両腕、両脚先に装備されたクローから直接出力されるビームサーベル。抜刀動作を必要としない為、瞬時に格闘戦へ移ることが出来る他、蹴りと連動して使用することも可能。発振ビーム刃の色は黄色。

2連装バルカン 2門

頭部に装備された片側2連装のバルカン砲。敵機への牽制からミサイルの迎撃など幅広い用途で使用出来る他、単純な砲門数の多さもあって威力はそこそこにある。

580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」

突撃形態時でのみ使用できる本機最大威力を誇るビーム砲。ベース機の物をそのまま流用している為威力は折り紙付き。発砲ビームの色は赤色。

フラガラッハ改ビームブレイド 2基

バックパック左右のウェポンラック兼スタビライザスラスターユニットに収められている実体刃にビーム刃を合わせた大型剣。格闘能力向上の為に装備された。形状はフラガラッハ3ビームブレイドをよりスマートにした形状となっている。発振ビーム刃の色は桃色。

対ビームシールド

ベース機の物と同型のシールド。先端が鋭利になっていたそのまま打突武器としても使用できる。非使用時は左腰のバインダーにマウントが可能となっている。

巡航形態

ベース機であるイージスガンダムの巡航形態をそのまま再現した形態。推進力を背後に集中することで爆発的な推進力を生む。

突撃形態

ベース機であるイージスガンダムの突撃形態をそのまま再現した形態。巡航形態から両手足を展開した形態。威力の高いスキュラはこの形態でのみ使用が可能だが、敵機に組み付きそのままクローで攻撃することも可能。

 

登場人物紹介

深海吹雪

電を執拗に恨んでいた黒フードの正体。深海細胞の侵食によって以前は普通の人間の腕をしていた左腕が黒く魚のヒレのような物が付いた異形の腕になり、真っ白な肌とセミショートの髪に真っ白なドレスを着て、首からは千切れた鎖が垂れ、額に2本の黒い角をはやし、深紅の瞳を持つ姿へと変異してしまっていた。自分をこんな体で生み出した研究員と世界、ガンプラバトルを憎んでおり、その全てを壊そうと画策している。

 

駆逐棲姫

時雨と夕立の2人に妙な胸騒ぎを感じて深海の鎮守府まで付いてきたため作戦に参加することになった。使用機体は変わらず「2.12(ダークネスレイン)ガンダム」

 

長門 容姿(艦これにおける)長門改二

深海が留守の間、鎮守府を任されていた元艦娘。深海本人やその子供たちから強く信頼されている。深海の鎮守府きってのエースファイターの1人で、製作技術、操縦技術共に高度な技術を持っている。艦娘時代はかつて連合艦隊旗艦を務めていたこともあって、深海からは部隊の指揮をよく任されていた。戦時中、深海が鎮守府に来る前に妹の陸奥を失っている。使用機体は射撃能力と指揮能力に優れた「ケンプファージライヤ」

 

ビスマルク 容姿(艦これにおける)Bismarck drei

深海が留守の間、鎮守府を任されていた元艦娘。戦時中に、友軍艦隊からプリンツ・オイゲンと共に落後し、満身創痍の状態で深海棲艦の艦載機に襲われている所を深海に保護され、以降この鎮守府に所属するようになった過去を持つ。深海の鎮守府きってのエースファイターの1人で、操縦技術は長門と並んで非常に高く、製作技術も荒削りながらも高い。深海に命を救われたこともあって、深海に対して小さな恋心を抱いているがなかなか素直になれないでいるらしい。使用機体は高機動を実現したツインドライブ搭載機「GN-XV」

 

深海白雪

吹雪と同様に研究所に手生み出されたクローン人間。吹雪同様、深海細胞に対する耐性が弱く残り少ない時間で、暴走する吹雪を止めようとした白いフードの人物の正体。吹雪と同じ深海細胞を操る力を持つが当の本人はそれを嫌っている模様。使用機体は純白に輝く神々しい機体「ガンダム・ホワイトボトムサウンド」

 

夕張 容姿(艦これにおける)夕張改二

深海が留守の間、明石と共にガンプラ戦力増強を行っていた元艦娘。手先の器用さとガンプラの製作技術は言わずもがな頭一つ飛びぬけて高く明石と並ぶ腕前。特製射出成形機を作った張本人でもある。深海に頼まれて、あるものを製作している模様。

 

金剛

深海には実力を買われて今回の作戦に参加したが、本人は深海の人柄に惹かれたとか惹かれてないとかで参加した。使用機体はバーニングラブガンダムより更なる機動力を獲得した「インフィニットバーニングラブガンダム」

 

比叡 容姿(艦これにおける)比叡

金剛型四姉妹の次女で、姉である金剛の事が大好きな少しおっちょこちょいな元艦娘。金剛が深海の誘いを受けた際に真っ先に反対したとかしてないとか。とにかく金剛第一である。ガンプラの製作技術はまあまあで、姉妹全員の技術でそれを補っている。ちなみに金剛は格闘系と機動系が得意で、比叡は防御面や特殊機能系が得意である。バトルでは常に金剛の傍で防御面でのサポートをよく行っている為、防御能力の高い機体を好んで製作している。使用機体はとても強力な防御兵装を搭載した「ガーディーフォビドゥンガンダム」

 

榛名 容姿(艦これにおける)榛名

金剛型四姉妹の三女で、少し抜けている所もあるが礼儀正しく頑張り屋な元艦娘。金剛の事を強く信頼していて、誰とでも分け隔てなく接することの出来る広い心の持ち主。深海に対してもかなり信頼しているとか。ガンプラの製作技術は他の姉妹同様まあまあで、姉妹全員の技術でそれを補っている。榛名は射撃系、索敵系が得意で、バトルでも後方からの支援射撃と索敵を担当し、前線を支えている。使用機体は射撃、索敵に優れた「ガンダムEz-AS」

 

霧島 容姿(艦これにおける)霧島

金剛型四姉妹の四女で、広い視野とその頭脳で姉妹を導く元艦娘。四姉妹での生活では彼女が財布を握っている模様。客観的な視野の持ち主で、よくおっちょこちょいな行動を取る比叡には少し手を焼いている。ガンプラの製作技術は他の姉妹と同様まあまあで、姉妹全員の技術でそれを補っている。霧島は駆動系やフレーム構造などの技術に優れ、緻密な計算によって姉妹それぞれの機体に最適な構造の物を作っている。使用機体は戦線突破能力に優れた可変機「ブーストカラミティガンダム」

 

加賀

深海の指示で鎮守府を訪れ、部活の後輩である翔鶴を取り戻す為に今回の作戦に参加した。使用機体はAGE-1バウンサーを上回る機動力と火力を得た「ガンダムAGE-1エグゼバウンサー」

 

瑞鶴

加賀と共に鎮守府に訪れ、姉である翔鶴を取り戻すため今回の作戦に参加した。使用機体は、加賀との連携を想定したAGE-2ホーキンスの強化機体「ガンダムAGE-2ハルファス」

 

赤城

加賀たちが深海の鎮守府に向かうとのことで残りの部員である飛龍と蒼龍を連れ、今回の作戦に参加した。

 

最上

時雨からその実力を聞いた深海のスカウトで今回の作戦に参加した。しかし本音は時雨が心配なだけだが、どうせならと姉妹の全員を呼んだ。使用機体はアンティリーデスティニーガンダムを進化させた「デスティニーガンダムリベリオン」

 

三隈 容姿(艦これにおける)三隈

最上型四姉妹の次女で、お淑やかで礼儀正しいお嬢様の様な性格の元艦娘。最上の事を「モガミン」と呼んで慕っていて彼女のガンプラの整備を進んで申し出てくる。しかし、その技術は高く最上もかなり彼女の事を信頼している。最上の新しい機体「デスティニーガンダムリベリオン」は基礎設計を担当したという。

 

鈴谷 容姿(艦これにおける)鈴谷改二

最上型四姉妹の三女で、テンションの高い女子高校の様な性格をした元艦娘。語尾に「じゃん!」がよくついてくることがあるらしい。今回の作戦には最上から誘いを受け、面白そうだ、と熊野を巻き込んで参加してきた。ガンプラ製作技術は三隈には劣るもののそれなりに高く、操縦技術に関してもそこそこ高い。使用機体は熊野との連携を前提に置いた支援型の機体「ユナイテッドザク・ウォーリア」

 

熊野 容姿(艦これにおける)熊野改二

最上型四姉妹の四女で、礼儀正しいが何処かちょっと高飛車なところがある元艦娘。艦娘時代は「神戸生まれのお洒落な重巡」を自称していたが、艦娘を止めてからは恥ずかしくなったのか、自称するのを止めたようだ。鈴谷とはとても仲が良く、いつも一緒と言ってもいい程の中である。その為、彼女が製作する機体は必ず鈴谷との連携を想定した機体に仕上がる。製作技術と操縦技術は鈴谷とほぼ同程度の域となっている。使用機体は鈴谷との連携を想定した高機動型の「グフ・ユナイティッド」

 

島風

深海から誘いを受けた金剛に誘われ今回の作戦に参加した。使用機体はウィンドガンダムの性能を引き継いだ「ガンダムウィンドジャスティス」

 

天津風

引き続き島風のサポートの為に今回の作戦に参加した。

 

大和

かつて深海に心を救われており、その恩返しをする為に今回の作戦に参加した。使用機体はシンプルながらも高い機動性を発揮する「ドレットノートスターゲイザー」

 

武蔵

久しぶりのガンプラバトルで苦戦するであろう大和のサポートの為、今回の作戦に参加した。現在は大和旅館に戻っているが、作戦開始時に復帰するようだ。

 

天龍

深海からの連絡を受け、龍田、木曽と共に今回の作戦に参加した。元は深海の鎮守府出身である。使用機体は多くの剣を装備した格闘機「ジークイフリート」

 

龍田

天龍同様、深海からの連絡を受け今回の作戦に参加した。元は深海の鎮守府出身である。使用機体はフェザーファンネルと大鎌を振るう機体「ガンダムデスサイズH(ヘル)ラストワルツ」

 

木曾

天龍や龍田同様、深海からの連絡を受け作戦に参加した。元は深海の鎮守府出身である。使用機体はクロスボーン・ガンダムバーストX1により強力な格闘性能を盛り込んだ機体「ガンダムアスタロト・X(クロス)バースト」

 

秋月

深海の鎮守府に避難していたが、照月を元の姿に戻す為作戦に参加した。使用機体はウイングガンダムゼロアランを修復し、より機動力を高める改修を施した「ウイングガンダムゼロ・アランダイト」

 

初月

秋月と同じく、照月を元に戻す為に作戦に参加した。使用機体はガンダムダブルオーエクシアの格闘性能を進化させた機体「ガンダムトライオークアンタ」

 

涼月

秋月と同じく、照月を元に戻す為に作戦に参加した。使用機体はガンダムデュナメスハイスナイプの狙撃性能をさらに引き上げた機体「ガンダムサバーニャ・ハイスナイプ」

 

防空棲姫

自分の為に力を尽くしてくれる秋月たちに恩返しをする為に作戦に参加した。使用機体は変わらず「ガンダムボークルス」

 

瑞鳳

深海直々に月華団がスカウトされたため、その指揮を執る為に作戦に参加した。

 

三日月

準々決勝で右脚の感覚までも失ってしまったが、それでも瑞鳳の役に立ちたいと作戦に参加した。使用機体は更に三日月に合わせて改修が施された格闘機「ガンダムバルバトスルプスレクスレイト」

 

長月

団長である瑞鳳の意思を尊重し、力になれるならと作戦に参加した。使用機体は更に堅牢かつ射撃に特化した機体「ガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティ」

 

睦月

意識がまだ戻らない中、月華団が深海の鎮守府に来たことにより現状を知って作戦に参加した。使用機体は全国大会3回戦で大破した睦月号を修復し火力増強を測った機体「睦月号・改」

 

皐月

団長からの指示で団員を纏め、今回の作戦に参加した。瑞鳳と共に、月華団を指揮面で支える。

 

文月

大好きなガンプラバトルが無くなるかもしれないと聞き、居ても立っても居られず作戦に参加した。使用機体は後方支援能力を追加した「文月・スーパースペシャルマンロディ」

 

菊月

作戦に参加すると言った長月のストッパー役は自分しかいないと心の底で思っている為、今回の作戦に参加した。使用機体はより格闘性能を強化した「ランド・マンロディ改二」

 

卯月

弥生が珍しくやる気なので、今回は冗談なしで弥生の期待に応えようと作戦に参加した。使用機体はより格闘戦に合わせた調整が施された「卯月号改」

 

弥生

自分の新しい居場所と心の拠り所を失いたくないと、やる気満々で作戦に参加した。整備の面で月華団を支える。

 

水無月

右脚の感覚までをも失ってしまった三日月を支えようと、作戦に参加した。今まで通り炊事面で月華団を支える。

 

望月

三日月のバルバトスを整備できるのは自分しかいないと、整備面で月華団を支える為作戦に参加した。

 

阿武隈

自分の憧れていた深海に直々にスカウトされて意気揚々と作戦に参加した。使用機体は特殊な装甲防御を追加された「ハイマットスタービルドストライクガンダム」

 

北上

阿武隈がノリノリで参加したことを鼻で笑いながらも、心の底ではなにかと心配しているので作戦に参加した。使用機体は以前より高い後方支援能力と装甲を加えられた「ヘビーアームズZZガンダム」

 

大井

北上が作戦に参加するため、作戦に参加した。使用機体は更に後方支援能力と機動力に優れた「ガンダムドーベンアームズ」

 

大鳳 容姿(艦これにおける)大鳳改

深海の鎮守府エースファイターの1人。深海が戦時中にたまたま行った大型建造で生まれた過去を持つため、深海に対してかなりの信頼を寄せている。高い空間認識能力を持っていて、それをガンプラバトルでも発揮するためファンネル系の武装と高い機動性の機体を好んでいる。ガンプラの製作技術と操縦技術は、長門に少し及ばないがそれでも非常に完成度の高い機体を高度なテクニックで操る。使用機体は機動力と火力、ファンネル武装を多く盛り込んだ「トールギスHi-ν」

 

プリンツ・オイゲン 容姿(艦これにおける)Prinz Eugen改

戦時中にビスマルクと共に深海に保護された元艦娘。深海の鎮守府のエースファイターの1人で特に部隊防御と敵への切り込みに関しての技術は一級品の操縦、製作技術を持っている。ビスマルクの事をとても慕っていて、艦娘時代はずっと傍を離れず支えていてそれは今も変わらずガンプラバトルでもビスマルクの事を支えようと努力を惜しまない。使用機体は部隊防御に特化しつつも敵戦線に深く切り込める盾を持った「パワードジムガーディアン」

 

陽炎

不知火と共に、行方不明となった萩風を見つける為作戦に参加した。使用機体はガンダムDXイフリーティアよりさらに強力になったサテライトキャノンを装備した「ガンダムFX(フォースエックス)

 

不知火

陽炎と共に、行方不明となった萩風を見つけるため作戦に参加した。使用機体はガンダムXブルーフレアをより格闘機に近づけた「ガンダムXブルーメギド」

 

綾波

最上から誘いを受け、夕立を手助けしたいと作戦に参加した。使用機体はより高度な格闘戦を可能とした機体「ガンダム鬼羅(キラー)エピオン」

 

川内

深海から直接スカウトを受けたので妹の神通を連れて作戦に参加した。使用機体はステルス性と強襲、敵陣突破に特化した「影光式(かげみつしき)

 

神通 容姿(艦これにおける)神通改二

川内から機体の整備と調整を頼まれて今回の作戦に参加することにした。ガンプラの操縦センスは川内と並ぶ実力を持っているが、楽しそうにガンプラバトルをする川内を邪魔したくないと基本的にはバトルはしないと決めている。それを補おうと、製作技術と整備技術をひたすらに極めた。

 

ヲ級

全国大会で加賀たちに負けてから自分を見つめ直し、その実力を試さないか?と深海に誘われて今回の作戦に参加した。使用機体は先読み能力とリ級、ル級との連携をこなす為に設計し直された機体「オギュルディアアストレイ・天星(アマツボシ)

 

リ級

ヲ級がまた暴走しないか心配で今回の作戦に参加した。使用機体は、リギリンドペイルライダーの格闘性能とバランスを見直しEXAMシステムを組み込んで再設計した機体「ストライクディスティニー」

 

ル級

リ級と共にヲ級を心配して今回の作戦に参加した。使用機体はオールレンジ攻撃による後方支援を得意とした「レジェンディウスガンダム」

 

伊勢

深海から誘いを受け今回の作戦に参加した。使用機体はブルーディスティニーFbの性能を引き継いだ機体「ガンダム試作改3号機ステイメンMk-Ⅱ」

 

日向

伊勢と共に深海から誘いを受け今回の作戦に参加した。使用機体は重装甲ながら驚異の推進力で高機動を実現した「ガンダム試作改2号機キリサリス」

 

扶桑 容姿(艦これにおける)扶桑改二

時雨が心から信頼を寄せている元艦娘の1人。時雨とは艦船時代からの付き合いで、本人も時雨の事を自身の娘の様に感じている。今回は最上からの連絡を受け、作戦に参加することになった。ガンプラに関しては製作技術と操縦技術はまあまあであるが、今回は深海から特別な役割を当てられているらしい。

 

山城 容姿(艦これにおける)山城改二

扶桑の妹で時雨が心から信頼を寄せている元艦娘の1人。時雨とは艦船時代からの付き合いで、本人は扶桑と違って時雨の事は年の離れた妹の様に思っている。扶桑と同じで、最上から連絡を受け今回の作戦に参加した。ガンプラに関しての製作技術と操縦技術は扶桑と同じくまあまあであるが、山城も深海から特別な役割を与えられているらしい。

 

深海に直接スカウトされて今回の作戦に参加した。電との関係をもう1度確かめ合い、ずっと一緒にいたい。と自身の想いを伝えることが出来た。使用機体は、アカツキ・ハイペリオンマスターを超える防御性能を持った「ハイペリオンガンダム・アカツキマスター」

 

深海に直接スカウトされて今回の作戦に参加した。電たちとの戦闘で、成長した電の姿を見てホッと胸を撫で下ろした。使用機体はヴェールフェニックスを超える機動力を持つ「ガンダム・スノーヴェールフェニックス」

 

深海に直接スカウトされて今回の作戦に参加した。電との絆をもう1度繋ぎ直すことが出来、姉妹が辛いときは全員で支え合う再確認を果たした。使用機体は高機動射撃戦による敵陣突破を目指した機体「ガンダムハルートアーチャー」

 

涼風

山風がガンプラバトルにもう1度向き合ってくれたことをとても嬉しく思いながら、山風を見守ろうと今回の作戦に参加した。使用機体は変わらず「ジェッズネロ・ブリッツガンダム」

 

白河洋一

深海の父親である黒野海ととても親しかった提督で、現在は海軍本部の職員として戦後処理に追われている。戦時中に彼の力を頼って訪ねてきた深海に力を貸し、海軍の旧体制転覆に一役買った過去を持つ。

 

黒野海

深海、夜空、深空の父親。戦時中に空母水鬼との交際が露呈し処刑されたため既に故人となっている。指揮を執っていた鎮守府ではかなり評判が良かったらしい。

 

黒野深海

今回の作戦の最高責任者。使用機体は更に進化を果たした「ガンダムエクストリームアウェリアス」ちなみに壊してしまった執務机はあとで直しました。

 

時雨(本名 黒野夜空)

深海の双子の妹であることがわかって、喜び勇んで妹になることを選んだ。しかし、今回の作戦の事を忘れているわけではないので新たな機体である「ガンダムエンドレインバレット」を現在制作中。

 

夕立

時雨と山風が深海の妹であることにかなり動揺しているが、彼女も今回の作戦の為に新しい機体である「ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア」を現在制作中。

 

山風(本名 黒野深空)

空母水鬼によって深海の双子の妹であることが分かったが、時雨と違って未だに受け止めきれずにいる。使用機体は変わらず「ホロルドロッソ・イージスガンダム」

 

暁たち姉妹ともう1度わかり合うことが出来、深海吹雪の野望を止めるために今までの経験と知識、そしてチームメンバーである時雨と夕立、姉妹である暁、響、雷への感謝を込めた機体「イナヅマガンダムトリニティVI」を現在制作している。

 




いかがでしたでしょうか?これで5回目の登場人物&ガンプラ解説は以上となります。

次回からは今まで通りのお話の続きを投稿していくので楽しみにしていてください。


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EP91 秘密兵器

翌日、体育館から1番近い旧工廠跡の倉庫で夕張と、ピンク色の髪を横でおさげ風にまとめ、水色のシャツの上にセーラー服を着て腰回りの露出したスカートを穿いている少女、明石が長さだけで見れば2メートルもある何かを製作していた。

「夕張ちゃん、ここちょっと抑えててくれないかな?」

「了解……これでいいかしら?」

「ええ!ここをこうして……よいしょ…っと!」

「なかなかに仕上がってきたよね!あとはぁ………艦橋と…主砲部分だね」

「飛龍さんと蒼龍さんにお願いしている部分だったわね…確かもうすぐで完成するって連絡貰ってるけど……」

するとその時、倉庫の扉が開いた。

「お待たせしてごめんなさい!」

「夕張ちゃん明石ちゃん、頼まれてきた物持ってきたよ!」

明石と夕張が振り向くと、そこには橙色の着物と緑の袴姿の茶色のショートヘアに濃い緑に赤い日の丸の様ながらの鉢巻を巻いた女性の飛龍と、緑色の着物に暗緑色のミニスカート仕立ての袴を着た青みがかった短いツインテールに纏めたの女性の蒼龍がそれぞれ大きめの箱を抱えて立っていた。

「飛龍さん!蒼龍さん!」

そこに立っていた2人は百年記高校のガンプラバトル部部員の飛龍と蒼龍だった。百年記高校ガンプラバトル部の中で1位と2位の製作技術を持つこの2人は夕張と明石、そして深海からある物を頼まれていたのだ。そして夕張と明石の目はすぐに2人が持っている箱に目が行った。

「頼んでたのはその箱に?」

「そうです!」

そう言って飛龍と蒼龍は箱を渡した。夕張は渡された箱のふたを開けると、蒼龍の箱の中には3つの砲身を持つ四角い物体にその下から伸びる円筒状のパーツが3つ。飛龍の箱には戦艦ミネルバの艦橋の様な形状のパーツが入っていた。

「凄いですね飛龍さん。こんな綺麗な艦橋作れちゃうんですね」

「蒼龍さんも凄いです!こんな立派な三連装主砲、お見事です!」

「「いやいや!それ程でもないですよー!」」

飛龍と蒼龍がほぼ同時に後頭部をポリポリと掻きながら照れた。そして夕張は、設置手伝ってくれますか?と言うと、勿論です!と同時に飛龍と蒼龍が言った。

 

それから2時間後、夕張に呼び出された深海は倉庫へ向かっていた。そして倉庫へと辿り着き、扉を開いた深海は驚いた。

「ほう…これは凄いな」

倉庫の中央にあったのは、全長約2メートル半、全高約1メートルはある左右をゼネラル・レビルの様に大きく伸びたカタパルトに挟まれた前方へ大きく伸びたミネルバの様な艦首、その底部に巨大な主翼を備え、先ほどの三連装砲を艦首部とその後方、第1砲塔の下部左右に1つずつのカタパルトを備えた船体、第2砲塔から少し斜め上にあるドーム状の左右に大型のレーダーを備えた艦橋を持ち、艦橋を挟み込むように配置された円柱形の砲身を持った連装砲を左右合わせて2つ備えた広いデッキと、艦橋の背後には3つ目の三連装砲とそれを挟み込むように設置された後部の斜め上へ向かって伸びる副翼、そしてその下部には2つの着艦用のカタパルト、さらにその下に横に4基のメインスラスター備えた戦艦だった。

「どうですか深海提督!」

「流石だな夕張、明石。見事なもんだ」

「ありがとうございます提督!でも流石に、1からこのサイズの戦艦作るのは無茶でしたけどね…」

明石が少し困った笑顔を作って深海に言った。

「それに関しては、本当にすまなかった。だが、本当によくやってくれた…これで後は、全員の練度を底上げするだけだな」

「でもこれ、どうやって体育館に運ぶんですか?こんな大きい物」

「安心しろ。運搬も兼ねて、全員へのお披露目会……いや、進水式と言った方がしっくりくるか?を用意してあるからな」

「さ、流石深海提督…いろんなところで抜け目ない…」

「早速取り掛かるぞ」

それからしばらくして、鎮守府内の館内放送で全員が倉庫へ集められた。鎮守府中に居た作戦参加メンバー全員が倉庫に集まり、ガヤガヤと賑やかになる倉庫。すると、深海が口を開いた。

「みんな、忙しい中集まってくれて感謝する。これから、この場にいる全員にある物を見てもらいたい………と、言ってももう目もそちらにばかり行ってしまっているようだが…」

深海はそう言って戦艦に掛けてある布を取り払った。そして戦艦の全体像が見えた瞬間、あちらこちらから、おぉー!という歓声が上がった。すると深海が説明を始めた。

「これは、明石と夕張が製作した今回の作戦で使用する戦艦。「機動戦艦ネェル・ミネルバ」だ!」

 

 

 

機動戦艦ネェル・ミネルバ!!

 

 

 

その場に居たこの艦の存在を知るもの以外が、一斉に声を張り上げた。深海の説明は続く。

「この戦艦を使えば、後方からの支援砲撃、損傷したガンプラの戦闘中での整備と修復が出来るようになった。つまり、戦線維持が容易になると言うわけだ!」

ガヤガヤと騒ぎになる中、長門が切りだした。

「提督。戦線の維持と言ったが、それはどういう意味だ?」

「…そうだな。なら、今回の作戦のブリーフィングも今済ませておく。全員、よく聞いてくれ」

「了解した。みんな、静かにするんだ!」

長門の言葉に、ゆっくりとその場が静まり返っていく。それから1分くらい経つと、静寂が倉庫を包んだ。そして深海は話し始めた。

「今回の作戦は、敵…ガンプラバトルをこの世界から消そうとしている者の確保だ。奴は、自分勝手な思惑で、今あるこの平和を崩そうとしている」

「………」

白雪が小さく俯いたが、深海の話は続く。

「奴がいつ行動を始めるかはわからないが、襲撃場所の大体の目星は付けてある。恐らく奴の目標は、ガンプラバトル日本協会が所有している「プラフスキー粒子精製工場」だろう。そこを潰せば、ガンプラバトルは出来なくなるからな。だが、先にこちらが動けば目標を変えられる可能性もある。その為、奴らが行動を始めるまでに出来うる限りの準備をこちらもするつもりだ。このネェル・ミネルバもその1つ」

「で、アドミラル。この戦艦、誰が操艦するのよ?こんなデカ物を、まさか1人で動かす気じゃないでしょうね?」

「馬鹿言え。俺にそんな器用なこと出来ないし、俺は1人の方がいいんだ。こいつの操艦及び運用の適任者は既に決めてある。その人員を今から伝える」

そう言って深海は1枚の紙を取り出し、発表を始めた。

「まず艦の指揮…艦長は、扶桑。副長兼火器管制は山城だ。扶桑と山城は、MAの操縦に非常に詳しい。だから適任と判断した。任せたぞ」

「「はい!」」

扶桑と山城が、ゆっくりと首を縦に振った。

「次に艦の操艦は皐月が担当する」

「ええ!ボ、ボク!?」

唐突な深海の言葉に驚く皐月。しかし深海は小さな笑みを浮かべると言った。

「瑞鳳から聞いた。皐月、お前は1度だけ模型として作った「イサリビ」を動かしたことがあるそうだな」

「あっ!」

「イサリビ」とは、鉄血のオルフェンズに登場する強襲装甲艦だ。そしてその言葉を聞いた皐月は、今の今までそのことをすっかり忘れていたことを思い出し少しだけ恥ずかしくなる。

「この中で(ふね)を動かせるのはお前を除いて他にはいない。だからお願いしたい」

「私からもお願いだよ、皐月ちゃん」

すると、皐月の後ろに立っていた瑞鳳も皐月にお願いをした。皐月はほんの少しだけ考えていたが、やがて大きく首を縦に振った。

「うん!やれるだけの事、やってみるよ!」

「ありがとうな皐月」「ありがとう皐月ちゃん!」

「次に、レーダー・索敵、発進管制は赤城。ダメージコントロールは、明石と夕張が担当する。最後に損傷したガンプラの修復には、望月、飛龍、蒼龍、そしてここにはいないが武蔵が担当だ。勿論、異論があるなら言ってくれて構わないが…」

だが、深海のこの決定に異を唱える者はいなかった。すると深海は、全員に目配りし言った。

「では明日から、ネェル・ミネルバを交えての訓練に入る。今回の作戦で発生する戦闘、恐らくア・バオア・クー攻防戦のような多数を相手取る長期戦になるだろう」

「なるほど。それで戦線の維持、という訳か」

「そう言うことだ。各自、機体の予備パーツは多めに用意しておくように。以上だ」

ブリーフィングの内容を言い切った深海。すると深海は、さて。と小さく言うと―――

「今から全員でこのネェル・ミネルバを体育館まで運ぶ。準備してくれ」

倉庫が一瞬静まり返り、やがてそこには大声が鳴り響いた。

 

 

 

え‘‘え‘‘え‘‘え‘‘ええええぇぇぇぇぇぇー!!!!

 

 

 

 

続く



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EP92 大切な想いを

それから参加者全員がネェル・ミネルバを体育館へ運び込んだ。深海と力自慢の参加者以外はへとへとになっていたが、体力の残っているメンバーはそのまま体育館中にあったシステム台を1つに集めていった。

「はぁ…はぁ…な、なんで時雨はあんなに平気な顔してるっぽい?」

「な、なのです…そ、それに凄く生き生きしてるのです…はぁ…はぁ…」

両手を膝について息を整える電と夕立は、遠くで深海に引っ付いて作業を進める時雨を見て言った。

「ねえ深海!僕こっちから押すね!」

「ああ。行くぞ、しぐ…夜空」

「うん!頑張ろうね深海!」

そしてそれを遠くで見ていた山風は、少し困った顔を作っていた。

「時雨姉ぇ…凄い楽しそう」

するとその隣に立っていた空母水鬼が笑いながら言った。

「深空も行ってきなよ!深海のこと、好きなんでしょ?」

「う…うん」

山風は頬を赤く染めながら小さく呟いた。空母水鬼は山風の頭を優しく撫でた。

「ほら、行ってきなさい。夜空に取られちゃうよ」

「う…うん!」

そう言って山風は深海の傍へ歩いていった。

「み、深海兄ぃ…て、手伝いに…来た」

「深空か。なら、こっちの方を頼む」

「うんっ。頑張る…ね」

その様子を見て、空母水鬼はニコニコと微笑むのだった。

 

それからしばらく経って、体育館の中央に大きな1つのバトル台が出来上がった。六角形のバトル台をいくつもくっつければ、それだけ台の大きさも大きくなり同時にバトル出来る人数も増えていく。そして台の上には、先程のネェル・ミネルバが鎮座していた。

「みんな、ご苦労だった!明日から、ネェル・ミネルバを用いた訓練を始める。今日はゆっくり休んで明日に備えるんだぞ?」

深海がそう言ってその日は解散となった。セッティングをしたメンバーはそれぞれに話し合いながら、体育館を後にしていった。

「じゃあ深海、僕新しい機体作らないとだからまた明日ね!」

「ああ。夜更かしするんじゃないぞ?」

「わかってるって!」

そう言って時雨は体育館から足早に出て行った。

「私も電ちゃんに付いて行くから、後でね深海」

「ああ」

「むぅ…ちょっとそっけなくない?」

「はよ行け」

空母水鬼は最後の最後まで頬を膨らませたふくれっ面のままだった。すると山風が、深海の来ているシャツの袖を引っ張った。

「み、深海兄ぃ…」

「ん?どうした深空」

「み、深海兄ぃは…あたしと時雨姉ぇのこと、なんですぐに妹って割り切れたの?」

「…まぁ、お前たち2人が、そうなりたい。って思ったからだな」

「そ、そうなんだ………」

「……深空は、まだ慣れないか?」

「う、うん……」

「まあ、少しずつ慣れていけばいいさ。焦らなくていいからな」

「うん……あたし、部屋に戻るね」

「ああ。また明日な」

山風はそう言って体育館を出て行った。そして残ったのは先程ネェル・ミネルバを任されたメンバーと夕張と明石だった。深海は横目でネェル・ミネルバについて講習を受けるメンバーを見ながら、戻るか。と心で呟いて体育館を後にした。

 

翌日、作戦参加メンバー全員が体育館に集まると深海は作戦当日の部隊分けを発表していった。

「訓練に先立って作戦当日の部隊配置を通達しておく、まず敵陣を突破し施設内の深部への進行を目的とした部隊。敵陣突破A隊は時雨、夕立、駆逐棲姫、山風。B隊は陽炎、不知火、初月。C隊は加賀、瑞鶴、秋月。D隊はビスマルク、プリンツ、最上、綾波。E隊は金剛、比叡、榛名、霧島。以上5部隊が、敵戦線を突破し施設奥を目指す。総指揮はビスマルク、お前に任せたぞ」

「え、ええ!私に任せなさい!」

「私がフォローしますから、頑張りましょうビスマルク姉さま!」

「背中は任せたわプリンツ!」

ビスマルクとプリンツがやる気十分のやり取りを交わしていた。深海は続ける。

「次に戦線の維持を目的とした部隊だ。この部隊には戦線を維持し、ネェル・ミネルバの進行ルートの確保と遠距離での防衛を担ってもらう。戦線維持A隊は長門、天龍、龍田。B隊は木曾、島風、鈴谷、熊野。C隊は、三日月、長月、卯月、菊月。D隊は、ヲ級、リ級、ル級。E隊は、阿武隈、暁、響、雷。以上5部隊が、戦線の維持を行う。総指揮は長門だ、頼むぞ」

「ああ。任せておけ」

「次にネェル・ミネルバの近接防御、護衛を行う部隊だ。A隊は大鳳、川内、涼月、防空棲姫。B隊は大和、睦月、文月、涼風。C隊は伊勢、日向、北上、大井。以上3部隊がネェル・ミネルバの防衛に当たる。総指揮は大鳳だ」

「はい!しっかりやり遂げます!」

「最後に、独立戦闘部隊だ。これは先に言った部隊全部から独立しているから、名前がもう上がった奴は聞き流してくれ。この部隊は、俺、空母水鬼、電、白雪。この4人だ。敵陣突破部隊よりも最前線で戦うことになる…覚悟しておくようにな」

「なのです!」「はい!」「了解よ深海!」

「ではそろそろ、訓練を始める。準備を始めてくれ」

 

はい!

 

そうして全員が慌しく準備を始めた。すると白雪が、電に声を掛けてきた。

「電ちゃん。ちょっといいかな?」

「白雪さん?どうしたのですか」

「うん。電ちゃんにこれを渡しておこうと思って」

そう言って白雪はフレームのみのガンプラを電に見せた。全体がグレーで統一されている一見すれば何の変哲もないガンプラのフレームだ。

「これは…ガンプラのフレーム?」

「うん。私や、吹雪ちゃんが使ってる特殊なフレーム「深海フレーム」って言うんだ」

「深海…フレーム」

その言葉を聞いて少しだけビクッとする電。そして白雪が深海フレームについて話し始めた。

「あの研究所で生まれた強化兵士の為に造られたんだけど…深海細胞を持ってる人物がこのフレームを使うと、自分の思い描いた通りのガンプラを作り出せるの」

「……あ!だから、吹雪さんのガンプラが形を自在に変えれたんですね!」

「そう言うことになるね。そして電ちゃんの身体にも、私たちと同じ深海細胞が埋め込まれている。だから、このフレームを使えば――――」

「電は遠慮しておくのです!」

「え?」

電の返答に驚く白雪。しかし、電の顔はいつも以上にハキハキとした笑顔だった。そして電は答えた。

「確かに、そのフレームを使えば電はもっと強くなれるのです…でも、それ以上に――――」

電は遠くで準備に勤しむ時雨と夕立、暁、響、雷に顔を向け、言った。

「電をここまで導いてくれた時雨さんと夕立さん。家族でいてくれた暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん。そのみんなへの大切な想いを込めた自分の(・・・)ガンプラで――――」

 

 

 

電は、戦いたいのです!

 

 

 

電は笑顔を作りながらそう言った。その言葉に、電の決意と強い想いを感じ取った白雪はそっと深海フレームをしまい、そっか。と呟いた。

「じゃあ電は新しい機体の製作があるので、これで失礼しますね!」

「うん。一緒の部隊だから、よろしくお願いするね電ちゃん」

「なのです!」

そう言って電は駆けていった。1人取り残された白雪は、ポケットから取り出した純白と金色で彩られた「ガンダム・ホワイトボトムサウンド」を取り出して呟いた。

「大切な想いを込めたガンプラ…か…」

白雪はガンダム・ホワイトボトムサウンドをギュッと握りしめるんだった。

 

続く



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EP93 訓練開始

そして訓練が開始された。今回参加したメンバーは未だにガンプラが完成していない電、時雨、夕立、空母水鬼を除いたメンバーで一点集められた全てのバトル台を使った広域フィールドでのバトルに参加者たちは各々張り切っていた。

「よーし!鈴谷と熊野の実力、みんなに見せちゃうよー!」

「ええ!私も、本気で挑ませていただきますわ!」

「涼月が、ネェル・ミネルバをお護りしてみせます!」

「一応姉として、私も負けるわけにはいかないな」

「照月姉ぇも気合入ってるね。ボクも負けてられないな!」

「敵前線を姉妹の力で見事突破してみせるデース!」

「はい!いつでも防御の準備出来ています!」

「ええ!榛名がしっかりサポートしましょう!」

「さ、姉妹の頭脳として頑張りますよ!」

「よし!この長門、みなの期待に応えるとしようか!」

「Gun-pla Battle mission mode Stand up!Mode damage level set to C.」

バトルシステムが起動し、訓練の為にとダメージレベルがCに設定される。

「Please set your GP base」

参加者全員が一斉にGPベースを台座にセットする。扶桑たちはネェル・ミネルバの為に夕張と明石が製作した特別製のGPベースをセットする。

「Beginning Plavsky particle dispersal. Field 01 space.」

台座自体の大きさもあって、メンバー全員が見たこともない様な大量のプラフスキー粒子が舞い上がり、文字通り広大な宇宙空間と宇宙要塞ソロモンを作り出す。

「Please set your Gun-pla.」

一斉に台座にセットされるガンプラたち。システムがそれを読み込み、47機のガンプラのメインカメラが一斉に発光する。

「Battle Start!」

47機のガンプラと1隻の戦艦が発進体制に入り、そして一斉に出撃していった。

「黒野深海。ガンダムエクストリームアウェリアス、出るッ」

「長門。ケンプファージライヤ、出るぞ!」

「ビスマルク。GN-XV、出撃するわ!」

「大鳳。Hi-νトールギス、出るわよ!」

「プリンツ・オイゲン。パワードジムガーディアン、出撃します!」

「金剛。インフィニットバーニングラブガンダム、Take-offデース!」

「比叡。ガーディーフォビドゥンガンダム、気合っ、入れてっ、行きまーす!」

「榛名!ガンダムEz-AS、出撃します!」

「霧島。ブーストカラミティガンダム、出撃よ!」

「天龍。ジークイフリート、出撃するぜ!」

「龍田。ガンダムデスサイズHラストワルツ、出撃します」

「木曾。ガンダムアスタロト・Xバースト、出るぞ!」

「陽炎。ガンダムFX、出撃しまーす!」

「不知火。ガンダムⅩブルーメギド、出撃します!」

「加賀。ガンダムAGE-1エグゼバウンサー、出撃します」

「瑞鶴。ガンダムAGE-2ハルファス、出撃よ!」

「ヲ級。オギュルディアアストレイ・天星、出るよ!」

「リ級。ストライクディスティニー、出る!」

「ル級。レジェンディウスガンダム、行くぞ!」

「最上。デスティニーガンダムリベリオン、出撃するよ!」

「鈴谷。ユナイテッドザク・ウォーリア、いっくよぉー!」

「熊野。グフ・ユナイティッド、出撃しますわ!」

「島風。ガンダムウィンドジャスティス、出撃しまーす!」

「三日月。ガンダムバルバトスルプスレクスレイト、出撃します!」

「長月。ガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティ、行くぞ!」

「睦月!4代目睦月号・改、いざ参りますよー!」

「文月。文月・スーパースペシャルマンロディ、出撃ですぅ!」

「菊月。ランドマンロディ・改二、出る!」

「卯月。卯月号・改、出撃でぇ~す!」

「川内。影光式、出撃します!」

「秋月。ウイングガンダムゼロ・アランダイト、出撃です!」

「初月。ガンダムトライオークアンタ、出るぞ!」

「涼月。ガンダムサバーニャ・ハイスナイプ、出撃致します!」

「防空棲姫。ガンダムボークルス、出ます」

「駆逐棲姫。2.12ガンダム、出撃する」

「阿武隈。ハイマットスタービルドストライクガンダム、出撃します!」

「北上。ヘビーアームズZZガンダム、出撃します」

「大井。ガンダムドーベンアームズ、出撃します!」

「伊勢。ガンダム試作改3号機ステイメンMk-2、出撃します!」

「日向。ガンダム試作改2号機キリサリス、出撃するぞ!」

「暁。ハイペリオンガンダム・アカツキマスター、出撃しますッ!」

「響。ガンダム・スノーヴェールフェニックス、出撃する」

「雷。ガンダムハルートアーチャー、いっきまーす!」

「山風。ホロルドロッソ・イージスガンダム、行くよ」

「涼風。ジェッズネロ・ブリッツガンダムで本気見せたげるぅー!」

「大和。ドレットノートスターゲイザー、出撃です!」

「白雪。ガンダム・ホワイトボトムサウンド、行きます!」

そして、ネェル・ミネルバのメインエンジンが点火しその巨大な船体がゆっくりと動き始めた。

「機関始動、ネェル・ミネルバ発進します!」

「了解扶桑さん。機関始動、微速前進!」

ネェル・ミネルバは初めての戦場、広大な宇宙へと飛び立った。

 

発進した47機のガンプラは、まずネェル・ミネルバへ合流し対戦相手の出現を待っていた。すると、自分たちの視線の先にジムが1機出現した。

「ジム1機だけ?」

それを見たプリンツが不思議そうに呟いた。しかし、それも束の間の出来事だった。プリンツがそう言った僅か数秒後――――

「ええー!な、何よこの数は!」

視線の先に居た1機のジムの後方から、数えるのも嫌になる程大量のジムとボール、そして地球連邦軍の宇宙艦艇であるサラミスとマゼランがそれぞれ5隻ずつ出現した。

「ちょっ!アドミラル、これっていったいどういう事よ!?」

あまりにもの敵の大部隊に、深海に抗議するビスマルク。勿論、ビスマルクは艦娘時代にこれ程の物量差を感じたことはないし、見たこともない。しかし、深海は平然とした態度で答えた。

「生半可な訓練じゃ今回の作戦を成功させることは出来ないし、本番はもっと多いかもしれないんだぞ?機体へのダメージが入らないだけでも、ありがたいと思ってくれないか?」

「だ、だからって!いきなりこんな数相手…」

「なら、お前は降りろ。駄々をこねる大人は嫌いだし、お前はそこで指でもくわえて見てるんだな」

そう言って、両肩アーマー上部に可動式の伸縮型ビームキャノンと両前腕部にビームガンを追加装備した頭部に2本追加されたブレードアンテナを持つ深海のガンダムエクストリームアウェリアスは単機で大量の敵部隊へと突入していった。

「馬鹿にしてぇ…敵陣突破部隊、私のGN-XVに続きなさい!もたもたしてたら、置いてくわよ!」

自分を小ばかにされたビスマルクは、黒とグレーのツートンカラーで塗装された両肩アーマー上部に可動式のガンダムダブルオーダイバーエースの様な平らなGNスラスターコーンを組み込んだ大型のシールドを持ち、胸部と腰部フロントアーマーに設置された腹部を中心とするようにX字状に伸びる鋭利な形状のバインダーと、両太腿にGNバーニアとバックパックに可動式のGNバーニア2基を装備した、頭部にV字のアンテナを持つ自身の愛機「GN-XV」を敵部隊へと走らせた。

「ちょっと!待ってくださいビスマルク姉さま!」

そう言ってプリンツが、オレンジと白のツートンカラーで塗装された胸部に増加装甲を施され、両肩アーマー上部に5連装ミサイルポッドと両腕に大型シールド、両腰、両脹脛にグレネードランチャー、バックパックに大型ライフルと大型ガトリングガンと稼働アームに接続された2枚の大型シールドを装備したガンプラ「パワードジムガーディアン」がそれを追いかけていった。

「やれやれ…相変わらず、発破の掛け方がへたくそだな。提督よ……みんな!急いで持ち場に着くんだ!これもガンプラバトルを守るための訓練だ。行くぞ!前線維持部隊、この長門に続けッ!」

そう言って長門はメンバー全員に発破をかけ、自身の愛機である全身を黒系統の色で塗装したジオン機らしいずんぐりとした曲線装甲と右肩にはギラ・ドーガの様なスパイク付きの小型シールド、左肩には大きく反り返った角と計4つの鋭利なスパイク、下半身はヤクト・ドーガの様にずんぐりし、バックパック左右には武装コンテナを兼ねた大型のウイングバインダーを備えた、頭部に1本のグラビカルアンテナと側頭部に金色の稲妻模様が施された「ケンプファージライヤ」を先行していった。

「私たちも行きましょう、瑞鶴」

「わかったわ!ハイパーブーストで一気に距離を稼ぐから、加賀さんと秋月ちゃんは捕まって!」

「はい!わかりました瑞鶴さん!」

瑞鶴はそう言うと、メタリックブルーと黄色、白のトリコロールで彩られ、前面と背面、両部合わせて4枚の大型ウイングが取り付けられた12連装ミサイルポッドを追加した両肩のツインドッズキャノンと、バックパックにセイバーガンダムのアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲を装備した、長大なライフル「ハイパードッズマグナム」を持った「ガンダムAGE-2ハルファス」をストライダー形態に変形させた。ツインドッズキャノンが正面を向きウイングが大きく展開され、肩に背負うようにアムフォルタスを設置すると、下半身と足先を90度後方へ向け、胴体中央にハイパードッズマグナムを差し込み、ハイパードッズマグナム上部のカバーが頭部を覆うと、そこに加賀のガンプラである、全身を白一色で塗装された頭部に4本のV字アンテナを持ち、スラスターを内蔵した左右へ突き出した両肩アーマーと、Gエグゼスの様に整った下半身、バックパックに搭載された左右合計12基の小型スラスターバーニアを内蔵した大型バインダーとバックパック本体との間に取り付けられたビームサーベルのホルダーとしても機能している可動式スラスターユニット、長大なライフル「ドッズマグナム」とウルフ・エニアクルのパーソナルマークをイメージした先端に緑色のクリアパーツ刀身を持ったシールドを備えた機体「ガンダムAGE-1エグゼバウンサー」と、秋月のガンプラである柿色と白のツートンで塗装された右肩に稼働レールによって広い範囲を防御できるウイングガンダムフェニーチェリナーシタのシールドの様な鳥の顔をイメージしたシールドと、左肩にマウントされた折り畳み式の実体剣の刀身とビームの刃を持つ大剣を装備し、パーツを全て新品の物へと交換し修復された「ウイングガンダムゼロ・アランダイト」がしがみ付き、AGE-2ハルファスがその瞬間とてつもない速度で前線へと突っ込んでいった。

「私たちも長門さんに続きましょう!行きましょう長月!」

「ああ!援護は私に任せておけ三日月!卯月、菊月、行くぞ!」

「了解ぴょん!」「わかった」

そう言って三日月のガンプラ、全体的にバルバトスルプスの様な曲線の装甲と外見を持ち、両腕には200㎜砲とバックパックに、メイス、ソードメイス、ツインメイスの3種のメイスと、より鋭利で小型化した「テイルソード」を備えた白と黒、大型アンテナを銀色で塗装されそして両肩アーマー側面と胸部中央に月華団マーク、右肩に右曲がりの三日月のマークが施された「ガンダムバルバトスルプスレクスレイト」を先頭に長月の、ツインアイを常に展開し4本のブレードアンテナを備えた直線的な装甲を持ちスラスターを内蔵つつも小型化された両肩アーマーと、大型スラスターユニットを両脹脛に組み込んだ脚部とバックパックのスタビライザーに内蔵したサブアームを展開しそこに「200㎜ロングレンジライフル」を保持しメインアームには「200㎜ロングレンジビームライフル」を持ち、リアスカートにはセフティアリベイクフルシティから受け継ぎ、スラスターユニットを追加装備されたセフティアリベイクシザーシールドを懸架した薄茶色とダークグリーンのツートンで彩られた「ガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティ」、全身を赤一色で塗装された右肩アーマーの側面に大型バスターソード、左肩アーマーには縦軸回転するソードシールドを装備し、右腕側面に2本のヒートダート、左腕には機関砲とガントレットシールド、胸部両側面、両膝の前面と背面のバーニア、両脹脛のスラスターユニット、そして両腰のサイドアーマーとリアアーマーに懸架されたマガジンラックとアサルティットライフルを装備した、ガンダムを思わせるV字アンテナを持った卯月の「卯月号改」、白とグレーで塗装され、曲線を多用した丸い全身の装甲に、左肩に「デモリッションバスタードソード」左腕には大型のサブアームが装備され、右前腕部には展開式のアーミーナイフ、グレネードランチャーを装備したサブマシンガンを右手で保持し、両腰には3連装のパイルバンカーを持つ菊月の「ランド・マンロディ改二」が敵の部隊へと向かって行った。

「よしっ!私も負けていられないわね!ガンガンかかってらっしゃい!」

そう言って大鳳の、黒と白、赤のトリコロールで塗装された頭部に中世の騎士の様なトサカを持った胸部中央に円形のサーチカメラ、右肩にはメガビームキャノン、左肩にはCファンネルとヒートロッドを内装したシールド、そして、フィンファンネルを左右3基ずつの計6基を装備したバックパックを持つ「Hi-νトールギス」もネェル・ミネルバの直掩に着くのだった。訓練に参加した全機が一斉に敵の大部隊へと向かって行き―――

 

かつてない大激戦は始まった

 

続く



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EP94 最前線

たった1機で敵陣の中へと突っ込んでいった深海のエクストリームアウェリアスにジムとボール、サラミスと、マゼランが集中砲火を浴びせてきた。しかし、深海は焦ることなくエクストリームアウェリアスを操り、その全てを回避しヴァリアブルライフルの引き金を引きジムとボールを1機、また1機と撃ち抜いていく。

「流石に多いが、倒せない敵じゃない…アウェリアスウイング!」

バックパックの4枚のウイングから、アウェリアスウイングを全て射出した深海は、エクストリームアウェリアスを大量のビームが飛び交う中を飛翔させ更に敵機を墜としていく。その時オレンジ色のビームが1本、エクストリームアウェリアスの背後から近づいてきていたジムを撃ち抜いた。深海はそれに目を向けることなく、呟いた。

「やっと来たか」

「キィー!その、自分が正しいです。って言い方腹立つー!」

「ちょっとビスマルク姉さま落ち着いて……」

そこに現れたのGNビームライフルは撃ちながら接近してくるGN-XVと、ビームマシンガンを連射しながらサブアームのシールドを展開したパワードジムガーディアンだった。勿論戦闘中なので、深海はエクストリームアウェリアスの動きを止めることなく会話している。ヴァリアブルライフルが更にジムを撃ち抜き撃墜する。それに続くようにしてビスマルクもジムやボールを墜としていく。

「ふん!この程度の実力でこの私を墜とそうなんて、片腹痛いわ!」

「CP制御の敵に言っても仕方ないですよビスマルク姉さま…」

GN-XVとパワードジムガーディアンが互いに背中合わせの隊形を組む。ビスマルクとプリンツ、長い間を共に戦ってきた2人がお互いの背中を預け合うこの隊形は、行動範囲を狭めるも撃ち漏らしを極度に無くすことの出来る2人の必殺技の様な物だ。GN-XVとパワードジムガーディアンが回転しながら敵機の間を抜け、ジムとボールを撃ち抜いていく。

「ビスマルクさんたちはやらせないよ!」

そこに、赤とグレー、白で塗装された2枚のウイングユニットから光の翼を展開し残像を残しながら接近してくるリアアーマーに設置されたマウントラッチに折り畳まれた大型のビームソードとビームランチャーを懸架し、両肩アーマーには一対のビームブーメランを装備した4本のブレードアンテナとデュアルアイの目元に涙腺の様な模様が描かれた最上の機体「デスティニーガンダムリベリオン」が左腰からビームソード「アロンダイトカリバー」を抜き放ちジムを2機斬り裂いて現れた。

「やっと追いつきました!行きますよ鬼羅(キラー)エピオン!」

それに続いて現れた綾波の、白と深紅のツートンで彩られた両肩、両脚が角張った鋭利な形状をし、両膝には2本のビームサーベル発振刃を有した、X字状のバックパックと鬼羅サンドロックから使い続けている赤い耐ビームコーティングマントと、頭部の鬼の面を思わせるV字アンテナを持つ「ガンダム鬼羅エピオン」が柄同士を連結させ、緑色の巨大なビーム刃を形成した大出力のビームソードでジム2機、ボール2機の計4機を斬り裂き現れた。

「最上!綾波!」

「ボクたちも戦列に加わるよ!いっくぞー!」

デスティニーガンダムリベリオンがアロンダイトカリバー両手で保持すると、それを機体正面で突き出し光の翼を展開、アロンダイトカリバーを右上段に構えて敵機の群れへと突っ込んでいった。そして右上段からの袈裟斬り、その斬り返し、最後に右回転斬り、瞬く間にジム2機とボール1機を撃墜した。そして振り返りざまにマウントラッチを回転させて左腰から折り畳まれたビームランチャーを展開し、撃ち放った。赤色のビームがジム2機のコックピットを貫き撃破する。

「綾波も、負けていられません!」

鬼羅エピオンが、左肩アーマーにマウントされたパッセルビームブーメランの柄を左手で掴み、抜き放ってそのまま胸の前で振りかぶると2機のジムに向かってそれを投擲した。パッセルビームブーメランのビーム刃が2機のジムの上半身と下半身を分離し、爆発させる。すかさずその背後にいた敵機群に斬りかかった鬼羅エピオンはビームソードの合体を解き、両手に1本ずつを保持するとそれを一気に最上段から斬り降ろした。二振り分のビーム刃がジム3機ボール2機を斬り裂き、爆散させた。

「行くわよ瑞鶴!」

「わかったわ!秋月ちゃん援護お願いね!」

「任せてください!私の十八番、見せてあげます!」

ハイパーブーストで一気に前線へと駆け付けた加賀、瑞鶴、秋月もまた戦闘を開始した。捕まっていたウイングガンダムゼロ・アランダイトがAGE-2ハルファスから離れると、ダブルオーガンダムのシールドを両腕に装備したAGE-2ハルファスは横向きだったその腕を回転させ、シールド面が上を向くようにした。するとそこに、加賀のAGE-1エグゼバウンサーが乗り、手にしたドッズマグナムを構えた。

「そこっ!」

コンマ数秒、銃口付近にビームの球体が出現し次の瞬間、ビームマグナムの発砲音の様な轟音と共にドリル状に回転した紫がかった桃色のビームがドッズマグナムから撃ち出された。本物のライフル弾の様に回転し貫徹力が増しているドッズライフルの特性に、Eパック1基分のエネルギーが加わったそのビームは、瞬く間に密集していたジム5機の胴体を深く抉りながら貫通、更にビームの余波の影響を受けて近くにいたボール3機が巻き添えをくらって爆散した。

(威力は凄いけど、残りのEパックが14発分しかないとなるとやっぱり通常モードで使うのが良いみたいね!)

「全弾発射!」

それに続いてAGE-2ハルファスがアムフォルタス、ツインドッズキャノン、ハイパードッズマグナムの銃身下部に設けられた1門のビームバルカンを次々に撃ちまくった。接近しようとする数々の敵機がそれによって撃ち抜かれ、爆散していく。

「私も負けていられないですね…撃ち漏らしは私に任せてください!」

「お願いね秋月さん!」

AGE-1エグゼバウンサーを乗せたAGE-2ハルファスの後をツインバスターライフルを分離し両手に保持したウイングガンダムゼロ・アランダイトが追いかけ、2機の撃ち漏らしをツインバスターライフルで撃ち抜いていく。敵陣の中をAGE-1エグゼバウンサー、AGE-2ハルファス、ウイングガンダムゼロ・アランダイトが駆け抜けていく。

「私たちも行くぞ山風。遅れるな」

「う、うん……」

そこにハイブラストモードの2.12ガンダムと、突撃形態のホロルドロッソ・イージスが加わった。2.12ガンダムはハイブラストモードを維持したまま高機動戦闘を開始。右肘のGNビームサーベルを抜き放ち、敵陣の中をGNダブルバスターライフルの連続射撃を交えながら左右への斬り払いでジムとボールを1機ずつ確実に撃破していく。

「モードチェンジ!ハイブラストtoネオスタンバイ!」

駆逐棲姫の掛け声で、バックパックの4枚のウイングバインダーが元の形態へ戻ると、各2枚ずつ左右の肩アーマーを少し覆うようにして集まった。そして、更に駆逐棲姫が続ける。

「モードチェンジ!ネオスタンバイtoアタック!」

2.12ガンダムがGNダブルバスターライフルを前方へ構えるのと同時に、右肩に集まっていたウイングバインダーが銃身に沿うように正面を向き、バインダーとバインダーの間に紫色のプラズマが走ると駆逐棲姫はGNダブルバスターライフルの引き金を引いた。

「一掃する!」

2枚のウイングバインダーによって高出力化されたGNダブルバスターライフルのビームが太い一筋のビームとなり、正面にいた数十機のジムとボールを一掃した。ビームに飲み込まれた敵機が次々爆発し、ビームが通り過ぎた道を覆う。

「今なら変形できる!」

その隙を突いた山風は、ホロルドロッソ・イージスの変形を解き、人型形態へ移行した。右腰のバインダーにマウントされたビームライフルを右手に保持し、上空から自機に向かって突っ込んでくる敵機を迎撃していく。更に振り返って、後方から接近してきたボール3機を撃墜し山風は敵陣の更に奥、深海の居る所へ向かって行った。

「深海兄ぃ!」

「待て山風!」

しかしそれを駆逐棲姫が収めた。

「私も一緒に行く。1人で突っ込むのは止めておくんだ。いいな?」

「う、うん!」

2.12ガンダムと、ホロルドロッソ・イージスは敵機を撃破しながら前線の奥を目指し敵陣を突っ切っていった。

「さあ突撃デース!みなさーん!付いてきてくださいネー!」

そう言った金剛の、発光パーツを備えた左右に大きく突き出した両肩アーマーと、両腕の分厚い手甲、丸みを帯びた下半身と膝部の発光装甲と両脹脛にはスラスターユニット、バックパックにアストレイレッドフレームのフライトユニットを備えた、頭部に燃え盛る炎を連想させる6本のブレードアンテナを持つガンプラ「インフィニットバーニングラブガンダム」を先頭に

「お姉さまには指一本触らせません!」

背部の円形状バックパックを頭部に被り、その両端にアームを介して装備された楕円形のシールドと、両膝からもアームを介して接続された同型のシールドである「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」を展開した手に大鎌を持つ薄緑と深緑、ダークグレーで塗装された比叡のガンプラ「ガーディーフォビドゥンガンダム」

「バックアップは榛名にお任せを!」

平面を多用した全身の装甲と、両肩アーマー前面、胸部中央に円形のセンサー、フレキシブルに稼働するスラスターを4基搭載し、右腕にはスナイパーライフルタイプの長銃身のビームライフル「カスタムスナイパーライフル」左腕には短銃身の「カスタムビームライフル」とレドームとシールドが合わさった「レドームシールド」を装備したグレーと白で塗装された榛名のガンプラ「ガンダムEz-AS(アサルトスナイプ)

「火力を前面に打ち出して、道を作ります!」

腹部で下半身を後方へ折り畳んで、胸部上面に2門の砲身を持つ鋭利なシールドをマウント、肩越しに前方を向く2門のビーム砲と、両膝にマウントされた2丁のビームライフルが特徴の紺とオレンジ、グレーで塗装された霧島のガンプラ「ブーストカラミティガンダム」の4機が続いて戦線に加わった。

「全砲門、敵を追尾して―――撃てッ!」

まず最後方にいたブーストカラミティがシールドにマウントされたビーム砲「ケーファー・ツヴァイ」肩越しに伸びるビーム砲「シュラーク」そして両膝にマウントされたビームライフルを一斉射した。全6門のビームを連射し、前方に群がるジムとボールを次々撃ち抜いていく。

「目標ロックオン!撃ちます!」

編隊から離脱したガンダムEz-ASがカスタムスナイパーライフルの銃身左側にカスタムビームライフルを接続し、1機、また1機と撃ち抜いていく。

「お姉さまの道を開くためにも、負けません!」

戦列の先頭に出たガーディーフォビドゥンが4枚のGパンツァーで、ジムのビームスプレーガンを歪曲させてどんどん前線を上げていく。そして痺れを切らした数機のジムが突出してきたところに―――

「私の出番ネー!」

インフィニットバーニングラブガンダムが飛び出し、炎を纏った拳で突出してきたジムを粉砕していく。そこにすかさずガーディーフォビドゥンがカバーに入って防御を取り、ブーストカラミティとEz-ASが周囲の残敵を掃討。

「さあ!ドンドン戦線を上げますヨー!」

「「「はい!」」」

4機のガンプラは更に戦線を押し上げていく。

 

その頃、鎮守府本庁舎の旧執務室では―――

「やったやったやった!これで完成だよ!」

「………!」

「白も、やったね!って言ってる」

「な、何か…我が妹ながら、凄いって思うよ」

秋雨たちが何かを作っていた。そしてそれを完成させ、互いに喜び合っていたのだ。

「じゃあ!早く早く早くおばあちゃんに持って行ってあげよう!」

「結構、重そう…」

「4人で運べば大丈夫じゃないかな?」

「………!」

「早く持っていこっ!って白が言ってる」

「……う、やっぱりちょっと重い」

「お姉ちゃん、頑張って」

そう言って4人は完成した「それ」を運んでいった。

 

続く



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EP95 激戦

戦闘が始まって5分が経過した。体育館中央のバトルシステム台では、数多の爆発と銃撃が所狭しと飛び交っていた。それを体育館の隅で見ていた空母水鬼が一言呟いた。

「皆、凄いなぁ~あんな数の敵にも勇敢に立ち向かって行くんだから……深海も…深空も…」

そして小さく項垂れた。

「昔は…私が深海を守ってた…もう、逆転しちゃったんだね…」

空母水鬼が、最前線の只中でジム、ボールを相手取るエクストリームアウェリアスを見た。軽やかな高速機動とアンバックで次々に敵機を墜としていく。それを見た空母水鬼が、小さく笑みを浮かべたが、目は少し物悲しそうだった。

「深海がたくましくなって、私…嬉しいよ……でも、深海が遠くに行っちゃったみたいで…」

 

私、悲しいなぁ

 

空母水鬼の瞳から小さな涙が一粒零れた、その時だった。

「おばあちゃん!」

体育館の入り口を背に向けていた空母水鬼の背後から、秋雨が声を掛けた。気が緩んでいて秋雨たちの気配を読み取ることの出来なかった空母水鬼は、ひゃあ!と声をあげて驚いた。

「おばあちゃん、ビックリした?」

梅雨葉が空母水鬼を見上げて言った。空母水鬼は苦笑いしながら梅雨葉に、ビックリしちゃった。と告げた。すると雨葉が元気よく言った。

「あのねあのねあのね!おとーさんに頼まれて、おばーちゃんのガンプラ作ってたの!それでそれでそれで!完成したから持ってきたんだよ!」

「え……私の…ガンプラ?」

空母水鬼はその時初めて、秋雨たちが持っていたもの(・・)に気づいた。中央の、下半身を覆うように大型のブースターを装着し、腰部フロントアーマーに大口径のハイメガキャノンを装備した肩越しにエクストラパックを装着したナラティブガンダムE装備を挟み込む様にナラティブガンダムE装備が握るグリップが取り付けられた頂点が下を向いた三角形の棒と、その根元部分に三又のクローの様なパーツ、更にその後部には6つの五角形状の小型コンテナ、そしてその下部に6基の大型プロペラントタンクを装着した。とても大きなガンプラ。

「うん!雨葉たちみんなで作ったんだ!おばーちゃんの為のガンプラ――――」

 

 

 

ナラティブガンダムAB装備ッ!!

 

 

 

「ナラティブガンダムAB装備……」

「………!」

「武装は多いけど、空母水鬼なら大丈夫。って白が言ってる」

「………みんな」

空母水鬼は秋雨たちからナラティブガンダムAB装備を受け取った。秋雨たちが4人がかりで運んだそれを、空母水鬼は両手で大切に持ち上げた。

「ありがとうね。秋雨ちゃん、梅雨葉ちゃん、雨葉ちゃん、白ちゃん」

空母水鬼はかわいい孫たちに満面の笑みで応えた。秋雨たちも、満足した様な表情で笑っていた。すると、秋雨が何かを思い出しポケットに手を突っ込んだ。そして、桜の花のアクセサリーが付いた桜色のブレスレットを空母水鬼に手渡した。

「はい!これ、おばあちゃんにあげる!」

「これは…桜の花が付いた…ブレスレット?」

「うん。梅雨葉たちで作った」

「ガンプラバトルが、上手に上手に上手になるってお守りだよ!」

「桜の花はお父さんが付けたんだ!おばあちゃん、桜の花が大好きだからって!」

「深海……」

深海の計らいと、孫たちの思いやりに思わず涙が零れそうになった空母水鬼。しかし、今度は何とか耐え、そのブレスレットを腕に通した。そして秋雨が、空母水鬼のデータ登録が既にされているGPベースを空母水鬼に手渡した。

「おばあちゃんのGPベース、もう登録は済ませてあるから頑張ってね!」

「ありがとう!じゃあ私、頑張ってくるから!」

秋雨たち全員が、うん!と答えたのを確認して、空母水鬼はバトル台へと向かった。

 

「行くぞ!ここで戦線を維持する!」

戦線突破部隊に釣られなかったジムとボールが戦線維持部隊とぶつかった。その中でも、部隊全体を鼓舞する長門のケンプファージライヤが、その火蓋を切った。右前腕部に格納されたビームサーベルを抜き、シナンジュのビームライフルと同形状のビームライフルで迫る敵機を撃ち落としていく。そして接近を許せば、すかさずビームサーベルでそれを切り捨て部隊を奮起させるため、長門は常に部隊の最前線に立っていた。

「長門にばっか、良いかっこさせられねぇなぁ!行くぞ、龍田!」

「了解よー」

同じく長門の部隊である天龍の、黒と金色で塗装されたヒートダートをそれぞれ4基ずつ装備した鋭利な肩アーマーと膝から下を高機動型ザクⅡ後期型の物にした、両腰にはヒートサーベル、ビームシールドを装備した両前腕には展開式の大型実体剣ヒートトンファ―、脹脛の左右にはビームサーベルのホルダーを装備した。ビームライフルを主軸に、下部にイフリートのショットガン、左側にはサブグリップを兼ねたグレネードランチャーを装着した「ビームライフルショットガン」を保持したガンプラ「ジークイフリート」と、ビームの刃を持つ大鎌を持ち、コウモリの様な大きな翼を背面に備え、肩口にはマシンキャノン、胸部中央には丸形のセンサー、両腰部にはスラスターを兼ねたバインダーと、両脚先のビームサーベル発振機能が付いた爪を持つ、白と金、グレーで塗装された龍田のガンプラ「ガンダムデスサイズHラストワルツ」が長門を追って戦線に加わった。

「オラオラァ!天龍様のお通りだぁー!」

そう言った天龍は早々にビームライフルショットガンをリアアーマーのマウントラッチにマウントすると、ヒートサーベルを抜きヒートトンファ―を展開し敵機に斬りかかった。接近してきたジムの懐に飛び込み、縦に真っ二つに斬り裂き、背後に回り込んだ敵機も振り返りながら上半身と下半身を分断させた。そして、ジムとボールの弾幕を急上昇で回避し頭部のバルカンをばら撒きながら撃ちまくった。

「龍田っ!」

「りょうか~い」

そこへデスサイズHラストワルツのバックパックから黒い三又の形状をしたGNファングをベースにしたオールレンジ攻撃端末「ホロウファング」を展開しながら現れた。手にした大鎌「ビームデスシザース」を横一文字に切り払った。一気に3機のボールを両断し、周囲に居たジム4機のコックピットを貫通した。

「よっしゃ!次行くぞ!」

「はいは~い!」

天龍と龍田は次の目標を目指して飛翔した。

一方別の戦線では三日月たち月華団のメンバーが敵機を墜としながら前進を始めていた。三日月のバルバトスルプスレクスレイトがツインメイスとテイルソードで敵機を弾き飛ばし、そこにガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティが200㎜ロングレンジライフルと200㎜ロングレンジビームライフルを撃ち込んで撃破、取りこぼしを卯月と菊月が接近戦にて対処していく。三日月が2機のジムをテイルソードで串刺しにすると、それを後方へと投げ飛ばし、ビームサーベルを構えてきたジムに対しても攻撃を回避してツインメイスを叩きつけて行動不能にしたのを後方へと弾き飛ばしていく。

「もう2機送ります!長月、お願いしますね!」

「ああ、任せろ!」

ツインメイスで行動不能にされたジムをガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティの200㎜ロングレンジビームライフルが撃ち抜く。ランド・マンロディ改二がデモリッションバスタードソードでボールを粉砕し、その後方から卯月号改が青色ラインの入ったマガジン「貫徹弾」をセットしたアサルティットライフルを撃ち放っていく。貫徹弾はジムとボールを容易く貫通していき、爆散させていった。

「やっぱり、三日月が最前線にいると安心して戦えるぴょん!」

「ああ。だが、私たちも負けてはいられないな」

「勿論ぴょん!」

「ボサっとするな菊月、卯月。置いていくぞ!」

「今行くぴょーん!」「すまない。今行く」

バルバトスルプスレクスレイトを先頭に4機は更に敵戦線へ切り込んでいく。

「んじゃ、パパッと片付けちゃうよー!」

また別の戦線では鈴谷のガンプラである、薄緑と、緑、胸部中央を黒色で塗装され、右肩側面には1本の衝角を備え、上部にはデュエルガンダムアサルトシュラウドの可動式レールガンである「シヴァ」を左肩には3つの打突用のスパイクを備えたシールドを持ち、左腰にはビームの刃を展開できる実体剣「レーザー重斬刀」、両脹脛には12連装のミサイルポッドを備え、ブレイズウィザードに76㎜重突撃機銃のマウントパーツを取り付けた「ユナイテッドウィザード」を装着して、右手にビーム突撃銃、左手には76㎜重突撃機銃を装備した「ユナイテッドザク・ウォーリア」を先頭に

「さあ!行きますわよ!」

熊野の、オレンジと薄橙で「ハイネ・ヴェステンフルス専用グフイグナイテッド」をイメージしたカラーリングをした両前腕に4連装のビームバルカンと両腰にスラスターユニット、両脚部には高機動型ザクⅡ後期型のバーニアスラスター、そして稼働翼とビームキャノンが追加された高機動バックパック「ユナイティッドウィザード」を備えた「グフ・ユナイティッド」と

「おい!あまり前に出過ぎるな!」

木曾の全身を黒とダークグレー、左肩や足元などの各所に紺色で塗装し、4本のブレードアンテナと右肩にはザクⅡのシールド、円形の左肩にはビームブーメランをマウントし、両腰にはベース機のスラスターユニット、足先の短くなった脚部にはヒートダガーを内蔵し、前身機から引き継いだX字状のバックパックとABCマントを羽織ったザンバスターを装備した「ガンダムアスタロト・Xバースト」

「島風が一番槍もらうんだからー!」

白とグレー、灰色で塗装された中世の騎士を思わせる肩アーマーと、がっしりした下半身と左腰にはサブウェポンのロングソードを模した剣「ウィンドソード」と、バックパックに装着可能な「ファトゥム-01ナイト」に乗ってガンダムイージスナイトの持っていたランスよりも大型な突撃槍「メガヒートランス 「テンペスタート」」を構え小型な六角形のシールドを装備した「ガンダムウィンドジャスティス」が続いていた。とても対列が組めているとは言えないが、しかし先頭のユナイテッドザク・ウォーリアはビーム突撃銃と76㎜重突撃機銃、そしてシヴァを連射しボールを撃ち抜いていく。そして、その間を縫うようにグフ・ユナイティッドが接近戦を仕掛け、4連装ビームバルカンで牽制を掛けながらテンペストビームソードで敵機を1機ずつ、確実に撃墜していく。

「島風も負けないよー!」

そう言って島風もガンダムウィンドジャスティスを乗せたファトゥム-01ナイトのスラスターのパワーを更に上げ、テンペスタートを構え敵陣へと突っ込んでいった。ヒート化されたテンペスタートにファトゥム-01ナイトの超高速が加わり次々にジムとボールを穿っていく。

「やれやれ…俺も負けていられないな!」

そして木曾のガンダムアスタロト・Xバーストも迫りくる敵機を切り裂いていった。ビームザンバーとバスターガンを使った木曾が最も得意とする戦法で部隊の他の3機に後れを取らないような速度で敵機を撃破されていく。

「熊野!例のアレ、いっくよー!」

「了解ですわ鈴谷!行きますわよ!」

そして、グフ・ユナイティッドがバックパックを射出した。そのバックパックはユナイテッドザク・ウォーリアに向かって飛んでいくと、ユナイテッドザク・ウォーリアは76㎜重突撃機銃を側面にマウントしたユナイテッドウィザードをパージした。

「よっしゃ!軸線りょーこー!」

そしてザクウォーリアのバックパック接続コネクターにユナイティッドウィザードが接続され―――

「こちらもよろしくてよ!」

ユナイテッドウィザードが、グフイグナイテッドのバックパック接続コネクターに装着された。

「ユナイティッドザク・ウォーリア、いっくよー!!」

「グフ・ユナイテッド、行きますわ!」

高機動性を手に入れたユナイティッドザク・ウォーリアが今度は敵機に斬り込み、火力を手に入れたグフ・ユナイテッドが、後方から76㎜重突撃機銃と、4連装ビームバルカン、ファイヤビー誘導ミサイルを全弾発射し、火力支援を開始した。

そして、その近くの戦線ではヲ級の駆る、白と金色で塗装された胸部中央に黄色のクリアパーツを備え、左右へ大きく突き出した金色の肩アーマーと、バルバトスルプスのような曲面を多用した装甲とヒール状の脚部、そして前身機から引き継いだゴールドフレーム・天のバックパックを持った金色のV字アンテナと後方へ湾曲するように伸びたアンテナを持つ「オギュルディアアストレイ・天星」を先頭に、リ級の黒と濃い藍色で塗装された腹部にビームキャノン、左腕には以前まで使用していたドラゴンハング、右肩にはAGE-2ダークハウンドのウイングバインダーをそのまま使用したシールドとアンカーショットを装備し左腰には前身機の大剣の鞘として使用するホルダーがマウントされたストライクガンダムの様な下半身を持つリバウとエールストライカーを組み合わせたようなバックパックを持った黄色のV字アンテナを持つ「ストライクディスティニー」と、ル級の黒とダークグレー、黒みがかった深紅で彩られた、大きく横へ突き出した両肩アーマーと、丸みがかった装甲形状をした脚部、左前腕を覆うように装着したビームシールドとビームサーベル、2連装ビーム砲が合わさったプロヴィデンスガンダムの複合兵装防盾と長銃身のビームライフルを右腕に装備し、円盤状のバックパックにレジェンドガンダムの大型ドラグーンを最上部とバックパックに埋め込まれた物を合わせて4基、小型ドラグーンをバックパック左右に5基ずつ、腰部サイドアーマーに計4基、リアアーマーに計2基の、総計11基を装備した、4本のブレードアンテナを持った「レジェンディウスガンダム」が戦闘を開始していった。

「リ級、ル級!ヲ級が先行するヲ!しっかり付いてきてよね!」

「ああ、取りこぼしは私に任せろ!」

「ル級、任せたぞ。火力支援、頼むぞ!」

「よーし、行くヲ!Xファング、展開!」

ヲ級のオギュルディアアストレイ・天星が前腕内側のサーベルホルダーから2本のビームサーベルを抜くと、腰部左右のアーマーからXファングを射出した。二刀流で次々に近場のジムを撃墜していきながら、少し遠くの敵をXファングで撃破していく。それに続くように、ストライクディスティニーがドラゴンハングを射出、1機のジムを圧壊させ、その隙に大剣を両手で握り、右下から一気に反対方向へ薙ぎ払う。3機のボールがまとめてスクラップになって破壊され、そこにレジェンディウスガンダムの小型ドラグーンがビームを撃ち込み完全撃破する。

「良い連携だヲ!この調子で行くヲ!」

「おう!」「ああ!」

3機は敵機を撃破しながら戦線の更に奥へと進む。

一方、長門たちの空域からほど近い戦場では阿武隈の、青と赤、白のトリコロールで前身機よりも小型化したスラスターを内蔵した両肩アーマーと、腰横にビームサーベルをマウントしたクスフィアス3レール砲を装備したスマートな脚部、ビルドストライクガンダムのビルドブースターを形状をそのままに特殊機能を追加したバックパック「ハイマットビルドブースター」を装着し、胸部から後方へ向かって伸びるウイング状の「ハイマットスラスター」と、ビームを吸収しエネルギーに変換できる機能を持ったシールド「アブソーブシールド」を持った「ハイマットスタービルドストライクガンダム」

全身を金色に染めた、バックパックにハイペリオンガンダムのアルミューレ・リュミエールを装備したバインダーを持ち、両肘、両腰横、リアアーマー、両脹脛外側に「オールレンジビームシールド」を各所2基ずつ装備し、両手首にはビームシールド、右腕に試製双刀型ビームサーベルを内蔵させた「ヒャクライ・スティグマトカスタム」を装備した暁の「ハイペリオンガンダム・アカツキマスター」

白と淡い金色で塗装された、頭部に金色の大きなトサカ状のアンテナと大型V字アンテナ、白色のV字アンテナを持ち、ウイングガンダム(EW版)を思わせる両腕と、曲線を多用した脚部装甲と爪先に金色の爪が施されたヒール状の脚、鳥の顔を思わせるシールド、そしてウイングガンダムゼロ(EW版)の純白の翼を持つバックパックを装着した響の「ガンダム・スノーヴェールフェニックス」

オレンジと白のツートンで彩られた、緑のGN粒子を舞わせながら飛ぶ、大きく突き出した両肩アーマーを持ち、腰部から接続されるバックパックは中央には飛行形態時の機首部と尾部となるGNミサイルコンテナを装備し、それを挟み込む様に先端にGNビームキャノンを内蔵した大型サイドバインダーを左右に持った、両膝とサイドバインダー上部に固定式のGNソードライフルを装着した4本のブレードアンテナが特徴の雷のガンプラ「ガンダムハルートアーチャー」の4機がそれぞれ攻撃を開始していた。

「オールレンジシールド、僚機防御モードで展開!AL(アカツキ・リュミエール)起動!」

ハイペリオンガンダム・アカツキマスターが、両肘、両腰横、リアアーマーからオールレンジシールドをパージし、僚機であるガンダム・スノーヴェールフェニックスとガンダムハルートアーチャーにそれぞれ3基ずつを展開させ、バックパックのバインダーを正面に向けて先端と側面、バックパック基部中央の合計5基のビームシールド発生器を展開し、球体上のビームシールドを展開した。そして、ヒャクライ・スティグマトカスタムを乱射し次々に敵機を撃破していった。

「見つからずに侵入するのが私の十八番だけど…今回はむしろ見つかってもとってもオッケーなんだよね!」

ハイマットスタービルドストライクガンダムはアブソーブシールド中央にある開閉式のハッチを開いて正面に構え、ジムの集団へと突っ込んでいった。ジムは手持ちのビームスプレーガンで応戦したが、元々ビームを吸収しエネルギーに変える役割を持つアブソーブシールドを装備したハイマットスタービルドストライクガンダムにとってはありがたい攻撃である。ビームが次々アブソーブシールドに吸収され、阿武隈の視界右端にあるエネルギーメーターがどんどん溜まっていく。

(よーし、これだけ溜まれば…)

阿武隈が武装スロットの中から「SP」を選択した。

「エネルギーディスチャージ!ハイマットスターモード起動!!」

ハイマットスタービルドストライクガンダムのメインカメラが淡く輝き、胸部から伸びるハイマットスラスターの表面と、ハイマットビルドブースターの主翼の間からストライクフリーダムガンダムの光の翼の様な青白い光が溢れだした。そして、それに応じるかの様に腰部フロントアーマー中央から青色の粒子が溢れ出ると機体の正面を覆った。

「いっくよー!」

ハイマットスタービルドストライクガンダムはその状態で更に敵深く突っ込んでいく、ジムとボールの射撃攻撃はハイマットスタービルドストライクガンダムの正面を覆う青い粒子の膜に触れた瞬間打ち消された。ハイマットスタービルドストライクガンダムはビームライフルを放ちながら、1機、また1機と敵機を撃墜していく。そしてその後方から、ウイングガンダムゼロ(EW版)のネオバード形態を思わせる主翼を左右に、副翼を上方へ伸ばし、バックパック中央にツインバスターライフルを左右にマウントしたシールドを装着し、ヒール状の脚部を折り畳み、腰部を180度回転させた「スノーフェニックス形態」に変形したスノーヴェールフェニックスと、ベース機の変形機構をそのまま踏襲し、腰部中央の機首部を頭部に被り、胸部の装甲を上面に向け足先を折り畳んで脚を延ばし両膝とサイドバインダーに取り付けられたGNソードライフルを後方へ向けサイドバインダー左右に手持ちのGNソードライフルを取り付けた変形をしたガンダムハルートアーチャーが、射撃武器を連射しながら飛翔していった。

「敵陣を突破する!行くよ、雷!」

「了解よ!正確な乱れ撃ち、見せてあげるわ!」

そして、変形した2機はツインバスターライフルと、GNソードライフルとGNビームキャノンを乱れ撃ちながら敵陣を駆け抜けていった。

 

そして、バトル台の一角そこにはナラティブガンダムAB装備を抱えた空母水鬼が立っていた。彼女の左手首には孫たちから貰ったブレスレットが揺れていた。

「今度も、私が深海を……ううん――――」

 

 

 

 

深海も、夜空も、深空も、みんな守ってみせるんだから!!!

 

 

 

 

空母水鬼はGPベースをセットし、続いて台座にナラティブガンダムAB装備をセットした。メインカメラが緑に輝き、本体が少し浮き上がる。カタパルトに両足をセットできないナラティブガンダムAB装備は戦闘機型のMAを発進させる方式で発進準備に入った。そして――――

 

 

 

 

空母水鬼。ナラティブガンダム、行きます!

 

 

 

 

背部のプロペラントタンクのブースターや脚部を丸々覆っているスラスター、エクストラパックのスラスター全てが一斉に火を噴き、ナラティブガンダムAB装備は高初速で撃ち出された弾丸の様に戦闘宙域へと出撃していった。

 

続く



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EP96 防空戦と突入

ネェル・ミネルバの近辺でも、戦闘が始まった。戦線維持部隊の展開する防衛線でも流石に穴が開いている部分は存在する。そしてそこを縫うように多数のジムとボールがネェル・ミネルバへと迫ったのだ。

「山城、ネェル・ミネルバの全砲門を開いて!対空、対艦、対MS戦闘用意!」

「了解お姉さま!CIWS、主砲1番2番3番起動。副砲は防空戦闘に設定、艦首ミサイル発射管、両舷ミサイル発射管、対空ミサイル装填!」

「陽炎さん、サテライトキャノンの方はどう?」

「いつでもいけるわ!敵戦線に風穴を開けてあげる!」

ネェル・ミネルバの正面、そこには両肩の上と両脇下から4門の長銃身のビーム砲「フォースサテライトキャノン」を前方へ展開した、両前腕と両脹脛の放熱板と、バックパックのX字状のバインダー、放熱板を格納するための装甲にも装備されているそれぞれが左右を向いてV字に展開するバインダーを全て金色に発光させた、赤とダークグレー、白のトリコロールで塗装されたガンダムダブルエックスと同じアンテナを持つ陽炎のガンプラ「ガンダムFX(フォースエックス)」が陣取っていた。その付近には、青とメタリックライトブルー、白のトリコロールで塗装されたガンダムX魔王の様にV字状に折り畳まれたバインダーをバックパックに備え、両肩正面と胸部中央には円形のサーチカメラ、腰部の両サイドアーマーにはケーブルで繋がれた大型ビームソードをマウントし、両膝から爪先にかけてビームサーベルを発振出来る「グリフォンビームブレイド」、そしてウイングガンダムゼロの様に頭部のサブカメラと一体化した4本のV字アンテナを持つ不知火のガンプラ「ガンダムXブルーメギド」と、とてもスマートな曲面を多用した装甲を全身に纏った胸部中央に円形の発行装甲を持ち、腰部サイドアーマーに4基のAタイプGNソードビットを装着し、バックパック中央にGNスラスターコーンとバックパック本体からダブルオーガンダムの様なコネクターを備え、その先にはダブルオーダイバーエースのバインダーマウントラッチに「GNソードⅣフルセイバー」を1基ずつマウントした青と赤、白のトリコロールで彩られた初月のガンプラ「ガンダムトライオークアンタ」が控えていた。

「陽炎、角度チョイ上げした方がより効果的になりますよ」

「了解よ不知火!流石、良い索敵能力ね!」

「ボクはいつでも突撃できる。発射のタイミングは任せるよ陽炎」

「それじゃあ発射するわ!赤城さん、全部隊に射線上からの退避勧告を!」

「了解ょ―――ちょっと待って!後方から、高熱原体が接近してきてるわ!」

赤城の言葉に、防空を任されていた全員が驚きの声をあげた。そして、それは流星のように現れた。

 

 

うおおおぉぉぉー!!!

 

 

空母水鬼の駆るナラティブガンダムAB装備だ。ナラティブガンダムAB装備は、その大推力を生かしとてつもない速度であっという間にネェル・ミネルバを追い抜き、敵戦線のど真ん中へと突っ込んでいった。

「す、凄いスピードッ!でも、秋雨ちゃんたちに応えるためにも乗りこなしてみせる!」

ナラティブガンダムAB装備は五角形状のコンテナの正面パーツを排除し、5発の中型ミサイル合計10発を発射し、頂点が下を向いた三角形の筒の表面に収納されたビームガン内蔵サブアームを展開しそれを乱射、筒の先端からとエクストラパックの大型ビーム砲からビームを発射して、根元の三又のクロー表面に備わった開閉ラッチからガデラーザの小型ファングと似た形状のオールレンジ攻撃端末「ABファンネル」を射出し、圧倒的火力を見舞いながら戦線奥を目指した。

「な、なに?あのガンプラ……」

「陽炎。今撃てば、あの機体に直撃します。発射は中止して、こちらも戦線に加わるべきです」

「あーもう!仕方ないわ、行くわよ2人共!」

ガンダムFXは即座にフォースサテライトキャノンの発射を取りやめ、機体を通常形態へと戻した。各部のバインダーを折り畳み、フォースサテライトキャノンの砲身を縮小させてバックパックでX字状になるように収納すると、迫ってくる敵機を専用バスターライフルと腰部サイドアーマーにマウントしたハイパービームソードで迎撃を開始した。ガンダムXブルーメギドもシールドバスターライフルで敵機を牽制しつつ腰部のビームソードを抜き、敵機を切り裂いていく。ガンダムトライオークアンタは、バックパックのバインダーからGNソードⅣフルセイバーを2基とも抜き放ち、敵機に斬りかかっていった。

そして陽炎たちに続くように大鳳の部隊が防衛を開始した。

「さあ、やるわ!フィンファンネル、Cファンネル展開!」

Hi-νトールギスのバックパックに搭載されたフィンファンネルと、左肩のシールドと、腰部サイドアーマーにマウントされたCファンネルを全てパージしオールレンジ攻撃による攻撃を始めた。6基のフィンファンネルで敵機への牽制を掛けながら、Cファンネルでの奇襲、そして―――

「メガキャノン、発射!」

トールギスⅢの右肩にマウントされたメガキャノンを発射し、敵機を薙ぎ払っていく。

「Hi-νトールギスの力、伊達ではないわ!」

そして、その隙を縫うようにハイパージャマーによって姿を消した川内のガンプラ、細身の外見にガンダムデスサイズHの様に大きく突き出した両肩アーマーと手甲を備え、バックパック左右には2枚のバインダーと中央にGNドライブとその下部に2本のプロペラントタンクを備えた銀とメタリックブラックで塗装された大きなV字アンテナを持つ「影光式(かげみつしき)」が、GNブレイドを改造して超低温によって敵機を切り裂く「コールドブレイド」で敵機の死角から斬りかかり、ジムとボールを切り裂いていく。

「今度の影光式は、一味も二味も違う夜戦を見せてあげれるんだからね!」

川内はそう言って、武装スロットの「SP」を選択した。すると影光式が一瞬だけ赤く光ると、その姿が完全にレーダーからも肉眼からも姿を消した。

「ナハト・トランザム、起動!さあ、新しい夜戦見せてあげるわ!」

ナハト・トランザムを起動した影光式はGN粒子の尾を引かせることなく完全に姿を消した状態で敵機に斬りかかると、あっという間に数基の敵機が爆散した。

「川内さんも凄い。涼月も負けていられません!防空戦闘は私たち姉妹の十八番…ネェル・ミネルバには指一本触れさせません!ライフルビット、シールドビット展開!」

「私も、防空戦闘で後れは取らん!」

そう言って涼月の、白とグレーのツートンカラーで色採られた。角張った装甲を全身に纏い、両手に銃床部にGNコンデンサーを内蔵したGNライフルビットⅡから手持ちグリップを取り出したサブマシンガンに近い連射性とビームライフルレベルの火力を誇るGNビームサブライフルを装備し、腰部リアアーマーから伸びる接続アームに左右5基ずつ連結状態で搭載されているGNライフルビットのホルスターを兼ねた大型のGNシールドビットを両肩アーマー側面と両脹脛の外側にもそれぞれ2基ずつ装備し、胸部中央にはGN拡散ビームキャノン、それを挟み込む様に胸部左右にそれぞれ6門の砲口が2段に分かれて露出したGNビームマシンキャノン、腰部フロントアーマーと膝部装甲、足首付近の両側にはGNミサイルポッドを備えたV字アンテナの中央部にガンカメラを装備した「ガンダムサバーニャ・ハイスナイプ」と防空棲姫の「ガンダムボークルス」が濃密な対空弾幕で敵機を迎え撃った。サバーニャ・ハイスナイプの持つ射撃武器合計32門のビームは、接近してくる敵機を次々正確に撃ち抜き、逆にガンダムボークルスは大型ビームランチャーによる薙ぎ払いで敵機を纏めて仕留めていった。

「対空ミサイル、副砲三式弾、CIWS、撃ち方始め!」

そしてネェル・ミネルバも、CIWSと副砲、対空ミサイルによる対空戦闘を開始した。ミネルバが装備していたCIWSと同型の物が銃身を急速回転させ弾幕を張り、副砲に搭載された対空戦闘用の信管を内蔵した弾頭「三式弾」を放ち、対空ミサイルが遠距離の敵機を迎撃する。

「そんじゃあ、私らも始めますか~大井っち、準備は―――」

「いつでもOKです北上さん!」

「んじゃ、いっきますかー!伊勢さん、日向さん、当たんないでよねー」

そう言って北上の、深い緑とダークグレーで塗装された胸部に開閉式ハッチの下に4基のガトリング砲を備え、スプレーミサイルランチャーを内蔵したフルアーマーZZガンダムの両腕とチョバムアーマーを両脹脛に固定装備し、バックパックには21連装ミサイルランチャーを4基搭載したZZガンダムの大出力バックパックを装備した、右腕にダブルビームライフルを固定兵装として装備した4本のV字アンテナを持つ「ヘビーアームズZZガンダム」と、紺と白のツートンで塗装された胸部にヘビーアームズZZガンダムと同様のガトリング砲を内蔵し、両肩上部には4連装ミサイル、その側面に大出力のブースターポッドを備え、両前腕にはダブルガトリングガン、V2ガンダムアサルトバスターの下半身腰部フロントアーマー、両膝に5連装ミサイルポッドを内蔵し、バックパックにはドーベンウルフのビームキャノンと、15連装ミサイルランチャーを備えた大井のガンプラ「ガンダムドーベンアームズ」が、背中合わせになってミサイルランチャーと、ダブルガトリングガンを発射した。スプレーミサイルとダブルガトリングガンの濃密な弾幕が数機のジムに襲い掛かり、回避できなかった機体は次々爆発に飲み込まれていった。

「行くよ日向!」

そしてその隙を狙った伊勢の、ダークグレーと赤、白のトリコロールで塗装された継戦時間延長用のプロペラントタンク内蔵型のアーマーを両肩上面に装着し、両腰にはガンダム試作3号機ステイメンのバインダーを、腰裏にはシールドブースターをリアアーマーとして装着、バックパック左右には円筒状のプロペラントタンクと上部にガンダムMk-Ⅱのビームサーベルを2本装備した「ガンダム試作改3号機ステイメンMk-Ⅱ」が、右手のビームライフルを撃ちながらミサイル弾幕の回避に成功した敵機を撃墜していく。

「ああ!瑞雲魂だ!」

そして、全身を分厚い装甲で覆ったずんぐりした外見を持ち、肩口にマシンキャノン、両肩側面には可動式の大推力ブースターを装備し、ベース機よりも細身となった脚部の内側には、脹脛の装甲を展開することで使用できる6基のブースターを内蔵し、バックパックにはキマリスブースターを装着し更なる推力強化を図った、右肩背面にアトミックビームバズーカの基部を、そして機体の全身が隠れきってしまう程のサイズを誇る背面にアトミックビームバズーカを収納した「メガラジエーターシールド」と大出力の長大な刀身を持つビームサーベルを持った日向のガンプラ「ガンダム試作改2号機キリサリス」が、そのビームサーベルで3機のジムと2機のボールを一刀両断し、脹脛の装甲を展開してそこから一気に離脱していった。

「伊勢さんも日向さんもやりますね。私も負けていられません!大和、推して参ります!」

そして、ネェル・ミネルバの右舷側では大和のガンプラである、白一色に首元、両肩、両膝とその側面、足の底面部に黒を配色した腹部にストライクフリーダムガンダムのカリドゥス複相ビーム砲を装備し、両前腕にはビームシールドをそれぞれに装備、腰部サイドスカート頂点部にはビームサーベル2基、そしてこの機体最大の特徴である円を描く形状のバックパックにX状に配置された大型のCファンネルをベースに2門のビーム砲を搭載した「Cドラグーン」を装備したドレッドノートガンダムの様なV字アンテナを持つ「ドレットノートスターゲイザー」が敵機への迎撃を始めた。

「ドラグーン展開!行きます!」

Cドラグーンを展開し、自身はビームシールドで自機を守りながら右手に保持したルプスビームライフルで敵機に向かって突撃していく。

「大和さんだけに、良い格好はさせないのね!4代目睦月号、参りますよー!」

Cドラグーンがドレットノートスターゲイザーの周囲で援護射撃をする中、その後方から飛行形態に変形した以前の睦月号と外見上はほとんど同じだが、武装がビーム系主体となった「睦月号・改」がビームマシンガン、ビームキャノン、そして機首部のバルカン砲を撃ちながら追随してきた。そしてその更に後方から、これまた外見上の変更は殆ど見られないが、実弾だった武装の一部をビーム射撃武装に換装した「文月・スーパースペシャルマンロディ」と、漆黒と深紅、薄紫で塗装された右腕にブリッツガンダムの攻盾システム「トリケロス」を装着し、左前腕にはビームバルカン、左膝にはピアサーロック「グレイプニール」をマウントしたバックパックにフリーダムガンダムのウイングを装備した金色の4本のV字アンテナを持つ涼風のガンプラ「ジェッズネロ・ブリッツガンダム」が追いかけてきた。

「大和さんを援護するよぉ~」

「合点だー!ミラージュコロイド展開!」

文月・スーパースペシャルマンロディはそのままビームサブマシンガン、ビーム機関砲、迫撃砲を次々撃ちまくり、ジェッズネロ・ブリッツはミラージュコロイドで姿を隠すとトリケロスのビームライフルを一射ごとに居場所を変えて四方から撃ちこんでいった。

「速度そのまま取り舵30度、主砲照準、右舷前方のサラミス級!」

「了解!取り舵30度!」

「主砲、一番二番、右50度仰角12度!照準合わせ、てえぇー!」

ネェル・ミネルバの主砲が遂に火を噴いた。3連装の砲門から放たれたビームは次第に螺旋を描いて1本のビームに収束、そして射線上に居た敵機を数機巻き込んで敵艦隊左端を航行中だったサラミス級の船体側面と艦橋を撃ち抜いた。サラミスは大爆発を起こし、船体を半分に折って爆沈した。

それと同時期にサラミスの爆発を視界端で確認した深海は言った。

「ネェル・ミネルバの砲撃……なら俺も墜とさせてもらう!」

そう言って深海は、エクストリームアウェリアスを艦隊中央のマゼランへと向けた。それを追うように山風のホロルドロッソ・イージスと、駆逐棲姫の2.12ガンダムが向かって行った。

「深海兄ぃ!手伝いに来た!」

「深空と駆逐棲姫か!俺はマゼランをやる!お前たちは隣のサラミスをやれ!」

「うん!」「了解した!」

そして更に、3機を追うように2機のガンプラが追いかけてきた。

「深海!」「深海司令官!」

「っ!母さん!白雪!」

圧倒的火力をばら撒きながら突っ込んできたナラティブガンダムAB装備と、4枚のバインダーの様になった両肩アーマーと胸部中央に光る円形のクリアパーツ、そしてスマートな下半身と長いスカートの様なリアアーマー、ダブルオーライザーの様な形状のバックパックを備えた白と金色で塗装された神々しい外見の白雪のガンプラ「ガンダムホワイトボトムサウンド」だ。

「2人は艦隊右翼のサラミスを頼む!」

「任せて!」「了解です!」

そう言って空母水鬼と白雪は目標へ向かって行った。そして、最初に攻撃を仕掛けたのはエクストリームアウェリアスだった。マゼランは接近を許すまいと対空砲火を浴びせるが、深海の操るエクストリームアウェリアスの前には無意味に終わってしまった。

「沈めぇッ!」

連結状態にしたヴァリアブルライフルを構えると、マゼランの船体中央目掛けて発砲。収束ビームはマゼラン艦橋の根元に直撃し、そのまま艦底部までを貫いた。そしてそこにアウェリアスウイングが次々に砲撃を浴びせていく。すかさず腰部のビームサーベルを抜き放ち、頭部バルカンとマシンキャノンを発射しながら艦橋まで接近すると、ビーム刃の出力を高め、長大化した刀身でマゼランの艦橋を縦に真っ二つにした。そのままマゼランはコントロールを失い、爆散した。

「そこっ!」

次に行動を起こしたのは山風と駆逐棲姫だった。サラミスの対空砲火を抜けたホロルドロッソ・イージスは一気に艦後部まで抜けると、ビームライフルをエンジン部に向かって発砲した。

「塵と消えろ!」

エンジンに全弾が命中、エンジン部分から火が上がるとその上空からバインダー全てを右側に寄せたゼノバスターモードの2.12ガンダムが、GNダブルバスターライフルの引き金を引いた。先程よりも一層激しい電撃が周囲を走るととても巨大なビームの帯が発射され、サラミスを飲み込んだ。サラミスは、船体を中央で真っ二つに折れて轟沈していった。

サラミスの真正面から突っ込んでいったナラティブガンダムAB装備は、その速度を維持したまま腰部のハイメガキャノンをチャージした。そして―――

「いっけぇー!!」

その状態のままハイメガキャノンをぶっ放した。ハイメガキャノンの強力なビームはサラミスを艦首から艦尾までを貫通。しばらくの間をおいて、粉微塵に爆散した。

「これで、最後です!」

そして、白雪のガンダムホワイトボトムサウンドが最後のサラミスに攻撃を開始した。右手に保持したAGE-2のハイパードッズライフルの様な形状をしたビームライフルを各所の砲塔部に正確に撃ち込みながら接近、艦橋を通り過ぎるとバックパック左右のバインダーからミサイルを発射した。ミサイルは艦橋後部に直撃、そのままビームライフルを船体に撃ち込みながらエンジン部へ回り込む。

「出力、最大!」

ビームライフルの銃口にピンク色の球体が現れ、その次の瞬間銃口から目にも止まらない速さのビームが発射されサラミスを貫通した。エンジン部から爆発を起こし、それが連鎖。最後に大爆発を起こして轟沈した。

 

続く



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EP97 自分にしか出来ないこと

深海たちが敵艦隊を壊滅させてから数分後、戦場に出現した大量のジムとボールは殲滅された。

「Battle Ended! Mission Completes!」

バトルシステムがシャットダウンされ、バトル台の上に47機のガンプラとネェル・ミネルバが鎮座していた。そして、かつてない大規模戦闘を体感したファイター全員が息を整えるのに必死だった。

「はぁ…はぁ…何とか、切り抜けたわね」

「ゼェゼェ…こっちも何とか…大丈夫ですかビスマルク姉さま?」

「ま、まあね…」

「流石のビスマルクも、堪えるか…まあ、この長門もだがな…」

約数人を除いて

「深海!どうだったかな、私の戦闘は!」

「いいと思うぞ。あとは、慣れていけばいい…」

「そっか!そう言ってもらえると、お母さん嬉しいな!後でギューってしてあげる!」

「いや、いいから……深空も、よく頑張ったな」

「う、うん!ありがとう…深海兄ぃ……」

「良かったね深空!深海に頭なでなでしてもらえて!」

そのメンバーを見て、やはりあの人は色々と化け物なんだ。とビスマルクは思うのだった。すると深海が、全員の前で大声で告げた。

「初訓練、みんなご苦労だった!これからもこういう訓練を行って行くつもりだ。今日はゆっくりと休んで、明日からの英気を養ってくれ!片付けは妖精に頼んであるから、機体を回収して解散してくれていいぞ!」

そう言うと、いろんな服装をした小さな小人が体育館の入り口から現れた。戦時中から、艦娘たちや鎮守府の運営を陰で支えていた「妖精」である。妖精たちは一度深海の足元に集合すると、指示を仰ぐように深海を見上げた。深海はコクリと頷くと妖精は一斉に散開、一つに纏まっていたシステム台を力を合わせて元の位置に戻していった。それを見て、深海と空母水鬼以外のメンバーは、最初からこうしておけばよかったじゃん。と思わずにはいられなかった。

 

その夜

 

鎮守府の本庁舎、旧執務室に深海一家は集まっていた。依然として、緊張は解けない現状ではあるが深海は久しぶりの平穏な夜を過ごしていた。深海は戦時中に家具屋で購入したクッション付きのチェアに座り、窓から見える星空を眺めていた。チェアをゆらゆらと揺らしながら、傍にある台に置いてある時雨が淹れてくれたミルクココアを一口すする。

「なんかなんかなんか!おとーさん、お爺さんみたい!」

「………!」

それを見ていた部屋のちょうど真ん中にあるソファーに座っていた雨葉が言った。白も、それを肯定するように、首を何回も縦に振っていた。

「何もやることがない時、仕方ない」

「うん。お父さん、いつも色んなこと考えているからね。仕方ないよ」

「聞こえてるぞ~」

「聞こえるように雨葉は言ったんだよー!」

深海は、フッと小さな笑みを浮かべココアをもうひと口あおった。すると、秋雨と梅雨葉もクスクスッと笑った。すると、秋雨が深海に尋ねた。

「そう言えばお父さん。なんで秋雨たちのナラティブガンダムE装備を、AB装備に使ったの?あれが無いと、秋雨と梅雨葉…バトル出来ないよ?」

「梅雨葉も思った。梅雨葉のガンプラ、何で使ったの?」

その言葉を聞いた深海は、しばらく何も答えなかった。しかししばらくして、深海は台にココアの入ったコップを置くとゆっくりと立ち上がり、4人の元に歩いていった。そして、ソファーの空いていたスペースに座り、語りだした。

「お前たちのガンプラを母さんに使わせてしまった事は謝る。すまない、秋雨、梅雨葉、雨葉、白……」

「ううん。その事は怒ってないよ?」

「うん。梅雨葉も」

「雨葉も雨葉も雨葉も!」

「……!」

「そうか…ありがとうな」

深海は笑みを浮かべながら感謝を述べた。秋雨たちも、深海の浮かべた笑みを見て小さく笑う。そして、深海は言った。

 

 

今回の戦いに、お前たちは連れていかない

 

 

その言葉に部屋は静まり返り秋雨が、え?と言うまでの数秒間、部屋は完全に無音状態だった。

「お、お父さん、今なんて言ったの?」

「今回の戦いに、お前たちは連れていかない。そう言ったんだ」

「な、なんでなんでなんで!」

「梅雨葉たち、足手まとい?」

梅雨葉と雨葉が、思った事を素直に伝えた。深海は、全員の顔を見据えて言った。

「そうじゃない。そもそも、お前たち4人をこんな危険と隣り合わせなことに連れ出した俺は、父親として失格だ。本当なら、俺1人で動かなければいけなかったんだ」

「…お父さん」

「だから、今回の戦いにお前たちは連れていけない…もうこれ以上、お前たちを危険な場所へは連れていきたくないんだ」

「おとーさん…」

「お前たちに今の言葉が通用しないって事はわかってる……だが頼む!俺の願い、聞き届けてくれないかっ?」

「………」

深海は秋雨たちに向かって頭を下げ、願った。そして、秋雨は口を開いた。

「わかったよお父さん…秋雨たち、今回は残るよ」

「秋雨…」

「梅雨葉も雨葉も、文句ないよね?」

「梅雨葉は…大丈夫」

「秋雨おねーちゃん!………うん…雨葉、文句ない」

「………」

一度声を張り上げた雨葉だったが、秋雨と梅雨葉の真剣な表情を見て悲しそうに頷いた。白もまた深海の言葉を受け、頷いた。深海は一言―――

 

 

 

ありがとう

 

 

 

と呟いた。

「秋雨、梅雨葉、雨葉、白さん、今日はもう寝なさい……」

部屋の隅にあるキッチンで洗い終わったお皿を拭きながら話を聞いていた時雨が、4人に声を掛けた。秋雨たちは、うん。と言って頷き、旧執務室を出て行った。そして部屋には深海と時雨の2人だけが残った。最後の1枚を拭き終わった時雨は、壁に掛けてあったタオルで手を拭いて深海の元に歩いていった。そして、背後からゆっくりと深海を抱きしめた。

「大丈夫だよ。提督の気持ち、きっと秋雨たちに届いてるから」

「……ああ」

深海は時雨の左手をギュッと握った。

「………時雨」

「なに?」

「お前も…今度の戦いには、付いてこないでくれ」

「……うん。わかったよ」

「随分…あっさりと了承してくれるんだな…」

「…本当は僕も、提督の傍に居たい……でもきっと、提督はああ言うと思うから……」

 

 

 

戦いは…戦うことしか知らない…自分()にしか出来ないことだから

 

 

 

「って……」

深海はその言葉を聞き、ああ。と小さく呟いた。

「でも、ちゃんとした理由は…聞きたいかな」

時雨がそう言うと、深海はゆっくりと立ち上がった。そして、時雨の正面まで歩み寄ると彼女を抱きしめた。最初は少し驚いた時雨だったが、やがて彼女も深海を抱きしめ返した。

「お前を、守りたいからだ……お前と結婚した時に誓って、今まで守り通せなかった約束を…」

「……」

「そして…生まれてくる新しい命を……俺は守りたいんだ

「っ!!」

時雨は深海の言葉を聞いた瞬間、ハッとした。今自分のお腹には、深海と自分の新しい子供。新しい命が宿っていたのだ。深海は時雨を強く優しく抱き締めなおした。

「それが俺の理由だ。って言ったらお前は、納得してくれるのか?」

その言葉を聞いた時雨は一粒の涙を流し、答えた。

 

うんっ

 

その時、夜空に一筋の流れ星が流れた。

 

続く



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EP98 最後のバージョンアップ

初訓練から更に2日が過ぎた。参加者たちも午前と午後に1度ずつ行われる大規模戦闘訓練に次第に慣れ始めたのか、最初の頃よりかなりの練度上昇が見れていた。そしてこの日の夜中、電たちの最後のガンプラが遂に完成した。

「やった!夕立のガンプラ、やっと完成したっぽい!」

「本当かい夕立!」

「うん!早速お披露目――」

「ふっふっふ…実は僕も、いま完成したところなんだ」

「ぽい!?じゃあ、ワンツーフィニッシュっぽい!?」

「そうゆうことだね!」

時雨と夕立が暮らしている旧艦娘寮の一室から笑い声がしていた。すると、その部屋の扉をノックする音がした。

「こんな時間に…誰っぽい?」

「僕が出て来るよ」

時雨はそう言って部屋の扉を開けた。

「時雨さん、夕立さん。こ、こんばんはなのです」

「電!」

「私もいるよ!」

「お母さんまで…」

廊下には電と、その付き添いである空母水鬼が立っていた。時刻は午前1時。ハッキリ言ってこの鎮守府に居るほとんどの人間が寝ている時間ではあるが、電はどうしても2人に会いたかったのである。

「それにしても…どうしたんだい、こんな時間に?」

「電ちゃんが、ガンプラ完成したから夜空と夕立ちゃんに見せたいって言ったから!」

「え!電…新型完成したのかい!」

「なのです!だから2人に、見せたくって!」

「凄いっぽい!夕立たち、みんな揃って一緒に完成させたっぽい!」

「え!そ、そうなのですか!?」

「うん。僕たちも、いま完成したところなんだ」

時雨の言葉を聞いた電はとても驚いた。すると、夕立が何かを思いついて声をあげた。

「じゃあ今から、前みたいにお披露目会するのはどう!」

「前みたいにって、地区予選の前にやったあれみたいな?」

「良いですね!電、やりたいのです!」

「うん!僕も賛成だよ!」

「よーし!今から体育館に行くっぽい!」

そう言って4人は体育館へ出かけていった。

 

誰もいない体育館に来た4人は早速バトルシステムを立ち上げた。

「Gun-pla Battle stand up! Model damage level set to C.」

「please set year GP base.Beginning Plavsky particle dispersal. Field 01 Space!」

プラフスキー粒子の青い光が暗闇の照らしだし、宇宙が形成された。

「Please set year Gun-pla」

3人が、それぞれ完成した新型を台座にセットする。システムが機体を読み取り、3機のガンダムのメインカメラが光を放つ。

「Battle start!」

3機のガンプラが発進体制に入り、発進台がカタパルトに覆われる。

「夕立!ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア、出撃よ!」

「時雨っ。ガンダムエンドレインバレット、行くよ!」

「電。イナヅマガンダムトリニティ(シックス)、出撃です!」

カタパルトを飛び出す3機のガンプラ。地球を望むその宇宙空間に3つの青い筋が飛び、そしてフィールドの中央に3機がそれぞれと対面する。

「……地区予選の頃がとても昔に感じられるよ」

「そうですね…色んなことがあって、数ヶ月しか経ってないのにとても長く感じたのです」

「うん…夕立も、同じ思いっぽい……」

それから数秒だけ静寂が辺りを包んだが、やがて電たちのお披露目会は始まった。

「ううん!気落ちしてても仕方ない!じゃあ、僕からお披露目するね!」

時雨のガンダムエンドレインバレットが飛び出す。しばらくして180度のターンをする。

「まずは、全身のアサルトシュラウドを取り外して軽量化を測ったんだ。アサルトシュラウドって、何気に重いからね。それと、胸部にはインフィニットジャスティスのCIWSと胸元に小型のセンサー、両腰横にビームピストルを取りつけたんだ。脹脛の後ろには、AGE-2ダブルバレットのカーフミサイルもある。だからちょっとだけずんぐりしちゃった」

「頭部と、バックパック、バイポットシールドは前と同じなんですね!」

「うん。頭部の髪留め型センサーは形をそのままに索敵、照準性能を強化したんだ。バックパックも同じで先端のビームキャノンの出力だけ上げたんだ。バイポットシールドも同じ」

「時雨ぇ~勿体ぶらないで両肩の装備と新しいライフルについて早く教えるっぽいー!」

時雨のガンダムエンドレインバレットを見た時から、夕立は両肩に取り付けられた新装備が気になって仕方なかったのだ。

「勿体ぶるつもりないんだけど…まあいっか。うん、前回のアサルトレインバレットから大きく変更したのは、この両肩の装備なんだ。両肩アーマーだけケルディムガンダムの最終決戦仕様にしてあるんだ。勿論、GNライフルビット2基と、GNシールドビット7基を装備してる…でも、この2つには仕掛けがあるんだよ」

そう言った時雨は、ライフルビットとシールドビットを展開させた。すると、ライフルビットは新しく製作されたスナイパーライフルの銃口付近上下の銃身に合体し、シールドビットは4基が機体を防御する様に展開し、残りの3基はイナヅマガンダムトリニティⅥと、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの周囲をゆったりと漂った。

「ケルディムガンダムのシールドビットは攻撃にも転用できるのです!つまりそう言うことなのですね!」

「ううん。残念だけど、このシールドビットに攻撃力はないよ。代わりに、センサーカメラを内蔵したんだ」

「センサーカメラ?………あ!ユーラヴェンガンダムが使ってたセンサービットみたいなやつっぽい!」

「正解だよ夕立。防御面でも、シールドビットの強度があるからね。センサービットより、墜とされにくいと思う。そして、この新型のスナイパーライフルはケルディムガンダムのGNスナイパーライフルⅡを改造してライフルビットを装着可能なんだ名付けて「エンドレインライフル」!」

時雨はそう言って、ガンダムエンドレインバレットにエンドレインライフルを構えさせた。

 

 

これが僕のガンプラ…ガンダムエンドレインバレットだ!!

 

 

「以前のアサルトレインバレットより、カッコいいのです!」

「ありがとう電!嬉しいよ!」

「じゃあ、次は夕立の番っぽい!」

今度はユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがイナヅマガンダムトリニティⅥの隣から飛び出す。そして、時雨と同じように少し離れたところで180度ターンをする。

「機体の素体自体はそんなに変えなかったっぽい!でも、エクスカリバーの設置場所を両肩のビームキャノンの銃身に変更したっぽい!両膝にはナイトメアモードになっても邪魔にならないようにイージスガンダムビームサーベル発振刃を付けたっぽい!これでより強力な格闘戦を仕掛けられるっぽい!」

「あの3種刀身の剣はオミットしたんだ」

「ぽい!ナイトメアパーティーブレイクはカッコいいけど、刀身をいちいち変えるのめんどくさいっぽい…だからエクスカリバーとビームサーベルだけに戻したっぽい!」

「えっと…エクスカリバーを両手に…ビームトンファーが2本、大型ビームサーベルが2基と両膝のビームサーベル発振刃が2基……凄い!八刀流なのです!」

「そんな数の剣、扱えるのかい?」

「大丈夫っぽい!それに、バックパックには電ちゃんから貰ったファトゥム-01ソードを飛行形態のまま装着してあるから、単独飛行出来るようにもなったんだよ!まあ、今は宇宙だから関係ないけど……

「ほ、本当かい夕立!」

「勿論っぽい!ほめてほめてぇ~」

遂に単独飛行能力を手に入れたユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを見て、驚く時雨と電。

「あとは、何もいじってないっぽい!ナイトメアモードもそのままっぽい!」

 

 

これが夕立の…ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアっぽい!

 

 

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはエクスカリバーを抜き放ち、大型ビームサーベルを上方へ向け展開、ビームトンファーと両膝のビームサーベルを発振、ナイトメアモードに変形してみせた。

「これだけとげとげしいと、本当に悪魔みたいだよ。夕立」

「もっと褒めても大丈夫っぽい!じゃあ最後は、電ちゃんっぽい!」

「なのです!」

イナヅマガンダムトリニティⅥはその場から飛翔し、クルクルと回転するとバッと身を翻らせた。

「ベースアイデアはデスティニーインパルスなのです!まず頭部のメインアンテナをメタリックライトブルーで塗装して大型化、そこに稲妻模様を付けたのです!上部のサブアンテナも2本追加して計6本のアンテナがあるのです!更に胸部先端、両肩先端、両膝には水色のクリアパーツを取りつけたのです!バックパックはデスティニーガンダムの翼の主翼を黄色、副翼を紺色で塗装して、ファトゥム-02で使ってた大型ビーム対艦刀を改造した剣「ビーム対艦刀「イナヅマ」」を二振り装備したのです!そしてバックパック下部には2門のビームキャノン「レインバレットキャノン」が取り付けてあるのです!」

「っ!電、その名前!」

時雨は、ビームキャノンの名称を聞いた時思わずドキッとした。それもそうだ、自身の機体名が使われているからだ。

「なのです…時雨さんは、電を今この場所まで連れてきてくれた大切な仲間なのです!だからこの機体には、電のことを想ってくれた人たちへの想いを込めた武器が積んであるのです!」

「電……」

電の言葉に少しだけ感無量になる時雨。電は説明を続ける。

「両肩にはビームブーメランの「アーチャーエッジ」、そして両掌に、デスティニーガンダムのパルマフィオキーナを出力アップさせた「ナイトメアフィオキーナ」、左腕の機動防盾には、十字マークの中心点にビームシールド発生器を追加した「アカツキビームシールド」、ビームライフルは単発と、3点バースト射撃が可能な「ヴェールフェニックスライフル」、腰部左右に柄同士の連結が可能なビームサーベル「アウェリアスサーベル」が装備されているのです!これが……」

 

 

みんなへのありがとうの想いを込めた、電のガンプラ……イナヅマガンダムトリニティⅥなのです!!

 

 

イナヅマガンダムトリニティⅥは光の翼を展開、機動防盾を縮小させると左手のナイトメアフィオキーナを前方へ向けた。

「時雨に夕立、暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん、それに深海提督さん…電ちゃんは…凄いね」

「なのです……暁ちゃんたちは、電にガンプラバトルを教えてくれたのです。夕立さんは、いつも電のことを気にかけてくれて…深海提督さんは、電の命を繋げてくれた……だから、皆へのありがとうの気持ちを込めて、この機体……イナヅマガンダムトリニティⅥを作ったのです」

「電……」「電ちゃん……」

「このガンプラで、何処まで何が出来るかわからないけど……きっと電は―――」

その時、電たちのいる操縦スペースに接近警報が鳴り響いた。方向は自分たちが出撃した方角と真反対、つまりは相手チームが出撃した方向だ。

「接近警報!?いったい誰が!」

警報が示した方向へ一斉に顔を向ける電たち。そしてそこには―――

「せっかく楽しいお披露目会なんだから、暗い話はしちゃダメだよ3人とも!」

「お、お母さん!?」

空母水鬼の駆るAB装備から切り離されたナラティブガンダムE装備が向かってきていたのだ。そしてナラティブガンダムE装備は、3機と向かい合う形で動きを止めた。

「そうだよ夜空!驚いた?…おっと、今はそんな話してる場合じゃなかったね」

3人を驚かそうとしたわけではないことを思い出した空母水鬼は、コホン。と咳払いをして話し始めた。

「電ちゃん、夜空、夕立ちゃん。今はお披露目会の最中なんだから、これから先に起こる戦いのことなんか気にしないで楽しまないとダメだよ!そうでしょ?」

「そう…なの、かな?」

「そうだよ!お披露目会って、楽しくやる行事なんだから!ほら、3人とも笑って笑って!」

「「「………」」」

だが、3人の顔は晴れなかった。それを見た空母水鬼は、むぅ。と頬を膨らませた。

「仕方ない……こうなったら実力行使だよ!」

空母水鬼は咄嗟にバトルシステムの設定画面を操作した。すると、4機を取り囲む様に多種多様な量産機が出現した。

「!?お母さん、これはどういうこと!?」

「3人がいつまでたっても笑顔にならないから、実力行使するの!」

「じ、実力行使って…何でCPU制御の機体で夕立たちを囲むっぽい?」

「っ!来るのです!」

出現した量産機の一部が、スラスターを噴かし4機に向かって来た。

「終了条件は全機撃破!私も手伝うから、みんなで楽しもうね!」

そう言った空母水鬼は、ナラティブガンダムE装備を敵機に向かわせた。

「……まったく、お母さんは本当に大雑把なんだから…」

時雨が、やれやれ。と首を振りながら小さな笑みを浮かべた。そして、電と夕立に言った。

 

 

 

行くよ!電!夕立!

 

 

 

時雨の言葉を聞いた電と夕立もまた、小さな笑みを浮かべ、答えた。

 

 

 

なのです!!  ぽい!!

 

 

 

イナヅマガンダムトリニティⅥ、ガンダムエンドレインバレット、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは敵軍団へと向かって行った。

 

続く



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EP99 新型の力

1番最初に飛び出した空母水鬼のナラティブガンダムE装備は、向かって来たガフランとギラ・ズール、ザクⅢに向けビームライフルで応戦を開始した。

「この形態での戦いにも慣れないといけないし…夜空に良いトコ見せないとね!」

ナラティブガンダムE装備のビームライフルが接近してくる敵機を撃ち抜いていく。すると今度は、背後から別の敵、ダガーL、ネモ、マラサイ、デスアーミーが近づいてきた。接近警報に気づいた空母水鬼はその場で宙返りしながらネモとダガーLを撃ち抜いて、エクストラパックの大型ビーム砲を放った。残ったマラサイとデスアーミーが撃ち抜かれ、爆散する。

「この程度で、私は墜とせないよ!」

そして続けざまにシールド裏のビームキャノンを撃ち、その後方に居たアヘッドとジンクスⅢを2機まとめて貫通させた。

「電も負けてられないのです!」

そしてナラティブガンダムE装備の上空を、イナヅマガンダムトリニティⅥが通り過ぎ、3点バーストモードのヴェールフェニックスライフルを撃ち出す。ワントリガーで3発のビームが撃ち出され、それを薙ぎ払うようにして撃ったイナヅマガンダムトリニティⅥは横一列で並んでいたザクⅡと、リックドムⅡ、リーオーを同時に撃破してみせた。そして左手で左肩のアーチャーエッジを抜き放ち、左腕を大きく振りかぶって投擲した。弧を描きながらアーチャーエッジはそのビーム刃で射撃攻撃をしていたガザC、ジンを両断、そのままイナヅマガンダムトリニティⅥの元へ戻ってきた。が電は敢えて回収せずアーチャーエッジを回避、そのまま背後でイナヅマガンダムトリニティⅥを狙っていたジムの右手とゲルググの頭部にアーチャーエッジを命中させた。

「やあー!」

そしてすかさず左手でアウェリアスサーベルを抜き放ち、ジムとゲルググに斬りかかり止めを刺した。左右に切り払ったアウェリアスサーベルがジムとゲルググの胴体を両断し撃墜する。

「そこなのです!」

そして続けざまにレインバレットキャノンを放ち、グレイズリッター、獅電、ジェノアス、ドラドを撃墜する。アウェリアスサーベルを右腰に戻し、戻ってきたアーチャーエッジを回収する。しかし、その回収時の一瞬の隙を突いて1機のドーベンウルフがイナヅマガンダムトリニティⅥに迫った。だが電は焦ることはせず、光の翼を展開した。イナヅマガンダムトリニティⅥが左腕を大きく振り払い、バックパックのウイングから光の翼が展開される。そして、爆発的な推進力を得たイナヅマガンダムトリニティⅥはそのままドーベンウルフの横を通り過ぎた。ドーベンウルフは反射的に振り返ったが、時すでに遅し。

「ナイトメアフィオキーナッ!」

通り過ぎた瞬間に方向転換していたイナヅマガンダムトリニティⅥは、左手のナイトメアフィオキーナが青白い光を放ちながらドーベンウルフの胴体を貫通させた。そして腕をそのまま引き抜いて飛び去るとドーベンウルフは爆散した。

「イナヅマガンダムは、伊達じゃないのです!」

そのまま別の敵へイナヅマガンダムトリニティⅥは向かって行った。

 

「シールドビット、展開!索敵モード!」

一方時雨のガンダムエンドレインバレットは、シールドビット7基全てを索敵モードで展開、乱戦となる今回の戦闘には不向きと判断しエンドレインライフルはライフルビットを装着させたまま、右肩にマウントさせビームピストルを抜いた。そして時雨の正面に、エンドレインバレット周囲に散開した7基のシールドビットが索敵した敵機の位置が表示されたスクリーンが現れた。そして、メインカメラが淡く発光すると時雨は次々に敵機をロックオンし、ビームピストルを連射していった。

「乱れ撃つ!」

時雨がビームピストルの引き金を連続で引く。ビームピストルから放たれたビームはロックオンした敵機を一撃で確実に撃墜していく。更に時雨は、宇宙空間であることを利用し、機体の方向転換をアンバックに一存した。元々、周囲を敵機に囲まれているこの状況である。動きは最小限に留め、敵機を撃墜する。敵機へビームを放つ為に腕を振り、その方向転換中に別の敵機を撃墜する。そしてそれに合わせるように、時雨の目が目の前のスクリーンのロックオン表示を追って物凄い速さで右往左往する。ビームの銃弾は降り続ける雨の様に止むことなく敵機を一撃で貫き撃破していく。するとそこにビームキャノンを携えたサーペントが現れ、エンドレインバレットをロックオンした。

「っ!」

ロックオンの警告音を聞いた時雨は、咄嗟にエンドレインバレットをその方向に向けた。そして、右手からビームピストルを離すと右肩にマウントされていたエンドレインライフルを180度回転させ、グリップを握って左手のビームピストルを銃身左側に接続した。それと同時にサーペントはビームキャノンを撃ってきた。

「ビーム収束率、急速最大!」

サーペントの放った黄色いビームが迫る中、ピピピピピピピピッ!と言う照準センサーの音が鳴りながら、時雨の右目にロックオンカーソルが重なる。そして、ピィィィー!とロックオン完了の音がした瞬間、時雨は迫るビームに向かって引き金を引いた。

「放たれたビーム諸共、撃ち貫けぇー!!」

エンドレインライフルが火を噴いた。放たれたエンドレインライフルのビームとライフルビットが放ったビームが螺旋を描き、やがて収束。そして黄色いビームに直撃、そのまま勢いを落とすことなくサーペントのビームを掻き分けながら直進し、遂にはビームを打ち消してサーペントのコックピットを貫いた。コックピットを失ったサーペントは爆発四散。時雨は、ふぅ。と一息吐くと、ビームピストルを回収し戦闘を再開した。

 

「全ビームサーベル展開!突撃あるのみっぽぉーい!!」

ナイトメアモードのユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが、大型ビームサーベル、ビームトンファー、両膝のビームサーベル、エクスカリバー対艦刀全てのビームを出力し、スラスターを噴かして高速で次々に敵機を撃墜していった。シグーとドートレスをビームトンファーで斬り裂き、スタークジェガンとリゲルグ、ハイザックを通り過ぎ際に大型ビームサーベルで焼き切り、GN-Xを右膝のビームサーベルでサマーソルトを放ち斬り裂く、そして右手のエクスカリバー対艦刀を投擲し、アデルとウィンダムを撃破、残った左手のエクスカリバー対艦刀でジェスタを一刀両断する。そして、弧を描きながら戻ってきたエクスカリバー対艦刀を回収し、元あった位置へマウントする。そこから両腕を左右に大きく伸ばし両膝のビームサーベル発振器を下方展開、更に大型ビームサーベルを上方へ展開した。

「みんな、今すぐ回避行動を取って!ビームエネルギー、全出力解放!」

そして、全てのビーム系近接武装の全出力を解放した夕立。上方へ向けられた大型ビームサーベル、左右へ向けられたビームトンファー、下方展開されたビームサーベル発振器のビームサーベル、全てビームの刀身が機体サイズを1.5倍も上回るサイズにまで延長され、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを中心に巨大なビームの十字架が形成された。

「な、なんだこれは!」

「凄い!巨大なビームの十字架なのです!ハッ!回避しないと!」

「うわぁー!夕立ちゃんすごーい!」

「全ての敵を薙ぎ払え!グランドナイトメアクロスッッ!!!

そして夕立はユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの全スラスターを全開で噴かして、敵陣目掛け突撃。巨大なビームの十字架「グランドナイトメアクロス」は進行方向に存在した全ての敵機を薙ぎ払い消滅させた。

そして、最後に残ったグレイズをエンドレインバレットが撃ち抜き、戦闘は終了した。その瞬間、全てのエネルギーが尽きたのか夕立のユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはナイトメアモードが終了し、そのままメインカメラ共々光を失ってゆったりと宇宙空間を漂い始めた。そこにイナヅマガンダムトリニティⅥとエンドレインバレットが駆け付ける。

「「夕立っ!」さん!」

「あっははは……やっぱり…グランドナイトメアクロスを使うとエネルギー切れになるっぽいぃ……」

「やっぱり今の技、機体の全エネルギーを使ったんだね」

「うん…よほどのことがない限り、使うのは控えるっぽい」

「でも、とっても凄かったのです!電、あんな巨大なビームサーベル初めて見たのです!」

「僕も驚いたけど、まったく…君ってやつは……プッ…あはははは!」

「は、はいっ…機体が動かなくなるなんて…ぷぷ……あははははは!」

「ちょっと!電ちゃんも時雨も笑い過ぎっぽい!……ふ…ぷふ……あはははは!」

笑い合う3人。そして、その3人を見て空母水鬼は小さく微笑んだ。

 

 

 

 

 

その後しばらくして、お披露目会はお開きとなり電と時雨、夕立は3人笑い合いながら体育館を出て行った。遅れて体育館を出た空母水鬼は、んぅー!と大きく伸びをし言った。

「良かった!3人が笑顔になっ―――」

「か~あ~さ~ん~」

「!!」

その直後、体育館の影から姿を合した深海に気づいた空母水鬼。深海の顔はとても暗かった。

「み、深海!えっと…これは違うの!電ちゃんたちがガンプラのお披露目会をしたいからって――――」

「問答無用ッ!!」

 

 

 

ふおぉぉぁ!!

 

 

 

空母水鬼は深海のラリアットをくらって、体育館の壁に叩きつけられたのだった。

 

 

 

 

 

あいつらを夜更かしさせるなぁぁぁー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさぁーい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

続く



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EP100 反逆の狼煙は上がる

「左舷後方カタパルト、瑞鶴さんのAGE-2ハルファス、着艦要請!」

「了解よ赤城さん。許可します!」

「瑞鶴さん、着艦して大丈夫よ」

「了解赤城さん!相対速度…よし、着艦します!」

ネェル・ミネルバの左舷後方カタパルトに着艦を果たすAGE-2ハルファス。着艦したAGE-2ハルファスはカタパルトの内部にある移動式の台座に固定され、格納庫へ運ばれていった。今日も行われていた大規模戦闘訓練は以前の訓練よりも更に過酷を極め、瑞鶴をはじめ多数のガンプラが補給と修理の為にネェル・ミネルバに着艦していた。格納庫へと入った瑞鶴は初めてネェル・ミネルバの格納庫を目にした。

「へぇー…結構しっかりと作られているのね」

「ま、これぐらいしっかりしてないと、安心して修理と補給作業できないからね~」

「望月!」

「両肩のウイングバインダー全部が破損してるのか…んじゃ、とっとと始めるよ~ハルファス用のコンテナ開けるよ蒼龍さん」

「了解!ハルファス用のコンテナ開けるよ!」

「そう言えば機体の整備ってどうやって……わっ!何か小さな人がいる!」

AGE-2ハルファスの周囲を数cmしかない人が飛行していた。瑞鶴はそれを見て驚きを隠せないが、隣で整備を受けていた阿武隈が声を掛けた。

「1/114の兵隊パーツですよ瑞鶴さん!なんかすっごい凝ってて、あたし的にはとってもOKです!」

「阿武隈も補給を受けてたのね」

「あはは…ちょっと無茶して右腕が破壊判定くらっちゃって…さっきまで比叡さんと、霧島さんも居ましたよ!」

「そう…」

そしてそんな会話をしている間に、ハイマットスタービルドストライクの新しい右腕が接続部に繋がった。

「よーし!ハイマットスタービルドストライクの修理完了、いつでもいけるよ!」

「ありがとうございました飛龍さん!瑞鶴さん、先に行きますね!」

「了解よ」

「台座を左舷カタパルトまで移動させるわ!少し待っててね阿武隈ちゃん」

ハイマットスタービルドストライクを載せた台座が、左舷の前方発進カタパルトへと向かって行った。そしてしばらくすると、カタパルトの発信位置まで来た台座から拘束具が機体を持ち上げ、そのままカタパルトまで機体を運んだ。そしてカタパルトがハイマットスタービルドストライクの脚がカタパルトに接続され発進体制をとった。

「カタパルト接続を確認!阿武隈さん、発進どうぞ!」

「阿武隈。ハイマットスタービルドストライク、出撃します!」

カタパルトが高速で走りだし、ハイマットスタービルドストライクを射出した。そして、それから1~2分経過してAGE-2ハルファスの修理と補給も完了し、カタパルトへ向かった。

「カタパルトの接続確認!瑞鶴さん、発進どうぞ!」

「なんか、ちょっと変な気分ね…瑞鶴。ガンダムAGE-2ハルファス、出撃よ!」

それからしばらく戦闘は続き、やがて今回も勝利で幕を閉じた。

 

一方その頃、街中で取材を行っていた青葉がいた。

「あ、お話ありがとうございました!お時間を取らせてしまってすいません」

だが青葉は、新しい情報が手に入らず困り果てていた。

「うーん……またしても新しい情報がありませんでした。もうこれで1週間連続…青葉、ちょっと困ってきました……はぁ…」

とぼとぼと歩を進める青葉。すると―――

「なら私が情報をあげますよ」

「え、誰―――ぁ」

背後から何者かが青葉の首を手刀で叩き、気絶させてしまった。

 

薄っすらと太陽の光が差し込む暗い路地裏。そこに青葉は倒れていた。しばらくして、青葉は意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がった。

「う……私は…一体?」

「目が覚めました?青葉さん…」

「っ!」

青葉の背後、そこには吹雪が立っていた。

(真っ白な髪に真っ赤な両目、それにあの異形の左腕……)

「ええ、そうです。青葉さんが探し回ってる…吹雪ですよ」

(考えが読まれた!?)

吹雪の言葉に思わず身構える青葉。それを見た吹雪は小さく笑いながら口を開いた。

「もう、そんなに身構えないでくださいよ!私は青葉さんを殺す為に連れ去ったんじゃないんですから!」

「………どういうことですか?」

「青葉さんにお願いしたことがあったんですよ!ちょっと手荒な真似してごめんなさい」

「私にお願い事?」

「はい!黒野深海に伝えてほしいんです。最後の時は―――」

 

 

 

3日後だってね

 

 

 

「っ!!」

吹雪の言葉に動揺する青葉。すると吹雪はゆっくりと青葉に近づいてきた。そして何故か先程と関係ない話をし始めた。

「そうそう…私って電ちゃんの細胞を使ったクローンなんですけど、艦船時代のこと何でか憶えてるんですよね~」

「い、いきなり何の話ですか?」

「わからないんですか~?なら、思い出させてあげますよ」

すると吹雪はその左腕で青葉の顔をガシリと掴み、そのまま建物の壁に圧しつけた。

「わっ!」

「……サボ島での海戦。貴女が何をしたか…忘れる訳ないですよね?」

「っ!」

青葉は思い出した。艦船時代、サボ島沖での海戦で自分は敵艦に向けて「ワレアオバ」と発光信号を送った。そのせいで、艦隊に損害を与えてしまった(※注意 と言う解釈もある)。そしてその時に艦船時代の吹雪は沈んだのだ。吹雪は目をギョロリとさせ、狂気じみた笑みを浮かべ、青葉に言った。

「今度は、余計なことしないでくださいよね?でないと―――」

 

 

 

 

貴女も鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)行きですからね?

 

 

 

 

「――――!」

青葉は脅えた表情で首を縦に振った。吹雪は狂気じみた笑顔を浮かべながら言った。

「そうそう……それでいいんですよ…あ・お・ば・さ・ん!」

青葉の瞳からは涙が溢れていた。そして吹雪は青葉の顔から左腕を外した。地面に座り込んだ青葉は未だに息を整えるので精いっぱいだったが、吹雪は気にする事もせず振り向きながら言った。

「じゃあ、お願いしますね。青葉さん!」

そして吹雪は去っていった。

 

続く



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EP101 反抗の狼煙を上げる

その深夜、深海は旧執務室でエクストリームアウェリアスの整備を行っていた。と言っても、今の今まで被弾をもらった事のない深海のガンプラはほぼ傷なしという状態ではあるが、それでも整備を怠ってはエクストリームアウェリアスに失礼だと思い、深海は手入れを進めていく。そんな時だった。鎮守府本庁舎の正面に1台の車が急停止した。

「なんだ、車か?」

キィィィー!というタイヤが擦れる音に気づいた深海は、エクストリームアウェリアスの整備を止め旧執務室を飛び出した。2階にある旧執務室から階段を下りて1階の廊下へ出た深海は、早々に何かと正面からぶつかった。

「きゃあっ!」「ぐっ!」

しかし突然ぶつかったとはいえ、深海は少し仰け反っただけにとどまった。一方の相手は完全に尻もちをついてしまっていた。

「いたたた……」

「っ!青葉!」

「あっ、深海司令官!良かった!司令官にお伝えしないといけないことが―――」

とても焦った様子で早口に言葉を紡ぐ青葉。そんな青葉の表情を見た深海は、かなり大変なことがあったのだと気づいた。そして、青葉の目に涙の後があることに気づいた。

「青葉。気持ちはわかるが少し落ち着け。何か…怖い思いをしたんじゃないのか?」

「っ!?」

「図星の様だな…大丈夫だ、今は俺がいる」

深海はそう言いながら青葉の頭に手を置いて、少しだけ撫でた。青葉はしばらく固まっていたが、やがて緊張が一気に抜けたのかペタンとその場に座り込んで大きく息を吐いた。

「落ち着いたか?」

「はい…司令官、ありがとうございます」

「ならいい。一体何があった?」

「はい――――」

青葉は淡々と話し始めた。

 

「―――という事です」

「最後の時は3日後。確かに吹雪がそう言ったんだな」

「はい。嘘を言っている様子はなさそうでしたし、恐らくは……」

「そうか。よく頑張ったな青葉…」

「いえ、青葉はそんなこと……」

「お前の部屋は用意してある、今日はゆっくり休め」

「はい………すいません司令官。部屋まで送ってもらえませんか?脚に力が入らなくって……」

「わかった。担いで行ってやるから、背中に乗れ」

「ありがとうございます」

青葉は少しだけ気恥ずかしそうに深海の背中におぶさった。深海は軽々と青葉を持ち上げると、寮へと向かって歩いていった。

 

そして翌日。作戦の為に集まったメンバー全員は、深海の館内放送で目を覚ました。

「皆、朝早くからすまない。作戦参加メンバー全員に伝えることがある。0900(まるきゅうまるまる)時に体育館前に集合してくれ。時間厳守だからな」

 

深海の館内放送で目を覚ました時雨と夕立は、間宮の甘味処と隣接している食堂で朝食をとっていた。すると夕立が時雨に尋ねてきた。

「深海提督さん、いきなりどうしたんだろうね?」

「…僕はなんとなくわかる気がするんだよね」

「え!時雨本当っぽい!?」

「夕立、君も少しは勘づいているじゃないのかい?」

「……まあ、ね。きっと、あの事…だよね」

「うん」

2人はゆっくりと手を机の上に着いた。すると隣の席に、誰かが食事の乗ったお盆を置いた。

「よっ!時雨の姉貴、夕立の姉貴!おはよーさん!」

「涼風、それに深空も。どうしたんだい?」

「朝ごはん待ってたら、夜空姉ぇたち、見つけて…」

「隣り空いてんなら、一緒に朝飯食おうって思ってなー!」

「うん!お隣どうぞっぽい!」

「ありがとなー!」「ありがとぅ…」

そう言って涼風と山風は席に着き、朝食を食べ始めた。すると早速、涼風が今朝の案件について話し始めた。

「今朝、深海提督が言ってた伝えたい事って何なんだろうね?あたいには、全く見当もつかないよ…時雨の姉貴は何のことかわかる?」

「あ、うん。たぶん…なんだけどな。僕たちに関わることが含まれてると思うよ」

「あたしたちに?」

「うん。恐らく村雨たちの事が関わってくると思うんだ」

「…村雨の姉貴、か」

「村雨姉ぇ……」

「決着の時は、近いかもっぽい…」

「そうだね…」

暗い雰囲気になりかける時雨たちだったが、涼風が明るい口調で言った。

「まっ、なんとかなるんじゃねぇの?こっちには深海提督もいるし、何より全国大会のファイナリストの時雨の姉貴と夕立の姉貴がいんだからさ!」

「「………」」

涼風の発言に呆気取られる時雨と夕立。だが、暗い雰囲気を打ち消すのには十分な言葉だった。

「…そうだね。この場にいる白露型姉妹で1番上の僕が、へこたれたら駄目だよね!」

「夕立も、しっかり時雨を支えるっぽい!時雨、一緒に頑張ろうっぽい!」

「うん!」

そうして時間は過ぎ、時間は9時を迎えた。

 

体育館前には作戦参加のメンバー全員が集っていた。しばらくガヤガヤしてはいたが、やがて深海が体育館入り口に現れると一気にそこは静まり返った。そして深海は、集まった全員に向け言った。

「昨夜、俺たちの為に情報を集めていた青葉が貴重な情報を持ち帰った。それを伝える……俺たちの敵となる存在。奴らが行動を起こす日が分かった」

深海の言葉を聞いた数人がガヤガヤと騒ぎ出す中、妹を取り戻す為に参加した陽炎と不知火は静かに拳を握りしめた。

「深海提督さん。それはいつなんですか?」

瑞鶴が挙手をし、深海に尋ねた。ガヤガヤと騒ぐ者たちと違い瑞鶴の瞳の奥には力強い炎が揺らめいていた。深海は答えた。

「2日後だ」

「2日後だと!」

あまりに短すぎる期間に思わず長門が声をあげる。しかし、それ以上に取り乱すことはなく深海の言葉を待った。

「2日後…俺たちは、今持てる全ての戦力を持って奴らの目的阻止に動く。この戦いはお前たちが今までに経験したことのない程の戦闘になるだろう。だが、俺たちがここで奴らを止めなければガンプラバトルは消滅し、多くの人が涙を流してしまうことになる」

山風と涼風が、ギュッとお互いの手を握り合う。

「それは何としても阻止しなければ駄目だ。この国を守ろうと戦ったお前たちなら、この言葉の意味が分かるだろう。だからもう1度、俺たちは戦わなければならない」

時雨と夕立が深海をジッと見つめる。

「ようやく涙をからして歩き出したこの国を、自分勝手な都合で再び涙の溢れる国にしようとする連中を、俺は決して許さん」

深海の言葉に白雪が小さく俯いたが、隣立っていた電がその手をギュッと握った。

「!?」

「大丈夫ですよ、白雪さん」

「電ちゃん」

深海が話を続ける中、電と白雪は小さな声で話していた。

「電と白雪さんなら、きっと吹雪さんを止められます。だから、そんな暗い顔をしないでほしいのです」

電はニッコリと笑ってみせた。

「……はいっ」

白雪もまた電の笑顔に応えるように、しっかりと頷くのであった。

「この戦いに勝ち、再びこの国を守る!それが、今ここに集まった俺たちの使命だ!だからどうか、もう1度力を貸してほしい!これは…俺たちにしか出来ないことなんだ!」

「………フッ、今更だな提督よ」

「………?」

「ここに居る者が、こんなタイミングで逃げるわけないだろう?そうだろビスマルク?」

「勿論よ。そもそも、アドミラルが事情話したうえで来てるんだから、当たり前じゃない!あなた馬鹿なの?」

「そうです!私は提督を信じています。ここで退いたら、ただの笑い者ですからね!」

長門、ビスマルク、大鳳の言葉に釣られ、あちこちからやる気に満ちた声が上がる。それを目の当たりにした深海は、そうだったな。と小さな笑みを浮かべるのだった。

「なら、決まりだな……」

 

 

 

 

必ず勝つぞ!

 

 

 

 

全員の掛け声と共に、反抗の狼煙は上がった。

 

続く



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EP102 さいごの夜に

深海たちの反抗の狼煙は上がった。その後から大規模戦闘訓練は何度となく繰り返され、メンバー全員の練度は急上昇していった。しかし、2日と言うとても短い時間はあっという間に過ぎていき、遂に前夜を迎えた。

 

「陽炎。準備は大丈夫ですか?」

「ええ。ガンプラの整備は済んだし、準備万端よ!」

旧艦娘寮の一室では、陽炎と不知火が最終準備を丁度終えたところだった。

「……いよいよ、ですね」

「うん。萩風を取り返す為の戦い…か」

「艦娘時代にもこんな作戦がありましたよね。何と言うか、宿命みたいなものを感じますよ」

「そうね……さて、そろそろ寝ましょ」

「そうですね。おやすみなさい陽炎」

「おやすみ不知火……絶対に、取り戻すわよっ」

「勿論ですっ」

陽炎と不知火はそのまま布団に入り、眠りについた。

 

旧艦娘寮の別の一室では、加賀と瑞鶴が準備を進めていた。そんな中、瑞鶴がふと準備の手を止め、俯いてしまった。

「…どうしたの?」

「……なんか…怖いの」

「怖い?」

瑞鶴の言葉に疑問を持った加賀。しかし加賀は無理に聞こうとせず、瑞鶴の言葉を待った。

「……もし、翔鶴姉ぇが戻って来なかったらどうしよう。って思っちゃって」

「………」

「…柄にもない。って言いたいの?」

「そんな事ないわ。貴女らしいな、と思ったのよ」

「え?」

加賀が口にした、思いもしなかった言葉に驚く瑞鶴。加賀は言葉を続ける。

「貴女は全国大会を棄権してから、とても変わったわ。特に、今みたいに弱音を吐いたり、思っていることを偽ろうとしなくなった」

「え、私が?」

「ええ。今の貴女からは、無理に強がったりする昔の雰囲気が消えているわ。自分を見つめて、思った事を言えるのはとても難しいこと。でも、今の貴女にはそれが出来る」

「加賀さん…」

「大丈夫よ。今の貴女なら、きっと翔鶴(あの子)を連れ戻せるわ。私が保証する」

「……ありがと

「ふふっ…どういたしまして」

加賀と瑞鶴は準備の手を再び動かし始めた。

 

「………いよいよ、か」

「……ああ」

また別の部屋では駆逐棲姫と防空棲姫がお互いを見つめ合いながら、話していた。

「まさか、マスターに反抗する日が来るとは思わなかった」

「…だが、もう私たちにマスターは居ない。いるのは、私を姉妹だと言ってくれる秋月たちだ。それはお前もそうだろう、駆逐棲姫?」

「…そうだったな。時雨に夕立、山風と涼風。私にも姉妹と呼んでくれる人たちがいたな」

「……そんな記憶など無いというのに、不思議なものだ」

「…ああ。だからこそ、応えなければな」

「お互いに、な」

そう言って笑みを浮かべながらグッと握った右手を前へとゆっくり出した防空棲姫。それを見た駆逐棲姫は、フッ。と小さく笑みを浮かべ、握った左手で防空棲姫の右手とグータッチを交わした。

「そうだな…」

 

「よっしゃ、これで準備完了でいっ!山風の姉貴、そっちはどうだい?」

「うん。今終わったところ」

「そっか!んじゃあ、とっとと寝ちまおっか!」

山風と涼風がいる部屋では、準備を終えた2人が就寝しようとしていた。

「……ね、ねえ涼風」

「ん?」

ベットに向かって歩いていた涼風を、山風が引き留めた。山風は顔を赤くしてオドオドした表情で言った。

「あ、あのね…今日は、ベ、別の部屋で…寝てきても…いい?」

「別の部屋?あたいは全然構わねぇけどさ。誰の部屋に行くってんだい?」

「ひ、秘密!」

そう言って山風は部屋を飛び出していった。涼風はそんな慌てた山風を見て小さく笑い、呟いた。

「…ゆっくりしてきなよ」

山風は枕を抱えたまま、旧艦娘寮を抜け出し本庁舎へ向かって走っていった。

 

「………」

深海は旧執務室のソファーに座り、ボーっと天井を見上げていた。時雨や秋雨たちはとっくに就寝し、旧執務室は静かな時間が流れていた。その時、旧執務室の扉がノックされた。ノックに気づいた深海はゆっくりと立ち上がり、扉を開けた。そこには、山風が立っていた。

「み、深海兄ぃ…」

「深空?どうしたんだ枕なんか持って?」

「あ、あのね…い、一緒に……ね、寝ても、いい?」

「準備はもう終わったのか?」

「うん。だから、来た!」

「そうか。とりあえず、部屋に入れ。体冷やすぞ?」

「うん!」

山風を室内へ入れた深海は、慣れた手つきで部屋の角にある5畳の畳が敷かれた場所に布団を敷いた。

「布団は敷いたから、もう寝てていいぞ」

「深海兄ぃは?」

「俺はもう少しだけ起きてるから、深空は先に寝て―――」

「いやっ!深海にぃにと、一緒が良いっ」

「はあ?」

「深海にぃにが寝ないなら、あたし、まだ起きてる」

「………」

「………」

無言で目を合わせ合う深海と山風。だが、深海が先に折れてしまい結局寝ることになってしまった。

「……わかったよ。だが、布団は狭い。それだけは我慢しろよ?」

「うんっ!」

深海が電気を消し豆電球を点けると、2人は布団の中へ入った。すると、山風が深海に抱き着いてきた。

「おい深空っ、いくら何でもくっつき過ぎじゃないか?」

「ごめんなさい深海にぃに…でも、寝るまでこのままいさせて、ほしい…」

「わかったよ……早く寝るんだぞ?」

「うん。おやすみ、深海にぃに…」

「おやすみ…深空」

だが結局、2人はその1分後にはお互い眠りについていた。それをこっそり隣の寝室から見ていた空母水鬼は、にっこりと微笑みながら見ていたのであった。

 

その頃時雨と夕立は準備を終え、部屋で何をする訳でもなくボーっとしていた。

「………」

「………」

2人は終始無言だったが、時雨が夕立に声を掛けたことで無言の空間は無くなった。

「夕立、ちょっといいかな?」

「どうしたの夜空?」

「…え?夕立、今なんて―――」

「夜空って呼んでみたっぽい!どんな感じっぽい?」

夕立が唐突に自分の本名を呼び出したことに驚きを隠せない時雨。

「う、うん。凄くビックリしてる……でも…いきなり、どうしたの?」

「……うん。ちょっと、考えてたんだ。時雨のこと」

「え、僕のこと?」

いつになく険しくも悲しそうな顔をした夕立を見た時雨は、驚きつつも心配そうな表情をした。普段は自分の心の赴くままに行動する夕立が、これほど険しい顔をする事はとても稀だったからだ。

「……時雨はさ、夜空って本名と深海提督さんの妹として本当の家族と再会できたでしょ?」

「う、うん」

「夕立はね。それがちょっとだけ、怖いんだ……時雨が、村雨みたいに遠くに行っちゃうんじゃないかって…夕立、村雨が敵に回った時…とっても寂しい気持ちになったから」

「………」

「時雨は……何処にも行かないよね?」

「―――っ!」

夕立の弱々しい言葉を聴いた時雨は、居ても立っても居れず夕立を抱きしめた。

「わわ!し、時雨!いきなりどうしたっぽい!?」

「ごめんねっ…夕立」

「時雨?」

「僕のことっ…そんなに思ってくれてたなんてっ…本当に…ごめんね夕立っ、夕立ッ!…うっ、ううう…」

時雨の目からは、ぽたぽたと涙が零れ落ちていた。

「時雨……」

「うわああぁぁん!!!」

そして、夕立の想いを知った時雨は、艦船時代の記憶の中からの込み上げてきた想いに耐えられず、夕立に抱き着いたまま泣き出してしまった。艦船時代、時雨は白露型駆逐艦の最後の1隻となり自分より先に姉妹全員を失って、更に西村艦隊としてもたった1人生き残った。「佐世保の時雨」と幸運艦の判を押されても、その中に残った悔しさ、悲しみが今になって込み上げてきて、時雨は泣くことしか出来なかった。そんな時雨を見た夕立は、優しく抱き締め、声を掛けることしか出来なかった。

「ありがとうね時雨……大丈夫、大丈夫だよ」

「夕立っ!夕立ッ!!」

「大丈夫……大丈夫だよ、時雨……うっ…うう……」

時雨と夕立の2人は、お互いを抱きしめながら泣いていた。

 

その頃、電は暁たちに呼び出されて1人暁たちがいる部屋へ来ていた。電は扉をノックし声を掛けた。

「暁ちゃん、電なんのです。入って大丈夫ですか」

すると部屋の扉が開き、暁が出迎えてくれた。

「待っていたわ電!さ、入って入って!」

「はい!お邪魔するのです!」

「やあ電。よく来たね」

「いらっしゃい電!」

「響ちゃん、雷ちゃん、こんばんはなのです!」

次いで響と雷が電を迎え入れ、4人は久しぶりに全員集合となった。

「久しぶりね!4人が揃ったのは」

「そうだね。この前のはこんな空気じゃなかったしね」

「うん。あの時は、こんなこと出来る心情じゃなかったもの」

「なのです……」

「「「「………」」」」

それからしばらく電たちは黙り込んでしまった。しかし、暁がその静寂を破った。

「電、あなたに渡したい物があるの」

「え?電に、ですか?」

電がそう聞き返すと、暁はポケットからオレンジがかった黄色い星の形をしたキーホルダーを取り出した。

「これ…は?」

「私たちで作ったんだ。4人のお揃いだよ」

そう言って響がポケットから青みがかった白色の星形のキーホルダーを取り出した。

「ほら!雷も持ってるわ!」

雷はオレンジ色の星形キーホルダーを取り出し、それに釣られて暁も紫色の同じキーホルダーを取り出した。

「はわわ!色が違うけど、確かにお揃いなのです!」

「どう?凄いでしょ!」

「凄いのです!電、とっても嬉しいのです!」

「良かったわ!はい、電!」

暁はそのキーホルダーを電に渡した。紫と、青みがかった白、オレンジに、黄色。4つの星をそれぞれ掲げ、電たちはしばらくそのキーホルダーを眺めていた。

「これにはね、「固い絆」って願いを込めたの…」

「固い絆。ですか?」

「うん。どんなことがあっても、砕けることのない絆」

「私たちが身につけている、特Ⅲ型のバッジと同じ…それくらい大事なもの…」

お守りを眺めながら喋る4人。すると響が、お守りを下げて電を見据えた。

「電」

「…なんですか?」

「……何があっても、帰ってくるんだよ。私たち3人の所に…」

「…響ちゃん」

響が真剣な表情で語る。

「電が帰る場所は、ここしかないんだから!とーぜんでしょ!」

「…暁ちゃん」

暁が少しだけ慌てたように語る。

「大丈夫よ!電の帰る場所も帰ってきた後のパーティーも、雷たちがきっちり用意するんだから!」

「…雷ちゃん」

雷がハツラツとした元気な笑顔を作って語る。

「約束だよ」

そう言って響が小指を伸ばした右手を出し、暁と雷も続くように右手を出した。

「…はい!約束なのです!」

電たちは、4人で小指を結び、約束を交わした。

 

鎮守府から少しだけ離れた岬に、白雪は立っていた。波が岩肌に当たる音と、海から吹き付ける風と草木を揺れる音だけが辺りを包み込んでいた。

「………」

白雪は何かをする訳でもなく、海をただ眺めていた。すると、背後から足音がしてそれは段々と白雪に近づいてきた。

「いざ戦うってなったら、辛くなっちゃう?」

「っ!吹雪ちゃん!?」

「久しぶり、白雪ちゃん」

声を聴いた白雪は慌てて振り返った。そこに立っていたのは紛れもなく自分の姉であり、命を懸けてでも止めるべき存在である、吹雪だった。

「吹雪ちゃん、何でここに!?」

「……最後に、会いに来た。かな?」

少しだけ照れた表情を作る吹雪。白雪は額に汗を流しながら、焦り気味に口を開いた。

「何でこんな事をするの吹雪ちゃん!こんな事したって、何も―――」

「……白雪ちゃん」

「っ!」

「もう、わかってるんだ……こんな事をしても私も白雪ちゃんも救われないって…」

「ならなんで!」

「………」

ひと際強い風が吹き、白雪と吹雪の髪を揺らす。吹雪は、星が瞬く夜空を見上げながら言った。

 

 

 

 

 

風前の灯の命を持った私でも、夢を叶えたかったから…かな

 

 

 

 

 

「…夢?」

「……明日の午前10時」

「え?」

「…明日の午前10時、プラフスキー粒子精製工場で待ってるから。それだけ…伝えに来たんだ……」

そう言った吹雪は、振り返りながら手を振って歩き出した。

「バイバイ……白雪ちゃん」

「吹雪ちゃん!」

吹雪を止めようと駆けだした白雪だったが、吹雪は森の中へ消えていった。波が岩肌に当たって弾け、吹き付ける風と草木を揺れる音だけが辺りを包み込んでいた。

 

 

 

 

2020年 8月某日 午前9時59分

 

 

 

 

森に囲まれたプラフスキー粒子精製工場の入り口、反抗の狼煙を上げた者たちは集った。

 

同時刻、工場内部に反逆の狼煙を上げた者たちは集った。

 

そして――――

 

 

 

 

午前10時(運命の時)

 

 

 

 

工場から青白い光が舞い上がり、全員のガンプラのメインカメラが淡く発光した時―――

 

 

 

 

 

ガンプラバトルの未来をかけた最後の戦いが始まった

 

 

 

 

 

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はEP88~EP97までに登場したガンプラと登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。


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EP102.5 登場人物&ガンプラ解説pt6

今回も前回同様にガンプラの解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。


機体名 ガンダムエクストリームアウェリアス

型式番号 MKI-A00-EX

ファイター 黒野深海 初登場話 第88話  ベース機 ガンダムエグザアウェリアス

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 70t

解説

深海が製作したガンダムアウェリアスの最終形態。両肩上部には180度稼働する「エクストリームガンダムエクリプスフェース」のブラスター・カノンを移植し、両前腕には連射性に優れたビームガンを装着している。それ以外に通信能力を向上させるために頭部に2本のブレードアンテナを追加されている。

 

武装(追加武装のみ表記)

ビームキャノン 2門

両肩上部に設置された180度稼働する砲身が伸縮し展開するビームキャノン。貫徹力に優れ、敵機2機を貫ける威力を誇る。発砲ビームの色は赤紫。

ビームガン 2門

両前腕に設置された連射性に優れたビームガン。低威力ではあるがビームである為、牽制射でもかなり高威力の武装となっている。発砲ビームの色は桃色。

 

機体名 GN-X V(ファイブ)

型式番号 GNX-903T

ファイター ビスマルク 初登場話 第88話  ベース機 GN-XIV

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 71t

解説

ビスマルクがGN-XIVをベースに機動力とあらゆるレンジに対応とした汎用性を更に高めたガンプラ。外見は可動式によって広い範囲を防御が可能なダブルオーダイバーエースの様な平らなGNスラスターコーンを装着したGN-XIVのGNシールドを両肩に装備し、胸部と股関部から伸びるGN-XのX字状のバインダー、両脹脛にはアドヴァンスドジンクスのGNバーニアを備え、両足はダブルオークアンタをイメージした形状になっている。バックパックにはGエグゼスのバックパックの様な上部にGNビームサーベルを接続した可動式のGNバーニアが備えられている。このGNバーニア左右のマウントラッチに近接用のGNバスターソードや、脇下から展開して射撃するGNビームキャノン、予備のGNビームライフルなどを任意で接続できる。放出されるGN粒子の色はGN-XIVと同じオレンジ。プリンツと連携が想定されており、本機は攻撃を担っている。

 

武装

GNビームライフル (マウントラッチに装備すれば最大3丁)

GN-XIVの持つショートバレルのビームライフルをそのまま使用している。劇場版ガンダムOOの劇中で使用した様な照射ビームは撃つことは出来なくなったが、その分エネルギー変換効率が最適化されている為、かなりの長時間使用が可能となっている。発砲ビームの色はオレンジ。

GNビームサーベル 2基

バックパック左右のGNバーニア上部に接続されたビームサーベル。グリップの形状は円筒状からGエグゼスの様なグリップエンドにかけて細くなる台形となっている。出力はGN-XIVの物より少しだけ強化されている。発振ビーム刃の色はオレンジ。

GNバルカン 2門

頭部に2門内蔵されているビームバルカン。ビームであるため威力が高い。発砲ビームの色はオレンジ。

GNクロー

先端が鋭利な形状になっている両手。本来はエネルギー切れの際の最後の手段と言うべき装備だが、GNフィールド効果を利用すれば攻撃力を底上げ出来る。

GNシールド 2基

両肩に装備されたダブルオーダイバーエースの持つ平らなGNスラスターコーンを備えた大型のシールド。両肩の稼働パーツによって広い範囲を防御出来る他、シールドを後方へ向けることで大推力を得ることもできる攻防優れた武装。

GNバスターソード (最大2基)

バックパックのGNバーニア左右のマウントラッチに任意で接続するGN-XIVのGNバスターソード。大きい刀身はGNフィールドを纏わせることで盾としても使える。

GNビームキャノン (最大2基)

バックパックのGNバーニア左右のマウントラッチに任意で接続するGNロングビームライフルを改造したビームキャノン。脇下から展開し、照射によって敵機を薙ぎ払うことに向いている。発砲ビームの色はオレンジ。

 

機体名 パワードジムガーディアン

型式番号 RGM-237G

ファイター プリンツ・オイゲン 初登場話 第88話  ベース機 パワードジムカーディガン

機体データ(製作者の設定)全高 18.1m 重量 84t

解説

プリンツがパワードジムカーディガンを更に重装備化し、重量増を招くも防御能力を格段に向上させることに成功したガンプラ。胸部にはコックピットハッチを覆うように増加装甲が加えられ、両肩上部にあったビームサーベルはオミットされ代わりに5連装ミサイルポッドが装備され、両前腕部にはベース機の大型シールドが装着されている。両腰、両脹脛にはジェスタキャノンのグレネードランチャーが装備されたが、両脹脛の大出力スラスターはそのまま残され、増加した重量をカバーしている。バックパックには大型ライフルと大型ガトリングガンが上下に連結され、稼働アームに接続された2枚の大型シールドがとても目を引く。本機はビスマルクとの連携を想定し、僚機の防御を担っている。その為格闘武器は装備していない。

 

武装

ビームマシンガン 

本機のメイン射撃武装。連射性と命中精度に優れ、フルオート射撃と3点バースト射撃を切り替えることが出来る。発砲ビームの色は桃色。

頭部バルカン 2門

ベース機から引き継いだ頭部のバルカン砲。主に牽制などで使用する。

5連装ミサイルポッド 2基

両肩上部に装備されたミサイルポッド。デュエルガンダムアサルトシュラウドのミサイルポッドをそのまま使用している。

大型ガトリングガン 2基

バックパックに装備された4連装の銃身を持つ大型のガトリング砲。主に対空用に使用され高密度の弾幕を張ることが可能で、面制圧にも向いている。

大型ライフル 2基

大型ガトリングガンの上部に沿うようにして取りつけられたビーム砲。精密射撃による遠距離の敵機を撃破することを目的として装備された。本機最大威力を持つ。発砲ビームの色は緑色。

グレネードランチャー 12発

両腰と両脹脛に装備されたグレネードランチャー。大型ガトリングガンの射程距離より内側に入ってきた敵機への攻撃に使用される。

大型シールド 4基

両前腕と、バックパックの接続アームに接続された大型のシールド。本機の代名詞と言える武装で、特にバックパックの物は稼働アームによってとても広い範囲を防御できる。

 

機体名 ケンプファージライヤ

型式番号 MS-14J

ファイター 長門 初登場話 第88話  ベース機 ケンプファー

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 42t

解説

元々高い機動力を持つケンプファーに更なる機動力強化と防御力強化を施したガンプラ。ジオン系MSの特徴である曲線的な装甲を持ち、ベース機と異なり右肩にはギラ・ドーガのスパイク付きの肩部シールドに似た物を装備し、左肩も同様にギラ・ドーガの様な大きく反り返った角と4本のスパイクを持つアーマーが装備されている。脚部はヤクト・ドーガの様な形状へ変更され腰部リアアーマーにはビームピストルがマウントされている。脹脛部はベース機よりも更に大型化され内側にスラスターノズルを多数装備している。そしてバックパックにはケンプファーアメイジングの武装コンテナ兼ウイングバインダーを2基装備している。この武装コンテナ兼ウイングバインダーはコンテナとしての機能が追及された設計の為、スラスターとしての機能はあまり持ち合わせていない。そして、本機最大の特徴と言えるのが側頭部にかけて描かれている稲妻模様である。この稲妻は、ジライヤの名前の由来となっている「迅雷」をイメージし長門によって描かれたものである。決して忍者イメージではない。

武装

ビームライフル 

本機のメイン射撃武装。ベース機のメイン射撃武装であるショットガンは、長門が使いづらいと判断した為オミットされた。連射力、威力共に高い。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

両前腕に格納されている格闘武装。手首の内側から取り出し使用する。本機唯一の格闘武装となっている為、ビームの出力は高い。発振ビーム刃の色は黄色。

頭部バルカン 2門

ベース機から引き継いだバルカン砲。主に牽制用として使われる。

ビームピストル 2丁

腰部リアアーマーにマウントされている連射性に優れたビームピストル。しかし長門にとってはビームライフルを失った際の予備兵装として認識されている為、使用頻度は少ない。

バスターランチャー 2丁

武装コンテナに格納されている本機最大威力を誇るビームランチャー。コンテナに積める様とにかく細身であることを主眼に置き、ガンダムMk-Ⅱのハイパーバズーカをベースに製作された。銃身は円形から長方形へと変更され、弾倉には小型ジェネレーターが内装されている。発砲ビームの色は黄色。

シールド

左腕に装備しているギラ・ドーガのシールド。背面にはシュツルム・ファウストを計4基装備している。

 

機体名 ガンダムAGE-2ハルファス

型式番号 AGE-2HF

ファイター 瑞鶴 初登場話 第88話  ベース機 ガンダムAGE-2ホーキンス

機体データ(製作者の設定)全高 18.8m 重量 35t

解説

瑞鶴が加賀との連携を想定し、尚且つ自分自身の能力を吟味し完成させたAGE-2ホーキンスの改造機。最大の特徴は、以前装備されていたCファンネルが取り外され代わりにライトニングバックウェポンシステムMk-Ⅲの大型ウイングバインダーとその基部パーツが取り付けられ、その基部となるパーツには面制圧に適した12連装ミサイルポッドが追加装備されている。更にバックパックはセイバーガンダムのバックパックに置き換えられ、高威力のアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲を使用可能となった。ツインドッズキャノンやカーフミサイル、ビームサーベルと言った武装はそのまま受け継がれたが、AGE-2ハルファスへの改造によって新たに追加されたメイン射撃武装である「ハイパードッズマグナム」は本機全てに装備されたビーム砲よりも高い威力を誇る。

武装

ハイパードッズマグナム 

本機最大の威力を誇るメイン射撃武装。形状はガンダムAGE-2マグナムの「ハイパードッズライフルマグナム」に酷似した形状で、一対のウイングを持つ。また銃身下部には1門のビームバルカンを備える。そしてその威力だが、これはハイパードッズライフルの「MSを2機貫通できる貫徹力」にビームマグナムの「掠めただけで相手を撃破できる火力」を上乗せした化物じみたものとなっている。その為Eパック方式を採用し、空になったパックは銃身上部から排莢され、リロードは銃身下部からの填め込みによって行う。予備のEパックは腰部リアアーマーの左右に6発分ずつ計12発分がマウントされている。ストライダー形態では機首となる。発砲ビームの色は赤紫色。

ビームバルカン 1門

ハイパードッズマグナムの銃身下部に取り付けられたビームバルカン。速射性に優れているが威力は低い。発砲はハイパードッズマグナムのEパックからではなく、機体本体からの直接エネルギー供給によって発砲される為、ハイパードッズマグナムのEパックは影響を受けず使用できる。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

AGE-2ホーキンスから引き継いだ近接格闘武装。形状やビームの出力に変更は加えられていない。発振ビーム刃の色は桃色。

ツインドッズキャノン 2基

AGE-2ホーキンスから引き続き装備されている貫徹力と連射性に優れたビームキャノン。AGE-2ハルファスへの改造によって銃身上部にライトニングバックウェポンシステムMk-Ⅲのウイング基部パーツが追加装備された。発砲ビームの色は桃色。

12連装ミサイルポッド 2基

ライトニングバックウェポンシステムMk-Ⅲのウイング基部パーツ側面に増設された小型ミサイルを内蔵したミサイルポッド。ストライダー形態時での使用が望ましいが、MS形態での運用も可能。濃密なミサイル弾幕で面制圧に適している。

アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲 2基

バックパックに装備された長射程、高威力のビーム砲。連射性能は低いが照射による薙ぎ払いが最大の強みである。同軸線上のスーパーフォルティスビーム砲はエネルギー問題を解決出来なかったためオミットされた。発砲ビームの色は赤色。

カーフミサイル 2基

AGE-2ホーキンスから引き続き装備されている脹脛裏の連装ミサイル。12連装ミサイルと連動して発射することで弾幕をより濃密にすることが出来る。

シールド 2基

両前腕に装備されているダブルオーガンダムのシールド。連結状態での使用は考慮されておらず、これはシールドとしての機能を持ちつつ僚機であるガンダムAGE-1エグゼバウンサーをシールド表面に乗せることを考慮しての配置となっている。

 

ハイパーブースト

ガンダムAGE-2ダークハウンドが持つ特殊機能「ハイパーブースト」をそのまま移植した物。発動させることでMS型のガンプラを2機牽引しながらでも最高速度を超えた圧倒的加速力で敵前線への瞬時到達から、敵射線上からの瞬時離脱を可能とする。ストライダー形態時のみ使用可能。

 

機体名 ガンダムAGE-1エグゼバウンサー

型式番号 AGE-1GEB

ファイター 加賀 初登場話 第88話  ベース機 ガンダムAGE-1バウンサー

機体データ(製作者の設定)全高 19.2m 重量 46.3t

解説

加賀が全国大会で大破したガンダムAGE-1バウンサーを全面的に改修した新型。バランスに優れた基礎設計が特徴の前身機であるAGE-1バウンサーに機動力強化を主体した改造が施している。両肩にはスラスターを内蔵したビルドストライクガンダムの様な肩アーマーが装着され、Gエグゼスの様な下半身には腰部サイドアーマーに可動式のスラスター、足裏にバーニアノズルを持ち、最大の特徴であるバックパックには左右合計12基の小型スラスターバーニアを内蔵した大型バインダーを装備し、バックパック本体との間に取り付けられたビームサーベルのホルダーとしても機能している可動式スラスターユニットによって前身機を上回る機動性を獲得し、頭部のV字アンテナも4本に増設することで索敵・通信能力の強化が図られている。また、この改修によって取り外されたバックパックのビームキャノンの火力を補うため「ガンダムTRYAGEマグナム」が使用するトライドッズライフルを改造し、銃身を少し切り詰め、Eパック方式を取り入れた新型ライフル「ドッズマグナム」を装備している。

 

武装

ドッズマグナム 

本機のメイン射撃武装。瑞鶴のAGE-2ハルファスが持つハイパードッズマグナムと同様、Eパックを採用した高威力のライフル。ハイパードッズマグナムよりある程度小型の為、威力は劣るがそれでも発射されたビームの余波で敵機を破壊する威力を持つ。銃のグリップから銃身の中ほどにかけてEパックを収めるためのパーツが増設されている為、精密射撃モードへの変形は不可能となっている。装填されるEパックは5発分だが、威力を抑えた通常モードへのモード切替が可能。予備合わせて15発分のEパックを携行し、予備は腰部リアアーマーにマウントされる。排莢は銃身上部から、リロードは銃身下部から行う。発砲ビームの色は紫がかった桃色。

ビームサーベル 2基

大型バインダーとバックパック本体との間に取り付けられた可動式スラスターユニットにマウントされたビームサーベル。Gエグゼスのビームサーベルをそのまま使用しているが、出力はかなり上がっている。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部ビームバルカン 4門

頭部に設けられたビームバルカン。AGE系ガンダムは基本持つことのない武装だが、オミットされたビームキャノンの火力を少しでも補うため設けられた。設置個所は側頭部。発砲ビームの色は桃色。

シグルドブレイド

エグゼバウンサーシールド先端に装備された「レの字」型のブレード。刀身は研ぎ澄まされた緑のクリアパーツを使用しているうえにビームサーベル発振機能を持つ為、以前の物より鋭い切れ味を誇る。発振ビーム刃の色は桃色。

エグゼバウンサーシールド

左腕に装備するAGE-1バウンサーのバウンサーシールドにプラ板を重ねてより強固にし、その1枚ごとに対ビームコーティングが施された新型のシールド。先端部にはシグルドブレイドが取り付けられ、その根元にはビームサーベル発振器が取り付けられている。

 

機体名 ウイングガンダムゼロ・アランダイト

型式番号 XXXG-00W0Ard

ファイター 秋月 初登場話 第88話  ベース機 ウイングガンダムゼロアラン

機体データ(製作者の設定)全高 17m 重量 13t

解説

全国大会で大破してしまったウイングガンダムゼロアランを大改修し、パーツを全て一新した秋月の新型。前身機であるウイングガンダムゼロアラン同様、左右非対称の姿をしており、右肩アーマーには稼働レールと接続基部のジョイントパーツによって広範囲を防御できるウイングガンダムフェニーチェリナーシタの鳥の顔をイメージしたシールド「アランウイングシールド」を持ち、また左肩アーマーにはデスティニーガンダムの「アロンダイトビームソード」の機能をそのままに刀身を延長させた「アランダイトビームソード」をマウントしている。また腰部サイドアーマーにはツインバスターライフルのマウントラッチが設けられている。バックパックは内装されているスラスターの出力向上とパーツを新品の物へ取り替えただけとなっている為、主だった変化は見られないが、それでもストライダー形態に変形したAGE-2ハルファスに追随するスピードを持つことからかなりの機動力強化を施すことに成功している。

 

武装

ツインバスターライフル 

ウイングガンダムゼロアランから引き続き装備しているメイン射撃武装。基本的な威力は前身機時代から変更されていないが、それでも高い威力を発揮する。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 1基

アランウイングシールドの裏面にマウントされている近接格闘武装。左肩にアランダイトビームソードを装備した為、マウント位置が変更となった。主に対MS戦に使用する。発振ビーム刃の色は緑色。

マシンキャノン 2基

両肩口に装備された大口径機関砲。砲身を覆うカバーが取りつけられ対弾性が上昇している。発砲時はカバーが持ち上がる。大口径の為、装甲の薄い部分へ向けて発砲すれば破壊することが出来る。

アランダイトビームソード 1基

デスティニーガンダムの「アロンダイトビームソード」の刀身を延長したビーム刃と実体刃を併せ持つ白色の折り畳み式大剣。ビーム系に対して高い耐性を持つIフィールドを持つガンプラや、対艦戦闘を想定し新たに装備された。ビームの刃で装甲を溶断、実体刃で押し斬るという運用をする。発振ビーム刃の色は緑色。

アランウイングシールド

右肩アーマーの可動式レールに接続されているウイングガンダムフェニーチェリナーシタの鳥の顔を思わせる形状をしたシールド。稼働レールと接続基部のジョイントパーツによって広い範囲を防御可能にしている。対ビームコーティング処理も施されている為ビーム、実弾共に高い防御力を誇る。裏面にはビームサーベルがマウントされている。

スモールビームシールド 1基

左前腕に装備されている小さいビームを発生させるビームシールド。アランウイングシールドが破壊されてしまった際の予備シールドとして意味合いが強く、出力を抑えられている。展開ビームの色は水色。

 

機体名 ガンダムバルバトスルプスレクスレイト

型式番号 ASW-G-08R

ファイター 三日月 初登場話 第88話  ベース機 ガンダムバルバトスルプスレイト

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 31t

解説

全国大会で大破したガンダムバルバトスルプスレイトを修復、改修を加えた三日月専用のガンプラ。主な改修点として、バックパックの改造が挙げられるがシルエットは殆ど前身機であるルプスレイトと同じように見える。この事から、いかに前身機が三日月に合っていたのかがわかる。武装は、バックパック右側にマウントされた「メイス」同じく左側にマウントされた「ソードメイス」バックパック背面にマウントされた一対の「ツインメイス」両前腕の「腕部200㎜砲」バックパック中央の、小型化されより鋭利さを増した「テイルソード」及び両手指先の「ルプスネイル」足裏のケーブル式「パイルバンカー」となっている。そして両肩アーマー側面と胸部中央に月華団マーク、右肩に三日月のパーソナルマークである「右曲がりの三日月」が施されている。

 

武装

メイス

バックパック右側にマウントされたガンダムバルバトスの「メイス」対MA型ガンプラ戦を想定して装備されている。中央のパイルバンカーのみ鉄パーツを使用し、刃先部分は鋭利になっている。

ソードメイス

バックパック左側にマウントされているガンダムバルバトスルプスの「ソードメイス」機動力が高く、尚且つ装甲の分厚い敵に対して戦闘を想定し装備され、刃先部分がより分厚く鋭意になっている。表面には対ビームコーティングが施されている。

ツインメイス 2基

バックパック背面、テイルソードを挟み込むようにマウントされたガンダムバルバトスルプスの「ツインメイス」乱戦での使用を前提に装備され、メイスよりも刃先は研ぎ澄まされている為、メイスでありながら「敵機を斬り裂く」といった芸当も可能。

腕部200㎜砲 2基

両肘のハードポイントに装備される射撃武装。使用時は砲身が180度回転し前方を向く形になっている。ビーム兵器ではないが、使用する弾倉を「200㎜ビーム弾」に変更すればビーム兵器としても使用可能。

テイルソード

バックパック中央に装備された大型テイルブレードの改良モデル。以前の物よりも小型化されてより鋭利となり、尚且つ推進用の小型スラスターノズルを増設したことで攻撃速度がかなり上昇している。

ルプスネイル

両手の指先に装備された鋭利なネイルカバー。先端がかなり鋭利な為、敵機を刺し貫くことも可能。

パイルバンカー 2基

両脚裏に格納されているケーブル式のパイルバンカー。接近戦を得意とする三日月の為に追加装備された。敵機への踏みつけの瞬間に発射して撃破したり、周辺物体に打ち付けスラスターを使わずに移動するなど多用途性のある武装となっている。

 

機体名 ガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティ

型式番号 ASW-G-11S

ファイター 長月 初登場話 第88話  ベース機 ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティ

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 37.3t

解説

全国大会で大破したガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティを修復、改修したガンプラ。前身機の特徴であった展開式の頭部は改修を受け、常に通常モードで運用されるようになったが照準モード時の高感度センサーをそのまま引き継いでいる為、変形時のタイムラグをなくすことに成功している。両肩にはスラスターを内蔵したアーマーを装備し、この両肩アーマーは小型化され前身機はガンダムエクシアの肩アーマーサイズまでだったのがガンダムグシオンリベイクのサイズまでスケールダウンに成功した。更に両脹脛部には大型のスラスターユニットが増設されている。バックパックにあったスタビライザーはアンバック性能向上のため少し大型化され、そこにサブアームを内蔵している。そして腰部リアアーマーに前身機で猛威を振るったリベイクシザーシールドを更に改修、スラスターを内蔵した「セフティアリベイクシザーシールド」が懸架されている。だが、前身機に存在したヒートダートはオミットされている。

 

武装

200㎜ロングレンジビームライフル 2丁

メインアームでの運用を前提として製作された新型のビームライフル。形状は200㎜ロングレンジライフルと同じだが、1番の相違点はビーム兵器であるという事だ。これは望月が製作した「200㎜ビーム弾」によるもので、ハイペリオンガンダムの「ザスタバ・スティグマト」の様にビームのエネルギーを充填したパワーセル(弾丸)を弾倉に装填することで、発射時の反動を実弾発射時とほぼ同一にしたままビームを発射できるというものだ。射程、威力共に200㎜口径という事もあって強大なものとなっている。発砲ビームの色は緑色。

200㎜ロングレンジライフル 2丁

サブアームでの運用を前提として再設計されたライフル。形状はグシオンリベイクフルシティが装備する200㎜ロングレンジライフルと同一である。主な改修点は照準センサーの改修、及びマガジンのロングマガジン化となっている。

セフティアリベイクハルバード

前身機の物を引き続き装備されている大斧。刀身部分に対ビームコーティングを施し、防御も出来る。また斧の刀身内部には鉄板が入っており、威力向上も図られている。

セフティアリベイクシザーシールド

腰部リアアーマーに懸架されている可変式の実体盾。変形時の支点部上面にスラスターが内蔵されたため機動力向上に一役買っている。

サブアーム 2基

バックパックのスタビライザー内に格納されているサブアーム。メインアームと全く同じパワーを発揮できる。

ナックルシールド 4基

手甲として従事装備されているナックルガード。殴打攻撃の際の威力向上に一役買っている。

 

機体名 卯月号改

型式番号 STH-16/uyc2

ファイター 卯月 初登場話 第88話  ベース機 卯月号

機体データ(製作者の設定)全高 20m 重量 54t

解説

全国大会で大破した卯月号を修復、改修を施したガンプラ。主な改修点は武装の充実化と増加した重量を補うための機動力強化、内部フレームの強化であり、武装に関しては右肩アーマーの側面に前身機の「大型バスターソード」左肩アーマーには縦軸回転し防御と同時に斬撃による攻撃を可能とする「ソードシールド」右腕側面に2本の「ヒートダート」左腕には「機関砲」と「ガントレットシールド」そして両腰のサイドアーマーとリアアーマーに懸架されたマガジンラックと右腕に「アサルティットライフル」を装備している。機動力に関しても胸部両側面、両膝の前面と背面のバーニア、両脹脛のスラスターユニットが増設されている。内部フレームは増加した重量と大型バスターソードの使用時の負荷により耐えられるよう強度がかなり上昇している。

 

武装

アサルティットライフル 

前身機から引き継いだ4種類の弾丸を使用できる「多用途アサルトライフル」弾の種類はマガジンに塗られた色で判別し、白は通常弾、赤は焼夷弾、黄色は散弾、青は貫徹弾となっている。

大型バスターソード 1基

右肩にマウントされている前身機から引き継いだ大型の実体剣。巨大な刀身は自機を覆えるほど巨大だが、その分機体への負荷がかかってしまう。左肩に新装備である「ソードシールド」が追加されたため1基外された。

ソードシールド 1基

左肩に装備された大剣状のシールド。シールド縁がとても鋭利になっており、零距離までの接近を許した際の不意打ちによる迎撃のために武装で縦軸に360度回転し敵機を撃破し、重圧な装甲と耐ビームコーティングによって高い防御力を誇る。

機関砲 1基

左肘に装備された機関砲。

ガントレットシールド 1基

左前腕に装備された小型シールド。先端に爪があり、格闘兵装として使用可能。前身機から引き継いだ武装だが、右前腕にヒートダートが設置されたため1基取り外された。

ヒートダート 2本

右前腕に新たに装備された武装。ガンダムグシオンセフティアリベイクフルシティから譲り受けた武装で相手に投擲し撃破するという戦法に向いている。

 

機体名 ランド・マンロディ改二

型式番号 UGY-R42

ファイター 菊月 初登場話 第88話  ベース機 ランド・マンロディ改

機体データ(製作者の設定)全高 17.5m 重量 46.3t

解説

全国大会で大破したランド・マンロディ改の大改修した菊月のガンプラ。装甲は一新されたが前身機同様曲面上の装甲を持ち右前腕にはガンダムヘビーアームズの展開式のアーミーナイフを装備し、左腕にはデモリッションバスタードソードを使用するための大型サブアームを装備している。更に両腰には3連装のパイルバンカーを新たに装備されたため零距離迎撃の攻撃力上昇が図られている。非常にシンプルな機体カスタマイズだが菊月にとっては十分な改修となっている。菊月がいかに自己判断能力に優れているかを体現したガンプラとなっている。

武装

サブマシンガン 

月華団共通のロングマガジンを使用したサブマシンガン。銃身下部にグレネードランチャーを装備している。

グレネードランチャー 

サブマシンガンの銃身下部に装備された武装。本機専用にカスタマイズされた特注品で、左側の排莢部から自動排莢、専用マガジンを装備するなど、他の武装とは一線を掻いた特殊なグレネードランチャーとなっている。

デモリッションバスタードソード

左肩にマウントされたデモリッション・ナイフとバスタード・チョッパーを分割できないようにした武装で、単純な形状ではあるものの鉄パーツを使用することで威力と強度はかなりの物となっている。左手のサブアームによって保持され使用される。

パイルバンカー

デモリッションバスタードソードのバスタード・チョッパーの部分に装備された炸薬式のダインスレイブ。零距離での使用ならば威力は高い。

頭部バルカン砲 2門

ランドマン・ロディ従来の武装。牽制などで真価を発揮する。

腰部パイルバンカー 6門

腰部サイドアーマーに装備された片側3連装のパイルバンカー。6発と装弾数は少ないが零距離での迎撃を想定している為、この装弾数でも十分と判断された。

アーミーナイフ 1基

右前腕にマウントされたガンダムヘビーアームズの展開式アーミーナイフ。刀身部をかなりやすり掛けされている為、鋭い切れ味を誇る。

 

機体名 Hi-νトールギス

型式番号 ROZ-93MS3

ファイター 大鳳 初登場話 第88話  ベース機 トールギスⅢ

機体データ(製作者の設定)全高 21m 重量 19t

解説

トールギスⅢの高い機動性と火力に、大鳳が持つ高い空間認識能力を遺憾なく発揮できるようにHI-νガンダムのフィンファンネルやCファンネルと言ったオールレンジ攻撃端末を追加し、あらゆるレンジに対応しつつ機動性を徹底的に追求したガンプラ。頭部はトールギスⅢの頭頂部をより西洋騎士兜のトサカ状になり、胸部中央はウイングガンダムゼロの様に前方へ突き出されそこに球形のサーチアイ、右肩にはトールギスⅢのメガビームキャノンを、左肩には裏面にヒートロッド、先端部にロングタイプのCファンネルを装備したシールド、脚部にはバックパックから取り外された大推力スラスターを補うため徹底的な機動力強化が行われており、スラスター類の推進力が爆発的なまでに強化されている。そして最大の特徴であるバックパックは、Hi-νガンダムのフィンファンネル6基を装備したバインダーと、アンバック性能を高める短いスタビライザーを中央上に長いスタビライザーを中央下に備え、その左右にはプロペラントタンクを備えている。高い機動力と火力を備えた本機は、そのスペック上大鳳しか扱うことの出来ない物となっている。

 

武装

メガビームキャノン 

右肩に装備されたトールギスⅢの装備を高出力化した本機最大威力を誇る射撃武装。薙ぎ払いによる面制圧から、照射によって敵陣に風穴を開けるといった芸当を可能とする高火力ビームキャノン。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 1基

シールドの裏面にマウントされているビームサーベル。火力に優れている本機が使用できる手持ち式の格闘武装。シールドにヒートロッドが内蔵されている為、あまり使用はされない。発振ビーム刃の色は桃色。

ヒートロッド 1基

シールドの裏面に設置された赤熱化し敵機を溶断する鞭。大鳳はビームサーベルよりもこの武装を使用することを好んでいる。よくしなる上に射程距離も長い。また、赤熱化せずに使用することで敵機の拘束などにも使える。

フィンファンネル 6基

バックパック左右のバインダーに計3基ずつ設置されているオールレンジ攻撃端末。射出後はコの字型に変形し、射撃や防御フィールドを形成することが出来る。また、Hi-νガンダムのフィンファンネル同様、接続部に戻すことでエネルギーのチャージが可能である。

Cファンネル 2基

シールド先端に装備された近接用のオールレンジ攻撃端末。AGE-FXのロングタイプCファンネルをそのまま使用している。

シールド

左肩にアームを介して装備された実体盾。表面の対ビームコーティングとビームを弾く効果のあるCファンネルによって高い防御力を誇る。なお、格闘武装がこのシールドに集中している為、破壊されれば格闘能力が著しく低下してしまう。

 

機体名 デスティニーガンダムリベリオン

型式番号 ZGMF-X42SR

ファイター 最上 初登場話 第89話  ベース機 アンティリーデスティニーガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.9m 重量 80t

解説

最上が三隈の協力の元完成させたアンティリーデスティニーガンダムの後継機に当たる機体。アンティリーデスティニーガンダムは地区予選の決勝戦で破壊されてしまった為、修復にかなりの時間要した背景を持つが、その長期間の修復期間が逆に最上のアイデアを膨らませる時間となった為、かなりの出来に仕上がっている。頭部のV字アンテナは2本から4本へ増設され、両肩アーマーにはスラスターが内蔵されその上部にビームブーメラン「フラッシュエッジ2」を備える。そしてバックパックに懸架されていた「アロンダイトビームソード」と「高エネルギー長射程ビーム砲」はそれぞれ強化され腰部リアアーマーにマウント位置を変更し、抜刀、砲身展開時のタイムロスを減衰、重心の安定化が図られている。またこのマウントラッチはリアアーマーを起点として回転し、左右どちらからでも素早い展開が出来る。また、バックパックの光の翼も出力向上により、より長い時間の使用が可能となっている。

 

武装

高エネルギービームライフル 

アンティリーデスティニーガンダムで使っていたものを高出力化し、3点バースト射撃も可能にしたビームライフル。リアアーマーにマウントできない為、未使用時は右腰サイドアーマーに懸架する。発砲ビームの色は緑色。

17.5㎜CIWS 2門

側頭部に装備されたバルカン砲。

アロンダイトカリバー

腰部リアアーマー左側に懸架されている「アロンダイトビームソード」の強化型。ビーム刃は出力が強化され、実体刃はより鋭利になっている。片手での使用も可能となっている。

高エネルギー長射程ビーム砲改

腰部リアアーマー右側に懸架されている「高エネルギー長射程ビーム砲」の強化型。エネルギー出力が上昇され、連射性も向上している。発砲ビームの色は赤色。

フラッシュエッジ2ビームブーメラン 2基

両肩上面にマウントされたビームブーメラン。前身機から引き継いだ武装だが、両肩側面にスラスターが内蔵されたため、マウント位置が変更となった。投擲せず、そのままビームサーベルとしても使用できる。発振ビーム刃の色は桃色。

機動防盾

デスティニーガンダムの装備する機動防盾の表面にビームシールド発生器を内蔵した盾。小型の為、取り回しに優れている。

 

機体名 ガンダム鬼羅(キラー)エピオン

型式番号 OZ-13MSK

ファイター 綾波 初登場話 第89話  ベース機 ガンダムエピオン

機体データ(製作者の設定)全高 17.8m 重量 10t

解説

綾波がガンダムエピオンの旧キットから製作した新型機。旧キットがベースとなってはいるが、綾波は関節などの駆動部を新キットのウイングガンダムゼロの関節パーツに換装している為、新キットを使用したガンプラと大差ない挙動が可能となっている。ガンダムエピオンが持っていた可変機構はオミットされ、バックパックのウイングバインダーも取り外されている。両肩にはジャスティスガンダムの「パッセルビームブーメラン」を装備し、両膝にはイージスガンダムの「ビームサーベル発振刃」を備えている。そして腰部左右にはベース機から引き継いだビームソードが2本懸架され、これは柄同士を連結させ間合いを取りつつ戦闘を行える特性を持つ。またX字状のバックパックや、防御装備である耐ビームコーティングマント、鬼の面を模したV字アンテナは鬼羅サンドロックから引き継がれた武装となっている。

 

武装

ビームソード 2基

腰部サイドアーマーに懸架されているビームソード。ジェネレータからのエネルギー供給ケーブルはオミットされたが、それでも高い出力を誇る。柄同士を連結させ、間合いを取った戦闘をとることも可能。発振ビーム刃の色は緑色。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。ベース機には存在していないが敵機への牽制などに使用する為、増設された。設置個所は側頭部。

パッセルビームブーメラン 2基

両肩に装備されたジャスティスガンダムのビームブーメラン。投擲することで弧を描きながら手元に戻ってくる。発振ビーム刃の色は桃色。

ビームサーベル発振刃 2基

両膝に装備されたイージスガンダムのビームサーベル発振刃。蹴りと連動させることで高い威力を発揮する。発振ビーム刃の色は黄色。

鬼モード

ガンダム鬼羅サンドロックから引き継いだ戦闘補助システム。鬼の面を思わせる頭部のV字アンテナをメインカメラに被せることで発動し、機体の反応速度を向上させることができる。尚、赤い目になるのは頭部アンテナに赤いデュアルカメラを装備している為である。

 

機体名 インフィニットバーニングラブガンダム

型式番号 BG-00LOVE

ファイター 金剛 初登場話 第89話  ベース機 ビルドバーニングラブガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 17.7m 重量 78.9t

解説

金剛がビルドバーニングラブガンダムを改修し、より近接格闘に優れた性能を持った機体として完成した新型。特徴として、両肩アーマーは発光装甲を上面に備えた左右に大きく突き出したものとなり両腕には分厚い手甲が施され、丸みを帯びた下半身と腰部背面のビームサーベル、膝部の発光装甲、両脹脛にはスラスターユニットが増設されている。またバックパックにはアストレイレッドフレームのフライトユニットを装備し、機動力向上が図られている。そして本機最大の特徴と言えるのが、灼熱の炎の様な6本の頭部アンテナで、ここから更にドライグヘッドを起動することでより一層燃え上がる炎を連想させる形状となっている。

 

武装

格闘

両の拳と両脚による格闘攻撃。本機のメインウェポンで、相手を直接粉砕可能なうえ炎を纏った連撃を放つことが出来る。

頭部バルカン 2門

頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制に使用する。

ビームサーベル 2基

腰裏にマウントされたビームサーベル。前身機の物をそのまま使用している。発振ビーム刃の色は桃色。

バーニングラブフィンガー

機体内のプラフスキー粒子を手に集約し放つ必殺技。ゴッドガンダムの「爆熱ゴッドフィンガー」を参考にした技で、掴んだ対象の内部まで破壊する威力を誇る。また、本機への改装によって両手同時使用が可能となった。

 

機体名 ガーディーフォビドゥンガンダム

型式番号 GAT-X252/G

ファイター 比叡 初登場話 第89話  ベース機 フォビドゥンガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 17.5m 重量 90.4t

解説

比叡が使用するとにかく防御に特化したガンプラ。「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」を備え、ベース機の時点から優れた防御力を誇るフォビドゥンガンダムの防御性能をさらに引き上げ、金剛たちの護衛に特化している為フォビドゥンガンダム本体にはあまり手を加えられていない。最大の特徴はやはり「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」の存在だが、ベース機に存在したバックパック両端だけでなく、両膝にも稼働アームを介してこれを装備している。これを全て一方向に展開させることで、大出力のメガビームでさえも湾曲させることが出来る極めて高い防御性能を持つ。だが、ベース機から存在する実弾兵器の多様は避けられなかった模様。

武装

誘導プラズマ砲「フレスベルグ」 1門

ベース機から引き継いだバックパック先端部に内蔵された高出力ビーム砲。ゲシュマイディッヒ・パンツァーを応用し、エクツァーン砲身に設置された誘導装置の磁場干渉によって、ビームの軌道を自在に偏向する事ができる。発砲ビームの色は赤色。

重刎首鎌(じゅうふんしゅれん)「ニーズヘグ」

ベース機から引き継いだ格闘戦用の打突用スピア付きの大鎌。湾曲した刃は徹底的に研磨されている為、とてつもない切れ味を誇る。なおビームシールドに対しての対抗手段はない。

88mmレールガン「エクツァーン」 2門

ベース機から引き継いだバックパック両側に設置された可動式レールガン。「フレスベルグ」の弾道を曲げるための磁場発生器としての役割も持つ。

115mm機関砲「アルムフォイヤー」 2門

ベース機から引き継いだ両腕内蔵の大口径機関砲。固定火器であるため、他の武装を保持したままでの使用が可能。

75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」 2門

ベース機から引き継いだ頭部のバルカン砲。主に牽制やミサイル迎撃、ニーズヘグで対処できない間合いの敵に対する牽制として機能する。

エネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」 4基

本機最大の特徴と言える防御武装。ミラージュコロイドの原理を応用した対ビーム防御システム。バックパック両側と両膝の稼働アームに取り付けられた可動装甲の表面に発生させた磁場でビームを歪曲させ、自機への命中を避ける。しかし、本体への密着状態から放たれたビームを曲げる事は原理的に不可能なため、接近戦に対する効果は限定されるが本機の戦闘目的はあくまで金剛の護衛であるため、遠距離からの攻撃を防ぎつつ、敵破壊をメインの攻撃手段とする本機にとっては敵機へ接近するという事はあまりないことからそれ程重大な問題とはなっていない模様。また、ビームの湾曲はある程度コントロールできる為、湾曲させたビームを敵機に当てる。と言った芸当もでき、更のこれら全てを一方向に展開することで大出力のメガビームでさえも湾曲させることが出来る。

 

機体名 ガンダムEz-AS(アサルトスナイプ)

型式番号 RX-79[G]Ez-AS

ファイター 榛名 初登場話 第89話  ベース機 ガンダムEz-SR

機体データ(製作者の設定)全高 18.6m 重量 80t

解説

榛名が使用する後方支援と索敵に特化したガンプラ。ベース機の様に平面を多用した装甲を持ち、高い索敵能力を持つ。その索敵能力はとても高く、両肩アーマーの前面と胸部中央の円形センサー、そして左前腕部に装備されたレドームと一体化したシールド「レドームシールド」によって、センサービットを展開したユーラヴェンガンダムの索敵範囲をほぼ見通すことが出来るほどだ。バックパックには可動式のフレキシブルスラスターを装備し、ベース機を凌ぐ機動力を獲得、宇宙空間での戦闘も可能となった。そして、左腕には長銃身のスナイパーライフル「カスタムスナイパーライフル」を、左腕には短銃身の「カスタムビームライフル」を装備し、遠、中、近のレンジにおいて高い対応性を持っている。

 

武装

カスタムスナイパーライフル 

右手で保持する長銃身のスナイパーライフル。長い射程距離と高い精密性を備えたビームライフルで、銃身左側にカスタムビームライフルを接続しサブグリップ兼センサー強化の能力を付与することが出来る。発砲ビームの色は桃色。

カスタムビームライフル 

左手で保持する短銃身のビームライフル。取り回しの良さと、連射性に優れたビームライフルで主に中から近距離の敵に対応するために使用される。カスタムスナイパーライフルの銃身に装着することでサブグリップとしても機能する。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

腰部サイドアーマーにそれぞれマウントされているビームサーベル。ベース機の物をそのまま使用している為、出力は少し低め。

頭部バルカン 2門

側頭部に設けられた牽制用のバルカン砲。

レドームシールド

左前腕に装着されるレドームと一体化したシールド。本機の索敵能力の要となる装備だが、機動性の維持の為シールドに装着されている。形状はガンダムEz-8が使用しているシールドの後端に円形レドームが設置されている。

 

機体名 ブーストカラミティガンダム

型式番号 GAT-X131/B

ファイター 霧島 初登場話 第89話  ベース機 カラミティガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.3m 重量 81.6t

解説

霧島が単機での敵戦線突破を目指して製作した火力と機動力に特化したガンプラ。カラミティガンダムの素体にあまり手を加えることなく製作されている為、機体のシルエットはベース機とほぼ同じと言っても良い。そして、本機最大の特徴はベース機に存在しなかった「ガンダムAGE-2」のストライダー形態を踏襲した変形機構で、これは腹部で下半身を後方へ折り畳み胸部上面に2門の砲身を持つ鋭利なシールドをマウント、両腕を後方へ向けて肩アーマーを折り畳み、両膝にビームライフルをマウントするという、ほぼAGE-2と同様の変形プロセスとなっている。またこの変形機構に合わせて、337mmプラズマサボット・バズーカ砲「トーデスブロック」は装備から外されることとなった。しかし、それ以外にカラミティガンダムが装備していた各種ビーム砲は残されている為、総合火力はむしろ上がっていると言っても過言ではない。また、水上でのホバー走行が可能なほどのスラスター推力は更に強化が施されている。

 

武装

67㎜高エネルギービームライフル「トーデスブリッツ」 2丁

337mmプラズマサボット・バズーカ砲「トーデスブロック」に変わる本機のメイン射撃武装。形状はデュエルガンダムの57㎜高エネルギービームライフルとほぼ同型だが、口径がひと回り大きくなっているため高い威力を誇る。変形時は両膝にマウントされる。名前の「トーデスブリッツ」とはドイツ語で「死の閃光」と言う意味。霧島曰く「カラミティガンダムらしさを出した」とのこと。発砲ビームの色は緑色。

125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲「シュラーク」

ベース機から引き継いだ背部バックパックのビーム砲。トーデスブリッツより2倍の口径を誇り高い連射性・出力を併せ持つ。本機の副砲と言ってもいい装備。発砲ビームの色は緑色。

580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」

ベース機から引き継いだ胸部中央の大口径ビーム砲。シュラークより速射性は劣るが大口径の分威力が高く攻撃範囲も広い、尚且つその装備配置上、発射までの隙が少ないために接近する敵機に対する牽制としても活用できる。本機の主砲と言っても過言ではない武装だが、変形時はシールドが胸部上面にマウントされるため、発射の余波でシールドを傷つけない為に発射できない。発砲ビームの色は赤色。

115mm 2連装衝角砲「ケーファー・ツヴァイ」

ベース機から引き継いだ射角を変更できるビーム砲を搭載したシールド。プラ板を重ねてのチョバムシールド化が図られており、対ビームコーティングも相まって高い防御力を誇る。通常形態では左前腕にマウントされ、変形時は胸部上面にマウントして機首となる。発砲ビームの色は緑色。

 

機体名 ナラティブガンダムAB装備

型式番号 RX-9/AB

ファイター 空母水鬼 初登場話 第90話  ベース機 ナラティブガンダムA装備、ナラティブガンダムE装備

機体データ(製作者の設定)全高 27.2m 重量 200.3t

解説

梅雨葉が使用していたナラティブガンダムE装備をベースに、ナラティブガンダムA装備の装備一式を改造、ナラティブガンダムE装備に合わせて装着したガンプラ。外見はナラティブガンダムA装備と酷似しているが、装備の内容は全くと言っていい程に変わっている。下半身を覆うようにA装備の大型のブースターを装着し、腰部フロントアーマーには大口径のハイメガキャノンを装備、エクストラパックを装着したナラティブガンダムE装備を挟み込む様にナラティブガンダムが握るグリップが取り付けられた頂点が下を向いたビームガン内蔵サブアームが取りつけられ先端部にはビームサーベルとしても機能するビーム砲を持つ三角形の筒と、その根元部分には三又のクロー状のファンネルコンテナ、更にその後部には6つの五角形状のミサイルコンテナを持ち、そしてその下部に6基の大型プロペラントタンクを装着している。これら改装によって、重量は7tも増加し完全に大気圏内ステージでの使用が出来なくなってしまい、おまけにとてつもない加速性によって旋回性能は超絶劣悪となっている。だが、本機の目指すコンセプトである「単独での戦線突破」を考えれば、これでも十分と言えるのかもしれない。また、豊富な武装によって火器管制が複雑化、空母水鬼以外には扱えない機体となっている。しかし、全パーツをパージすることでナラティブガンダムE装備として運用可能。

 

武装

頭部バルカン 2門

ナラティブガンダムE装備、従来の武装。ミサイルの迎撃などに使用する。

ビームサーベル 2基

バックパックに装備されているビームサーベル。E装備の物をそのまま使用している。発振ビーム刃の色は桃色。

機首部大口径ビーム砲 1門

エクストラパック機首部のビーム砲。常に180度回転している為後方からの不意打ちなどに対応できる武装となっている。連射は出来ないが、照射は可能。発砲ビームの色は黄色。

大型ビーム砲 2門

エクストラパック上面に装備された大型のビーム砲。機首部大口径ビーム砲との威力の差はそこまで変わらないが照射は出来ず、代わりに連射が可能。本体の向きに砲口が固定されている為射角は機体の向きに左右される。発砲ビームの色はオレンジ。

ハイパーバズーカ 2基

2つの大型ビーム砲の間に装備されているバズーカ。ユニコーンガンダムのハイパーバズーカをそのまま装着している。砲口が後方を向いているので、支援機状態でのドッグファイト対策として装備されているが、ナラティブガンダムE装備も勿論使用可能。またこのマウントラッチにはビームライフルとシールドを設置可能。

ハイ・メガ・キャノン

前部腰アーマーに内蔵されている本機最大威力を誇るビーム砲。威力は非常に高いがその関係上、使用場面は限られている。発砲ビームの色は桃色。

5連装中型ミサイルポッド 12基

機体後部左右に6基ずつ、計12基装備されているミサイルポッド。回転式で上部の物から使用され、使用後はパージされる。

ビーム砲 2門

元サイコ・キャプチャーの先端部に備えられたビーム砲。ビームサーベルとしても使用できるが、銃身が長すぎて取り回しは劣悪極まりない。発砲ビームと発振ビーム刃の色は桃色。

ビームガン内蔵サブアーム 6基

元サイコ・キャプチャーのスライド部に内蔵されたビームガンを内蔵したサブアーム。ベースアイデアはガデラーザの隠し腕となっているが本機の装備数はガデラーザを上回る。ビームガンは連射性に優れており、主に対空用に使われる。発砲ビームの色は桃色。

ABファンネル 60基

サイコ・キャプチャーのクロー内部に10基ずつ格納されているオールレンジ攻撃端末。形状はガデラーザの小型ファングに酷似しているがビームサーベルを展開する機能は持たない。ファンネルの上部と下部に小型ビーム砲が取り付けられている。

 

機体名 ジークイフリート

型式番号 MS-08TXZ

ファイター 天龍 初登場話 第90話  ベース機 イフリート

機体データ(製作者の設定)全高 17.2m 重量 62t

解説

天龍が製作したリヴァサーゴよりも格闘性能が向上され、四刀流での格闘戦が可能となっている。ヒートダートをそれぞれ4基ずつ装備した鋭利な肩アーマー、膝から下を高機動型ザクⅡ後期型の物にした、両腰にはヒートサーベル、両前腕にビームシールドを装備し両肘には展開式の大型実体剣ヒートトンファ―、脹脛の左右にはビームサーベルのホルダーを装備している。ベース機よりも機動力が強化されたため、宇宙空間でも問題なく活動できる性能に仕上がった。また、ビームライフル、ショットガン、グレネードランチャーを複合したビームライフルショットガンを手持ち武器として携行している。

 

武装

ビームライフルショットガン 

GMGMウェポンのビームライフルを基部に、銃身底部にはイフリートのショットガン、銃身左側にGMGMウェポンのグレネードランチャーをサブグリップとして備えた射撃武装。中から近距離に対して絶大な威力を誇る。発砲ビームの色は桃色。

ヒートサーベル 2基

両腰のマウントホルダーに懸架されている刃を赤熱化させて敵機を溶断する剣。メイン格闘武装として使われ主に手に保持して使う。

頭部バルカン 2門

頭部に設けられたバルカン砲。敵機への牽制などで使用する。

ヒートトンファー 2基

両肘にマウントされている展開式の剣。通常時は後方を向いており使用時は展開し正面を向く、刃が赤熱化し敵機を溶断する。

ヒートダート 8基

両肩アーマーに装着されたイフリートシュナイドのヒートダート。敵機に投擲し、撃破する戦法を取る。

ビームサーベル 2基

両脹脛に格納されているビームサーベル。AGEシリーズの使用するビームサーベルと同形状のビームサーベル。ヒートサーベルがメイン格闘武装の為、サブ格闘武装として使用を前提としている。発振ビーム刃の色は桃色。

ビームシールド 2基

両前腕に装備されたビームシールド。ビームのシールドの為、実弾、ビーム共に高い防御性能を誇る。展開ビームの色は桃色。

 

機体名 ガンダムデスサイズH(ヘル)ラストワルツ

型式番号 XXXG-01D2RW

ファイター 龍田 初登場話 第90話  ベース機 ガンダムデスサイズヘル(EW版)

機体データ(製作者の設定)全高 16.3m 重量 8.2t

解説

龍田がガンダムドラグノフィアの後継機という位置づけで製作していたガンプラ。ガンダムデスサイズヘルがベースというだけあってバックパックにはベース機の最大の特徴であるコウモリの翼の様なアクティブクロークを持ち、胴体回りはウイングガンダムの様な形状に変更され、肩口にはマシンキャノン、胸部中央には円形センサーが備えられている。両腕はベース機の形状のままにされたが、腰部サイドアーマーにはスラスターを兼ねたバインダー、両脚先の突起部にはビームサーベル発振機能が追加されている。そしてバックパックのアクティブクローク裏面にはアルケーガンダムのGNファングを改良した「ホロウファング」を内蔵し近接戦闘から遠距離戦まで幅広いレンジに対応が出来るようになった。

 

武装

ビームシザース

本機のメイン格闘兵装。ベース機から形状の変更はされていないが、それでも出力は倍以上となっており、鎌状のビーム刃であらゆる物体を破壊可能。発振ビーム刃の色は黄色。

頭部バルカン 2門

頭部に内装されたバルカン砲。牽制などで使用する。

マシンキャノン 2門

肩口に装着された大口径機関砲。龍田によって装弾数の増加が図られている。

ホロウファング 12基

アルケーガンダムのGNファングをベースに製作されたオールレンジ攻撃端末。1門のビーム砲を備え、そこからビームサーベルも発振が可能となっている。発砲、発振ビーム刃の色は黄色。ちなみにこの装備は、龍田がMGのガンダムデスサイズヘル(EW版)の箱の絵柄を見た時に思い付いた武装らしい。

ビームサーベル 2基

爪先の突起から出力されるビームサーベル。出力方向の変更は出来ないが、それでも蹴りとの連動で威力を発揮する。発振ビーム刃の色は黄色。

 

機体名 ユナイテッドザクウォーリア

型式番号 ZGMF-1000/YM

ファイター 鈴谷 初登場話 第90話  ベース機 ザクウォーリア

機体データ(製作者の設定)全高 20.5m 重量 92.9t

解説

鈴谷が製作した後方支援に特化しつつ、熊野との連携、前線での戦闘もこなせる万能機として製作したガンプラ。素組を生かした設計が施されおり、衝角を持つ右肩アーマーにはデュエルガンダムアサルトシュラウドのシヴァを装備し、左肩にはベース機のシールドをそのまま装着。左腰にはビームの刃を展開できる実体剣「レーザー重斬刀」、両脹脛には12連装のミサイルポッドを備えている。そして背部にはブレイズウィザードをベースに76㎜重突撃機銃をマウントし、ファイヤビー誘導ミサイルの装弾数を増加させた「ユナイテッドウィザード」を装着している。また、このユナイテッドウィザードは熊野の機体であるグフユナイティッドのバックパックとも互換性があり、また簡易変形によって僚機の元へ向かうことが可能となっている。

武装

ビーム突撃銃 

本機のメイン射撃武装。優れた速射性能でビームをばら撒き多数の敵への同時攻撃が可能。ドラム型のビームマガジンを採用し、予備を含めて3基が用意されている。発砲ビームの色は緑色。

レーザー重斬刀 1基

左腰サイドアーマーにマウントされた「シグー・ディープアームズ」のレーザー重斬刀。実体刃としての機能はないがそれでも刀身全体を覆うビーム刃を展開可能。発振ビーム刃の色は桃色。

ハンドグレネード 2発

腰部右サイドアーマーにマウントされたハンドグレネード。

12連装ミサイルポッド 2基

両脹脛に装着されている12連装のミサイルポッド。後方支援能力向上の為装備された。

対ビームシールド

対ビームコーティングが施された3本の衝角備えシールド。裏面にはビーム突撃銃の弾倉をマウント可能なハードポイントを備える。ビームトマホークの内蔵機構はオミットされた。

ユナイテッドウィザード

ブレイズウィザードをベースに新作された新型ウィザード。ファイヤビー誘導ミサイルのほか左側メインスラスター側面に76㎜重突撃機銃をマウントしている。中央のスタビライザーが機首となる簡易変形によって僚機であるグフユナイティッドの元への自動操縦も可能としている。グフユナイティッドに装着することで、その後方支援能力を付与することが出来る。

76㎜重突撃機銃 1丁

左側メインスラスターの側面にマウントされているジンが持つアサルトライフル。ユナイテッドザクウォーリアではサブウェポン、グフユナイティッドではメインウェポンとして機能する。

ファイアビー誘導ミサイル 

両側スラスターブロック先端部に内蔵された小型ミサイル。弾幕形成による撹乱から面制圧に威力を発揮する。装弾数は片側20発を3セル、計120発。ミサイルのセルは20発のミサイルを設置した板を1セルとカウントしており、全弾を撃ち尽くした場合は背部から抜き取られるように排出される。

 

機体名 グフユナイティッド

型式番号 ZGMF-2000/Y

ファイター 熊野 初登場話 第90話  ベース機 グフイグナイテッド(ハイネ・ヴェステンフルス専用機)

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 71.1t

解説

熊野が使用する機動力と格闘性能に優れ、鈴谷との連携を想定して作られたガンプラ。カラーリングの変更は行われておらず、ベース機のままとなっているが両腰にスラスターユニット、両脚部には高機動型ザクⅡ後期型のバーニアスラスターが内蔵された脚部を持っておりベース機よりも高い機動力を誇る。そして本機が装着する稼働翼とビームキャノンが追加された高機動バックパック「ユナイティッドウィザード」は本機の機動性をさらに引き上げ、尚且つ火力の増強も図ったウィザードとなっている。またこのユナイティッドウィザードも、鈴谷のユナイテッドザクウォーリアとのバックパック互換性がある為、簡易変形によって僚機への装着が可能となっている。

 

武装

4連装ビームガン 2基

両前腕に装備された4連装の銃身を持つビームバルカン。本機のメイン射撃武装の為、使用頻度は多いが威力、射程はあまりないが連射性能はかなり優秀。発砲ビームの色は緑色。

テンペストビームソード

本機のメイン格闘武装。対ビームコーティングシールドの背面に収納されている剣。使用する際には伸長し、ビームの刃を剣の両端に展開する。少し刀身は短いが、対MSタイプの敵には十分機能する。発振ビーム刃の色は桃色。

スレイヤーウィップ 2基

両前腕の内側に内蔵された格闘戦用の鞭。柔軟性に富み、高周波パルス発生時は鞭全体が赤色に発光する。打撃の他、敵機の一部や武器を絡め取ることが出来るなど使い方によってはかなり優秀な武装となる。

対ビームコーティングシールド

テンペストビームソードの鞘としても機能する対ビームコーティングが施された2つの衝角を備えたシールド。左腕の4連装ビームガンの上に装着する。

ユナイティッドウィザード

グフイグナイテッドのバックパックをベースに、中央のメインスラスター部を機首となる変形機構と、バックパック下部にオオワシストライカーのビームキャノンを増設したウィザード。ユナイテッドザクウォーリアに装着することで、機動力向上と火力増強を付与する。

ビームキャノン 2門

バックパック下部に備えられたオオワシストライカーのビームキャノン。威力、射程共に4連装ビームガンを上回っており、本機の遠距離射撃を担っている。

 

機体名 ガンダムアスタロト・Xバースト

型式番号 ASW-G-29X

ファイター 木曾 初登場話 第90話  ベース機 ガンダムアスタロト

機体データ(製作者の設定)全高 18.4m 重量 33.1t

解説

木曾がクロスボーン・ガンダムバーストX1の後継機として製作したガンプラ。ベース機をガンダムアスタロトに変更した為、装甲などが全て一新されているが、バーストX1の持つ格闘性能をしっかりと受け継いでいる。頭部には4本のブレードアンテナ、右肩にはザクⅡのシールド、円形の左肩にはビームブーメランをマウントし、両腰にはベース機のスラスターユニット、足先の短くなった脚部にはヒートダガーを内蔵し、前身機から引き継いだX字状のバックパックとABCマントを羽織っている。ただし、胸部中央のメガ粒子砲はオミットされている。武装数は前身機から減らされたが、それでも高い運動性によって前身機以上の格闘性能を誇っている。

 

武装

バスターガン

海賊が使用する古式拳銃を模したビームピストル。取り回しに優れるが威力は低い。発砲ビームの色は桃色。

ビーム・ザンバー

海賊刀(カトラス)の様なナックルガードと刃を思わせる長大なビーム刃を形成するビームサーベル。発振ビーム刃の色は桃色。

ザンバスター

バスターガンを銃身に、ビーム・ザンバーを銃底として使用するビームライフル。バスターガンよりも威力があり射程も長い。発砲ビームの色は桃色。

マシンキャノン 2基

胸部左右に内蔵された大口径機関砲。

ヒート・ダガー 2基

足裏部に内蔵された小型の実体剣。蹴りと合わせての攻撃が可能。

ビームブーメラン 1基

左肩に設置されているビームブーメラン。投擲することで弧を描いて、敵機を撃破し手元に戻ってくる。発振ビーム刃の色は桃色。

肩部シールド

右肩アーマーに設置されているザクⅡのシールド。ザクⅡと同様の可動域を持っており、広い範囲を防御できる。

ABC(アンチ・ビーム・コーティング)マント

前身機から引き継いだビームコーティングが施されたマント。ビームに対して高い防御力を発揮するが、ビームサーベル系の直撃には耐えられない難点を持つ。

 

機体名 ガンダムウィンドジャスティス

型式番号 ZGMF-X09AW

ファイター 島風 初登場話 第76話  ベース機 ジャスティスガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.4m 重量 76t

解説

天津風が製作したウィンドガンダムの後継機に当たるガンプラ。ガンダムジャスティスナイトをベースアイデアに、∞ジャスティスガンダムの「ファトゥム-01」を利用した一点突破能力に特化した性能を持つ。両肩からはパッセルビームブーメランが取り外され、下を向いて伸びる甲冑の様なアーマーパーツが取り付けられ、下半身はベース機の鋭利なデザインから一変、ガンダムサンドロックの様な平面性のある脚部へと変更されている。そして本機の一点突破戦法を支えているのがバックパックに装備された「ファトゥム-01」を大型化しスラスター推力を大幅に増強した「ファトゥム-01ナイト」である。ファトゥム-01としての機能を残しつつ、ガンダムウィンドジャスティスを乗せることで莫大な推力で敵機を穿つ、ガンダムウィンドジャスティスの愛馬と呼んでも過言ではないだろう。

 

武装

メガヒートランス「テンペスタート」

ガンダムイージスナイトが装備している「KT-E05Rライテイ ショットランサー改」の槍先に赤熱化機能を加え、大型化した本機のメイン格闘武装。槍の根元には4門のビームバルカンを備えている。赤熱化の出力は非常に高く、ファトゥム-01ナイトに乗っての突撃は例えMA機体の装甲であっても貫徹させてしまう。発砲ビームの色は緑色。

長剣「ウィンドソード」

左腰にマウントされている実体刃をもつロングソード。本機のサブウェポンとして位置づけられており、テンペスタートを失った際に使用する、天津風の必死の研磨によって鋭い切れ味を誇る。

頭部連装バルカン 2基

両頬部に設けられた連装式のバルカン砲。ジャスティスガンダムの「MMI-GAU1 サジットゥス 20mm近接防御用機関砲」を名称だけ変更してそのまま使用している。

ファトゥム-01ナイト

本機の一点突破戦法を支えるバックパックのサブフライトシステム。∞ジャスティスガンダムの「ファトゥム-01」の機能をそのままに大型化、スラスター推力を大幅に強化されている。大型化に伴って肩越しに装着することが出来なくなり、完全なサブフライトシステムとしての役割を持たせることとなったが、それに特化したことでその爆発的推力を生かして敵機を穿つという戦法を確立するに至った。

ハイパーフォルティスビーム砲 2門

ファトゥム-01ナイトに装備されているビーム砲。連射力にも優れる。発砲ビームの色は緑色。

ブレフィスラケルタビームサーベル 2基

ハイパーフォルティスを折りたたむことで発生器が露出するショートビームサーベル。本体から分離した際や、本体を乗せての突撃時に使用される。発振ビーム刃の色は桃色。

シュペールラケルタビームサーベル 

ファトゥム-01の先端部に設置されている固定式のビームサーベル。後述の対装甲ナイフを覆うように展開される。発振ビーム刃の色は桃色。

グリフォン2ビームブレイド 2基

ファトゥム-01のウイング部に設置されているビームカッター。発振ビーム刃の色は桃色。

対装甲ナイフ

ファトゥム-01の機首に設置されてる先端部分。これも天津風の必死の研磨によって鋭い切れ味を誇る。

 

機体名 オギュルディアアストレイ・天星(アマツボシ)

型式番号 MBF-P01-Re.W〈AMATHUBOSHI〉

ファイター ヲ級 初登場話 第90話  ベース機 オギュルディアアストレイ

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 71.9t

解説

ヲ級が以前の自分を見つめ直し、リ級、ル級の協力の元完成させたオギュルディアアストレイの後継機。以前までの黒を基調としたカラーリングは「アストレイゴールドフレームアマテラス」の様に白と金を基調とした鮮やかな物へと変更され、胸部中央には黄色のクリアパーツにビームカノンを内蔵し、左右へ大きく突き出した金色の肩アーマーとシナンジュの様な曲線を持つ腕部を持ち、バルバトスルプスの様な曲面を多用した装甲とヒール状の脚部、そして前身機から引き継いだゴールドフレーム・天のバックパックを持った金色のV字アンテナと後方へ湾曲するように伸びたアンテナを持っている。武装面に関しての増強は敢えて行われず、前身機と全くと言っていい程共通した武装を多く持つ。

 

武装

ビームライフル

前身機から引き継いだ射撃武装。形状、威力共に強化されていない。腰裏にマウント可能。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

両腕内に内蔵されたビームサーベル。前身機から引き続き装備している。天星への改良によってビーム刃の出力は更に上昇している。発振ビーム刃の色は黄色。

ビームカノン 1門

前身機から引き続き装備している胸部クリアパーツに内装されたビーム砲。本機の主砲を兼ねる為、前身機より出力の向上がなされている。威力の高い照射モードと、連射力のある連射モードの撃ち分けが可能。発砲ビームの色は黄色。

Xファング 16基

前身機から引き継いだ本機の代名詞と言える武装。設置個所は腰部サイドアーマーの2基に減らされたが内装方式を二段式にしたことで前身機同様16基のXファング格納に成功した。発振ビーム刃の色は黄色。

 

機体名 ストライクディスティニー

型式番号 SRX-79BD-3

ファイター リ級 初登場話 第90話  ベース機 ブルーディスティニー3号機

機体データ(製作者の設定)全高 17.8m 重量 54t

解説

リ級が製作したリギリンドペイルライダーの後継機に当たるガンプラ。前身機の運動性能をより向上させ、より柔軟な動きを可能にしている。腹部にビームキャノン、左腕には以前まで使用していたドラゴンハングを装着し、右肩にはAGE-2ダークハウンドのウイングバインダーをそのまま使用したシールドとアンカーショットを装備し、左腰には前身機の大剣の鞘として使用するホルダーがマウントされたストライクガンダムの様な下半身を持つ。バックパックはリバウとエールストライカーを組み合わせたようなウイングを持った物になりアンバック性能も向上されている。そして本機最大の特徴は、前身機ではリ級の技量不足で使用出来なかった特殊機能「EXAMシステム」を搭載していることだろう。これによって機体の反応速度上昇が見込まれている。

 

武装

ドラゴンハング 1基

左腕に装備された大型クロー。前身機同様、ガンダムナタクの装備していた物にスラスターを内装し、より高速に射出、敵機を破壊できるようになっている。

大剣

前身機から引き継いだデモリッションナイフをベースにした片刃の大剣。折り畳み式を撤廃し、完全な大剣となった。マウント位置がバックパックから左腰のホルダーへと変更されている。

腹部ビームキャノン 1門

ストライクフリーダムガンダムの様に腹部に設けられたビームキャノン。火力面において脆弱だった前身機を反省し増設された。発砲ビームの色は黄色。

アンカーショット 1基

右肩のAGE-2ダークハウンドのウイングバインダーに設置されているロケットアンカー。先端部はフック上ではなく鋭利な槍状となっている為、障害物などに撃ち込むことでその方向に対して瞬時に移動が可能となっている。

頭部バルカン 2門

ブルーディスティニー3号機従来の武装。

シールド

右肩に装備されているウイングバインダーをそのままシールドとして使用している。薄そうな外見に見えるが、チョバム方式を採用した為強度は高い。

 

機体名 レジェンディウスガンダム

型式番号 ZGMF-X679A

ファイター ル級 初登場話 第90話  ベース機 レジェンドガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.9m 重量 87.3t

解説

ヲ級との練習を通して、自身が空間認識能力を持っていることに気づいたル級が新たに製作したドラグーンによる後方支援に特化したガンプラ。レジェンドガンダムとプロヴィデンスガンダムの機能を1つの機体に盛り込み、圧倒的砲門数での後方支援を得意とする。大きく横へ突き出した両肩アーマーと、丸みがかった装甲形状をした脚部、左前腕を覆うように装着したビームシールドとビームサーベル、2連装ビーム砲が合わさったプロヴィデンスガンダムの複合兵装防盾と長銃身のビームライフルを右腕に装備し、円盤状のバックパックにレジェンドガンダムの大型ドラグーンを最上部とバックパックに埋め込まれた物を合わせて4基、小型ドラグーンをバックパック左右に5基ずつ、腰部サイドアーマーに計4基、リアアーマーに計2基の、総計11基を装備した、4本のブレードアンテナを持つ。そして全ドラグーンの総砲門数は驚異の58門を誇っている。

 

武装

高エネルギービームライフル 

レジェンドガンダムのビームライフルを出力向上させ、センサー機器の性能向上を図った物。長銃身によって威力は並のビームライフルを上回っている。発砲ビームの色は緑色。

デファイアント改ビームジャベリン 2基

腰部サイドアーマー上部にマウントされている近接戦闘用のビームサーベル。2基の柄を連結させた「アンビデクストラス・ハルバード」モードでの使用が可能となっている。発振ビーム刃の色は桃色。

17.5mmCIWS 2門

頭部に内蔵された機関砲。

大型突撃ビーム機動砲 4基36門

背部プラットフォームの最上端とバックパックに埋め込まれた物合わせて4基装備されている大型ドラグーン。1基につき9門のビーム砲が内蔵されている他、先端の4門からビームスパイクを発生させることができる。発砲ビームの色は緑色。発振ビーム刃の色は桃色。

小型突撃ビーム機動砲 11基22門

プラットフォームの側面と腰部に合計11基が装備されている小型ドラグーン。2門のビーム砲を内蔵し、本体との連結時は可動砲台として使える。この運用方法はドラグーンを分離させられない重力下での戦闘で行われる事が多い。発砲ビームの色は緑色。

複合兵装防盾システム

左腕に装着された大型ビームサーベルとその両脇に2門のビーム砲を内蔵した複合兵装。シールド表面にはビームシールド発生装置を取り付けてあるため、非常に高い防御力を誇る。発砲ビームの色は緑色。発振ビーム刃の色は桃色。

 

機体名 ハイマットスタービルドストライクガンダム

型式番号 GAT-X105B/HST

ファイター 阿武隈 初登場話 第90話  ベース機 ビルドストライクガンダムノワール

機体データ(製作者の設定)全高 17.7m 重量 89.1t

解説

阿武隈が前身機を大改修し作り上げた新型のガンプラ。前身機よりも小型化したスラスターを内蔵した両肩アーマーと、腰横にビームサーベルをマウントした「クスフィアス3レール砲」を装備したスマートな脚部、ビルドストライクガンダムのビルドブースターを形状そのままに特殊機能を追加したバックパック「ハイマットビルドブースター」を装着し、胸部から後方へ向かって伸びるウイング状の「ハイマットスラスター」と、ビームを吸収しエネルギーに変換できる機能を持ったシールド「アブソーブシールド」を装備している。本機最大の特徴はアブソーブシールドによってビームを吸収し、そのエネルギーを自機の武装として使用する点である。スタービルドストライクガンダムと違い、ハイマットスラスターの表面とハイマットビルドブースターの主翼部の間から青白い光の翼を展開し、腰部フロントアーマー中央から青色の粒子を噴出し機体の正面を覆う「ハイマットスターモード」という1つのモードのみに全エネルギーを割くことが出来るのが特徴である。

 

武装

ビームライフル

フリーダムガンダムのルプスビームライフルを改良したビームライフル。高威力且つ速射性に優れた高性能ビームライフル。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル 2基

腰部の「クスフィアス3レール砲」に懸架されているビームサーベル。柄同士を連結させ手の使用も可能にしている。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部バルカン 4門

頭部に4門内蔵されたバルカン砲。

クスフィアス3レール砲 2基

腰部サイドアーマーに設置された折り畳み式のレール砲。ストライクフリーダムガンダムの物をそのまま使用している。

ハイマットビームキャノン 2基

ハイマットビルドブースター下部に設けられたビームキャノン。阿武隈の改造によって出力が向上、照射と連射を撃ち分けることが可能となった。発砲ビームの色は赤色。

アブソーブシールド

本機の要とも言える装備で、左腕に装着される。表面の装甲を展開すると粒子吸入口が現れ、ここから敵機が発射したビームを吸収する。ビームによる射撃に対してはほぼ無敵だが、物理攻撃やビームサーベルのような近接戦闘用のビームに対しては効果が無く、吸入口を開いた状態で直撃を受けると一撃で破損し、閉じた状態であっても攻撃を受け過ぎるとビーム吸収機能が使用不能になってしまう。また、超高出力ビームは完全には吸収しきれないとされる。先端部の接続用アームは「ディスチャージシステムライフルモード」のオミットによって取り外され通常装甲へと取り換えられた。

ハイマットスターモード

本機最大の特徴と言える特殊機能。簡単に言えば、アブソーブシールドによって吸収したエネルギーを機動力と攻撃力、防御力の強化に同時に振り分けて使用するモード。まず機動力の強化は、ハイマットスラスターの表面とハイマットビルドブースターの主翼部の間から青白い光の翼を展開し、ストライクフリーダムガンダムやデスティニーガンダムの光の翼に近い加速力を生みだす。そして攻撃力と防御力強化は、腰部フロントアーマー中央からビームと同じ性質を持つ蒼白い粒子を噴出し、相手のビーム、実弾を無効化し、敵にダメージを与えるビームの幕を展開する。このビームの幕はドムトルーパーの持つ「G14X31Z スクリーミングニンバス」をベースアイデアに使用している。

 

機体名 ハイペリオンガンダム・アカツキマスター

型式番号 CATX1-OR01

ファイター 暁 初登場話 第90話  ベース機 ハイペリオンガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 16.9m 重量 55t

解説

暁が製作した金色に輝くアカツキ・ハイペリオンマスターの後継機。前身機の改修機ではなくハイペリオンガンダムをベースに製作されたまったくの別機体である。バックパックにはハイペリオンガンダムのアルミューレ・リュミエールを装備したバインダーを持ち、両肘、両腰横、リアアーマー、両脹脛外側に「オールレンジビームシールド」を各所2基ずつ装備し、両手首にはビームシールド、右腕に試製双刀型ビームサーベルを内蔵させた「ヒャクライ・スティグマトカスタム」を装備している。また全身を、ビームを跳ね返す「ビーム反射装甲」で覆われている為、ビームに対して非常に高い防御性能を誇る。また実弾に対してもバックパックのアルミューレ・リュミエールのエネルギー消費を抑えた「アカツキ・リュミエール」の展開する全方位のビームシールドによって防ぐ鉄壁の守りを備えた機体となっている。

 

武装

ヒャクライ・スティグマトカスタム

前身機で使用していたヒャクライ・スティグマトの改良モデル。形状やマガジン方式などの変化はないが、銃身下部に試製双刀型ビームサーベルを内蔵し敵機に接近を許した際の迎撃手段が増強された。弾数は50発で、発砲ビームの色は緑色。

試製双刀型ビームサーベル

ヒャクライ・スティグマトカスタムの銃身下部に内蔵されているビームサーベル。銃身に固定したまま使用出来る他、取り外して従来通りの使用も可能。発振ビーム刃の色は桃色。

オールレンジシールド 8基

両肘、両腰横、リアアーマー、両脹脛外側の各所に2基ずつ装備しているビームシールド。ジュピターヴガンダムの「マルチコンテナビット」をベースアイデアに防御に特化させたオールレンジ防御端末。マルチコンテナビットほど大型ではなく、ハイペリオンガンダムの手甲に取り付けられたビームシールド発生器ほどのサイズしかなく重量軽減に少しだけ影響を与えている。自機を護るように展開したり、僚機を護るように展開したりと広範囲を防御できる性能を持つ。なお暁が、ALユニットを取り外した要因は攻防両立の武器は大変。という理由である。展開ビームの色は緑色。

ビームキャノン 2門

本機最大威力を持つウイングバインダー先端部のビーム砲。パワーセルの供給が続く限り、連射が可能。ハイペリオンガンダムの「フォルファントリー」をそのまま使用している。発砲ビームの色は緑色。

アカツキ・リュミエール 7基

両腕に1基ずつ、ウイングバインダーに5基の発生装置を内蔵する全方位ビームシールド。ハイペリオンガンダム最大の特徴であるアルミューレ・リュミエールを、エネルギー消費を抑えつつあらゆる攻撃を無効にする出力を維持した改造が施された防御装備。展開方式はハイペリオンガンダムと同じ方式で、外部からの攻撃を遮断しつつ自機による内部からの攻撃を通すベース機と前身機が備えていた強みを見事に受け継いでいる。

 

機体名 ガンダム・スノーヴェールフェニックス

型式番号 XVG-01SP

ファイター 響 初登場話 第90話  ベース機 ガンダム・ヴェールフェニックス

機体データ(製作者の設定)全高 17.6m 重量 16.2t

解説

響が前身機であるガンダム・ヴェールフェニックスを改修し、より機動力に優れた機体として完成したガンプラ。改修によってより不死鳥の様な外見を持つようになり、頭部のトサカ状のアンテナとV字アンテナはより大型になり、そこに白色のV字アンテナが追加装備された。両肩のウイングバインダーは取り外され、ウイングガンダム(EW版)を思わせる両腕と、曲線を多用した脚部装甲とハイヒール状の足、爪先には金色の爪が施され、鳥の顔を思わせるシールドを左腕に装着、そして本機の外見の中で一番の目を引く、ウイングガンダムゼロ(EW版)の純白の翼をバックパックに持っている。変形機構も受け継がれてはいるが、本機では完全にウイングガンダム系と同じ変形機構を採用し、変形までのタイムラグを短縮することに成功している。変形プロセスは、主翼を左右に、副翼を上方へ伸ばし、バックパック中央にツインバスターライフルを左右にマウントしたシールドを装着、ヒール状の脚部を折り畳み、腰部を180度回転させる。と言う物となっている。

 

武装

ツインバスターライフル 2丁

前身機から引き続き装備しているツインバスターライフル。改修によって連射性と威力が向上している。変形時はシールド両端にマウントされる。発砲ビームの色は黄色。

ビームサーベル 2基

副翼の基部パーツに格納されたビームサーベル。前身機の物をそのまま使用しているが、柄の部分の色が白色に変更されている。発振ビーム刃の色は緑色。

マシンキャノン 2門

胸部上面に搭載された近接防御武装。威力が高い為、近接防御だけでなく敵機の破壊も可能。

シールド

改修によってウイングガンダムゼロのシールドの特色のみを引き継いだ専用シールド。変形時は機首となる為、鳥の顔を思わせる形状をしている。両端にはツインバスターライフルをマウントすることが出来るマウントラッチとシールドバルカンを装備している。

シールドバルカン 2門

シールド両端に装備された2門のバルカン砲。口径はマシンキャノンより大きく威力は高いが、シールドに装備されている都合上やや取り回しに難がある。

 

機体名 ガンダムハルートアーチャー

型式番号 GN-011A

ファイター 雷 初登場話 第90話  ベース機 ガンダムハルート

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 79.3t

解説

雷がガンダムキュリオスアーチャーの後継機として製作していたガンプラ。電たちとのバトルの時にはまだ完成していなかった。ガンダムハルートの素体を生かしたカスタマイズが施されており、より対多数戦に特化した。大きく突き出した両肩アーマーを持ち、腰部から接続されるバックパックは中央には飛行形態時の機首部と尾部となるGNミサイルコンテナを装備、それを挟み込む様に先端にGNビームキャノンを内蔵した大型サイドバインダーを左右に持った、両膝とサイドバインダー上部に固定式のGNソードライフルを装着した4本のブレードアンテナを頭部に持つ。変形機構もそのまま再現されており、腰部中央の機首部を頭部に被り、胸部の装甲を上面に向け足先を折り畳んで脚を延ばし両膝とサイドバインダーに取り付けられたGNソードライフルを後方へ向けサイドバインダー左右に手持ちのGNソードライフルを取り付ける、と言う変形プロセスとなっている。圧倒的な射撃武装を誇り、雷の射撃センスも相まって非常に強力な機体となっている。

 

武装

GNソードライフル 6基

本機のメイン武器となる射撃武装。両手に保持している物と、両膝とサイドバインダー上部に設置されている物を合わせて6基の同型装備がある。ベース機の物を本機に合わせて改修したもので、形状こそ同じだが一発一発の威力が上昇している他、連射性を犠牲にしたビームライフルモードでの運用も可能。また銃身下部にクリアパーツの刀身を持っている。銃身は縦に開閉する機構はオミットされている。発砲ビームの色は桃色。

GNキャノン 2基

サイドバインダー先端部に内蔵された大出力ビーム砲。粒子消費量は大きいが、その分威力は絶大である。主に戦闘機形態時に使用されるが、MS形態時でもサイドバインダーを腰から前方に構えることで発砲可能となる。発砲ビームの色は桃色。

GNミサイルコンテナ 24セル

機首部と尾部のテールユニットに内蔵されたGNミサイルコンテナ。ベース機では尾部のテールユニットに12セルしか装備されていなかったが、本機の場合はガンプラであるという事から機首部の後端左右にも4セルずつミサイルセルが増設されている。圧倒的なミサイル弾幕を張ることができ、面制圧で真価を発揮する。

 

機体名 ガンダムFX(フォースエックス)

型式番号 GFX-10000

ファイター 陽炎 初登場話 第91話  ベース機 ガンダムDXイフリーティア

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 13.5t

解説

陽炎がガンダムDXイフリーティアを修復、大改修を施したガンプラ。素体の外見はサテライトキャノンの増設と、両前腕と両脹脛の放熱板を格納するための装甲にも装備されているそれぞれが左右を向いてV字に展開するバインダー以外は変更はないが、やはりその最たる特徴である4門のサテライトキャノン「フォースサテライトキャノン」は本機を象徴する武装と言えるだろう。しかし、4門のサテライトキャノンと、追加されたバインダーの影響で5.5tもの重量増加を招いてしまっている。しかし、それを差し引いてもフォースサテライトキャノンの威力は前身機や「ガンダムX十魔王」などと言ったビルドファイターズ系に登場する大出力ビーム砲を装備する機体を凌駕している。

 

武装

FX専用バスターライフル

前身機から引き継いだ高威力ビームライフル。形状も以前のままとなっている。発砲ビームの色は桃色。

ハイパービームソード 2基

肩越しに展開するサテライトキャノンの砲身後部にそれぞれ接続された前身機から引き続き装備しているビームソード。発振ビーム刃の色は緑色。

ヘッドバルカン 2門

側頭部に装備されたバルカン砲。敵機への牽制などに使用する。

ブレストランチャー 2基

胸部インテーク下に装備された3砲身の大口径機関砲。マシンキャノンより高い威力を誇り単体での敵機撃破を狙える。

マシンキャノン 2基

胸上部に装備された中口径機関砲。ブレストランチャーより威力は低いものの、それでも十分な火力を有する。

ニービームブレード 2基

膝から爪先にかけて展開されるビームブレード。蹴りと合わせて攻撃ができる。発振ビーム刃の色は緑色。

フォースサテライトキャノン

本機最大の火力と射程を誇る武装。設置個所はガンダムDXと同じバックパック上端に2基、バーニアノズルの左右に増設された2基となっており、通常時は砲身を縮小させてX字状にしている。発射時はバックパック上端の2基を肩越しに、下部の2基を脇下から展開する。月からのマイクロウェーブを受けることで瞬時にエネルギーをチャージし全門斉射が可能だが、エネルギーを抑えての発射も可能。全門斉射されたビームの直径は約12㎞にもなるとされる。発砲ビームの色は白みがかった青色。

ソーラーシステム

前身機から引き続き装備しているエネルギー変換システム。周囲のプラフスキー粒子をエネルギー変換して使用しているが、フォースサテライトキャノンの全門を放つにはどうしても力不足となっている。

バインダーシールド 4基

両前腕と両脹脛の放熱板を格納する装甲に装備されているバインダー。フォースサテライトキャノンのエネルギーに使うマイクロウェーブをより多く受け止める為に増設されたが、そのバインダー自体がシールド並みの強度を誇っている為、固定式のシールドとしても十分機能している。その結果、ディフェンスプレートは取り外された。

 

機体名 ガンダムXブルーメギド

型式番号 GX-9900-BMF

ファイター 不知火 初登場話 第91話  ベース機 ガンダムXブルーフレア

機体データ(製作者の設定)全高 17.5m 重量 8.9t

解説

不知火がガンダムXブルーフレアを修復、改修を施したガンプラ。V字状に折り畳まれたバインダーをバックパックに備え、両肩正面と胸部中央には円形のサーチカメラ、腰部の両サイドアーマーにはケーブルで繋がれた大型ビームソードをマウントし、両膝から爪先にかけてビームサーベルを発振出来る「グリフォンビームブレイド」、そしてウイングガンダムゼロの様に頭部のサブカメラと一体化した4本のV字アンテナを持っている。より格闘戦に特化するように運動性が向上しており、腰部サイドアーマーに新たに装備された大型ビームソードを使った二刀流を得意とする。また引き続きサテライトキャノンも装備している為、非常に高い火力も依然として健在である。

 

武装

シールドバスターライフル

シールドと一体化したビームライフル。シールドとしても機能するため不知火によって前身機よりも更なる装甲面の強化が行われている。発砲ビームの色は桃色。

大型ビームソード 2基

腰部サイドアーマーにマウントされたケーブルに繋がれたビームソード。ケーブルによってエネルギーを直接供給している為、非常に強力な斬撃武装となっている。発振ビーム刃の色は緑色。

ブレストバルカン 4門

胸部インテーク下に4門供えられたバルカン砲。敵機の破壊から牽制など、幅広い用途を持つ。

ショルダーバルカン 1基

本来は外付けのオプション装備。右肩上のバックパックハードポイントに装備。

グリフォンビームブレイド 2基

両膝から爪先にかけてビームサーベルを発振出来る装備。格闘戦のバリエーション増加を目的に追加装備された。

サテライトキャノン 

本機最大の火力と射程を持つビーム兵器。肩から担ぐ発射形態を取りやめ、ガンダムX魔王の様に駆動パーツによって広い射角を誇っているのが特徴。発砲ビームの色は白みがかった青色。

ソーラーシステム

前身機から引き続き装備しているエネルギー変換システム。本機の継戦時間延長を支えている。

 

機体名 ガンダムトライオークアンタ

型式番号 GN-T0000

ファイター 初月 初登場話 第91話  ベース機 ダブルオークアンタ

機体データ(製作者の設定)全高 18.5m 重量 65t

解説

初月がガンダムダブルオーエクシアの後継機として製作した運動性に優れたガンプラ。とてもスマートな曲面を多用した装甲を全身に纏った胸部中央に円形の発行装甲を持ち、腰部サイドアーマーに4基のAタイプGNソードビットを装着し、バックパック中央にGNスラスターコーンとバックパック本体からダブルオーガンダムの様なコネクターを備え、その先にはダブルオーダイバーエースのバインダーマウントラッチに「GNソードⅣフルセイバー」を1基ずつマウントした非常に格闘戦に特化したガンプラとなっている。格闘戦闘に特化した為、GNドライブの安定化は容易となったが、射撃能力の低下は否めなかった。それでも初月は本機の性能に満足しているもよう。

 

武装

GNソードIVフルセイバー 2基

接続ユニットによって両肩に装備されている大型の実体剣。ダブルオークアンタフルセイバーの装備していたものと形状は同じだが内面は異なり、GNガンブレイドの取り外しは出来なくなっており、この武装に射撃・格闘のほぼ全てを装備を集中させている。大型であるが為取り回しに難があるが、高い機動力と運動性でそれを補っている。発砲ビームの色は桃色。

GNソードビット 4基

腰部サイドアーマーに装着されているAタイプのソードビット。空間認識能力の余りたくない初月に合わせ搭載数は少ないが、グリップが内蔵されている為文字通り剣としてもし使用できる。

 

機体名 影光式(かげみつしき)

型式番号 MSN-000

ファイター 川内 初登場話 第91話  ベース機 百式

機体データ(製作者の設定)全高 22m 重量 30.1t

解説

川内が神通と協力し「風魔スサノオ」の後継機として製作した隠密性と強襲に特化したガンプラ。細身の外見にガンダムデスサイズHの様に大きく突き出した両肩アーマーと手甲を備え、バックパック左右には2枚のバインダーと中央にGNドライブ、その下部に2本のプロペラントタンクを備えた大きなV字アンテナを持つガンプラとなっている。銀とメタリックブラックで塗装されている為、ベース機とはまた違った印象を受ける。また、ヲ級のアドバイスを受けて前身機の弱点であった「ハイパージャマー使用時でもGN粒子が見えてしまう」を完全に解決することに成功し、それを生かした特殊機能である「ナハト・トランザム」は姿と噴出するGN粒子を消しつつ、本家トランザムの70%の高機動性を獲得した非常に川内と相性の良い特殊機能となっている。

 

武装

コールドブレード 2基

「ガンダムエクシア」のGNブレイドを改造し、超低温で敵機を斬り裂く剣。「イフリートナハト」の持つコールドブレードの機能をそのまま踏襲した武装となっており、ナハト・トランザム発動時の熱探知を抑える効果を持つ。非使用時は腰部サイドアーマーに懸架される。

ビームダガー 2基

腰部リアアーマーに設置されているビームダガー。短いビームの刃を形成し、敵機を溶断する。しかし「ビームの刃」という特性上、熱を持つ為川内は使用を避けている。発振ビーム刃の色は桃色。

ビームガン 2門

手甲と腕の間に内蔵されているビームガン。低威力の為敵機の破壊には向かないが、接近時の牽制射として使用される。発砲ビームの色は桃色。

ナハト・トランザム

本機の持つ特殊機能。発動することで、影光式が一瞬だけ赤く光り、ハイパージャマーが起動。機体を透明化することで肉眼やレーダーからも本機を探知できなくする。その後、移動の瞬間にGNドライブを一瞬だけ稼働させて機体の背後で爆発に似た現象を発生させその余波を使って高速で一方向に移動すると言う物だ。この時にはGNドライブが完全に稼働していない為、粒子が尾を引くこともなく、機体の駆動も機体各所のGNコンデンサーによって賄われる。特殊機能の名前に「トランザム」が使用されているが、実際にはトランザムは発動していない。発動時に機体が一瞬赤く光るのは、相手に「トランザムを発動させた」と誤認させるためである。

 

機体名 ガンダムサバーニャ・ハイスナイプ

型式番号 GN-036

ファイター 涼月 初登場話 第91話  ベース機 ガンダムサバーニャ

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 88.1t

解説

涼月がガンダムデュナメス・ハイスナイプの後継機として製作した圧倒的な射撃能力を持つガンプラ。角張った装甲を全身に纏い、腰部リアアーマーから伸びる接続アームに左右5基ずつ連結状態で搭載されているGNライフルビットのホルスターを兼ねた大型のGNシールドビットを両肩アーマー側面と両脹脛の外側にもそれぞれ2基ずつ装備し、胸部中央にはGN拡散ビームキャノン、それを挟み込む様に胸部左右にそれぞれ6門の砲口が2段に分かれて露出したGNビームマシンキャノン、腰部フロントアーマーと膝部装甲、足首付近の両側にはGNミサイルポッドを備えたV字アンテナの中央部にガンカメラを装備し、両手には銃床部にGNコンデンサーを内蔵したGNライフルビットⅡから手持ちグリップを取り出したサブマシンガンに近い連射性とビームライフルレベルの火力を誇るGNビームサブライフルを装備している。全身に装備した射撃武装によって、超濃密な弾幕を張ることができ、涼月の得意とする対多数戦と、元防空駆逐艦としての信念と誇りも相まって非常に優秀な性能を持つ機体となった。

 

武装

GNビームサブライフル 2丁

両手で保持する射撃武装。ガンダムサバーニャのGNライフルビットⅡをベースに銃床部にGNコンデンサーを内蔵、サブマシンガンに近い連射性とビームライフルレベルの火力を両立させた本機専用のビームライフル。なお、GNシールドビットに内蔵されている物とは互換性がない。発砲ビームの色は桃色。

GNシールドビット 18基

腰部リアアーマーから伸びる接続アームに左右5基、両肩アーマー側面と両脹脛の外側にもそれぞれ2基ずつ装備されているGNライフルビットのホルスターとしても機能するオールレンジ防御端末。2枚以上を並べることでシールドビットとして機能し、4枚を並べることで強力なメガビームさえも防ぐことが出来る。ガンダムサバーニャが見せた4枚並べて照射ビームを発射させる機能はオミットされ、完全にホルスターと盾として機能するようになった。

GNライフルビット 18基

GNシールドビットに格納されているオールレンジ攻撃端末。メイン射撃武装であるGNビームサブライフルとは互換性がない為、連射性能で劣っている。しかしこのライフルビットにもグリップとセンサーが内蔵されている為、GNビームサブライフル紛失時に携行武器としても使用できる。発砲ビームの色は桃色。

GN拡散ビームキャノン 1門

胸部中央に追加装備された拡散ビーム砲。射程距離は短いが、それでも強力な面制圧武装となっている。発砲ビームの色は桃色。

GNビームマシンキャノン 12門

胸部左右にGN拡散ビームキャノンを挟み込む様に設置されたビームマシンキャノン。片側に6門装備され、それらを3門2段に分けて配列している。射程距離は本機の中で一番短いが、近接武器を持たない本機にとっては重要な武装となる。

GNミサイルポッド 14基

腰部フロントアーマーと膝部装甲、足首付近の両側に設置されたミサイルポッド。遠距離に対しての面制圧に適しており、発射した後はパージすることでデットウェイトになることを防いでいる。

 

機体名 ヘビーアームズZZガンダム

型式番号 MSZ-01H2

ファイター 北上 初登場話 第91話  ベース機 ZZガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 22m 重量 84t

解説

北上が製作したヘビーアームズバスターガンダムの後継機に当たるガンプラ。前身機同様、全身に実弾を主体にした火器を満載している。胸部の開閉式ハッチの下には4基のガトリング砲を備え、スプレーミサイルランチャーを内蔵したフルアーマーZZガンダムの両腕とチョバムアーマーを両脹脛に固定装備し、バックパックには21連装ミサイルランチャーを4基搭載したZZガンダムの大出力バックパックを装備、右腕にダブルビームライフルを固定兵装として装備している。大量の重火器を装備しているが前身機よりも2tもの軽量化に成功し、バックパックの大推力スラスターによって高い機動性を維持している。なお、頭部のハイメガキャノンは北上が自身の得意とする戦術に合わないと判断してオミットされた。

 

武装

ダブルビームライフル

右腕に固定されている本機のメイン射撃武装。2門の砲口から大威力のビームを放つことが出来る。発砲ビームの色は桃色。

ダブルキャノン/ハイパービームサーベル 2基

バックパック両端に備えられた大型のビームサーベル兼ビームキャノン。ベース機の物をそのまま使用してはいるが、北上の改造によってダブルキャノンの連射性が向上している。また長大なビーム刃を形成するビームサーベルとしても機能する。発砲、発振ビーム刃の色は桃色。

胸部ガトリング砲 4基

胸部の開閉ハッチの下に取り付けられたガトリング砲。前身機の物を引き続き装備している。

スプレーミサイルランチャー 2基20発

両前腕の装甲内部に内蔵されているミサイルランチャー。前腕部の広いスペースを生かし、片側10発の小型ミサイルを内蔵する。

ホーミングミサイル 2基32発

両脹脛に装備された誘導ミサイル。チョバムアーマー内臓式となっており、片側16発を装備。精密射撃や多重ロックオンによる攻撃を可能とする。

21連装ミサイルランチャー 4基84発

バックパックの上端とその下部に内蔵されている21連装のミサイルランチャー。本機が装備するミサイルの中で最大の装弾数を誇っている。

 

機体名 ガンダムドーベンアームズ

型式番号 AMXG-01H2

ファイター 大井 初登場話 第91話  ベース機 ガンダムバスターヘビーアームズ

機体データ(製作者の設定)全高 26m 重量 19t

解説

大井が前身機であるガンダムバスターヘビーアームズを大改修した機体。胸部にガトリング砲を内蔵し、両肩アーマー上部には4連装ミサイル、その側面に大出力のブースターポッドを備え、両前腕にはダブルガトリングガン、V2ガンダムアサルトバスターの下半身と腰部フロントアーマー、両膝に5連装ミサイルポッドを内蔵し、バックパックにはドーベンウルフのビームキャノンと、15連装ミサイルランチャーを備えている。前身機よりもミサイルの装備数が減少したが、それに伴い重量も減少している。そしてミサイルの減少を補うようにビーム兵器の充実化が行われ、ビームキャノンや腰部のヴェスバーなどと言った強力な火器を搭載するに至った。

 

武装

ダブルガトリングガン 2基

ガンダムヘビーアームズ改(EW版)が使用していたダブルガトリングガンを両前腕に固定させた物。両手が常にフリーになるようにすることで、咄嗟の格闘戦も行えるようになっている。圧倒的連射力を誇る。

ビームサーベル 2基

両前腕部に格納されているビームサーベル。サーベル基部が機体に対して内側に出て来るように装着されているため、抜刀までのタイムラグはかなり短い。発振ビーム刃の色は緑色。

4連装ミサイルポッド 2基8発

両肩アーマー上部に装備された4連装のミサイルポッド。中型のミサイルが装填されている為、威力は高い。

胸部ガトリング砲 4基

前身機から引き続き装備している胸部ハッチの裏に装備されたガトリング砲。小型ながらも高い連射性能を持ち、接近戦を挑まれた際などに使用する装備。

マシンキャノン 2基

両肩に内蔵された機関砲。前身機の装備をそのまま使用している。

頭部バルカン 2門

頭部に内蔵されたバルカン砲。前身機の装備をそのまま使用している。

5連装ミサイルポッド 2基10発

両膝に内蔵されているミサイルポッド。肩部の4連装ミサイルと同様中型ミサイルが装備されている。

ヴェスバー 2基

両腰サイドアーマーとしても機能している、ビームの弾速や収束率などを無段階連続帯域レベルで調整する事で発射されるビームの性質を変更する事が出来るビームライフル。主に遠距離の敵機に対しての狙撃に使われる。発砲ビームの色は桃色。

ビームキャノン 2基

バックパック両脇のブースターバインダー先端に装備されているビームキャノン。威力、射程、連射力においてヴェスバーに劣るが、大出力での照射を行うことで敵部隊を薙ぎ払うといった芸当を可能としている。発砲ビームの色は黄色。

15連装ミサイルランチャー 2基30発

バックパック両脇のブースターバインダー側面に内蔵されているミサイルランチャー。こちらは他のミサイルと違い小型ミサイルを内蔵している。

 

機体名 ガンダム試作改3号機ステイメンMk-Ⅱ

型式番号 RX-78GP03S/Ⅱ

ファイター 伊勢 初登場話 第91話  ベース機 ガンダム試作3号機

機体データ(製作者の設定)全高 18.2m 重量 42t

解説

伊勢がブルーディスティニーFb(フルバーニアン)の後継機として製作した機体。継戦時間延長用のプロペラントタンク内蔵型のアーマーを両肩上面に装着し、両腰にはガンダム試作3号機のバインダーを、リアアーマーにはシールドブースターを装着、バックパック左右には円筒状のプロペラントタンクと上部にガンダムMk-Ⅱのビームサーベルを2本装備した非常に汎用性の高い機体に仕上がった。また、両前腕のサブアームはオミットされ、代わりにガンダムNT-1のガトリング砲を内蔵している。ハッキリと言っていい程、特筆する箇所を持たない機体だがそれが逆にガンプラとしての完成度を高め、非常に強力かつ優秀な機体となっている。

 

武装

ビームライフル

ガンダム試作1号機やガンダム試作3号機が使用していたビームライフルと同形状のビームライフル。Eパック方式を採用しており、長い時間継続しての使用が可能となっている。威力も並のビームライフルを凌駕する。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

バックパックに装備された四角形状のビームサーベル。ガンダムMk-Ⅱが装備するビームサーベルの出力を向上させた武装となっている。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部バルカン 2門

側頭部に設けられたバルカン砲。ベース機には存在しない装備だが、伊勢が増設したことで使用できるようになった。

90㎜ガトリング砲 2基

両前腕部に内蔵されたガトリング砲。ガンダムNT-1の物をそのまま流用している。高い連射速度を誇っており、接近してくる敵機に対して高い効果を発揮する。

シールドブースター

腰部リアアーマーに装着されているシールドとしても機能するブースター。コアガンダムⅡのコアディフェンサーをベースアイデアとして取り入れた装備。ブースターを使用することで瞬発的に機動力を底上げし、高速移動が可能となっている。

フォールディング・シールド

左前腕に装着している元折り畳み式のシールド。しかし、シールド背面に予備のEパックを装着している為、折り畳むことが出来ない。しかしその機能が廃止されたことでシールドとしての強度が上がり、対ビームコーティングも相まって高い防御性能を誇る。

 

機体名 ガンダム試作改2号機キリサリス

型式番号 RX-78GP02/ASW66

ファイター 日向 初登場話 第91話  ベース機 ガンダム試作2号機

機体データ(製作者の設定)全高 20.4m 重量 81t

解説

日向がガンダム試作2号機をベースに新たに製作したガンプラ。全身を分厚い装甲で覆ったずんぐりした外見を持ち、肩口にマシンキャノン、両肩側面には可動式の大推力ブースターを装備し、ベース機よりも細身となった脚部の内側には、脹脛の装甲を展開することで使用できる6基のブースターを内蔵し、バックパックにはキマリスブースターを装着し更なる推力強化を図った、右肩背面にアトミックビームバズーカの基部を、そして機体の全身が隠れきってしまう程のサイズを誇る背面にアトミックビームバズーカを収納した「メガラジエーターシールド」を持つ。ガンダム試作2号機の増加した重量によって低下した機動力を大出力バーニアで補うという特徴をより強化したことが本機の1番目を引く点と言える。特に脚部は「ガンダムキマリス」の変形機構を採用しており、展開した脹脛部のブースターとバックパックのキマリスブースターを使用することでベース機を上回る圧倒的加速力を得ている。ちなみに「キリサリス」という名前は「キマリスとサイサリスを合わせた言葉」で、特に意味はない。

 

武装

ビームサーベル 2基

両腰部サイドアーマーに2基装備されているビームサーベル。長大なビームの刀身を常時展開できるように改修がなされており、非常に高い切断力を誇る。

頭部バルカン 2門

側頭部に設けられたベース機のバルカン砲。ベース機の物をそのまま使用している。

マシンキャノン 2基

肩口に内蔵されている大口径機関砲。ベース機の射撃能力不足を補うために装備された。

メガラジエーターシールド

ベース機が装備していたラジエーターシールドを大型化し、機体全身が隠れてしまう程の巨大化されている。チョバムシールド化と、シールド自体の大きさも相まってビームシールドとほぼ同レベルと言っても過言ではない防御力を誇り、また背面にはアトミックバズーカをビーム化させた。アトミックビームバズーカの砲身部格納されている。

アトミックビームバズーカ

本機が装備する中で頭一つ飛びぬけて高威力なビームバズーカ。砲身はアトミックバズーカの物をそのまま使用している。右肩の背面に設置されている基部に砲身を接続することで発射が可能となる。その威力は、アトミックと名が付くだけあって戦略兵器であるコロニーレーザーレベルのビームを発射できる。発砲ビームの色は白みがかった青色。

 

機体名 ドレットノートスターゲイザー

型式番号 YMFX-401A

ファイター 大和 初登場話 第91話  ベース機 スターゲイザーガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 85.3t

解説

武蔵が製作し、大和が操るスターゲイザーガンダムにドレッドノートガンダムをミキシングしたガンプラ。腹部にストライクフリーダムガンダムのカリドゥス複相ビーム砲を装備し、両前腕にはビームシールドをそれぞれに装備、腰部サイドアーマー頂点部にはビームサーベル2基、そしてこの機体最大の特徴である円を描く形状のバックパックにX状に配置された大型のCファンネルをベースに2門のビーム砲を搭載した「Cドラグーン」を装備したドレッドノートガンダムの様なV字アンテナを持つ。スターゲイザーガンダム最大の特徴であるヴォワチュール・リュミエールもしっかりと引き継がれており、円形のビームサーベルを展開して敵機を攻撃したり、防御に転用したりと幅広い用途を誇っている。また、本機の名称が「ドレッドノート」ではなく「ドレットノート」なのかと言うと「兵器の枠に当てはまらない機体を使用するなら」と武蔵の思い付きで名付けられた。決して大和や武蔵が読み間違えた訳ではない。

 

武装

ルプスビームライフル

本機のメイン射撃武装。フリーダムガンダムやジャスティスガンダムの装備する物と同型で銃身部のそれぞれのパーソナルカラーが塗られたラインは、本機のカラーリングに合わせて黒色に塗装されている。射撃戦を得意とする大和が扱うことで、非常に優れた性能を発揮する。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル 2基

腰部サイドアーマー頂点部にマウントされたビームサーベル。本機唯一の格闘武装となっているが、機体の構成がシンプルな為これでも十分となっている。発振ビーム刃の色は桃色。

カリドゥス複相ビーム砲

腹部に設けられた高威力のビーム砲。本機最大の威力を誇り、連射も可能な為すさまじい威力を誇っている。発砲ビームの色は赤色。

Cドラグーン 4基

バックパックにX状に配置された大型のCファンネルをベースに2門のビーム砲を搭載したオールレンジ攻撃端末。形状はCファンネルとほぼ同形だが、2門のビーム砲を搭載している事もあってプロヴィデンスガンダムの小型ドラグーンにも似ていると言える。端末のクリアパーツの刀身で敵機を斬り裂きつつ、ビーム砲での遠距離射撃も可能な万能武装となっている。発砲ビームの色は緑色。

ビームシールド 2基

両前腕に装備されたビームシールド。ヴォワチュール・リュミエールの防御を抜けてくる攻撃に対して装備された武装。ビームのシールドの為、高い防御性能を誇る。展開ビームの色は青色。

 

機体名 睦月号・改

型式番号 ASW-G-64/mc2

ファイター 睦月 初登場話 第91話  ベース機 睦月号(ガンダムフラウロス・改)

機体データ(製作者の設定)全高 18m 重量 25.3t

解説

全国大会で大破した睦月号(ガンダムフラウロス・改)を修復し、装備類を一新した機体。変形機構や外見は殆ど変更されていないが、装備している武装類が全てビーム兵器へと換装し、改造前よりも攻撃性能が上昇している。なお、ダインスレイブはオミットされた。ちなみに、機体名称は「睦月号・改」だが月華団のメンバーからは「睦月号」や「4代目睦月号」と呼ばれている。

 

武装

ビームマシンガン 2丁

本機のメイン射撃武装。前身機が使用していたマシンガンをビームに変更した武装。望月が製作した「200㎜ビーム弾」を装填したマガジンを装備しており、発射時の反動を実弾発射時とほぼ同一にしたままビームを発射できる。変形時は機首を挟む様にバックパックのマウントラッチにマウントとされる。発砲ビームの色は緑色。

実体剣 2基

前身機から引き続き装備している実体剣。本機唯一の格闘武装で腰裏にマウントとされている。

ビームキャノン 2基

脇下から展開する前身機から引き続き装備している武装。脇下から発砲するが発射する弾がビームとなった為、射程距離の低下は最小限に抑えられている。変形時は駆動アームが稼働しマシンガンの更に外側から展開される。発砲ビームの色は緑色。

機首部バルカン砲 4門

飛行形態時に機首となる部分の左右に追加装備されたバルカン砲。通常形態時でも使用でき、対空弾幕を張ることが出来る。

 

機体名 文月・スーパースペシャルマンロディ

型式番号 SSPUGY-R41

ファイター 文月 初登場話 第91話  ベース機 文月・スペシャルマンロディ

機体データ(製作者の設定)全高 17m 重量 40t

解説

全国大会で小破した文月・スペシャルマンロディを修復し、装備類を一新した機体。外見は殆ど変更されていないが、装備している武装類の一部がビーム兵器へと換装され、改造前よりも攻撃性能が上昇している。また、前身機から引き続き格闘武装は装備していない。

武装

ビームサブマシンガン 2丁

前身機から引き続き装備している携行射撃武装。前身機が使用しているサブマシンガンを望月が製作した「90㎜ビーム弾」を装填したロングマガジンに変更し使用している。発砲ビームの色は緑色。

可動式ビーム機関砲 2基

両肩に装備した可動式のビーム機関砲。ある程度なら仰角の変更は可能で非常に優れた連射力を誇る。発砲ビームの色は緑色。

迫撃砲 2基

両腰に装備された前身機から引き続き装備している迫撃砲。頭部のバルカン砲と同じくビーム化されていない武装の1つ。本機最大の威力を誇っている。

頭部バルカン砲 2門

頭部に内装されている前身機から引き続き装備している武装。敵機に接近を許した際に主に使用する。

 

機体名 ジェッズネロ・ブリッツガンダム

型式番号 GAT-X207SA

ファイター 涼風 初登場話 第91話  ベース機 ブリッツガンダム

機体データ(製作者の設定)全高 18.7m 重量 75t

解説

涼風が製作した火力と隠密性に優れた機体。ベース機であるブリッツガンダムは、隠密性に特化したあまり実験的武装を多く搭載したものの火力面において非常に弱い点があった。その火力を手に入れる為にバックパックにフリーダムガンダムのウイングを装備し、バラエーナプラズマ収束ビーム砲の使用と高機動性を獲得。ミラージュコロイドを展開した状態でも高い火力を獲得している。外見の特徴は右腕にブリッツガンダムの攻盾システム「トリケロス」を装着し、左前腕にはビームバルカン、左膝にはピアサーロック「グレイプニール」をマウント、金色の4本のV字アンテナを持つ。前身機同様、左右非対称の形状となっているが、涼風は元々ブリッツガンダムの左右非対称の形状が好きだったため本機はかなりお気に入りの機体となっている。また、型式番号の「SA」は「ステルス・アグリッション:Stealth Aggression(隠密性火力)」の略であり、機体名の「ジェッズネロ」はイタリア語で「漆黒」を意味する。

 

武装

攻盾システム「トリケロス」

右腕に装備された複合武装。シールドの裏面にビームサーベル、57mm高エネルギービームライフル、3連装超高速運動体貫徹弾「ランサーダート」を搭載し、攻守の切り替えを素早く行うことができる。

57mm高エネルギービームライフル

中距離用の射撃武装。ビームライフルの口径はストライクガンダムや、デュエルガンダムのビームライフルと同口径にしたことで威力が向上している。発砲ビームの色は緑色。

ビームサーベル

ビームライフル直下に装備されたビームサーベル。固定されているため、盾ごと振り回す形で使用する。また、取り外して普通のビームサーベルとしても使用できる。発振ビーム刃の色は桃色。

3連装超高速運動体貫徹弾「ランサーダート」

杭状のロケット推進弾。敵装甲を貫徹後炸裂し、内部から打撃を与える。3発しかない為、使用できる回数が極端に少ない。

ビームマシンキャノン 2基

胸部に埋め込まれている大口径機関砲。近接防御火器を持たないベース機の難点を掻き決するために装備された。発砲ビームの色は緑色。

ビームバルカン 2門

左腕に装着されたビームバルカン。連射性に優れ、敵機への牽制でも優れた威力を発揮する。

発砲ビームの色は緑色。

ピアサーロック「グレイプニール」

左膝に装備された有線式ロケットアンカー。クロー後部に内蔵されたブースターにより射出後の軌道変更を可能とする。クローは開閉させる事で打突攻撃に使用可能。

バラエーナプラズマ収束ビーム砲 2基

バックパックのウイングバインダーに装備されたビーム砲。本機最大の威力を誇り、連射も可能な為非常に優れた性能を誇る。発砲ビームの色は赤色。

ミラージュコロイド・ステルス

ミラージュコロイドを用いたステルスシステム。ガス状の物質を機体周囲に展開する事で、電子・光学双方で機体を隠匿する。また、コロイド粒子の定着率が高まる処理が涼風によって施されたため、例えスラスターを転化したとしても粒子が消えることはなくなった。

 

機体名 ガンダムホワイトボトムサウンド

型式番号 XF-2/4

ファイター 白雪 初登場話 第91話  ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高 No data 重量 No data

解説

白雪が所持している深海フレームが白雪の想像したガンプラの姿を再現した機体。深海フレームは「電たちが生まれた研究所で強化兵士の為に造られた深海細胞を持つ人物が使うことで自分の思い描いた通りのガンプラを作り出せるという物」だ。白雪が使用する機体は、ガンダムキュリオスの様な頭部を持ち4枚のバインダーの様になった両肩アーマーと胸部中央に光る円形のクリアパーツ、そしてスマートな下半身に腰部サイドアーマーには折り畳み式のビーム砲、長いスカートの様なリアアーマー、ダブルオーライザーの様な形状のバックパックを備えた白と金色で塗装された神々しい姿をしている。しかしこの機体は深海フレームが形作った姿の為、この状態も本当の姿ではない。また、型式番号は深海フレームの型式番号で「XF」は「深海フレーム」を現し、数字ナンバーは/の左側がその機体の製造ナンバー、右側は総生産数を表す。

 

武装

ビームライフル

本機のメイン射撃武装。ハイパードッズライフルの様な形状をしており、優れた貫徹力を誇る。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

腰部サイドアーマーの折り畳み式ビーム砲の上部にマウントされているビームサーベル。柄同士を連結させての使用も可能としている。発振ビーム刃の色は桃色。

ビーム砲 2基

腰部サイドアーマーに設置された折り畳み式のビーム砲。フリーダムガンダムのクスフィアスレール砲と同様三つ折り収納されている。展開することで高い威力を誇るビームを撃ち出す。発砲ビームの色は赤色。

マイクロミサイル 2基

バックパック左右のバインダーに内蔵されているミサイル。目標をある程度追尾し撃破する。

粒子フィールド

GNフィールドのシステムを応用し、機体周囲のプラフスキー粒子で防御フィールドを展開して相手の攻撃を防ぐ。防御動作を必要としない為、突破は非常に困難である。

 

艦名 ネェル・ミネルバ

型式番号 LHM-SCVA 77

艦長 扶桑 副長兼火器管制 山城 操艦 皐月 索敵兼発進管制 赤城 ダメージコントロール班 明石、夕張 整備班 望月、飛龍、蒼龍、武蔵 

初登場話 第86話  ベース機 明石と夕張の自作 設計 黒野深海

機体データ(製作者の設定)全長 350m 全高 144m 全幅 198m

解説

深海が明石と夕張に頼んで製作させた戦艦ミネルバをベースにネェルアーガマや、ゼネラル・レビルと言った高いMS運用能力を持つ艦の特徴を組み合わせたガンプラ。ミネルバの特徴と言える湾曲し前方へ大きく突き出した艦首を持ちその底部に巨大な主翼を備えている。その上部「42cm火薬式3連装砲 M10イゾルデ」が装備されていた箇所に第1主砲塔、そこからコアスプレンダーの発進カタパルト(本艦においては撤去されている)の下部に当たる位置に第2種砲塔を備え、その船体下部元々あった発進カタパルトはゼネラル・レビルの様に露天駐機も出来る様なデッキが増設された。更に両舷カタパルト区画の上部「2連装高エネルギー収束火線砲 XM47トリスタン」が配置されていた箇所には艦橋を挟み込むように円柱形の砲身を持った右舷が第1、左舷が第2の連装副砲が設置されておりその後部はMSタイプのガンプラ1機を立たせることの出来る広さのデッキが設けられている。そして艦橋はミネルバのドーム型の艦橋をそのまま再現しており、左右には大型のレーダーを備えている。艦橋の後方下部には艦尾側を向いた第3主砲塔があり、それを挟み込む様に後部の斜め上へ向かって伸びる副翼が設置され、更に副翼を挟み込む様に2つの着艦用のカタパルトが増設された。そのカタパルトに挟まれるように4基のメインエンジンが備えられている。艦内部はガンプラを整備、修復するためのスペースにほとんど使われており格納庫は搭載機のガンプラの予備パーツを区画ごとに分けて設けられており、1/144スケールの兵士プラモデルを使いガンプラの整備を行う。

 

武装

51センチ3連装高エネルギー収束火線砲 3基9門

艦首に2基、艦尾に1基装備されている本艦の主砲となる3連装ビーム砲。蒼龍によって製作された。形状は、戦艦ディーヴァの艦中央部に設けられた連装砲の様に角張った砲心基部に3つの砲身があり、後部両側面には戦艦大和の様な測距儀が設けられている。戦艦大和の主砲よりひと回り巨大な51センチ口径の為非常に強力。発射されたビームは近~中距離では3本のままだが、遠距離となるとビームが螺旋を描いて1本に収束する。この改造によって遠距離砲撃時の命中精度が向上している。発砲ビームの色は緑色。

41センチ連装高エネルギー収束火線砲 2基4門

両舷カタパルト区画の上部に1基ずつ装備された本艦の副砲となる連装ビーム砲。名称は「高エネルギー収束火線砲」ではあるが、薬室内の回路を変更することで対空射撃用の実弾「三式弾」の発射が出来る対空戦闘もこなせる万能砲。形状はミネルバの主砲「2連装高エネルギー収束火線砲 XM47トリスタン」と同形状となっているが薬室の配置関係の為、ミネルバの様に砲身を後部に折り畳むことは出来なくなっている。口径も戦艦長門が搭載していた41センチ砲と同口径の為副砲としてはかなり強力。こちらは主砲と異なり、遠距離でも2本のままのビームを放つ。発砲ビームの色は緑色。

40㎜CIWS 14基

艦首の主翼基部両舷に4基、第1主砲の下部に2基、両舷副砲デッキの後部に2基、第3主砲の付近に2基、艦底部に4基に搭載されている回転式の対空機関砲。ミネルバの搭載しているCIWSをそのまま使用しているが、搭載数は増加している。

ミサイル発射管 24基

艦首側面に8基、第2主砲下部に8基、両舷副砲デッキの側面に8基搭載されたミサイル。対艦ミサイル、対空ミサイルの2種を撃ち分けて使用する。宇宙空間、重力下ともに同型のミサイルを使用出来る。

陽電子破砕砲改「タンホイザーMk-Ⅱ」

艦首中央に設けられた本艦最大威力を誇る陽電子砲。展開方法はミネルバと同様で、艦首ハッチが開いて砲身が迫り出し、数秒のエネルギーチャージの後に発射される。出力の向上に伴いより高威力、長射程を実現した。発砲ビームの色は赤色。




いかがでしたでしょうか?これで6回目の登場人物&ガンプラ解説は以上となります。

長期間投稿出来なかった事、お詫び申し上げます。また、電たちのガンプラは最後の解説編で紹介させていただきます。

次回からは今まで通りのお話の続きを投稿していくので楽しみにしていてください。


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EP103 輝きの中へ

眼前に佇むプラフスキー粒子精製工場から、莫大な量のプラフスキー粒子が舞い上がった。そのプラフスキー粒子が放つ青い光はこの場にいる者たちが今までに見たことがない程、濃く美しい光だった。

「凄い……」

「こんなプラフスキー粒子の光は……見たことないよ」

「綺麗なのです……」

その光に見とれていた電たち…いや、その場に居たほとんどの者がそうだった。しかし、深海がそんなメンバーに一喝を入れた。

「見とれている場合じゃないぞ!急いで施設内にシステム台をセットしろ!」

深海の一喝を聞いたメンバー全員が慌しく動き始めた。深海の鎮守府にあったバトル台全てをトラックに乗せてここまで運び、今度は自分たちと妖精で協力して台を施設の中へと運び込まなければいけなかったのだ。当たり前のことだが、ガンプラはプラフスキー粒子が無ければ動けない。つまり今メンバーがいる外でシステムを起動させてしまった場合、途中でガンプラが動かなくなる可能性があるのだ。メンバーたちは、急いでトラックに向かい全員で協力して台を運び出していった。トラックの荷台からは妖精たちが次々飛び降りてきて、台を運ぶメンバーの元へと駆け付けては下から台を持ち上げメンバーを手伝う。特に凄かったのは、やはり深海と空母水鬼だった。あろうことか、たった2人でバトル台を持ち上げスタコラと施設内へと歩いていったのだ。

(やっぱり、アドミラルって化け物ね……)

その光景を見て、ビスマルクはそう思うことしか出来なかった。

(まあ…まだ深海棲艦の母さんはともかく、俺も空母並の(馬力)を出せるからな)

ビスマルクの視線を感じた深海は、勝手にそう返していた。

 

そしてそれから数十分が経過した時、遂に全てのバトル台が施設内に運び込まれた。そして深海はバトル台を「緊急起動モード」で立ち上げた。

「Gun-pla Battle Emergency mode Stand up!Please set your GP base」

緊急起動モードで立ち上げられたバトルシステムは、ハイペースで起動セッションを続けていった。メンバーたちはそれぞれのGPベースを台にセットする。

「Beginning Plavsky particle dispersal. Please set your Gun-pla.」

戦場となるフィールドは形成されず、バトル台からプラフスキー粒子が舞い上がる。そして全員がガンプラを発進台にセットした。システムが機体を読み込み、メインカメラが淡く発光する。

「Battle Start!」

52機のガンプラと1隻の戦艦が発進体制に入り、そして一斉に出撃していった。

「長門。ケンプファージライヤ、出るぞ!」

「ビスマルク。GN-XV、出撃するわ!」

「大鳳。Hi-νトールギス、出るわよ!」

「プリンツ・オイゲン。パワードジムガーディアン、出撃します!」

「金剛。インフィニットバーニングラブガンダム、Take-offデース!」

「比叡。ガーディーフォビドゥンガンダム、気合っ、入れてっ、行きまーす!」

「榛名!ガンダムEz-AS、出撃します!」

「霧島。ブーストカラミティガンダム、出撃よ!」

「天龍。ジークイフリート、出撃するぜ!」

「龍田。ガンダムデスサイズHラストワルツ、出撃します」

「木曾。ガンダムアスタロト・Xバースト、出るぞ!」

「行くわよ、不知火!萩風を取り戻すわよ!」

「了解です、陽炎!」

「陽炎。ガンダムFX、出撃しまーす!」

「不知火。ガンダムⅩブルーメギド、出撃します!」

「さあ、出るわよ瑞鶴!」

「ええ!加賀さん!」

「翔鶴姉ぇ…待ってて……瑞鶴。ガンダムAGE-2ハルファス、出撃よ!」

「加賀。ガンダムAGE-1エグゼバウンサー、出撃します」

「ヲ級。オギュルディアアストレイ・天星、出るよ!」

「リ級。ストライクディスティニー、出る!」

「ル級。レジェンディウスガンダム、行くぞ!」

「最上。デスティニーガンダムリベリオン、出撃するよ!」

「鈴谷。ユナイテッドザク・ウォーリア、いっくよぉー!」

「熊野。グフ・ユナイティッド、出撃しますわ!」

「島風。ガンダムウィンドジャスティス、出撃しまーす!」

「三日月。ガンダムバルバトスルプスレクスレイト、出撃します!」

「長月。ガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティ、行くぞ!」

「睦月!4代目睦月号・改、いざ参りますよー!」

「文月。文月・スーパースペシャルマンロディ、出撃ですぅ!」

「菊月。ランドマンロディ・改二、出る!」

「卯月。卯月号・改、出撃でぇ~す!」

「川内。影光式、出撃します!」

「秋月。ウイングガンダムゼロ・アランダイト、出撃です!」

「初月。ガンダムトライオークアンタ、出るぞ!」

「涼月。ガンダムサバーニャ・ハイスナイプ、出撃致します!」

「防空棲姫。ガンダムボークルス、出ます」

「駆逐棲姫。2.12ガンダム、出撃する」

「阿武隈。ハイマットスタービルドストライクガンダム、出撃します!」

「北上。ヘビーアームズZZガンダム、出撃します」

「大井。ガンダムドーベンアームズ、出撃します!」

「伊勢。ガンダム試作改3号機ステイメンMk-2、出撃します!」

「日向。ガンダム試作改2号機キリサリス、出撃するぞ!」

「暁。ハイペリオンガンダム・アカツキマスター、出撃しますッ!」

「響。ガンダム・スノーヴェールフェニックス、出撃する」

「雷。ガンダムハルートアーチャー、いっきまーす!」

「山風。ホロルドロッソ・イージスガンダム、行くよ」

「涼風。ジェッズネロ・ブリッツガンダムで本気見せたげるぅー!」

「大和。ドレットノートスターゲイザー、出撃です!」

「空母水鬼。ナラティブガンダム、行きます!」

「黒野深海。ガンダムエクストリームアウェリアス――――」

「深海提督!」

深海が出撃をしようとした時、不意に通信が入った。深海が左側のモニターを見るとそこには扶桑が映っていた。

「扶桑、何だ?」

「…時雨をお願いしますね」

「っ!」

「撃墜なんかさせたら、後で八つ裂きにするわよ!」

今度は山城がモニターに映り込んで深海に怒鳴りつける。

「わかっている。俺も自分の妹が傷つくのを見たくはないからな

「え、今何と―――」

「エクストリームアウェリアス、出るッ!」

エクストリームアウェリアスは扶桑たちの言葉を待たずに出撃していった。一方の白雪は少し考え事をしていた。

「吹雪ちゃん……」

ガンプラバトルで勝つ為だけに生み出された自分たちに、楽しい思い出はない。艦娘としての記憶もない。悲しみに溢れた自分たち。白雪は、ギュッと操縦桿を握りしめた。

「この悲しみの連鎖……終わりにしてみせる!今日、ここで!」

ガンダム・ホワイトボトムサウンドは発進体制に入った。

「白雪。ガンダム・ホワイトボトムサウンド、行きますッ!」

ガンダム・ホワイトボトムサウンドは飛び立った。そして決心を固めていたのは、電たちも同じだった。

「じゃあ夕立たちも行くっぽい!」

「うん!必ず、村雨たちを取り戻すんだ!」

「そして……吹雪さんを…必ず止めてみせるのです!!」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが発進体制に入った。

「皆を取り返して、もう1度全員で笑い合うんだ!」

 

夕立!ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア、出撃よッ!!

 

ガンダムエンドレインバレットが発進体制に入った。

「今日で止ませてみせる。まっくろな雨を……必ずッ!」

 

時雨!ガンダムエンドレインバレット、行くよッ!!

 

イナヅマガンダムトリニティⅥが発進体制に入った。

「必ず止めてみせます。レ級、そして…吹雪さんっ」

「行くぞなのです電!今日で決着をつけてやるのです!」

「なのです!行きましょうぷらづま!電たちの力で、未来を勝ち取るのです!!」

電はグッと操縦桿を握りしめ、叫んだ。

 

 

電!イナヅマガンダムトリニティⅥ、出撃ですッ!!

 

 

プラフスキー粒子の輝きの中へ、3機は飛び立った。

 

続く



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EP104 灼熱の炎

ガンプラ全機が出撃し、ネェル・ミネルバに集結する。そして進撃を開始しようとした時、それは現れた。

「本艦正面に多数の反応!敵機と確認!」

ネェル・ミネルバの索敵を担当していた赤城が声を張り上げる。

「来たか…」

ネェル・ミネルバの前に鎮守府の訓練とは比にならない程大量のガンプラが現れた。量産機からワンオフ機のガンダムタイプ、MSからMA、戦艦までと、どうすればこれ程の量を用意できるのか、と言いたくなるほどの大群が彼女たちの前に立ちはだかった。

「何て数……1000機や2000機どころじゃない!」

「流石にあの数に突っ込むのは無理があるぞ提督。どうする?」

ビスマルクと長門が出現した敵の大群に驚きつつ、深海に作戦を尋ねた。しかしこの事態を既に予測していた深海は驚く様子も見せず、陽炎、不知火、日向、空母水鬼に声を掛けた。

「陽炎、不知火、日向、母さん、準備はいいか?」

「大丈夫よ深海指令!もう用意は出来てるわ!」

「こちらも準備完了です」

「いつでもいけるぞ」

「オッケーだよ深海!」

「わかった。全機射線上から退避、アウェリアスウイング展開。さあやるぞ」

深海の言葉に合わせ、全身から金色の光を放つガンダムFXとガンダムXブルーメギドがフォースサテライトキャノンとサテライトキャノンを展開し、ネェル・ミネルバの正面へ向かうと、それに続いてナラティブガンダムAB装備とメガラジエーターシールドからアトミックビームバズーカの砲身を取り出し、右肩の基部に接続したガンダム試作改2号機キリサリスが前へ出た。そしてネェル・ミネルバの中央線上にアウェリアスウイングを射出し、機体全ての砲を正面へ展開、連結状態となったヴァリアブルライフルを構えたエクストリームアウェリアスが現れた。

「…照準調整、完了」

5人の目元に照準カーソルが合わさり、そしてそれは放たれた。

 

 

てえぇぇぇー!!!

 

 

ガンダムFXのフォースサテライトキャノン、ガンダムXブルーメギドのサテライトキャノン、キリサリスのアトミックビームバズーカ、ナラティブガンダムAB装備のハイメガキャノン、エクストリームアウェリアスの全門斉射が敵の敵機群へ向けて発射された。ガンプラサイズで30㎞にも及ぶ光が、出現した敵機を次々に飲み込んでいった。

「なんてビームなの…」

その光景を見た大鳳は思わず声をあげ、他のメンバーはただただ唖然としていた。そして、光が消えた時、敵機軍団の中央には巨大な風穴が空いていた。

行くぞ!中央を突破するッ!!

「よーし、敵陣突破で活躍しちゃうよー!」

深海の言葉で我に返ったメンバーたちは、ナラティブガンダムAB装備を先頭に5機のガンダムによって開けられた風穴へと次々に突入していった。

「サブアーム、ABファンネル展開!」

ナラティブガンダムAB装備はサブアームを展開し、コンテナからABファンネルを次々に射出した。風穴の中央を走るナラティブガンダムAB装備は、真っ先に敵機から攻撃を受けた。先程の攻撃範囲外に居た機体がナラティブガンダムAB装備に次々ビームを撃ち込んできた。

「凄い数。でも、この程度の攻撃じゃ秋雨ちゃんたちが作ったナラティブガンダムは墜ちないよ!」

その巨体を細かく動かし、空母水鬼はビームの十字砲火の中を飛んだ。サブアームのビームガンと、ABファンネルによる対空戦闘を行いながら筒先端のビーム砲と、エクストラパックの大型ビーム砲を撃ち続け、敵機を撃破していく。

「母さんに続け!行くぞ電、白雪!」

「なのです!」「はい!」

ナラティブガンダムAB装備の後方から、エクストリームアウェリアス、イナヅマガンダムトリニティⅥ、ガンダム・ホワイトボトムサウンドが続いた。

「CPU制御の機体ごときで、俺を墜とせると思うなッ!」

ヴァリアブルライフルをショートバレルにし、全身のビーム砲とアウェリアスウイングを全て展開、圧倒的な高機動性で迫りくる敵機を次々撃墜していくエクストリームアウェリアス。深海は先程の砲撃で、この場に出現したガンプラたちはバトルシステムによって制御され、トレーニングモードで出現するプラフスキー粒子が形作ったガンプラたちであることを見抜いていた。CPUによって制御されている機体は、トレーニングレベルを上げれば高度な動きをとるようになるが、今自分たちと戦っている敵機は単純な動きが目立っていた。ハイレベルな戦闘技術を持つ深海にとっては、雑魚も同然だ。

「電も続くのです!」

エクストリームアウェリアスの後ろを付いてきたイナヅマガンダムトリニティⅥは、3点バーストモードのヴェールフェニックスライフルで弾幕を張りながら、エクストリームアウェリアスの背後をしっかりと追従していた。3発同時に撃ち出されたビームは、敵機のコックピットを確実に撃ち抜いていき、撃破していく。そして遠距離の敵に対しては、レインバレットキャノンによる遠距離射撃で撃破し、更に奥を目指していく。

「私も、こんな所で足踏みしていられない!」

イナヅマガンダムトリニティⅥの後方から、ガンダム・ホワイトボトムサウンドが続く。ビームライフルで敵機を撃ち抜きながら、マイクロミサイルを発射。自分たちに近づけさせまいと、次々に敵機を撃ち落としていく。

「てぇーい!」

イナヅマガンダムトリニティⅥが左肩のアーチャーエッジを投擲し、2機のゲルググを撃破し、2機の爆煙の中をエクストリームアウェリアスが駆け抜けた。

「沈めぇ!」

エクストリームアウェリアスはヴァリアブルライフルを機体左右へ向けると、ビームを照射。そのまま機体を高速で一回転させ、周囲の敵機を纏めて薙ぎ払った。

「逃がさない!」

そしてその上空をガンダム・ホワイトボトムサウンドが高速で飛び、機体を回転させながら腰部のビーム砲を展開、ガイアガンダムとガンダムキマリスに向け発砲、2機を撃ち抜きその後方に居たイージスガンダムとV2ガンダムも撃ち抜いた。

「主砲照準!左舷前方のムサカ級、てぇー!」

後方からネェル・ミネルバの主砲が放たれた。ビームは数機の敵機を飲み込みながら螺旋を描いて収束、左舷前方に居たムサカ級を撃ち抜いた。

「右30度方向から敵機接近!」

「CIWS撃ち方始め!」

ネェル・ミネルバに多数の敵編隊が来襲した。山城はすぐさまCIWSを起動させ対空戦闘を開始、そこに涼月のサバーニャ・ハイスナイプが割って入り迎撃を開始した。

「ネェル・ミネルバはやらせません!シールドビット、ライフルビット展開!」

サバーニャ・ハイスナイプはGNビームサブライフルとGNライフルビットが火を噴き、次々に敵機を撃墜していく。

「左90度方向、右120度方向からも敵機の接近を確認!ミサイル、来ます!」

「副砲三式弾、自動追尾にて砲撃開始!」

「回避!取り舵45度、上げ舵15!」

「くうっ!」

「文月・スーパースペシャルマンロディの弾幕をくらえぇー!」

文月・スーパースペシャルマンロディがビームサブライフルと、両肩のビーム機関砲をばら撒き、可能な限りのミサイルを撃ち落としていく。

「フィンファンネル!」

文月・スーパースペシャルマンロディがミサイルを撃激していた間に、Hi-νトールギスがフィンファンネルを射出、迫って来ていたサーペント3機とジェットストライカー装備のウィンダムを5機撃墜した。

「ボークルスの対空弾幕、舐めてもらっては困る!」

ガンダムボークルスもまた、ネェル・ミネルバの右舷側にて対空戦闘を開始した。ビームライフルと大型ビームランチャー、バックパックのレールキャノンを次々に敵機へと撃ち込んでいく。

「山城!第1主砲照準、右舷45度方向のネルソン級、第2主砲照準、左舷前方のザンジバル級!」

「了解!第1、第2主砲照準!てぇー!」

再び51センチ主砲が火を噴いた。螺旋を描いた2つのビームはネルソン級とザンジバル級の船体中央に命中、お互い船体を真っ二つに割って轟沈した。

一方長門は、敵機のネェル・ミネルバへの接近を既に許してしまった事に焦りを感じていた。

「くそ!既に戦線を突破した敵がいたかっ…C隊はネェル・ミネルバの左翼方面、B隊は右翼方面の防衛に当たれ!A隊とD隊は私に続け、ネェル・ミネルバ正面方向の敵機を迎撃するぞ!足の速いE隊は、遊撃隊として各方面の援護だ!これ以上、ネェル・ミネルバへの接近を許すなッ!」

 

了解っ!

 

「ケンプファージライヤの力、侮るなよ!」

長門は、武装スロットからビームライフルとバスターランチャーを選択した。左側のウェポンコンテナからバスターランチャーが取り出されると、長門はその場でケンプファージライヤをバク転させた。バク転の反動でコンテナからバスターランチャーが飛び出すと、ケンプファージライヤはそれをキャッチし、左手に装備。ビームライフルと合わせて、バスターランチャーを連射した。ビームライフルが迫って来ていたジムⅢに命中し、バスターランチャーのビームがシナンジュとガンダムF91、ジェガンを貫通し爆発させる。

「逃がさん!」

続けてシールド背面のシュツルムファウストを2発発射し、下方から迫って来ていたジンハイマニューバとガンダムキュリオスを撃破した。

「ヲッヲー!長門に続くヲー!」

両腕からビームサーベルを出力したオギュルディアアストレイ・天星がケンプファージライヤの隣を通り過ぎ、目の前に居たリックディアスを右袈裟斬りで仕留め、背後から迫って来ていたムーンガンダムを左回転斬りで斬り裂きそのまま急上昇、遠方から狙っていたカラミティガンダムのコックピットを右手のビームサーベルで串刺しにした。

「薙ぎ払うヲッ!」

そのままカラミティガンダムを斬り払うと、胸部のビームカノンを照射しカラミティガンダムも含めて、周囲の敵機を薙ぎ払った。

「援護するぞヲ級!ドラグーン射出!」

そこにレジェンディウスガンダムの小型ドラグーンが飛来し、更に周囲の敵機を撃墜した。

「ル級、助かったヲ!」

「おいお前ら、気ぃ抜くんじゃねぇぞ!」

そこにジークイフリートとガンダムデスサイズHラストワルツが現れ、次々に敵機を撃墜していった。

「わかっている!」

リ級がストライクディスティニーのドラゴンハングを射出し、グレイズを圧壊させながら声をあげた。

「お喋りはそこまでだ!次が来るぞ!」

「わかったわ~長門」

その頃左翼方面では、三日月のバルバトスルプスレクスレイトを先頭切って敵機を撃墜していた。右手のツインメイスをメビウス・ゼロに叩きつけ、テイルソードでガンダムMk-Ⅱを串刺しにして放り投げ、そのガンダムMk-Ⅱをセフティアリベイクミディールフルシティのロングレンジビームライフルが止めを刺す。

「そこです!」

更に攻め込んだ三日月は左手のツインメイスをGセルフに向け投擲、ツインメイスが胴体に直撃したGセルフにテイルソードで追撃を掛けコックピットを串刺しにした。そして再びテイルソードで相手を放り投げると、ツインメイスを回収した。

「よし、次に行きましょう!」

「ん?待て、三日月!」

その時、長月が何かに気づいた。セフティアリベイクミディールフルシティのレーダーが高熱原体を捉えた。長月は咄嗟にバルバトスルプスレクスレイトの胴体を抱え込んで、その場原緊急回避を行った。そして、バルバトスルプスレクスレイトがいた地点を黄色のビームが通り過ぎ、続いて大型の赤い機体が通り過ぎた。

「3人とも警戒するぴょん!ヴァル・ヴァロだぴょん!」

「スターダストメモリーに登場したモビルアーマーか!」

大型の赤い機体の正体はヴァル・ヴァロだった。甲殻類を思わせる曲線形状をしたジオン軍の試作型MAである。ヴァル・ヴァロは三日月たちの前を通り過ぎた後、方向転換し戻ってきた。

「ビームに対する耐性がある筈…なら、私が先頭を行きます!」

三日月はツインメイスを武装スロットから外し、ソードメイスを選択した。バルバトスルプスレクスレイトがツインメイスをバックパックに懸架し、バックパック左側にマウントされたソードメイスを引き抜いた。

「三日月、援護は私に任せてくれ。デモリッションバスタードソードが役に立つはずだ」

「了解です菊月。いきます!」

そう言った三日月はバルバトスルプスレクスレイトをヴァル・ヴァロへ向かわせた。それに続くようにランド・マンロディ改二が続く。

「後方から援護するぴょん!」

「ああ、了解だ!」

そして後方から、セフティアリベイクミディールフルシティと卯月号改が援護を始めた。まっすぐ突っ込んでくるバルバトスルプスレクスレイトとランド・マンロディ改二に対し、ヴァル・ヴァロは機首部のメガ粒子砲を発射してきた。しかし、発射までの予備動作である機首部の展開をいち早く察知した三日月と菊月は、いとも簡単にメガ粒子砲を回避しヴァル・ヴァロへの接近を成功させた。しかしヴァル・ヴァロは大型クローアームを展開、バルバトスルプスレクスレイトを掴もうとした。

「その程度の攻撃!」

しかし、これも察知していた三日月はソードメイスを最上段から一気に振り下ろして大型クローアームに叩きつけた。クローアームを弾き飛ばし、次の攻撃に移ろうとした三日月だったが、その隙を突いてヴァル・ヴァロは対空ビーム・ガンをバルバトスルプスレクスレイトに向けて発砲しようとした。三日月はそれを見逃してしまい、今にもビームが発射されそうになっていた。

「させるか!」

そこに菊月のランド・マンロディ改二がヴァル・ヴァロ上空へ切り込み、デモリッションバスタードソードをヴァル・ヴァロの胴体に叩きつけた。ヴァル・ヴァロは大きく機体のバランスを崩した。

「動きが止まった。今だ卯月!」

「まっかせろぴょーん!」

そこにセフティアリベイクミディールフルシティの200㎜ロングレンジライフルと、卯月号改のアサルティットライフルの貫徹弾が命中した。

「連続して同じ部分を狙われれば、装甲も脆くなる!くらえぇー!」

長月と卯月は、同時の射撃であるにもかかわらずほぼ同じ個所に弾丸を命中させたのだ。2機からの同時箇所への射撃でヴァル・ヴァロの表面装甲は大きく沈み込んだ。

「そこっ!」

その箇所へ向けバルバトスルプスレクスレイトはソードメイスを突き立てた。刀身の約半分がヴァル・ヴァロに食い込み、その場から激しいスパークが上がった。

「零距離なら!」

バルバトスルプスレクスレイトは左腕の200㎜砲をその穴へ向け連続で発砲した。緑色のビーム弾がヴァル・ヴァロ内部に次々吸い込まれていく。今回の様なあらゆる状況が発生する戦闘に対処するため、三日月は望月に依頼し左腕200㎜砲のマガジンを「200㎜ビーム弾」に変更していたのだ。装甲内部に何発ものビームをくらったヴァル・ヴァロは次第に爆発し始めた。バルバトスルプスレクスレイトはソードメイスを引き抜きながらその場を離脱し、やがてヴァル・ヴァロは爆散した。

「やったぴょん!大物を仕留めたぴょん!」

「喜ぶのは早い様だ。次が来たぞ!」

「瑞鳳の為にも、ここは抜かせません!」

三日月たちは新たに迫ってきた敵機への攻撃を開始した。

「クソッ、何て数なの!」

その頃、戦線突破部隊はビスマルクを先頭にして何とか敵機の切れ目目前まで迫っていた。しかし、後方へ行けば行くほど敵機の数は増えていき戦線突破隊はなかなかこれを打ち破れなかった。

「あまいわ!」

GN-XVはGNビームライフルでリックドムⅡとイナクト、Gアルケインを撃ち抜き、接近してきたガンダムエクシアと、ソードインパルスガンダムを左手のGNビームサーベルであっさりと切り捨てた。

「姉さま!」

すかさずパワードジムガーディアンがカバーに入り、ビームマシンガンでOガンダム、ストライクノワールガンダムを撃破する。

「まずいね…何とかこの場を突破しないと」

別の場所で時雨がビームピストルを連射しながら呟いた。

「くっそ~このままじゃ埒が明かないっぽい!」

その近くでユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがジェガンを撃墜しながら夕立が言った。そこへ巡航形態のホロルドロッソ・イージスが飛来し突撃形態へ変形しスキュラを放った。放たれたビームにVガンダムとハイザック、ネモ、ダブルオーガンダムが貫通し爆発させる。

「早く…早く深海にぃの所に行かないとっ」

そして再び巡航形態となったホロルドロッソ・イージスがそのまま敵機の中へと飛び込もうと移動していった。

「山風、無茶っぽい!」

夕立が制止したが、山風の耳にその言葉は届かずホロルドロッソ・イージスはますます先行していく。

「私が行く!」

駆逐棲姫の2.12ガンダムが先行していくホロルドロッソ・イージスを追いかけ始めた。

「深海にぃの所に―――キャアッ!」

しかし、先行するあまりホロルドロッソ・イージスは遂に敵からの攻撃によって被弾してしまった。被弾を受けてホロルドロッソ・イージスはバランスを崩してしまった。

「深空!くそっ」

思わず声をあげる時雨。山風の援護をしようとした時雨だったが、新たにガンダムAGE-3ノーマルとクランシェが迫った為、結局動けずにいた。

「いやあっ!」

「山風!」

被弾を繰り返すホロルドロッソ・イージスに2.12ガンダムが到着しようとしていたが、その瞬間ホロルドロッソ・イージスに百万式(メガシキ)がメガライドランチャーをホロルドロッソ・イージスに向けて発射した。完全な直撃コースで飛来するメガライドランチャーのビームに、山風は恐怖に支配されてしまい動けなくなってしまった。

「あ――」

(駄目だ!間に合わ―――)

だが、メガライドランチャーが直撃する瞬間、赤い機体がホロルドロッソ・イージスをかっさらっていった。

「何だ!?」

「え、あたし?」

撃墜されていないことに気づいた山風が困惑した声をあげた。山風は正面モニターを見た。そこには――――

「まったく…俺の元に来ようとするのはいいが、無茶し過ぎだ」

「深海にぃ!」

そこに居たのはエクストリームアウェリアスだった。

「機体は動けるな?」

状況が状況なので、深海は無駄な会話を省き山風に単刀直入に尋ねた。

「う、うん!」

「なら行くぞ。……聞こえるか秋月」

状況をすぐに把握した深海はすぐに秋月を通信で呼び出した。

「はい!何でしょうか深海提督」

「フォーメーションを寸断する。手伝ってくれ」

「了解!そちらに向かいますね!」

「頼む。…駆逐棲姫、少し深空を頼めるか?」

「ああ、任せておけ」

「深海にぃ!」

「深空、駆逐棲姫と夜空たちから離れるなよ」

合流した駆逐棲姫に山風を預けた深海は、その場から離脱していった。

「ビスマルク、聞こえるか?」

「何よアドミラル!今忙しいのょ――――」

「敵機のフォーメーションを寸断する。全機、突破準備だ」

「え!ちょっ、いきなり!」

「急げよ」

そこで深海は通信を切った。通信を切られた瞬間ビスマルクは思わず、キィー!!とムキになった声をあげたのだった。そしてその後、深海は秋月と合流した。

「深海提督!」

深海はエクストリームアウェリアスをウイングゼロ・アランダイトと背中合わせにさせ、敵機を撃墜しながら秋月に作戦説明を始めた。

「秋月、俺とお前のローリングツインバスターライフルでまとめて敵機を薙ぎ払う。動きを合わせてくれ」

「なるほど、了解です!」

「では行くぞ。攻撃用意」

その時、ビスマルクから通信が入り全機の突破準備が完了したと連絡が深海の耳に入った。エクストリームアウェリアスと、ウイングゼロ・アランダイトは背中合わせのまま両手に保持したヴァリアブルライフルとツインバスターライフルを機体左右に向けた。そして、4門の銃口から照射ビームが撃ち出された。

「今だ!」

その次の瞬間、エクストリームアウェリアスとウイングゼロ・アランダイトが高速で回転を始めた。するとその回転に、次第に角度が付いてきた。斜め上と下にも放たれた回転照射ビームは次々に現れる敵機を焼き払っていった。そして、何度も照射ビームが通ったその周囲の敵機は全滅していた。

「ビスマルク!」

「わかってるわよ!全機、今のうちに戦線を突破するのよ!」

 

了解!

 

敵陣突破部隊は、戦線を突破。施設深部を目指して進撃していった。

 

続く



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EP105 双璧

敵戦線を突破した深海たちは施設の奥を目指して進んでいた。

「各機、警戒は怠るな。いつ敵が来るかわからないからな」

相変わらず先頭を行くのは圧倒的な加速力を誇るナラティブガンダムAB装備だ。その後方にエクストリームアウェリアス、イナヅマガンダムトリニティⅥ、ガンダム・ホワイトボトムサウンドが続き、戦線突破部隊の面々がその後に続いていた。その時、部隊の最後方で索敵を行いながら追随していた榛名のEz-ASのレーダーが後方から接近してくる敵機を捉えた。

「深海提督!後方から敵機が来ます!数は150機前後です!」

「もう追いついてきたか…ビスマルク、金剛。ここはお前たちの隊に任せたい。頼めるか?」

「え、ええ!任せておきなさいアドミラル!」

「了解デース!さあ、ここをしっかりと守り通しますヨー!」

「すまない。残りの部隊は足を速めるぞ、急げ!」

後方から追ってきた敵部隊をビスマルクと金剛の隊に任せた深海たちは、部隊の足を速め先へ進んでいった。

「時雨」

その時、最上が時雨を呼びとめた。

「最上?」

「無事に帰って来るんだよ。約束だからね?」

「うん!」

時雨はエンドレインバレットのスラスターを噴かし、その場を後にした。

「さあやりますヨ、ビスマルク!ここは絶対に通さないネー!」

「わかっていること言わないで!行くわよプリンツ、最上、綾波!」

「了解ですビスマルク姉さま!」

「わかったよ!時雨の為にも、ここは抜かせるもんか!」

「綾波も了解です!」

「私たちも行きますヨー!」

「了解、お姉さま!」

「援護は榛名にお任せを!」

「戦況把握は霧島が行います!任せてください!」

8機のガンプラは迎撃戦を開始した。

 

そして更に奥へと進んでいった深海たちだったが、そこにもCPU制御の敵機が数機飛来し、すぐに戦闘となった。

「一体何処から湧いて出て来るのよ!」

陽炎はFX専用バスターライフルでウイングガンダムと、シグーを撃ち抜きながら言った。

「今はとにかく、奥を目指すのが先決です陽炎!」

「わかっているわ不知火!クソッ、墜ちなさい!」

ガンダムFXがアビスガンダムに向けハイパービームソードを投擲し、それがコックピットに命中、ハイパービームソードを回収しながらアビスガンダムを踏み付け、その反動を利用して跳躍、接近してきていたガンキャノンをFX専用バスターライフルで撃ち抜いた。

「この程度の敵!」

ストライダー形態のAGE-2ハルファスがアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲を連射し、ガンダムエアマスター、ガンダムヴァーチェ、トールギスⅡを纏めて撃破した。

「流石ね瑞鶴。私も負けてはいられないわ」

その後方からAGE-1エグゼバウンサーが通常モードのドッズマグナムで1.5ガンダム、ユニコーンガンダムを撃墜し、シグルドブレイドで接近してきたジ・Oを腹部で真っ二つにした。

「次は―――」

「加賀さん、危ない!」

次の敵機を探していたAGE-1エグゼバウンサーの正面にガンダムトライオークアンタが割って入り、ミラージュコロイドを展開し接近してきていたアストレイゴールドフレーム天のビームサーベルをGNソードⅣフルセイバーで受け止めた。

「貴女は初月さん!ごめんなさい、助かったわ」

「AGE-1エグゼバウンサーの近くの空間が歪んで見えたからね。助けられてよかったよ。せあっ!」

ガンダムトライオークアンタはゴールドフレーム天を弾き返すと、そのままゴールドフレーム天をGNソードⅣフルセイバーで真っ二つにした。

「チッ、まだ来るか!」

「お母さんに任せなさい!」

最前列を突き進むエクストリームアウェリアスとナラティブガンダムAB装備は次々に敵機を撃墜していき、後からついてくるメンバーの進路を確保していった。その時、深海は自身たちの進行方向に光を見た。

「っ!全機回避行動!」

 

!?

 

深海の言葉にメンバーが反応し回避行動をとった瞬間。青白い光の帯が空間の中心を通り過ぎていった。

「な、なに!?」

そして、光の帯が消えた後には何も残っていなかった。

「一体何処から攻撃が!?」

「っ!進行方向に2つの機影!」

「なにっ!?」

秋月の言葉を聞いた全メンバーが進行方向を向いた。そこには2つの機影。

1機は、頭部に4本のブレードアンテナを持ち、ずんぐりとした胴体と両肩に4枚のウイングバインダーを備えた、アルケーガンダムの様にとても細い脚部と腰部左右のバインダー、バックパックにはHi-νガンダムの様なフィンファンネルラックとプロペラントタンクを装備した。胸部中央に逆さまになった「A」の紋様を持つ白と黒、オレンジ色をした異形のガンダム。

もう1機は、頭部に6本のブレードアンテナを持ち、胴体中央に紫色のクリアパーツを持ち、ストライクEの様な左右へ突き出した両肩アーマー、ビギニング30ガンダムの様な曲線的で少しずんぐりした下半身と腰部サイドアーマーにはそれぞれ3本のビームサーベルがマウント、そしてバックパックには6枚の青紫色に輝くバインダーと長大なビーム砲を2門背負った黒とダークグレー、濃い青紫で彩られたガンダムだった。

そして、そのガンダムを操るファイターから全機に向けて通信が入った。

「ここから先へは行かせません」

1人は、真っ白な肌と真っ白なロングヘアーに白の弓道着の上を着て黒いミニスカートをはいた背の高い、紅い目の女性。

「マスターの邪魔をする者は、排除する」

もう1人は、白いロングヘアーの髪に駆逐イ級を模したようなヘルメットをかぶり、黒いノースリーブの服を着て腰のベルトは太腿のホルスターのようなものに続いているとても露出の多い服装に、黒いグローブと、黒いブーツを履いた赤い目の少女だった。

 

ッ!!

 

そして、その2人の顔を見た、瑞鶴と陽炎、不知火は叫んだ。いや、彼女たちの名前(・・)を叫ばずにはいられなかった。

 

 

翔鶴姉ぇっ!!

 

 

 

 

萩風っ!!

 

 

彼女たちの前に立ちはだかったのは、深海化した翔鶴と深海細胞によって改造された萩風、駆逐水鬼だった。

 

続く



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EP106 今は…

異形のガンダムと対峙した陽炎と不知火、瑞鶴は自分たちの姉妹が姿を変えて自分と対峙していることに驚きを隠せずにいた。すると駆逐水鬼がガンダムFXに気づいて口を開いた。

「そのガンプラ…ああ、陽炎姉さんか。お久しぶりです…不知火姉さんもいるんですね」

「萩風!私たちのことがわかるの!」

「ええ、わかります。この前、マスターに記憶を戻してもらったんです。だから、わかります」

「そ、そっか……」

「でも、ここを通す訳には行きません。姉さんたちだとしても、通せません」

駆逐水鬼の異形のガンダム「ガンダム(ダブルカイ)」はビームライフルの銃口をガンダムFXに向けた。

「っ!」

そして瑞鶴もまた、翔鶴に通信で呼びかけていた。

「翔鶴姉ぇ、翔鶴姉ぇ!」

「瑞鶴…ね」

「翔鶴姉ぇ!良かった、早く一緒に帰ろうよ!」

「……それは出来ない」

「なんで―――っ!」

深海化翔鶴の異形のガンダム「ガンダム∀GE(ターンエイジ)-3」はフィンファンネルを展開、それらがAGE-2ハルファスを取り囲んだ。

「ここを通すな、って吹雪ちゃんに言われたの。だから、一緒に帰れないわ」

「翔鶴姉ぇ!」

その時だった―――

 

瑞鶴!

 

「っ!?」

AGE-1エグゼバウンサーの放ったドッズマグナムのビームがガンダム∀GE-3に向かって飛んだ。∀GE-3はそれを急上昇で回避し、手にしていたスタングルライフルと同型のビームライフルをAGE-1エグゼバウンサーに向けて放った。それを回避しながら、通常モードのドッズマグナムで応戦する加賀は、瑞鶴に言い放った。

「何をボーっとしているの!やられたいの!」

「加賀さん!」

「今の彼女は敵よ!腹をくくりなさい瑞鶴!それに今は―――くっ!」

そして遂にフィンファンネルも動き出し、AGE-2ハルファスを襲い始めた。

「わかってるわよ!くうっ!」

瑞鶴はフィンファンネルの砲撃を回避しながら、応戦を余儀なくされてしまった。そして、ガンダムDχもビームライフルをガンダムFXに向け発砲し、遂に戦闘が始まった。

「萩風!」

ガンダムFXはそれをバインダーシールドで受け止め、急速に後退した。それをカバーするようにガンダムXブルーメギドがシールドバスターライフルを撃ち、ガンダムDχを牽制する。

「流石、不知火姉さん。正確な射撃…でも、正確過ぎる!」

ガンダムDχか開いた左手を右腰に回すとそこにあった3本のビームサーベルを指の間に挟んで抜刀。シールドバスターライフルから放たれたビームを斬り、かき消した。

「なっ!」

そのままガンダムDχはガンダムXブルーメギドに向かって切り込んできた。先程駆逐水鬼が見せた芸当に若干驚いていた不知火だったが、すぐさま武装スロットから大型ビームソードを選択。ガンダムXブルーメギドは居合斬りの要領で大型ビームソードを抜き放ち、ガンダムDχの袈裟斬りを受け止めた。

「何のつもりですか萩風!今あなたたちがやろうとしていることは―――」

「そんなの私には関係ありません。私はマスターの命令を遂行するだけ」

「萩風!」

ガンダムXブルーメギドがガンダムDχを押し返し、そこへガンダムFXが斬り込んだ。ガンダムFXはハイパービームソードを上段から斬り降ろしたが、ガンダムDχは身を反らした最小限の回避方法で攻撃を回避し、ビームライフルをほぼ零距離で撃ち返してきた。ガンダムFXはバインダーシールドでビームを受け止めたが、弾き飛ばされた。しかし陽炎はすぐに体勢を立て直し、再び斬りかかった。

「はあぁぁー!」

 

AGE-1エグゼバウンサーとAGE-2ハルファスもまた、∀GE-3との戦闘を開始した。フィンファンネルのビームを回避しながら、ハイパードッズマグナム下部のビームバルカンを撃ちファンネルを牽制していた。しかし、元々優れた空間認識能力を持つ翔鶴のファンネル操作によって瑞鶴は少しずつ焦り始めていた。

「翔鶴姉ぇ、正気に戻って!」

「………」

「そこよ!」

そんな中で加賀のAGE-1エグゼバウンサーは直接∀GE-3を狙って攻撃した。しかし、ドッズマグナムのビームはことごとく回避されてしまった。そして今度は両腰のバインダーからGNファングが射出され、AGE-1エグゼバウンサーに襲い掛かってきた。

「この数のファンネル系武装を扱えるなんて!」

「加賀さん――うわっ!」

多数のファンネル系武装によって、2人は完全に圧倒されていた。瑞鶴は咄嗟にAGE-2ハルファスをストライダー形態に変形し、その場から離脱していった。

「逃がさないわ」

それを追うように∀GE-3とフィンファンネルが追随してきた。∀GE-3とガンダムDχの間に大きな空白地帯がうまれたその時だった。

 

 

深海提督さん!!

 

 

瑞鶴が突然、深海の名前を叫んだ。その瞬間、深海もまた声を張り上げた。

 

 

今だ、突破しろッ!!

 

 

その瞬間、後方で戦闘を見ていた残り部隊の全機が一斉に動き出した。全機がスラスター全開で、その空白地帯を次々に突っ切っていった。

「「!?」」

この行動に深海化翔鶴と、駆逐水鬼は驚いた。ガンダムDχはガンダムFXとの鍔迫り合いに持ち込まれて動けず、∀GE-3は突破していく部隊を追おうとしたがそこにAGE-1エグゼバウンサーがドッズマグナムを撃ちながら迫っていった。

「邪魔はさせないわ、翔鶴」

「くそっ」

そして最後にウイングゼロ・アランダイトとガンダムトライオークアンタが突破した。しかし、その2機は少しだけ進んだところで方向転換しそこで立ちふさがった。それに気づいた深海は、秋月と初月に通信を入れた。

「秋月、初月、何をしている!早く合流し―――」

「ここは私と初月で抑えます!」

「なんだと!」

「瑞鶴さんと加賀さんは秋月姉さん、陽炎と不知火はボクの部隊メンバーだからな。深海提督、ここはボクたちに任せてくれ、皆の退路も必ず守ってみせるさ」

「残った皆さんには深海提督が必要です!だから行ってください!」

「…わかった。ここは任せるぞ!」

 

はいっ!!

 

その場を秋月と初月に任せ、深海たちは更に奥を目指して進撃を再開した。

 

続く



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EP107 雨に集う

深海たちが駆逐水鬼と深海化翔鶴を突破した頃、ネェル・ミネルバ防衛戦は熾烈を極めていた。

「左舷後方からミサイル5!直撃コースです!」

「下げ舵20!山城、迎撃よ!」

「ネェル・ミネルバはやらせんぞ!」

そこにキリサリスがミサイルへ向け、頭部バルカンとマシンキャノンを撃ち込み、3発を撃破。しかし残りの2発が、ネェル・ミネルバの対空網を抜け第2主砲と艦橋の間に直撃した。

「艦橋下部に被弾!損傷軽微です!」

「夕張ちゃん、ダメージコントロールを!」

「了解!」

「くっ!全て墜とせんとは―――ぐっ!」

被弾したネェル・ミネルバを横目に見ながら日向が呟いた瞬間、キリサリスの上空からガンダムXディバインダーがビームマシンガンを撃ちながら飛来した。

「日向!」

するとそこへステイメンMk-Ⅱが援護に現れ、ビームライフルでガンダムXディバインダーを撃墜した。

「大丈夫日向?」

「ああ…クソッ、また来たぞ!」

今度はジンハイマニューバⅡ型が2機、ビームカービンを撃ちながら接近をしてくる。ステイメンMk-Ⅱとキリサリスの2機は互いのシールドでビームを防いだ。今自分たちの背後にはネェル・ミネルバがいる。2機は回避するわけにはいかなかったのだ。

「副砲三式弾、てぇー!!続けて左舷対空ミサイル、発射!」

しかし、突っ込んできたジンハイマニューバⅡ型の内の1機はネェル・ミネルバの発射した三式弾を避けきれず撃墜され、もう1機も対空ミサイルをまともにくらって爆散した。

「これ以上の接近はさせないわ!」

大鳳は、Hi-νトールギスのCファンネルも展開し迎撃を始めた。Cファンネルが接近しようとしたグフイグナイテッドとキュベレイを斬り裂き撃墜、その位置へ向けHi-νトールギスはメガキャノンを構え、発射した。

「この火力なら!」

黄色いビームの帯が射線上の敵機を次々に焼き払ったが、それでも敵の進軍は止まらない。その時、1発のミサイルが右舷カタパルト側面に直撃した。

「右舷カタパルトに被弾!損傷は軽微ですが、このまま連続して撃ち込まれたら―――っ!右舷50度方向のハーフビーク級、本艦を攻撃軸線に捉えました!」

「回避行動を取りつつ反撃!第1主砲照準、右舷前方のハーフビーク級。撃たれる前に撃つのよ!」

「第1主砲照準固定!てぇー!」

しかし、ネェル・ミネルバの主砲が火を噴いた瞬間ハーフビーク級の主砲もまたネェル・ミネルバ目掛け火を噴いた。ネェル・ミネルバの主砲はハーフビーク級を貫き、船体をゆがませながら爆沈させたが、ハーフビーク級の主砲弾もまたネェル・ミネルバに迫っていた。

「回避!」

ネェル・ミネルバはハーフビーク級の主砲を下げ舵で回避しようとしたが、あと一歩間に合わず主砲弾の内の1発が艦橋下部に直撃した。

「くそぉ…間に合わなかった!」

自身の失敗を悔やむ皐月。

「右舷後方からD装備型のジンが7機、来ます!」

「やらせないよ。大井っち!」

「はい、北上さん!」

ヘビーアームズZZガンダムがバックパック先端右側の21連装ミサイルランチャーを発射、ガンダムドーベンアームズが左側の15連装ミサイルランチャーを発射しミサイルの弾幕を放つ。これ程までのミサイル弾幕を撃ち出されたジンの編隊は回避することが出来ず、1機また1機と爆発に飲み込まれていった。しかし、その内の1機が弾幕を潜り抜け、両腕に装備した大型ミサイルを4発発射した。しかも、かなりの近距離まで接近してきたそのジンのミサイルは完全に対空弾幕の内側となっていた。

「しまった!これじゃ間に合わな―――」

「ネェル・ミネルバはやらせません!きゃああー!」

しかしそこに大和のドレットノートスターゲイザーが割り込み、その身を盾にしてミサイルを防いだ。

「「大和さん!」」

同部隊のメンバーである睦月と文月が思わず声をあげた。しかしその間にジェッズネロ・ブリッツが爆煙の中へ飛び込んでいった。その数秒後、左腕を失ったドレットノートスターゲイザーを抱えたジェッズネロ・ブリッツが現れた。

「大和さん、大丈夫かい!?」

「だ、大丈夫です。ありがとう涼風さん」

「このまま着艦するよ!」

「わかったわ」

ジェッズネロ・ブリッツはドレットノートスターゲイザーを抱えながら接近してきたジムⅡとガンダムアスタロトをビームライフルで撃墜し、何とか右舷後方カタパルトにドレットノートスターゲイザーを着艦させた。

「武蔵さん、大和さんをお願いします!」

「ああ、任せておけ!5番のハンガーに回すぞ、急げ!」

艦内へ入ったドレットノートスターゲイザー。そして大和の目に映ったのは、所狭しと並んだ補給と修理を受ける損傷した友軍機だった。

「望月、そっちはどうなっている!」

「もう少しで終わる!そしたらそっちに―――」

「ブリッジから連絡。三日月機、長月機が補給のため着艦するよ!」

「了解だ飛龍!望月は三日月と長月の補給に回れ!」

「りょーかい!」

「よし、涼月機出せるよ!」

「ありがとうございました蒼龍さん!涼月。ガンダムサバーニャ・ハイスナイプ出撃致します!」

格納庫内は右往左往する1/144の兵隊で溢れており、大和の耳に届く様に武蔵たち整備班がとても慌しく動いているのが分かった。

(深海提督が戻るまで、何としてももたせないといけない…どうにかしないと!)

大和はその光景を見ながらそう心の中で呟いた。

 

 

その頃、工場深部を目指す深海たちはとても広い草原を駆け抜けていた。ほんの数分前、深海たちの前に現れた円形のゲートをくぐった先がこの草原に繋がっていたのだ。ゲートを抜けた瞬間、ナラティブガンダムAB装備が超高速で墜落していくハプニングこそあったものの今ではその草原をナラティブガンダムE装備として駆けている。

(プラフスキー粒子が形成した草原フィールドか……ん?)

するとその時、草原の上空を分厚い黒い雲が覆い雨が降り始めた。

「雨?」

「ぶぅ~夕立、雨は嫌いっぽい」

「このタイミングでの気候変動…何か来るかもしれないな」

「うん。駆逐棲姫の言う通りだ、周囲の警戒を強めた方が―――っ!」

その時、時雨に耳に接近警報のアラートが鳴り響いた。このメンバーの中で1番索敵能力に優れたエンドレインバレットのレーダーが何かを捉えたのである。

「11時方向の上空に機影を確認!」

(やはり来たか!)

時雨はそうメンバー全員に告げるとエンドレインライフルをその方向に向け、スコープを覗き込んだ。

「あれは…竜?」

そこに映っていた機影はまるで飛竜のような双翼を持ち、竜であるなら頭となる位置に5つに刃のような鶏冠状のトサカ、そして尻尾に当たる部分は先端が鋏のように二股に分かれた、金色と黒の機影だった。その機影は時雨の目に留まった瞬間、両翼から緑色の光を放つと物凄い速度で時雨たちに迫ってきた。

「っ!みんな今すぐ回避するんだ!」

 

!?

 

時雨の言葉に突き動かされたメンバー全員がその場から一斉に立ち退いた。そしてその次の瞬間、先程までメンバーがいた場所をその飛竜が緑色に輝く翼…いや、緑色のビームを纏った翼を広げ、地面を抉りながら飛び去っていった。

「わわっ!何今の!?」

「恐らく敵――――っ!12時方向から別反応!?近づいてくる!」

その次には2.12ガンダムのレーダーが正面方向から接近してくる機影を捉えた。その数秒後、駆逐棲姫の目にとてつもない機影が映った。

その機影は、まるで黒とは白銀色の毛を纏った巨獣の様な外見に反り返るように伸びた豪壮な2本の牙とマンモスの様な長大な鼻の様なパーツを有し、獣であるならでこに当たる部分から巨大なビームの壁を形成し4足歩行でこちらに迫ってきた。

「象だと!?」

「ヤバイっぽい!回避ぃ!」

「わわわっ!」

その巨獣は、そのまま一直線に2.12ガンダムとナラティブガンダムE装備、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがいた位置を通り過ぎていった。

「はわわ!さっきから一体何なのですか……っ!?4時方向からミサイル!?」

すると今度はイナヅマガンダムトリニティⅥの後方、4時の方向から大量のミサイルが飛来してきた。イナヅマガンダムトリニティⅥの近くに居た白雪のガンダム・ホワイトボトムサウンドもまたそのミサイルに気づき、回避行動を取った。次々に地面に着弾し爆炎を上げるミサイルを回避しながら、電はミサイルが飛来した方向へメインカメラを向けた。そして見つけた。

「4時の方向にも機影を見つけたのです!」

電が見た機影は、朱色と白、胸元が紫の蛇の様に長いスレンダーな胴体とそこから伸びる4本の手足、頭部は狐の様に大きく前へ突き出しており、頭頂部には狐耳のような長いパーツとヒレの様なパーツが乱立しており、背中から尾部にかけて反り返った棘が5本立っている機影だ。

「電、白雪!クッ!次から次へと―――なにっ!?」

深海が電と白雪に気を取られた瞬間、今度は深海の耳に接近警報が鳴り響いた。アラートが示したのは6時方向。真後ろだった。深海が振り返ったその瞬間、目の前にはとても巨大な剣が迫って来ていた。

「なっ!」

「にぃに!」

とっさにホロルドロッソ・イージスが強襲形態でエクストリームアウェリアスに組み付いてその場から緊急離脱し、2機は何とか撃破をま逃れた。

「深空、助かった」

「うん。にぃにが無事でよかった」

そして先程まで2機がいた地点には、大きな斬撃跡が付いていた。深海と山風が目にしたのは、深い青と淡い赤色の肉食恐竜の様な外見に、頭から背中にかけて顔の方へ大きく反り返った棘を幾本も持ち、そして先程地面に巨大な斬撃跡を作った剣…いや、赤熱化した大剣の様な尾を持つ機体だった。

「くそ、一体何処に隠れていた……全機一旦集合だ!急げ!」

深海の指示を受けたメンバーは各々その場から退避し、少し離れた地点に集合した。

 

「大丈夫かみんな?」

それぞれ背中合わせになりながら円陣を組み、周囲を警戒する深海たち。

「うん。僕は大丈夫だよ」

「夕立も大丈夫っぽい!」

「それにしても、一体何処に隠れていたんだ…索敵範囲外だったとしても、あの巨躯をどうやって……」

「わからない。だが、奴らが敵であることは確かだ……来たぞ!」

そして遂に、その4機は現れた。飛竜は上空から深海たちへ狙いを定め、巨獣と恐竜はゆっくりと近づき、蛇は遠方からじっくりと獲物を睨んでいた。

「か、囲まれちゃったよ深海!」

「こっちは人数では上だが…相手の力量がわからん。さて、どうしたものか…」

じりじりと迫ってくる敵を前に、手を出せずにいたその時だった。

「っ!!上だ!」

上空から分厚い雨雲を突き破って、1機の機体が現れた。その機体もまた龍の様な姿をし、銀色の頭部は隼の様に少しだけ反り返った嘴のような形状と頭頂部は背後へ向かって伸びる鋭利な棘を何本も備え、そして4つの手足と、片翼に3本のとても鋭利な槍状の翼から、紅い光を放ちながらそれは飛来した。

「何だあの機体!」

「うふふ…待っていたわ。時雨、夕立、春雨、山風…」

「っ!その声はっ!」

飛来したその機体から通信が入り、時雨たちは懐かしい声を聴くこととなった。彼女たちにとって聞き間違えようがないその声の主。

 

 

 

村雨っ!!

 

 

 

飛来した機体の操縦者、深海雨雲姫は不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

 

 

止まない雨の中で…朽ち果ててしまいなさい!

 

 

 

 

続く

 



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EP108 叫び

5機の敵機と対峙する深海たち。地上に3機、上空に2機とほとんどの逃げ道のない状況の中、深海たちのガンプラは身構えたままだったが時雨と夕立の2人は上空から現れた深海雨雲姫の機体を見上げていた。そして時雨は深海雨雲姫に問いかけた。

「村雨!なんでこんな事に協力するんだ!自分が今、何をやっているのか本当に分かっているのか!」

「……ええ。わかってるわよ勿論。この世界からガンプラバトルを無くそうとしている吹雪ちゃんに協力しているのよ」

「そんな事をして君は本当にいいの!君がガンプラバトルを心の底から楽しんでいるのを僕は何度も見てきた!こんな事は止めるんだ!」

「そうだよ!村雨、あんなに夕立たちとのバトルが楽しいって言って―――」

 

 

黙りなさいッ!!!

 

 

「っ!!」

深海雨雲姫の突然の絶叫に驚く時雨と夕立。深海雨雲姫は荒げた声で時雨と夕立に叫んだ。

「あぁもうっ!何で貴女たちはいつもそうやって私の(しゃく)に障る事ばかり言うのよッ!!」

「しゃ、癪に障るだって!?」

「ええそうよッ!!いつもいつもお姉ちゃん面してッ!何かある度に「良い雨だね」だの「雨はいつか止むさ」だ!!いつもいつも雨に例えやがって…聞いてて飽きれるんだよッ!!」

「なんだって!?」

夕立(お前)も、いつもいつも「ぽいぽい。ぽいぽい」五月蠅いんだよッ!!毎日のように何かトラブル起こしやがって、誰がお前の後始末をしていたと思ってんだッ!!」

「ぽいっ!?」

深海雨雲姫もとい、村雨の私情にまみれた言葉を耳にした時雨と夕立は衝撃を受けた。深海雨雲姫は更に続ける。

「ガンプラバトルを無くす?そんな事、私にはどうだっていいのよッ!!ガンプラバトルが無くなろうが、無くならかろうが、私には関係ないのよッ!!」

「か、関係ない?」

「それなら村雨!君の目的はなんなんだ!」

時雨の問いかけを聞いた深海雨雲姫は不敵な笑みを浮かべ、フフフッ!と笑い、言った。

「私の目的はたった1つ―――」

 

 

 

姉妹全員、深海細胞の力で私の下僕にする事よッ!!アハハハハハハハー!!!!

 

 

 

狂気を纏った甲高い笑い声をあげ、深海雨雲姫は宣言した。その宣言を聞いた時雨と夕立、山風、駆逐棲姫は絶句した。

「大切な姉妹を下僕にだなんて…」

「ひ、酷いのです…」

深海雨雲姫の言葉を聞いた白雪と電は、思わず声を漏らした。深海と、空母水鬼は何も口を開かず耳を傾けていただけだった。深海雨雲姫は笑いながら言った。

「だから貴女たちも今この場で深海へ染めてあげるっ!!白露たちのようにねッ!!」

「っ!まさかここに居る機体を操縦してるのは!」

「ええそうよ。深海化した白露と五月雨、海風と江風よ!」

時雨たちの目の前に4つのモニターが現れ、以前に見た深海化した白露と五月雨と、黒色の髪を足首まで届きそうな長さの1本の三つ編みにして山風と同じセーラー服を着た赤い目をした少女「深海化海風」と、白色の髪を後ろで黒いリボンでおさげ髪にしてある白と赤のヘアバンドをした山風と同じ服装を着崩してお腹とへそを見せている赤いの目の少女「深海化江風」が映っていた。

「な、なんて酷いことを……海風に江風まで」

「安心して、時雨姉さんたちもすぐにこうなるんだから。勿論山風、い・ら・な・い・子の貴女もねぇッ!!感謝しなさいッ!!」

「い、いら…いらない?」

「ええ!貴女は今回だけ省かないであげる…ホント、感謝しなさいよ?いらない子のや・ま・か・ぜ・ちゃ・ん!」

「あ、あたしは…い、いらな、い?いら、な、い…」

「深空っ!!」

山風が発作を起こそうとした瞬間、空母水鬼は居ても立っても居られず操縦スペースを飛び出し、山風の元へと走った。

「母さん!」

「いら、ない…いらない…いらないいらないいらないいらないいらないいらない!!!うあ、あああ……あぁあ!!」

「アハハハハッ!!やっぱり山風をからかうのは最高に面白いわっ!」

「深空ぁっ!!」

空母水鬼は山風の操縦スペースに辿り着くなり、飛び込む様に山風に飛びついた。空母水鬼の身体は、山風を抱えたまま地面に激突し大きな音をたてた。

「いったたたぁ……」

「う…あ?す、水鬼?」

空母水鬼が地面に激突した衝撃で我に返った山風に、空母水鬼は痛みを堪えながら笑みを浮かべ言った。

「だ、大丈夫だよ深空。深空はいらない子なんかじゃない…だって、この世界にたった1人しかいない…代わりなんて存在しない………私の―――」

 

 

 

大切な…大切な娘なんだものっ

 

 

 

「すい…き?わっ!」

空母水鬼はそのまま山風をギュッと強く抱き締めた。

「だから、深海雨雲姫の言葉に負けないでっ。ここには…お母さ―――私が一緒にいるから…」

「……うんっ」

「頑張ろう深空!さあ、立って!」

「うん!」

空母水鬼に支えられながら山風は立ち上がった。そして、モニターに映った深海雨雲姫を睨みつけた。その深海雨雲姫を睨む空母水鬼の目は、いつもの優しい目ではなかった。薄っすらと赤い光を放ち、奥底に殺意の様な闇を纏う深海棲艦の目だった。

「私の姉妹に、変なこと拭きこまないでくれないかしら?空母水鬼」

「私の姉妹。だと?散々この子を困惑させ、馬鹿にしたその口で…姉妹を語るなッ!」

空母水鬼は重々しい口調で言った。

 

 

 

貴様だけは…私の手で叩き潰すッ!!

 

 

 

「いいわ、やってみなさいよ?」

空母水鬼は自身の操縦スペースに戻ると、即座にナラティブガンダムE装備を飛翔させビームサーベルを抜くと上空の深海雨雲姫が操る機体「ファバルク」へ斬りかかった。

「沈めぇ!!」

しかし斬りかかろうとした直後、深海雨雲姫は不敵な笑みを浮かべた。その瞬間、空母水鬼の操縦スペースに後方からの接近警報が鳴り響いた。ナラティブガンダムE装備の後方からもう1機の敵機、深海化江風の操る飛竜のような機体「ゼラクス」が高速で迫ってきたのだ。

「母さん、避けろ!」

「チッ!」

ゼラクスの高速突進を回避したナラティブガンダムE装備だったが、そこに蛇の様な機体「タツミネ」が放った多数のミサイルの飛来し襲い掛かってきた。

「くそぉ…あっちこっちからしつこい!」

ファバルクへの攻撃を中止しミサイルを回避するためその場から離脱するナラティブガンダムE装備。

「水鬼!」

「全員避けろ!来るぞ!」

そして遂に纏まっていた深海たちにも攻撃が始まった。恐竜の様な機体「ディノーバ」は大剣の様な尾を深海たちに向けて振り下ろし、象のような機体「ガムルト」は再びビームシールドを張って全速力で突進してきた。その場を一斉に離脱し散開する深海たち。ディノーバの大剣は再びに地面に巨大な斬撃跡を作り出し、その場からバックステップ。その斬撃跡を削り消すようにガムルトが大地を抉りながら通り過ぎる。

「くっ…なんてパワーを持っているんだ、こいつら!」

「このままじゃマズイっぽい!足止めされてるっぽい!」

「………」

しかし、そんな中で時雨は口を閉じ何か真剣に考えこんでいた。その間にも、エンドレインバレットへ向けミサイルやゼラクスの放ったビームなどが襲い掛かっていたが、時雨はそれを回避しながらやはり何かを考えていた。そして一言、これしかないか。と呟き―――

「深海は行って!電と白雪も!」

そう叫んだ。

「なんだと!?」

「ここはお母さんと僕たちで食い止める!深海たちは先に進んで!」

「そんな!時雨さんたちを置いていける訳ないのです!」

「駄目だよ電ちゃん!」

「っ!」

電の言葉を聞いた夕立が電を制止した。夕立はそのまま言葉を続ける。

「今は時雨の言う通りっぽい!ここで全員が足止めをくらってたら、間に合わなくなっちゃう!」

「でも……」

「早く行くんだ電!この作戦を成功させるには、もうこの方法しかないんだ!」

「………時雨さん、夕立さん」

電が戸惑う中、深海は小さく歯ぎしりをすると操縦桿を強く握りしめた。

「わかった。行くぞ電、白雪」

そう言って深海は、エクストリームアウェリアスを草原の彼方へと走らせた。

「深海提督さん!」

「電ちゃん、ここは堪えてください!」

未だに動こうとしなかったイナヅマガンダムトリニティⅥを左手で牽引しながらガンダム・ホワイトボトムサウンドもその場を飛び去っていった。

 

 

 

時雨さんッ!!夕立さんッ!!

 

 

 

電は最後まで時雨と夕立の名前を叫び続けていた。そしてその場には時雨と夕立、山風、駆逐棲姫、空母水鬼が残り、深海雨雲姫たちとの戦闘が始まった。

「あらら、行っちゃったわ。一応、追った方がいいかしら――――」

村雨ぇぇー!!!

深海たちを追おうとしたファバルクにエンドレインバレットがビームサーベルで斬りかかった。深海雨雲姫は咄嗟に方向転換、ファバルクの頭部となっていた部分をガンダムハルートの様に腰裏へ回すと、手足を展開。機体を起こすと腰のサイドアーマーにマウントされていたビームサーベルを居合斬りの要領で抜き放ち、エンドレインバレットの右からの袈裟斬りを受け止めた。2つのビームサーベルがぶつかり合い、エンドレインバレットとガンダムマルコシアスの様な頭部を持つファバルクが睨み合った。

「さすが、頭の回転は速いわね。そこは褒めてあげる」

「光栄でもないさ。今はこうすることが先決だからね」

「やっぱりその性格、気に食わないわ!」

「何とでも言え!これが僕だ!」

激しく火花を散らす2つのビームサーベル。

(電や、深海お兄ちゃんの為にも――――)

 

 

 

 

ここは譲れないッ!!!

 

 

 

 

エンドレインバレットのメインカメラが淡い光を放ち、輝いた。

 

続く



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EP109 先へ

草原を抜けた深海、電、白雪は再び工場内を突き進んでいた。時たまに現れるCPU制御のガンプラを撃破しながら、進撃を続けた3人はいよいよ最深部へ近くへと辿り着こうとしていた。

「時雨さん…夕立さん…」

電は未だに2人を置いてきてしまった事を悔やんでいた。

「電ちゃん、悔やんでも仕方ないよ。時雨ちゃんや、夕立ちゃんの言ってたことを実行してなかったら、間に合わないんだから」

「わかっているのです…でも、あの2人は…電の……」

(電……)

無理矢理その場を後にしてしまった深海自身もまた、心に小さな悔やみがあった。肉親と妹をあの場に残して自分1人、先を目指した。だが、今ここで退き返せばそれこそ3人に対しての裏切りになる。深海はその悔やみを胸の底に押し込み、前を見据えた。すると、先頭を行く深海の目の前に突然赤アラートが点灯した。

「っ!止まれ!」

急いで残りの2人の進行を止める深海。深海の言葉に驚きながらも、イナヅマガンダムトリニティⅥとガンダム・ホワイトボトムサウンドはエクストリームアウェリアスの傍で急停止した。そして深海同様、電と白雪の目の前にも同じ赤アラートが点灯した。アラートに書かれた文に目を通す電と白雪。

「えっと…エマージェンシー…アウトオブエリア?…えっ!?」

「この先場外!?」

そこに書かれていた文は、この先がプラフスキー粒子の範囲外であることを意味していた。通常のガンプラバトルにおいても、ガンプラがシステム台の端まで到達してしまうとこのアラートが表示される。プラフスキー粒子の範囲外。つまりは、ガンプラが動かなくなるのである。

「大部隊を持って来られないようにした強制的な防壁か……」

深海はゆっくりとエクストリームアウェリアスの右手を前へ伸ばし、ヴァリアブルライフルの銃口付近をエリア外に出して引き金を引いた。しかし、銃口からビームは撃ち出されなかった。ライフルが放つビームなどもシステムが作り出したエフェクト。範囲外でビームが撃ち出されるはずもないのだ。

「どうやら本当に範囲外のようだ…奴らもバカじゃないってことだな」

「どうするんですか深海提督さん?」

「電、白雪。ちょっと俺の操縦スペースまで来い」

「え?あ、はい」

そう言って電と白雪の2人は深海の操縦スペースへ歩いていった。そして深海は早々に小さなセンサーの様な機械をポケットから取り出し、続いて手のひらサイズとは言えないものの、そこまで大きくないお菓子作りなどで使用する小さな計りのような物を2つ取り出し、電と白雪に渡した。

「深海提督さん、これは…」

「明石と夕張が作った、プラフスキー粒子探知装置と持ち運びサイズの機体認証システム装置だ」

「ええ!!明石さんと夕張さん、こんな物まで作っていたのですか!?」

「ああ。今回の様な状況があるかもしれないと判断してな、俺が作らせておいた。残念ながら出来上がったのは、この2つだけだが…」

「深海司令って、何処まで頭回るんですか……流石に少し引きます」

「勝手に言っていろ」

「あれ?でも、2つだけって……」

電がその機械が2つしかないことに違和感を覚えた。すると深海は答えた。

 

 

 

ここから先は、お前たち2人だけで行くんだ

 

 

 

「え!」

思わず声をあげる電。すると深海は淡々と言葉を続けた。

「この先がプラフスキー粒子の範囲外にされたのは意図的の筈だ。つまり敵にとってここが俺たちの部隊を食い止める最終防衛ラインという事だ。プラフスキー粒子の範囲外では頼みの綱であるガンプラが使えない。妥当な判断だろ?」

「た、確かに…」

「だからこの探知装置と機体認証装置を持った少数が突入しプラフスキー粒子の漂っているエリアを探知装置で見つけ次第、機体認証装置でガンプラを出撃させるプラフスキー粒子は人体に害影響を及ぼすこともないしな。それに、このバトル台を持って移動できるわけもないからな。それに、ここが行き止まりとなっているのであれば……」

その時、深海たち3人の耳に接近警報のアラートが届いた。3人は慌てて後方を向き直った。そこには圧倒的な数のCPU制御のガンプラが現れていた。

「やはりな。退路を断って包囲殲滅する気だな」

「そんな!」

「2人共、早く場外にガンプラを弾き出せ!場外に出したガンプラは傷つくことはない!急ぐんだ!」

「でも!深海提督さんまで―――」

 

 

 

さっさと行けッ!!

 

 

 

「お前たち2人にはやらなければいけないことがあるんだぞ!早く機体を場外に出して、奥へ進め!」

「「!!」」

深海は電と白雪を早口で説き伏せた。その言葉を聞いた電と白雪は、何も言わずに操縦スペースへ戻ると機体のスラスターを全開で噴かし、それぞれのガンプラを場外へ弾き出した。カシャカシャ。という音をたてて、地面に落ちるイナヅマガンダムトリニティⅥとガンダム・ホワイトボトムサウンド。それと同時に操縦スペースが消失し、電と白雪の2人はGPベースを台から外すと全速力で工場内へ突入していった。2機のガンプラが場外に出たことを確認した深海は、エクストリームアウェリアスを180度反転させた。深海の目の前には、1000機以上のCPU制御のガンプラが群れを成してエクストリームアウェリアスに迫って来ていた。

「もっと多くの敵を倒す為にこんな数を用意したんだろうが……悪いな、たった1機が相手で……だが――――」

 

 

 

 

俺とアウェリアスを…侮るなよッ!!

 

 

 

 

深海の額から黒い角が現れ蒼白い炎を纏うと、前髪の後ろの真っ赤に染まった右目が一層の赤みを増した。そしてエクストリームアウェリアスは敵機の中へと突入していった。

 

それから数分が経った。電と白雪は、メンバー全員の戦闘を横目に見ながら工場の中を駆け抜けていき、遂に先程のエリア。プラフスキー粒子の境界線に辿り着いた。

「あ!あったのです!電と白雪さんのガンプラなのです!」

「……よかった!どこも壊れていないみたい…急ごう電ちゃん!」

「なのです!」

イナヅマガンダムトリニティⅥとガンダム・ホワイトボトムサウンドを回収した2人は、更に工場の奥を目指して走った。すると走っていく内に、電の手に握られた探知機がピー!ピー!ピー!と音を発し始めた。

「はにゃ!プラフスキー粒子の反応が大きくなってきたのです!」

「なら、もう少し進めば!」

そこから数分走ると、遂に探知機はピィー!!と途切れることのない音を発した。

「ここから行くのです!」

「うん!わかったよ電ちゃん!」

電と白雪は早速機体認証装置を取り出し、それを地面にセットした。そして「起動」と書かれたボタンを押すと装置から光で文字が現れた。

「GPベースとガンプラを装置にセットしてください。はわわわ…やっぱり明石さんと夕張さんは凄いのです」

「浮かれてる場合じゃないよ!急いで電ちゃん!」

「了解なのです!」

2人は装置の円形の台座にガンプラを、そこから伸びる四角い接続部にGPベースをセットした。すると、機体が装置によって読み込まれメインカメラが発光、操縦スペースが2人の前に現れた。2人は驚きながらも現れた操縦桿を握りしめた。そして機体認証装置がカタパルトを、上方へ作り出した。

「え!上なの!?」

「あ!ガンダムSEEDでフリーダムガンダムとかジャスティスガンダムが発進する時は上に向かって発進してたのです!それを再現しているのですよ!」

「なるほど……このサイズじゃ前へはカタパルトエリアを作れないから……そういうことなんだ」

「白雪さん、準備はいいですか?」

「うん、行こう!白雪。ガンダム・ホワイトボトムサウンド、行きますッ!

電。イナヅマガンダムトリニティⅥ、出撃ですッ!

2機のガンプラは大きく膝を曲げると、その次の瞬間上空へ勢いよく飛び上がった。そして、カタパルトを抜けた2機は全速力で工場の最深部へ向かって行った。

 

そしてそこから更に奥を目指した2機は、道中で現れる少数の敵機を撃破しつつ進んでいた。すると、だだっ広い円形の広場に出た。

「凄い広い所に出たのです!」

「何というか…あからさま。って感じがします…奥に続くであろう正面の扉も開きっぱなしだし…」

その広間はただ広いばかりで周囲には何もなく、敵機の反応すらなかった。

「誰もいないのなら手早くこのエリアを抜けてしまおう!」

「了解なのです!」

イナヅマガンダムトリニティⅥと、ガンダム・ホワイトボトムサウンドが解放されていた扉へ向かおうとした、その瞬間だった―――

 

ピーピーピーピー!

 

突然の接近警報と共に、正面の扉から1機のガンプラが飛び出してきた。そのガンプラは一直線にイナヅマガンダムトリニティⅥへ向かってきた。

「はっ!!」

その機影に気づいた電は咄嗟に左腕のアカツキビームシールドを構えた。突っ込んできた機体は、右手のビームサーベルが展開されたレギルスライフルに似たライフルをアカツキビームシールドに向かって振り下ろしてきた。

「くぅ!」

バチバチバチ!とビームの火花を散らすビームサーベルと、アカツキビームシールド。そして電は、目の前に現れたガンプラ。黒とグレー、そしてメタリックパープルで塗装され、6本のブレードアンテナを持つガンダムレギルスの様な頭部に、胸部中央にはゼイドラよりも尖った薄紫のクリアパーツ、それを挟み込む様にガンダムタイプによく見られる胸部のエアダクト、ゼダスのような鋭利な両肩アーマー、両肘と両膝にはギラーガの「Xトランスミッター」の様な薄紫のクリアパーツが設けられ、ガンダムレギルスの曲線的で非常にスマートな形状の下半身を持ち、背中にはゼダスが変形時や飛行形態時に展開する巨大な翼と、ガンダムレギルスの長大なビーム砲「レギルスキャノン」の様な稼働する尾を持った。そのガンプラを操縦しているのが誰なのかすぐに分かった。

「その機体…レ級ですね!!」

「流石オレの偽物だ!これほど早く気づくとは思わなかったぞ!」

レ級が操るガンプラは、ビームサーベルを展開したライフル「the()・レプリカライフル」を右へ切り払い、イナヅマガンダムトリニティⅥを弾き飛ばした。

「うわっ!」

しかし電はすぐさま態勢を立て直し、ヴェールフェニックスライフルをレ級のガンプラへ向けた。

「全国大会で付けれなかった決着、今ここで付けさせてもらうッ!!」

レ級がそう言うと、左腕に装備されたレギルスシールドに似た形状の実体盾「the()レプリカシールド」の表面装甲が展開、そこから小さな無数の光弾が現れ、その光弾は両肘、両膝のクリアパーツと、バックパックの翼表面の展開した装甲の内側からも次々に出現しレ級のガンプラを包む様に展開した。そして――――

 

 

 

 

 

この、ガンダムレギュルス・the()レプリカでなぁッ!!!

 

 

 

 

 

ガンダムレギュルス・theレプリカの薄紫のツインアイが神々しくも怪しく光り、輝いた。

 

続く



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EP110 最深部

その瞬間、ガンダムレギュルス・theレプリカの周囲を覆っていた光弾が一斉にイナヅマガンダムトリニティⅥへ向かって飛び立った。その光弾に驚いた電だったが咄嗟にその場を離れ、回避行動に入った。

「これは、レギルスビット!クッ、物凄い数なのです!」

偽物に終極をもたらせ!行くぞ、レギュルス・theレプリカッ!!」

その光弾「theレプリカビット」を追うようにレギュルス・theレプリカはその黒い翼を羽ばたかせイナヅマガンダムトリニティⅥへと向かって行った。

「クゥ!」

四方から迫ってくるtheレプリカビットを回避しながら、迫るレギュルス・theレプリカから逃げるイナヅマガンダムトリニティⅥ。theレプリカビットや、ベースとなった「レギルスビット」はオールレンジ攻撃系の武器の中でも珍しく周囲に展開された光弾がそのままビーム弾となる。その為、通常のファンネルやドラグーン、ライフルビット等と言った端末からビームを撃ち出すタイプに比べて圧倒的に手数と継戦能力を持っている。勿論照射ビームなどで打ち消すことも出来るが、シールドや機体各所の発射源となるパーツを破壊しない限りほぼ無限に展開されるのだ。電はその事を勿論知っている。だが、レ級の操るtheレプリカビットは非常に高密度の弾幕となり、隙もほぼ無い。電は回避することしか出来ていなかったのだ。

「電ぁぁー!!!」

レギュルス・theレプリカはtheレプリカライフルを連射しながら左手を右腰に回すとそこからサイドアーマーの上部にマウントされた円筒状のビームサーベル「theレプリカビームサーベル」を抜き放った。

「やられるもんかー!」

イナヅマガンダムトリニティⅥは機体を左右に振ってtheレプリカビットを回避し、レギュルス・theレプリカと同様左手で右腰のアウェリアスサーベルを抜いた。そしてイナヅマガンダムトリニティⅥとレギュルス・theレプリカは同時に左手のビームサーベルを振り下ろし、そのまま鍔迫り合いとなった。2つの刀身がぶつかり合いビームの火花を散らす。

「レ級、答えてほしいのです!レ級は吹雪さんの思惑を知っているのですか!?」

「それを知ってどうする!オレとの決着から逃げる気か!」

「違うのです!吹雪さんの計画が成功したら、レ級との決着も付けれなくなるのです!だから今は――――」

「逃げ腰な偽物の言葉など、オレの耳には届かん!ハアッ!!」

「わっ!」

レギュルス・theレプリカはそのままイナヅマガンダムトリニティⅥを押し返し、蹴り飛ばした。

「theレプリカビット!」

蹴り飛ばされたイナヅマガンダムトリニティⅥへ再び、無数のtheレプリカビットが襲い掛かった。咄嗟に電は態勢を立て直し、飛来するtheレプリカビットを回避しレギュルス・theレプリカから距離を取った。

「電ちゃん!」

咄嗟に電の援護を行おうとした白雪だったが、その瞬間にtheレプリカビットが数発ガンダム・ホワイトボトムサウンドへ向け飛来して来た。白雪はギリギリのタイミングでこれらをかわしたが、直後にレ級が釘を刺してきた。

「邪魔すんじゃねぇ!貴様から先に殺すぞ!!」

「っ!?」

その直後にイナヅマガンダムトリニティⅥとレギュルス・theレプリカは再び互いのビームサーベルで鍔迫り合いを演じていた。

「貴様という偽物を消さなければ、オレは一生前へは進めない。今日ここで、オレは貴様を超える!」

「電は!電はそんなっ、どっちが本物かなんて!」

「貴様には関係なくても、オレにはあるんだよ!」

「クッ!(このままじゃ、吹雪さんの思うつぼになってしまう!)」

鍔迫り合いの中で電は、今のままでは突破することも出来ず吹雪の思う壺となってしまうと思わずにいられなかった。そしてその中で、レ級が吹雪の計画に関して全く興味がない事が気になっていた。

(こうなったら、仕方ないのです!)

 

電は決意した。

 

「白雪さんは最深部へ向かってください!電は大丈夫なのです!」

「電ちゃん!?」

「今は目的を最優先するのです!白雪さんなら、わかっているはずなのです!」

「………」

白雪は少しの間だけ沈黙してしまった。しかし、今自分がやらなければならないことと自身の存在意義に後押しされ、白雪もまた決意した。

「わかったよ…私が必ず吹雪ちゃんを止めてみせるから!」

ガンダム・ホワイトボトムサウンドはその場で反転、開いていた最深部への扉をくぐって吹雪の元へと駆けていった。

「自分から援護を外したか、偽物にしてはいい判断力じゃないか」

「今は、やらなければいけない目標があるのです!この手以外にその目標を成功させる方法は無いのです!」

「フンッ。さっき言っていた、吹雪の計画ってやつか…まあ、オレは興味がない。貴様らの勝手にするんだな」

「そうさせてもらっているし、そうするのです!」

そう言った電は、全開まで操縦桿を前へ突き出しレギュルス・theレプリカを押し返した。しかし、レギュルス・theレプリカは簡単に態勢を立て直しtheレプリカビットを展開した。

「フッ、そう来ないと面白くないからな!」

レギュルス・theレプリカは一斉にtheレプリカビットを撃ち出し、イナヅマガンダムトリニティⅥに襲い掛かった。

「クッ!!」

イナヅマガンダムトリニティⅥは光の翼を展開し、その場から急速に離脱した。

 

薄暗い通路をガンダム・ホワイトボトムサウンドは駆けていた。通路の周辺には配管のような物が次々に現れては後方へ消えていった。襲撃してくるCPU制御のガンプラも全く現れることはなく、ガンダム・ホワイトボトムサウンドは恐ろしい程スムーズに最深部へと向かっていた。

「ここまで来て、敵機が全く展開していない…もしかして、吹雪ちゃんは―――っ!」

そして白雪の前に終点となる扉が現れた。

 

 

 

プラフスキー粒子精製室

 

 

 

その扉の上に取り付けられたプレートにはそう書かれていた。そして――――

 

 

扉は空いていた

 

 

「………」

白雪はその解放された扉を見て思わず唾を飲み込んだ。

(まるで…こっちに来いと誘っているみたい……いや、そうだとしても!)

ガンダム・ホワイトボトムサウンドは室内へ飛び込んだ。

 

青白い光によって照らされる少し暗い室内をガンダム・ホワイトボトムサウンドは進んでいた。周囲に電灯のような物は見受けられなかったが、所狭しと配管が周囲を覆い尽くしていてその配管はある一点へ向かって伸びていた。

「電灯も無いのに、こんなに明るいなんて……これはいったい…」

それからしばらくすると、何かを取り囲む様に広がる場所にガンダム・ホワイトボトムサウンドは足を踏み入れた。そして目の前には青白い光の源があった。

「これは―――」

「凄いよね~こんな物がこの世界に存在するんだから」

「っ!!」

その光の源の傍にある配管の上、そこに吹雪は座っていた。

「吹雪ちゃん!!」

「…やっぱり来たんだ白雪ちゃん」

吹雪はそう言って配管の上に立ち上がり、ガンダム・ホワイトボトムサウンドを見下ろした。白雪は居てもたってもいられず、吹雪を説得しようと口を開いた。

「もう止めようよ吹雪ちゃん!こんな事しても、誰も嬉しがらないよ!」

「誰も嬉しがらない?私は凄く嬉しいけど!」

「っ!」

白雪の言葉にハッキリ返答する吹雪。しかし吹雪は操縦スペースにいない。普通なら会話できるわけがない。だが白雪は会話できる理由を知っていた。

「ガンダム・アイアンボトムサウンド!」

吹雪の肩の上、そこにガンダム・アイアンボトムサウンドが立っていた。そして、深海フレームを使用した機体―――いや、自分たち…電とレ級の細胞から生みだされたクローンたちの最大の特徴。

「いざ初めてやると、驚くものだね。深海フレームがある限り、私たちの脳に埋め込まれたマイクロチップを介して会話ができるんだからね」

「吹雪ちゃん……」

「まあ、そんな事どうでもいいよね!それより白雪ちゃん、これ…この物体が何かわかる?」

「……深海結晶」

「大当たり!」

 

 

 

深海結晶

 

 

 

深海棲艦の使用する艤装の動力源となる深海にしか存在しない結晶である。そして―――

この結晶が放つ光……粒子こそが、プラフスキー粒子の正体

「そこまで知ってるなんて、流石だね白雪ちゃん。なら、この結晶がどうすれば破壊できるか……もちろん知ってるよね?」

「っ!」

「そう!この結晶は艦娘の装備でしか破壊できない。だから、この工場中に艦爆や艦攻の爆弾や魚雷を設置して、この部屋の時限式爆弾を爆発されて連鎖爆発でこの工場は跡形もなくなる!」

「そんな!残り時間はあとどれくらいなの吹雪ちゃん!?」

「あと1時間きっかりだよ!」

「1時間!?今すぐ止め―――」

その瞬間、ガンダム・ホワイトボトムサウンドはガンダム・アイアンボトムサウンドからの攻撃を受けた。単純なビームによる射撃だったため回避は容易にできたが、それでも白雪の言葉を遮るには十分だった。そして吹雪は冷めた口調で言った。

 

 

 

もう五月蠅いから、沈めさせてもらうよ

 

 

 

吹雪の肩からガンダム・アイアンボトムサウンドは飛び立ち、異形な左腕を掲げてガンダム・ホワイトボトムサウンドに襲い掛かった。

 

続く



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EP111 鶴舞う宇宙(そら)(前編)

「翔鶴姉ぇ!」

「………っ!」

AGE-2ハルファスの放った右上からの袈裟斬りを左手首から出力されたビームサーベルで受け止める∀GE-3。ビームサーベルがお互いに火花を散らしながら、AGE-2ハルファスと∀GE-3のメインカメラがお互いを睨み合う。

「翔鶴姉ぇ、今ならまだ間に合うよっ。こんな戦い止めて!」

「さっきも言った筈よ瑞鶴。吹雪ちゃんの命令にがある以上、私には戦わないといけない理由があるの。だから、やめることは出来ない」

「吹雪の命令なんて、聞く必要なんかないよ!私は、翔鶴姉ぇと―――」

「甘いわね瑞鶴!」

「え―――きゃあっ!」

∀GE-3はAGE-2ハルファスのビームサーベルを押し返し、バランスを崩したAGE-2ハルファスを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたAGE-2ハルファスは態勢を整えることが出来ずそのまま∀GE-3にビームライフルの銃口を向けられた。

「終わりよ」

「しま―――」

翔鶴はそのまま引き金を引いた。発砲された桃色のビームがAGE-2ハルファスに向かって飛んでいき、危うく命中するという所でAGE-1エグゼバウンサーがAGE-2ハルファスの正面に入り込み、ビームをエグゼバウンサーシールドで受け止めた。

「か、加賀さん……」

「いつまで迷っているの!貴女が墜ちれば、彼女を救うことなんて完全に出来なくなるのよ!」

「それは……わかってる、けど」

「なら―――っ!瑞鶴!」

AGE-1エグゼバウンサーは咄嗟にAGE-2ハルファスの右腕を掴んでその場を急速に離脱した。その次の瞬間、先程2機がいた地点をフィンファンネルのビームが襲った。加賀の咄嗟の判断により2機はダメージを負うことはなかった。

「大丈夫ね瑞鶴」

「う、うん。ありが―――」

「お礼は彼女を助け出してからにして」

「………」

加賀の言葉に返事を返すことの出来ない瑞鶴。しかしその間にも、∀GE-3の攻撃は止まらない。フィンファンネルが高速で迫ってはビームを次々に撃ち込んでくる。AGE-1エグゼバウンサーは未だにAGE-2ハルファスを掴んだまま、ビームの攻撃を回避していたが次第に加賀の額に汗が流れ始めていた。

「いい加減にしなさい瑞鶴!いつまで私に捕まっているつもり!」

遂に加賀が業を煮やし、瑞鶴に怒りの声をあげた。

「加賀さん……」

瑞鶴は弱々しい声で加賀に返事を返した。しかし、その言葉は更に加賀を怒らせた。

「惨めな声で返事するのは止めなさい!そうしていれば、私が助けてくれると思っているの!」

「………」

「そんな甘い考えで彼女を助けられると思っているのなら、今すぐそんな考えは捨てなさい!」

「……るさい」

「貴女が戦わなければ、誰が彼女を―――」

 

 

五月蠅い!

 

 

「………」

瑞鶴もまた怒りの声をあげた。しかし加賀は何も言わず瑞鶴の言葉に耳だけを傾けていた。

「そんなことわかっているわよっ!!翔鶴姉ぇを助けられるのは私しかいないって!でも、これが命の掛かった前の戦争じゃないとしても…翔鶴姉ぇとは戦えないよ!!」

「そう……貴女ってその程度の子だったのね」

「っ!」

「なら、邪魔だから離してちょうだい。私が彼女を墜とすわ」

「あ……」

「私が尊敬している人は自身の身を挺して弟子を救ったわ。貴女なら、どんな形になっても彼女を救うことが出来ると思っていたけど…残念だわ瑞鶴」

加賀はそう言ってAGE-1エグゼバウンサーで∀GE-3に向かって行った。AGE-2ハルファスをその場に残して。

「………」

瑞鶴は何も言えなかった。自分でも呆れてしまう程、加賀の言っていることが身に沁みてわかる。そして瑞鶴は小さく苦笑して言った。

「これじゃ、スーパーファイター……ううん、誰にでも優しかった翔鶴姉ぇの妹として…五航戦として名折れね……」

そして操縦桿少しだけ強く握ると、瑞鶴はAGE-2ハルファスに語り掛けた。

「ねぇ、AGE-2ハルファス…私に力を貸してくれる?翔鶴姉ぇを、助ける力を―――」

瑞鶴が無意識に操縦桿を更に強く握りしめた時だった。

 

 

キュピィン!

 

 

その場を漂っていたAGE-2ハルファスが、まるで瑞鶴に応えるようにメインカメラを輝かせた。

「ありがとうAGE-2ハルファス……翔鶴姉ぇを助けるまでは、もう諦めたりしない!」

AGE-2ハルファスはストライダー形態へと変形し、AGE-1エグゼバウンサーと∀GE-3が交戦するエリアへと向かった。

 



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EP112 鶴舞う宇宙(そら)(後編)

その宙域ではAGE-1エグゼバウンサーと∀GE-3が何度もすれ違いながらビームサーベルをぶつけ合っていた。バチィッ!バチィッ!と何度も火花を散らし、2機はビームサーベルをぶつけ合う。そして2機は鍔迫り合いへと持ち込んだ。

「流石ね翔鶴。ずっと前からやる子だと思っていたけど、思った通りだったみたい」

「今褒められたとしても嬉しくなんかないですよ。今の私は、貴女の敵なんですから」

「そういう所は変わったのね。前の貴女なら、少しは嬉しがったでしょうに」

「そうかもしれないですね!」

そう言った深海化翔鶴は操縦桿を大きく前へ突き出して、AGE-1エグゼバウンサーを押し返した。

「くっ!凄いパワーだわ…」

「終わりです!」

そこへフィンファンネルが襲来し砲口をAGE-1エグゼバウンサーに向けた。だがその時だった―――

「加賀さん避けてッ!!」

「っ!」

瑞鶴の声が加賀の耳に届いた。加賀は咄嗟の判断でAGE-1エグゼバウンサーを上昇させ、その場から退避した。そして次の瞬間、AGE-1エグゼバウンサーが先程まで居た場所を無数のビームが走った。そのビームは周囲に展開していたフィンファンネルを多数飲み込み撃破した。そしてそのビームは∀GE-3も射線に捉えていたが、深海化翔鶴は簡単にそれを回避した。しかしその僅か数秒後、物凄いスピードでAGE-2ハルファスが突入してきた。

「はあぁぁー!!」

左手を右腰に回してビームサーベルを抜き放ち、そのまま左上段に構えて∀GE-3に斬りかかった。左上段からの袈裟斬りを∀GE-3に向けて放ったAGE-2ハルファス。しかし、∀GE-3は左肘のビームサーベルを掲げて防御した。

「ぐううぅぅ!」

「まるで吹っ切れたみたいな顔ね瑞鶴」

「ええ、その通りよ!私はもう、翔鶴姉ぇを助けるまで絶対に諦めない!逃げたりなんかしない!!」

「そう…ならかかってきなさい!返り討ちにしてあげるわ!」

「うおおぉぉぉ!!」

瑞鶴はAGE-2ハルファスのスラスターを更に噴かし、∀GE-3のビームサーベルを押し返そうとした。しかし∀GE-3は左腕を払うようにして、AGE-2ハルファスのビームサーベルを弾き飛ばした。スラスターの勢いによってAGE-2ハルファスは∀GE-3の真後ろの方向へと飛んでいった。しかし瑞鶴は慌てる素振りを見せず即座にストライダー形態に変形、その場から高速で離脱した。それをGNファングと残ったフィンファンネルが追いかけていき、ストライダー形態のAGE-2ハルファスを四方から攻め立てた。だが瑞鶴はAGE-2ハルファスを巧みに操縦し、機体を反らしたり急加速や急減速でオールレンジ攻撃を回避していった。

「当たるもんですか!」

「やるわね瑞鶴!」

そして∀GE-3もAGE-2ハルファスの追撃を開始した。AGE-2ハルファスの後を追うようにビームライフルを撃ちながら迫る∀GE-3。だがしかし、その追撃はほんの数秒に留まった。

「逃がさないわよ翔鶴」

「チッ!」

∀GE-3の後方からAGE-1エグゼバウンサーが通常モードのドッズマグナムを撃ちながら近づいてきた。深海化翔鶴は仕方なく、AGE-2ハルファス周辺のGNファングを数基呼び戻しAGE-1エグゼバウンサーに差し向けた。しかし加賀は、飛来したGNファングを正確に1基ずつ撃ち抜いていった。そして加賀は気づいていた。

「それだけの数を操り続けていれば、疲労も溜まりやすいんじゃないかしら?」

「っ!!」

加賀が放った言葉を聞いた深海化翔鶴は一瞬驚き、額から汗が流れ落ちた。加賀は更にGNファングを撃ち落としながら言った。

「やはりね。貴女の前の機体、AGE-3FXでも10基しか使っていなかった。それに―――」

「なにを―――」

「隠していたようだけど…貴女、AGE-3FXの8基のCファンネルと2基のシールドビット10基でもかなり疲労していたわね」

「!?」

「そんな貴女が、16基のオールレンジ攻撃端末を長時間使い続けることは出来るのかしら?」

その言葉を聞いた深海化翔鶴は歯ぎしりし、叫ぼうとした。しかしその瞬間だった。∀GE-3の背後で無数の爆発が起こったのだ。それに気づいた深海化翔鶴は慌てて後ろを振り向いた。そしてその爆炎からAGE-2ハルファスが現れるのを目にした。更に、手元のフィンファンネルの武装スロットが消灯し、GNファングのスロットに「1/10」と表示され赤く点滅していた。

「そんな、ファンネルが!」

「これで最後よ」

そう言って加賀は、動揺する深海化翔鶴をよそに最後のGNファングを撃ち抜いた。∀GE-3はファンネル系武装はその全てを失ったのである。その∀GE-3の元にAGE-2ハルファスも辿り着き、瑞鶴は深海化翔鶴に交信を試みた。

「翔鶴姉ぇ、もう決着はついたよ!だからこんなこともう止めて―――っ!」

しかし、瑞鶴の呼びかけに答えることなく∀GE-3はAGE-2ハルファスに右肘のビームサーベルで斬りかかってきた。咄嗟にシールドを構えてこれを防いだ瑞鶴の耳に深海化翔鶴の言葉が届く。

「まだ終わっていない。まだよ、瑞鶴ッ!!」

「翔鶴姉ぇ!」

その瞬間∀GE-3はスラスターを全開で噴かし、AGE-2ハルファスを抑えたままその場から飛んでいってしまった。

「瑞鶴!」

瑞鶴の危機を感じてか、加賀は2人の後を追おうとした。しかし瑞鶴は加賀に向けて言った。

「加賀さんは来ないで!」

「っ!」

「もう逃げない…翔鶴――ぇは、私の手で―――けて――るから――」

AGE-1エグゼバウンサーとAGE-2ハルファスとの距離が開き過ぎてしまった為、通信は途切れてしまった。

 

∀GE-3に押し込まれたままだったAGE-2ハルファスはシールドを振り払い、ようやく2機の間に距離ができた。AGE-2ハルファスの背後の方向へ向かって弾かれた∀GE-3だったが深海化翔鶴は動きを止めることなく、振り返ったAGE-2ハルファスの左方向をぐるりと回るように移動していた。瑞鶴は尚も深海化翔鶴に呼び掛ける。

「翔鶴姉ぇ、勝負はもうついた!もう止めて、お願い!」

「言った筈よ瑞鶴。まだ終わってはいない!」

「翔鶴姉ぇ!」

そのまま正面から再び斬りかかってきた∀GE-3に対し、AGE-2ハルファスもビームサーベルを右手で抜き放ち応戦した。AGE-2ハルファスと∀GE-3が同時に放った上段からの縦斬りはAGE-2ハルファスの右肩のツインドッズキャノンを接続部を根元から切り裂き、∀GE-3の左腕を根元から切り裂いた。互いにすれ違うAGE-2ハルファスと∀GE-3。瑞鶴と深海化翔鶴が互いの機体をすれ違い様に睨み合う。そして再び∀GE-3は旋回、AGE-2ハルファスに向かって来た。

「戦うしかないのよ、互いに敵である限り―――」

 

 

 

どちらかが倒れるまでッ!!

 

 

 

右腕のビームサーベルを大きく前へ突き出し、突撃してくる∀GE-3。もはや深海化翔鶴は止まろうとはしなかった。

「くぅ!」

瑞鶴は歯を食いしばり、操縦桿を今までで一番強く握りしめた。そして突撃してくる∀GE-3に向かって、突っ込んでいった。

「ああああああ!!」

叫ぶ深海化翔鶴。

「―――――っ!!」

眼から涙を流し、前を見据える瑞鶴。そして――――

 

 

 

 

 

バチィィィッ!!

 

 

 

 

 

∀GE-3のビームサーベルはAGE-2ハルファスの左肩を貫き――――

 

 

 

AGE-2ハルファスのビームサーベルは∀GE-3の「∀」の文字が輝く胴体中央を刺し貫いた。

「翔鶴姉ぇ…ごめんなさい……ごめんなさいっ!」

「ずい、かく―――」

 

 

 

∀GE-3は淡い光に包まれて爆散し、翔鶴はその場に倒れた。

 

 

 

続く



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EP113 Xとχ

ガンダムFXとガンダムDχは互いのビームソードとビームサーベルをぶつけ合っていた。

「くっ!このビームソードのパワーと張り合えるなんて、どんだけ出力が高いのよ!」

「以前の私の機体よりもかなり強化してもらいましたからね。なんなら、1本でも耐えられますよ?」

「面白いこと言ってくれるわね!」

ガンダムFXはガンダムDχを押し返し、そこへFX専用バスターライフルを撃ち込んだがガンダムDχはそれを簡単に回避し、ビームライフルを撃ち返してきた。陽炎はバインダーシールドでそれを防ぐと、その場から離脱し不知火と交代。今度はガンダムXブルーメギドが大型ビームソードを掲げてガンダムDχに斬りかかって行った。

「はあっ!」

「甘いですよ、不知火姉さん」

バチィッ!とぶつかる大型ビームソードとガンダムDχのビームサーベル。しかし、ガンダムXブルーメギドの大型ビームソードでもガンダムDχのビームサーベルを弾き返すことは出来なかった。

「な、なんて出力。ケーブル式のこのビームソードを受け止めるなんて!」

「だから言った筈です。甘いですよ、と」

「くっ!」

「隙あり!」

「なにっ!?」

駆逐水鬼がそう言った瞬間、ガンダムXブルーメギドはガンダムDχに押し返されてしまった。少しだけ体勢を崩されたガンダムXブルーメギドに、今度はガンダムDχが斬りかかってきた。

「そこっ!」

「ちいっ!」

左上段からの斬り降ろしに不知火は右足のグリフォンビームブレイドで対応した。ぶつかり合ったビームサーベルとグリフォンビームブレイドは互いを弾き飛ばした。そして、ガンダムDχはその場から少し後退、ビームライフルを撃ち込みガンダムXブルーメギドの動きを封じようとした。

(しまった!シールドバスターライフルの展開が間に合わない!)

運の悪い事に、ガンダムXブルーメギドの防御装備であるシールドバスターライフルはバックパックに懸架したままになっていた。回避もほぼほぼ間に合わない。そんな時にガンダムXブルーメギドの正面にガンダムFXが割って入った。

「不知火!」

ガンダムFXはバインダーシールドでそのビームを防ぎ、FX専用バスターライフルを撃ち返した。

「ちっ!」

駆逐水鬼はその場からガンダムDχを離脱させてガンダムFXの反撃を回避した。

「逃がさない!」

離脱するガンダムDχを追撃するためFX専用バスターライフルを放ちながら後を追って行った。だが、ある程度距離が空いたところでガンダムDχは反転。バックパックに装備された巨砲「ツインサテライトキャノン」を展開した。ガンダムDχのバックパックに展開された6枚のバインダーが紫色の怪しい光を放ったのに気づいた陽炎は驚愕の表情になった。

「ツインサテライトキャノン!?こんな近距離で!」

「陽炎避けてくださいッ!」

本来、ツインサテライトキャノンは戦略兵器であり、エネルギーの充填にも多少なり時間がかかる。こんな近距離で使うのはハッキリ言って無謀に近い。エネルギー充填の隙を突かれるのがオチだからだ。だが、ガンダムDχは違った。

「終わりです2人共」

直後、ガンダムDχのツインサテライトキャノンが火を噴き青白い巨光が周囲を焼き払いながら駆け抜けた。エネルギー充填の時間など、皆無に等しい物だった。幸いにも、ツインサテライトキャノンの展開が始まったタイミングで回避行動を取っていた不知火のガンダムXブルーメギドは何とか回避に成功し、損傷軽微で済んだ。だが、かなりの近距離にまで接近していた陽炎のガンダムFXは回避に成功はしたものの、右脚と右腰周囲、右下のサテライトキャノンを完全に消失してしまった。

「な、何とか間に合った?」

「陽炎!」

ツインサテライトキャノンのギリギリ回避に胸を撫で下ろした陽炎。しかしその次の瞬間、ガンダムFXの左腕をガンダムXブルーメギドの右手が掴み、その場から急速に離脱を測った。

「不知火、何を――――」

陽炎がそう言い放った瞬間、先程ガンダムFXがいた宙域を再び青白い巨光が走った。

「ちっ、外しましたか…しかし次は直撃させる!」

「今の光……まさか!!」

 

 

 

沈めぇッ!!

 

 

 

不知火は再び回避行動を取った。そしてその僅か数十秒後、青白い巨光が再び走った。

「くぅぅッ!!」

回避行動を取った不知火だったが一歩間に合わず、ガンダムXブルーメギドは左腕全てと、バックパックのV字のバインダー左側を失ってしまい、頭部も約半分が消失していた。

「くっ!回避に失敗するとは、不覚です!」

「不知火!」

「気を付けてください陽炎、萩風の機体は――――」

 

 

 

 

月からのマイクロウェーブ無しにサテライトキャノンを連射出来ます!

 

 

 

 

ガンダムDχのメインカメラが怪しく光り輝き、駆逐水鬼がニヤリと口元を歪ませた。

 

続く



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EP114 炎の終焉

笑みを浮かべた駆逐水鬼は言った。

「流石ですね不知火姉さん、いい洞察力です。でも、それを知ってどうなるんですか?」

不知火の操縦スペースにロックオンの警告アラートが鳴り響いた。そして考える間もなく、不知火と陽炎は回避行動を取った。直後、ガンダムDχのツインサテライトキャノンが火を噴き周囲を飲み込んだ。

「くっそぉー!」

「くうっ!」

「どうにもなりませんよ。姉さんたちは、ここで撃墜されてしまうんですから」

再びツインサテライトキャノンが発射される。ガードが出来ない以上、回避するしかない。しかし、サテライトキャノンの放つビームは非常に幅が広い。それを回避するのは非常に困難を極める。ましてや、それが連続射撃となれば尚更である。放たれた次弾によってガンダムFXは左肘から先と左下のサテライトキャノンを喪失し、ガンダムXブルーメギドも右脚を失ってしまった。もはや陽炎と不知火の機体は満身創痍の状態だった。

「アッハハ!無様ですね2人共!」

「はぁ…はぁ…」

「…くっ」

ボロボロなガンダムFXとガンダムXブルーメギドを見て、駆逐水鬼は不敵な笑みを浮かべた。駆逐水鬼の不敵な笑みを見た陽炎はとても悔しそうな表情をし、不知火は焦った表情になった。

(このままじゃ、私たち2人共ツインサテライトキャノンの餌食になって終わってしまう!そうなったら、萩風を助けるチャンスも完全に―――)

「―――ください。陽炎」

「え?」

陽炎が全力で頭をフル稼働させて思考を巡らせていたその時、不知火の言葉が耳に届いた。

「退却してください陽炎。このままでは私たち2人共、撃墜されておしまいです!」

「し、不知火何を!?」

「ネェル・ミネルバに戻って補給を!ここは私1人で―――」

そう言った不知火は汗を拭った。しかし陽炎は反対した。

「っ!不知火、あんた何考えてるのよ!萩風相手に1人でなんて!」

「二度も言わせないでください。早く退却を!」

「そんな事できるわk―――」

「さっさと退却しろぉー!!」

「へ?きゃああああー!!」

聞き分けの悪い陽炎を退却させるため、不知火のガンダムXブルーメギドはガンダムFXの右腕をガシリと掴むとそのまま体を数回転させ、ガンダムDχの居る方向とは真逆の方向へと投げ飛ばした。そしてガンダムFXはキラリン!と星になって消えた。

「――――?」

まるで漫画の様なやり取りを見て、先程まで不敵な笑みを浮かべていた駆逐水鬼だったが流石に驚きを隠せなかった。ここだけの話し、ガンダムFXが投げ飛ばされ星になった瞬間、駆逐水鬼は完全にフリーズしてしまっていた。しかしその直後、駆逐水鬼はハッとした。自機の正面で、満身創痍のガンダムXブルーメギドがサテライトキャノンの発射態勢を取っていたのだ。残されていた2枚のバインダーが開き、右肩越しにサテライトキャノンを構え、機体各所の発光装甲が青白く輝いていた。

「………」

不知火は黙って手元のエネルギー充填モニターを見ていた。原作を再現したX字状のエネルギー充填メーターは半分も埋まらず、3分の1程しかチャージできずに停止してしまった。

(やはりこんな状態ではソーラーシステムでのチャージはまともなエネルギーが手に入らないですね。ですが、これだけあれば十分!)

不知火はガンダムDχに照準を合わせた。

「そんな状態で、このDχとサテライトキャノンの撃ち合いですか…哀れなものですね」

「何とでも言えばいいですよ………いけぇっ!!」

不知火はサテライトキャノンの引き金を引いた。右肩越しに構えたサテライトキャノンの砲口から青白い光が放たれ、ガンダムDχへと向かって行く。しかし、駆逐水鬼に焦りなどなかった。

「無様な最期ですね」

駆逐水鬼はツインサテライトキャノンの引き金を引いた。ガンダムDχのツインサテライトキャノンが発射され、渦を巻くようにガンダムXブルーメギドが放ったサテライトキャノンのビームへと向かって行った。

「陽炎ッ」

やがて2つのビームがぶつかり、巨大な爆炎と閃光が周囲を飲み込んでいった。その爆炎と閃光に飲み込まれたガンダムXブルーメギドは、全身が解けるように形を失っていき、消滅した

一方のガンダムDχは、光に飲み込まれはしたものの全身の装甲が少しだけ剥がれ落ちただけで、損傷は軽微だった。

「機体各所に軽微の損傷。問題はないですね」

そして、周囲を漂う元はガンダムXブルーメギドだった残骸を見て駆逐水鬼は言った。

「可哀想な不知火姉さん……」

 

 

その直後だった――――

 

 

遥か彼方に伸びる一筋の光が見えた。上空からある一点へと伸びるその光は、やがて何かに当たり――――

 

 

 

 

巨大な黄金の光となった

 

 

 

 

「あの光……まさか!!」

そのコンマ数秒後、駆逐水鬼の耳にロックオンの警告アラートが届いた。そして悟った。

(今までのこと全て、作戦だったの!?)

 

月からのマイクロウェーブを受け、黄金色の光を放つガンダムFX。陽炎は遥か遠方にいるガンダムDχに照準を合わせ、手元のエネルギー充填メーターを見た。Xの文字は100%、完全に埋まりフルチャージされていた。

「不知火。あんたの覚悟、無駄にはしないわ!」

陽炎はこれが作戦であると知っていた。不知火が汗を拭ったあの時、この作戦は始まっていたのだ。陽炎の脳裏に、昨晩不知火が言った言葉が流れた。

 

 

どんなことがあっても、陽炎は必ず萩風を救ってください!

 

 

当り前よッ!!

陽炎はフォースサテライトキャノンの引き金を引いた。直後、陽炎の耳にもロックオンアラートが届き、フォースサテライトキャノンが発射された。

 

(してやられた!)

陽炎と不知火の作戦にまんまとはまった駆逐水鬼は、この時初めて焦った。ガンダムDχのツインサテライトキャノンは月からのマイクロウェーブを受けずに連射が可能である。それがガンダムDχの最大の利点だった。しかし、駆逐水鬼は知っていた。

 

 

 

これが同時に最大の弱点でもあると

 

 

 

ガンダムDχは深海フレームに内蔵されたプラフスキー融合炉によって「月からのマイクロウェーブを受けずにツインサテライトキャノンを連射」出来る。だがそれは、フルチャージ時のツインサテライトキャノンの威力を超えることが出来ない。つまり、ガンダムDχは低威力のツインサテライトキャノンを連射していたのだ。低威力とは言え、サテライトキャノンである。折り紙付きの威力に連射が効けば申し分なかった。だが今、自身の前に月からのマイクロウェーブを受け、フルチャージされたサテライトキャノンを構えるガンダムFXがいる。ましてや相手は既にチャージを終え、こちらをロックオンしている。彼女に選択肢など無かった。

陽炎ぉぉぉぉぉー!!!

 

ガンダムDχはそのままツインサテライトキャノンを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はすぐに決着がついた。

 

ガンダムFXのフォースサテライトキャノンはガンダムDχのツインサテライトキャノンを打ち消し、ガンダムDχを飲み込んだ。

 

 

かげろぉぉぉぉぉぉッッッー!!!!!

 

 

駆逐水鬼は断末魔を上げながら光に飲み込まれ、ガンダムDχは消滅した。

 

「やっ…たぁ………」

安堵した陽炎だったが、その直後―――

 

ガンダムFXはフォースサテライトキャノンの発射に耐えられず、残った手足が捥げるようにして爆発、その姿を消したのだった。

 

続く



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EP115 砲火の中で

瑞鶴が深海化翔鶴を倒したのとほぼ同時刻。ネェル・ミネルバの防衛戦闘もいよいよ限界を迎えようとしていた。何時間にも及ぶ戦線の維持に、各ファイターたちにも疲れが現れ始め、遂には撃墜される者が現れた。

「わああぁぁー!!」

トールギスが放ってきたドーバーガンのビームが胴体中央に命中し貫通、卯月の卯月号改は爆発した。

「卯月!くそっ!」

そのトールギスに200㎜ロングレンジビームライフルを直撃させ撃墜した長月のガンダムグシオンセフティアリベイクミディールフルシティだったが、その直後に背後からGN-XがGNビームライフルを放ち、バックパック左側のサブアームを内蔵しておくバインダーを破壊した。

「ぐわっ!」

「長月!これ以上はやらせない!」

「C隊下がれ!天龍、C隊の後退援護に行ってくれ!」

「わかったぜ長門!お前ら、少しだけ耐えろよ!」

ジークイフリートを走らせ、A隊から離脱する天龍。しかしその間にも前線は押されていく。

「くっ!まさか、ここまで押し込まれるとは!」

「しま―――ぐわあぁぁ!」

ガンダムエクシアの接近を許してしまったル級のレジェンディウスガンダムはGNソードによって頭から一刀両断されてしまい、撃墜された。

「ル級!」

「ル級をよくもー!わっ!」

「ヲ級!」

レジェンディウスガンダムを撃墜したガンダムエクシアを撃墜したヲ級のオギュルディアアストレイ・天星だったが、そこへνガンダムのフィンファンネルのビームが直撃、左腕を喪失してしまった。すかさずリ級のストライクディスティニーがカバーに入り、フィンファンネルを追い払った。

「大丈夫かヲ級!」

「ま、まだ戦えるヲ!」

「きゃあああー!!」

その少し離れた宙域で、今度は熊野のグフユナイティッドがシナンジュのビームライフルの直撃を受け撃墜されてしまった。

「熊野さんがやられたぁ!」

「長門!このままじゃヤバいぞ!」

木曾が荒げた声で長門に言い放った。長門もその事は理解していた。実際、長門自身も、ケンプファージライヤもかなり消耗している。ましてや、既に3機の味方機が撃墜され防衛線も簡単に突破され始めている。

「クッ!戦線維持部隊全機に告げる!これより後退し、防衛線を下げる!B隊とC隊、D隊は密集隊形で先に退却!E隊はその護衛に当たれ!天龍はこちらと合流し、A隊で殿を務めるぞ!皆、急げ!」

「聞こえたなお前ら!早く行け!」

「わ、わかりました!菊月、長月をお願いします!私は、2人の後方で援護します!」

「わかった!頼むぞ三日月!」

三日月たちC隊は退却を開始し、天龍は長門たちとの合流へ向かった。退却するC隊に雷のガンダムハルートアーチャーが直掩に着いた。

「急ぐわよ3人とも!」

「直掩は頼むぞ雷!」

「任せなさい!」

そして、B隊には暁のハイペリオンガンダム・アカツキマスターがD隊には響のスノーヴェールフェニックスがそれぞれ直掩に着き、阿武隈のハイマットスタービルドストライクが密集形態となった3隊の進行方向でハイマットスターモードを使用し防衛に当たった。

「長門!龍田!待たせたな!」

長門と合流した天龍。

「じゃあ、行きましょうか~」

「オレも加えてもらうぞ。援護は1機でも多い方がいいだろ?」

そこに木曾のガンダムアスタロト・Xバーストも合流した。長門は言った。

「よしっ!私たちの背後に、1機たりとも通すなぁッ!!」

 

 

おうッ!!

 

 

ケンプファージライヤ、ジークイフリート、ガンダムデスサイズHラストワルツ、ガンダムアスタロト・Xバーストの4機は敵機をそれぞれ迎え撃ちながら、退却を始めた。

 

そしてそれはネェル・ミネルバの防空戦闘でも起きていた。ネェル・ミネルバに即座に着艦し補給を受け機体の損耗は少なくとも、ファイターたちの体力は有限。いずれ限界が現れるのは当然だった。そして、体力が限界を迎えることはすなわち撃墜の危険と直結してくる。

「はぁ…はぁ…もうダメぇ―――」

体力が限界を迎え、ガックリと項垂れる文月。その瞬間、文月・スーパースペシャルマンロディに対艦ミサイル3発が直撃し爆発、文月・スーパースペシャルマンロディは消滅してしまった。

「文月さん!」

「にゃー!文月ちゃんをよくもー!」

「っ!睦月あぶねぇ!」

「え――ぎにゃあぁぁー!!」

文月の仇を取ろうと飛び出した睦月の睦月号・改は複数の敵機からの集中砲火を浴びた。防衛戦闘において、不用意な突出は撃墜を招いてしまう。しかし、怒りに駆られた睦月は陣形から突出してしまい集中砲火を浴びた。睦月号・改の全身が次々破壊されていき、その僅か数秒で睦月号・改はバラバラになって大破。戦闘継続不可能となった。

「くそ!睦月もやられちまった!」

「(あの位置じゃ助けに行けない!)涼風さん、後退しましょう!」

「が、がってんだ!」

大和のドレットノートスターゲイザーと、涼風のジェッズネロ・ブリッツはその場から後退した。

そして、ネェル・ミネルバの直掩に当たっていた涼月のガンダムサバーニャ・ハイスナイプもカオスガンダムからのカリドゥス複相ビーム砲の直撃を左肩に受け、左腕全てを失ってしまった。

「きゃあ!ひ、左腕がっ…」

「大丈夫か涼月―――ぐわっ!」

「照月姉さん!」

直後に防空棲姫のガンダムボークルスも右膝にビームの直撃を受けた。バランスを崩しつつも、ビームライフルの引き金を引き続ける防空棲姫。

「はぁ…はぁ…対空戦闘で、私が音を上げるわけにはいかないんだ!」

「防空棲姫さん下がって!私がカバーに入ります!」

すかさず大鳳のHi-νトールギスがカバーに入り、なんとか態勢を整えたガンダムボークルス。

「す、すまない。助かった」

「涼月さんは1度着艦して修理を!その損傷では危険だわ!」

「わ、わかりました大鳳さん。少しの間、お願いします!」

「着艦の援護は川内さんにお願いします!防空棲姫さんはこのまま対空戦闘を!」

「任せて!」「わかった!」

その瞬間、ネェル・ミネルバの左舷中央にバスターガンダムの超高インパルス狙撃ライフルが直撃し、巨大な爆発を起こした。

「左舷中央に直撃!左舷中央ミサイル発射管、使用不能!」

「左30度方向からミサイル接近!数10!」

「迎撃しつつ回避!山城、第2、第3主砲を対空戦闘にまわして!」

「了解姉さま!第1主砲は艦正面のナスカ級に照準合わせ!てぇー!」

ネェル・ミネルバの主砲が火を噴き、照準違わずナスカ級を撃沈した。しかし爆沈の瞬間、ナスカ級は艦底部の120㎝単装高エネルギー収束火線砲を撃ち返してきた。そのビームはネェル・ミネルバの右舷副砲を直撃し、砲身内に装填されていた三式弾とその火薬を巻き込んで爆発。副砲本体は完全に爆発四散し、その後方にあった40㎜CIWSも破片によって損傷、2基使用不能となってしまった。

「右舷副砲に直撃!カタパルトは損傷軽微、発艦への支障は少ないと思われます!」

「明石さんと夕張さんはダメージコントロールを急いで!」

「わかりました!」

「っ!右舷後方から大型ミサイル接近!直撃コース!」

「回避ッ!!」

「ダメだ…間に合わないッ!」

回避の間に合わなかったネェル・ミネルバは、右舷艦底部に大型ミサイルの直撃を受けた。そしてそこは、あろうことかネェル・ミネルバの右舷側メインエンジンの位置だった。エンジンから黒煙を上げ、失速していくネェル・ミネルバ。

「っ!ネェル・ミネルバが!」

「急ぐぞ伊勢!あのままではネェル・ミネルバが―――あれはっ!」

伊勢のガンダム試作改3号機ステイメンMK-Ⅱと、日向のガンダム試作改2号機キリサリスがネェル・ミネルバへ向かおうとした時だった。ネェル・ミネルバの上空から急接近している飛行形態に変形したムラサメ5機を、日向が見つけた。そのムラサメの翼には劇中で使用した様なミサイルではなく、艦上爆撃機が搭載する爆弾が取り付けられていた。そしてその機影はネェル・ミネルバのレーダーを監視している赤城の目にもハッキリと映っていた。

(っ!!この位置は!)

赤城は叫んだ

 

 

 

 

敵機直上ッ!急降下あぁぁー!!!!

 

 

 

 

!?

 

 

 

 

ネェル・ミネルバの操縦者全員が同時に真上を見上げた。その瞬間、ムラサメ全機が翼に取り付けられた爆弾を一斉に投下、急上昇を開始した。自動照準となっていたCIWSが上空へ向け一斉に砲火を上げたが、時既に遅かった。

 

放たれた爆弾は、ネェル・ミネルバの第1、第2主砲、左舷副砲、主翼左側、艦橋の根元を直撃し、大爆発を起こした。

 

うわあぁぁぁー!!!

 

ネェル・ミネルバの船体が激しく揺れ、ネェル・ミネルバは戦闘力の殆どを喪失してしまった。

 

続く



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EP116 古強者(ふるつわもの)の意地

「ネェル・ミネルバがっ!」

黒煙を上げながらゆっくりと失速していくネェル・ミネルバ。

「くっ!急ぐぞ伊勢、あれではネェル・ミネルバが丸裸同然だ!」

「りょ、了解!」

ムラサメの急降下爆撃を目の当たりした伊勢と日向の2人はそれぞれの乗機を急いでネェル・ミネルバへ向かわせた。

 

一方その頃、殿を務めていた長門たちの耳に「ネェル・ミネルバ大破」の報は届いた。

「長門さん大変だ!ネェル・ミネルバがっ!」

「響?どうした!」

「ネェル・ミネルバがやられた!急降下爆撃を受けて、大破してる!」

「な、なんだとっ!?」

迫って来ていたジムⅡとネモを撃墜しながら、長門は叫び後方のモニターを見た。そこには黒煙を上げるネェル・ミネルバがハッキリと映っていた。

「長門!ここで防衛線を維持しても、このままじゃジリ貧だぜ!」

「補給が受けられなくなったら、こっちも持ちこたえられなくなるわ!」

「クソッ…いよいよヤバいな。長門!」

「クッ!全機、ネェル・ミネルバの直掩に当たれ!何としてもネェル・ミネルバを護るんだ!」

しかしその時、長門のケンプファージライヤに向け2機のガンダム、プロヴィデンスガンダムとレジェンドガンダムが近づいてきた。2機は早々にドラグーンを全基展開し、ケンプファージライヤに向け襲い掛かってきた。

「ドラグーンだと!クソ、こんな時に!」

ケンプファージライヤは咄嗟に四方八方から来るドラグーンの砲撃を回避した。

「長門!」

「お前たちは先に行け!ここは私が抑える!」

「……わかった。やられんじゃねぇぞ!」

「フッ、当然ッ!!」

ケンプファージライヤは、単機プロヴィデンスガンダムとレジェンドガンダムに戦いを挑んだ。

 

「被害状況の報告を!」

「第1、第2主砲及び両舷副砲大破。右舷メインスラスター使用不能!」

「くそぉ…右舷のメインスラスターがやられて、直進させるのもやっとだよ!」

「明石さん、夕張さん。ダメージコントロールは出来そうかしら?」

「かなり厳しいですけど、やってみます!」

「格納庫の方は今のところ無事だ。補給と整備はまだ続けられるぞ!」

「前部主砲塔が使えないんじゃ、私たちはただの大きな的だわ!どうするの姉さま!」

もはや継戦能力が皆無となったネェル・ミネルバに出来る事など、数えられるほどしかなかった。

「敵の攻撃は極力回避し、可能な限りの補給と整備を続けるようにさせて!第3主砲は、味方機着艦の援護に当たらせるのよ山城!」

「了解姉さま!」

(少しでも長く持ちこたえなければ……)

 

一方、プロヴィデンスガンダムとレジェンドガンダムの2機を同時に相手取っていた長門は、先程の言葉とは裏腹に段々と追い詰められていった。

(クッ!流石にこの数のドラグーンを回避し続けるのは、並大抵ではないな!)

ガンダムSEEDの作品内でも屈指のドラグーン装備数を誇る機体を相手に戦うのだ。長門が追い詰められていくのも無理はない。そして長門は、敵に対してハンデをもう1つ抱えていた。

(今の今まで、無補給で戦い続けてきたせいでエネルギーも底をつきそうだな…)

長門の視界端では、幾つものエネルギーメーターが赤く点滅していた。戦闘開始から今に至るまで、長門は常に最前線で指揮を執り敵を撃破し続けていたのだ、無理もない事である。しかし長門は、艦船時代(連合艦隊旗艦)から、艦娘時代(艦隊旗艦)、そして現在(戦線維持部隊総指揮官)に至るまで長門は常に「指揮官」としての立ち位置に立ち続けていた。彼女自身、その事を誇りに思ってはいたが、それは時に彼女の足かせにもなってしまっていた。

「お前は1人で何でも背負い込む癖がある。か…提督よ、また私は同じことを繰り返してしまったようだ…」

戦いにおいて、補給を疎かにすることがどのような結末を招くのか。長門は彼の大戦でそれを身をもって知っている。そんな事を思った長門は思わず苦笑した。

「だがこの長門。そう簡単には負けん!」

ドラグーンを回避しつつ、徐々に距離を詰めていくケンプファージライヤ。

(ビームライフルのエネルギーはあと数発分、バスターランチャーのエネルギーもあと2発しかない……ならばやることは1つ!)

 

 

 

短期決戦っ!!

 

 

 

ケンプファージライヤはシールドを機体正面で掲げ、プロヴィデンスガンダムに向かって突撃していった。多少の損傷など、もう気にしている暇はなく、長門とケンプファージライヤは突貫した。ドラグーンが次々にケンプファージライヤに向けてビームを放ってくる。あるものはシールドで弾かれ、あるものは機体を掠め装甲を抉っていく。だが、長門は止まらない。どれだけ被弾しようと、長門はケンプファージライヤを前へ前へと進ませていく。

「ケンプファージライヤの装甲は伊達ではない!うおおぉぉぉッ!!」

そして、1基の大型ドラグーンがプロヴィデンスガンダムの直線状に重なったその瞬間――――

「そこだぁぁぁ!!」

ケンプファージライヤはビームライフルを大型ドラグーンへ向けて1発だけ放った。銃口から放たれたビームは、狙い違わず大型ドラグーンを破壊した。中規模の爆発が起こり、一瞬だけだがプロヴィデンスガンダムの視界を遮った。

「とどめだぁぁぁ!!」

長門はその爆発の中へ、バスターランチャーを撃ち込んだ。爆発を抜けたバスターランチャーのビームは僅か一瞬の目くらましを受けたプロヴィデンスガンダムを直撃し、貫通。激しいスパークを起こしたプロヴィデンスガンダムは爆散した。

「あと1機!」

長門は休むことなくレジェンドガンダムの元へと向かった。しかし、ドラグーンによる全方位攻撃は止まることなくケンプファージライヤに襲い掛かってきた。今度は先程の様に突貫せず、回避しつつレジェンドガンダムへ向かって行く。一度使った戦法が、すぐ近くに居た敵にもう1度通用すると長門は思っていない。だからこそ、別の戦法で倒すのである。レジェンドガンダムは先程の攻撃を警戒してか、ケンプファージライヤから距離を取りつつ反撃をしてくる。ケンプファージライヤはそれらを回避し、シールドで防御しレジェンドガンダムへ迫っていく。

()がしはせん!」

ケンプファージライヤがビームライフルをレジェンドガンダムへ向けた瞬間だった。レジェンドガンダムのドラグーンから放たれたビームがケンプファージライヤの右膝に直撃。そのまま膝から下を喪失してしまった。しかしケンプファージライヤはその瞬間にも反撃し、レジェンドガンダムの右腕を破壊した。

「このまま押しきる!」

そのまま一気に距離を詰めるケンプファージライヤは、左手でビームサーベルを抜きレジェンドガンダムに斬りかかった。

「これで終わりだぁッ!!!」

だが、その次の瞬間だった。ケンプファージライヤが左腕を振り下ろそうとした瞬間、背後からの警報アラートが鳴り響いた。そして長門が振り返るより早く、それは襲ってきた。

「なに――――ぐわあぁぁぁー!!」

背後からレジェンドガンダムのドラグーンが全門斉射を行って来たのだ。全門斉射されたビームはあろうことかレジェンドガンダムをも撃ち抜き、ケンプファージライヤは右肘から先と機体の数カ所を一気に被弾した。レジェンドガンダムの爆発により吹き飛ばされたケンプファージライヤは、その衝撃でビームライフルと、バスターランチャー、そしてビームサーベルを失ってしまい満身創痍の状態となった。

「くっ、自分ごと敵を倒そうとは…油断した。損傷が酷い、ここまで…か」

完全に継戦能力を失ったケンプファージライヤはネェル・ミネルバに戻るべく、移動を開始した。

(無事でいてくれ、ネェル・ミネルバ!)

 

しかし、長門の想いとは裏腹にネェル・ミネルバは既に限界を迎えていた。

 

動いているのが奇跡

 

という言葉の通り、速度は著しく低下し、一部の装甲が捲れあがった船体は等しく傷ついて、残された第3主砲とCIWSが味方機の着艦を援護するために火を噴き続けていたが、明らかに手数不足であることは誰が見ても明らかだった。幸いなのは、睦月が撃墜されて以来誰も撃墜されていないという事だ。しかし、ネェル・ミネルバの護衛を行う機体の中には修理が追いつかず、片腕を失った機体や一部に別機種のパーツを装着し戦う機体の姿もあった。もはや、ネェル・ミネルバが撃沈されるのも時間の問題と言えた。

「左舷後方よりミサイル来ます!」

「残った対空ミサイルを全て発射!CIWSは全力稼働で何としても撃ち落とせ!」

「くそぉ…ネェル・ミネルバのエンジンを狙って!」

「暁、無駄口叩いてる暇ないよ!」

「わかっているわよ響!」

敵部隊の作戦は巧妙だった。右舷側のメインエンジンを失い、速力が落ち舵が効きにくくなったネェル・ミネルバの残された左舷メインエンジンを集中的に狙っていたのだ。味方部隊は必死に左舷側に喰らいつき、防衛戦闘を行っていた。濃密な対空弾幕と、必死の応戦で左舷メインエンジンを防衛し、ミサイルと撃ち落とし、向かって来た敵機を撃破、敵艦からの艦砲までも自らの身を挺し護っていた。その時、ネェル・ミネルバのレーダーが帰還するケンプファージライヤの着艦信号を捉えた。

「ケンプファージライヤ、着艦します!被弾あり!」

「長門が!?整備班急いで修理の用意を!」

そして、長門からネェル・ミネルバへ通信が入った。

「よ、良かった…まだ、沈んでいない」

「長門さん、報告はあとでお願いします!急いで着艦を!」

「後部からでは間に合わないわ!左舷カタパルトデッキを開放して!」

ネェル・ミネルバの右舷カタパルトハッチが開き、ケンプファージライヤはゆっくりとカタパルトへ向かって行った

「くっ……す、すまなぃ―――っ!!」

だが、ケンプファージライヤが着艦体制に入った瞬間。左舷後方から飛来した敵艦のビームが左舷メインエンジンを直撃した。左舷メインエンジンはとても巨大な爆発を起こし、全壊してしまった。

 

 

うわあぁぁぁー!!!

 

 

「左舷メインエンジン全損!航行不能!」

「そんな!」

「っ!前方に巨大なエネルギー反応!!」

「なに!?」

左舷メインエンジンを失ったネェル・ミネルバの前方に巨大な影が映り込んだ。それは巨大な楕円状・円盤型の胴体に2本の脚部を持つMA。

 

ビグ・ザムだった。

 

ビグ・ザムの機体中央に備えられた大型メガ粒子砲が、今まさに火を噴こうとしていた。回避など、今のネェル・ミネルバには勿論不可能である。

「回避っ!!」

「駄目です!間に合いません!!」

そしてビグ・ザムの大型メガ粒子砲が発射され、一直線にネェル・ミネルバへと向かって行った。

メガ粒子砲の光が扶桑たちを飲み込もうとしたその瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチィィィィィィィンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネェル・ミネルバの正面。そこに、残された左腕に装備されたシールドを前へと掲げ、大型メガ粒子砲を防ぐ1機のガンプラの姿があった。シールドに直撃したメガ粒子砲の火花がバチバチバチィ!とネェル・ミネルバの船体にぶつかるも、その本流はそのガンプラ。

 

 

ケンプファージライヤによって、防がれていた。

 

 

「フッ」

操縦スペース全体が真っ赤に染まりメガ粒子砲の光に飲み込まれる中、長門は小さく笑みを浮かべ、言った。

 

 

 

古強者の意地…少しは見せれたか――――

 

 

 

次の瞬間、ケンプファージライヤはメガ粒子砲の光を弾きながら全身を融解させ、爆散した。

 

続く



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EP117 最後の一射

ケンプファージライヤは、その身を盾として動けないネェル・ミネルバを護った。長門の撃墜はその場に居た者たちに動揺を与えた。

「そ、そんな…長門が―――」

「長門が、やられた……」

龍田と天龍は特にそうだった。艦娘時代から、彼女の実力とくに知る2人にとっては信じられない光景だった。だが、そんな2人に渇を入れる人物がいた。

「おい!ボーっとしてる暇ないぞ、天龍、龍田!すぐにあいつを墜とさないと、被害がどんどん広がるぞ!!」

「き、木曾!?」

「暁、お前のアカツキ・リュミエールでネェル・ミネルバを護れ!出来るな!」

「も、勿論よ!」

「それ以外の連中も、出来る限りビグ・ザム(やつ)の攻撃を防いでくれ!その間に、俺がデカ物を墜とす!それまで何としても持ちこたえてくれ!」

「木曾!お前、墜とされに行く気かよ!」

「無駄口叩いてねぇで行動しろ!大鳳、後の指揮は頼んだ!」

「お、おい!」

そう言った木曾は、単独でビグ・ザムへと向かって行った。そして早々に、ビグ・ザムは大型メガ粒子砲の第2射を行おうとしてきた。すかさずハイペリオン・アカツキマスターがネェル・ミネルバの前に出ると、アカツキ・リュミエールを展開した。

「アカツキ・リュミエール、出力全開で展開よ!ついでにオールレンジシールドも正面に展開!」

その次の瞬間、ビグ・ザムは大型メガ粒子砲を放った。大型メガ粒子砲のビームはまずオールレンジシールドのビームシールドにぶつかったが、8基のオールレンジシールドを集中運用したにもかかわらず、そのビームによって全てを弾き飛ばされてしまった。暁の手元にある武装スロットには「全基使用不能」の表示が点滅し、オールレンジシールドを弾き飛ばしたビームは続けてアカツキ・リュミエールに直撃した。

「こんな攻撃で、アカツキ・リュミエールは破れないわ!」

しかし今度は、そのビームを拡散させ簡単に防ぎ切った。そこへなんと、傷だらけでボロボロとなった北上と大井のガンプラ、ヘビーアームズZZガンダムとガンダムドーベンアームズが現れた。

「北上さんに大井さん!ど、どうしてこんなところに!」

「いや~もううちらの機体、ほぼ動かないしさ。暁の機体のエネルギータンクとして使っちゃってよ」

「ええ!?」

「つべこべ言わないでさっさとしなさい!北上さんをイライラさせたら許さないわよ!」

そう言った北上と大井は機体から伸びているケーブルをハイペリオン・アカツキマスターのバックパックに無理矢理ぶっ刺した。ハイペリオン・アカツキマスターに2機分のエネルギーを供給されると、アカツキ・リュミエールの使用時間が大幅に延長された。

「ありがと、お礼はちゃんと言えるし」

「んじゃ、後はよろしくね~」

 

「CPU制御の機体程度で、俺を墜とせると思うな!」

たった1機先行していくアスタロト・Xバーストは、並み居る敵機を次々に撃墜しながらビグ・ザムを目指した。

「そこをどけぇー!!」

ビーム・ザンバーの一刀で正面に居た敵機を4機まとめて切り裂いた。更に近づいてきた敵機も、ビームブーメランを投擲し丸ごと撃墜。木曾とアスタロト・Xバーストの進撃スピードはとてつもない速度となっていた。しかし、先に進めば進むほど敵機の密集率も高くなっていく。アスタロト・Xバーストの進撃スピードは確実に落ちていっていた。

「くそっ、次から次へと!」

するとアスタロト・Xバーストに近づいてきたウィンダムと、ガンダムエクシアが突然で爆発した。その事に少し驚いた木曾だったが、そこに現れたガンプラを見て、笑みをこぼした。

「お前にばっかり、いいカッコさせるかよ!」

ウィンダムとガンダムエクシアを撃墜したのは天龍のジークイフリートだった。そして、その背後からジークイフリートを狙っていたガンダムグシオンが一刀両断された。

「さ、早くあの目障りなデカ物さんを微塵斬りにしちゃいましょ~」

そして龍田のガンダムデスサイズH・ラストワルツがビームシザースを肩に担ぎながら現れた。木曾はフッ。と笑って言った。

「遅れるんじゃねぇぞ。お前ら」

「ハンッ!オレ様が遅れるわけねぇだろが!」

「2人とも~もう遅れてるわよ~」

「あ!おい待ちやがれ龍田!」

「ちっ、先を越されたな」

ジークイフリート、デスサイズH・ラストワルツ、アスタロト・Xバーストの3機は、ビグ・ザムへ向かっていった。

 

一方その頃、ネェル・ミネルバの操縦スペースでは艦の状況を確認していた。両舷のメインエンジンと殆どの火器を失っても、扶桑たちは諦めようとは思わなかったのである。

「皐月ちゃん、メインエンジン以外で使えるスラスターはあるかしら?」

「一応、両舷の姿勢制御用スラスターは使えるけどこれじゃあ旋回するしか出来ないよ。ましてや、この船体を回すんだ。180度の旋回にはそれなりに時間がかかると思う」

「でも、やらないだけマシだわ。お願いできるかしら?」

「うん!まっかせてよ!」

「武蔵さん、格納庫の方はどうなっている?」

「もうこっちも手一杯だ。格納庫内は荒れ果ててしまっているし、何より修理用のパーツがもうない。今補給を受けてる涼月と長月以外の機体はもう補給出来んだろう」

「わかったわ。なら本艦の戦闘は、次の一射で最後になるわね」

「姉さま?」

「山城、第3主砲に本艦に残されたエネルギーの全てを集めて。木曾さんたちがビグ・ザムに一撃を加えたら、そこへ最後の一射を行います!」

「っ!了解姉さま!!」

「各機に通達。最後の一射後、本艦は破棄します!大鳳さんに通達。深海提督の指令書の開封を通達!」

「了解!」

「右舷姿勢制御スラスター全開!180度回頭!」

「了解!180度回頭!」

ネェル・ミネルバはゆっくりと動き出した。

 

「邪魔だ!」

ジークイフリートがV2ガンダムを撃墜した時、ネェル・ミネルバからの通達が届けられた。正面モニターに映し出された通達文にサッと目を通した天龍と龍田、木曾はお互いを一弁しながら頷いた。

「急ぐぞ!」

「ああ!」「ええ!」

敵機を撃破しつつ、3機は足を速めた。

 

その頃大鳳は、深海から渡されていた指令書を開封した。それは、もし何らかの理由で、ネェル・ミネルバが撃沈に相当する状況になった場合に開封するようにと、長門と大鳳の2人に渡されていた指令書だった。

「この指令書、出来れば開封したくなかったけど……」

大鳳はポケットから指令書が入った封筒を取り出し、封を切った。そして、指令書の文書に目を通した。

「なになに…この指令書が開封された際、作戦参加の全部隊は速やかに撤退。自分たちの身を護る行動を取るように。撤退の際は、全領域通信チャンネルで「全軍撤退セヨ」と通達するように(ルート上に小型中継器を撒いておいた)。なお、身内を探す必要のある者は、撤退完了後明石から専用の電探を受け取り、捜索に向かわれたし。以上………了解しました提督!急いでみんなに伝えます!」

大鳳は早速行動を開始した。

 

そして木曾たちは、遂にビグ・ザムの懐へと飛び込んだ。ビグ・ザムは全方位メガ粒子砲と両脚の対空ミサイルを放ってきたが、その程度の攻撃で被弾するほど木曾たちは甘くは無かった。まず最初の一手を打ったのは天龍だった。

「うおぉりゃぁぁぁー!!!」

ジークイフリートはビグ・ザムの左側にあるIフィールド発生器へ両肘のヒートトンファーと、両手に持ったヒートサーベルを斬りつけた。球体上のIフィールド発生器に非常に深い斬撃痕が残った。

「こちら側が、お留守よ~」

続けてデスサイズH・ラストワルツが右側のIフィールド発生器をビームシザースで焼き斬った。

「これで終わりにしてやる。天龍!龍田!」

「おお!」「は~い!」

そして木曾の掛け声に合わせるように、ジークイフリートが右下から駆け抜けるようにビグ・ザムの正面装甲を斬り裂き、続けてデスサイズH・ラストワルツが左下から同じ位置をビームシザースで斬り離脱。

 

これで、ジ・エンドだっ!!

 

ビグ・ザムの上空から、アスタロト・Xバーストがビームザンバーを出力全開にし一気に斬り降ろした。通常時よりも更に巨大なビームの刀身は、ジークイフリートとデスサイズH・ラストワルツが斬りつけた斬撃痕をより一層深く抉った。そしてその直後――――

「180度回頭完了!扶桑さん、山城さん。いつでもいけるよ!」

「涼月さんと長月さんの出撃確認!こちらも問題ないわ!」

「よし……姉さま!」

「よしっ……主砲照準!目標、敵巨大MA!」

「照準…よし!」

回頭を完了したネェル・ミネルバの照準が、ビグ・ザムを捉えた。

 

 

()えぇぇー!!!

 

 

扶桑の掛け声と共に、ネェル・ミネルバの全エネルギーを搔き集めた第3主砲が放たれた。放たれた3本のビームは螺旋を描いて一筋の閃光へと姿を変え、ビグ・ザムの斬り裂かれた装甲の中心を直撃し、ビグ・ザムの胴体をそのまま貫通した。ビグ・ザムはその巨体を盛大な爆炎へと変え爆発、消滅した。

 

しかしその直後、ネェル・ミネルバのエネルギーの過負荷に耐えられなくなった第3主砲が大爆発を起こした。爆発は艦全体へと広がっていき、艦の各所で連鎖爆発が発生した。そして艦中央で起きた大爆発により―――

 

 

 

 

 

ネェル・ミネルバはその船体を真っ二つに割りながら爆沈した。

 

 

 

 

 

続く



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EP118  撤退開始

ネェル・ミネルバの爆沈直後、大鳳は指令書に書かれていた内容の通信を発信した。それから遅れること僅か数秒後、戦闘中だった各部隊は撤退を開始した。

「天龍さん、龍田さん、木曾さん。まだ余力はありますか!」

「ああ。オレはまだまだいけるぜ!」

「私も大丈夫よ~」

「俺も大丈夫だ。大鳳、俺たちで殿を務めるんだろ?」

「ええ。出来るだけ多くの時間を稼ぐ必要があるわ。みんなを逃がす為、力を貸して!」

「ハッ!言われるまでもねぇ!」

やる気になる天龍。するとそこに日向のガンプラ、ガンダム試作改2号機「キリサリス」が現れた。

「日向さん!?どうしてここに?」

キリサリス(こいつ)のアトミックビームバズーカなら、時間を大量に稼げると思ってな」

「なるほど。広範囲をビームで焼き払うわけか…大鳳!」

「わかりました。お願いします日向さん!」

「任せておけ」

そう言った日向は、キリサリスを少しだけ前進させるとメガラジエーターシールドからアトミックビームバズーカの砲身を取り出し、右肩の基部に接続した。

「皆さん!日向さんの砲撃と同時に撤退を始めます!用意をお願い!」

 

はいっ!

 

そして日向の右目に照準アイコンが重なった。

「いくぞ!」

日向はアトミックビームバズーカの引き金を引いた。アトミックビームバズーカの砲口から青白い閃光が放たれた。その閃光は数多の敵機を飲み込んでいった。

 

 

撤退始めッッ!!!

 

 

直後に大鳳の声が生き残っていたメンバー全員の耳に届けられた。それを聞いた全員が一斉に撤退を開始した。そして遅れて大鳳たち4人も撤退を始めた。しかし、大鳳が撤退を始めようとした時、彼女は気づいた。

「っ!日向さん、何してるんですか!?」

日向のキリサリスは未だに撤退しようとしなかった。それどころか、アトミックビームバズーカの砲身から手を放そうとすらしていなかった。

「あとは任せた」

日向の小さな一言が大鳳の耳に入った瞬間、キリサリスの全身から小さな爆発を起き始め、アトミックビームバズーカを放ったまま全身が捥げるように分裂、大爆発を起こしたのだ。大鳳たちと合流した時点で、キリサリス自体は無事だったもののその全身は傷だらけで機体内部の負荷も相当な物がかかっていた。その状態でアトミックビームバズーカを放てば機体はガンダムFXの様に崩壊してしまう。日向はその事を知っていた上でこの役割を引き受けたのだ。

「……ありがとうございます。日向さんっ」

大鳳はそう言って、Hi-νトールギスを天龍たちの元へと向かわせた。

 

そして、大鳳が通信を発して数秒後にビスマルク隊と金剛隊のメンバー全員に通信が届いた。ビスマルクはその通信を聞いた時、思わず声をあげた。

「全軍撤退セヨ、って…ネェル・ミネルバが沈んだというの!?」

「ビスマルク姉さま?」

ビスマルクは戦線突破部隊の司令官としてただ1人、深海からこの通信が何を意味するのかを伝えられていた。この通信が届いた時は速やかに撤退し、自身の身を護る行動を取ること。ビスマルクは決断を迫られた。

「Hey!ビスマルク、一体どうしたのデースか?」

「浮かない表情ですね。もしかしてこの通信が何か?」

金剛と榛名の2人が浮かない顔のビスマルクを心配して声を掛けた。

「撤退するのであれば早い方が良いかもしれません。幸い、ここ周辺の敵は殲滅しましたし。退路は確保できています!」

「霧島の言う通りですよー!私たちのガンプラだって損傷していない訳じゃないんですからー!」

「そうですよ!理由はどうあれ、この指示には従うべきですよ!」

「ビスマルク姉さま。ここは撤退しましょう!また、ライン演習作戦みたいなことになるのは、私嫌です!」

比叡と霧島、綾波、プリンツはこの撤退に賛成だった。しかしただ1人だけ、言葉を発さない者がいた。

「………」

最上だ。最上は、何を言うまでもなく難しい表情で考えていた。ビスマルクはそれに気づいて最上に声を掛けた。

「どうしたの最上?何か考え込んでるようだけど…」

「……うん。みんなには悪いけど、ボクはこのまま先へ進むよ」

「What!一体どういうことデスか、最上!」

「時雨が心配なんだ。彼の大戦では時雨だけが生き残ってしまったから、余計になんだよ」

「………」

「止めたところでボクは行くよ。もう、時雨を1人にさせたくないんだ」

「わかったわ。なら、私とプリンツで援護するわ」

「え!」

ビスマルクの口から飛び出してきた言葉に突拍子なものだった。これには流石の霧島も、え!と声をあげた。しかしビスマルクは動じることなく言葉を続けた。

「金剛、貴女たち4人は撤退しなさい。綾波、貴女もよ」

「そんな!私だけ撤退するなんて出来ません!」

「分からないの?金剛たちの護衛が出来るのは貴女だけなのよ。インフィニットバーニングラブは頭部と右手脚、ガーディーフォビドゥンは3枚の盾を、Ez-ASはほとんどの射撃武器を、ブーストカラミティは左腕と右脚、そして殆どの砲を失っている。今、五体満足で戦えるのは綾波、貴女の鬼羅エピオンだけなのよ」

「………」

金剛たちの顔から、先程までの余裕がなくなった。現在までの戦闘で、金剛たちのガンプラは非常に傷ついていたのだ。その反面、綾波の鬼羅エピオンの損傷は少なかったのだ。その事は、勿論綾波が1番良く知っていた。綾波はとても悔しそうな表情で、ギュッと操縦桿を握りしめた。

「わかりました。私が、金剛さんたちを必ずお守りします!」

「いい心掛けね。急ぎなさい、いつまた敵が来るかわからないわ!」

「はい!金剛さん、比叡さん、榛名さん、霧島さん。行きましょう!」

綾波の合図を受け、金剛隊とビスマルク隊は別れた。金剛たちは綾波に護衛され撤退を始め、ビスマルクたちは更に奥を目指していった。

 

そしてビスマルクたちが通信を受け取ってから遅れること1分。深海化翔鶴との戦闘に決着をつけた瑞鶴は加賀と合流を果たし、通信を聞いた。

「加賀さん「全軍撤退セヨ」って、これどういう意味なのかな?」

「言葉の通りじゃないかしら。送信者も、大鳳となってるわ。長門じゃない所を見ると…おそらくネェル・ミネルバに何かあったんだと思うわ」

「加賀さん、瑞鶴さん。無事ですか!?」

そこへ2人のバトルを見届けていた秋月と初月が合流した。幸いなことに、戦闘中にCPU制御の機体が現れなかったため、ウイングゼロ・アランダイトとトライオークアンタは完全な無傷状態であった。

「さっきの通信はいったい何なんでしょうか?」

「今のボクたちなら、ここ周囲の防衛は出来ると思うけど……」

「いいえ。ここは撤退しましょう。陽炎たちもやられてしまったし、何より翔鶴を探す必要があるわ」

「加賀さん」

「瑞鶴の機体を中心に輪形陣を作って、この宙域から離脱します。急ぐわよ!」

「はい!」「了解だ!」

そして瑞鶴たちは、その場からの撤退を始めた。

 

続く



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EP119 イイアメ

「はあぁー!」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがディノーバへとエクスカリバー対艦刀を掲げて斬りかかる。スラスターを噴かし、両手に握ったエクスカリバーをX状に開き斬りを放ったが、ディノーバを操る深海化江風はそれをサイドステップでかわすと超巨大ヒートサーベルであるディノーバの尾を地面に擦りつけながら斬り上げてきた。超巨大なヒートサーベルは地面の土を跳ね上げながらユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへ迫った。

「クッ!」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはそれを前転で回避し、素早く方向転換。今度はディノーバの頭部目掛けて飛び上がり、エクスカリバーを斬りつけた。

「これでどぉ!」

右上段からの袈裟斬り。狙いは正確無比。ディノーバは完全にユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの方を向いて動けずにいた。

(これなら直撃っぽい!)

夕立がそう確信したのと同時に、エクスカリバーはディノーバの頭部を直撃――――

 

 

 

バァキィィィンッ!!!

 

 

 

瞬間、エクスカリバーは根元の刀身3分の1を残して完全に折れてしまった。

「エクスカリバーが――うわぁっ!!」

エクスカリバーが折れたのを夕立が確認した直後、ディノーバはその瞬間を待っていたかのようにユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへ向け頭部によるアッパーを放った。完全に動揺し、距離も零距離だったユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはその攻撃をもろに受け、大きく跳ね飛ばされた。

「な、なんて威力っぽぃ―――あっ!!」

そこへ、その隙を逃がすまいとディノーバはその巨体を高くジャンプさせ空中で身体の向きを変えながら超巨大ヒートサーベルを振り下ろしてきた。

「ヤバッ!!」

夕立は咄嗟に右側のスラスター全てを全力稼働させ、緊急回避を取った。ディノーバの超巨大ヒートサーベルはユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが居た場所へと振り下ろされ、重力の乗ったまま地上へと振り下ろされた。巨大な斬撃は地表に合った小高い丘を、いともたやすく真っ二つにした。ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは何とかそれを回避したが、姿勢制御が間に合わずそのまま地面に墜落してしまった。

「わっ!イテテ…着地に失敗したっぽい…」

何とかすぐに立ち上がれたユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアだったが、立ち上がった瞬間、夕立の耳にロックオンアラートが届いた。その方向を反射的に見た夕立の目には、巨大な口を開けそこから赤いビームを撃ち出したディノーバが映っていた。

「ぽいぃぃ!!」

夕立は慌ててユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを横転させた。ビームをかわした。

「あの巨体であんな動き…まるで怪獣っぽい!」

そしてディノーバは超巨大ヒートサーベルを口にくわえるように構え、一方のユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは残ったエクスカリバーを構えて応戦の姿勢をとった。

 

一方の上空では、空母水鬼のナラティブガンダムE装備と深海化白露が操るゼラクスの戦闘が繰り広げられていた。ゼラクスの背後を取っていたのはナラティブガンダムE装備だったが、それは後ろを取っていたのではなく。ナラティブガンダムE装備がゼラクスに追いつけていなかったのだ。

「くっそぉー!全然追いつけないじゃないの!」

ナラティブガンダムE装備はビームライフルと大型ビーム砲でゼラクスを狙うが、緑のビームの翼を広げたゼラクスはスイスイとそれらを避け、旋回。翼の中央関節の部分から球体上のビーム弾を撃ち出しながらナラティブガンダムE装備に迫ってきた。ビームの翼を羽ばたかせることなく、超高速で迫ってくるゼラクス。

「くっ!」

空母水鬼は機銃掃射を行ってくる戦闘機の様に迫ってきたゼラクスを何とか回避し、方向転換。ゼラクスへ向け再びビームライフルと大型ビーム砲を撃ち込み、追撃していく。しかし、追撃を加えている内も2機間の距離は離れていく一方となっていた。

(完全に向こうのペースに乗せられてる!まずいかも…)

その直後、ゼラクスはその速度を保ったまま宙返りをした。

「なっ!」

ゼラクスがナラティブガンダムE装備の背後を取ったのだ。突然の出来事に驚きを隠せない空母水鬼。そしてゼラクスは、両脚の鋭い爪を掲げてナラティブガンダムE装備に襲い掛かった。

(方向転換してる暇はない!このまま避けないと!)

反応が遅れてしまった空母水鬼だったが、紙一重の所でその高速突進を回避した。

「避けられ―――うわあっ!」

しかし、E装備の左翼とシールド、左肩アーマーをその衝撃で失ってしまい完全にバランスを崩してしまった。更に不運は続き、ゼラクスのハサミ状になった尾がナラティブガンダムE装備の背後を通り過ぎ際に直撃。バランスを崩された直後のナラティブガンダムE装備は、そのまま地面へと墜ちてしまった。

「きゃあ!」

地面に真っ逆さまに落ちたナラティブガンダムE装備は何とか立ち上がる事には成功したが、そこへゼラクスが猛スピードで急降下しながら迫ってきた。その姿は、弱った獲物を仕留めようとする竜、そのものだった。

「こんな所でやられるかぁー!」

空母水鬼はナラティブガンダムE装備を前転させたのと同時に、エクストラパックをゼラクスへ向け射出した。機首部の大口径ビーム砲と大型ビーム砲が同時に火を噴き、ゼラクスに直撃した。しかし、ゼラクスは怯むことなくエクストラパックへ向けてそのまま突進。エクストラパックはゼラクスの高速突進を受け、墜落。その途中で爆発を起こして消滅した。そして、地面を抉るように着地したゼラクスはエクストラパックを失ったナラティブガンダムE装備へと向き直った。

「はぁ…はぁ…秋雨ちゃんたちから貰ったガンプラが……くそぉ…」

ナラティブガンダムE装備は何とか態勢を整えたが、機体は中破。戦闘力の殆どを失っていた。そんな中、ゼラクスは頭部のトサカを頭上高く掲げたのだった。

 

地上に降り注ぐミサイルの雨と爆炎の中を2.12ガンダムは駆けていた。最初は上空で戦っていた2.12ガンダムだったが、そのまま戦っていると味方への流れ弾を招いてしまうと思った駆逐棲姫は、敢えて地上戦を選んだのだ。2.12ガンダムは深海化五月雨が操るタツミネが止めどなく放ってくるミサイルの雨を回避しながらタツミネへとGNダブルバスターライフルを撃ち込んで反撃をしていた。しかし、蛇の様な胴体でありながら地上をフィギュアスケートの様に滑り2.12ガンダムの反撃を回避するタツミネに、駆逐棲姫は少し翻弄されかけていた。

(恐らくドムの様に地上をホバーして動いているんだろうが。それにしても、あの巨体であの動き…これが深海細胞の作り出した機体の力だというのか!?)

2.12ガンダムが背後に回ったタツミネに向けてアタックモードでのGNダブルバスターライフルを放った直後、タツミネは素早い滑走でその攻撃を回避したかと思うと今度は2.12ガンダムの真横、零距離の位置へと滑り込んできた。

「っ!」

駆逐棲姫が声をあげたより早く、タツミネの尻尾が2.12ガンダムを思い切り薙ぎ払い、弾き飛ばしたのである。

「クッ、この程度!」

弾き飛ばされた2.12ガンダムだったが、駆逐棲姫は咄嗟に態勢を整えて地上に着地した。そして、右肘のGNビームサーベルを抜き放ちタツミネへと突撃していった。道中はやはりミサイルの雨が2.12ガンダムを襲ったが単純なミサイルの雨に苦戦する程、駆逐棲姫の操縦スキルは低くなく、2.12ガンダムはミサイルの雨を掻い潜ってタツミネに追いついた。

「そのミサイルも、この距離では撃てないだろう!貰ったぞ!」

2.12ガンダムが斬りかかろうとした瞬間だった。突如タツミネがその口を開き、青白い光が一瞬光ったその僅か0.1秒後、2.12ガンダムの左腕と、左側のウイングバインダー2枚が根元から切断され宙に舞い上がった。

「―――え?」

駆逐棲姫は、衝撃すら感じなかった。そしてその直後、タツミネは2.12ガンダムへ向けてタックルを放ってきた。困惑した駆逐棲姫は回避する事を完全に忘れてしまい、この攻撃をもろに受けてしまった。

「ぐわぁー!」

姿勢制御出来なかった2.12ガンダムはそのまま地面に落ち、少し転がった。

「クッ、うう……な、何が起こった?」

駆逐棲姫は何とか2.12ガンダムを立ち上がらせたが、機体のダメージはひどく。駆逐棲姫の操縦スペースには赤アラートが鳴り響いていた。その間にタツミネは一気に2.12ガンダムに接近した。

 

山風のホロルドロッソ・イージスは、現れた5機のガンプラの中で一番巨大な機体。深海化海風が操るガムルトと戦闘を繰り広げていた。「巨獣」という言葉がこれでもかと似あうガムルトは、非常に鈍足だったがその防御力は他の4機を凌駕していた。

「スキュラの直撃なら!」

ガムルトの周囲を飛行していたホロルドロッソ・イージスは突撃形態に変形し、スキュラを発射した。しかし、ガムルトの右肩部分に直撃したスキュラの赤いビームは直撃と同時に完全に弾き消されてしまった。

「そ、そんな!!」

ホロルドロッソ・イージスの武装の中でも最大の火力を誇るスキュラの直撃すら防ぎきってしまうガムルトの装甲を目の当たりにした山風は、咄嗟に戦法を接近戦へと切り替えた。バックパックからフラガラッハ改ビームブレイドを抜き放ち、ガムルトに斬りかかろうとした。するとその時、ガムルトは突如その巨大な脚を動かし移動を始めると、背中の部分から濃密な弾幕を展開、対空射撃を開始した。

「た、対空射撃!?」

ガムルトはその巨体故に死角が多い、その為の無数の対空機関砲が機体の背中などに設置されているのだ。

「うう…これ程の濃密な対空弾幕じゃ、近づけない」

ホロルドロッソ・イージスにベース機の様なフェイズシフト装甲はない。濃密な対空弾幕に飛び込めば、撃墜される未来は容易に想像が出来る。強力なビームすら弾く装甲と濃密な対空弾幕、ガムルトはまさに動く要塞だった。しかし、ガムルトの強みは防御面だけではなかった。しばらく対空射撃を行いながら移動したガムルトは突然地面に転がっていた巨大な岩石をその鼻で掴むと、それを大きく振り回しホロルドロッソ・イージスへと投げつけてきた。

「なに―――きゃあ!」

弾幕に目が行ってしまっていた山風はガムルトの投げてきた岩石を回避することが出来ず、岩石を直撃させられてしまった。直撃の瞬間は焦ってしまった山風だったが、咄嗟に平常心を取り戻しホロルドロッソ・イージスを離脱させた。岩石はそのまま地上に落ちたが、ホロルドロッソ・イージスはなんとか空中へ逃れることが出来た。

「あ、危なかった…」

しかし安心した山風の正面から接近警報のアラートが鳴り響いた。山風がそのアラートに気づいた時には、既にそれは直撃していた。

「うわあっ!」

ホロルドロッソ・イージスはそのまま地面に叩きつけられた。襲って来たのはガムルトの長い鼻だった。ゆっくりと鼻をどかしたガムルトはそのまま後退した。

「う、うう…な、なにが?」

山風は状況を確認しながらホロルドロッソ・イージスを立ち上がらせたが、全身の所々から小さなスパークが走り、機体各所のダメージ表示は赤く光っていた。そんなホロルドロッソ・イージスの元へガムルトはゆっくりと歩を進めて行った。

 

「でやぁー!」

「フンッ」

ビームサーベルをぶつけ合うエンドレインバレットと、MS形態のファバルク。バチィ!バチィ!と互いを斬りつけようとするビームサーベルはぶつかり合い火花を散らす。そしてエンドレインバレットがビームサーベルで袈裟斬りを放つと、ファバルクは上昇し攻撃を回避。バックパックの槍状のバインダーを脇下から展開すると、先端から赤いビームの光弾を6発撃ちこんできた。エンドレインバレットはそれらを後退して回避した。

「どうしてなんだ村雨!どうして君が!」

時雨は深海雨雲姫に問いかけた。しかし、返答は返ってこず再度6発の光弾を撃ち込んできた。

「クッ!」

今度は急上昇で光弾を回避したエンドレインバレットは左手でビームピストルを抜くとファバルクへ向けて連射した。ファバルクはその間にMA形態に変形しビームピストルのビームを回避しながらエンドレインバレットへと接近していった。槍状のバインダー先端裏側から紅い光を噴きながら一気に接近してきたファバルクはそのままの勢いでエンドレインバレットに体当たりを行おうとした。

「沈みなさい!」

「なんの!」

しかし時雨は咄嗟にエンドレインバレットを急上昇させこれを回避。ビームサーベルとビームピストルをしまうと、エンドレインライフルを構え通り過ぎていったファバルクへと向けた。しかしMA形態で飛行するファバルクは、時雨が今まで経験してきた高速で動く標的のどれをも超越した速度で飛行していた。

「くそっ!早すぎてロックオン出来ない!」

エンドレインライフルのスコープを覗きながらファバルクを追い続ける時雨。だが、そのスピードに追い付くことが出来ず、時雨はやむなく狙撃を中断した。

(駄目だ。相手の速さが早すぎて、照準が合わせられない。銃身がぶらつく状態で予測射撃しても、当たる訳もない……くそ、こういう敵は相性が悪い!)

エンドレインライフルをリアアーマーに懸架し、再びビームサーベルを抜くエンドレインバレット。すると、方向転換したファバルクが加速し再びエンドレインバレットへ向かって来た。エンドレインバレットはビームサーベルとバイポットシールドを構えた。そして迫ってきたファバルクがいよいよ間近に迫った時、突如ファバルクはMS形態に変形した。先程までの加速を落とすことなく、ファバルクは槍状の右バインダーをエンドレインバレット目掛けて突き出してきた。

「これで終・わ・り!」

「なに――――」

時雨は突然の出来事に驚くも条件反射で操縦桿を右に大きく動かしたため、エンドレインバレットはその攻撃を紙一重もギリギリな程のタイミングで避けたが、バックパック左側のアームド・アーマーDEは完全に破壊されてしまった。

「危な―――うわぁっ!!」

回避に成功したエンドレインバレットだったが、避けた先で衝撃を受けた。理由は簡単だった。ファバルクの持つ槍状のバインダーは一対。避けた先に至極まともにあった左側のバインダーがエンドレインバレットに直撃したのだ。そしてそのままエンドレインバレットは地上へと落ちていった。

「うわぁぁぁぁぁー!」

そして時雨はエンドレインバレットの姿勢制御もままならず、地面に激突した。

「ううう…あぁああ…」

ゆっくりと立ち上がったエンドレインバレット。しかし、そこへ更なる追撃が来た。再びMA形態へと変形したファバルクが上空から飛来。立ち上がったばかりのエンドレインバレットを強襲した。回避することの出来なかった時雨はその高速突貫をまともに受け、エンドレインバレットの右腕と右胸周辺、そしてバックパック全てが消し飛んでしまった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!!」

激しく地面を転がるエンドレインバレット。何度も地面にぶつかって跳ねまわり、機体の損傷はさらに加速した。そして、全身が泥だらけになったエンドレインバレットはようやく止まった。そして、そんなエンドレインバレットの元へMS形態のファバルクがゆっくりと近づいてきた。

「クックック…アッハハハハハハハハハハハハッ!!!無様な姿ね時雨!先程までの威勢はどうしたのかしら?この私を元に戻すんじゃなかったの~?アッハハハハハハ!!!」

「グッ…うあ、あ……村雨、何で…何で君がこんな―――」

「いいわねその顔!ならその顔もっと輝かせてあげる(・・・・・・・・・・)!!」

すると深海雨雲姫は指をパチンッ!と鳴らした。すると時雨の正面に4つのモニターが現れた。それぞれのモニターには、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアとディノーバ、ナラティブガンダムE装備とゼラクス、2.12ガンダムとタツミネ、ホロルドロッソ・イージスとガムルトが映っていた。

「ゆ、夕立…深空…春雨…お母さん……」

時雨が3人の名前を呼んだ次の瞬間――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超巨大ヒートサーベルを銜えたディノーバが高速で一回転、超巨大ヒートサーベルの回転斬りはユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの胴体をほんの一瞬で両断してしまった。

 

 

 

「夕立ッ!!」

 

 

 

続けてトサカを頭上へ掲げたゼラクスはそのトサカに巨大なビームサーベルを形成。と同時にそれを一気に振り下ろし、ナラティブガンダムE装備を頭から真っ二つに斬り裂いた。

 

 

 

「お母さんッ!!」

 

 

 

更に、2.12ガンダムに接近したタツミネがジャンプしたかと思うと口から再び超高速の光を撃ち出した。その光は2.12ガンダムの胴体中央に巨大な風穴を開け、2.12ガンダムはその場で倒れると爆散した。

 

 

 

「春雨ッ!!」

 

 

 

その直後、ホロルドロッソ・イージスの頭上にガムルトが巨大な脚を持ち上げ、勢いよくそれを地面へ降ろした。ホロルドロッソ・イージスはガムルトの足の下敷きになり、グシャグシャッ!と音をたてて踏みつぶされてしまった。

 

 

 

「深空ッ!!」

 

 

 

僅か数秒の間に時雨の目の前で4機のガンプラは消滅した。時雨の表情は怒りや憎しみ、悲しみ悔しさなどが入り混じった絶望の表情となっていた。

「あ、あああ―――そん、なぁ…夕立、春雨、深空、お母さん…そんな、嘘、だ。嘘だ…」

「嘘じゃないわ。現実よ!げ・ん・じ・つ!」

「ぼ、僕は、また…み、んなを―――」

 

 

見殺しにしたのよっ

 

 

「ねぇ、聞かせてもらえるかしら?「佐世保の時雨」って幸運艦として呼ばれる実感ってどんなものなのかしら♪」

「そんな、もの…は……」

「他人の運を貪るように吸い取って生き永らえるのって、一体どんな気分なの?ねえ、どんな気分なの!」

「僕は、そんな、皆を、見殺しになんて―――」

「ふーん。じゃあ、もっといいところ(・・・・・)に連れて行ってあげる」

深海雨雲姫はそう言うと、大破したエンドレインバレットを掴み上げると遥か上空へと飛び上がった。

 

続く



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EP120 ゼツボウノアメ

しばらくして時雨は暗闇の中にいた。何か丸い物が薄い黄色の光を放っているようだが、それもハッキリとはしなかった。

「な、なんだ?ここ」

レーダーに目をやった時雨だったが、先程までいた深海雨雲姫のファバルクを始め、4機の巨大ガンプラたちの姿も何処にもなかった。

「え?なんで、レーダーに何も映らないんだ?」

時雨は辺りを見回し、操縦桿を動かした。目の前のメインモニターにエンドレインライフルが姿を現してからゆっくりと姿を消したことを確認した時雨は、機体がまだ動くという事を確認できた。

「でも、ここはいったい何処なんだ?」

先程までいた雨の降る草原とも違う。むしろ、先程自分が飛行して居た場所よりもはるかに高い位置にいる。そんな感じを時雨は感じていた。すると、時雨の耳がとても重い爆音を捉えた。時雨はその方向へエンドレインバレットを向けると、その方向から大きな光がいくつも灯っていた。

「まさか誰か戦っている!?行ってみよう!」

時雨はエンドレインバレットをその方向へと向かわせた。

 

そして、その場所へたどり着いた時雨が目にしたのは目を疑う光景だった。

「な、なん…で…ここに…そんなっ……」

時雨の眼下、そこにいたのは――――

「山城…扶桑…最上…満潮…朝雲…山雲…なんで……」

7隻の船だった。そしてその船を時雨はよく知っていた。前方に4隻の小型の船が三角形状に陣形を組んでその後方に、巨大な船体に、上方が少し前へ飛び出した背の高い艦橋と、2基前方へ向いた連装砲と4基の後方へ向いた連装砲を積んだ戦艦。「くの字型」のとても背の高い艦橋と巨大な船体、それぞれ3基ずつ前方と後方を向いた連装砲を積んだ戦艦。細長い船体に3基の連装砲、そして後甲板には複数の水上機を乗せた飛行甲板を持つ重巡洋艦。

 

戦艦山城

 

戦艦扶桑

 

航空巡洋艦最上

 

駆逐艦満潮

 

駆逐艦山雲

 

駆逐艦朝雲

 

そして――――

 

 

駆逐艦時雨

 

 

「な、なんで……なんであの時の僕たちがいるんだ!」

(それは…キミがあの光景をもう一度見たいって思ったからだよ)

「っ!!誰だ!」

不意に時雨の耳に声が届いた。何処かで聞いたことのある声だった。

(僕はキミだよ。キミの中にいるもう1人のキミさ)

「え?もう1人の…僕?」

(そう…でもそんなことはどうでもいいよね。だってもう、始まっちゃったっからさ)

「なにを?」

直後、山城と扶桑の主砲が火を噴いた。

「山城と扶桑の砲撃!?」

(時間、見て見なよ)

「時間?………!!」

時雨がメインモニター下に表示された時計に目をやると、そこには時雨にとって衝撃を受ける時間が刻まれていた。

 

01:48

 

「こ、この時間って……駄目だ皆!このまま進んだら―――」

時雨が叫んだ瞬間、艦隊の全艦が右舷前方へ向け照射射撃を始めた。時雨が時計に目を向ける。

 

02:53

 

先程からほんの数秒も経っていないのに、時計は1時間以上進んでいた。

「駄目だ!今すぐ引き返すんだ!」

時雨は知っていた。あの日、あの時、自分が、その場に居たのだから。

 

03:10

 

扶桑の右舷中央に水柱が上がった。扶桑は右舷に傾斜し、艦隊から落伍し始めた。その直後に扶桑の周囲を照らしていた光が一斉に消えた。

「扶桑ッ!駄目だ!早く火を消し―――」

しかし、時雨の叫びも虚しく扶桑の第三、第四砲塔の付近で大爆発が発生した。その爆発により、扶桑の巨大な船体は真っ二つになってしまった。

「あ、ああ…そんな…扶桑っ!」

時雨は目を瞑ろうとした。しかし、目は一向に閉じようとしなかった。

(駄目だよ目を逸らすなんて。キミがもう一度見たいって思ったんでしょ?)

「だ、誰が…誰がこんな―――」

叫ぼうとした時雨。しかし、今度は先頭を進んでいた駆逐艦満潮と山城の右舷前方の駆逐艦山雲に水柱が上がった。そして、山雲は瞬く間に海中へと姿を消し、続くようにして満潮も沈没していった

 

03:20

 

「満潮ッ!!山雲ッ!!」

更に続くように満潮の後方にいた朝雲の一番砲塔直下に水柱が上がり、艦首が切断されてしまった。

「朝雲ッ!!早く、早く逃げるんだ!このままだ沈んでしまう!!」

同時に山城の左舷後部にも水柱上がった。

「山城!!」

(ものの数分でこの損害。やっぱりえげつないね…スリガオ海峡は)

「!!」

 

スリガオ海峡

 

時雨にとって忘れられるわけのない。あの海の名前。時雨が条件反射で時計に目を向けた。

 

03:39

 

「ま、まさか―――」

直後―――

 

03:40

 

 

 

 

 

ワレ魚雷攻撃ヲ受ク、各艦ハワレヲ顧ミズ前進シ、敵ヲ攻撃スベシ

 

 

 

 

 

「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」

 

03:51

 

今度は艦隊の反対方向から爆炎が上がり始めた。敵艦隊からの砲撃であることは目に見えていた。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」

時雨の目からは大粒の涙が溢れてきていた。そしてその表情は恐怖に支配されていた。直後、山城の艦橋直下で火災が発生した。更に先程まで動いていた山城の三番四番砲塔が動きを止め、艦隊には次々に飛来した砲弾が命中していった。そして山城に4本目の水柱が上がった。山城の船体は傾斜し始め直後、扶桑と同様大爆発を起こした。そしてその高い艦橋が崩れ落ちていった。そしてその僅か数分後、山城は船尾から横転、その巨体を海中へと没した。

「山城ぉぉぉー!!!」

(あ~あ。山城、沈んじゃったね)

 

 

 

うわあああああああああー!!!!

 

 

 

時雨は大声で叫びながら泣き崩れてしまった。両膝を地に着き、両手で頭を抱えながら大粒の涙を流し続けた。目を閉じたくても、やはり閉じれない。そして、時雨の目に時間が映り込み―――

 

04:02

 

撤退を始めていた最上の艦橋に砲弾が命中した。座り込んでしまい、メインモニターは自分の視界には無いのに、まるで床そのものが光景を映し出しているようだった。

「も…もが、み……」

続くように艦首を失っていた朝雲が火災を起こし、更なる砲弾を浴び続け轟沈した。

「ぁ…あ、あさ…ぐ、もぉ……」

そして再び最上へと光景は移った。そこに映っていたのは空襲を受けていた最上だった。最上の艦上構造物は殆どが破壊され、酷い状態だった。そして、最上は1隻の駆逐艦が放った魚雷を受けそのまま轟沈し、続くように海面を漂っていた扶桑もその姿を海中に没した。

「あ、ああ……み、みん。なぁ……山城ぉ…扶桑ぉ…最上っ…満潮っ…朝雲っ…山雲っ……」

涙を止めることが出来ない時雨。そして、時雨の目はそれを捉えた。

 

 

 

たった1隻。撤退を続ける駆逐艦を

 

 

 

「な、何で……」

時雨は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

何でいつも僕だけが生き残るんだよッッッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

「なにが幸運艦だ!なにが佐世保の時雨だ!僕は、僕はそんなものなんか――――」

(欲しくなかった?)

「え?」

(じゃあ、キミもここで沈んでしまいたい?)

「なにを、言って―――」

時雨の表情が困惑した物になる。しかし声は続く。

(キミを幸運艦の呪縛から解放してあげようか?って言ってるのさ。今なら、山城や皆もそこにいるじゃないか)

時雨は目の前のスリガオ海峡を見下ろした。暗く光る、飲み込まれてしまいそうな、まっくろな雨が降りしきる海。

「僕は……僕、は…」

(飲み込まれてしまうといいよ。そうすればキミは、幸運艦の呪縛から永遠に自由だ!)

「ぼく………は………」

時雨の瞳から光が消え始めた。そして時雨の目の前に真っ白な手が伸びてきた。

(さぁ、この手を取るといいわ。そうして、深海へと堕ちてしまいなさい!)

時雨がその手をとった瞬間―――

(あ…む、ラ…さ…ぁめ?)

時雨の意識は深い海の底へと呑まれてしまった。

 

 

 

 

 

「うりゃあー!!」

雨の降る草原で、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがディノーバの超巨大ヒートサーベルを受け止めていた。その周りでは、ナラティブガンダムE装備とゼラクス、2.12ガンダムとタツミネ、ホロルドロッソ・イージスとガムルトがそれぞれ戦闘を行っていた。しかし先程、突如レーダーからエンドレインバレットとファバルクが姿を消し、夕立は非常に嫌な予感を感じていた。

(時雨、一体何処に行ったっぽい!?)

直後にディノーバが超巨大ヒートサーベルでビームサーベルを弾き返した。

「うわっ!」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアも弾き返され、ディノーバとの間に距離ができた。

「やっぱり、とんでもないパワーっぽぃ?」

夕立がユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの態勢を整えたと同時にディノーバがゆっくりと後退を始めた。

「え?何でこのタイミングな―――」

直後、ジェット推進のような音が夕立たちの耳に届いた。夕立、空母水鬼、山風、駆逐棲姫が一斉に上空へ目を向けると、遥か上空からファバルクが飛来し、その直後1機のガンプラが地上に降り立った。そのガンプラはゆっくりと体を起こし、姿を見せた。黒と白、そして紺色をした、長大なスナイパーライフルとバックパックに2枚の大型のシールド、右肩にはGNライフルビット、左肩にはGNシールドビットを装備していた。夕立には、すぐに分かった。

「し、時雨の機体!?何であんな姿に!」

以前の白、紺、グレーで彩られていたエンドレインバレットとは違う同一機体。すると、深海雨雲姫が言った。

「時雨が私の下僕になったからよ!時雨ったら、貴女たちが全滅する偽映像と西村艦隊の壊滅映像を見せたら、簡単に堕ちたんだから♪」

「村雨、酷すぎるっぽい!」

「何とでも言いなさい。時雨は、自分から(・・・・)深海へ墜ちたのだから」

「嘘っ?夜空がそんなこと!」

「何か言ったらどうなの?時雨」

「………僕は」

深海雨雲姫の言葉を聞いた真っ白な髪と深紅の眼、そして紫色の髪飾りをした時雨「深海化時雨」は言った。

 

 

 

ぼクはもウ、佐セボのシグれジャない!僕ハ開ホウされタンダ!!

 

 

 

 

 

 

サセボノシグレッテコウウンカンノジュバクカラッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「ア、アッハハハ…ジユウ。コレガホントウノジユウナンダ!!ボクヲシバルモノナンテナイ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホントウノジユウナンダッ!アハハ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙を浮かべながら狂ったように笑う深海化時雨の機体「ガンダムノットエンドレインバレット」は、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア目掛けて突っ込んできた。

「時雨ぇ!!」

 

夕立は、叫ばずにはいられなかった。

 

続く



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EP121 雨

突貫と同時にユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへ斬りかかったノットエンドレインバレット。夕立はすぐさまビームサーベルを構え、ノットエンドレインバレットのビームサーベルを受け止めた。

「くっぅぅ…時雨!こんな事止めてよ!なんで時雨と夕立が戦わないといけないの!?」

「……ネェ、ユウダチ」

「時雨!夕立がわかるなら、今すぐこんな事―――」

「ミンナヲノコシテシズムッテ、イッタイドンナキブンナノ?」

「え?」

「イイヨネキミハ、サイゴノヒトリニナルドコロカ…ダイカツヤクシテゴウチンシタンダシサ」

「時雨、一体何を言って―――」

「キミハサイゴニシズメテアゲル。ボクノアジワッタクルシミ、ゾンブンニアジワウトイイヨ!」

「わあっ!」

深海化時雨が叫ぶと同時にノットエンドレインバレットはユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを蹴り飛ばし、再加速。今度は2.12ガンダムへ向かって行った。

「春雨!」

夕立が叫んだ直後にノットエンドレインバレットのビームサーベルと2.12ガンダムのGNビームサーベルがぶつかった。

「クッ!このパワー、時雨の機体も深海細胞に侵食されたか!」

「ネェ、ハルサメ…キミハイイヨネ…タッタヒトリデシズンダンダカラ」

「何が言いたい!グウッ!」

2.12ガンダムのGNビームサーベルをどんどん押し込んでいくノットエンドレインバレット。

「ボクハネ、キミガウラヤマシインダヨ。ボクトハセイハンタイナシズミカタシタカラサ…」

「グッァ!(駄目だ!押し負ける!)」

「ネェ、オシエテヨ…タッタヒトリデシズムニハ、ドウシタライイノ?ネェ―――」

 

 

 

オシエテヨッ!!!

 

 

 

「しま―――」

直後、ノットエンドレインバレットは2.12ガンダムのGNビームサーベルを押し返した。ノットエンドレインバレットの勢いに圧され、バランスを崩された2.12ガンダムを何とか踏ん張らせようとした駆逐棲姫だったが、2.12ガンダムの足は地面との接地面が非常に少ないため、駆逐棲姫の奮闘も虚しく2.12ガンダムはそのまま地面に仰向けに倒れてしまった。

「ぐわっ!あ―――」

何とか起き上がろうとした駆逐棲姫の目の前に、ノットエンドレインバレットが現れた。ノットエンドレインバレットは2.12ガンダムに馬乗りになり、逆手に持ったビームサーベルを掲げると、何度も何度も何度も2.12ガンダムへ向けて突き刺した。

「ネェ…オシエテヨ――」

 

オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨ!オシエテヨッ!!!

 

しかし、深海化時雨が気づいた時には2.12ガンダムは残骸の山と化していた。駆逐棲姫は何を言うまでもなく、機体共々消えてしまった。

「ア…コワレチャッタ……ヒトリデシズムホウホウ…キケナカッタヨ……」

ノットエンドレインバレットはゆっくりと立ち上がり2.12ガンダムだった残骸を見下ろしていた。

「夜空……なんてことを…」

「夜空姉ぇ…」

「ア…ソウイエバモウヒトリイタッケ。ヒトリデシズンダイモウトガ」

「!!」

深海化時雨の言葉を聞いた山風は、咄嗟にノットエンドレインバレットへと向かって行った。

「深空!」

空母水鬼が止めようとしたが叶わず、山風のホロルドロッソ・イージスはノットエンドレインバレットに戦いを挑んだ。

「夜空姉ぇー!」

「………」

 

バチィィィ!!

 

ホロルドロッソ・イージスの右腕のビームサーベルとノットエンドレインバレットのビームサーベルがぶつかり、火花を散らした。

「ヘェ…ジブンカラキテクレタンダ。ヤマカゼ」

「これ以上、水鬼や、夕立姉ぇをやらせるわけにはいかない」

「ヤラセルワケニハイカナイ?ヨクワカラナイナ…ダッテ、キミガイチバンサイショニシズンダンジャナイカ」

「そうだよ。あたしは白露型(姉妹)の中で一番最初に沈んだ。怖かった。誰もいない海の真ん中で、たった1人で沈んでいくのが……」

「ジャアソノホウホウ、ボクニモオシエテ―――」

 

 

でもっ!!

 

 

「!?」

山風はその時、人生で初めて自身の意思で叫んだ。その言葉に驚く深海化時雨。

「でもあたしは、もう沈まない!あたしが大切だって言ってくれた水鬼の為にも―――」

 

 

 

 

 

あたしはもう絶対、沈んだりしないッ!!!

 

 

 

 

 

「………ダッタラ―――」

 

 

 

 

ハヤクシズムホウホウヲオシエロヨッ!!!

 

 

 

 

ノットエンドレインバレットは左腕をバックパックに回しもう1本のビームサーベルを抜き放つと、その勢いのままホロルドロッソ・イージスの右腕を斬り飛ばした。そして鍔迫り合いを強制的に解除され、抑える物が無くなったノットエンドレインバレットの右手のビームサーベルがホロルドロッソ・イージスの胴体中央へ向かって振り下ろされた。

「まだっ!」

咄嗟に身を反らしたホロルドロッソ・イージスの行動が功を奏し、ビームサーベルの刃は胴体中央の先端部だけを斬りつけた。しかし、身を反らしたホロルドロッソ・イージスへ向け、ノットエンドレインバレットの左脚がホロルドロッソ・イージスの右脇腹へ蹴り込んだ。

「うわぁぁぁぁぁ!」

その蹴りの勢いは凄まじく、ホロルドロッソ・イージスは弾き飛ばされてしまった。

「深空ぁ!!」

弾き飛ばされたホロルドロッソ・イージスの背後にナラティブガンダムE装備が飛び込み、ホロルドロッソ・イージスを受け止めようとしたが、2機はまとめて背後にあった岩肌に衝突してしまった。

「う、あ…す、水鬼?」

「だ、大丈夫?深空」

「う、うん。あたしは大丈夫だけど…」

山風がホロルドロッソ・イージスの状態を確かめると、機体各所に甚大な損傷を受けた赤色の表示が灯っていた。一方の空母水鬼のナラティブガンダムE装備も先程の衝撃を受け、機体全身が赤色表示となっていた。

「コンナトコロデシズマレチャコマルヨ。ヤマカゼ」

「よ、夜空姉ぇ…」

そこへノットエンドレインバレットが現れ、ゆっくりと身動きの取れない2人の元へ歩いていった。

「夜空、もうやめてよ!私たちが戦う必要なんてないはずでしょ!」

「オマエハダマッテテヨ。ボクハヤマカゼニヨウガアルンダカラ」

「夜空!」

空母水鬼の言葉は深海化時雨には届かなかった。そしてノットエンドレインバレットはビームサーベルを高く掲げ、深海化時雨は言った。

「サアオシエテヨヤマカゼ。ヒトリデシズムニハ、ドウスレバイイノ?」

「……教えない」

「エ?」

「あたしは絶対に教えない!夜空姉ぇはそうやって、自分の望みを他人に擦り付けてるだけでしょ!」

「………」

「それにあたし知ってる。夜空姉ぇは…時雨姉ぇは、あの夜をもう越えてるって!!」

「ッ!?」「っ!」

深海化時雨が驚いた顔をした。そして、動揺したのかノットエンドレインバレットの動きが一瞬だけ止まった。

「時雨ぇぇー!!」

直後、ノットエンドレインバレットの背後からユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが突撃を掛けてきた。慌てて反転したノットエンドレインバレットは咄嗟にビームサーベルを構えて防御態勢を取った。そして、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが右上段から繰り出した袈裟斬りを受け止めた。

「そうだよ時雨!時雨はもう、あの夜を越えてるっぽい!」

「ナ、ナニヲイッテ…ボクハサッキミタンダ!ミンナガ、ニシムラカンタイノミンナガシズンデイクノヲ―――」

「違う!時雨はもうあの夜を越えてる!2010年の秋、時雨たちは…西村艦隊は、あの夜を越えたんだ!」

「2010ネンノ…アキ?」

「夕立憶えてる!あの日、ボロボロになっても誰1人欠けず、7人は帰ってきた!その時、時雨は言った!」

 

 

 

 

 

 

 

 

止まない雨は…ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕立はこの耳でちゃんと聞いたよ!あの時の時雨の言葉、夕立は忘れてない!!

「ヤマナイアメは…ナ、い―――ウッ!」

夕立の言葉を聞いた深海化時雨は不意な頭痛に襲われた。右手が操縦桿から離れ、額へと移ったことでノットエンドレインバレットのパワーが一瞬だけ弱まり、その隙を見逃さなかった夕立はユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの全スラスターを全開で噴かし、ノットエンドレインバレットを押し返そうとした。

「おおおぉぉぉー!!!」

「ナッ!」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの動きに気づいた深海化時雨だったが、全ては遅すぎた。ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの全スラスター推力を乗せた突撃を真に受けたノットエンドレインバレットはその場に倒れてしまった。そして、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがその上に馬乗りになった。咄嗟にビームサーベルを捨て、起き上がろうとするノットエンドレインバレットの両腕をガシリと掴んだ。ノットエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが互いのスラスターを全開にし、取っ組み合っている。

「ナニヲスルンダゆうダチ!コレじャアやまかゼニキケないジャナイか!」

「いいや、どかないッ!!時雨が元に戻るまで、夕立はどかないよッ!!!」

「ボクハもうもトニモドってる!コレがホントウのボく―――」

「違う!今の時雨は、夕立の知ってる時雨じゃない!!目を覚ますっぽい時雨!夕立を―――」

 

 

 

夕立を1人にしないでぇッ!!

 

 

 

「ひと、リ、に……ウッ!ウァあァぁ…アああアアあアアアああー!!!

夕立の言葉を聞いた深海化時雨は更に頭を抱えて苦しみだした。しかし、ノットエンドレインバレットのスラスターは弱まることを知らず、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを押し返そうとしてくる。夕立の額に汗が流れる。

(あと1つ…あと1つ、何かあれば!!)

「まずいわね…仕方ないわ。行きなさい貴女たち!」

直後、深海雨雲姫の指示を受けたディノーバ、ガムルト、ゼラクス、タツミネが一斉にユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへ向かって行った。それに気づいた山風が叫んだ。

「夕立姉ぇ、危ない!!」

「あ――――」

そして、4機の攻撃がユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアに直撃する瞬間――――

 

 

 

 

うおおおぉぉぉぉぉー!!!

 

 

 

 

1機のガンプラが、ディノーバたちの前に高速で飛び降りてきた。そのガンプラは、両手で握りしめた大剣を地面に叩きつけ、巨大な砂埃を蒔き上げた。

 

やがて砂煙が晴れ、その中から光の翼を広げた赤いガンダムが立ち上がった。そのガンダムは、右手に握った大剣「アロンダイトカリバー」を正面へ突き付けた。

 

 

時雨たちを、やらせはしないよッ!!

 

 

そこにいたのは最上の駆るガンプラ「デスティニーガンダムリベリオン」だった。

「最上さん!!」

「大丈夫かい夕立!」

「夕立は大丈夫!でも、時雨が―――」

「モガ、み?」

朦朧とする意識の中で、時雨は最上の名を呼んだ。そして時雨の目の前、正面モニターに最上の顔が映った。

「時雨!大丈夫なら返事するんだ!」

「もがミ…何デ、キミはサッキぼクノ目ノ前…で…シズんだハ、ず……」

「何言ってるんだよ時雨。ボクが沈む訳ないだろ?」

「最上は…沈ンデ、なイ?じゃア、アの光ケイは……」

「戦闘中に居眠りでもしてたのかい?ボクはこの通り、ここに居るじゃないか」

「最上は…最上は、沈ンで、ない?」

「無事なら早く立つんだ!時雨の諦めの悪さは、ボクたち(西村艦隊)の中でも随一だった。スリガオ海峡を越えた日だって、時雨は最後まで一番諦めようとしなかったの、ボクは覚えてるよ?

「っ!!」

その瞬間、時雨の目の前に暖かい光が差し込んだ。直後、時雨の脳裏にスリガオ海峡を越えた日(あの日)の光景が映し出された。涙を拭いながら笑みを浮かべる扶桑と山城。その2人に抱きしめられながら泣きじゃくる自分。それに釣られるように泣いている朝雲と山雲、満潮。そしてその傍らで涙を堪えながら見守っている最上。

 

 

 

ああ…思い出した……あの日、僕たちは……越えたんだ―――

 

 

 

 

 

スリガオ海峡(あの海峡)を―――

 

 

 

 

 

あの夜を!

 

 

 

 

 

そして時雨は目を覚ました。

 

 

 

 

 

「ごめん夕立」

「え?」

「迷惑かけて、本当にごめん」

「時雨!」

直後、ノットエンドレインバレットの色が元の色へと戻っていった。

「もう、逃げたりしないよ。約束する」

「……もうっ、お寝坊し過ぎだよッ」

「あはは…夕立に言われたんじゃ、何も言い返せないや」

そして、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアとガンダムエンドレインバレットはゆっくりと立ち上がった。

「最上、ありがとう。僕の目を覚めしてくれて」

「え?何のこと?」

「ううん。なんでもない…さあ、行こう。もう一度、皆で戻る為に!」

「勿論さ!」「ぽいッ!」

3機のガンダムは目の前の4体の獣を見据え、そして上空のファバルクへ睨みを利かせた。

「まさか、立ち直るとはね…でもいいわ。今度こそ、確実に沈めてあげる―――」

 

 

 

 

二度と浮かび上がることの出来ない水底にねッ!!!

 

 

 

 

「………果たしてそうかな?」

「なにっ!?」

直後、ファバルクの背後から黄色と緑の渦巻くビームが飛来した。ファバルクはそれを急上昇で回避し、背後を振り返った。そこにいたのは、右のメインカメラと左側のV字アンテナを失い、右腕、左腰、左脹脛、右膝、右足のフレームが剥き出しになり、左側のウイングバインダーを失った、連結状態のヴァリアブルライフルを機体前方に構えた「ガンダムエクストリームアウェリアス」だった。

「黒野深海!!」

「これだけうちの家族に手を出しておいて、ただで済むと思うなよ?深海雨雲姫」

「深海!」「深海提督さん!」

「すまない。来るのが、少し遅れた」

そして、時雨たちの元へビスマルクとプリンツも到着した。

「最上!あんた1人で突っ込むなんて、撃墜されたいの!」

「まあまあビスマルク姉さま。こうして無事だったんだし、いいじゃないですか」

「フンッ!後で何か奢りなさいよね最上」

「あはは、わかったよ」

少しの間談笑をした最上とビスマルク。しかし、その光景を見た深海雨雲姫は苛立ちを隠しきれずにいた。

「随分と余裕ぶってくれるじゃない…そういうの、凄く虫唾が走るわ」

「それは夕立も同じっぽい!今度ばっかりは夕立、激おこっぽいッ!!」

「そういう所が腹立つのよ!!いいわ、皆まとめて沈めてあげる。跡形もなく、木っ端微塵に切り刻んで―――」

 

 

 

 

 

闇の底に沈めてやるッ!!!

 

 

 

 

 

ファバルク、ディノーバ、ガムルト、ゼラクス、タツミネが一斉に動き出し、時雨たちへと向かって行った。時雨はゆっくりと目を閉じ―――

「今度こそ決着をつける―――」

 

 

 

 

僕たちみんなで、帰るために!!

 

 

 

 

赤く染まった左目と青い右目を開いて叫び、ファバルクへと向かって行った。

 

続く



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EP122 雨の中で

深海雨雲姫は、時雨たちよりも数秒先に動いたエクストリームアウェリアスへビームを撃ち先制攻撃を仕掛けた。

「沈みなさい!」

「…無駄だ」

しかしエクストリームアウェリアスはそれをいとも簡単にかわし、地上からユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアと共にファバルクへと向かってくるエンドレインバレットとすれ違った。

「深海、どこへ行くの!?」

「お前たちは村雨を倒せ。他は任せろ」

「わかった!行くよ、夕立ッ!!」

「ぽいっ!!」

そう言って深海はエクストリームアウェリアスを中破したホロルドロッソ・イージスとナラティブガンダムE装備の元へ向け、時雨と夕立は深海雨雲姫に戦いを挑んだ。

「同時に行くよ夕立!」

「任せるっぽい!」

そしてエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは同時に二手に分かれ、二方向からファバルクへ攻撃を仕掛けた。ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはビームサーベルを両手に斬りかかり、エンドレインバレットもまたビームサーベルで斬りかかった。

「鈍い!」

しかし、ファバルクは即座にMA形態に変形し高速で飛び上がった。2機の攻撃は空を斬り、それぞれがファバルクのいる方向を探った。

「くそ…やっぱり早すぎる!」

「っ!時雨、見つけたっぽい5時の方向っぽい!」

「あ!見つけた!」

時雨と夕立の視界に旋回をするファバルクの姿が映った。

「よーし、なら一気に決めに行くっぽぃ―――」

「待つんだ夕立!あの速度差じゃ相手するのは無理だ!百里と初戦闘したバルバトスみたいになってしまう!」

すぐさま行動しようとした夕立を制止した時雨。しかし、当の本人はかなり冷や汗が流れていた。夕立はこういう時に限って突っ込みたがる癖がある。時雨は、唾を呑み込みながら夕立の返事を待った。

「わかったっぽい!」

返ってきたのはまさかの了解。の言葉だった。時雨は思わず、え!と驚きの声をあげた。

「どうしたの時雨?」

「…意外だな。って思って」

「ぽい?」

「いつもなら忠告無視して突っ込んでいくからさ…」

「今回は相手が相手だもん!時雨の言うこと、聞いておかないとやられちゃう気がするから…」

「そっか。なら、互いに背中合わせで待機しよう。死角をなくして、すぐに対応できるようにするんだ!」

「了解っぽい!」

そしてエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは互いに背中を預けるように陣形を組んだ。それを見た深海雨雲姫は舌打ちをした。

「チッ!その仲良しこよしを見てると、本当に腹がたつわッ!!

ファバルクは旋回を終え、2機に突っ込んできた。

 

一方、大破したホロルドロッソ・イージスとナラティブガンダムE装備の元へ向かった深海は、移動しながら最上、ビスマルク、プリンツに指示を出していた。

「ビスマルクとプリンツは蛇をやれ、最上は象だ!まずは3分持ちこたえてくれ!」

「アドミラル、あんたはどうすんのよ!」

「母さんと深空の撤退を援護する!手負いの2人を逃がしたら、俺はワイバーンと恐竜を相手にする。後は任せたぞ、お前ら」

「わかったよ深海提督!」

「わ、わかったわよ!」

「了解です!」

深海の指示を受けた3人は、それぞれが相手をする敵の元へと向かって行った。そして深海は、岩盤から何とか這い出てきたホロルドロッソ・イージスとナラティブガンダムE装備の元へ到着した。

「深空、母さん。大丈夫か?」

「あ、あたしはまだ動ける…でも、水鬼のガンプラが」

「ごめんね深海。私のは動かせそうにないよ」

「わかった。深空、お前は母さんのガンプラを突撃形態で抱えたまま撤退しろ。大鳳から、総撤退の通信が入った。急いでくれ」

「え?でも、それだと深海にぃにと夜空姉ぇは――」

「俺たちのことはいい。早くしろ、ビスマルクたちが敵の足止めをしている間に撤退するんだ」

「にぃに……うん、わかった!行くよ水鬼!」

「深海……気を付けてよね」

「誰にもの言ってるんだよ母さん………さあ行け!!」

「へ?わあああー!!」

深海がそう言った瞬間、エクストリームアウェリアスは大破したナラティブガンダムE装備を上空へと放り投げた。そして合わせるようにホロルドロッソ・イージスがジャンプ、突撃形態に変形しナラティブガンダムE装備に組み付き出口方面へと向かって行った。それに続いてエクストリームアウェリアスも飛び上がり、ホロルドロッソ・イージスの後方に着いた。しかし、しばらく進んだ所でエクストリームアウェリアスのレーダーがゼラクスとディノーバの機影を捉えた。2機は、左右からエクストリームアウェリアスを挟み込む様に向かってきていた。

「にぃに!」

「やらせるかぁー!!」

エクストリームアウェリアスは残っていた4基のアウェリアスウイングを射出し、ゼラクスとディノーバに牽制を掛けた。そして振り返りながらヴァリアブルライフルを構え、迎撃の構えをとった。しかし、4基というアウェリアスウイングの数でアウェリアスウイングよりも早く動く巨大ガンプラを相手取ることは出来ず、ゼラクスはアウェリアスウイングを越える速度で攻撃を突破し、ホロルドロッソ・イージスに迫った。

「ターゲットロックオン!墜ちろぉぉー!!」

左手の長銃身モードのヴァリアブルライフルの照射をゼラクスに向け放つエクストリームアウェリアス。残念ながらヴァリアブルライフルの照射ビームはゼラクスの宙返りで回避されてしまったが、ゼラクスの突撃を防ぐ事には成功した。しかし反対側からディノーバがホロルドロッソ・イージスに迫ってきた。

「そこだっ!」

咄嗟にヴァリアブルライフルをディノーバへ向けて放ったエクストリームアウェリアス。ヴァリアブルライフルのビームは突き進んできたディノーバの足元に直撃した。足元の地面が抉られ、飛び斬りを繰り出そうとしていたディノーバは地面を踏み外し体勢を崩してしまった。深海はその隙を突き、ゼラクスへ向けて両手のヴァリアブルライフルを連射した。ゼラクスはこれらを回避、命中弾をだすことは出来なかったがその隙を突いて突撃形態のホロルドロッソ・イージスは草原フィールドの端に辿り着くことに成功、最初にナラティブガンダムE装備がパージしたAB装備の残骸を横目にエリアを離脱していった。

「ちゃんと帰って来てよにぃに!」

その言葉を残し、山風と空母水鬼は戦闘領域からの脱出に成功した。

「気を付けてな。深空、母さん」

そう言った深海の前に、ゼラクスとディノーバが立ちふさがった。

「さあ来いよ。相手してやる」

ヴァリアブルライフルを連結させ、右腰からビームサーベルを抜いたエクストリームアウェリアスは左手のビームサーベルを前へと突き出した。

 

そして最上はアロンダイトカリバーを右手に、高エネルギービームライフルを左手にしガムルトに攻撃を仕掛けていた。

「そこだ!」

高エネルギービームライフルをガムルトに向けて放つも、ガムルトの強靭な表面装甲には歯が立たず、次々に打ち消されていった。ガムルトも対空弾幕をばら撒き、デスティニーガンダムリベリオンを寄せ付けようとしない戦いぶりを見せていた。

「くそぉ、なんて弾幕だ。僕たちが昔飛ばしていた艦載機たちの気持ちが少しわかった気がするよ……なら動き回った翻弄するまで!」

デスティニーガンダムリベリオンは光の翼を展開。ガムルトの周囲を高速移動を行い、ガムルトの隙を伺った。更に、光の翼が残す残像による副次効果も相まってか、深海化海風の視界に映るレーダーには複数のデスティニーガンダムリベリオンの姿が映り、深海化海風は少し焦りを見せ始めていた。

(弾幕の濃度は変わらないけど、弾が飛んでくるところが段々バラけてきてる。この調子で続けていけば!)

最上は更にアクロバットな動きでガムルトを翻弄した。そして、デスティニーガンダムリベリオンがガムルトの後方に向かって移動したとき、最上はあることに気づいた。

(あれは関節部分か?………そうか!いくら装甲が強靭でも装甲がない箇所なら!)

最上は光の翼を展開した状態でその場を通り過ぎ、再びガムルトの上空方向へ移動した。

(だけど、敵にバレるわけにはいかない。一発必中で命中させないと!そして恐らく、ビームライフルとか長射程ビーム砲じゃ駄目だ。もっと断続的に、ビームをぶつけ続ける必要がある!)

「なら!」

最上は高速移動を止めることなく高エネルギービームライフルを武装スロットの選択から外した。デスティニーガンダムリベリオンがビームライフルを左腰のマウントラッチに取り付け、更に高速移動。最上は徹底的にこちらの手札を読ませないように行動していた。ガムルトが放つ対空弾幕をかわしながら、ガムルトの周囲を更に右往左往。途中、何度かガムルトが振り回してきた鼻に当たりそうにもなったが、それらも全て回避しチャンスを待った。そしてチャンスは来た。ガムルトの上空から右側方向へ向けて降下した時、ガムルトの対空機銃が全て上を向いたのだ。

「今だ!!」

最上はデスティニーガンダムリベリオンをガムルトの後方へ向かわせながら、武装スロットのビームサーベルを選択した。デスティニーガンダムリベリオンのフラッシュエッジ2ビームブーメランのブーメランとしての機能を解除した状態で使用するモードだ。そしてガムルトの右後方に回り込んだ最上は秒単位の中で照準を合わせ、ガムルトの右後ろ脚の関節部へ向けてフラッシュエッジ2を投擲した。

「いっけぇー!!」

ブーメラン機能を解除したフラッシュエッジ2は弧を描くことなく真っ直ぐにガムルトの右後脚の関節部へ進んでいき、そして装甲の施されていない関節の真後ろに直撃した。ビームブーメランの刃は深々と関節へと突き刺さり、直後、ガムルトは大きく体勢を崩した。

「やった!この調子でもう1本のフラッシュエッジも当ててみせる!」

しかし、右後脚の関節が動かなくなったとは言え、ガムルトの対空機銃は健在。

(一度見せた戦法に相手も警戒してくる筈だ。次はさらに厳しくなるはず―――)

「―――って、うわぁ!!」

とたんにガムルトは何かを考えている訳でもないように突如暴れ出した。残った3本の脚でその巨体と鼻を振り回した。まるで、身体に纏わり着いた異物を振り落とそうとしているとしているような光景だった。

「な、なんだいきなり―――」

「――――クださイ」

「通信?いったい誰が―――」

「やめテクダさイ…ムラさ…めネ…エサん」

「この声って……海風!?」

 

それと同時刻、上空でエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアと戦っていたファバルクは突如その右腕をガムルトの方向へ向けていた。

「何をしているの海風?さっさとそのハエを始末しなさいよ?」

唐突に入った通信を聞いた時雨は思わず深海雨雲姫に問い詰めた。

「村雨!一体何をしているんだ!!」

深海雨雲姫は怒った様子で答えた。

「何って、出来ない子(海風)を躾けているのよ。あんな小うるさいハエ1匹墜とせないんだから当然でしょ?」

「う、海風に何をしたんだ!」

「深海細胞の侵食を更に進めたのよ。ほら、早くしないと残った自分の意識全部なくなっちゃうわよ?」

「アガッ―――ガッ!ワタシが、ワタシガキえ…て―――」

苦悶の表情を浮かべる深海化海風。更に深海雨雲姫は別の場所で戦っていた深海化五月雨と深海化白露、深海化江風にも同様に事を行い始めた。それと同時に、タツミネ、ゼラクス、ディノーバもガムルトと同じように暴れ出した。

「あんたたちも何やってるよの?さっさとそいつらを沈めなさいよ」

「む、ムラサめ……や、やメテ…クる、シイ…よ」

「アグッ―――ダ、ダめ…コレいジョうはヤメ…テくださ、イむらサメネエさん…」

「もう、ヤメテくレ……ムらさめノあ、アネキ―――アガァッ!」

「な、なに?いきなり暴れ出したわよこいつ!」

「一体何が起こっているの!?」

目の前で突如暴れ出したタツミネに動揺するビスマルクとプリンツ。そして、姉妹たちの悶絶する声を耳にした時雨は、操縦桿を今までに感じたことのない怒りで強く握りしめた。しかし同時に、時雨は怒りで震える右腕をグッと抑え込んだ。

(駄目だ。怒りを抑え込まないと、僕はまた深海化してしまうかもしれない!)

 

 

 

怒りに呑まれるな!!

 

 

 

時雨は強く、強く心の中で叫んだ。だが、その時だった――――

「隙だらけだ」

そう言い放った直後、ゼラクスが巨大なビームサーベルの縦斬りによって一刀両断された。頭頂部から、尻尾の先までを真っ二つにされたゼラクスはそのまま地面に倒れ伏せ、爆散した。

「なに!?」

更にその巨大なビームサーベルは、続け様に暴れ回っていたディノーバの胴体を背中から輪切りにしてしまった。胴体中央で真っ二つにされ支える物を失った前半身は地面に崩れ落ち、綺麗な両断面がくっきりと見えた直後、ディノーバの後ろ半身も地面に倒れ、爆散した。しかし、爆発と同時にビームサーベルのグリップも爆発四散してしまった。

「流石に負荷を掛け過ぎたみたいだな」

「い、一体何が―――」

「戦闘の最中に味方の調教とは…天才的なマヌケだな」

爆炎の中から姿の現したのは深海のエクストリームアウェリアスだった。

 

続く



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EP123 快晴への一撃

僅か数秒でゼラクスとディノーバの2機を一刀のもとに倒してしまった深海に、流石の深海雨雲姫も動揺を隠せなかった。

「な、何が起きて―――」

「教えてやるよ深海雨雲姫」

「!?」

 

 

 

その程度の心理攻撃など無意味だ

 

 

 

「な…なんだと」

「さあ、終わらせるぞ」

深海はヴァリアブルライフルをガムルトへ向けると、そのまま引き金を引いた。ヴァリアブルライフルの黄色いビームがガムルトへ向かって飛んだが、ガムルトの右前脚の装甲の表面を少し溶かしただけとなった。しかし、深海はそこで止まらなかった。エクストリームアウェリアスをガムルトへ向けて突貫させたのだ。

「ちょっ!深海提督!?」

「どけ最上!」

最上のデスティニーガンダムリベリオンを強引にどかせた深海はアウェリアスウイングを展開し、ヴァリアブルライフルに取り付けた。そして、暴れ回るガムルトの零距離まで接近すると片手で構えたヴァリアブルライフルを、先程装甲表面が少しだけ溶けた部分へ向けた。そして躊躇うことなく引き金を引いた。装甲の薄くなった部分へアウェリアスウイング装備ヴァリアブルライフルの零距離射撃を受けたガムルトの装甲は耐えられず遂に貫通を許した。ヴァリアブルライフルのビームは右前脚から、左後ろ脚へ向かって貫通したが、既にその場にエクストリームアウェリアスの姿はなくガムルトの上空で再びヴァリアブルライフルの引き金を引いた。そのビームは先程の右前脚から左後ろ脚へ貫通し膨れ上がった背中の装甲へ向かって行き、再び貫通。今度は背中から腹部まで貫通し、ガムルトはその巨躯を大爆発させ爆散した。しかしその時既に、エクストリームアウェリアスの姿はガムルトの上空にはなかった。

「何処に―――」

深海雨雲姫はエクストリームアウェリアスの姿を一瞬のうちに見失ってしまった。直後、GN-XVとパワードジムガーディアンが同時に全ての射撃武装をタツミネに向けて放った。

「まったく!またあいつの手伝いをされるなんて、腹立つわ!手柄寄こしなさいよ!」

「でも、こうすることしか出来ませんよビスマルク姉さま!」

「わかってるわよ!」

GN-XVとパワードジムガーディアンの全射撃武装による一斉射を受けた苦しみにもがくタツミネは、爆炎の中へ消えていった。するとGN-XVはGNビームサーベルを抜くと、ビーム刃を形成させずに空へと放り投げた。

「ほら使いなさいよ!」

「流石だなビスマルク、プリンツ。後は任せろ」

そこへ上空の雲を突き抜け、1機のガンプラが降りてきた。

 

 

エクストリームアウェリアスだ

 

 

エクストリームアウェリアスは地面すれすれの所で一気にGN-XVとパワードジムガーディアンの方向へ方向転換し、GN-XVが放り投げたGNビームサーベルを掴むとそのままビーム刃を出力。その出力を暴発一歩手前まで上げた。エクストリームアウェリアスの握りしめたGNビームサーベルは長く非常に太いビーム刃を形成し、エクストリームアウェリアスはそのGNビームサーベルを大きく振りかぶると、そのまま右上段から一気に振り下ろした。そのビーム刃は爆炎すらも斬り裂いて、タツミネを頭から尻尾の先までを斬った。そして振り切ったと同時にGNビームサーベルを手離したエクストリームアウェリアスはそのまま空中で身を捻りながら飛ぶとヴァリアブルライフルを出力最大でタツミネの上空で薙ぎ払った。GNビームサーベルによる両断と、ヴァリアブルライフルの薙ぎ払いをくらってしまったタツミネはそのまま姿を残すことなく消滅してしまった。エクストリームアウェリアスは、そのまま地面に着地すると上空のファバルクを見据えた。

「あとはお前たち2人の戦いだ」

この間、僅か1分の出来事だった。

 

続く



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EP124 雨のち、晴れ

「あとはお前たち2人の戦いだ」

エクストリームアウェリアスからの通信が時雨と夕立、2人の耳に届いた。時雨と夕立の2人はモニター越しにそれぞれの顔を見合わせ、コクリと頷きファバルクへ視点を移した。しかし一方で、たった1分で全ての姉妹たち(友軍機)を失った深海雨雲姫は動揺を隠せずにいた。

「嘘…嘘よ…こんなの嘘よッ!!」

「………」

深海雨雲姫の言葉に深海は耳を貸すだけで、何も答えようとしなかった。しかし、深海からしてみれば深海雨雲姫の反応は嘘まみれでしかなかった。

「白露…五月雨…海風…江風………よくも―――」

「………」

 

 

 

よくも私の姉妹をッ!!

 

 

 

ファバルクが動き出そうとした瞬間、今まで蚊帳の外だった時雨のエンドレインバレットがファバルクの進行方向へ向けてエンドレインライフルを放った。エンドレインライフルから放たれたビームはファバルクのメインブレードアンテナの部分の先端を掠めた。深海雨雲姫はハッとして、エンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの方向へ顔を向けた。

「なに?私の邪魔する気なの?」

時雨は汗を垂らしながら、唾を飲み込んだ。

「姉妹が全員やられて、何も感じないの?なんでみんなの敵討ちの邪魔するの?」

「……村雨」

「あんたも私の姉妹に加えてあげようって思っていたけど、もういいわ……あんたなんかいらない」

 

 

 

 

塵も残さず消滅させてあげるッ!!!

 

 

 

 

逆上した深海雨雲姫は、ファバルクをMA形態に変形させると超高速でエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへ向かって来た。

 

沈めぇぇぇー!!!!

 

怒りに任せた槍状のバインダーによる刺突攻撃。MA形態のファバルク自身の回転と速度が重なり、直撃を受ければ一撃撃破は必至の攻撃を前にしてエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは即座に回避の態勢に入った。エンドレインバレットはそのままファバルクから距離を取ろうとしたが、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは違った。

「夕立!?」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはその場でファバルクの刺突攻撃を機体を左にスライド移動させることで回避したのだ。そして、ファバルクがユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの正面を通り過ぎる瞬間、夕立は目にも止まらない速さで手元の武装スロットを操作し大型ビームサーベルを選択した。両肩のビームキャノンの砲身部がパージされ、一瞬にして巨大なビーム刃形成された。そして、砲身部を既に上方へ向けていた夕立はそのまま砲身の基部を回転させ、両肩の大型ビームサーベルを一気に振り下ろした。

「っ!!」

「くらうっぽぉーい!!」

深海雨雲姫がユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの動きに気づいた時には振り下ろされた大型ビームサーベルは、ファバルクの槍状の右バインダーの表面に直撃していて槍状の先端を斬り落としてしまっていた。ファバルクはその場で機体のバランスが崩されてしまい、少し落下してしまった。しかし、すぐに態勢を立て直してMS形態へと変形すると、方向転換しユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへと向かって来た。

「お前!お前!お前ぇー!!」

「やらせないっぽい!」

ファバルクは右手でビームサーベルを抜き放つと、その要領で居合斬りをユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアへ放った。ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは手にしていたエクスカリバー対艦刀のビーム刃でその居合斬りを受け止め、鍔迫り合いに持ち込んだ。

「よくも!よくも私のガンプラを!!」

「違うっぽい!村雨が使っているその機体は、深海棲艦の力で溢れてる!だから村雨の機体はガンプラじゃない!

「黙れ黙れ黙れッ!!」

「クウッ!」

ビームサーベルを更に押し込んでくるファバルクにユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは少しずつだが押し返され始めていた。

「夕立!」

そこへビームサーベルを掲げたエンドレインバレットが向かって来た。ファバルクへ向けて右上段からビームサーベルを振り下ろしたエンドレインバレットだったが、ファバルクはそれを高速で回避し、再びMA形態に変形し離脱していった。

「待てッ!」

それを追うようにエンドレインバレットもその場を離脱していった。その後、雨空に青い閃光と赤い閃光が何度にも渡って衝突を繰り返していった。

「もう止めるんだ村雨!」

「こんな時にまでお姉ちゃんぶりやがって!その口を閉じやがれッ!!」

「君を止めるまでは、絶対にやめない!絶対に止めてやる!!」

「ほざけぇぇぇー!!!」

MS形態に変形したファバルクは残された左のバインダーから赤い照射ビームを放ってきた。しかし時雨はその照射ビームを上昇して回避し、ファバルクへと斬りかかった。

「はあぁぁぁー!!」

「クソがぁぁー!!」

再び右上段に構えたビームサーベルを袈裟斬りで放つエンドレインバレット。間合いに入られてしまったファバルクはそれをビームサーベルで受け止め、鍔迫り合いになった。

「なぜこんな事をする!僕たちみんなを深海細胞で操って、それが本当の姉妹だって言うのか!?」

「それが理想の姉妹なのよ!私という絶対的な(上位者)が、無能な(下級者)を導く!これが真の姉妹なのよ!」

「っ!ふざけるのも体外にしろ村雨!そんな薄っぺらな関係、姉妹なんて言わない!そんなのはただの支配だ!!」

「黙れ黙れ!いつもいつも私の事を不愉快にさせるような奴は、絶対的な力でねじ伏せられてしまえ!!」

「ぐうっ!」

そして今度はエンドレインバレットが押し返され始めた。何とか必死に堪えるエンドレインバレット。

「どうだ!!さっきまでの威勢はどうしたんだよ!跳ね返してみろよ!」

「グッ!くうぅぅぅッ!!あああぁぁぁぁー!!!」

「なっ!!」

だが、エンドレインバレットはそこからファバルクを押し返していった。

 

 

 

うおおぁぁぁぁああああー!!!!

 

 

 

「な、なにぃッ!?」

「―――認めない」

 

 

 

 

 

そんな支配による姉妹を、僕は絶ッッ対に認めないッッッ!!!!

 

 

 

 

 

はあああああぁぁぁぁー!!!!!!

そしてエンドレインバレットはファバルクを完全に押し返した。鍔迫り合いの亀甲が破られ、弾き飛ばされたファバルクへ向けエンドレインバレットは全力の縦斬りを放った。その縦斬りはファバルクのビームサーベルを握っていた右腕を根元から斬り落とした。ファバルクはそのまま地上へと墜落していったが、直後左の槍状のバインダーが正面へ向けられた。

「っ!!」

 

 

 

舐めるなぁぁぁー!!!!

 

 

 

そして槍は撃ち出され、エンドレインバレットの右腕と右側の首元、右のアームド・アーマーDEを抉り取り、飛び散った機体の破片によって右のメインカメラまでをも使用不能としてしまった。

「うわぁぁぁー!!」

「時雨ぇぇー!!」

攻撃をもろに受けたエンドレインバレットもまた地上へと急速に落下して行ったが、そこへユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアが駆け付けた。ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは落下するエンドレインバレットを何とか支え、地上への落下を防いだ。

「時雨!時雨!応答して!」

「う、うん。僕は、大丈夫だよ」

「よかったぁ…」

地上では墜落したファバルクが舞い上げた砂煙で覆われていた。しかし直後、その砂煙の中心から赤いビームが撃ち出された。夕立は咄嗟の判断でエンドレインバレットを抱えたままこれを躱したが、同時にこのビームを放った主、ファバルクが未だに健在であることを認識した。

「やってクレる、ジャナイ…でモネ、まだファばるクはシズマナい―――」

 

 

 

 

シズマナイノヨッ!!!

 

 

 

 

「村雨っ」

「マダシズマナイ。アンタタチヲケスマデ、ファバルクハゼッタイニシズマナイ!!」

そして砂煙が晴れていき、中から大破しボロボロとなったファバルクが現れた。ファバルクは上空のエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを見据え、再び左のバインダーを上空へと向けた。

「また来るっぽい!」

「シズメェェェ!!!」

再び照射ビームがエンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを襲った。そして今度は夕立の回避が間に合わず、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアは左脚を、エンドレインバレットは更に両脚を失ってしまった。

「時雨!!」

「くそぉ…このままじゃ、こっちがやられてしまう…どうすれば……」

「…っ!狙撃!」

「え!?」

「もう狙撃で村雨を倒すしかないっぽい!夕立の機体じゃ、ここから有効打は当てられない!なら、時雨の機体で狙撃するしかないっぽい!」

「夕立……わかった、やってみるよ!」

そう言った時雨は残された左腕を腰裏へと回し、エンドレインライフルを取り出した。エンドレインライフルのグリップをエンドレインバレットの左手が握り、地上のファバルクへと銃口を向けた。だが―――

「…駄目だ。照準が、定まらないっ」

時雨の利き手と利き目はどちらも右だ。勿論狙撃の時にライフルのグリップを握るのも右、スコープを覗く目も右だ。しかし、エンドレインバレットに残されているのは左のメインカメラと左腕、エンドレインライフルを持つ左腕は大きくブレてしまい、左目で覗いたスコープのロックオンカーソルはなかなかファバルクに合わさらなかった。

「不味い…このままじゃ―――」

夕立も手伝うっぽい!

「え!?」

そう言った夕立の言葉に合わせるように、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの右手がエンドレインライフルの銃身の中程にあるサブグリップを掴んだ。すると、先程までの左腕のブレが治まり、スコープのロックオンカーソルがファバルクに重なった。

「夕立…」

「ケリを付けるっぽい。2人で…一緒にッ!!」

「……うん!!」

エンドレインバレットの左手と、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの右手で支えられたエンドレインライフルのロックオンカーソルは「ピピピピピピピ!」という音をたてファバルクへ完全に重なり、照準が固定された。だがしかし、ファバルクの照準がエンドレインライフルの照準より先に2機をロックオンしていた。時雨と夕立の耳にロックオンアラートが鳴り響いた。

「コレデ、オワリヨッ!!!」

そして、深海雨雲姫が引き金を引こうとした直後―――

「サセ…なイ、よ!」

「ナ、ナニ!?」

深海雨雲姫の操縦スペースに突如、真っ黒のボブヘアーと赤いカチューシャを付けた時雨たちと同じセーラー服を着た水色の目をした少女が飛び込んできて、深海雨雲姫に組み付いた。その人物は深海雨雲姫を抑えながら通信回線を開くと、時雨と夕立に言った。

「ハヤくウって!」

「「白露っ!!」」

そこに映っていたのは、姿は少し違うがまさしく2人の姉である白露だった。白露は暴れる深海雨雲姫を必死になって取り押さえようとしていた。

「シラツユ!ナニヲスルノヨ、サッサトドキナサイ!」

「どかなイ!しぐレトゆウダチがムラさメをタオすまでハ、ゼッたいにハナさない!」

「ハナセ!ハナセェェッ!!!」

「――時雨ッ!!」

「―――ああッ!!!」

エンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの腕に支えられたエンドレインライフルの銃口が淡く光り出し、やがて1つの小さな光弾を形作った。

 

そして、時雨の赤い左目がファバルクの胴体中央に重なった時―――

 

 

 

 

止まない雨はない――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、雨は止むんだッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の腕に支えられたエンドレインライフルの銃口から一筋の閃光が撃ち出され――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウソダアァァァー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その閃光は、異形の姉妹の長(ファバルク)の胴体中央を撃ち抜き、雨雲の姫は光の中へ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて空は晴れ、雨は上がった。

 

続く



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EP125 姉妹を助ける為に

ファバルクを撃破し安堵する時雨と夕立。エンドレインバレットとユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアはゆっくりと地上に降り立った。そこへエクストリームアウェリアスと、GN-XV、パワードジムガーディアン、デスティニーガンダムリベリオンが集合した。

「夜空、大丈夫か?」

「もうエンドレインバレットは駄目だ。戦えないよ」

「わかった。なら撤退するぞ、このままここに居ても何も出来ないからな」

「待ってよお兄ちゃん!電と白雪を置いていくなんて―――」

「電と白雪はもうプラフスキー粒子の範囲外にいる。もう追うことは出来ない」

「え?それってどういう―――」

「とにかく撤退だ。ビスマルクとプリンツ、最上と俺で夕立と夜空を援護しながら撤退するぞ。よし、急ぐぞ」

「わかったわ!アドミラル、大船に乗ったつもりでいなさい!」

「ああ。頼りにしてるぞビスマルク」

そして深海たちは撤退を始めた。

 

一方、大鳳たちネェル・ミネルバより撤退した部隊メンバーは殆どがプラフスキー粒子精製工場の外への避難を完了していた。大鳳たちが撤退を完了してからしばらく経って、加賀や瑞鶴なども撤退を完了した為、明石は瑞鶴たちに掌サイズの「22号水上電探」の形状をした特殊電探を渡していた。

「明石さん、これは?」

「私が提督に頼まれて作った特殊電探です。有機生命体にのみ反応する電波を360度照射して、反応があればこのモニターに光点で表示されます」

そう言って明石は自撮り棒の様な手持ち部分と、先端に円形の画面が取り付けられて物を瑞鶴たちに手渡した。

「これがあれば翔鶴姉ぇを探せるんですね!」

「はい!でも、急いだほうが良いかもしれません。何か、嫌な予感がします」

「わかったわ!陽炎、不知火、急ぐわよ!」

「ええ!」「了解です」

「提督には私から伝えておくから、気を付けてね瑞鶴さん」

「ありがとうございます大鳳さん!行くわよ!」

そう言って瑞鶴と陽炎、不知火は再びプラフスキー粒子精製工場の中へと走っていった。

 

一方の深海たちは大破したエンドレインバレットを抱えたユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを護衛しながら出口を目指していた。

「夜空、夕立。出口に到着したら、明石から電探を受け取って白露たちを探しに行け」

「え?」

「その為にお前たちはここに居るんだろ?だったら、その心に従え」

「お兄ちゃん……わかった、ありがとう」

「夕立からもお礼を言うっぽい!深海提督さん、ありがとう!」

「気にするな」

(まったく、あんたは誰にでも優しすぎるのよ)

(そう教えてくれた奴が居るからな…お前じゃないけど)

とビスマルクと深海は心の中でそんな会話(?)をしていたのだった。

 

続く



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EP126 トリニティVIとtheレプリカ

そこでは、赤い閃光と紫の閃光が何度もその光をぶつけ合っていた。紫の閃光から放たれた無数の黄色い光弾が赤い閃光を追いながら飛び、赤い閃光が赤紫の光線でそれを焼き払う。そして再び―――

 

イナヅマガンダム・トリニティVIとガンダムレギュルス・theレプリカが激突する

 

「はああー!!」

「墜ちろぉー!!」

イナヅマガンダム・トリニティVIのアウェリアスサーベルとビームサーベルモードのtheレプリカライフルがぶつかり合う。

「何故なのですか!なんで電たちは分かり合えないのですか!」

「無駄な質問だな電!オレと貴様は対の存在。分かり合うことなど出来ないのだ!」

レギュルスtheレプリカはイナヅマガンダム・トリニティVIを押し返し、すかさずtheレプリカビットを展開。ライフルモードのtheレプリカライフルをイナヅマガンダム・トリニティVIへ向け、theレプリカビットの突撃に合わせて連続射撃をしてきた。しかしイナヅマガンダム・トリニティVIも押し返された直後に方向転換、光の翼を展開しtheレプリカビットから逃げた。しかししばらく行ったところでもう一度方向転換し、レインバレットキャノンとヴェールフェニックスライフルを同時に撃ち返した。レインバレットキャノンのビームに飲み込まれた多数のtheレプリカビットが爆発を起こす中、イナヅマガンダム・トリニティVIのヴェールフェニックスライフルとtheレプリカライフルのビームがいくつもぶつかり合い激しくスパークを起こして爆発を起こす。しかしそれでも、2機が止まることはない。レギュルスtheレプリカはその爆発の中へと自らの身を突っ込ませ、イナヅマガンダム・トリニティVIを追いかける。

「逃げんじゃねぇー!」

レギュルスtheレプリカは右腰からtheレプリカビームサーベルを抜き放ち、theレプリカビットを展開、イナヅマガンダム・トリニティVIへ向けて発射した。

「電は負けないのです!レ級と分かり合えるまでは絶対に!」

再びレインバレットキャノンを発射し、多数のtheレプリカビットを撃ち落とす電。そしてイナヅマガンダム・トリニティVIは背部右側からビーム対艦刀「イナヅマ」を右側へと抜き放って光の翼を展開。theレプリカビットの光弾が舞う中、レギュルスtheレプリカへ向かって行った。

「「はああぁぁぁッー!!!」」

バチィッ!バチィッ!バチィッ!とすれ違いながらぶつかるイナヅマガンダム・トリニティVIとレギュルスtheレプリカ。そして何度かぶつかり合った後、大きく弧を描いて方向転換したイナヅマガンダム・トリニティVIは両手でビーム対艦刀「イナヅマ」を握ると、それを右上段で構え―――同じく弧を描いて戻ってきたレギュルスtheレプリカはtheレプリカビームサーベルとtheレプリカライフルを持ち替え、theレプリカビームサーベルを右上段で構えた。そして2機の剣が同時に振り下ろされて、ぶつかり合う。

「そうだ、それでいい!そうやって自身の力をぶつけろ!それがオレたちの定めなのだからな!」

「電はそんな…そんなこと思ったりしないのです!」

「流石偽物は甘ちゃんだな!オレたちは戦うために生みだされた命。故にこの瞬間が、オレと貴様の存在の証明なんだよ!」

「そんなことはないのです!電は…電は戦うためのだけの人間じゃないのです!」

「いいや違うな!オレたちは戦うことしか出来ないんだよ!そして―――」

レギュルスtheレプリカは再びイナヅマガンダム・トリニティVIを押し返し、直後に胸部中央のクリアパーツ「theレプリカビームバスター」をイナヅマガンダム・トリニティVIへ向けて放った。

「オレは今日、貴様を越えるッ!!

紫色のスパークを纏った赤紫のビームがイナヅマガンダム・トリニティVIへ向かって行く。

「なら電も、全力でレ級を止めるのです!

そして電の左眼が深紅へと変わった。

「行くぞなのです、電!」

「はい!ぷらづまちゃん!」

イナヅマガンダム・トリニティVIは咄嗟にアカツキビームシールドを展開し、theレプリカビームバスターを防いで見せた。そして両肩のビームブーメラン「アーチャーエッジ」を掴むとビーム刃を展開しレギュルスtheレプリカへ向け投擲した。

「くらえなのです!」

両手から投擲されたアーチャーエッジは弧を描いてレギュルスtheレプリカに迫ったがアーチャーエッジへ向けtheレプリカライフルを発射した。

「そんなもの!」

しかし、放たれたビームはアーチャーエッジの基部に命中した瞬間打ち消された。

「なにっ!?」

「ブーメランはよく撃ち落とされるから、対ビームコーティング処理をしたのです!そう簡単には壊せないぞなのです!」

「チッ!」

そして2方向から同時にアーチャーエッジがレギュルスtheレプリカに迫った。しかし、アーチャーエッジの同時攻撃に合わせてイナヅマガンダム・トリニティVIがヴェールフェニックスライフルを撃ちながら迫ってきた。しかしレ級はtheレプリカビットを自機を中心に円を描くように展開。そのtheレプリカビットでヴェールフェニックスライフルの攻撃を防ぐと同時に、theレプリカライフルと尾部のtheレプリカキャノンを左右に向け連続で撃った。その放たれたビームはアーチャーエッジのビーム刃の部分に命中し、その軌道を逸らした。アーチャーエッジは軌道を逸らされてレギュルスtheレプリカに命中することなくイナヅマガンダム・トリニティVIの手元へ戻ってきた。

(あの短時間でアーチャーエッジの軌道を逸らすなんて、流石レ級なのです!)

「沈め!」

続けてtheレプリカビットをイナヅマガンダム・トリニティVIへ向けたレギュルスtheレプリカは、theレプリカライフルを放ちながら左手に握られたtheレプリカビームサーベルを出力し、イナヅマガンダム・トリニティVIへ斬りかかってきた。右手で回収したアーチャーエッジをマウント位置に戻し、左手で回収したアーチャーエッジはそのまま左手で保持したままレインバレットキャノンを発射。theレプリカビットを無数に撃ち抜き、爆炎の中から斬りかかってきたレギュルスtheレプリカのtheレプリカビームサーベルを、アーチャーエッジを正面に掲げて受け止めた。

「裏の人格と力を合わせたとて、オレは止められない!」

「いいや止めてやるのです!ワタシの想いは、電の想いと同じ。ならワタシは、電の想いに応える力になるのです!」

「フンッいいだろう…ならその想いごと踏みつぶして…オレは貴様らを越える!」

「そんなこと、絶対にさせないのです!」

今度はイナヅマガンダム・トリニティVIがレギュルスtheレプリカを押し返した。少し弾き返されたレギュルスtheレプリカに向け、左手で保持していたアーチャーエッジを再度投擲した。しかしレ級は慌てることなくtheレプリカビットを周囲へ展開し、連続のビーム攻撃でアーチャーエッジの破壊を狙ってきた。しかし電は、投擲したアーチャーエッジへ向けヴェールフェニックスライフルを3点バーストで発射した。

「やった!ビームコンフィーズ成功なのです!」

「なんだと!」

アーチャーエッジのビーム刃に命中したヴェールフェニックスライフルのビームはその周囲を薙ぎ払うようにビームの波を生みだし、周囲にいたtheレプリカビットを全て爆散させた。電自身も、初めて試みたビームコンフィーズを成功させたためとても笑顔だった。そしてレ級もまた、驚きを隠せなかった。しかし、レ級は驚きはすれど動揺はしなかった。すぐさま再びtheレプリカビットを射出し、直後にtheレプリカビームバスターを撃ってきた。

「墜ちろぉ!」

回避行動を取るイナヅマガンダム・トリニティVIを追うように照射ビームで薙ぎ払いを行うレギュルスtheレプリカ。だが、このままでは命中させられないと判断したレ級はtheレプリカビームバスターの照射を止め、追撃を開始した。theレプリカビームサーベルを再度出力し、逃げるイナヅマガンダム・トリニティVIを追った。

「逃がす訳ないだろ!」

「させないのです!」

右中段からの払い斬りをアカツキビームシールドで受け流し、レギュルスtheレプリカと入れ違ったイナヅマガンダム・トリニティVI。だが入れ違ったのと同時に、レギュルスtheレプリカは振り返りながらtheレプリカビームサーベルを投擲した。高速で回転しながら迫るtheレプリカビームサーベルに電は左手の「ナイトメアフィオキーナ」を発動させ、手を正面へ勢いよく伸ばした。

「うおぉぉぉー!」

ナイトメアフィオキーナはtheレプリカビームサーベルのビーム刃を捉え、弾き飛ばした。出力されたビーム刃が消失し、宙を舞うtheレプリカビームサーベルのグリップ。だが、電の耳に直後ロックオンアラートが届いた。場所は正面。

「これで終わりにしてやる!」

直後、レギュルスtheレプリカはtheレプリカビームバスターを最大出力で発射した。紫色のスパークを纏った赤紫のビームがイナヅマガンダム・トリニティVIに迫ってきた。

「電、レインバレットキャノンで相殺するのです!」

「了解ぷらづまちゃん!いっけぇー!!」

回避が間に合わないと判断したぷらづまが、電にレインバレットキャノンを発射するように促した。それに応えた電は迷うことなくレインバレットキャノンを発射。2門の砲口から放たれた赤紫のビームは、吸い込まれるようにtheレプリカビームバスターの発射されたビームと激突。高出力ビーム同士の激突は、巨大な衝撃波と電撃の奔流を生み出し2機をその爆風で吹き飛ばした。だがイナヅマガンダム・トリニティVIとレギュルスtheレプリカの2機は、同時に姿勢を安定させ、同時に相手に向かって突撃していった。

 

レギュルスtheレプリカはtheレプリカライフルを連射しながら

 

イナヅマガンダム・トリニティVIは単発でヴェールフェニックスライフルを放ちながら

 

 

 

 

 

電ぁぁぁー!!!

 

 

 

 

 

レ級ぅぅぅー!!!

 

 

 

 

 

2機は同時に剣を抜いた。

 

イナヅマガンダム・トリニティVIはアウェリアスサーベルを

 

レギュルスtheレプリカはtheレプリカライフルビームサーベルモードを

 

 

 

 

 

そして、右上段から互いに繰り出された袈裟斬りがお互いの正面でぶつかり激しいスパークが起こった。2機と2人をその光が照らしだす。

 

 

 

 

 

 

うおおおぉぉぁぁぁー!!!!!

 

 

 

 

 

 

叫ぶ2人。より一層踏み込んでいくイナヅマガンダム・トリニティVIとレギュルスtheレプリカ。スパークはより一層の激しさを増し、剣を握る2人の腕は激しく震えた。

 

 

オレは負けない!止まらないッ!お前を越えるその時まで…絶対になぁッ!!!

 

 

電も負けない!負けられないッ!レ級を止めて、もう争わない為にッ!!!

 

 

閃光が2人を包み込んでいった。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがその時だった――――

 

 

2人の耳がロックオンアラートを捉えたのだ

 

 

「ロックオンアラート!?」

「っ!?全方位だと!?チィッ!」

直後、2機はお互いを弾き合い距離を取った。そしてその瞬間、先程まで2機がいたエリアに12本の青白い細い筋が四方八方から降り注いだ。

「っ!このビーム、もしかして―――」

「クソ野郎が…オレの戦いを邪魔しやがって―――」

 

 

あーあ。躱されちゃったかぁ

 

 

2人の耳に聞き覚えのある声が届いた。電は少し焦った表情になり、レ級は怒りのあまり歯ぎしりをした。

「纏めて沈められると思ったんだけど…残念だね」

 

広間の奥

 

その扉の闇から

 

 

 

異形の左腕でガンダムホワイトボトムサウンドの頭部を鷲掴みにしたガンダム・アイアンボトムサウンドと、狂気が纏わりついた笑みを浮かべた―――

 

 

 

 

そろそろ、終わりにしようかっ

 

 

 

 

 

深海吹雪が現れた

 

 

 

 

 

 

本当に続く



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EP127 発見

特殊電探を手にして施設内へと向かった瑞鶴、陽炎、不知火たちは、プラフスキー粒子の輝く廊下を走っていた。周囲には目標を失ったCPU制御のガンプラが漂っていた。

「こうしてプラフスキー粒子の中を走るってのは、なんか変な感じね」

「経験なんて、ありませんからね」

「瑞鶴さん。電探の方はどうですか?」

「ううん。まだ反応は―――っ!」

直後、特殊電探のレーダー波が2つの反応を捉えた。モニターに2つの光点が現れ、クルクルと回るレーダー波がその光点を通過する度に反応が続いていた。

「見つけたわ!」

「本当ですか!?」

「光点が2つ。きっと翔鶴姉ぇと、萩風だわ!」

そう言った瑞鶴たちは、更に足を速めて廊下を突き進んだ。いくつも角を曲がり、やがて3人はとある部屋へと辿り着いた。電探の光点はまさしくその部屋の中で点滅していた。だが、何故か扉は全開の状態で開け放たれていた。

「この部屋ですか…」

「その筈よ…罠があるかもしれないから、気を付けてね2人共」

「了解しました」

「それじゃあ、行くよ」

そう言って瑞鶴は部屋の中へとゆっくりと入っていった。それに続いて陽炎と不知火が続く。部屋の正面には2つのガンプラバトルシステムの台がセットされていた。部屋の壁周囲には休憩用の椅子と自動販売機が部屋を囲うように配置されていた。

「まるで、ガンプラバトルを楽しむ休憩室みたいな部屋ですね」

「罠は…うん、無さそうね……あっ!」

 

翔鶴姉ぇ!

 

瑞鶴の目にバトルシステム台の反対側に横たわる2つの人影が映った。瑞鶴は慌ててバトル台の反対側へ駆けていった。それを察してか、陽炎と不知火はもう1つの方のバトルシステム台に向かった。そして見つけた。

 

萩風っ!

 

そこに倒れていたのは深海化翔鶴と、駆逐水鬼だった。2人は意識を失っている様で瑞鶴と陽炎たちが揺さぶってもピクリとも反応しなかった。

「駄目だ、意識がない…陽炎、萩風はどう?」

「萩風も気絶してるわ。もしかしたら暴れられるかと思ったけど、これなら運べそうだわ!」

「陽炎。不知火は左から担ぎます。右側をお願いします」

「了解よ。瑞鶴さんは大丈夫ですか?」

陽炎が瑞鶴の方を向くと、瑞鶴は翔鶴をおんぶしながら立ち上がっている所だった

「こっちも大丈夫よ。急いで外へ向かうわよ!」

そう言って瑞鶴は部屋から駆け出した。それに陽炎と不知火も続いていった。

 

そして、外への脱出に成功した時雨たちも明石から特殊電探を受け取り、施設内へ向かおうとしていた。

「よし、行こう夕立!」

「ぽい!」

「俺も行こう。電と白雪が心配だ。母さんも来てくれないか?この2人では5人も運べないだろうからな」

「了解よ!深海のお願いだもん、断る理由なんかないもの!」

「深空。お前はここで待ってろ、かなり長い距離走ることになるからな」

「うん。ごめんねにぃに…」

「ありがとうお兄ちゃん、お母さん!その…村雨が襲ってきたら、当てにさせてもらうよ」

「ああ。わかったよ」

そう言って時雨、夕立、深海、空母水鬼の4人は再び施設内へ突入していった。

 

一方、瑞鶴と陽炎たちは施設の出入り口までへの最後の曲がり角を曲がっていた。

「頑張りなさい2人共!出口はすぐそこだよ!」

「大丈夫です瑞鶴。不知火は平気ですから」

「私も大丈夫!……て、あれは深海司令に時雨と夕立、空母水鬼じゃない!」

と、3人の目の前から深海、時雨、夕立、空母水鬼の4人が走ってきた。先頭を走っていた深海は瑞鶴に尋ねた。

「瑞鶴、翔鶴は見つかったか!」

「ええ!萩風もちゃんと見つけたわ!」

「わかった!外に避難して待機していろ!俺たちは白露たちを助けに行く!」

「わかったわ!気を付けて!」

深海たちは瑞鶴と陽炎たちとすれ違い、奥を目指した。

 

続く



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EP128 悲しき事実

「し、白雪さん!」

電は、鷲掴みにされ大破したガンダム・ホワイトボトムサウンドを見た瞬間叫んでいた。ガンダム・ホワイトボトムサウンドは左のツインアイが点滅しながら首元からはオイルのような液体が流れ落ちていた。

「ご、ごめんなさい電ちゃん…私じゃ、止められなかった…」

白雪が弱々しい口調で電に話しかけた。それを見て吹雪はニヤリと笑みを浮かべ言った。

「本当に馬鹿だよね!ちょっと苦しんだふりをしたら、すぐに攻撃するのを止めちゃうんだからさ!」

「ふ、吹雪ちゃん……」

「アッハハハハ!本当、おかしくて爆笑なんだけど!!アーハッハッハッハッハッハ!!」

「クッ!」

「………」

だが直後、ガンダム・アイアンボトムサウンドの周囲全方位からtheレプリカビットが一斉に襲い掛かった。

「…フン」

しかし、直撃する瞬間ガンダム・アイアンボトムサウンドの周囲に赤い粒子フィールドが展開され全てのtheレプリカビットが防がれてしまった。

「チッ」

「レ級!?」

突如吹雪を攻撃したレ級に驚きを隠せない電。だがレ級は聞く耳を持たず、ガンダム・アイアンボトムサウンドへ向けtheレプリカライフルの銃口を向けた。

「てめぇ、オレと電の戦いの邪魔をするなと言った筈だ。何故邪魔をする?」

「………」

「れ、レ級…」

「…ああ。あの約束か…あれ、嘘だよ…いや、嘘って言うのはちょっと違うかな」

「なに?」

「お前が勝手にそう思っていただけだよ。私はそんな約束した記憶ないし」

「約束の記憶が、ない?………っ!まさか、レ級の記憶を操作したのですか!」

「へぇ、いい勘してるね電ちゃん。それ、正解だよ」

「なんだとっ!?」

電の出した答えに驚愕するレ級。そして吹雪はニッと笑みを浮かべてレ級に言った。

「全ては電の言った通りだよ。レ級。お前の体内(なか)の深海細胞が私の偽の記憶に反応して、お前に偽物の記憶を作り出したんだよ!」

「なっ!馬鹿な!俺はあの時確かに―――」

「だからそれが偽物の記憶だって言ってるじゃない!レ級、君って本当は頭悪いんじゃないの?アハハハ!」

「オ、オレは…じゃあ、一体……」

「興が乗ったから良いことを教えてあげるよ、レ級!」

「っ!?」

「お前は自分が失敗作だと思ってるようだけど―――」

そして吹雪は言った。

 

 

 

 

 

本当はお前が成功作なんだよ!!

 

 

 

 

 

「な、に?」

「艦娘と深海棲艦の細胞によって作られたお前と電。だが、電は多重人格の形成によって人格の不安定を招いた失敗作にされたんだよ!でもお前には、そんな失敗要素は1つもない!研究所はお前を成功作に選んだんだよ!!」

「吹雪さん、もう止めるのです!」

「それに、電に脱走させたのは紛れもないレ級。お前自身なんだよッ!!!

「「っ!?」」

吹雪の言葉は電さえも驚愕させた。

「嘘…レ級が…電を?」

「オ、オレが…オレが電を、逃がした、だと?」

「真実を知れて嬉しいかレ級?アッハハハハ!良いねその顔!なら、本当の記憶を知れたんだし、今の偽物の記憶は消し去ってあげるよ!」

「な――」

 

 

 

止めるのです吹雪ぃ!!

 

 

 

「じゃ、さようなら、偽物のレ級ちゃん!」

そして吹雪はレ級を指差しながら指をパチンッ!と鳴らした。直後、レ級の脳に一瞬だけ電流が流れた。

「ウッ!」

レ級は一瞬頭を抱えたが、すぐにその手を放してハッとした様な表情で周囲をキョロキョロと見渡していた。

「レ級!」

そして通信で呼びかけてきた電の顔を見た直後、レ級は驚くような表情で電を見た。

「い、電!?お前、無事に逃げられたのか!?心配したんだぞ!」

「レ、レ級が…そんな…」

「アハハハハハ!最高だねこの展開!!今まで自身の事を消そうとしていた奴が、実は自分の身を一番案じていた人物だったなんてさ!アッハッハッハ!!!」

記憶を取り戻したレ級と困惑する電を見て嘲笑う吹雪。そして電の怒りは頂点を迎えた。

「…許さない」

「………」

「人の心を弄ぶお前を―――」

 

 

 

 

 

電は絶対に許さないッ!!!

 

 

 

 

 

だが電の言動は、吹雪さえも怒りの頂点へと導いてしまった。

「ふざけたこと言ってんなよ―――」

 

 

 

 

 

許さないのは、私の方なんだよッ!!!

 

 

 

 

 

ガンダム・アイアンボトムサウンドはガンダムホワイトボトムサウンドを放り捨てると、とてつもないスピードでイナヅマガンダム・トリニティVIへ向かって行った。

 

 

一方その頃、時雨たち4人は特殊電探を手に施設の奥地を目指して走っていた。

「夜空、電探の反応はどうだ?」

「ついさっき反応が出始めたよ!急ごうお兄ちゃん!」

「わかった。夕立、大丈夫か?」

「大丈夫っぽい!まだまだ走れるよ!」

「そうか。よし、急ぐぞ」

「スルーされたぁ~!」

と、空母水鬼がスルーされていたが深海は気にする素振りも見せず足を進めた。

「もう!スルーするなんて酷いよ深海!」

「集中しろ母さん。つまらないギャグ言ってる場合じゃないぞ」

「言ってないよ!………あれ?」

十字路となっている廊下に差し掛かった時、空母水鬼が右の廊下の先にその廊下の先から飛んでくる物に気づいた。その物体は白く丸い胴体にオレンジの光を放つ窪みと大きなヒビから出来たような大きな口を開け、上には猫耳のような突起、左右に小さな羽根の様な翼、そして下からは小さな足が生えている姿だった。

「え?あれって深海棲艦たち(私たち)が使ってた艦上戦闘機?何でこんなとこに―――」

「何してるんだ母さん―――ん?」

するとその艦上戦闘機は、空母水鬼に向かって飛んできた。空母水鬼はそれを両手でキャッチするように捕まえた。

「この子は……深海熊猫艦戦(海月ちゃんとこの子)?なんで海月ちゃんとこの子がこんなところに?」

「時雨!ちょっと待つっぽい!」

「え?どうしたの夕立?」

そして空母水鬼の動きに気づいた時雨と夕立も足を止め、十字路まで戻ってきた。そして2人も深海熊猫艦戦を目にした。

「深海棲艦の艦戦!なんでこんな所に!」

すると深海熊猫艦戦は空母水鬼に何かを伝えようと鳴き始めた。

「―――!―――!」

「え?深海に伝言があるの?」

「………」

すると深海は深海熊猫艦戦の足に巻きつけられた1枚の紙を取り外した。丸められた紙を伸ばし、書かれた文章を読み始めた。

「………なんだと!?」

「深海、伝言っていったい何なの?」

「まずいな。この施設の最深部に時限爆弾が仕掛けられている」

「「「ええ!!」」」

「急ぐぞ!このままでは全員が危険だ!海月たちにも逃げるように伝えてくれるか?熊猫艦戦」

「―――!―――!」

深海が深海熊猫艦戦に話しかけると、深海熊猫艦戦は内容を把握したかの様に鳴いた。そして深海熊猫艦戦は空母水鬼の手を離れると、元来た廊下を戻って飛んでいった。それを確認した深海は振り返って言った。

 

 

 

急ぐぞ!全力で走れ!!

 

 

 

「う、うん!」「ぽい!」「了解よ!」

4人は全力疾走で村雨たちの元へと向かって行った。

 

続く



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EP129 救出

足を速め、村雨たちがいるエリアへと向かって行く時雨たち4人。

「よし、この角を曲がった先の部屋だ!」

そして4人は、特殊電探が示した部屋へたどり着いた。時雨は手元の電探のモニターに映った光点をもう1度確認した。そこには5つの光点が光っていた。

「間違いない。この部屋だ」

「俺が先に入る。お前たちは後から入ってこい」

「わかったっぽい。深海提督さん、気を付けてっぽい」

深海はゆっくりとドアノブに手を掛けると、ゆっくりとノブを回して扉を開けた。それと同時に腰裏からナイフを抜くと周囲を確認しながら室内へと入っていった。深海は上下左右、全方位を見回し入り口付近に誰もいないことを確認した。深海はナイフを持っていない左手で時雨たちを呼び、4人は室内へと入った。そこはまるで実験室の様に正面がガラス張りとなっていて、その奥にもう1つ部屋が存在している部屋だった。ナイフを構えた深海を先頭に、ゆっくりと前へと進む4人。すると、夕立がガラスの向こう側に人影を見つけた。

「み、深海提督さん!今向こうの部屋に人影が!」

「………」

すると深海は左手を下へ向かって振った。

(姿勢を下げろ。バレないようにしてくれ)

深海の指示に夕立たちはコクリと頷き、腰を落とした。そのままゆっくりと足を進め、やがて4人はガラス張りになっている壁に辿り着いた。深海はゆっくりとガラスから顔を覗かせた。そこで深海が見たのは、床に倒れている深海化五月雨、深海化海風、深海化江風、そして部屋の隅で取っ組み合いとなっている深海雨雲姫と深海化白露の姿だった。

「白露ッ」

「村雨と取っ組み合ってるっぽい!」

「どうするの深海?」

「俺が村雨を気絶させる。母さんたちはその間に白露たちを連れだしてくれ」

「わかったよ!お母さんに任せなさい!」

 

そして室内では深海雨雲姫と深海化白露が取っ組み合っていた。

「オマエ!ヨクモジャマシヤガッテ!!フザケンジャナイヨ!!」

「ヤメてよムらさメ!」

「ダマリヤガレクソヤロウ!コロシテヤル!ゼッタイニコロシテヤル!!」

「グエッ!」

怒りが爆発した深海雨雲姫は、遂に深海化白露の首を絞め始めた。

「シネ!シネ!ワタシノイイナリニナラナイヤツハ、ミンナシンデシマエッ!!」

「むら…サめッ…」

その直後、室内へ繋がる扉が勢いよく開けられた。

「ダレ―――グハァ!」

しかし、深海雨雲姫が振り返るよりも早く深海雨雲姫の腹部を衝撃が襲った。その衝撃を受けて床の上を転がっていった深海雨雲姫は壁にぶつかった。

「ナ、ナンダ?」

「今だ母さん!」

「任せて!」

その隙をついて、室内へ空母水鬼、時雨、夕立が駆け込み、床に倒れた深海化五月雨、深海化海風、深海化江風を引っ張り出していった。

「海風、しっかりするんだ!」

「江風、起きるっぽい!風邪ひいちゃうっぽい!」

(いや、風邪はひかないだろ)

「シぐレ!」

「白露!今は外に出ることが先だ!急いで!」

そしてようやく深海雨雲姫が立ち上がった。

「グッ…クロノミカイ、マタオマエカッ」

「すまないが、早々に気絶してもらうぞ」

「ホザケェー!!」

と、怒りに呑まれてしまっていた深海雨雲姫は深海へ向かって一直線に向かって来た。しかし深海は、表情一つ変えずに少し屈むとナイフを床に落とした。

「ッ!?」

カラァン!とナイフが床に落ちた音に深海雨雲姫の注意が引かれたその一瞬を突き、突っ込んできた深海雨雲姫の腹を全力で殴った。

「――ガハッ!!」

自身で突っ込んできた勢いもあって、深海の拳は深海雨雲姫の腹部に深々と突き刺さった。そして深海雨雲姫は、そのままガクリと脱力するように深海に倒れかかった。深海はそのまま深海雨雲姫を担ぎ上げると、ナイフを拾って腰の鞘に戻すと部屋を出て行った。

「深海、大丈夫だった?」

「ああ、村雨は気絶させたから大丈夫だ。そっちは大丈夫か?」

「うん。五月雨と海風、江風は運び出せたし、白露も無事だよ」

「ウン。タスけテクれて、ありガトネ!」

「無事で何よりだ。俺は村雨を担いで行く、母さんは五月雨、夜空たちは海風と江風を連れていってくれ。急ぐぞ、時間がないからな。白露、お前も力を貸してくれ」

「もっちロン!おネエちャンにまカせなサイ!」

深海化したままではあるが、白露も協力すると言ってきた。それを聞いて深海は安心したのか小さく笑みを浮かべた。

「行くぞ」

「うん!さあ行こう、お母さん、夕立、白露!」

「ぽい!」「うん!」「急ぎましょう!」

(後は電と白雪か。急がなければな)

5人は部屋を飛び出し、急いで元来た道を走っていった。

 

続く



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EP130 吹雪(捨てられし者)の叫び

 

 

 

ここで吹雪さんを止めてみせるッ!!

 

 

 

イナヅマガンダム・トリニティVIはアウェリアスサーベルを抜き放ち、ガンダム・アイアンボトムサウンドへ向かって行った。

 

 

 

お前の存在全てを消し去ってやるッ!!

 

 

 

ガンダム・アイアンボトムサウンドは左腕から大型ビームソードを出力し、イナヅマガンダム・トリニティVIへ斬りかかってきた。左上段から振り下ろされた大型ビームソードに対してイナヅマガンダム・トリニティVIも右上段からアウェリアスサーベルを振り下ろし鍔迫り合いとなった。

「ガンプラバトルを無くすなんて、絶対に許せないのです!」

「何とでも言え!私はとうに、人の心など捨てている!!」

両機のアウェリアスサーベルと大型ビームソードは更に押しこんでいった。桃色と深紅のビームの火花が激しさを増して飛び散っていく。

「グッ、くぅぅ!」

「くうぅぅ!」

そしてバチィッという音と共にイナヅマガンダム・トリニティVIとガンダム・アイアンボトムサウンドは互いを弾き飛ばした。

 

沈めぇぇー!!

 

ガンダム・アイアンボトムサウンドは右腕をサテライトキャノンに変形し、ノーモーションでそれを撃ち放ってきた。しかしイナヅマガンダム・トリニティVIは光の翼を展開し、これを上昇して躱した。そして上昇しながらヴェールフェニックスライフルをガンダム・アイアンボトムサウンドへ向けて3連バーストで連続射撃を放つ。

「いけぇっ!」

だが直後、ガンダム・アイアンボトムサウンドのバックパックにある翼が展開されるとそこから青紫の光を放つ「光の翼」が形成された。ガンダム・アイアンボトムサウンドはその光の翼が生み出す高い推力でイナヅマガンダム・トリニティVIの放ってきた3連バーストのヴェールフェニックスライフルのビームを全弾回避した。

「光の翼!?」

今までガンダム・アイアンボトムサウンドが光の翼を展開したのを見たことのなかった電は思わず驚いた。

「これは光の翼じゃない…これは、影の翼!歴代のガンダムに出来て、アイアンボトムサウンドに出来ないことなど無いんだよ!!」

 

 

 

お前たち()に埋もれた()の怒りを、思いしれぇぇー!!!!

 

 

 

深海吹雪はガンダム・アイアンボトムサウンドの左肩を変形させ、サザビーと同形状のファンネルを8基射出し、サテライトキャノンとなっていた右腕は再び変形し手にはイージスガンダムと同形状のビームライフルが握られていた。先にイナヅマガンダム・トリニティVIの元へたどり着いたファンネルは四方からイナヅマガンダム・トリニティVIを攻撃し始めた。

「ファンネル、来た!」

しかし電は、ファンネルの砲撃を光の翼を展開させたままバク宙や首逸らし、腕を少し上げるなどして回避し、1基1基を確実に撃ち抜いて撃破していく。

「チッ!墜としたか」

そこへイナヅマガンダム・トリニティVIの下方からガンダム・アイアンボトムサウンドがビームライフルを放ちながら迫ってきた。イナヅマガンダム・トリニティVIはアカツキビームシールドを展開しビームを防ぎそのまま後退、ヴェールフェニックスライフルを撃ち返した。

「人の心を捨ててまで、何故ガンプラバトルを憎むのですか!?」

「お前にはわかるまい!平気で捨てられた者の気持ちなど!」

再びイナヅマガンダム・トリニティVIへと斬りかかったガンダム・アイアンボトムサウンド。最上段から放たれた大型ビームソードの振り下ろしをアウェリアスサーベルを掲げて受け止めるイナヅマガンダム・トリニティVI。

「他者よりも命を短く設定され、失敗作と分かれば即捨てられる命!」

「なにが!」

今度はイナヅマガンダム・トリニティVIがガンダム・アイアンボトムサウンドを押し返した。しかしガンダム・アイアンボトムサウンドはすかさずバックパックを変形させ、プロヴィデンスガンダムの大型ドラグーンを4基射出、備えられたビーム砲を全門斉射しビームカーテンをイナヅマガンダム・トリニティVIへ向かって放った。

「クッ!」

電はアカツキビームシールドを最大展開しこれを防いだ。多数のビームを受け止めたアカツキビームシールドではあったが、イナヅマガンダム・トリニティVIはその勢いに圧され弾き飛ばされてしまった。その機を逃さずガンダム・アイアンボトムサウンドは一気にイナヅマガンダム・トリニティVIに接近していった。右腕を変形させもう一振りの大型ビームソードを出力し、突進してきた。

「やらせません!」

弾き飛ばされながらも電はレインバレットキャノンをガンダム・アイアンボトムサウンドに向け放った。

「そんなもの!」

しかし放たれたレインバレットキャノンのビームは両腕の大型ビームソードによって切り裂かれ、相殺された。だが、その一瞬を突いてイナヅマガンダム・トリニティVIは態勢を立て直すことに成功した。すかさずアウェリアスサーベルを再出力し、左右の上段から斜めに斬り降ろしてきた大型ビームソードを右はアウェリアスサーベルで、左はアカツキビームシールドで受け止めた。

「最高だよね愚かな人間は!」

「!?」

「命を大事と言いながら自身より弱い存在の命を削って力を得ようとする!」

「なにを!」

 

 

お前だってその命の1つだろう!

 

 

「っ!違うのです!」

そう言って電は、ガンダム・アイアンボトムサウンドを押し返しレインバレットキャノンを連続射撃した。しかし、レインバレットキャノンの砲撃は全てガンダム・アイアンボトムサウンドが両肩を変形させて作った円形の盾によって屈折され、防がれてしまった。

「なっ!?ビームが!」

「違わないさ!お前はガンプラバトルを始めてたった数ヶ月でこの実力に達した!弱い存在として強い力を持って生みだされたお前も、私と同じなんだよ!」

そして再び大型ドラグーンを展開し、先程よりも密度の高いビームカーテンが発射された。イナヅマガンダム・トリニティVIは向かってくるビームをアウェリアスサーベルで斬りつけることで相殺し、ビームが途切れた合間を縫ってガンダム・アイアンボトムサウンドに向かって行く。

「そんなこと、ないのです!!」

右手のアウェリアスサーベルをガンダム・アイアンボトムサウンドの左腕の大型ビームソードに叩きつけるイナヅマガンダム・トリニティVI。

「電は…自分と仲間(みんな)の力で強くなったのです!元々の力で強くなってなんかいないのです!!」

「まだ苦しみたいか!そんな妄想こそが、私たちの力の源「深海細胞の生み出す虚像」だというのにッ!」

「違うッ!!」

電は勢いに任せて右の操縦桿を大きく前へ突き出し、ガンダム・アイアンボトムサウンドを再び弾き飛ばした。

「電の―――」

 

 

 

電の仲間(友達)は虚像なんかじゃない!!

 

 

 

弾き飛ばしたガンダム・アイアンボトムサウンドを更に追撃するイナヅマガンダム・トリニティVIは、アウェリアスサーベルをガンダム・アイアンボトムサウンドへ向けて投げつけ、そこへ3点バーストのヴェールフェニックスライフルを撃ち込みビームコンフィーズを放った。アウェリアスサーベルのビーム刃に当たったヴェールフェニックスライフルのビームが衝撃波を飛ばし、ガンダム・アイアンボトムサウンドを襲った。しかし、吹雪は大型ビームソードを形成する左腕の上から、Iフィールド発生装置付きのユニコーンガンダムのシールドを形成し、ビームの衝撃波を相殺してしまった。

「故に許されない!私を生みだしたガンプラバトルと言う存在も!!」

違うッ!

イナヅマガンダム・トリニティⅥは、右手のナイトメアフィオキーナを発動させガンダム・アイアンボトムサウンドに迫った。一方のガンダム・アイアンボトムサウンドもまた、右手からパルマフィオキーナを発現させイナヅマガンダム・トリニティⅥに向かった。

「ガンプラバトルは…ガンプラバトルはそんなものじゃないのです!!

互いにぶつかり合う右手の閃光。その光はぶつかった瞬間に互いの手を弾き飛ばし合った。直後にガンダム・アイアンボトムサウンドは左腕の大型ビームソードでイナヅマガンダム・トリニティⅥに斬りかかってきた。イナヅマガンダム・トリニティⅥは空いていた右手で右腰のアウェリアスサーベルを逆手持ちで抜き放ち、大型ビームソードを受け止めた。

「ガンプラバトルは、憎しみを生みだすようなものじゃないッ!吹雪さんがそれしか知らないからっ――」

ああ、知らないさ!憎しみの根幹たる深海棲艦の細胞をこの身に宿す私は―――」

 

 

 

 

憎しみしか知らないッッ!!!!

 

 

 

 

そしてガンダム・アイアンボトムサウンドはイナヅマガンダム・トリニティVIを押し返し、追撃とばかりに大型ドラグーンを一斉掃射した。一斉掃射された大型ドラグーンのビームはアカツキビームシールドへと吸い込まれるように直撃し、イナヅマガンダム・トリニティVは吹き飛ばされてしまった。

「うわあぁぁぁー!!」

そして吹雪は右腕を大型ビームランチャーへと変形させ、吹き飛ばされたイナヅマガンダム・トリニティⅥに照準を合わせた。

 

 

 

これでお前は終わりだぁぁぁー!!!!!

 

 

 

吹雪は躊躇うことなく大型ビームランチャーの引き金を引いた。赤いスパークを放つビームが砲口から撃ち出され、一直線にイナヅマガンダム・トリニティVIへと向かって行った。

「ハッ!?」

弾き飛ばされ、大きくバランスを崩されたイナヅマガンダム・トリニティVIは姿勢制御すらままならなかった。

 

くそぉー!

 

電が叫んだ瞬間、彼女の視界は光に包まれた。

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、次に電が目を開けた時。目の前にはいつもの操縦スペースのメインモニターがあった。そしてそのメインモニターには――――

 

 

 

 

 

 

電は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

電はやらせねぇッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンダムレギュルス・theレプリカがtheレプリカライフルをガンダム・アイアンボトムサウンドへと向けている姿があった。

 

本当に続く



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EP131 最後の決戦

「レ級!」

「無事だな電」

突如目の前に現れ、自分を助けてくれたレ級。電からしてみれば、意味が分からなかった。電は思わずレ級に尋ねた。

「レ級、なんで電のことを?」

「妹を見捨てることが出来ると思うか?」

「レ級……」

「今はそんなことはどうでもいい。動けるな?」

「あ、はいです!」

レ級の言葉を聞いた電は奮起した。その姿を見た吹雪は苛立った表情になった。

揃いに揃って私の邪魔をするのか!人間の業に弄ばれた者たちの総意であるこの私に!!

「ハンッ!そんなもん―――」

 

 

 

頼んでねぇよッ!!

 

 

 

レ級はそう叫びtheレプリカビットを展開、theレプリカライフルを連続で撃ちながらガンダム・アイアンボトムサウンドへ突撃していった。それに続くようにイナヅマガンダムトリニティVIもヴェールフェニックスライフルを撃ちながらガンダム・アイアンボトムサウンドへ向かって行った。

「なら、2人纏めて消し飛ばしてやる!!

イナヅマガンダムトリニティVIとガンダムレギュルス・theレプリカの行動に応えるように吹雪も動き出した。ガンダム・アイアンボトムサウンドは両肘、両膝、そしてバックパックのウイングバインダーの先端から無数のオレンジ色の光弾を作り出した。

「沈めッ!」

「フンッ!オレの真似をしたところで、オレには勝てん!」

そう言ったレ級は左手に握ったtheレプリカビームサーベルを出力し、theレプリカビットの半数を自機の周囲に展開させて一気に突破を測った。その周囲を残った半数のtheレプリカビットが追随し、ガンダム・アイアンボトムサウンドが展開してきたビットに次々に着弾、お互いのビットを打ち消し合った。

「レ級、援護するのです!」

その突撃するレギュルス・theレプリカの後方からイナヅマガンダムトリニティVIがヴェールフェニックスライフルを撃ちながらガンダム・アイアンボトムサウンドに牽制を掛けていた。

「チッ」

ガンダム・アイアンボトムサウンドは右腕を再びビームライフルへと変形させ、それをイナヅマガンダムトリニティVIに向けて放った。しかしイナヅマガンダムトリニティVIはそれらの攻撃を回避し、ガンダム・アイアンボトムサウンドの背後の方向へ向かって行った。

「背後には回らせない!」

そして続け様にビットを展開、それをイナヅマガンダムトリニティVIに向けて撃ち出した。

「よそ見なんて、随分余裕ぶるんだな!」

そこへ、ビットを掻い潜ったレギュルス・theレプリカがtheレプリカビームサーベルを右中段から横一閃に斬りかかってきた。しかし、ガンダム・アイアンボトムサウンドはイナヅマガンダムトリニティVIの動きを見たままそれを前転しながら上昇することで回避し、そこへ再びビットを撃ち出した。

「その程度!」

レ級は即座にtheレプリカビームバスターを選択し、迫るビットを撃ち落とした。そして続け様にtheレプリカビームバスターを連射していった。

「オラオラ!どうしたよ!?」

「チッ、調子に乗りやがって―――っ!」

だが直後、吹雪の耳に左側からの接近警報が鳴り響いた。ガンダム・アイアンボトムサウンドの左上方からアーチャーエッジが飛来し、それに続くようにイナヅマガンダムトリニティVIがガンダム・アイアンボトムサウンドへ向かって突っ込んできたのだ。

「吹雪さんッ!!」

ガンダム・アイアンボトムサウンドは左前腕部側面からビームシールドを展開し、腕を振ることでそれを弾き飛ばすと、それに続いてきたイナヅマガンダムトリニティVIのタックルを受けた。

「チッ!なんでこいつは!」

タックルを受けて弾かれたガンダム・アイアンボトムサウンドだったが、その態勢のまま右肩をビームランチャーへと変形させそれをイナヅマガンダムトリニティVIへ向けて発射した。しかしイナヅマガンダムトリニティVIはそれをアカツキビームシールドによって防ぎ、ヴェールフェニックスライフルを撃ち返してきた。吹雪はすぐさまガンダム・アイアンボトムサウンドの膝を変形させ、そこからミサイルを放った。ミサイルはヴェールフェニックスライフルの撃ち出したビームに命中して爆発した。だが、その煙の中から出て来たのはアウェリアスサーベルを右手で握りしめたイナヅマガンダムトリニティVIだった。

「はあぁぁー!!」

「あああぁぁー!!」

アウェリアスサーベルを右上段から袈裟斬りで振り下ろしてきたイナヅマガンダムトリニティVIに対しガンダム・アイアンボトムサウンドは左腕の大型ビームソードを横薙ぎし受け止めた。

「吹雪さん!過去に縛られたまま戦っては駄目なのです!そんな事をしても、何も戻ってなんか来ないのです!」

「失うことを知らないお前に、そんな事を言う資格があると思うのか!!」

「ッ!」

「私は処分された姉妹(失ったみんな)の無念によって立っているからなぁ!失うものなど1つもないお前にはわかるまいッ!!」

吹雪に言葉に応えるようにガンダム・アイアンボトムサウンドの赤いツインアイが発光し、鍔迫り合いとなっていたイナヅマガンダムトリニティVIを押し返した。

沈めェェェー!!

ガンダム・アイアンボトムサウンドは両肩を大型GNフィンファングの様なビームランチャーへと変形させ2門を同時発射した。しかし、放たれた赤いビームの進行方向に無数の黄色い光弾が円形に展開しビームを打ち消した。

「電はやらせねぇって…そう言ったろうがぁー!!

今度は、ガンダム・アイアンボトムサウンドの下方からレギュルス・theレプリカがビームサーベルモードのtheレプリカライフルを右下段に構えて突っ込んできた。ガンダム・アイアンボトムサウンドはそのレギュルス・theレプリカに対して頭部バルカンを撃って牽制を掛けたがレギュルス・theレプリカとレ級は気にする素振りすら見せず、一気に距離を詰めるとtheレプリカライフルを一気に最上段まで振り上げ、全力の縦斬りを放った。

「墜ちやがれぇー!!」

「あまいッ!」

しかし、ビームシールドを展開しtheレプリカライフルを受け止めたガンダム・アイアンボトムサウンドはそのまま左腕を払うことでレギュルス・theレプリカを受け流した。そして振り返りざまに両膝から10発のミサイルを発射しレギュルス・theレプリカを追撃した。

「チッ!」

ミサイルの発射を見たレ級は反撃に転じようとしていたがそのままその場を駆け抜け、theレプリカビットを周囲に展開。ミサイルへ向けてtheレプリカビットをばら撒いた。レギュルス・theレプリカの周囲で10発の爆発がほぼ同時に起こると追撃とばかりにガンダム・アイアンボトムサウンドはレギュルス・theレプリカを追おうとした。だが、そうはさせまいとイナヅマガンダムトリニティVIはレインバレットキャノンをガンダム・アイアンボトムサウンドへと向け放った。

「吹雪さんっ!」

ロックオンのアラートが吹雪の耳に入ると、吹雪は再び両肩をビームランチャーに変形させて応戦し、レインバレットキャノンのビームへと放った。ガンダム・アイアンボトムサウンドのビームランチャーは、レインバレットキャノンのビームに直撃し激しい電撃の奔流を巻き起こして爆発した。

「その程度の攻撃で墜とせると思ったか!?」

これ以上、レ級はやらせないのです!

電は武装スロットのアウェリアスサーベルのSPを選択した。するとイナヅマガンダムトリニティVIは右手のアウェリアスサーベルの柄を右腰にマウントされていたもう1本のアウェリアスサーベルの柄と連結させた。それを機体の正面に向けると同時に出力し、回転しながらスラスターと光の翼を展開してガンダム・アイアンボトムサウンドへと向かって行った。

「アウェリアスサーベル・アンビテクスハルバードなのです!」

そんなものを使ったところで、この私は倒せん!

「やあぁぁー!!!」

アウェリアスサーベル・アンビテクスハルバードを右上段から斜めに斬り払うイナヅマガンダムトリニティVIしかし、ガンダム・アイアンボトムサウンドはそれを上昇して回避した。だが、電は止まることなくガンダム・アイアンボトムサウンドを追撃していった。赤紫の光の翼と、青紫の影の翼を羽ばたかせたイナヅマガンダムトリニティVIとガンダム・アイアンボトムサウンドの閃光が何度も交差しぶつかり合う。

 

はあぁぁー!!

 

あああぁぁー!!

 

イナヅマガンダムトリニティVIのアウェリアスサーベル・アンビテクスハルバードと、ガンダム・アイアンボトムサウンドの大型ビームソードがぶつかり合い、大きなビームの火花が散っていく。

「ガンプラバトルを無くしたその先の未来で、吹雪さんはいったい何をしようと言うのですか!」

「生まれながらにして、自由も権利も、何もかも…さえ奪われたこの私に、そんなものがあると思うのか!」

 

 

っ!!

 

 

その言葉を聞いた白雪は、思わず背筋が震えた。白雪の瞳の奥で、かつての記憶が鮮明に浮かんでくる。

 

 

 

――――あれは吹雪ちゃんと私、そしてぱっつんな髪型と眠たげな表情な私たちと同じ服装の初雪ちゃん、黒の外ハネするショートボブヘアーが特徴の深雪ちゃんの4人が研究所で初めて揃った時の事でした。私たち4人はそれぞれの境遇を知りませんでした。ううん、もしかしたら吹雪ちゃんだけは知っていたのかもしれません。そして4人はそれぞれの夢について語っていました。深雪ちゃんは、ガンプラバトル全国大会で優勝すること。初雪ちゃんも、深雪ちゃんほど乗り気ではなかったけど、ガンプラバトル全国大会での優勝が夢だった。そして私も、他の2人と同じ夢を言いました。でも、最後の吹雪ちゃんだけは違いました。

 

 

 

みんなで一緒に勝ち負けなんて関係のない心の底から思いっきり楽しめるガンプラバトルがしたい。

 

 

 

それが吹雪ちゃんの夢でした。深雪ちゃんは、なんだよそれー!と爆笑し、初雪ちゃんはめんどくさそうな表情をして、へー。と言い笑いました。私自身は、困惑していました。突拍子もない言葉、だったんだなと今になって思います。

 

でも、その後しばらくして行われた実験で初雪ちゃんと深雪ちゃんは、廃棄処分になりました。無慈悲に一瞬にして姉妹を失った吹雪ちゃんが復讐に憑りつかれるのは至極当然、研究所が地獄絵図となるのに時間はかかりませんでした。

 

 

 

「吹雪ちゃんっ…」

白雪は下を向いて悩んだような表情を作った。白雪の目の前では、依然としてイナヅマガンダムトリニティVIとガンダム・アイアンボトムサウンドが、その刃を交え、幾度にも渡って機体をぶつけ合っていた。

「その奪われてしまった過去は二度と戻って来ません!吹雪さんはそれに気づいている筈ですッ!」

「それがどうしたというんだ!夢さえ見ることの出来なかった私の、いったい何がわかるって言うんだ!お前は!」

「なにを!」

ガンダム・アイアンボトムサウンドが大型ビームソードを押し出し、イナヅマガンダムトリニティVIを弾き飛ばした。そこへ大型ドラグーンを4基展開し、全砲門を一斉射した。イナヅマガンダムトリニティVIはそれをアカツキビームシールドで受け止めた。

「クゥッ!!」

「だが、どの道私の勝ちだッ!あと15分もすればこの施設は跡形もなく消え去るッ!

「っ!?」

その言葉を聞いた電は驚きを隠せなかった。そして吹雪は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンプラバトルの終焉の日だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それでも―――」

 

 

 

 

それでも電は、吹雪さんを止めてみせますッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

吹雪さんを止めて…吹雪さんと一緒に、笑い合えるガンプラバトルをするのです!!

 

 

 

 

 

 

 

 

っ!?

 

 

 

 

 

イナヅマガンダムッ!電に力を貸すのですっッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュピィンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イナヅマガンダムトリニティVIのメインカメラが今まで以上に淡く光り輝いた。そしてバックパックのビーム対艦刀「イナヅマ」を抜き、両手でそれを保持した。そして剣先をガンダム・アイアンボトムサウンドへ向け光の翼を最大出力で広げ、それを右上段に構え直し一気に突撃した。

 

 

 

あああぁぁぁぁぁー!!!!

 

 

 

「な―――」

電の放った「吹雪さんと一緒に、笑い合えるガンプラバトルをする」という言葉に動揺した吹雪の反応は完全に遅れてしまった。そして、その僅かな瞬間にイナヅマガンダムトリニティVIはガンダム・アイアンボトムサウンドの懐へ入り込み、ビーム対艦刀「イナヅマ」を最上段から一気に振り下ろした。

 

 

 

ズバァァンッッ!!!

 

 

 

振り下ろされた「イナヅマ」はガンダム・アイアンボトムサウンドの左腕の肩口とバックパック左のウイングバインダーを切り裂いた。イナヅマガンダムトリニティVIはそのままガンダム・アイアンボトムサウンドの背後へと通り過ぎていった。「イナヅマ」によって斬り落とされた左腕とウイングバインダーは即爆発して消滅した。だが、吹雪は―――

 

 

 

コノシニゾコナイガァァァー!!!

 

 

 

ガンダム・アイアンボトムサウンドの残った右腕を、以前電に深海細胞を侵食させたときに展開した異形のクローへと変形させると、残された全てのスラスターを全開にして背後に回ったイナヅマガンダムトリニティVIへ向かって特攻していった。しかし、その表情は今までの様な冷静さを失っていた。そして、ガンダム・アイアンボトムサウンドの頭部メインカメラが割れ、そこから円形に光る血の様に真っ赤な2つのモノアイが現れた。

「っ!?」

振り向いた電は眼前のガンダム・アイアンボトムサウンドの異形さに驚き、手の動きを止めてしまった。だが、その時だった――――

 

 

 

 

 

吹雪ちゃんもう止めてッ!!!

 

 

 

 

 

2人の眼前に大破したガンダムホワイトボトムサウンドが割って入り、吹雪を止めようとしたのだ。だが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわあぁぁぁ!!!初雪ちゃんッ!深雪ちゃんッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、吹雪の眼前に初雪と深雪の幻影が映りそして、処分される直前の初雪、深雪の姿が映し出された。冷静さを失っていた吹雪は遂に目の前に立ちはだかったガンダムホワイトボトムサウンドを2人を殺そうとしている科学者と誤認してしまい、幻影である初雪と深雪を守ろうとその異形の爪をガンダムホワイトボトムサウンドへ向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉー!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

白雪は迫りくるガンダム・アイアンボトムサウンドに恐怖を覚えた。そして、ガンダム・アイアンボトムサウンドの異形のクローが命中しようとした瞬間――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバァァンッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

ガンダム・アイアンボトムサウンドの遥か後方から現れたガンダムレギュルス・theレプリカのtheレプリカビームサーベルがガンダム・アイアンボトムサウンドの右腕を根元から切り裂いたのだ。そして、レ級はガンダムレギュルス・theレプリカをその場で反転させtheレプリカライフルを捨てた右手をグッと強く握りしめ、機体の全勢いを乗せてガンダム・アイアンボトムサウンドの顔へと突き出した。

 

 

 

 

 

この大バカ野郎がぁぁぁぁぁぁー!!!!!

 

 

 

 

 

そしてガンダムレギュルス・theレプリカの右拳はガンダム・アイアンボトムサウンドの右頬を殴った。

 

 

 

うわあああぁぁぁぁぁぁー!!!

 

 

 

吹雪の叫び声と共に、ガンダム・アイアンボトムサウンドは地面へと崩れ落ちるように墜ちていった。

 

続く



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Final EP 終わりの光

時間は少しだけ遡る。

 

村雨たちを連れてプラフスキー粒子精製工場を脱出した深海たち。気絶した村雨、五月雨、海風、江風をバトル台にもたれかけさせた時雨たちはようやく落ち着くことが出来た。時雨と夕立の2人は一緒に逃げてきた白露と話をしていた。

「白露、さっきはありがとう。おかげで全員を助けることが出来たよ」

「ぽい!本当にありがとう白露!」

「ううン!しらツゆノほうこソ、タスけてくレテアりがトネ!」

「でも、村雨の深海細胞はどうすれば良いんだろ……ねえ、お兄ちゃ―――」

と、時雨が深海に声を掛けようとした時、深海のポケットに入っていたスマホに着信が入った。深海が着信画面を見ると、一瞬だけハッとした表情になると電話に出た。

「俺だ」

「深海、頼まれていた物。何とか見つかったぞ」

「っ!そうか、ありがとうな中枢棲姫」

電話の相手は中枢棲姫だった。その言葉を聞いた時雨たちは思わずビクッとした。全ての深海棲艦を束ねる深海棲艦の長が、電話越しにとは言えそこに居るからだ。

「まったく、この広い海であれは見つけるのは大変なんだからな」

「ああ、わかってるよ。ちゃんとしたお礼はするさ」

「……ああ。楽しみにしているよ」

「それじゃあな」

そして深海は電話を切った。

「お、お兄ちゃん、中枢棲姫と何を話してたの?」

と、時雨が少し脅えながら深海に尋ねた。すると深海は、少しだけ口元に笑みを浮かべて言った。

「今回の事件を解決する最後のピースの話だ」

「え?」

「俺は電たちを助けに行く。お前たちはこの場から離れておけ」

「深海司令官!」

と、そこへ暁と響、雷が駆け寄ってきて深海に声を掛けた。深海は返答をすることなく、顔だけを3人に向けた。

「電のこと、ちゃんと連れ帰って来てよね!死なせたりしたら絶対に許さないんだから!」

「頼むよ深海司令官。司令官だけが頼りなんだ」

「本当にお願いよ!」

「ああ、わかっているさ。最善は尽くすが、最悪の事態が起こった場合は受け入れてくれよ」

そう言って深海は1人、プラフスキー粒子精製工場へと戻っていった。

 

 

 

そして時間は流れ、電とレ級によって撃墜されたガンダム・アイアンボトムサウンド。

「吹雪ちゃん!」

そう言った白雪は電の隣から駆け出していった。

「白雪さん!」

それに気づいた電もその場を飛び出し、施設の奥へと向かった。

「………」

それを壁に隠れながら見ていた深海も、2人を追って施設の最深部へと向かって行った。

 

イナヅマガンダム・トリニティVI、ガンダムレギュルス・theレプリカとガンダム・アイアンボトムサウンドが戦闘をしていた広間で深海吹雪は項垂れながら床に座り込んでいた。

「何で…どうして……私は……」

「吹雪ちゃん!」

「…あ」

そう言ってそこに白雪が駆け込んでいた。白雪の声を聴いた深海吹雪は、今にも光を失いそうな紅い目で駆け寄ってくる白雪を見つめた。

「白雪ちゃん…」

「吹雪ちゃん、早く脱出しよう!このままじゃ爆発に巻き込まれて死んでしまう!」

「あはは…もう私たち命が短いんだよ?それなのに生きる意味なんてあるの?」

先ほど見た幻影のせいで、吹雪は完全に全てを諦めたような生気のない声でそう言った。

「そんなこと言わないでよ!私はそれでも生きたいよ!」

「白雪ちゃん…」

「吹雪さん、電からもお願いなのです!」

そこへ白雪の後を追いかけてきた電も駆け付け、吹雪に脱出を促した。

「ここまで酷いことをした私に生きてほしいなんて言うなんて、電ちゃんは本当にお人好しだね」

「電は吹雪さんに何と言われても、吹雪さんに生きてほしいのです!電は、吹雪さんと一緒にガンプラバトルを絶対するのです!」

「そう言えばそう言ってたね……でも、深海結晶が壊れてしまえばもうガンプラバトル出来ないんだよ?もう爆発まで3分を切ったからね…」

「もうすぐガンプラバトル出来なくなってしまっても、きっと何か方法がある筈なのです!」

「そんな事有る訳ないでしょ。もういいから、早く逃げ―――」

「残念ながら、ガンプラバトルが完全に無くなることはないぞ」

「!?」

そこへ深海が歩きながら現れた。それに気づいた3人はとても驚いた表情を作った。

「深海提督さん!」

「時間がないから手短話す。吹雪、残念だがお前の企みは完全に終わりだ。中枢棲姫が新しい深海結晶を見つけてくれた。ガンプラバトルが再始動するのに時間はかかるが、無くなることはないぞ」

「………」

「もうお前の計画は終わりだ。なら、電と白雪の願いくらい叶えてやったらどうだ?」

「吹雪ちゃん!」

「……はぁ。もう、どうでもいっか。いいよ…早く行こ」

「っ!お、お前は黒野深海!?何でお前がここに!」

更にそこへレ級が駆け込んできた。

「レ級!レ級も早く脱出するのです!」

「お、おう。何かよくわからないが、急ごうぜ!」

そう言って何とか吹雪を説得できた3人は、元来た道を全速力で走っていった。

「あ…」

と、走り出そうとした吹雪は突然振り返ると床に転がったガンダム・アイアンボトムサウンドを見つめた。そして、しばらくガンダム・アイアンボトムサウンドを見つめていた吹雪はやがてガンダム・アイアンボトムサウンドを拾い上げたのだった。

「直るか知らないけど、持っていこ」

そして走りだした電たちより少し遅れて、吹雪もその場から走り出したのだった。

 

「急げ!間に合わなくなったらどうしようもないぞ!」

「はい!」

深海を先頭にレ級、白雪、電、吹雪と続いていた。だが、残り3分という時間はあまりにも短かった。電たちが出口まで半分も辿り着いていなかった地点に来て、遂に吹雪が設置していた爆弾が爆発した。爆発によって起こった爆炎が深海結晶を包み込んでいく。そしてその爆音を深海の耳は聞き逃さなかった。

「爆発したぞ!急げ!」

「は、はいです!はぁ…はぁ…」

「電ちゃん、大丈夫?」

「ふ、吹雪さん。電のこと、心配してくれるのですか?」

「まあね。電ちゃんが私の事許してくれたんだから、これくらいしないと罰当たりだよ」

「吹雪さん……」

「この音…連鎖爆発してるな」

そして深海は爆発が連鎖的に起こり、その爆音が徐々に近づいてくるのに気づいた。

「気をつけろ!いつ崩れてもおかしくないぞ!」

「おい吹雪!一体どんだけの爆弾置いたんだよ!」

「この施設をスクラップ同然にする量だよ。急がないと、私たちも巻き込まれる」

「てめぇ、あとで一発殴らせろ!」

「レ級!無駄口叩いてないで走って!」

そんなやり取りをしている間にも爆発は次々に起こり、それはやがて深海の耳で捉え切れないほどの数に達した。そして施設の外でその爆発の様子を見ていた時雨たちは、次々に目の前で起こる爆発に驚きはしたものの、ただ黙って電たちの無事を祈っていた。

(電、必ず帰ってきて!)

そしてそれは暁、響、雷の3人も同じだった。3人は昨日4人お揃いで揃えたお守りと「特Ⅲ型」のバッジを握りしめて必死に祈っていた。

 

そして、電たちはあともう少しで出口となるエントランスまで続く1本道まで戻ってきた。

「あと少しだ!頑張れ電!」

「は、はいなのです……はぁ…はぁ…」

だが、走り続けた電の体力は限界に近づいていた。流石の深海も電の体力が無くなっているのはわかっていた。

(流石に背負って行った方が良さそうだな。これ以上走らせると、途中で倒れてしまいかねない)

「電、俺が背負って行くから背中に乗れ」

そう言った深海は少しだけ走るペースを落としながら電に言った。電は、疲れ果てた表情で深海の顔を覗き込んだ。

「で、でも、電を背負ったら深海提督さんの足が…はぁ…はぁ…遅くなってしまうのです」

「気にするな電。お前が思っている以上に、俺は体力がある方だ」

「深海提督さん…」

「いいから乗れ。さぁ―――」

深海と電が足を止め、深海が少しだけ腰を下ろした時だった。

 

 

 

ガッシャーン!!

 

 

 

突如、天井が崩れ落ちてきたのだ。

「な―――」

流石の深海もこの崩落には驚いてしまい、直後の行動が取れていなかった。

「深海提督さん!!」

「いなづ―――」「電ちゃん!

だが、先にそれに気づいた電は咄嗟に深海を突き飛ばした。深海は電の突然の行動に驚いた。だが、全ては遅く深海が気づいた時にはその場に瓦礫の山が出来ていた。

「電っ!!」

深海は大声で電の名前を叫んだ。すると、瓦礫の反対側から声が聞こえてきた。

「だ、大丈夫なのです!吹雪さんが助けてくれたのです!」

「急いで別のルートで脱出してくれ!すまないが、この瓦礫をどかしている時間はない!」

「わかったのです!」

(くそ!俺としたことが…)

深海は自身の失態をとても悔やんでいた。

「電っ!」

(いや、悔やむのは後だ!レ級と白雪だけでも脱出させなければ!)

「レ級、電は必ず戻ってくる!今はここから出ることを優先しろ!」

「……チクショー!」

そして深海、レ級、白雪はその場を後にした。

 

そして、別ルートでの脱出を迫られた電と吹雪は、瓦礫を目の前にして立ち尽くしていた。

「吹雪さん、助けてくれてありがとうなのです」

「ううん。お礼には及ばないよ…電ちゃん」

「…諦めちゃ駄目なのです!」

「そうだね…急ごう」

「なのです!」

そう言って電と吹雪は瓦礫が点在する反対側へと戻っていった。

 

そしてそれから少しして深海、レ級、白雪が施設の玄関から抜け出してきた。

「お兄ちゃん!」「にぃに!」「深海!」「深海提督さん!」

それを見た時雨、山風、空母水鬼、夕立は慌てて深海の元に走っていった。

「はぁ…はぁ…流石に、ヤバかった…な」

「にぃに、良かった。良かったよぉ…」

「大丈夫なの深海!どこも怪我とかしてないよね!」

「あ、ああ。怪我はしてない…だが……」

「あれ?電ちゃんが、いない…」

そして夕立は電がいないことに気づいた。すると、隣にいたレ級が口を開いた。

「電とは分断されちまった。瓦礫が落ちてきてしまったんだよ」

「!!」

「レ級!まさか、お前―――」

レ級の姿を見るなり、彼女の胸倉を掴もうとした時雨だったが深海が慌ててそれを引き留めた。

「やめろ夜空!そいつはレ級だが、以前のレ級じゃない!」

「え?」

「吹雪に偽の記憶を植え付けられて、お前たちと戦わされていたんだ。だから、暴力を振るうのは止めてくれ。レ級も、被害者の1人なんだ」

「お、お兄ちゃんがそう言うなら……」

その場は事なきを得た。そしてそこに、暁、響、雷がやってきた。

「深海司令官…電は……」

「……すまない。脱出の途中で、分断されて逸れてしまった」

「じゃ、じゃあ、まだあの中にいるのかい!?」

「…ああ」

「――――っ!」

それを聞いた暁は、咄嗟に施設内へと駆けだそうとした。しかし、暁の腕を深海は掴み彼女を引き留めた。

「やめろ暁!今行けば、お前まで死ぬことになるんだぞ!」

「行かせてよ!また電だけが死んでしまうなら、暁も一緒に―――」

「馬鹿なことを言うな!なら電が無事に戻ってきた時に、お前がいなかったらどうする気だ!!」

「でも、これだけ崩れた施設の中で生きてる訳ないもん!」

「いい加減にしろ暁ッ!!これ以上暴れるなら、気絶させてでも止めるぞ!」

「や…やれるものならやって―――」

止めるんだ暁!

そして、響が声をあげた。暁は、響が今までに見せたことのない叫び声に驚きながら、涙でグショグショになった顔を響に向けた。

「今は待つことが私たちの最善策だよ。あの時みたいに、目の前で確実に電が死んだわけじゃないんだ」

「響……」

「私だって、今すぐ助けに行きたい。でも深海司令官の言う通り、電が無事に戻ってきた時に暁がいなかったらどうするのさ?」

「そ、そうよ!雷は電が生きてることを信じるわ!きっと帰ってくる!ううん…絶対帰って来る筈!」

「雷……」

「今は信じて待つんだ暁。今は、私たちに出来る精一杯のことをやろう」

「……う、うんっ」

暁は涙を流しながらゆっくりと響の手を取って立ち上がった。だが、その直後だった。

 

 

 

 

 

ドカァァァーンッ!!

 

 

 

 

 

ひと際大きな爆発が施設で起こったのだ。熱と瓦礫を含んだ爆風が外にいた全員を襲った。

「うわあぁっ!」

「キャアァッ!」

「クッ…!」

爆風が去った後、深海たちの目の前には火を纏った瓦礫の山が積みあがっていた。たった今、暁たちが電の帰還を信じた直後の出来事だった。

「あ、あああ……」

「そ、そんな…」

「建物が…」

 

 

 

完全に崩れた。

 

 

 

「い、電……電――――」

 

 

 

 

いやあぁぁぁぁぁー!!!!

 

 

 

 

その光景を見た暁は、悲しみのあまり絶叫した。それを見た響は完全にゆっくりとうつむき、雷は涙を流しながら放心状態だった。

「………くそぉ!」

そして、流石の深海もこれには地面を殴りつけることしか出来なかった。

「電……」

時雨もまた、放心状態で瓦礫の山を見ていた。

「電ちゃぁーん!!」

夕立は全力で電の名前を呼び、泣き始めてしまった。

(また…また僕は、助けられなかったのか……)

「何でだよ……何で僕は誰も救えないんだよぉ!」

悲しみのあまり、時雨も叫んだ。そして、炎のパチパチッという音と悲しみがその場を包み込んで、その場にいた全員が俯いた。

「吹雪ちゃん……」

そして白雪もまた、目に涙を浮かべていた。もう会うことが出来ない自分の大切なたった1人の姉を思うと、涙を浮かべずにはいられなかった。

「ごめんなさい。もう、私は泣かない!吹雪ちゃんの分も生き抜いてみせるよっ」

 

 

 

 

だが、その時だった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

勝手に殺さないでよ

 

 

 

 

 

 

 

 

白雪の耳元に、聞き覚えのある声が届いたのだ。その声に反応するように、白雪はハッキリと声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪ちゃん!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

白雪の声を聴いた深海、時雨、夕立はハッとして白雪の方を向いた。

「白雪!今、吹雪と言ったか!?」

「は、はい!ハッキリと聞こえたんです!吹雪ちゃんの声です!」

「っ!それは何処からだ!」

「そ、それが……耳元にいきなり――――」

と、その時だった。

 

 

 

ガラガラガラ……

 

 

 

施設の隅にある瓦礫の山が崩れたのだった。そしてそこには――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか…ガンダム・アイアンボトムサウンド(深海フレームの機能)に助けられるなんてね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電を抱えた吹雪の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその直後、超大量の青白い光が精製工場の中心から舞い上がるように現れた。

「こ、この光って…」

その場に居る者の中で、この光が何なのか、わからない者はいなかった。

 

 

プラフスキー粒子の光だ

 

 

プラフスキー粒子の光はやがて、その場にいた全員に舞い落ちた。すると駆逐棲姫、防空棲姫の2人に舞い落ちたプラフスキー粒子が2人を光に包み込んだ。

「な、なんだ?…あ―――」「これは…暖かくて優しい光?あ―――」

 

きれいな―――

 

空が、綺麗―――

 

そう言った2人を包む光が晴れると、そこには鮮やかなピンク色と毛先が水色がかった髪を左側でサイドテールにして、白いベレー帽をかぶった時雨たちと同じ制服を着た少女と、明るいセミロングの茶髪を2本の三つ編みおさげにし、その先を黄色いスクリュー型アクセサリーでまとめているのが特徴的な秋月たちと同じ制服を着た、ダークグレーの色をした目の少女が立っていた。

「は、春雨!」

「て、照月!」

そこに立っていたのは、間違いなく時雨と夕立の妹である春雨と、秋月の妹である照月だった。

「時雨姉さん、夕立姉さん…わ、私……」

「秋月姉さん。涼月に初月も…私、もど…れた?」

 

春雨!

 

照月!

 

時雨と夕立、秋月と涼月、初月は春雨と照月にそれぞれ走っていった。夕立は止まることなく春雨に飛び着き、そして時雨は抱き着く夕立の隣で腰をゆっくりと下ろした。

「春雨ー!良かったよ、ちゃんと元に戻ったっぽいー!」

「ひゃあ!ちょっと夕立姉さん、苦しいです!」

「良かった…ありがとう春雨、ちゃんと戻って来てくれてっ…うっ――」

「ええ!?泣かないでくださいよ時雨姉さん!」

そして、秋月もまた嬉しさのあまり照月に飛びついたのだ。

「照月!良かった!本当に良かったよ!大丈夫だって、信じてた!」

「ちょ、秋月姉さんいきなり抱き着かないでよ恥ずかしいって!」

「本当に…良かった。照月姉さん…うっううう……」

「って、涼月は泣き過ぎよ!」

「まあまあ、今日くらいは許してあげなよ。照月姉さん」

「いやいや、号泣しながら何でそんなクールなこと言えるのよ初月!」

そして涼月、初月の2人は秋月と照月の傍で涙を流していた。その2人に照月は的確にツッコミを入れていたが、その目からは涙が零れ落ちていた。そしてプラフスキー粒子の光は駆逐水鬼、深海雨雲姫、深海化した翔鶴、白露、五月雨、海風、江風も包み込んだ。そして光が消えると、そこには元の姿に戻った萩風、村雨、翔鶴、白露、五月雨、海風、江風の姿があった。

 

萩風!

 

翔鶴姉ぇ!

 

古代紫色の前髪を左で七三分して、エッジの効いたアホ毛と左サイドアップが目を引くセミロングが特長の陽炎と不知火と同じ制服着たバトル台にもたれ掛かっていた少女、萩風の元に駆け寄る陽炎と不知火。すると、萩風の金色の瞳がゆっくりと開かれ、陽炎と不知火の2人と視線が合った。

「う…あ……陽炎姉さん、不知火姉さん?」

「萩風!もうっ、勝手にどっか行くんじゃないわよ!」

「本当に…本当に心配したんですからねっ」

「はい……本当に、ごめんなさい。ごめんなさいっ」

涙を流す陽炎と不知火からもらい泣きをする萩風。そして、元に戻った翔鶴の前に座り込んだ瑞鶴は、必死に翔鶴を揺さぶって目を覚まさせようとしていた。

「翔鶴姉ぇ!翔鶴姉ぇ!起きてよ!ねえ起きてよ!」

「うう…瑞鶴、そんなに揺さぶらないで…ちゃんと起きてるわ」

「翔鶴姉ぇ!!」

翔鶴が目を覚ましたことに気づいた瑞鶴は、居ても立ってもいられず衝動的に翔鶴に抱き着いた。そして周囲を気にすることなく、わんわんと泣き出したのだった。

「うわぁぁぁーん!翔鶴姉ぇ!翔鶴姉ぇぇー!!」

「大丈夫よ瑞鶴。もう何処にも行かないわ…だから、安心して…うっ…」

そして翔鶴もまた、瑞鶴の髪をゆっくりと撫でながら涙を流すのであった。

(良かったわね、瑞鶴…)

そんな瑞鶴を見て、加賀はホッとした表情を見せるのだった。

「時雨ー!夕立ー!春雨ー!」

そして、元に戻った白露は全力疾走で時雨と夕立、春雨に抱き着いたのだ。

「わっ!し、白露!」

「わわ!いきなり来られたらビックリしちゃうっぽい!」

「そんなのいいでしょ!せっかくみんな元に戻れたんだから!」

「…そうだね。うん。僕も嬉しいよ」

「春雨もです!」

「夕立もっぽい!」

そして4人が抱き合って喜びあっている間に村雨、五月雨、海風、江風の4人も目を覚ました。

「うう~ん……あ、あれ?私、元に戻ってる?」

「いってて…あ?元に戻ったのか私ら?」

「うう…あ、江風。大丈夫?」

「海風の姉貴こそ、大丈夫なのか―――」

「海風姉ぇー!江風ー!」

「きゃあぁぁ!」「どわあぁぁー!」

と、そこへ山風が飛びついてきた。その目からは大粒の涙が止まることなく流れ落ちていて、山風もわんわんと2人に抱き着きながら大泣きしていた。

「うわぁぁーん!海風姉ぇー!江風ー!」

「山風…よしよし、寂しい思いさせてごめんなさい」

「まったくぅ…相変わらず泣き虫だなぁ山風の姉貴は」

「いいじゃん今日は。気が済むまで泣かせてやんなよ」

「涼風も、心配かけてごめんなさい。もっとしっかりしないと駄目ですね、うん」

「いやいや、これ以上しっかりしてどーすんだよ海風の姉貴」

そして、たった1人だけ気まずそうな雰囲気をかもし出している人物がいた。

「………」

村雨だ。そして、そんな村雨に気づいた時雨は、騒ぐ夕立3人の傍を離れ村雨の元へ歩いて行った。

「村雨」

「………」

そして、村雨に声を掛けた時雨だったが村雨はそっぽを向いたまま口を開こうとしなかった。それを見た時雨は、一方的に話し始めた。

「村雨、僕は姉妹のみんなを苦しめたことは許すことが出来ないよ」

「………」

「だけど、もう止めようよ。村雨がしたことは許されないかもしれないけど…もう僕と村雨に戦う意味なんて無いじゃないか」

「………こんな時にまで、お姉ちゃんぶるのね時雨」

「そりゃそうだよ。だって僕は、村雨のお姉ちゃんだからね」

「……そうよね…あーあ!完全に私の負け!……やっぱり、時雨姉さんには敵わないわ」

そう言った村雨はゴロンと地面に寝っ転がった。それを見た時雨は小さく笑みを浮かべながら言った。

「そんな事ないよ。みんなへのフォローなら、僕は村雨に勝てないよ」

「はいはい、わざとらしく言わないの………でも、ありがとうね時雨お姉ちゃん

「どういたしまして!」

そして時雨は、村雨の頭を優しく撫でたのだった。

 

「なるほど。 D事案(ドロップ)…か」

「え?」

そんな中、深海は今目の前で起こった現象が D事案(ドロップ)であることに気づいた。それを聞いて空母水鬼は疑問の表情を浮かべた。

「深海棲艦を倒すと、稀に新しい艦娘と邂逅する。深海結晶は深海棲艦の力の源。それが破壊されて、深海細胞を浄化したんだろう。まあ、母さんや俺、艤装を解体した深海棲艦とほぼ同じレ級や他の深海棲艦の連中には作用しないだろうがな……」

「そ、そうなんだ……」

だが、当の空母水鬼はまるで意味が分かっていなかった。そしてプラフスキー粒子の光は空母水鬼の隣に立っていた白雪、そして電と吹雪にも舞い降り、包み込んだ。そして彼女たちの白い髪と肌、紅い目、深海細胞によって異形化した吹雪の左腕を元に戻したのだ。その元に戻った肌を見て吹雪は笑った。

「最後の最後に、壊そうとした相手に救われるなんてね……」

「うっ……」

「あっ、電ちゃん」

そして電は、吹雪の肩で目を覚ました。

「吹雪、さん?」

「助かったんだよ、私たち…」

「………」

電はゆっくりと顔を上げた。すると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電ぁぁぁぁー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこへ暁と響、雷が走ってきた。暁は泣きじゃくった顔で電に飛びつき、響と雷も続いて電に抱き着いた。吹雪は咄嗟にその場を避けたので巻き込まれることはなかった。

 

 

 

 

電ぁぁー!!心配したんだからぁー!!

 

 

 

 

もう、ちゃんと帰ってこないと駄目じゃないか!

 

 

 

 

本当、世話の焼ける妹なんだから!!

 

 

 

 

「暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん……ごめんなさい…ごめんなさいなのですっ」

 

 

 

 

うわあぁぁぁーん!!!

 

 

 

 

目の前で泣きじゃくる姉妹たちを見て電も、泣き始めた。姉妹のぬくもりを感じた電には、暁たちと泣くことしか出来なかった。ただただ、謝りながら泣くしか出来なかった。

「………」

「吹雪ちゃん!」

そんな電たちを見ていた吹雪の元に白雪が駆け寄ってきた。そして白雪もまた、吹雪に釣られて電たちを見つめていた。

「…私たち、助かったんだね」

「……うん。無くそうとしたガンプラバトルの根幹部分に命を救われるなんてね…」

「吹雪ちゃん…」

「ううん、わかってるよ。私は簡単には許されないことをしたんだ。この罪は消えないし、消す気も無いよ」

吹雪は今まで自身がしてきたことへの償いの気持ちを白雪に語った。白雪は、そっか。と短く返答したが、やがて吹雪に言った。

「……でも、私は嬉しいよ」

「え?」

「また一緒に、吹雪ちゃんと生きられるんだもん。私は嬉しいよ」

「……そうだね」

そして吹雪は、小さな声でありがとうと白雪に言ったのだった。

 

「電!」「電ちゃん!」

そして暁たちと抱き合っていた電の元に時雨と夕立の2人も駆け寄ってきた。すると、電の声を聴いた暁たち3人は何も言わずに電から離れていった。

「時雨さん。夕立さん」

 

 

良かった…本当に無事で良かったよ…電

 

 

もう!夕立たちを泣かしたお詫びは、しっかりとって貰うっぽい!

 

 

そして時雨と夕立の2人は大粒の涙を流しながら電をギュッと抱きしめ、電もまた涙を流しながら時雨と夕立を抱きしめ返した。

 

そして言った―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのです!

 

 

 

プラフスキー粒子の光が空を照らしたこの日

 

 

 

 

長く短いガンプラバトルを巡る戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

Fin.



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EPilogue それぞれの道へ

結局その後、空を覆ったプラフスキー粒子の光は消え去り僕たちのガンプラは遂に動かなくなった。吹雪が行ったプラフスキー粒子精製工場の爆破によってプラフスキー粒子の源である「深海結晶」は破壊され、結果世界中でガンプラバトルが突如停止する、という事件が発生した。でも、お兄ちゃんが先手を打って中枢棲姫に新しい深海結晶を、ガンプラバトル協会には事前通達をしてくれていたおかげで世界中での混乱は少なかった。そしてガンプラバトル協会は3ヵ月以内の事件収束を宣言し、プラフスキー粒子精製工場の再建と深海結晶の早急な陸揚げ、稼働に取り掛かった。正直僕も、お兄ちゃんがここまで予測を立てているとは思わなくてビックリした。爆発が治まったことを確認した僕たちは、早々にプラフスキー粒子精製工場から撤退しお兄ちゃんの鎮守府に戻った。そこで簡単な解散式が行われた。僕たちはその日の夜、お兄ちゃんに許可をもらって鎮守府総出で大宴会を開いた。それはもうどんちゃん騒ぎだったよ。ガンプラバトルが出来なくなった筈なのに、みんなそれを気にしていないかの様にはしゃぎ回っていた。勿論僕と電、夕立、姉妹のみんなも参加した。でも、1つだけ気になることがあったんだよね。その宴会の時、何故かお兄ちゃんとお兄ちゃんの家族を誰も見かけなかったんだよね……うーん。ちょっと、不思議な気もしたけど次の日にはお兄ちゃんも含めて家族みんな揃って、集まってくれたみんなを見送ってたからきっと夜は家族水入らずで過ごしてたんだろうな~。僕も加わりたかったけど、夕立がうるさかったからね。参加できなかったよ。

 

 

それから月日は流れ秋が深まり始めた頃、ガンプラバトルは復活した。最初は日本から復帰が始まり、それからわずか1週間で全世界での復帰が完了した。本当に手が早いな。って思わずにはいられなかった。でもこれで、なんのわだかまりもなくガンプラバトルを楽しめるようになった訳で、暁学園では全国大会決勝戦まで行った僕たちの評判が功を奏し、ガンプラバトル部は一気に賑わいを見せた。今じゃ電も、ガンプラバトル部の(学年は1番下だけど)先輩として後から入ってきた部員たちに良く指導をしている。

 

電は、あの事件以来僕らがよく知るいたって普通の「電」に戻った。容姿は元の姿に戻ったし、目の色も戻った。そして何より、ぷらづまが息を潜めるようになった。よほどのことがない限り表に出て来ることはなくなったが、電曰く今も自分の中にぷらづまを感じるらしい。まあ電も電で、ぷらづまの事をしっかりと理解しているからこうなっているんだろうけど。そして今日も、ガンプラバトル部では学校終わりから部員たちが集まって、ワイワイと賑やかにガンプラバトルに打ち込んでいた。でも今日は少しだけ違った。

 

「それじゃあ今日の部活はここまで!みんな、気を付けて帰ってね」

僕がそう言うと、部員たちは「はい!」と言って部室を後にしていった。今じゃ部員は総勢15名にも増えてかなりの大所帯となっている。昔…って言っても数か月前みたいに何もせず部室でゴロゴロ出来るわけではなくなったから、夕立はいつも僕と一緒に最後に帰っている。そして電もそうだ。電はよく、一緒に帰ろうと言われることがあるが部室の片づけやまだやりたいことがあるから、と言って部室に良く残っている。

「あ“あ”~ゴロゴロお昼寝出来ないなんて、こんなのいじめっぽ~い」

「いや流石にいじめじゃないでしょ…夕立はガンプラバトル部1の接近戦ファイターなんだから、少しは頑張ったらどうなのさ?」

「部室でゴロゴロしながらガンプラバトルをするのが夕立のスタイルっぽ~い」

「まったくぅ……」

「あはは!良いじゃないですか時雨さん、今ぐらいは夕立さんにゴロゴロさせてあげても!」

「そうそう!電ちゃんの言う通りっぽい!」

「家でもゴロゴロしてるのにかい?」

「う…時雨ってば、痛いところ突くっぽい」

「あははは!」

そんなやり取りをしていたら、突然部室入り口の扉がガラガラと音をたてて開いた。僕たち3人は部員が何か忘れ物をしたのかと思って振り返ったら、そこには驚きの人物が立っていた。

「よぉっ!久しぶりだな電!」

「はわわ!レ級ちゃんなのです!」

「レ級!久しぶりだね、元気にしてるのかい?」

「久しぶりだな時雨…いや、夜空。オレはこの通り、いつも通りだ」

「こんなところに来るなんて、どんなご用事っぽい?殴り込みに来たのなら、お相手するっぽい!」

「相変わらずだな夕立。今日は殴り込みに来たんじゃない…って、殴り込みになんか来る分けねぇだろ!」

とレ級は夕立にノリノリでツッコミを入れていた。

 

レ級はあの事件の後、お兄ちゃんの鎮守府で暮らしていた。元々、路地裏の一室で暮らしていたらしいが、それではあまりにも可哀想だ。と電がお兄ちゃんに直談判をして、住む場所と将来が決まるまではお兄ちゃんの鎮守府で暮らせるようになったのだ。何より、以前とは比べ物にならない程、丸い性格になって電のことを妹の様に接するようになった。

 

「今日は何しに来たのですかレ級ちゃん?あっ、もしかして住む場所見つかったのですか!?」

と電は、早々にその話を切りだした。

「住む場所…って言うか、将来が決まった。って所かな」

「そうなのですか!良かったですねレ級ちゃん!」

そして電も電で、レ級の事を4人目の姉と見るようになった。だが、電の喜ぶ姿とは裏腹に、レ級の顔は優れなかった。何処か寂しそうな表情をしていた。

「…実はな電。オレはこれから、旅に出ることにしたんだよ」

「え?旅…ですか?」

レ級の突拍子のない言葉に電は困惑していた。それもそうだ、いきなり「旅に出る」なんて言われたら誰だってそうなるだろう。そしてレ級は続けた。

「ああ。オレは、もっともっと強くなりたいんだ。この世界の誰よりも強くなりたいっ」

「………」

「だから、もっと世界を知ろうと旅に出ることにしたんだ。だから電、お前とはしばらく会えなくなる」

「…レ級ちゃん」

レ級の言葉に、電も寂しそうな表情を作った。今レ級が言った言葉はつまり、お別れの言葉だ。せっかく姉妹として分かり合えたのに、こんなに早い別れになることが電は寂しいのだろう。するとレ級は、さっきまでのニッと笑った笑顔に戻ると電に言った。

「心配すんなよ。永遠の別れじゃないんだ。それに、オレは1人じゃない」

「え?」

「おーい!早く入ってこいよお前ら!」

するとレ級は部室の外にいるのであろう人物を呼んだ。そして現れたのは―――

「ふ、吹雪さん!白雪さん!」

吹雪と白雪だった。

 

吹雪と白雪の2人もまた、事件以後お兄ちゃんの鎮守府で暮らしていた。理由はレ級と同じで、例のごとく電がお兄ちゃんに直談判したのだ。結局、レ級と同じ理由で2人もお兄ちゃんの鎮守府で暮らしていた。

 

「久しぶりだね電ちゃん」

「お久しぶりなのです吹雪さん!この街に戻って来ていたのですね!」

「まあ、ね。でも、前の家は私を作った連中が用意してくれていた物だから早々に取り払ったんだ」

 

電やレ級、吹雪と白雪、そして彼女の姉妹たちを作った組織。旧海軍の復権を狙っていた勢力は、吹雪が個人的に報復を行ったおかげで殆どの人物が死亡してしまっていた。中心人物は勿論、研究者に至るまで、だ。でも、あの研究施設に残されていた資料から今の海軍上層部によって「艦娘、及び深海棲艦の技術を軍事、思想的な悪用の禁止。それを取り締まる機関の設立」を政策として提出してくれたおかげで、もう電たちの様な人間は生まれなくなった。僕としても嬉しいし、何より喜んだのは吹雪たちだろう。

 

「そうなのですか?…あ、もしかして吹雪さんと白雪さんも―――」

「はい。私と吹雪ちゃんは、世界各地を巡る贖罪の旅に出ることにしたんです」

「んでその旅に、オレも同行させてもらう。ってこった」

「……そうですか」

白雪の説明を聞いた電は、更に暗い表情になった。だが、吹雪はすぐに言った。

「だからね―――」

 

 

 

 

 

約束、果たしに来たんだ

 

 

 

 

 

「え、約束?」

「忘れちゃうなんて、酷いね電ちゃん。私との決着をつけた時(あの時)言ってたじゃない―――」

 

 

 

 

 

笑い合って、私とガンプラバトルがしたいって

 

 

 

 

 

 

「あ―――」

電は、ハッとしたような表情を作った。そして、先程の暗い表情と打って変わって電の顔には光が戻っていた。その電の表情を見た僕は、黙ってガンプラバトルシステムを起動した。

 

 

Gun-pla Battle combat mode Stand up!

 

 

そのバトルシステムの音声を聞いた電はまたビックリした表情をしてこちらを向き直った。

「時雨さん―――」

「約束を果たしに来てくれた相手を、無下にしたらガンプラファイター失格だからね」

「電ちゃん、行ってくるっぽい!そして勝ってくるっぽい!」

「夕立さん―――」

そして僕と夕立は、コクリと頷いた。そして電は今までで見せた中で最高の笑顔で言った。

 

なのです!!

 

 

 

 

Mode damage level set to A.Please set your GP base.

 

 

 

 

1つのバトル台を挟む様に電と吹雪の2人が対峙し、GPベースをセットする。

 

 

 

 

 

Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 space.

 

 

 

 

 

空を覆ったあの光。プラフスキー粒子によって広大な宇宙空間が形成される。

 

 

 

 

 

 

Please set year Gun-pla.

 

 

 

 

 

 

時雨と夕立、レ級と白雪の4人に見守られながら電と吹雪の2人がそれぞれのガンプラを台座にセットする。システムがガンプラをスキャンして読み込み、2人のガンプラ―――

 

 

イナヅマガンダムトリニティVIと、

 

 

ガンダム・アイアンボトムサウンドのメインカメラが淡く発光する。

 

 

2人は手元に現れた操縦桿を握りしめ、カタパルトではイナヅマガンダムトリニティVIとガンダム・アイアンボトムサウンドが発進体制に入った。そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Battle Start!

 

 

 

 

 

 

 

 

最初っから全力で行きますよ吹雪さん!

 

 

 

 

 

電!イナヅマガンダムトリニティVI、出撃ですッ!!

 

 

 

 

 

こっちこそ、手加減なんてしないんだから!

 

 

 

 

 

 

吹雪!ガンダム・アイアンボトムサウンド、行きますッ!!

 

 

 

 

 

 

イナヅマガンダムトリニティVIとガンダム・アイアンボトムサウンドは飛び立った。

 

 

 

 

笑い合える戦い(未来)へと

 

 



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Epilogue.5 登場人物&ガンプラ解説pt.Final

今回も前回同様にガンプラの解説を行っていこうと思います。出来るだけわかりやすく解説したいと思いますが、ご不明な点がございましたら感想にてこっそり教えてください。


機体名 イナヅマガンダム・トリニティ VI(シックス)

型式番号 ZGMF-X56S-INDM/(トリニティ)(シックス)

ファイター 電 初登場話 第98話  ベース機 イナヅマガンダム(セカンド)

機体データ(製作者の設定)全高 19.8m 重量 70.3t

解説

電が今までに培ってきた技術、知識の全てをつぎ込んで完成させたイナヅマガンダムの最終決戦仕様。ベースアイデアはデスティニーガンダムの前身機に当たるデスティニーインパルスガンダムだが、稲妻模様が描かれたメタリックライトブルーで塗装され大型化した頭部のメインアンテナとその上部に2本追加されたサブアンテナ、計6本のアンテナを持つ。更に胸部先端、両肩先端、両膝には水色のクリアパーツを取りつけられ、バックパックはデスティニーガンダムの翼の主翼を黄色、副翼を紺色で塗装し、ファトゥム-02で使ってた大型ビーム対艦刀を改造した対艦刀「ビーム対艦刀「イナヅマ」」を二振り装備している。そしてバックパック下部にはアームによって広い範囲に稼働する2門のビームキャノン「レインバレットキャノン」両肩のビームブーメラン「アーチャーエッジ」、両掌にデスティニーガンダムのパルマフィオキーナを出力アップさせた「ナイトメアフィオキーナ」機動防盾の十字マークの中心点にビームシールド発生器を追加した「アカツキビームシールド」ビームライフルは単発と、3点バースト射撃が可能な「ヴェールフェニックスライフル」腰部左右に柄同士の連結が可能なビームサーベル「アウェリアスサーベル」が装備されており、これらの武装の名前には電がお世話になった人たちへの感謝の意味を込めている。またバックパックの主翼部からは光の翼を展開し、高い機動性を獲得している。名称の「トリニティ」は暁学園のチーム3人を現し、「(シックス)」は第6駆逐隊を現している。

 

武装

ヴェールフェニックスライフル

イナヅマガンダム・トリニティVIのメイン射撃武器となるビームライフル。基本的に右手で使用し、形状はデスティニーガンダムの「MA-BAR73/S 高エネルギービームライフル」とほぼ同形状となっている。しかし、電の改造によりセミオートでの単発射撃、3点バーストによる3発同時射撃を可能としている。エネルギー効率の最適化と威力上昇がなされている為、非常に高性能なビームライフルとなっている。電はこのビームライフルに姉である「響」への感謝の気持ちを乗せている。発砲ビームの色は緑色。

アウェリアスサーベル 2基

両腰部のサイドアーマーにマウントされたビームサーベル。以前まで使用していたビームサーベルに更なる調整を加え、ヴェールフェニックスライフル同様、エネルギー効率の最適化と威力上昇がなされている。また、柄同士を連結させたアンビテクスハルバードモードとしても使用できる。電はこのビームサーベルに「黒野深海」への感謝の気持ちを乗せている。発振ビーム刃の色は桃色。

マシンキャノン 2基

イナヅマガンダムⅡから引き継いだ近接防御火器。設置位置は変わらず胸元に埋め込み式となっている。威力の変更などは行われていない。

ビーム対艦刀「イナヅマ」 2基

ファトゥム-02シルエット上部にマウントされていた大型ビーム対艦刀を更に改修した剣先までビーム刃を展開できるビーム対艦刀。ビームの出力と実体刃の切れ味向上が図られており、イナヅマガンダム(インパルスカスタムバージョン)から引き継がれた武装の為、「イナヅマ」と名付けられた。発振ビーム刃の色は桃色。

レインバレットキャノン 2基

バックパック下部に稼働アームを介して接続させている本機最大威力を誇るビームキャノン。稼働アームは広い可動範囲を持ち、あらゆる方向への砲撃を可能とし、1発で2機のNPC機を撃ち抜く威力を持つ。形状はフリーダムガンダムのバラエーナプラズマ収束ビーム砲に酷似している。電はこのビームキャノンに、チームメイトである「時雨」への感謝の気持ちを乗せている。発砲ビームの色は白の軸に赤い帯。

アーチャーエッジ 2基

両肩アーマーの側面に取り付けられたビームブーメラン。電の「ビームブーメランはよく撃ち落とされる」という考えの元、基部には対ビームコーティング処理が施されている。その為、通常のビームブーメランと比べて撃ち落とされる可能性が下がっており、またビーム刃の出力を調整することでビームサーベルとしても使用出来る他、ビーム刃にヴェールフェニックスライフルのビームを当てることで「ビームコンフィーズ」を放つことも出来る。電はこのビームブーメランに、姉である「雷」への感謝の気持ちを乗せている。発振ビーム刃の色は桃色。

ナイトメアフィオキーナ 2基

両掌に内蔵されているデスティニーガンダムの「パルマフィオキーナ」を形状をそのままに高威力化させた武装。「パルマフィオキーナ」同様、ビーム砲を構える動作無しに攻撃を行うことが可能で、相手のビームサーベルを弾く。通常有り得ない零距離で敵機を破壊するなど、使用用途はかなり広い。電はこの武装に、チームメイトである「夕立」への感謝の気持ちを乗せている。発砲ビームの色は青白い光。

アカツキビームシールド

左腕に装備する機動防盾の十字マークの中心点にビームシールド発生器を追加した実体盾。今まで装備していた機動防盾と同様に展開機構は未だに健在で、十字マークの中心点からビームシールドを発生させ実弾、ビーム問わず非常に高い防御力を誇り。またビームシールドの内側からでも射撃ができる「モノフェーズ光波シールド」になっている。電はこのビームシールドに、姉である「暁」への感謝の気持ちを乗せている。展開ビームの色は水色。

光の翼

バックパックのウイングバインダーから展開するデスティニーガンダムの「光の翼」を強化した装備。圧倒的な推進力で機体を高速移動させることが可能で、デスティニーガンダムの「光の翼」同様、ミラージュコロイドを広域散布することで、超高機動と同時に周囲の空間上に自機の光学残像を形成する事を可能としている。

 

機体名 ガンダムエンドレインバレット

型式番号 GAT-X102R/E

ファイター 時雨 初登場話 第98話  ベース機 ガンダムアサルトレインバレット

機体データ(製作者の設定)全高 19.2m 重量 77t

解説

時雨が今までに培ってきた技術を継ぎ込んで完成させたガンダムレインバレットの最終決戦仕様。全身のアサルトシュラウドを取り外して軽量化を測り、胸部には「インフィニットジャスティスガンダム」のCIWSと胸元に小型のセンサー、両腰横にビームピストルを取りつけられ、更に脹脛の後ろには、AGE-2ダブルバレットのカーフミサイルが内蔵されている。頭部の髪留め型センサーは形をそのままに索敵、照準性能を強化、バックパックのシールド先端のビームキャノンも出力だけ上げられ形状に変化はないが、最大の特徴は両肩アーマーの「ケルディムガンダム最終決戦仕様」が装備しているGNライフルビット2基と、GNシールドビット7基でこの2種類のビットには時雨によって独自のカスタマイズが加えられており、ライフルビットは後述する新作されたスナイパーライフル「エンドレインライフル」の銃口付近上下の銃身に合体し、シールドビットは攻撃能力をあえて排除しセンサーカメラを内蔵、狙撃時の弾着観測から広範囲の索敵、僚機の防御など使用用途は多岐に渡る武装となっている。そして本機のメイン射撃武装となる「ケルディムガンダム」のGNスナイパーライフルⅡをベースに製作されたスナイパーライフル「エンドレインライフル」は、以前までの「ロングバレルビームライフル」よりも高い威力と射程距離を誇り、ライフルビットを銃口上下に装着することで更に威力を増す設計がされている。時雨によって「雨を終わらせる弾丸」の名を与えられた本機は、時雨の内に秘めた確固たる意志を現している。

 

武装

エンドレインライフル

本機のメイン射撃武装となる「ケルディムガンダム」のGNスナイパーライフルⅡをベースに製作されたスナイパーライフル。形状はGNスナイパーライフルⅡと同形状ではあるが、銃口上下に後述のGNライフルビットを装着することが可能となっている。以前まで使用していた「ロングバレルビームライフル」よりも長銃身である為、威力、射程共に「ロングバレルビームライフル」を優に凌ぐ非常に強力な武装となっている。しかし、GNライフルビットを装着する影響で3連バルカンモードはオミットされている。また、左右両方の手で扱えるようサブグリップが左右どちらにも展開できるようになっている。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

初期のガンダムレインバレットから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されている格闘武装。マウント位置も変更は行われておらず、ビーム刃の出力のみ強化されている。発振ビーム刃の色は桃色。

頭部バルカン 2門

初期のガンダムレインバレットから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されている頭部に装備されている固定兵装のバルカン砲。20㎜CIWSとの併用で濃厚な対空弾幕をはつことが可能となっている。

20㎜CIWS 2基

マシンキャノンに変わり新調された近接防御火器。胸部に左右に1門ずつ内蔵されており、威力はマシンキャノンに劣るものの装弾数の向上と、頭部バルカンとの併用によって濃厚な対空弾幕を張ることが可能となっている。

GNライフルビット 2基

右肩アーマー側面にマウントされた遠隔攻撃端末。「ケルディムガンダム最終決戦仕様」が装備しているGNライフルビットをベースに製作され、射出、展開して敵機を攻撃できるが、その最たる役割はエンドレインライフルと結合し、狙撃の威力を高めることである。元々、空間認識能力の低い時雨ではインコムを操ることで精一杯である為、この運用方に重きが置かれている。発砲ビームの色は桃色。

GNシールドビット 7基

左肩アーマー側面にマウントされた遠隔防御及び索敵端末。「ケルディムガンダム最終決戦仕様」が装備しているGNシールドビットをベースに製作され、射出、展開することで僚機や自機を防御出来る他、ビット内に内蔵されたセンサーカメラによって弾着観測や広範囲の索敵も可能となっている。しかし、センサーカメラを内蔵したことによって攻撃性能が無くなっている。

ビームピストル 2丁

両腰部サイドアーマーにマウントされたビームピストル。地区予選大会直前で追加装備された物を引き続き使用しているが、エネルギーの変換効率と連射性が向上している。発砲ビームの色は緑色。

カーフミサイル 4基

両脹脛に内蔵されている小型ミサイル。小型であるため威力は低いが、敵機への牽制などに使用することで真価を発揮する。

アームド・アーマーDE 2基

初期のガンダムレインバレットから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されていたバックパックから伸びるコネクタに装備された大型のシールド。依然として狙撃中に不意打ちを受けた時の防御装備として装備されているが、シールド先端から発射されるビームの出力が向上されている。発砲ビームの色はオレンジの芯に水色の帯。

2連装ミサイルランチャー 1基

初期のガンダムレインバレットから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されているシールド側面に装備されたミサイルランチャー。

バイポットシールド

初期のガンダムレインバレットから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されているジェガンのシールドをベースに作られたシールド。シールド最上部にはエンドレインライフルをセットできる窪みがあり、シールド裏面には二脚、これらを使用し射撃を安定させるが可能。また表面には対ビームコーティング処理が施されている。

 

機体名 ガンダムノットエンドレインバレット

型式番号 GAT-X102R/Not.E

ファイター 深海化時雨 初登場話 第120話  ベース機 ガンダムエンドレインバレット

機体データ(製作者の設定)全高 19.2m 重量 77t

解説

深海雨雲姫との戦闘中に、かつての西村艦隊の壊滅と、家族たちの撃破の瞬間の偽映像を見せられ、絶望した時雨が深海雨雲姫の深海細胞の侵食を受け入れてしまった為に生まれたガンダムエンドレインバレットの深海化した姿。機体のカラーリングは黒と白、そして紺色となっている。深海化の影響で以前とは比較にならないパワーを持つ。

 

武装

ガンダムエンドレインバレットと同様の装備の為、割愛。

 

ファイター 深海化時雨

深海細胞の侵食によって深海雨雲姫に操られてしまった時雨。真っ白な髪と深紅の眼、そして紫色の髪飾りをした姿をしており「自分がどうすれば沈むことが出来るのか」を半ば暴走した状態で問い詰めてくる。しかし、夕立と山風による説得、最上の介入で目を覚ました結果、「夜空」としての本来の姿を取り戻すに至った。

 

機体名 ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア

型式番号 RX-NTM0-P

ファイター 夕立 初登場話 第98話  ベース機 ユニコーンガンダムナイトメアパーティー

機体データ(製作者の設定)全高 (ユニコーンモード)21.9m(ナイトメアモード)23.8m 重量 27.8t

解説

夕立がこれまでに経験した格闘戦のデータを集約し、持てるアイデアを全て継ぎ込んだユニコーンガンダムナイトメアの最終決戦仕様。機体の素体自体に変更点はあまり見受けられないが、以前の3種刀身の剣のオミット、エクスカリバー対艦刀の設置場所を両肩のビームキャノンの銃身に変更、両膝にはナイトメアモードに変形しても邪魔にならない「イージスガンダム」のビームサーベル発振刃をマウントし、エクスカリバー対艦刀、ビームトンファー、大型ビームサーベル、ビームサーベル発振刃による八刀流での戦闘を可能とし、前身機よりも更に強力な格闘戦を展開することが可能となっている。更にバックパックには、電から貰ったファトゥム-01ソードを飛行形態のまま装着し、単独飛行も可能となった。そして本機最大の特徴は、全てのビーム系近接武装の全出力を解放し、大型ビームサーベルを上方、ビームトンファーを左右、ビームサーベル発振刃のビームサーベルを下方へ展開し、全てのビームの刀身を機体サイズの1.5倍ものサイズにまで延長させ、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを中心に巨大なビームの十字架が形成、敵陣目掛け突撃し全てを薙ぎ払う「グランドナイトメアクロス」で、機体のエネルギー消費は非常に大きいものの一瞬で敵部隊を壊滅できる威力を誇る大技である。

 

武装

頭部バルカン 2門

初期のユニコーンガンダムナイトメアから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されていた頭部に設置された2門の機関砲。近接戦での牽制などに使用する。

エクスカリバー対艦刀 2基

初期のユニコーンガンダムナイトメアから今回の改装に至るまで、変わることなく装備され、ユニコーンガンダムナイトメアのメイン格闘武装となってきた二振りの対艦刀。ビーム刃と実体刃の2種類の刃を持ち、柄同士を連結させることも依然として可能。実体刃、ビーム刃共に、以前の物よりも鋭く、高出力の物になっている。発振ビーム刃の色は桃色。

肩部ビームキャノン 2門(大型ビームサーベル)

初期のユニコーンガンダムナイトメアから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されている両肩にそれぞれ1基ずつ装備されているビームキャノン。以前の物よりもより高威力のビームと、より高出力の大型ビームサーベルを展開できるようになっている他、エクスカリバー対艦刀のマウント箇所ともなっている。発砲ビームと発振ビーム刃の色は桃色。

ビームサーベル 4基

初期のユニコーンガンダムナイトメアから今回の改装に至るまで、変わることなく装備されている両腕部とバックパックに2基ずつ装備されたビームサーベル。腕部の物はホルダーから展開することでビームトンファーとして使用できる。特に両腕の物は「グランドナイトメアクロス」の威力に耐えられるように、非常に堅牢な造りとなっている。発振ビーム刃の色は桃色。

ビームサーベル発振刃 2基

両膝にマウントされた可動式の「イージスガンダム」のビームサーベル発振刃。ナイトメアモードに変形しても機体の稼働に影響を与えることなく使用でき、発進刃を下方に向け下に向かってビーム刃を展開することも出来、蹴りと連動で使用しその真価を発揮する。発振ビーム刃の色は黄色。

ファトゥム-01ソード

イナヅマガンダムⅡに装備されていたビーム刃と実体剣を複合させた大剣。電が「イナヅマガンダム・トリニティⅥ」を製作するにあたって夕立が譲り受け、装備された武装。普段は単独飛行が出来ないユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの為、以前の様に分離させて使用したり、大剣として使用することは少なくなった。しかし、大剣への変形プロセスはいまだ健在。発振ビーム刃の色は桃色。

グランドナイトメアクロス

全てのビーム系近接武装の全出力を解放し、大型ビームサーベルを上方、ビームトンファーを左右、ビームサーベル発振刃のビームサーベルを下方へ展開し、全てのビームの刀身を機体サイズの1.5倍ものサイズにまで延長させ、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアを中心に巨大なビームの十字架が形成、敵陣目掛け突撃し薙ぎ払う本機最大の威力を誇る大技。しかし、その威力も相まって機体のエネルギー消費は非常に大きく、最悪行動不能になってしまうリスクをはらんでいる。

 

機体名 ガンダム∀GE(ターンエイジ)-3

型式番号 ∀GE-3

ファイター 深海化翔鶴 初登場話 第105話  ベース機 ガンダムAGE-3FX

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 72t

解説

深海吹雪によって深海細胞を侵食された翔鶴が操るオールレンジ攻撃に特化したガンプラ。頭部に4本のブレードアンテナを持ち、ずんぐりとした胴体と両肩に4枚のウイングバインダーを備えた、アルケーガンダムの様にとても細い脚部と腰部左右のバインダー、バックパックにはHi-νガンダムの様なフィンファンネルラックとプロペラントタンクを装備した。胸部中央に逆さまになった「A」の紋様を持つ白と黒、オレンジ色をした異形の姿をしている。以前の翔鶴のガンプラ「ガンダムAGE-3FX」よりも多くのオールレンジ攻撃端末を装備した非常に強力な機体となっているが、翔鶴自身は16基ものオールレンジ攻撃端末を同時に使用できるほどの空間認識力が無かった為、加賀の「ガンダムAGE-1エグゼバウンサー」によってその悉くを破壊されてしまっている。

 

武装

ビームライフル

右腕に携行する「ガンダムAGE-FX」のスタングルライフルと同形状のビームライフル。以前のシグマシスライフルよりも取り回しに優れる他、威力も見劣りしないものとなっている。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 2基

両肘の装甲内から展開されるビームサーベル。設置個所の関係上、抜刀動作を必要としない為、咄嗟の攻撃、防御が可能となっている。しかしその反面、取り回しに難がある。発振ビーム刃の色は桃色。

GNファング 10基

両腰のサイドバインダーに格納されている「アルケーガンダム」のGNファングと同形状の遠隔攻撃端末。ビームによるオールレンジ射撃と、ビームサーベルによる格闘戦に対応している。発砲ビームと発振ビーム刃の色は赤色。

フィンファンネル 6基

バックパックにマウントされている「Hi-νガンダム」のフィンファンネルと同形状の遠隔攻撃端末。GNファングと違い、格闘戦には対応していない。発砲ビームの色は桃色。

 

ファイター 深海化翔鶴

深海吹雪によって深海細胞の侵食を受けた翔鶴。以前の明るくて優しい性格から一転して、クールな性格になっている。深海吹雪の命令で加賀、瑞鶴の前に立ちはだかるが、瑞鶴との攻防戦の末ガンダム∀GE-3は破壊され、最終的には解放されたプラフスキー粒子を浴びたことで元の姿に戻ることが出来た。

 

機体名 ガンダム(ダブルカイ)

型式番号 GX-0000-Dχ

ファイター 駆逐水鬼 初登場話 第105話  ベース機 ガンダムDX(?)

機体データ(製作者の設定)全高 19m 重量 10.3t

解説

駆逐水鬼が操るガンダムDXをベースに、深海細胞によって侵食を受けたガンプラ。頭部に6本のブレードアンテナを持ち、胴体中央に紫色のクリアパーツを持ち、ストライクEの様な左右へ突き出した両肩アーマー、ビギニング30ガンダムの様な曲線的で少しずんぐりした下半身と腰部サイドアーマーにはそれぞれ3本のビームサーベルがマウント、そしてバックパックには6枚の青紫色に輝くバインダーと長大なビーム砲「ツインサテライトキャノン」を2門装備した黒とダークグレー、濃い青紫で彩られた機体。本機最大の特徴は、深海フレーム内に内蔵されたプラフスキー融合炉によって「月からのマイクロウェーブを受けずにツインサテライトキャノンを連射できる」ことだ。しかしこれは、フルチャージ時のツインサテライトキャノンの威力を超えることが出来ない欠点を持つ。

 

武装

ビームライフル

右手に携行する「ビルドストライクガンダム」のビームライフルと形状が似ているビームライフル。威力、連射性共に非常に高い威力を誇っている。非使用時は腰部リアアーマーに懸架される。発砲ビームの色は桃色。

ビームサーベル 6基

両腰部サイドアーマーにマウントされた「ビギニング30ガンダム」のビームサーベルと同形状のビームサーベル。使用時は3本のビームサーベルを指の間に挟んで爪の様に使用する。通常のビームサーベルよりも刀身が短いが、その出力はジェネレータ直結式となっている不知火のガンプラ「ガンダムXブルーメギド」のビームソードすら押し返す程である。発振ビーム刃の黄色。

頭部バルカン 2門

側頭部に内蔵された近接防御火器。敵機への牽制、ミサイルの迎撃などに使用される。

ツインサテライトキャノン

バックパックに装備された本機最大の火力と射程を誇る2門の大口径ビーム砲。深海フレームに内蔵されたプラフスキー融合炉によって、月からのマイクロウェーブを受けずに連射できる特徴を持つ。しかしこれは、フルチャージされたツインサテライトキャノンの威力を超えることは出来ない欠点を持つ。

 

ファイター 駆逐水鬼(萩風) 容姿(艦これにおける)駆逐水鬼(萩風改)

深海吹雪の命令で陽炎と不知火の前に立ちはだかった深海棲艦。しかしその正体は、深海吹雪によって深海細胞の侵食を受けた陽炎と不知火の妹「萩風」である。冷酷で何事にも動じないような性格をしている。しかし陽炎、不知火の作戦に破れガンダムDχは撃破され、最終的には解放されたプラフスキー粒子を浴びたことで元の姿に戻ることが出来た。

 

機体名 ゼラクス

型式番号 MH/X001

ファイター 深海化江風 初登場話 第107話  ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高 30m 翼幅 23m 重量 113.1t

解説

深海雨雲姫のしもべとなってしまった深海化江風が操る、飛竜のような緑色の光を放つ双翼を持ち、頭となる位置に5つに刃のような鶏冠状のトサカ、そして尻尾に当たる部分は先端が鋏のように二股に分かれた、金色と黒で彩られたMAタイプの異形の機体。強靭な爪と鋏の様な尾、双翼から展開される緑色のビーム刃、鶏冠上のトサカからは長大なビームソード「ライトニングブレイド」を展開できる高機動格闘戦に特化した特徴を持ち、その巨躯からは予想も出来ない運動性、旋回性で上空からの奇襲や強襲を得意とする。深海からは「ワイバーン」と呼称された。

 

武装

ライトニングブレイド

頭部の鶏冠状のトサカから出力される長大なビームソード。設置位置の関係上、取り回しが非常に悪いがその威力は凄まじく、直撃を受ければ確実に両断、撃墜されてしまい、例えビームシールドで防いだとしても完全に相殺は出来ない程である。発振ビーム刃の色は緑色。

ビームウイング

両翼から展開されるビームの翼。ゼラクスの推進器としての側面も持つ複合武装。翼を広げて相手を薙ぎ払ったり、すれ違い様に撃墜するといった用途で使用される。発振ビーム刃の色は緑色。

クロー

両足先端に取り付けられた非常に鋭利な爪。ビームを展開することは出来ないものの、これを使っての強襲や、すれ違い様の一撃は非常に強力な武装。

ライトニングボム

両翼部中央関節の部分から球体上のビーム弾を撃ち出すビーム砲。敵機とのドッグファイトを想定した武装ではあるが、非常に高威力且つ広範囲への攻撃が出来る為いささかオーバーキルレベルな武装。発砲ビームの色は緑色。

テイルシザー

尻尾の先端にある鋏状の爪。内側、外側問わず凄まじい切れ味を誇ると共に、強靭な強度も誇っている。設置個所の都合上、使用頻度は低いものの敵機とすれ違い、取り逃がしたとしても直撃させれば強力な一撃を放つことが出来る武器。

 

ファイター 深海化江風

深海雨雲姫によって深海細胞の侵食を受けた江風の姿。深海雨雲姫によって感情をコントロールされている為、基本喋らない。しかし、深海の活躍によってゼラクスを破壊され、最終的には解放されたプラフスキー粒子を浴びたことで元の姿に戻ることが出来た。

 

機体名 ガムルト

型式番号 MH/X002

ファイター 深海化海風 初登場話 第107話  ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高 39.2m 重量 399t

解説

深海雨雲姫のしもべとなってしまった深海化海風が操る、黒とは白銀色の毛を纏ったような巨獣の様な外見に反り返るように伸びた豪壮な2本の牙とマンモスの様な長大な鼻の様なパーツを有したMAタイプの異形の機体。本機最大の特徴は、何と言っても圧倒的なパワーと防御力である。Iフィールドを発生させることなく、強力なビームの直撃をかき消す重圧な装甲と背部に多数存在する対空機銃によって、敵機を寄せ付けない戦い方を得意とし、その巨躯から放たれる一撃は、非常に重く強力なものとなっている。特に、頭部のハイパービームシールドを展開した突進は、そこにある物全てを消し去れる威力を誇る。深海からは「象」と呼称された。

 

武装

ハイパービームシールド

頭部に搭載された40mサイズのビームシールドを展開できる武装。前面からの防御は勿論、これを展開し全速力で突進することで、周囲一帯を荒れ地に変える程の威力となっている。展開ビームの色は桃色。

ビックノーズ

マンモスのような巨大且つ長大な鼻。振り回すことで周囲を薙ぎ払ったり、巨大な岩石を持ち上げて放り投げたりなど、使用用途は多々ある武装。

メガファング 2基

ビックノーズを挟み込む様に設置されたマンモスのような巨大な牙。こちらもビックノーズ同様、振り回しなどによる範囲攻撃などに使用される。

対空機銃 14基

背部左右に7基ずつ設置された対空機銃。ガムルトの攻撃武装は前面に集中し、尚且つ本機は非常に鈍足である為、後方への備えとして内蔵されている実弾式の対空機銃。

 

ファイター 深海化海風

深海雨雲姫によって深海細胞の侵食を受けた海風の姿。深海雨雲姫によって感情をコントロールされている為、基本喋らない。しかし、深海の活躍によってガムルトを破壊され、最終的には解放されたプラフスキー粒子を浴びたことで元の姿に戻ることが出来た。

 

機体名 タツミネ

型式番号 MH/X003

ファイター 深海化五月雨 初登場話 第107話  ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高 25m 全長 43m 重量 91t

解説

深海雨雲姫のしもべとなってしまった深海化五月雨が操る、朱色と白、胸元が紫の蛇の様に長いスレンダーな胴体とそこから伸びる4本の手足、頭部は狐の様に大きく前へ突き出しており、頭頂部には狐耳のような長いパーツとヒレの様なパーツが乱立しており、背中から尾部にかけて反り返った棘が5本立っているMAタイプの異形の機体。地上をホバー走行によって駆け抜ける高い機動力と、ミサイルによる面制圧能力に優れ、深海フレームの機能によってミサイルの装弾数は実質無限に近いものとなっている。更に、口部から発射される収束ビームは相手が衝撃を感じることが出来ない程の初速を誇っている。深海からは「蛇」と呼称された。

 

武装

多連装ミサイル

機体の各所から無数に放たれるミサイル。深海フレームの機能によって弾数は実質無限に近い。威力は中型ミサイル程度ではあるが、弾幕と物量に物を言わせた面制圧能力は脅威となる。

ソニックフレイム

口部から発射される超高速の収束ビーム。あまりに弾速が早すぎる為、敵機が部位破壊された場合、対戦者がその衝撃を感じることはない。なお、連射が効かないのが最大の難点である。発砲ビームの色は青白い閃光。

ウィッパーテイル

幅広い尾部を薙ぎ払うことで相手を弾き飛ばすことが出来る打撃武器。蛇の胴体を持つタツミネの柔軟な姿勢制御によって広い可動範囲を持つ。

 

機体名 ディノーバ

型式番号 MH/X004

ファイター 深海化白露 初登場話 第107話  ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高 33m 重量 153t

解説

深海雨雲姫のしもべとなってしまった深海化白露が操る、深い青と淡い赤色の肉食恐竜の様な外見に頭から背中にかけて顔の方へ大きく反り返った棘を幾本も持ち、赤熱化した大剣の様な尾を持つMAタイプの異形の機体。最大の特徴は、大剣として使用する尾部に装備された「超巨大ヒートサーベル」で、本機はこれを使った格闘戦を最も得意とする。その名が示す通り、刃を赤熱化させ相手を両断する。機体の3分の1を占めるこの巨剣は、そのサイズも相まって触れるものを悉く斬り裂く威力を誇る。そして口部には、大口径のビーム砲「インフェルノバスター」を備え、遠距離射撃も可能にしている。深海からは「恐竜」と呼称された。

 

武装

超巨大ヒートサーベル

尾部に装備された機体の3分の1を占める超巨大なヒート剣。その威力は語るまでもなく、高威力となっている。刀身を赤熱化させ、ありとあらゆるものを両断する。特に、超巨大ヒートサーベルを口に銜える様に構えて放つ「大回転斬り」は周囲を完全に焼き斬ってしまう程。

インフェルノバスター

口部に内蔵された大口径ビーム砲。本機唯一の射撃武装ではあるが、大口径である為長射程、高威力を誇る。発砲ビームの色は赤色。

 

機体名 ファバルク

型式番号 MH/XX000

ファイター 深海雨雲姫 初登場話 第107話  ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高(MS形態)34m (MA形態)38m 全幅(MA形態)22m 重量 125t

解説

深海雨雲姫が操る、龍の様な姿をした頭部は隼の様に少しだけ反り返った嘴のような形状と頭頂部は背後へ向かって伸びる鋭利な棘を何本も備え、そして4つの手足と、紅い光を放つ非常に鋭利な3本の槍状になった翼を持つ、銀色一色のMAタイプの異形の機体。MA形態からMS形態への変形機構を備え、ファバルクの頭部となっていた部分をガンダムハルートの様に腰裏へ回し手足を展開。機体を起こすことでMS形態へと変形する。最大の特徴は鋭利な槍状の大型バインダー「赤天の彗槍(せきてんのすいそう)」でMS、MA形態問わず近距離戦から遠距離戦まで使用できる武装となっている。またその機動力を支えているのもこの「赤天の彗槍」のビーム発射口から噴射される紅い光で、その速度はゼラクスを凌ぐほどである。

 

武装

赤天の彗槍(せきてんのすいそう) 2基

腰部リアアーマーから接続されている片翼に3つの槍先を持つ本機の主翼ともなる武装。伸縮機能を備え、槍として近接格闘時には後部のビーム発射口から紅い光を噴射して突きの速度を上昇させ威力を向上させることができ、またこれを180度回転させることで射撃武装である「赤天の光星(せきてんのこうせい)」として使用できる。

赤天の光星(せきてんのこうせい) 6門

赤天の彗槍を180度回転させ、ビーム発射口を前方に向けた形態。6門の砲口から高威力の照射ビームを発射出来る他、光弾型のビームを撃ち出すことも可能となっている。発砲ビームの色は赤色。

ビームサーベル 2基

腰部サイドアーマーにマウントされたビームサーベル。零距離での格闘戦を挑まれた時の武装として装備されている。発振ビーム刃の色は赤色。

 

機体名 ガンダムレギュルス・ the()レプリカ

型式番号 Xvm-fzc/the-Replica

ファイター レ級 初登場話 第109話  ベース機 ガンダムレギルス ゼハートカラー

機体データ(製作者の設定)全高 19.9m 重量 72.2t

解説

レ級が電を倒す為だけに製作した「ガンダムレギュルス」の後継機に当たるガンプラ。黒とグレー、そしてメタリックパープルで塗装され、6本のブレードアンテナを持つガンダムレギルスの様な頭部に、胸部中央にはゼイドラのものよりも尖った薄紫のクリアパーツ、それを挟み込む様にガンダムタイプによく見られる胸部のエアダクト、ゼダスのような鋭利な両肩アーマー、両肘と両膝にはギラーガの「Xトランスミッター」の様な薄紫のクリアパーツが設けられ、ガンダムレギルスの曲線的で非常にスマートな形状の下半身を持ち、背中にはゼダスが変形時や飛行形態時に展開する巨大な翼と、ガンダムレギルスの長大なビーム砲「レギルスキャノン」の様な稼働する尾を持っている。前身機であるガンダムレギュルスの格闘戦特化から一転して、格闘戦のみならず全戦闘距離に対応できるカスタマイズが施されており、最大の特徴であるtheレプリカビットはレ級の高い空間認識能力によって非常に強力な武器となっている。機体名の「theレプリカ」は「偽物()に終極をもたらす」と言う意味が込められている。また、常時ツインアイを展開している。

 

武装

theレプリカライフル

右腕で保持される携行射撃武装。「ガンダムレギルス」のレギルスライフルをベースに製作され、銃身上下及び銃口からビーム刃を展開できるようになっており、theレプリカビームサーベルを抜刀することなく格闘戦への対応が可能となっている。またビームライフルとしての威力も非常に高く、セミオートと照射の2つのモード切替が出来る。発砲ビームと発振ビーム刃の色は黄色。

theレプリカビームサーベル 2基

両腰部サイドアーマーにマウントされた円筒状のビームサーベル。ヴェイガン系MSに多く見られる掌のビームサーベルを撤廃した為、装備された格闘武装。前身機である「ガンダムレギュルス」のビームバルカンをそのまま発振口に使っているうえ、ビームバルカンとの併用が無くなった為、純粋なビームサーベル以上の出力を誇る。発振ビーム刃の色は黄色。

theレプリカビームバルカン 2門

側頭部に内蔵されたビームバルカン。設置個所は「ガンダムレギルス」とほぼ同一ではあるが、レ級によってエネルギー変換効率の最適化と威力の向上が行われたため、牽制用の武装ながら敵機の破壊も可能な威力を持つに至った。

theレプリカビームバスター

胸部中央にマウントされたゼイドラのものよりも尖った薄紫のクリアパーツから発射される本機最大の火力を誇る武装。その発射工程は特殊で、クリアパーツの下にはガンダムレギルスのビームバスターが内蔵されており、先にこれを発射しクリアパーツでビームの威力を増強して発射するという物となっている。純粋なビームバスターの威力を2乗した武装に見えるが、こちらもレ級によるエネルギー変換効率の最適化と威力の向上が行われたため、並の対ビームコーティングが施された防御装備では防ぐことが出来ない物となっている。発砲ビームの色は黄色。

theレプリカビット

両肘と両膝にはギラーガの「Xトランスミッター」の様な薄紫のクリアパーツ、バックパックの翼表面の展開した装甲の内側、theレプリカシールドの展開した表面装甲の内側から展開されるビームの光弾。「ガンダムレギルス」のレギルスビットの強化発展版で、ベース機よりもビットの展開数が格段に向上している。レ級の優れた空間認識能力によって操作され、非常に高密度且つ緻密な展開が行われ攻防に優れた非常に高性能な武装となっている。展開ビームの色は黄色。

theレプリカシールド

左腕に装着される実体盾。前述のtheレプリカビットの展開口を備えており、中腹部が展開するギミックが設けられている。盾としての機能も非常に優れており、対ビームコーティング処理が施された何層ものプラ板を重ねたチョバムシールドとなっており、照射ビームの一撃にも耐える強度を誇る。

theレプリカキャノン

尾部に装備されたビームキャノン。「ガンダムレギルス」同様、無数のジョイントパーツで接続されている為、非常に広い可動範囲を持つ。theレプリカビームバスターより威力は低いが広い射角を生かして広い範囲をカバーできる。発砲ビームの色は黄色。

 

機体名 ガンダム・アイアンボトムサウンド

型式番号 No data

ファイター 深海吹雪 初登場話 第29話 ベース機 深海フレーム

機体データ(製作者の設定)全高 No data 重量 No data

解説

深海吹雪たちの為に製作された特殊なフレーム「深海フレーム」が形作られた機体。その為、厳密にはガンプラでない。また、深海吹雪たちの脳に埋め込まれたマイクロチップを介して深海フレームを操る者たちは会話が出来る(マイクロチップを埋め込まれていない深海雨雲姫や、駆逐水鬼はこれが出来ない)。深海吹雪はこの事を皮肉めいて言っていたが、最終局面において吹雪と白雪を繋げたのは本機だった。

 

武装

影の翼

バックパックのウイングバインダーから展開される「デスティニーガンダム」の光の翼の色違い版。性能はイナヅマガンダムトリニティⅥの光の翼と同程度。

 




これで「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」は完結となります。
次は本編の裏側を語る次回作、艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 「深海(しんかい)からの言葉」でお会いしましょう!

長い間ご愛読していただきありがとうございました!


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