現世侵攻……ダルイ…… (食べかけのピザ)
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ニートになりたい
一刃.現世侵攻…ダルイ……


処女作です稚拙な部分もありますが、まあ初心者だし、というように広い心で受け止めてもらえると幸いです。

批判も受け付けるけど……

”あまり強い言葉を使うなよ、泣くぞ”


 虚夜宮(ラス・ノーチェス)の玉座の間で藍染惣右介は悩んでいた。

 

「現世侵攻ダルイ」

 

 崩玉との融合を間近に藍染はだるくなっていた、完璧すぎて全てがつまらなく感じていたから刺激を求めて護廷一三隊に宣戦布告したのはいいものの、隊長としての仕事に明け暮れていた死神時代と違って、離反した後は特にすることがなにもなく、やることといえば死神達の観察くらいでのんびりできる虚夜宮(ラス・ノーチェス)での生活が思ったよりも快適で、「もう、現世侵攻なんてダルイからやめよっかなー、ニート万歳」なんて思っていた。

 

 実は藍染にとって隊長の仕事など片手間にできるような事でしかない、しかし何故こんな事を考えるまでに疲弊しているかというと、隊長の仕事に加えて計画の準備、そしてその計画を悟らせないための隊長達に対する信頼を上げるための交流、それらの行動が重なって藍染は未だ嘗てないほど疲弊していたのだ。完璧主義の藍染にとって絶対に計画を成功させるために確率はできるだけあげたかった、今回はその完璧すぎる性格が仇となったのだが。

 

 そして最後にそれらから解放された時の未だ嘗てないほどの解放感を味わった藍染にとって、現世侵攻など米粒ほどの興味も向ける対象にはならないほどまでに成り下がっていたのだ。

 

「どう思うギン?」

「は?なにがでっしゃろ?」

「現世侵攻をやめようと思っているのだがどう思う」

「なにゆうてるんやこの人……」

 

 ギンのその返答に納得がいかない藍染だが、その反応は当たり前といったら当たり前である、長年仇にしていた相手がいきなり反逆をやめようといってきたのだから。

 

「そんなことは言わないでくれギン、私は今まで仕事に追われていたから気がつかなかったが、暇を知って初めて分かったんだ、私が真に求めていたものは刺激などではなく余裕だったということを」

「そんなこと言われましてももう計画は9割がた終わってるんでっしゃろ、今更計画を中止になんてできるんでっかね」

「フフフ……心配してくれなくても構わない、念のためにいつでも中止にできるように計画を組んでいる、その辺は抜かりないよ」

「もうだめやこの無駄にハイスペックな完璧超人、何処に才能つかっとんのや」

 

 そうなのだ自他共に認める完璧超人であるこの男は、中止も視野に入れた計画を組んでいたのだ。崩玉との融合、王鍵の創成といういまだかつてないほどの事業を護廷十三隊と対立して100年以上の時間をかけて成し遂げようとしておきながら、自分の気分で中止にできるように計画を組んでいたのだ。

 

「そんなに褒めないでくれギン、いくら私が賞賛に値するとは言っても照れてしまうじゃないか」

「いや、褒めとらんし、ほんまどうしたんや」

「まあいい、そうだ要はどう思う、もうそんなだるいことはやめてこの虚夜宮(ラス・ノーチェス)でニートしていこうじゃないか」

「うわ、遂にニート言いよったぞ」

「行けません!!やっと復讐できる機会が訪れたのに気分でやめるなんてあってはなりません!!」

 

 確かに東仙要にとっては100年以上かけて得た友人の復讐の機会、藍染を殺せればいいギンと違ってこの発言による焦りはギンの比ではないだろう。

 

「そんなことは言っても気分が乗らないのだから仕方ないだろう、仕事にはモチベーションが大事なんだよ、気分が乗らない時にやっても失敗の確率が高いし、いっそのことやめちゃおう」

「どうされたのですか今日はおかしいですよ、それに長年時間をかけてきた計画を今更止めるなどあってはなりません」

 

 やっと訪れた復讐の機会、こんな気分の問題で機会を奪われるなどたまったものではない、だから東仙は藍染を説得するので必死だ。

 

 その時藍染は思いついた、要は復讐ができればいいのだ、ということは自分自らが動く必要はないのではないのではないだろうかと。

 

「そうだ要、復讐ができればいいのだろう、ならば瀞霊廷に大量の虚を送り込んで混乱の嵐に陥れようじゃないか、それならば要も納得だろう」

「いえ、それでは私自らが復讐をしたわけではありませんし、私自身納得がいきません、どうか思い直しください」

 

 予想はしていたが要がここまで粘るのはいい加減に疲れてきた、しかしだからといって力で屈服させるのはなんだか負けた気がする、なので藍染はその類稀なる知能で要が納得するような案をひねり出そうとしていた。

 

「それではこうしよう、瀞霊廷に大量のゴキブリを解き放とうではないか、それならば要も納得だろう」

 

 ギンは今日何度目かわからない事を考えた「なにいってるんやこの人」と

 

「む…それ…ならば…まだ…いや…」

「なんでさっきのがダメで今ので葛藤しとんのや」

 

 しかし要が葛藤するのも無理はない、ギンはその時サボっていたから知らないが、ある隊首会の時ゴキブリが出たことがあった、室内は瞬く間に阿鼻叫喚の嵐に包まれ、凄惨なゴキブリ退治が始まった。

 

 各隊長達、あの更木剣八、卯ノ花列までも取り乱し、皆で始解を使ってゴキブリを抹殺しようとしていた、総隊長に至っては卍解を使う直前まで追い込まれた。その様子を信じられないようにしていた藍染だが、流石に総隊長の卍解は拙い、直ちにゴキブリを駆除した。

 

 藍染は知らないことだが、その時ゴキブリを恐れた様子もなく駆除するのを見ていた隊長達からの株が大上がりし、それが藍染に対する信頼に拍車をかけた。こんなところで計画がスムーズに進む要因を作っていたのだ、流石は瀞霊廷一の天才だと言えるだろう。

 

「ふむ、要も納得してくれたことだし、皆に計画の中止を告げようじゃないか」

「いや東仙サン丸め込まれたらあきませんで」

 

 あまりにも東仙が哀れになったギンは瀞霊廷に不利になるとわかっていながらも助け舟を出した。

 

「……ハッ、そうです藍染様そんなことで私が納得すると思わないでください」

「いや僕が助け船出さなかったら危なかったやろ……」

チッ、あと少しだったのに……ギン困るじゃないか」

「いやでも東仙サンがあまりにも哀れに感じたものやからですね……」

「とにかく計画を中止なんてあってはなりません、言語道断です」

「ゴキブリ……」

「うっ……くっ……いや……ダメです」

 

『なんだか楽しいな』

 

 めんどくさくなった藍染は要で遊び始めた。そんな様子にギンも「ダメやこれ……」みたいな顔をしている。

 

「それにこの計画のために集めた十刃(エスパーダ)達も納得しないでしょう、この日のために牙を研ぎ、死神達を打倒するために準備してきたのですから」

 

 確かに十刃達の反乱は厄介だ、藍染一人で十刃達を全員打倒できるとわかっていても今の藍染にとってはこの虚夜宮で遊ぶための部下達を失うことになるのだから。こんなに要に説得されても藍染の頭の中では十刃は既に自分が虚夜宮で暇つぶしをするための部下となっていた。もう十刃を使って死神達を打倒しようという考えは頭の隅にもない。

 

 この男藍染はもうこの虚夜宮でニートすると決めてからは基本的になにもない虚圏(ウェコムンド)で遊ぶために十刃達は必要だと考えていた、叩けば面白い反応をするものは結構いるのだ。そういうわけで日頃は冷徹な藍染は前に比べてだいぶ寛大になっていた。

 

「ふむ、確かに十刃達は厄介だな反乱を起こされては困る」

「そうでしょう、だから諦めてください」

 

 ここで藍染と要の間には致命的なすれ違いが起こっていた。要は十刃達に反乱されると流石に藍染でも危ないのだろうと考えていたが、藍染は反乱した十刃を、自分が粛清することで遊び相手が減る事を危ぶんでいた。

 

 藍染がこんな事を考えているとはつゆにも思っていないギンは要と同じように考えており、この藍染も護廷一三隊全員でかかればもしかしたら打倒できるかもしれないと、藍染の心中とは明後日の方向に考えて一筋の光明を得ていた。まあそんな事を考えなくても現世侵攻をする気持ちはほとんどないのだが。

 

「さあバカなことばかり言っていないでとっとと準備を進めましょう」

 

 やっと藍染を説得できたと思った東仙は普段は藍染相手には使わないような言葉を使うほどまでに浮かれていた。

 

そこに藍染の口から無慈悲な言葉が飛び出る

 

「よし、十刃達を集めて会議をしよう!!」

 

 普通ならば十刃程度など藍染の力をもってすれば自分の意見を押し通すことなど容易い、しかし此処で楽しくニートするためにはみんなとギクシャクするのは避けたいところなのである。

 

 藍染はほぼ全ての破面(アランカル)から恐れられている事を知っている。なので今からはなるべくフレンドリーに、寛大に接して気楽に付き合えるような関係にしていきたいのだ。そのためにも力を使っていう事を聞かせるなど弊害でしかない、あらゆる方向に才能を示すこの男、どうすれば自分の好感度が上がるなどと考えるのはたやすい事なのだ。

 

「なん……だと……」

 

 しかし説得に成功したと思っていた要にとってはまさに青天の霹靂である、上昇していたテンションは急降下、ついどこぞやの死神代行が発しそうなセリフを吐くほどまでに困惑していた。

 

「なんだかどこぞやの死神代行が発しそうなセリフだね」

 

 そんな東仙の気持ちを露とも知らない藍染は思いついた感想をそのまま口に出す。普段ならば東仙の考えていることなど手に取るようにわかる藍染だが、今はその類稀なる知能をいかにして全員を説得し、自分を楽しいニート生活に入れるかに全てを回しているので、そんな絶望の淵にいる東仙の気持ちなど察することができない。

 

「正気ですか、十刃程度に意見を求めるなど、あいつらは実に自分勝手な奴らです、そもそも会議になるとは到底思えません」

 

 確かに十刃達は自己主張の強いものばかりだ、いつも互いにいがみ合って藍染がいなければ絶対に殺しあう関係であろうものもちらほらいる。勿論そんなものばかりではないが、あくまでそこまでではないというだけであって、自己主張が激しいのは違いないのである。第1十刃と第4十刃である彼らは違うだろうが、それ以外はその例にもれないであろうことは間違いないのである。もし会議を開こうものならば、口論から発展して最悪殺し合いになることまったなしである。

 

 そんなことは百も承知であろう藍染の考えが東仙にもギンにもわからない、そこで藍染から発された言葉は彼らには到底信じられないことであった。

 

「なに、私がお願いすれば彼らもわかってくれるさ、私は彼らがきちんと会議に臨んでくれることを信じているよ」

 

 その発言から受けた2人の衝撃はいかほどのものか、今藍染の口から出た言葉は「お願い」と「信じる」である。彼らにはそれが上辺だけの言葉でないことが直感的に察していた、それだけにこの衝撃である。「ニートになりたい」その心が人をここまで変えるのか、ギンはこれで藍染が改心してくれるのならばもう復讐はいいかな〜なんて事を考えていた、そして東仙はもう会議は避けられないと察してその場に崩れ落ちた。

 

 東仙に比べてショックの小さかったギンが先ほどの衝撃から回復し見たのは、玉座でニート生活に思いをはせ明らかに計画をしている時より楽しそうに皆の説得の方法を考える藍染と、その前で床に両手をついている東仙、ギンは思わずつぶやいた。

 

「カオスや」

 

 

 

 

 




気が向いたら続きを書くと思います(中途半端に終わったし……)


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二刃.会議(笑)上

十刃会議(笑)が始まる
相変わらずキャラ崩壊が激しいです"こんなの僕が知ってる十刃じゃない"と言う人は自己責任で


「いきなり会議なんてなんだってんだよなー」

 

こうぼやくのはグリムジョーである、十刃(エスパーダ)の中でも特に好戦的なこの男はいきなりの召集にめんどくさそうな気持ちを隠さず、しかし決して小さくない驚きを心中に抱きながら玉座の間に向かっていた。

 

なぜグリムジョーが驚いているかというと、それは今回の招集が会議という名目だからだ。会議というと自分たちにも意見を求めているという可能性が高い、それは決して頭の出来がいいわけではないグリムジョーにもそれくらいはわかる。

 

いつもの招集といえば藍染が決めたことを皆に伝えるために行われるものであり、彼らはそれを実行するだけであってそこに自分の意見はない。あまり考えるのが得意ではないグリムジョーにとってそれは別に不満ではないし、疑問を持つこともない、考えるのは頭がいいものがやればいいのだ、だからこそ今回の招集に困惑しているのである。

 

しばらく歩くと玉座の間が見えてきた。いつも通りに扉を開け中に入り見渡すと自分以外は全員集まっているのがわかる。自分が来るのはいつも遅いほうなのでそれは何ら不思議なことではない、いつもと違うことといえば……

 

「やあグリムジョー待っていたよ、さあそこの空いている席についてくれたまえ」

 

……なぜか部屋の中央に長テーブルが置いてあり、全員がそこに座っていることである。

 

それならば会議室でやればいいじゃないかと思うグリムジョーだが、藍染的には計画を続けるかやめるかのとても大事な会議なので玉座の間でやりたかったのだ、つまり雰囲気である。

 

「さあ、みんなも集まったことだし会議を始めようか」

 

本当に会議だったのかと半信半疑で来ていたであろう皆が小さく驚くのをしり目に藍染は続ける。

 

「今日はよほどの無礼な口をきかなければ、多少のことは大目に見るつもりだ、皆の積極的な意見を期待しているよ」

 

あの藍染がそこまでして自分たちに意見を求めるとはいかほどのことかと全員が想像を膨らませる。ただ、藍染の横にいる東仙が見るからにげんなりしているのが気になるが、ちなみにギンのほうはいつも通り何を考えているかわからない笑みを浮かべている……しかしよく見ると心なしか疲れが見えるような気がする。

 

「それでは皆に意見を求めたいのは……」

 

皆がかたずを呑む中衝撃の言葉が耳に飛び込んできた。

 

「現世侵攻をやめようと思うのだがどう思う?」

「「「は??!!」」」

 

”絶句”その言葉が最も似合うような状況に陥るあの心がないとされる第4十刃(クアトロ・エスパーダ)のウルキオラでさえ目を見開き藍染を凝視している。

 

その衝撃からいち早く回復したグリムジョーは先の藍染の言葉もあっていつもより遠慮なく怒鳴る。

 

「は!?やめるってどういうことだよ!!今まで100年も準備に時間かけてきたんだぞ、今更辞めるなんてできるわけねーだろうが!!」

「シャクだが今回ばかりはグリムジョーに賛成じゃな、一体どうしたんだボス」

「私程度の力ではとても解決できないような事態に陥ったのだ、非常に非常に残念だが計画をやめるほかないと判断した、しかしそれでは納得しないであろう君達に説明および何か案があったら聞きたいと思い集まってもらった次第だ」

 

藍染ほどの力の持ち主でも解決できない、それは十刃達にとって衝撃であった。この男は力も頭脳も飛び抜けており、できないことはないのではないかと思っていたほどなのだ、この男も人(死神)なのだなぁとかすかな親近感が起こる。それを聞いていたギンと東仙は藍染に白い眼を向けている、東仙はそんな気がするだけだが。

 

先ほど声を荒げたグリムジョーとそれに同調したバラガンもその言葉に固まる、力で押さえつけられ絶対に勝てないと思ったから今まで従っていたが、今まさに困った目をしている藍染を見て、元々兄貴分気質を持つグリムジョーは困っている奴がいたら放っておけないセンサーが発動し怒りを収めた、まさにツンデレの鑑である。

 

「チッ、なんだよ困ってることって言ってみろ」

 

実にチョロイ、それに加えてバラガンも困っている孫を見守るおじいちゃん目線が顕現し、下克上を狙っていたはずなのに今はコロリと藍染を支えてやらねばという気持ちになってきた。

 

「そうじゃ、困っていることとはなんじゃおじいちゃんに言って見なさい」

 

心なしか目つきも優しくなっている…気がする。

 

「グリムジョー、バラガンありがとう、バラガンからは何か不安な声が聞こえてきた気がするがまあいいだろう。私が困っていることとはな———」

 

全員が耳をすませる、藍染でも手に負えないこととはどんなことかと。

 

「———働きたくないんだ」

「「「は??!!」」」

「何が手に負えないことだ、ただの気分じゃねーか!」

「何をいうグリムジョー、気分とは大事なことなんだ働きたくない時に働いても結果は出ない」

「なるほどなるほど、おじいちゃん分かったそんな事なら仕方ないのう」

「てめーじじいは黙ってろ、こういうのは甘やかしたらいけないんだよ」

 

藍染のこの言葉にグリムジョーは大激怒である、めんどくさがり屋の弟を怒る感じではあるが、バラガンはただ孫を甘やかすおじいちゃんだ。この様子にほかの十刃も口を開く。

 

「いきなりどうしたってんだよ、働きたくないのは同感だがらしくねーな」

 

こういうのは第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)のスタークである。基本的にめんどくさがりのこの男、グリムジョーのように計画の中止に対する忌避感はないが突然の藍染の変わりように困惑している。

 

「そうだそうだ本当にどうしちまったんだよー」

 

こういうのはスタークの従属官(フラシオン)のリリネットだ。スタークたちは2人合わせて第1十刃なので特別に参加を許可されているのだ。

 

「そうだね、簡単に言うと”今までたくさん働いたからもう休んでいいよね”というわけだ」

「じゃあしかたねーな、なあリリネット」

「何言ってんだよスターク良い訳ないだろ」

「リリネット」

 

藍染から声をかけられる。

 

「な、なんだよぉ…」

「後でお菓子をあげよう」

 

藍染はエサで釣り始めた。

 

「な、ならしかたねーな、わかったよ」

 

見た目通りお子様である、本人に言ったら怒りそうだが。

 

「ハリベルはどう思う」

 

次に意見を求めたのは褐色、金髪、巨乳の三拍揃った美女第3十刃(トレス・エスパーダ)のハリベルである。

 

「藍染様の御心のままにと言いたいところですが、流石にその理由では納得がいきません」

 

十刃一の真面目キャラで現実世界だったら風紀委員をしてそうなハリベル、忠誠を誓っている藍染のいうことと言えどもその不真面目な態度は納得がいかなかったようだ。

 

「そもそも計画を続けたいけどめんどくさいんですか、それとももうやる気はないんですか」

「やる気は一切無い(キリッ)」

「そんなわがまま言わないでください、グリムジョーも言っていましたが準備に100年かかったんですよ、それが無になりますがいいんですか」

 

藍染を説得する様子はグリムジョーと反対に姉のようだ。

 

「フッ、ニートになるためならそれくらい些細なことだ」

 

ダメだこりゃ、みんながそう思う中ハリベルは諦めない。

 

「と、とにかく私は納得しません、途中でやめるなんてめっです」

 

もはやできの悪い弟を叱る姉そのものである。

 

可愛い、そうほっこりした藍染だが最終手段を出す。

 

「そういえばハリベル、最近現世のケーキを手に入れたのだが」

「うっ」

「ハリベルにあげようと思ったんだが残念だな、リリネットに上げてしまおうか」

「い、いや待ってください」

「あの有名なエンゼルのモンブランなんだが残念だな」

「し、仕方ないですね、そういえば私もめんどくさいと思っていたんですよ」

 

ハリベルは陥落した、やはり破面といえども女の子、甘いものには目がないのだ。

 

「そうか、ハリベルならそうだろうと思っていたよ、モンブランは後で君の部屋に送っておこう従属官と一緒に食べるがいい」

 

勿論これも藍染の策略のうちだ。皆の趣味、好物を把握してある藍染にとって、どうすれば相手を陥落させられるか予想するのは容易だ。このモンブランもハリベル対策に自らが店に並びに行ってわざわざ買ってきたものだ。もちろん変装などしていない藍染曰く「私は変装をするほどみみっちい男ではない」ということだ。

 

もし藍染がケーキ屋の行列にならんでいるところを浦原喜助や四楓院夜一などに見られていたとしたら彼らはまず自分の目を疑ったことだろう、それだけシュールな光景である。

 

そんなわけでハリベルを説得(笑)した藍染は第4十刃(クアトロ・エスパーダ)のウルキオラに狙いをつける。忠誠心の高いウルキオラのことだ自分の案に賛成してくれるだろう。もはや藍染は解決の案など聞く気はない、いかにして皆を納得してもらった上でニートするかに全力を注いでいるのだ。

 

「もちろんウルキオラは賛成してくれるね」

「……ショートケーキ」

「ん?」

「ショートケーキを所望します」

「あ、ああ今はないが後ですぐに用意しよう」

 

さしもの藍染もウルキオラがケーキを条件に出すとは思っても見なかったようだ、心がないキャラはどこの行ったのだろうか、欲望ありまくりである。

 

ここで初めて藍染の余裕が崩れる、さすがは十刃一の潜在能力を持つ男だこういうところでもその一部を発揮しているようだ。だがそこは藍染、すぐに余裕を持ち直す藍染クオリティーは伊達じゃない。

 

「フフフ、ウルキオラがそんなことを言うなんて驚いたよ、私をここまで驚かすものは中々いない誇ってもいい」

「ホールでお願いします」

「わ、わかったホールで用意しよう」

 

ただし天然には敵わないようだ。

 

「ケッ、俺は死神の強いやつと戦えると思ったから楽しみにしてたのによ、いきなり丸くなっちまって俺のアフターケアはどうしてくれるんですかねー、俺はそいつらみたいに単純じゃねーですよ」

 

こういうのは第5十刃(クイント・エスパーダ)のノイトラだ、戦闘狂の気のある彼はせっかくの強い死神と戦えるからと楽しみにしていたのにこのままでは全てパァになると思い不満らしい。

 

「ノイトラは強いものと戦いたかったのか、困ったな私たちの間で戦うわけにもいかないし、どうしようか」

「思いつかねーならこんな会議やめにしてとっとと死神どもと戦えるようにしてくれよ」

「そうだ俺も黒崎一護と決着をつけなければいけねーんだよ」

 

ここにグリムジョーも加わる、かつて現世で戦った時に決着をつけられなかった一護と決着をつけたいグリムジョーはその機会が失われることを恐れたらしい。

 

「何も思いつかないってんなら俺は直接死神のところに行くぜ」

「それはダメだ、そんな事をしたら私の監督不届きで尸魄街と対立してしまうではないか」

 

自分が今までやってきた事を棚に上げそんな事をのたまう藍染、そしてそんな藍染の脳裏にいいアイデアがよぎる。

 

「そうだ彼らをこちらに招待しようではないか、それならば恨まれる心配もないだろう。いやいっそのこと武芸大会でも開くのがいいかもしれないな、うむ中々いいアイデアだと思わないかな」

「武芸大会だ〜?んだそれはそれじゃあ命と命のやり取りができねーじゃねーか、テンション上がらないな」

 

命のやり取りがしたいノイトラはそれでは満足しないようだ、だが藍染が口を開く。

 

「そんなこと言っても私は君たちに死んでほしくないんだ(遊ぶ相手が減る)君たちが死ぬととても悲しい(特にいじりがいがありそうだし)だから納得してくれないか(私の楽しい生活のためにも)」

「「藍染…様…」」

 

藍染の言葉の裏に隠された本音に気づかない二人はその言葉に感動する。つまり、普段は冷たい人がいきなりデレたら普通のデレよりも攻撃力が高い現象が発動したのだ。

 

その言葉の裏に隠された本音に気づいているギンは可哀想なものを見る目でたった今感動している二人を見ている、護廷十三隊はこんなのと戦うかもしれないのかと。今攻めてこられたら以外とあっさり倒せるのではないだろうか、そう考えながら藍染の方を見る。相変わらず胡散臭い笑みを浮かべながら計画通りに行ったと喜んでいるようだ。

 

なんで自分はこんなのに復讐をしようとしているのかと大きな脱力感を感じる。こんなバカなやり取りを見ていれば復讐心も萎えるというものだ。

 

ちなみに東仙は会議が始まった直後のグリムジョーとのやりとりの時から放心状態だ。

 

「チッ、藍染様がそこまで言うってんなら仕方ねーな今回は引いてやるよ、なあグリムジョー」

「わーったよ、約束は絶対に守れよ、絶対だかんな!」

「約束しよう、私を誰だと思っている完全無欠の超絶イケメン藍染様だぞそれくらいわけないさ」

 

内心ほくそ笑みながら『チョロい』そう思った。

 

 

 

 

 

 

 




大体6000文字で収めようと思ったら何故か10000文字近く行っただから分割します


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三刃.会議(笑)下

相変わらずのキャラ崩壊それに注意して呼んでね

そしてザエルアポロの謎の長さ(別に好きでもないのに)


十刃の半分以上の説得(笑)に成功した藍染はラストスパートに入る。とは言っても次は十刃一の忠誠を誓っているゾマリだ、今までで一番説得は容易だろう。もしかすると説得など必要ないかもしれない、なんたってアモールなのだから。

 

「次はそうだね、ゾマリはどう思……なんだいその目は」

 

もちろん賛成してくれるだろうと思って話しかけたのだが、藍染に向ける目がおかしい。簡単に言うとジト目というやつだ。

 

「嗚呼、どうしてこんなに丸くなってしまったのか、私が知っている藍染様はいつも私を深淵の目で貫いてくる。そこにアモールを感じていたのに、嗚呼本当にどうしてしまったのか」

 

今までで一番藍染の変わりように困惑しているのはゾマリかもしれない。確かに絶対の忠誠を誓っていた相手が突然変わってしまったら困惑するのは必然だが、彼は何かが違うようだ。

 

「私は藍染様の奥の見えない目で貫かれるとそこにエクスタシーを感じていたのです。だが今の藍染様にはそれが無い、その目には光が宿っている。それでは私はエクスタシーを感じることができない!私が忠誠を誓っていたのはかつてのその前に対峙するだけでとてつもない緊張と最高のエクスタシーを感じさせてくれる貴方だったのです」

 

つまり要約するとゾマリはドMだったということらしい。ゾマリが忠誠を誓っていたのは前の瞳に光の無い藍染であり、今の瞳を光のある藍染では無いということだ。なぜかいきなり説得の難易度が上がった。

 

「ふむ困ったな、確かに今の私には希望がある。ニート生活という希望が、瞳に光が宿っても仕方ないだろう。かつての生きることに刺激を求めていた私とは違うのだから」

「そうです、そうなのです!私が忠誠を誓っていたのはかつてのエクスタシーを感じさせてくれたあなただ、決して今のあなたでは無い!」

 

ドMは手に負えないはっきり分かんだね、他の十刃も呆れる中藍染に注目が集まる。これにどう対処するのかと。

 

「要するに君が求めているのはこういう目かな」

「あっ」

 

ゾマリの目に光芒の光が満ちる、これは重症のようだ。

 

「そうです、私が求めていたのはその目なのです」

「だが、それだけで君は満足なのかな」

「と、申されますと?」

 

なんだか雲行きが怪しくなってきた。

 

「君に新たな刺激を与えてあげようということだ」

「おお、さすがは藍染様、してどんなエクスタシーを与えてくれるので?」

「……焦らしプレイとは知っているかな」

 

こいつは何を言っているんだ、この二人以外の全員の心が重なった瞬間であった。今日の藍染の言動はおかしいの一言に尽きるが、これは最もおかしい。もう東仙は白眼をむいて気絶している、もともと白眼はむいていたが。

 

「ほう、焦らしプレイとはなんなのでしょうか?」

「焦らしプレイとはそれをあえて与えないことによってそれを与えた時の効果を倍増させるという効果を持つ一種の刺激のことだよ」

「それはお預けを食らっているということのようですが、どうしてそれが新たな刺激となるのでしょうか」

「そうだね、簡単に言うとお預けを食らっていたところに突然刺激を与えることで、一気に溜まっていたフラストレーションを解放させ、とてつもないエクスタシーを感じさせると言うことだよ」

「おお、さすがは藍染様そのようなことを私に与えてくださるとはお見それしました。私はあなたのことを見誤っていた、あなたのことを疑った私をお許しください」

 

そう恭しく礼をするゾマリに集まる目は冷たい、だが自分たちもおかしな手で丸め込まれたことを忘れてはいけないだろう。そんな面々の中藍染だけは満足げに頷く。

 

「分かってくれればいいんだ、それではもちろんゾマリも私の提案に賛成してくれるね」

「もちろんでございます」

 

そんなゾマリの返事に藍染も思わずにっこりだ。しかし忘れてはいけない次に説得すべきなのは第8十刃(オクターバ・エスパーダ)のザエルアポロだということを、十刃の中で一番頭の切れること男を説得するのは骨が折れそうだ。だが藍染には余裕の笑みが宿っている。

 

次は自分だと自覚しているザエルアポロはその笑みに不審げな顔をするが挑発されていると思って怒りが込み上げてくる。だがそこは冷静なザエルアポロすぐに怒りを鎮める、それはこれから晴らせばいいのだ。

 

「ザエルアポロは賛成してくれるかな?」

 

相変わらずの笑顔に少しイラッとしながらも前以て用意しておいた返事を返す。

 

「ははは、藍染様も妙なことをおっしゃる。藍染様がかつておっしゃられていたように僕たちは死神達と戦う運命にある。今回は憎き死神どもを殲滅できる絶好の機会だ、それを逃さない手はない。そのことは藍染様も分かっておられるはずです」

 

そんなことには全く興味はないが、反対することによって藍染を困らせることができるならと反対する

 

破面となる時に得る力の大半を捨ててまで知能を求めた彼は天才である。しかし天才であるがゆえに自分と藍染のとの差を誰よりも深く理解していた。それが彼には許せなかった、こと虚圏の中で一番頭のいいはずの自分がたった一人の死神に劣っていると言う事実が。自分が知能を得る機会を与えてくれたことには感謝しているが、自分より頭が良いと言う事実は嫌悪する対象でしかない。しかし藍染に手を出すことはできなかった、藍染が頭だけの怪物だったらやりようもあったのだが、藍染は力も怪物だからだ。

 

しかし藍染に反対すれば彼を困らせることができる。そう悟ったザエルアポロは自分の頭脳をフル回転させて理論的に、他の十刃達も納得するような理由を考えた。それで反対に転じてくれるのなら僥倖だと考えて。まあ藍染に一泡吹かせたいと考えているわりにはやっていること自体はみみっちいのだが。

 

「確かにそうだよな、死神どもをぶっ殺すのが俺たちのやることでもある」

 

そんな声を聞いてザエルアポロはほくそ笑む、これで十刃の何人かが反対になるかもしれない。笑い出しそうな自分を抑えながら藍染の方を見る。今まさに雲行きの変わったこの場の空気に顔を曇らせているであろうその顔を拝むために、だが顔を曇らせたのはザエルアポロの方だった。

 

顔を曇らせたザエルアポロを見て藍染はその笑みを深める。ザエルアポロの考えていることなどお見通しの藍染、もちろんザエルアポロが自分に反対することなど想定の範囲内のことなのだ。藍染からしてみれば自分から見て中途半端に頭のいいザエルアポロの方が比較的自由気ままな他の十刃より思考が予想しやすい、予想が容易であったがために対策の準備も簡単だった。他のみんなからしたらザエルアポロが1番の強敵だと考えていたかもしれないが、藍染からしたら一番簡単だったのがザエルアポロだったのだ。

 

「そうかザエルアポロは反対か、君ならメリットを考えた上で私に賛成してくれると思ったのだが」

「いや、メリットなど思いつきませんね、そんなハッタリで私を説得できるとでも?」

「嗚呼すまない、まだメリットを提示していなかったな」

 

ハッタリでは無かったことにザエルアポロが目に見えて動揺する。

 

「そういえば話は変わるが、今まで何度か無断で現世に行っているだろう?」

「な、何故それを」

「フッ、いつも言っているだろう、私は全てを知っていると」

 

いきなり話題が変わったことに怪訝な顔をしていたザエルアポロだがその言葉に動揺を隠せない、藍染がそのことを知っていることに驚いたのだろう。

 

藍染はある時ザエルアポロが任務でもないのに虚夜宮から遠く離れた場所に行っているのを見かけた、なんとなしにつけてみると現世に行っているのを知ったのだ。

 

「一週間前のコミケは楽しかったかいザエルアポロ?」

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 

ザエルアポロがここで今日一番の動揺を見せる、もはや言葉が言語として機能していない。そこに追い討ちをかける藍染。

 

「お目当てのものは買えたかい」

「お、お目当てのものと言いますと?」

「先着100人限定初音ミクサンタコスクリスマス特別verフィギュアのことだよ」

「ナナナナンノコトヲイッテイルノカワカリマセンネ」

 

何故自分が一番買いたかったものまで知っているのか、たしかに1番の目的はそれだった。しかしあと少しのところで買えなくて血涙を流した。ザエルアポロは必死に頭を働かせようとするが思考がままならない。

 

「なぜ?どうして?という顔をしているね、何故かってそれを一番最初に買ったのが私だからさ」

 

そう行って指を鳴らすと藍染の手元に一体のフィギュアが現れる。それは正にザエルアポロが求めていたフィギュアであった。

 

そうザエルアポロが無断で現世に行っていることを知った藍染は彼が現世に行く目的を突き止めたそれがこれだ。ザエルアポロがフィギュアを集めていることを知った藍染はその時はさして興味を示していなかった、自分の計画に支障が出なければ別にいいと思っていたのだ。

 

しかし皆を説得しなければいけなくなった時皆の好物などを手に入れる必要が出てきた、その時に思い出したのがこれだ。そこからの藍染の行動は速かった、現世である大規模なコミケの日程を調査し、虚夜宮内の監視カメラでザエルアポロの行動を観察した。すると数日後のコミケで売られる数量限定のフィギュアをお目当てにしていることを知ったのだ。そしてその前日から列に並びそれを手に入れてきたのだ。もちろんザエルアポロの行動は妨害して。

 

「特別に君にこれをあげようじゃないか、後は分かるね……」

「ぐぐぐ……」

 

心が揺れているのが手に取るようにわかる、そこにとどめの一撃を食らわせる。

 

「今ならこの別売りアイテムをつけよう」

「賛成します」

 

計画通り、そう皆にわからない程度に笑う。しかしザエルアポロの喜びようをみると前日から並んだ甲斐もあったというものだ。

 

そして残る十刃も後二人だ。もちろんこの二人に対しても対策は用意してある、他の十刃に比べたらよっぽど楽だった。

 

「アーロニーロはどう思う」

 

第9十刃(ヌベーノ・エスパーダ)でこの場で唯一の元最下級(ギリアン)だったアーロニーロに声をかける。頭が人の形をしていない彼からは表情を伺い知ることはできない。

 

「私はどうでもいいのですが」

 

彼の返答は大体予想通りだった。基本的に他のことにあまり興味がない彼のことだ特に賛成でも反対でもなく、手はかからないだろうと思っていた。これは用意していたものは必要なかったかもしれないな、そう思っていたが。

 

「ダケド他のノ皆ノ様子ヲ見タラ、ココハ反対スルノガイイカモシレン」

 

何故かアーロニーロも反対だと言っている。

 

「それはどういうことかな、君はあまり興味を示していなかったはずだが」

「ここで反対しておけば何か良いものがもらえると思ったものですから」

 

なんか行動パターンを読まれている、こう見えて計算高いどころがあるのかもしれない。しかし打算込みの反対であって実際にはどうでも良いのだろう、確かにアーロニーロ相手のものも用意してあるがなんだか釈然としない、ザエルアポロよりよっぽど計算高いのではないだろうか。そう思いながらもあらかじめ用意してあったものをアーロニーロに示す。

 

「なんだかしっくりこないがアーロニーロの言う通りだもちろん君のも用意してある。だが君のは多くてねここには持ってこれなかったんだ」

 

そうアーロニーロにプレゼント(賄賂)するのは多すぎてこの部屋に持ってこれなかったのだ。それを聞くとアーロニーロは怪訝な顔をする……気がする。

 

「コノ部屋ニ入ラナイトハドンナモノナノデショウカ」

 

この玉座の間はかなり広い、ここに入らないとなるとかなり大きなものになるはずなのだが、するとアーロニーロの前に画面が現れる。

 

「今回君に用意したのはその画面に映っているものだ、君の大好物だろう私自らが直々に狩ってきたんだ」

「おお……これは素晴らしい」

 

アーロニーロの前の画面に映っているのは生け捕りにされた大量の虚達だ。アーロニーロは他の虚を喰らうことでその虚が持っていた能力を使うことが出来る、その能力が元最下級(ギリアン)ながらもアーロニーロを十刃の席に置いている所以なのだ。

 

「どうだい、気に入ってくれたかな」

「ハイ予想以上ニ素晴ラシイモノデシタ」

「そうか、気に入ってくれたのなら私も嬉しいよ、ところで私の意見には賛成してくれるのかな」

「もちろんです喜んで」

 

そんなアーロニーロの答えに藍染もニコニコ顔だ。

 

遂に説得すべき十刃も最後の一人、ここまで長かったそう藍染は感慨にふける、まだ終わってないけど。

 

「何だーやっと俺の番かよ待ちくたびれて寝ちゃってたぜ」

 

そう言って背伸びをするのは第10十刃(ディエス・エスパーダ)のヤミーだ。彼は基本的に単純なので藍染も楽な相手だと結構失礼なことを思っていたりする。

 

「途中までしか聞いてなかったけどよーなんか貰えんだろ楽しみだぜ」

「今はなんの会議をしているのか覚えているかな?」

 

完璧に今の状況を忘れているヤミーに流石の藍染もイラッとする。だがここで怒ってはダメだと自分を落ち付かせる。

 

「ん〜っとなそうだ思い出した、死神のクソヤローどもをぶっ殺しに行くのめんどくさいってやつだろ」

「そうだ、それにヤミーは賛成かい反対かい?」

 

やっと方向修正出来たと少しの疲労を覚えながらも本題を切り出す。これで賛成だと言ってくれれば助かるのだが藍染の予想では——-

 

「アァン、もちろん反対に決まってんだろ、あの俺の腕を切りやがった死神にお礼をしてやんなきゃいけねーんだよ」

 

——-そう言って反対するだろうと思っていた。プライドの無駄に高いヤミーのことだ前やられた分はやり返さないと気が済まないのだろう。だがもちろん対策はある。

 

「ヤミー君は子犬の虚を可愛がっていたね」

「俺があのクソ犬のことを可愛がっているだって?冗談は程々にしてくれよ」

 

その返答に藍染は微笑む。すると藍染の後ろに大画面が映し出されて動画が流れる。

 

『おし、このボールを取って来いやー』

『ワンッ』

『よくやったなー偉いぜ』

 

そこで一旦動画を止める。

 

「おや、私には犬を可愛がっている様にしか見えないがね、一体どうしたことかな」

 

そう恥ずかしさのあまりプルプル震えるヤミーに追い打ちをかける。

 

「てめー何処から撮ってやがった消しやがれ!」

「どうしてだい?随分と微笑ましいじゃないか、皆もそう思っているはずさ」

「うるせーこのヤロー内緒にしてたのに〜」

 

そう嘆くヤミーに向けられる皆の視線は優しい、だがここはヤミーを説得する場だ、藍染はここからどうするつもりなのか。

 

「さてそんなヤミーにいいお知らせがある。ここに現世で手に入れた最高級のドッグフードとワンワンワールドのプレミアム招待券があるのだがどうする?」

 

そう藍染はヤミーが現世のワンワンワールドのことを知って羨んでいたことを知っていたのだ。

 

「もちろんこの動画も消去しよう、どうだい私の意見に賛成してくれるのかな」

「そ、そこまで言われちゃ仕方ねーなその意見に賛成してやるよ」

「そうか、そう言ってくれて私も嬉しいよ」

 

犬達と戯れることに想いを馳せニヤニヤしているヤミー、それに藍染はやはり単純だなと相変わらず思っていた。

 

これで十刃の説得には成功した、明日にでも計画の中止が虚夜宮中に知らされるだろう。後は今の藍染達の状況を知らずせっせと偽空座町で藍染を迎え撃つ準備をしている護廷十三隊だが、そこで藍染はいいことを思いついた。

 

 

 

「そうだ、ドッキリをしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで会議(笑)は終わり。
次は護廷十三隊との絡み


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四刃.ドッキリ計画in空座町

ここでオリ設定

・現世侵攻が原作より1ヶ月遅れています
・織姫がさらわれた後一護達は1ヶ月修行していたという設定です

この2つに注意して読んでね☆


今回は藍染様の愉悦が爆発する。


「「「ドッキリ?」」」

「そう、ドッキリだ」

「死神に対してドッキリをするとはどういうことでしょうか」

 

ザエルアポロ達の困惑も仕方ないと言えるだろう、藍染だってたった今思いついたのだから。

 

「私はこのまま計画を中止したと彼らに伝えてもいいと思っていたんだよ、だがその時思ったんだ『それじゃあ面白くない』とね」

 

今藍染が求めているのは楽しさと面白さだ。護廷十三隊に計画の中止を宣言するのは簡単だがそれでは面白くない、藍染は彼らが偽空座町を用意し、そこで自分達を打とうとしていることを知っている。そこで皆が集まっているところで計画の中止を宣言すればさぞ面白いことになるだろうと考えたのである。

 

だがそこには障害が一つあった。

 

「ウルキオラ、捕らえてきた人間の女の子はどうしてる」

 

そう、前に藍染がウルキオラ達に命じて捕らえさせてきた井上織姫のことだ。藍染の予想が正しければ彼女を救いに黒崎一護と死神数名がこの虚圏にやってくるだろう、それでは皆が集まっているところでドッキリをするという計画が狂ってしまう。

 

「今は藍染様の命令通り部屋にいると思いますが」

「誰にも手は出させていないな」

「はい、傷一つつけていません」

 

それはいいことだ、彼女に傷をつけていれば黒崎一護達の怒りは大きかっただろうから。そこでいい案を思いついた藍染、彼女を救いにやってくるのなら彼女でおびき寄せればいいじゃないと。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

ここ偽空座町に護廷十三隊の隊長格、仮面の軍団(ヴァイザード)、そして黒崎一護達が勢揃いしていた。

 

現世侵攻の際に井上織姫を連れてきてあげようという藍染の宣言により一護達の虚圏への織姫救出作戦は中止となり、結果ここに護廷十三隊の隊長格が勢揃いすることとなった。そこで一護は思う、どうしてわざわざ井上を連れてくる必要があるのかと。見た目で誤解されがちだが一護の頭の回転は速い、故に藍染の行動に不信感を持っていた。だがそこでその思考は打ち切られる、突如として黒腔(ガルガンタ)が開いたからだ。そこから出てきたのは予想通り藍染と、離反した市丸と東仙だった。

 

「やあ、こうしてみると壮観だね、ここまでの戦力が一同に集まっているのは」

 

こいつが井上をさらっていったのかと怒りがこみ上げ、藍染に怒鳴ろうとするがある声に遮られる。

 

「まさかそちらは三人で来たのではあるまいの藍染惣右介」

「これはこれは元気そうで何よりだ山本元柳斎」

「ほざけ貴様を倒すのはワシだということを知らんのか」

 

そんなやり取りの直後その二人から霊圧が溢れ出す、それも思わず膝をつきそうになるほどの強大な霊圧が。

 

「それは楽しみだ、それと先程の質問に答えようかここに来たのは———」

 

そういう藍染の後ろに黒腔(ガルガンタ)が開く。

 

「———我々の最大戦力達だ」

 

黒腔(ガルガンタ)から出てきたのは10人の破面達、その中には井上をさらっていった2人もいる。その10人の誰もが隊長達に比肩あるいは凌駕するような存在感を放っている。あれと戦うのかと苦戦の覚悟をし、ふと見渡すと隊長達も緊張感に包まれているのがわかった。この場の空気に飲まれていないのは山本総隊長と戦闘狂更木剣八くらいだ。そして一番気になっていたことを藍染に問う。

 

「藍染、井上は何処にいる!」

「やあ久しぶりだね黒崎一護、そんなに彼女が大事かい、ウルキオラ」

 

そう藍染が命令すると井上が連れて来られる。

 

「く、黒崎君……」

「井上!藍染、井上に手は出していないだろうな!」

 

だが藍染はその問いに答えない、ただ意味深な笑みを浮かべるのみだ。それにじれた一護は井上に直接問いかける。

 

「井上、こいつらに何かされてないか!」

「あの…えっと…その……」

 

だが井上は困惑した様子でその問いに答えることができない、それを何かされたのだととった一護は藍染に怒りを向ける。

 

「藍染!井上に何しやがった!」

「待って黒崎君…その……」

 

井上が何か静止しているようだが怒りで頭に血の登った一護には聞こえない。そして藍染はその笑みを深め遂に口を開く。

 

「ふふふ…ウルキオラ彼女の一日のスケジュールを」

「はい」

 

頭に血が上っていた一護だがそのやり取りに冷静さを取り戻す、なんかスケジュールとか聞こえなかったかと。

 

「8時に起床、朝の準備を済ませ8時半から皆で集まって朝食、朝食後から12時半までは自由時間、主に虚夜宮内のジムやゲームセンター、部屋に備え付けの漫画やテレビなどで過ごす。12時半からはまたみんなで集まって昼食、ここ最近はバイキング形式が多い。昼食後からはまた自由時間、午前と同じように過ごすことが多いが最近は仲良くなった破面達の部屋に行くことが増えた。15時におやつを挟み20時に夕食、ちなみに昨日はカレーを3回お代わりした。そして23時には就寝、夜更かしは許さない。運動会などの日には日程は変わる、以上です」

「というわけだ分かってくれたかな?」

「そ、そういうことだから黒崎君……何もされてないよ?」

 

ツッコミたい、果てしなくツッコミたい、今の自分の顔はさぞ可笑しなことになっているだろう、そこまで困惑していた。ちなみにそれを聞いていた他の面々もとんでもなく複雑な表情をしている。その絵面に藍染はニヤニヤし、市丸は腹を抱えて爆笑している。

 

ツッコミたいところは山ほどあるが、まずなんなんだそのスケジュールは快適すぎるだろう、8時に起床で23時に就寝の9時間睡眠だ健康的である。それに皆でご飯を食べるとか仲良しすぎないか、あの濃ゆい面々が一つのテーブルで食事をする、想像出来ない、というか普通のご飯を食べていることに驚きなのだが。それに虚夜宮という所にジムやゲームセンターが有るとはどういうことなのだろうか、特にゲームセンターに関しては電気はどこから持ってきているのだろう。更に運動会をしているらしい、井上も参加したのだろうか、井上のブルマ……一護の鼻から鼻血が吹き出す、存外ムッツリなのかもしれない。

 

「そいつらにいじめられたりしてないか?」

「う、うん最初は怖かったけどある日から突然優しくなって……そうだご飯は美味しかったよ!」

 

聞きたいのはそこじゃない、忘れていたが井上は天然だった。もう一護には何が何だかわからない、頭は既にショート寸前である。そんな一護に代わり浦原が藍染に問う。浦原も初めは困惑していた様子だったがそこは天才いち早く回復したようだ。

 

「虚圏も愉快になってますね〜アタシも遊びにいきたいくらいッス」

 

そんないつも通りに緩い感じを出しているが真剣な顔となる。

 

「それで崩玉はどこにある」

「浦原喜助かまた会えて嬉しいよ、そういえばあれは君が開発したものだったね気になるのも仕方ないかな」

「そうっスね、あれはアタシにもあなたにも制御できるものではない封印すべきものッス」

「あんなに便利なものを封印するべきだというのかな?天才の名が泣くぞ、事実私はあれを有効活用している」

 

今までのやり取りで初めて浦原の顔に動揺の色が出る、自分が制御できなかった崩玉を制御できたという言葉に驚愕しているのだろう。

 

「それは気になるッスね、どうやって利用してるッスか」

「今現在、虚夜宮内の全電力は崩玉で賄われている、あれは万能でね水を生み出すことにも成功した。全くあんなに便利なものに100年以上も気づかなかったとは私も君もまだまだだったということかな」

 

やれやれとでも言いたげな藍染に浦原は言葉をなくす、心情的には、なんと言ったんだこいつは、と言った所だろうか。

 

「そ、それじゃあ崩玉はその虚夜宮という所にあるってことですか」

「その通りだ、今も元気に電力を供給してくれているはずだ。一応言っておくが返さないからな、もうあれ無しでは生活できない」

「アナタは崩玉を完成させることが目的だったはずですが、それは成功したんですか」

 

そうだ藍染は崩玉を完成させることが本来の目的だったはずだ、決して今の使い方ではない。

 

「もちろんそれは成功させた、崩玉に私の意思を伝えたら同調してくれてね、君の崩玉と私の崩玉は融合し完全体となったのだ。そして今は更に虚夜宮と融合している」

 

ドヤ、とでも言いたげな顔だとてつもなく殴りたい衝動にかられる。

 

「それでは王鍵の創成はどうするつもりですか」

「それも中止だめんどくさい」

 

藍染とはこんなキャラだっただろうか、前にあった時はこうもっと威圧感があって底知れなさで溢れていたはずだ。だが今はどうだ、なんだか前に比べて随分と緩くなっている。今日の最初はその霊圧に寒気が立ったが、今はその霊圧を疑うくらいだ。

 

「それではここに何をしに来た藍染惣右介」

 

そこに山本総隊長の静かにかつ重々しい声が響く。そうだ王鍵の創成をしないのならここに来る必要はなかったはずだ、それでは何故ここに現れたのだろうか、井上を返すだけに来たとは考えにくい。

 

「いい質問だね山本元柳斎、それではその質問に答えてあげるとしようか。皆準備を」

 

そう藍染が言うと今まで後ろに控えていた10人の破面達が空間から巨大な紙を取り出し広げる。そこには無駄に達筆な文字で

 

 

 

『計画中止』

 

 

 

と書かれてあった。それに皆が呆けていると何かが破裂したような音が響く、そちらを見るとクラッカーを持った藍染達がいた。

 

「そういうことだ驚いてくれたかな、山本元柳斎、浦原喜助、君達のそんな顔が見れて私はとても満足している」

 

そう言う藍染はほくほく顔だ、皆をびっくりさせることができて本当に楽しいのだろう。よく見ると破面達にもニヤニヤしているものが数名いる、それを見ると一護はだんだん怒りがこみ上げてきた。

 

「てめー今更中止って何だよ、こちとらお前を倒すために必死で修行してきたのに、しかもその虚夜宮っつうところで快適に暮らしやがってよー、お前ら俺が血反吐吐いてる時にそんな悠々自適に暮らしてたのか!」

 

自分でも何を言っているかわからない一護の目には切実な思いのこもった涙が見える。それはそうだろう打倒藍染を目標に修行してきたのに、その相手がいきなり計画を中止にすると言ってきたのだから。

 

「どうして計画を中止にしたのか聞いてもいいっすかね」

 

その疑問も当然と言ったら当然だ、少し前までは王鍵の創成に力を注いでいたはずだ、何故こんなことになってしまったのか。

 

「そうか私としたことがうっかりしていたよ、まだ理由を話していなかったね。私が計画を中止にしたのはだるかったからだよ、以前ギン達にも話したが……」

 

 

 

 

 

その全ての理由を聞き終わった時にその場にいた藍染達以外の者の思ったことが『何だそりゃ』である。100年以上かけてやってきた計画を気分で中止にするとはとてつもなく予想外だったからだ。普通に考えてそこまで手間をかけて計画したものを気分で中止など絶対にしない、それもあの藍染惣右介だったならば尚更だ。

 

一護は藍染のことはあまり知っているわけではないが、ここまで綿密な計画を立てたものがそんな人間(死神)でないことくらいは分かる。一護でさえそうなのだから付き合いの長かった他の面々の困惑は一護の比ではないだろう。

 

「たったそれだけの理由で計画を中止にしたと申すのか!」

 

我に返った山本総隊長が藍染に問う、藍染の性格をよく知っていると思っていただけにさしもの山本総隊長も動揺を隠せていない。そして問われた藍染だが何だか様子がおかしい。

 

「たったそれだけの理由?私が計画を中止にする理由をたったそれだけの理由だと言うのか!」

 

そう言う藍染から膨大な霊圧がほとばしる。

 

「私はずっと優等生を演じてきた、君達に計画を悟らせないためにも。本当の自分を抑えているのだから当然ストレスは溜まる。隊長の執務室くらいではゆっくりできると思っていたのに雛森君が子犬みたいに付きまとってくるから少しも気を抜けない。隊長となる前は平子真子の奔放さに振り回されっぱなしで、平子真子が尸魂街(ソウルソサエティ)を追放となった時はこれで解放されたと思っていたのに!」

 

「そんな私が虚圏で初めて余暇を手に入れた。それはまさしく私にとっては麻薬のようなものだった、それを君はたったそれだけのことと言うのか!」

「お、おうすまんかった」

 

そう叫ぶ藍染の目には涙が、そんなにも追い詰められていたのか。流石の山本総隊長も同情して素が出たみたいになっている。

 

それを聞いた平子と雛森はきまりが悪そうな顔だ、それもそうだろう自分の行いがあの藍染をここまで言わせるまでも追い詰めていたのだから。

 

「なんか落とし前つけさせたろ思うとったけど気の毒すぎるわ、ていうか俺の方が謝らんばちゃうか?」

「ふう、いろんなことを吐き出したらスッキリしたよ、平子真子も構わない過ぎ去ったことは仕方ないのだから。というわけで私はこれからは虚夜宮でニートしていくことにするよ。そうだ黒崎一護、織姫君を受け取りたまえ」

 

晴れ晴れとした表情の藍染はそう言うと井上を一護の方に放り投げた。それにビックリした一護がすぐさま井上を抱きとめる。

 

「織姫君、私たちはいつでも君を歓迎する、偶に遊びに来るといい」

「は…はいお邪魔します!」

 

いつの間にそんなに仲良くなったのだろうかと一護は少し嫉妬する。

 

だがそうあっさりとは終わらない、帰ろうとする藍染に斬りかかる影が一つ。

 

「そんなつれねーこと言うなよ、少しは遊んで行こーぜ」

 

護廷一隊きっての戦闘狂更木剣八である、そもそもここまでおとなしくしていた方が不思議だったくらいなのだ。

 

「ノイトラ」

「おっしゃー」

 

そんな剣八を遮る十刃が1人。

 

「なんだ〜てめーは!」

第5十刃(クイント・エスパーダ)ノイトラ・ジルガだ覚えとけ」

 

そう言うと二人は何合か打ち合う。

 

「てめーとは気が合いそうだな」

「そうか俺もそう思うぜ、今度虚圏に遊びに来いよ、そこでまた戦おうぜ」

 

そう言うとノイトラはその大きな斬魄刀で剣八を吹き飛ばし黒腔(ガンガンタ)に消える。そしてそこに残ったのは藍染ただ一人。

 

「では今日のところはここでお暇させて頂こう。もしこちらに遊びに来るのなら盛大にもてなそうじゃないか、君達が来る頃には更に施設は充実していることだろう。また会う時を楽しみにしている」

 

最後に特大の爆弾をぶち込んで藍染は帰っていった。

 

……え、遊びに行く?誰が?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだプレゼントをするのを忘れていたよ、受け取りたまえ」

 

そう藍染が黒腔(ガルガンタ)から皆のところに送り出したのは大きな黒い玉、それが突如として爆発する。そこから現れたのは大量のゴキブリだった。

 

「生体反応を見つけては襲いかかるように訓練してある、中々丈夫だから精々頑張りたまえ」

 

それを聞く余裕のあるものはいない。

 

「総隊長、それはマズイですって!」

万象一切灰燼(ばんしょういっさいかいじん)と為せ!流刃若火ーー!!」

「総隊長ーーーー!!??」

 




後悔も反省もしていない。藍染様は疲れていたんです!だからそれを護廷一三隊にぶつけただけなんです!責めないでやって下さい!

そして総隊長エェ、あの後の惨状を見ていた藍染様は最高の愉悦を感じてました。


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日常
五刃.浦原喜助との決闘!?


評価バーに色がついてるー!お気に入りが300件超えてるー!と狂喜乱舞している食べかけのピザです。いやー皆様のおかげで私も書くのが楽しいです、ありがとうございます!

しかし設定の甘さと誤字の多さに取り敢えず自分を殴っていました。

それはさておき最新話です楽しんでくれたらうれしいな!


ここ空座町にある浦原商店、店長の浦原喜助が営むこの店にはいつも通り平和な時間が流れていた。

 

「いや〜平和ッスね〜」

「そうじゃの〜」

 

店長の浦原は店の奥にある座敷で人型となっている夜一と一緒にお茶をすすっている。今日は同居者の握菱鉄裁も外出しており、(ウルル)もじん太も友達と一緒に遊びに出かけている。普段から客が多いわけではないので日頃はこのように茶をすすっている事が多いのだ。

 

前日の藍染による現世侵攻の際、藍染の謎の心変わりにより戦闘が起きる事がなく、けが人も出なくて特に事後処理などもなかったのですぐにいつもの平和を取り戻していた。それに浦原達に対する嫌疑も晴れたのでコソコソする必要もなく、今まで以上にこの日常を満喫していた。だがその平和は一瞬で打ち砕かれることとなる。

 

不意に店の戸が開く音がし、今日は特に商売の方も入っていなかったので、近所の子供が駄菓子でも買いに来たのかと思い駄菓子屋の店長モードで対応に出る。

 

「はいは〜い、今行きますよっと」

「いや、そこにいてもらって構わないよ」

 

あれ、なんか今ここにはいてはいけない筈の声が聞こえなかったかと、恐る恐るその声の主を確認する。

 

「やあ久しぶりだね、遊びに来たよ浦原喜助」

 

そこに居たのは予想通り前日衝撃発言をしたばかりの藍染惣右介、その姿に今日の平和がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じたのだった。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「どうぞお茶です」

「ああ済まないね、ふむなかなか良い茶葉を使っているじゃないか」

 

今浦原の前にちゃぶ台を挟んで座っているのはあの藍染惣右介だ、最初は全力で現実逃避していたのだが諦めて座敷に通し今に至る。ちなみに夜一は浦原の後ろの壁にもたれかかり藍染の挙動を観察している。

 

「ところで今日は何をしに来たっスか?何の目的もなく僕に会いに来たわけではないんでしょう」

「そうだね、それでは本題に入ろうか」

 

お茶を楽しんでいるようだった藍染の顔が急に引き締まり、その変わりように浦原と夜一は身構える。

 

「浦原喜助、今日は君に私と決闘をしてもらおうと思ってね」

 

『決闘』その言葉に浦原は仕込み刀を引き寄せ、夜一は構えを取る。だがそんな2人の様子に藍染はどこ吹く風だ。

 

「決闘とは穏やかじゃないっスね、前日はもう戦うのはやめると言った筈ッスけど」

「ふふふ、せっかちな男は嫌われるぞ、私みたいにもっと余裕を持って構えなくては」

「それは無理な話っスね、特にあなたが相手では」

 

何処までも余裕綽々の藍染の態度に浦原は焦りを感じ、夜一はいつでもとびかかれる体勢に入る。

 

「全く人の話は最後まで聞けと教えられなかったのかね、決闘は決闘でも今日はこれで勝負をしようと思ってきたんだよ」

 

そう言うと藍染は自らの懐に手を入れる。その動作に2人は警戒心を高める。果たして藍染の懐から出てきたのは……

 

「今日は将棋で戦おうじゃないか」

「はい!?」

 

将棋盤と駒一式だった、だが言いたい事が1つある。

 

"何でそれが懐に入っていた!"

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

聞くところによると、今、虚夜宮(ラス・ノーチェス)内で将棋が流行っているらしい。いろんな娯楽品を集めて虚夜宮内の娯楽室にボードゲームなどを置いたところ、将棋が人気となり空前の将棋ブームが来ていると言う事だ。

 

だが将棋と言ったら純粋な知能戦、虚夜宮内で藍染とまともに渡り合える者がいない。幹部の1人に辛うじて食らいつくものはいるらしいが藍染が苦戦するほどの領域には達していない。故に自分と知能戦で渡り合えるものはただ1人だと思いあたり、浦原と将棋で勝負をするためにここに足を運んだと言う事だ。

 

「え〜っと、要するに相手がいなくてつまらないからアタシと勝負をしに訪ねてきたって事で良いっスかね?」

「その通りだ、全く話が速いじゃないか、さあ早く始めるとしようもちろん将棋くらい嗜んでいるだろう」

 

これはどうしたものかと浦原は考える。尸魂界(ソウルソサエティ)においては藍染は現世侵攻を辞めたとはいえ皆は半信半疑の状態だ、また心変わりした藍染が攻めてくるのではないかと危惧している。そんな時に自分と将棋をしている事がバレたら、また修復された仲に亀裂が入りかねない、そうなるとまたコソコソしなければならないだろう、そうなる事は極力避けたいのだ。

 

「負けるのが悔しいのなら始めにそう言いたまえ、手加減はしてあげよう」

「言ったっスね、アタシが負けるとでも」

 

突然の手のひら返しである。浦原は自分が他の者よりも頭が良いのは知っているがそれを鼻にかけるような事はしない、しかし明らかに自分が頭脳において下に見られているこの発言は許せなかった。

 

「おい喜助、何で此奴の挑発に載っとるのじゃ、らしくないぞ!」

「夜一サン、ここだけは負けてはいけないとアタシの中のなにかが囁いているんスよ」

「よく言った浦原喜助、それでこそ男だ」

「やかましい!お主は黙っておれ、喜助しっかりせい」

 

夜一が何か話しかけているようだが目の前の相手を倒すことを決めた浦原には聞こえない。今浦原の頭の中にあるのは自分を下に見た藍染に一泡吹かせることだけだ、いつもの冷静な浦原は何処にもいない。

 

「さあ、駒を並べましょうか」

「そうだね、私も君との優劣を早くつけたいからね」

 

 

 

そうやって駒を並べていた浦原だったがふとあることに気が付いた。

 

「この駒も将棋盤も結構値が張るものじゃないっスか?」

 

そう、駒も将棋盤もここにあるものと比べて明らかに上等品なのだ。

 

「良いところに気がついたね、その通りこれらは最高級品だからさ」

「はえ〜それじゃあ結構お高いんじゃないっスか、お金はどうしたので?」

「企業秘密さ」

 

そう笑う藍染に浦原は寒気を覚える、これはこれ以上詮索しない方が身のためだろう。そうしているうちに駒を並べ終わる。

 

「さあどちらの頭脳が上かはっきりさせようじゃないか」

「前アタシの方が上だと言ったのは藍染サンですけどね」

「はて、記憶にないな?それはさておき先手は譲ろうじゃないか」

「それじゃあお言葉に甘えまして……」

 

1手目…「成る程そうきたか」

 

10手目…「ほう…そうくるっスか」

 

23手目…「それは悪手なんじゃないかい」

「それはどうっスかね」

 

40手目…「まさかあの時の手か!」

「言ったでしょう」

 

65手目…「…何かがおかしい」

『流石に気づくのが早いな』

 

80手目…「この歩が邪魔だな」

 

101手目…「あの発言はブラフっスか!」

「フフフ……」

 

 

そして天才同士の一進一退の攻防は続き……

 

153手目…「…投了っス…」

 

 

ここに勝敗は決した、その結果に藍染は緊張の汗を流しながらも濁りのない満面の笑みを浮かべ、対して浦原は項垂れている。実は浦原表にはあまり出していなかったが自分の方が藍染より上だと内心思っていた、だが結果はこれだもう浦原の心はブルーを通り越してブラックだ。

 

「私は今未だ嘗てないほどの充実感に満ちている。これほどまで心が晴れたのはニート生活が決定した時以来だ」

 

その言葉に浦原はさらに落ち込む、自分に勝つこととニート生活は同等の価値だったのかと。

 

「ありがとう浦原喜助、君のおかげで私はまた1つ高みに登れた、感謝している。しかし君は本当に強かった、故に君を私の最大の好敵手(ライバル)だと認め、これからは喜助と呼ぶことにしよう」

 

どうしてそうなった、そう思う浦原だがあまりのショックにまだ立ち直れていない。しかし突然頰に痛みが走り、気がつくと壁に打ち付けられていた。

 

「しっかりせんか喜助!負けたなら次勝てばいいだけじゃろうが!」

 

そうだ自分はたとえ実験で失敗しても挫けなかったじゃないか、そう昔のことを思い出し奮起する、今回負けたのなら次に勝てばいいのだと。

 

「有難うございます夜一サン、さて藍染サンもう一局お願いできますかね」

「美しい友情じゃないか、もちろん受けよう、そしてその決意を打ち砕いてあげようじゃないか」

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

もうそろそろ日が落ちそうになる時間帯、2人の集中力は本日最高である。二局目において見事勝利をもぎ取った浦原は歓喜した、しかし負けず嫌いの藍染がそこにもう一局申し込み決着の一局が始まったのである。始めは見学していた夜一だったが今は猫モードで浦原の横で眠っている。

 

そしてその対局は段々とヒートアップしていく、2人からは霊圧がほとばしり近くにいた虚がその霊圧に当てられ蒸発した。遊びから帰ってきた(ウルル)とじん太もその霊圧によって店に近づけない、そんな状況で呑気に寝ている夜一とは一体何者なのだろうか。

 

しかしその緊張感は突如として霧散する。藍染の持っていた携帯が鳴ったからだ。

 

「失礼…ああ…わかった」

「どうしたんですか?」

「虚夜宮でトラブルが起こってね、その対処のために帰らなくてはならない。実に残念だが今日のところはここまでとさせて頂こう。また別の日に決着を付けるとしようか」

「それじゃあ仕方ないっスね、分かりましたまた別の日に勝負に来てください」

 

そう2人はがっしりと握手を交わし互いの健闘を称え合う、もうこの2人は好敵手(ライバル)なのだから。そこで夜一が眼を覚ます。

 

「ふわ〜なんじゃもう終わったのか、ん?まだ終わっとらんではないか」

「それがですね夜一サン、藍染サンに急用が入ったそうなので今日のところはここまでにしようとなったところなんですよ」

「そうか、では終わったところで有利だったのはどっちだったんじゃ?」

「アタシですね(私だ)」

 

2人の声が重なる、どちらとも今有利な状況なのは自分の方だと思っていたようだ。それに浦原は反論する。

 

「馬鹿言っちゃいけませんよ藍染サン、よく見てください、アタシはこの角から攻勢に出られたんですよ」

「そちらの方こそ何を見てるんだい、こちらは金によって君の陣形を崩すことができたのだが」

 

そう2人はにらみ合いまた盤の前に座ろうとする。それに焦ったのは夜一だ、やっと藍染が帰ってくれると思ったのにこの調子ではまだまだ続きそうだからだ。

 

「ほれ藍染、お主は用ができたのじゃろう、早う帰らねば皆が困っておるぞ。喜助も喜助じゃ、このままでは雨とじん太が帰ってこれないではないか」

 

それを聞いた2人はバツが悪そうな顔をし、同時に舌打ちをする。

 

「次は徹底的に叩きのめしてあげよう」

「それはこっちのセリフっスね」

 

そして藍染はやっと帰っていった、そこに雨とじん太が示し合わせたように帰ってくる。夜一の言う通り2人の霊圧により帰ってこれなかったのだろう。それに浦原はすまなさそうな顔をする。

 

「いやーすいません、ここまで熱中したのは久しぶりでしてねー」

「別にいいけどよ〜、なんなんだあのすげー霊圧のおっさんは」

 

『おっさん』その言葉に浦原と夜一は同時に吹き出し、藍染は謎の不快感に襲われた。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

虚夜宮に帰り崩玉トラブルを解決した藍染は娯楽室においてザエルアポロと対局をしていた。

 

「藍染様、また一段と強くなっておられませんか?」

「そうかい、確かにそうかもしれないな」

 

確かに藍染の力量は上がっていた。浦原とギリギリの勝負を演出した結果、その先読みの力が伸びていたのだ。

 

「今日、将棋において私は敗北してしまってね」

「は?」

 

藍染が敗北した、その事実にザエルアポロの手が止まり、信じられないものを見る目で藍染を凝視している。

 

「藍染様が敗北なされたと?」

「その通りだ、あの浦原喜助にね」

「浦原喜助と言うと、前藍染様がおっしゃられていた唯一藍染様の頭脳を超えるという死神のことですか?」

「そうだ」

 

藍染から見てザエルアポロは目に見えて狼狽している。それほどまで藍染の敗北が信じられなかったのだろうか。

 

「藍染様が将棋で敗北なされたとは……」

「そんなに信じられないかい?しかしこれで私も完璧ではないと証明された、これは素晴らしいことだよ」

 

この藍染のセリフにザエルアポロは首を傾げている、藍染の言っていることの真意が掴めないのだろう。

 

「私はまだまだ高みに登れる、もうそんなことに興味はないと思っていたが本能は抑えられないようだ。そのためにとことん付き合ってもらうぞ喜助」

 

その時浦原はなんとも言い表しようのない寒気を感じたのだった。

 

 

 

 

 




えー藍染様たちが対局中に結構喋ってますがあまり気にしない方向でお願いします。(そうしないと対局が書けなかったのです)


感想はドシドシ送ってくださいお願いしまーす!


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六刃.グリムジョーの憂鬱

実はこの話は私が最も書きたかった話の一つでも有る。だってあのキャラ好きだもん!

いやー日刊にも載ってお気に入りも増えると本当に嬉しいですねー書いてて楽しいです。
というわけでこれからもよろしくお願いします。


ある日グリムジョーは悩んでいた。

 

「ルピが俺に会うと恐怖で固まっちまう……」

 

そんなことで悩む柄ではないグリムジョーがこんなに悩んでいるのには訳がある。それは先日の会議が始まりだ。

 

藍染が突然現世侵攻を辞めると言いだし、それに皆が賛成して現世侵攻中止が決定した。それから藍染は人が変わったようになり、そんな藍染に触発されて虚夜宮(ラス・ノーチェス)全体の雰囲気が変わってきたのだ。虚夜宮内に娯楽施設などが設置され、その影響によって明るい雰囲気が浸透してきた。

 

前は同じところに住んでいても、一部の仲間以外は全て敵だと思っているものが多く、藍染には力で従わされているだけで忠誠を誓っているものは少なかった。それが今ではまだまだぎこちないながらも同じ趣味を持つもの同士が会話するという事が生まれるほどにもなった。それは十刃とて例外ではない。

 

今まではグリムジョーも藍染には力でかなわないから従っているだけであって、隙さえあれば殺してやろうとさえ思っていた。しかし今の藍染の変わりようを見てこいつは支えてやらねば仕方がないという気持ちになっていたのだ。

 

もちろん王になるという野望は捨ててはいない、ただその王になるという野望の上で藍染は倒すという対象から外れただけだ。そんな感じで変わったグリムジョーは今更ながら自分が殺しかけたルピに罪悪感を抱くようになっていたのだ。それとそれ以外に困っていることが1つある。

 

 

 

 

 

 

 

グリムジョーはどうやってルピに話しかけようかと悩みながら廊下を歩いていた。そこに曲がり角からちょうどよく(悪く?)出てきたのがルピだ。考え事に集中していたグリムジョーはそれに気づかずルピにぶつかってしまう。気がついた時にはもう遅い、今自分の前にいるのは自分とぶつかって尻餅をつき、そのぶつかった相手がグリムジョーだと気付いていつも通り硬直したルピだ。

 

どうやってルピに話しかけようかと考えていてそれに夢中でルピを怖がらせてしまう、そんな間の悪い自分にグリムジョーは苛立ちを隠せない。その苛立ちが自分に会ったからだと勘違いしているルピはさらに動けなくなる。ここからどう挽回しようかと考えるグリムジョーだがいい案が思いつかない、こんな時ほどあまり頭の出来が良くない自分に苛立ちを覚えることはないのだ。その苛立ちがさらにルピに恐怖感を与えているのだが。

 

そこにルピが出てきた角から現れたのがハリベルだ。ハリベルはその2人の状況を確認するとその整った眉を寄せ、ハリベルの存在を確認したルピは九死に一生を得たかのような顔をしてハリベルに抱きつく。

 

「ハリベル〜、た、助かったよ〜」

 

そんなルピをハリベルは優しく抱きとめ、その胸に埋めた頭を優しく撫でる。それにマズイと思ったのはグリムジョーだ、今この虚夜宮内でルピと一番仲が良いのはハリベル一家だ。そんなハリベルにこんな場面を見られては何を言われるか分かったものではない。

 

「おい、女の子に手を出すとはいい度胸だな」

「いや、ちげーんだって、ルピがいきなり曲がり角から出てくるからよ」

「ほう、ルピの方が悪いというのか」

 

そう、もう1つの困っていることとはこれだ、何故かルピが女の子になっていたのだ。グリムジョーが殺しにかかった時は女顔ではあったが体は男だった。それが何故こんなことになってしまったのか、それにはもちろん理由がある。それはグリムジョーが織姫に腕を再生してもらい、ルピを殺しかけた時まで遡る。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

織姫に腕を再生してもらったグリムジョーは先ず手始めに自分の代わりに第6十刃の席についているルピの腹を貫こうとした。それに間一髪で気づいたルピだったが急所は外したものの脇腹を貫かれることとなった。仕留めきれていないと感じ、追撃しようとするグリムジョーだがそこに藍染は待ったをかける。

 

「そこまでだグリムジョー」

「けどよこいつをぶっ殺……」

「私はそこまでだと言ったんだ」

「ぐっ!?」

 

止められたグリムジョーは反論しようとしたが藍染の強大な霊圧を含めた静止で動きを止められる。もちろん藍染も何の理由も無くグリムジョーを止めたわけではない、グリムジョーの行動を予想していた藍染はそれでルピが死ぬならそれでも構わないと思っていた。

 

しかしグリムジョーの行動に間一髪で気づいたルピにさしもの藍染も少し驚いたのだ。ルピが予想以上の戦力を持っていることが分かった藍染はわざわざ戦力を減らす必要も無いと思い、グリムジョーの追撃を辞めさせたのだ。それにもう1つ理由がある。

 

「ちっ、止めろっつっても俺たち破面は超速再生能力は失ってるからほっといてもそのうち死ぬぜ」

「そう、だから実験をしようと思うんだ」

 

そこで藍染が思いついたのは崩玉によって怪我の治癒は出来るのか否かといったことだ。ちょうどいい怪我人が目の前にいるのだからそれで実験をしようと考えたのだ。

 

そうして藍染はルピの傷口に崩玉の力を集中させていく、するとルピの体に空いていた穴がみるみるうちに塞がっていった。

 

実験が成功したことに藍染は珍しく偽りではない本当の笑みを浮かべていた。だがルピの体に違和感を覚える。その違和感がいまいちよく分からない藍染だが、しばらくしてルピが目を覚ました。

 

「あ…れ…?確か僕グリムジョーに脇腹を貫かれて……」

「ちっ、生きてるのかよ」

「ヒッ」

 

そうグリムジョーの存在に気づいたルピはすぐさまハリベルの背中に張り付く、それを嘲笑するグリムジョーだがハリベルは微妙な表情を浮かべている。

 

「藍染様」

「なんだいハリベル」

「恐らくですがルピの身体つきが女のものになっています」

「え?…あれ…ホントだ…無い!」

 

敢えて何がとは聞かないがルピの慌てようを見る限り本当のことなのだろう、それに藍染は久しぶりの本気の驚愕をし、そしてその顔に笑みを浮かべる。

 

「そうか…何故だろうな…ああ本当に面白い!完全に私の想定の外の結果だよ、崩玉のことは完璧に理解したと思っていたがまだまだ分からないことだらけみたいだ」

 

そう言って藍染は崩玉を撫でる、すると藍染の頭の中に崩玉の意思が伝わってくる感覚がした。

 

「ははははははは!」

 

突然笑い出した藍染に皆は怪訝な顔を向けている、そして東仙が藍染に問う。

 

「どうされたのですか藍染様」

「ああ済まない、崩玉の素晴らしい反応に歓喜していた」

 

藍染のその言葉に皆は要領を得ていない、皆には崩玉の反応など確認できなかったからだ。そして藍染は自分が感じたことを皆に語り始める。

 

「私が崩玉を撫でると崩玉から謝罪の感情が伝わってきた、その感情に私が何故?と返すと、崩玉はルピのことを女の子だと勘違いして身体を再生したというんだ」

 

その言葉にルピが凍りつく、しかし皆は崩玉のその勘違いに納得している、実は皆最初はルピのことを女だと勘違いしていたからだ。

 

「そしてルピのことを女の子だと勘違いしたままホルモンバランスなどを調節したところ、ルピは女の子になってしまったということだ」

 

その藍染の説明に皆は呆然としている、特にルピはハリベルの背中に張り付いたまま何かをつぶやいている。それがあまりにも可哀想に思ったハリベルはルピの頭を優しく撫でた。そんな十刃を尻目に藍染はとても嬉しそうだ。

 

しばらくしてハッと気がついたルピはいつものへりくだったような言葉遣いも忘れて藍染に問いかける。

 

「僕どうなるの、早く戻してよ!」

 

それを聞いた藍染はまた崩玉と対話をするように目を瞑る、そしてしばらくして目を開け、ルピの問いかけに答える。

 

「男に戻すことは可能のようだが、また先ほど以上のレベルの大怪我をして再生しないと不可能のようだ、やるかい?」

「そ、そんな〜、するわけないでしょ!」

 

そう言って嘆き崩れ落ちるルピはその容姿も相まって庇護欲をそそられるが、藍染は気にも留めない。それよりも崩玉と対話をできたという結果にご満悦のようだ。

 

「本当に素晴らしい結果が得られたよ、崩玉との対話ができるとは、これは治癒ができたという事実よりもはるかに価値のある情報だ」

 

これ程までも機嫌の良い藍染を見るのはいつぶりだろうかと皆は思う、いつもは笑っては居てもそれは表面上だけのものなのだから。そんな機嫌の良い藍染にルピは自分の今後の処遇を訪ねる。

 

「そ、それじゃあ僕はどうなるんですか」

「そうだな、大怪我をするのが嫌だというのならそのままで居てもらうしかないな」

 

いつもならそのまま放っておくのだが今の藍染は少し違う、そのままもう一つ付け加える。

 

「ハリベル、同じ女同士面倒を見てやってくれないか」

「はい、分かりました」

 

ハリベルも今のルピを見て気になっていたところだったので全く構わない、そうやってルピの面倒をハリベルが見ることとなったのだ。

 

これがルピが女になった流れとルピとハリベルが仲がいい理由だ。そんなわけでルピが女になった理由もグリムジョー(半分崩玉)にあるのであまり上手に出られない、その世話係のハリベルにも同様だ、ハリベルはハリベルで自己主張が特に激しい性格ではないのだが、ルピの事になると人が変わったかのようになるのだ。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「ルピに何をしようとした」

「いや、そいつがぶつかってきただけだって言ってるだろ!」

 

それを言った後にハッとする、ただでさえ怯えられているのにこれ以上怯えさせてどうするのかと。

 

「お前はルピを怖がらせるのが趣味なのか」

「ち、ちげーよ……」

「はぁ、まあいい、ルピ行くぞ」

「う、うん……」

 

その去っていく2人の背中にグリムジョーは自分の情けなさを感じるのだった。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「なあノイトラ、どうやったらルピに謝れると思う?」

「なんだ、まだ謝ってなかったのか」

 

ここはノイトラの自室、グリムジョーは相談をするためにノイトラを訪ねて来ていた。ウンウン唸っている2人のところにテスラがクッキーを持ってくる。

 

「すまねーなテスラ」

「いえ、これはノイトラ様がグリムジョー様の為に焼いていたものですから」

「ばっかテスラ言うなって言っただろうが」

「そうか、すまねーなノイトラ」

「チッ、気まぐれだよ」

 

そんなノイトラの不器用な優しさにグリムジョーは少し元気を取り戻す、普段は言わない礼を言う程までも。そんなグリムジョーに少しツンデレを見せたノイトラだったがすぐに真剣な顔になる。

 

「全くなにうじうじしてんだよお前らしくねーぞ、お前の本質は真っ直ぐなところだろーが、そんなお前がいろいろ考えたって仕方ねーんだよ、真っ直ぐ行け真っ直ぐ。直球で謝ればきっとルピだって分かってくれるさ、もしその場で許してもらえなかったとしても何度も何度も謝ればいいだけだ」

 

その言葉にグリムジョーはハッとする、確かに自分には直球しかない、そんな自分がいろいろ考えたって仕方ないと。

 

「そうだな…ありがとなノイトラ、まさかお前に諭される日が来るとはな」

「なんだとどう言う意味だてめー」

 

そうやって奮起したグリムジョーは先ず襲いかかってくるノイトラを迎撃するところから始めるのだった。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

今現在グリムジョーはルピを尾行している。ルピに直球で謝ろうと決めてからすぐに探査回路(ペスキス)を使いルピの霊圧を探知し、響転(ソニード)までも使ってやってきたのだがハリベルが一緒にいたのだ。恐らくだが今朝の出来事でルピのことが心配になり行動を共にしているのだろう、とんだ保護者バカである。

 

早く別れることを願っているとその願いが通じたのかハリベルとルピがそれぞれ自分の宮に別れるのが確認できた。この好機に今しかないと思い立ちグリムジョーはルピの前に躍り出る。

 

「ルピ!」

「!?」

 

グリムジョーの存在を確認したルピがいつも通り固まるのが分かる。いつもならここで尻込みしてしまうのだが今回は続ける。

 

「すまなかった」

「……え?」

 

頭を下げたままだがルピが困惑しているのがよく分かる。

 

「あの時はイラついてたんだ…そのせいでお前を殺しかけるし、女の体にもしちまったし。俺はバカだからこうやって謝ることしかできねー、許してくれなんて言わない、ただ俺がすまないと思っているのを知ってもらいたかったんだ」

 

頭を下げたままのグリムジョーに今のルピの顔色は分からない、ただ大きなため息をついたのだけはわかった。

 

「グリムジョー、顔をあげてよ」

 

その言葉に恐る恐る顔を上げ、ルピの顔を確認した瞬間ルピがの拳が顔に突き刺さりグリムジョーは吹っ飛ばされた。

 

「はぁー、あんなに怖がってた僕がバカみたいじゃないか。別にもういいよ、この体にも慣れたし、ハリベル達とも仲良くなれたし、今日はこの一発で許してあげるよ」

「……ああ、済まないな」

 

 

 

 

 

 

 

「おいノイトラ!クッキーはあるか!」

「なんだまた来たのかよもう……」

「グリムジョー様こちらです」

「お、サンキューな」

「おいー!?テスラなに勝手に出してんの!?」

 

前来た時よりも随分と元気になっているところからノイトラもテスラも謝罪がうまくいった事に勘付いたが取り敢えず尋ねてみる。

 

「それで、どうなったんだよ」

「バッチリよ、おいルピ!入ってこいよ」

「お邪魔しまーす、うわっキッチンが有るじゃん」

「ルピ様どうぞ」

「ありがとねー、うまっ!テスラだっけ?やるじゃん」

「いえ、これはノイトラ様が焼かれたものです」

「え〜ノイトラが〜、いが〜い」

「どう言う事だこのヤロー」

「きゃーグリムジョー助けてー」

 

そう言ってグリムジョーの後ろに隠れるルピを見て2人は本当に仲直りしたのだと安心する。

 

「グリムジョー、随分と仲よさそうじゃねーか」

「だろ、なあルピ」

「え〜そうだっけ〜?」

「俺とお前の仲だろ」

 

そう言ってグリムジョーは惚けるルピの胸をどつく。

 

……ふにっ

 

が女だということを忘れていたようだ。

 

「ああすまん、女ってこと忘れてたわ、お前風に言うと『ア・ごめーん』だっけか、はははは」

「…おいテスラ、逃げるぞ」

「はい、ノイトラ様」

 

ルピと仲直りして上機嫌のグリムジョーは俯いてプルプルしているルピに気づかない。

 

「ん?おいどうした」

「どこ触ってんだよ!王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)ーーー」

「どわー!!?」

「ここ俺の部屋ーー!?」

 

 




ルピ・アンテノール♀
作者の趣味と崩玉の勘違いによって産まれたルピ子ちゃん。素材が素材なだけにその辺の子よりよっぽどかわいい。ちなみに胸のサイズは普通。
比較的常識人のハリベルに可愛がられた結果原作より結構性格は丸くなっている。
グリムジョーと仲直りした後は、グリムジョーとつるんでいることも多く、ハリベルが寂しがっている。
グリムジョーから無自覚セクハラをよく受けていてその度に仕返しているが、本気で嫌がっているわけではない模様。

反省も後悔もしていない、だって書きたかったんだもん



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七刃.壁に耳あり作戦

他のやつ書いてて詰まったからこっちを書いてみたら何故かこっちが先に書きあがった。だから投稿。


今回もあの2人が主役みたいになってます他のキャラが好きな人はごめんなさい、だってあの2人が書きやすいんだもん。

そしてグリムジョーが主人公してやがる…何故だ。


「温泉」

藍染が現世の旅館に旅行に行った時、その旅館の温泉に感動した彼は虚夜宮(ラス・ノーチェス)にも大浴場を建設することを決めた。風呂に入るという習慣が無かった破面達は初めは全ての武装を解除して全裸で湯に浸かるということに抵抗を覚えていたようだが、一度入ってみるとその気持ち良さの虜となり、毎日訪れるものが現れるようにもなった。そしてその虜となった十刃達がここにも。

 

「なーノイトラ」

「なんだ」

「風呂入らね?」

「いいな」

 

今日は外でサッカーをしていた2人はその汗を落とすために大浴場に行くことにしたようだ、この2人も風呂の魅力に囚われたもの達だ。風呂に入ると決めてからは早い、すぐさま着替えを用意し風呂への道のりを行く。

 

しばらく歩くと2人の人影が見えた、後ろ姿から見るにウルキオラと東仙だろう。珍しい組み合わせだなと思いつつもノイトラは話しかける。

 

「オッス、ウルキオラ、東仙」

「む、ノイトラとグリムジョーか」

「げっ、ゴホン、どうした」

 

東仙の反応に解せぬと思うノイトラだがそれも仕方ないだろう、東仙はよく2人のいたずらの被害者となっているのだから。そして直ぐにいいことを思いつく。

 

「なあ、東仙」

「な、なんだ、何を考えている」

 

その反応に笑い出しそうになるのをこらえながらもノイトラは続ける。

 

「いや、風呂に行こーぜと思ったんだが」

「むう、それならば」

「ウルキオラもどうだ」

「パスだ」

 

その提案に思案する東仙と、速攻で拒否するウルキオラ。ウルキオラにつれねーなも思いつつ、鼻をひくつかせているグリムジョーが目に入った。

 

「どうしたグリムジョー」

「いや、なんか臭くないか」

「そうか?」

 

ノイトラには分からないがグリムジョーはそのままウルキオラに近づいていく。

 

「ウルキオラ、お前何日風呂に入ってねーの?」

「2週間ほどだ」

「「アウトーー!」」

 

ウルキオラの答えにノイトラとグリムジョーは同時に叫び、ノイトラは東仙に言う。

 

「東仙……」

「分かっている」

 

東仙が何処から取り出したのか縄でウルキオラを縛り上げ、縛り上げられたウルキオラをノイトラが担ぎ上げる。

 

「おい、俺は入らないと言っているだろう」

「うるせーよ、きたねーんだよお前、無理矢理にでも入らせてやる」

 

風呂に入らないと言っているウルキオラにノイトラは思わずつっこむ、虚夜宮内に綺麗付きが浸透した結果ノイトラにはそれが許せなかったようだ。

 

 

長い道のりを行くと『ゆ』と書かれたのれんが見えてきた、あれが大浴場の入り口だ。大浴場の入り口は二つに分かれており、青いのれんが男湯、赤いのれんが女湯である。もちろん4人で青いのれんをくぐりウルキオラを解放する。

 

「おい、ここまで来たんだ逃げられねーぞ」

「はぁ仕方ない、入ってやろう」

 

何処までも上から目線のウルキオラにこめかみに血管を浮かばせるノイトラだが、ウルキオラはもともとこんなやつだったと思い直しその苛立ちを抑え、そして風呂に入るために4人は脱衣所で服を脱ぐ。

 

「ノイトラほっせーな!」

「うるせーよ、お前こそ腹に肉がついてきたんじゃねーの、日頃だれてだからだよ!」

「んだとこら!」

 

低レベルな言い争いをしている2人に東仙は呆れ、ウルキオラは我関せずといった風にもくもく服を脱いでいる。

 

「全く低レベルな言い争いをしおって、貴様らどちらも似たようなものだ」

「東仙お前上からもの言ってんじゃねーぞ、お前も結構ひょろひょろじゃねーか!」

「ぬわっ、やめろっ腹をぺちぺちするな!ていうか背中になんか当たってるぞ!」

「当ててんのよってか!」

 

東仙の物言いにいらっときたノイトラは後ろから東仙の腹をぺちぺちする、長身のノイトラとの身長差のせいで東仙の背中にあれが当たっているらしい。

 

「全く馬鹿ばっかりだな」

「なんだとウルキオラ、てめーこそどうなんだよ」

「ふ、この通りだ」

 

そういって威張るウルキオラの体は予想通り細い、だが逆にダメージを受けるノイトラとグリムジョー。

 

「なあグリムジョー、なんで俺たちこんな細いやつより序列下なんだろーな?」

「しらねーよ、俺が聞きてーくらいだよ、今度ちょっと藍染に聞いてみるか」

「そうだな」

 

予想外の反応に首をかしげるウルキオラと、なぜか敗北感を感じ今度藍染に序列について質問をすることを決めたノイトラとグリムジョー、なんとも言えない空間がそこにあった。

 

 

 

気を取り直してやっと脱衣所から出る。時間帯が良かったのか特に混雑もしておらず、むしろ殆ど人がいないことにノイトラは内心ガッツポーズする、これなら泳げると。今この広大な大浴場の中にいるのは。

 

「力加減はどうでしょうか陛下」

「うむ、ちょうど良いぞ」

「ありがとうございます!」

 

自分の従属官(フラシオン)であるジオに背中を洗わせているバラガンと、

 

「おお、ノイトラとグリムジョーかいいところに来たね」

 

何をしたいのか何故か壁に耳を当てている藍染だ。耳を当てている壁が女湯の方だと気づいたノイトラは嫌な予感がしながらもその理由を尋ねる。

 

「壁に耳なんか当てて何やってんだ藍染」

「見てわからないのかい、こうやって壁に耳を当てていれば女湯の話し声が聞こえるんだよ。そう設計したのは私だけどね」

 

大体予想通りの答えにノイトラはため息をつく、なんでこんな奴が自分より遥かに強いのかと。隣にいるグリムジョーも何か言いたげな顔をしている、恐らくノイトラと同じような事を考えているのだろう。

 

「む、藍染様はまだやっているのか」

 

ノイトラ達から少し遅れて脱衣所から出てきたのはウルキオラだ、しかしウルキオラの口から衝撃発言が飛び出た気がする。

 

「おいウルキオラ、知ってたのか」

「知ってるも何も俺も偶にしている」

「何……」

「だと……」

 

あまりの衝撃にノイトラとグリムジョーは驚きの連携プレーをし、藍染はそんな2人に構う事なくウルキオラに話しかける。

 

「やあウルキオラ、今日はハリベルと……織姫君もいるみたいだね」

「では失礼します」

 

流れるような耳壁当て(技名)にノイトラはツッコム隙も見出せない、暫く呆然としていた2人だがグリムジョーがついにツッコム。

 

「いや何やってんだよ、変態か!」

「だが藍染様だ」

 

そのふざけた返しグリムジョーは大きくため息をつく、その自慢のリーゼントもまだ湯もかぶっていないのにしんなりしているようだ。

 

「そうだ、ノイトラとグリムジョーもどうだい」

「「いや何いってんだお前」」

 

部下を覗きではないとはいえ、明らかなる変態行為に誘う、こんなのが虚圏統括者で良いのだろうか。そんな事を考えたが今に始まった事ではないと諦める。

 

「はあ、とっとと湯船に浸かろうぜグリムジョー」

「そうだな、ツッコミしかやってねーのにサッカーより疲れたぜ」

 

藍染を無視して湯船に浸かろうとしたところに、トイレにでもいっていたのか東仙が遅れて入ってき、目が見えないながらも藍染のしていることを感じ取ったのか困惑しているようだ。

 

「藍染様は何をやっているのですか」

「ふっ、壁に耳あり作戦さ」

 

その言葉で全てを察したのか東仙が見るからにゲンナリとしている。その姿を見たノイトラはいつもイタズラなどで迷惑をかけている東仙にすまなく思った。いつも胃が痛いと言って医務室に通っているのをメンタルが弱いと笑っていたが、藍染がこれでは仕方ないと、その上自分達のイタズラまで加わるのだ心労で倒れていないのが凄いくらいだ。

 

そうノイトラから謝罪の感情を送られていることなんで露とも知らない東仙は藍染の行動について物申す。

 

「藍染様、虚圏統括者ともあろう方がそんな様子では他の者に示しがつかないといつも申し上げているではありませんか、どうかお控えください」

「何を言ってるんだい要、虚圏統括者である私自らがこのようなフリーダムな行動をとることによってその空気を周りに浸透させ、今までの殺伐とした雰囲気を無くそうという実に統括者らしい行動じゃないか」

 

ダメだこりゃ、屁理屈にしか聞こえない藍染の物言いに東仙は項垂れる、そして説得を諦めたのか洗面器を手に取り湯をかぶって湯船に入っていった。その後ろ姿はまるで上司の無茶振りに疲れたサラリーマンのようだ、見たことないけど。

 

そんな東仙に目もくれず、藍染はもう一度2人を勧誘する。

 

「もう一度聞くけど2人はどうだい、私と一緒にヴァルハラの奏でる音楽を聞こうじゃないか」

「「ことわ「ルピとネリエルもいるみたいだね」…!?」

 

ルピとネリエルが入っているという藍染の言葉に2人は速攻で壁に耳を当てる、その2人の心変わり様にニヤニヤしている藍染。

 

「おや?断るんじゃなかったのかな」

 

ニヤニヤしているのが実に腹が立つが事実なのできまりが悪い、そこでノイトラはグリムジョーに話を振ることにした。

 

「ま、まあ虚圏統括者たる藍染サマの言うことだし?あんまり断るのも悪いかな〜と思ってな、なあグリムジョー」

「お、おう俺も丁度そう思ってた所なんだよ」

 

しどろもどろの2人にニヤニヤを更に深くする藍染だが、もう2人は同志(きょうはんしゃ)なので追及を止める、それよりも聞き耳をたてることに集中することにしたのだ。

 

 

『うわ〜ずっと思ってたけどハリベルって胸大きいね〜』

『む、いきなり触るのは辞めろ、それよりも織姫とネリエルも似た様なものではないか』

『そうなんだよね〜織姫もこんな大きなものつけてさ〜おとなしい顔して誰を誘惑するつもりなのかな〜?』

『や、辞めて〜ルピちゃん揉まないで〜』

『良いではないか〜』

『ルピ辞めなさい、織姫が困ってるでしょう』

『そんなネリエルも凶悪なのつけちゃってさ〜男達はこれが良いのかな〜?』

『キャッ、辞めなさい!』

 

 

そんな女湯の話し声に聞き耳を立てている男の十刃3人は鼻血が止まらない。聞き耳を立てつつもそんな3人を見て面白がっている藍染、恐らく弄るネタが増えたとでも喜んでいるのだろう。いつもならそんな藍染の様子に気付く実力者3人だが聞き耳をたてることに集中しているのか全く気づかない、これも藍染の策略のうちなのだろうか、やっていることはしょーもないが流石は天才だと言える…のか?

 

 

 

『そんな事言っているがルピも別段小さいわけではないではないか、ロリを見てみろ』

『ロリはロリだから仕方ないでしょ、まあそうなんだけどね〜これだけ大きいのが揃ってると自信なくすって言うか、僕は考えたこと無かったけど男は大きい方がいいってゆーじゃん?』

『あら、気になる男の子でも出来たのかしら』

 

 

 

ギリッ、不意にノイトラの横からそんな音が聞こえた、その方を見てみるとグリムジョーが歯を食いしばり、手を固く握り締め、その拳からは血が滴っている。

 

「お、おいグリムジョー大丈夫か」

…誰だその野郎はルピをたぶらかしやがって絶対に見つけ出してぶっ殺してやる

「ヒッ、おいやべーよ藍染どうすんだこれ」

「修羅場か、実に面白そうじゃないか」

「ガッデム!お前に聞いた俺がバカだったよ!」

「まあ落ち着きたまえ、流石に隣に聞こえてしまうぞ」

お前のせいだろうが!

 

小声で怒鳴るという器用なことをやってのけたノイトラは、もうめり込むのではないだろうかと思うほど壁に耳を押し付けているグリムジョーを心配そうにみる、あちらの状況によってはグリムジョーが暴走するんじゃないだろうかと。

 

 

 

『へ〜ルピちゃんそんな子がいるんだ〜』

『ほう、それは私も気になるな、誰だ』

『ええ〜そんなやつ…いないよ?』

『疑問形なのが更に怪しいな、誰だ早く吐いたが楽になるぞ、まさかグリムジョーか!』

『そそそ、そんな訳ないじゃないか!、あんな乱暴な奴』

 

"バシャーン!"

 

『あら、男湯の方で誰かはしゃいでいるのかしら』

 

 

 

"バシャーン!"

「おいー!グリムジョーしっかりしろ!」

「くくくく……」

「藍染何笑ってやがる!」

 

女湯の話を聞いていたグリムジョーだがルピの発言を聞いて湯船に倒れこんだ、それにびっくりして助け起こすノイトラと含み笑いを漏らす藍染、そして我関せずといった風に聞き耳を続けるウルキオラと男湯はカオス状態だ。そしてノイトラに助け起こされたグリムジョーはブツブツ何かを呟いている。

 

「やべーよこれ、えいせいへーい!」

「ここに衛生兵は居ないがね」

 

ノイトラに冷静なツッコミをする藍染、グリムジョーのことは気にもとめていないようだ、そしてグリムジョーを湯船から引き揚げたノイトラに一言。

 

「ん?今、ネリエルの話になっているようだね」

 

その言葉にグリムジョーを放り投げ、すぐさま壁に耳を押し当てる。

 

 

 

『む〜僕ばっかり納得いかないなー、ネリエルはどうなのさ、ノイトラといい感じだって聞いたよ』

 

 

"え?マジで!"とルピの発言に驚き更に集中する。

 

 

『そうなの?そんなつもりはなかったんだけど、私が興味あるのは私より強い男だけだから』

 

"バシャーン!"

 

『またか、今日は男湯が騒がしいな』

 

 

ネリエルの発言に先程のグリムジョーと同じ様にノイトラも倒れこむ、それに珍しく腹を抱えて笑っている藍染。

 

「ははははは!お手本のようなリプレイをありがとう、全く君達の行動は私の予想を裏切らないから見ていて楽しいよ」

「うるせーよ、ほっといてくれ…」

「だが断る」

 

水面に浮かびながら意気消沈しているノイトラ、そのノイトラの目の端で投げ捨てられたはずのグリムジョーがゆっくりと起き上がるのを捉えた。

 

「こうなったらルピに直接聞くしかねー、この壁をぶっ壊したらルピが居るんだな……」

 

その発言にびっくりしたノイトラはそんな暴走気味のグリムジョーを止めるべくすぐさま駆け寄るが時すでに遅し、グリムジョーの拳がその壁をぶち破る。

 

「ルピーー!」

「おいばかやめろーー!」

 

グリムジョーの後を追って女湯の中に入ったノイトラが見たのは、全裸でルピの肩を抱くグリムジョー。

 

「ノイ…トラ…?」

 

自分の名を呼んだ者の方を向くとそこにはネリエル、その姿に鼻血が出そうになるが、なんとかこらえる。

 

「さいってー」

「ごはっ!」

 

しかしその代わりに血を吐いた。

 

織姫はネリエルが後ろに庇っており、グリムジョーに迫られているルピは何が何だか分かっていない、脳が情報処理の許容量を超えてオーバーヒートしたらしい。そしてハリベルはというと……

 

「おい貴様ら、女湯に突撃してくるとはいい度胸だな」

「討て『皇鮫后(ディブロン)』」

 

その声と急激な霊圧の高まりにそちらを見ると帰刃(レスレクシオン)状態のハリベルがゴミを見る目で此方を睨んでいた。

 

「お、おいグリムジョー逃げるぞ!」

「けどルピに……」

「けどもクソもねー死にてーのか!」

「逃すか、『断瀑(カスケーダ)』」

 

渋るグリムジョーの首根っこを掴み男湯の方へと逃げる、するとその横を巨大な激流が通り過ぎていく。

 

「ここが風呂でよかった、この威力ならお前らを殺すには十分だ」

「やべーよマジで殺す気だよ、てかなんで風呂に斬魄刀持ち込んでんだ!」

「武士の魂だからだ!」

「おめー武士じゃねーだ…あっぶねー!」

 

そのまま全裸で風呂場を飛び出て追ってくるハリベルから逃走する。

 

それから1時間後、虚夜宮の外でボロボロの2人が全裸で発見された。

 

 

 

 

この日から第5十刃と第6十刃は変態だという噂がたち、ルピとネリエルが1週間口を聞いてくれなかったことも相まって、2人は夜な夜な泣きながら酒を酌み交わした。

 

 

 




グリムジョーが主人公してやがる(2度目)何故だ、何故私はこの2人のラブコメを書いてしまうんだ…これも感想のせいだ!(暴論)

うごごこ…私が書きたいのはギャグなのに、次はギャグに出来るように頑張ります。


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八刃.Gパニック!?

皆大好きゴキブリ回、今回は護廷十三隊が主役だよー

これは藍染様がメインなのになぜかこの回が作中最長となり申した、私はそんなにゴキブリ回が書きたかったのか……まあ仕方ないよね!


「これより隊首会を執り行う」

 

今、瀞霊廷の一番隊隊舎において隊首会が開かれていた。一から十三までの全ての隊長が勢揃いし、それは圧巻の光景だ。そしてその隊首会を取り仕切るのが護廷十三隊総隊長山本元柳斎である。

 

「さて、最初の議題じゃが、今虚圏にいる藍染惣右介の動向はどうなっておる、砕蜂隊長」

 

昔というほど前では無いが、藍染惣右介が突然虚圏への引きこもりを宣言した後、それを真に受けられなかった彼らは虚圏へと続く黒腔(ガルガンタ)を開くことのできる浦原の協力を得て、虚圏へと隠密機動を送り、藍染の動向を探ることにしたのだ。

 

「はっ、今回は私自らが赴き奴等の拠点の虚夜宮(ラス・ノーチェス)なるところへの潜入に成功したのですが、奴の生活が…その…」

「なんじゃ続けよ」

 

報告の途中で突然歯切れが悪くなった砕蜂、それに訝しむ山本だが続きを促す。

 

「はい、奴は豪華な食事をし、午前は漫画を読み、午後はゲームをして快適に暮らしておりました……羨ましい!」

「そ、砕蜂隊長…どうしたのじゃ…?」

「それに奴は私に気づいたのか、時折こちらを見てニヤリと笑う始末!くそっ、私は残業続きで最近寝不足なのに!その私の前で昼寝なんぞしおって…観察の指令じゃなかったら暗殺してやりたかったくらいだ!」

 

報告の途中で砕蜂が突然叫び出し、藍染の生活への羨みと自分の仕事への不満を語り出した。それには流石の山本も唖然とし、その他の隊長達は砕蜂の言葉に大きく頷いている。その心のこもった頷きを見て山本も"業務改善が必要かの"と思った。

 

「う、うむ砕蜂隊長の言うことはよく分かった。して、今回の藍染の動向を纏めると…」

「羨ましい、藍染死ね、というか私と代われ、です」

「そ、そうか分かった」

 

どうして虚圏へと引きこもった今でさえ藍染は自分の胃にダメージを与えてくるのだろうか、砕蜂の報告によると護廷十三隊がブラック企業みたいではないか、今度会ったら即卍解で消し炭にしてやる。と物騒な事を考えて次の議題に移ろうとした時、突然部屋の扉が音を立てて開き、一番隊の隊士が慌てて入ってきた。

 

「今は隊首会の途中じゃぞ、あとにせい!」

「す、すみません、ですが緊急報告があります!」

 

息も絶え絶えの様子で部屋に飛び込んできた隊士に山本は一喝するがその鬼気迫る雰囲気に心を落ち着かせる。

 

「緊急報告とな?」

「Gが大量出没しました…」

「「「「!!!??」」」」

「G…じゃと…!?」

 

※Gとは護廷十三隊におけるゴキブリの総称である。

 

「出没箇所と数、そして今の状況は!」

「出没箇所は主に隊舎付近、数は確認出来るだけでも一万を超え、これからも増える事が予想されます、そして現在の状況ですが十一番隊が一部を除いてほとんど壊滅(気絶)、他の隊にも差はあれど被害が出ております!」

 

十一番隊がほぼ壊滅(気絶)、それは彼らに動揺を与えるには十分だった。十一番隊は護廷十三隊きっての戦闘部隊である、そんな彼らが壊滅となると早く対処しなければ他の隊も危ないだろう。

 

「くそっ、俺の隊が…じじい!どうすんだ!」

「…コードGを発令する」

 

※コードGとはゴキブリが出た時のための緊急コードである。主に瀞霊廷内での卍解を用いた全力戦闘を許可するもの。

 

「山じい…いいのかい…」

「仕方あるまい、このまま何もできずに尸魂界(ソウルソサエティ)が侵略されるのを(※ゴキブリです)黙って見ておくぐらいなら、被害はここまでで食い止めるべきじゃ。ではここにコードGを発令する、瀞霊廷内での卍解を用いた全力戦闘を許可する!早く自分の隊に散れ!」

「「「「はっ!!」」」」

 

天挺空羅により全体にコードGを伝達し、山本自身もGの迎撃に出る。Gは通常サイズのものから30センチほどのものまでおり、平隊士では苦戦(ビビり)しているものが多い、山本も流刃若火で焼き払ってはいるが奴等は素早く殲滅できているとは言えない。自身の右腕である雀部長次郎も奮戦しているが状況は芳しくない。

 

隊士達に指示を出しながらも山本は思案する、これは誰の仕業かと。ここまで大きなGの出現はまず自然に発生したとは考えにくい、となると人為的なものになるのだがその場合は2つの考え方がある。先ず一つ目はまだ見ぬ未知の敵の仕業だというもの、危機が去ったばかりなのにまた敵が現れるとなると厄介だがこれが考えられる。そして可能性として高いのが二つ目、山本も9割方こちらだろうと思っているのだが……

 

『えーテステス、聞こえているかな?久しぶりだね予想していた者もいたみたいだけどその通り藍染惣右介だ。そちらの状況はどうかな、藍染印のゴキブリは堪能しているかい?とは言っても私はモニターでそちらの様子を観察しているのだがね。藍染はどうしてこんな事をしたのかと疑問に思っている者も多いだろう、それはもちろん面白そうだったからさ、それ以上の理由がいるかい?まあこの間遊びに来てくれたお返しというのもあるんだがね。あの時の砕蜂君の人を殺せそうな視線は流石の私でもゾクッとしたよ、砕蜂君はあの視線ならG達も殺せると思うな。まあ長くなったけど頑張ってくれたまえ』

 

…そう、藍染惣右介の仕業である。どうやってこちらに音声を届かせているのかは知らないがそんな些細なことはどうでもいい、今、山本の頭の中を占めているのはただ一つだ。

 

突如として山本から膨大な霊圧が溢れ出し、その顔を見た隊士が恐れによって固まるほどの鬼の形相を浮かべ、その自慢の髭は荒ぶっている。

 

「あっのクソガキがー!今度会ったら骨の一片も残さず流刃若火で消し炭にしてやるからの!!」

 

今まさにこちらの様子を観察しながら高笑いを上げているであろう藍染の姿を幻視し、その幻想に向かって声を張り上げる。その声は瀞霊廷中に散らばっている全ての隊士の耳に届き、はては尸魂界全土に広がる程の山本の魂の叫びだった。

 

「…っ、総隊長そちらに大きいものが!」

「小賢しいわっ!此奴ら全てがあやつの顔に見えてきおった。もう我慢できんワシの全力を持って一掃してくれよう」

「総隊長!我々が危ないです!って聞こえてねー逃げるぞ!」

「卍解『残火の太刀』」

 

今まで燃え盛っていた流刃若火の炎が消え、山本の手には焼け焦げたかのような斬魄刀が、そしてその代わりに山本の体からまるで太陽を幻想させるかのような熱が溢れ出した。その熱は今まで苦戦していた辺りのGどもを跡形もなく溶かしていく。

 

「残火の太刀"北" "天地灰尽(てんちかいじん)"」

「うお〜死ぬ気で逃げろ!ガチで死ぬぞ!」

 

そうやって山本総隊長が無双を始めた頃他の戦場では……

 

 

 

「くそっ、なんて速さだ我々隠密機動と同等の速さとは、弍撃決殺をしようにも的が小さくて当たらん!大前田!そっちはどうだ」

「隊長、こいつら速すぎて俺の斬魄刀じゃなかなか当たんないですよ」

 

二番隊隊舎付近のGは特に速く、砕蜂の弍撃当てなければならない雀蜂と大前田の威力は大きいがその代わりに重く、一発一発の隙が大きい斬魄刀ではなかなか厳しいらしい。

 

「あっ隊長!あいつら隊舎に殺到してますよ!」

「なにっ!執務室にケーキ出しっぱなしなんだぞ!くそっ奴らにやられるくらいなら隊舎ごと奴らを吹き飛ばす!」

「え゛それはやばいですって隊長!」

「卍解『雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)』」

 

砕蜂の卍解の雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)は隠密機動に似つかわしくない広範囲殲滅に向いた卍解だ。だがこの場においては最も使える卍解だろう。

 

そしてこの日、二番隊隊舎周辺が更地となった。

 

 

 

 

 

 

「くっ数が多すぎる」

 

六番隊隊長の朽木白哉は自らの斬魄刀「千本桜」によってGを駆除していた。彼の始解である「千本桜」は多数対一の戦闘において無類の強さを発揮するものであり、今回のような戦場はまさにその場面だ。しかし同時に高度な技術を求められる斬魄刀でもあり、四方八方から攻められる今の状況では苦戦を強いられている。

 

「くっ「千本桜」では対処できん、だが卍解を使っては被害が大き過ぎるしあまり使いたくは…」

 

卍解を使うかどうかを悩んでいる白哉の背中に1匹のGが入り込む。

 

「ぬ?ぬぬぬぬ!?卍解!『千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)』」

 

先程の葛藤も何処へやら、瞬時に卍解を発動させ花弁の刃が今までの千倍以上に増え、先ず背中に入ったGを文字通り粉微塵にした。

 

「兄ら…私の逆鱗に触れた事を後悔しながら死んでいくがいい」

 

逃げ場のないほどの花弁の刃がGどもを蹂躙していく。

 

 

 

 

 

 

「卍解『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』」

 

早速卍解した七番隊隊長の狛村左陣はその巨大な卍解によってGどもを叩き潰す。

 

「ふん、Gどもめワシの卍解の前では自分が無力だという事を知らんらしい」

 

こう言ってはいるが実はそう余裕があるわけではない。その卍解は巨大であるだけに一振り一振りの隙が大きく、素早いGどもはその隙を狙って殺到してくるのだ。それをカバーするのが他の隊士なのだが徐々にやられ(気絶)その数を減らしていく、そして狛村に届いたGが1匹。

 

「ぐおおお、ワシの毛並みに入りおった!毎朝1時間毛繕いしておるのだぞ〜!」

 

その叫びに可愛いと思ってほっこりした他の隊士達だったが状況はそれどころではなくなってきた、自身の毛並みにGが入り込んだことによって錯乱した狛村ががむしゃらに斬魄刀を振り回し、それに連動した明王がその大きな刀で周りを破壊し始めたのだ。

 

「隊長!おち、おちちゅいて下さい、深呼吸です!ヒッヒッフーです!」

「副隊長、それはラマーズ法です!」

 

その攻撃を避けながら狛村を落ち着かせようと声をかける射場だが、自身も錯乱しているらしい。そんな事をしている間にも被害は拡大していく。

 

 

 

 

 

 

十番隊隊舎付近、ここの周辺ではG達が氷漬けになっていた。

 

「虫が寒さに弱いのは必然、そして俺の斬魄刀の「氷輪丸」は氷雪系最強の斬魄刀、ここにきた事を後悔するんだな」

 

天才の名を欲しいままにしている十番隊隊長日番谷冬獅郎は自身の斬魄刀によって卍解をせずともGどもを圧倒していた。氷を操る斬魄刀の氷輪丸の前では流石のG達もただの虫となり得るらしい。

 

「松本、そっちはどうだ」

「灰猫でなんとかやってますけど、いかんせん数が多いですね、このままではジリ貧かと」

「そうか……」

「あっ、隊長の後ろにGが!」

 

松本との会話に気を取られていた隙にその後ろからGが迫り、それを反射的に払おうとした冬獅郎の手にくっついた。

 

「ひゃん!」

「………ひゃん?」

 

時が止まった。その可愛らしい悲鳴を聞いた隊士の手が止まり、その声の主をチラ見して、一度視線を外しながらも恥ずかしさのあまり真っ赤になっている自分達の隊長を二度見する。それはいつもならからかう松本があまりの不遇さにフォローに走るほどだった。

 

「大丈夫ですよ隊長!Gですから仕方ないですって!」

 

だがそのフォローが冬獅郎にとどめを刺した、いつもならからかう松本がフォローするほど自分は哀れだったのかと。

 

「卍解『大紅蓮氷輪丸(だいぐれんひょうりんまる)』てめーら…1匹たりとも生きて帰れると思うなよ…」

 

その目からは一筋の涙が流れていた。

 

 

 

 

 

 

「くそがっ死ねっ!」

 

自身の隊を壊滅に追い込まれた更木剣八はその恨みを晴らすかの如くGを切り刻んでいた。しかし隊が壊滅したことによる人数の少なさと、剣八自身がGの事を苦手なこともあってなかなか数が減らない、ただやちるだけはGを恐れた様子もなく素手でGを叩き潰しているが。

 

「ぐあっ(耳元でのGの羽音)うおっ!(足元でのカサカサ)ぐあああ!!(顔面に迫り来るG)」

 

そこに皆から恐れられる十一代目剣八はどこにもいない、ただGが苦手な男がいるだけだ。

 

「くそっ、剣八ともあろう俺がなんて様だっ!こいつらを倒すにはもっと力が……」

「もうそろそろ頃合いかな」

「やちる……」

「斬魄刀の声を聞いてみて、今なら聞こえるはずだよ」

 

斬魄刀の声なんて今まで意識したことなんて無かった、一護に負けた後にやっと考え出したくらいなのだ、それをどうやって聞けばいいのか。そうやちるの言葉に困惑する剣八だが、その困惑の隙をついて大量のGが襲いかかってきた。なんの能力も持たない剣八の斬魄刀ではこれだけの数のGは一気に対処できない。せめてやちるのところに行くものだけでも駆除しようとするが、その時頭の中に響く声があった。

 

「呑め!『野晒(のざらし)』」

 

解号を口にした剣八の霊圧が急激に膨れ上がり、その霊圧によって周りのGを押しつぶしてゆく。そしてその手にあったのは巨大な斧のような形をした斬魄刀が。

 

「これが俺の始解か……」

「ねっ、言ったでしょ!」

 

その隙にも襲いかかってくるGだが剣八はその斬魄刀を一閃する。すると目の前のG達が跡形もなく消え去った。

 

「これが俺の新しい力か…いや、眠ってたのか…はははは!いいね!最高の気分だぜ!これでてめーらを皆殺しにできる」

 

これから始まるのは戦いではない、一方的な虐殺だ。

 

「剣ちゃん楽しそう」

「うおっ!」

 

ただしGが苦手なのは変わらないらしい。

 

 

 

 

 

 

一度はブチギレた山本元柳斎だったが今は冷静さを取り戻し、卍解を収め始解の状態でGを焼き払っていた。もうこの辺りのGはかなり少なくなってきたので他の戦場が気になるところである。

 

「他の隊の状況は分からぬか!」

「はっ、他の隊も奮戦し、8割方殲滅しているとのことです」

「そうか8割かもう少しじゃな、もう一踏ん張りじゃ」

「そして更木隊長が始解なされたとのことです」

「そうか、それはワシも感じておった、まさかあやつがの、自らの危機(※ゴキブリです)によって覚醒したか」

 

殆どのGを殲滅したとの情報と、部下の覚醒に山本も思わず顔をほころばせる。だがそこでつい気を緩めてしまったのだろう、その立派な髭の中にGが入り込んだ。

 

「ぬお〜、ワシの髭にGが!ええい焼き殺してくれる、流刃若火ー!」

 

突然のGに気が動転した山本はGを焼き殺そうとし、自らの髭も共に焼いた……

 

 

 

 

Gコード発令から約8時間、ようやくGの殲滅に成功した。そしてその報告会が開かれる。

 

「して、今回の被害状況じゃが卯の花隊長、死傷者はどれくらいじゃ」

「ちょっといいか」

「なんじゃ更木」

「いや、あんた誰だ」

「ワシじゃ、総隊長じゃろうが!山本元柳斎重國じゃ!」

「いや、俺の知ってるじじいには髭があったはずだ」

 

 

髭の中に入ったGを倒すために髭ごと焼いてしまった山本は仕方なくそのままにしていたのだが、髭がないせいで更木には判別がつかないらしい。

 

「そうだね〜、僕も思ってたけど奴さんどなたなんだい?」

「春水…お前もか…仕方ない」スッ(つけ髭on)

「おお山じい、どこに言ってたんだい!」

スッ(つけ髭off)

「てめー誰だ」

 

山本は泣いた。

 

 

気を取り直してつけ髭をつけたまま報告会を続ける。

 

「して、卯の花隊長」

「はい、死者はいませんでしたが、軽傷者(錯乱)が1,500弱、重傷者(気絶)が500弱程、そして隊長にも重傷者(メンタル)が出ております」

 

約3,000人が在籍している護廷十三隊において、その内の2,000人が戦闘不能に陥る。そして隊長にも重傷者を出したという報告は皆を大いに驚かせた。それに今回は瀞霊廷にも大きな被害が出ている。

 

「そうか…それほどの被害が…そして瀞霊廷の被害はどうなのだ」

「一番隊、二番隊、六番隊、七番隊、十番隊、十一番隊の隊舎周辺が壊滅しています」

「おのれ藍染め、ワシらの瀞霊廷を!」

「これらは隊長達の仕業ですが」

「は?!」

 

卯の花の言葉に砕蜂、白哉、狛村、冬獅郎が目をそらす。ただ剣八だけは悪びれもない態度を取っているが。そして瀞霊廷が破壊された原因が隊長達にあると知って山本は怒る。

 

「お主ら、もっと加減覚えぬか!」

「じゃあ一つ言うけどよ」

「なんじゃ」

「なんで一番隊隊舎の周辺が焼け野原になってんだ」

「ギクッ!」

 

そう、山本が怒り狂って流刃若火を振るっていた結果一番隊隊舎とその周辺が焼け野原となり、仕方なくその跡地で青空報告会を開いているのだ。実のところ瀞霊廷の被害はここら一帯が一番酷く、山本は他の者を叱ることのできる立場ではなかったりする。

 

「そ、そうじゃ、Gじゃ、Gのせいなんじゃ、ワシは全く悪くない!」

「じゃあ俺らのやつもGのせいだよなぁ」

「ムムム…そうじゃの…」

 

そのやり取りに砕蜂、白哉、狛村、冬獅郎は心の中で剣八にグッジョブを送る、これで怒られなくて済むと。そして剣八にやり込められた形になる山本は怒りの矛先を今回の全ての元凶の藍染に向ける。

 

「聞けい!藍染に今回の仕返しをしに虚圏に行くことをたった今決めた!ワシと共に行くという物は挙手せい!」

 

一瞬の迷いもなく13本の手が上がり、ここに"虚圏に藍染をブッ殺しに行き隊"が結成されることとなる。




藍染様が引きこもったことによるバタフライエフェクトにより剣八が始解した。これにより滅却師達の尸魂界攻略の難易度が爆上がりしたよ!
流石藍染様、迷惑をかけた代わりに護廷十三隊にお返しをするとは…天才は違うな…

原作との相違点といえば剣八が始解してもやちるはいなくならなかったよ!だって皆やちるのこと好きだよなぁ!


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九刃.ぐりむじょーーー!!

いつのまにかお気に入りも1000件を超え皆さんの感想にもニヤニヤさせていただいています。ありがとうございます!

そして今回の話を書いていて思ったことは"あるぇ?この作品の主人公ってグリムジョーだったっけ?"ですね。




ここはグリムジョーの自室、今日は特に何もやる気が起きないので自室でグータラやっていた訳だが、奴にはそんなことは関係ない、あいつはどんな時でもやってくる。

 

ノックの音が鳴り響き、ノイトラかルピでも訪ねていたのかと思い入室を許可する。だがドアを開けて入ってきたのは奴だった。

 

「やあ、くつろいでいるようだねグリムジョー」

「げっ藍染、何しにきやがった」

「酷いな、私がいつも何かやっているみたいな言い方をするじゃないか」

 

そう藍染である。グリムジョーがこう警戒するのにはもちろん訳がある。それはグリムジョーはいつも藍染のイタズラの被害にあっているからであり、それをやり返そうにも藍染にはまったく通用しないから余計にタチが悪い。

 

イタズラの被害に遭っているのはこの虚夜宮(ラス・ノーチェス)にいるものなら誰にでも当てはまるのだが、グリムジョーはその中でも特に藍染の標的にされることが多いのだ。

 

「いや、いつも何かやってんじゃねーか!この間一日中ひたすら膝カックンされたの忘れたとは言わせねーぞ!」

「ふむ、そんなこともあったかな、その後もいろいろやってきたから流石の私といえど記憶の彼方に飛んで行っていたよ」

「お前たった今いろいろやったって白状したの分かってんのか」

「は!誘導尋問か、流石はグリムジョーだ、この私を引っ掛けるとは……なかなかやるな」

「なんなんだよこいつ……」

 

どうしてたったこれだけの会話でこんなにも疲れるのだろうか、正直藍染と10分会話するよりも2時間ほどサッカーをしていた方が疲労度的にはまだマシである。

 

そんなグリムジョーに気づいているのかいないのか、藍染は驚いたというような口ぶりをしながらもそのニヤニヤを引っ込めていない。恐らくグリムジョーの反応を見て楽しんでいるのだろう。

 

「ふう、今日のグリムジョー分も摂取したところで」

「なんなんだよグリムジョー分って」

「まあ、小さいことなんてどうでもいいじゃないか、私もグリムジョーにいろいろイタズラを仕掛けてきたことを1ミクロン程反省していてね、そのお詫びでもしようと君を訪ねてきたんだよ」

 

おや、これは珍しい、あの藍染が反省するとは。そんな風に意外に思うグリムジョーだがそれを思い直し警戒する、これは何か裏があるに違いないと。こちらが油断した時にこそ仕掛けてくるのが藍染なのだ、こうグリムジョーが警戒するのも当然である。

 

「なんだ気持ちわりーな、またなんか(たくら)んでんのか、とっととはけ」

「何か企んでいるなんて人聞きが悪いな、私は本当にお詫びとしていいことを教えてあげようとここにきたのに」

「いいことだ?」

「そう、いいことだ」

 

なんだかお詫びとしてはいささか小さくないかと思うが、何かもらったところで何か仕掛けられていないかを疑うのが当然なので、そういう心配をしなくていいのだと思えばそういうことの方がいいのかもしれない。

 

どうせ聞くだけなら大したことでは無いだろうとグリムジョーは考える、もしそれがいいことで無かったとしても聞き流せばいいだけなのだから。

 

「本当にいいことなんだろうな、ロクでもないことだったらぶん殴るぞ」

「君に私が殴れるのならね、っとそんなに構えないでくれ、今から言うことは本当にいいことなんだ、少なくとも君に被害があるわけではない、それだけはAIZENの名に誓って保証しよう」

「本当か」

 

AIZENというところがなんだか信用ならないがそこまで言うのなら少なくとも被害があるわけではないのだろう。どうせこのままだったらしつこそうだし聞く覚悟を決める。

 

「分かったよ、で、なんだいい事って言ってみろ」

「ふふふ、そんなに聞きたいのかい、そこまで言うのなら教えてあげよう」

「うぜ〜」

「聞こえているよ、まあいい、いい事とはね、二の腕と胸の柔らかさは一緒なんだ」

「は?それだけか」

「そうだ、いい事だろう」

 

何故それがいい事なのだろうかグリムジョーにはそれが分からない。二の腕といえば腕の付け根ら辺の少し肉の付いているところだったはずだ、自分で触ってみてその後胸を触ってみるが断然鍛え上げられた胸の方が硬い。

 

「おい藍染、全然腕の方が柔らけーぞ、これがいい事なのか」

「全くこれだからグリムジョーなんて言われるんだよ、私が今すぐに確認できることを言うはずが無いだろう」

「なんで俺の名前がそんな悪い風な意味で捉えれられてんだよ!」

「おっと口が滑ったつい本音が」

「本音かよ!お前本当に俺に対して悪いと思ってんのか!」

 

 

なんで藍染はこんなに自分を怒らせるのが得意なんだろうか、藍染と話していると寿命がガリガリ削られていっている気がするグリムジョー、破面(アランカル)に寿命があるかどうかは知らないが。

 

「もちろん思っているさ、実際こうして謝罪(笑)に来ているだろう?」

「俺はもっとムカついたがな」

「取り敢えずいろんな人に試してみるといい、そうすれば私の言うことが真実だったと分かるだろう。あ、一つ言っておくが私のは触らせないからな」

「頼まれても触んねーよ!なんなんだよお前、俺を怒らせてそんなに楽しいか?」

「実に楽しい、グリムジョーをからかっている時が一番生きているということを実感するくらいだ」

「そんなにかよ………」

 

どうやったら藍染を止めることができるのだろうかと思案し、力でも頭でも叶わないことに思い当たり、諦めて全て東仙に任せようという結論に達する。こんな所で東仙の胃痛の種は増殖していっているのだ。

 

「はぁ、それでもう用事は済んだのか」

「ああ、これをいうためにわざわざここに来たんだからね」

「たったこれだけのためにかよ暇なヤローだな」

「何をいう、私はこれから要の所に遊びに行くという重大なミッションがあるんだよ」

「マジかよ……」

 

それを聞いたグリムジョーは心の中で東仙に黙祷(もくとう)を捧げる、今日は東仙が医務室に運ばれるかもしれないなと。

 

取り敢えず今回のところはこれでお(いとま)させていただくよ、それではまた明日会おう」

「絶対くんな!」

 

そう言ってやっと藍染は出て行った、まるで嵐のような男である、勢いだけじゃないだけに余計タチの悪い嵐であるが。

 

「そうそう、試しているとそのうちに絶対にいい事があるから試しに行った方がいいということを念押ししておこう」

「分かったからもうくんじゃねー!」

「ははは、アデュー」

 

最後の最後まで腹の立つ男だ。

 

 

 

 

 

藍染が出て行ってから約1時間が経ち、グリムジョーはまだ自分の部屋にいた。実は藍染の言うことが気にはなっていて何度か腰を上げようとしたのだが、それでは藍染に乗せられた形になるので、それが癪だったから意地を張って自分の部屋から出ていないのだ。

 

「クソッ、藍染のヤローめ、あいつの言葉が頭の中に鳴り響いてやがる!なんであいつは目の前にいなくても俺を惑わせてくるんだよ!」

 

先程からずっと藍染の言葉が頭の中に鳴り響き、藍染の高笑いする様子が目の前に浮かんできそうである。それを落ち着かせようと藍染の似顔絵の貼ってあるサンドバックをひたすら殴るがそれは一向に収まる気配はない、もしかすると藍染は自分がこうやって悩む事も計算の内に入れていたのかもしれない、もしそうだとするととんでもなく性格の悪いヤローであるとグリムジョーのイライラは(つの)るばかりだ。

 

そしてそこでグリムジョーは思いついた、これは藍染に乗せられたのでは無くて自分が気になるから確かめに行くのだと、その事が藍染に乗せられたと言うのだが、それに気がつかないのがグリムジョーらしいと言えるだろう。

 

「よし、俺は藍染に乗せられてねー、俺が気になるから行くんだ!」

 

 

 

 

 

 

思い立ったが即実行とまず訪れたところが悪友であるノイトラの所だ、取り敢えずアイツのところに行っとけばいいかという発想である。

 

「おっすノイトラ」

「ああ、グリムジョーか、ちょっと待ってろ」

 

見たところノイトラはDSをしているらしい、聞こえてくる音からしてマ○カーでもやっているのだろう、ちなみにノイトラが一番よく使っているのがワル○ージだ、なんだか親近感が湧くかららしい。

 

「ふーん、じゃあ待たせてもらうぜ」

「どうぞグリムジョー様」

「おお、テスラかわりーな」

「いえ、これが僕の仕事ですから」

 

グリムジョーがソファに座ったと同時にお菓子と飲み物を出すテスラ、そんな彼にグリムジョーはこんな従属官(フラシオン)が欲しいと常々思っているのだが、テスラはノイトラに絶対の忠誠を誓っているので残念に思っている。

 

ボリボリお菓子をつまんでいる間に終わったのかノイトラの声が聞こえた。

 

「チクショー難しすぎだろこのコース」

「なんのコースやってたんだ?」

「魔のレインボーロードですが何か?」

「ダッセーな俺あそこだったら4回くらいしか落ちねーぞ!」

「え?俺より雑魚じゃん、俺大体3回くらいなんだけど」

「………マジで?」

「マジで」

 

とても気まずい沈黙が訪れる、その気まずさは友達が「今回のテスト悪かったー」と言っているところに自分の点数を自慢したら、その友達が自分より点数が高かった時くらいに気まずい。あまりの気まずさにテスラはキッチンに引っ込んでいる。

 

「お、俺もさ5回くらい落ちる時もあるから気にすんなって!」

「うるせー、同情なんていらねーよ」

「ほ、ほら、これでも食えよ、結構上手に出来たんだぜ」

「クソがーー!」

 

自暴自棄になったグリムジョーはノイトラが差し出したクッキーを凄い勢いで(むさぼ)った。

 

 

 

 

 

泣きながらクッキーを食べていたグリムジョーだったがそこであることに気がついた。

 

「あれ?これジャムが乗ってんな」

「そうだ、それは上にジャムをのせてみたんだがどうだ味は」

「悪くねーな、というか美味い」

 

実はグリムジョー食パンを食べる時は必ずジャムをつけて食べるほどジャムが好きだったりする。そんなグリムジョーにとって食べたらサクサク感と共にジャムの味を楽しめるこのクッキーはとても口にあったらしい。

 

「そうか、良かったな」

「実はグリムジョー様がジャムが好きだということを知ったノイトラ様が、グリムジョー様が来た時のためだと言って作っていたものなんですよ」

「何言っちゃってんのテスラ!?いや別にそんなわけじゃねーから!ただの偶然だからな!」

「あだだだだだ!ノイトラ様、痛いです!」

 

このジャム乗せクッキーの制作秘話をテスラに暴露されたノイトラは力任せにテスラの頭にアイアンクローをかましそのまま釣り上げる。見た目は細身ながらもあの巨大な斬魄刀を苦もなく振り回す程の怪力を持っているノイトラのアイアンクローを食らったテスラは、頭が割れるのではないだろうかと思うほどの痛みに襲われている。

 

テスラを釣り上げたままノイトラはグリムジョーを一瞥(いちべつ)すると、グリムジョーは俯いたままプルプル震えていた。

 

「ノイトラ、俺、お前のこと勘違いしてたぜ」

「どう勘違いしてたんだよ」

「今までお前のこと馬鹿で悪人面で性格悪くて、最近料理始めたくらいしか取り柄のないやつだと思ってたけどよ」

「なに?お前今まで俺のことそう思ってたの!?」

「俺の為にこんなもん作ってくれるなんて、お前ただの馬鹿じゃなかったんだな…」

「ちょっとお前ぶん殴っていいか」

 

褒められているはずなのに全く褒められている気がしないノイトラ、取り敢えず一発ぶん殴る、そのまま倒れ込んだグリムジョーだったがしばらくするとムクリと起き上がった。

 

「あれ?俺今までなにやってたんだっけ」

「記憶飛んでんのかよ……」

ノイトラ様、これヤバいんじゃないですか

だ、大丈夫じゃね?

「おい、なにヒソヒソしてんだよ」

「いや、何でもないぜ!」

 

何故かこの部屋に入った時からの記憶が無いグリムジョー、ノイトラとテスラがヒソヒソとしているのが気になるが気になるクッキーが目に入ったのでそちらに意識がいく。

 

「お、これ上にジャムが乗ってんのかうめーな!」

「ノイトラ様、もう一回繰り返すんでしょうか」

「やめろよ…考えさせんな」

 

 

 

クッキーを全て食べ終わったグリムジョーは満足したが何かを忘れているような感覚に陥る。

 

「あー!そうじゃん、本題をすっかり忘れてたぜ」

「本題?そういやお前なにしに来たんだ」

 

藍染の言うことを確かめに来たグリムジョーだったが、ノイトラのパンチによって記憶から飛んでいたらしい。

 

「ノイトラ、ちょっと二の腕触らしてくれよ」

「二の腕?まあ良いけどよ」

 

ノイトラの許可をもらい差し出された二の腕を触る。だがなんだか違和感を感じる。

 

「…あれ?硬くね?」

 

そう、明らかに自分のに比べて硬い、正直なところ自分と同じくらいだろうと考えていたグリムジョーは(いささ)かショックだった。

 

「なー硬くね?」

「ん?まーな、そりゃーあれだよ」

「なんだよあれって、いやマジでかてーんだけど」

「ほら俺の鋼皮(イエロ)って歴代十刃最硬だからな、硬いのは当たり前っちゃ当たり前なんだよな」

「あーな!成る程そう言うことか」

 

ノイトラの腕が硬い理由を知ってグリムジョーは安堵する、ノイトラが硬いだけであって自分が柔らかいわけでは無いのだと。それに二の腕がこれだけ硬かったらもしかすると胸と同じ硬さかもしれない。そう藍染の言うことが現実味を帯びてきたところで再び尋ねる。

 

「次は胸を触るけどいいか」

「ああ、いいz……は?ちょっとすまん、もう一回言ってくんねーか」

「だから胸を触っていいかって聞いてんだよ」

 

時が止まる。ノイトラとテスラは彫刻のようにピシリと固まり、ノイトラは大粒の汗を流している。

 

その場の空気が変わったのを感じ取ったグリムジョーだが何故こうなったか分からない。

 

「お、おいグリムジョー、本気で言ってんのか?」

「ん?ああ、俺は本気だぜ」

「いや、考え直せ!俺にはネルがいてゴニョゴニョ…

「?なんでそこでネリエルが出てくるんだ?ネリエルなんか関係ねーだろ」

 

何故、胸の硬さを確認するだけなのにそこにネリエルが出てくるのだろうか、疑問符を頭に浮かべながらもジリジリと後ずさるノイトラに近づく。

 

「なんで逃げるんだよ、俺はただお前の胸を触りたいだけだ」

「待て待て待て待て!だったらテスラのを触ってろ!」

「ノイトラ様!?」

「お前のじゃなきゃ意味ないんだよ!」

「「!!!?」」

 

とてつもなく勘違いしそうなグリムジョーの言い回しに、案の定と言うかノイトラとテスラの2人はグリムジョーの真意と違った形に解釈しているらしい。

 

「テ、テスラーー!」

「はい!5分、いや10分は稼いで見せます!」

「任せたぞ!」

 

そして何故かグリムジョーの前に立ちはだかるテスラ、どうしてそこまでしてノイトラは自分から逃げるのだろうか、自分はただ…

 

「二の腕と胸の硬さが一緒かどうか確かめたいだけなんだが」

「「はい!?」」

 

 

 

 

 

 

「ククククク、なんだそう言うわけだったのか、紛らわしい言い方してんじゃねーよ」

「あれ、言ってなかったっけか?ていうか何と紛らわしかったんだ?」

「いや、てっきりBL展開に突入したのかと」

「BL?何だそれ」

 

そんなグリムジョーの返しにノイトラとテスラは顔を見合わせ、そしてノイトラがグリムジョーの肩に手を置く。

 

「グリムジョー、お前は綺麗なままでいてくれよ……」

「なに言ってんだお前」

 

優しい目で自分を見てくるノイトラに気持ちわりーと思いながら、グリムジョーは更にその疑問を大きくした。

 

 

 

 

 

 

「ところでお前細っこいくせにかてーな」

「言っただろ、俺の鋼皮(イエロ)は歴代十刃最硬だって」

 

誤解が解けた後ノイトラの胸を触ったグリムジョーだったが本当に硬かった。しかし二の腕も同じくらいの硬さだったので藍染の言うことも満更嘘ではないのかも知れない。

 

「全く、けど二の腕と胸の硬さが一緒なんて噂なんで知ったんだ」

「いや、ここに来る1時間くらい前に藍染が俺の部屋に来て俺に教えて行ったんだよ」

「「ブフォ!」」

「ゲッ、きったねーな」

 

その事を藍染に教えてもらったと言った瞬間に吹き出した2人、それに首をかしげるグリムジョー。

 

「ところでどうしたんだ?」

「いや、何でもねー」

ノイトラ様、やっぱり藍染様でしたよ

ああ、やっぱりかーって感じだな

 

なんだか2人が話しているが声が小さくて聞こえない、それに近づこうとしたグリムジョーだがちょうどノイトラが顔を上げた。

 

「これ、他の奴にもしたか?」

「いや、お前が初めてだけど」

「そうか……じゃあ他の奴にする予定はあるか?」

「お前の後にはルピのところにでも行こうと思ってたけどよ」

「え?マジで?」

「マジだけど」

 

ルピのところに行って何か悪いことでもあるのだろうか、ルピとは仲はいいのだし、それくらい構わないだろう。

 

「グリムジョー様それhモガッ!?」

「いんじゃねーか、お前とルピ仲良いしな!」

「あ、やっぱりそうか?じゃあ早速行ってくるわ!」

「いってら〜」

 

そう言うとグリムジョーはノイトラの部屋を出て行った。そして部屋に残った2人。

 

「ノイトラ様、いいんですか?」

「いいんじゃね?仲良いのはほんとだろ」

「まあそうですけど……とても悪い顔をしてますよ」

「うるせー悪い顔は元々だ」

 

そんな会話が行われている事を知らないグリムジョーはルピに会いに取り敢えずルピの部屋に向かっていた。すると運良く曲がり角からルピが出てくるのが見えた。

 

「おいルピ!」

「グリムジョーじゃ〜ん、どしたの?」

 

グリムジョーの声に反応してこちらにトテトテ走ってくるルピ、グリムジョーの目の前に立つとその身長差によって自然と上目遣いになるのだが、その度にグリムジョーはなんだか分からない感情に襲われる。

 

「いや、少しお前にしてもらいたいことがあってな」

「してもらいたいこと?」

「まあ実際にするのは俺なんだが…いいか?」

「??まあ良いけど…」

「じゃあ腕を出してくんねーか」

「こう?」

「じゃあちょっと借りるぜ」

「え?…何を…え?」

 

そう言ってルピの手を取りその二の腕を触る。それはとても柔らかかった、まさに自分のやノイトラのとは雲泥の差である。ただ触れているだけでふにふにしていてこのままずっと触っていたいくらいだ。

 

「え?……え?」

 

未だにルピは何が起きているか分かっていない、そんなルピを尻目にグリムジョーは当初の目的を思い出した、これは二の腕と胸の柔らかさが一緒かどうかを調べるものだったと。

 

だがグリムジョーはここで重大な間違いを犯していた。ルピの二の腕の柔らかさにテンパっていたグリムジョーはルピに同意を求めるのを失念していたのだ。

 

そしてそのままルピの胸に手を伸ばす、それは二の腕とは比べものにならないくらいの柔らかさだった。

 

「あっ…え?…あの…グリムジョー?」

 

あまりの柔らかさにグリムジョーはその手を離すことができない。その時藍染が言っていた事を思い出した。

 

『試しているとそのうちに絶対にいいことがあるから試しに行った方がいい…』

 

藍染が言っていたのはこの事なんだろうか、あいつも悪いやつではないのかもしれない。

 

「え、え〜っと…その…」

 

ふにふにふにふに………

 

「あの〜……」

 

ふにふにふにふに………

 

「は、はうぅ………」

 

ルピの問いかけるような声も今のグリムジョーには届かない、その内にルピは真っ赤になって俯いた。

 

そしてそこに通りがかったハリベル、そんなハリベルが見たのは、

 

ルピの胸を揉んだままのグリムジョー

 

それに抵抗せず真っ赤になって俯いたルピ

 

どう見たってギルティーである。

 

「おいグリムジョー……おい、聞いているのか」

 

グリムジョーに声をかけるハリベルだがグリムジョーがそれに気づいた様子はない、むしろ先に気づいたのはルピの方だ。

 

「え?ハリベル…えっと…これは…その…」

「案ずるな、すぐに助けてやる『波蒼砲(オーラ・アズール)』」

 

ハリベルに気づかないままその攻撃をモロに食らったグリムジョーはそのまま気絶した。しかしその顔は何かを悟ったかのように安らかなものだったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クククククク…はっはっはっ!アハハハハハ!ゲホッゲホッゲホッ」

「なんや、グリムジョーば観察しとったんかいな趣味悪いわー、これも藍染隊長の計画の内なんやろ」

「ゲホッゲホッ、ああ、その通りだよ、グリムジョーは私の計画通りに動いてくれた、こんなに笑ったのは初めてなんじゃないかと言うくらいに笑わせてもらったよ」

「はあ、グリムジョーが不憫(ふびん)やわ」

「でもいいじゃないか、そのお詫びに最後にいい思いをさせてあげたんだから。でもこれだからグリムジョーいじりはやめられないよ」

 

こうやって藍染のグリムジョーいじりは終わらない。




グリムジョーはルピの上目遣いに何かを感じた。
ルピはグリムジョーに対抗しなかった。

これだけ言えば分かるよなぁ!

さあ皆さん一緒に叫びましょう"ぐりむじょーーー!"





それと勝手ながら更新を一時休止させて頂きます。詳細は活動報告の方を確認ください。


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十刃.なんか落ちてた

ふっかーーーつ!!

はい、無事受験も終わり大学生になれることが決定したので、謎のテンションで書き上げました。

いや、復活早々変な奴書いてすみません(土下座)


ある日、藍染は虚夜宮(ラス・ノーチェス)の廊下を歩いていた。ただそれだけならば何の変哲も無い日常である。藍染の歩く先にパンツが落ちてなかったらの話だが。

 

「何だこれ……」

 

藍染がそう呟くのも無理はない、流石の藍染といえどもこのような事態は想定の範囲外である。例え藍染以上の天才がいたとしてもこのような事態は想定できただろうか、いや出来ない(反語)。

 

何はともあれ藍染の思考がストップしたのは確実である。というかこれで思考がストップしない方がおかしいのだが。これで思考がストップしない者はただの変態だろう。

 

取り敢えず目の前に落ちているパンツをそのままにしておくわけにも行かず、止まった脳みそをフル回転させ、どうするべきかを考える。

 

そこで藍染はそのパンツを観察することにした。

 

そのパンツは女物だ、それは確実に言える。男がこのピンクの三角形の布を装備するとは考えにくい。男なら大体トランクスかボクサーブリーフだろう、ただのブリーフなら三角形に見えないこともないがこの虚夜宮にいる男にブリーフを装備しているものがいるとは思えない。かく言う藍染自身もブリーフは5年前に卒業している。

 

観察した結果、女物だと分かったわけだが、それをどうしようかと考えようとしたところ重大なことに気がついた。そもそもパンツとは落とすものなのだろうかと。

 

パンツとは普通はズボン、又はスカートの下に装備しているものだろう。稀に頭にかぶっているものもいるらしいがそんな者がこの虚夜宮にいるとは考えたくない。

 

とにかくパンツは装備しているものだ、そんなものを落とすものなのだろうか。百歩譲って落としたとしても落としたことに気づかないと言うことがあり得るだろうか、もし自分が落としたとしても気づかないと言うことはないだろう、パンツを落としたと言うことは則ちノー●ンだと言うことなのだから。股がスースーして気づくだろう。いや、それに気付かないからこそパンツを落としたと言えるのかもしれないが。

 

取り敢えずとんでもなくドジな者が落としたのだろうと見切りをつけてそのドジにこのパンツを届けてやろうと考える。これは親切心からくる考え方だ、決してそのドジを笑ってやろうと考えたわけではない……いや、少しくらいはあるかもしれないが。

 

落とした者にパンツを届けるためにはまずそれを拾う必要がある。だがそこは藍染、もしかしたら直前までレディーが履いていたかもしれないパンツを素手で触るような非紳士的なことはしないのだ、藍染は紳士なのだから。なのでそれを拾うべくまず腰から斬魄刀を鞘ごと抜き、そしてその柄尻(つかじり)で器用にそのパンツを引っ掛けて拾い上げる。そして拾い上げたパンツを目の高さまで持ち上げ、もう一度観察する。まあもう一度観察したところで何が変わるわけではないのだが。というか斬魄刀の先に引っ掛けた女物のパンツをジロジロ観察する男、何も事情を知らないものが見たらただの変態である。藍染の威厳が急降下待った無しだろう、もう威厳など無いも等しいだろうとは言ってはいけない、ちょっとくらいはあるだろう……あるといいな。

 

しかし運の悪い日というのは誰にもあるもので、これにはたとえ藍染といえども抗えない。

 

そこに丁度ギンが角から現れ、その光景を目にする。そう、目にしたのだ。この時のギンの心中は誰にも推し量ることはできないだろう、それほど有り得ない光景なのだ。そしてその視線に藍染は気づいていない。

 

「藍染隊長……なにしてはるんですか……」

「ん?ギンか、丁度いいところに来てくれた、手伝ってもらいたいことがあってね」

 

普通ならばこのような光景を見られたら誰しもが狼狽(うろた)えるだろう。だが藍染は動じない、天才の名は伊達では無いのだ。

 

「いや、その前に質問いいですか」

「ん?何か疑問でもあるのかな、なんでも聞いてくれたまえ」

「いや疑問しかないやろ!なんでパンツを斬魄刀に引っ掛けてはるんですか!?その前になんでパンツなんかあるんかいな!?」

「ああこれかね、確かに疑問に思うのは仕方ないと思うが、そこまで興奮することはないだろう。あ、女物だったから興奮してしまったのかな?それならばギンの視界に入れてしまって済まない、配慮が足りなかったね」

「ぶん殴るであんた」

 

ギンが興奮している理由に1人で納得し謝罪する。藍染は素直(笑)なのだ。これがギンの怒りを買うのだが藍染は気づいていない。

 

興奮したり怒った様子を見せていたギンだったが取り敢えず落ち着いたようだったのでこれまでの経緯と事情を説明する。

 

「これには事情があってね、かくかくしかじかということなんだ」

「成る程、そういうことやったんか、なんならはよう言うて下さいよ」

「いや、ギンがいきなり怒り始めたのがいけないと思うんだがね」

 

ギンのせいじゃないかと思いそれを口に出す藍染だが深くは追求しない、なるべく部下との間に波風は立てない、藍染は優れた上司なのだ。……いつも波風立てているだろうとツッコんではいけない、いいね。

 

「とにかくこのパンツの落とし主を見つけたいのだが手伝ってくれないか?」

「嫌ですね」

「即答!?」

 

ギンならば文句を言いながらも渋々手伝ってくれるだろうと考えていた藍染は驚きをあらわにする。だがギンの反応は仕方ないだろう、誰が好き好んでパンツの落とし主を探す手伝いをしようと思うのだろうか、下手すれば、いや、下手しないでも変態のレッテルを貼られること待った無しである。

 

「いや、当たり前やろ、なんでボクが変態の仲間入りしなけりゃいけないんや」

「落し物を持ち主に届けようと言うことがどうして変態につながるのかな?」

「まあ普通やったらそうなんやけど……その落し物ってなんや?」

「パンツだね」

「パンツだね、じゃないやろ!?だからその落し物が問題なんや!もし『このパンツは君のかな』なんて言うてみて下さいよ、ゴミを見る目で見られるで!」

「ふむ、一理あるね」

「いや……一理どころじゃ無いんやけど……とにかくボクは手伝いませんから!」

 

そう言ってギンはその場から立ち去る。それを残念そうに見送る藍染、しかしそんな事で藍染は落ち込まない、藍染のメンタルは木綿豆腐より硬いのだ。

 

(ちな)みにギンとの会話の間もパンツは斬魄刀にぶら下げたままである。この光景を見たら100人中99人が変態だと言うだろう、残りの1人が藍染な訳だが、やはり天才は凡人とは感性が少しずれているのだろう。

 

あえなく協力をギンに断られてしまった藍染だったので、仕方なく1人で落とし主探しをする事にした。

 

ならばとまず誰から尋ねに行こうかと考える。そうなるとなるべくハリベルは避けておきたい、最近ますますこちらにゴミを見る目を向ける機会が増えているのを如実に感じている。そんな時にこんな問題を持っていき、もし違った場合には目を当てられない状況になるだろう。なのでハリベルのところに行くのは最終手段としておきたい。

 

こう考えた藍染は初めはハリベル以外の破面(アランカル)から尋ねて行こうと決断した。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

斬魄刀にパンツを引っ掛けたまま虚夜宮をぶらぶら歩く藍染は適当に会った人物から手当たり次第に聞いて行こうと考えていた。

 

そんな時に丁度よく廊下の先から歩いてきたのはルピ・アンテノール♀だ。崩玉の勘違いによって♂から♀へとジョブチェンジした彼女なら女物のパンツを装備しているだろうと思い話しかけようとするがあちらがこちらに気がついたらしい。そして、こちらに気づいたような様子を見せたルピは驚愕をあらわにしている。

 

「やあルピ、元気かい?」

「ま、まあ元気ですけど……」

「それは良かった、取り敢えず質問をいいかな?」

「僕の方が質問したいんですけど……」

 

戸惑ったような様子を見せているルピに話しかけるが、その返答にキレがない。そんな彼女を不審に思いながらも質問をしようとした藍染だったが、逆に彼女が何かを聞きたいらしい。

 

「いいだろう、なんでも聞いてくれたまえ」

「なんでパンツなんか持ってるんですか?」

「ふむこれか、あまり気にしないでくれ、と言うか君にも関係がある事なんだがね」

「エェ……え!?」

 

案の定藍染が手にしているものに疑問をぶつけ、気にするなと言う答えに呆れるルピだったが、それが自分に関係のあるものだと聞き目を見開く。

 

「僕に関係があるってどういう事ですか!?」

「つまり私の質問というのがこれに関係するものなのだが……君は今パンツを履いているかな?」

「………………は?」

 

予想の斜め上をいく藍染の質問にルピが固まる。だがそれもそうだ、質問が質問である。ルピは瞬時にその意味を理解できないようだった。

 

「君は今パンツを履いているかな?」

「いやいやいや!?なんでそんな質問が来るんですか!?意味が解りませんよ!」

「君は今パンツを履いているかな?」

「三回言った!?」

 

自分が言った質問に動揺しているルピだが、どうしてそんなに動揺しているのかがさっぱり分からない。やはり頭の出来が違うと、会話も成立しにくいのだろうか。

 

「私の言っている質問が解りにくいのかな?決して難しく言っているつもりはないんだけどね」

「意味が解らないとかじゃなくてですね、いや、解らないんですけど……なんでそんな質問を?」

「そうだな……私が今斬魄刀にぶら下げているのは何か分かるかな?」

「凄く……パンツです……」

「そう言う事だ」

「どう言う事!?」

 

ここまで説明しても理解出来ないルピにがっかりしつつ、仕方無くこうなった経緯を事細やかに説明する。

 

「成る程、そう言う事だったんですか。けど、なんでそれがこんな質問になるんですか?」

「全く、ここまで言っても解らないのかね、そんなんだからルピなんて呼ばれるんだよ?」

「なんでですか!?」

 

あたかも自分の名前が悪い意味で使われているような言い方をする藍染にツッコミを入れるルピだったが、そんなことににお構いなく話を続ける。

 

「仕方ない、説明しよう。まず、誰かがパンツを落としたわけだ、これは分かるかな」

「まあ、それは」

「と言うことは、落とした本人は今パンツを装備していない可能性があるわけだ」

「なんでそうなるんだよ!!」

 

藍染の謎理論にルピはつい敬語も忘れて怒鳴る。しかし藍染はどうしてルピがそんなに困惑しているのかが分からない。ここまで解りやすく説明してあげたのにどうして解らないのかと。

 

藍染の理論的にはこうだ。まず、誰かがパンツを落とした、これは事実だ。そして廊下に落ちていたと言うことは、歩きながら落としたと言う可能性が高いだろう。歩きながらパンツを落とすことなどあり得ない。もし落としたとしても普通なら気付くだろう。それに気づいていないと言うことは、かなりとろい奴が落としたのだろう。と言うことは、それだけとろいなら今現在ノー●ンであることにも気づいていない可能性が高い。それなら今パンツを装備していない奴を探せばいいと言うことだ。そんな簡単なことがルピはどうして説明しても解らないのか。

 

「まあ、君が理解できなくともいい、君が今パンツを履いているかどうかを答えればいいだけだ。さて、履いているかな?」

「履いてますよ!!」

「えぇ〜本当にござるか〜?」

「本当ですよ!!なんでここで嘘をつく必要があるんですか!?」

「いや、君は今パンツを装備していないが、恥ずかしくて私に言えないという可能性もなきにしもあら……」

「ねーよ!! 本当に履いてるんだよ!」

 

恥ずかしがらなくともいいという(むね)を伝えたのだが、それがルピを恥ずかしがらせてしまったらしく、少し怒らせてしまったらしい。

 

だが、そんなことで藍染は諦めない。早くも落とし主探しに疲れてきた藍染にとって、さっさと落とし主を探し出して遊びたいのだ。そうなるとルピがパンツの落とし主であるというのが一番手っ取り早い。しかし、ルピはパンツを装備していると言っている。

 

そこで藍染は考えた。今パンツを装備しているというのなら、装備していない状態にすればいいじゃないと。そうなったら話は速い、さっさとそれを剥ぎ取ってこのパンツを押し付ければいいのだ。

 

「残念だ、こんな事はしたくなかったが仕方ない。パンツを装備していた君が悪いんだよ?」

「な、なんで手をわきわきさせながら近づいてくるんですか……」

「ふふふ……()いではないか」

 

右手に斬魄刀を持ちながら、左手をわきわきさせて近づいてくる藍染にルピもジリジリと後ずさるが、藍染はそんなルピを目で牽制する。そしてルピは意を決して逃げ出そうとするが、藍染は逃がさない。神速の舜歩によって即座にルピの背後に立ち、斬魄刀を放り投げ、羽交い締めにする。

 

「この私から逃げられるとでも思っていたのかな?もしそうだとしたら甘い考えだ」

「くそっ、やっぱりか、離せ変態!」

「変態とは失礼な、これも立派な上司と部下のコミュニケーションだよ」

「そんなわけないだろ!」

 

藍染の手の内から逃れようと必死にもがくルピだが、悲しいかな、力で勝てるわけもなくジタバタすることしかできない。

 

「何やってんだお前ら……」

「何って、上司と部下のコミュニケーションだが?」

「そんなわけないっつってんだろ!助けてグリムジョー!」

 

そんな時、(ルピにとっては)丁度よく現れたのがグリムジョーだが、この状況が理解できていないようだ。まあ一目見て理解しろというのが無理な話なのだが。

 

「助けろって……え?」

「今、藍染にセクハラされているんだよ!」

「セクハラとは失礼な」

 

傍目(はため)から見たらセクハラと言われてもおかしくないのだが、藍染は本気でコミュニケーションと思っているからタチが悪い。

 

そんな2人を見て、訳が解らないながらもただ事では無いと感じたらしく、グリムジョーも行動に移す。

 

「なんだかよく解んねーが、藍染がなんかしてる事は分かるぞ。だからルピを離しやがれ!」

「ふふふ、そうして欲しいのなら力尽くで来るがいい」

「いいぜ、おめーを倒す為に編み出した新技を見せてやる」

「ほう、それは楽しみだ」

「吠え面かくなよ!」

(きし)れ『豹王(パンテラ)』!」

 

ここでまさかの帰刃(レスレクシオン)、これにはさしもの藍染も瞠目する。そんな藍染を他所にグリムジョーは新技を繰り出す。

 

 

「いくぜ!『豹王の虚閃(セロ・レオパリオン)』」

「ほう、それが君の新技か」

「余裕ぶっこけると思うなよ!」

 

グリムジョーの右手から虚閃(セロ)が打ち出され、それが形を変えて豹となり藍染に襲いかかってきた。器用にルピを避けて襲いかかる豹を避ける為にルピを解放し、その場から飛びのく。

 

「無駄だ!そいつは一度ロックオンした奴を追い続ける!」

「くっ」

 

完全に避けたと思っていた藍染は予想外の展開に驚愕するが、追ってきた豹に対して体の前で腕を交差させることによって防ぐ。霊圧を解放して、防御力を上げる事によってダメージを最小限に止めるが、そもそも元の威力自体が大したことがなかったらしくダメージはほとんど無かった。

 

「成る程、威力がないと思ったら、これはただの足止めだったという事か、よく考えたじゃないか。この私を出し抜くとは、誇ってもいい」

 

爆発によって生じた煙を払い、2人の姿を捉えようとするが、すでに2人はそこにはいなかった。先程の技は足止め且つ目くらましの為だったらしい。

 

この自分が出し抜かれたのにも驚いたが、それ以上にグリムジョーが頭を働かせて自分を出し抜いた事に感慨を覚え、彼には届かないとは思うが賞賛を送る。

 

それにしてもルピにこのパンツを押し付けようとしていたのだが、本人がいなくなっては仕方がない。諦めて落とした本人を改めて探してあげようと、先程放り投げた斬魄刀を拾い上げる。

 

「面倒臭くなってきたが仕方がない、これも虚圏(ウェコムンド)統括者としての役目かな」

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

落とし主を探し始めてしばらく経ったが、未だ落とし主が見つからない。この虚夜宮(ラス・ノーチェス)には女性破面(アランカル)はそう多くない。なので直ぐに見つかるだろうとタカをくくっていたのだが甘かったらしい。先ず会わない、この虚夜宮の広大さを忘れていた。

 

もう夜も()けてきたので(いや、いつも夜なのだが、感覚的に)、落とし主探しは明日に回そうかと考え始めてきた頃に藍染の頭上からヒラヒラと1枚の紙が落ちて来た。

 

「なんだこれは、手紙か?なぜ何も無い頭上から?」

 

その手紙本体にも、落ちて来たという事実も不思議に思いつつその手紙を拾い上げる。特に何か仕掛けられているわけでもなさそうなので、開封し、その手紙を読み上げる。

 

 

 

"君好みのパンツをプレゼントしたつもりだったがどうだったかな?"

 

by霊王




えー復活早々変でしたね、自分でもなんでこんな奴書いたのか分かりません。受験勉強から解放された喜びで頭がどうにかしてたんでしょう。

これからはぼちぼち更新していくのでよろしくお願いします。


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十一刃.ユーハバッハの襲来

遅くなってすみません、大学の手続きや入学式やなんやらで忙しかったので、はい

それは置いといて今回はあの方が襲来されます。ちなみにこれまでの最長です、9000字超えました。多分ギャグに入るまでが長いかなー


ここは虚圏(ウェコムンド)、ただ白い砂漠が延々と広がる世界。そんなところにそびえ立つのが、巨大という言葉では言い表せないような大きさを誇る城、虚夜宮(ラス・ノーチェス)。虚圏統括者である藍染惣右介が住まう居城である。

 

そんな藍染惣右介が住まう虚夜宮(ラス・ノーチェス)の前の、何も無い空間から現れた人影が三つ。

 

「ガハハハハ!これが虚夜宮なる城か!途轍もなく巨大な城であるな!」

「全ク、遊ビニ来タンジャ無インダよ、アマリハシャガナイデクレルカな」

「良いでは無いか、あの藍染惣右介に会えるのだぞ!興奮しても仕方ないでは無いか」

「ハア、程々ニシテクレよ」

 

その内の一際大きな者が何やら不気味な雰囲気を醸し出している人物に注意されているようだ。そうは言っても2人の間に険悪な雰囲気はない、まあ片方があまり気にしていないというのもあるだろうが。

 

「いくぞ」

「ハッ」

 

そんな2人の会話を残りの1人が遮る。しかし2人は話を遮られた事に不快感を示すことはなく、むしろ片方はその人物に従うような姿勢を見せる。どうやらこの人物が他の2人よりも上の立場にいるらしい。そうして3人は虚夜宮へと歩を進める。

 

「ふふふふふ、藍染惣右介、会うのが楽しみだ、がっかりさせてくれるなよ」

 

彼の名はユーハバッハ、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の長にして、全ての滅却師(クインシー)の始祖である男だ。

 

 

 

 

 

 

ユーハバッハは部下の2人とともに虚夜宮に向かって歩く。前以て偵察に向かわせていた者の報告によると、この巨大な城の一箇所に入り口があるらしい。なので部下が作成した地図を頼りに虚夜宮の周りを回る。すると地図通りにこの城にふさわしい巨大な扉が見えてきた。

 

その扉の前に立つが、どうやったら開くのかが分からない。そう言う事なら別に扉を破壊して入ってもいいのだが、藍染に協力を依頼しにきたと言う訪問の理由上、手荒なことをして相手との間にあまり波風は立てなく無い。だから出来るだけ温厚に入城したいのだが、どうすればいいのか思案する。

 

するとその巨大な門の横にボタンのようなものがあるのを見つけた。あれを押せばいいのだろうか。

 

「ジェラルドあれを押せ」

「良かろう」

 

連れてきた部下の1人であるジェラルドにそのボタンを押させると、そのボタンから誰かの声が聞こえてきた。

 

「誰だ、今日は訪問の予定はなかったはずだが……」

「私の名はユーハバッハ、藍染惣右介に用があって来た。通してくれないか」

「ユーハバッハ?聞かぬ名だな、少し待っていろ」

 

しばらく待つとゆっくりと門が開き始め、門が完全に開ききるとそこに1人の人物が立っていた。

 

「へぇ、君がユーハバッハか、何かえらい変な雰囲気しとるなぁ、まあついて来てや」

 

取り敢えずその男の言う通りにその後ろをついて行く。

 

その出迎えに来た銀髪で細目の男の後ろをついていきながら、考える。

 

(強いな……この男)

 

今は後ろ姿しか見えないが、先ほど対面した時の所作、そしてその歩き方から強者の片鱗が感じられる。今日は連れて来ていない自分の部下たちもかなりの強者だと自負しているが、純粋な戦闘力で彼を上回る者は数えるほどしかいないだろう。能力を解放したらどうなるかは分からないが。

 

そんなことを考えているうちに、男がある扉の前で立ち止まる。どうやらこの扉の向こうに藍染惣右介いるらしい。

 

「藍染隊長入りますよー」

『どうぞ』

 

中から藍染と思わしき返事が聞こえ、男は扉を開き自分たちを招き入れた。

その扉の向こうにいたのはソファーに座る髪をオールバックにし、星型の(ふち)の眼鏡をした人物と、その後ろに控える浅黒い肌の男。もしかしてソファーに座る男が藍染惣右介なのだろうか。

 

「よくぞ来てくれた、君がユーハバッハかな?さあそのソファーにでも座りたまえ」

「で、では失礼する」

 

ソファーに座る男にドン引きしつつも出来るだけ平静を装いその男と対面のソファーに座る。

 

「いや、藍染隊長なにしてはんるですか……」

「こういう初対面の人に会うときは第一印象が大事だというだろう?だからユーハバッハ君の記憶に強くこびりつくようなインパクトを与えてやろうと思ってね」

「いやまあそれはそうなんやけど……インパクト強すぎへん?」

「そこは気にしたら負けなんだよ」

「えぇ……」

 

確かに強いインパクトを与えられたのは確かなのだが、それ以上にこれは引く。しかも2人の会話から察するにあの男が藍染惣右介らしい……決して認めたくは無いが。

 

「ごほん、さて、貴様が藍染惣右介ということでいいのかな?」

「如何にも、私が藍染惣右介だ、以後お見知り置きを」

「さてな、それはこれから次第だ」

「…………ほう?」

 

仲良くしようじゃないかという藍染の申し出を突っぱねるユーハバッハに藍染は眉をひそめる。恐らくこちらの真意を測りかねているのだろう。

 

だが眉をひそめたのは一瞬だけで、藍染はすぐにその顔をニヤけさせる。これを疑問に思ったユーハバッハだが、その疑問は直ぐに驚愕へと変わる事となった。

 

「まあそれも仕方ないだろう、私達の協力が得られなければ仲良くする義理などないのだから」

「っ!?」

 

なぜその事を、とユーハバッハは驚愕する。確かに自分は藍染にある事に協力して貰おうと思いここにやって来た。しかし藍染がこの事を知る機会などないはずなのだ、それなのに何故それを知っているのか。

 

「何故、その事を知っている」

「さて、何故だろうな、私が天才だからかもしれないな」

「ほざけ……」

 

何故その事を知っているのかと聞くが、藍染は誤魔化して真実を言おうとしない。その事にさらに焦る。こいつはどこまで知っているのかと。

 

「確かに相手はあの山本元柳斎重國だ、私に協力を求めるのも仕方ないと言えるのかな?」

「くっ」

 

そこまで知っているのか!とユーハバッハには本格的に余裕が無くなってきた。この調子でいけば、ほぼ全てのことを知っていると考えて間違いないだろう。

 

その時ユーハバッハの脳内では何故、どうして、という言葉で埋め尽くされていた。まさかこいつは自分の過去までも知っているのかと。しかしそこまで考えながらも動揺を外に出さないのは流石と言えるのだろう。

 

「……どこでその事を知った」

「仕方ないそんなユーハバッハ君のために一つ教授してあげよう」

「まず私は既に君のことを調べ上げていた」

「何だと?」

「千年前、あの山本元柳斎が取り逃がした敵だ、私もあの山本元柳斎の戦闘力は認めている。そんな君を警戒し、その素性を調べ上げるのも当然だろう」

「成る程……な……」

 

しかし自分があの山本元柳斎に破れたのは千年前、そう千年前の話なのだ。それだけ前のことまでも調べ上げて警戒する。そんな抜け目ないところが藍染の完璧さの一端を担っているのだろう。

 

「だが貴様は私の素性を調べただけだ、何故ここに来た目的まで分かったのだ」

「始めにユーハバッハという名前を聞いた時に、既にその名を知っていた私はピンと来てね、これは私の力を得に来たのだろうとね」

「何故、そう思った」

「君は嘗て山本元柳斎に敗れている。と言うことは彼に復讐したいと思っているだろう。そして今私の下を訪ねてきた。ここに来たということは私が護廷十三隊と対立した事を知っていると言うことだ。ならば同じ目的を持つもの同士協力しよう、まぁここは利用といったほうがいいのかな、そう訪ねて来たであろうことは想像に容易いだろう?どうやらそのほかの理由もありそうだがね」

 

たったそれだけの情報でそこまで分かるのか、とユーハバッハは戦慄する。こいつはとことん敵に回したくない男だとも。

 

確かに自分は千年前、山本元柳斎に敗れている。故にその復讐の機会を虎視眈々と狙って来た。そして見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の戦力も整った今こそが復讐の機だと尸魂界(ソウルソサエティ)への侵攻を決意したのだ。

 

そして藍染が言うようにもう一つ理由がある。寧ろこちらが本命だといっていいだろう。それは世界の統合だ。霊王を抹殺し、現世、尸魂界(ソウルソサエティ)虚圏(ウェコムンド)を統合して全ての者が死の恐怖に怯える事がなくなる世界、それを現実するのが最大の目的だ。流石に藍染といえどもそこまでは分からなかったようだが、世界の統合(復讐以外の目的)が有ると分かっただけでも藍染の凄さが分かるというものだ。

 

しかしそこまで知られているのならば何も取り繕う必要などないだろう。藍染とは目的は同じなはずだ、故にこちらへの協力を拒む理由などない。交渉は寧ろ簡単に終わりそうだ。もし拒むと言うのならば備えはある。

 

「そうか、そこまで知られているのならば私から言うことは何もない。ではこちらに協力してくれると言うことでいいのかな?」

「そうだな……そこまで言うのならば協力するのも(やぶさ)かではない」

「そうか、協力感謝する。では共に奴等を殲滅しようでは……」

「だが断る!!」

「……ない……は?」

「だが断ると言ったんだが?」

 

ユーハバッハは混乱した、確かにこいつは今こちらに協力すると言った筈だ。しかし次の瞬間には断ると言った。事実をもう一度頭の中で整理してみるがその優秀な頭脳でも今回のことはさっぱり理解できなかった。

 

状況が理解出来ていない自分を見て、藍染は何だこいつ、頭わりーのか?みたいな顔をしているが、声を大にして言いたい。"頭わりーのはお前だ!"と。よく見れば、藍染がムカつく顔をしているのは当然として、その背後に立つ銀髪の男も顔を背け肩を震わせている。唯一まともなのは褐色の肌の男だけだろうか、いや体が小刻みに震えている、まるでバイブレーションのようだ。

 

流石にここまでくると、いかに心の広い(自称)ユーハバッハといえども見過ごすことはできない。これはもう激おこプンプン丸である。

 

「よろしい、ならば戦争だ」

 

こういう交渉が決裂した時のために連れてきたのがこの部下2人だ。

 

無類の戦闘力を持つと言われている藍染に対抗するために連れてきた部下2人。1人はジェラルド・ヴァルキリーだ、彼は配下である星十字騎士団(シュテルンリッター)の中でも最強クラスの強さを誇り、星十字騎士団の中でも4人しか居ない親衛隊(シュッツシュタッフェル)に選ばれる程の猛者である。

 

もう1人の部下の名はエス・ノト、正直彼の戦闘力は星十字騎士団(シュテルンリッター)の中でも高いとは言えない。しかし彼に与えられた聖文字"F"の能力である「恐怖(ザ・フィアー)」はその性質上、格上の敵にも大きなダメージを与える可能性を秘めており、使い所に寄っては切り札になり得る存在だ。

 

そんな2人だからこそ交渉決裂した時に力で相手を従わせる為に連れてきた。勿論場合によってはユーハバッハ自身もその力を行使するつもりである。そうなればいかに藍染とその部下2人といえども自分たちの力の前に(こうべ)を垂れる事となるだろう。

 

そうして後ろに立つ2人に合図を送ろうとしたその時、藍染から待ったがかかる事となった。

 

「まあまて、それも私との勝負に勝つことができたら話しは別だ」

「勝負、だと?」

「そう、勝負だ」

 

何を言いだすかと思えば勝負をしようと言う。自分達の力に自信を持っているようだが、元よりこちらはそのつもりだ、その自信を打ち砕いてやろう。そう考え、身の程を知らない目の前の男に笑い出しそうな自分を抑えつつ、もう一度合図を出そうとしたところまたもや待ったがかかった。

 

「そう焦るな、勝負とは言っても戦闘ではない、他の事で決着を付けようと言っているんだよ」

「戦闘の他の事?どう言う事だ」

此方(こちら)としても戦闘で決着を付けるのもいいんだが、今から提案する方が時間も被害も少ないだろう」

「むぅ」

「これを受けないと言うのならそれでもいいのだがね」

 

口ではそう言っているが、結局の所戦闘で勝つ自信がないのだろう、まさに弱者の発想だ。であればこの提案を受ける必要はないのだが、弱者に対して余裕を見せるのは強者の特権だ、その提案を受けて完全勝利と行くのもいいだろう。

 

「いいだろう、その提案を受けてやろう」

「なに、こいつらと戦わないのか!勿体無いではないか!」

「口を慎めジェラルド、私の決定に逆らうと言うのか?」

「ぐっ……」

「エス・ノト、お前はそれでいいな?」

「仰セノママに」

 

不満を口にするジェラルドを抑え込む。どんな勝負でも此方の勝ちが揺らぐことはないだろうと考えて。

 

「感謝しよう、では私が提案する勝負は……」

 

笑みを浮かべながら勝負の内容を言おうとする藍染、だがその笑みも数分後には消えているだろう。

 

「じゃんけんだ」

「……………………は?」

「じゃんけんだ」

「誰が2度言えと言った!」

「君がフリーズするからじゃないか、まさかユーハバッハくんはじゃんけんのルールを知らないのかな〜?」

「知っとるわボケ!」

 

じゃんけんとはあれだろう、ぐーとちょきとぱーを出し合って決着を付けるあれだろう、あの給食で残ったデザートを勝ち取る為にするあれだろう、何故その単語がこの場で出てくるのかユーハバッハには理解できなかった。

 

「じゃんけんとはぐーとちょきとぱーを出し合って決着を付ける勝負の事だ」

「だから知っとると言っているだろうが!」

「この場でのルールは簡単、先に2回勝った方が勝ちだ、私が負けたらそちらに従おう、だが私が勝ったら此方の言うことを聞いてもらう」

「勝手に進めてんじゃねー!」

「へ、陛下?」

 

ユーハバッハは激怒した、必ず、この目の前の男をぶっ殺さねばと決意した。ユーハバッハには藍染の心情が分からぬ、ユーハバッハは山本元柳斎に負けてから1000年間、正直言って計画の準備自体は500年くらいで終わっていたので後の500年は結構のんびりして暮らしていた。しかし自分が馬鹿にされることに対しては人一倍敏感であった。

 

 

「こいつ……ぶっ殺してやろう!」

「まて陛下、落ち着くのだ」

「けどあいつ、私を馬鹿にしやがった!」

 

普段多くの部下達から戦々恐々として従われているユーハバッハは自分に対する悪意に免疫がない、故にちょっとした事でも激昂してしまうのだ。しかしそんな事は露知らず藍染は爆弾を落としていく。

 

「あれ?ユーハバッハくんはじゃんけんで勝つ自信がないのかな?だからそんなに怒っているのかな?」

「そんなわけないだろう!やってやろうではないか!」

「その言葉が聞きたかった」

 

なんか藍染の挑発に乗った感じでじゃんけんをすることになってしまったが、少し間が空いて冷静になってみればこれは戦闘以上に此方に有利なのではないかと思ってきた。思い返してみれば今までの人生でじゃんけんで負けた事は一度たりともない、それは自分が有する能力のお陰だ。

 

「ふ〜少し落ち着いた、取り乱して済まなかったな」

「構わない、では始めようか」

 

自分の勝利を確信してユーハバッハはぐーを構える。そして藍染も準備はできているようだ。

 

「ではやろうか、さーいしょーはぐー」

 

一回戦、2人揃ってぐーを出したところでユーハバッハはその能力を発動する!

 

「じゃーんけーんポン!」

 

藍染が出した手はぐー、そしてユーハバッハが出した手はぱー、ここで早くもリーチがかかる。

 

「ふむ、始めは負けてしまったか、残念だ、まあこれも運のうちだろう」

「ククククク……フハハハ……ハーハッハッハッハ!!」

 

藍染は自分が負けた事は運だと思っているらしい、その敗北は必然だというのに。

 

「何がおかしいのかな?」

「その敗北は必然だ、それなのに貴様は運だと思っている。これを笑わずに何を笑えというのか」

「はいはいおめでとー、ユーハバッハくんは勝って嬉しかったんだね〜」

「やかましいわ!ではそんな貴様に一つ教えてやろう」

「私が持つ聖文字"A"の能力の名は『全知全能(ジ・オールマイティ)』未来を見る能力だ、だがこの能力の真骨頂はその見た未来を改変することが出来ること、故に次に貴様が出す手など全てお見通しであり、もし私が未来で負けていたとしても未来を改変することによって私の方が勝つ、だから……」

「まて陛下!それ以上は言うんじゃない!」

「待ッテ下サイ陛下!ソレ以上ハ言ッテハナリマセん!」

 

なんか後ろにいる部下2人が自分を制止しているようだが関係ない、次の発言で相手の心を折る!

 

「お前が勝つ未来は無い!!」ドヤァ…

 

決まった……(恍惚)これで藍染の心はポッキポキだろう。そう思い嘲笑うべく顔を伏せている藍染を覗き込むが、その顔を浮かんでいたのは絶望では無くニヤケ顔(キモい)だった。

 

「あちゃー、陛下よフラグが立ってしまったでは無いか」

「フラグガ立ッテシマッた、コレデモウ終ワリだ……」

「なんだ、フラグ?」

 

自分が決め台詞を言った瞬間、部下2人が頭を抱えフラグとか言う単語を口にするが、ユーハバッハにはその意味がよく分からない。その頭の中は疑問符だらけだ。

 

「プププ、ユーハバッハくんフラグ立てよったで、こりゃー負け確やな」

「くっ……わ、笑っては悪いではないか」

「ふっ……残念だ、君とはもっと楽しめると思ったんだがな」

「何だと…………」

 

何なんだこいつらは、とユーハバッハは怒る。部下2人は揃ってもう負けたと悲観しているし、目の前の3人は自分たちの勝利を確信したかのような笑みを浮かべている。

 

「何なんだお前達は!貴様らは自分の立場を分かっているのか?既に私が一勝している。圧倒的に此方が優位に立っているのだぞ、それなのになぜ笑う!?」

「いや失敬、君があまりにも見事にフラグを建てたものでね」

「フラグフラグと何ださっきから!」

「君が知る必要のない言葉だ、さあ続けようか」

 

なんかみんなフラグフラグと言っているが結局の所此方の方は揺るがない。直ぐにこいつを絶望のズンドコに落としてやろう。そう考えてユーハバッハは再度構える。

 

「では2回戦と行こうか」

「さーいしょーはぐー」

 

そしてここでまたもやユーハバッハはその能力『全知全能(ジ・オールマイティ)』を発動する!そして見えた未来で藍染が出した手はちょき、だからここでぐーを出したらユーハバッハの勝利だ!

 

ここまで自分を馬鹿にし、手こずらせてくれた相手だ。これに勝利した暁にはどうこき使ってやろうか、そう考えながらユーハバッハはぐーを出す。これで此方の勝利は確定した。その絶望に染まった顔を拝んでやろうと思ったが……

 

「何故だ!?何故貴様はぱーを出している!?」

「自分の力に慢心した。それが君の敗因だよユーハバッハくん?」

 

馬鹿な!?とユーハバッハは驚愕する。確かに自分が未来を見た時は藍染はちょきを出していたはずだ、しかし実際に藍染が出した手はぱー、だから勝つはずだった自分が負けてしまった。だがそんなことどうでもいい、重要なのは自分が未来を読み違えたと言うことだ。

 

ユーハバッハは今まで未来を読み違えたことなど一度たりとも無い。しかしこの場で未来を始めて読み違えてしまった。そんな事はあってはならないのだ。

 

「何故だ……私が見た未来では貴様は確かにちょきを出していたはずだ!」

「だろうね」

「だろうね、だと?」

「君は私の斬魄刀『鏡花水月』の能力を知っているかな?」

「当たり前だ」

 

そんな事は真っ先に調べた。藍染が持つ斬魄刀『鏡花水月』の能力は完全催眠、ユーハバッハが藍染を特記戦力の1人に数え上げた理由の一つである。それ程までに強力な能力であり、決してその始解は見ないように注意した。

 

「それは結構な事だ」

「だが私は貴様の始解を見ていない!」

「では逆に聞こう。いつから私が鏡花水月を使っていないと錯覚していた?」ニマァ…

「っ!?」

 

五感を支配することができるという事は始解していないと錯覚させることができるのか!と気付いてしまった。

 

「だ、だが貴様が支配出来るのは五感の筈だ!私の能力まで干渉できる筈は無い!」

「少し君の知識には齟齬(そご)があるようだ。鏡花水月が支配出来るのは五感では無い、全感覚だ。あくまで君の能力も身体に備わる感覚の1つに過ぎない、故に君が見た未来をも錯覚させることが出来るんだよ」

「な、なんだってーーー!?」

 

鏡花水月とはそこまでヤベー斬魄刀だったのかと改めて藍染の脅威を認識する。だが過ぎ去ったことを悲観しても意味はない、次こそ勝てばいいのだ。

 

「と言うわけでこれで一勝一敗、次に勝った方がこの勝負の勝利者となるわけだが、君の能力はもう使えない、まさに対等と言うわけだ」

「ふん、構わない、貴様ごとき能力を使えずとも勝てる!」

「それはどうかな?」

 

藍染の言う通り未来を見たところでもう意味は無いだろう。しかしそれがどうしたと言うのか、じゃんけんとはシンプルかつ高度な知能戦、藍染が素晴らしい頭脳を持っていようともユーハバッハ自身自分の知能には自信を持っている。

 

「よし、私は次にぐーを出す!これマジだから!」

 

これで藍染はぱーを出すべきだがその裏の裏の裏の…(以下省略)の裏をかいてくるだろうだから藍染が出す手は……

 

「さーいしょーはぐー!じゃーんけーん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言おう、ユーハバッハは負けた。だがそれも仕方ないと言えるだろう。ユーハバッハも確かに優れた知能を持っている。しかし相手はあの藍染。藍染は現世、尸魂界(ソウルソサエティ)虚圏(ウェコムンド)見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の中でも浦原喜助と並んでトップの知能を持つと言われる男だ、相手が悪かったとしか言いようがない。

 

そしてじゃんけんに負けたユーハバッハが藍染から命じられた事は…………

 

 

 

 

「あっ陛下、雑巾はちゃんと絞って下さいよ」

「わかっとるわ!くそっ、なんで私がこんなことを……」

「やあやあ諸君、掃除は(はかど)っているかな?」

「げっ藍染惣右介!」

 

そう、ユーハバッハ達が命じられた事は虚夜宮(ラス・ノーチェス)の掃除だ。藍染が言うことには、いい加減この虚夜宮の掃除をしなければと思っていたのだが、いかんせん虚夜宮は広大過ぎて皆がめんどくさいと意見が一致していたところ、丁度よくユーハバッハ達が来たのだと言うことだ。

 

結局、藍染の思い通りになり、ユーハバッハは星十字騎士団(シュテルンリッター)を総動員して虚夜宮の大掃除に勤しむこととなった訳だ。

 

「なかなか綺麗になってきたじゃないか、ん?これは」壁ツツー

「ダメじゃないかユーハバッハ君?埃がまだ残っているよ」

「クソッタレーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いやー忙しいですねー、けど受験勉強してきたんだと思うとなんか楽になります。しかもこんなに暇な時間が出来るなんて(泣)

しかし、未だに友達が……サークルの友達とかはいるんだけどね?それ以外が、誰かハーメルンとかで語れる人いねーかなー


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十二刃.やっべぇ、やり過ぎた

ちょっと本編?の方が難航しているので小話をちょっとばっかし投入。

相変わらずヤベーとは思ってる。今回は瀞霊廷での出来事です。


《やっべぇ、やり過ぎた》

 

五番隊隊長である藍染は最近新しい部下達を迎え、その中の1人が挨拶に来た。

 

「あ、あの、今日から五番隊に所属することになりました雛森桃です!よろしくお願いします!」

「ああ宜しく、君には期待しているよ」

「ふぁ、ふぁい!頑張ります!」

「ははは、そんなに緊張しなくてもいいんだよ」

 

霊術院を卒業した者は一から十三までの隊に振り分けられる。今日はそんな死神の卵の入隊式であり、その1人がこの雛森桃だ。

 

彼女は未だ霊術院生だった時に藍染に助けられた事があり、そんなこともあって藍染を敬愛している。なので藍染お得意の人身掌握に最もかかりやすい部類と言えるだろう。しかも彼女自身はあまり自覚していないが才能はある。特に鬼道に関しては今の時点で達人の域に達しようとしている。いずれは副隊長になる事もあるかもしれない。だから彼女に自分を盲信させるのもいいだろう。

 

そう考え、藍染は彼女を自分の虜にする為に何かと気にかけることにした。

 

 

「やあ雛森君熱心だね、何か困っている様だったけどどうしたのかな?」

「あ、藍染隊長!あのー、破道のここのところでいつも失敗しちゃって……」

「ああそこか、そこのところはこうすれば良いんだよ」ピトッ

「あっ……」

「ん?どうかしたかな?」

「い、いや!何でもないです!」

 

さり気なくボディタッチをしてみたり……

 

 

「ふぅ、重いなぁ」

「雛森君、なんだか重そうだね、僕が持ってあげよう」

「藍染隊長!そんな、悪いです!」

「良いんだよ、僕も丁度暇だったからね。それとたまには僕にカッコつけさせてくれ」

「もう……藍染隊長はズルいです」

「ははは、大人とはおしなべてズルいものさ」

 

荷物を運ぶのを手伝ってあげたり……

 

 

「雛森君、副隊長就任おめでとう」

「ありがとうございます!これも藍染隊長のおかげです!」

「いや、僕は何もしていない、全部雛森君の努力の賜物だよ」

「そんな事……」

「ところで明日の夜は暇かな?」

「はい、何もありませんけど」

「それは良かった。それじゃあ明日の夜は僕の家でお祝いをしよう……勿論、2人きりでね」

「ふぇ!?」

 

なんか意味深な行動をしてみたり……

 

そんな事を長年続けていた結果、もともと高かった藍染への好感度は爆上がり!これ以上ないくらいまで高まっていた!これでもう藍染の計画通りな訳なのだが、それに伴う弊害が有った。

 

 

「なあギン」

「何ですか?」

「最近風呂に着替えを忘れて行った時や、朝起きた時にきちんと着替えが用意してあるんだ」

「はあ、なんや不気味やけどええやないですか」

「それがね……下着もなんだよ」

「は?」

「それに僕の私物もたまに無くなっているんだ」

「それヤバイやないですか」

「いや、下手人自体は分かっているんだけどね」

 

そう、雛森の好感度を上げまくった結果、藍染の予想よりも遥かに高まっており、なんかこう、凄いことになっているのだ!

 

「それと、最近雛森君がお弁当を作って持ってきてくれるんだけどね」

「なんや羨ましいなぁ、やたら可愛い弁当を食べてはるて思うとったらそう言う事やったんか」

「羨ましい?たまに髪の毛や血が入っててもかい?」

「ヒェッ」

 

そう、ヤバイ(断言)。正直言ってここまでの恐怖を藍染は今まで感じたことはない。自業自得と言われれば自業自得なのだが、ここまでヤバくなるとは予想できなかったのだから仕方ない。

 

「藍染隊長ー、何処ですかー?」

「ヒェッ!ギギギギギン、僕は隠れるから相手をして追い払ってくれ」

 

そう言って藍染は物陰に隠れる。そしてそこに雛森が入れ替わるようにして現れた。

 

「市丸隊長、藍染隊長を見ませんでしたか?」

「い、いや見てへんなぁ」

「そうですか、何処行っちゃったんだろ」

 

藍染の話に少しビビっていたギンだったが予想よりも普通な雛森に少し毒気を抜かれる。そして少し興味が湧いて来るものがあったので聞いてみることにした。

 

「雛森ちゃんは藍染隊長のこと好きなんか?」

「すすすすすすす好き!?私なんかが藍染隊長を好きなんて烏滸がましいです!……けど、ずっとそばにはいたいですよね」ハイライトオフ

「え?」

 

雛森の初心な反応に、以外と普通やなぁ、なんて考えていたギンだったが、なんか雲行きが怪しくなってきたのを感じた。

 

「そう、おはようからおやすみまでずっと……」

「あ、あのー、雛森ちゃーん?」

「あ!藍染隊長を探してたんだった(ハイライトオン)。市丸隊長、失礼します!」

 

そう言って走り去って行く雛森の背中を見送りながらギンは戦慄していた。

 

「ギン、雛森君はもう行ったかな?」

「ええ、行きましたけど、あれはヤバイわ」

「ああそうだね、一言で言い表すなら……」

 

「やっべぇ、やり過ぎた」

 

 

 

 

《例のあのシーン》

 

砕蜂(ソイフォン)と夜一に左右から同時に短剣を突きつけられている藍染は、そんな状況にもかかわらず余裕の笑みを浮かべている。そんな藍染に対してキレるのが護廷十三隊の中でも沸点が低いという事で有名な砕蜂。

 

「何がおかしい貴様ぁ!」

「いや何、君達2人の行動は全くの無意味だと考えると笑えてきてね」

「なんじゃと?このまま貴様の首を掻き切っても良いんじゃぞ」

「まあすぐに分かる。特に四楓院夜一だったらすぐに分かるだろう」

「ワシだったら?……っ!?砕蜂!此奴から離れろ!」

 

夜一の言葉に疑問を抱いた砕蜂だったが、その鬼気迫る様子に藍染から飛び退く。すると空から光のようなものが降ってきて藍染を包み込んだ。

 

「これは……」

反膜(ネガシオン)(ホロウ)が仲間を助ける時に使われるものじゃ」

「総隊長!」

「流石は総隊長、見識が深い」

「ふん、虚の力を借りて逃げるような奴に褒められても嬉しくないのう」

「逃げるのではないさ、その……あれだよ、ちょっと家に帰るだけだから!」

「いや、それって逃げてるんじゃね?」

「うっせー、バーカ!」

 

なんかいきなりキャラ崩壊を起こした藍染を皆はびっくりした表情で見つめるが、直ぐに藍染は冷静さを取り戻した。

 

「ごほん、冗談はさておき砕蜂君」

「……なんだ」

 

突然自分の方に話題を振る藍染に驚き、訝んんだ砕蜂だったが、返事を返す。

 

「いや、先程剣を突きつけられた時の事なんだが……可哀想なくらい貧乳だね」

「……………………は?」プッチーン

 

胸の話題、それは砕蜂をキレさせるには十分だった。それに関しては砕蜂自身も気にしている事、毎日寝る前にバストアップマッサージを100年以上も続けているのに 、効果が現れる兆しは一切無い。100年以上振りに再会した師は前より大きくなっているようだったのに。

 

「全く、どうして師弟でそこまで差が出るのかこの私でも全く分からなかったよ(笑)」

「貴様ぁーーーーー!」

「そんな事より藍染惣右介」

「そんな事!?夜一様、あのハゲそんな事って言いましたよ!」

「待て砕蜂、何かが外れかかっておるぞ」

 

規制が効かなくなってきた砕蜂を宥める夜一、砕蜂の物言いに額に青筋を走らせる総隊長、中々混沌(カオス)な状況だが其処は総隊長、直ぐに気持ちを鎮める。

 

「改めて……藍染惣右介、貴様は天にでも立つつもりかの」

 

その問いに反膜(ネガシオン)に包まれた藍染は、悔しそうにこちらを睨む護廷十三隊を見下ろしながら答える。

 

「元々誰も天になんて立ってはいないさ」

 

そしてその伊達眼鏡を外し、ヨン様風だった髪型をオールバックに掻き上げる。

 

反逆者風にイメチェンした藍染は彼らに宣言する。

 

「私が天に立つ」眼鏡グシャァ

 

 

 

 

 

 

そして虚夜宮(ラス・ノーチェス)へと帰ってきた藍染は手当てを受けていた。

 

「痛たたたた、ちょっとギン、もう少し優しくしてくれないかな?」

「何言うてはるんですか、自分で握り潰した眼鏡の破片で怪我する様な人に丁寧になんてする訳ないやろ」

「要〜、ギンがいじめるんだが」

「藍染様の自業自得かと」

 

そう、あの時眼鏡を握り潰した藍染は、その破片で掌を怪我していたのだ。これには流石の東仙でも呆れている。

 

「あーもう面倒くさいなあ、消毒液ぶっかけたろ」

「アァーーー!」

 




はい、やっぱりこうなるよね。

藍染様の眼鏡グシャァ、は絶対手のひら怪我したでしょって思うんですよ。

それに雛森ちゃんもこうなってもおかしくないかなーてね。


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十三刃.黒崎一護の災難

どうも食べかけのピザです。他の作品で二次小説を書こうとしてたらこっちが遅くなったんだ、だらしない作者で済まない……

取り敢えず今回は原作主人公か活躍(笑)するので、はい。お楽しみいただけたらいいな!


今日は一学期の終業式、明日からは夏休みだ、それ故にクラスの皆は心なしか浮き上がっているように見える。かく言う一護もその例には漏れない、いくら死神代行として常人とはかけ離れた経験をしていようとも、元々は霊感が強いだけのただの高校生なのだ。そのような反応も仕方ないだろう。故に夏休みはどう過ごそうかと既に計画を立て始めていた。なかなか無い長期休暇だ、普段なら出来ないことだって出来るかもしれない。何はともあれ楽しい夏休みになるだろう。まあ死神代行としての役割は都度都度入ってくるかもしれないが、あちらも少しは考慮してくれるはずだ。

 

其処まではただの夏休み前の学生の一風景だった。しかしそうは問屋が卸さない。やはり自分は何かに取り憑かれているのでは無いかと一護は再確認させられることとなるのだ。

 

「黒崎君!」

「ん、井上か、どうしたんだ?」

 

楽しい夏休みに想いを馳せる一護の元に同級生である井上織姫が駆け寄る。

 

「ちょっと付き合ってもらいたいところがあるんだけど……」

「え!?いや…俺で良ければどこでも付き合うぜ!」

 

なにを隠そう、この男今目の前に立つ井上織姫に好意を抱いている。藍染を敵として一緒に戦い抜いた結果、なんかまあ、そんな感じになったのだ。勿論この事には周りの者は皆気付いている。気付いていないのは当の織姫くらいだ。この女、一護に好意を寄せているわりに逆のことにはやたら鈍感なのだ、勿体ない。

 

そんな訳で一護にとってこの申し出は織姫との距離を縮める絶好の機会であり、断ると言う選択肢は初めから無い。

 

「本当に!良かったぁ〜」

「ところでどこに行くんだ?」

「うん!前からもう一度行ってみたいところがあるんだけど……」

 

もう一度と言うことは前に行ったことがあるのだろう。織姫のことだ、遊園地や動物園辺りだろうか、もしそうだったらまるでデートではないか。そう期待に胸を膨らませる一護だったが、現実はそう甘くなかった。

 

「藍染様のところ!」

「…………は?」

「前に藍染様から攫われたことあったじゃない?あの時みんなからとても良くしてもらって楽しかったんだ!しかもまた遊びに来いって行ってたから黒崎君と一緒に行きたいと思って……」

 

楽しそうに思い出を語る織姫だったが一護にその言葉は届いていない。今一護の頭の中を占めるのは疑問符だけだ。

 

「いや、藍染のところ?」

「え、ダメだった?」

「ダメっつーかあいつ敵だろ?」

「もう、ダメだよそんなこと言っちゃ」

「えぇ〜」

 

何故そんなに藍染との思い出を楽しそうに話すことが出来るのだろうか、一護の頭は理解が追いつかない。いずれにせよいくら織姫と出かけられるとはいってもこれは断るしかないだろう。まだ奴に対しての警戒は解いていないのだから。

 

「やっぱり…ダメ…かな…?」

「行きます」

 

即答である。別に藍染に対しての警戒を解いているわけではないのだが、これはダメだ。涙目での上目遣い。この頼み方をされて断れる奴がいたら見てみたい。しかも頼んでいるのは織姫だ。それも加味されて断ると言う選択肢は地平線の彼方へと消えていった。

 

「本当に!やったぁ!黒崎くんありがとう!」

「あ、ああ、気にするな」

 

断れなかった自分の脆弱な胆力を恨みつつ、それでも織姫とのお出かけに幾らかの期待に胸を膨らませる一護は内心頭を抱える。そんな一護に出来ることといえば、目の前で喜びを全身で表し、ぴょこぴょこ跳ねる度に揺れる、具体的にどことは言わないが織姫のアレを脳裏に焼き付けることだけだった。

 

 

 

 

 

 

終業式の次の日の午前9時頃、遊びに行く準備をしたら学校の裏山に集合と言われた一護は約束通りに裏山へとやってきた。そして先に来ていた織姫と落ち合った。

 

「おっす井上」

「おはよう黒崎君!いい天気だね!」

「そ、そうだな」

 

何故か出会って早々天気の話を切り出す相変わらずの天然具合にちょっと呆れつつも"可愛い"なんて思っていた一護はある疑問をぶつけた。

 

「ところでなんで裏山なんだ?」

「うん、藍染様が迎えに来てくれるらしいんだけどあまり人目につかないようなところにしろって」

「えぇ…あいつが迎えにくんの?」

「もう、あいつなんて言っちゃダメだよ!」

「わ、悪りぃ」

 

何故自分が謝っているのだろう。そう考えたが取り敢えず謝った。なんだか釈然としないが、織姫の満足顔を見れたのでよしとする事にしよう。

 

「で、どうやって迎えに来るんだ?」

「うーん、私もよく分からないんだけど、取り敢えず準備が出来たら呼べって」

「分かんないのかよ……」

「取り敢えず呼んでみよっか、"藍染様ー!"」

 

空に向けて織姫が大声で名前を呼ぶが何かが起きる様子はない。

 

「あ、あるぇー?これでいいと思うんだけどなー」

 

当の本人も首を傾げているし、またなんか遊んでいるのだろうか。そう考えて辟易するが突如として空から光のようなものが降ってきて2人を包み込み、体が上昇を始めた。

 

「あ!藍染様が迎えに来てくれたんだよ!」

「そうらしいな……」

 

なんかこれどこかで見たことあるな……と一護は自らの記憶を探る。すると、これが前藍染が退却する時に使っていたものだと思い出した。

 

「確か反膜(ネガシオン)ってじいさんが言ってたっけな」

 

なんだか分からないが何故かムカつく、キザなことしやがって、みたいな感じに。

 

「黒崎くーん、楽しいねー!」

 

上昇を続けながらこちらに向かって楽しそうに手を振る織姫を見て嫉妬したわけではない。断じて無い。

 

しかし願わくばもう少し自分の高度を下げてくれればいいのにと考える。さすればスカートを履いている織姫のパ●ツが見れるかもしれないのに。そんなことを考えた一護は自分は案外ムッツリなのかもしれないと驚愕する。しかし考え直す。もうムッツリでもいいじゃない、と。

 

するとそんなことを考えていた一護の上昇する速度がいきなり上がった。

 

「お、おいはえーぞ!」

「黒崎君楽しそう」

「んな訳ねーだろー!」

 

やばい、なんかどんどん上昇速度が上がっていっている。いくら戦闘では高速移動をしているとは言っても自分で動くのと動かされるのは全く違うと再認識する。そしてこれを観ながら高笑いを上げているであろう藍染を恨みながら一護は諦めた。

 

 

 

 

 

 

「うっぷ、まだ気持ち悪い」

「だ、大丈夫?」

「ああ、少しは楽になった」

 

反膜によって虚圏(ウェコムンド)へと入った一護達はそのまま藍染の居城である虚夜宮(ラス・ノーチェス)へと入城した。そして藍染の部屋まで通されている途中なのだが未だに酔いが醒めない。

 

しかしそんな状態でも驚いたのがこの城における織姫の扱いだ。廊下を歩いている途中でもすれ違った破面(アランカル)達は織姫に対してにこやかに挨拶をしてくる。それに織姫も挨拶を返すのだからなんかよくわかんねーな状態だ。まあ、その後一護を見て怪訝な顔をするのだが。

 

そんなこんなあって藍染の部屋へと通された2人は現在藍染、ギン、東仙と向かい合っている。

 

「藍染様お久しぶりです!」

「ああ、よく来たね、私も嬉しいよ」

「ほんまやなー、ボクも織姫ちゃんがいつ来るかってやきもきしとったわ」

「えへへーギン君も久し振りー」

 

なにこれ、何故自分はかつての敵の主力3人と向き合っているのだろうか、何故織姫はあんなにフレンドリーなのだろうか。全く理解できない。すると藍染の視線がこちらへとむいた。

 

「やあ黒崎一護、こんな形でまた会うとは流石の私でも予想していなかったよ」

「それはこっちのセリフだぜ藍染」

 

2人の視線が交錯し、藍染はこちらを品定めするかのような視線を送ってくるが、一護には何か違和感があった。その違和感が何かと考えていると藍染が笑みを浮かべた。

 

「成る程、君からはグリムジョーと似た匂いがするな」

「あちゃー、一護君やらかしたなー」

「やらかしたってなんだよ!俺なんかやったか!?」

「ああ、ちゃうちゃう、藍染隊長にロックオンされて可愛いそーやなー思うただけや」

「全く酷いな、ギンは私をなんだと思っているんだい」

 

ニヤニヤしながらそんなやりとりをする2人に対してキレそうになるが織姫の前だ、そう思いなおし気持ちを鎮める。

 

それにしてもグリムジョーに似ているとは甚だ遺憾である。自分の何処があの粗暴なグリムジョーと似ていると言うのだろうか、自分は奴のように戦闘狂なわけではない。そういう非難を込めた視線を藍染に向けるが、当の藍染は知らん顔だ。それがさらに一護を不機嫌にさせるのだが、まあ藍染のことだそれを分かっていてやっているのだろう。だから気にしたらダメだ。いやホントに気にしたら……負けだ。

 

「さて、挨拶も済んだことだし、織姫君は遊びに来たということでいいのかな?」

「はい!藍染様がいつでも来ていいって言っていたので、それとも迷惑でした?」

「いやいやそんな事あらへんよ、ゆっくり遊んで行ってええよ」

「ギンのいう通りだ、存分に楽しんで行ってくれたまえ」

「ありがとうございます!」

 

一護がイライラしている間にも話は進んでいく、なんかいつのまにか大歓迎されているようだ、歓迎されているのは元からだったような気もするが。

 

「ハリベル達は恐らく部屋にいるだろう、彼女達も織姫君に会いたがっていたよ、きっと歓迎してくれるはずさ」

「そうなんですか!じゃあさっそく行ってきますね」

 

黙って話を聞いていた一護もこの発言にびっくりする。もしやこの娘は自分の存在を忘れているのではないかと。

 

「ハリベルさんと何話そうかなー、あっ、ルピちゃんもいるかもしれないなー」

「え!?いや井上?」

 

そのまま織姫はふんふんと鼻唄を歌いながら部屋から出て行く。そしてそこには一護だけが取り残された。

 

「おーい……井上さーん……」

 

恐らく、というか絶対に自分の存在を忘れている織姫のド天然さに一護は項垂れる。しかしそこであることに気がついた。"あれ?目の前に藍染達が居たよな?"と。

 

そして顔を上げるとちょっと前までは想像さえ出来なかったニヤニヤといい笑顔を見せる藍染。

 

「少し、話をしようか」

 

これが、殴りたいこの笑顔、という奴だろうか、そう考えながら返事を返す。

 

「やだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、そう言うな、私は君と話したいことが沢山あるんだ」

「俺にはねーんだよ!」

「まあまあ一護君もそない言わんで藍染隊長の話を聞いてみるんがええで」

「聞かんでも分かる!これ面倒くさい奴やん!」

 

まだ短い時間しか藍染と話していないが一護には分かる。こいつは面白いかどうかで生きている奴だと、そんな奴が自ら話題を振ってくるのだ、それが自分にとって面倒くさいものでないと言うことがあろうか、いやない!(反語)

 

「それで私が気になっていることなんだが……」

「いや、勝手に話進めんなよ!」

「一護君諦め、こうなったら止められんから」

「いや、やめよう」

「あら?」

 

何故か藍染が話題をやめた。それに驚くような仕草をするギン、当の一護も驚いたのは言うまでもない。正直素直にやめるとは思っていなかったのだから。

 

だがここで気がつく、藍染の顔に笑みが宿っている事を。

 

「うんそうだな、いっちーがやめて欲しいのなら仕方がない」

「マジで?てかいっちーって俺のことか!?」

「ウンウン仕方ない。さすれば」

「いやスルーすんなよ!」

 

何故か某十一番隊副隊長のロリッ子と同じあだ名で呼ぶ藍染にビックリする。しかし話は続いている。

 

「この話を広めるしかないかな」

「は?」

「いや……ね、君がそんなに聞きたくないと言うなら仕方ない。私の予想を広めて真偽の程を確かめるとしよう」

「いやいやいやいや、何予想って!」

 

予想?こいつは自分の何を予想し広げようとしているのだろうか、自分は何か予想されるようなことがあっただろうか。藍染の顔色から何かを読み取ろうとするが出来るはずもなく、不安ばかりが募って行く。

 

「そうか、そんなに気になるなら言ってあげよう。耳を貸したまえ」

「チッ」

 

藍染に従うのは癪だが渋々と耳を差し出す。

 

「ふぅ〜」

「ぐぇっ!?何したんだてめー!」

 

そして息を吹きかけられた。

 

「ふふふ、ちょっとしたお茶目じゃないか」

「今度やったら(ホロウ)化しちゃうよ!?完全虚化してこの城吹っ飛ばしちゃうからな!?」

「それは済まなかった、それでも私に勝てるとは思えないが(ボソッ)

「ああ?なんか言ったか?」

「いや、さあもう一度耳を出したまえ」

「チッ」

「全く、舌打ちばっかりしてると印象が悪いよ?」

「てめーのせいだよ!!」

 

ツッコミを入れながらも改めて耳を差し出すと。

 

「君、織姫君の事が気になっているんだろう?」

「………………はぁ!?」

 

すぐさま藍染から距離を取り先ほどの言葉を反芻(はんすう)する。何故、こいつがそれを知っているんだ。

 

「ん?違うのかな?」

「ちちちちちちげーし!別に井上の事なんて気にしてねーし!」

「え?違うん?」

「なんでテメーも入ってくるんだよ、細目はひっこんでろ!」

「細目なんて、ショックやわー(棒)」

「嘘つけ!」

 

しかし何故それに気づかれたのか、正直言って一護本人も自らの心境に気付いたのはほんの少し前なのだ。まして他人が知る機会などあるはずも無い。まさかお得意の心を読んだとでも言うつもりだろうか、しかし藍染と対面したのは久し振りである。この短い時間でそこまで心を読めるとは思えない。ならばどうして?

 

そうやって考えれば考えるほど泥沼にはまって行く。やはり自分程度ではこいつの頭脳に勝つことはできないのだろうか、そう考えるとさらにいら立つだけなのだが。

 

「フフフ、まあ私レベルになればそれくらい推察することはわけもないということかな」

「くそっ」

 

やはりこちらの様子からそれを推察したのかと一護は奥歯をかみしめる。しかしこの短い時間でそこまで推察するとは、この男の頭脳は今では敵ではなくなったとはいえ油断できない。

 

「と言うのは冗談で、本当は暇つぶしに日頃の君の行動を観察していただけなんだが」

「いや冗談かよ!てか何してんだ暇人か!?」

「暇人だ」ドヤァ

「本当に暇人かよ!?」

 

さっきからどうにも調子が狂う。何故自分はこんな奴と対峙しなければならないのだろうか、元のラスボス感を醸し出していた藍染の方がまだましだと思えるくらいだ。

 

「人間観察は私の趣味でね、前々から君の事は気にかけていたんだ。事実私は君が生まれたとべぶっ!?」

「はーい藍染隊長は口閉じよか?」

「す、済まないギン」

「は?なんか言ったか?」

 

なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするが、まあ気のせいだろう。それくらい聞き流さないとこいつとは会話さえままならない。

 

「いや、うんなんでも無いよ、つまり私は暇な時に君がトイレに入っていようが、風呂に入っていようが観察していたと言うことさ」

「何やってんだ!?」

「徹底的にやるタイプなんでね」

「うるせーよ!」

「以上により君の織姫君に対する心情、もとい思慕を感じ取ったと言うことさ」

「ぐぬぬぬぬ……」

 

やはりこいつは危険だ、ここで消滅()すべきなのでは無いだろうか、しかし藍染はもとより後の2人も相当な手練れだ、勝ち目があるとは到底思えない。

 

そんな危険な思考を始めた一護だったが直ぐに我に帰る。取り敢えずその誤解(誤解では無い)を解くのが先決だと。

 

「け、けど本当に違うからな!」

「えぇ〜本当にござるか〜?」

「うっせーよ!本当だよ!」

「む?違ったのか?」

「何いきなり入ってきてんだよ!色黒ドレッド変なゴーグル野郎は黙ってろ!」

 

今まで沈黙を保っていた東仙がいきなり話に入ってきたことに虚を突かれた一護はつい怒鳴ってしまう。だが怒鳴られた本人である東仙の様子がなんかおかしい。

 

「へ、変なゴーグルじゃないし……」

「え?」

「はい泣かせたー!要を泣かせたー!うわー最低だわー」

「あかんあかん、これは駄目やわ東仙隊長は打たれ弱いんよ、それ知ってて泣かせるとかほんま最悪やわー、もうこれ主人公やないで」

「いや知らねーよそんな事!てか何でその程度で泣いてんだよ!」

「うわーほんと最低だなーいっちーは、泣かせたのを本人のせいにするとか」

「あかんあかん、ほんまあかん」

 

何故自分は責められているのだろうかと一護は考える。今までの流れ的には責められるべきなのはストーカー紛いの事をしている藍染だろう。

 

「わーったよ、俺が悪かった、だから泣きやめよ、な?」

「……うん」

 

仕方なく一護は東仙を慰める。しかしそれでも東仙は泣き止まない。

 

「はい自分いい人感出してるー!泣かせたのは自分なのにー!」

「かかか、主人公感出してるやないの」

 

取り敢えずこの2人は殴っていいよな?そう思うがもう面倒ごとは起こしたく無いし、というかもうここに居たくない。東仙はまだメソメソしているがそんなこと知ったことでは無い。

 

「うるせー!こんなところもう出て行ってやる!」

 

織姫には悪いがとっととこの城から出て行こう。そう考えてダッシュで部屋から出て行こうとするが。

 

「そんなことさせる訳ないだろう、ギン」

「ほいさ、卍解『神殺槍(かみしにのやり)』」

 

ギンが卍解し、その伸びた刀身が一護の頬を掠めそのままその先の壁に穴を開ける。それに一護はドバッと汗を流す。

 

「ボクから逃げられるわけ無いやろ、これどれくらい伸びるか分かる?」

「わ、分かんねーな……」

「13.57kmや」

「微妙!?」

 

そんな茶番をしている時に部屋のドアが開いた。

 

「黒崎君も一緒にあそ……」

 

入ってきたのは織姫だ。にこやかにしていた織姫だったが部屋の様子を見て怪訝な顔をする。

 

「あれ?何で東仙さん泣いてるの?」

「それはね、黒崎一護が要のゴーグルをバカにしたんだ」

「いや、違うんだ井上!それは……」

 

言い訳をしようとした一護だったが口ごもる。その間に織姫が口を開いた。

 

「あのね黒崎君?」

「な、なんだ」

「要さんをいじめちゃダメだよ?」

「納得いかねーーーーー!!」

 

 




いや本当に主人公が活躍しましたね(白目)それに東仙も活躍したよ!

本当にストーカーは怖いねー、

私はいつでも君達を見ているby藍染

多分次は一月もかからないと思うんで楽しみにしてくれる人はお楽しみに!


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十四刃.恋次の決意

はいどうも、食べかけのピザです。今回はタイトルの通り恋次、及びその他がメインになるのかな?けどちゃんと藍染様も出るよ。

えー正直なところ今回のやつは書きながら何書いてんだろ?とか思ってたくらいなのであんま面白くないかもです。はい、すみません。

まあ、取り敢えずどうぞ。




《恋次の決意》

 

現在、阿散井恋次は生まれて此の方最大の緊張感を持ってある人と互いに正座で対面していた。

 

「…………………」

「あ、あの……」

「……なんだ」

「いえ、何でもないです!」

 

そう、現在対面しているのは朽木家当主であり、ルキアの義兄である朽木白哉だ。しかし、いくら自分の直属の上司である白哉と対面していようとも、長い間副隊長を務めている身としては普段ならばここまで緊張する事はあり得ない。だが、今は状況が状況なのだ。

 

恋次の横にはルキアが同じ様に正座している。ここまで来たらもう分かるだろう。今、白哉と対面しているのは護廷十三隊六番隊副隊長阿散井恋次ではなく、白哉の義妹であるルキアとお付き合いしている唯一人の男なのだ。ここでの白哉の回答によって恋次が白哉の義弟となるかならないかが決定する。無論恋次としては白哉の義弟となる回答の方が望ましい。だが、その回答を得られるかどうかは恋次の誠意次第だろう。

 

白哉に対して恋次とルキアが向かい合ってもう15分は経過した。しかし当の恋次にしては数時間もたったかの様である。それはルキアとの結婚の承諾を得るために来たのだという緊張感もあるのだが、それに加えて白哉から放たれる無言のプレッシャーによるものだ。朽木白哉は護廷十三隊の隊長達の中でも最強クラスの力を持っている。それは生まれ持った才能もあるのだが、彼はそれの上にあぐらをかかず努力を怠らない。故に強い。そんな男から放たれるプレッシャーが弱いわけもなく、恋次は押しつぶされる様な重圧を感じているのだ。

 

そんな感じで白哉からの重圧に耐える事更に10分、いい加減話を切り出さなければならないだろう。それに先程からルキアに脇腹をエルボーでえぐられている。地味に痛いからやめて欲しいのだが。

 

「ふー、朽木隊長、いや白哉さん、単刀直入に言います」

「…………」

 

自分のプレッシャーに気圧(けお)されていた恋次の雰囲気が変わったのを感じたのか、白哉は閉じていた眼を開き目の前の男を直視する。それにより開いた口を閉じそうになった恋次だったがここまで来たら引き返せないと言葉を続けた。

 

「妹さんを、ルキアを俺にください!」

「…………」

 

それをいうと同時に自分の赤いパイナップルの様な頭を畳にめり込むかのごとくまで下げ、自分の覚悟を示した。

 

言いきった……、それが今の恋次の心境である。これでもう白哉の返事を待つだけだ。

 

だが恋次は失念していた。白哉は普段の様子からは想像できないほどの重度のシスコンだということを。

 

緊張していた恋次は気づかなかった。人と対面するときはすぐには抜けない様に右に置いておくべき刀を白哉はいつでも抜刀できる様に左側に置いていたことを。

 

頭を下げている恋次は気付かない。現在白哉がその刀に手を掛けていることを。

 

「に、兄様!」

 

ルキアの焦った声、そして上から感じ取った明確な殺気。それにより恋次はその場から飛び退いた。そして恋次が見たのは先ほどまで自分がいたところにめり込んでいる刀とその刀を振り下ろしている白哉。

 

「た、隊長!何するんですか!」

「……私はルキアの結婚について1つ決めたことがあってな」

「は?」

 

突然語り出した白哉に恋次は疑問を浮かべる。

 

「ルキアの夫となるのは私よりも強いものだけだとな」

「はは、成る程……はぁ!?」

「さあ抜け、私が試してやろう」

 

そう言ってこちらに刀の切っ先を向ける白哉に後退りする恋次だったがここで考え直す。ここで引いたらルキアの夫になどなれないと。

 

「分かりました、俺の覚悟を受け止めて下さい」

 

そう言って自身も立ち上がる。

 

「じゃあ広い場所に……」

「では行くぞ」

「え?今ここでですか!?」

「安心しろ半径1キロの人払いは済んでいる」

「いや、そういう話じゃ……」

「卍解『千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)』」

「うそーん」

 

地面に沈む白哉の斬魄刀、地面から伸びる無数の刀、そしてそれが全て散った時、恋次は結構ガチで死を覚悟した。

 

そしてその日、朽木邸及びその周辺は消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

白哉と恋次の戦いはどちらが勝ったのかは誰も知らない。ルキアでさえその場から離れるしかないほどの激戦だったのだから。だが、その戦いから近いうちに2人の祝言が行われたとだけ言っておこう。

 

そしてその日、白哉が皆がドン引きするくらいの泣き上戸であり、予想を遥かに超えるほどのシスコンである事が判明したとも言っておこう。

 

 

 

 

 

 

《結婚式(笑)》

 

 

白哉を決闘(せっとく)し、無事了承を得ることが出来た恋次はルキアを(めと)る事となった。

 

そして今日は阿散井恋次と朽木ルキアの結婚式当日、その式には六番隊の隊士だけでなく、恋次が副隊長でありルキアが六番隊隊長である朽木白哉の義妹(いもうと)であるということも相まって他の隊からも多数の隊長副隊長を含む隊士達が多数参列していた。今日は恋次にとって今まで生きてきて(死んでるけど)最高の日であり、その心はすでに昇天寸前(死んでるけど)である。

 

そんな式直前の恋次の所には各隊の隊長副隊長達が祝福の言葉を送りに来ており、現在は丁度恐縮としながらその謝辞を受け取っている最中である。

 

「阿散井分かっているな?」

「はい!絶対にルキアを幸せにします!」

「そうか、分かっていればいいんだ」

「はい!」

 

今日正式に自分の義兄(あに)となる白哉からの言葉を恋次は心に刻む。

 

「ぐずっ」

「は?」

「いや、ほん゛と゛に゛だのむぞ!」

「おい誰だ!隊長に酒飲ませたのは」

 

突然泣き出した白哉にギョッとしながらも恋次はすぐに白哉が酒を飲んでいることに気づく、白哉が酒に弱いというのは本人から何度か聞いたことはあったがまさか泣き上戸だとは思いもしなかった。だがそんなことよりもまずは白哉を介抱しなければならない、しかし自分は自分で準備がある。そうして為すすべなくオロオロしていると横から助け舟が出された。

 

「おやおやぁ〜朽木隊長はもう潰れちゃったのかな〜」

「京楽隊長!」

 

助け舟を出してくれたのは護廷十三隊の中でも屈指の古株である京楽春水。

 

「大丈夫だよ、朽木隊長はこっちで預かっておくから」

「すいません」

「そんなことないさ、今日は君が主役なんだ助けるのは当たり前だろう?」

「いえ、それでも……」

「まあ心配しないで、おっと、遅くなったが結婚おめでとう」

「有難うございます!」

 

その後京楽達を見送った恋次がほっと一息ついたのもつかの間、またもや声をかけられた。

 

「取り敢えず結婚おめでとうとでも言っておこうかの」

「そ、総隊長までですか!」

「なんじゃ、迷惑だったかな?」

「いや、そんなんじゃないです!まさか俺なんかの結婚式に総隊長が出席されるとは思わないで」

「お主は自分が護廷十三隊の副隊長だということを自覚したほうがよいの」

 

 

そんなこんなで恋次にお祝いの言葉を掛けてくれるものは後を絶たない。そんな中またもや恋次に声がかけられた。

 

「いやーいつ来ても本当にめでたいね結婚というのは、突然来て悪いが元護廷十三隊五番隊隊長として、そして現虚圏(ウェコムンド)統括者としてお祝いの言葉を贈らせてもらおう。御結婚おめでとう」

「ありがとうございます!いやー藍染隊長にまでお祝いの言葉をかけてもらえるなんて……」

 

 

 

「「「「「藍染!!!!!?」」」」」

「やあみんな久しぶりだね元気にしていたかな?」

 

そこにいたのはすべての悪の元凶である藍染惣右介、しかし藍染は虚圏に引きこもったはず、何故こんなところにいるのか。だがそんなことは些細なことだ、ここにいる皆はかつて藍染がいたずら(やらかしてきたこと)について誰一人として忘れていない。

 

「てめぇ藍染!おまえがやったことは忘れてねーからな!てかなんでお前がここにいるんだ!よく俺たちの前に顔を出せたな!」

「おや?君の結婚を純粋にお祝いに来たというのにひどい言い草だな」

「お前がやってきたことを心の中で思い返してみろ!」

「ふむ、心当たりしかないな」

「いやあんのかよ!」

 

藍染ムーブにブチ切れそうになる恋次だったがそれよりもブチギレている人が現れた。

 

「久しぶりじゃの藍染、よく儂等の前に顔を出せたものじゃなの、その胆力だけは評価してやる」

「これはこれは山本元流斎、無事髭も生え揃ったようで何よりだ」

「いやお前のせいじゃろ!!」

「おや?そうだったかな?」

 

すっとぼける藍染に思わず斬魄刀を抜きかけた山本だったが藍染が待ったをかける。

 

「待て待て、今この場は何だ」

「お主の処刑場に決まっとるじゃろ!……と言いたい所じゃが今は結婚式場じゃな」

「そう、私は純粋に虚圏統括者としてお祝いに来ただけだし、そんなめでたい日に怨恨で争うのは野暮だと思わないか?」

「いや、お前がそれ言う?しかしそれもそうじゃな、儂としても部下のめでたい日に争うのは気が引ける」

「だから今日だけは全ての恨み辛みを忘れて阿散井君と朽木ルキア君の結婚を祝おうじゃないか!」

 

なんでお前が仕切ってんだと思ったが恋次としても正直なところそちらの方が望ましい。流石に怨恨がある相手がいるといえども自分達のめでたい日に争いたくは無いのだ。そのことは総隊長も承知していることだろう。事実今総隊長はその最近生え揃った立派な髭をさすりながら熟考している。

 

「認めたくはないが貴様の言うことには一理ある。良かろう、総隊長の名の下に今日ばかりは全ての怨恨を忘れ、阿散井恋次と朽木ルキアの新たなる門出を祝おうではないか!」

 

 

 

それからは速かった。新たに藍染を加えて再開された式の準備は着々とと進んでいった。少しアクシデントが起こったりはしたが、優秀な人材である藍染の手助けもあって大した問題にはならず、遂に結婚式が行われることとなった。

 

披露宴では各隊の隊長たちからの祝辞などが行われる中、何故か藍染の祝辞が入る事となった。皆藍染が何かやらかすのではないかと疑っていたがそんな事はなく、寧ろ素晴らしい祝辞となった。藍染はいろんなスキルを高水準で修得しているが、その話術はその中でも群を抜いている。かつてはその話術によって死神、破面(アランカル)を問わず魅了し、陥れ、自分の術中へと導いていた。そんな藍染の話がつまらないはずがなく、始めは懐疑的に思っていた者もだんだんとその話へと引き込まれてゆき、ときには涙を、ときには笑いを巻き起こすまでにも至っていった。そしてその祝辞が終わった時には場内から割れんばかりの拍手が藍染へと送られた。もうその時には藍染に対する敵意はほぼ忘れられており、全ての者が藍染を受け入れていた。

 

その後は藍染が持参した虚圏で精製されたという酒に舌鼓を打ち、総隊長と藍染が肩を組んで笑いあい、今までのしこりをすべて忘れたかのような光景が広がっていた。それはここにいる全ての者が望んでいるであろう平和な世界であり、確かにそれはここにあった。その騒ぎは深夜まで続き、皆が酒につぶれるまで続けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゔおっ!!っつつ、頭いてー」

 

結婚式の翌日の昼手前、初めに目を覚ましたのは新郎である恋次だった。立ち上がろうとするとひどい頭痛がしてふらっとするがなんとか足を踏ん張って立ち上がる。そして辺りを見渡すと目を疑った。

 

辺りには男達が倒れ伏しており、その全員が隊長格という有様だ。いつもは厳格で、いや厳格ではないものもいるが、そんな彼らが辺り一辺に倒れ伏している光景はいっそシュールであり、当に死屍累々といった表現がよく似合う。

 

その後、恋次が起きてすぐに他の面々も立ち上ってきたが皆一様に頭痛に苛まれているようだ。そんな中通常状態に復活した総隊長がある事に気がついた。

 

「あいたたたたた、少し飲みすぎたかのう。して、昨日なんかいたような気がするんじゃがなんだっかの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!藍染いたじゃん!!!」

 

 

酒に酔って憎っくき藍染を取り逃がす、なんとも護廷十三隊とは思えぬ失態。ここには総隊長もいたというのに。

 

 

 

【今回の教訓】

酒は飲んでも呑まれるな。さもなくばなんかやらかしちゃうよ!今回の総隊長たちのようにね!お酒は怖い!(未成年は飲まないようにしようね、藍染様との約束だよ)

 

 

 

 

 




はい、すみません。次からはもっと真面目に頑張ります。

次のやつは多分ウルキオラがメインかな?みんなウルキオラが大好きだろうから頑張ります。ギャグだけどね!


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十五刃.恋とはこいである?

はいどうも食べかけのピザです。今回はみんな大好きウルキオラのお話だよ!


他の作品を読んでるとやっぱり執筆が遅れちゃうんですよね、はい、言い訳すみません



今日もいつも通り自室でぐーたらしていようと思い、朝っぱらからいそいそと最近現世で購入した●iiやP●4を準備していた藍染だったが、引きこもってばかりいないでたまには部下とコミュニケーションをとってこいとギンから部屋を追い出されてしまった。初めはふてくされて部屋の外でブーブー行ってた藍染だったが、確かに部下とのコミュニケーションも大事かなと思い直し今は廊下をぶらついていた。

 

「全くギンはひどいなー、確かに親交を深めるのは大事だと思うけどなんで私が虚夜宮(ラス・ノーチェス)に引きこもったか考えてもらいたいところだな」

 

往生際悪くギンが聞いたらキレられそうなことをぶつくさ言っている藍染だが、そうは言いながらも言いつけに従って部下とコミュニケーションをとろうとする辺り人が悪いわけではないのだろう(反逆はしたが)。そんな訳でとりあえず誰かとしゃべってみようかと手当たり次第に声をかけるべく廊下をぶらついているのはいいものの、取り合えず破面(ひと)がいない。せっかく珍しく気合を入れたというのにこんなにもエンカウントしないと萎えるというものだ。

 

そろそろ諦めて部屋に戻りス●ブラでもしようかと考えていたところ自分の前を歩く影が見えた。

 

「あれは誰だ?」

 

遠目で見たところでは誰だか判別がつかなかったが、ここまで近づくと誰だかわかってきた。小柄な体になんか半分に割れた貝殻を被ったかのような頭、そして常に両ポケットに手を突っ込んでいる者といえば一人しかいないだろう。

 

「やあウルキオラ」

「藍染様……」

「おはよう、今日もいい天気だね(藍染ジョーク)」

「はい、そうですね」

「あれ!?」

 

取り敢えず声をかけてみたものの、何を話そうか迷ったので取り敢えず天気の話題を振ることにした。ちなみに虚夜宮(ラス・ノーチェス)は常に夜なので天気なんて概念はないのだが、要するに藍染の持ちネタというところか、ウルキオラには通じなかったが。

 

「ごほん、ところで君が外を出歩いているなんて珍しいな、何かあったのかい?」

「いえ、たまには散歩もいいかと思いまして」

「ほう、それはいい心がけだ、体が(なま)らないように運動することはいい事だと思うよ(但し自分もするとは言っていない)」

「ありがとうございます」

 

相変わらず物静かな奴だが、散歩をしているなんて可愛い奴じゃないかと藍染は内心うんうん頷く。他の奴らは反抗的な奴が多いからウルキオラに対する藍染ポイントはどんどん上がって行く。

 

「それで藍染様はどうしてここらを歩いていらしたのですか?」

「そうだな……」

 

別に外に出る気はなかったが、ギンに部屋から追い出されたと言ったらなんかかっこ悪いような気がする。ここは嘘でもついていた方がいいだろう。

 

「たまには君たちと交流をしようと思ってね、部下とのコミュニケーションは大事だろう?」

「成る程、さすがは藍染様、考えることが深い」

「そんなことないさ……いや、そう?」

「はい、流石です」

「ははは、全くウルキオラは可愛い奴だ、そんな君には特別に藍染ポイントを贈呈しよう」

「ありがとうございます」

 

ウルキオラの藍染に対する敬意を持った態度に藍染は気分を良くする。藍染ポイントとかいう訳わからないものに対してもツッコまず、丁寧に礼を言うことからも本当に藍染のことを敬愛しているのだろう。藍染はこんな者を求めていたのだ。

 

思えば藍染がニート宣言をして以来部下達の藍染に対する態度がぞんざいになった気がする。ギンは元々此方を信用しておらず、寧ろぶっ殺そうとしていたので分かるとして、当初は藍染のことを信仰と言っていいほど敬意を払っていた東仙の最近の態度は、ニートを子供に持ったオカンの様な感じで、今ではまるで当初の敬意が感じられない。

 

十刃(エスパーダ)にしてもそうだ。元々は彼らを力でねじ伏せていたとはいえ最近の態度はヤバイ。

 

第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)である彼はある意味悪友のようなものだしいいだろう。元々争いが嫌いな男だと言うこともあって、寧ろ前より今の方が気軽に遊べる仲だ。その従属官(フラシオン)ともいい関係を築いていると藍染自身は思っているし、たまには共にスマ●ラなどをして遊ぶくらいだ。

 

第2十刃(セグンダ・エスパーダ)である彼はどうだろうか、彼は藍染に虚圏の王を奪われる形で部下になったと言うこともあり、藍染をヤベーくらい恨んでいた。しかし平穏になった今ではなんかテキトーになった藍染に気を抜かれたのかすっかりじいちゃんみたいになって自分の宮に従属官とともに隠居している。

 

第3十刃(トレス・エスパーダ)である彼女はどうだろう。根っからの武人である彼女は圧倒的な力を誇っていた藍染に敬意の念を送っている節があったのだが、最近では自由奔放になり色々迷惑をかけている藍染を見て、かつての尊敬のまなざしと打って変わって汚物を見るかのような視線を送ってくる。誠に寂しいことだ。まあ藍染としては興奮するのでそれもまた良いと感じているのだが。

 

第5十刃(クイント・エスパーダ)第6十刃(セスタ・エスパーダ)の彼らはもはや語るまでもないだろう。片方は序列的には五番目で相変わらず元第3十刃に負けてるくせに自分が十刃最強とか言ってる厨二病真っ只中のやつだし、もう片方は好きな子にちょっかいを出す男子中学生になってるし、本当にろくな奴らではない。そして2人とも藍染には反抗的である。

 

そして第7十刃(セプティマ・エスパーダ)の彼は藍染至上主義だが、ただの変態だし、第8十刃(オクターバ・エスパーダ)の彼は表向きには藍染に従ってはいるが、好きあらば蹴落としてやろうとか考えてるヤベー奴だし、いや、最近では藍染のイタズラに加担することがあるような気がする。それはともかく、第9十刃(ヌベーノ・エスパーダ)は何考えてるのか藍染でさえよく分からない引きこもりだし、第10十刃(ディエス・エスパーダ)のあいつは第5、第6と同じで反抗期だし、よく考えたらろくな奴がいない。そう考えたらウルキオラは本当に可愛い奴だと再認識する。

 

そんな事を考えながらこれからはもっとウルキオラを可愛がろうと決め、考え事に集中していてほったらかしにしていた間に立ったまま寝てるウルキオラに話題を戻す。

 

「おーい、ウルキオラ、起きたまえ」

「Zzz……ハッ!おはようございます」

「あ、ああおはよう」

 

どこまでもマイペースなウルキオラに癒されながらも当初ギンに言われたことを実行する。

 

「ところで最近困っていることや悩んでいることはないかな?私でよければ相談に乗るが」

「困っていることや悩んでいることですか……」

「そうだ、どんな些細なことでもいいから何かあったら言ってみたまえ、こう見えてもアドバイスをするのは得意なんだ」

 

何を隠そう、藍染実は尸魂界(ソウルソサエティ)にいたころは悩み相談所として様々な者の悩みを聞いてきたという経歴がある。その評判はすこぶるよく、常に予約でいっぱいだというありさまだった。故にその経験を生かしてウルキオラの悩みを解決してあげようという考えだ。

 

「それならば一つ、引っかかっていることがあります」

「ほう、それは何なんだ」

「女、井上織姫のことなのですが……」

「織姫君のことか、それは興味深いな、言ってみたまえ」

 

まさかここで織姫の名が出てくるとは思わなかった。織姫とウルキオラの接点といえば、初めのころの織姫をさらった時の世話係、あとはたまに訪ねてくる織姫がウルキオラのところに顔を出すことくらいだろうか。正直ウルキオラが気に掛けるとは思わないのだが。

 

「はい、最近何故か井上織姫のことを思うと自分の中で何かがざわつくのです」

「なるほど、織姫君のことを思うと……ね…………え!?」

「はい……何か変でしょうか?」

「いや、別に変だということはないんだが少し意外に思ってね」

「はあ?」

「まあそんな事はどうでもいい、喜んで相談に乗るとしよう」

 

少し面食らったが可愛いウルキオラのためだ、少し一肌脱ぐとしよう。しかしそう難しい問題ではない、今までの経験から話を聞く限り思い当たるのは一つしかない。

 

「ところでざわつきの他にも何か思い当たる事はないか?」

「そうですね……あの女の事を考えるとなんだか胸にポッカリと穴が空いたような感じがします」

「元々から空いてたけどね、いや、あれは首元だったかな?」

 

ジョークだかなんだか分からない発言だが、これが本気だとしたならばもはや確定だろう。

 

「ウルキオラ」

「はい」

「君のそのざわつきのことを世間では恋というんだ、間違いない」

「鯉……ですか?」

「そう、恋だ(確信)」

 

そう、恋なのだ。これまで数々の相談を受けてきた中で色恋の相談件数はかなり多かった。そんな藍染にとってウルキオラの気持ちは恋としか言いようがないのだ。

 

「何故、鯉だと思われるのですか?」

「私の経験上そうなんだ」

「しかし鯉は現世でしか存在しないものなのでは無いでしょうか?」

「ふむ、確かにここ、虚圏では見られないものかもしれないな」

 

よく考えたらそうだ、虚圏ではまず恋というのは聞いたことがない。まずもって女性破面の絶対数が少ないし、そもそも元々が(ホロウ)であった彼、彼女らにそういった感情があるかどうかさえ分からない。まあグリムジョーが少し怪しいところがあるかもしれないが。

そう考えたらウルキオラが勘違いしても仕方ないのだろうか。

 

「しかし恋は尸魂界でも見られるものだよ」

「そうなのですか」

「というかそもそも君は恋というものを知っていたのか?」

「はい、少し現世の事を勉強しようと思いまして」

「ならば話は早い。君はざわつきの他にもふわふわとしたものを感じたりしないかい?」

「ふわふわとしたものですか?」

 

藍染の言葉に考え込むウルキオラ、自分には心が無いと思っているだけに少し困惑しているのだろう。

 

「しかしそもそも鯉とはふわふわしているのですか?」

「それはどういう意味だろうか」

「俺が調べた限りでは鯉とは水の中を流れるようなものだと聞いたのですが」

「水の中を流れるようか……」

 

水の中を流れるようとはどんな気持ちなのだろうか、恋をすることによって心が洗われ、水の中を流れるように健やかな気持ちになる、といったところだろうか。

 

「成る程、実にいい表現の仕方だ。中々現世の表現も馬鹿にはできないな、しかし私が言ったふわふわするというのも恋なんだよ」

「成る程、鯉はふわふわするのですか」

「そうだ。で、何か思い当たる節はあるかな」

「あるのかもしれません」

「やはりか!」

 

これは喜ばしい事だ、これまで心が無いと悩んでいたウルキオラに心が芽生えたのかもしれない。今の気持ちを例えるのなら、初めて立ち上がった赤子をを見る母親といったところか。

 

「ウルキオラ、よく聞いてくれ」

「はい」

「君の中に芽生えた恋というのは心なんだ」

「鯉が心?」

「そう、君の中に恋が住み着き、君の中でふわふわして、君の中を流れて心が出来上がったんだ」

「俺の中の鯉が心を」

 

又もやウルキオラは考え込む。確かにいきなり自分の中に心が芽生えたと言われても困惑するのは仕方がない。だが焦る必要はない、じっくりと自分の中に染み込ませてこい、そして心に慣れていけばいいのだ。

 

「分かり始めてきました。俺の中に鯉が住み着いているということは、俺自身が鯉になるということでしょうか」

 

ウルキオラ自身が恋になる?それはどういうことだろうかと暫し考えたが、恐らく自分を恋で包み込むというような表現だろう。

 

「そうだ、自分の中に芽生えた恋を大きくしていき、そして自分を包み込み自分自身が恋になることによってその想いは相手へとダイレクトに伝わるようになるんだ」

「俺自身が鯉になると」

「あくまでも比喩表現に過ぎないがそれくらいの気持ちでいろということだ」

 

だんだんウルキオラもこちらの言いたいことが分かってきたようで、その鉄面皮に感情と思わしき表情が浮かんできた。そんなウルキオラの手助けをしてやりたいがここからはウルキオラの成長につながっていく、ここはそっと見守ったがいいだろう。

 

そうやって見守っていると遂にウルキオラが顔を上げた。

 

「藍染様、分かりました」

「ほう、何が分かったというのかな?」

「鯉とはそんなに難しいものではなく、鯉に身を任せ、委ね、それを体の隅々まで浸透させて俺自身が鯉となる。それこそが本当の鯉なのだと」

「お、おう……」

 

ウルキオラ自身が理解してすっきりしているのは藍染としても喜ばしいことなのだが、今度は逆に藍染のほうがウルキオラの言っていることが理解できない。先ほどまではギリギリついていくことができたのだが、これに関してはお手上げだ。だからそれをツッコみたいのだがこれまでないほどに満足しているうウルキオラにそれを指摘するのは流石の藍染といえども忍びない。ならばそこでとるべき行動は何か、それはもはや一つしかなかった。

 

「そういうことですよね藍染様」

「うん、まさにその通りだ(白目)」

 

思考放棄である。もう藍染がとるべき行動はこれ一つしかなかった。藍染の驚異的な頭脳でもウルキオラの言うことはさっぱり理解できなかったのだからこれを責められる者はいないだろう。藍染は断言できる。これは自分と同等の頭脳を持つ浦原でも理解することは出来ないと。

 

「今回は俺のつまらない相談に乗っていただき有難うございました」

「あ、うん、気にしないでくれ」

「では俺はここで失礼します」

「うん、おつかれ……」

 

いろんな事を考えている、いや、思考が停止している間に十分に満足したらしいウルキオラは藍染の前から去ってゆく。藍染はただその後姿を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたかね?ちょっと無理やり感が否めませんが、まあ大丈夫だよね?

ちょっとした独り言なんですけど、私は投稿した奴は基本読み返さないんですよね、なんか気恥ずかしいっていうか。自分が読みたいって思ったものを書いているはずなのになんなんですかねこの感覚。

それはさておき、次はもっと早く投稿できるように頑張ります。それと感想、評価は大歓迎なんでドシドシ送ってください!



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十六刃.ラジオ

はいどうも食べかけのピザです。

えーっとね、すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!!(スライディング土下座)

待ってる人がいるとは思いませんが最新作です

今回は少し新しい試みに挑戦してみようかと。いわゆるラジオ形式ってやつですかね?取り敢えずどうぞ


「第1回藍染ラジオの時間だよ」

 

「お相手は皆知っての通り藍染惣右介と」

 

「東仙要です。よろしくお願いします」

 

「さあ記念すべき最初の藍染ラジオな訳だけど、要からは何かあるかな?」

 

「私としては藍染様が放送事故を起こさないかが一番心配なんですけどね」

 

「はっはっは、私がそんなヘマをするわけないじゃないか、間違っても●●(ピー)とか●●●(ピーー)とか言わないよ」

 

「いやたった今言ったばかりですよね!これ生放送なんですよ!初っ端から放送事故かまさないでくださいよ!」

 

「おっと私としたことが、少しやってしまったようだね」

 

「少しじゃないんですけどね、クレームが来たら藍染様が対応してくださいよ」

 

「問題ない、確実に論破してあげよう」

 

「いや、クレームを論破するとかそれに更にクレームが来ると思うのですが……」

 

「だからそれも論破するんだよ」

 

「ええぇ……」

 

「まあそんなことはどうでもいいじゃないか、早く始めよう」

 

「藍染様のせいなんですけどね、では気を取り直して最初のコーナーは『藍染惣右介の相談室』です。このコーナーは様々な人の悩みに藍染様がアドバイスを送るといったコーナーです」

 

「ここで私が尸魂街(ソウルソサエティ)で様々な相談を聞いてきた経験が活かされる訳だ」

 

「そう言えばそうでしたね、随分と評判は良かったみたいですね」

 

「まあ私にとっては片手間だったわけだがね」

 

「うわっムカつく」

 

「なんか言った?」

 

「いえ何も、取り敢えず始めましょう」

 

「なんかはぐらかされたような気もするけどまあいいだろう。さあ最初の相談は何かな?」

 

「えー、ラジオネーム『ストロベリー』さんからの相談ですね」

 

「最近同じクラスのOさんという人の事が気になっているのですが、彼方はこっちのことを友達としてしか見てないだろうなと思ってなかなか踏み出すことができません。今まではこっちも友達としてしか見ていなかったのでどうすればいいのか分かりません。どうしたらいいでしょうか?」

 

「なるほど、クラスという単語が出てきたということは学生かな?」

 

「そうみたいですね」

 

「そういえば嘗ても恋愛相談が1番多かったような気がするな、私が的確なアドバイスをしてあげよう」

 

「これは信頼できそうですね。それではストロベリーさんへのアドバイスをお願いします」

 

「諦めよう」

 

「……は?」

 

「諦めよう」

 

「いやいやいや!それアドバイスですか!?」

 

「ふっ、諦めるということもまた1つの選択肢さ、それに君のことよく知らないし」

 

「いや当たり前でしょ、これラジオですよ、知ってたら知ってたで問題でしょう」

 

「そんなことは置いといて、私からのアドバイスとしては諦めたらいいんじゃ無いかな?まあ諦められないというのなら止めはしないが」

 

「これアドバイスなんですかね?」

 

「違う選択肢を提示する。これもまたアドバイスさ」

 

「はあ、そんなものですかね?」

 

「解決策を提示するだけがアドバイスでは無いということさ、じゃあ次に行こうか」

 

「なんだか丸め込まれただけのような気がしますが次に行きましょう」

 

「次はラジオネーム『パラボラアンテナ』さんからの相談ですね」

 

「昔からの知り合いに毎日のように勝負を仕掛けているのですが未だに一度も勝てていません。しかも相手は女なのでさらにムカつきます。どうしたら勝てるようになるでしょうか?」

 

「リスナーは恐らく男性かな?それにしても実に興味深い悩みだね。何度も負けることは彼のプライドが許さないんだろうな」

 

「そうですね、この手紙を読んだだけでかなりプライドが高い人物だということが分かりますね」

 

「そうだね、では何度も負けてどうしても勝ちたいという彼のために有益なアドバイスを送ろうじゃないか」

 

「おお、やっとやる気にやりましたか。前の時もこんな感じだったらよかったでしょうに」

 

「いや、私は負けたことなんてないから勝ちたいという彼の気持ちは分からないんだけどね」

 

「なんですかそれ、結局いつも通りじゃないですか。真面目にアドバイスしてくださいよ」

 

「完璧な私にこんななやみを送ってきた相手が悪い」

 

「相手に責任を押し付けないでくださいよ、そういう番組じゃないですか……」

 

「私がルールだ」

 

「ただのニートのくせに独裁者みたいなこと言わないでください」

 

「ニートとは失礼な。ニートとは英語で書くとNEET、Not in Education,Employment or Traininng の略、就学・就労・職業訓練のいずれも行っていないもののこと、まあ自宅警備員ともいうかな」

 

「いや、ニートじゃないですか。藍染様は学校には……行かなくていいですね、職業についていますか?」

 

虚圏(ウェコムンド)統括者という立派な職業についているじゃないか」

 

「何もやってないくせによく言いますね」

 

「だったら要だって同じだろう」

 

「私はいつも業務に追われているんですがね。主に藍染様達の後処理で」

 

「あ、いや、なんかごめん」

 

「はぁ、もうどうでもいいですからとっとと悩みに答えてくださいよ」

 

「ああ、えーっと、ライバル視している女の子に勝ちたいだったかな?」

 

「まあ、そんなかんじですね。藍染様はお強いのですからいいアドバイス出来るんじゃないですか?」

 

「そうだな……彼のスペックがどれくらいかは知らないが、これなんかいいんじゃないんかな?」

 

「これはと言いますと?」

 

「まずは落とし穴を用意する」

 

「え!?せこっ!!」

 

「そして落とし穴に落ちた相手に気絶するまで攻撃をぶち込む」

 

「いや、せこくないですか?これ決闘ですよね!?」

 

「ふっ、若いな。要、覚えておくといい。闘いとはね勝てばいいんだよ」

 

「とても元護廷十三隊隊長とは思えないような発言ですね」

 

「そう言われてもな、じゃあ要は私が鏡花水月の能力を使うのはせこいとは思わないのか?」

 

「!?……確かにせこいですね」

 

「だろう?だから今更こんな発言をしたところで問題ないのさ」

 

「それとこれとは関係ないような気がするのですが、それに藍染様がよくても彼がよくないと思ったら意味がないでしょう」

 

「まったくこれだから要は、ついでだからパラボラアンテナ君にも一つあることを教えてあげよう。誰かが言っていた。『卑怯とは敗者のいいわけである』とね」

 

「誰が言ったかは知りませんが、ろくでもない人物だということだけは分かりますね」

 

「数少ない私がリスペクトする人にひどい言いようだね」

 

「藍染様がリスペクトする人がそんな人だなんて知りたくありませんでしたよ」

 

「リスペクトしてしまったものは仕方ないだろう?というわけだからそんな感じでやったら恐らく勝てるだろう。そうだ、落とし穴の底に竹やりでも仕込んでおけばもっと確実に仕留められるだろう」

 

「ゲスかっ!!」

 

「ゲスではない、藍染様だ。ということで次のお便りでも……ん?」

 

「ほら、藍染様が無駄なことばかりに時間を使うから時間になってしまったじゃないですか」

 

「ふむ、残念だが今日のところはここまでみたいだね」

 

「私はホッとしていますがね」

 

「ではまた来週」

 

「そもそもこの番組に来週なんてあるんですかね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 




余談ですが、このラジオの後虚夜宮の外でノ●トラさんが落とし穴の底で気絶しているのが見つかったそうです。はい、関係ない話でしたね。

それはともかくですねおひさしぶりです。ハ、ハーメルンだったら三か月なんて短い方だよね(震え声)
これも全部アニメが悪いんだ!!

恐らくこれからも大体2000~4000くらいのやつを不定期ですが投稿していくと思います。気長にお待ちを。


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十七刃.開幕

|д゚)チラッ
誰かいるかな……

どうも、食べかけのピザです。相変わらず投稿の間が空きまくるダメ作者でござる。これも全部ニコ動ってやつが悪いんだ!

はい、言い訳すみません。相変わらずあほな奴ですがそれでも良ければお付き合いください


「というわけで対抗戦をしようと思うのだが」

「は?」

 

いつも通りいきなり呼び出されたギンと東仙は、また訳が分からないことを言い出したよと頭を悩ませる。というか何がという訳なのだろうか。

 

「いや、何がという訳なのか言うてくださいよ。それだけじゃ何も分からんやないですか」

「そうですよ。いくら何でもそれだけで理解しろなんて無理な話です」

「ふぅ、私の偉大なる右腕と左腕ならこの程度解ると思ったのだがな」

 

やれやれとでも言いたげな仕草で無茶なことを言ってくる藍染に、少しばかり殺意を持ったギンと東仙だったが、すぐにその殺気を収める。こんな事で一々怒っていたら、藍染と会話する事が出来ないと付き合いの長い2人ならよく分かっているのだ。そう判断したギンは、先ほどからの疑問を再度口に出す。

 

「なんかむかつくんやけどまあいいでしょう。で、結局どういうことなんですか?」

「仕方あるまい、教えてあげよう」

「もったいぶってないで早く教えてくれません?」

「まあそう睨まないでくれ、では先ずは事の発端から話すとしようか」

 

ようやく真面目に話をしようとしている藍染だが、それを聞く二人は真面目に聞く気はない。いつも通りくだらないことなのだろうと高をくくっているからだ。それに気づいているのかどうかは分からないが藍染は話を続ける。

 

「こないだ山本元柳斎と飲んできてね」

「ちょいちょいちょい待ち!?」

「なんだ、まだ話の途中なんだが」

「山本元柳斎て言うたら総隊長のことですよね?」

「そうだな、というかそれ以外にはいないと思うのだがな」

「いや、そういう問題やなくてですね……」

 

話など聞き流そうと考えていたギンだったが、いきなりの衝撃発言に思わず口をはさむ。驚いたのはギンだけではないらしくとなりの東仙も絶句しているのが見なくても分かった。そして当の本人はというと話の途中だから口をはさむなと文句をたれ、特にこちらの反応に興味を示した様子はない。その態度に少しイラっとしたが、今の発言の衝撃が大きすぎてそれも霧散する。口をはさみながらもそれ以上言葉を紡がないギンを藍染は、一瞥すると話を続けた。

 

「続けるぞ?飲んでいた、というのはだね私が気まぐれにあちら、尸魂界(ソウル・ソサエティ)に行った時のことなんだが。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

ここは護廷十三隊の隊長格がよく利用する料亭。この店は完全個室となっており密談をするのにうってつけの場であり、そこで二人は向かい合っていた。

 

 

 

「で、何しに来たのじゃ?意味もなく来たとは言わせんぞ、貴様に恨みを持つものは数えきれないほどおるのでな、わしもその中の一人じゃが」

 

「ふふふ……意味もなく来た、と言いたいところだが君に偶然出会ったことを踏まえると意味もなく来た、とは言えないもかな」

 

「たわけが、わざわざと一番隊の執務室を訪ねてきてここまで連れてきたものが何を言う」

 

「君たちの警備はざる過ぎてね、私にとっては執務室に入ることなどその辺の道を歩いていることと同義なんだよ。元隊長として部下の教育をし直すことを進言しよう」

 

「屁理屈をこねよって……貴様が元隊長などと名乗るでない。貴様が護廷の在籍していたことは永遠の恥なのでの」

 

「これは手厳しい、私としては部下の教育には手を尽くしていたつもりなんだがね」

 

山本としては誠に不本意なことなのだが藍染の言うことは否定できない。事実、彼が隊長を務めていた五番隊の隊士たちの個別の能力は護廷の中でも非常に高く、そこら辺のことは認めざるを得ないのだ。

 

そこら辺のことは山本も分かっているのだがそれを認めることは非常に癪なことであり、そんなこともあって酒は進む。既に山本の周りには決して少なくない数の空の熱燗が並んでおり、それに合わせて藍染の酒量も増えていった。

 

多量のアルコールは2人の身体を蝕み、思考力を徐々に奪って行く。そうなれば普段は出せないような本音が飛び出すのは世界有数の実力者である2人も例外ではなく、その会話は段々とヒートアップしていった。

 

「そもそもじゃな、随分と貴様らはこちらをなめ腐っておるようじゃが、わしらが本気を出せば貴様らなぞ一ひねりに出来ることを忘れるでないぞ」

 

「ほう、随分と威勢のいい台詞だが私一人さえも捕まえられないことを鑑みると、滑稽な台詞にしか聞こえないな」

 

「なめた口をききよって、わしらがまだ本気を出していないことが分からんか。何なら今この場で捕えてやってもいいのだぞ」

 

「望むところだ……と言いたいところだが、私と君が戦えばこの尸魂界(ソウル・ソサエティ)が無事では済まないことくらい聡明な君なら分かるだろう?」

 

「……ここが尸魂界(ソウル・ソサエティ)だったことに感謝するんじゃな、虚圏(ウェコムンド)じゃったら貴様の命はなかった」

 

「それは楽しみだ」

 

「重ねて言っておくが貴様らなぞわしらの敵ではないということを忘れないようにしておけ」

 

「君こそ私たちを侮りすぎではないのかな?今は虚圏(ウェコムンド)に引きこもっているとはいえ彼らの実力が鈍ったわけではない。君たちがそう言うように私たちが本気を出せば負けることはないさ」

 

「常に訓練を重ねているわしらが引きこもり達に負けると?」

 

「おや?そう聞こえなかったのかな?」

 

すっとぼけたような返事をする藍染が気に障った山本は、生半可な者なら気絶するであろう怒気を放ち目の前の男をにらみつける。しかし当の本人はどこ吹く風で酒を口に運んでいる。その態度が更に山本を怒らせることとなった。

 

「いいじゃろう。近いうちに貴様らを襲撃してやろう。そこまで言ったのじゃ、まさかここまで来て逃げるなどと言わないだろうの」

 

「まさか、君にしてはなかなか面白いことを言い出すじゃないか。そうなるとそれなりの戦力がぶつかることとなるわけだ。だがこれは戦争ではない、お互いのプライドをぶつけ合う場になる。そうなるとそれなりの準備が必要となる。君もそう思うだろう?」

 

「むぅ、正論じゃな」

 

「だから対抗戦という形をとりたいと思うのだがどうだろうか」

 

「いいじゃろう。首を洗って待っておるんじゃな」

 

「君たちこそ最後の晩餐を終えてから望むことをお勧めする」

 

 

★★★★★

 

 

 

「……と、言うわけだ。いやはや、酒の勢いというのは恐ろしいものだね」

「はあ、相変わらずというか、特に深く考えたわけではないんですね」

「まあ、その場の勢いというやつだ」

「考え深かった昔の藍染隊長はどこ行ったんや……」

「道端の犬に食わせてきた……とでも言っておこうか」

 

なんの悪びれもなくそう言い切る藍染に、少しばかりの徒労感を覚えたギンと東仙だったがすぐに気を取り直す。そんなことよりも確認しなければならないことがあるのだ。

 

「それは分かりました。それで、日程などは決めているんですか?」

「それは君たちで決めておいてくれ、私はいつでも暇……んんっ!予定は開けておく」

「自分で暇って言いましたやん……」

 

自分が勝手に決めてきたにもかかわらず、全てを2人に丸投げする藍染。二人の苦労が絶えることはいつになるのだろうか……

 

 

 

 




どうでしたかね?まあ、流石の総隊長も堪忍袋の緒が切れたんでしょうね。藍染様の煽りスキルのせいもあったかもしれませんが……

取り敢えずその内に初めてといってもいい戦闘回を投稿するやもしれません。今回のも行き当たりばったりなので気長にお待ちください。


これは関係ないことなんですが、藍染様の一番の魅力は常にその余裕を崩さないところだと思うんですよ。それだけに一護君との最後の戦闘シーンは少しばかり残念だったかなと。しかし最後にユーハバッハを出し抜いてくれたからよかったんだけどね!


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