けものフレンズ−After stories− (藺草影志(OVERBLOOD))
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1.弱点

サーバル「ねーねーかばんちゃん、これからおひるねしようよ!」

 

かばん「おひるね?」

 

サーバル「うん!」

 

かばん「いいよ。でも、どこでするの?」

 

サーバル「私のおきにいりのばしょ!このちかくにあるんだー。今日は天気もいいし、きっとすごくきもちいいよ!」

 

かばん「お気に入りの場所かー……いいね、ぼくも行きたい!」

 

サーバル「やったー!じゃあ私が案内してあげるね。ついてきて!」

 

かばん「うん!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

-30分後-

 

 

 

 

ガサガサ…

 

 

 

 

かばん「サ、サーバルちゃん……まだ着かないの?」

 

サーバル「大丈夫!もーすぐだから!がんばって!」

 

 

 

 

ガサガサ…

 

 

 

 

サーバル「あ、ほら!見えてきたよ!」

 

 

 

 

サァァ……

 

 

 

 

かばん「わぁ……!」

 

サーバル「どう?すごいでしょ!」

 

かばん「うん!広くて、風がすごく気持ちいいね!」

 

サーバル「でしょー!ここは「草原ちほー」って言うんだ!」

 

かばん「草原ちほーかぁ……」

 

サーバル「天気がいい日はこうやって……みゃー!」ピョンッ

 

 

 

ドサッ

 

 

 

サーバル「ねっころがっておひるねするのがオススメだよー」ゴロゴロ

 

 

サーバル「ほら、かばんちゃんも!」

 

かばん「う、うん。……えいっ!」ピョンッ

 

 

 

ドサッ

 

 

 

かばん「……」

 

サァァ……

 

 

 

 

 

かばん「きもちいい……」

 

サーバル「きもちいいねー」

 

 

 

かばん「サーバルちゃんはいつもここでおひるねしてるの?」

 

サーバル「ううん。ここはサバンナちほーからは遠いから、たまにしか来れないんだ」

 

かばん「そうなんだ」

 

サーバル「この前おひるねしたときは、気づいたら夕方になっちゃってたなー」

 

かばん「あはは。サーバルちゃんらしいね」

 

 

 

 

 

サァァ……

 

 

 

 

 

サーバル「なんだかこうしてると、空をとんでるみたいだねー……」

 

かばん「うん。このまま吸い込まれちゃいそうな、不思議な感じ……」

 

サーバル「トリのフレンズはみんなこんな気持ちなのかなー」

 

サーバル「あっ」

 

かばん「どうしたの?」

 

サーバル「あの雲、ちょっとかばんちゃんに似てるかも!」

 

かばん「え、どれどれ?」

 

サーバル「ほら、あそこの……」

 

かばん「えー。似てないよ」

 

サーバル「似てるよ!」

 

かばん「どっちかと言えば、あれはサーバルちゃんに似てると思うな」

 

サーバル「そうかなー?」

 

かばん「あの上に2つぴょんぴょんって出てるのがサーバルちゃんの耳で……」

 

サーバル「ちがうよ。あれはかばんちゃんのぼうしのはね!」

 

かばん「いや、あれは耳だよ」

 

サーバル「はねだもん!」

 

かばん「耳!」

 

サーバル「はね!」

 

かばん「むむむ……」

 

サーバル「ぐぬぬ~……」

 

 

2人「……」

 

 

 

2人「ぷっ」

 

 

 

2人「あははははっ!」

 

 

 

かばん「どっちでもいいね」

 

サーバル「どっちでもいいや」

 

サーバル「それにしても、雲っていろんな形してるよねー……なんでだろ?」

 

かばん「うーん……きっと、軽くてふわふわだからじゃない?」

 

サーバル「ふわふわ……いいなー、さわってみたい!」

 

かばん「ぼくもさわってみたいなー」

 

サーバル「ねー。トリのフレンズならさわれるのかな」

 

かばん「どうかな。すごく高いところにあるから、もしかしたら届かないかも」

 

サーバル「そっかー……」

 

かばん「でも、いつかさわってみたいね」

 

サーバル「うん!そうだね!」

 

サーバル「……あっ、あそこの雲、ジャパリまんみたい!」

 

かばん「えっ?……あ、本当だ。たしかに丸くてジャパリまんみたいな……」

 

 

かばん「……ってそれじゃあ、丸い雲はぜんぶジャパリまんになっちゃうよ!」

 

サーバル「えへへ、そうかも」

 

 

かばん「あんなにいっぱいジャパリまんがあったら、食べきれないね」

 

サーバル「私なら食べられるよ!」

 

かばん「えー、ほんと?」

 

サーバル「うん!私、1度に10このジャパリまんを食べたこともあるんだから!」

 

かばん「すごいなー。ぼくは3こでお腹いっぱいになっちゃうよ」

 

サーバル「えっへん!」

 

かばん「でもサーバルちゃん、あのジャパリまんは、10こよりもっとたくさんありそうだよ?」

 

サーバル「ええっ!そんなに!?」

 

かばん「うん。たぶん、30こくらいあると思うな」

 

サーバル「うぅ、30こもかー……」

 

かばん「いや、40こかも」

 

サーバル「もー!結局いくつなの?」

 

かばん「いくつだろうね。数えてみる?」

 

サーバル「うん!やってみよー!」

 

 

 

 

2人「いーち、にーい、さーん、しー……」

 

 

 

 

 

 

かばん「さんじゅはち……さんじゅきゅー……よんじゅう!」

 

 

かばん「ちょうど40こかー……サーバルちゃんはいくつになった?」

 

 

かばん「……あっ」

 

 

サーバル「すー……すー……」

 

 

かばん「……寝ちゃったんだ」

 

 

サーバル「……」スースー

 

 

かばん「……」

 

 

サーバル「……」スースー

 

 

かばん「……」

 

 

かばん(きもちよさそうに寝てるなあ)

 

 

かばん「……」

 

 

サーバル「……」

 

 

サーバル「……」ピョコッ

 

 

かばん「……ふふっ」

 

 

かばん(耳がぴょこんってした……かわいい)

 

 

かばん「……」

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん(そういえば、サーバルちゃんの耳ってけっこう大きいよね)

 

 

かばん「……」ジーッ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん(それに毛が生えてて、ふわふわしてそうで……)

 

 

かばん「……」

 

 

 

かばん「……」ソーッ…

 

 

サーバル「ううん……」

 

 

かばん「!」ビクッ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」ドキドキ

 

 

かばん(や、やっぱりダメだよね。起こしちゃうかもしれないし……)

 

 

かばん(……でも)

 

 

かばん「……」ジーッ

 

 

サーバル「……」ピョコピョコ

 

 

かばん「……」

 

 

かばん(すごくさわってみたい……!)

 

 

かばん「……」ウズウズ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん(ちょ、ちょっとだけなら……いいよね?)

 

 

かばん「……」

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」ソーッ…

 

 

 

かばん「……」チョンッ

 

 

サーバル「……」ピョコン

 

 

かばん「!」

 

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」プルプル

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」サワッ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……!」サワサワ

 

 

サーバル「ん……」

 

 

かばん(ああああっ……)

 

 

かばん「……♪」ナデナデ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん(すごい……思ってたよりもかたいけど、でも毛がさわさわしてて……)

 

 

かばん「……♪」サワサワ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん(なんだか、くせになっちゃいそう……)

 

 

かばん「……♪」スリスリ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」ツンツン

 

 

サーバル「……」ピョコッ

 

 

かばん「ふふふ……」

 

 

サーバル「んー……」

 

 

かばん「……♪」ナデナデ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……♪」サワサワ

 

 

サーバル「……」

 

 

サーバル「……かばんちゃん、なにしてるの?」

 

 

かばん「!!」ドキッ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「あっ!えっと、その……!」アセアセ

 

サーバル「……」

 

かばん「ご、ごめんねサーバルちゃん……起こしちゃった?」

 

サーバル「……ううん。だいじょーぶ」

 

かばん「そっか……」

 

 

サーバル「……でも、なにしてたの?」

 

かばん「その、ちょっとサーバルちゃんの耳をさわってみたくなっちゃって……」

 

サーバル「耳?」

 

かばん「うん。ほら、サーバルちゃんの耳って大きくて、ぴょこぴょこしてるでしょ?だから……」

 

サーバル「……」

 

かばん「……ごめんね。いや、だった?」

 

サーバル「……」

 

 

 

サーバル「……いいよ。さわっても」

 

かばん「えっ?」

 

 

 

サーバル「……」

 

かばん「……いいの?」

 

サーバル「うん。ちょっとだけなら、へーき」

 

かばん「……」

 

サーバル「あ、でも、引っぱったりしちゃダメだよ?」

 

かばん「うん」

 

サーバル「……」

 

かばん「……それじゃあ、失礼します」

 

 

 

かばん「……」サワッ

 

サーバル「んっ……」

 

 

かばん「……」サワサワ

 

サーバル「……」

 

 

かばん「痛くない?」

 

 

サーバル「うん」

 

かばん「……」ナデナデ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……♪」スリスリ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」サワ…

 

 

 

 

 

かばん「……」カリッ

 

サーバル「ふみゃあっ!!?」ゾクゾクッ

 

かばん「!?」ビクッ

 

サーバル「うみゃぁぁ……」

 

かばん「えっ、ご、ごめん!痛かった!?」

 

サーバル「うぅ……」

 

かばん「あわわ……どうしよう、サーバルちゃんが……!」

 

サーバル「まって……ち、ちがうの」

 

かばん「え?」

 

サーバル「み、耳のうしろは……その、弱くて……」

 

かばん「……」

 

サーバル「うー……」

 

かばん「……もしかして、くすぐったかったとか?」

 

サーバル「……」コクッ

 

かばん「そうなんだ……」

 

 

サーバル「……」

 

かばん「……」

 

 

 

かばん「……」サワッ

 

サーバル「……っ」ビクッ

 

 

 

かばん「……」ナデナデ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」スリスリ

 

 

サーバル「ん……」

 

 

かばん「……」サワ…

 

 

 

 

 

かばん「……」カリッ

 

サーバル「みゃぁああんっ!!!」ゾクゾクッ

 

 

 

 

 

サーバル「か ば ん ちゃん!!」

 

かばん「ご、ごめん。つい……」

 

 

サーバル「もー!おこるよ!」

 

かばん「ごめんねサーバルちゃん。もうしないから……」

 

サーバル「だーめ!そんなことするなら、もう耳はさわらせてあげないんだから!」

 

かばん「ええっ!?」

 

サーバル「ふーんだ!」クルッ

 

かばん「そ、そんなぁ……」

 

 

サーバル「……」

 

かばん「うぅ……」シュン

 

 

サーバル「……」

 

かばん「サーバルちゃん……」

 

サーバル「……」

 

 

 

サーバル「……」フリフリ

 

 

かばん「!」

 

 

かばん(こ、これは……)

 

 

かばん「……」

 

 

サーバル「……」フリフリ

 

 

かばん「……」ソーッ…

 

 

 

かばん「……」モフッ

 

サーバル「みゃっ!?」ビクッ

 

かばん「……」

 

サーバル「か、かばん、ちゃん……?」プルプル

 

 

 

かばん「……」

 

 

 

かばん「……」モフモフ

 

サーバル「……っ!」

 

 

 

かばん「……」モフモフ

 

サーバル「んんっ……」

 

 

 

かばん「……」モフモフ

 

サーバル「……」

 

かばん「……♪」モフモフモフモフモフモフ

 

サーバル「うみゃぁあああっ!!」バシッ!

 

かばん「いたっ!」

 

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……サ、サーバルちゃん?」

 

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」スッ

 

 

サーバル「……」サッ

 

 

かばん「……」

 

かばん「……」スッ

 

 

サーバル「……」サッ

 

 

かばん「……」

 

 

サーバル「……」

 

 

 

かばん「……」スッスッスッスッスッスッ

 

 

サーバル「……」サッサッサッサッサッサッ

 

 

 

かばん「……」スッ

 

サーバル「……」バシッ!

 

かばん「いたっ!」

 

 

 

かばん「もー!にげないでよ!」

 

サーバル「にげるよ!」

 

かばん「せっかくモフモフできもちよかったのに……」

 

サーバル「だからって、激しくさわりすぎだよー!」

 

かばん「えー……」

 

サーバル「しっぽは大事なところなんだから、もっとやさしくしなきゃダメ!」

 

かばん「……じゃあ、やさしくならさわってもいい?」

 

サーバル「え?」

 

かばん「お願い!あと一回だけでいいから!」

 

サーバル「えー……」

 

かばん「……」ジーッ

 

サーバル「うぅ……」

 

かばん「……」

 

サーバル「……」

 

 

 

サーバル「……しょーがないなー」

 

かばん「!」パァァ

 

 

 

サーバル「ちゃんとやさしくしてよー?」

 

かばん「うん!うん!」コクコク

 

サーバル「あ、あと、しっぽのつけ根はさわちゃダメだからね!」

 

かばん「分かった!」ウキウキ

 

サーバル「ほんとかなー……」

 

かばん「えへへー」ソーッ

 

 

かばん「……」モフッ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……♪」モフモフ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……♪」モミモミ

 

 

サーバル「みゃ……」ピクッ

 

 

かばん「……♪」サワサワ

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……」ナデナデ

 

 

サーバル「ん……」

 

 

かばん「……」

 

 

 

かばん「……」ススッ…

 

 

サーバル「!?」

 

 

 

かばん「……♪」サワサワ…

 

 

サーバル「やっ、そ、そっちは……!」ビクビク

 

かばん「……」モミモミ…

 

 

かばん「……」モミ…

 

 

 

 

かばん「……」キュッ

 

サーバル「うみゃぁっ!?」ビクッ!

 

 

 

 

かばん「……♪」モミモミ

 

サーバル「ふみゃっ、あっあっあっ……!」ゾクゾクッ

 

 

 

かばん「……♪」フニフニ

 

サーバル「ふあああっ……か、かばんちゃ……!」ビクビクッ

 

 

かばん「……♪」サワサワ

 

サーバル「ん……ふっ……んぅぅぅ……!」プルプル

 

 

 

かばん「……」モミモミ…

 

 

 

 

 

かばん「……」カリッ

 

サーバル「ふみゃぁぁああああっ!!!」ガバッ!

 

かばん「うわっ!」

 

 

サーバル「はぁ……はぁ……」

 

 

 

かばん「……」

 

かばん(さ、流石にやりすぎちゃったかな……)

 

 

 

サーバル「……」

 

 

 

サーバル「……っ!」キッ!

 

かばん「ひっ!」

 

 

 

 

サーバル「かーばーんーちゃーん……?」ゴゴゴゴゴ…

 

かばん「あわわわ……ご、ごめんなさい……!」ガタガタ

 

 

サーバル「私、もうおこったからね……」ゴゴゴゴゴ…

 

かばん「ごめんなさい……食べないで……!」

 

 

 

サーバル「言うこときかない悪いかばんちゃんはー……」

 

かばん「ひぃぃ……」ビクビク

 

 

 

 

サーバル「こうだーー!!!」ガバッ

 

かばん「うわぁぁあああ!!」

 

 

 

コチョコチョ…

 

 

 

 

 

かばん「……えっ?」

 

 

 

サーバル「うりゃうりゃー!」コチョコチョ

 

かばん「ちょっ、サーバルちゃん!?」

 

 

サーバル「このっ!このー!」コチョコチョ

 

かばん「んふっ、んふふっ……! や、やめて……」

 

サーバル「やめないよーだ!」コチョコチョ

 

かばん「あははっ! だめ……脇の下は……!」

 

 

 

サーバル「ここかー!」コチョコチョコチョコチョ

 

かばん「あははははははっ!!!」

 

 

 

サーバル「どうだー!まいったかー!」コチョコチョ

 

かばん「あはははっ!まいった!まいったからぁ!!」

 

サーバル「まだまだー!!」コチョコチョ

 

かばん「やめっ、もうやめへぇっ!!」

 

サーバル「うみゃみゃみゃみゃみゃーー!!」コチョコチョ

 

かばん「あーーっ!あははははっ!!」

 

 

 

_______

_________

______

 

 

 

 

かばん「……」ゼェゼェ

 

サーバル「もうあんなことしちゃダメだからね!」

 

かばん「は、はひ……ごめんなさい……」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

-ゆうえんち-

 

 

かばん「……ということがあったんです」

 

アライグマ「……」

 

フェネック「……」

 

 

 

かばん「あれからしばらくは耳もしっぽもさわらせて貰えなかったんですけど……最近また、ちょっとだけさわらせてくれるようになったんですよ!」

 

アライグマ「……」

 

フェネック「……」

 

 

かばん「久しぶりのしっぽはとってもやわらかくてモフモフで、最高だったなぁ……」ウットリ

 

アライグマ「……」

 

フェネック「……」

 

 

かばん「……って2人とも、なんでそんな変な顔をしてるんですか?」

 

フェネック「やー……なんというかー……」

 

アライグマ「……ごちそうさま、って感じなのだ」

 

かばん「?」

 

 

 

フェネック「それよりも、サーバルさんにそんな弱点があったなんて意外だねー」

 

アライグマ「確かに、びっくりなのだ!」

 

かばん「フェネックさんも、耳とかしっぽが弱かったりするんですか?」

 

フェネック「さーどうだろうねー」

 

かばん「……その、ちょっとさわってみたりしても」

 

アライグマ「ダメなのだ!フェネックに変なことをするのは、いくらかばんさんでも許せないのだ!」

 

かばん「ええっ!?へ、変なことって……」

 

 

アライグマ「フェネックのしっぽをさわれるのは、アライさんだけの特権なのだー!」

 

フェネック「あははー……そういうわけだから、ごめんねー」

 

かばん「うぅ……分かりました」シュン

 

アライグマ「かばんさんは、サーバルのしっぽをさわってればいいと思うのだ!」

 

フェネック「そうだねー……あ、噂をすればー」

 

かばん「え?」

 

 

 

サーバル「……」

 

 

 

かばん「あっ、サーバルちゃん」

 

 

サーバル「……」

 

 

かばん「……サーバルちゃん?どうしたの?」

 

 

サーバル「……」

 

 

 

サーバル「……かばんちゃんは、耳としっぽがついてれば誰でもいいんだ?」

 

かばん「え?」

 

 

 

サーバル「……」ムスーッ

 

かばん「え、いや、その……さっきのはそういうつもりじゃ……」

 

 

サーバル「……」

 

かばん「ただちょっと、さわってみたいなーって思っただけで……」

 

サーバル「そっかー……それなら、もう私のをさわらせてあげるのはやめようかなー」

 

かばん「ええっ!?そんなぁ!」

 

サーバル「ふーんだ。かばんちゃんなんかしらなーい」プイッ

 

かばん「ご、ごめんなさいサーバルちゃん!もうしないから……!」

 

サーバル「しらないもーん」

 

かばん「あぅぅ……」

 

 

 

サーバル「……」

 

かばん「サ、サーバルちゃん……」

 

 

サーバル「……」

 

かばん「うぅ……」

 

 

 

サーバル「……」

 

 

 

サーバル「……」チラッ

 

 

 

かばん「……」シュン…

 

 

 

サーバル「……」

 

 

 

 

 

 

サーバル「……もー、しょーがないなー」

 

 

かばん「!」

 

 

サーバル「今回だけ、とくべつにゆるしてあげる!」

 

かばん「本当!?」

 

サーバル「うん。だから、そんなにしょんぼりしないで?」

 

かばん「わーいっ!ありがとー!」ギュッ

 

サーバル「うみゃっ!?」ビクッ

 

 

 

かばん「えへへー♪」モフモフ

 

サーバル「もー!急にさわったらびっくりするじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

フェネック「ははー……やっぱりねー」

 

アライグマ「フェネック?何がやっぱりなのだ?」

 

フェネック「サーバルさんが本当に弱いのはー、耳やしっぽじゃなかったってことだよー」

 

アライグマ「えっ?じゃあ、どこが一番弱いのだ?」

 

フェネック「さーどこだろうねー?」

 

アライグマ「ええっ!教えてほしいのだ!気になるのだー!」

 

フェネック「まーまー……見ればわかると思んだけどなー」

 

アライグマ「わかんないのだ!教えてなのだ!」

 

フェネック「しょーがないなー。いーい?サーバルさんが弱いのはー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

かばん「……♪」モフモフ

 

サーバル「……かばんちゃん、そんなに私の耳やしっぽがすきなの?」

 

かばん「うん!だいすきだよー」ナデナデ

 

サーバル「そっかー……」

 

 

 

 

サーバル「……えへへー♪」

 

かばん「あれ?サーバルちゃん、なんだか嬉しそう?」

 

サーバル「ううん、なんでもないよー!」

 

かばん「?」

 

サーバル「……♪」

−−−−−−−−−−−−−−−−

next.



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2.お花見

かばん「それじゃあ、ボクたちはこれで」

 

サーバル「みんな、またねーっ」

 

かばん「……ふぅ」

 

サーバル「かばんちゃん、お疲れさま」

 

かばん「あはは、ありがとう」

 

サーバル「最近あちこちから声がかかっちゃってるね」

 

かばん「だねぇ……」

 

サーバル「きっとみんな、かばんちゃんを頼りにしてるんだよ」

 

かばん「そうかな」

 

サーバル「そうだよ。絶対」

 

かばん「何だかサーバルちゃん、嬉しそうだね」

 

サーバル「え、そ、そう?」

 

かばん「ボクにはそう見えたかな」

 

サーバル「う、うーん。多分、なんだけど……」

 

サーバル「フレンズのみんなに、かばんちゃんが頼られてることが嬉しいんだ」

 

かばん「それはボクも嬉しいけど、でもどうしてサーバルちゃんも?」

 

サーバル「え、えと、その……」

 

かばん「?」

 

サーバル「……私の大事な人がみんなの力になってるから、かな」

 

かばん「そうなんだ……。ありがとう、サーバルちゃん」

 

サーバル「……き、今日はこれで全部終わったし、帰ろっか」

 

かばん「うん。……あ、ちょっと待って」

 

サーバル「えっ?まだ何かあったっけ?」

 

かばん「今日はもう帰るだけだし、その前にお花見していかない?」

 

サーバル「おはなみ、って?」

 

かばん「えぇと、綺麗に咲いたお花をみんなで眺めるの」

 

サーバル「へぇー。やっぱりかばんちゃん、物知りだね」

 

かばん「時間があれば図書館で本ばっかり読んでるからかな」

 

かばん「……それで、さっき聞いたんだけどこの近くにいい場所があるんだって」

 

かばん「サーバルちゃんさえよければ、これから行ってみない……?」

 

サーバル「もちろん行くよ!かばんちゃんと一緒だもん」

 

かばん「じゃあ、行ってみよう。ラッキーさん、お願いします」

 

ボス「ワカッタヨ、任セテ」

 

ボス「着イタヨ。話シテイタノハ、ココノコトダネ」

 

かばん「うわぁー……」

 

サーバル「すっ、ごーい……!すごい、すごいねっ!」

 

かばん「うん……。辺り一面ピンク色で……」

 

サーバル「私、こんな色した葉っぱの木って初めてみたよ……」

 

かばん「これは葉っぱじゃなくて、お花が咲いてるんだ。だからこの色は、お花の色」

 

サーバル「このピンクは全部お花の色なんだ……」

 

かばん「でも、どうしてここだけに集まってるのかな」

 

ボス「コノ辺リハ、フレンズト一緒ニ花見ヲ楽シメルヨウニシテアルヨ」

 

ボス「セッカクダカラ、サーバルト一緒ニ散策シテミタラドウカナ?」

 

かばん「え、いいんですか?」

 

ボス「ソノタメノエリアダカラネ。ボクハ、ココデ待ッテルヨ」

 

かばん「ありがとうございます。サーバルちゃん、行ってみよう」

 

サーバル「うんっ」

 

かばん「わぁ……。すごいね、サーバルちゃん」

 

サーバル「うん……。どこを見てもピンク色のお花が咲いて、それがいくつも重なってて……」

 

サーバル「何だかその中に私たちが埋まっちゃったみたいだね」

 

かばん「この中にだったら、埋まってみてもいいかも」

 

サーバル「えぇー?例えばの話でほんとに埋まるのはちょっとなぁ」

 

かばん「だってこんなに素敵なお花に囲まれたら、きっと幸せな気持ちになるんじゃないかなって」

 

サーバル「それは、わからなくもないかな。眺めてるだけでも、ふわふわした気分になってくるから」

 

かばん「ただ、実際にやるわけにはいかないよね。咲いてるのをたくさんちぎってこなきゃだし」

 

サーバル「あはは……」

 

かばん「……あ、サーバルちゃん。あれ見て」

 

サーバル「あれって周りの木と同じ、だよね。同じ色のお花咲いてるし」

 

サーバル「だけど、あの木だけすごくおっきいねー……」

 

かばん「どのくらいあるんだろうね……」

 

サーバル「さばんなにあった木より大きいかも……」

 

かばん「ねぇ、あの木の下で休憩していこうよ」

 

サーバル「ちょっと疲れたし、そうしよっか」

 

かばん「ふぅっ……」

 

サーバル「綺麗だねー……」

 

かばん「そうだねぇ……」

 

サーバル「でも、何でこんな綺麗な色してるのかな」

 

かばん「うーん……」

 

かばん「……あっ」

 

サーバル「何かわかったの?」

 

かばん「……このお花、ピンク色でしょ?ピンク色って赤と白が混ざるとできるんだけど」

 

かばん「砂漠の、ツチノコさんがいたところに赤いセルリアンがいたよね?」

 

サーバル「い、いたけど……」

 

かばん「……さっきこの場所を聞いたときに教えてもらった話なんだけどね、実は」

 

かばん「昔、この辺りに大きな赤いセルリアンが出たんだって」

 

かばん「そのときはみんなで協力してやっつけたから被害は出なかったんだ」

 

かばん「でも、倒したときに欠片がこの辺に弾け飛んだの……」

 

サーバル「か、かばんちゃん?何言ってるのかな……?」

 

かばん「今でもここに残ってる欠片とか、地面に染み込んだ何かをこの木は吸い上げて……」

 

かばん「白いはずの花がいつしかピンク色の花を咲かすようになったんだ……」

 

かばん「そして、満月の夜になると赤いセルリアンが……」

 

サーバル「に、にゃーっ!ダメ、やめてっ!この話おしまいっ!」

 

かばん「……あははっ、ごめんね。嘘だよ、サーバルちゃん」

 

サーバル「……嘘?な、何だ、嘘かぁ」

 

サーバル「もうっ。オオカミみたいなこと言うのやめてよ、怖いよーっ」

 

かばん「怖くてぶるぶるしてるサーバルちゃんが可愛かったから、つい」

 

サーバル「でも、かばんちゃんの話は嘘だとしてもこの色はどうやって出してるんだろうね」

 

かばん「お花をじっくり観察したことなんてあんまりないけど、見たことない色だよね」

 

サーバル「ほんとに最初は白かったのかな。それとも、これが普通なのかな」

 

かばん「今度図書館に行ったら調べてみよっか」

 

サーバル「……ボスが色のついた水あげてこの色にしてる、とか」

 

かばん「な、何かやだなぁ。色のついた水って」

 

サーバル「自分で言ったんだけど、ちょっと気持ち悪いかも……」

 

かばん「……不思議なところだね。ここ」

 

サーバル「不思議?」

 

かばん「素敵で、綺麗で、だけど今にも消えちゃいそうな気がして……」

 

かばん「……まるでボクとサーバルちゃん、2人だけの世界になっちゃったみたい」

 

サーバル「あ、ぅ……」

 

かばん「サーバルちゃん?」

 

サーバル「……何でも、ないよ。ただ、かばんちゃんと2人なのが、嬉しくて」

 

かばん「えっ?」

 

サーバル「最近、忙しかったでしょ。セルリアンとか、みんなのお願いとか、いろいろあって……」

 

サーバル「こんな風にかばんちゃんと2人でゆっくりする時間、なかったから……」

 

かばん「うん……」

 

サーバル「だからね、私たち2人だけの世界で、2人きりでいられて、とっても嬉しいんだ」

 

かばん「そっか……。ごめんね、気づいてあげられなくて」

 

サーバル「気にしないで。かばんちゃんが頼られて嬉しいっていうのも、嘘じゃないから」

 

かばん「……それでも、気にしちゃうよ。だって、サーバルちゃんはボクの大事な人だもん」

 

サーバル「みゃっ!?」

 

かばん「サーバルちゃん、ボクを大事な人って言ってくれたでしょ。それと同じ」

 

かばん「ボクの大事な人を、サーバルちゃんを悲しい気持ちにさせたくないよ」

 

かばん「サーバルちゃんには、どんなときも笑っていてほしいな」

 

サーバル「……えへへっ。ありがとう、かばんちゃん」

 

かばん「わっ……。どうしたの、肩に頭乗せてきたりして」

 

サーバル「……私ね、かばんちゃんとこんな風に過ごしてみたかったの」

 

サーバル「かばんちゃんと2人きりで、かばんちゃんと2人だけの場所で……」

 

かばん「それはさっきも言ってた、2人でゆっくりしたかったって……」

 

サーバル「……かばんちゃんと2人でゆっくりしたいっていうのは、本当」

 

サーバル「だけど、私が嬉しかったのはもっと大きな理由があるんだ……」

 

かばん「もっと大きな理由?」

 

サーバル「それをかばんちゃんに伝えようかって、ずっと迷ってたの……」

 

サーバル「でも、こうしてかばんちゃんと2人きりで過ごして、ちゃんと話そうって思ったんだ」

 

かばん「サーバル、ちゃん。その、大きな理由、教えてくれる?」

 

サーバル「……かばんちゃん。私、かばんちゃんのことが好き」

 

かばん「……ありがとう。サーバルちゃん」

 

かばん「ボクも、サーバルちゃんのこと、好きだよ」

 

サーバル「違うの。私の好きと、かばんちゃんの好きは……」

 

かばん「違わないよ。同じだって、言ったじゃない」

 

サーバル「同じ……?じゃあ、かばんちゃんは……」

 

かばん「サーバルちゃんと一緒。ただひとつ違うのは、相手がサーバルちゃんってことだけ」

 

サーバル「……ほんと?ほんとにかばんちゃん、私のことっ」

 

かばん「うん。サーバルちゃんのこと、そういう意味で好き」

 

サーバル「そっか、そうなんだ……。私も、かばんちゃんも……」

 

かばん「……サーバルちゃん。手、握ってもいい?」

 

サーバル「う、い、いいよ。ちょっと意識しちゃって恥ずかしいけど……」

 

かばん「ありがとう。じゃあ……」

 

サーバル「あ、あれ?いつもしてるのとはちょっと違うね」

 

かばん「こうして指を絡ませて握ると、特別なものになるって本に書いてあったんだ」

 

かばん「ボクたちは、その。もう友達じゃなくて、特別になったから……」

 

サーバル「……何だか、手がすごくあっついね」

 

かばん「握った手の中に火があるみたい……」

 

サーバル「……好き。好きだよ、かばんちゃん」

 

かばん「ボクも。サーバルちゃんが、好き……」

 

サーバル「……ねぇ、かばんちゃん」

 

かばん「なぁに?」

 

サーバル「私たち、これからもずっと一緒だよ」

 

かばん「もちろん。ボクの隣は、サーバルちゃんだけの場所だから」

 

かばん「どんなことがあったとしても、ずっと、ずっと一緒だよ」

 

サーバル「……このお花、次はいつ咲くのか私にはわからないけど」

 

サーバル「また、ここでおはなみをしようね。私と、かばんちゃんの2人だけで」

 

かばん「うん。約束だよっ」

−−−−−−−−−−−−−−−−

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3.ずっと一緒

サーバル「かばんちゃーん。ただいまーっ」

 

かばん「……」

 

サーバル「ごめんねー、待っててもらって。最近自分で走らなくて……」

 

かばん「……」

 

サーバル「思いっきり走り回れて楽しかった……?」

 

かばん「……」

 

サーバル「かばんちゃん?かばんちゃんってば!」

 

かばん「うえっ!?……さ、サーバルちゃん。帰ってたんだ」

 

サーバル「もう。全然返事してくれないんだもん」

 

かばん「ご、ごめんね。つい夢中になっちゃって……」

 

サーバル「そんなに夢中になって、何をしてたの?」

 

かばん「えっと、これを読んでたんだ」

 

サーバル「これって、本だよね。図書館にいっぱいある……」

 

かばん「うん。図書館に行ったとき、いくつか貸してもらって」

 

サーバル「へぇー」

 

かばん「サーバルちゃんも見てみる?」

 

サーバル「……うーん。やっぱり私には何なのかさっぱりだよー」

 

サーバル「せめて絵があれば少しはわかるかもしれないけど……」

 

かばん「そういう本もあるから、あとで一緒に見ようね」

 

サーバル「ほんと?楽しみだなぁ」

 

サーバル「でも、かばんちゃんはすごいなー。こんなにたくさんの文字がわかるんだから」

 

かばん「そ、そうかな」

 

サーバル「そうだよー。私には変な形の模様にしか見えないもん」

 

かばん「ちょっと恥ずかしいけど、でもサーバルちゃんに褒めてもらったのは嬉しいな」

 

サーバル「ねぇ、このたくさんの文字にはどういう意味があるの?」

 

かばん「これは誰かが書いた作り物の物語だね」

 

サーバル「作り物の、物語?」

 

かばん「そうだなぁ……。例えばボクとサーバルちゃんの冒険みたいな本当にあったことじゃなくて」

 

かばん「もしも図書館に向かわずにサバンナで暮らしたら、を想像して書いたって感じかな」

 

サーバル「かばんちゃんと一緒にさばんなで、かぁ。何だか考えられないよ」

 

サーバル「それに私はへっちゃらだけど、かばんちゃんにはあの暑さは大変なんじゃない?」

 

かばん「あはは……。涼しくなるまで日陰でじっとしてるかもね」

 

かばん「それにボクはどこかに住むのなら、湖畔や図書館の辺りが過ごしやすくていいなぁ」

 

サーバル「あの辺りは私も過ごしやすかったなー。思いっきり走り回れるし」

 

かばん「と、そんな感じの誰かが考えたお話が書いてある本なんだ」

 

サーバル「うぅー、何だかすっごくおもしろそう……。でも私はさっぱりだし……」

 

かばん「大丈夫だよ。ほら、これならわかるでしょ?」

 

サーバル「絵がついてる……。もしかして、さっき言ってた?」

 

かばん「うん、絵がついてる本。どうかな?」

 

サーバル「これなら私にもわかるかも。あ、でもちょっとだけど文字もあるんだ……」

 

かばん「そこはボクが読んであげるから。ほら、一緒に見よう?」

 

サーバル「わーいっ」

 

かばん(……とは言ったけど、ボクもこれ読んでないからどういう内容なのかわからないんだよね)

 

かばん(それにサーバルちゃんがものすごく近くて、何だか気になっちゃう……)

 

サーバル「かばんちゃん?」

 

かばん「あっ、ううん、何でもないよ。じゃあ始めるね」

 

サーバル「よろしくねっ」

 

『ここはジャパリパーク。ヒトとフレンズが仲良く暮らす大きな施設』

 

サーバル「ジャパリパークって、ここのことだよね。それを本にしたのかな」

 

かばん「そうみたいだね。ヒトとフレンズさんが一緒に暮らしてるのかぁ」

 

サーバル「ほら、早く続きっ」

 

かばん「う、うん。えと……」

 

『大勢のヒトとフレンズが暮らすこの場所で、彼女はあの子に出会った』

 

『これは1人の少女とフレンズの、恋のものが』

 

かばん「ええぇっ!?」

 

サーバル「わあっ!?き、急に何!?」

 

かばん「だ、だって、だってこれっ!」

 

サーバル「この本?この本がどうしたの?」

 

かばん「それは、その、えっと……」

 

かばん「……さ、サーバルちゃん。恋とか、恋愛ってわかる?」

 

サーバル「なんとなくはわかるかな。誰かのことが特別好きってことだよね?」

 

かばん「それはそうなんだけど……」

 

サーバル「……あ。もしかしてこれってそういう本なの?」

 

かばん「う、うん」

 

サーバル「そ、そっかぁ……」

 

かばん「……」

 

サーバル「……」

 

かばん「……べ、別のにしよっか。他にもいくつかあるから」

 

サーバル「かばんちゃん。これ、続き読んでほしいな」

 

かばん「えっ……」

 

サーバル「ダメ……?」

 

かばん「だ、ダメじゃないけど……」

 

サーバル「かばんちゃんと一緒なのは恥ずかしいっていうか、照れちゃうけど」

 

サーバル「私は、これが気になるな」

 

かばん「そう、なんだ……。じゃあ、続きから読むね……」

 

かばん(うぅ……。ただでさえサーバルちゃんが近くて気になってるのに)

 

かばん(一緒に恋愛のお話を読むなんて、すっごく恥ずかしい……)

 

かばん(何より、これ女の子同士で、余計にサーバルちゃんを意識して、ドキドキしちゃう……)

 

サーバル「この女の子、フレンズの子のことがとっても好きなんだね」

 

かばん「そ、そうだね……」

 

かばん(本の内容が恋愛だから、それに影響されてるだけ……。そのはず、なのに)

 

かばん(ボクにはフレンズさんを想う女の子の気持ちが痛いくらいにわかってしまって……)

 

サーバル「あれ。ねぇ、手を繋いでるけどこれって普通じゃないよね?」

 

かばん「これ、は……。すっごく仲良くなったらするやつで……」

 

サーバル「へぇー。じゃあ、あとで私たちもやってみようよ」

 

サーバル「私たちだって、すっごく仲良しなんだから」

 

かばん「あ、う、うん……」

 

かばん(サーバルちゃんのことは好きだけど、そういう意味ってわけじゃ……)

 

かばん(さっきまではそう思ってたのに、今は絶対そうだと言えなくて……)

 

サーバル「わぁ……。この子たち、抱き合ってる……」

 

サーバル「……えへへ、何か照れちゃうね。かばんちゃんと一緒にこの2人を覗いてるみたいで」

 

かばん「あ、あはは……」

 

サーバル「……もうすぐで終わり、かな。めくってる方があとちょっとになってるし、お話も素敵な感じだし」

 

サーバル「ワクワク、じゃない。ちょっとドキドキしちゃう……」

 

かばん「あ……」

 

かばん(今のサーバルちゃん、すごく、すっごく……)

 

かばん(どう言ったらいいんだろう……。可愛いとか綺麗ってだけじゃなくて、それが全部混ざったみたいな……)

 

サーバル「かばんちゃん。続き、読んで?」

 

かばん「……へっ?あ、えと……」

 

サーバル「……かばんちゃん?」

 

かばん(……無理、これ以上は無理!サーバルちゃんの前でこんなの読めないよぉ!)

 

サーバル「だ、大丈夫?顔、真っ赤だよ?」

 

かばん「だいじょっ……!」

 

サーバル「えぇっ!?ほ、ほんとにどうしたの、本に顔押しつけて」

 

かばん(ダメだ……。サーバルちゃんの顔、まともに見れない……!)

 

かばん(サーバルちゃんの顔見るだけであっつくなって、すっごくドキドキして……)

 

かばん(やっぱり、ボク、サーバルちゃんのことが好きなんだ……。友達じゃなくて、恋の対象として……)

 

かばん(この女の子みたいに、ボクもサーバルちゃんが……)

 

かばん(……言うなら今しかない、よね。こんな機会、そうそうないだろうし)

 

かばん(ボクの気持ちを、サーバルちゃんにっ……!)

 

サーバル「あれ……?かばんちゃん、何で閉じちゃうの?」

 

かばん「……サーバルちゃん。サーバルちゃんはボクのこと、どう思ってる?」

 

サーバル「どうって、友達だよ。とっても素敵で、仲良しで……」

 

サーバル「最高の友達だって、私はそう思ってるよ」

 

かばん「……うん、そっか」

 

サーバル「かばんちゃん……?」

 

かばん「ボクもサーバルちゃんのこと、仲良しの友達だって、そう思ってる。そう思ってた……」

 

サーバル「思ってた?」

 

かばん「……一緒に本を読んで、気づいたんだ。ボクと、この本の女の子は同じなんだって」

 

サーバル「えぇと……?かばんちゃんは何が言いたいの……?」

 

かばん「……サーバルちゃん。ボクは、サーバルちゃんのことが、好き」

 

かばん「友達としてじゃなくて、この本の女の子とフレンズさんみたいな恋愛の対象として……」

 

サーバル「……えっ?」

 

かばん「ボクは、ボクはサーバルちゃんに……」

 

かばん「……恋を、しちゃったんだ」

 

サーバル「えっ……?え、えと、そう、なの……」

 

かばん「うん……」

 

サーバル「へ、へぇー……」

 

かばん(あぁ、何だかあんまりよくない返事……。やっぱり、ダメだったかな……)

 

かばん(それに勢いで言っちゃったけど、もしこれで嫌われたりしたらボクはひとりぼっちに……)

 

サーバル「……かばんちゃんは私と、その本の2人みたいになりたいんだよね?」

 

かばん「そう、だよ……」

 

サーバル「私ね、恋とか恋愛ってよくわかんないんだ。その、恋をして、恋をされてそのあとどうなるのかって」

 

サーバル「だけど、本の2人はとっても仲良しで、嬉しそうで、楽しそうで、それが少し羨ましくて……」

 

サーバル「本を見ているうちに、かばんちゃんとこの2人みたいになりたいって思ったの」

 

サーバル「かばんちゃんと一緒にいて、お話をして、触って、ドキドキしたい。物語の2人がしたこと全部、かばんちゃんとやってみたい」

 

サーバル「だってかばんちゃんは、たった1人の特別な人だから……」

 

かばん「サーバルちゃんっ……」

 

サーバル「かばんちゃん、私のことを好きになって、好きって言ってくれてありがとう。私、とっても、とっても嬉しいよ」

 

サーバル「私も、かばんちゃんが誰よりも大好きっ!」

 

かばん「じゃあっ……!」

 

サーバル「うん!私、かばんちゃんの……」

 

サーバル「……えぇと、どう言えばいいのかな?恋をした同士は友達じゃないと思うし」

 

サーバル「とにかく、私はかばんちゃんと本の2人みたいな関係になりたいな」

 

かばん「……ほ、本当に?」

 

サーバル「もちろんだよ。どうして?」

 

かばん「その、ボクが好きって言ったあと、何だか気のない返事をしてたから……」

 

かばん「もうダメだって、嫌われたって思っちゃった……」

 

サーバル「わ、私はそんなつもりじゃなかったんだよ。ごめんね、怖い思いさせちゃって」

 

サーバル「心配しなくても、私はかばんちゃんが大好きだから。大丈夫だよ」

 

かばん「……あの、ね。ボクたちや本の2人みたいな関係を恋人って言うんだって」

 

サーバル「こいびと?」

 

かばん「うん。恋人」

 

サーバル「こいびと、かぁ……」

 

サーバル「……何でかな。ちょっと恥ずかしいけど、でもそう言われて嬉しいんだ」

 

かばん「ボクもサーバルちゃんと、その、こ、恋人になれて……」

 

かばん「……とっても、嬉しいな」

 

サーバル「えっと、これで私たちはこいびと、になったんだよね?」

 

かばん「ボクはそのつもり、だけど……」

 

サーバル「……えへへ。かばんちゃんとこいびとになれたんだって思うと、ね」

 

サーバル「たくさんの嬉しいと楽しいでいっぱいで、私からこぼれちゃいそうだよ」

 

かばん「……そう言ってもらえると、ボクも嬉しいな」

 

かばん「サーバルちゃん。ボクの恋人になってくれて、ありがとう」

 

サーバル「私も、こいびとにしてくれてありがとう。かばんちゃんのこいびとになれて、すっごく嬉しいよ」

 

かばん「……恋人になったら何をするのかとか、どうなるのとか、ボクも全然わからない」

 

かばん「でも、まずはこうして手を繋ぐことから始めよっか」

 

サーバル「これって、さっきの……」

 

かばん「こうしていれば、サーバルちゃんと一緒にいられるね」

 

サーバル「かばんちゃん……」

 

かばん「サーバルちゃん。ボクたち、どこに行っても、何があっても、ずっと一緒だよっ」

 

サーバル「うんっ。ずっと、ずーっと一緒にいようねっ」

−−−−−−−−−−−−−−−

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4.嘘つき

アリツカゲラ「いらっしゃいませ~、ろっじアリツカにようこそ~!」

 

 

わたしはフレンズのアリツカゲラ。

このちほーでぐうぜん見つけたろっじの管理をしています。

あ、「ろっじ」というのは博士たちによるとお泊りができる場所のことらしいです。

 

 

キタキツネ「……まんぞく」

 

ギンギツネ「とてもいいサービスだったわ。わたしたちも見習わなくちゃ。またくるわね」

 

アリツカゲラ「ありがとうございました~(ペコリ)」

 

 

おかげさまで最近はお客さまの評判もよく、遠くのちほーから来てくれるフレンズの方も多くなってきました。

ろっじは広いので一人でみるのは大変ですけどとてもやりがいがあります。

 

 

アリツカゲラ「さてと。次のお客さまのためにお掃除しないと」

 

 

だけど同時にとある問題もあって……

 

 

????「きゃあああーー!!」

 

アリツカゲラ「森の方から……もしかして!?」

 

~~夜の森~~

 

パンサーカメレオン「ひいいぃぃ~~(gkgkbrbr)」

 

シロサイ「なんですの誰ですの~!!」

 

 

バサッバサッ

アリツカゲラ「あの~、どうかしましたか?」

 

ヘラジカ「おのれぇ、セルリアンか!わたしと勝負しろぉ!」

 

ブンブン

 

アリツカゲラ「わあっ、危ないですよぉ!わたしはただのアリツカゲラです、やめてくださいー!」

 

ヘラジカ「な、なに?それはすまない、てっきりさっきのくせ者かと……」

 

アリツカゲラ「くせ者?なにがあったんですか?」

 

ヤマアラシ「わ、わたしたち合戦30回記念でろっじってところに泊まりに来たんですぅ」

 

アリツカゲラ「わぁ、わたしそこの管理人なんです。ありがとうございます~!」

 

オオアルマジロ「よよよ~、そしたら森から黒い何かが飛び出して『がおーっ』って……」

 

シロサイ「すっごくこわかったですの~!」

 

ハシビロコウ「……(コクコク)」

 

アリツカゲラ「やっぱりまたそうだったんですねぇ」

 

カメレオン「ま、また?でござるか?」

 

アリツカゲラ「ちかごろこの辺りでみなさんと同じようなことがよくあるんですよ~」

 

ヘラジカ「なんと!やはりセルリアンが!?」

 

アリツカゲラ「ろっじを開く前、ハンターの方に見てもらったところこのちほーにセルリアンはほとんどいないそうなんですが~」

アリツカゲラ「しかしせっかく来ていただいたのにお騒がせして申し訳ないです……念のため周囲を見て回りますので」

 

ヘラジカ「では我々も共に行こう!」

 

オオアルマジロ「ええ!?」

 

ヤマアラシ「ヘラジカさま、わたしは怖くてムリですぅ~!」

 

アリツカゲラ「わたしならこの辺りはよく知ってるので大丈夫ですから~」

 

ヘラジカ「むむ、しかたない。我々は先にろっじに向かうとしよう」

 

ハシビロコウ「気をつけてね……」

 

アリツカゲラ「ありがとうございます~。ろっじはこの道をまっすぐ行けばつきますよ~」

 

~~森の奥~~

 

 

アリツカゲラ「うう~ん、とはいえもし本当にセルリアンならどうしよう……戦うのは苦手だし~」

アリツカゲラ「あっそうだ!動物だった時にしていた自分を強く見せる方法、あれをやってみようかなぁ」

 

 

ガサッガサガサ!

 

アリツカゲラ「誰ですかぁ!?」

 

ガサッ

????「うー!がおーっ!!」

 

アリツカゲラ「!!」

バサァッ!

 

????「!!? うわああっ、おおきいぃ!(ドテッ)」

 

アリツカゲラ「う、うまくいきましたぁ~。急に羽を広げて威嚇するなんて久しぶり……あれ?」

 

タイリクオオカミ「う、うぅ~ん……」

 

アリツカゲラ「フレンズさん、ですか~?」

 

タイリクオオカミ「うっ!し、しまった……まさかこちらがおどろかされるなんて……」

 

 

~~~~~~

 

 

アリツカゲラ「それじゃあ、あなたがこの付近でフレンズをおどろかせていた犯人さんですか」

 

タイリクオオカミ「まあ、そういうことになるかな」

 

アリツカゲラ「堂々としてますね~。セルリアンかと思いましたよ~」

 

タイリクオオカミ「ハハハッ。セルリアンがしゃべるわけないじゃないか。いや待てよ、しゃべるセルリアン……アリだな」

 

アリツカゲラ「あのぉ。じゃあなんでみなさんをおどかしたんですか~?こんな夜中に~」

 

タイリクオオカミ「わたしが夜行性だし暗い方が恐ろしいだろう?きみも鳥だからてっきり夜目が利かず怖がると思ったんだが」

 

アリツカゲラ「鳥目といってもほとんどの鳥はそこまで見えないわけじゃないですよ~」

 

タイリクオオカミ「なるほど。使えそうなネタだ、覚えておくよ」

 

アリツカゲラ「じゃなくて、どうしてこんなことを?」

 

タイリクオオカミ「ふふふ、それはね……これを見たまえ!」

 

 

アリツカゲラ「? これは紙?絵ですか?」

 

タイリクオオカミ「少しちがうね。これはマンガといってお話になってるんだ」

 

アリツカゲラ「へぇ~、確かによく見るとなんだか物語になっててすごいですね~!」

 

タイリクオオカミ「おもしろいだろう?わたしはこれを描く作家というものになろうと思うんだ」

 

アリツカゲラ「なるほど~。でもそれがどうしてビックリさせることに?」

 

 

タイリクオオカミ「わたしはホラーものを描きたいんだ!フレンズが恐ろしい目にあう話さ」

 

タイリクオオカミ「だけどフレンズは動物だった時とちがって本当の狩りなんかしないしみんな基本的に平和にくらしてる」

 

タイリクオオカミ「だからわたしはみんなをおどろかせてその顔をマンガの参考にさせてもらってるってわけ」

 

 

アリツカゲラ「それはいいですけどわたしのろっじのお客さんをおどかすのはかわいそうですよ~!」

 

タイリクオオカミ「ああ、きみがあのろっじのフレンズだったのか。あれがオープンしてから色んな子が来て執筆がはかどったよ」

 

アリツカゲラ「そんなぁ~!」

 

 

タイリクオオカミ「……まあ今回はきみにつかまっちゃったし次からは少しひかえるよ」

 

アリツカゲラ「うぅ~、やめる気はないんですか~?」

 

タイリクオオカミ「これが中々たのしくてね。まあケガはさせないと誓おう……またな!」

 

バッ

 

 

アリツカゲラ「あっ!……もういなくなっちゃいました。すごい速さ……」

 

オオカミさんの言うとおり、それからろっじのお客さんが怖がることは減りました。

でもやっぱり時々そんな目にあうフレンズさんはいるようで……

 

わたしはお客さんはもちろん、オオカミさんがなんだか心配で森を見回ることが多くなりました。

そんなある日……

 

 

~~空~~

 

 

アリツカゲラ「はぁ~、今日もオオカミさんいないなぁ。もう一度お話したかったんだけど……」

 

 

??「きゃ、ガアーーーー!ガアーーーー!!ガアーーーー!!!」

 

????「うわああああっ!!」

 

 

……ドーンッ

 

 

アリツカゲラ「なっ、なんですか今の音は!?というか、二つ目の叫び声は……オオカミさん!?」

 

 

~~森~~

 

 

バサッバサッ

アリツカゲラ「あ、あれは……」

 

 

トキ「けほっけほっ、び、ビックリした……あら?アナタは?」

 

アリツカゲラ「アリツカゲラです~。あの~、なにがあったんですか?」

 

 

トキ「わたしはトキ。仲間を探してこのちほーに来てみたの。そしたら急に茂みから何かが出てきて」

 

トキ「……あまりにおどろいたから威嚇の鳴き声を出しちゃったの。ごめんなさい、うるさくて」

 

 

アリツカゲラ「いえそれはいいんですけど……さっきの一つ目の声はトキさんだったんですね」

 

トキ「ええ。急に出てきたのは大声をあげながら森の中に走っていったわ。そのあと何かぶつかった音がしたけど」

 

アリツカゲラ「やっぱり……!それきっとオオカミさんです、探さないと!」

 

バサッ!

 

トキ「あっ、行っちゃった……なんだったのかしら」

 

 

~~森の奥~~

 

 

タイリクオオカミ「う、うぅ……(フラフラ)」

 

 

アリツカゲラ「……いました、オオカミさん!」

 

タイリクオオカミ「や、やあ……また、会ったね……」

バタッ

 

アリツカゲラ「あっ!大丈夫ですか!どうしてこんな……」

 

タイリクオオカミ「また……見慣れない子が来たからおどろかそうと思ったんだけどね……さっきの声、聞いただろ?」

 

アリツカゲラ「ええ、なんだかすごい声でしたけど……」

 

 

タイリクオオカミ「わたしは耳が良くってね……どうも、彼女の声はひどいダメージになったらしい」

 

タイリクオオカミ「あんまりびっくりしたもんだからあわてて逃げだしたら岩に思い切りぶつかって、このザマさ。もう走れない……」

 

 

アリツカゲラ「そ、そんな……!」

 

タイリクオオカミ「まあこれまでたくさんのフレンズをおどろかせた罰が当たったのかもね……しかたないさ……ってきみ!?」

 

グイッ

バサッバサッ

アリツカゲラ「しっかりしてください!すぐろっじに運びますから、そうしたらきっとだいじょうぶです!」

 

 

タイリクオオカミ「おどろいた……あんがい力持ちなんだなきみは……キツツキはあんなに小さい鳥だったのに」

 

アリツカゲラ「アリツカゲラです、よぉ!うーん!こんなの今回だけですからね!」

 

タイリクオオカミ「そうだった……ありがとう、アリツさん……」

 

アリツカゲラ「オオカミさん……?」

 

タイリクオオカミ「わたしみたいなのを気にかけてくれて……それに最後にこんな空の旅ができるなんて……」

 

アリツカゲラ「! 最後だなんて、そんな、ちょっとぶつかったくらいじゃないですか!弱気になっちゃ……」

 

タイリクオオカミ「そうだな……どうせ最後なら……きみのおどろく顔が……みたかっ……た……」

 

アリツカゲラ「え……」

 

 

タイリクオオカミ「……」

 

 

アリツカゲラ「そ、そんな、ウソですよね?」

 

 

タイリクオオカミ「……」

 

 

アリツカゲラ「あんな、むだに元気でみんなをおどろかせてたオオカミさんが、そんな、死んじゃう……なんて……」

 

アリツカゲラ「オオカミさぁーん!!返事をしてくださいよぉ!」

 

タイリクオオカミ「うん、なんだい?」

 

 

アリツカゲラ「……へっ……?」

 

タイリクオオカミ「いやあ空を飛ぶのは最高だね。あまりに気持ちよくて返事を忘れたよ」

 

タイリクオオカミ「それにしてもむだに元気とはひどいんじゃn」

 

 

ポロッ

 

タイリクオオカミ「あ」

アリツカゲラ「あ」

 

 

ひゅうううー

 

タイリクオオカミ「うわああああああああ!!?」

 

アリツカゲラ「オオカミさあぁーーん!?」

 

 

~~ろっじ~~

 

 

アリツカゲラ「まったくひどいですよぉ!」

 

タイリクオオカミ「いやあ、ごめんごめん」

 

アリツカゲラ「いいえ、ゆるしません!あんなウソまでついて!本当におどろいたんですから!」

 

 

タイリクオオカミ「でもウソはついてないよ。ほら、ぶつかった時に足をくじいたから走るのはしばらくムリだ」

 

タイリクオオカミ「トキの声で平衡感覚も変になってたし。空を飛ばせてもらうのも一生に一度だろうしね」

 

タイリクオオカミ「どうせ最後ならアリツさんのおどろいた顔を見たいと思ったのも、本心さ」

 

アリツカゲラ「むむむ……」

 

タイリクオオカミ「ははっ、いい顔いただきました!あっ、いてて……」

 

トキ「ごめんなさい、わたしのせいで」

 

アリツカゲラ「トキさんがあやまる必要はありませんよ!オオカミさんの自業自得なんですから!」

 

トキ「そう?ならせめてお詫びに歌を歌おうかしら」

 

タイリクオオカミ「びくっ!い、いやそれは遠慮するよ!」

 

 

アリツカゲラ「とにかく、オオカミさんはケガが治るまでここにいてもらいますから!もう無茶しちゃいけませんよ?」

 

タイリクオオカミ「うっ、それじゃ誰もおどろかせられないじゃないか……」

 

アリツカゲラ「そんなことしなくていいですから~!」

 

トキ「あら、誰かをおどろかすなんて簡単じゃない?わたしなんて歌を歌うだけでみんなびっくりするみたいだし」

 

タイリクオオカミ「それはきみだけ……いや待てよ。確かに直接おどかさなくたっていいわけだ……」

 

アリツカゲラ「……またなにか考えてます~?」

 

 

~~しばらくして~~

 

 

タイリクオオカミ「……というわけで、パークは本当はセルリアンの女王が支配されていて……」

 

ギンギツネ「こわいこわいー!」

 

キタキツネ「ゲームの話みたい……もっと聞きたい……」

 

タイリクオオカミ「いい顔いただきました。そっちの子はけっこう強いね~。じゃあ今度は……」

 

 

アリツカゲラ「オオカミさん、まーたそんな怖いウソばかりついて~」

 

タイリクオオカミ「いいや、わたしは全部うわさを話してるだけさ」

 

アリツカゲラ「そのうわさの出どころはオオカミさんじゃないんですか~?」

 

タイリクオオカミ「さぁ~どうかな?まあ記憶まちがいくらいは誰にでもあるからね。そうだ、ある歴史的なマンガ家の名言にこんなのが……」

 

アリツカゲラ「もう消灯時間ですよ~。みなさんまた今度にしましょう」

 

ギンギツネ「はーい。ほら、キタキツネ行くわよ」

 

アリツカゲラ「ほらウソつきオオカミさんも。一日13時間は寝るんでしょう?」

 

タイリクオオカミ「夜行性だからへいきだけどね。しかしウソつき扱いは心外だなあ」

 

アリツカゲラ「いいえ、ウソつきですよ~」

 

 

アリツカゲラ「だって、わたしはいつだって二人で空を飛んでもかまいませんから」

 

 

タイリクオオカミ「え?それって……あ、ちょっと待って!」

 

 

タイリクオオカミ「ねえ今また空を飛ばせてくれるって言った?」

 

 

アリツカゲラ「さあ、オオカミさんの聞き間違いでは?」

 

 

タイリクオオカミ「いやわたしは耳がいいんだそんなはずはないよ」

 

 

アリツカゲラ「うーん、オオカミさんがたのむならいいかもですけど~」

 

 

タイリクオオカミ「ほんとに!?」

 

 

アリツカゲラ「でもそれだとオオカミさんはやっぱりウソつきになりません~?」

 

 

タイリクオオカミ「あっ、い、いや最初にウソをついたのはアリツさんだから……」

 

 

アリツカゲラ「あはは、オオカミさんなんだか子どもみたいです~」

 

 

タイリクオオカミ「うう……とにかくだね……」

−−−−−−−−−−−−−−−−

next.



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5.レズ

……

-ビーバーとプレーリーの家

 

 

 

コンコン

 

 

アライグマ「こんにちはなのだ!」

 

フェネック「こんにちはだよー」

 

 

ガチャッ

 

プレーリー「やや、お客さんでありますか!」

 

アライグマ「そうなのだ! アライさんなのだ! 実は聞きたいことがあっ」

 

プレーリー「では早速ごあいさつを!」ガシッ

 

アライグマ「へっ?」

 

 

 

チューーーーーーッ

 

 

アライグマ「!!?!?!?!?!?」

 

プレーリー「んー」チュッチュパッヌプッ

 

アライグマ「んっ!? んんぅう!?! んんーーーーっ!!!?」

 

プレーリー「ぷはぁ」

 

フェネック「……おぉー」

 

アライグマ「な、な、……なにをするのだぁあーーっ!」

 

プレーリー「これがプレーリー式のごあいさつなのであります!」

 

フェネック「なるほどねぇー」

 

アライグマ「い、いきなり、びっくりしたのだ……」

 

フェネック「おやおやアライさん。顔が赤くなってないかい?」

 

アライグマ「な、なってないにょだ!」

 

フェネック「かみかみだねーアライさん」

 

プレーリー「そちらの方もごあいさつを!」ガシッ

 

フェネック「フェネックだよー、よろし」

 

 

チューーーーーッ

 

 

プレーリー「んー」チュッチュパ

 

フェネック「……」

 

フェネック「ん」チュルチュパヌッヌポッ

 

プレーリー「んんんっ!?!?」

 

アライグマ「!?!!」

 

プレーリー「ぁへっ……」フラッ

 

フェネック「ふぅー」

 

アライグマ「ふぇ、フェネック……?」

 

フェネック「んー? どうしたんだい? アライさーん」

 

アライグマ「な……なにをしてるのだ……」

 

フェネック「あいさつを返しただけじゃないかー。ひかないでおくれよー」

 

アライグマ「……いや、どん引きなのだ……」

 

フェネック「ひどいなー」

 

フェネック「じゃあ」

 

 

フェネック「アライさんも、ちゅーしようかー。私と」

 

アライグマ「!!!?!??!?!?!」

 

アライグマ「ななんあなにぇを言っへるのだぁ!!?」

 

フェネック「ただのあいさつだよー」

 

アライグマ「ひっ!? や、やめ、やめるのだ! やめっ」

 

 

ガシッ

 

 

 

 

チュチュチュゥーーーーーーーーーーッ

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

アライグマ「ぁひ…………ぁ……」ポー……

 

フェネック「アラーイさーん。大丈夫~?」

 

アライグマ「」ビクッ

 

フェネック「アライさーん?」

 

アライグマ「…………ひ、ひどい……ひどいのだ……。なんでこんな、ぅ、ぐすっ、こんなことを……」

 

フェネック「…………」

 

フェネック「だってアライさん。プレーリードッグとちゅーしちゃったじゃないかー」

 

アライグマ「それはっ、アライさんのいしじゃないのだ!! 無理矢理に……だいたい、そんなことなんの関係がっ」

 

フェネック「私はずーーっと、我慢してたのにさー」

 

アライグマ「へ…………?」

 

フェネック「ずるいよねー。いきなり、あいさつだーなんて言って……さぁ」

 

アライグマ「ふぇ……フェネック……? なんか、目がこわいのだ……」

 

フェネック「ねぇ、……アライさーん」

 

アライグマ「ひ、ひぃい! ご、ごめん! ごめんなさいなのだぁ!! なにがわるいのか分からないけどフェネックをおこらせたなら謝るのだぁー!! ゆるしてほしいのだぁ!!」

 

フェネック「………………」

 

アライグマ「……ぅ、……フェネック……?」

 

 

ナデリ

 

 

フェネック「よし、よし」ナデナデ

 

アライグマ「ぁ、あの」

 

フェネック「だーいじょうぶだよー。おこってなんかないからねー」ナデナデ

 

アライグマ「ほんとに……?」

 

フェネック「ほんとだよー」

 

アライグマ「よかったのだ……」

 

フェネック「こっちこそわるかったよ。こわがらせてごめーんねー」

 

アライグマ「べ、べつにこわがってなんて」

 

フェネック「仲直りに、お互い洗いっこしようかー」

 

アライグマ「洗いっこ!? アライさん、洗うの大好きなのだ!! フェネックのこといっぱいきれいにしてやるのだ!」

 

フェネック「ふふー、よろしくたのむよ~」

 

 

 

 

 

ビーバー「大丈夫ッスか!? しっかりするッスよ!!」

 

プレーリー「うぅ……やばいやつに手を出してしまったであります……」

 

ビーバー「もう、だれかれ構わずちゅーするの、やめたほうがいいッスよ?」

 

プレーリー「しかし、これが習性なので……」

 

ビーバー「……いつでも」

 

 

ビーバー「いつでもオレっちが、ちゅーさせてあげるッスから……」

 

プレーリー「ほ、ほんとうでありますか!?」

 

ビーバー「っていうか今でもおはようとおやすみのたびにちゅーされ」

 

プレーリー「んーっ」チューーッ

 

ビーバー「んんぅっ!?」

 

プレーリー「それだけじゃ足りないであります! もっともっと、顔を見合わすたびにしましょう!」

 

ビーバー「うー……もう、しょーがないッスねぇ……」

 

プレーリー「えへへへ……」

 

 

……

-温泉

 

 

アライグマ「やめっひぁあ!? そこはっだぇっだめなのだぁ!!」

 

フェネック「ほーらアライさん、こっちもきれいにするよー?」ワシャワシャワシャ

 

アライグマ「ひぐぅうっ!!? しょこもらめなのだぁあっあっあっ!!」

 

 

 

 

ギンギツネ「あの……ここ、そーいう場所じゃないんですけど」

 

キタキツネ「ギンギツネ……あれ、なにやってるか分かるの……?」

 

ギンギツネ「えっ!? そ、そっれは……」

 

キタキツネ「…………ギンギツネ、えっちだ」

 

ギンギツネ「なっ……!? はぁ!?」

 

キタキツネ「ボクらも洗いっこ、する?」

 

ギンギツネ「し な い!!」

 

キタキツネ「ちぇっ」

 

 

アライグマ「はぁっ、ひぃっ……たすけてぇ、かばんさーん!」

 

フェネック「おやぁ……アライさん。私と洗いっこしてるときに、他の子の名前を出すなんて……」

 

アライグマ「へっ……? あれ? フェネック……? なんかまた目がこわ」

 

 

 

 

 

 

 

アッーーーーーーーーーーーッ!!!!!

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

豆知識

 

フェネックはキスを交わしながら交尾をするといわれてます

そのキスの長さはなんと2時間以上とも言われてます

因みに発情した雌のフェネックは異常に甘えん坊になるともいわれてます

ペットとして飼ってても、いつか発情する場合もあるので

飼い主の皆さん、覚えて下さいね。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

end.



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