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EPISODE61「私に地味は似合わない」

翼と朱斗が要石防衛の任務についている頃、騎竜、響、クリス、雷の4名で
構成された竜宮班は深淵の竜宮に到着したところだった。そこにはあらゆる
機械を操れる完全聖遺物があるらしいが……。

OP:
「Exterminate」唄:水樹奈々

ED:
「Rebirth-day」唄:高垣彩陽



 潜水艦に運ばれること数時間、俺達はとうとう深遠の竜宮にたどり着いた。

 

「ここが深淵の竜宮か……思ってたより広いな」

 

 周囲を見ながらそんな感想を漏らす。

 ここでは活動領域が限定されるとゲンさんは言っていたが、見た感じ天井は

数十mありそうだし、横幅もそれなりにあるからそれほど限定はされないよう

に思える。

 

「ここにシュバルツ達がいるんだよね?」

「ああ、おっさんも言ってたが、やつ等の目的はこの内部にあるヤントラ・サ

ルヴァスパを盗みだすことだ」

 

 ヤントラ・サルヴァスパ。

 何でもそれを使えばあらゆる機械を操ることができるという。

 つまりシュバルツはそれを使ってチフォージュ・シャトーを完成させようと

しているのだ。

 

「けどこんなに広いんじゃ捜すのも一苦労だな。おい、敵が今どこにいるのか

わかんねぇのか? おっちゃん」

【シュバルツ達は現在、君達の現在地から東北方面を移動しているな】

「なら東北に進もう。ここに来る前に師匠から地図をもらってるから、

その通りに行けばたどり着けるはずだよ」

 

 丸く畳まれている地図を取りだす響。

 

「じゃあ地図の示す通りに進んでみるか。こうしてる間にもシュバルツ達は

ヤントラ・サルヴァスパに近付いてるだろうからな」

「ですね」

 

 深淵の竜宮の中を俺達は進んでいくのだった。

 

 

―――――

 

 

 騎竜達が深淵の竜宮の中を進んでいる頃、シュバルツ達もその中を

進んでいた。

 

「危険物を扱っているだけあって監視カメラの数が多いですね。これでもう

20台目か」

 

 レイアがそんな感想を漏らしながら、コインで天井に設置されている

監視カメラを破壊する。

 

「深淵の竜宮は一部のやつ等にしか告知されていない拠点だ。だから

それなりに貴重なものが保管されてるってわけだ。着いたぞ」

 

 シュバルツ達がたどり着いたところは巨大な金庫。

 鉄色の丸みを帯びたもので、いかにも貴重なものが保管されてる雰囲気を

かもしだしている。

 

「この中にヤントラ・サルヴァスパが?」

「ええ、間違いないありません。僕は長い間ここに閉じ込められて

いましたから。この中のことは誰よりも知っています。この開け方

も、ね」

 

 ウェル博士がノートパソコンを取り出す。

 続けてケーブルでノートパソコンとパスワードを入力する機械に接続し、

ノートパソコンを操作しはじめる。

 

「前から思ってたが、随分慣れてるな」

「ここにいる間、パソコンをカチャカチャすることしかすることありません

でしたから。おかげでタイピングソフトの記録も更新しちゃいましたよ」

「で、今は何を?」

「この金庫を開けるにはパスワードがいるんですがね。それを今繋いでいる

機械の管理システムに侵入して、パスワードを割りだそうとうわけです」

 

 パソコンの画面がパスワードの入力画面に切り替わった。

 ウェル博士がそれに8桁の数字を入力すると、固く閉ざされていた金庫が

音を立てながら開いた。

 

「さて、あやゆる機会を操れる完全聖遺物とやらを拝むとするか」

 

 キャロルが金庫の中に入って奥に進んでいく。

 そこには書物のようなものが小さなテーブルの上に置かれていた。

 

「これがヤントラ・サルヴァスパか。これさえあればチフォージュ・シャトーを

完成させられる」

 

 ヤントラ・サルヴァスパを持って金庫から出る。

 だが、外には……。

 

「ふっ、簡単には帰しちゃくれないってことか」

 

 騎竜達がいた。

 

 

―――――

 

 

「やっぱ……簡単には帰してくれないよな」

 

 肩をすくめながら言うシュバルツ。

 

「ウェル博士……調が言ってたことは本当だったのか……」

「お久しぶりです騎竜君、こんなところで再会できるとは嬉しい限りです」

 

 ウェル博士が笑顔でそう言っているが、俺は全然嬉しくない。

 むしろ再会したくなかったくらいだ。

 

「ここを嗅ぎつけてきたのか。卑しいやつだ」

 

 レイアが溜め息混じりに言う。

 卑しくて悪かったな。

 

「そして雷、お前はやっぱりそっち側についたんだな」

「あんたについていたのは記憶を封印されていたからだ。俺の

意志じゃない」

 「ねえ、シュバルツが持ってるアレ、ヤン何たらってやつじゃない!?

金庫開けられてるし!」

 

 シュバルツの持っている書物のようなものを響が指さす。

 ゲンさんの話ではヤントラ・サルヴァスパは本のような形をしていると

言っていた。

 つまりシュバルツの持っているアレがヤントラ・サルヴァスパで

間違いないだろう。

 

「おい、それはお前ぇ等の扱っていいもんじゃねぇ! 元の場所に戻せ!」

「そう言われて“はい、わかりました”って言うと思うか? お断りだ」

「お前がそう言うのはわかっていた。なら俺達は力づくでもお前からそれを

奪うまでだ」

 

 ギアを纏い、アームドギアを取りだす。

 

「やる気出してるところ悪いんだがな、俺はあんた達の相手をしてるほど

暇じゃない。

だがせっかくここまで来たんだ。遊び相手は置いていってやるよ」

 

 シュバルツの前に出る2体の自動人形。

 レイアのほうは尊から聞いていたが、もう片方のほうは見たことも

聞いたことないやつだ。

 

「あなた達にはまだ紹介していませんでしたね。こいつはシルバ、僕が

創った第5の自動人形です」

 

 銀色の髪に銀色の瞳。

 それ等を持ったシルバという自動人形はまさに“銀”を象徴した姿を

していた。

 

「レイア、シルバ、この場はお前達に任せる。存分に遊んでやりな」

「御意」

 

 レイアの返事を聞くと、シュバルツが踵を返す。

 

「おい待て! また逃げんのか!?」

「あんたと戦うこと自体は簡単だ。だが、こんなタイミングで戦っちゃ

盛り上がりに欠ける。それにメインってのは、ここぞって時にやるもん

だからな」

「……お前は、この戦いもゲームだと思ってるのか?」

「人生はゲームそのものというのが俺の持論だ。だから楽しめよ、お前も」

 

 そう言って、シュバルツは消えた。

 何が楽しめだ、ふざけやがって。

 

「あなた達に1つだけ言っておきます。シルバはこれまでの自動人形とは

一味も二味も違います」

「それはどういうことだ!?」

「戦ってみればわかりますよ。では、失礼いたします」

 

 カーテンコールをした後、ウェル博士も消えた。

 ていうかあいつ、自動人形も作ったのかよ……。

 

「量産型ネフィリムに続いて自動人形……っとに毎回厄介なの用意してくるな、

あいつは」

 

 あの技術をもっと世界に役立てればいいのにな。

 能力があるだけにもったいない。

 

「何にしてもまずはこいつ等を何とかしなきゃな。で、誰が誰をやる?」

「あたしと雷でレイアを、騎竜と響でシルバを頼む。ヤントラ・サルヴァスパを

奪われた以上、ゆっくりはしてられねぇ。速攻で行くぞ!」

 

 その掛け声でクリスさんと響がイグナイトモジュールを発動した。

 

 

―――――

 

 

 。

 

「司令! 外部から通信をキャッチしました。翼ちゃんと朱斗君からです!」

 

 弦十郎達が2体の自動人形と戦っている騎竜達の様子をS.O.N.G.本部から

見ていると、藤尭がそんなことを言った。

 

「繋げ」

「はい」

 

 弦十郎の指示で通信を繋ぐと、モニターの隅に“SOUND ONLY”書かれた

ウインドウが表示された。

 

「どうした?」

【敵のことについてわかったことがあったので、連絡をしました】

「わかったこと? 何だ?」

【我々が切り札としていたイグナイトモジュール。アレを使わせること自体が

敵の罠だったのです】

「どういう意味だ?」

【自動人形はイグナイトモジュールを発動した俺達の旋律をその身に受け、

譜面を完成させることが目的だったらしい。その譜面が何のことまではわか

らないがな】

「イグナイトモジュールは罠だった。つまり……」

 

 みんなの視線がキャロルに向けられる。

 

「キャロル君、君は俺達を欺いていたのか? エルフナイン君を

救いたい。あの時君が言ったことは俺達を内部から破壊するため

の戯れ言だったのか?」

「……」

 

 キャロルがしばらく黙り込んだ後、口を開く。

 

「違う、俺にそんなつもりはない。Project IGNITEを発案したのも、

やつ等に対抗するために必要だと思ったからだ」

【騙されるなよ。そいつの言っていることは全てウソだ】

 

 突如シュバルツが姿を現す。

 だがそれは実物ではなく、ホログラムだ。

 

「シュバルツ、何故お前が!?」

【そいつは俺と結託してドヴェルグ=ダインの遺産をエルフナインから

受け取り、Project IGNITEという名目でダインスレイフを聖遺物に埋

め込んだ】

「黙れ! エルフナインにドヴェルグ=ダインの遺産を持ちださせたのは

どうせお前の指示だろう! みんな、騙されるな! シュバルツの言って

ることが偽りだ!」

【この期に及んでシラを切るのか? お前はとんでもない噓つき野郎だな】

「くっ……!」

 

 キャロルが何も言えなくなる。

 これまでのことを踏まえると、キャロルがシュバルツと結託していたと

考えるのはあまりにも自然なこと。

 しかもキャロルには自分がシュバルツと結託していないことを

証明する術がない。

 だから今のキャロルには口で無実を訴えるしかないのだ。

 

「……私は、キャロルを信じます」

 

 言葉に詰まっているキャロルを見て、セレナが言う。

 

「セレナ君、キャロル君を信じる根拠は?」

「キャロルは夢の中でマリア姉さんが言った意味がわからなくて悩んでる私を

助けてくれました。大事なのは自分らしくあることだって」

「だがそれはイグナイトモジュールを発動するのに必要だったから言っただけ

かもしれないんだぞ? それでも信じるのか?」

「私がキャロルを信用するのはそれだけじゃありません。私、アガートラームに

ダインスレイフを入れてもらった時……」

 

<キャロルがこんなに頑張るのは、エルフナインが大事だからなんだよね?>

<当然だ。エルフナインはホムンクルスだが、俺にとって妹のようなものだ。

だからシュバルツから1秒でも早く解放してやりたい。そしてそのためなら、

どこまでも頑張りぬいてやるさ>

 

「って、言ってたんです。こんなことを言う人がシュバルツと結託してるなんて

ありえません。ウソを吐いてるのはキャロルじゃありません! シュバルツのほ

うです!」

「……そうか」

 

 弦十郎が視線をセレナからシュバルツに向ける。

 

「というわけだシュバルツ、俺達はお前の言うことよりキャロルの言うことを

信用する」

【根拠のないそいつの言葉を信用するのか? そのセレナってやつに

言ったことだってウソかもしれないんだぜ?】

「ウソかどうかは目を見ればわかります。あの時の私にはわかったんです。

キャロルはウソは吐いてないって。それは今でも同じです」

【チッ、キャロルの信用を失わせるために一芝居打ったのによ。面白くねぇ】

 

 そう言い捨てて、シュバルツのホログラムは消えた。

 

「ありがとうございます弦十郎さん、信用してくれて」

「キャロル君がウソを言っていないことは俺もわかっていた。だから俺達は

キャロル君を信じる。君が俺達を信じてくれる限りな」

「司令、感謝する」

「うん。だが厄介なことになったな。翼の言う通り、イグナイトモジュールを

使わせることが罠なら、響君とクリス君にイグナイトモジュールの使用をやめ

させなければ。友里! すぐに響君とクリス君に連絡を!」

「それが……さっきから連絡を取ろうとしてるんですけど、繋がらないんです。

恐らくシュバルツが深淵の竜宮に電波を妨害する装置を仕掛けたかと!」

「何!? そんなはずないだろ! さっきまで連絡できていたんだぞ!?」

「恐らく一定時間経過すると作動するタイプのものを仕掛けたのだろう。

対策されないために」

「くっ……俺達の行動は計算ずくというわけか……」

 

 そう言って、弦十郎は眉間にシワを寄せるのだった。

 

 

―――――

 

 

 レイアが繰りだすトンファ―の連撃を雷が避けていく。

 

「おらぁ!」

 

【BLA⚡KUGEL】

 

 レイアから距離を取った後、雷は雷を帯びた群青色のエネルギー弾を

打ち飛ばす。

 その攻撃をレイアはマ○リックスばりに上半身を曲げて避けた。

 

「ふっ!」

「ぐあっ!」

 

 懐に潜り込まれてアッパーカットを喰らった雷が上空に舞い上がる。

 

「くそっ! ナメんなよテメェ!」

 

【DONNER⚡NADEL】

 

 雷がハンマーから発射したホーミングミサイルをレイアはトンファーの

入れ替わりに出したコインをマシンガンのように撃って破壊する。

 

「野郎!」

 

 2つのクロスボウからビーム矢を飛ばすが、レイアはそれを後方に

ジャンプして回避。

 その後コインをあたしに飛ばしてきた。

 

「クリス! おりゃあ!」

 

 雷があたしの前に立って、コインを弾き飛ばす。

 軌道を変えられたコインが壁に突き刺さる。

 

「ふっ!」

 

 再び取りだしたトンファーを振り下ろす。

 雷はその攻撃を右手で受け止める。

 レイアは腕力で押し出そうとするが、腕力は雷のほうが上なのか、

押しだせない。

 

「雷!」

「心配するなよ。パワー比べなら、こっちが有利だ!」

 

 雷がレイアを頭突きで怯ませる。

 

「吹っ飛べ!」

 

 続けてストレートを繰り出して、レイアを殴り飛ばした。

 レイアは飛んでいく中、宙返りをして態勢を整える。

 

「ぐっ……人間がこの私に頭突きなど……ちょこざいな……」

「お~いってぇ! 人形の頭ってこんなに固いのかよ~。俺が石頭じゃ

なかったら脳天死してたぜ」

 

 頭突きは雷が喧嘩で相手を怯ませるのに使う技の1つで、技と呼ぶように

なったのは雷が喧嘩相手に“お前は石頭だ”と言われたから。

 ちなみに雷は頭突きを入れて48の喧嘩技を持っている(らしい)。

 

「だが、これしきで倒れる私ではない。私は地味が似合わない自動人形。

こんなのでやられるなど、地味すぎるからな」

「……そんなに派手なのがいいか?」

「何?」

「後ろを見てみろ」

 

 あたしに言われて、レイアが後ろを見る。

 だがそこには何もない。

 

「くっ、はかったな!」

「意外に素直なやつだな、お前!」

 

 後ろを向いてる間に設置した発射台からミサイルを飛ばす。

 自分のほうに飛んできたそれをレイアは両腕で押さえつける。

 だがミサイルの推進力の高さもあってか、レイアは地面を削りながら

徐々に後ろへ下がっていく。

 

「これしきのミサイルで……私を押さえられるものか……!」

「なら、更にパワーを上げるだけだ!!」

 

 雷がハンマーを巨大化させる。

 

「貴様……!」

「雷神トールの鉄槌、喰らいやがれぇえええええええぇぇ!!!」

 

【MAXIMUM⚡HAMMER】

 

 雷が投げたハンマーをミサイルに直撃する。

 

「派手に散るのは私のほうだったか……。だがこの派手な最後は、私に

相応しい。ふふふっ」

 

 レイアはそう言って笑うと共にミサイルが爆破。

 それで発生した黒煙が消えて辺りを確認するが、レイアはどこにも

いなかった。

 

「ちょっと派手にやりすぎちまったかな……?」

「ちょっとどころじゃねぇよ! やりすぎだっての! あの先に機関系統とか

あったらどうすんだ!?」

「しょうがねぇだろ! あのままじゃ押し返されそうだったんだから!

ていうかお前もミサイルぶっ放してんだろうが!」

「くっ、そう言われると言い返せねぇ……」

 

【ビー! ビー! ビー!】

 

『っ!?』

 

 突如アラームが鳴り響く。

 これはヤバいっていう知らせか。

 やっぱりあたし達のさっきの攻撃が機関系統にダメージを与えて

しまったらしい。

 

「クリスさん!」

 

 シルバと戦闘していた騎竜と響がこちらに駆けてきた。

 

「無事だったみたいだな。あいつはどうした?」

「アラームが鳴った途端どこかに行きました。それよりここを脱出しないと!

ここはもうもちません!」

「あたしもそう思ってたところだ! 入口に戻るぞ! 潜水艦で脱出する!」

「はい!」

 

 あたし達は急いで深淵の竜宮から脱出する。

 この状況、おっさんからのお叱りを覚悟しとかないといけないな。

 

 

 

 




シルバとの戦いは次回やります。


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第1章 竜殺し覚醒篇 EPISODE62「究極の自動人形」

シルバとの戦いの全容が明かされる。果たしてその力とは……?

OP:
「Exterminate」唄:水樹奈々

ED:
「Rebirth-day」唄:高垣彩陽



 崩壊寸前の竜宮から脱出した俺達はS.O.N.G.本部に戻ってきた。

 

「随分派手にやってくれたものだな……少しは考慮して欲しいものだが……」

 

 派手にやらかした雷さんとクリスさんにゲンさんは呆れ顔だ。

 たしかにあの攻撃のおかげでレイアを倒すことはできた。

 しかし同時に機関系統に大ダメージを与えてしまった。

 もし俺達の脱出が遅れていたら海の藻屑となっていただろう。

 

「あ~もう! 悪かったって! でもしかたなかったんだ! ああでも

しなきゃ倒せなかったんだよ!」

「そうだとしてももっと加減を―――いや、過ぎたことを言ってもしかたないか。

それよりお前達に言わなきゃいけないことがある」

「言わなきゃいけないこと?」

「ああ、先ほど翼と朱斗君から連絡があってな。要石を防衛することは

できなかったものの、ファラの撃破に成功したらしい」

 

 ということはこれで残る自動人形はシルバだけになったわけだ。

 さすが翼さんと朱斗だ。

 

「あとイグナイトモジュールだが、次以降の戦闘では使用を控えてもらう」

 

 キャロルのいきなりの発言に驚く。

 イグナイトモジュールは圧倒的な力を持つ自動人形に対抗するべく

搭載された強化形態。

 それを使うななんて、何を考えてるんだ……?

 

「どういうことだよ!? イグナイトモジュールはあいつ等に対抗するために

必要な決戦兵器なんだろ!? なのにそれを使うなっておかしくねぇか!?」

「やつ等はイグナイトモジュール状態の装者に歌わせるよう仕向けていた。

それは呪われた旋律をその身に受け、楽譜を完成させるためだ」

「楽譜? それって何ですか?」

「それはわからない。だがロクでもないことには違いない。だからこれ以上

やつ等の思い通りにさせないためにイグナイトモジュールの使用を控えるよ

う言っているんだ」

 

 つまりイグナイトモジュール自体が罠だったってことか。

 恐らくそれを考案したのはシュバルツかウェル博士のどちらかだろう。

 

「つまりこれからはイグナイトモジュールを使わずに敵勢力と戦わなければ

ならない、そういうことですか?」

「ただでさえシルバなんていうチート野郎が出てきたってのに……アレなしで

戦うなんてキツすぎるぜ……」

「……」

 

 疲れ果てたように言うクリスさんの言葉で俺は頭の中であるシーンが

フラッシュバックされる。

 クリスさんと雷さんが戦っている間に俺と響が繰り広げていたシルバとの

戦いを……。

 

 

―――――

 

 

<……>

 

 レイアをクリスと雷に任せ、騎竜と響はシルバと対峙していた。

 

<(ウェル博士の作った自動人形、一体どんな力を持ってるのか……)>

 

 だが見つめてるだけではどんな力を持ってるかなんてわからない。

 しかしあのウェル博士が作ったのなら、厄介な力を持っているに

違いない。

 騎竜はそう思っていた。

 

<騎竜来るよ!>

 

 シルバが繰りだした右ストレートを騎竜と響は左右に散って避ける。

 シルバの右拳が床に激突し、クレーターを作る。

 

<(あんなの喰らったらひとたまりもない)>

 

【八竜ノ剣】

 

 シルバの右ストレートの破壊力を見て近距離戦は不利だと考えた騎竜は

8本の剣を飛ばす。

 シルバはそれ等が自分の近くまで飛んでくると……。

 

「消えた!?」

 

 シルバは緑色の風に包まれて消えた。

 目標を失った剣達が壁や床に突き刺さる。

 

<騎竜、あの風……>

<自動人形で風といえばファラしかいない。けど、嘘だろ……っ!?>

 

 空中から振り下ろされた大剣の斬撃を騎竜は片手剣で受け止める。

 しかしその後、片手剣の刀身が赤い筋に包まれ、砕けた。

 

<何!?>

 

 いきなりのことに驚きながらも、騎竜はシルバと距離を取る。

 

<アームドギアがこんな簡単に砕かれるなんて……それにさっきの赤い筋、

アレも自動人形の能力か……?>

 

 刀身が砕かた片手剣を見ながら呟く。

 騎竜の片手剣を砕いたのはファラのもう1つの能力であるソード・ブレイカー。

 剣であれば何でも砕いてしまうファラのもう1つの能力だ。

 

<(もしさっきの能力が剣を砕くものだとしたら……こいつと俺の相性は

最悪だ……。こいつに剣は通用しない)>

 

 壊れた片手剣を投げ捨て、入れ替わりにもう1本片手剣を取りだす。

 それを銃に変形させる。

 

<響、俺が遠距離から援護する! 俺は接近戦じゃあいつには勝てそうに

ないからな>

<どういうこと?>

<さっき攻撃した時、剣が一瞬で砕かれたんだ。自動人形の誰かの

能力でな>

<まさに剣士にとって天敵の能力ってことか……でも、ガングニールなら

関係ない!>

 

 響がシルバに突っ込んでいく。

 そんな響を見て大剣を構えるシルバに騎竜が横から銃弾を連射する。

 

<はぁあああああぁあああぁああぁあっ!>

 

 銃弾を大剣を両手の指で回して防いでいるシルバに響がパンチを繰りだす。

 シルバは響のパンチを空いた手から出したカーボンロッドで受け止める。

 ミカの能力だ。

 

<あっ!?>

 

 そのまま響を弾き飛ばすと、シルバは蛇を象った2匹の水流を地面から出す。

 ガリィの能力だ。

 

<響!>

 

【咆哮竜飛翔】

 

 響に飛ばしたそれを騎竜が投げつけた銃を竜を象ったブースター付きの

巨剣に変形させて貫いた。

 

<……>

 

 水流が防がれると、シルバはコインで構成されたトンファーを片手に

1本ずつ持って、2人に接近する。

 これに対して騎竜は距離を取り、響はトンファーの一撃を受け止める。

 その後響がシルバにパンチとキックの不規則に繰りだし、騎竜は銃弾を

放つ。

 だがその攻撃をシルバは全てかわしていく。

 

<こいつ、やっぱり……>

 

 水流、カーボンロッド、ソードブレイカー、トンファ―。

 これは全て騎竜達がこれまで戦ってきた自動人形の能力。

 つまりシルバはこれまで戦ってきた自動人形の能力を全て所持している

ことになるのだ。

 

<かはっ……!>

 

 シルバに殴り飛ばされた響が壁に叩きつけられる。

 

<響!>

<ぐっ……けほっ、けほっ!>

 

 響がお腹を押さえながらむせている。

 腹を殴られれば訓練されてる人でもそうなる。

 

<(やっぱり通常形態で相手するのは厳しいか……こうなったら……)>

 

 騎竜が懐から蒼い宝玉がはめ込まれたブレスレットを取りだす。

 この蒼い宝玉は元々アスカロンにはめ込まれていたもので、アスカロンの

パワーソースになっている。

 

「ダメだよ騎竜。今それを使っちゃ……」

「だが、このままじゃ俺も響もやられる。あいつに対抗するには、もう……」

「それを最初に使う時は決めてるでしょ? それは君にとってすごく大事な

ことじゃないの?」

「でも……」

 

【ドカァアアアアアアアアアアアァアァアァアァンッ!】

 

 突如耳をつんざくよな爆撃音が聞こえてきた。

 何かと思って音が聞こえたほうを見てみると、雷の前に大きな穴が

できていた。

 雷とクリスの攻撃によってできたものだ。

 

<(派手にやりやがったなあの人達……ちゃんとここのこと考慮してるん

だろうな……?)>

 

 騎竜がそんな心配をしていると警告音が鳴り響く。

 雷とクリスの攻撃によって機関系統にダメ―ジを与えたためだ。

 

<……>

 

 警告音を聞くと、シルバはテレポートジェムで転移した。

 

<あ! 逃げた!>

<爆発に巻き込まれるとわかって脱出したのか。俺達も脱出しよう!>

 

 ここはもう危険だと判断した騎竜と響はクリスと雷に合流する。

 

<無事だったみたいだな。で、もう1人のやつはどうした?>

<警告音が鳴った途端どこかに行きました。それよりここを脱出しないと!

ここはもうもちません!>

<ああ、あたしもそう思ってたところだ! 入口に戻るぞ! 潜水艦で

脱出する!>

<はい!>

 

 これが騎竜達がクリスと雷と合流するまでの経緯もといシルバとの

戦いの全容である。

 

 

―――――

 

 

「……」

 

 あの時の戦いで俺はシルバの脅威を知った。

 ガリィ、ミカ、ファラ、レイア。

 シルバはそいつ等の持つ能力を全て使うことができる。

 つまりシルバと戦うことは全ての自動人形を同時に相手にするのと

変わらないのだ。

 

「司令! 大変です!」

「どうした!?」

「謎の飛行物体が現れました! 恐らくアレがシュバルツ一味の居城かと」

「居城だと? 何でそんなものが今更……?」

「こっちが自動人形を4体も潰したから俺達を本格的に潰すつもりなん

でしょう。

でも好都合ですよ、あっちから出てきてくれるなら」

「俺も行く。いつまでも後手に回るのは性に合わないんでな」

「わかった。行こう! シュバルツとの因縁を今日終わらせる!」

 

 シュバルツの居城に向かうべく、俺達は本部から飛びだした。

 

 

―――――

 

 

 シュバルツの居城が確認できた大通りにやってくる。

 そこには翼さんと朱斗もいた。

 

「翼さん、いつ帰ってきたんですか!?」

「ついさっきだ。竜宮のことは叔父様から聞いた。ファラを倒した

そうだな」

 

 翼さんは俺達を褒めるが、実際は褒められたものじゃない。

 ヤントラ・サルヴァスパを奪われてしまったのだから。

 

「いえ、そんなことは。ヤントラ・サルヴァスパも奪われてしまいましたし」

「それも聞いている。だが過ぎたことを言っていてもしかたない。今は……」

 

 朱斗が空に浮かんでいる城に鋭い視線を向ける。

 

「やつ等をどうするかだ」

 

 あそこはやつ等のいる居城。

 そして俺達はやつ等を倒さなきゃいけない。

 この世界の未来のためにも、シュバルツによって死んでしまった人達の

ためにも。

 

「やっと来たか。待ってたぜ、装者共」

 

 聞き覚えのある声が聞こえてきたので、そこに視線を向ける。

 視線の先にはシュバルツとシルバがいた。

 

「シュバルツ!」

「ステージをクリアしてここまで来れたのは褒めてやるよ。もっとも

あんた達は俺の罠にまんまとハマッたようだがな」

「ああ、まんまと乗せられたよ。あんな猿芝居をしてまで俺達にダイン

スレイフを受け取らせ、使わせるなんてな」

「そのおかげで楽譜は完成した。それはつまり自動人形の死んでもらう

ということだが、やつ等は嫌な顔1つせずに成し遂げてくれたぜ。本当

にやつ等は最後まで俺に忠実な操り人形(マリオネット)だったよ」

 

 こいつは仲間を仲間だと思っていない。

 自分の道具として扱い、自分の目的のためなら平気でそれを犠牲にする。

 ガリィ達に同情するわけじゃないが、こいつの仲間に対する物言いには

腹が立つ。

 

「自動人形のことはどうでもいい! エルフナインはどこだ!? あの

居城の中か!?」

「……知りたいか?」

 

 意味を含めたような口調で聞いてくる。

 

「そうだよな。俺がお前からエルフナインを奪ってもう数年、会いたく

ないわけないよな」

 

 シュバルツが後ろのビルに視線を移す。

 

「やっと来たか。キャロルが来ているぜ」

 

 俺達も後ろのビルに視線を移す。

 その屋上にはたしかにエルフナインと思しき子がいた。

 頭に三角帽子を被り、身体には漆黒のローブを纏っている。

 こう見ると本当にキャロルにそっくりだ。

 

「エルフナイン……」

「……」

 

 困惑しているキャロルをエルフナインは冷たい目で見下ろしていた。

 

 

 



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EPISODE63「開幕」

変わり果てた姿となって騎竜達の前に現れたエルフナイン。一体エルフナインに
何があったのか……?

OP:
「Exterminate」唄:水樹奈々

ED:
「Rebirth-day」唄:高垣彩陽




「エルフ、ナイン……?」

「……」

 

 雰囲気が変わったエルフナインにキャロルは困惑している。

 俺はエルフナインと話す機会はなかったが、エルフナインは控えめでは

あるが、心優しい子だとキャロルは言っていた。

 しかし今のエルフナインは何というか、冷たい目をしていて、とても

キャロルが言ってような子には見えなかった。

 

「……」

 

 エルフナインが俺達の前に降り立つ。

 

「なあ……あいつ本当にエルフナインなのか……? 初めて会った時と

雰囲気変わってるぞ……」

「ああ、あいつはエルフナインだ、間違いない。シュバルツ! エルフナインに

何をした!?」

「別にたいしたことじゃねぇよ。ただちょっと身体を弄らせただけだ」

「身体を弄っただと……? それはつまりエルフナインに自分の身体を

改造させたってことか!?」

「そうだ。チフォージュ・シャトーの真の力を発揮させるには錬金術師の力が

必要だった。だが、それには性別なしのエルフナインに女に―――いや、正確に

は女の身体を持ってもらう必要があった」

「おい、それはまさか!」

「ああ、そのまさかだよ。エルフナイン、見せてやれ」

 

 シュバルツの指示でエルフナインが魔法陣を展開。

 そこから取り出した竪琴が光り、エルフナインを幼女からグラマラスな

女性へと変えた。

 そんなエルフナインは背中に竪琴を背負った鎧を纏っている。

 

「ダウルダブラ、ケルト神話の主神ダグザが用いたとされる竪琴。だがそれを

エルフナインが……?」

「これ手に入れるの、苦労したんだぜ。まあ、かなり貴重なもんだから当然だが」

「でもそれとエルフナインの身体を女性にすることに何の関係が?」

「アレはファウストローブといって、女性の身体でなければ纏えない代物なんだ。

性別なしのエルフナインでは恐らく扱えなかっただろうからな。だが……」

「どうした?」

「エルフナインは俺と違って錬金術を扱えるほどの想い出の量はない。

仮にファウストローブを扱えたとしても錬金術の運用は……」

 

 エルフナインはキャロルのように数千年の時を生きているわけじゃない。

 しかも生きてる年は俺達以下じゃ錬金術を扱ってもすぐに想い出が空に

なって記憶喪失に陥ってしまうのがオチだ。

 

「あんたの言う通りだキャロル。エルフナインにはお前のように幾多の

想い出があるわけじゃない。なら奪えばいいんだよ、他人からな」

「どういうことだ?」

「あんた達が倒してくれたガリィ。こいつは倒される前にちょっとした仕事を

与えていた。それはミカを動かすのに必要な想い出を集めるついでにエルフナ

インの頭にぶち込む分の想い出を回収するって仕事をな。1人1人の想い出の量

は少なくても、それが複数集まれば膨大な量になる。塵も積もれば山となるっ

てやつだな」

「そんなことのために無関係の人達をあんな風にしたっていうのか……!」

 

 翼の眉間にシワが寄っている。

 想い出を吸われた者は生気を失い、抜け殻となる。

 そしてそれは死んだことと変わらない。

 怒りを覚えるのは当然だ。

 

「ゲームを盛り上げるための犠牲だ。それに人間は腐るほどいる。数人

減ったって問題はないだろ?」

「数の問題じゃない! 自分の都合のために誰かを犠牲にするなんて

間違ってる!」

「ふっ、なら見せてやるよ。ファウストローブの、チフォージュ・シャトーの

力をな。エルフナイン、歌え」

 

 シュバルツの指示でエルフナインが歌いはじめる。

 するとチフォージュ・シャトーが動きだし、4方向からビームを放つ。

 それが空を駆け、海を割り、そびえ立つ山を消し飛ばす。

 

「何て破壊力だ……」

「あんなの何度も撃たれたら、世界が……」

「これがあんた達の協力を経て作った歌だ。世界を破壊するための、な」

「まさかファラが言っていた楽譜っていうのは、このことだったのか!?」

「そうだよ。だからお前達には感謝してるんだぜ。あんた達がいなかったら

この曲は完成しなかったからな」

「こいつ……!」

「エルフナイン、シルバ、この場はお前達に任せる。1匹も残さずに

始末しろ」

 

 エルフナインとシルバに指示をすると、シュバルツはチフォージュ・シャトーに

向かって飛んでいく。

 

「待て!!!」

「俺とケリ着けたきゃ追いかけてこいよ! もっとも、お前が無事俺の

ところまでたどり着けたらの話だがな!」

「野郎……!」

「騎竜はシュバルツを追って! ここは私達が引き受ける!」

「私も同行する。さっきのシュバルツのセリフからチフォージュ・シャトーに

何かを用意してるに違いないからな」

「私も行く。何が待ってるかわからない以上、スリーマンセルでいったほうが

いいと思うから」

 

 たしかにそうだな。

 

「わかった、3人で行こう。この戦闘(ゲーム)を今日終わらせる!」

 

 こうして、俺達の世界の命運を賭けた総力戦が、スタートした。

 

 

―――――

 

 

 チフォージュ・シャトーに向かう騎竜達を見送った後、残った朱斗達は

シルバとエルフナインと対峙する。

 

「さて、シュバルツはあいつに任せるとして……厄介なやつ等と対峙することに

なったな」

 

 エルフナインが作った自動人形全ての能力が使えるシルバ。

 シュバルツの指示によって、ファウストローブ持ちの錬金術師に仕立て

上げさせられたエルフナイン。

 人数はこちらのほうが上とはいえ、シルバもエルフナインも一筋縄では

いかない相手なので、一概に朱斗達が有利とは言えない。

 

「エルフナインの実力は未知数、もう1人は能力全部乗せのチーター……こんな

やつ等に勝てるんデスか? あたし達……」

「勝てる勝てないは今重要じゃない。今大事なのは、俺達がやるかやらないかだ」

「火神の言う通りだ。やる前から諦めたら何もできない」

「分担してやつ等に対応する。キャロル、それでいいな?」

「ああ、エルフナインは俺、残りの者でシルバに対応する」

「待ってよ! 1人でエルフナインと戦う気なの!? エルフナインちゃんが

どんな力を持ってるか、まだわからないんだよ!?」

「そうデスよ! ここは半々にしたほうがいいんじゃ……」

「エルフナインは恐らく雷のように記憶を封印されている状態だ。だとしたら、

エルフナインと戦う上で重要なことはエルフナインに勝つことではなく、エルフ

ナインを以前の状態に戻すことだ。そしてそれができるのはエルフナインと長く

付き合ってきたキャロルだけだ」

 

 分配の理由にみんなは納得する。

 自分達はエルフナインのことをよく知らない。

 だから自分達の言葉はエルフナインには届かない。

 言葉を届かせることができるのは長い間同じ時を過ごしてきた者だけ

なのだ。

 

「納得したようだな。なら、行くぞ!」

 

 朱斗のその掛け声で、朱斗達は2手に別れた。

 

 

―――――

 

 

 エルフナインとシルバを朱斗達に任せ、俺達はチフォージュ・シャトーに

侵入した。

 

「ここにシュバルツが……でも一体どこに……?」

 

 だがここにシュバルツがいるのは間違いない。

 しらみ潰しに捜すしかないか。

 

【ようこそ、チフォージュ・シャトーへ】

 

 しばらく歩くと、どこからともなくウェル博士の声が聞こえてきた。

 

「ウェル博士、一体どこから!?」

 

 周囲を見渡しても、どこにもウェル博士の姿はない。

 

【僕はそこら辺にはいませんよ。ここから少し離れたところからこの声を

流しているのですから】

「いないと思ったらここで留守番していたわけか。だがここで話せるなら

丁度いい、シュバルツはどこだ?」

【シュバルツは最上階である3階にいらっしゃいますよ。チフォージュ・シャトーを

操って、この世界をメチャクチャにしてやるためにね】

「じゃあさっきの砲撃は……」

【僕ですよ。ヤントラ・サルヴァスパがあればチフォージュ・シャトーを

意のままに操れますからね。それがたとえ善人であっても、悪人であって

もね】

 

 確認がまだできてないので正確にはわからないが、少なくともあの砲撃で

かなりの被害が出たことは間違いない。

 でもこいつはそれを平然とやってのける。

 フロンティア事変でフロンティアを操った時のように。

 

【ドォオオオオオオオオオオオオォオオオオオォオオォオオンッ!】

 

 またしても聞こえてきた砲撃音。

 シュバルツが撃ちやがったのか。

 

【おや、また撃ったようですね。今はまだ平気ですが、これが何度も

繰り返されたら、世界はどうやってしまいますかね?】

「あまり時間がない! 急いで3階に向かうぞ!」

【くくっ、そう簡単にできるとお思いですか? だとしたら、心底甘い

人達ですねぇ!】

 

 そんなウェル博士の言葉と共に3人の人物が姿を現す。

 

「おい、ウソだろ……?」

 

 目のない頭に鋭い牙。

 何でも踏み潰してしまいそうな大きな腕と足。

 知っている、俺と翼さんはこいつを知っている。

 こいつは自律する完全聖遺物にしてフロンティア事変を焦土に変えようとした

災厄。

 名を……。

 

「……ネフィリム」

 

 口からヨダレを垂らしながら唸り声を上げる巨人の名を俺は静かに

呟いた。

 

 

 

 



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