ロクでなし魔術講師と異世界憲兵 (mocomoco2000)
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かくして青年はプロローグに立たされる
死を目の当たりにしたことはありますが、体験したことはありません。
……………少なくとも彼のような考えには至らないと思います。
世界の動きが止まった。
文字通り雲も空も、空を舞う鳥も、目の前に広がる海の波も、隣にいる"ソ連を愛する女性"も。
〔聞こえるか、青年よ〕
声が聞こえた。威圧感のある重々しい響きの声が聞こえた。止まっている世界で"唯一意識のある青年"はその声を聞いて思考の回転を早める。これは一体どういう状況で、この声は一体何者なのかと。
〔聞こえているようだな。さて、貴様は今混乱していると思うが落ち着いて話を聞け〕
確かに混乱する状況だろう、と青年は思う。時が止まったかのように世界が動かないこの現象にも驚きを感じるが、時が止まる前に起きていた現象も中々に混乱極まる状況である。
青年は少し前に、隣にいる女性に誘われて沖まで出ていた。そこから見える朝日が絶景だからと。断る理由もないので行くことにし、朝日が出るまで雑談をしていた。だが朝日が顔を覗かせたと思った瞬間事故が起きた。
敵の遠距離砲撃が飛んで来たのだ。うちの鎮守府のレーダーはポンコツかと突っ込みたくなるが、残念ながら無いに等しいほどポンコツであると"提督"が嘆いていたのでポンコツなのだろう。
で、先に砲撃を察した青年はとち狂ったのか船から跳んで女性を蹴り飛ばしていた。
そして、砲弾が目の前に来たところで今の現象に陥ったのだった。
〔…………この状況で落ち着いているとは。貴様、今から死ぬのだぞ〕
(ああ、確かに死ぬな)
青年は目だけ動くことに気付き見える範囲で状況を確認する。砲弾は時が動けば胸を貫通するだろう。これはどう足掻いても避けれない。当たれば即死だ。蹴り飛ばした女性は目を見開いてこちらを見ている。あの表情からして察しているのだろう。これから私が死ぬことを。
〔何故死に恐怖しない。怖くないのか?〕
(死に対して恐怖は無い。そもそも、"人を多数殺めた時点で私に死を恐怖する資格はない")
〔なるほど、人として壊れているな。だが、恐怖は無いが"後悔"はあるようだ〕
(当たり前だ。あの時ああすれば良かった、こうすれば良かったと人間は常に考えている。あり得たかもしれない世界に無駄だと分かっていても手を伸ばす)
〔この状況に後悔は?〕
(あるに決まっている。少し考えれば分かる問題だ。これは蹴り飛ばすより「伏せろ」と声を掛けるのが正解だ。それなら誰も死なずに済んだ。咄嗟の判断とはいえ、この手は悪手だ)
青年は淡々とこの状況を眺めながら"声の主"に告げる。それが面白くないのか
〔普通ならこの状況に驚き、私の声にも驚きを浮かべるのだが〕
と、少し低い声で青年に話す。
(だろうな。だが、これでも私は驚いている。よくこんな状況で冷静にいられるなって)
〔……………長い時を過ごしたが、本当に落ち着いて私と話をする者は初めてだ。平静を保っているように見せかける者は多数いたが、それもすぐに皮が剥がれて驚きの表情を浮かべる〕
(止まっているのに驚きの表情が出来るのか)
〔心を見れば分かるであろう?なぜならば私は〕
一度呼吸を整えるかのような間を"声"は取る。告げようとした瞬間に
(神であると言うのだろう?)
〔神で――――分かっていたか〕
青年は"神"の言葉を遮るように答えを述べた。
("提督"がその手の創作物にハマっていてな。暇があれば呼び出されて鑑賞会を設けていた。そうだな………貴殿を"存在x"と呼べば良いのかな?)
〔好きに呼ぶと良い〕
(ではあの作品を参考にして"X"と呼ぼう。無信仰の私が"神"と呼ぶのは不敬だからな)
〔その発言の時点で不敬であるが……………〕
少し呆れが混じった声で"X"は呟く。青年はその声に特に反応することなく話を続ける。
(………あの作品のように貴殿を信仰させるために記憶を残したまま転生させるのか?)
〔いや、私は"システム"のようなものだ。生物が死に、次の転生先へ魂を浄化させて送る装置。"神"と名乗るのは分かりやすくするためだ。本来ならこうして生命と話をすることすらしない〕
そこで、青年に疑問が生まれる。
(では、どうして話をする?)
装置であるならばこうやって話す必要なぞない。青年は死んで次の生物に転生しているはずだ。
〔貴様に分かりやすく言えば私は"システムのバグ"のようなものだ。システムも特に問題視してないから放置されている。問題視されていたらとっくに貴様は別の生命に転生している〕
(なるほどな。それで?"バグX"。これから私をどうするのだ?)
〔私は今貴様に興味を持っている。今まで送り出した生物の中で異質を放っている〕
(バグに興味を持たれても嬉しくないのだがな)
青年は軽いため息をつく。動けないから心の中での行動であるが。
〔貴様には"記憶を残したまま転生してもらう"〕
(…………ほぅ)
〔面白くない、という反応だな。普通なら喜ぶと思うのだが?〕
青年の反応に少し笑みを浮かべたかのような声で"バグX"は喋る。
(あくまで私の考えであるが、"死"というのは"罰"であり、"救済"なんだ)
〔ほぅ?〕
(私のように"多数の人を殺めた者"は死をもって"罰"を受け、魂の浄化…………要するに今までの行いをてリセットすることで"救済"…………いや、"己の罪を逃避"することができる。だって罪を忘れることができるだろう?)
〔面白い考えをしているな。それで本が書けるのではないか?〕
(残念ながら私には文才はない。それで?記憶を保持したまま転生させて何をする?いや、何をさせるつもりだ?)
違うと言いながらこのバグXに信仰せねばならないのか?それは困る。このバグに信仰する理由なぞない。理由があれば信仰するだろうが。と言っても、バグを信仰するとかあまり面白くないのだが。
では、何をさせる?記憶を保持したまま転生というのは嬉しくはないがかなりの特典を所持した状態でニューゲームをするようなものだ。例えば、RPGゲームを一通りクリアした。そして、リセットしてもう一度ゲームをする。まあ、色々知らない新たなイベントが生まれるだろうが、ゲームの進行方法はある程度分かっている。だから始めにやったときよりも速く、スムーズにボスを倒すことができる。少し違う?じゃあ、RPGゲームを一通りやった。そして、新たなRPGゲームをやることになった。システムや仕様は全然違うとしても、進め方といった経験則でスムーズに進めることができる。例に出すなら某黄色いネズミの出るゲームをした後、某悪魔を仲魔にするゲームをする。全く違うゲームではあるが、このままいけば敵と遭遇するとか、ここら辺にアイテムとか落ちてそうといった"予測が出来る"ようになる。これが転生先の住民より一足先を行ける………住民からしたら"天才"のように見える存在になれるだろう。
ちなみに、チート武器や、装備といった"2周目特典"というのは甘えだと私は思う。あくまで私の考えであるが。
確かに楽するのは良いことだ。だが、それに頼るというのは己の成長を阻害する事と同じ。
チート武器で倒すのはさぞ爽快であろう。だが、達成感はコツコツ経験値を積み上げて倒すより無いだろう。道のりを想う度合いが圧倒的に少ないからだ。
もう一度言うがこれはあくまで私の考えである。他の人にこの意見を押し付ける気も全くない。まあ、少し羨ましいと感じることも無いこともないが…………あれだ、隣にいる"ソ連少女"がプロレタリアートな生活をしているが、たまにブルジョアな生活をしてみたいみたいなもんだろう。違う?そうか…………。
〔………………摩訶不思議な思考は終了か?〕
どうやら私の思考を延々と見ていたらしいバグX。面倒な男を目を付けてしまったな、御愁傷様。
〔思っていないだろ〕
バグXにとって思考を読むのは当たり前のようだ。プライバシーの侵害であると起訴すると"提督"なら言うだろうが、私はこの摩訶不思議現象のせいかそんな事でキレたりしない。
(で?もう一度聞くが私に何をさせるつもりだ?)
〔貴様にはある世界に行ってもらう。その世界は魔術が発展した世界だ〕
ますます某悪魔幼女の話になってきている。
〔安心しろ、貴様の想像するほど過酷な世界ではない。そこで貴様の壊れた心がどうなるか見てみたいのだ〕
(バグに心が壊れてると言われても説得力がないな。まあいい。その世界で生き延びれば良いのだな?)
〔ああ、では………これから転生させる。ああ、そうだ。私の満足いく結果になればこの世界に戻してやろう〕
(……………は?)
それは一体どういう意味だ?
〔言葉通りだ。貴様が手を伸ばしたかったという結果にしてやると言っている。確か"蹴り飛ばす"のではなく"伏せろ"と言うのだったか?その結果にしてやると〕
(……………なるほどな)
〔貴様は死が確定したのを覆されることに特に忌避と感じないのだろう?それに目標がある方がゲームは面白いのだろ?〕
(………………分かった。そのゲームに乗ってやる)
この世界に確かに未練はあるが、この世界に戻らないといけないほど固執してるわけではない。だが、目標はないよりある方が良い結果が生まれる。バグのくせにその辺は分かってるようだ………いや、バグだからこそ分かってるのか。
〔ああそうだ。特典がてら1つ言っておこう。貴様の生まれる村はどう足掻いても4年後に滅ぶ〕
は?
その瞬間、青年の胸に風穴が開いた。
こうして私は不吉な言葉を託されたまま、新たな世界へと旅だったのだった。
どうも、初めましての方は初めまして
初めまして、モコモコです
某野球バラエティゲームをやっていた時にふと思い付きました。
思い付いて速攻で全巻読み直し、さらにこの前出た日誌も買いました。この作品のあとがき面白いですね(白目)
友人にドルフロの二次書くん?と言われたのですがどう足掻いても"不定期更新"をやってしまう私にあの抽象的な世界感の作品を具体的な設定を設けて書ける自信がありません。(といっても禁忌教典も抽象的なとこ多いけど)
というわけで"不定期更新"で"見切り発車"な私ですが幼少期までの流れは考えてますので頑張って書きたいと思います。
だが、この言い方だと幼少期までの流れまでしか考えれていないということになる。
はい、そうです。そこまでしか考えれていません。
アルザーノの学生にするか、はたまた講師にするか敵にするかとかアンケート取るか感想とか読んで考えていこうかなと思います。
いや、本当に見切り発車だな………
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育成を間違えると大変なことになる
これは子供ではない、子供の面した怪物であると。
"提督"が以前某セロAは飾りの野球バラエティゲームで、最初の育成を間違えて何度もリセットしたという話を聞かされたことがある。提督曰く最初の選択が重要なのだと。バラエティじゃない方の2016であれば、実は男さんに会わないと強くなれないとか(修正が入ったと何か叫んでいたような気がするが)、バラエティの12でひたすら工業地区へ歩いたり、刑事の奥さんの話をしないといけないとか、まずやらなければならないことがある。
つまり何が言いたいのかというと、
「オギャア………オギャアアアアアア」
赤ん坊として転生したからには赤ん坊らしいことをせねばならんということだ。間違えても泣かない、急に歩くといったことをすれば"天才"ではなく、"天災"として見られてしまう。そのことを危惧しながら隠れて己の育成をせねばならない。0歳だから何もしなくていい?いや、もう戦いは始まっている。
あのバグXは言った。この村は4年後に滅ぶと。
どう滅ぶか分からないが、何をしても滅ぶと言っていたから多分"多勢に無勢"のようなものと考えるべきだろう。
青年(今は赤ん坊である)が生まれたこの村の国は宗教浄化策といったものを行っているらしく、民族を滅ぼそうと躍起になってるとかなんとか。
なるほど、確かにこれは滅ぶ。どう足掻いても滅ぶ。この村の人口も少なく、さらに遊牧民族で守りが弱い。攻めが強いのかと言われたらそうでもなく、強い奴もいるよー程度の強度だった。
とりあえず、今は情報を入手しつつ、陸軍で培った筋トレ(赤ん坊でも無理にならない程度)をし続けた。
半年が過ぎ、この村の状況を把握した。どうやら青年(赤ん坊)が生まれたからこの村の人たちは足を地に着かせてるらしい。しばらくは比較的安全な街の近くに拠点を置いて赤ん坊のための食事やらなんやら買って、ある程度育ったらまた移動するとのこと。
半年経ったので親の前で歩いて見せたら大層に驚いて、
「こいつは将来有望だなぁ」
と呟かせた。英才教育を受けさせなくても色んな情報を流してくれることを期待しての行動である。実際、両親から色々な情報が流れてきた。特に重要だったのが、"魔術"というものだった。この世界には魔術というものが存在しているらしい。怪我をした時に
「《天使の施しあれ》」
と母親がそう言うと、擦り傷が嘘のように消えたからだ。それを知った青年(赤ん坊)は筋トレをした際に傷ついた筋肉を無理やり回復させれる………超回復の短縮が図れるのではないかと考えた。結果は成功。それに味をしめたのかますます身体作りに性を出した。
ちなみにだが、その際にマナ欠乏症(その頃は魔力切れと呼んでいた)を知り、やり過ぎは良くないと分かった。何事も程々が一番。
さらにちなみになのだが、彼には名前がない。というのも、生まれた時に両親が名前を付けようと色々話をしてたら喧嘩になり村の人たち総動員して止めないといけないほど暴れたらしい。そのせいで、名前の事はタブーとなり、青年(赤ん坊)の事は皆"坊"と呼んでいた。それを知った坊は両親は村の中でも上位の武力を有しているのだなとズレた感想を抱いていた。
生まれて1年が経った。この頃になると父親の真似事と称して棒を振るようにした。陸軍在住時や、憲兵として派遣、鎮守府守衛や提督護衛の任に就いた時も欠かさず剣を振るっていた。1年振らなかったせいでかなり溜まっていたのだろう。この世界で初めて振った瞬間、気づけば朝だったはずなのに夜になっていた。(ちゃんと食事はしたらしい。覚えてないが)
それを見た父親は引くどころか
「お前は将来優秀な剣士になれるな!」
と褒めてくれた。この父親は色々とズレてるらしい。その日から父親が帰ってきたら剣を習う事になった。母親からも本当は教えたらダメだけどもしも用として覚えとくだけ覚えときなさいと簡単な魔術も教えてくれた。基本回復系の魔術だったが、剣にしか能のない者にとってありがたいものだった。だってダメージを受けても魔力切れにならない限りずっと戦い続けれるのだろう?最強ではないか。
2歳になった。タイムリミットまで後2年。体格もあるだろうが、憲兵時代の動きと比べたら笑いが止まらない程度に育った。要するに弱い。恐ろしく弱い。
毎日両親に隠れて(天災と思われないようにするための配慮)憲兵時代の自分の幻想と剣を振るったが、全く勝てない。もう万を越える勝負をしたが、勝てるイメージが付かない。初めは一瞬で首を跳ねられた。千を越えた辺りで一合は打てたがその一瞬の隙で首を跳ねられた。
気休めに砲撃による戦闘を想定してソ連少女と対峙してみたが、それも一瞬で殺られた。これではダメだ。そう焦りを感じた坊は何か策はないかと考える。このままでは己の命も守れないぞと。こんな時に転生チートがあればと思うこともあるが、切望するほど欲しいとは思わなかった。あったら楽だったろうなと感じる程度。
そんなある日、変化が訪れた。坊もそこそこ育ったということで村は移動を開始したのだ。
そしてしばらく停泊する所の近くによく分からない遺跡があった。軽く調べた父親らから
「あの遺跡は危険な異形がうじゃうじゃいる。入るなよ」
と言っていたので、入ることにした。提督曰く
「入るなよ入るなよと何度も忠告するっていうのはフリというやつで、入れって意味なんだよ」
らしいので。1歳過ぎ辺りで遊牧民族だからか坊を放牧するようになった。そのため自由時間がかなり増えたのだ。母親から教えて貰った身体強化の魔術……フィジカル・ブーストをかけて坊は大人に見つからないように遺跡に入っていった。
遺跡に入って直ぐに付いていた光る石を持ち、途中で落ちていた簡素な剣を拾ってしばらく進むと、二足歩行の魔物と出くわした。
魔物は坊を見たとたんニヤリと笑い、腰に差していた剣を引き抜こうとしたが引き抜けなかった。
「…………やはり遅い。これでは士官時代の私より遅い………もっと精進せねば」
魔物の右手がバッサリと切り落とされていたのだ。
「■■■■■■■■■■■■!!!!!」
奇声のような声を上げて左手で殴りかかろうとしたが
「………"見性悟道"」
そう呟いたかと思った瞬間左手も切り飛ばされていた。
「………この剣………かなり脆いな、注意して使わなければ。そこの………魔物で良いか。魔物よ、その腰に差す剣、すまないが頂戴する」
と言ったと思ったら魔物の意識は途絶えた。魔物は思う、あれはガキじゃない………悪魔だと。
自身の実力調べをしているが、この遺跡はどうやらそこまで危険ではないらしい。大人たちめ。本当に入るなよ入るなよ詐欺ではないか。確かに危険だが、あんなに忠告するほどの危険さはない。物理の効かぬ亡霊さえ気を付ければ何とかなる。そう感じた坊はどんどん遺跡の奥まで歩いていった。ちなみに剣は3度折れ、4本目を魔物から拝借した。剣が折れるというのは己の扱いに問題ありと考え、振るい方もどんどん洗練されていった。
入ってからしばらくして、坊はそろそろ帰ることにした。
身体時刻が少し日が傾く頃と告げたからである。最後にと思って入った部屋にはなんと武器がズラリと並べられていた。どうやら武器庫のようだ。何百年も月日が経っているから殆どが錆びていたり、風化したいたり、脆くなっていたが、いくつかの武器は全く錆びておらず、新品のような状態で保管されていた。
坊は目に入った明るい赤色の短剣を握ると気に入ったような笑みを浮かべた。さらに奥にある翡翠色の直剣も気になり、手に取ってみる。かなり使い込まれているようだが手入れが行き届いていて、この剣を使った者はかなり思い入れがあったのだなとうんうんと頷いた。
欲しいが身体的に釣り合わない。残念だなと思いながら、渋々と元の位置に置いた。今回の収穫はこの赤い短剣入手と翡翠色の直剣の発見であった。己の腕はまだまだ未熟であると再認識した坊は短剣の切れ味の確認がてら帰りながら魔物狩りをするのだった。
それからは棒や短剣で憲兵時代の坊と戦ったり、武器漁りと称して隠れて遺跡に入ったりと充実した日々を過ごしていた。
そして、ついにタイムリミットの4歳になった。
何とか書ききれました。
急展開?タグに付けようかな………"急展開""見切り発車"って。
幼い頃ってどんなだったかなと思いながらこの話を書いてました。
私の幼い頃はまだ走ったりするのが好きなガキんチョで、転んでは泣いて、それで泥んこになって親に殴られまた泣いて………泣いてばっかだったな。あの頃はまだ純粋だったな。小学生……だったか?それくらいの時に始まったあのdwangoの動画サイトにのめり込まなければ。
教に入ってもないのにランランルーって叫んでいたな。懐かしい。
では次回、坊死す!
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プロローグは終わり、新たな話が始まる
「フハハハハ!今回の発明は上出来だ!これを着れば何と通常の10倍の身体能力を得ることができる!」
高笑いするどこかの学校の制服の上に白衣を着た青年は台車で押すように出してきたその服………というより人型の装甲は派手で何より重そうだった。
「着るというより装着するという方が合っている服………服か?それ」
「エルドレッド、買ってき………オーウェル、何を作ったんだ?」
白衣のオーウェル呼ばれた青年と同じ制服を着た、人の腕みたいなものを持つエルドレッドと呼ばれた青年は呆れた顔をし、買い出しに行ってたであろうフード等付けたりした改造民族衣装を着た少年も、オーウェルを呆れた顔で見ていた。
「おお!スキターリェツ!今回の発明はスゴいぞ!これはこの前のマキシマムパワードスーツⅣを越えるスーパーマキシマムパワードスーツⅠ!あれから軽量化を進め、さらに進化したんだ!」
「Ⅴじゃないのか」
「それで?オーウェル、軽量したのか?前より重そうに見えるが」
エルドレッドに頼まれたモノを人の足みたいなものが無造作に置かれた机に置いて、そのパワードスーツを眺める。
「この前のマキシマムパワードスーツⅣで私はかなりの重症を負ったが」
「切り傷程度だったろ」
エルドレッドは腕を置いて呆れた顔を継続している。そんな彼の言葉を無視しながら話を進める。
「あの凄まじい斬撃を考慮して今回は強度を高めることにした!それでこのスーパーマキシマムパワードスーツⅠはスキターリェツの魔剣の斬撃を通さないほどの強度にすることに成功したのだ!だが、重さは前回の10倍になったが、それは些細な問題!」
「大問題だろ。お前、この前のやつも重いせいで動けなくて的になってたろ。つか軽量化を進めたんじゃねぇのかよ」
「それが些細な問題なのだ!このスーパーマキシマムパワードスーツⅠはこの"遠隔操作出来る君"を使うことで私の思考をトレースして動かすことが出来るのだ!」
「おい、それ学会で発表しろよ。もしくは論文に際に出せよ。普通に考えて大発明だろ。学生の領分越えてるだろ」
「さあ、行け!スーパーマキシマムパワードスーツⅠ!今度こそスキターリェツを越えるぞ!」
オーウェルは遠隔操作出来る君のボタンを押すがスーパーマキシマムパワードスーツⅠは全く動かない。
「何?私の理論は完璧の筈だ。何故動かない」
「………いや、オーウェル。お前バカだろ」
「どういう意味だ?」
エルドレッドはある方向を指を指す。そこには拳を踏み込んで突き出した状態のスキターリェツがいた。彼の拳の先にはスーパーマキシマムパワードスーツⅠの背部があり、背部に取り付けられた配線とか付いている精密機械っぽい何かに、深々と赤い短剣が突き刺さっていた。
「アアアアア!!!!!しまったあああ!!!!!」
「重要なもんは内部にしまえよ」
赤い短剣は粒子となって消え、それを見届けたスキターリェツは
「広い研究室とはいえここは室内。悪いが早期決着させてもらった。戦闘による実験は屋外でお願いする」
と言って、また何かあれば呼んでくれと述べた後部屋を去っていった。
私、スキターリェツは現在5つになった。まだまだ未熟な身であるが、着実に力をつけている。
4つになった時に私の村はバグXの予言通り無くなった………と言っても本当に滅んだかは分からない。あの日私はスリープ・サウンドと呼ばれる魔術により深く眠らされ、御者の荷馬車に積まれてしまった。流石の私でもあれには驚いた。目覚めたら荷馬車に揺れていたのだから。直ぐに御者に話を聞くと、たまたま村の近くを通ったら金を渡すから私を運んでほしいと言ったらしい。それは凄く切羽詰まった状態だったらしく、勢いに負けて乗せたそうだ。
ある程度話を聞いた私は横に置いてあった民族特有の紋様が刺繍された袋を開けて中身を確認したら手紙とそこそこの金と隠してあったはずの短剣が入っていた。
手紙を読むと、違う集落の同族から宗教弾圧の兵団が向かっているという情報を入手したらしく、何人かで確認したらもう近くまで迫っていたとのこと。闇に隠れて一気に接近………という作戦だったのだろう。さらに囲うように陣形を組んでいたようで逃げ場がなかった。
まだ完全な陣形を組まれていなかったため、馬の扱いに長けた者数人は女、子供を乗せて抜け道を突破することにしたそうだ。その結果は不明であるが、生き残っていることを願おう。
残った子供は私だけになり、両親はあえて私を起こさなかった。どうやら私の訓練はバレていたらしい。その異常さに怯え放牧のような措置をしていたとのこと。
途中で父親が剣を教えなくなったのもそれが原因だったのだろう。遺跡に入って行くのも知っていたらしく止めようとしたが、いつもケロッと帰ってくるものだから怖くなって言えなくなった。ちなみにこの時隠密が甘かったか……まだまだ未熟だなと私はかなりズレた感想を抱いていた。
両親はこの子を起こしたら絶対にここに残って戦うと予想した。だから眠っている私にさらに深い眠りにつかせるスリープ・サウンドをかけて眠らせた。
それで、たまたま近くを通った御者に私を預けた。両親は最後まで悩んだらしい。この村………民族のために戦わせるかと。私のシミュレーション戦闘を見た父親はこいつに戦わせたらまだ勝機があるかもしれないと考えた。2人で話し合ってる最中に御者の荷馬車が来たそうで、その瞬間、2人の思考は一致した。この村より私の未来を優先したのだ。
手紙の最後の方はくしゃくしゃになっていて親らしいことが出来なくてごめんなさい、本当にごめんねと書かれていた。所々水で濡れたように滲んでいて、読み終えた私は悲しいというより悔しい気持ちや苛立ちが滲み出た。もっと親孝行しとけば良かったと。私はずっと滅びを少しでも和らげるよう動いてきた。親の気持ちも考えず、見ていなかった。親はずっと私のために考え、見つめていた。なんて親不孝な子供だ。
確かに前世は生まれた時から親はおらず、軍直属の施設で育ったため親の気持ちなぞ分からない。ある程度動けるようになったら強制的にひたすら訓練をしていたというのもあるが、今回はそうではなかった。人のためと言いながら全くその者たちを見ていない。
「同志はいつも前ばかり見ている。たまには後ろを見てみなよ」
前世で空色のケープを羽織った女性が言った言葉を思い出す。確かに耳が痛い。言われていたというのに気づけていなかった。
両親は村に残って戦うことにした。民族の誇りにかけて。だから私は両親の誇りにかけて生きていこうと決めた。らしくないとも思った。常に冷静にを心がけている私とは思えない感情論。だが、その感情がどこか居心地良く感じた。
それから私は荷馬車に揺れてドナドナしていた。鍛練は怠らず、馬の休憩中に剣を振るった。たまに魔獣に襲われたが即座に殲滅。御者もそこそこの手練れであるが、乗せて貰ってるからには何か貢献をしたかった。
「本当に君は子供かい?」
と言われたがそれはスルーすることに。
御者の手伝いをしつつ馬車はどこまでも進んだ。月日は巡り、レザリア王国から馬車はアルザーノ帝国へ場所を移した。
そんなある日事件は起きた。
いつものようにドナドナされていたら前方で馬車が襲われているではないか。何やら白衣の男が馬車から降り、それを周りの者が押さえていて、盗賊のような連中は好き放題にやられていた。
意味の分からない状況だったが、とりあえず盗賊を倒すことにした。
こういうのは悪いやつであったとしても、恩を着せたら有益な情報とか流してくれるかもしれないから。
盗賊はさほど強くなく、正直訓練数ヶ月の士官候補生の実力だった。これくらいならまだ勝てる。
何気に今世初の対人戦であった。
助けた者はどうやら領地貴族の者だったらしく、しかも御者の顔見知りだった。あれよあれよと話が進み、私はこの貴族の護衛になった。養子になると貴族の面倒事に関わるからそれは避けといたよとサムズアップを決めながら御者は言った。貴殿は一体何者なんだ?
これが私、スキターリェツと天災オーウェル=シュウザーの出会いだった。
はい、皆大好きオーウェルさんです。
私も結構好きで、一番好きな男性キャラは?と聞かれたら「バーナードっす」と言うくらい(おい)
女性ならロザリーです。ああいったキャラスゴく好きです。
真面目に書こうと思っていてもあのキャラが出たら全てぶち壊していくよね。流石天災。
そして安定と信頼の文才。本当にすみません、頑張って書いても急展開になる。話を書くのってスゴく難しい(でも止められない)
で、追記ですがタイトル変更しました。ずっとしっくり来てなかったので。
さらに新たにタグにオリキャラを入れました。最初に出てきた腕を持つ青年を出すためです。
最後にですが、お気に入り付けて頂いた方、ありがとうございます。お気に入りの数字が1となってた時には「ファ!?」と声をあげてしまうほど驚きました。こんなハチャメチャな話についてきていただけるなんて本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これからも日々精進……頑張っていきたいと思います。
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天災は流れに身を任せ新天地へと身を委ねる
スキターリェツ。
意味はロシア語で漂泊者、放浪者。
オーウェルと出会った際に名前を聞かれたので咄嗟に出したのがこれだった。
この呼び名は白コートの愛煙家が付けてくれたものである。それが定着するかと思ったが、他の者は"憲兵さん"や"憲兵"だった。何故かと聞いたら負けた気がするからとのこと。彼女たちの溝は意外と深かったようだ。
オーウェルの護衛となったスキターリェツだったのだが、護衛というより実験の助手のような存在へと変わっていた。
オーウェルは魔導工学というものに精通しているらしく、要するに特殊な道具を作るのが得意であるとスキターリェツは解釈した。所謂ピンクのおさげやポニテみたいなものかと。
で。
ここが重要なのだが、このオーウェルって男、変人である。それもかなりの。スキターリェツが出会った者に該当する奴は……………多分いない。
あの酒飲んだら裸になる奴とも違うし、赤化を推進するコサック組とも違う。赤化運動をしてる時のテンションに近いがやはり何か違う。
ワーワーテンション高く説明をしているのだが、スキターリェツの前世は陸軍所属で魔術なんてもの、独軍がオカルトを取り入れた戦術を繰り広げたという噂でしか聞いたことないし、今世では魔術というものを教わったが回復系統の魔術とショック・ボルト等の初等魔術を軽く教わった程度……聞いていても意味が分からなかった。分かっているのはあの工作好き共の技術を魔術で出来るということくらい。
分からないと言っているのにやたらめったら説明してくるので、変人であるというのは心の底から感じ取った。
では、何故魔術を理解してないスキターリェツがオーウェルの助手みたいなことをしているのか。それはオーウェルがシュウザー家の守衛と手合わせしていたのを見たからである。
もうすぐ5歳になるとはいえ、スキターリェツは幼子である。こんな奴に護衛なんて出来るのかと、という疑問がシュウザー家の者たちからたくさん出てきた。当然の疑問である。
というわけで腕試しということで守衛と戦わせることに。
盗賊と戦ったという話は聞いていたが、がむしゃらに突っ込むだけ突っ込んで、結局は一緒にいた御者が倒したのだろうと予想していたのだが、その予想はものの見事に外れるのであった。
守衛との手合わせを終えると次に現れたのは、あの時助けた変人だった。確かオーウェル、オーウェル=シュウザーだったかとスキターリェツは思い出す。
「フーーハハハハ!あの守衛を一瞬で倒すとは。私には通り過ぎただけにしか見えなかったが、守衛が敗けを認めたということはそういうことなのだろう。だが!そんな一瞬で終わらせるとは面白くない!」
「………………《用意》」
右手に魔力を込めると"赤い短剣が現れ"、軽く構えた。何となく嫌な予感がするから。
「今私が着ているのは"スーパーパワードスーツⅢ"!前回の"スーパーパワードスーツⅡ"より薄く、頑丈になったのだ!これの実験に付き合いたまえ!」
そうオーウェルが叫んだ後、勢いよく突っ込んできた。
スキターリェツは色々突っ込みたかったが、
「…………いや、貴殿は魔術師じゃないのか?…肉弾戦してどうするのだ」
と一番の疑問を呟いて横に逸れて簡単に避け、さらに足を引っ掻けてオーウェルを転ばした。顔から突っ込んだオーウェルにノータイムで頭の横に短剣を突き立てた。
「……………これも手合わせの内ですか?」
と微妙な顔をするスキターリェツに周りの者たちは微妙な顔で返答する。
何とも言えない空気が支配する中、オーウェルの護衛の権利を勝ち取った。
この戦がオーウェルの付けてはいけない火を灯してしまい、事あるごとにスキターリェツを連れ出して実験………というよりパワードスーツの検証に付き合わされた。
スキターリェツも鍛練になるかと楽観的に捉えて根気よく実験に付き合った。それもあってか家の者たちから色々良くしてもらって、厚待遇を受けた。どうやら彼のわんぱくっぷりには辟易してたようだ。
それからしばらくしたら、オーウェルは学院に行くぞと言い出した。どうやら彼は学生で、今はこの屋敷に帰省していたらしい。一応私のような者を連れていっても大丈夫なのかと聞いたら大丈夫だと元気よく返したので多分大丈夫。
オーウェルが学院へ旅立つ時、従者とか親族が安堵した顔をしてる辺り、本当に彼と付き合うのに体力を使ってたのだろう。
今年はスキターリェツがいたからかなりましだったようであるが。
アルザーノ帝国のフェジテに到着し、スキターリェツはオーウェルに少し広そうな家に連れられた。
「ハハハハハハ!!!戻ったぞ!!」
「おーう、もう一生戻らなくても良かったんだぞー」
勢いよく扉を開けて叫ぶオーウェルにドライな対応をしながら奥の部屋から青年が出てきた。
「あ?オーウェル、そいつ誰だ?」
「エルドレッド、私は今から取りかからなくてはいけない案件があるんだ。話はその後だ!」
と華麗にスルーしてエルドレッドと呼ばれた青年が出てきた部屋へ入っていった。
「お、おい!………って」
ポツンとエルドレッドとスキターリェツは置いていかれた。初対面同士の者を残すというのはどういうものかと考えるが、オーウェルという男はそういう男だ。今さら言ったところで変わることはないだろう。じゃあ、それならこちらが上手く合わせるしかない。
「すまない、とりあえず情報の共有をしたいので話が出来る所はないか?」
「え?あ、ああ。じゃあこっちに」
エルドレッドはスキターリェツを入口手前の部屋へ案内した。オーウェルに付き合っていたら急展開なぞ慣れてしまった。彼は思い付きで発明とかするから。それはエルドレッドも同じようで瞬時に対応した。
部屋は片付いているというより使われていないって感じだった。テーブルと椅子、キッチンがあり、最低限の掃除はしているが、使用された痕跡があまり見受けられなかった。
2人は椅子に座ると
「まずは自己紹介か……。私はスキターリェツ。好きに呼んでくれ 」
スキターリェツは自己紹介をした。それを聞いたエルドレッドは変な奴が来たよというような感想を抱きながら
「エルドレッドだ。エルドレッド=ドゥール」
と簡素に挨拶した。
「それで?あんたは何だ?」
「何だと言われてもな………私は奥の部屋へ行ったオーウェル=シュウザーの付き添いのようなものだ」
「…………ちょっと待ってろ」
エルドレッドは話を止めて部屋を出ていった。怪訝に思うが何かあるんだろうとスキターリェツは気にしなかった。
前世でも同じ事があり、ドイツの将校帽を被った金髪碧眼の女性と食堂で会話をしていたら、急に立ち上がって
「少し待ってろ」
と言われて立ち去っていった。しばらくしたら戻ってきて
「悪かったな」
と言って席に座った。何かあったのかと聞いたらどうやら芋をふかしているらしく、状態を確認しにいったとのこと。
「まあ、彼女がいるから大丈夫だろ」
と割烹着を着用した女性を指差して微笑んだ。
ちなみに、その芋は鎮守府を悲劇に陥れるのだが、それは別の話。スキターリェツはその時関わらなかったため事後報告となったが、空色ケープ曰く
「あれは悪夢です。もう2度とあんなことになりたくない」
とのこと。報告だけ聞いたスキターリェツは意味が分からなかったが、当事者の顔を見ればそれほど酷いことが起きたのだろうと感じた。
「悪い、待たせたな」
前世の記憶に浸っていたらエルドレッドが戻ってきた。
「芋を見てきたのか?」
「は?芋?」
「………いや、何でもない。それで、その箱は?」
エルドレッドの手には白い立方体の箱があり、2人を挟むように机に置いた。
「まあ、話してたら分かるさ。んじゃ、情報の共有すっか」
エルドレッドは座ってスキターリェツを見つめた。
「もう一度聞くが、あんたは何者なんだ?」
「事情聴取されてるみたいだな。私はオーウェル=シュウザーの付き添いだ」
「……………」
「……………」
エルドレッドは箱をじっと見ているからスキターリェツもつられて箱を見る。白い箱でそれ以外特に特筆すべき点のない箱。これは一体なんなんだ?
「反応なしか。じゃあ……」
「貴殿ばかり質問するのは些か気を害する。交互に質問して良いか?」
「え?ああ、良いぜ?」
スキターリェツは軽く座り直して質問を始める。
「まあ、オーソドックスな質問だが、貴殿はオーウェルの学友か?」
「学友………と言えば学友だが………」
「煮え切らない感じだな」
「学年も違うし、専攻学科も違うからなー」
「…………戦艦と空母みたいなものか」
「は?戦艦?空母?」
「いや、こちらの話だ」
「まあ、居候と考えてくれ………もしくはオーウェルの研究仲間……?」
「それも煮え切らない感じだな」
「だからさっきも言ったが分野がかけ離れているからな。同じ魔法工学でもやってることは全く違う」
「…………貴殿らは"同志"みたいなものと考えれば良いのか?」
「同志…………ちょっと違うがそんなもんかね?」
簡単に話してみたがこの男、そんなに悪い奴ではないようだ。そうスキターリェツは考えた。そこそこフレンドリーで明るい男。例えるなら……ネイビーブルーのワンピースを着たあの女性にThe・ヒーローみたいな女成分をちょっと加えた感じか?違うか。
「じゃあ、次は俺だな」
そう言って質問による情報共有は続くのだった。
これがスキターリェツとエルドレッドの出会い。オーウェルと比べると些か物足りないだろうが、出会いなんて普通こんなものだ。
いきなり瑞雲を渡してきたり、赤化プロパガンダを撒き散らしながら接近されたり、ラムネを渡されたり、パンジャンドラムが飛んできたり、あんなハチャメチャな出会いは出会いと言わない。普通が一番。
ついに毎日更新ならず!
いや、いつか不可能になるだろうなとは感じてましたよ。
私の文才ではこれが限界なのだ!(開き直るなよ)
とにかくさっさとフェジテに行かせたかった。フェジテに行かせりゃ帝都に行かせやすいし、何より"さっさと原作に向かわせたかった"。
そうですよ、これ察していたかもしれませんが、原作開始前です。時間で言うとバーナードが特務分室にいる頃じゃないでしょうか?(いつだよ)
感想ありがとうございます!
お気に入りに引き続き、また声を上げてしまいました。
これからも感想とか戴けたらとっても嬉しいです。ただ、私のメンタルはつつかれたら腐ったり、3日に1度子猫に拐われたりするくらい弱いです。常に退却魂で執筆してます。眉毛をかかれたり、蚊に刺されたら折れるので用法・容量はお守りください(どういう意味だよ)
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天才と変態は紙一重と知る
努力をし続ける、それが出来るものは天才である。
私には全く出来なかったもので、出来るものをみると少し黒い感情が混み上がってくる。
エルドレッド=ドゥール。
アルザーノ魔術学院の3年次生で学院内で変わり者と証されている。それもまず、オーウェルと関わってる時点で変人扱いされている。学年も違うのによく知り合ったなと思ったが、どうやらエルドレッドが動いて知り合ったらしい。
エルドレッドはオーウェルの存在とどんな奴かを知ると昼食の際、オーウェルの相席をしたそうだ。それも何度も。
「エルドレッドがついに壊れた」
と言われてもエルドレッドはめげずにオーウェルの所へ赴いた。
エルドレッドの野望にオーウェルが必要であると感じたからだそうだ。実際オーウェルと一緒に研究をするようになって己の野望に着実に近づいているらしい。
エルドレッドの野望というのは"最高の人形師"になることだ。
彼には姉がいて、アンリエッタ=ドゥールと言う。彼女は魔術が上手く扱え、魔導師として優秀で、何より"人形を扱わせれば右に出るものなし"と言われているそうだ。
そんな彼女といつも比べられ、失敗すれば姉のように頑張れと言われ、成功してもあの姉の弟なのだから当たり前と評された。それに苛立ちを感じたエルドレッドは家を出て学院に飛び込むように入学した。
「1年次生の頃は金に困り続けた」
親を頼らずバイトをしながら学費の金を稼いだ。住み込みのバイトだったから家賃とか食費の心配は無かったが、自身の研究……人形の研究は全然出来なかったそうだ。それでも筆記は学年首位を取る辺り、努力家なのだろう。そして2年次生になった時に彼の前に天災が現れた。天啓のようなものが降りたそうだ。こいつに関われと。一瞬バグXを想像したが、あれは転生をする際に起きた不具合。生きている者に関わることはないはず。
そして、オーウェルの信用をある程度勝ち取ると、住み込みバイトをしなくてもよくなった。オーウェルが学費を出すと言ったらしい。その代わりに研究の助手をやってくれと頼まれたそうだ。それを快く受け、今に至る。
スキターリェツはエルドレッドを常識人でありながら変人でもあると評した。
エルドレッドは己の野望に真剣に取り組んでいる。特に錬金術とやらをかなり勉強し、高速錬成というのが出来るようになった。一瞬で武器を生み出したのを見たとき、こりゃスゴいと思った。ただ、失敗したら廃人になる諸刃の剣らしく、あまり使わないそうだ。
そういった努力家というのが常識人で、変人というのはどういうことか。彼、人形の事になると本当に変人になる。人形が好きだからああなったのか、それとも姉に対する対抗心から生まれたのか分からないが、とにかく人形の事になるとどんどんのめり込んでしまうのだ。あのオーウェルですら、
「ハハハハハハ!!!!アイツに人形の研究をさせるとブレーキの効かない暴走馬となる!疲れ果てるまで放置するしかあるまい」
と言わせるほど。まあ、人形の事になった途端暴走するわけでもない。現に人形の腕とかの動作確認とかする程度ならのめり込まなかった。設計図とか書き出したりして………要するに何か火が付くような事が起きなければ普通の気の良い兄ちゃんである。知り合ってしばらくしてもどこで火が付くか、どうしたら火が付くのか未だに分からない。
5歳になってもスキターリェツのすることは変わらなかった。ただひたすら鍛練あるのみと。未だに前世の自分(イメージ)に勝てず、シュトゥーカ隊の急降下爆撃(イメージ。1度だけ淡い金髪ツインテにやってもらってそれを当時避けることに成功はした)にも負け、その鬱憤ではないが負け続けると気が滅入るので、エルドレッドとオーウェルが共同で作った戦闘用魔導人形を完膚なきまでに叩きのめした。
データを取ろうとして持っていたペンと紙を2人は落とすほど唖然としていたが、スキターリェツはこの程度で負けていたら不幸姉妹とかが繰り出す西村鉄拳とかに瞬殺されると考えていた。
鍛練しつつ、2人の要望を受けて実験に付き合ったり、掃除とかしたりと2人の研究に貢献した。まあ、この頃ゴーレム?とやらを作って実験をした際は
「手加減しろ。良いな?絶対にだぞ」
と言われたので、ああ"提督理論"かと思って本気で粉砕したら
「これはフリじゃない!」
と怒られた。どうやらこの理論は当てはまらない場合もあるようだ。
月日は巡り、いつもの日課のランニングを済ませて研究室に行くとエルドレッドが机に突っ伏していた。どうやら人形の研究の火が消えた状態のようだ。
スキターリェツはオーウェルがいないことの方が珍しいみたいなズレた感想を抱きつつ、端に置かれてる魔力を込めることで空気中の水蒸気を吸い取り、浄化させて新鮮な水を出す装置"いつでも水が飲める君"(オーウェルが作った中ではかなりマシな発明品)で水をやかん(スキターリェツがオーウェルに頼んで作らせた)に入れ、棚に置いてある茶葉(絶滅危惧種らしい。でも裏庭にたくさん咲いていたからそんなに貴重品ではないのだろう)を入れて、置くだけで一瞬で設定した温度にしてくれる装置"何でも温めます君"(オーウェルは"君"とか英数字を付けたがる節があるとスキターリェツは感じていた)で瞬時に暖めると、2つカップに注いで1つはエルドレッドの横に置いた。
ゆっくりお茶を堪能していたらスキターリェツがガチャガチャ作業をしてたからか、お茶の香りでなのか分からないが目を覚ました。
「………んん………また落ちてしまったか」
「おはよう。今日が休日で良かったな。学院があれば遅刻は確定していたぞ」
「ああ………次は気を付ける」
エルドレッドは横に置いてあったお茶を啜ってほぅ……と息を漏らす。
「その言葉、何度目だ?」
「…何度目だろうな………そういやリェツが来てからもう半年か………もう少ししたら長期休暇。それを越えるともう学生でいれるタイムリミットが近くまで迫ってくる」
「…………」
「オーウェルと出会って1年半。かなり目標に近づいたと思うが、まだまだアンリエッタに届かねぇ。もっと高みに行かなければ」
高みへ行こうとするのは間違っていない。現にスキターリェツも前世の己を越える為に日々鍛練を積んでいる。それはもう間違えないようにするため。あの馬車で刻まれた悔しさを味わいたくないため。
出会いがあれば別れもある。それは肉親であろうが起こる。なら、その別れを最高の別れにしたい。スキターリェツは2度大きな別れをした。1度目はあの白いコートを纏った赤き野望を秘めた女やドイツの将校帽を被った規律に厳しい女。そんな彼女たちを纏める白い軍服を適当に着てる男。
2度目は今世の両親、村の人たち。眠らされたとはいえその原因を作ったのはスキターリェツ自身。もっと上手くできていたら、もっと強かったらと後悔し続けた。
後悔したから今の自分がある。そして、その後悔があるから上へ上へと高みへ行こうとする。失敗は成功のもととよく言うが、あながち間違ってない。失敗という糧を得ることで己のレベルを上げているのだから。
だが、エルドレッドはどうだ?
彼は姉を越える、最高の人形師になるばかりだ。たくさん失敗しただろうが、それをちゃんと糧にしているのだろうか?
彼は姉を越えた先をちゃんと見据えているのだろうか。それを伝えたいが肉体が5歳のスキターリェツでは多分言っても効果がない。何か方法があれば良いのだが………。
「そういや、お前の使ってる短剣ってなんなんだ?」
思考の海に浸っていたら急に声をかけられた。急いで海から這い出てエルドレッドの質問に答える。
「何なのだと言われてもな。特殊な短剣としか言いようがないな」
「それは分かってる。じゃあ、質問を変える。それはどこで手に入れた?」
「村にいた頃にたまたま遺跡の近くに停泊してな。その際に潜り込んで手に入れた」
「……………待て、遺跡に入ったのか?」
「ああ。大人たちは危険だから入るなと言っていたが、さほど危険ではなかった。何人か負傷していたが、ありゃ不意討ちを食らったのだな。それで体勢を乱されて一気にダメージを受けた。そこそこ入り組んでいたから仕方ないと思うが、その程度で危険と判断するのは早計だろう」
「………………つまり、1人で入ったのか?」
「そりゃ1人で入ったさ。皆行きたがらないし、そもそも鍛練のために入っていったようなものだ。その時に武器庫を見つけてこの短剣を手に入れた」
「ちなみにいつ?」
「短剣を手に入れたのは…………2つの時だな」
唖然とするエルドレッドを他所にスキターリェツはまた思考の海に浸っていく。そういえばあの翡翠色の直剣、後数年したら振るえるだろうな。だが、あの直剣は手元に無いし、そもそもあの遺跡がどこにあるか分からない。無理やりにでも引っ張ってきたらよかったと少し後悔していた。
「こほん。それで、この短剣って抜刀しなくても良い剣なんだよな?瞬時に手元に飛び込んでくる」
「………あ、いや、少し違うな」
「は?どういう意味だ?」
スキターリェツは懐にある短剣を出して抜き取る。
「この短剣を持ってある程度魔力を込めたら、レプリカを創造してくれるんだよ」
「……………はあ!?それってつまり」
「魔力が尽きない限り永久に剣を生み出してくれるんだよ。《用意》」
左手に短剣を持って、右手に魔力を込めると左手にある短剣と全く同じモノが現れ、その2つをエルドレッドの前に置いた。
「どちらがレプリカかと言われても分からないだろ?」
エルドレッドは2つの短剣を吟味する。持ってみたり、振ったりしてみて
「確かに、どっちが本物だと言われたら分からないな」
と短剣を置いてうーむと唸った。
「まあ、少し振ったり見れば分かるがな」
スキターリェツはレプリカの方を握ると、短剣は粒子となって消えていった。
「そうなのか?」
「そりゃハリボテなのだから分かるだろ。ハリボテに生命は宿っていないからな」
「………………なあ」
短剣を鞘にしまって懐におさめているとエルドレッドが神妙な顔でスキターリェツを見た。
「ハリボテでも魂が宿れば本物になるのか?」
「……………どうだろうな。だが《用意》」
スキターリェツはまた短剣を出し、手早く複製した短剣と一緒に机に突き立てる。
「例えばこのハリボテにお前の魂が宿ったとしよう。それはハリボテではなく"本物"になる。だが、それはこちらの"本物"とは別の"本物"になる。で、この短剣に宿った魂がこちらのハリボテに移ったとしよう。そうなればハリボテは"本物"となり、"本物"はハリボテになる…………あくまで私の考えだが、質問に答えられたか?」
「あ、ああ。お前の言いたいことはわかった」
そうかと言ってスキターリェツはこの場から立ち去ろうとする。慌てて止めて剣を忘れているぞと言ったら、
「今は貴殿が必要していると思うから置いておく」
と言って今度こそ立ち去った。
エルドレッドはじっとその短剣を眺めているのであった。
どうも。やわらか戦s………けぷこんけぷこん。モコモコです。
何だかんだで5話?まで来ました。そして思うのです。いつになればグレン先生やらルミア、クリスティーナ……間違えたシスティーナに会えるのだろうか。でもまだ時期的にグレンはまだグレンという名前でなかったし、ルミアもまだルミアという名前ではない。
あー、キンクリして原作まで加速させようかな(止めろ)
友人に言われたのですが、
「なあ、これヒロイン未定ってタグ付いてるけど女性出てきた?」
……………………………出てきたよ!回想でな!
というわけで急展開な私に急展開を求めて来た(皮肉)友人に鉄槌を下しつつ今日も必死に綴っていこうと思います。
友人みたいな皮肉、ジト目な感想どしどしお待ちしております。
ただ私の精神は豆h――――
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