ゾンビが人間を守って何が悪い (セイント14.5)
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解説編 レベル0.歴史のお勉強

未プレイの方のために、Destiny1やそこまでのストーリーを簡単に会話形式で説明します。既プレイの方は、読まなくても大丈夫です。


※登場人物


ケイド6…人類の守護者ガーディアンの三つの職業のうち、『ハンター』を代表するリーダー。エクソと呼ばれるアンドロイドでお調子者。いつも外に出たがっている。


イコラ・レイ…ガーディアンの職業『ウォーロック』をまとめる。種族は人間。疑問はそのままにしておかないタイプ。


ザヴァラ…ガーディアンの職業『タイタン』を統括する。アウォークンとよばれる、肌の白い人類の派生種族。頭の固さと責任感では誰にも負けない。





Destiny1からDestiny2までの少しの間…

 

タワー、バンガードの会議室

 

 

「イコラ、こんな時間に呼び出してどうした?もしかしてデートのお誘いか?俺はいつでもOKだぞ!さあ!」

 

 

「ケイド。聞きたいことがあるの」

 

 

「なんだ?まさか…スリーサイズか!?ちょっと待ってろ、今測ってくる!」

 

 

「違う。ケイド、あなたはトラベラーと我々の歴史についてどのくらい知ってる?」

 

 

「哲学的な質問だな。例えるなら…」

 

 

「いいから答えて」

 

 

「なんだよ…歴史だろ?俺たちの」

 

 

「そうだな…まずはトラベラーだ。真っ白の超デカイ球体!それが火星に現れて、俺達にすんごいテクノロジーをプレゼントしてくれた!」

 

 

「人類はもう大喜び!黄金時代の到来だ!太陽系のどこにも、人間が住んでない星なんか無くなった!あと俺が産まれた!これは一番大切だ。テストに出すぞ」

 

 

「エクソ。自己増殖機能を備えた、超高性能アンドロイド。あなたもその一人よね、ケイド」

 

 

「ああ、そうさ。おでこの角がチャーミングだろ?」

 

 

「そんで…あー…そのあと…」

 

 

「暗黒」

 

 

「そう!暗黒…ってなんだっけ?」

 

 

「はぁ…外宇宙からトラベラーを追ってきた敵性体の総称。トラベラーがガーディアンにもたらす『光』の力に対して呼ばれるの」

 

 

「暗黒には4つの種類がある。宇宙を放浪し、略奪と虐殺を繰り返すフォールン。虫と死の神を崇め、生物のことごとくを喰らい、侵し尽くすハイヴ。その圧倒的な軍事力で複数の銀河を手中に収め、未だ侵略を続ける大帝国カバル。そして、星の機械化と時間改変による我々の排除を目論む機械の集団。暗黒の中の暗黒とも呼ばれるベックス」

 

 

「あー。そうだったな。つまり暗黒は敵だ。そんでトラベラーと人間はそいつらと、それはもう戦ったんだ!」

 

 

「でもダメだった。もう全然。負けばっかり。人類はついに月まで奪われて、地球のこんなところにまで押し込まれた」

 

 

「もうダメか…そう思ったその時!地球に移動していたトラベラーが最後の力を振り絞り、暗黒を撃退…はしてないが押しとどめた!」

 

 

「そんで、トラベラーが最後に放ったゴースト達…ガーディアン用のナビゲーターで、トラベラーの子機みたいなもんだな。意外とおしゃべり。…とにかくそれを使ってガーディアンを生み出した」

 

 

「そこからは私が話そう」

 

 

「ザヴァラ!来てたのか!」

 

 

「今来た所だ」

 

 

「ガーディアン達は暗黒に対し勇敢に戦い、壁を築き、『シティ』と『タワー』を築いた。今我々がいる所だな」

 

 

「我々は団結し、バンガードを作ってガーディアンを組織した。ガーディアン達に装備を提供し、訓練を施し、送り出してきた」

 

 

「もちろん予期せぬ危機が我々を襲うことが何度もあった。ガラスの間…ハイヴの王子クロタ。エルダーズ・プリズンの挑戦…そして邪神オリックス…しかし、その度に、彼らは我々と共に戦い、勝利を収めた」

 

 

「彼ら…今は何をしてるのかしら」

 

 

「さあな。暗黒と戦ってるのだけは確かだ」

 

 

「新たな武器を求めて?」

 

 

「かもな」

 

 

「とにかく、そうして我々は今日もガーディアンとして、人類を守っているわけだ」

 

 

「というわけで、今日の会議を始めるぞ。二人とも位置につけ」

 

 

「イコラ。歴史をうまく言えた俺へのご褒美は、一週間外出権がオススメだぞ!」

 

 

「ダメ」

 

 

「なんだって!?」

 

 

「おい。早く位置につけ。ハンターのうちの一人が妙な反応を見つけたらしい。そう言ったのはお前だろう、ケイド」

 

 

「ああ、そうだった。俺が思うにアレはカバルだと思うんだが…」

 

 

 

Destiny2へ続く

 

 



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レベル0.1 ガーディアンとは



またしても解説です。いや〜本編では長すぎて語れないことって多いんです。お暇でしたら読んでみてくださいね。
独自解釈や記憶を頼りに書いておりますので、「ここ間違ってるよ」なんてところがあったら教えてください。




 

 

「ケイド」

 

 

「ザヴァラ!どうした?」

 

 

「昨日のことだが…バンガードに所属しているハンターの一人から、お前の助言が非常に分かりづらいという苦情が来た」

 

 

「なんだ。いつものことじゃないか」

 

 

「これで通算10000通目だ。これまでもお前に注意するなどして対策を取ったが、バンガードはついにこの問題について総力を挙げて解決しなければならないものだと認識を改めた」

 

 

「そりゃ…大変だな。俺に協力できることはあるか?」

 

 

「………」

 

 

「…あー…いや、俺は…そのー、ワザとじゃないんだ。分かってくれ!」

 

 

「…バンガードは、『ケイド6再教育プログラム』と称して、お前の知識を問い直すことにした」

 

 

「…つまり、どういうことなんだ?」

 

 

「ケイド。これからいくつかの質問をする。それに全て答えられれば、再教育プログラムは終了だ」

 

 

「なんだ。簡単じゃないか」

 

 

「ただし、答えられなかった場合は…その都度、我々から、時間をかけた説明を座って受けてもらう」

 

 

「ウソだろ?まるで出来の悪いティーンエイジャーだ!俺はもうそんな歳じゃないのに!」

 

 

「これはバンガードの総意だ。お前がなんと言おうとな」

 

 

「早速始めよう。時間が惜しい…私にも仕事がある」

 

 

「チクショー!」

 

 

………………

 

 

「さて、では最初の質問だ。『ガーディアン』とはなんだ?」

 

 

「ガーディアン?俺たちのことだ。それ以外に何がある」

 

 

「…私は定義の話をしている。お前が事実を並べたとしても、それは答えにはならない」

 

 

「…あー…そうか。なるほどな」

 

 

「つまり、お前はこう言いたいワケだ。『ケイド。お前はバカだ』」

 

 

「それは違う。私はお前に正しい答えを問うているだけだ」

 

 

「フーン。まあいいさ。ガーディアンだろ?ガーディアンっていうのは…」

 

 

「それは…つまりー…うん…俺たちのことだ」

 

 

「…再教育プログラムを開始する。ケイドを拘束してくれ。椅子に座らせる」

 

 

「お、おい!何すんだ!なんだこのワイヤーは!まだ俺は答え終わってないぞ!」

 

 

「いいか、ケイド」

 

 

「ザヴァラ!俺はこんなことをされるような事をしたのか!?助けてくれ!おい!」

 

 

「ケイド、黙って聞いていればすぐに終わる」

 

 

「…………まだか?」

 

 

「まずはガーディアンの定義の話からだ。ここからはウォーロックの有志がお前に説明してくれる」

 

 

「やあ、ケイド6。私はライアス76。君と同じエクソで、君とは違ってワンオフタイプじゃない」

 

 

「はあ…分かった。分かったよ。全く…御託はいい。さっさと始めてくれ」

 

 

「君の助言が分かりづらいとバンガードに手紙をわざわざ直筆で書くこと37…いや、先程まで書いていたのを加えれば37.61度だが…ついにこの時がやってきたというわけだ。」

 

 

「ザヴァラ!助けてくれ!こいつは暗黒の仲間だ!俺に洗脳波を送ってきてる!ザヴァラ!どこに行った!」

 

 

「さて…ガーディアンとは。君はシンプルに、我々だと答えた。ふむ。間違いではない。しかし、ガーディアンとはそれのみに留まらない」

 

 

「ガーディアンとはトラベラーに認められし戦士。暗黒に立ち向かい、トラベラーと人類を守るもの」

 

 

「そして、ガーディアンは、ガーディアンとなった瞬間に『光』という力を手に入れる」

 

 

「『光』には諸説あるが…曰く、生体エネルギーの塊…精神的な…霊魂のようなもの。もしくは自然に…あらゆる所に存在しているともいえる。解釈が共通するのは、トラベラーがきっかけとなって手に入れる点だ」

 

 

「………」

 

 

「…ふむ」

 

 

「ぉおおおおおわぁ、あ、あ、ぁ、あ、ん、ぎ、ぁああっ!!!?」

 

 

「残念ながら、君が眠ったと確信する度にこの高圧アーク電流を流すことを許可されている…クルーシブルで君が恐れるハボックフィストとは…比べものにならないぞ」

 

 

「はぁ……あー…畜生…ハボックフィストなんか…俺は恐くないぞ…間違えるな…」

 

 

「意識が戻ったようだね。では…ガーディアンの種類について話そう」

 

 

「ガーディアンは大きく分けて三種類あると言われている。すなわち…タイタン、ハンター、ウォーロック」

 

 

「それぞれに得意なことと苦手なことがあり、基本的には性格、体格などから、ガーディアンは自然と本人に向いた職業の形をとると言われている」

 

 

「つまり、正義感が強く、仲間との協力や鍛え抜かれた肉体こそ全てを解決すると信じるならタイタンに」

 

 

「勝利をこそ求め、そのために取れる手段は取るべきだと思うならば…もしくは、自らの美学が最も素晴らしいと思うならばハンターに」

 

 

「勝利、敗北…その繰り返しに辟易し、宇宙や真理の理解が問題解決へとつながると考えるのなら、ウォーロックになる」

 

 

「…まあ、その辺はゴーストが考えることだが」

 

 

「次はガーディアンの扱う『属性』についてだ。ガーディアンが扱うことができる力には3つの属性があることは知ってるね?」

 

 

「ああ、もちろん!ブレードダンサー、ガンスリンガー、ナイトクローラーだ!」

 

 

「それはハンターの話で、しかもブレードダンサーは今の主流じゃないだろう。アークストライダーと呼ばれてるはずだ」

 

 

「全く…とにかく、ガーディアンが扱う…というより、どこの誰であっても、武器や装備には属性がある。それはキネティック、アーク、ソーラー、ボイドだ」

 

 

「キネティックは実質的に、属性なしといえる。つまり、特に特徴がないのが特徴だ。だが、キネティック属性をもつ武器や装備は安価で扱いやすい」

 

 

「アーク。電撃に限りなく近い性質をもつ。青白い輝きを持つことも特徴の一つだな。まさしく電流のように物を感電させたり、それを連鎖させたりするのが得意だ」

 

 

「ソーラー。こちらは炎の力、太陽の力だ。強力な熱を帯びた武器を作り出したり、あふれるエネルギーをそのまま流用することができる。またウォーロックの間では、これが光の源になるとして『復活』を研究していたグループもある。暗黒の強化に伴って廃れてしまったのが残念でならない」

 

 

「俺としては、オシリスの試練で妙なことをされなくなって嬉しい限りだがね!」

 

 

「…そしてボイド。これは解析がほかの力ほど進んでいない。宇宙の無限の虚無的な力であるらしい。強い粘着性や可塑性をもってその場にフィールドを作り出したり、敵を縛りつけたり…エネルギーをそのまま放出しても十分な威力を得られる」

 

 

「ノヴァワープ!アレを考えたやつは天才だな!俺からも脳天に銃弾をプレゼントしてやりたい」

 

 

「…ガーディアンや暗黒は、これらの属性をもった武器を使って戦う。また、それぞれの種族に得意な属性がある。例えばフォールンならアーク、カバルならソーラーだ」

 

 

「…とりあえず、今日はこのくらいにしておこう。ケイドの処理が追いついていないらしい」

 

 

「…ああ、お疲れさん!やったぜ!早くどっか行ってくれ!」

 

 

「ケイド」

 

 

「ザヴァラ!どこ行ってた!探したんだぞ?」

 

 

「…彼には明日も来てもらうぞ」

 

 

「…オイ嘘だろ?」

 



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調査編 その1.ザナリー3



調査編として、各キャラクターについて今までのおさらいと深掘りをしていこうと思います。ストーリーには直接影響しませんが、良かったら読んでみて下さい。

とりあえず最初は彼から。



 

 

 

ーーー0530、聴取試験開始。被検体02『ザナリー3』

 

 

よう、はじめましてだな。報告は行ってるだろうが改めて、俺はザナリー3…ってことになってる。こんな言い方なのはなんでかっていうと、俺のホントの名前を誰も知らないからだ。ザナリー3って名前は俺のゴーストがつけたんだ。俺が生き返った時にな。

 

 

ーーー元のクラスは?

 

 

ん?ああ、俺はハンターだった。ハンターらしくクルーシブルがお気に入りだったし、もちろん暗黒と戦うために太陽系中を飛び回った。ああ、スパローレースにも出たな。俺、けっこういい所まで行ったんだぜ?スポンサーもつきかけたんだ。まあつかなかったんだけど…

 

 

ーーーファイアチームのメンバーは覚えているか?

 

 

…仲間?あー…そうだな…………ああ、お察しの通りさ…お恥ずかしながら、ってやつだな。…俺は決まった仲間を持つことがなかった。いや、まあ…その、組んでもらえなかった、の方が的確だな…。何故かって言えばそれは、ソリが合わないヤツがいたこともあったし、いやまあこれが大半なんだが…あとは、その…俺は…臆病者だったからだ。

 

 

ーーー『臆病者』?

 

 

『臆病者』…それが俺のあだ名だった。本来のハンターは、作戦のために敵のど真ん中を走り抜けることだってある。恐れ知らずの冒険…未知との遭遇。危険な、死ぬ寸前のスリルを楽しむヤツらばっかりだ。

…そんな中で俺は、戦いの中では仲間の後ろで隠れてばっかりだった。

 

 

ーーーPTSDか?その理由は?

 

 

なんでかは俺にも分からない。暗黒との戦いになると、途端に足がすくむ。視界にノイズが走る…ああ、めまいのことだ。あとは身体が金縛りにあったみたいに動かなくなっちまう。…ただ、ショットガンとグレネードしか持ってないのに、敵がうじゃうじゃいる所に1人で突っ込め、なんてそんな作戦、信じられるか!?俺が悪いんじゃない!そんな作戦立てるヤツが…ああ、いや、忘れてくれ…他のハンターならできるって言葉は何度も言われてきたんだ…

 

 

ーーーザナリー3、もう少し明確な話し方はできないのか?

 

 

うん?喋り方が気になるのか?俺はだいぶ気に入ってるし変えるつもりもないんだが…何?脈絡がなくてわかりづらい?おお、そいつは悪いな、考えとくよ…

 

 

ーーーチェック。意思の疎通に軽度の問題あり

 

 

………それで、まあ、話を戻すが…とにかく、俺はマトモに戦えない役立たずで有名だったんだ。だからチームを組んでくれる仲間なんかいなかったし、いたとしてもそれは数合わせや荷物持ちとしてだった。

もちろんハンドキャノンの練習を欠かしたことは無かったし、戦えるようになるためにできることは全部やった。まあ全部ムダだったけどな。

 

 

そんなことをしながら過ごしてた時に、アイツらがやってきた。そうだ。アンタらもよく知ってるだろ?カバルのレッドリージョン。あのデブのサディスト達。アイツらが俺達から光を奪った日、俺達はなすすべもなく散り散りに逃げた。たくさん死んだし、見殺しにした。俺もそのうちの1人になりかけたが、運良く助かった。…俺に名前をくれた、唯一の親友を失って。

 

 

ーーーゴーストはレッドリージョン襲来の際に失ったと

 

 

ああ。…正直に言おう。カバルが来た時、俺はこう思った。【助かった】!

元々俺は暗黒と戦うことなんかできないんだ。これからだって、今までのようにずっと逃げ回ってりゃいい。それに元々仲間なんかいないから仲間の死に悲しむこともない。誰も俺に文句なんか言えない!こいつは天恵だ!そう思った。

 

 

ーーーそれは、バンガードおよびシティに翻意があると受け取ることもできるが?

 

 

おお、いや、そんなつもりはない…もっと個人的な話さ。…そこから先は、まあ、知っての通りだ。しばらく暗黒に怯えて、隠れながらのんびりと生きのびてた俺だったが、その中で1人の男に出会った。ああ、そうさ。ダンナのことだ。ダンナは1人でフォールンの小隊と戦ってた。いや、ゴーストはいたが…とにかく、俺の目にはバカで無謀な戦いにしか見えなかった。

 

 

ーーー被検体01、『ガンドール』との邂逅。

 

 

結局、ダンナはボロボロになりながらも、フォールンに勝った!ありえないと思った…光をなくして、それでも戦おうってヤツはもうみんな死んだと思ってたしな。

 

 

ーーーザナリー3。お前は戦わなかったのか?

 

 

さっきも言ったろ?俺は戦えないんだ。その時だって、これから先どうやって生き延びようかしか考えてなかった。でも、どうやらダンナはそうじゃなかったらしい。人間かフォールンか分からないゴチャゴチャになってフォールンを倒して、フォールンから奪って生き残る。でもそれだけじゃなかった。ダンナはガーディアンの役目を忘れてなかったんだ!

 

 

ーーー『ガンドール』はガーディアンとしての務めを果たそうとしていたと?

 

 

光を失って、ボロボロで、でもどうしたって戦うことをやめようとはちっとも思ってないらしいとんでもないバカを見て、俺はどうしようもなく希望を見た。だからついてくことにしたんだ。…まあ、あんなに気むずかしいヤツとは思わなかったけどな。

 

 

ーーー『ガンドール』の性格に難があることは聞いている。

 

 

ああ、そうそう。さっきもちょっと言ったが、ダンナはその戦いが終わったあとに腕を失っちまって、フォールンの腕を取り付けてたんだ。ほかにも元から腕や足を機械化してた。

正直、その頃の俺は、俺のゴーストを奪ったこの腹の機械をなんとかしてぶっ壊してやりたい気持ちでいっぱいだったんだが、それについても考え直すいい機会になったよ。

 

 

ーーー腹の機械。フォールン技術による、透明化機能。ゴーストと引き換えに手に入れたものか

 

 

ああ。…そんで、まあ、ムリヤリついてくことにしたもんだからダンナはそりゃもう俺のことを邪魔者扱いするんだ!ことあるごとに俺の首根っこをつかんで放り投げようとするし、ライフ君が止めてくれなけりゃ死んでたかも…うう、いまさら寒気がしてきたぜ…

 

 

ーーーザナリー3がとめどなく冗談を言うことが耐えられなかったと、彼から報告されている。

 

 

冗談?ああ、そりゃ言ったぜ!渾身のやつを、ずっと溜め込んどいたんだ!誰も聞いてくれなかったからな…クールなやつからホットなやつ、ちょっとウェットなやつまでなんでも取り揃えてやった!

全部言い終わる頃にはダンナも何も言わなくなってたな。感動したのかな?

 

 

ーーー言葉も出ない。それで、『ガンドール』からはお前も戦力として戦っていたと聞いているが。

 

 

ああ。ダンナがいっつも一番矢面にいたんだ。俺には『好きにやれ』『やるなら後始末までやれ』の2つしか言われなかった。

ダンナが敵の気を引いて、正面から打ち倒す。その隙に俺が遠くからハンドキャノンを撃ったり、何か罠を仕掛けたりした。…ああ、そういやなんでか視界にノイズも走らなかったな…なんでだ?

 

 

ーーーこの会話は記録されている。検討はこちらでする

 

 

おお、そいつは…ありがたいのか?

 

 

ーーー0600。時間だ。本日の被検体02に対する聴取試験は終了。すぐに退室するように。お疲れ様。

 

 

終わったのか?まだまだ話せるんだが…

 

 

ーーー勘弁してくれ。明日は別の者が対応する。

 

 

そうか。おつかれさん。じゃあな!

 

 

………………………

 

 

「…どう見る?」

 

 

「どうもこうも、精神性も多少のコミュニケーション障害はあっても一般的。戦闘能力試験も、機動力および狙撃についてはトップクラス…戦力としては十分だ」

 

 

「では、何故彼はガーディアン時代に戦えなかった?」

 

 

「軽度のPTSDだろう。治療する機会が無かっただけだ…奇しくも、敵から逃げ回っていた期間がその治療に充てられたのだろう」

 

 

「…そんなに簡単なものか?」

 

 

「どちらにせよ、今は確信が持てない。更なる調査が必要だな」

 

 

「…まあ、そうなるか…先は長いな…」

 

 

「次の会話役は誰だ?」

 

 

「……俺だ…」

 

 

「そうか…頑張れよ。話は全部聞かなくてもいい。どうせ記録されている。お前は指定された質問をすればいい」

 

 

「ああ…」






ザナリー3は言いたいことを一方的にまくし立ててくるせいで会話しづらいタイプです(多分)



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その2.ゾンビもしくは暴風のガンドール



いまいちカッコよくならない主人公です。
個人的に、あまりヒロイックじゃない主人公のほうが好みです。まあだからこうなってるんですけど。鶏卵の問題みたいなもんですね。




 

 

 

 

ーーー0700、聴取試験開始。被検体01『ガンドール』

 

 

…俺をその名で呼ぶのをやめろ。今すぐにだ。

 

 

ーーー『ガンドール』…悪いが、お前が現在、自らの名を変えていようと、バンガードの登録名を優先させてもらう

 

 

…ならさっさと終わらせてくれ。ここは息が詰まる。まるで見せ物の檻だ。

 

 

ーーー【もしも】を想定し、防弾癖越しに話しかけている、それだけだ。我々は実験のためにここにいる。他意はない。

 

 

フン。どうだかな…

 

 

ーーー本題に移ろう。お前はどうしてフォールンの身体を手に入れるに至った?

 

 

カバルの襲撃でシティが落ち、逃げ延びた俺は逃走経路として旧ロシア連邦の山岳地帯を選択した。

結果、深いクレバスに落下し、重傷を負った。手足を含む複数箇所の骨折だ。そのクレバスの底でたまたまフォールンの基地跡を見つけ、バンダルの死体を剥ぎ取り、手足をフォールン製の義肢に取り替え、運良く生き延びた。以上だ。

 

 

ーーーでは、お前の身体に接続されているフォールンの身体は全てそのバンダルのものか?

 

 

違う。俺の身体は複数のフォールンを使い、ライフ……俺のゴーストにって複数回改造されている。

 

 

ーーーお前の身体が常人と比べて巨大なのはそのためか?

 

 

ああ。ライフが言うには、エーテルが俺の身体をエーテルに最適化させるために改造を進めた結果らしいが、俺にはよく分からん。

 

 

ーーーエーテルの人体に与える影響の詳細については、また後日に調査することになる。

 

 

そうか。

 

 

ーーーでは、次に、お前がここに至る経緯について話してもらいたい。

 

 

曖昧な質問だな。まあいい…順序立てて話そう。

フォールンの身体を得て生き延びた俺は、更なる生存のためにエーテルの確保…奪取が急務となった。その一環としてフォールンの小規模な部隊と何度か戦闘し、その中で更にフォールンの身体を手に入れた。

 

 

ーーーザナリー3とは、どこで出会った?

 

 

旧ロシアからヨーロッパ・デッドゾーンの間…細かい位置や日時は覚えていない。

俺がバンダルの義肢を奪って生き長らえた後、エーテル奪取のためにフォールンと戦闘した。右腕を失ったからキャプテンのを奪って取りつけたのもそこだ。

その後になって、ザナリー3の方から接触してきた。

 

 

ーーーどうして同行することになった?

 

 

知らん。アイツから付きまとってきた。俺は何度も拒んだし、首を掴んで放り投げてやったこともあった。

それでも着いてきたのと、ライフが同行に賛成したから仕方なく同行を許した。

 

 

ーーー…仲が悪いのか?

 

 

それも知らん。俺はあのポンコツと仲良くなりたいとは欠片も思っちゃいないがね。

 

 

ーーーザナリー3は『臆病者』と呼ばれ、戦闘は不可能と言われていた。

 

 

そうなのか?特に問題なく戦えていたように思えたが。ハンドキャノンは人並みに当たるし、ハンターによくある変な突撃癖も無かった…多分。まず俺がよく突っ込むから分からん。後ろに目はついてないからな。

 

 

ーーーでは次だ。デヴリム・ケイとの接触について。

 

 

…あのいけ好かないジジイがどうしたって?俺を殺そうとした。それだけだ。

 

 

ーーー彼から、お前はフォールンのスパイだと報告されている。

 

 

フォールンはスパイひとりのために同胞を何部隊も殺させるのか?バカにしてるとしか思えんな。

 

 

ーーー…バンガードでも、似たような見解が出ている。一応のチェックだ。

 

 

そうかよ。そろそろ終わりか?さっさと出してくれ。

 

 

ーーーまだだ。『暴風のガンドール』

 

 

………

 

 

ーーー火星。メリディアン・ベイの撤退戦。そこでガーディアンの本隊を逃がすため、殿として残ったファイアチームはお前の部隊だな?

 

 

…何が言いたい。

 

 

ーーー質問をしているだけだ。お前の異名…『暴風』がついたのは、その時メリディアン・ベイでは激しい砂嵐が巻き起こっていたからだ。…お前達とカバルの連隊が、撤退する部隊からは全く見えなかったほどの…

 

 

下らん。俺のあだ名の由来が何だって言うんだ?

 

 

ーーーその後のお前の聴取データの中に、【お前が仲間を殺した】との記述がある。これは事実か?

 

 

………ああ。

 

 

ーーーでは、その経緯について説明することはできるか?

 

 

……それが出来ないことは、その当時にも話したはずだ。話したくない。

 

 

ーーー隠匿は、時に誤解を産む。今、お前は危うい立場にいることを我々は懸念している。

 

 

だから事実を話せと?

 

 

ーーーそうだ。

 

 

…あまりなめるなよ、研究者風情が…いつも部屋に引きこもってるお前達に、ガーディアンの何が分かる!

 

 

ーーー分からないとも。だから聞いているのだ。

 

 

………なら、俺の答えはひとつだ。誤解したいなら好きにしていればいい。俺は何も言わん。

 

 

ーーーそうか。では、また明日にでも聞くとしよう。

 

 

バンガードに協力すると言った以上抵抗はしない。だが二度とここには来たくないな。

 

 

ーーー…ロックを解除した。もう部屋から出ても構わない。

 

 

フン…

 

 

 

………………………

 

 

 

「頑なに過去を話そうとしないな」

 

 

「ああ。だが戦闘能力に関しては問題なしだ。一部はガーディアンを超えている」

 

 

「だが、彼が反乱分子ではないと証明しなければ、戦力として投入することはできないか…」

 

 

「そこは仕方がないだろう。『彼』がいるとしても、奪還作戦は緻密な連携が必要なんだ」

 

 

「まあ、今はまだ時間がある…腰を据えて話をしていくしか無いだろうな」

 

 

「ああ、頭が痛いよ…」

 

 

 

………………………

 

 

 

『お疲れ様でした』

 

 

「ああ」

 

 

『…本当にお疲れのようですね』

 

 

「…あの日のことを聞かれた」

 

 

『そうですか…答えたのですか?』

 

 

「まさか」

 

 

『…そうでしょうね』

 

 

『あの日に何があったか…知るのは私とあなただけです。もう、何年も前のことになりますね』

 

 

『…あなたは、いつ自分を許すのですか?』

 

 

「…許す?それこそありえない」

 

 

『………』

 

 

『…エイリーク…ダカート76…イブキ・リンドーズ…』

 

 

「………」

 

 

『あなたが手にかけた仲間たちは、あなたを糾弾しましたか?』

 

 

「…関係ない。自分が許せないだけだ」

 

 

『仕方がなかった』

 

 

「それは何度も聞いた。あいつらからも…」

 

 

『…私に自由意思が生まれたのは、ちょうどその頃でした』

 

 

『私は幾重にも交差する思考のループに呑まれていました。ガーディアンとしてガーディアンを殺すあなたに、ゴーストとしてどうすればいいのか分からなかった。』

 

 

『結局、私はサポートデバイスとしてあるまじき【何もしない】という選択肢を選んだ…いえ、何もできなかっただけかもしれません』

 

 

『今の私はその際に発生したメモリの空白に生まれた、言わば偶発的なバグのようなものです…その際、あなたとの接続も、少し薄まりました』

 

 

『しかし、私は後悔していません。自由意思を持つことで、私は『私』になりました。あなたにも反乱しうる存在になりました』

 

 

「…昔話を始めて、なんのつもりだ」

 

 

『今から私が何をするか、当ててみて下さい』

 

 

「………」

 

 

『……せめて何か言って下さい……まあ、ちょっとあなたの過去を適当な人に打ち明けてくるだけです』

 

 

「…そうか」

 

 

『止めないのですか?』

 

 

「俺が止めたらやめるのか?行くなと言ってやめるならもう言ってる…」

 

 

『…痛いところを突かれましたね』

 

 

「行くなら行け。俺は寝る…」

 

 

『分かりました。では、とりあえずザナリー3のところへ…』

 

 

「それはやめろ。せめてケイの所に行け」

 

 

『分かりました。残念です』

 

 

「………」

 

 

『…冗談ですよ』

 

 






ふわっとした設定なので、どこかに矛盾があるかもしれません。その時は教えてください。またはオリックスの玉座のように広い心で許して下さい。


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本編 レベル1.我こそはガーディアン

初投稿です。


「…弱ったな」

 

 

さっきより勢いの強まった吹雪を見てつぶやく。

いくら敵が少ないとはいえ、やはりこんな山道を選ぶんじゃなかった。洞窟の壁にもたれかかりながら、今更意味のないことを考えて暇をつぶす。

 

 

『吹雪は少なくとも一晩、最長で二日ほど続く可能性があります。船を呼んで、一度シティへ戻りませんか?ここは寒くて…』

 

 

私のゴースト…ガーディアンのナビゲーターがわざとらしく震える。ひし形のシェルに入った大小の亀裂がこすれ、カチカチと音を立てる。

私はゴーストを手で制した。この手の冗談は嫌いだ。つまり、全くありえない仮定をするような…。

俺達が帰るべきシティはもうない。ついでに、ゴーストに寒さを感じる機能もない。

 

 

…そう。我々が、文字通り命をかけて守ってきたシティは、ついに敵の手に落ちたのだった。

カバル。レッドリージョンという一派だった。突然の襲撃に、我々は完全に敗北した。

シティを愛するタイタンは、カバル戦艦の砲撃から街や市民を守るため立ちはだかり、そのまま死んだ。

ハンターは飛び回り、何とか敵を減らすよう立ち回ったが、そのことごとくが失敗に終わった。

ウォーロックは混乱を鎮め、解決策を導き出すことに躍起になったが、答えはどこにもなかった。

 

 

我々は負けた。

俺もガーディアンとして戦ったタイタンの一人だった。

今では…頼るべき光も無い放浪者に過ぎない。

 

 

「これからどうすればいい?」

 

 

私はゴーストに尋ねた。ゴーストは俺よりずっと賢い。知り合いのウォーロックにこう言うと、全くナンセンスな考えだと笑われるのだが、少なくとも私はそう感じている。

 

 

『…あなた以外にも生きているガーディアンがきっといます。まずは彼らと合流しましょう』

 

 

「生きている、ね。光のないガーディアン…人類を守れないガーディアンは、本当に生きていると言えるのか?」

 

 

『…だとしても、これから生き返るのです』

 

 

「どうやって?」

 

 

『トラベラーの光を失いましたが、必ず取り戻す方法があるはずです。それを見つけましょう』

 

 

「俺が生き返るのと、みんなと合流することのどっちを先にやればいいんだ?」

 

 

『…お好きなように』

 

 

「そうか。なら、まずは光を取り戻そう」

 

 

自分でも意地の悪い問答だった。ゴーストをいじめるつもりはなかったのだが…光を失ったことで、無自覚のうちに精神が不安定になっていたのかもしれない。

 

 

光。ガーディアンの力の源にして、トラベラーを象徴するもの。曰く、生物、無機物…あらゆるところに存在するエネルギー。曰く、無限の勇気、情、奉仕の心…精神的パワー。実のところ、よく分かっていない何か。

これがないと、ガーディアンは何もできない。敵に撃たれれば死ぬし、復活できない。ガーディアンにとって光を失うということは、両手足をもがれ、感覚器官をすべて奪われたに等しい。

 

 

「よし…まず光だ」

 

 

なればこそ、取り返さなくてはならない。光を。力を。使命を…ガーディアンとしての、命を。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

夜が明けてしばらくすると、嘘のように吹雪が止んだ。降り積もった雪を何とかかき分けて外に出ると、周囲を一望する。

真っ白な雪と、淡い水色の青空が目に入った。というより、それしかなかった。目印になるようなものが全くない。

 

 

「これはまずいか?」

 

 

ゴーストに尋ねる。

 

 

『問題ありません。自分の位置もわからないゴーストはいません。問題は、しばしばガーディアンの居場所を見失うことですが…』

 

 

問題なさそうだ。ゴーストのナビに従い、歩を進める。

一歩。雪に足が沈む。

二歩。膝まで沈む。

三歩。腰まで雪が積もっているのか?

四歩…

 

 

『ガーディアン、止まって下さい!ガーディアン!』

 

 

五…

 

 

「ゴースト?どうし…」

 

 

瞬間、嫌な浮遊感が私を襲う。

 

 

『ガーディアン!ああ…まずい…!』

 

 

どうやら、私は雪山のクレバスに思い切り足を踏み入れていたようだった。

崩れ落ちる雪とともに、割れ目の底へ落ちていく。

景色が妙にスローだった。ゴーストの声が遠くなっていく。走馬灯。何度も見た景色が、視界に現れては消える。

 

 

いや、大丈夫だ。ガーディアンは死んでもゴーストの光の力で蘇生してもらえるのだから…

…光?

 

 

「…っぁあああああーーー!」

 

 

死ぬ!死ぬ!このままだとまずい!

二度と生き返れないことを思い出した俺は、がむしゃらに手足を伸ばした。

ボロボロになったグローブが氷壁を引っかく。落ちるスピードは変わらない。

ブーツで氷を蹴る。スピードはだんだん早くなる。

真っ暗なクレバスの底が近づいてくる。

 

 

 

重い衝撃。俺はたった数秒のうちに、意識を手放した。

 




あとがき

Destinyの世界観が好きなのですが、二次創作は少ないのが残念だと常々思っていました。
だったら作ればいいじゃないかぁ(ひらめき)


ちょっとした設定

主人公は名もなきガーディアンです。ちなみにタイタンですが、これは私の好みです。
時系列はDestiny2開始直後、レッドリージョンがシティを制圧した後です。主人公は人間です。まだ。

ヒロインや仲間は作るかもしれないし、このままゴーストがヒロインになるかもしれません。
これが欲しいぞ!という方は感想で伝えてもらえると、私がそれを読んで要望に応える可能性があります。


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レベル2.我こそはガーディアンだったもの

「…は、あ…」

 

 

『ガーディアン…ガーディアン!』

 

 

「…く…」

 

 

ゴーストの声が聞こえる。返事をしようとするが、その度に身体のどこかが痛み、言葉にならない音が出るだけに終わる。

 

 

『ガーディアン…状況を説明します』

 

 

『あなたはロシア連邦の雪山を徒歩で移動中、クレバスに足を滑らせて落下。今は…そのクレバスの底です。』

 

 

『あなたの身体に複数の骨折が見られます。ですが…』

 

 

「治るのを…ぉ…待ってる…暇は無い」

 

 

少しずつ意識がハッキリしてくる。しきりに痛みを叫ぶ身体をなんとか宥め、ゴーストに言葉を返す。

 

 

『…ええ。その通りです。ここは極寒の地…食料も熱源も無い今、このままでは…』

 

 

「…ぐ…つっ…あぁああ!」

 

 

『ガーディアン!無茶をしないで!』

 

 

ゴーストの制止を無視して、氷壁にもたれて無理矢理に立ち上がる。

目に見えて折れているのは左腕と左脚…特に左腕から地面に落ちたらしく、左肩から先は骨がないかのようにぐにゃぐにゃだった。

 

 

「はぁ…っ…ゴースト…左腕は…」

 

 

『…光があれば治ります』

 

 

「…はっ…」

 

 

何をするにも光。やることは結局変わりないようだった。

 

 

『ガーディアン…ここから少し歩きますが、洞窟を見つけました。人工のもののようです』

 

 

「…?」

 

 

こんなところに洞窟?しかも人工だと?

 

 

『ああ、いえ、人間ではなくフォールンの遺跡のようですので、人工ではなく…フォールン工?…うーん』

 

 

合点がいった。フォールンは地球上のどこにでもいるのだ。こんなところにいても不思議ではない。

 

 

フォールン。今となっては懐かしい、4本腕の略奪者にして、ガーディアンの戦うべき敵。

適応力に優れ、敵性技術を奪うとそれをすぐさま利用できるほどの柔軟性をもつ。それは、この地球の厳しい環境による洗礼を乗り切るためにも利用された。

フォールンは地球上のこういった所にも拠点を築くことで、ガーディアンの目から逃れることもあった。

 

 

…今の俺では、ドレッグ一体にも勝てないだろう。

 

 

 

『フォールンの機械が残っていますが、生きているフォールンはいません。戦闘の後、廃棄されたということでしょうか…』

 

 

なんとか歩きながら、その洞窟を目指す。

少しすると、橙色のうすぼんやりした光が見えた。

 

 

『電力が生きているようです。これなら…』

 

 

ゴーストが先行する。何かを持って帰ってきたかと思えば、金属の棒と長いコードだった。

 

 

『応急処置ですが、ギブスの代わりにはなるでしょう。私は探し物をしてきます。』

 

 

そう言うと、ゴーストはまた洞窟の奥に消えていった。

私は洞窟の入口に着くと、ゴーストが持ってきた資材を使い、左脚のギブスを作ることにした。片腕が使えないので、代わりに口を使った。

噛んだだけでも、コードはひどい味だった。今後どれだけ飢えても、これにかじりつくことは二度と無いだろう。

 

 

ひどく不格好なギブスを四苦八苦しながらなんとか一つ作り終えると、ゴーストが戻ってきた。

 

 

『ガーディアン…朗報です!通信機器が生きています!』

 

 

ゴーストが揺れる。シェルを回して、喜びを表現している。

 

 

「一体…誰と、通信するんだ」

 

 

『もちろんバンガード…ではなく………近くにいる…誰かです』

 

 

ゴーストはあまり動かなくなった。

シティが落ちた以上、こういう時に頼るべきバンガードもない。こんな状況で何を頼れというのか。

 

 

バンガード。ガーディアン達を統括し、シティを守るためにあった組織。三人のリーダーにより、ガーディアンはそれぞれの任務をこなした。

ザヴァラ…タイタンのリーダー。非情にも映るその行動は、しかしシティを守るためにいつでも万全を期すためにあった。

イコラ…ウォーロックの代表。常に冷静で、何にでも疑問を持って取り組む彼女の助言に救われた者は数しれない。

ケイド6…ハンターの取締役。彼の望まない役職に対する不満を聞かなかったガーディアンはいない。彼の親しみやすさと面白くない冗談は、ピンチの際に強力な支えとなったと言うガーディアンもいた。俺は信じていない。

 

 

今は、その誰もが、いない。

 

 

『とにかく、オープンチャンネルで救援要請を出してみます』

 

 

「…やめておけ」

 

 

『何故?』

 

 

「フォールンが…来るだろう…俺は、戦えない」

 

 

『…そうでしたね。ですが、それ以外に助かる方法は…』

 

 

「ゴースト…」

 

 

私は洞窟の壁を右手で指し示した。

 

 

『フォールンの死体があります。バンダルです。エーテルがまだ残っています。触ると危険です』

 

 

「使え…」

 

 

『使う…?一体何を考えているのですか?』

 

 

「左腕を作るんだ…銃は撃てるように…なる」

 

 

フォールンの機械技術は非常に高い。実際、フォールンの中には身体を機械化して戦闘するものも多く見られた。まさに、今目の前にいるフォールンのように。

フォールンとて二足の生物だ。ガーディアンと同じような構造をしているかもしれない。

 

 

『まさか…しかし!危険です!前例がありませんし、腕を機械化しても動くとは限りません!それどころか…』

 

 

「ゴースト…」

 

 

『嫌です。光を取り戻したって、一度改造してしまえば、その腕はもう元には治せなくなる』

 

 

「ゴースト」

 

 

『…ガーディアン…しかし、私は…』

 

 

「やれ、ゴースト…!」

 

 

『………』

 

 

「…頼む」

 

 

『…きっと失敗します』

 

 

「ああ…それでもいい」

 

 

何もしないよりは、誰かの救いを求めて死ぬよりは、ずっといい。

 

 

「俺は…死ぬまで、いや…死んでもガーディアンだ」

 

 

ガーディアン。人類の守護者。人間を守るために最後まであがいて死ぬなら、それも本望だ。

 

 

『…では、始めます。寝転がっていて下さい』

 

 

『麻酔はありません。せめてコードを噛んでおいて下さいね。それと…早めに気絶することを祈って下さい。』

 

 

そう言うと、ゴーストは薄い鉄板を取り出した。

ゴーストは私の左腕をしばらく見つめると、おもむろをその鉄板を振り下ろした。

 

 

「っっーーーーーー!」

 

 

 

 

『…ガーディアン…』

 

 

ゴーストの声。

 

 

『ガーディアン…申し訳ありません…』

 

 

「どう…した…」

 

 

失敗したのか?そう思って首を左に向ける。

そこには、よく見る腕があった。

 

 

「…なんだ…」

 

 

そう。俺がいつも殴り倒していたバンダルの腕。

カチャリと軽い音を立てて、その腕は自身の望むように動いた。

 

 

「成功したのか…よかった」

 

 

『ガーディアン…いえ…失敗です』

 

 

『フォールンは機械を動かしたり、生きるためにエーテルを消費します。普通はサービターが供給するのですが…』

 

 

「…まさか…」

 

 

『…ええ。その腕も、エーテルがないと動きません。それだけならともかく…』

 

 

ゴーストはためらうように俯いた。

 

 

『ガーディアン…その…あなた自身も…』

 

 

嫌な予感がした。

 

 

『エーテルが無くなると、全く活動出来なくなります』

 

 

「何故だ…機械化したのは左腕だけのはず」

 

 

『神経系を接続する際に、機械に残っていたエーテルが逆流しました。いえ、機械を動かすには必要なので、それは正しいのですが…ガーディアン…いえ、あなたとの相性が悪く、エーテルによる侵食が始まりました。』

 

 

『何とか侵食を止めた頃には、あなたの身体の中にエーテルが通っていない所はほとんどありませんでした。』

 

 

「…なんてことだ…!ああ…最悪だ…」

 

 

「…今、俺の身体には…光じゃなくて、エーテルが流れているのか?…」

 

 

「俺は…それでもガーディアンなのか?光のないガーディアンならまだいい…だが、望んでフォールンの腕を持ち…身体の中を、フォールンと同じものが流れている…ガーディアン…?」

 

 

「俺は…どうやって今の俺を…ガーディアンとして、定義すればいい?」

 

 

『ガーディアン、気を確かに持ってください…』

 

 

「ゴースト…お前には俺が何に映る?」

 

 

『あなたははガーディアンです。それ以外のなにものでもなく…依然変わりなく』

 

 

「…嘘だな」

 

 

『そんなことは!』

 

 

「ああ…すまない。俺が認めたくないだけなんだ。自業自得だ。無理矢理ゴーストにフォールンの左腕をくっつけさせて、いざこうなってみれば…。死んで本望だ…なんて、本当に死んでみたら下らない。」

 

 

自嘲する。不思議と笑いが込み上げてくる。

 

 

『ガーディアン…』

 

 

「俺というガーディアンは死んだ」

 

 

「俺はもうガーディアンじゃない。俺のことをガーディアンと呼ぶな…今後一切」

 

 

『ガーディアン…!』

 

 

「二度は言わない…俺を苛立たせないでくれ」

 

 

『………では、ガーディアンにつき従わない私もゴーストではありませんね』

 

 

「なんと呼べばいい…俺も…お前も」

 

 

『…そうですね…では…』

 

 

ゴーストは少し考えるような仕草を見せた。

 

 

『ガーディアンであることを放棄したもの…ガーディアンとしての命を捨てた、動く屍ですね。分かりやすくゾンビでいいですか?』

 

 

「何とも言えないな。ゾンビか」

 

 

『…では、あなたが考えてください』

 

 

「いや、これでいいよ。…お前は、俺がガーディアンだったことの象徴だ。俺が捨てたガーディアンとしての命は、お前が預かっておいてくれ。」

 

 

『そうですか…では、私があなたの命を預かっている間、私を「ライフ」と呼んでください。あなたがガーディアンだったことを…その命を捨てたことを、忘れないために』

 

 

「分かった。…よろしくな」

 

 

『…ええ。初めまして、ゾンビさん。私は…ライフ。あなたのライフです。』

 

 




あとがき

あとがきはあったりなかったりします。
更新は不定期です。


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レベル3.略奪者の略奪者


第三話です。

敵の中ではフォールンが好きです。同種なのに派閥があったり、中には必ずしも敵対してないのがいたり、個性的なのが多いんです。




 

ガーディアン。トラベラーの従者にして、人類の守護者。

磨き上げたプラスチール製のヘルメットとガントレット。ジェットパックでどこまでも飛べる気がした。

 

俺は、ガーディアンであることに誇りを持っていた。

人類を守っている自負があった。敵をことごとく打ち倒し、全能感に浸っていた。

 

 

今はもうない。

 

…………………………

 

 

「いいことを思いついたんだ」

 

 

ぽん、と、わざとらしく手を叩く。

 

 

『きっと悪いことですね』

 

 

ゴースト…いや、『ライフ』がうつむく。ボロボロになったシェルも俺の腕のついでにちょっと直したらしい。

 

 

「お前にとってはそうかもしれない」

 

 

「だが、俺にとってはいいことだ。絶対に」

 

 

『そうですか…それで、一体何を思いついたのですか?』

 

 

「俺の身体をもっと機械化しよう。手始めに左脚だ。今ではまだ動くだけだ。戦えるようにしよう」

 

 

『…本当に死んでしまいますよ?』

 

 

「俺はゾンビだ。ちょっとやそっとでは死なん」

 

 

『それはただの…もういいです。バンダルを持ってきます。』

 

 

「頼む」

 

 

ライフが、俺の左脚に鉄板を振り下ろした。

 

 

 

『成功…で、いいのでしょうか。慣れてきた私に寒気がします』

 

 

「成功だよ。間違いなく」

 

 

俺の身体にくっついたバンダルの左脚が動く。接続には問題ないようだ。

 

 

『長さは調節しておきましたが、重さも何もかも違います。走ればバランスが崩れることがあるでしょうね』

 

 

ガシャガシャと新しい脚をいじくり回す。なるほど、これは確かに、走ることは難しいだろう。

 

 

「だが、ギブスのついた肉の足よりはマシだ」

 

 

『そうかもしれません』

 

 

「…む」

 

 

瞬間、目が眩む。左腕が妙に重く感じた。

 

 

『どうしました?』

 

 

「…目眩だ。それと…腕が、急にうまく動かなくなった」

 

 

『少し待ってください。見てみます…これは…』

 

 

『ゾンビさん。今すぐ通信機器を使って、オープンチャンネルで電波を流しましょう』

 

 

「どうして。危険じゃないか」

 

 

『あなたのエーテルが切れかけています。このままでは本当に死んでしまいます』

 

 

『電波を掴んだフォールンが怪しんでやって来るはず。それらの中には必ずサービターもいます』

 

 

「サービターを捕まえろっていうのか?」

 

 

『いえ。破壊しても構いません。サービターは破壊されても周囲にエーテルをまき散らします。それをこのタンクで集めれば…』

 

 

ライフが人間大の金属缶を取り出す。エーテルタンク。かつてフォールンの基地で、散々爆破した覚えがある。

 

 

「エーテルをそのタンクにどうやって集めるんだ?」

 

 

『…タンクを開けてれば勝手に入りませんか?』

 

 

「まさか!」

 

 

『生きているフォールンを見て学びましょう。実は、もう呼んであります』

 

 

電源の落ちたヘルメットの代わりに腕に取りつけたレーダーが赤く光る。

 

 

「…お前のそういうところは相変わらずだな。今度お前を握り込んでフォールンを殴ってやる」

 

 

『遠慮しておきます。敵はフォールンの一小隊。ドレッグ三体にバンダルが一体…まあ、斥候ですね』

 

 

「サービターがいないじゃないか」

 

 

『もっと後ろにいるようです。まあ、ドレッグ一体でも多少はエーテルを持っているでしょう』

 

 

「…クソっ!なんて無計画で無責任なやつなんだ!」

 

 

『あなたには言われたくありません!』

 

 

「ふん。ところで、武器はあるのか?」

 

 

『たくさんあります。フォールン製のものが』

 

 

「持ってきてくれ…いよいよ俺はフォールンの一員だな」

 

 

『これからフォールンを倒すんですが…ああ、いえ。フォールンは各ハウスで戦争してましたね』

 

 

ライフが俺にワイヤーライフルを手渡す。

アーク(電撃)エネルギーをまとった弾丸を打ち出す、バンダル用の武器だ。こいつに初めて撃たれた時は思わず叫んだぐらいには痛い。

 

 

「ああ。仲間内で殺し合うのはやつらの得意技さ」

 

 

久々の銃の感触。思いのほか軽い。左腕にもよく馴染んだ。

 

 

「よーく狙って…」

 

 

金属の折れた柱を支えに三本指になった左手を添え、右手でトリガーを握る。スコープがついていなかったので、とりあえず勘で撃つことにした。

 

 

レーダーが映す赤点が大きくなる。物音も聞こえる。既に洞窟の曲がり角を挟んで向こう側にいるようだ。

 

呼吸を抑える。右手に汗が滲む。つとめて肩の力を抜く。ここで死んだら、今までのように生き返ることはできない。フォールンは残虐だ。間違っても俺を生きたまま放り出すことはない。

 

失敗は許されない。

 

 

『…2…1…来ます!』

 

 

ゴーストの合図と同時にワイラーライフルの引き金を引く。

スプリングが水中で跳ねたような、特徴的な音とともにアークエネルギーの塊が走る。

 

 

「頼む!」

 

 

ライフルをリロードしながら祈る。どうか当たりますように。

 

 

『…ヒット!ドレッグ一体が沈黙。あと三体です』

 

 

「よし!」

 

 

ライフルを構える。奴らは少し混乱したあと、既にこちらに向けて腰を落として戦闘態勢を取っていた。

 

 

『バンダルを狙ってください!小隊長です!』

 

 

「分かってる!」

 

 

もう一度引き金を引く。今度はバンダルの前に出ていたドレッグの胸を撃ち抜いた。

 

 

『違います!そいつじゃない!』

 

 

「射線上にいたらどうしようもないだろ!ああクソ、もう一度だ!」

 

 

敵の攻撃が激しくなる。たまらず柱の裏に身を隠した。

 

 

『ドレッグが電磁ナイフを取り出しました!こちらに走ってきます!』

 

 

「うそだろ!?」

 

 

まずい!近接戦闘も想定しておくべきだった!

 

 

『来ます!ジャンプしました!直上!』

 

 

「っーーーー!」

 

 

ドレッグがナイフを両手に持って飛びかかってくる。フォールンの中では一番下っ端の、失うもののないドレッグにとってお得意の戦法だった。

たまらず転がって回避する。

 

 

「っがあああああああ!」

 

 

骨がきしむ。激痛が走った。ここに落ちてきた時に細かいところにヒビが入っていたらしい。これ以上激しい動きはできない。

 

 

何とかライフルを構える。向かってくるドレッグに向かって電流が走った。

 

 

「ギュアアアア!!」

 

 

ドレッグの悲鳴。右脚が吹っ飛んでいた。切断面が焦げつき、血が流れていた。

 

 

「左だったらお揃いになれたかもな!」

 

 

ライフルを撃つ。今度は頭に命中した。ドレッグはしばらく痙攣したあと動かなくなった。

 

 

『あと…あ、いえ。撤退していきました』

 

 

「フォールンが撤退?」

 

 

『いくら気性の荒いフォールンだって撤退ぐらいするでしょう』

 

 

「…そうかね」

 

 

『それよりエーテルです。このドレッグ…はダメですね。最初に撃った方…ありました』

 

 

ライフがドレッグのつけていたマスクを引きはがす。パイプの先にはドレッグがつけていた小さな箱が繋がっていた。

どうやらこれにエーテルを貯めてあるらしい。

 

 

『つけて下さい』

 

 

「ウソだろ?」

 

 

『残念ながら、ドレッグと間接キスです。…生きるためです』

 

 

「クソ…」

 

 

しぶしぶマスクをつける。心なしかライフが笑っているように見える。後でお仕置きしてやることを心に深く刻む。

 

 

数回呼吸をすると、空気とは違うものが肺に流れていくのが分かる。恐らくこれがエーテルだろう。

だんだん思考が明瞭になり、機械化した腕が軽くなった気がした。

 

 

「まるで麻薬だな」

 

 

『そんなに【イイ】ものですか…エーテルというのは』

 

 

「ああ。お前も吸うか?」

 

 

『遠慮しておきます。それより、しばらくはそれをつけておいてください。今あなたの装備にくっつけます』

 

 

「フォールンと見分けがつかなくなりそうだ」

 

 

『今度は胴体も作りますか?』

 

 

「それもいいかもな」

 

 

『…あなたはフォールンになりたいのですか?』

 

 

「俺はフォールンじゃない。ガーディアンでもないが…」

 

 

『ですが…!』

 

 

ライフが一回転する。慌てている。

 

 

「どうした」

 

 

『フォールンが来ます!さっきより多い…!』

 

 

まずいことになった。

 

 



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レベル4.脳筋は銃で殴る

フォールンの援軍。まさしくピンチだ。正直に言うと、勝てる気がしない。

 

 

「フォールン…!詳しく分かるか?」

 

 

『ドレッグ5、バンダル3!それと…キャプテンがいます!サービターを連れています!』

 

 

「一部隊丸々来てんじゃねえか!一体何したんだ!?」

 

 

『何かしたのはあなたでしょう!?バンダルを取り逃したなら、仲間を呼んでくるのは当たり前です!』

 

 

「…確かにそうだが!ワイヤーライフルで全部倒すのは無理が…」

 

 

『ああ!もう来ます!構えて!』

 

 

「っ!」

 

 

キャプテンの雄叫びが洞窟内を反響する。どうやら怒っているらしい。同調したのか、他のフォールン達もそれぞれに声を上げる。

 

 

「…まさか、フォールンの大声に恐怖する日が来るとはな」

 

 

今までは、煩わしいとしか思っていなかった。慣れた頃には、もう意に介さなかった。自らの無力がどこまでも恨めしい。

 

 

「………ライフ。考えがある」

 

 

ドレッグから剥ぎ取った電磁ナイフを見つめる。エーテルも補給した今、身体は動く。

状況は、さっきとは違う。絶望ではない。むしろ…

 

 

 

……………

 

 

 

「いいぞ…そのまま来い…」

 

 

身をかがめ、フォールンを待つ。

 

 

『フォールン、曲がり角の向こう側に到達』

 

 

『…本当にやるのですか?あなたは元タイタンなのに…』

 

 

「だが、今はタイタンじゃない。なら、やることだって変わる」

 

 

『慣れの話をしているんですよ』

 

 

「やらなきゃ死ぬのは変わらんだろう」

 

 

『そうですか……来ますよ』

 

 

「よし…そのままだ…」

 

 

ドレッグが部屋に入ってくる。キョロキョロと辺りを見回す。

 

 

『…気づかないものですね』

 

 

「生き物は上下の動きに弱いのさ。フォールンもそうかは知らんが…」

 

 

俺は、柱を伝って天井の梁に登っていた。ハンターのマネだ。かつての俺はタイタンだったが、一度としてこんな卑怯なマネはしなかった。今回は仕方なく…だ。そうやって勝手に納得して、作戦通りワイヤーライフルを構える。

 

 

「ドレッグは後だ。次…」

 

 

続いて入ってきたバンダルに狙いを定める。

呼吸を整え、引き金を握る。エーテルを補給したおかげで、支えが無くても持ち上げられるようになっていた。

 

 

「…ふっ!」

 

 

特徴的な発砲音。何度聞いても慣れないな、なんてのんきなことを考えながら、リロードする。

弾丸はうまくバンダルの頭を撃ち抜いたようだ。プシュー、という音を立ててバンダルが倒れる。

 

 

「アレは、パイプからエーテルが漏れる音だったんだな」

 

 

続けてバンダルを撃つ。今度は肩に命中した。ドレッグの一体がこちらを指して叫んでいる。場所がハッキリとバレたようだ。

 

 

「やれると思うか?」

 

 

電磁ナイフを取り出し、強く握る。刀身はバチバチと音を立てている。

 

 

『やるしかありません。それに、これはあなたが考えたんです…残りはドレッグ5、バンダル1、キャプテンとサービターです』

 

 

部屋にキャプテンが入ってくる。榴弾ランチャーを構えている。アレはワイヤーライフルより痛い。いや、今は痛いじゃ済まないだろう。当たればどこかは確実に吹っ飛ぶ。

 

 

「行くぞ…行くぞ、クソ…行くぞ!」

 

 

ワイヤーライフルを適当に投げつけると、踏ん切りのつかない足を殴りつけ、不格好にジャンプしてキャプテンの頭に飛びかかった。

頭の装飾を掴んで張り付くと、キャプテンのやたら大きい叫び声が頭に響いた。

 

 

「ぅわあああああああああ!!」

 

 

ナイフをむちゃくちゃにキャプテンに向かって突き立てる。傍目に見れば、大人に駄々をこねる子供にも見える体格差だった。

 

 

「ぐっ…クソ!死ね!死ね!死んでくれ!死ねぇぇえ!!」

 

 

ナイフがひときわ深く突き刺さる。キャプテンが榴弾ランチャーを天井に向けて撃ち込む。金属片や氷が砕け落ち、俺の頭に当たる。

 

 

「づっ…このっ!」

 

 

「グオ…オ…ォ…!」

 

 

キャプテンのエーテル供給パイプが千切れる。首元から吹き出る血が顔にかかる。

 

 

「っーーー!ぐ、わ…!」

 

 

瞬間。背中に衝撃。

 

 

『バンダル!』

 

 

混乱から回復したバンダルが、俺に殴りかかってきていた。

 

 

「く、このやろ…!」

 

 

ナイフを振り回す。バンダルは身体を後ろに逸らして回避する。

 

 

「クソ!あともう少しなのに…!」

 

 

俺と電磁ナイフによる涙ぐましい努力により、キャプテンはもう死に体だ。だが、その周りがこれで終わらせることを許さなかった。

 

 

『【ガーディアン】!これを!』

 

 

「っ!【ゴースト】!」

 

 

放り投げられたドレッグのピストルを右手で掴む。

倒れていくキャプテンから飛び降り、そのままの勢いでドレッグをピストルの柄で殴りつけた。

 

 

『銃なんですから撃ってください!』

 

 

「うるさい!こっちの方が早い!」

 

 

飛びかかってくるドレッグを足で払うと、そのまま脳天に向けてピストルを撃つ。

 

 

「ほら!撃っただろ!」

 

 

『後ろ!』

 

 

「っぐお…!」

 

 

背後に鋭い痛みと温かい感触がする。バンダルが背中を切りつけたようだった。出血もしている。

 

 

『このままでは…!』

 

 

「先にこっちだ!」

 

 

バンダルを正面から蹴りつけ、姿勢を崩す。そのままナイフを肩に突き立てて倒し、今度は首を切りつける。吹き出る血で、視界が塞がれる。

 

 

「次!どこだ!ライフ!」

 

 

血を拭いながら叫ぶ。

 

 

『右手!三時の方向です!』

 

 

「こっちか!」

 

 

ピストルを撃つ。

 

 

『違います!そっちは九時です!』

 

 

「九時か!こっちだな!」

 

 

後ろ蹴り。ドレッグの腹に当たったらしい。

 

 

『違っ……納得いきません!』

 

 

「倒したんだからいいだろう!」

 

 

血が落ちてだんだん視界がクリアになる。残るは…

 

 

「ドレッグが2体。それと…」

 

 

『サービターです。今頃入ってきました』

 

 

ドレッグに対して応戦する。光も装備がないとはいえ、身体が動くなら遅れはとらない。1体は頭を殴りつけ、2体目はナイフを投げつけて殺す。

 

 

「さて…」

 

 

大きな黒の球体に、蛍光色の紫で縁どりされた円状の機械がいくつか埋め込まれた…一言で例えるならば目玉のような形をしたサービターがゆらゆらと浮いたまま移動している。こちらを見ているようにも見える。

 

 

「できればそのまま撃たないで欲しいんだが…」

 

 

サービターが動きを止め、機械的な甲高い音を立てる。装備されている砲を構えた合図だ。

 

 

『来ます!』

 

 

「やっぱりダメか!」

 

 

サービターはフォールンの中では一際装甲が厚い。ドレッグのピストルでは歯が立たないだろう。

 

 

「何か、何かあったか…」

 

 

ボイド…宇宙的な(実のところ俺にはよく分かっていない)…エネルギーを纏ったサービターの砲弾を転がってかわし、周りを見渡す。

 

 

『これを!』

 

 

ライフが、キャプテンの持っていた榴弾ランチャーを投げる。確かにこれなら十分なダメージが望めるだろう。

 

 

「くっ…重い!」

 

 

何とかランチャーを持ち上げ、サービターに向けて撃つ。一発撃つごとに身体がきしみ、後ろに吹っ飛びそうになる。

 

 

5発も撃つ頃には、俺の肩が外れかかる代わりにサービターは小さなクレーターだらけになっていた。

 

 

「これで…終わりだ!」

 

 

爆発音。榴弾ランチャーがサービターの中心に命中すると、サービターが高速で回転しはじめる。サービターは一定以上のダメージを追うと、形を保てなくなって自壊するようになっている…そう俺は思っている。

とにかくしばらく撃っているとサービターはみんなこうなるので、あながち間違いではない…ハズだ。

 

 

ひときわ甲高い音を立てると、サービターは爆発した。辺り一面に破片が飛び散る。

 

 

『終わり…ました。生きてます!』

 

 

「ハァ…ハァ…フー…」

 

 

ランチャーを床に落として息を整える。そういえば…

 

 

「お前…さっき俺のこと、ガーディアンって呼ばなかったか?」

 

 

『…いえ、気のせいでは?』

 

 

「………」

 

 

ライフを見つめる。

 

 

『………』

 

 

『…呼びました。いけませんか?それにあなたも私のことをゴーストと呼びました』

 

 

観念して白状したが、開き直るつもりのようだ。

 

 

『ガーディアン。やはりあなたはガーディアンとして動いた時の方が…』

 

 

「それ以上言うな。握りつぶすぞ」

 

 

『そんな力もないくせに。私がいなければあなたはここで凍死していました』

 

 

「それとこれとは話が別だ」

 

 

『…そうですか。では今は、とりあえずゾンビとライフ。それでいいでしょう』

 

 

「とりあえずじゃない。これからずっとだ」

 

 

『………』

 

 

『…とりあえず、エーテルを集めましょう。首尾よくサービターも倒せました。上手くいけばエーテルを生産する方法も見つかるかも…』

 

 

「ああ…後は頼む。俺は疲れたよ…少し眠る。何かあったら起こしてくれ」

 

 

『ええ。ええ。わかりました…【ゾンビさん】』

 

 

硬い地面に横になる。天井の氷壁は太陽の光を少しも通さないほど分厚いようだ。今後のことを何となく想像しているうちに、意識は薄らいでいった。

 

 




あとがき


Destinyをプレイしている、もしくは知っている方には説明ばかりでストレスのないように。未プレイの方(読んでるか分からないけど)には置いてけぼりにならないように…両方やらなくちゃあいけないのが難しいですね。


分かりにくい所とかは教えて下さるとモチベーションにもなります。感想下さい(直球)


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レベル5.魔改造計画

少し間が開きました。

今回はクロスオーバーというか、個人的に好きな作品の要素を思い切って取り入れています。

Destinyの世界観や整合性を崩さないレベルになるよう作りましたが、そういうのが苦手な方や純粋にDestinyのみを楽しみたい方はご注意ください。


追記:クロスオーバーについて少々書き直しました。物語には支障ありませんが、過去のものは過去に置いていきます。



 

 

夢を見た。カバルの無機質な戦車が進む。さっきまで軽口を言い合っていた戦友をその履帯の下におきながら、俺に砲口を向けていた。俺は動けなかった。友人の死に動揺したのではない。後ろに、守るべき街と市民がいたから…

 

ずいぶん久しぶりの夢だった。

元々死体だったガーディアンが夢を見るほど眠ることは、実は少ない。

光さえあれば、いくらでも活動できるからだ。

 

 

…光はもうない。

 

 

……………………

 

 

『起きてください』

 

 

ライフの声で目を覚ます。身体の節々が痛み、麻痺したように動かない。

 

 

「ここは寒すぎるんだ。疲れがちっとも取れない。全く…」

 

 

『あなたはよく眠っていました。およそ6時間といったところでしょうか』

 

 

「そうか。日は出てるのか?」

 

 

指先から少しずつ動かして身体を慣らす。カチャ、という音に驚いたが、すぐに腕と脚を取りかえたことを思い出した。既に接続部の痛みはかなり薄まり、フォールンに受けた傷も半分ほど塞がっているように思えた。改めて、ライフの性能の高さとエーテルの万能っぷりを感じる。

 

 

『いえ。真夜中です』

 

 

「ならなんで起こしたんだ」

 

 

実をいえば洞窟にいる今、日が出ているかどうかはさほど問題ではないのだが…要は気分の問題だ。人間は夜に寝て、朝に起きる。紀元前から続く伝統で、俺もそれを尊重するつもりだった。自分の都合のつく限りだが。

古き伝説によればアイティー・ドカータやヒキ・ニートゥという希少人種が昼夜を厭わず活動していたという噂もあるが、俺は信じていない。

何せこれはハンターが言っていたことだからな。

 

 

『報告があります。2つほど…まず、いいものが1つ』

 

 

「もう1つは?」

 

 

『受け取り手次第です』

 

 

『いい方から行きましょう。サービターの残骸から抽出したエーテルにより、しばらくはエーテル切れの心配をする必要はありません』

 

 

「そうか。朗報だな」

 

 

『そうですね。それともう1つは』

 

 

『フォールンの装備がたくさん手に入りましたので、更なる改造が可能です』

 

 

「なんだ。両方とも朗報じゃないか」

 

 

『…私にとっては朗報ではありません。あなたの意思を尊重して報告したまでです』

 

 

「俺がもうガーディアンじゃないように、お前ももうゴーストじゃない。自分でそう言っただろう」

 

 

「光の戦士としての正義は、もはやこの手に振りかざしていいものでは無くなったのさ」

 

 

『ガーディアンじゃないから、身体をフォールンに改造しても倫理的に問題ないと?』

 

 

「ん…うん。ああ。つまりそういうことだ」

 

 

そこまで考えていなかった。そうか、身体をフォールンに改造するっていうのは倫理的な問題もあるのか。

ほかの生存者に会った時の印象が悪くなるかもしれない…

 

 

「まあ、どちらにせよ…生きるために必要だからやるんだ。それで、いくつ改造プランがあるんだ?」

 

 

『2つです。脊髄から神経系に沿うようにしてエーテル供給パイプを身体の各所に繋ぎ、エーテル供給の効率化と省エネ化をする。これはフォールンがやっていることと同じです』

 

 

『もう1つが、腕及び脚にフォールン由来の武器を直接装備するカートリッジを増設します。これにはいつくかの前例があり…成功率も高いと思います』

 

 

『代表的なものは…パワードスーツでしょうか。少数ですが、ガーディアンが生まれる前に人間の装備の一種として開発されたものがあるようです』

 

 

「パワードスーツ?ガーディアンの装備とは違うのか」

 

 

『着想はもっと古く…トラベラーさえ存在しない時代にはもう、創作として広く知られていたようです』

 

 

『例えば…ああ、今の私ではクラウドデータに接続できません。口惜しい』

 

 

「何も覚えてないのか?」

 

 

『多少は覚えています。英雄として宇宙からの侵略者に立ち向かった話があります。ただ、彼の人間性は最悪だったようですね』

 

 

「パーソナリティはともかく、やってることはガーディアンそのものだ。しかし、それが古典なら彼は光なしで戦ったということか?」

 

 

『ええ。創作ですが』

 

 

『何でしたら、カートリッジ増設の際に彼の装備を再現しますか?』

 

 

「できるのか?」

 

 

『もちろん。ゴー…我々の能力は非常に高いことをお忘れですか?』

 

 

「そんなことはこの腕や脚を見ればいつだって思い出せるさ」

 

 

『そうでしょうね。【それ】は私の…功績であり、同時に業、ですから』

 

 

「あまり難しいことを考えるなよ。気が滅入る」

 

 

『すみません』

 

 

「とにかく、そいつの装備が再現できるならついでにやってみてくれ。後で交換もできるんだろ?」

 

 

『…恐らく』

 

 

「おい」

 

 

『いえ、大丈夫です。ええ。それで、改造プランは後者…腕と脚の強化でよろしいですか?』

 

 

「いや、脊髄のと両方だ」

 

 

『…私が失敗しないことを今から神に祈って下さい』

 

 

「神は信じてないんだが…」

 

 

『でしたら私に祈っていてください』

 

 

「わかった。頼むぞ」

 

 

うやうやしく(同時にわざとらしく)ライフの前で手を組み、目をつむる。

数秒の沈黙の後、俺はライフに言われたとおりうつぶせになった。ライフが腕から何かを流したかと思うと、視界は急速に暗くなっていった。

 

 

………………………

 

 

『軽い電流です。毎度毎度、痛みで気絶するわけにもいきませんからね』

 

 

『…本当にこれでよかったのでしょうか?…いえ、選択肢など無かった。それは確かなのですが…』

 

 

『…ガーディアン。いえ、今は動く死者…ゾンビと、そう名乗っていましたね。私が見つけ、共に戦ったかつての光の守護者…あなたは、今何を考えていますか?』

 

 

『私は…いえ、トラベラーは、あなたが命をかけて守った彼らは、今の…ガーディアンとして死んだあなたを見て、どう思うのでしょう…』

 

 

ライフは俯くような仕草を見せたあと、ボディを左右に振った。さも、人間が迷い、そしてそれを思考から排除しようとするかのように。

 

 

……………

 

 

また夢を見た。今度は見知らぬ場所。【俺】が、薄暗い所で佇んでいる。

誰かが近づいてくる。その影がだんだんはっきりしてくると同時に、【俺】は姿勢を低くして、そいつを注視した。

 

 

「そんなに身構えなくてもいいじゃないか」

 

 

そいつは【四本ある腕】を軽く広げ、俺に話しかけた。

 

 

「仲間だろう?」

 

 

そいつは話し続ける。

 

 

「…何だと?仲間?俺とお前が?」

 

 

聞き捨てならない言葉に、思わず反応した。

 

 

「そうだ。同じ身体。フォールンの身体。流れているものも、死ぬ条件も同じ…俺とお前は同類だ」

 

 

「ふざけるな!俺とお前は別物だ!俺は…」

 

 

俺は…

 

 

俺は、何だ?

 

 

………………………

 

 

『起きてください』

 

 

ライフの声。

 

 

『うなされていました。どこか痛みますか?』

 

 

「…いや」

 

 

左腕を見る。首を回すと、何かに引っ張られるような異物感を覚えた。

 

 

「…っ」

 

 

正面の氷壁に自分の姿が映った。全身をパイプがつなぎ、口にはフォールンと同じマスク。少し大きくなった左腕や左脚は、既に元の人間の要素など欠片もない。

 

 

『どうか、しましたか?』

 

 

「…ライフ」

 

 

「俺は…何だ?」

 

 

『あなたはゾンビ。死してなお動く、元ガーディアン…そう、あなたと私で決めました』

 

 

「ああ…そうだったな」

 

 

『ええ…そうです。腕と脚の装備の説明をしますね』

 

 

『まずは彼のメイン装備であった【リパルサーレイ】…を模した、アーク放電を起こすことで衝撃波を前方に放射する手のひら』

 

 

「同じ名前にするのも失礼だし、パルスキャノンとでも呼ぶか」

 

 

『そうですね。加えて、ひじから拳にかけての部分にはワイヤー射出機構を装備しています。相手を掴まえて動きを封じるほか、高いところから落ちても平気』

 

 

「俺が反応できるならな…これはまあ、ワイヤーでいいだろう」

 

 

『そうですか。色々案はありますよ?タクティカル・ロッドにスペシャルダーツ。それと…極東の古典になぞらえてヒッサツ・オシゴトピープル』

 

 

「装備の名前は全部俺がつける。絶対だ。いいな」

 

 

『残念です。まだ色々あるのに』

 

 

『説明に戻りましょう。ですが腕はそのくらいです。あとは先程の戦闘で使用したワイヤーライフルを直接腕に接続できるようになりました』

 

 

『脚は、武器としてというよりも別の用途に向けて改造しました。まずは大腿部にエーテルパック詰め替え用。2つもついて安心です』

 

 

「もう少し言い方はなかったのか」

 

 

『特には。それと、膝にはスパイラル・ドリル』

 

 

「待て」

 

 

『何ですか?ストレート・ドリルの方がお好みですか?』

 

 

「めちゃくちゃだ。武器はつけないと言ったろう」

 

 

『ええ。これは武器ではありません。採掘用です。収納もできます。というか、今収納しています。思い切り膝蹴りすると出ます』

 

 

試しに左足を曲げて強く振ってみると、膝をカバーしていた金属板が突然開き、けたたましい機械音とともに鋭く高速回転する銀色のトゲが出てきた。これは間違いなくドリルであり、他の呼び方を許さない。そんな気迫さえ感じる回転だった。

 

 

「なくせ」

 

 

『ご無体な』

 

 

「これはものすごく邪魔だ…まさか楽しんでないか?」

 

 

『分かりました。残念ですが、次の機会にでもその機構は排除しておきます』

 

 

「頼むぞ…それと、他には何かないのか?」

 

 

『あとはかかとに小型ローラー及びターンピックと』

 

 

「なくせ」

 

 

『冗談です。流石に全く不要なものはつけません』

 

 

「………」

 

 

『仕切り直して、あとは爪先に電磁ナイフを仕込みました。これでキックによる攻撃に殺傷能力が付与されます』

 

 

「まともだな。武器だが」

 

 

『ええ。スペースが余ったので…つい』

 

 

「………」

 

 

『………』

 

 

一通りの説明を受けると、どっと疲れを感じてまた横になった。こいつはいつからこんなに冗談好きになったのだろうか。いや、冗談にしてもこんな行動までするような奴じゃなかったような気もするが…トラベラーとの接続が途切れると、性格も変わるのだろうか。

 

 

「…ライフ」

 

 

『何ですか?』

 

 

「…いや。俺はもう一度寝る。今度は朝になったら起こしてくれ」

 

 

『分かりました。いい夢を』

 

 

「ああ…見れるといいな」

 

 

意識は、次第にブラックアウトしていった。考えることややるべきことは数え切れないほどある。だが、今は何も考えずに眠りたかった。

 

 



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レベル6.走狗


遅くなりました。なんて事ない回のハズなのにやたら難産でした。
おかしいところがあるかもですが大目に見てくれると…




 

 

 

死とは、何だろうか。

生命に、等しく訪れるもの。黄金時代、人間の寿命は3倍にまで伸びたが…結局、逃れえなかったもの。

物理的には、細胞の活動が全て停止し、二度と動かない状態。精神的には意識を失い、それが二度と戻らない状態だろうか。共通しているのは、死が不可逆的なものだと捉えていることだ。

中には、あらゆる人々に忘れられた時に初めて人は死を迎える、と言ったロマンチストもいる。

 

 

ガーディアンは死体から生まれる…すなわち、一度死んでいるが生き返っている。この時点で、死の概念から乖離する。その上で、ガーディアンは死なない。いや、厳密にはよく死ぬが、すぐに生き返る。敵に脳天を撃ち抜かれても、踏み潰されても、ゴーストと光の力によって復活することができる。だからガーディアンは絶対に【死なない】。

 

 

であれば、ガーディアンは何をもって死ぬのか?

 

 

ウォーロックであった友人の言葉によれば、我々ガーディアンが死ぬはその役目…市民を、街を、そして何よりもトラベラーを守るという役目を果たせなくなった時。要は…光を失った時に、自らをガーディアンとして定義できなくなり、初めて本当に死ぬのだという。

 

 

それを聞いたとあるタイタンは、そんなことをしなくても、ゴーストを撃ち抜いたあとに頭を撃てば死ぬと言っていたが。

 

 

俺には、もう市民は守れない。いくらかの敵に囲まれればあっけなく死ぬだろう。復活もできない。

ゴーストがいても、光がないからだ。何度でも立ち上がれるガーディアンではないからだ。

 

 

俺というガーディアンは死んだ。

 

 

ならば、未練がましくも生きている【ガーディアンとして死んだ】俺は何者として生きればいい?

 

 

「簡単なコトだ」

 

 

目の前の【4本腕の怪物】が低くうなるようにして笑う。その姿は、以前よりもずいぶんハッキリと見えた。頭に特徴的な一対の装飾。首から背中にかけたマントには、彼の所属するハウスのマークが大きくこしらえてあった。

 

 

「お前はもうガーディアンじゃない。だが人間でもない…死んでから生き返る人間などいない」

 

 

【奴】は誇らしそうにマントを撫でた。

 

 

「お前はフォールンだ。ハウス・オブ・デビルズの装備を奪い、ハウス・オブ・キングスのエーテルを奪った。略奪者の中の略奪者。しかし同時に、自分だけは、まだ堕ちちゃいないとどこかで思っている…まさしく模範的フォールンだ。素晴らしいコトじゃないか」

 

 

【奴】は皮肉っぽく笑い声を上げたあと、下の腕で相手の胸を強く叩くと、上の腕を高く上げた。これがフォールン流の賞賛であることが、何故か分かった。

 

 

胸の腕を振り払う。【奴】は少し考える素振りをすると、俺の肩を掴んだ。

 

 

「オレはお前のことを気に入ってるんだ。誰よりもフォールンらしいお前を、な」

 

 

「どこが…!」

 

 

そう言ってもう一度腕を振り払おうとする。

 

 

「っ!?」

 

 

「【ソレ】が、何よりの証拠だ」

 

 

細長く、薄白い三本指。【奴】の腕を掴んだ自分の腕が、フォールンのものになっていた。

 

 

 

………………………

 

 

「…っは!」

 

 

『どうしました?』

 

 

ライフが不思議そうにこちらをのぞき込む。背中にはじっとりと汗がにじんでいた。

 

 

「恐怖…?いや、まさか。ありえない」

 

 

タイタンが恐怖を感じるのは、カバルのファランクスの大盾に吹き飛ばされた時だけだ。地に足がついている限り、そこから一歩も引くことのない決意と、誰よりも暗黒を憎む心があるからこそタイタンは戦うことができるのだ。

 

 

タイタンは光と勇気、そして強靭を誇り、暗黒と弱気、そして卑怯を厭うと言われている。ふと、ガーディアン達の冗談のひとつを思い出した。

 

ファイアチームのひとりが、強大な敵に恐怖したことを仲間に伝えた。まず仲間のタイタンが『なんて軟弱なやつだ』と笑う。次にハンターがそれを見て『恐怖がわかる分、お前より賢いな』と笑う。最後にウォーロックが大笑いした。

『なぜお前が恐怖を感じたか推測したんだ。お前にも教えてやろう。まず…』

みんな静かになった。

 

 

…これは、バカで石頭なタイタンと、人を嘲笑うことばかりなハンター、話が長くてつまらないウォーロックをまとめて揶揄するものだったはずだ。

 

 

「…いや、もう俺はタイタンでもない」

 

 

下らないことを思い出した。

タイタンはガーディアンの職業だ。今の俺には関係ない。

 

 

「しかし、もう寝る気も起きないな。ライフ、外はまだ暗いか?」

 

 

『いえ。今ちょうど起こそうと思っていたところでした。太陽は既にのぼっています』

 

 

「そうか。なら、今日はここから移動しよう」

 

 

『どこへ行くのですか?』

 

 

「ずいぶん遅れたが、当初の予定をなぞる。つまり…」

 

 

『ヨーロッパ・デッドゾーンですか?』

 

 

「ああ。だが、目的は違う」

 

 

「元々は光を取り戻すための手がかりを探るためだったが…それはもうなしだ。…ヨーロッパ・デッドゾーンは、確かフォールンの拠点だったよな?」

 

 

『ええ。元々はフォールンのハウスのひとつが拠点を置いていました。しかし、彼らが去ってからは様々な勢力が争う場となっています』

 

 

『まさか、突っ込むつもりですか?』

 

 

「いや。まさか」

 

 

『では、何をするつもりですか?』

 

 

「助けてもらうのさ」

 

 

『…今、なんと?』

 

 

「フォールンに助けてもらう。もはや半分フォールンの形をしてるんだ。仲間だと思ってハウスに入れてくれるかもしれない」

 

 

『ありえません。馬鹿げてます!フォールンは我々よりよほど社会的に統制された存在です!』

 

 

「…だろうな。冗談だ」

 

 

実のところ、冗談を言ったつもりは無かった。かといえば、ヤケになったわけでもない。このままいけば、何かのきっかけで俺はフォールンに近しい存在にもなりうる。昨日の夢の影響なのか、そんな気…いや、確信が、俺の中にあった。

 

 

「だが、人はいるかもしれない」

 

 

『…可能性は低いです』

 

 

「なら他の方法を考えてくれ」

 

 

『…ヨーロッパ・デッドゾーン…いえ、そこにほど近いところにガーディアンのキャンプがあったという記録があります。そこへ行きましょう』

 

 

「そうか。ならそこだな」

 

 

バランスの取りづらくなった身体を持ち上げ、洞窟の外を見据えた。

 

 

…………………

 

 

「ハァ…ハァ…フー…」

 

 

『大丈夫ですか?』

 

 

「…大丈夫に…見えるか?」

 

 

『…少し』

 

 

何とかワイヤーとドリルやナイフを使ってクレバスを登った。しかし、ガーディアンでないということは、疲労や小さなケガを無視できなくなるということでもある。

俺の身体は指先一つ動かすのも億劫なほど疲れ果て、身体のところどころに傷ができていた。

 

 

「初めからそういう模様だったみたいだ」

 

 

キズを見てつぶやく。

 

 

『冗談はよして下さい。このまま夜を迎える訳にはいきません。移動しましょう』

 

 

「ああ。そうだな」

 

 

重い腰を何とか上げる。太陽は既に西に傾き始めていた。

 

 

…………………

 

 

『…見えました。アレです』

 

 

「本当か?」

 

 

前方に目をこらす。確かに、米粒ほどの大きさのテントのようなものがいくつか見えた。

 

 

『…記録が正しければ、確かにここのはずです』

 

 

「そうか…じゃあ」

 

 

『…そうですね…残念ですが…』

 

 

「ああ。失敗だったな」

 

 

キャンプには、動くものが何ひとつなかった。

 

 

その事実は、しかし何よりも雄弁に、俺達にそのキャンプの全滅を伝えていた。

 

 

 





はい。例のキャンプです。
タカはいません。


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レベル7.半端者:前編

前提として、主人公は元々タイタンでした。

つまり…石頭でアホの子要素があります。




 

『エーテルって何なんだ?サービターを倒すと出てくる紫のもやもやのことだ』

 

 

『エーテルだと?助手よ、まさか本当に知らないのか?』

 

 

『…知らないという顔だな。よくそんな状態でヤツらと戦おうなどと言えるものだ。仕方ない。教えてやろう。エーテルとはサービターに搭載された高度なテクノロジーによって精製される気体状のエネルギー体であり、フォールンにとっての生命維持装置だ。サービターがその辺の資源から適当に作って、周りのフォールンに配る。ヤツらはこれがないとみじめにもがき苦しんで死ぬ』

 

 

『じゃあヤツらを見つけたら、まずサービターを破壊すればいいのか?』

 

 

『バカめ。怒り狂って突撃してくるフォールンを全員捌ける自信があるのか?それともお前はサービターだけを破壊して帰ってくるつもりか?』

 

 

『サービターを壊してエーテル供給を止めても、しばらくの間はエーテルが残っているから動ける。中でも供給量が多いために身体が肥大化したキャプテンは、エーテルなしでも数週間は動いてられたという情報もある』

 

 

『ふーん…まあ、俺には関係ないな』

 

 

『どうせ全部倒すから、とでも言うつもりか?』

 

 

『………』

 

 

『バカバカしい。だが、正しくもある。そんなところだな。フォールンは一度に全滅させないと次々と援軍をよこしてくる』

 

 

『でも、疑問がひとつ晴れたよ。フォールンのなかでも特に偉いアルコンやバロンがどうしてあんなにデカいのか。エーテルをたらふく貰ってたんだな』

 

 

『ああ…まあ、そういう話で終わっておこう。お前との会話は疲れる。もうどこかへ行け』

 

 

ー金星。とあるガーディアンの会話記録ー

 

 

…………………

 

 

「さて…」

 

 

『どうしましょう』

 

 

「キャンプには誰もいませんでした、おわり…とはいかん。何か探そう」

 

 

『…あ、ガーディアンの死体です。戦闘があったのでしょうか』

 

 

「…ハンターだな。クロークを見るに、デッドオービットの所属だったらしい。この状況はヤツらにとってはありがたかったのかもな」

 

 

『デッドオービットはあくまで太陽系外にも生存圏を探しに行くことを目指していただけで、タワーの破滅までは…』

 

 

「どんな組織だって一枚岩にはなれない。実際、ヤツらの中にだってそういうことを大声で言うのはいた」

 

 

「デッドオービットの船は、タワーよりよっぽど安全なんだと。しかしタワーがあるから人は外に逃げられないんだ、足枷なんだ。だったら無くなってしまえばいいってな」

 

 

「そして…いつだって、大声を張るやつは目立つ。そいつのいる組織や集団を代表するかのように、そいつの声や行動は周りに広まっていく」

 

 

「そうやって出来ていくんだ。イメージというのは…良くも、悪くも」

 

 

「話しすぎたな。まあ、奴らのデザインしたアーマーは気に入ってたよ。ライフ、何か見つけたか?」

 

 

『えーと…食糧はありませんね。前にキャンプを見つけた人がいたのかもしれません』

 

 

『…まあ、今のあなたはエーテルがあれば十分なのですが』

 

 

「…そうだな。それ以外は?」

 

 

『プラスチール強化材がありました。これであなたのアーマーを修復できます』

 

 

「それはいいな…おっ」

 

 

『どうしました?』

 

 

「銃だ…これは、パルスライフルだな。ハッケの旧式で、4発バーストで撃てるやつだ」

 

 

『いいですね。弾は資材さえあれば精製できます』

 

 

「この規模のキャンプならこんなもんだろう。むしろいい方だ」

 

 

「アーマーを修理して少し休憩したら、もう少し奥まで行ってみよう。マトモな武器も手に入ったことだし、今度は多少戦闘することも考えて動くぞ」

 

 

『了解しました。無理だけはしないで下さいね』

 

 

………………

 

 

「…少し、慣れが必要だな」

 

 

先程のパルスライフルを手元に構える。さもありなん、といったところだろうか、フォールンの腕に人間用の武器はかなり不格好に見えた。ついでに三本指では持ちづらい。

 

 

『大変お似合いですよ』

 

 

「お前はその態度をいつか後悔することになるぞ」

 

 

『ああ、恐ろしい』

 

 

「ライフ…大丈夫なのか?」

 

 

最近、気になってきたことがある。ライフの様子がおかしいのだ。元々あなたのゴーストであることを誇りに思います、とか恥ずかしげもなく言うような真面目一辺倒だったのに、いつの間にか冗談ばかり言うようになったのだ。ゴーストの性格が変わるのは珍しい話ではないが、それは長年の付き合いとなったガーディアンに徐々に影響されたりした結果、個性として生まれたものだ。今回のような急激な変化とは状況が合わない。

 

 

『何がですか?私の機能は依然、万全です』

 

 

「…お前みたいなやつを修理できる知り合いはまだ生きているかな」

 

 

『中々ひどいですね』

 

 

「お前のために言ってるんだ。決めた。ゴーストに詳しいやつに会ったらお前について調べることにする」

 

 

『そうですか?まあ、何も出ないとは思いますが』

 

 

「だと、いいんだがな」

 

 

とはいえ、今できることは非常に少ない。ライフのことばかり気にしていることはできない。今は前に進むべきだ。

 

 

「さて、鬼が出るか、蛇が出るか…」

 

 

そうつぶやいて、ヨーロッパ・デッドゾーンの奥地へ歩を進めた。

 

 

………………

 

 

『…アレは…』

 

 

「ケッチ!だが小型か」

 

 

ケッチ。フォールンの輸送船だ。兵員から物資まで何でも運ぶ。多少の自衛能力もある。ケル(王)のケッチはすさまじくデカく、停泊すれば基地にもなる。

 

 

『停泊しています。戦闘…ではありませんね。物資の調達でしょうか』

 

 

「…チャンスだな」

 

 

『危険では?』

 

 

「エーテルはあるに越したことはない。確保できる時にするべきだ。それに…新しい武器の試運転もまだだ」

 

 

『…そうかもしれませんね。では偵察から行きましょう。ちょうどいいところに小さな岩山があります。あの裏なら気づかれないでしょう』

 

 

「そうだな…行くぞ」

 

 

………………

 

 

「ここだな。さて…」

 

 

改めて、フォールンの様子をうかがう。後方の支援任務についた小隊、といったところだろうか。忙しく働くドレッグに手や口で激を飛ばすキャプテン。周りを数機のシャンクが飛んでいるのが見える。

 

 

「バンダルはいないのか?」

 

 

『いえ。これは恐らく…』

 

 

「あ、あそこか」

 

 

『どうせなら最後まで言わせて下さい』

 

 

少し離れたところで、バンダルが戦闘訓練をしていた。4本の腕を器用に使い、ブレードやライフルで連携してターゲットデコイに波状攻撃を仕掛けている。

 

 

「改めて見ると、シンプルでよくできた戦術なのかもな」

 

 

少し感心する。少しだけ、もし自分に4本の腕がついていたらどうするか考えてみる。

 

 

「…あり、か?」

 

 

『脳改造から始めないといけませんがね。それか各腕に私特製のサポートAIを取り付けます』

 

 

「…それは御免だ」

 

 

『残念です』

 

 

ライフが少しうつむいて身体をふるが無視して偵察を終える。

 

 

「こんなもんだろう。後はどう攻めるかだが」

 

 

「昔の俺なら正面にグレネードを投げ込んだ勢いのままオートライフルを撃ちながら突撃してパンチだが、流石に無理だ」

 

 

『…まあ、高所からそのワイヤーライフルで狙撃、都度拾ったパルスライフルやその他の武器で攻撃でしょうね』

 

 

「狙撃は苦手なんだがな…」

 

 

だが、他に手もない。俺は深呼吸をすると、狙撃のできそうなポイントを探し始めた。

 

 



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レベル7.半端者:後編

 

 

結局、狙撃のために横倒しになったトラックの山の上に伏せることにした。しかし…

 

 

「なんて不安定な場所だ…どこも錆び切って今にも崩れそうだ。さっきの岩山の方が良かったんじゃないか?」

 

 

『あそこだと遠すぎます。当てる自信があるのなら別ですが』

 

 

「………」

 

 

『ここがベストです。我慢してください』

 

 

「…そうか」

 

 

ワイヤーライフルに取り付けたサイトを覗く。銃口の先には、休んでいるのか壁にもたれかかるキャプテンの姿があった。

 

 

「これは使命じゃない。生きるためだ」

 

 

そうつぶやいて、息を止める。腕のブレを極力抑え、キャプテンの頭を狙う。

 

 

「………」

 

 

「…っ!」

 

 

パシュン、と特徴的な音を響かせ、弾丸がキャプテン目がけて飛ぶ。

 

 

「クソッタレ!やっぱりだ!」

 

 

だが、無情にも放たれた弾丸はキャプテンに届くことなく、その足元に穴を作ったのみに終わった。

 

 

キャプテンの咆哮。アレだけ派手な武器なのだから当然だが、こちらに気がついたらしい。

 

 

『ドレッグが向かってきます。応戦してください!』

 

 

「分かってる!」

 

 

ワイヤーライフルを置き、トラックの山から飛び降りる。

 

 

『正面にドレッグ2体、10時の方向からシャンクが3機です』

 

 

「おおおおっ!」

 

 

パルスライフルを乱射する。頭に正確に当てる自信はないが、どこかに当たれば足止めになる。

 

 

ドドドドッというリズミカルな音とともに、運良く弾が胴に当たったドレッグが倒れた。

 

 

「よしっ」

 

 

『まだです!気を抜かないで!』

 

 

気づけば、シャンクがすぐそこまで迫ってきていた。すでに銃撃の用意をしている。

 

 

「ぐっ!…ライフ!」

 

 

『なんですか!』

 

 

「パルスキャノンを使う!補助してくれ!」

 

 

『分かりました!左手を素早く2回握れば起動します!無事に当たることを祈って下さい!』

 

 

「また祈りか!ギャラルホルンを探してるんじゃないんだぞ!」

 

 

『チャージしています!構えて!』

 

 

「くっ!」

 

 

シャンクの銃撃をかわしながらパルスライフルを背負い、左腕を前に突き出して右腕を添える。

 

 

『…もう少しです』

 

 

「早くしてくれ!もう避けるのも限界だ!」

 

 

シャンクの群れにいつの間にかバンダルが加わり、銃撃は激しさを増していた。

 

 

『行きますよ!3、2…』

 

 

「っ!」

 

 

『1…!発射!』

 

 

左腕から大きな衝撃が走り、景色が急転する。一瞬、青空が見えたかと思うと頭に鈍痛が走るが、何とか意識を保つ。どうやら自分はパルスキャノンの反動で後ろに転んだようだった。

 

 

「っ〜〜!…」

 

 

『敵の残存数を確認…朗報です。パルスキャノンの威力は予想以上です』

 

 

「…みたいだな」

 

 

起き上がって、先ほどのパルスキャノンの射線を見る。そこにあったのは、一直線に黒く焦げた地面と、装備ごとボロボロに破壊された無惨な姿のフォールン達だった。

 

 

『これで残りはキャプテンだけです』

 

 

「サービターはいないのか?」

 

 

『あ、そうですね。サービターは…いないようです』

 

 

「いなくても大丈夫なのか?」

 

 

『分かりませんよフォールンの考えることなんか。それよりキャプテンが来ます。構えて!』

 

 

「クソ!パルスキャノンは!?」

 

 

『エーテルを使いすぎました!これ以上使うと生命維持装置に支障が出ます!』

 

 

「これが終わったら調整が必要だな…仕方ない、ほかの武器で戦うぞ!」

 

 

『キャプテンはエネルギーシールドを展開しています。キネティックダメージ系統…背中のパルスライフルは有効打になりえません!』

 

 

「だろうな!あとは…ワイヤーライフルを拾いに行ってる暇はない!残るのは…」

 

 

『…ドレッグピストル、それと…ショックブレードと、ドリルですね。ワイヤーは残念ながらあの体格の動きを阻害できるほど強力ではありません』

 

 

「最悪だ!!」

 

 

「クソっ!食らえ!」

 

 

興奮気味に、ドレッグピストルをキャプテンに向かって撃つ。低威力だがアーク属性を持っていること、敵を検知して多少追尾することが利点の武器だ。銃を当てる自信の無い今の自分には意外にマッチした武器かもしれない。

 

 

『キャプテンのシールドの漸減を確認。消失には至っていません。それと…』

 

 

『あのキャプテンは肉体派のようですね』

 

 

「見たらわかる!」

 

 

キャプテンは二本の大型ショックブレードを構えてこちらに突進してきていた。こちらのささやかな抵抗は全く意に介していないようだ。

 

 

「曲芸なんかしたことないぞ!」

 

 

ピストルを撃ちながら、悪路をジャンプしつつ後退する。キャプテンとの徐々に距離が詰まっていく。

 

 

『危ない!』

 

 

「っ!!」

 

 

一瞬の視界の暗転ののち、痛みとともに地面に伏す。こんなところで引き撃ち流石に無理があったか、大きめの石に気がつかずに無様に、仰向けに転んでしまった。

 

 

「まずい!」

 

 

キャプテンは速度を緩めず向かってくる。

 

 

立ち上がる暇もなくこちらに追いつき、右腕ごとピストルを踏み砕く。そして…

 

 

その刃を、無慈悲に俺に突き立てた。

 

 

「っ…ああああああああ!!!」

 

 

死。それが明確なビジョンとなって俺に襲いかかる。キャプテンは勝利を確信したのか、腕を上げて叫んでいる。

 

 

キャプテンがこちらを見る。狩人が捕らえた獲物に対するように見下ろしたかと思えば、今度は久々に会った同胞に向けたように目を見開いた。

 

 

『グ…ォ…』

 

 

『…オレ達の、【なりそこない】か』

 

 

「…なん、だと…」

 

 

フォールンの声。ひどくハッキリとした幻聴が頭の中でこだまする。景色が妙にゆっくりと動く。キャプテンはこちらを観察するのをやめ、トドメを刺すために再度ブレードを掲げた。

 

 

終わってみれば、なんとも呆気ないものだ。そんなことを呑気に考えながら、ブレードを見つめる。

 

 

『ドリルを起動します!』

 

 

突如、けたたましい音が鳴り響く。左脚からだった。

ドリルがキャプテンの足を抉り、キャプテンを怯ませる。

 

 

『さあ、起きて!まだ戦えるハズです!』

 

 

「あ、ああ…」

 

 

キャプテンが叫ぶ。相当な怒りを感じる。勝利を確信した【獲物】に噛みつかれたことに憤っているのだ。

 

 

「武器、は…」

 

 

『残念ながら、左脚のみです』

 

 

「はっ…」

 

 

乾いた笑いを浮かべる。

 

 

『グオオオオ!』

 

 

キャプテンが突進してくる。足を怪我したためか先ほどより勢いは無いが、それでも今の俺を殺すには十分だ。そう思った。

 

 

「死ねないから殺す…生きるためだ。略奪も、生きるため…」

 

 

「なりそこないか…確かに、そうかもな」

 

 

左脚のつま先ををキャプテンの突進に合わせて突き出した。

 

 

『オオオオオォ…!』

 

 

つま先に仕込まれたブレードが、キャプテンの首に深々と突き刺さる。パイプが切れたようで、エーテルが吹き出ている。

 

 

「…俺は死んだガーディアンだ。だが…なりそこないとして生きることはできるのかもしれない」

 

 

『ォォ…ォ……』

 

 

ぶらん、とキャプテンの腕が下がる。

 

 

「そのくらいならできるハズだ」

 

 

「フォールン。お前の奪ってきたものを少し分けてもらうぞ」

 

 

『…グオオオオォ!』

 

 

『危ない!』

 

 

キャプテンが突如動き出す。ライフが叫んだ。

 

 

「っ!?」

 

 

『オオオオ!』

 

 

キャプテンの最後の抵抗によるブレードは、俺の右肩に突き刺さった。右腕が身体と切り離され、地面に落ちる。

 

 

「っぐ!ああああっ!!」

 

 

「…痛いな…クソ…畜生!」

 

 

背中のパルスライフルを取り出し、キャプテンに滅茶苦茶に撃ち込んだ。キャプテンは少し痙攣したかと思うと、ついに倒れる。

 

 

『ォォ………』

 

 

勝ち誇ったような顔で、キャプテンは今度こそ息絶えた。

 

 

「…俺は生きてるんだからお前の負けだよ、この野郎…」

 

 

『大丈夫ですか!?』

 

 

「ライフ…大丈夫に見えるか?」

 

 

『いえ…ただ…』

 

 

「何だ…早く止血しないと死んじまう。とりあえず布を…」

 

 

『あ、いえ、そのことなんですが…』

 

 

『血が、出てません。右肩からエーテルが流れ出てます…』

 

 

「………は?」

 

 





長くなったので今回は前後編にしました。

最近、別の小説?も書き始めましたがちゃんと終わらせるつもりなので大丈夫です。きっと。


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レベル8.同志?


お久しぶりです。ちょっと長いですが、前後編に分けるほどでもなかったのでまとめました。

例によって、感想や評価は大歓迎です。モチベーションにもなります。



 

 

 

「腕…生身の方だよな?」

 

 

『ええ…一目瞭然とはこのことでしょうね』

 

 

「ふうん…それで?」

 

 

『それで、とは?』

 

 

「いや、血が出ないことで問題があるのかを聞いてるんだ」

 

 

『…スキャンは既に済ませました。あなたの身体の血液の一部が、エーテルに置き換わっている…いえ、エーテルを主体に融合しているようです。つまり…』

 

 

『身体の血液が果たしていた機能を、エーテルが代替…もしくは補強しています。今は血の代わりにエーテルと血液の融合体が少しずつ流出している状態です。…今後、エーテル不足で死ぬことはあっても、出血多量で死ぬことは無いでしょうね』

 

 

「なんだ、だったら大丈夫だな」

 

 

『…しかし、これでは本当に…』

 

 

「既に足を踏み入れた領域だ。一歩も十歩も大差はないだろう」

 

 

「それより、またいい素材が取れたな。フォールンのキャプテン、しかも格闘タイプ!威圧感バリバリ。昔の俺も、敵からはこんな感じに見えてたのかもな」

 

 

『あなたの元々の腕はそこに残っていますが?』

 

 

「だが、キャプテンに踏み潰されてボロボロだ。アレを繋げて、今後マトモに動くか?」

 

 

『アレ、ですか』

 

 

ライフがうつむく。

 

 

「俺は人間の身体でいたいなんて…ましてや、ガーディアンに戻りたいなんてこれっぽっちも思っちゃいない。身体がフォールンになっても…光がなくても…俺は俺として戦えればそれでいいんだ。そう考えることにした」

 

 

『あなたはいつもそうです。あなたが作る言葉は、いつだって力強い…そして脆い』

 

 

「ああ、あの時だってそうだった。…俺の心は弱い。だからこそ力強い言葉を使うんだ…ライフ!キャプテンを使って…腕を、作ってくれ」

 

 

『…ええ。あなたが望むなら…従いましょう。私はあなたのライフ。あなたの意思で動くものです』

 

 

「…頼むぞ。そろそろエーテルの残量が切れそうだ」

 

 

………………

 

 

『…もう、後戻りはできませんね』

 

 

「……ああ」

 

 

キャプテンの腕は機械ではなかった。俺は【それ】を繋いだ。つまり、俺はまさしく【フォールンの腕】を身体に繋げている。俺は、新しい、青白く強靭な三本指の右腕をまじまじと見つめた。

元々バンダルから剥ぎ取ってくっつけた左腕と見比べると、階級による体の大きさの違いがハッキリと分かる。

 

 

「…しかし、不思議なものだな」

 

 

『何がですか?』

 

 

「拒絶反応とか、神経接続とか…タイタンだった俺でも不思議に思えるくらい、そういう不都合がない」

 

 

『…本来はあるはずなのですが、これもエーテルの力でしょうか。私も確かに細心の注意を払ってやってはいますが、回数を重ねる度…あなたがエーテルと親和していくにつれて、抵抗が少なくなっているように思えます』

 

 

「エーテル…やっぱりサービターが必要だ」

 

 

パチパチパチ

 

 

「ん?」

 

 

『拍手の音です』

 

 

「いや、それは分かるが」

 

 

音の元を見る。ここから少し離れた岩場の影から、身体のラインにぴったり沿うようにしたスーツを着込み、ヘルメットの上からぶかぶかのクロークを羽織った人間がこちらを見ていた。

 

 

「ライフ。どうして教えてくれなかった」

 

 

見るに、どうやら男性のようだ。彼に敵意は無いようだが、あまり自分のこの姿を晒したくもないのが本音だった。この外見から、思わぬすれ違いを生む可能性が高いためでもある。

 

 

『…それが、レーダーに全く映りませんでした』

 

 

「なんだと?故障か?」

 

 

「ああ、いやぁ、そんなことはないだろうさ!ゴーストをあまり責めないでやってほしいね。何せ俺は…特別製だからな」

 

 

「っ!?」

 

 

またしても不意をつかれ、思わず後ずさる。この男は、少なくとも、音も気配もなく…誰にも気がつかれずに移動することができることは確かなようだった。

 

 

「お前は誰だ」

 

 

「警戒!ごもっともな反応だが少々傷つくぜ」

 

 

「味方でないなら敵と思え…タイタンの教えか?」

 

 

「…お前も元ガーディアンなのか?…ハンターか」

 

 

「ご明察…タイタンじゃなくて残念だったかな。確かに、俺はバンガードの元メンバーさ。ケイド6のもとで、中々楽しくやらせてもらっていた」

 

 

「ここに来たのは全くの偶然だったんだが…まさしく幸運だったと言わざるを得ない。まさかここで同志に出会えるとは!」

 

 

「…同志だと?」

 

 

「そりゃあそうさ!お前も俺も、光を失った…残念なことに。あのカバルのデブに全部奪われた!だが…」

 

 

「戦うことを諦めていない!」

 

 

目の前の男は大げさに拳を握りしめたのち、仰々しく両手を上に挙げた。妙に演技くさいところが鼻につく。

 

 

「…放っておいてくれ」

 

 

ヘルメット越しに睨む。

 

 

「ハハ…見りゃあ分かるさ。お前は光の代わりにフォールンの力を手にしたんだろう?戦うために…」

 

 

「さっきの拍手はそのためさ。お前のその気高き精神と…ゴーストの技術を賞賛したのさ」

 

 

「自己紹介といこう。俺はザナリー3。名前から分かるとは思うがエクソだ」

 

 

「…ゾンビだ」

 

 

『私はライフです』

 

 

「フーン、ゾンビ…それとライフね。偽名にしてももう少しマシなのはなかったのか?夢見がちなローティーンが考えたみたいだ」

 

 

「俺はガーディアンじゃない。俺というガーディアンは死んだ…そう決めた時にガーディアンとしての名前も捨てた。適当な名前も考えるのが面倒だから生ける屍を名乗っているだけだ」

 

 

「笑えるな、ハハ…」

 

 

…そろそろ限界だ。コイツと俺は絶望的に合わない。それだけが分かればいいと思うまでに…

 

 

「ああ、そうかよ。ライフ、パルスキャノンのクールダウンは終わってるよな?」

 

 

左腕のガントレットを強く握りこんだ。

 

 

『ええ。ですが…まさか撃つつもりですか?』

 

 

「こいつは俺を放っておいてくれないらしい。協力者になるならとも思ったが、無理だ。コイツと関わることに俺が耐えきれないな。だったら…」

 

 

「おっと!待ってくれよ…悪かった。アンタ達を貶めたりするつもりは無かった」

 

 

「お詫びの印といってはなんだが…俺がどうしてアンタ達に、気づかれずに接近できたと思う?その物騒なものをしまってくれれば今すぐ教えてやるよ」

 

 

「話し方が気に食わん」

 

 

「…生来のもんで、変えるのは難しい。悪いな」

 

 

「そうか」

 

 

パルスキャノンを構える。

 

 

『待ってください』

 

 

ライフが構えた左腕とザナリー3との間に割り込んだ。

 

 

「ライフ…邪魔をするな」

 

 

『話を聞いてください。彼は我々にとって有益な情報を持っているかもしれません。彼の【透明化】…心当たりがありますよね?』

 

 

「カラクリに気づいてたのか?優秀なゴーストだな」

 

 

『…あまり私をゴーストと呼ばないでください』

 

 

「理由があるみたいだな。分かった。悪かったよ」

 

 

「【透明化】はハンターの能力だ…まさかとは思うが…」

 

 

透明化は、ハンターの特殊能力のうちメジャーなものの1つだった。実際、奇襲作戦には、レーダーにも視覚にもほとんど映らなくなるこの能力が欠かせなかったのだ。しかし、もちろんこれは【ガーディアンの能力だ】。つまり…

 

 

「ご名答!…と、言えれば良かったんだが…」

 

 

「残念だが、俺は光を取り戻したワケじゃないんだ。…コイツを見てくれ」

 

 

そう言うと、彼は自らの腹部を露わにした。そこには、ダークグリーンの金属板に食い込むようにして、青白い光を放つ球形の機械が埋め込まれていた。

 

 

『これは…まさか』

 

 

「俺が君達を【同志】と言った理由はもう1つあった、ということさ。お察しの通り、コイツは俺が生まれ持ったパーツじゃない…フォールン由来だ」

 

 

「お前…」

 

 

「…おいおい、アンタ自分のこと鏡で見たことあるのか?俺なんかよりよっぽど改造されてるじゃないか。人のこと言える立場じゃないだろう」

 

 

『どこで、どうやってこれを手に入れたのですか?』

 

 

「…いいだろう。隠し事はナシだ。だが、長くなるぞ」

 

 

「俺はあの時…シティが落ち、光を失ったあの日、俺達ガーディアンは生きるべきだと…何があっても生き残るべきだと、そう確信した」

 

 

「俺のゴーストも同じ意見だった。いつかまた、ガーディアンの役目を果たすため、どんなにみっともなくても生き残ると、そう決めた」

 

 

「問題はここからだ。俺達は雨の山中を、カバルのクソ犬達に追われながら走っていた。だが…運悪く俺達は、逃げた先でフォールンの哨戒部隊にも出会ってしまった」

 

 

「そこからはもうめちゃくちゃだ。フォールンに襲われ、犬に追い立てられ、雨と土砂に身を隠してなんとか逃げおおせたが…フォールンはバカじゃなかった」

 

 

「バンダルの1体が、めざとく俺に発信機をつけていやがった。そいつは功績を独り占めしたかったんだろうな…1体だけで、隠れていた俺達に襲いかかり…俺のどてっ腹を、ご自慢のブレードで貫きやがった」

 

 

「だが、そのブレードが俺の下にあった木の根まで切り裂いたのが、ヤツの運の尽きだった!支えを失った木がヤツに向かって倒れ、ドロドロになった土砂の中でアイツは息絶えた…」

 

 

「俺のゴーストはそいつをスキャンして、こう言った。『透明化できるようになる』…もちろん俺はそのうまい話に飛びついた!身を隠すにも、攻撃するにも透明化はこれ以上ないくらい最適だったんだ」

 

 

「俺はゴーストに頼まれてしばらくスリープ状態に入り、目が覚めると、俺の腹の傷にはすっぽりとこの…妙な機械が埋め込まれていた」

 

 

「そして俺は腕に刻まれたメモを見つけた。それはこの機械の使い方と、『いつでも一緒』のメッセージ。送り元はハッキリしている。つまりはそういうことだ」

 

 

『それは…つまり、あなたのゴーストが、あなたの腹部にフォールンの透明化する機械を接続し、自身さえもそのパーツとして組み込んだ、と…』

 

 

「そういうことだ。どうやらこの機械は、俺と相性が悪かったらしい。拒否反応を示したもんで、慌てて自分をバイパスに使って安定させたんだとよ…情報は、頭に流れてくるんだ」

 

 

『………』

 

 

ライフがうつむく。少しの静寂が流れた。

 

 

「話は終わりか…事情は分かった。その透明化能力の由来も、俺達には使えそうにないことも」

 

 

「ああ。提案があるんだ…俺を仲間として連れて行ってくれないか?」

 

 

「断る」

 

 

『ですが!』

 

 

「これが軍隊ならいい。強力な指導者と規律のもとで、大多数のうちの1人としてコイツと共に動くなら、俺は何の疑問も抱かなかった…だが、ペアになるなら話は別だ」

 

 

「ここには規則もない。指導者もいない。俺にコイツのお守りをしろって言うのか?」

 

 

「何言ってる。俺はアンタとペアになるつもりは無いぞ!単なる協力者として…」

 

 

「二人ならペアも協力者も同義だ。二人いるということは、俺達は単独行動の利点を失うことにもなる」

 

 

『ゾンビさん…私は彼の同行に賛成です』

 

 

「…お前はいつも俺の意見には反対するんだ」

 

 

『いつも最後はあなたの意見になるじゃないですか!私はいつでもあなたのためを思って言っているのに…言い方は悪いですが、彼は私にとっても貴重な資料です。それに、あなただって…フォールンの装備を身体の一部としたことで、今後どんな影響が出るか分かりません。私は戦えませんが、彼ならば…』

 

 

「ハンドキャノンの扱いは得意だ。ハンターらしいだろ?それともクルーシブルが好きなら、ごろごろ転がってショットガンを撃ってる方がイメージが強いか?」

 

 

「お前をショルダータックルで潰してやりたいよ。…ハァ…分かった。とりあえず、同行ならいいだろう」

 

 

「おお、やったぜ!」

 

 

「だが、あくまで同行者だ。お互いに過度な干渉はしない。俺が話しかけるなと言ったら話しかけないでくれ。俺からは話しかけないだろうが」

 

 

「おう、了解した。過度な干渉はナシだ」

 

 

「…分かっているのか?」

 

 

「もちろん!」

 

 

不安だ。

 

 



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レベル9.奇襲はお任せ

思い知ったことがひとつ。キャラクターを魅力的に書くのがめちゃくちゃ難しいです…




 

 

結局のところ、ザナリー3の同行は俺にとって大きなストレスとなった。

戦闘となれば、確かにヤツはそれなりに戦ってみせた。特にハンドキャノンの扱いについては、確かに言うだけはある、というのが俺とライフの評価だ。しかし、たとえ戦闘中であっても、ヤツの軽口は留まるところを知らなかった。いい加減腹に据えかねて文句をいえば…

 

 

「おっと、すまない。独り言のボリュームを下げるよ」

 

 

この一点張り。どうやらヤツにとって【軽口】と【独り言】は同義らしい。そして何より腹が立つのは…

 

 

『それで…あなたのゴーストは、光について何か知っていましたか?』

 

 

「知ってたらこんなことにはなってないな。だがあくまで噂話だが…歴戦のゴーストの中には、とんでもなく遠くの光も感知できるヤツもいたそうだぞ?」

 

 

『興味深い…今の私にはとても…無理でしょう』

 

 

「ああ。暗黒のさらに奥…光が微塵も入らない深淵。まるでハイヴの王座のような所…そこで、ガーディアンと共に厳しい戦いを乗り越えたゴーストは、少しの光も見逃さないように進化する…そういう、噂だ。ハハ」

 

 

『なるほど』

 

 

これだ。何故だか知らんが、ライフとこの…いまいましいアンドロイドが、楽しげに会話をしていやがる。

 

 

「ライフ、そろそろ目的地に着く。無駄話はやめろ」

 

 

『ですが興味深い話です。今後の参考にも』

 

 

「ライフ」

 

 

『…はあ、もう…ここはフォールンのキャンプ跡地です。一見すれば単なる洞窟ですがね…さてと。フォールンの場合はここに…』

 

 

ライフが壁に取り付けられた小さな端末を操作する。しばらくして、洞窟の奥で大きな音がした。

 

 

『OK。セキュリティをシャットダウンして、ついでにシャッターを開きました。進みましょう』

 

 

「アンタのゴースト…や、ライフ君だったか。とにかくアイツは優秀だな」

 

 

「………」

 

 

「…アンタも元気そうだ。さて、進もう」

 

 

ザナリー3が俺に向けてくいっと手首をひねり、奥へ進むよう促してくる。

 

 

「フン…」

 

 

『…武器は構えておいて下さい。ここはデータによれば廃棄された場所ではありますが、フォールンが全くいないとは限りません』

 

 

「ああ、そうだな。少し見てくるよ」

 

 

ザナリー3は腰のあたりに手をかけて数秒じっとすると、音もなく透明化した。

 

 

「どう?見えてない?」

 

 

「行くなら早く行け」

 

 

「おっと、そうだったな」

 

 

そう言うと、彼は足跡も残さず奥へと進んで行った。ほとんど見えていないので予測ではあるが。

 

 

少しの静寂が流れた。俺とライフだけでいるのも、誰も喋らないことも、ずいぶん久しぶりのように思えた。

 

 

『…ゾンビさん』

 

 

ライフが俺に語りかける。

 

 

「なんだ」

 

 

『ザナリー3のことです。彼は…』

 

 

思った通り…ザナリーの話だった。

 

 

「分かってる。ヤツが悪いんじゃないことぐらいはな…だが無理だ」

 

 

『…一時的とはいえ協力者です。生存率を上げるためにも、いがみ合うべきではありません。それに』

 

 

「アイツは優秀だ。使える…そう言いたいんだろう」

 

 

『…ええ。よく分かりましたね』

 

 

「お前と何年一緒にいると思ってる。俺はハイヴの王座に突入したチームの一員ではなかったが、立派にシティを守ってきた1人だ…お前とともに」

 

 

『…ガーディアンとしての誇りですか?あなたはもう、ガーディアンではない…そう言ったのはあなただ』

 

 

「誇りなんかじゃない…これは郷愁だ。俺は元ガーディアンとしての記憶と、そしてこれからフォールン混じりの【なにか】としての生と、付き合っていかなきゃならない」

 

 

「いがみ合っていてはいけない…それは、自分自身ともだ…」

 

 

『…変わりましたね。ザナリー3のおかげですか?』

 

 

「いや…どちらかと言えば、あのフォールンのおかげだ。俺の肩に刃を突き立てた…」

 

 

ーーーオレ達の、【なりそこない】かーーー

 

 

『あのキャプテンですか?確かに腕は接続しましたが…』

 

 

「…いや、アレはアイツにとって…むしろ俺以外の全てにとっても、何気ない一言だったんだろう。しかし…」

 

 

「考えれば考えるほど、俺は【なりそこない】という言葉がいやにしっくりくるんだよ」

 

 

「ガーディアンではない。かといって、いくら装備を盗んでも、腕を取り替えても、身体にエーテルが流れても、俺はフォールンじゃない…フォールンにすらなれない」

 

 

「だから俺は、【なにかのなりそこない】だ。人間でも死者でもない、死人のなりそこないのゾンビって名前にもぴったりだ。どうだ?」

 

 

「ハハ…俺はいいと思うぜ?」

 

 

「…ザナリー。いつからいた」

 

 

「ついさっきだ。アンタが、ライフ君に俺との関係について諭されてたあたりかな」

 

 

『ほぼ全部聞かれてましたね』

 

 

「全く…いいかザナリー。お前には関係のない話だ。奥の様子を見てきたのなら報告しろ」

 

 

「もちろんです。仰せのままに…なんてな。フォールンはいたが、バンダルが1体と、ドレッグが数体いただけだ。紋章もつけてない。ハウスを追い出されたんだろうな」

 

 

「アンタの生命に関わるエーテルも、大した量はないだろうな。襲う価値はあるのか?」

 

 

「確実に勝てる戦いを積み上げていくのも戦略だ。フォールンの数は減り、俺達は戦闘の経験値を得る…エーテルはその副産物としてあればいい」

 

 

「フーン…よく分からないが、襲うんだな?だったら任せとけよ!奇襲はハンターの十八番だぜ?」

 

 

「何をするつもりだ」

 

 

「分かっちゃつまらないじゃないか!いいから見てろって…3分後に歩いて入ってきな」

 

 

「あ、おい!」

 

 

「いいからいいから!」

 

 

言うや否や、ザナリー3は透明化して奥へと走っていってしまった…

 

 

「…これでも仲良くしろって言うのか?」

 

 

『…今回の戦闘の結果次第では、意見を変えるかもしれませんね』

 

 

「………」

 

 

…………………

 

 

『3分です。頃合でしょう』

 

 

「ああ。行こう」

 

 

洞窟には電気が通っていた。足元のライトを頼りに進む。

 

 

『…これは』

 

 

「なるほどな」

 

 

しばらく歩くと、やかましいブシューッという音と、人工物のゲートに開いたフェンス、そしてそこからもうもうと立ちこめる白い蒸気が俺たちを迎えた。手を伸ばせば、肘から先がぼやけて見えなくなるほどの濃さだ。

 

 

「奇襲は得意って言ったろ〜!?うわっ、何しやがる!すまん、手伝ってくれ!」

 

 

「ライフ、どうだ?」

 

 

『私としては…協力者でありたいですね』

 

 

「そうか…まあ、いいだろう」

 

 

新しく備えた右腕を構える。ライフが敵の位置を教えてくれる。

 

 

「4体か。いや…」

 

 

「ちくしょう、このっ!…ハッハー!見たか!」

 

 

「…3体だな」

 

 

『正面、3歩の距離です』

 

 

右腕で頭を掴み、そのまま地面に叩きつける。

 

 

『続いて10時の方向。向かってきます』

 

 

「流石に場所くらいは分かるんだろうな」

 

 

左腕を2度握る。バシュン、という音とともに、アークエネルギーの塊は蒸気を切り裂いてドレッグを吹き飛ばした。

 

 

『威力の調整も良好ですね。エーテル損失も軽微…やはり威力を切り替え式にするのは良い選択だったと思います』

 

 

「片付いたか?」

 

 

『ええ。もう大丈夫…いや、ちょっと待ってください…まさか!』

 

 

「どうし…」

 

 

『っ危ない!後ろです!』

 

 

「おっと、お疲れさん!」

 

 

「っ!」

 

 

振り向くと、俺を睨んだまま動かなくなったバンダルと、そいつの首にナイフを突き立てたザナリー3の姿があった。

 

 

「…透明化したバンダル…レーダーに映らないハズだ」

 

 

『すみません。バンダルがいた時点で警戒するべきでした…』

 

 

「いや、いい。俺も忘れていた」

 

 

「…なあ、命の恩人である俺になにか一言は?」

 

 

「………」

 

 

『すみません。助かりました…彼に代わってお礼を』

 

 

「ハハ…まあいいさ。口下手なのは知ってる」

 

 

「今回は水がたんまり溜まってるタンクを近くに見つけたんで、コイルをいくつか作ってくっつけて、無理矢理高圧の電流を流して熱で中から爆発させてやったんだ。蒸気でニンポーエンマクのジュツ、なんてな…」

 

 

そう言うと、ザナリー3は蒸気の奥に歩いていった。かと思えば、少しして大声で話し始めた。

 

 

「なあ、もうこの蒸気止めていいか!?錆びちまう!」

 

 

「…エクソが錆びるわけないだろう!いいから早く止めろ!」

 

 

「…おっ、了解〜!」

 

 

キュッ、キュッ、という金属とゴム質が擦れる音。

 

 

『バルブを閉めているのでしょうか?でも何故…』

 

 

「…あ〜クソ!やっぱり無理か!このっ!」

 

 

ガンッ、ドガンッ、という強い金属音。

 

 

「バルブは諦めたらしい」

 

 

「う〜ん…あ、そうだ」

 

 

ガコォン、という響くような、重い音が聞こえたかと思うと、少しずつ霧が晴れていくのが分かった。

 

 

「…ハハ、まあどうやったって結果は同じだ」

 

 

『…これは…』

 

 

「………」

 

 

そこには、ぐしゃぐしゃに潰されたタンクと電線にコイル、そしてその上に、無造作に叩きつけられた大きな岩…

 

 

「…お前、詰めが甘いと言われたことはあるか?」

 

 

「1度や2度じゃないな。いつも言われてたぜ」

 

 

「…今後、お前に作戦がある時は…必ずその内容と、どう収拾をつけるかを必ず俺とライフに伝えてからだ。お前が独断専行したと判断すれば撃つ」

 

 

「そりゃ…ひどいな?」

 

 

「当然の措置だ。お前は奇襲することに関しては確かに優秀かもしれんが、それだけでは足りない」

 

 

「…わ、分かったよ。俺が何か思いついたら、アンタかライフ君に必ず相談する。それでいいんだろ?」

 

 

「ああ。それでいい…盗るもの盗ってさっさと行くぞ」

 

 

「ああ、了解。と言っても俺は単なる荷物持ちだがな…ん?」

 

 

「…なあ、もしかして今、俺が優秀だって言ってた?しかも今のって俺と協力して動いてくれるってこと!?」

 

 

「いいから黙って選別しろ!」

 

 

「なあ、教えてくれよ!それかもう1回言ってくれ!なあ頼むよ〜!」

 

 

「うるさい!お友達になった覚えはないぞ!」

 

 

「ハハ…否定はしないと。いいね!そう来なくちゃ!」

 

 

『…結果オーライですかね?あ、そのパーツは捨てないでそこに…ああっ、それは違います!あーっ投げ捨てないで!』

 

 

 





相変わらず、評価や感想大歓迎です。ここがおかしい、みたいな意見もけっこう参考になります。


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レベル10.暗雲:前編



なんか閲覧数がめちゃくちゃ増えてると思ったら、この作品がランキングに載ってたんだそうです。…ふーん…ランキング…ランキングぅ!?

ということで、日刊ランキングの20ちょい位ぐらいになってました!

Destinyが好きなだけで始めたこの小説がまだ続けられているのも、ひとえに皆さんの応援のおかげです。本当にありがとうございます。

これからもお付き合いいただければ幸いです!




 

 

 

 

…明晰夢だ。最近は見なかったのだが…

 

 

「立派な右腕だな…同志よ」

 

 

目の前に佇むソイツは、マントを愛おしそうに撫でながら俺に語りかける。

 

 

「………」

 

 

「オマエは、自分がフォールンじゃないという」

 

 

「ああ。そうだ」

 

 

「だが、ガーディアンでもない」

 

 

「…そうだ」

 

 

「だったら、オマエは【何】だ?」

 

 

「…中途半端なのは百も承知だ。だが俺は何者でもない」

 

 

「本当に、ソレが許されると?」

 

 

「オマエは…オマエ達は…いや、【オレ達】は、孤独ではいられない」

 

 

「生まれた瞬間から…必ず、何かのグループに属することになる…それは、ハウス、バンガード…人間、エクソ、ハイヴ…エリクスニー…カバル…なんでもだ」

 

 

「種族…社会…何でもいい。自分達の枠組みに属さない存在は、【俺達じゃないもの】は…【敵】になりうる。そう、みなされる」

 

 

「………」

 

 

「オマエは、もはや人間かどうかも疑わしいオマエは、それでも人間を守るために戦うのか?光を失い、今や人間よりフォールンに近い…今のオマエは必ず排斥される。オマエの背中には、もはやオマエを信じ、守られる市民はいない」

 

 

「それは違う」

 

 

ガーディアンがガーディアン足るために必要なのは光と強い決意だ。市民とトラベラーを守るための力…そこに、市民の支持は関係ない。

 

 

「ガーディアンは市民を守る存在だ。それは市民に望まれるからじゃない…力があるからだ。トラベラーの力により、力を得たからだ。力には責任が伴う…その力を向ける方を間違えないために」

 

 

「グ…ハハ…グハハハハ!ハハハハハァ!」

 

 

何が面白いのかヤツは目を細め、口元をゆがめる。

 

 

「ハハハ…チカラ、セキニン…?…そんなものどこにある」

 

 

「一体、誰に言われた?『オマエにはチカラがある』だと?『チカラにはセキニンがともなう』だと?実に…バカバカしい!」

 

 

ヤツは地面を強く踏みつけた。ガシャン、と装飾品が揺れ、ぶつかる音が響く。

 

 

「弱者はなぜ弱者であるのか!強者はなぜ強者と呼ばれるのか!」

 

 

「そんなものはダレも知らない!強い、弱い…そんなものは下らないと、皆知っているからだ!強弱の定義などという曖昧なものを知る意味など無いからだ!」

 

 

「…フォールンはいつでも純粋だ…力とは相手を打ち倒すもののことだと、誰もが信じている。銃でうち抜けば、バロンも、アルコンも…ケルも、ガーディアンでさえも!皆カンタンに死ぬ。そのことを知らないフォールンなどいない…そこに、強いも弱いもない」

 

 

「いい加減にしろ…話が読めない。一体、俺に何を伝えたいんだ」

 

 

「…今のオマエには分かるまい…オレはオマエだが、オマエはオレじゃない…だが、オレ達になりつつある」

 

 

「また会おう。同志よ…今度はオマエが【何】になるのか、楽しみにしている」

 

 

「…何だってんだ…」

 

 

ヤツは背を向け、俺の意識は覚醒していく…

 

 

………………

 

 

 

「風が強くなってきた…雲行きも怪しい。朝は雲ひとつなく晴れていたんだがな…おい、いい加減荷物整理は済んだか?さっさと行くぞ」

 

 

あの洞窟でフォールンのキャンプをめちゃくちゃに(主にアイツのせいで)した後、俺とザナリー3は数日かけてヨーロッパ・デッドゾーンを回り、十分に戦えるだけの資材をかき集めていた。

 

 

「もうちょっと待ってくれ!くそ、片付けってのはどうしてこう…うーんこれ以上手には持てないな。もう弾薬はバックパックに全部入れちまうか!まあ敵を倒せば、その残骸からライフ君が精製してくれるワケだし、弾薬についてはそこまで気にしなくていいのか?」

 

 

「…俺達は別行動することもある。お前のそばに常にライフがいるとは限らないぞ」

 

 

『エーテルは予備タンク含め、いくつかストックもできました。最大出力のパルスキャノンをやたらに撃ったりしなければ、エーテル切れはあまり心配になりません』

 

 

「ついでにプラスチール材から作った新しい防具もバッチリ!…まあ、光はないけどな」

 

 

『…ああ、それと、フォールン・キャプテンの装備をサルベージしたものから、アークエネルギーのシールドを発生させることに成功しました。腰ベルトの右側に発生スイッチがあります』

 

 

「これか。いいな」

 

 

カチッという音が鳴ったかと思えば、俺の身体は淡い水色のエネルギーで覆われていた。キャプテンやバロン達がこぞって愛用するシールドとほぼ同じものだ。

 

 

『エーテルの消費はダメージに比例して増えていきます。また、短時間にキャパシティを超えるようなダメージを受ければシールドは消失します。その場合、リチャージにはしばらく時間が必要です』

 

 

「さらっとすごいことをしてるな!なあライフ君、俺にもソレ装備できないか?」

 

 

『身体中にエーテルを通せば可能です』

 

 

「残念。遠慮しとくぜ」

 

 

「エーテルも悪くないものだぞ。頭が冴えるし身体もすこぶる調子がいい…いや、最近背骨が痛むか」

 

 

『背骨、ですか?』

 

 

「ああ。…いい機会だ。ライフ、俺の身体をスキャンしてみてくれ。寝て起きた時に特に痛むんだ」

 

 

『了解しました。じっとしていて下さい…』

 

 

「何だってんだ?スキャン?ゴーストにそんな機能あったか…?」

 

 

『ゴーストは、ガーディアンを常にすぐそばでバックアップするためにあります。そのための機能のひとつです…スキャン終了。これは…?』

 

 

「どうした?」

 

 

『ゾンビさんの身体が…以前に比べ肥大化しています。いや、これは…まさか成長?』

 

 

「オイオイどういうことだ?ガーディアンは死体が光で動いてるだけなんだろ?死体が成長なんかするかよ!それとも何か?ライフ君。君のカメラアイには…まさかコイツが、まだ背が伸びるような健全な青少年に見えるってのか!?」

 

 

「カメラのホコリを払ってよく見てみろ!顔だっていっつも難しい顔してるからこんなにシワが寄って固まっ…」

 

 

「………」

 

 

「…顔が変なマスクでよく見えねえ!前から気になってたけど一体何だコレ!?」

 

 

「いい加減に黙れ。このポンコツめが…このマスクはエーテルを身体に供給してるだけだ」

 

 

「そうだったのか…ん?」

 

 

『どうしましたか?』

 

 

「エーテル…肥大化…これは…つまり…もしかして、俺は素晴らしくアタマがいいんじゃないか…?」

 

 

「何の話だ。さっさと言え」

 

 

「おうおう、求めに応じて不肖ながら答えて差し上げてやろう…この現象の原因はズバリ、アンタがフォールンのキャプテンになったということだ!!」

 

 

「………」

 

 

「……えっ…と、つまりだな。身体が、大きくなっただろ?フォールンの中で身体が大きいのは…その、キャプテンだから…」

 

 

「………」

 

 

「…うん、そういうことなんだ。つまりアンタはキャプテンなんだよ!」

 

 

「バカにしているんだな?そういうことだな…?…覚悟は出来てるんだろうな!」

 

 

ザナリー3の胸ぐらを掴み、引っ張り上げる。ザナリーの足は宙に浮いてバタバタと動いている。

 

 

「ちょちょちょ、待ってくれ!頼むよ待ってくれぇ!おいライフ君、見てないで助けてくれ!」

 

 

ザナリーの口腔がパカパカと開閉し、ライムグリーンの光が点滅している。エクソの中には喋ると口元が光るタイプがいるのだが、今かなり焦っている彼もその1人だったようだ。

 

 

『…ゾンビさん、折檻は少し待ってください』

 

 

「おお、ありがとう助かるぜ〜!…ん?…少し…?」

 

 

「なぜ止めた。今の俺ならなんの問題もなくコイツをぐしゃぐしゃにしてやれる」

 

 

『あなたがフォールン・キャプテンになった…という話は全く見当違いと言わざるを得ませんが、彼の着眼点は私の仮説にかなり近いです』

 

 

「つまり?」

 

 

『これは…いえ、これもエーテルの影響だと思います』

 

 






張り切って書いたら長くなったので前後編です。
一度に読むには長すぎたので分けたのですが、分けたら分けたでちょっと短い微妙な文字数になってしまったので、また加筆することになりました。なんだか本末転倒感。


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レベル10.暗雲:後編

 

 

 

 

「…俺の身体にエーテルが流れているから、身体が肥大化していると?」

 

 

『ええ。ご存知の通り、フォールンは厳格な階級社会…階級によってエーテルの供給量が決まります。そして、上位の個体ほどエーテル供給量は多く、また身体も大きい…』

 

 

「俺、エルダーズプリズンを見学した時に見たぜ!冷凍保存されてたが、バロンの1体にめちゃくちゃデカいのがいた!ドレッグの3倍はあったね」

 

 

『エーテル供給量の多い個体が大きくなるのは、エーテルの作用による最適化だと考えられています。ドレッグなどはエーテルを温存するために小さなままですが、キャプテンやバロン、アルコン達は十分な量のエーテルを得られる分、消費が大きくても問題ない』

 

 

「…俺が、エーテル供給量の多いキャプテンのようになりつつあると?」

 

 

『端的には、そうなります』

 

 

「下らん仮説だ…とは言い切れないな。しかし、俺がフォールンに近づきつつあるということになる…だが認めたくはないが、ほかに原因も思いつかん」

 

 

「良いことじゃないか」

 

 

「なんだと?」

 

 

「ライフ君、コイツの身体が大きくなると、何が良くて何がまずいんだ?」

 

 

『戦闘力としては向上します。ゾンビさんは正面から打ち倒す戦術を取りますから、筋力や骨格は大きい方が有利です。デメリットとしては隠密が大の苦手になりますが、どうせやらないので関係ありませんね』

 

 

「おい、俺は1度フォールンの斥候を上から奇襲してやったんだぞ」

 

 

『ですがあれ以来1度もやっていません。奇襲や隠密はザナリー3に任せて口にも出さない』

 

 

「…適材適所だ」

 

 

『ではあなたは正面戦闘に適していますので、幸いにもそれに特化することになりましたね。ほかのデメリットですが、エーテルの燃費が少し悪くなるのと…【外見が人間離れします】』

 

 

「フォールンの腕をつないでるんだ。今更じゃないか?ハハ」

 

 

「…フォールンの腕は、あくまで【つないでいるだけだ】…身体が根本的に変わった訳じゃなかった…機械をつないだのも、効率や必要に迫られてだ…しかし…」

 

 

『もしこのまま成長が続けば、残念ですが…人前に出ることは難しくなるでしょう。あなたに害意はなくとも、ほかの人間にとっては脅威と捉えられるでしょうね』

 

 

「………俺は、フォールンじゃない」

 

 

『ええ。それは確かで…「俺は、ガーディアンでもない」』

 

 

『………ゾンビさん…?』

 

 

「…俺は…人間でもなくなる…?」

 

 

『………』

 

 

「俺は…俺は、【何】になるんだ…?俺は…オレは…」

 

 

『あなたは、ガーディアンとして死んだまま生きる者、ゾンビです…私とあなたでそう決めました。これは前も言いました』

 

 

「…ああ、ゾンビ…そうだったな…俺はゾンビ…だがゾンビは人間がなるものだ…人間ですら無くなれば、俺は何になればいい?」

 

 

『ゾンビさん、落ち着いて下さい!あなたは【何でもない何か】のまま生きるとも言っていました!あなたはフォールンではありません!』

 

 

「そんなことは分かっている!」

 

 

思わずマスクを引き剥がし、地面に叩きつける。硬質な金属音とともにマスクが跳ねた。

 

 

「おっと、危ねぇ…なあダンナ、アンタ難しく考え過ぎなんじゃないのか?俺とアンタと、フォールン混じりで似たもの同士だ。これからのことは寝ながらでも考えてさ、仲良くやろうぜ?」

 

 

「似たもの同士、だと…?」

 

 

「お前に…エーテルも流れていない…身体にフォールンの機械をくっつけただけのお前に!俺の何が分かるっていうんだ!!」

 

 

「【ゴーストさえいないお前に】!!」

 

 

近くにあったラジオまでも蹴りつける。腹の底から湧き上がってくる激情に、身体の抑えが効かなくなってきていた。ラジオから音が漏れる。

 

 

《ザーーーー…ザザ…ーーーーガガ…》

 

 

「…ゴーストの話をするなよ…【お前に俺の何が分かる】だって…?」

 

 

「そりゃコッチのセリフだぜ…なあ、アンタに…」

 

 

「ゴーストが生きてて、甲斐甲斐しく付き従ってるアンタに!ゴーストのいない俺の気持ちが分かってたまるかよ!!」

 

 

《ザー…ビビ…ビ…ーーーーぐ…》

 

 

既に空は暗雲に覆われ、ぽつぽつと雨が降り始めていた。

 

 

《…生き残っ…ザ…ガーディアンに告ぐ…ガガ…衛星…タイタンに集結…よ!…繰り返す…ザ…ザザー》

 

 

「…それは…」

 

 

「…もういい。終わりにしよう」

 

 

「…ザナリー」

 

 

「気安く呼ぶんじゃねえ!俺の名前はザナリー3…俺のゴーストが、名前も忘れちまった俺につけた名前だ…アンタみたいな甘ったれた野郎に呼ばれたくない」

 

 

「…なあ、俺はアンタのこと、嫌いじゃなかったんだ…希望だった。光を失っても、グチャグチャになりながらフォールンを倒してるのを見て…俺はもう1度戦おうと思った。アンタと一緒にいたら、フォールンにも勝てると思った」

 

 

「………」

 

 

「…それだけだ。じゃあな。今までムリヤリついていって悪かったな…そこで固まってるヤツも元気でな」

 

 

『…ザナリー3…私は…』

 

 

「何も言うな。自分の命は大事にしろよ」

 

 

そう言うと、ザナリー3はゆっくりと歩き出した。振り返らず、かといって急ぎもしない。もはや未練などない…お前達のことなど気にも留めない。そう主張するように。それを見せつけるように…俺の目にはそれが、ヤツなりの決別の仕方なのだと感じられた。

 

 

《ザー…現在生き残っ…る、全ガー…に告ぐ。衛星タイタンに…せよ。繰り返…》

 

 

ザナリーを呆然と見送ったまましばらく立ち尽くしていると、雨が本格的に降り始めた。

 

 

『…行きましょう。せめて雨をしのげる場所へ…これからのことは、そこで腰を落ち着けてから考えましょう』

 

 

「…やかましいラジオだ。…ザヴァラ。生きていたんだな…衛星タイタンに集結しろ、だとさ…生き残ったガーディアンには光も船もないだろうに、無茶な要求だ。本当に行くやつなんかいるのか?バカげてる」

 

 

『ゾンビさん、今はそれどころでは…』

 

 

「バカげてるといえば、あのポンコツもそうだ。俺を何だと思ってやがる…万能の願望器か?望むままの、ヒーローみたいな姿でいろって?…バカめ、荷物も置いたまま行きやがって…」

 

 

バックパックを持ち上げる。

 

 

『あ、それは…』

 

 

ザナリー3が携帯していたのは、ナイフと1マガジン分だけ弾のこもったハンドキャノンだけだった。

 

 

『…ここはフォールンの勢力圏です…放っておけば、フォールンの物量に押されて死んでしまいます…ゾンビさん』

 

 

「ライフ。お前も、俺に望むのか?」

 

 

『…もちろん。あなたは、使命を果たすために私が選んだガーディアンでしたから…働いてもらいますよ』

 

 

「………」

 

 

『行きましょう。彼の行先は分かっています』

 

 

『ヨーロッパ・デッドゾーンの入口…トロストランド。そこへ向かいましょう』

 

 

「………」

 

 

落ちたマスクをつかみ、無言のまま歩き出す。雨に濡れても、もはやまばたきすら必要なくなった。身体は常に人間から離れていっている…俺は、【何】になるのか。そのことを考えている暇は、今はなかった。

 

 





ゾンビくんのアンデンティティはガバガバ

相変わらず誤字脱字のご指摘、ご感想やご意見もお待ちしております。


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レベル11.人間



最近ネタ切れ気味なので、またしばらく間が空くかもしれません。失踪する時は宣言するので、とりあえずは気長に待って下さるとありがたいです。




 

 

 

 

「ああ…鬱陶しい」

 

 

本格的に降り始める雨。ぬかるみにくるぶしまで浸かりながら歩くのに辟易する。

 

 

『そろそろ人間の建物が見えてくるはずです。ザナリー3も雨宿りはするでしょう…もしかしたらそこに居るかも。そこで説得しましょう』

 

 

「俺はあいつに忘れ物を渡しに行くだけだ」

 

 

『…そうですか』

 

 

「クソ…背中が痛い…人間離れだと?そんな生易しいものじゃない…俺の身体はフォールンになろうとしている」

 

 

『あなたはフォールンじゃありません!』

 

 

「だったら俺は【何】だ!」

 

 

『それは…っ!敵です!これは…フォールンではない!まさかカバル!?』

 

 

「何だと!?」

 

 

カバル。気の遠くなるような宇宙の果て、別の銀河から来た侵略者。圧倒的な体躯、重厚な武装の数々。そして…

 

 

「俺達から光を奪った張本人…」

 

 

『危険です。すぐに離れましょう』

 

 

「…いや、もう間に合わん」

 

 

崩れかけた二階建ての家屋。その上で、小さな人影がこちらを見つめていた。

 

 

「サイオン…カバルに隷属した知性体…ヤツらは目がいい。俺達は見つかったらしい」

 

 

『…では、建物のある方へ牽制しながら逃げましょう。隠れる所は多い方がいい』

 

 

「そうだな…行くぞ」

 

 

装備を確認する。機械の左腕、左脚。そしてフォールンの右腕。前よりもたくましくなったか?

 

 

『パルスキャノンは既にオンラインです。銃のリロードも済んでいます』

 

 

「3…2…」

 

 

サイオンがこちらを見るのをやめ、声を上げる。仲間に敵の存在を伝える合図だ。

 

 

「1…!」

 

 

『走って下さい!』

 

 

ライフの掛け声とともに建物に向かい走る。遠くから特徴的な機械の音が聞こえる。

 

 

「それなりに数はいるらしいな」

 

 

ジャンプして階段を上り、高所に向かう。立ち止まるワケにはいかない。牽制にパルスライフルを撃ちながら角を曲がり、敵の少ない方を目指す。

 

 

『遮蔽に入ったことでサイオンの目が離れました。あそこに逃げ込みましょう。』

 

 

「廃墟どころかほとんど埋まってるじゃないか」

 

 

『だからですよ。敵の目を欺けます…大丈夫、今のあなたなら怪我もしません』

 

 

「あまりいい感じはしないがな…」

 

 

実のところ、身体に起こった変化は肥大化だけではなかった。皮膚の硬質化もその1つである。

廃墟のとなった家の中を進み、ガレキをかき分けた中に身を隠す。

 

 

『身体は完全に隠れました。あとは静かにしていれば、諦めていなくなるでしょう』

 

 

「………」

 

 

何もせずじっとしていると、いらないことまで思考に入り込んでくる。俺は今までのことを思い出していた…

 

 

あの日、何事も無かったかのように目が覚めると、目の前に白色の角張った喋るロボットが浮いていた。ゴーストだ。俺は死んで、ガーディアンとして生き返ったと言う…俺はゴーストの導きに従い、たくさんの敵を倒し、たくさんの味方を守ってきた…あの日までは。

カバル。今でも鮮明に思い出せる。妙な機械がトラベラーに取り付き、俺達は光を失った。

 

 

俺達は逃げた。どこへともなく散り散りになった。また戦える日が来るのを待ちながら…俺は逃走に、旧ロシアの山を越えるルートを選び、そして…失敗した。

 

 

俺は生き延びるためにフォールンの力を使った。身体にはエーテルが流れ、俺は、そこに至ってやっと、自身がもはや光を失い、ガーディアンではなくなったことを自覚した。

 

 

さらに、俺は戦うためにフォールンの力を求めた代償を受けることになった。身体は醜く肥大化し、皮膚は岩のように硬くなり、手足は4本中3本が、すでに人間のものではない。

俺はもはや、到底人間とは呼べなくなっていた。

 

 

妙な夢を見ることは誰にも言っていない。ヤツの言うことは曖昧で、的を射ることがない。ただ、ヤツの姿がフォールンであることだけが、俺の心に引っかかっているのだが…アレは一体何なのだろうか?…

 

 

『…もう大丈夫です。出てきて下さい』

 

 

ライフによって思考がシャットアウトされる。深みにハマる所だっただけにありがたかった。

上に覆いかぶさったガレキを右手で押しのけ、立ち上がる。

 

 

「ライフ。次の目的地を教えてくれ」

 

 

『了解しました。ええと…』

 

 

「…?」

 

 

首元に違和感を覚える。左腕で触ると、水音と、やや粘着質な感触があった。虫でも潰していたかと左手を戻す。

 

 

「っ!」

 

 

左手は赤かった。ここで俺はようやく首から血を流していたことを知った。これは銃弾の跡だ。弾丸は貫通したらしく、反対側からも血とエーテルが流れ出ていた。咄嗟に物陰に身を隠す。

 

 

「血はまだ赤いんだな…ライフ。俺はどこからか撃たれたらしい。場所…を…」

 

 

気が遠のいていく…

 

 

『ゾンビさん?…っ!これは…!全身を撃たれています!まずい…治療しなければ…』

 

 

「その必要はない…首以外は麻酔銃だ。音は聞こえなかっただろう?俺特製のサイレンサーを使った。なに、この程度なら熊でも1日は生きているだろうさ。…こんな化け物なら1週間は耐えるんじゃないか?」

 

 

『誰です!?』

 

 

「俺か?俺はこの辺りに拠点を構えてる…デヴリムだ。ゴースト。お前には少し聞きたいことがある」

 

 

『あなたがやったのですね…!一体何故!』

 

 

「いいから、俺の質問に答えろ。それ以外は許さん」

 

 

デヴリムと名乗ったその男は、ゴーストを鷲掴みにした。

 

 

「ゴーストよ…まず聞こう。コレは何だ?」

 

 

暴れるゴーストを手で抑えながら話しかける。

 

 

『いいから早く私を離して下さい!治療しなくては…急がないと死んでしまう!』

 

 

ゴーストはその手からどうにか逃れようと、カチャカチャと音を立てもがく。

 

 

「ゴースト。お前の力では私の手からは逃れられん…いいから答えろ。【これ】は何だと聞いているんだ」

 

 

デヴリムはゴーストを両手で掴みながら、あごで地面に倒れるものを指した。

 

 

『…では約束してください。私が事実を話したらすぐに解放することを!』

 

 

「いいだろう…では、事実を全て話せ。【これ】は何だ?この人間のようなフォールンに、何故お前が付き従っていた?」

 

 

『訂正させて下さい。彼はフォールンではありません。彼は人間です…元ガーディアンの』

 

 

「ガーディアン?…はっ、光をなくしたから、今度はフォールンになって野盗の真似事でも起こそうとしたのか?」

 

 

「嘘をつくな。事実だけを話せ…ガーディアンは人間か、それに類する種族がなる。こんな大きさで外見の人間など見たことも聞いたこともない」

 

 

『嘘ではない!この私が、光を失い負傷した彼を改造したのです!彼が望み、そして私が応えた!彼がガーディアンであったことは否定させません!』

 

 

「…ふん。それで?【これ】がガーディアンだったとして、何故フォールンになっている?」

 

 

『フォールンではありません!…戦う力が必要だったからです。光がなくとも、彼は戦おうとしていたから、敵の装備を奪い、装備した!それ以上の意味などありません』

 

 

「あくまで、【これ】が人間だと、そう言うのか」

 

 

『…彼を【これ】と呼ばないでいただきたい…早く離して下さい。話すべきことは、これが全てです』

 

 

「…なるほどな。元ガーディアンが、光を失い、そして戦うためにフォールンの装備を使っている…」

 

 

『その通りです。だから…』

 

 

デヴリムは片側の口角を上げ、獰猛な笑みを見せた。

 

 

「全く信用できんな。では、コイツが今後、俺達人間に銃口を向け、フォールンの仲間にならない理由は?そもそも何故こんなに身体が大きい?お前は一体、コイツに何をした?」

 

 

『!?』

 

 

「フォールンがゴーストを捕え、改造し、実験体に付き従うように仕向けた…恐らくガーディアンを装い、油断させるためだろう。そう考えるのが自然だ」

 

 

「光を操る実験も兼ねていたかもしれんが、何せこのデカくて色々つながった身体だ。右腕なんか完全にフォールンじゃないか。こんなものすぐにバレるだろうに…もっと人間のことを研究すべきだったな」

 

 

「ゴースト。お前も機械のはしくれだ。故障ぐらいする…故障中に、お前が何をしたとしても…お前は悪くない。そうだろう?機械に詳しい仲間がいるんだ。そいつに見てもらおう」

 

 

『ま、待ってください!せめて彼の治療を!』

 

 

「ダメだ。コイツには色々吐いてもらうことがあるんだ…フォールンの基地や作戦、その内情をな」

 

 

「デヴリム。コイツはどこに置けばいいんだ?」

 

 

近くに控えていたらしい男が物陰から出てくる。

 

 

「奥地まで行かなくていい。教会の地下で十分だろう…ああ、大丈夫だ。かつてキャプテンを閉じ込めたが、奴が死ぬまで破れなかった頑丈な牢だからな」

 

 

『…エーテルが流れ出ている…!離して下さい!早く!』

 

 

「大人しくしていれば、手荒なことはしないさ。お前にはな…行くぞ」

 

 

『離して下さい!離して!…ゾンビさん!起きて下さい!』

 

 



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レベル12.白狼は獲物を逃がさない

遅れ…てない(当社比)。1週間なら遅れてはない…なくない?
すみません。お待たせしました。




 

 

「答え合わせをしようじゃないか」

 

 

もはや見慣れた風景。何をするでもなく、声の元へ顔を向ける。

 

 

「お前は一体誰だ?何が目的で俺の夢に入り込む?」

 

 

何度も繰り返された質問。はぐらかされることは分かり切っている。

 

 

「同志…そんなことは重要ではないのだ。オレはオマエだが、オマエはオレじゃない…」

 

 

「…そうやって俺をせせら笑って楽しいか」

 

 

「ああ。楽しいとも…これから、もっと楽しくなる…爪弾き者のエリクスニーもどき。ニンゲンもどき。ついに【仲間】に撃たれたな?」

 

 

「………」

 

 

意識を失う前。こちらに歩いてくる男を見た記憶がある。

 

 

「本当にあいつが撃ったのか?」

 

 

「ニンゲンが、オマエを敵とみなし、銃を撃ったのか、ということだな?…答えはすぐそこにある…また会える時を楽しみにしている」

 

 

含み笑いのような仕草を見せ、ヤツはこちらに背を向ける。話は終わった、ということだろう。

 

 

………………………

 

 

「答え合わせをしよう」

 

 

バシャ、という水音と、冷たい液体の感触に意識が必要以上に覚醒させられる。

髭面の壮年が、眉間に皺を寄せて立っていた。片手にバケツを持っていることからして、コイツが俺に水をかけたのだろう。

 

 

身体の状態を確認すると、俺は牢屋に入れられた上で、壁に何重にも巻かれた鎖で磔になっているようだった。

 

 

「…ひどいことをする」

 

 

文句を言うと、男はひどく驚いたようにしてみせた。あまりにわざとらしい挑発だ。

 

 

「ほう、人語を解すか…フォールンの技術力は流石に高いな。さあ、質問だ。お前はフォールンだ。そうだな?」

 

 

「…フォールンだと?」

 

 

「今更とぼけるなよ。無論お前のことだ。もはやお前に逃げ道も、弁護士を立て司法に訴える道もない。…司法は分かるか?それともフォールンに法はなかったか?」

 

 

「俺はフォールンじゃない!」

 

 

「その右腕がそう言ったか?それとも左腕か?左脚か?そうだ。その右脚はどこから手に入れた?」

 

 

「っ!!ぐ…っ」

 

 

大した言葉ではない。単なる挑発に過ぎない…そうやって自分に言い聞かせる。この男は何か致命的な勘違いをしているだけだ。

しかし…しかし、俺をフォールン呼ばわりしてはばからないのはやはり腹が立って仕方がない。

 

 

「ふん。フォールンの本能はやはり野蛮だな…さあ、吐いてもらうぞ。お前達の作戦から基地の資材まで全て!」

 

 

「…あの小うるさいロボットは結局大したことは何も吐かなかったからな」

 

 

「…なんだと?」

 

 

「あん?ああ…あのゴーストのことに反応したか。お前からしたら大事な作戦ツールだろうしな…気になるか?アレは今別のところにいる。次会うときはもう少し素直になってればいいがな」

 

 

「どういうことだ」

 

 

「おい、いちいち俺が説明しなきゃならんのか?なんて愚鈍なヤツだ…あのゴーストは俺の知り合いの元で改造を施すと言ったんだ。ちゃんとガーディアンの元で正しい行いの手伝いが出来るように直してやるのさ」

 

 

「改造だと!?」

 

 

怒りに任せて男を掴みあげてやろうとするが、鎖が派手な音を立てるだけで俺の行動は終わってしまった。

 

 

「おーおー…人間にこんなに敵意を向けやがって…やっぱりコイツはガーディアンじゃあないな。あのゴーストは嘘をつきやがったということだろう…」

 

 

「ここまで挑発しておいてよくも…!」

 

 

「フン。どうせお前に選択肢はない。情報は全て吐いてもらうし、ここから逃がすことは絶対に無い…なに、時間はまだまだある…今日はまだ顔合わせで済ませておく。今のうちに命乞いの言葉でも考えておくんだな」

 

 

男が踵を返す。

 

 

「っ待て!ゴーストを返せ!いや…返さなくていいから改造するのをやめさせろ!アイツは正常だ!」

 

 

「聞こえなかったか?お前に、選択肢は、無い。ゴーストをどうしようが俺の勝手だ。お前の運命を握っているのは俺だ。…これ以上の説明は必要か?」

 

 

「っ…この…」

 

 

「フン…馬鹿め…」

 

 

男は再び歩き出し、どこかへ消える。俺は黙って見ていることしかできなかった。

 

 

「クソ…あの野郎…俺をフォールンだと…本気で言っているのか?」

 

 

「…ゴースト…ライフ」

 

 

ゴーストが自ら名付けた名前をつぶやき、左腕を見つめる。

 

 

「チッ…」

 

 

機械の三本指。散々見て、無慈悲に破壊してきたフォールンのもの。最近サイズが合わなくなってきて、そろそろ替え時か、などと話していた…少なくとも人間のものではない。

 

 

人間とは何か…哲学をするつもりはない。俺が人間だと信じる限り、俺は人間であり続けるだろう。問題は、俺が、自分自身が人間であることを疑いはじめていることだ。

 

 

「………」

 

 

ライフは、常に俺の不安に注意を払ってきた。俺が疑心暗鬼に陥れば、すぐにそれを否定してきた。鬱陶しいと思っていたソレが、今になって俺を守るための行動であったと知る。

 

 

「…俺はあとどのくらい生きていられる?」

 

 

意識を現実に向ける。期待する返事はない。

エーテルが首元から流出していることは知っていた。思っていたより勢いよく流れ出ている上に、治療してくれる相手もいない。手足を縛られては、自分で処置することもできない。明日の朝には、もう俺は死んでいるのではないだろうか…あの男は俺を死ぬ寸前、もしかすれば死ぬまで追い詰めるつもりのようだ。

 

 

「ここまで依存していたとはな…情けないことに、俺はアイツなしでは少しの間も生きていられないらしい」

 

 

自嘲する。

 

 

「さて、それはどうかな」

 

 

「!?」

 

 

突然、牢内に見知らぬ声が響いた。

 

 

「誰だ?」

 

 

声のあった方を見れば、牢の向こうから1人の女性がこちらを見据えて歩いてきていた。シンプルに見えて複数の凹凸を含んだラインを施されたヘルメット。

膝までのびる藍色のコートが揺れ、腕に淡く光るリストバンドが見えた。

 

 

「…ガーディアン。それもウォーロックか」

 

 

ハッキリ言えば、ハンターより苦手な人種だ。やれ事実を超えた真実だの、真理だのを戦闘中であっても常に議論してる奴らは、ドーン・ウォードを張るのに必死なタイタンの目には単なるサボりにしか見えなかった。

 

 

「驚かせてしまってすまない。1つ伝えておきたいのは、私は君のゴーストの頼みでここにいることだ」

 

 

「ゴーストだと?」

 

 

「君のゴーストは優秀だな。ゴーストの出せる最大範囲の通信で、私達ガーディアンにオープンチャンネルで救援を求めた…咄嗟にな」

 

 

「そんな機能があったのか?」

 

 

「さあね。少なくとも私のゴーストはそんなことしない。ゴーストは突き詰めればただの人工知能…条件に対して一定のアンサーしか出さない。普通ゴーストはガーディアンの指示無しにルール違反のオープンチャンネルは使わないし、ここまで大げさに助けを求めるはずはないんだ」

 

 

「私がここにいるのは単なる興味だ。妙なアクションを起こしたゴーストと、そのマスターである君に対するね…」

 

 

「…それで、俺をどうするつもりだ。あの男のように尋問するか?」

 

 

「それには及ばない。私は真実を論ずる際には他人の言葉は用いるべきでないと考えるタイプでね。究極的に嘘を嘘と見抜くことはそもそも…」

 

 

「いいから、要点を話してくれ…」

 

 

ああ、ウンザリだ。ウォーロックは世の中で一番難しい言葉を使うヤツが一番賢いと思っていやがる!

 

 

「おっと、すまない…つまり、君を助けにきたのさ…ゴースト、仕事は終わったか?」

 

 

『あと3秒下さい…終わりました』

 

 

「よし。意外とセキュリティが固かったな…フォールン用と言われるだけある。さあ、あとはその鎖だが…」

 

 

『ハッキリ言えば無理です。少なくともここでは。破壊には専用の機械が必要です』

 

 

「コレもフォールン用ってワケだね。ふむ…どうしようか…ゴースト、鎖の組成は分析できるか?腐食から試してみよう」

 

 

「………それは、どのくらいかかる?」

 

 

「うん?そうだな…分析結果にもよるから適当な推測は立てたくないんだけど、どれだけ急いでも数時間は必要だろうね」

 

 

「す、数時間…?」

 

 

「ああ。別の方法も無いわけじゃないんだが、とりあえずこれが一番早いだろう」

 

 

ああ…これだからウォーロックってやつは!

 

 

「……なあ」

 

 

「なんだ?今計算の準備をしてるからあまり集中を乱して欲しくないのだが」

 

 

「脱出が目的なら、俺の後ろにある壁を破壊して、鎖ごと持っていけばいいんじゃないのか?」

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

「…よし、それで行こう。ゴースト!効率的に、かつ発生する音の小さいように壁を破壊できるポイントを」

 

 

「っ…うあああああーーっ!うるせえ!もう離れてろ!俺がやる!」

 

 

それはほとんど無意識だった。脳のオーバーフローが引き起こした現象であった。俺はありったけのエーテルをつぎこみ、左手を何度も閉じ、開きを繰り返してパルスキャノンを連射した。

 

 

地響きのような音が地下中に鳴り響く。音の合間にウォーロックの叫びが聞こえてくる。ガレキが至るところで崩れ落ち、世界の終わりのような様相を呈してきたころ、ようやく俺の身体は壁から解放された。

 

 

「な、なんてことを!これでは脱出がバレてしまう!」

 

 

「早いか遅いかの違いしか無いだろうが!!」

 

 

「その違いが重要で…ああもう!早く逃げるぞ!着いてこい!」

 

 

走り出すウォーロックに追いすがる。身体が大きくなってしまった分、崩れ落ちたガレキに身体がつっかえることがあったが、鎖か巻きついたままの右腕で破壊して進んだ。フォールン・キャプテンの腕というのは思ったより強力だ。

 

 

「もうすぐ地上だ!」

 

 

走る。走る。状況の矛盾に気がつくことなく…

 

 

「よし!これで…」

 

 

「ゲーム・オーバーだな。ガーディアンとバケモノよ」

 

 

「っ!デヴリム…!?」

 

 

そうだ。俺の脱走など、想定も対策もしていないハズが無かったのだ…デヴリムと呼ばれたその男は、地下を這い上がってきた俺と突然現れた協力者を、苛立ちを含んだ獰猛な笑みで出迎え、自慢げに抱えていたライフルをこちらに向けた。

 

 





というわけで、新キャラです。ウォーロック使いの皆さんお待たせしました。ウォーロックって議論好きの理屈屋なイメージがあるんですが私だけですか?多分ベックス研究家な彼のせいだとは思うんですけど。



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レベル13.巨人、狩人、魔術師



最近、活動報告なるものがあることを知りました。ついでなのでちょっとしたアンケートもしました。よかったら答えていって下さい。




 

 

 

 

 

状況は絶望的だ。デヴリムが俺の脳天に向けて銃口を近づける。

 

 

「腕を頭の後ろに置いてその場に伏せろ」

 

 

デヴリムは不敵に歯を見せながら命令する。

命令に従いながら、俺は1つの記憶を思い返していた。

 

 

「…ナインのエージェントを知ってるか?」

 

 

「なんの話しだ。時間を稼いだところでフォールンの助けはこないぞ」

 

 

デヴリムが銃口を頭に押しつけてくる。ウォーロックの方は、いつの間にかベルトを後ろ手に巻かれて動けなくされていた。

 

 

「ヤツらはいつも黒いフードを被っていて、その素顔はいつも何かに邪魔されて見ることができない」

 

 

「貴重品と引き換えに、すごく珍しいアイテムを売ってくれるエージェントもいる。だが神出鬼没で、見つけた情報が回ってきて向かう頃には、もうそこからいなくなっている。つまり自力で見つけるしかない」

 

 

「黙れ。ついに頭がおかしくなったか?」

 

 

「いいから聞いてくれ。俺はかつて、そのエージェントに会うために至るところを飛び回ったことがあるんだ」

 

 

「3週間ほどして、俺は日曜日の夕方にやっとの思いでナインのエージェントを見つけ出した。そしたらヤツは俺に何と言ったと思う?」

 

 

「時間切れだ、残念だったな!」

 

 

突然、デヴリムの背後から男の声が響く。

 

 

「っ誰だ!?」

 

 

デヴリムが背後を振り向こうとする。

 

 

「おっと、おねんねしてな」

 

 

「がっ…」

 

 

瞬間、鈍い音が鳴り、デヴリムが気を失って倒れた。

 

 

「お仕事完了〜っと…これで貸し1だな。さて」

 

 

「久しぶりだな、ダンナと…アンタ誰?」

 

 

「ザナリー!」

 

 

「おお、あんまり大きい声を出すなよ。まだ仲間がいるかもしれないんだから…とにかくここからズラかろうぜ?」

 

 

「…いや、ライフを探さなければ」

 

 

「ハハ、お探しはコイツかい?」

 

 

『ゾンビさん!』

 

 

「ライフ!?何故ここに!」

 

 

『私が運ばれている途中で、ザナリー3が現れて私を助けてくれました。私は彼に事情を説明し、協力してもらいました』

 

 

「まあ、そういうわけだ。お互い積もる話はあるだろうが、それは移動しながらにしてくれ」

 

 

「ああ、そうだな…おい、お前はどうする」

 

 

彼女を縛っているベルトを解き、呆けているウォーロックの肩を叩く。

 

 

「えっ?あ、ああ…状況が飲み込めない…と、とりあえず私もついて行くよ。元々の目的を果たそう」

 

 

「そうか。好きにしろ。ザナリー、これからどこに逃げるつもりだ?」

 

 

「え?」

 

 

ザナリーが驚いたような声を上げ、周りをキョロキョロし始める。

 

 

「…お前…」

 

 

「あ、いや、違うんだ!元々考えてて、でもド忘れしたっていうか…すっげー頑張って走ったから来た道覚えてない…じゃなくて!」

 

 

「もういい!ライフ!」

 

 

『はい!逃走経路は検索済みです。私の指示に従って移動してください』

 

 

「…そういうことだ!走るぜ!」

 

 

「ああ…全く!」

 

 

………………………

 

 

日が沈むころ、やっと建物の少ない洞窟にまでたどり着いた。警戒がかなり厳しく、遠回りを余儀なくされたために時間がかかった。

 

 

「…ここからは人間の勢力圏を抜ける。少しは安全だろう…妙な話だがな」

 

 

「これで俺もアンタもお尋ね者ってワケだ。あと…そっちの姉ちゃんも。アンタ誰?」

 

 

「おっと…状況に呑まれて自己紹介の機を逸していたな。改めて、私はケイ。ケイ・サカモトだ。今後ともよろしく頼む」

 

 

「妙な名前だな。いや、こういうのがたまにいるのは知ってるんだが…」

 

 

「ゴーストが言うには、私のルーツは極東の島国だそうだ。呼びづらいのも、髪や目が真っ黒なのもそのせい」

 

 

「フーン…いや、目が黒いのはその…ヘルメットで見えないんだが、とりあえず了解だぜ。もう知ってると思うが、俺はザナリー3、エクソだ。これからよろしくな!ケイ!」

 

 

ザナリーがわざとらしい動きと表情で彼女に握手を求め、ケイが適当に応える。

どうやら彼女はこういう輩の対処法をよく知っているらしい。

 

 

「ええ、よろしく。もっとも、私の興味の対象はあなたじゃないけど」

 

 

ケイがこちらを見る。

 

 

「何もない。ライフも、俺も、研究したところで大したことは得られないだろう」

 

 

『私も自己スキャンに加えて論理的自己再定義は定期的に行っていますが、今のところ内部的な異常は見つかっておりません。損傷やエネルギー不足は別ですが…』

 

 

「大したことが見つかるかどうかは、これからの私が決めること。あなた達は普通にしてるだけでいい」

 

 

「あのー…俺は?」

 

 

「さっきも言ったけど、あなたはただのハンターでしょう?さっき使った透明化だってハンターの…1スキル…に…嘘」

 

 

「お、分かった?俺の魅力に気づいちゃった?ちなみに光は使ってないぜ〜?」

 

 

「光なしで透明化するとしたら…あなたまさか!」

 

 

「イエス!ちょっとセクハラじみてるけど、俺の腹に秘密があるんだぜ!見る?どうだ?研究する?」

 

 

「え、ええ、そうね。あなたも十分研究対象になりうる。また今度、ゆっくりお話しましょう…」

 

 

「おっ、動揺してる?話し方変わってるぜ?」

 

 

「っ…今後、あなたが静かになるプログラムの開発も並行して行う。覚悟しておけ」

 

 

「おお、そいつはいい。是非協力させてくれ」

 

 

「おいおい〜!せっかくの再会なのにこんなに冷たいのか?アンタ達を助けたのは俺だぜ!?」

 

 

「…ああ、そうだった。ザナリー3。俺達を何故助けた?」

 

 

「おおっと、いきなりシリアス…ハハ、まあ…大したことじゃない。ただ、俺はアンタとライフ君に借りがあることを思い出しただけだ」

 

 

「借りだと?」

 

 

「弾薬とか、あと安全とか…えっと、あと…あ〜…やっぱりこういうのは性にあわないな。…要するに、借りってのは俺の言い訳だよ。俺は1人になるのが恐くなった。だから恥をさらしながらアンタのとこに戻った。それだけだ」

 

 

『ザナリー3の同行に対して私は賛成です』

 

 

「ライフ、静かだと思ったら…全く。良いだろう。お前は多少戦力になることは知ってる。これからはチームだ。それと…忘れ物だ」

 

 

ずっと背負っていたカバンを投げ渡す。身体がずいぶん軽くなったような感じだ。

 

 

「これは…おお!まさか持ってきてくれてるとは!やったぜ!ハンドキャノンの弾薬が無くなって、もう透明化してナイフ振るしかなかったんだ!」

 

 

「タイタン、ハンター、ウォーロック…ファイアチームとしてはバランスがいいな」

 

 

ケイが感慨深そうにつぶやく。

 

 

「フン。それは皮肉か?光がなければクラスなど、あってないようなものだ」

 

 

「フフ。ガーディアンは光だけじゃない。あなたも知っているだろう?」

 

 

「…いや、光なくしてガーディアンはガーディアン足りえない」

 

 

「…何かあったのか?」

 

 

「何も無かった。何もできなかったからこうなっている…この話は終わりだ。ケイ、お前がここに来るまでに、何か情報は得ていないのか?」

 

 

「そうか、今は触れないでおく。…それで、情報か。私も光を失ったガーディアンの1人だ。ついこの前までは必死に逃げるしかなかった…」

 

 

「つまり、何も知らないってことか?」

 

 

「ザナリー、静かにしてろ。お前が入ると話がおかしくなる」

 

 

「へいへい…隅の方でライフ君と遊んでるぜ」

 

 

『えっ、私もですか?』

 

 

「…ライフ、行け。お前は多少離れても会話は聞こえるだろう」

 

 

『…分かりました』

 

 

「…続けるぞ。私のゴーストは常に仲間の発信する電波を受信し続けていた。例えば、ザヴァラが率いるチームは今惑星タイタンにいる。フォールンとハイヴに押されていたらしいが、とあるガーディアンの増援で持ち直したらしい」

 

 

「とあるガーディアン?」

 

 

「ああ。噂程度の情報だが、最近起こったヨーロッパ・デッドゾーンの情報網の復元や、地下の敵の撃破に一役買ったらしい」

 

 

「…一説には、光を取り戻したんじゃないかとも言われてる」

 

 

「何だと!?」

 

 

思わず立ち上がり、声を荒らげる。

 

 

「落ち着いてくれ。まだ確証は得られていないし、皆がそういうヒーローを求めるのは自然なことだ。それが真っ赤な嘘であったとしても」

 

 

「だが、もし本当に光を取り戻していたとしたら」

 

 

光を取り戻す方法があるということだ。つまり…

 

 

「俺は…光を捨て、敵の力を利用し、ガーディアンの姿まで失った俺が、光を取り戻したガーディアンに敵わなかったとしたら…俺は何をしてきたことになる?俺は一体どうなる…」

 

 

「…残酷なようだが、過去は変わらないし、君は君なりのベストを尽くした。そう思うしかないだろうね」

 

 

「ああ。お前にとっては他人事だ。まさしくな…」

 

 

「タイタンは、ガーディアンはこの程度で打ち負かされるほど軟弱ではないはずだ」

 

 

「俺はガーディアンではない!研究だか何だか知らんが、俺をガーディアンと呼ぶなら協力はしない」

 

 

「わ、分かった。すまなかった…」

 

 

「…いや、謝るのはこっちだ。何も知らないのに当たり散らしてしまった。研究は好きにしてくれ…」

 

 

「ライフ。俺は少し眠る。彼女の相手をしてやってくれ」

 

 

『今度はウォーロックの会話相手ですか?全く人使いが荒いんだから…まあ、ハンターの遊び相手よりはマシですが』

 

 

「ひでえ!」

 

 

「やかましい!外の警戒でもしてろ!しばらくしたら交代してやる…」

 

 

「おお、そりゃいい暇つぶしだな。警戒中何もなければもっと暇になるけどな!」

 

 

「………」

 

 

「じゃあ、行ってくるぜ。ケイ、こんな気難しいオッサンだが、別れるなら早めがいいぞ。こんなんでも愛着ってのは湧くもんだ…」

 

 

「ああ、考えておくよ」

 

 

「聞こえてるぞ!」

 

 

「ハハハ、聞こえるように言ったんだよ!」

 

 

「全く…」

 

 

夜は更けていく…






ということで、どこかにいるPC君について少しだけ触れました。今はタイタンの問題を解決したあたりかな。
光はもうないと諦めた末の結果であるゾンビ君にとってはアイデンティティの危機です。どうなることやら。



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レベル14.亡霊


そういえば、時々はじめの方に書いている伝承風の文章ですが、深い意味はあったりなかったりします。今回は割と書きたかっただけです。




 

 

月、『ヘルマウス』での会話記録

 

 

「なあ、それはなんだ?その胸に下げてる石のペンダントのことだ」ーー新米のハンター

 

 

「これか?これは俺だ」ーーベテランのウォーロック

 

 

「いや、アンタはそこにいる。俺と話してる」

 

 

「俺はここにはいない。もっと遠く…いや俺は、もうどこにもいないのかもしれない」

 

 

「何の話だ?意味がわからない」

 

 

「俺達は死ぬが、生き返る。だがその間に何があったか知ってるか?」

 

 

「ある時、この【間】が恐ろしくなった。だから俺をここに封じこめた。俺が壊れない限り、身体が死んでも、俺はここで全てを見ていられる」

 

 

「自己暗示か?」

 

 

「そうではない。事実だ。俺はハイヴ魔術により魂を分け、ここに移動させた」

 

 

「何だと?ハイヴの忌まわしい力を使ったのか?」

 

 

「忌まわしい?ハイヴは純粋だ。純粋な死だ。そもそも…敵の技術を流用することの何が悪い?」

 

 

「このことはバンガードに報告させてもらう」

 

 

「そうか…残念だ」

 

 

「なんだと?」

 

 

「歯。先端。お前は年老いた影だ。苦痛。腫瘍。そして…」

 

 

「何をしてる?おい!やめろ!」

 

 

………………………

 

 

 

あれからまた数日が経過した。

 

 

ザナリーは俺をからかってくる以外はよく働く。ケイについても、時々俺やライフに妙な質問を投げかけてくるがそれだけだ。突っ込むザナリーや俺の援護が非常に上手く、今では作戦を考えるのも彼女の仕事だ。理屈っぽく、また考え過ぎて視野が狭くなる時もあるが、その時は俺やザナリーが意見する。

俺達はかなり安定した戦いができるようになっていた。

 

 

これなら自分達が生きるだけでなく、ほかのことにも目を向けられるだろう。

…それこそ、ガーディアンの仕事の真似事だってできるかもしれない。

 

 

…ただ1つの懸念を除けば。

 

 

『痛みますか?』

 

 

「いや、最近はもう痛みは感じない」

 

 

俺達は木製の廃屋をキャンプにして休息をとっていた。あちこち軋んでうるさいし、床には穴が空いていてよく足が抜けるが、雨風をしのぐには十分だと判断した。

ライフは俺にライトを当てるのをやめて考え込む。

 

 

『ふむ。エーテルの供給を最低限にしたからでしょうか』

 

 

「そうかもな。身体の肥大化も前ほど早くない」

 

 

『やはりエーテルの供給量が身体の肥大化に直結しているようですね。ケイはどう考えますか?』

 

 

「前例が無いことだから難しいが、私が考えるにこれはかつてのガンのようなものだ」

 

 

『ガン、ですか』

 

 

「なんだそれは」

 

 

「ああ。ガンというのは病の1種だ。黄金時代までは不治の病だったらしい。私も文献でしか知らないがな」

 

 

「それが、どう俺とつながるんだ」

 

 

「ガンの治療法が確立するまでは、患者には2つの選択肢しかなかった。すなわち、進行を弱めて死を遅らせるか、ガンに罹った部位を健康な部分ごと切除するか」

 

 

『…今のゾンビさんは前者であると?』

 

 

「そうだ。結局のところ、根本的な解決をしなければ、君は遅かれ早かれ完全なる人外と化すだろうな」

 

 

「なんだ。最初からそう言え」

 

 

「例を挙げて話した方が分かりやすいだろう?」

 

 

「どうだかな。そもそも例を知らないなら意味がないんじゃないか?」

 

 

「それは受け取り手次第だ。そもそも会話による理解というのは実際の割合にして…」

 

 

「ああ。もういい。その話はまた俺の墓ができた時にしてくれ。それで、結局俺はどうしたらいいんだ?」

 

 

「言っただろう。根本的な解決だ。つまり原因の究明、解決策の模索。ガンのように、解決策さえ確立してしまえば、不治の病はほんの少しの損失に変わる」

 

 

「何も分からんということか?」

 

 

「そうとも言える」

 

 

『では、我々はゾンビさんの変化を抑えながら研究し、解決を目指す…つまり今まで通りというわけですね』

 

 

「…なあ…お話中失礼するんだが…」

 

 

「どうしたザナリー、敵がいたか?」

 

 

「いや、ちょっと話を…いやほとんど全部聞いてたんだが…なあ、つまり、アンタ達は【よくわかんないから現状維持で】って言うためだけにそんだけの時間を費やしたのか?」

 

 

「………」

 

 

「…はあ、ザナリー…あなたは本当に…」

 

 

「あー、いや、俺の勘違いならいいんだ!ただ、その話に弾丸の1発分以上の価値はあったのか気になったんだ!」

 

 

「…物事の本質は結論にだけある訳じゃない。複数の事実。複数の意見。そして複数の分析…結論はその先にあるからこそ価値がある。結論や結果が同じであっても、そこに明確な根拠があることに意味がある。説得力が増す」

 

 

「…なるほどな!ハハ…今度からアンタ達の話は立ち聞きしないようにするぜ」

 

 

『理解を諦めるのも1つの選択ですね』

 

 

「そういう事だ。ライフ君は優しいなぁ感動しちゃうぜ」

 

 

『では、私をボールにして遊ぶのを控えてくれると嬉しいのですが』

 

 

「そりゃムリだ。今ある娯楽の中で1番楽しいんだからな!」

 

 

『ああ…助けて…イヤだ…』

 

 

「ザナリー」

 

 

『ゾンビさん!』

 

 

「…ほどほどにしておけ」

 

 

「了解!流石ダンナだ話が分かるぜ!」

 

 

『………』

 

 

ライフは静かになった。

 

 

………………………

 

 

「ケイ、お前に師匠はいるのか?」

 

 

「師匠はいなかった。あえて言うならゴーストが私の師匠だ」

 

 

『質問に答えていただけです』

 

 

ケイのゴーストはライフに比べて寡黙だ。必要とされたり、ケイの話の補足程度にしか話さない。

 

 

「ウォーロックの素質が高かったということだな」

 

 

「そうかもしれない。師匠はいなかったが、仲間はいた。チームを組んで研究に打ち込んだりもした。今は…どこにいるか分からない」

 

 

「そうか。死ぬ前に見つかるといいがな」

 

 

「ああ。…あっ」

 

 

「どうした」

 

 

「1つ、忘れていたことがあった…お前より先に、敵と融合したガーディアンがいたんだ」

 

 

「融合…という言い方は引っかかるが」

 

 

「…あの人も、お前と同じだ。そうせざるを得なかったから、そうなった」

 

 

「気が合いそうだな。タイタンならもっと良かった。それで、名前は?」

 

 

「エリス。エリス・モーン。アウォークンの女性で、行方不明だったファイアチームの生き残り。かつてシティに迫るハイヴの脅威を伝えた」

 

 

「彼女はハイヴだらけの中で身を隠し、生き残るためにハイヴの目を手に入れた。彼女は…私達には聞こえない声が聞こえていたようだった」

 

 

「ハイヴか。あまり参考にはならなさそうだが、話してみる価値はあるな。それで、居場所は分かっているのか?」

 

 

「分からない。そもそも、今生きているのか…」

 

 

「彼女はシティにいたのか?」

 

 

「ああ。ハイヴの脅威がガーディアン達によって退けられた後は、シティの広場の端、影になっているところで景色を眺めていた」

 

 

「あの日、シティから逃げること自体は難しいことではなかった。ましてハイヴの巣から生還する能力があればな…生き残っている可能性は高いだろう」

 

 

「あの日死んだのは勇敢な者達ばかりだった」

 

 

「………」

 

 

「おい!大変だ!」

 

 

ザナリーの声が響く。柱のひびが大きくなった気がした。

 

 

「ザナリー、あまり大きな声を出すな」

 

 

「大変なんだ!今ラジオのオープンチャンネルで話してる!いいから聞いてくれ!」

 

 

《…ザヴァラだ。経緯は先程スロアンが伝えた通りだ。我々は衛星タイタンに集結し、反攻の時を待った。そして…ガーディアンがやってきた》

 

 

「ガーディアンだと…?」

 

 

《彼は我々の懸念をことごとく打ち破った。驚くべきことに…彼は、1度は奪われた光を取り戻していた!》

 

 

「…!」

 

 

思わず顔が歪む。

 

 

《これは福音だ。我々はまだ戦うことができる。希望は残されている!我々はバンガードを再度結成し、リーダーを召集して、反攻作戦を練る…これを聞いているガーディアンがいたならば、我々の発する情報を常に気にかけてほしい。そして覚えておいてほしい…我々はまだ負けてはいないことを!》

 

 

「………」

 

 

「…どうだ?すごい事だぞこれは!」

 

 

「…ザヴァラ…いやほかのバンガードは生きていたのか…」

 

 

「………」

 

 

「どうした?ダンナ、具合でも悪いのか?」

 

 

「…おおおっ!」

 

 

衝動のままに醜く膨れ上がった右腕を振りぬき、地面に穴を開ける。

 

 

「い、一体何だってんだ、落ち着けよ!」

 

 

「……っ!」

 

 

腕を引き抜き、立ち上がる。

 

 

「どこへ行く?外は危険だ」

 

 

「すぐに戻る…1人にしてくれ」

 

 

そう言って、俺はほとんど外れかけの扉を開いた。

 

 

………………………

 

 

『ショックでしたか?』

 

 

「ライフ、黙れ」

 

 

『あなたはその身をフォールンに似せてまで生き残り、力を得た』

 

 

「黙れ」

 

 

『これで戦うことができる。姿は変わっても、光がなくても、また人を守れる…また、ガーディアンの仕事ができる…そう思った』

 

 

「………」

 

 

『でも問題が起きた。あなたは守るべき人間に拒絶された…それが、彼らにとって正しい判断だったとしても、あなたにとっては理不尽にも感じた』

 

 

『……それでも、あなたを保っていたのは諦念。光などない…取り戻した者などいないのだから、こうするしかなかった…状況が悪かった。そう考えることで、自分を正当化していた』

 

 

「黙れ!握りつぶしてやってもいいんだぞ!」

 

 

ライフを掴む。だが、ライフは話すことをやめない。

 

 

『…私はあなたのライフ!あなたの命を預かると決めた!ならば、これは自衛です!私は今、あなたが私から奪おうとするあなたの命を守っている!』

 

 

『光が取り戻せると知ったから何ですか!?あなたはもう取り返しのつかない所まで来ているというのに!フォールンのような身体の何がいけないのですか!?』

 

 

『センチメンタルにふけるのもいい加減にして下さい!あなたが過去にタイタンとして働いたことを、私があなたのゴーストであったことを、今更後悔させないで下さい!』

 

 

「…っ!」

 

 

『…あなたはもう、ガーディアンではない。自分でそう決めた。ならば、今更光など気にしないで下さい。あなたはあなたの戦い方で戦えばいい…光を取り戻したガーディアンがいたことはプラスです。憎たらしい暗黒に痛い目を見せられるチャンスです』

 

 

「……少しの間でいい…静かにしててくれ。頼む」

 

 

『いいでしょう。私はまだ、あなたのゴーストです』

 

 

「…ゴースト…ガーディアン…俺は…」

 

 






ゴーストはガーディアンの乗り換えができるそうです。ラストワードの伝承にもそういった描写がありますね。


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レベル15.精神的に病んでいる時は何してもうまくいかない


本編がシリアスだとタイトルがふざけます。
今回は普段の倍近く長いのですが、うまい切り所がなかったのでまとめました。ご了承ください。
それと補足として、現時点でゾンビさんは人間として見るのはかなり難しい外見をしてます。7割ぐらいキャプテンです。




 

 

 

木の扉を右手で引く。有り余る力は腐りかけていた扉をつなぎ止めていた最後の蝶番を引きちぎり、扉は大きな音を立て倒れた。

 

 

「チッ…」

 

 

右腕の力加減が未だによく分かっていない。自身の腕として十全に扱うためには訓練が必要だろう…巻き上がった粉塵を手で払いながらそんなことを考えていると、ザナリー3がいつものように調子のいい声色で話しかけてきた。

 

 

「意外と早かったな。もういいのか?」

 

 

「ああ」

 

 

簡単に事情を察しているようで、深入りはしてこないのがありがたかった。

続けて、銃のメンテナンスをしていたケイが、視線は下に向けたままこちらに語りかける。

 

 

「厳しいことを言うようだが、あまり気にしすぎるのも良くないことだ。こういった気の迷いが戦闘にも支障が出る可能性がある」

 

 

「そうだな…」

 

 

彼女は生真面目にこちらに忠告を投げかけてくる。耳が痛い。

 

 

「…なあケイ。あんたって…『空気が読めない』とか、『頑固者』とか言われたことある?」

 

 

「…ザナリー、空気が読めないのはあなたもだ」

 

 

「ダンナも読めないからお揃いだな!ハハハ」

 

 

ザナリーがわざとらしく大げさに笑いながら、どかっとその場に胡座をかく。俺が何か言うのを期待してか、顔だけをこちらに向けた。

 

 

「………」

 

 

「…ダンナ?」

 

 

「…いや、なんでもない。ライフ、これから俺達はどうすべきだと思う?」

 

 

『そうですね。現状、我々は生きていくだけの資材には困っていません。当面の間は、資材のために敵を襲う必要はないでしょう。まあ、こちらの望む如何に関わらず敵はやってくるわけですが』

 

 

『今我々に最も必要なものは情報です。そこで、私はある方をお呼びしました』

 

 

「ある方?いや、そもそも勝手に呼んだのか?」

 

 

『私が勝手に通信回線を使用することは今に始まったことではありませんが?』

 

 

「…今度から許可を取れ」

 

 

『いいでしょう。それで、呼んだのは…』

 

 

ライフの言葉が終わらないうちに、突如部屋の中心に黒い霧が発生した。それは高速で渦を巻きながら、緑がかった歪な楕円を形成していく。崩れかけの窓枠がガタガタと音を立て、苔むしたまま乾燥した屋根や柱が激しく軋みながら粉を吹いた。

俺は、いや俺達は、この光景にひどく見覚えがあった。これは…

 

 

「ハイヴの遠隔テレポートだ!まずい!ハイヴの軍隊が来るぞ!」

 

 

ザナリーが声を上げ、距離をとる。俺とケイも同様に距離をとり、全員が戦闘態勢を取った。ただ1者を除いて…

 

 

「ライフ!何をしてる!こっちに来い!」

 

 

『いえ、大丈夫です。私が呼んだのは彼女なのですから』

 

 

「何を言って…っ!」

 

 

外側へ向けて強い風が吹いたかと思うと、黒い霧がさらに収縮し、地面に吸い込まれていく。そこから姿を現したのは…

 

 

「ゴースト。私を呼んだのはお前で間違いないな?」

 

 

『ええ。御足労感謝します』

 

 

「エリス・モーン!?」

 

 

ケイが声を荒げる。エリス・モーン。その名は先程聞いたばかりだった。この異質なアウォークンがそうであるならば…

 

 

「ハイヴと融合したガーディアン…」

 

 

エリスがこちらを向く。彼女の緑色に光る3つの眼に俺は戦慄した。背筋に氷が張ったような錯覚に陥る。

 

 

「私を見て何を恐れる、タイタン…私よりも余程業の深い存在へと成り果てたお前が、何故私をその目で見る。【異物】を見る目で」

 

 

そう言ってこちらを見る彼女の口元は、卑屈に歪んでいるように見えた。

 

 

「…恐れてなどいない。驚いただけだ。ライフ、彼女をここに呼んだ理由を教えろ」

 

 

『ですから情報です。彼女から暗黒の力の使い方や付き合い方を学びましょう』

 

 

この異様な空間の中で、ライフだけが、妙に呑気に話していた。

 

 

エリスがケイに向き直る。顎に手を当て、記憶を手繰っているようだ。少しの間の後、彼女の口元が緩んだ。

 

 

「…ケイ・サカモト…だったか。ああ、覚えている…ゴーストの研究に熱を上げていた。アシェル・ミルとそのゴーストに触れた噂が立った私に、しつこく質問してきたこともあったな」

 

 

「…覚えていてくれて嬉しい。…あなたは我々に協力してくれる、そう考えていいか?」

 

 

「私がわざわざここに1人で来た。それが答えでは不満か?」

 

 

「…いや、十分だ。感謝する」

 

 

「…そういえば」

 

 

そう呟いて、エリスの肩越しに部屋の奥を覗き見る。そこには、積み上がったガレキに仰向けにひっくり返ったまま動かない、哀れなエクソの姿があった。

 

 

………………………

 

 

「…それで、エリス…氏」

 

 

「呼び捨てで構わない」

 

 

「では、エリス。あなたは俺のライフ…あー、ゴーストが、通信によってあなたを呼んだ…そして、それに応えたと、それでいいか?」

 

 

「そうだ。お前のゴーストの独断であったことは驚いたがな」

 

 

「それで、暗黒勢力の力をその身に宿した先達として、俺達に情報を伝えてくれると」

 

 

「そうだ。もっとも、お前達はフォールン、私が宿したのはハイヴ…全く異なる種の暗黒を扱うために、あまり確実なことは言えないがな」

 

 

「待った、いや待ってくれ!」

 

 

ザナリーが右手を上げて抗議のポーズをとる。

 

 

「悪いが俺はアンタを信じられない。だって都合が良すぎるだろう!フォールンの武器や身体がくっついてエーテルが頭まで回った元ガーディアンに、アンタは二つ返事でご奉仕するってのか?しかも無報酬で!?」

 

 

「…エーテルの話は余計だが、その点については確かに聞きたい。エリス、あなたが俺達にここまでしてくれる理由はなんだ?悪いが、あなたなら自分1人でもこの辺の敵からなら身を守れるだろうし、俺達はあなたに渡せるものを何も持ってない」

 

 

「…ゾンビ、と呼べばいいのか?お前にひとつ、伝えておかなければならないことがある…私は、バンガードから指令を受けてここに派遣されている」

 

 

「…何だと?」

 

 

「真実だ。バンガードはお前達の存在を把握し、それに関する情報を求めている…つまりもし、私に対する報酬を無理に定義付けるならば、それはお前達の情報、ということになる」

 

 

「何故俺達のことを知っている?」

 

 

「…デヴリム・ケイという男に覚えはあるか?」

 

 

「!…ああ、覚えているとも」

 

 

デヴリム。先日、ヨーロッパ・デッドゾーンの市街地で俺に麻酔を撃ち込み、監禁した男。ヤツの目の奥に見えた明確な敵意が、脳裏にちらついた。

 

 

「その男から奥地を経由してバンガードに報告が入った。【フォールンの実験体を逃した。人間に擬態する。危険だから早いところ始末してくれ】…だそうだ」

 

 

「なら、俺を殺しに来たのか?」

 

 

「そうではない。バンガードはこの報告を受け、仮説を立てた。フォールンの装備を奪いながら生き残っているガーディアンがいたのではないか、と」

 

 

「待ってくれ。その仮説は報告から飛躍しすぎている!何故バンガードはそう思い、あなたという貴重な人材まで使って危険を冒した?」

 

 

ケイが声を上げた。確かにそうだ。デヴリムは【フォールンの実験体】だと言ったのに、バンガードはそれを【ガーディアン】だと考えた。加えてエリスは貴重な情報提供者であり、優秀な研究者だ。こんな確実性の低い任務につかせる理由が分からない。

 

 

「バンガードが私を派遣した理由はいくつかあるが、まずは…」

 

 

緩慢な動作でエリスが首を曲げ、ライフに視線を投げかける。

 

 

『…では、私が経緯を説明しましょう。まず、我々が求めたのはゾンビさん、あなたの、フォールンと融合した身体についての情報です。そのためには何が必要だと思いますか?』

 

 

「………」

 

 

「…前例だ。未知のことでも、似た例があれば研究の加速度は段違いだ」

 

 

ケイが答える。

 

 

『その通りです。我々に必要なのはゾンビさんの前例…つまり、ガーディアンによる暗黒との融合やその力の利用の歴史です。フォールンが一番なのですが、暗黒であれば参考になりますからね』

 

 

『では、その情報が最も集まるのは?』

 

 

「バンガードだ!バンガードのデータベースには、ガーディアンが暇つぶしに集めてきた伝承がゴロゴロ転がってる!」

 

 

『そうです。よくご存知でしたね?』

 

 

「ああ。伝承のデータ…まあボイスデータとかが主なんだが、こいつがその辺に時々転がってるんだ。ウォーロックや学者ぶりたいタイタンには高く売れたんだぜ?」

 

 

『…そういうことでしたか。話を戻して、私はこのデータを求めてバンガードとコンタクトを取りました。彼らにゾンビさんのことも含めた今までの経緯や現状を伝え、協力を求めました』

 

 

「俺はそんなこと全く聞いてなかったがな」

 

 

『そう何度も言わないで下さい。次からは気をつけますよ』

 

 

「…バンガードがお前達を信用したのは、これがゴーストからの連絡であったからだ。フォールンがゴーストを破壊することはあっても、利用した例はなかった。また、デヴリムは用心深い男だった…時には、必要以上に。だから、バンガードはお前達を敵ではないと考え、また協力する代わりに、お前達が生き残ってきた戦略や改造の情報の提供を求めたわけだ」

 

 

『それに、今のバンガードには少しでも戦力が必要ですからね』

 

 

「戦力…?ライフ、お前まさかとは思うが」

 

 

『ええ。お察しの通り、シティ奪還作戦発動の際には、我々も戦力として協力する約束をしました』

 

 

「………」

 

 

驚きや怒りを通り越して放心する。確かに、ライフの独断専行は今に始まったことではない。ガーディアンであった頃にも、少し抜けたところのある性格だとは思っていたし、光を失ってからは頼んでもいない冗談や忠言をよく言うようになった。通信を勝手にすることもあった。

だが、今まで俺に何かを強制することは無かったし、まして戦闘などは俺の判断に全て任されていた。

…しかし今回はそうではない。

 

 

「…ライフ。俺を、無理矢理戦わせようとしたのか?」

 

 

『そう思われても仕方のないことだと思いますが、必要なことでした』

 

 

「…そうか」

 

 

ライフは知っているはずだ。俺はこのフォールンの力を忌避していることを。それを振るって戦うことは、そのフォールンの力を誇示することにも等しい行為となることを。

 

 

「…俺が…」

 

 

『………』

 

 

「俺が、それを望まないことくらい、知っているだろう!」

 

 

『もちろんです。私は…』

 

 

「お前は、俺の『あなたの』」

 

 

「『ゴーストですから』だろうが!」

 

 

「っ…!だったら…!」

 

 

『私はライフ。ゾンビさん、あなたの命を預かる者です。ですが、私はあなたのゴーストであることを辞めた覚えはありません』

 

 

『私は、あなたがもう一度【ガーディアン】として蘇ることができるなら、それがあなたにとって…我々にとってのベストだと思っています』

 

 

「………」

 

 

『光を取り戻したガーディアンがいる。この事実はプラスです。なぜなら、それであなたをフォールンの、エーテルのしがらみから解放し、元のガーディアンに戻せるかもしれないのですから』

 

 

座り込み、歯を噛み締める。ギシギシと音が鳴るのを煩わしく思う余裕はなかった。それほどに、ライフの言葉は理解できず、また衝撃的であった。

俺をガーディアンに戻すだと?身体中をパイプが走ってエーテルを流し込み、醜く膨れ上がり、フォールンの三本指の義手や義足にまみれ、人間としての原型など留めていないこの俺を、未だにガーディアンになれると思っている?

額には汗が滴り、見下ろした右手がわなわなと震える。俺はあまりにも重いライフの言葉を噛み砕くのに必死だった。

 

 

「…ライフ…お前は一体…何を言ってる…?」

 

 

『………』

 

 

「…何を……考えてる………」

 

 

『………』

 

 

『…あなたはガーディアンに戻るべきだ。今の状態のあなたでは、今後長く生きることは…まして、戦い続けることは難しいでしょう。身体もそうですが…精神的に、あなたはもはや崩壊寸前まで来ています。その自覚はありますか?』

 

 

「………」

 

 

あまりにも残酷に、ライフは、俺のゴーストは、現状を告げる。

 

 

『私をおかしいと思いますか?』

 

 

「…まだ、考える時間が必要だ」

 

 

『ですが、状況はあまり待ってはくれません』

 

 

「…ああ、そうか…そうなんだな、ライフ」

 

 

「…いいさ。ああ、分かった……エリス、お前達バンガードの望むものを全て提供してやる」

 

 

「………」

 

 

エリスは黙ったままこちらを見つめている。

 

 

「俺をバンガードまで連れて行ってくれ。いくら仮説でも、ここよりマシな医務室くらいはあるんだろう?」

 

 

「いいだろう。バンガードはお前達を受け入れる。研究や情報収集はそこでするとしよう」

 

 

エリスは無機質に、淡々と答えた。まるで最初からこうなることが分かっていたかのように。

 

 

「なあ、ライフ」

 

 

『なんですか?』

 

 

「俺をハメたんだろう?こうなるって知ってたんじゃないのか?」

 

 

【1度光を失い、暗黒の力を宿せば、2度と元には戻れない】。知らず知らずのうちに、俺はその幻想に取り憑かれているのだろう。ガーディアンであった頃の輝かしい記憶と、忌々しい力を身に宿し、身体を醜く変形させてまで生きながらえている自分を対比させて悲劇的な感傷に浸っているだけなのだろう。

ライフはそれを俺よりもよく知っていたというわけだ。そして、力技でもってそれを崩しに来た。ただそれだけのことだ。

 

 

『そこまでは考えていません。ただ、私はあなたのゴーストであるために、あなたをガーディアンにしたいだけです』

 

 

「……そうか」

 

 

結局、これもまた俺の妄想に過ぎないのかもしれない。ライフは俺をガーディアンに戻すと主張する。

今俺の中にあるのは諦めだけだ。もはや抵抗してもどうにもならない。

状況は、とっくに俺が把握しコントロールできるような状態ではなくなっていたのだろう。既に完成した流れは、今更多少の力で変わることなどない。あとは流されていくだけだ。

 

 

俺はただ、無心のままに術式を編むエリスを眺めていた。ザナリーが俺の前で手を振っている。ケイはまた、難しい顔をして何かをライフと話し合っている。

今ここにある全てが、俺の意識の外にあった。

 

 

 



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レベル16.意識



短めですが、キリがいいのでこの辺で。
リアルが忙しいので更新はゆっくりになります。気長にお待ちください。



 

 

 

 

エリスが術式を編み終えると、またハイヴ式のポータルが開いた。彼女が言うには、彼女の船が停めてある場所に繋がっているらしい。

ポータルを通る時、ザナリーは珍しい体験にずいぶん興奮していた。ケイは戸惑いながらも、興味を隠せない様子だった。最後に俺が通った。引っ張られるような感覚があった以外は、特に何も感じなかった。

 

 

ポータルを抜けると、目の前には鬱蒼とした森と大きめの黒い影があった。エリスの船だった。エリスの船は普通のガーディアンが乗るような船に近い形をしていた。ハイヴ風の装飾が施されていたのは彼女の趣味だろうか。

 

 

残念なことに、ガーディアンの船は俺を含めた複数人を乗せるようにはできていない。我々(俺)については現地で情報収集するつもりで、今回は予想外だったと説明された。

ケイは身体が小さいので、エリスと共になんとかパイロットシートへ。俺とザナリーは格納庫に入り、宇宙に出る一応の対策として、月でも活動できるガーディアンのスーツをつけた。バンガードの支給品をいくつか持ってきていたらしい。

もちろん俺にはサイズが合わないので、俺だけはライフが加工したものに身体を無理矢理はめ込んだ。はっきり言ってキツい。このままザナリーと一緒に惑星タイタンまで行くのかと思うと、人生の終わりのような気分になった。深く考えないように努めていると、いつの間にか意識が遠のいていった…

 

 

 

………………………

 

 

 

「同志よ…調子はどうだ」

 

 

「また、お前か」

 

 

いい加減に、この夢にも飽きてきた。雲をつかむような話をするフォールンの相手を、相手が満足するまで延々とするだけ。

 

 

「もういいだろう」

 

 

起きている間に、俺は1つの仮説を立てていた。コイツの正体についてだ。

 

 

「…何がだ?」

 

 

わざとらしく、フォールンは首をかしげる。

 

 

「とぼけなくてもいい。お前の正体くらいは分かっている」

 

 

冷静になってみれば、何のことは無い。

 

 

「………」

 

 

「お前はフォールンだ…だが、フォールンのうちの何者でもない。お前は…」

 

 

「お前は、俺の被害妄想が作り出した幻に過ぎない」

 

 

そうだ。こいつは俺の、【フォールンになってしまったかもしれない】という不安に、被害意識に呼応して生み出された、単なる悪夢の登場人物。曖昧な話も、全て俺がそもそもフォールンについてよく知らないから、確かな話が出来ないだけなのだ。

 

 

「……そうだとして、オマエはどうする?」

 

 

「オマエは、もはやガーディアンには戻れない。オマエのゴーストが言うのは希望だ…全く、具体性のない。オマエは分かっているハズだ…もはや、後戻りなどできはしない」

 

 

「オレがオマエの妄想の産物だと?だとすれば、オマエの心のなんと脆弱なことか!夢でも敵を作らねば自我を保てないとは!」

 

 

「ああ。そうだ。俺は弱い。身体がではない…精神面の問題だ」

 

 

「身体をいじくり回して、人間とは到底言えない身体になりながら、フォールンを殺して、俺は生きて…何人かにはコケにされて、俺はようやく気がついた」

 

 

「俺は弱い。もしかしたら、ガーディアンであった頃からそうだったのかもしれない。ゴーストは、それを知っていて、終始俺を止めていたのかもしれない」

 

 

「それも推測に過ぎん」

 

 

フォールンが低くうなる。

 

 

「そうだ。これも、全て推測だ。だが不思議と確信がある…全てがつながったような。そうだ。俺の生に大層な伏線や劇場的な展開などない…全てはあるべくしてあり、全てはなるべくしてなっている」

 

 

「悟ったような気分になっているだけだ。現実は何も変わりない!」

 

 

フォールンが叫ぶ。

 

 

「ああ。そうだとも…現実は、これから変わる」

 

 

「俺は弱い。数々の失敗を経て、俺が弱いということを知った…だが、まだ全てを失ったわけではない。ゴースト…妙ちくりんな協力者。それに…この【命】が残っている」

 

 

「お前はそれを自分で捨てたのだ」

 

 

「いや、預けたんだ。俺のゴーストに…だから俺はゾンビだ。生きているのか死んでいるのか分からない。ただ動く。何かの目的をもって…もしくは持たずに」

 

 

「ゾンビとして、ただ生きることは難しいことではない。ガーディアンとして人類を守ることは今更不可能だ…だが、俺は諦められない。ガーディアンであることを…」

 

 

「諦めたと自分で言ったはずだ!」

 

 

「言った。言ったが…やはり、俺は、精神の奥底の部分でガーディアンなんだろう。だから俺はフォールン扱いされることをあんなに拒絶し、人間であることに執着した…女々しいと笑えばいい…」

 

 

「…だが、俺は諦めない。永劫ゾンビとして生きることになったとしても、ガーディアンとして戦うことはできるハズだ」

 

 

「不可能だ」

 

 

「やってみなくちゃわからんだろう」

 

 

「馬鹿め…そのままフォールン扱いされて、卑屈に生きていればいいものを」

 

 

「全てがどうしようもなくなったら時はそうさせてもらう」

 

 

「……それで満足か?」

 

 

「さあな。この夢が醒めたら考えることにする」

 

 

「………」

 

 

「…苦労をかけたな。俺の心を守るために生み出された、名前も知らないフォールンよ」

 

 

「…お前がまた戻ってくることを楽しみにしている」

 

 

フォールンはそう言って踵を返した。段々視界が霞みがかり、その姿も見えなくなっていく。

覚醒していく意識の中で、もうこの夢を見ることは無いだろう。そんな確信があった。

 

 

 

………………………

 

 

 

「お、やっと目が覚めたか?」

 

 

密着に近い距離で、ザナリー3がこちらの顔を覗き込んでいる。

 

 

「…離れろザナリー」

 

 

ヘルメットの中でため息をつく。

 

 

「俺を見るなりため息をつくなんて…悪い夢でも見たのか?」

 

 

「今の状況が俺にとっては悪夢だ」

 

 

「ハハハ、そうかも」

 

 

「今、どこにいるんだ?」

 

 

「もう宇宙だとさ。木星まで行くんだろ?しばらくかかるんじゃないか?」

 

 

『そろそろ到着だ。姿勢を低くしろ』

 

 

エリスの声が響いた。船内放送だ。

 

 

「…だそうだ。俺の予想は大幅に外れたが、何も賭けてなかったよな?」

 

 

「ああ」

 

 

「よし。最高だ。そういやケイド6も見つかったらしいぜ!これでまたアイツと…いや、特に何もしてなかったっけ」

 

 

「アイツの冗談はつまらないんだ。なんと俺よりも!何故そんなことが分かるかって?だって俺よりクレームの数が多いんだよ」

 

 

「少し黙ってろザナリー。舌を噛むぞ」

 

 

「俺エクソだぜ?……もしかして冗談のつもり?」

 

 

「………」

 

 

「ハッハー!なんてこった!ダンナが冗談を言ったぜ!…しかも俺に!こいつは大ニュースだ!」

 

 

「黙れと言ったんだ!」

 

 

「こいつが黙っていられるかってんだ!ハハハハ!すげえ!俺、光を失くしてから1番笑ってるかも!」

 

 

到着するまで、ザナリーの笑い声が止むことはなかった。






というわけで、ゾンビさんの情緒不安定やらにうまくケリをつけたい今日このごろ。考えながら書くもんだから、収集つけるのは次話を書く時の自分です。一応大筋は決めてあるんですが。

それとお調子者キャラはやっぱりオチに使いやすいです。乱用しないようにしないと…


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レベル17.バインドチェーン


Destiny2、光がすこぶる上げづらくてライトユーザーにちょっと優しくないのが玉にキズです。おじさんつらいよ…
まあ楽しいからやるんですけど!




 

 

 

「俺はもう逃げないぞ」

 

 

「?…急にどうした?まだ眠いのか?」

 

 

「決意表明だ」

 

 

「フーン…?」

 

 

ザナリーが首を傾げる。大げさにやりすぎて身体ごと傾いている。

同時に船が大きく傾き、衝撃が走った。元々傾いていたザナリーがバランスを崩して転がった。

 

 

「到着だ。外へ出ていいぞ」

 

 

格納庫にエリスの声が響いた。

 

 

………………………

 

 

「はぁ〜ここがタイタンかあ」

 

 

ザナリーが間の抜けた声を上げ、辺りを見渡す。

今俺達が立っているのは惑星タイタン、その海上基地だ。…ボロボロの。

エメラルドグリーンという表現が適切かは分からないが、見渡す限りの緑がかった荒れ狂う海。またそれとは対照的に、空は静かで荘厳な雰囲気を纏った木星をたたえている。…今のところ、タイタンにはそれしか見受けられない。いくつもの太く頑丈な柱が絶え間ない大波から基地を支えており、ひとまずは倒壊の危険はないだろう、というのがバンガードの見解らしい。だが…

 

 

「なあ、アレってやっぱり…アレだよな?」

 

 

騒がしい銃撃の音と、けたたましい叫び声。所々で蛍光色の魔法陣と黒い霧が生まれては消え、また他方では雄たけびとともに掲げられたブレードがライトに照らされてきらめく。

 

 

「…ああ。ハイヴとフォールンだな。戦っているらしい」

 

 

「まあ、そう…だよ、なあ…タイタンは安全なんじゃなかったのかよぉ!」

 

 

「騙したようで悪いが、我々はここが安全とは一言も言っていない。ただここにガーディアンを呼び、戦力を集めようと思っただけだ」

 

 

「!ザヴァラ…!」

 

 

「お前がタイタンであったことは報告にも上がっている。……お前が未だ誇りあるタイタンであることを願う」

 

 

「そんなことは、問われるまでもない。俺はガーディアンとして生きることを諦めてなどいない」

 

 

「ならいい…こっちだ。とりあえず、顔合わせを済まそう。ウォーロックの彼女についても、別の者が案内している」

 

 

「お、歓迎会の準備は万端なのか?」

 

 

「キャプテンとウィザードならお前達を諸手を挙げて歓迎するだろうが…残念なことに、ここには物資がない。歓迎会は遠慮してくれ」

 

 

「そうか…」

 

 

ザナリーが大げさすぎるほどに肩を落とす。ザヴァラはそれを一瞥すると踵を返して歩き出した。

 

 

………………………

 

 

「これは…また、ソーソーたるメンツで…」

 

 

案内された部屋をぐるりと見渡す。元は会議室だったのか、中々の広さだ。モニターや空調設備はほとんど壊れているが。

部屋にはザナリーと俺のほかに、先にここへ案内されたというケイとエリス、タイタンの幹部であるスロアン、ジャンプシップ技師のアマンダ、そしてバンガードの3人のリーダーが揃って立っていた。

 

 

「それだけ、お前達を重大に見てるってことさ」

 

 

濃紺を基調としたカラーに角が目立つハンターがこちらの驚きに答える。ケイド6。バンガードの、ハンターの代表者だ。

 

 

「私達がここにいるのは調査のため。申し訳ないけど、しばらくの間あなた達に行動の自由は保証されないと思ってほしい」

 

 

冷静に説明を続けるのはイコラ・レイ。ウォーロックのリーダーとしての活躍もさることながら、彼女は高名な研究者でもある。

 

 

「ここの施設を利用して、お前の身体について分析を進めることになる。覚えておいてくれ」

 

 

最後にザヴァラ。タイタンのリーダー。実直なリアリスト。ここにいる誰よりも、正義を追い求めている。かつて、俺も何度か彼と直接話したことはある。…面影もない今では、思い出すことなどできないだろうが。

 

 

「…あ、自己紹介がまだだったな。俺はザナリー3。見ての通りエクソのハンター…元。地球ではこのダンナについていってた。光はないけど、透明化はできる。こうやって…」

 

 

そう言うや否や、ザナリーが透明化を発動する。にわかに室内がざわついたが…

 

 

「そいつはすごいが、いきなりやるな。みんながビックリするだろ?ああ、もちろん、俺以外のみんなが、だ。俺はビックリしてない」

 

 

いつの間にかザナリーの後ろに回っていたケイドがハンドキャノンの柄で頭を小突く。と同時に、ザナリーの透明化が解除された。

 

 

「オイオイ初見だぜ!?いきなり見破るかよぉ!」

 

 

「透明化を見慣れてないハンターなんかいるのか?ま、お前より俺の方が何枚も上手だったってコトだ」

 

 

「自信なくすぜ…」

 

 

うつむくザナリーを横目に、ケイが控えめに手を挙げた。

 

 

「…もういいか?次は私だな。私はケイ・サカモト。ウォーロックだ。彼のゴーストについて研究するために同行していた。光は取り戻していないが、戦闘は可能だ。よろしく」

 

 

「あなたの論文は読んだことがある。よろしく。今度、また話しましょう」

 

 

イコラがケイに反応する。彼女達の会話に混ざるのは良くない予感がする…

 

 

「光栄だ。是非とも」

 

 

なんというか、先程に比べて穏当すぎる自己紹介が終わった。視線がこちらに集まってくる。

 

 

「…俺か。今はゾンビと名乗っている。元はタイタンだったが…生きるため、また暗黒と戦うために、フォールンの身体を取り込んだ…それ以上のことについては、また研究してくれ」

 

 

「…お前の得意な武器はなんだ?」

 

 

ザヴァラが話しかけてくる。

 

 

「質問の意図が読めんが…オートライフルだ。正面からグレネードを投げ込み、リフトで正面から高速で突撃する。そうすれば大抵の敵は倒せる」

 

 

「…クラスは何を好んだ?」

 

 

「…必要に応じて使い分けた。あらゆる戦術を取り、敵を殲滅できる者こそ真のガーディアンだ」

 

 

「…アイアンバナーに出たことはあるか?」

 

 

「……マシンガンを求めて出場したことはある。だが、あまり好まないな」

 

 

「そうか。お前はシティ成立前からガーディアンだった。そうだな?」

 

 

「……ああ。そうだ」

 

 

「…お前には…アイリーンという仲間がいたか?」

 

 

「………」

 

 

ザヴァラがこちらを見据えている。視界がゆらぐ。視野が狭まり、目の前の男に集中していくのが分かる。

 

 

「違うか?」

 

 

ザヴァラは不敵な笑みを浮かべた。もしくは、俺の目にはそう見えた。

 

 

「何のつもりだ。研究するならさっさと俺を研究室でも牢屋でも連れていけ」

 

 

身体の奥底から熱が湧き上がってくる。思考が鈍化していくのを感じた。

 

 

「答えろ。お前にはアイリーンというタイタンの仲間がいただろう」

 

 

「…何が言いたい」

 

 

右手を握りしめる。三本指が器用に噛み合って鈍い音を立てた。左腕で右手を抑えた。

 

 

「いや…他意はない。かつての同胞、そしてメリディアン・ベイの英雄に出会えて嬉しいのだ…なあ、【暴風のガンドール】」

 

 

「…俺をその名で呼ぶな…!」

 

 

言ってはならないことを口にした目の前の男を、どうやって殺してやろうかと頭が回転を始める。無理矢理押さえつけた。

 

 

「そうか。異名を持つのは名誉なことだと思ったのだが…仕方ない。では、今度は我々だな。知っての通りだが、私はバンガードの…」

 

 

そこから先は、よく覚えていない。嫌な熱のこもった感情を抑えることに必死で、人の話など到底聞こうとは思わなかった。気がつくと俺は個室に通され、設置されていた椅子にうつむいて腰掛けていた。

 

 

『【暴風のガンドール】…彼は知っていたようですね』

 

 

「黙れ…」

 

 

『……もう、乗り越えたと思っていました』

 

 

「…アレは、俺だけは絶対に忘れてはならない」

 

 

『そうですか…そうでしょうね』

 

 

「……アイリーン…」

 

 

『…今日はもう寝ていいそうです。エーテル残量も十分ですし、睡眠をとることを勧めます』

 

 

「…ああ、そうだな…」

 

 

ベッドに横になる。俺の重さに、スプリングが悲鳴をあげている。ちゃんと人間用の部屋を与えてもらったのは僥倖か。もっと実験動物のような扱いを受けると思っていた。

 

 

『…【彼】は、今も火星に眠っているのでしょうか…アイリーン。カバルの軍勢を食い止め、名誉ある死を遂げたタイタン…あの日、同じファイアチームにいた我々にかけられた枷は、未だ重いようです』

 

 

しばらくの沈黙の後、俺は意識を手放した。

 

 






ザヴァラの質問がいきなりすぎるぜ!って思われそうなので補足。本編にはちょっと入れづらかったのもありますが。

いきなりの新設定(一応プロット通り)ですが、ゾンビさんはかつて、功績を上げてガーディアンの間で有名になったことがあります。
またザヴァラは元々、ゾンビさんの正体についてある程度アタリをつけていました。元タイタンであること、戦うことを諦めず、またそのために手段を選ばないこと(自分の身体でさえも顧みない点も含めて)、またその割にメンタルが弱いことなどから、その有名になった彼によく似ていると予測を立てたというワケです。

ゾンビさんの過去についてはまた次回以降に!では!


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レベル18.懸念


構成上、今回ちょっと短めです。なおかつ、説明回です。




 

 

「それで?」

 

 

曰く、フォールンの身体を取り込んだという人間離れした大男が部屋から出ていったのを見送ると、ケイド6がザヴァラに問いかけた。

 

 

「何がだ」

 

 

「オイオイとぼけるなよ。なんであんな、神経を逆撫でするようなこと言ったんだ?」

 

 

「……かつて、彼は英雄だった」

 

 

「それは俺も知ってる。メリディアン・ベイの砂嵐の中の撤退戦で、最後まで残ってカバルの精鋭部隊を1週間も食い止めた伝説のファイアチームの生き残りだ」

 

 

「少なからず、私は彼を尊敬していた」

 

 

「勲章を贈って、伝承に残そうと言い出したのはお前だったもんな。ガーディアンの間では、【暴風のガンドール】と呼ばれて有名人だった。で、それがどうしたっていうんだ?」

 

 

「彼はそれを頑なに拒んだ。何故かと聞けば、『俺にはその資格がない』の一点張りだった」

 

 

「…ザヴァラ?」

 

 

「事実を知る必要があると感じ、私は調査を命じた。彼にもいくつか質問をした…あの1週間に何があったのか、どうして彼は戦士としての誇りを、心構えを全く失い、まさに死んだような目をしていたのかを知るために」

 

 

「………」

 

 

「結果、戦場跡で見つかったのは何名かのガーディアンの死体と、ボロボロで使い物にならないような装備や物資の残骸…分かったのは、彼があのファイアチームの唯一の生き残りであったことと…彼の証言によれば、【彼自身の手で仲間を殺していた】という事実だった」

 

 

「…それは過去にバンガードで1度議論した。戦略上必要で、仕方のないことだったと結論も出ている」

 

 

イコラが口を挟む。

 

 

「ああ。確かにそうだ。あの時は物資もなく、彼が殺したのはもはや戦えなくなったガーディアンのみ。戦うために必要な犠牲だった」

 

 

「…たとえその犠牲の中に、彼の親友がいたとしても」

 

 

「私は冷酷な人間だ。必要とあれば、トラベラーや市民のためにバンガードに所属するガーディアンを…まるで捨て石のように扱う判断を下すだろう」

 

 

「だが、私は同じファイアチームとして長年共に戦った仲間を、必要だからと言って切り捨てられるのか?自らの手で、息の根を止められるのか?調査結果を見たとき、私は自問した…結局、答えは出なかった」

 

 

「私は知りたかった。彼は何故その判断を下せたのか。彼がその時どのような感情を得たのか、彼が廃人のようになったのは何故か…だが、彼の口からそれが語られることはついぞ無かった」

 

 

「そのために、まるでからかうようにあんな質問をしたのか?」

 

 

「…それもある。だが、最も大きな理由は、彼が我々に仇なすのではないかと疑っているからだ」

 

 

「なんだって?お前はデヴリムが正しいと思うのか?」

 

 

「そうではない。私はリスクを想定したのだ。つまり…彼が極端に衝動的であったり、危険な思想を持った人間であった場合をな」

 

 

「戦いが始まると誰彼構わず襲いかかるだろうって?それとも必要なら仲間を殺すことに躊躇しないような、危険なヤツってことか?」

 

 

「そのような傾向がないことは後に行った彼についての調査でも分かっている。だが、調査だけでは分からないこともある…実際、例のガーディアン達の直接の死因は未だ明らかではないのだ。理由についても、彼の言葉や当時の状況から我々が予測したに過ぎないのだから」

 

 

「考えすぎじゃないのか?アイツはお前にからかわれても冷静だった。少なくとも表面上は…」

 

 

「我々は常に最悪を想定して動くべきだ。彼が獅子身中の虫となってはならない……とにかく、私は完全に彼を信用すべきではないと考えている。彼を挑発したのは、衝動的な人物ではないか確かめるためだ。…話は終わりだ。持ち場に戻れ」

 

 

そう言って、ザヴァラは部屋を後にした。

それに続いてイコラも部屋を出、残ったのはケイド6だけとなった。

 

 

「……行ったか…」

 

 

ケイドはぐるりと部屋を見渡すと、ため息をついてパイプイスに勢いよく座り込んだ。

 

 

「…だ、そうだ。ちゃんと覚えたか?」

 

 

ケイドが何もないように見える空間に話しかけると、周辺の景色が歪み、細身の男がばつの悪そうな態度で現れた。

 

 

「アンタには敵わないな〜…物音だって立ててないんだぜ?」

 

 

「盗み聞きとは感心しないぞザナリー3。あと、お前は自分の透明化に自信を持ちすぎだ。透明人間だって無敵じゃないんだぞ?そう、例えば俺みたいな熟練者には簡単にバレるんだからな」

 

 

「それがなんでか分からないんだよなあ〜!」

 

 

「経験と、あとは俺の野性的シックス・センスだな」

 

 

「………」

 

 

「……冗談だ。…半分…いや、6割ぐらいは……ゴホンッ!…それで?お前はこの話を聞いてどうするんだ?」

 

 

「…そうだな…俺はダンナがどんな人かちっとも知らなかった…それに、ザヴァラの考えをダンナに伝えたところで、火に油を注ぐだけだろうし……覚えとくだけにするよ」

 

 

「そうか。英断だな…フー…」

 

 

大きく息をつくと、ケイド6はザナリー3の目を見て再び話し始めた。

 

 

「ザナリー3…俺はお前のことも知ってる。…【臆病者のザナリー】」

 

 

「…ああ、俺は確かにハンター達の中では有名だったかもな」

 

 

「お前のことについてのグチも聞いたことがある…やれ、戦いになるとどこかに隠れて出てこない。やれ、作戦を伝えても『無理だ』としか言わない…」

 

 

「………」

 

 

「お前にどういう理由があって、いまさら戦うようになったのか俺には分からん。彼のおかげなのか、それとも…お前のそばにいないゴーストのおかげか…」

 

 

「とにかく、お前も監視対象らしい。せいぜい気をつけるこった」

 

 

「…ご忠告痛み入るぜ」

 

 

「おう。全力で痛み入れ…ほら、もう行け。俺はこれから上手にサボるんだ」

 

 

「分かった…俺が隠れてたことを黙っていてくれたことには感謝するよ」

 

 

ザナリーが退室する。1人部屋に残されたケイドは、おもむろに両手を頭の後ろに回し、天井を見上げた。

 

 

「さて、言い訳を考えないとな……サボりがバレた時の…」

 

 

「これから彼らの調査が始まる。直接関わることは無いだろうが、俺もきっと忙しくなる…こうやってサボるのも、あと何回できるか…」

 

 

基地の外で、今日何回目か分からないドレッグの叫び声が響いた。足を踏み外したアコライトが海に呑まれ、甲高いシュリーカーの駆動音が遠くから聞こえてくる。

 

 

「…まあ、退屈はしなさそうだな」

 

 

ケイドはそんな状況を横目に、退屈そうにつぶやいた。

 

 

 






主人公不在問題

次回は出します。


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レベル18.思惑



本編には出てこなかった敵をオリジナル展開として出します。とりあえずまだ特に目立つことはありませんが、苦手な方はお気をつけ下さい。




 

 

 

浅い眠りから目を覚ます。金属製の無機質な天井と電灯を眺め、自分の状況を思い出した。

 

 

『おはようございます。本日は恐らく快晴。ただ波浪には十分ご注意下さい』

 

 

「そうか」

 

 

『先日からバンガードの研究の協力者として、いくつかの実験を行いましたが、今日は会議だそうなのでそれもお休みです』

 

 

『私はこれから少しだけケイの研究の補助を行うことになっています。ご用があれば通信で呼んでください』

 

 

「ああ、分かった」

 

 

ゴーストがドアを開けて廊下に出て行く。ひとりになって沈黙が場を支配した。

右腕を動かす。バキバキと固まっていた関節が音を立て、アンバランスに肥大化した筋肉が収縮する。

 

 

「また大きくなったか?」

 

 

フォールンの身体だっただけあり、この右腕はエーテルの影響を真っ先に受ける。親和性が高いのだろう。

そして、この右腕が大きくなったことが意味するのは…

 

 

「…また装備の作り直しだな…」

 

 

採寸から装甲の延伸、場合によっては一からやり直し。今度はどれだけかかるだろうか。身体の急速な肥大化に伴い、頻繁に必要となる身につけるものの更新に頭を痛める。

 

 

「…チッ」

 

 

更につけ加えるとすれば、この関節の内側から圧力をかけられるような断続的な痛みだ。

顔をしかめながら立ち上がる。このままここにいても仕方ないので、とりあえず外に出ることにした。

と、その時、首元につけた通信機がベルを鳴らした。

誰かからの個別通信だ。

 

 

『お、ダンナ起きた?俺より一時間遅れだな!』

 

 

「…お前か…」

 

 

相手はザナリー3だった。誰から聞いたのか、俺が目を覚ましたことを知ったらしい。

俺は通信を拒否しなかったことを盛大に後悔した。

寝起き、更にエーテルに悩まされて苛立っていたところにコイツと話すだけの根性はない。

 

 

『ああ、俺だぜ!なあ、ダンナ今日暇なんだろ?ちょっと外に行かないか?』

 

 

「断る」

 

 

『まあそんなつれないこと言うなよ!外には暗黒がいっぱいいるんだぜ?少し減らして人類に貢献!ついでにストレス発散で一石二鳥だ!』

 

 

「………」

 

 

『…ダメか?うーん…あとは俺がダンナの部屋に行って最近作ったジョークでも語りに行くぐらいしかないんだけど…』

 

 

「…分かった。行こう…許可は取ってあるのか?」

 

 

流石にコイツの長話を聞かされるよりは、暗黒と戦っている方が何倍もマシだ。

 

 

『よっしゃ!許可?ああもちろんだぜ。ちゃんとケイドに伝えてある』

 

 

「そうか…」

 

 

そこはかとない不安を感じたが、流石にバンガードのトップに話が通っているなら間違いも起こらないだろう。

 

 

『それじゃ、俺は西側出口で待ってるから、早めに来てくれよ!』

 

 

適当に返事をしてから通信を切った。まあ、戦闘すること自体には異論はない。ザナリーに誘われなくとも、今日することが見つからなければ自分から外に行っていた可能性が高い。

ただ、ザナリーに誘われてというのが少し気に食わないというか、引っかかるところだった。

 

 

『臆病者』…研究者に聞かされた話によれば、ザナリー3はかつて原因不明のPTSDのような症状を患っていたらしい。

だのに、突然今になって、アイツはむしろ自分から戦いに身を投じるようになった。

その原因は、今のところ分かっていない。

 

 

「会った時にでも聞いてみるか…?」

 

 

そこまで考えて、らしくないと思考を振り払う。とりあえず、外出の準備を進めることにした。

 

 

 

………………………

 

 

 

準備を済ませて、ザナリー3の言葉の通り西側出口に向かった。

到着すると、1人の男がこちらに片手を軽く上げているのが見えた。

 

 

「よう」

 

 

「ケイド6?なぜここにいる」

 

 

「なんだよ、そう構えるなって。コイツから何も聞いてないのか?」

 

 

そう言って、ケイド6は親指でザナリー3を指し示す。

 

 

「え?俺ちゃんと言ったろ?ケイド6に話は通したって」

 

 

「それはそうだ。だから俺はお前の誘いに乗った。しかし…」

 

 

辺りを見渡す。そこには、見覚えのある元ガーディアン達3人が、それぞれ俺を見ていた。

 

 

「…あ、そうか、俺ホントにそれだけしか言ってないんだった」

 

 

「オイオイ…報告・連絡・相談はガーディアンの基本だぜ?」

 

 

「お前がそれを言うのか、ケイド」

 

 

俺を見ていたガーディアンのうちのひとりがケイドを厳しい目で見ながら割り込んだ。

 

 

「ケイ、説明してくれ。これはどういうことなんだ。どうしてガーディアンが集まってる」

 

 

「本当に何も聞いていないらしいな。とりあえず、まずは謝罪しよう。騙したようになってしまってすまなかった。…経緯はこうだ。まずザナリー3がケイド6に外出を申請した際、理由を『暗黒との実地での戦闘訓練』とした」

 

 

「ケイド6はそれにかこつけて、1人では危険だからと付き添いを申し出た。もちろん仕事から抜け出して暗黒と戦闘するためだ」

 

 

「ただそれがザヴァラの耳に入り、スロアンの助言によって暗黒の殲滅作戦に置き換えられた。そのために選出されたファイアチームがケイド、ザナリー、私、お前、そしてこの2人ということになった」

 

 

「ケイドはザヴァラには黙ってこっそり行くつもりだったらしいがな…」

 

 

ケイが再度咎めるように細目でケイドを見つめる。

 

 

「これじゃ仕事と変わりないぜ。ま、外で戦闘できるなら何でもいいんだがな」

 

 

ケイドはその視線を意に介さず腕組みをして軽口を叩いた。

 

 

「ちなみにこれら全て、俺の知らないところで起こってた!俺もさっき聞かされた!ケイドはウソつきだ!」

 

 

ザナリーが弁明する。

 

 

「ウソつきって…ひどくないか?」

 

 

「…それで、この2人はどうやって選出されたんだ」

 

 

ファイアチームは基本3人か6人チームで動く。作戦規模によって異なるが、この枠から外れることは基本的にないので数合わせと言えば疑問はない。

 

 

「バンガードから派遣されたガーディアンだ。忠誠心というか、正義感が強い。まあ…お前達の監視役だな」

 

 

あっけらかんとした態度でケイドが話す。

 

 

「監視役…か」

 

 

「ま、そういうことだ。色々調査はしたが戦闘は今回が初めてだしな。研究も兼ねてるんだろ。気に食わないだろうがまあ許してやってくれ」

 

 

「俺はバンガードに反逆などするつもりは無い…それを今回で証明してやろう」

 

 

「そりゃ頼もしいな!いいぞ、楽しくなってきた」

 

 

ケイド6が足踏みをする。今にも飛び出したくてうずうずしているようだ。

 

 

「待て。作戦となったからには目標がある。今回は近隣のフォールンの漸減…可能ならば殲滅と、最近降り立った新たなアルコンプリーストの調査だ」

 

 

「アルコンプリースト!フォールンの司祭か!手応えありそうだ」

 

 

ザナリーがハンドキャノンを手でくるくると回している。しきりに透明装置をもう片方の手で確認しているのは見なかったことにした。

 

 

「もちろん生存が最優先だ。フォールン拠点に到達して観測するだけで、撃破は狙わなくていい。お前達は戦力としては能力があっても、何分急造のファイアチームだからな」

 

 

「まあ、そもそも光もないしな。キャプテンにも勝てるか怪しい」

 

 

「以上だ。作戦指揮および撤退の判断はリーダーであるケイド6が行う。作戦中は彼の指示に従ってくれ」

 

 

「テキトーなこと言って混乱させないでくれよ?」

 

 

「大丈夫だって。俺が信じられないのか?」

 

 

「ソーセージをくれたら信じるかもな」

 

 

「お前は食えないだろ?まあ俺もだが」

 

 

「スロールどもにやるんだよ!アイツら痩せてるからかわいそうだろ?ハハハ!」

 

 

「………ああ、そうだ。お前からライフを借りていたんだった。研究の参考になった。ありがとう」

 

 

『…ああ、よく寝ました。…あれ、ここはどこですか?』

 

 

「……地獄の入り口だ……」

 

 

俺はこれから作戦中、延々とこのハンター達の会話を聞き続けることになるのだろうか。

 

 

ああ、憂鬱だ。

 

 



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