無色と灰色の交奏曲 (隠神カムイ)
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設定資料 無色と灰色の交奏曲 キャラクター設定資料『プロローグ~他バンド交流編』

陽だまりロードナイトのやつをやる前にこれまでの無灰メンバーの事の設定資料をあげようと思います。
今回は主に主人公の奏多とRoseliaメンバーの設定資料です。Roseliaメンバーは基本は原作「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」と同じですが奏多の介入で多少の変化はあります。そのため変化したところだけの紹介となりますので原作をあまり知らない方は「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」の方を見てから来ることをオススメします。


主人公 九条奏多

 

身長170cm 体重58kg

 

好きな食べ物 甘い物、緑茶、コーヒー

 

苦手な食べ物 納豆などのネバネバしたもの

 

得意なこと ネトゲ、音色の判定

 

苦手なこと、弱点 会話、方向音痴

 

イメージカラー 無色

 

本作の主人公。

生まれつき個性を表す《色》が無く、影が薄い。

 

小さい頃に母親に見捨てられ、父親があまり喋らないため家で会話がなくそのため会話が苦手。

 

話そうとすると緊張してしまい自然と敬語になってしまうが父親と叔父だけは敬語を使わずに話すことが出来る。(それは母親に見捨てられたせいで人に対する信用度が少し低く、心から信用できる人にしかタメ語で話すことが出来ないためである)

 

更に母親がいなくなったせいで女性の温もりや愛情を感じることが出来なかったため女性に対する関係の取り方がわからず、恋や恋愛などはからっきしダメ。

 

会話が苦手なため高校1年まで友達と呼べる存在が少なく、休日等はほとんど家に引きこもって遊んでいた。

 

そのためネトゲの腕はかなり上達し、プレイヤーの中では少し名の知れた存在になりつつある。(ユーザーネームはカナタ)

 

花咲川高校に転校してからは今井リサの影響もあってか人並み程度には話せるようになっては来ていて、友人(といってもほぼ女子)も増えてきている。

 

始業式の夕暮れに聞いた音色に感動し、音楽に少し興味を持ち始める。

 

Roseliaに入った理由は『湊友希那が目指す場所に自分の求める色が見つかるような気がした』からであるが楽器は引くことが出来ず、歌声も凡人以上なのでマネージャーとしてメンバーのサポートをしている。

 

湊友希那からはスケジュール管理と予算管理、新曲名の決定やカバー曲の選曲を任されている。

 

クラスやネトゲをやっている関係で白金燐子との関係が深く、CIRCLEからの帰り道もほとんど一緒なのでよく一緒に帰っている。

 

 

 

父親の仕事の関係で一人暮らしをしており、仕送りの他にコンビニでアルバイトをして生活費をやりくりしている。

 

そのコンビニには同じバンドの今井リサや今井リサの後輩の青葉モカがおり、シフトの関係でほとんど一緒に働いている。

 

 

 

 

 

Roseliaメンバー

 

湊友希那

Roseliaのボーカル。

 

基本設定は原作参照。

 

いつもはクールで音楽のことになると周りが見えなくなるが猫を見ると緩くなる。

 

宇田川あこのオーディションの時に今井リサに用があった奏多に不信感を抱いていたが奏多の才能に目を付けマネージャーとしてスカウト。

 

原作の『Roselia1章』の11話~のストーリーは奏多の介入のためそのルートは無くなっている。

 

 

 

LOUDER編では父親の曲を歌うことに迷いを持っていたが父親と奏多の叔父で父親の昔のバンドメンバーである九条茂樹に促され歌うことを決心。

 

仲間との馴れ合いはあまり好まなかったが、絆を深めることが完璧な音楽への1歩だと知り仲間との関係を深めていくようになった。

 

 

 

 

 

今井リサ

Roseliaのベース。

 

基本設定は原作参照。

 

湊友希那の幼なじみでギャルのような見た目だが人当たりがよく、面倒見が良い。

 

奏多とはバイトの先輩として出会う。

 

人と話すことが苦手な奏多に会話のレクチャーなどをしたりして仲を深めていった。

 

顔が広く、色々な友達や知り合いがいる。

 

 

 

 

 

 

氷川紗夜

Roseliaのギター。

基本設定は原作参照。

 

しっかりとした性格で学校では風紀委員をしており、奏多とは最初、校内紹介として話しかけた。

 

基本後ろ向き思考で安全にやることが多い。

 

『日菜』という双子の妹がいる。

 

奏多と出会ってからしっかりとした性格は変わらないものの少し丸くはなった。

 

 

 

 

 

 

宇田川あこ

Roseliaのドラム。

基本設定は原作参照。

 

元気な性格で常に「カッコいい」事を探しているため発言に所々厨二病っぽい言葉も入る。

 

奏多とは彼が道に迷った時に白金燐子が話しかけて言った時に出会った。

 

ネトゲでもパーティを組んでおり死霊魔術師としてトリッキーな戦い方をする。

 

奏多と出会ってから自分のミスが少なくなってきたので彼には感謝の気持ちがある。

 

 

 

 

 

 

白金燐子

Roseliaのキーボードで本作のメインヒロイン。

 

基本設定は原作参照。

 

引っ込み思案な性格。

奏多とは始業式の日に見ていて、その日の夕暮れに弾いたピアノが奏多に聞かれていた。

 

後日奏多が道に迷っていたところを見つけ、自分から話しかけに行ったことで奏多との関係を本格化させた。

NFO内で奏多と話してから学校で話すことも多くなり、今では一緒に帰るほど仲が良い。

 

Roseliaに入る時緊張していたが奏多の自分を変えたいという気持ちに自分もそうなりたいと思ってオーディションに挑み加入。

 

Roseliaのキーボードとしてステージに立ち始めた。

 

曲名制作で悩んでいる奏多に助言をしたり、氷川紗夜のポテト好きを見抜くなと目割によく気を配っている。




設定としてはこんな感じです。
他のメンバーはリクエストや時間があればやろうと思いますので!


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無灰設定資料集『5章~7章』編

はい、無灰の設定資料集の新規版です。
ネタバレ要素含むのでまだ本編読んでない方はそちらからがオススメ。
今回は『九条奏多』と『陰村炎』のこの作品限定の二人の設定となります。奏多は前回もやりましたが7章で成長したこともあり一からやることになりました。(どっちかと言うと補足に近い)
付け加え設定もありますのでそこんとこは新しく見るつもりで見てください。
インディーズメンバー等もやってほしい場合はリクエスト等で受け付けるのでメッセージいつでも待ってます!

それでは設定資料集どうぞ!


主人公 九条 奏多(くじょう そうた)

 

性別 男

 

身長170cm 体重58kg

 

誕生日 12月27日

 

年齢 16歳

 

好きな食べ物 甘い物、緑茶、コーヒー

 

苦手な食べ物 納豆などのネバネバしたもの

 

得意なもの ネトゲ 音色の判定 料理等の家事全般

 

苦手なものや弱点 会話 方向音痴 圧倒的ジャンケンの弱さ

 

イメージカラー 無色

 

 

 

本作の主人公。

 

4章までの設定は前回の資料集参考。

 

5章でわかるように人に頼むと断れないタイプ。

 

バイトで多少は付いてきたが基本の体力が人並み以下な為、激しいことや長時間何かをすると息が上がりやすい。

 

しかし好物の甘いものを食べるとすぐに回復する。

 

彼は無類の甘いもの好きでありスイーツバイキング等では自分の財布が許す限り買い込むこともしばしばある。(そのせいで八月の生活費がカツカツになってしまった。)

 

甘いものを目の前にすれば人が変わり少し女子っぽくなる。

 

その変わりようはリサが少し引くほどの凄さである。

 

 

 

6章においてリサとひまりに頼まれ海に行ったが体の傷を見られたくないために奏多は泳がずに荷物番をしていたが、リサ、ひまり、そして燐子の水着のインパクトに耐えられず気絶。

 

これは前の資料集でも記したように女性に対する免疫がものすごく低く、コンビニのバイト中に雑誌の陳列でたまたま水着の女性が表紙の雑誌を見た時でさえ顔を赤らめてしまうほどの弱さである。

 

その後にNFOとコラボをしていた海の家を手伝うことになったが奏多は父が料理できない(作ると絶望的に不味い)ため磨き続けた料理スキルを発揮する。

 

3年生から鍛え続けたスキルは凄く、レシピを見るだけで調理、更にアレンジも加えることが出来るほどである。店長曰く「もう少し経験積めば多分飯屋作っても繁盛する」ぐらいらしい。

 

 

 

7章で母親と会って心が砕け、挫折。

 

その時に他人を信じず、一人でいることが身を守れ、他人を傷つけないと思う感情が目覚めてしまい、奏多は一時的な二重人格障害となってしまう。

 

Roseliaメンバーとは初め裏の人格が話していたが炎と話した時に彼の言葉にに押し負けて基本の人格が前に出てくる。

 

その時基本の人格は砕け散り、無の人格になりつつあったが燐子の説得により元に戻り、裏の人格も自分だと認め、一時的な二重人格も元に戻った。

 

そこから奏多はRoseliaメンバーと炎にはタメ語で話すようになり、彼らには自分を助けてくれた恩を感じている。

 

 

 

本人は全く気づいてないが燐子といい関係になりつつあるのをRoseliaメンバー以外から暖かい目で見られつつある。

 

燐子とのいい関係雰囲気は恋愛に全く皆無なRoseliaメンバーは全く気がついてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

陰村 炎(かげむら ほむら)

 

性別 男

 

身長180cm 体重69kg

 

誕生日 1月9日

 

好きな食べ物 肉全般、奏多の作った料理

 

嫌いな食べ物 ピーマン、ニンジン

 

好きなもの 友達、運動

 

苦手なものや弱点 勉強、白鷺千聖

 

イメージカラー 虹色

 

 

 

本作で奏多と対になるように生まれたキャラ。

 

イメージコンセプトは「イケメンだけど天然バカ」

 

奏多が影が薄く、無色なキャラなら友達は派手で目立ちやすい多色なキャラってことで考えついたキャラ。

 

名前の由来は実は『病ンデル彼女ノ陰』の原作者のユーザーネームを少しいじったものであり「名前だけでもいいから出してくれ」とリアルで言われたので名前はこうなりました。

 

元々「友達の母親は昔自分を捨てた母親で母親と出会うことで奏多の心に亀裂を入れて砕かせる」というイメージは持っていて奏多の母親はとてつもないゲスキャラで行こうとの事。

 

炎は彼の母親でいう所の「自分が望んでいた子」であり、当時生まれてすぐ交通事故で母親を亡くし、男で一つで育てられた炎にとってとても優しく育ててくれた母親は「最高の母親」と言われるに等しい存在だった。

 

彼の父親は初め彼の母親がまだ離婚してなかったことに気が付かなく(しかも虐待していたことなんて全く知らなかった)、母親が完璧に離婚したことを期に結婚を申し込まれ結婚。

 

Roseliaや奏多と出会うまで母親が何をしてきたか知らなかった。

 

 

 

奏多とは彼の家に泊まってから無二の親友となり度々奏多の家に食事を振舞ってもらっている。(なお、Roseliaメンバーは奏多がいる時に家に行ったことはまだない)

 

白鷺千聖とは奏多が休んでいる時に同じ委員会に入れられ、自由奔放で天然バカな炎を止めるストッパーとして働いている。

 

何故出会って数日でここまで炎が怯えているのは「あいつの怒った時のオーラがめちゃくちゃ怖くて反抗できない」だそうだ。

 

ついでに千聖によれば「彩ちゃん以上にほっとけない存在」なのだそうだ。




奏多の方は設定資料集よりかは作品の補足に近いです。
炎の方は完全新規で多分細かい設定はここでしかやらないと思うんでこうなりました。
設定資料集も何かの拍子にやると思いますのでその日までお楽しみに!


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プロローグ&1話 ムショク ノ ジブン プロローグ ムショク ノ ジブン

こんにちは!隠神カムイといいます!
小説制作は初めてながらも燐子との恋愛系の話を作って見ようと思い制作しました。まだまだ半人前ですが読んでくれると幸いです。


あと明坂さんに最大の敬意と感謝を。


プロローグ ムショク ノ ジブン

 

 

 

 

 

 

僕は無色だ

 

人にはそれぞれ個人の《色》というものがある。

 

簡単に言えば、熱血系の男の人なら赤、みんなを笑顔にする某ふわふわ系なアイドルならピンク等々それぞれが個性を出してそれぞれの良さがある。

 

 

 

そんな中、僕が生まれ持ってきたのは《無》だった。

別に身体障害や精神障害でもなく、生まれ持ってくるはずだった《色》がなく、成長した今では影が薄い存在になってた。

 

こんな体質のせいか友達も(ゼロではないが)少なく、後ろから話しかけるとめちゃくちゃ驚かれるのもよくある事だ。

 

 

 

そんな《無》の自分に変化が出たのは高校の2年の時だった。

 

それはある日の唐突な転校から始まった

 

 

 

 

 

 

九条奏多(くじょうそうた)は高校1年の一月頃、突然親父に転校しなければならない話をされた。

 

我が家は親父と僕の二人家族で、母は存在感のない僕に嫌気がさし、男を作って逃げてしまった。

 

親父は少々頑固者であまり転勤とかの話は断る人なのだが、ここ最近の家計状況と出世のチャンスに止む無く転勤することにしたそうだ。

 

僕が新しく行く高校は花咲川という高校で元々女子高なのだが来年度から名前が変わり、男子も引き受けることになったそうだ。

 

元女子高ということは女子が多いのだろうか。

 

あまり自分から喋りに行かない僕からしたら不安要素しかないが、三ヶ月後にはそこに通わないといけないのでどうにかするしかない。

 

そして、入学手続きと入学試験を通って「花咲川高等学校」の数少ない2年生の男子生徒となった。

 

 

 

 

 

 

新しい学校の先生に挨拶した後、僕は始業式で「この高校に転校してきた初めての男子生徒」として盛大に発表され、挨拶しなければならないそうだ。

 

正直めんどくさいがこれも仕方が無いことなので自分の番が来るのを待った。

 

校長先生の話が終わり、自分の挨拶の番が来た。

 

 

 

「さて、今日から2年生になんと男子生徒が入ることになりました!それでは一言挨拶を貰いましょう!」

 

・・・そんな盛大にされたら困るって。

 

そう思いながらも壇に立ち、挨拶をした。

 

「今日からこの学年に入る九条奏多です。まだ転校してきたばっかでこの街もこの高校のこともあまり良くわかってないですがよろしくお願いしましゅ・・・」

 

・・・噛んだ。

 

今思いっきり噛んだよな・・・

 

一瞬静けさが通った後笑われながらも盛大な拍手で帰ってきた。

 

めちゃくちゃ恥ずかしい転入劇だったがそこからのハチャメチャな転入初日はこれで終わらなかった。

 

 




最初なので1000文字ぐらいまでにしました
また改善点とかあればよろしくお願いします


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続プロローグ ハランバンジョウ

プロローグはまだ続きます。
小説制作は週一ペースでやると思います
あと時系列的にはRoselia結成のちょっと前ぐらいです


あの始業式が終わった後僕は自分のクラスに案内された。

 

担任の教師に挨拶した後、クラスでも挨拶するように言われた。

 

どうやら僕のクラスは2年B組でやはりと言うべきか男子生徒は僕だけのようだ。

 

1年生には男子生徒が3割ほどいるが2年生には僕しかいない上に3年生には男子生徒は来なかったらしい。

 

この時期に転校する3年生はそう居ないのでそれもそうだが、自分の学年に男子生徒1人は少々心細い。

 

そんな不安の中担任から紹介が入り、クラスの人たちに挨拶した。

 

 

 

僕「さっきも紹介しましたが、九条奏多といいます。これから1年よろしくお願いします。」

 

拍手のあと僕は自分の席に案内された。

 

どうやら窓側の一番後ろのようだ。

 

窓側なのは好きだが一番後ろはよく教師に目がつけられるのであまり好きではないが、仕方がない。

 

席に座ると隣の人から声を掛けられた。

 

「はじめましてっ!私、丸山彩っていいます!よろしくねっ!」

 

丸山彩と名乗った女子生徒が初めに声をかけてきた。

 

丸山彩といえば最近テレビで出てきたpastel paletteというバンドのボーカルの子ではないだろうか。

 

「九条奏多です。よろしくお願いします。」

 

間違いだと困るのでそこには触れず、軽い挨拶を返す。

 

軽い挨拶をしていると青髪の子が声をかけてきた。

 

 

 

「九条さんでしたか?私は氷川紗夜といいます。この学校で風紀委員をしています。この学校のことをあまり知らないと言うので良ければ案内しましょうか?」

 

氷川紗夜と名乗った女子生徒が案内をしてくれるそうだ。

 

自分から声をかける自信がなかった僕からしたら有難いことだ。

 

「ほんとですか?それじゃあお願いします。」

 

「わかりました。それでは終礼の後時間はありますか?」

 

「今日は特に予定何も無いから大丈夫です。」

 

「それではその時間に。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

放課後

 

休み時間という休み時間に転校生のお決まりというか大量の質問攻めを喰らった。

 

今日は始業式のため昼まで学校ということもあり、ほかのクラスからも盛大に来た。

 

その質問に一つ一つ答えながらもなんとか放課後、氷川さんを捕まえて案内してもらうことになった。

 

各学年の教室や調理実習室などの部屋などを案内された後、最後に図書室に案内された。

 

前の学校ではあまり友達も少なく、本ばかり読んでた僕からしたらこの学校の図書室は前の学校の比では無いほどの本の数があった。

 

氷川さんはこの後予定があるらしく、ここで別れたが僕はしばらくの間図書室にいた。

 

そこで気に入った本を数冊借り、家に帰って読もうとしていた帰宅路。

 

 

 

 

 

 

それは唐突な衝撃だった。

 

 

 

 

 

 

ピアノの音だ。

 

どこからかピアノの音がした。

 

距離があるのか音が少々小さかったがその音は澄んでいて、綺麗で、心に響く、そんな音だった。

 

僕は周りの音を気にせずその音だけを聴いていた。

 

心に響くこの音を、聴き逃さないために。

 

この音は何なんだ、誰の演奏なんだろうか。

 

もっと聴いていたい、もっと奏でてほしい。

 

音楽なんて乏しかった僕が心から感動した音色。

 

引いているのは誰だろうか?

 

 

 

その答えは思っていたより近くにあった。




てなわけで2人の対面はまだですが音色だけ対面となりました。
プロローグはこれで終わりです。
次からは本編に入ります。頑張って続ける気なのでよろしくお願いします!


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1話 デアイ ト シオリ

毎週日曜投稿にしようと思います
さてやっと初対面です


気がつけば僕は道の真ん中で30分ほど立ちすくんでいた。

 

あの音色は何だったのか、夢や幻ならばここまで立ちすくむはずがない。

 

そう考えていると後ろからの自転車のベルの音が鳴った。

 

その音で僕は我に返り、そのまま家に帰った。

 

 

 

 

家に着くと時間は4時半を過ぎていた。学校を出たのが3時半で家と学校は大体15分ほどの距離しかない。

 

それほど音色に夢中だったのかと僕は自分に呆れながらも自室へ行き荷物を置いた。

 

ふと、自分のスマホを見ると親父から今日は帰りが遅くなるから先に飯作って食べとけという連絡が来ていた。

 

最近、親父は大きなプロジェクトを任されたらしく、一週間前からこの調子だ。

 

「親父・・・体壊すんじゃねぇか?」

 

僕は心配しながらもカバンと財布を持って近くのスーパーに買い物に出かけた。

 

 

 

夕飯のメニューはどうしようか。

 

親父が帰ってからも食べれるように保存のきく食べ物の方がいいよな。

 

そんなことを考えながらスーパーに着いて材料をえらんでいると、そこには氷川さんがいた。

「あ、氷川さん。」

 

「あぁ、九条さんですか。あなたも買い物ですか?」

 

「はい。家の都合上親父が帰ってくるのが遅いんで。今日も夕飯は自分で作って食べとけって連絡が来たんです。」

 

「それは大変ですね。」

 

「いえ、もう慣れたんで。あっ今日はありがとうございます。」

 

「いえ、気にしないでください。元々こういう性格なの・・・」

 

「おねーちゃーん!」

 

突然大きな声がして後ろから氷川さんにそっくりな青髪の子が飛び出してきた。

 

「ちょっ・・・日菜!」

 

「おねーちゃんその人誰?もしかして彼氏?」

 

「違うわよ・・・今日うちの学校に転校してきた九条さんよ。」

 

「ふーん。確かに男女混合校になるって言ってたね。私氷川日菜!よろしく!」

 

「うっ・・・うん。九条奏多です・・・よろしく・・・。」

 

・・・姉妹でこうもテンションが違うものなのか?

 

僕には兄弟がいないからわからないがそういうものなんだろう・・・

 

「日菜・・・ところで何しに来たのよ?」

 

「ん~?暇だったのとアイス買いに」

 

「日菜・・・アイスばっか食べてると体壊すって何回も言ってるじゃない・・・」

 

「実際に壊したことないからだいじょーぶだって!」

 

はぁ・・・と氷川さん(姉)がため息をつく。

「話してる途中悪いけど、日菜さんだっけ?アイス持ってると溶けるよ?」

 

あぁー!っと日菜が叫んだ。

 

「ありがとうソータくん!じゃあおねーちゃんまたあとで~!」

 

バタバタと日菜が走ってレジに向かった

 

「・・・出会って数分でもう下の名前呼びなんだ。」

 

「すみません・・・妹がご迷惑をかけて。」

 

「いえいえ・・・気にしないでください。僕がこういうの慣れていないだけんで。」

 

「そうなんですか。失礼ですが人付き合いは苦手なんですか?」

 

「はい・・・そこまで得意ではないです。」

 

「私はそう思えませんが・・・あぁ、もうこんな時間ですか、私はこれで失礼します。」

 

「はい。それではまた明日。」

 

こうして氷川姉妹と別れ、僕は具材を買って家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・はずだったのだが。

 

「・・・ここ、どこだ?」

 

実は僕はかなりの方向音痴なところがある。

 

普段の生活ではこんなことは起こらないのだが、たまにこんな感じに道に迷う時がある。

 

幸い、買ってきた食品はすべて常温でも大丈夫なものだったので急いで帰らないといけないという訳では無いが時間も遅くなってきたので早く帰りたい所なのだ。

 

しかしこの街に慣れていないせいかどの道をどう進めばいいのか分からず、少々焦り始めた頃だった。

 

「あの・・・どうか・・・されたんですか?」

 

後ろを向くと黒髪でロングの女の子がいた。

 

「あっ・・・えっと・・・その・・・道に・・・」

 

「あっ・・・はい・・・その」

 

「りんりーんどうしたのー?」

 

黒髪の子の後ろから紫髪の恐らく中学生辺りであろう女の子が出てきた。

 

「あこちゃん・・・その・・・この人が・・・道に迷った・・・みたいで・・・」

 

「なんだその人に声をかけに行ったんだ~。りんりんがいきなりどっか行っちゃうからびっくりしたよ・・・」

 

あこと呼ばれた女の子が胸をなで下ろした。

 

「だいたいこの辺って分かる?」

 

「確かコンビニとスーパーの近くのところだけど・・・」

 

「スーパーならこの道を真っ直ぐだけど・・・」

 

「えっ?」

どうやらいつの間にかスーパーの前の道まで戻ってきていたようだ。

 

「見つかって・・・良かったですね・・・」

 

「あっ・・・はい・・・」

 

僕は少々赤面しながらも2人の案内に従った。

 

 

 

 

 

 

あこと呼ばれた少女の案内もあってなんとか無事に家に着いた。

 

荷物を置き、キッチンに立って料理をした後親父の分を残し、僕は自室へ向かった。

 

パソコンか借りてきた本を読むかで少々考えたもののやはり借りてきた本を読もうと思い本を読み始めた。

 

本を読み始めるとしばらくは止まらなく、本を読み終えると時刻は11時半を過ぎていた。

 

1冊を読み終えもう1冊は明日読もうと手にとって直そうとした時その本から何かが落ちた。

 

どうやら本のしおりのようだ。

 

そのしおりには鍵盤の柄が描かれていてリボンが付いている。

 

少々傷んでは入るがその様子からそれがとても大切に使われていたことがわかる。

 

このしおりをどうするか少々悩んだがやはり貰うわけにもいかないので明日図書室で持ち主に返してもらえるよう渡しに行こうと決め、その日は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

しかしあの音色綺麗だったな・・・

 

眠りにつきながらもあの音色がいつまでたっても消えずにいた。




初日編はこれにて終了です(まだ三話しかしてない)。
次の章は燐子やほかのキャラとの交流を多くするのとRoselia結成編に入ります。


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1章 メブク アオバラ ト ネイロ ノ ショウタイ 2話 トツゼン ト ハッケン

今週中にはあと2、3話上げるつもりです。
ざっとした流れが掴めてから週一ペースでやる(かも)。
さてRoselia結成編ですが今回の話はRoseliaの1章を見直してどこに主人公を入れ込むかなど色々試行錯誤してました。Roselia結成編のメインの山になると思います。


次の朝、僕は目覚まし時計の音で目が覚めた。

 

時刻は6時半、いつも通りだ。

 

起きた後は、いつも着替えずに朝食や弁当の準備をしている。

 

親父は昨日夜遅くに帰ってきていたため、まだ寝ているはずだ。

 

いつも出勤時間は9時半なのでまだ寝かせていて大丈夫だろう。

 

いつも通り、僕は準備に取り掛かった。

 

朝食と弁当を作り終え、親父を起こした後僕は早めに学校へ行くことにした。

 

氷川さんから教室の位置などは教わったが、まだいまいち覚えきれてない所もあるため早めに出て覚えようと思ったのだ。

 

うちの学校はいつも7時には校門が開くので早めに着いてもおそらく大丈夫だろう。

 

そう思って僕は朝食を食べ終え、すぐに準備して学校へ向かった。

 

 

 

午前7時40分過ぎに学校に着いた僕は荷物を置かずに学校の中を見回った。

 

朝も早いせいか人も少なく、部活の朝練をしている生徒や生徒会や委員会の生徒、教師ぐらいしか人はいなかった。

 

曖昧だった所や覚えてなかったところを覚えつつ、8時頃に自分の教室へ向かった。

 

教室の中には数人の女子生徒が授業の準備をしたり話し合ったりしていた。

 

その中にはこの前の黒髪の子がいた。

 

「えっと・・・君は昨日の?」

 

「あっ・・・その・・・はい・・・。」

 

「えっと、昨日はどうも。ええっと・・・」

 

「まだ・・・名前・・・言ってなかった・・・ですね。私・・・白金・・・燐子といい・・・ます。」

 

「あっ・・・九条奏多です。昨日はありがとうございます、白金さん。」

 

「いえ・・・昨日・・・帰っている時に・・・オロオロしている人がいて・・・多分・・・新しく・・・入った人じゃないかと思って・・・。」

 

「うん・・・本当に感謝しているよ。あのあこっていう子にもお礼を言わないと・・・」

 

「あこちゃんには・・・私から・・・言っておきます。」

 

「あぁ・・・うん、ありがとうございます。」

 

・・・会話が弾まない。

 

僕もそうだが彼女もかなり人と話すのが苦手なんだろう。白金さんの手元を見ると本があった。

 

「本・・・好きなんですか?」

 

「あの・・・えっと・・・はい。私・・・本ばかり読んでいるので・・・。」

 

「うん・・・本は読み始めると集中してしまいますよね。」

 

「はい・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

・・・まさかここまで弾まないとは。

 

どうしようかと呆然としているうちに氷川さんが教室に入ってきた。

 

「あぁ、九条さん、白金さん、おはようございます。」

 

「あの・・・おはよう・・・ございます。」

 

「えっと・・・おはようございます。」

 

僕は氷川さんが大きなケースを持っていることに気がついた。

 

「氷川さん、その大きな黒いケースは一体?」

 

「これですか?ギターです。今日、バンドの練習があるんですよ。昨日の予定もバンドの練習に行っていました。」

 

(氷川さんがバンドを!?)

 

僕はこの事実に衝撃を受けた。

 

まだ会って日にちは少ないが、いつも風紀委員の仕事や勉強などに集中して取り組んでいて他のことにはあまり興味を持たなさそうなイメージを持っていた僕にはとても意外に思えた。

 

「そんなに驚くことですか?」

 

「いえ・・・ちょっとイメージに無くて・・・。その」

 

キーンコーンカーンコーン

 

言い終わる前にチャイムが鳴った。

 

「チャイムも鳴ったので席に戻りましょうか。HRも始まりますし。」

 

「あっ・・・はい。」

 

最後まで言い切れず、もどかしい気持ちを抑えながらも僕は席についた。

 

氷川さんのバンドの話も気になるが今日は本のしおりの持ち主を探してもらう予定なので気持ちを切り替えて授業を受け始めた。

 

 

 

 

放課後

 

(授業も終わって終礼も終わったし、図書室へ向かいますか・・・)

 

そう思いつつ足を運ばせると携帯に通知が来た。

 

どうやら親父かららしい。

 

「親父から?こんな時間に?」

 

内容は『急だが話がある。とっとと帰ってこい。』というものだった。

 

いつもは仕事で忙しいはずの親父が今家にいるということに驚きつつ、僕は図書室に向かうのをやめ、家に帰った。

 

 

 

家に着くとそこには親父がかなり難しい顔をして座っていた。

 

「親父、仕事どうしたのさ。んでもって話ってなんだよ。」

 

「奏多・・・落ち着いて聞いてくれ・・・」

 

親父が静がながらもはっきりとした声で話し始めた。

 

「実は出張で1年ほど大阪へ向かうことになった。」

 

「えっ!?また転勤?」

 

「俺が引き受けたプロジェクトでどうしても大阪で働かなければならなくなった。規模が大きいプロジェクトだからどうしても断れなかった。」

 

「そんでいつ行くのさ。僕も準備しないといけな・・・「そこで話がある」・・・え?」

 

僕が喋り切る前に親父が話を持ち出した。

 

「お前も高校生だ。もうあらかた家事はできるよな。」

「・・・まぁそうだけど。」

 

「ならお前、一人で暮らせる自信はあるか?」

 

「えっ?ちょっと?突然そんな事言われても・・・。それに金はどうするのさ?あっちの滞在費とかめちゃくちゃかかるだろ?」

 

「金は仕送りも送る。しかも大阪には俺の実家があるからそこで何とかするつもりだ。俺の親にも話はつけてある。後はお前がどうするかだ。」

 

「・・・。」

 

何とも言えなかった。

 

突然こんな事言われて戸惑わない方がおかしいし、一人で何とかする自信もない。

 

しかし、新しい学校で話してきた人たちに会えなくなるし、あの音色の正体もわからずじまいになってしまう。

 

 

 

 

 

 

それだけは困る。

 

 

 

 

 

あの音色は、自分の心に響くものだったから。

 

 

 

 

 

 

「・・・わかった。やるよ。」

 

「そうか。無理させて悪いな。」

 

「そんでいつからなの?」

 

「明日からだ。」

 

「明日!?もし僕が一緒に行くって言ってたらどうするつもりだったのさ!?」

 

「お前なら了承してくれるって信じていたからな。」

 

はぁ・・・と僕は大きなため息をついた。

 

「んで、行くことはわかったけど大丈夫なのか?最近親父夜遅くまで仕事してただろ?体壊すんじゃねぇか?」

「俺を誰だと思ってる。このくらい大丈夫だ。俺は出発の準備に取り掛かるから先飯作っといてくれ。」

 

そう言って親父は居間を離れ、自室で準備を始めた。

 

親父の唐突な出張に驚きつつも僕は夕飯の支度を始めた。

 

 

 

・・・しかし何か忘れているような気がする。

 

音色のことではなく今日なにかする予定だったような。




Roselia結成編の最初はどうだったでしょうか?
まだRoseliaのロの字も出てないですが次の話辺りで『鳥籠の歌姫』を出す予定なので!
今週中にあと2話ぐらい出せたらいいな~


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3話 トリカゴ ノ ウタヒメ(前編)

お待ちかねのメインボーカル様の登場です。
しかも投稿日は10月!友希那さんと燐子の誕生月じゃん!(しかも押し2人の誕生日の中間あたりに作者誕生日という奇跡)

こんな雑談はほっといて本編始まります。


突然の親父出張問題から日が変わり、朝起きると親父はもう出発していた。

 

だが不思議と孤独感には見舞われなかった。

 

(いや、昔から自分は孤独で無色だったじゃないか。)

 

そう自嘲気味に受け流しながらも僕は一人で朝食の準備に取り掛かった。

 

今日は土曜日。

 

学校も休みで部活も部費を払う余裕もないので入っていない。

 

だから今日はのんびりとできる日だ。

 

窓の外を見ると、空は澄み渡るほどの青色。

 

外の眩しさに目をすぼめつつも、僕は今日することを考えた。いつも通りにネトゲで1日を潰そうかと考えたが流石にそれだけでは味気ない。

 

すると僕はふと、この前道に迷ったことを思い出した。

 

街に慣れていないならこういう日こそ街に出て覚えるべきなのではないか。

 

「・・・よし。外に出る準備をするか。」

 

朝食を食べ終え、外に出る支度をした。

 

まだ四月なので外は暑くもなく寒くもない。

 

薄い上着を羽織っていくべきか悩んだがあまり長く出る予定ではないので長袖のシャツと少し厚めのズボンで出ることにした。

 

しかし、いざ出発しようと思ったもののどこから回るべきかを決めていなかった。

 

大体家の近く辺りから覚えようと思ってもいざ考えると迷うものだ。

 

「・・・こんな時こそゴーグル先生だな。」

 

困った時のみんなの味方ゴーグル先生に頼ることにしてこの周辺で良さそうな所を検索した。

 

すると20分ほどの距離に商店街があることがわかり、まずはそこに行こうと思い商店街を目指した。

 

 

 

所々道を間違えながらもなんとか商店街に到着した。

 

商店街は思っていたより広く、休日とあってかかなり繁盛していた。

 

商店街の中心辺りにはピンク色のくまの着ぐるみが風船を配っていた。

 

この商店街のマスコットなのかと思いつつ、まずは近くの店に立ち寄った。

 

そこは「山吹ベーカリー」というパン屋で店の中には焼きたてであろう、いろいろな種類のパンが並んでいた。

 

どれも美味しそうだったが所持金もあまり多くはないので適当にメロンパンとチョココロネを選択してレジに持っていく。

 

そこには自分と同じぐらいか1個下ぐらいの女子が立っていた。名前を見るにこの店の子なのだろう。

 

その子にこの商店街でオススメの店を聞くと手前の精肉屋のコロッケが美味しいのとその隣のカフェがオススメだと聞いた。

 

どちらとも寄っても良かったが、全ての店を回ると流石に予算オーバーなので今回はカフェだけ寄ることにした。

 

支払いを済ませその女子に礼を言って僕はそのオススメの店の「羽沢珈琲店」という店を目指した。

 

 

 

 

 

中に入ると昼過ぎなのか人が少なく、すぐ案内された。

 

店にはバイトの子であろう茶髪と銀髪の2人と水色の髪でまとめてある子と金髪でロングヘアの子の2人組がいた。席に着くと茶髪の子がオーダーを渡しに来た。

 

「いらっしゃいませ。ご注文はどうされますか?」

 

「それじゃあコーヒーとクッキーのセットをお願いします。」

 

「かしこまりました。少々お待ちください。」

 

注文を取るとすぐにコーヒーのいい匂いがしてきた。

 

そして数分後コーヒーとクッキーのセットが運ばれてきた。

 

「お待たせしました。コーヒーとクッキーのセットです。」

 

「ありがとうございます。」

 

持ってきてくれた子に礼を言って僕はコーヒーに口を付けた。

 

「・・・美味しい!」

 

「ありがとうございます!それ、うちのオリジナルブレンドなんですよ!」

 

道理でほかの店とは違う味がした。

 

苦味もありながらもコーヒーの旨みがとてもわかりやすく出ていて香りもとても良い。

 

確かにこれは勧められて満足しないわけがない。

 

コーヒーとクッキーを堪能したあと僕はその茶髪の子に声をかけた。

 

「あの、この周辺でおすすめな所ってありますか?僕この街に来て日が浅いので・・・」

 

「そうですね・・・イヴちゃんなんか思いつく?」

 

茶髪の子は考えながら近くにいたもう1人の銀髪のバイトの子に話しかけた。

 

「そうですね・・・ジンジャなんてどうでしょうか?」

 

「なるほど!あそこなら景色もいいしね!」

 

「あの・・・その神社ってどこにありますか?」

 

「大体この商店街を出て5分ぐらいです。鳥居と階段でわかると思いますよ。」

 

「それじゃあ行ってみようと思います。2人ともありがとうございます。」

 

「いえいえ、気をつけて行ってきてください!」

 

「困っている人を助けるのもブシの務めですから!」

 

「う、うん・・・そうだね。」

 

イヴという子のブシ発言に少々驚きながらもコーヒーのお金を払い、僕は2人に礼をしつつその神社に向かった。

 

 

 

神社には着いたのだがその階段はとてつもない長さだった。

 

僕は運動が得意な方ではないので上りきった頃には息が上がっていた。

 

しかし後ろを向くとそこには街が一望できた。

 

「・・・凄い。」

 

この言葉しか出てこなかった。

 

神社から見える景色はとても言葉で表すことが出来ないほどの壮大さだった。

 

昼はこうだから夕方や夜は違う顔を見せるのかと想像を膨らませつつ神社に参拝して僕はそろそろ帰ろうかと思い始めた。

 

あの長い階段を降りつつも僕はきっとあの景色は忘れないだろうと思った。

 

 

 

 

 

しかし、帰る途中僕は道に迷った。

 

同じ道を帰れば良かったのにあえて違うルートで帰ろうとしたのが間違いだった。

 

今更後悔しても遅いと思いつつ道を探した。

 

しかも不幸なことに携帯は古い型のせいかバッテリーの消費が激しくほとんど無い。

 

緊急用で残さないといけないため今は電源を切ってカバンの中にある。

 

そのため一人で何とかしなければならない。

 

あっちこっち道を聞けるところを探しつつ、僕はあるライブハウスにたどり着いた。

 

そのライブハウスは「CIRCLE」と言うらしく、ちょうど今色々なバンドがライブをしているそうだ。

 

道に迷って疲れたのもあり、僕はそのライブハウスで休息がてらライブを見ることにした。

 

 

 

 

 

まさかこんな偶然が起こるとは思わなかった。

 

僕がライブ会場に入るとちょうど前のバンドが終わって交代のタイミングだった。

 

しかも入ってきた3人組の1人はなんと氷川さんだった。

 

(確かにバンド活動しているとは言ってたけどまさかこんな所で会うとは思わなかった。ちょうどいいし見てみよう。)

 

そう思って僕は人混みから少し離れた所で氷川さんのライブを見ていた。

 

そして氷川さん達のライブが始まった。

 

メンバーはおそらく全員高校生なのだろう。

 

その年代の子が歌いそうな曲を歌っていた。

 

しかも氷川さんのギターはものすごく迫力と正確さがあり、とても素晴らしかった。

 

しかし、僕はその演奏に少し違和感を覚えた。

 

おそらく氷川さんのギターの演奏とメンバーの演奏がうまく釣り合ってないのだろう。

 

ギターばかりが目立ってしまい他のメンバーが置いていかれている感じがした。

 

そう思っているうちに氷川さんの演奏が終わり、僕は氷川さんに声をかけに行こうと席を後にした。

 

 

 

 

 

僕が氷川さんを見つけ話し掛けようと近づこうとすると何やらバンドメンバーと揉めているようだった。

 

僕は3人の会話を聞くことにした。

 

「あなたにはギター以外のことは頭にないの?私達は仲間なのよ!もっと他のメンバーに合わせてよ!」

 

「えぇ、私にはギターの事しかありません。第一、仲良くしたいのであればバンドなんかせずに高校生らしくカラオケやファミレスで騒ぐだけで充分です。」

 

おそらくギターばかり目立って他のメンバーに合わせなかったことで口論に発展したのだろう。

 

(しかし氷川さんかなり強い言い方するな。)

 

僕はそう思いつつ話を聞いていた。

 

「どうやら私達とあなたでは考えが違うようね。」

 

「そうですね、私は抜けますのでどうかあなた達でバンドを続けてください。今までありがとうございました。」

 

そう言って氷川さんと2人は別れていって氷川さんだけがその場に残った。

 

声をかけるのは今なのだろうと思い動こうとすると氷川さんの後ろから銀髪でロングヘアの子が話しかけていた。

 

どうやらバンドを組まないかとの誘いらしい。

 

声をかけた子は湊友希那というらしく次の次が出番だそうだ。

 

最初は否定していた氷川さんだったがどうやらその実力を確かめるらしくその子の演奏を見るために残るらしい。

 

2人とも別方向に去っていってしまったため氷川さんに話しかけるタイミングを逃した僕はその湊友希那という子の演奏が終わってから帰ろうかと思いライブ会場に戻った。

 

 

 

 

 

その頃ライブハウスの出入口にはとある2人が話し合っていた。

 

片方は湊さんの演奏を見ようと誘い、もう片方は人混みを嫌うので何とか帰ろうとしていた。




今回前編後編に分けた方が読みやすいかなと思い、分けました。
後編も本日中に出す予定なのでそちらも見てください!


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4話 トリカゴ ノ ウタヒメ(後編)

前編の続きです。
元々トリカゴ ノ ウタヒメは3話で全部書くつもりだったんですけど長々しいのは好きではないので分けることにしました。

それでは本編どうぞ!


僕が会場に戻るとちょうど湊さんの一つ前のバンドが始まったばかりだった。

 

そのバンドは人気があるのかファンが多く、熱気が凄いことになっていた。

 

服装が長袖と厚手のズボンのせいなのかいつも以上に暑くなり、ドリンクカウンターへ向かった。

 

 

 

 

 

ドリンクカウンターで適当に飲み物を買い、飲んでいると階段から見覚えのある2人が降りてきた。

 

「大丈夫だって!確かにりんりん人混み苦手なの知ってるけどあこが一緒にいるから安心してって!」

 

「あ・・・あこちゃん・・・その・・・引っ張らないで・・・私・・・やっぱり・・・」

 

「ドリンクカウンターの辺りなら人少ないから大丈夫だって!友希那を見た後すぐに帰るから!」

 

あれは白金さんとあこって言う子だ。

 

どうやら湊さんのライブを見に来たようだが白金さんはあまり乗り気ではないようだ。

 

するとあこがこちらに気づいた。

 

「あれ?この前の道に迷ってた人だ!ええっと確か名前・・・」

 

「この前の案内してくれた子ですね。僕は九条奏多って言います。この前はどうもありがとうございます。」

 

「私、宇田川あこ!この前のことは気にしないで!九条さんも友希那を見に来たんですか?」

 

「いや、道に迷ってたらたまたまこのライブハウスがあって休息ついでに見ているんです。」

 

「ええ・・・また迷ってたんですか?ねぇりんりんがこの前言ってたクラスメイトってこのひ・・・りっ、りんりん!?」

 

宇田川さんが白金さんに話し掛けようと振り向くとそこには顔が真っ青になって震えている白金さんがいた。

 

「わ・・・私・・・やっ・・・家・・・かえ・・・」

 

「し、白金さん!?大丈夫!?」

 

「りんりん!友希那を見るまで死んじゃダメぇ!」

 

「ちょっとあなた達少し静かに・・・九条さんと白金さん!?」

 

あまりの騒がしさに注意しに来た氷川さんがこちらに気付いた。

 

「ひ、氷川さん!その・・・すみません・・・」

 

「りんりん!大丈夫!?」

 

あこはすこし慌てすぎて周りの声が聞こえてないようだ。

 

「そこのあなた、少し落ちついて」

 

氷川さんが話切る前に湊さんの歌声が流れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは優しくも強く、深く、そして澄んだ歌声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

宇田川さんは慌てていたのが嘘のように止まり湊さんの歌を聴き入っている。

 

 

 

白金さんは震えていたのが止まり、落ち着きを取り戻している。

 

 

 

氷川さんは怒るのを忘れ、2人以上に湊さんの歌に感銘を受けているように思える。

 

 

 

そして僕はその澄んだ歌声に何も言えずにいた。

 

 

 

曲は「魂のルフラン」だろう。

 

昔からある曲だが今でも王道曲として歌われ続けている曲だ。

 

原曲も素晴らしいのだが湊さんが歌うと一層引き立って聴こえる。

 

湊さんの「魂のルフラン」が終わると盛大な拍手が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湊さんの出番が終わり僕と宇田川さんと白金さんはライブハウスの外の席で話していた。

 

「やっぱり友希那超超超カッコよかった!」

 

「うん・・・そうだね・・・」

 

「確かにあれはすごかった・・・」

 

「ねぇりんりん!ここで待ってたら友希那来てくれるかな?」

 

「ええっと・・・私・・・そろそろ・・・帰りたい・・・」

 

宇田川さんがここで待とうと提案している中、僕は白金さんに質問をした。

 

「ねぇ白金さん、なぜライブ会場に降りてきたとき真っ青になっていたんですか?」

 

「えっと・・・私・・・人混みが・・・大の苦手で・・・ああいう場所に行くと・・・怖くて・・・震えてしまうんです。」

 

「なるほど・・・」

 

「でも・・・あの人の・・・歌を・・・聴いていたら・・・不思議と・・・心が・・・落ち着いたんです。」

 

だから湊さんの歌の時はあれほど落ち着いていたのか。

続けて質問をしようとした時にライブハウスから湊さんと氷川さんが出てきた。

 

「あら?九条さんに白金さん、まだ帰っていなかったんですか?」

 

「紗夜、その人たちは?」

 

「クラスメイトです。たまたま一緒にいたんですよ。」

 

「そう、紗夜バンドを組むにあたって練習日時は」

 

氷川さんが湊さんの質問を返し話を続けようとするとあこが僕の前に出た。

 

「えっと・・・友希那・・・さん。バンド組むんですか?」

 

「えぇ、そうだけど。」

 

「わ、私!ずっと友希那さんのファンでした!だからえっと・・・友希那さんのバンドに入らせてもらえないですか?」

 

宇田川さんが思い切った質問をした。

 

これには僕も白金さんもとても驚いた。

 

「悪いけど遊びでやってるつもりは無いから。」

 

しかし湊さんは冷たく引き離した。

 

「えっ・・・うぅ・・・」

 

「紗夜、行くわよ。」

 

「え、ええ。」

 

宇田川さんは落ち込んだ様子だった。

 

その落ち込んだ様子を気にせず湊さんは氷川さんを連れてどこかへ行ってしまった。

 

僕は氷川さんと話をするため2人を追いかけた。

 

 

 

 

 

「氷川さん!」

 

「九条さん、どうしましたか?」

 

「あの・・・実は僕、氷川さんのライブから見ていたんですけど・・・」

 

「あぁ・・・今日はすみません、最後の方少しミスをしてしまいました。お見苦しいのを見せてしまいました。」

 

「えっ・・・その・・・」

 

そんなミス気がつかなかった。

 

確かに最後の方のテンポが少し早まったかなと思ったけど全然気にならないぐらいだった。

 

それをミスと言うならどこまで意識が高いのだろうか。

 

「紗夜、早く行くわよ。」

 

「それでは私は湊さんと打ち合わせなどをしに行くので。また学校でお会いしましょう。」

 

氷川さんはそう言うと湊さんの後を追いかけて行った。

 

 

 

 

 

ライブハウス前に戻るとそこにはまだ白金さんと宇田川さんがいた。

 

「九条さん、あの2人と何話してたんですか?」

 

「えっと・・・氷川さんと話をしようと思ったんですけど少ししか話せなくて・・・」

 

「そう・・・でしたか。」

 

「あこ、何回でもお願いしに行きます!入れてくれるまで絶対絶対あきらめないんだから!」

 

宇田川さんがとても燃えていた。

 

凄いやる気に気圧されつつも僕は2人と別れ、帰ろうとした。

 

「えっと・・・九条さん・・・道・・・わかるん・・・ですか?」

 

あっ・・・

 

 

 

 

 

 

また2人のお世話になりつつ、何とか家に着いた。

 

家を出たのが11時ほどだったはずなのだが帰ってきたのは7時前だった。

 

居間に着くとどっと疲れが押し寄せ、そのままソファーにダイブした。

 

夕飯を作る気力もなく僕はソファーにもたれながらも今日あったことを思い出した。

 

パン屋のパンが美味しかったこと、コーヒーが美味しかったこと、神社からの景色が素晴らしかったこと、そしてあの湊さんの歌声が素晴らしかったこと。

 

すると僕はあのピアノの音色を思い出した。

 

あの澄んで心に響く音色と湊さんの歌が合わされば素晴らしいものができるのではないか。

 

そんなことは不可能だとわかっているが、いつかそんな演奏が聴けたらいいなと思いつつ僕はそのまま眠りについた。




本当はプロット1枚しか書けてないのですがまさかプロット1枚で2話も書けるとは思ってなかったです(笑)
次回はあの人気2人を出す予定!(タグ注目)


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5話 ハタラク ムショク

連続投稿と模写練と部活で疲れてきてますがやる気で頑張ってます!
この調子だとRoselia結成まで何話かかることやら・・・
あとまだ結成編終わらないと燐子との進展は鬼のように遅いです。


僕は今人生最大の問題を抱えている。

 

それは何を隠そうお金の問題だ。

 

あのライブから4日ほど経ち、水曜日の今日、親父から仕送りが来たのだが食費や光熱費を計算するとお金が少々足りない。

 

おそらくあちらもあちらで忙しいためこれぐらいが精一杯なのだろう。

 

親父にお金を増やすようにいうことをできず、こうして僕はバイトせざるを得なくなった。

 

 

 

 

 

日は変わり土曜日

 

「・・・いらっしゃいませ。」

 

「ダメダメ!ソータはもっと大きい声出さないと!」

 

「いらっしゃっせ~」

 

「はいそこ!モカはしっかりと挨拶する!」

 

ということで僕は家の近くのコンビニで働くこととなったのだが、どうやら同じタイミングでバイトの申請があったらしくこうして2人とも先輩に指導を受けている。

 

先輩の名前は今井リサと言い、見た目は少々ギャルっぽいのだがとても優しく、何かあれば助けてくれる同い年なのにとても頼りがいのある人だ。

 

同じタイミングに入った子は青葉モカというらしく見たところかなりマイペースなようだ。

 

仕事はしているのはしているのだがたまにその仕事をこちらに回してくる時がある。

 

こいつやる気あるのかと思う時も度々あるが適当ながらも仕事はしっかりやっているのでこちらからは何も言えない。

 

青葉さんは一つ下の高校1年で、今井さんも青葉さんも羽丘というもう一つの高校に通っているらしく2人はとても仲がいいようだ。

 

そんな中バイトの休憩中に今井さんが話しかけてきた。

 

「ねぇねぇ、ソータってなんで同い年でも年下でも敬語なの?」

 

「えっ?」

 

「いやさ、私やモカに話しかける時でもずっと敬語使ってるじゃん?それ、なんでかなーって思って。」

 

あまりそんなこと考えてなかったため、いきなりの質問に僕はしどろもどろした。

 

「ゴメン、突然言って驚かせた?」

 

「い、いえ・・・その・・・僕、昔から人と話すのはあまり得意ではなくて・・・なんかその・・・体がこわばるっていうか・・・」

 

「なるほどねー」

 

今井さんは頷くと僕に提案してきた。

 

「それじゃあ慣れちゃえばいいじゃん?」

 

「え?」

 

「私とかならまだ話しやすいと思うし?私、自分で言うのもなんだけど結構面倒見はいい方だよ?」

 

突然の提案に僕はかなり驚いた。

 

「その・・・いきなりは・・・」

 

「とっとと慣れた方がいいって!それじゃあ今から私のことリサって呼んでみて!」

 

強引に話を持っていかれ、僕は焦りながらも答えた。

 

「えっ・・・あっ・・・その・・・リサ・・・さん?」

 

「もっと大きな声で!あとさん付けはなし!」

 

「はっ・・・はい!・・・リサ?」

 

「そうそう!そんな感じ!そのうち慣れたらいいよ!」

 

少々強引ながらも今日から今井さん「リサ」・・・リサと話す練習をさせられそうだ。

 

こればかりは避けられそうにない。

 

「・・・あの、さらっと地の文読むの辞めてもらえますか?」

 

「ナンノコトカナー?さっ!休憩も終わったし仕事仕事~」

 

リサにとぼけられ僕は少し変な気持ちを感じながら仕事に戻った。

 

 

 

 

 

リサのシフトが上がり、レジには青葉さんと僕の2人が立っていた。

 

僕はあと2時間ほどでシフトが上がるのだが・・・

 

「・・・暇だ。」

 

「ですね~」

 

客が入ってこない・・・

 

おそらく客足が少なくなる時間帯なのだろうかそれにしても少なすぎる。

 

すると青葉さんが話しかけてきた。

 

「そう言えば九条さんってなんでバイト始めたんですか~?」

 

「えっ?あぁ・・・僕は今一人暮らししているんですけど、仕送りのお金だけじゃ足りなくて・・・」

 

「そうなんですか~」

 

「青葉さんは?」

 

「私は~まぁ色々と~」

 

曖昧な返事をされも答えに困る・・・

 

「お小遣いのほとんどがパンに消えるんで~」

 

「・・・はい?」

 

「山吹ベーカリーのパンがすごく美味しくて~大体10個近く買うんですけどお金が足りなくなって~」

 

(・・・そりゃそうだろ。)

 

僕は純粋にそう思った。

 

「・・・確かにあそこのパンは美味しいですけど、さすがに買いすぎでは?」

 

「いやいや~これぐらいだと足りないですよ~正直10個ぐらいなら余裕ですよ~」

 

・・・彼女の胃は化け物か。

 

口では言えないので心の中でつっこむ。

 

「2人とも~今日はもう上がっていいぞ~」

 

店の奥から店長の声がした。

 

「おぉ~もう終わりですか~」

 

「そうですね。」

 

「一緒に帰ります~?」

 

「いや、僕は少し買い物をして帰るので先に上がってください。」

 

「分かりました~お先で~す」

 

そう言って青葉さんは颯爽と帰っていった。

 

やはり不思議な子だ。

 

そう思って店長にレジを打ってもらい買い物を済ませコンビニを出た。

 

 

 

 

 

コンビニを出ると前の道をしょんぼりとした顔をして歩いている宇田川さんを見つけた。

 

「・・・宇田川さん?」

 

「・・・あれ、九条さん?どうしてここに?」

 

「そこのコンビニでバイトしててちょうどシフトが上がったんです。宇田川さん、何かあったんですか?」

 

「ええっと・・・今日また友希那さんに断られちゃって・・・。」

 

「えっ・・・またってあの後何回か行ったんですか?」

 

「うん、ほぼ毎日。」

 

「ほぼ毎日ですか!?」

 

逆に迷惑がられて入れてくれないのではないか?

 

「あこ、入れてくれるまで諦めないって決めたから!」

 

熱い・・・宇田川さんが燃えている・・・

 

そういえばいつも一緒にいるイメージの白金さんが今日はいない。

 

「あれ?白金さんとは一緒じゃないの?」

 

「うん、さすがに毎日はりんりんに迷惑かけちゃうから。」

 

今思えば白金さんと宇田川さんの共通点が思いつかない。

 

白金さんと宇田川さんの学校は違うらしく行動や性格も似ていない。

 

「そういえば、白金さんとはどこで知り合ったんですか?」

 

「えっとNFOっていうネトゲの中で知り合って、そこからリアルで会って一緒に話してやるようになったんだ~」

 

「えっ宇田川さんNFOやっていたんですか?っていうか白金さんも?」

 

NFOとはネオ・ファンタジー・オンラインの略称で壮大なスケールのフィールドと音楽、そして少しハードなゲーム性が人気のゲームだ。

 

僕も去年からやっており、今では少し名の知れたプレイヤーとして楽しんでいる。

 

宇田川さんがNFOをやるのは想像がつくがあの白金さんがやるのは想像つかなかった。

 

「うん!りんりんはめちゃくちゃ強くていっつもあこを助けてくれるんだ!もしかして九条さんもやってるの?」

 

「えぇ・・・去年からですけど。」

 

「だったら今晩、ゲーム内で会わない?今日りんりんとクエスト行く予定だったけどそのクエスト3人以上じゃないと参加出来なくて。」

 

「別に構いませんよ。今晩は予定もないですし。」

 

「やったぁ!なら始まりの村のショップ前で集合で!」

 

「わかりました。僕のアバターは白色の装備で背中に少し小ぶりの片手剣を背負ってるのでわかりやすいと思います。」

 

「わかった~あこは死霊魔術師でりんりんが魔法使いだから見た目も少し派手だしわかりやすいと思うよ!」

 

「それでは後ほど7時頃に、よろしくお願いします。」

 

「うん!よろしく!」

 

ここで宇田川さんと別れ僕は自宅へ帰った。

 

 

 

自宅について、コンビニで買ったものを軽く食べながら僕は時計を見た。

 

時刻は六時前、まだ集合時間に余裕がある。

 

しかし最近プレイしてなかったので操作になれるべく僕は早めにログインすることにした。

 

自室に戻り、去年の誕生日にもらった大きめのパソコンの前に座り僕はNFOを起動させてログインした。

 

2人のプレイングにドキドキしつつ僕は自身のアバターの「カナタ」を思うがままに操作していた。




バイト編のタイトルは某細胞擬人化マンガをベースにしてます(笑)
あとムショクは「無職」じゃなくて「無色」の方だから!
次回はNFO編!そこをどうするかが一番の問題なのだけど
・・・いつになったら五人集まるのだろ?←自分でこう編集してんだろ


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6話 ツルギ ト マホウ ノ コンチェルト

NFO編です!まだガルパの方じゃ描写が少ないので結構苦労しました・・・。
武器名までは考えたんですけど技名やスペルは流石に厳しかった・・・

それでは本編どうぞ!


時刻は6時40分になり、僕のアバター「カナタ」は約束の始まりの村のショップを目指し出発した。

 

僕が今いるエリアから始まりの村へは街から街へのワープを使っても5分はかかる。

 

そのため僕は、時間に余裕はあるが少し急ぎ目に始まりの村を目指した。

 

 

 

 

 

始まりの村に到着し、僕はショップを目指した。

 

その途中、僕は大事なことを思い出した。

 

(あれ・・・そういえば2人のプレイヤーネーム聞いてない!)

 

ネトゲは自由度が高い分トラブルになるとかなりめんどくさいことになる。

 

そのためプレイヤーの間ではあまりリアルの話をしない事が暗黙のルールとなっている。

 

宇田川さんには僕のアバターの特徴を伝えてあるので2人が僕を見つけてくれるのを祈るしかない。

 

そう考えながら僕はショップに到着した。

 

 

 

 

 

待ち始めて5分後。

 

僕の前に死霊魔術師の女の子のアバターが歩いてきた。

 

「失礼ですが、もしかして九条さんですか?」

 

「はい。宇田川さんですよね?」

 

「はい!えっとこっちの世界じゃあ聖堕天使あこ姫って名前だから!」

 

「わかりました。僕はこっちの世界ではカナタって名前でやってます。そういえば白金さんは?」

 

「りんりんならもう少しで来るはずだけど、あっ!いた!おーいりんりーん!」

 

宇田川さんのアバターが手を振った。

 

すると煌びやかな服装の魔法使いがこちらに走ってきた。

 

「こっちの世界でははじめましてですね九条さん。私はこっちの世界ではRinRinって名前でジョブは魔法使いをしています。今日は協力してもらってありがとうございます!」

 

・・・あれ白金さんってこんなに喋ったっけ?

 

「ええ・・・よろしくお願いします。白金さんもNFOやっていたんですね。」

 

「はい。あこちゃんともこの世界で初めて会って、一緒にプレイしていうちに仲良くなったんです。今日はあこちゃんが前からやりたいって言っていたクエストなんで一緒に頑張りましょう!」

 

「はい!頑張りましょう!」

 

「2人ともー!早く行こーよー!」

 

2人のことはあこ姫さんとRinRinさんと呼ぶことにして僕達はクエストの発注場所に向かった。

 

 

 

今回のクエストは三人以上が最低条件のクエストで、森に住む三つ頭の大蛇を倒してその牙を持ってきて欲しいというクエストだった。

 

三つ頭の大蛇こと「イービルスネーク」は、三つの頭で噛みつきや毒攻撃を仕掛けてきてたまに装備を腐敗させるブレスを吐いてくる。

 

僕は昔、このクエストをやったことがあるがかなり難しいボスだ。

 

これをマルチでやるのでおそらく難易度も上がっているはずなので注意して戦わなければならなさそうだ。

 

戦い方を考えているとRinRinさんが話しかけてきた。

 

「もしかしてカナタさんはあの両手剣使いのカナタじゃないですか?」

 

「でもりんりん?カナタさん片手剣装備しているけど?」

 

「はい。メインは両手剣ですけど今は片手剣を鍛えようと思って片手剣を使っているんです。」

 

僕は昔、このゲームのイベントで大型のドラゴンをどれだけ早く倒せるかというランキングイベントに参加して見事2位に入った。

 

1位の人は全身真っ黒の革コートの二刀流使いで僕と0.5秒の差で優勝した。

 

この日から僕は「両手剣使いのカナタ」として少し有名になり、周りから色々と言われるのが面倒なので片手剣と胸部アーマーと篭手を付けている。

 

「でも今回かなり強いと思いますけど。慣れていない武装で大丈夫ですか?」

 

「ボスは1度違うクエストで戦ったことがあるので攻撃パターンはわかりますし、この片手剣もメインの両手剣と同じぐらい強いので後は連携次第でなんとかなると思います。」

 

「そうだよ!あこ達の連携ならどんなボスでも倒せるよ!」

 

こんな感じで雑談しているうちにボスのエリアに到着した。

 

やはり前に戦った時より体力が多い。

 

2人には道中攻撃パターンを教えてあるのでどうにかなるだろう。

 

僕は片手剣「ガルムソード」を構え、イービルスネークに立ち向かった。

 

 

 

 

 

戦闘開始から15分が経過した。

 

2人との連携があってか、イービルスネークの体力は残り10%程になっていた。

 

イービルスネークが怯み、後ろへ下がった。

 

「よーし!最後はあこの最強技で決める!」

 

そう言ってあこ姫さんが詠唱を始めた。

 

名前はわからないが詠唱の長さからおそらく特大魔法を使うようだ。

 

するとイービルスネークの頭があこ姫さんに向き、大きく息を吸うモーションを始めた。

 

(あれは・・・腐敗ブレスの動き!)

 

特大魔法の詠唱中はダメージを受けるか詠唱を止めないと動くことが出来ない。

 

あこ姫さんもモーションに気づき、詠唱を止め、回避行動をとろうとするが、

 

(あれでは・・・間に合わない!)

 

そう思った時には僕はアバターをあこ姫さんの前に出して防御行動をとっていた。

 

腐敗ブレスが吐かれ、体力は残ったものの、片手剣、篭手、胸部アーマーは腐敗状態になっていた。

 

腐敗状態の装備は付けているだけで耐久値が激しく減り始め、使い物にならなくなる異常状態だ。

 

装備を外せば耐久値の減りは止まり、鍛冶屋で修復できるのだがイービルスネークのターゲットは明らかこちらに向いている。

 

まずいと思ったその時RinRinさんがイービルスネークの一つの頭に火炎魔法を放った。

 

「タゲはこちらで引き受けるので、あこちゃんとカナタさんは回復を!」

 

「う、うん!カナタさん大丈夫?」

 

「はい・・・装備は予備がありますので。」

 

「ごめんなさい・・・あこが特大魔法を放とうとしたばっかりに・・・」

 

「いえ、気にしないでください。それとあの蛇の行動には少しイラッと来ました・・・」

 

「カナタさん!?」

 

「少し本気を出します!」

 

そう言って僕は腐敗した装備一色をストレージに直し白の革製のロングコートと両手剣「純銀剣クラレント」を装備し、ターゲットを集めているRinRinさんのところへ向かった。

 

RinRinさんのところへ向かうと流石に時間をかけすぎたのか体力は少なくなっていた。

 

「すみません、お待たせしました!とりあえず回復を!」

 

「りんりん!回復魔法かけるから少し下がって!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

回復をあこ姫さんに任せて僕は愛剣をイービルスネークに向けて振るっていた。

 

RinRinさんが回復した頃にはイービルスネークの体力は残り4%になっていた。

 

「あこがバインドをかけるんで2人でとどめさしちゃって!」

 

そう言ってあこ姫さんはバインド魔法を唱え、イービルスネークの動きを止めた。

 

「私がアシストするのでカナタさん頼みます!」

 

RinRinさんが高火力魔法でイービルスネークの体力を削る。

 

「これで止めです!」

 

僕は愛剣を弱点である真ん中の首の付け根に刺した。

 

するとイービルスネークは断末魔の叫びを上げてポリゴン状になって消滅した。

 

「いやったぁ!」

 

「ふぅ・・・」

 

「お疲れ様です。カナタさん、あこちゃん!」

 

僕達はピンチになりながらも何とかイービルスネークを討伐した。

 

 

 

 

 

イービルスネークを討伐し、依頼主に報告するための帰り道、行きと同じように話しながら向かっていた時だった。

 

「ねぇ・・・りんりんあれって!」

 

「どうしたのあこちゃん?」

 

「どうしました?え?あれは!」

 

そこには、滅多に出てこない黒い毛並みでモフモフの体と翼が特徴のレアモンスター「ファーリドラ」がいた。

 

ファーリドラは他のモンスターに比べてかなり弱いのだが滅多に出てこないうえに逃げ足がものすごく速い。

 

しかし、倒した時にドロップする「ファーリドラの毛皮」は最高レア防具の素材の一つで売却価格は頭一つ抜けている。

 

「よし・・・ここはあこが!」

 

「・・・待ってあこちゃん。あのファーリドラ、こっちに近づいてきてるけど?」

 

「えっ?嘘?」

 

ファーリドラは2人を無視してこちらの方に近づいてきた。

 

すると僕の画面に『ファーリドラが友好的な眼差しを向けている』と出てきた。

 

「これってもしかしてテイムチャンス!?」

 

テイムチャンスとはたまに敵モンスターが仲間になるチャンスの事だ。

 

主に猫や狼、コウモリなどの弱めのモンスターにテイムチャンスが起こりやすいのだがまさかこんなレアモンスターにまで出るとは思わなかった。

 

「ファーリドラのテイムチャンスなんて初めて見た・・・!」

 

「カナタさん!頑張ってください!」

 

「は、はい・・・」

 

テイムするにはそのモンスターの好物をあげる必要がある。

 

他のモンスターならわかるのだがなにせファーリドラに会うこと自体初めてで好物などは聞いたことがない。

 

「・・・迷ったら負けだ!これでどうですか?」

 

悩んだ末、僕が選んだのは始まりの村で買ったビスケットだった。

 

「・・・カナタさん。流石に人の手で作られた物は食べないんじゃあ。」

 

『ファーリドラが仲間になりました!』

 

「嘘ぉ!テイムできてる!」

 

「おめでとうございます!カナタさん!」

 

「嘘だろ・・・本当にテイムできてしまうとは・・・」

 

あげた僕が一番びっくりした。

 

「カナタさん。その子の名前どうするの?」

 

テイムできたらまず名前をつけなくてはいけない。

 

考えていなかったのでとても悩んでいるとRinRinさんが提案してきた。

 

「あの、その子の名前ルナってどうでしょうか?ここからだと月が綺麗でその子の顔が良く見えるんで。」

 

「うん!いい名前だと思うけどカナタさんはどう?」

 

「はい、良いですね!今日からこの子はルナです!」

 

新たにファーリドラのルナが仲間に加わり、依頼主に報告を済ませに行った。

 

 

 

 

 

「2人ともありがとう!このネックレスカッコイイから欲しかったんだ~」

 

「お役に立てて何よりです。」

 

「うん、良かったねあこちゃん。」

 

報告が終わり、クエスト報酬の大蛇の牙のネックレスを貰ってご満悦なあこ姫さんに2人は笑って返した。

 

「そうだ!カナタさん、あこ達とフレンドになろうよ!」

 

「僕は構いませんけどRinRinさんはどうですか?」

 

「はい、こちらからお願いします!」

 

2人とフレンド申請を交わし、僕は先にログアウトさせてもらった。

 

 

 

 

 

NFOをログアウトすると一気に疲れが押し寄せた。

 

イービルスネーク相手に苦戦したからだろう。

 

夕飯を食べる気力も残ってないためそのまま隣のベッドにダイブした。

 

(白金さん達との連携良かったな。ソロでやるより楽しいかも・・・)

 

そう考えながら、僕の意識は夢の中へ落ちていった。




今回出てきたファーリドラのルナの名付け親は僕の師匠にあたる人につけてもらいました。

けどまさかここまで長くなるとは思わなかった!
次回はやっと4人集まります!奏多はいつになったら燐子のピアノを聴けるのだろう!


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7話 ボロボロ ノ スコア ト バンド ノ キセキ

燐子を除く4人のメンバーの結成編です!
奏多をどう絡ませるか悩みましたがなんとかさまになったので感想とかバンバン言ってもらえると幸いです!

それでは本編どうぞ!


NFOの協力から3日後、あの日から白金さんと少しずつ話すようになってきた。

 

主にNFOの話以外あまり話題が無いのだがお互いのプレイやクエストの話でほとんど尽きることがない。

 

リサとの会話の練習の甲斐があってか最近は少しずつだが緊張せずに話せるようになってきている。

 

「そういえば・・・ルナの様子は・・・どうですか?」

 

「はい、攻撃時のサポートやデバフ解除とかかなり役立ってもらってます。

 

けどまだわからないこともたくさんあって・・・」

 

「ファーリドラをテイムした人は・・・まだ九条さんしか・・・いないと思いますし。」

 

すると携帯に通知が来た。差出人はリサのようだ。

 

「どう・・・したんです?」

 

「あぁ・・・バイトの先輩からの連絡です。えっと?『今日バイトの事で相談があるから悪いけど羽丘まで来てくれない?』ですか・・・」

 

「大変ですね・・・場所は・・・わかりますか?」

 

「はい・・・わからなけれは調べますので・・・」

 

大まかな場所しかわからないがとりあえず放課後に羽丘へ向かうことになった。

 

 

 

放課後、少し急ぎ目に花咲川を出て羽丘に着くと門の前で何やらざわついているようだ。

 

そこには湊さんと宇田川さんとリサがいた。

 

「リサ!どうしたんですか?」

 

「あっ!ソータ!」

 

「九条さん!なんでここに?」

 

「いや、今日リサにバイトの話で呼ばれて・・・」

 

「あなたは・・・この前の。」

 

「はい・・・九条奏多と言います。とりあえず何があったか話してもらえますか?」

 

リサの話によると、湊さんと話している時に今日も宇田川さんが入りたいと申請しに来て、湊さんから聞きリサが宇田川さんを試してあげればと提案している時に僕が来たようだ。

 

「とりあえず1回!1回だけ合わさせてください!それでダメだったらもう諦めるから!」

 

「とりあえず友希那、試させてあげれば?あこはやる時はしっかりやる子だよ!」

 

「・・・仕方がない、1回だけよ。」

 

「は、はい!」

 

どうやらまとまったようだ。

 

「友希那、アタシも見学していい?」

 

「別に構わないけど・・・」

 

「やった!」

 

「すみません、僕もいいですか?リサとはまだ話がありますし、おそらく第三者からの声もいるかと・・・」

 

「・・・それもそうね、けど今回だけだから。」

 

「ありがとうございます!」

 

湊さんから許可を貰い、僕達はCIRCLEに向かった。

 

 

 

CIRCLEでは氷川さんが先に準備していた。

 

「九条さん!?どうしてここに?それと湊さん、その人達は?」

 

「どうも、アタシは今井リサ。友希那の幼なじみで今回は見学に来ました!」

 

「う、宇田川あこですっ!今回はオーディションに来ました!」

 

「僕は元々リサに予定があったんですけど、このオーディションの第三者からの意見として見学させてもらえることになりました。」

 

「オーディション?」

 

「ごめんなさい紗夜。今回は私がテストの許可を出したの。」

 

「テストということは、それほど実力のある方なんですよね。」

 

「努力はしているらしいわ。勝手に練習時間を使ってごめんなさい。5分で終わらせるから。」

 

そう言って湊さん達は準備を始めた。

 

「出来ればベースもいるとリズム隊として総合的な評価が出来るのですが・・・」

 

「こればかりは仕方がないわ。このまま・・・」

 

「あ、あのさ!アタシが弾いちゃダメかな?」

 

「えっ?リサ姉ベーシストだったの?」

 

「昔ちょっとやってたんだよね。ちょっと待って!ベース借りてくるから。」

 

リサがベースをしていたとは思わなかった。

 

湊さんの会話によると一応譜面を一通り弾くことは出来るらしいが氷川さんは少々不満そうだった。

 

リサが戻ってきて、あこのテストが始まった。

 

 

 

 

 

曲が始まってすぐに違いがわかった。

 

曲はこの前、湊さんが歌った「魂のルフラン」なのだが、この前とは明らかに違う。

 

ボーカルはこの前より声の張りが良く、ギターの音はこの前より正確で強く、そして久々に弾いたらしいベースの音でさえ今でも活躍しているベーシストと同じぐらいかそれ以上に感じた。

 

それは演奏しているメンバーも驚いているようでドラムとベースが入るだけでこれまで素晴らしくなるのかと驚いた。

 

 

 

演奏が終わると僕達は不思議な感覚に襲われていた。

 

「あの・・・さっきからみんな黙ってるけど・・・あこ・・・バンドに入れないんですか?」

 

「そ・・・うだったわね。ごめんなさい。いいわ、合格よ。紗夜の意見は?」

 

「いえ。私も同意です。ただ・・・その・・・」

 

「いやったぁぁ!けど凄かったですよね!体が勝手に動いて!」

 

「もしやこれって・・・」

 

「おそらく・・・その場所、曲、楽器、機材、メンバー・・・技術やコンディションではないその時その瞬間でしか揃い得ない条件下でだけ奏でられる『音』・・・」

 

僕も雑誌で売れっ子バンドのインタビューの時にそんな感じの内容の記事を読んだことがある。

 

バンドの醍醐味とでも言うのだがミュージシャンの誰もが体験できる訳では無い。

 

「なんか・・・キセキみたいだね!」

 

「その言い方は肯定できないけど・・・でも、そうね。皆さん、貴重な経験をありがとうございます。後はベースとキーボードのメンバーさえいれば・・・」

 

「えっ?ベースならここにリサ姉がいるじゃん!」

 

「えっ?アタシ?」

 

「今井さんは今回のオーディションの為だけに弾いただけ。そうですよね?」

 

「でもメンバーがいないんですよね?これだけいい演奏出来たのになんでメンバーにしないの?」

 

「はい・・・僕もいいと思います・・・。それよりもリサ、本当に経験者なだけなんですか?さっきの演奏、まるで弾き慣れているように見えましたが?」

 

「いやぁ・・・なんか体が勝手に動いて・・・」

 

「確かに技術的にまだメンバーとは認められないけど。ただ、足りない所はあるけど確かに今のセッションはよかった。紗夜もそれは認めるでしょう?」

 

「それは・・・今の演奏に限ればそうですけど・・・。そういえば九条さん、さっきの演奏の感想を貰えますか?」

 

氷川さんが突然こっちに話を降ってきた。

 

「えっ?」

 

「あなたは今回の演奏の第三者からの声として見学したはずでは?」

 

「あっ・・・はい。全体的なバランスはとても良かったです。ただ、湊さんは後ろの演奏と歌声が少しズレていた所がありました。氷川さんは正確だったのはよかったのですがはじめの方少しタイミングがズレていたように感じました。宇田川さんは周りに合わせてはいるんですけど、少しずつ早まっていたと思います。今井さんはやはり久々とあってか少しミスもありました。そんなところだと思います。」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

4人が黙り込んだ。

 

「・・・あの、僕なにか悪いこと言いましたか?」

 

「い・・・いえ、その、あまりにも的確だったので・・・」

 

「えっと・・・九条さんだっけ?あなた本当に音楽の経験無いの?」

 

「えっ?はい、そうですが・・・」

 

「それにしてもソータ・・・的確すぎだよ・・・」

 

「うん・・・あこも気が付かなかった・・・」

 

まさか僕がそんなに的確に言えるとは思わなかった。

思ったことをそのまま言っただけなのでこんな反応をされて少し戸惑った。

 

「九条さん・・・いえ、奏多と呼ばせてもらうわ。あなた、これからもこのバンドの演奏を見に来てその都度、感想を貰えるかしら?」

 

驚きだった。

 

湊さんからこんな誘いを貰えるとは思わなかった。どうするべきか悩んだが、もしかしたらこのメンバーと一緒にいると自分の《色》を見つけられるかもしれない。

 

「・・・はい!やらせてもらいます!」

 

「えぇ、よろしく、奏多。」

 

「お願いします、九条さん。」

 

「この5人でバンドを組めるんだ!あこめちゃくちゃ嬉しい!」

 

「え?・・・マジで?アタシも・・・入っていいの?」

 

「練習次第よ。リサ。」

 

「・・・うん!頑張る!」

 

「後は・・・」

 

「キーボードだけですね。」

 

こうしてキーボードを除くメンバーが決まった。

 

 

 

しかし、キーボードが決まるのは容易ではなかった。




とりあえず奏多にはベタだけどアドバイスを言ったりマネージャー的な立場についてもらいました。リサとの会話は次回に持ち越しで・・・←おい!
次回はキーボードメンバー探しです!燐子にはちょっと頑張ってもらいます!


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8話 モノクロ ノ ワタシ(奏多side)

昨日はこちらの都合で更新出来ずにすみません!
本日は二話連続投稿とさせてもらいます(元々分ける予定だった)
こちらは奏多sideでの「モノクロ ノ ワタシ」でもう一つは燐子sideでの「モノクロ ノ ワタシ」となります。

それでは本編お楽しみください!


キーボード以外のメンバー+マネージャー的な立場の僕が揃い、次の練習日を決めその日は解散となった。

 

僕は本来の予定を思い出してリサの所へ行った。

 

「リサ、今日呼び出したのはどんな予定立ったんです?」

 

「あ〜忘れてた!ソータ、バイトの日にち変えることできる?」

 

「別に大丈夫ですけど何かあったんですか?」

 

「アタシ、今週のバイトの日にどうしても外せない用事があって・・・。モカはその日バイトだからお願いできるのソータしかいないんだ~」

 

「それなら仕方が無いですね、わかりました。」

 

「ありがと!今度なにか奢るよ!」

 

「別に大丈夫ですよ。今日はお互い疲れていますし僕はここで失礼します。」

 

僕はリサと別れ、自分の帰宅路へ着こうとした。

 

すると「九条さ~ん」と名前を呼ばれた。

 

呼ばれた方を向くとそこには宇田川さんがいた。

 

「宇田川さんまだ帰っていなかったんですか。」

 

「九条さんに用事があって!ねぇねぇ、今日この後、7時ぐらいにNFOにログイン出来る?りんりんにあことリサ姉と九条さんがバンドに入ったことを伝えようと思って!」

 

「いいですよ。場所はこの前のショップ前でいいですか?」

 

「うん、りんりんにはあこから言っておくから九条さんは先に待ってて!」

 

「わかりました、後で会いましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

帰宅すると僕はすぐに夕食の買い出しに出かけた。

 

宇田川さんとの集合時間まで後1時間近くしかないので、今のうちに軽くつまめるものや飲み物などを買いに行こうと考えたのだ。

 

とりあえずプレイしながら食べれるようにサンドイッチと緑茶、そして明日のお弁当の食材を買い込んで帰宅し、その二つを持ってパソコンの前に座りNFOを起動させた。

 

 

 

 

 

NFOを起動させるとカナタとファーリドラの「ルナ」がカナタの肩に乗っているような感じでスタートした。

 

ルナが喉を鳴らして顔を擦り寄せてくるので撫で返し、約束の場所へ向かった。

 

おそらくファーリドラをテイムしているプレイヤーは僕しかいないのでほかのプレイヤーの視線などを感じながらも何とか5分前に始まりの村のショップ前に到着した。

 

するとそこにはもう「聖堕天使あこ姫」こと宇田川さんが待っていた。

 

「遅いですよ!くじょ・・・カナタさん!」

 

「5分前なんでセーフです、セーフ。ところで白金さんは?」

 

「りんりんは少し遅れてくるって。」

 

「それでは気長に待ちましょうか。」

 

僕はルナを撫でながら宇田川さんとこれからのバンドの話やクエストの話をしながら待っていると、白金さんのアバターの「RinRin」が少し走ってこちらに来た。

 

それに気がついて僕はフレンドのみで会話出来るモードに変更した。

 

「す、すみません!遅れました!」

 

「いえ、大丈夫ですよ。」

 

「ところで話ってなに、あこちゃん?」

 

「うん!りんりん実はあこと九条さんとリサ姉が友希那さんのバンドに入れることになったんだよ!」

 

僕は今日あったことを白金さんに手短に話した。

 

「そんな事があって、あことリサ姉と九条さんも加入してもいいよって言われたんだよ!」

 

「僕は成り行きというか、たまたま自分にそんな才能があるとは思いませんでした。」

 

「そうだったんですか。オーディション合格おめでとう!あこちゃんの努力が認められたんだね。」

 

「うん!今日のことは一生忘れない!でも努力だけじゃないかも。」

 

「どういうこと?」

 

宇田川さんは白金さんに演奏中に体が勝手に動いて他のメンバーもいつも以上にうまく演れたことを説明した。

 

「そうなんだ。バンドって凄いね。」

 

「うん!やっぱりバンドって最高!みんなで演るのって、楽しすぎる!ずっと1人で練習してたから超感動した!」

 

「みんなと・・・」

 

「はい、あのオーディションの宇田川さんは楽しそうでした。」

 

「・・・そうですか」

 

白金さんの返事が遅れてきた。

 

「白金さん、大丈夫ですか?」

 

「すみません・・・すこし体調が良くなくて・・・今日はここでログアウトさせてもらいますね。」

 

そう言って白金さんはログアウトした。

 

「りんりん大丈夫かな・・・」

 

宇田川さんがとても心配そうにしていた。

 

「わかりませんが僕達は僕達で楽しみましょう。」

 

「・・・うん!それじゃあさっき言ってたクエストしようよ!」

 

宇田川さんの気分を切り替えさせて僕達はクエストに出発した。

 

2、3個のクエストをクリアした後僕は宇田川さんと別れ、ルナを撫でた後ログアウトした。

 

パソコンを離れて明日のお弁当の下準備をして次の日に備えて僕は早めに眠った。

 

 

 

 

 

 

次の日、白金さんは学校を休んだ。

 

おそらく昨日の体調不良が原因だろう。

 

白金さんの体調が良くなることを願いながら僕は授業の準備をした。

 

 

 

 

 

白金さんは数日学校を休み、今日は金曜日である。

 

「燐子ちゃん、今日も休みだったね・・・。」

 

「そうですね・・・体調がかなり悪いのでしょうか?」

 

放課後、隣の席の丸山さんと話しながら担任を待っていると担任がこちらに話しかけてきた。

 

「九条、お前白金の家を知っているか?」

 

「いえ・・・どうして僕に?」

 

「いや、白金とよく喋るから知っているのかと思ってな。このプリント、提出が月曜日までで誰か白金の家に届けてもらえないかと思ったのだが・・・」

 

すると僕は宇田川さんの事を思い出した。

 

彼女なら白金さんの家を知っているのかもしれない。

 

「あの・・・多分白金さんの家を知っている友人がいるのですが。」

 

「そうか!なら九条頼んだぞ。」

 

「え?あっ、その?」

 

担任に押し付けられその担任はどこかへ行ってしまった。

 

「・・・九条くん?大丈夫?」

 

「えぇ・・・多分。」

 

丸山さんに心配されながらも僕は宇田川さんに連絡を取った。

 

宇田川さんから返事はあったものの今日のバンド練習前にダンス部の練習があるらしく位置情報だけ送ってきた。

 

僕はそのマップを頼りに白金さんの家を目指した。

 

 

 

 

 

・・・到着した。

 

白金さんの家は少し大きい白色の家だった。

 

僕は前の学校の頃から他人の家とか行ったことがない。その上相手は女子の家だ、無駄に緊張する。

 

震える手を動かしてインターホンを鳴らすと玄関から白金さんが出てきた。

 

「九条・・・さん?どうしてここが?」

 

「宇田川さんに聞いたんですよ。これ、月曜日提出らしくて担任に渡してこいって言われたんですよ。」

 

僕は苦笑しながら白金さんにプリントを手渡した。

 

「その・・・ありがとう・・・ございます。」

 

「いえ、では僕は今からバンドの練習があるので。お大事にしてください。」

 

僕は白金さんにそう言ってからCIRCLEに向かった。

 

 

 

 

 

CIRCLEでは氷川さんがもう準備をしていた。

 

それを手伝っていると残りの3人が到着し、練習を始めた。

 

僕は動画を撮って再生しながら悪い点をあげて良い点などを伝えた。

 

その後、湊さんにグループの方にその動画を送って欲しいと言われ、グループに送って今日の練習は終了した。

 

今日白金さんの様子を見たが顔色も良さそうなので月曜日には来られると思う。

 

そう思いながら僕は1人自宅へ向かった。




モノクロ ノ ワタシ奏多sideと燐子sideは少し短めです。
初めてのside切り替えなんでこれぐらいで勘弁してください・・・。
問題はあげた時間が11時20分だから1日2話投稿キツそう!


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8話 モノクロ ノ ワタシ(燐子side)

二話連続投稿の2話目!
こちらは燐子sideになっています
9話じゃないよ。まだ8話だよ。

それでは本編どうぞ!


体がだるい・・・。

 

九条さんと話してその後、図書室によって本を借りて少し探し物をした後の帰り道。

 

私は体の不調を感じていた。

 

何とか家に着いて熱を測ると少し熱を出していた。

 

私は体が弱い方なのでたまにこうして風邪をひいてしまう。その時に携帯に通知が来た。

 

差出人はあこちゃんからだ。

 

内容は今日NFOで話したいことがあるから来てくれとのことだった。

 

携帯のチャットで話せばいいのにわざわざNFOで話したいということはなにかあるのだろう。

 

パソコンの前に座り、私はNFOを起動させた。

 

 

 

 

 

始まりの村のショップ前に行くとあこちゃんの他に九条さんのアバターのカナタと使い魔ルナの姿があった。

 

九条さんがこちらに気がついて、フレンドのみの会話のモードにしてくれた。

 

内容は2人が友希那さんのバンドグループに入れることになったことだった。

 

あこちゃんの部活の先輩の今井さんも入れたらしく、後はキーボードだけとのことだった。

 

2人と話していると徐々にしんどくなってきたので先にログアウトさせてもらった。

 

 

 

 

 

パソコンの前から立つと私は部屋の中にあるグランドピアノに触れた。

 

 

 

 

 

 

ピアノ

 

 

 

 

 

 

 

1人で頑張ってきて昔はある発表会で賞もとったことがある。

 

昔は確かに楽しかった。

 

今でもたまに弾いて楽しいと思うのだが、昔の『楽しい』と今の『楽しい』は全く違う。

 

昔は頑張って練習し、それが色々な人に認めてもらえるのが嬉しかった。

しかし歳を重ねるにつれて周りの人の目線や人の数が怖くなってきた。

 

昔は少しまともに話せたのだが今では人と話すことが苦手になっている。

 

一時期はビクビクしすぎて喋れないということもあった。

 

そんな中、1人でも楽しめるNFOであこちゃんと出会い、一緒にやっていくうちに色々とかわっていったのだが、根本的な所は変わらなかった。

 

九条さんと出会って彼も話すのは苦手なのだそうだがここ最近、それを克服しようとしている。

 

しかし、私はどうだろうか。

 

そこまで努力して苦手を克服しようとしただろうか。

 

そんな深いことを考えていても体はだるさを訴えかけている。

 

私は考えるのを辞めてベッドの中へ入り眠りについた。

 

 

 

 

 

次の日、私は学校を休んだ。

 

熱が昨日より悪化し、今日は休むことにした。

 

体は昨日より悲鳴をあげているため一応病院に行くと診察結果は風邪だと言われた。

 

そのため私はしばらく学校を休むことにした。

 

 

 

 

 

 

学校を休んで数日後、体のだるさは消えないが熱も下がりだいぶ楽になった。

 

今、家には誰もいないため何をしようか考えているとインターホンが鳴った。

 

恐る恐る出てみるとそこには九条さんがいた。

 

「九条・・・さん?どうしてここが?」

 

「宇田川さんに聞いたんですよ。これ、月曜日提出らしくて担任に渡してこいって言われたんですよ。」

 

彼は苦笑しながら私にプリントを手渡した。

 

「その・・・ありがとう・・・ございます。」

 

「いえ、では僕は今からバンドの練習があるので。お大事にしてください。」

 

そう言って九条さんはこの前あこちゃん達といたライブハウスの方向に走っていった。

 

やはりバンド活動は忙しいのだろうか。

 

彼はマネージャー的な立場になったとは言っていたがマネージメントはかなり大変だったはず。

 

「九条さん・・・ありがとうございます。」

 

聞こえないだろうがお礼を言って私はプリントに目を通して記入を始めた。

 

 

 

 

 

その日の夜体の調子もかなり良くなり、いつも通りあこちゃんとチャットで会話していた。

 

「ちょっとは怒られたりするけど、みとめられるようにはなってきたんだ!」

 

「バンドとして息が合ってきたんだね。あこちゃんのドラムもどんどん上手くなってきてるんじゃないかな?」

「こんなこと造作もないことよ!」

 

ここ最近のあこちゃんはバンドの話一色で本当に楽しそうだ。

 

「では特別に、我が同胞、りんりんにだけ演奏中のバンドを見せてしんぜよう!」

 

するとあこちゃんから動画が送られてきた。

 

中身は友希那さん達の演奏でとても楽しそうに演奏しているあこちゃんの姿もあった。

 

そしてこの前見た友希那さんの演奏の時よりとても素晴らしくなっていた。

 

「ありがとう。すごいね!全員でひとつの音楽を作り上げてる。みんなでって、こういう事なんだね!」

 

「・・・」

 

「・・・あこちゃん?」

 

あこちゃんからの返事が来ない。

 

あこちゃんが自分からチャット落ちるなんて初めてだ。

 

おそらく今日の練習で疲れたのだろう。

 

私はあこちゃんから送られてきた動画を見直した。

 

この動画を見ると身体が引き寄せられる気がするのだ。

 

「例えば・・・もし・・・仮にだけど私のピアノをあこちゃんのように合わせてみると・・・どうなるんだろう・・・?」

 

私はグランドピアノの前に座り、あこちゃんから送られてきた動画に合わせて弾いてみた。

 

 

 

 

 

するとまるでずっと前からこうしてきたようにピアノの音が合わさっていく。

 

(凄く・・・楽しい・・・!)

 

この感覚は今までの『楽しい』とは違う。

 

この感覚は昔の頃の『楽しい』の感覚。

 

自分がまたこの感覚に戻れたことに驚いていた。

 

 

 

 

 

ピアノを弾き終わり、私は寝る前に本を読み始めた。

 

寝る前に本を読むのが私の日課だ。

 

本にはピアノの鍵盤の柄のリボンがついたしおりが挟んであった。

 

これは予備で前から使っていたしおりは前借りた本に挟んだままのようだった。

 

そのため落としたり本に挟まっていないか探しているのだがまだ見つかっていない。

 

(あのしおり・・・どこ・・・行っちゃったんだろう?)

 

そう疑問に思いながら私は本を読み続けた。




8話「モノクロ ノ ワタシ」はこれで終わりです。
結局間に合わなかった・・・。

9話はしっかりと今晩仕上げるのでお楽しみに!


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9話 ツナガル シオリ ワタシ ノ キモチ

Roselia結成編はあと2話続きます。
ちょっとは奏多と燐子を引き合わせれたらいいのだけど・・・
それと、最後に少しだけお知らせがあるのでそちらも見てもらえると嬉しいです。

それでは本編どうぞお楽しみください!


今になって大切なことを思い出した。

 

何を隠そうあのしおりのことだ。

 

確か親父が出張する前日に探しに行く予定だったのだがあの時のドタバタで忘れてしまっていたようだ。

 

うちの学校の本の貸出期間は3週間でそろそろ返しに行こうかと考えた矢先のこれである。

 

自分のうっかりに呆れながらも僕は支度を終わらせ学校へ向かった。

 

 

 

 

 

学校へ着くとそこには白金さんの姿があった。

 

「白金さん、おはようございます。体はもういいんですか?」

 

「九条さん・・・はい・・・おはよう・・・ございます・・・おかげさまで・・・良くなりました・・・」

 

白金さんは笑顔で返してくれた。

 

彼女は本を読んでいる最中だった。

 

「白金さん、なんの本を読んでいるんですか?」

 

「これは・・・夕暮陰炎さんの・・・『病ンデル彼女ノ陰』・・・です。」

 

確か最近図書室に入った本で、軽く読んでは見たが確か主人公が金髪の彼女に付きまとわれ、彼の友人の女の子や気になる子を次々と殺めていく話だったはず・・・

 

「そ、それ面白いんですか?」

 

「はい・・・確かに・・・怖い所もありますけど・・・内容自体はしっかりしていて面白いです・・・今日返す予定なんです。」

 

「それなら僕も本を返しに行く予定なので今日の放課後一緒に行きませんか?」

 

「いい・・・ですね・・・放課後・・・宜しく・・・お願いします。」

 

白金さんと本を返しに行く約束をして、授業が始まる前に自分の席に戻った。

 

 

 

 

 

放課後、白金さんと共に図書室へ向かった。

 

道中、本やNFOの話をしながらカウンターへ本を返しに行った。

 

すると本の隙間からあのしおりがひらりと落ちた。

 

するとそれを見た白金さんが驚いた様子で聞いてきた。

「く、九条さん?そのしおりって・・・」

 

「あぁ、この本を借りた時挟まっていたんですよ。今日、図書室に寄るついでにこのしおりの持ち主を探してもらおうと思って。」

 

「そ、それ・・・私の・・・です。」

 

「へ?」

 

予想だにしない返答に僕は変な返事しか出なかった。

 

「そ、そうだったんですか!?すみません、長々と持っていた上に少し使ってしまって・・・」

 

「いえ・・・そのままにしていた・・・私も・・・悪いですし・・・」

 

「いや、でも」

 

「しかもそのしおり・・・昔から・・・使っていて・・・結構・・・ボロボロなのに・・・大切に持っていてくれたんですね・・・本当に・・・ありがとうございます・・・」

 

白金さんにお礼を言われ、僕は少し慌てた。

 

「い、いえ、人の物を雑く扱っては行けないなと思って・・・それにこのしおり、確かに古くなってますけど大切に使っていないとこんなに長持ちしませんし、本当に大切なものだったんですね。」

 

そう言って本のしおりを返そうとした。

 

しかし白金さんはそれを受け取ろうとはしなかった。

 

「いえ・・・それは・・・九条さんが・・・持っていてください・・・これも・・・何かの縁かもしれませんし・・・」

 

「そうですか・・・では、有難く使わせてもらいます。」

 

その後図書室で互いに本を借り(僕は白金さんが読んでいた『病ンデル彼女ノ陰』を借りた)、僕はライブの練習があるためここで別れ、CIRCLEへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ふう・・・疲れたぁ・・・」」

 

いつも通り練習が終わり、宇田川さんとリサが声を合わせてぐったりしていた。

 

「すみません、次の予約をしたいんですけど。」

 

「そういえば友希那ちゃん、来月のこの日ににライブがあるんだけど1枠余っててさ、出ることできない?」

 

「!!」

 

その日にあるライブはメジャーのスカウトも来るイベントだったはずだ。

 

この地区のバンドにとっては登竜門と呼ばれているイベントだ。

 

湊さんと氷川さんは目指す所はもっと高いと言ったが、そのイベントのために何としても今練習中のオリジナル曲を完成させなければならなくなったが、そのためにはキーボードが必要不可欠だ。

 

短期間でこの5人が揃ったこと自体がすごい事なので一刻も早くキーボードを探すことになった。

 

 

 

 

 

その日から1週間が過ぎたがまだメンバーは見つからなかった。

 

湊さんは「私は妥協してまでメンバーを揃えたくない」とは言っていたが少し焦っているようにも見えた。

 

オリジナル曲はキーボードありきで作っているため、その曲をキーボード無しでやる訳にもいかないのだ。

 

そんな中リサと宇田川さんがピアノかキーボードの出来る人を友人や知り合いの中でいないか聞き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

私は九条さんと別れた後、家に着くと私はあこちゃんが送ってくれた動画を聞きながらピアノを弾いていた。

 

(・・・やっぱり、何度弾いてもあこちゃん達と合わせるの、楽しい・・・不思議な感覚・・・)

 

弾き終わると時間がかなり過ぎていた。

 

かなり熱中していたようだ。

 

すると携帯の音が鳴った。

 

相手はあこちゃんからだ。

 

いつもはチャットのあこちゃんが電話をくれたことに疑問を持ちながらも私は電話に出た。

 

「もしもし・・・あこちゃん・・・?」

 

『りんり~ん!助けて~~~っ!キーボードが見つからないんだよ~っ!ライブ決まったのに!りんりんの周りにいない?キーボードかピアノがめちゃくちゃ上手い人?』

 

「・・・!・・・そう・・・だよね・・・」

 

確かに私はピアノは弾ける。

 

しかし友希那さんのバンドはすごく真剣にやっている。

部屋で1人ピアノを合わせていただけの自分に出来るのだろうか?

 

『えっ、りんりん?そうだよねってことは誰か知ってるの・・・?』

 

「えっ?私・・・私は・・・」

 

またこんな感じに恐怖から逃げていいのだろうか。

 

すると私はふと九条さんの事を思い出した。

 

私と同じ苦手なことに自分から治そうとしている、彼みたいにチャレンジしなければ自分もかわらないのではないか。

 

『ーーってそんな上手い話ないよね。あのね、もしめちゃくちゃ上手な人いたらあこに教えて・・・』

 

「・・・ける」

 

『りんりん?』

 

「ひ・・・弾ける!・・・私・・・弾けるの!」

 

『えぇぇっ!』

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「えぇぇっ!」

 

宇田川さんがいきなり驚いた声を上げた。

 

「うん・・・うん・・・わかった・・・ちょっと待って・・・友希那さん!」

 

「どうしたの、あこ。」

 

「ピアノ・・・弾ける人いました!」

 

「そう、なら明日オーディションするから来るように言って。」

 

「はい、あ、ごめんお待たせ。明日オーディションするから来てほしいって・・・場所はこの前行ったCIRCLEってとこ・・・うん、宜しく!」

 

あこが電話を切った。

 

「それでさあこ、その子どんな子?」

 

リサが宇田川さんに話し相手のことを聞いた。

 

「うん、白金燐子って言うんだけど・・・」

 

「「白金さんが!?」」

 

僕と氷川さんが驚いた。

 

「紗夜、奏多その子って?」

 

「はい・・・湊さんと初めてあった時に宇田川さんと九条さんと一緒にいた子です・・・」

 

「まさか・・・白金さんピアノ弾けるとは・・・」

 

そういえばしおりもそうだし、筆箱やファイルも何かとピアノの鍵盤や柄が多かったような・・・

 

とりあえず明日のオーディションで決まるのだがまさか彼女がやるとは思わなかったので、僕は他人の事ながらとても緊張した。

 

 

 

全ては明日にかかっている・・・




途中に燐子sideとの切り替えがありましたが本編どうだったでしょうか?



なお今回出てきた『病ンデル彼女ノ陰』は後々小説出すつもりです。(友人に頼まれ出すことなった。)
なおこれはバンドリライトユーザーの友人がバンドリを初めたばっかの頃に思ったことなどをまとめて小説にしたものでヒロインは千聖さんです。
彼がバンドリを初めて秒で星4の孤高のウィザードの燐子を引き当て(もちろん鉄拳制裁)、その後にお泊まり会の千聖さんを2体被らせ、こいつヤンデレみたいだなーと思って嫌悪感を抱いてたらなんとこの前のドリフェスで3体目を引くという凄いことを成し遂げ、その腹いせに作った小説だそうです・・・
ヤンデレ系なので嫌な人とかいると思うのでそこはおまかせしますが、『病ンデル彼女ト陰』はRoselia結成編が終わった後辺りに友人がネタを送ってきたら出すつもりです。(つまり不定期)
ヤンデレ系が大丈夫だよって人はお楽しみください!


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10話 アツマル メンバー ネイロ ノ ショウタイ

記念すべき第10話です!
予定では、次話でRoselia結成編『メブク アオバラ ト ネイロ ノ ショウタイ』は終わりです。
なお、Roselia1章の11話~20話は奏多が加入した事で時の流れが変わり、そのルートが無くなったということになっています。
毎日投稿も明日まででその後のストーリーは週4投稿になりますので宜しくお願いします。

それでは本編お楽しみください!


次の日の朝、僕は学校に着いた瞬間すぐに白金さんの所へ駆け寄った。

 

「白金さん!ピアノ弾けるって本当ですか?」

 

「あの・・・はい・・・すみません・・・話すタイミングが無くて・・・」

 

「いえ・・・驚かせてすみません、でも大丈夫ですか?」

 

「はい・・・あこちゃんから演奏中の動画を送ってもらってたので・・・それで何度か練習しました・・・」

 

「それはいいのですが・・・」

 

すると氷川さんが話に入ってきた。

 

「おはようございます、九条さん、白金さん。」

 

「あぁ、おはようございます。」

 

「おはよう・・・ございます。」

 

「白金さん、あなたの経歴を少し調べさせてもらいました。あなた、発表会で賞をとったことがあるようね。」

 

そんなに凄いのか・・・

 

「いえ・・・賞をとったのは・・・昔の話で・・・」

 

「とにかく、今日の放課後CIRCLEでオーディションを受けてもらいます。課題曲は1曲、それで私達に合わなければ悪いけど加入してもらうのを辞めてもらいますから。」

 

「氷川さん・・・そこまでプレッシャーをかけなくても・・・」

 

「この程度でビビってしまっては意味が無いんですよ。」

 

「あの・・・精一杯・・・頑張ります・・・!」

 

「その意思はオーディションで示してもらいます。九条さん、HRも始まりますので私達も席に戻りましょう。」

 

「・・・はい。それでは白金さん、また後で。」

 

HRも始まるので僕は席に戻った。

 

しかし、宇田川さんの時もオーディションをしたのになぜ白金さんの時だけこんなに心配するのだろうか・・・。

 

 

 

 

 

放課後、僕は白金さんと一緒にCIRCLEへ向かっていた。

 

氷川さんは湊さん達と一緒に行って先に準備をしておくと言って先に行ってしまったので2人で向かっている。

 

しかし緊張のせいか白金さんとの間に会話がない。

 

自分から話しかけようかと思ったが彼女が物凄く集中しているので話そうにも話しにくいのだ。

 

そうこうしているうちにCIRCLEに到着した。

 

そこにはもう四人の姿があった。

 

「あ、来た!おーい、りんりーん!九条さーん!」

 

「すみません、待たせてしまいましたか?」

 

「そんなことないよ、ソータ。その子が燐子ちゃん?」

 

「はい・・・白金・・・燐子です。宜しく・・・お願いします。」

 

「燐子、紗夜と奏多から聞いていると思うけど課題曲は1曲だけ、わかった?」

 

「大丈夫ですよ!何たってりんりんはあこの大大大大大親友でネトゲでは最強なんですからっ!」

 

「宇田川さん・・・ネトゲは関係ないかと・・・」

 

「・・・とにかく始めるわよ。」

 

「・・・はぁ、大丈夫かしら?」

 

氷川さんが軽くため息をついたがそんなことお構い無しに僕達はCIRCLEの中に入った。

 

 

 

「ピアノとキーボードは少し違うけど感覚は同じだと思うわ。」

 

「・・・はい。頑張り・・・ます。」

 

白金さんはかなり緊張しているようだ。

 

今回の課題曲は今やっているオリジナル曲。

 

この曲の名前の命名権は僕にあって、まだ決めていないがこの曲はかなり難しい曲である。

 

白金さんの成功を祈りつつ僕はいつもの席についた。

 

「それじゃあ・・・いくわよ。」

 

宇田川さんのスティックの音が鳴ってリズムが刻まれる。

 

確か初めからキーボードが入るはず。

 

大丈夫か心配していたがその心配は一気に消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白金さんのキーボードが音を響かせ始めた瞬間、僕はあの時の衝撃と全く同じ、いやそれ以上の衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの始業式の帰り道に聴こえた《音色》。

 

それと全く同じ音が響いているのだ。

 

(あの時の・・・音色!あの・・・僕の心を震わせ・・・初めて感動したあの音色・・・!)

 

僕は驚きすぎて本来の目的を忘れるほど衝撃を受けた。

まさかあの時の音色を響かせていた人の正体がまさかこんなに近くにいるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

これは後から聞いた話なのだが、メンバー達は僕とは違った衝撃を受けていた。

 

白金さん以外の4人は初めて合わせた時のあの《音》以上の感覚に驚いていた。

 

そして白金さんは1人でやるよりもみんなでやる楽しさに心から感動していた。

 

 

 

 

 

演奏が終わると全員があの時のように沈黙していた。最初に口を開いたのは宇田川さんだった。

 

「・・・あの、みんな黙っているけど・・・りんりん入れないの?」

 

「・・・ごめんなさい、そうだったわね。無論合格よ、ぜひ入ってほしいぐらい。」

 

「・・・!はい!」

 

「宜しくね!燐子ちゃ・・・燐子!」

 

「やったぁ!これで今週末のライブに間に合いそう!」

 

「・・・!こ、今週末!?」

 

今週末と聞いて白金さんの顔が青くなった。

 

「燐子!?・・・あのさぁあこ?燐子にどうやって伝えたの?」

 

「え?あこ達と一緒にバンドやらないって。」

 

「ん~それだけじゃあ言葉が足りないかな~。ソータからは聞いてないの?ソータ?」

 

僕はまだ意識が呆然としていた。

 

「ねぇソータ!聞いてる!」

 

「・・・!は、はいっ!」

 

リサの呼びかけで何とか意識がこちらに戻った。

 

「ねぇ、燐子に今週末のライブの事説明した?」

 

「・・・あの、タイミングを逃してしまって。」

 

「・・・あちゃ~」

 

「・・・今週末なんて・・・そんな・・・まだ心の・・・準備が・・・」

 

「なら、帰って。」

 

湊さんが冷たい声でそう言った。

 

「どれだけ技量や音が合っても、やる気のない人に用はない。また新しいキーボードをさがすだけよ。」

 

この言い方に僕が口出ししようとした時だった。

 

「・・・たいです。」

 

「えっ?」

 

「・・・ひ、弾きたいです!・・・あの・・・精一杯・・・頑張ります・・・ので・・・宜しく・・・お願い・・・します!」

 

あの大人しい白金さんが大声を出した。

 

その事に僕と宇田川さんはとても驚いた。

 

「白金さんが・・・大きな声を!?」

 

「りんりんの大声・・・初めて聞いた・・・」

 

「・・・なら、その意気込みはライブで示してもらうわ。頼んだわよ燐子。」

 

「・・・!は、はいっ!」

 

こうして5人目のメンバーが決まった。

 

その後湊さんに「バンド名は私が考えるからあなたは早くこの曲の名前を考えて。」と言われ、その日は解散になった。

 

 

 

 

宇田川さんは姉の和太鼓を見に行くと言って先に抜け、氷川さんと湊さんは自主練のため残ったので、僕と白金さんは帰り道が途中まで同じなので先に帰らせてもらった。

 

2人きりになり、今度は僕から話しかけてみた。

 

「とりあえず、オーディション合格おめでとうございます。」

 

「はい・・・ありがとうございます・・・」

 

「まさか宇田川さんが呼んだのが白金さんだったとは思いませんでしたよ。」

 

「ふふっ・・・そうですか。」

 

白金さんが微笑し、行きとは違う空気の軽さがあった。

「あの・・・白金さんの家ってピアノあるんですか?」

 

「・・・?はい・・・ありますけど・・・なぜわかったんですか・・・?」

 

「・・・実は、白金さんのピアノの音色を聴いたのはこれが初めてではないんですよ。」

 

「・・・!どこで・・・ですか?」

 

「それは・・・始業式の日、帰宅中にあるピアノの音色が聴こえたんです。・・・その音は澄んでいて、綺麗で、心に響く、そんな音でした。その音と全く同じ音が今日のオーディションの時にあなたの弾いたキーボードから聴こえたんです。」

 

「・・・そうだったんですか。確かに私はあの日、ピアノを弾いていました。窓かなにかが空いていて音が漏れ出たんでしょうか。」

 

「えっと・・・だからその・・・上手くは言えないんですけど、とにかくこれからもよろしくお願いします。」

 

「・・・ふふっ、九条さんって・・・面白い人・・・こちらこそ・・・お願いします。」

 

 

燃えるような夕焼けが沈んでいき、辺りは暗くなっていく。

 

黒くなった空には星星と月が映っている。

 

「・・・決まりました。オリジナル曲の・・・名前を。」

 

「それは・・・何ですか?」

 

「はい、それは・・・」

 

 

 

 

 

この曲の名前は『BLACK SHOUT』

 

黒き叫び。

 

色を求めた僕が初めて聴いた音の叫び。




あと1話でRoselia結成編は終わります。
結成編終了後は『病ンデル彼女ノ陰』(タイトル確定)の投稿と2章の制作です。

どちらも乞うご期待!


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11話 メブク アオバラ ワタシタチ ノ ネイロ

Roselia結成編の最終話です。
これが終わったら次の更新は土曜日となります。これの投稿後すぐに不定期更新小説『病ンデル彼女ノ陰』を投稿しようと思います!

てかYouTubeに運営様が上げてくれた5thライブのBLACK SHOUT神かよ、さすが神運営ですわ!

そんなことは置いときつつ

それでは本編どうぞお楽しみください!


ライブ当日

 

一週間という短い期間で練習をして、ライブ本番を迎えた。

 

今回のライブでの僕達のバンドの順番は最後だ。

 

演奏する曲は「魂のルフラン」と新曲「BLACK SHOUT」の2曲。

 

今、僕達はライブ会場であるCIRCLE内の控え室でチューニングや打ち合わせなどをしていた。

 

「・・・みんな、私達のバンドの名前・・・色々と考えた結果この名前にしたわ。」

 

湊さんは紙にすらすらと文字を書いて僕達に見せた。

 

僕達のバンドの名前その名は

 

 

 

 

 

 

 

『Roselia』

 

 

 

 

 

 

「・・・ロゼ・・・リア?」

 

紙にはそう記されていた。

 

「薔薇のroseと椿のcamelliaから取ったわ。特に『青い薔薇』・・・そんなイメージだから・・・」

 

後から白金さんに教えてもらったが『青い薔薇』の花言葉は「不可能を成し遂げる」なのだそうだ。

 

なぜ青い薔薇をイメージしたのかはわからないが僕達はその名前を心に刻んだ。

 

これから僕達が頂点を目指すバンドの名前だ、これを刻み込まないわけがない。

 

「・・・うん、とってもいい名前!」

 

「Roseliaの闇のドラマー宇田川あこ!うん、めちゃくちゃかっこいい!よーしこの5人で頑張るぞっ!おー!」

 

「「「・・・お、おー・・・」」」

 

宇田川さんの号令に氷川さんと湊さんはスルー、僕含め残りの3人は返したのだがとてもガチガチだった。

 

「友希那さんも紗夜さんも返してくださいよ・・・ていうかもしかして3人とも緊張してる?」

 

「・・・え?ええっと・・・そんな訳ないじゃん!燐子の方こそ大丈夫?」

 

「・・・えっと・・・その・・・私は・・・確かに・・・緊張・・・してます・・・けど・・・頑張るって・・・決めたので」

 

「馴れ合いはやめて。気持ちの整理は個人で済ませてきてもらわないと困るわ。それと燐子、口ではなく音での証明をお願いね。」

 

「・・・は、はい!」

 

そんな感じに話しているとCIRCLEで働いている月島まりなさんが入ってきた。

 

まりなさんは僕がRoseliaの練習の予約を初めてやった時に受付をしていた人でそれからはよく話をするようになった人だ。

 

「Roseliaのみんな~そろそろ出番だから入って~」

 

「は、はい!ありがとうございます、まりなさん。」

 

「うんうん、奏多君もその呼び方慣れてきたみたいだね。初のライブ、期待してるよ!」

 

「・・・行くわよ。」

 

湊さんの一言で僕達Roseliaは舞台裏に移動した。

 

演奏に出ない僕は舞台裏からの応援となるが、他のみんなは初の表舞台だ。

 

特に白金さんは沢山の人からの目線を浴びるはずだ。

 

青くなったりしなければいいのだがと祈りつつRoseliaの出番がきて僕を除く全員がステージに立った。

 

(絶対・・・成功しますように!)

 

僕は柄でもなく両手を握り合わせてRoseliaの成功を祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

私達は九条さんからのエールを背中に受け、舞台に立った。

 

照らすライトが熱く眩しく、多くの人の目線が私達に向けられている。

 

体の震えが止まらない、けど自分を変えるためには耐え抜き、演奏しなければならない。

 

緊張が体を固くしていく、そんな中私はふと舞台裏の方に目を向けた。

 

するとそこには九条さんが手を握り合わせて祈っていた。

 

「・・・ふふっ」

 

思わず笑みが漏れる。

 

すると体の震えや緊張は嘘のように消えていた。

 

恐らく笑ったことで緊張がほぐれたのだろう。

 

そんな中、友希那さんのMCが始まった。

 

「・・・はじめまして、私達はRoselia・・・まずは1曲、聴いてください『魂のルフラン』」

 

友希那さんの歌声に合わせて私のキーボードを合わせる。その歌声は練習以上に綺麗で透き通って聴こえる。

そして曲が進むにつれて観客の歓声がとても激しくなっていった。

 

(・・・凄い・・・これが・・・バンド!)

 

私は感動しながらピアノを弾いていた。

 

そして魂のルフランが終わり、歓声のあと静寂に包まれる。

 

「・・・次の曲で最後です。この曲は私達のオリジナル・・・もう1人のメンバーが名前を付けてくれた私達だけの曲です。聴いてください・・・『BLACK SHOUT』!」

 

BLACK SHOUTの始まりはキーボードからである。

 

私のキーボードからなる音色に合わせてみんなの音色を合わせていく。

 

激しくなるにつれ、観客の歓声も激しくなっていく。

私だけじゃない、今井さんも、あこちゃんもとても楽しそう。

 

(不思議・・・あんなに緊張していたのに・・・私・・・すごく・・・楽しんでいる・・・こんな自分がいるなんて・・・知らなかった・・・)

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

魂のルフランが終わって次はBLACK SHOUTの番だ。

 

白金さんがRoseliaに入った時、二人で帰った道で考えついたRoseliaの始まりの曲。

 

そんな中湊さんのMCが始まった。

 

「・・・次の曲で最後です。この曲は私達のオリジナル・・・もう1人のメンバーが名前を付けてくれた私達だけの曲です。聴いてください・・・『BLACK SHOUT』!」

 

(・・・!!)

 

湊さんがまさかそんなことを言ってくれるとは思わなかった。

 

舞台にはいない僕のことを出してくれるとは思ってもいなかったからだ。

 

「・・・湊さん。」

 

僕は湊さんの計らいに感謝しつつBLACK SHOUTが始まった。

 

舞台裏からだとメンバーの横顔が良く見える。

 

リサ、宇田川さん、そして白金さんはとても楽しそうに演奏している。

 

湊さんと氷川さんは相変わらずの表情だが音色はとても楽しそうだ。

 

観客のボルテージも最高潮になり、演奏が終わると大きな歓声と拍手が帰ってきた。

 

 

 

 

 

ライブ後、僕達はファミレスに来ていた。

 

本当はライブ終了後そのまま各自の課題を持って解散する予定だったのだがリサが「初めてのライブだったし反省会やらない?」と提案したのだ。

 

湊さんと氷川さんは反対だったのだが宇田川さんとリサに押され、渋々了承し、今ここに6人全員がいる。

 

「さて、注文とるけど何にする?」

 

「僕はドリンクバーでいいです。」

 

「私も・・・同じで・・・」

 

「私もふたりと同じでいいわ。」

 

「あこは、ドリンクバーと超特盛ポテトで!紗夜さん、一緒に食べましょ!」

 

「ちょ、なんで私が・・・」

 

「だってあこ1人じゃ食べきれないですし、みんなで食べた方が美味しいですよ!」

 

「・・・っ、仕方ないわね・・・」

 

「それじゃあドリンクバー六つと、超特盛ポテト一つお願いします!」

 

リサが店員を呼んで、注文した。

 

「僕、ドリンクバー取りに行きますけど何にしますか?」

 

「私はコーヒーを。」

 

「あこ、オレンジジュース!」

 

「私も・・・あこちゃんと・・・同じで・・・」

 

「私もふたりと同じでいいわ。」

 

「アタシも一緒に行くよ。私は見て選びたいし、ソータ1人じゃ持ちきれないでしょ?」

 

「ありがとうございます、リサ。」

 

僕とリサはドリンクバーにドリンクを選びに行った。

 

僕はアイスティーを選び、宇田川さんと白金さんのオレンジジュースを入れた。

 

リサはと言うと、氷川さんの分のオレンジジュースとコーヒー、そして烏龍茶を選んでいた。

 

「リサは烏龍茶ですか。」

 

「うん、ワタシこういうお茶系好きでさー」

 

「なんか意外です。リサはコーラとかジュースが好きだと思っていました。」

 

「アタシこう見えて和食とか好きだよ~」

 

そう言いながらリサは大量のガムシロップとミルクを準備していた。

 

「・・・あの、その大量のガムシロップとミルクどうするんですか?」

 

「あぁこれ?友希那ああ見えて苦い物苦手だからコーヒー飲む時これぐらいないと飲めないんだよね~」

 

衝撃の事実を知ってしまったような気がする。

 

今まで思っていた湊さんのイメージが少し崩れた。

 

「それとこの事教えたこと友希那に言わないでね。この事思いっきり隠しているつもりだから。」

 

「は、はい・・・」

 

コーヒーにガムシロップとミルクを入れ終えたリサにウインクされ、僕とリサはドリンクを持ってみんなの元へ向かった。

 

 

 

 

 

「・・・とりあえず落ち着いた所で、今日のライブは良かったと思うわ。この短期間でRoseliaのレベルはかなり上がった。だから、この6人で本格的に活動するなら、あこ、燐子、リサ、奏多・・・あなた達にもそろそろ目標を教える」

 

「湊さん・・・」

 

「・・・そうですね。私はそのために湊さんと組みましたから。たしかにここで意思確認をすべきだわ。」

 

「FUTURE WORLD FES.の出場権を掴むために、次のコンテストで上位3位以内に入ること。その為にこのバンドには極限までレベルを上げてもらう。練習メニュー等は後でメールする。音楽以外のことをする時間はないと思って。ついてこれなくなった人にはその時点で抜けてもらう。」

 

「ふゅーちゃー・・・」

 

「・・・わーるど・・・ふぇす?」

 

宇田川さんと白金さんがわからなさそうに首を傾げる。

リサと僕はそれがどれほど過酷で生半可な気持ちじゃたどり着けないものであるとわかっていた。

 

「・・・あこ、燐子。・・・リサ、奏多。あなた達、Roseliaに全てを賭ける覚悟はある?」

 

湊さんは最後の言葉を力強く言った。

 

それは生半可な覚悟ではなく、本当に全てを音楽のためにつぎ込める覚悟はあるかの確認だった。

 

言われた直後僕達は沈黙していた。

 

最初に口を開いたのは・・・僕だった。

 

「・・・えぇ、やりますよ!僕にだってこのバンドに入った目的はある。あなたが求める音色、それが見たい!」

 

「・・・あこも!お姉ちゃんに追いつくため!一番のカッコイイになるため!」

 

「・・・私も・・・自分を変えるために・・・みんなで・・・頑張るって・・・決めたから!」

 

「アタシも・・・このバンドで・・・みんなで続けたい!」

 

「・・・その言葉、音での証明をお願いね。」

 

 

 

こうして6人全員の意志が固まり、『Roselia』の頂点を目指す道は始まった。

 

これがきっかけか、無色の少年に初めての《色》の元が芽吹き始めたことに彼は知る由もなかった。




Roselia結成編『メブク アオバラ ト ネイロ ノ ショウタイ』はこれで終わりです。
次からは週4投稿となりますがもちろん続けるつもりです!
次は修学旅行編をやろうと思います!バンドリ本編にはないオリジナルストーリーですが精一杯頑張ろうと思います。
感想や評価などもバシバシ来て欲しいので宜しくお願いします!


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2章 オリジナルストーリー 沖縄修学旅行編 12話 ムショク ト オキナワ ハジケル パレット

初のオリジナルエピソード「沖縄修学旅行編」です。
Roselia結成編や修学旅行編の次に書くLOUDER編は主にRoselia1章やイベントなどをベースにしますが、こちらはキャラ以外は基本オリジナルストーリーで書かれています。

それでは「沖縄修学旅行編」スタートです!


「修学旅行か。」

 

あのライブが終わってRoseliaの本格的な活動が始まってからはや1週間、僕もマネージャーの仕事や感想などを伝えることに板がついてきた頃、修学旅行の時期がやって来た。

 

場所は沖縄で2泊3日、1日目は沖縄の歴史を学び、2日目は観光名所を巡ったりするフリータイム。

 

最終日は海のことを学ぶのだそうだ。

 

まだ5月のはじめの頃なのだが修学旅行まであと2週間もない。

 

アレルギーや薬の調査は入学当初に済ませてあるのでそこは大丈夫なのだが問題は移動班だ。

 

ホテルの部屋は男は僕1人のため流石に男女が同じ部屋は危ないとのことで特別に個室を用意されてある。

 

クラスの女子が和気あいあいとしている中、人混みが苦手な僕はRoseliaの次のスケジュールや新曲の名前、昨日のみんなの演奏の良点や悪点などを考えていた。

 

すると丸山さんが話しかけてきた。

 

「ねぇ、奏多くん。良かったら同じ班にならない?」

 

「はい、特に相手もいませんし。」

 

「よかったぁ・・・4人班だからあと2人いるんだよね~」

 

黒板を見るとほとんどの人が班を決めていた。

 

そんな中まだ氷川さんや白金さんが決まっていないことに気がついた。

 

「なら、氷川さんと白金さんを誘いませんか?見た所あの2人決まってなさそうですし。」

 

「いいね!そうしよ!」

 

僕と丸山さんは2人の元へ向かった。

 

氷川さんと白金さんは2人でなにか話していた。

 

「・・・はい、あそこのパートは・・・少し勢いを抑えた方が・・・」

 

「そうですね、その後テンポを上げていった方がこの曲に勢いが増しますし・・・」

 

どうやら2人は新曲の打ち合わせをしていたようだ。

 

「紗夜ちゃん!燐子ちゃん!良かったら同じ班にならない?」

 

「すみません、こちらで少し熱中していたようです・・・私は構いませんが、白金さんは?」

 

「はい・・・私も・・・大丈夫です。」

 

「決まりですね。」

 

「うん、精一杯たのしもー!」

 

こうして4人が決まり、楽しい修学旅行になる!

 

 

 

 

 

 

 

・・・はずだったのだが・・・

 

 

 

 

 

 

修学旅行初日

 

「丸山さんは今日、仕事で休むみたいです・・・」

 

なんと丸山さんが昨日からあるパスパレの仕事でこちらに来れなくなったらしい。

 

「・・・その・・・なんて言うか」

 

「気の毒ですね・・・観光が2日目で良かったですね。」

 

「2人とも、そろそろ向かいましょう。丸山さんとは2日目で合流出来るわけですし私達は私達だけで回りましょう」

 

こうして僕達の修学旅行は始まった。

 

 

 

 

 

「~っ!着いた・・・」

 

飛行機内でずっとRoseliaのスケジュール管理や次のライブの時にする曲の編曲などをしているうちに沖縄に到着した。

 

ここ最近ずっとRoseliaの事ばかりしている、たしかに湊さんの言う通り音楽以外の時間はないようだ。

 

「九条さん、早くしないと置いていきますよ。」

 

「は、はい。すみません。」

 

氷川さんに呼ばれ初日の予定である沖縄の歴史を学ぶため、僕達はまず歴史博物館へと向かった。

 

歴史博物館ではガイドさんが説明しながら館内を案内してくれた。

 

沖縄がまだ琉球王国だった頃の話や戦争時の沖縄の様子などを説明しているがA組からE組までいるせいで人(って言うかほとんど女子)が多い。

 

白金さんがこの人混みを見て顔が蒼白していたので僕達は一番後ろで見ているのでガイドさんの声が聞き取りづらい。

 

何とかメモを取りながら僕達は博物館を出た。

 

 

 

 

 

「ふう・・・人やばかったです・・・明日も人が多いんでしょうか・・・」

 

全員が泊まるホテルへ向かっている途中僕はため息をつきながらこの後のフリータイムのことや次の日どこへ向かうか考えていた。

 

「うぅ・・・人混み・・・やっぱり・・・怖い・・・」

 

白金さんはさっきからこの調子だ。

 

人混みが大の苦手な彼女だ、こればかりは仕方がない。

 

「次の日の日程を決めてきました。こんな感じでどうでしょうか?」

 

氷川さんはあらかじめ日程を考えてきてくれていたらしく、それが書かれたメモを見せてくれた。

 

そのメモには首里城や美ら海水族館などを効率よく回る日程が組まれていた。

 

「・・・すごい、あまり人が多くない時間帯を的確に狙って・・・」

 

「人混みが苦手な白金さんや、一応芸能人である丸山さんの事を考えた日程ですが、悪い点があればもうしてください。」

 

「これなら・・・私も・・・大丈夫そう・・・」

 

「凄いですよ・・・異論どころか悪い点が見つからない・・・」

 

氷川さんの日程に驚きつつ僕達はホテルに到着した。

 

荷物はあらかじめ空港で渡してあるので部屋に入るとしっかりと置いてあった。

 

手荷物と持ってきた物の整理をし、1日目の午後からのフリータイムをどうするか考えていた。

 

とりあえずメンバーがいないとどこに行くかも決められないので2人を呼び出し、どこに行くか相談している時だった。

 

話している時に氷川さんのスマホに電話がかかってきた。

 

「・・・すみません、え?日菜?」

 

どうやら日菜さんからの電話らしい。

 

「もしもし、日菜?あなた仕事は・・・え?沖縄に来てる?・・・しかもライブを?・・・そんな勝手に!・・・ちょっと、日菜?・・・切れた・・・」

 

「どうしたんですか?もしかして日菜さんがこっちに?」

 

「いえ・・・どうやらPastel palette全員が沖縄でライブをするようなんで・・・席を準備してあるから来てくれと・・・」

 

「日菜さんパスパレのメンバーだったんですか?」

 

まさか日菜さんがPastel paletteのメンバーで、そのメンバー全員が沖縄に来ているとは思わなかった。

 

どうやら番組でライブをすることを伝えられると突然目隠しをされ、目隠しを外されるとそこは沖縄だったそうだ。

 

沖縄に氷川さんがいることを知っている日菜さんはスタッフに頼み込み特別席を確保したようだ。

 

「・・・どうします?」

 

「私・・・人混みは・・・」

 

「勝手に頼まれてもこっちが困るのよ・・・」

 

「でもあちらのスタッフさんに悪いです・・・」

 

3人の間に沈黙が流れる。

 

しかし、考えた結果僕達はライブに向かうことにした。

 

 

 

 

 

ライブ会場ではたくさんのファンが押し寄せていた。

 

少し前色々あって活動休止まで追い詰められていたパスパレだったがここまで復帰しているとは思わなかった。

 

会場のスタッフに訳を話すとすぐに席を案内された。

 

そこは人もあまり多くない端の方だった。

 

「ここなら・・・大丈夫・・・です。」

 

「はぁ・・・私はあまり来たくないのですが・・・」

 

「他のバンドの演奏を見てすごい所を見るのもRoseliaのレベルを上げるひとつの方法だと思いますけど・・・」

 

「それなら・・・仕方ないわね・・・」

 

氷川さんを納得させると、数分後パスパレのライブが始まった。

 

「みなさーん!こーんにーちわー!まん丸お山に彩りを!pastel paletteボーカルの丸山彩です!今日は来てくれてありがとうございまーす!それでは聞いてくだしゃい!『しゅわりんどりーみん』!」

 

・・・今噛まなかった?

 

そう思いながらパスパレのしゅわりんどりーみんが始まった。

 

そこにはこの前、羽沢珈琲店にいた金髪の人やバイトの武士道の子がいた。

 

まさかあの2人もパスパレだったとは思わなかった。

 

しゅわりんどりーみんが終わると大きな歓声に包まれた。

 

すると日菜さんがこちらを向いて大きな声を上げた。

 

「いたいた!おねーちゃーん!」

 

「っ!日菜・・・」

 

氷川さんにスポットライトが当たった。

 

「こっちに上がって上がってー!」

 

「ちょっと・・・なんで私が・・・そもそもギターもないのよ!」

 

するとスタッフが日菜さんのギターと同じギターを持ってきた。

 

どうやらスペアのようだ。

 

「それ貸すからー!」

 

「・・・氷川さん・・・これ上がらないといけない流れです・・・」

 

「・・・お疲れ・・・様です。」

 

僕と白金さんと周りの空気に押され、氷川さんは渋々ステージに上がった。

 

「紗夜ちゃん・・・ごめんね!」

 

「いえ・・・私は・・・」

 

「おねーちゃんとダブルギターで演奏できるなんて私嬉しい!」

 

「日菜!そもそもあなたが・・・」

 

「紗夜さん、すみませんが宜しくお願いします。」

 

白鷺千聖と言った金髪の人が紗夜さんに楽譜を渡した。

 

氷川さんはそれを受け取り、一目通して準備にかかった。

 

「えっと・・・それでは、氷川姉妹のダブルギターで聞いてください!『そばかす』っ!」

 

氷川さんと日菜さんのダブルギターで演奏が始まった。

 

いつも弾いている曲調とは違うポップな曲に氷川さんも渋々ながらも楽しそうに演奏している。

 

演奏が終わるとさっきのしゅわりんどりーみんより大きな歓声が上がった。

 

 

 

 

 

ライブ後、僕と白金さんは氷川さんを迎えにスタッフに案内され、楽屋の方に向った。

 

楽屋に入ると氷川さんとパスパレのメンバーが和気あいあいとしていた。

 

「氷川さん、お疲れ様です。」

 

「九条さん・・・その・・・さっきのは」

 

「あっ!ソータくんだ!久しぶり!」

 

日菜さんが駆け寄って僕の手を取って上下にぶんぶん降っていた。

 

「ちょっ・・・日菜さん・・・お久し・・・ぶりです。」

 

「ちょっと日菜!」

 

「日菜ちゃん、九条さん困ってるから辞めてあげて?」

 

白鷺さんに止められ日菜さんは渋々手を離した。

 

「えっと・・・どうして僕の名前を?」

 

「あなたが始業式に言ってたじゃない?私も花咲川の2年生よ?私は白鷺千聖、宜しくお願いしますね?」

 

「宜しくお願いします。それとたしか君はブシドーの?」

 

「はいっ!お久しぶりです、私は若宮イヴです!立派なブシを目指して日々修行しています!」

 

「ジブンとは初めてですね。ジブン、大和麻弥って言います。日菜さんと同じ羽丘の2年生です。以後宜しくっす!」

 

「九条奏多です。宜しくお願いします。」

 

「九条さん・・・そろそろ・・・時間が・・・」

 

時計を見ると5時前になっていたフリータイムは5時半までだったはず。

 

「やばっ!氷川さん、そろそろ行きましょう!」

 

「そうですね、それではここで失礼します。」

 

「うん、今日はありがと!明日はよろしくね!」

 

丸山さんに見送られ僕達は何とか集合時間までにホテルに投稿した。

 

しかし波乱万丈な修学旅行はまだ始まったばかりである。




修学旅行編どうだったでしょうか?
予定では1日目、2日目、3日目で1話ずつに分けてやろうと思います!
次の更新は明日です!その日までお楽しみに!


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13話 グウゼン ト ヒツゼン アマカケル ネッショク

修学旅行編2話です!
ここまで思いついてるけど3話が思いつかない!!明日全力で考えねば・・・

作者の苦労はほっといて本編始まります!


修学旅行2日目、家とは違うフカフカのベッドの中僕は目を覚ました。

 

時刻は午前5時半、まだ日も登っていない時間だ。

 

昨日のパスパレのライブで絶対に疲れているはずなのに何故こんなに早く起きてしまったのだろうか。

 

(やはり枕が違うと眠れないのだろうか・・・)

 

そんなことを考えているとカーテンの隙間から光がさしてきた。

 

カーテンを開き、窓を開けると涼しい風が流れ込みんで来る。まだ空は薄暗い中、海から太陽が登ってきた。

 

「・・・綺麗。」

 

沖縄の朝焼けにそんな普通な言葉しか出てこなかった。

 

登ってくる太陽の光が暖かさを感じさせる。

 

それで僕は目がすっかり覚めてしまった。

 

朝の集合時間までにはかなり余裕がある。

 

着替えや身支度を済まし、余った時間で新曲のタイトルを考えていた。

 

しかし、あと少しのところまで出てくるのだがどうにも納得がいかない。

 

朝焼けをテーマに色々な単語を組み合わせ、考えてみたのだが、あの曲調だとどうしても合わないような気がする。

 

そうこうしているうちに集合時間が近づいてきた。

 

モヤモヤする気持ちを切り替え、僕は集合場所であるラウンジまで向かった。

 

 

 

 

 

学校全体で朝食を済まし、氷川さんと白金さんを見つけて2日目の予定である観光名所巡りを始めた。

 

丸山さんとは昨日、氷川さんが行く所を話していたらしく最初に向かう首里城で合流する予定だ。

 

ホテルへ集合する時間は7時ぐらいに設定されているのでかなり余裕がある。

 

午前は首里城で見学などで時間を潰し、早めのお昼ごはんを食べてから人が少ない昼飯時に美ら海水族館へ。

 

一通り見回った後は商店街でショッピングなどをする予定だ。

 

予定の確認をして、丸山さんの待つ首里城へ向かった。

 

 

 

 

 

首里城に着くと丸山さんがサングラスと帽子を被って待っていた。

 

「すみません、待たせましたか?」

 

「そんなことないよ、私も今さっきついたところだし!」

 

「丸山さん・・・その格好は・・・?」

 

「昨日、ライブやったんだから千聖ちゃんにここまで変装しなさいって言われちゃって・・・」

 

「・・・芸能人も大変ですね。」

 

正直あまり変装出来てるように思えないが人が少ない時間帯なのでこれぐらいでもバレないのだろう。

 

「と、とりあえずいこっ!」

 

この空気を変えるために丸山さんが3人を引っ張っていった。

 

 

 

 

 

 

首里城を見学しながら、僕はまだ新曲のタイトルを考えていた。

 

ここでのテーマを思いつく限り当てはめていったがどれもぱっとしない。

 

すると白金さんが話しかけてきた。

 

「九条さん・・・考え事・・・ですか?」

 

「え、えぇ・・・新曲のタイトルを考えていたのですがどれもぱっとしなくて・・・丁度いいスペルや語呂が思いつかなくて沖縄で色々見ればいいのがあるかなーって思いまして。」

 

「そうですか・・・別に・・・全部英語じゃなくても・・・いいんじゃないですか?」

 

「え?」

 

「その・・・たしかに・・・英語の方が・・・Roseliaにあってるようにも・・・思えます。けど・・・無理に英語にしなくても・・・良いものはあると・・・思います。」

 

確かに思いつかなかった。

 

無理に英語に合わせようとして逆にややこしくなっていたのかもしれない。

 

「・・・なるほど、ありがとうございます!また考え直してみます!」

 

「はい・・・けど・・・せっかくの・・・修学旅行です・・・もっと・・・楽しんだ方が・・・いいと思います・・・」

 

「たしかに・・・ここ最近ずっとRoseliaの事ばかり考えていました・・・肩の力が入ってはいいものも思いつきませんね。」

 

白金さんの話に少々苦笑気味に返した。

 

「奏多くーん!燐子ちゃーん!そろそろ次行くよー!」

 

丸山さんが僕達を読んだ。

 

「呼ばれましたね、行きましょう!」

 

「・・・はい!」

 

僕はその時の間Roseliaの事を考えるのをやめ、首里城を後にした。

 

 

 

 

 

少し早いお昼ごはんに沖縄名物のソーキそばを堪能した僕達は美ら海水族館へ向かった。

 

この水族館の名物である巨大水槽に目を奪われながら僕達は水族館内を見回った。

 

見回っている最中、クラゲのコーナーで見覚えのある金髪の人がいた。

 

「あれ?千聖ちゃん?」

 

「あら、彩ちゃん?それに九条さん達も?」

 

やはり白鷺さんだった。

 

それにどうやら1人だけではないようだ。

 

「ふええ・・・千聖ちゃん、勝手に行かないで~」

 

「あら、花音!ごめんなさい、置いていってしまって・・・」

 

「う、うん。その人達は?」

 

「ええ、昨日ライブに来てくれたB組の人達と・・・」

 

「えっと、千聖ちゃんと同じバンドのボーカルの丸山彩です!」

 

「B組の氷川紗夜です。」

 

「同じくB組の九条奏多です。」

 

「えっと・・・白金・・・燐子です。」

 

「えっと、A組の松原花音です。宜しくお願いします。」

 

松原さんと軽い挨拶を交わす。

 

「へぇー、千聖ちゃんもここに来たんだー。」

 

「花音がクラゲを見たいって言ったからよ。私もそれなりに楽しんでるけどね。」

 

「松原さんクラゲ好きなんですか?」

 

「はい・・・あの丸っこい形やふわふわした感じが好きなんです。」

 

意外な趣味に驚きつつ、白鷺さん達は他にも回るところがあるらしいのでここで別れた。

 

館内も大体回り僕達は美ら海水族館を後にして商店街へと向かった。

 

 

 

 

商店街に来るとそこは地元の人や観光客で賑わっていた。

 

今日は平日なのだがどうやらほかの学校の修学旅行も来ているらしくそこは別の学校の生徒でごった返していた。

 

「うわ~人が多いね。」

 

「まさかほかの学校も修学旅行とは・・・迂闊でした・・・」

 

「し、白金さん・・・大丈夫・・・です?」

 

「ひ、人混み・・・無理・・・」

 

白金さんの顔が青くなっていたので僕達は商店街内で人が少ない所を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・のだが

 

「はぁ・・・自分の方向音痴が嫌いです・・・」

 

白金さんと一緒にいるのだが気を使いながら進んでいたせいでどうやら氷川さん達とはぐれてしまったようだ。

 

「すみません・・・私の事を・・・気にしていたせいで・・・」

 

「いえ、そんなことは無いですよ。ただ始めての場所であることと僕が方向音痴のせいで・・・」

 

幸い、人の少ないところに来たおかげで白金さんはだいぶ落ち着いているようだ。

 

すると携帯が鳴った。

 

相手は氷川さんのようだ。

 

「もしもし、九条です。」

 

『九条さん、今どの辺にいますか?』

 

「えっと・・・こっちからはわからなくて・・・」

 

『そうですか・・・では商店街の入口あたりで一度集合しましょう。白金さんとは一緒ですか?』

 

「はい、一緒です。多分そこならマップを見ればわかると思います。」

 

『では後で。』

 

そこで通話は切れた。

 

「白金さん、最初に入った所で集合だそうですけど行けますか?」

 

「はい・・・なんとか・・・しかし・・・」

 

「問題は・・・あの人混みですね・・・」

 

2人が途方に暮れる時だった。

 

「あれ?ソータに燐子じゃん!?」

 

聞き覚えのある声がした。

 

後ろを向くとその声の正体はリサだった。

 

「い、今井さん!?」

 

「り、リサ!?どうしてここに?」

 

「何故って、修学旅行だけど?言ってなかったっけ?」

 

どうやら羽丘も今日から修学旅行だったらしい。

 

「リサ、どうしたの?あら、燐子に奏多?どうしてここに?」

 

後ろから湊さんも出てきた。

 

「あの・・・実は・・・」

 

リサと湊さんに事情を説明した。

 

「プッ・・・ハハハッ!えっと、紗夜と彩と一緒に行動してたらはぐれてしまって集合場所に向かおうにも人混みで通れない上にソータ方向音痴だって!」

 

「リサ・・・そんなに笑うことないですよ・・・」

 

「とりあえず紗夜も来ているって事ね。」

 

「とりあえず、一緒にいこっか!」

 

「す、すみません・・・ありがとう・・・ございます。」

 

リサと湊さんに助けられ、何とか氷川さん達のいる所についた。

 

 

 

「み、湊さん!?そして今井さんも!?」

 

「迷っているところにばったり会ってしまって、あれ?丸山さんは?」

 

「ええ、彼女なら」

 

話を聞くと、どうやら事務所から連絡があり昨日のライブとはまた別で沖縄ロケをすることになったらしくそのため先にホテルへ戻ったそうだ。

 

とりあえず僕達は近くに海があったので休憩がてら海の家へと向かった。

 

 

 

 

 

「結局あこ以外のRoselia揃っちゃったね~」

 

「私はあまりこういう店は、」

 

「氷川さん、ここ限定のフライドポテトあるみたいですよ。」

 

「フライドポテト!?」

 

実は最近知ったことだが、氷川さんは大のフライドポテト好きのようだ。

 

この前のライブの反省会の時に頼んだフライドポテトがすぐに無くなり宇田川さんが「そんなに量なかったねー」と言っていた。

 

他のメンバーは気づいてないがその殆どを氷川さんが食べていたことを見ていた僕は昨日のライブの後こっそり日菜さんに聞いたら大のフライドポテト好きということがわかった。

 

日菜さんからは「おねーちゃんの機嫌悪い時とか叱られる前にフライドポテト出したら落ち着くよー」と入れ知恵された。

 

「そ、そんなものに興味はないですがあるというなら試してみる価値はあります。」

 

湊さんは「歩き疲れたから丁度いい」と言って先に白金さんと席を探しに行ってもらってる。

 

それぞれのドリンクと氷川さん用のポテトを購入し、2人の待つ席へと向かった。

 

テラス席で4人と会話している中、追加のドリンクを購入しに、席を立つとみせの端にキーボードやギターが置かれていた。

 

それを見ていると店の人が話しかけてきた。

 

「坊主、それに興味があるのかい?」

 

「い、いえ・・・その海の家になぜベースやギターなどがあるのかなと思いまして・・・それとあなたは?」

 

「俺はここで店長やってるもんだ!それらは今度ここでライブするとき用で今日届いたもんなんだけれどよ、まだ試し弾きしてなくてよ・・・」

 

「そうなんですか、どれもこれもいいものを使ってますね。」

 

「おっ、わかってるねぇ!坊主、バンド組んでるのかい?」

 

「いえ、たしかにバンドは組んでいますが僕はマネージャー的なやつです。メンバーはあっちに・・・」

 

「そりゃいい!頼む坊主、試しで良いから弾いてくれねぇか?」

 

突然のお願いに僕は戸惑った。

 

「えっ、ちょっ、いきなり言われても・・・それに弾くのは僕じゃないですし・・・」

 

「頼む!ここには楽器弾けるやついなくて・・・礼ならする!ポテトやドリンクサービスするからよ!」

 

「ち、ちょっと待っててください!」

 

流石に僕だけでは決められないので湊さん達の所へ向かった。

 

湊さん達のところへ行き、訳を説明した。

 

「そんなこと言われてもね・・・」

 

「でも友希那、たまにはいつもと違う所で新曲を弾くのもRoseliaの成長としていいんじゃない?」

 

「そうですね、たまには違う場所、違う楽器で演奏するのもいいかもしれません。」

 

いつもこういうことは否定する氷川さんが珍しく賛同している。

 

やはりポテトの力が大きいのか・・・

 

「白金さんはどうしますか?」

 

「その・・・私は・・・やって・・・みたい・・・です。」

 

「でもドラムはどうするの?」

 

「ドラムの音は宇田川さんの音を録音していますけどそれで流すしかないと思います。」

 

「全員揃っていないのが残念だけど仕方ないわね・・・行くわよ。」

 

店長の元へ戻り、楽器を準備してもらった。

 

ドラムはまだ届いていなかったらしくキーボード、ベース、ギターそしてマイクが2本準備された。

 

「あれ?なぜ2本あるんですか?」

 

「そりゃ坊主、お前が歌え。」

 

「えっと・・・僕はマネージャー的な役割なんですけど・・・」

 

「いいじゃねえか!嬢ちゃん!別にいいか?」

 

「はぁ・・・お客さんの提案よ、早くステージに来て。」

 

まさか新曲をダブルボーカルでやるとは・・・

 

歌詞は今までずっと聴いてきたので完璧に覚えている。

 

歌詞名は・・・と考えているとぱっといいものが浮かんだ。

 

これなら曲調や歌詞にも合う。

 

「何しているの奏多、早く来て!」

 

「す、すみません!」

 

僕は湊さんの隣に立った。

 

初のステージからの景色に緊張しつつ湊さんのMCが始まった。

 

「Roseliaです。今回この場を借りて演奏させてもらいます。ここで私達の新曲を披露したいと思います。名前はまだ・・・」

 

「『熱色スターマイン』・・・」

 

「え?」

 

「この曲の名前は『熱色スターマイン』ですっ!」

 

「フフッ、それでは聴いてください。『熱色スターマイン』!」

 

唐突の命名にメンバーは少し驚きつつ、新曲『熱色スターマイン』が始まった。

 

今はいない宇田川さんのパートと湊さんのパートの一部を僕が歌い、他を湊さんが歌う。

 

ダブルボーカルに海の家の人達のテンションは最高潮まで達していた。

 

(楽しい・・・ここで歌うことがこんなに楽しいなんて!)

僕は歌いながらステージに立って演奏する楽しさを感じていた。

 

今回だけの特別なライブだがそれでもステージに立てたことに僕は喜びを感じていた。

 

 

 

 

 

ライブが終わると店長からお礼としてドリンクと大量のポテトを貰った。

 

その半分が気が付かないうちに氷川さんの所に行ったのは僕のみぞ知ることだった。




修学旅行編2話どうだったでしょうか?
この話の海の家の行はBanG Dream!のOVAのポピパの所をベースにしています。今回どうしても氷川さんのポテト事情を書きたかったのと奏多と湊さんのダブルボーカルを試してみたかったのもあります。
羽丘と花咲川が一日ずれて修学旅行なのは少し強引だったかな・・・と思いつつもいい作品ができたと思います。
1人だけライブに行けなかったあこちゃんと仕事で修学旅行をあまり楽しめていない彩ちゃんには心からドンマイと言わせて貰います・・・


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14話 ムショク ト アザラシ サラバ オキナワ

沖縄編3日目です。
これで沖縄修学旅行編はラストですが・・・

ネタが・・・思いつかん・・・!

って状況で海洋研究所を訪ねる日なんでわちゃもちゃぺったん行進曲の時をベースにしました。(ぱ、パクッてはないからね・・・)

そんな訳で半分ぐらいわちゃもちゃイベのやつですが本編始まります!←おい!


ライブ後、店長から貰った大量の差し入れを食べながら今回のライブの反省会をしていた。

 

日が暮れてきたため、互いの集合時間までに終わらせないといけないので今回は主に感想だけになりそうだった。

 

「まず聞いておく事があるわ・・・奏多、あの曲名はいつ考えたの?」

 

「えっと・・・ライブ始まる3分前ぐらいです・・・」

 

「3分前!?よくそんなタイミングで思いついたね~!」

 

リサが驚いていたがリサだけではない。

 

白金さんやしれっと大量のポテトをすごい勢いで食べている氷川さんも手を止めて驚いた顔をしていた。

 

「・・・えっと、あの曲名『熱色スターマイン』はどんな情景から思いついたの?」

 

「はい、あの夕焼けと東の方の空が暗くなってきていて星が少し見えたので夕暮れから夜への切り替わりの時って感じで思いつきました。BLACK SHOUTの時みたいに全て英語にしようかと思ったんですけど白金さんに無理に英語にしなくてもいいと言われたんで今回このような曲名にしました。」

 

「そんなことで思いつくなんて・・・奏多に任せて正解だったわね。」

 

「はい、しかし今回はタイミングが無かったとはいえ私たちに言わずに唐突に言われては困ります。次からはあらかじめ伝えてください。」

 

「はい・・・すみませんでした・・・」

 

氷川さんにそう言われ僕は少しへこんだ。

 

「でも・・・とっても・・・いいと・・・思います。」

 

「そーそー!燐子もそう言ってんだしアタシもいいと思うよ。それにソータの歌も良かったし!」

 

「そ、そんなことないです・・・あれは店長さんに言われて・・・」

 

突然褒められるとなんか照れる。

 

「私にしてみたら凡人以上程度だけど・・・楽しかったわ。機会はもうほとんど無いかもしれないけどまたやりましょう。」

 

「あっ、やばっ!友希那!時間時間!」

 

「そうね、今回はここで解散にしましょう。あなた達は明後日私とリサがいなくても練習するように。」

 

「それじゃまたね!」

 

リサと湊さんが海の家を後にした。

 

「私達も・・・そろそろ・・・ですね。」

 

「そうですね。このポテトどうしましょうか・・・」

 

テーブルの上には多くはないがポテトがまだ残っている。

 

知らない間に半分以上消えているがその御本人は「残すのも勿体ないですし、持ち帰りましょう。」と、後で食べる気満々である。

 

氷川さんが持ち帰り用の入れ物を取りに行ってると白金さんが話しかけてきた。

 

「あの・・・あのポテト・・・ほとんど氷川さんが食べてましたけど・・・もしかして氷川さん・・・」

 

「はい・・・日菜さんに聞いたら無類のポテト好きみたいです・・・」

 

白金さんも気がついたようだった。

 

「・・・フフッ」

 

「・・・ハハッ」

 

2人とも思わず笑ってしまった。

 

すると氷川さんが帰ってきた。

 

「2人とも楽しそうですね。何かあったんですか?」

 

「「い、いえ何も!」」

 

・・・ハモった。

 

氷川さんが不思議そうな顔をしながらポテトを入れ物に移し、僕達はホテルへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行3日目

 

今日は海洋研究所を訪ね、見学しながら海のことを学ぶらしい。

 

場所は昨日行った美ら海水族館のすぐ隣にあるらしいので、ほとんどの生徒が準備を終えると荷物を空港へ運んでもらっていた。

 

僕も荷物を預け、携帯や財布などの貴重品を持ち海洋研究所へ向かった。

 

 

 

 

 

海洋研究所では主に傷ついたウミガメや魚の傷を治したり、沖縄の海の魚やサンゴの研究をしていた。

 

職員の人に案内されながら回っているが

 

「さっぶ・・・」

 

中の冷房がめちゃくちゃ効いていて寒い。

 

念のために持ってきた上着は今頃空港の荷物の中で、上半身半袖の服しか来ていない僕は羽織れるものが無い。

 

近くにいた教師をつかまえて外のベンチで休ませてもらうことにした。

 

「ふぅ・・・中寒すぎだろ・・・いくら沖縄とはいえ冷房効きすぎ・・・」

 

中の感想は後で白金さんや丸山さん達に聞くことにするとしていざ外に出ると暇である。

 

ベンチに座っていると沖縄の太陽が照りつける。

 

まだ5月下旬とはいえ気温は28度を超えてきている。

 

汗を少しかき始めた時、物音がした。

 

「・・・ん?」

 

聞き間違いかと思った時だった。

 

「・・・・・・キュイ・・・」

 

「な、鳴き声?カモメ?」

 

しかし聞こえてくるのはカモメの鳴き声ではない。

 

しかも聞こえてくるのは隣のベンチの辺りからだ。

 

(ベンチの上には何もいない、だとしたら下か?)

 

恐る恐る下を除くとそこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白くてモフモフしたものがあった。

 

「・・・なに・・・これ?」

 

手を伸ばすともぞもぞと動いた。

 

ビックリして手を引っ込めると謎のモフモフはベンチのしたから出てきた。

 

「これって・・・アザラシ?」

 

中から出てきたのはアザラシの子供だった。

 

アザラシはこちらを見ると

 

「・・・キュキュイ・・・」

 

と鳴いて後ろに下がっていく。

 

(なんでアザラシ?なんでここに?しかもここ沖縄だぞ?)

 

見る限りそのアザラシは怯えている上に少し弱っているように見えた。

 

「・・・とりあえず中に入れた方がいいな、ごめんよ!アザラシさん!」

 

アザラシをそっと捕まえ、僕は研究所の中へ入った。

 

僕がいた所からさっき皆といた所は少し距離がある。

 

しかもこういう時に限って職員が見当たらない。

 

アザラシは暴れる様子もなく大人しく僕の腕の中で抱かれている。

 

人を探しているとどこかわからない所に出た。

 

「・・・自分が方向音痴なの忘れてた。」

 

詰んだ、と思った時だった?

 

「・・・あれ、九条くん?」

 

後ろを向くとそこには松原さんがいた。

 

「ま、松原さん!よかったぁ・・・」

 

「どうしてここに?って、それってアザラシ!?」

 

「はい、外のベンチで休んでいたら隣のベンチの下にうずくまっていて・・・とりあえず皆がいる所知ってますか?」

 

「その・・・私、実は方向音痴で・・・道に迷って・・・」

 

嘘だろ・・・完璧に詰んだよなこれ・・・

 

まさか松原さんも方向音痴だったとは思わなかった。

 

「と、とりあえず一緒に行動した方がいいですね、とりあえず職員さんを探さないと・・・」

 

「う、うんそうだね・・・」

 

方向音痴な2人組は職員を探すため歩き始めた。

 

 

 

 

 

「あ、あの制服!あれって!」

 

適当に歩いているとなんとか花咲川のみんなのところに着いた。

 

「よ、よかった・・・」

 

少し小走りで走って追いついた。

 

「あれ?松原さん?それにあなたは転入生・・・ってそのふわふわなに?」

 

1人の女子生徒がこちらに気がついた。

 

すると一斉にこっちにむいてきた。

 

「すごい、もしかしてアザラシ?」

 

「めちゃくちゃ可愛い!触ってもいい?」

 

「私写真撮りたい!」

 

「私にも抱っこさせて!」

 

めちゃくちゃ寄ってきた。

 

アザラシの様子を見るとかなり怯えている・・・

 

「く、九条くん・・・アザラシさんが・・・」

 

とりあえずここから離れた方が良さそうだ。

 

「え、えっと・・・ごめん松原さん!アザラシさん!我慢してください!」

 

僕は人混みを掻き分け走り出した。

 

後ろから松原さんと他の女子生徒達の声がしたが悪いが気にしている余裕はない。

 

D組、C組の列を抜け、B組の列を抜けようとした時、

 

「九条・・・さん?」

 

白金さんがこちらに気づき声をかけた。

 

「し、白金さん!あの!職員の人、知りませんか?」

 

僕は肩で息をしながら白金さんに訪ねた。

 

「え、えっと・・・多分・・・先頭の方に・・・」

 

「すごい!九条、それアザラシ?」

 

「アザラシ?見てみたい!」

 

「なんで九条がアザラシ抱いてんの?」

 

やばい・・・人がアザラシに気が付き始めた。

 

「すみません白金さん、ありがとうございます!」

 

「は、はい!」

 

白金さんに礼を言ってA組の先頭の職員を探しに走り出した。

 

A組の列を抜けると先頭に入口で挨拶してくれた男の職員さんがいた。

 

「す、すみません・・・その・・・外にアザラシがいて・・・」

 

「ん?あっ!そいつ!ちょっと待ってて!」

 

職員さんがトランシーバーで連絡を取り始めた。

 

「はい、見つけてくれました・・・はい、わかりました、彼を通しても・・・はい、ありがとうございます。」

 

「あの・・・このアザラシさんって。」

 

「そのアザラシ、今日美ら海の方に行く予定だったアザラシなんだけど人見知りでどこかに逃げてしまってね・・・僕達が抱いたら嫌がって暴れ出すのにここまで落ち着いてるとはな・・・」

 

職員さんが不思議そうに見てきた。

 

アザラシを見ると

 

「キュイキュイ!」

 

と鳴いて落ち着いている。

 

さっきまで寒かったはずなのに走ったせいかかなり涼しく感じる。

 

「とりあえず、一緒に来てくれないかい?僕が抱くと暴れてしまうからね。」

 

「は、はい!」

 

アザラシを抱いたまま僕は「第五研究エリア」と書かれた部屋に案内された。

 

そこにはこのアザラシにそっくりなアザラシが3匹いた。

 

「そいつらはこのアザラシの兄弟でね、わかりやすいように腕に色々なバンドを付けているんだ」

 

アザラシの腕を見ると赤や黄色などのバンドが巻かれている。

 

話によるとどうやらこのアザラシはそのバンドをつけようとした時に電話がかかってきて、目を離している隙に逃げたしたようだ。

 

「良かったら付けてみるかい?」

 

職員さんが青色のバンドを渡してきた。

 

「はい!やらせてもらっていいですか?」

 

「もちろん。」

 

そのアザラシを作業台の上に置いてバンドを付ける。

 

アザラシは暴れずに大人しくしてくれた。

 

バンドを付けるとアザラシは

 

「キュキュッ」

 

と嬉しそうに鳴いた。

 

「アザラシを見つけてくれてありがとう!そうだ!お礼と言ってはなんだけどその子に名前つけてくれない?」

 

「名前・・・ですか?」

 

「そ、他の子には名前あるけどその子だけ名前ないからね。」

 

他のアザラシをよく見るとバンドにドッグタグが付いていて「まるお」なり「メアリー」なり付いている。

 

「そうですね・・・出会った時暑がっていたんで・・・冷房・・・レイ!この子の名前はレイでお願いします!」

 

職員さんがドッグタグに「rei」と打ち込んでレイに付ける。

 

「君、そろそろ時間だろ?レイのことは任せて、友達の所へ戻ってあげなさい。」

 

「はい・・・レイ、またね。」

 

「キュキュキュイ!」

 

アザラシのレイに別れを告げ、僕は皆がいる所へ戻った。

 

 

 

 

 

 

見学が終わり、空港に着くと丸山さんが話しかけてきた。

 

「奏多くん、さっきは大変だったねー。」

 

「丸山さんいつから?」

 

「大体皆が研究所の真ん中ぐらいにいた時に追いついたんだー。今日の朝も沖縄ロケがあって・・・あまり皆と観光出来なかったな・・・」

 

丸山さんが大きなため息をつく。

 

「お疲れ様です、アイドルって大変ですね。」

 

「ホントだよ~。でも、私がやりたいって決めたことだから頑張れるんだ!」

 

「九条、丸山、早くしないと置いていくぞ!」

 

担任が大きな声で2人を呼んだ。

 

「呼ばれましたね・・・行きましょうか。」

 

「うん!バイバイ沖縄!」

 

こうしてハチャメチャだった沖縄修学旅行は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

後日

 

『さて、私は沖縄の美ら海水族館にきています!』

 

ニュースで美ら海水族館の特集をしていた。

 

「沖縄か・・・楽しかったな・・・」

 

『ここでは最近人気の動物の赤ちゃんが発表されたようです!それでは見に行ってみましょう!』

 

レポーターが歩き始め、ある水槽の前についた。

 

『その赤ちゃんとは、アザラシです!』

 

画面にアザラシが4匹映り出した

 

「・・・っ!レイ!」

 

そこには人にビビらず元気に歩いているレイと兄弟達の姿があった。

 

そして飼育員の人にインタビューを始めた。

 

『大盛況ですね!この子達のエピソードとかありますか?』

 

『はい、この中の青のバンドを付けているレイって子がいるんですけど。その子、人見知りで1度研究所から逃げてしまったんですよ。』

 

『えぇ!そんな事が?それからどうしたんですか?』

『その日見学に来ていた高校生が見つけてくれて連れてきてくれたんですよ。その時レイがとても落ち着いていたらしくて恐らく僕とその高校生以外が抱くと怖くて暴れてしまうんですよ。』

 

「・・・レイ、元気でよかった。」

 

僕はそのニュースを聞いてとてもほっとしていた。

 

次にレイに会える日はかなり先かもしれない。

 

けど必ずまた会いに行こうと僕は決心した。




沖縄修学旅行編はこれで終わりです。
ホントに半分がわちゃもちゃイベだわ・・・と思いつつなんとか形になったと思います。

さて、次からは「思い繋ぐ未完成な歌」をベースにLOUDER編やろうと思います!
次回の投稿日までお楽しみに!


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3章 ~LOUDER~オモイツナグ ミカンセイ ナ ウタ 15話 ハゲシイ シャウト

新章『~LOUDER~オモイツナグ ミカンセイ ナ ウタ』のプロローグ的な回です。
本当は投稿日じゃないのですがこの回は前からめちゃくちゃやりたかったので早めに投稿することにしました。

そして今回は新しく友希那sideが追加されます。主に奏多と燐子の目線で書くつもりですがこの回はやっぱり友希那さん目線が欲しいってことで追加することにしました。この3人の目線からのストーリーをお楽しみください!

てなわけで新章本編始まります!


Roselia結成から少し経ち、6月になった。

 

6月といってもまだ始めの方なので梅雨入りしておらず、外は快晴。

 

日曜でRoseliaの練習も珍しくオフなので僕は久々に外をぶらついていた。

 

「んー!たまには散歩も悪くないなぁ!」

 

体を伸ばしながら川沿いを歩いていた。

 

最近ずっとテスト勉強やRoseliaでの作業で座ってばかりいたのでこうしてのびのびと出来るのは久々である。

 

適当に歩いていると公園を見つけた。

 

「・・・ちょっと休憩するか。」

 

僕はそう思って公園に入った。

 

公園に入ろうとすると中に見覚えのある銀色の髪の人がいた。

 

「あれは・・・湊さん?」

 

背を向けてしゃがんでいるのでこちらには気がついていない。

 

声をかけようとしたがその光景に僕は思わず口を閉ざした。

 

そこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫だった。

 

しゃがんでいる湊さんの周りにたくさんの猫がいた。

 

しかもその猫達は湊さんに警戒することなく湊さんの周りに集まっていく。

 

(あの人、なんであんなに懐かれてんの?)

 

すると今まで黙っていた湊さんが口を開いた。

 

「・・・フフッ、にゃーんちゃん・・・お待たせ、今日はお菓子、持ってきたよ~」

 

(み、湊さんが!?に、にゃーんちゃん!?)

 

崩れていく・・・僕のいつも見ていた湊さんのイメージがものすごい勢いで崩れていく・・・

 

その湊さんは見たこともない緩い笑顔で猫達を撫でながら猫用であろうビスケットをあげていた。

 

(み、湊さんにあんな姿あったとは・・・このことリサ知ってるのかな・・・)

 

そんなことを考えている中、何のいたずらか突然くしゃみが出そうになる。

 

(あ、やばっ!)

 

思わず耐えようとするが

 

「・・・くしゅん!」

 

耐えたのだが音が漏れだしてしまう。

 

だがその小さな音でも湊さんが気づくのには十分だった。

 

「・・・誰?」

 

これは出ない方が逆に怪しまれると思い湊さんの前に姿を現す。

 

「そ、奏多!?」

 

「あの・・・ハハハ・・・」

 

「い、いつからそこに?」

 

「そ、その・・・に、にゃーんちゃん辺りから・・・」

「・・・っ!」

 

湊さんの顔がみるみる赤くなっていく。

 

猫達はそんなのお構い無しに湊さんの足に頬を擦り寄せている。

 

とりあえずこのままだと僕がストーカー扱いされそうな空気だったので無意味かもしれないがとりあえず話すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「日曜で予定もなかったんでたまには散歩しようかなと・・・」

 

「そう、散歩ねぇ・・・」

 

湊さんは少し疑い気味に返す。

 

「そして川沿いを歩いていたら公園があって、その公園で休もうとしたら湊さんがいたんですよ。」

 

「・・・はぁ、そういうことにしときます。けど!」

 

湊さんがこちらをくわっと見てきた。

 

「は、はいっ!」

 

「あの・・・あのことは忘れてちょうだい!」

 

「あのことって・・・」

 

「その・・・ね、猫のこと・・・」

 

(あ、この人あれだ・・・普段はツンとしてるけど緩いとこ見られたら慌てて隠そうとするタイプの人だ!)

 

忘れてと言われても一度見てしまったものはそう簡単に忘れられない。

 

「は、はい・・・」

 

とりあえず相槌を打つ。

 

ここで忘れられないと言われても逆にめんどくさくなるだけだ。

 

すると1匹の猫が近づいていた。

 

「ニャー」

 

「あら、どうしたの?」

 

猫は身軽に湊さんの膝の上に乗ってきた。

 

「ニャァ・・・」

 

「そう・・・ちょっと待ってて。」

 

そう言って湊さんは自分の鞄からさっきの猫用ビスケットを取り出して猫に与えた。

 

「猫・・・かなり懐いてますね。」

 

「・・・えぇ。私、よくこの公園に来るから。」

 

湊さんはそう言って猫を撫でる。

 

猫も目を閉じて喉を鳴らして湊さんの膝の上に丸まった。

 

「そういえば奏多、次のライブのセットリスト考えている?」

 

次のライブは2週間後でそろそろ曲のセットリストを考えなければならない時期だ。

 

次やる曲は3曲、あらかじめ湊さんに言われていたので考えてはいた。

 

「えっと・・・1曲目を熱色スターマイン、2曲目をBLACK SHOUTの流れで行こうとは思うんですけど3曲目をそのまま勢いに乗らせるか、緩急をつけるべきかで考えているんですけど・・・」

 

「そう、はじめの2曲はいいセットだと思うわ。」

 

「はい。ここはあまり外したくないので残りの1曲は明日皆に聞いてみようと思います。リサや白金さん達の意見も聞きたいですし。」

 

「それでいいと思うわ。」

 

湊さんは納得したように相槌を打った。

 

「そういえば前から気になってたのだけれども。」

 

「はい?」

 

「奏多は何故ほかの人は名字なのにリサだけ下の名前で呼んでるのかしら?」

 

突然のその質問に僕はビクッとした。

 

とりあえずバイトであったことをそのまま話した。

 

「その・・・リサにバイト始めた日に話の練習するついでにアタシの事はリサって呼んでと言われて・・・」

 

「そう・・・リサらしいわね。」

 

今考えると僕が今下の名前で呼んでいるのはリサと日菜さんしかいないかもしれない。

 

「なら私の事は友希那って呼んで。」

 

「は、はい!?」

 

「話す練習をしているのでしょ?それぐらい慣れてもらわないとマネージャーとしてどうかと思うけど?」

 

「は、はい・・・ゆ、友希那さん?」

 

「さん付けは無し。」

 

「はい!その・・・友希那・・・?これで・・・いい・・・ですか?」

 

「はぁ・・・本当は敬語も直して欲しいけど、まぁそれでいいわ。」

 

みな・・・友希那が少しため息をつく。

 

「話がズレたけど私の方でも考えておくわ。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

友希那が移動するのを察して猫が膝から降りる。

 

「それじゃ、また明日練習で。」

 

「はい、また明日よろしくお願いします。」

 

友希那と別れ、時間もいい所なので僕はそのまま家に帰ることにした。

 

ライブの件は正直新曲を試してもいいとは思うのだが2週間で作詞からやるのはかなり難しい。

 

その上氷川さんなら「中途半端なものはライブで演奏出来ない」と言いそうなのでもし、新曲をするとしたらカバー曲ぐらいなのだ。

 

「あぁ・・・Roseliaに合ってアップテンポのいい曲無いかな~」

 

僕はそう考えながら来た道を帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

奏多と別れそのまま家に着いた私は鞄を置いて色々な曲のスコアを置いている棚の前に立った。

 

「奏多が言っていた曲で合いそうなもの・・・たしかこの辺りに・・・」

 

探していると黒い四角のものが入っていた。

 

「・・・なにこれ?」

 

それはカセットテープだった。

 

音楽配信が普通な今の世の中ではカセットテープはかなり古いほうだ。

 

見たところ10年以上前のものだった。

 

恐らく何かの拍子に入れてそのままだったのだろうか。

 

最近この棚の中を見ていなかったので何時頃から合ったのか覚えていない。

 

「この家にあるということは曲・・・なのかしら。」

 

悩んでいても仕方が無いのでそのカセットテープをラジカセに入れた。

 

私のラジカセは昔から使っているのでカセットテープに対応していた。

 

テープの巻取りが終わり、私は再生ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは私にとって衝撃的な音楽だった。

 

(何・・・この激しいシャウト?)

 

ラジカセから流れ出す激しいドラムとギターの音。

 

聴いたいるだけで心が揺さぶられる感覚に陥るしかし衝撃的なのはその歌い手の声だった。

 

(これは、お父さんの声!?)

 

その声は自分の父の声だった。

 

私の父は昔、インディーズというバンドを組んでいてボーカルをしていた。

 

しかし10年前あることがきっかけでバンドは解散してしまった。

 

曲の殆どのスコアは父が処分してしまったらしく私は父がバンドをしていたこと以外その内容をよく知らない。

 

しかしこの声は間違いなく父のものだ。

 

(お父さん・・・すごく楽しそう・・・。この曲から純粋な音楽に対する熱意が伝わってくる・・・。)

 

曲が終わりカセットテープを取り出した。

 

そのカセットテープの背面によく見ると題名らしきものが書かれてあった。

 

そこには

 

 

 

『インディーズ LOUDER』

 

 

 

と父の文字で書かれていた。

 

「LOUDER・・・この曲、私も歌ってみたい・・・!」

 

この曲なら今回のライブのセットリストに合うかもしれない。

 

しかし・・・

 

「私にこの歌を歌う資格は・・・あるのかしら・・・」

 

私の歌声に、この曲を重ねる資格・・・

 

私はその後、その有無をずっと考えていた。

 




今回、燐子は出てこなかったけど投稿日の今日は燐子誕生日なのでしっかり祝ってます!
次の友希那さんの誕生日は特別編やる予定なんでよろしくお願いします!


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16話 イガイ ナ セッテン ボーカル ト ベース

何気に投稿日じゃない昨日にさらっと上げてます見てない方はそちらからドゾ。

昨日は燐子誕生日だったのに前話は燐子出てない・・・!
てなわけで今回しっかり出るので!
まぁ最初は友希那sideから入るので出てくるの多分中盤辺りだと思うけど!
いい加減進展させないと面白みが薄れるな・・・タグ詐欺になりそうだし・・・←怖いのそこかよ

そういう事で未だ友達関係な本編始まります!


私は今CIRCLEの前に立っている。

 

練習の日ということもあるが、その鞄の中にはいつもは入っていないものも入れている。

 

それは昨日見つけたカセットテープだ。

 

昨日これを歌うべきかを悩んだ私はとりあえずみんなに聞いてもらうべきだと考えてこうして持ってきている。

 

 

 

『LOUDER』

 

 

 

父が残していた私が知る中で一つだけの父の曲。

 

まだ10年以上前、父がバンドに熱意を向けていた頃の曲。

 

この曲からは音楽に対する熱意と楽しさが感じられる。

今のRoseliaならこの曲を完璧に演奏できるかもしれない。

 

しかし、他のメンバーが演奏出来ても私が歌わなければ完成しない。

 

この曲を歌ってみたい気持ちはある。

 

しかし、私が『最高の音楽』を求める思いとこの頃の父の思いはどうもかけ離れすぎているような気がする。

 

この曲を歌う資格は私には無いのかもしれない。

 

昨日散々悩んでその結果持ってきているのだが、これを聴かせて皆はどんな反応をするのだろうか。

 

その反応に私はどう返せばいいのだろうか。

 

「・・・そんなこと考えても変わらないわね。」

 

この時間だと他のメンバーは揃っているだろう。

 

この件は練習の後みんなに話そうと思い私はCIRCLEの中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

僕はいつも通り集合時間の15分前には準備を始めている。

 

・・・といっても大体先に氷川さんが居るので、ほとんどは練習中に飲む水の準備や重い荷物の運搬などぐらいなのだが。

 

「そういえば氷川さんって何時ぐらいに来ているんですか?」

 

「そうね、大体集合時間の20分前ね。いつもこれぐらいですよ。」

 

「そんなに早く来て暇にならないんですか?」

 

「遅れて皆に迷惑をかけるぐらいなら早く来て待っていた方がいいと思いますけど。」

 

それもそうかと納得しつつドラムのセットを運ぶ。

 

すると僕の携帯にメールが来た。

 

「LINEじゃなくてメール?誰からだろう?」

 

僕は携帯を取り出して内容を見る。

 

差出人は・・・「九条茂樹」と書かれていた。

 

「え?シゲさん?」

 

シゲさんは僕の親父の弟で叔父に当たる人だ。

 

今、音楽雑誌の仕事をしているのでいつも忙しく、会うことが出来るのは正月ぐらいだ。

 

しかし小さい頃から母親がいない僕のことを可愛がってくれたので昔からシゲさんと読んでいる。

 

「シゲさん・・・とは?」

 

氷川さんが僕の反応に気づき、尋ねてきた。

 

「僕の叔父です・・・仕事で滅多にメール送ってくれないのに・・・」

 

とりあえず内容を読んでみた

 

『ひさしぶりだな奏多。突然で悪いが兄貴に頼まれてお前の様子を見に行くことになったから今からそっちに行くぜ。今日の夕方辺りに着くと思うから飯と部屋の準備よろしく! 茂樹』

 

いや、そんな唐突に言われても!?

 

僕はシゲさんが親父とは違いかなり自由人な性格をしているということを今更ながら思い出した。

 

「どうしました九条さん、顔がひきつってますけど・・・」

 

「え、えっと・・・叔父が今からこっちに向かうって言われて・・・」

 

「お、お疲れ様です・・・」

 

氷川さんもこちらの心境を察したようだ。

 

「しかし、それはそれこれはこれ。練習にはしっかり集中してくださいね。」

 

氷川さんがそう言って準備を再開する。

 

そろそろ他のメンバーも来る頃なので僕もシゲさんに『今日6時ぐらいまでバイトあるから早くついたら適当に時間つぶしといて』とだけ送って準備を再開した。

 

 

 

 

 

 

今日の練習が終わって片付けを開始しようとした時、

 

「・・・みんな、ちょっと集まって。」

 

と友希那に呼ばれた。

 

いつもこんなことは無いのでみんな不思議に思いながら友希那の前に集まる。

 

「友希那、一体どうしたの?」

 

「皆に聴いてほしいものがある。」

 

リサの問いかけに友希那はカセットテープを見せてCIRCLEにあるラジカセに差し込む。

 

(カセットテープ・・・どうしてあんな古いものが?)

 

準備がおわり、友希那が再生ボタンを押す。

 

そこから流れたのは激しいシャウトから始まる歌だった。

 

その曲に全員が驚き、その曲を聴き入っている。

 

激しくて、だけど繊細で胸がぎゅっと締め付けられるような感覚におちいる。

 

(こんな曲があったなんて・・・しかし誰が歌っているのだろう・・・)

 

そう考えているうちに曲が終わった。

 

「すごい・・・すごいすごいすっごーい!カッコイイ!超カッコイイ!ねぇりんりん!」

 

「う、うん・・・そうだね・・・すごく・・・カッコイイ。」

 

「確かにすごい曲・・・しかし誰が・・・」

 

「ね、ねぇ友希那・・・この声ってもしかして・・・」

 

リサが思い当たるような質問をする。

 

しかし友希那はそれに答えなかった。

 

「・・・ごめんなさい、やっぱりこの曲は私達には見合わない。余計な時間を取らせてしまったわね。」

 

「え、でも・・・」

 

「・・・宇田川さん、湊さんは考えていることがあるのだと思います。」

 

宇田川さんを氷川さんが静止した。

 

「ゆ、友希那!その曲、録音だけしていいかな?」

 

「・・・?別に構わないけど。」

 

特に意味もないかもしれないが、一応残しておいた方がいいと思いラジカセにパソコンを経由して曲を保存する。

 

保存が終わり、片付けを再開しようと後ろを向くと友希那を除く4人がびっくりした顔をしていた?

 

「ど、どうかしました?」

 

「あの・・・九条さんが、」

 

「友希那さんを・・・下の名前で・・・呼んでる・・・」

 

「ソータ・・・一体どうしたの?」

 

そういえばみんなの前で友希那を下の名前で読んだことない・・・

 

「えっと・・・実は昨日友希那とたまたま会って・・・その時慣れるために下の名前で呼んでって言われて・・・」

 

僕は少々あたふたした。

 

「・・・マネージャーがその程度で慌ててどうするのかしら。」

 

友希那がため息をつく。

 

「と、とりあえず早く片付けてしまいましょう!リサも次バイトでしょう!」

 

とりあえずみんなを急かして話を流しその日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

練習の後、私はあこちゃんと帰っていた。

 

いつも私と九条さんとあこちゃんの3人で帰っているのだが九条さんはバイトのため今井さんと先に行ってしまったので2人で帰っている。

 

「ねぇりんりん、あの曲良かったよね」

 

「そうだね・・・でも今の私達には見合わない・・・って言われたね。」

 

「見合わないってどういう事だろ・・・あこ達のレベルがまだまだなのかな・・・でも頑張って練習したらできるようになるんじゃないかな。あこ、あの曲に見合う演奏ができるようになりたい!」

 

「・・・うん、私も・・・同じ気持ち。でも・・・友希那さんがどう言うか・・・。」

 

2人で悩んでいると噂をすればと言うべきか友希那さんがいた。

 

どうやら自販機で飲み物を買っていたようだ。

 

もちろんあこちゃんも気づいた。

 

「ねぇ・・・あれって友希那さんだよね。・・・よしあこ、もう1回お願いしてくる!」

 

そう言ってあこちゃんが走り出した。

 

「ま、待って・・・あこちゃん!」

 

あこちゃんを追いかけるが運動は得意ではないので全然追いつけない。

 

追いついた頃にはあこちゃんは話を切り出していた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・あこちゃん・・・早い・・・」

 

「りんりんっ!りんりんもあの曲演奏したいよね!」

 

「・・・う、うん・・・私も演奏したい・・・どなたの曲なのかはわからないですけど・・・きっと・・・友希那さんの歌声にあう、素敵な歌だと思いました・・・!」

 

「私の・・・歌声に?」

 

「私、友希那さんの歌声が好きです・・・!強くて、繊細で・・・時には音楽を求めすぎるあまり、まるで恋焦がれているような焦燥感を感じる・・・そんな歌声をしています。先程の曲を聞いた時・・・友希那さんの歌声を初めて聞いた時のような感覚に陥りました。」

 

「・・・」

 

友希那さんは黙って聞いている。

 

「だから・・・その・・・友希那さんにあの歌を歌って欲しい・・・そう思います・・・」

 

「お願いします!友希那さん、あの曲演奏させてください!あこ達のレベルが合ってないなら皆で猛練習します!だから!」

 

「・・・私の歌声は、そんなに純粋なものではないわ。」

 

「えっ・・・!?」

 

「私には・・・今の私にはあの曲を歌う資格はない・・・」

 

「友希那・・・さん?」

 

「ごめんなさい、あなた達の熱意はたしかに受け取ったわ。ありがとう。けど、この件に関しては、少し考えさせて・・・」

 

友希那さんはそう言って帰っていった。

 

その時のあの人の表情はとても悲しそうな表情をしていた。

 

自分の歌声を否定し、あの曲に自分の歌声を合わせる資格はないと言ったものの本当は歌いたいから私達に聞かせたのではないだろうか。

 

「・・・ねぇりんりん、もしもここに九条さんやリサ姉がいたらどう言ってたんだろ。」

 

「・・・そうだね。」

 

もし、九条さん達がいたらこの状況は変わっていたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「くしゅん!」

 

「ソータ、風邪?」

 

「いやそんなことはないと思います・・・」

 

誰かが噂したのかな・・・

 

練習が終わって僕とリサはこんなことを話しながらコンビニへ向かっていた。

 

この後、昨日のことをあれこれ聞かれたが後々怖いので適当に流し、コンビニに付くと着替えてレジの前に立った。

 

夕方頃なので人もあまり多くなく、そこまで忙しくなかった。

 

レジにたって2時間後、全然客入ってこないのでがボーッとしてると客が入ってきた。

 

「いらっしゃいま・・・!」

 

なんと入ってきたのはシゲさんだった。

 

「お、奏多!正月以来だな!お前ここで働いてたのか!」

 

シゲさんが笑顔で話しかけてくる。

 

「う、うん・・・ひさしぶりシゲさん。」

 

「ソータ?どうしたの?」

 

リサが奥から出てきた。

 

「え、えっと・・・」

 

「おっす!奏多の叔父の茂樹って言うもんだ!よろしくぅ!」

 

「よ、よろしく・・・お願いします・・・」

 

リサもかなり引いている。

 

「し、シゲさん!今バイト中だから後にして!後に!」

 

「お、そうか悪ぃ悪ぃ!」

 

シゲさんはとりあえず商品を選びにレジの前から立ち退いてくれた。

 

「えっと・・・すみません、僕の叔父が・・・」

 

「なんか、凄い人だね・・・ソータの叔父さん・・・」

 

「ええ、かなりの自由人なんで・・・」

 

そろそろバイトが終わる時間なのでシゲさんには待ってもらうことにした。

 

 

 

バイトが終わり僕とリサはコンビニを出るとそこにはシゲさんが待っていた。

 

「おう!お疲れさん!ほらよ、差し入れだ!」

 

シゲさんは僕に缶コーヒー2本を渡してきた。

 

1本をリサに渡す。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「ありがとう、シゲさん。」

 

「いいってことよ!そういえば、今井ちゃんだっけ?」

 

「そ、そうですけど、なぜ名前を?」

 

「いや、店員の胸に名札ついてるだろ?家どの辺?夜の道は色々危ないし送ってやるよ!」

 

シゲさんはどうやら車で来ていたらしい。

 

「シゲさん・・・それいきなり言っても困ると思うけど・・・」

 

「ん~まぁいいか。お言葉に甘えてお願いします!」

 

「あいよ!」

 

(いいのか!?それで!)

 

そう思ったがなんとも言えずに僕とリサはシゲさんの車に乗った。

 

そこで僕はさっき録音した曲を流した。

 

(そういえば曲名聞いてないな・・・)

 

と思って流し始めた時だった。

 

「お、おい奏多!その曲なんで知っている!?」

 

シゲさんがびっくりした顔でこちらを見てきた。

 

「茂樹さん!前向いて!運転中!」

 

「お、おう悪ぃ・・・」

 

リサがとりあえずシゲさんを前に向かせる。

 

「んで、奏多。なぜその曲を知っているんだ?」

 

「シゲさん、この曲知ってるの?」

 

「いや、知ってるも何もその曲俺が演奏してんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

え?今なんつった?

 

「・・・え?シゲさん、今なんて言った?」

 

「だーかーらー、その曲俺が昔演奏していた曲なの!」

「「えぇ~!!」」

 

僕とリサは車の中で大声で驚いた。

 

 

 

「なるほどね・・・湊ん所の嬢ちゃんとバンド組んでて今日その曲聞かされてやっぱ辞めると言われたのか・・・」

 

僕はとりあえずさっきの事をシゲさんに説明した。

 

シゲさんは納得したようで僕はそのまま質問した。

 

「ね、ねぇシゲさん。シゲさんはなんの楽器演奏してたの?」

 

「俺か?俺はベースやってた。」

 

「ベースですか?アタシもベースやってるんですけど!」

「そうか今井ちゃん!ベース仲間だな!」

 

シゲさんがニシシと笑う。

 

「けど、まさか湊この曲のカセット残してたんだな・・・」

 

「シゲさん、この曲の名前何ていうの?」

 

「この曲は『LOUDER』と言ってな、俺達が全盛期だった頃にやっていた曲だ。その後解散した時にスコアとかカセットとか全部湊が持っていってよ全部処分したとか言いやがるんだ。」

 

「友希那のお父さんがバンドやってたの知ってるけどまさかそのメンバーに会えるなんてね・・・」

 

「そうだ今井ちゃんよ、湊どこ住んでんか分かる?」

 

「どこってアタシんちの隣だけど?」

 

「え、友希那とリサって家隣だったんですか?」

 

「そうだよ、言ってなかったっけ?」

 

意外な事実に驚く僕を余所目にシゲさんが豪快に笑った。

 

「ハッハッハ!そりゃ丁度いいや!湊んとこ行くか!」

 

「え、そんな勝手にいいの?その人にも仕事あるでしょ?」

 

「えっと・・・今の時間なら多分友希那のお父さんいると思う・・・」

 

「よし!湊家に突撃だ!」

 

行き先が今井家から湊家に変更され僕達は強制的にシゲさんの自由人行動に付き合うハメになった。




微妙な終わり方ですが続きは次回です!(こういう焦らす系を試してみたいと思っただけ)
さて、いつになったら奏多くん全員下の名前呼びになるのかな~


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17話 ヨミガエル オト ヒキツガレル イシ

なんだかんだで続いてるな~これ
LOUDER編終わったら何やろ・・・
と思う作者であった。

作者ほっといて本編どうぞ!


友希那side

 

燐子達と別れて帰宅した私はベッド上でずっと考えていた。

 

『私、友希那さんの歌声が好きです・・・!強くて、繊細で・・・時には音楽を求めすぎるあまり、まるで恋焦がれているような焦燥感を感じる・・・そんな歌声をしています。』

 

「私の歌声・・・か。」

 

燐子に言われたことをずっと考えていた。

 

確かに音楽に対する熱意はほかの誰よりも上だということに自信はある。

 

しかし、燐子が言うような歌声で歌えている自信はない。

 

私は1度だけ、父のライブを見たことがある。

 

小さい頃だったので曲やメンバーはあまり覚えていないが、その時の父は本当に楽しそうにしていた。

 

しかし、父が引退した時から父の表情は変わってしまった。

 

昔とは違い、まるで昔のことをあまり思い出したくないように見える。

 

そんな父を超えるため、私は歌い始めたのだがそんな理由で始めた自分にやはり歌う資格はない。

 

やはり私はメンバーが増えて考えが変わってきたとしても、その始まり方の呪縛から離れなれない鳥籠の歌姫。

そう考えてしまうのだ。

 

「・・・もう1度、聴いてみましょう。」

 

私はもう1度、LOUDERを流した。

 

やはり音楽に対する愛情と熱意はこちらの方が上のように聞こえてしまう。

 

父はどのような気持ちでこの曲を歌ったのだろうか。

 

するとドアをノックする音が聞こえた。

 

「友希那、ちょっといいか?」

 

それは父の声だった。

 

「お父さん?えぇ、いいけど。」

 

ラジカセを止め、父を部屋に入れた。

 

「懐かしい曲が聞こえて、ついな。もう10年以上前の曲じゃないか。」

 

父が懐かしいそうな表情でそう言った。

 

「私、この曲を歌いたいと思ったの、でも・・・私には・・・」

 

「それなら歌えばいい、何をためらっているんだ?」

 

「それは・・・」

 

するとインターホンがなった。

 

「すまん、話は後で聞く。」

 

父が部屋を出て下へ降りる。

 

すると父の驚く声が聞こえた。

 

気になって下に降りるとそこには父の知り合いである人とリサと奏多がいた。

 

「リサ?それに奏多も?どうしてここに?」

 

「えっと・・・色々あって・・・」

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「えっと、その道を左で後は直進です。」

 

「おう、もうすぐだな!」

 

シゲさんがとてもワクワクした顔をしている。

 

今考えたら2人の家まで行くのは始めてだ。

 

家の近くで車を止めて、僕達は歩いて友希那の家の前に着いた。

 

「お、ここだな!湊なかなかいい家住んでんじゃん!」

 

「そして隣がリサの家ですか?」

 

「そ、昔は窓越しによく話したんだけどな~」

 

シゲさんがインターホンを押した。

 

すると中から男の人が出てきた。

 

「はい・・・ってシゲ!?」

 

「おう、湊!久々だな!」

 

「お前どうしてここに・・・ってリサちゃん?」

 

「こんばんは、友希那のお父さん!そそ、彼が」

 

「えっと友希那と同じバンドでマネージャーをしている九条奏多です。シゲさんの甥にあたります。」

 

すると玄関の奥から友希那が出てきた。

 

「どうしたのお父さ・・・リサ?それに奏多も?どうしてここに?」

 

「えっと・・・色々あって・・・」

 

リサが苦笑気味に返す。

 

「おっ、お前が湊の嬢ちゃんか!俺はこいつと同じバンドでベースしてた九条茂樹ってもんだ!奏多の叔父だ!」

 

友希那がそれを聞いて呆然としている。

 

「とりあえずここでもなんだ、とりあえず中に入れ。」

 

「おう、邪魔するぜ!」

 

「お邪魔しま~す。」

 

「えっと・・・お邪魔・・・します。」

 

友希那のお父さんが中に入れてくれた。

 

 

 

リビングに案内されて向かい合うように席に座らされた。

 

「・・・で、シゲ、何故リサちゃんや奏多くんを連れてここに来た?」

 

「いや、元々一人暮らししてるこいつの様子を見に来たんだけど、一緒に出てきた今井ちゃんを送ろうと思って場所聞いたら湊ん家の隣だと聞いてよ、そんでだ。」

 

それを聞いて友希那のお父さんはため息をついた。

 

「・・・お前のそういう所、昔っから変わってないな。」

 

「俺らしくていいだろ。それと」

 

シゲさんの声がいきなり低くなった。

 

「こいつら、LOUDERやろうとしてんだろ。何故お前が処分したはずのあの曲のカセットを持ってんだよ。」

 

「・・・本当は全て捨てるはずだった。過去の事を、あの時の事を忘れたいがために。」

 

友希那のお父さんはその質問にゆっくりと返した。

 

「けど、あの曲はLOUDERだけは捨てられなかった。この曲は俺達の魂がこもっている。俺や、お前や、他のみんなとの絆の曲だ。この曲を捨てたら、お前達の関係も消えそうだったから・・・」

 

「お父さん・・・」

 

友希那は心配そうにお父さんを見ていた。

 

「ふっ、やっぱりお前も昔から変わってないじゃん。」

 

「・・・え?」

 

「お前のその音楽に対する愛情、仲間を思う気持ちと優しさに惚れたから俺たちゃお前に付いてったんだよ!奏多が車ん中でこの曲流した時驚いてよ、湊との関係聞いた時俺は正直嬉しかった!お前がまだ音楽に対する熱意を持っていたこと、その意志が継がれていることにな。」

 

「シゲ・・・」

 

「それと嬢ちゃん!」

 

「は、はい!」

 

シゲさんが友希那に話を降った。

 

「アンタ、自分の歌声を合わせる自信がないって思ってるな。」

 

「・・・はい。あの曲から感じる音楽への純粋な情熱・・・それを私の歌声に載せて歌える自信がなくて・・・」

 

(だから友希那は・・・)

 

僕はまでの行動の理由に察しがついた。

 

「友希那・・・それで・・・」

 

リサも察しがついた様だ。

 

「なら嬢ちゃん、その思いをのせて歌えばいい。」

 

「・・・え?」

 

「今、誰も歌わなくなったこの歌は思いがないただの歌詞になってしまってんだ。別にこいつと同じように歌わなくてもいい、自分の思う通りにに歌えば自ずと自分の気持ちに気づくし、この曲も新たな思いをのせて蘇る。他人に合わせるんじゃない、自分の歌声を信じて歌ってみろ。」

 

シゲさんが自分の意見を伝える。

 

「九条・・・さん。」

 

「・・・ハハッ、お前らしい意見だな。」

 

「ニシシ、俺は難しいことわかんねぇからよ!だから我が道を行く生き方してんだ。」

 

するとシゲさんが何かを思いついた表情をした。

 

「そうだ湊!明日お前暇か?」

 

「あ、あぁ・・・仕事は休みだが・・・」

 

「なら、もう一度だけやらねぇか?こいつらに本物を見せるために!」

 

突然の提案だった。

 

「ちょ、シゲさん!そんないきなり!てか、もしいけても他のメンバーさんどうすんだ!?」

 

「え?今から呼ぶけど?」

 

「え?じゃないよ!」

 

僕がツッコミを入れる中、シゲさんは友希那のお父さんの方を向いた。

 

「安心しろ、お前がOKを言うだけであいつらは絶対来る。お前がやるかどうかだ。」

 

友希那のお父さんは無言のまま考えている。

 

「お父さん・・・」

 

「・・・わかった。1度だけやろう。」

 

「うっし!んじゃちょっと待てよ。」

 

シゲさんが連絡を送り始めた。

 

「ねぇ茂樹さん。そんないきなり送ってもすぐに返事は」

 

「よし湊!全員行けるぞ!」

 

「・・・嘘でしょ?」

 

リサがその速さに呆然とする。

 

「シゲは昔からそういうの早かったよな・・・他のみんなも返すの早いし・・・」

 

「お前が遅すぎるだけなんだよ!」

 

「ってことは・・・シゲさんそれって。」

 

「おう!インディーズ再集結!」

 

僕とリサと友希那が呆然としている中、友希那のお父さんは笑顔でシゲさんを見ていた。

 

 

 

 

 

この話が終わり、湊家から出ようとした時、

 

「ってかソータ、いつもそんな感じに話せばいいのに。」

 

リサにそう言わた。

 

「あぁ、こいつ昔色々あったせいでなれた相手じゃないと内側見せねぇからよ、めんどくさいと思うけど勘弁してやれ。」

 

シゲさんがリサにそう返した。

 

「昔って奏多。一体何が・・・」

 

「えっと・・・その・・・あははは・・・」

 

僕は曖昧に返すことしか出来なかった。




奏多の昔はプロローグの一番最初アレです。
その話は詳しくやる予定ですので。

てか今回インディーズの2人しか喋ってないし奏多ほとんどツッコミに回ってた・・・
奏多とシゲさんのイメージはFate/Zeroのイスカンダルとウェイバーだと思ってくだせぇ。(知らない人は見てね!)


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18話 LOUDER オモイツナギ ヒキツガレル ウタ

わーい投稿日(21日)誕生日だぁ!
ログボ燐子だぁ!
ガチャは渋いわぁ・・・

祝17歳ということで『~LOUDER~オモイツナグ ミカンセイ ナ ウタ』ラストです!(無論こうなるのは想定外)

今回は全員のsideが入ります!そのため切り替えが多くなると思う・・・そこはご了承ください。

次を日常パートにするか陽だまりロードナイトの回にするかで迷ってるけどそれはおいおい決めるとして

LOUDER編ラスト始まります!


友希那の家の騒動から夜が明け、CIRCLEにはいつものRoseliaのメンバーとインディーズのメンバーが揃っていた。

 

「まさかホントに揃うとはな・・・」

 

「だから言ったじゃねぇか!お前が呼べばいつだって集まるって!」

 

シゲさんが友希那のお父さんの背中を叩く。

 

その後こちらを向いた。

 

「えっとこいつらが昔のメンバー!自己紹介頼むぜ!」

 

すると長身の女の人が前に出た。

 

「シゲはやっぱり変わらないわね・・・私、キーボードをしていた黒木奈津子。よろしく。」

 

次に強面の男の人が前に出た。

 

「ギター担当だった、大山恭介だ。よろしく。」

 

次は背の低い優しそうな人が出てきた。

 

「俺、佐久間響!ドラムやってたもんだ!よろしくな、嬢ちゃん達!」

 

次はシゲさんが前に出た。

 

「んで俺が奏多の叔父でベースやってた九条茂樹だ!気軽にシゲって呼んでくれや!んで我らがボーカルの!」

 

シゲさんが友希那のお父さんに降った。

 

「ったく、気恥しいって。ボーカルで友希那の父の湊悠斗だ。いつも友希那が世話になってるな。」

 

友希那を見ると少し顔を赤くしている。

 

そんなことお構い無しにシゲさんは話を続けた。

 

「お前達が俺達の曲をやるって聞いてな!それなら本物を見せてみようってことになってよ!」

 

すると宇田川さんが友希那に顔をきらめかせて話しかけた。

 

「友希那さん!それってこの曲をやれるんですか?」

 

「えぇ、ようやく決心がついたわ。」

 

「湊さん、どうやら迷いが吹っ切れたようね。」

 

「友希那さん・・・表情が良くなってる・・・いつもの友希那さんだ・・・」

 

メンバーがいつもの友希那になったことに喜んでいた。

 

「まぁそういうこった!とりあえず俺達のLOUDER、聴いてくれや!」

 

インディーズのメンバーがそれぞれの位置について静まる。

 

メンバーの準備が終わると悠斗さんが話し出した。

 

「歌う前に言っておく。俺達のLOUDERを聴いたからと言ってそのまま真似る必要は無い。インディーズはインディーズの、RoseliaはRoseliaのLOUDERを奏でればいい。それだけは頭に入れといてくれ。では、聴いてください『LOUDER』!」

 

するとカセットで聞いた以上の激しいシャウトが流れ出した。

 

Roseliaのメンバーは静かに聴いているがその表情は始めてこの曲を聞いた時以上の感動した顔をしている。

 

インディーズの人たちもブランクを感じさせないぐらい凄く、そして楽しそうに演奏している。

 

演奏が終わると悠斗さんが肩で息をしながら話し出した。

 

「どうだ・・・これが俺達のLOUDERだ。この後、こいつら一人一人が担当のところへ行く。そこでこの曲のコツとかを叩き込んでもらえ。次のライブまで1週間ぐらいしかないそうだな。がんばれよ。」

 

「「「「はい!」」」」

 

友希那を除く全員がそれぞれの担当のところへ行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

私はあの演奏の後、黒木さんの所へ向かった。

 

「あなたがキーボードの子?黒木よ、よろしく。」

 

「えっと・・・白金燐子です・・・よろしくお願いします。」

 

「ふむふむ・・・あなた、人前に出るのは苦手なタイプね?」

 

「・・・!どうして・・・わかったんですか?」

 

「私、今は音楽学校でピアノを教えていてね。たくさんの生徒を見てると自然とわかってくるのよ。」

 

自分の特徴をひと目で見抜かれてかなりびっくりした。

 

黒木さんはそのまま話を続けた。

 

「けど心配しないで。あなたはお客さんを見なくていい。メンバーの背中を見て支えてあげればいいのよ。」

 

「え・・・?」

 

「恐らくあなたは人目が苦手なタイプなのよ。お客さんの方を見るとどうしても目線を感じてしまって固まってしまう。けどあなたには仲間がいる。その仲間の背中を見て、その手で、その音色で支えてあげれば自ずと自分の音色が良くなる。だから仲間の事をよく見てあげて。そっちの方があなたの成長に繋がると思うわ。」

 

「・・・は、はい!」

 

お客さんを見なくていい、仲間を見てあげることで私は伸びる。

 

そのことに自分を変える道が見えたような気がした。

 

「さ、話していても仕方が無いわ、さぁLOUDERを引いてみて!」

 

「はい!」

 

私は仲間を思う気持ちを載せてキーボードを引き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あこside

 

友希那さんのお父さんに言われたようにあこはあのドラムの人の所へ行った。

 

「お、君がドラム担当かい?佐久間響だ。よろしく!」

 

「えっと、宇田川あこです!よろしくお願いします!」

 

「お、元気のある子だ!こりゃ教えがいがありそうだな!とりあえず叩いてみろ。そっからだ!」

 

佐久間さんが笑顔でそういった。

 

あこは闇のドラマーの力を見せる時だと思い、ドラムを叩いた。

 

演奏が終わると佐久間さんが話し出した。

 

「うん、あこちゃんのドラムも悪くはねぇ。しかし、少し早まって演奏しているな。」

 

「う、そうですか・・・うぅ、どうしても早まっちゃうんだよな・・・」

 

いつものミスを言われてあこは少し気持ちが落ちた。

 

しかし、佐久間さんは慰めるように話を続けた。

 

「だが、あこちゃんの思いは伝わってる。ドラムは他のみんなのテンポを保つ土台でもあるんだ。自分がこの曲の土台を任されているって大きな気持ちを持って演奏したらいいんだ!そうすると自然と行ける!」

 

「あこが・・・土台を・・・」

 

自分がこの曲の土台を任されている、そう思うとめちゃくちゃやる気が出てきた。

 

「は、はい!あこ、頑張ります!」

 

「よし、その意気だ!もう1度!」

 

あこは自分が土台を任されている自信を持ってドラムを叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜side

 

私は大山さんの所へついた。

 

「ギター担当の氷川紗夜です。今日はよろしくお願いします。」

 

「あぁ、大山恭介だ。まずは引いてみろ。」

 

無愛想な人だなと思いつつ私はLOUDERを演奏した。

 

演奏が終わると大山さんは無言でこちらを見ていた。

 

「あの・・・どうでしょうか?」

 

「・・・悪くは無い、音もテンポもかなり正確だ。」

 

「はい、他には・・・」

 

「特に無い。」

 

「えっと・・・それじゃあ」

 

「しかし、音から楽しさが感じられんな。」

 

「・・・え?」

 

「正確で完璧な演奏もいい、しかしそればかりが音楽じゃない。正確さだけを追い求めるのは限度がある。その先を目指すなら音楽を楽しむ気持ちが大切だ。」

 

「なるほど・・・」

 

私が納得すると、大山さんは笑みを見せた。

 

「固くなってはダメだ。まずは笑って引いてみろ。その後はお前の場合感覚でわかるだろう。」

 

「は、はい・・・やってみます。」

 

「悪いな、元々口数は少なくてな。教えるってことが苦手なんだ。」

 

大山さんは苦笑気味に返した。

 

「フフッ、大丈夫です。やってみます。」

 

私は正確にではなく、音楽を楽しむことに集中してギターを弾き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

リサside

 

アタシは茂樹さんの所へ向かった。

 

すると茂樹さんはもうベースを構えていた。

 

「お、来たか今井ちゃん!」

 

「はい、よろしくお願いします!そのベースは?」

 

「こいつは俺が昔から使ってるベースだ。俺は見てアドバイスを送るのが苦手でよ、一緒に弾いてその都度アドバイスを送る方がやりやすいんでな。」

 

「なるほど、わかりました。」

 

アタシは茂樹さんと一緒に弾き始めた。

 

「テンポが緩い!もっと上げる!」

 

「は、はい!」

 

「そうだ、そのままそのまま!」

 

シゲさんの教えは思っていた以上にハードだがわかりやすく、自分のミスや遅れをその都度教えてくれる。

 

そして曲のラストを引き終わるとシゲさんが話しかけた。

 

「今井ちゃんよ、お前はどう思いながらベースを弾いてる?」

 

「え?えっと・・・みんなに合わせて置いていかれないように・・・けど弾いて楽しいっていう気持ちです!」

 

「弾いて楽しいって気持ちは悪かねぇ。ただ『置いていかれないようみんなに合わせる』はちと違ぇな。」

 

「え?」

 

「多分お前は自分が一番下手だから置いていかれないようにしないといけないと思ってるだろ。」

 

「えっと、はい。アタシだけみんなと違ってブランクがあるので・・・」

 

「だったら俺もこいつを弾くのは10年ぶりだ。大事なのは『置いていかれないように』じゃなくて『仲間を置いていかないように』って気持ちだ。ブランクなんて関係ない。自分が仲間を引っ張ってそいつらを置いていかないように合わせるって考えが大事なんだ。」

 

「自分が・・・引っ張る。」

 

アタシは仲間を支えてばっかで自分から引っ張ったことは無いことに気づいた。

 

茂樹さんはそのことを気づかせてくれた。

 

茂樹さんはそのまま話を続けた。

 

「そ、だからもっと自信持て!自分が一番下じゃなくて自分が仲間と同じってことにな!」

 

「・・・はい!」

 

「んじゃもう一回やるぞ!」

 

アタシは自分の音に自信を持ってベースを弾き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

私はその場に残って父の前に立った。

 

「友希那・・・」

 

「お父さん、私は何を」

 

「お前に言うことは一つだけだ。殆どは昨日シゲが言ってしまったからな。」

 

「・・・。」

 

昨日茂樹さんが言った『自分の思いを載せて歌う』ことと『自分の歌声を信じて歌うこと』。

 

それはもちろん覚えている。

 

しかし父からのアドバイスは貰えていない。

 

私は父からの一言を待った。

 

「楽しめ。」

 

父からのアドバイスはシンプルなものだった。

 

「・・・え?それだけ?」

 

「それだけだ。楽しめ、ただ純粋に音楽に対して楽しい思いを載せろ。自分が思うこと、それと一緒にな。」

 

「・・・ええ、わかったわ。」

 

その父からのアドバイスを受け取る。

 

まだ他のメンバーは練習中のようだ。

 

音がないとタイミングを合わせて歌いにくいので私は練習せずにみんなを待った。

 

みんなの思いと私の思い、そして楽しさをぶつけるために私は仲間を信じて待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

みんなが練習している中、僕は他のメンバーの練習を見ながら待つしかなかった。

 

仕事もほとんど終わらせてあるので見守ることしか出来ない。

 

そんな中、悠斗さんが僕の隣に座った。

 

「少し良いかな?」

 

「は、はい。何でしょう?」

 

「君にこれを渡そうと思ってね。」

 

悠斗さんは自分のカバンから大きな封筒を取り出して僕に渡した。

 

中身を見るとそれはLOUDERのスコアだった。

 

「・・・!これって、大切なものでは?」

 

「いや、君たちが持っていてくれ。この曲に新しい命を吹き込んでくれるお礼だ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

僕は素直にそれを受け取った。

 

「君は友希那のバンドのマネージャー何だってね。」

 

「は、はい。元々音楽に関しては全然でしたけど。」

 

僕は苦笑気味に返す。

 

「シゲがベースやってたことは?」

 

「全く聞いていませんでした。ほんとに知ったのは昨日です。」

 

「まぁ、あいつなら言い忘れそうだけどな。」

 

悠斗さんがそう言いながら笑った。

 

「君は彼女達の善し悪しを見つけるのが上手いそうだね。」

 

「はい、基本は良くないと思ったところを指摘しています。まさか僕にこんなことが出来るとは思ってなかったです。」

 

悠斗さんは頷きながら僕に提案した。

 

「なら、その悪い点にアドバイスを入れてあげるのはどうかな?」

 

「アドバイス・・・ですか。」

 

「あぁ、そこを指摘するだけじゃなくてもう少しどうすればいいと思うって自分の気持ちをぶつけてみたらどうだ?」

 

「・・・はい、やってみます!」

 

「お、全員終わったみたいだな。とりあえず集まるぞ。」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

それからRoseliaは1週間みっちりと練習を続けた。

 

インディーズのメンバーがそれぞれの仕事に戻った後も僕がアドバイス等を送って質を上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてライブ当日

 

メンバーが衣装に着替えている間、部屋の外で僕が待っていると

 

「よぉ!」

 

とシゲさんが後ろから声をかけてきた。

 

「シゲさん!来てくれたんですか?」

 

「俺だけじゃねぇよ!可愛い弟子のためにインディーズ全員で来た!」

 

後ろからインディーズのメンバー達が並んできた。

 

「弟子っていうか、まぁいいや。そういう訳だ。」

 

「そうね、あの子のキーボード、気になるしね。」

 

「あいつの音、どうなったかが知りたいだけだ。」

 

「ま、まぁそういうことだ。そうだ奏多くん、これを友希那に渡してくれないかい?」

 

僕は悠斗さんから銀のネックレスを渡された。

 

「あの、これは?」

 

「これは僕が昔ライブの時に身につけていたものだ。お守り替わりにと伝えといてくれ。」

 

「とにかく俺たちゃ客席で待っとく。いいライブ期待してるぞ!」

 

インディーズの人達が客席へ向かった。

 

僕は着替えが終わったらしい、みんなの元へ向かった。

 

「お待たせ、順番は?」

 

「これの次です。友希那、これを。君のお父さんからこれを渡すよう頼まれてね。」

 

「・・・!これは、お父さんが大切にしていた・・・」

 

「ライブの時に身につけていたものらしくて、お守り替わりにって言ってました。」

 

「・・・そう、ありがとう。」

 

話しているとまりなさんが声をかけてきた。

 

「Roseliaのみんな~そろそろだからステージ裏に来て~」

 

「・・・よし、行くわよ!」

 

みんながステージに上がって行く。

 

僕はそれをただ見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

ステージに上がると歓声が上がった。

 

この前より人が多くなっている。

 

「・・・Roseliaです。まずは1曲聴いてください。『熱色スターマイン』!」

 

奏多が考えたセットリストで私は歌い始めた。

 

 

 

 

 

熱色スターマインとBLACK SHOUTを終え、LOUDERの番が来た。

 

「次でラストです。この曲は私が・・・いえ、私達が尊敬するバンドから引き継いだ曲です。聴いてください、『LOUDER』!」

 

 

 

 

 

 

あこは『土台を任されていること』に自信を持って

 

燐子は『仲間を思う気持ち』を載せて

 

紗夜は『正確さだけでなく楽しむこと』に集中して

 

リサは『自分の音に自信を持ち、仲間を引っ張ること』を思って

 

そして私は『純粋に音楽に楽しい思いをぶつける』ために

 

全力でLOUDERを奏でた。

 

それは私達5人が初めて合わせた時以上の音を奏でた。

 

5人の思いを繋ぎ、引き継がれた歌は新たな思いを載せて蘇ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ライブ終了後

 

「みんな、お疲れ様です!」

 

「ええ、お疲れ様。」

 

「お疲れ様です。」

 

「お疲れ様!」

 

「おつかれ~!」

 

「お疲れ・・・様です。」

 

ライブが終わり、6人で楽屋に戻るとテーブルには6人分の飲み物と袋、そしてメモが1枚置かれていた。

 

メモには

 

『いいものを見させてもらった。それは俺達の思いを載せたアクセサリーが入っている。俺達が成し遂げれなかったことを託す インディーズ一同』

 

とシゲさんの文字で書かれていた。

 

「シゲさん・・・」

 

彼らの計らいに感謝し、その日からRoseliaの衣装にブレスレットが追加された。

 

それは思いを引き継いだ者達に送られる感謝のものだった。




これで『~LOUDER~オモイツナグ ミカンセイ ナ ウタ』は終わりです!何気に時間過ぎてる!21日中に終わんなかった!
次回からは他バンド交流編やる予定です!他のバンドとの交流お楽しみに!


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4章 他バンド交流編 ホシ ト ユウヒ ト エガオ 19話 Afterglow コーヒー ト パン ト オウドウロック

他バンド交流編です。
今更ながら思ったのはパスパレメンバー以外の交流が薄すぎる・・・との事で『他バンドの演奏を見てRoseliaの技量向上につなげる』との名目で交流編です。
今回はAfterglow編!何気にひまり(あだ名は疫病神)が誕生日だったのとモカがいるから交流させやすいとの事で
ひまりは悪くは無いんだ・・・ただあけしゃんの引退発表の朝に来たから・・・タイミングが悪かったんだよ・・・(ひまり推しの人すんません)

あと更新情報やお休みの時は基本Twitterで言っています。そちらもよろしくお願いします!→@kamuifantasy

ということで『他バンド交流編』始まります!


あのLOUDER初ライブから数日、六月も下旬となり雨が降り続く日々が多くなった。

 

雨が降っているということは客足が伸びず店は人が少ない。

 

しかし仕事は仕事なのでしっかり働いている。

 

今日はリサと青葉さんと僕の3人でレジ作業や商品の陳列などをしている。

 

僕と青葉さんがレジに立つ中、リサは届いた新商品の陳列をしようとしていた。

 

「お、新商品きたか~どれどれ?」

 

「私は美味しければどれでも~」

 

「いや、これ商品なんで・・・」

 

「すごい、このスイーツ猫の形だ!」

 

リサはこちらにそのスイーツを見せてきた。

 

見るとそれは猫を模したカップケーキだった。

 

「おお~すごいですね。」

 

「最近のコンビニスイーツってすごいですね・・・」

 

「うんうん、これ友希那喜びそうだな~」

 

「そうですね。」

 

僕が相槌を打つとリサが不思議そうにこちらを見てきた。

 

「あれ?なんでソータが友希那猫好きってこと知ってるの?」

 

「え、あっ、その・・・」

 

「九条さん言葉濁しちゃだめですよ~」

 

「じ、実は・・・」

 

僕は2人にあの日のことを伝えた。

 

するとリサがいきなり笑い出した。

 

「ハハハッ!友希那あれ見られたんだ~!」

 

「リサさん笑いすぎですよ~」

 

「いやぁ・・・友希那って猫のことになると物腰が柔らかくなるからね、本人は全力で隠してるんだけどさ!」

 

「そ、そうなんですか・・・」

 

どうりであんなに隠そうとするわけだ。

 

「とりあえずほかの人には言っちゃダメだよ。友希那あれでも頑張ってで隠そうとしてるから。」

 

「は、はい。それは本人にも言われましたので。」

 

「お、そろそろ終わりますね。九条さん、リサさん、この後つぐの家で珈琲でも飲みに行きませんか?」

 

「僕は大丈夫です。リサは?」

 

「アタシも平気だよ。よし、このあと3人で行くか!」

 

羽沢珈琲店にはあの日の後も度々通っているので羽沢さんと若宮さんとは話をすることも増えてきた。

 

僕達はシフトが上がるとそのまま羽沢珈琲店へ向かった。

 

 

 

 

 

珈琲店に着くと中にはあまり人がいなかった。

 

「つぐ~来たよ。」

 

「あ、モカちゃん!いらっしゃい。それにリサさんと九条さんも来てくれたんですか!」

 

「やっほーつぐ!おひさ!」

 

「羽沢さん、こんにちは。」

 

羽沢さんに挨拶をすると店の奥から声が聞こえた。

 

「つぐー、その人知り合い?」

 

「お、ひまりじゃん!やっほー!」

 

「ひーちゃんだ、来てたんだ~」

 

「あれモカじゃん。それにリサ先輩もいる!こんにちは!」

 

ひまりと呼ばれた桃色の髪の子がこちらに来た。

 

「それでつぐ、この人は?」

 

「うちの最近の常連さんの九条さん。」

 

「はじめまして、花咲川2年の九条奏多です。よろしくお願いします。」

 

「えっと上原ひまりです!よろしくお願いします!」

 

「ねぇひーちゃん、今日いるのひーちゃんだけ?」

 

「ううん、蘭と巴もいるよ。蘭~!巴~!」

 

上原さんがその2人を読んだ。すると奥から黒髪に赤のメッシュが入った子とワインレッドの髪色の子が出てきた。

 

「ひまりどうした?って、モカ?」

 

「なんだモカも来たんだ。」

 

「ほほぉ、Afterglow全員集合ですな~」

 

モカがそう言うとその2人が後ろのリサに気づいた。

 

「うおっ!リサさん!?」

 

「リサさんも来てる・・・」

 

「やっほー巴!蘭!」

 

どうやらリサも2人のことを知っているようだ。

 

「リサさん、その人は?」

 

「あぁ、2人ははじめてだったね。彼はうちのバンドのマネージャーの」

 

「九条奏多です。よろしくお願いします。」

 

2人にそういうとまずは赤メッシュの子が返してきた。

 

「美竹蘭です。よろしくお願いします。」

 

「私は宇田川巴です。よろしくお願いします。」

 

「宇田川ってまさか・・・」

 

「そうだよ、巴はあこのお姉さんなんだ。」

 

「いつも妹がお世話になっています。バンドでもネトゲでも。」

 

「いえ、こちらもあなたの事は妹さんから聞いています。『最高で最強の最も憧れるドラマー』って。」

 

「あ、あこ・・・」

 

「ともちん照れてる~!」

 

「う、うっせ!」

 

巴さんがそう言うと全員が笑った。

 

すると上原さんが思いついたかのように提案してきた。

 

「あ、そうだ!リサさん、奏多さん明後日に私たちのライブがあるんですけど、よかったら来てくれませんか?」

 

「ライブということはこの5人でバンドを?」

 

「はい、Afterglowって言います!」

 

「アタシは行けるけどソータは?」

 

「はい、僕も大丈夫です。」

 

「OK!ならひまり、私達も見に行くから!」

 

「やったぁ!よーし!リサ先輩と奏多さんに悪いとこ見せないように頑張ろう!えいえいおー!」

 

上原さんが号令をかけた。

 

・・・しかし全員乗らなかった。

 

「え、えっと・・・乗らなくていいんですか?」

 

「別に・・・いつも通りです。」

 

「そーそー、いつも通りいつも通り~」

 

「うん、いつも通りだな。」

 

「はは・・・いつも通りだね。」

 

「ちょっとぉ・・・たまには乗ってよ・・・」

 

とりあえず僕とリサは明後日ライブを見に行くことになった。

 

 

 

 

 

 

NFO内

 

「ふぅ・・・お疲れ様。」

 

「お疲れ様です。」

 

「お疲れ~!やっぱりこの3人だと最強だねっ!」

 

僕はその夜、NFOにログインし、宇田川さんと白金さんと一緒に討伐クエストをしていた。

 

内容はゴブリン討伐と簡単そうなものだが、その数が1000体というものすごい数だった。

 

一体一体は弱くても数で押し寄せてくるので思ったより手間がかかった。

 

しかし何とか1000体討伐し終え、今はグループトークモードで話しているところだ。

 

「しかし、あの数はやばかったですね。白金さんの全体魔法が無ければやられていたかも知れません・・・」

 

「いえ、敵の体力は低めだったので全体魔法で吹き飛ばした方がやりやすいかなって。」

 

「それでも多かったね・・・あこクタクタだよ・・・」

 

「そういえば今日、宇田川さんのお姉さんに会いましたよ。」

 

「え!おねーちゃんに!?どこで?」

 

「羽沢珈琲店です、その時ライブに誘われました。」

 

「ホントに!?いいなーねぇりんりん、一緒に行こうよ!」

 

「え、えっと・・・」

 

やはり人混みが苦手な白金さんはたじろいでいるようだ。

 

「白金さん、無理に行かなくても大丈夫ですけど・・・」

 

「・・・い、行きます!」

 

「ホント?やったぁ!」

 

「大丈夫ですか?」

 

「は、はい!その・・・みんなと一緒なら。」

 

少し心配だが白金さんと宇田川さんも行くようだ。

 

2人に集合場所を伝えてその日は解散になった。

 

 

 

 

 

 

ライブ当日

 

場所はいつものCIRCLEだがその日はうちの学生や羽丘の生徒などの学生層や若者が多かった。

 

「お、きたきた。ソータ!」

 

「リサ、お待たせしました。」

 

「リサ姉!やっほー!」

 

「こ・・・こんにちは、今井さん。」

 

「あこ?それに燐子まで?どうしたの?」

 

「僕が誘ったんです。ネトゲで話していたらこの話題になって。」

 

「そうだったんだ、けど燐子大丈夫?人多いと思うけど。」

 

「その・・・今井さんやあこちゃん、九条さんがいるので・・・」

 

「うーむ・・・とりあえずキツかったらアタシに言ってよ?」

 

リサも心配しているようだがとりあえず中に入った。

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、Afterglowです。まずは聴いてください。『That Is How I Roll!』」

 

美竹さんのMCが入り、曲が始まった。

 

曲調は王道ロックと言った所か。

 

青葉さんと美竹さんのギターや上原さんのベースがとても映えて見える。

 

宇田川さんは「おねーちゃんカッコイイ!」と言ってはしゃいでいる。

 

白金さんはビクビクしながらもそれなりに楽しんでいるようだ。

 

曲目が終わると盛大な拍手が起こった。

 

「ありがとうございます。続いて『アスノヨゾラ哨戒班』!」

 

次は『アスノヨゾラ哨戒班』だった。

 

ボーカロイドでかなり有名な曲で実演奏バージョンの『キミノヨゾラ哨戒班』もある人気の曲だ。

 

Roseliaとはまた違ったカバー曲のチョイスに最近新しいカバー曲をしようかと考えている僕にはかなり参考になった。

 

それにしても美竹さんかなり凄くないか?

 

ギターを弾きながらあの難しい音程差をほとんど完璧に歌っている。

 

友希那とはまた違った歌のうまさを感じた。

 

2曲目が終わると観客のボルテージはかなり高まっていた。

 

「ハァハァ・・・ありがとうございます。次で最後です。これは私達が最初に考えた私たちを繋ぐ曲です。聴いてください『Scarlet sky』!」

 

最後の曲が始まった。

 

さっきの2曲とは違った感じをした曲だ。

 

先程の2曲歌詞の内容とかで反逆とかそんな感じのイメージを感じたがこの曲だけ仲間との別れやその仲間達と繋がっていたいと言った意味合いを感じた。

 

僕はこの3曲の中でこの曲が一番好きだと思った。

 

 

 

 

 

ライブが終わり、Afterglowのみんなに差し入れでお菓子や飲み物を渡しに行った。

 

白金さんはこの後用事があるらしく先に帰ってしまった。

 

「みんなお疲れ!」

 

「リサさん!九条さん!それにあこちゃんも!どうでしたか?」

 

「よかったよーひまり!最高だった!」

 

「おねーちゃんおねーちゃん!最っ高だった!」

 

「あぁ、なんせあこの目標にならなきゃならないからな!」

 

「美竹さん、青葉さん、お疲れ様です。」

 

「九条さん、ありがとうございます。」

 

「九条さんどうもです~」

 

「あ、これ。みんなに差し入れ!」

 

「うわぁ!リサさん!ありがとうございます!」

 

「そうだ青葉さん、これ。」

 

僕は青葉さんに朝に買ってきた山吹ベーカリーのパンを渡した。

 

「こ、これは!」

 

「この前ここのパンが好きだと言ってましたよね、好みがわからなかったので適当に見繕ったのですが。」

 

「いえいえ、ありがとうございます~」

 

そう言って青葉さんは早速メロンパンを食べ始めた。

 

「モカ・・・早すぎ。」

 

その光景をみて美竹さんが笑う。

 

「今日はありがとうございました。僕もかなり勉強になりました。」

 

「いえ、私達は私達のためにやっているだけなんで。」

 

「また機会があったら見に来ようと思います。」

 

「その時は私達はもっと上達していますので、Roseliaの人たちより上になっているかも知れませんよ?」

 

そう言って美竹さんが笑を浮かべる。

 

「お、言うねぇ蘭!私達だって負けないよ?」

 

「そ、そうだよ!いつかおねーちゃんを超えるカッコイイドラマーになるんだから!」

 

 

 

 

お互いの気持ちを確かめ合い、意気投合した3人とAfterglowのメンバー達。

 

奏多が次に会ったのはホシノコドウで集まったあの5人組だった。




Afterglow編どうだったでしょうか?
次回はホシノコドウのワードでだいたいわかりますがあの5人組です(笑)
さて、友希那さん誕生日特別編を考えなければ・・・
という訳で二日連続投稿なると思うんでお楽しみに!


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20話 Poppin Party ホシノコドウ ト チョココロネ

祝20話です!
なんだかんだでここまで続いてきたな~
ただ自分が書きたいように書いているだけで結構読んでくれてるのが嬉しいです!
今回は本家BanG Dream!のメイン枠のPoppin Party編です!
他バンド交流編はポピパ終わったらハロハピやって終わる予定です。(パスパレは結構交流あるからいいかな・・・)
でもリクエストがあればパスパレ編もやろうと思います。
Afterglowは自己主張の強い子がいないのでモカから繋げるしかなかったけど残り二つはあのふたりがいるから多少強引でも違和感ない!←おい!

そんな訳で本編どうぞ!


Afterglowのみんなとの交流から数日、今日は土曜日で本当はRoseliaの練習の日だ。

 

しかし、氷川さん、宇田川さん、白金さんの3人が同時に体調不良で来れなくなってしまったので急遽休みになってしまった。

 

いつもなら2人ぐらいまでならいなくても練習するのだが流石にボーカルとベースだけでは厳しいのと、ギターの氷川さんまでいないのは流石に練習にならないと判断し、友希那が各自自主練という事で解散となってしまったのだ。

 

 

 

 

 

今日の予定が無くなってしまったので僕は買い物をしに商店街へ来ている。

 

生活用品や野菜などを購入し、僕は山吹ベーカリーへ向かった。

 

「いらっしゃいませ。あ、九条さん、こんにちは!」

 

あの散策の日から度々通っているので店主やその娘さんで僕の学校の後輩にあたる子に顔を覚えられている。

 

「こんにちは、沙綾さん。この前はありがとうございます。」

 

僕は店主のことを『山吹さん』その娘さんを『沙綾さん』と読んでいる。

 

2人とも山吹さんと呼ぶとややこしいので沙綾さんにそう読んでくれと言われた。

 

「ああ、モカのパンのことですか?あの子の好みはわかっているので。」

 

この前Afterglowのライブの時に青葉さんに渡したパンは沙綾さんが見繕ってくれたものだ。

 

メロンパン×3、クリームパン×3、チョココロネ×2、焼きそばパン×2が青葉さんがよく買う組み合わせらしい。

 

これを覚えている沙綾さんも凄いが、これを1日で平らげてしまう青葉さんの胃袋も恐ろしい。

 

「今日は何を買いに来てくれたんですか?」

 

「明日の朝食べる用の食パンと今食べる用にチョココロネを買いに来たんです。」

 

「知ってると思いますが食パンはそこです。それとチョココロネはあと少し待ってもらえたら出来立てが来ますよ!」

 

「そうですね・・・時間もありますし待たせてもらいます。」

 

僕はチョココロネが出来上がるまで気長に待つことにした。

 

 

 

 

 

5分後、店の奥からココアパウダーとチョコレートのいい匂いがしてきた。

 

「お待たせしました九条さん。チョココロネできまし」

 

「さーや!いるー?」

 

「うわっ!か、香澄!?」

 

沙綾さんがチョココロネが出来たことを伝えに来た時、入り口から恐らく沙綾さんと同じぐらいの年頃の猫耳(?)の髪型をした子が入ってきた。

 

その子だけではない。黒髪ロングの子やショートヘアの子、ツインテールの子の計4人が店に入ってきた。

 

どうやら全員沙綾さんの知り合いのようだ。

 

「ちょっと香澄!ほかの人に迷惑だろ?」

 

「そうだよ香澄、入る時はノックしてお辞儀してからだよ。」

 

「おたえ!そこまでしなくていいから!」

 

「ね、ねぇ沙綾ちゃん、この匂いって。」

 

「ん?たしかにいい匂い!」

 

「りみりん流石だね~!今さっきチョココロネが出来たばっかりなんだ!」

 

「流石沙綾、私たちが来るタイミングに凄いね。」

 

「いや、んなわけねぇだろ。」

 

5人で話していると沙綾さんがようやく話についていけずに呆然としている僕に気がついた。

 

「す、すみません九条さん!」

 

「い、いえ大丈夫です。」

 

「香澄、お前のせいだぞ。」

 

「えぇ!私のせい?」

 

「私は沙綾の焼きたてパンが私たちを引き寄せたせいだと思うけど?」

 

「おたえは少しだまってろ!」

 

「有咲ちゃん、落ち着いて・・・」

 

「そ、その・・・いくつにしますか?」

 

「えっと・・・Roseliaのメンバーのためにも6つください。メンバーが体調不良で休んでしまって御見舞に渡そうかと」

 

「え?あなたってRoseliaの人なんですか?」

 

猫耳ヘアの子が食いついてきた。

 

「は、はい・・・そうですけど。」

 

「えっと私、戸山香澄っていいます!Roseliaの友希那さんのことすっごく尊敬していて!そうだ、私たちPoppin Partyってバンド組んでいるんですけどRoseliaの練習メニューってどんな感じですか?それともし良かったら友希那さんと話がしたいんですけど」

 

「はい、香澄ストップストップ、九条さんビビってるから。」

 

戸山さんのものすごい食いつき様に押されてかなりビビっていた。

 

沙綾さんが止めてくれなければどうなっていた事か。

 

「えっとその・・・す、すみません。」

 

「だ、大丈夫・・・です。えっと、Roseliaでマネージャーをやっている九条奏多です。」

 

自己紹介をすると黒髪ロングの子が唐突に返してきた。

 

「私、ポピパでギター担当の花園たえです。よろしくお願いします。」

 

突然の反応に少しビックリした。そして残り2人が続けて自己紹介をする空気になった。

 

「えっと・・・言わないといけない流れか・・・その、キーボードの市ヶ谷有咲です。その、よろしく・・・お願いします。」

 

「その、ベースの牛込りみです・・・その、よろしくお願いします。」

 

どうやら市ヶ谷さんと牛込さんはかなり引っ込み思案のようだ。

 

しかし、さっきの市ヶ谷さんの的確なツッコミはすごいと思った。

 

2人の後に沙綾さんが続けて話した。

 

「そして私がドラムをやっているんです。」

 

「そうだったんですか。」

 

「九条さん!明日私達のライブあるんですけど来てくれませんか?」

 

「ちょっ、香澄!幾ら何でもRoseliaの練習とかで明日は厳しいんじゃ」

 

「別に大丈夫ですよ。」

 

「・・・え?いいんですか?」

 

「はい、たまたまメンバーの3人が体調不良で明日も休みにする予定でしたし。」

 

「やったぁ!それなら、友希那さんとかも誘ってもらえないですか?」

 

そのお願いに僕は少し戸惑った。

 

リサから聞いたが友希那はあまり人のライブを見に行くことが無いらしい。

 

「えっと・・・厳しいかもしれないですど一応聞いては見ます・・・」

 

「そっか・・・とりあえずお願いします!」

 

「九条さん、お待たせしました。」

 

沙綾さんにチョココロネと食パンが入った紙袋を渡された。

 

「予備で小さい紙袋が5つ入ってますので。」

 

「ありがとうございます、それではポピパの皆さん、また明日よろしくお願いします。」

 

そう言って僕は山吹ベーカリーを後にした。

 

 

 

 

 

「白金さん、大丈夫ですか?」

 

「は、はい・・・軽い熱なので・・・」

 

僕は体調不良のメンバーを見舞いに回っていた。

 

宇田川さん用のチョココロネはたまたま商店街にいた巴さんに渡した。

 

そして僕は白金さんの家を訪れている。

 

相変わらず大きな家だ。

 

「明日も練習をなしにするようなんでゆっくり休んでください。これ、見舞い品としては微妙なものですけど。」

 

「チョココロネ・・・ですか?ありがとう・・・ございます。」

 

白金さんは笑顔で受け取ってくれた。

 

これ以上無理をさせる訳にはいかないので僕は白金さんの家を後にした。

 

「さて、後は氷川さんだけだけど・・・」

 

そういえば僕は氷川さんの家を知らない。

 

日菜さんに聞こうかと思ったが仕事中だと失礼だしどうするか考えた。

 

「友希那なら知っているかな・・・」

 

Roseliaの初期からの付き合いだ、恐らく知っているだろう。僕は友希那に電話をかけた。

 

『・・・もしもし、奏多?』

 

「はい、九条です。」

 

『どうしたの急に?』

 

「友希那、氷川さんの家を知っていますか?見舞い品を渡そうと思ったのですが家を知らないので。」

 

『ええ、知っているわ。今どこにいるの?』

 

「えっと大体CIRCLEの近くです。」

 

『そう、なら私も行くわ。ちょうどCIRCLEにいるし。』

 

「わかりました、ではそちらに向かいます。」

 

僕は電話を切ってCIRCLEに向かった。

 

 

 

 

 

CIRCLEに着くと入り口に友希那がいた。

 

「お待たせしました。」

 

「じゃあ、ついて来て。」

 

僕は友希那の後をついて行った。

 

氷川さんの家は思ったより近いところにあった。

 

インターホンを鳴らし出てくるのを待った。

 

「はい?あ、ソータくんに友希那ちゃんだ!」

 

「どうも、日菜さん。」

 

「どうしたの?家なんかに来て。」

 

「これをお姉さんに渡してもらえますか?見舞い品です。」

 

「だったらおねーちゃん呼んだ方がいいんじゃない?」

 

「いえ、無理をすると悪いんで。」

 

「そうだ、紗夜に『明日は休みにするけど自主練は無理しないぐらいにやっておいて』って伝えといてもらえるかしら」

 

「わかった、ソータくんに友希那ちゃん、ありがとう!」

 

日菜さんにチョココロネを渡して僕と友希那は氷川さんの家を後にした。

 

帰っている途中に僕はさっきの山吹ベーカリーでの話を思い出した。

 

「そういえば今日ポピパの人達に会ったんですけど明日ライブがあって友希那に来て欲しいって戸山さんに言われたんですけど・・・」

 

「そう・・・戸山さんが。」

 

僕は多分拒否するだろうと思った。

 

しかし帰ってきたのは意外な返答だった。

 

「わかった、行くわ。」

 

「え?行くんですか?」

 

「誘ってきたのはあっちでしょう?予定もないのに断るのはどうかと思うけど。」

 

「は、はい、わかりました。僕も行く予定なんですけど・・・」

 

「わかったわ、マネージャーとしての仕事も忘れないように。」

 

「はい、わかっています。」

 

ということで友希那も来ることになった。

 

来てくれることに僕は安堵の息をもらした。

 

 

 

 

 

ライブ当日

 

観席は小さい子や大人まで賑わっていた。

 

とりあえず僕達は人の少ない後ろの方で見ることにした。

 

10分後ライブが始まりポピパのメンバーがステージに立った。

 

「こんにちは!私たちPoppin Partyっていいます!私達の曲を聴いてください!まずは『ときめきエクスペリエンス』!」

 

ポピパの演奏が始まった。

 

Afterglowとはまた違った青春ソングで聴いていて楽しい曲だった。

 

「続いて『千本桜』!」

 

沙綾さんが次の曲をコールした。

 

その曲は初音ミクでお馴染みの千本桜だった。

 

ボカロ基準なんでトーンは高めだがそれをしっかりと出来ているのがすごいと思った。

 

昔1人カラオケで歌ったことがあるが息が続かずに途中でミスを連発した記憶がある。

 

「これで最後です!この曲で皆さんもキラキラドキドキしてください!『STAR BEAT~ホシノコドウ~』!」

 

最後の曲はさっきの2曲とは違ったテンポの曲だった。

 

しかしポピパらしい雰囲気は残っているためとても楽しいライブだった。

 

 

 

 

 

ライブ後、ポピパのメンバーが僕と友希那の所へ集まっていた。

 

「友希那さん、来てくれてありがとうございます!」

 

「ま、まさか本当に来てくれるとは思わなかったです。」

 

「戸山さん、あなたの歌悪くなかったわ。でも、まだまだね。」

 

友希那が不敵に笑った。

 

「い、いえもっと頑張って上達しますので!」

 

「Roseliaを超えれるように頑張ります!」

 

戸山さんと花園さんが意気込みを言う。

 

「とりあえずこれ、差し入れです。」

 

僕はポピパの皆に差し入れを渡した。

 

「これうちのパン?」

 

「そうです。今日の朝にパンを買ったら山吹さんに差し入れとして渡しといてと言われたんです。」

 

「これ全部チョココロネ!?」

 

「ち、チョココロネ!」

 

牛込さんがパンを見た青葉さん並に顔をきらめかせている。

 

「とりあえずみんなで食べよう!」

 

「おいひい。」

 

「おたえ食べるの早すぎだろ!」

 

ポピパのみんなの光景を僕と友希那は遠目で見ていた。

 

「フフッ、仲がいいわね。」

 

「そうですね。」

 

「初め、なれ合いはなしだと思っていたけどなれ合いじゃなくて絆を深めることで音楽に磨きがかかる。そう実感したばかりだけど、こうみるとああして高校生らしく仲良くするのも悪くないかもね。」

 

「そうかもしれませんね。」

 

Roseliaがポピパのように仲良くなる日はそう遠くないかもしれない。

 

僕はそう思ってポピパみんなを見ていた。

 

 

 

 

 

「・・・アレが九条奏多。」

 

「お嬢様が言っていた面白そうな人ってあの人ですね。」

 

「とりあえずお嬢様のバンドに引き込ませればいいのですが・・・」

 

離れた場所で謎の黒服がこちらの様子を伺っている事に僕は全く気が付かなかった。




謎の黒服集団は一体何巻家の人間なんだろ・・・

なお現時点で演奏可能な曲は
ポピパ ときめきエクスペリエンス、千本桜、STAR BEAT~ホシノコドウ~

Afterglow That Is How i Roll!、アスノヨゾラ哨戒班、Scarlet sky

パスパレ しゅわりんどりーみん、そばかす、パスパレボリューションず

Roselia BLACK SHOUT、LOUDER、魂のルフラン、熱色スターマイン、シャルル

ハロハピ えがおのオーケストラ、ハピネスっ!ハピィーマジカルっ♪、ロメオ

といった感じです
次の更新は明日(って言うか日付変わってるから今日?)です!友希那さん誕生日特別編ということでお楽しみに!


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21話 ハロー、ハッピーワールド! ハッピー ラッキー スマイル イェーイ

他バンド交流編ラストはハッチャケ組のハロハピです!
おそらく一番ツッコミどころ多いと思いますが暖かい目で見てもらえると嬉しいです。

という訳であの掛け声で本編スタートしたいと思います!

ハッピー!ラッキー!スマイル!イェーイ!


遡ること数日前、僕が羽沢珈琲店を訪れた時だった。

 

「いらっしゃいませ~」

 

「こんにちは、羽沢さん。」

 

「九条さん!毎度ありがとうございます!」

 

すっかり常連となった僕はいつものカウンター席についた。

 

「ご注文はいつものですか?」

 

「はい、それでお願いします。」

 

僕は初めてここに来た時から注文しているコーヒーとクッキーのセットを注文した。

 

「あれ?九条くん?」

 

聞き覚えのある声がしたので声のした方向に向くとそこには松原さんがいた。

 

「松原さん、こんにちは。」

 

「こんにちは。九条くんもここの常連なの?」

 

「ええ、初めてこの街を散策した時からよく来るようになって。」

 

「それって始業式終わって数日たった日?」

 

「・・・?はい、そうですけど。」

 

「その時、多分私ここにいたと思うんだけど・・・千聖ちゃんと一緒に。」

 

思い返せばあの時店に松原さん似の人と白鷺さん似の人がいたような気がする。

 

多分、似じゃなくて本人だろう。

 

「たしかに・・・いたような気がします。」

 

「まだその時名前も知らなかったからね。私始業式の日休んでたし。」

 

話しているうちに注文したものが来た。

 

「お待たせしました。いつものコーヒーとクッキーのセットです。」

 

「ありがとうございます羽沢さん。」

 

僕がコーヒーに口をつけた時だった。

 

「いた!花音!」

 

扉が勢いよく開き、大きな声で松原さんを呼んだ。

 

僕はビックリして鞄を倒し、手に持っていたコーヒーを危うくこぼす所だった。

 

「こ、こころちゃん!?」

 

「花音、私とーってもいいことを思いついたの!今からハロハピのみんなでライブをしようと思うんだけど!」

 

「こ、こころちゃん・・・ここお店だから少し声小さくして。」

 

「それもそうね!あら、これは何かしら?」

 

こころと呼ばれた子が拾ったのは曲の楽譜だった。

 

それは明日Roseliaのみんなに渡すためのもので確か鞄に入れていたはず。

 

倒れた時に落としたのだろうか。

 

「す、すみません。それ僕のです。」

 

「そうなのね、はい!」

 

その子は素直に渡してくれた。

 

「あなたバンドでも組んでるの?」

 

「ええ、Roseliaというバンドでマネージャーをしています。」

 

「そうなのね!マネージャーって面白そう!そうだ、私弦巻こころって言うの!」

 

「く、九条奏多です。」

 

この子はかなり押しが強い方でグイグイくる。

 

そのため言葉を返すのに精一杯になる。

 

すると弦巻さんはじーっと僕のことを見てきた。

 

「あ、あの・・・何かついてます?」

 

「フフフッ、あなたって面白い人ね!」

 

「・・・へ?お、面白いってどこが・・・」

 

「ん~、何かしら?なんとなくよ!」

 

なんとなくで僕は面白い人と言われたのか。

 

「とりあえず花音!みんなを集めに行くわよ!」

 

「ふ、ふええ・・・こころちゃん、待って!」

 

松原さんは弦巻さんを、追いかけるため支払いを済ませて追いかけていった。

 

「その・・・なんて言うか。」

 

「やっぱりこころちゃん凄いね・・・」

 

僕と羽沢さんは苦笑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてポピパのメンバーとの交流から日が変わり今日。

 

僕はRoseliaの練習が終わり、白金さんと一緒に帰るタイミングだった。

 

「今日は体調不良明けなのにみんながいつも通り練習出来て良かったです。」

 

「はい・・・昨日はありがとうございます。」

 

すると僕達の歩いていた道の隣に黒い車が止まった。

 

すると窓が開き、中から黒服でサングラスをかけた人が話しかけてきた。

 

「九条奏多さんですか?」

 

「は、はい・・・そうですけど。」

 

「こころお嬢様が今から会えないかと申しておりますのでお時間頂けますか?」

 

「こころ・・・って弦巻さんが?」

 

「はい、来て頂けますか?」

 

「別にこの後は用事ないですけど・・・そんないきなり言われても。」

 

「その事は申し訳ありません。では車に乗ってください。」

 

そう言うと後ろの席からもう1人の黒服が出てきて僕を席に案内させた。

 

「え、ちょ、し、白金さん!すみません、先に帰ってもらえますか?」

 

「く、九条さん・・・その・・・お気をつけて。」

 

白金さんは慌てながら僕を見送った。

 

扉が締まり、車が発進した。

 

 

 

 

 

車を走らせること15分、窓の外を見るとものすごい豪邸が建っていた。

 

「え?これもしかして・・・」

 

「はい、我が弦巻財閥グループの社長と奥様、こころお嬢様のご自宅であります。」

 

「・・・嘘だろ。」

 

まさかあの弦巻さんが財閥のご令嬢だとは思わなかった。

 

門で検査を受けてそのまま中へ入った。

 

ずっと続く木々の間を抜け、大きな家の入口前で車は止まった。

 

「到着しました。」

 

「そ、その・・・ありがとうございます。」

 

車から降りるとその家の大きさがよく分かる。

 

その家の大きさに見惚れているとドアが開き、弦巻さんが出てきた。

 

「あ、キタキタ!とつぜんごめんなさいね、どうしても話がしたくて!」

 

「そ、その・・・話って?」

 

「とりあえず中に入って!メンバーを紹介するから!」

 

なすがままに弦巻さんに引っ張られて連れていかれた。

 

連れていかれた部屋に入るとそこには松原さんとほか3人が居た。

 

「ま、松原さん!?」

 

「ごめんね九条くん・・・こんなことになってしまって。」

 

「あ、そーくんだ!こころが連れてきたかった人ってそーくんだったんだ!」

 

そういったのはオレンジ色の髪の毛の子だった。

 

彼女の名前は北沢はぐみ。

 

商店街にある北沢精肉店の店主の娘さんだ。

 

散策した日の後日、沙綾さんに勧められていたので行ったらそこで出会った。

 

北沢さんのお父さんにたいそう気に入られたらしく、店に行くとコロッケをおまけしてくれたり少し安くしてくれたりする。

 

初めてあった日に自己紹介してから彼女は僕のことを『そーくん』と呼び始めた。

 

「君が九条くんか。我がプリンセスに気に入られるとはなんと罪深い・・・」

 

そういったのは女性なのにとてもイケメンな人だった。

 

「申し遅れたね、私は瀬田薫。よろしく。」

 

「九条奏多です、よろしくお願いします。」

 

瀬田さんと挨拶を交わすと最後の1人が話しかけてきた。

 

「あーなんかすみません、うちのこころが無茶言って。あ、私奥沢美咲です。」

 

3人と挨拶を済ますと弦巻さんが本題を話してきた。

 

「今日ここに呼んだのは奏多、あなたに私達、ハロー、ハッピーワールド!のメンバーに入ってほしいからなの!」

 

そう言われて僕はかなりびっくりした。

 

「え!でも僕はRoseliaでマネージャーをしているんですけど・・・」

 

「知ってるわ。けど、あなたほどの面白い人を見過ごすわけにはいかないもの!」

 

「え、えっと・・・」

 

「ねぇこころん、そーくんにはぐみたちの演奏を聴かせてみたらどうかな?」

 

「それはいい提案ね!奏多、1度私たちの演奏を聴いてみて!」

 

そう言われてハロハピの人たちと僕は弦巻邸の演奏可能なところへ向かった。

 

 

 

 

 

1人席に座らされて、黒服たちが楽器を準備している。

 

部屋に入る前に奥沢さんに

 

 

「私の姿結構やばいんで」

 

と言われたがあれはどういう意味なのだろうか。

 

するとハロハピの人たちが衣装でステージに立った。

 

メンバーが出てくる中一番最後に出てきたのは奥沢さん・・・ではなくピンク色のクマだった。

 

(そういう意味か!)

 

僕は一人納得した。

 

すると弦巻さんが話し出した。

 

「それじゃあ奏多、聴いてちょうだい!『えがおのオーケストラ』!」

 

ハロハピの演奏が始まった。

 

衣装からしておそらくコミックバンドなのではないかと思っていたがその通りで楽しそうな音楽だった。

 

 

 

 

 

演奏が終わるとピンク色のクマが話してきた。

 

「えっと・・・奥沢美咲改めミッシェルです。」

 

「えっと・・・よろしくお願いします。」

 

とりあえずミッシェルと挨拶をする。

 

ミッシェルの隣から弦巻さんが来た。

 

「ミッシェルが来るといつも美咲がいないのよね~」

 

・・・え、この人たち気づいてないの?

 

後で聞いた話だがこの事は松原さん以外わかっていないらしい。

 

その事にどうにも言えない感情を持ちつつも弦巻さんは話を続けた。

 

「それでどうだった?私たちの演奏?」

 

「ええ、とっても良かったです。」

 

「それで私たちのバンドに入る気にはなった?」

 

「僕は・・・すみません、やはりあなた達のバンドには入ることは出来ません。」

 

「あら?どうして?」

 

「・・・あなた達の演奏は確かによかったです。心から音楽が好きって気持ちが感じ取れます。けど、僕にとってRoseliaがあなた達が音楽を思う気持ちと同じぐらい好きなんです。」

 

「・・・そう、でも諦めてはないわ!私達はいつでもあなたを歓迎するから!」

 

弦巻さんはすこし残念そうにしながらもまだ諦めてはいないと言った。

 

Roseliaのことを再確認した所で今日のところは帰らせてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・のだが。

 

「・・・ここどこだ?」

 

広い広い弦巻邸の庭の中で僕は一人さまよっていた。

 

20分後、黒服の人達が見つけてくれてその人達に案内されてなんとか家までたどり着いた。




他バンド交流編はどうだったでしょうか?
最後は方向音痴オチでしたがとりあえずなんとか家には帰れましたとさ(笑)
次回は『陽だまりロードナイト〜Don't leave me Lisa and Sota!!!〜』をする予定何ですが・・・
明日こちらの事情で更新できるかどうかが不明です。上げるかどうはTwitterにて報告するのでそちらをご確認ください。


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5章 ~陽だまりロードナイト〜Don't leave us Lisa and Sota!!! 22話 ムショク ト ヒダマリ ノ イナイ Roselia

はい、Don't leave me Lisaをベースにした陽だまりロードナイト編です。
陽だまりロードナイトは作者が一番好きな歌でイベントのキャラは星四の慣れない電話の燐子以外揃ってます(悲しみ)!
基本はリサ姉、奏多の奏多sideと友希那さん、紗夜さん、あこちゃん、燐子の燐子sideの二つで分ける予定です。
さーて今回も陽だまりイベ何回見直すんだろなー


ってことで本編スタートです!


他バンドの交流があった六月が終わり七月となった。

 

あのジメジメした感じから一転し、かなり暑くなってきた。

 

そんな中、最近僕達Roseliaは羽丘に集まってからCIRCLEに向かう習慣が出来てきて、今日も放課後に羽丘に集まっていた。

 

「あ、きたきた!りんりん!九条さん!紗夜さん!」

 

「お待たせしました、宇田川さん、友希那。」

 

「あれ・・・今井さんは?」

 

「リサはまだ来ていないわ。一体どこにいるのよ・・・」

 

リサが遅れるとは珍しいこともあるものだ。

 

基本的に集合時間には絶対来るリサだが遅れたのは初めてではないだろうか。

 

そう考えているとリサが走ってくるのが見えた。

 

氷川さんもそれに気づいたみたいで

 

「噂をすれば・・・ですね。」

 

とこそっと呟いた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ~、いやーごめんごめん!出る時に先生に捕まっちゃって!」

 

「今井さん・・・すごく息切らしているけど・・・大丈夫ですか?」

 

「リサ姉先生の手伝いしてるところよく見るけど疲れないの?」

 

「うーん体力は有り余るほどあるしな~。バイトにバンドにダンス部にテニス部に・・・」

 

思い返せばリサが本当に疲れている姿を見たことがない。

 

リサの体力は一体どうなっているんだ?

 

「とにかく、全員揃ったしそろそろ行きましょうか。」

 

氷川さんがそう言って向かおうとした時だった。

 

「・・・!あ、ゴメン電話出るね。」

 

リサに電話がかかってきた。

 

どうやら話し相手は僕も働いているコンビニの店長のようだ。

 

「・・・はい、・・・え?ソータですか?ここにいますけど・・・はい、少し待ってください。」

 

そう言ってリサがこちらを向いた。

 

「ソータ、店長から電話変わってって。」

 

そう言って僕に携帯を渡してきた。

 

とりあえず受け取って電話に出た。

 

「もしもし、変わりました九条です。」

 

『ああ、九条くん!休みの日に悪いけど今日3時間だけでいいからシフト入れないかな?本当はモカちゃんともう1人入る予定だったんだけどモカちゃんは風邪でもう1人は結婚式に招待されたって言って休んじゃってね。今井さんにも聞いてたんだけど折り返すって言われてね。』

 

「今日・・・ですか。」

 

今日はいつも通りRoseliaの練習がある。

 

店長にはいつもお世話になっているので行きたいのはやまやまだが練習の方に行きたい気持ちもある。

 

「僕もまた折り返すのでまた連絡させてもらいます。」

 

『わかった、突然ごめんね。』

 

電話を切ってリサに携帯を返す。

 

すると2人同時に着信音がなった。

 

送り主は青葉さんのようだ。

 

内容は

 

『九条さ~ん、リサさ〜ん、モカちゃんのお願い聞いてください~ 今日風邪でバイト行けなくなっちゃったんです・・・ 元々もう1人も来れなくなっちゃったのは聞いていたんですけど〜タイミング悪く風邪ひいちゃって・・・ あたしともう1人の代わりに入ってもらえませんか?また今度お礼するので』

 

といったものだった。

 

「奏多、リサどうしたの?」

 

友希那が尋ねてきた。

 

「はい、僕達がバイトしているコンビニの店長さんですけど・・・」

 

「今日2人に3時間だけシフト入れないかってお願いされちゃった・・・モカともう1人が来れなくなっちゃったみたいで。」

 

僕とリサが交互に返した。

 

「リサと奏多はどうしたいの?」

 

「僕は日頃の感謝もありますし行きたい気持ちはあります。」

 

「アタシも店長のお願いとモカの代わりなら行ってあげたいけど・・・やっぱりRoseliaの練習があるからダメだよね・・・」

 

そう言ってリサが店長に断りの電話を入れようとした時だった。

 

「なら行って来ればいいわ。」

 

「「え・・・?」」

 

予想外の回答に僕とリサはびっくりした。

 

「湊さん、いいんですか?元々2人が入っていたシフトではありませんし、断ってもいいのでは?」

 

「練習にはしっかりと集中してやってほしいもの。落ち着かないまま練習されても音が濁るだけよ。その代わり今日練習できなかった分は次の日2倍やってもらうから。」

 

リサがそれを聞いて苦笑いする。

 

あの練習を2倍と言われるとそれもそうだ。

 

「奏多には・・・そうね、全員の名前を下の名前で読んでもらおうかしら。」

 

「・・・え?」

 

次は僕が慌てる番だった。

 

「そ、その・・・なぜこのタイミングにそれを?」

 

「あなたにいい加減慣れてもらうのとタイミングがよかったからよ。」

 

そう言われると何も言い返せない。

 

「と、とりあえず友希那、ありがとう!」

 

「みなさんすみません、今日は僕達バイトの方に行かせてもらいます。早めに上がれたらスタジオに行って練習にも参加しますので!」

 

そう言って僕とリサは走ってバイト先のコンビニへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

九条さん達が走っていったあと私達はまだ校門の前にいた。

 

今考えてみれば2人がいない練習は初めてかもしれない。

 

「そっか~、今日リサ姉と九条さんいないんだ・・・」

 

「今井さんと九条さんがいない練習って・・・初めてだよね・・・」

 

「アルバイトが早めに終われば来ると言っていましたので私達は普段通り練習をしましょう。」

 

「そうね、リサと奏多がいなくてもやることは変わらないわ、私達はスタジオに向かうわよ。」

 

「そうですね。」

 

「はーい。」

 

「はい・・・」

 

「「「「・・・」」」」

 

周りの空気が何故か重い。

 

今井さんと九条さんがいないだけでこんなに変わるとは思わなかった。

 

黙り込む中あこちゃんが発言した。

 

「きょ、今日はあこがリサ姉と九条さんの代わりをやります!えーっとえーっと・・・そうだ、リサ姉の真似しよう!」

 

そう言ってあこちゃんは今井さんっぽい真似をした。

 

「や、やっほ~!ゆっきな~!元気~?」

 

「・・・」

 

しかし友希那さんはあこちゃんのそれを無言で返した。

 

「す、すみません・・・」

 

「・・・とりあえず行くわよ。」

 

そう言って友希那さんはスタジオに向って歩き出した。

 

「はぁ・・・こんなことでは先が思いやられるわね・・・」

 

「は、はい・・・」

 

とりあえず友希那さんのあとを追いかける。

 

この調子だと恐らくもっと悪くなるような気がする。

 

(練習・・・大丈夫かな・・・)

 

私は追いかけながらもそう思った。




本日は短め(ていうかいつもの半分程度)ですが今回はこの章のプロローグ的なやつのため次回はもうちょい長いと思います。
次は麻弥ちゃんイベか~燐子イベまだかな・・・
という訳でスタリラを楽しむ作者でした(なんかハロウィンの京都弁の有紗を引いた)


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23話 イツモドオリ ト イツモドオリジャナイ

はい、燐子イベ来ましたね。
ちょっと本気出して頑張ります。

頑張って頑張ってガチャ回して虹きた!勝った!と思ったらお花見の有紗でした・・・
そっちじゃなぁぁぁぁぁぁい!ちげーよ!ありがとー!す、好きなんかじゃないから!←これが言いたかっただけだろ!
はい、作者の嘆きはそれほどにして本編始まります。


燐子side

 

私達は重い空気のままCIRCLEに入った。

 

いつもは九条さんがスタジオの予約とかをしてくれているが今日は友希那さんがカウンターへ向かった。

 

友希那さんが帰ってくるとその手にはパンフレットのようなものがあった。

 

「友希那さん・・・それは一体?」

 

「機材の貸出のパンフレットよ。どうやら今半額のキャンペーンをやってるらしくてね。」

 

「色々な種類がありますね・・・」

 

氷川さんがそのパンフレットを覗き込んだ。

 

私もあこちゃんとのぞき込んでみるとそこには色々な種類の楽器や機材があった。

 

「うわぁ!ドラムのシンバルもいっぱいある!」

 

「電子ピアノに・・・シンセサイザーもあるんですね・・・」

 

「ギターやベースも、いろいろな種類があるみたいですね。今までずっとこのスタジオに通っていたのに知らなかったわ。」

 

スタッフさんによるとCIRCLEはライブハウス併設のスタジオなので品揃えはいいらしい。

 

そのため、定番のものから変わり種まで色々な種類の楽器がある。

 

「あこ、どれかやってみたいです!」

 

「もし借りるとしても、いつも通り練習をしてからよ。スタジオに向かいましょう。」

 

そう言って友希那さんは先にスタジオに向かった。

 

いつも先導したり盛り上げたりしてくれる2人がいないからどうしても空気が重く感じる。

 

本当に今日の練習は大丈夫だろうか。

 

 

 

 

 

いつもの機材を準備し、練習前のミーティングの時になった。

 

「奏多とリサはいないけど、いつも通り練習を始めましょうか。」

 

「「「はい!」」」

 

友希那さんに全員が返事を返すと友希那さんは少し困った顔をした。

 

「・・・何から始めようかしら。」

 

「「「え!?」」」

 

その発言に全員びっくりした。

 

「練習内容、決まっていないんですか?」

 

「いえ、やりたいことは決まっているんだけど、こういうのはいつも奏多がまとめてくれていたから・・・少し待って、考えるから。」

 

そう言って友希那さんは考え始めた。

 

確かにこういうことはいつも九条さんがまとめてくれていた。

 

やはりまとめ役がいないのが大きいかもしれない。

 

「・・・そうね、新曲のコードを決めてきたから、まずはメロディを決めたいわね。」

 

「では、それをベースに考えてみましょう。」

 

「「はい!」」

 

とりあえず練習が始まった。

 

 

 

 

 

練習開始から10分

 

友希那さんはさっきからずっとマイクの設定をいじっていて、氷川さんは自由に音を出している。

 

あこちゃんは周りの様子を見ていて、そういう私は同じフレーズばかりを練習していた。

 

やはりあの2人がいないのは本当に大きい。

 

すると今まで様子を見ていたあこちゃんが提案した。

 

「あ、あの!」

 

「・・・!なに?」

 

「せっかく集まってるんだし、一緒にメロディ考えながら演奏しませんか?なんか・・・みんなバラバラで個人練習みたいですっ!」

 

確かにこのままではここに集まっている意味がない。

 

あこちゃんの発言に私はホッとした。

 

「・・・そうね、確かにあこの言う通りだわ。全員で練習しましょうか。紗夜、どこからメロディを決めていくのがいいかしら?」

 

「そうですね・・・・・・すぐに浮かびませんね。」

 

「そう・・・あなた達、何か良い案ないかしら?」

 

私たちに話を振られ、考えているとあこちゃんが発言した。

 

「はい!じゃあ、あこ、提案があります!さっきのパンフレットの機材、借りてみませんか?」

 

あこちゃんがさっき受付カウンター前で見たパンフレットの機材の話を持ち出した。

 

「機材?何を借りたいの?」

 

「あこ、ドラムのハイハット変えてみたいです!次の新曲は、シンバルの音を長く響かせてみたいんですよ。」

 

私も使ってみたい機材があったのでお願いすることにした。

 

「私は・・・シンセサイザー・・・使って・・・みたいです。電子音・・・入れると・・・新しい音になるし・・・いいメロディも浮かぶかも・・・」

 

すると氷川さんもそれに乗るように発言した。

 

「借りるのであれば、私は新しいエフェクターを試してみたいですね。今よりもっと音を歪ませるとどうなるか確かめてみたいですけど、湊さん、どう思いますか?」

 

「悪くないわね。新曲に合わせて新しい音を模索してもいいかもしれないわ。」

 

そう言って友希那さんはさっき貰ったパンフレットを差し出した。

 

「紗夜、あこ、燐子。このリストの中から好きな機材を選んで。」

 

それを受け取ってしっかりと見てみるとシンセサイザーだけでも結構な種類があった。

 

聞いたことある名前の機材や本当にライブで使うのかといった造形のシンセサイザーもあったが私は少し有名なメーカーの機材を借りることにした。

 

「私は・・・決めました。」

 

「ん~悩むけど・・・うん、これだっ!友希那さん決まりました!」

 

「では、私はこちらにしましょう。」

 

全員の借りたい機材が決まり、友希那さんがそれをメモして私に渡してきた。

 

「燐子、受付に電話をお願いできる?電話はドアの横に備え付けてあるはずよ。」

 

「わ、私ですか!?は、はい。」

 

メモを受け取ったはいいものの、電話をかけることは人と話すことが苦手な私にとってかなり緊張することだ。

 

(電話するの・・・緊張するな・・・ドキドキしてきちゃった・・・まずは・・・大きく深呼吸して・・・)

 

私は落ち着かせるために大きく深呼吸をした。

 

するとあこちゃんが尋ねてきた。

 

「りんりん、何してるの?」

 

「あ、あこちゃん・・・私・・・電話するの・・・苦手だから・・・深呼吸して、落ち着こうと・・・思って。」

 

「そっか!りんりん、頑張って!」

 

「うん・・・!」

 

あこちゃんから激励をもらい、電話の前に立つ。

 

深呼吸して落ち着かせたもののやはり手が震える。

 

いつもこういうことは九条さんにやってもらっているため慣れないことをするのは緊張してしまう。

 

ふと私は

 

(九条さんならどうしただろう)

 

と思った。

 

あの人も話すことが苦手なのにこういう作業をしている。

 

彼の行動をよく考えてみると、確かに声は少し震えている時もあるが落ち着いてゆっくり話している。

 

とりあえず九条さんのようにゆっくり話してみることにした。受話器を手に取り耳に当てる。

 

するとすぐに受付に繋がった。

 

『はい、こちら受付です。』

 

「あっ・・・も、もしもし・・・きききき機材の・・・レンタルを・・・」

 

『はい、レンタルですね。どの機材に致しますか?』

 

私はメモに書かれた機材を声が震えながらも答えた。

 

『わかりました、すぐそちらにお持ちしますね。』

 

「は、はい・・・よろしくお願いします・・・」

 

受話器を元に戻して私は安堵の息を吐いた。

 

するとあこちゃんが後ろから話しかけてきた。

 

「りんりん、しっかり話せた?」

 

「う、うん・・・話せたよ、あこちゃん・・・すぐ・・・持ってきてくれるって。」

 

「なら、来るのを待ちましょうか。」

 

友希那さんがそう言って私達は機材を待った。

 

 

 

 

 

5分後、若いスタッフさんが機材を持ってきたのだが・・・

 

「お待たせしました、ご注文のウクレレとパーカッションです!」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

来たのは予想外のものだった。

 

「わ、わたし・・・ドラムのハイハットと・・・シンセサイザーと・・・ギターエフェクターを・・・頼んだつもり・・・だったんですが・・・」

 

「あれ?違いました?少しお待ちください、確認してきます。」

 

スタッフさんが困った顔をして受付に戻った。

 

「この楽器だと・・・ハワイアンのメロディが出来るわね・・・」

 

「・・・やります?ハワイアン・・・」

 

「・・・やらないわ。」

 

そもそもRoseliaの雰囲気にハワイアンが会うはずがない。

 

するとさっきのスタッフさんが戻ってきた。

 

話を聞くと、どうやらその楽器は隣のスタジオの人が借りる予定だったらしいものを手違えてこちらに持ってきたらしい。

 

その機材が来るまでまた待つことになったが場の空気は変な空気になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「へっくしゅん!」

 

「あれ?ソータまた風邪?」

 

「いえ、そんなことは・・・え?」

 

「ソータ、どうし・・・うわ・・・」

 

友希那や白金さん達の元を離れ、僕とリサはコンビニに来たが、店が思ってた以上にお客さんが多かった。

 

たまたまそのコンビニのセールが始まったのと、うちの学校のソフトボール部がうちの学校で他3校との合同練習があったらしく駅から花咲川高校との中間にあるこのコンビニに飲み物やパンなどを買いに来たせいでこうなっているらしい。

 

店長が一人慌ただしくレジ打ちをしていた。

 

「あ、今井さん!九条くん!ごめんよ休みの日に!」

 

「て、店長!待っててください、今準備します!ソータ行くよ!」

 

「は、はい!」

 

リサが走って店裏に向かったので僕もそれに続いた。

 

急いで制服に着替え、リサはレジ打ち、僕は商品の補充を始めた。

 

 

 

20分後

 

他校の波が収まり、何とか捌ききった僕はかなり疲れていた。

 

「いや、本当にありがとう!一時はどうなることかと思ったよ。」

 

「い、いえ・・・今回は仕方ないですし・・・」

 

「そーですよ店長!日頃の恩もありますし!」

 

リサは少々疲れてはいるっぽいがそれっぽさを感じられない。

 

リサの体力はバケモノか。

 

「とりあえずあと2時間ほどだけどよろしく頼むよ!」

 

「「はい!」」

 

人が少なくなったコンビニもまたいつあのソフトボール軍団が来るかわからないので僕とリサはレジに立った。

 

するとリサは心配そうに呟いた。

 

「友希那達、大丈夫かな・・・」

 

「友希那なら何とかなりますよ。それに氷川さんもいますし。」

 

「うーん、でもさぁ・・・」

 

「とりあえず僕達は今の仕事に専念しましょう。」

 

僕も口ではそう言っているがやはりRoseliaのみんなが心配だ。

 

僕は立場上、周りをよく見ているからわかるがあの中でリサはかなり大きな役割を担っている。

 

周りの空気を盛り上げているし、提案事も大体リサが発端だ。

 

そのリサがいないRoseliaは恐らく空気が重くなっているかもしれない。

 

宇田川さんがいるから多少は大丈夫かもしれないが、あのメンバーの中だと宇田川さんにも限界があるだろう。

 

早く戻ってあげたい気持ちを抑えながら僕はバイトに専念した。




こう考えるとリサ姉って役割でかいな・・・
リサ姉の大切さを知ったところで次回へ続きます!
次は土曜日ですが恐らく朝早くの投稿となります!
つまり明日編集と作品制作をしなければならないこと・・・
さぁ、編集を始めようか!(ぶっちゃけこれが言いたかっただけ。)


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24話 キュウソク ト アワタダシサ

今までなんとか続いてきた無灰ですが、次から新しいことに挑戦しようと思います!
それはズバリ『九条奏多を描いてみる!』です!
僕自体絵を描くことは好きですが、人に自慢できるほど得意ではない上にアナログしか描けませんがやってみようと思います。
とりあえず30話までにはやろうと思うのでお楽しみに!
ということで本編どうぞ!


燐子side

 

ようやく機材が届き、私達はその機材をセッティングしていた。

 

そしてそれぞれの調整が終わり、準備が整った。

 

「正しい機材も届いたし、気を取り直していくわ。みんな、準備はいい?」

 

「バッチリです!」

 

「私も・・・大丈夫です。」

 

「私も問題ありません。」

 

「では始めるわ。どう音が変わるか楽しみね。」

 

そう言って私達は演奏を始めた。

 

曲はRoseliaの始まりの曲『BLACK SHOUT』。

 

しかし、いつもと違い私のシンセサイザーの電子音から入るとガラッと印象が変わった。

 

氷川さんもギターの音がいつもと違うし、あこちゃんのドラムもハイハットを変えたことでいつもより響きがいい。私が借りたシンセサイザーもかなり良く、私は結構好きな音だがみんなはどうだろうか。

 

そう思っているといつの間にか曲は終盤に差し掛かっていた。

 

私達はいつもと違う『BLACK SHOUT』を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

「・・・ふぅ。どうやら借りてきた機材は正解だったみたいね。」

 

演奏後にいつもと同じ空気に戻り、私はとても安心した。

 

すると友希那さんは自分の意見を私たちに伝えてきた。

 

「紗夜、今の演奏は悪くないわ。もっと音に強弱をつけると良くなると思う。」

 

「はい。」

 

「あこ、力任せに叩いては無駄に体力を消耗するだけよ。最後までベストな演奏ができるように、配分を考えながら叩いて。」

 

「わかりましたっ!」

 

「燐子はあこと音を合わせることを意識して。」

 

「はい・・・!」

 

「細かい部分はまだ課題があるけど、全体的なまとまりは悪くないわ。その調子で行くわよ。」

 

「それにしてもさっきの紗夜さんのギター演奏は・・・こう・・・漆黒の闇より生まれし炎の弦楽士(ギタリスト)がアレして・・・炎と闇の封印が解かれし暗黒!って感じ!」

 

友希那さんが話した後あこちゃんがいつもの言い方で紗夜さんを褒めた。

 

「うん、そうだね・・・」

 

私にはあこちゃんの言いたいことがわかるのでそう頷いた。

 

「・・・湊さん、次の曲に行きませんか?」

 

「・・・そうね。」

 

褒められた本人である氷川さんはそれをスルーしてそのまま練習を再開させようとした。

 

あこちゃんは気づいてくれなかったことを諦めきれないのか次は友希那さんを対象として話し出した。

 

「ゆ、友希那さん!今の友希那さんの歌は、現世に蘇りし死霊魔術師(ネクロマンサー)が、闇の僕(しもべ)をアレして・・・ドーン!って感じですね!」

 

次も言いたいことがだいたいわかった。

 

「うん、すごくわかるよ、あこちゃん・・・」

 

しかし、やはり2人とも全然わかっていないようで氷川さんが尋ねるように聞いてきた。

 

「白金さん、宇田川さんはさっきから何を言っているの?さっぱり意味がわからないんだけど。」

 

1から説明すると難しいので私は意味の省略して簡単に話すことにした。

 

「あこちゃんは・・・氷川さんの演奏と友希那さんの歌を・・・すごく褒めててて・・・」

 

「そうなの?宇田川さんの言っていること、私には外国語のように聞こえるわ。」

 

私はRoselia結成前からあこちゃんと交流があるのでこういった言葉の意味はだいたいわかるようになった。

 

九条さんもNFOで一緒にプレイしているうちにわかるようになったと言っていたので恐らくこの中であこちゃんの言いたいことがわかるのは私と九条さんぐらいだろう。

 

「紗夜、あこ、燐子。練習中よ!無駄口叩くのはやめて。」

 

「は、はい。」

 

「「す、すみません・・・」」

 

友希那さんに怒られ、また少し空気が重くなってしまう。

 

盛り上げようとしたあこちゃんは少し落ち込んでいるようだ。

 

「さあ、練習を続けるわよ。」

 

そう言って私達は元の位置に戻り、演奏を再開した。

 

 

 

 

演奏を続けて2時間ほどがたった頃だろうか。

 

長時間の演奏でそれぞれの集中が切れてきてきた。

 

あこちゃんはずっとドラムを叩いているので腕が重そうだし、氷川さんはずっとギターを引いていて動く度に痛そうな顔をしている。

 

恐らく肩こりなどが酷くなってきたのだろう。

 

私も度々音を間違えるようになり演奏にボロが出てきた。

 

「ちょっと、3人とも集中力が切れてきているわよ。ちゃんと曲に集中して。」

 

友希那さんがそう言って注意してくるがそういう友希那さんも声の伸びが悪くなってきている。

 

みんなの疲れが出てきて、また空気が悪くなってきた時だった。

 

「あ、あの友希那さん!」

 

「・・・な、なに?」

 

「そろそろ休憩にしませんか?時計見てください!」

 

時計を見ると時刻は5時過ぎになっていた。

 

「あっ・・・結構時間経ってたわね。じゃあ休憩にしましょうか。」

 

そう言って休憩に入ったがいつもは賑やかな休憩時間が今回はとても静かだ。

 

こんな時どうすればいいだろうと考えた時に一ついい案が思いついたので友希那さんに提案してみることにした。

 

「あ、あの・・・」

 

「どうしたの?」

 

「よかったら・・・みんなで外のカフェに・・・行きませんか?のど・・・渇きましたし・・・甘い物でも・・・」

 

するとあこちゃんが便乗するように話し出した。

 

「りんりん、ナイスアイディア~!友希那さん、紗夜さん、みんなでいきましょうよ!ねっねっ!」

 

「どうしてもって言うなら・・・」

 

「湊さんがそう言うなら・・・」

 

2人とも口ではそう言っているがその表情は心做しかほっとしているようだった。

 

ということで私達はカフェに行くことにした。

 

 

 

 

 

「あ、Roseliaのみんな!いらっしゃい。」

 

外のカフェではまりなさんが店番をしていた。

 

ここはCIRCLEが経営しているカフェでもあるのでCIRCLEのスタッフさんもレジに立つらしい。

 

「ん~、何頼もっかな~♪あっ、今日のおすすめパイナップルジュースだって!おいしそう~!」

 

あこちゃんはわくわくして決めている。

 

友希那さんによるとここのソフトクリームがコクがあって美味しいらしいと今井さんから聞いているらしい。

 

「そうですね・・・私はこのイチゴのソフトクリームをいただきましょうか。」

 

「あっ、それもおいしそう~!う~ん・・・悩むけど・・・あこはこっちのゴマソフトにしよ!りんりんと友希那さんはどうする?」

 

「そうね・・・私はホットコーヒーと抹茶ソフトにするわ。」

 

「私は・・・ホットミルクが・・・あればいいけど・・・なかったら・・・紫芋ソフトにしようかな。」

 

「うん、ちょっと待ってて。聞いてくる。まーりなさーん!」

 

あこちゃんがまりなさんに聞きに行った。

 

待っている間友希那さんと紗夜さんの話を聞いていたがこのカフェはスナック系も充実しているそうだ。

 

メニューのカリカリポテトを見た時の紗夜さんの反応はすごく興味をそそられているようだった。

 

私は練習後に一息つく場所としてあこちゃんとよくここに来るので、常連客となりつつある。

 

話しているうちにあこちゃんが帰ってきた。

 

「りんりんお待たせっ!今の時期はホットミルクはメニューにないみたいんだけど、特別に作ってくれるって!どうする?」

 

「じゃあ、せっかくだから・・・ホットミルクと紫芋ソフト・・・どっちもお願いしようかな。」

 

「オッケー!じゃああこがまとめて頼んできますね~」

 

「ええ、よろしくね。」

 

そう言ってあこちゃんが注文を取りに行った。

 

5分後、まりなさんがお盆に乗せて頼んだメニューを持ってきてくれた。

 

「お待たせしました~。ソフトクリームは溶けやすいから早く食べてね。」

 

「はーい!これが友希那さんのホットコーヒーと抹茶ソフトで、こっちが紗夜さんのイチゴソフトでしょ・・・」

 

そう言ってあこちゃんは持ってきてくれたものを全員に分け始めた。

 

「全員行ったね!それじゃあ・・・」

 

「「「「いただきます。」」」」

 

私達はソフトクリームを食べ始めた。

 

さっきまでの重苦しい空気から一転、みんな和気あいあいとしている。

 

もうすぐ九条さんと今井さんが来る頃かなと考えつつ私はホットミルクに口をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

スタジオで、まだみんなが練習していた頃。

 

僕達はまだレジでレジ打ちをしていた。

 

あのソフトボール軍団が去った後も度々お客さんが来るので離れることが出来ずにいた。

 

「どうして今日はこんなにお客さんが多いんですかね・・・」

 

「まぁそろそろ夏だからね~ほとんどのお客さん買っていくの飲み物ばかりじゃん?」

 

確かに今日お客さんの買っていくもののほとんどは飲料水ばかりだ。

 

たしかに暑くなってきたのでこまめな水分補給が必要な時期なのだろう。

 

「たしかにここのお店品ぞろえいいですしね。」

 

「それを発注して店に並べてんのが私たちなんだからそう考えると少しすごく感じるね~」

 

そういった感じでほのぼのと喋ること30分、店裏から店長さんが顔を出した。

 

「2人とも~ありがとう!そろそろ上がってもらって・・・」

 

ザワザワ

 

店長が話切る前に聞き覚えのあるザワつく声がした。

 

「こ、これって・・・」

 

「あちゃー帰ってきたね・・・」

 

「・・・ごめん2人とも、あの子達の商品さばいてから上がってもらって良いかな?」

 

「「は、はい・・・」」

 

そろそろだとは思っていたがソフトボール軍団がこの店に帰ってきた。

 

しかも多分きつい練習のあとなので僕達が店に来た時よりも激しさを増すだろう。

 

僕とリサは軽く溜息をつきながら戦闘の準備をした。




そういえばお気に入り件数が100件を超えていました!ここまで読んでくれたことがとても嬉しいです!
これからも無色と灰色の交奏曲をよろしくお願いします!


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25話 カケガエノナイ タイセツ ナ ヒト

昨日投稿できなかったので本日投稿となります。
昨日はこちらの方で事情があったのと「ツナグ、ソラモヨウ」のCD買いに行ってました←おい!
なお特典のカードはモカちゃんでした。モカ推しの友達にいじり程度に自慢すると「殺してでも奪い取る」と言われました(笑)
強奪予告を友人にされたことは置いといて本編始まります!


燐子side

 

カフェでの休憩も終わり、私達は元のスタジオに戻った。

 

私は飲みきれなかったホットミルクをまとめてあるギターのシールドが置かれている机の上おいて借りてきてそのまま置いてあるシンセサイザーの前に立った。

 

「みんな、リフレッシュはできた?」

 

「はい、丁度いい気分転換になりました。やはり疲れている時に甘いものはいいですね。」

 

「ソフトクリーム美味しかったです!」

 

「みんなとカフェに来られて・・・良かったです・・・」

 

「そう、それは良かったわ。さあ、練習を再開するわよ。残り時間も少ないからあと2~3曲で終わりだと思って最後までしっかり気を抜かないでいくわよ。」

 

「「「はい!」」」

 

気持ちを整え、私達は練習を再開した。

 

しかし演奏を続けていても今井さんと九条さんが来る様子はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

練習が終わって最後のミーティングの時間となった。

 

「今日はそれぞれの音は悪くなかったと思う。けど、全体の調和が取れているとはいえなかったから音のバランスを調整しないといけないわ。あなたたち、次の曲に新しい音を使いたいならどうするのがベストなのか、それぞれ考えてきて。最後の演奏をベースにしてみて。」

 

「「「はい。」」」

 

時計を見るとそろそろ終わりの時間だ。

 

今回は借りてきた機材も多いので、そろそろ片付けなければならない。

 

「そろそろ終わりの時間ですが、片付けますか?」

 

氷川さんがそう言ったのは恐らく今井さんと九条さんの事を思ってのことだろう。

 

「ホントだー!もうこんな時間か・・・リサ姉と九条さんまだ来ないのかな・・・」

 

「まだ・・・来てない・・・みたい。」

 

「仕方ないわ、片付けましょう。」

 

そう言って私達は片付けを開始した。

 

いつもは九条さんが指示を出してくれるが今回は氷川さんが指示を出してくれた。

 

氷川さんの指示で湊さんがマイクケーブルを直そうとした時だった。

 

「きゃあっ!」

 

湊さんがギターのシールドに足を絡ませて転倒してしまった。

 

「友希那さん!大丈夫ですか?」

 

「いたた・・・ごめんなさい、ギターのシールドが足に絡まってしまって。」

 

「大丈夫ですか・・・って、なにか床にこぼれてますよ!」

 

床になにか白いものが広がっていく。

 

それは私が置いていたホットミルクだった。

 

恐らく友希那さんが倒れた時机にぶつかったのだろう。

 

「ああっ、すみません・・・休憩の時に・・・飲みきれなかったホットミルク・・・持って来ていたんです・・・」

 

「うわわわわ!床一面真っ白になっちゃった!・・・うわっ!」

 

あこちゃんが後ろに下がろうとしたらドラムのセットに足をつまずかせこけてしまった。

 

その時何かが倒れ、その衝撃でホットミルクが少し飛び散り被害が増えた。

 

「あこちゃん!・・・だ、大丈夫?」

 

「いったー・・・うっかりつまずいちゃった・・・」

 

倒れたあこちゃんを見ると今なお広がっているホットミルクがあこちゃんのスカートの端に付いてしまっていた。

 

「ううっ・・・スカート濡れちゃったよ~」

 

「機材にも飛び散ってます!早く拭かないと・・・」

 

今この場がパニック状態になりそうになったその時だった。

 

 

 

 

 

バタン!と扉が開いた。

 

「す、すみません!遅くなりました!」

 

「友希那ごめん!遅くなっ・・・ってなにこれ?どういう惨状?」

 

「リサ、奏多・・・これは・・・」

 

「と、とりあえず話は後!早く片付けるよ!ソータ、指示お願い!」

 

「はい!友希那と氷川さんは何か拭くものを、リサと白金さんで倒れた機材を立ててください。・・・っ!宇田川さんはこちらに来てください。」

 

九条さんが指示を出して私達はそれに従った。

 

このタイミングでこの2人が来てくれたことに私はとても安心感があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「あ、ありがとうございました!」

 

「うん、そーくんもお疲れ~」

 

「はい、また今度北沢さんのお店に行かせてもらいます。」

 

「うん、その時はコロッケいっぱい準備しとくね!」

 

「はい!ありがとうございました~・・・ふ、ふへぇ・・・」

 

「やっと終わったね~」

 

CIRCLEであの惨状が起こる少し前、あのソフトボール軍団の最後の客だった北沢さんと話をしたあと僕とリサは一息ついていた。

 

「北沢さんソフトボールやってたんだ・・・」

 

「ソータあの子知り合い?」

 

「はい、商店街の精肉店の・・・」

 

「あぁ!あのコロッケが美味しいところの!」

 

北沢さんの話をしていると店長が話しかけてきた。

 

「いやぁ、2人とも今日はありがとう!また今度お礼するから今日はもう上がって。待っている仲間がいるんだろ?」

 

「はい、すみません上がらせてもらいます。」

 

「お疲れ様でーす。」

 

僕とリサがコンビニを出てCIRCLEに向かおうとした時、僕の背中に悪感が走った。

 

「・・・!」

 

「ソータ?どうしたの?」

 

「何故かとてつもなく嫌な予感がするんです。早くCIRCLEに向かいましょう。」

 

「え、ちょっと!ソータ!」

 

僕はCIRCLEに向かって走り出した。

 

リサもそれに続いて走り出す。

 

スタジオの場所はグループで言われているので走っている途中にリサに抜かされながらもCIRCLEにたどり着いた。

 

「す、すみません!遅くなりました!」

 

スタジオに入ると悪い予感が当たってそこは凄いことになっていた。

 

「友希那ごめん!遅くなっ・・・ってなにこれ?どういう惨状?」

 

スタッフさんにスタジオに入ることを伝えていたリサが後から入ってきてこの惨状を目の当たりにした。

 

「リサ、奏多・・・これは・・・」

 

周りを見ると白いものが機材等にもかかっている。

 

これは早くどうにかしなければならない。

 

これを見たリサの判断は早かった。

 

「と、とりあえず話は後!早く片付けるよ!ソータ、指示をお願い!」

 

リサに指示され僕が指示を取ることになった。

 

いつもやっている事なので慌てたりはしなかったがこの惨状のため急がなければならない。

 

とりあえずみんなに指示を与えていく。

 

宇田川さんを見るとスカートが汚れてしまっているようだ。

 

「宇田川さん、こちらに来てください!」

 

「は、はいっ!」

 

宇田川さんがこちらに来る。

 

幸い汚れの大きさはそこまで大きくないようだ。

 

とりあえず汚れをタオルで拭き取った。

 

「宇田川さん、この汚れは一体?」

 

「え、えっとりんりんが持ってきてたホットミルクで・・・」

 

「えっとなにか着替えるものはありますか?」

 

「カバンの中にダンス部の時に使うジャージがあるけど・・・」

 

「すみませんが着替えてこれますか?早くしないとこの汚れが取れにくくなってしまうので。」

 

牛乳の汚れのとり方は昔から家事をしていたので大体わかる。

 

宇田川さんに更衣室で着替えてもらっている間僕は周りを見た。

 

他のメンバーはモップで床を拭いたり機材を拭いたりしている。

 

どうやら何とかなったようだ。

 

あらかた拭き終わったのでいつも通りの片付けに入った。

 

指示を出していると宇田川さんが着替え終わってスカートを渡してきた。

 

「九条さん、よろしくお願いします!」

 

「うん、少し待っててください。」

 

指示を氷川さんに任せ僕はスカートの汚れを水洗いで丁寧に落とした。

 

ここで乾かすことは出来ないため、袋に入れて宇田川さんに帰ったら洗濯に出すように伝えた。

 

片付けが終わると僕含めみんな疲れているようだった。

 

 

 

・・・ただひとりを除いては。

 

「うん、綺麗になった~」

 

「今井さんと九条さんが来てからすぐに片付いたわ・・・」

 

「指示が・・・的確でした・・・」

 

「九条さんが来てくれなかったらスカートに臭いが残ってたよ・・・」

 

「2人が来てくれて助かったわ・・・」

 

「そんな大げさな~」

 

「そうですよ、そんなことないですって。」

 

しかし4人からの視線がものすごく熱い。

 

しかも、氷川さんが蜂蜜飴をくれたり、友希那がリサの肩を揉んだりといつもは絶対しないことをしていてなにか怪しい。

 

「ちょっとちょっと!なんでみんないつもと違うの?」

 

「そうですよ、今日の皆さんはどこか変です。白金さん、これは一体?」

 

「えっと・・・その・・・」

 

白金さんまで言葉を濁すとは。

 

僕達に対してなにか変なことでもしたのだろうか。

 

「アタシにも話せないことなの?それじゃあ帰ろっかな・・・ソータ行こっ。」

 

「・・・え?は、はい。」

 

リサが僕を連れて帰ろうとした時だった。

 

「帰っちゃダメぇぇぇぇ!」

 

宇田川さんが全力で止めに来た。

 

「やっぱりRoseliaにはリサ姉と九条さんがいないとダメ!友希那さん、2人と話がしたいから今すぐファミレスへ行きましょう!」

 

「そうね、行きましょう。」

 

ということでいつものファミレスへ向かうことになった。友希那が即答するとは珍しい。

 

僕とリサの頭の上にハテナマークが飛び交う中、一行はファミレスへ向かった。




今日はここまでで続きは明日です。
この調子だと多分次かその次で陽だまりロードナイト編終わりそう・・・


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26話 陽だまりロードナイト ~アオバラ ヲ ササエル ヒダマリ ト カゲ~

バンドリの今のイベントも最終局面に入ってきた中、バンドリに全く関係ないFGOでまさかの星四確定交換の機会にパーリー状態の作者です。(アタランテ推し)
でもCV的に加藤段蔵も捨てがたいところ・・・(CV明坂さん)
さらっと全く関係ない雑談入ってますが『陽だまりロードナイト~Don't leaves as Lisa and Sota~』は今回でラストになります。
タイトルの意味はリサ姉がみんなを照らす陽だまりなら奏多はそれに照らされてしたから支える影かなと思ってこのタイトルにしました!

ということで陽だまりロードナイト編最終話始まります!


みんなと合流して僕達は今ファミレスに来ている。

 

今日何があったかを聞くためにここへ来ているがいつも渋々来ているような友希那や氷川さんが即答して来るとは思わなかった。

 

「いらっしゃいませ~ご注文はお決まりですか?」

 

「とりあえず頼んでから話そっか。アタシはオレンジジュースにするけど何にする?」

 

「僕はコーヒーで。」

 

「私もそうするわ。」

 

「私は・・・今井さんと同じで・・・」

 

「あこは超大盛りポテト!紗夜さん、半分こしましょう!」

 

「ちょっと・・・なんで私が・・・」

 

「・・・?だっていつもポテト食べてますしみんなで食べた方が美味しいですよ!」

 

今、宇田川さんさらっと氷川さんのポテト事情をばらさなかったか?

 

「・・・っ!ぽ、ポテトばかり食べてません!その・・・宇田川さんがそう言うなら・・・」

 

「ははっ!とりあえずみんな決まったね~注文とるよ~」

 

リサが店員さんに注文を頼み、こちらを向いた。

 

「ところで、今日は何があったの?みんな疲れた顔してるし。」

 

「はい、いつもとは違う疲れ方をしています。本当に何があったんですか?」

 

「色々あって大変だったのよ・・・あこ、代表して話してあげて。」

 

「はい、リサ姉、九条さんそれがね・・・」

 

宇田川さんが僕達がいない間のことを話し出した。

 

いつもとは違うRoseliaの行動に僕はハラハラしていてリサは笑いをこらえているようだった。

 

宇田川さんが話し終わるとリサはこらえ切れず笑い出した。

 

「あっはっは~!!そんな事があったの!?その場にいたかったわ~」

 

「今井さん、そんなに笑わなくても・・・」

 

「そうだよ!あこ達大変だったんだから!」

 

「僕は聞いててハラハラしました・・・」

 

「もうっ、みんなアタシがいないとダメなんだから~」

 

「そうだよ、リサ姉がいないと誰もツッコんでくれなくて寂しかったんだから・・・」

 

「そうかそうか~可愛い奴め!」

 

リサが宇田川さんをぐりぐりと撫でる。

 

「ちょっ!やめてよリサ姉~!あこほんとに寂しかったんだから~!次急にいなくなったら・・・」

 

「大丈夫大丈夫!アタシは急にいなくならない、今日はごめんね!」

 

「僕も本日はすみませんでした。」

 

とりあえず僕もリサに従って全員に謝る。

 

「謝ることではないですよ。しかし普段2人に助けられてるのがよくわかったわ・・・」

 

「さ、紗夜がそこまで言うなんて・・・ほんとに大変だったんだ。」

 

氷川さんがそこまで言うとは思ってなかったので僕とリサは心底驚いた。

 

「そうですよ、九条さんがいないと宇田川さんとの意思疎通や練習メニュー等の決定が遅くなりますし、今井さんは気づいているかはわからないけどRoseliaの雰囲気を良くしているのはあなたよ。2人とも次からは必ず練習に参加してください。」

 

「氷川さん・・・」

 

「紗夜・・・うん、次からはちゃんと練習に参加するって約束するよ。」

 

「私は・・・2人がいると・・・安心して、練習できているんだなって・・・思いました。」

 

「どうしてそう思ったの?」

 

「私・・・今井さんが・・・いつも楽しそうに・・・演奏しているの・・・見るのが好きで・・・多分、みんなも・・・同じだと・・・思うんです・・・そして・・・九条さんが楽しそうに聞いて・・・アドバイスしてくれて・・・それに応じて音を磨く・・・今日はそれが無かったのが・・・みんな変な感じがして・・・」

 

「そっか・・・燐子、ありがとう。」

 

「・・・はい、ありがとうございます。」

 

「2人がいないことで、みんな2人のありがたみがわかったのよ。Roseliaには2人がいないと困る。」

 

「友希那・・・みんな・・・そんなにアタシのこと思ってくれてたなんて・・・」

 

リサがそう言って目頭を押さえる。

 

僕もこの言葉にかなりジーンときた。

 

無色で何も無い自分がここまで必要だと言われるとは思っていなかったからだ。

 

「あっ、リサ姉ちょっと泣いてる~」

 

「だって嬉しいんだもん!バイト中もずっと気になってたんだからね!みんなどんな練習してるかなって。アタシがいなくてもいつも通り練習してるのかなって思うとちょっと寂しかったの!」

 

「・・・はい、僕も嬉しいです。実は度々思うんです。僕なんかがここにいていいのかなって。僕なんかがいなくてもみんないつも通り練習してお互いを磨きあっていけるんじゃないかって。」

 

「そんな事・・・ないです!」

 

僕の発言に白金さんが大きな声で否定した。

 

「し、白金さん!?」

 

「そんな事ないです・・・九条さんがいつも自分なりに・・・努力しているのは知っているし・・・九条さんがいないと・・・それぞれが気がつけていないところも多々あります。だから・・・今のRoseliaがあるのは九条さんのお陰なんですっ!だから・・・その・・・自分がいてもいいのかなって思わないでください・・・」

 

白金さんがここまで大きな声を出したのは彼女がバンドに入った直後の時以来だ。

 

彼女に力説され、僕は目頭が熱くなった。

 

「・・・っ!す、すみません・・・その・・・ありがとう・・・ございます・・・」

 

「あっ、ソータ泣いてる~」

 

「リサも・・・さっきまで泣きそうだったじゃないですか・・・」

 

「そ、それは・・・アハハ・・・」

 

「とりあえず、今日は2人がいなければこんなことならなかったのにってことばかりだったわ。」

 

「そうだそうだ!」

 

「今井さんは自分が思っていたより影響力があることを、九条さんは白金さんが言ったように自分がいてもいいのかどうかなんて思わないでください。」

 

「私・・・2人にいて欲しいです・・・」

 

「みんな・・・よーし、すっごくやる気出てきた!次はちゃんと初めから参加するからね!」

 

「はい、次からはしっかり参加させてもらいます。」

 

話しているうちに注文したものが届く。

 

しかし届いたポテトの量が多く、みんなで分けて食べることになった。

 

リサから渡された砂糖を大量にコーヒーに突っ込んでいる友希那がこちらに話しかけた。

 

「そうだ奏多、あのこと忘れてないわよね。」

 

「あのこと・・・それは一体?」

 

「みんなの名前をしたの名前で呼ぶこと。」

 

「・・・あ。」

 

これまであった事で完全に忘れていた。

 

しかし友希那はこのことを忘れていなかったらしい。

 

「えっと・・・どうしてもですか?」

 

「どうしてもよ。」

 

「そうですよ!いつまで経っても宇田川さんじゃあなんか堅苦しいです!」

 

「私はどちらでも構いませんが協調性を保つならそっちの方がいいわね。」

 

「氷川さんがそれ言いますか・・・」

 

「私はいいのよ。それと氷川さんって呼んでますよ。」

 

とりあえずこの空気は逃れなれないと察した。

 

とりあえず下の名前で呼んでみる。

 

友希那の事だ恐らくさん付けもなしだろう。

 

「えっと・・・紗夜?」

 

「はい。」

 

「そして・・・あこ?」

 

「はい!」

 

「・・・燐子?」

 

「・・・はい。」

 

「奏多、なんで最初に下の名前を呼ぶ時は疑問形なの?」

 

「ソータ、そこ直さなきゃダメだよ~」

 

「は、はい・・・すみません。」

 

次からは3人のことを紗夜、あこ、燐子と呼ぶことになりそうだ。

 

「後はその敬語さえ直せればね・・・」

 

「ソータ、茂樹さんが言ってたことって・・・いや、何でもないよ。」

 

リサが話そうとしたことを途中でやめた。

 

その事は僕が触れてほしくないところだと察したのだろう。

 

「とりあえず敬語は徐々に直していくとして、次のライブそろそろでしょ?新曲どうするの?リズムは決まってるんでしょ?」

 

「ええ、けど今回の件でいい歌詞が思いついたわ。奏多、今回は私が曲名を付けるわ。それでもいい?」

 

「は、はいそれはいいですけど・・・」

 

「歌は私で今日中に何とかする。みんなはそれぞれの音を完璧に仕上げるように。」

 

「「「「はい!」」」」

 

新曲の設定の基礎も仕上がり僕達はポテトがなくなるまで雑談を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブ当日

 

新曲も完成して音も完璧にできている。

 

今日のセットリストはLOUDER、シャルル、そしてラストに新曲だ。

 

新曲のMCの内容は全く聞かされていない。

 

最初のLOUDERと新しいカバー曲として採用したシャルルが終わり、MCが入った。

 

「・・・ありがとうございました。次で最後の曲です。この曲は私達にとってかけがえのない存在であるベースとマネージャーの事を思って完成させた曲です。それでは聴いてください、『陽だまりロードナイト』」

 

Roseliaの新たな曲、『陽だまりロードナイト』が始まった。

 

初めて聞いた時からこの曲は僕にとってかけがえのない曲になりつつある。

 

曲が2番に差し掛かった。

 

友希那の歌声が響く。

 

『~励ます魔法のように 囁いたの「みんながいれば 怖くないよ」!』

 

あれ?「みんながいれば」って所は本当は「あなたがいれば」のはず・・・

 

もしかしてわざと変えた?

 

この曲は聞く人に伝わるようにかけがえのない人を思っている歌詞になっているので二人称のあなたを使っている。

 

それをわざと三人称に変えたのはリサだけでなく僕のことも思ってのことだろうか。

 

そう思うとまた泣きそうになる。

 

曲も終盤に差し掛かり、そろそろ終わる頃だ。

 

僕は涙を拭い、みんなが帰ってくるのを待った。

 

 

 

 

 

Roseliaのメンバーとして、彼女達にとって大切な存在としてあり続けられるように。




陽だまりロードナイト編どうだったでしょうか?
最後の「みんながいれば怖くないよ」って所はYouTubeでバンドリちゃんねるで陽だまりロードナイトが上がっていた時にあったフレーズです。
いつも陽だまりロードナイトを聴いて思うのは「神曲、異論は認めん。」です(笑)

さて、次はお待ちかね水着イベ(トコナッツパーク編じゃないよ)です!
トコナッツパーク編はいつやるか不明ですが多分無灰世界で1年後かと・・・

とりあえず次の更新をお楽しみに!


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6章 ムショク ト ハイイロ ノ ナツヤスミ 27話 ムショク ト ウミ マヨウ ハイイロ

はい、この11月というくっそ寒くなっていく中無灰世界では水着イベです。
夏だ!海だ!水着だ!って感じではありますが現実世界でくっそ寒い中考えるのはまあまあ難しかったです(作者はめちゃくちゃ寒がりで登校する時は完全防具)
ンなわけでテンションは常夏!外は寒気という中新章始まります!


『夏』それは学生にとって夏休みという一大イベントの一つである。

 

バイトに追われるもの、部活で汗を流すもの、家でのんびりするものと色々あるが我らがRoseliaはこの暑い中絶賛練習中である。

 

しかし、いくらCIRCLEの冷房が聞いているとはいえ外は気温30度に近く、熱中症の危険性があるため少し練習時間を短くしている。(友希那には熱中症で倒れては元も子もないと言って言いくるめた。)

 

さらに週末は基本休みにさせてあるのでそれぞれのメンバーが思い思いの時間を過ごすことが出来るためそのリフレッシュ期間もあってかメンバーの実力は前よりかなり上がっている。

 

そしてある日、練習していてそろそろ終わろうとしている時だった。

 

「・・・あの、友希那さん。」

 

「どうしたのあこ?」

 

「なんか・・・暑くないですか?」

 

「あこちゃん・・・大丈夫?」

 

あこを見るとかなり汗をかいている。

 

よく見るとあこだけじゃなく、他のメンバーをいつも以上に汗をかいていた。

 

「と、とりあえず一回休憩挟みましょう。」

 

そう言って僕は全員分のタオルとスポーツドリンクを準備した。

 

「なんかいきなり暑くなったね・・・」

 

「もしかして冷房が壊れたのではないでしょうか。」

 

「ちょっとスタッフさんに聞いてみます。」

 

「ええ、頼むわよ奏多。」

 

僕はスタジオを出て受付の方へ向かった。

 

受付にはまりなさんがいた。

 

「あれ、奏多くんじゃん。どうしたの、練習は?」

 

「すみませんまりなさん、冷房の調子が悪いようで見てもらってもいいですか?」

 

「うん、わかった。」

 

そう言ってまりなさんは受付の人を他のスタッフさんに任せてみんながいるスタジオについてきてもらった。

 

 

 

 

 

 

まりなさんに見てもらっている中、僕達は作業の邪魔になってはいけないと思いCIRCLEの待合スペースでミーティングをしていた。

 

10分後にまりなさんが帰ってきた。

 

「まりなさん、どうでした?」

 

「うーん多分故障したんだと思う。あそこの冷房そろそろ古くなってきてたからね・・・」

 

どうやらこの暑さでオーバーヒートしてしまい故障してしまったらしい。

 

中を見ると回線が焼けていたそうだ。

 

冷房の修理には1週間もかかってしまうらしい。

 

「うーん・・・どうしよっか、Roseliaのみんなの予約は全部あそこのスタジオだったし・・・他のスタジオで空いている時間ないか見てくるよ。」

 

そう言ってまりなさんは受付の方に戻った。

 

流石にこの暑さの中で冷房なしで練習するのはもちろんきついがかといって冷房が直るまで練習できないのはもっときつい。

 

戻ってきたまりなさんによると次空いている時間は明後日の朝からだけらしい。

 

「友希那、どうしますか?」

 

「そうね・・・明日は各自自主練にするわ。それぞれ各パートの練習をしておくように。」

 

「「「「はい!」」」」

 

「それじゃあ解散ね、また明後日に。」

 

そう言って友希那は颯爽と帰っていった。

 

紗夜も後に続き帰っていく。CIRCLEには僕、リサ、燐子、あこの4人が残っていた。

 

「ねぇ、三人ともこのあと暇?」

 

「あこは大丈夫だよ!」

 

「私も・・・大丈夫です。」

 

「僕もこの後特に予定はありません。」

 

「それじゃあさ、今からショッピングモール行かない?この前新しいカフェが開いたみたいでさ~」

 

「あこ行きたい!りんりん行こっ!」

 

「えっと・・・うん、そうだね・・・行こっか。」

 

「良いですね、たまにはそういうところへ行っても。」

 

そう言って僕達は駅前近くのショッピングモールへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングモールへ着くと平日とあってか人は少なめだった。

 

「よかったですね、人が少なくて。」

 

「はい・・・これなら安心できます。」

 

「燐子~ソータ~早く行くよ~」

 

リサに急かされ、僕達はカフェへ向かった。

 

カフェに着くと甘い匂いが漂ってきた。

 

その匂いの正体は入るとすぐにわかった。

 

「うわぁ!ケーキがいっぱい!」

 

「すごい品揃えだね、ケーキ屋さんみたいだよ!」

 

「確かに・・・すごい・・・」

 

「・・・まじですか。」

 

その品ぞろえの凄さはケーキ屋顔負けの種類だった。

 

僕は無類の甘いもの好きなのでこういうのには目がない。

 

僕の様子の変化に気がついたのはリサだった。

 

「あれ、ソータどうしたの?いつもと様子違うけど・・・」

 

「もしかして奏多さん甘いもの好きだったりして!」

 

「そうには・・・思えないけど・・・」

 

「・・・!す、すみません・・・ぼーっとして何も聞いてませんでした。さっきは何を話していたんですか?」

 

「・・・ほんとに甘いもの好きみたい。」

 

「とりあえず・・・注文しましょうか。」

 

「うんっ!あこは何にしようかな~奏多さんはどうする?」

 

「あ、はい僕は・・・」

 

とりあえずカウンターで適当な数のケーキとコーヒーを注文する。

 

みんなのオーダーを聞くと全員がケーキ一つとドリンク一つという組み合わせだ。

 

やはりケーキ複数買いは異質なのだろうか。

 

「ソータ、早くしないと置いていくよ~」

 

「あ、はい待ってください!」

 

気がつけばみんな先に行っている。

 

カウンターで注文したものを貰い、お金を払ってからみんなを追いかけた。

 

「・・・ん?今あこ僕のこと奏多さんって言わなかった?」

 

僕があこの呼び方の変化に気がついたのは初めて呼ばれてから5分後のことだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・美味しかった!」

 

「はい・・・とっても美味しかったです。」

 

「そうですね、どのケーキも美味しかったです。」

 

「そ、ソータあの量全部食べたの?」

 

リサが若干引きつった笑顔で聞いてきた。

 

「はい、そうですけど・・・甘いものは別腹って言いませんか?」

 

「九条さん・・・それ女の子が言う台詞だと・・・思うんですけど。」

 

「奏多さんが甘いもの好きって意外だよね~」

 

「そんなに意外ですか?CIRCLEでもよく甘いもの食べてますけど・・・」

 

「いや、ソータっていったらアイスコーヒーのイメージしかなくてね~」

 

「はい・・・そんなイメージです。」

 

確かにコーヒーもよく飲むがそんなに甘いもの好きが意外なのだろうか。

 

僕がコーヒーを飲みながら考えていると

 

「あ、やっぱりリサ先輩と九条さんだ!」

 

という聞き覚えのある声がした。

 

声のした方向を向くとそこには上原さんがいた。

 

「あれ、ひまりじゃん。どうしたの?」

 

「はい、ショッピングモールによってぶらついてたらリサ先輩と九条さんの姿が見えたんで声をかけに来たんですよ。」

 

「そうですか。あ、上原さんこの2人とは初めてでしたよね、まず彼女が」

 

「白金・・・燐子です。よろしく・・・お願いします。」

 

「宇田川あこですっ!いつもおねーちゃんから話は聞いてます!」

 

「宇田川って巴の妹!?初めて見たよ!よろしく!あこちゃん、燐子さん!」

 

初めて会う3人が挨拶を交わす。

 

すると上原さんは思いついたように話し出した。

 

「そうだ!このメンバーで海行きませんか?実は他のメンバーが行けなくて誰と行くか考えていたところなんです!」

 

「海か!いいね、行こうよ!」

 

「あこも行きたい!ねぇ、りんりん、奏多さん一緒に行こうよ!」

 

「う、海・・・ですか。訳あってあまり行きたくはないですけど・・・」

 

海はある事情があってあまり行きたくはない。

 

別に泳げないって訳では無いがあまり人前に肌を晒したくないのだ。

 

「お願いですっ!女の子だけじゃ何があるかわかんないですし!」

 

「そうだよソータ!アタシ達に何かあったらバンドとして困るでしょ?」

 

「そ、そこまで言うなら・・・泳がなくていいのであれば行かせてもらいます。しかし・・・」

 

燐子を見るとかなり青ざめていた。

 

海はやはり人が多い上に色々と危険がある。

 

「う、海・・・む、ムリです・・・海、こわい・・・」

 

これは本当に怖がっている時の声だ。

 

無理に行かせるのもかわいそうだ。

 

「り、りんりん無理しなくていいよ!」

 

「あこちゃん・・・ごめん・・・」

 

「ううん。謝ることなんかないよ、気にしないで!りんりん、いつかぜーったい海に行こうね!」

 

「そうだ燐子!代わりに新しい水着を見てよ!燐子ならいい水着見つけてくれるだろうしさ!」

 

「え、その・・・」

 

「そうなんですか?確かに燐子さんそういうセンスありそう!」

 

「だってRoseliaの衣装担当はりんりんだもんね!」

 

「そ、それくらいなら・・・大丈夫です。」

 

「よーし!それじゃあ水着コーナーへレッツゴー!」

 

「「おー!」」

 

上原さん、リサ、あこの3人はノリノリだが白金さんはまだ少し怯えているし僕はこのノリについていけなくなっている。

 

その上男子1人に女子4人で水着コーナーとかめちゃくちゃ行きにくい。

 

「ぼ、僕は適当に本とか見に行くので・・・皆さんで水着見てきてください。」

 

「えー、奏多さんも一緒に行こーよ!」

 

「いや、その、女子4人の中に男子1人は流石に・・・」

 

「ほーら!ソータ行くよ~!」

 

リサに腕を引っ張られ、そのままカフェを出ようとする。

 

僕はこの後のほかの人の目線を浴びながら移動しなければならない事に覚悟を決め、なすがままに連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、リサと上原さんに連れていかれ振り回されクタクタになった僕は部屋に戻るなりベッドに倒れ込んだ。

 

行くのは今週末でまだ3日もあるのにノリノリではないだろうか。

 

ふと気分でパソコンを開くと通知が来ている。

 

通知の内容はNFOの通知だった。

 

どうやら夏限定のコラボカフェイベントで一部の海の家に行くと特別な装備のコードが貰えるそうだ。

 

装備は夏らしく麦わら帽子に向日葵などの夏らしいアクセサリーが着いたものだった。

 

性能は配布としては悪くなく、見た目も悪くない。

 

僕はどこで入手できるか調べてみるとなんと今度行く海にある海の家で入手できるようだ。

 

(燐子ならこの装備欲しそうだな・・・)

 

そう思ったがコードはもちろん一人一枚限定だ。

 

僕が代わりに二つもらうわけにも行かない。

 

(燐子来てくれるといいけど・・・)

 

僕は叶えそうにないことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

今日は何かと振り回されてとても疲れた。

 

海はあこちゃん達と一緒に行きたいという気持ちもあったがやはり人混みは苦手だ。

 

出来れば行きたくないがよく九条さんは行くって言ったものだ。

 

ここ最近、あの日のことをずっと疑問に思っている。

 

それはこの前九条さん達が一時的にいなかった時ファミレスでの九条さんの発言に大きな声で反応してしまったことだ。

 

あの時の九条さんの考えは間違っている。

 

同じメンバーとしてその考えを変えて欲しいと思ったから反論したが本当に『メンバーだから』ってだけだろうか。

 

初めは同じクラスメイトとして、そして同じNFOのプレイヤーとして、Roseliaのメンバーとして関わってきたが今の私は九条さんの事をどう思っているのだろうか。

 

ふとパソコンを見ると何やら通知が来ている。

 

あこちゃんとよくチャットをするのでパソコンの電源はつけたままだ。

 

私はその通知がNFOからのものであることを知るとすぐに確認した。

 

内容は夏限定の限定装備のコードの事で装備のデザインを見るととても可愛らしいものだった。

 

「手に入れたいな・・・どこでやるんだろ・・・」

 

NFOの通知をよく見ると開催場所のマップが乗っていた。

 

しかし、その場所は海の家だった。

 

「ここって今度九条さんやあこちゃん達が行くところ・・・」

 

しかも今度九条さん達が行く所だった。

 

限定装備は欲しいが海に行かないとコードが貰えないことに私はとても悩んだ。

 

するとふとあこちゃんの言ったことを思い出した。

 

『ううん。謝ることなんかないよ、気にしないで!りんりん、いつかぜーったい海に行こうね!』

 

あの時のあこちゃんの表情は笑っていたけど寂しそうだった。

 

あの表情はもう見たくないし、いざとなれば今井さんや九条さんがいる。

 

私は決意を固めた。

 

「あこちゃんに・・・連絡・・・しよう!」

 

私はあこちゃんに海に行くことを連絡した。

 

コードのために、何よりあこちゃんの笑顔のために。




はい、水着イベ最初はどうでしたか?
ネタバレ(?)になりますが奏多が素肌を見せたくないという所は後々の展開に大きく左右されます。
そのため沖縄編でも海に入れていません!
それとそろそろ『九条奏多を描いてみる』の企画が終わりそう・・・(あと色塗るだけ)
なお、奏多の髪色は銀色か灰色にしようかと思います。
完成まであと少しなので乞うご期待!


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28話 クジョウソウタ ノ サイナン

タイトルが斉木楠雄のΨ難みたいになった作者こと隠神カムイです。
前のイベントからはや2日、新イベまさかのRoseliaとは・・・前のイベントを8989位で終わらせて今回息抜きしようかと思ったらガチらなあかんやつや・・・
とっとと九条奏多を仕上げないといけない中、水着イベ本編始まります!


上原さん企画の海に行く日の全日、僕はあことショッピングモールに来ている。

 

しかし今日は2人だけではない。

 

僕達は今回のメインの人の付き添いとしてきている。

 

その人とは燐子のことだ。

 

 

 

 

 

 

遡ること二日前、NFOにカナタとしてログインしていた僕はあこと一緒に経験値稼ぎに出ていた。

 

今度コラボカフェのイベントの時にNFOの中でも限定イベントが行われるのだが、そのイベントの高難易度がかなり難しく設定されているらしく今のあこのレベルでは厳しいかもしれないということで経験値稼ぎに来たのだ。

 

高耐久だが経験値豊富なドワーフ型モンスターを相棒のルナのバフを受けながら愛剣「純銀剣クラレント」を振るいながら狩っていた時だった。

 

「あ、奏多さん、メール来たんでちょっとの間よろしくお願いします!」

 

「はい、わかりました。」

 

あこがメールのために戦線を外す。

 

すると驚いた声を上げた。

 

・・・と言ってもチャットのため驚いたようなチャットなのだが。

 

「あこ?どうしたんです?」

 

「やったよ奏多さん!りんりん海に来てくれるって!」

 

僕はそれを見た瞬間飲んでいたコーヒーを吹きかけた。

 

(なお操作は片手でおこなっていた)

 

咳き込みながらチャットを返す。

 

「本当ですか!?」

 

「うん!それで今度水着を選んでほしいって!」

 

「・・・それ、僕も行かなきゃダメですか?」

 

「もちろんですっ!同じメンバーとして、同じパーティとして絶対絶対絶対来てください!」

 

呑気にチャットを返しているとカナタの体力はいつの間にか3分の1になっていた。

 

「あ、あこ!?そろそろ戻ってきてくれませんか?体力がちょっとやばいです!」

 

「す、すみません!なら、わらわの特大魔法で消し飛ばしてくれるわ!」

 

そう言ってあこ姫のアバターは詠唱を始める。

 

確か死霊魔術師のあの魔法は味方も巻き込んだはず・・・

 

「ちょ、退避するので、待ってくだ」

 

「くらえ!『デス・ザ・クライシス・デンジャラスパーティ』!!」

 

すると地面から「ヴァハハハハァ!」と高笑いを上げながら大量の白色のゾンビらしきものがドワーフ達に絡んでいく。

 

それは僕の方にも来たので僕は全力で逃げる。

 

あのゾンビは出てきてから10秒後に大爆発を起こすのだ。

 

しかも1度捕まるとめちゃくちゃしつこく絡んでくる。

 

「あ、奏多さんいるの忘れてた!奏多さ~んすみません~!」

 

(ンなこと今更言われても!!)

 

僕はチャットを返す余裕がなくとりあえず逃げる。

 

するとカナタの後ろで大爆発が起こり、ドワーフ達がポリゴンとなって消えていった。

 

どうやら何とか逃げ切ったようだ。

 

「あ、危なかったぁ・・・」

 

「奏多さん大丈夫?」

 

「は、はい・・・次からは僕がいるのを覚えていてくれると助かります・・・」

 

そう言った後、空からルナが何事も無かったように肩に止まったのを見て僕はものすごく疲労感が湧いた。

 

 

 

 

 

・・・と、そんな感じで経験値を稼いだ後、燐子とメールで行く日にちを決め今日に至る訳である。

 

「りんりんよく行くって言ったよね。この前はあんな嫌がってたのに。」

 

「えっと・・・その・・・」

 

「とりあえず早く決めましょう。」

 

「うん!りんりんにぴったりなヤツ探すぞ~!」

 

あこはノリノリで走っていった。

 

「あ、ちょっと・・・あこちゃん!」

 

「走っていきましたね・・・」

 

「そ、そうですね・・・」

 

僕と燐子が取り残された。

 

僕はおそらく行く原因であるであろう事を聞いた。

 

「燐子、もしかしてNFOの限定コードの件で行く気に?」

 

「・・・はい、あの装備強いし・・・とても可愛かったので。」

 

「けど、無理はしないでくださいよ。緊張して楽しめなかったら元も子もないですし。」

 

僕は笑顔でそういったのだろうか。

 

燐子が僕の顔を見て微笑み返した。

 

「・・・はい。今日はよろしくお願いします。」

 

水着を選ぶセンスがあるかはわからないがとりあえず頑張ろうと思った。

 

すると気がつくと水着のコーナーの前に着いていた。

 

「奏多さんにりんりんおーそーいー!」

 

「すみません、遅くなりましたね。」

 

「・・・き、緊張するな。」

 

「大丈夫だよ!あこがめちゃくちゃカッコイイの探してあげるから!」

 

「ちょ、あこちゃん・・・引っ張らないで・・・こける・・・」

 

あこが燐子の手を引いてコーナーの中に入る。

 

「・・・やっぱり入りづらい。」

 

置いていかれた僕はまだ水着コーナーへ入る抵抗感を持ちながら2人を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

この前来た時もそうだが最近の水着はかなりレパートリーが多い。

 

ビキニやワンピース型に競泳用っぽいやつ、布面積の少ないものまで色々ある。

 

「ん~・・・ねぇ奏多さん、どれがいいと思う?」

 

「どれがって言われても・・・」

 

年頃の高校2年生に聞くことだろうか。

 

変に想像すると変態扱いされかねないのに。

 

「燐子だと・・・白と黒のイメージですね。」

 

「白と・・・黒ですか・・・」

 

「確かに!まずはそれで探してみよっ!」

 

とりあえず色のイメージを言ったがこのコーナーだけでも白黒の水着は多い。

 

これを片っ端から探すのだろうか・・・

 

「あこちゃん・・・私・・・できればワンピース型に・・・」

 

「うん、わかった。それでさがそ!」

 

燐子が水着の型を選んでくれたのでだいぶ探しやすくなった。

 

「・・・これ僕いるの?」

 

ここに来てからずっと思っていることをまた思いながら僕は2人の水着探しに付き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

探し始めて30分後、燐子がレジから戻ってきた。

 

「燐子、いい水着が見つかったんですか?」

 

「はい・・・なんとか・・・」

 

「どんなものを選んだんです?」

 

「はい、それは・・・」

 

燐子が紙袋の中から出そうとした時だった。

 

「ダメ~!」

 

あこが止めに入った。

 

「あ、あこちゃん!?」

 

「りんりん、そういうのは海に行ってからのお楽しみってやつだよ!」

 

「で、でも・・・」

 

「奏多さんも!それでいいよね!」

 

「え、えっと・・・その・・・は、はい。」

 

あこの発言に押され、僕はそう返事した。

 

「うん、それでよし。すべては審判の時に明かされるであろう・・・」

 

燐子の水着を後回しにされ、僕はポリポリと頭をかいた。

 

実は2日前、リサや上原さん、あこにも同じ行動を取られているので僕は4人がどんな水着を選んだかを見ていない。

 

そういうのも海に行く楽しみなのだろうか。

 

今まで友人と何かをしたことが全然ないので全くわからない。

 

「えっと・・・今日はありがとうございます。」

 

「いえ、今日に至ってはほとんどあこが決めてましたし僕は何も。」

 

「明日・・・よろしくお願いします。」

 

「うん、みんなで海めいっぱいに楽しもー!」

 

「はい、また明日。」

 

僕はこの後バイトに行くので2人とはここで別れてコンビニへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

いつものコンビニについて制服に着替え、青葉さんとレジに立っているがコンビニ内はすごく空いていた。

 

この前のソフトボール軍団があってか最近は人が少し多くても対応できるようにはなってきた。

 

「九条さん九条さん。」

 

暇だったのか青葉さんが話しかけてきた。

 

「はい、なんでしょうか。」

 

「今度リサさんとひーちゃん達とで海行くらしいですね~」

 

「そうです、と言っても僕は付き添いなんですけどね。」

 

「ひーちゃんずっとあたし達に海行こうって言ってたんですけど、ともちんは祭りの打ち合わせでつぐは用事、蘭はバイトであたしは白いお肌がこげるのと暑さで溶けちゃうのが嫌なんで断ったんです~」

 

おい、ほかの3人は仕方ないとして青葉さんの断り方酷くないか。

 

「それで~九条さんは誰が好みなんです?」

 

青葉さんに唐突にそう言われ思考がフリーズした。そしてすぐに冷静になってゆっくり否定した。

 

「そんな、誰が好きだからって理由でついて行くんじゃないんです。上原さんやリサに『女の子だけじゃ不安』って言われたんで・・・」

 

「でも、それだけで行くもんなんです?」

 

「どうせその日は練習もなくて暇だったのとたまには違う場所に行ってみたいと思って。」

 

「あとはともちんの妹のあこちゃんと白金さんでしたっけ~?」

 

「はい、白金さんは最初断ったんですけどあることがあって行くって言ってくれたんです。」

 

「そ〜なんですか。」

 

青葉さんが少し興味無さそうに返す。

 

後日聞いたが、リサ曰く、青葉さんは「興味無い事はとことん興味無いが興味あることはすごく本気になるタイプ」らしい。

 

興味無さそうだったことをスルーして僕は話を続けた。

 

「それでみんなの水着を選びに行ったんですけど・・・」

 

「それ九条さんが全員分決めたんですか?」

 

「いえ、僕は振り回されただけで結局全員見せてくれなかったんですよ。」

 

「ああ、わかります~女の子ってそういうの良くやりますから~」

 

やはり女子ってそういうものなのか・・・やはり昔から女性ってよくわからない。

 

「あ、そろそろシフト上がりますね~」

 

「そうですね、もうこんな時間ですか。」

 

「あたしは先に帰りますけど~うちのひーちゃんをよろしくお願いします~」

 

「は、はい、わかりました。」

 

青葉さんに上原さんの親みたいな言い方をされ少し困惑したがすぐに返す。

 

今更ながらリサに鍛えられて成長している感はある。

 

着替えて外に出ると空は夕焼け模様だ。

 

「綺麗だな・・・」

 

日が沈み、夕暮れが夜へ移り変わり周りが暗くなる瞬間。

 

僕はそのタイミングが好きだ。

 

BLACK SHOUTが生まれた時間でもあるがそれ以上に色の移り変わりが激しく心を揺らす。

 

ほかの人からしたら当たり前なことでも色の無い僕にとってはその移り変わりがすごく響く。

 

(明日はどんな色が見られるだろうか。)

 

僕はそう思いながら自分の帰宅路へ向かった。




久々にルナ出したな・・・
次はついに海へ向かって4人が水着に着替えます。
その時奏多はどんな反応をするのか・・・お楽しみに!

あと『デス・ザ・クライシス・デンジャラスパーティ』の元ネタは無論、社長で神で今は王様のあの人です(笑)(デーンジャデーンジャ!ジェノサイド!デスザクライシスデンジャラスゾンビィ!ウォォォ!)


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29話 ウミ ト ミズギ ト アワテル ムショク

やべぇ・・・奏多の色塗ってねぇ・・・と慌てる隠神カムイです。
ほんとに次出すんで・・・それまで待ってくだせぇ・・・ってことで絶賛九条奏多を描いている途中であります。
これで将来大丈夫かねぇ・・・

そんな作者の心配は置いといてくっそ寒くなってきた今無灰世界で海行くってよ


上原さん企画の海に行く日当日。

 

僕は集合時間の20分前に駅前に到着していた。

 

海に行くということで水分補給用の塩分タブレットや日焼け止めクリーム、着替えにもしものための緊急用の包帯や医療用キットなど色々持ってきている。

 

僕はかなり心配性のためこういう物はいつも準備してあるのだが親父にはいつも『やりすぎ、もうちょっと少なめでいい』とよく言われる。

 

そこまでやりずきているのだろうか。

 

とりあえず待つこと5分、まずは上原さんとリサが来た。

 

「あ、九条さん!おはようございます!」

 

「おはよーソータ・・・って何その荷物!?」

 

「おはようございます。この荷物がどうかしました?」

 

「いや、そん中何入ってんの?」

 

「確かにすごい量ですね・・・」

 

「えっと熱中症予防の塩分タブレットやタオル数枚、着替えに日焼け止めクリームに緊急用の包帯やら何やら色々入ってます。」

 

「それ重くないの?災害避難用の持ち物じゃないんだし・・・」

 

「正直少し重いです。けどこういうのを持っておいた方が色々対応できるんで。」

 

「九条さんすごい心配性ですね・・・」

 

やはりやりすぎなのだろうか。

 

次からは少し減らした方がよさそうだ。

 

そうこう話しているとあこと燐子が来た。

 

「上原さん、今井さん、九条さん・・・おはようございます。」

 

「おはようございます!・・・って奏多さんその荷物何!?」

「ほーらやっぱりやりすぎなんだって!」

 

「・・・次から自重します。」

 

「よーし、これで全員揃いましたね!それじゃあ出発しましょう!」

 

「おー!」

 

そう言って上原さんとリサが改札へ向かう。

 

「僕達も行きましょうか。」

 

「はい・・・そうですね・・・」

 

燐子が返事を返すがやはり緊張しているようだ。

 

肩にすごく力が入っている。

 

するとあこが燐子に笑顔で話しかけた。

 

「りーんりん!今日は一緒に行ってくれてありがとう!今日は思いっきり楽しも!」

 

「あこちゃん・・・うん、そうだね。」

 

あこのお陰で肩の力が抜けたようだ。

 

それに僕はほっとした。

 

「おーい、早くしないと置いていくよー!」

 

「りんりん、奏多さん行こっ!」

 

「・・・うん、行こっか。」

 

「そうですね、行きましょう。」

 

僕達は目的地である海のある隣町へ向かうため改札を通り、電車に乗った。

 

電車には女子4人が向かい合う形で座り、僕は隣の席で通路を挟んで話していた。

 

隣街の海の近くの駅は結構遠く、急行に乗っても6駅ほど乗っていなければならない。

 

しかし、最近のバンドの近況やこれから何をするかなどを話しているうちに目的の駅に近づいていた。

 

トンネルを抜けると窓の外には海が見えた。

 

「うわぁ!すっご~い!」

 

「綺麗・・・」

 

「ホントすごいね!」

 

「すごく綺麗!写真写真~」

 

「すごく青い・・・」

 

海の青さに僕は心を打たれる。

 

海に来るのは本当に久々だ。

 

一番最後に来たのはまだ母親が親父と別れていなかった頃なのだがその頃の記憶が全然思い出せないし正直思い出したくない。

 

僕は頭を降って嫌なことを忘れ、これから行く海に柄でもなく心を踊らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

女子が着替えている中、僕は受付で借りたビーチパラソルと持参のブルーシートをひいて準備していた。

 

一応僕と荷物を置くために引いているのだが更衣室には鍵付きのロッカーがある。

 

しかし財布を取りに来たり、色々取り出す時に戻るのが面倒だということで海に来ても泳がない僕が一括管理をすることになった。

 

まだ女子が更衣室から帰ってこないので僕はパラソルの下で本を読んでいた。

 

しかしいくら日陰とはいえ暑さで汗が出てくる。

 

持ってきたタオルと塩分タブレットを取り出そうとカバンを漁ろうとした時だった。

 

「九条さんお待たせしました!」

 

その声は上原さんだろうか。

 

返事を返そうと声のする方に振り向いた。

 

「はい、荷物はこちら・・・に・・・」

 

後ろを見るとそこには当たり前だが水着の上原さんがいた。

 

どうやら上原さんはピンクのビキニにしたようだ。

 

そのため白い素肌や体型がしっかりわかってしまう。

 

しかも振り向いた時に上原さんは前かがみになっていたので大きな胸が強調されている。

 

女子の露出に慣れていない僕はおそらくすごく顔を赤くしているだろう。

 

そんな頭がごちゃごちゃになってきた時に追い討ちをかけるようにリサが来た。

 

「おっ待たせ~!いや~久々の水着に着替えるの苦労しちゃって。」

 

「リサ先輩!その水着とても可愛いです!」

 

「そう?ひまりも可愛いよ!ソータはどう思う?」

 

「い、いや・・・あの・・・その・・・と、とても・・・大人っぽく・・・」

 

リサの水着も同じビキニタイプだがこちらは色々と装飾が付いていてリサのギャルっぽさをとても強調している。

 

しかもスタイルがいいせいかとても大人っぽく見えて、いつも接しているリサとはまたイメージが違って見える。

 

「ええ~それっていつもは子供っぽいってこと?」

 

「い、いえ・・・そういう訳では・・・」

 

「あとはあこちゃんと燐子さんだけですね。」

 

こんなに頭がオーバーヒート寸前なのにまだ2人いるのか・・・その時聞き覚えのある中二病臭いセリフが聞こえた。

 

「ふっふっふ・・・わらわを呼ぶのは貴様たちか!」

 

「そ、その声は・・・!」

 

「え、リサ先輩?いきなりどうしたんです?」

 

「これがあこの水着姿である!」

 

どーんと言った掛け声とともにあこが僕達の前に現れる。

 

あこは紫色の水着にしたらしく編上げの入ったデザインとなっている。

 

しかしいつもと着ているデザインが変わっていからかまた別の原因があるのかわからないがあこをみると何故かほっとした。

 

「あとは燐子さんだけだけど・・・」

 

「あこ、燐子は?」

 

「りんりんなら多分そこに隠れてるよ。おーいりんりーん!」

 

そう言ってあこは更衣室方面へ走っていったと思ったらおそらく燐子であろう人影を引っ張ってきた。

 

確か白黒のワンピース型にしたと言っていたので露出は少ないだろう。

 

おそらくこの2人よりかはびっくりしないはず・・・

 

「じゃーん!これがりんりんの水着姿である!」

 

「あ、あこちゃん・・・恥ずかしいよ・・・」

 

・・・前言撤回、隠した方がやばい。

 

まさか燐子がここまでスタイルが良いとは思わなかった。

 

いつも着ている服ではわかりにくかったが水着を着るとここまで凶暴性が増すとは思わなかった。

 

水着は胸の中心に白色のリボンが付いて所々白のラインが入った水着なのだがその胸の大きさやスタイルの良さなどでとても映えている。

 

燐子の登場にビキニ2人組も絶句していた。

 

「あの・・・どこかおかしいですか?」

 

「いや・・・燐子って・・・脱ぐとすごいね。」

 

「・・・え!?それは・・・どういう・・・」

 

リサのその発言に燐子がめちゃくちゃ顔を赤くする。

 

それに畳み掛けるように上原さんが続く。

 

「初めて会った時から燐子さんスタイルいいなって思ってたけどここまでとは・・・いいな~私も燐子さんみたいになりたい!」

 

「スタイルよく・・・ない・・・ですよ。」

 

「ねー奏多さんはどう思う?りんりんの水着。」

 

「え!・・・あの・・・その・・・」

 

僕に話がふられ全員が一斉にこちらを向く。

 

燐子はずっと顔を赤らめている。

 

そんな中燐子が話しかける。

 

「その・・・似合って・・・ますか?」

 

その言葉にボン!って音とともに僕の意識は闇へ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

水着に着替えたはいいがやはり人前だと恥ずかしい。

 

いつもは胸を少しキツめに締めているように作った服も今はすべてカバンの中だ。

 

しかも水着はしっかりフィットするのでいつもとなれない感触に困惑する。

 

するとあこちゃんが私を見つけた。

 

「あ、いた!りんりん、奏多さん達待ってるよ。早く行こっ!」

 

「あ、あこちゃん・・・引っ張らないで・・・転んじゃう・・・」

 

そう言ってもあこちゃんは構わず腕を引っ張ってみんなの所へ引っ張っていく。

 

すると今井さんがこちらに気づいたようだ。

 

「キタキタ、おーい!燐子・・・」

 

「あ、燐子さ・・・ん・・・」

 

私を見ると2人ともフリーズしたように固まっていた。

 

「じゃーん!これがりんりんの水着姿である!」

 

「あ、あこちゃん・・・恥ずかしいよ・・・」

 

九条さんを見るととても顔を赤くしている。

 

暑さの影響なのかなにかほかに原因があるのかわからない。

 

「あの・・・どこかおかしいですか?」

 

そう言うと今井さんがフリーズが溶けたようで話し出した。

 

しかし開口一番に言ったのは思ってもないセリフだった。

 

「いや・・・燐子って・・・脱ぐとすごいね。」

 

「・・・え!?」

 

そう言われて私の顔が自分でもわかるぐらい赤くなる。

 

「それは・・・どういう・・・」

 

今井さんに聞こうとすると上原さんが続けて話しかけてきた。

 

「初めて会った時から燐子さんスタイルいいなって思ってたけどここまでとは・・・いいな~私も燐子さんみたいになりたい!」

 

そんなにスタイルなんて服を作る時以外気にしていなかったので困惑してくる。

 

「スタイルよく・・・ない・・・ですよ。」

 

とりあえず否定したがあまり効果はないだろう。

 

するとあこちゃんは残る1人に話を降った。

 

「ねー奏多さんはどう思う?りんりんの水着。」

 

「え!・・・あの・・・その・・・」

 

九条さんは顔を赤くしながらあわてたように返す。

 

視線が九条さんに集まる中、九条さんがこちらを見ている。

 

何も言わないのは失礼かもしれないのでとりあえず話してみた。

 

「その・・・似合って・・・ますか?」

 

すると九条さんは顔から湯気が上がるほど赤くなった後ボンっ!と音とともに後ろに倒れた。

 

「ちょっとソータ!?」

 

「九条さん!?」

 

「奏多さん!?」

 

「く、九条さん!」

 

全員が急いで九条さんの周りに集まる。

 

九条さんは顔を赤くして目を回しながら鼻血を出して気絶していた。

 

今井さんが揺すっても反応がない。

 

「あちゃー・・・ソータには刺激が強すぎたかな~」

 

「リサ先輩、それってどういう事ですか?」

 

「いや、ソータって女の子の耐性がめちゃくちゃ薄くてさ、この前コンビニで雑誌を整理していた時に水着特集が表紙の雑誌でめちゃくちゃ顔赤くしててさ~」

 

そう言いながら今井さんは笑っている。

 

このまま放っておく理由にもいかないので九条さんが目覚めるまで待った。

 

 

 

 

そして九条さんが起きたのは倒れてから10分後の事だった。




はい、設定資料集でも言ったように奏多はめちゃくちゃ耐性薄いです(笑)
てか初めての水着イベの時にまだノーマルしか出来なかった未熟な頃の僕が水着燐子欲しいがためにがむしゃらに頑張った頃を思い出した。
懐い・・・
そんな訳で早く奏多を描き終わらせるので次回までおまちくだせぇ!それでは!


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30話 ムショク ト ウミ ト フワフワピンク

や、やっと奏多出来た・・・
お待たせしました!『九条奏多を描いてみる』計画終了です!


【挿絵表示】


絵の上手い下手は置いといてやりきった感とやはり白黒すぎた感もあるけど作者は満足してます!

ということで本編始まります!


「んっ・・・」

 

なんだろう・・・頭がクラクラする。

 

僕は今まで何をしていた?

 

僕は今までの事を振り返ってみた。

 

(確か海に来てブルーシートとパラソルを設置して満足していたのは覚えている。その後確か・・・)

 

そこまで来て僕はある異変に気づく。

 

目の前が真っ暗で手足に力が入らない。

 

周りの音は微かに聞こえるぐらいだ。

 

(あれ・・・なんで倒れてんだ?熱中症?いや、そんなはずは・・・)

 

何とか指を動かすとガシャと音が鳴る。

 

恐らくブルーシートの音だろう。

 

ということはまだ海にいて病院ではなさそうだ。

 

すると声が聞こえた。

 

「・・・九条さんどうします?」

 

「このままだと・・・熱中症の危険が・・・」

 

「どうするリサ姉?」

 

「う~ん・・・海の水でもぶっかけてみる?ちょっと待ってて~」

 

今なんかやばいこと言わなかった?

 

そう思った瞬間意識がはっきりしだして体に力が入る。

 

ガバッと僕は勢いよく起きた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・僕は・・・一体・・・」

 

「あ、九条さん起きた!」

 

「よ、よかった・・・」

 

隣を見ると上原さんと燐子が安堵したように隣に座っていた。

 

顔、特に鼻の部分に違和感を感じ触ってみると両鼻にティッシュが詰められている。

 

通りで息がしづらいはずだ。

 

「これは・・・一体?」

 

すると2人に変わってあこが説明を始めた。

 

「奏多さんがみんなの水着を見たあとにりんりんが話しかけたら鼻血出して気絶したんです!みんな心配したんだから~」

 

今更だが雑誌の表紙の水着の女性で顔が赤くなる僕が海に来るとこうなるのを予想出来なかったのは何故だろうか。

 

すると水をいっぱい入れたビニール袋を持ったリサが帰ってきた。

 

「あ、ソータ起きたんだ~せっかく汲んできたのに・・・」

 

「辞めてもらえます!?」

 

リサの危うい行動に全力でツッコミを入れる。

 

まだ体に力が入りにくいのと鼻が塞がれているせいですぐに息が上がってしまう。

 

「ソータ大丈夫?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・大丈夫です。すみません、僕が迷惑かけて。」

 

「大丈夫ですよ!それじゃあ九条さんも起きたことだし!」

 

「海行こっか!」

 

女子がキャッキャ言って海に入っていった。

 

しかし燐子は海に行かず僕の隣に座った。

 

「燐子は入らないんですか?」

 

「私・・・泳ぐの苦手で・・・みんなが楽しそうにする姿見るの・・・好きだから・・・」

 

そう言って燐子は自分のカバンから薄い上着を取り出して羽織った。

 

さっき水着を見ただけでぶっ倒れた僕からしたら正直有難い。

 

「九条さんは・・・なぜ泳がないんですか?」

 

「いや・・・色々ありまして。」

 

燐子の質問に曖昧に返す。

 

燐子は不思議そうな顔をしながらもそれ以上聞かないでくれた。

 

とりあえず僕はカバンの中からタブレットを取り出した。

 

本当はもっと本を持ってこようかと思ったが潮風で傷んでしまう可能性があるので昔親父が買ったはいいものの使い方がわからないという理由で置いていった防水(しかも海水も平気)のタブレットを引っ張り出してきたのだ。

 

「九条さん・・・それは?」

 

「防水のタブレットです。本当はもう少し本を持ってこようかと思ったんですけど濡れるのと潮風が怖くてこちらを持ってきたんです。」

 

燐子が興味津々にタブレットをのぞき込む。すると肩と肩がぶつかった。

 

「ヒャッ!」

 

「わっ!」

 

お互いビックリして距離を開ける。

 

お互い何があったかわかってなく見つめあっていたがいきなり弦が切れたみたいに笑い合う。

 

するとタイミングが良いのか悪いのか海に行っていたメンバーが帰ってきた。

 

「あれ?りんりんと奏多さんどうしたの?」

 

「何か面白いことでもあったんですか?」

 

「あれ~?もしかしてお邪魔だった?」

 

「「ち、違いますっ!」」

 

最後のリサの発言に僕と燐子が否定しようとしたら偶然声が重なる。

 

リサはそれが可笑しかったみたいで笑い出した。

 

上原さんはリサの発言にキャーキャー言っているが1人理解出来ていないのかあこはポカンとしている。

 

「リサ・・・そんなに笑うことですか。」

 

「い、いや~ソータも燐子も顔赤くしちゃって。それにハモったから可笑しくってさ・・・」

 

燐子は顔を赤くして下を向いている。

 

リサにこれだけ言われたら流石に恥ずかしくなるだろう。

 

僕はとりあえず平然と返す事にした。

 

「と、とにかくリサ達はどうしたんです?別にこれが気になったわけでもないですよね。」

 

「ああ、そろそろお昼近いしご飯食べに行かない?って誘いに来たんだよ。あとはそのための財布とか色々取りに来た。」

 

「確かあそこに海の家ありましたよね。そこで食べましょうよ!」

 

上原さんが指す海の家とはおそらくNFOのコラボカフェの会場の店だろう。

 

上原さんの発言にさっきから下を向いていた燐子がピクッと反応した。

 

「いいねひーちゃん!りんりんも行こっ!」

 

「そうだね・・・行こっか。」

 

ということで僕達は昼ごはんを食べに海の家へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

海の家に着くとそこにはたくさんの人が列を作っていた。

 

「人でいっぱいですね・・・」

 

「あちゃ~やっぱりお昼時は混むな~」

 

「ひ、人・・・いっぱい・・・」

 

「やばい!りんりんのいつもの発作が!」

 

「り、燐子!落ち着いてください!」

 

燐子が顔を青くしだしたので僕とあこで全力でなだめていると聞き覚えのある声がした。

 

「いらっしゃいませ~!まん丸お山に彩りを!パステルパレットボーカルの丸山彩ですっ!本日はNFO特別コラボカフェへようこそ!限定ドリンクやゲームのアイテムをモチーフとした色んなメニューがたっくさんあるので皆さん楽しんでくださいね!」

 

声の主は丸山さんだった。

 

しかもテレビで見るパスパレの時の格好のような水着を来ているのでおそらく仕事関連だろう。

 

他のみんなも気づき、丸山さんに声をかけに行くことにした。

 

「彩さん!こんにちは~!」

 

「あれ、ひまりちゃん!それに・・・あこちゃんとリサちゃんに燐子ちゃんと奏多君まで!?なになにみんなどうしたの?」

 

「彩は仕事?ってそのネームプレート・・・『一日店長』!?」

 

「えへへ、そうなの!今回のコラボカフェで、この海の家の一日店長を任された丸山彩でーっす!みんなよろしく!」

 

まさかこんな偶然があるとは思わなかった。

 

道理で異様に人が多いわけだ。

 

「すごい!あや先輩が店長さんなんだ!だから、こんなにたーっくさんお客さんが来てるんだね!」

 

「そ、そうなのかな?えへへ、だったら嬉しいな・・・あ、でもコラボしているゲームの人気も凄いみたいだよ。ほら、見て。お客さん、みーんな展示の写真撮ってるでしょ?」

 

ネット情報ではゲームキャラが水着になったりカフェの壁紙がNFOの海ステージっぽくなっているらしい。

 

しかし来てみるとそれだけではなく再現された実物の装備やなんとキャラのラフ画まであった。

 

「あっ!このゲームあことりんりんと九条さんもやってる!九条さんはRoseliaに入ってからだけどあことりんりんはリリースの時からずっとパーティ組んでてねっ、それでね!」

 

すると店の奥から人が出てくる。

 

店の店員さんだろうか?

 

「彩ちゃん、彩ちゃーん!悪ぃまたホール手伝って欲しいんだが・・・」

 

店の奥から出てきたのはなんと沖縄で会った店長さんだった。

 

「お、沖縄の店長さん!?」

 

「お、誰かと思えば坊主じゃねぇか!それにベースの嬢ちゃんとキーボードの嬢ちゃんも久しぶり!」

 

「どうして沖縄にいた店長さんがこっちに!?」

 

「いやぁこの店の店長は俺の親友でよ!コラボカフェするのに人手足りねぇからって呼び出されたんだよ!けどまさか坊主達に出会えるとはな!」

 

日本って狭いな・・・

 

そんなことを考えていると店長さんが思いついたように提案してきた。

 

「そうだ!坊主達悪いけど店を手伝ってくれねぇか?」

 

「あ、アタシ達がですか?」

 

「ああ、頼めねぇか?今日彩ちゃん来るの知っていたかみたいに人が多くて人手が足りなくてよ・・・」

 

「私たちに出来ることならお手伝いしたいですけど・・・」

 

上原さんが悩む。

 

確かに今日はお客さんとして来ている訳だし手伝おうにも作業がわからない。

 

「そんなに難しい事じゃねぇ、基本的にはスタッフを手伝ってもらえればいいからよ・・・頼む!この通りだ!」

 

店長さんが深々と頭を下げる。

 

僕でもこの人の量はやばいと思う。

 

この前のソフトボール軍団の3倍はあるのではないか。

 

それを数少ないスタッフで賄おうというのは流石に無理があると思う。

 

しかもここまで頼まれているのだ、断ることなんてできない。

 

「・・・わかりました、任せてください!ここまで頼まれたら断れないよね!」

 

「はい、私も手伝います!料理とかは無理でも接客やホールぐらいなら出来ると思います!」

 

「僕もやります。バイトでこういうのは慣れているし料理もレシピさえわかれば出来ると思います。」

 

「あこも手伝う!お店で働くのなんで初めてだから、楽しそう!りんりんも一緒にやろー!」

 

「わ、私・・・裏方なら・・・出来ると・・・」

 

「ありがと!それじゃあよろしく頼むよ!」

 

そう言って店長はあらかじめ手伝ってくれるのをわかっていたかのように仕事を振り分けていく。

 

その結果、あこと上原さんと丸山さんがホールと接客で、僕と燐子とリサが裏方で料理をすることになった。

 

「それじゃあ頑張るよ!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

丸山さんの掛け声にみんなで答える。

 

僕達の海改め、僕達の海の家での手伝いとなった今、僕は与えられた仕事を頑張ることにした。




久々に登場沖縄の店長さん。
少々強引な出し方だけどこの人のキャラ好きなんで出てもらいました。(キャライメージはFateのクーフーリン)
次でラストかな?って所なんで水着イベ編の後の流れを大体作っている所です。っていうかそもそもここを大切なポイントにしようと思ってたので考えるのは楽。
次回もお楽しみに!


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31話 ウミ ト シゴト ト ユウヤケ ト

疲れてようが何であろうが極力投稿日にはあげるように頑張る隠神カムイです。
なんかこの前リアルの友人が小説オススメサイトかなんかで僕の小説見つけたらしいんすけど週4投稿とかいう馬鹿みたいにやっているせいでニートか何かの扱いされてたけどちゃんとした高校2年生の男子ですからね!?
クラブとか色々やってるけど空いた時間に小説の設定考えたりしてるからこんなこと出来るんです!(しかし勉強してるとは言ってない)
けどたまに9時ぐらいから突発的にやってる時もある。
そんな作者の制作事情や正体事情は置いといて水着イベ編ラストです。
冬場の今、夏のことやってるのなんか変な感じしてるけどお楽しみください。
それでは本編どうぞ!


店長に頼まれて店の手伝いをすることになった僕達は2つのグループに別れて手伝うことになった。

 

僕とリサは一番大変な厨房スペースを任されている。

 

なぜなら料理出来るのがリサと僕しかいなかったからだ。

 

今回のコラボカフェはドリンクがメインなので作るメニューはいつもの海の家のメニューでいいらしいのだが夏場の厨房だ、めちゃくちゃ暑い。

 

この暑さのせいで何人かのスタッフがバテてしまっているようだ。

 

しかしタフなリサはそんな暑さお構い無しに準備に取り掛かっていた。

 

「流石お店、調理器具が多いね~」

 

「そうですね。って言うかリサ料理できたんですか?」

 

「こう見えてアタシ結構やるよ?趣味とかで大体の料理作ったし。ソータは?」

 

「僕は今一人暮らししてるのと親父が料理出来なかったんで自然と身につきました。流石に毎日弁当とか買うのはお財布に厳しいですしね。」

 

「確かにそうだったね~」

 

「あ、あの・・・私はどうすれば・・・」

 

後ろで燐子が困ったように話しかける。

 

そう言えば燐子も調理場担当だったっけ。

 

「それじゃあ燐子はドリンク頼めますか?」

 

「ドリンク・・・ですか?」

 

「ドリンクならアタシも手伝うけど。」

 

僕はリサにメニュー表を突きつける。

 

するとリサは困惑していた。

 

「ど、ドリアードの涙?ま、マリカスの炎?な、なに・・・それ?」

 

「燐子はわかりますよね。」

 

「はい・・・おそらくこれと・・・これです。」

 

そう言って燐子は見本の写真を指差す。

 

緑のメロンソーダがドリアードの涙で赤のイチゴフロートがマリカスの炎だ。

 

「な、なんでわかったの?」

 

「ドリアードの涙は・・・ゲームだと・・・緑の回復アイテムですし・・・マリカスの炎は・・・使うと一定時間炎属性を付与できるドリンクなんで・・・」

 

「これ多分ゲームやってないとわからないと思います。僕と燐子とあこはこのゲームやっているのでわかりますが。」

 

「なるほど・・・だったら燐子頼むよ!」

 

「は、はい!」

 

「手が空いたら僕も手伝いますので。」

 

ドリンクを燐子に任せ、僕とリサは厨房に立った。

 

担当としては麺類はリサに任せ、僕は揚げ物や他の物を担当することになった。

 

「リサさん、ラーメン2つに焼きそば1つですっ!」

 

「奏多くん、カレー1つにポテト3つお願い!」

 

「りんりん、ドリアードの涙と解毒ポーション!」

 

流石お昼時、注文が多い。

 

カレーは温めるだけでなんとかなりそうだが問題はポテトだ。

 

揚げても揚げても時間が足りず、すぐに注文が入る。

 

ポテトを揚げている間にカレーやサンドイッチを作り、即座にカウンターへ。

 

ポテトが揚がるとすぐに新しいポテトを油の中へ突っ込んで揚がったポテトをさらに盛り付ける。

 

1回揚げるだけで7皿ほどに分けることが出来るがそれでも足りない。

 

ポテト頼む人多すぎだろ。

 

「ソータ!そっちどう?」

 

「ポテト地獄ですっ!そっちは?」

 

「店の人と協力してるけど焼きそばがすごい勢いで注文くる!」

 

え、あっちだけ手伝いいるのせこくないか?

 

「出来ればこっちも手伝いが欲しいです!」

 

「うん、無理そう!ソータ頑張って!」

 

即答で断られた。

 

あの声からしてリサが燃えている様だがいかんせん注文が多すぎる。

 

汗を流しながらテキパキと進めていると頼もしい声がした。

 

「おい坊主!大丈夫か?」

 

「て、店長さん!」

 

「流石にきついだろ!俺も手伝うわ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「この山乗り切ったら休んでいいからよ!それまで頑張ってくれ!」

 

店長が手伝ってくれることに感謝し、僕は最期までやり切ろうと決意した。

 

時々揚げ物スペースを店長に任せ、燐子の手伝いに行きながらなんとかお昼時を脱した。

 

 

 

 

 

 

 

「ご来店ありがとうございました~!」

 

「ふぅ・・・あれで最後のお客さんだね。くぅ~!アタシ達頑張ったぁ!」

 

「お疲れ・・・様でした。」

 

「つ、疲れた・・・」

 

最後のお客さんが帰っていった。

 

お昼時を脱してからも僕達は手伝いを続け、結局はコラボカフェの閉店時間の3時半まで手伝い続けた。

 

あの後お昼時を脱してからもポテトの売上がやばかったのと揚げ物の他にお好み焼きやクレープなどをやったため終わった瞬間疲労感がどっと来た。

 

「みんな、ありがとな!結局最後まで手伝わせちまったな。」

 

「いえいえ、お役に立ててよかったです!」

 

上原さんがそう言った。

 

おそらくここにいる全員がそう思っているだろう。

 

すると誰か知らないが腹の音がなった。

 

今思えば手伝いをしていたせいでお昼ご飯を食べるのを思いっきり忘れていた。

 

すると思い出したかのように空腹感に見舞われる。

 

「はっはっは!お前ら腹減ってんだな?待ってろ、なんか作ってやっから!もちろん金はいらねえ!」

 

「え、いや悪いですよ!」

 

「手伝ってもらったお礼だ!んなモン気にすんな!食べたいヤツがあればなんでも言ってくれ!」

 

「それじゃあお言葉に甘えて、あこは焼きそばでしょ!お好み焼きでしょ!それにかき氷!」

 

あこがそう言い出すとみんな遠慮なく注文しだした。

 

「アタシはラーメンでお願いしま~す!あ、あとクレープ追加で!」

 

「私は焼きそばとチョコパフェで!」

 

「えっとわたしは・・・サンドイッチと・・・オレンジジェラートをお願いします。」

 

「それじゃあ僕はラーメンとポテトで。」

 

「あいよ!ちょいと待ってな!」

 

店長が店の奥へ行くと丸山さんが声をかけてきた。

 

「みんな~こっちこっち!この席が海が一番良く見えるんだよ!」

 

丸山さんが指示する席に向かうとそこからは海が一望でにた。

 

「わ、すごーい!店内からこんなに海が見えたんだね~。料理作るのに必死で気が付かなかったよ。」

 

「凄いですね・・・」

 

丸いテーブルにみんなが適当に座り、今日あったことなどを話していると店長が料理を運んでくれた。

 

あれだけしんどい思いをしてこれらを作っているのだから店の人は改めてすごいと思った。

 

「それじゃあ料理も来たことだし!せーの!」

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

「どうぞ、召し上がれ!」

 

まだ仕事中のため1人注文をしていない丸山さんがそう言った。

 

「そういえばリサ先輩と九条さんって本当に料理上手なんですね!私ホールしながら見てましたけど、とてもテキパキしてました!」

 

「そ、そんなことないよ~普通だって!」

 

「そうですよ、誰だって慣れればあれくらい出来ますよ。」

 

「そーそー!そういうひまりだってあんだけお客さんいたのにずっと笑顔だったじゃん!」

 

「あ、あれは彩さんやあこちゃんに助けられただけですって!」

 

「確かにあこちゃんずっと楽しそうだったもんね!」

 

「そ、そうかな~?」

 

ホール組が互いを褒めあっている。

 

そういうのを見ると自然と笑みが出る。

 

「そういえばりんりんも凄かったよね!」

 

「え・・・わたしは・・・ただドリンクを作っていた・・・だけだけど・・・」

 

「それが凄かったんです!途中からものすごく早くなっていましたし!」

 

厨房で仕事をしている時に何度か燐子の手伝いには行ったがその時の燐子の手は見えないぐらい早くなっていた。

 

こういう作業に素質があるのかもしれない。

 

「最初は自身なさそうだったけど慣れたらテキパキ作って、ほんとすごかったよ~!」

 

「そうそう!お客さん喜んでたし!特にホワイトドラゴンの鉤爪フロート!あれ写真で見るよりすっご~いって!」

 

「あ、あれは・・・やっぱり迫力が・・・大事かなって・・・思って・・・」

 

すると食後用のデザートを持って店長が来た。

 

「おっ、楽しそうな話してんな!ほらよ、デザートだ。」

 

「わーい、店長さんありがとうございます!」

 

「それと、坊主とキーボードの嬢ちゃんとドラムの嬢ちゃんにはこれ!」

 

店長は四角い厚紙のようなものを渡してきた。

 

よく見るとそれは今回のコラボカフェで貰える限定装備のコードだった。

 

「り、りんりん!奏多さん!これって!」

 

「げ、限定装備のコード・・・ど、どうして・・・欲しいって・・・わかったんです?」

 

「嬢ちゃんの動き見てたらわかった。作るのにめちゃくちゃこだわっていただろ?それと坊主が教えてくれたのもあるんだけどな!」

 

「く、九条さんが?」

 

「はい、2人で作業している時に。」

 

それは僕と店長が揚げ物をしている時に店長に僕と燐子とあこがこのゲームをやっていることを伝えていたのだ。

 

店長はコードをとっておくと言ってくれて仕事の終わったこのタイミングで渡してくれたのだ。

 

「店長さん、ありがとうございます。」

 

「その・・・ありがとう・・・ございます!」

 

「いいってことよ!お前らほんとにありがとな!」

 

日も傾き始め、僕達はそろそろ帰ることにした。

 

丸山さんも仕事がそろそろ終わるらしいのでそれまで待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ!」

 

「あ、彩さん!」

 

丸山さんが普段着でこちらに走ってきた。

 

丸山さんだけではなく今は全員が着替えて普段着でいる。

 

「それじゃあ帰りましょうか。」

 

「そうですね・・・」

 

僕と燐子がそのまま後ろを向こうとした時だった。

 

右腕を誰かに掴まれた。掴んだ主はあこだった。

 

「奏多さん、りんりんストップ!」

 

「あ、あこちゃん?」

 

「最後にやることが残ってるよ!」

 

「やることですか?」

 

ふと上原さんを見ると手にはスマホが。

 

「記念撮影ですよ!こういうのはしっかり残さないと!」

 

「ソータ、燐子早く!」

 

リサが僕と燐子の背中を押す。

 

全員が上原さんの後ろに着くと上原さんはスマホのカメラを起動させた。

 

「それじゃあ撮りますよ!はいチーズ!」

 

パシャという音がする。

 

すると上原さんはスマホを下げて後ろを向く。

 

「今日は楽しかったですね!」

 

「そうだね!またこういうのもやろっ!」

 

「ひまり~宿題終わってるの?」

 

「お、終わってないです・・・」

 

「あこも終わってない・・・」

 

宿題は夏休み初日にすべて終わらせてある。

 

Roseliaの活動に支障が出るかもしれないので先に終わらせておいたのだ。

 

「楽しかったですね、こういうのも悪くないです。」

 

「そうですね・・・コードも貰えたし・・・」

 

「また来ましょうか。」

 

「・・・次は人の少ない日がいいです。」

 

「ははっ、そうですね。」

 

今日は久々に思いっきり笑った気がする。

 

泳がず、ただ手伝っただけなのに友達や仲間といるだけでこんなに楽しいとは経験がなかったので僕は初めて知った。

 

またこういう日が来ればいいのに、僕はこの時だけ幸せを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、こういう日が続くとは限らなかった。




水着編これにて終わりです!
最後の言葉の意味とは?度々出てくる奏多の秘密とは?
次回、急展開の『挫折編』お楽しみに!


って言うか時間すぎてる!


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7章 ~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ 32話 フオン ナ カゲ

新章『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』に入りました。
ある意味この章が無灰の大きな山となります。
作者が一番やりたかったところであり、この先の九条奏多の変化の起点となります。
この回では大きくは動きませんが次辺りは大きく動くかと。
それでは本編始まります。


 気がつくとそこは見慣れない場所だった。

 

 

 

(ここは・・・一体・・・)

 

周りを見るとどうやら部屋のようだ。

 

テレビにソファー、タンスに机など至って普通の部屋。

 

一見なんともないように思えたがチクリと頭が痛む。

 

周りをよく見ていくと頭の痛みが激しくなる。

 

しかし何故かその部屋から目が離せないのだ。

 

(・・・っ、なんでこんなに頭が痛む・・・別になんとも無い・・・)

 

僕はふと気づいた。

 

この部屋は見慣れない場所じゃない。

 

あのテレビの型にソファーに置かれているキャラクターのクッション、タンスの上に置かれた写真立てや机に刻まれた傷。

 

すべて見たことがある。

 

「そんな・・・ここって・・・」

 

 

 

 

 

 

認めたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ここがあの場所だって。

 

 

 

 

 

 

 

『僕が幼少期に過ごした家の中だって。』

 

 

 

 

 

 

「なんで・・・なんでここに・・・もう二度と来たくないって思ってた・・・ここに・・・」

 

足が震える。

 

しかし体は気がついてから首以外全く動かない。

 

するとガチャりと音がした。

 

その音の方向を見るとそこには女性が立っていた。

 

 

 

 

 

その髪色、服装、きつい香水の匂い、そしてその顔。

 

 

 

 

 

忘れたかった。

 

 

 

 

 

しかし忘れられるはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

そこには自分を1度絶望のどん底に落とした母親がいた。

 

 

 

 

 

「なんで・・・何であんたが!」

 

震えながらも必死に声を出す。

 

しかし母親は何も話さない。

 

しかしその顔は気持ち悪いものを見たような引きつった顔をしていた。

 

母親はヌルッと動き出し僕の首を片手で掴む。

 

掴んだまま前に進むと僕は棒が倒れるように倒れる。

 

不思議と痛みがない。

 

しかしその指の細さからは考えられないほど首を絞められている。

 

そしてもう片方の手には何かを持っていた。

 

 

 

 

 

 

それは割れて先端が尖った酒瓶だった。

 

 

 

 

 

 

ふと脳裏に幼少期の記憶が思い出す。

 

子供の頃、常に気持ち悪いものを見たような顔をされること。

 

近寄るだけで怒鳴られたこと。

 

そして何も言わないことをいいことに服を脱がされ酒瓶で骨折をしない程度に殴られたこと。

 

気がつくと上半身の服が無くなっている。

 

そこには僕が小学二年生で母親が男を作って逃げるまで付けられた傷が痛々しく残っている。

 

母親が酒瓶を振りかざす。

 

体が言うことを聞かない。

 

早く逃げたい。

 

早くどうにかしなければ。

 

頭は動いても僕の体はもう声が出せないぐらい動かなくなっている。

 

母親の酒瓶が振り下ろされた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!」

 

体を起こすとそこはいつもの部屋のベッドの上だった。

 

「ゆ・・・夢?」

 

どうやらあれは夢だったようだ。

 

置時計を見ると今は9月1日月曜日の5時前。

 

始業式の日の朝だ。

 

体からは汗が滝のように流れていた。

 

「・・・最悪だ。」

 

朝から最悪の夢を見た。

 

思い出したくもない幼少期、しかも一番最悪な場面を思い出してしまった。

 

とりあえずこのままでは気持ち悪いのでシャワーを浴びに体を起こした。

 

 

 

 

 

風呂場に入り、いつも通りバルブをひねると暑いお湯が出た。

 

そのお湯は僕の体から汗を心地よく流してくれる。

 

僕は風呂場に付いている鏡を見た。

 

そこにはもちろん僕が映っている。

 

銀色か灰色か中途半端な色の髪、細いがバイトやトレーニングで付いた筋肉、そしてその筋肉の上に刻まれた数多い古傷。

 

僕はこの体が嫌いだった。

 

親父によるともっと綺麗な銀色だった髪色も暴力の恐怖かくすんでしまっている。

 

今でこそ児童虐待にあたるのだろうが親父が気づいた頃には母親は行方がわからず、暴力を振るわれ始めた5歳の頃からの傷は二度と消えなくなっていた。

 

親父の帰る時間が遅いせいか毎日のように暴力を振るわれていたし小学四年生までは僕は何も喋ることが出来ず、別室で授業を受けていた。

 

なんとか小学五年生頃からしゃべることが出来て中学生になると人並み程度には喋れるようになっていたが敬語は抜けなかった。

 

よく考えてみると敬語じゃなくタメ語で話せるのは親父と親父と一緒に育ててくれたシゲさんぐらいかもしれない。

 

深く考えていたせいで風呂場から出ると時間は5時半になっていた。

 

「・・・光熱費と水道代もったいないな。」

 

そんなケチ臭いことを考えながら僕は濡れた体を拭いて着替えてから朝食の準備を始めた。

 

 

 

 

 

いつも通りの時間に出ていつも通りの道を歩く。

 

いつも早めに出ているせいかこの時間だと花咲川の生徒の通りは少ない。

 

校門前に着くとそこには黒塗りの見たことある車が止まっていた。

 

「おはよう、奏多!今日こそはハロハピに入ってもらいましょうか!」

 

そこにはいつも通り元気な弦巻さんがいた。

 

「あの・・・だから僕はRoseliaに入っているんですけど。」

 

「知ってるわ、だから私考えたのよ!奏多がRoseliaとハロハピの2つのマネージャーをやってくれたら丸く収まるんじゃないかしら!」

 

確かにそれならまとまるかもしれないがそれだと体がいくつあっても足りない。

 

「やっぱり!ちょっと、こころ!」

 

そこに走ってきたのか息を切らして立っている奥沢さんがいた。

 

当たり前だがミッシェルじゃなくいつもの姿だ。

 

「あら、美咲おはよう!」

 

「お、おはようじゃないよ!あんたまた九条さん誘ってたの!?」

 

「そうよ。」

 

「あーもー!だから前からやめとけって言ってるでしょうが!嫌な予感したから走ってきたらこれだよ!」

 

嫌な予感とはそう簡単に当たるものなのか?

 

ある意味この2人はいいペアなのかもしれない。

 

「とにかくもう行くよ!九条さんほんっとうちのこころがすみません・・・」

 

「い、いえ・・・」

 

「奏多!ハロハピはいつでもあなたを待ってるわよ!」

 

「そんな事言わない!行くよ!」

 

奥沢さんが弦巻さんの襟首を掴んで引っ張っていく。

 

この状況を僕は苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

始業式のお決まりといえば全校集会である。

 

うちの学校は体育館が広いためいつも体育館で集会や式をやっている。

 

お決まりの校長先生の長い話で眠たくなってきた頃だった。

 

「今日から新しい生徒がうちの学校に転入してきました。」

 

なんだ、この時期に転入してくる不幸なやつがいるもんだと思った。

 

しかしその考えはすぐに覆された。

 

「入ってきた生徒は2年生で2人目の男子生徒です!」

 

その瞬間一瞬で目が覚める。

 

今まで女子ばかりの中男子1人だったので男子が増えるのを少しばかり祈っていたのだ。

 

周りから「どんな奴だろ?」「イケメンだといいな!」「九条みたいに影が薄いかもよw」と声が聞こえる。

 

自分の影が薄いのはわかっているが、いざあまり知らない人に言われると気持ちが悪いものだ。

 

「それじゃあ挨拶してもらいましょう!」

 

校長が段から降りて代わりに男子の制服を着た奴が段に登る。

 

マイクを持ってそいつは挨拶を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、今日からこの学校に入ることになった陰村炎(かげむらほむら)だ。よろしく頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

影村炎と名乗った生徒が頭を下げる。

 

簡素な挨拶だった(と言っても僕も人のこと言えない)が顔を見ると結構な美顔だ。

 

女子がものすごくざわめく。

 

教師の静止で収まるまで少し時間がかかった。

 

「えっと、陰村くんにはA組に入ってもらおうと思います。A組の皆さん、陰村くんと仲良くしてあげてください。」

 

そう言った後細かい連絡が終わり、始業式が終わった。

 

教室へ向かう途中、後ろから誰かにつつかれる。

 

後ろを見るとそこには燐子がいた。

 

「男子・・・入ってきましたね。」

 

「はい、やっとこの学年でも2人めですか。」

 

「九条さん・・・前から男子1人はきつい時あるって・・・言ってましたもんね。」

 

そうなのだ。

 

一学期の時、男子が僕しかいないということで2年の教師にめちゃくちゃ力仕事などを任されていたのだ。

 

しかも多い時は1日に3回も思い書類を運ばされ、家に帰ると筋肉痛ということもしばしばあったのだ。

 

「やっと力仕事地獄から解放されますよ・・・」

 

「ふふっ・・・でも九条さんの頑張ってる姿・・・凄くカッコイイと思います。」

 

「そ、そうですか?別にそんなことないと思いますけど・・・」

 

すると後ろから担任の教師が声をかけてきた。

 

「いた、九条!」

 

「は、はい。なんでしょうか。」

 

「手伝って欲しいことがあるんだ。転入生を手伝わせるわけにもいかないから頼む!」

 

「噂をすれば・・・ですね。」

 

「はい・・・行ってきます。」

 

僕は燐子と別れ、担任の所へついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしこの先何が起こるかを知らずに。




たまに見る怖い夢ってトラウマになる時あるよね・・・
ということで次回九条奏多をいい言い方で挫折、悪い言い方で絶望のどん底に叩き落とそうと思います。
明日試合(しかし作者は応援)で書けるかは不明ですがその時はTwitterや時事報告で連絡する予定です!


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33話 クダケル ココロ

昨日は色々あってすみませんでした!(バチが当たったのか知らないけど焼き鳥食べすぎて吐きそうだった)
お布団から出られない季節になりましたが実際お布団最強説。
しかし我が家はベッドなのであった。(そんな変わらん)

さて、雑談はここまでにしてここから九条奏多の精神を粉ッ粉のボロッボロにしようと思います!←鬼か!
九条奏多が絶望し、Roseliaがどうなるか。
それを暖かい目で見てくれると幸いです。
それでは本編始まります!


先生からの頼みは新しく入った陰村のために新しい机と椅子を運んでほしいとのことだった。

 

あらかじめ運んでおく予定だったが何を手違えたのか運んでいなかったらしく今はバタバタしているらしいので運んでくれとのことだった。

 

(なんで間違える!?それに理由も酷くない!?)

 

そう思ったがしかし口には出せないので適当に答えて机を運ぶ。

 

机も椅子も使い回しではなく新品のものだった。

 

A組に着き、扉を開くとA組生徒に不思議な目で見られた。A組担任が気づき話しかけてくる。

 

「九条くん、一体どうしたの?」

 

「あの、先生に机と椅子を持っていけと言われたんですけど・・・」

 

「あら、本当に!ごめんなさいね、私が持っていくはずだったのだけど急遽会議が入ってしまってね。」

 

あとから松原さんに聞いた話ではA組の担任はかなり天然でおっちょこちょいらしい。

 

しっかり者だが雑いうちの担任といいここの担任といいここの先生教えるのは上手いのだがその他がへっぽこすぎないか?

 

「それじゃあ中へ運んでもらえるかしら?まだ陰村くんも来てませんし。」

 

そんな失礼なことを考えてるとは知らずにA組担任はおっとりした口調で運ぶように言ってくる。

 

僕も頷いて席を一番後ろに置いた。

 

すると白鷺さんが話しかけてきた。

 

「九条さんも大変ね。断っても良かったのではないかしら?」

 

「別にこれくらいは平気です。流石にもっときつかったら断ってますよ。」

 

「でも頼られすぎるのも良くないわよ。たまにはほかの人にも頼ったら?」

 

「自分でできることはできるだけやりたいと思っているので。」

 

そうは言ったもののこの言葉に自分は不思議に思う。

 

よく考えてみると昔の自分なら結構すぐに人に頼っていたのに今じゃ一人でやろうとしている。

 

今と昔で変わってきていると思うと少し嬉しく思った。

 

「九条さんどうしたの?にやけた顔をして。」

 

白鷺さんが不思議そうに見てくる。

 

「あ、いや・・・人に頼るのも悪くないかな・・・って思いまして。」

 

「そう、無理はしないようにね。」

 

僕はA組を出て隣のB組へ戻る。

 

自分の席に座ると燐子が話しかけてきた。

 

「さっきは・・・何を手伝っていたんです?」

 

「はい、今日入った陰村くんのために机と椅子を運んでくれって言われました。」

 

そう言えば燐子から話しかけてくるのが多くなったような気がする。

 

海の時以来から練習の時やNFOでも彼女から話題を持ちかけるのも少しずつだが多くなってきている。

 

「九条さん・・・ずっと何かを手伝ってたり・・・働いていたりしているイメージがあります。」

 

「そうですかね・・・確かにバイトとか手伝いとか色々していますけど。」

 

「Roseliaのマネージャーもやってくれて・・・疲れてないんですか?」

 

「疲れですか・・・」

 

今思えば疲れてはいるが疲れが残る疲れをしたことがない。

 

自分があまり疲れが残りにくい体質なのかそれとも他にあるのか自分でもわからない。

 

「はーい、みんな席について。HR始めます。」

 

「この話は後でしましょうか。」

 

「はい・・・それじゃあ後で・・・」

 

燐子が自分の席に戻っていく。

 

全員が席につきHRが始まった。

 

しかし、燐子が戻る時に少し残念そうにしていたのは気のせいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

ここ最近、自分の行動が変わってきていることに自覚し始めた。

 

それはあの海に行った日からだ。

 

今まで私は人と話すことを極力避けていた。

 

話すのが苦手であり人見知りで引っ込み思案なのは自分でもわかるがそれ以上に恐らく人と話すことに恐怖を抱いていたのかもしれない。

 

言葉は時折ナイフや刀より鋭い刃となる。

 

たった一言がその人の心に深く傷をつけたり、心境を変えてしまったり、最悪の場合その人を狂わせ自殺に追い込んだりその人が罪を犯すかもしれない。

 

かつて幼い頃の私は人が言葉で傷つくさまを少しばかりだが見てきた。

 

当時、親が同じ仕事場で働いており、お父さんはそこで部長をしていた。

 

そのため、小さい頃はよく親の仕事場に遊びに行った。

その仕事場では誰もが私に優しくしてくれて私はそこが好きだった。

 

しかし、ある日からお母さんの顔が弱っていくのが見えた。

 

お母さんに聞いても大丈夫と答えられお父さんに聞いても

 

「俺もわからない、俺もお母さんが心配だ。」

 

と答える一方だった。

 

ある日、私が仕事場に遊びに行くとそこにはお母さんと数人の同僚の人がいた。

 

私はお母さんの元に行こうと思ったが私は足を止めた。

 

 

 

 

 

 

そこでは母親がほかの同僚から暴言を吐かれていた。

 

 

 

 

 

仕事が悪かったのか彼女らの癪に触れたのかわからない。

 

けどお母さんが一方的に暴言を吐かれているのを私はただ見ているしかいなかった。

 

お母さんの元によるとお母さんは

 

「大丈夫だから・・・お父さんには言わないでね。」

 

と、辛そうに答えた。

 

私は何も言うことが出来ず、お父さんにも言えず、たまに仕事場に行ってはお母さんが暴言を吐かれているのを見てるしかなかった。

 

遂にお母さんがストレスで倒れてしまい、パワハラが発覚した頃には私は言葉や会話に対して恐怖を抱いていた。

 

お母さんはしばらく会社に行けなかったし、お父さんも気が付かなかった自分を責めていた。

 

小さかった私にも言葉の鋭さや危険性が悪い意味でわかってしまい、そこから人と話すこと、つまり人と関わることを避けていた。

 

大好きだったピアノも家でしか引くことが出来なくなり、唯一遊べるのがネトゲだけになってしまっていた。

 

けど、あこちゃんと出会って、Roseliaと出会って、そして九条さんに出会ってからはこの恐怖が薄れているような気がした。

 

 

 

 

 

あの人と話していると自然と笑顔になれる。

 

 

 

 

 

 

心があったかくなる。

 

 

 

 

 

 

話をしているともっと話したくなる。

 

 

 

 

 

 

話が終わると寂しく感じてしまう。

 

 

 

 

 

 

あこちゃんやRoseliaのメンバーと話している時の安心感とはまた違う安心感。

 

話すだけで心臓がドキドキする。

 

この気持ちはなんなのか今日の練習後ぐらいに九条さんに聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私にはこの気持ちがなんなのかわからないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

HRが終わり、帰宅の準備を始める。

 

今日もいつも通りRoseliaの練習なのだがいつも大事に持ってきているRoseliaの活動を記したノートを家に置いてきてしまったのだ。

 

すぐに準備を済ませ、帰ろうとした時だった。

 

「九条、すまないが頼み事があるのだが・・・」

 

また頼み事かよ!

 

そう思いざるを得なかった。

 

「・・・次は一体どういうご要件で?」

 

「ああ、この書類の入った段ボールを職員室に持って行ってくれないか?本当は私が持っていかなければならないのだが生活指導の方で呼び出しをくらってな。」

 

珍しく担任が真っ当な理由で頼み事をしている。

 

明日は雪が降るのではないか?

 

「どうした九条。ぼーっとして。」

 

「いえ・・・わかりました、持っていきます。」

 

「いつもすまないな、頼むよ。」

 

僕は渡された段ボールを持って職員室へ向かった。

 

持っていくだけで済めばいいのだが・・・

 

 

 

 

 

職員室の前に来るとそこにはあの転入生、陰村くんがいた。職員室にようがあるのか扉の前で立っている。

 

「えっと・・・陰村くんでしたっけ?」

 

「う、うん・・・そうだけど。君は?」

 

「僕は九条奏多、同じ2年生でB組です。」

 

「そっか、君が俺と同じ学年の唯一の男子ってやつか。知ってると思うが陰村炎だ。炎でいいよ。」

 

「ええ、よろしく炎。」

 

段ボールを持っているため握手はできないが会釈で返す。

 

僕は本題を聞いた。

 

「炎は何故職員室の前に?誰かを待っているんですか?」

 

「ああ、母さんを待ってる。どうやら職員室の奥で書類の手続きやらなんやらやってるみたい。奏多は?」

 

「うちの担任にこれを持って行けと言われたんです。」

 

「大変だな、扉開けようか?」

 

「ええ、頼みます。」

 

炎に扉を開けてもらい、中の教師に事情を話して段ボールを担任の机に置いてもらう。

 

中にはさっき事情を話した教師と奥で炎のお母さんと話している教師しかいないらしい。

 

職員室を出ると炎が話しかけてくる。

 

「奏多ってさ、何かやってるの?部活とかその他のこととか。」

 

「部活はやってないです。今事情があって一人暮らししているんですけど仕送りが少し足りなくてバイトしながら生活してるんです。」

 

「へぇーすごいな、なら料理とか出来るんじゃねえか?」

 

「料理は親父がいる頃からやっているので人並み程度にはできます。これくらい覚えとかないと毎日コンビニ弁当だと家計が厳しくて・・・」

 

「ははっ、言ってることが親父臭いぞ。そうだ、今度飯食いに行っていいか?」

 

「ええ、構いませんよ。腕によりをかけます!」

 

「うっし!楽しみにしてるぞ!」

 

今思えば男子と話すのは久々で炎がフレンドリーなのか もしれないがここまで仲良くなれるとは思わなかった。

 

同じ年頃の男子と話すのがこんなに楽しいとは思わなかった。

 

するとガラガラと扉が開く音がした。

 

音がする方向を見る。すると女性が出てきた。

 

「あ、母さん。お疲れ。」

 

「待たせたわね炎、その子は?」

 

「ああ、この学校で初めての友達の九条奏多!」

 

「九条・・・奏多・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

その時僕は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

炎に友達と言われたからじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

話すのが苦手だからじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

炎の母親の顔を見たからだ。

 

 

 

 

 

 

 

その顔は見間違うはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

忘れたいと思っても脳裏にこびりついて離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎が母と言った人物は昔、男を作って僕の前から消えた僕の母親だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奏多、どうした?」

 

「炎、あなたは先に行ってなさい。母さん彼と話してみたい。」

 

「・・・?わかったよ。奏多また明日な!」

 

炎が肩を叩いて走っていく。

 

廊下には僕と母親が残された。

 

「・・・まさかあんたがここの生徒だったとはね。」

 

「・・・なんで・・・何でここにいる。あんたは・・・」

 

「そんなのわが子の転校に付き合わない親はいないでしょう。あ、先に言っとくけどアンタを子供と思ったことないから。この不良品。」

 

体ががくがく震える。

 

冷や汗もかき、今すぐここから離れたい。

 

しかし体がいうことを聞かない。

 

「あんたの事はどうでもいいわ。とりあえず炎と絡むのは辞めてくれる?アンタの無色さが炎にうつると困るから。」

 

「・・・それを決めるのは・・・炎だろ。」

 

「あら、いっちょ前に口答えする気?あんたも成長するのね。」

 

僕の発言を鼻で笑い、炎の走っていった方向に母親は歩き出した。

 

そしてすれ違いざまにこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次、口答えしたら昔みたいに優しくは済まないわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カツ、カツとパンプスの音が遠のいていく。

 

遠のくにつれて僕の頭に昔された惨劇を思い出させる。

 

呼吸が荒くなる、心臓が不定期に荒れる、目眩がする、吐き気がする、頭が痛い。

 

何故人と話してはいけない。

 

何故反抗したらいけない。

 

 

 

 

 

 

 

そして何故僕は生きてはいけない。

 

 

 

 

 

 

様々な疑問が頭をよぎる。

 

そして限界をむかえ、僕の意識は闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は・・・一体・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どう・・・すれ・・・ば・・・

 

 

 

 

 

 

 




次回、『ゼツボウ』


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34話 ゼツボウ

シリアスな回なので後書きは基本省略してます。
ということでこちらも短め。

ちなみにシリアス回長いです。(別に前書き後書きがめんどくさい訳ではない。)



それでは本編をどうぞ。


燐子side

 

「奏多さん来ないね~」

 

「来ないわね・・・」

 

「学校にいたのはわかるのですが・・・」

 

いつものスタジオに着いてみんなが揃ってから30分がたつがいつまでたっても九条さんがこない。

 

学校で先生に頼み事を頼まれているとしてもそれなら連絡が来るはずだし、それにしてもいつも時間を厳守している九条さんなら仕事があってももう来る時間だ。

 

「ソータの携帯に連絡してみる?」

 

「そうね、そうしてみましょうか。燐子、頼める?」

 

「わ、私が・・・ですか?」

 

「最近、仲が良さそうだったから奏多も話しやすいと思ったんだけど何か悪いことでもあるの?」

 

「い、いえ・・・そういう訳では・・・」

 

そんなに仲が良さそうに見えていたのかな?

 

たしかに最近話すことが多い気がするが・・・

 

「白金さん、頼みます。」

 

「頼むよ~燐子!」

 

「お願いね、りんりん!」

 

氷川さんに今井さん、さらにあこちゃんまでが頼んできた。

 

こんなに言われると断ろうにも断れない。

 

「は、はい・・・わかりました。」

 

私は携帯を取り出して九条さんの携帯に電話をかけた。

 

コール音が鳴る。

 

しかし一向に出る様子がない。

 

しばらく待っているとコール音が切れて通話できるようになった。

 

「あ、あのもしもし・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子が電話をかける数分前

 

廊下を1人の警備員が歩いていた。

 

今日は始業式で学校が早く終わる日で部活も教員会議ですべて休みにしてある。

 

そのため残っている生徒は受験のために残っているほんの少ししかいないはずだ。

 

そう思って警備員は廊下を歩いていた。

 

警備員が廊下の角を曲がる。

 

その先は職員室などがある道だった。

 

警備員がふと、なにかに気づいた。

 

「・・・なんだ?」

 

廊下にある黒いもの。

 

それはよく見るとこの学校の制服のようだ。

 

しかも男子の制服・・・

 

「まさか・・・!」

 

警備員は走ってそれに近づいた。

 

近づいてみるとそれは倒れた男子生徒だった。

 

意識はなくどうやら気絶しているようだ。

 

「ど、どうする・・・とりあえず救急車!」

 

無線で別の警備員に救急車と応援を頼んだ警備員はその男子生徒の様子を確認する。

 

目立った外傷などはなく他人による暴力で気絶させられていないことはわかった。

 

応援で呼んだもう1人の警備員が担架を持ってきてその男子生徒を保健室に運ぼうとした。

 

するとその男子生徒の懐から音が鳴る。

 

どうやら携帯からのようだ。

 

その警備員は電話に出るべきか迷った。

 

彼が倒れたことを知り合いに言ってご家族に話してもらうべきだとは考えたのだが見ず知らずの人にいきなり話すのはどうかとも考えた。

 

少し考えた結果その警備員は電話に出ることにした。

 

『つ、繋がった!あ、あの・・・もしもし・・・』

 

「も、もしもしこの携帯の持ち主の関係者ですか?」

 

『え、あの・・・九条さん・・・どうかしたんですか?それに・・・あなたは?』

 

「えっと私は花咲川高校で警備員をしているものです。彼は廊下で倒れていて今から救急車で病院に行くところですが・・・」

 

『そ、そんな・・・なんで九条さんが・・・うちの学校で・・・』

 

「あなたここの生徒なんですか?原因はわかりませんが気絶しているだけのようなんで恐らく大丈夫だと思いますが出来れば彼の親にこのことを伝えてもらえませんか?病院は恐らく総合病院だと思います。」

 

『は、はい・・・わかりました。』

 

「よろしくお願いします。」

 

そう言って彼は男子生徒の電話を切った。

 

するとちょうど救急車が到着する。

 

救急隊員が担架に男子生徒を乗せて救急車に乗せる。

 

そのまま救急車は病院へ行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

「はい・・・わかりました。」

 

『よろしくお願いします。』

 

そう言って警備員さんは電話を切った。

 

まさか九条さんは学校で倒れていたなんて・・・

 

「り、燐子どうしたの?顔がめちゃくちゃ青いけど・・・ソータに何かあったの?」

 

「く、九条さん・・・うちの学校で・・・倒れていたって・・・」

 

「「「「え!」」」」

 

全員が驚く。

 

当たり前だ、メンバーの1人でとても重要な人が倒れたのだから。

 

「そ、それで奏多さんは大丈夫なの?」

 

「気絶・・・してたって・・・」

 

「湊さん・・・」

 

「ええ、練習どころではなくなったわね・・・燐子、奏多が送られた病院ってわかる?」

 

「たぶん・・・総合病院だって・・・電話に出た人は言ってました・・・」

 

「わ、わかった。アタシがスタジオのキャンセルと別日に借りれるか聞いてくるからみんなは先に行ってて!」

 

今井さんが受付の方に走っていった。

 

昔の友希那さんなら練習を続けていたのかもしれないが九条さんの所に行くって言ってくれてよかった。

 

私達は荷物をまとめて九条さんが送られたであろう総合病院へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

移動中に合流した今井さんに九条さんの叔父さんを呼んでもらい、受付に説明して九条さんのいる病室へ案内してもらった。

 

そこには白衣を着てベッドの上で寝ている九条さんの姿があった。

 

そして、その病室内にいた医師に今井さんが尋ねた。

 

「あ、あの、ソータは大丈夫なんです?」

 

「目立った外傷もなく、恐らく何らかの負荷がかかって倒れたんでしょう。恐らく心や精神の問題なのでこればかりは彼が起きないとわかりません・・・」

 

「そうですか・・・ありがとうございます。」

 

医師はそれだけ言って病室を出ていった。

 

「奏多さん、何があったんだろ・・・」

 

「日頃のストレスや疲れの可能性は?」

 

「九条さん・・・確かそういうのは・・・大丈夫だったと思います。」

 

「ソータが気絶したのって海の時ぐらいだよね。女の子耐性ないからアタシ達の水着見て目を回して倒れたけど・・・」

 

「それじゃあ九条さんは誰かの水着を見て倒れたってことですか?」

 

「今回のは・・・あの時とは違うと・・・思います・・・」

 

「どうしてわかるの?」

 

「九条さん・・・海の時・・・鼻血や顔が赤くなってたりしてました・・・けど今回は・・・顔が青いし血も何も出ていません・・・」

 

するとガラガラガラと扉が開く音がした。

 

入ってきたのは九条さんの叔父さんだった。

 

「お、おう・・・おめーら先に着いてたか。ありがとな今井ちゃん、連絡くれてよ。」

 

「いえ、ソータの家族って茂樹さんしか思いつかなくて・・・」

 

「んで、奏多はどうなんだ。」

 

「気絶しただけらしいです。しかしなぜ気絶したのかがわからなくて・・・原因はストレスらしいんですが。」

 

「奏多にストレスか・・・そりゃ原因が思いつかねえな・・・」

 

「シゲさんわかるんですか?」

 

「こいつ、ストレスとか疲れはあんまりたまんないタイプなんだよ。けど一気に強いストレスや衝撃がくると弱いんだけど・・・そもそもそんなに強い衝撃なんてこいつの前に水着のねーちゃんが何人もいるぐらいの衝撃じゃないとこんなこと起こんねぇしな・・・」

 

「原因・・・なんでしょう・・・」

 

「それはこいつが起きねぇとわかんねぇ。」

 

「とりあえず待ってみましょう。起きたらその時聞けばいいわ。」

 

私達は九条さんが起きるまで病院で待つこととなった。

 

その場は明るい空気にはならずずっと暗い空気が漂うだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苦しイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つライ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コワイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウダ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コワイナラ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニゲレバイイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コノ ウンメイ ト イウ クサリ ニ シバラレナガラ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダレトモセッシナケレバイイ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モウ イタイノハ イヤダ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケド・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダレカ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タス・・・ケ・・・テ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年の願いは

 

 

 

 

 

 

 

『九条奏多』という人の思いは

 

 

 

 

 

 

 

絶望の深淵に落ちていった

 

 

 

 

 

 

 

届かないとわかりながら

 

 

 

 

 

 

 

助けを求めて

 

 

 

 

 

 

その少年の心に残ったのは

 

 

 

 

 

 

『絶望』と『逃亡』、そして『誰とも接しない』と思う気持ちだけだった。




次回、『フサグココロ ウラ ノ ムショク』


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35話 フサグココロ ウラ ノ ムショク

話はシリアスだけどここだけテンションの高い隠神カムイです。
あ、話の尺の関係上さらっとタイトル長くなってます。そこは前の次回予告いじるのでご勘弁を・・・←ダメな作者のやること
新イベ来たね~チョココロネ先輩新規きたね~ってヤン陰原作者に言ったらハイテンションな海馬社長となって返ってきました(笑)

さて、こんな感じにおちゃらけてますがめちゃくちゃ重い本編始まります。


燐子side

 

ここに来てから1時間が経った。

 

九条さんは一向に目覚める様子がない。

 

時折、今井さんやあこちゃんが話を切り出そうとしてもこの重苦しい空気の中では長くは続かない。

 

「・・・悪いなお前ら、今日はもう帰れ。時間も時間だ。」

 

そんな中九条さんの叔父さんが私たちに帰るよう促した。

 

そう言われて今井さんが反応する。

 

「いえ、私たちなら大丈夫・・・」

 

「この様子じゃ奏多が目覚めるのがいつになるかわからねぇ。しかもお前ら明日学校あるだろ、学生が学業に支障を出しちゃいけねぇ。」

 

「け、けど・・・」

 

「リサ、今日は帰りましょう。茂樹さんの言う通りだわ。」

 

「・・・わかった。けど茂樹さん、ソータが目覚めたら連絡ください。」

 

「おう、そんときゃ連絡する。」

 

「シゲさん・・・よろしくお願いします」

 

「あぁ、奏多の事は任せとけ。」

 

そう言って私達が帰ろうとした時だった。

 

「・・・んっ」

 

小さく、弱々しいけど聞きなれた声。

 

その声を聞いて全員が一つの方向を見る。

 

そこにいたのは意識が戻って体を起こしていた九条さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

 

 

 

体が重い

 

 

 

 

 

 

 

痛みはないが手足に力が入らず感覚がない

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえる

 

 

 

 

 

 

 

 

誰だ

 

 

 

 

 

 

 

「し・・・ん・・・ソータが・・・たら・・・らく・・・さい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

この声はリサ・・・?

 

何を言っている、途切れ途切れでわからない。

 

 

 

 

 

 

「シゲ・・・よろし・・・いします・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

あこの声・・・?

 

幻聴か?

 

でも途切れ途切れでも幻聴にしてはハッキリしすぎてる・・・

 

 

 

 

 

 

 

手足の感覚が戻ってくる。

 

 

 

 

この柔らかさ・・・ベッド?

 

 

 

僕は・・・今どこに?

 

 

意識を・・・ハッキリ・・・

 

起き・・・ない・・・と・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・んっ」

 

目をうっすら開ける。

 

そこには見たことのない白い天井。

 

軽く周りを見ると自分が今ベッドの上にいることがわかる。

 

病院でよく見るベッドだ。

 

(・・・ん?病院のベッド?)

 

そこでようやく自分が今どういう状況なのかを思い出した。

 

僕はどうやら『何かがあって』病院に送られたようだ。

 

体を起こす。

 

意識が落ちてから全く動かさなかった体は各関節の痛みを起こしながらもゆっくりと動き出す。

 

「く、九条さん!」「奏多!」「ソータ!」「奏多さん!」「九条さん!」「おお、起きたか奏多!」

 

聞きなれた声が一斉に来る。

 

そんなに言われても反応できないって。

 

「ここは・・・なんで・・・それに・・・シゲさん・・・みんな・・・」

 

「よかったぁ・・・行く前に起きてくれたぁ・・・」

 

「もう・・・ほんとに心配したんだからね!」

 

「し・・・心配・・・」

 

何が何だか全くわからない。

 

何故ここにいるのか、何故Roseliaのみんなが心配そうにしてるのか、そして何故倒れたのか・・・

 

「九条さん・・・なぜ倒れたのか話してもらえますか?」

 

紗夜がそう聞いてきたので考えてみる。

 

確か担任に仕事を頼まれてその後炎と話して・・・

 

 

 

 

 

 

『次、口答えしたら昔みたいに優しくは済まないわよ。』

 

 

 

 

 

 

全身に寒気が走り震え出す。

 

そうだ・・・思い出した・・・会いたくなかったあの人に会ってしまったんだ・・・

 

「そ、ソータ!?どうしたの?」

 

リサが心配してこっちに来る。

 

しかし今の僕はそれどころではない。

 

「・・・いで。」

 

「な、何か言った?もう一回言って!」

 

目は開いてるはずなのに前が見えない。

 

僕が何かを言ったのだろう、リサが心配して近づいている気配はする。

 

「・・・らないで。」

 

「ソータ!?震えがやばいよ!ホントに・・・」

 

 

 

 

 

辞めて・・・

 

 

 

 

 

 

ほんとに辞めてくれ・・・

 

 

 

 

 

 

今の・・・

 

 

 

 

 

今のボクニ・・・

 

 

 

 

 

 

 

チカヨラナイデ・・・

 

 

 

 

 

 

「近寄らないで!」

 

「!!」

 

無意識に出た言葉に全員がしんと静まる。

 

ふと我に返るとリサがびっくりした顔をしていた。

 

「・・・すみません、今日は帰ってもらえますか。今は・・・話したくないんです・・・」

 

「・・・うん、わかった。ごめんねソータ・・・」

 

Roseliaのみんなが病室を出る。

 

自分の言ったことに凄く後悔が残る。

 

すると一人病室に残ったシゲさんが優しく真剣に話しかけてきた。

 

「奏多・・・お前何があった。今の反応は異常だ。お前をそこまで追い詰めたのはなんだ。」

 

体が震える。

 

心臓の動機が激しくなる。

 

呼吸が荒くなる。

 

しかしそれをなんとか抑えて学校であったことを正直に話した。

 

「あの人に・・・僕の・・・母に会った・・・」

 

「!!」

 

それにはいつも能天気なシゲさんも驚きを隠せなかったようだ。

 

「・・・なぜお前の母親に会った。兄貴が別れた後行方わかんなかったんだろ?」

 

「炎の・・・転校生の・・・母親が・・・あの人だった・・・その後・・・話をした・・・」

 

「なんて言われた。」

 

「・・・『次、口答えしたら昔みたいに優しくは済まない』って。」

 

「・・・お前しばらく学校休め。それにバンド活動もだ。」

 

「それは・・・出来ない・・・みんなには・・・Roseliaには・・・僕が・・・いかないと・・・」

 

「今のお前に何が出来る。」

 

「っ!」

 

シゲさんに一喝されて言葉を失う。

 

「今のお前は人に対する恐怖と自分の存在を否定すること、そしてこれらから逃れたいとの事しか残ってない。そんな人間がまともに人を支えれるはずがねぇ。行っても逆に足でまといになるだけだ。」

 

確かにそうかもしれない。

 

今こうして話している自分は今の自分からしたら本当の自分ではないのだろう。

 

今の自分は『甘い物好きで優しく、自分の色を模索しているRoseliaの九条奏多』ではなく『人と接するのを恐れ、無色の自分を否定しその事を逃れようとしている九条奏多』なのだろう。

 

いつもの自分は今の自分にとってその身を隠す『側』でしかない。

 

そんな僕が練習に行ってもいつかのタイミングで今の『側』の心が砕けるかわからない。

 

迷惑をかけ、傷つけるかもしれない。

 

『最高の音楽を目指す』彼女らにとって今の僕は障害でしかない。

 

「・・・わかった。」

 

「悪いな・・・何もしてやれなくてよ。休む手続きとかは俺の方でやっとく。お前は大人しく寝とけ。それと手続きとかやるから家の鍵借りるぞ。」

 

そう言ってシゲさんが家の鍵をもって病室を出て、僕だけになる。

 

僕は毛布を頭まで被った。

 

「ったく・・・どうしたらいいんだ・・・」

 

毛布の中で頭を悩ませる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナラ、ニゲレバイイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

しかもその声は毎日嫌という程聞いている自分の声だった。

 

「お前は・・・誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボクハ、キミダヨ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい、お前が僕のはずがない。早く出ていけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

『アイニク キミ ト ボク ハ イッシンドウタイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい・・・」

 

 

 

 

 

 

『コノ クルシミ カラ ノガレル ニハ』

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ココロ ヲ トザシテ マワリ ト カカワラナケレバ イイ』

 

 

 

 

 

 

 

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!それ以上言うな・・・頼むから言わないでくれ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ソウスレバ キミ ハ キズツカナイ ダレモ キズツケナイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「辞めてくれ・・・それ以上この心を蝕むな・・・」

 

 

 

 

 

『サァ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

「来るな・・・来ないでくれ・・・」

 

 

 

 

『ボク ト・・・』

 

 

 

 

 

 

 

「せめてこの心は消さないでくれ・・・」

 

 

『ヒトツニ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・これで、誰も傷つかない。僕が・・・僕がいなければ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

九条さんに病室を追い出された私達は病院のエントランスで座っていた。

 

「ソータどうしたんだろ・・・」

 

「奏多さんのあんな声・・・初めて聞いた。」

 

「九条さんのあの行動は異常でした。本当に一体何が・・・」

 

「奏多があそこまで変わった理由がわかれば・・・」

 

「しかし・・・それを知っている九条さんが・・・」

 

九条さんのあの様子は明らかおかしかった。

 

今井さんが近づいた時に大きな声を出したがあれは怒っているんじゃなくて怯えているような声だった。

 

人と話すのを拒むような・・・

 

ポーンと音がしてエレベーターから九条さんの叔父さんが降りてきた。

 

「茂樹さん!」

 

「お前達まだ帰ってなかったのか・・・」

 

「奏多はどうだったんですか?」

 

「あぁ・・・あの様子じゃ学校もバンドもしばらくは無理だな・・・」

 

「そんな・・・あこ達の力じゃなんにも出来ないのかな・・・」

 

「確かに九条さんのあの様子じゃマネージャー業は無理ですね・・・」

 

みんなの気持ちが落ちてきた時だった。

 

「あ、あの・・・茂樹さん!」

 

「なんだ、白金ちゃん。」

 

「九条さんの・・・過去を教えてもらえませんか?」

 

とっさにそんな考えが出た。

 

なぜこの言葉が出たのかはわからない。

 

しかしあの顔は『昔が原因でなにかに怯える』顔をしていた。

 

・・・昔の自分がそうであったように。

 

「ソータの過去を・・・?」

 

「なんでそう思ったんだ?」

 

「何故かは・・・正直わからないです・・・けど・・・今回の件は・・・九条さんの過去にも何かあると思って・・・」

 

「確かに奏多さんちょっとわからない所あったよね・・・」

 

「思えば九条さんはいつも親しんではくれていました。しかし、なんだかいつも一歩引いた感じでした・・・」

 

「茂樹さん、前にあなたはこう言いましたよね。『奏多は慣れた相手じゃないと内側を見せない』って・・・あれも関係があるんですか?」

 

茂樹さんは黙って私たちの質問を聞いた。

 

そして諦めたかのように息を吐いた。

 

「・・・長くなるが構わねえか?」

 

「・・・!はい!」

 

「まず湊の嬢ちゃんからの話だが・・・あの言い方は崩しすぎてわかりにくかったな。」

 

「それは・・・どういう事ですか?」

 

「あいつはな・・・『本当に信頼出来るやつしか心を開かない』のさ。今、本当に心を開いてんのはあいつの親父と俺だけだ。」

 

「もしかしてシゲさんだけタメ語で話してたのも・・・!」

 

「あぁ、あいつはお前達のことを信頼しているが心から信頼しきってねぇ。」

 

「それはどうして・・・」

 

「とりあえずここだと話しにくい。奏多ん家の鍵借りてるからそこで話そう。」

 

そう言って私達は九条さんの家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

これから語られる九条奏多という人間の過去を知るために

 

 

 

 

 

 




次回『ムショク ノ カコ』


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36話 ムショク ノ カコ

昨日土曜日の気分すぎて急いでネタを考えてた隠神カムイです。
これだから金曜日の祝日は嫌いなんだよ・・・←小説書いてまだ一ヶ月ちょいしか経ってない
あと少しで2ヶ月か・・・なんだかんだ続けてるってすごいな。
作者の数日前の過去はほっといて今回は『九条奏多の過去』をメインとして書いていきます。

(ピロロロロロ・・・アガッタビリィー)九条奏多ぁ!
君が何故人を信用しきってないのか
何故信用してても敬語が抜けないのか(アロワナノー)
何故前回負の感情に取り込まれたのかァ!(それ以上言うな!)
(ワイワイワイワーイ)その答えはただ一つ・・・(やめろー!)
ハァァ・・・九条奏多ぁ!それは!君の幼少期に・・・関係があるからだぁぁぁ!
(ターニッォン)アーハハハハハハハハハアーハハハハ
(ソウトウエキサーイエキサーイ)ハハハハハ!!!


奏多「僕の・・・過去に・・・?」ッヘーイ(煽り)


すみませんこれがやりたかっただけです・・・
なお奏多の今までの感情のセリフは「」で、負の感情のセリフを『』で書こうと思います。

それではハイテンションな前書きから打って変わってめちゃくちゃ重くなる本編始まります!


燐子side

 

私達は茂樹さんの車に乗って九条さんの家に送ってもらっていた。

 

車の中で話を聞こうと思った人は一人もおらず、車内はずっと静かだった。

 

九条さんの家について茂樹さんが借りてきた鍵を使ってドアを開けた。

 

「さ、お前らは入れ。」

 

「「「「「お、お邪魔します・・・」」」」」

 

全員の声が緊張している。

 

これから九条さんの過去が明らかになるということでもあるが全員が同年代の男子の家に上がったことがないので何故か緊張するのだ。

 

「なんだお前ら、緊張してんのか?」

 

「だって・・・その・・・」

 

「アタシ達・・・同い年の男の子の家って初めてだから・・・」

 

「んなモン普通の家と変わんねぇよ。あいつの事だ、整理整頓されているし、ヤラシイもんなんて買ってねえよ。」

 

「そうだよ!早く入ろ!」

 

1人だけ男の子の家だろうと気にしないタイプのあこちゃんがみんなを促す。

 

あこちゃん曰く「おねーちゃんの部屋以外なら大体いける」だそうだ。

 

あこちゃんに急かされて私達はリビングへ入っていった。

 

 

 

 

 

 

リビングの中は整理整頓されていてとても綺麗だった。

 

床や机の上はしっかりと掃除されていてホコリやゴミが全然見つからない。

 

「ソータの家・・・めちゃくちゃ綺麗・・・」

 

「そういえば九条さん、学校でも整理整頓してますし彼が掃除した後はホコリ一つありませんでした。」

 

「だから言ったろお前ら。あいつはそういう奴なんだ。とりあえず座れ。」

 

そう言って私達は机を挟んで向かい合わせに置かれているソファーの上に半分に分かれて座った。

 

そして茂樹さんは別に置かれている椅子の上に座る。

 

後で聞いた話なのだがあそこは九条さんのお父さんの椅子なのだそうだ。

 

「ふぅ・・・さて、どこから話すべきかな。」

 

そう言って九条さんの昔の話が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九条奏多という人間はこの世に生まれてからずっと無色だった。

 

『人生を多くの色を束ねて奏でてほしい』という願いで『奏多』と名付けられたがそれとは正反対の感じで髪の毛は色素が足りないのか生まれつき銀色。

 

成長して4歳になった頃はまだ4歳児らしさはあった。

 

家には父親が仕事で毎日遅くにならないと帰ってこないので、常に母親と奏多の2人だけ。

 

幼稚園や保育園は家に母親がいるから大丈夫だろうとの事で行かせてなかった。

 

時々、叔父の茂樹が見に行っていたが至って普通の家族のような生活をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ある日を境に九条奏多の生活は激変した。

 

 

 

 

 

 

 

それはある日の昼食時の頃だった。

 

当時5歳だった奏多がいつも通りご飯を食べていた時、誤ってお茶の入ったコップを倒してしまい、隣で食事をしていた母親の服の上にお茶をこぼしてしまった。

 

その日、母親はどこかに外出予定があったらしく、いつもは着ない高いスーツを着ていた。

 

「あ・・・お母さん、ごめんなさい・・・」

 

奏多がすぐに謝る。

 

いつもは舌打ちして自分の服をタオルで拭いてから奏多に机を拭かせる程度で済んでいた。

 

しかし今日は様子が違っていた。

 

母親はなにかに取り付かれたようにゆるりと立って奏多の首を掴んで投げ飛ばした。

 

「あんたね!いつまで経てば言うことを聞くの!」

 

「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

奏多が謝っているのにも関わらず容赦なく両頬を叩く。

 

「いつまで!経っても!言うことを!聞かない!思い通りに!ならない!この!不良品が!」

 

日頃のストレスや疲れが出ていたのだろう。

 

普通の子なら抵抗したり父親や他人にこの事を言っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼は『九条奏多』という人間は無色、つまり『普通』では無かった。

 

 

 

 

 

 

彼は自分が原因で母親がこうなってしまったのだと思い、誰にも言わずこの罰を受けた。

 

彼は『何も無い』から『全てを受け入れる』人間だった。

 

今まで頼み事を断ったこともなく、抵抗もしたことがなかった。

 

そして誰にも受け入れた事を吐き出すことは無かった。

 

母親はこのことを知ってから何かあれば奏多に暴力を振るうことが普通になっていた。

 

初めは投げ飛ばしたり頬をぶったりした程度だったが腹を蹴ったり首を絞めたりなど次第にエスカレートしていった。

 

傷が残ると帰ってきた父親にバレてしまうため傷がつかないように、あるいは傷がわかりにくいため傷を付けるなら体にやるようになっていた。

 

奏多は時々こんな暴力から逃れたいと思った。

 

しかし逃れることは出来ないとわかると自分の思いを内側に閉じ、母親のなすがままになっていた。

 

そして小学生になる頃には『どうして自分はこんなにも無色で何も無いのだろう』と思い始めた。

 

 

 

 

 

小学校での体育の時間、奏多は自分の体の傷を隠すように着替えていた。

 

その頃には成長期の少年の体に母親から付けられた生々しい傷が古傷となって身体中についていた。

 

しかし、その傷を隠しきれるはずがなかった。

 

2年生になった頃、いたずら好きの男の子が着替え中の奏多の腕を掴んで引っ張ってみんなの前に出された。

 

奏多の傷を見た男の子達はその傷を気持ち悪がった。

 

奏多は「これは自分が悪いことしたから付いた傷だ」と言うといたずら好きな男の子達は奏多のことをいじめ始めた。

 

先生のいないうちに暴言を吐かれ、机の上には『きずだらけかいじん』『どっかいけ』などの落書きをされていた。

 

母親はどこからその情報を仕入れたのか「アンタらしい無様なお友達ね」と言って殴られた。

 

 

 

 

 

しかし、母親の暴力も長くは続かなかった。

 

 

いつも通り母親から暴力を受けている時に突き飛ばされた衝撃でボールペンが飛んで母親の顔に当たった。

 

その事に激怒した母親は奏多服を剥ぎ取り、首を掴んで倒し、近くにあった酒瓶をもって叩きつけようとした。

しかし、幸い頭に来ていて標準が狂ったせいか奏多には当たらず、床に当たって瓶が割れる。

 

その破片が奏多の腹部やが胸に刺さり、傷を作る。

 

その後、母親は瓶の破片を集め、奏多の血を拭いてから倒れた奏多を放ったらかしにして荷物をまとめて出ていった。

 

机の上には離婚届と「あなたとはやっていけないわ、親権はそちらにあげるからどうぞ勝手に暮らしてください。さようなら」と書かれたメモが置いてあったらしくその後の行方は分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「その後の奏多は人と話したり関わることを拒み続けた。そりゃイジメやあの母親からの虐待もあったからだ。だからあいつは小4まで別室で授業を受けていた。今のアイツは俺から見りゃ凄く成長しているぜ。なんせ中学に上がっても他の奴と全く喋ってなかったからな。今のあいつになったのはお前達のお陰だよ。」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

茂樹さんにそう言われたが私達は何も反応できずにいた。

 

まさか敬語や一歩引いた立場だったのはこの過去の経験があったからだなんて誰も思わなかったからだ。

 

「・・・その・・・九条さんが倒れたのって・・・まさか・・・」

 

「あぁ、学校であいつの母親にあったらしい。」

 

今の話の流れからして全員がやっぱりそうだったのかという空気になる。

 

そんな中、友希那さんが茂樹さんに質問をした。

 

「ねぇ茂樹さん、何故奏多は学校でお母さんと会ったの?あの後行方不明になったんでしょ?」

 

「どうやら今日転校してきた子の母親があいつの母親だったらしい。」

 

「それって陰村さんの事じゃないですか?」

 

「はい・・・多分・・・」

 

花咲川組は陰村さんの事だとわかったが羽丘組はわからなさそうだった。

 

「とりあえずその陰村って子はソータの父親違いの兄弟ってことになるの?」

 

「いや、奏多の母親は奏多を産んでから子供ができない体になっちまってるから子供はできないはずなんだ。だから恐らく再婚相手の子供だろう。」

 

「う~ん・・・あこ達に出来ることってなんだろう?」

 

その事で全員が静まる。

 

ここまで知ってしまったからには九条さんのために何とかしたいがいざ考えてみると良い案が思いつかない。

 

「・・・私と白金さんでその陰村さんと話してみます。」

 

「話すっていったって何を?」

 

「特に・・・思いつきません・・・けど・・・話してみないことには・・・わからないと思います・・・」

 

「・・・わかったわ、なら私とリサとあこでもう一度奏多に会ってみる。」

 

ということで花咲川組は陰村さんとのコンタクトを、羽丘組は九条さんともう一度話すことでまとまった。

 

「さ、お前ら今日はもう遅い。早く帰った方がいい。」

 

「そうね、そろそろ帰りましょうか。」

 

そういう事でここで解散となった。

 

九条さんの家は幸い花咲川に近かったので各々が自分の帰宅路に向かった。

 

(今まで・・・九条さんには・・・たくさん助けてもらった・・・たくさん支えてもらった・・・次は私が・・・私達が九条さんを助ける番・・・)

 

そう決心して私は自分の家に足を運んだ。




珍しく奏多sideがないストーリーとなりました。
なお陰村炎のキャライメージは奏多が『無色』なので炎は『多色』というイメージを持っています。
そこだけを言いたくてこの章に入って久々の後書きです。
次の更新は明日です。それまでお楽しみに!


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37話 ムショク ト タショク

久々に日曜日しっかり投稿してるような気がする・・・
ども、最近ヴァイスシュヴァルツというカードゲームでAfterglowデッキ作ろうか考え中の作者の隠神カムイです。
Roseliaデッキあるんだけどね・・・Afterglowも作ってみたい訳ですよ・・・(あ、浮気じゃないんで)なおサインカードはSPパックでたまたま当たった巴さんしか持ってないです()

作者のカードゲーム事情は置いといて今回も重い雰囲気の無灰本編始まんます~


燐子side

 

九条さんの過去を知ってから日が変わって、今は朝のホームルーム前だ。

 

九条さんは昨日のことがあってしばらく学校を休むこととなった。

 

家に着いてからLINEで氷川さんと話し合い、昼休み辺りに転校生『陰村炎』と話すことになった。

 

話す内容としては母親はどんな人とかそんな感じの話をしようかと思っているのだがどうやって話しかけるべきなのかを未だ思いついていない。

 

ホームルームが終わると氷川さんが話しかけてきた。

 

「白金さん、例の件なのですが・・・」

 

「はい・・・陰村さんと・・・どうやって話すべきなのでしょうか・・・」

 

「私も考えてはいたのですが・・・」

 

どうやら氷川さんもお手上げのようだ。

 

突然話しかけても怪しまれるだけだし仮に話しかけることが出来たとしても突然九条さんと彼の母親の関係を話しても信じないだろう。

 

そうやって悩んでる時だった。

 

 

 

ガラガラと扉が開く音がした。

 

次の授業の先生が早く来たのかと思い扉の方を見ると

 

「奏多~いるか~ここのクラスだったよな~」

 

それは陰村さん本人だった。

 

初めは九条さんを読んでいたことにびっくりしたが氷川さんと顔を合わせる。

 

これは願ってもないチャンスだ。

 

「九条さんなら今日は体調不良で休んでいますよ。」

 

「そうなのか?マジかー今日アイツんちで飯食わせてもらおうと思ったんだけどなぁ・・・」

 

「九条さんと・・・知り合い・・・なんですか?」

 

「んー?あいつとは昨日知り合ってよ、職員室で母さん待ってたら先生の手伝いかなんかで段ボール運んでてそん時話してダチになった!」

 

その事に私達はびっくりした。

 

まさか昨日九条さんが倒れる前に彼と出会っていたとは思わなかった。

 

「ところでアンタらは?奏多のことやけに気にしてるっぽいけどもしかしてダチ?」

 

「ダチ・・・よりかは同じバンドのメンバーですね。私は氷川紗夜と言います。」

 

「私・・・白金燐子って言います・・・」

 

「バンド!?あいつバンドやってたのか~!なあなあ、後で詳しく教えてくれよ。あいつが紗夜と燐子のバンドでどんなことしてるのかよ!」

 

「・・・!ええ、それでは今日の昼休み辺りに屋上とかでどうですか?今日は日差しが良いので屋上でも寒くないかと。」

 

「お、いいねぇ!それじゃあ昼休み頼むぜ!」

 

陰村さんが自分の教室に走っていった。

 

しかしこうも簡単に話をする機会を得ることができるとは思わなかった。

 

しかし陰村は九条さんとは正反対の活発で人当たりがよく、フレンドリーな人だ。

 

同じ母親に育てられた人だとは思えない。

 

「まさかこんなにも早く話すチャンスが来るとは思えませんでした・・・」

 

「はい・・・あの人が明るい性格で良かったです・・・」

 

とりあえず私達は陰村さんと話す昼休みまで待つこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

時が過ぎて昼休み。

 

私達は屋上にお弁当をもって上がっていた。

 

この学校は珍しく屋上を解放している学校である。

 

今井さん達によると羽丘も屋上を解放しているらしいがこの学校の生徒で屋上を使う生徒は少ない。

 

そんな屋上を選んだのは聞かれる人は少ないほうがいいのと単なる気まぐれだったと氷川さんは言っていた。

 

屋上に座っていると陰村さんが上がってきた。

 

「よっ、待たせたな紗夜に燐子!」

 

「はい、待ったと言っても私達も今さっき来たところですが。」

 

「まぁ立ち話もなんだし座って話を聞かせてくれよ!」

 

そういう事で私達は陰村さんに九条さんの話をした。

 

転校したはじめの方はあまり人と話せなかったこと、Roseliaにマネージャーとして入ったこと、九条さんと今井さんがいなくて大ピンチだったことなどRoseliaにあったことを大体話した。

 

「・・・とこんな感じ・・・です。」

 

「そっか、あいつすげー奴なんだな。あいつの事すげー気に入ったわ!」

 

陰村さんが話を聞いてすごく笑っている。

 

九条さんを、友達を心から尊敬しているような感じで本当に優しい人なんだなと私は思った。

 

すると氷川さんが本題を切り出した。

 

「そういえば陰村さんは転校した初日に九条さんと会ったと言ってましたが・・・」

 

「あー、入学手続きとかで母さんが職員室にいてよ、それを廊下で待ってたらあいつが荷物持って運んでたから話しかけたってわけよ。この学校ほとんど1年しか男子いないって言われたからな、2年で男子がいたのが嬉しくてよ。」

 

「陰村さんの・・・お母さんって・・・どんな人なんですか?」

 

「優しくて、しっかりしてて、めちゃくちゃ俺に甘い人でよ、この世で最っ高の母さんだぜ!」

 

その言い方に私達はすごく驚いた。

 

茂樹さんから聞いたイメージと陰村さんから聞いたイメージでは全くかけ離れていたからだ。

 

陰村さんは聞いた感じ嘘をつくような人ではない。

 

それでは何故こんなにもイメージに差があるのか・・・

 

「あれ、どうした?二人共難しい顔なんかして・・・」

 

「い、いえ・・・何も・・・」

 

「そ、そうです。陰村さんとお母さんは仲がいいんですね。小さい頃からそうだったんですか?」

 

「・・・?まぁ、いいや!母さんとは仲いいけど実は血が繋がってないんだ。俺が小学2年の時に父さんが再婚した相手でよ、そん時からめちゃくちゃ可愛がってくれてさ~この前奏多と話すって言って俺先に帰ってたけど後からどんな感じだったかって聞いたら『いい友達を持ったわね』ってさ!やっぱり見る目あるよ母さん!」

 

陰村さんがお母さんの事をベタ褒めする中、私達は疑問が確信に繋がっていた。

 

やはり陰村さんのお母さんは九条さんのお母さんであり、陰村さんとお母さんが出会った時期や九条さんと話したということも合っている。

 

「実は・・・今、九条さんは入院していて倒れていたのが学校の職員室前の廊下らしいんです。」

 

「なんだって!?それでなんで倒れたんだ?」

 

陰村さんが真剣に心配して聞いてくる。

 

やはり彼はこの件のことを全く知らなかったようだ。

 

「どうやらあなたのお母さんと会った後らしいのですが・・・」

 

「うーん・・・ダチの母さんと話して緊張してストレスで倒れたか?それで、奏多がいる病院は?」

 

「えっと・・・総合病院・・・ですけど・・・」

 

「そんじゃあ俺学校終わってから様子見に行く!・・・と言っても俺まだこの街慣れてないから2人とも着いてきてくれねぇか?」

 

「え、ええ・・・構いませんが。」

 

「ありがと!うぉっ!やっべ!」

 

陰村さんが屋上に掛けられている時計を見る。

 

あと5分で昼休みが終わる時間だ。

 

「俺、次移動授業なんだ!この話はまた後で頼むわ!」

 

そう言って陰村さんは走っていってしまった。

 

「・・・最後まで・・・言われませんでしたね。」

 

「でも・・・その方が良かったのかもしれない。彼、本当にお母さんのこと信頼してるみたいだから・・・」

 

私達も荷物をまとめて教室へ戻る。

 

戻る途中にお互いの携帯に通知が来た。

 

どうやらLINEのグループチャットの通知のようだ。

 

 

 

友希那『こちらは授業が終わったので奏多の様子を見に行きます 』

 

 

 

どうやら友希那さんからの通知のようだ。

 

そういえば羽丘は授業が午前に終わると言っていた。

 

 

 

燐子『こっちは陰村さんと話をしました。詳しい話は夕方の練習のあとに話します 』

 

リサ『りょうかいっ!紗夜も燐子も学校終わったら来れそうなの? 』

 

紗夜『それなんですが陰村さんも一緒に行くことになりまして、恐らく大丈夫だとは思いますが・・・ 』

 

友希那『そうね・・・一応気をつけて 』

 

あこ『それじゃあ先行ってまってまーす!』

 

 

 

羽丘組が出発したようだ。

 

「私達も出来るだけ早く見に行った方がいいですね・・・」

 

「そうですね・・・」

 

私達はまだ授業があるのですぐには行けないが、九条さんとしっかり話をしたいので我慢して授業を受けに行った。

 

 

 

 

 

 

しかしなんだろう・・・この胸騒ぎは・・・

 

 

 

 

 

 

 

友希那side

 

授業が早く終わった私達はすぐに奏多のいる総合病院へと向かった。

 

受付に面会の許可を貰い、奏多のいる病室へ向かった。

 

「着いたね・・・」

 

リサが袋を持ちながらそう言った。

 

病室へ来るにも手ぶらでは不甲斐ないので適当に果物などを買ってきたのだ。

 

「は、入ろっか・・・」

 

あこが扉をノックする。

 

すると置くから「どうぞ」と声がした。

 

「私たちよ、入るわね。」

 

そう言って扉を開く。

 

奥には九条さんがベットの上で座っていた。

 

「また来たよ、ソータ。」

 

『はい、ありがとうございます、今井さん。』

 

「・・・えっ?」

 

奏多の言い方に私達は驚いた。

 

今まで「リサ」と読んでいたのに突然「今井さん」と言ったのだ。

 

『湊さんに宇田川さんもありがとうございます。』

 

「奏多さん・・・どうしちゃったの?」

 

『どうしたって・・・普通ですよ。』

 

奏多が軽く笑う。

 

しかしその笑顔はどこか普通じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

例えるなら・・・《色》がない様な・・・そんな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ソータ・・・まるで別人みたいに・・・」

 

『別人も何も、ぼくはぼくですよ。』

 

奏多が首を傾げる。

 

その目には光がともっておらず、表情もどこかぎこちなかった。

 

『今日はありがとうございます。しかし、せっかく来てもらったのは嬉しいんですが帰ってもらえますか?』

 

「で、でも・・・」

 

『すみません・・・しばらくは話したくないんです・・・』

 

「・・・そう、それじゃあ失礼するわ。突然来て悪かったわね。リサ、あこ、行くわよ。」

 

そう言ってわたしは病室を出る。

 

追いかけるようにあことリサが出てきた。

 

「ゆ、友希那・・・ホントにいいの?奏多をほっといて・・・」

 

「今の奏多は普通じゃない。変に触れると前の奏多に戻らない可能性があるから置いておく方がいいと思う。」

 

「友希那さん・・・」

 

奏多があそこまで変わってしまっては私たちではどうにも出来ない。

 

これは奏多が乗り越えるべき壁なのかもしれない。

 

そう思って私達は病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレデ・・・ヨカッタノカナ・・・」

 

『当たり前だろ、実際あの3人は傷つかなかった』

 

「タシカニソウダケド・・・」

 

『とにかく君は引っ込んでいろ。』

 

「・・・ウン」

 

時折側の感情が表に出てくるようになってきた。

 

これを抑えなければまた傷つき傷つけるかもしれない。そうなるのはゴメンだ。

 

昔のように同じ過ちは繰り返させない。

 

他人のためじゃない、『自分』のために・・・




次回『アレル ウラムショク』


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38話 アレル ウラムショク

今の奏多の心を支配している負の感情の奏多を「裏奏多」と名付けたネーミングセンスが皆無に等しい作者です。
ということでタイトル通り裏奏多さん荒れます(笑)
どのように荒れてRoseliaとの間に亀裂を入れるか、そこの再現が難しかったです・・・
なお、いつもの奏多の一人称は「僕」、裏奏多の一人称は「ぼく」となっております。

それでは本編お楽しみください!


「・・・ネェ、ホントニ ソレデ イイノ?」

 

 

 

 

『うるさいな、黙って見ていてって言っただろ。』

 

 

 

 

「ケド、アレジャア リサ ト ユキナ ト アコ ヲ キズツケルノデハナイカ?」

 

 

 

 

 

『あれぐらい言っておけば近寄ってこないさ。人間という生き物はわざわざ自分から傷つきにこない生き物だからな。』

 

 

 

 

 

「シカシ アイテガ キズツケバ キミ ノ イウ タガイニキズツケナイ ト イウ イミ ガ ナクナル」

 

 

 

 

『ったく・・・わかってないなキミ(僕)は、この程度で傷つくようでははじめにきつく当たった時点で二度と近づいてこないよ。』

 

 

 

 

 

「ケド・・・」

 

 

 

 

 

 

『悪いけどしゃしゃり出ないでくれないかな。側のキミ(僕)が前に出ちゃうとまた傷つくよ。』

 

 

 

 

 

「・・・ウン。」

 

 

 

 

 

側の感情が内側に戻る。

 

あの感じだとしばらくは表に出てこないだろう。

 

あの母親から虐待を受け始めてから心に芽生え始め、側の感情と共に成長していた負の感情が覚醒したのはついこの間だ。

 

ぼくが覚醒すると側の感情は衰弱しており、側の記憶を読むとかつて虐待を受けていた母親に出会ったことがわかった。

 

ぼくはこれを好機だと思った。

 

今までの虐待やイジメの時に貯まる「恐怖」や「ストレス」は全てぼくに蓄積されていたので、恐怖やストレスに耐性のない側の感情からしたら母親に出会ったのはかなりのストレスだっただろう。

 

側の感情が気絶している間に側の記憶を読み取り、この体の感情の主導権を側から奪うことにした。

 

ぼくを否定する側の感情に負けるはずがない、その結果今の主導権はぼくにある。

 

時折、側の感情が前に出る時があるが言葉で押し着れば内側に勝手に戻るだろう。

 

『・・・せっかく前に出れたんだ、誰とも関わらせないし誰とも関わらない。他人なんて信用できない、信用できるのは・・・ぼくだけだ。』

 

後は紗夜ってやつと燐子ってやつを待つだけだ。

 

側の感情にとっては一番交流のある奴らだ。

 

こいつらを、Roseliaってバンドから側の感情を引き剥がせば・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

側の感情は消えてなくなってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぼくが僕を上回るのも時間の問題だ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

ようやく終礼が終わり、荷物をまとめる。

 

時間は3時半前といったところでここから病院へは30分ほどかかるので着くのは4時過ぎだろう。

 

スマホを見ると通知が来ており内容を見ると友希那さんからだった。

 

『奏多と面会した 私達は先にCIRCLEに行っておくから面会後に結果を教えて』

 

結果を教えてとはどういう事なのだろうか。

 

チャットでは言い難いことなのだろうかと考えていると誰かが私の肩を叩いた。

 

「ヒャッ!」

 

「し、白金さん?驚かせてしまいましたか?」

 

後ろを見るとそれは氷川さんだった。

 

様子を見るに行く準備は終わっているようだ。

 

「ひ、氷川さん・・・でしたか・・・」

 

「準備は終わりましたか?陰村さんが待っていますので早く行きましょう。」

 

「は、はい・・・」

 

私達は荷物を持って陰村さんを待つために校門前へ向かった。

 

 

 

 

 

 

校門前へ行くと陰村さんがそわそわした感じで待っていた。

 

「お待たせしました。」

 

「おう、早く行こうぜ。」

 

陰村さんが今すぐ走り出しそうな雰囲気で私達にそう言った。

 

「早く行きたいのはわかりますが・・・着く前にバテてしまっては・・・」

 

「・・・それもそうか。悪ぃな、奏多のために早く行きたくてよ!」

 

陰村さんは急ぎたい気持ちを抑えてはにかんで笑った。

 

やっぱり友達思いのいい人なのだと確認した後、私達は九条さんのいる総合病院へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

総合病院へ着くとまず受付の人に面会の許可を取りに行った。

 

「あの、205号室の九条さんに面会を取りたいのですが・・・」

 

「あ、はい大丈夫です。けど・・・」

 

受付の人は少し不安そうな顔をした。

 

「どうか・・・したんですか?」

 

「さっきも九条さんに面会したいって子達が来たんだけど10分ぐらいで出てきちゃってね・・・それにあの子うちの看護師たちにもあまり話さないみたいで・・・」

 

「あいつそんな人見知りだったっけ?俺が初めてあった時は普通に話してくれたけど・・・」

 

陰村さんが頭を悩ます。

 

確かに九条さんは話すのは苦手だが今井さんとの練習でかなり良くなっているはずだし恐らく先に面会に来たのは友希那さん達だろう。

 

何故そんなに早く出ていったのか全くわからない。

 

「・・・ここで悩んでいても仕方ありません。これは九条さんに会ってみないとわかりません。」

 

「そう・・・ですね・・・」

 

「んじゃ、あいつの病室に向かいますか!」

 

という訳で九条さんの病室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

『すみません、帰ってもらえますか。』

 

入って挨拶をすると開口一番これだった。

 

この態度に私達は戸惑いを隠せなかった。

 

「九条さん・・・どうしたんです・・・?」

 

『この前も言いましたがあまり話したくないんです。僕を気にかけてくれるのは嬉しいです。けど今はほっといてもらえると・・・』

 

「そういう訳にも行きません。私達はあなたの過去を知ってしまった。それを知ってしまった以上放ってはおけません。」

 

『けどこれはぼく自身の問題です。白金さんも、氷川さんも、Roseliaの人達には関係ないことです。』

 

「・・・っ!」

 

呼び方が違う。

 

今まで下の名前で読んでくれていたのに名字に戻っている。

 

彼は本当に私達の知る九条さんなのだろうか。

 

すると今まで黙っていた陰村さんが話し出した。

 

「・・・なぁ奏多、お前本当に九条奏多か?」

 

『本当・・・ってぼくは九条奏多ですよ。何を言っているんですか陰村くん?』

 

「いやさ、お前から感じないんだよ。昨日初めてあった時に感じたお前の個性を。」

 

『個性って・・・僕は元から・・・』

 

「いや、確かに感じた。なんか・・・こう・・・表現できねぇけどお前がお前だっていう感じは出てた。けど今はそれが無いただの屍みたいだぜお前。」

 

陰村さんがまくし立てていく。

 

それは今さっきまで見ていた明るく元気で友達思いの陰村さんとは全く違う冷静で落ち着いた陰村さんだった。

 

『屍・・・ですか・・・』

 

「倒れたのはストレスかなんかだって聞いた。けどその様子じゃあストレスより何かに怯えて逃げようとしてパニクって倒れたみたいだな。」

 

『なにを・・・言って・・・』

 

九条さんが強ばった笑顔を作る。

 

しかし様子からして図星のようだった。

 

「全く・・・お前に何があったか話してみろ。俺達に話せなくても親にぐらい話せるだろ。お父さんかお母さんにでも話してみろ。楽になるぜ。」

 

私と氷川さんはその発言にやばいと思った。

 

なんせ倒れた原因もこうなってしまった原因も全て自分の母親にあるのだから。

 

しかし陰村さんはそれを知らない。

 

「大体、親ぐらいきただろ?お父さんに話せなくてもお母さんにぐらい話せよ。あーあ、うちの母さんみたいに全員の母さんが優しかったらな~」

 

その発言を聞いて九条さんが下を向いて震え出す。

 

『・・・・・・れ・・・』

 

「ん、なんか言ったか奏多?」

 

『・・・・・・まれ・・・」

 

「なんだ?小さくて聞こえねえよ。もしかして話す気になったのか?」

 

「・・・黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!お前に何がわかる!親も!クラスメイトも!何もかもすべてから裏切られて!殴られて!傷つけられてきた!そんな人間に他人に話せだって!?ふざけるな!出来るもんならとっくに出来てる!」

 

初めての九条さんの怒声に全員が驚く。

 

しかし九条さんの顔には怒っているより苦しんでいるような顔で、その瞳には大粒の涙があった。

 

「そ、奏多・・・」

 

「確かにお前の母親は最高かもしれねぇ!ただ僕からしたらあいつは最低最悪の人間でしかない!」

 

「ちょっ、なんで俺の母さんが侮辱されなきゃいけねぇんだよ!」

 

「確かに今はお前の母親だ!けど昔は俺の母親でもあったんだよ!」

 

「なっ・・・!」

 

陰村さんが硬直する。

 

まさか自分の母親が昔友人の母親だとは思わなかったのだろう。

 

「嘘だろ・・・なぁ嘘だろ!?」

 

「陰村さん・・・事実です。」

 

陰村さんがそう言ってこっちを向いてきたので氷川さんが冷静に答える。

 

私はただ頷くことしかできなかった。

 

「・・・頼む・・・もう帰ってくれ・・・今は誰とも話したくないんだ・・・」

 

今までの勢いは消え、九条さんが泣きながら弱々しくそう言った。

 

「・・・陰村さん、白金さん。」

 

「・・・はい。九条さん、失礼します。」

 

「・・・悪かったな奏多。」

 

九条さんを置いて静かに病室を出た。

 

すると陰村さんが落ち着いて低いトーンでこちらに尋ねてきた。

 

「・・・なあ、奏多が言ってたことって本当なのか?」

 

「・・・はい・・・九条さんが言ってたことは・・・事実です。」

 

「私達は彼の叔父から全てを聞きました。しかし最初あなたのお母さんが彼のお母さんだとは思わなかったです。」

 

「俺だって初めてだ・・・母さんは昔のことを話すのが嫌いだった・・・その事は色々あるんだと気にしてなかったが・・・そんな事が・・・」

 

陰村さんが肩を落とす。

 

それもそうだ、今まで信じてきた人が今回の問題の原因だったのだから。

 

すると陰村さんは決心したような顔をして話し出した。

 

「・・・俺、母さんに昔のことを聞いてくる。」

 

「けど・・・昔のことを・・・話したがらないって・・・」

 

「何が何でも話させる。今回の件はうちにも問題があるみたいだし。」

 

「・・・では、よろしくお願いします。」

 

氷川さんがわかったような顔をして答える。

 

2人は連絡先を交換して病院を出たところで別れた。

 

私達は友希那さん達が待つCIRCLEへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クッ・・・マサカ ガワ ガ アソコマデ デテクル トハ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シカシ、ツギコソ ガワ ノ カンジョウハ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・黙れ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナニ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の僕に・・・誰も近づくな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マダ ソンナキリョク ガ・・・イヤ、チガウコレハ・・・!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう・・・独りにしてくれ・・・みんなも・・・負の感情も・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ム ノ カンジョウ・・・ダト・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そっか、そんな事が。」

 

CIRCLEに到着し、3人に今さっきまであったことを話す。

 

友希那さん達はそれを黙って聞いていた。

 

「奏多さん・・・そんなに重荷を抱えてたんだ。」

 

「話してる時の九条さん・・・とても苦しそうでした・・・」

 

「どうにか、彼の心を治さなければ・・・」

 

全員が悩んでいると今まで黙っていた友希那さんが言葉を発した。

 

「・・・みんな、聞いて。」

 

「湊さん・・・?」

 

「今の奏多には私達の言葉はどうやっても届かない。話しかけても恐らく心を閉ざしてしまっている。」

 

「ならどうすれば・・・アタシ達に出来ることなんて・・・」

 

「あるじゃない・・・一つだけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌うこと・・・それだけよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『ムショク ト ハイイロ ノ コンツェルト』


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39話 ムショク ト ハイイロ ノ コンツェルト

タイトル回収してるけどまだ最終回じゃないです。
最終回じゃないのにタイトル回収してるのは今回がこれからの無灰にとって大切な回になるからです。
あとから見直して赤面黒歴史になりそうな予感がしますがそこはどうか暖かい目で見てくださらると嬉しいですw

それでは本編お楽しみください!


燐子side

 

「歌・・・ですか?」

 

今の九条さんを助けることが出来るものは歌うことだと友希那さんは言った。

 

「歌と言っても何の曲をやるんです?」

 

「今までの曲だと全部ソータがいてできた曲だから悪いけど今のソータには届くとは思わないけど・・・」

 

「みんな、この前言った曲・・・覚えてる?」

 

友希那さんの一言に全員がハッとする。

 

実は1曲だけ九条さんがいない間に全員でやろうとしてた曲があるのだ。

 

「しかし、あの曲はそれぞれ個人練習でしかやって来ませんでしたしそもそも合わせたこともないんですよ!」

 

「そうだよ!確かにあの曲なら届くかもしれないけど合わせたことのない曲をやるのはリスクが大きいって!」

 

氷川さんだけでなく今井さんまでが友希那さんの意見を否定している。

 

しかし友希那さんは臆さず続けた。

 

「最高の音楽を目指すなら多少のリスクは乗り越えないといけないわ。それに今のRoseliaには奏多がいないと・・・いえ、奏多の存在がないと私達は最高の音楽を目指せない。それに、今から猛練習すれば出来るかもしれないわ。その可能性を捨ててしまっては前に進むどころか後退してしまうわ。」

 

「し、しかし・・・」

 

「・・・やりたいです。」

 

「え?」

 

「私・・・この曲をやってみたいです!九条さんの為でもあります・・・けど、私が・・・私達が前に進むためにもやってみる価値は・・・あると思います!」

 

気がつけば頭で考えるより先に言葉が出ていた。

 

するとそれに乗っかるようにあこちゃんも話し出した。

 

「あこもやってみたいです!奏多さんには色々お世話になってますしこのままどこかへ行っちゃうような気がして・・・何もしないままなんて、あこ嫌ですっ!」

 

「・・・そうだね。ここで臆病になっちゃソータに悪いもんね。」

 

「九条さんのためだけじゃなくて私達の成長のため・・・そのためにはものすごい集中力が必要ですが。」

 

「ふふっ・・・紗夜、何のためにここに集まったと思ってるの?」

 

CIRCLEの第3スタジオ。

 

ここはRoseliaがいつも練習していて色々なことがあった慣れ親しんだスタジオだ。

 

後でわかった話なのだが今日治ったばかりのスタジオを無理を言って借りたそうだ。

 

もしかして友希那さんは全員が賛同するのをわかっていてここにしたのだろうか。

 

「みんな、これから合わせる曲は私達にとって初めての曲調よ。それを完璧にするにはみんなの心を一つにする必要がある。昔の私達なら出来なかったでしょうね。けど今は違う。お父さんが、インディーズの人たちが、他のバンドの人たちが、そして奏多から・・・色々なことを教わった。その教わったことを今ここで発揮する時よ。今回の練習は本番の時より集中してやるわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

全員の気持ちがリセットされる。

 

今からやるのは私達にとって未踏破の曲。

 

しかしこれをこなせないようではこの先前に進めない。

 

Roseliaにとっても、私にとっても。

 

「それじゃあ始めるわよ。」

 

あこちゃんがリズムをとり、私達が創る無銘の曲は奏でられ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九条さんが倒れてから4日が経った。

 

昨日は丸一日を使って『無銘の曲』を練習していた。

 

名前は友希那さんが九条さんに発表する前に決めるのだそうだ。

 

曲もほとんど完成し、私はその曲を聴いてもらうために九条さんがいる総合病院まで来ていた。

 

今の九条さんと話すなら集団で行くより1人の方がいいとの事で友希那さんに指名されて私が来ている。

 

本当はもう退院出来るらしいのだがあの様子だともう少しいた方がいいとのことで検査入院という形で入院している。

 

「あの・・・205号室の九条さんに面会を取りたいのですが・・・」

 

「はい、わかりました。けど・・・」

 

受付の人が口を濁す。

 

何があったのだろうか。

 

「どうか・・・しましたか?」

 

「いえ、九条さんなんかうちの看護師達のこと避けているみたいで・・・検査や食事の時間にもすぐに出ていくよう言われたみたいでね・・・面会するなら気をつけた方がいいわよ。」

 

どうやら今まで以上に人を避けているようだ。

 

恐らくこの前のことが原因だろう。

 

追い出されることを覚悟し、私は九条さんのいる病室へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の前につき、ドアをノックする。

 

「・・・はい。」

 

小さく、弱々しいが九条さんの声だ。

 

少し緊張してきたが声をかける。

 

「あ、あの・・・白金です。入っても・・・いいですか?」

 

「・・・どうぞ。」

 

そう言われたので部屋に入る。

 

九条さんを見ると様子が変わっていた。

 

いつもの九条さんでも無くこの前の九条さんでも無い。

 

例えるなら『無』・・・

 

「・・・どうしてまたここに来たんです。ほっといてって言ったはずですが。」

 

「あ、あの・・・九条さんに来て欲しい所が・・・」

 

「すみません・・・行きたくないです・・・」

 

案の定断られた。

 

しかしここで諦めては今までのみんなの頑張りが水の泡だ。

 

「お願いします・・・1度だけ・・・1度だけでいいんで。」

 

「やめてください・・・一人でいたいんです・・・」

 

九条さんが毛布にくるまって身を隠す。

 

この行動が原因かはたまたこれまでの九条さんの態度が原因か。

 

私という人間はその時だけ無意識となった。

 

「・・・逃げるんですか。」

 

「・・・逃げてないです。」

 

「いえ、逃げてます。一人でいたいから、傷つきたくないから、そして過去の傷を一人で抱えながらもそれを認めたくないから。」

 

「・・・っ。黙ってください。」

 

「それなのに人に話そうともしない。信用してもどこかで信用できないと思って話さない。あなたの場合は信用できないんじゃない、信用しようとしてないんです。」

 

「・・・黙って。」

 

「誰にも話そうとしないからそうやって逃げるんです。これでも逃げてないって言うんですか?」

 

「黙れ・・・黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!ならどうすればいいんだよ!どうせ僕の傷なんて誰にもわからない、誰にも伝わらない!嫌なことから逃げて何が悪い!だからもう・・・1人に・・・」

 

九条さんが涙を流しながら自分の想いを表にする。

 

九条さんが言い切る前に私の体は動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

誰とも話したくない。

 

誰とも関わりたくない。

 

他人と話すことなんて自分が傷つき損するだけの事だ。

 

しかし彼女はそれを思い切り否定した。

 

 

 

 

 

 

「・・・逃げるんですか。」

 

 

 

 

 

 

これは逃げているんじゃない。

 

自分の身を守るために当然のことだ。

 

それが自分の世話をしてくれている看護師や医者でも話しても損をするだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・逃げてないです。」

 

 

 

 

 

 

 

「いえ、逃げてます。一人でいたいから、傷つきたくないから、そして過去の傷を一人で抱えながらもそれを認めたくないから。」

 

 

 

 

 

 

やめろ、そんなことを言うな。

 

こんなの人に話せるものじゃない。

 

信用できる人なんているはずも無いのだから。

 

それに今過去のことを話すな。

 

虫唾が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・っ。黙ってください。」

 

 

 

 

 

 

 

「それなのに人に話そうともしない。信用してもどこかで信用できないと思って話さない。あなたの場合は信用できないんじゃない、信用しようとしてないんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

信用できない訳じゃないんだよ。

 

確かに心のどこかでは信用しようとしてないのかもしれない。

 

わかったような口を聞くな。

 

僕の心に触れようとするな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・黙って。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰にも話そうとしないからそうやって逃げるんです。これでも逃げてないって言うんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

お願いだ・・・黙ってくれ・・・もう・・・たくさんなんだよ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙れ・・・黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!ならどうすればいいんだよ!どうせ僕の傷なんて誰にもわからない、誰にも伝わらない!嫌なことから逃げて何が悪い!だからもう・・・1人に・・・」

 

八つ当たりだとわかっている。

 

この前も今回も、他人にきつく当たってしまってることぐらいわかる。

 

しかし叫ばずにはいられない。

 

涙が止まらない。

 

そうでもしないと自分が自分でいられなくなる。

 

本当に何もかも無くなってしまう。

 

僕がいい切ろうとした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が突然暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

頭に違和感がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

額の方は柔らかいのに側頭部から後頭部にかけて何かが絡んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それは凄く暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めはどうなっているか理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし今の状況がどうなっているかすぐに気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『燐子』が僕の頭を抱き抱えていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その行動に思考が停止した。

 

「それなら・・・何故他人に一度ぶつけようとしないんですか!」

 

声が震えている。

 

頭に何かが落ちてきていた。

 

それは燐子の涙だった。

 

「燐・・・子・・・」

 

「もう一人で抱え込まなくてもいい!一人で逃げなくてもいい!だって・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が・・・私達『Roselia』がいるから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!」

 

一人で・・・抱えなくていいのか?

 

この悪しき過去を・・・?

 

自分が・・・傷つくかもしれないのに?

 

「抱え込まなくても・・・いい・・・?」

 

「そうです!確かに私達はまだあなたの過去を詳しく知らない!話したくなかったのもわかる!その傷は深いかもしれない・・・けどそれを支えてくれるのが友達では!仲間じゃないんですか!」

 

「友・・・達・・・、仲間・・・」

 

本当にいいのか・・・他人を・・・友達を・・・そして仲間を信じても。

 

「無色だっていい・・・それがあなたの『個性』だから・・・だから・・・そんな重荷を一人で背負い込まないで・・・私を・・・私達を頼ってくださいよ・・・」

 

燐子の抱きつく強さが強くなる。

 

これが女性の暖かさなのか・・・

 

これが優しさなのか・・・

 

これが信用ってものなのか・・・

 

その抱擁が強くなったのをきっかけに心の何かがなくなった気がした。

 

こんな自分でも信用してもいいのだと。

 

他人を頼っていいのだと。

 

そしてこれが自分なんだと。

 

そう思うようになっていた。

 

 

 

 

 

気がつけば僕は泣いていた。

 

しかしさっきの涙じゃない。

 

これは嬉し涙というものなのか。

 

「信じても・・・いいんだよな・・・こんな自分でも・・・こんな過去を背負っていても・・・」

 

「・・・はい、信じて・・・頼ってください。」

 

「・・・ぐっ、ううっ・・・信じさせて・・・もらうよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供っぽいし情けないかもしれないけど彼女の胸の中で思いっきり泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女も泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと「大丈夫だから・・・大丈夫だから・・・」と呟きながら泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその抱擁はしばらく解かれることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無色の少年と灰色の少女の気持ちが重なり始めたきっかけだったのかもしれない。

 

しかし共に奏で始めるのはまだ先の話である




次回『~軌跡~ムメイ ノ ナマエ ユメ ノ ツヅキ』


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40話 ~軌跡~ムメイ ノ ナマエ ユメ ノ ツヅキ

はい、挫折編のラストです。
実は前回書き終わったあと次の日見直したらめちゃくちゃ恥ずかしかった・・・これが黒歴史というものなのか・・・
ということで今回その黒歴史の続きからです。
この小説書いてるおかげで作者が地味に成長してるところもあります。
おかげで座右の銘が『他人と違ってもいい、人生何事も楽しんだもん勝ち』になりましたw

カッコつけてないで『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』のラスト、お楽しみください!


気がつけば体が勝手に動いていた。

 

 

 

 

 

 

彼の思いを受け止めるために

 

 

 

 

 

 

彼の悲しみを背負うために

 

 

 

 

 

 

彼の頭をこの胸に抱きとめていた

 

 

 

 

 

 

もう一人で抱え込まないで

 

 

 

 

 

 

そのままの彼でいて

 

 

 

 

 

 

そんな気持ちでいっぱいだった

 

 

 

 

 

 

彼は私を信じてくれた

 

 

 

 

 

 

私の胸の中で泣いてくれた

 

 

 

 

 

 

気持ちが伝わった

 

 

 

 

 

 

今まで彼にどれだけ支えられていたのかを知った

 

 

 

 

 

 

そしてこんな自分でも人を助けられるのだと知った

 

 

 

 

 

 

奏多side

「・・・ありがと・・・落ち着いた。」

 

気持ちが落ち着き燐子にそう言うと燐子はその手を離した。

 

彼女の顔を見るとその瞳には涙は残っているが笑っている。

 

「よかった・・・信じてくれて。」

 

「うん、燐子のお陰。」

 

すると今さっきまでどういう状況だったのかが頭をよぎる。

 

(まって・・・僕、今さっきまですごく恥ずかしいことしてたんじゃ!)

 

女子の前で思いっきり泣いたこと、今まで彼女を、Roseliaのみんなを信じきってなかったこと、そして彼女の胸の中に抱かれていたこと・・・

 

(額の感触・・・あの柔らかさ・・・あれってもしかして・・・)

 

僕の頭が熱くなってきた。

 

恐らくめちゃくちゃ赤くなっているのだろう。

 

「・・・っ!あの・・・その・・・今さっきのは・・・体が・・・勝手に・・・」

 

僕が赤面していることに気がついたのか燐子も顔がみるみる赤くなる。

 

話を変えなければお互い何も喋れなくなりそうだ。

 

「あ、あの・・・来て欲しい・・・所って?」

 

「う、うん・・・CIRCLEの第3スタジオ・・・来てくれる?」

 

「わかった・・・けど先に行ってて。色々と用事済ませていくから。」

 

「うん・・・先に行って待ってるから・・・」

 

そう言って燐子は病室を出ていった。

 

僕1人になったところで僕はやることをしなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

「・・・いるか、『ぼく』」

 

 

 

 

 

 

『イマサラ ナンノヨウダ』

 

 

 

 

 

 

「話しておくことがある」

 

 

 

 

 

 

『ボク ヲ ミトメヨウト シナイ ゼイジャク ナ ガワノカンジョウ ノ ハナシ ナンテ キクキハ・・・』

 

 

 

 

 

 

「僕は・・・『ぼく』の事を認める」

 

 

 

 

 

 

『・・・ナニ?』

 

 

 

 

 

 

「確かにぼくの事は避けていたさ。嫌な思い、辛い思いを全部押し付けてそれを弱さだと思ってそんな自分は自分じゃないって思ってた。」

 

 

 

 

 

 

『・・・シッテルサ、キミハボクダ。キミノオモイナンテカンタンニ ワカル。』

 

 

 

 

 

 

「だったらわかるだろ。今の僕がどう思っているか。今の僕は人を信じて頼ることを知った。自分が変わるためには君を認めないといけない。」

 

 

 

 

 

 

『コノボクヲウケイレル・・・カ・・・ソノサキハ ジゴクダトシッテモカ?』

 

 

 

 

 

 

「もう地獄は味わったさ・・・それに今は信じられる人がいる。」

 

 

 

 

 

 

『・・・イイヨ、ケド マタザセツシタリシタラ コンドハボクガ キミノコトヲトリコムカラナ』

 

 

 

 

 

 

心の中の負の感情の気配が薄れていく。

 

過去にあった惨劇が霧が晴れたように思い出せる。

 

辛さ、悲しさ、怖さ。

 

それをすべて受け止めて今の僕という人間の糧とする。

 

もし挫折してもその時は支えてくれる仲間がいるのだから。

 

「・・・よし、行くか。」

 

明日には退院できるよう手続きをしてもらうようシゲさんにメールを送って白衣からパーカーとカーゴパンツという動きやすいラフな格好をしてみんなが待つ第3スタジオを目指した。

 

 

 

 

 

 

CIRCLEに久々に来た。

 

最後に来てから数日しか経ってないのにとても懐かしく思える。

 

「お、奏多くん!なんか久しぶりだね。」

 

声の主はまりなさんだった。

 

確かにいつもRoseliaの練習の時にカウンターに行くのは僕なのでそう思うとこうして会うのも久しぶりなんだなと思う。

 

「はい、お久しぶりです。」

 

「友希那ちゃんから聞いたよ〜体調崩してたんだってね。」

 

「え、えぇ・・・けどもう大丈夫です。」

 

「そうなんだ、よかった!そうそう、Roseliaのみんなは第3スタジオだよ。顔見せに行ってあげて!」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

友希那が上手いこと誤魔化してくれていたことに感謝して第3スタジオの前に立つ。

 

そこで手が止まる。

 

思い返せばみんなにかなり酷いことを言っている。

 

機嫌を損ねてなければいいのだが・・・

 

「し、失礼・・・します。」

 

部屋に入るとRoseliaのみんながなにか話し合っていた。

 

そして僕に気づくと一斉にこっちに来た。

 

「奏多、待っていたわ。」

 

「は、はい・・・遅くなった。」

 

「あ、奏多さん敬語抜けてる!」

 

あこに言われて今気づいた。

 

みんなに対して話す時使っていた敬語が抜けていた。

 

「ほ、ほんとだ・・・いつから・・・」

 

「奏多くん・・・病院で・・・話してた時も・・・そうだったよ。」

 

「り、燐子も敬語抜けてるよ!しかもソータのこと『奏多くん』って!」

 

「そ、そうですか?・・・そんなこと・・・ないと・・・思いますけど・・・」

 

「どうやら九条さんだけに対して敬語が抜けているようね・・・病院で何があったんです?」

 

あのことを話されると色々とやばい。

 

燐子が質問に答える前にやることをやってしまおうと思った。

 

「あ、あの・・・みんなに言いたいことがあるんだけど・・・」

 

そう言うと全員が静かになった。

 

僕は意を決して話し出した。

 

「まずは君たちに謝りたい、本当にごめんなさい。僕はたしかに君たちを信用していた。けど心のどこかでは信用できてなかった。そこは僕の未熟さであり弱さだ。そのせいで君たちを避けて傷つけてしまった。けど燐子に言われて心の霧が晴れたんだ。弱さから逃げてはいけない、向き合って受け入れなければならないって。だからもう1度君たちを信用したい。だから・・・」

 

「皆まで言わなくていいわ。」

 

「え・・・」

 

「私達があなたを信じなかったことってあった?」

 

そう言われて心にジーンとくる。

 

泣きそうになるがここで泣いてはだめだ。

 

「そうですよ。誰だって弱さや人に知られたくない面もあります。」

 

「それでもソータがこうやって帰ってきてくれたのがアタシ達は嬉しいんだよ。」

 

「あこ達はずっと奏多さんのこと信じてます!」

 

「だから・・・そんなに固まらなくていいよ。」

 

「・・・っ!みんな・・・ありがと・・・」

 

ほぼ泣きかけの僕の肩を友希那が掴む。

 

「次は私達の番よ。ここに呼んだ理由は一つしかない。あなたに聞いてほしい歌がある。」

 

肩を掴んだまま僕はステージの前の椅子に案内された。

 

そこに座らされるとRoseliaのみんながそれぞれの位置に立つ。

 

「これは本当はあなたの誕生日に送るはずの歌だった。けどこの歌は今のあなたに必要だと思ってみんなで完成させたの。」

 

そんな急ピッチで完成させたのか。

 

これでは彼女達に頭が上がりそうになさそうだ。

 

 

 

 

 

 

「それでは聞いて・・・『軌跡』」

 

 

 

 

 

 

『靴紐が解ければ 結び直すように』

 

 

 

 

 

 

ピアノの伴奏に合わせて友希那が歌を紡ぐ

 

 

 

 

 

 

『別れても途切れても また繋がる為に出逢うべく 人は歩んでゆく』

 

 

 

 

 

 

『バラード』

 

それはRoseliaが今までやったことのないレパートリー

 

 

 

 

 

 

『哀しみで 胸の中溺れそうならば 瞼閉じ迎えよう いつも変わらず 笑う貴方の瞳が ほらね…』

 

 

 

 

 

 

ほとんど時間がなかったのにこの完成度・・・

 

彼女達はどれだけ練習したのだろうか

 

 

 

 

 

 

『ただ綺麗で』

 

 

 

 

 

 

テンポが上がる。

 

恐らく次は・・・曲のサビ・・・

 

 

 

 

 

 

『“ありがとう”

歌をうたい ひたすら愛しさを告げ

溢れ出す想いは

ずっと星のように瞬くから』

 

 

 

 

 

 

僕はこの曲の名前が何故『軌跡』なのかようやく理解した。

 

バラードは基本別れなどを惜しみその人に感謝する曲、しかしこの曲はただ純粋な『感謝』の曲だった。

 

 

 

 

 

 

『“ありがとう”

廻る地球 貴方と私は進む

握る手離れても

終わらない絆がある

 

幾千も 永遠を重ね』

 

 

 

 

 

 

1分半ほどの短い曲、その曲が今終わった。

 

突如視界がぼやけ出す。

 

気がつけば僕は大粒の涙をポロポロ落としていた。

 

「練習時間が短くてこのぐらいしか完璧にこなせなかったけど・・・」

 

「・・・みんなと会う時は・・・絶対に・・・泣かないって・・・決めてたのに・・・止まんないじゃん・・・」

 

「それはソータがみんなの事大切に思ってる証拠だと思うな。」

 

「リサ・・・」

 

「多分この前のソータだったら泣かなかったと思うよ。けどソータすごく変わったじゃん。泣くって事は私達がソータのこと大好きな仲間だって思いが伝わったからだと思うよ。」

 

「大好きな・・・仲間・・・」

 

「そうだよ・・・奏多くんは・・・大切な仲間なんだから。」

 

「もう・・・泣かせないでよ・・・これ以上泣くと・・・涙枯れるじゃん・・・」

 

一人泣く僕の前にステージから降りた友希那が前に立つ。

 

「奏多、次からの練習・・・来てくれるわよね。」

 

そう言って手を差し出す。

 

僕は涙を拭い、その手を握った。

 

「・・・ええ、もちろん!」

 

「あなたの支えが私達の『色』を引き立たせる。奏多のこと、信用してるわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は無色だ。

 

 

 

 

 

 

 

しかし今はそれが青薔薇のバンドを引き立たせる。

 

 

 

 

 

 

自分の『色』を見つける

 

 

 

 

 

 

そんな『夢』は朧気となった

 

 

 

 

 

 

このバンドを引き立たせる『無色』でありたい、そんな夢になっていた。

 

 

 

 

 

 

他人が見たら笑うかもしれない。

 

 

 

 

 

 

それでも僕はこの夢の続きを見たい

 

 

 

 

 

 

僕は初めて自分が無色であることを誇りに思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』は終わりです。
あーやりたいこと全部やれた!次何しようか考えてないっ!(投稿日明日)
恐らくNFO編の前日譚やると思うんで!ひっさびさにファーリドラの「ルナ」を出す時がきたぞぉ!
それではまた明日!おたのしみに!


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エピローグ ムショクデアルカラコソ

この前ラストだと言ったけど大事なこと決着ついてないからエピローグです
なので流石に今回で終わると思います。

遂にお気に入り150件到達!これも皆さんのおかげです!評価バーに色もついて見た瞬間指震えましたw
今回はそれを記念して設定資料集のVer.2も仕上げようと思います。これが上がり次第作業に取り掛かります。

それでは『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』のエピローグお楽しみください!


『軌跡』の発表から日が明け、今日は月曜日。

 

久々に学校へ登校する日だ。

 

昨日病院で手続きを済ませ、無事退院した。

 

シゲさんはこれから忙しくなるらしく都心の方へ帰っていった。

 

実はシゲさんは丁度仕事の関係でこの辺りの人気バンドを取材していたらしく近くに支社があってそこで寝泊まりしていたそうだ。

 

昨日退院手続きのあと僕達Roseliaにも取材が来た。

 

インディーズを尊敬していること、FWFを目指していること、そしてこの6人で『自分たちだけの最高の音楽』を目指すこと。それを話した。

 

シゲさんに聞いたところPoppin PartyやAfterglow、Pastel Paletteにハロー、ハッピーワールド!の皆にも取材に行ったらしい。

 

編集が終わって出版されたら僕達に送ってくれるらしい。

 

それを楽しみにしながら僕は花咲川高校の門をくぐった。

 

 

 

 

 

教室の扉を開くと周りがざわついた。

 

久々の登校だ、無理もない。

 

「奏多くんおはよっ!久しぶりだねー!」

 

席に座ると後ろから丸山さんが声をかけてくる。

 

何度か席替えをしているはずなのだが何故か丸山さんとは席が隣前後になるという謎の引きをしている。

 

「おはようございます、丸山さん。」

 

「・・・奏多くん何か変わった?」

 

「変わった・・・?」

 

「うん、前よりなんか柔らかくなってる感じがする!」

 

自覚していなかったが多分この前の件で気が付かないうちに変わっていたのだろう。

 

するとドアの開く音がした。

 

入ってきたのは紗夜と燐子だった。

 

「紗夜!燐子!おはよー!」

 

「おはようございます、九条さん。」

 

「奏多くん・・・おはよう・・・」

 

燐子の言い方に何も知らない丸山さんは驚く。

 

「燐子ちゃん・・・その言い方・・・ねぇ、この土日に何があったの!?」

 

「えっ・・・その・・・色々と・・・」

 

燐子が誤魔化す。

 

僕も誤魔化し程度に笑って返す。

 

すると後ろから強い衝撃が来た。

 

「おーっす奏多!久しぶり!」

 

声の主は炎だった。

 

炎が僕の肩に腕を回していた。

 

彼はいつも通り元気そうだ。

 

「炎、おはよう。あとこの前はゴメンな、あんな言い方して・・・」

 

「あぁ、気にすんな。それとちょーっと来てくれ、話ある。」

 

炎が腕を引っ張って男子トイレに連れ込んだ。

 

「それで話って何?まぁ他の人に聞かれたくない事なんだろうけど・・・」

 

 

 

 

 

 

「母さんがお前に会いたいって。」

 

 

 

 

 

 

その言葉に一瞬体が固まる。

 

しかしすぐに平然を装って返す。

 

「う、うん、わかった。それでいつ行けばいい?」

 

「できれば今日。お前と会うことを条件に母さんから昔のこと色々聞いた。無理しなくていいけど・・・」

 

確かに母親と会うのは怖い。

 

しかし会って自分の気持ちを伝えなければ何も変わらないような気がした。

 

「・・・大丈夫、なんかあったら炎を頼るから。そん時は頼むよ炎。」

 

「わかった、とりあえず話したいことは色々あるから昼休み屋上に来てくれ。」

 

「了解。」

 

ということで男2人で屋上で話し合うことが確定した。

 

 

 

 

 

 

時は流れて昼休み。

 

僕は炎に言われた通り屋上に来た。

 

炎は先に来ていて待っててくれていたようだ。

 

「お待たせ、それで話したいことって何?」

 

「まずここに呼んだ理由だが・・・」

 

炎が真剣な顔付きをする。

 

僕は何故か緊張して生唾を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・弁当持ってくんの忘れて金もねぇ・・・だから奏多の弁当少し分けてくれ!」

 

 

 

 

 

 

炎が涙目で訴えかけてきた。

 

変に緊張したせいでガクッとなる。

 

「な、なんだ・・・そんな事か・・・」

 

「頼む~腹減って死にそうなんだよ~」

 

そう言って炎は僕にすがってくる。

 

「わかったわかった!だから服は引っ張るな!」

 

「奏多~ありがと~」

 

とりあえず座って弁当の蓋に適当なおかずを載せて炎に渡す。

 

それを炎はものすごい勢いで口の中に頬り入れた。

 

「は、早・・・」

 

「んぐっ!ぷはぁ~美味かったぁ!これ奏多が作ったのか?」

 

「そ、そう・・・だけど・・・」

 

「やっぱりお前の飯食いたくなってきた!この前の約束忘れてないよな!」

 

「当たり前じゃん。それは置いといて本当に話したいことって何?」

 

「・・・ああ、そうだったな。奏多、俺はお前の過去を聞いたけどそれでも今のお前のことをよく知らねぇ。今日母さんと話すにあたってもしかしたらもう二度と関わるなって言われるかもしれねぇ。それでも・・・それでもお前は俺のダチで・・・友達でいてくれるか?」

 

僕は炎の言うことを無言で聞いた。

 

少し間を開けて炎に返した。

 

「・・・昔の僕ならそのまま母親の言いなりになっていたのかもしれない。言うことを聞くことで母親から逃れようとしてたのかもしれない。けど今はもう違う。僕は僕で母親の奴隷じゃない。僕の生きる道を決めるのは僕自身だし、炎の生きる道も炎が決めることだ。それを親だろうと他人に言われる筋合いはないよ。だから炎はやりたいようにやればいい。炎がそう思っているのなら僕はそれに応える。ずっと友達でいるよ。」

 

「そっか・・・お前変わったな。だから初めて見た時からお前のこと気に入ってんだろうな・・・ありがとな奏多!」

 

「うん、気にしないで。その代わり今日何かあったら助けてよ~もうあの人に傷つけられるのはうんざりなんだからさ。」

 

「当たり前さ、例え母さんだろうと友達傷つけるやつは嫌いだからな!」

 

そう言ってお互い笑い合う。

 

すると屋上にある人が入ってくる。

 

僕は気がついたが炎は気がついていないようだ。

 

「・・・炎、昼休みなんか予定あったの?」

 

「ん?お前と飯食べる以外なんかあったっけ?」

 

「だったら何で・・・

 

 

 

 

 

 

後ろにいる白鷺さんは禍々しい笑顔で炎見てるの?」

 

 

 

 

 

 

炎の顔が固まる。

 

そのままゆっくりと後ろを向いた。

 

彼の顔には秋だというのに汗がダラダラ流れている。

 

「・・・ち、千聖・・・さん?」

 

「あら、炎くんは元気そうでゆっくりお弁当ですか?これから委員会の仕事があるっていうのに。」

 

白鷺さんの笑顔が怖い。

 

なにか良く分からない禍々しいオーラが僕達を襲っている。

 

「お説教が必要かしら?」

 

「そ、奏多・・・た、たす・・・」

 

「ごめん炎・・・こればかりは無理。」

 

「さ、行きましょうか。」

 

白鷺さんは炎の襟首を掴んで引っ張って行った。

 

炎は首を掴まれた猫のように大人しく涙目で引っ張られて行った。

 

炎の行く末を祈りながら僕は残った弁当を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

放課後、僕はRoseliaのみんなに『母親と話してくるから遅れていく』とLINEを送って炎と一緒に炎の家へ向かった。

 

炎が先に入ったのに続いて炎の家に上がる。

 

リビングに入ると母親が平然と座っていた。

 

「・・・母さん、ただいま。」

 

「おかえりなさい炎、そいつも連れてきたようね。」

 

「・・・話って何。」

 

「とりあえず立ったままでもこちらが話しにくい。座りなさい。」

 

言われた通り席に座る。

 

母親はコーヒーらしき飲み物を啜って話し出した。

 

「まずはあなた、うちの炎に近づかないでくれるかしら。あなたと炎が一緒にいたら炎にどんな影響が出るかわかったもんじゃないわ。」

 

「母さん・・・奏多を病原体みたいに・・・」

 

「炎は黙っていなさい。これはあなたの為でもあるのよ。」

 

僕は無言で聞いていた。

 

今話しても何も効果が無いと思ったからだ。

 

「炎はあなたと違って存在感や色々な才能がある。あんたは才能もない、存在感もない、極めつけはアンタを産んでから二度と子供を作れない体になった。あんたなんて産まなきゃ良かったわ。」

 

「母さん・・・そんな言い方」

 

「だから炎は黙ってなさい。」

 

炎もついに黙る。

 

こうなり始めた母親は止まらないことはわかっていた。

 

「アンタの人生はどうでもいいけど炎の人生は華やかで素晴らしいものにしてほしいの。だから二度と近寄らないでくれる?それとも昔みたいに体に刻み込んだ方がわかりやすいかしら。」

 

体が震える。

 

昔の惨劇を思い出す。

 

冷や汗が出る自然と拳に力が入る。

 

逃げ出したい。

 

傷つきたくない。

 

そんな思いが出てくる。

 

しかし逃げ出してはいけない。

 

だって・・・

 

 

 

 

 

 

今の僕には支えてくれる仲間がいるから

 

 

 

 

 

 

「・・・炎の人生は炎のものだ、あんたが決めることじゃない。」

 

「・・・何ですって。」

 

「あんたは炎に華やかで素晴らしい人生にしてほしいと言った。けどそれはあんたが炎に押し付けているだけのエゴに過ぎない。あんたの思う幸せが炎の思う幸せじゃあない。例えあんたが今の炎の母親だろうと炎の人生にとやかく言われる筋合いはない。しかもあんたと僕はもう赤の他人だ。僕こそあんたに誰と会おうが誰と友達になろうが言われる筋合いはないよ。」

 

「なん・・・ですって!この不良品!生きているだけで害悪な無色が!」

 

「無色か・・・今はその無色が誇らしく思えるよ。」

 

「・・・このっ!死んでしまいなさい!」

 

母親が激昂して隠してあった包丁を取り出して切りかかってくる。

 

「奏多!あぶねぇ!」

 

炎が止めにかかるが母親はもう僕の前に来ていた。

 

しかし僕は焦りはしたが怯えはしなかった。

 

なぜなら・・・

 

 

 

 

 

 

激昂した母親は標準を狂うからだ。

 

 

 

 

 

 

予想通り母親の包丁は標準が狂って左肩を浅く切り裂いただけだった。

 

左肩に痛みが走るが我慢して母親の足を払う。

 

すると母親はバランスを崩して近くの机の角に頭をぶつけてそのまま倒れ込んだ。

 

包丁は僕の座っていた椅子に突き刺さった。

 

「奏多!大丈夫か!」

 

「痛てて・・・大丈夫だよ。それより・・・」

 

僕は母親の方に視線を送ると炎は母親の脈を触った。

 

「・・・うん、脈はある。」

 

「そっか・・・とりあえず警察呼んだ方がいいかな、これは。」

 

「そうだな、面倒くさくなるけどこれは警察に任せた方がいいや。」

 

 

 

 

 

 

その後あったことをまとめると僕達は警察に連絡して母親は傷害容疑で逮捕、僕は怪我を見てもらうために警察病院へ、炎は何があったか言うため取り調べ室にに行った。

 

肩の傷は思っていたより浅く、数日で治るものだったが僕の体を見た医師は何があったか聞いてきた。

 

僕は昔の虐待のことを話し、母親は傷害容疑だけでなく虐待容疑もかかりかなり重い罪となり、刑務所行きが確定した。

 

炎は今日のことだけで済んだが僕は昔の虐待の件も何度も聞かれ気がつくと日は暮れていた。

 

炎によると父親は今日は帰ってこれないため僕の家に止めることになった。

 

炎に料理を振る舞い、談笑しながらその夜を過ごしたがRoseliaの練習に行けなかったのでこれから色々言われるだろう。

 

日が変わって僕達は一緒に学校へ向かった。

 

教室では先に燐子と紗夜がいた。

 

「おはよう、2人とも。」

 

「おはようございます九条さん。」

 

「おはよう・・・奏多くん。」

 

「昨日は行けなくてすみませんでした。」

 

「昨日の件は仕方の無いことです。それで・・・」

 

「うん、母親とは決着ついたよ。こうなったのはみんなのおかげ。本当にありがと。」

 

「よかった・・・奏多くん・・・優しい顔してる・・・」

 

「・・・こうなったのも君のおかげだからね、燐子。」

 

「昨日のことに関しては今日の練習できっちり話してもらいますからね。」

 

「それもそっか。わかったよ。」

 

 

 

 

 

 

彼は優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

それは心からの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

この日、彼は昔の縛りから開放された。




エピローグがいつも書いてる量より多い・・・!
との事で『~軌跡~ムショク ノ ナミダ ト オボロゲ ナ ユメ』は本当に完結です。この後資料設定集Ver.2を仕上げるとして次は何をしよう・・・
次に何をすればいいかメッセージ等でリクエストあったらやるかも知れません!リクエストはいつでもお待ちしてますのでよろしくお願いします!


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8章 ~Determination Symphony~秋時雨に翡翠の姉妹 41話 ヒスイ ノ シマイ

新章「~Determination Symphony~秋時雨に翡翠の姉妹」です。Twitterのアンケートの結果NFOより先にこっちが先になりました。
今回恐らく氷川姉妹がメインとなります。今回はプロローグにあたるため少し短めとなります。
それに今回でプロローグ、番外編含めると50話になります!まさかここまで続くとは・・・

それでは新章スタートです!


私の妹は一言で言えは「天才」だった

 

見たものはすぐに覚え、自分の技術にすることが出来た。

 

私とは生まれた時間が数時間しか変わらないのにこの差である。

 

私は今まで妹、日菜から逃げるように生きてきた。

 

日菜が芸能事務所にスカウトされてからほとんど話さなくなってきた。

 

私は日菜と同じものにならないように違うことを極めようと思った。

 

それがギターだった。

 

私の中学生活はギターの素晴らしさに魅入られた。

 

高校受験の時も日菜とは違う学校を選び、花咲川に入学した。高校に入れは何かが変わると思っていた。

 

しかし日菜の芸能事務所がアイドル業をすることになり日菜がアイドルバンドでギターをすることになった時、私の人生は日菜から離れなれないことを悟った。

 

そのため私は高校人生の殆どをギターに費やすことを決めた。

 

あの子はどんな事でも自分のモノにしてしまう。

 

緩い気持ちでは越されてしまう。

 

最悪他のことは抜かされても構わない。

 

しかしギターだけは抜かされたくなかった。

 

そのためソロではなくバンドを組むことで技術が上がるのではないかと考えた私はたまたまギターを募集していたバンドに入ることにした。

 

しかしそこはただバンドというものを楽しむだけのバンドで私の技術に見合わないものだった。

 

楽しむだけでは技術が上がらないと思っていた私にバンドを組まないかと誘ってくれた人がいた。

 

 

 

 

 

 

それが湊さんと、「Roselia」との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

そこから今井さんや宇田川さん、白金さんに九条さんと出会い、そこで多くのことを学んだ。

 

そこで格段に技術を磨けたと思っている。

 

そして夏のある日、日菜は私にこう言った。

 

「おねーちゃん、夏祭り行かない?」

 

私は最初否定した。

 

けど考えているうちに日菜と話せなければこれまでと変わらない、自分が成長するにはまず日菜とまっすぐ向き合わなければならないと思うようになっていた。

 

しかし私はその時日菜と話すことはできなかった。

 

だが、七夕の日に母から頼まれた買い物をしている途中、日菜を見つけてその時日菜が書いていた短冊を鳥に取られてしまい取り返すために追いかけ、そのまま七夕祭りに行くこととなった。

 

祭りに行って本当のことを思えば楽しかった。

 

その時日菜が書いたように私も短冊に願いを書いた。

 

 

 

 

 

 

『日菜とまっすぐに話せますように』

 

 

 

 

 

 

それが私の願いだった。

 

願いだけでは変わらないことは知っていた。

 

けどこれがその時、頭の中で思ったことだった。

 

日菜とまっすぐ話すこと、それを願いだけで終わらせないように努力しようと決心した。

 

 

 

 

 

 

そして夏祭りから3ヶ月が経った。

 

九条さんの1件も終わり、私が家のリビングで本を読んでいる時だった。

 

「ただいま~あ、おねーちゃん!聞いて聞いて!」

 

日菜が仕事から帰ってきてすぐに私の所へ来る。

 

『日菜とまっすぐ話せますように』そう短冊に書いてから少しずつだが日菜との時間が増えてきたような気がする。

 

日菜と過ごす時間も悪いものではない。

 

それに、会話することで新しい発見もある。

 

「おねーちゃん、今、話聞いてなかったでしょ!」

 

「え・・・」

 

「おねーちゃんは、『考え事モード』に入るとピタッとして、んーってなるんだよね。だからすぐにわかるよ!」

 

「ピタッと・・・?私そんなに瞬きが減っていたかしら?」

 

「そーだよ~!ちゃんと話聞いてよ~!」

 

最近少しだけ、日菜の言う擬音が何を指しているのかわかるようになってきた。

 

「・・・まぁいーや。ねぇねぇ、今日さ、テレビでパスパレのライブが放映されるんだよ!一緒に見ようよ!」

 

「え・・・」

 

「この前やったライブが一部だけ放送されるんだって!まぁ、ローカル局なんだけどね。おねーちゃん一緒に見ようよ!」

 

そう言えば修学旅行でのライブ以降、日菜のライブ姿を見たことがない。

 

その上あの時は初めてやる曲に必死で日菜の演奏などろくに見ていなかった。

 

いや、見たことがないというより見ないようにしていただけだ。

 

「・・・ダメ?おねーちゃん、忙しい?」

 

日菜が少し寂しそうに顔を見てくる。

 

今日は特に予定もない。

 

これからも少しずつ変わるためには日菜の演奏を見てみるのもありだろう。

 

「いえ、今日は練習もないし、生徒会や風紀委員の仕事もすべて済ませてあるから時間はあるわ。」

 

「やったー!時間は・・・あと5分くらいで始まる!あたし、飲み物とか用意してくるね!おねーちゃんはテレビよろしく!」

 

「ひ、日菜!私はチャンネルわからないからあなたがチャンネルを合わせて!飲み物とかは私が用意するから!」

 

「そ、そっか。わかった、おねーちゃんよろしくね!」

 

チャンネルも伝えずに行こうとしたので引き止めて日菜にテレビのチャンネルを合わさせる。

 

私は冷蔵庫から紅茶を、棚からクッキーを取り出して持っていく。

 

「おねーちゃん早く早く!」

 

「わかったから少し落ち着きなさい。」

 

最近こういった会話をよくするようになってきた。

 

これはうまく話せている方なのかわからないが、私としては話せているように思える。

 

机の近くの棚からグラスを二つ取り出して紅茶を注いだ。

 

紅茶に口をつけた時にテレビの画面にパスパレのメンバーが映し出された。

 

「あっ!はじまった!!わあーっ、すごいお客さん!こうやって見るとすっごいな~!」

 

「日菜、少し落ち着きなさい。」

 

「だってだって!お客さんから見たらあたし達ってこんな風に見えてたんだなーって思って!」

 

今思えば日菜達はこうやってお客さん目線でライブをあまり見たことがないのだろう。

 

私達の場合は九条さんが動画を撮ってくれているので、楽屋での反省会の時に見ることが多い。

 

パスパレのあらかたな紹介は終わり、丸山さんのMCが入った後に演奏が始まった。

 

「あ!演奏はじまった!」

 

「もう、日菜ったら・・・」

 

日菜のはしゃぎ様に呆れながらパスパレの演奏を見た。

隣で日菜がその時の状況を説明する。

 

「この時さー、すっごく照明がギラッギラだったんだ!眩しいし、暑いし大変だったんだー。それにね、彩ちゃんがちょいちょい音外してさー。」

 

日菜の解説を他所に私は日菜の演奏をしっかり見ていた。

 

やはり私より技術は高い。

 

私より後に始めたのにここまで技術が高いとはさすが天才だと思った。

 

しかし、他のメンバーの演奏よりテンポが走りがちだし、主張が強い演奏をしている。

 

「あっ、ほらほら!次はあたしのギターソロだよ!」

 

日菜の言う通り、ギターソロに入って日菜が大々的に映し出される。

 

テレビの日菜の音は・・・凄く楽しそうな音をしていた。

 

日菜の表情、それに、はやるメロディーでさえ・・・

 

「おねーちゃん?大丈夫?」

 

日菜が心配そうに聞いてくる。

 

また日菜が言う『考え事モード』に入っていたのだろう。

 

「・・・!ごめんなさい、私、また・・・」

 

「うん。考え事?」

 

「いえ、大丈夫よ。大丈夫・・・」

 

日菜に言うより自分にそう言い聞かせながらパスパレの演奏を最後まで見続けた。

 

私の心に残ったのは・・・自分の音に対する疑問だった。

 

 

 

 

 

 

演奏が終わったあと日菜に少しやることを思い出したと言って部屋に戻ってきた私は壁にかけてある自分のギターを見た。

 

日菜に真似されたくない。

 

負けたくない。

 

その一心で私はギターの技術を高めてきた。

 

しかし日菜の音は技術力だけではなかった。

 

私とのもう一つの違い、それは『魅力』だった。

 

日菜の音は技術だけではなく魅力的な音をしていた。

 

テンポが走っていることでさえ日菜の個性であるように感じた。

 

それに比べて私の音は・・・

 

 

 

 

 

 

「私の音は、日菜と比べて、どんな音をしているの・・・?」

 

 

 

 

 

 

その事が私の心を揺さぶり始めた。




はい、本文を見るように文の書き方変えてみました。
これの投稿後にこれまでの全文をこんな感じに変えようと思います。
骨が折れるぞぉ!しんどいぞぉ!けど少し見やすくなるぞぉ!

てなわけで次回もお楽しみに!


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42話 ~Re:birthday~ウマレカワル キョク ト マヨウ ヒスイ

世間がスマブラで盛り上がってる中スイッチ持ってないので話でしか聞くことの出来ない作者の隠神カムイです。
突然ですが四日連続投稿やります。←ほんとに突然
理由としては活動報告でも伝えたように修学旅行で火曜、木曜分の更新が難しいと判断したためこうなっております。
久々の連続投稿ですが身体壊さない程度に頑張りますのでそこのところよろしくお願いします。

てなわけで何故かタイトルがRe:birthdayな本編始まります!


僕が挫折から立ち直る救いとなった曲の『軌跡』。

 

その曲とは別に僕を思う気持ちで創られた曲があった。

 

その曲の名前は『Re:birthday』。

 

『再誕の日』の意味を持つこの曲は元々軌跡のフレーズの没案を友希那が念のために取っておいたものを僕とRoseliaのみんなで再編させて創り上げた曲だ。

 

そして今は僕のために急ピッチで完成させたため、ショートバージョンでしか演奏できなかっためにフルバージョンの軌跡とその曲の没案を新たに生まれ変わって出来たこのRe:birthdayの二つをメインとして練習をしている。

 

軌跡は僕以外のメンバーが創り出したので僕からは何も言うことがないが、Re:birthdayは僕も編集に携わっているため各自のミスや改良点を指摘しやすい。

 

そして、1度全員で通してから休憩を入れるのが最近の練習のスケジュールとなっていたのだった。

 

「それじゃあそろそろ全員で通して軌跡とRe:birthdayやってみようか。」

 

今回も軌跡とRe:birthdayを全員で通し、休憩に入った。

 

「みんなお疲れー!休憩入れよっか。」

 

「ふぅー!疲れたぁ!」

 

「リサお疲れ。はいこれ。」

 

リサにタオルと水の入ったペットボトルを投げ渡す。

 

「よっと!ありがとソータ!」

 

「友希那にあこも受け取って!」

 

そう言って友希那とあこにペットボトルとタオルを渡す。

 

「ありがとう奏多。」

 

「奏多さん、ありがとー!」

 

「燐子はこれで、紗夜はこれ!」

 

続いて燐子と紗夜に渡そうとする。

 

「あ、ありがとう・・・奏多くん。」

 

「いつもの事だよ。後は紗夜だけだけど・・・」

 

紗夜の方を見るとめを開いてずっとぼーっとしている。

 

日頃、紗夜の事をよく見る僕は紗夜が今、考え事をしている事がわかった。

 

しかし受け取ってくれないのも寂しいので声をかける。

 

「おーい、紗夜ー?もしもし、紗夜さん?」

 

するとやっと気がついたのかハッとしたような顔をする。

 

「わ、私・・・また・・・」

 

「紗夜また考え事?とりあえずこれ。」

 

紗夜にペットボトルとタオルを渡す。

 

紗夜はそれを受け取った。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

いつもと様子がおかしい。

 

見た目は凛としてしっかりしているのだが、何故か違和感がある。

 

無理していつも通りを演じているような、どこかに迷いを持っているようなそんな感じだった。

 

「ソータ?どうしたの?」

 

後ろからリサが声をかけた。

 

「ん?何も無いよ?なんで?」

 

「いやさ、ぼーっとしてたからどうしたんだろうと思って。」

 

「ごめん、少し考え事してた。」

 

「何考えてたの?」

 

「いや、特に大したことはないよ。ほら、そろそろ休憩終わるよ。」

 

「むむむ・・・気になるけど練習優先だね。はいこれ。」

 

リサにタオルと中身が半分くらいのペットボトルを渡される。

 

僕はそれをいつも置いている位置に置いた。

 

「みんなー、そろそろ始めようかー!」

 

リサがみんなに呼びかける。

 

こういう呼びかける系はリサの方が向いていると思う。

 

全員が位置について僕が次の練習メニューを伝えた。

 

「えっと、そろそろ次のライブも近いのでメニューを組もうと思ってる。なにかリクエストとかある?」

 

「はいはーい!あこは新曲やってみたいです!」

 

「新曲か・・・悪くないけどまだ軌跡とかRe:birthdayも完璧じゃないのにやるのもどうかなー・・・友希那はどう思う?」

 

「確かに新曲も悪くないわ。けど新曲をするのであればどのようなテーマで行くか考えないと。」

 

「今回のライブは軌跡とRe:birthdayも入れる感じで4曲やろうと思う。だからあと2曲のうち仮に1曲を新曲をやるしたらあと1曲何にするか・・・」

 

考えていると燐子が手を挙げて提案してきた。

 

「あ、あの・・・軌跡は結構テンポが緩やかなのでそれで緩急をつけるとしたら・・・テンポの良い曲の方がいいと思う・・・例えば熱色スターマインとか・・・」

 

「熱色スターマインね・・・悪くないわ。もし新曲をするならそれを最後にした方がいいわね。」

 

友希那の言葉に僕は流れを考える。

 

もし最後に新曲をやるとしたら必ず盛り上がる。

 

なら、熱色スターマインを初めにして次にRe:birthday、緩急をつけるように軌跡を入れる方がいいだろう。

 

1通り考えて僕はみんなに提案することにした。

 

「なら、1番目を熱色スターマイン、2番目をRe:birthday、3番目を軌跡で最後に新曲って感じでどう?」

 

「うん!賛成!」

 

「それがいいわね。なら新曲はアップテンポな曲の方がいいわね。」

 

「結構ハードな流れだけどやる気出てきた!頑張るよ燐子!」

 

「は、はい・・・頑張りましょう・・・」

 

僕はふと紗夜の方を見る。

 

紗夜は話は聞いているようだが考え事をする状態に入りそうになっていた。

 

「紗夜はどう思う?このセット。」

 

「え、ええ・・・悪くないと思います。アップダウンもしっかりしてて面白そうだと思います。」

 

「そうね、紗夜のギター、今回も期待してるわよ。」

 

「は、はい・・・わかりました。」

 

紗夜の表情が少しだけ曇る。

 

やはり何かあるのだろうか。

 

「それじゃあその流れで一回やってみよ!」

 

リサの提案で全員が練習のスイッチが入る。

 

紗夜の様子も気になるがとりあえず練習を優先させた。

 

 

 

 

 

 

紗夜side

 

私は初め、今井さんが何故Roseliaに入ることを許されたのかわからなかった。

 

力量もお世辞にも上手かった訳でもなくただの経験者というイメージしかなかった。

 

確かに初めて演奏した時の一体感は素晴らしかった。

 

けど入ることを許されたのは湊さんが甘いのではないかと疑ったこともあった。

 

しかし彼女がいなくなって困ったことがあったのも事実だ。

 

実際、夏休み前に今井さんと九条さんがバイトで抜けた時、自分がしっかりしていればまとめられるだろうと思っていた。

 

しかし実際はそうもいかず、最後に2人が来なければパニックになっていた事だろう。

 

その時、私は何故、湊さんが今井さんをRoseliaに入ることを許可したのかわかった気がした。

 

彼女の強みは私達を支えてくれていることなのだと。

 

そしてその強みは九条さんも持っている。

 

2人が居て初めてRoseliaというバンドは輝き続けることが出来るのだと、そう思った。

 

湊さんはもちろん白金さんも、更に宇田川さんもそれぞれの強みを持っている。

 

私は音楽性に左右されずに評価されるからこそ高い技術や正確さを信じてやってきたつもりだった。

 

なので私はギターの技術やテンポは誰よりも優れているという自信はある。

 

しかしそれはすべて『日菜に負けないため』でもあった。

 

しかしこの前見た演奏・・・『日菜と比べて』テンポもリズムも私の方が正確なのにどこかが決定的に違うように思えた。

 

今の私の音はただ正確なだけのつまらない音だ。

 

私の音が『日菜の音』を超えることは出来るのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

演奏をフルで一度通してアドバイスを送ってからもう一度通すと時間もいい具合になってきた。

 

「そろそろ時間だ、今日の練習はここまでにしようか。」

 

張り詰めていた心地よい緊張感が抜け、いつもの緩やかな雰囲気に戻る。

 

「お疲れさま・・・です・・・」

 

「お疲れ様でーす!ううー、つっかれた・・・」

 

「あこ。このくらいで弱音を吐いていては先が思いやられるわね。特にドラムは体力が大事なのだから体力の使い方やペースを考えて叩くことね。」

 

「ううっ・・・」

 

「まあまあ。あこお疲れ!はい、クッキーどーぞ!」

 

リサが手作りのクッキーを渡す。

 

これもいつもの恒例となってきた。

 

「あ、今回僕も作ってみたからよかったら食べてみて!」

 

そう言って僕は鞄の中からタッパーを取り出した。

 

その中には昨日の夜に生地を寝かせて今日の朝に焼き上げたチョコマフィンが入っている。

 

タッパーを開けるとチョコの甘い匂いが周りに漂った。

 

「うわぁ!美味しそう!いっただっきまーす!」

 

あこがリサのクッキーを片手にマフィンの一つをとって口に運ぶ。

 

するとあこの顔が一瞬で輝いた。

 

「おいひぃ!こんな美味しいマフィン食べたことない!」

 

「ほんとに?どれどれ・・・」

 

あこの反応に興味をそそられたのかリサがマフィンをとって食べる。

 

「うわっ!ほんとに美味しい!ソータ料理できるって言ってたけどこんなに美味しいなんて!」

 

「でしょでしょ!奏多さん料理上手すぎだよ!」

 

喜んでくれてよかった。

 

すると燐子と友希那も近づいてくる。

 

「奏多。一ついただくわ。」

 

「奏多くん・・・いただきます・・・」

 

友希那と燐子もマフィンを口に運ぶと幸せそうな顔をする。

 

「美味しい・・・!」

 

「ええ、とっても。」

 

「今回のはかなり自信作なんだ!」

 

僕は唯一マフィンを食べていない紗夜に声をかける。

 

「紗夜ー!マフィン作ったんだけど食べる?」

 

「ええ、ですけど私は残って少し練習をしてから帰るので後でいただくわ。」

 

「わかった!袋に包んで置いとくから!」

 

僕は念のために持ってきていたラッピング用の袋にマフィンを一つ入れて紗夜のカバンの上に置いた。

 

「それじゃあギター周り以外は片付けといて。僕は受付に精算と次の予約をしてくるからよろしくね~」

 

僕はスタジオの現状復帰をみんなに頼んで受付に向かった。

 

しかし僕はまだ紗夜がなぜ顔を曇らせたのかを考えていた。




突然ですが無灰のメイン2人のCVイメージがつきました!
なお案には「陽だまりと剣と秋時雨」の作者のソロモン@ナメクジさんも絡んでます。

九条奏多・・・島崎信長
陰村炎・・・逢坂良太

という感じになりました!(ほとんど願望)
それでは次回もお楽しみに!


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43話 ツマラナイ オト

実はバンドリで一番最初に来た星4が七夕の日菜な隠神カムイです。
今ではスキルマになりながらもパスパレのイベント以外での使い道がなくて全然使ってない・・・(基本イベントは属性固めたバンドでやってるタイプ)
なお全話の改良が終わりましたので読むと少し変わっているところもありますので読み返してみるのもおすすめです!
それでは本編始まります!


紗夜side

 

みんなが九条さんの作ったマフィンを堪能している中、私は1人ギターの練習をしていた。

 

練習している所はRe:birthdayのサビの前。

 

ここで少し詰まるところがあるのでそこを練習している。

 

詰まりを微調整して一度フルで流す。

 

引き終わると宇田川さんが絶賛の声をあげた。

 

「今日も紗夜さんのギター超カッコイイですっ!リズムもテンポも正確で・・・弾いてる姿もバーンって感じで~!紗夜さんの右手にはこう・・・音楽を司りし聖なる・・・えっと・・・そういう感じのがいるんだと思いますっ!」

 

宇田川さんのいう事は未だに不明なところがある。

 

しかしこれも日菜の擬音語と同じようにわかってしまう日が来るのだろうか。

 

「あこの表現はよくわからないけど・・・紗夜。あなたの演奏はとても正確ね。今日の演奏も問題ないと感じたわ。これからもその正確さを持って精進して。」

 

「正確さ・・・」

 

「紗夜?どうかしたの?」

 

「え、ええ。そのつもりです。」

 

そう行ってる間にギター周り以外の現状復帰を終えたメンバーが帰る準備を始めていた。

 

「紗夜どうする?もう少しやっていく?」

 

「は、はい。あと少しだけやってから帰ります。」

 

「了解、今度マフィンの感想よろしくね~」

 

そう言って九条さんや湊さん達が帰っていく。

 

そして1人残ったスタジオでもう一度Re:birthdayのフルを演奏してみる。

 

「・・・ダメね。何度やってもしっくりこない。」

 

湊さんや宇田川さんはさっきの演奏を問題ないと評したが私にとっては全くしっくりこない演奏だった。

 

テンポもリズムも正確なはず。

 

しかしそれ以上でもそれ以下でもない『何か』が違うのだ。

 

その何かが足りない。

 

そのせいで『日菜と比べて』テンポもリズムも正確なはずなのに自分の演奏がつまらないものに聞こえる。

 

気がつけばそろそろ終わらなければいけない時間である。

 

私はギターとギター周りを元に戻し、自分の荷物をまとめた。

 

カバンの上には九条さんが作ったマフィンが置いてあった。

 

封を開けて中のマフィンを取り出す。

 

チョコレートの甘い匂いがする。

 

そのマフィンを口に運ぶ。

 

柔らかな食感とチョコレートの甘い味が疲れた体に行き渡る。

 

「・・・美味しい。」

 

私は今さっきまでのモヤモヤをマフィンの甘い味で押し込めていた。

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

マフィンを振舞ってから数日が経った。

 

3週間前になったライブを成功させるため、新曲以外の3曲を通しで練習している時だった。

 

「紗夜!また同じところミスよ!」

 

「・・・っ!すみません、もう一度いいでしょうか。」

 

「では、その二つ前のフレーズからやりましょう。」

 

二つ前のフレーズに戻って演奏を始める。

 

Re:birthdayのギターがメインとなる所で紗夜が同じ所でミスをする。

 

いつもの紗夜からしたら彼女らしからぬミスだ。

 

「どうする紗夜?休憩入れようか?」

 

「いえ、平気よ。もう一度お願いします。」

 

「紗夜・・・」

 

やはり無理をしているようにしか見えない。

 

しかし紗夜がそういうのでそのまま練習を続行した。

 

 

 

 

 

 

練習が終わった帰り道、リサはバイトで燐子とあこは新しい衣装のアクセサリーを買いに言ったので僕と友希那と紗夜で帰っている。

 

しかし紗夜は終始考え事をしているようだった。

 

「紗夜、今日は本当にどうしたの?あなたらしくなかったわよ。」

 

「うん、聞いてていつもの紗夜の演奏じゃなかった。本当にどうしたんだ?」

 

「私らしい・・・」

 

紗夜は少し考えると呟くようにこう言った。

 

「・・・私らしい、って何なんでしょう?」

 

「えっ?」

 

「いえ、何でもありません。今日は申し訳ありませんでした。今日のぶんは必ず取り戻しますから。」

 

紗夜はそう言って自分の自宅の方へ向きを変えた。

 

「紗夜待って!さっきのは・・・」

 

友希那が追いかけようとしたので咄嗟に腕を掴んで止める。

 

「奏多!なぜ止めるの?」

 

「友希那、これは多分僕達がどうこうして答えを見るけるものじゃない。これは紗夜自身の問題だと思う。」

 

さっきの『私らしいって何なんでしょう』と言った言葉。

 

その発言でようやく確信がつけた。

 

紗夜の音に違和感があったのは彼女が自分の音に迷いを持っていたから。

 

なぜこうなった原因はわからない。

 

けどこれは僕の時みたいにみんなが答えを見つけるものではないとわかった。

 

「今の紗夜は自分の音に迷いを持っている。このことは僕達が見つけても彼女のためにはならない。だから今は見守って、進んではいけない道に進もうとしたらこうやって止めてあげればいい。今はただ、それだけだよ。」

 

「奏多・・・」

 

友希那が納得したように力を抜く。

 

僕も掴んだ腕を離した。

 

「友希那、多分今の紗夜の気持ちを一番よくわかるのは友希那だと思う。だから友希那が紗夜を導いてあげて。」

 

「私が・・・紗夜を・・・」

 

「うん、だから一度自分がどうしたら立ち直れたのか考えてみて。友希那ならいいアドバイスをあげれるとおもうよ。」

 

「・・・わかったわ。とりあえず今は見守りましょう。」

 

友希那の瞳は決心がついたような瞳をしていた。

 

自分がこうやって説教臭いことをするのは珍しいが、今回の件は僕も経験があるので見守るのが先決だと思った。

 

(だから紗夜、自分で答えを見つけて・・・)

 

今の僕はただこう思うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

紗夜side

 

『私らしいって何なんでしょう・・・』

 

私はこの言葉を頭の中で繰り返していた。

 

湊さんと九条さんの前で出てしまったこの言葉。

 

他人に聞いてもわかるはずかないのに何故か二人の前で出てしまった。

 

湊さんも九条さんも困惑した顔をしていた。

 

当たり前だと自分の心で自嘲する。

 

自分がわからないものは他人にもわかるはずが無い。

 

いつも練習後に必ずしていたギターの練習もここ最近やっていない。

 

それは自分の音を聞きたくなかったこと以上に日菜に自分のつまらない音を聞いて欲しくなかった。

 

するとドアがガチャりと開く。

 

開けたのは日菜だった。

 

「ねえねえ、おねーちゃん!ギターの練習が終わったら一緒にテレビ見ようよ!今から動物番組の特番があるんだって!」

 

日菜が私の気持ちなんてお構い無しに話しかける。

 

他人の空気を読めないのが日菜の悪いところだ。

 

「・・・ギターの練習なんてしないわ。」

 

「えっ?でも・・・いつも家に帰ってから練習してたよね。」

 

日菜が私の行動を覚えていた。

 

しかし生憎その事は今の私の癪に障る事だった。

 

「・・・弾かない。」

 

「お、おねーちゃ・・・」

 

「ギターは弾かない!!弾きたくないの!!」

 

口に出してから初めて、今自分が何をしたのか気がついた。

 

日菜は驚いたような顔をしていた。

 

「・・・っ。申し訳ないけど今はあなたとも会話したくない。・・・一人にして。」

 

「おねーちゃん・・・どうして・・・?」

 

「ごめんなさい・・・お願いだから今は一人にさせて・・・」

 

「・・・わかった。」

 

日菜が寂しそうに部屋から出ていく。

 

日菜に強くあたってしまった。

 

これでは昔に逆戻りではないか。

 

「・・・どうすればいいの。」

 

ふと視線の中に自分のギターが映る。

 

私はギターから目をそらした。

 

今はギターというものを見たくない、聞きたくない。

 

今ギターを見てしまうと自分のつまらない音が、そして『日菜の音』を思い出してしまうからだ。

 

『日菜とまっすぐに話せますように』

 

そう願ったのは自分だ。

 

しかし今の自分はそれとかけ離れてきている。

 

『日菜と比べて』私は前向きじゃないし可愛らしさもない。

 

私にないものは日菜がすべて持っている。

 

しかし自分より劣っているはずの私のことを日菜は慕ってくる。

 

 

 

 

 

 

今の私はそれが不思議で不快だった。

 

 

 

 

 

 




前の章から挫折の話ばっかりだから重め・・・
次の投稿までお楽しみに!


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44話 シタウ イモウト シタワレル アネ

四日連続投稿と言いながら土日はいつもと変わらないことに気がついた・・・
前置きなんてほっといてとっとと本編入ります。(ただ書くネタが無いだけ)

それでは本編どうぞ!


この前のことから日が開けた。

 

紗夜はいつも通り練習には来ていた。

 

しかし昨日以上に浮かない顔をしていた。

 

「氷川さんの不調・・・まだ治らないですね・・・」

 

「そうだね・・・紗夜さんのギターなんかいつもより迫力がない・・・」

 

このまま不調が続けば次のライブにも影響が出るかもしれない。

 

そんな紗夜に友希那が話しかけた。

 

「紗夜、そんな状態で練習に参加されても困るわ。」

 

友希那がいつもの口調で話す。

 

実は昨日僕と友希那が別れる時に僕は友希那に「心配そうに話すんじゃなくていつも通り話してくれ」と頼んである。

 

紗夜の性格なら心配されると余計頑固になってしまうからだ。

 

「調子が悪いなら・・・」

 

「すみません。・・・すみません・・・」

 

「あ・・・ちょっと休憩入れよっか!良いよねソータ!」

 

「う、うん。それじゃあ30分ぐらいとろうか。」

 

「ってことでみんな今から30分休憩~!休むのも大事っ!」

 

リサにそう言われて今から30分休憩をとることになった。

 

「・・・すみません、少し出ます・・・」

 

そう言って紗夜はスタジオの外へ出ていってしまった。

 

「ちょっと紗夜・・・」

 

追いかけようとしたリサの腕を掴んで止める。

 

「ソータ・・・」

 

僕は無言で首を振る。

 

リサの性格上おせっかいをかけたくなるのはわかるが今は我慢してもらうしかない。

 

どうやらその気持ちは伝わったようでリサは我慢してくれたようだ。

 

今は紗夜自身が問題を解決するか、僕らに頼るのを待つことしか出来ない。

 

しかし心のどこかには紗夜を今すぐにでも助けに行きたいと思う自分もいるのも事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜side

 

スタジオに居づらくなってたまらずスタジオを出る。

 

弾けば弾くほど自分の演奏がつまらないものに聴こえる。

 

こんな状態で演奏を続けるなんて出来ない。

 

「あ、あの・・・っ!紗夜さん!」

 

後ろから宇田川さんが声をかけてきた。

 

「・・・なんでしょうか。」

 

「その・・・よかったらカフェに行きませんか?甘いもの食べたら、その、きっと・・・紗夜さんの右手に宿る聖なる力が・・・えっと・・・」

 

相変わらず宇田川さんのいう事はよくわからない。

 

しかし私をカフェに誘おうとしてくれているのはわかった。

 

「宇田川さん・・・ごめんなさい。あまり食欲がないの。」

 

宇田川さんの誘いを断ってしまう。

 

確かに甘いものを食べたら気分がスッキリするが食欲がないのと今は食べる気力がない。

 

「・・・そう、ですか・・・」

 

宇田川さんが寂しそうにする。

 

私はふと疑問が湧いた。

 

確か宇田川さんにはお姉さんがいたはずだ。

 

「・・・宇田川さん。」

 

「は、はい!」

 

「あなたは・・・まだお姉さんに憧れているの?」

 

それは純粋な疑問だった。

 

妹からして姉はどういうものに見えているのか、それが気になった。

 

「もっちろんです!おねーちゃんは世界一カッコイイですから!あこの永遠の憧れですっ!」

 

「永遠・・・」

 

やはり思った通りの反応だ。

 

宇田川さんはずっとお姉さんを目標にドラムを続けているがRoseliaに入り、技術が上達してからもずっと目標としているようだ。

 

「あ・・・す、すみません・・・あこ、また変なこと・・・言っちゃいましたか・・・?」

 

宇田川さんがさっきの反応をまた悪い癖が出たと思い反省する。

 

聞いたのはこちらだ、反省しなくてもいいのに。

 

「・・・ていうか、急にどうしたんですか?そんなこと聞いて・・・」

 

「いえ、何でもないわ。・・・そろそろ時間ね、練習に戻りましょう。」

 

宇田川さんの質問を濁し、スタジオに戻る。

 

つまらない音でも今は弾かなければならない。

 

ただそれだけが重荷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あこside

 

「たっだいま・・・」

 

「あこ、おかえり~」

 

練習が終わり、家に帰るとおねーちゃんが先に帰っていた。

 

「うん、ただいまおねーちゃん。」

 

「・・・どうしたあこ?なんかあったか?」

 

おねーちゃんに一発で見抜かれる。

 

家に帰るまで紗夜さんがなぜあんな質問をしていたのかずっと考えていた。

 

「・・・うん、あのね・・・」

 

あこは今日の練習であったことをすべておねーちゃんに話した。

 

おねーちゃんはそれをずっと静かに聞いていてくれた。

 

「・・・って感じで、紗夜さん、ここのところずーっと元気なくて。演奏もいつもの紗夜さんらしくないような気がするんだ・・・」

 

「へぇ、紗夜さんでもそんなことがあるのか。」

 

「うん。それで紗夜さんにね、『今でもおねーちゃんに憧れているのか』って質問されたの。あこは、おねーちゃんはあこの永遠の憧れですって答えたんだけど・・・どうして急にあんな質問してきたのかな?紗夜さんどうしちゃったんだろう?」

 

「うーん・・・アタシは紗夜さんとあまり話したことないからわからないけど・・・早く、紗夜さんの調子が戻ればいいな。」

 

「うん・・・あこも、そう思う。」

 

おねーちゃんが心配していると言ったのであこもそれに賛同する。

 

するとおねーちゃんは恥ずかしそうに笑った。

 

「・・・にしても、永遠の憧れかあ~。へへ、アタシはあこにそんな風に思ってもらえて嬉しいよ。あこのためにも・・・アタシもずっと、あこのカッコイイでいられるように頑張らなきゃな。」

 

おねーちゃんがそう言ってくれるたのはめちゃくちゃ嬉しかった。

 

「おねーちゃん・・・っ!やっぱり、おねーちゃんはカッコイイなぁ!」

 

「あはは!だろ~!アタシ、カッコイイだろ~?」

 

「うんっ!カッコイイー!」

 

おねーちゃんがそう聞いてきたので正直に答える。

 

やはり誰が何を言おうとあこの永遠の憧れはおねーちゃん以外ありえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜side

 

時は流れて日が変わり次の日の朝。

 

私は一人朝早くからCIRCLEへ向かっていた。

 

今日の練習で失敗したらもう許されない。

 

そのためにも事前に個人練習に来たのだ。

 

しかし向かう途中に足が止まってしまう。

 

今日もあの音だったらどうしようと怯えて足がすくんでしまう。

 

「・・・あれ・・・紗夜さん?」

 

呼ばれたので後ろを振り向く。

 

声の主は宇田川巴・・・宇田川さんのお姉さんだった。

 

「宇田川さん・・・?」

 

「・・・あ、あの、少し付き合ってもらってよろしいですか?」

 

宇田川さんに突然誘われる。

 

「・・・はい。わかりました。」

 

私はその誘いに乗ることにした。

 

なぜなら、同じ姉として妹とどう付き合っているのか気になったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇田川さんはこのあとCIRCLEでAfterglowの練習があるという訳でCIRCLEの前のカフェまで来て、向い合せで席に座った。

 

「・・・あ、あの!うちのあこがいつもお世話になってます。」

 

「え、ええ・・・」

 

宇田川さん・・・巴さんは少し戸惑っているようだった。

 

恐らく昨日、宇田川さんから話を聞いたのだろう。

 

「宇田川さん・・・いえ、巴さん。あこさんから私の話を聞いたの?」

 

「えっ・・・」

 

「巴さんの方から突然声をかけてくるなんて、他に理由が思い浮かばないですから。・・・私の演奏が上手くいってないと、そんな話を聞いたのでしょう?」

 

巴さんが少し慌てたような顔をする。

 

どうやら図星のようだ。

 

「あ、あっはは・・・ま、まあそんなところです・・・あこ、心配してましたよ。アタシも、あこにその話を聞いたから、声をかけずにいられなくって・・・」

 

「巴さん、気を使ってくれてありがとう。・・・そういうところも、あこさんの『憧れ』のもとなのかしら。」

 

「え・・・」

 

「あなたは、あこさんの『永遠の憧れ』なのでしょう?」

 

「あはは・・・まあ、そう見たいですね。」

 

私は巴さんに一番気になることを聞いた。

 

「あなたは・・・苦痛に感じたことはないの?ずっと憧れと言われ、追い続けられることが。」

 

巴さんは少し考えると思ったことを話してくれた。

 

「アタシは・・・あこがアタシを慕ってくれているのは純粋に嬉しいです。けど、時々ドラムもホントはあこの方がうまいんじゃないかって思うこともあります。でも・・・あこがアタシのこと慕ってくれている。それなら、アタシはあこの気持ちを大切にしたいし、応えたい。」

 

巴さんは一息置くと自分が思っている一番大切なことを伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜなら、あこは・・・アタシのたった一人の大切な妹ですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に私は衝撃を受けた。

 

それと同時に私はそんな風に思うことが出来ないと思った。

 

「・・・なんて、ちょっとカッコつけちゃいましたね?すみません、紗夜さんの方がアタシより年上なのに・・・」

 

「巴さんは大人ね。私は妹からの想いをそんな風に受け止めきれない。」

 

「アタシだってプレッシャーに感じることありますよ?あこのヤツ、アタシのこと全知全能の神!みたいに言うことありますからね!」

 

確かに宇田川さんはお姉さんのことをそんな風に言うことがある。

 

巴さんは息を整えると話を続けた。

 

「アタシは紗夜さんの抱えているものを知らない。それに、アタシが深く立ち入れる筋合いもないです。・・・でも、紗夜さんの調子が戻りますようにって、願ってます。」

 

「巴さん・・・」

 

「すみません、なんだか急に。それじゃあ、アタシは練習があるのでこれで失礼します。」

 

そう言って巴さんはCIRCLEの中へ入っていった。

 

「・・・たった一人の、大切な妹・・・」

 

その言葉を聞いて私は巴さんが強い人だと思った。

 

そして巴さんは私が思う姉というものの理想形なのではないかと思った。




妹ねぇ・・・
兄からしたら妹って、ろくなもんじゃないよ・・・
お兄ちゃんな作者の愚痴は置いといて明日で四日連続投稿のラスト!その次から修学旅行!

ということで次回もお楽しみに!


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45話 ブツカラナケレバ ツタワラナイコト

今思えば「秋雨時に傘を」の衣装である通称(と言ってもそう読んでるだけ)「雨衣装」が初めてすべて揃ったイベスト衣装な隠神カムイさんです。
四日連続投稿の最終日!
明日からは修学旅行のため次の更新は土曜日となります。
修学旅行のせいでBRAVE JEWELを発売日に買いに行けない!悔しい!けど帰り道死んでも買いに行く!な覚悟です。

ということで死んだらフリージアが流れそうな作者が書く本編、始まります!


紗夜side

 

スタジオに入るとまだ誰もいなかった。

 

集合の一時間前である。

 

私の次に早く来る九条さんでも来るのは集合時間の20分前なので当たり前だろう。

 

ギターケースからギターを取り出そうとする。

 

しかしやはり腕が止まる。

 

やはり頭ではわかっていても体が動かない。

 

どうしようか立ちすくんでいた時だった。

 

ガチャりと扉が開く音がする。

 

入ってきたのは湊さんと九条さんだった。

 

「紗夜・・・!随分早く来ていたのね。」

 

「・・・ええ。しかし珍しいですね。九条さんが早く来るのはわかりますが湊さんまでも早く来るなんて・・・」

 

「次のライブの打ち合わせや新曲とかの相談をするために早く来てもらってたんだ。そういう紗夜こそどうしてこんな時間に?」

 

私はその質問に対してすぐには答えなかった。

 

湊さんと九条さん・・・一度挫折を経験している2人にならこの不調のことを話したら何か解決策が得られるのではなかいかと考えた。

 

私は腹を括って自分の思いを2人に話すことにした。

 

「・・・先日からの不調の分を取り戻そうと思って。だけど・・・見つからないんです。」

 

「紗夜・・・?」

 

「見つからないんです。私の音が・・・」

 

私は2人になぜ自分がこうなったのか話した。

 

2人は私の話を静かに、そして真剣に聞いてくれた。

 

 

 

 

「・・・そう・・・不調の理由は、そういう事だったのね。」

 

「日菜に負けないことでしか、自分を信じられなかったんです。でも、そのせいで私の音は、何にもなれない、つまらない音になってしまった。私は・・・私は、日菜のことも、音楽も、自分を信じようとする道具にしか使っていないんです。・・・最低、ですよね。」

 

自分の言葉を自嘲的に流す。

 

しかし2人はそんな私を否定しなかった。

 

「・・・紗夜、それは私だって同じことよ。初めはあなた達を仲間だとは言っても頼ったり信じようとしなかった。私の夢のためにあなた達を巻き込んでいいものか・・・そう考えたしそんな自分に自己嫌悪したこともあった。今でもたまにそう感じる時がある。こんな自分が歌を歌っていいのかと思って悩んだこともあったわ。」

 

湊さんの苦悩・・・それは今の私に似ているような気がした。

 

「けれど・・・そんな風に悩み、真剣に考える気持ちこそ、音楽と純粋に向き合おうとしているからだと教えてくれた人がいた。紗夜、あなたの演奏は正確で素晴らしい。それは間違いなく誇りを持っていいことよ。」

 

「・・・けど、そんな音・・・ただ正確なだけで・・・」

 

すると今まで黙っていた九条さんが口を開いた。

 

「紗夜、音楽は自分を信じる道具だと言ったけどそんな風に思っているのは君だけじゃない。僕も、初めは音楽を、Roseliaを自分の『色』を見つけるために始めたんだ。」

 

「九条・・・さん・・・」

 

「けど、無意識のうちに自分が音楽に対して真剣になってきていることがわかった。初めは誰だって気が付かない。それに君達のことを心から信頼していなかった。そのせいで1度は今の君より酷くなってしまった。けど、みんなに言われてわかったんだ。『ぶつからなきゃ伝わらないことだってある』って。だから今は信じることが出来てるし今もこうやって信じられてて相談を受けている。」

 

「ぶつからなきゃ・・・伝わらない・・・」

 

九条さんが言ったことを繰り返す。

 

その言葉は今の私にとって重すぎた。

 

「紗夜、私もまだ未熟だし、未だに音楽を好きだと言いきることが出来ないでいるからこそ、今の私の言葉を受け止めきれないことも、あなたの苦しみもわかるわ。」

 

「うん、だからこそその苦しみと向き合わないといけない、向き合わないと変わることができないんだ。」

 

「苦しみと・・・向き合う・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、だからこの苦しみと逃げずに向き合うことこそが何よりも大切で、とても尊いことなのだと、わかって欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げずに・・・向き合う・・・」

 

「・・・今日は練習に参加しなくていい。見放しているわけじゃない。あなたが自分で答えを出して、もう一度ここに来てくれることを・・・信じているから。」

 

「紗夜・・・日菜さんから慕われすぎるのも、大変だね。」

 

「湊さん・・・九条さん・・・」

 

 

 

 

『でも・・・あこはアタシのことを慕ってくれている。それなら、アタシはあこの気持ちを大切にしたいし、応えたい。』

 

 

 

 

 

私は巴さんの言葉を思い出す。

 

私が逃げずに向き合う相手。

 

その相手はたった一人しかいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「・・・これでよかったのかしら。」

 

「・・・これでよかったんだよ。」

 

紗夜が出ていったスタジオで僕と友希那が残る。

 

本当は紗夜が来る前に2人で相談してから話そうかと思っていたがまさか紗夜が先に来ていたとは思わなかった。

 

しかしお互いに伝えたいことは伝えることが出来たので結果オーライというものだ。

 

「今日の練習はギターなしでやらないとね。」

 

「今は紗夜が答えを見つけてくれることを祈るわ。」

 

時計を見るとそろそろリサや燐子達が来る頃合いだ。

 

「さて、僕達はそろそろ練習の準備に取り掛かりますか。」

 

「・・・そうね。」

 

いつも通り楽器などの準備を始める。

 

すると友希那が僕が着ているパーカーのフードを掴む。

 

「ぐわっ!ゆ、友希那ぁ!?」

 

「あ・・・その、ごめんなさい。えっと・・・」

 

友希那が言葉を詰まらせる。

 

一体どうしたのだろうか。

 

「・・・この前は・・・引き止めてくれてありがとう・・・」

 

「なんだそんな事か・・・気にしないでいいよ。あれは止めとかないと友希那、紗夜に聞きに行ってただろ?あれは止めるべきだと勝手に判断しただけだよ。」

 

「でも・・・」

 

「むしろ僕の方が友希那に感謝することは多いんだ。こんなぐらいで感謝されたら僕はどれだけ感謝しなくちゃいけないんだよ。」

 

友希那に笑って返す。

 

しかし友希那はそれを納得しなかったようだ。

 

「でも、今回は奏多のお陰よ。本当にありがとう。」

 

恐らくこれ以上言っても変わらないだろう。

 

これは大人しく感謝を受け取った方が良さそうだ。

 

「・・・うん、どういたしまして。」

 

「それでいいんだから・・・」

 

「さて、早く準備を済ませちゃいますか!」

 

「そうね。」

 

友希那も準備に手を貸してくれる。

 

これならみんなが来るまでに終わりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、何故友希那は顔を赤くしていたのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜が出ていってから30分後、紗夜を除くRoseliaのメンバーが全員揃った。

 

「さーて!今日も練習頑張るぞ~!」

 

あこが気合を入れる。

 

「あれ・・・?ちょっと待って、今日、紗夜は?」

 

しかしリサは紗夜がいないことに気がついたようだ。

 

「紗夜は・・・今日はいないわ。」

 

「何か、あったんでしょうか・・・?」

 

「・・・・・・」

 

友希那が口をつむぐ。

 

今、メンバーに紗夜の状態を言わない方がいい。

 

賢明な判断だ。

 

「最近の紗夜、チョーシ悪そうだったもんね。まぁ、少し休んでもいいんじゃない?」

 

「そう・・・ですね・・・」

 

「・・・紗夜は紗夜なりに自分の答えを探しているんだろう。だから僕達は答えを見つけた紗夜にいつでも合わせることができるようにしよう。」

 

「ええ、だから・・・私達は練習を始めましょう。私達だけでも、できることはあるはずよ。」

 

友希那の一声で全員の気が引き締まる。

 

今の紗夜が何処で何をしているかはわからない。

 

しかし、紗夜が自分の答えを見つけるために動いているのはわかる。

 

だから僕達は帰ってきた紗夜を暖かく迎えて、そのギターの音に合わせて演奏ができるようにしなければならない。

 

(だから紗夜、君は君だけしかできないことを成し遂げてくれ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達が練習している中、空には暗雲が立ち込め始めていた。




はい、あれはユウキのセリフです・・・
なおSAO2のユウキ編のラストだけで5回ぐらい泣いてます。あのシーン弱いんだよ・・・

そんな訳で次回が一番大事なシーン!でも更新かなり先!
次の更新は土曜日です。それでは沖縄宮古島行ってきます!


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46話 アキシグレ ニ カサヲ

沖縄宮古島より帰ってきた隠神カムイです。
楽しかった!CD(限定版)買えた!ついでにクレーンゲームの蘭ゲットできた!
手なわけで3分の1しか沖縄の楽しさ表現出来なくなるぐらい買えたことが嬉しいです。
あと蘭の造形ヤバすぎィ・・・

ということで帰ってきてから久々の投稿でこの章の山場であります!
さて、久々の本編どうぞ!


湊さんと九条さんに言われて外へ出た私は商店街の中を歩いていた。

 

『この苦しみと逃げずに向き合うことこそが何よりも大切で、とても尊いことなのだと、わかって欲しい』

 

湊さんに言われた言葉を思い出す。

 

自分が向き合う相手はわかっている。

 

わかっているけど、でも・・・

 

「今の私には・・・そんな勇気・・・」

 

そう思っていると鼻先に冷たさを感じる。

 

何かと思い上を見ると曇天の空がさらに黒くなっている。

 

「あ・・・雨・・・?」

 

するとポツポツと雨が降ってきた。

 

さらに数分としないうちに勢いが増していく。

 

とりあえず適当に雨をしのげるところを探す。

 

この雨は今の私の心を表しているように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

「うん、それじゃあ一度熱色スターマインから合わせてみようか。」

 

「「「「了解!」」」」

 

紗夜不在の中いつも通り初めに曲を合わせて一度フルで流そうとした時だった。

 

バタンと扉が開く。

 

そこに居たのは翡翠色の髪の色をした・・・日菜さんだった。

 

「お、おねーちゃん、いる!?」

 

「ヒナ!?どうしたの!?」

 

リサが驚きの声をあげる。

 

いつもはアイドル業で忙しそうな日菜さんが何故ここにいるのかわからない。

 

しかしその手には2本の傘があった。

 

そしてその片方はかなり濡れていた。

 

「外、すっごい雨降ってるの!だからおねーちゃんに傘もってきたんだけど・・・おねーちゃん、いないの?」

 

そう言われたのでスタジオの窓の外を見ると確かに雨が降っている。

 

しかもその勢いはかなり凄かった。

 

「紗夜は・・・今ここにはいません。でもまだ近くにいると思います。」

 

「ソータくん・・・ならおねーちゃんにこれ・・・」

 

すると今まで黙っていた友希那が口を開いた。

 

「いえ、日菜・・・あなたが紗夜に傘を渡してあげて。」

 

「・・・ん!わかった!リサちー、友希那ちゃん、ソータくん、ありがとー!」

 

日菜さんがそう言ってスタジオから出ようとする。

 

「日菜さん!」

 

「?どうしたの、ソータくん?」

 

僕は日菜さんを引き止めた。

 

何故引き止めたかはわからない。

 

けど一言だけ言っておきたいことがあった。

 

「その・・・紗夜のこと、よろしくお願いします。」

 

「私からも、紗夜のこと、頼んだわよ。」

 

「・・・?う、うん・・・じゃ、あたしその辺探してくるから!」

 

今度こそ日菜さんがスタジオから出ていった。

 

「・・・友希那さん、奏多くん・・・氷川さんがいない理由・・・2人は知っているんですか?」

 

「はい、さっきの口調からして知ってるような言い方でした・・・もしかして、あこ達が来る前に何かあったんですか?」

 

これは言わなければならない空気だとわかり、みんなが揃うまでにあったことと紗夜がなぜあんなことになったのかを話した。

 

するとリサが静かに、しかしハッキリと話し出した。

 

「・・・紗夜があんな状態になった理由はわかった。けど何でそんな紗夜の所に日菜を行かせたの?もしかしたら紗夜は日菜から傘を受け取らない可能性もあったかもしれないんだよ?」

 

「・・・今の紗夜に私たちの声は届きにくい。だから日菜に頼むしかなかった。私は日菜の言葉が1番紗夜に届くと思ったからそう頼んだの。多分この考えは燐子が一番わかると思う。」

 

「私・・・ですか?」

 

「奏多が私たちから離れた時、燐子に誘うように頼んだわね。あの時奏多に対して1番声が届くと思ったのは燐子だと判断したから頼んだ。だからこうして奏多はここにいてくれている。」

 

「だからあの時・・・友希那さんは私を・・・」

 

「私は誰かが挫折したりした時に一番声が届くのは一番親しみのある人だと思うわ。インディーズの時もそう、奏多のときもそう、いつだって身近で親しい人が助けてくれた。だから今回も紗夜の一番身近な人、日菜に頼んだのよ。」

 

「紗夜の苦しみや辛さは正直リサに燐子、あこより僕と友希那の方がわかると思う。だから僕も紗夜のことを日菜に託そうと思った。話すタイミングが無くて話せなくてごめん。でも今回のことは日菜さんに任せてみよう。」

 

「・・・うん、わかった。ごめんね、アタシも考え無しで聞いちゃって・・・」

 

「大丈夫よリサ。紗夜は必ず答えを見つけて帰ってくる。だから私達は練習を再開しましょう。」

 

そう言ってみんなが元の位置につく。

 

そうして練習が再開された。

 

みんなの演奏を聞く中、僕は窓の外を見る。

 

秋の時のこの雨・・・俳句とかでは「秋時雨」というのだろうか。

 

この様子ではしばらくやみそうにない。

 

紗夜がどこかで濡れていないか心配だがそこは日菜さんに頼むしかない。

 

僕は紗夜が答えを見つけて帰ってくることを願うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜side

 

私はあるお店の前で雨宿りをしていた。

 

外の雨は勢いを増す一方だ。

 

この様子ではしばらくやみそうにない。

 

「・・・そう言えばあの日もそうだったわね。」

 

私はあの日・・・七夕の日を思い出す。

 

その日も一時的にこんな感じに雨が降っていた。

 

やんだあとに買い物に出たら1人で七夕祭りを見に行っていた日菜と偶然であった。

 

しかも出会った場所もこの商店街だったはず。

 

『日菜とまっすぐ話せますように』

 

そう願ったのは自分であり、その願いを叶えるのは自分自身だとその時からずっとわかっていた。

 

わかっていたはずなのに・・・

 

「私・・・あの日から、何も変わっていないんだわ・・・」

 

そう思いざるを得なかった。

 

実際今もこうやって逃げてばかりいて九条さんや湊さん達を困らせてしまっているのだから・・・

 

「っ・・・」

 

悔しさ、辛さ、そして悲しさがこみ上げてくる。

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おねーちゃん・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声、そして私を「おねーちゃん」と呼ぶ存在。

 

そんな人はこの世にただ1人しかいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・日菜?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を上げる。

 

やはり声の主は日菜だった。

 

「よかったあー、ここにいたんだ!雨がすっごいから傘渡そうと思ってスタジオに行ったんだけど、おねーちゃん、今日スタジオに来てないって言われてね、友希那ちゃんとソータくんにまだそのへんにいるはずだから傘、渡してきてって言われてさ。はい、これ。」

 

日菜が傘を手渡してくる。

 

私はその傘を・・・素直に受け取れなかった。

 

「・・・どうして・・・どうして・・・」

 

どうして、私が何度突き放しても、何度拒絶しても日菜が私のそばにいようとするのかわからなかった。

 

しかし、日菜がこんなに私のそばを離れずにいてくれたというのに、私はすべて日菜のせいにしていた。

 

私は・・・私はそんな自分が惨めで、悔しくなってきた。

 

「・・・うっ・・・ううっ・・・」

 

思わず嗚咽が漏れる。

 

そして・・・雨とともに涙が流れる。

 

「お、おねーちゃん!?大丈夫・・・!?ご、ごめん、あたし・・・また、おねーちゃんのこと・・・」

 

日菜が慌ててまた自分のせいだと思いそうになる。

 

しかし私は日菜の言葉を最後まで言わせなかった。

 

「日菜・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

私は・・・日菜に謝ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着きを取り戻した私は日菜が渡してくれた傘をさして日菜と一緒に自宅へ帰った。

 

家には誰もおらず、私と日菜は向かい合うように座った。

 

「・・・。」

 

「・・・さっきは、突然ごめんなさい。」

 

「う、ううん!おねーちゃん、もう大丈夫?」

 

日菜がまっすぐこちらを見てくる。

 

いつもの私なら目をそらしている。

 

しかし今は・・・

 

「・・・日菜、あなたと、あなたの目を見て、まっすぐに話をする時が来たわ。」

 

「えっ?それって、どういう・・・」

 

「私は・・・いつもあなたにコンプレックスを感じてきた。・・・日菜と比べられたくない。だから私は、あなたがやっていないギターをはじめた。けれど、あなたは私を追うようにギターをはじめて・・・あっという間に私を追い越していって・・・」

 

「おねーちゃん、そんなことないよ・・・っ!」

 

「いいのよ、日菜。あなただって気づいているはずよ。私より、あなたのほうが・・・」

 

そこまで言って言葉が詰まる。

 

・・・そして涙が出そうになる。

 

「おねーちゃん・・・っ!もう、それ以上は・・・!」

 

日菜が止めようとする。

 

しかしここで止まってはいけない。

 

ここで止まればその先にいる者達に追いつけないから。

 

「いいえ、ダメよ。言わないと・・・言わないと私は・・・変われないから・・・!」

 

「おねーちゃん・・・」

 

「・・・あなたの演奏する音が怖かった。自分への劣等感、それに・・・あなたへの憎しみが増していってしまうから・・・前に、一緒に七夕祭りへ行ったでしょう?」

 

「うん、覚えてるよ。」

 

「あの日の短冊に私はこう書いたの。『日菜とまっすぐ話せますように』・・・と。」

 

「・・・!」

 

「けど、その願いを、星が叶えてくれるはずがない。叶えるのは、私自身なのだと・・・そう自覚もしていた。だから、以前よりもあなたと一緒にいる機会を作ろうとした。そうすれば短冊の願いも叶えられると思ったから。・・・でも、あなたの演奏を聴くことだけは逃げ続けていた。沖縄の時も日菜の音より自分の音や他の楽器の音にだけ集中していた。そんな時、久しぶりにあなたの演奏をしっかり聴いて・・・あなたの音は技術にとらわれない魅力的な音をしていると、そう感じたの。『音楽を心から楽しんでいる』・・・私には無い、そんな音がした。あなたに負けないために、何にも左右されない評価を得たくて技術を磨いてきたけど私の音なんて・・・その程度の『つまらない音』なのだとはっきりと感じてしまった。あなたに負けたくない・・・ただそれだけのために磨いて、弾いてきた音なんて、つまらない音で当然よね。もう・・・もう全部嫌なのよ。『つまらない音』を奏で続けている自分も、短冊の願いからどんどん遠ざかっている自分も、全部・・・全部!」

 

自分の今思っていることをすべて話す。

 

すると日菜は下を向いて身体を震わせていた。

 

「・・・日菜?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おねーちゃんの・・・おねーちゃんの嘘つき!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ・・・?」

 

日菜が滅多に見せない大きな声で私を叱りつけるようにそう言った。

 

日菜はそのまま話を続けた。

 

「おねーちゃん、約束してくれたよね?あたし達はお互いがきっかけだから勝手にギターをやめたりしないでって!あたし・・・それが、すっごく嬉しかったのに・・・!」

 

確かに日菜がギターをはじめたとき私は突き放すためにそんな約束をした。

 

日菜は泣きそうな自分を抑えてひとはく開けるとそのまま話を続ける。

 

「あたし、おねーちゃんの音、大好きだよ!前よりも今の方がもっとるんって・・・えっと・・・楽しそうな音、してるんだよ?おねーちゃん、自分で気づいてる?あたしはおねーちゃんの音がつまらない音だなんて思ったことないよ!おねーちゃんの音を聞いて、あたしはギターをはじめたんだよ!」

 

「日菜・・・!」

 

日菜が擬音ではなくわかりやすいように言葉を変えて話す。

 

私は日菜の言葉に驚きを隠せなかった。

 

「・・・あたし、知らないうちにおねーちゃんのことたくさん傷つけていたんだよね。本当にごめんね、おねーちゃん。でも、でもね・・・あたし、おねーちゃんにギターやめて欲しくないよ。どんな理由だっていい!苦しいこと、辛いことがあったらあたしのせいにしたっていいよ。おねーちゃんが・・・おねーちゃんがギターを続けてくれるんなら!・・・あたし、おねーちゃんと昔みたいに仲良くなりたいって思ってた。けど、そのせいでおねーちゃんが苦しい気持ちになるんだったら・・・いいよ。あたしの事、嫌いでも。それに・・・そんな風にギターをやめようとして・・・約束を破るおねーちゃんなんて、あたしだって・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしだって・・・大っ嫌いだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!」

 

日菜がたまらず泣き出す。

 

私は・・・私の心には日菜の言葉が突き刺さった。

 

・・・しかしその言葉が私を『いつもの私』に戻してくれた。

 

「・・・あなたは・・・いつもすぐに私を追い越していくのに、私を待って立ち止まって・・・時には傘をさして、私を苦しみから守ろうともしてくれた。・・・私は、いつしかあなたの優しさに、甘えていたんだわ。でも・・・そうよね。あなたとの約束・・・そして、短冊に書いた願い事・・・どちらも違えては行けないわよね。」

 

「・・・!」

 

「私は・・・常にあなたが先に行くような現状を受け入れられるようなできた人間ではない。でも・・・いつか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたと並んで一緒に歩いていくことができるように・・・私はこの音・・・『つまらない音』でギターを弾き続けようと思う。そしていつか・・・自分の音に誇りを持てるようになりたい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが今の気持ち、そして・・・精一杯の願いだった。

 

「おねーちゃん・・・!」

 

日菜が泣きながらも笑顔を見せる。

 

やはり日菜にはまだ追いつける気がしない。

 

「・・・また、あなたに先を行かれてしまったわね。・・・ありがとう、日菜。必ずあなたのもとへ向かうから、その時までもう少し・・・待っていて。」

 

「うんっ・・・うんっ・・・!あたしは・・・おねーちゃんが止まらない限りその先で・・・おねーちゃんを待ってるから・・・必ず・・・必ず来て!約束だよ、おねーちゃんっ!」

 

日菜に追いつくにはまだまだ時間がかかる。

 

しかし私はこの音を・・・このまだ『つまらない音』を『誇りある音』と思えるようににすることが先だと思った。

 

私は・・・ようやく前に進めるようになったと思った。




いつもより長い・・・そしてストーリー見直したら泣きそうになった・・・
さすがブシロードさん・・・神作を作る・・・
ということで次の投稿でこの章はラストになります。
次の更新は明日です。
それまでお楽しみに!


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47話 ~Determination Symphony~セカイデ ヒトツノ タイセツナ ヒト

こう見えて実は進路とかめちゃめちゃ考えてる隠神カムイです。
なぜ唐突にこんな話だしたかと言うと今日は専門学校のオープンスクールに行ったからです。
こう見えてしっかり考えております。

さて、今回で『~Determination Symphony~秋時雨に翡翠の姉妹』のラストとなります。
Roseliaのストーリーの中でも屈指の人気を誇るこの作品もラストとなります・・・見てて何回泣きそうになったか・・・
それでは8章のラスト、お楽しみください!


紗夜はその日、結構練習には来なかった。

 

しかし練習が終わり、外に出るとさっきまでの雨は嘘のようにやんで太陽の光が差し込んで空には綺麗な虹が出来ていた。

 

「うわぁ・・・綺麗!」

 

「さっきまでの雨が嘘のようだよ!まるで・・・悪天を払い舞い降りし・・・聖なる・・・その・・・ドバーんとしたなんかみたいな感じ!ね、りんりん!」

 

「そうだねあこちゃん・・・けど・・・本当にキレイ・・・」

 

雲の隙間から除く空の色がまた虹の派手な色を目立たせる。

 

しかし僕含む2名は虹の綺麗さよりほかのことを考えていた。

 

「ねぇ、友希那・・・これって・・・」

 

「ええ・・・多分・・・」

 

言わなくても伝わる。

 

恐らくこれは紗夜が日菜さんと正面から話し合い、答えを見つけたから。

 

そう思いざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の練習日、今日は学校が休みなので早めに家を出る。

 

スタジオに着くともう殆どのメンバーが揃っていた。

 

しかし、紗夜の姿が見当たらない。

 

「おはよう。・・・紗夜は?」

 

「紗夜はまだ来てないけど・・・」

 

「もしかしてまだ調子なおってないんじゃあ・・・」

 

「そんなことないですよ。」

 

「ほら、本人もそう言ってる・・・し・・・」

 

後ろにばっと振り返る。

 

そこには紗夜が何気ない顔をしながらそこに居た。

 

「「「「「さ、紗夜!」」」」」

 

全員が驚きの声をあげる。

 

当の本人は不思議そうな顔をしていた。

 

「お、おはようございます・・・どうしたんですか、一体?」

 

「い、いえ・・・氷川さん・・・いつもより遅かったので・・・」

 

「色々ありまして遅くなりました。しかし、九条さんまで驚くことないじゃないですか。私の言葉を返したのだからいた事に気づいていたのでは?」

 

「い、いや・・・あの・・・あれは・・・流れ的に・・・」

 

あたふたしていると友希那が前に出る。

 

友希那の顔はとても落ち着いていた。

 

「紗夜・・・調子は大丈夫?」

 

「・・・ええ、みなさん、ご迷惑をおかけしました。今度こそ、言葉通りこれまでの分を取り返します。」

 

紗夜の表情はとても落ち着いていて、そして覚悟を決めた顔をしていた。

 

どうやら答えは見つかったようだ。

 

「紗夜・・・!うんっ!よし、じゃあみんな練習はじめよっか!」

 

リサが嬉しそうに声を上げる。

 

それを聞いて紗夜はいつもより柔らかい表情をしていた。

 

「うん、ライブまであと少しだよ!新曲も、これまでの曲も、極限まで完璧にするよ!」

 

「「「はい!」」」

 

みんながいつもの位置につく。

 

新曲はギターのソロがあるため紗夜がいないと練習ができなかったのだがこれで練習ができる。

 

そして紗夜の弾くギターの音はいつも通り正確で、いつも以上にかっこよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子side

 

「ねえねえ!今日の紗夜さんのギター、かっこよくなかった?」

 

「うん・・・私もそう思ったよ・・・」

 

練習の間の休憩時間、私とあこちゃんと今井さんで外のカフェに来ていた。

 

氷川さんは昨日の分のギターの練習を、友希那さんと奏多くんは次のライブのための打ち合わせをしている。

 

「だよねだよね~!いつものチョーシ取り戻せた感じがした!」

 

「やっぱり・・・氷川さんの妹さんのお陰・・・ですかね。」

 

「友希那言ってたもんね。身近で親しい人の声ほどよく届くって。ソータの時もそうだったもんね!」

 

「うん、あの時はりんりんが奏多さんを連れ戻してくれたもんね!」

 

「あ、あの時は・・・必死で・・・奏多くんを・・・助けなきゃって・・・ずっと思ってて・・・」

 

「へぇ~、それでさ、燐子はソータのことどう思ってるの?」

 

今井さんが突然そんなことを聞いてきた。

 

びっくりしたけど少し考える。

 

私が・・・奏多くんをどう思っているか・・・

 

「・・・奏多くんは・・・私に、色々なことを教えてくれたんです。本人は・・・全然気づいていないと思います・・・でも、私にとって・・・奏多くんは・・・落ち着いて話せる人・・・あこちゃんと一緒で・・・私が持っていないものをたくさん持っている人・・・そんな人です。」

 

私が思っていることを話すと今井さんは微笑ましい顔をしていた。

 

「・・・そっか、燐子にとってソータは大切な人なんだ。」

 

「はい・・・だから・・・氷川さんの調子が悪くなった時に・・・奏多くんと友希那さんは気づいたんだと思います・・・どうすれば『今まで通り』じゃなくて『いつも通り』になるかを・・・」

 

1度挫折を味わった2人だからこそ今回の氷川さんの気持ちをわかってあげることが出来た。

 

そしてどうすればいつも通りに戻るかを。

 

『今まで通り』と『いつも通り』はちがう。

 

『今まで通り』は元には戻るが『元に戻ったまま』に、つまり後退してしまう。

 

けど『いつも通り』は元に戻るだけでなくそこから変わる、つまりいつもと同じように前に進んで行く。

 

それがわかったからこそ2人はあんな行動をとったのだと思う。

 

そんなことを考えているとあこちゃんが口を開いた。

 

「そういえばこの前、紗夜さんが元気なかった時にこのカフェに誘ったんだけど断られちゃったんだ・・・」

 

「あこ・・・あこは心配して紗夜をカフェに誘ったんでしょ?あこの気持ちはきっと伝わってると思うよ。」

 

今井さんがあこちゃんにそう言うとあこちゃんはいつも通りの元気を取り戻した。

 

「リサ姉・・・!うん、そうだよね。ありがとう!紗夜さん少し元気を取り戻したみたいだし、今日ならカフェに来てくれるかな?」

 

「うん・・・来てくれるかもしれないね・・・もう1度・・・誘ってみよっか。」

 

「そうだね!あこ、声かけてくる!!」

 

あこちゃんがそう言ってスタジオの方へ走っていく。

氷川さんがいない間、ずっとあこちゃんは元気がなかった。

 

話を聞くとどうやら元気がない氷川さんに『お姉さんを尊敬しているか?』と聞かれて、それに答えたせいでまた調子が悪くなったと責任感を感じていたらしい。

 

けど今は元気が戻って心から安心している。

 

離れそうになってもまた戻って成長していく。

 

これがバンドの楽しみであり良いところなのだと改めて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏多side

 

休憩の間、僕と友希那と紗夜で新曲の合わせと次のライブの演出を相談していた。

 

そこで新曲のギターソロの部分を紗夜に演奏してもらっていた。

 

「・・・ふぅ。」

 

ギターの演奏が終わり、紗夜が軽く息を吐く。

 

そこに友希那が静かに声をかけた。

 

「紗夜。」

 

「はい、どこか悪い点でもありましたか?」

 

「・・・いえ、今更だけどあの日、日菜から傘を受け取ったの?」

 

紗夜は少し目を瞑る。

 

そしてその質問に静かに答えた。

 

「・・・ええ、受け取りました。」

 

「今日のあなたの音色を聴いてそう思っいたけど・・・やはり受け取ったのね。敢えて言うわ。今日のあなたの演奏は正確で素晴らしかった。」

 

「・・・私の演奏は、ただそれだけです。今はそうとしか思えません。」

 

紗夜が首を降る。

 

しかしその後しっかりと友希那を見つめて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ですが、いつかこの音を好きになれるよう・・・これが、『氷川紗夜の奏でる音』なのだと、胸を張って言えるようになるまで、私はギターをやめるつもりはありません。これが妹との・・・日菜との約束ですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜が自分の思いをはっきりと言ってくれた。

 

そして紗夜の覚悟や決意をしっかりと受け取ったような気がした。

 

「紗夜、私も父の曲・・・LOUDERを歌おうと悩んだ時、同じような事を感じたわ。何かを決断することはとても怖いこと。勇気のいること・・・その恐怖と立ち向かったあなたの音はこれからどうなっていくのでしょうね。」

 

友希那が微笑んでそう言うと紗夜も微笑み返す。

 

「ええ、湊さんや、メンバー全員・・・そして日菜も驚くような演奏ができるようにこれからも精進していくつもりです。」

 

「期待しているわ。」

 

するとバタバタと足音が聞こえる。

 

足音の主はあこだった。

 

「紗夜さーん!あ、友希那さんに奏多さんも!一緒にカフェで甘いものでも食べませんか?」

 

「悪くないですね、さっきまで弾きっぱなしでしたし。」

 

「ええ、行きましょうか。」

 

友希那が先にあこと一緒にカフェに向かう。

 

紗夜がギターを元の位置に戻すと紗夜は僕に話しかけた。

 

「九条さん。」

 

「ん?どうした?」

 

「九条さんは・・・今の自分をどう思いますか?」

 

その質問に僕はすぐには答えられなかった。

 

けど自分の思うことを素直に話した。

 

「・・・今の自分がどうかはまだしっかりとはわかってない。今でもまだみんなにきつく当たった暗い面が残っているかもしれないし、またあの時みたいになるかもしれない。けど、今は信じられる君たちがいるし今の自分色を・・・『無色』であることを誇りに思っているよ。」

 

紗夜は僕の言葉を聞いて話し出した。

 

「私も・・・私もこのただ正確な『つまらない音』を『誇れる音』に出来るでしょうか・・・」

 

「うん、今の紗夜なら出来ると思うよ。ゆっくりでもいい、確実に1歩ずつ進んでいけば、いずれね。」

 

「・・・はい、ありがとうございます。私達もカフェに向かいましょうか。」

 

そう言って紗夜は僕と共にカフェに向かった。

 

本音を打ち明けた紗夜はとても清々しい顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Determination Symphony』

 

決断の交響曲、これが新しい曲の名前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迎えたライブ当日。

 

今回は新衣装や新曲など色々てんこ盛りである。

 

「新しい衣装・・・どうでしょうか・・・」

 

「うん、今回もすごいよ燐子!」

 

今回のテーマは『青薔薇と雨』らしく色々な青がたくさん使われている。

 

「みんな、今回のライブは熱色スターマイン以外はどれも新曲ばかり。でもやることは同じよ。私達は・・・最高の演奏を目指すだけ、頂点に狂い咲くために。」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「それじゃあ・・・行くわよ。」

 

友希那達がステージに上がる。

 

カメラはいつも通りセット済みだ。

 

後はみんなの、Roseliaのライブの成功を祈るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・Roseliaです。まずは聞いてください。『熱色スターマイン』」

 

燐子のキーボードから入り、『熱色スターマイン』が始まる。

 

テンポのいい曲のため観客のテンションが上がる。

 

そして最後のサビ前、実はここだけ少し変更点を加えた。

 

それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・頂点へ狂い咲け!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中二臭いようだがこのセリフを入れることでテンションを上げれるようにしてある。

 

実際、観客のテンションはいつものライブよりテンションが高い。

 

そして熱色スターマインが終わる。

 

次のMCはリサだ。

 

「次から新曲3連発です!それでは2曲目『Re:birthday』」

 

そう言って『Re:birthday』の演奏が始まる。

 

流石新曲とあって歓声が物凄い。

 

『Re:birthday』の演奏が終わると新たにMCが入る。

 

しかも今回は珍しく燐子がMCをした。

 

「え、えっと・・・3曲目・・・いままでのRoseliaとは・・・少しちがう・・・初めての曲です・・・聞いてください・・・『軌跡』」

 

キーボードの演奏が入って観客の歓声がかなり収まる。

この曲はRoselia初のバラードだ。

 

この雰囲気に歓声が合わないのが観客はわかっているのだろう静かに聞いている。

 

この曲は僕にとって思い出深い曲だ、こうして静かに聞いてくれるのは正直ありがたい。

 

軌跡が終わると観客の拍手が上がる。

 

拍手がなり止むとMCを入れる。

 

このライブの最後のMCは紗夜だった。

 

「・・・次で最後の曲です。大切な人を思う曲です・・・聞いてください『Determination Symphony』」

 

ギターの音とともに曲が始まる。

 

観客はさっきまでの静けさが嘘のように歓声が上がる。

 

この完成の大きさははじめの2曲より大きかった。

 

 

そして2番のサビが終わる。

 

『セカイデ ヒトツノ タイセツナヒト ツナゲ ココロ フカク ツナゲ ユメヲ シナヤカニ・・・・・・紗夜! 』

 

紗夜のギターソロが入る。

 

その時のギターの音は確かに正確で素晴らしかった。

 

しかしそれ以外の音も入っていた。

 

その音は・・・音楽を楽しんでいる、そんな音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブが終わって楽屋。

 

僕達は反省会を行っていた。

 

「紗夜の演奏、今までより良かったわよ。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「とりあえずみんな着替え終わってるし、いつものところ行こうよ!」

 

いつものところ・・・つまりいつものファミレスである。

「そうですね・・・行きましょうか・・・」

 

「今、ポテト増量で20%オフらしいですよ!みんなでまた分けましょうよ!」

 

「ははっ!だって紗夜!」

 

「な、なぜ私に振るんですか!べ、別に・・・みなさんが食べるなら・・・私も・・・」

 

流石ポテトがあれば心が折れる紗夜、いつも通りの平常運転である。

 

すると通知音がなる。

 

「・・・すみません、少し失礼します。」

 

どうやらその音の主は紗夜のスマホのようだ。

 

すると紗夜はフフッと笑った。

 

「紗夜、どうかしたの?」

 

リサが紗夜に質問する。

 

すると紗夜はにこやかに、そして少し恥ずかしそうに話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の・・・世界で一つの大切な人からです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで『8章~Determination Symphony~秋時雨に翡翠の姉妹』はこれで終わりです。
次こそNFO編やります!
ということで次回をお楽しみに!


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9章~Opera of wasterland~NFOー猫とはじまりの歌ー 48話 ムショク ト ネコ

新章『~Opera of wasterland~Neo Fantasy Onlineー猫とはじまりの歌ー』のはじまりです!
Determination Symphonyより先にする予定が無灰世界の時間の関係とアンケートの奴で後になりました。

前置きはここまでにして本編始まります。


『猫』

 

それは数多の人間を『魅了』という技で虜にした動物の総称である。

 

今では様々なところで人間社会に対応していき、技を駆使しなから生きて、人間共を虜にしている。

 

更に猫には大きく二つの種類に分けられる。

 

『野良』と『飼い猫』だ。

 

この二つの決定的な違いはその生活にある。

 

『野良』は人間社会で餌となるものを探すため、日夜人々が行き交う街の中を動き回り、人間共の残した残飯や魚屋の魚などを奪って生活をしている。

 

そのため警戒心が強く、他の猫や人間にはあまり寄り付かない。

 

対して『飼い猫』は動ける範囲が制限され、時々動物病院等に連れていかれる場合もあるが、そのデメリットを上回る程に安全性と餌の保証がある。

 

更に人間に媚びることでさらなる餌を獲得できたり野良にはない『遊ぶ』という行動もある。

 

そのため人間に慣れているため人懐っこかったり人の前でも堂々としている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・さて、なぜいきなりこういう話を出したかと言うと僕は今大量の猫達に囲まれているからだ。

 

ここは猫カフェ『にゃぴねす』商店街に最近出来たカフェだ。

 

なぜここに来ているかと言うとこの店の開店当初、告知無しで開いたため客が入ってこなかったこの店に初めて入った『お客様第一号』としてマスターに顔を覚えられており、その後、友希那のバースデイパーティ会場として使わせてもらったこともあるので、その日から常連客として度々この店に通っているのである。

 

さらに言えばこの店の名物の『肉球ロールケーキ』が絶品で、猫よりかはこちらを目当てに来ている。

 

なので純粋にコーヒーが飲みたかったら『羽沢珈琲店』、ロールケーキが食べたければ『にゃぴねす』と使い分けているのである。

 

「九条くーん!ご注文の肉球ロールケーキ出来たよ~!」

 

「あ、はいマスター!今向かいます!」

 

今では常連客なため、マスターとはこんな感じに緩い会話をしている。

 

僕は猫がメインでいるスペースから人間メインのスペースに移動する。

 

人間メインのスペースと言っても猫達はそんなことお構い無しで床でゴロゴロしているのだが・・・

 

僕は高い椅子に座ってマスターに注文していた肉球ロールケーキを受け取る。

 

「いや~悪いね九条くん。毎度来てくれて。」

 

「いえ、ここのロールケーキが絶品なので。マスターももっと宣伝すればいいのに。」

 

「いやぁ、広告宣伝は苦手でねぇ・・・インターネットもよくわからなくて・・・」

 

「まぁ、マスターはネット苦手ですもんね・・・」

 

ロールケーキを頬張りながらマスターと会話をする。

すると高い椅子をもろともせず、1匹の猫が膝の上に乗ってくる。

 

「んにゃあ」

 

「ん?なんだモカか。」

 

乗ってきた猫の名前は『モカ』

 

うちのコンビニで一緒に働いている脳内年中パン祭りと同じ名前だ。

 

『モカ』の名前通りカフェモカのような色をして、垂れ耳で尻尾が短い猫だ。

 

ここに始めてきた時に一番最初に触れ合ったのがこのモカで、今では僕が来ると真っ先に飛んでくる。

 

「モカは九条くんにベッタリだね~」

 

「むぅ・・・やはりモカって名前はあっちと被るな・・・」

 

「九条くんのお友達にモカって名前の子がいるの?」

 

「はい、友達ってよりかはバイト仲間ですけどね。」

 

「へぇ~仲いいの?」

 

「そこそこって所です。パンを見せれば尻尾振ってこっちきます。」

 

「食べ物に目がないところもモカにそっくりだねぇ。」

 

話をしているとカランと店のドアが開く音がする。

 

「あ、いらっしゃいませ。」

 

「こんにちは、マスター。」

 

聞きなれた声がする。

 

後ろを見ると入ってきたのは友希那だった。

 

「あ、湊ちゃんいらっしゃい!」

 

「あ、友希那。」

 

「奏多・・・来てたのね。」

 

「うん、今日はロールケーキ目当てでね。」

 

友希那が隣の席に座る。

 

すると友希那が来たことを察したように猫エリアから猫達が一斉に近寄ってきた。

 

「フフッ、みんな・・・お待たせ。」

 

「「「「「「「ニャアン!」」」」」」」

 

「ら、ライブの時より・・・メンバーの統一感がある・・・」

 

「ライブの時はライブの時、猫達の時は猫達の時よ。」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

キメ顔で友希那にそう言われる。

 

正直何を言ってるかわからないのでとりあえず流す。

 

「湊ちゃんはいつものでいい?」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「わかった、すぐできるから待っててね。」

 

マスターがカウンターで準備をする。

 

するとコーヒーのいい匂いがしてくる。

 

「はい、湊ちゃん。コーヒーとにゃぴねす特製猫用ビスケット。」

 

「ありがとうございます。」

 

友希那がコーヒーの入ったカップとビスケットの入った袋を受け取る。

 

友希那がいつも通り砂糖とミルクモリモリでコーヒーを飲むと猫達は待っていたかのように鳴き出した。

 

「こらこら・・・1匹ずつ順番に・・・」

 

友希那が猫を見る時限定で見せる緩顔で猫をあやす。

 

すると猫達は順番を守るようにその場に座った。

 

そして1匹ずつにビスケットを渡していく。

 

「・・・友希那、Roseliaのメンバーより統一させてるよ。」

 

「人は人、猫は猫よ。」

 

「そうだけど・・・将来歌姫兼猫トレーナーにでもなる?」

 

「・・・わ、悪くないけど・・・歌手でいいわ。」

 

友希那が苦し紛れにそう言う。

 

今絶対悩んだだろ。

 

モカを撫でながら時計を見るとそろそろ3時前である。

 

「マスター、お会計を。」

 

「あれ?いつもより早いけど九条くん今日なんか予定あるの?」

 

「はい、この後友人とネトゲで会う予定なので。」

 

「そっか、それじゃあレジまで来て。」

 

僕が立とうとするとモカがそれに合わせて膝から飛び降りる。

 

華麗に着地すると少し寂しそうに「にゃ~ん・・・」と鳴く。

 

「・・・また来るからね。」

 

そう言って頭を撫でる。

 

モカは目を閉じて喉を鳴らした。

 

「それでは友希那、僕はここで。」

 

「ええ、また明日の練習で会いましょう。」

 

友希那がキリッとした顔で言うが頭以外は猫だらけなので迫力がない。

 

変に言うと機嫌を損ねそうなのでニャンニャンパラダイスの中邪魔をしないように会計を済ませて外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いて5分後、突然雨が降り出した。

 

それもパラパラじゃない本降り並みのやつ。

 

確かに天気予報ではにわか雨に注意とは言っていたが心配ないと思い傘を置いてきたのが間違いだった。

 

(次から天気予報士の話はしっかり聞いとこ)

 

という謎の決心をしながら雨の中を走っていると

 

「・・・にゃん・・・」

 

と弱々しい猫の鳴き声がした。

 

声のした方を向くとそこには段ボールが一つあるだけだった。

 

しかし確かにその辺から聞こえたため、段ボールに近づくと布で包まれてはいるがそこにはやせ細って弱っていた子猫がいた。

 

多分このままほおっておけば子猫は確実に死ぬ。

 

しかし家には猫用の用具なんて一切ないし、猫に対する知識も強い訳では無い。

 

「・・・んぁもう!悩んだら負けだ!ごめんよ猫!」

 

考えるのをやめて布ごと子猫を抱いて雨の中を走る。

 

すこしデジャヴを感じながら家に走り込んで急いでお湯(と言ってもあまり熱くない)を沸かす。

 

そして小さなバケツの中に子猫を入れてあまり体が浸らない程度にお湯を入れる。

 

優しくお湯をかけながら温めて、すぐに体を拭いてドライヤーで遠距離から軽く乾かす。

 

猫は嫌がる気力がないのかじっとしていた。

 

猫を乾かし終わると猫の毛はモフモフになっていたが体がやはり細い。

 

何も食べていなかったせいだろう。

 

「・・・いそいで買いに行くか。」

 

僕は猫を毛布に包ませて1人で僕の働いているコンビニへ向かう。

 

コンビニに着くとそこにはモカ(人間)がいた。

 

「あれ、九条さん。どうしたんですか~そんなに急いで~」

 

「も、モカ!すぐにレジ打ちできる?」

 

「?・・・わかりました~」

 

とりあえず猫缶を三つほど取ってモカにレジ打ちしてもらう。

 

「猫缶ですか~?湊さんにでもあげるんですか~?」

 

「その事はあとで話す!とにかくありがと!」

 

お金を渡し、モカから袋を受け取って家まで走る。

 

家に入ると子猫は動かずにじっとしていた。

 

「待たせたね、とりあえず食べて!」

 

皿をとって猫缶を開け、中身を皿に移す。

 

子猫の前に置くと子猫は少し警戒しながらもニオイを嗅いで猫缶を食べ始めた。

 

「良かった・・・食欲はあるみたいだな・・・」

 

ふぅとため息を吐く。

 

こんなに走ったのは沖縄でアザラシのレイを抱いて走った以来だ。

 

さっきのデジャヴはそれだろう。

 

するとスマホに電話の着信音がなる。

 

相手は燐子だった。

 

「もしもし、燐子?」

 

『奏多くんどうしたの・・・?時間・・・過ぎてるけど・・・何かあった?』

 

「ご、ごめん!子猫助けてたら時間忘れてた!」

 

『子猫・・・?何か・・・あったの?』

 

燐子に軽く事情を説明する。

 

その説明に燐子は納得してくれたようだ。

 

『・・・そんな事があったんだ・・・』

 

「うん、だからもう少し様子を見てからログインするけど・・・次イベ発表までには間に合いそう?」

 

『うん・・・あと30分ぐらいかな・・・あこちゃんには私から言っておくよ・・・』

 

「うん、ごめんありがとう。それじゃああとで。」

 

そう言って通話を切る。

 

子猫はまだ猫缶を食べていた。

 

この後、実はNFOで新イベの発表があり、新しいタイプのクエストらしいのでそのイベントに対応するために準備をしようということで燐子とあこと僕で集まる予定だったのである。

 

発表が遅くて助かったと思いながらも子猫を見るともう食べ終わっていた。

 

子猫はどうすればよいのかわからないように辺りを見回していた。

 

僕はそっと手を伸ばして子猫の顔の近くに手の甲を近づける。

 

子猫は少しビビりながらも手の甲を嗅ぐとチロチロと舐め始めた。

 

その行動に僕の心は一撃で射抜かれた。

 

「やばい・・・かわいい・・・」

 

子猫は温まってご飯を食べて満足したのか拭く時に使ったタオルの元に行きそこで丸まって寝てしまった。

 

僕はその子猫に触りたい衝動を抑えて自室へ向かう。

 

あの様子だとしばらくは寝続けるだろう。

 

「・・・そうだ・・・名前考えなきゃ・・・」

 

自室へ向かう途中にそう考える。

 

いつの間にか僕はあの子猫を飼うつもりでいた。




ということで名前はまだ無い()
期限は木曜日まででリクエストやTwitter等で募集しますのでよろしくお願いします!

子猫のイメージ
白と黒の毛並み
フワフワ
種類は雑種


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49話 Neo Fantasy Online ーシンテンチー

という訳で猫の名前は『レイン』に決まりました!
名付け親の零七さんありがとうございます!
ほかの方々もたくさんの意見ありがとうございます!

という訳でNFOメインの回となります。
それでは本編どうぞ!


ここは剣と魔法とロマンの世界がテーマのゲーム『Neo Fantasy Online』

 

数多のネットゲーマーがログインしているその世界にまた1人ログインする者がいた。

 

その者の名は『カナタ』、『両手剣使いのカナタ』として少し有名なプレイヤーだったが、相棒であるレアモンスター『ファーリドラ』のルナをテイムしてから『ファーテイマーのカナタ』と異名が変わり、初のファーリドラをテイムした人として有名となったプレイヤーである。

 

今日も仲間と共にモンスターを討伐しに行く・・・はずだったのだが・・・

 

「る、ルナ・・・?」

 

「キュ!」

 

ルナの御機嫌がめちゃくちゃ悪い。

 

撫でようとしたり好物のクッキーを上げようとしてもそっぽを向くのだ。

 

「・・・別にテイマーじゃなくなった訳でもないしな・・・」

 

ユーザーインターフェイスを見てもハッキリとテイムモンスターとして表示されている。

 

今までは撫でろと言わんばかりに顔を擦り寄せてきたしクッキーを与えるとほんの数秒で袋の中をカラにするほど大好きなはずなのに・・・何故今日に限ってこんなに機嫌が悪いのだ?

 

「でももし感情があるなら凄いよな・・・」

 

たかだか敵mobであるファーリドラ1匹にここまで感情をつけるとは考えにくい。

 

テイムモンスターは基本プレイヤーのサポート(と言っても指示通りには動きにくいのだが)やこういったたまに起こるお触りイベなどがメインなのだが僕のルナは指示は聞くしこういった『感情』のようなものがある。

 

「レアモンスターをテイムしたからかな・・・」

 

時計を見ると集合時間の5分前である。

 

「うわやばい!とりあえずルナ、行くよ!」

 

「・・・キュイッ」

 

ふてくされている様子を見せながらもついてくる。

 

ルナのことをしっかり知ることはまだ先になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか今回の集合場所『都市キャメロット』に到着する。

 

ここはNFOの中でもかなり大きな都市で、品物が豊富、そしてこの都市は高難易度クエストが多いせいで『ハイレベルプレイヤーの都市』とも言われている。

 

しかしこの都市は『NFOサーバーに最も近い都市』とも言われていてこの都市が一番早くNFOの新イベントの発表や更新の早さが他のところに比べて早いのだ。

 

という訳で新イベントの発表のためこの都市に来たのだ。

 

「あ、カナタさーん!こっちこっち!」

 

死霊魔術師の女の子のアバターが手を振る。

 

あのアバターの名前は『聖堕天使あこ姫』名前でわかる通りあこのアバターである。

 

「奏多くん遅かったね。やっぱりあの猫となにかしてたの?」

 

赤い服の魔法使いのアバターが話す。

 

彼女の名前は『RinRin』お馴染み燐子のアバターネームである。

 

「うん、ご飯食べさせたり寝床作ってたら時間遅くなった。」

 

「カナタさん猫の名前決めたんですか?」

 

燐子から事情を聞いたあこが質問してくる。

 

「名前・・・そうだな・・・雨降ってたし・・・うん、今決めたわ。」

 

「それで名前は?」

 

「猫の名前は『レイン』にするよ。」

 

自分でもなんだが相変わらずのネーミングセンスである。

 

レイの時といい何かのもじりや簡単な名前ばかりだ。

 

何故曲の名前を決める時以外はここまで酷いのか・・・

 

「レインかー!うん、いい名前じゃない?ね、りんりん!」

 

「そうだね!とってもいい名前!」

 

どうやら2人はそうは思わなかったようだ。

 

今頃レインはリビングに作った寝床でぐっすりと眠っていることだろう。

 

『運営よりNFO新イベントのお知らせです!』

 

電子声のアナウンスで都市全体に広がった。

 

待ちに待った新イベントの発表である。

 

「あ、発表始まった!」

 

「もうちょっと難しくてもいいのにな。」

 

「燐子、君に合わせるとみんなしんどいと思うけど・・・」

 

そう話しているとアナウンサーが本題に入った。

 

『さて、次のNFOのイベントですが・・・今回は古参の人から新人さんまで楽しめるイベントとなっております!それは最後のお楽しみとしてまずは新しいキャンペーンのお知らせです!』

 

まさか新イベントの発表と新キャンペーンの発表を同時に行うとは思わなかった。

 

RinRinも聖堕天使あこ姫も静かに聞いている。

 

『そのキャンペーンとは・・・友達紹介キャンペーン!NFOをやったことが無いリアルのお友達にNFOを紹介して一緒にクエストをクリアすると限定装備をプレゼント!』

 

すると画面に装備の画像とステータスが映される。

 

装備名は隠されているがどこかで見たことのある装備だ。

 

しかし今まで様々なクエストをやって来たせいでそのクエストがどのクエストか、そしてどんな使われ方をしたのか思い出せない。

 

しかしステータスとしては悪くない方だ。

 

耐久に最大魔法力にMP最大値アップなどと剣士の僕には合わないが魔法使いや死霊魔術師などにはうってつけのアイテムだ。

 

そして見た目がかなりカッコイイ。

 

これはあこ好みの装備だなと思いあこ姫を見るととても顔を輝かせていた。

 

しかし問題は誘える人がいるかどうかだ。

 

NFOユーザーは今や国内だけでもかなり多い。

 

僕の周りでは探すのは難しそうだ。

 

しかしどこか嫌な予感がするのは僕の気のせいだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、いつも通りの練習が終わり、珍しくカフェにてくつろいでいる途中である・・・僕以外は。

 

メンバーのみんなはカフェにいるが僕はCIRCLEの受付でまりなさんと話していた。

 

内容としては次の予約日の相談であった。

 

いつも使っている時間はその日CIRCLEで大きなことをするらしくCIRCLEがその日中支えないので別日の相談である。

 

「どうする?スタジオは違うけどここならいつもの時間で行けるよ?」

 

 

「むむ・・・その日しかいい時間なさそうだな、はい、その日にします。」

 

「わかった、その日に予約入れとくね~」

 

「ありがとうございます、まりなさん!」

 

「気にしないで仕事だからね!」

 

まりなさんがその日に予約を入れる。

 

僕はそれを確認して外に出るとカフェでメンバーが談笑していた。

 

話を聞くとどうやら今日の練習の反省会のようなものをしているようだ。

 

「お待たせ、次の予約取れたよ。」

 

「ええ、いつもありがとう奏多。それと今日のあこの演奏、走りがちだったと思わない?」

 

それは僕も思った。

 

聴いていて少し走りがちだったので度々アドバイスを入れるが直してもすぐに走りがちになるのだ。

 

「うん、あこ今日どうしたの?」

 

「あ、あの・・・」

 

「あこ、アタシ達に話してみてよ!楽になるかもよ。」

 

「そうですよ。そのための私たちです。」

 

ということであこは僕達に昨日のNFOのキャンペーンのことを話す。

 

友希那はわからなさそうだったので僕が時々補足を入れた。

 

「・・・なるほど、そういう事ね。」

 

「だから・・・お願いします!」

 

「悪いけど断るわ。」

 

「私も湊さんと同意見です。ゲームとバンドは関係ないですし。」

 

やはり予想通りの反応だ。

 

しかもリサも「アタシはやってみたいけど正直パソコン操作苦手だからな・・・」と言っていた。

 

こうなれば奥の手を使う時が来たようだ。

 

「友希那、今NFOじゃあ新しいイベントで『猫大量発生!?ニャンニャンイベント』とかいうイベントやっているんだよね~現実世界にいそうな猫やそれこそゲーム限定の猫とかいっぱいいるんだけどな~」

 

まさか次の新イベントが猫祭りだとは思わなかった。

 

しかし難易度は少し高めなので面白そうだとは思ったがまさかこんな形で使うとは思わなかった。

 

「ね、猫・・・限定種・・・」

 

「あ、あと最近ネカフェがポテト大盛り半額フェアしているんだよね、ゲームしながら食べるポテトってまた格別なんだよな~」

 

「ぽ、ポテト・・・」

 

ここまで来たらおとせる。

 

ここで一気に畳み掛けた。

 

「けど今回のイベント時間短いしポテト半額も明後日までなんだけどな~」

 

「「行くわ!」」

 

ふたりが食いついた。

 

残すは・・・

 

「ゆ、友希那が来るならアタシも行く!」

 

「やったぁ!ありがとうリサ姉、紗夜さん、友希那さん!」

 

こうして新人3人がNFOにログインすることご確定した。

 

これは・・・ハチャメチャになる予感がした。




さて、今回レインちょっとしか出てこなかったけど。
そこは気にしないで!

という訳で次の更新日までCiao!


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50話 Roselia ト レイン

祝50話!
これからも『無色と灰色の交奏曲』をよろしくお願いします!(話すネタないので・・・)

ということで本編どうぞ。


友希那と紗夜が私欲に負けてNFOをすることになった。

 

時間としては練習にそのままネットカフェへ赴き、NFOをプレイする予定だ。

 

友希那、紗夜、リサの3人はネトゲ初心者なのであこはリサに、燐子は紗夜に、そして僕は友希那について色々教えることとなった。

 

まずは練習との事で日付が変わった今日、いつも通りCIRCLEへ向かうはずだったのだが。

 

「・・・レインさん。」

 

「ミャア」

 

「あの・・・どうしてもそこから動く気がありません?」

 

「ンミャ」

 

「僕、今からバンドの練習行くんですよ。流石にスタジオに猫はダメだと思うんすよ・・・なので・・・出てくれません?」

 

「ミャン」

 

この前の雨の日に拾ってそのまま家族の一員(もちろん手続きには行った)となった猫の『レイン』が頑固として動かない。

 

そのままほっといて行けばいいと思うのだがレインがいるのはなんと僕が今着ているパーカーのフードの中なのである。

 

まだ子猫のため体が小さいレインはパーカーのフードの中がたいそう気に入ったらしく、僕が着る瞬間にタイミングを見計らってフードの中に飛び移ったのだ。

 

 

 

 

 

・・・さて、今更だが生活費が足りないためアルバイトまでして一人暮らしをしている僕が余計金がかかる猫を飼い始めたのか、それは少し前に遡る。

 

僕が母親と決着をつけ、母親が逮捕された後の裁判にて僕は十数年ぶりに母方の祖父母に出会った。

 

そこで2人はこれまでの虐待や今回の件の慰謝料として300万円を受け取ってほしいと言われた。

 

僕は最初それを断った。

 

悪いのは僕を虐待し、その後音信不通となった娘である母親であって親である祖父母ではないのであなた方から受け取ることは出来ないとそう言った。

 

しかし2人はその反対を押し切ってあの子を育てたのは私達だ、それに私達はあなたの成長を見守る義務があったはずだったのにそれが出来なかった。

 

その後悔を罪を償わせてくれと頼まれたので断りきることが出来ずに受け取ってしまった。

 

僕は全額を銀行に預け、もしもの時やなにか困ったことがあった時に限ってそのお金を頼ることにしようと決心した。

 

そして昨日、にゃぴねすのマスターから猫と暮らすのに必要なものを聞いて、そのお金を使って猫のトイレやゲージ、餌におもちゃに猫タワーなどを買い込んだ。

 

 

 

そしてレインは昨日買った猫タワーのてっぺんからフードの中に飛び移ったわけである。

 

まさか買って一晩で制するとは思わず、餌を与えたあとなんかレイン見つからないな~と思っていたらいきなり衝撃とともに首がしまったのである。

 

「・・・少し苦しいんすよ、出る気ない?」

 

「ニャゴ」

 

「・・・はぁ、仕方ない。まりなさんに説明したらなんとかなるかな・・・」

 

こうなれば仕方がないのでそのままレインをフードの中に入れながらCIRCLEに向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フードの中に異常がないかチマチマ確認しながら(レインは移動中ずっと寝てた)CIRCLEに到着した。

 

中に入るとまりなさんは受付にいた。

 

「あ、奏多くん。今日予約の日だったよね。」

 

「はい、そうなんですけど・・・」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「あの・・・実は・・・」

 

話そうとするとフードの中からレインが顔だけ出す。

 

どうやら起きたようだ。

 

「うわっ!ね、猫?」

 

「あの・・・絶対にここから出さないので連れ込み大丈夫ですか?」

 

「え、えっと・・・少し待ってて!」

 

そう言ってまりなさんは受付裏に行く。

 

まぁライブハウスに猫を連れ込む人間なぞ僕しかいないだろう。

 

するとすぐにまりなさんは帰ってきた。

 

「店長に確認したけど楽器とかコードとかに触れさせなければいいよって。それと猫の写真撮らせてって・・・」

 

まりなさんの手には恐らく店長から借りてきたのであろうデジカメがある。

 

ここの店長は猫好きなのだろうか。

 

「あ、はい、ありがとうございます。レイン~ちょっとゴメンよ~」

 

そう言ってフードの中を開ける。

 

レインはその中で丸まっていた。

 

「撮るよ~」

 

と言ってまりなさんはレインの写真を撮る。

 

幸いレインはカメラに驚かなかった。

 

「ありがとう!スタジオはいつものところだからね。」

 

「はい、すみませんお手数をお掛けしました。」

 

僕はいつものCIRCLE第三スタジオへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レインの落下に気をつけながら先に機材の準備をしているとガチャりとドアが開く。

 

入ってきたのはRoseliaの僕以外のメンバー全員だった。

 

「あ、おはよう。みんな一緒って珍しいね。」

 

「今日やることを色々教えてもらおうと思ってあこと燐子に色々聞いてたんだ~」

 

「私はだいたい理解しました。白金さん、本日はよろしくお願いします。」

 

「はい・・・こちらこそよろしくお願いします・・・」

 

みんながわいわいする中、友希那はじっと僕のことを見ていた。

 

「友希那・・・?なにか顔についてる?」

 

「いえ・・・けど奏多の方から猫の匂いが・・・」

 

友希那の猫センサーはバケモノか。

 

そう思うとフードの中からレインが顔を覗かせた。

 

「ね、猫ぉ!?」

 

「そ、ソータ!?その猫どうしたの?」

 

「え、えっと・・・今日からうちでお世話になるレインでーす・・・」

 

「その子が・・・この前言ってた猫・・・」

 

「九条さんどうしてここに猫を連れてきたんですか?」

 

「じ、実は・・・」

 

僕は今さっきまでの出来事を手短に話した。

 

「・・・ということで・・・まりなさん達には許可はもらってる。」

 

「なるほどね・・・そんな事が・・・」

 

「しかしライブハウスに猫を連れ込むのはダメでは?」

 

紗夜以外のメンバーは納得してくれたようだ。

 

「だいたい猫なんていたら練習にならないじゃないですか。ねぇ湊さん。」

 

紗夜は友希那に同意を求める。

 

友希那はキリッとした顔で紗夜の言葉に答えた。

 

「もちろん構わないわ。」

 

「ですよね・・・って、構わないんですか!?」

 

紗夜は驚きの声をあげた。

 

この反応には僕も驚いた。

 

「ここがOKを出したならそれに従うべきだわ。それにそのにゃ・・・猫は大人しそうだし多分練習の音も平気だと思うわ。」

 

そう言って友希那はスタスタと僕の方まで近づいてフードの中からレインを抱き上げた。

 

レインは特に暴れる様子もなく大人しくしていた。

 

「名前はレインと言ったわね。」

 

「う、うん・・・そうだけど・・・」

 

「レイン、あなたは私達の音聴いてくれる?」

 

「・・・ミャ」

 

「そう・・・なら奏多と一緒にいてね。」

 

「ンミャ」

 

友希那がレインを僕に渡してくる。

 

僕がレインを受け取るとレインはそのまま服をよじ登ってフードの中に入っていった。

 

「それじゃあ練習始めるわよ。」

 

「「「「は、はい!」」」」

 

「奏多、先に一度音合わせをしてからフルで通していい?」

 

「う、うん・・・良いけど・・・」

 

「ありがとう。」

 

そう言ってメンバーが所定の位置に動く。

 

「みんな・・・今日はお客さんのレインが来てくれている。だから最高の音を届けましょう。」

 

友希那の気迫がいつも以上に強い。

 

やはり猫が絡んでくると友希那は強い。

 

「それじゃあ・・・始めるわよ。」

 

友希那がいつも以上にやる気がある。

 

やはり猫がいる時の友希那はとても強いと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

結果から言うとライブはこの前のライブの時より良くなっていた。

 

特にボーカルが1人無双していたのは置いておくがこれまで以上の完成度だった。

 

「友希那の・・・猫パワー恐るべし・・・」

僕はそう思わざるを得なかった。




今回は珍しくストーリーよりかは日常目線です。
それでは次回もお楽しみに!


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51話 Neo Fantasy Online-ハジマリノトキ-

最近忙しすぎてギリギリ投稿時間間に合ってない作者の隠神カムイです。
12月後半に予定つまりすぎぃ・・・しんどい・・・
そんなことお構い無しに本編はしっかりやってます。

それでは今回はRoselia in Neo Fantasy Onlineということであのネタ使って本編始めようと思います。

それでは・・・リンクスタート!(やりたいだけ)


練習が終わりあこお待ちかねのNFOをするためにネットカフェ行きの時間である。

 

僕はというと流石にネットカフェにレインを連れ込む訳にはいかないので一度家に帰りレインを置いてから行くつもりである。

 

そういう事で先にCIRCLEから出た僕は今家にいるのだが・・・

 

「レイン・・・今だけでいいから出てくれない?」

 

「んミャ!」

 

レインがパーカーのフードの中から出てくれない。

 

本当にここが気に入ってしまったみたいだ。

 

「・・・こうなったら着替えた方が早いか。」

 

ということでレインが落下しないように慎重にパーカーを脱ぐ。

 

パーカーを脱ぐとレインはスッとパーカーのフードの中から出ていった。

 

「・・・結局出るんかい!」

 

「ミャーオ」

 

レインは呑気に鳴き声を鳴らす。

 

レインはかなりの気まぐれなようだ。

 

僕はフードの無い服を選んで着替えるとすぐに外へ出て自転車に跨りみんなが向かっているネットカフェへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネットカフェに着くと他のみんなは既に店内へ入っていた。

 

「ごめんお待たせ!レインがなかなか離れなくて・・・」

 

「奏多さん服装変わってる!もしかしてレインを置いてくることできたのは・・・」

 

「はい、パーカー脱ぎました。・・・お気に入りだったんだけどな・・・」

 

あのパーカーは本当にお気に入りだったので正直悲しい。

 

「あはは・・・お疲れ・・・それであこ、アタシ達は何をすればいいの?」

 

「ここのブースに1人ずつ入って、同じ場所にログインして遊ぶ感じ!ここのパソコンには最初からNFOが入っているから簡単だよ!」

 

「別々のパソコンで一緒に遊べるの?」

 

「オンラインで・・・同じ空間を冒険するんです。」

 

「まぁやってみた方が早いよ。とりあえずログインしてみよっか。」

とりあえず初心者組全員パソコンの前に座った。

 

「あ、職業どうしよっか・・・」

 

「ゲームの中に職業があるんですか?」

 

「役割を・・・決めるんです・・・私は、魔法使い(ウィザード)・・・あこちゃんは、死霊魔術師(ネクロマンサー)・・・そして奏多くんは剣士(ナイト)なんですけど・・・」

 

「パーティを組むならなるべく色々な職種の方がいいよね・・・どうしよっか?」

 

「リサ姉は・・・なんかヒーラーっぽいよね?」

 

「確かに。」

 

経験者組が頷く。

 

しかし初心者組は全くわからなそうだった。

 

「へ?ヒーラー?・・・って何?」

 

「みんなを回復させたりしてサポートする役割の人だよ。」

 

「そうそう!めちゃくちゃリサ姉っぽい!」

 

「へぇ・・・アタシってそういうイメージなんだ。オッケー!それやってみる!」

 

「友希那さんは・・・なにかやってみたい職業・・・ありますか?」

 

友希那は色々な職業を見ているが剣士や魔法使い以外にも僧侶や忍者、侍など和の要素がある職種もあるのでどれにするか悩んでいるようだった。

 

「種類が多くてよくわからないわ・・・なにがいいかしら?」

 

「ん~・・・ビーストテイマーとかもありじゃない?」

 

「いや、友希那さんは歌が上手いから吟遊詩人だよ!」

 

「ぎんゆう・・・しじん?」

 

「歌で・・・みんなを元気づけてサポートする役職の人です・・・」

 

「歌を歌う職業があるのね・・・ならそれにしようかしら。」

 

これで友希那も決まった。

 

残すは紗夜だけだ。

 

「ん?あれ、奏多に燐子・・・え?紗夜までいるじゃん!」

 

聞きなれた声がする。

 

そっちを向くとそこには炎がいた。

 

「あ、炎!こんにちは。」

 

「陰村さん・・・こんにちは。」

 

「陰村さん、お久しぶりです。」

 

「なんでお前らがいるんだ?来そうなイメージないのに。それにほかの3人は・・・この前言ってたRoseliaってバンドのメンバー?」

 

「あなたが陰村さんね、話は奏多や燐子から聞いてるわ。あなたが言った通りRoseliaのボーカルの湊友希那よ。よろしく。」

 

「ベース担当の今井リサでーす!」

 

「Roseliaの闇のドラマー・・・宇田川あこ!」

 

「オッケー、友希那にリサにあこね!知ってると思うけど陰村炎だ!宜しくな!」

 

羽丘組と炎が挨拶を交わす。

 

すると炎は僕の席の画面を見た。

 

「お、NFOじゃん!奏多もやってたんだ。」

 

「え、もしかして炎も?」

 

「あぁ、自慢じゃないが、このゲームは結構やり込んでるぜ?」

 

まさか炎もやっているとは思わなかった。

 

後々フレンド登録したいところだ。

 

「陰村さんは・・・何の職業をしてるんですか・・・?」

 

「俺か?俺は拳闘士(ファイター)!」

 

「そうだ、紗夜の職業を今から決めるんだけど何がいいか考えてくんない?」

 

「うーん・・・紗夜なら意外と槍使い(ランサー)とか弓使い(アーチャー)とかいいと思うけどな。」

 

確かに紗夜は弓道部なので弓使いとかは相性が良さそうだ。

 

しかし紗夜は画面を指差すと僕達に聞いてきた。

 

「この職業って難しいんですか?」

 

紗夜が示した職業。

 

それはタンクだった。

 

「タンク?それは敵の攻撃を守りながら戦う職業。タゲを集めてみんなに攻撃が行かないようにしないといけないし体力調整をしないといけないから初心者には難しいと思うけど・・・」

 

「でも・・・やるのは今回のキャンペーンのやつなんで・・・大丈夫・・・と思います。」

 

「なるほど、それなら行けるか。」

 

「では私はこれにします。」

 

紗夜の職業が決まり、これで全員の職業が決まった。

後で何故タンクにしたか聞くと「防御が高くて安心できたから」だそうだ。

 

すると炎が僕に話しかけてきた。

 

「なな、俺もそのパーティに入っていいか?パーティの上限は7人までだろ?」

 

「みんな、大丈夫だよね?」

 

「私は・・・大丈夫です。」

 

「あこも賛成!」

 

「みんなでやった方が楽しいしね!」

 

「私は構いません。」

 

「私も・・・」

 

「うし!それじゃあ宜しくな!」

 

ということで炎が新しくパーティに加わった。

 

これは心強い味方ができた。

 

初心者組の初期設定も終わり、全員がログイン可能になった。

 

「それじゃあ職業も決まったしNFOプレイ始めますか!」

 

「うん、みんな準備はオッケーですか?」

 

「ええ。」

 

「うーなんか緊張するねー!」

 

「みなさん・・・ゲームが始まったら・・・最初の場所に・・・いてください・・・私達が迎えにいくので・・・」

 

「わかりました。」

 

「それじゃあ・・・NFOスタート!」

 

画面に『welcome to Neo Fantasy Online』と表示されて僕達7人はNFOへとダイブした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NFOへダイブするとそこは旅立ちの村の宿屋だった。

 

確か最終セーブポイントがここだったのでここにログインしたようだ。

 

するとすぐにメールが届く。

 

相手はRinRin(燐子)だ。

 

『カナタさん今どこにいます?』

 

「旅立ちの村の宿屋だよ。どうする?多分初期ログイン地点はあの広場だよね。先に行こっか?」

 

『はい、私とあこちゃんは一緒にいるので陰村さんと合流してから行きます。』

 

炎とは先に2人と合流しておくよう先に言ってある。

 

「キキュイ!」

 

鳴き声とともにルナが肩にとまる。

 

どうやらさっきまで飛んでいたようだ。

 

「それじゃあ迎えに行きますか。」

 

僕はカナタを走らせて初期ログイン地点である『噴水広場』へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広場に向かうとそこにはタンク、ヒーラー、吟遊詩人のアバターがいた。

 

恐らく紗夜とリサと友希那だろう。

 

プレイするのは今回だけなので3人のアバターネームは本名にしてある。

 

「お待たせ、奏多です。」

 

「あ、ソータ!それがソータのアバター?」

 

ヒーラーが話し出す。

 

リサのアバターの『リサ』は白い服装をしている。

 

「あ、もうチャット会話に慣れたんだ。」

 

「なんかノリで行けたんだ!」

 

「・・・なるほどこうやって会話をするんですか。これはタイピングに慣れないと・・・」

 

青い鎧を身にまとったアバターは紗夜のアバターの『サヨ』。

 

どうやらチャットのやり方を模索していたようだ。

 

「後は友希那だね、おーい喋れる?」

 

「nnn・・・」

 

英語が三つ並ぶ。

 

友希那のアバターの『ユキナ』は茶色と紫をベースにした軽装備のアバターだ。

 

「ゆ、友希那?」

 

「nihongo ga syaberenai」

 

「あ、ちょっと待ってて。」

 

どうやら日本語切り替えができていないようだ。

 

リアルの方で友希那の席に出向いて日本語切り替えのキーを押す。

 

「これでどうかな?」

 

「あああ・・・ええ、喋れるわ。」

 

「よかった、後は燐子とあこと炎だけだね。」

 

2人には炎を迎えに行ってもらっているのでしばらくかかりそうだ。

 

それまで僕達4人は待つことにした。




変な所で切りましたが続きは次回です。
炎の装備とアバターネーム考えなければ・・・
ということで次回もお楽しみに!


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52話 Neo Fantasy Online -いざ迷宮(ラビリンス)へ-

メリークリスマス!
本編のサブタイトルに初めて漢字を使ってみました。
基本はカタカナだけどこれからはたまに漢字を入れます。
なおクリスマスは師匠と大人しくヴァイスしてました()
クリスマス特別編はやろうか考えましたがクリスマスはやっぱり色々させたいということで後々本編として出そうと思います。(なお無灰世界の季節は11月)

ということで本編お楽しみください!


待つこと5分、燐子のアバターの『RinRin』とあこのアバターの『聖堕天使あこ姫』がもう1人拳闘士(ファイター)のアバターを連れて広場に来た。

 

恐らく拳闘士のアバターは炎のアバターだろう。

 

「あ、あこちゃん!みんないたよ!」

 

「ホントだ!おーい!」

 

「RinRin!あこ姫!こっちこっち!」

 

「いやぁー待たせちまったな!」

 

「これが炎のアバター?」

 

「そっ!名前はburning!まぁ見たとおり名前を英語にしただけだけど宜しくな!」

 

「僕はこっちではカナタって名前。宜しくburning!」

 

炎ことburningと挨拶を済ます。

 

ここではあまりリアルの世界を出さないのが暗黙のルールだ。

 

「宇田川さん・・・その名前・・・」

 

「ふっふっふー、深淵の闇より出でし悲哀の翼。ええっと・・・生命の理を超えてババーンと舞い降りた聖堕天使・・・あこ姫!」

 

「へぇ~カッコいいね、あこ!」

 

しかしそのルールを知らない初心者組は普通に名前で呼んでいる。

 

・・・まぁここにはこのメンツしか人はいないのだが。

 

「みんな、ここでは基本リアルの話はあまりしてはいけないルールだから他のユーザーがいる時は基本ユーザーネームで読んでね。」

 

「りょーかい、カナタ!でも今はソータでいいんだよね。」

 

「ま、まぁほかの人がいない時はね。」

 

「そ、それより、ここはどこで、私達は何をすればいいの?」

 

ゲーム初心者の友希那がぎこちなく喋る。

 

まだタイピングに慣れていないようだ。

 

すると燐子が説明に入る。

 

「あ、そうですよね。説明します(`・ω・´)ゞここは旅立ちの村といってNeo Fantasy Onlineの始まりの場所で小さな村なんですけど初めてゲームをする人が絶対に通る思い出の場所で、この大陸、あ、フライクベルト大陸って言うんですけど、その最東端にあるので通称最果ての村とも呼ばれている場所です(’ω’∗)フライクベルトは大陸中央でいつも戦争をしていてそこに近づくほど危険な場所が増えてくるんですけどそういう意味では旅立ちの村はゲームの中で一番安全な憩いの場所って言うかのどかな場所で、外に出ても危険なモンスターはほとんどいないし受けられるクエスト、これはゲーム内のお仕事みたいなものなんですけど、それも簡単で安全なものばかりだしゲームをあまりやったことがない人でもNFOの世界を楽しく体験できるようにちゃんと村の構造とかも考えられていて凄くいい所なんですよね(´ω`)実はこの村の村長のダンケインさんは元々この世界では超有名な一騎当千の勇者だったんですけど彼がモンスターと戦ううちに大陸の至る所で人間同士でも争いが始まってしまって、それに巻き込まれる形で大ケガをして戦えなくなってしまったんです(=ω=.)それでも悲願だったモンスターのいない平和な世界を作るためにこの小さな村からわたし達のような冒険者を何千、何万人と送り出して支援していて、あ、わたし達は今回そのダンケインさんの屋敷で下働きをしているジェイクさんという人から手紙を預かって、この村から西に少し進んだロゴロ鉱山のリンダさんに届けるのが目的なんですけど、さっきも言った通り村の近くは安全でも鉱山の奥にはちょっと危ないモンスターもいたりなんかするのでちょっとだけ気をつけてみんなで頑張りましょうね(оゝД・о)ノ」

 

燐子が説明を終える。

 

僕、炎、あこは頷きながら聞いていたが初心者組はかなり驚いた顔をしている。

 

チャットの速さに驚いたのだろうか。

 

「りんりんはキーボード打つのが上手くて、チャットがめっちゃ速いんだよっ!」

 

「そ、そんなことないよ(*ノノ)」

 

「まぁ慣れたりしてると速いわな。」

 

「多分ピアノに慣れてるから打つイメージが少し似てるんじゃない?」

 

「あれ?みんな、どうしたんですかー?」

 

初心者組はまだ驚いた顔をしている。

 

チャットの速さではないのなら恐らく・・・

 

「いえ・・・白金さんがこんなにたくさん話すのは珍しかったので・・・」

 

「う、うん・・・アタシもびっくりした・・・」

 

「え、ええ?(;゚ロ゚)」

 

やはりそうだ・・・初めは僕もこの代わり様に驚いた。

 

「うん、僕も初めてここで燐子とあった時はびっくりした。」

 

「そ、奏多君まで・・・そんなに変わってるかな

(๑• . •๑)?」

 

「いるよなーゲームで人格変わる人!」

 

「うんうん!奏多さんもたまに人格変わるしね!」

 

「え、僕変わります?」

 

「だってこの前ゴブリン大量討伐のクエストした時めちゃくちゃ荒れてましたもん!なんて言うか・・・漆黒の闇に包まれし狂乱の暗黒騎士!みたいな!」

 

そ、そんなに荒れていたのか・・・次から気をつけなければ・・・

 

「そ、それで私達は何をすればいいのかしら・・・驚きすぎてわからなかったわ・・・」

 

「えーっと・・・なんちゃら鉱山のリンダさんに手紙を渡しに行くんだっけ?」

 

「そうそう、それが今回のキャンペーンの対象クエ!」

 

「ジェイクさんから手紙を受け取ってロゴロ鉱山のリンダさんに届けに行きましょう

ヽ(*゜∀゚ *)ノ」

 

「キュイ!」

 

気がついたらどこかへ行っていたルナが帰ってきた。

 

どうやら燐子とあこ以外のメンバーを警戒していたようだ。

 

「も、モンスター!?」

 

「うわっ何それカワイイ!」

 

「そ、それを倒せばいいの?」

 

初心者組が驚いて戦闘態勢みたいなのをとろうとする。

しかし村や街などは特別なイベント以外は装備を実体化できないためそれっぽいポーズにしかならない。

 

「あ、安心して。この子はルナ、僕のテイムモンスターです。」

 

「て、テイム・・・モンスター?」

 

「一部のモンスターは運が良ければ仲間になってくれるんです。今回のキャンペーンと同じ時期に始まったイベントでは猫系モンスターの出現率とテイム率が上がっているんですよ。」

 

「私も実は黒猫のモンスターをテイムしています

( *´︶`*)今は私のプレイヤーホームに住んでいるんですよ(∗•ω•∗)」

 

そう言えばこの前そんなことを言っていたような気がする。

 

魔法使い(ウィザード)に黒猫とはベストマッチな組み合わせだ。

 

「く、くろね「うぉぉ!すげぇ!それファーリドラじゃん!」

 

友希那が何かをいう前に炎がルナを見た瞬間寄ってきた。

 

ルナはびっくりして僕の頭の後ろに隠れる。

 

「あ、炎こいつ実は人見知り・・・」

 

「あ、悪い・・・でもまさかファーリドラをテイムしたプレイヤーってお前だったんだなー」

 

「運が良かったんだよ運が。」

 

「へぇ、モンスターってなんかこうごついのとかキモイの想像してたけどこんな可愛いモンスターもいるんだー」

 

リサが近寄ってルナに手を伸ばす。

 

ルナははじめ警戒していたが安全だとわかると顔をすり寄せた。

 

「わっ!凄いこれがほんとにモンスター?」

 

「実は僕もルナの事よく分かってなくて・・・ホントこいつは謎が多いんです。」

 

「それってどういう事ですか?ゲームの中ならそのモンスターの情報とかあるんじゃないですか?」

 

「ファーリドラはすーっごくたまにしか出なくて出てもすぐに逃げられちゃうんです・・・それにテイムチャンスなんてたまにしか起こらないからこうしてテイムできたのは奇跡に近いです!」

 

するとポロンポロロンと音が鳴る。

 

これは・・・歌スキル?

 

「ねぇ、この音何?」

 

「これは歌スキルか?」

 

「この中でそのスキル使えるのって吟遊詩人だけだから・・・」

 

全員が唯一の吟遊詩人、友希那の方を見る。

 

友希那はスキルを発動中だった。

 

「ゆ、友希那さん!?どうして歌スキル使っているんですか?」

 

「し、知らないわ!ボタンを押したら勝手に出たのよ・・・」

 

僕がリアルで席を立って友希那の席に行ってスキルを止める。

 

「あ、ありがとう奏多・・・」

 

「まぁ気にしないで。操作とかはこの冊子に書いてるから。」

 

そう言ってパソコンの隣においてある冊子から『NFO操作ガイド』と名のついた冊子を友希那に渡す。

 

友希那は軽く読んで「だいたいわかった」と言って元に戻した。

 

僕は席に戻ってカナタに戻る。

 

「・・・ふぅ、これで行けるはずだよ!」

 

「もうーなにやってんの。」

 

「さっき操作はわかったわ。これで何とかなるはずよ・・・多分・・・」

 

「と、とりあえずジェイクさんのところ行きましょ!」

 

「そうだな!」

 

ということで一行は村長ダンケインさんの屋敷へ向かった。

 

これから始まる珍道中を誰も予測することは無かった。




なお、燐子の説明だけで738文字ありました・・・打つの疲れた・・・
燐子の早口もいいけどいつもの燐子も儚い・・・
ということで次回もお楽しみに!


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53話 Neo Fantasy Online -ハジメテ ノ オツカイ-

タイトルが某子供おつかい番組みたいになってる今回のストーリーはわかる通りクエストの進行です。
そして祝お気に入り200件越え!
何気に続けてきた無灰も折り返し前(?)となります!
読者の皆さん本当にありがとうございます!
これからも「無色と灰色の交奏曲」をよろしくお願いします!
それでは本編どうぞ!


僕達Roselia+‪αはこの旅立ちの村で一番大きな屋敷の「ダンケインの屋敷」に到着し、そこで下働きしているジェイクさんに話しかけた。

 

ジェイクさんの頭の上にはクエストロゴが出ているのでひと目でわかるのだ。

 

「よく来てくれました・・・旅の方。実は、折り入ってお願いしたいことがあるのです。この手紙を、鉱山のリンダに届けてくれませんか?私は、ここの仕事があるので中々私に行くことができないのです・・・」

 

NPCは基本しゃべることが出来ないので頭の上の吹き出しに言葉が並ぶ。

 

それを見てリサが興味津々に話し出す。

 

「へぇーこの人がジェイクさん?」

 

「そうだよ!」

 

「ジェイクさんはこの場所からリンダさんに何万通も手紙を出し続けているんです。」

 

「そんなに手紙を書いてどうするのかしら?」

 

「たくさんのプレイヤーがこのクエストを受けるからそれだけ数がいるんだよ。1通だけだと初めてやった人しかこのクエストをクリアできないからね。これはゲームの使用上仕方が無いことなんだよ。」

 

これはゲームあるあるでもある。

 

仮に病気の子供に薬を届けるクエストをクリアしてもクリアしていない別のプレイヤーがその子を見るとその子は病気にかかったままである。

 

そのためこの子供は病気を直してはかかり、直してはかかりとエンドレスに病気になるがこれは使用上仕方の無いことなのである。

 

「手紙を受け取るにはどうすれば?」

 

紗夜がそう質問してくる。

 

答えたのは炎だった。

 

「今目の前に『クエストを受注しますか?』って出てると思うからそれの『手紙をリンダに届ける』を押して。そうすると手紙を受け取りましたって出るから。」

 

「わかりました。」

 

全員が同じ動作をしてクエストを受ける。

 

これでジェイクさんは3通の手紙を渡して、リンダさんは3通もの手紙を受け取る羽目になる。

 

いつも思うのだが、いずれリンダさんは手紙を受け取るのを拒否する日が来るのではないだろうか。

 

そんなことお構い無しにジェイクさんは話を続けた。

 

「本当ですか!?ありがとうございます!リンダは村を出て西に進んだ先の鉱山にいるはずです。どうかよろしくお願いします・・・」

 

画面に『リンダに手紙を届ける クエスト開始』と出る。

これでクエスト開始である。

 

「これでオッケーだね!」

 

「しかし目的地の位置が随分曖昧なんですね。もっと話を聞いて場所をしっかり教えてもらいましょう。」

 

紗夜はジェイクさんにもう1度話しかけた。

 

「本当ですか!?ありがとうございます!リンダは村を出て西に進んだ先の鉱山にいるはずです。どうかよろしくお願いします・・・」

 

しかしジェイクさんは同じことを繰り返して言った。

 

紗夜はとても不思議そうにしている。

 

「・・・どうしてこの人は同じことしか言わないんですか?」

 

「NPCは同じことしか喋らないですよ?」

 

「NPC・・・?」

 

「ノンプレイヤーキャラクターの略だよ。NPCはこの世界の登場人物で人が動かさないから思考が固定されているんだ。だから何度聞いても同じことしか喋れないんだよ。」

 

「1人1人人が動かしてたら手間もかかるしお金と時間もかかる。だからコンピューターにやらせることで作業を効率化させてんだよ。」

 

「なるほど、そういう事なんですね。」

 

「まぁとりあえず、その鉱山に行ってみようよ。」

 

ということで鉱山に続く道である『アゼミチ村道』を通ってロゴロ鉱山に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇここから鉱山までどのくらいで着くのかしら?」

 

「すぐそこですよっ!最初のダンジョンだからすぐ近くっ!」

 

「ここからだと本当に3分もないよ。この道もモンスター出ないから安心して進めるし。」

 

ロゴロ鉱山は誰もが通る最初のダンジョンで、中には色々な鉱石の他にコウモリ型モンスターや小さなゴーレムなど低級モンスターしか出ないので初心者が最初に戦闘なれするところとしてよく使われるダンジョンでもある。

 

「あれ?ねえ、なんか光ってる草があるんだけど?」

 

リサが指を指すとそこには確かにチカチカと点滅する草があった。

 

しかし経験者組はそれがなにか人目でわかった。

 

それは全てのプレイヤーがお世話になるアイテムの原型であるからだ。

 

「これは薬草ですね。」

 

「薬草ってことは薬になるの?」

 

「そ!回復ポーションの元になるアイテムだよ。」

 

「へぇ!これってその回復なんたらにできるの?」

 

「できますよ。これをこうすると・・・」

燐子が的確な手さばきで「メニュー」→「アイテム」→「調合生成」の順で薬草を回復ポーションに変換させる。

 

正式名は「HP回復ポット」というのだがみんな回復薬やヒール瓶など色々な呼び方で読んでいる。

 

「はい、出来ました!」

 

「えー!すごいすごーい!」

 

リサがめちゃくちゃはしゃいでいる。

 

僕らにとっては見慣れた光景でも初心者にとっては凄いのだろう。

 

経験者組が暖かい目でリサを見る。

 

「これはタンクの氷川さんに渡しておきますね。もしHPが減ったら使ってください。」

 

「あの・・・HPというのは?」

 

「生命力のことですよ。モンスター攻撃を受けちゃうと減っちゃうので( ̄ω ̄;)」

 

「タンクは移動速度は装備をしている間少し遅いけどそのHPの減りが少ないんだ。その耐久性を活かして味方のHPを減らさないように味方を守りながら戦うのがタンクの仕事だよ!」

 

「だからタンクは難しいんだよな・・・」

 

炎が少し肩を落とす。

 

どうやら炎は一人で突貫して蹴散らすタイプのプレイヤーのようだ。

 

明らかタンクとは相性が良くない。

 

「なるほど・・・ゲームは覚えることが多いんですね・・・」

 

するとリサが燐子に話しかけた。

 

「ねえねえ、そのHP回復ポットってアタシでも作れる?」

 

「一番簡単なものなら大丈夫ですよ。やってみます?」

 

そう言って燐子が作り方をレクチャーしている。

 

あっちはあっちで楽しそうだ。

 

すると後ろでものすごい勢いで調合音が聞こえるので後ろを向くとリサがすごい量の回復ポットを生成していた。

 

「り、リサ!?作りすぎじゃない?」

 

「ええー?たくさんあった方がいいじゃん!みんなにもあげるね!」

 

「あ、ありがとうございます。ポットでアイテムスロットがいっぱいです(;°▽°)」

 

そう言ってリサが回復ポットをみんなに配る。

 

初心者組はまだまだアイテム容量がいっぱい空いているが経験者組は装備品や他のアイテムなどがあるのでかなりキツキツだ。

 

「ありがとうリサ!丁度回復ポット切れてたんだ!」

 

・・・一部を除いては。

 

「いや、炎・・・アイテムぐらいちゃんと見とこうよ・・・」

 

「たまにやっちまうんだーこのミス。基本かすりは気にせずに戦ってるから体力の減りが早くてよ、回復ポット結構使うんだわ。」

 

「拳闘士使ってるんだったらそこはこまめに見ないとすぐに死ぬよ・・・」

 

「わ、わかってらい!」

 

炎が意地を張ってそう言う。

 

しかしわかってないからこうなるのでは・・・

 

「それより、これから私達はそのアイテムを使わないといけないような場所に行くのね。」

 

友希那がそう言う。

 

すると初心者組は少し緊張しているようだった。

 

「まぁ、僕達がいるからモンスターぐらいはすぐに倒せるよ。」

 

「そうだな!」

 

炎が拳を手のひらに打ち付ける。

 

こうみると炎はやはり拳闘士っぽい。

 

「そう言えばあそこにはキラぽんも出るよ、あこちゃん。」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「あー確かに出たね。僕は一度エンカウントしてすぐに逃げられちゃったけど。」

 

「キュイ」

 

飛ぶのが疲れたのかルナが頭の上に乗る。

 

キラぽんはルナことファーリドラと同じくらい出現率が低いモンスターで倒せば非常にレアなアイテムをドロップする。

 

しかしその素早さはファーリドラ以上で見つけても遠距離攻撃での闇討ちでしか倒すことが出来ないと言われている。

 

不思議そうしている初心者組にあこがキラぽんの説明をする。

 

なお、キラぽんはファーリドラとは違ってテイム率0%(これは運営が予め公表しているらしい)なのでルナの時のようにテイムすることは出来ない。

 

「とりあえずクエスト進めながらそのキラぽんってモンスターも探しながらいこっか!」

 

話しながら歩いていたがもうすぐロゴロ鉱山に到着する。

 

ストレージの容量はキツキツだが、正直な話ここで入手できるアイテムはほとんど必要ないので今日は愛剣を存分に振るうことが出来るだろう。

 

僕は背中に愛剣の『純銀剣クラレント』を実体化させて僕達一行は鉱山の入口まで進んだ。




炎の戦闘スタイルは脳筋突貫です。
つまり回復しないと死にます()
次回更新は土曜です。
次回もお楽しみに!


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54話 Neo Fantasy Online-ロゴロ鉱山の怪物-

こんにちは、隠神カムイです。
昨日、新小説『Fate/Rider Order』を始めたので無灰の更新ペースは火曜日と土曜日になります。
楽しみにしてる読者の方々には申し訳ありませんがご了承ください。

ということで無灰の方はようやく中盤です。
それでは本編どうぞ!


道中なんだかんだいろいろあったが一行はロゴロ鉱山に到着した。

 

中に入ると鉱山らしくレールとトロッコ、そして色々な鉱石があった。

 

「ここが鉱山かー、なんか薄暗くてちょっと怖いね。」

 

「大丈夫大丈夫〜!」

 

「けど入口の看板に・・・」

 

実は入る前に立ってある看板を見たのだがその看板には「この先モンスター出現!ロゴロ鉱山の怪物に注意!」と書かれていた。

 

「その怪物って確かこの鉱山のボスモンスターじゃなかったっけ。」

 

「うん、確かでっかいドラゴンの形を模したゴーレムだったはず。」

 

「そのモンスターってどのくらい強いんですか?」

 

「初心者組ならワンパンです( •́ㅿ•̀。 )」

 

「「「・・・」」」

 

初心者組が黙り込む。

 

経験者組がパーティを組んで倒せるぐらいなので出くわすとかなりしんどい。

 

するとカラカラと音とともに何かが近づいてくる。

 

「まって、あれはなんですか?」

 

その正体はスケルトン、低級のかなり弱いモンスターだ。

 

しかしそれを知らない初心者組は初めての敵モンスターにびびる。

 

「わわわわわっ!こっち来た!!」

 

「abunai・・・」

 

初心者組が元来た道に走って逃げる。

 

しかし炎が前に出てスケルトンに攻撃を加える。

 

スケルトンは打撃属性の攻撃を受けると一撃で倒せる上にレベル制ではなく完全スキル制なNFOで炎は筋力をメインに上げているので攻撃力が高い。

 

その上拳闘士というジョブの補佐もあってスケルトン系モンスターに対しては無敵の強さを誇る。

 

炎はスキル技も何も使わずただ軽くスケルトンの眉間にデコピンをくらわせる。

 

するといとも簡単に頭が飛んでいき、スケルトンはポリゴン状となって消滅した。

 

「そんなに逃げなくても大丈夫!こいつめちゃくちゃ弱いから!」

 

「そうだよリサ姉!」

 

「び、びっくりしたんだよー!いまのは何?」

 

「スケルトンという弱いモンスターですね。外と違って、鉱山には突然襲ってくるモンスターもいるんですよ。(°-°;」

 

「そうなんだ・・・助かったぁ〜ありがとう、炎!」

 

「いやいや、初心者を守るのが今回の仕事だし!な、奏多!」

 

「うん、だからモンスターとか出てもあまり逃げたりしないようにね。道に迷うかもしれないから。」

 

ボディガードとしての仕事はしっかり出来そうだ。

 

するといきなり紗夜が盾を構えた。

 

「氷川さん?盾を構えて、どうしたんですか?」

 

「いえ、まだ敵が残っているのではないかと思って・・・」

 

「大丈夫大丈夫!この鉱山の上級者向けのダンジョンにいかない限り強いやつは出ないって!」

 

「ちょっと待っててください・・・むむむ・・・うん、この辺りにはもうモンスターはいませんよ!」

 

あこが索敵スキルを使う。

 

魔法使いや死霊魔術師など魔法をメインに使うキャラが使える便利スキルだ。

 

これを使うと自分の周囲にモンスターがいるかどうか確認することができる。

 

するとリサがあることに気づく。

 

「あれ・・・友希那は?」

 

「「あ。」」

 

ボディガード失格のお知らせである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友希那ー!友希那ーー!」

 

「ゆーきーなーさーーーん!」

 

リサとあこがずっと呼びかける。

 

ダンジョン内では一定の範囲を離れるとそのプレイヤーとチャットで話せなくなってしまう。

 

なので探しながらこうやって呼びかけるしかない。

 

「だめだ・・・全く反応ないよ・・・」

 

「一体どこにいったんでしょうか・・・」

 

「たしかこの先は上級者向けの高難易度ダンジョンだったはず・・・」

 

「げげ・・・大丈夫かな、友希那・・・」

 

上級者向けのダンジョンに初心者が向かえばどうなるか、答えは簡単、ワンパンでゲームオーバーである。

「あ、あれは・・・湊さんじゃないですか?」

 

紗夜が指を指した先にいたのは吟遊詩人のアバター、間違いなく友希那だ。

 

「ホントだ!友希那さーー・・・ん!?」

 

「あら、あなた達どこへ行っていたの?」

 

「友希那・・・とそれ何?誰?」

 

「「「へ、ヘルスケルトンソルジャー!?」」」

 

友希那の後ろにいたのは上級モンスターである『ヘルスケルトンソルジャー』だった。

 

まさかこのダンジョンにいるとは思わなかった経験者組が驚きの声を上げる。

 

なぜならヘルスケルトンソルジャーの出現率はまあまあ低いが、そのパワーと剣さばきはとてつもないものであるからだ。

 

「みんな落ち着いて!ヘルスケルトンソルジャーは視界に入らなければ襲ってこないから!」

 

幸いヘルスケルトンソルジャーは友希那にターゲットを向けていないようだ。

 

大きな甲冑兜を被っているので視界(目はないが)が悪いので正面に入らない限り襲ってこない。

 

「ゆ、友希那さーん・・・そのままそーっと・・・そーっとこっちに来てもらえます?」

 

「・・・?わ、わかったわ・・・」

 

友希那が行動を開始する。

 

ヘルスケルトンソルジャーがこっちを見ないことを祈るしかない。

 

初心者組は後ろに下げているのでいざとなったら飛びかかる準備は出来ている。

 

すると不幸なことに天井が少し崩れ、近くにあったトロッコに石が当たって大きな音が鳴る。

 

しかもそれは・・・友希那の隣だった。

 

友希那のアバターはビックリしてその場に止まってしまう。

 

さらにヘルスケルトンソルジャーが音に気づいてこちらを振り向き、友希那を見た瞬間カラカラ音と共に襲ってきた。

 

「友希那!逃げて!」

 

友希那に逃げるように急かす。

 

友希那のアバターが走り出して逃げる。

 

ヘルスケルトンソルジャーは装備が重い分動くのが遅い。

 

友希那が安全圏まで逃げるとターゲットは僕に移行、僕めがけて剣を振り下ろす。

 

僕はそれを愛剣『純銀剣クラレント』で受け止める。

 

攻撃が重い、流石上級モンスターだ。

 

「・・・っ、悪いけどっ!アンタの同類は!何度