「女の子の気持ちが知りたい? なら束さんに任せてよ!」 (天道詩音)
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その1

 

 無かったことにしたい過去。あの時、別の選択をしておけば……って思ったことはないかな?

 

 俺はある!

 あの一言さえ無ければ、今まで通りに過ごせていたはずなのにって思わずにはいられない。

 

 きっかけは些細な事だったんだ。指名手配されてる姉さんが珍しく電話してきたのに、話題が無かったんだよね……。

 

 女の子って男の俺らから見ると、不思議で訳の分からない生き物だろう?

 

 仲良くなれたと思ったら、突然『あんたなんて嫌いなんだから!』って言われたり、嫌われたと思えば次の日に『酢豚を作ってきたけど、作りすぎちゃったから食べていいわ!』とか言い出したり。

 酢豚はおいしかったけど、訳が分からない!

 

 一夏みたいに白黒はっきりつける性格なら分かりやすいのに、女の子……特に鈴って奴はよく分からない!

 

 女の子の気持ちがよく分からない!

 

 そんな思いの丈を、姉さんにぶつけたら『女の子の気持ちが知りたい? なら束さんに任せてよ!』と自信満々に答えられたんだ!

 

 そんなに自信満々ならよろしくお願いします!って言ってしまった結果がこれだよ……!

 

 あの時に、分からなくても鈴と話していく中で、自分で答えを見つけるよって、言っておけばよかったのに!

 

 過去に戻って、やり直せるならそう言ったよ!

 

 タイムマシンは天才兼天災の姉でも、『時間の不可逆性はどうしようもないかなー?』って言っていたから作れないんだろうね……姉に無理なら誰が作れるんだ……?

 

 『IS』なんて、時代を何世紀先取りしたか分からない物を作った姉が無理って言うなら、もう無理だよね……。

 

 無理な事を考えるのは無駄だし、今できることを考えていこう。

 

 とりあえず姉さんに電話して、この状況をなんとかしてもらおう!

 姉さんに電話をしてみると、ワンコール鳴る前に電話に出てきた。

 

「もしもしー? みーくんからの電話だわーい! 束さん一晩でがんばったんだよ! これで女の子の気持ちが分かるよ! よかったね!」

「よくないわ! 天才の姉さんならもっとやりようがあったよね! もっと良い選択肢があったはずだよね!」

 

 電話越しの姉さんはすごい嬉しそうだけど、こっちは全然嬉しく無いんですけど!

 

「これが私の最適解だよ! キリッ!」

「キリッじゃない! それは口で言うセリフじゃないし、俺にとっての最適解は別だったから! てか元に戻してくれ!」

 

「それは無理かなー? 男性の持つ染色体は不安定なんだよね。それを安定させたのに、また戻そうとするなんて、染色体が壊れちゃって死んじゃうかもよ? 私の大切なみーくんにそんな危ないことはできません!」

「できませんじゃなくて! ええ……もう、戻れないのか……」

 

 なんか男性より女性のDNAの方が優れているって聞いたことがあるけど、そんなのいいからなんとかしてください!

 

「逆に考えよう。生物学的に完成に近づいたんだから、むしろ進化したんだって! みーくんがもっとかわいくなって、束さんはすごいうれしいよ!」

「俺ははうれしくないって! どうしてこうなった!?」

 

「え……束さんはみーくんの為を思って、寝ないでがんばったのに……嫌なことしちゃったのかな……?」

「いや、姉さんが俺の為にやってくれたのは、分かってるしうれしいよ……でもね、ちょっと思ってたのとは違ったかなーって」

 

 悲しそうな姉さんの声に闘志が折れそうになったけど落ち着け……今は元に戻ることを優先しよう。

 

「もう怒ってない……? 束さんのことを嫌いにならないよね……?」

「嫌いにはならないよ。俺の大切な姉さんなんだから! だから、どうか元に戻してくれ!」

 

「それは無理っ!」

「無理っ! じゃなーーい!」

 

「束さんにも不可能はあるんだよ。日常生活に支障がないようにちーちゃんに、色々教えてあげてって言っておいたから、あとはちーちゃんに任せるね。おっと、そろそろ脳を休めないといけない時間だから切るね! じゃねー! みーくん改めみーちゃん!」

 

「…………え、切られた? これからどうするんだよ……? 姉さんが無理ならどうしようも無いじゃんか!」

 

 もう終わったーとうずくまって頭を抱えていると、ピンポーンとインターホンが押された音が鳴った。そう言えば千冬さんにあとは任せたって言っていたな……世界最強の千冬さんならこの状況をなんとかしてくれるかも……?まあ、無理かー……。

 とりあえず出ようか。

 

「いま出ますよ-? 千冬さんこんにちは! 早速助けてほしいんですけど……」

 

「…………すみません。間違えました」

 

 千冬さんが頭を下げてから、扉を締めた。いやいや、合ってるからね!

 慌てて扉を開けると、表札と部屋番号を見て首をかしげている千冬さんが居た。

 

「千冬さん合ってますから! 俺が篠ノ之湊ですから!」

「しのののみなと……? ああ、部屋は合っているな。君は湊の彼女か。湊は居るか?」

 

「俺が湊ですって! 束姉さんの弟で、一夏の友人の湊ですから!」

「いや、湊は男だからな? ちょっと鏡を見てみろ」

 

 千冬さんがバッグから手鏡を取り出して俺の前に差し出す。あの千冬さんが鏡を持ち歩いているん……痛っ!思っただけで叩かないでください!

 

 そこに映ったのは、腰まで伸びた艶やかな黒髪に、一目で清楚だと思えるような可憐な顔立ちで、愛くるしい大きな目をしている、男物のだぼだぼな服を着ている美少女が鏡の中で驚愕の表情を浮かべている。

 

 なんだか小さくなった姉さんって感じ?

 

「これが……俺?」

 

 目を覚ました時から、違和感があったし、声も高くなって、胸もなんだか大きくなってたし、立ち上がったら目線が低くなっていて、変だとは思っていた。

 

 でも鏡で自分の姿を見たら、現実を認めないといけなくなる気がしたから、自分の姿が映る鏡とガラスは一切見なかった。

 でも、千冬さんの取り出した鏡に映る自分は、完全に女の子だった……。

 

 

 姉さん……女の子の気持ちが知りたいとは言ったけど、女の子にしてとは言ってないからね……お願いだからどうか元に戻してください!




よくあるISのTS物です。

TSした主人公が、今後どうなっていくのか。
鈴ルートを行くのか、千冬さんルートか?
王道?の一夏ルートへ進む可能性もありますね!
原作に可愛いキャラはたくさん居ます!どのルートへ進むのでしょうか?

まあ、似たような話はISで沢山あるのでこの話はこれおしまいの予定ですが!※続きました!すみません!

読んでいただきありがとうございました!

登場人物紹介
篠ノ之湊
しのののみなとちゃんになりました。
男には戻れないそうです。
これで女の子の気持ちが分かりますね!
一家離散はしても一夏と同じ学校に通っているみたいですね。
篠ノ之束
湊の姉さん。
束さんが一晩でTSさせてくれました。
織斑千冬
ちーちゃんも女の子だから鏡を持ち歩くんだよ!
鈴ちゃん
伝わらないツンデレ。酢豚はおいしいです。

以上です!ありがとうございました!


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その2

※前話を少し修正しました。


 

 生まれてから大きな出来事っていくつかあると思う。

 

 姉さんが『IS』を作った事だったり。

 

 姉さんが全世界から指名手配されたり。

 その時に一家離散して、両親と箒と離れて暮らす事になってしまったり。

 箒とは二卵性双生児の兄妹で、箒の方が姉だと言い張ってるけど、同じ日に産まれた訳だから姉も弟も無いと思うけどね。その箒も苗字を変えて、別の町で暮らしている。

 

 でも、姉さんに頼んで、電話はできるようにしてもらったから元気でやっていることは確認している。ぼっちみたいだけど……。

 まあ火曜と金曜の夜に毎回電話をして、俺と一夏の話をしているとすごい喜んでいるから、それを楽しみにしてがんばっているって言っているし、まあ、なんとかやれているんだろうね。

 

 離散する日に、箒は離散の原因になってしまった姉さんの力なんか

借りないって言って、そのまま連れられて行っちゃったんだよね。箒は頑固なところもあるけど、それがなければこのマンションで一緒に暮らしていたかも知れないなぁ。

 

 俺は、姉さんのお陰でこの町に残れることになった。

 離散の日から姉さんの逃亡生活に一ヶ月くらい連れられていたけど、その後に町に戻ると出迎えてくれたのは、日本の暗部組織を名乗る人達だった。

 家族を離散させた事にキレた姉さんが日本を脅したらしく、護衛してくれるようになったらしい。姉さんは俺と箒と離れることになることに怒っていたけど、父さんと母さんの事は何も言ってなかったけど、姉さんだからなぁ……。

 まあ、そのおかげで今もこの町で暮らしていられるんだよね。

 

 あと第二回目のモンド・グロッソで一夏と一緒に誘拐された事だったり。

 あの時は死ぬかと思ったけど、姉さんと千冬さんが来て、助けてくれた。

 千冬さんは決勝を戦わなかった責任で、その後から1年間はドイツで教官をすることになったけど、決勝より俺たちが大切だから別に構わないって言ってくれたのは一生忘れられないし、女の子だったら惚れていたね。

 

 あとは、まあ最近と言うか、今日あった話だけどさ。

 

 

 女の子になっちゃったって出来事かなー?

 

 

 アホか!意味分からないと思うけど、俺もどうやってこうなったのかは分からないし、ただ姉さんが何かをして、性別が変わってしまったのは、もう変えようが無い事実で、男には戻れないらしい……。

 

「千冬さん……どうしようか?」

「まあ、束が無理って言ったのなら諦めろ。まあ男の時よりも綺麗になったんだ。よかったと思えば楽になるさ」

 

「楽になんてなれないんですけど! 千冬さんが男になったとしたら…………あまり変わら」

「殺すぞ……」

「すみませんでした!!」

 

 世界最強の『殺すぞ』は怖すぎなんですけど……直ぐに頭を下げて許してもらわなくては死ぬ!

 

「痛っ! ごめんなさいー!」

 

 頭を叩かれただけで、許してもらえた……死ぬほど痛いけど……。

 

「次は無いからな。それより、服を脱いでくれ」

「んなっ! 何する気ですか!?」

 

 一夏は千冬さんが結婚できるかどうか心配していたけど、やっぱりそっちの人なん……っいたい。頭割れちゃうから叩かないでください!

 

「そんなサイズの合っていない服を着続けるわけにはいかないだろう。採寸を図るためだ」

「確かに服とか無いですけど、メジャーとか家にありませんよ?」

「もちろん持っているさ」

「よく持ってましたね。姉さんになんて言われたんですか?」

 

「束から珍しくメールが来たから見てみると可愛らしい寝顔が映っていてな、その後電話が来て話を聞くと、くくっ全部聞かせてもらったよ」

「いや、笑い事じゃないんですけどー!」

 

「くくっすまない。女の子の気持ちが知りたいからって女にされるとはな……災難だったな。ふふっ」

「ひどいんですけど!」

 

「まあ、女の気持ちは分かるんじゃないか……はははっ!」

「鬼なんですか! 千冬さんは鬼畜なんですか!」

 

「ははっ悪いな。まあ、ちゃんとフォローしてやるさ。とりあえず採寸を図って服を買いに行こう」

「頼みますよー!」

 

「ああ任せろ。服を脱いでくれるか? いや脱がせてやろうか?」

「自分で脱ぎますから-!」

 

 寝間着に着ていた長袖のスウェットを脱ごうとするけど……いや待てよ。スウェットを脱いだら、下に何も着てないわけで、裸なんだよね?

 うわ……どうしよう……昔姉さんとお風呂に入っていた時はまじまじと見たわけじゃないし……でもこれから見慣れていくしか無いんだよなぁ。

 

「いつまで止まっているんだ。仕方ないな私に任せろ」

「ちょ、千冬さん! まっ!」

 

 世界最強に逆らえるはずもなく、上下のスウェットを脱がされて、下に履いていたトランクスだけにされた。

 

 下を向いて自分の身体を見ると、白く透明な肌がまぶしいのに、そこから目を離せない。でもなんだか、全体的に小さい?

 一応出るところは出てるよ?身長は鈴よりは高そうだし、胸も手に手のひらから溢れるくらいには大きくて、思わず揉んでしまったけど……柔らかっ!これはマシュマロを超える柔らかさ!

 

 でも自分の身体だからかもだけど欲情はしなかった。心は今も男のつもりだけど、女性に興奮できない……?いやいやまさかね。

 

「いつまで揉んでいるバカ者。それより私の前に立ってくれ」

「あっ、はい」

 

 メジャーで身長からバスト、ヒップ、ウエストと図ってもらったけど、改めて身長が低くなったなぁって思った。千冬さんより身長が低くなっちゃったし。

 あとサイズの測り方ってこんな感じなんだね。身長と体重くらいしか測ったことが無かったからなぁ。てか色々触られたし、千冬さんが間近にいて恥ずかしいんですけど……!

 いい匂いがするし、千冬さんってめちゃくちゃ綺麗だし……!

 

 

「身長は154cm。スリーサイズはバストが76でアンダーは64……Bカップくらいか。ウエストは54、ヒップは78か……だいたい分かったな」

「うぅ……恥ずかしかった」

「女同士なんだ。恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」

「いやいや、千冬さんめちゃくちゃ綺麗なんですから仕方ないですって!」

 

「……そうか」

「わっ!」

 千冬さんに頭をポンとされてから髪を撫でられたんだけど、なんだか不覚にも胸の奥がドキドキして、ちょっとときめいてしまった。これは女の子にモテるわけだよね!

 

「取りあえず服を着ようか? 私の古着をいくつか持ってきたんだ。私が着せてやろう」

「あっはい……」

 

 言われるがままに従ってしまったし、身を任せて服を着せられた。千冬さん男前すぎるよ……。はっ、なんだか身体に心が引っ張られている?いやいや思い出すんだ。俺は男だ!

 

「俺は男だ!」

「どうしたいきなり。こんな可愛いのに男な訳がないだろう? 服も似合ってあるぞ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 千冬さんがイケメンすぎてヤバい。男でも惚れるくらいかっこいいんだからときめくのも仕方ないよね!これは男女は関係者ないから!

 

「では、服を買いに行こう。私のコーデで構わないな」

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

 千冬さんに手を引かれながら部屋を出て、玄関では持ってきてくれたサンダルを履かせてくれて、開けてもらった扉から外へ出るとまた手を取ってくれた。

 

 ほんとヤバいよ千冬さん。惚れちゃうから!

 いやいや、俺は男だから!むしろ千冬さんを惚れさせるつもりでいかないと!がんばれ男の俺!ってうぁ!

 

「それでは行こう。っと、サンダルがそれでも大きかったか」

 

 千冬さんが抱きとめてくれたおかげで転ばずにすんだ……。思わず千冬さんを見上げると、優しく笑っている千冬さんと目が合った。

 

「私が支えるから、安心してくれ。ショッピングモールについたら先に靴を買おうか」

「は、はぃ……」

 

 これは、無理かもしれない……女の子になっちゃうかも……なってるけどさ!心だけは負けないから!




千冬さんにときめいてしまった湊ちゃんでした。

でも仕方ないですよね!イケメンすぎたんですから!

感想もらえたのがうれしくて続けちゃいました!
読んでいただきありがとうございます!

露骨に世界観を説明する回になっちゃいました。
篠ノ之家の湊ちゃんが一夏と同じ学校に通い続けるには、ちゃんと理由が必要になりそうだと思ったので!


登場人物紹介
湊ちゃん
身長は154cm。
バストが76でウエスト54、ヒップは78らしいです。
これは、wikiで調べた情報によると鈴以上シャル以下って感じの体系です!どうでしょう?
元は171cmで千冬さんより高かったです。
メス堕ちしないようにがんばれ湊ちゃん!

千冬さん
イケメンすぎます。
湊ちゃんの天敵その1。
自然な仕草がイケメンで、湊ちゃんは服を買いに行ったあとはどうなっているんでしょうか?

箒ちゃん
主人公との電話を楽しみにしています。
今後、女の子になった湊ちゃんと電話することになると思いますが、どうなるんでしょうね?


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その3

※誤字報告、感想ありがとうございました!


 

 千冬さんに手を繋いでもらいながら町を歩く。時々転びそうになるけど、その度に抱きとめてくれて、助かるけどけっこう恥ずかしい……。

 千冬さんは日本人なら誰でも知ってそうなくらいの知名度があるから、道行く人たちみんなが俺たちの事を見てくる。

 

 そんな千冬さんに抱きとめられている自分が周りにどう映るかって考えたら緊張して、余計に足を滑らしてしまう……どうしたらいいんだよー……。

 

 

「すまない。私はサンダルは履かないから一夏のを持ってきたんだが、大きすぎたな」

「千冬さんにはすごい助けられてますから、謝らないでください!」

 

 本当に助かっていますから!正直、千冬さんが来なかったら、夢だと思うことにして、寝てたし……。

 

「ならいいが……もう少しでショッピングモールに着くからそこで靴を買おう。足は痛くないか?」

「ちょっと痛いですけど、大丈夫ですよ!」

「そうか。辛くなったらいつでも言ってくれ。湊を抱えるくらいの力ならあるさ」

「あ、ありがとうございます……」

 

 世界最強だからね!俺くらい抱えられるよね!でもこれ以上緊張したらヤバいから大丈夫ですよ!

 

 もう少しでショッピングモールに着きそう。なんとか抱えられずにここまでこれた……。

 

 このショッピングモール『レゾナンス』は、食べ物は和・洋・中と完備していて、衣服も量販店から高級ブランドまであって、大抵の物はこのレゾナンスで揃う。逆に、此処になければ市内の何処にも売ってないって言われるくらいにはなんでも揃っている。

 

 レゾナンスにはよく一夏と弾とたまに鈴も連れて遊びに来ていて、此処に来た時は、だいたいゲーセンで遊んでるけど、たまに鈴が服を買うのについて行ったりもしていた。食事は弾の家の定食屋で食べるからここではあまり食べたことが無いんだよなー。

 

 五反田食堂って量も多いし、安いしで、最高だよね。一夏もたまにバイトしているから、よくお邪魔しに行っている。

 

「一番近い靴屋に行こう。入ってすぐ右に靴屋があったな」

「ありますね。はぁ……ここまで大変でしたね」

 

 これで転ばなくて済みそうだからよかった……。これ以上抱きとめられたら危険だったよ……。

 

「あと少しだが、ほら」

「ひゃあ!」

 

 突然、千冬さん片腕で背中に手を回されて、もう一方の手を両膝の下に差し入れられて抱き上げられた……。

 

 つまりどういう事なのかと言うと……お、お姫様だっこぉ!?

 

 だ、ダメ!千冬さんと顔が近いし、ニコって笑うのはダメですよ!俺は男、俺は男、俺は男!

 

「これで大丈夫だろう」

「だ、ダメかも知れません……」

 

 千冬さん、それは反則ですよ……。ど、どうしよう?目を開けていると千冬さんが近いし、目を閉じても千冬さんの力強さと息遣いがより感じられヤバいし……。

 無になろう。何も見ないで、何も感じない。そうすればこの状況にも耐えられるかも!

 

「靴屋までもう少しだ。湊は軽いな」

「あ、ありがとうございます……」

 

 こんな近いのに喋りかけられたら、は、恥ずかしい……。

 俺が男の時も、千冬さんは姉のように接してくれていたけど、こんなに近くになんて居ることなんか無かったから、ヤバいですって!

 

 千冬さんに降ろされたかと思えば、気づいたら靴屋の椅子に座らせられていた。いつの間に靴屋に着いていたんだろう?

 目の前の千冬さんしか見てなくって、周りが見えていなかったみたい。

 

「湊に合う靴を持ってくるから待っていてくれ」

「はいぃ……」

 

 千冬さんって無自覚にモテる行動をする一夏の姉なだけあって、やる事全てがかっこいいんですけど……。でもそれを俺に向けないでください!心は男のはずなのに、何かしてもらう度にときめいちゃって……。

 早く服を買って、家に帰ろう!そうしないと、本当に男に戻れなくなるかも知れない……!

 

「これなんか湊に似合うんじゃないか? サイズもぴったりな22cmで、色も湊に似合うと思う」

「ありがとうございます! スニーカーで助かりました。ヒールとかだったらまた転びそうですし……」

 

 白に近い水色のスニーカーで、少し濃い水色の紐がかわいらしい。女の子らしい服を着ている千冬さんとか見たこと無いけど、いいセンスをしているね!……でも履くのは俺かー。

 

「では試しに履いてみますね」

「ふっ、履かせようか?」

「だいじょぶです!」

 

 スニーカーを履いて立ち上がって、ちょっと歩いてみると、安定して歩けている。ただ、脚の長さが短くなったせいで、歩幅が分からなくなることが……これは慣れていかないとダメか。

 身長が25cmくらい小さくなったせいで、思った通りに歩けてない時がある。慣れるまでは思ったより大変かも……?

 

「いい感じですね。ありがとうございます!」

「よかった。では清算を済ませてくるから、脱いでくれるか?」

「はい。よろしくお願いします」

 

 靴を脱いで千冬さんに渡して、待っていると清算して、タグを外した靴を持ってきてくれた。それを履いて、店を出る。千冬さんが一夏のサンダルをバッグにしまってから、また手を差し出される。

 

「もう転ばないから大丈夫ですよ?」

「靴はサイズが合ってもまだその歩幅に慣れてない感じがしたんだが、どうだ?」

「確かにまだ、慣れてないですけど……」

「なら私と手を繋ごう。湊に怪我をされたく無いからな」

「あっはい……」

 

 差し出された手を取ってしまった。いや逆らえませんけど!千冬さんがIS学園に勤めているって言っていたけど、女子生徒達にどれだけモテていることか……。

 

 高校教師なのを一夏には内緒にしてるせいで、全然家に帰ってこない千冬さんがマフィアのボスのSPとかしてるんじゃないかって一夏が言っていて笑った事も思い出した。

 

 次は服を買いに行くけど、がんばれ俺!

 いつか男に戻るために、千冬さんにはもう絶対ときめかない!負けませんよ!

 




毎日投稿するために、2500文字くらいで止めています。

次回の服屋の途中まで書いて、3500文字くらいになってしまったので、続きは次回でお願いします!

今回は靴を買えましたね!
TSしてからまだ数時間ですけど、湊ちゃんは千冬さんのイケメン具合に屈しそうになってますね……?
心も女の子になれば楽になれますけど、負けるな湊ちゃん!

湊ちゃんの靴のサイズは22センチらしいです。小さいですね。


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その4

※あらすじの誤字を修正しました。


 

「次は服を買おう。生徒が言っていたおすすめのブランドの店がこっちにあるらしい」

「IS学園ってお嬢様学校ですよね? お金とかって大丈夫ですか?」

「湊の為に束からかなりの額が振り込まれていたから、気にしないでいい」

「姉さんお金を振り込むより、男に戻して欲しいんだけど……せめて一日限りだったら……」

 

 ちょっと落ち込むなぁ。明日には男に戻ってないかなー……?

 

「まあ、服を変えて気分転換をしようか? そんな悲しそうな顔はするな」

「すみません。そうですよね! 千冬さんのおすすめコーデでお願いします!」

「任せてくれ。では行こう」

 

 頷いて、千冬さんと服屋に向かう。くよくよするのは性に合わないし、前向きに女の子ライフを楽し……めるか!

 

 まあ、なんとかやっていくしか無いよね?でも学校とかどうしよう……?女の子になりましたーで通用しないでしょ……もしかして学校生活終わった……?

 

「女子生徒達に、この『LISA LISA(リサリサ)』ってブランドが流行っているらしい。入ろうか」

「でもめっちゃ女の子してる服じゃないですか? もう少し男物っぽいのでも……?」

 

「今の湊に、男物みたいなのは似合わないから、ここで買える服にしよう。着る方法も教えるさ」

「はいー。よろしくお願いします」

 

 今は千冬さんに任せるしか無いからねぇ。慣れてきたら男物みたいな服を着よう!

 

「服と下着もここで揃うから、一週間、毎日別の服を着れるように7着ずつは買っていこう」

「そんなにですか? 3着くらいでいいんじゃないですか?」

「女社会ではそうはいかないものさ。私が選んでこよう。湊も好みの服があったら持ってきてくれ」

「はいー! ちょっと店内を見てきますね」

 

 なんだか女子ばかりの店内を歩くの新鮮だけど……結構見られている。服装は千冬さんのお古の青いワンピースでサイズも少し大きいくらいで悪くないと思うけどけど、変かな?

 

 なら、今まで千冬さんに向けられてたと思ってた視線って俺に向けられてたとか……?

 いや、そっちは千冬さんを見ていた視線だと思うけど、今は何で?似合ってないのかな?

 

「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」

「わっ! あの、似合う服が無いかなーって探してました」

 

 女性の店員さんに声を掛けられてしまった。せっかくだし買う服は店員さんに決めて貰おうか?

 

「よろしければ私がお探ししましょうか?」

「ならよろしくお願いします」

 

「はい! ではこちらへどうぞ。お客様のようなとても可愛らしい方にはこちらの服が似合うと思いますよ!」

「かわいいですか……? 確かに姉さんに似てるとは思いますけど?」

 

 鏡を見たときのイメージが、小さくなった姉さんみたいな感じで、姉さんがよく着ているアリス服が似合いそうな女の子だったけど。

 

「お姉さんも可愛らしい方なのですね! 服を合わせてみましたけど、この服はお客様の為に作られたのかと思うくらい似合っていますよ!」

「ありがとうございます! 何着か買いたいので、よければ他の服も選んでもらえますか?」

「よろこんで!」

 

 店員さんに付いていって、服を合わせられる着せ替え人形になる。すごい楽しそうに服を合わせてくれるなー。確かに目の前の鏡の中の女の子に、すごい似合っているから嬉しいのかな?

 

「これも似合いますね! お客様は本当に可愛らしいので着て欲しい服がたくさんありすぎます! これも合わせてもらえますか?」

「は、はいー。ありがとうございます……」

 

 もう5着目なんですけど!この店員さんすごい勧めてくる……。これくらいでいいよね?後は千冬さんの選んだ服があればいいと思うし。

 

「かわいいですよ! 次は着てみませんか? モデルとして写真を撮らせてくれれば料金を割引きいたしますよ!」

「え、えっとー……」

 

「湊そこに居たのか?」

「あっ、千冬さん!」

「ち、千冬様!?」

 

 どうやって断ろうかって考えていたら、ナイスタイミングで千冬さんが来てくれた!店員さんがすごい驚いている。そうだよね。超有名人だし、綺麗だし!

 

「店員に服を選んで貰っていたのか。ありがとう」

「い、いえいえー! こちらこそありがとうございました! 失礼します!」

「あ、ありがとうございましたー……」

 

 去っていく店員さんが感謝していた……何故に?千冬さんに会えたからかな?

 

「千冬さんありがとうございました。どうやって、もう良いですよって言おうか迷っていて」

「もう少し早く戻ればよかったな。すまないな」

「いえいえー! そんなに困って無かったので!」

「よかった。では先に服の支払いを済ませてくるから、選んだ服は渡してくれるか?」

 

「はい。よろしくお願いします!」

「ああ。では行ってくる」

 

 千冬さんに服を渡して、買ってきてもらう。千冬さんも結構服を持ってたなぁ。大きな紙袋3つくらいになりそう。いくらするんだろう……聞かないでおこう!

 

「待たせたな。では試着室に行こうか? 私が着せるから安心してくれ」

「は、はい!」

 

 千冬さんに連れられ試着室に二人で入った。一メートル四方の部屋に二人で入ってるから狭くて、千冬さんと密着しちゃっている。き、緊張するんですけど!

 

「少し狭いな。私が選んだ服を着てくれるか?」

「はい! どんな服を選んだのかちょっと楽しみです!」

「あまり期待はするなよ。まあ、これだ……」

 

 紙袋から出した服は、トップスはニット生地の白い長袖で、肩から胸が微かに見えそうなくらい大きく開いている。ネックラインのレースが可愛らしい。似合うかは別として!

 

 下は紺色のミニスカートかな?全体は紺色で、黄色で星型の刺繍が星空みたいに点々としていて、お洒落な感じがする。ウエスト部分には白色の星形のボタンもあってかわいいかも?

 

「それはスカパンと言って、外見はスカートでも、中にインナーがあるからパンツが見えないようになっているんだ。スカートも買ったが、しばらくはスカパンの方を履いたらいいんじゃないか?」

「パンツが見えないのは安心できますね。今まで気にしてなかったですけど、気をつけないといけないんですよね……」

 

「湊は可愛いから気をつけた方がいいな。私がずっと傍に居られればいいんだが……IS学園で一緒に暮らすか?」

「いやいやいや、そこまでしなくても大丈夫ですって!」

 

「ふっ、冗談だ」

「ですよね! でも部屋はきれいに使っていますか? 今なら掃除に行けますよ?」

 

 千冬さんの唯一の弱点が部屋が汚くなってしまうこと何だよなぁ……昔は一夏と一緒に掃除をしていたけど、今は一夏がやっているらしい。

 残念なことにIS学園に行けることになっちゃったからなぁ。必要なら一夏の代わりに掃除しに行くしかないね。入れるか分からないけど。

 

「まあ、気にしなくて大丈夫だ。それより着てみてくれ。似合うはずだ」

「……ごまかしました? まあ、必要なら言ってくださいね」

 

 ワンピースとパンツとスポーツブラを脱いで、千冬さんが持っている薄いピンクのパンツとブラジャーに着替えよう。

 

 パンツはサイズが小さくて履けるかなって思ったけど、意外と伸びるんだ……。その下の、いや考えるのは止めておこう。

 

 ブラジャーは輪になっているところに両腕を通して、胸……をカップになっている部分に入れて、背中の部分のホックを留めようとしたけど、なかなかうまくいかない……。難しいんだけど!

 苦戦していたら千冬さんが後ろに回ってホックを留めてくれた。

 

「いずれ慣れるさ。前屈みだと着けやすいんだ。後はストラップのここを動かして、長さを調整して……ほら、これでブラジャーは付けられたな。次は湊がやってみてくれ? 今の内に慣れておいたほうがいい」

「分かりました! でもなかなか難しいんですねー」

 

 何回かブラジャーを着けるのを繰り返していると、難しかったホックを着けるのに慣れてきた。前屈みだと手が届きやすくなって、簡単に着けられるんだね!

 

「上着の着方はほとんど変わらないと思うが、大丈夫か?」

「はい。よいしょっと」

 

 普通に被るように上着を着て、スカパンも中のインナーに脚を通して履く。大丈夫そうだね。

 

 鏡に映っている、さっきより可愛くなった、小さな姉さんみたいな女の子が俺なのが信じられない。

 正直、結構可愛いと思う……でも、俺は男だから!

 

「可愛いな。似合っているよ」

「あ、ありがとうございます……。千冬さんのセンスのお陰ですね!」

「湊が可愛いから似合ったんだ……っとすまない電話だ。取りあえず店を出よう」

「はい。あ、荷物を持ちますよ」

「それは私の役目だ。気にしないでいい」

 

 かっこいいんですけど……!大人しく千冬さんに付いて店を出た。

 

「すまない。少し電話してくる」

「分かりました! ゆっくり待ってますよ」

 

 千冬さんが電話をしに向かったので、壁に背を付けて待とうとしたけど……服が新品なのを思い出して、付けないように待つことにした。

 

 家から携帯を持ってくるのを忘れたから、遠くの千冬さんを眺めて待つことにした。遠くから見てもきれいだよね。何だか機嫌が悪そうだけど、何かあったのかな?

 

 電話が終わったみたい。と思ったらまた電話してる。IS学園の教師って大変なのかな?次こそ終わったのかな?こっちに向かってくる。

 

「すまない。学園に戻らないといけなくなってしまった」

「いえ、仕方ないですよ! でも千冬さんが居てくれて本当に助かりました!」

「最後まで一緒に居たかったんだが、すまない」

「だいじょぶですって! でも荷物はどうしましょう? 持てるかな?」

 

「それなら、荷物持ちが直ぐ来るから……来たぞ」

「千冬姉! レゾナンスで待機しとけってメールがあったけど、何だよ!」

「あっ、一夏!」

 

 一夏が来てくれたから、荷物持ちはゲットだ……ってうわっ!

 

「うおっ、いつつ。ごめん!」

「いたたっ……って一夏変なところ触るなよ!」

 

 駆け寄ってきた一夏が突然俺の方に倒れ込んできて、一緒に転んでしまった。一夏に覆い被されたし、服が新品なのに!アホ-!

 

「うおっ、ごめん!」

 立ち上がろうとした一夏に胸を掴まれて、揉んできたんだけど!

 くすぐったかったし、やめてくれよ!

 

 一夏はラッキースケベをよくやるんだけどさぁ、俺にやるなよ!

 

 一夏が荷物持ちで無事に帰れるかな……?




一夏をラストに出すまで、書いていたら4000文字になってしまいました……でも基本は2500文字です。
話を削るのが苦手で、短く書けないのを治したいです。
そうしないと原作までたどり着けない気が……。一万字掛けてまだ初日……。

まだTSして、数時間後ですが、
第二の刺客『一夏』がやってきました!

特技はラッキースケベと無自覚で口説くこと!
湊ちゃんにとってのラスボスになるかも知れませんね!

パンツの下……この小説はR指定の無い全年齢向けなのでカットしました。

湊ちゃんは千冬さんに落とされそうになってますが、落ちた先は百合だぞ!(悪くないですね!)え?


そう言えば、ショッピングモールの名前を思い出すために原作の3巻まで読み直したんですけど、原作一夏の鈍感さを久々に読んで面白かったです。
二次創作一夏って鈍感さが比較的まともになってますよね?
この小説ではどうなるんでしょう?

次回も読んでいただけたら嬉しいです!
感想、評価いただければ更に嬉しいです!
ありがとうございました!


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その5

※念のためR15タグを付けておきました。


 

 先に立ち上がった一夏に手を引っ張ってもらって立ち上がる。

 目を合わすと、何だか一夏が驚いている。そうだよね。女の子になっちゃってるし!

 

「えっ、もしかして」

「もしかして一夏なら分かってくれるか!」

 

 小さな頃から一緒に居たんだ。一夏なら性別が替わっても分かってくれるよな!

 

「箒だよな! 元気にしてたか?」

「……あぁ、うん」

 

 だよね-!分からないよね-!たしかに小学5年くらいの箒ってこんな感じだったような?でも箒ってもう少し鋭い目つきだったからなぁ。今の学校で怖がられて無ければいいけど……。あっ……。

 

「ふむ。箒を任せていいか? 私は仕事に向かわないといけなくなった。荷物持ちを頼む」

「どんだけ買っているんだよ! えーっと湊の家まで運べばいいのか?」

「よろしく頼む。では箒は一夏と気をつけて帰ってくれ。くくっではな」

「千冬さんありがとうございました! ちょっとひどいですけど!」

「またな。何かあったら電話してくれ」

 

 千冬さんが手を振ってから仕事に向かっていった。

 一夏は荷物を全部持ってくれたけど、一つくらい持とうか。

 

「一夏一つ持つよ?」

「箒は女の子なんだ。俺が持つよ」

「あ、ありがとう……」

 

 笑顔で腕をまくって、紙袋を見せてきた。一夏のこんなところがモテるんだろうなー。弾の情報によるとクラスの女子の6割くらいが一夏に惚れているらしい……。でも一夏は気付いていないし、鈍感すぎだろ!

 

「でも久しぶりだよな! 小学5年以来会って無かったし3年ぶりかー!」

 

 ここは取りあえず箒だと思わせておこう!説明は家に着いてからかな?外だと落ち着いて話せないし。

 

「それくらいになるか。一夏は元気にやっていたか?」

「ああ。湊と楽しくやってるよ」

「そうか……」

 

 箒ってこんな感じの口調だったよね?電話越しだと、『そうか』とか『なんだと』とか『羨ましいな』って感じで一言しか喋らないから、昔を思い出して箒を演じてみる。

 箒ももう少し会話が得意になればなぁ……。今度から電話で会話の練習しようか?でも女の子になっちゃったし、電話越しで俺って分かるかな……?

 姉さん作の、俺と箒しか持ってない携帯があって、特殊な回線で通話するから情報の流出が一切起こらないらしい。その携帯を持っているのが俺たちだけだし、箒との思い出を話せばなんとかなるでしょう!ダメなら姉さんを使うしかないね!

 

「でも、町に帰ってきたのは何かあったのか? 湊から聞いたけど、いろいろ大変だったんだろ?」

「大変だったが、久しぶりにこの町を見たくてな? 一夏とも会えて嬉しいぞ」

 

 箒って一夏のことを気に入っていたし、会えたら嬉しいだろうなーって思う。昔の箒が一夏に頑張って声を掛けていたのが微笑ましくて、ちょっと笑ってしまった。

 

「お、俺も嬉しいぜ! でもちょっと服を買いすぎじゃないか? いくらするんだこれ……?」

「千冬さんがたくさん選んだのだが、支払いは姉さんだし気にするな」

 

「そう言えば今日は千冬姉と一緒にいたのか?」

「ああ。家に千冬さんが来て、一緒にレゾナンスに向かったんだ。この靴と服もそこで買った」

 

「そうなのか。可愛い箒に似合ってるよ!」

「世辞はいらん」

 

 よかった-!一夏に褒められてもときめかなかった!

 やっぱり心は男なんだよね。千冬さんがイケメンすぎただけなんだよ!

 

「いや。本当に似合っているから! 今の箒みたいに可愛い子とか初めて見たし!」

 

「そ、そうか……」

 

 あっあれ?……気のせいだよね。

 

「本当に可愛いから自信を持ってくれよ!」

「わかった! わかったからあまり褒めるな!」

 

 一夏に可愛いって言われて、少し嬉しくなってしまった……。

 いやいや、容姿を褒められたら嬉しいよね!普通だよね?

 

「い、一夏もかっこいいぞ!」

 

 何言ってるんだ俺-!お互い無言になったのを誤魔化そうとしたら変なことを口走ってしまった……。

 

「あ……ありがとう。嬉しいよ?」

「お、おう……」

 

 会話が無くなって、無言で二人で道を歩いている。何を話そう……?

 

「……箒は、また引っ越し先に帰るのか?」

「ああ。ここに長い間居たら、周りを巻き込んでしまうかも知れないからな」

 

 暗部組織の青髪のお姉さんが言うには、箒を色々な組織が狙っているらしい……。暗部の人達が護衛しているおかげで日常生活が守られているんだって言われて、俺に出来たことは電話で箒を励ますことだけだった。

 姉さんになんとかできないか聞いたら『箒ちゃんが私と一緒に逃亡してくれるならなんとかできるけど、束さんは嫌われちゃっているからなぁ。箒ちゃんに日常生活を送らせながら守り続けるのは国外に居る私には難しいかな……』って言っていたから、姉さんにはどうしようも無いみたいだけど、なんとかしてあげたいな……。

 

「俺がなんとか出来ればって、簡単には言えないよな……」

「そうだな。難しいだろうな……」

 

「俺さ、昔はみんなを護るためにって剣を振っていたんだ。千冬姉も湊も箒も束さんもみんな俺が護りたいって思ってずっと剣術を続けていたけどさ、いざ護らないといけない時に湊を護れなかったんだ……」

「……それは」

 

 モンドグロッソで誘拐された日のこと……?

 

「湊から聞いたかも知れないけど、俺と湊が誘拐されて、人質は二人も要らないって、俺が殺されそうになったんだ……。怖くて動けなかった俺を突き飛ばして、代わりに湊が銃で撃たれて、血を流して倒れて……」

 

 覚えている。一夏が撃たれるって思ったら身体が勝手に動いて、一緒に避けようとしたのに撃たれたんだ……。

 

「その直ぐ後に千冬姉と束さんが来てくれて、俺も湊も助かったけど、護るって決めていたのに、俺だけが護られただけで、何も出来なかったんだ……!」

 

 銃を向けられて、動けないのは仕方無いって言っても、今の一夏には伝わらないよね……?

 

「だから、今まで以上に剣を振って強くなって、湊を、みんなを護りたいって誓ったんだ」

 

 一夏がそんな事を考えていたなんて知らなかった……。俺を護りたいって……いいのに……。

 

「それでも、気軽に護るなんて言えないけどさ、何かあったら俺に言ってくれ。できるだけ力になるからさ」

「ああ。ありがとう……」

 

 何か今までより一夏が大きく見えた。剣を振る回数を増やしたって言っていたのは知っていたけど、そんな理由があったんだ……。俺の……みんなのために……。

 

「ま、まあ今は湊の家に行こう! 湊も入れて三人で昔みたいに話そうぜ!」

「……そうだな」

 

 その後は、俺が色々考え込んでいたから、一夏も話さないで家まで歩いていた。俺の今の状況よりも一夏のことを考えてしまう。

 

「着いたぞ。さっきの話は湊に聞かれたら恥ずかしいから内緒にしてくれよ?」

 

「ごめん一夏!」

「ほ、箒!?」

 

 笑いながら、おどけて誤魔化そうとした一夏を抱きしめて、ごめんなさいって謝る。

 

「一夏がそんな事を思っているなんて知らなかった。身体が勝手に動いただけで、怪我をしたのも俺が上手く避けれなかったからで……」

 

「箒……じゃないのか……?」

「ごめん一夏。俺、湊なんだ……」

 

 

「…………え?」

 

 




なんだかシリアスな展開に……。
一夏が湊やみんなを護るために強くなるって決意しています。
それを聞いて湊ちゃんは……。

湊みたいに可愛い子は初めて見たそうです……箒と鈴はドンマイ!特に箒は似ている顔をしてるのに……。

今回は一夏回と見せかけて、箒回かと思ったら一夏回でした。


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その6

 

「えっ……? 湊なのか?」

「そうなんだよ……っと、ごめん。詳しく話したいから入ってくれるか?」

「ああ……」

 

 感極まって、一夏に抱きついちゃっていたけど離れて、入り口の扉を開ける。

 

 いや、なんで抱きついたんだよ俺!

 

 リビングを抜けて、自室に入ってベッドに座る。一夏はこっちをすごい凝視している。女になったとか信じられないよなー。

 

「取りあえず座ってくれ」

「ああ……えっ? 本当に湊なのか?」

 

「見ての通り……湊でしょ?」

「ちがうだろ! えっ? なんで女の子になってるんだよ!? 束さんか? 束さんなのか!?」

「そうだよ! 姉さんのせいで起きたら女の子だったんだよ!」

 

 姉さんのせいで通じたみたい。さすが悪名高い姉さん!ついでに治してくださいお願いします!

 

「一応確認するけど、昨日の会話覚えているか?」

「女の子って訳分からないって盛り上がったやつでしょ? それのせいで女に……」

 

 思い出したら、嫌になってきてベッドに倒れ込む。横になりながら一夏と話そう。

 

「どうしてそうなった!? 女の子になれば分かるってことか?」

「そんなかんじー……しかも元に戻れないって、姉さんに言われたんだけど……」

「それで、服を買っていたのか……でも早く湊って訂正してくれよー?」

「いやー、千冬さんに乗せられて、つい……ごめん!」

「いいけどさー。でも箒だと思って喋りすぎちゃったな」

 

「それはごめん。でも一夏あの時の事は気にしないでいいから……お互いこうやって無事なんだからさ」

 

「それでも湊を護れなかった自分を許せないんだ。まあ、俺の自己満足なんだけど、もう少し頑張ってもいいか?」

 

「う、うん……」

 

 一夏に真剣に見つめられながら、そう言われたらうなずくしか無かった。

 自己満足なら止められないよね……でもなんで、今日の一夏は格好いいセリフばっか言ってるんだよ!普段ならそんな事言わないのに。

 

「なら一夏さー。俺が女の子になっちゃったのを治したいんだけど、手伝ってくれるか?」

「当たり前だろ! でも……束さんが無理ならもう駄目じゃないか?」

「それを言ったらおしまいじゃん! もうダメだー……」

 

 これからどうしようかなってベッドに顔をうずめて考える。

 問題は沢山あるけど、姉さんが無理って言うなら性別を戻すのはしばらく諦めるしかない。

 服は用意できたし……そうだ。

 

「一夏服を畳んでくれー。俺は疲れたからお願い!」

 

 ゴロンと一夏の方を向いて、お願いする。格好いいはセリフ禁止だろ!

 罰として畳んでもらおう。なんで目を合わせないんだ?なぜか首の方を凝視してるし……タグでもついてる?見ても首周りにタグは付いてないし、なんだろう?

 

「あ、ああ畳むよ」

「……ん? どうした?」

「なんでも無い! 直ぐ畳むからーってうぉ! こんなの履くのかよ!」

 

 一夏が紙袋から最初に取り出したのは紐みたいな黒いパンツだった……履かないって!

 千冬さんがネタで買ったのか……?

 

 でもそれを最初に、引く一夏ってやっぱりラッキースケベ体質なんだなぁ。

 

「そのラッキースケベを俺に向けないでくれよー。それは履かないけど一応畳んでおいてくれー」

「ラッキースケベとか違うから! てか、パンツくらい自分で畳めよ!」

「いや、俺が履くやつだし気にしなくても……っていくら親友でもパンツ畳んでもらうのはあれだな」

「そ、そうだよ! ほら、ってまだパンツが入ってるのかよ!」

 

 ベッドに座って一夏を眺めていると、なんか一人芝居していて面白い。パンツばかりの紙袋を開いたみたいで、かなり慌てている。

 一夏にパンツをベッドに置いてもらったから、自分で畳んでいこうと思ったけど……どうやって畳むのこれ?

 

「一夏これってどう畳むの?」

「なんでそんな見せ方なんだよ! 貸してみろって! こうだよ!」

「わっ、ありがとう」

 

 一夏に見やすいように、パンツの足を通す部分に両手を通して広げて見せたら、強奪された……。まあ教えてくれたからいっか。

 

 パンツを丁寧に畳んでいく。千冬さんってパンツも一夏に畳ませていたんだなー。まあ、ちょっとくらい残念なところがあるくらいある方が親しみやすくていいよね!そうじゃないと千冬さんは完璧過ぎだからねぇ。

 まあ、今度IS学園の部屋を掃除しに行ってあげよう。腐海になってなければいいけど……。

 

 一夏は女物の服でもきれいに畳めている。やっぱり家事スキルじゃ一夏には勝てないかな-?料理も和食なら勝てると思うけど、他は一夏の方が美味しいからなぁ。

 そうだ!そろそろお昼だし昼食でも作ろうかな?

 

「いちかー。お昼ご飯作るけどさ。食べたいものある?」

 

 立ち上がって、エプロンを着けながら一夏に聞いてみると、なんだかぼーっとしていて、聞こえなかったみたい?

 

「一夏……? なに食べるの?」

「あっ、ああ。えっと……肉じゃが!」

「おっけー。カレー作る用で材料もあるし、すぐ作るよ。一夏はゆっくりしていて」

「おう。お願いします……」

 

 なんで敬語?まあいっか。ささっと作ろう!

 キッチンに行って、まずは冷蔵庫から食材を取り出そうとしたけど、冷蔵庫が大きい……高いところのみりんが取れない-!

 

 なんとかジャンプして取ろうとしてみるけど届かないんだけど!

 って思ったら後ろから手が伸びてきて、一夏がみりんを取ってくれた。

 

「他の食材も取るけど、次からは足場を買ってこないとダメだな」

「そうだなー。ありがとう」

 

 振り向くと、直ぐ傍に一夏が居て、思わず見上げてしまう。俺が小さくなったせいで一夏の事も見上げないと顔が見れなくなった。ちょっと近いぞ……。

 

 一夏は冷蔵庫に手を突っ込んだまま、こっちを見て固まっている……さっきから固まるけど、調子悪いのか?顔をじーっと見てると、あっ動き出した。

 

「こっちを見上げるなよ……! すぐ取るからちょっと横で待っててくれ」

「ありがとう! ならお皿を用意しとくよ」

 

 一夏も料理できるから楽でいいよねー。お皿は下の方に入れているから、今の俺でも取り出せた。

 一夏も肉じゃがに必要な食材を出してくれたみたい。これがモテる理由か……!料理ができるってやっぱり好感度上がるよなぁ。

 

「もう大丈夫だから、テレビでも観て待っててくれー」

「ああ。怪我しないように気をつけてくれよ?」

「あーい」

 一夏が相手だと気楽に話せるから楽でいいよねー。さて、お礼に美味しく作らないと!

 

 ささっと作っていく。肉じゃがは何度も作っているから身体が勝手に動く。包丁も問題なく使えるし、料理は今まで通りに作れそうだな。

 

 

 よし、完成!味付けも一夏の好きな少し濃いめにしたし、これでいいでしょう!

 

「いちかーできたよ!」

「ああ。ありがとう!」

 

 お昼ご飯を食べながら今後の事を考えていこう!まずは腹ごしらえだな!




これが湊ちゃんの実力です!
気楽に話せる一夏が相手だと素で話しちゃうんですね-。
一夏を鈍感と言いつつも湊ちゃんもけっこう……?

次回から新連載で、
『TSした親友が可愛すぎる件』
が始まります!

嘘ですすみません!

でも、一夏視点を書いたら面白そうな感じになったので、次回は一夏視点かもですね!

読んでいただきありがとうございました!


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その7

※一夏視点です。
※連載に変更しました。


 

「えっ……? 湊なのか?」

 

 目の前のめちゃくちゃ可愛い女の子が湊……?

 

 黒髪が腰まで伸びていてサラサラしててきれいだし、顔は束さんに似て、おっとりしていそうな可愛い顔をしているし、身長も小さくて俺の胸辺りに顔があって、見上げられて見つめられると、目を離せなくなる。

 

 そんな可愛い子に今は、抱きつかれているってどういう事だ……?

 なんで抱きついてるんだよ!柔らかくて、甘い匂いがするんだけど!

 

「そうなんだよ……っと、ごめん。詳しく話したいから入ってくれるか?」

「ああ……」

 

 湊に連れられて、湊の部屋に着いて、ベッドに座った湊を見る。改めて見るとやっぱりかわいい……。服もかわいい系でまとまっていて似合っているし、千冬姉が選んだのか?

 グッジョブ!いやいや湊なんだよな?

 

「取りあえず座ってくれ」

「ああ……えっ? 本当に湊なのか?」

「見ての通り……湊でしょ?」

 

 でしょ?じゃないからな!

 今の見た目はめちゃくちゃ可愛い女の子だろ!全然男の時とは違うから!湊は格好良くて、身長も俺より高い奴だったからな!

 

「ちがうだろ! えっ? なんで女の子になってんだよ? 束さんか? 束さんなのか!?」

「そうだよ! 姉さんのせいで起きたら女の子だったんだよ!」

 

 束さんかー……あの人は湊の事を溺愛してるからなぁ。変な勘違いしてやらかしたんじゃないか……?

 

「一応確認するけど、昨日の会話覚えているか?」

「女の子って訳分からないって盛り上がったやつでしょ? それのせいで女に……」

 

 やっぱり湊なんだなー……ぱたりと倒れ込んだ女の子が湊かー。昨日は湊と弾と三人で女の子って意味不明だろって盛り上がったんだよなー。

 

 でもどうしてそうなった!?それより箒だと思っていたから沢山しゃべりすぎたな。湊には言わないつもりだったんだけどなぁ。

 

「でも箒だと思って喋りすぎちゃったな」

「それはごめん。でも一夏あの時の事は気にしないでいいから……お互いこうやって無事なんだからさ」

 

 それでも、血を流して倒れた湊が目の前に居るのに、なにも出来なかった俺を俺自身が許せないんだ……。束さんが直ぐに治療をしてくれたら、傷もなく治ったけど下手したら死んでいたかも知れないのに……湊は強いよな、でも護りたいって気持ちは変わらないからさ。

 

「それでも湊を護れなかった自分を許せないんだ。まあ、俺の自己満足なんだけど、もう少し頑張ってもいいか?」

「う、うん……」

 

 それに今の湊は女の子なんだから、護ってあげないと。次は護れるようにもっと強くなるからさ。

 

「なら一夏さー。俺が女の子になっちゃったのを治したいんだけど、手伝ってくれるか?」

「当たり前だろ! でも……束さんが無理ならもう駄目じゃないか?」

「それを言ったらおしまいじゃん! もうダメだー……いちかー服を畳んでくれー。俺は疲れたからお願い!」

 

 枕に顔を押し付けてた湊がこっちを向いたけど……服の胸元が伸びて胸が少し見えちゃっている……意外と大きい……いやいや、思わず凝視しちゃったけどさ、この子は湊だからな!

 

「あ、ああ畳むよ」

「……ん? どうした?」

「なんでも無い! 直ぐ畳むからーってうぉ! こんなの履くのかよ!」

 

 近くに置いた紙袋に手を突っ込んで、出てきたのは黒の紐パンだった……湊がこれを履くのか!?ほとんど紐じゃねえか!

 

「そのラッキースケベを俺に向けないでくれよー。それは履かないけど一応畳んでおいてくれー」

「ラッキースケベとか違うから! てか、パンツくらい自分で畳めよ!」

「いや、俺が履くやつだし気にしなくても……っていくら親友でもパンツ畳んでもらうのはあれだな」

「そ、そうだよ! ほら、ってまだパンツが入ってるのかよ!」

 

 この紙袋の中身が全部パンツかよ!うわ、いろいろあるし……今の湊がこれを履くのか……じゃなくて!

 全部取り出して湊の横に置いた。自分で畳んでくれよ!

 

「一夏これってどう畳むの?」

「なんでそんな見せ方なんだよ! 貸してみろって! こうだよ!」

「わっ、ありがとう」

 

 湊がパンツの足を通す部分に両手を通して、パンツの内側を広げて見せてきた……そんなエロい見せ方は止めてくれ!

 今の湊はめちゃくちゃ可愛いんだからその天然は本当に止めてください!

 

 急いでパンツを奪って畳み方を見せてから返す。湊ってかなりの天然で鈍感だし、俺が見てないと危なかっしいんだよな……。

 

 このままだと他の男に襲われるんじゃないか……ヤバいって!

 

 服を畳みながら、湊をどうやって護るか考える……家に来て貰うか、しばらく湊の家に住まわせて貰うか?

 同棲……いやいや、違うだろ!でも近くで見てないと心配だからなぁ……。

 

 

「いちかー。お昼ご飯作るけどさ。食べたいものある?」

 

 湊が前から着けていた、水色のエプロンの背中の紐を結ぼうとしていた。同棲か……違うって!

 

「一夏……? なに食べるの?」

「あっ、ああ。えっと……肉じゃが!」

 

 どうしてそれを選択したんだよ俺!湊の肉じゃがは美味しいけど、今は選んじゃダメだったろ!恋人に作って欲しいって思ってた料理じゃん!

 

「おっけー。カレー作る用で材料もあるし、すぐ作るよ。一夏はゆっくりしていて」

「おう。お願いします……」

 

 キッチンに向かう湊の後ろ姿を眺める。湊かなり小さくなったなー。冷蔵庫を開けて、上の方のみりんか?取れなくてぴょんぴょんしてて可愛い……じゃなくて、取ってやらないと!

 

 急いで、冷蔵庫からみりんを取り出して、台の上に置く。

 

「他の食材も取るけど、次からは足場を買ってこないとダメだな」

「そうだなー。ありがとう」

 

 湊がこっちを見つめて微笑んで……湊は男、湊は男、湊は男!これだけ可愛くても、湊は男で俺の親友だから……だから、見つめないでくれよ!

 

「こっちを見上げるなよ……! すぐ取るからちょっと横で待っててくれ」

「ありがとう! ならお皿を用意しとくよ」

 

 どいてくれた!ありがとう。急いで冷蔵庫から食材を取り出して、置いていく。よし、これで肉じゃがは作れるだろう!

 

「もう大丈夫だから、テレビでも観て待っててくれー」

「ああ。怪我しないように気をつけてくれよ?」

「あーい」

 

 リビングから料理を作っている湊を眺めて待つ。大丈夫か?怪我しないか?

 

 包丁さばきもいつも通りで、料理の手際も良いから大丈夫かな?よし、残りの服を畳んでおこう。

 

「いちかー。できたよ」

「ああ。ありがとう!」

 

 できたみたいだ。肉じゃがの良い匂いがしてくる。今日はもう疲れたし、たくさん食べてやる!




一夏と湊はお互いに相手が天然で鈍感だと思ってますね。

そんな二人が今後はどんな風になっていくのでしょうか?

一夏はもうダメかも知れませんね。仮に湊に告白されたら即ゴールインですよ……!負けるな一夏!

読んでいただきありがとうございました!

しばらく毎日投稿できそうです。18時予約で投稿していきたいと思います!

連載に変更しました。まだ初日すら終わってないですけど、原作を目指して進めていく予定なのでこれからもよろしくお願いいたします!


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その8

※未だにTSしてから数時間しか経ってません。
※これを書いている時点でUAが一万を越えそうです。こんなにもたくさん読んでいただきありがとうございました!


 

「いちかーできたよ」

「ああ。ありがとう!」

 

 リビングで待っていた一夏の前に肉じゃがとご飯を置いて、自分の分も持ってくる。あとは麦茶を注いで、準備おっけーだねー。

 

「じゃあ食べようか? いただきます」

「いただきます! てか肉じゃが上手すぎるんだけど!」

 

 一夏が吸い込むように、肉じゃがを食べている……おかわりをできるくらい作っておいてよかったなぁ。喉に詰まらさないようにね。

 

「一夏の好きな味付けにしたから、たくさん食べてくれてうれしいよ? でも詰まらさないようにね」

「お、おうありがとう! いやーおいしいなーHAHAHA!」

 

 変なリアクションだなー。俺も一夏が美味しそうに食べてるからって、眺めてないで食べようかな。うん。おいしいね。料理は今まで通り作れてるから安心だね。

 えっあれ、一夏もう肉じゃが食べたの?

 

「一夏おかわりあるよ? 食べる?」

「もちろん! あ、よそってくるよ」

「いや、俺が作ったからさ。よそってくるのも任せてよ?」

「あ、ありがとう!」

 

 やっぱり作った側としては、たくさん食べてくれてのが嬉しいからねー。気分良くなって笑っちゃうね。

 

 鍋に残っている肉じゃがを乗っけていく。あと一杯分はあったけど、食べられるかな?まあよそっちゃうか!

 

「はいお待ち!」

「ありがとう! いつもよりおいしいぞ!」

「そう? まあよろこんでくれて嬉しいよ」

 なんだか今日の一夏はテンション高くて面白いね。元気づけてくれてるのかな?やっぱり優しいねぇ。これがモテか!

 

 あれ、なんかあまり食べられない……?いつもの半分くらいしか食べてないけど、お腹いっぱいになってきたんだけど。

 女の子ってあまり食べないけど、俺も食べれなくなったのかな……?

 

 とりあえずご飯はなんとか食べられそうだけど、肉じゃがは残しちゃいそうだなー……まあ、夜にまた食べようかな?

 それとも一夏に食べてもらうとか?でもあれ以上食べたらフードファイター並に食べることになるから断るよね。一応聞いてみる?

 

「なんかあまり食べられなくなったみたいだから、ごちそうさま。残り食べる?」

「えっ、おう! 食べる!」

「食べるの? ならはいー。なんか食べ過ぎたみたいー……」

 

 カーペットに横になって、ちゃぶ台の横から一夏を覗き込みながら休憩する。普段の倍以上食べてるよね?フードファイター目指してるの?

 

 あ、スプーンも一夏に渡しちゃった。まあいっか。避けといてくれるよね。

 

 一夏が食べ終わったら今後について話したいなぁ。

 鈴の見送りが明日なんだけど、行かない方がいいのかな?

 

 明日鈴は中国に帰る。一昨日に鈴の送別会をして、最後に見送りに来なさいよって言われたけど、女の子になったって説明するのも難しいよねぇ……?

 てか、姉さんをよく知っている一夏じゃなかったら信じてくれないよなぁ。

 鈴には手紙を書こう。中国に行ってもがんばってくれって。鈴と居た時間は楽しかったって。また会えるといいなって感じで書いて、一夏と弾に渡してもらうか。

 

 弾には、こうなった事を説明したいなぁ。弾も協力してくれたら心強いし。こっちは時間もあるから一夏と一緒に説得すればなんとかなるかな?

 

「なんでずっとこっち見てるんだよ! まあごちそうさま!」

「食べにくかった? ごめん。考え事をしてて」

「いや、謝らなくていいけどさ。何を考えていたんだ?」

「鈴の事とか、弾の事とかこれからどうしようかなって」

 

 もっと問題があるのは学校だよね。篠ノ之湊としては通えないんじゃないかな?転校するしか無いのかな?

 

「それより、いったん食器を洗ってくるよ。その後に聞いて欲しい話があるんだ」

「ああ、わかった」

 

 食器を洗いながら考える。学校はどうしようか?名前を変えて同じ学校に行く?それとも、楯無さんの妹が通っているらしい、隣町の学校に行く?

 

 楯無さんは暗部組織の代表のお姉さんで、よく電話して、妹への愛を語ってくる変わったお姉さんで、そのお陰で会ったことは無いけど、妹の簪さんについて詳しくなっちゃたんだよなぁ……。

 

 正直、転校って形でリスタートした方が楽そうだよねぇ?ここからでも通える学校だし知り合い……と言っても一方的に知っている知り合いだけど、知っている人が居るなら多少は安心できると思う。

 でも一夏と弾がいるこっちの学校で通いたいって気持ちの方が大きいから……どうしたら通えるかな?

 

 食器は洗い終わったから、一夏と相談しようかな?一夏はこっちを見てたみたい。怪我しないって、大丈夫だよ?

 

「洗い終わったよ。それで一夏に聞きたいんだけど、どうしたら一緒の学校に通えるかな?」

「どうしたら? そっか今までの名前だと誰ってなるのか? 難しいな……」

「そうだよね……俺も転校しないといけないのかな?」

 やっぱり女の子として、新しい学校でやり直すしか無いのかな?

 

「いや、待ってくれ! ちゃんと考えるから! やっぱり湊のままだとダメか……? そうだ、箒みたいに名前を変えて、転校してくるのはどうだ?」

 

「それでいけるかな? でもどうやって名前を変えよう? 千冬さんならできるかな?」

「いや、姉さんがいくら世界最強でも戸籍を変える力は無いんじゃないか? 無いですよね……? 束さんは……違法ならいけそうだけど、他に戸籍を変えることのできる知り合いって……居るわけ無いか!」

「あっ……一人居るかも。早速電話してくるね!」

「居るのかよ! がんばれよー! いってらっしゃい」

 

 楯無さんなら戸籍を変えることができるかも知れない?とりあえず電話で俺が湊だって証明してから聞いてみよう!電話して……繋がった!

 

「もしもし、湊君どうしたの? 何かあった? それともお姉さんと話したくなっちゃったり?」

 

 よし、いつもの楯無さんだ。がんばって信じてもらおう!ちょっと声を低くして、男の時っぽくしゃべろう。

 

「こんにちは楯無さん。ちょっといいですか?」

「いいわよー? って誰よ!?」

「ですよねー……まず俺が湊って信じて欲しいんですけど」

「無理よ! だってあなた女じゃない? 湊君に扮して私に電話するなんて何の用かしら?」

 

 ぜんぜん声も低くならないし、俺の声なのにめっちゃ可愛い声だし!簡単には信じてくれないですよねぇ。

 

「いや、昨日姉さんと色々あって、朝起きたら女になってたんですって!」

「そんな事あるわけ無いじゃない!」

 

「あったんですって! あ、そうだ。今日も俺の家を監視して居たのなら、千冬さんが家に来たのは報告に来ているかも知れませんけど、千冬さんに確認してくれませんか?」

 

 切り札を見つけた!千冬さんに確認取ってくれれば信じてくれるかも知れない!千冬さんの事を信じてますよ!




一夏のおかわりをよそいに行ったときは鼻歌を歌いそうなくらいニコニコしていた湊ちゃんでした。
時系列が鈴が中国に帰る前日だと判明しましたね。つまり原作まで後、一年以上あるって事ですね。遠い……。

みんなのお姉さん楯無さんが登場しましたね!


※アンケートでは無いです。
次のルートは転校ルートか同じ学校ルートですね。

転校ルートだと、簪ちゃんと本音ちゃんとイチャイチャできるGLルートになれますね!
女の子としての第二の人生を歩むルートが確定ですね!

同じ学校ルートだと、一夏との仲がさらに深まりそうです……。
弾も居るので、乙女ゲーの主人公みたいになりそうですね。


とにかく次は、楯無さんを説得できるのでしょうか?

しばらく毎日投稿できそうです。18時予約で投稿していきたいと思います!


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その9

 

「今日も俺の家を監視して居たのなら、千冬さんが家に来たのは報告に来ているかも知れませんけど、千冬さんに聞いてみてくれませんか?」

 

「……確かに、織斑先生が湊君の家に行って、見知らぬ女の子と一緒に出てきたって報告を受けたわ。確認させてくるからこのまま待っててくれるかしら? ちょっと待っていて」

「はい。よろしくお願いします」

 

「今確認に向かわせたわ。とりあえず、あなたは暫定湊くんだと思って話すけど、何の用だったのかしら?」

「あのー……朝起きたら女の子になってたじゃないですか?」

「あり得ないわね!」

 

「あり得たんですって! それで……女の子になっちゃいましたけど、今までの学校に通いたいじゃないですか-?」

「まあ確かにそうね?」

 

「ただ、篠ノ之湊として通うのは無理がありますよね?」

「そうねぇ。見た目が一緒なら……でもあの高身長の男の子がそんな可愛い声って……あははっ!」

「見た目は小さいですから! 楯無さんより小さくなっちゃたんですって!」

 

「それより、同じ学校で通うなら、篠ノ之湊は転校させて、代わりに別の名前で通えないかなって思ったんですよ」

「ふーん。それで戸籍を用意してくれないかって、私に電話してきたのね? あっ、ちょっと待ってね」

 

 電話を保留にされたみたい。確認が取れたのかな?千冬さんありがとう!

 

「お待たせ暫定湊くん。千冬先生と確認が取れたわ」

「本当ですか! やっぱり千冬さんは頼りになりますね!」

 

 

「あなたは偽物よ! 今すぐ拘束しに行くわ!」

「ええーーー! なんでですか! 確認取れたんじゃないんですか-!?」

 

 

「ふふっ、冗談よ。戸籍は用意するわ」

「はぁ……ひどいですよ楯無さん……そんな意地悪をするから簪さんに嫌われちゃうんですよ?」

「簪ちゃんの事を言うのは止めて……立ち直れなくなっちゃうから!」

 

「ならいくら好きでも気を付けないとダメですからね!」

「はーい。湊くんじゃなくて湊ちゃんになっちゃったけど、中身は変わっていないのね。声は可愛らしいけど!」

 

 

「それより女の子になったのなら、私の妹にならないかしら?」

「どうしてそうなったんですか!?」

「せっかく戸籍を変えるなら苗字は更識にしたらいいと思うのよ」

「更識でもいいですけどー。いいのかなー?」

「はい決定よ! 名前は何か候補があるかしら?」

 

「そのまま湊いきたいです。ここは同名だって貫くしか無いですね!」

「それでいいならそうするわ。学校への手続きはこちらで進めておくわ。これからは篠ノ之湊くんじゃなくて更識湊ちゃんね。私の新しい妹の!」

 

「はいはい。お姉ちゃんありがとうね」

「お、お姉ちゃん!? ねえもう一回言ってくれるかしら」

 

「いいですよ? お姉ちゃん、本当にありがとうね」

「い、妹のためなら何でもやるわ! それじゃあ後はお姉ちゃんに任せてね! あといつでも何かあったら電話してね!」

「わかりました! お姉ちゃんもよろしくお願いします!」

 

「ええ! ではまたね! あと妹なんだから一回は私の家に来ないとダメよ! じゃあね!」

「え、ええー! ちょっ、わかりました?」

 

 これで、同じ学校に通える!なんか楯無さんの妹になっちゃったけど!

 よっぽど妹に飢えていたんだねぇ。シスコンすぎませんか!?家の姉さん並のシスコンなんですか!

 今度楯無さんの実家に挨拶しにいかないとダメかー。まあ安い代償なのかな?

 

 よし、一夏のところに戻ろうか。戸籍作ってくれるって報告しにいかないと、心配してるかもだし。

 

 自室から出てリビングに戻ると、一夏は携帯を弄ってる。メールでもしてるのかな?

 

「一夏お待たせ。誰かとメールしてた?」

「いや、千冬姉とメールしてたけどさ、何言ってんだよ千冬姉は!? 湊を学校に行かせるのは諦めて、お、俺と湊が結婚して……専業主婦にしてやれって……いやいや俺たちまだ中学生だからな!?」

 

 一夏と結婚……一緒にご飯食べたり、二人で出掛けたり、楽しく話したり、二人で一緒の部屋で暮らして……ほとんど、今日やってるんだけど!?

 それに肉じゃが作っちゃったよ!女々しいとは思うけど、好きな人ができたら作ってあげたいって思ってた肉じゃが作っちゃったよ!

 

 わ、なんか想像したら顔が熱くなってきた。いやいや、落ち着け俺は男だから!

 

「だ、ダメだよそんな! お、俺は男だし! い、一夏もいやでしょ!」

「全然いけ……いやいや、やっぱりダメだよな! 湊は男、湊は男!」

「そ、そうだよ! 千冬さんも冗談が好きなんだから!」

 

 はぁ……少しずつ落ち着いてきたけどさー。変なことを言わないで欲しいよ……でも俺は誰と結婚するんだろう?

 今でも女の子が好きだと思っているけど、同性婚は認められてないし……男と結婚とか無理だから!そ、それよりも話さないといけないことがあるんだった!

 

「そ、それよりさ! 新しい戸籍は作ってくれるって!」

「そうか! よかったな!」

 

 なんだかお互いに変なテンションになっちゃってるよ!

 

「知り合いのお姉さんの楯無さんに頼んだら戸籍を作ってくれる事になって、ついでに楯無さんの妹にされちゃった」

「なんで妹になる必要があったんだよ!」

「楯無さんがシスコンだから……?」

 

「その人も束さんもシスコンって湊の周りにシスコンが多くないか?」

「一夏もシスコンだからねー」

「いやシスコンじゃねーし!」

 

「えっ? 千冬さんのこと嫌いなの?」

「嫌いなわけないって、たった一人の家族なんだから千冬姉のことは好きに決まってるって!」

 

 む、そんなに千冬さんが好きなら、シスコンですって言えばいいのにー!なんだかちょっとむかむかするね!ん?……なんで怒ってるんだ俺?疲れてきたのかな?

 

「ちょっと疲れてきたかも? 少しゆっくりしようか?」

「そうだよな。何かやって欲しい事とかあるか?」

 

 一夏に何かやって欲しい事かー?レゾナンスに行っただけなのに、なんだか疲れちゃったから、何をやって貰おうか……あ、これだ!

 

「いちかー久々にマッサージしてほしいな-」

「ま、マッサージだと!?」

 

「えっダメ? 一夏のマッサージって気持ちよかったからさ、またやって欲しいんだけど、どうかな?」

「わかった。やるよ! ……落ち着け俺。千冬姉にもやってるんだ! 耐えられるはずだ!」

 

「何に耐えるの?」

「な、なんでもない!」

 

「それならベッドに行くね。カーペットだと薄すぎて、痛いと思うから」

「ベッドの上!? がんばれ俺! がんばれ一夏!」

 

 変なの?でもマッサージにやる気になってくれたのかな?まだ考えないといけないこともあるし、気持ちよくても寝ないようにがんばらないと!




マッサージきましたー!それは置いといて。

更識湊になってお姉ちゃんが増えました。
今宵の楯無さんは妹に飢えていた模様。
いずれどこかで更識家に行くことになりましたね。
簪ちゃんにはそこで会えるのでしょうか?

千冬さんの事を好きって言った一夏を見て湊ちゃんの様子が……あれ?

そしてマッサージですね!
(意味深なマッサージでは)ないです。

次回も読んでくれたらうれしいです!

マッサージ回は一話開けてから、書く予定です!
『百合』な話を書いて、清らかな心になってからじゃないと、やり過ぎちゃいそうなので、次回はifルートの『簪ちゃんルート』を書きたいと思います!
一夏と湊ちゃんのあれこれを見たい方は明後日までお待ちください!


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if更識簪√『まるでアニメみたいな恋』

 
簪と本音の居る学校に進んだifルートです。
一話で完結します。でも7000文字超えですみません!
本編とは関係ないので読まなくても大丈夫ではあります。

簪視点で進みます。
 
※ガールズラブ注意です。


※時系列・設定の説明です!

『東雲湊《しののめみなと》』として転校します。
 時系列は8話で楯無さんに電話をしてから一週間後で、湊ちゃんは楯無さんから女の子として学校に通うためのレッスンを一週間受けたので、女の子度がアップしています。なので本編よりも女の子しています。


 

 日差しがまぶしい。学園アニメの主人公が座るような、窓際で一番後ろの席に座れたって喜んでいた過去の自分をぶっとばしたい……!

 日差しが当たって、あついし……夏ってほんといやだ……。

 

 朝までアニメを見てたせいで、すごい眠いのに、暑くて寝られない……。

 朝早いのに、周りの生徒たちは楽しそうに騒いでいる。頭に響くからやめてぇ……!

 

「ねえねえ。さっき職員室の前で初めて見たすごい可愛い女の子が居たけどさ、転校生なのかな?」

「そうかも! ねえ机が増えてるよね? ほら、更識さんの隣に!」

 

 隣?確かに机が増えてるけど、転校生……?

 

 あっ先生が来た。でも転校生だったら隣の席の私が、案内とかしないといけないのかな?嫌だなー。私がコミュ力が無いことを先生も汲み取ってくれるよね……!

 

「皆さんおはようございます。突然ですが、皆さんと一緒に学校生活を楽しむ生徒が一人増えます!」

 

 キャーとかウォーとか声援が鳴り響いて、頭に響く……うぅ死にそう。

 

「それでは、東雲さん入ってください」

「……失礼します」

 

 それまでうるさかった教室が、ピタッと無音になって、皆が一人の女の子に釘付けになっている。

 

 アニメのヒロインがリアルに現れたら、こんな美少女になるのかな……なんて考えちゃうくらいの美少女転校生が、教壇に立ってクラスを見渡して……わ、私と目が合った!な、なんで私を見てくるの!?

 

「は、初めまして。私は東雲湊です。仲良くしてくれたらうれしいです!」

 

 か、かわいい!

 

 頭を下げてから仲良くしてって言った後の、不安げにこっちを見てくる表情が……小柄で小動物みたいなイメージの女の子にそんな風に見られたら……。

 

「仲良くするよ〜!」

「よろしくね! 東雲ちゃん!」

「かわいいー! 仲良くしようね!」

 

 クラスメートが思い思いに、挨拶を初めてかなりうるさい……『皆落ち着け、湊ちゃんが困っているだろ!』なんてラブコメ主人公みたく言えるコミュ力は私には無いけど……仲良くなれたらうれしいな。

 

「では東雲さんは、一番後ろの空いている席に座ってくれますか」

「は、はい! 分かりました!」

 

 東雲さんが私の隣に座って、私の方に振り向いた!?近くで見たら睫毛も長くて目もぱっちりしていて、すごいかわいい!

 

「あ、あの! よろしくお願いします!」

「よ、よろしく……」

 

 もっと話したいけど、コミュ力が足らない……!

 

「では、このまま授業を始めたいと思います。あ、更識さんは東雲さんに教科書を見せてあげてくださいね」

 うぇ!?ま、まあ机を近づけたけど、すごい、いい匂いがするんだけど!

 

「ありがとうね。か、更識さん」

「別にいい……」

 もっと喋りたいのにそれしかしゃべれなかった……。

 

 それから特に何も無く授業が終わって、それ以上東雲さんとは話さなかった。

 授業が終わった途端に、東雲さんの周りにクラスメートが集まってきた。

 

「しののんってすごいかわいいね〜!」

「し、しののんですか!?」

「東雲さんだからしののんだよ〜!」

「あ、ありがとうございます?」

 

 クラスメート……って言うか本音が東雲さんに絡んでいる。絡んでいると言うか、抱きついてる……何やってるの!?

 

「んなっ! なんで抱きつくんですか!?」

「かわいいし、いい匂いだよ〜!」

「ちょっ! 何してるんですか!?」

「かんちゃんも一緒にやろ〜」

「私はいいから……止めてあげて」

「え〜! 仕方ないな〜」

「あ、ありがとうございます! 更識さん!」

「……気にしないで」

 

 本音うらやましい!……じゃなくて、東雲さんを守れてよかった。まあ、その後は他のクラスメートから質問攻めにあってて、大変そうだったけど、転校生の宿命だよね。

 東雲さんは、それから放課後まで、休み時間はずっと他のクラスメートと話していたから、喋られなかった……。

 

 その後も授業は全部終わって、放課後になった。

 先生からは東雲さんに学校の案内をしてと言われてしまった……本音なんで先に帰っちゃったの!?

 

「あ、あの! 更識さんよろしくね?」

「……よろしく。案内するからついてきて」

「はっ、はい!」

 

 なんで私こんな冷たいの!?緊張しすぎて全然まともに喋れないよ!嫌いじゃ無いのに……!

 

「たくさん本があるね!」

「綺麗な教室だね!」

「研究道具もたくさんあるんだ!」

「大きな体育館だね……」

 

 校舎を一通り回ったけど、全然話せなかった……。東雲さんからたくさん話を振られたけど、返せなくって、無視したみたいになっちゃって……もう嫌。もっと話したいのに……!嫌われちゃったよね……。

 

 全部の説明が終わっちゃった。もう帰ろう……。

 

「説明終わったから……もう帰っていいよ」

「あ、あの! 更識さん、ありがとうございました!」

「別にいい……じゃあね」

 

「さ、更識さん!」

「……なに?」

 まだ何かあるの?もう話せないんだから、帰らせてよ……。

 

「わ、私とお友達になってくれませんか?」

「え? な、なんで……」

 

 たくさん無視しちゃったのに……嫌われたと思ったのに、なんで友達になってくれるの……?

 

「た、本音さんから、更識さんは話すのが苦手だけど、本当は優しい女の子だから、喋られなかったらごめんねって言われていたの。優しいって言うのは伝わったよ? 私がゆっくり部屋を見てたときもずっと待っていてくれたし、歩幅の小さい私に合わせて隣を歩いてくれたよね? そんな優しい簪さんとお友達になりたいと思ったから……私とお友達になってくれませんか?」

 

「う、うん!」

「よろしくね。更識さん」

 

 お友達になれた……!ほとんど無視しちゃったのに……それでもお友達になってくださいって!

 東雲さんの方が優しいよ……!

 

「更識さんは電車通学?」

「うん!」

「そっか。なら一緒に帰らない?」

「か、帰る!」

 

 電車通学しててよかった!

 中学に入るまでは車で送り迎えしてもらっていたけど、そんな事をしてる子なんて他に居なかったから『更識さんはお金持ちなんだね』とか言われるのが嫌になって……今までも電車で通学してたけど、東雲さんと一緒に帰れるならこれからもずっと電車通学だよね!

 

「なら帰ろうか?」

 

 東雲さんが私に手を差し伸べてきた。その後ろから指す夕日に照らされた東雲さんは本当に綺麗でなんだか格好良くも見えた。

 

「は、はい!」

 

 恐る恐る手を握る。

 手は私よりも小さくて、柔らかくて温かくて、手を引かれながら歩いていたら、隣に並んでくれた。

 

 二人での帰り道は、本当に楽しくて幸せだった。お友達が出来たのは初めてで、本音と帰るか、一人で帰るだけだったのに、今は東雲さんが隣に居てくれる。

 本音はもともと更識家に仕える家の出身で、私の従者をしてくれてるけど、本当は姉さんに仕えているんじゃないかって疑っちゃって、友達になる為のあと一歩が踏み出せなかったから……東雲さんと一緒に帰れて本当に嬉しい。

 

「更識さんは好きな物って何かある?」

「アニメ……! ……あ」

 

 やっちゃった……!アニメが好きなんだけど、女の子でアニメ好きなんて変だよね……クラスの女の子は誰もアニメの話なんてして無いし……。

 

「ん? アニメが好きなんだ。私も見るけど、ロボット物か熱血物ばかり観ちゃってるから、女の子らしくは無いよね?」

「ほ、ほんとに!? 好きなアニメは?」

 

「天元突破するアニメかな!」

「良いよね! あれって平成のロボットアニメでトップ10に入るくらいに面白いと思う! 主人公も他の人たちもみんな熱くて、格好良いよね! …………あ」

 

 喋りすぎちゃった……!アニメの話なんて出来る人が居なかったし、私も好きなアニメだったから……引かれちゃったかな……?

 こっそりと東雲さんの顔を見ると、なんだか楽しそうに笑っていた。

 

「本当にアニメが好きなんだ。私も好きだけどさ、更識さんの方が詳しそうだから、たくさん教えてよ?」

「ひ、引かないかな?」

「引かないよ。さっきの更識さんは本当に楽しそうだったから、またアニメの話をしてる更識さんを見たいな」

「あぅ……」

 

 な、なんでこんな格好いいセリフを私に言うの!?優しく笑いながらそんな事を言うなんて反則だよ!

 

「っと、駅に着いちゃったね。更識さんは上り線?」

「下りの方……」

「じゃあ反対だね。ならまた明日かな? これからよろしく! またね!」

「うん! バイバイ!」

 

 改札を越えて別々のエスカレーターを登っていった。あ、反対側のホームに東雲さんが居て、手を振ってくれた!

 

「また明日会いたいな……」

 手を振り返して、そうつぶやいちゃった。転校してきた女の子が可愛くて、アニメが好きな女の子で、お友達になってくれるなんて、夢じゃないよね……?

 

 

 次の日に学校に向かう。昨日の事が全部夢だったらどうしよう……?東雲さんが学校に居てくれるかな?

 

 電車を降りて、改札を抜けようとしたら、私に向かって手を振っている女の子が居る……東雲さんだ!思わず、駆け出して、東雲さんの目の前まで走った。

 

「更識さんおはよう。朝から元気だね!」

「東雲さんが居たから……かも」

「そう? ならずっと一緒に居てあげないとね。更識さんが元気なら私も嬉しいし」

「あぅ……」

 

 私よりも小さくて、可愛いのに格好いいセリフを言っちゃうから、ギャップがヤバいよぅ……東雲さん、格好いいなぁ……。

 

 

 それからは夢じゃなかったけど、夢のような日々が始まった。

 

 友達になってから半年が過ぎて、東雲さんから湊って呼ぶようになって、『お友達が出来たらやりたかった事リスト』には、ほとんど斜線が引かれて、今日は私の家で夜通しアニメを観る事に!

 

 私服姿で家に来た湊はすごい可愛くて、白のニットの上着と、紺色のミニスカートがすごい似合っている!

 

「今日はよろしくね。簪」

「うん。湊が来てくれるのがすごい楽しみだった……」

「私もだよ。じゃあお邪魔しまーす」

「私の部屋はこっち……」

 

 私の家に湊が来るのはこれが初めてで、大きな家だけど驚かなかったかな?湊は楽しそうにしてるし、だいじょうぶかな?って本音なんで走ってくるの!?

 

「しののんだ〜! かわいい〜!」

「なんでいつも抱きつくの!?」

「私服もかわいいよ〜! スカートじゃなくてスカパンだ〜!」

「ちょっとどこ見てるんだ!?」

「本音ストップ」

「は〜い」

「あ、ありがとう」

 

 さっきみたいに、湊はたまに男っぽい口調になる時がある。小さいのに、男勝りなところもある湊のギャップってすごい良いよね……!

 

「本音も居るんだね」

「かんちゃんと二人っきりがよかった〜?」

「ちょっと、何言ってるの……!?」

 

「確かに二人でアニメを観る予定だったから、お邪魔虫さんはまた明日ねー」

「押される〜またね〜」

 

 本音は曲がり角まで湊に押されていって見えなくなった。なんか二人って仲が良いよね……ずるい。

 

「むー……なんか二人って仲が良いよね」

「うーん。学校だと一番話しているのが本音だからねぇ。簪がもっと話し掛けてくれたらいいんだけど……どうかな?」

「が、がんばる!」

 

 学校だと他のクラスメートも居て、二人の時みたいにアニメの話も出来ないから、何を話せばいいのか分からなくて、湊とあんまり話せていない。

 湊から話してくれても、周りに見られて緊張しちゃうから会話をすぐに切らせちゃう……でももっと湊と話したいし、がんばろう!

 

 私の部屋に着いたら部屋を見回している湊には、あまり見ないでって言って、一緒にベッドに座ってテレビをつける。

 観るアニメは某ドリルのアニメで、私たちが最初に話し合ったアニメで、湊も大好きなみたいだから寝ないで観るのはちょうど良いよね!

 

 

 そう思っていたんだけど、私の膝を枕にして寝ている湊にはダメだったかな?

 

 髪の毛はさらさらしていて、ずっと触っていられる!

 寝る準備をしてから来てねって言ったから、お風呂に入ってから来たのか、シャンプーの良い匂いがするし……!

 

 夜遅くまで起きるのは苦手って言ってたけど、まだ1クールも越えてないよ……いつも23時前には絶対寝てるって言っていたのは伊達じゃないね。遅くまで起きられない湊もかわいい……。

 

 でも、どうしようかな?二人でアニメを観るから夜更かししようって思ってたけど、一人で観るなら寝ちゃってもいいかな?でも1クールは観よう!あと三話だし。

 

 あれ?ベッドに置いてあった湊の携帯の画面が光った。誰かからメールが来たのかな?

 

 み、観ちゃダメだよね……でもこの前、知らない男の子と湊が楽しそうにレゾナンスでゲームしてたのを見つけちゃって……湊はその男の子と付き合ってるのって聞いたけど、『付き合って無いから!』って、強く否定されちゃった。

 でも、ちょっと怪しいよね。その時の湊はすごい楽しそうだったし……ごめん!件名だけしか見ないから!

 

 

 えっ……なんで姉さんからメールが届いているの……?

 

『簪ちゃんとお泊まりなの!? ずるいわよ!』

 

 なんで、姉さんは……私が湊と泊まったことをずるいって言ってるの……姉さんが湊と泊まりたいって……なんで!

 

「うわっ、あれ? ……ごめん寝てたみたい」

「な、なんで……」

 

 思わず立ち上がろうとしたせいで、膝からベッドに頭が落ちちゃった湊が目を覚ました。

 

「ご、ごめん……夜は眠くて」

「違うの……なんで姉さんとメールしてるの……!」

「楯無さんと? あ……」

 

 楯無さん……湊は姉さんと知り合いなんだ……!

 

「全部姉さんが! 湊は姉さんが友達の居ない私を憐れんで、転校させて来たんだ……今までの楽しかった事も全部姉さんが湊にやらせていたんだ!」

「違わない……!」

 

 私みたいなのに友達なんて出来るわけ無かったよね……湊は、姉さんが憐れんで、私に与えただけのおもちゃだったんだ……!

 

「帰って……!」

「いや、違うんだ。本当に!」

「帰ってよ……!」

 

「話を聞いてくれ、簪!」

「あっ、あぅ……」

 

 なんで、なんで抱きしめるの?全部嘘なんだから……もう放って置いてよ……。

 

「私、いや俺が簪と会ったのは、君に会いたいって俺が思ったからなんだ! 簪の話は楯無さんから聞いたよ」

「な、なら……!」

 

「でも! 簪が居る中学に転校するって決めたのは俺だから! 実際に簪と会って、友達になりたいって決めたのも、全部俺だから! だから大丈夫だから。そんなに泣かないでくれ」

 

「本当なの……? 信じていいの……?」

「大丈夫だよ。ほら泣き止んで……」

 

 湊がポケットからハンカチを取り出して、涙を拭ってくれた……でも止まらないよ……もっと信じさせてよ……!

 

「でも、ならなんで姉さんと知り合いなの……?」

「重要人物保護プログラムって知っている? 更識家が政府から依頼されているって聞いたけど……」

「少し……知ってる」

 

 政府によって保護が必要だと判断された人物を保護する為のプログラム。湊が保護されているの?でもなんで……?

 

「俺は小さい頃から重要人物保護プログラムで更識家に護衛されていて、楯無さんはしばらく後に護衛役の代表になったから、それで知り合ったんだ」

「……そうなんだ。でも、なんで保護されているの?」

 

「それは……まだ秘密かな? でも簪にならいずれ言えると思う」

 

 湊は口に人差し指を当てて、内緒って可愛らしくポーズをしていて、それがさっきから『俺』って言ってるのとギャップがすごすぎて笑っちゃった……笑ってまた少し涙が零れちゃった。

 

「あははっ!」

「なんでそんなに笑うの!?」

「だって……湊って俺っ子だったんだね? 似合ってないよ」

「う、うるさい。俺の方が言いやすいんだから仕方ないんだって!」

 

「でも似合わない……ふふっ」

「だ、だよね……」

 

 でもよかった……!湊は姉さんとは知り合いでも、私とは友達なんだから!

 だから、なんで保護されてるのか……いつか教えて欲しいな。

 

 それからは後ろで進んでいたアニメを、湊が寝る前に見ていたところまで巻き戻して、二人で最終話が終わるまで観た。

 

 眠そうな湊はすごい揺らして起こしてあげた。

 

 私を泣かせた罰だよ?

 

 全部観たら二人で倒れるように寝ちゃって、気付いたら夕方になっていた。

 

 友達が出来たらしたい事リストの最後の項目は『二人でアニメを夜通し観る』だったから、そこに斜線を引いて、次は親友が出来たらしたいリストを作らないとね!

 

 まだまだ湊とたくさんしたい事はあるから、これからもずっと一緒に居てね……!

 

 

 楽しい時間は過ぎていって、進路を決める時期になってきた。

 

 私は全寮制のIS学園に行くから、湊が別の所に行くとしたら、あんまり会えなくなるかもって話をしたら、湊もIS学園に行くんだって!

 前々からISに興味があるのは知っていたけど、IS学園に行くんだ!一緒に受験勉強が出来るねって笑い合った。

 

 

 二人で一緒にIS学園に入学出来て、部屋は別々だけど、湊の部屋に毎日遊びに行った。

 ISの勉強もちゃんとしたよ?

 

 初日の授業を受けて、昼休みになったから、別クラスの湊を一緒にお昼ご飯を食べるために迎えに行く。

 

 湊のクラスに行っても、湊が居ない……どこだろう?

 

「かんちゃん大変だよ〜! 告白だよあれは〜!」

「えっ……な、なに?」

「おりむーがしののんに屋上で告白だよ〜! おりむーとしののんは幼なじみだから付き合っちゃうのかな〜?」

 

 湊が幼なじみと付き合っちゃう……?告白される……?

 

「だ、ダメ!」

「冗談だよ〜! かんちゃーー」

 

 本音が何か言ってるけど、今は屋上に行かないと……!

 屋上まで全速力で走って、屋上へ出たけど、誰も居ない……?いや、こっちから声がする!

 

「湊、俺と付き合ってくれ!」

「えっ? いちか?」

「ずっと前から好きだったんだ!」

「う、うん」

「だ、だから俺と付き合ってくれ!!」

 

 

「ダメーー!」

 告白の返事をしそうな湊に抱きしめて、唇と唇を重ねて、キスをした……キスをしちゃった!

 

 甘い味がして、視界にはもう湊しか見えない。

 

「あ……あぅ……」

 

 あぅ……なんて言っている湊が可愛い。

 

 それよりも、この男に言わないと!

 

「湊は私の大切な女の子なの。あなたには絶対渡さないから!」

「な、なんだってえええ!」

 

 絶対誰にも渡さないから!

 これからもずっと一緒だよ!

 

「…………あぅ」




二人は幸せなキスをして終了!終わり!
百合を書いていたら7000文字を超えてしまいました……。
少女漫画を書いている気分で書きました!どうでしょうか?

簪視点は初めて書きましたが、めんどくさ可愛いオタク女子な簪ちゃんが書けていたら嬉しいです。

ほぼ最後まで、湊ちゃんが押してましたが、最後の最後に簪がキスをして、逆転しました。
あぅ……と言わせていた湊ちゃんが最後には簪に言わせられましたね。
湊ちゃんはびっくりして最後まで思考停止してましたね!

簪ちゃんと仲良くなる為の、一番の障害だった楯無さん問題は越えたので、後はゴールまで一直線でしょうね!

一夏はこれからも湊ちゃんにアタックを続けると思いますが、勝者はもちろん……。この話は簪ルートですからね!
少し語られたように、一夏と湊ちゃんは休日や放課後でちょくちょく遊んでいました。そこで一夏は好きに……。

小さくて可愛いのに、俺っ子で男勝りな湊ちゃん。簪はギャップ萌えしてしまいましたね。

『簪ちゃんとお泊まりなの!? ずるいわよ!』
簪ちゃんは反対の意味に捉えてしまいましたね。楯無さんは簪ちゃんお泊まりしたかったんですけどね。

5000文字くらいで終わらせる予定が7000文字オーバーでした……だから本編がまだ9話なのに数時間しか経ってないんですよ!
でも今回みたいに飛ばせばすぐに原作まで行けるんですが、本編はまったり進めて行きたいと思います!
すみませんが、しばらくはお付き合いください。

では、簪ルートはこれで終わりたいと思います。
後はハッピーエンドまで一直線なので、続きはありません。
次回からは本編の更新に戻ります!

読んでいただきありがとうございました!


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その10

※前回は長くてすみませんでした。
 今回は普段通りの2500文字程度に戻っています。
※誤字報告ありがとうございました。
※マッサージ回なので内容が……。


 

「じゃあ横になるからよろしくねー」

「がんばれ俺! よし、やるぞ!」

  

 湊がマッサージをしてくれなんて言い出したから、やるしかない!理性を保たないと、もう戻れなくなるぞ俺!

 

 さっきは湊が学校に行けないかもって言っていたから、どうしたら良いかって千冬姉にメールで聞いてみたら『一夏が湊と結婚して、専業主婦にしたらいいんじゃないか? お似合いだと思うぞ』なんて言ってきたけどさぁ!そうじゃないんだって!学校に行かせる方法を聞いたんだよ!

 

 湊の事が好きなのは認める。

 でもそれは親友として好きだったんだ!

 

 小さい頃からずっと一緒に居て、他にも友人はいるけどさ、湊よりも長く一緒に居た友人は居ないから、二人で居るのが当たり前になっていた。

 湊が女の子になったけど、親友なのは変わらないし、二人で居るのはこれからも変わらないと思う。

 

 

 だから、これからも親友で居続けるためにここは耐えろ俺!

 

「あっ……そこ……あぁっ……!」

 

 だから頼むから変な声を出さないでくれ!

 

「やっぱり一夏は……はぁ……マッサージ上手いね……んんっ!」

「ありがとう! だからそんな声は出さないでくれ!」

 

 湊の背中に乗って今は肩をマッサージしているけど、なんだか良い匂いがするし、背中なのに柔らかいし!

 気持ちよくなってくれているみたいで、さっきから変な声を出しているし……かわいい声でそんな声を出されると本当にヤバいから止めてくれ!

 

「だって……声がまん……できな……んあっ……いから」

「でもがんばってください、お願いします! 肩は終わりだ! よし、もう終わろう!」

 

 やっと肩揉みは終わった!もう終わろうな……湊もまだ考えることがあるから!二人でこれからの事を話し合おう!

 

「えー……まだ足らないよ? 次は背中をお願いー。一夏が乗ってた辺りをよろしくなー」

「ああ……分かったよ! やってやるよ! 負けるな俺!」

「ん? 何に負けないの?」

 

 や、やばい……背中を上手くマッサージするには、お尻辺りに座らないといけないんだ……!

 千冬姉に何度もマッサージをしてるんだ、慣れているから大丈夫だよな!

 

 よし、座るぞ……って柔らかすぎるだろ……!

 

 いや意識をそっちに向けるのはまずい!

 今の俺はプロのマッサージ師だ。無心でマッサージを続けよう。背中のツボを無心で押していく。ここは疲労回復にいいツボだ。強く押してあげよう。

 

「そこ……もっと強く……んぁ!」

 

 ダメだ!ダメでした!無心でなんて出来るわけないだろ!

 

「なんか……男の時より気持ちよくて……癖に……なりそ……んっ!」

「変な事を言うのは止めてください湊さん!」

 

 身体が小さくなった分深くまでツボを押せるようなっただけだよな!早く終わらせるためにペースを上げよう!こことここを連打だ!

 

「んあっ! 激しい……から……いちかぁ……!」

「湊は男、湊は男、湊は男だからな俺!」

 

 だから、そんな声で俺の名前を呼ばないでくれえええ!

 

「背中も終わりだ! 今日はこれで終わりだな!」

「はぁ……はぁ……わかったよー……ありがとうね」

 

 ベッドに座り直した湊は息を切らしていて、髪も乱れていて、色っぽい……いやいやいやいや!変なことは考えるな俺!

 

 でも耐えきったぞ!本当にがんばった……!

 今の湊はめちゃくちゃ可愛いんだからさ、もっと自覚を持ってくれよ!男の時と同じようにはいかないって教えてあげないとこの先まずいよな?

 

「ふぅ……やっぱり一夏は上手いね。脚はまた今度よろしく!」

「ああ! またいつかだな!」

 

 できれば、男に戻るまではご遠慮ください!今の湊へのマッサージは本当にヤバかったんだ!

 

 

「なんか、身体がさっきより軽くなったかも? ありがとう!」

「ならよかった。俺は結構疲れたなぁ……」

 

「あれだけしてくれたら疲れるよねー、なら今度は俺がマッサージしようか?」

「な、なんだと!? い、いやーいいかなー?」

 

「遠慮しないでいいからさ、横になってくれよー」

「わ、わかりました……」

 

 言われるがままにうつ伏せになったけど、大丈夫か……?湊の天然が発動しないよな……?

 腰に柔らかな感触が乗っかってきて、背中にぺたりと両手を置かれた。でも背中で位置調節するからって、腰を動かさないでください湊さん!

 

「じゃあやるからなー! たしかここの辺りとか? えい!」

「おおー? 良いんじゃないか?」

 

 押す力が弱いから、気持ちよさはあまり無いけど、なんか一生懸命に押されている感じがして、いいな!ふう、これくらいなら大丈夫だ。

 湊がマッサージしているのは見たこと無かったけど、この調子ならなんとか無事に終われそうだな!

 

「そうー? ならここは?」

「うぉっ! くすぐったッ!」

「あわっ!」

 

 やばい!湊が床に落ちる!

 慌てて湊を抱きしめるように受け止めて、反対側に転がる。

 

 危ない。いきなり横腹を押されて、くすぐったくて身をよじったら湊が落ちそうになったから、受け止めたけど……無事でよかったってはぁ!?

 

「あぅぅ……ありがとう……」

「お……おう……」

 

 さっき受け止めるために湊を抱きしめて……今は抱きしめたままの体勢で、お互い固まっている……。

 湊が腕の中で顔を赤くして、俺を見つめてくる……!どうしたらいいんだ!?

 

「ごめん……くすぐったかったよね……」

「いや……まあ……気をつけてくれよ?」

「う、うん……」

 

 いつ離れたらいいんですか!?

 離れ時を見失って、動けない……!俺も顔が赤くなってくる……なんで見つめ合っているんだ俺たち!?

 吐息がぶつかるくらい近いところに湊の顔があって、目を合わせていて……もうゴールしていいのか……?

 

 湊は目をぎゅっとつぶって……それから……それから、どうするんだ!?いくしかないのか!?

 

「も、もうだいじょうぶだから……離していいよ?」

 

「お、おうそうだな! 悪い!」

 湊を離して、反対に転がってベッドの端に正座して気を落ち着かせる。

 危なかった……あのままいっていたら俺は何をしようとしていた!?

 

「あ、危なかったな!」

「そ、そうだね! 一夏のおかげで助かったよ!」

 

 俺も色々な意味で危なかったから、お互いに無事でよかったな!

 

「はぁ……なんだかまた一気に疲れたかも?」

「そうだよなぁ」

 

「ならまたマッサージしてくれる……?」

「また今度でお願いします!」

 

 もう、色々と限界だったから許してください!

 

「はーい。まあ冗談だったからね」

 

 

 よかった……まあ疲れたけど、湊がニコニコしてるからいいか。

 マッサージはしばらくしないけどな!




前回の簪ちゃんルートを書いて、清らかな心で臨んだマッサージ回でした。

マッサージ回で一夏視点が湊視点で迷いましたが、今回は一夏視点になりました!
湊側だともう少しまともな回だったと思いますが、読者が選ぶならこっちかなと思い一夏視点になりました(偏見ですね!)


この話を書く前は評価が白から赤になっていましたが、この内容だと下がるような……?すみませんでした!

それは置いておいて、評価、感想、お気に入りをしていただき、ありがとうございました!

これからも本編はゆっくり進んでいくと思いますが、よければお付き合いください!

Ifルートで適度に、心を清めつつ完結目指してがんばります。
読んでいただきありがとうございました!


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その11

※湊視点に戻りました。
※全話の細かい部分の修正をしました。


 

 一夏がマッサージをしてくれたから、体がもっと軽くなったけど、あのマッサージは気持ちよすぎたって……!

 一夏に触られたところが熱くなってきて、それが気持ちよくて、なんだか癖になりそうだったし、特に腰を押された時がすごかった……はまっちゃいそうだし、しばらくは自重しないと!

 

 ……それで、その後一夏にマッサージをしてあげたけど、横腹を押したら、一夏がすごい驚いて動いちゃって、俺が床に落ちそうになって……一夏に受け止めて貰って、抱きしめられて……!

 

 あんなに近くで一夏の顔を見たのは初めてだけど、やっぱり格好良かったなー……ただ近すぎて、どうしたらいいのか分からなくなっちゃって、目を瞑って気を落ち着かせたら、なんとか離れることができた。

 

 でも危なかった……あのまま、離れられなかったら俺は何をしたのかな?一夏と……いやいや、なにもする訳無いよね!一夏は親友なんだから!

 

 そ、それより今後の事を考えないと!

 

 鈴が明日中国に帰っちゃうけど、この身体じゃ会えないし、説明する時間も無いから手紙を書かないと。

 

「俺は鈴に手紙を書くけど、一夏はどうするー?」

「まあ、ゆっくり待っているよ。何かあったら言ってくれ」

「おーけー。さっそく書いてこよう!」

 

 ベッドから立ち上がって、勉強机に向かう。くーちゃんとの文通用に用意している手紙を取り出して、書いていく。一夏は携帯をいじって待っていてくれるのかな?

 

 くーちゃんは俺が女の子になったのを知っているのかな?

 『くーちゃん』は姉さんがドイツで拾ってきた女の子で、小さいのに姉さんのお世話をしている偉い子で、俺も何度か会っているけど『小説で読んだのですが、この文通って言うのをやってみたいです。ダメですか……?』って上目づかいで言われたらやるしかないよね!

 

 それから今まで手紙を交換しあっている。

 手紙の交換は姉さんの『これも次元連結システムのちょっとした応用だよ!』って言っていた謎技術で家のポストに入れたら、自動でくーちゃんに届けてくれる。くーちゃんからも自動で届くから便利だけど、空間転移させるってすごい技術なんじゃないの……?

 

 手紙の内容は、俺は一夏と遊んだ話とか、テストの点数が微妙だった話とか、日常のちょっとした話を書いていて、くーちゃんは束様が全然寝てくれないとか、束様が変な発明をしてましたとか、姉さんの話ばかりをしているよねぇ。本当に姉さんがすきなんだねー。微笑ましいよなぁ。

 

 くーちゃんは姉さんの話ばかりしてるけど、もう少しくーちゃんの話も聞かせてくれないかなー?……じゃなくて、鈴に手紙を書かないと!

 

 『拝啓鈴様ーー』いやいやこんな感じじゃないよね!鈴に伝えたいことをそのまま書いていこう!

 

 『鈴へーー今日は鈴が中国に帰るのに、見送りにいけなくてごめん。それでも伝えたいことがたくさんあったから、手紙としてだけど、聞いて欲しい。鈴が小学生の頃に俺のクラスに転校してきて、まだ日本語を喋るのが苦手だった頃に俺と一夏で話し掛けて、そこから仲良くなって、学校でも放課後でも、いつも3人で遊んだよな』

 

 鈴が転校してきて、自己紹介で上手くしゃべれなくて、他のクラスメートがからかっていたのを止めて、『下手でも、ゆっくりでもいいから、俺達と話そう』って言って、鈴もたどたどしいけど、少しづつ話してくれて、それから毎日話していたら、日本語も上手くなってきて、元は明るい性格だったみたいで、元気に話してくるようになって、笑っている鈴を見れて本当に嬉しかった。

 

 『中学に入ってからも、鈴とは一緒にいて、毎日が楽しかったし、鈴も楽しかったのなら、俺も嬉しいよ。鈴との一番の思い出は、二人でお祭りに行った時かな。町内の小さな花火だけどさ、二人で見たからかな? 小さな花火を見るだけでも楽しかった。鈴の浴衣姿は今だから言うけどキレイだったよ。あの時は馬子にも衣装かななんて誤魔化したけど、本当はすごいキレイだって思ってた』

 

 その日は、一夏と弾は何故か二人で花火を見に行くって言っていたから、鈴を誘って二人で花火を見に行ったんだけど、本当にキレイだと思った。その後に、下駄の鼻緒が切れて歩けなくなった鈴をおぶって帰ったけど、あの時も結構ドキドキしてた。

 

『鈴が作った酢豚がなんだか好きでさ、また日本に戻ってきたら作って欲しいな。一夏も弾も俺も楽しみに待っているからさ、いつでも帰って来ていいからな? 中国でも元気で居て欲しい。何かあったらすぐに駆けつけるし、いつでも連絡してくれよ?』

 

 姉さんに頼めば、中国位までならすぐに行けるよね。駆けつける俺は、鈴の知っている俺じゃないけどさ、逆に説明しやすいかもね?

 

 『それじゃあ、また会える日を楽しみにしているよ。また会おう。篠ノ之湊より』

 

 書き終わった!

 

 ……でも書いていて思ったけど……俺って口調変わってないかな!?男の時のような書き方にするのに、何度か書き直しちゃたし!今も男の時より、なんか女の子っぽい口調になってるよね!?手紙に書いたみたいな口調だった気がするんだけど!

 

「ね、ねえ一夏?」

「おう。なんだ?」

 

 一夏に確認を取ろう……!

 

「なんか俺って口調が女の子っぽくなってない……? 気のせいだよね!」

「……なってるな」

 

「やっぱり……身体に引っ張られているんじゃないのこれ……? 姉さんに後で確認しないと本当にヤバいかも!」

「あー……あ! でも女の子として学校に行くなら、仕草も口調も女の子っぽいし、楽なんじゃないか!?」

 

「仕草も口調も女の子っぽい……うぅ……」

「わ、悪い!」

 

 終わった……知らない間に口調も仕草に女の子よりになっていたなんて……どう気をつければいいの!?じゃなくていいんだ!?

 ダメかも……。

 

「そ、それよりさ! 鈴への手紙は書いたのか?」

「そ、そうだね書き終わったよ! これを封筒に入れて、一夏に渡すから、明日鈴に渡してくれる?」

「任せてくれ!」

 

 後は俺が……俺って一人称が男っぽいね!まだ、だいじょうぶかも!

 それより、俺が見送りに行けない理由はどうしようかな?鈴の見送りに行けないくらいの理由ってあるかな?ひどい風邪で寝込んだって事にするしかないか……嘘をつくことになってごめん鈴。

 

「いちかー俺はひどい風邪で寝込んだから、見送りに行けないって事でお願い」

「分かった。仕方ないよな。鈴にはちゃんと伝えておくから」

 

「よろしく! 鈴の見送り行けないのは残念だよね。まあ、鈴も帰って来たいって言ってるし、また会えるよね?」

「そうだな。鈴なら一人でも日本に帰って来そうだし、また会えるって!」

 

 次に鈴と会う時は俺はどうなっているのかな?男に戻っているのが、一番だけど、女の子として会っても、また友達になれるといいな。

 

「鈴への手紙は書けたから、次は女の子として、学校に転校するけど、どんな感じで行けばいいかな?」

「……やっぱり、一人称は私って言わないとダメなんじゃないか?」

 

 一人称が私……いや、一人称が私になっても俺は男だからね!




湊ちゃんの内面の女の子化が進んでいた事に気づいた回でした。

くーちゃんが軽く登場です。湊ちゃんと文通をしてるみたいです。

鈴への手紙を書きました。二人で花火を見に行ってたみたいです。

『次元連結システムのちょっとした応用だよ!』
なんて技術を開発しているんですか束さん!まあネタなので、手紙の交換にしか使われません。

ヒロインは鈴か一夏(ん?)それとも他の原作キャラの誰になるんでしょうね?

今回も読んでいただきありがとうございました!


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その12

※誤字や文法の誤りの訂正ありがとうございました。
 見直しても気づけてなかったりするので助かっています。
 ありがとうございました。


 

「やっぱり、私って言わないと変かな?」

「今の湊の見た目だと、私って言わないと違和感がなー……」

 

 そうだよね……小さくなった姉さんみたいな容姿だし、俺は無いよねぇ。

 せめて僕?んー馴染みが無いし微妙かな?

 

 更識湊(さらしきみなと)として、学校に通う事になったら女の子らしくしないとダメか……少し練習してみようか?

 

「私、更識湊です。よろしくね一夏くん!」

「うくっ! い、いきなりどうしたんだ?」

 

 一夏が突然胸を押さえたけど、どうしたんだろう?痛そうな感じでは無いけど一応確認しないと!一夏に何かあったら嫌だよ!

 

「だいじょうぶ? 一夏くん?」

「おおおぉぉ!? なんで覗き込んでくるんだ!?」

 

 一夏に近づいて顔色を見るけど、大丈夫そうだね。うん。いつも通りの一夏だね。なんかすごい驚いているけど……どうしたの?

 

「あの、一夏くんが胸を押さえていたから心配になって……」

「だ、大丈夫だからな! ちょっと胸を撃たれただけだから! それより一夏くんってなんですか!?」

 

 なんとなく頭に浮かんだから一夏くんって呼びたくなっちゃったんだよねー。なぜか慌ててる一夏が面白いし、一夏くん呼びを続けちゃおう!でも胸を撃たれる?ん-なにに?

 

「あ、それより学校での立ち振る舞いの練習をしてみたけど、変かな?」

「悪くないな! でも普通に一夏でいいからな!」

 

 昔から一夏って呼んでいたから、なんか一夏くんって呼ぶのは新鮮でいいよね。

 

「えー……一夏くんって呼びたいんだけどダメかな?」

「いや、いいけどさ!」

「なら練習中は一夏くんって呼ぶからね。じゃあ一夏くん! 場所は教室で休み時間に話している感じでよろしくね!」

「わかった。やってみるか!」

 

 よし、学校で変に思われないように、しっかり演じよう。演じてるだけだから!

 

「一夏くんお疲れー。さっきの授業が分からないとこばかりで疲れちゃったー」

「お、おう。おつかれ!」

「ねえ、そう言えば一夏くんって勉強できたよね? 私に教えてくれないかな?」

「お、おう。任せてくれ!」

「ありがとう! なら今度、私の家で勉強会をしようよ? ダメかな?」

「お、おう。やろう!」

 

「ちょっとカットー! なんでさっきから棒読みなの!?」

「わ、悪い! なんか緊張して……?」

 

 一夏がめちゃくちゃ棒読みすぎて、全然練習にならないんだけど!昔やった劇で王子様役をやってた時は上手かったじゃん!どうしたのー?

 

「じゃあもう一回やるよー! ちゃんと一夏もがんばってね!」

「よし、その小悪魔系女子みたいな湊に少しは慣れてきたからいけるはず! こい!」

 

 小悪魔系女子?なにそれ?

 まあ、一夏の天然かなー?気にしないでやり直してみよう!

 

「みんなー! 初めまして-! 湊だよー!」

「なんでアイドルの挨拶みたいになってるんだよ!」

「ふふっ、ちょっとやってみたくなって! 冗談でしたっ!」

「普通にかわいすぎるから止めてくれ!」

 

 女の子になったのならアイドルを目指さ……無いよね!

 でも冗談でやってみたくなっちゃったんだよねぇ。

 

 少しくらい楽しめる余裕が出てきたのかな?女の子の身体に慣れてきてるよね……。

 

「次が本番ね。いくよ-! 初めまして、更識湊です。趣味は料理で、和食を作るのが得意だけど、他は勉強中です!」

「最初の自己紹介か? よろしくなー!」

「もし味見をしてくれるなら今度作ってくるので、食べてくださいね!」

「ぜひ食べたい!」

「あ、この前一夏くんに肉じゃがを食べてもらったけど、おいしいって言ってくれました!」

「それ自己紹介でぶっ込むのか!?」

 

 えっ!?ダメだったかな?

 

「いや、ちゃんとおいしいよーって言わないと味見をしてくれないかなって思ったんだけど……」

「今の湊なら、言わなくても味見はしてくれると思うな!」

 

 それならいいけど、まあ自己紹介はそんな感じでいいかな!私の名前と料理が得意って知って貰えたらいいかな?男の時は料理が得意ってクラスでは教えてなかったから、そこを押し出していこう!

 

「一夏くんは何かお題がある? なんでもいいよ?」

「なんでも!? ならえーっ全然思いつかない! 普通に昼休みとかでお願いします!」

「昼休みかー。やってみようか。私は一夏くんと一緒に居ると思うし簡単だね!」

 

 他のクラスメート達と仲良くもなれると思うけど、一夏くんか弾か数馬あたりと居た方が気が楽だし。鈴が居れば……んー残念だなぁ。

 

「じゃあスタート! 昼休みだね一夏くん!」

「おう。昼休みだな!」

「一緒にお昼ご飯を食べよー! いいよね?」

「いいよ。ここで食べるか」

「そうだねー。今は屋上だと暑いよね! 一夏くんの分もお弁当を作ってきたからさ一緒に食べてくれる?」

「作ってきたのか!? ありがとう!」

「なら机をくっつけて! はい一夏くんのお弁当だよ!」

 

「ちょっとストップだ!」

「えー……一夏くんなんでー?」

 

 楽しく練習できていたと思うけどなぁ。どうしたのー?いい感じだったと思うよ?

 

「これさぁ……もう付き合ってるようにしか思えないんですけど!」

「うそー!? お昼ご飯を一夏と一緒に食べてるだけじゃん!」

「湊は女の子になったし、男女でこんな事してるクラスメート居たか?」

 

「た、確かに……でも俺ってたまに一夏に作りすぎたからってお弁当を持って行ってたよね……あれダメかー」

「今の湊とだと完全にカップルだな!」

「一夏とカップル!? ……うぅ……」

 

 なんで俺の顔が熱くなるの!?ちょっと一夏に俺の作ったお弁当を食べてもらう事を想像しただけなのに……!美味しそうに食べてもらっただけなのに……!そもそもなんでそんな想像しているの!

 

「あとまた俺って言ってるから、今の内に直しておいた方がいいと思うぞ?」

「わかりました。私は湊です……」

「なんで落ち込んでるんだ!? ちゃんと学校でもフォローするから不安にならないでいいからな!」

「あ、ありがとう一夏くん……」

 

「あと一夏くんじゃなくて一夏でいいからな! 一夏くん呼びはかなり効くから止めてください!」

「はーい。一夏が居てくれて、本当に助かっているよ? ありがとうね!」

 

 よし、落ち着いてきた!一夏が明るいから、私も元気になるし、本当に居てくれてありがとうね!でも、一夏くん呼びは何に効くんだろう?分からないけど、今度また呼んであげようかな?

 

「練習はこれで終わりでいいかなー」

「役に立つのかこれ……?」

「た、たぶん……? そ、それよりそろそろ夕方だし、五反田食堂に行って夜ご飯を食べるのと、弾に説明しに行きたいな!」

「いつの間にか夕方だなー……なら食べに行くか? 説明するのも協力するから、頑張ろうぜ!」

「うん! ありがとうね!」

 

 弾に私が湊だって、女の子になったけど、これからも友達で居て欲しいって伝えたいな。弾は私たちのムードメーカーで、一緒に居て楽しいし!がんばって説明しよう!




学校での立ち振る舞いを練習?した回でした。

練習になったんですかね-?イチャイチャしてただけなのでは……?

一夏の発言をよく分からなかったら天然で済ませちゃう湊ちゃんでした。

一夏くん?湊ちゃんは何でもって言ったんだから、もっとやらせる事がありましたよね?

ここから湊ちゃんの一人称が私に変わっていきますね……初日なのに、女の子化がどんどん進んでいますね!

まだ初日なんですよね。朝から夕方まで時間が進みましたけど、まだ初日です!次話も初日です……!

次回も呼んでくれたら嬉しいです。ありがとうございました!


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その13

 

「じゃあ早速行こうか?」

「行こうか。弾ならすぐに分かってくれそうだし、気楽に行こうぜ」

 

 頷いて、一夏と部屋を出て、玄関に居たら突然インターホンが鳴った。えっ、なに?取りあえず出ようかな?

 

「今出まーす。あ、こんにちはー。なんでしょう?」

「荷物のお届けに上がりました。こちらになります」

 玄関を開けると、宅配業者のお兄さんが、大きな段ボールを持っていて、腕で抱えられなそうな大きなダンボールの上にはでかでかと

 

『束さんから大好きなみーちゃんにプレゼントだよー! 大切に使ってね!』

 

 と書かれていて、姉さんが何故かバニーガールのコスプレをしながら投げキッスをしてる写真が貼られていた……。

 こんなの送ってきたの!?指名手配だよ姉さんは!?良く届いたね!?

 

「重いのでお気をつけてください」

「なら俺が持つよ。おもっ!? なんだこの写真!? 束さんも相変わらずだな!?」

 

 一夏は荷物を部屋に置きに行ってくれた。取りあえずサインとかしないとダメかな。

 

「あはは、ありがとうございます」

「いえ、束様から届けて欲しいって言われた物でしたので、気にしないでください」

「束様って……もしかして、くーちゃんなの!?」

 

 この宅配業者の格好をしている男の人がくーちゃん!?あー……くーちゃんのISの能力で作った幻影かー。声も男の人になってるし、何もヒントが無かったら分からないよ!でも久しぶりに会えてうれしいな-!

 

「今は元の姿に戻れないよね。でもくーちゃんに会えてうれしいよ!」

「私も湊さんに会えてうれしいです。本当に女の子になってしまいましたね……」

「うん……くーちゃんなら戻せる?」

「戻せませんね。ごめんなさい……」

 

 目の前では男の人が頭を下げているけど、私には小さなくーちゃんがシュンとして俯いているように見えた……こっちがごめんなさいって気持ちになってきちゃった……!

 思わず抱きしめたら、私の胸辺りに顔が当たった感触がした、やっぱりくーちゃんなんだね!ごめんね!

 

「だいじょうぶだよくーちゃん。私も楽しくやっていくからさ。また文通をしてくれる……?」

「はい……私も文通して欲しいです。湊さんは性別が変わっても湊さんなんですから」

「ありがとう……くーちゃん……」

 

 そう言ってくれて本当にうれしい……!くーちゃんとはこれからもお友達でいられそうでよかったなぁ。優しいくーちゃんをもっとぎゅーって抱きしめてあげる。

 

「戻ったぞ……ってなんで抱きしめてるんだよ!?」

「えっ、だって抱きしめたくなっちゃったから……」

「いやいやいやいや! 男の人を抱きしめるのはまずいだろおおお!」

 

「…………あ、そっか。くーちゃんの幻影で男の人に映っているんだった。一夏はだいじょうぶだよ。この人はくーちゃんだからね!」

「幻影かよ!? でも男に抱きついている湊を見るのはなんか嫌だから離れてくれるか!?」

 

「う、うん。ごめんね一夏」

「いや、いいんだ! 何言ってたんだ俺!?」

 

 なんか恥ずかしい……男の人に抱きついていたみたいに見えていたんだ……!そんな事しないからね!くーちゃんから離れて、一夏にごめんねって謝る。

 

「それでは失礼します。湊さんも私の手伝いが必要でしたらいつでもご連絡ください。なんでもしますので」

「ありがとう! くーちゃんに頼みたい事があったら必ず言うから! 気をつけて帰ってね!」

「はい。では失礼します」

「またね-!」

「またなー!」

 

 くーちゃんに手を振ってから、一度部屋に戻って、何が届いたか確認しに行く。何が入っているのかな?

 取りあえずこのバニーな姉さんの写真は部屋に飾って置こうかな?姉さんって写真はあまり撮らないで、動画ばっかりだから、写真は結構レアなんだよねぇ。こんなに可愛く撮っているし、やっぱり姉さんってきれいだよね!

 

「何が入っているかなー?」

「結構重かったけど何だろう?」

 

 開けてみると、沢山の小瓶とピンクの小箱と白い冊子が入っている。

 冊子を開いて読んでみたら、束さんよりって書いてある。なになに?

 『女の子になって、さらに可愛くなったみーちゃんにプレゼントだよ! 女の子はね頭の上から足の爪先まで、お手入れしていかないとダメなんだよー! もっとみーちゃんには可愛くなって欲しいからね! 必要な物は全部詰め込んでおいたからちゃんと使わないとダメだよ? 使い方についての説明書も入れるからちゃんと読んでみてね!』

 『あと女の子になって困った事、分からない事が出てきたら、この冊子に全部書いておいたから、読んだら何とかなると思うよ! 後で、携帯にもデータを送っておくね! それじゃあ女の子の気持ちを知るためにがんばってねー! みーちゃん愛してるよ! またねー!』

 うん。ありがたいけど、男に戻して欲しいかなって!

 まあ、仕方ないかぁ。私が姉さんにお願いしちゃったのが、原因だからね……この結果は予想外すぎたけど!

 

 この説明書は後で読もうか。今は弾に会いに行こう!

 

「化粧品とメイク道具とその説明書みたいだね、後で詳しく読むから、先に弾に会いに行こうか?」

「そうだな。気を取り直して行こうぜ!」

 

 

 一夏と二人で五反田食堂に向かって歩く。15分くらいで着く近場だし、普段は自炊するけど、疲れた時とかには五反田食堂で食べている。それに美味しいからね。私も負けないくらい上手くなりたいけど、作ってる量も経験も違うから難しいよねぇ。

 

「一夏は五反田食堂でたまにアルバイトしてるけど、私もやろうかな?」

「湊がバイトかー? エプロンとか似合うし、いいんじゃないか?」

「基準がそこなのー……? もっと料理が上手くなりたいから沢山作って練習しようかなって思ったんだよねー」

「なるほど。今でも十分うまいと思うけどな」

「一夏に和食以外負けてるし、勝ちたいの!」

 

 だって、一夏の料理ってすごいおいしいんだよね。オムライスとかシンプルなのに、すごいおいしく作るし、もうプロだよね!また一夏のオムライス食べたくなってきた……今度作ってもらおうかな?

 

「一夏のオムライス食べたいなー。今度作ってくれる?」

「ああ。いつでも作るよ」

「やたー。一夏のオムライス大好きだから楽しみだよ!」

「お……おう。ありがとう」

 

 今から食べるのが楽しみだなぁ。あ、そろそろ着くね……がんばろう!

 

「あ、俺が先に弾と話すから湊は付いてきてくれ」

「うん。よろしくね」

 

 一夏に付いて五反田食堂に入る。店の中は席が半分くらい空いてるけど、これからお客さんが増えていくのかな?カウンターの奥には弾のお爺さんの厳さんが居る。料理を続けて数十年のベテランの料理人さんで、なんでも美味しく作るんだよね。

 

「厳さんこんばんは! 弾は居ますか?」

「いらっしゃい! 一夏じゃねえか! それと……一夏の彼女か?」

「ち、違いますよ! 詳しくは後で説明しますけど、この子は湊なんですよねぇ……」

 

「あはは……湊です。厳さんこんばんはー……」

「……ずいぶん小さくなっちまったな。まあ、湊なんだろ? 弾なら上に居るぞ」

「厳さんー……ありがとうございます!」

 

 か、かっこいい……!

 私が湊だって簡単に信じてくれた!普通なら冗談だって思うよね……信じてくれて本当にありがとうございました!

 

「じゃあ、行こうか?」

「うん!」

 

「弾入るぞー!」

「一夏か? 入ってくれ!」

 

 一夏が扉を開けて、部屋の中に居る弾と目が合った。なんか目を合わせたまま弾が固まってる……?取りあえず笑って手を振ってみよう!だんーみなとだよー!気づいて-!

 

「い、一夏が彼女を連れてきただと!?」

「違うよ!」




弾と会うまでの回でした。
化粧品と、化粧品道具をくーちゃんが持ってきてくれました。

女の子の湊ちゃんには必要ですからね!

厳さんはやっぱし、格好良いですね!

最後に弾が登場です。一夏が彼女を連れてきたと思ってます。
まあ、将来的に一夏の彼女になる可能性もありますからね!(え?)

読んでいただきありがとうございました!

休みの日っていいですね。沢山小説書けますからね!もっと休みをください!


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その14

 

「い、一夏が彼女を連れてきただと!?」

「違うよ!」

 

 弾は立ち上がって、一夏の前に来てから私を見てきた。彼女じゃないからね?一夏が先に話すって言っていたのに、つい突っ込んじゃたよ!

 

「誰この美少女!? 俺に紹介してくれよ!?」

「……この子は更識湊って言って今日会ったんだ。こいつは弾だ」

 

 ふーん。一夏がアイコンタクトしてきたけど、その設定で通せばいいんだね!任せてよ!

 

「初めまして、弾くん。よろしくね!」

「おうふ……よ、よろしくお願いします!」

「お部屋にお邪魔してもいいかな?」

「どうぞお入りください! ほら一夏道を空けろよ!」

「おう。邪魔するぞ」

 

 なんか弾がすごい低姿勢でペコペコしてる……やっぱり面白いよね。取りあえずベッドに座らせてもらおうかな?

 

「弾くんはさっきまで何をしてたの?」

「弾くん呼び……いい……じゃなくて! ゲームしてました! すみません!」

「えーなんで謝るの? 私もゲーム好きだよ? ISVSとかよくやってるよ?」

 

 うん。弾ともよく遊んでいるよね。私はラファール・リヴァイブをよく使ってるんだけど、あんまり勝てないんだよねぇ。

 一夏も弾もやりこみすぎじゃない?私もゲームを買おうかな?本体を持ってないから一夏か弾の家でしかやらないからなー。

 

「まじっすか!? 更識さんってめっちゃおしゃれだし、ゲームとかやらなそうだと思うんですけど!」

「うーん? おしゃれなのは千冬さんに服を選んで貰ったからなんだよねぇ。あまりおしゃれとかは気にしてないよ?」

 

「いやいや、それは勿体ないですよ! 更識さんってめちゃくちゃ可愛いんですから! 一夏はなんで更識さんと知り合ったんだよ!」

「幼なじみだからな。昔からの知り合いだ」

「まじか!? 噂のファースト幼なじみって更識さんの事だったのか? いやその子って湊の双子の姉だったよな。ん? みなと?」

 

「んー? 私がどうかしたの?」

 

 ふふっ、こういうのも面白いね。絶対別人だと思っているよねぇ。でもそろそろ教えてあげようかな?

 

「いやー、知り合いにも湊って名前の奴が居るんですよ? 今日は湊は一緒じゃないのか?」

「ここに居るぞ」

「ここに居るよ?」

「いや、更識さんじゃなくてですね?」

 

「私が湊だよ? 篠ノ之湊!」

「えっ? 篠ノ之さん……? ん?」

「まあ、この子は湊だ」

「弾ごめんねー。私が弾の友達の湊だよ!」

 

「ま、まじで……!?」

「ああ」

「うん!」

 

 あ、固まった。ふふっ弾の顔面白すぎ!目が飛び出そうだよあははっ!

 

「なんでこんな美少女になってるんだよおおおお!」

「なっちゃったっ!」

 

「なっちゃったってなんだよ!? えっ本当に湊なのか?」

「そうだよー……昨日一緒に騒いで、厳さんに叩かれた湊だよー……」

「まじか!? えー……湊なんだよな!? なんでそうなってるんだよ!?」

 

「朝起きたらこうなっていたんだけど……姉さんがなんかやったみたいなんだよねー」

「湊の姉さんってIS作った人だよな? まあISと比べたら性別変えるくらい簡単なのか……?」

「そうかもねー……信じてくれる?」

「まあ、信じるしかないよな! でも一個くらい湊って分かることを教えてくれよ?」

 

「んー……それなら私と弾と蘭ちゃんでやっていた作戦名『IRT』を知ってるって事でどうかな? 成果は出なかったけど……」

「本人だな……まじかよ!? 正直めっちゃタイプの女の子が来たって思ったんだけど! 俺の純情返せよ!」

「残念でしたー。弾に純情なんて元から無いからね! 諦めてー!」

「お、おう……その笑顔やばいって! なんでそんな女の子っぽくなってるんだよ!」

「一夏と練習したんだよねー。ねーいちかー」

 

 一夏と楽しく練習したおかげで、なんか女の子度が上がったよね!ん?上がってよかったのかな……?あれ?

 

「そうだな! それでその作戦名IRTってなんだ?」

「一夏には秘密だよ! この鈍感!」

「なんで罵倒されたんだ?」

「鈍感だからだろ馬鹿一夏!」

「弾は殴る!」

 

 作戦名IRTは『一夏と蘭ちゃんを付き合わせよう』作戦の略で、弾と蘭ちゃんと私でやってたんだけど……一夏が鈍感すぎて全然ダメだったんだよね……。

 最近は蘭ちゃんもあんまり一夏にアタックしてなくて、私と遊んでばかりだったからねー。アタックしても全然効果も無かったし、鈍感な一夏に少し疲れちゃったのかな?

 

 まあ息抜きも必要かなって思って、一緒によく出掛けてたんだよねぇ。出掛けるときにおしゃれをしてる蘭ちゃんは本当にきれいだったから、すごい褒めたんだけど、顔を赤くしていて本当に可愛かったんだよねぇ。

 

 一夏はなんであれで落ちないの!?鉄壁すぎるよ!

 

 

 一夏が弾にヘッドロックを掛けてるけど、一夏さーん?弾が死にかけてるよー。でも二人って本当に仲がいいよねー。いつもこんな感じで遊んでるし!

 二人でよくゲームもやってるし、その時は私は漫画を読んでいたり、蘭ちゃんの部屋にお邪魔して雑談してたり、たまーに一緒にゲームしてボコボコにされたりしてたねー。うーん少しやけちゃうね!

 

「二人が仲いいのは分かったけどさ。だんーあらためてよろしくね!」

「おう……でも蘭が悲しむかもなぁ」

「蘭ちゃんが? 一夏が女の子になったら悲しむと思うけどねー?」

「ん? なんでだ?」

「知りませんよーどんかんいちかー」

 

「お前ら二人とも鈍感だよ。似たもの同士だからな!」

「いや、一夏はともかく私は鈍感じゃないよ?」

「いやいや、湊はともかく俺は鈍感じゃないって!」

 

 私が鈍感な訳無いでしょー。弾も変な事を言うもんだねー。鈍感なのは一夏だけですー!

 

「それで、これから湊はどうするんだ?」

「いくつか一夏とは相談したんだけど、明日は鈴の見送りは私は行かない事にしたの。代わりに手紙を書いたから、一夏と弾に渡してもらおうかなって」

「まあ、仕方ないかな。ところで、湊は男に戻れるのか?」

「姉さんが無理って言ってるからなー……ダメかも……」

 

「そっか……わかった。学校はどうするんだ?」

「学校は新しい戸籍を作って貰って、更識湊として、今の学校に通うよ」

「なら、よかったな! 俺も協力するぜ!」

「ありがとう! 弾にも手伝って欲しいなって思っていたから助かるよ!」

「ちょっと、いきなり手を握るなよ!? 心臓止まるわ!」

「大げさだよー! だんーありがとねー!」

 

 弾の手を握ってぶんぶん振っちゃうくらい嬉しいよね!これで、学校生活も安心できそう!

 

「……なあ、一夏?」

「……おう、なんだ弾?」

 

「湊って女の子なったら絶対ヤバいよな……」

「目を離したらまずいな……」

 

「いやいや二人とも何言ってるの? だいじょうぶだって!」

「「ダメだな!」」

 

「なんでー!?」

 

「まあ俺たちが守るから安心してくれよ」

「親友を守るのは当然だろ?」

 

「あ……ありがとう……」

 ちょっと二人とも格好いいんだけど!一夏はともかく、なんで弾はモテないのかな?顔も良いのにねー。

 

「お兄! 早く夜御飯食べてよ!」

「あっ、蘭ちゃん……」

 

「ん? 誰ですかこの可愛い子!? まさか一夏さんの彼女!?」

 

 弾も蘭ちゃんも似たもの同士だねー……さて、蘭ちゃんにも私が湊って説明しないとね!がんばるよ!




弾がちゃんと登場しました。
一夏と湊はアイコンタクトで会話してますね……。
湊ちゃんがちょっと女の子になったのを楽しみ始めてますね。

一夏も湊も鈍感で天然なんですよねー。二人は認めないですが……。

一夏の事を好きだった蘭ちゃんも最近はアタックしてなくて、湊と遊んでいたそうですよ。

最後に蘭ちゃんが登場しました。
次回は蘭ちゃん回ですね。

次回も読んでくれたら嬉しいです!


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その15

※誤字報告、評価、お気に入りありがとうございます。
※UAが30000を超えました。たくさん読んでいただきありがとうございます!


 

「お兄! 夜御飯食べてよ!」

「あっ、蘭ちゃん……」

 

「ん? 誰ですかこの可愛い子!? まさか一夏さんの彼女!?」

 

 蘭ちゃんは弾に夜御飯を食べてって言いに来たんだね。この兄妹ってけっこう仲が良いんだよねぇ。二人とも認めてくれないけど!それより蘭ちゃんにも、ちゃんと説明してあげないと……がんばろう!

 

「蘭ちゃん……えっと先に結論から話すけど」

「あっはい?」

「私は篠ノ之湊なんだ。蘭ちゃんと先週二人でレゾナンスに遊びに行ったり、昨日もメールでやり取りした篠ノ之湊だよ」

「え……えっと?」

 

 蘭ちゃんは突然名前を呼ばれてキョトンとした顔をしてる。まあ、困惑するよね。聞く側からしたら初めて会った人から、意味不明な事を言われてるんだから。でも分かってもらえたら嬉しいな。

 

「突然そんな事を言われても意味不明だと思うけど、蘭ちゃんには信じて欲しいな。二人で一緒に出かけて、アイスを食べたり、カフェで苦いねって笑い合いながらコーヒーを飲んだりした、蘭ちゃんとはそんな小さな日常をこれからも一緒に出来たらいいなって思うんだ。だから信じて欲しい」

「えっ……本当に湊さんなんですか? な、なんで……!?」

 

「詳しいことは分からないんだけど、もう男には戻れなそうなんだよね……」

「そ、そんな…………私の本当のお兄ちゃんだって思っていた湊さんがお姉さまになっちゃうなんて!?」

「えっ、ん? んん?」

「ちょ!? 蘭それってどう言う事だ!?」

 

 本当のお兄ちゃん?弾はドンマイだね……!でも蘭ちゃんみたいな可愛い妹なら大歓迎だけどね!

 

「うっさいお兄! 湊さんちょっと二人で話したいので、私の部屋に来て貰えますか?」

「うん。行くよ」

「ありがとうございます! お兄達は来ないでくださいね! あと聞くのも許しませんから! じゃあ湊さん行きましょうか」

 

 

 蘭ちゃんの部屋まで手を引かれながら行って、部屋の真ん中まで行ったところで、こっちを振り向いた涙目の蘭ちゃんに……抱きしめられた!?

 

「湊さん……! 本当に女の子になっちゃったんですか……?」

「うん。ごめんね」

 

 蘭ちゃんを抱きしめ返して頭を優しく撫でてあげる。どうして泣いてるかは分からないけど、泣いている子が目の前に居るんだから、泣き止ませてあげないと。

 

「蘭ちゃんがどうして泣いているか分からないけどさ。ごめんね」

「謝らないで……ください……湊さんは悪く無いんですから……」

 

「でも、蘭ちゃんを泣かせたのは私だよね。ごめんなさい」

 

 さらさらとした綺麗な赤髪を優しく何度も撫でる。

 

「湊さんは女の子になっちゃっても変わらないですね……」

「そうだといいなぁ……蘭ちゃんとこれからもずっと一緒に居られるかな?」

 

「それって告白ですか……?」

 

 まだ目を潤ませている蘭ちゃんに下から覗きこまれながら聞かれた質問は、本気で聞いてきたように思えた……目がしっかり答えて欲しいって強く訴えているから。

 

「私は蘭ちゃんの事を好きだよ。弾の妹だけどさ、私も妹だと思ってるくらい好きだから、だからこれからも一緒にいて欲しいって思ったの」

「…………妹ですか……分かり……ました! これからはお姉さまって呼びますね! だから、もう少しこのままで居させてください……!」

 

 また私の胸に顔を強く押し当てながら泣いている蘭ちゃんを強く抱きしめて、背中をさする。泣き止むまでずっとこうしてるから……涙が止まるまでずっと。

 

「ごめんなさい! 湊さんじゃなくてお姉さまですね……」

「蘭ちゃんが呼びたい方でいいよ?」

「お姉さまにしておきます! それでお姉さまはどうして家に来たんですか?」

「蘭ちゃんと弾にはこれから私は別の人間として生きていくけど、篠ノ之湊だって知っておいて欲しかったんだ……」

 

「そうですか……私に出来ることがあればなんでもしますから!」

 

「ありがとう。でもこんな風に蘭ちゃんと話せるだけで幸せだから、それだけで十分だよ?」

「……うぅ湊さんってずるいです……」

「ずるいかな?」

「ずるいです! 反則です! だからこれからも私と一緒に居て貰いますからね!」

 

 優しく笑う蘭ちゃんが本当に可愛いと思った。やっぱり、蘭ちゃんには笑っていて欲しいよね。

 

「そろそろ、お兄のところに戻りましょうか? 一夏さんも待たせてますし」

「そうだね。蘭ちゃんは夜御飯食べた? まだなら一緒に食べない?」

「まだです! 一緒に食べたいです!」

「わっ! ふふっ、なら一緒に行こう」

 

 腕に抱きついてきた蘭ちゃんと一緒に弾の部屋に戻る。弾の部屋の扉の外からでも聞こえるくらいの大きな音で音楽を聞いているみたい。聞かないようにしてくれたのかな?二人とも優しいね。

 

「お兄うるさいよ! さっさと音楽消して!」

「お、おう。ほら消したぞ」

 

「お姉さま! お兄も一夏さんも放っておいて、私と二人で食べましょう!」

「そうだね。行こうか?」

「お姉さま!? どういう事なんだよ湊!?」

「どうしてそうなった!?」

 

 蘭ちゃんが嬉しそうに手をひっぱってくるから、一緒に食堂の方に向かう。後ろで聞こえてくる男二人のうるさい声は無視しちゃおう!

 

 蘭ちゃんと一緒にカウンターに座って、メニューを眺める……今日も業火野菜炒めにしようかな……少なめで!

 

「厳さんすみません。業火野菜炒めをちょっと少な目でお願いします」

「あいよ。蘭も一緒でいいな」

「うん。ありがとうお爺ちゃん!」

 

 注文したところで、一夏と弾も食堂に来て、私の隣に一夏、蘭ちゃんの隣に弾が座った。コップを取って一夏と蘭ちゃんに水を注いであげる。弾は遠いからごめんねー。蘭ちゃんに……って思ったら自分で注いでた。蘭ちゃんには頼めないのかな?弾もシスコンだからねぇ!

 

「それで、湊はなんでお姉さま呼びになったんだ?」

「兄妹は俺が居るから十分だろ!?」

 

「私の姉妹はお姉さまだけですから! お兄とか要らないし!」

「そ、そんなぁ……」

「私も妹は蘭ちゃんだけだよ?」

「お姉さま-!」

「蘭ちゃん!」

 

 姉さんと自称姉の二人は家族に居るけどね。くーちゃんはもはや娘みたいに思ってるし!

 

「お前らイチャつくな! 特に湊! 俺の妹に抱きつくなよ! ウゴッ!?」

 

「弾うるせーぞ! 黙って座ってろ!」

「あい……済みませんでした……」

 

 厳さんが投げたお玉が弾のおでこに直撃して、おでこを抑えながらカウンターに倒れ伏してる……痛そう!

 男の頃は私にも飛んできたけど、今は飛んでこないのかな?い、今まで通りに投げてもいいですよ!私は私なんだから!

 

「厳さん! 今までみたいに私にも投げてきても大丈夫ですから!」

「……今の湊にはこれで十分だろ? 業火野菜炒めおまち!」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 厳さんやっぱり格好いい……!




次回蘭ちゃんifルートです。
蘭ちゃんが泣いたのはなぜかは、次回で分かると思います。

読んでいただきありがとうございました。


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if五反田蘭√『乙女はお姉さまに恋してる』

※ガールズラブ注意です。
※7000文字くらいです。
※蘭視点です。


 

「詳しいことは分からないんだけど、もう男には戻れなそうなんだよね……」

「そ、そんな…………私の本当のお兄ちゃんだって思っていた湊さんがお姉さまになっちゃうなんて!?」

 

 湊さんが女の子になったなんて信じられなかったから、誤魔化して私の部屋に行って湊さんにちゃんと話を聞こうと思った。この時はなんとか演技を出来ていたと思う。

 

「湊さん……! 本当に女の子になっちゃったんですか……?」

「うん。ごめんね」

 

 気持ちが抑えられなくて、泣きながら聞くことになってしまったけど、湊さんは本当に女の子になっちゃったんだ……!

 

 

 なんで?どうして?私の大好きな湊さんが女の子になっちゃったの……!

 

 

 今だから思うけど、一夏さんへの気持ちは憧れだったんだと思う。

 

 一夏さんと初めて会ったのは、一夏さんがお兄に連れられて家に初めて来た時だった。

 現実にこんな格好いい人が居るんだって、どもりながらも何とか挨拶した私に、笑顔で挨拶した一夏さんはすごい格好良くて、ドキドキした。

 

 湊さんもその時に居たらしいけど、私は覚えて無くてごめんなさいって謝ったのを思い出した。

 湊さんは中性的な顔をしていて、身長も高くて、少女漫画の登場人物みたいって思うくらいには格好いいんですよ?……忘れていてすみませんでした。

 

 一夏さんの事が気になって、お兄と湊さんに協力してもらって、一夏さんと付き合うためのお手伝いをしてもらった。

 

「押し続けるしかないな!」

 お兄……具体的に言ってくれないと何をしたらいいか分からないよ?

 

「一夏はかなりの鈍感だから、一夏さんの事が大好きですみたいに直接的な言葉を使わないと伝わらないと思うよ」

 湊さん……それが言えれば簡単なんです。恥ずかしくて言えないからお手伝いしてもらってるんですよ?

 

 

 一夏さんは本当に鈍感で、私が一緒に出かけませんかと、勇気を振り絞って言っても、『荷物持ちか? 何を買うんだ?』と言われて結局、食堂で使う食材を持ってもらうことになっちゃって、特に会話も楽しくできないまま、家に帰り着いて、一夏さんはお兄の所に戻ってしまいました。

 その後に、湊さんにダメ出しされた後に、優しく慰めてもらって元気は出ましたけど、一夏さんと付き合えるのか不安になった……。

 

 一夏さんに料理を作った。食堂の娘として、料理はそれなりにできるので自信はあったんですけど、『湊の味付けの方が好きだなー』って呟いていたのが聞こえてきて……!

 

 一番の協力者だと思っていた湊さんが一番のライバルなんだって、湊さんに文句を言いに行ったら、『ごめんね。それなら一緒に料理しようよ?一夏の好きな味付け教えるからさ』なんて言ってくれて、二人で一夏さんの好きな料理の練習をしていたら、文句を言ったのも忘れて、楽しく料理を作りながら味付けを教えてもらった。

 

 一夏さんに、おしゃれをした私を見てもらったら、これからデートか?と聞かれましたけど違います。一夏さんとデートしたくて、おしゃれをしたんですよ?なんて言えればいいのに、私には言えなくて、湊さんに泣きついたら、本当に綺麗だって言ってくれた。

 

 『蘭ちゃんは元から可愛いけど、おしゃれをした今の蘭ちゃんは本当に綺麗だよ。あと少しの勇気があれば、一夏と付き合えると思う。自信を持ってよ。蘭ちゃんは本当に可愛いんだから』

 

 湊さんはすごい優しくて、私が一夏さんの事で夜中に電話しても、優しく話を聞いてくれて相談に乗ってくれた。長く電話をしているといつの間にか、一夏さんの話をしてなくて、湊さんの事ばかり聞いていた。

 

 湊さんの趣味は、読書で時間があったら本を読むらしい。好きな食べ物はオムライスらしくって、私も作れるって言ったら、今度作ってよって笑っていた。

 好きなタイプも聞いてみた。明るくて元気な子が好きって言っていたから、私もそんな感じの女の子ですよって冗談で言ったら、湊さんも冗談だと思うけど『確かに蘭ちゃんは俺のタイプかもね?』って言われて、私が変に意識するようになっちゃって、そこからは会話が切れ切れになっちゃって、また明日話しましょうと言って、電話を切っちゃいました。

 

 一夏さんへのアタックは進展がなさすぎて、しばらく止めることにして、湊さんと出かける息抜きに出掛けて、レゾナンスを二人で回ることにした。

 服屋のウィンドウを眺めながら、この服は蘭ちゃんに似合うんじゃないと言われて、その服を買いたくなっちゃったり、おしゃれなカフェでは普段は飲まないらしいブラックコーヒーを頼んで、苦い苦い言いながら飲んでる湊さんを笑ったり、私も頼んだモカが思ったより苦くて、苦そうにしていたら笑われたりして楽しかった。

 

 湊さんにお弁当を作ってお兄に渡してもらったら、お昼にメールが来て、『すごい美味しいよありがとう。俺は蘭ちゃんの味付けは好きだよ』って書かれていたのを見て、ニヤニヤしていたらクラスメート達にメールを見られて、付き合ってるの?なんて言われて恥ずかしかった。

 

 湊さんは何をしているのかな?って気になるようになってメールをするようになった。ほとんど本を読んでいるって言われるけど、たまーにお兄の部屋に居るって言われる時があって、すごいドキッとするけど、すぐに会いに行ったら、寝てる時の格好のまま行っちゃって、すごい恥ずかしい思いをして、その後着替えてからまた行ったら、湊さんに慰められた……。

 

 ある時ふと思った。

 いつからか湊さんの事しか考えていないって。湊さんの言葉で、湊さんとのメールで、湊さんの仕草でドキドキしていたって事に。

 

 気付いてしまったんです。湊さんを好きになっていた事に!湊さんに恋をしていた事に……!

 

 

「湊さん……! 本当に女の子になっちゃったんですか……?」

 

 

 せっかく湊さんのことを好きだって気付けたのに、どうしてそうなっちゃったんですか……?私の気持ちはどうしたらいいんですか?いろんな思いで心をかき乱されて、涙が止まらない。

 湊さんを強く抱きしめて、泣き続けても気持ちの整理がつかない。

 

「蘭ちゃんとこれからもずっと一緒に居られるかな?」

「それって告白ですか……?」

 

 聞かせてもらうのはもう今しか無いと思って、湊さんが私をどう思っていたのかを聞く。

 

「私は蘭ちゃんの事は好きだよ」

 

 うれしい。私も湊さんの事が大好きです!続く言葉さえなければ幸せだったのに。

 

「弾の妹だけどさ、私も妹だと思ってるくらい好きだから、だからこれからも一緒にいて欲しいって思ったの」

「…………妹ですか……分かり……ました! これからはお姉さまって呼びますね! だから、もう少しこのままで居させてください……!」

 

 妹。大切な存在だけど恋愛対象とは正反対のモノ。そうだよね……湊さんは私が一夏さんを好きだと思っているんだから……!

 

 湊さんをこれからはお姉さまと呼ぶことにすると言って、なんとかごまかそうとするけど、視界がぼやける。

 

 湊さんが私を妹だと思うなら、これからは妹として湊さんと一緒にいよう。

 

 私の恋は始まる前に終わってしまった。

 でも……湊さん、いえ、お姉さまとはこれからも一緒に居させてくださいね。それでも好きな事に変わりは無いんですから。

 

 そして、私はこの恋を諦めたーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「湊さん! 次はこのお店に入りましょう!」

「蘭ちゃんが楽しそうで嬉しいよ。お供するね」

 

 ーーー諦められなかった……!

 

 湊さんは女の子になっても湊さんで、私の好きだった湊さんは変わらずにそこに居た。

 

 湊さんが女の子になった日から五ヶ月くらい経って、休日はほぼ毎日、湊さんと一緒に出かけるようになっていて、湊さんは女の子の身体に少し慣れてきたみたいで、今日は二人で洋服を買いにレゾナンスに遊びに来た。

 お姉さま呼びはこの前に出かけたときに、やっぱり湊って呼んで欲しいって言われたから止めちゃったけど、やっぱり湊さんって呼べた方がなんだか恋人同士みたいで嬉しい!

 

「この服とか湊さんにすごい似合うと思いますよ!」

「そう? それより、蘭ちゃんにはこの服を着て欲しいな。絶対可愛いくなるよ」

「なら、お互い着てみませんか? ふふっ一緒に着替えます?」

「うぇ!? ひ、一人で着ます……」

 

 ふふふっ、湊さんが顔を赤くしながら照れていて可愛い。完璧に可愛い女の子にしか見えないのに、たまにすごい格好いいセリフを言ってくるから、そのギャップでもっと好きになっていって、気持ちが抑えられなくなっていった。

 

 でも『湊さんが好きです付き合ってください』なんて言えなかった。妹としか思われていないし、女の子同士なのにそんな事を言っても、変だと思われるだけだから……。

 

 湊さんが選んでくれた服を着ながら考えていたけど、私はこのまま湊さんと一緒に居られるなら幸せだと思う。

 変な事を言って、この関係が壊れるくらいなら、このままで十分ですから。

 

「お姉さま着替えました?」

「もうちょっとー……よし着れたよ!」

「お邪魔します! わ、お姉さま綺麗です!」

 

 湊さんに着て貰ったのは、紺色のエプロン状のジャンスカで、胸元の黒い小さなリボンが可愛くて、裾のレースが可愛らしい湊さんに似合っている。

 その場でくるりと回った湊さんの背中には大きなリボンがひらりと舞って、妖精みたいに可愛い湊さんがさらに可愛くなってる……!

 

 ジャンスカの下に着ている白色のトップスは、胸元のフリルのレースが湊さんの清楚さをさらに引き立てていて、本当に綺麗だと思った。

 

「本当に綺麗ですよ! 買っちゃいましょう! むしろ私がお金を出しますので、買わせてください!」

「じ、自分で買うよ……! でも綺麗って言ってくれてありがとうね。蘭ちゃんも本当に可愛いよ」

「あ、ありがとうございます……!」

 

 うれしい!湊さんに可愛いって言って貰えた!二人で試着した服を買って着ながら店を出た。私が選んだ服を湊さんが着てくれて、私も湊さんが選んでくれた服着てる……幸せすぎだよ!

 

「この後はどうする? またコーヒーでも飲みに行く?」

「湊さんには苦いコーヒーはまだ早いですよ。今日はココアにしておきませんか?」

「飲んでいれば慣れてくるかなって思うんだけどねぇ。ずっと苦いよねー」

 

 レゾナンスに来て、半分くらいはお気に入りのカフェでコーヒーを飲みに行ってる。湊さんは苦いのをガマンして、目をぎゅとしながらブラックコーヒーを飲むけど、毎回『にがい……』って言ってその後に舌を出してるけど、その仕草が可愛すぎて、それを眺めるのが密かな楽しみになっていた。でも、やっぱりおいしく飲んで幸せそうな表情をしている湊さんも見たいから、今回はココアを勧めてみた。

 

「たまにはココアにしようかな? 絶対甘くて美味しいよね!」

「そうですよ! 一緒にココアを飲みましょう!」

「うん。蘭ちゃんと一緒に同じ物を飲んだらもっと美味しいだろうからね」

「わ、私も美味しくなると思いますよ……!」

「ふふ、そうだね。じゃあ行こうか」

 

 湊さんはこんな風に格好いい言葉を私に言ってくるけど、天然なんだよね?狙ってやってるのって思うくらい格好いいセリフを言ってくれるから、嬉しいけど他の人にもこんな風に言ってるのかなって結構心配になる。

 私は湊さんとは別の学校に通ってるから、湊さんの学校生活がどうなってるか見えないけど、一夏さんとお兄が守っているんだと思う。でも、湊さんが可愛すぎて、一夏さんもお兄もデレデレしてるし、守ってる二人のどちらかと湊さんが付き合っちゃうんじゃないかって不安にもなる。

 

 湊さんが私の学校に転校してきたらいいのになぁ……。

 

 よく行くカフェはレゾナンスの最上階にあるから、二人でエスカレーターに乗って最上階に行き、その先の街を一望できる渡り廊下を二人で歩く。

 そのままカフェに向かうのかなって思っていたけど、湊さんが渡り廊下の真ん中で止まって街を眺めている。私も湊さんの隣で街を眺める。

 街はビルのガラスが日光を受けてキラキラとしていて綺麗だけど、暑そうだなぁなんて思った。湊さんはどう思っているのかな?

 

「蘭ちゃん……ちょっと話したい事があるんだけどいいかな?」

「はい。何でも聞きますよ?」

 街を眺めていた湊さんは振り向いて、真剣な表情で私を見てきた。何だろう?

 

「私が女の子になっちゃってから、蘭ちゃんとは休みの日はほとんど一緒に居たよね」

「そうですね。私が休みの度に湊さんを誘っちゃったからだと思うんですけど……迷惑でしたか?」

 

 もし迷惑だとしたらもう止めないと……楽しそうにしてくれていましたし……大丈夫ですよね?

 

「そんな事無いよ。私蘭ちゃんと一緒に居れて嬉しかったんだ。女の子になったらさ、一夏よりも弾よりも蘭ちゃんと一緒に居るときが一番気楽に居れて、一番楽しく居られたんだよね」

「そうだったんですか……ならうれしいです!」

 

 湊さんと居るときが一番楽しく居てくれたんだ……本当にうれしいです……!

 

「蘭ちゃんと居られて本当に助かったし、楽しかったよ」

「み、湊さんどこかに行っちゃうんですか……?」

 

「あー……別れの挨拶みたいだったね。しばらくはそんな予定は無いよ」

「しばらく……ですか?」

 

 いつかどこかに行っちゃうって事ですか……?そんなの、嫌です!

 

「入学するのはまだ先だけど、高校はIS学園に行くんだ。これは決定事項で、全寮制だから入学したら蘭ちゃんとはあまり会えなくなっちゃうね」

「そうですね……でもまだ一年以上ありますから!」

 

「そうだね。でもそろそろISについて勉強をしていかないといけないから、今までみたいには出掛けられないと思うんだ」

「でも湊さんのお姉さんってISの博士ですよね? 勉強をしなくても大丈夫じゃないんですか?」

 

「姉さんの家族でも、私はISの事をほとんど知らないから勉強をしないとダメなんだよね。お姉ちゃん……楯無さんから聞いたけど、私の入学するための枠はすでに設けてあるから入学するだけなら何もしなくても大丈夫なんだ。私は姉さんの家族だから保護のために入学することは確定なんだけど、入学できる人数は決まっているから、その代わりに誰かが落ちる事になっちゃうから……だからその人よりも、いや、誰よりも勉強をしないといけないと思うんだ」

「そんな……気にしなくても」

 

 入学できる事は決まっていても、代わりに落ちてしまう誰かのために勉強をするなんて、真面目すぎますよ……知らない人なのに、その人のために今から勉強を始めるなんて格好いいですけど、それで会えなくなっちゃうのは……私は嫌だ。本当に私って自分勝手だよね。

 

「だから、これからあまり会えなくなっちゃう前に蘭ちゃんに言っておきたい事があるんだ」

「はい……」

 

「私が女の子なってから、蘭ちゃんと一緒に居て、色んな事があって、蘭ちゃんの事が前よりももっと大切だと思ったんだ」

「は、はい……」

 

「大切な妹だと思っていたはずなのに、いつの間にか一人の女の子として見ていたんだ」

「……えっ?」

 

 私を女の子として見ていた……?妹じゃなくって……それって……!

 

「今は女の子同士だから、こんな事言ったら嫌われちゃうかもしれないけど、聞いて欲しい」

「み、湊さん……」

 

 視界が涙で滲んでくるけど、指で拭ってちゃんと湊さんを見つめる。私もずっと思ってました……湊さんもなんですか……?

 

 

「私は蘭ちゃんを妹としてじゃなくて、一人の女の子として好きです」

「そ、それって告白ですか……?」

 

 湊さんに抱き付いて、あの時と同じ問いかけをする……私の答えは決まっています。湊さんどうか教えてください……!

 

「告白だよ。女の子同士だとしても、蘭ちゃんを好きだって気持ちは止められなかったの。だから大好きだよ!」

 

 それを聞いてまた涙が止まらなかった……それよりも今は湊さんに私の気持ちを聞いてもらわないと……!

 

「み、みなとさん! わ、私もずっと好きだったんです! 湊さんが男の時も、女の子になってからも大好きで……でも女の子同士になっちゃったから、好きなんて言ったら変だって思われるって……嫌われちゃうって思ってました……!」

「ら、蘭ちゃん……」

 

「私も湊さんの事が好きです。女の子同士でも関係無いです! 大好きなんです!」

「私も蘭ちゃんの事が好き。誰よりも蘭ちゃんが好きだよ! んぅ……!」

 

 気持ちが抑えられなくて、湊さんの口にキスをしちゃった。それでも止まらなくて、何度も唇を押し当てる。好きです。大好きです!

 

「ら、蘭ちゃ……んっ!」

「湊さん……!」

 

 湊さんを強く抱きしめて、最後に呼吸を忘れるくらい長くキスを交わして、湊さんから離れる。

 

 私のこれからを決めました。聞いてください!

 

「ら、蘭ちゃん……」

「湊さん! 私もIS学園に行きます! 湊さんが行ってから一年後になっちゃいますけど、絶対行きますから! だから、これからも一緒に私とずっと一緒に居てください!」

「い……いいの?」

 

「当たり前です! むしろ絶対離しませんから、覚悟してくださいね!」

「う、うん」

 

 私もIS学園に行くんですから受験勉強も一緒に出来ますね!ずっと一緒に居てもらいますからね!

 

「あ……あぅ……」

「湊さん、どうしたんですか? いきなり顔を真っ赤にして? ん……後ろですか? あっ……」

 

 後ろには大勢の人たちが私達を見ていた……私達は何をした……?湊さんは告白を……!私は…………キスを……!?

 

「し、失礼しましたーー!」

「あぅぅ…………」

 

 顔を真っ赤にしてる湊さんの手を引っ張って、遠くに見えたカフェに逃げ込んだ。私も顔が真っ赤だよ……!

 

 あんなにたくさんの人に見られちゃったけど、後悔は無い……です!無いったら無いです!だって湊さんと付き合えるんだから!

 

 これからもずっと一緒ですよ湊さん!




これが最終話でいいんじゃないでしょうか!?
if編を書くと毎回そう思ってしまいます。

今回は蘭ちゃんのifルートでした。

本編に繋がるルートでは湊に恋する事は諦めて、妹として一緒に居ることを選びました。この先の展開ではまた恋をするかも知れませんがどうなるんでしょう?

ifルートでは湊を好きな気持ちに嘘はつけなくって諦めないでいたら、湊も蘭ちゃんの事を好きになって告白されて、嬉しくてキスをして、ハッピーエンドまでたどり着けました。

お互いが両想いなのに、好きですと言えないのは、TSして女の子同士になってしまったから。好き同士なのに、好きと言えないもどかしさ。最後に気持ちが通じ合って本当によかったです。


読んでいただきありがとうございました!


次回の更新は3日後にさせてもらいます。すみません!
このSSは本当は一話で終わりの予定だったんですが、皆様のおかげでここまで続いたので、しっかりと今後の話を考えたいと思いました。
最終話までのプロットをちゃんと作ってきます。



あと今後の参考のために活動報告の欄にアンケートを作りました。
沢山のご回答ありがとうございました!


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その16





 

「そろそろ帰ろうかなー? 一夏も帰る?」

「おう。送ってくよ」

 

 業火野菜炒めを食べて、雑談しながらゆっくりしていたけど、お客さんも増えてきたし、そろそろ帰ろうかな?一夏が送ってくれるみたいだしー?モテだよねぇ。

 

「お姉さまもう帰っちゃうんですか?」

「ごめんね。また遊んでくれる?」

「もちろんです! 気をつけて帰ってくださいね!」

「ありがとうね。まだ早いけどおやすみ」

 

 隣に座っている蘭ちゃんの頭をぽんぽんとしてから席を立ち上がる。蘭ちゃんが落ち込んでいる時はよくこうやっていたんだよねぇ。癖になったみたいで今もやっちゃった。

 

「弾、明日は鈴のことをよろしく頼むね。見送れない私が言うのもあれだけど、しっかりと鈴を見送って欲しい」

「鈴にはしっかりと伝えておくから任せてくれ!」

「ごめんね……」

「そんな悲しい顔をしないでくれ……! また会えるって!」

「うん……」

 

 鈴に最後に会いたかったけど、仕方ないよね……鈴の行動力ならすぐに戻ってくるかもしれないし!

 

「行こうか湊」

「うん。二人ともまたね!」

 

 一夏に付いて五反田食堂を出る。二人で暗くなった道を歩くけど、一夏は自然と隣を歩いてくれているから、やっぱりモテ……なんか一夏と一緒に歩くだけでも楽しいよねぇ。自然な感じで居られるからかな?

 

「一夏ってやっぱりモテるよねー」

「どうしたんだ突然? 湊の方がモテてると思うぞ」

「いやいや! 私がモテてる訳ないって! 一夏は鈍感だから分からないんですー」

「俺は鈍感じゃないからな! 湊は鈍感だから気付いてないだけだって!」

「一夏はともかく私は鈍感じゃないからね! 諦めて天然で鈍感だと認めなさいっ!」

「はいはいーほら、帰るぞー」

「ちょっと、早足で行かないでよ!」

 

 一夏は早足で歩いて行っちゃうから、私も駆け足で行かないと追いつけないし……待ってよー。冗談なんだからー!

 一夏の手を掴んで、隣を歩く。

 

「冗談だよっ! ごめん!」

「お、おう……」

 

 一夏の手って大きいなぁ。男の時は同じくらいの大きさだったけど、今は全然違うね。にぎにぎして遊びながら帰り道を歩いていく。

 

 あ、ここにタコができてる!ちゃんと剣を振ってるんだね。本当にがんばっているなぁ。私も何か手伝えたらいいんだけど……剣は箒と一夏みたいに上手くないから、剣では手伝えないし……弓術なら得意なんだけどねー。一夏のために手伝えることが何かあるか考えておこう。

 

「い、いつまで手を握ってるんだよ!」

「あ……ごめんね。手を触ったら一夏が頑張って剣振ってるのが、分かったから嬉しくて」

「そ、そうか……まあ振り続けるって決めたからな」

「私は応援してるから、手伝って欲しいことがあったら何でも言ってね!」

「何でも!? …………湊はやっぱり鈍感なんだから気をつけてくれよマジで!」

「う、うん? なんでそんな必死なの?」

 

 変なの?鈍感って言われても、そんなはず無いんだけどねぇ。やっぱり一夏は天然だし面白いよね!そろそろ家に着くけど、一夏はどうするのかな?

 

「このあとは家に来る? 鈴の出発は夕方までだし、昼までは居れると思うけど、泊まっていく?」

「いやいやいやいや! 湊は気にしてないみたいだから言わせて貰うけどさ。今の湊ってめちゃくちゃ可愛い女の子なんだよ!」

「えっ……!? あ、ありがと……う?」

 

 いきなり可愛いってなに……どうしたの一夏?うぅ……恥ずかしくなるって……!

 

「だから、男に気軽に泊まっていいなんて言わない方がいいからな! 本当に気をつけないと心配なんだよ」

「だって……一夏は親友だし、私は信じてるから大丈夫だと思うのに……」

 

 私はそんなに変わっちゃったのかな……?もう男だった頃みたいに遊べなくなるのかな?でもなんか少し寂しいなぁ。

 

「ッ……! ちょっと俺も考えすぎていたかも知れない。湊は湊だもんな」

「うん……ありがとね」

「でもこれからは気をつけないと危ないからさ、気をつけてくれよ。さて着いたな。俺は帰るけど何かあったらすぐ駆けつけるからいつでも電話してくれよ?」

「うん! 一夏も気をつけて帰ってね。おやすみ」

「ああ。おやすみ!」

 

 はぁ……一夏が帰っちゃった。今まで通りの関係を続けるのって難しいのかな……?一夏とはこれからも一緒にいて欲しいし、今まで通りに仲良くして欲しいよ。

 

 とりあえず部屋に入ろうか。洗面所で手洗いうがいをして、キッチンで冷蔵庫を開けて、お茶を飲む。お茶を飲んで落ち着こうかなー。ペットボトルに入ったお茶をコップに注いで一口飲む。おいしい……よし、私は一夏には今まで通りに接するよ!

 私は変わらないから、一夏も今まで通りにしてくれたらうれしいな。

 

 このあとはどうしようかな?なんか眠くなってきちゃったし、寝る前にしないといけない事を全部終わらせてもう寝ちゃおう!

 

 まずはお風呂に……お風呂!?

 

 ど、どうしたらいいんだろう!?だって服を全部脱いで、裸になって、身体を洗わないといけないんだよ!?うぅ……自分の身体だとしても、見たら恥ずかしいよ……!それでもこれから慣れていかないとダメなんだよね!

 

 とりあえず、寝間着のスウェットと下着を持って脱衣所に行こう。あ、寝る時ってブラジャーを着けるのかな?あとで姉さんから届いた冊子を読んで確認しておこうかな。今日はいいや……着けていると胸辺りに違和感があるし、着けていたら寝られないかも。

 

 脱衣所で服を脱いでいく。

 上着のお腹辺りの裾を両手で掴んで引き上げていって、あっ……胸が引っかかるんだ……引っかかった所をずらして脱ぎ、服は脱衣籠に投げ入れる。次はスカパンのベルト部分のゴムを伸ばして、太股の下まで脱ぐと、そのまま床まで落ちていった。足をどかしてスカパンを拾って籠へポイっと投げる。

 

 次はブラジャー……や、やるよ!

 恥ずかしくなっちゃうから鏡を見ないように反対側を向いて、前屈みになって背中のホックに手を伸ばす。左右のホックを押さえてずらす……あっ外れた!千冬さんと練習したおかげで簡単に外せたのかな?肩に掛けていた紐から両腕を抜いて、脱いだブラジャーを籠に入れる。もう下は向かないから……!

 

 あとはパンツ……ささっと脱いで早くお風呂に入って寝よう!

 腰に掛かったパンツを伸ばして、足首までパンツをずり下げて、片足づつ抜いていく。こ、こんな可愛いパンツを私が穿いていたんだ……うわー……見なかったことにしよう!

 

 パンツも籠に入れて、お風呂の扉を開ける。か、鏡に映っちゃってる!?あわわわ!?あらためて全身を見ちゃったよ!?綺麗だったなぁ……いやいや、自分の身体だから!うぅ……絶対慣れないよ……。

 

 早く身体を洗って寝よう!椅子に座ったし、お風呂を出るまではもう目を開けないからね!……この身体に慣れていけるのか不安だよ!

 




お風呂はカットして次回は次の日になりますよ!

脱衣描写はもっとしたかったです!

読んでいただきありがとうございました!

あと、活動報告に『その15.5』を投稿しています。
1000文字くらいですし、本編にそれほど影響しないので読まなくても問題ありません!ただのトイレ回ですので!


今回で一日目が終わったので、一日で何があったのかを時系列で書いていきます。読まなくても全く問題ありません。

09時00分 湊ちゃんとして目覚める。
09時30分 束さんに電話。
09時45分 千冬さんが湊の家へ。身体測定。
10時00分 レゾナンスへ向かう。
10時45分 靴屋でスニーカーを買う。
11時15分 服を買って、試着していく。
11時25分 千冬さんはIS学園へ。一夏と合流。
12時15分 湊は箒になりきる。湊の家へ到着。
12時30分 一夏と会話後、肉じゃがを作り始める。
13時00分 肉じゃが完成。二人で食べる。
13時15分 肉じゃが食べ終わる。湊の今後を相談。
13時20分 楯無さんと電話。湊の戸籍を作る相談。
13時30分 更識湊としての戸籍を用意して貰う事に。
14時20分 一夏が湊へマッサージを行った。
15時40分 鈴への手紙を書き終わる。
16時20分 学校での振る舞いの訓練。
16時25分 五反田食堂に行こうと話し合う。くーちゃん登場。
16時30分 五反田食堂へ向かう。
16時45分 五反田食堂へ到着。厳さんの出迎え。
17時00分 弾に女の子になったと信じて貰った。
17時20分 蘭ちゃんとの話し合いが終わる。食事へ。
17時45分 食事終了。(短編15.5)

ここから今回の話でした。次の日からはそこまで長くなりません!原作を目指してますので!(一年以上先って事に目を背けつつ)


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その17

※誤字報告いつもありがとうございます!
※UA40000ありがとうございました!


 

 ……暑い、もう朝ぁ……?眠い……けど暑いから起きる……布団の中で瞼をこすりながら、今日の予定を考える。

 今日は鈴が帰る日で見送りに……はいけなくなったんだったね……他の予定は今日は箒と夜に電話するくらいかなぁ?

 

 うーん……なんで鈴の見送りに行けなくなったんだっけ……あっ……一気に目が覚めた。昨日の出来事は全部夢だよね!?女の子になったとか夢だよね!?

 

 手を前に伸ばそうとしたら柔らかい何かに当たる……このマシュマロみたい柔らかくて永遠に触っていられそうな物はなに!?なんで布団の中にこんな物があるの!?

 

 えっ……自分の胸は触ってないんだよ!?思わず、もう片手で自分の胸に手を伸ばす……うわぁ柔らかいよ……ふわふわ……やっぱり女の子になっちゃったんだね……じゃなくて!それなら目の前にあるこのふわふわは何!?

 

「湊ちゃん……積極的なのね。お姉ちゃん嬉しいわ!」

「えっ……んん? お姉ちゃん……? へっ!?」

 

 ガバッと掛け布団を剥ぐと、目の前にニコニコしてる楯無さんが居た……えっ?

 

「えええええー!?」

「おはよう。かわいい妹の湊ちゃん!」

「た、楯無さん!?」

「違うわよ? お姉ちゃんよ!」

「お、お姉ちゃん……」

「ええ! 愛しのお姉ちゃんよ!」

 

 わっ!抱きつかないでくださいぃぃ!すごいいい匂いですし、柔らかいんですから!

 

「お、お姉ちゃん恥ずかしいから止めてください……」

「…………湊ちゃんを見てるとなんだか虐めたくなっちゃうわね……えいっ!」

「ひあっ……!?」

 

 なんで耳を舐め……!?ひいいくすぐったいいい!吐息が耳に当たってゾワゾワするしぃぃ!?

 

「おね……お姉ちゃん止めてぇ……」

「ッ……!? お姉ちゃん我慢できなくなっちゃったかも!」

「ひいいっ……!」

 

 何をされるのか分からないから、怖くて目を瞑る。えっ……な、何もされない……?

 

「あいたっ……」

「ふふっ冗談よ。おはよう湊ちゃん!」

 

 目を開けた瞬間におでこに軽くデコピンされた。でもなんで楯無さんが家に居るの……?寝る前に鍵掛けていたよね?

 

「おはようございます? なんで楯無さんがベッドの中に居たんですか? 鍵締めていましたよね?」

「私ってどんな鍵でも簡単に開けられるのよ? 湊ちゃんが何処にいても会いに行けるから安心してね?」

「安心でませんけど……まあ、おはようございます。今日はどうしたんですか?」

 

 楯無さんが暗部組織の代表になってからは、護衛対象の私と月に一回は会っていたからそれかな?それともやっぱり戸籍の件かな?

 

「大切な妹のかわいい顔を見に来たのよ? ついでに戸籍の用意と更識湊ちゃんが今の学校に転校する準備もできたわ」

「戸籍はついでなんですかー? でもありがとうございます。姉さんなら違法でなら戸籍を作れたと思いますけど……」

「私が作ったのも違法だけどね! でも国としては目を瞑ることになっているから、安心していいわよ」

「ありがとうございます。あ、お姉ちゃんは朝ごはんは食べました?」

「まだよ……? もしかして湊ちゃんが作ってくれるの?」

「はい。お姉ちゃんはゆっくりしててくださいね」

「い……妹の手作り料理……楽しみに待っているわ!」

 

 ベッドから出て、エプロンを着けてからキッチンで朝食を作っていく。昨日炊いたご飯は一夏が全部食べてくれたから残ってないし、今日はパンでいいかな?

 

 食パンをトースターに二枚差して、電源を入れておく。このまま放置しておけば、トーストの完成だね。

 

 あとはスクランブルエッグを作らないとね。

 今から私特製のスクランブルエッグの作り方を教えちゃうよ-?

 

 なんか料理を作るときって料理番組風に作り方を頭の中で考えちゃうんだよね。変な癖なんだけど……でも楽しいから止められないね!

 

 ではまず、今日は二人分なので卵を3つ用意します。ボールに卵を割って入れて、菜箸で泡が立つようにしっかりと混ぜてくださいね!

 

 次は私特製のスクランブルエッグの隠し味を入れていくんですよ-!牛乳を小さじ2杯とマヨネーズを小さじ1杯入れてください。あと、砂糖と塩を一つまみ入れてもう一度しっかりかき混ぜてください。

 

 混ぜ終わったら、フライパンに油を引いて、良く熱していってください。熱せられるまでに最後の隠し味を用意しましょうね!

 

 はーい。フライパンが温まったので、混ぜた卵をフライパンに入れます。そしてすぐに隠し味のとろけるチーズを小さじ2杯入れてください!そして菜箸でかき混ぜていきますよ-!

 

 お好みの火の通り具合になったら火を止めて、完成です!

 

 隠し味の牛乳、マヨネーズ、チーズを入れることでスクランブルエッグの濃厚さが増すんですよー!

 

 皆さんも作ってみてくださいね!それではありがとうございました〜!

 

 なんて遊んでいたらスクランブルエッグができたから、トーストを斜めに切って、どちらもお皿に載っけてテーブルに持っていく。あとはトーストに牛乳は外せないよねー。

 

「お姉ちゃんーできましたよー」

「ありがとう湊ちゃん! エプロン姿もすごい可愛いわ!」

 

 お姉ちゃんが……楯無さんのことをお姉ちゃんって言うのにもう慣れちゃってる……まあ女の子の身体に慣れるよりは簡単だからねぇ……。

 

 まあいっか。お姉ちゃんがすごい嬉しそうにフォークを持ちながらワクワクしててかわいいし、早速食べようか!

 

「お姉ちゃんのために愛情を込めて作ったんですよ? 美味しかったらうれしいです!」

「うぅ……お姉ちゃんうれしいわ! 早速食べていいかしら?」

「はいどうぞ! いただきます」

 

 食べて貰う人のために愛情を込めるのは当然なんですよ!美味しくできていたらいいなぁ。

 

「いただきます! す、すごい美味しいわ! このスクランブルエッグ、なんでこんなにふわふわしてるの!?」

「愛情を込めたからですよ? 美味しくできてよかったです!」

「湊ちゃん大好きよ!」

 

 お姉ちゃんはすごい美味しそうな表情を浮かべてるし、作った身としては本当に嬉しいよねー。私も食べてみよう!うん。結構いい感じだね!スクランブルエッグは朝食によく作っているから、一夏よりも上手く出来ているかも?

 

 でも一夏が作るスクランブルエッグはバターと塩胡椒で味付けしていてシンプルなんだけどすごい美味しいんだよねぇ。余計な味付けをしないで美味しくするのって和食でもそうだけど、結構難しいんだよねぇ。

 

「湊ちゃんごちそうさま! こんな美味しいスクランブルエッグは初めて食べたわ!」

「ふふっお粗末さまでした」

 

 最後に牛乳を飲んで私も食べ終わったし、二人分の食器をシンクに持っていく。食器を洗ってからは何をしようかな-?でもお姉ちゃんが喜んでくれてよかったなー。

 

「ふふふーん……ひゃあ!」

「食器を洗ってる湊ちゃんも可愛いわ!」

 

 後ろから突然抱きしめられてびっくりした……お姉ちゃんってイタズラ好きなんだねぇ。

 

「湊ちゃんって小さくて可愛いわね。これからもお姉ちゃんが守ってあげるわ!」

「ふふっありがとうございます。頼りにしてますよ」

 

 あんまり実感は無いけど、私が今まで無事に生活できていたのは、お姉ちゃんたちのお陰なんだよね?お姉ちゃんの方を向いて、しっかりありがとうって言わせてもらう。

 

「お姉ちゃんありがとね!」

「湊ちゃん! 愛してるわ!」

「ひゃあ!?」

 

 正面からお姉ちゃんにぎゅっと抱きしめられて、うぅ……それはさすがに恥ずかしいです……!




今回は楯無さん回でした。

妹愛が止まらない楯無さんでした。
嫁力の高い湊ちゃんでしたね。
湊ちゃん特製のスクランブルエッグは美味しいので是非作ってみてくださいね!

読んでいただきありがとうございます。
次回は11月1日の投稿になります。しばらく毎日更新ではなくなりますが、すみません!
投稿する日は必ず18:00に投稿します!


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その18

※漢字の間違いを報告していただきありがとうございます!


 

 朝ご飯を食べた後は、新しい戸籍についての真面目な話をしたり、お姉ちゃんに抱きつかれたり、簪さんの話を延々と聞かされたり、お姉ちゃんと一緒にクッキーを焼いたり、ついでにお昼ご飯も一緒に作って、二人で食べていたら、あっという間に夕方近くになっていた。

 

「湊ちゃんー! もっと、もーっと撫でて-!」

「はいはいーお姉ちゃんは甘えん坊ですねー」

 

 お昼ご飯を食べ終わってリビングのソファーに座ってゆっくりテレビを見ていたら、お姉ちゃんが私の太股に顔を埋めてきて、吐息が当たってくすぐったいけど、サラサラな青い髪を撫でていたら、もっとねだってきて、ちょっと可愛いって思った。

 

 甘えてくるお姉ちゃんは可愛いから、もっと撫でてあげるね。よしよし。

 

「湊ちゃんみたいな妹が出来てお姉ちゃん幸せよ〜」

「私もお姉ちゃんができてうれしいですよー」

 

 今日はショートパンツを穿いていたから、息が直接当たってきて、結構くすぐったいけど……お姉ちゃんが嬉しそうだし我慢しようか。

 

「なんか湊ちゃんって絶対いいお母さんになると思うわよ」

「いやいや、私って男なんですからー。身体は女の子ですけど……」

「ちょっと私のお母さんになってみない? 湊おかーさんー好きよー」

 

 なんかお姉ちゃんが幼い感じの可愛らしい声を出して、ごろんと私の方を向くように寝返りをうって甘えてきた。

 

 まあ、お姉ちゃんもやって欲しそうだし、なりきってあげようかな?私にお母さんなんてできるとは思えないけどね?心は男だし!

 

「楯無ちゃん。私も好きですよ。よしよしー」

「ッ……! も、もっとしてー……!」

 

 楯無さんはお姉さんなのに、可愛く甘えてくるのが、演技だとしてもすごい可愛いから、普段とのギャップでなんだか笑っちゃった。こんなお姉ちゃんも結構好きですよ。

 

「次はぎゅーってしてー」

「いいですよー、はいぎゅー」

 

 お姉ちゃんが横に座ってきて、両手を前に出して、抱っこをねだってきたから、優しく抱きしめてあげる。

 

「楯無ちゃんはいつもがんばってるから偉いですねー。えらいえらい」

「えへへ……もっとぎゅ〜ってして〜」

「はいはい。ぎゅってしてあげますよー」

 

 うん。暗部組織の長をやっているらしいからね。ストレスも抱え込むよね?こんな形でも発散してくれたらうれしいですよ。

 

「湊おかーさんー私のことをほめてー応援してー」

 

 抱きしめているお姉ちゃんの背中をさすりながら、もう片手で頭を撫でてあげる。

 

「楯無ちゃんえらいえらい。がんばれっ、がんばれっ」

 

「もう……しあわせー……ずっとこのままで居たいわ!」

「ずーっとぎゅっとしてあげますよー、っと電話ですね。ごめんなさい、ちょっと出ますよ」

「えー……やだやだー!」

「楯無ちゃんごめんなさいね」

 

 私の胸に顔を押し付けて、顔を横にやだやだと振ってるお姉ちゃんに謝ってから電話に出る。本当になりきってるね……演技のプロだよ。

 

「みーちゃんなんで……私以外にバブみプレイをしちゃってるの!? それって束さんの特権だったよね!?」

「そんな特権ないし、やったことないからね! なに言ってるの……まあ、姉さんおはようー今日はどうしたの? 男に戻れるようになったのかな?」

「束さん以外にママしてるみーちゃんなんて知りません!」

「えっ……えぇー……」

 

「束博士!? えっ? なに嘘!? 今の観られてたの!?」

 

 なんかよく分からない事で怒ってる……とりあえず謝っておこうかな?

 

「姉さんごめんね。またして欲しいことがあったら言ってよ? 会えなくて寂しいのは私も一緒だからね」

「みーちゃん…………愛してるよ! 女の子になったみーちゃんにして欲しいこと全部やってもらうから覚悟しててね!」

「ついでに男に戻して欲しいなーって」

「それは無理っ!」

「もう……まあいつか治してね?」

 

 姉さんしか治せないと思うからねぇ?何をどうやったら、女の子になるの?

 

「前向きに検討させていただきますって言う断り文句で回答させてもらうよ! だってみーちゃん可愛いだもん。もったいないよ!」

「断らないでよ! むー……それよりも今日はどうしたの?」

「そうだったよ! そこの泥棒猫はなに!? なんで私と箒ちゃん以外にお姉ちゃんが増えてんの!?」

 

 携帯のスピーカーからすごい騒いでる姉さんの声がするけど、自業自得だよ……ね?姉さんが私を女の子にしなければ、戸籍を作る必要も無かったからねぇ?そうだ!これで攻めていこう!

 

「姉さんが私を女の子にしなければ、新しく戸籍も作らなかったから、楯無さんがお姉ちゃんになることは無かったんだよー。戻すなら今のうちですよー」

 

「戸籍なんて、日本を脅せば簡単だよね! それより、世界中のテレビ局をジャックしてみーちゃんが女の子になって、もっと可愛くなったよって放送した方が世界中が知ってくれるし、楽だよね!」

「よくないからね! 確かに性別変えるのはすごい技術かも知れないけどさ! 恥ずかしすぎるよ!」

 

 姉さんには勝てなかったよ……楯無さんがお姉ちゃんになったのが姉さん的にはNGだったのかな?お世話にもなってるし、できれば仲良くして欲しいけどね?

 

「姉さん。楯無さんは私の護衛をしてくれた人でお世話になっていたの。許してあげて」

「えー……」

 

「し、篠ノ之博士! 聞いてください!」

「聞いてくれる姉さん?」

 

 楯無さんは何の話をするのかな?なんか真剣な顔してるけどがんばってね?

 

「……なに?」

「私妹が好きなの! 妹の湊ちゃんを愛しているのよ!」

 

「……はい?」

 つい疑問が口から出ちゃった……真面目な話をすると思ったのにどうしたの!?

 

「湊ちゃんと血の繋がりは無いわ。でもお姉ちゃんとして愛しているのよ! 湊ちゃんの寝顔が可愛いところ、優しいところ、料理が上手いところ、全部が大好きよ! どうか、私が湊ちゃんのお姉ちゃんになることを認めてください……!」

 

 へ……?

 

「……ふん。まあ多少は認めてあげるよ。ただし! みーちゃんを全宇宙一愛しているのは束さんって事を忘れるなよ?」

「いつか越えてみせるわ!」

「……凡人が一生掛けて足掻いても、天才には届かないことを教えてやるよ」

「望むところよ!」

 

 何が望むところなの?どう言う展開?

 湊ちゃんよく分からないよ……まあ、なんだかんだで楯無さんの事を認めてくれたのかな?

 

「じゃあみーちゃんまたねー! お姉ちゃんはいつでも見守っているからね! ばいばーい!」

「また電話してね。ばいばい」

 

 見守っているって……二十四時間体制でどこかから、録画されているんだよね……愛が重たいよ……さすが宇宙一だね……まあ、姉さんとお姉ちゃんが喧嘩して、日本が核の炎に包まれるような事にならなくてよかったよ!

 

「ふふっ、これで湊ちゃんの姉だって認められたわね! 次はお姉ちゃんらしいことをしてあげるわ! ぎゅー!」

「わっ、ふふっありがとうお姉ちゃん」

 

 お姉ちゃんが正面から抱きしめてくれる。柔らかくて、温かくて、いい匂いで……でもなんでこんなスキンシップをしても、お姉ちゃん可愛いねって気持ちしか湧かないんだろう……?

 

「もっとしてあげるわ! これはどうかしら……?」

「ちょっと……むぐっ! 顔に当たってますから……!? むー!?」

 

 すごい柔らかい物に顔が埋まって、息苦しいけど、なんか夢心地みたいな……なんか苦しいのにちょっと気持ちよくて、天国に登っちゃいそうかも……。

 

「えっ、どうしたんだ湊!? 鍵空いてる! 入るぞ!」

「い……いちかぁ……はぁ……」

「ッ! 大丈夫……か……へ?」

 

 頭がぼーっとしてる中で、一夏が扉を開けてリビングへ入ってきた。なんで慌てているの?

 

「湊が痴女に襲われている……!?」

「だれが痴女よ!? 私は湊ちゃんのお姉ちゃんよ!!」




暗部組織の長は大変なんです。TSした湊ちゃんにバブみを感じることで心の安寧をやっと得ることが出来たんです……楯無ファンの方すみませんでした!

楯無さんはもちろん簪ちゃんの事も大好きですよ!

湊ちゃんの『がんばれ♡がんばれ♡』でした。

第二次聖姉戦争が勃発しましたが、姉としての愛する気持ちの力で戦争は終わりましたね。
ちなみに第一次聖姉戦争は箒ちゃんと束さんのバトルですね。

今回も読んでいただきありがとうございました!


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その19

 

「鈴はやっぱ、湊の事を待っているよな?」

「だな……まあ、来れないのは仕方ないんだ。俺たちがフォローしようぜ」

 

 弾と一緒に空港で鈴を探しているけど、小さいから見当たらない……何処にいるんだ?

 昼ごろに電車に乗って、空港まで来てからしばらくロビーを探しているけど見当たらないし、鈴に電話してしてみるか?

 

「あんた達遅いわよ!」

 

 後ろからそんな声が聞こえて振り向くと、俺達を指さしている不機嫌な鈴がいた。どこに居たんだ?普通に見落としたけど……。

 

「ごめんな。ちょっと前に空港に着いていたけど、鈴が小さいから探すのに時間が掛かってさ」

「だな。鈴が小さいのが悪い」

 

「あんたらぶっ飛ばすわよ?」

 

「冗談だって、ごめんごめん」

「見送りに来たんだ。許してくれよ?」

 

「ふん。まあいいわ。湊はどうしたのよ?」

 

 鈴が一番来て欲しかったのは湊なんだし、やっぱり聞いてくるよな。嘘つくのは悪いと思うけど、湊が女になったって言って変にこじれたまま、鈴が中国に行くのが一番最悪だろうから……ごめん。

 

「湊は風邪で寝込んでいて、来れなくなったんだ。ごめんな」

 

「……そう。来るって言ってたのに……バカ湊」

 

「鈴、来れなくなった湊から手紙を受け取ってきたんだ。これだけど、読んでみて欲しい」

「……まあ、読んであげるわ」

 

 鈴が手紙を読み始める。湊がどんな事を書いたかは知らないけど、真剣に書いていたからな。ちゃんと気持ちが伝わってくれるといいな。

 

「今さら……なんでそんな事を……もう遅いわよ……」

 

 鈴が溢れる涙を拭いながら、手紙を読んでいる。

 

「…………バカ湊」

 

 手紙を封筒に戻して、長い息を吐いて気持ちを落ち着かせているみたいだ。湊は何を書いたんだ……?

 

「一夏、弾! 湊に伝えときなさいよ! 必ず日本に帰ってくるから、次に会ったら毎日酢豚を作るわって!」

 

 鈴はすごい良い笑顔でそう宣言した。それってつまりそう言う事だろ……?

 

「これから毎日味噌汁を作ってくれ的な意味か?」

「プロポーズって事か? 任せてくれ、ちゃんと伝えとくぜ!」

 

「ち、ちがうわよ! 見送りに来ない湊なんて嫌いなんだから!」

 

「ツンデレ乙」

「ツンデレだな」

 

 顔を真っ赤にしながら照れているんだ。嫌いな訳ないよな。鈴はツンデレだからなー。

 

「あんたら一発ずつ殴らせなさい!」

 

「ははっ、ごめんごめん。でも元気を出してくれてよかったよ」

「悲しい別れじゃなくてさ、笑顔で見送りたかったからな」

 

「ふ、ふん。殴るのは日本に戻ってからにしてあげるわ。覚悟しておきなさいよ!」

 

「ああ、楽しみに待ってるよ」

「鈴もがんばってくれよ。何かあればいつでも連絡してくれ」

 

 鈴の手を握って握手をする。弾も同じようにしたところで、鈴がキャリーケースを取りに行って戻ってきた。

 

「そろそろ行くわ! 私も元気でやっていくから、あんた達も元気でいなさいよ! バカ湊には早く風邪を治しなさいって言っておきなさい!」

「ああ。ちゃんと伝えておくよ」

「プロポーズの件も伝えておくさ……いてっ、足を踏むな足を!」

 

「プロポーズじゃないの! 湊が私の酢豚が好きって書いていたから、毎日酢豚を食べて欲しいって思っただけなんだから!」

 

「ツンデレ乙」

「ツンデレ乙」

 

「あんた達もほんとバカなんだから! じゃあ行くわ」

 

「いってらっしゃい。またな」

「また会おうぜ。気をつけてな」

 

 俺達みんなで待っているからさ、さよならじゃなくて、またなでいいよな。

 

「…………バカ。またね」

 

 後ろ手に手を振って、鈴は検査場に向かっていった。背中が見えなくなるまで見守っていたけど、最後まで振り返らなかった。元気でな鈴。鈴が帰ってくるからまでに湊も男に戻っていればいいけど、どうなっているかな?

 

「……帰るか」

「そうだな。湊も待っているからな」

 

 弾と一緒に空港を出て、電車に乗って帰る。今日は湊は大丈夫か?一人だと思うけど、出掛けてないよな?

 

「湊は家で大人しくしてるかな? 出掛けていたら心配なんだけど……」

「家に籠もるって言っていたんだろ? なら家に居るんじゃないか?」

「うーん……心配だ。早く帰るか」

「湊はめちゃくちゃ天然だけど、しっかりしてるところもあるし大丈夫じゃないか? たぶんな……」

 

「弾も不安じゃねーか!」

「よく考えたら不安だわ。あの容姿であの天然だろ? 一夏は昨日一緒に居たけど、どうだったんだ?」

 

「あんな可愛いのに、疲れたからマッサージして欲しいって言われたんだぞ? ヘンな声も出すし、めちゃくちゃ危なかった……」

「何やってんだお前ら……」

 

 弾に呆れられた顔をされたけどさ……いやいや、あの湊のお願いとか断れないだろ!

 

「ほら、駅に着いたから降りようぜ!」

「まあいっか。学校でも俺達がちゃんとフォローしてやろうぜ」

「だな。クラスの女子達と仲良くなれればいいけど、湊なら何とかなるか」

「だろうなぁ。男の時もクラスのまとめ役していて、女子達とも仲が良かったからな」

 

 一緒に改札を出て、湊の家に向かって帰る。今日は千冬姉は家に居ないし、湊の家で夜御飯を食べるか。

 

「弾、今日は湊の家で夜御飯食べるから、スーパーに寄ってから帰るよ」

「オッケー。俺は家に帰るとするか。湊によろしく言っておいてくれ。また明日な」

「おう。また明日」

 

 弾に手を振ってから別れ、スーパーに向かって歩く。駅の近くのスーパーは品揃えもそこそこあって安いから、食材を買うのはだいたいここだな。

 

 昨日湊はオムライスが食べたいって言っていたから、それでいいか。後は適当におかずを作るかな?少し時間が掛かるけど、グラタンでいっか。

 

 食材を買ってスーパーを出て、湊の家に向かう。湊も不安だろうから、鈴は元気に中国に向かったって教えてあげないとな。

 

 もう夕方だから料理の準備してなければいいけどな。もし準備していたら明日の分にするか。

 

 よし、湊の家の前に着いたけど、なんか仲が騒がしいけど、誰か来てるのか?

 

「……むー!?」

 

 いや、湊のくぐもったような声がした。大丈夫か湊!?

 

「えっ、どうしたんだ湊!? 鍵空いてる! 入るぞ!」

 

「い……いちかぁ……はぁ……」

「ッ! 大丈夫……か……へ?」

 

 部屋に入るとソファーの上で寝ている湊に覆い被さっている、青髪の女の子がいる。て言うか襲ってる……?

 

 

「湊が痴女に襲われている……!?」

「だれが痴女よ!? 私は湊ちゃんのお姉ちゃんよ!!」

 

 湊の姉は束さんだけだろ!一応箒もだけどさ!




鈴ちゃん初登場ですね。ツンデレ可愛いです。
ツンデレと言えばバカって台詞かなって思ってます。

今回も読んでいただきありがとうございます。


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その20

 

「い、いちかお帰りー」

「ただいま。それでこの自称姉は誰なんだ?」

「自称じゃなくて、ちゃんとお姉ちゃんよ! 篠ノ之博士にも認めて貰ったんだから!」

「マジで!? あの束さんに認められるとか、不可能だろ?」

 

「あはは、私が姉さんに聞いてあげてって言ったからかな? あんな事を言い出すとは思わなかったけどね」

「全部私の本心よ湊ちゃん。大好きよー!」

「わっ、もう仕方ないですねー。よしよし」

「…………湊の方が姉じゃないのか?」

 

 お姉ちゃんがまた抱きついてきた。一夏も居るんだよ-?あ、それより初対面なんだし、楯無さんのことを一夏に紹介してあげないとね。

 

「この人は私の新しいお姉ちゃんで更識楯無さんだよ」

「よろしくね一夏くん。湊ちゃんがいつもお世話になっているわ。ありがとうね!」

「早速姉面してるよこの人……まあよろしくお願いします。今日は湊に何か用があったんですか?」

「妹の寝顔を見に来たのと、おまけでちょっと用事があったのよ!」

 

 楯無さんにとって私の寝顔がメインで、戸籍はついでなんですねー。でも助かりましたよ。

 

「楯無さんが新しい戸籍を用意してくれたんだよ? 凄いよねー」

「何者だよ……えー更識さん?」

「楯無でいいわよ? それともたっちゃんかお姉ちゃんって呼ぶ?」

「なら楯無さんって呼ばせて貰います」

 

 お姉ちゃんは年上で見た目も大人びているし、たっちゃんは無いよねー?それに一夏は千冬さん一筋だからねー。お姉ちゃんとは呼ばなそうだね!シスコンなんだからまったくー。

 

「弟が増えると思ったのに残念。まあよろしくね。それで一夏君はどうしたのかしら?」

「鈴の見送りが終わったから湊に会いに来たんですよ」

「ありがとうね、鈴はどうだった? 怒ってたよね?」

 

 怒ってないかな?鈴って結構怒りっぽいからねぇ……絶対怒っていたよね。

 

「まあ最初だけな。風邪は早く治せだってさ」

「そっか。ごめんね鈴」

 

 心配させてごめん。嘘ついてごめん。次に会うまでに鈴とまた仲良くなれるようにちゃんと考えるから。

 

「それと伝言だ。日本に帰ってきたら湊に毎日酢豚を食べさせてあげるってさ」

「鈴の作る酢豚は好きだから楽しみだね! また会えるといいなー」

「そう捉えるのか……」

「んー? どう言う事?」

 

「鈍感な湊ちゃん可愛いわ!」

 

 鈍感じゃないですー!えっと他にどんな意味があるのかな?えーっと……もしかして?でも鈴がそんな風に言うかな?

 

「それなら、僕に毎朝みそ汁を作ってくださいみたいな意味……とか?」

「鈴は否定したけど、ツンデレだし、もしかしたらそう言う意味かもな」

「否定したなら違うでしょー。鈴の酢豚が好きって手紙に書いたからそう言ってくれたのかな?」

「まあ……どんまい鈴。それでまたなって言って見送ったら、またねって言ってから中国に帰っていったよ。元気が有り余ってる鈴ならすぐに帰ってくるんじゃないか?」

「私もまた会いたいし、すぐに帰っていてくれたらうれしいなー」

 

 中国で頑張ってね。私も頑張るから!男に一刻でも早く戻らないと本当に戻れなくなりそうだから!もうなんか、私って言うのに違和感無いし……完全に馴染んじゃってるし……!

 

「お姉ちゃんを忘れて無いかしら? えいっ!」

「ひゃあ!? もー……ごめんね。よしよし」

 

 一夏と鈴のことで話していて、仲間外れになっちゃっていたお姉ちゃんが、横から抱きついてきて胸に飛び込んできた。ちょうど良いところに頭もあるし、さっきみたいに撫でてあげる。

 水色な髪って珍しいよね。でも凄い綺麗。ひんやりしててサラサラだし、まるで流れる水を触っているような……それは言いすぎかー。でも癖になりそうかも!

 

「もっと撫でてー」

「やっぱりお姉ちゃんは甘えん坊ですねー。よしよし」

「どっちが姉なんだよ……? まあ束さんも同じような感じだったし、湊の姉って変わってるよな……」

 

 それは否定できないし、禁句だよ一夏……私の姉さん達と比べたら千冬さんはまとも……と言うか、格好いいし憧れちゃうなぁ。命まで助けて貰ったこともあるし、いつか恩返しがしたいって思ってる。

 

 私に出来る事なんて少ないし、取りあえずIS学園の千冬さんルームの掃除をしてあげようか?ISの適正があるかは分からないけど、そのためにIS学園を目指して勉強していくのも悪くないかも?

 ISも姉さんが作った物で愛着もあるから、勉強も苦にならないし、目指すのも悪くないのかもね。それにISで宇宙を目指してあげたいって気持ちもあるから、少しづつ勉強を進めていこ……いやいや、男に戻るのに女子高のIS学園は無いよね!…………まあ勉強は大事だよね、うん。

 

「さて、湊ちゃん。名前を変えて転校する件だけどね」

「あっはい。なんですか?」

 

 お姉ちゃんが私の胸に押し付けていた顔を離して、真面目モードに戻ってくれた。子供みたいなままだとすごい可愛いけど、真面目な話が続かなそうだから助かったよ。

 

「転校する日程は一週間後よ。それまでに書類とか必要な物はお姉ちゃんが用意しておくから、湊ちゃんは女の子として学校生活がおくれるようにお姉ちゃんと一緒に身振りとかを練習しましょうか? でも湊ちゃんってもう仕草とか完璧に女の子だし、可愛すぎでさすが私の妹だから問題ないと思うわよ!」

「いやいや、まだ女の子生活二日間ですよ? そんな簡単に身につく訳ないですよ! そうだよね一夏!」

 

 椅子に座ってこっちを眺めていた一夏に聞いてみる。仕草が女の子って、そんなこと無いよね!

 

「…………」

「なんで無言なの! 目を逸らさないでくれるかな!?」

 

 一夏に無言で横を向かれちゃったよ!

 えー……姉さん何したの?仕草も女の子になっちゃってるの?一夏もそう思ってるってことだよね……本当に戻れるのかな?

 ま、まあ取りあえずはこのままなんだから、簡単に女の子できるって前向きに思っていこう!私がんばるよ!

 

「さて、今日はひじょーに残念だけどお姉ちゃんは帰るわね。一週間分の仕事を片付けてくるわ! また明日来るから楽しみにしててね?」

「一週間分の仕事を一日で出来るんですか? 急がなくても私は待ってますし、大丈夫ですよ?」

「湊ちゃん優しい……でも大丈夫よ! 引き継げるところは別の人に任せるし、私じゃないと出来ないって物だけ片づければいいだけだから、すぐに終わらせるわ!」

 

「ありがとうございます。それなら、お姉ちゃんとまた明日会えるのを楽しみに待ってますね?」

「湊ちゃん大好きよー! それじゃあまた明日ね! 一夏君もまたねー。それと湊ちゃんに手を出したら許さないわよー!」

「出しませんよ!?」

 

 また変なこと言ってるよー。私と一夏は親友なんだから大丈夫だよ。

 

「また濃いキャラが増えたなぁ」

「お姉ちゃんって面白いよねー。それでスーパーの袋を持っていたけど夜御飯用なの?」

「ああ。今日は千冬姉は帰ってこないし、こっちで夜御飯を食べようかなって買ってきたんだ。オムライスとグラタンだけどいいよな?」

「いいの!? 一夏のオムライスもグラタンも大好きだから楽しみ!」

「じゃあ作るからゆっくりしていてくれよ」

 

 やった!おいしいオムライスとグラタンだよー!一夏が作るとすごく美味しいからうれしいなー。それに相談したいこともあったし、助かったよ。

 

「うん! あとちょっと相談したいことがあったからちょうどよかったよ」

「相談?」

 

「今日の夜ってあの日だから、一夏にどうしようか相談したくて」

「今日の夜? あー、箒と電話する日だ……難題だな」

「うん……どうしようか?」

 

 箒と電話するけど、私が湊だってちゃんと伝えられるかな?

 私との電話が唯一の楽しみって言っていたから、ちゃんと説明しないと、箒のメンタルが大変なことになっちゃうよね……精神面に弱いところがあるからねぇ、一夏と本気で考えないと大変なことになっちゃうかも!




口調だけじゃなくて、仕草も女の子してる湊ちゃんでした。男に戻れる日は来るのでしょうか?(戻すとは言ってない)

明日からは楯無さんと一週間の女の子レッスンが始まります。すでに女の子してる湊ちゃんには必要ないかもですけど。

次回は一夏のオムライスとグラタンですね。
後は、原作メインヒロインの箒ちゃんが登場するかもです。
きっとメインヒロインらしい可愛さを持ち合わせてるんでしょうね!

それと今回で20話でしたね!まだ二日目の夕方ですみません!ここからはスピードアップしていくと思います!でも20話掛けて二日目って長過ぎですよね。ここまで読んでいただきありがとうございました!


あと、UA50000ありがとうございます!
それと評価、お気に入り、感想もありがとうございます!
もちろん読んでいただいているだけでも十分うれしいです!

これからも完結を目指して更新を続けていくので、次回も読んでくれたらうれしいです!ありがとうございました!


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その21

 

「オムライスとグラタンができたぞー」

「ありがとう! おいしそうだね!」

 

 一夏がテーブルにオムライスとグラタンを持ってきてくれた。どちらもすごい美味しそうだから食べるのが楽しみだよ!一夏のオムライスもグラタンも好きだから早く食べたいなー。まだかなー?

 

 一夏の分も持ってきたから二人でいただきますをして食べ始める。一口食べると……美味しい!

 

「一夏すごいおいしいよ!」

「そう? ならよかった」

 

 オムライスは掛かっている卵がやわらかくふわふわしていて、口に入れたらとろけた。それが、トマトソースで味付けされたライスに良く合う。シンプルな筈なのにどうしてこんなに美味しくなるんだろう?

 

 グラタンも具材がタマネギ、ブロッコリー、鶏もも肉、マカロニとシンプルで一夏特製のホワイトソースが美味しさを際立てている。私が作る時より、なんかコクがあるんだよねぇ。ホワイトソースの隠し味に何を入れてるんだろう?一夏に聞いてみても秘密って言われちゃうし、教えてくれてもいいよね!

 

 昨日お昼ご飯を残しちゃったことを一夏が覚えてくれていたみたいで量を減らしてくれてるし、これだけ美味しいんだから全部食べられそうかな。やっぱり一夏の作る手料理は最高だね。

 

「ごちそうさま!」

「俺もごちそうさまだ。片づけてくるよ」

「あ、私がやるよー。一夏はゆっくりしていてね」

「そうか? なら箒との電話をどうするか考えておくよ」

「よろしくー」

 

 食器を洗いながら箒について考えようかなー。箒って、学校生活のことを全然話してくれないんだよね。多分誰とも話してないし、馴染めていないんだろうから話題が無いんだろうね……。そんな中で、私と話さなくなったとしたら、どうなっちゃうんだろう?

 精神的にも弱い方だから、悪い方向に行かないように、ちゃんと私が湊だって信じてもらって、これからも電話できるようにしてあげないと!

 箒は姉だって言ってるけど、結構子供っぽいところもあるし、いつも心配で、フォローしてあげてる私の方が姉……兄っぽいよね!

 

 食器洗い終わり!食後用にオレンジジュースを入れて持っていこう。果汁100パーセントのオレンジジュースって苦手なんだよね。オレンジその物みたいな味がダメなんだろうねぇ。

 私の好きなのは、この果汁がまったく入ってなさそうな、人工甘味料の身体に悪そうなこの甘さが好きなんだよねー。

 身体に悪そうな食べ物って美味しいよね!あんまし食べてると一夏に怒られるけどね!

 

「いちかーお待たせー。オレンジジュースも持ってきたよ」

「湊ってこれ好きだよなー。ありがとな」

 

 一夏の分のオレンジジュースもテーブルに置いて、向かい合わせに座る。

 

「じゃあ早速だけど、箒と電話する前の作戦会議を始めよっか?」

「おう。まず先に俺が説明してから湊にバトンタッチした方がいいと思うんだけど、どうだ?」

 

「そっちの方がよさそうかな? 姉さんの仕業って言えば箒なら何とかなりそうだよね」

「束さんならやりかねないって思うだろうからなぁ。冗談だと思われないように真剣に話すよ。箒と電話で話すのは久しぶりだし、楽しみだ」

 

 箒って一夏の事が気になるみたいで、私と電話する度に一夏の話をねだってくるからね。一夏と直接電話して、緊張しなければいいけど。

 

「箒も喜ぶと思うよ? 緊張してしゃべれなくなるかもだけどね」

「誰かと話すのも久しぶりかも知れないからな……箒大丈夫か?」

 

 挨拶くらいなら誰かとしてるかも知れないから、大丈夫だよ!でも年々しゃべりが下手になってきてる気がするし、結構本気で心配なんだよね……箒のお友達を増やす作戦会議もいずれやらないと!

 

「さて、そろそろ時間だから電話してくれる?」

「よし、任せてくれ!」

「はーい。じゃあ……はい、掛けたよ!」

 

 箒に電話をして、スピーカーに変えてから一夏に渡す。箒が一夏と話したらどんな風になるか気になるからね!結構楽しみ!

 

「も、もしもし湊だな! 二時間も前から電話を持って待ってたんだぞ! お、遅いぞ湊!」

 

 うわぁ……いつもの事だけどさ、重たいよ箒……毎回決まった時間に掛けてるのに、なんで毎回数時間前から待ってるの……。

 

「ひ、久しぶりだな箒! 俺だよ織斑一夏だ」

「すみません間違えました」

「ちょっ箒!? 切られたんだが……」

「まあ、箒だからねぇ。引かないであげてね。もう一回言ってみよーう! はい掛けたよー」

 

 切られた電話を受け取ってもう一度掛け直す。箒との専用の電話は、姉さん特製の生体認証をパスしないと電話を掛けられないから、私が認証してからじゃないと掛けれな……性別変わっても、普通に認証できたけど、どんな技術なの……?何を認証してるんだろう?まあ、姉さんしか理解できない何かなんだろうね!

 

「も、もしもし湊だよな? さっき間違い電話が掛かってきたんだが、久しぶりに湊以外と喋ったんだ! 褒めてくれ!」

 

 箒……えらいね、がんばったよ……今度誰かと話す練習もしようね。

 

「が、頑張ったな! 俺は幼なじみの織斑一夏だけどさ」

「ひゃい!? いちかだと!?」

「おう。久しぶり」

「なななな、なんで一夏が電話してくるんだ!?」

 

 ふふっ、箒慌ててるね。でも話せてるよ!その調子でがんばって!

 

「湊に色々あったからなぁ。俺が説明してから湊に代わろうかなって思ったんだ」

「怪我でもしたのか!? 湊は無事か!」

「怪我とか病気じゃないから安心してくれ。ただ、そうだなぁ……結論から言うと、湊は女の子になったんだ!」

「……む、もしかして今日は巷で噂のエイプリルフールと呼ばれる日なのか? つまり、一夏じゃなくて湊なのだな! 驚かせないでくれ」

 

 違うよ!もう夏だしエイプリルフールは終わっちゃってるよ!それにちゃんと一夏と話してるからね!

 

「俺は一夏で、湊が女の子になったのはマジなんだ」

「バカ者。湊は私の弟なんだぞ。それが妹に変わるとか……悪くはないな……でもあり得ないだろ!」

 

 悪くないんだ……でも考えてみてよ!箒が突然男になったら嫌だよね!戻りたくなるでしょ?みんな他人事だから悪くないとか言えるんだよ-。だから早く男に戻してね姉さん!

 

「……束さん」

「なんだと……!?」

 

「全て束さんって奴の仕業なんだ」

「何やってるんだ姉さん……」

 

 納得しちゃった!だよねー……姉さんの事を知ってたらそうなるよねー。正直姉さんの仕業って言えば納得しそうだって思ってたよ……。

 

「それなら本物なんだな! い、いちか! ひさしぶりだな!」

「だな! でも湊から頻繁に箒の話をされるから、そんなに久しぶりって感じでも無いなぁ」

「なんで私の事を聞いているんだバカ者! へ、変な話は聞いてないよな?」

「まあな? でも友達を作れるように俺も協力するぞ! 一緒に頑張ろうな!」

「わ、私にも友達くらい居る!」

 

「えっ嘘!?」

 あっ、口に出しちゃったら、一夏がこっちを見て頷いてるし……。でも友達が居て私以外と久々に喋るってなんだろう?チャットだけの友達とか?

 

「み、湊と一夏だ!」

「俺はともかく湊は弟だろ? また今度友達作りの練習しような? そろそろ湊に代わるぞ」

「他にも居るかも知れないぞ! クラスメートの…………あれっ? 誰も名前が出てこないんだが……」

 

 クラスメートの名前が誰も出てこないのは重症過ぎだよ!私の性別が変わったことより、箒の方がもう心配だよ!!

 一夏と代わって箒と電話する。

 

「もしもしー湊だよ! クラスメートと話せられるように一緒にがんばろうよ!」

 

「……すみません間違えました」

「なにが!?」




原作メインヒロインの箒ちゃんが登場しましたね。
湊以外とはほぼ喋っていないですが、これでも原作よりはマシなのかもですね?ボッチなのは変わらずですけど……

やっぱりメインヒロインの箒ちゃんが一番可愛いですね(棒読み)

次回は湊と箒のしゃべり回になると思います。

読んでいただきありがとうございました!


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その22

※誤字訂正ありがとうございます!


 

「私だよ? 湊だよー?」

「私の弟がそんなかわいい声な訳が無い!」

 

「箒の妹になっちゃったけど、私は湊だよ?」

「湊は私なんて言わなかった!」

「一夏と練習したの! 女の子っぽいかな?」

「女の子そのものだろ! えっ、本当に湊なのか?」

 

 双子なのに分かってくれないのー?まあ、仕方ないよね!それなら前回話した事を言っていってみようか。

 

「ならさ、この前ちょっとだけ話したけど、私と一夏が水族館に行ったときの話の続きを話そうか?」

「話してみてくれ」

 

 前回電話した時に話したのは、鈴が水族館でしか売ってないぬいぐるみが欲しいって言っていたのを聞いたから、鈴には内緒で一夏と一緒に買いに行った時の話なんだけど、

 一夏は鈴と行った方がいいんじゃないかって言っていたけど……サプライズで渡したいって思ったから、一夏と一緒に買いに行って欲しいって言ったら、仕方ないなって付いてきてくれたんだよね。

 

 箒は『鈴って子は湊と水族館でデートしたかったんじゃないか?』なんて乙女な事を言ってたけど、ぬいぐるみが欲しかっただけだよねぇ。少女漫画の読み過ぎだよ箒!

 

 それで箒に話したのは、電車で水族館で行ったところまでだったからその続きかな。夜はすぐに眠くなっちゃうから夜11時には絶対に寝てるんだよね。この前電話した時も眠くてまた今度ねって言っちゃったんだったね。

 

「この前は電車に乗ったところまでだったからその後からだね。水族館に入るとね、すごい大きな水槽があってたくさんの魚が泳いでいたんだよ! イワシの群れが集まって泳いでいたけど、まとまって泳ぐから一匹の大きな魚みたいに見えたの! すごくない?」

「テレビで群れで泳いでいるイワシは観たことがあるが、目の前で見たらすごいかもな?」

 

 銀色の群れが泳ぐから反射でキラキラしててすごい綺麗だったからしばらくの間、一夏と一緒にぽけーっと眺めちゃった。

 

「その後にクラゲがふよふよしてる水槽があってね、かわいくて癒やされたんだよー……水の中でゆらゆらしてて気持ちよさそうで、もし生まれ変わったらクラゲになりたいよね!」

「同意を求められても困る……クラゲでは剣は握れないからな」

 

「本当に剣術が好きだよね。私は剣を扱うのは苦手だから、篠ノ之の剣を継ぐのは箒に任せたよ?」

「任せてくれ」

 

 箒の剣って綺麗なんだよね。根が真っ直ぐで、芯が通っているから、太刀筋が綺麗になるんだろうね。私は剣術は全然ダメで、姉さんは天才だし、やろうと思えば簡単に極められるんだろうけど、興味が全く無さそうだからねぇ。

 剣は箒に任せよう!一夏も篠ノ之流の剣術を極めようと頑張ってくれてるし、私は応援しててるからね!

 

「クラゲコーナーをどれくらい見たのかな? クラゲの水槽が沢山あったから、二十分くらい見たかもね。だよねーいちかー?」

「だな。ブルージェリーってクラゲが可愛かったよな」

「かわいかった! ミズクラゲが私は好きになっちゃった! また観に行ってくれる?」

「あ、ああ。今度行こうな?」

 

 楽しみだね!次に水族館に行ったら、イルカショーが見たいな-!この前は時間が合わなくて、見れなかったけど、絶対イルカもかわいいよね!

 

「おい。二人でイチャつくのは止めてくれ」

 

「いちゃ!? イチャついてなんかいないよ! もう! 一夏と私は親友なんだから、イチャついたりなんかしないよ? あっそれでね、クラゲの次は、深海エリアを見て、平ったくておちょぼ口の赤い魚がかわいかったなぁ。その後は太平洋エリアでカクレクマノミが居たんだよ、箒も知ってるでしょ? すごいかわいいよね!」

「テレビで見たが確かに可愛いな」

「だよね! イソギンチャクに隠れて、少しだけ顔を出していたんだけど、それがすごいかわいかったの!」

 

 カクレクマノミって家で飼えないかな?でも海水の魚って飼育するのが大変って聞いたことがあるからね、また一夏と見に行けばいいかな?

 

「その後はなんとね! カワウソ、ペンギン、アザラシ、カピバラってかわいい動物達が居たんだよ! みんなかわいかったから、後で写真を送るね!」

「気になるな。後で見せてくれ」

「うん。それでイルカショーは時間が合わなくて見れなかったから、もう一度館内を見て回って、ペンギンのぬいぐるみを買って帰ってきたんだー」

「そうか。ちょっといいか?」

「あ、うん。何か質問かな?」

 

「なんか……湊と一夏がデートした話にしか聞こえないんだが……まさか付き合ってるのか?」

「なんでよ! 付き合ってないよ!」

 

「まあいい。その天然は湊だと何となく伝わったが、何をどうしたら女になるんだ?」

「何したんだろう……姉さんじゃないと分からないよね?」

 

 

「みーちゃん呼んだ? 束さんのことを呼んだよね!」

「えっ? 姉さん? ーーーー電話切れちゃた! 箒が切ったよね……」

 

 

 突然姉さんが会話に交ざってきたから、びっくりして切ったのかな?あっ姉さんから電話掛かってきた。

 

「みなとぢゃあああん! ほうきちゃんに電話切られちゃったああああ!」

「まあ、いきなり姉さんが喋ったから箒もびっくりしたんじゃない?」

「びえええええええん! きらわれちゃったよおおお!」

「大丈夫だから、泣かないで姉さん。いつか仲直りできるよ!」

「うん……ありがとね……」

 

 まあ、箒も姉さんが悪いわけじゃないって分かってはいるんだろうけどね。一家離散の原因になっちゃったから、複雑なんだろうね。いつか仲直りできるように、たまーに姉さんの話をしてるんだけど、機嫌が悪くなっちゃうし、まだダメそうだよねぇ。気長にがんばろうかな!

 

「じゃあ、箒との電話に戻るけど、ちゃんとフォローしておくからね! 私は姉さんのこと大好きだからね! おやすみ!」

「うぅ……みーちゃん! 私も大好きだよ! おやすみ!」

 

 姉さんも元気が出てくれたみたいでよかったよ……さて、次は箒だね。

 

「湊も板挟みになっていて大変だな……」

「まあ、どっちも悪いわけじゃないからねぇ。一夏も二人の仲良し計画に協力してくれる?」

「ああ! 出来ることがあったら言ってくれ」

「ありがとうね! 取りあえず箒に電話するね…………あ、もしもしー」

 

「電波が悪かったのか、幻聴が聞こえたんだ。すまない」

「ちゃんと肉声だったけどね! 姉さんも箒と話したかっただけだよ?」

「いきなり来たら、反射的に切ってしまうんだ。まあ姉さんの事はいい」

 

 あ、うん。姉さんの事はいいんだ……姉さんどんまい!ごめんねフォローできなかったよ……!

 

「取りあえず性別も話し方も変わったが、湊は湊だと思ったからな。これからもよろしく頼む」

「う……うん! よろしくね箒!」

 

 

「そろそろ電話は切るが、最後に一つ聞いていいか?」

「うん! なんでも聞いて!」

「一夏と本当に付き合ってないのか?」

「付き合ってないからね! 箒のバカ! またね!」

 

 どうしてそうなるの!水族館に行ったときは男同士だよ!男女で行っていたらデートかも知れないけど、仮に次に一夏と行っても親友同士なんだから、デートじゃないからね!だから、クラゲを見に行こうね一夏!




水族館デートは男同士で行ったんですよ!
でも私の脳内では湊(女の子)と一夏のデートとして、再生されてましたけど!
江○島の水族館が舞台でした。クラゲがかわいいですよ!

今回で二日目は終了です!二日目は五話で終わりましたね。

活動報告にも書いたのですが、明日の12日から15日まで、仙台に行きます。忙しいかもなので、その間に更新ができないかもしれません。
その後は必ず更新しますので、すみません!

読んでいただきありがとうございました!


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その23

※お待たせしてしまい申し訳ありません。
※誤字訂正ありがとうございました!


 

 これから更識湊として、クラスに入ることになるけど馴染めるかな……?お姉ちゃんと仕草だったり口調の練習をしてきたけど、やっぱり心配だよね。

 まあ、普段通りに話せばだいじょうぶだって、お姉ちゃんからのお墨付きも貰ったし、やってみるしかないよね!

 でも普段通りが女の子してるって事だよね……今は気にしたらダメだよ私!

 

「更識さん。入ってください」

「はい。失礼します」

 

 先生が開けてくれた扉をくぐると、クラス中の視線が私に来てるのが分かる。みんな見るよね……私も転校生が来たら絶対凝視すると思う。でも緊張だよー。

 

 あっという間に教壇まで来ちゃった。クラスを見渡すと皆が私を見ている。一夏と弾が手を振ってくれてる……ありがとう、何か安心してきたかも!がんばるよー!

 

「初めまして。更識湊って言います。仲良くしてくれたらうれしいです。よろしくお願いします」

 

 自己紹介をしてお辞儀をしたら、皆がキャーとかキターとか叫んでるし……頭を上げると、皆が思い思いに声を掛けてくれる。

 

「よろしくねー更識さんー!」

「小さくてかわいいー! よろしくー」

「よろしく! 美少女キター!」

「湊ちゃーん! よろしくな!」

「馴れ馴れしいだろ山田! よろしくお願いします更識さん!」

 

「あはは、よろしくお願いします」

 

 歓迎してくれてるみたいでうれしいな。男じゃ無くなっちゃったけど、またここに通えるようになったから、これからもよろしくね!

 

「湊ーよろしくな!」

「制服似合ってるぞ!」

 

「一夏よろしくね。弾はうるさいよ!」

 

 つい突っ込んじゃった……だって制服似合ってるって、絶対からかってるよね!女子が着ていた見慣れた制服だったけど、自分で着るのは変な感じだし……紺色の制服で、胸元の赤いリボンがかわいいとは思うけど、自分で着るのはねぇ。

 

「一夏君と五反田君の知り合いなの!?」

「またかよ一夏! 俺の夢見た学園生活は終わった……」

「一夏くんとはどんな関係!?」

「一夏! なんで美少女ばかりと仲良くなるんだよ!」

 

「おいお前ら! 俺も湊と知り合いだぞ! なんで一夏しか名前が出てこないんだよ!」

「五反田君は五反田君だからねぇ。それよりも更識さん! 一夏くんとはどんな関係なのかな?」

 

 弾はそういうキャラなんだよドンマイ!私と一夏の関係は……考えて無かった!?一週間あったのに忘れてたよ!?た、助けて一夏!

 

「あー、湊とは幼なじみなんだ。引っ越す前はよく遊んでいたんだ」

「うん。一夏とは幼なじみだよね!」

 

 いちかーありがとうー……フォローしてくれて助かったよー!一夏みたいな幼なじみがいてくれて本当に感謝だよー!

 

 

「そういえば更識さんって、転校した湊と名前が一緒で、一夏とも知り合いなのか……」

「確かに……湊くんが突然引っ越したら、湊ちゃんが転校してきたって……」

 

 や、やばい……偶然ではあり得ないし、おかしいって思うよね。

 でも、名前は変えたく無かったんだもん。そこまで変えちゃったら、別の人になっちゃいそうな気がしちゃって……とりあえず予定通り、無関係ですって押し切ろう!

 

「えっと、湊くんって人が居たんですねー……ぐ、偶然ですねー……」

 

 ごめん!いちかーフォローしてください!一夏にアイコンタクトで、助けてとお願いしたけど伝わって-!

 だって、結局変な理由付けするよりは、無関係を装った方がマシだって思ったの!入れ替わりで転校してきて、名前が一緒っておかしいよね?言い訳も全然思いつかないし、偶然ってした方がまだマシだよね!

 

「この湊と転校した湊の名前が一緒なのは偶然だと思うぞ? 湊はフランスの田舎に居るって連絡が来たからな。湊って幼なじみが二人もいたんだし、偶然ってすごいよな!」

 

 うん!偶然ってすごいよね!フランスの田舎は姉さんが今居る場所だよね。転校先はきっとフランスだったんだよ!

 

 こ、これでどうかな?

 

「そうなのかなー? まあいっか、更識さんよろしくね!」

「湊君と鈴ちゃんが居なくなって、クラスが少し静かになっちゃったし、一緒に盛り上げようね更識さん!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 よかったー、なんとなく納得してくれたよー……。これから楽しく学校に通えたらうれしいなー。そのためにもボロは出さないようにがんばろう!

 女の子らしくしないとね、女の子らしく!

 

「はい。それでは更識さんは織斑さんの横に座ってください」

「はい! よろしくね一夏」

 

 男の時に座っていた席がそのまま空いていたから、一夏の隣に座れてよかったよ。その反対にはおまけで弾も居るけどね!

 弾もありがとうね。弾にありがとうって口を動かしたら、そっぽを向かれちゃった……伝わらなかったみたい?弾も一夏みたいに鈍感なのー?鈍感が二人もいたら私が困るんだからダメだよー。

 

「更識さんは急な転校で不安もあると思います。困ってる時には皆さんで助けてあげてください。もちろん先生も手伝いますので、何かあったら相談してくださいね。それでは朝礼は終わりにして、授業を始めたいと思います」

 

 授業は何事もなく進んでいって、無事に終わった。1週間は学校を休んでいたけど、一夏にノートを見せて貰っていたから分からないところは無かったからよかった。

 

「起立。礼。ありがとうございましたー」

 

 授業が終わったら、次は転校生の宿命のあれが始まるよね……鈴の時は眺める側だったからよかったけど、今は……たくさん来た!?

 

「更識さんのこと湊ちゃんって呼んでいい-?」

「更識さんの趣味ってなにかな?」

「部活とか興味ある?」

「髪の毛ツヤツヤのサラサラだよね! シャンプーとか何を使ってるの?」

 

 一斉に喋ってきたから何を言ってるのかが、これしか分からなかったよー!十人くらいに同時に話し掛けられたら、姉さんならともかく私は分からないからね!

 

「湊が困ってるだろ! 一人づつ質問してあげてくれ」

「一夏彼氏気取りかよ!」

 

「彼氏!? いやいや、湊の彼氏じゃないからな!」

「そ、そうだよー! 一夏はかっこよくて、優しいけど幼なじみだからね! 彼氏じゃないよ!」

「お、おう! 俺たちは幼なじみだからな!」

 

「……お前らなにイチャついてるんだよ!」

 

「イチャついてなんかいないよ! 変なこと言わないでよ弾!」

 

 何を言ってるの弾!私が湊だったって知ってるなら、一夏とイチャつかないって分かるでしょー。むしろ私のフォローをしてくれてもいいのにねー。弾のアホー。

 

 もう自分で証明するんだから!

 

「一夏は私と付き合わないよね……?」

「えっと…………あ、ああ」

 

 ほらね、間はあったけど付き合わないって言ったよ!

 

「一夏くんなにその間は!? 好きなの!? 好き同士なの!?」

「湊ちゃん好きなら好きって言わないとダメだよ! 私も当たって砕けてるんだから! でも湊ちゃんはいけるかもよ!」

「ほら、湊ちゃんは一夏君のことを好きなんでしょ?」

 

「え!? えーっと? 幼なじみとして一夏の事は好き……です」

「…………おう」

 

 な、なんで告白みたいなことをしてるのー!?一気に顔が熱くなってきた……一夏も顔を赤くして黙っているのはなんでなの!?フォローしてよー!?

 

「えっ待って一夏くん。ガチな反応じゃん!?」

「あの一夏君が付き合うの!? 付き合っちゃうの!?」

「一夏が付き合うだと!? 俺たちにも春がやってくるってことか!? 祝福するぜ一夏!」

「おめでとう一夏!」

 

「お、お前ら違うからな! 湊とは一緒に居たいって思うけど、付き合うとかそういう気持ちじゃないからな!」

「う、うん! 私も一緒に居て欲しいって思うけど、違うからね!」

 

「一夏……湊……お前ら墓穴掘りすぎだからな! とにかく二人は付き合ってないって言ってるんだから、後は見守ってやろうぜ!」

 

「そうね……二人ともお幸せにね!」

「一夏君……でも一夏君が幸せなら仕方ないよね」

「これで俺にも春が来るぜー! でも更識さん美少女だし羨ましすぎだろ」

 

「あ、ありがとう……? なんか思っていた反応と違うんだけど?」

 

 ちゃんと付き合ってないって証明できたんだよね?たぶんできたよね……?あっチャイムが鳴った!みんな解散してね!

 

「はい! 授業が始まっちゃうよ! みんな席に戻ってね!」

「よし、座ろうぜ! ってうぉ!?」

「ひゃあ!? あたた……」

「湊悪い……! だいじょうぶ……か?」

 

 一夏が突然私に向かって転んできて、床にぶつかりそうになった所で抱きとめられたから、痛くはなかったけど?

 

 なんか胸に圧迫感が……?というか触られてる……?えっ?

 

 痛くはなかったけどびっくりして瞑っちゃった目を開けると、私を上に乗っけて、私が転ぶのを止めようと両手を突き出したのか、私の胸を鷲掴みしてる一夏が目の前にいた……ま、またなの!?顔が一気に熱くなって、恥ずかしくなってきた……!

 

「いちかのバカー!」

 

 転校初日なのに、変なことしないでよ!

 これからの学校生活はだいじょぶなのかな……?ひゃ、手を動かさないで!?ヘンタイいちかー!




お待たせしてしまいすみません!仙台に行っていたのですが、拘束時間が思ったよりも長くて、時間が取れませんでした。

明日からは2、3日毎の投稿に戻れるのですみません。
次回も読んでくれたらうれしいです。

今回は前回から1週間後で湊ちゃんとして転校しましたね!
1週間経過して、『だもん』とか使うようになってますね。
初日から湊ちゃんも一夏もやらかしていますけど、大丈夫なんですかね?

読んでいただきありがとうございました!


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その24

※毎回誤字訂正ありがとうございます!


 

 いきなり一夏のラッキースケベに巻き込まれちゃった波乱の学校生活初日だけど、なんとかそろそろ昼休みだよー……

 休み時間は、質問されたり、一夏とお幸せにみたいな意味不明なことを言われ続けたけど、さっき一夏と否定したよね!?

 みんなノリが良いからねぇ。でも一夏はともかく私は巻き込まないでほしいけどね!

 

 それより、一夏のラッキースケベって前からよくあったけどさ、私が女の子になってから、もう十回くらいはラッキースケベの被害に遭ってるんだけど……!

 パジャマから普段着に着替えてたら突然部屋に入ってきて下着姿を見られたり、

 ソファーで二人で座ってテレビを観ていたら、寝落ちした一夏が私のお腹を枕にしてきたり、

 カーペットで四つんばいになってごみを探しながらコロコロしてたら、何かに躓いて転んだ一夏が私のお尻に顔を突っ込んできたり……

 

 ねえ一夏?そんなにラッキースケベを私にやらないでよ!毎回くすぐったいし、恥ずかしいんだからね!

 

 でも……今までってこんなにラッキースケベしてたっけ?一日一回は胸かお尻を鷲掴みにされてるし……もしかして一夏はエッチなの?

 まあ、鈍感一夏だし、そんなわけないよね-?

 

 もしかして……姉さんのイタズラ?

 

 一夏が胸に顔を突っ込んできたのも、私のスカートに一夏の携帯のアクセサリーが引っかかって、パンツを見られたりしたのも、全部姉さんの仕業ってやつなの!?

 

 変なイタズラは止めてよね姉さん!まあ、冗談だけどね!冗談だよね……?

 

「それでは授業を終わります。日直さんお願いします」

「起立、礼、ありがとうございましたー」

 

 よし、やっと昼休みだね!お昼は一夏達と食べようかなー?

 

「いちかーお昼食べよう?」

「そうだな。弾も食べようぜー」

「二人で食べてもいいぞ。お前らカップルの邪魔するのも悪いからなー」

 

「カップルちがうし!」

 

 ニヤニヤしながら馬鹿な事言ってる弾の机に、私と一夏の机をくっつける。後は数馬も……別のグループに混ざっちゃったかぁ。女子が苦手っていつも言っていたからねー。今日は諦めるけどいずれ私には慣れて貰わないとね!

 

「それにしても結構クラスに馴染めたな。安心したよ」

「一夏と弾のおかげだよ。ありがとうね!」

「女子と会話できるだけでうれしいからな!」

 

「弾のばーか。ほらお弁当食べるよ? いただきまーす」

 

 ヘンなことを言う弾なんて知りません。

 お弁当を広げて、手を合わせていただきますをして、ホウレンソウのソテーを食べ始める。ホウレンソウとベーコンをバターで炒めて塩コショウで味付けしただけでもおいしいんだよねー。

 

「学校生活初日はどうだ?」

「一夏のラッキースケベが無ければ完璧だったよね! ねーいちかー」

 

 ちらりと一夏を見ると、顔を赤くしてるし……そんなに怒らなくてもいいじゃんー!こっちは毎日ラッキースケベされてたんだから怒るのは私だと思うよー。別に気にしてないけどねー。

 

「す、すまん。怪我が無くてよかったけど、気をつけるから!」

「気をつけてね。毎回くすぐったいし、恥ずかしいんだからー……」

 

「へっ? 何度も湊にラキスケしてるのか一夏……湊は他には何されたんだ?」

「えっとね。昨日は私がカーペットのコロコロしてたらお尻……むぐっ」

「湊ストップだ! 悪かったから!」

「わひゃったからやめへー」

 

 言おうとしたら、いきなり一夏が手で口を塞いできた。分かったから離してーってもごもごしながら言ったら、伝わったみたいで離してくれた。でも他のクラスメートに見られていたみたいで、なんか皆こっちを見て話してるんだけど……?

 

「一夏くん大胆……またイチャイチャしてる」

「束縛系彼氏……いいかも!」

「更識さんうらやましいなー」

 

 何がうらやましいの!?イチャイチャもしてないよね?一夏はモテモテだから目立っちゃうのかな?

 

「いいなー。鈴ちゃんと駆け落ちした湊くんみたいに私もそんな恋愛してみたいよー!」

 

「はいい!?」

 隣で集まって座っている飛鳥さんから、意味不明な言葉が飛び出してきたから思わず反応しちゃった……鈴と私が駆け落ち!? なんで!?

 

「あっ、湊ちゃんじゃなくて転校した湊くんの方ね。同じ時期に引っ越した鈴ちゃんと仲がよかったから、一緒に駆け落ちしたんじゃないかって噂になってたの」

「えぇー……」

 

 鈴と駆け落ち……そもそも私たちって中学生だし、駆け落ちとか無いよね……?まあ、冗談かー。でもそんな噂があるなら一夏が教えてくれてもよかったよねぇ。休みの私に、毎日学校であったことを教えてくれていたのにー。教えづらかったのかな?

 

「そんな噂があったんだねー」

「お似合いの二人だったからね! 湊ちゃんと一夏くんもお似合いのカップルだからお幸せにね!」

 

「カップルちがうもん!」

 

 カップルって見られてるのって、一夏のラッキースケベが原因だよね!違うって言っても認めてくれないのはなんでー!

 だから、微笑ましいものを見るような優しい感じで見るのはやめてー!

 

「ご、ご飯食べるからまたね! ほら、一夏早く食べるよ!」

「お、おう。それにしても湊の弁当小さいな」

「少ししか食べられなくなっちゃったからねー。これでも多いかも? 何か食べたいのはある?」

「い、いや大丈夫だ!」

「そうー? 食べたくなったら言ってね!」

 

 ハンバーグを食べてみると、これも美味しくできたね。夜は早く寝ちゃうから、その分早起きは得意なんだよね!

 ハンバーグも朝起きてからタネの用意を始めて、一時間寝かせてから焼いたんだよねー。

 ハンバーグは一度寝かせるのが美味しく焼くコツだよねー。ボウルの底を氷水に浸けながら捏ねても、お肉の温度が体温でどうしても上がっちゃうから、形が崩れやすくなっちゃうんだよね。三十分か一時間くらい冷蔵庫で寝かしておくと、きれいな形でジューシーなハンバーグができるのですよ!皆さんもぜひ試してくださいねー!

 ……料理番組見すぎて、真似するのが癖になっちゃったよ。楽しいから仕方ないよね!

 

「ごちそうさま。おいしく作れてよかったよー」

「ごちそうさま。俺も上手く作れてよかった」

「一夏も湊も料理得意だよなー。定食屋の息子の俺より上手って極めすぎだろ」

 

「私も一夏も自炊してるからねー。経験の差ってやつだよ!」

「だよなぁ。そうだ湊。今日が転校してくる日って話をしたら蘭が『お姉さまの制服姿を絶対見たいです!』って言ってたぞ」

「私も蘭ちゃんに久しぶりに会いたいからね。放課後にでも見せに行こうかな?」

 

 蘭ちゃんとは五日前にあったけど、それから五反田食堂に行かなかったからねぇ。今日の夜御飯はそっちで食べようか。

 

「一夏も夜御飯は五反田食堂に行く?」

「そうするか。業火野菜炒めが食いたくなってきたしな」

「私も野菜炒めにしようかなー? 少なめにするけど、食べられなかったら一夏食べてね」

 

 ご飯を食べたら、またご飯の話をしちゃったけど、業火野菜炒めは本当においしいから仕方ないよね!

 

「ねえ湊ちゃん?」

「んー飛鳥さんなに-?」

 

 また飛鳥さんが話し掛けてきたけど、なんか真剣な顔をしてるのはなんで?

 

「イチャイチャしてるとこにごめんねー」

「してないけどねっ!」

 

「一夏くんを射止めたコツってなんなのかな? ぜひ私に教えてください!」

「射止めてないよ!」

 

「隠さなくても大丈夫だよ! あんなに顔を赤くしてる一夏君なんて見たことが無かったんだからー! はっ!? もしかしてコツって色仕掛けとか!?」

「仕掛けません!」

 

 あはは……まあ、クラスの女子ともなんだか仲良くやっていけそうでよかったよー。

 

 でも本当に一夏とは付き合って無いんだからね!




授業中に一夏のことを考えていた湊ちゃんでした。

鈴ちゃんと駆け落ちしたと噂が流れてました。

読んでいただきありがとうございます!


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その25

 

「湊ちゃんと一夏君またねー」

「二人ともまた明日ね!」

 

「またねー……なんで私と一夏がワンセットになってるのかな?」

「……俺に聞かないでくれ」

 

 あっという間に放課後!クラスのみんなに挨拶されるけど、みんな一夏と私をひとまとめにするのはなんでなの-?

 一夏に聞いても目を逸らされるし……やっぱり一夏の所為なんだね!気をつけてほしいね。

 

「まあ帰ろっか? 弾はどうする?」

「俺はまっすぐ家に帰るけど、お前らは?」

「一夏は出かけたい所はある? どこか行くならついていくよ?」

「特に無いな。取りあえず弾の家に行こうぜ」

 

 三人で帰るのは久しぶりかな?学校に来たのも久しぶりだからねぇ。

 

 お姉ちゃん(楯無さん)は今日の朝に帰って行ったけど、お仕事が溜まってるみたいだし、一週間分の仕事があると思うけど大丈夫かな?

 お仕事がんばってくださいねって後で電話してあげよう!

 

 お姉ちゃんは一週間一緒に居てくれて、その間に女の子として暮らしていくために身振りとか口調の練習をしてくれる予定で、初日にちょっと教えてくれたんだけど、そこからはお姉ちゃんが甘えてきたり、相談に乗ってあげたりしていたら、あんまり練習はしてなかったんだよねぇ。

 

 お姉ちゃんは実妹の簪さんと仲が悪いのは、前から知っていたけど今は目も合わせてくれないって泣きついてきたんだけど……姉っていうのは妹と仲が悪くなっちゃうものなのかなー?

 家も箒と姉さんの仲が悪いし、何だろう……二人とも妹を溺愛しすぎだからダメなのかな?

 

 でもねぇ。姉さんに押してダメなら引いてみよう作戦をして貰った事があるんだけど、普通に会話を全然しなくなっちゃったんだよね……仲良くなるのって難しいですよねってお姉ちゃんと話してたんだよね。

 その後は抱きついてきたり、甘えたりしてくるお姉ちゃんをあやしてたら、時間が経つのはあっという間だったよ……まあ、お姉ちゃんが幸せそうだったし、私も無事に学校初日を終えれたし、良かったのかもね!

 

「蘭ちゃんに今から行くってメールしておくねー」

「おう。喜ぶと思うぞ」

「だといいけどね!」

 

 蘭ちゃんへ。会いたくなったので今から会いに行きます。

 はい送信!これでおっけーだね。

 

「じゃあ行こうか?」

 

 三人で教室を出て、昇降口に来た。

 私の靴はここー……と、取れない!?ぴょんぴょんと跳ねて取ろうとするけど届かないよ!えいっ!えいっ!

 

「湊……なにやってるんだ?」

「なにって靴のところに届かないの! やぁー!」

 

 むー、弾も見てないで手伝ってくれたらいいのにー!

 

「湊……あのな、女子の棚のはあっちだぞ」

 

下駄箱から靴を取り出そうとしたけど、この棚じゃなくなったんだ……隣の棚から靴を取り出して履く。

 癖で前の下駄箱に行っちゃった。2年間くらいそっちの棚を使っていたからね。これからはこっちの棚だね!間違えないようにしないと、また弾に変な目で見られちゃう……もっと早く教えてくれたらいいのにね、弾ひどいよー!

 

 さーて、今日の夜ご飯は何を作ろうかなー?弾は家に帰ると思うけど一夏はどうするのかな?まあ家で食べるよね!

 

「いちかー? 今日は何を食べたい-?」

「えっ!? いいのか? 何でもいいぜ!」

 

「何でもって一番面倒な答えなんだよー? 仕方ないから、一夏の好きなカレーにしてあげるね!」

 

 今日はカレーを作ってあげようかな。豚肉を大きく切って、ごろごろとお肉が入っているカレーだよ!

 

「お前ら、新婚カップルかよ……! お邪魔な俺は帰ってやろうか」

「新婚!? そんな訳無いよー。ほらニヤニヤしてないで弾も行くよー! カレーも食べるならもう少し多く作るよ?」

「家の手伝いをしなきゃいけないからな。明日食いに行くよ」

「おっけー」

 

 なら多く作ってあげないとね。カレーって一日経った方が美味しいよねー。明日もカレーになっちゃうけどいっか。

 

 一夏と弾の真ん中を歩いて帰ってるけど、二人とも背が高いなぁ。私が小さくなっただけなんだけどねぇ……これから先も二人は友だちで居てくれるのかなぁ。何か夕暮れ時ってこんなセンチメンタルな気分になっちゃうよね。

 

「何くらい顔してるんだ?」

「ふえっ……!?」

 

 一夏に頭をぽふぽふと叩かれた……思わず変な声を出しちゃったよ!やっぱり一夏って格好いいなぁ……これはやっぱりモテるよね!

 

 もし、このまま元に戻れなくても、一夏と居たらこの先も、楽しくやっていけるのかもね!なんか元気出てきた!

 

「ふふっ、何でも無いよ! ほら早くカレーの具材を買いに行かなきゃ!」

 

 何となく一夏たちを背に軽く走り出す。顔が赤いのを隠さないと恥ずかしいから……!

 

「危ないから走るなって、全くなぁー。弾、危ないから急ごうぜ」

「はいはい。しっかり守ってやれよ彼氏さん」

「ち、違うわ! ほら行くぞ!」

「へいへい」

 

 後ろでの会話は聞かなかったことにして、もっと駆け足になる。ヘンなことを言う二人には、激辛カレーを作っちゃおうか!なんてね。




投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。
完結はさせます。
社会人になってしまい、時間は足らないので、駆け足になってしまうかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。


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その26

更新が長い間止まっていたこの小説ですが、誤字修正、感想ありがとうございます。


 

『ジリリリリリリ……』

 

 んぅ……うるさいよー。もー静かにしてよね……はい止まった!

 もう朝かぁ。寒いし起きたくない……くぅ……だめだめ起きないと……!

 

 まだ寝ていたい誘惑は押し切って、ベッドから出る。

 

「ふぁー……おはよー……」

 

 ベッドサイドで腕を伸ばして伸びをする。

 どこからかは分からないけど、毎日私を見てる姉さん()に挨拶をする。着替えるのも見られてる気がするけど気にしたら負けだよね。

 

 お姉ちゃん(楯無)からプレゼントされたピンクの生地にデフォルメされたクマが刺繍されているパジャマを上からボタンを外し、脱いでいく。

 

 ボタンを外したパジャマから覗く胸元の膨らみだけど、見ても何も感じなくなっちゃったなぁ。最初の頃は恥ずかしくて見れなかったけど、もうこの体になって半年も経ったし、見慣れちゃったのかな……?

 パジャマの上着を脱いでベッドの上に置き、着替えを用意していなかったのを思い出した。着替えを取らないと寒いよー……

 

 新しく購入したハンガーラックに掛かっている白色のニットのブラウスに茶褐色のコートと、勉強机の上に置いていた黒のミニスカートにオーバーニーソックスに着替える。寒いし早く着替えないと風邪ひくかも!

 ニットを被るように着て、胸に引っかかった部分の皺を整える。下に履いているパジャマも脱ぎ、スカートに穿き替える。スカートへの抵抗力ももうゼロだし、むしろ穿き易いって考えちゃうのはもう致命的かも……まあ、それより靴下を履かないと。

 

 黒のオーバーニーソックスを履くために、ベッドに座り、片足を上げてつま先から靴下を通していく。反対も同じように靴下を通し、最後に伸ばしてから口ごむの部分を整えて、はい完成!

 

 ベッドから立ち上がって、身体全体が映る姿見の前に立つ。

 鏡に映る、姉さん似の可愛い美少女……これが私なの!?

 って前は驚いていたけどもう見慣れっちゃったよ!戻れる兆しは全くないし、そもそも姉さんが戻そうとする気が全くないみたいで、今の私に似合いそうな服が毎週送られてくるし……その度にくーちゃんに会えるのは嬉しいけどね!

 

 そんな事はもう忘れてさ、今日は楽しまないとね!だって今日はクラゲに会える日!じゃなくて、一夏と一緒に水族館に出かける日だからね!

 突然、水族館に二人で行こうって言ってきたのはビックリだったけど楽しみだなぁ。今行くとミズクラゲの赤ちゃんが見れるんだってさ!初めて見るけどきっと、小さくてふよふよしてて可愛いんだろうなぁ……早く会いに行かないとね!

 

 準備する物ってなにかあったかな?お昼ご飯は水族館のフードコートで買って、イルカショーを見ながら一緒に食べようって言っていたし用意しなくていいよね。

 

 冬だし、外の気温はもっと寒くなるかもだからマフラーをバッグの中に入れておこうかな。淡いピンク色の二人で巻けそうなくらい長いマフラーを千冬さんから貰ったんだよね。これを持っていこう!一夏と一緒に巻くといいって千冬さんは笑いながら言っていたけどそんな予定はありません!

 

 あとはお財布とか化粧ポーチの一式はバッグに入っているから、これで大丈夫そうだね。

 よし、昨日作ったパンでも食べて、その後残りの準備をして、出発しようかな。

 

 昔の夢を見たせいか、準備をしながら何となくあの日からの事を考えちゃうなぁ。

 あの日突然、女の子になっちゃったけどなんだか楽しくやっている気がするよねぇ。学校でも今まで話さなかった子と仲良くなれて、色々話したり、たまーに一緒に出かけたり。

 楯無さんって呼んでたのに、今はお姉ちゃんって呼んでいるし、よくお泊りしてくるようにもなって、寝るまでずっと楽しい時間が続くし。

 一夏も弾も今までと変わらずに親友として仲良くしてくれているから、毎日が楽しいのも二人のお陰かもね!

 

 特に一夏にはずっと支えて貰っていたから、何かお返しできたらいいんだけど……一夏がして欲しいことってなにかな?たくさん感謝しているから何でもしてあげるよ!

 

 この後一夏に会ったらそう言ってみよう!一夏がして欲しいことってなんだろう?私が出来ることならいいけどね!

 

「じゃあ姉さん! 行ってきます!」

 

「みーちゃん行ってらっしゃい!」

 そんな幻聴が、閉じた扉の後ろから聞こえた気がしたけどきっと気のせいだよね!じゃあ行ってきます!




読んでいただきありがとうございます。

今回は、スキップした時間の回想+次回の導入回なので、ちょっと短めになっています。
基本は2000文字くらいで進める予定です。

前回から半年ほど進んだ湊ちゃんはどうなっているのでしょうか。

次回も読んでくれたらうれしいです。


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その27

予約投稿が勝手に仕事してました……
一年前に書いて予約投稿を一年後にしていたんですが、気がつけば一年経っていたんですね……

せっかくなので去年書いたあと二話も20日と21日にアップします!


 

 天気は快晴。風は南南西から。

 私は行き交う人の波に揺られながら集合地点へ向かいます。

 クラゲは浮かぶぷかぷかと。

 気ままな君に今、会いに向かいます。

 

 かわいいクラゲちゃんへ会う気持ちを思い浮かべたら詩のようになっちゃった。寝る前に、この前の席替えで隣になった栞ちゃんから借りた詩集を読んでたせいか、私も詩を作りたくなったのかな、ふふふ。

 

 くらげーくらげーくらげ~ふふっ。楽しみだなー。待ち合わせの場所は……あと3分くらいだね。一夏はもう来てるかな?

 

 一夏が水族館に連れて行ってくれるって言うから楽しみで昨日はあまり寝れなかったなぁ。

 

 くらげに会うのが楽しみで!

 

 さーて、待ち合わせ場所に着いたけど一夏はどこかなー……あっ居た!

 

「一夏お待たせ! 待った?」

「お、おう……今来たところだ……」

 

 何故か下を向く一夏の顔を覗き込むためにしゃがんで顔を見上げる。

 

「ふふっどうしたの一夏?」

「おわっ! 何で見上げてくるんだよ!」

「だって、一夏が突然下を向くから気になるよー」

「いや、…わいすぎて……じゃなくて、なんでそんなおしゃれしてるんだよ!」

 

 前半部分が聞き取れなかったけど、おしゃれした理由はもちろんあれだよね!

 

「くらげに会うためだよ!」

「そ、そうか……好きだもんなくらげ」

 

 ミズクラゲ、ハナガサクラゲ、サカサクラゲちゃん達、他のクラゲ達にも会えるなんて幸せだよー!

 

「あと……そ、その服似合っているぞ……」

「ふふっありがとう! 今日のためにお姉ちゃんと一緒にコーディネートしてきたんだよねー」

 

 お姉ちゃんに一夏と水族館に行ってくる事を話したら、おしゃれしないとねって一緒に服を買いに言ってくれたんだよね。

 

「よし、早速行こうね!」

「ちょっ! 手が……!」

 

 一夏の手を引いて水族館に向かう。早くクラゲ達に会いたいなぁ。

 水族館の券売でチケットを買うために二人で並ぶけど、待ち遠しいなぁ。

 あ、次でやっと私たちの番だから券を買える。

 

「お待たせいたしました。どちらの券を購入されますか」

「中学生2枚でお願いします!」

「かしこまりました。では中学生2枚で2,400円となります」

「はい! ってあっ……一夏ごめん手をずっと繋いでたね……」

「い、いや気にするな! うれしかったから!」

「えっ! うれしかったの!?」

 

 うぅ、クラゲに会いたすぎて一夏の手をずっと握ったままだったよ……恥ずかしいよぅ……

 

「と、とりあえず俺が払うから! 店員さんこれでお願いします!」

「うふふ、はいかしこまりました。ちょうどお預かりいたします。チケットはこちらです。どうぞお楽しみください」

 

 券を買うために待っている間もずっと繋いでたんだ……カップルみたいじゃん……!

 周りからカップルみたいに思われていると考えて恥ずかしくなっちゃって下を向く。

 

「ほら、湊も下を向いてないで行くぞ。クラゲも待っているんだろ」

「あっ……そうだね! ありがとう一夏!」

 

 今度は一夏に手を取られて、水族館の入り口に向かって歩いていく。

 ちょっと気が動転して恥ずかしくなっちゃったけど、一夏とは親友だし手も繋ぐよね!

 

「一夏ありがとね! さすが私の親友だよ!」

「そうだな……じゃ、じゃあ行こうぜ! 親友!」




すみません、お待たせいたしました!
読んでいただきありがとうございます!

湊ちゃん
クラゲに会いたい気持ちで詩ができるくらいうきうき

一夏くん
湊ちゃんの私服姿にくらくら



以下後書き
これを書いていた時はsteamの某文芸部のノベルゲーにはまっていたなぁと冒頭の詩を読んで思い返してました。

次回もよろしくお願いします!


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その28

 

「水族館に突入ー! わぁ……涼しいねー」

「だな! よし、どこから回るんだ?」

「まずは目の前のおっきな水槽! ほら行こっ」

 

 まだ繋いだままだった一夏の手を引いて少し先に見える大きな水槽の前に行く。水族館はエアコンのひんやりとしていて涼しくて、夏の暑さを忘れさせてくれる。

 

 そして目の前に広がるのは海の中! 

 悠々泳ぐ色とりどりの魚たち! 

 早く会いたいクラゲちゃん!

 

 最初に出迎えてくれたのはイワシの稚魚たちで、大きな水槽で大きな群れとなって泳いでいるのが目に入った。

 

「わぁ! 小さな魚が一緒に泳いで大きな魚みたいだね!」

「だな!」

 

 水槽の中では大小様々な魚たちが泳いでいて、水の青色の中を泳ぐ銀色の光が反射してきれいだと思った。

 

「あっ一夏! 砂場にも魚が居るよ! 細くて長いしアナゴかな?」

「ち、ちかっ……きっとアナゴだろうな!」

 

 一夏がなぜだか適当に話を合わせている気がするなーって思いながらも水槽の中を覗き続ける。

 

 こう泳いでいるのを見るとわたしも泳ぎたくなちゃうなぁ。

 

 もう女性の水着を着るのにも慣れてきちゃったし……一夏と弾を連れて今度は海かプールに行こうかな!

 

 水着はこの前姉さんが10着くらい送ってきてたから買わなくて済んでいるからいいけど……半分は紐みたいのだったり、布面積がほとんど無いようなやつで着れない水着だったから押入れの奥にしまい込んじゃった。

 

 着た写真を送ってとせがまれているけど無理なものは無理だからね!

 

「今は何を見ているんだ?」

「水着……じゃなくて、あの背中に黄色と青の模様が入っているあれだよ!」

「水着ってなんだよ……まあいっか。あれはマグロだな!」

「水着のことは忘れて! あの魚はマグロじゃないと思うよ……また適当言ってるしー」

 

 姉さんのせいで変なことをくちばしっちゃったよ!

 魚も見ていて飽きないよねー。いつまでも見ていたくなるけどクラゲがすっごく見たいし次に行っちゃおうか!

 

 水族館でカピバラ、カワウソ、ペンギンなどなどかわいい動物たちと触れ合いつつ、お目当てのクラゲさまの元に向かっていく。

 

「水族館にカピバラとかカワウソも居るとさ、動物園の存在価値が薄れると思うんだけど」

「動物園にもいいところはあると思うよ! クラゲはいないし、外を回るから夏だと暑いけどね!」

「いいところを一個も言ってないと思うんだが……」

 

 うーん、そう言われると動物園の良いところってなんだろう? 色々な動物たちを見れて触れ合えるのがいいところだと思うけど……あっかわいい鳥とかいるかも!

 

「えっとかわいい鳥が居る!」

「さっき見たペンギンが世界一可愛い鳥だって言っていなかったか?」

「言ってたけどね!」

 

 ペンギンってかわいいよね。よちよち歩く姿はかわいすぎだと思う。親鳥も雛鳥も最高にかわいいと思う。

 

「ほら次はクラゲだよ! 動物園はまた今度行って、いいところを一緒に見つけようよ!」

「お、おう! じゃあクラゲ行こうぜ!」

 

 動物園に行くのがそんなに嬉しいのか、ニコニコしてる一夏を引っ張って、クラゲの水槽があるコーナーに向かっていく。

 

 クラゲちゃん! いま、会いにゆきます!




読んでいただきありがとうございました!

ウマを擬人化した育成ゲームにハマっていた今日この頃です!
ハマり過ぎには気を付けないとですね!
課金は悪い文明です。


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その29

 

「海と月、水と月……クラゲを漢字で書いたらこんな風に書くんだよ」

 

 ポーチから取り出した手帳にクラゲを漢字で書いていく。

 

「名前の由来はね、海面に映る月の様だったり、海中や水中に月があるように見えるからなんだよ」

 

 海の中でゆらゆら泳ぐ月に見える生き物、昔の人には幻想的な生き物に見えたんじゃないかな?

 目の前の水槽の中ですブラックライトに照らされてふわふわと漂っているクラゲに目を奪われながら一夏にクラゲの由来を教えてあげた。

 

「確かに月っぽいな! クラゲって今でこそ生き物だって誰でも分かるけどさ、昔の人から見たらすごい幻想的な存在に思われていたんじゃないかな? こんなキレイなんだからさ」

「わー……! 一夏がそんなにクラゲのことを分かってるなんて思わなかったよ!」

 

 好感が持てる男性ランキングの一位はクラゲ(趣味)を理解してくれる人だと思っていたけど、さすが一夏!

 私の親友だけあってちゃんと解ってくれるね!

 

「あっ! 次はあっちの水槽を見に行こう!」

 

 一夏の手を引いて遠くに見えるタコクラゲの水槽に移動する。このフロアにならいつまでも居られちゃうなー。クラゲばっかり見ていたけど周りに居る人たちを見たらカップルが多かった。たしかに万人受けするかわいさだから男女関係無く魅了しちゃうんだろうね。

 

「なんかカップルが多くないか? もしかしてお、俺達もそう見えてるんじゃないか!?」 

「何言ってるのー。私たちは親友同士なんだから友達で来てるって思われてるよー」

「て、手も繋いでるしカップルだと思われるはず!」

「あ、ごめん! ほら、離したからだいじょうぶ!」

 

 こっちの水槽を観に来る時に手を引いてそのままで、なんか周りからカップルだと思われていると考えてしまうと途端に恥ずかしくなって手を離してしまった。なんだか周りの目線も気になってしまう。

 

「変なこと言わないでクラゲを見るよ! 今日はクラゲに会いに来たんだから! 一夏はそのオマケなんだからね!」

「ひでーなぁ。まあいっか、じゃあクラゲ見ようぜ!」

 

 そこからクラゲを見たり、お昼ご飯を食べてまたクラゲを見て、イルカショーを見てからまたクラゲを見て……と閉館時間まで水族館を満喫して帰ることとなった。

 

 電車に揺られながら今日は楽しかったなぁと思い返す。一夏も楽しめたかな? 

 

 水槽を見ている時に一夏からすごい視線を感じてて、水槽よりも私を見てた時間の方が長かったんじゃないかって思うくらいだったけど、何か話したかったのかな?

 

「今日楽しかったな! また水族館……と言うよりクラゲを見に来るか?」

「うん! また連れて行って!」

 

 隣に座っている一夏のにこやかな表情を見て、楽しめたんだなって言うのがわかった。また一夏に連れて行って貰いたいな。やっぱり一夏と居ると楽しいなー。

 

 それから一夏と今日の事を話しながら帰り、家の前まで一夏に送ってもらい家に入った。

 

 お風呂に入るために寝室に行って着替えを取ろうとするけど、ちょっと疲れたから目に入ったベッドにダイブする。

 目を閉じながら今日の事を思い浮かべる。

 

 今日がとても楽しかったからか、これからもこんな時間が続いてくれたら良いなって思う。

 先の事を考えると疎遠になってしまわないか心配だ。

 

 IS学園に入ることは決まっているから、高校に入学してからは一夏とも弾ともあまり会えなくなると思うし、それが不安だな。

 

 よし、お風呂に入ってさっぱりして不安なことは忘れちゃって、今日はぐっすり眠っちゃおう!




読んでいただきありがとうございました!


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その30

最終話まで書いたので完結まで毎日18時に投稿予約しました。

更新が止まっていてすみませんでした。

あと、誤字報告すごく助かりました。
ありがとうございます!


 

 今日は楽しかったな。

 家に帰ってベッドに寝転がりながら一夏と水族館に出かけたことを改めて思い出す。

 

 とにかくくらげがかわいかった! 他の生き物達もかわいかったけどね。

 

 一夏も楽しんでくれたかな? 今日の出来事を振り返ってみると私ばっかり楽しんでいた気がする。そう言えば一夏は仕方ないなって感じな顔ばっかしてたかも……

 まあ一夏も楽しかったって言ってくれてたからいいよね! いいって事にしておこう。

 

 んー? バッグの中から着信音が鳴ってる。誰からだろ?

 今日買って貰ったくらげのぬいぐるみとか、便利だから使っている姉さんがくれた薄ピンク色のお財布、化粧品ポーチやらがごちゃごちゃしてるカバンの中から携帯を取り出すと、姉さんからの電話だった。

 

 どうしたのかな? 最近忙しいみたいで二週間くらい電話が無かったけど、落ち着いたのかな? 普段は毎日電話を掛けてくれていたのにに最近話せて無かったからちょっとうれしい。

 

「もしもー……」

「久しぶり湊ちゃんのことが大大大好きなお姉ちゃんだよ湊ちゃん元気してた? 最近忙しくって話せてなかったけど、お姉ちゃんずっと湊ちゃんのことを見ていたよ! 今日はいっくんと一緒に水族館に行ってたねくらげも見れてよかったね今度はお姉ちゃんとも行こうね!」

「あ、そ……うん」

 

 久しぶり話すといつもこうなるんだよね……無限に一人で喋っちゃうから聞くだけでも大変だよ。まあお姉ちゃんだから仕方ないね。お姉ちゃんだから。

 

「……それでね、月の裏側に月面基地を作ったからこれから月に行ってくるの! 湊ちゃんと一緒に行きたかったけど明日学校だからダメだよねざんねんざんねん。だからパッと行ってパッと戻ってくるね!」

「うんうん……って月に行くの!?」

 

 姉、ついに宇宙進出するみたいです。

 

 忙しかったのは月に行くからだったんだ。姉さんが電話も掛けてこないって余程のことだと思ったけど、月に行くのかぁ……ISを作ったのも宇宙進出のためだったもんね。

 

「姉さんおめでとう! 夢だったもんね」

「うんうん、湊ちゃんならそう言ってくれると思っていたよ! もう向かっちゃうからあいつに護衛よろしくって言っておいてよ。頼むのとかすごーくやなんだけどね!」

 

 姉さんとお姉ちゃん(更識楯無)って仲が悪いからねぇ……姉さんは湊ちゃんの姉は私以外認めないって騒いで仲良くしてくれないんだよね。

 

「大丈夫だと思うけど、護衛のことは伝えておくね。姉さんも気を付けて」

「私は天才だから大丈夫だよ! 湊ちゃんはちょー可愛いから襲われないか不安なの!」

「私は男だよ? 心はね! たぶん……」

 

 私は男だって自信が最近無くなってきたんだよね……なんか一夏がすごいかっこよく見えちゃって、今日も……ってやめやめ!

 

 

「と、とりあえずお姉ちゃんには言っておくから! 落ち着いたら私も月に連れて行ってね! おやすみ!」

「絶対連れていくよ! でもあいつを姉とは認めな----」

 

 あ、途中で切れちゃったけどまあいっか。

 

 

 ふぁ、電話してたらなんか眠くなってきちゃった。お風呂はさっき入ってるしもう寝ようかな。お姉ちゃんに電話するのは明日でいいよね。

 

 おやすみ、姉さんおめでと。

 

 

 

 

 

 

 

「あら、目覚めたのね。おはよう、篠ノ之湊ちゃん」

「おはようございます……って誰!? ここどこ?」

 

 目を覚ますと見知らぬ部屋で、目の前に知らない綺麗なお姉さんが居た。 




姉さん
二週間振りに湊と話せて最高にハイになってます。

綺麗なお姉さん
新しいお姉ちゃんキャラが登場!
誰でしょうか。


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その31

誤字報告、感想ありがとうございました!


 

 昨日は姉さんと電話した後にすぐに寝ちゃったんだよね。もちろん家で。

 

 それなのに今は窓のない真っ白な部屋の中でベッドに寝かされていた。ここはどこなんだろう? それにこの人誰なの!?

 

「あの、あなたは誰ですか?」

 

 まずはこの人が誰か確認することで、どういう状況なのかを知っていこう。こんなきれいなお姉さんなんて忘れるはずが無いんだから絶対知らない人だよ!

 

「私はスコール。亡国機業の者よ」

 

 にこやかに微笑みながら答えてくれた。亡国機業もスコールの名前にも聞き覚えは無い。やっぱりこの状況からして誘拐されたのかな? 意味わからない状況すぎて逆に冷静に考えられている。

 

「目的は姉さんですか?」

「ふふっ、頭の良い子は好きよ。その通り、私達は篠ノ之博士に用があるのです」

 

 あの姉さんをどうにかできる人なんていないだろうし……あっ、千冬さんならできるか。でもそれ以外の人達はダメだろうからね。姉さん天災だし。だから狙うなら私ってことか。でもお姉ちゃんが護衛を付けていたはずだから簡単に連れ出すことはできないと思うんだけど……どうやったんだろう?

 

「更識家の護衛の人達が居たのにどうやって……」

「私達の協力者が護衛の中に居たから簡単だったわよ。貴方と篠ノ之博士との会話の傍受後に直ぐ行動に移って貰ったのよ」

 

 思わず口に出してしまった疑問に答えられたけど、スパイが居たってことか……罰としてお姉ちゃん失格だよ*1って言っちゃおうかな。絶望の表情を浮かべるお姉ちゃんを想像して思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「ずいぶんと余裕なのね」

「姉さんがどうにかしてくれるって思ってるからね。それに私に何かしてたら交渉もできないと思うよ」

 

 あの姉さんなら何とかするって思っちゃうから心に余裕がある。姉さんなら月からでも助けてくれそうだって思う。

 

「まあいいですわ。これから私が篠ノ之博士に可愛い妹は預かったと連絡するから楽しみにしていなさい。その時に少しは痛い目を見せてあげる」

 

 そう言って取り出した銃をテーブルの上に置いた。人を殺せる凶器が目の前に出てきたことで恐怖が溢れてきた。でもよく見たら銃口もかなり小さく造りの精巧さが無いからおもちゃなのかも。うん、そう思うようにしよう。

 

 スコールさんは私の携帯電話を手に取り、履歴の一番上にある『束お姉ちゃん』にコールを掛け、数コール鳴った後に通話が繋がり、空間投影された映像にはお姉ちゃんの横顔とその後ろに小さくクロエちゃんが写っていた。どちらも作業に集中しているのかこちらを向いていない。

 

「おはよー湊ちゃん! お姉ちゃん忙しいけど湊ちゃんのためならいくらでも時間を作るよ。今日はどうしたの? お姉ちゃんの声を聞きたくなっちゃったとか? うんうん、いくらでも話してあげるから沢山声を聞かせてあげるよ。本当に湊ちゃんはお姉ちゃんのことが大好きなんだから」

 

 スコールさんが無限に話し続ける姉さんを見て、あなたのお姉さん大丈夫? って感じな目を向けて来たので思わず首を横に振ってしまう。姉さんはもうダメですね。

 

「こほん、私は亡国機業のスコ----」

「は? 誰お前、何なの? 気持ち悪いなぁ大事な妹への言葉を勝手に聞くとか死んだ方がいいよ。早く消えてくれない? ほんとキモいんだけど」

 

 血走った目をこちらに向けて怒鳴り続けている姉さんを見て、あなたのお姉さんヤバくない? って目を向けてきたスコールさんに思わず首を縦に振ってしまう。怒った姉さんは銃より怖い。

 

「あなたの可愛い妹は預かりました。こちらの要求は月面基地とISの技術の全てです。いい返事を期待していますわ」

「ふーん、月面基地ね。私との通信が傍受されるなんて有り得ないから会話を聞いてたんだ。てことは護衛の中にお前の仲間が居たのか。あいつゴミ共すらまともに管理できないなんて姉失格だな。やっぱり湊ちゃんの姉は私だけだよ」

 

 怒りすぎて冷静になっているのか、状況を淡々と分析してる姉さん怖い。けど何とかしてくれるって信じてるから! でも部下の管理能力は姉の資質とは関係ないと思うな。

 

「で? 要求を飲まなかったらどうするの? 湊ちゃんに手を出したら地球滅ぼすよ。もちろん湊ちゃんを助けた後でね」

 

 姉さんが逆に脅迫してきた! 地球滅ぼすって本気でやりそうなのが怖いんだけど……スコールさんも冷や汗を搔いている。

 

「と、とにかく一時間後に回答して貰います。いい返事を貰えない場合はこうしますわ」

「ひゃわ!?」

 

 スコールさんが私の後ろに回って来たから何されるのかと思い、振り返ろうとした時に横腹にくすぐったい感触が突然来たせいで、思わず声を上げてしまった。さっきの姉さんが怖かったのか加える危害のグレードがすごい下がったけど、誘拐犯それでいいの……? ってスコールさんに視線を向けると恥ずかしそうに目を逸らされた。

 

「お前ふざけんな!」

 

 突然、姉さんの怒号が飛び交った。え? わき腹を突かれただけだよ?

 

「湊ちゃんのわき腹をつ、つ、突くなんてお姉ちゃんでもしたことないのに……許せない。湊ちゃんの初めてを奪うなんて絶対ころ----」

 

 通話を突然切ったスコールさんの方を向くと、目が合った。お互いに言いたいことは一緒だと分かる。

 

「「そんなに怒ること??」」

*1
楯無に取っては滅びの呪文と同じ効果※束にも効く




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湊ちゃん
誘拐されてるけどなんだか余裕そう。

スコールさん
テロリスト?
誘拐と脅迫は犯罪だけど、今のところ被害は突かれただけ。
それでいいのか亡国機業。
なお姉さんにはクリティカルヒットした模様。

束さん
愛しの妹ちゃんからの電話だと思ったら他人で発狂。
妹の横腹を突かれた殺意の波動に目覚める。

くーちゃん
横顔だけ登場。
24時間続いていた湊様モニターチェックが月ではできていなかったので湊成分欠乏中だった。


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その32

 

「くーちゃん湊ちゃんの位置は特定できた?」

「携帯電話と通信に何か細工をしているようで、特定ができませんでした」

 

 通話中にくーちゃんに居場所の特定をお願いしていたけどダメだったか。湊ちゃんに手を出すなんて本当に許せない! あれ以上のことをやられたら、本当に地球を滅ぼしちゃうかも。思い出すだけでほんと怒りが沸いてくるよ。

 

「ISネットワークを使っていいから引き続き探してみて。一時間以内に湊ちゃんを助けるよ! 状況から日本国内に居るのは確定だから日本に絞って探してみて」

「はい。必ず湊さんを見つけます!」

 

 くーちゃんも本気だし、位置情報の特定は大丈夫だね。次は救出方法だけど、私達は月に居るから一時間以内に地球に行くには時間が足らない。湊ちゃんは不安だと思うからすぐに助けてあげないと。

 

 私以外が救出に向かわないといけないんだけど、ちーちゃんは……ドイツか。そう言えば湊ちゃんなら第二回モンド・グロッソに向けて親善試合に行っていると聞いてたんだ。なら、湊ちゃんは日本に居るから間に合わないか。でも応援を頼んじゃおう。親友だもんね!

 

 湊ちゃんの為だし仕方ないからあいつに頼むか。ISネットワークで位置を特定して……はぁ? モスクワに居るとか本当に使えないね! 妹のピンチなのに遠くに居るとか終わってるよ。湊ちゃんにあいつは役に立たないから関わらないでってきっちりと言っておかないと。

 

 それにしても、私とちーちゃんとあいつが居ないタイミングだったから仕掛けてきたのか。

 

 二人が居ないなら仕方ないよね。これも湊ちゃんの為だからちーちゃんも許してくれるよね。てことで電話しちゃおう!

 

「もしもし一夏くん! お願い、湊ちゃんを助けて!」

「湊がどうかしたんですか!?」

 

「誘拐されたの……それにあんな酷いことを……うぅ」

「は? 誘拐? それに何をされたんですか!?」

 

 思い出したら思わず涙が出てきた。私ですら湊ちゃんをわき腹を突いたことなんて無いのに何回も突くなんて本当に許せない。

 

「い、言えないよ。お願い湊ちゃんを早く助けて!」

「絶対助けます! でもどうやって」

 

 やっぱりいっくんは頼りになる。湊ちゃんを任せられるのはちーちゃんといっくんだけだよ!

 

「いつも着けるようにって渡したネックレスがあるでしょ。それを強く握ってくれる?」

 

 いっくんに預けていたネックレスの機能開放を急いで行う。これでいっくんが助けに行ける。いっくんならこれを動かせるから!

 

「はい、握りました。って光が溢れて! うわっ!?」

 

 モニターに映るいっくんが真っ白い光に包まれる。

 

 画面が白一色に染まって、それが薄れてくると純白のISに身を包んだいっくんが現れた。

 

「うんうん、問題なく起動したね。似合っているよ!」

「えっ、なんでISを起動できているんですか!?」

 

 いっくんは男なのにISを起動できたことに驚いているけど、今はそれより大事なことがあるよ! 男なのにISが動かせるいっくんの秘密のあれこれなんて今はどうでもいいの!

 

「そんなことより、いっくん! 白騎士に湊ちゃんの座標を送ったから確認して。そこで湊ちゃんは助けを待っているよ!」

「……分かった。束さん、絶対湊を助けてくるから。じゃあ行ってきます!」

 

 そう言って飛び立ったいっくんを横目に、ISネットワークと人工衛星にダミーを送って、白騎士の姿を確認できないようにする。白騎士がある程度サポートしてくれるけど、説明無しにISを動かせているのは流石ちーちゃんの弟ってところだよね。

 

 さてさて、いっくんが向かっている間に処刑の準備を進めないとね。悪事をばらす為に全世界への放送を出来るように世界の全放送局をジャックしちゃおう。

 

「くーちゃん、前に集めてもらった亡国企業のデータをこっちに送っておいて~」

「すぐに送ります」

 

 必ず助けるから待っててね湊ちゃん!




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束さん
いつの間にか一夏にISを渡していた。
こんな時のためにね!

くーちゃん
裏ではいっぱいがんばっています。

一夏くん
湊が酷いことをされたって聞いてめちゃめちゃ心配している。


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その33

 

「湊ちゃんも大変だったのね……」

「でも私の姉さんですし、いいところも一応あるので、嫌いになれないんですよ」

「ほんとにいい子ね! どう、私の妹にならない?」

「あはは、姉が増えるのはもう結構です……」

 

 姉さんへの脅迫?の通話が終わってからは、スコールさんもやることが無かったみたいで待っているだけだったので、時間があったのでお互いに愚痴を言っていたらいつも間にか仲良くなっていた。誘拐されている立場なんだけど、なんか憎めないんだよね。

 

 月に居る姉さんはともかく、千冬さんかお姉ちゃんが直ぐに助けに来てくれるかと思ったけど、二人とも国外に居てすぐには来れないみたい。だから大チャンスだったのよとスコールさんが嬉しそうに話していたけど、私も運が悪いなぁ。まあ嫌なこととか怖いことはされて無いからそれだけは良かった。

 

「あら? いつの間にかそろそろ約束の時間ね。あなたのお姉さんに答えを聞きましょうか。そうだ、私達の本気を知ってもらうためにまた突くからたすけてーと言ってもらえるかしら」

「いいですけど、誘拐犯としてそれでいいんですか……?」

「いいのよ。私だって別に傷つけたくないもの」

「分かりました。私も痛いのは嫌ですし、突かれるくらいなら我慢します」

 

 結構くすぐったいけどね!

 

 スコールさんが通話ボタンを押して、コール音が鳴った瞬間に姉さんの映像が投影された。

 

「湊ちゃん無事!? 変なことされてないよね!?」

 

 姉さんが慌てた様子で声を掛けてくれるけどごめん、スコールさんと話してだけなんだよね。

 

「では篠ノ之博士、回答を聞きましょう。可愛い妹さんのために月面基地とIS技術の全てを渡してくれますね?」

「ふんっ、渡したところで凡人共に扱えるなんて思えないけどね」

 

 IS技術は姉さんの夢だから悪いようには使われて欲しくないな。スコールさんは世界の発展のために技術の全てを公開させるって言ってた。それが人類の宇宙進出に繋がるのなら姉さんの夢にも繋がるから渡してもいいと思う。でも戦争に使われるようになるのなら止めないと!

 

「様々な技術者が集まっているのでIS技術も十全に扱えますわ」

「ゴミ共がいくら集まってもゴミでしょ。未だに第一世代、第二世代とか開発してるけど、IS技術を公開してから何年経ったと思っているの? その程度なら私が十年前には構想していたよ。そんなゴミ共により高度な技術を渡しても理解すらできないでしょ」 

 

 

「……随分と強気ですね。いいのですか? 私達の技術力なら妹さんに色々できますのよ。例えば……性別を無理やり変えるとかね」

「あっ、それはぜひお願いしま----」

「はぁ? 湊ちゃんの性別を変えるとか有り得ないでしょ!! 本当に死にたいんだね。なら今すぐにでも望み通りにしてあげるよ!」

 

 え、えぇ……姉さん、私の性別変えたこと覚えてるよね……? 男だったんだよ私。諦めもあったけど、今ではもう慣れちゃったし女の子のままでいいような気がしてるけど……原因は姉さんなんですけど! 女の子の気持ちが知りたいって姉さんに相談しちゃった私も悪いけどね!

 

「あら、冷静じゃなくなっているわよ。そうね、なかなか首を振らないのですから、こうしても仕方ないですわね」

「ま、待って!? そっちは反対側だよ! ファーストじゃなくてセカンドまでも奪うって言うの? そ、それだけは……」

「ひゃわっ」

 

 スコールさんに左のわき腹を突かれる。左の方がくすぐったく感じるなんて知らなくてもいい情報だったよ……

 

「そろそろ助けてって言ってくれるかしら今がチャンスよ」

 

 小声でそう伝えられたので、頷いて姉さんに向けて声を掛ける。

 

「ね、ねえさんたすけてー」

「あ、あぁ……湊ちゃんそんな悲しい声を出して……」

 

 出してません。棒読みになっちゃってました。

 

「でも大丈夫。湊ちゃんにはね、とっても心強い騎士様が味方なんだから!」

 

 突如、後ろから轟音が鳴ったと共に勢いよくコンクリートの破片が周りに沢山飛んできた。でも痛くない……なんでだろうと思って後ろを向いた。

 

「助けに来たぜ、湊!」

 

 純白のISを纏った一夏がそこに居た。




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最終話

感想、誤字報告ありがとうございます!



 

「とりあえず逃げようぜ!」

「えっ!? 一夏がなんでISをってわわっ!?」

 

 一夏に抱きかかえられたと思ったらすごい勢いで景色が変わっていき、一瞬の間に空の上に来た。後ろを見ても追手は来ていないみたいだから安心する。

 

 それに抱きかかえられているから一夏の顔がすぐ近くにあるのに気づいて顔が熱くなる。純白のISに光が反射していつもよりキラキラしている。いつもより格好良く見える一夏が近くに居てなんだか恥ずかしさを覚える。

 

「あ、痛いところとか無いか? 本当に心配したんだぞ!」

「痛いところはないよ! それと……ありがとうね」

 

 突然誘拐されたこととか、ISを纏っている一夏と空を飛んでいることとか現実感が無さ過ぎて混乱しちゃうけど、夢の中じゃないよね? 現実だよね?

 

「追手は束さんがどうにかしてくれるみたいだから、安全なところまで連れていくからな」

「うん……」

 

 それから無言で飛ぶ一夏に抱えられながらお空の旅を続けていたけど、しばらくして一夏の家の庭に降りたことで旅は終わった。姉さんが千冬さんに内緒で防衛機構を取り付けていたからここが一番安全なのかも。あとで千冬さんにばれて怒られてたけど。

 

 でも、見慣れた一夏の家を見て現実に戻ってきたような気持ちになれた。追手も今のところ来ていないみたいだし、姉さんが何かしてくれたんだろうね。

 

『湊ちゃん、いっくんおかえり~! 二人とも無事でよかったよ!』

「姉さんもありがとうね。色々聞きたいことはあるけど」

 

 一夏がどうしてISで助けに来れたのかとか本当になんでなんだろう? 一夏が男なのにISを使えるのが何でなのかすっごい気になる! しかもあのISって細部は違うけど白騎士だよね?

 

『湊ちゃんも聞きたいことが色々あるみたいだけど答えは私が天才だってことで全部解決だよ!』

「確かに! それで解決だ〜」

「いいのか……確かに否定できないけどさ」

 

 私しか気づけないくらいの反応だったけど、一夏がISを動かせる理由は答えたくなさそうだったから聞かないようにしておこう。必要だったら教えてくれるだろうからね!

 

『あ、それより亡国機業の悪事を全世界にばらしちゃうからね〜! いっくんがISを使えることも一緒に説明しちゃうから二人も放送に出てもらうよ~』

「放送ってなんですか!?」

 

 一夏も驚いてるけど全世界にばらしちゃおうって、なにするつもりの!? 全世界の放送局をジャックするとか普通にやっちゃいそうで怖い……

 

 いつも通りの姉さんを見て、落ち着いたから安心のため息が零れてしまう。ISを解除して制服姿に戻った一夏も同じように安心したようなため息を吐いていた。

 

「湊が無事で本当に良かった。束さんから湊が誘拐されて酷いことされているって聞いたからマジで心配していたんだぞ」

「誘拐はされたけど、酷いことはされなかったからだいじょうぶ! ふふっ、颯爽と助けてくれた一夏は格好良かったよ!」

「そ、そうか」

 

 一夏が格好よかったって言葉に照れたのか少し顔を赤くして照れている。照れた顔をじーっと眺めていたら恥ずかしくなったのか下を向いてしまう。それならと、俯いている一夏に近寄って下から覗き込んだらもっと顔を赤くして後ろにジャンプして距離を取られた。

 

 そんな一夏が面白くて笑っていると突然両肩に手を置かれたので、顔を見上げると真剣な顔をしている一夏が目の前に居た。

 

「湊に言いたいことがあるんだ。いいか?」

「うん、いいけど……どうしたの?」

 

 声もいつもの一夏と違ってすごい真剣な声でどうしたんだろう?心配させたのに変なことしちゃったから怒らせちゃったのかな?

 

「湊に言いたいことがあるんだ」

 

 一夏が真剣だから私もしっかり話を聞けるように一夏の目を見て、次の言葉を待つ。

 

『さーて、それじゃあ今からあいつらの悪事を全世界へ公開しちゃ----』

「ずっと前から湊のことが好きだったんだ!!」

 

『おうか…………うぇ?』

 

「はっ……えっ?」

 

 私のことが好き?一夏が私のことを……? 突然の告白に理解が追いつかない。

 

「親友として好きなんだと思ってた。ずっと一緒に居て家族のように育ったんだから、好きにならないはずが無いだろ。だから……今、湊の事を異性として好きだってこの気持ちを……親友として好きだと思うようにして蓋をしていたんだ」

 

 

 

「でも攫われた湊を助けて抱きしめた時に湊をずっと護ってやりたい、一生隣に居たいって思っちゃったんだ」

 

 

 

『あ……あのこれ全世界にほうそ……』

 

 一夏の言葉の衝撃で姉さんが何かを言っていたけど頭に入ってこない。

 

「これからは親友としてだけじゃなく、男としても湊を支えていきたい。ずっと一緒に居たいんだ! だから俺と付き合ってくれ!」

 

 異性として好き……そっか、私も一夏も一緒だったんだ。

 

 隣に居てくれると安心できたこと。

 

 一夏のことが誰よりも格好良く見えていたこと。

 

 手を繋いだ時に顔が熱くなったこと。

 

 帰り道で家の前で別れる時にまだ一緒に居たいって思ったこと。

 

 まだまだいっぱいあるけど、そう言うことだったんだね。

 

 私は一夏のことを女の子として好きになっていたんだ。

 

「ど、どうなんだ……?」

 

 不安そうな目で私を見てくる一夏に愛しい気持ちが溢れてくる。

 

「私も一夏のことが好き……」

 

 好きな気持ちが止まらなくて、身体でも伝えたくなって、目を瞑って一夏の顔に近づいていく。

 

『あーあー! 放送止めます放送止めますー!』

 

「うわ!?」

「ぴゃあ!?」

 

 突然の姉さんの大声にびっくりして飛び上がってしまう。放送止めるってなに? なんのこと?

 

『あ、あのね。お姉ちゃん全世界に放送し始めた時にいっくんの言葉にびっくりして固まっていたの……』

 何を言っているのか聞こえたけど、理解したくない。

 

『あー……あとは若い二人に任せるよじゃあね! お幸せに!!』

 

「初めから放送されてたってことなの……それも全世界に……おわった……」

「お、お、おれたちはこれから始まるんだ! だからだいじょうぶだ!」

 

 一夏は変なこと言ってるしダメそうだ。

 

 でも大丈夫だよね。

 

「一夏がこれからも守ってくれるんでしょ?」

「あ、あぁ! 任せてくれ!」

 

「ならこれからもよろしくね!」

 

 つま先立ちになって一夏の頬に口付けをする。顔を真っ赤にしてる一夏を見て私も顔が熱くなってくる。そんな一夏を見てもっと好きになっていくのを感じる。

 

「大好きだよ一夏!」

 

 いつまでも一緒に居てね!




湊ちゃん
恋を知って、女の子の気持ちが分かっちゃいました。タイトル回収。

一夏
全世界に告白が映された男。
世界は突如テレビの画面が切り替わり、映った告白の様子に困惑した模様。当然知り合いにも見られてます。
でも湊ちゃんと付き合えたんだからいいよね!

束さん
戦犯、だいたい束さんのせい。
なお、湊ちゃんと一夏が付き合ったことには大喜びしている。


以下、後書き
読んでいただきありがとうございました!

UA 103,221
お気に入り 1020
感想 79件
こちらもありがとうございます。
本当に励みになりました。

一夏と付き合って終了することはプロット通りなんですが、完結するために巻きになったので、まだやりたいことが残っています。なのでおまけとしていくつか投稿を続けていく予定です!
特に鈴ちゃんを全然出せていないのが心残りです!
ですが、当小説は一旦完結とさせていただきます。
本当に読んでいただきありがとうございました!


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おまけ1【女の子の気持ちを知った乙女とその周辺】

誤字報告ありがとうございます。


 

 あの事件から一週間、色々なことがありすぎてあっという間に時間が過ぎていった。

 

 一夏とお付き合いすることになったあの後すぐにお姉ちゃんがやってきて、泣きながら私に抱き着いてきた。

 

 私を抱きしめながら本当にごめんなさいと言って泣いているお姉ちゃんの頭を撫でてあやしている時に、冗談でお姉ちゃん失格だよって言ったら号泣させちゃって、なだめるのがすごい大変だった。一時間くらい慰めていたらなんとかいつものお姉ちゃんに戻ってくれた。今後姉達にこの言葉を使うのは止めておこう。

 

 その日の夜には千冬さんが帰ってきてくれて、私達を抱きしめてくれた。無事でよかったとか色々優しい言葉を掛けてくれた後に、話があると言ってテーブルを挟んで向かい合う形で座らされた。千冬さんが正面で、一夏と私は隣り合わせに座った。

 

 カバンから缶ビールを取り出して一気に飲んでから、お前達付き合うんだなと重々しく告げられた。千冬さんも知っているってことは本当に全世界に放送されていたんだ……その事実に気が重くなってくるけど、今は千冬さんに私たちの関係を認めてもらわないと。

 

 千冬さんに私達を認めてくださいって伝えようとしたら、それより先に一夏が----

 

「千冬姉! 俺と湊が付き合うことを認めてくれ! 俺は一生湊の傍に居て、護り続けるって誓ったんだ! だから頼む!」

 

 そう言って頭を下げた一夏と一緒に私も頭を下げる。

 

「わ、私からもお願いします!」

 

 千冬さんは何も言わずに私達を見ている。無言の時間が永遠に続くと思ったら、千冬さんがため息を吐いて声を掛けてきた。

 

「はあ……最近のお前達を見ていたらいつか付き合うんじゃないかと思っていたが本当に付き合うとはな。まあいい、家の愚弟を任せられるのは湊ぐらいだからな。弟を頼むぞ」

「ありがとう千冬姉!」

「ありがとうございます!」

 

 そんな感じで色々な事を飲み込んでくれたのか千冬さんに認めてもらった。まだ一夏と付き合ってどうしたいかとか何も考えられていないけど、小さい頃からも、女の子になってからもすごくお世話になっていた千冬さんには一番最初に認められたかったから、認められて本当にうれしい。

 

 千冬さん本当にありがとう。

 

 ちなみに姉さんはいっくんと湊ちゃんが付き合うって事はいっくんは私の弟になるってことだし最高じゃんって喜んでいた。そしてすぐ千冬さんに私の弟を取るなって叩かれていた。二人とも弟、妹が好きすぎでしょ。

 

 まあ、私も同じくらい姉のことを好きなんだけどね!

 

 お姉ちゃんの方は私の方が湊ちゃんのことを好きなんだから、私に認められたいならISで私に勝ってみなさいと、なぜかISで決着をつけようとしてる。また姉失格って言っちゃうよ。

 

 結局千冬さんに睨まれてお姉ちゃんは退散していった。お姉ちゃんでもさすがに千冬さんには勝てなかったみたい。

 

 お世話になった人たちに挨拶に向かっていたら、あっという間に一週間が経っていた。

 

 

 そして今日は、一番の難所に挑むことになっている。千冬さんに認めてもらう以上に挑むのが怖いところ……と言うより行くのに勇気がかなり必要な場所とは----

 

 覚悟を決めて扉を開けて一夏と一緒に部屋に入る。

 

 瞬間、乾いた音が部屋全体にいくつも響き渡り、紙吹雪が宙を舞った。

 

「待ってたよお二人とも!」

「一夏くんおめでとー! 湊ちゃんもー!」

「世界に向けて愛を叫んだ一夏さんカッコイー」

「世界公認のカップルおひさー」

「で、一夏……どこまで進んだ?」

「俺の湊ちゃん幸せにしろよ!!」

 

 あの出来事の後、今日は初の登校日。弾に今日行けるって教えていたからか、早めに登校したのにクラスメイトがクラスに全員居て出迎えられた。どれだけ楽しみだったの……? 

 

 クラッカーとか先生に怒られるよね!?

 

 明るく出迎えてくれるのはうれしいけどさ、さすがに恥ずかしいよ!

 

「俺達のサプライズはどうだった? 今日登校するって聞いて盛大に準備したんだぜ」

「弾、お前かよ! 恥ずかしいわ!」

 

 一夏と弾がいつも通りに言い合って、それにクラスの男子も混ざって騒ぎあってる。私は私で女子たちに囲まれて質問攻めに合う。一夏とどこまで進んだとか恥ずかしいから聞かないでー!

 

 でもまあ、みんなに祝福してもらえてよかったって思う。

 

 でも君たち、キスしろって騒ぎ立てるのは止めようね。

 

「だめ、ここだとしないよ。二人っきりじゃないとね」

 

 冗談っぽくそう言うと、一夏が顔を真っ赤にしたと同時に歓声が響き渡る。ノリのいいクラスメイトには感謝だね。ふふっ、でもまだ頬にしかしたこと無いんだから冗談だよ。

 

 でもクラスメイトにも優しく迎えられて安心したよ。正直どう反応されるか分からなかったから不安な部分もあった。弾がうまく纏めてくれたのかな。うれしいな、後でちゃんとお礼を言おう。

 

 突然性別が変わるなんてあり得ない体験をしてから色々あったけど、今は女の子になったこともそんなに悪いことじゃ無かったのかなって思っている。

 

 変わらずに接してくれたクラスメイト達との関係を大切にしていきたいな。

 

 だからいつまでもキス、キスって囃し立てるのはやめてね!




読んでいただきありがとうございます!

以下、最終話の謝罪と反省です。
最終話の終わり方については賛否両論あったかもですみません!
ご意見とか感想があれば教えてくれたらありがたいです。
プロットではもっと一夏との関係性を深めていく描写を入れて、最後の最後に告白するって流れを、展開をかなり飛ばしてラストを持ってきてしまったので、一夏の告白が安っぽくなってしまったのではと思っています。
ですが、読んでいただけたことは嬉しく思います。ありがとうございました!


以下、今回の後書きです。
千冬さんに二人の関係を認められたいって話と全世界公開告白後クラスに行った話でした。

千冬さんの人物像を個人的に予想した結果、内心は認めていても表には出さないで、厳しいことを言いながら認めるだろうと考えました。
千冬さんも束さんと同じように超越者的な側面があるので性別がどうかは二の次で一夏を任せられるかが判断基準になると思いました。
てことで、湊ちゃんは認められたのでした。


次回はあの子との後日談です。
書き終わっているので校正したら投稿します。
ありがとうございました。


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おまけ2 【リン、来日】

感想ありがとうございます!


 

「あんた達あの放送ってどういうことよ!!」

 

 学校帰りに弾の家に一夏と遊びに行こうと思ったら、後ろから大きな声で話しかけられた。驚いて振り向くと見覚えのあるツインテールの小さな女の子が仁王立ちでこちらを睨みつけていた。久しぶり会ったけど全く容姿の変わってないこの子は!

 

「あ、鈴ひさしぶり!」

「鈴か、日本に帰ったのか。元気してたか?」

 

 ひさしぶりに鈴に会えてうれしい。元気そうで良かった。中国に戻ってから友達ができたか心配だったけど元気そうに見えるし、大丈夫そうかな? 

 

 弾は用事があるから先に帰っちゃったから会わせないといけないね。鈴も弾の家に一緒に連れて行こうか。

 

「ひさしぶり……じゃないわよ! あんた達あの放送ってどういうこと!? ていうか何で湊が女になっているのよ!? しかも何で一夏と付き合ってるの!? あーもう訳わかんない!!」

 

 ツインテールを振り回しながら勢いよく言葉をぶつけてきた鈴に言えることは一つだけ。

 

「うん、だいたい姉さんのせいだね」

「束さんのせいって言われたら納得しちゃったじゃない! でも付き合ってるのはどういうことよ!?」

 

「それは……一夏に告白されたから……」

 

 思い出して顔を赤くしてしまう。

 

「顔を赤くするな! かわいいじゃないの! 見てたわよリアルタイムで親友の二人の告白現場を! わかる? お昼に食堂でラーメンを食べてたら突然知り合いが告白してる映像が流れた私の気持ちが!? ラーメン噴き出したわよ!」

 

 相変わらずラーメンばっかり食べてるんだね。あの放送の事はもう気にしないことにしたから、鈴が見ていたとしてもダメージは無い……ないったらないの!

 

「鈴は相変わらずラーメンばかり食べてるの? ダメだよー他の料理もバランスよく食べないと! それより久しぶりだから弾の家でゆっくり話そうよ」

「私のことはいいの! はあ、全く湊は相変わらず天然だし、一夏も相変わらず一夏だし! とりあえず弾の家行くわよ!」

 

 鈴がぷりぷり怒りながら先陣を切って弾の家に向かっていく。このツンツンしてる感じが鈴だよねぇ。会ったのは久々だけど全然変わってなくて安心する。

 

「待って、久しぶりなんだから一緒に行こうよ。鈴と沢山話したいな! 一夏もそうだよね?」

「おう、一緒に行こうぜ! 頼む!」

「はいはい、なら一緒に行くわよ。でも湊は隣でいいけど一夏はダメ。後ろから付いてきなさい!」

「なんでさ!?」

 

 渋々と後ろについてくる一夏に手を振っていたら鈴に手を握られて、こっちを見てなさいよって怒られた。

 

 鈴が中国でどう暮らしてたのか色々聞いていたらいつの間にか弾の家に着いていた。でも鈴が中国でIS乗りになっているとは思わなかったよ。でも運動神経がよかったから天職かもね。

 

 鈴が弾の家族に挨拶したら優しく迎えられているのを見て相変わらず温かい所だなって思う。この前の事件の後も同じように出迎えてくれたからね。挨拶が終わったし弾の部屋に向かう。

 

「久しぶりね!」

 

 扉を勢いよく開けて部屋に入った鈴に驚いて弾が飛び上がっていた。

 

「鈴久しぶりだな! 元気してたか? お前が居ない間にこっちは色々あ、ぐはっ!!」

「私にその色々を思い出せるな!」

 

 私と一夏のことだと思うけど……それを思い出したくないからって、久しぶりに会った弾に飛び蹴りするのは理不尽だと思うなぁ……弾どんまい!

 

「いきなり蹴ってくるなよ!」

「知らないわよ! 少しはストレス発散させなさい!」

 

 ガミガミと言い合っている二人を見るのも久しぶりだなぁ。

 

「あはは……相変わらず二人は仲よしだね」

「良くないわよ! とりあえず湊は私の横に座りなさい! あんたには色々聞かないといけないんだから!」

「ほどほどでお願いね……」

 

 鈴の横に座ってから身体のあちこちをじーっと見られている。無言で見られ続けているから恥ずかしくて顔が熱くなってきた。一夏と弾の方に助けてって視線を送っても目を逸らされた。

 

「あの、鈴さんそろそろ許してください……」

「なんでさん付けなの? つねるわよ。ていうかなんで顔を赤くしてるのよ!」

 

「鈴のかわいい顔が近くに来たら恥ずかしくなっちゃうの!」

「んにゃ!? バカにゃ事言ってんじゃないわよ! ば、ばかっ!」

 

 顔を真っ赤にしている鈴は可愛いけど、横腹をつねるのは止めてぇ。地味に痛いから……

 

「とりあえず湊は性別が変わっても湊だって分かったわ。なら私はまだ諦めないから!」

「えっどういうこと?」

 

 諦めないってなにを? 

 

「湊はIS学園に行くんでしょ?」

「うん、姉さんの家族だから入学することが決まってるの」

 

「私もIS学園に行くから三年間はずっと一緒よ!」

「鈴も入学してくれるんだ。鈴が居てくれるのすっごい心強いからうれしいよ!」

 

「そう言う訳よ一夏! 知り合いの居ない所に行く湊が頼るのは私なの! ふふっ、あんたの負けよ一夏!!」

「いや、勝ち負けって話じゃないと思うが……オレもIS学園に入学するぞ」

 

 一夏がISを動かせることが世界に知れ渡っているから自己防衛をするためにもIS学園でISの事を学ぶ必要があるみたい。

 

「は? なんであんたが女子高に入るのよ? バカなの? キモッ!」

「きもいってのは止めてくれ……かなり効くからな。仕方ないだろ、ISを動かしたから俺も強制入学なんだよ」

 

「あの噂本当だったのね……でも負けないから! とりあえず一週間は日本に居る予定だからその間は湊の家に泊るわ。これは決定事項よ!」

「鈴の家引き払っちゃったもんね……うん、分かったよ。一週間も一緒に居れるのすごくうれしいね!」

 

「はい私の勝ち~! じゃあ早速行きましょ! 男二人はそこでゲームでもしてたらいいんじゃない?」

「ま、待ってくれ!? 俺も湊の家に泊まるから!」

「え、私の家に一夏も泊まるの……さすがに恥ずかしいかも……」

「ほらそこイチャイチャしない! 行くわよ!」

「わぁ!じゃあ、一夏も弾もまたねー」

 

 それから鈴と一緒に一週間を楽しく過ごした。水族館に行ったり遊園地に行ったりと遊んでいたらあっという間に時間が過ぎていった。

 

 中国に帰る日は皆で見送りに行った時に一夏と弾と鈴でこそこそと話をしていたと思ったら突然大声を出して飛行機に乗って行っちゃった。何を言ったんだろう?

 

「私はヘタレじゃないわよ!!」

 

 ほんとに鈴になんて言ったの……?




鈴ちゃんはへたれ。

読んでいただきありがとうございます!

ISのNo.1ヒロイン(私調べ)の微少女アイドルこと鈴ちゃんの登場回でした。


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