ゴムのヒーローアカデミア (D.C.)
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世の中は理不尽だ

「私が来た!!!!!」

 

僕は、テレビの中で戦う最高のヒーローに目を奪われていた。ヒーローの名前はオールマイト。みんなの憧れであるNo.1ヒーローだ!僕は毎日毎日、飽きることなくオールマイトの事をパソコンやテレビで見ている。

 

「出久!明日は個性診断で病院に行くんだから、早く寝なさい!」

 

お母さんが僕に早く寝るように言ってきた。

 

「お母さん!僕もオールマイトみたいなヒーローになれるかな?」

 

僕は明日の個性診断を前にワクワクしている。お母さんは物を引き寄せる個性。お父さんは火を噴く個性。僕はどんな個性を持ってるんだろう!?明日が楽しみで眠れない!!

 

「出久はオールマイトが本当に好きなのね。じゃあオールマイトみたいに強くなりたいなら早く寝て早く起きて、ご飯を沢山食べなきゃね。」

 

「うん!」

 

「じゃあ、歯磨きして、早く寝ちゃいなさい。」

 

「はーい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無個性ですね。」

 

僕は頭の中が真っ白になった。お母さんも凄く驚いている。

 

「出久くんは足の小指の関節が2つありますよね。コレは最近では割と珍しいのですが、無個性の証になるのです。」

 

僕はそれからどうやって家に帰ったのか分からない。ただ覚えてるのは僕を抱きしめ泣きながらに謝るお母さんの事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は今中学3年生になった。無個性だけど、ヒーローへの憧れは未だに消えない。それどころか、年々様々なヒーローの事を調べて周りからはヒーローオタクとまで言われている。

今僕は受験に向けて勉強をしている。受けるのは雄英高校。ヒーロー科があり、僕の憧れでもある。

 

「あーお前ら、進路希望配るけど、殆どヒーロー科を受けるんだよな?」

 

「「「「当たり前だよ(ろ)」」」」

 

「オレはお前らモブとは違って雄英に行くけどな!!オレはそこでオールマイトをも超えて、No,1ヒーローになって高額納税者になるんだよ!!!!!」

 

彼は爆豪 勝己。僕の幼馴染みで何でも出来る、僕の通う中学始まって以来の天才と先生に言われている。僕とは才能が違う存在だ。

 

「あー爆豪は雄英だったな。そう言えば緑谷、お前も雄英志望だったよな?」

 

先生が言ったその言葉にクラスのみんなが僕に視線を向け、言葉を発してきた。

 

「辞めとけよ!!緑谷!勉強が出来るだけでヒーローにはなれねぇぞ!!」

 

「ヒーロー科に無個性は無いだろ!(笑)」

 

「思い出受験の邪魔してやるなよw」

 

みんな僕をバカにするけど

 

「そんな決まりはもう無いよ!前例が無いだけで、僕だっt」

 

BOOOOOM!!!!!!

 

「デク!!!ゴラァ!!!!お前みたいな無個性野郎が雄英を受けるだと!?寝言は寝てから言えや!!クソナード!!!」

 

「がっっ!!!」

 

僕はかっちゃんに教室の後ろまで押され叩きつけられた。かっちゃんは昔から僕が憧れている身近なヒーローでもあった。でも、そんなかっちゃんに否定されるのは一番辛い。

 

「てめぇごときクソナードがオレと同じ道を進もうとするんじゃねーよ!!現実を見ろや!」

 

かっちゃんは今にも僕を叩きのめそうと腕に力を込め始めた。

 

「辞めろ爆豪!!!校内で個性を使って問題を起こしたら進路にも影響するんだぞ!」

 

「チッ!!クソが!!!」

 

担任の一言でかっちゃんは僕を解放した。

 

 

 

 

〜放課後〜

 

「オイ!クソデク!」

 

帰ろうとしたらかっちゃんや他の男子が僕に絡んできた。

 

「な…なに?かっちゃん…」

 

「まだ話は終わってねぇだろうが。オレはこの平凡な市立中学から唯一の雄英進学者になるんだよ!お前みたいな無個性には雄英を受けることすら認めねぇ。オレの逸話に泥ぬるんじゃねぇよ。」

 

かっちゃんは僕にそんな事を言ってきた。

 

「でも…僕は、それでもっ!?」

 

「お前はオレの踏み台にすらなれねぇんだよ!!!!」

「つーわけで、雄英を受けるなよ。ナードくん」

 

「何か言い返せよ、緑谷。」

 

「ナードくんは中3にもなってまだ現実が見えて無いのですよ。それでもヒーローになりたいなら、窓から飛び降りて来世に掛かれば良いんだよ。」

 

かっちゃんのそんな言葉が聞こえた。

僕はもう、ヒーローになれないのかもしれない、無個性だから……そんなんだったら……

 

「オラ!クソナードなんかほっといて、さっさと帰ろうぜ!」

 

「そうだね、かっちゃん。」

 

「あ?」

 

僕は窓際に行き扉の前にいるかっちゃんの方を向く。

 

「確かに僕は無個性だ。君の、君たちの言う通りヒーローにはなれないのかも知れない。だったら、かっちゃんが今言ったみたいに来世に期待するよ。」

 

「なっ、!?」

 

「じゃあね、かっちゃん…」

 

そうして僕は窓から後ろ向きに落ちた。

ほんの少し、身体を浮遊感が襲ったと思ったら背中から身体中に激痛が走った。

 

(お母さん、ゴメンね…)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おい、緑谷が落ちたぞ!!」

 

「先生呼んで来い!!早く!!!」

 

「急がないとやばいぞ爆豪!!」

 

オレは何が起きたのか理解出来ない。デクが、あのクソナードが窓から落ちた。オレはとんでもないことをやってしまったのかも知れない。オレは……

 

「カツキ!!!!!」

 

学校でよく連む奴に名前を呼ばれオレはやっと動き出せた。今は取り敢えず動こう。今はそれしか出来ねえから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ココはどこだろう……目が覚めたら僕は見たことの無い白い空間で寝ていた。僕は死んだのかな?

 

「出久!!!」

 

声のする方を見ると母さんが泣いていた。口に何か付いてるせいで喋れないけど、お母さんの握る手を今出来る限りの力で握り返す。お母さんはまた僕の事で泣いている。個性が無いと分かったあの日。そして今度は学校での無個性が原因によるイジメ。また僕は無個性という事でお母さんを泣かせてしまった。

身体が動くようになったら身体も心も強くなろう。無個性でも僕を大事に思ってくれる人が居るんだから。



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始まりの一歩

僕が目を覚ましてから5日がたった。お母さんは毎日お見舞いに来てくれる。僕は本当に申し訳ない事をしてしまった。無個性だからって理由だけで人生諦めたりして、お母さんはこんな無個性な僕でも大切に思ってくれてるんだ。僕も、無個性だからって悩んだりしない。

 

グゥ〜〜〜!!

 

「病院の食事って量が少ないんだよなぁ。」

 

僕はお母さんが持ってきてくれたお見舞いのフルーツを食べようとした。するとその中に見たことも無いフルーツが入っていた。

 

「なんだこれ?変な色してるなあ。形はメロンみたいだけど…食べれるのかな?」

 

明らかにヤバい見た目なのだがお母さんがせっかく僕の為に持ってきてくれたんだからそんな事言ったらダメだと思い、僕はそのフルーツを手に取った。

 

「あ、柔らかい。他にもメロンやマンゴーとかあるけど、包丁無いからこのフルーツ食べてお昼まで待とう。」

 

僕はその変わったフルーツを手に取り食べた。すると……

 

「!!!???!!!、まっずい!!なんだコレ!とてもじゃ無いけど食べれる味じゃ無いな!僕もよく飲み込めたよこんなモノ!」

 

とは言え、食べ物を粗末にする訳にも行かないので僕は残りを二口程で頑張って平らげた。

 

 

 

 

お昼過ぎ

 

「出久、お見舞いに来たよ。」

 

お母さんが今日も来てくれた。忙しいのに申し訳ない。

 

「ありがとう、お母さん。1つ聞きたいんだけど、アソコのフルーツを持って来てくれたのはお母さん?」

 

僕はお昼前に食べたフルーツの事を含めてお母さんに聞いてみた。

 

「ん?そうよ?貴方が目を覚ましたって聞いてお母さんすぐ買いに行ったんだから!」

 

「その中に紫色のメロン見たいなフルーツって覚えてる?」

 

「え?そんなの入って無かったと思うけど……なんでそんな事聞くのよ?」

 

「いや、何でもない!もしかしたら夢とごっちゃになってるのかも!!」

 

僕はすぐに誤魔化した。また変な事をしてお母さんを心配させる訳には行かないから。

でもお母さんが知らないとなると、あのフルーツはいったい誰がどこから持って来たんだろう。

 

「お母さん、僕ちょっとトイレ行ってくる。」

 

僕はトイレに行こうとするとお母さんが

 

「一緒に行くよ」

 

と、言って来たので僕は慌てて

 

「恥ずかしいからイイよ!リカバリーガールのお陰でもう歩けるんだから、1人で行けるよ!」

 

僕が入院した時、治癒の個性を持つ妙齢ヒロイン、リカバリーガールがたまたま病院に出張で来ていたらしく、リカバリーガールが治療をしてくれた。そのお陰で僕は入院してから5日という少ない日数で歩けるまでに回復したのだ。

僕は恥ずかしさから1人で行こうとお母さんの横を通ったらお母さんに腕を掴まれた。

 

「万が一倒れたら危ないんだから、ついてい…」

 

お母さんに腕を掴まれてるのに抵抗もなく歩けている。と思ったら、お母さんの言葉が急に止まったので後ろを振り向くと

 

「っっっ!!!???」

 

お母さんが凄く驚いた顔で握った僕の腕を見ていた。

もちろん僕も驚いている。だって

 

「えーーー!!!!??腕が伸びてる!!??何これ!?僕どうしちゃったの!?」

 

それから僕は看護師さん達に止められるまで騒いでしまい、すぐに先生の所まで連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻って出久が飛び降りた日の夜。

 

「勝己、あんた自分が何したのかわかってるの?」

 

オレは今、ババアに叱られている。普段は口うるさく叱られたり怒鳴られたりしても言い返してたが、今のオレにはそんな気は到底起きない。流石のオレでも今回の件は反省している。

オレが黙ってると、ババアに左頬を叩かれた。

 

「あんたは成績が良いから多少の事でも今までは少し口うるさく言うくらいにしてたよ。でもね!友達を、昔から一緒にいる幼馴染みを落として死なせようとするなんて思わなかったよっ!!」

 

返す言葉も見当たらねえ。オレは正直言ってデクの事をバカにしていた。デクだけじゃなく、学校の奴らはみんな下に見ていた。オレより優れた奴なんか居ないから、先公もオレの態度が悪くても強く言わないから、オレは誰よりも成績が良いから。オレは調子に乗っていた。でも、オレは心のどこかでデクなら何しても平気だと思ってた。昔から何をしても後ろに引っ付いて来てたから。だけど今回は……

 

「勝己!!何か言ったらどうなのっ!!!」

 

「母さん、少し落ち着いて。部屋に戻って休んでな。」

 

ババアがオレを叩こうとした時、いつも静かなオヤジが止めに入った。

 

「でも!!あたしは母親として!!」

 

「それは僕が言っとくよ。いつも家庭の事、勝己の事は全部母さんに任せっきりだからね。こんな時くらいは任せてよ。」

 

オヤジがそう言うとババアはリビングから出て行った。それを見送ったオヤジはオレの方を向き話しかけて来た。

 

「勝己」

 

「っ!??」

 

静かに、それなのに力強く名前を呼ばれた。いつも物静かでババアの尻に敷かれてる情けないと思ってたオヤジがこんなに強い人に見えるとは思わなかった。オレはどこかで自分の親まで舐めてたみたいだ。

 

「今回の事件、何が悪いのか分かっているね?僕は勝己の事も家庭の事も全て母さんに任せているから勝己が普段どんな事をして、どんな友達と一緒に居るのか知らないよ。だけど今回、勝己の一言で出久君は身を投げてしまったんだろう?」

 

オレは頷いた。

 

「勝己には勝己の、出久君には出久君の想いが有ったんだと僕は思う。だけど、遊びだろうと、冗談だろうと、人を傷つけちゃいけない。勝己が目指してるヒーローは人を助ける存在だからね。でも、今日やった事はヴィランがやってる事と変わらない。」

 

そう言ってオヤジはオレの横に座った。

 

「勝己は小さい時から何でも出来る子だったからね。自分を下に見られたり、自分より上がいるなんて考えもした事無いだろう。でも、必要以上に自分を下に見る事をしないのは勝己の良いところでもある。人は下と認め下を向くとやる事が全て伸びなくなってしまうからね。」

 

オヤジの言葉は一言一言に重みがあった。そしてオヤジはだけどと続けて。

 

「ヒーローを目指してるなら人を傷つけちゃいけないよ。人を傷つける事はヴィランと一緒だからね。」

 

「今回の事を今後、どう活かして行くかは勝己しだいだよ。でも僕は、勝己ならきっと、ちゃんと答えを出せると思うよ。応援してるからね。」

 

「父ちゃん……」

 

父ちゃんはそう言って、リビングを出て行った。

初めて見た男として頼もしく力強い父親を。オレは本当に今まで調子に乗っていた。少し周りより優れているからって、家を支えてる親にまで歯向かっていたんだから。

 

「オレは……ヒーローになるんだ。ヴィランから人を助ける、オールマイトみたいなかっけえヒーローに!」

 

その為にはまず、デクと母ちゃんに謝ろう。デクは許してくれないと思うけど、それでもオレは自分が今までデクにやって来た事に対してケジメをつけなきゃならないから。

母ちゃんにも散々迷惑や苦労をかけて来たから、その事を謝ろう。

オレはデクが許してくれるまでヒーローにはならない。そう心に誓ってオレは部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は病院に戻り

 

「凄い奇跡ですよ。出久君は個性を発動しています。個性の名前はゴム人間。」

 

僕とお母さんはいま担当医の先生の前で説明を受けている。理由は勿論僕の腕が伸びた事だ。あの後僕は急いで先生の所まで連れていかれ、様々な精密検査を受けた。

 

「先生…出久は無個性の筈なんですが…」

 

「恐らくは死の間際に瀕して、身体が突然変異を起こしたのでしょう。可能性としてはあり得なくは無いですが、まさに奇跡と言えるでしょう。」

 

「出久の身体は大丈夫なのでしょうか?」

 

お母さんの疑問も最もだ。無個性の僕がいきなり個性を発動したんだから不安になるのもしょうがないと思う。僕だって腕が伸びた時は怖かった。でも

 

「検査の結果ですが、出久君の身体はゴムになっていました。筋肉や骨、血管など、身体の全てがゴムになっていました。簡単に言うと身体は伸びて骨折をしなくなると考えて頂けたらと思います。その他の事は今後出久君が自分で調べて行くしか無いでしょう。」

 

「はい!!頑張ります!!」

 

無個性だった僕が個性を発動出来た事に今は興奮を隠しきれない!!

 

「取り敢えず身体の方はリカバリーガールのお陰でもう異常はありませんので、明日にでも退院して大丈夫でしょう。」

 

「わかりました。また何かありましたら宜しくお願いします。」

 

「はい、個性の事で協力できる事が有りましたら出来る限りの事はさせて頂きます。」

 

そうして僕とお母さんは病室に戻った。

 

「お母さん、僕やっぱりヒーローになりたい。雄英に行きたいんだ!」

 

「それは出久が個性に目覚めたから?」

 

「それは…」

 

「たまたま目覚めた個性でヒーローになりたいって言うなら、お母さんは認めないわよ。」

 

お母さんの言う事は分かる。死にそうになって手に入れた個性だからお母さんが心配するのも分かる。だけど!!

 

「確かに個性が発動して嬉しかった。ラッキーだとも思ったよ。だけど僕は無個性だとしても、雄英を受けてたよ。雄英に受からなくても僕はヒーローを目指してたと断言できる。だって僕は、オールマイトのようなヒーローになるのが夢だから。だから僕は雄英を受けたいんだ!!」

 

僕はお母さんに自分の思っている事を全て伝えた。例えダメと言われても僕は受ける。そう心に強く決意したんだ!!!

 

するとお母さんが笑いながら

 

「そこまで決意が決まってるなら、何が何でも、例え誰に笑われても、ちゃんとした立派なヒーローになりなさい。お母さんは出久の最初のファンだからね!!頑張りなさい!!」

 

お母さんのその言葉に僕は涙が溢れてきた。こんなどうしようもない僕を応援してくれる事が嬉しすぎて!

 

「ゔん!!がんばるよ!!!おがあざん!!」

 

「ヒーロー目指すなら、その泣き虫とネガティブな思考治さないとダメよ」

 

そう言ってお母さんは僕を抱きしめてくれた。

 

次の日の午後僕は退院した。



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仲直りと新しい道

「出久、無理して学校行かなくても良いのよ?まだ休んだって…」

 

「大丈夫だよ。学校に行ったら、多分みんなに色々と言われると思うけど、それでも僕はヒーローになる為に前に進むって決めたから!」

 

僕が退院して1週間が経った。アレから僕は家の中で出来る筋トレを毎日してる。オールマイトの様な強いヒーローになるには身体を鍛えないとダメだと思ったから。

病み上がりなのにってよくお母さんに怒られるけどね。

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「安心してよ。僕はもう大丈夫だから。じゃあ行ってきます!!!」

 

僕は元気よく学校に向かう。今日から復帰だけど正直ちょっと怖い。またみんなに何かを言われるかと思うと学校には行きたく無くなる。けど

 

「他の人に言われたくらいでもう諦めたりしないぞっ…!」

 

僕は再び決意を固くして学校に向かう。いや、向かおうとした。

 

 

 

 

「おい、デク」

 

僕はせめて学校で会いたいと思いながら声がする方を振り返った。

 

「…か、かっちゃん……」

 

「話があんだけど、一緒に行って良いか?」

 

「え!?あ…うん」

 

僕は驚きのあまり返事をしてしまった。今までのかっちゃんからは想像も出来ない言葉だった。僕の知ってるかっちゃんは僕に話かけるのに許可を取ったりしないからだ。そしてかっちゃんは僕の横を歩いた。

 

「……………」

 

「…………」

 

お互いに言葉を発さないで歩いている。かっちゃんと歩くのは何年振りだろうか。

 

(何言われるのかなぁ……僕が飛び降りた事で進路に影響が出たのかなぁ…)

 

僕がそんな事を考えてるとかっちゃんが口を開いた。

 

「その……怪我は大丈夫か?思ったより早く復帰出来たみたいだけどよ」

 

「えっ?あ…うん。その、あの日偶々リカバリーガールが病院に居たらしくてさ、治癒の個性を使ってもらえたんだ。だから早く治ったんだよ」

 

「…そうか。そりゃ良かったわ」

 

かっちゃんの様子がいつもと違う。僕まで変な喋り方になりそうだよ!そんな事を思ってたらかっちゃんが急に止まった。

 

「デク、ごめんな…」

 

「っ!?」

 

「オレ、今まで調子に乗ってた。個性が優れてて、他の奴より勉強が出来るってだけで周りを見下してた。」

 

「……」

 

僕は何も言わずに黙ってかっちゃんの話を聞く。

 

「オレは正直、デクになら何をしても平気だと勝手に思っちまってたんだ。お前はオレに何を言われて、何をされても、いつも付いて来たから、心の何処かでお前を1番下に見てた。」

 

「でも、あの日お前が窓から飛び降りて、親に叱られて初めて気付いたんだ。オレが今までやって来た事はヴィランのやってる事と何にも変わらねえって。」

 

「お前に今までの事を謝って、許してほしい訳じゃ無えんだ。コレはオレの自己満足でありケジメなだけなんだ。」

 

「本当にごめん!!デク!」

 

かっちゃんが、あの完璧なかっちゃんが僕に頭を下げて謝ってる!?

 

「かっ、かっちゃん!頭を上げてよ!」

 

「悪い、こんな人目のつく所でやるのは迷惑だった、ごめん」

 

「違うよ!アレは僕も悪かったんだ。ハッキリと拒絶をしないで、そしてあの日自分を信じられないで飛び降りた僕の弱さが招いた事なんだよ!」

 

「違ぇよ!!アレは、お前を今まで散々追い詰めて、それでいてトドメの一言を言ったオレが悪いんだ!」

 

お互いが激しい口調で言い争い息を切らしている。とても登校中の光景には思えない。

 

「はぁ…はぁ……」

 

「かっちゃん、じゃあ今回の件お互いが悪かったって事にしよう」

 

「あぁ!?そんなの意味がわかんねえだろ!?お前を散々傷つけて、追い詰めて、死なせかけて、なんでこんなオレを許せるんだよ!!」

 

「かっちゃん!!僕は、君と昔みたいに一緒に居たいだけなんだ!!!それでもかっちゃんが自分を許せないって言うなら今から言う事を守ってほしいんだ」

 

僕はかっちゃんに自分の思いを伝えた。かっちゃんはまだ納得して無い感じだけど僕は1人で話を続ける。

 

「1つ目は僕がヒーローを目指して夢見る事を否定しないでほしいんだ」

 

「…わかった」

 

「2つ目は僕の個性の事を黙っていて欲しいんだ」

 

「ああ、わかっ………デク、今なんて言った?」

 

「僕の個性の事を黙っていて欲しいって」

 

「お前!個性が出たのか!?」

 

かっちゃんが驚きながら僕の肩を掴んで来た。

 

「うん。お医者さんは奇跡的に出たって言ってた。この個性は辛い事が切っ掛けで目覚めたけど、僕はこの個性でヒーローを目指すよ」

 

かっちゃんは僕の目を見て驚きながらもしっかりと答えてくれた。

 

「…わかった。もうお前をバカにしないし、お前の夢を否定しない。個性の事は複雑だけど、お前が言わないでくれって言うなら誰にも話さねえ。約束する」

 

「うん!ありがとう、かっちゃん!!」

 

「バカやろうっ…!お礼を言いたいのはっオレの方だっ!!」

 

僕らは笑顔で、それでいて泣きながら仲直りを果たした!!僕たちはココで初めて友達になれたんだ!!!!

 

 

 

気付いたら時間はギリギリに迫っていた。今僕たちは走りながら学校に向かっている。と言っても、かっちゃんが僕に合わせて走ってくれている。先に行って良いよって言ったら

 

「遅れるなら2人一緒でも変わらねぇよ」

 

って言ってくれた。僕は本当に嬉しくて顔がにやけている。そしたらかっちゃんが話しかけて来た。

 

「デク、お前どんな個性なんだよ」

 

「えっとね、身体がゴムになる個性」

 

「ゴムか、伸びるのか?それとも弾力があるのか?」

 

「一応どっちもあるみたい。腕も10メートルくらい伸びたし、転んだ時も痛くなかったから」

 

「鍛えれば強くなりそうだな。色々と使えそうだし」

 

「うん!だから、今日の放課後から鍛えようと思ってさ!」

 

「そうか、ならオレも一緒に付き合って良いか?」

 

「え!?かっちゃんは、充分強いじゃ無いか。鍛える必要ある?」

 

僕はかっちゃんが一緒に訓練すると言って驚いた。かっちゃんからそんな言葉が出るとは思わなかった。

 

「デク、雄英受けるんだろ?なら一緒に受かろうぜ!オレたちでよ!!」

 

僕はかっちゃんのその言葉が嬉しくて泣きそうになる。

 

「デク!一緒に頑張ろうぜ!!」

 

僕は目に溜まった涙を拭いて笑顔で言った!

 

「うん!かっちゃん、よろしくね!」

 

 

2人の幼馴染みは今日、真の親友の第一歩を歩き出したのだった。

 

 

 

 

僕たちは5分前になんとか学校に着いた。かっちゃんが前に立って教室に入ってくれたから僕も続けて入りやすかった。席に着きいつも書いていたヒーローオタクノートを取り出して、昨日話題になっていた新人ヒロインのMt.レディの事を書こうとしてると、目の前に人が立っていた。

 

「緑谷…」

 

そこに居たのは僕をバカにしていたクラスメイト達だった。

 

「緑谷、今までごめんなさい!」

 

「「「「「「「緑谷(くん)ごめんなさい!!」」」」」」」

 

「えっ!?」

 

僕がテンパっていると、かっちゃんが僕の席までやってきた。

 

「コイツら、あの後オレと一緒で今までの事悪いと思って反省したみたいなんだよ。先頭に立ってたのはオレだから悪いのはオレだって言ったんだけどよ…」

 

「違うぜ、カツキ。誰が言い出しとか、そんな事は関係ないんだよ。俺たちは緑谷をイジメてたんだ。その事実に変わりは無いし反省して謝らなきゃならないんだ」

 

「らしいんだよデク。改めてオレも、デク、今までの事本当にごめんなさい!!」

 

「「「「「「「「ごめんなさい」」」」」」」」

 

僕はかっちゃんの説明を受けてなんとか理解した。

 

「謝ってくれてありがとう。でも、僕も辞めてって言えなかったから、僕ももっとはっきりと言えてれば良かったと思うんだ。だからごめんなさい。コレで仲直りしようよ!」

 

僕がそう言うと最初に話しかけてきた男の子がビックリした顔で

 

「許してくれるのか?こんなオレたちを」

 

「うん。コレからは宜しくね」

 

僕が握手を求めて手を出すと男の子は泣きながら手を取り

 

「ありがとうな…!緑谷ッ!」

 

こうして僕はクラスメイト達とも仲直りをして新しい学校生活を送り始めたのだった。



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無謀なお節介

放課後、僕は先生に職員室に呼ばれている。進路のことで話があると言われた。

 

「すまなかったな、緑谷。お前がそこまで追い詰められてしまったのは私が止めなかったからだ。お前が何も言ってこないから大丈夫だと、勝手に思ってしまっていた。本当にすまない!」

 

と言って先生は頭を下げた。他の先生もビックリしている。

 

「頭を上げて下さい!先生!!僕はもう大丈夫ですから!」

 

「僅かだが雄英の過去に出た傾向のある問題を集めて私なりの過去問を作ってみた。後は面接の練習を今度しよう。コレを使って頑張ってくれ」

 

先生はそう言って過去問と様々な雄英の資料を紙袋に入れて渡してくれた。

 

「話は以上だ、気をつけて帰りなさい」

 

先生なりの謝罪だと思った僕はコレを有り難く受け取ることにした。

 

「ありがとうございます!頑張ります!!失礼しました!」

 

僕は職員室を後にした。

教室に戻るとかっちゃんが僕を待っていてくれた。朝の約束を覚えていてくれたみたいだ。

 

「終わったのか?」

 

「うん。帰りながらかっちゃんにも話すよ。雄英関係の話だったし」

 

「ん。じゃあ帰り道で頼むわ」

 

「うん、じゃあ帰ろう。あ、待っててくれてありがとう!かっちゃん!」

 

「うるせぇ!早く帰んぞ!!」

 

そう言ってかっちゃんは先に教室を出て行ってしまった。僕はかっちゃんに怒鳴られてるのに嬉しくなり笑顔でその後を追った。廊下に出るとかっちゃんは既に居なかった。

 

「えっ!?嘘、はやっ!!」

 

僕は急いで下駄箱まで走った!下駄箱について靴を履き替えたらかっちゃんが校門で待ってくれてた。

 

「遅ぇぞデク!さっさと行くぞ!」

 

「かっちゃん待ってよ!」

 

こうして僕は復帰1日目の学校を終えた。

 

「で、先公に何言われたんだ?」

 

「あ、雄英の過去問と資料を貰ったんだよ。過去問は先生が作ってくれてさ。かっちゃんにも渡そうと思ってさ。」

 

「じゃあウチに来てコピーさせてくれよ。オレはそれで充分だからよ」

 

「わかった。じゃあ今日の帰りに行って平気?」

 

「ああ、それで頼むわ。それで、特訓はどこでやるんだ?」

 

「あ、それなら海浜公園でゴミ掃除がてらやろうかなって思ってさ。あそこなら大きいゴミとかあるから掃除しながら筋トレ出来て、砂浜を歩けば足腰鍛えられるかなって」

 

僕は休んでいた間に何処なら人の迷惑にならないで鍛えられそうな所を探していたら海浜公園の事を思い出した。あそこは海流の影響で海から様々なゴミが打ち上げられ、片付けてもゴミがどんどん増えるのだ。それを理由に不法投棄も相まって海浜公園はゴミの山になっている。

 

「あそこか、確かにデカいゴミとか色々と捨てられてたな。鍛えるには丁度良いかも知れないな。でも、あそこは勝手に入っても良いのか?」

 

「安心してよ、かっちゃん!もう地元のプロヒーローと警察には電話をして許可を貰ってるから!!」

 

僕は調べたその日にヒーロー事務所に電話をした。最初は危ないからと許可を貰えなかったが、この話を聞いていたプロヒーロー『デステゴロ』さんが許可を出してくれた。ゴミを種類ごとに分けて分かるように置いとくなら暗くなるまでやって良いと言って貰えた。ゴミは週2回デステゴロさんの後輩のヒーローが取りに来てくれるらしい。

 

「おまっ!相変わらず行動が早えな!」

 

「折角だからね。早く力を付けてかっちゃんに少しでも近づきたいんだ。最終目標はオールマイト!だけど、身近な僕のヒーローはかっちゃんなんだ。だから目標にさせて貰うよ!!だけど、憧れてるだけじゃ無いからね!僕は君をライバルだと思ってるんだ!」

 

僕はかっちゃんにライバル宣言をした。するとかっちゃんは一瞬驚いて、だけどすぐに笑いながら。

 

「へっ!オレのライバルになるならもっと強くならねえとな!!」

 

「当然だよ!!離れすぎてるんだから、追い続けるまでだよ!かっちゃん!!」

 

「よく言った!一緒に高みを目指すぞ!!デク!!!」

 

「うん!!!」

 

僕とかっちゃんは拳を合わせてまた歩き出した。商店街に差し掛かった所で人だかりが出来ていた。

 

「どうしたんだろ?」

 

「ヴィランでも出たのか?」

 

僕は疑問に思いながら見物客の人に聞くと、あのヘドロみたいなヴィランは他人を操ることが出来るらしく、女の子が囚われてしまってるらしい。またヴィランの身体は掴めないのでプロヒーロー達も手が出せずにいるらしい。

 

「来るな!!!来たらコイツを殺すぞ!!」

 

「くそ!掴めないから手が出せない!」

 

「有利な個性を持ってるヒーローはまだ来ないのか!!」

 

(プロですら手こずるヴィラン。なんて凄い個性なんだ!捕まってる子は…)

 

その時僕の目に入ってきたのは涙を流しながらなんとか抵抗している女の子の顔が見えた。

 

「たす……て!いやっ!!」

 

その時僕とかっちゃんはお互いの顔を見合わせた。不思議だ。さっきまで怖くて震えてたけど、かっちゃんが隣に居て顔を見ただけで震えが治った。

 

「かっちゃん、僕あの子を助けたい」

 

「止めても聞かねえんだろ?デク。お前は昔から自分の芯を貫く奴だったからな」

 

かっちゃんが笑いながらカバンを下ろして僕の目を見る。

 

「作戦は?」

 

かっちゃんが僕に聞いてくる。

 

「かっちゃんの方が機動力があるからアイツの近くに行って撹乱して欲しいんだ。ヴィランの意識が女の子からかっちゃんに移ってくれれば、僕がその隙に腕を伸ばして一気に引っ張り出して女の子を助ける!コレでどうかな!?」

 

この作戦はかっちゃんが危険な目に合う可能性が高い。僕にはコレしか思いつかない。だけどかっちゃんなら大丈夫だと僕は確信している。

 

「デク、それで大丈夫なんだな?」

 

「かっちゃんが危険な事は間違いないよ。だけど、僕はかっちゃんなら大丈夫だって信じてるから」

 

僕がかっちゃんの目を見て言うと

 

「そうか、こんなオレを1日で許して信じてくれるのか」

 

「うん!君の凄さはずっと近くで見てきたからね!!」

 

かっちゃんは照れ臭そうに笑いながら

 

「なら、その信頼に応えてやるよ!行くぞ!!デク!!!!」

 

「うんっ!」

 

僕たちは人垣をかき分けヴィランに向かって走り出した。

 

「へへっ!もう時期この女も意識が無くなる。なかなか抵抗したがそろそろ終わりだ。そしたらコイツを人質にしながら逃げ切ってやる!」

 

ヴィランが自分が逃げ切れると思っている所に僕とかっちゃんは現れた。

 

「オイ!!!クソヴィラン!!!てめぇ、そんな没個性を手に入れたくらいで良い気になってんじゃ無えぞ!!!」

 

「なんだガキ?ヒーローごっこがやりてぇなら他所でやんな。オレはガキ相手でも容赦しねえぞ!」

 

かっちゃん、そのセリフヒーローにはとても思えないよ!

 

「辞めろ少年達!危ないぞ!」

 

「逃げろ!」

 

プロヒーロー達から辞めるように言われるけど僕はもう止まれない。だって

 

 

 

 

「オラァァァ!!!!」

BOOOOOM!!

 

かっちゃんがもうヴィランと戦ってるんだもん!!

集中しろ!一瞬のチャンスを無駄にするな!時間が掛かれば掛かるほど、女の子が危ないぞ!

かっちゃんが距離を一定に保ちながらヴィランの意識を徐々に逸らしてくれる。避けるだけじゃなく、目の前で爆発させたり、爆音を耳元で鳴らしたり、様々な牽制を入れてくれている。

 

「このガキ!!付け上がるんじゃねえぞ!!お前から先に殺してやるよ!!」

 

BOOOOOM!!!!

 

かっちゃんがヴィランのパンチを個性の爆発を使って躱し、そのまま後ろに回り込んだ。

 

「ちっ!!ちょこまかとハエみたいに鬱陶しいガキだ!!」

 

「今だ!!」

 

ヴィランの意識が完全にかっちゃんに代わった!僕は腕を思いっきり伸ばした!

 

(掴んだ!このまま、引っ張り出す!!)

 

かっちゃんに集中していたヴィランは僕が女の子を引っ張ってる事に気づくのが遅れた。そのお陰で僕は女の子を引っ張り出せた。僕は女の子をそのまましっかりと掴んで後ろに下がる。

 

「かっちゃん!!助けれたよ!!」

 

「っ!!ガキぃっ!!!待て!!」

 

ヴィランが僕の方に向かおうとするけど

 

「行かせねえよ。オレの親友の所には」

 

「ならお前からだ!!!」

 

「いや、終わりにしてやるよ!閃光弾(スタングレネード)!!」

 

かっちゃんがそう叫ぶと目を瞑っても防ぎきれないくらい光が発せられた。それによりヴィランは動きが完全に止まる。

 

「グワァーー!!!目が!耳が!!」

 

「…っ!!?捕らえろ!」

 

コレを逃さずプロヒーローと警察がヴィランの確保をしてこの事件は解決をした。

 

 

 

「なんて危険な事をするんだ!!下手をしたら君たちまで危ない目にあったんだぞ!それに、個性の使用も法律で禁止されているんだぞ!」

 

「君たちは危険な事をして我々警察やヒーローの邪魔をしていたかもしれないんだぞ!」

 

僕たちは今警察のお叱りを受けている。確かに自分たちが個性を勝手に使用してヒーローの邪魔をした事は分かっている。だけど、それでも僕は助けを求める人を放っては置けなかった。すると怒られている僕たちの元にヒーローがやって来た。

 

「その辺にしてやってくれませんか?」

 

プロヒーロー、デステゴロさんが僕たちに声をかけてくれた。

 

「今回のヴィラン、捕まえられたのは間違えなく彼らのお陰です。確かに危険な事をしましたが、彼らは間違いなく、ヒーローでした!!私はヒーローでありながら自分の個性では通用せず、ただ傍観している事しか出来ませんでした。ヒーローとして情けなく思います」

 

そう言ってデステゴロさんは警察の方達に頭を下げた。

 

「今回の件!私、デステゴロの責任として、事を済ませて頂きたく思います!」

 

「……」

 

警察の人達もプロヒーローが頭を下げて子供の無茶の責任を取ろうとしている事に驚き、戸惑っている。双方がどうするか悩んでいると、空から声が聞こえてきた。

 

「その必要は無いぞ!デステゴロくん!!何故かって?……私が来た!!!!」

 

上からオールマイトが降ってきた……

 

「………っ!?オールマイト!!!???僕、貴方に憧れているんです!!!サイン頂けませんか!!?」

 

「うるせぇぞ!デク!今は大人しくしとけ!!」

 

こんな時でもデクは何時も通りであった。

 

「ゴホン!!……どういう意味ですか?オールマイト。平和の象徴たる貴方がこの子供たちの味方をするとは」

 

「そのままの意味だよ。あのヴィランは、本来私が捕まえなければならないヴィランだったのだ。それを私は移動途中に奴に逃げられてしまったのだよ。今回のこの一件、オールマイトの責任として罰せられる事はあっても、そこの少年達やデステゴロくんが責められる事は一切無いんだ」

 

僕は驚いた。画面の中では無敵、ネットを調べれば無敗のヒーローが失敗をした。今回の件は自分の責任だと言ったのだから。

 

「言い訳はしないよ。何時も通り、楽勝だと思って舐めていたかも知れないからね。だからこそ、今回の件は私1人の責任なのさ」

 

「オールマイト!そんな事は関係ありません!ヒーローはいつでも困ってる人を助けなければいけない!なのに私は動く事が出来なかったのです。ですので!オールマイトの所為では!」

 

「なら、今回の件は、オールマイトとデステゴロに2週間の無償奉仕活動を罰とする事で良いかな?」

 

オールマイトとデステゴロさんが言い争いをしていると、ハットを被りコートを来た人が現れた。

 

「塚内警部!!」

 

「ご苦労様。…それで良いかい?オールマイト、デステゴロ」

 

「塚内くん…」

 

「分かりました」

 

「オールマイト、君も人間なんだ。No.1や平和の象徴と言われているが、背負いすぎるのは良くない。今回はコレで納得してくれるね?」

 

「……ありがとう、塚内くん」

 

「そうと決まれば早く終わらせて撤収するぞ!やる事はまだまだあるんだからな!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

塚内警部がそう言うと警察の人達は他の所に行ってしまった。

 

「君たちもそれで良いかい?今回の件、世間から賞賛される事は無くなってしまったけど」

 

「別に構わねえよ。んなもんが欲しくて助けた訳じゃねぇからな」

 

「僕も、かっちゃんと同じです。悩むよりも先に助けたいって思いが出ただけですから」

 

「君たちは立派なヒーローだよ。警察関係者を代表してお礼を言わせてくれ、ありがとう!」

 

塚内警部にお礼を言われて僕たちは帰宅の許可を貰った。今回の件は最初からいない事にする為に僕たちの事情聴取は先程の軽いやり取りで終わりで良いと言われた。

 

「今日はゴメンね、巻き込んじゃって」

 

「気にすんな、オレだってヒーローになるんだ。助けを求めてたら助けるのは当然だろ?」

 

かっちゃんはそう言ってくれた。そうして2人で話しながら帰っていると

 

「わぁたぁしぃがぁ!!!突然曲がり角から来たぁ!!!」

 

言葉通りにオールマイトが滑り込むように出てきた!!

 

「「オールマイト!?」」

 

まだ今日の騒動は終わりそうに無さそうです。




いつも読んで頂きありがとうございます。コレからも頑張るのでよろしくお願いします。


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秘密

この小説ではワン・フォー・オールの事をOFAと所々記載させて頂きます。


ヴィランとの騒動の帰り道、僕とかっちゃんの前にはオールマイトが立っている。僕たち2人の憧れであり目標でもあるヒーローが目の前にいる。驚きのあまり声も出せない。

 

「ん?どうしたんだい少年達!!私、オールマイトだぞ?驚き過ぎたぞ!ハッハッハッハァ!!!」

 

「…なんでオールマイトが、さっきまで警察の人やヒーローとインタビュー受けてた筈なのに」

 

「そんなの、少し話せば大丈夫さ!私は忙しい身の人間だと言うのはみんな知っているからね!!」

 

オールマイトが教えてくれた。確かにいつも何処かで人々を守ってるヒーローだ、忙しいからと言う理由で抜け出しても何も問題は無いと思えてしまう。

 

「で、その忙しいオールマイトがオレ達になんの様だよ?」

 

確かにかっちゃんの言う通りだ。話はさっきの現場で終わっているから何もない筈なんだけど…

 

「ココだと目立ってしまうから、少し移動しようか。海浜公園なら人目が付かないだろうからそこで話をしても良いかい?」

 

オールマイトと話せるなら僕は何処にだって行ける!!かっちゃんはどうだろう?横を振り向くとかっちゃんも頷いていた。

 

「ありがとう!なら私は先に行ってるよ!」

 

オールマイトは飛んで行った。

 

「遅くなるって母ちゃんに連絡入れとこうぜ」

 

かっちゃんにそう言われて僕はお母さんにメールを送った。

 

 

 

海浜公園に着いた僕たちはオールマイトを探していた。すると、ゴミ捨て場からオールマイトが現れた。

 

「来てくれたね、少年達!コッチで話そうか!」

 

そう言われて僕たちは後にくっついて行った。

 

「まず、ヴィランを取り逃がしてしまった事、そして君たちを巻き込んでしまった事を、平和の象徴である者として謝罪させて欲しい」

 

そう言ってオールマイトは僕たちに謝ってきた。

 

「そんな、謝らないで下さいオールマイト!僕たちもヒーローや警察の邪魔をしちゃったので……」

 

「デクの言う通りだ、ルールを破って個性を使ったんだ。オレ達がやった事はヴィランと変わらねぇよ」

 

かっちゃんの言う通りだ。僕たちがやった事は世間では迷惑を掛けても賞賛はされない行為である。そんな風に思っているとオールマイトが

 

「だが!!!ヒーローが手を出せずにいる中、あの少女を助けたのは他でもない君たちだ!そう!只の中学生の君たちがあの場に居た誰よりもヒーローだったんだ!!!」

 

ブワッ!!

 

その言葉を聞いたとき、僕の心の中のつっかえみたいなモノが取れた気がした。今まで散々無個性の事をバカにされてヒーローになれないと笑われた僕が、No.1であるオールマイトにヒーローと言われて嬉しくないわけがない!!気づいたら僕は涙を流していた。

 

「だからこそ、君たちにっ!?」

 

ボシュン!!!!

 

オールマイトから音が出て煙が上がった。僕たちが驚いて目を見開いてるとそこから現れたのはガリガリの男性だった。

 

「えええ!!!誰ですか!?オールマイトは!?」

 

「てめぇ!!さてはさっきのヴィランの仲間か!!オールマイトに化けるなんて厄介な個性使いやがって!ぶっ潰してやる!」

 

僕とかっちゃんが驚き、かっちゃんが戦闘態勢に入った時。

 

「ま、待ってくれ!!私はオールマイトなんだ!!信じてくれ!」

 

ガリガリの男性は自分をオールマイトと言った。よし、そんなにオールマイトを語るなら

 

「かっちゃん、僕に考えがあるんだ」

 

「どんなのだよ?」

 

「僕のオタク度を使うんだよ。僕がヒーローオタクなのはかっちゃんも知ってるでしょ?特に僕はオールマイトのファンだからマニアックな質問も出来るはずだよ」

 

「そんなので大丈夫か?デク」

 

「僕のオタク度を信じてよ!他人に引かれるくらいの自信はあるよ!!」

 

「自慢するところか?それ?」

 

かっちゃんに親指を立てて僕はオールマイトに振り向いた。

 

「今から僕は貴方に質問をします。答えられないなら偽物として警察に引き渡します!!良いですね!!」

 

「いや、だから私はオールマイトで…」

 

「本物なら答えられる筈です!行きますよぉ!」

 

 

 

〜30分後〜

 

僕は負けた…

 

「はぁ…はぁ……。貴方は、本物のオールマイトなんですか?」

 

「だから、さっきからそう言ってるじゃ無いか。大体、私が自分のこと聞かれて答えられない筈が無いだろ?」

 

「デク、どうすんだよ?」

 

「かっちゃん、本物のオールマイトだよ。いま僕がした質問はオールマイトファンクラブ(OMFC)でも答えられる人は片手で数える程度しか居ないんだ。だから信用して平気だと思うよ」

 

僕はかっちゃんにそう答えた。1問でも間違えたら偽物で決めれたのに、まさか答えられるとは思わなかった。

 

「ゴホン!なら、話を戻しても良いかい?」

 

「いや、アンタなんでそんな痩せてんだよ。血だって少し吐いてたし、大丈夫なのかよ?」

 

「爆豪少年…だったね。私は5年前にヴィランに襲撃を受けて今は体力が著しく落ちているんだよ。その時の怪我で呼吸器官半壊、胃袋の全摘出、度重なる手術と後遺症で憔悴していてね。私は1日で長くて6時間しかヒーロー活動が出来なくなってしまっているんだ」

 

「5年前……あっ!!もしかして毒々チェーンソーとの戦闘ですか!?」

 

「いや、私はあんなチンピラ如きには負けないよ。………しかし、君は本当に私の事なんでも知っているな!!」

 

「なんでそんな事が誰にもバレてないんだよ?」

 

「それは私が、世間に公表するのを辞めさせたからだよ」

 

「なんでですか…?そんな身体で、戦ったらどんどん悪化しちゃいますよ!!」

 

「その身体で無茶をする必要があんのかよ…オールマイト」

 

「そうだね、それは政府や警察の人に言われたよ」

 

「だったら!!」

 

「でもね、人々を笑顔で救い出す平和の象徴、オールマイトは決して悪に屈してはいけないんだよ」

 

僕は言葉を失った。どこかで僕はヒーローになる事を甘く見ていたのかも知れない。そんな命がけで傷だらけの身体でも、正義の為に身体を張り続ける事が僕に出来ただろうか。

 

「だが、今日の君たちを見て私は1つ確信を持てた。君たちに、私の力を受け継いで貰いたい」

 

「「……。え?」」

 

「なんだいその反応は!!本題はここからだよ!!少年たち!」

 

「私の個性は世間では怪力だの、ブーストだの書かれているがそうではない。私の力は『ワン・フォー・オール』コレは聖火の如く先代から受け継いできた個性なんだよ」

 

受け継いでいく個性!?そんなものがあるのか!?いったいどうやってそんな個性を受け継いできたんだ?方法は?それは何人に渡せるんだ?僕がOFAについて考えていると

 

「…そんな重要な事、オレ達に言って良いのかよ?」

 

かっちゃんの言う通りだ。オールマイトの個性が他人に渡せるなんて知られたらオールマイトに憧れているヒーローや一般人、最悪ヴィランまで狙って来かねない。僕がそんな風に考えていると。

 

「君たちの考えは概ね当たっているだろう。この個性の存在が知られたら世間どころか、世界が私の個性を手に入れようとするだろうからね」

 

「じゃあなんで僕たちに話したんですか?」

 

僕は当然のように疑問をぶつけた。オールマイトの言う通り、今の情報は間違いなく危険だからである。

 

「君たちが私の後継に相応しいと思ったからだ!あの時の君たちは間違いなくヒーローだったからだ!!」

 

オールマイトが僕たちを認めてくれた。それだけで無個性だった僕は嬉しかった。助けた能力では無く助けた事を評価して貰えたからだ。しかし、オールマイトの後継になると言うなら…

 

「オールマイト、後継はかっちゃんの方が良いです」

 

「それは何故だね?緑谷少年」

 

「僕は今まで無個性だったんです。少し前に偶然個性が発動したんです。そんな僕よりも、強いかっちゃんの方が後継に相応しいと思います!」

 

正直、悔しい。オールマイトの強さには憧れるけど、強く無い僕ではヴィランに負けてしまう。それなら僕より強いかっちゃんの方が相応しい。僕は純粋にそう思ってた。だけど……

 

「オレはいらねえ」

 

かっちゃんはオールマイトの後継になる事を断ったのだ!!

 

「…な、なんでだよ!?かっちゃん!君ほどの強さを持っていればオールマイトの後継、平和の象徴に相応しいじゃ無いか!!」

 

僕はかっちゃんに怒りを覚えていた。僕に無いモノを持っているのに、憧れてる人からの誘いを断るなんてって思っていた。

 

「なんでだよ!!かっちゃん!!」

 

僕は悔しさのあまり涙を流してかっちゃんを睨んだ。するとかっちゃんは

 

「オレは、お前を傷つけたことのある男だ。それに、今日の行動を言い出したのはお前だ、デク。人を傷つけ、自分から助けに行けなかったオレよりも痛みを知りながらも人のために動けるお前の方がオールマイトの後継に相応しいんだと、オレは思うんだよ」

 

かっちゃんの言葉に僕は唖然とした。僕が許したのにもかっちゃんはまだ自分の事を許して無かった。

 

「お前みたいなヤツが本当のヒーローなんだよ、デク。それによ、オレはこの個性を使ってオールマイトを超えるんだ!オールマイトを超えてオレは高額納税者になるんだ!!」

 

かっちゃんはどこまでもブレない。僕は勝手に決めつけて怒ったりして恥ずかしい。

 

「ごめんね、かっちゃん。キミの気持ちも知らないのに怒鳴ったりして」

 

「気にすんな。お前のオールマイトの憧れは知ってるからな。もう少し言い方に気をつければ良かったわ」

 

そう言ってかっちゃんは笑って許してくれた。ありがとう、かっちゃん!

 

「ふむ、なら後継は緑谷少年で良いかい?」

 

「「はい!(ああ!)」」

 

「わかった!後継は緑谷少年に決まりだな!」

 

「ところで、君たち高校はどこを受けるんだい?」

 

「オレたちは雄英一択だぜ!なぁデク!」

 

「うん!!」

 

そう言うとオールマイトは笑って

 

「なら私が君たち2人を鍛えよう!!私は君たちが気に入った!!私はOFAの後継を緑谷少年に決めたが、平和の象徴は君たち2人になって欲しいと思ってるからね!!」

 

オールマイトが僕たちを鍛える!?あのオールマイトが直々に!?僕は嬉しくて興奮が抑えきれない!!

 

「本当ですか!!?ありがとうございます!!じゃあ早速お願いします!!何すれば良いですか!?ここのゴミ捨て場は地元の警察とヒーロー事務所に掃除をする事で使用許可は貰ってます!!まずは……!!」

 

興奮して早口になる僕をかっちゃんが止めてくれた。

 

「おい!デク!興奮しすぎだ。オールマイトも引いてんぞ?」

 

「あっ!すいませんオールマイト!鍛えてもらえると分かったら嬉しくてつい……」

 

「まぁ気持ちは分かるけどな。あのオールマイトが鍛えてくれるんだ。興奮しない方がおかしいだろ」

 

かっちゃんも僕の気持ちは分かるらしい。態度や口調が変わるわけでは無いが顔が緩んでいる。するとオールマイトが笑いながら

 

「素晴らしいね!!君たちのその意欲とやる気は教える身としても嬉しいよ!!!だが、今日はもう遅い。だから今週の土日に私も時間を必ず作るから、その時に特訓を始めようと思う。それで良いかい?緑谷少年、爆豪少年」

 

「はい!貴方の後継になれるようにしっかりと頑張ります!」

 

「オレも、あんたを超えるために死ぬ気でやるぜ!オールマイト!」

 

「なら今日はもう帰ろうか。遅くまで付き合わせてすまなかったね。そして、ありがとう!じゃあまた今度な!2人とも!!」

 

そう言ってオールマイトは何時もの姿になって飛んで行った。

 

「帰ろう、かっちゃん」

 

「随分と遅くなっちまったな。母ちゃんに連絡は入れたが、怒られねぇか心配だわ」

 

「僕も多分怒られるよ。復帰初日で遅くまで帰ってこなかったんだから」

 

「じゃあ走るか!」

 

「うん!なるべく急ごう!」

 

「コレも特訓だな」

 

そう言って僕たちは走りながら家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

帰った僕を待っていたのは怒ってるお母さんだった。




読んで頂きありがとうございます。こんな初心者素人の作品がお気に入り300件を超えました。まだまだ始まったばかりですが、ここまでモチベーションを保ちながら書いてこれたのは、皆様のお陰でございます。今後も拙いながらも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


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特訓〜目指すは頂きへ〜

あの日から僕は身体を鍛え始めた。取り敢えず筋トレとランニングの量を増やしている。オールマイトの後継に相応しくなる為に、とにかく頑張っている。そして、放課後はかっちゃんと一緒に海浜公園のゴミ掃除をしている。コレが思ってた数倍キツかった。大小様々なゴミを運ぶには色んな筋肉が必要だった。腕の力だけで運ぶわけでは無かったのだ。砂浜は予想以上に足を取られ重いゴミを持ってる時は転ばないように慎重に運んでいる。そのせいで、掃除が思ってたよりも進んでいない。学校が終わってからは毎日かっちゃんとここに来ている。

 

「かっちゃん、本当にスタミナ凄いね。僕もうヘトヘトだよ」

 

「お前は重いゴミを運ぼうとし過ぎだ。オレが言わなきゃ小さいゴミ選ばねえだろ」

 

「だって、早く筋肉付けないとだから」

 

「身体にはバランスっつうもんが有るんだよ!重いのだけ運んでも身体のバランスは崩れるから小さいのを運んで様々な筋肉をバランスよく鍛えんだよ!!」

 

「えっ!?バランス?そんなに大事なの?」

 

「腕力だけ鍛えても、足腰が弱けりゃ踏ん張れねえ。そんなんじゃ攻撃も守りも強くならねえんだ。バランス良く鍛える事が大事だとオレは思うんだよ」

 

確かにかっちゃんの言う通りだ。腕だけ鍛えても身体を支える足腰を強くしなきゃ倒れてしまうし、逆に足腰ばかり鍛えても人が生活で主に使うのは手だ。いざという時は手が出てしまう。つまり、人間の身体は天秤なんだ。バランスが悪いと平行に保つ事が出来なくなってしまう。

 

「ありがとう、かっちゃん。僕、少し焦ってたみたいだ。オールマイトの後継になる為に少し無理してたみたいだ。入試までまだ10ヶ月有るんだから先を見据えて行かないとダメだよね!」

 

「ま、一直線になんのはお前の良いとこなんだ、そこはブレんなよ」

 

僕はかっちゃんに言われたようになるべくバランス良くゴミを運ぶようにした。大きいのを運んだ後は前に運んだものよりも小さいのを。小さいのを運んだらそれよりも大きいものをと運ぶ様にした。ココはゴミが有り過ぎて選ばなくても自然とバランス良く運べてる気がする。

 

そうして僕たちは毎日一緒に学校に行って学校終わりに鍛えてを繰り返して平日を過ごし、今日ついに、オールマイトに鍛えてもらえる日が来た。

 

 

 

〜翌朝7時〜

 

「来たな!緑谷少年!爆豪少年!」

 

僕たちより先にオールマイトはいた。

 

「おはようございます!オールマイト!」

 

「じゃあ君たち2人には取り敢えず、今から30分程で身体を温めて貰いたい。その後は9時までこの砂浜を走ろうか」

 

オールマイトの言葉に僕は驚いた。

 

「9時までですか!?」

 

最近になって鍛え始めた僕はそんなに走れるか不安だった。

 

「ペースは自分で決めて良い。疲れたら歩いても良い。取り敢えず9時まで足を動かし続けてみな!!さぁ行こう!」

 

そう言われて僕たちは走り出した。

 

 

 

走り始めてからどれくらい時間が経ったんだろ……もう無理だ、少し歩こう。そう思い既にジョギング程度に遅くなっている足を止めようとしたら

 

「はぁ……!はぁ……!はぁ……!」

 

かっちゃんに抜かされた。かっちゃんはずっと走り続けてる。その背中を見て折れそうになる心をなんとか保つ。

 

「そうだ…一緒に合格するんだ……!足は…止めないぞ!!動かし続けるんだ!」

 

 

 

「はぁ…はぁ………ったくよ!」

 

なんとか止まらねぇで済んだか。一緒に上を目指すんだから助けねえとな。まぁオレもお前が居るからこのキツいランニングも耐えれてるんだけどな。

 

「デクより先には倒れられねえんだよ!オレは!!」

 

 

 

 

かっちゃんが叫んで気合を入れ直してる。僕も負けないぞ!!かっちゃん!!こうして僕は残りの時間をしっかり足を動かし続けた。

 

「私が!!ヒーロー活動を終えて来た!!」

 

オールマイトが上から降って来た。

 

「えっ!?オールマイト居なかったんですか!?」

 

「そりゃ私はヒーローだからね。困ってる人を助けに行かなければならないからね。君たちに付きっ切りという訳にもいかないんだよ」

 

オールマイトはNo.1として忙しいのにも関わらず僕たちを鍛えてくれている。オールマイトを裏切る事にならない様にしようと心に誓った。

 

「じゃあ取り敢えず15分休憩したらその後はお昼までゴミ掃除をしよう!!じゃあ!頑張ってくれよ!!」

 

そう言ってオールマイトはまた飛んで行った。僕とかっちゃんは休憩の為に座り込む。

 

「よく止まらないで走ったじゃねえか。1回だけ折れそうになったろ?」

 

「うん…。だけどあの時かっちゃんが後ろから抜いた時、君に負けたくないと思ったからなんとか頑張れたんだよ!!一緒に雄英に合格するって思い出させてくれたから」

 

「運動神経はオレの方が良いからな。オレもデクより先にはヘバレねえんだよ……。まぁ、なんだ。一緒に助け合って、頑張って行こうぜ」

 

かっちゃんの言葉に僕は嬉しくなった。

 

「っっ!!うん!!!ありがとう!!かっちゃん!」

 

「っ!…るせえ!!休憩終わりだ!次やんぞ!!」

 

そう言ってかっちゃんはゴミ掃除に行った。もしかしてかっちゃん、照れた!?

 

「置いてかないでよ!」

 

僕は急いでかっちゃんの所に向かった。

 

 

 

〜8ヶ月後〜

 

アレから僕たちは走り込みとゴミ拾いをしてをひたすら繰り返していた。僕も最初と比べると筋肉が付いた気がする。そんな日々を繰り返していると、僕たちはオールマイトから呼び出しを受けた。新しい特訓をすると言ってたけど……何をするんだろう?不思議に、それで居てワクワクしながら僕は海浜公園に向かっていた。

 

「遅えぞ!デク!」

 

既にかっちゃんはいた。かっちゃんは特訓の事になると行動が早い気がする。そんな風にかっちゃんも変わったなぁって思ってると。

 

「来たね!!2人とも!!!」

 

「「おはようございます!オールマイト!」」

 

オールマイトがゴミの上に立っていた。

 

「アレから8ヶ月が経ったね。君たちも最初と比べると身体つきが逞しくなったね。そんな君たちに!今日から新しい特訓をしてもらうよ!!」

 

「なんだよ?新しい特訓って」

 

「爆豪少年!君の個性は爆破だったね?」

 

「ああ」

 

「君たちは学生だから個性を使った事は少ないだろう?よって爆豪少年には個性を鍛える為に、今日は限界まで海で個性を使ってもらうよ?」

 

確かに僕たちは個性を自由に使う事は出来ないけど、限界を知るってどういう事なんだろう?

 

「君たちは自分の限界を知らないだろう?それだと、いざという時に使えなくなって戦えなくなってしまうんだよ。そんな事が起きてしまうとヒーローの後ろにいる一般人が危険に晒されてしまうんだ。だからこそ、君たちには個性の限界を知って把握して欲しいんだ」

 

「なるほどな。じゃあオレは向こうでやれば良いんだな?」

 

「そうだね。だけど個性を使う事に変わりないから今日は応援を呼んだんだ。おーい!来てくれー」

 

そう言ってオールマイトが入り口に向かって声を発した。すると2人の人がコッチに歩いて来た。

 

「オールマイト。あまり大声を出さないで下さい。貴方は良くも悪くも目立つのだから」

 

「ですよね!目立ちますよね!」

 

「お前もだルミリオン」

 

なんか怖そうな人と明るい人が来たぁ!!なんかこの人達真逆だよ!

 

「ありがとう!よく来てくれたね」

 

「まさか貴方から連絡が有るとは思いませんでしたよ、オールマイト。まさか謝罪をする為に会いたいと言われた時は、流石に驚きました」

 

「謝りたかったのは本当なんだよ、ナイトアイ。勇気が出たのは彼らのお陰でね」

 

そう言ってオールマイトとナイトアイと呼ばれた人が僕たちを見た。

 

「……なるほど。確かに、この2人はお互いが良い関係を築けているようだ」

 

「彼らを見ていたら、私も昔に戻りたいと思えてね。君に謝る勇気を貰えたんだよ」

 

「私も、あの時の事が心残りでした。私の方こそ申し訳ない。それと、また宜しくお願いしますよ、オールマイト!」

 

「…ああ…。ありがとう!ナイトアイ!また一緒に戦ってくれ!」

 

オールマイトが泣きながら握手をしている。何者なんだ!?この人達は。その後2人の自己紹介が始まった。

 

「私はサー・ナイトアイ。昔はオールマイトのブレインとしてサイドキックをしていた。君たち2人がオールマイトの弟子なので有るならば厳しく行くのでそのつもりで」

 

「オレはルミリオン!オレはナイトアイに連れてこられただけなんだよね!宜しくね!」

 

オールマイトのサイドキック!?コレもすごい情報だ!オールマイトにサイドキックがいるなんて誰も知らない筈だからだ!

 

「君たちに出会えたから、私はナイトアイと仲直りする事が出来たと思っている。ありがとう、緑谷少年、爆豪少年」

 

「オールマイト、貴方は忙しい身だ。話はここまでにして、早く特訓に移りましょう」

 

「おっと、そうだね。ならナイトアイ、取り敢えず爆豪少年に付いて貰って良いかい?特訓内容は伝えた通りに頼むよ」

 

「わかりました。……行くぞ?爆豪くん」

 

そう言ってかっちゃんとナイトアイとルミリオンの3人は海の方へ移動した。

 

3人が見えなくなった所で

 

「…さて、緑谷少年。まずはコレを食え」

 

そう言ってオールマイトは僕に髪を一本渡して来た。

 

「……えっ!?コレをですか!?」

 

「OFAは所有者のDNAを取り込む必要があるんだ。さぁ食え!」

 

「力の継承が思ってたのと違うなぁ…」

 

そんな風に言いながら僕は髪を口に入れ飲み込んだ。

 

「それから2時間から3時間くらい経てば自然と使えるようになるはずだ。取り敢えずそれまでは君の個性、ゴムを鍛えよう」

 

僕の個性はゴム。確かに個性を鍛えるとは言うけど…

 

「伸ばしたりするんですか?」

 

「ノンノン!!君は意外に頭が固いなぁ!ゴムって伸ばすだけかい?考えてみなよ!例えば、ゴムで作られてるものとかさ!」

 

「…なんだ?何が有るんだ…?……っは!?ゴム風船とかはどうですか!?空気を思いっきり吸って身体に溜めれば浮いたり出来そうです!!」

 

「グッド!!そう言う柔軟な発想が個性を使う上で大事なんだよ!!」

 

そう言えばかっちゃんはあの時爆発の光を集めて目眩しに使ってた。考え方次第ではどんな個性でも強くなるのか。

 

「それに君は全身ゴムなんだろう?なら私の力を使っても骨が折れる事は無いだろう」

 

伸ばす、膨らむ。取り敢えず今の僕が思いつく限りはコレだけだ。それに合わせてOFAを使えば充分闘える筈だ。絶対合格するぞ!!

 

「じゃあ私は爆豪少年の方を見てくるから取り敢えず伸ばせる距離を増やす様に特訓しようか」

 

「はい!頑張ります!!」

 

こうして僕たちは残りの2ヶ月を過ごしていった。

 

 

 

〜入試前日〜

 

「よく耐えたね。2人とも」

 

「オールマイトの弟子が中学生と聞いた時は驚いたが、まさかここまで特訓をしっかりとやり抜くとは思わなかった。素直に賞賛しよう」

 

「今日はルミリオンくんは居ないが、彼から伝言を預かっている。君たちなら合格できるから、いつも通りに行けば大丈夫だよ。ってね」

 

「はい!」

「ああ」

 

「じゃあ明日に備えて今日はゆっくり休みな。期待してるぞ!2人とも!!」

 

僕らはオールマイト達から激励を貰って帰路に着いた。こうして僕らは受験日を迎えた。



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入試〜夢に向かって〜

〜入試当日〜

 

僕は目覚ましの音で目が覚めた。いつも通りの朝だ。身体も怠いとかは一切ない。僕は制服に着替えてリビングに向かった。

 

「おはよう、お母さん」

 

「おはよう、出久。顔洗ってきなさい。ご飯もうすぐ出来るから」

 

「うん」

 

僕は顔を洗い朝ごはんを食べてと普段と変わらない朝を迎えた。するとお母さんが

 

「出久、緊張してないの?昔のあんただったら間違いなく緊張してガチガチになってたと思うんだけど…」

 

確かに昔の僕なら朝ごはんなんて食べる余裕も無かっただろう。けど今は師匠たちに鍛えてもらい、親友と共に目指し、憧れの人から自信を貰ったんだ。コレで潰れてたらみんなに申し訳が立たない。

 

「今の僕は自信に満ちてるから。決して過信してる訳じゃ無いけど、この10ヶ月、ひたすら頑張ったんだから、自分を信じて頑張るよ!」

 

「そう。じゃあ全力を出して来なさい!後悔の無いようにね!」

 

「うん!」

 

時計を見るとかっちゃんとの待ち合わせの時間が近づいていた。

 

「じゃあお母さん!行ってきます!!」

 

「行ってらっしゃい!」

 

僕は家を飛び出し、走って駅に向かった。

 

駅に着くとかっちゃんの姿はまだ無かった。少しだけ待っていると後ろから肩を叩かれた。

 

「ようデク!その感じだと緊張はしてねぇみたいだな!」

 

「もちろん!かっちゃんも居るんだ。不安になる事なんか無いよ!それに、オールマイト達に鍛えてもらえたんだ。負ける気は無いよ!」

 

「だな。んじゃあ行くか!」

 

 

 

 

〜雄英の校門前〜

 

「ついに来たね、かっちゃん!」

 

「ああ!行くぞデク!目指すはNo.1だ!」

 

そう言って歩き出すかっちゃんの後ろを付いて行こうと歩き出した時、後ろからぶつかられた。

 

「こんな場所で止まんじゃねぇよ!邪魔くせえなぁ!」

 

そう言って僕は地面が近づいていった。転ぶ!そう思ったけど僕はいつまでも転ばない。って言うか

 

「えっ!?ういてる!?」

 

「大丈夫やった?」

 

声の方を振り向くとそこには可愛い女の子が立っていた。

 

「私の個性なんだ。ゴメンね?勝手に。でもさ、折角の受験日に転んじゃったら縁起悪いもんね」

 

「ありがとう…」

 

僕は恥ずかしさと照れでそれしか言えなかった。

 

「緊張するよねぇ。お互い頑張ろうね」

 

そう言って女の子は会場の方へ進んで行った。って、僕も急がなきゃ。

 

「遅かったなデク、トイレか?」

 

「そんなところ。席取っといてくれてありがとう!」

 

会場で待っていると先生が入ってきた。その人を見て僕は気持ちが盛り上がった。

 

「今日は俺のライヴにようこそ!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

「「「「「「よーこそー…」」」」」」

 

「うわぁ、ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だよ。雄英の先生は本当にプロの人達なんだ。毎週ラジオ聞いてるよ!」

 

「ヘイ!そこの緑の髪のリスナー!熱いエールをサンキューな!YEAHH!!!」

 

プレゼント・マイクに話しかけられるなんて、僕は幸運だあ!!!

 

「入試要項に書いてある通りだが、リスナーにはこの後、各々指定された会場に移動して貰うぜ!持ち込みは自由だ!」

 

「デク、お前どこだ?オレはDだ」

 

「えっと…僕はAだ。って事は一緒じゃ無いね」

 

「ああ。多分コレはダチでの協力を防ぐ為だろうな」

 

プレゼント・マイクの説明は続く。

 

「試験会場には、仮想ヴィランが3種類いるぞ!リスナー達の個性でヴィランを行動不能にしてポイントを稼ぐ。コレが君たちの目的だ。もちろん、アンチヒーローな行為はご法度だぜ?それと……」

 

前の方で1人が手を挙げた。

 

「質問を宜しいでしょうか!!配られたプリントにはヴィランは4種と記載されています!コレがもし間違いなら日本最高峰の雄英にとってコレは恥ずべき痴態!!我々は規範となるヒーローを目指してココに座して居るのです!」

 

手を挙げたのはメガネをかけている真面目そうな人だった。背筋はピンと真っ直ぐだし、手もピシっと真上に向かって伸ばしてあげていた。僕がそんな事を思っていると、その人は後ろを振り向き、僕を睨んできた。

 

「それと緑の髪の君!!さっきから五月蝿くて気が散るんだが。プロヒーローに会いにきた、若しくは物見遊山のつもりなら即刻ココから出て行きたまえ!」

 

「すいません!」

 

確かに僕は雄英に来て、プレゼント・マイクに会えて少し舞い上がってた。周りの人の迷惑にもなってたと思うから僕は素直に謝罪した。

 

「その事に関してはコレから説明する予定だったぜ!!まだ説明は途中だから落ち着けよ!リスナー!!are you OK?」

 

「説明を途中で遮って申し訳ありません!!続きをお願いします!」

 

そう言ってメガネの人は席に着いた。それを確認してプレゼント・マイクは説明を再開した。

 

「4種類目の仮想ヴィランは0P。つまりはお邪魔虫って訳だ!スー◯ー◯リオってやった事あるか?アレのドッ◯ンみたいなもんだよ。各試験会場に1体。暴れまわってるぜ!」

 

「なるほど、避けて通るステージギミック」

「まんまゲームみたいだな」

「倒せない敵って事ね」

 

プレゼント・マイクが説明を終わらせた所で最後にと声をかける。

 

「説明は以上だ。最後にリスナーのみんなに我が校の校訓をプレゼントしよう。かの英雄は言った『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』ってね」

 

「更に向こうへ『Plus Ultra!!』では皆、良い受験を!」

 

そう言ってプレゼント・マイクは説明会場から出て行った。僕とかっちゃんはスグに準備をして会場を出る。

 

「終わったら門前に集合な」

 

「うん!頑張ろうね!かっちゃん!」

 

「ああ!」

 

僕たちは各々の試験会場に向かった。

 

 

 

〜D会場〜

爆豪SIDE

 

意外に心細いもんだな。隣にアイツが居ないっていうのは…。なんだかんだ言ってガキの頃からずっとアイツはオレの近くに居て、今年はアイツとずっと一緒に生活をしてた。特訓の辛さややり遂げた達成感を全部アイツと過ごして来たからこそ、オレの中でアイツの存在がこんなにデカくなってるなんてな。

 

「ありがとよ、デク。お前のお陰でオレはヒーローになれそうだ…」

 

さてと、そろそろ始まるだろうし準備するか。オレは身体を解しながらスタートの合図を待つ。

 

やるぜ!!オラァ!!!

 

 

 

〜A会場〜

デクSIDE

 

「広!!」

 

僕はジャージに着替えてA会場に居た。やっぱ緊張するな〜。あ、さっき助けてくれた女の子だ。お礼言おうかな…でも、試験前に話しかけて邪魔したら悪いしなぁ…。よし!終わったらお礼しよう!

 

「っと、身体少しでも解しとかなきゃ」

 

僕は軽くストレッチをした。時間を気にしていつでも動けるようにしとけって、かっちゃんが言ってたからね。よし、充分温まったぞ!

 

「はい、スタート」

 

突然声が聞こえた。っえ!?スタート!?ヤバいヤバい!出遅れた。僕はそう思い急いで走り出した。

 

「かっちゃんに言われてたのに……僕はバカか!」

 

そう思っていると

 

「反応できたのは十数人だけか……おいおい!実戦じゃカウントなんて無いんだぞ!賽は投げられたんだ、走れ走れ!!」

 

えー!反応したの僅かな人だけなの!?ってか、僕が反応出来たのもかっちゃんのお陰なんですが……。

 

っ!気持ちを切り替えろ!早い遅いは関係ないんだ!ヒーローになる為にやれる事を精一杯やるんだ!!

 

取り敢えず目の前のヴィランを

 

「スマッシュ!!!!」

 

殴って壊す!行動不能にするなら壊したって良いはずだ!

それにしてもこのヴィラン達、市街地だからなのかビルを壊して瓦礫を使ってくる。意外に厄介だ!

 

「まてよ……ヴィランに壊させないのもヒーローの務めじゃ無いのか!?」

 

そんな風に考えてると爆発音と共に悲鳴が聞こえた。

 

「きゃあ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

悲鳴のする方を見ると、男の子と女の子が2人崩れてくるビルの下敷きになり掛けている。僕は腕を伸ばして2人を引っ張り出した。

 

「手荒くてごめんなさい!怪我はないですか!?」

 

僕は2人に怪我が無いか確認した。

 

「オイラ、もうダメかと思ったぜ…」

 

「助けてくれてありがとう!怪我は無いよ。瓦礫が上から落ちてくるのを見て驚いて動けなかっただけだからさ」

 

僕はそれを聞いて安心した。冷静に考えれば今の助け方は無理矢理過ぎた。骨折をしてたらこんな助け方は悪化させる原因になってただろう。

 

「良かった!まだまだ時間はあるから、お互い頑張ろうね!!」

 

そう言って僕は走り出した。まだまだ時間はあるんだ。倒せるヴィランはどんどん倒さないと!

 

 

 

それから僕は確実にポイントを稼いで居た。数え間違えで無ければ今のヴィランで26ポイントの筈だ。

 

「ケロっ!!」

 

カエルみたいな女の子がヴィランに囲まれてる!!数は7体。すごい!あの数のヴィランに囲まれても決定打は貰ってない。けど…

 

「ケロっ…。このままじゃジリ貧ね」

 

ヴィランが一斉に飛び掛かろうとした。させないぞ!!

 

「スマッシュ!!!」

 

僕は2体のヴィランをまとめて殴り飛ばして、そのまま伸ばした手で女の子をヴィランの包囲から引っ張り出した。

 

「ゴメンね!勝手な事しちゃって!大変そうだったから!」

 

僕が謝ると女の子は笑顔で

 

「大丈夫よ、お陰で助かったわ。ありがとう」

 

「即興だけど、取り敢えず一緒に片付けよう」

 

「ええ」

 

女の子は舌を、僕は腕を伸ばしてヴィランを掴んで叩きつけた!よし、コレで一先ず終わり!残り時間も後僅かになって来た。気を引き締めて最後まで頑張るんだ!

 

 

 

 

「この入試はヴィランの総数も配置も教えていない。だからこそ、そこからあぶり出される4つの能力が試される」

「状況を素早く把握する為の情報力」

「遅れて登場など論外な機動力」

「いつ、如何なる時も冷静でいる為の判断力」

「そして、純粋に脅威を排除する為の戦闘力」

 

「コレらは平和を守る為の基礎能力であり、この入試はポイント制という形でこの4つを調べている」

 

「さぁて、そろそろ動かすか」

 

圧倒的脅威が今動き出す。

 

 

 

 

THOOOOM!!!BOOOM!!!

 

デカ過ぎる!!アレが4種類目!?流石にヤバい!!逃げないと!!僕が後ろを向いて走ろうとすると

 

「いったぁ……」

 

背中から声が聞こえた。振り向くとそこには、(転んじゃんったら縁起悪いもんね)僕を助けてくれた女の子が倒れてた。

 

僕は無我夢中だった。両腕を、両脇にそびえ立つビルに伸ばして反動を使って飛んだ!

 

 

 

「おお!?今年はアレに挑むのが居るぞ?」

メリットなんか一切無い。だからこそ、それは色濃く浮かび上がる時がある。ヒーローとしての大前提。自己犠牲の精神って奴がね!!

 

 

 

ゴムの反動と腕力だけじゃ間違いなく倒せない。なら今こそ、OFAを使う時だ!オールマイトが教えてくれた。(ケツの穴グッと引き締めて心の中で叫ぶんだ!)

 

OFAとゴムの個性を合わせて使うのは初めてだ。どうなるか分かんないけど、後悔だけはしないぞ!!!OFA!この力は人を助ける為の力だ!!

僕はOFAの力を使い今まで以上に腕を後ろに伸ばした。反動の力を上乗せして、そのままヴィランをぶん殴れ!!!

 

「ピストル・スマッシュ!!!!!!」

 

僕の一撃は仮想ヴィランを再起不能にした。

 

「ふぅ……。なんとかなった。でもこんなんじゃ……」

 

僕は落ちながら今の攻撃を振り返った。考え事をしてると、ズキン!!ズキン!!と右腕に痛みが走った!驚いて右腕を見て見ると。

 

「いったあああぁぁぁぁいい!!!!」

右腕が伸びたまま戻らなくなっていた。えっ!?なんで!?僕ってゴムだから骨折しないんじゃ無いの!?うわ!もう地面がすぐそこだ!?ぶつかる!!!

 

「えいっ!!」

 

そんな声と共に僕は叩かれた。それと同時に僕の落下は止まった。

 

「解……除…」

 

僕はこの感覚を知っている。また助けて貰えた。

 

「ありがとう!!」

 

まだ時間は残ってるんだ。

 

「せめてもう1ポイント」

 

「終了!!!!!」

 

試験は終わった。

 

 

 

〜飯田SIDE〜

「お前すげえな!」

「見た感じ筋肉無さそうなのに力すげえな」

「腕伸び切ってるけど大丈夫か?」

 

そこじゃ無いだろう!!見ていなかったのか?彼は、あの女子を救うために飛び出したんだぞ!?己の身の安全、合格に必要な要素。この2つを天秤にかけて……それでも尚、一切の躊躇なく…試験という場で無かったら僕だって当然そうしたさ!!

 

(いや、試験じゃ無かったら当然……。そう思ってる時点で負けか…)

 

彼はすごいヒーローになるかもしれないな。

 

 

 

〜デクSIDE〜

 

腕がめちゃくちゃになってる!!未だに骨折した理由が分からない!!なんでだ!?なんでゴムなのに!?そんな風に戸惑ってると声が聞こえてきた。

 

「はい、お疲れ様〜。ハイハイ、ハリボーだよ。お食べ」

 

「あのマドモアゼル、雄英の屋台骨だね。雄英がこんな無茶な入試を出来るのも、彼女に依るところが大きいらしいね」

 

「自身の個性でこんなになるかい……」

 

「あの、僕の腕折れちゃったみたいなんですけど……!!」

 

「あんた、折れてると思ってるのかい?見た感じ、あんたの腕は切れてるね。文字通り。まるで個性と身体が馴染んで無いみたいだね」

 

「はい、いくよ!」

 

そう言ってお婆ちゃんは僕に唇を伸ばして来た。って!

 

「えええぇぇぇ!!!???なになになに!?!?」

 

「チユ〜〜〜〜〜」

 

すると、僕の腕は痛みが引き、腕も元に戻った。この回復の個性、もしかして!

 

「この治癒の個性…。もしかして、リカバリーガールですか!?」

 

「おや、あたしを知ってるのかい?」

 

「知ってるもなにも、僕は4月に貴方のお陰で救われたんです!」

 

「そうかい、そうかい。ほら、ハリボーをお食べ。疲れが一気に来るだろうからね」

 

そう言って僕にお菓子を渡してきた。

 

「はい!!ありがとうございました!!」

 

「はいはい。それじゃ、ちゃっちゃといくよ。ケガした子はいるかい?」

 

そう言ってリカバリーガールは他の人の所に行った。

こうして僕の入試は終わった。あとは合格発表を待つのみだ!!




ようやく入試が終わりました。戦闘シーンと言うのは難しいですね。コレからもよろしくお願いします!!


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合否発表

入試が終わり家に帰った僕。家でゆっくりしているとオールマイトに呼び出された。スグに部屋着から着替えて僕は急いで海浜公園に向かった。そこには既にかっちゃんも来ていた。

 

「お、来たね?緑谷少年!!」

 

「遅かったなぁ!デク!!」

 

「かっちゃん!!オールマイト!!」

 

僕はオールマイトを大声で呼んでしまった。すると綺麗になった海浜公園にデートに来てた人達が

 

「うそ!?オールマイト!!?」

「どこどこ!?!?」

 

あ、コレはやってしまった。汚かった頃の海浜公園のつもりで居たからつい大声で話しかけてしまった。僕が悩んでいると、かっちゃんが

 

「デク!!!オールマイトなんか、何処にも居ねぇじゃ無えかよ!!探し損じゃねえか!!」

 

「すいません!間違いでした!!!」

 

僕とかっちゃんがそう言うとデートに来てた人たちは

 

「なんだよ、居ないのかよ」

「もう、紛らわしいんだから」

 

そう言って海の方に向かった。

 

「ありがとう、かっちゃん。助かったよ」

 

「いや、オレの方こそ強く言い過ぎた。悪かったな」

 

「いや!素晴らしい判断力だよ!爆豪少年!今のはホントに助かったよ」

 

オールマイトがかっちゃんにそう言う。僕も気を付けないと!オールマイトの人気は計り知れないんだから。

 

「さて…取り敢えず、試験お疲れ様。どうだった?爆豪少年!」

 

オールマイトがかっちゃんに試験の出来を聞いた。かっちゃんの事だから大丈夫だとは思うんだけど…

 

「多分、会場トップで仮想ヴィランを倒した。特訓のお陰で10分くらいなら爆破をフルで使っても汗腺に痛みは無いと思う」

 

「思うって事は使って無いのかい?爆豪少年?」

 

「最後の2分は、あのデカブツとやり合ってた。爆破で足元崩して、それから頭に最大火力をぶち込んだから、爆破だけで10分は使ってねえんだ」

 

かっちゃんの言葉に僕は声を出して驚いた。

 

「かっちゃんもアレに挑んだの!?」

 

「ああ、ナイトアイと特訓してた大技で何とかな。未完成だから倒せるかギリギリだったけどよ。ってか、やっぱお前も挑んでたか」

 

「いや、僕は偶々そうなったと言うか、気付いたら飛び出してたと言うか…」

 

「なんだ、困ってる奴でも居たのか?」

 

かっちゃんはエスパーなの!?

 

「お前が自分より怖い存在に挑むのはいつも、そんな時だっただろ?」

 

「あ、うん。まぁね…」

 

親友が僕の事を分かってくれてると思うと凄く嬉しくなる。僕もかっちゃんのすごい所を知ってるけど、もっともっと知っていきたいと思えた。

 

「爆豪少年はタフネスだね!よく10分間動き続けたね!それは凄い事だ!君の強みの1つだね!!……じゃあ次は緑谷少年。どうだった?」

 

今度は僕の番だ。

 

「僕はそれなりに稼げたと思います。あと、スタートダッシュはかっちゃんのお陰で出遅れずに済みました。ただ……」

 

「どうした?何か有ったのかい?」

 

「ゴムの個性にOFAを合わせて使ったら骨や筋肉が切れました。言うなら、骨折みたいな感じでした」

 

そう言うとオールマイトは嬉しそうに

 

「そうか!その程度で済んだか!」

 

「って事は、こうなる事を分かってたんですか!?」

 

「そりゃそうだろ!!私の力を受け継いで僅か10ヶ月で使いこなせるわけが無いだろう?鍛えなかったら今頃君の四肢は爆散していただろうね」

 

その言葉を聞いて僕はゾッとした。考えてもみればそうだ。オールマイトの様な凄いヒーローの力を10ヶ月前まで身体を鍛えても居なかった僕が使いこなせる筈が無かったんだ。少し…いや、かなり舞い上がってた。

 

「だけど、四肢が爆散しないで使えたのは君が鍛えて勝ち取った結果なんだ!!コレは誇っていい事だよ」

 

「でも…この歳になって個性を制御出来ない生徒なんて雄英も要らないでしょうし…」

 

「個性の制御が利かねえならまた特訓するしかねぇだろ。人を助けて自分が怪我する。良いじゃねえか、デク。ヒーローの本質はなんだよ?」

 

「自己犠牲の精神と、お節介!!!」

 

かっちゃんに言われて僕は思い出す。個性の制御が出来てなかったのは事実なんだ!ならそれを制御出来るようにすれば良いんだ!簡単な事だ!今までみたいに、ただガムシャラに前に進むだけじゃ無いか!!!

 

「一緒にまた特訓しようぜ、デク!」

 

「うん!!よろしくね!かっちゃん!!」

 

僕らが話し終わるとオールマイトが話を切り出した。

 

「さて、私は君たちの入試が終わるのと同時に忙しくなる予定なんだ。少し溜めていた仕事もあるからね。だから特訓には付き合えなくなってしまう。合格発表はいつだっけ?」

 

「確か1週間後だった筈です!」

 

「そうか、なら1週間後にまた私から連絡をするよ。じゃあ、またね!!!!」

 

そう言ってオールマイトは海の上を走って行った。

 

「んじゃ、帰るか。また明日から何時も通り特訓だぞ!デク!!!」

 

「うん!負けないよ!かっちゃん!!」

 

こうして僕たちは帰宅した。帰るとお母さんがご馳走を作って待っててくれた。

 

「お母さん、ありがとう。疲れててもこうやってお母さんが支えてくれるから今日まで頑張れたよ。雄英に受かんなくても僕、ヒーロー目指すから、コレからもよろしくね!」

 

「バカね!出久が頑張ってるのは母さんが1番分かってるよ。ほら、冷めちゃうから早く食べましょ」

 

 

 

〜1週間後〜

 

入試から1週間が経った。僕とかっちゃんは何時も通り、特訓は欠かさずやっている。今は軽い組み手をしている。

 

「そろそろだよね?通知」

 

「今日か、遅くても明日には来んだろ?」

 

「楽しみだなぁ」

 

「まあ、オレたちなら大丈夫だろ。………っと、今日は早めに帰ろうぜ!デク」

 

「うん!」

 

僕たちはお昼頃に切り上げて帰宅した。

 

帰宅するとお母さんが僕のところに来て

 

「はい、出久。さっき通知が届いたよ」

 

さっそく来た!!僕は部屋に行き少し震える手で封を開けた。すると中には機械が入っているだけで合否に関する紙など他には何も入って無かった。僕が不思議に思っていると

 

「私が投影された!!!」

 

「オールマイト!?え!?なんで!!コレ、雄英からだよね!?」

 

「実は私、雄英の教師をやる事になったんだよね。だから言っただろ?1週間後に連絡するって」

 

そう言う事だったのか!!

 

「え?巻きで?でも彼が最後だろ?…良し、じゃあ問題無いね」

 

「筆記は取れていた。実技の方もヴィランPが29Pと取れてない訳では無かった。だが、今年の受験生から比べると低いのは事実だ」

 

…っ!やっぱりダメだったのか…。

 

「だが、今回の試験!ヴィランPのみを見ていた訳では無いのだよ!!ヒーローは人救けをする仕事だ!!それをした人間を排斥しちまうヒーロー科など、あってはならない!!!綺麗事?構うもんか!!命を賭して綺麗事を実践するのがヒーローだ!!」

 

「レスキューPは審査制!!我々雄英が見ていたもう1つの基礎能力さ!!!緑谷出久!!レスキューP50!!!まぁ救助の仕方が少し乱暴だったり、個性を制御出来てないと言う事でこの点数だよ」

 

「でも文句なしで合格だよ。……来いよ緑谷少年!!雄英が!ココが!!君の、ヒーローアカデミアだ!!」

 

目から涙が止まらない…多くの奇跡と、多くの助けを受けて僕は夢への第1歩を進めた。

 

「っっはい!!!」

 

「あ、因みに君の前に爆豪少年の合否発表したんだけど、彼は今年の1位だよ。圧倒的にヴィランPの方が多かったんだけど、少しだがレスキューPも有ってね。彼もまた素晴らしい逸材だ。競い合えよ!緑谷少年!そうすれば君たちは更なる高みへと行けるさ!!」

 

「じゃあな!緑谷少年!待ってるぞ!!」

 

僕は真っ先にお母さんに結果を報告した。お母さんは泣いて喜んでくれた。その後にかっちゃんにメールを送ったら

 

「心配なんかして無えわ!!入学式は一緒に行くからまた後で時間決めんぞ!!!」

 

ってメールが返って来た。遂に始まるんだ!僕の高校生活が!!!

 

 

 

〜合否判定〜

教師SIDE

 

「実技総合成績が出ました!!」

 

レスキューPが20、ヴィランPが88か…化け物みたいなスタミナしてやがるなコイツ。

 

「後半他の動きが鈍っていく中、唯一動き回って寄ってくるヴィランを迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

次に2位の切島だが、個性を上手く使っていたな。ヴィランPが45、レスキューP38。個性と体力共に持久力が付けばいいヒーローになるだろう。

 

そして3位だが……。

 

「アレに立ち向かったのは過去に居たけど、ぶっ飛ばした奴は久しぶりに見たな!」

 

「だが腕を壊した。ヒーローとして、自分の個性を制御出来ないんじゃ話にならないからな」

 

だがまぁ、やれる事が多そうな個性だ。オレのクラスになるなら面白そうだ。




今回はいつにも増して短いです。申し訳ないです!


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最初の試練

指摘を頂いたので修正を入れました。


「ほら出久!ティッシュ持った!?ハンカチは!?」

 

「うん!」

 

僕は入学初日から慌ただしく準備をしている。理由は単純で少し寝坊してしまったからだ。

 

「持ったから大丈夫だよ!急がないと…」

 

こんな日に限って楽しみと緊張で寝坊するなんて……子供か!僕は!

 

「出久!!」

 

「なぁにぃ!!」

 

「……似合ってる。超カッコいいよ!」

 

「…ありがとう、お母さん!!行ってきます!」

 

高校生活が今始まる!因みに寝坊したせいでかっちゃんは先に行ってる。

 

 

 

「1ーA……1ーA……って、広すぎるなぁ」

 

毎年300を超える受験倍率。その正体は一般入試の定員が36名。18人ずつで2クラスしかヒーロー科が無い。そりゃ倍率が高くなるわけだ。そんな倍率を勝ち抜けた事を実感していると教室を見つけた。

 

「あった……。ってか、ドアでか!!」

 

異形型の個性の人は体格も大きくなるタイプもあるからコレはそんな人でも入れるようになってる。流石雄英だ!!バリアフリーも抜かりが無い!

 

「あの受験者数から選ばれたエリートたち……やっぱり新生活はドキドキするなぁ」

 

僕が恐る恐るドアを開けるとそこには

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

「思わねえよ!!ってか、てめぇ誰だよ!」

 

なんかかっちゃんが初日から揉めてる!?

 

「ボ……俺は、私立聡明中学出身の飯田天哉だ」

 

「聡明か……。随分エリートな所から来たんだなあ!倒し甲斐がありそうじゃねぇか!」

 

「かっちゃん、おはよう!寝坊しちゃってゴメンね?」

 

僕は2人の間に割って入るように挨拶をした。

 

「デク!なんとか間に合ったな!」

 

「うん。まさか寝坊するなんてね」

 

僕とかっちゃんが挨拶していると、もう1人の男の子も会話に入ってきた。

 

「俺は私立聡明中学の…」

 

かっちゃんにした自己紹介と同じのを言って来ようとしている。この人真面目だ!

 

「あ、聞いてたよ。僕は緑谷。よろしくね飯田くん!」

 

「緑谷くん。君はあの試験の構造に気付いていたのかい?情けないが俺は気づけなかった……。君を見誤っていた、君はスタートも出遅れずにいた。君の方が俺より数段上だったようだ!!」

 

「いやいや、気付いてないよ!?スタートはかっちゃんのお陰だし!あの巨大ヴィランだって、身体が勝手に動いてて!」

 

僕たちが話していると後ろから声を掛けられた。

 

「あ、その緑のモサモサ頭って……。やっぱりあの時の地味目の人だ!!!」

 

僕を助けてくれた可愛い人だ!!!

 

「やっぱり受かってたんだね!!良かったよ!!あの時は助けてくれてありがとうね!あ、私の名前は麗日 お茶子!よろしくね?」

 

「いや、あの時は身体が勝手に反応して……たまたま助けられたんですよ!あ、緑谷 出久です」

 

「緊張するね。担任の先生ってどんな人だろうね!」

 

僕と麗日さんが話していると

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。…………ココはヒーロー科だぞ」

 

なんか変な人がいるぅぅ!!!

 

「ハイ、静かになるまで8秒掛かりましたね。時間は有限。君たちは合理性に欠けるね」

 

先生!?

 

「担任の相澤 消太だ。よろしくね」

 

担任!?って事は、この人もプロヒーロー?でも……見た事ないぞ!?

 

「じゃあ早速だけど、この体操服に着替えてグラウンドに出て」

 

え!?なんで?僕たちは疑問に思いながらもグラウンドに出ると

 

 

 

「「「「個性把握テストォ!?!?」」」」

 

「あの!入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな行事に時間使うのも勿体無いよ。雄英は自由な校風が売り文句、それは知ってるな?そしてそれは先生側もまた然り」

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。以上8種目をやってもらう」

 

ヒーロー科って言っても、いたって普通のテストだ。僕がそんな風に思ってると

 

「爆豪、お前から行け。因みに、中学の時は個性禁止だっただろ?」

 

「まぁ、そうっすね」

 

「ソフトボール投げ、いくつだった?」

 

「67メートルっす」

 

「じゃあ個性使ってやってみろ。円から出なけりゃ何しても良い。早よ行け。思いっきりな」

 

「そんじゃ」

 

やる事は簡単だ球威に爆風を乗せりゃ良いんだ!

 

「オラァァ!!!!!!!」

 

805.2メートル!

 

「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

なるほど、個性を使い自分の個性を含めて限界を知るのか…確かに個性を使っての記録は今までやった事は無い。

 

「「なんだこれ!!すげー面白そうだ!」」

「805メートル!?すげーな!」

「個性使えるとか最高じゃん!

「流石ヒーロー科だな!」

 

8種目か、個性をどうやって使うかだな…

 

「面白そう…ね。ヒーローになる為の3年間を、そんな腹づもりで過ごす気か?」

 

相澤先生の言葉に皆が静かになる。

 

「よし、トータルで最下位の成績の奴は見込み無しと判断して除籍にしようか」

 

「生徒の如何は先生の自由!!ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ!」

 

入学初日からとんでもない事になってます!

 

「最下位除籍って……理不尽すぎる!!」

 

僕たちの叫びを相澤先生はどこ吹く風と話す。

 

「自然災害、大事故、身勝手なヴィラン。厄災はいつどこで起こるか分からない。日本は理不尽にまみれているんだよ。そういう理不尽を覆していくのがヒーローだ」

 

「…っ!」

 

「放課後にマックとかで談笑したいならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに至難や苦難を与えていく。"Plus Ultra"だ。全力で乗り越えて来いよ」

 

コレが最高峰の学校なのか!?頑張らないと……除籍にされちゃう。

 

「さぁ、こっからが本番だぞ!」

 

〜第1種目:50メートル走〜

 

「6秒51」

パッとしない。

 

〜第2種目:握力〜

 

右「43.3」左「40.1」

パッとしない。

 

〜第3種目:立ち幅跳び〜

 

「6メートル23」

飛んで腕を伸ばせるだけ伸ばしてそこに手を付いてゴムの反動で戻った。それなりの結果だった。

 

ー第4種目:反復横跳び〜

 

「52回」

パッとしない。

 

〜第5種目:ソフトボール投げ〜

 

まずいぞ…。このままじゃ僕が最下位だ…。まだ立ち幅跳びでそれなりの記録を出しただけだ。こうなったら、OFAを使うしか無い!

 

「緑谷くんはこのままだとマズイな…」

 

「心配しねえでも、デクなら大丈夫だ!」

 

お母さん、オールマイト!僕は、ヒーローになるんだ。絶対に!例え、腕が切れても!

 

「…56メートル」

 

なっ!?今確かに使おうとしたのに!?

 

「俺が個性を消した。………ったく、つくづくあの入試は合理性に欠く。お前のような個性を制御出来てない奴も入学出来るからな」

 

消した…!?

 

「そのゴーグル……もしかして、視ただけで人の個性を抹消する個性。…抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』だ!」

 

「イレイザー…?」

「オイラ知らねえ」

「聞いた事ある!アングラ系のヒーローだよ」

 

「お前の個性は良く分からないが、見たところ制御出来ないんだろ?また行動不能になって、誰かに助けてもらうつもりだったのか?」

 

「い、いえ!そんなつもりじゃ…!」

 

そう言うと先生は首の布で僕を拘束し引き寄せた。

 

「お前にそんなつもりが無くても、周りはそうせざるを得ないって話だ。昔な、1人の暑苦しいヒーローが、大災害から千人以上を救う伝説を創った」

 

「同じ蛮勇でも…おまえのは1人を助けて木偶の坊になるだけだ。緑谷 出久。おまえの力じゃヒーローにはなれないよ」

 

……相澤先生の言う通りだ。ヒーローになる奴が、1回力を使って後は何も出来ません。助けてください。そんな事が通用するか!OFAが制御出来ないで使えないならゴムの個性を工夫しろ!やるんだ!ゴムは伸びる!膨らむ!

 

「ん?伸びる!?」

 

「個性は戻した…ボール投げは2回だからな。とっとと済ませろ」

 

「緑谷くんは指導を受けていたのか?ココからじゃ聞こえないな」

 

「だから!心配なんかいらねえよ!」

 

〜相澤SIDE〜

 

さぁどうする?ココで性懲りもなく全力で個性を使い潰れるか……または、萎縮して最下位に甘んじるのか……。まぁ、どちらに転んでも、見込みは無い。

 

「…?なんだ?」

 

緑谷がブツブツ言いながら助走を取り出した。

 

「はぁ…。見込み、ゼロ」

 

助走したと思ったらあいつその場で腕を振り回して回転し始めたぞ?ありゃまさかハンマー投げか?

 

「……!遠心力か!」

 

「今だ!!僕にできる事を!!よし!腕は切れてない!」

 

力任せでは無く遠心力を利用してより遠くに投げた…いや飛ばしたか。

 

「先生!まだまだ、動けます!」

 

「こいつ……!」

 

随分と考えたな。こりゃ見込みゼロは間違いだな。コイツはやはり鍛えたら面白い。

俺がそんな事を考えてると爆豪が緑谷に突っ込んで行った。

 

「デク!!お前!もっとやれただろ!」

 

「ちっ!ったく!」

 

俺は舌打ちと共に爆豪を捕縛する。

 

「んだ!?この布、固えっ!」

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だ。ったく、ガキじゃ無えんだから何度も個性を使わせるな……。俺はドライアイなんだよ!

 

相澤 消太。視た者の個性を消す!瞬きすると解ける。

 

〜緑谷SIDE〜

 

個性凄いのにもったいない!!!

 

「時間がもったいない、さっさと次やるぞ」

 

「…デク、学校終わったらまた特訓すんぞ。その力は使いこなせるようになれ」

 

「うん、頑張るよ。よろしくね?かっちゃん」

 

〜第6種目:持久走〜

 

「真ん中より少し遅いくらい」

パッとしない。

 

〜第7種目:長座体前屈〜

 

「100センチ」

やった!1位だ!!

 

 

 

 

「んじゃパパッと結果発表するぞ」

 

最下位が除籍……。この中の誰かが……。記録らしい記録はボール投げと立ち幅跳び、それと長座体前屈。内一つは1位だから大丈夫なはず………。

 

「点数は単純に各種目の評点を合計した数だ。説明するのは時間の無駄なので一括開示するぞ…………。あと、除籍はウソな」

 

……………………!!??

 

「君らの最大限の力を引き出す為の合理的虚偽って奴だ」

 

はあぁぁぁ!!!???

 

「あんなのウソに決まっていますわ。まったく、少し考えればわかる事ですわ」

 

「んじゃ、これにて終わりにするぞ。教室にカリキュラム等の書類があるから目ぇ通しとけよ」

 

取り敢えず助かったけど、僕にはやらなきゃいけない事が多過ぎた。下からのスタート。コレから学んでいくんだ!憧れに近づくために!!

 

〜オールマイトSIDE〜

 

「相澤くんのウソつき!」

 

「オールマイトさん…見てたんですか?暇ですね」

 

相澤くんがそう返してくる。

 

「合理的虚偽って!!エイプリルフールは1週間前に終わってるぞ?」

 

私は本当に驚いた。彼が前言を撤回したんだから。

 

「君は去年の1年生一クラス全員を除籍処分にしてるじゃないか!」

 

「見込みゼロと判断すれば迷わず切り捨てる。それだけですよ」

 

「そんな君が前言撤回。君も緑谷少年に、可能性を感じたからだろう?」

 

「随分と肩入れしてますね?教師としてマズイですよ?…………ただ、ゼロでは無かった。それだけです」

 

〜緑谷SIDE〜

 

疲れたぁ……。プレッシャーが凄かったなぁ。

 

「疲れ過ぎだろ?デク?」

 

「だって、最下位除籍だよ?入試並みに緊張したよぉ……」

 

僕とかっちゃんが下駄箱で靴を履き替えてると

 

「緑谷くん!爆豪くん!一緒に帰ろう!」

 

「3人とも!駅まで?一緒に行こうよ!」

 

麗日さんと飯田くんが一緒に帰ろうと誘ってくれた。

 

「オメー等は、飯田と無限女子か」

 

かっちゃん、そのネーミングセンスは何!?

 

「麗日 お茶子です!改めてヨロシクね!デクくん!爆豪くん!飯田くん!」

 

「うん!ヨロシクね」

 

「ああ、共に切磋琢磨していこう!」

 

「オレは頂点にいくんだ。邪魔すんなよ?」

 

入学初日。友達が2人も出来ました!!更なる高みを目指して頑張るんだ!!『Plus Ultra』!!!




不定期ですが今後ともよろしくお願いします。


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戦闘訓練〜準備〜

遅くなり、また短い内容で申し訳ございません。


「んじゃ、次の英文で間違っているのは?おら!エヴィバディハンズアップ!!!!盛り上がれやー!!!」

 

((((普通だ))))

(つまんね)

(関係詞の場所が違うから……4番だ!)

 

雄英高校と言えど普通の高校とそこまで変わらない。午前は必修科目、英語等の普通の授業。昼は大食堂でクックヒーロー『ランチラッシュ』の作る一流の料理を安価で頂ける。

そして午後の授業では!いよいよ始まる、ヒーロー基礎学!!

 

「わーたーしーがー!!!!普通にドアから来た!!!!」

 

「オールマイトだ!」

「本当に先生やってるんだな!」

「あれって銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだろ?」

「画風違い過ぎねえか?」

 

オールマイトだ!遂にオールマイトの授業を受けれる!ワクワクするなぁ!

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為の様々な訓練を行う課目だ!!!!単位数も最も多いぞ!早速だが、今日はコレ!!戦闘訓練!!」

 

「「「「戦闘訓練!!」」」」

 

「そう!そしてそれに伴って……こちら!!!入学前に送って貰った個性届けと要望に沿って誂えた……君達の戦闘服(コスチューム)だ!」

 

「「「「おおおお!!!」」」」

 

僕の…コスチューム…!

 

「それじゃ!着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!!」

 

「「「「はーい!!」」」」

 

「格好から入るってのも大切な事なんだぜ?少年少女!!自覚するんだ!今日から自分は…ヒーローなんだと!」

 

みんな着替えるの早い……!

 

「さあ!始めようか、有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!」

 

「あ、デクくん!!半袖半ズボンなんだ?カッコいいね!」

 

「麗日さ……うおおぉぉ……!!」

 

麗日さん…!身体が……!!ラインが!!

 

「要望ちゃんと書けば良かったよ……パツパツスーツんなった。………はずかしい///」

 

「ヒーロー科最高だな!」

 

「ええ!?って…君入試の時の」

 

「おう!オイラは峰田 実!あん時はありがとな!」

 

「僕は緑谷 出久です!コレから宜しくね?」

 

新しい友達がまた出来ました!

 

「良いじゃないか!みんな!カッコいいぜ!!」

 

オールマイトがみんなのコスチュームを褒めているとヘルメットを装着した人が質問をした。

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

 

って、飯田くんだったんだ。カッコいいな……!!そんな風に思っているとオールマイトが

 

「いいや、もう2歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!ヴィラン退治は主に屋外で見られる事が多いが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィランの出現率は高いんだ!」

 

そうだったのか……。普段目の当たりにする事件は外の方が良く見るけど、屋内の方がそういうのは多いんだ。

 

「監禁、軟禁、裏商売…このヒーロー飽和社会。真に賢しいヴィランは屋内(やみ)にひそむ!!君らにはコレからヴィラン組とヒーロー組に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

「「「「!!?」」」」

 

いきなり!?

 

「基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知る為の実戦なのさ!!ただし、今度はぶっ壊せばオッケーなロボじゃ無いのがミソだぞ!!」

 

「勝敗のシステムはどうなりますの?」

「ぶっ倒しても良いんすか?」

「また相澤先生みたいに除籍とかあるんですか…………?」

「組み分けはどのような分かれ方をすれば宜しいですか?」

「このマントヤバくない?」

「いや、みんな一気に聞きすぎじゃ無い!?」

 

「んんん〜〜〜!聖徳太子ィィ!!!」

 

流石のオールマイトでもみんなの質問には答えられないみたいだ。

 

「えーと…。いいかい?状況設定はヴィランがアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれの処理をしようとしている。ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか核兵器を回収すること。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事。コレが、勝利条件だ!!」

 

すごいカンペ読んでる!!?

 

「さぁ!チーム分けはクジ引きだ!」

 

「適当に決めるのですか!?」

 

「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事が多いからそういう事じゃ無いかな……?」

 

「そうか!!先を見据えての計らい……失礼致しました!!」

 

「いいさ!!早くやろ!!!」

 

僕のクジ引きは……コレだ!!!

 

〜チーム分け〜

(A)麗日お茶子、緑谷 出久

(B)障子 目蔵、轟 焦凍

(C)峰田 実、八百万 百

(D)飯田 天哉、爆豪 勝己

(E)青山 優雅、芦戸 三奈

(F)口田 甲司、砂藤 力道

(G)上鳴 電気、耳郎 響香

(H)蛙吹 梅雨、常闇 踏陰

(I)尾白 猿夫、葉隠 透

(J)切島 鋭児郎、瀬呂 範太

 

「縁があるね!よろしく、デクくん!」

 

「は、はい!!」

 

マジか!!ちゃんと喋らないと……!

 

「チームが決まったら、次は対戦相手を決めるぞ!最初の対戦は…………こいつらだ!!!Aチーム、ヒーロー!!Dチーム、ヴィラン!!」

 

いきなり!しかも……かっちゃんと!!

 

「ヴィランチームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入してスタートするぞ!他のみんなはモニターで観察するぞ!」

 

緊張する。かっちゃんとは軽い組み手はやって来ても、個性を全開でやった事は無かった……。勝てるのか?僕は……!

 

「飯田少年、爆豪少年はヴィランの思考を学ぶように!コレはほぼ実戦!ケガを恐れるな!思いっきりだ!しかし、度が過ぎたら中断するけどね……」

 

「やろうぜ、デク。屋内っつう制限はあるけど、オレと本気でよ!」

 

かっちゃん……!

 

「負けないぞ、かっちゃん!僕は、頑張れって感じのデクだ!!」

 

「面白え!そう来なくっちゃなぁ!」

 

そう言ってかっちゃんは飯田くんとビルの中に入っていった。

 

 

 

〜爆豪SIDE〜

 

さて、どうしたもんか。待ち構えるか別行動で迎撃するか…。

 

「訓練とはいえ、ヴィランになるのは心苦しいな……コレを守ればいいんだな」

 

オレのコンビは飯田。初日からオレに突っかかって来た奴だ。

 

「おい飯田、お前はどれくらい速く走れるんだ?」

 

「オレの個性を知っているのか!?」

 

「あぁ?体力テストで見ただろうが。……それで、どうなんだよ?」

 

「ああ、そういう事か。オレは直線なら速く走れるんだが、こう狭い空間じゃあまり速くは走れないな。加速しきる前に壁にぶつかるだろう」

 

なるほどな…でも

 

「この部屋でもそのハリボテを抱えて移動は出来るか?」

 

「ん?最高速には程遠いが並の人間なら振り切れる筈だ」

 

(ならいけるか?)

 

オレは飯田に作戦を伝えた。

 

「良いだろう、爆豪くん。君の作戦でいこう!」

 

さあ来いよデク!誰だろうとオレは負けねえ!!

 

 

 

〜緑谷SIDE〜

 

相手はかっちゃんと飯田くんだ…機動力は向こうの方が圧倒的に上だ。

 

「建物の見取り図…覚えないとねコレ。でも、相澤先生と違って罰とか無いみたいだし安心したよ!」

 

「そ、そうだね…!」

 

「って!全然安心してないね!?どうしたの!?震えてるよ?」

 

麗日さんが僕を見て驚いてる。

 

「あ、大丈夫だよ!怖いとかじゃ無いんだよ?ただ、相手がかっちゃんだからさ…」

 

「爆豪くん、口の悪い人だよね?」

 

かっちゃん、会ったばかりの人ですら君の印象が良くないよ…。

 

「確かに口は悪いんだけどね。でも、凄い人なんだよ。目標も…自信も…体力も…個性も、僕なんかより何倍も凄い奴なんだ。でも……だからこそ、負けたくないなぁって……」

 

かっちゃんと特訓じゃないガチの勝負。だからこそ、今だけは負けたくない!

 

「男のインネン?ってヤツだね!」

 

僕がそんな風に思っていると麗日さんがそんな事を言ってきた。

 

「あ、いやゴメン!麗日さんには関係ないのに……!!」

 

「あるよ!コンビじゃん!!一緒に頑張ろう!」

 

「っ……!!」

 

やっぱ麗日さん良い人だ!!!



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戦闘訓練

皆さま、新年明け過ぎましておめでとうございます。サボっていてすみませんでした!!!!また少しずつ投降をして行きます。よろしくお願いします!


〜オールマイトSIDE〜

 

屋内対人戦闘訓練、開始!!!

 

「さぁ、君たちもこの地下モニタールームでしっかりと見て、また考えるんだ」

 

緑谷少年、爆豪少年、ココでは君たちでも一生徒、成績は平等に、贔屓目なしで厳しくいくぞ!!

 

 

 

〜緑谷SIDE〜

 

「潜入成功だね」

 

「うん。でも、死角が多いから気をつけよう!」

 

OFAはまだ完璧に使う事は出来ない。100%は諸刃の剣だし、僕のゴムと麗日さんの『無重力』でやるしか無い……頭をフルで回せ…!屋内の狭い中での戦いの記録を!!思い出せ!これまで書き留めてきたノートを!!!

 

僕がそんな事を考えてると

 

バッ!!BOOOM!!!!

 

「うわっ!!」

 

人が角から飛び出して来たと思ったら壁が爆発した

 

「かすった……!麗日さんは大丈夫!?」

 

「うん!デクくんのお陰でね、ありがとう!!」

 

「どういたしまして!やっぱ早速来た…!!」

 

「ちっ!上手く奇襲出来たと思ったんだがな…よく避けたじゃねえか!デク!!」

 

「かっちゃんが敵なら、君のタフネスと機動力を活かしてヒーローの迎撃に来ると思った!!」

 

 

 

〜地下モニタールームSIDE〜

 

「いきなり奇襲!!」

 

「爆豪ズッケェ!!奇襲なんて男らしくねえ!」

 

「いや、そんな事は無いだろう」

 

「どう言う事だ、常闇?」

 

「それは、奴らもまた悪に染まらなければならないからだ」

 

「ん?どう言う意味だよ?」

 

「つまり、爆豪ちゃんはヴィランとして、奇襲の作戦を選んだって事ね?常闇ちゃん」

 

「その通りだ!蛙吹少女、常闇少年!彼らは今実戦の中にいる。奇襲も立派な戦略だよ!」

 

「でも、緑谷もよく避けれたね!」

 

さぁ、まだまだ始まったばかりだぞ?4人とも!!

 

 

 

〜緑谷SIDE〜

 

「麗日さん!ココからは僕がかっちゃんの相手をするから核に向かってくれ!!」

 

「うん!わかった!」

 

「作戦通りにお願い!」

 

飯田くんはスピードがある、ハリボテの核は軽いから抱えて部屋を逃げる事くらいは出来るはずだ。

 

「行かすかぁ!!」

 

「ひっ!?」

 

かっちゃんが麗日さんを追いかける。

 

「行かせないぞ!かっちゃん!」

 

僕は腕を伸ばしてかっちゃんの腕を掴み引き寄せる。

 

「……」

「……」

 

僕とかっちゃんは互いに睨み合って構えている。お互いを良く知ってる分動き辛い。

 

「そういや、久しぶりにやりあうな」

 

「負けないぞ!かっちゃん!!」

 

かっちゃんは基本的に初手は右の大振り!コレは何回戦っても変わらなかった!だから間違いない!!

 

BOOOM!!!

「オラァァァァ!!」

 

「見えてるよ!かっちゃん!」

 

僕はかっちゃんの手首と肘を掴み身体を横にずらして攻撃をかわすと同時に思い切り投げて壁に叩きつけた。

 

「っぐ!!………、やるじゃねえか…デク!」

 

「昔から君を見てきて、闘ってきたんだ!負ける気は無いぞ!かっちゃん!」

 

 

 

〜爆豪SIDE〜

 

ったく…マジで強くなったな、デク。俺のことなら俺以上に詳しそうだ。マジで笑えねえな、こりゃ。

 

「イイぜ!デク!!来いや!!」

 

「っ!行くぞ!!」

 

とは言ったが、今回コッチが持ってるのは核兵器だからな……あまり大規模な個性は使えねえ。

 

「っらああぁぁ!!!!」

BOOOM!!!

 

「っ!!」

 

くそ!またギリギリ避けられた。決定打になんねえな……こうなるとデクを早々に仕留めて飯田の援護ってのは無理だな…。仕方ねえ、核は頼むぜ!飯田!!

 

 

 

〜麗日SIDE〜

 

やっと核のある部屋を見つけた。デクくんのお陰で探す事は出来たけど、ココからどないしよ。

 

「ヒーローはまだ来ねえのか?爆豪く…爆豪の足止めが効いてるな!」

 

飯田くん!めっちゃ成りきっとる!!真面目や!!……でも、ほんまにあかん。部屋ん中なんもあらへん。浮かすもん無いんじゃ私1人じゃ捕まえられへん。こんな時ヒーローなら……

 

「敵!無駄な抵抗は辞めて、投降しなさい!」

 

「ん!?来たかヒーロー!!貴様は無重力女子だな!貴様対策で、部屋の中には何も無いわ!」

 

私1人じゃ飯田くんには追いつけん…でも、デクくんが来てくれれば!

 

「もうすぐ他のヒーローもココに来ます!諦めて投降しなさい!」

 

だから私は飯田くんが核を持って逃げないように時間を稼ぐ事!

 

 

 

〜緑谷SIDE〜

 

「うらあぁ!!!」

 

…っつ!!やっぱかっちゃんは強い…麗日さんの援護に行きたいのに!

 

「この…ピストル……スマァァァァッシュ!!!!」

 

僕の伸ばしたパンチをかっちゃんは難なく躱す。

 

「そろそろ見えてきたぜ…デク。援護に行くために短期決戦にしたかったんだろうが、ここまで時間が掛かれば俺の方が有利だ」

 

そう。かっちゃんはスロースターターだからなるべく早く決着を付けたかった…。

 

『デクくん!核を見つけたよ!5階中央の部屋なんだけど…』

 

「どうしたの!?麗日さん!」

 

麗日さんが言いづらそうにしてる。もしかして捕まっちゃったのか!?

 

『部屋の中なんも無くて、私の個性が使えんの。飯田くんは核持って動けると思うから私じゃ追いつけへん!今説得はしとるんやけど、どないしよ?』

 

「ごめん麗日さん…まだコッチも手が離せないんだ……情けないけど頑張ってほしい!」

 

『う…うん!なんとかするよ!頑張ってみる!』

 

そう言って麗日さんとの通信は終わった。くそ、かっちゃんの身体能力の高さは解ってたつもりだけど、ここまで見通しが甘かったなんて!

 

「話は終わったか?デク。んなら行くぞ!!」

 

かっちゃんの攻撃を躱し、僕の攻撃を躱され、そのまま時間は過ぎていき……。

 

『終了!!勝者!敵チーム!!!講評をするからモニタールームに戻ってきてくれ!』

 

結局、決定打を与える事が出来ず、時間切れになってしまった。もっとやれる事が有った筈だ!身体がゴムなんだから「……ク…」攻撃だけじゃ無く、巻き付いての捕縛とか「…デク…」空気で骨って膨らませたりとか出来るのかな?…あ、身体の一部をポンプにして「おいデク!!」

 

「うわぁ!?かっちゃん!!急に何なのさ!」

 

「急じゃねえよ!ずっと呼んでたわ!!さっさとモニタールームに戻んぞ!」

 

あ、そうだったのか…。

 

「ごめんよかっちゃん。ありがとう」

 

「おう。……それで、何を考えてたんだ?」

 

「うん…もっとゴムって物に詳しくなろうと思ったよ。今は伸ばすのと風船みたいに膨らませてって事しか出来ないからさ……」

 

「そうか。まぁオメェの個性なんだ、オメェで考えろよ。何かありゃ相談とか訓練に付き合うからよ」

 

そう言う僕にかっちゃんが言ってくれる。

 

「ありがとう!かっちゃん!!」

 

そう言って僕たちはモニタールームに戻った。

 

 

 

〜オールマイトSIDE〜

 

「4人とも良く頑張ったね!素晴らしかったよ!…さあ見てた皆に聞くが今回1番素晴らしかったのは誰かな!?わかる人!!」

 

「ハイ!オールマイト先生」

 

む?彼女は八百万少女。

 

「恐らく飯田さんかと思われます。飯田さんはヒーローチームの麗日さん対策として部屋の物を全て退かしていました。また核を持って逃げる事も出来ていたので状況判断等も素晴らしかったと思います。次点で麗日さんかと、敵に対して最初無理に戦闘をせず、説得から入ったのは正しいと思います。ただ部屋の状況で自分1人では出来ないと諦め、緑谷さんが来てくれるのを待ってしまい、頼ってしまったのが良く無かったかと。爆豪さんの奇襲と緑谷さんの応戦も間違いでは無かったですが、建物を上手く使い短期的に決めるべきだったと思われます。核という兵器があるのでなるべく多対一に持ち込み安全に、そして速やかに回収するべきだと思います」

 

な、なんか思ってた以上に凄く言われた!!!

 

「そ、その通りだね。素晴らしいよ、八百万少女!」

 

「常に下学上達!一意専心に励み、トップヒーローを目指しますので!」

 

「うむ。良いことだ!飯田少年の様にヒーロー対策をしてくる敵は多くいるからね?ヒーローの個性は有名になればなるほど周知されて行くからね!」

 

 

 

〜緑谷SIDE〜

 

その後も戦闘訓練は続いていった。みんな個性を上手く使ってるけど、1番凄かったのは轟君だ。ビルを丸ごと凍らせるなんて…なんて凄い個性なんだ!

 

こうして初めての戦闘訓練は終了した。だけど僕たちはまだ知らない。今度の授業が、あんな事になるなんて……。

 

 

 

 

〜????SIDE〜

 

「おいおい、見たかコレ?」

 

「何がですか?」

 

「平和の象徴が教師だってよ…ああ、どんな風になるんだろうな……平和の象徴が敵に殺されたら…」

 

悪は動き出そうしている……!

 




戦闘シーンが難しいです…


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学校らしいイベントです!

「ったく、朝っぱらから面倒くせー目にあったぜ!」

 

「まぁマスコミの気持ちも分かるけどね。だってあのオールマイトが教師やってんだもん」

 

登校した僕たちを待っていたのは大量のマスコミだった。

 

そんな風に席に座りながら話してると相澤先生が入ってきた。

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績見させて貰ったが、各々自分に足りない所や反省点などが見えたと思う。3年間と言う短い時間しか無いんだ。焦って行けよ、お前ら」

 

相澤先生の言う通りだ。一刻も早くゴムの個性を理解してOFAの個性の特訓もしなきゃ。ゴムの方は試してみたい事もあるし…

 

「さて、朝のHRの本題に入る。早速急で悪いが、君らに……」

 

((((またテストなのか!?))))

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

「「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」」

 

「委員長!!俺やりたいです!」

「ウチもやりたいっす」

「ボクの為にあるヤツだよね☆」

「リーダー!!やるやるー!!」

「オイラのマニフェストは女子全員膝上30センチ!!」

「闇に潜む我がやろう」

 

学級委員長かぁ…僕もやりたいなぁ!

 

「静粛にしたまえ!!」

 

…っ!飯田君!?

 

「多をけん引する重大な仕事なんだぞ…!やりたい者がやれるモノでは無いだろう!!ココは、投票で決めるべき議案だろう!!」

 

「そびえ立ってんじゃねーかよ!!」

「なんで発案したんだ!」

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」

 

「そんなん、皆自分に入れらぁ!」

 

「だからこそ、ここで複数票獲った者こそが、真にふさわしい人間という事にならないか!?どうでしょうか!!先生!」

 

「俺は時間内に決めりゃ何でも良いよ」モゾモゾ

 

相澤先生…何も決めてる間寝袋で待たなくても…。

こうして投票が始まったんだけど……。

 

「僕、3票!!!???」

 

「クソ!デクに負けたか!」

 

「まーおめぇに入るよかわかるけどな!」

 

ママママジ……マジでか…!

 

「1票……一体誰が…!?」

 

「他の人に入れたのですね……」

 

「自分が1番やりたがってたのに…何がしたいんだ?飯田」

 

「んじゃあ、委員長は緑谷、副委員長は八百万だ。しっかりやれよ」

 

このクラスを纏めるなんて、責任重大だ…!

 

〜昼休み〜

 

「デク、食堂行くぞ」

 

「うん、すぐ片付けるよ!」

 

「あ、デクくん!私も一緒に良い?」

 

「緑谷君、爆豪君、僕も良いだろうか?」

 

「あ、全然良いよ!ね?かっちゃん?」

 

「急がねえと席無くなるぞ!ランチラッシュの飯は人気だからな!」

 

〜食堂〜

 

相変わらず人が凄いなぁ……まぁランチラッシュのご飯が食べられるんだ。ヒーロー科以外にも、サポート科や経営科、普通科の人も来てるもんな。

 

「僕に委員長なんて務まるかな……」

 

「ツトマルよ」

 

「大丈夫さ、緑谷君の胆力や判断力は、多をけん引するに値する。だからこそ、僕は君に投票したのだ」

 

君だったのか!

 

「でも、飯田くんもやりたかったんじゃないの?」

 

「そうだよ、あんなに手が高くピーンと立ってたのに」

 

急に後ろから声が入り振り向くと

 

「芦戸さん!」

 

「急にゴメンね!席空いてないっぽいからさぁ、ここ1つ空いてるなら座って良い?」

 

「全然良いよ!ランチラッシュのご飯は人気だし食堂は混んでるからね!」

 

そう言って芦戸さんは空いてる僕の隣に座った。

 

「でさ、さっきの話なんだけど、飯田もやりたかったんでしょ?」

 

「ああ、だが、やりたいと相応しいは別の話になるさ。緑谷くんなら相応しいと思い投票したんだ」

 

飯田くんにそう言ってもらえると嬉しいな。

 

「飯田ってさ、自分の事僕って言ったり真面目だったりするけど、お坊っちゃん?」

 

「っく…!やはり一人称は変えるべきだったか!」

 

あ、やっぱりそうなんだ。何となくそうかなぁとは思ったけど…。

 

「そうさ、僕の家は代々ヒーロー一家でね。インゲニウムって知ってるかい?僕の兄なんだよ!」

 

「ターボヒーロー・インゲニウムだね!!もちろん知ってるよ!65人もの相棒(サイドキック)を雇ってる大人気ヒーローじゃないか!!!ねぇ?かっちゃん!」

 

かっちゃんも僕に散々聞かされてるから知ってるはずだ。

 

「すげー真面目なヒーローって印象だったな。…まぁ個性からして、似てるとは思ってたがな」

 

「そうなんだよ!規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!僕は兄に憧れてヒーローを目指しているんだ!!だから雄英での最初の一歩を委員長として踏み出そうとしたんだが…」

 

「飯田少し真面目過ぎるしねぇ」

 

芦戸さん、君本当に容赦無いな…。

 

「ああ、僕はまだまだ未熟だ。だから上手の緑谷君が就任するのが正しいと思ったんだ!」

 

僕にとってのオールマイトが、飯田くんにはインゲニウムなんだな。

 

「デク、話は変わるが、個性の方はどうなんだ?」

 

「うん、昨日からずっと考えてたんだけど、伸ばすだけじゃ無い、色々な案を2つ出したよ。取り敢えず試してみるつもり」

 

「そうか、なら付き合うわ」

 

体育館とか使えないかな?早速先生に聞いてみよう!

 

「なになに?2人で特訓?私も参加して良い?」

 

「良いね!皆でやれば特訓の幅も広がるよ!」

 

僕たちがそんな風に話しながら食事を終えようとした時。

 

ウウーーーー!!!!ウウーーーー!!!!

 

警報!!!???

 

『セキュリティ3が突破されました!生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい!」

 

セキュリティ3ってなんだ!?何が起きてるんだ!!

 

「セキュリティ3って何ですか?」

 

飯田くんが上級生に聞いている。

 

「校舎内に侵入者だ!!3年間で初めてだよ!!君たちも早く避難するんだ!」

 

その声を聞くや否や後ろから大勢の生徒が入り口に向かって雪崩れ込んできた。

 

「痛えよ!!」

「押すなよ」

「ちょっと!やめてよ!」

「押すな!倒れるだろ!!」

 

「いたっ!急になに!?」

「潰されるよぉ…」

 

麗日さんと芦戸さんが押されて痛がってる。僕は2人を引き寄せる。

 

「2人とも大丈夫?僕が壁になるから僕の前に来て!」

 

「う…うん。ありがとう、緑谷」

「デクくんありがとう!」

 

まさか敵が侵入したのか!?僕がそんな風に考えてると飯田くんがこっちに来た。

 

「麗日くん!僕を浮かせてくれ!」

「麗日!俺もだ!!飯田!連れてけ!」

 

かっちゃん!?飯田くん!?何をする気なんだ!?僕が声をかける暇も無く2人は飛んで行った。

 

BOOOOM!!!!!

「大丈ー夫!!!ただのマスコミです!慌てる必要はありません!!」

 

かっちゃんと飯田くんのお陰で生徒は落ち着きを取り戻し、その後直ぐに警察が到着して事なきを得た。

 

〜午後の授業〜

 

「委員長、早速ですが始めてください」

 

「その前に、僕から提案が有るんですけど、委員長は飯田くんが良いと思います!あんな風に状況を確認して、素早く行動出来るなら、飯田くんがやるのが正しいと思うよ」

 

僕がそう言うと、食堂に居た切島くんと上鳴くんが

 

「良いんじゃねえか!!飯田、超活躍してたし!」

「非常口の標識みたいになってたけどな!」

 

「何でも良いから早く進めろ……時間の無駄だ」

 

「「「ひっ」」」

 

相澤先生も怒りそうだ!

 

「どうかな八百万さん?今日のあの騒動を止めた飯田くんが1番適任だと思うんだけど…副委員長として意見が聞きたいんだ」

 

「私も構いませんわ。聞いた話では、怪我人が出てもおかしくなかったそうですし、それを怪我人を出す前に収めたその手腕は素晴らしいと思いますわ」

 

「ありがとう!八百万さん!……どうかな?飯田くん?」

 

「……委員長と副委員長が言うなら仕方ない!僕がこのクラスの委員長になろう!!」

 

こうして飯田くんが委員長になった。ただ、気になることがある。一体どうやってマスコミは侵入したんだろう?

 

 

 

〜教師SIDE〜

上記、同時刻

 

「ただのマスコミがこんな事出来るかね?」

 

「唆した者がいるね……」

 

「トナルト…」

 

「うん。邪な者が入り込んだか…もしくは宣戦布告のつもりなのか…」

 

いずれにしても、嫌な予感がするさね…。

 

 

 

〜放課後〜

 

「相澤先生、聞きたいことがあるんですけど」

 

僕は昼休みに考えてた特訓を学校の施設を借りて出来ないか聞いていた。

 

「構わないぞ。1年のこの早い時期に使いたいと言うやつは珍しいがそういう有意義な時間の使い方なら、俺も許可しよう」

 

こうして僕たちは相澤先生に体育館γを使う許可を貰った。




麗日の口調が難しいのと飯田の一人称を僕で通すか俺で行くか悩みます。
読んで頂きありがとうございます!


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特訓とレスキュー

遅くなりました!続きです、どうぞ!


「この体育館γなら個性を使っても構わない。ココは必ず誰かしら教師がいるから、アドバイスをもらう事も可能だ」

 

僕らは相澤先生に連れられて体育館γに来ている。ココなら個性を思いっきり使えるよ!

 

「ありがとうございます!相澤先生!」

 

「「「ありがとうございます!」」」

「あざっす」

 

「ん。…んじゃ有意義に過ごせよ」

 

そう言って相澤先生は戻って行った。

 

「それじゃあ早速始めようか!」

 

「だが、特訓と言っても一体何をすれば良いんだ…?」

 

僕とかっちゃんだけならいつも通り組手で良いんだけど、芦戸さん、麗日さん、飯田くんの3人は必ずしも組手が良いとは限らないな……。

 

「3人の個性教えて貰っても良い?因みに僕の個性は『ゴム』だよ」

 

「僕の個性は『エンジン』だ。ふくらはぎにエンジンが付いていて早く動ける」

 

「私は『酸』手から酸を出して溶かす事ができるよ。酸の強さは変えられるよ」

 

「私は『無重力』(ゼログラビィティ)言うて、手で触れたら浮かす事が出来るんやけど、自分のキャパを超えると凄く気持ち悪くなるんよ」

 

「オレは『爆破』だ。手の汗で爆発を起こせる」

 

皆良い個性持ってるなぁ…。飯田くんはどこまで速さを上げられるんだ?最高速に至るまでの時間はどれ位だろう……芦戸さんは牽制にも決め手にもなる個性だし、麗日さんは触れる事が出来れば敵を無力化する事も可能だ。コレは近距離の敵に対しては凄く強いぞ」ブツブツブツブツ…

 

「おいデク、怖えからやめろっていつも言ってるだろ?」

 

「…っ!またやっちゃってた!?」

 

あぁまたやっちゃった…昔からコレで気味悪いって言われてたのに…。

 

「凄いな緑谷君は。個性を聞いただけで活用方法などを考えられるのかい?」

 

「緑谷凄いね!じゃあさ、私達に合う訓練とか考えられんの?」

 

僕のコレを見ても引かれない!?やっぱ雄英のヒーロー科は凄いや!!

 

「三奈ちゃん、流石にスグには無理なんとちゃう?」

 

「その、一人一人のを考えると少し時間が欲しいけど取り敢えず出来そうなのは考えたよ」

 

「うそ!?デクくん早すぎん!?」

 

「デクはヒーローが大好きだからな、昔から個性を見ると活用法とか使いどころとかを考えてんだよ。……んで、どんなの思いついたんだ?デク」

 

「えっと…芦戸さんと麗日さんの2人でチームを組んで貰って、飯田君を攻撃するのはどうかな?芦戸さんが酸で攻撃しつつ動きを封じるんだ。そこを麗日さんの個性で浮かせる。飯田くんはひたすらそれを避ける感じでどうかな?」

 

「まあ初日だし、最初はそれで良いんじゃねぇか?……んで、オレ達はいつも通り組手か?」

 

「いや、かっちゃんには僕の特訓で付き合って欲しいことがあるんだ!」

 

「よし!じゃあ早速やってみようよ!」

 

「OK!行くよ飯田!」

 

「1度も捕まる気は無いぞ!芦戸君!麗日君!」

 

そう言って3人は奥の空いてるスペースの方へ行った。

 

「んで、何を試したいんだよ」

 

「2つ有るんだけどね。身体がゴムなら普通の人が耐えられない事でも耐えれると思うんだ。そこで考えたのが身体の一部をポンプにして血液の流れを加速させて身体能力を底上げするんだ!僕だけのパワーアップ!」

 

そう言って僕は準備をした。

 

「身体が赤く……やっぱお前は最高だぜ!デク!」

 

そう言ってパワーアップを終えた僕とかっちゃんは組手を始めた。

 

 

 

〜次の日〜

 

「今日のヒーロー基礎学だが…俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」

 

3人になった……?何か有ったのか?それとも特例なのかな?

 

「先生!なにするんすか?」

 

「今日は災害水難、なんでもござれ。人命救助(レスキュー)訓練だ!」

 

レスキュー……

 

「今回も大変そうだな」

 

「バカおめー!レスキューこそヒーローの本分だぜ!?腕がなるぜ!」

 

「水難なら私の独壇場ね。ケロケロ」

 

ワイワイガヤガヤ!!

 

「おい…!まだ途中だ…!」

 

シーン……

 

最近はお約束みたいになっている。

 

「今回もコスチューム着用で授業を行う。ヒーローになったら常にコスチュームを着てるからな。着替えたらバスに乗って移動する。以上、準備開始」

 

憧れの、最高のヒーローに近付く為の訓練!!頑張るぞ!!

 

 

 

「さぁ!バスの席順でスムーズにいくように、番号順に2列で並ぼう!」

 

「飯田くん、フルスロットルだなぁ……」

 

「こういうタイプだったか…!くそう!!」

 

「イミなかったねー」

 

あはは…。

 

「私思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

 

「あ!はい!?蛙吹さん!!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

「う、うん。それで梅雨ちゃん、どうしたの?」

 

「あなた、個性使いこなせないの?入試の時、0Pの敵を倒した時大怪我してたけど」

 

「あ、えーと…僕、個性が発動したの去年なんだ。だからまだ皆みたいに使いこなせる程使って無いんだ。あの時は初めて全力を出したから加減が効かなくて…」

 

「緑谷の個性ってゴムだろ?やれる事多そうで良いよな!俺の『硬化』は対人戦じゃ強えけど、いかんせん地味だからなー」

 

「そんな事ないよ!凄くカッコいいじゃないか!後ろに一般人がいても硬化して敵の攻撃を一切後ろに通さないで守る事も出来るし、攻撃でもそうそう引けを取らない!プロでも通用する個性だよ!」

 

「そ、そうか?……へへ、ありがとうな!緑谷!!」

 

「でもよ、プロは派手さの人気も少なからずあるぜ?」

 

「僕の『ネビルレーザー』は派手さも強さもプロ並み」

 

「でもすぐお腹壊しちゃうのはヨクナイよね!」

 

「派手で強えっつったら轟と爆豪じゃね?」

 

「爆豪ちゃんは口悪いから人気出なさそ」

 

「んだと蛙吹!出すわ!」

 

「ホラね?」

 

「この付き合いの短さでもうクソを煮込んだような性格って認識されてるってすげえな!」

 

「てめぇのボキャはなんだコラ!」

 

かっちゃんがイジられてる!さすが雄英の生徒だ!信じられない!

 

「もう着くぞ…いい加減にしとけよ…」

 

「「「「ハイ!!!」」」」

 

この時、あんな事になるなんて、僕たちは誰もまだ知らない……。



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悪意の来校

遅くなり申し訳ありません!!

新社会人と言うのは忙しいものですね…。

短いですが続きも頑張りますので、よろしくお願いします!


「「「スッゲーーー!!!!!!」」」

 

「んだよこれ!」

 

「まるでUSJみたいだな!!」

 

それはマズイんじゃ無いかな!?切島くん!上鳴くん!

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc。あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場です。その名もウソの(U)災害や(S)事故ルーム(J)!!」

 

って、本当にUSJだったぁ!!!???

 

「スペースヒーロー13号!!災害救助で活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わー!私好きなの!13号!」

 

「13号、オールマイトはどうした?ココで待ち合わせの筈だが…」

 

「先輩、それが…通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で今休んでます」

 

「不合理の極みだなオイ」

 

「終わりがけに顔だけは出せるみたいなので……」

 

(まあ……念のための警戒態勢だからな)

 

「仕方ない、始めるか」

 

相澤先生と13号先生が話を終えてコッチに来る。

 

「えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ……四つ………。」

 

どんどん増えてる!

 

「僕の個性は『ブラックホール』どんなものでも吸い込んでチリにします」

 

「でも、その個性で災害から人を救い上げるんですよね?」

 

「ええ……しかし、簡単に人を殺せる力です。皆さんの中にもそういう個性があるでしょう?なので、皆さんにはヴィランと戦うだけでなく、人を助ける為の力であると心がけて下さい」

 

カッコいい!!!

 

「そんじゃあ早速始めるぞ。まずは…………っ!?一かたまりになって動くな!!」

 

「「「え?」」」

 

「13号!生徒を守れ!」

 

「なんだアリャ?また入試ん時みたいに始まってんのか?」

 

「動くな!あれは…ヴィランだ!」

 

そんな……学校に!?

 

「13号にイレイザーヘッド……おや?先日頂きました教師側のカリキュラムには、あのオールマイトが居るはずなのですが…」

 

「どこだよ…こんなに大勢引き連れてきたのにさぁ……平和の象徴いないのか…」

 

なんだ…あいつ?

 

「子どもを殺せば来るのかな?」

 

 

 

 

「ヴィラン!!?バカかよ!」

 

「学校にはヒーローが居るんだぞ!?」

 

そうだ!ヒーローが大勢居るのになんで…。

 

「平和の象徴に」

 

……っ!後ろに!?

 

「生き絶えて頂きたく思いましたので、来てみたのですが……まぁ良いでしょう。私の役目は…」

 

BooooM!!SKLIT!!

 

「その前に俺たちにやられるとは考えなかったのかよ!」

 

かっちゃん!切島くん!ダメだよそこは!

 

「危ない危ない…………さすが雄英ですね」

 

「退きなさい!!2人とも!!!」

 

13号先生が個性を使えない!!

 

「子供と言えど金の卵。……流石にこの数を相手にするのは骨が折れますので…」

 

そう言ってヴィランは黒い霧を広げて僕たちを飲み込んだ。

 

「散らして嬲り殺す……!」

 

その言葉とともに僕の視界は真っ黒に染まった。

 



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