ブオン!ブオン!
現代日本にて、明らかに場違いな音が周囲に響く。
それは何かを振り下ろす音。
だがそれが出す音の大きさが場違いだった。
剣道等なら竹刀を振る音と言えるが、竹刀は1㎏すらないのだ、こんなに重い音は響かない。
その音の正体は、1人の男が振るっている鉄塊だった。
竹刀と同じ三尺七寸程度の長さに整えられ、持ち易いよう細くなり革ベルトを巻かれた持ち手。
だが先端には、10㎏近くはありそうな鉄塊。
鉄塊だけで出来た鍛錬棒を、その男は振っていた。
「ふむ…」
何食わぬ顔で鍛錬をやめた男は、そのまま鍛錬棒を腰に持っていき居合の形を取った。
鞘が無い、だが鞘が無くてもそれは居合である。
そして精神を集中させ、目を閉じる。
「すぅ…はぁ……」
カッと目を見開いた男の視界には、彼が憧れてやまない彼の魔人の姿があった。
ひたすらにその姿を追い続けていた彼は、彼のやることなすこと全てを研究し続けていた。
その中でも彼。いや、彼ら兄弟の特に兄の剣技に心を引かれた。
何時の日かあんな風になりたいと。
そう決意してから45年。
高校を卒業してから就職もせず、両親の仕送りでほぼニート生活を送っていると周りが思うほど。幸いなことは両親が超が着くほど裕福で、超が着くほど親バカだった事だろう。
故に絶縁も、文句を言われる事も無く
彼は体を鍛え続けた。
45年間就職せず、ひたすらにジムや剣術の道場、空手、ムエタイ、覚えられるだけ習ってきた。
食事や風呂、睡眠以外は常に自分の体を虐め抜く毎日に彼が気付かない内に体は悲鳴を上げ続けた。
それでも彼の魔人には届かない。
いや、届くはずがない。
所詮はゲームの中のキャラクターに過ぎない、どれだけ体を鍛えようとも、創られた者にはなることが出来ない。
だがそれでも彼は、今の今まで鍛錬を続けてきた。
かかさず体を虐め抜いてきた彼の体は余すところなく筋肉が付き、ムキムキボディとなっていた。
彼が憧れてやまない、彼の魔人のスラッとしたボディでは無かった。
人間は鍛えれば鍛えるほど筋肉が付き、体格も良くなるのだから仕方ないと諦め、技量だけでも身に着けようと必死に素振りをした。
だがどれだけやろうとも、彼の魔人のように次元を切り裂く等、ましてや神速を超えて抜刀するなど出来はしない。
だが諦められなかった。
そう、例え体が限界を迎えても、死するその時まで夢を追い続けるつもりであった。
彼の体はとっくに限界であった。
医師にも、これ以上やると命に関わると言われ、それでも続けてきた。
だが遂にそれは訪れる。
鍛錬中に立って居られなくなったのだ。
それはつまり、彼の体が限界を迎えたことに他ならない。
だが限界を迎えてもなお、彼は鍛錬を続けた。
精神を落ち着かせ体が限界ならばと、彼の魔人なら容易に切断出来る鋼鉄を斬って、人生の手向けにしようと考えた。
鍛錬棒を居合で構え、鋼鉄に向き合う。
彼ら兄弟なら易々と切断するだろう。
それならばこそ、自分もそれを成し遂げれば彼らの足元に辿り着ける。
故に全力を、文字通り全てを掛けて一閃した。
何かが、切れる音がした。
それは鋼鉄か、はたまた彼の命か。
崩れゆく彼の体は、同時に崩れていく鋼鉄に押し潰された。
死に体の状態で鋼鉄を支えるなど出来ず、動けなくなった。
元々限界を超えていたのだ、直ぐにでも死ぬだろう。
だが彼は遂に成し遂げたのだ、人の身で彼の魔人に迫る事に。
「嗚呼、長かった。45年、ここまで来るのに掛かってしまった。これでようやく…ッ!?」
そう、鋼鉄は斬れた。
だがその向こう、大空が割れていた。
彼が振るった軌跡通りに亀裂が入り、その歪みが目視できる程に。
そう、遂に至ったのだ。
彼の魔人の得意とする次元斬。
それを人の身である自分自身が、たった一閃とはいえ成し遂げたのだ。
これほどの喜びがあるだろうか、届くはずがない、出来るわけが無いと笑っていた友人たちを見返すことが出来る。
そんなことを考えつつも、彼は意識を失った。
そのまま息を引き取った、享年53歳であった。
『おいおい、人間が憧れだけでここまで出来るのかよ。』
そう呟いたのは、一人青年。
否、青年の姿をした何かだった。
そしてその青年の横、そこには一閃され歪んだ空間があった。
『よし!あの男に興味が湧いた。転生させてみたらさぞ面白いだろうな。』
青年はそう呟くと早速作業に取り掛かった。
死者の魂を呼び寄せ他の世界へと転生させる。
これは青年の、いや神の持つ特権だった。
『初めましてだな、成し遂げた男!』
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第二話
いあ!いあ!
ふふふ
『初めましてだな、成し遂げた男!』
彼は意識を取り戻して早々、不審な青年を目撃した。
それはどう見ても青年であり、どう見ても青年では無かった。
言うなれば、青年ではない別の何か。
「あんたは?」
『私か?
私はお前達が世界と呼ぶ存在。
或いは宇宙、或いは神、或いは心理。』
その言葉が紡がれていく度に青年の姿が変化していく。
まさにその姿は、形容し難い何かだった。
その姿は、蠢く黒い無形。
『私は、無貌の神【ナイアーラトテップ】。外なる世界とここを隔てる番人だ。』
ナイアーラトテップ。
別名ニャルラトホテプ。
千の姿を持つ無貌の神。
這い寄る混沌。
人間体以外の姿は、一度見てしまえば正気ではいられないと言われている。
それが彼の目の前に、不定形の化け物の姿へと変化して存在していた。
「で、そのカミサマが一体何の用だ?」
『本来ならお前達人間に用など無い。
だがこのように何も無い所に居る私達は娯楽に飢えていてな。見ると良い、この亀裂を。』
ナイアーラトテップが促した方向を向くと、そこには今も確かに存在している時空の裂け目があった。
『本来、この場所で自然と発生した時空の裂け目は数分で消える。だが外的要因によって発生したものは2~3日は消えることなくその場に残り続ける。』
男は何を言っているのか理解できなかった。
確かに時空の裂け目がどうとかの話は理解した。
だがこの亀裂を自分に見せた意味が分からなかった。
何より、この無形の化け物が何故自分に興味を持ったのか、それが謎だった。
だが次の一言で否応なく納得する。
『本来、この空間に意図的に傷を付けるのは次元を斬り裂かない限り無理だ。ましてやそれを人間が成すなど有り得ない。そんな力等人間に無いからな。だがお前は…お前は違った。』
ナイアーラトテップがその無形の手で男を撫でる。
目があるかどうかすらわからない顔からは、愛しさが伝わってくる。
それが彼にとっては酷く
『お前はあの世界で、私達が課した絶対の理を独力で覆した。それは娯楽に飢えた私達にはとても甘美なものだ。』
「俺は……俺は遂に成し遂げたのだな。」
『ああ。だから私はお前をここに呼び寄せた。絶対の理を覆したお前に、
その言葉に彼は歓喜した。
彼はナイアーラトテップに認められた事より、褒められた事より、褒美を貰える事よりも憧れに近付く事が出来た方が喜びが大きかった。
文字通り命を賭して成し遂げた事だ、例え指先一本しかその領域に掛かっていないとしても。
到達することが不可能では無いと言う事の方が嬉しかった。
だからこそ彼は、こう選択する。
「ならばもう一度、夢を追い掛ける事を許して欲しい。俺はあの領域に、あの人に…憧れに追い着きたい!独力で指先一本でも追い着けたんだ、不可能じゃないって知れたんだ!だからこそもう一度!もう一度だけ夢を見させて欲しい!」
『良いだろう。お前の歩く道が、私の娯楽になる。夢を追い掛ける事で理を覆したのなら、その先の夢を追い掛けるお前は最高の娯楽だろう。』
快くナイアーラトテップはその望みを受け入れた。
彼にとってもそれは最高だった。
死んでも尚まだ夢を見ていられる。
その夢は決して叶わないものではないと証明が成された、ならば何時の日か憧れに追い着ける。
『ならば力不足だな。
人の身であるお前のままでは少々厳しかろう。褒美の前祝いだ、お前が望む力をくれてやろう。ほれ、何でも望みを言うが良い。』
その言葉に、男は言葉を失った。
何でもと言うことは、憧れである彼の魔人の力ですら叶ってしまうのだから。
だが、目の前の存在がナイアーラトテップだと言うことでふと男は思い出した。
とても狡猾で残忍で、トリックスターの1面も有ると描かれている。
それは試練を課した相手に対し、達成すれば褒美を、失敗すれば死よりも恐ろしい恐怖を与えるとも書かれている。
つまりこれは試練であると。
少しの力添えは人間なのだから仕方ないだろう。だがここでナイアーラトテップに夢を叶えて貰ったところで、彼の存在理由はあるのだろうか。
夢を追い掛けるその生き様が目に止まったが故にここに居るのだ。
人の身でありながら理を覆したその生き様がナイアーラトテップに気に入られたのだ。
だからこそ、独力で覆す姿勢を崩してはならないと。
「俺が欲するものは3つ。
1つ、成長限界のない肉体。
1つ、彼の魔人が使う技が使えるような代替手段。
1つ、天才的な頭脳。
以上だ。」
その答えに全身の無形を踊らせながら上機嫌になっていく。
ナイアーラトテップにとって、人間等目の前に飴をふらつかせればそれに食い付くような存在でしかない。
だからこそ、少しの助力以外は独力で全てを成し遂げようとする男は最高の娯楽であった。
『素晴らしい。やはりお前を呼び寄せて正解だった。お前は今までのどんな人間よりも最高の娯楽になるだろう。』
その言葉と共にナイアーラトテップの後ろに新たな空間の裂け目が現れる。
これは男が斬り裂いたものとは作用した力が違う。
そこへとナイアーラトテップは男を掴み、文字通り放り投げた。
だがそこに怒りも不安も恐怖すらなかった。
あるのはただ、夢を追い続ける事が出来るという喜びのみ。
『行って来い。そして私に、お前の生き様を見せてくれ。』
ニャルラトホテプは千の姿を持つと書かれていますが、その千の姿全てがラブクラフト作のクトゥルフ神話に描かれている訳ではありません。
ならばそのうちの1つの1面がこんな姿でも問題は無い筈です。
だってニャルラトホテプですから
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第三話
まだ先だよ
[ふむ]
男は目を覚ました。
そう普通に目を覚ましたことで、あれは夢なんじゃないかと。
次元を斬り裂き、ナイアーラトテップに会い、転生したこと自体がまやかしなんじゃないかと。
体が動かないのはあの後誰かが自分を見つけ、病院に運ばれて処置をされたからだと。
そう思っていた。
[すまない、少し良いだろうか?]
そのため、男は情報収集の一環として近くの女性に声を掛けた。
その女性は白衣を着ていたので、一目で医者だろうと当たりが付いた。
だがどれだけ声を掛けようとも、女性は男を微笑ましいような笑みを浮かべて見るばかり。
そう、今の男が女性に話し掛けて必要な情報を引き出すなど絶対に出来はしないだろう。
そもそも言語が通じていないという問題では無いだろう。
どう見ても日本人顔だし喋る言語も日本語だからだ。
ならば何故か、それは現状を見れば分かるだろう。
「はい坊ちゃん、ご飯の時間ですよー」
新たに部屋に入ってきた女性は、メイド服に身を包み、その手に哺乳瓶を持っていた。
それを見れば流石に男も察する事が出来た。
何故言葉が繋がらないのか、何故会話が出来ないのか。
「あうあ~」
自分が赤ん坊になっていたからだ、赤ん坊で意思疎通が出来るはずも無い。
そして赤ん坊になっていると言うことは、転生したことが現実であると言う事だ。
50を過ぎたおっさんだった男にとって、これはとんでもない羞恥プレイだ。
外見が赤ん坊だから問題は無いのだが、中身はおっさんなのだから。
赤ん坊の格好をした50過ぎのおっさんがベビーベッドで哺乳瓶を咥えてる様等、誰も見たくないだろう。
(これで想像してしまった人は、1d100のSAN値チェック。)
せっかく前世とは違って成長限界の存在しない肉体を手に入れたのだ、前世と同じような訓練メニューでは意味が無いと当たりを付けた。
そもそも、人間が1日訓練して成長出来る度合いは概ね決まっているものだ。
それを毎日、幾重にも積み重ねていく事で肉体は育っていく。
そして分野ごとにも成長限界と言う物が付きまとう。
純粋な筋力、動体視力、反射神経、どれを取っても、人間には鍛えられる限界がある。
どれだけ鍛えてもこれ以上成長しないという壁にぶち当たり、それ以上やれば肉体を壊してしまう。
そう、この男の前世がまさにそれだ。
だが今の男にはその壁が存在しない。
鍛えれば鍛えるだけ、際限なく上がっていくのだ。
だが男が現状を見るに、坊ちゃんと呼ばれた事から良いとこの生まれだと推測が出来る。
つまり鍛える為だけに時間を作ると言うことが出来なくなる恐れがあるのだ。
その家にはその家のルールがある。
前世の場合超が付くほど親バカだった為に、したいことをしたいだけさせてくれた。
だが今回もそうとは限らない。
[うーむ、どうしたものか。]
男は思考を巡らせる。
そして閃いたのだ。
鍛える時間が無いのなら、鍛えざるを得ない状況を作り出せば良いのだと。
常日頃から体中にアンクルを仕込むのだ。
そうすれば、日常生活を送るだけで肉体を鍛える事が出来る。
成長限界の存在しない男の体なら、数日位で馴染んでくるだろう。
そしてその状況で、段々とアンクルの重さを重くしていくのだ。
なんて良い案なんだと、男は自画自賛する。
そして自分の体を見て、もう少し先の話だと溜息を付く。
未だ満足に動くことすら出来ない体では、いくら何でも鍛える事など出来るわけが無いのだ。
まずは立って動く。
話はそこから始まるのだ、断じて今ではない。
「はーい、お昼寝の時間ですよぉ坊ちゃん。ねんねしましょうねぇ」
再度部屋にやって来たメイド服を着た女性によって、男は頭を撫でられながら寝かし付けられる。
流石に赤ん坊の体では抵抗する事など出来ず、睡魔に負けて目を閉じるのだった。
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第四話
次の話は原作キャラ出すんで…
羞恥プレイの毎日も終わり4歳となった。
この頃になれば、男が自由に立って歩き回れるようになった。
だが男が生まれた家は裕福なうえにかなり過保護で、3歳まで殆ど1人で行動することが許されなかった。
ここで男の名前を言っておこう。
男は
この世界で1、2を争う大企業【クラタコーポレーション】の御曹司である。
そして宗助の父が倉田
そして宗助や宗一郎の身の回りの世話をするメイド服を着た女性、朝倉真由美が別荘地に立つ一軒家で暮らしている。
そんな過保護な親の元に生まれた宗助だが、4歳になりようやく自由を得た。
つまりここから鍛錬がようやく始まるのだ。
まずは幼い自分の体に負担を掛けないようにしながら、負荷を掛けていく。
矛盾しているが、これが1番重要なのだ。
体を壊すか壊さないかギリギリの所を見極めて鍛えていく、それは繊細で豪快な作業である。
まず手始めに狭い部屋でも簡単に出来る腹筋から始める。
ただその際、ベットに横になり上半身だけ宙に浮く体勢を作る。
こうすることで体の保持に筋力を使いながら鍛える事が出来る。
4歳児がそんなこと出来るわけが無いと思うだろうが、宗助の肉体は神様ボディだ。
基本的なポテンシャルが違う為、通常の4歳児以上の基礎がある。
だがそれでも小学生後半当たりが限界の為、徐々に伸ばしていかねばならない。
そして彼の体はほぼ休息要らずの肉体だ、寝る事すら惜しんで鍛錬を開始した。
鍛えれば鍛える程に上昇していく身体能力に嬉しくなった宗助は、過保護な親の監視の目が無くなったのを良いことに本格的に寝ずに鍛錬していた。
そして2年が経ち6歳になった時には彼の身体能力は既に常人を超えていた。
2年も休まず鍛え続ければそうなるのは当然とも言える。
6歳になり幼稚園に通いだすようになってからは、その高すぎる身体能力をセーブするのが困難を極めた。
元々彼は転生者であり精神的に成人を超えている、まして50を超えたおっさんだったのだから今更園児の身体能力等分からない。
だが鍛錬漬けの毎日に身体能力が上がり続ける為、手加減を覚えようとまた鍛錬をする。
結果的に彼は手加減の為料理をしだした。
流石のクラタコーポレーションの御曹司、父親にひと声掛ければ一流の設備が5日で揃った。
料理とは繊細な作業を必要とする、もちろん絶妙な力加減が要るためかなりの神経を使う事になるが手加減を覚えるには丁度良いとやりだした。
最初は当然その高すぎる身体能力によって調理器具を砕きまくり、とてもじゃないが料理処ではなかった。
『私は何も見ていませんよ坊ちゃま。』と、使用人の真由美が青い顔をしながら砕けた調理器具を廃棄し新品に取り替えながら言っていたのが尚更に手加減を覚えなければと躍起になった。
力を抜くと言う事は誰しも当然のようにやっている事だ。だが宗助の場合、どの程度力を入れれば良いのかと言う上限値が際限なく上がっていく為最低値である脱力状態から徐々に力を入れていくと言う極めて異常な状態から始めるしかなかった。
だがすぐにコツを掴んだ。
元々人間にある機能を見失っただけなのだから、すぐに出来るようになった。
出来るようになれば後は簡単だった、料理をしながら手加減を覚えていき。
料理の繊細な作業ですら、彼の身体能力を上げる為の鍛錬となった。
だが彼の体は、身体能力が上がれば上がる程ある症状が出始めていた。
ほぼ休息要らずの体とは言え人間である以上体を休める時間、睡眠が必要である。
眠ると言うのは体を休めること以外にも、成長ホルモン等が分泌される為重要である。
だが彼の体は、6歳のこの時点で不眠症に掛かっていた。
人の平均睡眠時間が6~7時間と言われている時代に、宗助の睡眠時間は2時間。
多く寝れても3時間である。
しかも最大で3時間しか寝れないのである。
どれだけそれ以上寝ようとしても、完全に脳が覚醒してしまうためそれ以上眠る事が出来ないのだ。
鍛え始めた当初は7時間睡眠が基本だった。
だが睡眠時間は段々と減っていった。
最初は30分、半年後は1時間。
1年経って2時間減り、結果2年後の現在では4時間減って合計2時間ちょっとの睡眠しか出来なくなった。
ナイアーラトテップから貰った転生特典だが、何の代償も無しに使える訳がないのだ。
使えば使うほど人間らしさが削られていく。
無くなる訳では無いが、それでも削り取られていく。
人間らしさと言うのが彼の場合は睡眠だっただけだ。
だが宗助にとって何の支障も無かった。
もとより50年以上も目標に向かって寝る間も惜しんで鍛錬をしていたのだから、彼にとって短くなったなぁ程度にしか感じられなかった。
むしろ喜んでいたのだろう、寝る時間を鍛錬に当てることが出来るから。
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第五話
しかも原作開始前だから、原作開始まで何話かかるか…
7歳になった宗助は今まで以上に身体能力が増大していた。
反射神経、動体視力、瞬発力、並列思考。
様々なアプローチから肉体を高めていった。
彼が日常から常に両手足に身に着けているアンクルは、既に50㎏オーバーで総重量が200㎏を超える。
肉体の成長限界が存在しない為、人間が持てる重さをとうに超えていると言うのにピンピンしていた。
そしてその重さによって手足の動きが阻害される為、その障害を乗り越えようと筋肉が更に成長する。
それを繰り返したことで最早人なのか疑わしいが、特典の影響で成長限界を取り払っただけなので全て宗助が鍛えた結果である。
そんな宗助だが、今は宗一郎に連れられてとある学会へと向かっていた。
そこは新しい発明や論文が発表される会場であり、過去にIPS細胞や熱核融合炉の理論提唱等が行われた実績ある場所である。
宗一郎によると今日は、とある女子高生が興味を惹くような発表をするとのこと。
「ねえ父さん、本当に高校生の発明なの?これ。」
宗助の手には1つのパンフレットがあった。
それは今日の学会の予定が書かれており、そこには当然何時誰が何を発表するのかも記載されている。
「ああ、何でも宇宙に羽ばたく為の翼だそうだ。名前は…」
『
パンフレットには宇宙空間で自在に活動出来るマルチフォーム・スーツとあり、様々な活躍が出来るということが事細かに書かれている。
PICやスラスターは宇宙空間で自在に動くための足になり、ハイパーセンサーはその膨大な宇宙空間内を遥か先まで見渡せるようにするためだそうだ。
だが時間が差し迫っているとのことだ、もう既に女子高生【篠ノ之束】の発表が始まってしまっている。
宗助は宗一郎よりも早い足取りで辿り着き、会場の扉を開けた。
『君は巫山戯ているのか!?こんな子供の夢物語のような物を聞きに来るために、私達はここに居る訳では無い!』
バンッと学会の審査員を兼ねた研究者が篠ノ之束が提出した論文を机に叩き付けて怒鳴り散らす。
10分遅れて会場に到着した宗助の目に入ってきた、篠ノ之束に対する罵倒の声。
提出した論文は、どう考えても現代科学で実現不可能であり、そもそもなぜそうなるのかすら会場内の誰一人として理解できなかった。
「巫山戯てなんかない!私の夢は、実現可能なの!」
『ならば何故実物が今この場に存在しない!こう言う物は不完全でも実物を持ってきて実績を作ってから語り給え、時間の無駄だ。』
その場はもう既に、篠ノ之束の発明発表の場では無かった。
彼女が発表した発明はこんな物実現不可能だと酷評され、実物が無いためただの夢物語を語っただけだと。
「……実績があれば言い訳ね。」
篠ノ之束は涙を浮かべながら、そう呟く。
その顔には憎悪が浮かんでいて、研究者達を睨みながら壇上から姿を消した。
宗助と宗一郎はインフィニット・ストラトスに有用性を見出したが、流石にこの雰囲気では何も言えずに黙り込むしかなかった。
「どいつもこいつも、凡人の分際で…ッ!」
篠ノ之束は1人、自分の家の近くにある公園でキレていた。
会場でキレて意見を言えなかった自分にも腹が立つのだが、彼女元来の人見知りの性格によりそれは無理だと彼女自身も悟っている。
よって1人で怒りを物に当たるしかなかった。
「これを見せれば信じて貰えたのかなぁ。」
そう言う彼女の手には、球体状の物体が存在しておりその表面にはこう刻まれていた。
【CORE№001 SIROKISI】
そう、インフィニット・ストラトスはもう既に完成していたのだ。
だがそれを見せるのを彼女は躊躇ってしまった。
過ぎたる力は身を滅ぼす、そしてそれが自分達にとって未知の力ならば排除しようとする。
それが彼女にはとても恐かったのだろう、自分は周りの人間とは違うと思っている彼女には。
「実績……あ、そうか。こうすればいいんだ。」
何かを悟ったような笑みを浮かべながら、彼女は立ち上がった。
実績が無いなら作ってしまえば良いという、単略的な考えのもとに彼女は手に持ったコアを握り締める。
「いくら凡人でも、こうすれば有用性を認めるはず。束さんあったま良い!」
そう呟いて、彼女は公園を出て行った。
そこにはもう、以前の彼女の面影は無かった。
過ぎたる力で排除されると怯える姿は何処にも無く、そこにはただ自分の作品が認められると確信している笑みを浮かべる彼女だった。
そして1ヵ月後、日本のある場所に主要各国からミサイルが放たれた。
その数2314発。
軍事的にもインターネットに接続されていない筈の軍事コンピューターがハッキングを受け、強制的に発射されたと当時はニュースで話題となった。
だがそれ以上に、その場に現れた人型パワードスーツに世間は注目した。
後に白騎士事件と呼ばれるこの事件で初めて表舞台に台頭したそれは、篠ノ之束という人物がとある学会で発表した【
そしてミサイルを尽くに撃墜するその機体を捕縛するべく、各国から戦闘機や軍艦、軍事兵器が多数出動し、その全てを無力化した。
死者数は0だったと公式に言われているが、その真相は発表されること無く闇に葬られた。
そう、それはまさしくデモンストレーション。
篠ノ之束が…自分の作った物は凄いんだぞと、世界へ公開する発表の場。
それは確かにその日、世界が認めた。
あの日学会で酷評され、夢物語だと断言された
だがそのあり方は、束が思ったような
世界へ発信してしまった、既存の兵器を超える性能。
ミサイルを撃ち落とし、戦闘機を落とし軍艦を落とし空母をも無力化する。
それは世界にとって、今までの軍事力に取って代わる兵器として認知された瞬間であった。
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第六話
現在主人公が10歳なので、あと7年で原作開始です。
あれから3年。
白騎士事件以降台頭したインフィニット・ストラトス以下ISは、本格的に各国の軍事力の要となっていった。
篠ノ之束が製作して世界各国へと振り分けたISの核となるコアを使い、各国の企業がそのコアの収まる機体を製作するというのが今の世の中だ。
それはクラタコーポレーションも例外ではなく、倉持技研と並んで日本の2大企業の為割り振られたコアも多い。
倉持技研は2つだが、クラタコーポレーションは3つ割り振られていた。
その違いは大きく、同じ日本の企業だというのにこの差に倉持技研から不満が出たのだが、企業としての規模が違う為だと政府が言った事で沈静化した。
そして3つの内2つは社長である宗一郎の管理の下機体製作が行われ、残り1つは10歳となった宗助の管理下でとある実験と称して開発が進められていた。
その実験とはISコアとの対話である。
ISには女性にしか起動できないという欠点が存在しており、男性が触れても何にも反応しないのだ。
宗助が転生する前、それも50年以上前に読んだ小説に同じようなものを見かけた覚えがあった為にこの方法を思いついたのだ。
その小説は女性しか動かせない筈なのに男性が動かしていた。
そしてその中でコアの内部意識に対して感応現象によって対話が可能になっていた事だけは、未だに覚えていた事だった。
ならば自分もコアと対話が出来れば動かせるのではないかと、宗一郎に相談して許可が下りたのだ。
だがコアとの対話方法等分かるはずもない。
だからこそ、コアに対して話し掛けるという原始的な方法しかないのだ。
ケーブルに接続されたコアを撫でながら、宗助は愛しそうに話し掛ける。
まるでそれはかつて宗助がナイアーラトテップから受けた狂ったような慈愛に満ちていた。
「お前の全てを知りたい。お前は一体、何を魅せてくれるのか楽しみだ。」
撫でるその手からは、コアに向けて紫電が流れていた。
それはハッキングとはまた別の手段。
宗助も完全に無自覚なのだが、ナイアーラトテップとの会合からか特殊な力に目覚めていた。
【とある邪神の加護】
気に入られてしまったが故の呪いとも言えるそれは、外なる世界の住人達が持つ精神に直接語り掛ける外法。
外なる世界の邪神達が精神に直接形容し難い恐怖心を植え付ける為に使っている術、その劣化版だ。劣化版故に断片的で、コアの声も聞くことは出来ない。
だがまさしくそれは、コアとの対話を可能にするもの。
故に宗助はコアを撫でるだけで己の思いを直接コアに送り込み、自分はこんな人間だと知らせる事が出来るのだ。
そうとは知らずに撫で続ける宗助。
ISさえ自分が動かせるようになれば、夢にまた一歩近付ける。
彼の魔人のように魔力は使うことが出来ない為、ISが代替手段になるだろうと確信しているからだった。
ISは女性にしか起動できない。
それはCORE№001の白騎士操縦者が女性だった為、女性のフラグメントマップしか存在しないからと言われている。
だがこのコア、CORE№352はとある男性の思いを一身に受け取っていた。
彼の感情、成したい事、夢。
そして彼が自分を撫でるその感触。
生み出されてから初めて感じる事ばかりだった。
ISコアにも人格があり、それぞれ趣向が違う。
№352の場合は、新しい物に惹かれる性格をしている。
産まれて間もない為好奇心旺盛なのはどのコアにも共通することだが、このコアは度が過ぎているのかも知れない。
それは彼を自身の操縦者として選んでも良いかもしれないと迷うくらいに。
ひとまずは断片的に送られてくるそれが全て揃ってからでも遅くは無いと、この心地良い思いに浸るのであった。
宗助は近くの公園までやって来ていた。
体が出来上がってきたため、生前を含め60年振りに剣を振りに来たのだ。
幸いにして公園の近くには道場があり、時折剣道少年が竹刀やら木刀やらで素振りをしている為宗助が木刀を持っていても何にも言われる事が無かった。
故に宗助はあの時を思い出しながら構える。
あの時全身全霊を掛けて振るった太刀筋は鋼鉄を斬り裂き、その先の次元すらも斬り裂いた。
当時はその1擊だけで体が限界を迎えてしまったが、その時より何倍も身体能力が上がった今ならばと。
彼が行うのはあの時の再現、そしてそれを昇華すること。
任意に狙った場所に次元を斬り裂く斬擊を設置出来るようになれば、また一歩夢に近付く事が出来る。
宗助は仕込み刀となっている木刀の鯉口を切ってすぐに抜刀、そして即座に納刀していた。
キンっ!
抜刀した刀は神速を超え、空を斬り裂き元の鞘へと戻る。
その際に発生した真空波が斬擊となって、宗助の目の前にある的を斬り裂こうと飛んでいく。
キンっ!
飛んでいった斬擊は途中で掻き消え、消えた斬擊は周囲の空間毎的を斬り裂いて霧散した。
魔力で斬擊を強化する事が出来ない宗助が考えに考え抜いた末に編み出した、距離を斬って殺す技。
飛ばした斬擊の距離という概念を斬って、1と2の地点間の距離をゼロにする離れ技。
この場合宗助という地点1と的という地点2の間を斬って時空を歪めた事となる。
次元斬を自分なりに再現した結果、何十もの斬擊をその場だけに出すことは不可能と悟った。
自分ではどうしても斬擊を飛ばす事しか出来ないと。
だがこのやり方だと別である。
斬擊が内包する距離という概念を、同じく斬擊を当ててその概念だけを的確に殺す。
目的地点に斬擊は到達するが、その間の道中が存在しなくなる。
だが斬擊を目的地点へ放った事は事実となるので、間に障害物があろうとも、斬擊を放ったから的だけが斬れたという事になる。
1回の斬擊を当てる為に2度抜刀し納刀する必要が出て来るが、十分実用レベルだと宗助は判断した。
次元を斬り裂く事が出来るなら概念も斬れる筈だという滅茶苦茶な考えで実行された、宗助の規格外さが現れる技である。
「何…それ……」
宗助が後ろを振り返ると、そこには現在時の人となっている最重要人物【篠ノ之束】がそこに居た。
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第七話
篠ノ之束。
根っからの研究者であり、彼女には解明出来ないものなど自分には存在しないと思っている。
時間は掛かるけど様々な謎は全て解明することが出来るから、未知の存在等あり得ないと。
そんな彼女だからこそ、今自分のお気に入りの公園でたかが刀1本程度で次元を斬り裂いたのを見たことで動揺が隠せなかった。
次元を斬り裂くと言うことは、空間に穴を開けると言うことと同義。
空間に穴を開ける行為自体そもそも仮説すら出来ていない状態で、もし仮説があったとしてもそれは膨大なエネルギーを使った巨大な装置によって引き起こされるものになるだろうと予測していた。
それを彼は、刀1本で成し遂げたのだ。
膨大な科学の結果成し遂げられると思っていたそれを生身で、しかも科学なぞ使わずに引き起こされたのだ。
科学の分野の大天災を自称する彼女にとって、それは存在の否定と思えた。
「なん…で。どうしてキミは『それ』を起こせるの?まだ仮説すら立証出来てないのに。この束さんでも、どうやったら良いか分からないのに。何でキミは…『空間に穴を開ける』事が出来るの?」
その言葉に、宗助はどう返答して良いか迷った。
そもそも宗助に、空間に穴を開けている自覚はない。
ただ彼の魔人のように斬擊を放っている、ただそれだけなのだ。
だが彼の魔人の斬擊【次元斬】は、文字通り次元を斬り裂く。
宗助にとって、次元斬を模倣しているだけに過ぎないのだから、理屈など分かるはずがない。
「どうして、ね。それを考えるのが研究者としてのあんたじゃないのか?篠ノ之束。」
その言葉に、グッと顔をしかめる束。
自分以外は凡人と思っている彼女は、凡人と評価を下した宗助から、ましてや自分よりも年下に言い負かされた事が感情を逆撫でされた気分になる。
「……凡人の癖に生意気言うじゃ無いか。」
「その凡人に言い負かされ夢を諦めた兎風情が、テロ紛いを引き起こして認められた気にでもなったか?ミサイルを撃墜する様を見せ付けて、大衆が
宗助は束を兎だと評価する。
たとえ多大な才能を持ち周囲よりも優れていたとしても、道を外れてしまえばゴールまで一直線に進む亀に負ける。
無限の成層圏と名付けられたそれを、宇宙に羽ばたく為の翼になるはずだったそれを、開発者である束自身が兵器にしてしまったのだ。
その有用性を認めた軍等がいずれ軍事転用する日が来るかも知れなかったが、束は翼としてではなく兵器として世に出した。
何時か来る時を、自らの手で早めてしまったのだ。
「その発想が甘いんだよ、篠ノ之束。」
「凡人のお前に何が分かる!!束さんの苦労が!夢を否定された私の気持ちが!!」
「たかが1回失敗した程度で諦めた天才サマの事なんざ分かりたくもない。それとも何か?あんたの夢はその程度だったのか?」
宗助の言葉は、的確に束の心を抉っていく。
普段なら凡人の戯言と聞き流す束も、夢を諦めたと言われれば聞き流す訳にもいかずに真正面から食い掛かる。
「あんたの夢は、他人に認められなかった程度で諦められる小さいものだったのか?笑われた程度で諦めるようなどうでも良い事だったのか?」
「そんな訳無い!あの宇宙に行く事は、何を言われようとも変えられない私だけの夢なんだ!!」
「なら今の状況はなんだ、これはあんたが望んで引き起こした事だろう?各国が一斉にミサイルを日本目掛けて撃つはずがないし、その着弾地点に偶然あんたが発表した
「あぁあああぁぁっ!!!」
遂に束はブチ切れて宗助へと掴み掛かる。
原作では天災だの細胞レベルでオーバースペックだのと自称する束、しかし現在は高校生。
確かに原作では超人レベルの身体能力だが、今の束にその力は無かった。ナノマシンやらで底上げしていたと考えられるが、それが開発される時期はまだまだ先の話。だがそれでも束の身体能力は常人を超えていた。
それでも束は、宗助には敵わない。
小学生だとしても既に常人を遥かに超えた身体能力を宿す宗助とは次元が違った。
掴み掛かった力をそのまま利用され、束は地面へと転がされた。
「がっ…!」
「無様だよなぁ。宇宙を夢見て作ったものが、今や国防を担う兵器なんだから。でもあんたにとっては嬉しい事だろう?認められたんだから。」
「ぐっ…」
束は地面へと転がったまま涙を流した。
確かに望み通り認められた。
だがその使われ方は束の望んでいたものではない、だからこそそれを指摘した宗助に対して怒りを感じ、自分が兵器としてしまった事に、そして夢を諦めたと絶望を抱いた。
「せっかく宇宙への足掛かりが出来たと、父と喜んだんだがな。必要経費全額を出資しても良いと。だがせっかくの開発者が宇宙に興味が無く、兵器として世に解き放ったと知って落胆していたよ。」
「え…」
宗助の言葉は、泣いている束に関心を持たせるのに十分だった。
束が作り出した
だが宗助の父、宗一郎は違った。
学会でそれを聞いたとき、これがあれば必ず単身で宇宙に行けると、束の援助を行うと、会社に戻って即会議の議題としたのだ。
そして決まりかけていたときに白騎士事件である。
全てが水の泡となったのだった。
「本当に…本当に認めてくれるの?」
「ああ。あと2週間あんたが行動を起こさなければ、あんたの家まで直接会いに行く算段は付いてたからな。」
その言葉に、束の中の最後の防波堤が崩れ、ブワッと涙が溢れてきた。
自身が認められる機会を、他ならぬ自分の手で潰してしまったと、宗助の言葉で理解したのだ。
たった一つ選択を間違えただけで、束にとって最悪の結果となっていたのだから。
「今からでも来るか?父…うちの社長も喜ぶだろうし。」
「……キミはいったい…」
その言葉に宗助は狂ったように笑みを浮かべる。
だがそこに狂気の類いは無かった。
「爪楊枝から人工衛星まで、あなたの町のクラタコーポレーション。社長の息子、倉田宗助だ。よろしく、篠ノ之束。」
束はその笑顔に、不思議と見惚れて居たのだった。
宗助は朧気な原作知識と状況推理によって、白騎士事件が束のマッチポンプであることを導き出した。
因みに現在の主要キャラクターの年齢
宗助10歳
篠ノ之束 18歳、今年19歳の高校3年生
織斑千冬 同上
織斑一夏 8歳 小学3年生
篠ノ之箒 8歳 重要人物保護プログラムによって転校。
宗助の会話誘導術!(無意識)発動!
束は宗助が次元を斬り裂いた事を追求出来なくなった!
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