ハイスクールDxD ー歪な想いー (北海海助)
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第一章『歪と悪魔』
第一話『鈍』


処女作です。


世界からあらゆる感情や想いが漏れ出ている。まるで破裂した水管のように。

ドバドバと、漏れ出たそれらに行き場など存在しなかった。

 

やがて、年月が経ち。

漏れ続けたソレは形へとなっていく。

形となったソレはやがて覚えることを覚える。それからソレは欲を覚え、感情を覚えた。

 

愛情、友情、悲しみ、喜び。

そうして形となったソレは。

やがて世界で産まれた。

歪な存在として。

 

1

 

駒王町(くおうちょう)

日本のどこにでもある町。

デパートやら映画館やらと、割となんでも揃っている普通の町だ。

 

そんな駒王町を代表するのがこの町で一番の生徒数と人気を誇る駒王学園(くおうがくえん)だ。

元々は女子高だったのを少子化やら何やらで共学化。女子の比率は若干高いが、男子もそれなりにいる。

 

山田優一(やまだゆういち)、それがオレの名前。そんな普通なネーミングのオレもここに通う三年だ。

 

「山田、あれ見ろよ」

「んぁ?」

 

クラスメイトの一人が声を掛けてくる。

指を指した所には、この学校の人気者。

お嬢様という雰囲気を纏った生徒。

リアス・グレモリーと姫島朱乃(ひめじまあけの)だった。

 

「グレモリーと姫島がどうかしたのか?」

「…………お前ってホモ?」

「人間ミットって知ってるか?」

 

オレはパシリと握った拳を叩く。

そいつは冗談と言いながらグレモリーと姫島を見つめる。まぁ、確かに二人はこの学校でも相当男子に人気がある。

 

「オレにはわからん」

「ん?」

「そういう好きだとかって」

「なに?なんの漫画見たの?」

「漫画の読みすぎで影響された訳じゃないから」

 

ただ、本当に分からないんだ。

オレは名前や容姿は普通だけど、それ以外は異常だから。

 

「もー告白しようかな」

「爆死乙」

「まだしてもねーよ」

 

オレはそのまま流れるように机に突っ伏し寝る。オレは3秒以内で寝れることが出来るのだが、それを友達に「のび太みたいだ」と言われたことがある。

 

2

 

さて、あれから時は過ぎて昼休みを過ぎた頃。既に午後の授業が始まっている。

オレはどんだけ寝ていたんだ。

そして何故誰も起こしてくれなかったんだ。

 

オレは窓側の席。

すぐ隣が窓なのだが、今そこは空いていた。

心地よい風が吹いている。

やべ、また寝そう。

オレはもう一度、机に突っ伏す。

しかし、何かが頭に当たった。

 

「ん?」

 

紙くず?

なんで投げてきたの?

するとめくれた箇所から文字が見えた。

オレは紙くずを広げる。

『数学』

そう紙に書かれていた。

マジか、危なかった。

オレのクラスの数学を担当している先生は厳しすぎることで評判だった。

生徒からもあまり人気がない。

授業中に寝てしまえば、そこで速攻減点。

オレも数学の時間だけは寝ないようにしている。

 

「………?」

 

つかこの紙くず誰が投げたんだ?

オレは辺りを見渡す。

こちらを見ながらクスリと微笑む姫島の姿が視界に入る。

 

どうやら姫島が投げてくれたらしい。

後で礼を入れておくべきか?

いやこれくらいならいいのか?

そんなことを考えていた時だった。

 

「山田、お前。……教科書とノートも出さずに何キョロキョロしてるんだ?」

「え?」

 

結局減点になり、オレが寝ていたことも後にバレてしまい職員室にへと放送がかかった。

 

3

 

放課後、問題児三人の断末魔が響く校内。

オレは姫島の後を追った。

旧校舎の入口まで辿り着き、やっと姫島を捕まえることができた。

 

「……姫島」

「……?あら、山田くんどうかしましたか?」

「何故敬語、……まぁいいかそんなこと。さっきはすまなかったな、結局減点くらったが」

 

苦笑するオレに姫島は微笑む。

ん、確かにアイツが言った通り、近くで見ると可愛いのかもしれない。色んなことに鈍いオレでもそれは若干わかる事ができた。

 

「どうかしましたか?」

「ん?……いや、クラスの言ってた通り、近くで見ると可愛いなってね」

「あら、お上手ですわね」

「いやいや、ホントのことだよ。……じゃあな姫島」

 

オレは流れるようにその場から去る。

厄介事に巻き込まれるのはごめんだからね。

この旧校舎。

明らかに人がいない。

人外の巣窟だな。

 

「はぁ、帰るか」

 

ため息を零して荷物がある教室へと戻った。

アソコとはなるべく関わりたくないし。



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第二話『問題児たち』

さて、この世界には人間とその他の動物以外に三種族存在している。

 

悪魔、天使と堕天使。

それ以外にもチラホラと存在するが大雑把に分ければ三種族の方がわかりやすい。

そして、この駒王町には悪魔がいる。

というか、この町は悪魔の管理下に置かれている。

 

ここだけの話。

この町の実権を握っているのはグレモリーという悪魔だ。名前からも分かる通り、あのソロモン72柱のグレモリーだ。

といってもグレモリーという一族だからグレモリー一族の中の一人がこの町の実権を握ってることになる。

 

それがあの駒王学園の二大お嬢様と言われているカースト上位の美少女。

リアス・グレモリーだ。

ちなみに姫島はグレモリーの部下だ。

後輩に何人かまだ部下がいるらしいが、正直言ってどうでもいいので話さない。

 

あと、生徒会も全員悪魔だ。

理事長も教員にもチラホラと悪魔がいる。

あぁ、あの数学教師は人間だけどね。

 

1

 

オレは何も置いていない殺風景な部屋でボーッと虚空を見つめる。

 

部屋にはフローリングの床にタオルケットが無造作に敷かれ、その横にテーブル代わりのダンボールが置かれている。

 

ここがオレの部屋だ。

何も無い殺風景すぎる部屋。

アパートの一室を借りて暮らしている。

 

ハッキリ言うと何もすることがない。

あっても寝たり、飯食ったり、歯磨いたり、風呂入ったり、服着たり、宿題したり、だ。

これが今時の人間の生活じゃないことくらい、オレでもわかる。

 

ただどうすればいいのかわからず。

放置しているだけだ。

別にオレはこの生活になんの苦痛も感じないし、これでいっかとも思っている。

 

2

 

さて、現在昼休み。

オレは何故か。

 

「よし、今まで地道に開けた穴。ようやくここまでの大きさになった」

「流石は元浜、よくやった!」

「お前が親友で良かったぜ!」

 

オレは何故だか駒王学園の問題児三人。

元浜、松田、兵藤と共に校庭にある女子更衣室の裏にいた。

 

ここまでの経緯を話そう。

最初はオレが校庭にある自販機まで歩いていた時だった。一応、校内にも何体が設置されているのだが、この校庭にある奴にしかオレの飲みたい飲み物がないからだ。

 

そんなことは置いといて。

校庭の自販機のすぐ側でバカでかい声で猥談をするこの三人組がいた。

オレは気にせず、飲み物を買おうと自販機の前に立つ。

 

「んで?例の話は?」

「フッ、計画通り。……ちゃんと仕込んでおいたさ。松田、ちゃんとカメラ持ってきたか?」

「当たり前だ、イッセー。……逃走経路は?」

「確保、及び確認しておいたぜ、安心しろ」

「…………」

 

オレは小銭を入れて飲みたい飲み物のボタンを押す。ピッという音が鳴った後にガシャ!と飲み物が落ちてくる。そんな音に気づいたのか、三人はこちらを見てくる。

 

「まずいぞ……!」

「話を聞かれた!」

「殺るか?どうする!」

 

ヒソヒソと話し出す三人組。

話が解決したのか、ユラユラとオレを囲む。

 

「話を聞いたな?」

「我らの極秘任務を」

「帰すわけにはいかねぇ」

 

こいつら、まさかオレに襲いかかってくる気じゃないだろうな。逃げるか?

 

「君は今から俺達の同志だ」

「さぁ行こう、夢の先へ」

「そこは天国よりも尊い場所だからよ」

「……は?」

そして冒頭へ戻る。

壁には10センチ程の穴が空いてる。

こいつら、噂には聞いてたが、これは明らかに犯罪じゃないのか?

 

「なぁ、オレ帰っていいか?」

「ダメだ」

「バラされたら困るからな」

「恥ずかしからなくてもいいんだぜ?むしろ興奮するだろ!この壁の中には、なんてたっておっぱいがいっぱいだからな!」

 

オレは女性の胸について語り出す兵藤を見つめる。兵藤一誠(ひょうどういっせい)、この三人組の中でも一番の性欲を持つ男。

 

淫魔、性欲魔人、変態卿やらと渾名の尽きない男だ。

 

「悪いが、オレは興味ない」

「おっぱいに!?」

「貴様ホントに男か!?」

「ホモ?ホモなのか!?」

「殺すぞ、……興味ない、そのお前らの行動に興味がないし、お前らにも興味がないからチクッたりもしない」

 

オレは「じゃあな」と言って、その場から立ち去ろうとする。しかし、そんなオレの肩を掴んで元浜が言う。

 

「なぁ、頼むよ。……ここまで来たんだからさ」

「ちょっとくらい見ようぜ?」

「すぐ済ますからさぁ」

 

こいつら、本格的にオレを仲間に引き入れようとしてないか?

 

「さきっぽ、さきっぽだけ!」

「退屈させないって!」

「楽しいから!」

「オレは…………ん?」

 

気配、というか視線を感じた。

壁を見てみれば、穴から瞳が見える。

ホラーだ。

 

「ま!ば、バレた!?」

「声が大きかったか!?」

「クソ!用意した逃走経路に行くぞ!」

「じゃあな」

「って早!!?」

 

顔を覚えられる前にとっとと逃げよう。

後輩三人と覗きで犯罪者なんて、自殺レベルのレッテルだ。

 

「待て!」

「貴様一人だけ逃がすか!」

「せめて道連れに!!」

「お前ら、逃走経路あるんじゃないのかよ……!」

 

確保した意味ねぇじゃねぇか。

三人の後ろからは猛獣と化した女子部員たちが追いかけてくる。

 

オレは急いで曲がり、すぐ近くの物陰に隠れる。釣られて曲がってきた三人もオレと同じ所に隠れる。

 

「なんで来たんだよ」

「しょうがねぇだろ!」

「そうだそうだ!」

「仕方ない仕方ない」

 

女子たちは理性を失っているせいか、そのまま真っ直ぐ突っ切って行ってしまう。

 

「難は逃れた、よくやった新たな同志よ」

「同志じゃね」

 

ポンポンと肩を叩く元浜の手を止める。

 

「えーと、ん?名前なんだっけ?」

「そういや聞いてなかった」

「オレはお前らのことを知ってるぞ、悪い意味で」

「まぁ、何でかはわかる」

 

何故かわかるのか。

じゃあ今までのは分かっててやってたのか。

とんだ勇者だな。

 

「まぁいいさ、オレは三年の山田優一だ」

「おう、よろ……ん?」

「さん」

「ねん?」

 

ん?どうした、こいつら。

揃いも揃って固まっている。

 

「す、すんませんした!」

「三年生とはつゆ知らず!」

「俺達の紳士的な時間に付き合わせてしまい!」

 

本当に紳士的なら何も言わないんだけどな。逆の意味で、悪い意味で紳士なんだよなぁ、こいつら。

 

「まぁ、知らなかったんなら、それでいいよ、めんどくさいし」

「「「ハイっす!」」」

 

それにしても。

兵藤一誠、左手から妙な気配を感じる。

まるで力そのものが骨や筋肉を這いずり回っている感じだ。

 

面倒事から避けるにはグレモリーたちオカルト研究部よりもこいつ(イッセー)を避けた方がよさそうだな。

後にオレはこの三人にやたらと絡まれることになるが、それはまだ先のこと。



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第三話『シスター』

この町に堕天使が入り込んだ。

オレは無関係だから気にしてはいないが、ちょっと無用心がすぎるのではないかと思った。

まぁ、そのくらいしか興味ないのでオレはグレモリーたちオカルト研究部を咎めるつもりはない。

 

「ん?あれは」

 

オレが目に付いた場所にいたのはイッセーと金髪のシスターだった。というかイッセー、お前いつの間に悪魔になったんだ、少し早すぎるのではないだろうか。

 

あれか、眷属システムとかいう。

駒に見立てて王が眷属兼下僕を作るやつ。

若干だがグレモリーの気配をイッセーから感じる。

 

「なにしてるんだ、……ナンパか」

「あれ?先輩じゃないっすか、って違いますよ!道に迷っていたから案内してるだけです!」

「In primo luogo, dice Asia Argento」

「……!?」

 

英語だ、いやイタリア語か?。

こいつ、見かけによらずイタリア語なんて喋れたのか。イッセーにもそんな一面があったのか。

 

「んで、教会だっけ」

「Sì è vero」

「あれ?」

「ん?どうかしました?」

 

おかしい。

こいつは日本語で話している。

にも関わらずイタリア語を話すシスターと話が通じている。

まさか、悪魔になると言語機能に何らかの異変があるのか?まぁ、いいそれならこっちもイタリア語喋れる設定にしよう。

 

「初めまして、オレは山田優一、呼び方はなんでもいいよ」

「はい!山田さんですね!」

 

なんの捻りもない名前。

オレが名前辞書やらでそれっぽいやつを選んでつけた名前だ。

まぁ、それは置いといて。

 

「教会、この町のはずれにある奴か?」

「そうっす」

「そうか、まぁ遅刻は程々にな」

 

オレはアーシアと名乗ったシスターと悪魔になったイッセーを置いて、学校に向かった。

 

1

 

どうやら、俺の知らないところで色々と進んでいたらしい。興味ないから知らなかっただけだけど。

 

「先輩見てくだいさいよ!」

「昨日手に入れた新刊!」

「もうおっぱいが凄いのなんのって!!」

 

こいつら、この間の件からやたら絡んで来るようになった、つまんないわけじゃないからいいんだけど、ちょっぴりしつこい。

 

「エロ本をオレに押しつけるな」

「そう言わずに!」

「凄いから!」

「というかイッセー、お前朝のこと」

「あーー!!!アソコに空飛ぶおっぱい!?」

「「なに!!!」」

 

イッセーは虚空に向かって指を指し、オレに顔を近づけてくる、近い、鼻息凄い。

 

「朝のことはコイツらには内緒で!」

「は?なんで」

「嫉妬で俺が殺されます」

「納得」

 

確かに。

こいつらは女の子に関しては誰よりも変態的で真剣だからな、イッセーが殺されても仕方なさそう。

 

2

 

「山田優一?」

「えぇ」

「知らないわね」

 

珍しく朱乃が他人のことを自身に聞いてくる。リアスは山田何某とやらよりもそれが気になって仕方なかった。

 

「珍しいわね、あなたが他の誰かを気にするなんて」

「そう?」

「えぇ、まぁそんなことよりも今は堕天使のことよ」

「あら?イッセーくんのことがそんなに気になるの?」

「なるわよ、大切な下僕ですもの」

「あらあら」

 

二人の声が部室内に残り消えていく。




短いしグダってるね。
すんません……。


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第四話『助言』

イッセーが休んだらしい。

なんかあったのか、どうせ堕天使と戦って負けたりしたんだろう。

 

「イッセーがいない今日、俺達は欠けた存在となってしまった」

「そんな俺達を埋めるのは、先輩しかいません!!」

「断固拒否する」

 

イッセーがいない今日、オレはこの二人に絡まれ続けている。最初は少し程度のしつこさだったが、最近になってガチでオレを仲間に引き込もうとし始めている。

 

「なんで休んだんだ?」

「さぁ?風邪じゃないっすか?」

「怪我じゃなかったか?」

「お前らもっと関心もてよ」

 

休んだイッセーが可哀想だ。

すると松田と元浜は鬼のような怒り狂った表情を浮かべる。

 

「ヤツめ!今度俺たちの目の前に姿を表した時、ぶん殴ってやる!」

「いや!輪廻転生出来ないほどに痛めつけてやる!」

「なんでアイツに怒ってんだ?」

「アイツ!イッセーの野郎!俺達を差し置いてリアス先輩と仲良くなってたんですよ!!」

 

あぁ、そんなことか。

というかイッセー、アーシアのこと言わなくても同じ運命を辿る羽目になってるぞ。

 

「そんな仲良いことが珍しいか?」

「何いってんですか!光栄なことじゃないですか!!」

「そうですよ!」

「フゥン、オレはグレモリーとは同じクラスだからな。……そういうのはわからん」

 

ガシリ。

二人はオレの肩を掴む。

なんだ、顔が近い、キモイ。

 

「「紹介してください」」

「したところで相手にされないだろ、お前ら有名だけど底辺だからな」

「ガッハ!なんて酷いことを!」

「グハ!心に突き刺さるどころか真っ二つに両断された!」

 

二人はその場で吐血しながら悶え始める。

こいつらホントに仲いいな。

イッセーが空気になってっているぞ。

そこで昼休みは終わり予鈴が鳴った。

 

「じゃあ、オレは帰る」

「よし、そうしましょ」

「帰りましょ帰りましょ」

「ついてくるな、教室に戻れ」

 

ブーブーと言いながら二人は去って行く。

子供かアイツらは。

 

1

 

それから学校は終わった。

オレは特に用事もないので足早に校内から出る。

しかし、そこで旧校舎に向かうイッセーが視界へと入った。

 

なんだ?アイツ休んだじゃないのか?

てっきり堕天使に負けて休んでるのかと思ったが、本当に風邪だったのか?

 

「おい」

「おわ!って先輩」

「何してるんだ、学校に今更来て」

「え、いや。……えっと」

 

なんだ、さっきからモジモジして。

気色悪いぞ。

 

「先輩に聞きたいことあるんすけど」

「先に質問したのはオレだ」

「う、……旧校舎に忘れ物しちゃって」

 

なんてわかりやすい嘘なんだ。

これは確かにあの二人といつも一緒にいるだけはある、精神年齢が同様に低いのか。

 

「まぁ、それでいいや」

「じゃ、次は俺の番すよ」

「んぁ?」

「……先輩は守りたいものが、どっか行っちまった時、どうしますか?」

 

なんだどうした。

漫画の影響か?とも言ってやりたいが、イッセーの顔は真剣だ。真面目に答えた方が良さそうだ。

 

「オレは、……守りたいモノなんてできた事ないから分からないけど、多分。…オレがソレを求め、望むのなら取り戻そうとすると思う」

「そうすか、……そうですよね…!」

 

何か自信に満ちた表情をする。

ちゃんとアドバイスできたようだ。

 

「何か困り事か?」

「まぁ、それはそうなんですけど。……これは俺の問題なんで、先輩は巻き込めないっす」

「……そうか」

 

まぁ、自分たちが危ない目に会ってるという事を知らないと思ってるからそう言うんだろうな。

 

「まぁ、頑張れ」

「はいっす!」

 

イッセーはそのまま走って旧校舎へと向かっていく。普通の人間なら、事情を知っていればどうするのだろうか。

 

先輩として後輩を助けた方がいいのか?

そうした方が人間味とやらが湧くだろうか。

……試してみるか。

オレは気配を断ち旧校舎へと向かった。



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第五話『堕天使』

ハイスクールDxDに関しては曖昧で、かと言って見直すとしても時間がかかります。

でしたら覚えてる部分はなるべく再現して、訳分からん部分はちょっと変えようと思います。

そしてこれはあくまでもハイスクールDxDの世界のifだと思って見てくれれば幸いです。
これは山田優一という異物が存在している、というifの世界なのです。
なので本編とは違う展開になっても、これは山田優一がいるifの世界だから、と思ってください。

語彙力皆無ですいません。


部屋の中からパンと乾いた音が聞こえる。

先程までの会話から攫われたアーシアを救いたいと駄々をこね、話を聞かないイッセーをグレモリーが平手打ちしたってとこだな。

そしてさり気無く悪魔の駒(イーヴィル・ピース)兵士の駒(ポーン)について説明するグレモリー。

ツンデレとか言う奴か?

違うな。

 

それからこちらへ向かってくる足音が聞こえた。不味いぞ、よし透明化するか。

ガチャと目の前の扉からグレモリーと姫島が出てくる。二人は気づかずに旧校舎の玄関まで歩いていった。

 

オレもそろそろ行くか。

その教会とやらに。

 

1

 

はずれにあるとは聞いていたが。

……こんな森が深いところにあるとは思わなかったぞ、堕天使め、許せん。

しかも割とオレの自宅から離れてるし。

 

しかし、ここまで来ると魔力みたいなのが凄く感じるな。それも下のあたりから、地下室で儀式的な何かをするのか?

 

考え事をしていると後ろから三人の話し声が聞こえ始めた。もう来たのか。

ちゃっかり増えてるし。

みんな仲間思いだな。

確か、あの白い女の子が塔城小猫(とうじょうこねこ)で顔の整ったのが木場祐斗(きばゆうと)か。

 

後者はすぐわかったぞ。

元浜のブラックリストにデカデカと名前が載ってあったのを覚えてる。

 

さて、オレは一足先に地下へ行くか。

オレは透明のまま扉の前へ立つが、そこで思い止まる。

これ、オレが扉開けたらバレね?と。

オレは透明になってるからいいとしても、ここで扉開けたら後ろにいる三人の存在がバレてしまう。どうしよう。

 

「行くぞ!」

 

早いな。

もう行くのか?まぁ、グレモリーの下僕なんだし、それなりに場数は踏んでるよな?

なら安心か。

よし、それならこいつらと同時に中に入るか。

 

「アラァ?こないだの悪魔くんじゃありゃせんですかァ!もしかして、殺されたくて我慢できずに俺っちの所まで来ちゃった?」

 

なんだこいつは。

細身の白髪男だ。

十字架を首から下げてる所を見ると、神父って感じか?いやこんな神父いてたまるか。

悪魔祓い(エクソシスト)って奴だな。

堕天使の根城にいるって事ははぐれか。

 

「イッセーくん、ここは僕達に任せて…!」

「でも……!」

「ここは、私達だけで充分です」

「おまえら、…すまねぇ!」

 

ありがとう。

これでオレは心置き無く地下へ行けるよ。

イッセーの跡をつけてオレも地下室へ行こっと。

 

「アァ?テメェらよォー、も一人いね?」

 

なんてこったい。

こいつ、相当経験を積んでいるのか?

それとも単にオレの気配が漏れてるから?

 

「何を言ってるんだい?」

「そんなことをして、気をそらそうとしても」

 

ヒュン!白髪エクソシストに向かって木造の椅子が投げつけられる。おいおい、どんな握力してんだ。

 

「……無駄」

「おー怖、ロリめ……ニヤニヤ」

 

白髪エクソシストは笑みを浮かべる。

漫画で見たことあるぞ、この手の狂気系のキャラクターは強いと。

 

「……小猫ちゃん!」

「早く行って!」

「行ってください!」

「は、はい」

 

そうだ、早く行け。

お前が行かないとオレも行けないぞ。

 

オレはイッセーの跡を慎重に追って地下室まで降りていった。

 

着いた場所には何人もの神父が詠唱を唱え、その奥には十字架に磔にされたアーシアと笑う女堕天使がいた。

 

「アーシア!……てめェ!アーシアを離せ!」

「あら?イッセーくんじゃない」

 

まぁ、見た感じコイツが首謀者だな。

悪そうな顔してるし。

 

「まぁ、いいわ。……貴方たち、そこにいる小汚いネズミを殺しなさい」

「なっ!……クソ!」

 

イッセーは左手を構えた。

すると腕から翠色の光が放出し、それが消えると。イッセーの腕には赤い龍を模した篭手が現れていた。

 

なるほど、あれが神器(セイクリッド・ギア)

それもかなり強い部類のモノだ。

骨や筋肉ではなく、力という概念が左腕を形成してるかのように思えた。

 

「さぁて、アーシア。……貴方の神器、私が貰うわよ」

「グゥ!……カハ!」

 

アーシアは突然悶え苦しみ始めた。

するとアーシアの心臓部分から小さな光の玉が出てきた。

 

「アーシア!!」

「……これが、神器……!私の神器!!」

「イッセーくん!!」

 

そこで木場と塔城が追いついた。

あの男を倒したのか。

……あまり漫画に影響しないようにしよう。

 

「これで私は!……シェムハザ様とアザゼル様の愛を!!この身に!」

 

女堕天使は自身の体にアーシアから抜き取った神器の本体を押し込んだ。

 

「レイナーレェェェエ!!!」

「下賎な悪魔風情が!至高な私の名を口にするな!!さっさとそいつらを駆除しろ!」

 

レイナーレは天井を破壊して上へ飛んで行った。神父たちはイッセー達を囲む。うん、ここで気づいたが出るタイミングを逃したな、オレ。どうしよう。

 

「ここは任せて!君はレイナーレを倒すんだ!」

 

犠牲好きだな。

いや、仲間思いなだけか。

イッセーは怒りを抑えて上へと登っていく。

 

さてと、流石に何もしないのは気が引ける。

なので、ちょっと数を減らしてやろうか。

一気に六人くらい消しても、違和感は。

……あるな。

三人にしとくか。

オレは手をかざして、それとなく消えろと念じる。すると照明が消えるかの如くパッと三人ほど消えた。

 

後は傍観するか?

いや、そろそろ透明化も辞めておいた方がよさそうだな、疲れるし。それならイッセーのところ行くか。

 

オレは急ぎ目にイッセーがいる地上へと上がる。



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第六話『露見』

語彙力皆無マンだ。
見苦しい文章だが気にするな。



オレはイッセーの跡を追って地上へ戻った。

案の定、イッセーは飛び回るレイナーレに翻弄され攻撃出来ないままでいた。

 

「クソ!」

「フン、悪魔なのにねぇ、…飛べないなんて、その魔力と翼に意味はあるのかしら」

 

え?悪魔飛べるの?

イッセー、なぜ飛ばない。

いや、飛べないんだったな。

 

「喰らいなさい!」

 

レイナーレの光の槍がイッセーの体を掠る。

それから単純作業のようにレイナーレは槍を放出し続けた。

 

「グ!……く!アーシア…!」

「さっきからアーシア、アーシアって気色悪いわね、そこまで会いたいなら会わせてあげるわ」

 

さて、相手は飛んでいる。

後輩は飛べない、そしてイコール攻撃できないということ。

 

しゃーなしだな。

手を貸すか。

 

「神様、……いや悪魔だから魔王様か?」

「遺言かしら?」

 

オレが落としてやるから。

お前はカッコよく主人公しろ。

 

「なっ!翼が勝手に……!?」

 

オレはレイナーレの片翼を握るように念じる。すると浮遊中にぎこちない違和感に襲われたレイナーレは油断して降下する。

 

「ウソ!待って!」

「お願いします……!俺に目の前のコイツをぶっ飛ばせる力を、俺にください!!」

 

そんな時だった。

イッセーの願いに応えるように左腕の篭手が光り輝く。

 

「アレは、……形状変化」

 

オレは思わず呟いた。

光が止むとイッセーの左腕の篭手は形状を変えて、新たに紋様が浮き出ていた。

 

『Boost!』

 

そんな音声が轟く。

イッセーは思いっきり拳を引いて。

 

「ヤメロォォオ!!!」

「…………!!!」

 

前へ突き出す。

突き出した拳はレイナーレの顔面へクリーンヒット。そのまま吹っ飛んでいった。

 

1

 

さて、それからイッセーはトボトボとアーシアのいる地下室へ戻って行った。

まぁ、レイナーレをぶん殴ってもアーシアが戻ってくる訳ではないからな、ただ虚しいだけなのかもしれない。そうしてオレは透明化を解いた。

 

「長時間の透明は疲れるな……ん?」

 

瓦礫の中からボロボロのレイナーレが出てきた。マジですか、生命力ゴキブリ並ですね。

 

「たす、けて」

「え?」

 

レイナーレはぐしゃっとした顔面でオレにそう懇願してきた。

 

「えっと、まぁ」

「……ぐ、か」

 

レイナーレは苦しそうによろつき、尻餅をついた。助けてと言われましても。

 

「……まぁ、そういうことなら」

「たすけて、くれるの?…………グガッ!!」

 

レイナーレは首を絞められたように宙に浮いた。まぁ、浮かせてるのはオレなんだけど。

 

「こうした方が、人間っぽいかな?」

「ボアッ!!」

 

レイナーレは弾け飛んだ。

カランコロンと骨だけがそこに落ちる。

肉や血はそこらにべチョっと飛んだ。

 

虐められた後輩を助けた。

これって人間がすることだよね?

ならオレがしてることは人間っぽいと言えるのかな?

 

「フゥ、……つかれ」

「なにしてるのかしら?」

「あれ?グレモリーじゃん」

 

そこにはグレモリーと姫島がいた。

二人とも警戒心マックスという感じだ。

 

「先輩……!?」

 

タイミング良くイッセーも戻ってきた。

アーシアを抱いて。

 

「イッセー、そいつから離れなさい」

「へ?ってうわ!!…なんだこれ」

 

イッセーは周りに落ちてたレイナーレの残骸を見て驚く、木場と塔城はイッセーを守るように囲む。

 

というかこれって。

オレ、敵?

 

「一部始終を見させてもらったわ」

「……油断してたな」

「貴方何者?」

「山田だ」

「ふざけないで」

 

何者だって現実で聞いたの初めてだ。

いや、茶番で三人が言ってたな。

 

「巫山戯るもなにも、あまり言いたかねぇんだけど」

 

しかし、接触するつもりは無いと自分から自分に言っておいて、なんで出会しちゃったんだオレ。

 

「そう、……力づくと言ったら?」

「んー?逃げる?」

 

そして、流れるようにテレポート。

オレの視界は廃教会から一気に自宅へと変わった。

 

「……グゥ……つ」

 

オレはその場に倒れ込む。

やっぱり力を使いすぎると、一気に疲れるな。力を使ってると、少し気を張るから気にならないのに、緩めてしまうといつもこれだ。

 

よし、グレモリー達にも会いたくないし、疲れてるから明日は休もう。

オレはそのまま寝た。

 

2

 

さて。

現在は午前の10時過ぎ。

朝ごはんも食べて、寝ようかと床に敷いてあるタオルケットを手に取ったのだが。

 

「……妙な視線を感じる」

 

窓を覗いても誰もいない。

けれども視線を感じる、まぁ、100%グレモリーだろうな。

 

「どこかに術式が施された紙とか使い魔的な何かが隠れてるのか?」

 

力の使いすぎで休んでいるのに、こんなにも早く力を使う羽目になるとは。

どうしようもないから、使おう。

オレは辺りにそれらしきモノがないか念じて探す。すると外に蝙蝠がいるのを確認した。

 

「……あれか」

 

オレは携帯を手に取って画面をタップして耳にあてた。

 

「…もしもし、家に蝙蝠が住みついちゃったらしくて、駆除の方をお願いできますか?」

 

そのあと直ぐに業者さんが片付けてくれた。



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第七話『オレ』

面倒くさい。

なんであの時、オレはあの場に行ってしまったんだろう、レイナーレを殺しても人間味とやらは一向に湧いた気がしなかったし。

 

それに、昨日は体を休めるのとグレモリーから逃げるために学校には行かなかったが、今日は登校しなければ。ただし、絡まれるのは確定だろうな。

 

「先輩!おはようございます!」

「おす!先輩!」

「あ、……先輩」

 

イッセー以外はいつも通り。

まぁ、確かにコイツはあの場にいたしな、仕方ないか。

 

「うひょぉ!!リアス先輩に姫島先輩!」

「今日もたまんねぇ体付きしてやがる!」

「ウオォォ!!燃えてきた!!」

 

おい、今の仕方ないかってオレの心の声を返せコノヤロー。本当に女体の事となるとどーでも良くなる節があるなコイツらは。

 

こんなのを下僕にするとは。

グレモリーも物好きだな。

オレはグレモリーへ視線を向ける。

その時、たまたま目が合ったのだが、微笑んできた。

 

「…………」

「あれ?今こっち見なかった?」

「どした?イッセー、そんなに震えて」

「な、なんでもない」

 

今の確実に覚えてろよって顔だったな。

使い魔を業者に頼んで処理したの怒ってるのか?

 

1

 

それから三人と別れて、オレは教室へと入る。中には既に半分以上クラスメイトがいた。

オレは自身の席に座って鞄をかける。

 

「山田くん、宜しいですか?」

「姫島?」

 

座った瞬間、姫島が話しかけてきた。

姫島の後ろでグレモリーが怪しく微笑んでる。

 

「なんだ?どうした?」

「今日の放課後、予定などは?」

「ないけど、……なんでアイツ後ろで笑ってるの?」

「お察しくださると助かりますわ」

 

なるほど。

ここまでの話から推測するに。

放課後に旧校舎へ来いと、そういうことですか。

 

「オカルト研究同好会へ行けばいいのか?」

「研究部ですわ」

 

同じだろ。

今のは素で間違えた。

 

「まぁ、特に用事もねぇし。……いいよ」

「あらあら、話が早くて助かりますわ」

「と思ったけど、面倒いからグレモリーには適当に理由つけてくれ」

「聞こえてるわよ」

 

ピキリと額に青筋を立てたグレモリーが目の前に来た。怒るなよ、そんくらいで。

 

「黙って旧校舎へ来なさい、さもないと今度は貴方の家に上がり込むわよ」

「変態め」

「うっさいわね!」

「あらあら」

 

プンスカと怒りながらグレモリーは自分の席へ戻り、姫島も戻って行った。

一時の難は逃れたか。

ガシリ、オレの首に突如、手が入る。

クラスの友達の雛蔵(ひなくら)だった。

 

「おい!おまえ!リアス様と姫島様と、いつ間に仲良くなったんだ!?」

「知るか、絡まれただけだ」

 

しかしも様付け。

どんだけ敬われてんだこの二人は。

そうして時は過ぎて放課後。

 

教室から出ようとするも、後ろには昨日業者に頼んで駆除してもらったグレモリーの使い魔が飛んでいた。意地でも来させる気か。

 

「しゃーなしか」

 

オレは旧校舎へと向かった。

 

2

 

さて、旧校舎にあるオカルト研究部、部室の扉前まで来ているのだが、一向に進む気が起きない。

 

「バックれるか」

『聞こえてるわよ』

 

部屋の中からグレモリーが言った。

悪魔の聴力恐るべし。

仕方ないので扉を開けて中に入る。

 

「来たわね」

「そのセリフ、あそこで言っといた方が良かったんじゃない?」

 

オレは扉の方を指さして言った。

グレモリーはというと。

 

「…………」

 

余計な事は言うなという目ですね。

コホン、グレモリーは咳払いをして続けた。

 

「単刀直入にいいかしら?……貴方何者?」

「その前に座らせてくれ」

「…………」

 

オレはイッセーの隣が空いてたので、なんとなくそこに座った。すると姫島がテーブルに紅茶がはいったカップを置いた。

 

「紅茶ですわ」

「あんがとう」

「………、いい加減にしてくれないかしら」

「怒るなよ」

「怒らせてんの先輩ですよ……!」

 

イッセーはオレの耳元で言った。

ゾワゾワするからやめてほしい。

今度こそ、とグレモリーは咳払いする。

 

「それで?何者なの?先に言っておくけど、ここはグレモリーが管理する町なの。……危険分子は排除するのが管理者としての、私の仕事なのよ」

 

そこからは至って真剣だった。

イッセー以外はみんな警戒してるのか、ピリピリしている。

 

「強いて言うなら、……エネルギー体?」

「…………は?」

「知ってるか?」

 

意味不明という顔をするグレモリーにオレは紅茶を飲みながら説明することにした。

 

「この世界にはさ、どんな賢者の目だろうと精密機械だろうと、ましてや人間にだろうと、……見えない不純物があるんだよ」

「不純物?」

 

オウム返しのように返してきた。

まぁ、わからないのも当然だ。

 

「この地球で生まれた全ての生命体は、常にそのエネルギーを垂れ流しにしてるんだ。

エネルギーって言うのは、

 

感情。

想い。

魂。

魔力。

氣。

精神力。

 

想いには、誰かを想う気持ちや、妄想とかも含まれてる。オレはソレらを適当に括ってエネルギーって言ってる、オレはソレらエネルギーが蓄積して形になった存在なんだよ」

 

地球に生命というのが産まれたのと同時にオレも生まれた、その時はまだ、見えない液体のような感じだったと推測してる。

 

「貴方は、……人間ではないの?」

「うん、そうだね。……簡単に言えばこの地球にいる全生物の思念の集合体って感じかな」

 

グレモリーは腕を組んで考え込む。

まぁ、当たり前だろう。

人間と思っていた人は実は人間じゃなくて、それも自身の知る、悪魔でも堕天使でも天使でもなかったのだから。

 

「昨日の力は?」

「それは、オレの中にある誰かの想いを形にして実行したんだよ。……人間って残酷だよね、日頃あぁいう事考えてんだから」

 

要は、なんでもできるって事です。

本当になんでもできます。

物凄く疲れるけど。



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第八話『お試し』

グレモリーは頭を抑え、呆れたように言った。

ため息吐くな、ため息を。

 

「今、貴方はペラペラと話してるけど、なんで一昨日は言いたくないなんて言ったの?」

「面倒だったし、疲れてたから」

「本当に呆れるわね、貴方は」

 

露骨にため息を吐くグレモリー。

なんで、こんなにため息をつかれなきゃならんのだ。

 

「結局のところ、……貴方の目的はなんなの?」

「人間になりたい」

 

けっして妖怪人間などではなく。

いや好きだけど。

本当に人間になりたいとオレは思っている。

 

「オレは、オレじゃないから。……オレの中にある感情は全部誰かのモノだ。……だからオレはオレの心が欲しい」

「だから人間になりたいと?」

「そうだよ」

 

オレは真剣だ。

そんなオレの真意がグレモリーに届いたのか、グレモリーは椅子から立ち上がるとそっぽを向いてため息を吐いた。

 

さっきからどんだけため息を吐くんだ。

地の文がため息で構成され始めてるぞ。

 

「貴方、出身は?」

「日本だけど」

「違うわ、日本のどこで生まれたの?」

「ここだよ、……オレはずっとここで生きてきた」

 

むしろ東京とか。

大阪とかなんて行ったことがない。

小学校も中学校も行ってないし、修学旅行なんて体験しなかったからな。

 

「そう、この町の住人なら仕方ないわ。……それに悪魔になるのを誘うのも無理っぽいわね」

「すまない」

「謝らなで、……そのかわり。貴方には私と契約を結んでもらうわ」

 

グレモリーはニヤリと笑みを浮かべた。

契約?悪魔と?

それは魂を贄にとか言うやつでは?

 

「心配しなくても魂なんて取らないから」

「具体的には?」

「そうね、……具体的には協力者ってとこかしら。あとは貴方には監視をつけるわ」

「監視?」

 

なんだか面倒くさい方向へ話が向かっている気がするんだが。

 

「えぇ、そうね。……誰にしようかしら」

 

初めてオレは嫌な予感って奴を感じた。

 

 

「なんで俺なんだ」

「なんでお前なんだ」

 

自宅へと帰宅するオレの後ろについてるのはイッセーだった。

 

「仕方ないっすよ。……あの中で一番先輩と仲良いの俺なんですから」

「え?オレとお前って仲良かったか?」

「え?」

「え?」

 

え?のオウム返しになった。

ここ数日を振り返れば、確かにオレは後輩と学校生活を半ば強制的に過ごしていた。

イッセーも輪に入ってる事はあったが、そんなにいなかった気がする。

むしろあの二人とよく一緒にいたな。

 

「お前、悪魔になってからそんなにオレと一緒にいたことなかっただろ」

「そんなぁ!、アイツらと遊んでなかったツケが回ってきたのかぁ」

 

とは言っても。

イッセーにはイッセーの家がある。

今日はあくまでもお試しという訳だ。

そんなこんなでオレは自宅であるアパートに到着した。

 

階段を上がり、オレは部屋の扉を開けて入る。あれ?何気に家に誰かを上がらせたのは初めてだな。

 

「お、おぉぉ!!」

「どうした?」

「なんも無さすぎる……」

 

イッセーは何も無いオレの部屋を見て驚く。これが普通じゃないのはオレも分かってはいるのでなんとなくわかる。

 

「なんも無さすぎるますよ!これは流石に!精神病になりますって!!ホントに!」

「言い過ぎだろ」

「こんなのは!年頃の男の部屋じゃない!!」

 

イッセーはバンと壁を叩く。

おいここオレの部屋。

隣に誰もいなくて良かったわ、ホントに。

 

「ならお前が何かしろよ」

「え?」

「そこまで言うなら何とかしてみろよ、全力で、命かけて、努力して、何とかしてみろよ」

「え、えぇぇ……」

「金はある」

「そ、そんな急に」

 

なんで急にビビってるんだよ。

この部屋が年頃の男の部屋じゃないのは確かだが。というか人の部屋じゃない。

ほぼ無人と言ってもいい部屋だ。

 

「頼む後輩、お前を信じて言ってるんだ」

「わ、わかりました!……そこまで言うならやりましょう!!」

 

チョロいな。

イッセーの奴。



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第九話『アーシア』

それからイッセーは寝もせずにオレの部屋を。年頃の男の部屋というモノにすべく奮闘してくれた。明日が休日で良かったな。

そして、翌日の夕方。

 

「どう、ですか。……オレが先輩から託された金をふんだんに使って作ってあげた部屋は」

「中々いいんでない?」

 

殺風景なオレの部屋は変わった。

無造作に敷かれたタオルケットはちゃんとしたベッドになり、テーブルはダンボールから木造の物に変わった。

 

そして新たに追加されたのが。

テレビとソファ、パソコンとデスク、テーブルとソファの下には絨毯も敷かれ、台所には食器棚やらも設置された。

 

「これで、やっと寝れる」

「うん、ありがとう。……流石はイッセーだな、お礼に新しく買ったベッドで寝かせてやろう」

「ウッス……ぐは」

 

そのまま倒れ込むようにイッセーはベッドに寝込む。オレはテレビでもつけてみよう。

 

 

休日が明けて平日。

オカルト研究部には新顔がいた。

 

「山田さん!久しぶりです!」

「アーシアか」

 

金髪シスターのアーシア・アルジェントがそこにはいた。ただあの時と違い、シスターの服じゃなく我が校の制服になっていた。

それに……。

 

「悪魔になったのか」

「はい、少し名残惜しいですけど、これで良かったと思ってるんです」

「まぁ、楽しいなら何よりだよ」

 

オレはソファに座り、姫島が出してくれた紅茶を飲む。なんだろう、この沈黙。

 

「ってちがぁう!!」

「なんだどした」

 

意外にも沈黙を破ったのはグレモリーだった。

 

「この間イッセーに何したの!?枯れ果てて帰ってきたわよ!」

「あぁ、……燃え尽きたんだろ」

「何故!!」

 

何故と言われても。

そうか、アイツは枯れ果てたから今日休んだのか。

 

「オレを男にするため?」

「は?……何言ってるの?」

「正確には部屋だが」

 

もう何を言ってるのか理解不能という顔をしてショートするグレモリー。

 

「まぁいいわ、優一。貴方の監視は……誰かしたい?」

 

誰も何も言わなくなった。

なんだろう、これが寂しいという感情か?

 

「はい、私がやりますわ」

 

そんな中、手を挙げてくれたのは姫島だった。お前はどこまでも優しい大和撫子なんだな。

 

「え?いいの朱乃、枯れ果てるわよ?」

「酷い言い草だな、奴は勝手に枯れただけだ。……オレはそれを見ていただけだ」

 

まるで観察対象のアサガオに水をやらず、適当に枯れゆく様を観察日記に記している気分だった。

 

「まぁ、それならいいんだけど」

「使い魔は?前はあれでオレを監視してただろ」

「アレ以来、貴方の家に行けと命令しても拒絶反応かなんかで気絶するようになったのよ。どうしてくれんのかしら?」

「知るか」

 

あの蝙蝠がどうなろうと知ったこっちゃない。

そして、何故かグレモリーの横に突っ立てた姫島がオレの隣に座ってきた。

 

「まぁ、よろしくな」

「えぇ、お願いしますわ」

 

なんだろう。

これがアイツらの言うエロチズムという奴なのか?それが感じるということはつまり。

 

オレも段々と人間味とやらが湧いてきたということか。いや待てよ?エロチズムを感じて人間味が湧くなんてそんなのアイツらと一緒じゃないか。

 

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

 

アイツらと関わるのは辞めておいた方がいいんじゃないだろうか。



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第二章『歪と不死鳥』
第十話『朱乃』


今までのオレが家に帰った時の行動を振り返ろう。まずは学校が終わって即帰宅。

うがい手洗いを済ませて私服に着替え、後はボーッとする。無論、寝るまで。

それが今では……。

 

「山田くんは、嫌いなモノとかありますか?」

「特にない」

 

どうしてこうなったんだろう。

昨日のことを改めて振り返れば、オレはなんで止めなかったのだろうか。

アイツらに染められたか?

 

「つか、……別に家事をしなくてもいいぞ?」

「ダメですわ、監視と言えども居候させてもらうのですから」

 

ニコニコと姫島は微笑んでいる。

この状況をアイツらに言ったらオレはどうなるんだろうか。オレは終わるかもしれない。

 

「姫島が言うならいいけど、……嫌になったら直ぐに言ってくれ」

「はい、……それと」

 

姫島は返事の次に続けた。

 

「次からは名字ではなく、朱乃と呼んでください」

「わかった、そのかわりにその丁寧口調をやめろ」

 

オレは即答した。

別に変な感じはしないし。

 

「うふふ、わかりましたわ」

「あの、……さっそく丁寧口調なんだけど」

「…………」

 

姫島、あらため朱乃は少しずつ顔が赤くなる。まぁ、こうしてオレと朱乃の生活が始まったんだが。

 

朱乃の作るご飯は美味い。

オレも食べた瞬間好きになった。

その他に弁当も作ってくれた。

風呂掃除や皿洗い、そして部屋の掃除まで。

 

「あの、朱乃」

「はい?」

「いくら何でもやりすぎじゃないのか?そこまで献身的にしなくてもいいぞ」

「いいのよ、……私がしたくてしてることですもの」

 

朱乃の口調は皆がいる前では丁寧なままだが、オレと一緒にいる時は砕けた感じになっている。

これもようやくだ、ここまで口調が砕けるのも時間が結構経った。

 

「あのさ、一人で溜め込むんじゃなくて頼れよ、オレは信用できないか?」

「……そういうことじゃないわ」

「ならオレも家事をやる、次は何をするんだ?」

 

朱乃はたぶん、というか絶対。

優しい奴なんだろう。

でも一人で溜め込むのは良くないと思います。

 

「お風呂掃除ですわ」

「そうか、……よしオレも洗う」

 

ん?待てよ。

ウチの風呂は狭い、二人じゃできないな。

 

「ウチの風呂は狭いからオレが一人でやる、その間朱乃は休憩かなんかしといてくれ」

「私もやりますわ」

「いやだから」

「やりますわ」

 

すごい圧だ。

この前、罰として欲を抑えることになったあの二人の苦しそうな表情で迫られたんだが。

その時と同じ圧を感じる。

つまりは怖い。

 

1

 

オレは濡れてもいいTシャツと短パンに着替え風呂場へ入る。朱乃は「ちょっと待ってくださいな」と微笑みながら寝室へ行ってしまった。

 

オレはスポンジに洗剤を染み込ませて先に浴槽を拭く。風呂掃除は毎日してるから、すぐ終わると思うのだが、そう考えれば朱乃がくる必要はあったのだろうか。

 

ガララと扉が開く。

やっと来たか、そう思い朱乃の方へ視線を向ける。

 

「なにしてるん?」

「水着ですわ」

 

何故か水着だ。

何故水着だ。

浴槽洗うだけだぞ。

 

「浴槽洗うだけだぞ、それに毎日洗ってるからオレ一人で充分だし」

「優一くんは浴槽を洗ってくださいまし、私は床を洗うので」

 

なんだか断る気にもなれなかった。

というよりは、段々と失せてしまった気がする。オレは言われた通りに浴槽を洗う。

 

しかしだ。

ここで問題が発生した。

アイツら三人は、常におっぱいおっぱいと連呼していて、オレも呆れて何も言わなかったが……。

 

朱乃がアクションを起こす度に胸が揺れる。アイツらがいなければオレは気にも止めなかっただろう。

 

「朱乃、……オレは何も見ていない」

「……あらあら」

 

そう、オレは何も見ていないのだ。

何も揺れなどしていないのだ。

オレはこのスポンジで初めてできた煩悩とやらを拭おうと意味合いも込めて浴槽を強く擦った。

 

2

 

しまった。

なんてこったい。

客用の布団を用意するのを忘れていた。

 

「シングル一つしかない、か。……仕方ない、オレはソファで寝るから朱乃はベッドを使ってくれ」

「そういう訳にはいきませんわ」

「行かせて欲しいところだ」

「ダメ」

 

朱乃は半ば強引にオレの手を引いて、ベッドに横になる。連られてオレも横になった。

 

「初めだ」

「何がですの?」

「誰かと同じベッドで寝ることが」

「ご両親は?」

 

間近で朱乃は聞いてくる。

呼吸の音が聞こえる。

 

「いないよ、オレはずっと一人で生きてきたから」

「……同じね」

 

ただ一言だけ。

朱乃はそう言った。

それ以降のことは覚えていない。



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第十一話『変わった日常』

久しぶりの登場だなイッセー。

最近休みがちで学校に来てなかったイッセーが遂に復活し登校した。

 

「よっしゃあ!!今日からまたバシバシ悪魔稼業やっていくぜ!!」

「燃えてるな」

「当たり前っすよ!今の俺なら転移魔法もくぐり抜けれるはず!」

 

そっか、そういえばイッセーは魔力が無さすぎて紙に描いてある魔法陣で転移することができなかったんだっけ。自転車で走り回ってるところをよく見かけた。

 

「おうイッセー!」

「待ちくたびれたぜ!新ネタの調達はちゃんとしておいたぞ」

「詳しく」

 

悪魔稼業どした?

そっち方面になると全てがどうでも良くなるなコイツは。

 

「先輩ももちろん昼はご一緒しますよ!」

「見ましょうよ!一緒に」

「そうだ!先輩も興奮していきましょう!」

 

コイツら、オレが完全に仲間になったと思い込んでやがるな。

 

「悪いが、今日は先約がある」

「「「えーーー」」」

「えーじゃない」

 

昼休みに朱乃に呼ばれているからな。

行かないと殺される。

たぶん……。

 

1

 

四時間目の授業が終わり、オレは屋上へと行った。朱乃は同じクラスではあるのだがオレが一緒に行ってしまうと何かと面倒事が起きるので一人で来た。

 

その数分後に朱乃も屋上へと入ってきた。

この間も言ったと思うが朱乃は弁当を作ってくれる。だから朱乃は二つ弁当を持ってくる。

 

オレが食うやつはオレが持つ。

そう言っても先に食べ始めそう、中身をグチャグチャにしそうとのことで朱乃が管理することに。

 

「これが今日の弁当ですわ」

 

隣に座る朱乃は弁当の蓋を開ける。

オレと朱乃の弁当の中身は同じだ。

内容も割と普通。

でもこれが美味いんだ。

 

「いただきます」

「はい」

 

オレは弁当を口に運ぶ。

うん、やはり美味い。

こんな所をアイツらに見られたら殺されるだろうな。

 

「美味いよ」

「あら、……ありがとう」

 

普段口数が少ないオレは美味いと言ってみる。いや今までにも言ったけど、最初に食べた時しか言ってないな。

 

「オレも今度何か作るよ、伊達に一人暮らししてた訳じゃないからな」

「楽しみにしておきますわ」

 

オレは弁当を食べ終わり箸をしまう。

手を合わせてごちそうさまでしたと言った。

 

「ふふ、お粗末さまでした」

 

朱乃はいつもの様に優しく微笑んでいた。

そして、その後の六時間目の授業中。

嫌な予感がというものを、ビンビン感じるんですが。

 

2

 

帰ろうとしても強制的に連れて行かれてしまうこの様、とてもいい思いはしない。

帰りたい、寝たい。

それに何か面倒事の予感がする。

 

「グレモリー、この数分後に何か嫌なアクションがあった時はお前の頬を引っぱたいていいか?」

「なんでよ!?」

 

冗談だ。

というか、ずっと気になってたんだが。

 

「あんた誰?」

 

銀髪のメイドがいた。

ずっと突っ立ってる。

けど、物凄い力を秘めてるのはわかった。

 

「お初にお目にかかります。わたくしはグレモリー家に仕えるグレイフィアと申します」

「どーも」

 

流石は名家と言ったところか。

メイドなんて初めて見た。

いや、悪魔の世界では割と常識だったりするのか?メイドや執事がいるのは。

 

「なぁグレモリー、悪魔ってのは全員メイドやら何やらをこき使っているのか?」

「言い方をどうにかしてくれないかしら、全員が全員、使用人を雇っている訳ではないわ。72柱に属さない下級の悪魔達は雇う資金がないと思うし」

「金持ちは言うことが違うねぇ」

「なんでそうなるのよ」

 

それから数分後。

オレは出された紅茶を飲んだりしてそれなりにくつろいでいたら、イッセーと木場、塔城が入ってきた。それも各々構えて。

 

「どしたの」

「あれ?敵は」

「いないわよ?」

 

グレイフィアさんの魔力にあてられたか。

まぁ、いつの間にかに自分たちのテリトリーに大きな力が入り込んだら誰でも警戒するか。

勝手な憶測だが。

 

「まぁ、みんな集まったわね。…それじゃあ」

 

ん?暑い?

何か来るぞ。

それを感じ取った瞬間。

部室内が紅い光で包まれた。

直後にボゥワ!!と激しい炎が舞う。

 

「フゥ、やっと着いたぜ」

 

炎から出てきたのは男。

ホストみたいな風貌だ。

 

「会いたかったぜ、愛しのリアス」

 

精子臭い。



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第十二話『ライザー』

なんだこの精子臭い男は。

銀座のホストか?何故ここに?

 

「……人間界は空気が悪くて仕方がねぇ、それにリアス、お前いつから人間なんてペットを飼い始めたんだ?」

 

こいつ、噛ませ犬キャラ臭がプンプン臭ってくるのに随分と言いたい放題だな。

オレ以外は全員悪魔だから、確実にオレへ向けた言葉だ。

 

「彼はペットなんかじゃないわ」

「そうだ、そしてグレモリーとは仲間扱いにしないでくれよ、強制的にここにいるだけだからな」

「そうよ、彼はウチのペットだわ」

 

冗談だって。

そんなに怒るなよ。

ていうか最初に言った言葉を速攻で否定するな。

 

「フン、まぁいい。リアスいい加減にしてくれないか?こっちはずっと待っているんだぞ」

「いい加減にして欲しいのはこっちよ、あなたしつこいわよ私は断じて結婚するつもりなんかないわ」

 

ムム?

結婚??

この精子臭い男とリアスが?

 

「結婚!!!???」

 

イッセーが叫ぶ。

確かに驚きだ、リアスに許嫁がいたなんて。

 

「ぶ、部長。……どういうことですか!?」

「イッセー黙っとれ」

 

確かめたくなる気持ちはわかる。

十分にな。

 

「お前のお父様だって承諾してくれているんだぜ?お前は今の悪魔界に、俺たちフェニックスとグレモリー家に泥を塗る気なのか?」

「違うわ、結婚はする」

「なら俺と一緒に今すぐ冥界に帰ろう!」

「でも貴方とじゃないわ」

 

段々ピリピリした空気になっていく。

オレの嫌な予感は見事に的中したわけか。

イッセーの奴はさっきからワナワナと震えてる。

 

「強情だな」

「それは貴方の方よ、ライザー」

 

どうやらこの精子臭い男の名前はライザーと言うらしい。ライザーは困ったようなフリをしながらニヤリと笑みを浮かべた。

 

「んー……、ならこうしようかリアス。キミの下僕とキミとで俺と決闘するってのは」

「……!」

 

リアスの表情が変わった。

この男、どうするつもりなんだ?

 

「えぇ、良いわよ。レーティングゲームって事ね」

「そうだ、でも俺から提案しといてアレだが良いのかい?俺は悪魔会でも屈指のレーティングゲーム実力者だ、勝てるのかな?俺のこの下僕たちによぉ!!」

 

すると再び炎は上がり、火の中から何人もの女性が現れる、というかさっきから演出ハデすぎなんだけど、いつのテレビだよ。

 

「お、おおお!!」

「ん?なんだ?リアス、キミの下僕くんが俺の下僕を見て何か言いたそうなんだが」

「彼は……、その、なんというか」

 

リアスは言葉に詰まる。

無理もない、持ってる神器は超絶レアだけど、頭の中身は処理済みティッシュと同程度だからな。

 

「彼にはハーレムという夢があるの……はァ」

「ほう、ハーレムか、……羨ましいか?」

「も、勿論!!」

 

グレモリーがお得意のため息を吐き、ライザーはニヤリとイッセーの方へ興味を向ける。

 

「フン、こんなことだって出来るんだぞ」

「え?」

 

イッセーが困惑した瞬間。

ライザーが後ろにいたロングヘアの下僕に、いきなりキスをした、それもディープ。

ちゃっかり胸まで揉んでる。

 

「な、ななな!?」

 

イッセー、あまりの出来事に言葉が出てこないそうです。

 

「この変態!!」

「お前が言うな」

 

うっかり声が出ちまった。

ライザーはキスをやめて、イッセーにドヤ顔を向ける。

 

「気色の悪い男ね」

「どうとでも言えばいいさ、んで?どうする?やるのか?俺との、レーティングゲームを」

「やるに決まってるわ、必ず勝って、必ず貴方なんかの婚約者になんてならない」

 

ライザーは怪しげな笑みを浮かべた。

うん、これは完全にライザーの流れだ。

つまりは負け確。



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第十三話『修行開始』

オレは今。

何故だか長い坂道を歩いている。

周りは森で、辺りに家などはない。

 

「どうしてこうなった」

「俺が、……きき、たいです、よ。はァ、はァ」

 

隣で大荷物を抱えたイッセーが息切れしながら歩いていた。ちなみにオレは全てイッセーに持たしてある、最初はコイツが調子に乗ってオレの分まで運ぶと言ったからだ。

と、まぁその話は置いてといて。

なんでこんな森の中を進んでいるのかを話そうと思う。

 

1

 

ライザーは去り際にこう言った。

 

「そうだな、十日間、猶予をやろう。そしてその日が俺とお前達の決闘の日だ、せいぜい頑張るんだな」

 

余裕そうな顔で出ていった。

うーん、これは負けの予感。

 

「んで?どうするんだグレモリー、ハッキリ言うと今の戦力じゃ勝てないと思うけど」

「バカね、そのための十日よ」

 

バカですか。

もしかして修行とかすんの?

 

「山篭りよ!」

「絶対、ドラグ・ソボール読んだろ」

 

こうしてグレモリーの一言によって、オレ達はグレモリーが持つ別荘があるという森へと修行しにやって来たのだ。

 

2

 

しっかし、十日でどうにかなるもんかね。

イッセーはまだ伸び代がある。

木場も塔城も。

しかし相手はライザー。

聞いた所によるとフェニックス、つまりは不死鳥の名を冠する悪魔らしい。

 

「そんな奴にたった十日で勝てんのかね」

「何弱気になってんすか!」

「お前はいつも熱いな」

 

まぁ、イッセーの言いたいこともわかる。

グレモリーの事だったらなんでもやりそうだし。

 

「みんな、着いたわよ」

 

先頭のグレモリーが告げる。

ここで坂道は終了。

イッセーは完全に息切れ、その場に倒れ込む。

 

「や、と着い、た」

「何やってるのイッセー、まだまだこれからよ?」

「え?」

 

イッセーは予想外な顔をする。

うん、せめてアイツらと互角に戦える程の戦力が欲しい、じゃないと確実に負けるからな。

その為の時間が今はすごく惜しいし。

 

3

 

結果的に言えばイッセーはダメダメだった。

剣術は木場との練習は早々に退場。

これは塔城との体術の練習も同じ。

そして朱乃による魔力講座を受けるも、生成できる魔力は米粒くらいのモノだった。

 

「24ッ……25ッ……26ッ……ッ!」

 

今は筋トレで精一杯てか。

ダメだな、このままじゃ確実に負ける。

というかグレモリー、イッセーは牛じゃないんだから乗るなよ。

 

「グレモリー、イッセーの上に乗るのは流石にやりすぎだろ、お前重そうだし」

「この間から思ってたけど、私は貴方に何かしたの?」

 

何もされてないぞ。

ただお前をいじるのが面白いだけだ。

 

4

 

そして、その日の夜。

朱乃の手作りカレーを食し、プチ反省会。

やはり、イッセーをどうするかで持ちきりだった。

 

「あと九日、割と少ない期間だからな、思いつきでもいいから、なんでもしてみたらどうだ?」

「思いつき、ですか」

 

イッセーは腕を組んで悩む。

すると、グレモリーら女子達は一斉に立ち上がった。

 

「そろそろお風呂に入るわ」

「お、おお、お風呂!!」

「もう、お前に助言するのはやめるよ」

 

呆れる。

とことん呆れる。

グレモリーは悪戯な笑みを浮かべた。

 

「ふふ、イッセーも一緒に入りたいの?」

「も、もちろんです!!」

「グレモリー、……ビッチみたいだからやめとけ」

「う、うっさいわね!」

 

グレモリーは顔を赤くしながら言った。

その後に、朱乃も同じように俺を誘い始めた。

 

「ふふ、どうですか?」

「却下、そして俺を誘ってしまったら、木場が空気になるぞ、可哀想だろ」

「なんでそこで僕なんですか」

 

木場は苦笑しながら答えた。

するとグレモリーはまたも、悪戯な笑みを浮かべてイッセーに問うた。

 

「そうねぇ、小猫が良いって言ったら一緒に入ってあげるわ、どう?」

「嫌です」

 

即答、うん、これが普通の対応だ。

そしてイッセーは泣きながら床に膝を着く。

その姿を思いっきりスルーしてグレモリー達は浴場へと行ってしまった。

 

「イッセーくん、覗かないでね」

 

ここで木場が爆弾発言。

やめて差し上げろ、イッセーが死ぬぞ。

 

「死に腐りがれ!!!」

 

イッセーは部屋を飛び出して行った。

木場、お前は悪魔か。

いや、悪魔だ。

まぁ、顔のビジュアル的にそっち系も行ける口なのかもしれない。

 

「お前なら一生ネットの晒し者になっても、強く生きていそうだな」

「どいうことですか?」

 

分からないならいいや。

オレは水を飲みに台所へと向かった。



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