魔弾戦姫リュウフォギア (ライダーファイト(ただいま療養中))
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俺がヒーローに!?

療養+魔弾戦記リュウケンドーを久しぶりに視聴したら、リュウケンドーの熱さが出たためシンフォギアとクロスオーバーして書いてみました。

最初はライブ前のオリジナルストーリーを10話ぐらいやるためお付き合いください。


感想と評価待っています。


「いらっしゃいませー」

 

俺は今日、コンビニのバイトで夜遅くまで働いていた。

 

「えー、こちらのお弁当温めますか?」

 

本当は今日は俺のシフトはなかったのに、俺と同じバイトの1人がバックレを起こし、そのため急遽俺が入ることになってしまったのだ。

 

「合計で762円になります。1000円のお預かりでお釣りが238円のお返しになります。またのお越しをお待ちしております!」

 

今日は専門学校があり、帰る時間が一番遅くなる時間帯だって言うのに、店長に無理矢理入らされて今に至るのだ。

 

「はい、17番のタバコですね」

(あの薄毛店長め覚えてろよ。いつかあの天辺の残り少ない毛を全部むしりとってやる)

 

レジで客を捌いている俺は、ここのシフトに俺をぶちこんだのに自分は入らず、夜遊びに出掛けたくそったれ店長に心の中で愚痴を言いながら、懸命に客を捌く。

 

「ありがとうございましたー!…………それじゃあ時間なんで俺はこれにて降りますね」

 

「ああ、来てくれてありがとな、お疲れさん」

 

「はい、お疲れ様です」

 

シフトの終わりの時間が来たため、俺はコンビニの制服を脱いでバイト先から出た。

 

「ふぅ~。やっと終わったぜ」

 

バイト先から出た俺は体を伸ばして、伸ばし切れば右腕に巻いてある腕時計に目をやり時間を確認する。

 

時間を確認した俺は、口をへの字に変え愚痴る。

 

 

「あーあ10時過ぎかよ。ここからの距離で家に帰ったら11時半過ぎになっちまうぞ!最悪じゃねえか、明日も学校あるのによ!」

 

それを愚痴っても仕方ないのだが、愚痴られずにはいられなかった。

 

「ったく、ふざけんじゃねえぞあの薄手店長!」

 

とりあえず俺はこの台詞を吐き捨て、家に向かって夜の町を歩くことにした。

 

家を目指して歩きながら、夜空を見上げながら呟く。

 

「あ~、早く家に帰って特撮ヒーローに癒してもらおう」

 

そう、俺はこう見えてコアな特撮ヒーローファンなのである。仮面ライダーやスーパー戦隊から昔ながらのヒーローからCG技術が発達し使ったヒーローまで何でも好きなのである。

 

DVDから玩具、さらにはフィギュアや雑誌、さらには限定モノまで持っているほどだが、因みにこれらの金は全て俺の自腹である。玩具すら何故自腹なのかと言うと、俺には両親がいないのだ。物心着いたときから天涯孤独であり、そのせいでひどく苛められたものだ。それはもう自分の命を絶ってしまいたいほどに、だがあるときそんな俺を救ってくれたものがあった。そうそれこそが俺が心から愛してやまない特撮ヒーローである。

 

ガキの頃にそれを見た俺は、思いっきり特撮ヒーローに嵌まってしまい、親が大量に残した金を使い玩具を買い特撮ヒーローのように立ち振る舞った。特撮ヒーローに嵌まった俺はそれ以降、特撮ヒーロー観たさに頑張っていき苛めも何のそので乗り越えてきた。まあ時には苛めてきた相手に反撃もした。

 

たまにであるが、自分の空想で自分だけの特撮ヒーローを作ったり、ストーリー作成などもした。

 

高校生になってからというものありとあらゆる特撮ヒーローのDVD欲しさに、バイトを初めて金を貯めれば通販で特撮ヒーローのDVDに使った。そのせいで俺の財布は常に氷河期を迎えていたが、学費の方は親の残した金でなんとかした。俺の親がどんな仕事をしていたのかは知らないが、銀行にはかなりの量の金があったのだ。

 

 

そして今では専門学生となり、念願のバイクの免許を取り、バイク通学をしながら専門学校に通っているのだ。なら何故バイクでバイト先まで行かなかったのは理由がある。その理由はうちのバイト先には駐車場がないのだ、近くにも駐車場がないため、バイト先に行くには歩いていくしかないのだ。

 

一応バイト先に駐輪場はあるのだが、自転車しか置けるスペースしかないし、それに情けないことに俺は自転車に乗れないのである。バイクの方は特撮ヒーローを観ていたため、ずっと憧れていたため免許も取ったが、自転車は小中高ともに徒歩で間に合う距離だったため自転車を買わずにずっとそれでいたのだ。それとなるべく金の出費を抑えようとしたのが仇となったとも言えるが、なので俺は自転車に全くもって乗れないのだ。

 

 

「帰ったらなに観ようかな~、久々に魔弾戦記リュウケンドーでも見るとするかな~」

 

魔弾戦記リュウケンドーとは、俺の中でベスト2に入っているほど面白い特撮ヒーローである。ベスト2に入っているものは他にもあるのだが、俺の中で1番のベスト2は魔弾戦記リュウケンドーだ。

 

「♪~~~」

 

魔弾戦記リュウケンドーを観ることに決めた俺は、魔弾戦記リュウケンドーの歌を鼻歌で歌いながら、浮き足立つようにスキップをする。

 

するとその時、上から大きな声が聞こえた。

 

 

「おいっなにやってんだ!?しっかり支えろ!鉄骨が落ちちまうぞ!」

 

「君っ、危ない!そこから離れるんだ!?」

 

人間と言うものは不思議なもので、危ないと言われればついついそこの方向に目をやってしまうのだ。俺は危ないと言われた上に目を向けた。

 

「えっ…………?」

 

上に目を向ければ、そこにはクレーンで吊るされていた鉄骨が勢いよく落ちてきていたのだ。

 

「嘘だろ…………」

 

そう言わずしかなく、そのまま俺は立ち尽くし、大量の鉄骨の下敷きになってしまった。

 

「い、いやぁ~~~あ!?!??」

 

「おい大変だぞ!人が鉄骨の下敷きになっちまったぞ!!?」

 

「救急車呼べっ!!!」

 

「てめぇらなにやってんだ!?早くクレーン使って鉄骨をどけろ!」

 

「おいやべぇよ!大量の血が流れてる!?」

 

 

色んな方向から沢山の声が聞こえてくるが、俺の意識は朦朧としていた。

 

(やっべ、頭どころか身体中からめっちゃ血が流れてやがる)

 

鉄骨の下敷きになった俺は、降ってきた鉄骨の隙間から右腕だけ出ており、残り全ての場所は下敷きになっており、かなりの量の血が流れている。

 

(こんだけ血が流れてりゃ俺はもう無理だな、救急車がすぐに来ても間に合わねえだろうな)

 

冷静に状況を分析する暇などないはずだが、俺は鉄骨の下敷きになって身動きが取れないため仕方ないのだ。

 

(体が痛え…………ったく、こんなところで死ぬなんて意地悪だな俺の運命)

 

俺の頭から数々の思い出が甦ってくる。

 

(これが…………走馬灯ってやつか。色んな思い出が甦ってくるんだな)

 

俺の脳内に甦ってくる思い出のほとんどは、特撮ヒーローのイベントであった。

 

(ああ…………最後に思い出すのが特撮ヒーローか…………ま、最後に思い出す思い出にしちゃあ悪くねえな)

 

鉄骨の中で薄く微笑むが、それでも今日のことに関して俺は愚痴りたかったため、俺の意識が亡くなる前に、俺は今日のことについて心の中で愚痴る。

 

(それにしても今日の俺は本当についてないな。家を出たら新品の靴の靴紐がぶった切れるわ、登校途中でバイクのタイヤはパンクするわ、バイクを押しながら帰ってたら黒猫が俺の前を横切るわ、道端に落ちていた古新聞には3つ並んだ6の数字を見掛けるわ、挙げ句の果てにバイトのシフトを無理矢理で入れられるわで、本当に今日の俺はついてないどころか呪われてるな)

 

心の中で最後にそう思って、俺は意識を手放し瞼が重くなるのを確認して静かに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は階段を上り2階まで来れば、3つあるドアのうち一番奥のドアの前まで来てノックをする。

 

コンコンコンッ!

 

「おいっ響!いい加減起きろ!」

 

ノックをして叫ぶも、この部屋にいる主は一切合切返事がなかった。

 

そのため、俺はもう一度ドアをノックする。

 

「響!もう時間が危ないんだぞ、起きろっ!」

 

今度は強くノックをして大声を出すも、部屋の主からの返答はない。そのため俺は少しイラついてしまう、そのため3回目のノックを最後の忠告とする。

 

「おいっ響!これが最後の忠告だ!起きないとお前の部屋に入るぞ!!!」 

 

大きめの声で言うも、部屋の主の返答は全くもってなかった。こうなってしまっては部屋に入らなければならないため、俺はめんどくさそうに後頭部の髪を掻く。

 

(ったく、だからあれほど夜更かしはするなって言ったのによ。大方どうせ部屋に入れば幸せそうな寝顔なんだろうな)

 

だが起こさなければ大変なことになるため、俺はドアの取っ手に手を掛けて、部屋に思いっきり入った。

 

「やっぱりな…………」

 

部屋に入って見てみれば、そこにあったのはオレンジ色の水玉模様のパジャマを着て少しだけヘソを出し、掛け布団は蹴り飛ばして幸せそうな顔でベットで寝ている女がいた。

 

その姿に俺は一度溜め息を吐いて、ベットで寝ている響の元まで行き、響の頬を軽い力でペチッと叩きながら大声を出す。

 

「おいっ響、いい加減起きろよ!」

 

「んにゃ?…………お兄ちゃん、どうしたの?」

 

すると、幸せそうに眠っていた響は半目だけ開けて、俺に視線を向けて口を開いた。

 

そんな響に俺はさっさと重要なことだけを口にする。

 

「どうしたの?じゃねえよ!さっさと起きろ!もう7時半だぞ!」

 

「え?、7時…………半?」

 

伝えると、響は寝惚け眼で時間を言えば、すぐに目を強く見開いてベットから上半身だけ起き上がらせて、

 

「えぇぇぇぇえぇぇぇええぇっ!!!!!7時半なの!!!」 

 

まるで人間1人吹き飛ばせるような悲鳴が上がった。

 

今ベットから起きた女の名前は立花(たちばな)(ひびき)。食欲旺盛で趣味は人助けなのだが、基本やることにトラブルを起こすトラブルメーカーな俺の妹だ。趣味が人助けなのはどこぞの特撮ヒーローの主人公みたいだが、人助けをする度にトラブルまで起こすため、俺や響の親友はフォローするのが大変であれば、心臓に悪いこともあるため本当に傍迷惑な妹だ。

 

話は変わったが、響のこんな悲鳴を聞けば大抵の人間は耳を塞ぐだろうが、俺は10年以上も響を起こしているため、もうこの悲鳴には慣れた。それなのに何故か俺の耳は、一切難聴になるどころか遠くなることはなかった。何故なら風呂場にいても親の小さい喋り声が普通に聞こえてしまうのだから。

 

(いや、案外俺の知らない間に耳が遠くなっていたりしてな)

 

まあそんな下らないことを考えるのはしょーもないため、俺は後頭部の髪を掻きながら素早く伝えるべきことを響に伝えることにする。

 

「そうだ。もう7時半過ぎてんだよ!だからさっさと制服に着替えて降りてこい、いい加減母さんも食器片付けたいからな」

 

「うん、分かった!?」

 

伝えることは伝えたため、俺は響の部屋を早く出ることにする。いくら妹であっても女のためいつまでも入っているのは失礼なので、俺はさっさと響の部屋から立ち去ろうとすると、

 

「あ!ちょっと待ってお兄ちゃん!」

 

妹の響が俺を呼び止めたため、俺はすぐに響に顔を振り向かせて聞く。

 

「おはよう!お兄ちゃん♪」

 

すると響は、邪悪のないまるでお日さまのような笑顔で言ってくれた。

 

「ああおはよう、いいからさっさと着替えちまえよ。じゃあな」

 

響のそんな笑顔に俺も笑顔で返して言って、背を向け手を振って響の部屋を出た。

 

「さぁて、今日も一日の始まりだ」

 

俺は響のあの笑顔に自然と笑顔になりつつも、体を伸ばして階段を降りていく。

 

 

俺の名前は立花(たちばな)剣二(けんじ)

 

ここ立花の家の息子で長男だ。家族構成は父、母、母方の祖母、そしてさっき起こしにいった妹の響だ。俺を合わしてこの家で5人で住んでいるのだ。

 

 

 

…………因みに、俺はこの世界の人間ではない、今流行りの所謂(いわゆる)転生者というやつだ。

 

(それにしても本当目が覚めたときは驚いたぜ。死んだはずだって言うのに、目覚めてみれば何故かガキの姿だったからな。ま、そんな感じで俺はこの世界で十年以上も生きているため、言うならここにいる俺は立花響の本当の兄ではないと言うことだ)

 

階段を降りた俺は、そのままリビングへと向かっていく。

 

 

リビングへと向かえば、そこには1人の女性が椅子に座っていて、俺はその人に声を掛ける。

 

「母さん、響の奴ようやく起きてくれたよ」

 

「そうなの?いつもごめんねお兄ちゃん」

 

俺が母さんと言ったこの人の名前は立花明美(あけみ)さん。基本的に温厚で、家事全般をやっている俺達の優しい母親である。

 

「母さんが謝ることじゃないさ。あ、響の残りの朝御飯は俺が作っちゃうから母さんは座っといてくれよ」

 

「本当、何もかもありがとねお兄ちゃん」

 

「良いって良いって、俺が好きでやってることなんだしさ」

 

そう言いながら俺はコンロに置いてあるフライパンを手に取り、コンロに火を着け油を垂らして引き伸ばし、油がパチパチと言いながら温まったところで卵を割って入れて、次第に目玉焼きが作られていく。

 

「よしっ目玉焼きの完成に、ウインナーのボイルもこれぐらいでいいな!」

 

コンロの隣では、片手鍋に入れているお湯が勢いよく沸騰しそこにあるウインナーも調度良い感じに茹で上がり、火を止めて先にフライパンを持ってテーブルまで持っていき、皿の上に目玉焼きを置く。

 

皿の上に目玉焼きを置けば、上からドッタン!バッタン!という慌ただしい音が聞こえてきた。大方響が着替えを終えて大急ぎで降りているのだろうと予想した俺は、すぐにコンロに戻り今度は片手鍋を持って菜箸(さいばし)で茹で上がったウインナーを取って皿に置いていく。

 

「次はあいつの大好物を置いてやるとするか」

 

片手鍋もコンロに置いて、次に俺は響が使っている茶碗を持って、たっぷりとご飯を盛っていく。茶碗でご飯の塔を作っていれば、中学校の制服に身を包んだ響がリビングへと現れ第一声を放つ。

 

「急がないと遅刻しちゃうよ~!?」

 

そんな響を見て俺は溜め息を吐いて、ご飯を置いて言う。

 

 

「だからあれほど夜更かしは美容の大敵だって言ったのに、夜更かしするお前が悪いんだろうが!もうさっさと飯を食え!牛乳は入れといてやるから!」

 

「ありがとお兄ちゃん」

 

響が使っているガラスコップを手に取り、冷蔵庫から牛乳を出してトクトクと入れていき響の目の前に置く。響は食い物を頬張りながら首を縦に振って頷く。

 

「急いで食っちまえよ響!」

 

「あ!?お兄ちゃん待ってよ!!?」

 

響の声を無視して、俺は母さんに顔を向けて謝罪して言う。

 

「それじゃあ母さん、悪いんだけど後のことよろしくな」

 

「大丈夫よ。あなたたちが産まれる前からやっていたことだから平気よ」

 

「…………分かった。じゃあ出るわ」

 

「いってらっしゃい、剣二」

 

そう言って俺は自分の椅子に置いてあるリュックを背負い、玄関まで行って靴を履いて靴紐もきちんと結び外へと出る。外へと出れば、裏にあるデカイ物置小屋へと行き、そこから俺のバイク HONDA CB400 SUPER FOURを出して門の前に停める。

 

門をバイクの前に停めてあいつを待っていると、扉の向こうから大慌ての声が聞こえる。

 

「それじゃあお母さん。いってきまーす!」

 

「車に気を付けるのよ響!」

 

「うんッ!」

 

バンッ!という勢いで響は家の扉を開けると、扉から出てきた響に向けてヘルメットを投げ渡す。

 

「わっ!?」

 

ヘルメットを投げ渡されたことに響は驚きながらもキャッチして、ヘルメットと俺を交互に見ながら口を開く。

 

「えっ、どういうことお兄ちゃん?」

 

「どうもこうもねえだろ。早く乗れ、遅刻すんぞ」

 

俺がそう言うも、響は申し訳なさそうな顔をする。

 

 

「でも未来と待ち合わせの約束してて…………」

 

申し訳なさそうな響に、俺はそのことも伝える。

 

「大丈夫だよ、そんなことだろうと思って未来からは俺が連絡して先に行ってもらってる。大方校門の前で待ってるだろうよ、分かったら早く乗れ!」

 

「ッ~!うんッ!ありがとうお兄ちゃん!!!」

 

俺の言葉に、響はまた太陽のような笑顔を向けて俺にお礼を言った。

 

「礼は良いから、早くヘルメット被って後ろに乗れ!時間が勿体ねえぞ!」

 

「本当にありがとう!お兄ちゃん!」

 

ヘルメットを被ってバイクに乗った俺は、響に後ろに乗れと即し、響はまたお礼を言いながら俺の後ろに乗っていく、因みに今日のリュックは殆ど荷物が入っていないため響の邪魔にもならないので、響の中学校の鞄を入れてそのまま響は俺の腹に手を回す。

 

「しっかり捕まってろよ。スピード違反全開で飛ばすからな」

 

「うん、でもなるべく警察のお世話にならないようにしてね!」

 

「行くぞ!」

 

俺はキーを廻してエンジンを噴かし、バイクを発進させた。

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁあ!!!!!!速い速い速い!お兄ちゃん!もっと飛ばしてよ♪」

 

「おい響、さっきと言ってること正反対だぞ」

 

バイクを走らせていると響は叫びながらもっとスピードを出してと言ったため、俺はすかさず響にツッコミを入れた。

 

「まあ別に良いけどよ。そんじゃあさらに腕に力を入れとけよ」

 

「はーい」

 

響の要望通り、俺はアクセルを全開にしてバイクを突っ走らせていく。

 

 

 

 

 

 

バイクを思いっきり走らせて、目的地である響が通っている中学校が見えてきた。すると校門の前には黒髪のショートを大きな白いリボンでハーフアップにしている少女がいた。そいつの名前は小日向(こひなた)未来(みく)。響の幼なじみ件親友で保護者の役割をしているしっかりものな女だ。

 

「よしっ響、到着したぞ。早く降りろ」

 

「本当にありがとうお兄ちゃん!」

 

俺は校門の近くでバイクを停めて響に降りるよう即し、響も俺にお礼を言って急いでヘルメットを脱いでバイクを降りる。響がバイクに降りれば俺は素早く肩に掛けているリュックを前に持っていき、そのまま開けて響の鞄と弁当を出す。

 

「ほらよ響」

 

「ありがと!、えっ?お兄ちゃんこれ?」

 

弁当の袋を見てみれば、また響は俺と弁当を交互に見合った。

 

「お前のことだから急ぐあまり忘れそうだからな、俺のリュックに入れといたんだよ。多分崩れてはないと思うが、もし崩れてたらメールしてくれ、詫びとしてなんか買ってくるよ」

 

弁当をもう一度見た後、響はにこやかに笑い首を横に振って言う。

 

「ううん、そんなこと気にしないよ。本当にありがとうお兄ちゃん!」

 

響のお礼に俺は苦笑しながら鼻で息を吐くが、隣から呆れた声が飛んでくる。

 

「もう響、また剣ちゃんに迷惑掛けたの?」

 

「あっ、未来!」

「よ、未来。おはようさん」

 

親友の未来がやって来たことに響は喜び、俺は右手を出し指三本を真っ直ぐにして残り二本は折って、ヘルメットに触れる具合で前にして未来に挨拶をする。

 

分かりやすく言うなら、仮面ライダー響鬼お兄さんの「シュッ」である。

 

そんな俺達を見て、未来も鼻で息を吐いて俺達に目を向ければ瞳は鋭かったため、大方これは事情を聞こうとする瞳のため俺は普通に答えようと思う。

 

「で、想像はできるけど何でこうなったのかな響?」

 

「うっ、その夜更かしをしてしまいまして」

 

「なんで夜更かしをしたのかな?」

 

未来の問い詰めに響は顔を横に向けて、まるで横顔からだらだらと汗を流しているような感じであった。そのため俺は横から口槍を入れる。

 

「やめとけ未来、聞いたところで響の夜更かしの原因は大抵下らないことだからな、呆れるどころか頭を痛めることになるぜ」

 

「ちょっとお兄ちゃん!いくらなんでもそれはヒドイよ!」

 

俺の言葉に響はちょっと泣きそうな目で吠えて、未来は「はぁ…………そうだよね」と溜め息を吐いて言う。2人のそんな姿に俺はニッと笑いながら、バイクのハンドルを握って告げる。

 

「ま、響への尋問は教室に入ってからやれよ。そろそろチャイムが鳴る時間だぜ」

 

「…………あ、本当だ」

 

「それじゃあ早く行こうよ!」

 

未来はポケットから携帯を取り出し時間を確認し、響は駆け足をしながら教室に行こうと未来を促す。

 

「俺はまだ時間は大丈夫だけど、そろそろ行かせて貰うぜ。じゃあな」

 

「うん!お兄ちゃん今日は本当にありがとうね!」

 

「剣ちゃん、またね」

 

「おう、またな」

 

手を振る2人に、俺も軽く手を振り返しバイクを発進させる。

 

 

 

 

 

 

響達と別れて、俺は今通っている総合分野の大学に到着し、バイクを駐輪場へと停めてバイクへと降りる。

 

「さてと、今日も色々と学ぶかな…………」

 

そう言って俺はリュックを肩に下げて、大学へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

大学が終わってもうすぐ7時になりそうな時間帯、俺はバイクで実家に向かって走っていた。大学に行って何が起こるわけでもない、いつも通り講義を受け黒板に書かれたことをノートに書いて昼飯は友人とバカなことを喋りながら学食で済ませ、午後もいつも通り講義で書かれたことをノートに書いて終われば、大学内で友人達と軽く遊んで家へと帰るだけのいつもの日常だ。

 

 

家の前に到着した俺は、バイクから降りて物置小屋へとバイクを入れていく。バイクを入れ終え、俺は鍵を取り出し鍵穴に差し込んで回す、玄関を開けて家に入る。

 

「ただいまー」

 

「あ!お兄ちゃんおかえり!」

 

我が家に入って声を出せばリビングから響が出てきて、小走りで俺の元までやって来た。

 

「あー、今日も1日疲れたぜ。特にどこかの妹のせいでな」

 

首を動かしながら、特に後半の言葉を強調しながら言う。

 

 

「うっ、本当にごめんなさい」

 

俺の台詞に響は苦しい表情をして、少し俺に下がる。

 

「謝るんだったら明日からちゃんと起きてくれよ。なんのために去年の誕生日に爆音目覚まし時計買ったと思うんだよ?」

 

「そうは言うけど、あれ初めて使ったときものすごい音でうるさかったんだよ。だからあれ以来使わなくなったんだよ」

 

「当たり前だ。爆音目覚ましなんだからうるさく鳴るのは当然だろ」

 

響とあーだこーだ言い合い、俺はリビングから顔を出し今日の晩飯を作っている母さんに声を掛ける。

 

 

「母さん、ただいま。今日の晩御飯はなに?」

 

「あ、おかえり剣二。今日の晩御飯はね鯖味噌よ」

 

今日の晩御飯が鯖味噌と聞いた俺は喜ぶ。

 

「お、マジかやったぜ!なんか手伝いとかいるかい母さん?」

 

「もうすぐで出来るから。荷物置いちゃって降りてきてほしいぐらいかしら、もし手伝いたかったら食器とか出してくれる?」

 

「分かった。じゃあすぐに荷物置いてくるよ」

 

 

「…………ちょっと待ってお兄ちゃん」

 

リビングから下がった俺は、自分の部屋に行き荷物を置くために階段まで行こうとするが、響が俺を呼び止めたため俺は振り向く。

 

「ん?どうした響」

 

「ねえ、お兄ちゃんの服から薄く油ものの匂いがするんだけど…………お兄ちゃんもしかして帰り際にコロッケ食べたでしょ!!!」

 

「…………確かに帰り際に精肉店寄ってコロッケ食ったけど、薄くなった油ものの匂い嗅ぎ分けるって、お前どんな嗅覚してんだ!」

 

「ずるいよお兄ちゃん!なんであたしの分買ってきてくれなかったの!」

 

「なんでお前の分まで買ってこなきゃならねえんだよ?第一お前、校門の前に居たとき大丈夫って言っただろうが、買ってきてほしかったならあん時言っときゃ良かっただろうが!」

 

コロッケを買ってこなかったという下らないことに俺と響はまたあーだこーだ言い合うも、そんな響を俺は放っておいて階段を昇り自分の部屋に行き、ベッドにリュックを放り投げて母さんの手伝いへと行く。

 

 

リビングへと向かい、母さんの手伝いをして調度良いときに父さんも仕事から帰ってきて、俺達はそのまま父さんと婆ちゃんも含めた5人で晩飯を食べ始めた。メニューは鯖味噌、ほうれん草のお浸し、味噌汁、ご飯だ。

 

「ん~。今日の晩御飯もとっても美味しい~!」

 

「ごめん、ちょっとテレビ着けるな」

 

響が幸せそうな表情で晩御飯を食べ、俺はその隣でテレビのリモコンを持ってテレビを着ける。

 

「きちんとニュース情報は確認しとかないとな」

 

そう言いながら俺はニュース番組にチャンネルを変えていく。

 

「おっ、あったあった」

 

ニュース番組を見つけた俺はチャンネルをそのままにして箸も止めて見つめると、食事をしている家族も静かになった。

 

そしてニュースキャスターの言葉が響く。

 

 

『ニュースをお伝えします。今日昼頃米国でノイズの出現が確認されました。出現したノイズは全て小型でしたが100体以上の数で多くの犠牲者が出た模様です』

 

「またノイズか…………」

 

「ここのところ出現率が早いみたいらしいわ」

 

「沢山の人達が犠牲になっちゃったんだね」

 

「一体ノイズってなんなのかしらね?」

 

「………………………………」

 

家族の言葉に俺は無言でお茶を啜るも、左手は握り拳を作り思いきり握り締めていた。

 

 

ノイズ。

 

人類共通の脅威とされ、人類を脅かす認定特異災害。

 

響が産まれた13年前の国連総会で、特異災害として認定された未知の存在。発生そのものは有史以来から確認されており、歴史上に記された異形の類は大半がノイズ由来のものと言われ、一般的にも報道されており知名度自体はそれなりに高い。

 

そしてノイズは空間から滲み出るように突如発生し、なぜか人間だけを大群で襲撃し、触れた者を自分もろとも炭素の塊に転換してしまう特性を持っている。なお発生から一定時間が経過すれば、ノイズ自身が炭素化して自壊する。

 

他にも生物的な外観を持ち、各々が妙な奇声を発するのが特徴だ。形状には個体ごとに差異があるようことが確認されており、大きさは人間と同程度のノイズからビルをも超える超大型ノイズまで様々である。ただし外見上の共通点として、どのノイズにも液晶ディスプレイのように輝く部位が存在している。ノイズ同士の合体・分離も可能と確認されており、それに伴い形態を変化させることもあるようだ。中にはその分離能力を用い、切り離した部位を爆発させたり、ノイズを弾丸の如く射出したりと、まるで兵器のような攻撃手段を持つ個体も存在するようだ。

 

最も大きな特性は、その存在を人間の世界とは異なる世界にまたがらせることで、通常物理法則下のエネルギーによる干渉をコントロールする位相差障壁にあるらしい。これはノイズ自身の現世に対して「存在する」という比率を自在にコントロールすることで、物理的干渉を可能な状態にして相手に接触できる状態、物理的干渉を減衰、無効化できる状態を使い分ける能力であり、これにより人間の行使する物理法則に則ったエネルギーは、ゼロから微々たる効果しか及ぼすことができない。これに対しては存在比率が増す攻撃の瞬間にタイミングを合わせたり、効率を考えず間断なく攻撃を仕掛けることで対応は一応可能であるのだが、後者は周囲にノイズよりも深刻な被害をもたらす結果となってしまう等、有効な対策は無いに等しい。

 

どうやらノイズは本来有史以前から存在するものであると発表され、人が一生のうちノイズに遭遇する確率は、東京都民が一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回るとされている。

 

 

 

「…………ノイズのことはきちんと知っておかなきゃならないが、やっぱりこういうのを聞くのは、キツいものがあるな」

 

言いたくはないのだがつい口に出てしまい食事の場が少し重たい空気になってしまったが、そこで我が家の大黒柱で入り婿、少々頼りない面もあるが責任感が強くポジティブに問題解決に勤しみ、子煩悩ながら優しく家庭を支える良き俺達の父親立花(たちばな)(あきら)。旧姓守崎洸がとある話題を出した。

 

付け加えるが、響の人助け趣味は父さんの影響だ。子は親に似るとは良く言ったものだな、いや寧ろ娘は親に似るか、か?

 

「確かにそうかもしれないが、10年前からこの日本にはあるヒーローが現れてノイズの被害は最小限に食い止められてるけどな」

 

その話題を言うと、みんなワッと言うかのように“そいつ”について語り出した。

 

「あの人が現れてから多くの命が助けられているのよね」

 

「うんっ!それに、ノイズが現れたら何よりも早くノイズの出現場所に現れて一気にノイズを倒していくんだよね!そして最後はなにも言わずに去っていく!カッコいいな~!!!」

 

「でもそれだけじゃなく、二次災害にあった人達も助けてくれているんでしょ。立派ね~」

 

響、母さん、婆ちゃんもそいつに好意的な意見を出す。そう調度10年前、俺が10歳の時にそいつは現れた。青色の体で銀色の鎧を身に纏い剣を手にノイズを次々と倒していく。人を守り救う姿勢から多くの人から好意的に捉えられているのだ。

 

その後は、家族と楽しく談笑しながら食事を済ませ、俺が一番風呂に入り特撮のOPを鼻歌で歌って髪と体を洗って出て、寝間着に着替え、部屋のベットで寝る前に風呂から上がった響の勉強を難しいところだけ見てやり、それが終われば俺は響に「おやすみ」と言って、自分の部屋へと戻る。

 

「さぁぁて寝るとするかな」

 

自分の部屋へと戻った俺は、今日は本当に疲れたためベッドに寝ようとした瞬間、机の上に置いてある物が小さな光を出した。

 

「!!?」

 

その光に気付いた俺は、すぐに顔を机の場所に向け机の所まで行きそれを手に取る。光が放った物は腰に着けられるキーホルダーのようなもので片手の平の大きさで色は青の“龍”の顔を模したキーホルダーである。

 

「…………………………………出やがったか」

 

重く呟くも、俺は龍を模したキーホルダーを手に取りすぐに寝間着を脱いで私服に着替え、机の引き出しから抜け出し用の靴を取り出して掃き、静かに自分の部屋の窓から外へと飛び出した。

 

「………………………………………………………………………………」

 

大方家族はつい先程寝始めたため、今バイクのエンジン音を掛ければ家族全員起きてしまうため、そのまま家族を起こさずに走ることにした。調度奴らの出現場所も近くで走って行ける距離のため、俺は全速力で奴らが現れた場所へと直行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には“ノイズ”という危険な存在がいる。人類は未だノイズを倒す力を持ってはいない、それなのに剣を持ち迫り来るノイズを次々と倒す謎の存在がいる。

 

ここで話が変わるのだが、俺の名はある特撮ヒーローの主人公と同じ名なんだ。

 

そして、その主人公が変身しているヒーローの名前が。

 

 

 

真夜中の夜。

 

とある住宅街の広場で異形の軍団〈ノイズ〉が彷徨(うろつ)いていた。俺はそれを民家の屋根から見つめていたが、すぐノイズに向かって叫んだ。

 

「ノイズ!これ以上貴様等の好きにはさせんぞ!」

 

『『『『『『!?!??!!??』』』』』』

 

俺の叫び声にノイズは一斉に俺の方へと視線を向ける、ノイズに目があるのかどうかは分からんが。ノイズに俺の姿の名を宣言する。

 

俺の名は…………名は!

 

 

 

「魔弾剣士リュウケンドー!!!!!来神!」

 

そう、この世界で俺は、魔弾戦記リュウケンドーの力を得たのだ。そして魔弾戦記リュウケンドーの力を使い、俺はノイズの脅威から、みんなを守る!

 

「行くぞッ!」

 

気合いを入れた声とともに、右手にゲキリュウケンを持ってノイズに飛び掛かっていく。

 

 

to be continued.




次回予告。

この世界で魔弾戦記リュウケンドーの力を持った俺。

なぁんでリュウケンドーの力を持ってこの世界で新たな人生を得たんだろうな~?

って、そんなこと言ってる場合じゃねえ!またノイズが出現しやがった。

ノイズ!この俺が居る限り、みんなの命を奪わせやしねえ!


次回!魔弾戦姫リュウフォギア!

これがヒーローだ!

次回も魔弾戦記リュウケンドーで突っ走れ!


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これがヒーローだ!

これがヒーローだ!のことは活動報告にありますので、そちらをご確認ください。

私作者の諸事情により、ゲキリュウケンの応答はマダンキーだけですぜ。


 ピッピッピッピッピッピッピッピッ!

 

 「うっ、う~ん…………ちょっと待て、すぐに起きてやるから」

 

 俺はそう言いながら掛け布団の中をモゾモゾと動き、布団から右腕を出して、うるさく鳴り響く目覚まし時計の停止ボタンを押した。

 

「…………5時20分。…………起きねえとトレーニングの時間がなくなっちまう」

 

 目覚まし時計を止めた右手で掴み取り、寝ぼけ眼で時間を確認すれば、俺自身が設定した時間のため俺はすぐに自分のベッドから起き上がった。

 

 

「……………………フンッ!」

 

 俺はベッドから起き上がれば、目覚めの一発に頬を勢いよく叩いて、自分自身を起床させる。

 

「うぅ~痛てぇ、でも目は覚めた。ここから一気に着替えるとするか!」

 

 頬を勢いよく叩いたお陰で、その痛みで俺は眠気からバッチリと目覚めて、今来てる寝間着から高校のジャージへと着替え始めた。

 

「よしっ、行くか」

 

 高校のジャージへと着替えた俺は、部屋を出て体の回せるところを階段を降りながら回していき、玄関の前まで来ればいつも外へと出るために使っている運動靴を履く、しっかりと靴紐の確認をして俺は玄関の戸へと手を掛ければ、まだ誰も起きていない家の中を身ながら一言発した。

 

「いってきます」

 

 そう言って俺は、家を出てランニングへと出掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 家から出てランニングを始めた俺、今は子供の頃よく遊びに行っていた公園で周囲を回りながら走っている。

 

「はっ、はっ、はっ…………ふぅ~。ランニングはここで打ち止め…………よしっ次だ!」

 

 一旦走るのをやめて、次に俺は普段からやっている腹筋30回、腕立て30回、背筋30回、懸垂30回、スクワット30回を行った。

 本当なら50回以上やりたいところだが、そんなにやってしまえば疲れてしまい、大学の講義などに支障が出てしまうため、30回までにしているのだ。

 

「29…………30!うしっ、こいつが今日の最後のトレーニングだ!」

 

 トレーニングメニューを順番通りやっていき、最後のスクワットを30回で終わらせれば、深い屈伸を行いながら眼光を鋭くして、この公園から一切のスピードを緩めることなく家に帰るランニングを行う。

 

 そして俺は深い屈伸を終わらし、立ち上がって軽い跳躍を数回行い、跳躍を止めればそこから一気にクラウチングスタートの体勢に入る。

 

(位置について、よーい…………ドンッ!)

 

 心の中でそう呟けば、そこから一気に俺は家に向かって駆け出した。

 

「はあぁぁぁ…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……………………ふぅ~。到着!やっぱあの距離の公園から家まで走って帰るとなると、結構キツいな…………それでも良いトレーニングだが」

 

 休むことなくスピードも緩めなかった俺は、見事に我が家に無事到着し、切れ切れの息をゆっくりと整えながら、玄関の鍵をポケットから取り出し、家へと入った。

 

「ただいまー」

 

「おう剣二、帰ってきたか」

 

 家に入って声を掛ければ、調度パジャマ姿の父さんが起きてきていたようで、帰ってきた俺の言葉を返してくれた。

 

「父さん、起きたんだな」

 

「ああ、そろそろ起きなきゃならない時間だからな。だからこうして起きたのさ」

 

「へいへい、俺はシャワー浴びるけど良いよな?」

 

「ああシャワー浴びるなり風呂入るなりしてこい。ただ、母さんの朝飯にはきちんとありつけるようにしろよな」

 

「わかってるよ。そんじゃシャワー浴びてくるわ」

 

 父さんと軽く喋った俺は、そのまま風呂場へと向かい着ている体操着を脱いで風呂場へと入った。

 

 

 シャアァァーーーー。

 

「ぶはっ…………もうこれぐらいで良いだろ?」

 

 10分ほどシャワーを浴びた俺は、シャワーを止めて顔を振って水滴を振り払い、俺は風呂場を出る。風呂場から出た俺は、脱衣かごに放り入れた昨日使ったバスタオルを手に取り、そのタオルで頭や体を拭いていった。

 

「あ~!さっぱりしたっ!!」

 

 バスタオルを手に取り頭や体を拭いた俺は、バスタオルを体に巻き付けて2階にある自分の部屋へと向かった。この時間帯ならば妹の響は部屋でまだ寝ているか、既にリビングに居て朝飯を食べているかだ。

 そのため、この状態で響と落ち合うようなことはないだろう。もし落ち合ってしまえば、最早運が悪かったとしか言いようがない。

 

「ま、そんなことになることはないんだがな」

 

 そう言って俺は自分の部屋に入り、洋服ダンスへと向かい今日着ていく服を取り出して、体に付いている水滴を拭き取っていき、素早く着替えを終えた。私服に着替えを終えた俺は、ノイズの戦いで必要なアイテムを後ろのポケットに入れ、部屋を出て食事をするリビングへと向かっていく。

 

「おはよう」

 

 朝の挨拶をしてリビングへと入れば、既に父と祖母と妹が食卓の椅子に座っており、母さんは朝食に使う皿をテーブルに置こうとしているところだった。

 

「「「おはよう剣二」」」

 

「おはようお兄ちゃん!」

 

 そうして家族から朝の返事を貰って、俺はテーブルへと向かっていった。母さんが朝食用の皿をテーブルに並べたため、それを見た俺は、茶碗に米を装おうと母さんに声を掛けて動こうとした。

 

「いいわよ剣二。気を遣わなくて大丈夫だから、すぐにみんなのご飯も装っちゃうから」

 

「え…………だけどよ?」

 

 俺が米を装うのを気付いた母さんは、俺を止めて自分でやると言った。動きを止めて母さんに向かって言おうとするが、母さんはそんな俺の言葉を一気に止めるようにキッパリと言い放った。

 

「剣二の気遣いは嬉しいけれど大丈夫だから、ご飯も私が装っちゃうから、椅子に座ってなさい」

 

「分かったよ」

 

 こう言う母さんは何を言っても意地を通してしまう、そのため俺は母さんの意地に負けを認め、了承して自分が座る椅子へと座った。

 俺が椅子へと座れば、母さんは家族全員の茶碗を持って炊飯器が置いてある所まで行き、手際よく俺達の茶碗に白米を装っていく。

 

「はい、ご飯ですよ。自分のお茶碗取ってくださいね~」

 

 白米を装い終わった母さんは、全員分の茶碗をお盆に乗せて持ってきた。俺達はそれぞれの茶碗を取って皿の近くへと置いた。母さんも自分の茶碗を皿の近くへと置いて、お盆は机の空いている場所へと置いた。

 俺達の朝食が全部揃えば、全員で手を合わせて父さんが率先して言った。

 

「いただきます!」

 

 父さんが言った後に、俺達4人も一斉に「いただきます!」と言って、俺達は食事を始めた。

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

 朝食を食べ始めた俺は7~8分ほどで食べ終わらせ、食べ終わった挨拶をして、椅子を引いて立ち上がり母さんに顔を向けて言う。

 

「それじゃあ母さん、俺もう行ってくるわ」

 

「ええ、いってらっしゃい」

 

「車に気を付けろよ剣二」

 

「頑張るんだよ」

 

 そう母さんが言えば、続けて父さんと婆ちゃんが言って、俺は手を振りながら返した。

 

「ああ、気を付けていってきますよ」

 

「あれお兄ちゃん。もう行っちゃうの?」

 

 俺がもう出ようとすることに響は疑問を抱いたのか、大好物のご飯を食べ箸も口に入れて、ほっぺに1粒のご飯粒を付けたまま聞いてきた。

 

「そうだが?どこぞのわんぱく娘が早起きしてくれたんでな、俺も早く行けるってもんだ」

 

「だからごめんて、そこまで攻めないでよ…………」

 

「ならきちんと早起きしてくれよ。んじゃ、もう俺は行くぜ」

 

「はーい。いってらっしゃい、お兄ちゃん」

 

 最後に響の言葉を聞いて、俺は玄関前に置いてあるバックを手に取り、玄関にある下駄箱の上に置いてあるバイクのキーを手に取り、玄関を出た。

 

「さてと、今日も俺の1日を始めるとしますかね」

 

 軽く体を伸ばしながら呟き、俺は自分のバイクを入れてある倉庫へと向かい。バイクを一気に倉庫から出して、門の前まで押し出せば、そのままバイクへと跨がりハンドルを握ってバイクを発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー、へいよっと」

 

 バイクで大学に到着した俺は、相棒をバイク用の駐輪スペースへと駐車させ、大学へと入れば靴を脱いで上履きを履き。今日の大学を過ごすためのだだっ広い講義室へと入り、適当に席を選んで座って机の上にバックを置いた。

 

「ふわぁ~~あ。…………寝みぃ」

 

「剣二。まだ時間があるとはいえ、しっかりしなさいよ!」

 

「鈴さんの言う通りですよ。呑気に欠伸してると、大目玉喰らいますよ」

 

「ん~…………おう鈴に喜一か。おはよう」

 

 席に着いた俺はただボーッとして、黒板を見ながらも欠伸をかいていれば、後ろの席から聞き覚えのある声が聞こえてきた。その声に俺は、返事をしながら振り向けば、そこに居たのは俺の幼なじみで親友の左京(さきょう)(りん)()()(やま)喜一(きいち)だ。

 こいつらとは保育園からの付き合いなのだが、初めて会った時は心の中で思いっきり驚いた。保育園生だから顔はめちゃくちゃ幼かったのだが、それでも本編の魔弾戦記リュウケンドーに出てくる左京鈴と瀬戸山喜一に顔が似ていた。

 俺はそんなことを思いながら一緒に育っていけば、2人は次第に本当の左京鈴と瀬戸山喜一に全くもってそっくりになっていき、もし対魔戦特別機動部隊・SHOTの制服と喜一には杖を持たせれば、完璧な魔弾戦記リュウケンドーに出ていた左京鈴と瀬戸山喜一が出来上がるであろう。

 

「ま、んなことはどうでもいいんだけどな」

 

「ん?剣二、なにか言った」

 

「いやなんでもない」

 

 そんな下らないことを思いながらも、すぐに頭を切り替えるために呟くも、その小さな呟きが鈴に聞こえていたらしく、俺は気にしないようにどうでもいい風に返した。

 

「そ、ならいいけど」

 

「2人とも担当官が来ました。講義が始まりますよ」

 

 鈴の奴も俺の返答に特に気にせずそっけなく返し、喜一は今日の講義の担当が来たことを教え、俺達はしっかりと姿勢を正し今日の講義が始まろうとする。

 

 

 

「これにて講義終了だ。聞きたいことがあるものは来てくれて構わない、但し早めにな。まだノートを取りきれていないものは早めに済ませて昼飯に入れ、終わってるものは昼を食べてこい」

 

「ようやく昼休憩か、腹減ったな~」

 

「お昼どこで食べよっか?」

 

「学食にしますか?それとも外に出てコンビニに行くか?ファミレスにでも行きます?」

 

 昼休憩となったため、既に講義のことをノートに書き写した俺達は、座っていた席から立ち上がり、昼をどうするか話し合いながら講義室から出ていった。

 

「学食でいいんじゃね?安くて助かるし、俺今月は出来るところで出費を抑えときたいんだよ」

 

「剣二がそこまで言うのなら学食で良いかな?」

 

「僕は別にどこでも構いませんので大丈夫ですよ」

 

「それじゃ、学食で昼飯とするか!」

 

 学食に決めた俺達は、すぐに学食がある1階の奥へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっこれにて今日の講義は終了だ。お前ら、いくら大学生とは言えあんまり夜まで遊び耽るなよ。それじゃあな」

 

 昼飯を食べ終えた後は、残りの講義を聞くだけでノイズも出ることなく、平和に終わった。

 

「くうぅぅ…………あ~。ようやく終わったぁ…………」

 

「ええ、そうですね」

 

「ねえ、久しぶりに3人でカラオケかゲームセンターでもいかない?」

 

 

 講義が終わったため、俺は軽く体を伸ばしながらぼやけば、後ろの席に居た喜一が返してきて、俺は口角を上げて笑いながら自分の荷物をバックに入れていけば、喜一の隣に居た鈴が遊ぶ提案をしてきた。

 

「あー…………せっかくのお誘いのところ悪い、今日はさっさと帰らなきゃならないんだよ」

 

 しかし俺は鈴からの遊ぶ誘いを、心苦しくも拒否するしかなかった。

 

「え…………そうなの?」

 

「悪いな鈴、来週なら大丈夫だから、それで良いか?」

 

 俺が断ったことに鈴の顔がみるみると落ち込んでいってしまい、鈴のそんな顔を見てしまった俺はいたたまれない気持ちになり、来週なら大丈夫と鈴の方を見ながら話す。

 

「うん、まあそれなら良いけど」

 

「鈴さん。しょうがないですよ、今日は運悪く剣二には用事みたいなものがあるみたいですから割り切るしか」

 

 来週が大丈夫だと言うも、鈴の方はまだ残念がる表情で沈み込んでいたが、喜一が何とか俺のフォローに入りながらも、鈴のことを慰めるようにしてくれた。

 

「本当に悪い鈴、この埋め合わせは来週するからよ!」

 

「別に気にしなくていいわよ。用事があるんじゃ仕方ないんだからさ!」

 

「そうしましょう。それと講義室からも出ていきましょう。いつまでもここに居るわけにはいきませんから」

 

 納得してくれたようで、俺の台詞に鈴はガッツポーズをしながら元気よく返した。

 そして喜一の言葉に俺と鈴は同時に頷いて、3人一緒に講義室から出ていき家へと帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブオオオオオオオン!

 

「それにしても、やっぱり鈴には悪いことしたな」

 

 バイクを走らせ家へと帰りながら、俺は鈴のことを考えていた。なにしろ元気よく返事を返してくれたものの、それでも寂し気なところを感じさせて、大学を出るときもやっぱり寂しい顔を微かに浮かべていた。

 

「普通あそこまでガッカリするか?いや、どこか不安なのかね鈴の奴」

 

 よく考えれば分かることなのかもしれなかった。いくらまだ大学生とは言え、それでも後2年程しかないのだ。大学を卒業して就職すれば、もしかしたら忙しくなって一緒に遊びに行くことなど出来ないかもしれない、それどころか会えなくなるかもしれないんだ。

 

 それを考えれば、今の時間を一緒に遊びたい鈴の気持ちはある意味で分かることかもしれない。

 

「来週は時間一杯まで3人で遊ぶとするか!…………ッ!」

 

 自分でそう決めた俺は、バイクのスピードをさらに上げようとアクセルを踏もうとしたが、尻ポケットに入れていたモバイルモードとなっている〝ゲキリュウケン〟が光を放ち、俺の脳裏にノイズの出現場所を映し出したのだ。

 

 俺はバイクにブレーキを掛けて、道路の真ん中で方向転換をするように停めれば、ノイズの出現場所に顔を向ける。

 

「なんで俺が家に帰ろうとするときに出てくるんだよ!」

 

 そんなことをついついぼやいてしまうが、ノイズの奴らはいつ何時現れるのかも分かっていなければ、全てが謎に包まれた連中のため文句を言っても無駄であるため、俺はバイクを動かして最高時速でノイズの出現場所へと急行した。

 

「俺が行くからにはてめえらの好きにはさせねえぞノイズ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???

 

 ある場所で、ノイズの出現を知らせるサイレンがけたたましく鳴り響いていた。そしてサイレンが鳴り響きながらも、数名の隊員がキーボードを操作しており、その後ろの上では身長が2メートルは超えてるような大男が険しい顔で自分の前にある巨大なモニターを睨んでおり、大男の後ろには黒いスーツを着た優男が控えるよう立っていた。

 

「状況はどうなっている?」

 

「大型は居ないようですが、住宅街にヒューマノイドノイズとクロールノイズが大群で出現しました!」

 

「現在民間人を避難させていますが、奇襲のような出現により、民間人の避難はかなり遅れている模様です!」

 

 2名の隊員の報告に大男は苦しい表情をして、後ろに控えていたスーツを着た優男が声を掛けた。

 

「いきなりの小型ノイズの出現…………司令、これでは」

 

 司令と呼ばれた大男は、顔を頷かせると口を開いた。

 

 

「ああ、民間人の命が危険に晒されているのなら2人を出すべきなんだろうが、〝アレ〟はまだ完全な調整には仕上がっていない、そんな状態で2人を出せば下手をすれば大きな二次被害が出るかもしれない!」

 

 大男は苦しい顔で握り拳を作り、辛くても断言するしかなかった。

 

「あの2人には悪いが、まだそんな危険な目に合わせるわけにはいかない。2人は人類の切り札なんだからな!彼を除いては…………」

 

 その言葉に、ここに居る多くの者が顔を俯かせる。事実上、今ノイズの対抗手段は彼らの組織が所持するものとノイズと戦って世間をよい方向へと騒ぎ立てている騎士のだけなのであるから。

 

 そんな時、オペレーターが機器がある反応をキャッチしたことに気付いて、司令と呼ばれた大男に大至急報告した。

 

「!! 司令ッ!ノイズの出現ポイントに謎の反応をキャッチ、恐らくこれは彼です!」

 

「「「「「ッ!?!?」」」」」

 

「!! そうか、彼が、未確認の騎士が来てくれたのか!」

 

 オペレーターの報告に、ここに居た他の隊員たちは顔を驚愕にするが、大男は安心しながらも重い口調で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノイズの出現をモバイルモードのゲキリュウケンが関知したため、俺は今ノイズの出現場所にバイクのスピードを一切緩めることなく、最早スピード違反全開の警察に検挙されること間違いなしで向かっていた。

 

「間に合ってくれよ…………!」

 

 本来なら、モバイルモードのゲキリュウケンには敵の出現を感知する機能などはないはずなのだが、不思議なことにこのゲキリュウケンには感知機能がセットされている。

 そのお陰で俺は、いつ何時現れるかも分からない意味不明なノイズの出現場所に先手を打ってノイズを叩くことが出来るが、それでもゲキリュウケンの感知機能を破って苦戦させる方法はあるが今はそんなことはどうでもよく、とにかく住宅街に出現するノイズを倒すことが重要だ。

 

「さあて行くぜ。ゲキリュウケン!」

 

 俺はバイクのハンドルから手を離し、モバイルモードのゲキリュウケンを真の姿である【撃龍剣】へと変化させた。

 

「リュウケンキー発動!」

 

 俺はバイクから立ってゲキリュウケンの持ち手の柄の部分のようなものを上げ、それとともにゲキリュウケンの顔が上がれば同じく翼のようなものも畳まれた。

 

 ゲキリュウケンの顔があった場所からマダンキーの挿し込み口が現れ、俺は龍の顔が描かれた金色のマダンキー、リュウケンドーの重要な変身アイテムであるリュウケンキーを出して発動させキーを出現させる。

 

 リュウケンキーをゲキリュウケンの挿し込み口に入れて回し、柄の部分を下げれば再び翼が展開しゲキリュウケンから音声が鳴る。

 

『チェンジ、リュウケンドー』

 

 するとゲキリュウケンから青白い光が発せられ、俺はそれを確認すれば、バイクを走らせたまま右手は光を放つゲキリュウケンを持ち横に伸ばし、左手は広げて横へと伸ばすも上に向かって動かす。

 同じく右手に持っているゲキリュウケンも上に向けて動かし、俺の至近距離までゲキリュウケンを持ってきて両手でゲキリュウケンを持った。

 

「撃龍変身!」

 

 そしてこの言葉を放てば、ゲキリュウケンから巨大な青白く輝く龍が飛び出し、龍は空の上に昇れば咆哮を上げてバイクに乗っている俺の元までやって来る。

 それが分かっている俺は、ゲキリュウケンを右手で持ったまま斜め下に向け、左手はバイクのハンドルを持って重心を真っ直ぐへとさせる。

 

「ぐっ…………!?」

 

 龍が俺の体に飛び込んでくれば、俺は少し苦しい表情をするも、龍の力の重みに耐えれば俺の体には青い鎧が身に纏い、肩と前腕と胸に白い鎧が胸の真ん中には金色の鎧、手の甲には金色の龍の顔を模した手甲が装着される。

 下半身に白い鎧が装着し、足は金色の龍の顔を模した甲掛が装着される。最後の決め手に額部分に金色の龍の顔の兜、白と青の仮面が纏っていき、顔も含めた全身に鎧が身に纏えば、俺は気合いを入れるように叫んだ。

 

「変身完了だっ!!!」

 

 魔弾剣士リュウケンドーに変身した俺は、大量の小型ノイズが出現する住宅街に向かっていく。

 

 

 

「よっしゃ到着、ここからはバイクなしで行くとするか」

 

 大量の小型ノイズが出現する住宅街の付近まで到着すれば、俺は一旦バイクを止めてエンジンも切り、バイクを押して出来るだけ気付かれない端っこの位置へと隠すように放置した。

 

(本当ならバイクを放置するなんてことしたくないが、下手に持っていって、監視カメラにでも俺のバイクが映れば厄介この上ないからな。バイク経由で俺の正体に迫られたら家族や親友まで危険に晒すことになっちまうからな)

 

 心の中で言いながら、今俺はゲキリュウケンをモバイルモードにして左腰へと着けて、ノイズの出現場所まで走っている。

 

(下手すりゃマジで、勘の良い連中が俺がノイズと戦っている奴だって気付いたら、俺達の生活は一瞬で変わっちまうか。それどころか俺のせいで最悪な事になるかもしれない、出来ることならそんなことにはしたくねえからな)

 

 そんなことを考えながら走っていれば、住宅街の周辺からノイズ出現のサイレンが鳴り始めた。

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

「ノイズ!?現れたのか、急がねえと!」

 

 

 

 

「皆さん落ち着いて下さい!」

 

「シェルターはこっちです!」

 

「ノイズだ!急げ!?」

 

「早くしろよ!!」

 

「邪魔だ!どけっ!」

 

 ノイズの出現により、多くの民間人はシェルターに向かって急いでいた。しかしその中には自分の命優先に我先にと、他人を押し退けて逃げようとするものもおり、そのせいで1人の女性が倒転してしまった。

 

「きゃあ!?」

 

「「「!!?」」」

 

 1人の女性が倒れたことに避難指示をしていた警官は気付いたが、逃げている一般市民は女性に目も暮れず必死になってシェルターに向かっていった。

 

「ひっ…………いやっ、いやっ」

 

 多くの人がシェルターに向かって女性の周りには人がいなくなったとき、女性はなんとか立ち上がろうとするが、すぐそこからヒューマノイドノイズが迫っていることに気付き、その恐怖から女性は声にならない悲鳴を出して後退りをする。

 

「急げ!!あの女性が危ないっ!?」

 

「くそっ、ここからじゃあの人に当たってしまう!?」

 

 警官もなんとかして女性を助けようと試みるが、この距離では助けられなければ、拳銃を打ってノイズを牽制しようとしたが、ヒューマノイドノイズが女性に被っており下手に打てば女性に当たってしまう状態であった。

 

「来ないでっ…………こっちに来ないで!!?」

 

 女性は後退りを止めてしまい、恐怖で声を上げながら目を瞑って死を覚悟したその時であった。

 

「ゲキリュウケン!」

 

『!?!!?』

 

「えっ…………」

 

 謎の声を聞いた女性は恐る恐る目を開いてみれば、そこにあったのは剣に貫かれたヒューマノイドノイズと、堂々と背を向けながらも守るように、自分とノイズの間に割って入っている俺の存在が居たのだから。

 

 

「大丈夫か?」

 

「騎士の…………ヒーロー?」

 

「大丈夫かって聞いているんだ!」

 

「は、はい!?」

 

 俺が大丈夫かと聞くと、女性は小さな声で世間で呼ばれている俺の異名を呟き、その名前に俺は内心困ってしまうも、そんなことを気にする暇なくもう一度女性に大きな声で尋ねれば、女性は慌てながらも返事をした。

 

「大丈夫ならいい、ほら手を。早くシェルターまで逃げるんだ」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

「お嬢さんこちらです!早く!」

 

 俺は女性に手を出し立ち上がらせれば、ここからシェルターに行くことを即せば、女性は俺にお礼を言ってシェルターに向かっていった。ついでに女を助けようとしていた警官が傍に来て、女性をシェルターまで案内していった。

 

「さてと、やろうか。魔弾剣士リュウケンドー!来神!!」

 

 パキポキと指の骨を鳴らし、迫ってきているヒューマノイドノイズとクロールノイズに向かって、俺はヒューマノイドノイズに突き刺したゲキリュウケンを地面から引き抜いて決めポーズをした。

 しかし俺はゲキリュウケンをもう一度、突き刺さっていたコンクリートの地面に突き刺し、小型ノイズの軍団にファイティングポーズを向けて駆け出した。

 

 

「行くぜっ!!」

 

『!?』

 

『『『『『!!!!!』』』』』

 

 俺は駆け出し、ヒューマノイドノイズに向けてリュウケンドーの拳をぶち当てた。拳を当てたことにヒューマノイドノイズの顔面は崩れて倒れ、そのまま炭素の塊へとなっていった。仲間がやられたことに色とりどりの小型ノイズたちは一瞬驚いていたようだが、すぐ気を取り直したようで俺に向かって突撃を仕掛けてきた。

 

「嘗めんな!ふっ!はっ!だあっ!おりぃやっ!せあっ!らあっ!うおわあたぁーっ!!!」

 

 しかし俺は、最初に攻撃を仕掛けてきたヒューマノイドノイズの攻撃を避けて顔面に裏拳を当てて、ヒューマノイドノイズから離れれば次にクロールノイズを蹴り飛ばし、次はヒューマノイドノイズの顔面に拳を2発ほど当て一本背負いを行い、今度は挟み撃ちでヒューマノイドノイズとクロールノイズが攻撃してくるが、素早く蹴りで対処しヒューマノイドとクロールを蹴り飛ばし、最後にオレンジ色のヒューマノイドノイズに強烈な回し蹴りを喰らわせた。

 

 結果、6体の小型ノイズは俺の打撃によって炭素の塊へと変わってしまった。

 

「どんなもんよ。…………おおっと!」

 

 右手をスナップさせ呟けば、5体ものヒューマノイドノイズが俺に襲い掛かってくるが、その攻撃を横に向けてのバク転で転がり避け、ゲキリュウケンが突き刺さっている所までやって来た。

 

「んじゃ、ここからが本番だ!」

 

 バク転で転がり避けながらも着地し、立ち上がった俺は地面に突き刺さっているゲキリュウケンを引き抜き、小型ノイズの大群にゲキリュウケンを突き付けて走り出した。

 

「でえりぃやあぁっ!」

 

『『『『『!!!??』』』』』

 

 俺に攻撃を仕掛けてきた5体のヒューマノイドノイズの元まで来れば、一気に踏み込みを入れたゲキリュウケンの斬撃を喰らわせた。

 斬撃をまともに喰らったヒューマノイドノイズは、上半身と下半身が離れて炭素となった。

 

「まだまだぁっ!」

 

 そう言って俺は、小型ノイズの群れの中に飛び込み、ゲキリュウケンを振るいまくって、次々とノイズを炭素の塊へと変えていく。

 

(チッ、どうにも数が多すぎるな…………戦法を変えるとするか)

 

 小型ノイズの多さに少し鬱陶しさを感じた俺は、ターンをするように小型ノイズどもから距離を取り、右腰に装着しているものに手を当てた。

 

「マダンキーホルダー!」

 

 右腰に装着されているマダンキーが入っているマダンキーホルダーを回せば、俺が使いたいと望むマダンキーに止まれば、俺はそのマダンキーを一気に引き抜き発動させた。

 

「ナックルキー発動!」

 

『マダンナックル』

 

 キーを出現させれば、既に解放させているマダンキーへの挿し込み口にナックルキーを挿し込んで回し、マダンナックルを召喚した。

 

「来いっ!マダンナックル!」

 

 左手の甲をノイズに向け、そうすれば次第にリュウケンドーの左手にマダンナックルが装着された。マダンナックルが装着されれば、俺はマダンナックルを真っ直ぐと小型ノイズが居る方へと向ければ、マダンナックルのキバが展開されて、エネルギーを集中させた攻撃をノイズに向けて放った。

 

「受けてみろ!ナックルスパーク!」

 

『『『『『!!?』』』』』

 

 マダンナックルから放たれた遠距離攻撃のナックルスパークにより、ナックルスパークの射程とその周囲に居た小型ノイズはナックルスパークの餌食となり、小型ノイズの大群は一気に消し炭になったり炭素の塊になった。

 

 

 俺が今使っているマダンナックルは、魔弾戦士共通の手甲型武器であり、腕に装備してパンチ力を強化したり、ナックルスパークという約9000ボルトの威力を持つ電流の衝撃波を放つことも可能だが、本編のリュウケンドーでは遣い魔以外には通じないことが多く、なにかと可哀想ながらも頑張り屋な武器なのである。

 

 

 

「てめえらノイズに時間を割いてる余裕はないんだよ!とっとと消えろ!」

 

 俺は大群の小型ノイズに言いながら、マダンナックルを向け連続でナックルスパークを打ち出した。ナックルスパークで小型ノイズを倒していき態勢を崩せば、一気にノイズの懐へと飛び込めばゲキリュウケンを思いっきり振り被りまくった。

 

「せえぇぇぇぇの!!!!」

 

『『『『『!!!!!』』』』』

 

 ゲキリュウケンでの回転斬りを行ったことにより、周囲に居た30体の小型ノイズどもは炭素の山へと変わっていき、俺は一旦動きを止めゲキリュウケンの刃に触れながら小型ノイズの大群に顔を向ける。

 

『『『『『!!!??』』』』』

 

 ノイズに恐怖を感じる感覚器官があるのかは分からないが、今の奴らは俺を見ながらも動けずにおり、俺に対して恐怖のようなものを感じている気がする。

 

「お前ら人類の敵が俺に恐怖を感じているかどうかは分からねえが…………数はもう残り20体程度なら、一気に決めさせて貰うぜ!」

 

 俺はそう宣言して右腰にあるマダンキーホルダーを回して、使用するマダンキーへと止めればそのマダンキーを引き抜いて発動させた。

 

「ファイナルキー…………発動!」

 

『ファイナルブレイク』

 

 それは龍が必殺のブレスを放っている模様が描かれたマダンキーであり、そのキーの名はファイナルキーと言い、魔弾戦士にとって必殺技を放ち強力な一手にもなり得る切り札である。

 

 俺はそのキーをゲキリュウケンに挿し込んで回し発動させれば、ゲキリュウケンから凄まじいほどの青白いエネルギーが発生すれば、俺は冷静にゲキリュウケンを両手で持って掲げれば、必殺技の名前を叫びながら小型ノイズの大群に向かって放った。

 

「これで終わりだ!!ゲキリュウケン、魔弾斬り!!」

 

『『『『『『!?!!?』』』』』』

 

 リュウケンドーの必殺技である、【魔弾斬り】をノイズに向かって放てば、1ヶ所に集合していた小型ノイズは魔弾斬りによって、炭素も残すことなく纏めて消し飛んだ。

 

「ま、ざっとこんなもんか…………」

 

 残っていたノイズが、必殺技の【魔弾斬り】によって消し飛んだことを確認すれば、俺はジャッという音を立てながらゲキリュウケン振ってノイズが居た場所に視線を向けた。

 

 少しの間そこに視線を向けるも、これ以上ここに居ても無駄なため、早急にこの場から去ることを決めた俺は、跳躍をして屋根へと屋根へと飛び上がりながら離脱をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令っ未確認の騎士がノイズの殲滅とともに、住宅街から去りました!」

 

「すぐに未確認の騎士の反応を追跡するんだ!」

 

「了解!」

 

 先程の場所では、未確認の騎士と呼ばれているリュウケンドーが全てのノイズを殲滅させ、その場から去っていったのを報告した。その報告を聞いた大男はすぐに追跡を隊員に指示を出し、オペレーターも強く返事をして追跡を始めたが…………。

 

「ッ!?司令、未確認の騎士の反応が消失しました!?」

 

「なんだとっ!?それなら未確認の騎士が消えた場所にある全てのカメラの映像を映し出すんだ!」

 

「は、はいっ!?」

 

 未確認の騎士の反応が消えたことに大男は一瞬狼狽えてしまうが、すぐに新たな方法を見出だしオペレーターにそれを伝えた。大男の指示を聞いたオペレーターも多少慌てながらもキーボードを操作して巨大なモニターに、リュウケンドーが消えた場所を全て映し出したが、結果は鼠一匹も映っていない有り様であった。

 

「司令…………すみません。なにもいません」

 

「そうか。…………すまないがそのまま映像を映し出したままにしておいてくれ、もしかすれば未確認の騎士かそれに関係があるものがカメラの視覚に入るかもしれない」

 

「分かりました。全力でやってみます!」

 

 隊員が申し訳なさそうモニターになにも移っていないという報告に、大男は隠しきれない落胆をしてしまうも、まだなにかあるかもしれないと考え、ここに居るオペレーターを勤める隊員たちにカメラの映像の監視を指示した。

 隊員たちも指示を了承して、モニターに映し出されている数多くの監視カメラの映像を確認できるだけ確認を始めた。

 

 

「それにしても未確認の騎士もすごいですね。ノイズを倒すだけではなく、我々の監視網からも抜け出すとは」

 

「ああ、俺達は何年も彼の追跡をしているが、全てが水の泡で終わっている」

 

 少し落ち着いた瞬間、スーツを着たは優男が大男に向かって話し出せば、大男の方も口を開いて語った。

 

「俺たち機動二課の現状を考えるのなら、未確認の騎士とは強力関係を築きたいんだがな…………」

 

 大男は機動二課と言った。

 ここは日本政府が造り出した組織、その名は特異災害対策機動部二課。ここに所属しているものは略して機動二課や二課と呼んでいる。

 

 この組織はその名の通り、特異災害である人類の敵ノイズの対策本部であるが、しかし現状それらしい対策は出来ておらず、出来ることは市民の避難誘導か命を懸けてノイズを食い止めることだが、それはどうにも芳しくはなかった。

 

 そしてこの大男は、この特異災害機動部二課の司令官を勤めている風鳴弦十郎である。

 

 

「とりあえず、ノイズは未確認の騎士がなんとかしてくれたから良かったが、あいつらにも連絡をいれとかなければな」

 

 そう言って弦十郎はマイクのスイッチを入れて、ある場所に聞こえるよう操作をした。

 

「奏、翼、聞こえるか?」

 

『ん?おっちゃんどうかしたか?』

 

『どうかしましたか叔父様?』

 

 マイク越しから話し掛ければ、それに答えたのは十代と言える幼い少女の声だった。奏と呼ばれた少女は縦横無尽な活発さを感じ、翼と呼ばれた少女は気弱でどこか儚げな雰囲気を感じさせた。

 

 2人の声を聞いた弦十郎は、心配をしながら2人にマイクで大事なことを伝えることにした。

 

 

「何度も言って悪いが、明日もしノイズが出現すれば〝アレ〟の実戦になるがくれぐれも気を付けてくれ」

 

 弦十郎からその事を言われた奏は呑気そうに、返答した。

 

「分かってるっておっちゃん、何度も言われなくても気を付けるって!」

 

「はい、いくら実戦に投入できるとは言え危険も多いですから、気を付けます!」

 

 奏と翼の言葉に、弦十郎は笑みを称えるが、すぐに笑みを崩して真剣な表情と声色を出して奏と翼に言う。

 

「それなら良い、だがお前たち2人に最後にこれだけ言っておく、いくら〝アレ〟が完全に実戦で使えるとは言え、未確認の騎士とは絶対に戦うな!」

 

『なっ!それは!?』

 

『どういうことだよ、おっちゃん!?』

 

 弦十郎の言葉に、2人は驚愕の声を出した。

 しかし2人の声に、弦十郎は冷静に返答した。

 

「確かに上層部からは未確認の騎士の捕獲を命令されているが、お前たちと未確認の騎士では圧倒的なまでの戦闘の差がある。そんなお前たちを未確認の騎士と戦わせて失うわけにはいかないんだ!」

 

 弦十郎はまるで頭を下げるぐらいの懇願をしているようで、そんな弦十郎に奏と翼も真剣な表情となる。

 

「すまない。だが未確認の騎士が俺達人間のために戦ってくれているとは言え、彼はノイズと同じくらい謎が多いんだ。果たして俺達の味方かどうなのかが、それを理解するためにも未確認の騎士との戦闘は避けてほしいんだ!」

 

『…………分かったよおっちゃん、そこまで言うのならあたしらも出来るだけ気を付ける。な、翼』

 

『うん!叔父様の気持ちはよく分かりました。ノイズと未確認の騎士、両方に気を付けながら戦います!』

 

「ありがとう2人とも、絶対に死ぬんじゃないぞ」

 

 2人の言葉を聞いた弦十郎は、頷きながら2人のことを思いやる言葉を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、なんとか気付かれることなく無事にここまで帰ってくることが出来たな…………」

 

 小型ノイズとの戦闘を終えた俺は、誰にも気付かれることなく変身解除をしてバイクを回収し、出来るだけ怪しさを感じられないよう平然としながらあの場を去ったのだ。

 

「このまま帰るのもなんだし、ちょっくら寄り道でもするかな」

 

 バイクを走らせて帰路に帰ろうと思っていたが、心変わりをして寄り道を決めた俺はその場所に向かってバイクを右折させた。

 

 

 

「よしっ到着っと、コロッケ頂戴~」

 

 俺は看板に所沢精肉店と描かれた肉屋の前に、バイクを停めればヘルメットを脱いでコロッケを注文した。

 

「ケッ、また来やがってのか剣二」

 

 コロッケを注文すれば、店の中から木刀を持った顔の厳つい太った男が現れた。しかし俺は臆することも気にすることもなく、その男にコロッケを注文する。

 

「いいじゃねえかよ。ちゃんと金は払ってるんだし、そんなことよりおっちゃんコロッケ50枚揚げてくれ!」

 

「ったく、そんな体のどこにコロッケが入るんだろうな」

 

「あんた!家のお得意様の剣ちゃんがまた来てくれたのにそんな言い方はないだろ!剣ちゃん、コロッケ50枚すぐに揚げるからね!」

 

「おう、ありがとよおばちゃん!」

 

 厳つい顔したおっちゃんを宥めるのは、フライヤーの前に立ちおっちゃんよりかは少し痩せている優しい顔した女性。

 

 この2人の名前は所沢熊蔵と所沢邦子。

 夫婦2人でこの精肉店を経営している。この街ではなにかと有名な2人組であり、そしてこの精肉店では肉を売っているが、揚げ物も行っているのだがコロッケとメンチカツしか売っていないと言う、昔ながらを表現した肉屋なのである。

 

 因みにコロッケは100円で、メンチカツは110円と値段も心優しいものである。

 俺はガキの頃からここの精肉店が行き付けで、帰り際や腹が空いた時にはよく通ってコロッケをたらふく食べていたものである。

 

 

「じゃあ先に金だけ払っとくぜ。はい5000円」

 

 俺はコロッケが揚がる前に代金を調度で支払えば、近くにあった休憩用の椅子に座った。椅子に座ってコロッケを待っていれば、精肉店に置いてあるラジオからニュースが流れてきた。

 

『ここでニュースです。今日未明、夕方頃に小型のノイズが出現しましたが、未確認の騎士の手により一切の死亡者を出すことなく、ノイズの撃破を完了させました』

 

 ラジオのニュースは続けて言う。

 

『しかしノイズの撃破を完了させました未確認の騎士は、そのまま何処かへと立ち去り、行方もなにも掴めることなく姿は消えました。…………このノイズと戦う未確認の騎士に関してなのですが、人々の見解はどうなのかと…………』

 

 ラジオのニュースでは、俺が先程戦ったノイズとの情報が流れたが、それを聞いたおっちゃんとおばちゃんは喜びの声を上げた。

 

「あの騎士のヒーローまた出てきてノイズをやっつけてくれたのね!」

 

「やっぱりあの騎士は大したもんだな!俺達のためにノイズと戦ってくれるんだからよ!」

 

 おっちゃんとおばちゃんの言葉に、俺は嬉しくなり自然と頬を緩めてしまうが、この笑みが2人に気付かれないよう頬のマッサージをして誤魔化すことにした。

 

 

「あっ剣ちゃん。コロッケ50枚揚がったよ!」

 

「やった!ありがとおばちゃん!」

 

 頬のマッサージをしながら誤魔化していたが、おばちゃんがコロッケ50枚を揚げ終わったことを知らせてくれたため、俺は休憩用の椅子から飛び上がりながら立ってコロッケを受け取った。

 

「いただきまーす!…………うんめえ~!」

 

「相変わらず上手そうに食べやがるな…………」

 

「良いじゃないあんた、作ってくれるこっちとしては嬉しい限りだよ!」

 

 おっちゃんとおばちゃんが何を言っているのか知らないが、俺はそんなものなど気にすることなく揚げたての50枚のコロッケを上手そうに幸せそうに食べていった。

 

「やっぱ俺って、コロッケ大好きだぜ!」

 

 

 to be continued.




ようやく第2話の復活完了。
色んな意味で疲れました。
感想お願い致します。


次回予告。

止まることのないノイズの襲撃。
それでも俺に休みの時などありはしない、ノイズとの戦い以外にもやるべきことがあるのだ。

再びノイズの大群が現れ戦場へと赴けば、空からヘリがやって来て、2人の女が飛び降りるとともに歌を歌った。
そしてその歌とともに、2人組の女は機械の鎧を身に纏う!

一体なんだあれはっ!?

次回 魔弾戦姫リュウフォギア

登場!シンフォギア!!!

次回も魔弾戦記リュウケンドーで突っ走るぜ!


剣二「そして次のリュウフォギアの最新話は、魔弾戦記リュウケンドーが放送していた曜日と時間に投稿するぜ!読者のみんな絶対見てくれよな!!」

よろしくお願いします!!!!


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登場!シンフォギア!!!

名探偵と魔法少女の登場です。

危うく二万文字まで行くところでした。めっちゃ長いですけど、どうぞ。

読者の皆様の感想と評価が私作者の原動力となりますので、どうかよろしくお願いします!


「…………ごちそうさま。母さんコーヒー入れていいか?」

 

今日は休日の土曜日だが、いつものように早く起きた俺は、すぐに朝飯を食べ終え椅子から立ち上がり、コーヒーを飲んでもいいかと母さんに問い掛ける。

 

「聞かなくても良いわよ。コーヒー入れて」

 

母さんから許可を貰い、自腹で買ったコーヒーミルと買ってきたコーヒー豆を出し、片手で焙煎が出来るコーヒーロースターでまずコーヒー豆を焙煎する。

 

焙煎するのはやっぱり家のコンロの火である。火の威力は強すぎず弱すぎず、中火よりちょっと低めで弱火よりちょっと強めの火でコーヒー豆を煎っていく。

 

助かることに我が家のコンロは火を着けても火の強さが勝手に変わらないのだ。最近のコンロは製造側の親切心か嫌がらせか、どうにも火を着けた後、その火の火力のままではなく何故か弱火になったり強火になったりするため傍迷惑なガスコンロも多いが、我が家のコンロ選びはとても上手いのか、そんなガスコンロなど来ることはないから安心だ。

 

 

「♪~♪~~~♪~~」

 

鼻歌を歌いながら、コーヒーロースターを持っている手を時計回りに回して、コーヒー豆を煎っていく。煎りの作業は結構大変だ。浅くやれば酸味の味わいになるし、中間のところまで煎ればスッキリとした味と苦味の両方になり、深く煎ればコクと苦味の深い味わいとなる。ただ気を付けなくてはならないのは下手に煎りを続ければ、映画でコーヒー豆を煎っていてコーヒー豆を台無しにして沢山の煙を出させた壮吉のおやっさんのように失敗してしまうからだ。

 

かく言う俺も、前の人生ではよく買ってきたコーヒー豆を煎るところで大量の煙を出して沢山台無しにしてきた過去がある。説明書を読んでも、ついもう少しだけ長く煎れば美味しくなるかなと思って挑戦してしまうのだ。

 

本当に、ちょっと長くやってしまうと煙が出るなんて、コーヒー豆は案外怒りっぽいのかもな、と思ってしまう。

 

 

そんなことを思っていれば、丁度コーヒー豆が濃く煎ったため、コーヒーロースターをコンロから離し左手に持って、隣にコーヒーミルを置いてあるのでミルの蓋を開け煎ったコーヒー豆を入れて蓋を閉め、コーヒー豆を砕くためグリップを少し早めに回していく。

 

「コーヒーはこう見えて作り方は奥が深い、豆の油や豊富なやり方、器具の使い方で味が変わるから…………俺はコーヒーを作るのが止められないんだよな~」

 

手を止めずに言いながら、まだまだグリップを回してコーヒー豆を砕いていく。

 

「よしっ、そろそろ良いだろう」

 

コーヒー豆が全て砕けただろうと思いグリップから手を離し、粉砕されたコーヒー豆が集まっているところに手を持っていきそれを引く。

 

 

「充分な粉末だ。これならいつも通りにコーヒーができる!」

 

 

細かく粉末状になったコーヒー豆を見て俺は強く頷いて、それを手で持ち上げ俺の一番のお気に入りである。大きいサイズのフレンチプレスを出し、そこに粉末になったコーヒー豆を入れる。

 

その次に熱湯を2回入れる。時間は4分が調度良いらしい、フレンチプレスに粉末にしたコーヒー豆を入れたら次に家のポットでプレスに熱湯を注いでいく。

 

そのため今からコーヒーを作るための時間の始まりである。粉全体に熱湯がかかるよう円を描きながら、勢いよくもゆっくりと注いでいく。

 

熱湯が全体に行き渡れば、ある3つが出ることになる。その3つは1番上から、コーヒー豆から出た『ガス』。2番目は先程俺が入れたコーヒー豆の『粉』。そして最後が豆の粉と熱湯から出てきた『液体』。

 

つまりコーヒーである。

 

「これも目安って感じだし、鮮度や焙煎具合によっても変わるから、奥が深くて大変なんだけど辞められないんだよな~。俺的にはこの入れ方と時間帯で普通に上手いから良いんだけど」

 

一旦熱湯を注ぐのを止め、そこから30秒待つことにする。

 

 

30秒経過。

 

 

「よしっ、30秒経った!」

 

時計を見て30秒が経ったのを確認した俺は、元の位置に戻したポットを手に取り、フレンチプレスに2回目の熱湯を入れていく。熱湯を蓋が届くところまで入れれば、すぐフレンチプレスに蓋をする。それをやれば残りの時間が経つのを待つ。

 

「……………………………もういいな」

 

自分自身の体感時計で4分経ったのを確認した俺は、フレンチプレスの蓋に付けられているプランジャーを下に向けて押す。

 

プランジャーを押せば出てきたガスと粉砕されたコーヒー豆の粉が下に行ってしまった。

 

「完成した!ちょっと時間掛かったけど、上手いコーヒーを飲めるのならそれもご愛嬌ってね!」

 

そう言いながら、俺は棚から自分のマグカップを取り出して、フレンチプレスを手に取りマグカップにコーヒーを入れていく。

 

カップにコーヒーを入れ終えた俺は、食事をする自分の椅子に座ってフレンチプレスとマグカップをテーブルに置いて、俺はマグカップを手に取りコーヒーの匂いを嗅ぎながら口に入れゆっくりと飲み込む。

 

「………………………………………」

 

目を瞑ってコーヒーを深く味わう。そして少し無言を貫くも、俺は目を開けて微笑みながら力強く頷く。

 

「うんっ、旨い!やっぱりフレンチプレスだとコクが一番出るな!」

 

コーヒーの匂いとコクを楽しんでいると、俺の隣で同じく朝食を既に食べ終えている響が、俺の方へ視線をやっていた。まあ響の視線の理由は分かるため、俺はもう一口コーヒーを飲み響の方に顔を向け聞く。

 

「響…………俺の方見てどうかしたのか?」

 

「あ!…………えっと、その…………お兄ちゃんコーヒーいつも美味しそうに飲んでるから、あたしも飲みたいな~って」

 

「えへへ」と何故か照れたように髪を掻きながらそう言う響に、俺は顔を前に戻してコーヒーをまた一口飲んで即答する。

 

「ダメだ」

 

「なんで!?良いじゃんちょっとぐらい飲んでも、お兄ちゃんあたしにもコーヒー飲ませてよ!」

 

俺の即答に響は口を尖らせて文句を言うも、俺は響に向かってあの時のことを口にする。

 

「あのなぁ、お前まさか小学5年の頃に起こした大惨劇を忘れた訳じゃあるまいよな?」

 

「っ、それは…………その~」

 

 

そう、それは俺が17歳の時で響が11歳の時の話である。高校生からコーヒーを飲み始めた俺は、コーヒーの作り方についてまた一から学び始めたのである。それからというもの器具や豆を自腹で買い研究して飲んでいたのだ。そんなことを続けていると、朝飯を食べ終えいつも通り食後のコーヒーを飲んでいれば、隣に座っていた響がいきなり「お兄ちゃん!あたしもコーヒー飲んでみたいから作ってよ」と行ってきた。

 

 

その時の響の言葉に俺は軽く驚きつつも、響にコーヒーを入れるのを拒否した。しかし、いくらどんな理由で言っても響は駄々を捏ねて飲みたいと言ったため、仕方なく俺は響にコーヒーを作ることにした。コーヒー初体験の響に俺が飲んでいるコーヒーだと苦すぎるため、めんどくさいがもう一度コーヒー豆を焙煎し、一番コクが少なくスッキリとした味わいの出るペーパードリップを使ってコーヒーを作った。

 

 

これなら響でも飲めるだろうと思っていたのだが、俺のその考えはとてつもなく浅はかだと知ることとなり、なぜこの時響に砂糖とミルクはいるかと聞かなかったのだろうか。例え言ったとしても響のことだ、俺と同じくブラックのまま飲む確率は高いと思うが、それならそれで無理矢理にでもコーヒーとミルクを入れてやればよかったかもしれない。

 

ペーパードリップでコーヒーを作り終わり、響専用のマグカップにコーヒーを入れた。響は嬉々とした表情で手に取りコーヒーを一気に口一杯に入れた。それを見た俺は「バカやめろ!」と言ったが遅かった。響は数秒固まるとそのまま顔を前に向け口を開ければ、そこからまるで滝のような勢いでコーヒーが口から流れ出てきたのであった。

 

響が滝のようにコーヒーを出せば、俺、母さん、父さん、婆ちゃんは、大慌てでタオルなどを持ったりして、響の大惨状を消し去るように動くこととなった。

 

その結果、俺達で床や椅子を拭くことになり、響は急いで新しい服に着替えることとなった。本当にあの時はとてつもなく大変で疲れ果てた。挙げ句の果てにその日は平日だったため、危うく遅刻するところでもあったのだから。

 

 

あの時の事が起きたため、俺はそれを強調させながら響に言う。

 

「またあの時みたく口から滝が流れる勢いでコーヒーを流されちゃ堪ったもんじゃないからな、だからお前にはコーヒーは絶対に飲ませやしねえぞ」

 

「むぅ~、お兄ちゃんのいじわる」

 

「むくれてもダメなもんはダメだ」

 

頬を膨らませちょっと怒る響に、コーヒーを飲みながら俺はきっぱりとダメだと言う。

 

「………………………………」

 

ふと今の時間が気になった俺は、ポケットからスマートフォンを取り出し、時間を確認する。時間を確認すれば7時30分を指そうとしたため、俺はマグカップに入れてあるコーヒーとフレンチプレスを手に持って、椅子から立ち上がり母さんに声を掛ける。

 

「そんじゃあ母さん、俺はいつも通り部屋でやることあるから、悪いけど後のこと頼むわ」

 

「はいはい、任せて」

 

そう言う俺に、母さんは優しい笑みを称えながら答えてくれた。そんな母さんの答えに俺も自然と笑みを溢し、リビングを出て自分の部屋がある2階へと赴こうとするが、そこで響が俺に声を掛けてきた。

 

「お兄ちゃん。10年以上前から随分と休日にやること多くなったよね?今日は休みなんだしどこか遊びに行こうよ!未来も誘ってさ!」

 

「悪いが無理だな。大学生にもなるとやることが多すぎる、そんなわけで今日はお前たちに時間を割いてやることは無理だが…………明日なら一緒に行ってやる。それでどうだ?」

 

言い続けていると、響が段々と寂しそうな顔になったため、俺は明日は開いてることを言ってやれば響は満面に笑顔となって俺のことを見る。

 

「うんっ!それで良いよ!じゃあ明日の日曜日はちゃんと開けといてよねお兄ちゃん♪」

 

「分かってるよ。俺が約束破ったことはねえだろ?」

 

「そうだね!お兄ちゃんは1回も約束破ったことはなかったね!」

 

響は笑顔で言いながら頷く、俺も笑顔で手を降って響に返し、そのまま自分の部屋へ向かう。

 

 

 

2階に上がり、自分の部屋へ入った俺はコーヒーカップとフレンチプレスを机の上に置いて椅子に座り第一声を言い放つ。

 

「さてと、俺の重大なことをやるとするか」

 

俺にとって重大でやらなければいけないこと、まず最初に俺がこの世界に転生してしまったことにも関係があるのだ。

 

「はぁー…………めちゃくちゃイラつくからあの手紙を見るのは勘弁願いたいんだが、もう一度確認のために見るとするか」

 

溜め息を吐きながら俺は、一番下のタンスに手を掛けて開けた。

 

「………………………………………………」

 

タンスの中には封が解放された一通の小さい手紙と分厚いが古古そうな本が入っている。

 

「あぁぁぁ…………やだやだ」

 

俺自身そんなことを言うが、一々止まっていたら始まらないため、俺は意を決して手紙だけを取り出してそれを開けることにした。

 

『ハロハロ、エブリワーン!やあやあこんちちは立花剣二君。もし君がこの手紙を見ているということは、無事に戦姫絶唱シンフォギアの世界に転生できたみたいだね♪』

 

もう初っ端から腹が立つ文章が目に入る。

 

『まず最初に言うことは、僕は君達の世界で言うのなら神様という存在だ。驚くかもしれないけど君をこの世界に転生させたのは僕なんだよ。君には見えないだろうけど僕はこう見えて結構、上の地位にいる神様なんだ。で、そんな僕は慈悲深いから鉄骨の下敷きになった君が不憫に思って強引にシンフォギアの世界に転生させたんだ♪もちろん!転生特典は君が好きな特撮ヒーロー《魔弾戦記リュウケンドー》さ!それと追加で光のカノンの書と君が子供の頃に考えていたマダンキーのオリジナルキーも製作しといたからね~♪』

 

「…………………………………………………………」

 

みんな…………こんな神をどう思うだろうか?俺か?俺はいくら神でもハッキリ言わせて貰おう。

 

(くっそ、うっっっっぜぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!それに恥ずかしいことすんなぁ~!!!!!)

 

ああ本当にうざったくてしょうがない、挙げ句には俺だけが考えていたオリジナルキーを製作するなんてなに考えてんだこのアホ神は?今でも俺は両手を震わしながらこの手紙をビリビッリに破きたい、何せこの手紙を最初に見た時も俺は、それ以上の行為に行き、手紙を燃やしてやろうかと思ったがそれを止めた。何しろ後半の文章には俺にとってとてつもなく大事な情報が書いてあったからだ。

 

 

 

「……………………………………………」

 

後半に書かれている情報の確認のため、俺は手紙の続きを見ることにする。

 

 

 

『とりあえず転生の話はこれで終わりにして、君に大事な報告があるんだ。実は君を転生させたのは良かったんだけど、結構強引な手を使ったせいでね…………リュウケンドーが所持しているフォームチェンジのファイヤーキーたちやサポートアニマルの獣王、武器であるダガーキーやナックルキーはこの町のパワースポットに封印されてしまっているんだ!』

 

『本当は僕自身なんとかしたかったんだけど、やっぱり強引にやり過ぎてしまったせいでね獣王達が封印されているパワースポットの場所も教えられないんだ。そのため君が使えるマダンキーは今のところ3つだ。1つはリュウケンドーに変身するリュウケンキー。必殺技を発動するファイナルキー。それと君が考えたオリジナルキーだけなんだ。本当にごめんね!』

 

『…………ま、若い時は苦労は買ってでもしろ!っていう言葉があるからね。精々死ぬ気で苦労しながら獣王などが封印されてるパワースポットを調べて見つけてね♪じゃ、僕が手紙で書くことはこれだけ、せいぜい頑張ってこの世界に出てくる敵と戦って生き残って第二の人生を謳歌してくれたまえよ。ヒーロー立花剣二君~!!!!!』

 

(ぶち殺して~!?!!?今すぐ、この神野郎に今すぐにでも会いに行ってぶち殺して~~~!?!?!!?)

 

手紙を最後まで読み終えた俺は叫びたい気持ちを押し殺して、変わりにやりたくはなかったが手紙をぐしゃぐしゃと丸めて無言で床に投げ付けた。

 

「!…………………………」

 

 

変に叫べば、下にいる響達が心配して俺の部屋の前まで来てしまうため、こんな手紙を読んで叫ぶのを我慢した俺を誰でもいい、誉めてほしい。

 

肩で息をしながら、丸めて床に投げ付けた手紙を拾い上げ、丸めた手紙を広げてもう一度文章を確認する。

 

「………………………………パワースポットに封印されてる、か」

 

俺は昨日の戦いでナックルキーを使用した。それはつまり、俺はナックルキーが封印されているパワースポットを見つけ、ナックルキーの封印を解いたのだ。

 

物心着いたときに俺はこの手紙を読んだ。ハッキリ言ってめんどくせぇとも思ったが、獣王やフォームチェンジのマダンキーが無ければリュウケンドーは成り立たない、そのため俺は思いっきり苦労はしたが最近のパワースポットからえらい昔のパワースポットまで調べあげ、その努力や苦労が報われたように俺は色んなマダンキーが封印されているパワースポットを発見したが、発見する度に何故か戦いが始まり俺はリュウケンドーに変身して勝利してはマダンキーを勝ち獲ったんだ。

 

(まるで試練を受けるかのように敵が現れては戦うことになる、一体どうなってるんだ?)

 

まあ、そんな感じで大変ではあるのだが、その末俺はフォームチェンジのマダンキー全てとダガーキーにナックルキー、オリジナルキーを見事手に入れることができた。そして残りに残っているのはサポートアニマルの獣王のマダンキーだけである。

 

情けないことに俺は獣王のマダンキーは未だに見つけられていないのだ。どこかにはあるのだろうが、雑誌やサイトで調べてはいるのだが、ここにはパワースポットの場所が多すぎるため、俺は未だに獣王が封印されているパワースポットだけ見つけられていない、一応それなりに近いもので調べてはいるのだが一向に獣王の手掛かりすらもないためちょっとお手上げ状態である。

 

 

「だけど…………諦めるわけにはいかないからな、みんなを守るのがヒーローの務めだ」

 

そう言った俺は、軽く体と腕を伸ばしてぐしゃぐしゃな手紙を広げて折って封筒の中へ入れてタンス中に戻した。

 

「それじゃあパワースポットについて調べるか!」

 

自分の机へ歩いて、パソコンを立ち上げ起動させ、獣王が封印されているパワースポットを検索する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンッ

 

「お兄ちゃーーーん!お昼ご飯出来たよーっ!」

 

「と、もう昼飯の時間か…………分かった。すぐ降りる」

 

雑誌やサイトでパワースポットのことを調べていれば、扉の向こうからノックの音の後に、響が昼飯が出来たことを教えてくれた。そのため俺は、パソコンをスリープ状態にしてパワースポットの雑誌も読んでいる所に栞を挟んで、俺は椅子から立ち上がり部屋へと出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさん!」

 

2階へと降りた俺は、すぐに自分の飯の席に着いて昼飯であるパスタを食べ始め、一気に平らげ手を合わせて言った。

 

「あー旨かった~。さあぁぁてと、この後は…………っと、母さん悪いんだがちょっくらバイクでひとっ走りしてきても良いか?」

 

「別に良いけど、調べものの方はいいの?」

 

「ああ、そっちの方はちょっと手詰まりになっちまってな、だから息抜きがてらにバイクでひとっ走りしようと思ってさ!」

 

バイクでひとっ走りすることを伝えれば、母さんは俺が調べものをしていたんじゃないのかという疑問を投げ掛け、それを俺は簡単に母さんに説明した。

 

「そうなの、良いわよ何時間でも走っていらっしゃい」

 

「ありがと、なんか買ってきて欲しいものある?なにかあればそこまで寄って買ってくるけど…………」

 

「別にないから大丈夫よ。早く行ってきたら剣二?」

 

「了解。それじゃあ行ってくるよ。あ!…………そうだ響」

 

「ん、なにお兄ちゃん?」

 

母さんから了承を貰い俺は出ようとするも、買い物はあるか聞いたが母さんは別にないと言ったため、俺は頷きながら答え出ようと思ったが、一番大事なことを伝え忘れそうになったため、伝えるべき相手の響に伝えようとすると、響は首を傾げて疑問を口にする。

 

「俺の調べものが気になるからって、俺の部屋に勝手に入ったりするんじゃねえぞ、もしも入ったりしたらお前の大好物は俺の腹に入ると思っとけよ」

 

「え~っ!そんな~!横暴だよっ!酷いよ!」

 

俺の言葉に響はブーイングをするが、響のそんなブーイングにキッパリと言い放つ。

 

「そうなりたくなければ、俺の部屋に入らなければの良い話だ。精々お前の好奇心を大好物を失いたくない衝動で抑えるんだな、それじゃあ行ってくるわ」

 

そう言って俺は、ズボンのポケットからバイクのキーを取り出して軽く放り投げてキャッチする。それを連続でやりながら俺は玄関から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブオォォォォォォォォン!

 

家の倉庫からバイクを出した俺は、エンジンを掛けてバイクを発進させた。そして今は真剣な表情で前を見ながらバイクを走らせあることを考えていた。

 

(それにしても、一体獣王たちはどこのパワースポットに封印されているんだ?もしかしたら誰にも知られず密かに出来たパワースポットに封印されている可能性も高い、だがそんなものどうやって調べればいいんだ!?)

 

 

「ちょっと待ってよ!奏!?」

 

「ほら翼、早くしろって!」

 

獣王のことで悩みながらバイクを走らせていれば、前方から2人の女の声が聞こえ、歩道からいきなり赤と橙色の間の朱色の髪をした私服姿の女がいきなり飛び出して来やがった。

 

「危ねぇッ!?」

 

飛び出してきた女に、俺は急いでバイクに急ブレーキを掛けて、車体を曲がらせる。

 

「わッ!?」

 

飛び出してきた女の方も、俺が車体を転換させたことに驚いて立ち止まってしまうが、何とか数センチというところでバイクを止めることが出来て女を轢かなかったことに安堵するも、すぐに女の方に顔を向けフェイスを上にやって女に注意する。

 

「バカ野郎!危ねえだろッ!?いきなり飛び出してくるんじゃねえ!危うく轢き殺すところだったぞ!!?」

 

「わ、悪い…………本当に悪かった」

 

「悪いで済むぐらいだったら、こんなことは言わせねえぞ!お前本当に分かってたのか!?それぐらいの年齢なら飛び出しは危ねえのは分かるだろ!?」

 

「………………………………」

 

朱色の髪の女に怒鳴っていれば、女が出てきた歩道から私服姿の蒼い髪をした女が出てきて俺に向かって頭を下げた。

 

「ごめんなさい!?私が奏のことをきちんと止めれば良かったんです!本当にごめんなさい!?」

 

「つ、翼が謝ることじゃない!?きちんと周りを見てなかったあたしが悪いんだ!本当に悪かった!?」

 

蒼い髪の女が頭を下げて謝罪をし、朱色の髪の女も慌てながら俺に向かって勢いよく頭を下げた。

 

「……………………………………」

 

その姿を無言で見るも、俺はなるべく落ち着いた声で2人に話す。

 

「まあ、ちょっと俺も言い過ぎたかもしれないが、それでもいきなり道に飛び出すのは危ねえからな!それだけは忘れるんじゃないぞ、良いなッ!」

 

「…………肝に命じておきます」

 

俺の言葉に女は深く頷いた。その顔は真剣な表情そのもので、俺から見てもきちんと反省しているのが分かる。

 

「そんじゃあ、次からはちゃんと気を付けろよ…………じゃあな」

 

反省しているのを見たため、俺はフェイスを下げてエンジンを噴かせそう言ってバイクを発進させる。

 

「「……………………………………………………」」

 

バイクでそこを去ろうとする。ふと後ろを振り向けば、2人の女はまだ反省している顔で俺の背中を無言でじっと見ていた。だが俺は運転に集中するために前方に戻して、しっかりと前を見る。

 

だがこの時の俺は思いもしなかった。こんな小さすぎる出会いで、俺はあの女2人組ととんでもない付き合い方をすることになろうとは、もしこの時、俺は外に出ず家でずっとパワースポットのことについて調べていれば、多少なりとも運命が変わっていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏side

 

「あ~あ、怒られちった」

 

あたし天羽奏(あもうかなで)は、後頭部の髪に触れながら先程バイクに乗っていた男の言葉についぼやいた。

 

「もうっ、奏!今のは怒られても仕方のないことだよ!」

 

すると、隣に居るあたしの相棒である翼が顔を向けて叱ってくる。

 

「いくら今日が私達の初出撃になるからって、今日の奏はちょっと周りを見てなさすぎだよ!あの人が怒鳴りながら注意するのもよく分かるよ!」

 

「わーってるって、ちゃんと気を付けるからよ。それに出撃の時はよーく周りを見ておくから大丈夫だって!」

 

「もうっ、本当に分かってるの?」

 

翼はちょっとだけ頬を膨らませて、あたしに強く言い放つ。

 

「分かってる分かってる!…………それにあたしたちは絶対に“あいつ”にだけは負けたくないからな」

 

「!?……………」

 

後半を小さな声だが真剣に言うと、翼は少しだけ目を見開くも、静かに深く頷いた。

 

「…………分かってる。私だって、あの剣士には負けたくないから!」

 

「ああ、絶対に負けられない!」

 

あたし達はお互いの顔を見合って、同時に強く深く頷いた。

 

奏side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、本当に危なかったぜ。この齢で人殺しになって刑務所送りなんて嫌だぜ、家族全員や未来に迷惑掛かっちまうしよ」

 

俺はバイクのハンドルをしっかりと握りながら、道路に飛び出してきて女を轢きそうになったことについてぼやいた。

 

「ああ~もうっ、気分転換に今日も所沢のコロッケでも食べるか!!」

 

赤の信号になってバイクを停めた俺は、ブンブンッと顔を横に振って気分を変えるため、〈肉の所沢〉のコロッケを食べようと決め、青信号になればすぐバイクを〈肉の所沢〉の方向に変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~…………おっちゃーん!コロッケ揚げてくれ!」

 

〈肉の所沢〉の前にバイクを停車させ、俺はヘルメットを脱いで軽く髪を振り、店の中に居るおっちゃんにコロッケを揚げてくれと頼む。

 

 

「また今日も食いに来やがったのか。そんなにコロッケ食ってたらいずれ体が油まみれの太っちょになるぞ!」

 

「おっちゃんに言われたら不安になるじゃねえかよ…………でも大丈夫!太らねえように毎日俺はトレーニングしてるし俺太りにくい体質だからよ。安心してくれ」

 

「はぁぁぁあ?トレーニングしながらその体型を維持できるのに挙げ句には太らない体質か。羨ましいを通り越して妬ましいな」

 

「そんなものは置いといて、コロッケ10個頂戴!」

 

俺の言葉を聞くと、おっちゃんは「ん?」と疑問の声を口にし、俺を見ながら聞いてきた。

 

「おい剣二。お前今コロッケ10個って言ったか…………?」

 

「あ…………10個って言ったけど、それがどうかしたか?」

 

返答すれば、おっちゃんは目を大きく見開き顔面を蒼白するようなかんじとなった。なんかまるであれだな、普段は温厚な奥さんの邦子さんが鬼のように怒ったときに見る顔だな。

 

そんなことを考えていれば、蒼白するような顔で俺を見ていたおっちゃんは、ようやく口を開いた。

 

「いや、いつもならコロッケ100個や50個、少なくても20個頼むお前が、今日は10個って…………まさか今日は空からノイズが降ってくるんじゃあるめえな?」

 

そう言いながらおっちゃんは、真剣な顔で天井を見上げた。そんなおっちゃんに、俺自身もお返しと目を細めて言い返す。

 

「おいおっちゃん、いくらなんでもそれは酷いだろ。今日は気分転換のために寄ったんだよ。まあ、思いっきりコロッケにはがっつくけどよ…………早くコロッケ10個揚げてくれよ!!!」

 

「分かった!?コロッケ揚げてやるからそんな叫ぶんじゃねえよ!!?」

 

「へっ…………頼むぜおっちゃん!」

 

ようやくコロッケを揚げてくれることに、俺は満面の笑みになる。

 

 

 

 

10分後…………。

 

 

「ほらよコロッケ10個、おまちどおさん!」

 

「来た来た!ありがとよおっちゃん♪」

 

「別に良いってことよ。それよりほら、揚げたてのうちに食っちまえよ」

 

「おうよっ!」

 

おっちゃんの言葉に俺は満面の笑みで強く頷き、白い紙袋に入ったコロッケを1つ取って、ガブリと思いっきり食らい付いた。

 

「モグモグモグ…………う~ん、やっぱりここのコロッケが一番旨いぜ~」

 

「……………………ホント、旨そうによく食うなお前は。揚げてるこっちとしては嬉しいから良いけどよ」

 

そんなおっちゃんの台詞を聞きながらも、俺は夢中で揚げたてのコロッケをガツガツと食べ、コロッケ10個を食べ終えたのは約3分半ぐらいであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブオォォォォォォォォン!

 

「はぁぁぁぁ、旨かったな~所沢のコロッケ、もうあれだけ食えるだけでも俺は幸せになれるぜ」

 

今俺は、バイクを運転しながら家路に向かっているが、所沢で食べたコロッケが旨くて、つい呟いてしまった。

 

「いつか腹がはち切れるほど、コロッケをたらふく食いてえなぁ~」

 

そんなことをぼやきながら、俺はバイクのスピードをさらに上げて家路を急いでいく。

 

 

 

「到着到着~っと、あ~腹減ったー。さっさとバイクを倉庫に入れて家に入ろう」

 

我が家に到着した俺は、バイクを停車させてヘルメットを脱いで降り、愛車であるバイクを押して倉庫に入れ俺はとっとと家の中に入る。

 

「ただいまー!」

 

「あっお兄ちゃんお帰り!」

 

「おう響、ちゃんと大人しくしていただろうな?」

 

俺が玄関から入ってくれば、まず最初に出迎えてくれたのは響であった。響はまるで自分のことのように嬉しく笑いながら俺の所までやって来る。そしてやって来る響に声を掛けながら、頭を撫でてやる。

 

「んにゅ~」

 

(本当の家族じゃないんだけどな…………長年一緒に住んでるとつい思っちまう。俺は守りたいこの家族を、そしてこの笑顔を…………守りたい!)

 

そんな決意を心の中でしているのだが、不思議なことがあるのだ。俺が頭を撫でてやると響は気持ち良さそうに目を閉じて、まるで俺に身を委ねるように頭を撫でられているのだ。

 

(なぁんで響の奴は、俺が頭を撫でてやるだけで、こんなに嬉しくなるんだ?変な妹…………)

 

心の中で思いながら10回以上響の頭を撫でて、響の頭から手を退けて廊下を歩く。

 

「む~っ……………………」

 

頭から手を退けて廊下を歩き出せば、響は立ち止まったまま俺を見ている。その目はまるで物欲しそうな目で俺を見ていたのだ。だが俺はそんなことを気にすることなく、響に訪ねたことを聞けなかったため、響に聞こうと思って俺は響の方を振り向いてもう一度訪ねる。

 

「ところで響?俺の部屋には勝手に入らなかっただろうな。もし勝手に入ってたりすれば、お前の大好物はお代わりできずに全て俺の胃の中に入るぞ」

 

俺の部屋に入っていないか訪ねてみれば、響は両手をパーにして左右横に振りながら答えた。

 

「入ってないよぉ~。そんなことしてあたしの大好物全部お兄ちゃんの胃の中に入ったら悲しいよぉ~!?」

 

「…………………………………………………………………」

 

一切慌てず答える響に、俺は5分ぐらい無言で見るが、すぐに背を向けて言う。

 

「まあいいか、入ったか入ってないかは俺の部屋見て確認すれば良いだけだしな」

 

俺はまた前を向いて廊下を歩いていけば、ふと鼻に旨そうな匂いが入ってきた。

 

「クンクン、ん?この匂い、もしかして今日の晩飯はカレーか?」

 

俺がふとそんなことを呟けば、楽しそうな笑顔をした響が俺の隣までやって来て、今日の晩飯について答えた。

 

「うん、そうだよ!今日の晩ご飯はみんな大好きな家庭の料理のカレーだよ!」

 

「へー、そいつは嬉しいな!そんじゃあ母さんのカレーを食べるためにも、手伝いに行かねえとな!」

 

そのため俺は、部屋に行き響が入ってないかどうか確認して、部屋の確認が終われば急いで1階に降りてリビングに行き、母さんの手伝いをする。後は大きな器の皿に10合まで炊いたご飯を載せて、調度良いときに父さんも仕事から帰ってきて、俺達家族全員は今日の晩ご飯であるカレーライスを食べ始めた。

 

結果的に、母さんのカレーライスがあまりにも旨すぎて俺と響は3杯もカレーをお代わりしてしまった。晩飯であるカレーを食べ終えれば、俺は風呂に入って温まった体に軽い柔軟運動をして、そのまま自分の部屋へと戻り就寝した。

 

 

因みに調べた結果、響は俺の部屋に入っていないことはきっちりと判明した。いやーそれにしてもすごいね、ノートで人を殺害している主人公がやっていた方法は、この世界の人でもあのやり方に一切気付いていないんだからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通に就寝に入りたかったんだが、どうやら今日もそれは無理なようだ。今日もみんなが就寝する時間帯にノイズが現れたのだ。モバイルモードの撃龍剣がノイズの気配を察知し、俺は大急ぎで現場に急行した。

 

だがノイズが現れたのは誰もいない何かの製産工場のようなところであり、今回も出てきたのは小型ノイズだけであるが、ヒーローたるもの無視するわけにはいかないため、速攻でノイズを倒してベッドに潜り込んで寝よう。それに明日は響と未来と一緒にお出掛けするんだからな、そのためにも速攻でノイズをぶっ倒す。

 

 

 

「ゲキリュウケン!」

 

俺は製産工場の屋根の上から叫び、この言葉でモバイルモードのゲキリュウケンを本当の姿にして、ここからリュウケンドーの変身に入る。真ん中が金色で龍の顔が描かれているリュウケンキーを取り出す。

 

 

「リュウケンキー…………発動!」

 

キーの部分が出現すれば、俺はゲキリュウケンの柄の一部を上に引き、上に引けばゲキリュウケンの顔も上がりゲキリュウケンの回りにある翼のようなものが畳まれる。撃龍剣の顔が上がればそこにあるキーの挿し込み口にリュウケンキーを挿し込む。

 

俺はリュウケンキーを挿し込んで回し、柄の一部分を下へと下げる。ゲキリュウケンの顔も下に下がり、ゲキリュウケンの翼のようなものが戻り、キーを挿し込んだ一瞬青い光も発する。

 

そして昨日と同じように、ゲキリュウケンから音声が発せられる。

 

 

 

『チェンジ、リュウケンドー』

 

「撃龍変身!!!」

 

 

この言葉を叫んで、ゲキリュウケンが青い光のエネルギーを発し、俺はゲキリュウケンを高く強く掲げる。

 

「ハッ…………!」

 

ゲキリュウケンの剣の部分から青き龍が現れ空へと昇る。青き龍は一度吠えると、龍は俺に向かって突っ込んでくる。俺は青い龍をこの肉体に受け止める。

 

「…………うっ!?」

 

 

また少し苦しい表情をするが、俺の体には青い鎧が身に纏い、肩と前腕と胸に白い鎧が胸の真ん中には金色の鎧、手の甲には金色の龍の顔を模した手甲が装着される。

 

下半身に白い鎧が装着し、足は金色の龍の顔を模した甲掛が装着される。最後の決め手にフルフェイスのマスクが顔も含めた全身に鎧が身に纏えば、ゲキリュウケンを軽く振りながら再び勇ましく決める。

 

「魔弾剣士リュウケンドー!来神!」

 

決め台詞を言いながら決めポーズを決めて、俺はノイズに向かって掛かっていく。

 

 

「ノイズ!俺が相手だ!」

 

『『『『『『『『『『!!!!!!!!!!』』』』』』』』』』

 

「ハァァァァァァッ!…………やっ!ハッ!でぇい!たぁっ!せいっ!…………うおあたあぁっ!!!」

 

『『『『『!?』』』』』

 

『!!?』

 

先制攻撃と言うかのように、すれ違い様に次々と撃龍剣で斬り倒していく。

 

「とうっ!」

 

ヒューマノイドノイズとクロールノイズを倒し、ノイズどもの動きを止めた俺は、その瞬間を狙ってヒューマノイドノイズがその細い腕をさらに細くして俺を狙ってきた。だが俺はその攻撃を一回転のジャンプで難なく避け、後ろへと行けば俺を攻撃してきたヒューマノイドノイズを斬り裂いていく。

 

「いい加減学習したらどうだノイズ?俺はてめえらと何十年と戦ってんだ。てめえらの攻撃方法ぐらいもう覚えきってんだよ!」

 

俺はゲキリュウケンを小型ノイズの大群に向けながら、静かに重く小型ノイズに言い放った。するとその時、俺の後方の上空から何かが回っているような音が聞こえた。いや、この音には聞き覚えがある。この低く重く回る音はヘリのジャイロ音であった。

 

「!? なんだっ!?」

 

ヘリのジャイロ音が聞こえたため、すぐさま俺は後ろを振り向き確認した。

 

(なんでヘリが来たんだ!?軍隊の人間か?…………それともまさか、好奇心旺盛なテレビ局のバカどもかっ!?)

 

そんな奴等がこの近くに来られれば、獣王を持っていない俺では守りきれない確率が高い、そのためやって来たヘリには今すぐにでも退散してほしい。

 

「…………!? くっ!?しまった!?チッ、人が余所見してる間に攻撃たぁっ…………やってくれんじゃねえかぁッ!!!」

 

目の前のノイズではなくヘリが来る後方を見ていれば、ノイズどもがスキありと言わんばかりに、余所見をしていた俺に攻撃を仕掛けてくるが、俺はそのノイズの攻撃をゲキリュウケンで捌いて、後方に少しだけ下がるが思いっきり前方に踏み出し、踏み込みを入れた斬撃の衝撃波をノイズどもに浴びせるように振った。

 

『『『『『『『『『『!?!?!!??』』』』』』』』』』

 

斬撃の衝撃波を浴びたノイズは、一瞬のうちに消し炭となった。ノイズどもを消し炭にしたら、俺の後方から2つの声が耳に入った。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「なんだこれ?歌か?ヘリの次はなんだってんだ!?」

 

そう悪態を付きながら後方に目をやれば、ヘリから2人の女が飛び降りて歌のようなものを口ずさむと、2人の女は光に包まれて、その身に妙な機械の鎧を身に纏った。

 

「!?…………な、なんだあれ?」

 

それを見て俺は驚愕するも、女2人は平然と地面に着地をした。女の2人組で1人は朱色の髪をして身に纏っている機械の鎧のメインカラーはオレンジであり、もう1人の女は青い髪をして纏っている機械の鎧のメインカラーもその髪色と同じ青であった。そしてお互いが持つ武器は、朱色の髪の女の方は槍で、青い髪の方は剣であった。

 

「あれは!未確認の騎士!?」

 

「やっぱり居やがったか…………」

 

青い髪の女と朱色の髪のリュウケンドーである俺を視認すると、人を射殺すかと言わんばかりの目付きで俺のことを睨んだ。しかし俺は、青い髪の女の台詞に疑問を抱きリュウケンドーのまま首を傾げた。

 

(未確認の騎士?…………まさか、俺のことか…………?)

 

まあ確かに未確認の騎士と言われても仕方ないか。いくらみんなを守るためにノイズと戦っていても、こんな人外のような姿じゃ好意的に視てくれる人なんて俺の家族や所沢の夫婦みたいな変わったところだけだろうな。

 

なにせタイムレンジャーは主人公の父親が経営している会社の部隊に襲われてたし、アギトも人間自身がアギトやギルスに征服される社会に恐れて使徒を守ることにして、アギトやギルスになるものを殺そうとしたけど、逆に使徒は全人類を根絶やしにしようとしたからな。

 

(あれはやられる側や視ている側としては嫌な感じだったし腹が立ったな~、俺自身そんな目に合うとは思っても見なかったけど、実際にやられるとやっぱりめちゃくちゃ腹が立つな)

 

そんなことを考えていると、呆然と立ち尽くしている俺にまたノイズが今度は突撃を仕掛けてくるが、それに気付いている俺は、その攻撃を撃龍剣で斬り捌いた。

 

 

いきなり攻撃をしてきたノイズを睨みながら、俺は坦々と言う。

 

「そんなに俺を倒したいみたいだな。なら逆にお前らを蹴散らしてやるよ」

 

『『『『『『『『『『!?!?!?!!?』』』』』』』』』』』

 

感情と言うものが一切ないはずのノイズの軍団が、俺が一直線に放った殺気に驚きでもしたのか、まるで驚愕したかのように少々後方へと退いた。

 

小型ノイズの大群が一旦動きを止めると、機械の鎧を身に纏った2人組の女の喋り声が耳に入ってきた。

 

「奏!悪いんだけど、あの未確認の騎士とは…………」

 

「分かってるって、今日は翼に譲ってやるからノイズの方は任せときな…………ただし次はあたしも加わるからな!」

 

「…………うん、今日が初出撃なのにありがとう!奏!」

 

翼と呼ばれた青い髪の女は奏と呼ばれた朱色の髪の女に顔を向けて恐る恐る聞くと、奏と呼ばれた女は軽い感じで了承すると、次に強い瞳で翼と呼ばれた女を見た。その瞳に翼とやらも気恥ずかしかったのか頬を赤くするも、すぐに片方の女と同じ強い瞳になって頷いて返答した。

 

「………………………………………………」

 

あの2人の言葉に俺は少し嫌な予感を覚えるも、そんなものは無視してノイズに向き直りゲキリュウケンを向けて俺は走り出した。

 

「だあぁぁぁぁぁッ!でいっ!はあぁッ!せあっ!らあっ!ふんっ!…………でえりぃやあぁっ!」

 

『『『『『『!?!!?!?』』』』』』

 

俺が動き出したことに小型ノイズは戦闘態勢に入ろうとするが、それは全くもって遅すぎたため、ゲキリュウケンを振ってノイズどもを炭素の塊にしてやった。

 

「ちゃっちゃと終わらせるぞ…………」

 

なにせ明日は約束があるんだからな。そう心の中で付け足して言って、俺は次々と小型ノイズの大群の中に入り、ノイズを炭素の山にしていけば。その中にいきなり青い髪の女が乱入してきて、俺が相手をするはずだったノイズを斬り裂いていった。

 

 

「ふっ!…………はあぁぁっ!」

 

「……………………」

 

無言でノイズを斬り倒して次に行こうとすれば、青い髪の女が何故か俺に切っ先を向けて口を開いた。しかし、俺は慌てることなくいきなり剣先を向けてきた女をじっと見た。

 

「未確認の騎士!抵抗をするな、私はあなたを捕縛する。下手に抵抗をすれば手荒な真似をすることになるぞ!」

 

「?…………」

 

いきなり何バカなことをほざいてるんだこの女は、この周辺にはノイズがウジャウジャ居るんだ。こいつらを野放しにしたら余計な被害者が出ちまうぞ。しかもこの女、俺を捕縛するって言ったな。今の言葉から多分この2人組の女は腐りきった日本政府の一員ってところだろう。

 

 

(そう言えば!…………あの機械の鎧はノイズとの戦闘で極たまに目にした、大方今日それが完成したから思いっきって出撃させたってところか!)

 

 

青い髪の女を見ていたが、その後ろでノイズと戦闘している朱色の髪の女の方に目を向けるも、俺は心の中で盛大に舌打ちをした。

 

 

(チッ!いくらノイズと戦う手段が少ねえからって、こんな青春真っ盛りの10代の女使って、ノイズと戦わせるなんざ…………日本もどれだけ腐り切れば気が済むんだ!?)

 

そう心の中で日本の政府に対して悪口を言うも、俺は青い髪の女に背を向けてノイズに向かって動き出そうとすれば…………

 

「動くな!未確認の騎士!下手に動けば私の剣の錆にしてくれる!」

 

(剣?刀じゃないのか…………?)

 

女の台詞に俺はそんな下らない疑問が心の中に現れるが、即刻その疑問を振り払い、俺は静かに女に告げることにした。

 

「俺の敵は…………ノイズだ」

 

そう告げてノイズが居る方向に動き出そうとすれば、青い髪の女が透かさず俺に斬り掛かってきやがった。

 

「ふざけるなッ!貴様の相手はこの私だ!」

 

青い髪の女が放った斬撃、しかし俺はそれを簡単にゲキリュウケンで受け止め、斬り掛かってきた女を睨みながら今度は重く冷酷に告げる。

 

「…………俺の敵はノイズ、人間じゃない」

 

「なんだとっ?…………ぐぅっ!?」

 

女は驚愕の表情をした瞬間を狙って、女をゲキリュウケンで思いっきり吹き飛ばした。

 

「邪魔をするな」

 

坦々とそう告げ、俺はノイズが居る方向に駆け出そうとするが。

 

 

「行かせるものか!」

 

「!……………………」

 

青い髪の女はまた俺に斬り掛かってくるも、その刀を俺は簡単に受け止め鍔迫り合いになる。

 

「私は答えなければならない、私を信じてくれた奏の期待に、答えなくてはならないんだ!」

 

鍔迫り合いになりながら、女は今の状況で自分の思いの丈を叫んだ。そして一旦俺から距離を取れば、もう一度踏み込み俺に斬り掛かり、俺はその斬撃を防ぐもここから無数の剣戟が始まった。

 

「……………………………………」

 

俺は無言で青い髪の女の刀を防ぎながらも思った。

 

(…………ハッキリ言ってこいつはまるで、自分の存在価値をどこかで見つけたい感じだな…………まあその気持ちは半分ぐらいは分かるが、その半分は下らねえな)

 

俺は続けて心の中で思い続ける。

 

(自分の存在価値を決めるのは結局は自分自身なんだからよ。そんな自分の思いを勝手に俺と戦って見つけられると勘違いしてんじゃないのか?)

 

そのため俺は心の中で思っていることの続きを口にした。

 

「そんな自分勝手な思いを、俺にぶつけるのは間違いだろ?」

 

「っ!?知ったような口を聞くな!!!」

 

「!…………よっと」

 

女の図星にでも触れたのか。女は持っている大きな刀で勢いよく俺を突き飛ばそうとするが、俺はその斬撃の勢いを利用し、女からかなりの距離を取った。

 

俺のこの行動に、女は驚愕の表情をしながら声を出した。

 

「なっ!?まさか今の私の斬撃の力を利用してあんな距離まで跳んだのか!?」

 

「…………………………………………」

 

俺は無言のまま左腰に装着されているマダンキーホルダーに手を掛けて回した。マダンキーホルダーが回れば俺が使いたいマダンキーのところで止まり、俺はそのマダンキーを引き抜いてキーを出現させた。

 

「ナックルキー、発動」

 

『マダンナックル』

 

「召喚、マダンナックル」

 

ナックルキーを発動してマダンナックルを召喚させれば、俺は空から振ってくるマダンナックルを左手でキャッチし、マダンナックルを装備して展開させる。

 

「! なにをする気だ!?」

 

「ナックルスパーク」

 

俺はマダンナックルを後ろに向け、ナックルスパークを思いっきり撃ち放った。

 

「まさか奏が狙い!?奏避けて!」

 

「! しまっ」

 

『『『『『『『!?!?!!?』』』』』』』

 

「えっ…………?」

 

ナックルスパークを朱色の髪の女に放ったと思った青い髪の女は、朱色の髪の女に危険を叫んだ。朱色の髪の女も俺の方に向いて苦しい表情をするが、ナックルスパークは女に当たることなく、7体のクロールノイズに当たり消し炭になった。

 

「どいういうことだ!まさか私の友を助けたつもりか!?」

 

女の怒りの叫びに、静かに坦々と返す。

 

「別にそんなつもりはない…………ただノイズとの戦いは遊びではなく、命を賭けた戦いだ…………それなのにお前とちんたら遊ぶ暇など…………俺には、ない」

 

「遊びだと?…………ふざけるなッ!私は貴様と真剣に勝負をしているのだ!」

 

俺の言葉に青い髪の女は怒りに燃え、所持している武器の刀を力強く握り、俺を斬り倒そうと掛かって来るが、そんな怒りと力に任せて振った刀でこの俺に掛かって来るのは無駄も良いところだ。

 

「……………………ふんッ!」

 

「そ、そんな…………バカな」

 

女の無茶苦茶な斬撃に対し、俺自身も右手で持っているゲキリュウケンを力強く握って下げ、迫り来る女の刀を下に下げたゲキリュウケンを上に上げ女の剣を簡単に弾き飛ばしたのだ。

 

刀を弾き飛ばしたが、そのまま俺は女が動かないよう素早く動き出し、ゲキリュウケンを女の首元に近付ける。

 

「………………………………」

 

「うっ………………………」

 

その距離はまさに、首元が斬られるか斬られないかの距離である。しかし俺は女の首から血が流れないギリギリの距離を維持してゲキリュウケンを首元に近付けている。

 

「これ以上無駄なことは止めろ。……………………それに俺の剣は人を殺すための剣ではない…………人を守り、生かす為の剣だ!俺はこの力で人を傷付けたくはないからな」

 

「なんだとっ?…………」

 

俺の言葉に女は疑問の顔を作ると、後ろから獣のような吠える声がきた。まあ予想は着くように、ノイズと戦っていた朱色の髪の女である。

 

「翼っ!?…………こんのお~っ!翼から離れろぉっ!!!」

 

朱色の髪の女は走りながら俺目掛けてデカイ槍を投擲するが、青い髪の女からゲキリュウケンを下げて、投擲された槍を弾き落とした。

 

「くっ!?…………」

 

槍を弾き落とされたことに朱色の髪の女は苦の表情をする、俺は地面を思いっきり踏み締め跳躍し、2人組の女との距離を稼ぎノイズが密集している半分のところの距離まで跳んだ。

 

「翼、大丈夫か!?」

 

「奏!私は大丈夫…………でも、未確認の騎士の強さはとんでもない!あれはまるで化け物としか言いようがない」

 

「何て奴だ…………一体どんだけ戦ってるんだよ?」

 

(化け物っておい、ヒデェな)

 

女2人組の言葉に傷付きそうな俺であったが、無視して体を朱色の髪の女が残したノイズの方に向けて走り出す。走りながら左手に装備しているマダンナックルを向け、小型ノイズに狙いを定めてナックルスパークを撃ち放つ。

 

「ナックルスパーク!」

 

ナックルスパークを放って、クロールノイズとヒューマノイドノイズを消しながら突き進む。

 

(1、2、3、4、5、6…………)

 

「ゼアッ!ハッ!シッ!だあっ!えやっ!せいっ!らあっ!うおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

ナックルスパークで12体のノイズを消し、近付けばゲキリュウケンを振って8体の斬り倒した。もはやノイズの数は10数体程度になったため、俺はマダンナックルを地面に置いて、マダンキーホルダーを回しファイナルキーを取り出しゲキリュウケンに挿し込む。

 

「ファイナルキー!発動!」

 

『ファイナルブレイク』

 

「はあぁぁぁぁぁぁ…………ゲキリュウケン!魔弾斬りッ!」

 

ファイナルキーを挿し込んだゲキリュウケンの剣先が青白く光り出し、それを見た俺はただゲキリュウケンを両手で持って高く掲げ、必殺技の名前を叫びながら勢いよく振った。

 

『『『『『『『『『『『『『!!!??!?!!?』』』』』』』』』』』』』』』

 

魔弾斬りを振り放てば、10数体居たノイズは一瞬のうちに消し炭となり、俺は背を向けゲキリュウケンを1回振り回して肩に担ぎ、10数体居たノイズの場所に視線を向けた。

 

「……………………………………」

 

それを数秒だけやれば、俺は無言のままその場を立ち去ろうとする。

 

「待てっ、未確認の騎士!?」

 

「逃がすと思ってるのか!?」

 

だが2人組の女が俺を逃がす気はないらしく、それぞれの得物を持って俺に向けた。その行いに俺は呆れそうになったが、無視をして立ち去る。

 

「ッ! 待てッ!?」

 

「無視すんな!」

 

「…………黙れ」

 

「「!!?」」

 

静かなる殺気を含めながら言うと、2人は動きを止めてその場で動けなくなった。

 

「…………俺の敵は…………ノイズだけだ」

 

俺はこの言葉だけを残し、静かにその場を去った。2人組の女は無言で俺の背中をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

「………………………………眠い」

 

急いで家に戻った俺は、疲れきった体を無理に動かし、パジャマに着替えてベッドに倒れ混んで眠りの世界に入ったのであった。

 

to be continued.




次回予告。

なんとかノイズとの戦闘を終えたけど、現れた2人組の女。あれは一体なんなんだよ?

ま、そんなことは考えるのは止めて息抜きに響と未来と一緒に遊びに行くぞ!

行った途端に、ノイズが現れやがった。
しかも2回も現れて来やがって、2回目にはあの機械を纏う女どもまで現れたら、また俺に襲い掛かってきやがった。

いい加減にしてくれよ!

次回!魔弾戦姫リュウフォギア!

激突!装者ッ!

次回も、魔弾戦記リュウケンドーで突っ走るぜ!


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激突!装者ッ!

6月になってようやく更新が出来ました。申し訳ございません!!!

描きたいのに描きたい気持ちが殆ど出ず、だらだらとしていたらこんなにも更新が遅くなってしまいました。本当に申し訳ございませんてした!
出来れば最後までお付き合いください!

もしかしたら少々キャラ崩壊が起きてるかもしれません。許してください!
それと次回予告の後に報告もございますので、そちらもお願いします。

読者様の感想や読者様の評価をお待ちしております!

小説情報を見て皆様の閲覧やお気に入り登録にものすごく驚き嬉しくありました。
心より厚く御礼申し上げます。

本当にありがとうございます!!!
これからもなんとか頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします!!!!!


日曜日の朝。

 

 

「…………寝みぃ」

 

なんとか目覚めた俺ではあるが、未だにベッドからは出られないでいる。その理由は夜中の戦闘にあり、俺に襲い掛かってきたあの訳の分からない機械の鎧を纏った2人組の女にある。

 

「あの女ども…………よくも俺の貴重な睡眠時間を削ってくれたな…………」

 

俺は自分にしか聞こえない小声で言う。だがこれは不味い、あの女どもとの戦闘がこれからも続けば、いつもならノイズを倒し家に帰れば終わりなのに、あんな2人組の女どもとの戦闘が入れば俺の大切な睡眠時間が削られちまう。そんなことになったら日常生活に支障が出て、最悪大学の抗議で居眠りどころか遅刻するかもな。

 

(…………なんとしてもそれは避けないと、せっかく無遅刻無欠席で通ってるのに、ここから遅刻や欠席を大量に採ったら、大学を留年なんてことにはなりたくない!)

 

そんな考えが出た俺は、重い体を上げてベッドから起き上がり、今着ているパジャマを脱ぎ始め、私服に着替えていく。

 

 

「着替え完了。リュックの準備したら下に降りるか」

 

着替えを終えた俺は、今日の出掛けるための準備をする。準備と言っても肩の斜めに掛けるリュックに、財布と充電器等を入れるぐらいであるが、それが終われば脱いだパジャマを手に掛け部屋を出て1階へ降りていく。

 

「う~ん…………まだ体が睡眠を欲してんな、少し鍛え直さないとな」

 

ただいまの時刻は8時半過ぎである。階段を降りながら体を伸ばすが、どうにも体は睡眠を欲しているようだ。でも今日は響と未来と一緒に出掛けるためシャキッとしなければならない。

 

「おはよー」

 

1階に降りた俺は、一度洗濯機がある脱衣所に行ってパジャマを洗濯機に放り込み、そのままリビングへと向かって顔を出すとともに朝の挨拶をする。

 

「お、剣二起きたのか。おはよう」

 

「剣二。おはよう」

 

「おはよう剣二。朝ご飯はもうすぐで出来ちゃうから待ってて」

 

リビングに顔を出して挨拶をすれば、最初に新聞を読んでいた父さんが顔を離して俺に挨拶を返す、次に湯飲みを両手で落とさないように大事に持っている婆ちゃんが言い、湯飲みに入っているのは湯気が立っている温かそうなお茶である。最後はなんのイラストも描かれていなく色合いもない簡素なエプロンを着た母さんが言う。そしてただいま朝ご飯を作っております。

 

「ありがと、あれ?…………響の奴は?」

 

椅子に座ってお礼を言うも、響がリビングに居ないことに疑問になった俺は、周りをキョロキョロと見回しながら母さん達に聞く。

 

「ああ、響ね…………」

 

(なんか嫌な予感がする…………こう言うときはいつものアレだよな?)

 

母さんの言葉に嫌な予感がするも、とりあえず最後まで聞くことにした。

 

「実はまだ起きてこないの。剣二、起きてきたばかりで悪いんだけど、響起こしに行ってくれる?」

 

母さんの言葉に俺は一度盛大な溜め息を吐いて、髪をガリガリと乱暴に掻いて愚痴りながらも了承した。

 

「…………ったく響の奴、自分から出掛けようって言っときながら、その張本人が寝坊するなんて世話ねえぜ!」

 

そう言って、俺はさらに「ああもうっ!しょうがねえなあ!?」と言葉を付け加えながら椅子から立ち上がり、響の部屋へと向かう。

 

 

 

2階へと上がった俺はすぐに響の部屋の前に立って、目の前にある扉を乱暴にノックした。

 

「おいっ響!なにしてんだ!とっとと起きろっ!!」

 

乱暴にノックして大声を出すも、部屋にいる響からは返事も何もなかった。そのためもう一度俺は、部屋の扉を乱暴にノックして叫ぶ。

 

「響!起きろっ!さっさと飯食って出掛けるぞ!」

 

先程よりも大きな声で叫ぶが、一向に響からの返事はなく俺はふるふると体を震わせるもその怒りを必死に抑える。

 

そして俺は、3回目である最後のノックを扉にやる。

 

「響っ!いい加減起きろっ!じゃねえとお前の部屋に入るぞっ!!!」

 

ノックをした後に、下からも聞こえるような大きな声で叫ぶが、結局のところ響からの返事はなかった。そのため俺は、響がいる部屋の扉を勢いよく開けて躊躇いもなく入って進みながら、響が寝ているベッドの前に立つ。

 

「………………………………」

 

ベッドにはちょっとだけヨダレを垂らして、オレンジ色した水玉模様のパジャマを着て、気持ち良さそうに眠っている俺の妹の姿があった。その姿に俺は、ワナワナと怒りを震わして響に手を上げた。

 

「つむじーッ!!」

 

「にゃあ~!!?」

 

今日の立花家に、響の凄まじい悲鳴が通りに通った。

 

 

 

「うぅ、う~…………痛いよお兄ちゃん、何するのさ~」

 

「起きてこないお前が悪い、自業自得ってやつだ」

 

眠りから覚めた響は、ベッドに座って小さな蒸気が上がっているつむじ部分を両手で抑え、涙目で俺に顔を向けた。そんな目をされても悪いのは起きてこない響のため、俺は淡々と冷静に返した。

 

「うぅ~、身長伸びなくなったらお兄ちゃんのせいだからね」

 

「そんだけ身長あれば十分だろ?それよりさっさと起きろ、着替えて朝飯食ったら未来との待ち合わせに間に合わせなきゃならねえんだからな」

 

「は~い、すぐに行きます」

 

「早くしろよ」

 

 

つむじ部分を擦りながら身長が伸びなくなると言った響だが、150越えの身長を持っているためもう十分だと思うのだが、一体響の奴はどれくらい背を伸ばしたいんだ。とりあえず響を起こし伝えることは伝えたため、俺は響の部屋を出て階段を降りていった。

 

2階から1階へと降りた俺は、リビングへと戻って自分の椅子へと座り母さん達に報告する。

 

「響の奴、起こしてきた…………」

 

「ご苦労様お兄ちゃん。それにしても響のものすごい悲鳴が聞こえたけど、大丈夫なの?」

 

「軽くつむじを力一杯押してやっただけだよ…………」

 

「そんなことして大丈夫なのかい?」

 

「大丈夫だよ婆ちゃん。もしかしたら身長が縮むぐらいだから、それにあれぐらいしないと響はすぐに起きないからな…………全く、あんな寝坊しまくるのは一体誰に似たんだか?」

 

「本当に…………誰に似たんだろうな…………」

 

報告をすると、そこから母さん達との話し合いが始まり、婆ちゃんが響のことを心配するも、つむじを押された程度で何かが起こるわけでもないため身長がちょっと縮む程度だ。そのため心配ないと断言して寧ろ響の寝坊しまくるのは誰に似たのかを口にした。すると、新聞を読んでいる父さんが新聞から顔を離さず逆に自分の顔を隠すように発言した。

 

新聞で顔を隠している父さんを横目で見ながら俺は思う。

 

(ああして顔を隠すってことは、響のあの寝坊しまくりは父さんから受け継いだんだろうな。もしかしたら父さんも昔寝坊助だったのかもな?…………はぁ~、それにしても響の奴、父さんの悪い部分ばかり受け継いでんな。いやまあ人助けは悪いことではないが、もう少し父さんのましな部分を受け継いでないのか?)

 

横目で父さんを見ながらそんなことを思っていると、キッチンにいた母さんがテーブルまでやって来た。

 

「はい、朝ご飯できたわよ」

 

「あ、ありがと母さん!」

 

母さんが朝飯を乗せた皿を持ってきたため、俺は椅子から立ち上がってその皿を貰い受け、テーブルに奥から順に置いていく。

 

(…………今日の朝の献立は同じ野菜たちとハッシュドポテトか、まあ朝飯には調度良いぐらいだな)

 

「それじゃあご飯も入れちゃいましょうか!」

 

「母さんいいよ!俺がやるから」

 

茶碗と杓文字を持つ母さんに、俺が変わりにやると言うも、母さんは優しく微笑みながら俺に告げた。

 

「これぐらい大丈夫だから心配しないで、そんなことより今日あなたたち未来ちゃんと一緒にお出掛けするんでしょ。それなら早く朝ご飯食べちゃって準備した方が良いわよ」

 

母さんは俺の茶碗に白米を装いながら言って、装いきった茶碗を俺に渡した。

 

「はい剣二。どうぞ」

 

「…………ありがと」

 

そう言う母さんに、俺はちょっと気恥ずかしながらもお礼を言う。

 

 

 

「おはよーっ!朝ご飯できてるー!」

 

すると、階段からまたドタドタと足音が聞こえれば、私服姿の響がリビングに入ってきた。

 

 

リビングに入ってきた響に、俺は顔を向けて響に口を開く。

 

「響遅すぎだ。早く朝飯食って準備するぞ、それと大方パジャマは部屋に置きっぱなしだろ?準備が終わったら、1階に降りると一緒に脱いだパジャマ洗濯機に入れとけ」

 

「分かってるよお兄ちゃん。そんなに言わなくたっても平気だって」

 

「………………お前には耳にタコができるほど言わないと駄目なことが多かったと思うが?」

 

「……………お母さん。ご飯頂戴!」

 

目を半目にして響を見やると、その響はというと、俺から目を逸らし母さんに顔を向けてご飯を即した。

 

「ったく、しょうがねえ妹だな…………いただきます!」

 

俺は軽く悪態を吐くも、すぐに手を合わせて食に敬意を表して、朝飯を食べ始める。

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

俺が朝飯を食べ始めたちょっと後に、響も食に敬意を表して食べ始め、そして同時に朝飯を食べ終えた。

 

「そんじゃあ準備するか…………って言いたいが、俺はほとんど終わってるから準備するのは響だけだが…………」

 

「分かってるよぉ~。そんなに言わなくてもすぐに準備するってお兄ちゃん!」

 

そう言いながら椅子から立ち上がれば、響も俺に言い返して立ち上がり一足早くリビングから出て2階の部屋へと向かう。それを見た俺は、やれやれと言うかのように鼻で息を吐き首を傾げ、椅子を元の位置に戻して俺も2階の部屋へと行く。

 

 

自分の部屋へ行く前に、俺は響の部屋の前に立ち止まり、扉越しで声を掛ける。

 

「響、後どれくらいで準備終わりそうだ?」

 

「1分以内には終わるよお兄ちゃん!」

 

そう声を掛ければ、素早く響の返答が飛んできた。響の返答に俺は小さく笑って「分かった」と返事をして、自分の部屋へと入りリュックを右肩に斜め掛けする。そのまま俺は廊下に出て、歩きながら指で持っていくものを数えることにした。一応はリュックに入っている物を全部出し確認した、財布も開いて今日使うものはちゃんとあるかも確認したが、念には念を入れて確認を入れておく。

 

「えーっと、今日必要なものは…………金銭が沢山入ってる財布に連絡するための携帯、移動するためのバスカードや少しは金額を易くできる学生証と電池切れを防ぐための充電器。最後にみんなを守る変身アイテムのゲキリュウケン!必要なものはこれぐらいだな」

 

階段を降りながら数えるも、必要なものは全部リュックにあるため確認を終えた俺は調度良く階段を降りきった。

 

 

「…………うん、大丈夫だな」

 

言葉にして頷き、俺は廊下を真っ直ぐに歩いて玄関前まで来て靴を履き、準備に少しだけ手間取っている妹の響を待つ。

 

「急げ、急げ、いっそっげ~っ!」

 

靴を履いて玄関前で待っていると、小さな手提げ鞄を持った響が数秒程度で終わらせ、階段を降りてそのまま素早い動きで俺の目の前まで来て止まった。

 

俺の目の前で止まった響を見ながら、口を開く。

 

「…………数秒程度で来れたな。じゃあ早いとこ未来との待ち合わせ場所に行くぞ響」

 

「はーい!」

 

響はこの後のお出掛けが嬉しいのか、楽しそうな表情で笑って返事をして、靴を履く。

 

「そんじゃ行くか!」

 

「うんッ!」

 

俺の言葉に、響は満面の笑みで頷いて答え、俺も頷きで返して玄関の取っ手に手を掛け、二人一緒に声を合わせて外へ出る。

 

「「いってきまーす!」」

 

 

 

「ハッハッ、ハッハッ」

 

家を出た俺と響は軽い小走りで、未来との待ち合わせ場所に向かっていた。

 

「あ、おーい!未来ぅ~!!」

 

前を見て小走りで進んでいれば、俺達がどこかに行くときは必ず使う、ガキの頃からの集合場所には白を基調とした私服姿の未来がいた。そのため俺は、見つけた未来に声を掛け手を降る。すると、声を掛けたお陰で未来も俺達を見つけて、すぐに手を振り返してくれた。

 

「ふぅ…………すまん未来。待っただろ?」

 

「ううん、私も今来たところだから大丈夫だよ?」

 

右手だけを出して未来に謝り聞いてみれば、未来は顔を横に振って落ち着いた感じで返答をしてくれた。未来の返答に俺は安心して微笑みを称える。

 

「良かったね、お兄ちゃん!」

 

俺が笑っていると、響が横から顔を出して笑ったまま言ってきた。

 

「響。今日は遅れなかったんだ偉いね!…………って言うことは寝坊もしなかったんだよね」

 

「あ~…………うん、そうだね~…………」

 

響を見た未来は、響の名を呼んで次はかなりやっている傍迷惑行動のことを聞いてきた。そのため響は目線を動かしながら、少し苦しい感じで答えるも、俺はその響が言った答えを即座に否定した。

 

「い~や違うぜ未来、響の奴はいつも通り寝坊をした。そんで俺が無理矢理起こしたんだよ」

 

「響…………また剣ちゃんに迷惑掛けたの?」

 

「えーっと…………えへへ、お兄ちゃんに起こして貰っちゃいました」

 

「えへへじゃねーし得意気に言うな!ったく、起こすのに結構な労力を使ったぜ、いい加減自分の力で起きろよな」

 

「えぇー、そんなぁ~」

 

「もう、響…………いつまでも剣ちゃんに頼ってちゃダメでしょ?」

 

俺と未来で注意するも、響のあの悪すぎる寝坊は言ったところで治る確率は0パーセントに近すぎるため、言ったところで無駄だと思う。

 

「分かってますよーだ。それよりほら早く行こうよ!遊ぶ時間がなくなっちゃうからさ!」

 

そんな響の言葉に、俺と未来は響を見ながら口を開く。

 

 

「ああ言ってるけど、絶対分かってないよな?」

 

「それはしょうがないよ。だって響だもん」

 

「なるほどな、響だからか…………そりゃ言えてるわ」

 

「2人とも!それどういう意味!?」

 

俺が呟けば、その呟きが聞こえたようで未来はそれに静かに付け足した。未来の付け足された台詞に俺は頷いて理解すれば、響が泣きそうな感じの声を出した。

 

「自分の胸に手を当てりゃ分かることだろ?ほら行くぞ、時間がなくなっちまうんだろ」

 

「あ!?ちょっと待ってよ、未来!お兄ちゃん!?」

 

そう言って軽く手を振り響を放って俺と未来は動き出す、そうすれば響は慌てながら俺の横に並んで一緒に歩く。

 

「それでバスでデパートには行くけど、着いたらどうするの?」

 

「んー、そこんところはあんま考えてなかったな。まあ到着したら適当に色んなところ回ればいいだろ?俺は未来と響が行きたいところに付き合うからよ」

 

「えへへ、久しぶりの3人でのお出掛け楽しみー!」

 

響の言葉に俺達はお互いに笑い合い、デパートへ行くバス停に歩いていく。

お互い笑いながら、俺は顔を前に向けて思う。

 

(頼むから今日だけは…………ノイズもなにもなく平穏に終わってくれよ。俺の貴重な心の平穏を奪うのだけはやめてくれ)

 

ヒーローたるもの。そう思うのはいかんと思うし、多分こんな事態の中で思うのも贅沢だとは思うが、でも俺はこの大切な日常を邪魔されたくはない。

 

剣二side out 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特異災害対策機動部二課。

 

今ここでは私服姿の2人の少女が椅子に座り身を縮込ませて、その目の前には赤いシャツを着た大男が腕を組んで2人を見ていた。その一面はまるで、イタズラをした子供を叱る親か先生のようなものであった。

 

「翼、奏…………なぜお前たちは昨日、未確認の騎士と戦ったんだ?」

 

「「………………………………………」」

 

「確かに未確認の騎士には捕縛命令が下されているが、俺は言ったはずだぞ?未確認の騎士との間には戦闘技能の差がある。下手に戦ってお前たちを失えば人類は終わりだと、あの戦い…………最悪を考えればお前たち2人は死んでいたかもしれなかったんだぞ!?」

 

大男の言葉に2人の女は無言になるが、大男の凄まじい覇気に根負けして、女2人は喋り出した。

 

「そうは言うけどよおっちゃん、あたし達にだって譲れない思いがあるんだよ!あたし達はノイズと戦うためにシンフォギアを纏ったんだ!」

 

「奏の言う通りです!私達は人類の守護を目的としています。それなのに民間人を助けノイズを倒してただ去っていく得体の知れない未確認の騎士の存在が許せないんです!」

 

「お前たち2人の気持ちは分からない訳でもない、だが未確認の騎士との戦いは止めるんだ!第一昨日お前らは未確認の騎士と戦って負けたんだぞ!」

 

「っ…………!?」

「それは!…………」

 

大男はそんな言葉を放ちながらモニターから昨日の戦闘の映像を映し出した。2人は言い返そうとするが、2人の言葉を言わせずに強く昨日の戦いのことを話し出した。

 

「翼は未確認の騎士と戦ったが、簡単にお前の剣はあしらわれて弾き飛ばされた!奏も投擲した槍を簡単に弾き落とされただろ!あんなことになった時点でお前たちの負けは確定していた!」

 

「そんなことはない!あたしたちはまだ未確認の騎士には負けちゃいない!」

 

「そうです!それに、次は奏と一緒に戦えば勝機は必ずあります!」

 

その返答に大男は目を見開き、2人に向かって強く言い放った。

 

「そういう問題じゃない!未確認の騎士との戦闘はよすんだ!」

 

「「ッツ!?」」

 

女2人は大男の聞いたこともない声に驚愕し、目を見開いて少しだけ体が後ろに下がった。大男はそんな女2人の驚愕の顔を気にせず続けて言う。

 

「お前たち2人は人類の希望だと言っているだろ!そんなお前たちを失うわけにはいかない!それに、未確認の騎士は今のところお前たちのことを殺す気はない、だがもしも何かの拍子でお前たちのことを殺しに掛かるか分からないんだ!奴の実力を考えれば、お前たち2人は一瞬で御陀仏になるぞ!」

 

「ッ…………!?」

「ですが…………」

 

「…………………………………………」

 

言い切れば大男は無言になるが、すぐまた口を開いて2人に謝罪を付けて話す。

 

「すまない言い過ぎた…………だがお前たち2人は唯一ノイズに対抗できうる鍵だ。そんなお前たちを未確認の騎士との戦闘で死んで欲しくないんだ。頼む、分かってくれ2人とも」

 

「…………分かりました」

「分かったよ。おっちゃん」

 

大男の言葉に、2人は顔を下げて静かに俯き返答し、大男は続けて言う。

 

「…………話は終わりだ。2人とも外へ出て構わない、今日も1日頑張ってくれ!」

 

「ああ!任せろおっちゃん!」

 

「はいっ、分かりました!」

 

大男の最後の言葉に、2人は笑顔で頷いて返答し、そのまま手を降り頭を下げてこの場を後にした。

 

「それじゃあな、おっちゃん」

「それでは叔父様、また後で」

 

 

「…………………………………………………」

 

(っと言ったが、翼や奏のことだ。どうしても未確認の騎士に勝ちたい気持ちが高すぎる。大方今回も未確認の騎士が現れれば、向かっていくだろうな)

 

2人が出たドアを無言で数秒見詰めながら心の中で2人の譲れない思いに悩むが、すぐに大男は視線を戻して、特異災害対策機動部二課の制服を着て機器を操作している若い男に声を掛けた。

 

「藤尭。昨日も現れた未確認の騎士の声は録音はできているか?」

 

「はい、もちろんできています」

 

「昨日は予想以上に声を出してくれたのが助かったな、それなら未確認の騎士の声紋鑑定を頼めるか?」

 

藤尭と呼ばれた男の言葉に、大男は頷いてすぐに次の指示を出すが、その指示を聞いた藤尭という男は、口をへの字にしてぼやいた。

 

「司令、声紋鑑定で未確認の騎士を特定しようとしているんでしょうけど、いくらなんでもそれは無茶ですよ。この日本だけでも総人口は1億を越えているんですよ。そんな中で一体誰が未確認の騎士かなんて特定できませんよ!」

 

藤尭はさらに司令の大男に続けて言う。

 

 

「それに未確認の騎士の声と身長からして若い男だと思いますけど、あんな若い声して高身長した男なんて下手をすれば40代まで居ますよ!この日本で尤も多い男の年齢層は10代から30代なんですから」

 

「……………………………………」

 

藤尭の話に大男は無言で聞ききながら見ていると、藤尭は大男の視線に気付いて一度謝罪を入れて言う。

 

「あ、すみません。でも未確認の騎士が人間であったとしても、未確認の騎士になるときにはきっと身長は変わってるんじゃないですか?」

 

「いや、確かにお前の言う通りだ。…………日本の人口数はトップに入るほどだ。そんな中、未確認の騎士の正体を探らせるというのは、今お前たちにどうでもいい無茶をさせてしまうからな」

 

「ええ、それに…………未確認の騎士はもしかしたら、まだ我々が知らない力を隠し持っているかも知れませんからね」

 

「そうだな…………未確認の騎士は俺から見ても、まだまだ本気を出していない。寧ろ、確実に俺達でも想像が付かない力を持っているだろう」

 

藤尭の言葉に頷き、大男は大型モニターに映し出されて一時停止されている未確認の騎士の映像を、鋭い目付きで見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大男が未確認の騎士の映像を睨んでいる時、少し前に部屋を出ていった2人組の女は、長い廊下をただ無言で歩いていた。しかしそんな無言を打ち破るかのように、青い髪の女が口を開いた。

 

「奏どうするの?叔父様の言葉に従って未確認の騎士との戦闘はやめるの?」

 

「……………………………………」

 

そう言ってくる相棒である翼と呼ばれた女の言葉に、朱色の髪の奏と呼ばれた女は無言であったが、その後すぐ首を横に振って、しっかりと翼の言葉に返事を返した。

 

「いいやっ…………おっちゃんには悪いけど、あたしはあの言葉に背くことにするよ翼!」

 

「奏…………」

 

「だってそうだろ翼!あたしたちは死に物狂いでシンフォギアを纏ったって言うのに、あの未確認の騎士はなんにもしないで、10年以上前からあんな力でノイズを何千体も倒してるんだ!あたしにはそれが許せない!まるで『お前たちが培っているもの全ては無駄だ』って言われているようで許せないんだよあたしには!」

 

立ち止まって我を忘れて叫ぶ親友の姿に、翼は目を見開いて驚き身を退いてしまっていた。同じく奏も荒げた声で親友に言ってしまったため、自分の声で驚かせたあげく退かせたことに謝罪をする。

 

「わ、悪い翼ちょっと頭に血が上っちまってた」

 

「ううん気にしないで、ちょっと驚いただけだから…………それに私も奏の気持ちは分かるから」

 

奏の謝罪に翼は首を横に振り、自分の気持ちも同じだと告げる。

 

 

「…………それじゃあ翼、未確認の騎士と戦うとき一緒に戦おう!」

 

翼の言葉に奏に無言で頷いて言って、翼も無言で頷き返し返答する。

 

「うん、一緒に戦って未確認の騎士に勝とう!奏!」

 

そう強く息巻いた2人は、友情を確かめ合うようにお互いの手を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特異災害対策機動部二課でそんな話し合いがされている中、その話の中心人物の立花剣二はと言うと…………。

 

 

剣二side

 

「ふぅえくしょん!!!」

 

「「ヒャッ!!?」」

 

バスに乗った後、きっちり15分でデパートに到着して今俺達はデパート内にあるそれなりの値段の洋服売場に居るのだ。まあここに居る限り俺の仕事は2人の荷物持ちだ。それに今日は久し振りの3人でのお出掛けだが、俺は響と未来が喜んでくれるならそれで良いため、多少の出費は目を瞑る。

 

しかし2人が洋服を見ていると、俺はいきなりドデカいくしゃみをしてしまい、2人を驚かせるどころか周りにいる客や店員にまで注目を集めてしまった。そのため俺は「しまった!?」という顔をするも、すぐに周りに居る他の客や店員の皆様に申し訳ない顔で会釈をした。

 

それでなんとか場は俺達から目を離したが、響と未来が俺に聞いてきた。

 

 

「ビックリしたぁ~…………いきなりくしゃみなんてどうしたのお兄ちゃん。風邪?」

 

「いや、なんかいきなり鼻がむず痒くなってな。急だったもんでくしゃみが出ちまったんだ」

 

「もしかして誰かが剣ちゃんの噂でもしてるんじゃない?」

 

「俺のことを噂するやつなんて居るのか?」

 

未来にそう言われたため、一応腕を組んで考えてみた。

 

(鈴か喜一か?…………いや、あの2人が俺のことをいちいち噂するなんてありえねえな。そんじゃあ俺がボコボコにした不良どもか?…………なんかありえそうだな。俺にボコボコにされた仕返しのために俺にやられた不良ども大量に集めてやって来そうだな)

 

考えるが一旦思考を中断して、響と未来の方に顔を向ける。

 

「それでお前らなんの服買うのか決まったのか?買うんだったら俺が全部買ってやるぞ」

 

「そ、そんな…………わざわざ服一式全部買って貰うのは悪いよ…………」

 

「別に気にすることねえよ。金ならそれなりにあるし、遠慮することはないぞ未来?」

 

「そうは言うけどさお兄ちゃん。前々から聞きたかったんだけど…………お兄ちゃんそんなにお金持ってるのなんで?お兄ちゃんバイトなんて一切してないよね?」

 

我が妹響は、俺の顔を見ながら疑問の言葉を放ち、それを聞いた未来は、見ていた服から素早く俺の方に顔を向けた。その顔は驚きと不安に心配している顔であった。

 

大方この顔から察するに、未来は俺がヤバいことに手を出しているんじゃないかと思っているんだろう。確かに自分でも認めているように、俺は結構荒いところがある。響と未来は俺のことをよく理解してくれているため俺がそんなヤバいことに手を出していないことは分かってると思うが、付き合いの短い奴だったら俺がヤバいことに手を出していると思うだろうな。

 

 

疑問の顔になっている響と不安そうな顔の未来に、俺は安心させるように返答する。

 

「安心しろって、別になんかヤバそうなことに手を出しているわけじゃねえよ。ただ知り合いのところ手伝って普通に金貰ってるだけだから心配すんなよ!なんか起きたらちゃんと言うからよ!!」

 

いつも通り安心させるように言ってやると、2人はホッと息を吐いて安心した。

 

(ま、そうは言ってるが、俺は響や未来、鈴や喜一、家族に話題沸騰の騎士のヒーロー、魔弾剣士リュウケンドーであることは言ってないからな…………)

 

ついでに心の中で、俺はリュウケンドーのことを付け加えた。そんなことを思っていれば、服を見ていた響と未来が一斉に声を出した。

 

「「決まった!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「♪~」」

 

服を決めて買い終われば、響と未来の2人はご機嫌であることを表すかのように、鼻歌を歌いながら買った服の袋を両手で持って、外を歩いている。因みに俺は2人の1歩後ろを歩いている。

 

歩きながら俺は、響と未来にあることを聞く。

 

「ところでよぉ、お前ら本当にそれだけで良かったのか?もうちょい選んでも良かったんだぜ、もし選びすぎても俺が全部買ってやるのに」

 

そう、響と未来が買ったのはシャツとスカートだけである。しかも2000円ぐらいにしかならない値段のものであった。

 

「だからそこまでしてもらうのは悪いってば、剣ちゃんにわざわざ服買って貰うなんて…………」

 

「そうだよお兄ちゃん、これはあたし達が選んだんだからあたし達のお金で買わないと、まあ結構キツくなったら言葉通りお兄ちゃんを頼るけどさ」

 

俺の言葉に、響と未来は俺の方に顔を振り向け2人で抗議をするように言ってきた。響と未来の言葉に、俺は「そうかい」と言って両手を肩の辺りまで上げ、軽く笑って2人の隣で並ぶように来た。

 

「ま、お前らがそれで良いのなら俺もそれで良いよ。それよりもう昼になったな、どうする?一旦昼飯食べてまた買い物にでもするか?それともこのまま続けるか?」

 

「ん~、あたしはお腹が空いてきたからお昼ご飯食べてからお出掛けの続きをしたいな!」

 

「私もお昼ご飯からでいいよ。お昼食べ終わった後、3人で色んなところ回ろうよ!」

 

響と未来の言葉を聞いた俺は、笑いながら頷いて答える。

 

 

「了解。それじゃあ昼飯にすっか!」

 

「「うん!」」

 

響と未来も満面の笑顔で返し、そして俺達はデパート内にあるファミレスへと足を向けた。ファミレスに入れば中にはそこそこの客が居たが、まだ3人客が座れる席も普通にあって、俺達は4人テーブルの禁煙席に座った。

 

「さぁぁぁて何にするかな?」

 

そう言いながら俺達はメニュー表を目にするも、すぐに注文するものが決まり、俺達は店員さんを呼ぶブザーを押した。ブザーを押せばすぐに店員が来て、俺達はそれぞれが決めたメニューを頼んだ。そうすれば、10分弱で俺達が頼んだそれぞれの料理が一気に運ばれてきた。

 

 

「まさか俺達が頼んだ料理が同時に来るとはな、それじゃあ食べるとするか!」

 

「うん…………!」

 

「食べよう!食べよう!」

 

俺達は食器を手に取って、手を合わせて一緒で言う。

 

「「「いただきます!」」」

 

因みに俺が頼んだ料理はハンバーグセット(サラダとライス)で、飲み物はジンジャーエールだ。未来はナポリタンのセット(サラダとコーンスープ)で飲み物は牛乳だ。

 

(…………未来はそんなに栄養を付けたいのか?)

 

俺は未来が頼んだ飲み物の牛乳を見ながら、首を傾げた。そして最後に、俺の妹の響が頼んだ料理は…………食材よりご飯がたっぷりのパエリアセット(大盛サラダ)である。そんで飲み物はオレンジジュースだ。

 

(朝にあんだけ米食ったのに、昼飯でも米を食うって大丈夫なのか、こいつは?)

 

そんなことを思いながらも、俺は右手で頬を付きフォークを持っている左手でハンバーグを刺して響に聞く。

 

「お前本当にご飯が好きだよな…………そんなに炭水化物の米ばっかり食べてると、カロリー増えすぎていずれ太るぞ」

 

注意するように言う俺だが、当の本人の響は大丈夫とでも言うかのように満面の笑みを称え、言ってきた。

 

 

「それなら大丈夫!いつも学校へ登校するときとかに走ってるから、カロリーはなんとかなってるよ!」

 

「それはお前が寝坊しているときだよな?そんなことを自信満々で言うんじゃねえよ!そんで寝坊も治しやがれ!」

 

満面の笑みのままピースをして言う響に、俺は呆れるように溜め息を付きジト目を響に向けて言って、注文したハンバーグをナイフとフォークで切って、フォークで刺したハンバーグを口に運んだ。

 

口に入れたハンバーグの味に俺は目を見開いて、感想を口にする。

 

「んっ! 相変わらずここのハンバーグはめちゃめちゃ上手いな。ソースの味もまるで飽きさせない味だし!」

 

そんな感想を言いながら、俺は次々とハンバーグを切っていき口へと運んでいく。時にはサラダやライス、付け合わせの食材を口へ運んでいき、休まずに食べていってハンバーグセットを10分以内に完食した。その後で響と未来が順番に昼飯を食べきり、軽く腹を落ち着かせれば俺達は店を出た。

 

因みに、自分で頼んだものは自分で払った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~…………十分に食べたな。腹一杯だ」

 

店で金を払って出た俺達は今、2階デパートの外へと出ており次はゲームセンターへと向かっている。だがその前に、腹に入れた昼食を消失させるため、遠回りでゲームセンターへ向かう、そんな中俺は自分のお腹をポンポンと軽く叩いて言葉を口にした。

 

その言葉を発すれば、響と未来も同意するかのように言葉を口にする。

 

 

「うんッ、美味しかった。あたしも満足だよ~♪」

 

「でもちょっと食べ過ぎたんじゃないかなって思うよ」

 

満面な笑みで言う響に対して、未来は自分のお腹を見ながら擦り、心配そうな顔で自分のお腹を見る、そんな未来に俺は一応頭の中で精一杯出した言葉を言う。

 

「別に心配することはないんじゃないか?お前ら2人はまだ中学生なんだ。育ち盛りなんだからよしっかり食べとけ」

 

俺がそう言うと、大型デパートと一体になっている巨大な液晶テレビがかなりの音量で何かの宣伝CMを流した。

 

『ツヴァイウィングのCD!発売まで後3日!』

 

「ん?…………って、こいつらは!?」

 

デパートと一体になっている液晶テレビの街頭モニターに目を向ければ、俺は周りのことと響や未来のことも考えずに、驚愕の声を張り上げてしまった。だが俺は、周りのめも気にせずに今の驚愕を心の中で考える。

 

(どういうことだ、こいつらは昨日出会った機械の鎧を纏った女どもじゃねえか!?いや…………もしかすれば昨日のあいつらに似たそっくりさんか?いや絶対に違う!あんなにも髪の色や骨格が似たそっくりさんが居て堪るか!整形をしたんじゃあるまいし…………)

 

心の中でそんな考えをしていると、左隣に居た未来が俺が見ているモニターの方向に目を向けた。

 

「どうしたの剣ちゃん?妙な声なんか出して、ツヴァイウィングがどうかしたの?」

 

「ツヴァイウィング?」

 

「未来、何それ?」

 

未来の放った言葉に、俺と右隣に居た響は一斉に顔を向けて、ツヴァイウィングという聞いたことのない単語を口にし疑問へと変える。

 

「あー…………そう言えば剣ちゃんや響はあんまりそう言うのって知らないんだよね。まあ剣ちゃんに至っては興味がないんだよね」

 

「随分と失礼なことを言ってくれるな未来、俺でもきちんと最近の流行りや世の中のことを知っとるよ」

 

「ふ~ん、そうなんだ。そんなことより…………ツヴァイウィングって言うのはね」

 

結構な勢いで辛辣なことを言う未来にちょっと心が傷付くも、なんとか耐え未来相手にジト目で返すも、未来は俺の言葉をどこ吹く風と言わんばかりに俺の言葉を軽くスルーしてツヴァイウィングのことを歩き出し説明しだした。

 

(やれやれ、成長するにつれて結構冷たい奴になってないか未来の奴?まあ根本的な優しさを捨てないでいてくれる分には嬉しいけどな…………ッ!?)

 

そんなことを思いながら、未来のツヴァイウィングの説明を意識半分で聞き流しながらポケットに手を突っ込んで歩き出せば、ポケットに入れていたモバイルモードのゲキリュウケンが小さな光を放ち出し、ゲキリュウケンに触れていた俺の脳内にノイズの出現場所を映し出した。

しかも映し出された場所はこのデパートの近くの道路のため、俺はもうすぐで出現するノイズを叩くために響と未来に断りを入れてノイズが出現するポイントへと向かうことにする。

 

「響、未来、ちょっとトイレ行ってくるから悪いんだが先にゲームセンターに行っといてくれ」

 

「あたし達のこと気にしなくていいよお兄ちゃん。早くトイレに行ってきなよ」

 

「響の言う通りだよ。剣ちゃんを置いていくことなんてしたくないから、ここで待ってるよ」

 

響と未来は俺の方に顔を向けてそう言ってくる。まあ本当のところはノイズの出現ポイントへと向かうんだが、今は2人のこの答えに感謝するべきだな。

 

「そうか、悪いじゃあちょっくらトイレに行ってくるわ」

 

俺はそう言って2人に手を振って、トイレに行くフリをしてノイズの出現ポイントへと急ぐ。

 

 

 

 

響side

 

お兄ちゃんの背を見送っていれば、段々とお兄ちゃんの姿が見えなくなっていく。結構急いでいる感じだから、我慢してたんだろうなあ。

 

「あんなにも急いで、お兄ちゃんよっぽどトイレを我慢してたんだな~」

 

あたしはそんなことを言いながら、外のデパートの周りを見ながら心の中で呟く。

 

(まあしょうがないか…………何せこの辺りってトイレが全くないから、デパートの中に行くしかないんだよね。公衆トイレを作ればいいのに何故かデパート側の人は作らないし、やっぱり作ったら作ったで掃除が大変なのかな。公衆トイレって丁寧に使う人が少ないから、そんなことにならないようデパート側の人も作らなかったのかな?)

 

心の中で呟いて、あたしはお兄ちゃんが戻ってくるまで未来と他愛のない会話をするも、お兄ちゃんを待つこと5分が経過した。

 

5分経ってもお兄ちゃんが戻ってこなく、あたしと未来は一度お互いの顔を見合わせて口を開く。

 

 

「剣ちゃん遅いね。どうしたんだろ?まさか…………お腹痛めたのかな?」

 

「うーん、それはどうだろう?お兄ちゃんって小学生の頃から病気知らずの体だったんだよね。まあ風邪を引いたり体調崩すときもあったけど、それも3~4回程度だったからその可能性はかなり低いと思うよ?」

 

「そうなんだ…………」

 

そう。小学校の時から体を鍛えていたおかげかお兄ちゃんは、そんなに学校を休んだことはないし、全部と言っていいほど無遅刻無欠席でしかも成績優秀で運動神経抜群の文武両道な兄であった。他にも色々なエピソードがあるけど、それを説明するのはまた後にしようと思う。

 

「…………本当にどうしちゃったんだろうお兄ちゃん?未来、ちょっとお兄ちゃんに電話するね」

 

「あ、うん良いよ」

 

未来からの返答を貰い、あたしは携帯を取り出し通話履歴からお兄ちゃんの電話番号を出して、お兄ちゃんに電話を掛けようとしたその時だった。

 

ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!

 

「「!!?」」

 

あたしがお兄ちゃんに電話を掛けようとしたその時に、ノイズ出現の警報がそこら中から鳴り響いた。

 

「ノイズ!?こんなときにっ!?」

 

「そんな!?は、早くお兄ちゃんに電話しないと!」

 

あたしと未来はノイズ出現の警報に驚き、慌てながらもお兄ちゃんに電話をしようとした瞬間、あたしの携帯にお兄ちゃんの名前が出た。お兄ちゃんがあたしに電話を掛けてきたのだ。

 

「ッ!?」

 

一瞬あたしは驚いてしまうも、すぐに気を取り直してお兄ちゃんの電話に出る。

 

響side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響と未来にトイレに行くと誤魔化した俺は、デパートの中を走り外へと出て、今は多くの人垣を掻き分けながらノイズの出現場所へと向かっている。

 

しかし急いで出現場所へ向かっていれば…………

 

 

ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!

 

「ッ!!?」

 

そこら中からノイズ出現の警報が鳴り響いた。警報が鳴り響けばそこら中に居た人達は「ノイズ!?」と騒ぎ散らしながら我先もと、シェルターに向かいだし、俺はと言うと路地裏に入り携帯を取り出し響の番号へ電話を掛ける。

 

『お兄ちゃん!?』

 

「響!未来!大丈夫か!?」

 

響に電話を掛ければ、3コールで出たため俺は2人が無事がどうか確かめる。

 

『う、うん!あたしも未来も大丈夫だよ!?そんなことよりお兄ちゃんの方こそ大丈夫なの!?今どこにいるの!?早く避難しよう!?』

 

響と未来は無事なようだが、響のこの口調からしてかなり心配されていることが分かるも、心配させたことに少し心を痛めるも俺はこの思いを捨て置き、すぐに響達に伝えるべき事を伝える。

 

「いいか響よく聞け!お前はこれから未来と一緒にそこから一番近いシェルターに避難するんだ!」

 

『え…………ちょっと待ってお兄ちゃんはどうするの!?』

 

俺の台詞に響は数秒固まったが、素早く気を取り戻して大慌てで聞いてくる。恐らくは響の隣に居て携帯の反対側に耳を傾けている未来も驚いているだろうが、俺はそんなことは一切気にせずさっさと納得して貰うための説明をする。

 

「俺は別のシェルターに避難する!この距離だとお前らが避難するシェルターへ行くよりはこっちにあるシェルターに避難した方が安全だろ!」

 

『それは、そうだけど…………』

 

俺の説明に納得はするも心では納得できず引き下がれない響達に、俺は安心させるためにも断言するように言い放つ。

 

「安心しろ。お前らに心配されるほどのことはしねえよ、それにシェルターでも連絡は通じる、お前らはとにかく自分の事だけを考えるんだ。だから早く避難するんだ!」

 

強く言うと、電話越しの響は今度は数秒間だけ黙り混むも、すぐに返事をしてくれた。

 

『うん!分かった!あたし達はこの近くのシェルターに避難する!だからお兄ちゃんも怪我とかしないように気を付けて避難してね!絶対に無事でいて!約束だよ!』

 

「……………………ああ、分かったよ。約束だ」

 

響の言葉に俺は鼻で笑い響と約束をする。その言葉を最後に、俺は電話を切って携帯を尻ポケットにしまい、路地裏から出て既に出現したであろうノイズの方へと険しい顔を向ける。

 

険しい顔を向ければ、すぐに不適な笑みを浮かべて告げる。

 

 

「さぁぁて…………約束しちまったからには、守らねぇといけねえなぁ!」

 

不適な笑みでそう告げた俺は、右腕を斜めにして顔の前まで持っていく、右手にはモバイルモードのゲキリュウケンが握られており、俺はモバイルモードのゲキリュウケンの名を叫び、剣の姿へとさせる。

 

「ゲキリュウケン!」

 

この名を呼べば、モバイルモードのゲキリュウケンは青白い光を放ちながら、真のゲキリュウケンの姿となる。俺はゲキリュウケンを強く握り締め、縦に掲げて持ち手部分の一部をガシャンと上にあげる。

 

「リュウケンキー、発動!!」

 

上にあげればゲキリュウケンの顔もあがり、鍵の挿し込み口が現れる。そして俺はどこからともなくリュウケンキーを出してリュウケンキーの絵を押してキーを出す。そこからゲキリュウケンにリュウケンキーを挿し込み回し、最後にガシャンと持ち手の一部を下へさげる。

 

『チェンジ、リュウケンドー』

 

その音声が鳴り、ゲキリュウケンから青白い光が強く発せられる。

 

「撃龍変身!」

 

俺はゲキリュウケンを両手で持って叫び、ゲキリュウケンからは青龍が出てきて遥か上空に飛び上がり咆哮を上げると、垂直で俺に目掛けて落下してくる。落下してくる青龍を体全体で受け止めれば、俺の体に青いスーツと白い鎧が身に纏い、そして龍の顔をした仮面が俺の顔に装着される。

 

俺の全てに仮面と鎧が装着されれば、俺は右手に持っているゲキリュウケンを1回だけクルンと回し、回したゲキリュウケンを力強く握り締め、ゲキリュウケンを2回振り空気を斬って決める。

 

「魔弾剣士リュウケンドー!…………来神!!」

 

ポーズと台詞を言って、俺は走りながら1回転ジャンプをし、一気にノイズの出現した場所へと距離を摘める。

 

「ゲキリュウケン!」

 

俺はゲキリュウケンを持って先制攻撃と言わんばかりに、視界に入ったヒューマノイドノイズを一閃とばかりに斬り裂いた。

 

「!!?」

 

いきなり俺に斬られたことにヒューマノイドノイズは、声とも分からないようなものを上げ、もがくような行動をして炭素の塊へと変わった。

 

「「「「「!!!!!!」」」」」

 

1体のヒューマノイドノイズが消され、そしてどこからともなく俺が現れたことに周りにいた小型ノイズは驚いて動きを止めた。俺はその隙を逃すことはなく、着地とともに走り出し、俺の目の前にいるノイズどもの隙間を走りながら大量の小型ノイズどもをすかさず斬っていく。

 

「「「「「!?!?!!?」」」」」

 

小型ノイズどもを斬り裂きながら隙間を抜けて、ゲキリュウケンをブォン!と強く振れば、その勢いとともにゲキリュウケンに斬られた小型ノイズの大群が炭素へと変わった。

 

「悪いがこちとら、せっかくの息抜きを邪魔されてイラついてるんだがな、一気に蹴散らせて貰う!」

 

背を向けながらもノイズどもを睨み付け言って、俺はマダンキーホルダーに手を掛けて、勢いよく使うマダンキー目掛けて回す。マダンキーホルダーが回りまくり、使いたいマダンキーに止まり、俺はナックルキーをマダンキーホルダーから勢いよく引き抜く。

 

「ナックルキー、発動!」

 

ナックルキーの絵を押してキーを出して、ゲキリュウケンの持ち手部分の一部を上へあげ、ナックルキーを挿し込んで回し、持ち手部分を下へさげればゲキリュウケンから音声が鳴る。

 

『マダンナックル』

 

「出でよ、マダンナックル!」

 

ゲキリュウケンを空に向け魔法のエネルギー波を放つ、そうすれば空中で魔法陣が現れて、魔法陣からマダンナックルが出てきた。

 

「よっと!……………………」

 

魔法陣から出てきたマダンナックルを左手に装着し、目の前に居るノイズに向ける。ノイズに向ければマダンナックルのキバが展開され、そこから9000ボルトを溜めた電流を纏った衝撃波をぶっ放した。

 

「消し飛べ!ナックルスパーク!」

 

ナックルスパークがノイズに向かって真っ直ぐ放たれれば、目の前にいた大量の小型ノイズが一瞬のうちに炭素の山となった。

 

「フッ!!」

 

大量のノイズが炭素の山になるも、俺は一切それを気にすることはなく、マダンナックルで狙いながらナックルスパークを放って、ゲキリュウケンを構えて突撃する。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

ナックルスパークで何十体ものノイズを葬っていれば、既にノイズとの距離はゲキリュウケンを当てられる距離に入っており、俺は迷うことなくゲキリュウケンを振った。

 

「おらぁっ!」

 

『!?!!?』

 

ヒューマノイドノイズはゲキリュウケンで真っ二つとなり、声とも分からないのを上げながら炭になった。だが俺は手を止めずゲキリュウケンを振りまくって小型ノイズを葬るも、リュウケンドーの蹴りにマダンナックルを装備した左手で、ナックルスパークの衝撃波を乗せた拳を小型ノイズに喰らわせて次々と葬っていった。

 

「おらっ!そらっ!だらあぁっ!…………おわあぁぁたぁぁっ!!!」

 

『『『『『!?!?!!?』』』』』

 

次々とノイズを葬っていき、最早残りのノイズの数はリュウケンドーの必殺技《魔弾斬り》で消し飛ばせる数となり、俺は目の前にいたクロールノイズをゲキリュウケン斬り倒し、残りのノイズへと目を向ける。

 

「残りのノイズは50体…………多いが、今の俺の機嫌はMAXで悪いんだよ。そんな数なら魔弾斬りで消し飛ばせる!」

 

俺はノイズを睨み付けてそう言いながら、マダンキーホルダーに手を掛けた。

 

「フンッ!…………ファイナルキー発動!」

 

マダンキーホルダーが止まれば、俺はファイナルキーを抜き取り発動させた。ゲキリュウケンに挿し込み回して入れれば、ゲキリュウケンが言う。

 

『ファイナルブレイク』

 

「おおおぉぉぉぉ!……………………ゲキリュウケン!魔弾斬りッ!」

 

『『『『『!?!?!!?』』』』』

 

ゲキリュウケンに必殺技のエネルギーが集まり、俺は50体のノイズに目掛けて、ゲキリュウケンを高く掲げて怒りを込めた魔弾斬りを叫びながら放った。

 

結果、50体の小型ノイズの大群は、魔弾斬りの威力で炭も残さず消し飛び、俺は小型ノイズが消し飛んだところを見詰めながら、ゲキリュウケンを1度回し(やいば)の部分に右手で触れて、ジャっと言わせて右手で刃の全体を触れば、俺は不機嫌に告げる。

 

「ケッ、俺の大切な休みを潰した罰だ…………」

 

そう告げて、俺はゲキリュウケンを左腰に下げ背を向け静かにその場を去ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特異災害対策機動部二課。

 

「なんということだ…………!?」

 

モニターで未確認の騎士、魔弾剣士リュウケンドーの戦闘映像を見ていた風鳴弦十郎は声にもならないような顔になっていたが、なんとか声を発するも、顔には一筋の汗が流れ恐ろしいものを見たかのような顔である。

 

モニターに映されていたのは、未確認の騎士であるリュウケンドーが、10分程度で小型ノイズの大群を始末し終え、背を後ろに向けて静かに去っていったのだ。

 

「まさか、たったの10分であれだけいたノイズを倒してしまうなんて…………」

 

「それに未確認の騎士…………なんか、妙に機嫌が悪いように見えませんでしたか?」

 

スーツを着た緒川とモニターの目の前に居る藤尭が、それぞれが思ったことを口にする。そして藤尭の言葉に、風鳴弦十郎は首を縦に動かし口を開く。

 

「ああ確かに、藤尭の言うように今日の未確認の騎士は機嫌が悪いように見えた。何があったのかは知らんが、ああいう状態の奴はかなり厄介だ。下手に刺激をしない方がいいだろう」

 

弦十郎がそう言うと、司令室の廊下からドタバタと急いでくる2人分の足音が聞こえた。

 

「おいおっちゃん!出撃はしなくていいってどういうことだよ!?ノイズが出現したんだろ!?」

 

 

司令室に飛び込んできたのは、天羽奏とその後ろには相棒の風鳴翼がいた。2人は弦十郎に怒られたため、気分転換のために外で遊んでいたが、ノイズの出現を聞いて大急ぎで特異災害対策機動部二課へと戻った。

 

二課へ戻る前に未確認の騎士が現れたことも聞いて、2人は未確認の騎士への対抗意識を燃やし二課へ戻れば、既にヘリの準備は終わっており、2人はヘリに乗ろうとした瞬間、基地内から弦十郎からの連絡が入った。『出撃は中止だ!』というものだった。

 

それに驚いた2人は、すぐにヘリから出て司令室にいる弦十郎に物申しに来たのである。

 

「そうです!ノイズが街中(まちなか)に出たというのに出撃中止とはどういうことですか!?」

 

司令室に奏と翼がやって来るも、弦十郎は顔だけを振り向かせて2人を静かに見れば、すぐに前を向いて2人の言葉に答えを差し出した。

 

「……………………未確認の騎士がたった10分でノイズの大群を倒したんだ」

 

「「ッ!!?」」

 

弦十郎の言葉に2人は言葉が出なかった。それもそうであろう。2人にとって未確認の騎士は認められない訳の分からない存在であり、越えるべき壁のようなものなのだ。そんな存在が、たったの10分で大量にいたノイズを倒したのだ。それを聞いた2人はさらに対抗意識を燃やすかのように拳を強く握り締めた。

 

今の2人が力を合わせて戦っても、ノイズの大群を10分以内に倒すことは不可能である。2人でなんとかお互いの弱いところを補い助け合ってはいるが、天羽奏は不完全適合者であり制限時間付きでシンフォギアを纏って戦っている、片や相棒の風鳴翼はシンフォギアの完全適合者であるがノイズを滅ぼす覚悟の奏とは逆で所々に覚悟が弱いところがある。

 

そのためお互いをお互い支えあっていても、弱いところが強く出ていれば、ノイズを10分以内に倒すことは全くもって不可能である。

 

「くそ…………あたしたちはあんだけいるノイズを10分で倒したことなんてない、どこまで規格外でいれば気が済むんだ」

 

天羽奏はそう言いながらモニターに映っているリュウケンドーを睨みながら、歯を食い縛り拳を強く握り締めた。隣にいる風鳴翼も悔しい表情をして、奏と同じくリュウケンドーを睨んでいた。

 

「……………………そうだ。それとお前らに重要なことを伝えねばならない」

 

実力の差を突き付けられて悔しがる2人を、顔を半分だけ向けて見る弦十郎。無言で2人を見ていたが、2人に伝えるべきことがあるため、体全体を向けて真剣な表情で2人に伝えた。

 

「なんだよ、おっちゃん。重要なことって?」

 

「一体なんなんですか?」

 

疑問を浮かべながら言う奏と翼に、弦十郎は1度頷いて、2人に重要なことを話し始める。

 

「今回、未確認の騎士を見ていて分かったことがある!未確認の騎士には感情があるようだ」

 

「「ッ!?」」

 

弦十郎の言葉に2人は驚きを隠せないでいた。それもそうであろう、モニターで見ていた時や直接接触したときも、未確認の騎士は抑揚のない声で喋っていた。だがそんな未確認の騎士が感情を持っていることに2人は驚いたのだ。

 

「未確認の騎士に喜怒哀楽という感情精神があるのかは分からん。だが、あの時の未確認の騎士には怒りを表すような不機嫌さが感じた。それを考えるなら奴には怒りの感情があるということ、だからお前ら2人に伝えておく、未確認の騎士との戦闘は止めておくんだ!下手に奴の怒りを買ってお前たち2人を殺されれば終わりだ!」

 

 

「ッ…………了解しました」

 

「分かったよ。おっちゃん」

 

弦十郎の強い物言いに、2人は返す言葉がなく、ただ了承の返事をしたが、天羽奏は拳を強く握り震わせながら人を射殺せるような鋭い瞳で、モニターに映っているリュウケンドーに闘志を燃やしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在俺達は自分の家へと歩を進めていた。ノイズの大群を始末した後、俺は無事、響と未来に合流することができた。因みに2人からはめちゃめちゃ心配したと、涙を流しそうな目で見られながら言われた。心配を掛けさせてしまったのは俺のため、俺はバツが悪そうな顔で後頭部の髪を掻きながら、2人に謝り安心させるように2人の頭を撫でた。

 

頭を撫でてやれば、2人は悲しそうな顔から一片、1輪の花が咲くような感じで、笑顔を綻ばせた。そんな2人の笑顔に釣られて、俺も笑ってお互い笑い合うも、ノイズの出現騒動のせいで今日のお出掛けは中止となったため、俺はお互い頷きあい、家に帰ることにした。

 

「それにしても、なんかすまんな未来。久しぶりに3人でのお出掛けだったのに、中途半端に終わっちまって…………」

 

「ううん、剣ちゃんが謝ることじゃないよ!?確かに久しぶりに出掛けられたのに中止になっちゃったのは悲しいけど…………3人で出掛けられて私は嬉しいよ!」

 

今日のお出掛けに少し悲しそうな顔をする未来であったが、すぐに笑顔を取り戻して俺達に楽しかったという笑顔を見せる。

 

「うん!あたしも楽しかったし、嬉しい!嬉しい!」

と、未来に続いて、響が屈託のない笑みで未来の隣に並んで言ってきた。

 

 

未来と響の笑顔に、俺自身も溜め息混じりで2人に笑顔を見せてある提案をする。

 

「それじゃあ、今日はお出掛けが最後までできなかったが、その途中を再来週の休日に再開させないか?再来週だったら俺空いてるからよ!」

 

俺がその提案を出すと、2人、特に未来の方は響と同じぐらい、いやそれ以上の笑顔を見せた。

 

「賛成!賛成!再来週空いてるなら、お兄ちゃんの言うとおり、再来週に再開させようよ!」

 

「うんッ!剣ちゃんが再来週大丈夫なら私もちゃんと空けておけようにしておくよ!」

 

2人は強く頷きながら、賛成の返事をしてくれた。2人の返事に俺も「じゃ、再来週にするか!」と言えば、響と未来は笑顔でまた頷いた。

 

 

 

「それじゃあここまでだね。剣ちゃん、響、またね♪」

 

そう言って俺達の親友小日向未来は手を振り背を向ければ、家に向かって走り出した。だが、今の未来の走り方は、上機嫌であるかを現すような走り方であった。そんな未来の後ろ姿を見て、俺は鼻でフッと笑う。

 

「未来の奴…………最初はあんなに落ち込んでる風だったのに、俺が再来週空いてるって言ったらあんなに元気になりやがった」

 

「それくらい未来も嬉しいんだよ。まさかお兄ちゃんの方からそんな提案してくるなんて思ってもみなかったっていうのもあると思うよ?あたしもそうだし」

 

「俺お前らにどういう風に思われてるのか気になんだけど、ちょっと聞くのが怖いから辞めとくわ」

 

響と喋りあい、それを一旦終えて俺達2人は家の方向に向かって歩きだす。俺達が無事に家に帰ってくれば、家でニュースを見た父さん母さん婆ちゃんが心配して俺達の元までやって来て、本当に心配したと言うのを現していた。

そんな父さん母さん婆ちゃんに俺と響は、心配かけてごめんなさいとしっかり頭を下げて3人に謝った。

そんな俺達に、父さん母さん婆ちゃんは首を横に振り、無事ならそれでいいんだと言って、俺達を家に上げてくれた。

 

(転生して思うけど、本当に俺みたいなイレギュラーには良すぎる家族だよな…………)

 

そんなことを心の中で思いながら、俺は我が家と家族の温かさを感じる。

 

 

 

 

家に上がったあと、母さんたちから「疲れただろうから、晩御飯ができるまで休んでて良いわよ」と言われた。せっかくの家族の厚意のため、無下にするのは酷いため俺はそれを了承し、今は自分の部屋のベットに倒れている。

 

「もう6時過ぎか…………外もすっかり暗くなっちまって、夜だな」

 

俺はベットに倒れ込んだまま顔を横に向け窓を見れば、もう外は真っ暗闇と言ってもいいほどだ。

 

「母さんたちには休んでって言われたけど、寝たら寝たでそのまま明日になりそうだからな。はぁ~、こういう時に言うべきことではないと思うが…………暇だ」

 

そう呟きながら俺は、枕元の隣に置いてあるモバイルモードのゲキリュウケンを握り締める。俺の顔の前までゲキリュウケンを持っていき無言で見詰める。

 

「………………………………」

 

無言でモバイルモードのゲキリュウケンを見詰める中、ゲキリュウケンが急に光り、頭痛が来るような勢いでノイズの出現場所を俺の脳内に映し出した。

 

「ッ!?……………………昼頃に出現したのに、こんな晩飯時間からも出現するって、どういうことだ?何か起ころうとしてるのか?」

 

だがそんな頭に浮かんだことを言っても仕方がないため、俺はすぐにベットから起き上がり、バイクのキーを持って小走りの速度で1階へと降りていく。そして家を出る前に、台所で料理をしている母さんに声を掛ける。

 

 

「母さん悪い、ちょっと息抜きにバイクで夜の町を走ってくるわ」

 

「えっ!?剣二、外に出て大丈夫なの?疲れてるんだから部屋で休んだ方がいいんじゃない?」

 

「部屋に居てもあんまりやることがないんだよ。だからちょっとバイクで一走り走りたいんだ!」

 

「そう…………?分かったわ、出るのは構わないけど気を付けてね。事故とか起こさないようにね!」

 

「おう、了解」

 

母さんから外出の許可を貰った俺は、すぐさま玄関まで行き靴を履いて「じゃあ、ちょっと出るわ!」と言って玄関を出る。玄関を出れば、すぐに倉庫まで行きバイクを引っ張り出して門から出せば、バイクに乗ってキーを挿し込んで回しアクセル全開でバイクを発進させた。

 

「頼むッ!間に合ってくれよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセル全開でバイクを発進させ、後少しの距離でノイズの出現場所へ到着しそうだった時である。

 

ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!

 

 

「チッ!?もう少しの距離だって言うのに、間に合わなかったか…………しょうがねえ!」

 

ノイズの出現の警報が鳴れば、周りにいた人々はシェルターに向かって走り出した。逆に俺はこのパニックを利用して、バイクを道路の端に無断駐車させバイクから降りて路地裏へ入る。

 

路地裏には入ったがすぐには変身せず、左ポケットに入れていたスマートフォンを取り出し、そこから母さんのメアドを出した。俺は素早く本文を打って送信した。本文は『シェルターに入ったから心配しないでくれ』である、何せ俺は今からノイズと戦うのだ。それなら家族の誰かにはメールを送っておかなければいけない、心配はされるであろうがメールをせずに心配されるよりかはマシだろう。

 

「さて、もう一度いくか。…………ゲキリュウケン!」

 

そう言って俺は、モバイルモードのゲキリュウケンを本当の姿にして、右ポケットに入れてあるリュウケンキーを出す。

 

「リュウケンキー、発動!」

 

『チェンジ、リュウケンドー』

 

「撃龍変身!」

 

リュウケンキーをゲキリュウケンに挿し込んで回し、ゲキリュウケンから変身できる声が出てくる。ゲキリュウケンに強烈な蒼白いエネルギー派が集まっていき、剣から蒼白の龍が出現した。

 

蒼白の龍がゲキリュウケンから出てきて空まで(のぼ)ると、空中で停止すれば、そこで1度吼え、俺の肉体目掛けて飛び込んできた。

 

俺に向かって飛び込んでくる蒼白の龍を体全体で受け止める。 

 

 

「ぐっ、うぅぅぅっ…………ハァッ!」

 

体全体で受け止めると、俺の体と顔全体に青いスーツと白い装甲が装着されれば、ここに《魔弾剣士リュウケンドー》が誕生した。

 

リュウケンドーに変身すれば、俺は右手で持っているゲキリュウケンを振って、右手を後ろに持っていき左手を前に向けて宣言する。

 

「魔弾剣士リュウケンドー!…………来神ッ!」

 

この宣言とともに、俺はノイズが出現しようとしているポイントに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動二課。

 

「司令ッ!未確認の騎士が現れました!?そのままノイズの出現ポイントに向かっています!」

 

「やはり来たか…………奏と翼の到着時間は後どれくらいだ?」

 

「2人が乗っているヘリの現場到着時間はおよそ10分です!」

 

「分かった。至急2人が乗っているヘリに通信を繋いでくれ!」

 

女性オペレーターの友里あおいが、リュウケンドー出現の報告を司令の風鳴弦十郎に報告すれば、弦十郎は素早く装者のノイズが出現したポイントの到着時間を聞けば、もう1人の男性オペレーターの藤尭朔也が10分だと告げる。その言葉に弦十郎は頷いて2人の乗っているヘリに通信を繋げるよう頼むと、藤尭が「分かりました!」と言って、ヘリに通信を繋いだ。

 

『どうしたんだよおっちゃん。なんかあったのか?』

 

『司令、いきなり通信なんてどうしたんですか?』

 

ヘリに通信を繋げれば、すぐに奏と翼の2人が出る。弦十郎もすぐに伝えられるように通信用のマイクに口を近付けている。

 

「お前ら2人に伝えることがあるんだ。よく聞け、今ノイズの出現場所に未確認の騎士が向かっている」

 

『『ッ!!?』』

 

「いいか、くれぐれも未確認の騎士とは戦うんじゃないぞ。未確認の騎士と協力してノイズを倒すんだ!…………いいか、もう一度言うぞ!くれぐれも未確認の騎士とは戦うな!未確認の騎士と協力してノイズを倒すんだ!倒した後も奴と戦うなんてことは考えるな!分かったな!」

 

『……………………分かりました』

 

『分かってるよ。おっちゃん』

 

弦十郎の言葉に、2人は渋々了承するように言ったが、きっとノイズとの戦闘が終わればリュウケンドーと戦うだろう。風鳴弦十郎も2人がリュウケンドーに戦おうとするだろうと内心分かっているも、(わざ)とそれに気付いていないフリをして最後に2人に告げる。

 

「2人とも…………気を付けろよ」

 

『りょ~かい』

『了解しました』

 

弦十郎の言葉に、奏と翼はしっかりと返答をしてそれを終わりに2人の通信も切れた。通信が切れれば弦十郎は、数分前からモニターでノイズとの戦闘を繰り広げているリュウケンドーに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらあぁぁッ!!!」

 

『!?!?!!?』

 

「今度はこれだ。ナックルスパーク!」

 

『『『『『!!?!??』』』』』

 

橋の近くで5分程前から俺は、出現した小型ノイズと激しい戦闘を繰り広げていた。最初はゲキリュウケンでヒューマノイドノイズを6体ほど葬り去り、そこから素早く一気にナックルキーを発動させマダンナックルを装備すれば、大量の小型ノイズを消し飛ばしてゲキリュウケンで斬り裂いていった。

 

「…………悪いが、人の命を脅かすてめえらノイズに俺は情けなんて掛けやしねえからな」

 

1度動きを止め、ゲキリュウケンをノイズに向けて俺は冷酷に言い放った。するとその時、かなり向こうからであるが、前方方面からヘリの音が聞こえた。

 

「!? ヘリのローター音!まさかあいつらか…………?」

 

俺がそう呟くも予想は当たり、前方方面から軍用ヘリがやって来て、ヘリの扉がガラッと勢いよく開けば、昨日の2人がヘリから飛び降りて歌詞か分からないものを歌うように口にした。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

青い髪の女と朱色の髪の女が歌えば、そいつらの体に機械の鎧が武装された。そして地面に着地すれば、青い髪の女は己の武器である巨大な刀を振り、朱色の髪の女も巨大な武器である槍を強く向けた。

 

「………………………………」

 

「未確認の騎士!?」

 

「昼頃はたっぷりとやってくれたようだが、今回はそうはいかねえぞ」

 

 

着地したあいつらを無言で見ていれば、あいつらも俺を見てなにかを言ったようだが、そんなものは俺は一切気にすることはなく、俺の目の前にいる小型ノイズへと目線を変え、近付いてゲキリュウケンで斬り裂く。

 

「ふんッ…………でぇぇぇぇあ!」

 

『!?!!?』

 

「せいっ!やあっ!はっ!らあぁっ!おわあぁぁたぁっ!」

 

『『『『『『『『!?!?!!?』』』』』』』』

 

ゲキリュウケンで多くの小型ノイズを倒していくと、俺の目にあの機械の鎧を纏った2人組の女が入り、俺の少し先にいた小型ノイズを数体葬った。

 

「ハァッ!」

 

「らぁッ!」

 

2人組の女は俺のことを気にすることなく、そのまま続けて小型ノイズの殲滅へと入った。2人組の行動に俺は心の中で考えを巡らせる。

 

(昨日は俺に襲い掛かってきたのに、今日は俺のことを見てはいたが、今は俺のことを気にせず、ノイズに集中している。まさか上の命令で俺には手を出すなとでも言われたか?…………だが、いくら命令されているとは言え、ノイズの戦闘が終わればあいつらはまた俺に襲い掛かって来るかもしれない、そうなる前にノイズの戦闘が終わったら退散するか!)

 

心の中で考えを巡らせてそう決めれば、俺はゲキリュウケンとマダンキーナックルを強く握り締めて、小型ノイズへと飛び掛かっていく。

 

「うおらあぁぁっ!!!」

 

 

 

「せあっ!…………これで、終了か…………」

 

目の前のクロールノイズを斬り裂いて、ゲキリュウケンの刃を肩に置いて一旦立ち止まる。そこからノイズの残りが居ないかどうか周りを見回したが、ノイズは1体も残っておらず、寧ろそこら中に炭素の塊がたっぷりとあった。

 

「ノイズとの戦闘終了」

 

「ま、こんなもんか」

 

青い髪の女と朱色の髪の女も、落ち着きを払いながら周囲を見回していた。

 

(…………さてと、ノイズがもう出現しないのなら長居は無用だな。あの女どもとも戦いたくはねえし、今のうちに退散するか)

 

念のために全方位を警戒したが、なんの気配もなかったため、心の中で決めてゲキリュウケンを下げて女どもに気付かれないように静かに動こうとした時である。

 

「逃がすと思っているのかよ!未確認の騎士!!」

 

「今日こそは逃がしはしない、神妙にしろ!」

 

俺が背を向けた瞬間、朱色の髪の女と青い髪の女が俺に向かってお互いの得物を向けてきた。その2人の行動に、俺は背を向けたまま顔だけを向けて内心では溜め息を吐くも、静かに伝えることした。

 

「…………昨日も伝えはすだ。俺の敵はノイズ、お前たち人間ではない」

 

そう言うも、朱色の髪の女は何かが気に入らなかったのか声を荒げて返す。

 

「うるさい!お前の言葉なんて関係ない、あたし達はお前のやり方が気に入らないんだ!」

 

「そう、そのような訳の分からない力でノイズだけを倒し、ただ静かに去っていく!貴様は正義の味方気取りか!」

 

この2人の言い方に俺は内心傷付いてしまったが、まあ2人の言い分も分からないわけではないが、リュウケンドーの力で人は傷付けたくはないし、それにノイズがもう居ないのなら俺のことを心配してる家族の元にさっさと帰って安心させてやりたい。

 

「…………俺の力は人を傷つけるためにあるんじゃない、人を助け守るためにあるんだ。それに、これ以上時間を無駄にしたくないんでな」

 

告げて俺を前に戻して、再び足を動かし始めた。

 

 

「~~~ッ!ふざけんなッ!」

 

「!?……………………」

 

朱色の髪の女は何故かキレて、武器である槍を強く握り締めて俺に振る。俺はその槍の一振りを避けるが、朱色の髪の女は手を止めず俺に狙いを定めて槍を連続で振るう。

 

「……………………………………」

 

だが俺は長年のノイズとの戦闘や得意のスポーツのおかげで、槍の軌道がよく見えるため難なく避けることができる。

 

「っこの、ちょこまかと…………当たれッ!」

 

俺に槍が槍が当たらない苛立ちか、朱色の髪の女は俺に勢いのある刺突を繰り出した。

 

「! ふっ!!」

 

朱色の髪の女が繰り出した刺突に対して、俺はすぐに右へと下がれば、女が繰り出した刺突は空気だけを破り、俺はその槍の隙を狙って右足を上げて勢いよく下ろした。

 

「ッ、なっ!?」

 

「……………………」

 

俺の右足を勢いよく下ろした結果、右足は槍の腹へと当たりそのまま槍はコンクリートへと沈んだ。俺の行動に驚いたのか、それとも槍が沈んだことに驚いたのかは分からないが、女は俺と槍を1度交互に見て驚愕の表情をした。

 

「奏!?このっ!」

 

青い髪の女は相棒である朱色の髪の女が危ないとでも思ったのか、一気に俺の左側へと距離を詰めて、持っている巨大な刀で凄まじく勢いのある斬撃を放った。その斬撃に対して俺は二の腕を盾にして、青い髪の女の斬撃を左の二の腕だけで受け止めた。

 

「なんだとっ!?防人の剣を受け止めただと!?」

 

「…………………………………」

 

俺は無言で2人の女を見ながら、右足で朱色の髪の女の槍わ槍を蹴飛ばし、青い髪の女の刀を左の二の腕で弾き飛ばした。

 

「うあっ!?」

「くっ!?」

 

そして俺は2人から距離を取れば、持っているゲキリュウケンをモバイルモードにして左の腰横へと掛ければ、リュウケンドーの腕を2人に構えてこう言い放った。

 

「仕方ない…………少し遊んでやる。来い…………ハンデ付きだ。徒手空拳で相手をしてやる」

 

「「!?!!?」」

 

俺の発言に、2人の女は驚愕を通り越した訳の分からないとでもいう顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動二課。

 

「くそっ、奏と翼め…………やはり未確認の騎士に戦いを挑んだか!あれほど戦いを挑むなと言っておいたのに!」

 

モニターで見ていた風鳴弦十郎は、拳で強く機器を叩くが、すぐに自分の後ろにいる信頼できる部下。緒川(おがわ)慎次(しんじ)に指示を出した。

 

「緒川!大至急翼と奏の元へ向かえ!もしあいつらが危機に陥ったらすぐに避難させるんだ!」

 

「了解しました!」

 

緒川は弦十郎の指示を聞けば、すぐにその場から消えた。まるでその動きからして忍者のように思えるほどに…………。

 

「翼、奏、頼むから無茶だけはするんじゃないぞ」

 

弦十郎はモニターで2人を見ながら、無茶をしないように呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしたちを嘗めてんのか!」

 

朱色の髪の女は怒りを全身で現したように、槍を両手で強く握り締めて俺に突撃してくる。

 

「そらあぁーっ!」

 

女は槍を横凪ぎに振るうが、俺はその攻撃を屈んで避け女との距離を詰めた。

 

「なっ!?」

 

「……………………」

 

「うあぁぁぁぁッ!?!!?」

 

女との距離を詰めれば、巨大な槍の持ち手部分を握り、逆上がりをするような感じで女を回転させた。結果、女はいきなりなことで逆らうことができず、地面に背を叩き付けてしまった。

 

「くそっ、やりやかったな」

 

「奏!?よくも奏を!はあぁッ!」

 

朱色の髪の女は苦の表情を見せ、青い髪の女は慌てたように動き出し、横一線で刀を振った。

 

「そんなっ!?」

 

「…………ふん、だぁぁぁあっ!!!」

 

「かはっ…………がっ!?」

 

「翼!?…………翼!大丈夫か!?」

 

横一線で振った刀を右の二の腕で防ぎ、そのまま流れるように右腕を動かし刀の峰のところを脇で挟み、刃の部分を手で挟むように持った。そして刀を挟んだこの右腕で女を引き寄せ、青い髪の女の鳩尾部分に目掛けて左上段蹴りを放った。

 

左上段蹴りを喰らった青い髪の女の体は、くの字になるかのように息ができない掠れた声を出して、女は少し向こうまで吹っ飛んでいった。朱色の髪の女は名前を呼びながら一気に起き上がり、少し向こうまで吹っ飛んだ青い髪の女の元まで走った。

 

「奏、私は大丈夫。寧ろ、未確認の騎士は私達相手に手加減をしているみたい」

 

「手加減だと…………くそっ、どこまでも嘗めやがって」

 

俺を見ながら何かを言っているようだが、俺にとってはそんなもの関係ない、て言うかとっとと家に帰って家族と響を安心させてやりたいため、俺はこの2人に向かってもう一度言う。

 

「もういいだろ?…………お前ら2人じゃ俺には勝てやしない。それに、俺はもう帰りたいんだよ」

 

「…………翼。あたしと一緒に同時に出てやるぞ」

 

「うん、分かった。あたしたち2人の戦いを未確認の騎士に見せよう!」

 

発言するも、2人の女はなにか小声で話し合ってるようだが、どうにもリュウケンドーの聴覚では聞き取れなかった。すると、2人組の女は俺に向かって全くもっての同時

で動き出し、同時にお互いの得物を振ったのであった。

 

「りあっ!」

 

「はあっ!」

 

「ッ…………!?」

 

2人が繰り出した同時攻撃を、俺は両腕をクロスさせて防いだ。だが、朱色の髪の女と青い髪の女は一気に俺の後ろへと回り、俺の背中を狙ってまた同時に武器を振るった。

 

「もらった!」

 

「そこだ!」

 

「…………まだだ」

 

「「なっ!?」」

 

俺の後ろへと回っての同時攻撃だが、2人の同時攻撃を俺は後ろを向いたままであるが、2人の女の武器を受け止めた。武器を受け止められたことに、女2人は驚愕の表情と声を出した。

 

 

驚愕している2人に、俺は軽い助言をすることにした。

 

「それなりに良い戦法だ。だが、攻撃の軌道が単調すぎる。それじゃあ受け止めてくださいと言わんばかりだぞ?」

 

そう言いながら俺は、女2人の武器を受け止めたまま元居た場所へと投げ戻すことにした。

 

「…………そらっ!」

 

「なっ…………おわあぁぁっ!?」

 

「くっ…………ああぁぁぁっ!?」

 

投げ飛ばされた2人は受け身も何も取れず、ただ地面に背面をぶつけたのだから。

 

「やれやれ、これだけ言っても分からないって言うのなら仕方ない、きちんと理解してくれるように少し痛い目にあって貰おうか?」

 

冷酷に小さな怒気を含めて言えば、女どもは冷や汗をかいたような青ざめた顔になり、俺はその一瞬の隙を見逃すことなく駆け出した。

 

「ッ!?!?」

 

「しまった!?」

 

「…………遅いっ!」

 

俺の怒気に怖じ気づいて動けなくなっていた2人は、駆け出したことに今ごろになって気付くも、対処できる距離ではなく俺は50%ぐらいの力を込めた正拳突きを放った。

 

「ッ! なんだと?」

 

正拳突きを放ったのだが、正拳突きが当たろうとした瞬間に女達がいきなり丸太の木へと変わったのだ。

 

 

「これは?…………忍者の術の変わり身の術ってやつだよな?ってことは誰かが来たってことだな」

 

丸太の木を放り投げて後ろを振り向けば、誰かは知らないが、スーツを着た優男が2人の女の腕を抱えてかなり後ろへと下がっていた。

 

「緒川さん!?何でここにッ!!?」

 

青い髪の女はスーツを着ている優男に顔を向けて、驚きの声で優男の名前を言って、ここに来た理由も聞いた。

 

「司令からの指示でお二人を助けに来たんです。案の定、未確認の騎士相手に苦戦を強いられたみたいですね」

 

「うっ!?それは…………」

 

「申し訳ございません」

 

「いえ、お二人が無事で何よりです」

 

優男はここに来た理由を答えれば、俺を見ながら女2人の現状を口にすれば女は2人は苦しい表情をして顔を沈める。そんな2人に優男は人の良さそうな笑みを浮かべた後、真剣な表情となって俺の方へと向く。

 

「2人から3人に変わっただけと言いたいが、お前のその足の運び方からして、かなりの技量…………実力を持っていると見るべきだな」

 

「あなたこそ卓越した観察眼をお持ちのようで、ただ高い戦闘能力を持っているだけではないようですね」

 

「「……………………………………」」

 

お互い言葉を出した後、俺達はお互いを無言で見合う。

 

 

無言の中俺は口を開いて、両手を広げてこう言った。

 

「これ以上は本当に時間の無駄であれば、無駄な争いあいにしかならないな…………ここらでおさらばさせてもらおうかな」

 

そう言って、俺は足を動かして橋のところまで行って手摺の上に立った。

 

「えっ!?」

 

「な、なんのマネだ!?」

 

「おい、まさかあいつ!?」

 

「…………じゃあな、バカども」

 

優男と2人の女が信じられないとでも言う声を出し、朱色の髪の女が想像したように、俺はさよならを告げて手摺から足を離して、そのまま勢いよく川へと身を投げたのだ。

 

「しまった!?」

 

「そのまま逃げる気か!?くそっ!?」

 

2人組の女が悔しそうな声を聞いたが、俺はそんな声を一切気にすることなく、川へと落ち川の流れに逆らいながら上流を泳いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた」

 

ザバァっと川から上がった俺は、愚痴を溢してリュウケンドーの変身を解除した。変身解除すれば、後頭部の髪を掻きながら俺は今居る場所を見回した。

 

「…………ここからバイクを停めたところまで走っていくと30分は掛かるな、そしてそこから家に帰るとするだろ。…………うわぁ~、響や父さん達がすんげぇ心配してるだろうな~」

 

その事を考えただけでゲンナリしてしまう俺だが、覚悟を決めて全力ダッシュでバイクを停めたところまで走り、バイクに乗って起動させればアクセル全開のスピード全開で走り出し、大急ぎで家へと帰った。

 

家へと到着すれば、一応インターホンを押して反応を待てば、ドタドタと大慌てをしたような足音が聞こえ響や父さん達が玄関を勢いよく開けた。玄関を開ければ響や父さん達はしばらく固まり、俺は頭を下げてこう言った。

 

「心配かけてごめん。ただいま」

 

俺がそう言うと、響や父さん達は笑って俺にこう返してくれた。

 

「「「「お帰り!」」」」

 

「無事で良かったよ。お兄ちゃん!」

「「「無事で良かったよ。剣二!」」」

 

そう返して両親と祖母と妹の響は、俺の無事を喜んで家へと上げてくれた。

 

 

その後俺は、母さんの美味しい晩御飯を食べ、風呂に入って寝間着に着替えれば、響のまだやってなかった宿題の問題集を丁寧に教え、自分の部屋へと入れば目覚ましを7時にセットしてベッドに倒れ込むように睡眠へと入ったのである。

 

to be continued.




次回予告。

昨日はノイズとの戦闘が2回もあった挙げ句に、また機械の鎧を纏った女どもの相手をすることになって散々だった。

いつもの日常の始まりだ。と言いたいところだけど、ノイズの出現は収まることはないから出動だ!

なのに機械の鎧を纏う女どもがやって来てまた俺に襲い掛かってきやがった!そんな中、朱色の髪の女は周りをよく見ずに俺の怒りを買いやがった!

朱色の髪の女ァッ!てめえはやってはいけないことをやったぜ!!
そして俺はあの力を使う!


次回!魔弾戦姫リュウフォギア!

燃えろ怒りよ!熱き炎となれ!

次回はみんなが待ってた力で突っ走るぜ!!!



3万文字を越えてようやく書き終えれました。ここまで長くなってしまい、本当に申し訳ございませんでした!!!
どうかこの作品を見捨てることはなく、お付き合いくだされば嬉しいです!
さて、そんな感じなのですが、前書きの報告はとあるユーザー様から許可を頂いた作品を描こうと思います。そしてそれと同時にリュウケンドーをもう1話書いて、それを書いたらダイレンジャーを書こうと思います。

よろしくお願いします!!!!!


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燃えろ怒りよ!熱き炎となれ!

また編集することになってしまい、戻したました。
本当に申し訳ございません。


まさかシンフォギアがグリッドマンやゴジラとコラボしていたとは。

そんなことより、更新遅くなってしまい誠に申し訳ございませんでした!?台風19号の被害が意外なところで出てしまい、片付けなどにかなり手間取ったり、自分自身色々とやるべきことがあったりでここまで更新が出来ませんでした。

本当に申し訳ございません!!!


今回は皆さまお待ちかねのアレが登場しますので、よろしくお願いいたします!


目覚まし時計の音が鳴った。

 

目覚まし時計の音ともに俺はベッドから起き上がり、目覚まし時計を止めた。

 

「……………………………………」

 

俺は無言のまま不機嫌な顔をしているが、1度立ち上がりタンスの前に行き、タンスの1番下の引き出しに手を掛け引いた。そこにはアホの神から送られた手紙と、妙な文字が書かれ三角と丸のマークが描かれた本を取り出す。

俺が取り出したこの本は、魔弾戦記リュウケンドーの物語の中でキーアイテムと言っていい《光のカノンの書》である。

 

「ふわぁ~あ…………」

 

俺はデカイ欠伸をしながら光のカノンの書を手に持ち、ベッドに座って光のカノンの書を開いた。リュウケンドー本編の光のカノンの書は、新しいマダンキーでカノン文字を出現させてマダンキーを使えるようにして光のカノンの書のページを作るのだが、俺に与えられた光のカノンの書は何日間かは分からないのだが、何時の間にやら3ページから5ページ辺りまでカノン文字が出て作られていることがあるのだ。

 

(まったく…………一体何をしたらそんなことができるのか、不思議すぎてしょうがない)

 

そんなことを思いながら、頭をガリガリと掻きながら新しく綴られた光のカノンの書のページを開くことにした。

 

 

「………………………………」

 

光のカノンの書を開いて無言で新しいページを読むも、すぐにそのページに目を向けた。そのページには今日の日付が書かれていたため、俺はそのページのカノン文字を音読した。

 

「! なになに…………“今日(こんにち)、リュウケンドーなる者、相対する存在に燃え上がる怒りの炎を燃やし、その者を叩き潰す”」

 

その文章を音読して読めば、俺は自分の顔を疑問へと変え思いっきり首を右方向へと傾げた。

 

「ん?一体どういう意味だ?リュウケンドーに変身して相対する者って言やあ…………あの機械の鎧を纏った2人組の女かノイズぐらいだが…………」

 

俺はそう言いながら、今度は心の中で考え始める。

 

(燃え上がる怒りの炎と言われても、ノイズ相手にいつも俺は怒りの炎を燃え上がらせて戦ってるし関係はないか?…………ならあいつらか?ま、確かにあいつらが俺を勝手に敵視する理由には腹が立つし、戦い方にも危険なところが多すぎる)

 

心の中での呟きを止めて、その最後を言葉に出すことにした。

 

 

 

「可能性として考えたくはないが、まさかあいつらに対して怒りの炎を燃やすんじゃないだろうな?」

 

なんだか本当にありそうで困る。あの2人組の女は本当に危険極まってしょうがない、例えるなら燃料を背負った特攻機と言っていいからな。

 

「あいつらの行動に怒りを燃やすことがないとは言い難いが、まあ燃え上がる怒りを立てないよう気を付けるとするか」

 

自分自身でそう決めて、俺は光のカノンの書の次のページを捲る。

 

「次のページは、“リュウケンドーになるもの、貴殿の行動次第で運命は変わりうる”…………?」

 

次の光のカノンの書に書かれていることが分からず、俺は再び首をコテンと傾げ疑問を浮かべた。

どういう意味なのかは分からないが、文章にまだ続きが残っているためそれを続けて読むことにした。

 

 

「“しかし、既に決定付けられた運命を覆すのは不可、そうしなければ始まらぬ、そしてその運命をどう受け入れどう活かしていくかは…………リュウケンドー、貴殿自身である”」

 

口に出して読んでみたが、その続きの文章の意味も分からず、俺はまたまた首を傾げた。

 

「どういう意味なんだよ…………俺の行動次第で運命が変わる?だけど決定付けられた運命を覆すことはできない、そしてどう受け入れてどう活かすかは俺次第って、なんなんだよ?それにそうしなけれゃ始まらないって……………………一体」

 

一旦口を閉じて顎に手をやり深く考えてみるも、全くさっぱり分からないため、俺は両手で髪を無茶苦茶にして両手を頭から離して言い放つ。

 

「考えてもしょうがねえ、とにかく今は出来ることをやるっきゃねえんだ!それに決定付けられた運命を覆せない訳がねえ!?俺は、人の命を死の運命から何度も救ったじゃねえかッ!ならその決定付けられた運命も、覆すどころか塗り替えてやらあ!!!」

 

俺はそう決意しながら、力強く光のカノンの書を握り締めた。決意に満ちた鋭い目付きのまま、俺は今日の光のカノンの書に出来上がった最後の隣のページへと目を向ける。

 

「“リュウケンドーになるもの、この日この時最強の相手をすることになるだろう。それとともに新たな出会いも果たす”ん…………?最強の相手?一体なんのことだ、その日に最強のノイズでも出てくるってのか?それに出会いって…………遂に俺にも恋人ができるのか?」

 

光のカノンの書に出来上がった、最後のページに綴られた文を読めば、またしても俺は疑問を口に出しながら頭で考え始めるも全くもって分からなかった。それとその後のことに描かれていた文章に、俺はちょっとした期待を持ってしまった。今のこんな状況でちゃんとした恋人ができるかどうかも分からんが。

 

 

 

それと俺が最初の文章に首を傾げた理由は……………………。

 

「俺を倒せるノイズなんて現れるのか?それか新しいノイズでも出てくるってのか?だけど、それでもなんか負ける気はしないんだけどな~」

 

俺がこう言うのは自惚れでも自信過剰でもなく本当のことだ。確かに昔はノイズと戦ってかなり苦戦したこともあったが、今となってはそれなりに負けることのない経験を積み、ノイズなんて片手で捻るほどとまではいかないが負ける気はしないレベルではある。それでも数の多さで来られれば厄介ではあるし、油断しないようきちんと警戒もしているが。

 

「ま、例えどんな敵が現れようとも俺が人間を守ることには変わりはない、この決意は嘘じゃないし背負う覚悟も貫く覚悟もできてる!」

 

俺はそう言いながら自分の顔の前に握り拳を作る。この拳には俺の強い覚悟と決意が秘められている、それを忘れないよう俺はこの拳を見詰める。

 

「……………………………………」

 

5分ほど自分の拳を見詰めれば、俺は膝の上に置いた光のカノンの書を閉じ、元の所にあったタンスの一番下の引き出しに戻す。そして俺は自分の体を一度伸ばし、体を伸ばせば着ている寝間着を脱いでいき、高校で使っていたジャージへと着替えた。

 

 

「さてと、ランニングする時間はないから今の時間からだと竹刀を振るぐらいだけど、それでいいか!」

 

そう言って俺は、洋服ダンスの取手に手を持っていき開ける。その中にある使い古された竹刀を手に取り家の庭へと出ていく。

 

自分で言うのもなんだが、俺は小中校ともに文武両道の学生であった。なので、きちんと勉強をして上位に入り運動も忘れることなくこなしていき、武道の大会でも上位入賞を果たした。

 

そのためこの竹刀は俺にとっての思い出の1つである。今にも壊れそうではあるが、この竹刀には俺のトレーニングに何度も付き合ってくれているため大切にしようと思う、そのためそろそろ新しい竹刀を買おうとも思う。

 

 

 

「ふぅー……………………」

 

外に出た俺は竹刀を両手でしっかりと握り、正眼の構えを摂りこの庭は既に戦場であり周りには敵しかいないという緊張感を持って、俺は竹刀を振るった。

 

「はっ!…………やっ!…………せいっ!…………だあっ!…………えあっ!…………むんっ!…………はあぁぁぁぁっ!」

 

………………………………………………………………。

 

………………………………………………………。

 

………………………………………………。

 

………………………………………。

 

 

「はあぁっ!…………でやあぁっ!…………うらあっ!…………ふっ!…………ふんっ!…………おらあぁぁっ!!!」

 

竹刀を振り始めてから、俺は一切休むことなく竹刀を振り続けている。しかし竹刀を振るだけではなく、時には拳を打ち出し時には回し蹴りをやる。全方位に一切の集中力を乱すことなくやっていく、そして体感的ではあるが経っている時間は凡そ一時間程度だろう俺はそれくらい家の庭でトレーニングに励んでいる。

 

「ふっ…………ふぅぅぅ、であぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「お兄ちゃ~ん。朝御飯出来たよ!」

 

そして竹刀を振るのを止め、俺は一歩後ろへと下がって竹刀を右手で持ち後ろに構え左手は威嚇をするように前へと向け、左足は左手と同じく前に出し右足は後ろへとやる。

前後に向けた足は踏み込みを入れながら重点を入れ、精神を一点に集中させ、意気込みを入れながらそのまま空気を斬り裂くように竹刀を振るった。

 

竹刀の振りをやれば、調度良いときに俺の妹の響がガラス戸を開けて朝飯ができたことを伝えて来た。

 

「そうか、分かった。すぐに行く」

 

伝えに来た響に返事をして、竹刀を振るい上に投げ左手でキャッチする。そして俺は家の中に戻ろうと歩を進めながら、トレーニングをする前に持ってきたタオルで流れ出ている汗を拭く。

 

「ふぅ~…………良い汗掻いたぁー」

 

「お疲れ様お兄ちゃん。それにしても毎日毎日トレーニングして、よく飽きないね」

 

「…………まあな、ノイズなんていう危ないもんが出てるって言うのに、今のところは安心安全に過ごしていけてる。でも、もしかしたらその安心安全がいきなり壊れちまうかもしれない…………そうなった時、響や未来、そして家族を守れるようにトレーニングしとかないとダメだろ?備えあれば憂いなし、だ!」

 

玄関から入ってきた俺を出迎え、響は俺の隣に並んで歩きながらそう言ってくる。「大変じゃないの?」と間接的に伝えているような響に、俺は大変じゃないことを伝えながら俺が何故トレーニングをしているかの嘘の理由も教えた。

 

俺がトレーニングする理由を教えれば、理由を聞いた響は口元を薄く微笑ませ、その後は俺に(にこ)やかな笑みを見せながら言ってきた。

 

「ありがとうお兄ちゃん。それじゃああたしもお兄ちゃんの手助けができるように体鍛えておこうかな?」

 

俺の力になりたいと言う響に、俺は鼻で笑って響のふわふわな髪をガシガシと乱暴に撫でた。俺がいきなり髪を撫でてきたことに、響は大慌ての悲鳴を上げる。

 

「ゆやあぁ~ぁっ!?!?なにすんのさ、お兄ちゃん!!?」

 

「妹がそんなこと気にしなくていいんだよ、そんないっちょまえなこと言うくらいなら自分の身は自分で守れるようにしろ。それなら俺も安心できるからな!なにせお前は他人のことばっかり気にして、自分のことは後回しにしすぎたからな。もう少し多めに自分のことを頭に入れとけ!」

 

「んむぅ~、仕方ないじゃん!?人助けはあたしの趣味なんだからッ!」

 

「周りをよく見ながら行動しろって言ってんだ!そうすりゃ最適な解答を得て自分への危険もなくなるだろ!ちゃんと自分を大切にしろ!…………んまっ、こんな話は終わりにして母さんの朝飯を頂こうぜ!」

 

乱暴に髪を撫でながら言い放つ俺に、響は口を尖らせ半目で俺を見ながら抗議するも、俺は響の髪から手を離し全くもっての正論を放つ。そしてこの話を切り上げ、俺は母さんの朝飯が並べられてるであろうリビングへと向かった。

 

 

 

「ふわぁ~あ…………眠い」

 

あの後、母さんが作った朝飯を食べ終えて俺は、すぐに大学の準備を終わらせ愛車のバイクを出して跨がり、大学に向けて発進させた。

 

そんで今は後少しで大学へ到着する距離のため、安全運転でバイクを動かしている。安全運転と眠りの時間が足りなかったため、ヘルメットの中で目尻に涙を溜めながら欠伸をした。運転中に欠伸をするのはとても危険が大きく危ない、安全運転で前の車ともそれなりの距離を取っているため大丈夫だと思うが、だが急に赤信号で止まって前の車にぶち当たったり欠伸のせいでバイクを横転させて大怪我をしてしまうかもしれな、そんなことにならないよう気を付けるに越したことはない。

 

 

安全運転で行けば大学が見えるところまで来た。するとその途中で、見知った後ろ姿を見つけた俺は大学の道程の曲がり角で曲がって2人に声を掛ける。

 

「よっ鈴、喜一、おはようさん」

 

「あ、剣二おはよう!」

 

「剣二、おはようございます!」

 

曲がり角の邪魔にならないところでバイクを停めて、幼なじみの鈴と喜一に挨拶をすれば、2人も俺に気付いて挨拶を返した。そして俺はバイクのエンジンも停めて、バイクを歩道へと上げて2人の隣に並んでバイクを押しながら同じ歩幅で歩き始めた。

 

俺がバイクを押しながら普通に並んで歩くその姿に、鈴と喜一は少しぎょっとした顔で聞いてきた。

 

「ちょっと剣二、バイク押しながらあたしたちと同じ歩幅で歩いてるけど大丈夫なの!?」

 

「ええ確かに、そのバイク結構な重さですよね?それを押しながら歩くなんて疲れませんか?」

 

鈴と喜一が言っていることはよく分かる、ただでさえこのHONDA CB400 SUPER FOURの重さは優に150キロを超えている。そんなものを押しながら歩くというのはかなり大変なことである。それでも新しく製造されているバイクで、重量200キロを超しているバイクもある。それを考えれば俺のバイクなんて軽い方なのではないかと思ってしまうが。

 

まあそんなことを気にすることなく、俺は普通に答えた。

 

 

「まあ少しは大変だけど、これぐらいは鍛えてるお陰でなんとかなってる。大丈夫さ」

 

歩きながら言い放つと、大学の校門前まで到着し俺は歩みを止めずこう言った。

 

「今日一日、頑張って学びますか」

 

「…………そうね!」

「…………ええ、学びましょう!」

 

鈴と喜一も同時に返答し、俺達はそのまま大学へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奏、翼…………俺は昨日、確かにお前たち2人に言った筈だぞ?お前たちは人類の希望だ。お前たちを失うわけにはいかないと…………なのに何故お前たちは俺の言葉を無視してまた未確認の騎士と戦った?」

 

場所は変わって特異災害対策機動部二課では、聖遺物《ガングニール》装者・天羽奏と、同じく聖遺物《天羽々斬(あめのはばきり)》装者・風鳴翼は、機動部二課の司令官を務め2人の保護者でもある風鳴弦十郎にまた問い詰められていた。

 

「「…………………………………………」」

 

弦十郎の問い掛けに2人は答えることが出来なかった。無言を貫く奏と翼に弦十郎はただ2人を見詰めるが、数秒程度で見詰めるのを辞めて言葉を発した。

 

「確かに上層部からも未確認の騎士の捕縛を言い渡されているが…………俺は言った筈だぞ?未確認の騎士とお前らには決定的に戦闘技能の差があると、下手に戦えばお前たち2人は負けるどころか奴に殺される確率だってあるんだ!それにお前たちは人類の希望なんだ!お前たちシンフォギア装者を失うことは人類の終わりを意味する!それにお前たちの役目は人類の脅威であるノイズから人々を守ることだ!?それを忘れているわけではないだろッ!!!」

 

「「ッ!!?……………………」」

 

弦十郎の凄まじい言葉の数々と威圧に、もはや2人はただ緊迫な表情をするしかなかった。しかし弦十郎はそんな2人の顔を見ながらも、一切迷うことなく2人が驚くことを口にした。

 

「そしてこれをお前らへの最終忠告とする。もし忠告を破れば、お前たちのシンフォギアを没収することになる!そして最悪の場合、お前たち2人を拘束し軟禁することになる!」

 

「なっ!?なに言ってんだおっちゃ!?」

 

「司令!それはあまりにも―――――!?」

 

弦十郎の言葉に驚いた奏と翼は立ち上がって抗議するも、それでも弦十郎は2人を抗議の言葉を消し飛ばす勢いで言い放った。

 

「なら未確認の騎士との戦いを止めるんだ!!!!!」

 

「「!!!??」」

 

その後で弦十郎は、なるべくトーンを下げた口調で喋り始める。

 

「俺だってお前たちにそんな手荒なマネはしたくない、だがもし何かの拍子で未確認の騎士がお前たちのことを殺しにかかれば遅すぎる。だから人類の希望であるお前らにもう一度だけ言っておく、未確認の騎士との戦闘は止めろ、もしこの忠告を破るようであれば…………お前たちのシンフォギアを取り上げ拘束、最悪軟禁することになる!分かったな…………?」

 

「ッ、分かりました。司令」

 

「くそっ、分かったよおっちゃん」

 

弦十郎の心からの思いに負け、奏と翼は頷くしかなかった。それを聞いた弦十郎は最後に2人にこの言葉を残して司令室を出ることにした。

 

「…………お前ら2人はもう少し冷静になって落ち着いて考えるんだ。でなければ、いつか守るべきものに対して取り返しのつかないことをしてしまうぞ!」

 

「それは…………」

 

「そうだけど…………」

 

弦十郎はこの言葉を最後に司令室を出ていき、弦十郎の言葉に2人の装者はもはや言葉を詰まらせるしかなかった。

 

 

 

「司令、果たして奏さんと翼さんのお二人は司令が言った言葉の本当の意味を理解してくれるでしょうか?」

 

「…………………………………………………」

 

司令室を出た風鳴弦十郎は無言で廊下を歩いていたが、その右斜め後ろで弦十郎と同じ歩幅で歩いている彼の部下、緒川慎二が口を聞いてきた。その言葉に弦十郎は足を止めそうになったが、止めず無言を返し足を動かし続けるも真剣な表情で緒川の顔を見ずに先程の言葉の返事をする。

 

「分からない…………だが、あそこまで言ったんだ。2人も下手に未確認の騎士に戦いを挑まないことを祈りたい。今の2人はもし取り返しのつかないことが起これば、立ち直れなくなる確率が高いからな!どうか俺の言葉がしっかりと伝わってくれていることを願うばかりだ」

 

弦十郎はその言葉を最後に口を閉じた。だが、顔は複雑な表情を表していたが、止まることなく足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎて、剣二が通う大学。

 

「ぐあぁ~~~。はぁぁ、やっと終わったぜ!なんか肩凝った気分だな」

 

今日の講義が全て終われば、俺は腕を伸ばしてその次に息を吐き、肩を解すように動かし始める。

 

「仕方ないですよ。講義も聞いて答えてノートに写す、それの繰り返しですから、肩だって凝った気になりますよ」

 

左隣に座っている瀬戸山喜一が、掛けていた眼鏡を手にとってレンズを布で拭いている。すると、俺の右隣に座っていた鈴が立ち上がり、こう言ってきた。

 

「講義も終わったし、今日こそは3人で遊びにいかない!剣二!今日は大丈夫よね!?」

 

少々鈴が鬼気迫るような勢いで聞いてきたため、俺は少し引きながら両手を出しガードするように頷きながら言葉を返す。

 

「お、おう、もちろん大丈夫だ。俺自身が言ったんだ!覚えてるし、きちんと約束は守るぜ!」

 

「…………やった!」

 

俺がそう返事を返せば、鈴は後ろを振り向き何か小声で言ってガッツポーズらしきものを取った。そんな鈴の行動に、俺は思いっきり疑問もたっぷり含ませながら口にする。

 

「なんなんだよ…………。一体?」

 

「…………相変わらずモテモテで羨ましいですね。剣二」

 

すると、喜一が何か含みがあるような言い方をして、冷たい眼で俺を見ていた。そんな喜一にも俺は疑問しか持てなくなり首を傾げるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームセンター。

 

今ゲームセンター内では、凄まじいまでの緊迫した空気が流れていた。そのため俺こと立花剣二は、ノイズとの戦闘をしているかのような集中力を発揮し、後ろにいる鈴と喜一は両手で握り拳を作って静かだが力のある応援をしている。さらにその後ろじゃ、学校帰りの学生や仕事終わりか休みの大人たちが、俺達のことを静かに見ていた。

 

「剣二!そこよっ!頑張って!」

 

「もう少しです!頑張ってください!もうそれを取るのに2000円近く出してるんですから!」

 

「ここだっ、頼む落ちろ!……………………いよっしゃあぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

「「やった!」」

 

俺の言葉とともに俺が狙っていた商品が落ち、その瞬間を見た俺は喜びの叫びを上げながらガッツポーズをして、後ろにいた鈴と喜一も同じく喜びながらお互いの手をハイタッチし、後ろにいたギャラリーの客と店員が拍手や歓声を上げた。

 

 

 

「…………プハッ、それにしてもこいつが手に入れられて良かったぜ~。2000円近い出費だったからな、あれ以上はさすがにキツすぎる」

 

「全くです。もし剣二があれ以上出してクレーンゲームをやるなんて言ったら、僕たちが全力で止めますよ!」

 

「本当にね。それにしても変わらないわよね剣二って、充分いい歳なのにまだそんなものが好きだなんて!」

 

クレーンゲームでの接戦の後、俺達は多くの歓声を浴びながらゲームセンターの休憩所で飲み物を飲んでいた。軽い祝杯みたいな感じだ。因みに俺はコーラで喜一は甘いカフェラテ、鈴はオレンジジュースを飲んでいる。お互いにあの接戦を話し合っているが、鈴が放った失礼な言葉に俺は口を尖らせ言い返す。

 

「ひでえこと言うんじゃねえよ鈴!特撮ヒーローは日本の宝で、俺達ファンにとっては心の支えなんだぜ!」

 

「はいはい、そうですね…………」

 

「なんだよ?冷てえなぁ~。良いじゃねえかよ!こいつだって俺らのためにノイズと戦ってくれてるんだからよ!」

 

鈴とそんな話し合いをしながら、俺は先程クレーンゲームで取った魔弾剣士リュウケンドーのフィギュアを見せた。俺以外の連中はこいつの名前を知らないため、【騎士のヒーロー】や【未確認の騎士】などと呼ばれている。

 

「それにしてもこのフィギュアすげえなぁ~。細かいところまで正確に作られてるし、それにしっかりと間接部分を動かせるように作ってあるし、それにきちんとカッコ良く出来上がらせている!まだこれが堪らん!」

 

「はいはい、そうね~」

 

「相変わらずヒーローになると…………剣二はテンションが上がりますね」

 

俺がそんな力説をすれば、鈴と喜一の2人は呆れたように言葉を発した。

 

ウオォォォォォォォォォッ!!!!!!!!

 

「ん?なんだ?」

 

そんなことをしていれば、いきなり勝ちどきのような騒がしい声が聞こえ、俺はそっちの方へと目を向けた。その方向はこのゲームセンターでもかなりの目玉で、数多くの種類がある格ゲーコーナーの所であった。俺が目を向ければ鈴と喜一もともに格ゲーコーナーの方へと目を向けた。

 

「うわっ、すっごい声!?一体なに?」

 

「なんでしょうね?格ゲーコーナーで誰かの勝利でも称えているんでしょうか?」

 

「…………気になるんなら行ってみようぜ!騒がしい格ゲーコーナーに!!」

 

俺は右手に持っていたコーラを一気に飲み干し、格ゲーコーナーに行くことを提案した。それに2人は同意をして、互いに持っていた飲み物を飲みきり、俺は格ゲーコーナーへと足を進めた。

 

 

 

「うわっ!すげえ人だかりだな!?なんかイベントでもやってんのか!!?」

 

俺が驚いた声を上げたのも仕方ない、なにせ今格ゲーコーナーには30人を越えた人だかりが出来ていたのだ。その現状に俺の隣にいた鈴と喜一も驚愕も含ませながら口を開いた。

 

「どうなんでしょうかね?ここのゲームセンターは5本の指に入るほど大きいですが、格ゲーのコーナーにしか集まらないイベントなんてやらないと思いますが?」

 

「確かにね。もしもやるんだったら、大々的に発表してイベントをやると思うのだけど?それにこの集まり方を見ると、剣二がクレーンゲームで取ろうとした時と状況が似てるんだけど」

 

鈴の言葉に俺は「なるほどね。言われてみりゃあ似てんな」と納得するが、仕方がないため近くにいた俺の前にいる数段歳上のおっさんに話を聞くことにした。

 

「あのすんません、この人だかり一体なんなんですか?」

 

「ああ、この人だかりかい。なんでも格闘ゲームでものすごい勝ち星を上げているのが居るみたいだよ。しかもその勝ち星をあげているのが女の子みたいで、そのせいで向かいの場で長蛇の列ができてるんだよ」

 

おっさんに聞いてみれば嫌な顔など1つもせず、俺に懇切丁寧にこの状況を教えてくれた。

 

 

「もうそろそろ、終わる頃だと思うよ」

 

「「「…………え?」」」

 

おっさんが言った言葉に、俺達は揃って格ゲーの方へと目を向ければ【WINNER】という勝利の音声が耳に入った。どうやら勝ち星を上げている女がまた勝利をしたらしく、相手側の男は頭を抱えながら唸った。

 

「くそっがあぁぁぁッ!!!負けちまったぁーっ!?!?」

 

「へへーん!ざまあみろ!」

 

相手の男が敗北の声を上げていれば、向かい側の女は自分の勝利に誇りを見せていた。しかし俺はそんな女の勝利の声を聞けば、そちらの方へと目を向けるが人だかりの多さと格ゲーの機材のでかさで女の顔が見えなかった。

 

 

「なら今度は俺が相手だ!」

 

「いくらでも掛かってきなよ。4~5分で終わらしてやるから」

 

「嘗めやがって!!」

 

次の男がドカッと椅子に座り女の相手を宣言するが、女は相手をからかうように挑発的な言葉を放ち、その言葉に男は激昂し格ゲーのキャラをさっさと選び女に勝負を挑んだ。

 

(あ~あ…………なにしてんだか、いくら勝ちたいって気持ちがあるにしても簡単に挑発に乗りすぎだろ。冷静さを失っちゃ勝てる戦いも勝てねえぞ)

 

相手の男の行動に心の中で指摘するも、結果は変わることなく女の勝利だ。本当に4~5分で決着を付け、相手側の男は床に手と膝を着けて真っ白になっていた。

 

女の方が一体どれだけの勝ち星を上げたのかは分からないが、これを見ている周りの連中は「誰か勝てる奴居ねえのかよ?」や「勝てる奴なんて居ねえだろ」などと負けることを想定した話し合いをしていた。

 

俺自身もこれ以上あの女に勝ち星を上げさせるのは何やら腹が立つため、俺は右のポケットに手を突っ込みポケットに入っている100円玉を取り出し、次の奴が座る前に言い放った。

 

 

「待ちな、その勝負俺が預かった!お前に負けた奴らやこれから挑む奴らの想いを背負って俺がこの女に勝ってやるぜ!」

 

俺が大きな声で言えば、しばらくの間ゲームセンター内の時間は止まったようになったが、すぐにドッと沸き出し声援を送るものやブーイングを散らすものそれぞれが現れる。因みに鈴と喜一は唖然とした顔をした後、すぐに俺への応援へと回った。

 

因みにリュウケンドーのフィギュアは、なんとかバックに入った。

 

対戦側の格ゲーの席へと行けば、俺の前に次の相手をする男が前に立ち止まってきた。これを見た俺は、めんどくせえと思いながらもこいつの言葉を聞こうとする。

 

 

「おい待てよ。次は俺が相手をするんだ!でしゃばったマネするんじゃねえ!」

 

「でしゃばってるねえ…………そう思われるのは仕方ないけど、別にでしゃばってはいねえよ。それにこれまで見てるから分かるはずだぜ、ここに並んでるあんたらじゃあいつには勝てねえってことぐらい。どうだ?ここはいっちょ俺に託してみねえか!」

 

「はぁ、好きにしろよ。負けたら俺を含めてここにいる奴らが容赦しねえぞ」

 

「お任せを。木船に乗ったつもりで頼ってくれ!」

 

「…………なんか急に不安になってきやがったな」

 

男は納得して俺に席を譲り負けるなと諌め、それに俺も軽い感じで答えてやれば、俺の答えに不安を感じながら後ろへと行った。

 

俺は含み笑いをして、人差し指と中指に挟んでいる100円玉を格ゲーの硬貨入れに投げ入れ、格ゲーをスタートさせた。俺の動作を見た周りの観客は「おおーっ!!!」と感嘆の声を上げた。

 

 

「さぁぁてと、準備はいいかい勝ち星上げてる女。…………俺に負ける準備はよ?」

 

指の骨を鳴らしながら椅子に座りキャラを選んでいくと、女の方も余裕な声を出しながら俺に話し掛けてきた。

 

「へー、随分と自信があるんだな。そっちこそ負けたときの言い訳考えとかなくていいのかよ?」

 

「安心しな、こう見えて俺はこの格ゲーをやり込んでたからな、負けることは絶対にねえ!」

 

(それにしても、本当につい最近に聞いた覚えのある声だな?)

 

女の台詞に俺は自信たっぷりの宣言をしながら心の中である疑問を出すも、気にせずにこの格ゲーで一番得意のキャラを選んだ。そして俺が得意のキャラを選べば、格ゲーが戦いの始まりをカウントする。その間に俺は相手の女にレディファーストを譲ることにした。

 

「ああそうだ。先制攻撃はそっちで構わないぜ、レディファーストだ。いくらでも攻め込んできな」

 

「…………言ってくれんじゃねえか!」

 

台詞に女は軽く怒りながら格ゲーのスタートとともに、女が選んだキャラを動かし始め俺に先制攻撃を与えてきた。

 

 

「よっ、ほっ、はっ、と言っての…………よよいの、よい!しょっと!」

 

繰り出してきた攻撃に対して俺は、全てのキャラが持つガードモーションの捌くや防ぐをやって、全ての攻撃をノーダメージで対処していった。

 

「こなくそっ!?」

 

「そんな攻撃をやっちまったら、がら空きだぜ!」

 

「んなっ…………!?」

 

女が怒りのあまりにキャラで繰り出した強攻撃に対し、俺はこのキャラが持つカウンターの投げ技で女のキャラを投げ落とした。その動作に女は驚嘆の声を出し、観客も「すげえ!」や「マジかよ!?」などと女と同じく驚嘆の声を上げた。

 

 

「それじゃ、今度はこっちから行くぜッ!!」

 

「なっ!?…………くそっ!?」

 

操作キャラを攻めさせてきたことに女は驚くがすぐにキャラの防御の動作をするが、それに俺はジャンプをして後ろに回れば打撃コンボのコマンドを繰り出した。

 

「ッ!しまった!?」

 

「まだまだッ!」

 

「ああッ!!?…………」

 

打撃コンボを繰り出せば、そのまま投げ技のモーションに入り女が操作しているキャラを再び投げ落とした。

 

「さっ、まだまだこれからだろ!」

 

「くそっ、負けるか!」

 

女が操作しているキャラが起き上がれば、今度は正面から攻撃を繰り出すことにした。女の方も負けじと攻撃を繰り出してくる。今画面では、ガードモーションなしでの攻撃の打ち合いが繰り広げられている。応援をしながら、この一戦を見ている観客たちはそれぞれに言葉を出した。

 

「おいおいすげえな、格ゲー内であれだけの戦いなんて中々見られるもんじゃないぜ」

 

「ああ、大会レベルもんだぜ!こんなもん見れるなんて俺ラッキーだな!」

 

「一体どっちが勝つんだろうな!?」

 

ドキドキしながらそんなことを言うギャラリーに、俺の後ろにいる鈴と喜一がひそひそ声で話し合う。ひそひそ声で話し合うところ悪いが、この話し声は俺に聞こえてしまっている。

 

「ねえ瀬戸山くん、どっちが勝つと思う。やっぱり私は剣二が勝つと思うんだけど?」

 

「どうでしょうかね?確かに剣二の方が体力が半分もあり相手に多めのダメージを与えていますが、このゲームには必殺技があります。それを喰らってしまえば剣二の負けは確定してしまいますから」

 

そう。喜一の言う通りこの格ゲーには必殺技があり、それを喰らってしまえば俺の負けは確定してしまう。それに俺と相手の女が操作しているキャラは、既に必殺技ゲージが満単のためいつでも繰り出せるのだ。しかしこの格ゲーで必殺技はそうそう出していいものではない、必殺技ゲージは簡単には溜まらないのもあれば、必殺技を繰り出すタイミングというのもあり、そういのが大切なためこの格ゲーは以外と難しいのだ。

 

「! ここだっ!」

 

『『『!!?』』』

 

「あたしの勝ちだ!」

 

そんな説明をしていれば、女が大声を出して操作キャラの必殺コンボを繰り出しやがった。タイミングも合っているため俺の操作キャラはその必殺コンボを受けてしまうだろう。それを見たギャラリーたちは「ああ、負けたか」「結局ダメなんじゃねえかよ」「なんだよ期待させやがって」などと落胆の声を上げている。女の方は勝利を確信した不適な笑みをしてるはずだ。

 

だが俺は落胆の声を受けながらも、俺は女が使っているキャラの必殺コンボの最初の一撃を喰らうこの瞬間に、ジョイスティックを上左にやり5つあるボタンを右下から順に押していった。その瞬間俺のキャラが女が出した必殺技コンボを弾き返し、逆に俺の操作キャラが必殺コンボを繰り出した。

 

「なっ…………!?」

 

「ええぇっ!?」

 

俺が必殺コンボを繰り出したことに女とギャラリー達は驚きの声を上げ、結果的に俺の操作キャラが勝利して格ゲーの画面には【KO】の文字が映し出され、次に俺の画面には【WINNER】の文字が映った。この番狂わせに格ゲーコーナーの空気はまた一時的に止まり、俺はそんなことを気にせずに、含み笑いをして言ってやった。

 

「どうよ、これがこの格闘ゲームにある隠し裏技コンボだ!」

 

俺がそう言ってやると、一時停止していた空気が一気に動き出し周りの連中は歓声を上げた。

 

「「「すげえ~!!!!!」」」

 

「俺初めて見たよ!このゲームの隠し裏技コンボ!?」

 

「ああっ俺もだ!本当にあったんだな!?」

 

「なあこれ大会じゃないよな!?格ゲー大会の最終決戦じゃないよな!!?」

 

などとギャラリーの連中が騒ぎ始めた。

 

隠し裏技コンボと言うのは、この格ゲーのそれぞれののキャラが持つカウンターの必殺技である。又の名を裏必殺技コンボとも言うのだ。

これを発動するにはギリギリの条件が必要であり、相手が放つ必殺コンボの一撃を受けた瞬間に、そのキャラが持つコマンドを操作すれば隠し裏技コンボが発動するのだ。

因みに隠し裏技コンボのことはこの格ゲーを作った会社が発表したが、しかし隠し裏技コンボを発動させるコマンドは発表されていない、なんとか自分で見つけろと言うのだ。俺は偶然このキャラが発動させる隠し裏技コンボを見つけることができ、今ではこの格ゲーではこのキャラで無双状態と言ってもいい。

 

 

「俺の勝ちだ。そういうことで、さっさとその場所から退きな。俺も帰るとするかね…………!?」

 

スマホで現在の時間帯を確認すれば、そろそろ帰らなければならない時間の為、俺は荷物を持って椅子から立ち上がり最後に対戦側の女の顔を確認しようと思い確認すれば、その対戦相手の女の顔に俺は小さいながらも驚きの声を発しそうになった。

 

(あいつらはあの機械の鎧を纏ってノイズと戦っているアイドルじゃねえかよ!?なんでこんなところに居るんだよ!?てかなんで周りの連中はそれについて騒がねえんだ。まだそれほど有名じゃねえのか?)

 

どうして俺がこいつらのことをそんなに分かっているのか疑問になるだろう、まあその理由は簡単なことだ。大学の講義中に昨日未来が言っていたツヴァイウィングについて調べた、調べてみれば2人の名前や年齢、ツヴァイウィングの結成理由などが出てきた。

そしてツヴァイウィングのアイドルの2人の名前が《天羽奏》と《風鳴翼》と知った瞬間、確か俺に喧嘩を売ってきた朱色の髪の女の名が奏と呼ばれ、青い髪をした女の名が翼と呼ばれていたため、俺は完全にこの2人だと確信してしまった。

 

「………………………………」

 

俺はこいつらがここに居ることに驚いたが、その反応を悟らせないようなんとか普通の表情をして、ゲームセンターを出ることにした。ゲームセンターを出るため、俺は後ろにいる鈴と喜一に声を掛けた。

 

 

「鈴、喜一、終わったから帰るとしようぜ!」

 

「そうね。そろそろいい時間だし、帰ろっか」

 

「僕も親のうるさい小言は聞きたくありませんし、帰りましょうか」

 

俺がそう言うと鈴と喜一は笑いながら頷き、2人と一緒に並んでゲームセンターから出ようと動けば、いきなり後ろから俺にドデカイ声が向けられた。

 

「待て!勝ち逃げなんてするんじゃねえ!もう一度あたしと勝負しやがれ!」

 

案の定、声の主は朱色の髪の天羽奏という名前の女だ。その女がなんか怒りの形相みたいな顔で俺を睨み付けながら言ったのだ。その女の行動に俺はフッと鼻で笑い、右腕を上げて拳を作れば、右手の甲の場所を左手で撫でながら朱色の髪の女に言ってやった。

 

「腕磨いて出直してこい、それと門限あるから無理だ。じゃあな!」

 

言って俺は右手の指2本出して右目を隠して振る。それをやれば、俺は鈴と喜一と一緒にゲームセンターを出ていく。女の方はなにやら俺のことを憎々しげに見ていたが、それを俺はどこ吹く風と言わんばかりに無視して去っていく。

 

 

 

「……………………ぷはっ、いや~快勝!快勝!」

 

ゲームセンターを出て家に帰ろうと思った俺なのだが、もう少し時間があるためゲームセンターの近くにあるフードコートで軽い食い物と飲み物を買い、今はベンチに座って格ゲーでの勝利を祝っている。

 

「むぐむぐむぐ、いや~それにしても負けたときのあの女の顔と来たら面白かったぜ!」

 

「剣二、そういう失礼なことを言うのはどうかと思いますよ。君の人間性が疑われてしまいますから」

 

「でも相手の子も失礼じゃなかった?なんか敵を見るような目で剣二のこと見てたし」

 

「まあ、それはそうですけど」

 

「負けたから悔しいだけだろ。気にすることじゃねえって!もぐもぐ、うーん!唐揚げうめっ!」

 

唐揚げを食べながら先程のことを言うと、喜一がそのことについて俺を注意し、鈴はあの朱色の髪の女の行動に憤慨しており、しかし俺はそんなことを一切気にせず唐揚げをまた1つ口に入れる。

そうやっていると、急に足元の特に脛の辺りがくすぐったくなり、(なんだ?)と思い左足の方に目を向けてみた。

 

「あ…………お前」

 

「クゥゥ~ン…………クゥゥ~ン」

 

目を向けてみれば、俺の足元には薄汚れながらも白い毛並みを持った野良の仔犬が、俺の足から脛まで匂いを嗅いで脛に顔を擦り寄せていた。

 

「おいおいなんだお前。こんなところで何やってるんだ?」

 

そう言いながら俺は、足元に顔を擦り寄せている白い毛並みの仔犬を両手で持ち上げた。持ち上げてみれば仔犬は俺のことをじっと見ながら、舌を出して「ハッハッハッ」と息を上げる。

 

「なんだお前、腹減ってるのか?」

 

「ワン!ワンワンワン!」

 

仔犬になんとなく聞いてみれば、仔犬はその通りだとでも言うように鳴き出した。しかし俺は首を横に傾げて悩む、なにせ今俺のところにあるのは唐揚げだ。唐揚げを犬にあげるのは一応大丈夫だが、あげすぎたり塩分や油が多すぎれば病気になってしまうため危ない、下手をすれば病気になってしまうかもしれないため危険性が高すぎる。

 

「どうすっかな~………………あ、そうだ!」

 

悩んでいた俺だが、すぐに良い妙案を思い付き仔犬を地面に戻し、隣に置いてあるバックを開いてこの中にあるものを取り出す。

 

「これならお前でも普通に食べれるだろ!」

 

俺が取り出したもの、それは塩分も糖分もない普通の食パンである。犬にはパンを与えても大丈夫だと言われている、それでも与えていい量がありその量はおやつ程度だ。

それ以上あげすぎれば色々と危なければ、塩分か糖分のあるパンを食べさせれば危険すぎることがあるため気を付けた方がいい。

それにこいつは野良の仔犬だから、食パンを2枚半ぐらい与えても大丈夫だろう。そう考えた俺は、購買で買いながらも食べなかった食パンの封を開けて食パンを与えた。

 

「ほら、これでも食え。これなら腹にも悪くないだろ?」

 

食パンを与えてやれば、仔犬はフンフンッと鼻で何度か嗅げば、そのまま一気にパンにかぶり付いた。パンにかぶり付けば、そのままガツガツと食パンを食べ進めていき2分程度で1枚を食べ終え、そして休むことなく2枚目の食パンにかぶり付いた。仔犬のその凄まじい食欲に、俺は軽く笑い3枚目の食パンを半分にしていく。

 

「ははっすごい食欲だな、そんなに腹減ってたのか?」

 

言いながら半分にした食パンを仔犬の前に置いてやれば、鈴と喜一がさらに俺の近くにやって来た。

 

 

「剣二、何やってるんですか!?そんなにパンを与えたら危ないじゃないですか!?」

 

「そうか。こいつ野良みたいだし大丈夫じゃないか?」

 

「わあぁ!可愛いわねこの仔犬。どうしたの?」

 

「ん?ただ俺が飯持ってないかやって来ただけだよ」

 

喜一は俺を注意し、鈴は手を仔犬に向けて聞いてきた。俺はのらりくらりと言った感じで、2人に答えてやった。すると喜一は仔犬を見ながら口を開いた。

 

「…………それにしても、また捨て犬ですか。最近よく増えてますよね」

 

「まあな…………この時代だからって言うのもあるのかね。だがいくらなんでも無責任すぎるだろ」

 

「ねえ誰かこの子飼えない?私のところはお兄ちゃんが犬アレルギーだから飼えないし」

 

「飼いたいところですけど、僕のところは両親が共働きですから飼うのは不可能ですよ。剣二はどうです?」

 

「…………悪いけど俺も無理だよ。ただでさえ母さんや婆ちゃんに迷惑掛けてるってのに、これ以上余計な負担掛けられねえよ」

 

「「「………………………………」」」

 

飼えるか飼えないかの話し合いをするが、俺全員この仔犬を飼えることは不可能であり、このまま放っておくことしかできなかった。

 

「俺らに出来ることと言えば、飼い主を探してやることだが、そんなこと今は出来ないだろ」

 

「…………うん、そうだけど」

 

「最悪ですが、また明日この仔犬に出会えることを祈りましょう。その時はこの子のために、飼い主を探してあげましょう!」

 

「ああ、そうするしかない。…………ごめんな」

 

「クウゥゥ~ン?」

 

話を終え、俺は悲しい顔をしながら仔犬の頭を撫でてやると、仔犬は食パンから口を離して可愛らしい顔を傾げた。これを最後に俺達は自分の荷物を持って家に変えることにした。

 

 

「本当に…………ごめん!」

 

歩きながらも仔犬の方へと振り向き、ただ謝罪の言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏side

 

「ああっもう、腹立つなあの男!!!」

 

「奏落ち着いて。ここお店なんだからあんまり騒いだら迷惑だよ」

 

「…………だってよぉ~翼」

 

あたしは苛立ちながらゲームセンターないを歩いていれば、それはもちろん周りの連中にも目を向けられてしまうがあたしはそんなことも気にすることなく、ついついこの怒りを発散するために叫びそうになるが、そんなあたしを相棒の翼があたしを宥める。

 

 

何故あたしたちがゲームセンターに居るのかは理由がある。おっちゃんの厳しい叱りを受けた後、どうにもモヤモヤとした心が身に纏いあたしはそれを振り払うため、暗い顔をした翼と一緒にゲームセンターへとやって来た。

ゲームセンターへとやって来たあたしは、こういう娯楽を知らない翼を引っ張り回しながら一緒に楽しんだ。そして最後はあたしが大得意とする格闘ゲームをやって大量の勝ち星を上げていたと言うのに、いきなりあたしを倒すと宣言した男が現れ、あたしはそんな男をコテンパンにしようと思ったが、逆にコテンパンにされ勝ち逃げもされて苛立っているのだ。

 

 

そんなあたしを宥めてくれる翼にあたしは口を尖らせながら言葉に詰まってしまう。もちろんあたしが怒っている理由は、あたしから勝ち逃げをした男にあった。

 

そんな時だ。

 

 

『ちくしょお~!?今日もこのフィギュア取れないなんてよー!!!!』

 

『はいはい、今日もご苦労様。小銭もなくなったし帰るとしようぜ』

 

『お前一体このフィギュア取るのにどんだけ金使ってんだよ?』

 

『一万はとっくに越えてるよ!だってしょうがねえだろ!欲しいんだよ。この騎士のヒーローのフィギュアを!!』

 

「「!?…………ッ!」」

 

少し奥から聞こえてきた言葉にあたしと翼は、お互いの顔を見合わせて頷き、奥にあるクレーンゲームの場所まで走った。その途中で項垂れている男を2人の男が挟んで慰める姿を見た。

 

「ッ!?これって…………」

 

「なんだよこれ…………!?」

 

クレーンゲームの1つを見てあたしと翼は言葉を失った。クレーンゲームの中にあるその1つには、あたしたちが倒すべき敵の未確認の騎士のフィギュアがデカデカとクレーンゲームの中にあったのだ。

 

それを見たあたしはみるみると怒りが込み上げてきて、周りのことなど構わず近くにいたゲームセンターの店員の胸ぐらを掴んで叫んだ。

 

「うわあぁぁっ!?」

 

「おいお前!あれはなんだ!?」

 

「あ、あれってなんのことですかお客様!!?」

 

「あのクレーンゲームの中にあるフィギュアのことだ!?」

 

店員の言葉に対し、あたしはクレーンゲームに入っている未確認の騎士のフィギュアを人差し指で指した。そのことについて店員は苦しい顔で説明し始めた。

 

「ああ、あの騎士のヒーローのフィギュアのことですか?あれはですね。今騎士のヒーローはとてつもなく流行っているため、フィギュア作りの人達に頼んで作ってもらったんですよ。そしたら今バカみたいに売上げが出ているんですよ!」

 

「そんな理由でこいつを売り出してるのか!?」

 

未確認の騎士のフィギュアが出ている理由を聞けば、あたしは怒りのあまりさらに店員の胸ぐらを掴む力を上げた。

 

(訳の分からない理由でノイズと戦い、あたしらのことをなんとも思っていない、未確認の騎士がこんな風に思われてるなんて許せねえ!)

 

あたしがそんなことを心の中で思っていれば、胸ぐらを掴まれていた店員が必死に口を開いて言い出した。

 

 

「い、一体何なんですかお客様!!?騎士のヒーローは僕達を命を懸けて守ってくれているんですよ!あなたに何かあったのかは知りませんが、もうやめてください!!!」

 

「ッ!?なんだと…………!」

 

店員の言葉に腹が立ったあたしは、右手の拳で店員を殴ろうとした時。

 

「奏やめてッ!!!」

 

「!? 翼…………」

 

店員を殴ろうとしたその手に、翼が必死にしがみついて止めていた。右腕にしがみつきながら翼必死にあたしを言葉を掛けてくれた。

 

「奏の気持ちはよく分かるけど落ち着いて!ここはお店の中だし、その人が悪い訳じゃないでしょ!?」

 

「…………そうだな、そうだった……………………悪かった翼」

 

翼の言葉に冷静さを取り戻したあたしは店員の胸ぐらを離す、胸ぐらを離されたことに店員は空気が来たことに「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!」っと蒸せ混む咳を放った。

 

「…………本当に悪かった!!??」

 

店員に必死の叫びで謝罪して頭を下げ、あたしはこの場から逃げるようにゲームセンターを早歩きをする。

 

「あっ!奏待って!?」

 

そんなあたしを翼は駆け足で追い掛けてくる。それでもあたしは相棒である翼の方には振り向かず、凄まじい形相でただ進んでいく。

 

(見てろよ未確認の騎士!出てきたらその余裕な行動を崩してやる!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!!」

 

あの後は駐車場で鈴と喜一と別れ、肉の所沢にも寄ることはなく、真っ直ぐと我が家へと帰った。家に入れば、一番先に俺のことを出迎えへかれたのは、我が家にとってのムードメーカー件トラブルメーカーの妹である響だ。

 

「お兄ちゃんお帰り!今日は結構遅かったね」

 

「ああちょっとな、色々あって幼なじみの鈴と喜一と遊んできたんだよ」

 

「へぇー、お兄ちゃんがよく話してる幼なじみの鈴さんと喜一さんと遊んできたんだ。そう言えばお兄ちゃん!そろそろあたしに鈴さんと喜一さん紹介してよ!あたしお兄ちゃんの幼なじみに会うの楽しみにしてるんだから!」

 

「ああ、そうしたいところだが、お前がトラブルメーカーすぎて会わしたくないんだよ!お前が起こすトラブルにあの2人を巻き込みたくねえんだよ!」

 

「何それ!?お兄ちゃんあたしをなんだと思ってるの!!?」

 

響に鈴と喜一と会わすのは危ないと言ってやれば、響は少し怒った顔で自分をなんだと思ってるのか聞いてくれば、俺は嘘偽りなくハッキリと答えてやる。

 

 

「笑顔が可愛く元気一杯だが、人助けを趣味としながらもさらなるトラブルを起こすこともある。目が離せないおバカ自慢の俺の妹!立花響だろっ!」

 

「最初誉めながらも、最終的にあたしのこと問題児として見てるじゃんそれッ!?」

 

「全く持ってその通りだよ。そう言われたくなきゃも少し自分の行動力を考えてろっていつも言ってるだろ!お前は本当にフォローしている俺や未来の気持ちが分かっているのか!!」

 

「分かってるよ!フォローしてくれてお兄ちゃんと未来には本当にお礼しかないよ!」

 

「そう思ってるのなら俺達の気苦労を減らしてくれよ。下手すりゃ寿命まで縮んでるかもしれないんだぞ…………今日の晩飯ってなんだ?」

 

「何度も聞いてるし分かってるよ。もう…………今日のご飯はね野菜の天ぷらだって!なるべくスッキリと揚げようってお母さん張り切ってたよ!」

 

「そうか!それじゃあ荷物部屋に置いて、母さんが作ってくれた天ぷら食べるとするか!」

 

再び話続けていって、俺は今日の晩飯がなんなのかを聞けば、響は今日の晩飯のメニューを知っており教えてくれた。野菜の天ぷらだと知った俺は、笑いながら部屋へと向かおうとする。

 

「うん!そうしよう!…………そう言えばお兄ちゃん、なんかバックが朝の時より膨れてる気がするんだけど、なにか入ってるの?」

 

「おっ、それに気が付いたか響。実はな今日は嬉しいものを手に入れることができたんだよ。…………じゃーん!これだ!」

 

バックが大きいことに疑問を抱いてきた響に、俺は満面の笑みで答えながらバックの中に入っているお宝を取り出した。そのお宝を見た響も俺と同じく満面の笑みを返してくれた。

 

「お兄ちゃんこれって!騎士のヒーローのフィギュアだよね!!?あのノイズと戦いながら私達のことを守ってくれてる!!!」

 

「ああそうだ!ゲームセンターのクレーンゲームにあってな、それを今こうして手に入れたって訳だ!にしてもすげえな~体の細部まで完全に再現してるんだからな!」

 

響とそんな熱弁をしていれば、丁度良いときに父さんも帰ってきたため、立花家全員で母さんが作ってくれた美味しい夕飯を食べた。

 

 

 

夕飯を食べた後は響の宿題を分からないところだけ見てやり、分かるところは自分でやれと伝えて俺は風呂に入り、風呂から出ればパジャマに着替えて軽い柔軟体操をやって、家族全員が寝たのを確認もして俺も就寝に入ろうとしたときである。

 

「チッ、やっぱり来やがったか。だったら一気に炭素の山にしてやるだけだ!」

 

そう言い放ち、俺は動きやすい私服へと着替え、モバイルモードのゲキリュウケンをその手に持ち、部屋の中にある靴を履いて窓から気付かれないようコッソリと抜け出した。

 

「っと……………………」

 

屋根から誰も居ないことを確認した俺は、一気に飛び降りて地面に着地し、すぐにノイズの出現ポイントへと駆け出した。

 

(確かノイズの出現場所は既に使われていない廃工場近くだったな、その周りには民家があった。なら俺が囮になってあの場所から引き離すだけだ!)

 

そう思いながらも、俺はもう1つの懸念すべき事項を頭に浮かべる。

 

(頼むからあの機械の鎧を纏った女ども、今日ぐらいは俺の邪魔をしないでくれよ!)

 

そう祈りながら、俺はノイズが出現しようとしている場所に全速力で向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!

 

 

機動二課。

 

「司令ッ!ノイズが廃工場の付近に出現を確認しました!種類は小型ノイズのみ!数は数百体にも及びます!」

 

「やはり今日も出たか。未確認の騎士はどうだ?」

 

「いいえ!未確認の騎士はまだいません」

 

「よし、奏!翼!今すぐに出撃だ!言っておくがくれぐれも未確認の騎士には戦いを挑むんじゃないぞ!」

 

「分かっています司令、任せてください!」

 

「ああ任せろ、おっちゃん!」

 

弦十郎の指示に2人は強く頷き、急いで司令室を出た。

 

「2人とも、頼むからこれ以上心配を掛けさせないでくれ」

 

弦十郎は本当に奏と翼を心配している顔をしながら、そんなことを呟いた。

 

 

司令室を出た2人は走りながら、軍用ヘリポートに乗せるエレベーターに向かっている、並んで走りながら風鳴翼は天羽奏に顔を向けて、心配そうな顔で声を掛けた。

 

「ねえ奏、お願いだから今日は落ち着いて戦って。私も一緒に戦うから、今日の奏なんだかいつもの奏じゃなくて怖いんだもん」

 

「翼…………」

 

翼の言葉にあたしは言葉が出せなくなるが、すぐ翼に笑顔を向けて頷き言う。

 

「分かってる。それにあたし1人じゃ未確認の騎士には勝てやしないさ、だからこそ2人であいつに勝とう翼!」

 

「うんっ!!奏!!!」

 

この話し合いを最後に2人はエレベーター前に着いて、エレベーターに乗って軍用ヘリポートへと行く。

 

しかし2人は知ることはない、もし少しでも天羽奏と風鳴翼に、しっかりと周りを見る冷静さを持っていれば、2人はリュウケンドーの凄まじい力を受けることもなかったであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!

 

 

「ゲキリュウケン!リュウケンキー発動!」

 

『チェンジ リュウケンドー』

 

「…………撃龍変身!」

 

現場に近くまで到着した俺は、直ぐ様モバイルモードのゲキリュウケンを本当の姿にして、リュウケンキーを発動しゲキリュウケンに差し込んで回し、ゲキリュウケンからリュウケンドーに変身する龍を呼び出し、俺は魔弾剣士リュウケンドーに変身した。

 

 

「とおっ!…………ノイズ、こっちだ!」

 

『『『『『!?!?!!?』』』』』

 

「魔弾剣士リュウケンドー!来神!!!」

 

リュウケンドーに変身すれば、変身した場所から1回転のジャンプをしてノイズが出現した場所まで飛び、ノイズに視線を集めて決めた。

 

 

「先制攻撃だ行くぞッ!はあっ!」

 

『『『!?!!?』』』

 

「まだまだ、ナックルキー発動!」

 

『マダンナックル』

 

「来いっ!マダンナックル!…………ふっ、連続ナックルスパーク!!!」

 

『『『『『『!!?!!?』』』』』』

 

先制攻撃でゲキリュウケンを振るって3体のノイズを葬り去り、俺は動きを止めることなくマダンキーホルダーからナックルキーを抜き取り、ゲキリュウケンに差し込んで回し魔法陣を出してマダンナックルを呼び出した。

 

魔法陣から呼び出されたマダンナックルを手に取れば、前に転がって前方周辺にいるノイズに向かって、ナックルスパークを撃ち放つ、それにより6体の小型ノイズが一瞬のうちに炭素の塊に出来上がった。

 

 

(それにしても…………また小型ノイズのヒューマノイドノイズとクロールノイズだけ、一体どうなってるんだ?大型ノイズが出ないでもう1ヶ月以上だ。なにかあるのか?)

 

俺は休むことなくゲキリュウケンを振るって小型ノイズを始末していくが、最近のノイズの出現に俺は疑問を覚え考えるも、結局のところ俺みたいな奴では何も(ひらめ)かないため、とにかく出現した小型ノイズを蹴散らしていくことを決めた。しかしそれでも、小型ノイズしか出てこないことには疑問だけしか出なかった。

 

「…………おわぁたあぁーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未確認の騎士がいつの間にか出現していました!そしてノイズとも既に戦闘を開始しています!」

 

「なんだと!?…………よしっ、俺は今すぐ奏と翼に連絡をする。2人が到着するまで後どのくらいだ?」

 

「お二人が現場に到着するのはもうすぐ、最低2分後には現場に到着します!」

 

「分かった。奏、翼、聞こえるか?」

 

未確認の騎士が現れたと言う部下の報告を聞いた弦十郎は、直ちに人類の希望である天羽奏と風鳴翼の2名に連絡を入れた。

 

 

『ん?どうかしたのかおっちゃん?』

 

「ああ、ノイズの出現場所にやはり未確認の騎士が現れた。お前たち2人にもう一度伝えておくぞ!くれぐれも未確認の騎士との戦闘は止めておくんだ!もしこれを破れば、お前たちのシンフォギアを没収し最悪の場合拘束し軟禁することになる!俺もそれだけはしたくない、気を付けるんだぞ!」

 

『分かっています司令!』

 

『大丈夫だよおっちゃん!』

 

そんな2人の返事であるが、それでも弦十郎は2人が本当にリュウケンドーに戦いを挑まないかという不安が過り、もう一度だけ忠告に出た。

 

「いいかっ、しつこいようだが絶対に未確認の騎士に戦いは挑むな!もし下手に挑んでお前たちを失えば、それこそ俺達人間の終わりなんだ!それを忘れるんじゃないぞ!」

 

『もちろんだよ。あたしだって命が惜しいからな!それにしてもおっちゃんは心配性だな~!』

 

『大丈夫です!私達が最優先に守るべきものは人の命、そのためにシンフォギアを纏っているんです。未確認の騎士とは決して戦いません』

 

「…………そうか、くれぐれも油断はするなよ」

 

『おう!』

『はい!』

 

弦十郎は奏と翼の返答に少し違和感を感じだが、2人に注意だけを即し、奏と翼の2人はしっかりとした返事をして通信を切った。

 

 

 

ヘリコプター内。

 

扉を開けば、地上には大量の小型ノイズと、それを相手にしている魔弾剣士リュウケンドーであった。その場面を見ていた2人は、お互いの顔を見合わせ同時に頷き。

 

「歌うぞ、翼」

 

「うん、行こう奏」

 

そう言って、天羽奏と風鳴翼の2人はヘリから飛び降り、歌を歌った。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「数だけが自慢の雑魚が鬱陶しいんだよ!回転()りだ!さらにナックルスパーク!」

 

『『『『『『『『!?!?!?』』』』』』』』

 

『『『『『『『『!?!!??』』』』』』』』

 

小型ノイズの数の多さにキレて、俺はゲキリュウケンを力強く握り締め回転しながら周囲にいる小型ノイズを倒し、さらに回転を続けながらマダンナックルを向けてナックルスパークを撃ちまくって、周囲にいる小型ノイズどもを蹴散らしていった。

 

「はっ!どんなもんだ!!」

 

回転を止めて足のふらつきもなく立ち上がりを見せ、小型ノイズどもに啖呵を切った。

 

その時である。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「! この歌は!?奴等か!!!」

 

この歌が聞こえてきたため、俺は歌が聞こえた方向へと顔を向ければ、あの奏と翼と呼ばれた朱色の髪の女と青色の髪の女が歌いながら降ってきて、その身に髪の色と同じ機械の鎧を纏った。

 

「ふっ!」

 

「はっ!」

 

朱色の髪の女と青色の髪の女は、それぞれお互いの得物を振ってポーズを取り、一気にノイズ目掛けて動き出した。

 

「らああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

(…………まあいい、ノイズを全滅させることが先決だ。もし奴等が襲い掛かってきたらそん時はそん時だ)

 

2人は俺には目も暮れず、ノイズに向かって武器を振るっていった。俺はノイズと戦いながらあの2人組を見ながら思うが、そんなものは三の次以上にして、ノイズとの戦闘に集中する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼side

 

「はぁぁぁっ!せいっ!やあっ!はあぁぁぁぁぁあ!!」

 

「ふんっ!たあっ!であぁぁ!らあぁぁぁぁぁっ!!」

 

「うおりぃやあぁぁッッッ!!!!!」

 

ノイズとの戦いに凡そ20分程が経った。私と奏はお互いの武器で懸命にノイズを葬っていくも、その向こうでは未確認の騎士が持っている剣で大振りを咬まして周囲のノイズを一気に葬り去っていった。

 

「ナックルスパーク!!!」

 

さらには手に装備している手甲のような武器で、稲妻を纏ったエネルギーを放ってノイズ倒していく、未確認の騎士のその異常な戦いぶりに怒りを覚える。

 

(未確認の騎士、お前は何故そこまで強いんだ?一体どうやってそれほどまでの強さを手に入れたんだ!?)

 

私は未確認の騎士を睨みながら観察した。未確認の騎士の戦い方は異常に尽きる、時に細かい動きをしたり時に大雑把な動きをやっていると思えば、その実確かな動きで敵を倒し、時に跳躍などの動きを見せてノイズを倒していき、ある時は鍵の形をしたもので強大な力を繰り出す。

 

私は未確認の騎士のその戦い方を見ながら、ただ自分の胸の中に怒りの感情が出てきていた。

 

 

私、風鳴翼は幼少の頃からある時は剣となりある時は盾となるため、人類の守護を目的とする防人として育てられてきた。それはとても辛く厳しいものであった、だがそれでもそれが自分に枷られた使命であるためなんとか乗り切っていった。

 

防人になるのを続けていたときのこと、未確認の騎士と言う全てが謎に包まれ、ただ人間を守りながらノイズという人間の敵を倒すまさに正体不明の化け物が現れたのだ。奴はただ人を守りノイズを倒せば去っていく、まるでテレビの中に居るような正義のヒーローだ。

 

だけど、私にはその姿が許せなかった。もし未確認の騎士にも我々のように正義を胸にして戦っているのなら、私達と共に力を合わせて戦えばいい、それなのに未確認の騎士は協力など提案せず、ただ1人孤独に戦うことを宿命付けられているかのようにその強大な力を振り下ろしていた。

 

 

(未確認の騎士よ、お前は本当になんなんだ?)

 

そんな言葉を心の中で呟いて、私はクロールノイズ種の中で手足がオミットされたオタマジャクシ型のクロールノイズを斬り裂けば、今ここにいるノイズの数は15体以下になり、これぐらいの数になれば私は奏と顔を見合わせ頷き、未確認の騎士が右の腰からまた鍵のようものを取り出した瞬間、私は未確認の騎士に切りかかったのだった。

 

「!?!!??」

 

「ッ!?やはり防ぐか、防人の剣を!」

 

私は未確認の騎士の反射速度に驚愕を表しながらも、ただ未確認の騎士を睨みながら、未確認の騎士との戦闘を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機械の鎧を纏った女どもと力を合わせノイズを叩いていけば、残りの小型ノイズの数が15体以下になったため、俺はマダンキーホルダーからファイナルキーを取り出そうとした時であった。

 

「やああぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ッ!!むんっ!!!」

 

機械の鎧を纏った女どもが居る方向から、妙に気合いと殺気が籠った声が聞こえたため、俺は全力を持ってゲキリュウケンで防ぐように振った。

 

その行動は大当たりで、青色の髪の女が俺に向かって得物であるデカイ刀を振るって襲い掛かって来たのであった。俺は難なくその斬撃を受け止め、青色の髪の女とは今鍔迫(つばぜ)り合い状態になっている。だがそんなものは気にせず、俺はいきなり襲い掛かってきた青色の髪の女に尋ねた。

 

「お前…………いったい何のつもりだ?」

 

「未確認の騎士!!今日こそは覚悟してもらうぞ!!!」

 

尋ねてみれば、女は未だに俺のことを敵視している台詞を言って、自分の武器である刀にさらに力を入れた。しかしそれでも俺は難なく受け止めるも、そこから青色の髪の女は刀を激しく振るい凄まじい連撃を繰り出していく。

 

 

「おっと、危ない」

 

女が繰り出す斬撃の連撃を、上手くゲキリュウケンで捌いていくも、この場所が廃工場と民家の間のため少々やりにくいのもあり困ってしまう、そのため戦いの場所を変えようと思い、俺は向こう側にある廃工場に向かって駆け出した。

 

(とりあえず残りの小型ノイズは、あの朱色の髪の女に任せるとして、一旦戦いの場を変えてやる!)

 

「むっ!逃がさんぞ未確認の騎士!!!」

 

俺が駆け出したことに、青色の髪の女はすぐに追いかけようとして走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変です司令ッ!翼さんが未確認の騎士に戦いを挑みました!」

 

「!? 翼か奏、どちらかが未確認の騎士に戦いを挑むと思ってはいたが、まさか翼の方だったとは。至急翼に通信を入れて戻れと伝えろ!…………どうした藤尭?」

 

オペレーターの友里あおいが急いで報告してきたことに、司令官である弦十郎は苦虫を噛み潰したような顔になるも、すぐに部下に通信を入れろと言うが、もう1人のオペレーターである藤尭朔也が汗を流しながら思い表情をしていたため、それを目にした弦十郎は藤尭がどうしたのか聞くことにした。

 

弦十郎の台詞に、藤尭はただ起きた事態を伝えることだけであった。

 

 

「ダメです司令、遅すぎました。翼さんは誘い込まれました。未確認の騎士は向こう側にある廃工場で動きを止めました」

 

「なにっ!?まさか翼は誘い込まれたのか!!?」

 

「そうとしか考えようがありません」

 

「くっ、大至急奏に連絡を入れて、翼の救助に向かえと伝えろ!」

 

「司令無理です!今奏さんは残りのノイズの相手をしているため、この場を動くことは不可能です!」

 

「ぬっ…………頼む翼、危険が迫ったらすぐに退却してくれ!」

 

相手が未確認の騎士であるため、本当なら弦十郎はここで最適な指示を出すはずなのだが、下手に退却されて未確認の騎士に追い詰められて翼を殺されてしまえばお仕舞いであるため、とにかく弦十郎は彼女が無茶を起こさないか祈るばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃工場の中に入れば、俺は足を止めて青色の髪の女の方へと向き直った。すれば、青色の髪の女も足を止めて周りを見回せば、すぐに緊迫した表情となり何かを察した。

 

「まさか、わざと私をここへ誘い込んだのか!?」

 

「…………ここなら暴れてもそれほど迷惑も掛からないだろ。仕方ないから付き合ってやるよ?」

 

そう言えば、青色の髪の女にとって俺の言葉は挑発とでも受け取ったのか、凄まじい勢いで俺に斬り掛かってきた。

 

「~~~!嘗めるな未確認の騎士!!!」

 

「……………………シッ!」

 

しかし俺は女の斬撃を簡単に受け止め、また鍔迫り合い状態になるも、青色の髪の女はすぐに鍔迫り合いから離れ、今度は大量の斬撃を繰り出してくる。

 

「ふっ、はっ、やっ、ほっ、とっ」

 

そこから俺と青髪女との激しい剣戟が繰り広げられていくが、女は苦しそうな顔をする反面、俺は軽い感じで受け流したり捌いたりしている。だがその行為がさらに女の戦闘行動に火を着けたのか、俺から勢いよく距離を取れば、俺に向かって踏み込みを入れた斬撃波を撃ち放った。

 

「余裕の態度もそれまでだ未確認の騎士、喰らえッ!!!」

 

 

【蒼ノ一閃】

 

青色の髪の女が持つ刀から青い斬撃波が撃ち放たれ、それがものすごいスピードで迫ってきた。だが俺は、その斬撃波を見ながらゲキリュウケンを持つ右腕を後ろに向けて、左手は鉤爪でもやってるかのように前に向けて、足も左足は前に持っていき右足は後ろに持っていき、体は斜めにした態勢を取る。

 

そして精神を集中させながら左足の爪先に踏み込みを入れて、力のある一撃の斬撃を繰り出した。

 

(その目に焼き付けろ!これが俺の剣の才だ!)

 

「はあぁぁッ!!」

 

息を一気に吐き出すような力のある斬撃を繰り出した結果、青色の髪の女が放った斬撃波は半分に斬られ、その半分になった斬撃波は廃工場の壁を貫き破って消えた。

 

「そんな!?防人の剣を防ぐだけではなく、斬撃を斬ったと言うのか!?」

 

「…………………………………………」

 

「ッ!?…………くっ!?」

 

斬撃波を斬られたことに驚きを隠せない青色の髪の女に向けて、俺は無言でジャキ!っという音を経てながら女にゲキリュウケンを向けた。その行動に、女はただ苦しい表情をしながら後退るだけであった。

 

俺と女2人の固まった空気が流れる中、その空気を破るようにこの廃工場に乱入者が現れた。

 

「翼!!!」

 

「!? 奏!!?」

 

【STARDUST∞FOTON】

 

今度は朱色の髪の女が現れたことに驚く青色の髪の女であるが、すぐに後ろへと下がれば朱色の髪の女は俺に向かって槍を投げ付けると、その槍が1本から30本程増えて俺に迫ってくる。

 

俺は朱色の髪の女が投げて大量に増えた槍を簡単に避けようとしたその時である。

 

ある1つの命が、俺の目に入った。

 

「クウゥゥ~ン」

 

(!? 嘘だろ!くそっ!!)

 

俺はその声が耳に入り、朱色の女の攻撃でその命が奪われてしまうのが目に入った俺は、その攻撃を受けるのを躊躇いもなく動き出した。

 

ドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!

 

「ぐうっ…………!?」

 

俺はその命を右手で抱え込み俺の胸元まで持っていき、この小さな命を守るために全力で踏ん張った。

 

 

「ハァ…………ハァ…………ハァ…………そうか、ここはお前の住み処だったのか。悪かったなお前の大切な場所を荒らしちまって」

 

「クウゥ~ン!クゥンクゥン!!」

 

「ははっ心配してくれんのか?大丈夫だよ、この程度なら俺には掠り傷だ!ほら、ここは危ないから早く離れな。俺は大丈夫だからよ」

 

「…………クウゥゥ~ン」

 

俺が守ったのは、今日の夕方頃に出会った薄汚れながらも白い毛並みを持った仔犬である。どうやらここはこいつの住み処だったらしく、俺達が争っていたせいで確認のために出てきたようだ。

 

 

女が繰り出した大量の槍の攻撃に苦しい声を出してしまうが、リュウケンドーの仮面越しから平気な優しい声を出して悲しそうな鳴き声を出す仔犬を安心させる。そして右手を地面に置いて仔犬を離してやり、ここから離れることを即す。仔犬はまた心配そうな鳴き声を上げながら1度俺に振り返り、前を向いてこの廃工場から急いで離れていった。

 

「行ったか。ふぅぅぅ……………………」

 

仔犬がこの場から離れたことに一安心した俺だが、それでも許されざることが起きたため俺は静かに立ち上がり、2人組の女を見る。

 

「…………なんで未確認の騎士は奏の攻撃を避けなかったの?あれだけの実力があれば、奏の攻撃なんて簡単に避けれたはずなのに」

 

「それはあたしにも分からない。まさか避けないことに何か意味でもあるのか?」

 

どうやら2人組の女は俺の行動に疑問しか抱いていないようで、その理由が分からずも武器を構えながらしっかりと警戒を置いていた。だが今の俺にはそんなものは一切関係なく、朱色の髪の女の行いに激しい怒りが沸き起こり、鋭い睨みを効かせて止まることのない凄まじい殺気を体全体から生み出した。

 

「一体なんだッ!?未確認の騎士から放たれてるこれは?殺気なのか!?」

 

「体が動かない…………それどころか、体中が恐怖で打ち震えている!?」

 

朱色の髪の女と青色の髪の女は、俺が体中から放つ殺気に動けなくなっていたが、俺はそんなことなど構わず、ただ胸の中に疼く怒りの感情を叫び声にして張り上げた。

 

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「「ッツ!?」」

 

喉が枯れるほどの叫び声を上げたことに、2人組の女は

恐怖の顔をするも何とか負けることがないように、互いの武器をしっかりと握りしめるも、その手と足は恐怖のあまり震えていた。

 

そんなものには一切構うことなく、俺は朱色の髪の女を睨みながら彼女に言う。

 

「朱色の髪の女ァッ!てめえは俺の目の前でやってはいけないことをやったぜ!!」

 

「…………は?」

 

「視野を広くせず、ただノイズを殲滅すること、いや暴力をも越えた危険な力を振り回して、かけがえのないものに気付けないお前達に、その力を持つ資格もなければ戦場に起つ資格もありはしない!」

 

「いきなり、何を言ってるんだ?」

 

「力を持つことへの責任とその覚悟、そしてその恐ろしさを知れっ!」

 

女たちは俺の言葉に疑問の声しか出すことが出来ず、俺は叫びながらマダンキーホルダーを回して、使うべきマダンキーに止まれば一気に引き抜き、そのマダンキーを発動させる。

 

「ファイヤーキー!発動!」

 

『チェンジ ファイヤーリュウケンドー』

 

「火炎、武装!」

 

炎の絵が描かれたマダンキーを発動させ、ゲキリュウケンに差し込んで回せば、ゲキリュウケンが音声を発し炎が生まれ、(つるぎ)から炎の龍が舞い上がった。

 

「炎の…………!?」

 

「ドラゴンだと!?」

 

ゲキリュウケンから炎の龍が出てきたことに驚く2人だが、そんな驚きなど無視をして俺は炎の龍が降りながらこの身に纏って来るのを待つ、待っていれば炎の龍は俺の体の周りを旋回し、次第にその炎が俺の体を包んでいきリュウケンドーの頭部にファイヤーキーと同じ絵柄が装着され、白い鎧部分は赤い炎の鎧へと変わっていった。

 

姿が変わった俺は、ゲキリュウケンを前に突き出してこの姿の名前を言った。

 

「ファイヤーリュウケンドー!来神!!!」

 

「「未確認の騎士の姿が変わった?」」

 

「ああぁぁぁ!!!俺の怒りが!熱き炎となって、燃え滾る!!!!!」

 

この言葉とともに、俺は2人組の女との戦闘を再開させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏side

 

あたしの攻撃を受けきったと思えば、未確認の騎士はいきなり訳の分からないことを言い出したと思えば、鍵のようなものを剣に差し込んで回し妙な音声が鳴り出した。その瞬間剣から炎の龍が現れば未確認の騎士を包み込んで、凄まじい熱波を放った。

 

「熱っ!?」

「くっ!?」

 

凄まじい熱波にあたしと翼は顔を手で隠すように防いで、熱波が収まり未確認の騎士が居た方に顔を向ければ、そこに居たのは白い体の未確認の騎士ではなく、炎のような赤い体をした未確認の騎士がそこに居たのだ。

 

「――――――――――――!――!!!」

 

未確認の騎士は何かを言うが、それはあたしたちにとっては聞き取れず何を言ったのかが分からなかった。そして未確認の騎士はこう言ってあたしたちに飛び掛かってきた。

 

「ああぁぁぁ!!!俺の怒りが!熱き炎となって、燃え滾る!!!!!」

 

「ぐうぅっ!?」

 

未確認の騎士が剣を振ってきたため、あたしはガングニールの槍で全力を持って防ぐが、あまりの異常な力の強さにあたしは膝を着いて苦悶の表情を浮かべ口を開く。

 

「ぐうぅぅ、一体どうなってるんだ?炎の力を纏ったと思ったら、急に力が強くなってやがる!」

 

『奏!?一体何が起こったんだ!?』

 

「おっちゃん!?今説明してる時じゃないんだよ!?それにそっちからでも分かるだろ!」

 

未確認の騎士の剣を懸命に防いでいれば、通信機から弦十郎のおっちゃんの慌てた声が聞こえ、あたしは必死に声を出しながら答えた。

 

『悪いがお前らがいる廃工場では、何が起きているのか分からないんだ。ただ分かっていることは、お前たちが相手をしている未確認の騎士のパワーが増大に膨れ上がったことだ!』

 

「なっ!?それじゃあこの姿の未確認の騎士はパワーは何倍も上がってるってことかよっ!!?」

 

「だあぁぁあ!!!」

 

「!? がはっ!?」

 

おっちゃんの報告に驚きながらまた赤い姿をした未確認の騎士に目を向ければ、未確認の騎士はガングニールの槍から剣を離せば、踏み込みと回転を入れた後ろ回し蹴りをあたしの腹に喰らわせた。結果、あたしは体をくの字に折り曲げて廃工場のスクラップ置場まで蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁ」

 

「奏!?よくも奏を!はあぁぁぁぁ!!!」

 

相棒である奏が蹴り飛ばされたことに怒り、翼はがむしゃらのような感じでファイヤーリュウケンドーに向かって突撃し、聖遺物の天羽々斬から生まれた武器である刀を思いっきり振りかぶった。

 

「おらぁぁ!」

 

しかしリュウケンドーは翼の斬撃を寸分で避けて、炎の力を宿したゲキリュウケンを振るった。

 

 

「ッ!?はあぁっ!危なかった。……………………熱っ!?そんな!!?」

 

翼はなんとか避けれたと思っていたようだがそれは違っていた。二の腕に急な熱さを感じ翼は恐る恐る見てみれば、二の腕にあった青の装甲が斬られており、しかしそれだけでは終わらず、斬られた箇所はマグマでも浴びたかのようにドロッと溶けていたのだ。

 

「これが未確認の騎士の…………本当の力」

 

翼は静かにそう呟くも、怒りが燃え上がっているリュウケンドーは問答無用で風鳴翼に突撃しゲキリュウケンを連続で振るう。

 

「!………………………………」

 

「くっ!?ふっ、はあぁぁ!?うあぁぁぁぁぁ!?」

 

翼はなんとかリュウケンドーの連続の斬撃を捌いていくが、ファイヤーリュウケンドーになったリュウケンドーの力は何倍にも上がっているため力を込めた斬撃を何度も捌けるわけはなく、最終的に力負けしてしまい吹き飛ばされた。

 

「こいつも持ってけ!」

 

だがリュウケンドーはこの2人を許すことが出来ず、翼が吹き飛んだ瞬間さらに、翼の右足を自分の右足で蹴り飛ばした。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁあ!?!!?」

 

「翼!?このぉぉぉーーーー-!!!!!」

 

するとスクラップ置場から奏が起き上がり、翼がやられたのを見て何とか立ち上がって、リュウケンドーに槍を刺そうと飛び掛かってくる。

 

「ふんっ!」

 

「んなっ!?がっ!?うおわあぁぁぁッ!?!!?」

 

ガングニールの槍を数倍上がった力で弾けば、奏は驚いた顔と苦しい顔をするがリュウケンドーは手を止めず、奏の槍を掴んでそのまま無理矢理地面に叩き付けた。

 

「奏!?ぐうっ!? !!? いやあぁぁぁぁ!?!?」

 

「翼! うわあぁぁぁぁ!!?があぁぁぁぁぁぁ!??」

 

翼は奏を助けようとするが立ち上がることが出来ず、奏は翼の元まで向かおうとするがそれが出来ず、奏はリュウケンドーに右腕を掴まれ勢いよく翼の元までぶん投げ2人を衝突させた。

 

 

「…………………………………………」

 

「くそっ!?」

「奏!!?」

 

リュウケンドーは無言のまま奏と翼の女の所まで歩いていく、2人はボロボロのフラフラで武器を構えるが録に動けるわけがなく、リュウケンドーは情け容赦なく炎の力が宿ったゲキリュウケンを力強く握り締め、2人の体を斜め横に斬り裂いた。

 

「うらあぁぁぁぁ!!!!」

 

「「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」」

 

斬撃を喰らって火花を散らしながら、後ろに下がっていく奏と翼。そして2人を無言ながらも殺意全開の目で睨むリュウケンドー。

 

「…………………………………………」

 

「ちくしょ、なんだか分かんねえが、お前が恨んでるのはあたしだけだろ!!なら殺すのならあたしだけを殺せ!頼むから翼だけは殺さないでやって来れ!!!」

 

「!? 何言ってるの奏!?そんなのダメだよ!未確認の騎士!頼むから奏を殺さないで!!殺すのなら私だけにして、お願いだから!!!」

 

「……………………!?……………………!」

 

なんとか互いの相棒を殺さないでくれと頼む奏と翼、リュウケンドーはただ2人を見ているだけであったが、ある方向に顔を向ければ、すぐさま廃工場を出ていった。

 

「え…………?未確認の騎士が去っていった?」

 

「…………助かったのか?」

 

リュウケンドーがいなくなったことに不思議に思った2人は、それぞれの疑問を口にしたが再び通信機から連絡が入った。

 

 

 

『翼!奏!聞こえるか!』

 

「おっちゃん!?」

 

「司令ッ!?どうかしたんですか!?」

 

『お前たち、なんとか動けるか?』

 

「一体どうしたんだよおっちゃん!」

 

『レーダーに大型のノイズの反応が2体確認された!しかもその廃工場から近いぞ!』

 

「なんだって!?」

 

「本当ですか!?」

 

弦十郎の言葉を聞いて何回目か分からない驚愕の声を上げて、2人はなんとか武器で体を支え限界の精神力で立ち上がった。

 

『ああ!大方未確認の騎士は大型ノイズの気配を感じ取りそっちへ向かったんだろう。お前らももし動けるようなら未確認の騎士と一緒に対処を頼む!』

 

「ああっ…………分かった!?」

 

「了解です!?司令…………」

 

人類をノイズの脅威から守ると決めた2人は、フラフラでありながらも廃工場から出て大型ノイズの対処に向かおうとしたが、目の前にあった光景に言葉を発することが出来たものの、その顔は絶望に沈んだような顔であった。

 

 

『大型ノイズの反応が消えただと!?大型ノイズに何が起きたんだ!?奏!翼!一体何が起きたんだ!!?』

 

「おっちゃん、どうやら未確認の騎士の力はあたしたちの予想を簡単に越えちまってるみたいだ」

 

「司令、未確認の騎士が…………巨人型ノイズを簡単に葬っています」

 

『なんだとっ!?』

 

2人の目に入ったのは巨人型のヒューマノイドノイズの1体が火炎に包まれて、焼かれながら悶え苦しみ炭素の塊となった。そしてもう1体は、直接のファイヤーリュウケンドーの必殺技・ゲキリュウケン火炎斬りで真っ二つに斬られて炭素化した。

 

「「ッ!?」」

 

「……………………………………」

 

大型ノイズの瞬殺に言葉が出なかった奏と翼であったが、最後にリュウケンドーがこちらを見据えれば、2人はリュウケンドーの存在に畏縮し、リュウケンドーが静かに去っていけば奏と翼は暫くの間そこを動けないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………!?……………………!」

 

怒りのあまり2人組の女を重傷レベルまで傷付けてしまい俺は無言のまま後悔した、あの光のカノンの書に書かれていたことを行ってしまったからだ。

 

怒りを燃え上がらせないと決めたのに、俺は怒りを燃え上がらせただけではなく、怒りに身を任せてしまいファイヤーキーの力を使ってこの2人をここまで痛め付けてしまったことに、今さらになって激しい罪悪感に苛まれてしまっている。

 

罪悪感に苛まれてしまっていると言うのに、俺の脳裏に大型のヒューマノイドノイズが現れる映像を流した。こんな時に久方ぶりの大型ノイズに慌ててしまうが、すぐに気を取り直して俺はこの廃工場から出ていき、大型ノイズが出てくる場所へと駆けていく。

 

 

 

「! 来たか…………」

 

出現場所が近くだったため、俺は5階建ての事務所のような建物の屋上で巨人型ノイズの出現を警戒していれば、すぐに上空から2体の巨人型ヒューマノイドノイズが降りてきた。

 

巨人型のヒューマノイドノイズが現れれば、俺はゲキリュウケンの持ち手部分を上げれば、同じくゲキリュウケンの顔の部分が上がりマダンキーを差し込む場所が現れる。そしてマダンキーホルダーから炎属性に変化した、炎の必殺ブレスを放っているファイナルキーを抜き取り、ゲキリュウケンに差し込んで回し持ち手部分を下げてゲキリュウケンの顔も下がり音声が鳴る。

 

『ファイナルブレイク』

 

「喰らえっ、ゲキリュウケン!火炎斬り!!!」

 

必殺技の名前を言えば、ゲキリュウケンから炎が産み出され俺はその炎を1体目の巨人型ヒューマノイドノイズに放った。

 

『!?!!?!!?』

 

撃ち放った火炎斬りをその身に受けた巨人型のヒューマノイドノイズは、火炎斬りの炎に包まれて悶え苦しみながら炭素の塊になろうとしていく。

 

「もういっちょ行くぜ!」

 

そう言って俺は力の限りのジャンプをして、炭素の塊になろうとしていく巨人型ヒューマノイドノイズの体を駆け登っていく、頭上に到達すれば巨人型ヒューマノイドノイズの頭を踏んで跳躍し、体を回転させ炎を纏ったゲキリュウケンを振って2体目の巨人型ヒューマノイドノイズを真っ二つに焼き斬った。

 

「ファイヤーリュウケンドー!ゲキリュウケン!火炎斬り!!!!!」

 

『!?!?!?!!?』

 

2体目の巨人型ヒューマノイドノイズも、火炎斬りに悶え苦しみながら炭素化していった。

 

「消え失せろ。…………ノイズ」

 

俺はゲキリュウケンを斜めに向けて冷酷に言い放ち、2体の巨人型ヒューマノイドノイズの最後を確認した。

 

「……………………………………」

 

「「ッ!?」」

 

2人組の女たちが居る方面に目を向ければ、2人は俺に畏縮したように止まって、ただ俺を見ているだけだった。俺もそれを見れば、背を向けて早急にこの場を去ることにした。

 

「……………………バカ野郎が!」

 

俺は歩きながら、静かな空気が流れているこの場に自分自身の愚かさを戒めた。

 

 

 

to be continued.




長かった……………………。

リュウフォギアの更新が1年過ぎにもなってしまい、本当の本当に申し訳ありませんでした!!!!!????
再び心に不安感が宿ってしまい、それに怯える始末になってしまい更新がここまで滞ってしまいました。誠に申し訳ございませんでした!
こんなことにならないよう、頑張っていきたいと思いますので、読者の皆様の感想や評価の応援よろしくお願い致します!
では次回予告をどうぞ!


次回予告。

俺は昨日ファイヤーリュウケンドーの力で、あの機械の鎧を纏った女2人を戦場に出れないほど傷付けた。
本当なら、リュウケンドーの力で人間を傷付けるのは大罪どころか死刑執行だ。それでも俺はあの朱色の髪の女が起こしたあの視野の狭い行動が許せなかった。そんな時、顔には出さず心の中で悩んでいる俺の隣に妹の響がやって来た。

そしてシンフォギアを纏う装者の2人、2人は二課で俺の怒りの理由を教えられる。その理由に2人の装者は俺に何を思うのか?


次回。魔弾戦姫リュウフォギア。

知るんだ、剣士の心を。

次回も魔弾戦記リュウケンドーで突っ走れ!


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知るんだ、剣士の心を。

今回は書き留めという行為を初めてやりました。

う~ん…………直接やるより書き留めという行為の方が楽ですかね~?でもそうしたらそうしたで、後でこの場面の文章や表現が納得できないって言うのが出るかもしれないので、難しい問題です。


そんな感じですけど、今回は次回予告に“あれ!”を使いました。

反省も後悔もありません!ただ、やってやったぞ!という達成感がありました!

この次回予告にツッコミを入れるかは読者様次第です!ただ誤解なさらないでください!私はバカにはしていません!この作品でこれをやりたかったんです!!!!!
そしてあの作品も大好きです!!!!!!!!!!!!


立花家。

 

 

「……………………………………」

 

現在昼の13時。

俺は相棒であるバイク・HONDA CB400 SUPER FOURに簡易的なメンテナンスを行っている。

というか大学生の俺が、我が家で呑気にバイクのメンテナンスを(おこな)っているのはおかしいだろう。本当なら大急ぎで荷物の準備をしてバイクで大学に行かわなければならないんだろうが、今日は全国的な休みの日のため大学に行かなくてもよい、そのためこうして俺は呑気に相棒の修理をしていられるのだ。

 

因みに俺の家族は出掛けている。親父と御袋は一緒にデパートへ買い物という名のデート、夫婦仲がよろしいことで。

祖母は地域の老人会に出席している。普通に爺さん婆さんで集まってお喋りしながらのお茶会だ。

たまにであるが、旅行用のバスを借りて老人達と数人の若い人を連れての旅行や遠足がある。と言ってもほとんどが旅行で温泉行ったり、こことは違う別の所に行っている。まあその度にお土産を買ってきてくれるから、俺達も嬉しい限りなんだが。

 

 

 

そんで俺にとっての頭を常に抱えている妹の響はと言うと、なんと今日は家に居るのだ。いつもなら幼馴染み件親友の未来か、中学校の友人と一緒にどこかに行くのだろうが、今日は珍しいことに家に居るのだ。

 

まあ未来が遊びに行かないという連絡が来ていたみたいだが、また珍しいことに響はそれを断ったようだ。本当に珍しいが、たまにはこういう日もあるだろう。それに俺としては今日ぐらい1日大人しくしていて欲しいものだ。あいつのせいで俺が一体どれだけ苦労しているか。

 

「ほんと、少しは分かって欲しいもんだぜ…………」

 

バイクの電装系に付着したオイル汚れを拭きながらぼやき、俺は「はぁー」と頭を下げながら重い溜め息を吐く。だがすぐに頭を上げて電装系を拭くのを再開するが、今の俺の表情は複雑そのもの、それはもちろん昨日の戦いにあった。

 

(俺は昨日人間を…………あの2人組の女を傷付けてしまった。しかもリュウケンドーの力で、だ。いくら朱色の髪の女がやったことが許せなかったとはいえ、リュウケンドーの力であそこまでやったのは許されざることだ!)

 

心の中で呟きながら、俺は右手で握り拳を作り顔の前まで持っていき、さらに左手の平で右手の拳を握った。バイクの電装系はゆっくりと地面に置いた。

 

(でも俺は!あの女の周りをよく見ない行動が許せなかった!…………俺は人間を守るリュウケンドーの力で傷付けた。しかも怒りに身を任せて、こんなことをしてしまった俺にリュウケンドーの力を使う資格はない!でもリュウケンドーにならなければノイズとは戦えないし人を守ることもできない!…………俺は一体、どうすればいいんだ!?)

 

俺は悩みながらも結局は考えが付かず、バイクの電装系を持ち電装系に付いていたパーツを付け加え、電装系を元の場所に挿し込んだ。

 

 

「…………さてと、後はエンジン内の汚れをブラッシングして落としたり、水洗いで拭いていくとするか」

 

俺は言いながらメンテナンスに使っていた工具を、工具箱に戻していき、俺の相棒の最後の仕上げをするとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特異災害機動二課。

 

 

司令室では重症を負った天羽奏と風鳴翼、二課の司令官である風鳴弦十郎、2人のマネージャーにして凄腕エージェントの緒川慎次、できる女科学者の桜井了子、そしてオペレーターの藤尭朔也と友里あおいが居た。

 

 

因みに奏と翼が負った怪我はあまりにも酷い、奏は右腕に三角巾を巻いていて、左目にはその目を覆うほどの大きなガーゼを貼られており、顔や腹、膝の数ヶ所には医療用のシップなどが貼られていた。

 

見るからに重傷者である。

 

しかし、それは相棒である翼も同じことである。彼女も左手で松葉杖を付き、右足には包帯を巻きギプスで固定している。そして奏と同じく顔や体に医療用のシップを貼っており右腕には包帯を巻いていた。

 

「…………くそっ、なんだったんだ昨日の未確認の騎士の奴は!?あいつの実力なら避けられたはずなのに、あたしの攻撃を受けたと思ったら急にキレやがって、しかもあたしに説教染みたことまで言いやがって!何が「かけがえのないものに気付けないお前達に!その力を持つ資格もなければ!戦場に()つ資格もない!」だ!偉そうなこと言いやがって!」

 

奏は我慢しきれない怒りを、口で吐き出しながら怪我を負っていない左手で机をガンッ!と強く叩いた。

 

「うん!私達だって覚悟を持って戦場に出ているというのに、未確認の騎士は私達の覚悟を侮辱した!…………でも奏、私達は昨日確実に未確認の騎士には敗北したのは事実だよ。あの凄まじい炎の力を纏った瞬間、未確認の騎士の力は何倍にも跳ね上がった。また未確認の騎士があの姿になれば、私達に勝機はない!」

 

「それは、…………そうだけど」

 

「…………………………………………………」

 

苛立ちを吐き出す天羽奏の言葉に、風鳴翼も同意するがそれと同時に、昨日のリュウケンドーのことを冷静に分析しながら言う。翼の言葉に奏は返せる言葉がなく口を(つむ)いだ。

 

 

司令官である風鳴弦十郎はそんな2人を腕を組みながら見ていたが、体勢を変えずに目線を巨大モニターへと変更した。巨大モニターにはファイヤーリュウケンドーにモードチェンジしたリュウケンドーが映っていた。

 

この映像はシンフォギアに取り付けられた隠しカメラで録られたものだ。ただ弦十郎はファイヤーリュウケンドーを鋭い真摯な瞳で見ながら、2人にとって信じられないと言ってもいい言葉を言い放った。

 

「奏、翼、悪いが今回ばかりはお前たち2人を擁護することができん!逆に未確認の騎士の怒りの理由と彼の言った言葉に納得がいく」

 

「「!!?」」

 

弦十郎のリュウケンドーを擁護する予想外の言葉に、2人は驚愕の顔をしながら弦十郎の方に振り向き、直ぐ様声を荒げながら言葉を放った。

 

「どういうことだよおっちゃん!?なんで未確認の騎士の肩なんて持つんだよっ!!!」

 

「そうです!それに昨日の未確認の騎士の行動理由に納得できるとはどういうことですか!?」

 

奏と翼の鬼気迫るような表情と言葉、しかし弦十郎はそれに一切臆することなく、1度目を瞑れば腕組みを辞めて2人に真摯な表情で見ながら言う。弦十郎のそんな表情に奏と翼の2人は押されるが、なんとか持ちこたえて弦十郎に面と向かう。

 

 

「翼さん、何故未確認の騎士があんなに怒りを顕にしたのか分かりませんか?」

 

「え…………?」

 

「奏ちゃん、未確認の騎士がなんであなたが放った攻撃を全て避けず、捌けることだってできたはずなのになんでそれをせずに背中で受け止めたのか考えなかった?」

 

「は…………?」

 

「2人とも、未確認の騎士が言った言葉の意味を…………理解することができないのか!」

 

緒川慎次、桜井了子、そして風鳴弦十郎の言っていることに天羽奏と風鳴翼は全くもって理解できず、奏は左腕を伸ばしてこう言った。

 

 

 

「そんなもん、未確認の騎士の気の迷いかなんかじゃないのか!?それかあたしらにこう言いたかったんじゃないのかよ。俺にはそんな攻撃なんて一切通用しないって言う!あいつの余裕だろっ!」

 

奏はそう言い、奏のその言葉に同意するように翼も頷いた。2人の反応に弦十郎は顔を斜め下に向け、溜め息のようなものを出した。それをやれば、弦十郎はオペレーター担当の部下に目配せをした。オペレーターの藤尭は頷き、巨大モニターから昨日の戦闘を映し出したが、場面はリュウケンドーが奏が繰り出した攻撃を背中で受けている場面であった。

 

「これはシンフォギアに装着していた隠しカメラで録画した、昨日の戦闘映像だ。そしてこの場面は勿論のこと、未確認の騎士が奏の攻撃を避けることも捌くこともせずに受けている場面だ」

 

「この場面が一体どうしたと言うんですか!?」

 

「未確認の騎士は攻撃を受けきった後に、怒りの感情を顕にした」

 

「ああそうだよッ!いきなりぶちギレたと思ったら、訳の分からないこと言い出して、姿を変えやがったんだ!」

 

「俺も、彼がなぜ怒りを顕にしたのか分からなかった。最初はただの我々には分からないものなのかと思った…………だが違っていた。彼の怒りには理由があった、だが俺はその理由を見つけることができた!」

 

「「!!?」」

 

未確認の騎士の怒りの理由、それを聞いた奏と翼は再び驚愕の表情をした。だが弦十郎はそんな2人の表情に全くもって目もくれず、オペレーターの藤尭に命令した。

 

「藤尭!未確認の騎士が右手を地面に添えているところを拡大し、画像を鮮明にしてくれ!」

 

「はっ!」

 

弦十郎の指示に藤尭朔也はしっかりとした返事をして、すぐ行動に入った。画面が拡大され、そしてその拡大された画面がより鮮明になっていった。

 

「!? そんな、これはッ!?」

 

「まさかあいつは…………!?」

 

より画面が鮮明になっていき、未確認の騎士が右手から離れていたものを見た2人は驚愕と複雑な表情が入り交じった顔になった。それはそうであろう、なにせ未確認の騎士の右手から離れたのは、多少薄汚れているが白い毛並みを持った仔犬だったのである。

 

「分かったようだな2人とも…………そう。未確認の騎士は白い仔犬の命を守ったんだ!」

 

この言葉とともに弦十郎は奏に顔を向け、奏も恐る恐ると言った表情で汗を流しながら弦十郎の方を向いた。そんな奏を見ながら、弦十郎は迷うことなく静かに口を開いた。

 

「奏。もし未確認の騎士がこの仔犬を守っていなければ、今頃この仔犬は跡形もなく死んでいただろう。ガングニールのせいで仔犬を殺してしまった。それを知ったらお前はその事実を受け止めきれるか?」

 

「! それは、その…………」

 

弦十郎の重みのある言葉に、奏は目を見開くも出せる言葉がなかった。奏は思考を頭の中一杯に巡らせていた。自分が守るべきものはノイズの脅威に晒されている人間の命、そして自分の望みはこの世からノイズを一匹残らず全滅させることである。そのためノイズと戦えるというのなら自分の身を遠慮なく犠牲にし悪魔と相乗りする覚悟さえもある。

 

そんな狂気のような覚悟があれど、天羽奏という人間は非道で残酷な人間ではない、困っている人がいれば普通に助けるし、命が危険に晒されていれば自らの危険も省みず助けにいく、そんな心優しい少女である。

 

 

 

しかし昨日の自分は、儚く小さな命を自らの手で奪おうとしていのだ。恐らく昨日の自分なら、仔犬の命を奪ったことに気付かず未確認の騎士に向かっていただろう。だがもし自分が小さな命を奪ったことに気付けば、自分は小さな命を奪ってしまったという激しい罪悪感に苛まれ、下手をすればそれがトラウマとなりノイズを滅ぼすどころか戦場に起つことさえできなくなっていたかもしれない。

 

それを考えれば未確認の騎士は、一匹の仔犬の命を守っただけではなく、天羽奏という一人の少女の心も守ったことになるのだ。

 

「あたしは、あたしは……………………」

 

「奏…………………………………………」

 

それに気付いた天羽奏は、苦しそうな声でただ頭を抱えた。相棒である風鳴翼は親友の天羽奏の方を向いて、彼女の名前を呟くしかなかった。そんな悩む2人に、風鳴弦十郎は今回は辛く厳しい台詞を2人に突き付けた。

 

「“視野を広くせず、ただノイズを殲滅すること、いや暴力をも越えた危険な力を振り回して、かけがえのないものに気付けないお前達に、その力を持つ資格もなければ戦場に起つ資格もありはしない!”」

 

「「!!!!!????」」

 

「…………昨日未確認の騎士が言った言葉だな!」

 

弦十郎の口にした台詞、それは昨日未確認の騎士が激しい怒りを顕にしながら言い放った台詞である。その台詞を耳にした奏と翼は弦十郎の方に顔を向けた。

 

 

「未確認の騎士の言う通りだな。奏、翼、お前たちの気持ちはよく分かる。だがノイズの殲滅を建前に、逆に未確認の騎士に戦って勝つことを本音にして、その力を私的乱用し続けるお前らに!ノイズと戦う資格も!人類の希望であるシンフォギアを使う資格もない!」

 

「「!!!!!!!!」」

 

弦十郎の2人を思っての辛く厳しい言葉に、奏と翼には口に出せる言葉がなかった。

 

「本来ならお前たちのシンフォギアを取り上げお前たち2人を軟禁するつもりだったが、そんな体じゃシンフォギアを纏うことなどできないだろう。しっかり安静して、自分達がどれだけ取り返しの付かないことをしていたのか、よく考えろ!」

 

「「…………はい」」

 

ようやく出せた言葉には、2人の複雑な心を表しているようだった。そして弦十郎は、今この司令室にいる部下たちにあることを伝えた。

 

「そしてこれより俺達機動二課は、未確認の騎士とは協力体制に入る!上層部からは未確認の騎士の捕縛を命令されているが、昨日の彼の行動から彼の目的は1つでも多くの命を守ることだと分かった!ならば俺達のやることは未確認の騎士と協力関係になり、そして彼と力を合わせノイズを対処するんだ!さらに大変になるだろうが、みんな!俺に力を貸してくれ!」

 

「「「「了解(よ)(です)!!」」」」

 

弦十郎の見せる司令官ぶりに、ここにいる全員は否定の言葉を出さず、力強い返事をした後で頷いた。

 

心機一転。という雰囲気を出しながら、司令官である弦十郎はモニターに映っているファイヤーリュウケンドーに目を向けながら、心の中であることを考えていた。

 

(だが問題は…………未確認の騎士が快く俺達と協力体制を取ってくれるかどうか?なにせ俺達は彼の怒りを買ってしまった。それだけではなく情けないことに、今の俺達の現状はノイズに対抗できうる戦力を1つでも多く見つけることだ!そんな俺達に彼は協力をしてくれるか?)

 

ファイヤーリュウケンドーを見ながら思案する弦十郎の隣で、同じく科学者である桜井了子も心の中で思案していた。

 

(うーん、未確認の騎士君にはまだ何か隠されている。とは思っていたけど、まさかあんな形態変化をする能力があったなんて、しかもあの炎の龍の力を纏った瞬間、彼の力が格段に上がった。彼の力にはまだまだ何か隠されているとは思うけど、それはこれからに期待かしらね)

 

桜井了子もリュウケンドーについて考えているが、それは楽しみも入っているが、もし剣二がこの場に入れば何か邪なものも含まれていると感じ取っていたであろう。桜井了子は司令室に居る全員に気付かれないように、そんな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…………これで全部終了だな。やっぱり3ヶ月に1回はメンテナンスと掃除はするもんだな。結構埃まみれになってたりオイル汚れが付着してたりするもんだ」

 

バイクの清掃が終わったので倉庫に戻し、俺はバケツに入っている濁った水を捨てて、また新しい水を入れてジャブジャブとオイル汚れを拭くのに使った雑巾を絞りながら呟いた。

 

「それにしてもかなりの汚れだったな。もう雑巾やブラシがボロッボロのギトッギトだぜ!これもう捨てた方がいいな」

 

そう言いながら、俺は出来るだけの汚れを落としバケツに入っている汚くなった水を捨て、液体石鹸で清掃に使ったバケツを束子(たわし)で汚れを懸命に洗い落とし、液体石鹸と束子、それとバケツを元あったところに戻して雑巾とブラシをゴミ袋に投げ捨てた。俺は今日のやるべきことを終えたため、庭に置いてあるベンチに座って溜め息を吐いた。

 

 

「ふぅ…………あ~……………」

 

さらにベンチに手を着いて顔を上げるも、ただ夕焼け空を見詰めるだけである。それでも今の俺の顔は昨日のことで一杯だった。

 

リュウケンドーの力で人を傷付け怒りに身を任せて戦ってしまったことに、確率は高いがもし今日もノイズが出現すれば、今の俺で大量に出てくるノイズと満足に戦うことができるのであろうか、いや絶対にできやしない、下手をすれば悩んでいるせいで出してはいけない被害を出してしまうかもしれない。

 

だが、そんな最悪な事態を俺自身の弱さのせいで産み出したくはない。

 

 

「…………結局のところ、迷いながらでも戦うしかないってことだよな~」

 

この言葉を誰にも聞こえない声で小さく呟くも、やはり悩んだまま夕焼け空を見続けていれば、後ろから静かな足音が聞こえた。大方気付かれないように俺に近づきたいみたいだが、こちとらノイズと数え切れないほどの戦闘と経験を積んだため、そう簡単にやられることなどしない。

 

「何か用か、響?」

 

そのため俺は後ろを振り向いて、やって来る妹の名前を言ってやった。

 

「あ!?気付いてたんだお兄ちゃん」

 

自分の名前を呼ばれたことに響は多少なりとも驚いた顔をするが、すぐに微笑みを見せ返事をする。だがやって来たのは妹の響だけではなく、響の両腕には俺がガキの頃自分の金で買った、白のクラシックギターを両手で落とさないように大事に抱え持っていた。

 

「響…………えらい懐かしいモン出してきたな!」

 

「えへへ、あたしとお兄ちゃんが一緒に使ってる共同倉庫にあったから取り出してきたんだ。流石にギターケースごとは重くて無理だったんだけど、中にあったギターはなんとか持ってきたんだ!」

 

「それで、なんで俺が高校まで使ってたギターなんて持ってきたんだよ?」

 

響が持ってきたギターに懐かしさを覚えていれば、響は照れ笑いをしながら俺のギターを持ってきたらしいが、でもなぜ響がギターを持ってきたのかその理由を聞いた。

 

 

「だってお兄ちゃん、朝からなんか悩んでるみたいで元気なかったし」

 

響のその台詞に俺は少しドキリとし、気付かれないよういつもの俺であることを取り繕うように返事を返す。

 

「そ、そうか?俺?そんな感じだったか?」

 

そう聞き返すと、響は「うん」と言うように頷いて今日の俺について語り出した。

 

「そうだよ!朝起きたときの返事、ほとんど元気なかったし!あたしたちの中で一番早く食べ終わるお兄ちゃんが、今日一番遅く朝ご飯食べ終えてたし!それに普段ならコーヒー作って飲むはずなのに、コーヒー作らないで溜め息してたんだから!今日のお兄ちゃんなんか変だし、心配してるんだよあたし!!」

 

「うえっ、そうか?」

 

響の言葉と今日の自身の行動に、俺は一切気付いてなく首を傾げて疑問を口にすれば、響はうんうんと力強く首を縦に動かした。隠していた気になっていたが、確かにそれを聞けば上手く隠せてないどころか思いっきりバレバレだったな。

 

 

 

「お父さんやお母さん、お婆ちゃんは疲れてるんじゃないのかって言ってたんだけど、でもおかしいよ!いつものお兄ちゃんなら疲れてるときはしっかりと休むはずなのに、それをしないなんて!嫌だよあたし!いつものお兄ちゃんでいてくれないと寂しいんだからさ!」

 

(…………なんともまあ勘のいい妹だな。それに俺のことをよく見ていやがる)

 

一緒に暮らしているからか、響その観察能力には俺は舌を巻いて驚かされる。まあ多分こんな能力なぞ、兄貴である俺か幼なじみの未来ぐらいにしか通用しないだろう。できればその能力は、普段やっている人助けに活かしてほしいのが俺の願いだ。

 

「それで?そんな悩んでそうな兄貴様に、ギターを持ってきて何しに来たんだ?」

 

「うんッ!お兄ちゃんが悩んでいるみたいだから、久し振りにあの歌のメロディをギターで弾いてよ!歌はあたしが歌うからさ!!」

 

「……………………は?」

 

そんなことを考えながら、俺は響に何故俺のギターを持ってきたのかを聞いてみれば、持ってきたその理由を聞けば、疑問の一言を口にして口を開けたまま呆けた。

 

 

「だ・か・ら!久し振りにお兄ちゃんが子供の頃よく歌ってたあの歌ギターで弾いてよ!歌はあたしが歌いたいからさ!」

 

「お、おう。まあ…………別に良いけどよ。久し振りにギターなんて弾くな。3年か4年ぶりぐらいか?指覚えってっかな~」

 

発言しながら俺に無理矢理白のギターを手渡し、そしてその響は密着する距離まで来て俺の隣に座る。ギターを手渡された俺は、少し困惑な言葉を述べる。

 

 

因みにこれはどうでもいい話だが、何故俺がギターを持っているのかには理由がある。まあその理由はもちろん特撮ヒーローにあるのだが、幼い頃から特撮ヒーローが好きだった俺は色んな特撮ヒーローを観て、そして楽器を持ったヒーローがあまりにもカッコ良すぎてその反動で楽器の1つであるギターを買ってしまったのだ。

 

まあ前世でも楽器を持ったヒーローへの憧れがあったからギターを買って、動画を見ながら練習したもんだ。そして響が言うあの歌とは、もちろん魔弾戦記リュウケンドーの第一期OPのことである。

俺がギターを買っての初っぱなで魔弾戦記リュウケンドーのOPを弾いて歌った。その時両親と祖母は出掛けていたのだが、運悪く響が帰ってきたことには気付かずその場面を響に見られてしまい、そのせいで半ば響の強制力でよく弾いては歌ったり、2人でデュエットをしたりした。

この歌について響は聞いてきたのだがそれはちぐはぐに誤魔化し、それなのに響はこの歌がお気に入りになってしまい、昔は歌ってくれ弾いてくれとせがんできて、俺はそれに根負けしよくやったもんだ。

 

 

「う~ん、上手くやれっかな~?」

 

そんな懐かしいものを持ってきたとこだが、俺は困りながらも一応懸命に弾くことを響に伝える。

 

「とりあえず弾いてみるけどよ。恐らく失敗するところも多くあるだろうから文句は言わないでくれよ!」

 

「文句なんて言わないからさ!早く弾いてよお兄ちゃん!!」

 

「へいへいっ…………それじゃあ行くぞっ!」

 

響の元気な返事を聞いて、俺は軽い返事で返して白のクラシックギターで魔弾戦記リュウケンドーを弾き始める。

 

 

「決して、未来の、邪魔はさせ~ない~♪」

 

「3!2!1!GOッ!」

 

「熱く燃えさかれ♪GAGAGAッ!♪」

 

俺と響はお互いに笑いながら楽しく、魔弾戦記リュウケンドーを歌った。

 

 

「はーっ、久し振りに歌ったからスッキリしたあー。やっぱりあたしこの歌大好きだなぁー!!!この歌について全然知らないけど、この歌を歌うとエネルギーが沸き上がるって言うかさ。楽しい気持ちになるな!」

 

「そうかい、そう言ってくれるのなら、俺も嬉しい限りだよ!」

 

「でもお兄ちゃん、この歌についてちっとも教えてくれないよね?お兄ちゃんが作ったの?知ってるのなら、歌の名前ぐらいは教えてよ!!?」

 

「嫌だね。それに俺がこんなかっけえ歌作れるわけねえだろ!俺には作詞作曲の才能なんてありゃしねえよ!それと歌の才能もな!」

 

本当にそう言うこと言うのは勘弁してくれ響、そんなことをすれば俺は色んな意味で消されるかもしれないんだからな。そんで俺には作詞作曲の才能なんてこれっぽっちもない、前世ではカッコいい曲を作りたいという思いがありやろうとしたが、結果は惨敗。

 

全く持って作ることなどできず自分の才能のなさに涙が出たもんだ。それと歌の才能もないと言ったが俺は音痴ではない、大事なことなのでもう一度言うが決して音痴などではない。ただ俺の歌声なぞ微々たるものであり、日本全国どころか文化祭の祭りにすら出せないレベルだ。まあそんなレベルだが、一応はカラオケに行っても恥ずかしくないレベルであることは分かっている。

 

うん、それでもね。人間には時として自身にある事実を直視できず隠したいものが1つや2つはあるんだ。だからこそ人間はそんなものを持ちながらも、懸命に生きれる強さがあると俺は思うのだよ諸君。

 

 

途中からこんなどうでもいいことを思案してしまったが、俺は夕焼け空を見上げた。今の俺の顔は悩みのない晴れ渡った笑顔をしているに違いない。

 

「あ!お兄ちゃん今日ようやく笑ったねッ!悩みが吹っ飛んだの!!?」

 

「………………………………………」

 

響の台詞に俺の無言になるが、顔を振り向かせて思案する。ったく、まさか妹の響に助けられるとは、今回ばかりはこいつの思いやりに感謝だな。

 

「ああ、お前のお陰で助かったよ。ありがとな…………響!」

 

響に感謝の言葉を伝え、俺はこいつに向かって最高の笑顔を見せた。

 

「あ…………」

 

「ん?どうかしたのか響?」

 

「う、ううん!?何でもないよ!何でも!?」

 

笑顔を見せれば、何故か響は時が止まったかのように俺を見ていたが、そんな響に疑問を抱いた俺は笑顔を解いてどうかしたのかと聞けば、響はハッとなりすぐに返事をすれば体全体を後ろに向けた。

 

そんな変な行動をし出した響に俺は近づき、問い質すことにした。

 

 

「いきなり後ろに向いてどうしたんだよ響。なんか顔赤いけど風邪でも引いたか?」

 

「な、なんでもないったら!?ただ夕日のせいで顔が赤くなってるだけだよっ!!」

 

「あ?夕日のせいって…………半分以上まで降りてんのにそこまで赤くなるか?つか、さっき見たところ顔全体が赤くなってた気がすんだが」

 

「だから気のせいだよっ!!?そんなことより中に入ろうよ!日が沈んでるから冷たい風が吹いてきてるし!」

 

「あ、ああ。確かにそうだな、家に入るとするか」

 

問い質そうとするも、響は慌てながら必死に誤魔化すようにすれば、夕方のため冷たい風が吹いてきて中に入ることを即し、響は先に家の中に入り俺も了承しながら家の中へと入りベランダの戸を閉めた。

 

 

「それで響、お前何であんなに顔赤かったんだ?もしも風邪なら病院行って診てこいよ。風邪引いて移されちゃ溜まんねえからよ」

 

「だから何度も言ってるでしょ!?大丈夫だって、夕日のせいで顔が赤くなっただけだよっ!!」

 

「って言ってるけどよ、今も顔赤いぞ」

 

「そんなの気のせいっ!!!」

 

家の中に入り再び響に聞いてみるも、それなりのデカイ声で否定され、顔が赤いことを突っついてみるも気のせいだと一蹴されてしまった。

 

そんなこと無限ループみたいなことをしていれば、調度良いときに同時で両親と祖母が帰ってきて俺と響は一緒に出迎え、その後は父さんと母さんがデパートで買ってきた鮮度の良い鶏肉で晩飯は鳥鍋となった。

晩飯の鳥鍋ができれば、俺と響は鳥鍋の上手さに感動し鳥鍋とご飯を4杯もおかわりしてしまった。本当に上手すぎて困る、米と鳥鍋を一緒に食べれば上手さが倍になるから本当に手が止まらなくなるかと思った。

 

 

晩飯を食べ終われば、俺はいつも通りに風呂に入って出れば、パジャマを着て軽く柔軟体操をしベッドに眠りに就こうとしたが。

 

「……………………お出でなすったか、ノイズ」

 

モバイルモードのゲキリュウケンが強い光を発したため、俺はゲキリュウケンを手にすれば俺の脳裏にノイズが出現する場所が映し出された。そのため俺は私服に着替えずパジャマのまま、部屋に隠している靴を履いて窓から飛び出した。

 

「迷いは吹っ切れた。なら今はただ真っ直ぐにノイズを叩き潰すだけだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、ノイズが出現したショッピングモール街に俺はいる。既に俺は魔弾剣士リュウケンドーに変身し、ゆっくりと歩を進めながらノイズの大群に言い放つ。

 

「ノイズッ!ここから先は俺が相手だ!!」

 

『『『『『!?!!?』』』』』

 

「魔弾剣士リュウケンドー…………来神!!!」

 

暗がりから現れたリュウケンドーに驚くノイズ、しかしそんなことを気にせず、俺は右の腰に掛けているモバイルモードのゲキリュウケンを本当の姿にして、リュウケンドーの決め台詞を言ってゲキリュウケンを構えたポーズを取った。

 

「行くぞ!!」

 

そしてこの言葉とともに、俺はノイズの大群に飛び掛かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動二課。

 

「司令ッ!ノイズの出現ポイントに未確認の騎士も現れました!」

 

「分かった。だが奏と翼が戦えないのでは、情けないことに俺達に出来ることはなにもない、未確認の騎士頼りだ。黙って見ることしか出来ないんだからな」

 

「そうですね…………」

 

風鳴弦十郎の言葉に、オペレーターの藤尭は小さな声で返し、同じオペレーターの友里あおいと弦十郎の部下の緒川慎次は無言で頷いていた。

 

「「……………………………………」」

 

その後ろでは重傷の天羽奏と風鳴翼がいた。2人も無言ではあったが、モニターに映っている未確認の騎士、魔弾剣士リュウケンドーの戦闘を見ていた。リュウケンドーの戦闘を見ながら、天羽奏は意を決して立ち上がり、なんとか歩いて弦十郎に進言した。

 

「おっちゃん頼む!あたしを未確認の騎士のところに行かせてくれ!」

 

「奏…………!?」

 

弦十郎の元まで行った相棒の言葉に風鳴翼は驚きの声を上げ、反対に司令である弦十郎は奏の方に振り向けばその顔つきは真剣そのもの、いやそれだけでなく、かなりの威圧感を出して奏を見ていたのだ。

 

「うっ…………!?」

 

弦十郎の威圧のある瞳に奏は1度後退る、弦十郎のその瞳はしっかりとした言葉でなければ許されないものだった。もし奏が「ノイズを叩く!」などと言えばすぐさま弦十郎に取り抑えられるだろう、しかし奏は素早く同じ真剣な顔付きで弦十郎を睨み返し言った。

 

 

「あたしは、未確認の騎士のあいつに謝りたい!自分自身の視野の狭さやシンフォギアの力を持つ事への甘さを!そしてあいつにお礼を言いたいんだ!あたしと小さな命を救ってくれたことを!」

 

「………………………………………………」

 

「ッ…………!?……………………」

 

奏はそう言いきり、弦十郎は鋭い目付きのまま無言で奏を見ていた。弦十郎の鋭い目に奏は下がることをなんとか耐えるも、すぐにそれが崩れそうだった時である。

 

「…………その答えがあれば充分だ。行ってこい奏、既にヘリの準備はしてある」

 

「ッ…………ッ…………ッ!!」

 

弦十郎はフッと鼻で笑い、顔付きも優しい笑みを称えた顔となり奏を未確認の騎士の元まで送る許可を出した。弦十郎のその言葉と先を見通した行動に、奏は満面の笑みを称えれば頭を下げてお礼を口にした。

 

「ありがとう!おっちゃん!」

 

「緒川。時間が勿体ない、お前の力で奏をすぐにエレベーター前まで送ってやれ」

 

「分かりました」

 

「待ってください司令!私も…………私も未確認の騎士の元まで行かせてください!私も彼に謝りたいんです!!」

 

すると、今まで黙っていた翼もなんとか立ち上がって、自分も未確認の騎士の元まで行き謝りたいと言い出した。

 

「分かった。緒川、翼も一緒に連れていってやってくれ!」

 

「畏まりました」

 

きっと翼も言うだろうと予想していた弦十郎は、すぐに翼の同行を許可して部下の緒川に頼んだ。緒川自身もニコニコ笑顔で、快く引き受けた。

 

(待っててくれよ、未確認の騎士!)

 

奏はモニターでノイズと戦っているリュウケンドーを見ながら、彼に自分自身の言葉を伝えようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらあっ!」

 

『!?!?!?』

 

ゲキリュウケンでヒューマノイドノイズを横一線で斬り裂けば、ヒューマノイドノイズは声か分からないものを出しながら炭素の塊となった。

 

しかしそれでも俺は、目の前を事態に目を向けながら舌打ちをした。

 

「チッ!?いくらなんでも数が多すぎんだろ!いったい何体いやがんだ!つーか、横一列に並んで歩くとかお前ら軍隊か!!?」

 

今回はヒューマノイドノイズしか出ていないが、しかしその数がおかしすぎる。今この商店街の通り俺の目の前では、ヒューマノイドノイズが横一列5体で並んで、さらには縦一列の大群で並んでいたため、俺達はそれにツッコミを入れたのだ。

 

(ちくしょう、倒しても倒しても進んできやがる。そのせいで俺が後退させられちまってるし、どうでもいいが、これ見てるとなんかアレだな。大怪獣バトルNEOの大量のキングジョーブラックの行進みたいだな!)

 

そんな下らないことを考えながらも、俺は大量に迫ってくるヒューマノイドノイズ軍団を片っ端から全力で葬り去っていった。だがしかし、そんなにやってもヒューマノイドノイズの軍団は一向に減らない、寧ろやられてもやられてもザッザッザッと進んでくる始末だ。

 

 

「多すぎにも程があんだよッ!!!」

 

俺はそう愚痴りながらも、すぐに右腰にあるマダンキーホルダーを回して、マダンキーを抜き取った。

 

「ナックルキー発動!」

 

『マダンナックル』

 

「来たれマダンナックル!」

 

ナックルキーを挿し込めば、壁に目掛けてゲキリュウケンから魔法陣発動のエネルギーが打ち出す。すれば壁に魔方陣が展開されそこからマダンナックルが飛んできた。

 

 

 

「よっと!…………初っぱなからナックルスパーク!!」

 

『『『!?!?!!?』』』

 

マダンナックルを右手に取った瞬間、一気にヒューマノイドノイズに向かってナックルスパークを撃ち放った。撃ち出されたナックルスパークにヒューマノイドノイズは驚いたような声か分からない声を出して、ヒューマノイドノイズが数体消し飛んだ。しかしそれでもヒューマノイドノイズは大量に居るため、ナックルスパークで消し飛ばした程度ではヒューマノイドノイズの行進が収まることはない。

 

「ああもうっ!ならこうするまでだ!」

 

この数を片付けていくことに嫌気が差した俺は、思い切りの行動に出た。

 

「ナックルスパーク!ナックルスパーク!ナックルスパーク!おらよおっ!!!…………とうっ!!」

 

『『『『!!?!??』』』』

 

「しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!しょい!」

 

『『『『『『『!?!!?』』』』』』』

 

「よいしょおーーーっ!!!」

 

ナックルスパークでヒューマノイドノイズを3体を撃ち消して、ゲキリュウケンで踏み込みの斬撃を放ち周りにいたヒューマノイドノイズを斬り崩す。

 

そのままジャンプをすれば、ヒューマノイドノイズの顔や肩を踏み台にして俺は前に進んでいく、俺のその行いにヒューマノイドノイズは何もできず、だが俺はそんなことなど気にせず前に進んでいけば、商店街の出口が俺の目に入った。

 

 

出口まではジャンプすれば届く距離であったため、俺は最後のヒューマノイドノイズの顔面を思いっきり踏みつけ、この踏みつけとともに勢いのあるジャンプをして商店街から見事抜け出した。しかし素早く起き上がり、俺はヒューマノイドノイズたちに向かって挑発を与えた。

 

「おらっどうしたノイズども、俺を倒したきゃとっとと出てきな!」

 

『『『『『『!!!!!!!!』』』』』』

 

ヒューマノイドノイズの大群は俺の挑発に簡単に乗り、全てが俺に向かって行進してきた。それを見た俺もすぐに行動に入ることにした。

 

「さぁぁてお片付けだ。一気に決めるぜ!」

 

そう言って、俺は右手に装着したマダンナックルを地面に置き、右腰にあるマダンキーホルダーを回して目的のマダンキーを引き抜いた。

 

(あの数相手に魔弾斬りなんてやったら、商店街にまで迷惑が掛かる。なら全部出てきたらこいつで倒すまでだ!)

 

「マダンキー! ファイヤーキー…………発動!」

 

『チェンジ ファイヤーリュウケンドー』

 

「火炎武装!てりぃやあぁぁっ!」

 

昨日怒りのまま使ったファイヤーキーを今日も使い、ファイヤーキーを挿し込んで回せばゲキリュウケンから炎を纏った龍が出現し、天高く昇って吠えれば俺に向かって突撃してくる。俺は炎の龍を受け止め、炎の龍は昨日と同じようにリュウケンドーの体に身に纏い、リュウケンドーの白い鎧が炎のような赤い色に変わった。

 

 

 

俺はゲキリュウケンを振るい上げ、声高々に宣言した。

 

「ファイヤーリュウケンドー!来神ッ!!!」

 

この宣言をすぐに終わらせ、再び俺はマダンキーホルダーに手を掛けて回す。俺が望んだマダンキーを手に取り発動させ、ゲキリュウケンに挿し込んで回しゲキリュウケンが応答する。

 

「ファイナルキー発動!」

 

『ファイナルブレイク』

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ……………」

 

ファイナルキーを発動するも、ゲキリュウケンにファイヤーキーの炎の力が集まるのを待ち、それと商店街から全てのヒューマノイドノイズが出てきてこちらに来るのを待つ。

 

『『『『『!!!!!!!!』』』』』

 

しかしそれを待つ必要はなく、ヒューマノイドノイズはいつの間にやら商店街から全て出てきており、俺に向かって突撃してきた。それが調度よく、俺はリュウケンドーの仮面の中で笑みを溢すが、ゲキリュウケンに集まったファイヤーモードの炎を打ち出した。

 

「消えな!ゲキリュウケン!!火炎斬りッ!!!!!」

 

ヒューマノイドノイズの大群に向かって、火炎斬りの炎を打ち放てば、その炎はヒューマノイドノイズに直撃し火炎斬りの炎に包まれバタバタと悶え苦しんでいた。だが数分程で、100体近くいたヒューマノイドノイズは一瞬のうちに炭素の塊となって敢えない終わりを迎えた。

 

「なんか…………今回は別の意味でいつも以上に、疲れたな」

 

 

ヒューマノイドノイズの大群の終わりを見届けそんなことを呟いた俺は、ファイヤーリュウケンドーのままこの場を去ろうとした時である。

 

「ッ!!!」

 

後ろからヘリコプターのローター音が聞こえれば、俺はすぐに後ろを振り向いた。後ろを振り向いてみれば予想通りそのヘリは軍が使っているヘリコプターであった。軍用ヘリコプターを見た俺は内心で舌打ちをして思った。

 

(チッ、またあいつらか!今頃になってノコノコやって来るとはな。あんだけボコボコにしてやったのに、まだ懲りてねえと見えるな。くそったれが!)

 

心の中で思いながら、俺は動きを止めてあの2人組の女が出てくるのを待ってやった。大方俺に戦いを挑みに来たんだろうが、なら今度はあいつらの所持している得物を叩き壊して戦意を喪失してやると決めた。

 

「来るなら来いよっ」

 

奴らが来るのを待っていれば、何故か不自然なことに軍用ヘリコプターは俺から少し距離を開けて着陸した。そんな不自然さに俺は最大限の警戒をして、警戒を一切解かず軍用ヘリコプターを睨んでいた。すると軍用ヘリコプターの扉がガラッと開きそこから慌てた声を出しながら女が出てきた。

 

 

「ま、待ってくれ!落ち着いてくれよ!今日は別に戦いに来たんじゃないんだ!それに、こんな体じゃ戦おうにも戦えねえよ!」

 

「奏の言う通り!警戒する気持ちはよく分かるけど、警戒したままでも良いから、聞いてほしいことがある!」

 

「?」

 

 

ヘリコプターからあの2人組の女が出てきた、その姿は見るからに重傷者と言っていいだろう。だが俺は昨日のこともあったため、決して警戒を緩めることなくゲキリュウケンに手を掛けたまま2人の女を睨んだ。だが2人組の女はヘリから出ただけでそこからは一歩も動くことはなく、そこで立ち止まりなにかモゴモゴと言いたげだった。

 

なにをするのかと警戒をしていると、朱色の髪の女が息を大きく吸って叫んだ。

 

「未確認の騎士!昨日は本当にすまなかった!それと本当にありがとう!」

 

「………………………………あ?」

 

叫んで頭を下げる朱色の髪の女に、俺はたった1つの疑問の声を出した。すると続けて青髪女も頭を下げながら叫んだ。

 

「私からも謝る!本当にすまなかった!未確認の騎士、あなたのあの言葉は私達を思っての言葉だった!それなのに私達は自分のことしか考えず戦ってしまった。本当にすまない!」

 

女2人組のこの言葉に、俺は心の中で納得し思考した。

 

 

(心変わりの演技か何かかと思ったが、どうやら昨日の行動と言葉の意味を理解したってことか)

 

そう思考していれば、朱色の髪の女が俺の昨日の行動について語り始めた。

 

「お前は昨日命を助けた!それだけじゃない、あたしも助けてくれた!だけどあたしたちはそれに気付くどころか目も向けずに、ただお前に勝ちたいなんて言う下らない思いのために突っ走りすぎた!…………お前の言う通りだ。そんなあたしたちにシンフォギアの力を纏う資格なんてない」

 

「奏…………それは私も同じだよ。気付かないうちに視野を狭くしすぎて、守るべき大切な存在にきちんと目を向けてなかった!人々を守る防人のはすが、命を奪おうとしたんだから…………」

 

思いっきり反省の色を見せその意味を理解できた2人に、俺は心の中で安堵するが、大切なことに気付いてくれたことにはありがたいが、それでも俺はこの2人にキツい言葉を言っておくことにした。

 

「…………何を勘違いしているのか知らないが、俺は仔犬を守っただけだ。お前なんざ助けてなければ、はっきり言ってどうでも良い」

 

「「!!?」」

 

俺のこの言葉に2人は驚愕の表情をするが、すぐに真剣な表情になって俺のことを見る。

 

「ただお前らに言っておく。これ以上ノイズとの戦いにしゃしゃり出るな、邪魔なだけだお前らは」

 

「それは…………」

 

「そうかもしれねえけど…………」

 

俺の放った言葉に傷付く2人だが、それでも俺は遠慮なく言わせてもらう。

 

「それに、それだけ大きな力を持っていれば、いずれ後悔がやってくるぞ。…………力には常にそれ相応の責任が付きまとい、そしていつかそれ以上の代償がやって来る。それがやって来る日は案外近いかもな、それがやって来たとき…………お前たちはお前たちでいられるか?」

 

「「………………………………………………」」

 

俺が言ったこれからの戦いに大切なことに、朱色の髪の女と青色の髪の女は黙ったまま顎を引いた。言い切った俺は踵を返し、背中を見せるもリュウケンドーの顔を半分振り向かせこの言葉を最後にする。

 

「それが出来ないのなら戦場に出てくるな…………お荷物は邪魔なだけだ」

 

静かに言って、俺はただこの場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズの出現した場所を離れた俺は、さっさと自分の家がある方面へと入り、自分の部屋へと帰宅した。それでも俺は自分のベッドに座り真剣な顔で呟いた。

 

「…………迷いはなくなった。…………それでもこれが俺の答えだ。どんな風になってもこれだけは絶対に変えられない、俺の覚悟だ!」

 

 

静かに呟き、俺は疲れた体を癒すためにベッドに入って穏やかな眠りに就くことにした。

 

 

 

to be continued.




さて、どうなりますかね。


今回はちょっと場面が少なかったでしょうけど、たまにはこういう感じも悪くないんじゃないんでしょうか?
感想や評価よろしくお願い致します!私に皆様のパワーを分けてください!!

それとある二次創作を思い付いてしまったため、申し訳ございませんが今度はそちらを描かせて下さい!はい、本当に申し訳ございません!!!!????

一体いつになったらダイレンジャー描けますかね。



次回予告。

昨日はかわいい妹響の行為と2人の女の謝罪に、俺の悩みはぶっ飛んだ。
まあそれでも、俺にはまだ悩みの種は沢山あるんだけど、いくら俺が悩んで苦労していようともノイズの発生は終わりはしない!
みんなを守るために戦うだけだ!
するとそんな時、上空から1人の大男が降りてきやがった!しかもこの大男コンクリートの地面を踏み砕きやがった!?

こいつホントに人間か!!!??

挙げ句の果てにリュウケンドーの鎧に拳をぶち当てたって言うのに、その拳には傷一つ付いちゃいねえ!!?

こいつ人間辞めてんじゃねえのか!!!!!

人間を辞めているような大男に追い詰められて、俺は終わりを覚悟した…………その時である!
俺が所持しているマダンキーが強烈な光を放った!まさか、これは!?



次回!魔弾戦姫リュウフォギア!

VS(バーサス)最強の男!? 見つけたぜ!最初の獣王!

こいつはすごいぜぇっ!!!


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VS(バーサス)最強の男!?見つけたぜッ!最初の獣王! 前編

あの日、ようやく新ストーリーを投稿できたのに、最初に来た感想にキレました。泣きました。暴れました。

言いたいことは分かったんですけど、文章や言葉って怖いですね。特に療養している人間にとっては、その伝え方によって何が引き金になるか分かりません。

療養している自分には、心に歯止めが効かなくなって、そのせいで恩を返さなきゃいけない親をまた心配かけさせてしまいました。

気を付けなきゃいけないこの世の中なのに、酷い人間ですね自分は。本当に恐いです。

まあ、奏がリュウケンドーをあそこまで恨むのには、理由があるんですけど。


 ドクン!

 

 どこか静かで暗い場所、そこには誰にも理解できない真っ白で輝く丸いものがあった。

 

 誰から見てもそれは全く持って分からない、端から見ればそれは巨体な球体。端から見ればそれは巨大な卵。

 

 とにかくその謎の物体に分かっていることはただ1つ。どんな命よりも強い、命の鼓動を上げていたのだ。

 

 ドクン!ドクン!ドクン!

 

 その命の鼓動を放つ卵のような塊は、誰かを呼ぶようにとにかく強く鼓動を脈打っていた。

 

 ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!

 

 さらに鼓動は強く激しく脈打っていった。自分はここに居ることを気付いてほしい、ここから出してほしいのを伝えるよう、その球体はただとにかく命の証である鼓動を確実に打った。

 

 ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!

 

 そして球体の中から赤く鋭い瞳が覗かれた、その瞳は待ち望んでいた、ここから解放され命を脅かす悪しきものと戦うことを。

 

『………………………………………………』

 

 ドクン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっ、はっはっ、はっはっ、はっはっ」

 

 只今朝の5時半。

 

 いつも通り俺は日課のランニングをしている。今日はいつもより早く起きることができ、そのため俺はジャージに着替えて柔軟運動と準備体操をすればすぐに朝のランニングへと出掛け、今走っている場所はいつものランニングコースの公園である。それと今日の俺はサングラスを掛けて、ランニングを行っている。

 

 

「はっ、はっ…………やっぱり朝のランニングはいいな、心も体も爽やかになってくる!」

 

 俺は一旦走るのを止め、足を止めることはなく歩きながら言った。少し走り続けたせいもあり、俺はまだ「はぁはぁはぁ」と息を整えていく。

 足を止めることなく公園内を歩いていれば、次第に息を整っていき、俺は歩きながら公園内を見回していく。

 

「後、この公園内を5週位したら家に帰るとするか!」

 

 そう口にすれば俺は、初っぱなから全力で走り出し、公園内を5周してそのまま家に帰るために全力のまま走っていく。

 

「はっはっ、はっはっ、はっはっ、はっはっ」

 

 走りを止めることなく家に帰ることができ、家の中へと入れば珍しいことに妹の響を含めた家族全員が起床しており、俺は家族に「ただいま」と伝え家族全員は「お帰り」と返して、その返事を聞いた俺はそのまま風呂場へと直行してランニングでかいた汗をシャワーで流していく。

 

 俺はシャワーを3分ほど浴びて風呂を出ていき、昨日の夜から用意していた俺の私服へと着替えていく。ランニングで使ったジャージはきちんと分けて、洗濯機の中に放り込んでおいた。

 我が家の家族は男の汗臭い臭いを気にすることはないため、1回目の服洗いと一緒に洗ってくれるため安心である。

 

(臭いなんてものを気にして洗濯してたら、電気代と水道代、洗剤代の無駄になっちまうからな。…………第一に臭いのは頑張ってる証拠じゃねえかよ。いくら臭いのが嫌だからってその頑張りを真っ向から否定すんじゃねえよ今の若人!特に女子高生は!)

 

 そんなことを心の中で思いながら、俺は着々と私服に着替えていく。

 

 

 

「あー腹へった~。おっ、調度良いときに朝飯出来てた!」

 

 私服に着替え終わった俺は、そのまま食事をするリビングへと入った。すると既に朝飯はテーブルの上に置いてあり、目玉焼きとウインナーは出来上がったばかりのようだ。

 すると椅子の近くでは、響が俺の分の牛乳をコップに入れており、その向こうでは母さんが俺の分の 米を俺が使っている茶碗に入れていた。

母さんが俺の茶碗に入れていたことに、俺はすぐ母さんに謝罪した。

 

「悪い母さん、俺の分の米入れてくれたのか!?」

 

「別に気にしなくて良いわよ。私がやりたくてやったんだから」

 

「ああ~、本当にありがとう」

 

 お礼を言いながら俺は椅子に座って、母さんから白米が乗せられた茶碗を受け取った。

 

 

「それじゃ、頂きまーす!」

 

「「頂きまーす!」」

「「頂きます」」

 

 椅子に座って新聞を読んでいた父さんが、新聞を折り畳んで置いて朝食への挨拶をする。それに続いて俺と響、そして母さんと婆ちゃんが朝食への挨拶をする。

 

「もぐもくもぐ…………あむっ、もぐもくもぐ、んっくん」

 

「あ、そう言えば剣二。明日はどうするの?」

 

 朝飯を食べ始めれば、白米をゆっくり食べている母さんが俺に顔を向けて話し掛けてきた。

 

「明日って?…………お兄ちゃん、明日なにかあるの?」

 

「ああ明日な、実は少し前から母さんには言っといたんだけど、明日喜一の家に泊まらせてもらおうと思ってな。喜一も明日なら親が居ないから大丈夫ですよ。って言ってたし、泊まらせて貰おうと思ってな」

 

 明日に何かあると思った響は、大好物の白米を食べながら俺の方を向いて聞いてきた。別に黙っていることでもないと思い、明日俺が幼なじみの喜一の家に泊めてもらうと言えば、響が箸でも落としそうな感じで驚いた表情をして声を出した。

 

「ええっ!?それじゃあお兄ちゃん、明日お家には居ないの!?」

 

「だからそうだって言ってるだろ。大学が終わって帰るときにそのまま行こうって考えてるんだよ、だから鞄に着替えとタオルを入れておこうと思ってな。別に良いよな母さん?」

 

「大丈夫よ。でもあんまり瀬戸山君にご迷惑を掛けちゃダメよ」

 

「分かってる。迷惑掛けないよう気を付けるさ」

 

「そんなぁ~…………あ!それじゃああたしも泊まりに行って良いかなお兄ちゃん?喜一さんにもご挨拶したいし!」

 

「…………なに言ってんだお前?」

 

 母さんと話し合っていれば、何故か寂しそうな顔をしている響が、いきなり妙案を思い付いた感じで突拍子もないことを言い出した。

 

「良いじゃん!あたし喜一さんに会いたいしさ、ねえあたしも泊まりに行って良いよねお母さん!」

 

「響。それはちょっと…………」

 

「ダメに決まってんだろ。このバカ!」

 

 響の言葉に言い淀む母さんに変わり、俺がキッパリとダメだと言ってやった。それを聞いた響がすぐに俺の方に顔を向けて、大きな声で疑問を提示してきた。

 

「なんでダメなの、お兄ちゃん!?」

 

「あのなぁ!野郎2人が居るってところに、中学生の女まで泊まりに行かせられる分けねえだろ、常識的に考えて!そんなことしたら喜一の家で中学生の女の子を連れ込んだって噂されたら、瀬戸山家が嫌な目で見られるだろうが!今の世の中を考えろ!」

 

「えーっ、大丈夫だよそれぐらい」

 

「何を基準にして大丈夫だって言ってんだ!?絶対にダメだ!!!」

 

 そんな響に俺はきちんと今の世の中の理不尽な厳しさと世間の冷たさを説明していると言うのに、案の定。響の奴は口を尖らせて、ブーブーと無茶苦茶なことを言い張る。

 

(どんだけ喜一に会いてえんだこいつは?…………まさか響の奴、喜一のことが気になってるのか!?)

 

「響、あんまりお兄ちゃんに無茶な注文を言わないの!お兄ちゃんが困ってるでしょ?それに最近の世の中は本当に大変なんだから…………響の我儘で、喜一君に迷惑掛けてもいいの?」

 

 そんなことを思っていれば、向かい側に座っている母さんが響に向けて俺のことを名前で呼ばず、お兄ちゃんと呼びながらキッパリとぐうの音も出ないレベルで言った。

 そう言われた響も、うぐっと苦しい表情をしながら顔が後ろに下がった。

 

「それは、そうだけど。でも…………む~っ」

 

「母さんの言う通りだろ!なら諦めろ。別に俺が居なくても寂しくもなんともないだろ?」

 

 母さんの言葉に言い返せる言葉がなく、口を尖らせるそんな響に対し、俺も母さんの言っていることは全面的に正しいため、横から擁護した。俺の言葉に響は、まだ納得ができないような顔をして俺のことをじっと見ていた。

 

「もういいから食っちまうぞ、じゃねえと片付けられねえんだからな!」

 

 響の視線を無視して俺は再び母さんが作ってくれた朝飯を食べていく、響は納得ができない顔のまま自分の朝飯を食べていった。

 

(やれやれ、困った妹だぜ)

 

「うぅぅ…………あたしって呪われてるかも」

 

 朝飯を食べながら、響に視線だけを向けて心の中で呟く。

 

(てか我が妹よ、こんな下らないことで呪われてるって言ってたら、今後の人生で起きる出来事が大変としか言えなくなるだけだぞ)

 

 

「ごちそうさま。じゃあ母さん悪いけど後のこと頼むな、俺はもう行ってくるよ」

 

 朝飯を食べ終わり、母さんに一言謝って俺は椅子から立ち上がり、出ることを伝える。

 

「大丈夫よ。気を付けていってらっしゃい、剣二」

 

「いってらっしゃい、剣二」

 

「気を付けて行ってこいよ。剣二」

 

「あ、お兄ちゃんいってらっしゃい」

 

 俺の台詞に、母さんは平気そうな顔で返して俺に送る言葉をかけ、続けて婆ちゃんと父さんが言って、最後は響が口元にご飯粒を付けながら俺に言葉をかけた。

 そんな家族に俺は笑って、響に口元にご飯粒が付いていることを伝えて、バックを2階から持ってくることにした。

 

「あんがと。それと響、口元にご飯粒が付いてるぜ」

 

 そう言って俺は背を向けて2階へと行き、響はと言うと、恥ずかしいようで顔を少し赤めながら口元に付いていたご飯粒を素早く口元へと入れた。

 

 

 

「ん~、やっぱり体が疲れてるな…………肩が凝りまくってやがる」

 

 バイクを運転して目的の大学へと向かっている俺は、バックを背負いながらも両肩の凝りがさらに増してしまい、俺は肩の凝りに愚痴を言った。

 

「たくっ、肩が凝るのは仕方ないとしても、もうゴリッゴリだよ。喜一の家泊まりに行くときに銭湯でも行ってくるか?確か車とかで行けば、距離的にはそこまで遠くないし30分ぐらいで済んだよな?」

 

 肩の凝りに悩みながらも、俺はしっかりとハンドルの操作をして、通っている大学へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機動二課。

 

「はいっ検査終了。翼ちゃんも奏ちゃんも未確認の騎士に負わされた怪我は消えたわね!これもシンフォギアのお陰かしらね♪」

 

 機動二課では、装者である天羽奏と風鳴翼の精密検査を行っていた。主治医はもちろん、自他ともにできる女である科学者の桜井了子。そしてその場所には司令官であり2人の親代わりの、風鳴弦十郎も居た。

 翼と奏の2人は、検査のために着る検査着を着ていて、翼は先に検査が終わっていたようで、桜井了子の後ろにいて心配な顔で奏の検査を見ていたようだ。検査が終われば、奏も同じく機器を操作する場所に入ってきた。

 

 

「これにて終了!了子さん、状態はどうだ?」

 

「ええっ、2人とももう完全な健康状態よ。これならシンフォギアを纏って戦えるわよ」

 

 それを聞いた奏と翼はそれぞれ別々の反応を見せた。奏は「うしっ」と喜びでも見せるようにガッツポーズし、翼は嬉しそうに微笑んで頷き、弦十郎は真剣な表情のまま無言で頷いていた。

 そんな奏と翼の2人を反応を見ながらも、桜井了子は付け足すように、先程よりも声のトーンを上げて通達した。

 

「ただしっ!いくら戦えると言っても、怪我が完全に治ったわけじゃないわよ。2人の体はまだ本調子とまではいかない、それほどまでに未確認の騎士から受けた攻撃は凄まじいと言える、だから2人に言っておくわ。戦いに出るとしても、無茶な戦いは厳禁!無理のない範囲で戦って、基本的なノイズの戦闘は未確認の騎士に任せておくことね!」

 

 そう言われた奏と翼の2人は、1度お互いの顔を見合わせ桜井了子の方に顔を向けて、深く顎を引いた。

 

「了解です」

「分かった」

 

 奏と翼の反応を見た桜井了子も深く頷き、精密検査の機械から録った検査用紙に目を通していく。

 

「…………やっぱり正規適合者の翼ちゃんと違って、強制適合者の奏ちゃんは、LiNKERを挟みながら使っているから、少し危ない所があるわね」

 

 検査用紙を見ながら桜井了子は発言し、その言葉に奏は少しだけ暗く俯いた。

 

「そうか、やっぱりあたしは、翼のように連続で戦うのは厳しいか」

 

「奏…………気持ちは分かるけどそんなに思い詰めないで、私は奏が居るだけで嬉しいから!」

 

「うん。…………ありがとな、翼」

 

 暗く俯く奏に、翼は彼女にしっかりと伝わるように大きな声で言った。

 翼のその言葉に奏は頷き、軽く微笑んで相棒にお礼を言った。

 

「とにかく、奏ちゃんは体の調子が悪くなってきたり違和感を感じたら、すぐに報告すること!無茶や無理を隠して出撃したら何が起こるか分からないからね!」

 

「了子の言う通りだ。奏、お前はかなり無茶や無理をしてガングニールを装着している。そんな状態で聖遺物を纏い続けていれば必ず体に異変が起きるだろう。だがそうなる前に、必ず医務室にくるんだ!起きてからでは遅いからな!」

 

「分かってるよ2人とも!」

 

 了子と弦十郎の心配を含めた注意換気に、奏は笑いながらサムズアップをして強く頷いた。

 それを見た弦十郎は笑み浮かべたまま頷くも、少しだけ無言になるがすぐに話をしだした。 

 

「…………それならいい、それとお前らすぐに検査着から着ていた服に着替えるんだ。司令室で伝えるべきことがあるんだ」

 

「え?ここじゃダメなのかおっちゃん?」

 

「ああ、全員に聞いてもらうことだからな。悪いが2人とも、大急ぎで私服に着替えてもらえないか?もちろん、俺は廊下に出ておく」

 

「わ、分かりました。すぐに着替えます!」

 

 弦十郎の台詞に疑問を抱きながら問う奏だが、弦十郎は顔を2人に向けて頷いた。弦十郎のその顔はかなり真剣な表情であり、その顔を見た2人の中で風鳴翼は慌てながら返答をした。

 

「フッ、慌てすぎて怪我をするなよ」

 

 風鳴弦十郎は鼻で笑いながら言って、2人の着替えるところを見ないよう検査室を出ていった。

 

 

 

「………………………………………」

 

「なあ翼、一体おっちゃんが伝えたいことってなんだろうな?」

 

「さあ、それは私も分からないけど…………叔父様があれほど真剣な顔をなさるってことは、かなり重大なことだとなんじゃないかな?了子さんは何か聞いてますか?」

 

「いいえ、私もなにも聞いていないし知らないわ。上の方からなにか厄介ごとでも言われたのかしら?」

 

 私服に着替え終えた奏と翼は弦十郎や桜井了子とともに、指令室に向かっていた。風鳴弦十郎を先頭に天羽奏、風鳴翼、桜井了子の3人は静かに着いてきていた。

 

 

 すると、奏が無言で歩いていた空気に嫌気が差し、隣にいる翼に問いを掛けた。しかし、奏の弦十郎が伝えたいと言うことへの問い掛けに翼はさっぱり分からないと答え、隣を歩いている弦十郎が心から信頼を置いている天才科学者の桜井了子ならば、なにかを知っていないか聞いてみたが桜井了子もなにも聞かされていないと首を横に振りながら言った。

 そして最後に、上層部が弦十郎になにか厄介な命令でも出したのかと予想を出した。桜井了子の予想を聞いた奏と翼は、納得がいったような頷きをした。

 

「……………………よしっと」

 

 そんな話し合いをしていれば司令室の前に到着し、弦十郎は扉の隣にある機器を操作して扉を開けた。扉が開けば弦十郎はすぐさま司令室へと入り、弦十郎に続いて奏と翼、そして桜井了子の3人も司令室へと入った。

 

 

 

「あっ司令っ!」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「楽にして構わない」

 

 弦十郎が司令室に入れば、一番最初に気付いた忍者の緒川慎次が敬礼をしようとすれば、司令室にいた他のオペレーターや隊員たちも敬礼をしようとすれば、弦十郎は片手を上げてそう言えば全員は敬礼をせずにただ了承したのか、深く顎を引いただけであった。

 

 弦十郎の後ろから続いて、天羽奏、風鳴翼、桜井了子と順に入ってきた。

 

 

 弦十郎は歩いて司令室の中央に止まれば、隊員たちの方に振り向き皆の顔を右端から見ていく。

 司令室に入ればすぐに右端に並んだシンフォギア装者の天羽奏に風鳴翼、科学者の桜井了子、そこから次にオペレーターの藤尭朔也と友里あおい、それとこの二課に所属する隊員たち、そして忍者である緒川慎次。

 皆、司令官である弦十郎に対して、真剣な表情である。いつも話し半分で聞く奏も今日は真剣な眼差しで弦十郎を見ていた。全員の表情を見た弦十郎は静かに頷き、口を開いた。

 

「みんなに伝えることがある。上層部がどんな手を使ってでも未確認の騎士を捕らえろと指示があった…………」

 

「「「「「!?!!?」」」」」

 

 

 弦十郎の台詞に、この場に居る全員に数多くの反応を見せたが、その全てには言い表せないほどの困惑が滲み上がっていた。

 

 

「司令、上層部は未確認の騎士を捕獲しろと仰ったんですか?」

 

「ああ、上層部は確かにそう言ったよ、緒川」

 

 代表するかのように緒川慎次が弦十郎に確認するように聞けば、弦十郎は深く頷いて肯定した。

 

 

「そんな…………未確認の騎士を捕獲しろだなんて…………」

 

「上層部はなにを考えてるんだよ!!嫌って言うほど未確認の騎士の戦闘能力を見たって言うのに、まだ捕獲をしろって言うのか!?」

 

「寧ろその逆だろ、あんだけの戦闘能力を持っているからこそ、捕獲しろだなんて言うんだろ?考えてるように見えて言ってるが、上の連中は実際はなにも考えちゃいねえんだろ」

 

「それが上のやり方なの?あれだけ奏さんや翼さんが傷ついたって言うのに、上層部はそんなに未確認の騎士を捕らえたいの?」

 

「司令ッ!!わざわざこんな命令に従うことはありません!これ以上未確認の騎士を刺激させれば、我々は今度こそ翼さんと奏さんを失うことになります!!!」

 

「そうです!どんなに言っても分からない上層部ですが、シンフォギア装者のお二人を出せば、上層部もこんなバカげた命令を(とり)()すはずです!」

 

 

 ざわざわと隊員たちが語りだし、オペレーターの藤尭 が朔也が意義を唱え、その藤尭に続いて友里あおいも異議を唱えた。

 藤尭と友里の発言により、それを聞いた他の退院たちも「そうだ!その通りだ!」「こんな命令を聞くことなんてない!」と賛同の言葉を出していく。

 

「………………………………………」

 

 弦十郎はと言うと、隊員たちのそんな言葉を静かに無言で聞いていた。

 

 

「あたしと翼、2人で戦ってもシンフォギアの必殺技を放っても、未確認の騎士には録に通用しなかった。…………あたしたちの実力じゃあいつには敵うどころか、勝てることだって出来やしないのに、ッ!」

 

「…………未確認の騎士は、私達と違って戦うことの大切さを誰よりも心得ている。それに昨日も使ったあの炎の力を考えれば、きっと未確認の騎士はまだ私達の予想を越える力を持っているとも考えられる!」

 

「ああ。…………捕獲のことを考えて戦って勝つなんて、()ずもって不可能だ!」

 

「………………………………………」

 

 隊員たちが命令を聞くべきではないと騒ぐ中、実際にリュウケンドーと対峙して敗北を喫した奏と翼の2人は、リュウケンドーにある種の尊敬の念のようなものを入れながらリュウケンドーの実力を言い放つ。

 奏と翼のその変化に、弦十郎は嬉しく思いつつも今の状況で決して顔には出さず、一度目を瞑ってすぐに開き、冷静に隊員たちに向かって言った。

 

「…………上層部はノイズに対抗できうる力と機動二課の更なる実績が欲しいんだろう。残念だが、ここは大人しく従うしかない」

 

「「「「「ッ…………」」」」」

 

 弦十郎のこの言葉に、皆は一気にしーんと静まり返ってしまい、隊員たちはなにを言えばいいのか分からなかった。

 

 

 

「だが、上層部もこれで未確認の騎士の捕獲が無理であれば、捕獲は諦めてノイズの対処に集中してくれて構わないと言った」

 

「「「「「!!!!!!!!」」」」」

 

「おっちゃん!それって、つまり!!」

 

「…………ああ、これで未確認の騎士の捕獲は終わると言う訳だ」

 

 奏の尋ねる台詞に、弦十郎は小さな笑みを見せリュウケンドーの捕獲はお蔵入りとなることが決定したことを伝えた。

 それを聞いた奏、翼やオペレーターである藤尭、友里、そして二課の隊員たちはわっ!と喜ぶように叫んだ。

 

「でも弦十郎くん、上層部が未確認の騎士の捕獲を諦めたのは有り難いけど、諦めるのなら諦めるだけの証明みたいなものが必要なんじゃない?」

 

「桜井さんの言う通りです。上層部が未確認の騎士を捕獲を諦めさせるには、諦めさせるほどの証拠映像を見せることになります」

 

 しかし皆が喜ぶ中、その喜び用を科学者である桜井了子は疑問の表情で弦十郎に聞いてきた。同じく緒川慎次も、桜井了子の言葉に頷きながら上層部を納得させることが重要だと察する。

 桜井了子と緒川慎次の言葉に、風鳴弦十郎はまた真剣な表情へと戻り、深く頷いて語り出した。

 

 

「うむ。上層部を納得させるにはそれ相応の証明が必要だ」

 

「「「「「……………………………………」」」」」

 

 弦十郎の真剣さに、全員弦十郎の言葉を聞き逃さないようにするも、次に弦十郎は全員が驚愕することしかできない一言を言ってのけた。

 

「そのため、上層部を納得させるために司令官である俺自身が出ようと思う!」

 

「「「「「!?!?!?」」」」」

 

「司令官直々に出て未確認の騎士を相手にすれば、流石の上層部も納得して諦めるだろう。…………いや、あいつらを納得させるにはそれぐらいしなければならない!!」

 

 この言葉に再び奏や翼、この場にいる全員が騒ぎ出し、隊員の1人が新たに意義を申し立てた。

 

「危険すぎます司令ッ!?いくら上層部を納得させるためとは言え、司令自身が出撃するなんて危険が大きすぎます!?」

 

 隊員の言葉で、先程より隊員たちは一気に騒ぎ出し、賛同したり頷いたりをした。

 

 

「確かに、未確認の騎士と戦うのは危険が大きい。だが他にどうやってあの上を納得させるんだ?シンフォギアで捕獲が不可能だと言うのに、上層部はこれを最後に捕獲しろと言っている。なら、あいつらを納得させるには司令官である俺が直々に出て戦うしかない!それぐらいのものを見せれば、上層部も完全に未確認の騎士を諦めるだろう」

 

「それはそうですが…………」

 

「それにだ。彼の行動から考えて、人間の命を奪うことはないだろうしな。彼の弱点を狙うようで卑怯だが、手加減なしで俺は彼と戦う。そしてもしも彼を二課まで連れてくることができれば、彼を二課で守ろう。例え彼が人間でなくとも、子供でなかろうと、守ってやるのが俺達大人の使命だからな!」

 

「「「「「…………了解ッ!!!」」」」」

 

 機動二課にとってリュウケンドーは未知の存在であるが、例え人間かどうかも分からないものでも守ろうとする弦十郎の思いに、隊員たちは心打たれ弦十郎の思いに応えるように敬礼をした。

 

 

 

「そう言うわけだ。奏、翼、ノイズが出現すれば今回は俺も一緒に行くからよろしくな。ノイズとの戦闘が終われば俺は未確認の騎士に戦いを挑む、だがお前らは一切の手出しはするな、できるか?」

 

「分かったよ。おっちゃん!」

 

「私も分かりました。ですが司令、くれぐれも気を付けてください!」

 

 奏と翼の方に顔を向け弦十郎はそう言えば、奏と翼は頷いて返事をした。

 

「これでこの話は終わりとする。みんなノイズが出現したときは、よろしく頼むぞ!」

 

「「「「「はいっ!!!!!!」」」」」

 

 弦十郎の言葉と隊員たちの気合いの入った返事でこの場は終わり、全員はそれぞれの役割へと戻っていった。そんな中、シンフォギア装者の天羽奏と風鳴翼は弦十郎を心配そうに見て、弦十郎も心の中で呟いた。

 

(しかし、もし未確認の騎士の怒りを買ってしまえば、俺も無事では済まないだろう。果たしてどうなるか…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ鈴、昨日は本当に悪かったって!頼むからもう機嫌治してくれよ!!」

 

「………………………………………」

 

「喜一~、鈴の機嫌治すの手伝ってくれよ!!?」

 

「流石にこれは僕でもどうすることもできないよ。それに一番の原因は、昨日約束をほっぽり出した剣二が悪いんじゃないですか」

 

「それはそうなんだけどよ!説明したじゃねえかよ!!」

 

 現在は放課後であり、半分の学生たちは帰り支度を終えて大学を出ている。まあどうせこの後は何人かでつるんで、どっかの遊び場とかに行くんだろう。

 このまま帰る奴なんてあんまり居ないだろうし、それでも残り半分は大学に残って今回の講義の予習をしたり、大学の体育館や外でスポーツをしているだろう。

 そんな中、俺は廊下を歩きながら幼なじみで親友の左京鈴の機嫌を必死に取っていた。

 

 

 

「いくらなんでも酷すぎじゃない剣二!一昨日、一緒に犬を探そうって約束したのに、それを忘れて昨日はバイクの調整に丸一日潰すだなんて!!」

 

「だから悪かったって言ってるだろ!?一昨日にお前らと別れた後、ちょっと俺自信に問題が起きちまったんだよ。そのせいで色々と心の中で悩んじまって、お前らとの約束のことも思い出せずに夕方まで悩んじまったんだよ!!!」

 

 昨日のこととはつまり、俺と鈴と喜一で一昨日に出会った、あの薄汚れた白い毛を持つ仔犬の飼い主を探してあげてやることだ。

 …………だったのだが、俺は一昨日の戦いであの2人組の女を重傷レベルまで傷付けてしまい、リュウケンドーの力で傷付けたことを後悔しながら悩んでしまった。

 まあ可愛い妹の響のお陰で悩みが吹き飛び、ノイズと戦えるレベルまで回復できた。

 

(今回は響に助けられたな、感謝しとかないと…………)

 

「…………剣二。剣二が悩むと言うほどの悩みなんて、物凄いものだと思うんですけど、大丈夫だったんですか?」

 

 鈴へのご機嫌取りに苦戦を強いられている俺は、苦い表情をしながら後ろの髪を手で掻きながら、心では妹の響に感謝を伝えることにした。すると後ろにいた喜一が、思いっきり深刻そうな表情で俺の悩みについて聞いてきた。

 

 

「そこまで深刻そうな表情で聞いてくるのは分かるけどよ、大丈夫だよ。悩みなら昨日の夕日が沈んでいるときに解決してくれたからよ」

 

 喜一の気持ちも分からんでもない、昔っから俺は大抵の悩みなんざ一気に吹き飛ばす勢いで行動してたからな、それでも耐えきれないほどの重すぎる悩みなら思いっきり悩んでいたところだが、その度に家族や友人、教師に「相談しろ!」と言われいるのだが、如何せん問題が問題のため、俺一人で片付けなければならないものも多いのだ。もちろん俺一人で片付けきれない問題は家族や友人とかに相談して供に解決してもらっている。

 

 俺がノイズと戦っていること以外はだが……………………。

 

 

 

「大丈夫だって!昨日妹の響が悩みなんて吹き飛ばしてくれたからよ!」

 

 鈴と喜一が今度は心配そうな顔で俺を見ていたため、俺は2人を安心させるように大丈夫であることを口で伝えた。

 

「そうですか。…………それは良かった」

 

「…………大丈夫ならそれでいいのよ。それで!」

 

「それよりも早く行こうぜ!今日は3人であの白い仔犬を探すんだろ?時間はそんなにねえんだ。行動あるのみだぜ!」

 

「あっ、待ってよ剣二!?」

 

「ちょ、ちょっと2人とも!?いきなり走ったら危ないですよ!?」

 

 そう言っていきなり走り出した俺に、鈴と喜一は俺に追い付くため慌てながらも足を早めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…………よいしゃ、っと」

 

 俺はバイクで廃工場の前に来ていた。誰に説明しているのかは知らんが、ここの廃工場は予想通り、俺が一昨日あの機械の鎧を纏った2人組の女と戦った場所だ。

 

 ここを戦いの場にしたせいで廃工場は派手に崩れ落ちてはいないが、人の大きさ以上もある穴が開いていたり、地面にはえげつない数の穴や一昨日の戦いの痕跡がまだ残っているし、そして廃工場の周りには立入禁止と危険の文字が書かれた看板が立っており、さらには黒い文字でkeepoutと英語で書かれている黄色のテープが廃工場の周辺一帯に張り巡らされていた。

 

 

 その前に何故俺が廃工場に居るのかを説明しなくてはならないだろう、本当に誰に説明するのかは知らねえが、説明は大事だからな。

 大学を出た俺達はそのまま一昨日白い仔犬と出会ったあのゲーセン近くのフードコードへと行ってみたのだが、結果は予想通りのダメダメ。

 3人でフードコート周辺を散り散りになって探してみたが、あの白い仔犬どころか他の仔犬の姿形も見当たりしなかった。

 

 一切仔犬の姿が見掛けなかったため、俺は鈴と喜一に一昨日またあの仔犬を見掛けたから、もう1つの場所に行ってみると言って、バイクに乗り動こうとしたのだが、鈴と喜一が同時に「「行く!」」と言い出したのだが、念のためにここにもう一度現れるかもしれないからと言い聞かせ、2人にその場を任せ俺は白い仔犬を探しにこの廃工場まで来たんだ。

 

 

 

「にしても…………看板やテープはあんのに、なんで警官が1人も居ないんだ?」

 

 この廃工場は入れば危険だ、子供たちが遊び半分で勝手に入る確率もあると言うのに、その監視役としての警官が居ないのかがものすごく気になる。

 

(リュウケンドーである俺に対する罠か?それともやることだけやり尽くしたから、警備も置いとかずに看板とテープだけやって帰ったのか?)

 

 少し疑問に思ってしまうが考えていても仕方ないため、俺は叱られることも気にせず、黄色のテープを潜り抜け廃工場の中へと入っていった。

 

「失礼しますよ~っと」

 

 軽快に廃工場に入ってみるも、警報装置のようなものもなく、簡単に廃工場の中へ入れてしまった。廃工場へと入った俺は、少し大きめの声を出しながら仔犬を探し始めた。

 

「お~いワンちゃ~ん!!どこだ~!居るんだったら出てきてくれないかー!!!!!」

 

 言ってみたが結果は無言の空気、この廃工場にも仔犬の鳴き声どころかなんの生き物の気配がなかった。とりあえずと思い、俺はもう一度声を出しながら呼んでみることにした。

 

「ワンワンワンワーン!ワンちゃ~ん。居るなら出てきて頂戴!!」

 

 ちょっとアホなこともやってみたが、結果は全くもって同じ、返事もなにもなくただ静かな空気が流れるだけであった。

 

(もしかして、一昨日あんなことが起きちまったから、縄張りを移動したのかな。)

 

 その可能性は高すぎるため、俺はかなり居た堪れない気持ちになってしまった。

 

 

「……………………はぁ、もういい時間だし、今日はこれぐらいにするか。鈴にも電話するとするか」

 

 そう言って俺は、ズボンのポケットから黒色のスマートフォンを出し、鈴の電話番号を映し出して押した。スマホを耳に翳していると、3コールで鈴が電話に出た。

 

『もしもし剣二。どうだった?』

 

「悪いダメだった。心当たりはあったんだが、ここにもあの仔犬は居なかったよ」

 

『そう…………』

 

「鈴、そうガッカリすんなと言いたいんだけどよ。今日はここまでにしとかないか?そろそろ帰らないと夜になっちまうし、明日だって大学があるんだ。なんなら明日また探してみないか?」

 

『…………うん、そうね。そうしようか!それじゃあ今日はここまでにして、明日またあの仔犬を探すことにしよう。…………瀬戸山君、今日はもう諦めて帰りましょう!それじゃあ剣二、あなたもそのまま家に帰っていいけど、明日も一緒に探してよね!!』

 

「分かってるよ。だけど鈴、明日も見つけられなかったら探すのは一旦諦めようぜ。ああ、ああ、そうしよう。じゃあお前らも気を付けて帰れよ」

 

 電話を終わらせ、スマートフォンをポケットに入れて、最後にもう一度廃工場の周辺を見回し、俺は廃工場から去っていった。

 

「…………ったく、あの仔犬一体どこにいるんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブオオオォォォォォン!

 

「やっと家に帰ってこれたぜ!まあ約束ほっぽった俺が悪いんだけどよ…………」

 

 バイクをかなりのスピードで走らせ我が家に到着すれば、ヘルメットを脱いで少し愚痴り、バイクをさっさと倉庫へと入れ、背中に掛けているバックから紙袋が入ったビニール袋と家の鍵を取り出した。

 

「えーっと、中身のやつは全部無事だな。…………ただいまー」

 

 紙袋の中を確認してみると紙袋に入っているものは全部無事であり、俺はホッと一安心して家の中に入った。

 

「…………あり?」

 

 家の中に入ってみたが、家の中はシーンと静まり返っており、顔を下に向け玄関前の靴置き場を見てみれば、母と祖母の靴がなかった。

 

「母さんと婆ちゃん居ねえのか?2人して買い物にでも行ったのかな?珍しいこともあるな」

 

 家に誰も居ないことを確認した俺は、そのまま自分の部屋がある階段を上っていき、上がりきって自分の部屋の扉を開けて入った。

 

 

 

 自分の部屋へと入れば、そこにはいつも通りの電灯が付けられた机、机の上にある特撮ヒーローモノの雑誌やインターネットが繋がっているパソコン、服が入ったタンスにロッカー、マンガやバイクの雑誌やパワースポット雑誌が入れてある本棚、ヒーローモノのフィギュアやおもちゃ、就寝するベッド、そして壁にはギターケースが立て掛けられている。

 

 このギターケースは昨日響が俺のために出してきたものであり、その後は2階の倉庫に仕舞うのも面倒だったので、俺の部屋に置くことにしたのだ。

 

「あ~…………疲れた」

 

 買ってきたものを自分の机の上に置いて、俺はベッドの上に座り、そのままボスっと寝転んで両腕を伸ばした。

 

「帰ってきたのはいいけど、今はなんもやる気がしねえな~。どうすっか」

 

 そう言いながら俺は体を起き上げて、体を力一杯伸ばし始めた。

 

「んーーーー…………ッ!?あれは!!?」

 

 体を力一杯伸ばしていれば、タンスの一番下の引き出しから光が漏れていたのだ。そしてその光は段々と強さを増していったのだ。

 

 

 そうこの光は、光のカノンの書が次なる未来を記した光なのだ。

 

 

to be continued.




文章量が多くなりそうなため、前編後編で分けました。もし1話にしてほしい人が居たら言ってください。出来上がり次第、そうしますので。

現在は魔弾戦記リュウケンドーの第一期OPを聞きながら執筆のモチベーションをなんとか作っています。

もしもですが、読者の皆様も久し振りにご視聴してみてください。

すごいですね、音楽って。


感想と高評価をお待ちしております!!!!!
皆さまのエネルギーを私に与えてください!!!!!!


それと【これがヒーローだ!】についても報告がその内ございます。リュウフォギアのファンの皆様は、活動報告のご確認のほどとご理解のほどをどうかよろしくお願い致します!


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VS(バーサス)最強の男!?見つけたぜッ!最初の獣王! 後編

最初の時は酷すぎました自分。
コンクリートの壁に10回以上は頭突きして、結果は額がえらい血が流れていました。

ただ今はもう額の傷は治って、少しだけ痕があるって感じですが。

ただでさえ、ストレスも解消できない嫌な状況なのに、これ以上は嫌な思いしたくありません。

何とかしろって言っても、その何とかができない状況なんですから。


「光のカノンの書が光り輝いている!?…………もう新しいページが出来上がったのか!?」

 

 家に帰ってきて部屋に入った瞬間、いきなりタンスの一番下の引き出しに入れてある、光のカノンの書が光り出したんだ。急にこんなことが起きれば驚くが、いやまあ実際に驚いたんだが、それにしてもおかしすぎる。

 今までの光のカノンの書の新しいページが綴られるには、後数日間は必要だと言うのに、今回は2日しか経たずにページが出来上がったのだ。しかも俺が帰ってきたのを見計らったかのように、いきなり光を出してきたんじゃ、もう確実におかしいとしか言いようがない。

 

「ま、考えても仕方ねえよな。不思議なことなんざいつも起きてるんだし」

 

 そう言いながら自分自身を納得させ、気になることを気にせずに俺はベッドへと座って、光のカノンの書の新しく綴られたページを開くことにした。

 

 

「えーっと、なになに~。“新たな出会いを果たした。しかし、次に来るのは最悪な敵、その敵を討てるかどうかは自分自身次第。生きるか死ぬかは貴君の力のみ、自分自身の運命は自分自身の力で斬り開くのだ。”…………は?」

 

 新しく綴られた光のカノン書のページを読んでみたが、俺は疑問すらも通り越した声が出たような気がした。

 

「どういうことだよ。…………今日には最強の相手と戦うことになるって言うのに、その次の喜一の家に泊まりに行く明日には最悪の敵だと?しかも、もしかすれば俺は死ぬかもしれないってのかよ」

 

 言いながらも、俺は自分の思いを頭の中で巡らせた。

 

 

(冗談じゃねえぞ、向こうでは鉄骨の下敷きになって死んだと思ったら転生して新しい生を得たって言うのに、下手をすれば死ぬってのか)

 

 俺は一呼吸置くために喋るのを止めるも、すぐに緊迫した表情で呟いた。

 

「なにか?…………まさか本当に、何かが起きる前触れなんじゃねえだろうな?」

 

 だが、口で言ったとしても仕方ないため、俺は次のページになにが綴られているのかを確認するため目を向けた。

 

「次のページは、“ここから貴君の本当の戦いが始まる。どう行動するかは己の心次第、そしてリュウケンドーに変身できる貴君は、いずれ最大の決断を迫ることとなる。それを肝に命じておくように”」

 

 光のカノンの書の次のページを読み終えた俺は、真剣な眼差しでそのページに綴られている文字を見詰め、小さな声で喋った。

 

「…………ここから俺の本当の戦いが始まる?そうかよ。いや、それどころか…………俺が生き続ける限りは俺の戦いに終わりなんてありはしない、助けを求めている人がいるのならば、俺はその手を掴むために伸ばすんだ!」

 

 そう言いながら、俺は自分の右手の平を見て力強く握り締めた。

 

 

「しかし、この文章が綴られているってことは、俺が生き残れる未来もあるってことだよな?だから光のカノンの書に続きのページが出たんだろうし。果たして明日は俺の命運はどっちに転ぶことやら、そして最大の決断を迫ることとなるか。…………さて次のページは何かな?“リュウケンドー。この出会いを果たした瞬間、貴君の戦いはしばらく落ち着く、だが別の方向で苦労をすることとなるだろう。だがそれすらも負けることなく、強く生きることを薦める”」

 

 次のページの文章を読んだ俺は、一気に無言となってしまい、目を半目にしてそのページを見たまま思ったことを口にした。

 

「…………なんだよ強く生きることを薦めるって、光のカノンの書は過去から未来、この世で起こるありとあらゆることが記載されている本の筈だろ?それなのに強く生きることを提案して薦めるって、光のカノンの書でも対抗できないことが起こるって言うのかよ。一体何が起こるって言うんだ?」

 

 俺は嫌な顔をしながらそう言い、頬に一筋の冷や汗が流れ落ちるも、「はぁ」と溜め息を深く吐いた。

 

「言ったところでしょうがないんだけどな…………それでもしばらく戦いがないって言うのに、苦労することになるって、一体俺になにが降り注ぐってんだよ」

 

 そう口で溢しながら、俺は光のカノンの書の次のページを捲った。

 

 

「今回は4ページも綴られたのか。久々に4ページも出来上がったな、それほど俺に危険を知らせたかったのかね」

 

 次のページに捲って目を向けて、それを自分自身でしか聞こえない声量で出した。

 

「“貴君の運命は定められた。しかし自身の力で貴君の運命を変えることは可能、ならば己の全てを持って戦うべし、そして己の戦う理由を忘れることなかれ”」

 

 まるでこの文章は、俺に対する忠告のようであった。俺は光のカノンの書を静かに閉じて、膝の上に置いたまま今度は天井を見詰めた。

 

(俺が戦う理由なんて忘れることはないさ、もし戦う理由を忘れちまったら、俺はなんのために戦ってきたのか分からねえし、俺が今もなお背負っているものに対する侮辱だ!)

 

 そう侮辱だ。だからこそ俺は一瞬でも自分自身が背負っているものと戦う理由を忘れてはならない、もしそんなことしてしまったら、俺には生きている資格もなければリュウケンドーに変身する資格もない。

 

 

 

「…………絶対に忘れるなんてこと、しちゃいけねんだ」

 

 静かに呟き、俺は壁に背を預けてボーッとしてしまおうとしたが…………。

 

『ただいま~!!!』

 

「!? やばっ響の奴帰ってきたのか!?」

 

 その瞬間に、響が玄関を開けて元気な声で入ってきたのが聞こえたため、俺は慌てるように立ち上がり、手元にある光のカノンの書を大急ぎで元あったタンスの一番下の引き出しに入れる。家族の誰か、特に妹の響にでもこんなもん見られたらかなりめんどくさいことにしかならない。

 

『あれ?誰も居ないの?…………でもお兄ちゃんの靴は置いてあるから、家には居るはずだよね?』

 

「急げ急げ急げ!急いで戻せッ!!おうわぁ~!!?」

 

 慌てて立ち上がったのがいけなかった、そのせいで俺は部屋に引いてあるカーペットに(つまず)いてしまい、派手にずっこけた。

 カーペットに躓いてしまったため顔面から落ちてしまったが、運良くギリギリのところでタンスにぶつかることはなかった。

 もう少し部屋が狭ければ、もう少し俺に身長があれば、危うく俺はタンスに頭か顔を思いっきりぶつけていただろう。

 

(…………想像しただけで痛そうだよ)

 

「部屋に居たんだねお兄ちゃん。なんか物凄い音がしたけど、大丈夫?」

 

 心の中で呟きながらぶつけていたらと思うとゾッとするが、俺の部屋の扉の前から響が声を掛けてきた。恐らく2階から俺がずっこけた音を聞いたため、それなりに急ぐような感じで2階にやって来たのであろう。

 とりあえず俺は、響に怪しまれないよう返事をしながら、光のカノンの書をそっと静かにタンスの中に入れようとする。

 

 

「ああ響か。おかえり、いや大丈夫だ。ちょっと部屋の中で転んだだけだ」

 

「そうなの?なんか慌てているようにも思えるんだけど…………?」

 

「だから大丈夫だって!安心しろ!別に怪我もしてねえし、なにも起きちゃいねえからよ!」

 

「…………お兄ちゃん、なにか怪しいことでもしてるのかな~?」

 

 響のなにか探りを入れるような言葉に少しドキッとしつつも、俺は響に悟られないようにしながら、いつも通りの平常心で答えた。

 

「怪しいことなんざしちゃいねえよ!大丈夫だからさっさと自分の部屋に行け!」

 

「ほんとに~?もしかして如何わしいものでも隠したのかな~?」

 

「おい響…………その言葉は俺に対して喧嘩を売ってるようなもんだぞ」

 

 誰がそんなもの買うか!そんなものを買うぐらいなら、俺は今すぐに全財産を寄付金に使うわ!

 

「それなら大丈夫でしょ。それじゃあお兄ちゃん、入るからね」

 

(ええい、ちくしょうめ!)

 

 光のカノンの書はタンスの中に戻したが、今の俺はタンスに背中を凭れ掛けている状態、タンスに背中を凭れ掛けさせていることなんてよくあることだが、何も持っていない状態で背を凭れさせていたら響であろうと怪しく思うだろう。

 最悪タンスの中になにか隠しているだろうと睨んで、俺のタンスを上から順に開けていくことは間違いないため、俺は“あるもの”を手に取り、それでこの場面をやり過ごそうと思い付いた。

 そしてガチャっと、俺の部屋の扉が開けられた。

 

 

「お兄ちゃん何してるのかな~。…………なんだ、転んだのを良いことに、タンスに凭れてギター弾こうとしてたんだ」

 

「だから言っただろ。怪しいこともなんもしてねえって」

 

 俺が手に取った“あるもの”とは俺が自腹で買ったギターである。響が扉を開ける一瞬のうちにギターケースからギターを取り出し、失礼ながらもケースをベッドに放り投げ、タンスに凭れ掛かりながらギターを弾いていたように見せたのだ。

 俺がたまにやっているこの場面に、響はすぐさまつまらなさそうな顔になり、口元が少しだけ尖っていた。

 

「そんなことより響。言ってるよな?俺が了承を出さなければ部屋の扉を開けるのは禁止だって」

 

「痛い痛い痛い痛い!?うにゃあ~!?ごめんなさいお兄ちゃーん!!!!」

 

 ギターをタンスに凭れかけさせ、俺は立ち上がって響の目の前まで行けば、響の鼻を摘まんで引いた。そのお仕置きをやれば、響は軽く涙目になって叫び謝罪を口にした。

 響の謝罪を聞いた俺は、すぐに響の鼻を離してやり、響から少しだけ距離を取る、響は涙目のまま自分の鼻を摩りながら俺を少し睨んだ。

 

「だってぇ~、お兄ちゃんって1人で背負うことがあっても隠し事をしてることなんてないからさ。なにかあたし達に隠していることでもあるのかな~って、気になっちゃって扉開けちゃったんだもん」

 

「あのなぁ~…………俺は別に家族に隠し事はしてないし、如何わしいものも買う気はない!そしてそんなアホな物に俺が手を出すわけないだろ、俺は男の中じゃ健全なんだよ、健全!!!」

 

 響の言葉に、俺は頭を抱えて疲れるように返す。まあ前者では俺が家族全員に隠している、世間で有名な未確認の騎士、魔弾剣士リュウケンドーなのだが。

 そして俺は後者の方の如何わしい物には俺は手を出してはいない、本当にそんなものに金を出すくらいなら全額寄付金に使うまでだし、それにそんなものに手を出してたら家族や親友たちが俺に対しての見る目が変わっちまうよ。

 

 

「あれ?お兄ちゃん、お兄ちゃんの机の上に置いてあるものってなに?」

 

 すると響は次に、俺の机の上に置いてあるものに気が付き、気になったようで机の上にある袋に人差し指を向けて聞いてきた。

 

「ああ、これか?ほい響。お前へのお礼だ」

 

「…………え?お礼?…………あたしに?」

 

「そうだよ。早く受けとれ」

 

「…………あたしお兄ちゃんに何かお礼されるようなことしたっけ?」

 

 机の上に置いてある袋に向けていた人差し指を、響は自分自身に向けてポカンとした表情で首を傾げた。理由が分からない響に、俺は至極簡単に説明をして終わらすことにした。

 

「つまりだな。昨日俺はお前のお陰で助かったんだよ、だからそのためにお礼の品を買ってきた!お前からしたらそれほどのことはしてないだろうが、俺からしたらお前に助けられたのは事実だ。だから俺はお前にお礼の品を送るって決めたんだ!」

 

「そんな…………あたしは別にお兄ちゃんが元気になってほしくてやっただけで、お礼が欲しくてやった訳じゃないのに…………でも、ありがとお兄ちゃん!」

 

 お礼を言いながら響は袋を受け取り中を確認すれば、響はまるで蕾の状態だった花びらが咲き開いたような笑顔を見せた。

 

 

 

「わあぁっ!!これって所沢さんのコロッケ!!?」

 

「そっ、お前。前々(まえまえ)から食べたいって言ってただろ?だから20個ほど買ってきた。全部響のもんだからよ、ちゃんと味わって食べな」

 

「お兄ちゃんも一緒に食べようよっ!!!」

 

「………………………………いきなり何言ってんだよ?」

 

 所沢のコロッケ20個は響のものだと言ったのだが、当の響はいきなり俺に顔を向け、名案でも思い付いたかのような声を出した。そして俺はいきなりすぎる響の突拍子もない台詞に長い間を作りながらも、出てきた言葉は疑問でありふれていた。

 

「別に良いでしょ!コロッケは20個もあるんだし、10個で分けて食べようよ!」

 

「いや、それは響のコロッケなんだぞ?ならお前が全部食べるべきだろ…………?」

 

「それならそれこそ、このコロッケはあたしのだからあたしの好きにしても良いでしょ!それにあたしはお兄ちゃんと一緒に食べたいの!だから良いでしょ、お兄ちゃん♪」

 

 響の台詞に俺は少々困った表情をしながら後頭部の髪を掻く、それにこう言うときの響は結構な頑固者になってしまう、だからどんなにこっちが下がろうとしても、響はまるで石に噛りついたかのようにガンっとして下がらず、逆に食い入るようさらに迫るため、そのため諦めて響の提案を受け入れた方がめんどくさくなくて済むのだ。

 

「分かった分かった、それじゃあ一緒に食べるとするか」

 

「うんッ!!!!」

 

 そして俺と響は1階へと降り、庭にあるベンチに2人同時に座り、ともに所沢のコロッケを味わって食べ始める。

 途中、響が6個目のコロッケを食べ終え俺が5個目のコロッケを食べていると、急に俺の右隣に座っている響が俺の方に顔を向け、目を閉じて「あーん」と言いながら口を開けてきた。

 急にそんなことをして来た響に俺は心の中で疑問に思いつつも、その疑問を一切口に出さず自然な流れで俺が口に加えていた食べ掛けのコロッケを口から離し、俺の食い掛けのコロッケを響が開いた口へと入れてやった。

 

「!!!!!!」

 

 俺の食い掛けのコロッケを口に入れると、響はなにも言えない驚愕の表情をして目を見開くも、俺の食い掛けのコロッケを小さな一口で少し食べた。

 次に響は面白いほど顔を右と左と順に振りまくり、それを何回かやるとほんのりと赤くなった顔を俺に向ければ、何かを言いたいのだろうが口は「あわあわ」と言っているだけで、響はなにを言いたいのか俺には一切分からなかった。

 そのため俺は響に一気に終わるよう、説明に入った。

 

「口を開けてるから、こっちの分も欲しかったんだろ?それならお前が全部食えばいいのに、今からでもコロッケやろうか?」

 

「あ…………えっと、その…………そう言う意味じゃ…………なかったんだけど。…………えっと大丈夫だよ…………お兄ちゃん」

 

 

 響は顔を赤くしたまま俯き、まるで恥ずかしがっているような感じでボソボソと小さい声ながらも、俺の耳に入ってくる声だった。

 じゃあなんで俺に開けた口を向けたんだ。と思ったのだが、なんだが聞くのは野暮のような気がして、再び俺はコロッケを口へと運んだ。

 だが俺は響のそんな小さな声よりも、顔を赤くしながら恥ずかしがるように俯いたことに疑問が出た。

 

(なんで恥ずかしそうな感じになってるんだよ?俺達は血の繋がった兄妹なんだから、そんな恥ずかしそうにする必要ないだろ?)

 

 そんなことを心の中で思いながら、俺は響がまた顔を赤くしている事について言及しようとしたが、昨日と同じ響が慌てながらも起怒って話題を反らしたのを思い出し、響の頬がほんのりと赤くなっていることへの言及は止めることにした。

 

 

「「……………………………………………………」」

 

 その後俺達は一言も喋ることなく、ただゆっくりと所沢のコロッケを味わいながら食べていった。コロッケを食べていれば丁度母さんと婆ちゃんが家に帰ってきて、響と一緒に出迎えた。

 母さんと婆ちゃんが家へと入れば、帰ってきたと言うのに休憩も入れず今日の晩飯の下準備を始めた。いきなり料理を始める母さんに心配して「大丈夫なの」と聞いたが、母さんは全然平気そうな口調で返せば、なんと驚くことに婆ちゃんも今晩の晩飯作りに加わった。

 婆ちゃんはそれなりにいい歳なので大丈夫なのかと同じことを聞いてみたが、婆ちゃんもまるで歳を感じさせないような元気な動きを見せて、母さんと一緒に晩飯作りを始めた。

 

「……………………………………」

 

 

 母さんと婆ちゃんのその後ろ姿を後にし、自分の部屋へと戻ることにした。同じく妹の響も俺と一緒に2階の自分の部屋へと戻ることにしたらしい。

 それならと思い響の今日の勉強を見てやろうと言えば、響は大喜びになるがすぐ勉強は見てやるが答えは教えない、してやるのは問題への助言だと付け足しておいた。

 

 それを聞いた響は大喜びから一気に元気がなくなった顔になり、軽はずみな足も元気のないトボトボ歩きとなった。そんな響に俺は軽く溜め息を吐くも、響を元気付けるように響の頭を優しく撫でてやった。すると響はさっきまでの元気のなさが嘘かのように元気を取り戻し、俺を自身の部屋へと招き入れ勉強を見てやることとなった。

 1時間ほど響によく分かりやすいように勉強を見てやれば、父さんが会社から帰宅しその10分後に晩飯も出来上がり、丁度よく響の勉強も終わって俺達は一緒に1階へと降りていった。

 そして家族全員で晩飯を食べ、晩飯を食べ終われば風呂に入ってパジャマに着替え、自分の部屋で軽い柔軟体操をやって就寝に入ろうとした。

 

 因みに今日の晩飯は、焼いた塩鮭とほうれん草のお浸し、そして白米と味噌汁で母さんと婆ちゃんが作ってくれたため、とても旨かった。

 

 

 

「ふぅ…………さてと、行くとするかね」

 

 パジャマに着替えた俺は就寝に入ろうとしたのだが、最後にモバイルモードのゲキリュウケンを触れば、俺の脳内にノイズの出現場所を映し出し、その場面を見た俺は素早く上下とも運動用のジャージに着替え靴下を履き、机の一番デカイ引き出しに仕舞っている靴を取り出し、静かに窓を開けて出ようとした時だった。

 

「お兄ちゃん…………もう寝ちゃった?」

 

「おっ、と…………なんだ響、何か用か?」

 

 窓から出ようとした瞬間に、いきなり扉の前からまた響が声を掛けてきたため、俺は慌てようを隠しながら声を出した。

 それになんか、今の響の声質は少々不安のようなものが感じられた。

 少し変な感じだが、扉越しで俺達は会話を始めた。

 

「起きてたんだお兄ちゃん、寝ちゃってるのかと思ってた」

 

「ああ、今から寝ようとしたときに響が声掛けてきたから、なんか用かなと思ってよ。どうかしたか?」

 

「あ…………その、なんかね急に悲しいって言うか不安って言うか、そういった心が苦しくなってる感じなの?」

 

「…………心が苦しく?」

 

「うん。まだ大丈夫って分かってるんだけど、でもなんだか…………そのうちお兄ちゃんが遠くへ行くどころか、いずれ居なくなっちゃうんじゃないかって、なんか思っちゃうんだ」

 

「……………………………………」

 

 響の言葉に俺は苦しい表情をして無言になってしまう、響が口にしたことはある意味で当たっていると言ってもいい、俺はリュウケンドーに変身してノイズと戦っている、今のところ家族に気付かれることなく無事に帰ってきてはいるが、下手をしたらこの保たれている状態が一瞬のうちに壊れてしまうことだって有り得る。

 そうなってしまえば、俺は家族や親友たちを守りきれはしないだろう。もしかすれば家族や親友を捨てて戦いの渦中に身を投げるか、最悪を想定すれば家族や親友を失い、その悲しみから最早ノイズを滅ぼすことしか考えるしかない《獣》となり下がるかもしれない。

 

(このまま戦いを続けていれば、俺はきっと大切なものを分かりきった風を装って失っちまうバカになるかもな…………)

 

 そうならないよう気を付けているが、人間と言うものはいつの間にかそうなっていることが多いから怖いんだ。それでも俺は現在(いま)の日々が好きだし、ここにいる家族と親友たちが心の底から大好きで守りたいと思っている。

 だから俺は響に安心させるよう、力強く安心して頷けるよう告げることにした。

 

 

「安心しろよ響、なにか本当にとんでもないことが起こらない限り俺はどこにも居なくなったりしない!響達家族や未来達親友を守るために、俺は絶対に居なくなったりしないさ!」

 

「ッ…………うん!!!!」

 

 俺の言葉に安心したのか、響は元気な声を出して頷いたのが分かった。

 俺は微笑みながらそのまま続けた。

 

「ま、(いず)れは独り暮らしをするためにこの家から出ると思うが、そん時はきちんと心配させないよう、連絡ぐらいは入れるよ!安心しろ!!それにもう遅いんだ、明日のためにもう寝ちまえ!」

 

「はーい!お兄ちゃんありがとね♪お休みなさい!」

 

「おう…………お休み!」

 

 扉の前から響が消えたことを確認し自分の部屋に入ったことも確認すれば、俺は静かながらも素早く自分の部屋の窓を開け、次に靴を履いて窓を静かに閉じて、そして家族の耳に入る入らないかどうかの素早い身のこなしで降りていき、そして足が着地すればそのまま全速力でノイズの出現ポイントまで走り出した。

 

(絶対に居なくなったりしねえさ、絶対に死にやしねえさ、俺の心の底から思う者はここに居るんだ!だから俺は響にそんな思いはさせはしない!!!)

 

 俺は心の中で響を悲しませないよう強い決断をして、モバイルモードのゲキリュウケンを本当のゲキリュウケンの姿にして、持ち手に着いている開閉式の装置を上げればゲキリュウケンの顔も上がり、マダンキーの挿し込み口が現れ俺はリュウケンキーを挿し込んで回す。装置を下げてゲキリュウケンの顔も下がり音声が鳴る、そして俺は走りながらゲキリュウケンを振って叫ぶ。

 

「撃龍変身!!」

 

 この叫びとともに、ゲキリュウケンから青白の龍が出てきて一叫びすれば、俺の体に纏い俺を魔弾剣士リュウケンドーへと変身させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令ッ!ノイズの大群が出現!場所は住宅地!タイプは全て小型です!」

 

 機動二課では、ノイズ出現の緊急警報がなっており、オペレーターの藤尭はすぐさまノイズの出現場所の情報などを司令官である風鳴弦十郎に報告した。

 

「分かった!翼と奏には連絡したか?」

 

「はいっ!翼さんと奏さんに連絡を入れ、今はヘリの出撃所にいます!ヘリも今すぐに出せます!」

 

 藤尭の報告を聞いた弦十郎は頷いて返事をし、シンフォギア装者の奏と翼のことを聞けば、女性オペレーターの友里は素早い対処で弦十郎に返した。

 

 そして弦十郎は、一番重要なことを聞くことにした。

 

 

「…………未確認の騎士の方はどうだ?」

 

「いいえ。不思議なことに、今のところ未確認の騎士の姿も反応もなにもありません」

 

「そうか…………」

 

 藤尭の返答に、弦十郎は少し考える素振りを見せたが、しかし今はノイズの対処が先決のため、弦十郎は大きな声で指示を出した。

 

「とにかく、今はノイズが最優先だ!藤尭!友里!未確認の騎士を見つけたら即時連絡を頼む!」

 

「「了解ッ!」」

 

「俺は翼たちとともに、出撃する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘリコプター内部。

 その中では天羽奏、風鳴翼、風鳴弦十郎が座って、ノイズの出現場所へと向かっていた。奏と翼は一緒に座り、向かい側の席では弦十郎が真ん中にドドンっと座っていた。

 

「奏、翼、俺との出撃は初めてだな」

 

「そうだな~。まさか旦那と一緒に出撃する日が来るなんて思いもしなかったよ」

 

「だけど叔父様、ノイズとの戦いは私たちに任せてください。できれば戦場には出てほしくないんですけど」

 

 ヘリの中、話題を出し話し出すも風鳴翼が心配そうな声で弦十郎に告げ、弦十郎の方も軽く頷き口にする。

 

「分かっているさ、とにかくノイズの方は専門家であるお前たちに任せる。だが未確認の騎士がそこに居れば、彼を捕獲と言う名の保護を行う。彼が何者であろうと、我々人間の味方であることには間違いないのだからな。2人もくれぐれも気を付けろよ」

 

「ああ、もちろんさ!」

 

「はい、分かっています!」

 

 弦十郎の台詞に2人は頷きながらしっかりとした返事をした、2人のこの返事に弦十郎は笑みを浮かべて頷きを返した。

 

 

「でも、ノイズの出現場所には未確認の騎士はいないんだよな?」

 

「ああ、いつもなら我々より先にノイズと戦っている彼が何故か今日はいないんだ」

 

「ふ~ん、なんか外せない用事でもあって今日は来れないのかね?」

 

「奏。いくらなんでもそれはないよ。…………もしかして、叔父様が捕獲なんて言ったから、それを感じ取って来てないのかな?」

 

「ああっ、それありそうだな!未確認の騎士は鋭いところがあるから、おっちゃんと戦うのを察知して今日は来るのを止めたのかな!」

 

 奏がリュウケンドーがノイズの出現場所にいないことを口にすると、弦十郎は腕を組んで思案し、奏はそんな弦十郎を見ながら思い付きなことを口走る。

 そんな奏の言葉に翼は呆れではなく困っている反応を見せながら、今回リュウケンドーが来ないことへの予想を立ててみれば、その予想に奏は賛同するように指を鳴らして指鉄砲にしたまま翼のことを指差した。

 しかし、弦十郎は腕を組んだまま翼のその予想に頭を横に傾け、今までのリュウケンドーについて語る。

 

「それは有り得ないと思うが、今まで彼は俺達がノイズの出現を確認する前に、既にノイズとの戦闘に入り対処をしている。彼のお陰でノイズの死亡者数は出ていないと言ってもいい、そんな彼の行動から考えれば…………ノイズを野放しにしておくなど考え付かないんだがな…………」

 

「「…………………………………………」」

 

 

「皆さん!もうすぐでノイズの出現ポイントに入ります。準備のほどをお願いします!」

 

 3人が話し合っていれば、ヘリを運転している操縦士が3人に顔を向けて報告をした。操縦士の言葉を聞いた3人は顔を見合わせ同時に頷き、シンフォギア装者である奏と翼はヘリのドアの前に立つ、そして弦十郎がドアを開けて言い放った。

 

「2人とも気を付けて行ってこいっ!!!」

 

「おうっ!あらよっと!行くぜ!!」

 

「はいっ!風鳴翼…………行きます!」

 

 装者の2人はヘリから跳び降りれば、さっそくシンフォギアを纏うための聖詠(せいえい)を唱えた。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 聖詠を唱えれば、奏と翼の首に下げられているペンダントが起動し、彼女たちの体に鎧が纏っていく。

 

「…………ふっ!」

 

「…………はあぁっ!」

 

 シンフォギアを纏った2人は互いの得物を持って、降下しながら態勢を決めた。

 そしてシンフォギアの力である歌を歌い始め、ガングニールの力を持った奏が先制攻撃とばかりに槍を投げた。

 

「喰らいやがれノイズどもっ!」

 

【STARDUST∞FOTON】

 

 投げ放たれたガングニールの槍は大量に増加し、広範囲に大量の小型ノイズに向かって貫き迫っていく。

 

『『『『『!?!?!!?』』』』』

 

 奏の先制攻撃がゴングとなり、リュウケンドーのいない中、シンフォギア装者対ノイズの戦いが始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せやあぁぁぁっ!」

 

 響を心配させないよう話し合ったためノイズの出現場所に遅れてしまったが、全速力の走りと跳躍を繰り返して出現場所に到着してノイズどもが出現した場所を確認すれば、機械の鎧を纏った朱色の髪の女と青色髪の女がノイズ相手に暴れていたが、所々で後退しているところや追撃を加えられないところがあった。

 

(やはりか…………怪我が治っていることには驚いたが、ただ見えないようにしただけ、ファイヤーリュウケンドーで負わせてしまった怪我はまだ感知しきってはいないか。…………だったら!!)

 

 リュウケンドーの視覚で視認すれば、俺は勢いよく跳び上がり大量の小型ノイズと機械の鎧を纏った2人組の女どもに向かって叫び放つ。

 

「悪いがここで真打ちの登場だノイズどもっ!…………来神!!!」

 

『『『『『!!!!!!』』』』』

 

「!! 未確認の騎士…………」

 

「!! 来てくれたのね…………」

 

 左手でゲキリュウケンを真横に構え、右腕を上に向けて真っ直ぐ向けて、ゲキリュウケンの剣に二の腕を当てているかのようなポーズを決めた。

 俺の登場に全ての小型ノイズは俺の方に向き、朱色の髪の女と青色の髪の女は俺が来たことにどこかホッとしたような雰囲気を出していた。

 

 だが俺はそんなことは気にせずに、ノイズを倒すために行動する。

 

 

「人間の命を踏みにじる貴様らは、絶対に許しはしない!はあぁーー!!」

 

 俺はそう言って、1回転跳躍をしてそのまま降下しながら、その降下先にいるクロールノイズに向かってゲキリュウケンを振るった。

 

「おらよっ!」

 

 そしてこの一撃が、俺とノイズの戦いの合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………相変わらず凄まじい戦いだな、未確認の騎士の戦い方は…………」

 

 

 ヘリを上空で飛ばせたまま奏と翼の戦いを見守っていた弦十郎、2人の戦い方に所々で体が上手く動かせていない辺り、まだ未確認の騎士に負わされた怪我が原因だと見ていた。

 加勢したいのは山々であったが、ただの人間でシンフォギアを纏えない自分では、ノイズを相手にしても簡単に死んでしまう。

 

(ッ!?…………未確認の騎士はまだなのか!?)

 

 弦十郎は歯痒い思いをしながら、リュウケンドーの助力を願っていた時である。

 

「悪いがここで真打ちの登場だノイズどもっ!…………来神!!!」

 

「!!??」

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、その場所に目を向ければいつの間にかリュウケンドーがいたことに驚いた。そしてリュウケンドーが戦闘に加わった瞬間一気に戦況は激変し、まるでリュウケンドーは紙を切るかのようにクロールノイズやヒューマノイドノイズ、大量の小型ノイズを葬り去っていった。

 

 リュウケンドーのその戦いっぷりに弦十郎は、恐怖と賞賛を含ませた呟きをしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ…………数だけは大量にいやがって、キリがねえぇっ!!」

 

 ゲキリュウケンを振るってヒューマノイドノイズを3体葬るも、ノイズはまだまだ居やがる。まるで軍隊アリのようで嫌になる、機械の鎧を纏った2人組の女も頑張って入るが小型ノイズを減らすに減らせないでいる。

 そのため俺はさらに戦況を変えるために、左腰に装着させているマダンキーホルダーに手を掛け回して、目的のマダンキーに止まれば俺はそれを一気に引き抜いて発動させる。

 

「ナックルキー発動!」

 

『マダンナックル』

 

「来いっ!マダンナックル!!」

 

 ナックルキーをゲキリュウケンに差し込んで回せば、ゲキリュウケンから音声が鳴り、俺は住宅街の壁に向かって魔法を放ち、その壁から魔法陣が浮き出て魔弾戦士の共通武器であるマダンナックルが出てきた。

 俺は魔法陣から出てきたマダンナックルを掴み取り、ナックルスパークを放てるよう開放してノイズへと狙いを付けて向ける。

 

「ナックルスパーク!!!」

 

『『『『『!?!!?』』』』』

 

 ノイズに向けてナックルスパークを連射すれば、全てのナックルスパークは小型ノイズに着弾させ炭素の塊に変えた。

 俺は小型ノイズの大群から距離を取り、さらに精神を高めてナックルスパークのエネルギーを集中させ、大量の小型ノイズへと向けて派手に撃ち放った。

 

「はあぁぁぁ…………ナックルスパーク!!!」

 

『『『『『!?!?!?』』』』』

 

 エネルギーを集めて撃ち放たれたナックルスパークは、稲妻を纏った巨大なエネルギー砲となって撃ち放たれ、10体以上もの小型ノイズを炭素の山へと変えた。

 

「な…………なんて威力だ」

 

「すごい…………あれだけの武器で、あんなことが出来るなんて」

 

 10体以上もの小型ノイズが炭素の山に変わったこととマダンナックルの力に、機械の鎧を纏った女どもは驚愕の表情と言葉を表すが、俺は2人組の女の驚きに一切気にすることもなく力一杯怒鳴った。

 

「ボーッとしてんじゃねえっ、ここは戦場だぞ!そんな暇があるのならさっさとノイズを片付けるぞ!!」

 

「!? お、おう!」

 

「ご、ごめんなさい!?」

 

 俺の怒鳴り声に2人組の女はすぐに気を入れ換え、ノイズの戦闘へと身を引き締めた。

 

 

 

「ファイナルキー発動!」

 

『ファイナルブレイク』

 

「行くぜ、ゲキリュウケン!魔弾斬りッ!!!!」

 

『『『『『!!?!??』』』』』

 

「…………これにて殲滅完了」

 

 その後の戦闘もかなりの楽勝であった。

 機械の鎧を纏った2人組の女どもと共闘し大量の小型ノイズを葬っていった、所々でこいつらのフォローをすることとなったが、何かと困った妹のフォローをしていたため、苦もなくこいつらのフォローは簡単にできた。

 

(明日も早いんだ。帰るとするか)

 

 そう決めた俺は、1度だけ女どもの方へ顔だけ振り向かせて、女どもも俺の視線に気付いたらしくこちらを無言で見ていた。

 女どもへの視線を外し、俺はさっさと家に帰ることを決めたため、ゲキリュウケンの剣を肩に乗っけてこの場を去ろうとした。

 

 その時であった。

 

「!!!??」

 

 いきなり俺の真上に影が射し、暗くなったことに疑問を抱いた俺は、(雲でも差し掛かったのか?)などと思いながら上を見上げてみれば、俺の真上から足が降りてきていたのだ。

 何故俺の真上から足が降りてきているのかは分からなかったが、疑問が頭に浮かびながらも俺は即座に体を動かし、体を飛び上がるように動かして転がり回って避けた。

 

 

「…………あっぶねぇ~。なんなんだよ、ガチムチに鍛えた女の子でも空から降ってきたのか?」

 

 そんな下らないことを呟くも、俺が先程まで居た場所は冗談もなにも通じないくらいヤバイことになっている。

 俺が居た場所は今もうもうと土煙を上げており、恐らくクレーターが出来上がったほどコンクリートの地面は磨り減り下がっているだろう。

 

「………………………………」

 

 前が見えなくなるほどの土煙が上がっている場所を俺は無言で見詰めていれば、土煙の向こうから声を掛けられた。

 

「いきなりとんでもないことをしてしまってすまない、だが君の方は普通に無事のようだな」

 

「…………そうでもねえよ。危うく行動が遅れて下敷きになるところだったよ、とんだご挨拶の仕方だな?」

 

 声からして30代ぐらいの男の声だと睨むが、男は俺の台詞に「うっ」と言いながら体を少しだけ後退させる動きを見せた。

 

(さすがにあいつからしても、やってしまったって言う気持ちがあったか?)

 

 心の中でそんなことを思いながら、土煙が晴れていき俺が居た場所に降ってきた正体は、少し暗めの赤い髪、髪の毛の色と同じ赤のカッターシャツを着て、ピンクのネクタイを締め、ベージュ色のスーツズボンを履いて、妙にお高そうな革靴を履いた身長2メートルはありそうな大男がそこにいた。

 と言うか。筋肉がこれでもかと言うぐらいにはち切れんばかりに鍛えられており、まるで赤い毛並みを持った変異種のゴリラのように思えてくる。

 

「…………何(モン)だてめぇ…………?」

 

「ん?俺か?俺はあいつらの…………保護者みたいなもんだ」

 

 俺は睨みながら大男について訪ねると、大男は自分を指差しながら、次に親指を機械の鎧を纏っている女どもの方に向け宣言した。

 

「そうかい、そいつらの保護者か。…………保護者ならしっかりと言い聞かせとけよ。お陰でこっちは余計なもんを抱え込んじまったよ」

 

「「!?…………」」

 

 俺の台詞に女どもは痛いところを突かれて、言い訳が出来ない苦い表情をした。

 

 

「それについても本当にすまなかった。…………さて、時間もそれほどないし、単刀直入に行こうか」

 

「……………………………………」

 

「未確認の騎士。どうか俺達と一緒に来てくれないか?」

 

 大男は1度頭を下げるも、すぐに頭を上げて俺の方を真剣な表情で見る。そのため俺自身も警戒をしながら大男の出方を待っていれば、大男の方は俺に右腕を向けて訳の分からないことを言った。

 

「は……………………?」

 

 大男の言葉に、すっとんきょうながらも疑問しかない声を出してしまった。

 しかし大男は俺の声に気にすることなく、続けて言い放った。

 

「疑問の声を上げるのも仕方ないだろう。だが君としてもそろそろ1人で戦うのは苦しいんじゃないか?俺達の組織に加われば、安全な保護を受けられる。例え君が人間でなかったとしても我々と同じくノイズと戦う志を持つものなら、どうか俺達と一緒に戦ってはくれないか!!?」

 

 なるほど。つまりは俺をこいつらの組織みたいな所で保護し、それ相応の権限みたいなもので守ろうってことか。

 まあこの感じを見たところ、こいつらは腐った政府に属している組織みたいなものだろう、俺自身もこの組織に属すれば高レベルの厳重な保護を受けられる筈だ、それはとてつもなく魅力的で有り難い上に心強いが、俺の答えは決まっている。

 

「…………………………悪いがお断りだね」

 

「「ッ!!?」」

 

「やはりそう言うと思っていたよ。…………できれば理由を教えてはくれないか?」

 

 俺のキッパリとした返答に、2人組の女は驚愕の反応を見せ、片や大男の方は分かりきっていた返事を予想していたらしく、それについての理由を欲した。

 

「まず第一に、今まで俺を襲ってきた連中がいきなり俺を守ろうだなんて烏滸がましいんじゃねえか?怪しさしか感じねえよ!」

 

「うっ…………」

「あ…………」

 

 俺の最初の断りの理由に、2人組の女はさらに苦しい表情を見せて顔を俯かせ、俺はそいつらの方には顔を向けずさらに続けることにした。

 

「第二の理由で、てめぇが信用できねえ。…………俺を保護するとか言って、その(じつ)、俺の力を研究したり調査したりして、お前らが所属している組織の兵器にでもされたら堪んねえかんな」

 

「…………………………………………」

 

 続きの言葉に大男は無言で俺を見る、逆に俺は喋りながらも大男に最大限の警戒をしながら、この最後の理由をこいつらの耳に残るようしっかりと言うことにする。

 

 

「これが最後の理由、俺にとって一番気に入られねえことだ。…………その女どもを戦場に出しているのが腹立たしいんだよ!」

 

「「「!!!??」」」

 

 俺の強気の台詞に、3人が目を見開くほどの驚きを上げた。

 

「そんな青春真っ盛りの10代の女を戦場に出すなんて何を考えてやがんだ!いくらノイズへの対抗手段がないからって、こんな青春真っ盛りの女を使ってる時点でお前らのことを信用なんて端から出来るかよ!!保護者を名乗るのなら、まずこいつらを危険に晒さずに守ってやるのが大人の役目じゃねえのか?それなのにそいつらをこんな危険すぎる戦場に出すなんて、俺は大人っていうものが分からなくなりそうだ!!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!?」

 

 俺がそう言い切れば、朱色の髪の女が一歩前に出て大男の擁護をしてきた。

 

「未確認の騎士!お前があたしらのことをどう思っているのかはよく分かったし嬉しい!!でも弦十郎の旦那をそこまで悪く言わないでくれ!旦那だって辛い思いをしながら決断をしてるんだ!それにだ、ノイズと戦うのを決めたのはあたしらの意思でもあるんだ!」

 

「奏の言う通り!未確認の騎士、お願いだからおじ様をそんなに悪く言わないで!!そして信じてあげて!今までのことは許されないだろうけど、おじ様は懸命に私達のことを守ってくれているの、だからお願い!私達の所にどうか来てほしいの!!!」

 

 朱色の髪の台詞に続けて青髪の女も大男の擁護へと入った、この2人にとってこの大男にかなり助けられ感謝しているであろうが、それでも俺にとって妹より2つ3つ歳上ながら青春を謳歌するべきなのに、戦場に身を委ねているのが許せることではなかった。

 

 

「だからなんだって言うんだ?それでその男の認識を改めろと?悪いがそれでもお前らが戦場に出ているのは紛れもない事実だろうが!!それにお前らがどんな覚悟や意思でノイズと戦っていようが関係ない、お前らの存在は俺にとってはただの邪魔物でしかないんだからな!!!」

 

「「!!??」」

 

 俺のハッキリとした発言に、2人の女は今までとは比べ物にならないほどの苦しい顔となるも、それでも黙っていることができず俺にもう一度進言をしようとする。

 

 

 だが…………………………。

 

 

「なら!おまっ「いいんだ奏」おっちゃん!?」

 

 大男が朱色の髪の女の言葉を遮り、女はそれに驚くも前にいる大男の背に目を向けて叫ぶ。

 

「いいんだ。彼の言っていることは間違っていない、大人である俺が子供であるお前たちに頼りきっているのが現状、例えどんなに擁護しようともそれは揺るぎのない事実なんだからな」

 

「ッ…………!?」

 

「おじ様………………」

 

 大男の言葉に朱色の髪の女は言葉に詰まり、青髪の女は複雑な顔で大男の背中を見詰める。大男は真剣な表情で顔を上げ俺を見ながら口を開いた。

 

「未確認の騎士。…………君の気持ちはよく分かった、俺達のことを信用出来ないと言うことも俺達をどんな風に見ているのかも…………だが未確認の騎士、言わせてもらうが何故君はそこまでして1人で戦おうとする?君はノイズを滅ぼした後、何をするつもりだ!?」

 

「………………………………………………」

 

 大男の台詞に1度無言になる、それに俺はノイズを滅ぼした後なにをするとかないんだけどな、ただノイズの脅威から人を守って戦うぐらいだ。企んでることもなければ世界征服なんてものもバカらしくてやる気はない。

 

(ただ俺は、家族と不自由なく平穏無事に暮らせればそれで良いんだよ。この幸せを邪魔するやつらがいるのなら、俺は全力で戦うだけだ。…………まあノイズがこの世から居なくなれば、リュウケンドーとしてやらなきゃいけないこともあるしな)

 

 心の中で思うも、これを言えば俺自身どころか家族にまで面倒を越えた危険が迫る。そのため俺は心の中で思ったことを口に出さず、家族と同じく大切なことを伝えることに決めた。

 

「別にその後で何をしようとかねえよ。世界征服だとか全人類抹殺とか地球滅亡なんてものも企んでない、ただ俺は戦わなきゃ守れない大切なものがあるからノイズと戦っているんだ!」

 

「そうか…………君のその思いに嘘はないだろう」

 

 俺のその言葉に大男はどことなく安心した風な息を吐き出し、息を吐き出せば俺を鋭い視線で睨み付けそこからまるで走り出してくるような構えを見せた。

 

「だが俺達にも込み入った事情があってな、君をこのまま行かせるわけにはいかないんだ。少々手荒な真似になるが、悪いが力ずくで俺達の所に来てもらう!」

 

「…………はっ、やっぱそうなるって訳か。警戒しといて正解だったぜ!」

 

 そう。なぜ俺が今まで警戒を解かなかったのには理由があった、それは今俺の目の前にいるこの大男である。

 初対面でありながら、俺はこの大男からは何か凄まじいものを感じ取ったため、あまり動かず一瞬の隙も見逃すとなく警戒しこちらもそれを晒すことなくしていた。

 だが、最早この膠着(こうちゃく)状態も終わりである、大男は既に動き出そうとしている所だ。そのため俺もゲキリュウケンを振りながら構え、警戒態勢全開で頭の中でこの大男から逃げ切る方法を考える。

 

(俺の経験からしてあの大男から普通に逃げ切るのは不可能だ。こうなりゃ、ありったけの土煙を発生させてリュウケンドーで出せるだけの速度の全速力で逃げ切るきゃねえ!)

 

「未確認の騎士…………行くぞっ!!!」

 

(ッ!?……………………早っ!!?)

 

 大男が動き出せば、踏み込みに使った地面が軽く吹き飛び、その勢いのまま大男は俺に突っ込んで、俺目掛けて力を込めた右ストレートを放った。大男の行動に目を疑ったが、その分大男の放った右ストレートの早さにも驚きを隠せず、俺は驚愕しながらもギリギリで体を下げて交わした。

 

「むっ交わしたか。…………だがッ!おおォォォっ!!!」

 

「!? ぐっ…………うおぁぁぁッ!?!?」

 

 右ストレートを交わしたが、大男はすぐに右足を踏み込んで回し、左脚の蹴りを俺にぶち当てた。俺自身もすぐさまゲキリュウケンを盾にして大男の蹴りを防いだが、かなりの勢いで後退させられた。

 俺はゲキリュウケンを盾にしたまま、俺は大男の方を警戒しながら思案する。

 

(…………はっきり言って、今の右ストレートはプロのボクサーでも交わせるものが10人と居ないレベルの拳だった。もし生身で当たっていたら口から内蔵が飛び出るどころか腹に風穴開くんじゃないのか!?)

 

「まだまだ行くぞ。手加減はするが!遠慮はできん!!!!」

 

 大男はそう言うと、地面を割って跳躍しそのまま俺が居る所まで降下しながら拳を振り下ろした。

 

「!? くそっ!!?」

 

 力を込めた大男の拳が迫ってきたため、俺はすぐに左に転がり避けて大男の拳の被害範囲から出る。

 

「ハァハァハァハァ…………嘘だろ」

 

 大男の拳を転がり避け、すぐに起き上がりその場を確認すれば、あまりの状況に絶句仕掛けた。

 何故ならば、大男の拳が当たった場所はボガァァァン!と大きな音を発し、かなりの土煙が巻き起こるがそこの隙間から見ると、アスファルトの地面は砕け散り周辺にはアスファルトの破片が散らばっていた。

 大男の異常すぎる拳の強さに、俺は息を整えながら唾を飲み込み、呟いた。

 

「驚いている暇があるのか!未確認の騎士ッ!!!」

 

「ッ!?くそがッ!?」

 

 土煙を吹き飛ばして大男が迫ってきて、また俺に右ストレートを打ち放った。そのため俺もすぐさま両足に踏み込みを入れて、ゲキリュウケンを盾にするように構え大男の右ストレートを防いだ。

 だが俺は仮面の中で苦悶の表情を浮かべ、かなり踏み込みを入れた両足も凄まじい勢いで後退させられた。なので、今俺は大男と鍔迫り合い状態に似たことになっているのだ。

 

「ぐ、ぐぅぅぅぅぅ…………」

 

「ほう?俺の拳を防ぐとは、やはり長年ノイズと戦っているだけはあるな!」

 

 大男は俺を見ながら軽く微笑んでそう言うと、鍔迫り合いのような状態で入れば、いきなり俺の脳内に小型ノイズがここに現れるのを映し出した。

 ゲキリュウケンが俺の脳内に送ってきた映像では、小型ノイズの数は(およ)そ30体だったため、何とかこの人間とは思えない力を持つ大男を引き下げ、ノイズの撃退を試みようと考えている。

 

「ノイズが…………来る」

 

「なんだと?」

 

 大男と鍔迫り合いのような状態に入りながら、俺は静かにノイズが来ることを呟けば、大男は俺の言葉が聞こえたらしく眉を上げ俺のことをじっと見れば、大男の耳にインカムでも装着されていたのかゲキリュウケンから拳を離し、いきなり耳に手を当てた。

 

 

『司令!ノイズの反応を確認しました!場所はここです!今すぐに出現します!!』

 

「なんだとっ!?未確認の騎士はノイズの出現すらも一足先に察知することができるのか!」

 

 通信機から来た連絡は恐らく新たなノイズの出現であろう、それを聞いた大男は驚いた顔をすれば俺の方にもう一度顔を向けた。

 そんなことをしていれば、上空から小型ノイズが現れこの場へと降ってきた。降ってきた数は30体であり、俺と大男の場所からは多少離れているが、俺はノイズが急に出現したチャンスを利用しようと思い、ノイズと戦いながらこの場から逃走しようと考えたが、俺の行動よりも早く大男の方が大声を出した。

 

「奏!翼!連戦になって悪いが、出現したノイズどもを蹴散らしてくれ!俺は未確認の騎士を捕獲する!」

 

「分かった!」

 

「分かりました!」

 

「ッ!!?」

 

 大男の指示に、俺達の戦いを見ていた朱色の髪の女と青色の髪の女は素早く了解をして出現したノイズの対処に当たり、俺はそいつらの対処の早さに苦虫を噛み潰したような顔になり、大男は俺の方に降り向き直り両手の拳を握り締めて言う。

 

「未確認の騎士、君の思い通りにはいかんぞ」

 

「俺を逃がさないためとはいえ、怪我が治ったばかりのあいつらに無茶させるなんて、とことん!てめぇは非道な大人みたいだな」

 

「君にはそう見えるかもしれんが、あの2人ならばあの数のノイズぐらいは簡単に対処できるさ。これは彼女たちに対する信頼の証だ」

 

「はっ!さすがは日本政府が生み出した組織の人間だ!そう言うことも信頼と言う建前で人を危険に駆り出すんだから、質が悪いぜ!」

 

「悪いがこれ以上俺達に対する失望は…………後で聞かせて貰う!」

 

「御生憎様、俺は信頼も置けねえくそったれな所に捕まる気はねえ!」

 

 大男は再び地面を踏み砕いて俺に突撃してくれば、凄まじいスピードとパワーを持った拳を連続で放った。

 

「うおぉぉぉぉぉッ!!!??」

 

 大男が放つ拳を紙一重で交わしていくが、俺は今ここで言わせて貰いたい、この大男の地面を踏み砕くほどの異常なスピードに、下手をすれば巡洋艦をも一撃で沈没させられるぐらいの異常過ぎるパワー、それに付いていけるこの大男の肉体構造。

 

 

(こいつホントに人間か!!?)

 

「貰ったぞ、未確認の騎士!!!」

 

「!? ごぶぅっ!??」

 

 そんなことを心の中で思っていれば、俺は大男相手に一瞬の隙を作ってしまい、胸の中央の膻中(だんちゅう)という場所に、ありったけの力を込めた鉄拳を打ち込まれた。

 この鉄拳が膻中に打ち込まれ、俺は自分自身の肉体をくの字に曲げて思いっきり吹っ飛ばされた。

 

「がはっ、こふっ、ゲホッゲホッゲホッ!?」

 

「ほう。…………かなりの力で当てたんだが、当たった直後一気に後方へと下がり、俺の拳の威力を流せるだけ流したか」

 

 大男の言う通り、こいつの拳が当たった直後に後ろへと下がり拳の威力を軽減させたのだが、それでもこの大男の拳の威力は半端なかった。もし歯を食い縛って気をしっかり持ってなかったら本当に意識が飛んでいた。

 挙げ句の果てにリュウケンドーの鎧に拳をぶち当てたって言うのに、その拳には傷一つ付いちゃいねえし、それどころか右手を軽く振りながら喋ってる。

 

(こいつ、人間辞めてんじゃねえのか!!!!!)

 

 膝を付いてリュウケンドーの鎧の胸に手を当て、苦しい表情をしながら心の中でそんなことを思いながらも、左腰に装着しているマダンキーホルダーに手を添えながらこの大男から逃げる方法を考える。

 

(くそっ!?一撃でこれだけの威力なら、下手すりゃ後1発でノックダウンになっちまう!それだけは絶対に避けねえと…………!!)

 

 俺は頭の中で、思考を続けていく。

 

 

(どうする?…………力には力でファイヤーキーで対抗するか?それか1度も使ったことがない“このマダンキー”を使うか?)

 

 俺は頭の中で考えながらもつい顔をマダンキーホルダーの方へと向ければ、俺の視線の先が大男に気付かれてしまい、大男は口を開きながら俺に突撃を仕掛けた。

 

「!! させん!」

 

「!!?」

 

 大男が突撃しながら拳を振り翳したため、俺は全力でその場から離れるも、俺が居た場所は派手に砕け散り(いく)つかの細かい破片が俺に当たるが、俺は一切そんなことを気にしていられないため、素早く態勢を立て直しマダンキーホルダーに手を掛けて回そうとする。

 

(考えてる暇はねえ!こうなりゃファイヤーリュウケンドーにフォームチェンジして上手いこと逃げるっきゃねえ!)

 

「させんと言った筈だ!!」

 

 決意してマダンキーホルダーを回そうとするが、大男は俺より素早く動き俺から距離を詰めて、普通の蹴りより威力が何倍にも上がっている、踏み込みを入れた左足の回し蹴りを放った。

 

「げふぅっ!!?」

 

 大男の回し蹴りは俺の鳩尾の部分に入りそうになったが、俺は右手に持っていたゲキリュウケンを盾にして、なんとか大男の回し蹴りを防いだ。

 威力だけはなんとか防げたが、勢いを止めることはできず、俺はそのまま体全体で飛び跳ねて、住宅街の近辺に発生した雑木林の中に入ってしまった。

 

 

「くそったれ…………マダンキーを使う暇もねえか…………」

 

 雑木林の中へと突っ込んだ俺はなんとか意識があり、蹴られた鳩尾の場所を手で抑えている。大男とかなり離れたため今ならマダンキーを使えるが、大男によって与えられたダメージのせいで体が思うように動かないでいる。

 

「未確認の騎士。いい加減諦めて俺達の元まで来てくれ、これ以上手荒なマネはしたくない。そして俺達のことを信用してくれ、絶対に君を守ると約束する!」

 

「うっ…………ハァハァハァ、てめえみたいな化け物が居る時点で、余計に信用なんてもの、出来やしねえよ」

 

 俺が入ったところから、大男が土を踏む音を出しながら歩いて言うも、俺は激しく痛む体に無理を通して立ち上がり、フラフラな状態でも迫ってくる大男に向かって、苦しくもお断りの返事をさせてもらった。

 

「はぁ、君も随分と強情だな。なら次の一撃で決めて、君を俺達の組織まで連れていく」

 

「ハァハァハァハァ…………だったらどんな手を使ってでも逃げてやるよ!」

 

 そう言って俺は、フラフラな体でも気をしっかりと持ちながら歩いて、森の中の奥へ奥へと進んでいく。

 

「残念だが、そうはさせん。はあぁぁッ!」

 

 大男はそう断言すれば、駆け出し俺に目掛けて拳を振りかぶった。

 

「!?…………一か八かだ!とあっ!」

 

 大男の拳が当たるところまで来て、その現状に俺はここで諦めを覚悟したのだが、ギリギリで当たるところで足に負担もかけてジャンプをした。

 その結果、なんとか大男の拳は避けられたが、ギリギリであったため、大男の拳の威力の余波を受けてしまい、再び俺は吹き飛ばされ背中から落ちるが、背中に受けたのは土の感触ではなく、ゴトッと音がして平べったく少し固い板のような感じだった。

 

「おわぁぁぁぁ!?…………ごはっ、ゲホゲホ」

 

 背中をぶち当ててしまった俺だが、上半身だけを起き上がらせて周りを確認した。

 

「な、なんだここ。民家か何かか?」

 

 そこは今にも崩れそうなほどボロボロな、木材で出来たかなり大きく広い建造物であった。疑問を頭に浮かべながら周囲を見回していれば、月明かりが射している出入口の方から大男が入ってきた。

 

「袋の鼠。逃げることは最早不可能だ、ようやくこれで終わりだ。かなり手間取ったが、これで上も納得するだろうな」

 

「……………………………………!?」

 

 大男は入ってきて足を止め、リュウケンドーの仮面を見ながら言う。大男の言葉と視線に警戒しながら周囲を見回すも、ここは今にも崩れそうなほどボロボロだが他の場所から出られそうな所は一切なかった。

 

(絶体絶命…………これで終わりか)

 

 心の中でそう諦めて覚悟も決めた俺であったが、大男は1度このボロボロの建造物を見れば、一般人では聞き取れない声量で呟いた。

 

「…………確かこの場所は、10年以上前は有名なパワースポットだったな。だが不思議なことに人々はそれを忘れ去ってしまい、まさかここまで廃れてしまうとは」

 

(あ…………パワースポットだって?……………………そんな、まさかな)

 

 大男の言葉に出てきたパワースポットという台詞に、俺は気になるものを感じたが、すぐにその台詞を捨てて否定へと持っていた。

 

「!!?…………これは?」

 

 その時であった。

 リュウケンドーの左腰に装備しているマダンキーホルダーが、いきなり目も瞑るほどの強烈な光を放ち始めたのであった。

 

「な、なんだ!この光は!?」

 

 いきなり出てきた強烈な光に大男も驚き、目を向けていられないらしく、目を瞑りながらも左腕でこの光を遮っていた。

 

「このマダンキーは…………もしやここに居るのか?」

 

 光を放っているマダンキーがかなり重要なものだったため、俺はリュウケンドーの仮面からでも深刻な顔をしながらこの場所の周囲全体を見回した。

 

 

「! あれか!!」

 

 マダンキーホルダーから光を放っている1つのマダンキーを引き抜いて、1度マダンキーに目を向けるもすぐに広すぎる建造物の周囲確認をすれば、右斜め前方の壁の角隅に巨大な球体のようなもの、端から見れば卵のようなものが存在した。

 

 そしてその卵のようなものは、俺が手に持っている光を放つマダンキーに答えるように、その巨大な球体は心臓の鼓動が放つドクン!という音を放った。

 

「!? 一体なんだあれは!?」

 

 大男の方も、俺が視線を向けている方向に、左手でマダンキーの光を遮りながら目を向ければ、大男は巨大な球体を目にすれば驚きの声をあげた。

 

「ハハッ…………こんなところで会えるとはな。偶然か必然かは分からないが、出会っていきなりで悪いがお前の力を貸して貰うぞ!」

 

 俺は大男には気にせず宣言して、手に持っているマダンキーを発動させる。

 

「!? 何をする気だ未確認の騎士!」

 

 大男は俺の行動に疑問を放ちながらも、それをさせないとばかりに俺に飛び掛かって、拳を放ってきた。

 

「ッ!? おっと!」

 

 だが俺は激しく痛むこの体にムチを打ち、大男が放つ強烈な拳を転がりながら避けて、すぐ体勢を立て直し左手に持っているマダンキーの名を叫び、ゲキリュウケンに挿し込みこのマダンキーを発動させた。

 

 

 

「ダガーキー。発動!」

 

『マダンダガー』

 

「来いっ!マダンダガー!!!!」

 

 ゲキリュウケンを上へ向け、エネルギー派を天井に当てれば、その天井に魔法陣が現れ小さな剣が降ってきた。俺は降ってきた小さな剣を左手でキャッチし、出てきた小剣は普通の小剣より倍の大きさを持ち、真ん中にはドームのようなものを装着された、小剣にしてリュウケンドーにとって重要な装備【マダンダガー】である。

 

「小剣を出した?…………一体何をするつもりだ!」

 

 大男は俺が出現させたマダンダガーに一瞬疑問を浮かべるが、すぐに行動を始めて俺の行動を食い止めるため飛び掛かってきた。

 

「そうは行くか!悪いが少しだけ止まってて貰うぜ!」

 

 大男が飛び掛かって来るのは予想出来ていたため、俺は左手に持ったマダンダガーのドーム状の部分を大男に向けて、そのドーム部分からあるものを放たれるものの名前を言った。

 

「あの人間とは思えない化け物大男を止めろ。ダガースパイラルチェーン!」

 

「ぬおっ!?」

 

 俺がそう言えば、マダンダガーのドーム状の部分からダガースパイラルチェーンと言うものが出てきた。

 ダガースパイラルチェーンとは、先程言った通り、マダンダガーのドーム状部分から放たれ敵を拘束することができる技だ。

 

 このダガースパイラルチェーンの正体は光のカノン文字であり、そして本編の魔弾戦記リュウケンドーでは獣王の封印を解くものでもあった。

 そう。ここに封印されている獣王がなにかは分からないが、封印を解除する光のカノン文字の暗号によって解き放つことができるだろう。

 

(一体どんな獣王かは分からないが、とにかく今は俺に力を貸してくれっ!)

 

 そのため俺は、マダンダガーを獣王が封印されている球体に向けて、光のカノンの文字を叫びながら放った。

 

「光のカノン文字!獣王の封印を解きたまえ!!!」

 

 マダンダガーから光のカノン文字を獣王が封印されている球体に打ち放つ、光のカノン文字を受けた球体は、さらに強い光を発し、球体の中にいる獣王はまるで球体を破るかのような動きを見せていた。

 

「球体がさらに光っている!?未確認の騎士!お前は何をしているんだ!?」

 

 俺の行動に大男は驚愕しながらも問い詰めてきたが、俺は大男のことなど全くもって一切気にせず、獣王の封印を解くことに全神経を向けるも心の中で大変なことを言わせて貰いたい。

 

 (と言うかこの大男、バギン!とデカイ音を立ててダガースパイラルチェーンを破壊しやがったぞ、本当につくづく人間であることを辞めていないか?)

 

 その場面を見た俺は、一筋の汗を垂らしながらも、獣王が封印されている球体に全神経を集中させる。

 

「…………獣王よ!長年の眠りから目覚め!今こそこの地に姿を現せ!」

 

 この言葉を放てば球体が一気に消し飛び、そしてその球体から飛び上がり、空中で数回ほど回ればそのまま地面に着地してきた。

 

「な…………なんだあれは?」

 

「まさか…………最初に来るのがお前だったなんてな」

 

 俺の目の前にいる獣王は、赤い瞳に金色の(たてがみ)を持ち、金色の鬣の他に青い鬣のようなところもあり体は輝くような白い色であり、前足の肩部分と後ろ足の太股の後ろにはタイヤに似た部分が装着されており、そしてその獣王は勇ましくも俺を守るように大男に向かって大きく吠えた。

 

『ガアアアァァァァァァッ!!!!!!!!』

 

「「!!!??」」

 

 

 その獣王は勇気の力を持った誇り高き獣王。

 

 名を【ブレイブレオン】と言う。

 

 

「ブレイブレオン。…………お前はブレイブレオンだな」

 

 俺は静かに獣王の名前を呼べば、ブレイブレオンは1度俺の方へ顔を向けコクリと頷けば、そのまま俺の頬を後ろ足で蹴りやがった。

 

「ごはっ、何故だ!?」

 

 痛いと言う程の威力ではなかったが、何故訳も分からずブレイブレオンに蹴られたのか理解できず、蹴られた頬を抑えながらブレイブレオンに顔を向け俺は言う。

 

 

「ブレイブレオン!てめぇ封印から解放して、ようやく出会えた主人に対して、いきなり後ろ足で蹴るなんざ何様のつもりだ!!獣王としての役割分かってんのか!?」

 

『……………………………………………………』

 

 言い放つも、ブレイブレオンは俺の言葉なんぞ無視をしてそっぽも向いていた。

 

「俺の話を無視すんじゃねえ!ブレイブレオンッ!!!…………ったく、初対面でこんなことになるなんてな」

 

 話を聞かないブレイブレオン相手に、俺は頭を抱えながら溜め息を吐くも、俺は真剣なブレイブレオンに向かって真剣な表情と声で尋ねる。

 

「ブレイブレオン。せっかく目覚めて悪いんだが、地球の精霊で誇り高きお前にこんなことを頼んじまって心苦しい、お前はこんなことをしたくないだろうが頼む!俺はあの大男からなんとか逃れたい…………頼む。今回だけは俺を助けてくれ!!」

 

『……………………………………』

 

「? ? ? かつてのパワースポットに妙な球体のものがあって?と思ったら彼が出した小さい剣から…………白い獅子が産まれた?一体全体どういことなんだ!??」

 

 俺の必死な思いに、ブレイブレオンはこちらに顔を向ければすぐ大男の方に顔を向ける。やはり地球から産み出された精霊のため、人間と戦うのは獣王の誇りとしても出来ないことだろう。

 それと向かい側では、大男は獣王の封印が解放された場面に立ち合ったため、かなり疑問の声を出しながらの混乱を起こしていた。

 

 

(まあ初対面で、こんなとんでも場面に立ち会うことになったら誰だって混乱するわな。俺だって混乱する)

 

『グルゥゥゥゥ…………ガアァァッアアァァァァッ!!!』

 

「「!!??」」

 

 心の中で大男に同情していれば、いきなりブレイブレオンは耳をつんざくような咆哮を轟かし、いきなりの咆哮に俺と大男は同時に驚けば、ブレイブレオンは駆け出して大男に飛び掛かった。

 

「ぬおっ!?ぬうぅぅぅ!!?」

 

 飛び掛かってきたブレイブレオンに大男は驚くも、大男はブレイブレオンの突進(とっしん)と噛みつきの攻撃に、両腕をクロスさせて防御するも気を抜いていたため、大男は派手にこのパワースポットの建造物から出ていった。

 後に残ったのは、呆然と座り込んだリュウケンドーである俺と、俺の前に飛んできたパワースポットの建造物の木材の破片であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃。

 

「「ハァハァハァハァ」」

 

 獣王ブレイブレオンが封印されていたパワースポットがあった雑木林の場所に、シンフォギア装者である天羽奏と風鳴翼が走っていた。

 2人はリュウケンドーと風鳴弦十郎の戦いの立ち合いをしていたが、いきなり20体の小型ノイズが出現し弦十郎から小型ノイズの対処を任された。

 ノイズの対処を快く引き受けた2人は、小型ノイズとの戦いに突入し互いの力を合わせて小型ノイズを殲滅させていき、今はリュウケンドーと弦十郎がいる雑木林の所まで向かっていた。

 

「ハァハァ、それにしてもえらく長い戦いを繰り広げてるなおっちゃん。やっぱりおっちゃんでも未確認の騎士の相手は厳しいのか?」

 

「ハァハァ、有り得ないこともないけど、今はとにかく叔父様の元へ急ごう!!」

 

 奏と翼は息を切らしながら走っていれば、リュウケンドーと弦十郎が居る雑木林の場所まで到着し、一旦2人は足を止めて息を整えていた時である。

 

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「ぬうぅぅぅぅぅ!!?」

 

『ガアァァァァァァァアッ!!!!!!!!』

 

 いきなり2人の前にあった木々を吹き飛ばして、そこから司令官である弦十郎と白い獅子のブレイブレオンが出てきて戦っていたのである。

 そんな理解など及びつかない状況に2人は驚きの声を上げて、雑木林の中から出てきたものに驚愕しながらも互いの顔を1度見合わせ、同時に声を上げた。

 

「司令ッ!?」

「おっちゃん!?」

 

 2人の驚愕しか入っていない大きな声に、弦十郎は両腕でブレイブレオンの攻撃を必死に防いでいれば、苦しい表情をしながら何とか奏と翼の2人に顔を向けて手早く伝える。

 

「奏!翼!ここから離れろ!俺はこの獅子をなんとかしなければならない!」

 

「えっ!?でもおっちゃん!未確認の騎士はどうしたんだよ!?それにこのライオンは一体?」

 

「説明している暇はない!!早くここから離れろ!この獅子を投げ飛ばす!」

 

 手早く伝えるも、奏と翼は状況が飲み込めず奏が率先して聞いてみるも、弦十郎はその質問を飛ばして、アスファルトの地面を踏み砕くほどの踏み込みを入れ、ブレイブレオンの上顎と下顎を掴めば、その両腕にも筋肉の血管が浮き上がるほどのとんでもない力を入れ、そのまま弦十郎は力任せにブレイブレオンを真上へと投げ飛ばした。

 

「うおぅらあぁぁッ!!!!!」

 

 ブレイブレオンは風鳴弦十郎に垂直に投げ飛ばされるも、ブレイブレオン自身は一切慌てることはなく、冷静に空中でグルンと1回転をして態勢を立て直せば、空中で1度『ガアアァァァァ!』と咆哮を鳴らし、弦十郎に狙いを定めてそのまま降下していった。

 

「なっ!?空中で態勢を立て直すこともできるのか!!?」

 

 ブレイブレオンはそのまま降下する勢いとともに、風鳴弦十郎にぶち当たっていった。

 

「ぐおぉぉぉぉう!?」

 

 ブレイブレオンの行動に驚いた弦十郎は、攻撃への対処が遅くなってしまい、ギリギリで腕をまたクロスさせてブレイブレオンの体当たりを防ぐが、弦十郎は汗を流し苦しい表情を見せていた。

 

「ブレイブレオン!十分だ。その辺でいい!」

 

「「「未確認の騎士!?」」」

 

「ブレイブレオン!ビークルモードだ!」

 

 奏と翼はこれだけ苦戦を強いられている弦十郎を始めて見て、自分達も弦十郎に加勢をしようと決めたときに、機動二課が未確認の騎士と呼称している魔弾剣士リュウケンドーが雑木林から出てきた。

 リュウケンドーの登場に3人は驚くが、リュウケンドーの方は奏と翼と弦十郎の反応など無視して、ブレイブレオンに指示を出した。

 

『ガアァァァァア!!!』

 

「ぐおっ!?」

 

「叔父様!!?」

 

「なんだぁ!あのライオン野郎変形(へんけい)しやがったぞ!?」

 

 リュウケンドーの指示を聞いたブレイブレオンは反転して、後ろ足で弦十郎の両腕を蹴った。ブレイブレオンの後ろ足蹴りを喰らった弦十郎は、両腕をクロスさせたまま後退させられた。

 ブレイブレオンはその後ろ足蹴りで跳び、彼が持つもう1つの姿、三輪バイク・レオントライクへと変形していった。

 弦十郎が後退させられたことに、翼は弦十郎の心配をして声を掛け、奏はブレイブレオンがビークルモード・レオントライクに変形したことに大きく驚いた。

 

 レオントライクに変形したブレイブレオンはそのままリュウケンドーの元まで行った。ブレイブレオンが目の前まで来たことにリュウケンドーは多少驚いたが、すぐレオントライクに跨がりハンドルを握るが、奏、翼、弦十郎の方を振り向いて一言告げてレオントライクをアクセル全開でこの場を去っていった。

 

「…………あばよ」

 

「な、なんなんだ彼は一体?」

 

 弦十郎は大怪我を負った両腕を下げながら、去っていくリュウケンドーの後ろ姿を見詰めていた。奏と翼は弦十郎が負った怪我を心配して彼に寄っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体感時間的には既に夜中の1時は思いっきり過ぎているであろう夜、俺はフラフラの体で家族の誰にも気付かれないよう懸命に窓を開けて自分の部屋へと入る。

 

「ぐうぅぅッ!?…………ハァハァハァハァハァ」

 

 なんとか部屋に入るも体に強烈な激痛が走り、俺は冷や汗を流しながら苦しい顔もして壁に寄りかかった。

 

「くそっ…………なんなんだあの大男は?宇宙からやって来た未確認生命体とかじゃあるめえな」

 

 俺は冷や汗を拭かずそんなことを考えてしまう。本当に有り得るんじゃないだろうか、いくら人間でもあんな身体能力やら頑丈さや力を持てるわけがない。本当にあの大男は人間の姿を借りた地球外生命体じゃないだろうか。

 

「…………ま、そんなことよりも…………ようやく獣王を手に入れられたことを喜ぶべきだな」

 

 凄まじいほどのダメージを体に受けたせいで、喜ぶことなどできないが、俺は右手に持っている獅子の絵が描かれたマダンキー、レオンキーを確認する。

 俺はレオンキーを見れば、口許を上げて不適に微笑み、俺にしか聞こえない声量で呟いた。

 

「これからよろしく頼むぜ。相棒、ブレイブレオン!」

 

 俺は獣王を心から信頼してマダンキーになったブレイブレオンにそう伝えれば、ブレイブレオンは俺の思いに応えてくれたのかは分からないが、レオンキーは柄の部分が一瞬だけキラッと輝いた。

 

「…………ありがとな」

 

 それを見た俺は、レオンキーに向けてお礼と優しい微笑みを称えた。

 

 

to be continued.




最初の獣王はブレイブレオンでした。

感想と高評価!何卒よろしくお願い致します!!!!!!



次回予告。

パワースポットの封印を解き、獣王ブレイブレオンの力でなんとかあの化け物染みた大男を退けることができた。

俺の肉体はかなりの大怪我を負っちまったが、そんなもん気にしててもノイズは手加減なんてしてくれやしねぇ、怪我に負けてたら誰かを助けることなんざ出来ない!


人を守るのがヒーローの戦いなんだからな!!!


そしてノイズと戦っているとき、戦場から黒いノイズが現れやがった!

一体なんだあのノイズは!?!?

黒のノイズは凄まじい力で俺達を圧倒する、ピンチに陥った俺は覚悟を決めたッ!!!!!

次回!魔弾戦姫リュウフォギア!!!

黒のノイズ!? 決めろ!全てを懸けた魔弾斬りッ!!!!!

次回は!
リュウケンドーの全てを懸けて!突っ走れ!!!!!


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黒のノイズ!?決めろ!全てを懸けた魔弾斬りッ!!

お気に入りが100件を越えたことに私作者はとてつもなく驚き、涙を流しました。

本当にありがとうございます…………!!!!!


少し嫌な気持ちで文章を書いてるんですけど、何故でしょうね。嫌な気持ちで書いてると何故か文章がスラスラと書けてしまうんです。
でもそんな気持ちで作品は描きたくないため、なんとか気持ちを切り替えて頑張りたいと思います。

読者の皆様、こんな情けない作者ですが、どうかお力添えのほどをよろしくお願いいたします…………!
そしてめちゃくちゃ長文ですが、諦めずに最後までお読みください。


 ドンドンドンッ!

 

「お兄ちゃん!起きて、朝だよっ!!」

 

「……………………………………………」

 

「お兄ちゃん起きてってば!朝だって言ってるじゃん!!」

 

「スー……………………スー……………………スー……………………」

 

「もおっ!部屋に入るからね!!!」

 

 

 ガチャ。

 

「お兄ちゃん起きてってば!もう7時過ぎだよ!」

 

「スーッ…………スーッ…………スーッ」

 

「お兄ちゃんってば、いい加減起きてよ!!もうすぐ朝御飯もできちゃうんだよ!!!」

 

「スーッ…………スーッ……………………んあっ」

 

 深く眠っていた俺だが、目を半開きで開けてみれば1番最初に映ったのは妹の響であった。

 俺はベッドに横になったまま、寝惚け眼で口を開いた。

 

「響…………? なんで俺の部屋に入ってるんだ?なんかあったのか?」

 

 多少寝惚け声で響が何故俺の部屋に居るのかを聞けば、当の響は俺に向かって少しの呆れ顔を見せる。その顔に軽くイラッと来た俺は、昨日の戦いで人間を当に越えた化け物大男に傷付けられた重い体を上半身だけ起こして、木の素材で出来ているベッドの頭に背を凭れさせた。

 

「なんかじゃないよ!もう朝ご飯が出来るって言うのに、お兄ちゃんがいつまでも降りてこないから、確認しに来たんだよ!見てみれば、まだ寝てるなんて!」

 

「……………………ゲッ!マジかよ!?響、今何時だ!!?」

 

 響の言葉に俺は驚愕の顔をして、妹の響に慌てながら現在の時刻を聞いた。すると響は、またも軽くイラっとさせる呆れた顔をして、俺に現在の時刻を教えた。

 

「もうっ…………後少しで7時半になるとこ、だから早く起きてよ!」

 

「後少しで7時半か。…………分かった、そんじゃあ起きるとしますか!」

 

 そう言って俺はベッドからゆっくりと起き上がれば、体に激痛が走ってしまうが、響に気付かれないように動いていくも、響は何か気になったのか俺に疑問を投げ掛けてきた。

 

「あれ?どうかしたのお兄ちゃん?」

 

「え…………何がだよ?」

 

「いやその、お兄ちゃんの動き方がちょっとおかしかったような気がして、なんか動きが少し引き摺ってるように見えて」

 

「そう見えたか?俺は普通に動いたんだけどな…………」

 

 響の言葉に俺は一筋の汗が流れながらドキッとしてしまうが、今度は響に気付かれないよう上手く平気そうな顔をしながら、響の顔を向けながら疑問入りの言葉を放った。

 

「ん~?あたしの気のせいだったのかな…………?」

 

「んなことより響…………お前いつまで俺の部屋に居るつもりなんだよ?着替えてぇから部屋から出てくれよ。それとも俺の裸が見たいのか?」

 

 俺の返答に、響は首を傾げクエスチョンマークでも出ているような考える顔になるが、考える仕草をしている響に俺は声を掛け、パジャマに手を掛けて脱ぐ行動をすれば、それを見た響は面白いぐらいにみるみる顔を真っ赤にさせて叫んだ。

 

「もうっ!こんなときにからかわないでよ!お兄ちゃんのバカッ!!!」

 

 響はそう言って俺の部屋から素早く出ていき、バンッ!と乱暴にドアを閉めてドタバタと階段を降りていった。

 

「なに怒ってんだ?ガキの頃は一緒に風呂に入ってたって言うのに、俺の裸なんざ見慣れてるだろうが?」

 

 そう言う俺だが、響が1階まで降りていってくれたのは有り難かった。響が居なくなったのを良いことに、俺はいつも通りの普通の顔から、苦しい顔へと変貌し部屋の壁に凭れかかった。

 

「響に…………こんな苦しい顔と大怪我を見せでもしたら、あいつのことだ。大騒ぎしながら家族に知らせるのは目に見えてるからな」

 

 俺はそう言いながら上半身に着ているパジャマのボタンを外していけば、そこに出てくるのは俺が懸命に鍛えた肉体と、そして誰から見ても顔をしかめるような紫色の痣が出来上がっていた。

 

「うわっ、酷っ…………」

 

 しかもご丁寧に、拳の痕もしっかりとできている。

 

「ったく化け物大男め、リュウケンドーの鎧も突き抜けるほどの威力のパンチを放つってどんなだ!しかもぶち当てた膻中のところにしっかりと痣ができるって、あの野郎確実に人間じゃねえだろ?」

 

 

 昨日、俺は人間の姿をした化け物大男に襲われ、ヤバイところまで追い詰められたのだが、運良く獣王ブレイブレオンが封印されていたパワースポットに廻り合い、そこでブレイブレオンの封印を解いて、何とかビークルモードのレオントライクで逃走することに成功した。

 レオントライクで無事逃走することは出来たのだが、家に到着した時もかなり大変だった。ボロボロでフラフラな体だったのだが、玄関から入れば家族にバレてしまうかもしれないため、必死に屋根を登って自分の部屋へと入るが壁に寄りかかって10分ほど休憩を挟んだ。

 

 休憩を終わらせば再び体を無理矢理動かし、着ていた私服をベッドの近くに脱ぎ捨て、脱ぎ捨てたパジャマを着てそのままベッドへと就寝に入った。のだが、寝た時間が夜中過ぎであったため、ハッキリ言って結構眠い。

 

「本当に、冗談抜きでキツいな。バイク運転するときは気を付けねえと…………」

 

 ぼやきながら、俺はめちゃくちゃ痛む体を動かして、眠気と戦いながら私服へと着替えていった。

 

 

「おはよう。ふわぁ~あ」

 

 痛みを堪えながらなんとか私服に着替えた俺は、階段を下りながら数回ほど欠伸を噛み殺し、肩にはバックとパジャマを下げて、パジャマは洗濯機がある場所まで持っていき、次はリビングに行って家族に挨拶をする。

 

「おはよう剣二。ちょっと待っててね、今ご飯入れるから」

 

「それにしても珍しいね、剣二が朝寝坊するなんて?」

 

「確かに、それにまだ眠そうな顔してるな。大丈夫か?」

 

 母さん、婆ちゃん、そして父さん、三者三様で俺に向けて心配そうな声を掛けてくる。因みに響を含めた4人は、もう少しで朝御飯を食べ終わりそうであった。

 

「まあ大丈夫。でも眠いのは確かなんだよな、最近どうにも疲れが取れないし寝たっていう気がしないし、体が気候に付いていけてないのかな?」

 

「本当に大丈夫お兄ちゃん?それでバイク運転しても平気なの?」

 

 大男に与えられたダメージを懸命に我慢して隠し家族に平気なのを伝えるも、少し体を伸ばしながらぼやいてしまう。その言葉を耳にした響が疑問と心配が入り交じった質問をしてきた。

 

「大丈夫だから心配すんな。だけどバイク運転するときは思いっきり安全運転でいかないとダメだな。スピードも抑えられるだけ抑えなきゃならねえ」

 

 妹の響でさえもそんなことを聞いてきたため、俺はいつも通りの声調で響に言ってやった。そのままバックを自分の椅子に掛け椅子を後ろへ引いて座り、朝御飯を食べようとする。

 

「はい剣二、どうぞ」

 

「ありがと母さん、いただきます!」

 

 母さんがよそってくれたご飯を受け取り、俺はお礼を言って手を合わせて食事への感謝を述べ朝食を食べ始める。

 

「急いで食わないと、時間的に危ねえからな!」

 

「剣二、そんなに急いで食べると喉に詰まるから気を付けて!」

 

 そう言って俺は大急ぎで朝食を口に入れていき、白米も大急ぎで掻き込んでいく。大急ぎで朝食を食べていれば、それを見た母さんが心配半分お叱り半分を入れた器用な声で注意してきた。

 

「了解です」

 

 母さんの注意に俺はしっかりと返事をして、手のスピードを緩めて朝食を食べていく。

 

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

 朝食を5分過ぎで食べ終えた俺は、最後に牛乳を一気に飲み干し、食への感謝を告げた。

 

「じゃあ母さん、悪いんだけど時間もねえから俺さっさと行くな。それと大学終わったらそのまま喜一の家に行くからよろしく!」

 

「ええ、あんまり瀬戸山君に迷惑掛けないようにね剣二」

 

「剣二、楽しんでこいよ」

 

「向こうで風邪引くんじゃないよ」

 

「そんなに言わなくても分かってるよ。じゃあいってくる」

 

 俺は立ち上がって前々から伝えていた喜一の家に泊まることを伝えれば、母さん、父さん、婆ちゃんの3人はそれぞれの反応を見せた。

 3人の言葉に俺はちょっとだけうんざりしてしまうも、俺を心配してのことのため、しっかりと返事を返しながらバックを肩に下げて、俺は3人に手を振りながら家を出ることにした。

 玄関の前に行って靴を履き、靴紐をしっかりと絞めていれば、俺はふとあることを考えた。

 

(そういや今日は珍しく、響の奴先に出たな)

 

 そうなのだ。いつもなら響の奴は俺より後に出るか、俺と同時に家に出るはずなのに、今日のあいつは俺が朝飯を食べ終わる少し前に、先に準備を済ませて家を出たのだ。

 

(未来との待ち合わせでもまだまだ間に合うだろうし、今日が日直なら俺を起こした後すぐに出るはずだし、なんか気でも変わって早く出ることにしたのか?)

 

 心の中で考えるが、響の行動はいつも焦らされたり頭を抱えたりするので、俺はもう考えるのを辞めにして玄関の扉を開けた。

 

「…………………………なにしてんだ響?」

 

 玄関の扉を開けて俺がまず最初に目にしたのは、響が通っている中学の女物の制服、そして次は満面な笑みで微笑んでいる俺の妹、立花響が居たのだ。

 どうして響が学校に行っていないのかが分からず、俺はそれに対して疑問の声を投げ掛けた。

 

「えへへっ、今日はお兄ちゃんのバイクで学校まで乗せてって貰おうか~なと思って待ってたの♪」

 

「はぁぁぁ?」

 

「だって今日お兄ちゃんと居られるのはこの朝の時間だけなんだもん。それならこの時間だけでもお兄ちゃんと長く居ようと思って待ってたんだ!」

 

「………………………………」

 

「だからねお兄ちゃんお願い!バイクに乗せてくれない!この時間帯ならゆっくりなスピードでも間に合うでしょ」

 

 昔からの響の能天気な考えに俺は言葉が出ずに呆れてしまい、当の響はパンッ!と手を合わせてお願いを重ねてきやがった。

 

「ったく…………よお」

 

 響のこの裏のない真っ直ぐなお願いに、俺は顔を下げて斜め下に向け、なんとも言えない声を出しながら後頭部の髪を掻けば、響の方に顔を向けて答えを伝える。

 

「わあぁぁったよ。…………門の前で待ってろ、すぐにバイク出してくるからよ」

 

「やった!…………だからお兄ちゃん大好き!」

 

「へいへい…………有り難みもなくその言葉を受け取っておくよ」

 

 体は凄まじく痛むのだが、妹の響のあの顔を見たんじゃ断るに断り切れなかった。そのため俺は溜め息を吐きながらも、俺のバイクを入れてある物置小屋まで行き、扉を開けてまずは予備に買ったヘルメットを手に取る。

 そこから手に取ったヘルメットをバイクのメーター部分に置いてから、俺はHONDA CB400 SUPER FOURを引っ張り出す。

 自分のバイクを引っ張り出し門からも出せば、妹の響に向かって予備のヘルメットを手渡した。

 

「ほらよ響」

 

「ん。ありがとう」

 

 ヘルメットを手渡せば、響は歩を進めてヘルメットを被りシールドを下げる、俺もバイクに跨がってハンドルに掛けていたヘルメットを被りシールドを下げる。

 

「…………それじゃあ行くぜ」

 

「うんッ、いつでも良いよ」

 

 響の返答を聞いた俺は、バイクのキーを回し起動させ、ハンドルを強く握って回せばエンジンを吹かす。そしてアクセルを踏んでバイクを発進させた。

 風を感じるほどのスピードを出すが、それでも激しく痛む体に、余計なダメージを与えないよう細心の注意を払って運転する。

 そして後部座席に居る響はと言うと…………。

 

「わあぁぁぁ…………やっぱりお兄ちゃんの運転って良いな~。ねえお兄ちゃん、もう少しだけ飛ばせないかな?」

 

「…………少しぐらいならな。それで良いか?」

 

「うんッ!お願い!!」

 

 響がもう少しだけスピードを上げて欲しいと頼んできたため、俺は事故らないよう確認してから響に少しだけ顔を向けて、周りのエンジン音が阻害してもヘルメット越しから聞こえる声を出せば、どうやら響には聞こえたらしく賑にこやかな微笑みを見せて、同じく聞こえるぐらいので声量で返事をした。

 

「分かったよ。行くぜ」

 

 響の返事を聞いた俺は、もう少しだけエンジンを回しアクセルを踏み込み、愛車のスピードを上げた。

 

「ふふっ~ん。お兄ちゃんと一緒のバイク~」

 

 スピードを上げれば、響はさらにちょっとだけ強めに抱き付いてきた。そうすれば響の中学生にしては発育の良い柔らかい部分が、さらに俺の背中に押し当てられムニュと潰れてきたような気がした。

 その感触がなんなのか分かった俺は、ヘルメット越しからでも握り拳を口の所に添えて、「ンンッ」と響には聞こえないぐらいの声量で声を出し、すぐに顔を前へと向けてハンドルをしっかりと握ってバイクを運転していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機動二課。

 

 

「叔父様。腕の方は大丈夫ですか?」

 

「ああ、このぐらいの怪我なら大丈夫だ!見ろ。これぐらいの怪我を負っているのにも関わらず、こんなに腕を動かせッ…………いたたたたっ!?」

 

 機動二課の司令部では、殆どの隊員が集結している中、風鳴弦十郎は右腕に包帯を巻き、三角巾を結んで肩に掛けていた。

 その姿はまさに、数日前の天羽奏と同じであった。

 

 

 弦十郎は昨日のリュウケンドーのサポートアニマル、獣王ブレイブレオンの登場によりかなりの傷を負っていた。他の体の箇所は掠り傷で済んでいるのだが、1番の重傷は右腕であり、その理由は獣王ブレイブレオンによって右腕を集中的に攻撃を受けたためである。

 そのため昨日の戦いが終わった後は、奏と翼の2人で弦十郎をヘリに乗せ、緊急で起動二課に戻れば医務室に弦十郎を連れていき、右腕の治療をしたのである。

 

 

 平気そうな顔で腕を上げるも、激しい痛みに苦悶の表情を抱える弦十郎を見て、奏は椅子に座りながら背もたれに腕を乗せて、乗せた腕に顎を乗っけて呆れた顔で告げた。

 

「いくら心配させまいとは言え無理すんなよおっちゃん。その怪我しまくった腕、まだまだ痛むんだろ?」

 

「ああっ…………奏、お前の言う通りだ」

 

「はぁ~。やれやれ」

 

「それにしても右腕をあれだけ集中的に攻撃されて結構な怪我を負ったって言うのに、検査したら明日になれば治ちゃうなんて…………相変わらず弦十郎君の体はどうなってるのかしら?」

 

 奏の言葉に、弦十郎は少し苦しい顔をしながらも笑みを見せて、そんな弦十郎を見れば、奏は背もたれに乗せていた腕を横へと出して、さらに呆れた顔となって溜め息を吐きながら呟いた。

 その呆れが含まれた呟きに、奏の隣にいた科学者の桜井了子は、弦十郎のカルテを見ながら弦十郎の異常すぎる体の回復力に疑問しかない言葉を放った。

 

「普通なら全治1ヶ月以上は安静にしておくぐらいの怪我を負っている筈なんだけどね」

 

「了子さん、おっちゃんの体の異常性なんて今に始まったことじゃないだろ?もう気にする方が無駄ってもんだよ」

 

 疑問を浮かべる了子に対して、奏は手をヒラヒラと振りながら即答した。

 奏のその言葉に、桜井了子も「それもそうね」と納得を入れて、弦十郎の体の疑問とはおさらばをすることにした。

 そんなことを語り合う奏と了子に、当の弦十郎は至って真剣な表情を2人に向けて伝える。

 

「何を言っているんだ2人とも。俺のような過ごし方をしていれば、こんな体になるぐらい簡単だぞ?」

 

 平然と言ってのける弦十郎であるが、奏と了子の2人は光の速さもよろしくの速度で、「「いや、それは絶対にあり得ない(わ)」」と即答した。確かに弦十郎が普段しているようなことをしても、あれほどの異常としか言いようのない肉体が出来上がることは、絶対に不可能と断言できるであろう。

 

「第一におっちゃんがやっていることであんな異常な体が出来たら、それこそノイズ以上に世界が混乱することになるぞ」

 

「奏ちゃんの言う通りよ。それに未確認の騎士君だって、弦十郎君と対峙して化け物だって思ったんじゃないかしら?」

 

「…………………………………………確かに、そんなことを言われたような気はするな?いや、だが彼だって今から俺のように過ごせばそのうち…………」

 

「叔父様。大変に申し訳ありませんが、いくら未確認の騎士でもそれは不可能だと思います。昨日叔父様と戦った未確認の騎士も足がかなり覚束ない状態でしたから、かなり限界に近かったと思います」

 

「司令。いくら上層部の命令でも、やはり少しやり過ぎだったんじゃないですか?」

 

「…………………………………………………」

 

 奏と了子、2人の言い分に弦十郎はたじろぎながらも言い返すが、さらにそこから姪である翼の追い討ちの言葉に、さらには心から信頼を置いている緒川慎次の追撃の台詞に、弦十郎は最早なにも言い返すことが出来ず、黙ることしか出来ずにいた。

 

「……………………よ、よし!そんなことよりだ。昨日未確認の騎士が使役していたような、ライオンみたいなものについて少し考察しよう。藤尭、昨日の映像を出してくれ」

 

「話を変えたな」

 

「…………そうね」

 

 無言でいるものの、すぐに弦十郎は話題を変えるため、昨日リュウケンドーがパワースポットの封印から解いた。獣王ブレイブレオンについて語り始めることにした。

 モニターを操作しながら弦十郎の言葉に、オペレーターの藤尭は半目で弦十郎の方を振り向き見てボソッと呟き、藤尭の呟きが友里の耳には聞こえたようで、彼の言葉に同意を示した。

 

「…………昨日、未確認の騎士はかつてパワースポットとして有名だった場所から白い獅子を出現させた」

 

「そのパワースポットの場面は奏ちゃん達は見てはいないのだけど、シンフォギアに装着されていたカメラの映像を確認して見たんだけど、まさか未確認の騎士君にあんな仲間が居るなんて驚いたわ」

 

 弦十郎の深刻そうな表情に、桜井了子は頷きながら答え、さらに続けて言う。

 

「因みに映像だけでもあの獅子を解析したんだけど、解析結果…………あの獅子は未確認の騎士君と同等の力を持っていると判断されたわ」

 

「「「ッ!!?」」」

 

 了子のその言葉に、奏と翼と弦十郎の3人は戦慄でも走ったかのような顔付きとなった。

 

 それもそうであろう。

 

 

 機動二課で未確認の騎士という呼称で呼ばれている魔弾剣士リュウケンドー。

 

 彼は自分の持っている得物の剣で、まるで紙を斬るかのようにズバッと小型ノイズの大群を難なく斬り伏せている。そして大型ノイズにも怯むことなく立ち向かい、今まで積んできた戦闘経験を発揮して大型ノイズも見事に倒しているのだ。

 そのような正体不明の強者が存在しているにも関わらず、彼と同等レベルの存在が昨日いきなりパワースポットに現れ、リュウケンドーとともに去っていったのだ。

 

 そんな3人の顔が未だに戦慄が走っているが、それでも言葉を口から出した。

 

「未確認の騎士の野郎はあんな炎の力を持ってるだけじゃなく、自分と同等レベルの力を持つ奴が居たのかよ」

 

「もしかしたら…………未確認の騎士は私達の想像を遥かに越えた力を隠し持っているかも知れない」

 

「…………翼の言うことには一理あるな、俺と藤尭も彼はまだまだ力を隠していると踏んでいたが、まさかこう来るとは。…………全く持っての予想外だ」

 

 奏は難しい顔をしながら髪を掻き、翼は口に手を当てて考え込み、弦十郎は左腕を上げて降参でもするかのような仕草で言った。

 藤尭を含めた機動二課の隊員たちも悩む中、了子はまたモニターの画面に映っている、ビークルモードに変形しレオントライクに乗ったリュウケンドーを見て、再び思案する。

 

(ここまで私達の予想を越え抜いた力。…………やっぱり1番に障害になり得るのはシンフォギア装者ではなく、この未確認の騎士君になりそうね)

 

 

「そう言えば…………戦闘映像で拝見しただけなんですけど、未確認の騎士はあの獅子のことを名前で呼んでませんでしたか?」

 

「「「「え?」」」」

 

 少々固まった空気の中、その空気を破るように緒川慎次が口を開いた。緒川のその台詞に、4人は一斉に素の声を出しながら緒川の方に顔を向けた。

 そんな4人の視線に何も気にすることなく、緒川は自ら出したことについて語ることにした。

 

「いえ、ですから昨日の未確認の騎士…………あの時、自らの手で産み出したと言う、白い獅子のことを名前で呼んでいましたよね?声の方はかなりのノイズまみれで解読が出来ませんでしたが」

 

 緒川の言葉に、司令官の弦十郎は顎に手を当て頷きながら言う。

 

「…………そう言えばそうだな。未確認の騎士はあの獅子のことを名前で呼んでいたな」

 

「確か未確認の騎士、あたしたちの前であの白い獅子の名前言ってたよな。なんて名前だったっけ?えーっと…………プライド?いや違う、フラ?も違う。フレ?も違うしブラ!でもないし!えーっと?えーっと!」

 

「ブレイブレオン!…………未確認の騎士はあの白い獅子のことをブレイブレオンって呼んでたよ奏」

 

「! そうっそれだ!ブレイブレオンだ!ブレイブレオン。助かったぜ翼ッ!」

 

 弦十郎の言葉に、奏は人差し指を出してクルクルと回しながらブレイブレオンの名前を必死に口から出そうとするが、一向に名前が出てこず、このままでは話が進まなくなると気付いた翼は、少々呆れた様子で親友の奏にブレイブレオンという名前であったことを教えた。

 翼から獅子の名前を教えられた奏は、すぐにピンッと来て翼に人差し指を向けてお礼を言う。しかしそんな奏に翼は、呆れた顔のまま溜め息を吐いて奏に言った。

 

「もうっ奏!!戦いのことばかりじゃなくて、こういう他のことにもちゃんと気を配ってよ!」

 

「わ、分かってるって!?翼は本当に細かいな~」

 

「…………奏が大雑把すぎるだけでしょ」

 

 奏と翼のちょっとした言い合いが始まるが、それを見兼ねた弦十郎が止めに入った。

 

 

「そこまでだ。奏、翼」

 

「も、申し訳ございません叔父様!?」

 

「わ、悪かった!おっちゃん!?」

 

 弦十郎の声に、奏と翼の2人はすぐに姿勢を正して弦十郎に謝罪した。そんな2人の反応に弦十郎は軽く微笑んむが、それも一瞬。すぐに考え込む表情に変えて口元に手を添えて語る。

 

「それにしても、未確認の騎士がパワースポットから産み出したあの獅子の名前は、ブレイブレオン…………か」

 

「ブレイブレオン…………。訳すのなら勇ましき獅子。他には勇敢や勇気とも訳せますが…………」

 

「…………確かにあの白い獅子には勇ましい貫禄(かんろく)(うかが)えられたな、その名で呼ばれるのも納得がいく」

 

 緒川の言葉に、弦十郎はうんうんと頷いて納得する。

 だが気になることがあり、それを尋ねようと奏と翼が発言に入った。

 

 

「まあ…………あの白い獅子がブレイブレオンっていう名前は分かったけどよ。あたしはもう1つ気になることがあんだけど」

 

「「「「「???」」」」」

 

「私も奏と同じことを聞こうと思っていました。…………叔父様、上層部の方は大丈夫なのですか?納得してくれたのでしょうか?」

 

「ああ…………そのことか」

 

 奏と翼が気になっていたのは上層部のことであった。

 それもそうであろう。昨日、機動二課は上層部から、これを最後にどんな手を使ってでもリュウケンドーを捕獲しろと命じられていた。そのため機動二課の司令官である風鳴弦十郎が直々にリュウケンドーの捕獲に動いた。

 

 圧倒的な力の差でリュウケンドーを追い詰め、捕獲まで後一歩の所まで来ていたのだが、最終的にはリュウケンドーがパワースポットの封印を解いて、獣王ブレイブレオンを呼び覚ました。

 その結果、獣王ブレイブレオンが呼び覚まされたことにより、驚きに包まれていた弦十郎は不意を突かれてしまい、弦十郎はかなりの重傷を負わされてしまった。

 しかし、それだけの大怪我を負っていながら、明日になれば治ると言うのは、かなりおかしいことだが。

 

 

「上層部の件なんだが、未確認の騎士の捕獲は…………」

 

「「「「「「……………………」」」」」」

 

「未確認の騎士の捕獲は完全に取り止めとなった。」

 

「「「「「「ッ!!?」」」」」」

 

 弦十郎の雰囲気に、皆は緊張を表すように唾を飲み込んで黙ったが、次に弦十郎の放った言葉に、皆はワッと言うかのように喜びを出した。

 そんな皆の喜びの反応に、弦十郎も続けて微笑んで続ける。

 

 

「流石の上層部も…………未確認の騎士が持っているあの炎の力とブレイブレオンと呼ばれる強力な白い獅子を観れば、首を縦に振らずにはいられなかったさ」

 

 みんなに伝えれば、弦十郎はいきなり顔を下に向けて「くっ…………くっ」と笑っており、なぜ弦十郎は笑っているのかと疑問を持ちながら奏たちは首を傾げるが、弦十郎はみんなが疑問を浮かべて首を傾げていることに気付かず、笑いながら言った。

 

「それにしても、ブレイブレオンと呼ばれた白い獅子の力を見た上層部のあの顔は傑作だったな!全員顔を青白くさせて、首を縦に振ったんだ。あれは傑作すぎる」

 

「アッハッハ!そいつは確かに傑作だな!でもよぉ、おっちゃん!上層部のそんな顔見て笑うなんて、おっちゃんも悪い奴だな」

 

 弦十郎のその言葉に二課全員が笑い、奏も笑いながら答え、弦十郎はさらに口角を上げて言い放つ。

 

「まあこれで、厄介な面倒ごとが1つなくなったんだ。これぐらいはしても罰は当たらんだろ」

 

『『『アッハッハッハッハ!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 弦十郎たちが機動二課の指令本部で笑っている頃、リュウケンドーに変身する立花剣二と妹の立花響と言うと。

 

 キイイィィィッ!!

 

「ほらよ響、お前の通う中学校に到着したぜ」

 

「はーい。ありがとねお兄ちゃん♪」

 

 妹の立花響が通う中学校の校門前にバイクを停めて、響はご機嫌に後部座席から降りれば、ヘルメットを脱いでそれを兄あに剣二けんじに渡す。

 

「ああ、ちゃんと勉強しろよ。それから授業中に居眠りこくんじゃねえぞ」

 

「分かってるってばお兄ちゃん!それじゃあねぇ~!!」

 

「おう、お人好しも程々にな」

 

 元気な声で手を振っている響を見送る剣二、響が背を向け学校に行けば、軽く鼻で溜め息を吐いて、上げたヘルメットのシールドを再び下げ、バイクのエンジンをかき鳴らし、アクセルを踏んで発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 弦十郎を含めた機動二課の面々の笑い声が響くが、数分程でその笑い声は収まれば、弦十郎は左手の握り拳を口に当て、少し離してゴホンと咳払いをした。

 

「はーっ、こんなに笑ったのは久し振りだな。…………さて本題に戻るが、俺達にとっての厄介ごとは1つ無くなったわけだが、それでもまだまだ難題が残っている。みんな!まだまだ苦労するかもしれないが、油断のないよう事に当たってくれッ!!」

 

「「「「「了解ッ!!!!」」」」」

 

 司令官である弦十郎の言葉に、二課の隊員たちは姿勢を正して、活力の入った返事をした。

 

 部下たちのそんな返事を聞いた弦十郎は、笑みを称えて深く頷き「よしっ、それじゃこれで解散だ。それぞれの持ち場に着いてくれ」と言った。

 そして二課の隊員たちは、また「了解ッ!」と返せば、自分たちが担当する持ち場へと向かっていった。

 

 隊員たちが持ち場へと向かっていくと、椅子に座っていた奏が立ち上がり言う。

 

「それじゃ、あたしらもこれで退散するか!行こうぜ翼」

 

「あ、うん。そうだね奏」

 

 奏の言葉に、翼も反応して返答し彼女の元まで近寄る。そんな奏と翼に、弦十郎は彼女たちの方へ向いて聞く。

 

「確か奏と翼は今日はライブもなにもないんだったか?」

 

「ああ。だから今日は翼と一緒に学校に登校しようと思ってる!」

 

「はい。いくら私達がアイドルでも、学業の方も出来るだけ疎かにしないため、今日は行こうと思っています」

 

 因みにだが、今日の2人の服装はいつも彼女たちが着ている仕服ではなく、彼女たちが通う学校の制服であった。

 

「そうか。2人には無理をさせてすまないな、俺が言うのもなんだが…………学園生活、しっかりと楽しんでくれ」

 

 弦十郎の言葉に、奏と翼は満面の笑みを称えて大きな声で元気よく答えた。

 

「はいっ!ありがとうございます!」

 

「ああ!楽しんでくるよおっちゃん!」

 

 そう答えて奏と翼は手を振りながら司令室から出ていき、弦十郎も笑ってそんな2人を見送った。

 

 

「……………………」

 

 司令部から出た奏は1分ほど走っていたが、足の速度を緩めて歩きへと変えた。しかし表情の方はなにか思案しているような顔であった。

 親友のそんな顔を見た翼は、奏の横顔を見ながら尋ねた。

 

「どうかしたの奏?少し深刻そうな顔してるけど?」

 

「ッ!ああ、ちょっと気になることがあってな」

 

 奏の言葉が気になる翼は、「ん?」と言って首を傾げて疑問を出すも、翼の方も色々と気になり思いきって聞くことにした。

 

「一体どうしたの奏?何かあるんだったら言ってくれる?」

 

「ッ…………」

 

 翼の真剣な表情に押された奏は、困った顔をして後頭部の髪を掻けば、その後で降参という顔をして両手を上げて喋った。

 

「分かったよ翼、降参。素直に話すから、そんな真剣な顔は止めてくれ。肩が凝っちまうからさ」

 

 言って奏は肩を竦めると、そんな微かな動きとともに彼女の胸元の大きな2つの塊がゆさっ、と効果音が付きそうな勢いで揺れた。

 

「……………………………」

 

 親友が持つその大きな塊の揺れを見た翼は、一瞬のうちに目のハイライトが消えて、半目で奏の胸を見た。

 

「ど、どうかしたか翼?」

 

 親友が纏っている雰囲気が変化したのを感じ取った奏は、多少たじろぎながらも翼に声を掛けた。

 

「あっ!?な、なんでもないよ奏!それより奏の気になってることってなんなの!?」

 

「お、おう。実はな…………」

 

 奏の声にすぐ意識を取り戻した翼は、奏に両掌を見せて慌てながらも返事を返した。相棒のその行動に、奏は少々たじろぎながらも、今自分が気になっていることを口にする。

 

「未確認の騎士が新しい力を得ただろ?まああれが新しい力と見るべきかは、ちょっと分からないんだが…………あいつとは色々とあったからさ」

 

「うん…………まあ、そうだね」

 

「でよ。これまでの戦いで考えちまったんだ、未確認の騎士が隠し持っていた力とブレイブレオンって呼ばれた獣の力…………近いうち、もしかしたらもうすぐそこまで、何か恐ろしいことが迫ってるんじゃないかって、あたしは考えちまったんだ!」

 

「……………………………」

 

 そんな天羽奏に、風鳴翼も深刻そうな顔となった。

 

 ある意味で彼女の言葉は的を得ていた、魔弾剣士リュウケンドー変身者である立花剣二が持つ光のカノンの書にはこう書かれていた。

 【”次に来るのは最悪な敵、その敵を討てるかどうかは自分自身次第。生きるか死ぬかは貴君の力のみ、自分自身の運命は自分自身の力で斬り開くのだ”】と、下手をすれば今回の戦いでは、恐るべき最悪の敵が彼と彼女たちに襲い掛かり、死ぬことになるかもしれない確率があるということだ。

 

 しかし、そのようなことが起こるとは2人は知ることはない。だが、それでも天羽奏は深刻ながらも真剣な表情で翼に顔を向けて告げる。

 

「色々と気になるんだよ。あたしらどころか、この機動二課ですら想像の及ばないことが起きていて…………もしかしたら、シンフォギアじゃ対抗できないんじゃないかって考えちまうんだ、情けないけど不安なんだ」

 

「奏…………」

 

 明るく振る舞う親友のそんな姿を見て、翼はただ彼女の名前を呟くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後の講義終了。お疲れさんッと」

 

 最悪の講義が終わりを告げ、俺は体を真っ直ぐに伸ばす、しかし途中で体に激しい痛みが走ってきたため、俺はすぐに体を伸ばすのを止めて、自分が座っている席から立ち上がった。

 俺が席から立ち上がれば、斜め後ろの席に座っていた鈴があの話を持ち掛けてきた。

 

「ねえ、今日もあの白い仔犬の捜索しない?」

 

 鈴のその言葉に、俺は顔を向けて言い返す。

 

「探すのは良いけどよ。どこかアテあるか?」

 

「申し訳ありませんが剣二の言う通りです。闇雲に探しても見つからないと思いますよ?」

 

「それは、そうだけど…………」

 

 俺と喜一の言葉に言い返すことができず、鈴は呟きながらも押し黙ってしまうが、そんな鈴を見て俺は「言い過ぎちまったかな?」と気まずそうな顔をするも、すぐに立ち上がって言った。

 

「分かった分かった。とりあえず俺達があの白い仔犬を見た場所まで行って、あの周辺を三手に別れて探してみよう!」

 

「剣二…………!」

 

「ただし鈴!1時間以上探しても見つからなかったら止めにするぞ。近頃ニュースでノイズの動きがおかしいって言ってるらしいからな、それに今日俺は喜一の家に泊まるって決めてるしな!」

 

「えっ、なにそれ!?」

 

 俺の台詞に鈴が驚愕の声を上げて、まるで必死な表情で俺に詰め寄って来た。そんな鈴の行動に、俺は軽く引きながら、戸惑いながらも説明を始めた。

 

「いや俺、今日は喜一の家に泊まるんだよ。喜一の家…………今日は両親が2人ともいないみたいだから、なら丁度良いし泊まろうかなってよ」

 

 鈴にそう説明してやると、鈴は俺に顔を近付けて言ってきた。

 

「それなら私も瀬戸山君の家に泊まりに言ってもいい?私も久し振りに泊まりに行きたいし、良いでしょ!?」

 

 鈴のその台詞に、俺と喜一は首を傾げながら渋った。

 

 

「鈴、流石にそれは…………厳しいだろ?」

 

「ええ、いくら幼なじみとはいえ、男性の家に泊まるとなると…………最近の世間の目はキツいですから」

 

「う…………確かにそうかもしれないけど、でも良いんじゃない?久し振りに3人で泊まってみようよ!」

 

「ならまずは鈴の家族からも聞いてみたらどうだ?多分ダメだと思うけどな」

 

「僕も剣二と同意見です。鈴さん、さすがに今の世間のことも考えるとなると僕も大変ですから、泊まらせるのは厳しいですよ」

 

 俺と喜一がそう言うと、鈴は納得がいかないようで頬を膨らませて怒った一面を見せる。

 

「分かったわよ。それじゃあ家族に聞いてみるから、許可が降りたら私も瀬戸山君の家に泊まらせてよね!」

 

 などと言って携帯を取り出し、少し俺達から離れて家族に電話を掛けに行った。

 

「多分どころか…………絶対に無理だと思うけどな」

 

「ええ…………僕もそう思います」

 

 互いに顔を見合わせながらそう言うと、少し離れた先では鈴がなにか言い合いをしているようで、大方家族から反対されているのであろうが、鈴の奴も必死で説得しているようだが、あれは完全にダメであろう。

 そんなことを重いながら見ていれば、鈴は電話を切って俺達の方に振り向けば、まさに分かりやすさ全開でとぼとぼと俺達の方へと戻ってきた。

 

「ダメだった。お母さんがワガママ言わないで、ちゃんと家に帰ってきなさいって」

 

 それを聞いた俺は軽く苦笑混じりの笑顔を見せて、立ち上がる。

 

「しょうがねえだろ!今のご時世それが普通だ。…………そんじゃ、鈴の電話も終わったことだし、仔犬探しに出ようぜ」

 

「そうですね!」

「…………うん」

 

 俺の言葉に喜一は良い返事をして、鈴の方は未だに納得できていないようで、元気のない返事をした。そして俺達は大学から白い仔犬の探しに急いで出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、今日も見つかんなかったな」

 

「仕方ないですよ。こうなることは誰もが予想してました。でも、鈴さん悲しい顔してましたね」

 

 そう言いながら俺はさらにバイクのスピードを上げる。

 後部座席には喜一が座っており、バイクから振り落とされないよう俺の腹に手を回している。

 

 いくら親友でも男を後部座席に座らせているのは、なんともまあ複雑なもんだが、喜一の家に泊まらせてもらうのに、俺はバイクで喜一の家に行き、当の本人は歩きというのは酷すぎるので、携帯で連絡をとって喜一を拾い、その次に鈴とも連絡をとって合流し、さよならをして別れた。

 

 そして今は、喜一の家の方面に向かってバイクを走らせている。

 

(それにしても鈴の奴、最後の最後まで納得できない顔してたな~。気持ちは分からないでもないが、こう言う時は潔く諦めるべきだぞ、鈴)

 

 バイクを走らせながら心の中で呟けば、ある疑問が頭に浮かび、俺はバイクのスピードを少し下げて、後部座席にいる喜一に顔を向けて尋ねた。

 

 

「そういや喜一よ」

 

「ん?どうかしましたか剣二?」

 

 声量を上げて喜一に尋ねれば、喜一の方も聞こえたらしく、喜一も聞こえるぐらいの声量を出す。

 

「いや晩飯はどうするのかと思ってよ?今から行く銭湯で飯食うのか?それともお前の家にある材料で、俺がなんか作るか?」

 

「ああ、それなら大丈夫ですよ。今から銭湯に到着して入っても僕たちなら2時間ほどで銭湯から出るでしょうから、8時半過ぎには寿司が届くよう予約してますよ!」

 

 晩飯の事を聞けば、喜一は既に寿司の予約をしているようで、俺達が銭湯から喜一の家に戻っている時間帯であれば、10分ほどで寿司がやってくるだろう。

 

 それを聞いた俺は、バイクのハンドルを握っている力を強めて笑った。

 

「はっはっは!既に寿司を予約してんのか。さすが喜一、抜け目がねえぜ!」

 

「前々から剣二が泊まるのは聞いてましたから、それにお寿司を買うぐらいの貯えはちゃんとありますよ!」

 

「そんじゃ、晩飯は美味い寿司を食うために、さっさと銭湯へと行きますか!さっきよりスピード上げるぜ喜一」

 

「ええ、よろしくお願いします。剣二」

 

 銭湯に到着した俺達は、素早く風呂に入りゆったりと寛ぎ、風呂から出ればしっかりと髪を乾かしたり体を(ほぐ)したりして、最後にコーヒー牛乳を飲んで銭湯を出た。

 その後はどこへも寄り道することなく喜一の家まで向かい、晩飯の寿司が来るまで適当に遊び、時間通りに寿司が来て俺と喜一は4人前の極の寿司をペロリと食べた。

 

 

 

「ふぅ~、食った食った…………ごちそうさんと」

 

「食べましたね。それでも少し多かったんじゃないかと思いますが」

 

「俺達はまだまだ若いんだ。あれぐらいしっかり食べておかないとダメだと思うぜ?」

 

「……………………そうでしょうか?」

 

 寿司を食べ終わった俺は喜一と軽く駄弁り、冷蔵庫にある飲み物を貰おうとした瞬間、俺の後ろポケットに入れてあったモバイルモードのゲキリュウケンに軽く触れた時、今までとは違う勢いで俺の脳内に認定特異災害のノイズの出現場所を映し出した。

 

 しかし、俺の脳内には映し出された場所の情報量が凄まじく。それだけではなく、今までにはなかった断片的ながらも、まるでこれから起こるかのような感じで俺や機械の鎧を纏った2人組の女、そしてノイズとの激しい戦闘のシーンとヒューマノイドノイズにやられている俺達の映像が流れた。

 

「ぐっ…………!?ぐぎッ…………あがっ、ずっ…………はっ、はっ!?」

 

 あまりにも激しい情報量に俺の脳だけではなく体も付いていけなくなり、鋭い頭痛がやってきて俺は両手で思いっきり頭を抑え、喉も閉められるほどの息苦しさがやってきて、その苦しさに耐えられず膝を折り曲げてしまった。

 なんとか倒れそうになるのを抑えて、俺は気をしっかりと持って落ち着きながら息を吸い、目を瞑った。

 

「剣二!?どうかしましたか…………?」

 

 いきなりの俺の異常事態に、喜一は心配しながら俺に声を掛けながら駆け寄って来る。

 

「すまん大丈夫だ。心配すんな」

 

 駆け寄ってきた喜一に心配を掛けないよう、掌を向けて大丈夫だと伝え、俺はなんとかふらつくことなく立ち上がる。

 

「悪い喜一、ちょっと外の空気吸ってくるわ。ついでにバイク雑誌も買ってくるわ」

 

「え?…………ええ、それは別に構いませんが、大丈夫なんですか剣二?かなり苦しそうでしたけど」

 

「ああ大丈夫大丈夫。多分息苦しいとかそんなもんだろう?外の空気目一杯吸えば大丈夫だよ」

 

「それなら良いんですけど…………何かあってらすぐに電話してくださいよ」

 

「へいへい、そんな心配しなさんなって、大丈夫だからよ」

 

 喜一の心配性まみれの言葉を右から左へと受け流し、俺は手を振りながら喜一の家の玄関に立ち止まり、1度振り向いて喜一に声を掛ける。

 

「そんじゃちょいと出てくるわ。ま、もしもなにかあった時は連絡するし、俺の親から確認の電話がきたら誤魔化しよろしくな!」

 

「…………まったく、出来るだけのことはしておきますよ」

 

 互いに、いつも通りのやり方を伝えて、俺は喜一の家へと出た。

 

 

「…………今までにないゲキリュウケンからの報せ、そしてまるでこの後に起こるかもしれないと言う現実味すぎる映像…………まさかこれが光のカノンの書に出た最悪な敵ってことか?」

 

 喜一の家を出た俺は、歩きながらゲキリュウケンが見せた映像に思案を巡らせたが、今はそんな思案などすること自体が無意味なため、俺は考えることをやめた。

 なぜなら、ゲキリュウケンが俺の脳内にノイズの出現場所の映像を見せたということは、今日ノイズが現れるのは絶対だ。

 迷う気もさらさらねえしな。

 

(それに、例え最悪な敵だろうと逃げるわけにはいかない。死ぬことになったとしても家族を悲しませる結末になっても、俺の命と引き換えにしてでも最悪なノイズを倒してやるさ!)

 

 心の中で絶大な決意を固めた俺は、喜一の家から充分離れたことを確認して、道のど真ん中に立ち止まる。

 

「行くぜっ!ゲキリュウケン!!」

 

 ノイズと戦うための覚悟を口にし、俺は尻ポケットに入れてあるモバイルモードのゲキリュウケンを取り出し、名前を呼んだ。そうすると、モバイルモードのゲキリュウケンが光出せば、一気にゲキリュウケンは剣の姿となった。

 

「リュウケンキー、発動!」

 

 ゲキリュウケンのマダンキーを挿し込むための開閉装置を上げて、俺はリュウケンドーに変身するためのマダンキー・リュウケンキーを発動させた。

 発動したことにより、キーの部分が飛び出し俺は勢い良くリュウケンキーをゲキリュウケンへと挿し込むとともに、開閉装置を下げて変身を行う。

 

 

『チェンジ リュウケンドー』

 

「撃龍変身!」

 

 

 ゲキリュウケンから青白く発行するエネルギーが出てくれば、俺は右手に持っているゲキリュウケンと左手でも持ち、俺の前まで持って来て言った。

 そうすると、ゲキリュウケンから青白い龍が飛び出し天高く舞い上がる。龍は空中で止まり巨大な咆哮を放ち、真下に居る俺目掛けて降りてくる。

 

「……………………!」

 

 俺は龍を全身で受け止め、顔には龍の顔を思わせる仮面、体には白と青と金の鎧が俺を纏った。

 

「ふっ!…………魔弾剣士リュウケンドー。来神ッ!」

 

 魔弾剣士リュウケンドーに撃龍変身した俺は、ゲキリュウケンを振ってポーズを決め、力強く台詞を口にする。

 そのまま俺はマダンキーホルダーを回して、1つのマダンキーを引き抜き、ゲキリュウケンに挿し込んで回し発動させる。

 

「マダンキー!…………レオンキー発動!」

 

『ブレイブレオン』

 

「いでよ!ブレイブレオン!」

 

 レオンキーを発動させたゲキリュウケンを前の地面に向ければ、ゲキリュウケンから召喚魔法が放たれ地面に当たり魔方陣が現れれば、現れた魔方陣から勇気を司る獅子獣王・ブレイブレオンが出現した。

 

 

『ガアアァァァァァッ!!!!』

 

 魔方陣からブレイブレオンは現れれば、力強い咆哮を上げた。

 

「ブレイブレオンッ!!ビークルモードだ!」

 

 しかし俺はブレイブレオンの咆哮を気にすることなく、獣王ブレイブレオンにビークルモードへのチェンジを指示した。

 

『ガアァァァァァッ!!』

 

 俺の指示を聞いたブレイブレオンは、跳躍するとともにビークルモードのレオントライクへと変形した。

 

「一気に行くぜ、ブレイブレオン!」

 

 レオントライクへと変形したブレイブレオンに俺は跨がり、ハンドルを握りアクセルを踏み込んでノイズが出現する場所に向かって発進させた。

 

 俺がブレイブレオンに声を掛けた時、レオントライクに変形していたブレイブレオンは、俺の言葉に返事をするように唸り声を上げ、赤い瞳が強く光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!

 

 

「司令ッ!ノイズの出現を確認!!それと未確認の騎士は既に出現ポイントに居ます!」

 

 ノイズの出現を確認した機動二課では、けたたましいほどのサイレンが鳴っており、オペレーターの藤尭が司令官の弦十郎に報告した。

 

「場所はどこだ!数は何体だ!?」

 

「出現場所はスクランブル交差点!!数は…………ッ!?…………100体を優に越えています!!?」

 

「「「「「!!!??」」」」」

 

 

「そんなっ!?」

 

「嘘だろっ!?」

 

 弦十郎がノイズの出現場所と出現数を聞けば、司令室にいる数多くの隊員たちが驚愕の表情となっていた。

 それを聞いた奏と翼は驚愕の表情をしながら声を上げ、司令官の風鳴弦十郎も衝撃を受けながらもオペレーターに再度問いた。

 

「100体以上だと!?一体どういうことだ!!?」

 

「分かりません。…………ですがレーダーには100体を越えるほどの数が出ていますし、これからモニターにも映します」

 

 友里あおいはキーボードを操作して司令室のモニターを映し出せば、モニターに現れたのは100体も軽く越えるほどのヒューマノイドノイズと、100体以上のヒューマノイドノイズと懸命に戦う魔弾剣士リュウケンドーの姿であった。

 

 

 モニターに映し出されたリュウケンドーの姿を見た弦十郎は、すぐさま奏と翼に緊迫した表情で指示を出した。

 

「奏!翼!大至急出現ポイントに向かってくれ!未確認の騎士の彼を援護するんだ!!」

 

「はいっ!」

 

「分かった!」

 

 弦十郎の指示を聞いた2人は素早く返事を返して、司令室を出ていった。

 2人の背中を見送った弦十郎は、すぐにモニターへと目を移し、ヒューマノイドノイズと激戦を繰り広げているリュウケンドーを心配そうな目で見ながら呟いた。

 

「本当に、一体どういうことなんだこれは!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確か出現場所はここだったな?」

 

 100体以上のノイズが出てくる数分前。

 

 レオントライクに乗ったリュウケンドーが、100体を越える小型のヒューマノイドノイズが出現するスクランブル交差点へと到着した。レオントライクにブレーキを掛けたリュウケンドーは、レオントライクから降りて一言呟き周囲を見回した。

 

 

(戦う場所はこのスクランブル交差点のど真ん中、今までになかった出現場所。そして俺でも苦戦するほどの最悪の敵…………ッ!?)

 

 心の中で思案していると、いきなり俺の背中を撫でるかのようなゾッとするほどの気配を感じ、俺は後ろを振り向いた。

 

「おいおい嘘だろ?今までなかったぞ、こんなこと!?」

 

 振り向いて見た俺は、その光景に意義を申し立てるも、それに答えてくれるものなど何処にもいない。なぜならそこに現れたのは100を越える処か、寧ろ1000を越えているのではないかと言わんばかりだ。

 

「これはいつも以上の覚悟で戦わなきゃならないみたいだな…………!」

 

 俺の体はあの人間を越えた化け物男との戦いでかなりの怪我を負っている、下手をすればこの戦いで俺の怪我は余計に酷くなるだろう。

 それでも俺は、覚悟を決めゲキリュウケンを力強く握り締めて、今体に入ってしまった余計な力を抜き出すように叫びなから決める。

 

「魔弾剣士リュウケンドー…………来神ッ!」

 

 叫びながら決めて、俺はゲキリュウケンを出てきたヒューマノイドノイズの大群に向けた。

 

「掛かってこいノイズッ!…………ブレイブレオン、お前の力も貸してくれ!」

 

 俺はレオントライクのままになっているブレイブレオンに力を貸してくれと頼むと、ブレイブレオンは赤い瞳を光らせて『グルゥウゥゥ』と唸り声を出せば、レオントライクから一気にブレイブレオンの姿へと変わり、先制攻撃と言わんばかりにヒューマノイドノイズの大群に勢い良く飛び掛かっていった。

 

『ガアアァァァァァァァァァッ!!!!!!』

 

『『『『『!?!!?』』』』』

 

 ブレイブレオンが飛び掛かってきたことに、ヒューマノイドノイズは驚愕するも、そんな行動も関係なく。ブレイブレオンは10体ものヒューマノイドノイズを吹き飛ばし、後ろ足で4体のノイズを蹴り飛ばし、1体のヒューマノイドノイズに噛み付き、踏み込みを入れて噛み付いたヒューマノイドノイズを投げ飛ばした。

 

 

「…………すんげ」

 

 ブレイブレオンのその凄まじい戦いぷりに、感嘆と驚愕が入り交じった言葉を放ってしまう。

 

「って、そうじゃい!?…………行くぜッ!」

 

だが俺はすぐに気を取り戻し、ゲキリュウケンを握り締めてヒューマノイドノイズの大群に突撃していく。

 

「おらぁっ!…………せいっ!ふんっ!だあッ!いい加減しつこいんだよッ!!!」

 

 ヒューマノイドノイズの大群の中に飛び込めば、俺は勢い良くゲキリュウケンを振りまくってノイズを炭素にしていく。周りにいたノイズを片付けて、そのまま素早くマダンキーホルダーを回してナックルキーを引き抜き発動させた。

 

「こんなに数が居るのなら、一気に掃討してやる!ナックルキー発動!」

 

『マダンナックル』

 

「召喚。マダンナックル!!」

 

 ゲキリュウケンでナックルキーの魔法陣を展開させれば、そこからマダンナックルが飛び出してきて、俺は魔法陣から飛び出してきたマダンナックルを左手でキャッチし装備した。

 

「ナックルスパーク連続発射!!」

 

『『『!!!??』』』

 

 マダンナックルを装備すれば、ヒューマノイドノイズにマダンナックルのキバを展開してナックルスパークを連射した。細かく連射したナックルスパークによって、大量のヒューマノイドノイズは炭素になっていくが、俺は動きを止めることなく、人類の敵であるノイズに手加減もせずに攻撃をする。

 

「そらそらそらあっ!!!…………マダンナックルもどうだっ!」

 

 ゲキリュウケンの斬撃でさらにヒューマノイドノイズを葬っていき、マダンナックルでもノイズをぶん殴って炭素にしていく。

 

『ガアァァァァア!!』

 

 ブレイブレオンの方も、俺に続いて大群のヒューマノイドノイズを葬っていく。

 

(やっぱすげぇな獣王の力は…………ブレイブレオンが一緒に戦ってくれるだけで、俺の負担がかなり減っていくぜ)

 

 俺はノイズを斬り倒しながらもブレイブレオンを見て、獣王の戦闘力に心の中で称賛を上げていれば、どこからともなくヘリのジャイロ音が聞こえ、俺は目の前にいたヒューマノイドノイズ1体をゲキリュウケンで葬ってから、そちらの方へと顔を向けた。

 

 

「チッ…………あいつらが来やがったのか…………」

 

 ジャイロ音が聞こえた方へ目を向ければ、その方向から凄まじいスピードの軍用ヘリが俺の頭上を通過すれば、危険としか言いようがないのスピード全開のヘリから、2人の女が歌いながら飛び降りてきた。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 

 やはり飛び降りてきたのは朱色の髪の女と青髪の女であった、飛び降りながら歌の一文を口ずさめば、あの2人の全身に機械の鎧が纏っていき、互いの専用装備の槍と剣をどこからともなく出して手に持った。

 

「そらあぁぁっ!」

 

「はあぁぁっ!」

 

 そして2人組の女は降下すれば、互いの得物を力強く握り、地面への着地とともに振って数体のヒューマノイドノイズを葬った。

 

「……………………………」

 

 俺は2人組の女を見ながらも、マダンナックルをヒューマノイドノイズに向け、エネルギーを集中させたナックルスパークを放ち、6体のヒューマノイドノイズを炭素にする。

 

(…………チッ、またあのお荷物どもが来たのか。いい加減戦場から離れさせてやって、普通の青春送らせてやるべきだろう、がっ!!)

 

 俺は心の中で思いながら、俺に襲い掛かって来ようとした1体のヒューマノイドノイズを葬った。

 

「ブレイブレオン!!一気に片付けるぞッ!」

 

『ガアァッ!アァァァァァァァッ!!!!』

 

 ブレイブレオンに向けて指示を出せば、ブレイブレオンは咆哮を上げてさらにヒューマノイドノイズを片付けていき、俺もさらにリュウケンドーの能力を上げてノイズを倒していく。

 

「よしっ、翼!あたしらも負けてらんねぇぞ!」

 

「うん!私たちも遅れを取ることなく頑張ろう!」

 

 俺とブレイブレオンの戦いを見て当てられたのか、機械の鎧を纏った2人組の女は更なる張り切りを見せていた。

 

(張り切らなくていいよ。寧ろお前らは戦場から撤退してくれ)

 

 心の中であの2人の事を一応は心配するも、俺は大量に出現したヒューマノイドノイズの対処が重要なため、俺はゲキリュウケンをさらに強く握り締めて、ヒューマノイドノイズを倒していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おわぁったぁー!!」

 

 大量に出現したヒューマノイドノイズを葬っていき、時間は凡そ20分ほどが経過した。

 

『ガアァァァァッ!!!!』

 

「こんのッ!」

 

「せあっ!」

 

 特に俺とブレイブレオンで倒したのだが、朱色の髪の女と青髪の女の共闘で、1000体も越えるほど居たヒューマノイドノイズの数は、最早10体程となっていた。

 

「それじゃ…………一気にファイナルキーで決めるとするかね!…………ッ!?」

 

 そう言ってファイナルキーを取り出そうとする俺だが、後方から身の毛もよだつ気配を感じ取り、俺はすぐに後ろの方へと体を向けた。

 

「なんだ、このおぞましい気配は!!?」

 

 後方へと全神経を向けた警戒を置けば、そこからまるで空間を引き裂くかのように、どこからともなく今まで見たことがないノイズが現れた。

 そのノイズはヒューマノイドノイズであったが、今までニュースで上がっていた色のノイズとは見たことも聞いたこともなかった。

 

 何故なら、その現れたノイズの色は黒なのだ。

 

 言うなれば、深い闇を思わせるかのような恐ろしいほどの黒さであり、そして数々の戦闘経験を積んだ俺だから分かるように、そのノイズからは俺が今まで感じたことのない圧迫感を感じ取り、さらには背筋を凍らせる処か俺達の命を脅かす程の危険をこの身で感じ取った。

 

(こいつは…………ヤバすぎる!?)

 

 黒いノイズは俺達の方向をじっと見れば、急激にとてつもない危機を感じ取った俺は、直ぐ様ヒューマノイドノイズと戦っている2人組の女の方へと危険を呼び掛けることにした。

 

「散開だっ!お前ら今すぐそこから離れろっ!!」

 

「…………えっ?」

 

「未確認の騎士…………?」

 

 俺が叫ぶと、2人組の女は俺の言葉に疑問を持って動きを止めるも、黒いノイズは視線を俺から外して2人組の女の方へと向いた。

 

「!? 急いでその場から逃げろっ!!?」

 

『!!!!!』

 

 黒いノイズが動き出すのを感じ取った俺は、もう一度2人組の女の方へ危険を叫べば、黒いノイズは少しの動作で猛烈なスピードを出して、2人組の女がいる場所へ突撃した。

 

 

「は?…………黒いノイズ…………ッ!?」

 

『!!!!!!!』

 

「!?…………奏ッ!!?」

 

 黒いノイズは朱色の髪の女に向かって、アイロン状の腕を振り翳した。が、朱色の髪の女はギリギリで反応して攻撃を飛び退いて避けたが、その攻撃が朱色の髪の女と戦っていた(だいだい)(いろ)のヒューマノイドノイズの液晶ディスプレイのような顔面を貫き、一瞬橙色のヒューマノイドノイズはジタバタと踠くが、あっという間に炭素の塊へと変化してしまった。

 

「ノイズが…………ノイズを、殺しただと…………?」

 

「なんだよこのノイズ!?」

 

「今までのノイズとは…………違う」

 

 俺達はそれぞれの感想を()らすが、黒いノイズは自分と同じノイズを炭素にしたことなど気にも止めることなく、今ここに残っているヒューマノイドノイズを消しに掛かった。

 

『!!!!!』

 

『『『『『!!??』』』』』

 

 黒いノイズの行動に残り少ないヒューマノイドノイズは逃げ出そうとするが、黒いノイズは一気に動いて残りのヒューマノイドノイズを一瞬のうちに炭素の塊へと変えてしまった。

 

 そのあまりの残虐性に、俺はただ恐ろしさを感じながらも、重要なことを思い出して呟いた。

 

「まさかこいつが…………光のカノンの書に出ていた。最悪の敵か!?」

 

『!!!!!』

 

 そう言葉にした瞬間、黒いノイズは俺目掛けて突撃をしてきた。

 

『!!!!!』

 

「ぐうぅぅぅぅ!?」

 

「「未確認の騎士ッ!?」」

 

 黒いノイズの一撃に、俺は何とか反応してゲキリュウケンを使って防ぐが、黒いノイズの一撃があまりにも重く、ゲキリュウケンで防ぐのもかなり辛かった。

 

「離れやがれっ!真っ黒ノイズ!!」

 

『!!』

 

 俺は体が悲鳴を上げているのも気にせず、地面を思いっきり踏み込んで黒いノイズを弾こうとするが、黒いノイズは自ら退き、俺からかなりの距離を取った。

 

「これでも喰らいやがれッ!!!」

 

 黒いノイズが離れたことで、俺は左手に装備しているマダンナックルを向けて、巨大な電流の衝撃波のナックルスパークを4発ほど放った。

 

『!!!』

 

「やっぱりこいつには通用しねえか…………」

 

 だが、マダンナックルから放たれたナックルスパークは黒いノイズには通用せず、アイロン状の腕で簡単に弾き飛ばされてしまった。

 ナックルスパークが弾き飛ばされてしまったことにより、4発のナックルスパークはビルや壁に着弾して破壊した。

 

「くそっ、ブレイブレオン!俺に続けっ!!」

 

『ガアァァァァァァァア!!!!!』

 

 しかし、そんなことを気にしている暇は俺にはなく、とにかく黒いノイズを何とかするために、ブレイブレオンとともに向かっていく。

 

 

「おらあぁぁっ!」

 

『!!!!!』

 

『ガアァァァァッ!!』

 

『!!!!!』

 

『グガァァァ!?』

 

「ブレイブレオン!?」

 

 

 俺がゲキリュウケンで斬り掛かるも、黒いノイズは俺の攻撃を難なく片手で受け止め、その大きな隙をブレイブレオンが狙って鋭い爪で攻撃しようとしたが、黒いノイズはアイロン状の左手でブレイブレオンを地面へと叩き付けた。

 

「この野郎!!」

 

『!!!!!』

 

 ブレイブレオンが地面に叩き付けれたことに驚愕した俺だが、すぐに目の前の黒いノイズへと視線を戻し、力を込めた斬撃を繰り出していくも、それら全ては簡単に防がれていき、そして俺は黒いノイズのアイロン状の左手で思いっきりぶん殴られた。

 

「ぶほっあぁっ!?」

 

「「未確認の騎士!?」」

 

 黒いノイズにぶん殴られた俺は、軽く飛びながらも何とか空中で体制を立て直し、捻りを入れた回転で地面へと着地した。

 

(あのヒューマノイドノイズ…………どんだけのパワーを持ってんだ!?)

 

「翼!あたしらも行くぞ!」

 

「うん!奏!!」

 

「!? やめろ!お前らの実力じゃ敵いっこねえ!」

 

 俺がやられたことに、2人組の女は動き出して黒いノイズに飛び掛かっていき、それを見た俺は全力の声量で2人を呼び止めるが、あいつらは俺の言葉など聞かずに黒いノイズへと互いの得物を振るった。

 

「らあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「はあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『!!!!!』

 

「「なっ!?」」

 

 しかし、2人組の女が振るった武器を黒いノイズは簡単に受け止め、そしてアイロン状の両手で2人組の女をぶっ飛ばした。

 

「うあっ!?」

「きゃっ!?」

 

『……………………』

 

『ガアァァァァァアッ!!!!』

 

「ブレイブレオン!お前だけで挑むんじゃねえッ!?」

 

『!!!!!』

 

 黒いノイズが機械の鎧を纏った2人組の女をぶっ飛ばした瞬間を狙い、ブレイブレオンは黒いノイズに破壊力のある牙を喰らわせようとしたが、黒いノイズはブレイブレオンの牙をアイロン状の腕で防ぎ止め、すると黒いノイズはそのままブレイブレオンの巨体を持ち上げて、そのまま地面へと叩きのめした。

 

『ガアァァァッ!?』

 

「ブレイブレオン!?くそっ、ダガーキー発ど…………」

 

 このままでは不味いと心の中で断言した俺は、素早くマダンキーホルダーを回してダガーキーを取り出し発動しようとするも、キーの先は押し出すことはできたが、そこから先が出来なかった。

 

「………………………」

 

 何故なら俺の右腕には黒いノイズのアイロン状の腕が巻き付いており、黒いヒューマノイドノイズは俺の隣にいつの間にか居たのだ。

 

 大方、俺達では確認できない速度でやって来たのだろう。

 

『!!!!!』

 

「ごはっ!?」

 

 

 黒いヒューマノイドノイズは俺を空中へと上げ、砕かれた地面に何十回も俺を叩き付け、そしてそのまま思いっきり俺を投げ飛ばしたのだ。

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!?がはっ、ごはっ、があっ!?」

 

「未確認の騎士、大丈夫!?」

 

「なんなんだよ…………あの黒いノイズは?」

 

 

 投げ飛ばされた俺は、3回ほど地面を跳ね飛び、背中を打ち付けダメージを負いながらも膝を付きながらも立ち上がる。

 

 だが最悪なことに、先程黒いノイズに投げ飛ばされたことにより、俺はダガーキーを手放してしまったのだ。

 

(しまった…………ダガーキーを手放した挙げ句にとんでもない距離まで行っちまった。これじゃあ奥の手の必殺技も放てねえ、下手に回収に行けばやられるだけだ)

 

 そんなことを思案するも、朱色の髪の女が気になることを口にした。

 

「あの黒いノイズがヤバイってのは分かったが、なんであのノイズ自壊しねぇんだ?いい加減自壊しても良い頃だろ?」

 

「それは確かに、奏の言う通り…………なんで自壊しないんだろ?」

 

 朱色の髪の女が言ったことはその通りであった。いつも通りのノイズならば制限時間があり、制限時間が来れば炭素へと自壊してしまう。

 

 なのにこの黒いノイズはそれが来ることがないように見える。確かにこの黒いノイズは普通のノイズと違うところがあれば、同族であるノイズを殺し俺達とも対等以上の力を見せている。

 

 そんなことを考えれば、俺はふとある答えが浮かび口に出した。

 

「まさかこのノイズは、自壊することがないんじゃ?」

 

「「!!?」」

 

 俺の言葉に2人組の女は絶望的な表情となり、俺の方を見て言葉を放った。

 

「そんな!?そんなことって…………」

 

「だけどそう考えれば、あのノイズが自壊しない理由も分かるぞ」

 

(自壊の制限もなく戦えるノイズかよ。…………確かにこれほど最悪な敵はいねえな…………あの魔弾キーはリスクがデカすぎるから使えない、しょうがねえ!こうなったらダメ元の命懸け、あの必殺技に俺の全てを懸ける!)

 

 心の中で強い決意を固めた俺は、ゲキリュウケンを強く握り締めてブレイブレオンを呼び叫んだ。

 

「ブレイブレオン!!!!!」

 

「「ッ!?」」

 

『?????』

 

『! ガアァァァァァァッ!!!』

 

 2人組の女は黒いノイズに獲物を構えながら警戒していたが、俺の叫び声に驚いて俺の方に顔を向け、黒いノイズも静かにゆっくりと俺の方へと顔を向けた。だが俺はそんなことを気にすることなく、ブレイブレオンに次なる指示を出す。

 

「ビークルモードになってこっちに来い!」

 

『ガアァァァウゥゥッ!!!』

 

 ブレイブレオンは吠えて赤い瞳を光らせれば、俺の元へと駆けながらレオントライクに変形し、俺の所へとやって来た。

 

「……………………行くぞ」

 

 レオントライクが来れば、俺はゲキリュウケンをモバイルモードに変化させ左腰に装着すれば、すぐにレオントライクへと跨がり、朱色の髪の女と青髪女に1度視線を配るも、心苦しい思いをしながらも俺はレオントライクを発進させた。

 

「なっ!?おいっ未確認の騎士!?」

 

「このノイズを放って逃げるというの!?」

 

 2人組の女の声に耳を傾けず、俺は全速力でこの場から距離を取ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あたしは今、信じられないものを目にしてしまった。

 

 

「未確認の騎士は諦めたって言うのかよ!?」

 

「そんな、未確認の騎士が逃げるなんて」

 

 本当に信じられなかった。いや、確かに今相手にしている黒いノイズは恐ろしい強さだ。あたしだってもう弱音を吐いて逃げ出したかったが、それをせずに済んだのは近くに未確認の騎士の存在が居たからだ。

 それなのにあいつは、あたしたちに1度目を向けるも、すぐさまマシンになったライオンに跨がってこの場から去ったのだ。

 いくらなんでも酷すぎる、それにこのままではあたしと翼は確実にこの黒いノイズに殺されるだろう。

 

「ああぁぁぁぁっ!?」

 

「きゃあぁぁぁっ!?」

 

『!!!!!』

 

 未確認の騎士が去ったことで、黒いノイズはあたしたちを標的とし、こいつが持つ凄まじい力であたしらを苦しめ傷付けていく。

 

『奏!翼!今すぐお前たちも未確認の騎士のようにその場から逃げるんだ!!このままでは本当に不味いことになるぞ!?』

 

 あたしらが苦しんでいれば、通信機からおっちゃんの声が響くが、あたしはそれに反発した。

 

「そんなこと出来るかよおっちゃん!このノイズは今までと違う!自壊もしないんじゃ下手すりゃ沢山の一般人が居る街まで行って暴れるかもしれないんだぞ!?」

 

「奏の言う通りです司令!もしここで私たちが逃げれば、守るべき多くの人命が、このノイズの手によって犠牲になってしまうかもしれないんです!そんなこと!私達には出来ません!」

 

『しかし…………』

 

「安心しろよおっちゃん、最悪シンフォギアの切り札を使ってこいつを道ずれにしてやるからよ!」

 

『なっ、やめろ!あれはまだ未知数なんだ!ここで使うには…………!』

 

「そんなことを言ってる場合ではありません司令ッ!私達は全てを覚悟してここに立っているんです!ならば死なばもろとも、ここで覚悟を見せなくては防人の名もありません!!!」

 

 あたしと翼は覚悟を決めてシンフォギアの切り札を使おうとしたが、その瞬間こちらに向かって激しいエンジン音が聞こえた。

 

 ブオオオオォォォォォォォォォォン!

 

「まさか…………」

 

「嘘…………」

 

 あたしと翼は、エンジン音が聞こえた方向へと顔を向ければ、向かってくるその存在に驚いた。

 

「「未確認の騎士っ!!??」」

 

 それは逃げ出したと思っていた未確認の騎士が、黒いノイズに向かって突撃してくるところであった。

 

「喰らいやがれ!黒きノイズ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっここら辺でいいな」

 

 黒いノイズと距離を取った俺は、急ブレーキを掛けながらも方向を戻し、レオントライクのハンドルを回してアクセルを強く踏み続ける。

 

「ブレイブレオン…………全速力で頼むぜ!」

 

『グウゥゥゥッ!』

 

 俺の言葉に答えるかのように、ブレイブレオンは唸り声を上げて赤い瞳を光らせた。

 

「おっしゃあ!」

 

 そうして俺はブレイブレオンとの心を1つにして発進させれば、レオントライクは凄まじ過ぎる程のスピードを出した。

 

 

「嘘だろっもう見えやがった!?」

 

 吹き飛ばされるんじゃないかと思うほどのスピードに必死にハンドルを掴んでいれば、黒いノイズから距離を話していたはずだが、1分もしないうちに黒いノイズと2人組の女を視認した。

 

「だがここで怖じ気づく訳にはいなねえな!」

 

 そう言いながら俺は、モバイルモードのゲキリュウケンを元の姿にして、喋ることがないゲキリュウケンとブレイブレオンに確認を取った。

 

「お前らも覚悟はいいか?」

 

 尋ねれば、ブレイブレオンは唸り声と赤い瞳を光らせることで返答し、そしてゲキリュウケンは不思議なことに俺の言葉をまるで聞いていたかのように、1度だけキラリと光った。まるでそれはゲキリュウケンからの返答のように俺は思えた。

 

 

サビ 魔弾戦記リュウケンドー

 

 

「行くぜッ!魔弾龍!獣王!そして剣士!3つの力を1つに合わせ今放つ!ファイナルキー発動!!」

 

『ファイナルブレイク』

 

「「未確認の騎士っ!!??」」

 

「喰らいやがれ!黒きノイズ!!!」

 

 ファイナルキーを発動させて、ゲキリュウケンに射し込んで回し、必殺技を放とうとする。

 

 2人組の女は驚きの声を出していたが、俺はそんなものに聞く耳を持たず、レオントライクを飛び上がらせて黒いヒューマノイドノイズに目掛けてこの必殺技を放った。

 

「撃龍剣!!三位一体!魔弾斬りッ!!!!!」

 

『!?!?!?』

 

 ゲキリュウケンから放たれている、とてつもない光の斬撃に黒いノイズも危機を感じたらしく全ての力を防御へと回したのか、三位一体魔弾斬りを防いだ。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

『!!!???』

 

 俺と黒いノイズは互いに一歩も譲らない状態であったが、俺には負けられない覚悟と理由があるため、諦めるわけにはいかなければ、こいつをここで倒さなくては多くの犠牲者を出してしまう。そんなことは絶対にしたくないため、俺はさらに体に残っている全ての力を限界まで振り絞るように叫んだ。

 

「斬り裂けえぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」

 

『!!!??』

 

 そして三位一体魔弾斬りによって、見事黒いノイズの防御を突破して消し飛ばし、俺は転換しながらレオントライクと共に着地をして降りた。

 ブレイブレオンにも限界が来たようで、俺が降りたことを確認すれば軽く唸り声を上げながら消滅し、俺もフラフラの状態ながら意識を手放し倒れ込んだ。

 

「はぁはぁ、生きて、やったぜ。…………あ…………あぁぁ」

 

 掠れた声で言えば、俺はあいつらの事など放っておいて自然に変身解除して地面に勢い良く倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…………」

「きゃ…………」

 

 未確認の騎士が放った必殺技もの余波を喰らったあたしたちは、腕を盾にして目を瞑るが、数秒程で余波が消えて未確認の騎士の方を見れば、そこに黒いノイズは跡形もなくいなくなっており、そこには辛くも未確認の騎士が勝利者として立っていた。

 

「やった…………やったのか?」

 

「うん…………やったんだよ。奏、未確認の騎士があの黒いノイズを倒したんだよ!!」

 

 あたしが確認するように呟けば、隣に居た翼が肯定するように、黒いノイズが倒されたことを断言した。

 その光景に、あたしたちは感じたことのない喜びに打ち震え、あたしは未確認の騎士の元へと駆け出した。

 

「やったな未確認の騎士!!!」

 

「うぅ…………あ…………あぁぁ」

 

 しかしあたしが駆け寄ろうとすれば、未確認の騎士は白い光に包まれて地面へと倒れ込んでしまった。

 

「あ!?未確認の騎士!!?」

 

「し、しっかりして!?」

 

 地面へと倒れ込んだ未確認の騎士に、あたしたちはもう何度めか分からない驚きをするも、すぐに未確認の騎士の所に行こうとするも、次の瞬間、未確認の騎士の正体にあたしたちは今まで以上の驚きを見せた。

 

「えっ!?こいつは!?」

 

「嘘っ!?この人って?」

 

 とうとう隠されていた未確認の騎士の正体。そこに現れたのは、数日前ゲームセンターであたしを打ち負かした男だったのだから。

 

 

 to be continued.




 読者の皆様はお分かりのように、剣二は機動二課の存在は知りませんが、二課へのアンチは凄まじいです!
 はてさて、どうなることやらですね。

 コロナのせいでストレス解消ができずストレスが溜まるばかり、そのせいで口の中が口内炎まみれです。

 コロナ、ガチで滅びやがれ!!!!!!!




次回予告。

一か八かの三位一体魔弾斬りでなんとか黒のノイズを倒すことに成功した俺。

だが、長い戦闘行動とあまりの肉体の重傷で俺は意識を手放した。

そして目を覚ましたときには、俺はノイズに対抗する機動二課と呼ばれる組織に保護された。

そこで知るノイズに対抗する戦力と2人の少女との出会い。

挙げ句の果てに、こいつ等のせいで俺はとてつもない災難に見回れ、それはさらに悪化しそうな気がしてならない。

俺の道はこれからどうなるんだろうな?



次回。魔弾戦姫リュウフォギア!

俺はリュウケンドーだ!

次回も魔弾戦記リュウケンドーで突っ走る!!


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オレはリュウケンドーだ!

 さぁ…………剣士と戦姫の物語が始めるとしようか。




 こんなところで言うのもなんなのですが、それでも私はここで強く断言したいです!
 やはり魔弾戦記リュウケンドーは、これからも語り継がれるべき名作特撮ヒーローであると!
 私ライダーファイトは断言致します!!!!!!!!!


「うっ…………うぅぅッ、あ、…………あぁっ」

 

 少々掠れた声を出しながらも、ゆっくりと瞼を開いていく。

 目を開けて最初に目にしたものと言えば、明る過ぎると言っていい程の電灯の光と、真っ白と言っていい天井であった。

 慣れ親しみもなく違和感しかない、こんな場所に言う言葉などこれしかないだろう。

 

「…………知らない天井だ」

 

 小さい声ながらもしっかりとした発音で呟き、周囲を見回した。そこにあったのは心電図などを図る医療系の機器に横長の棚、そしてそこの棚の上には綺麗な花瓶に1本の花が入れられていた。

 ついでに花瓶の隣には俺が着ていた衣服が綺麗に畳まれて置かれ、さらに服の上には俺の財布と免許証、そしてスマートフォンがご丁寧に置かれていた。

 

 しかし、俺の一番大切な相棒と鍵はどこにもなく。恐らくと言うか、完全に奴らの手の中にあるのだろう。

 

(めんどくせぇことになったな。ゲキリュウケンがあれば、こんなところ簡単に脱出できるつーのに、奴らに奪われちまうとは…………)

 

 因みに俺が今着ているのは、PCR検査などに使う検査着である。

 

「…………だッ…………!?」

 

 ここがどこだかは分からないが、とにかく俺は起き上がろうとするも、その瞬間に体が悲鳴を上げるほどではなかったが、鋭いものを突き刺したかのような痛みが流れ、その痛みは顔に出るほどだったが、痛みを(こら)えながらも上半身を上げた。

 

「ッ…………この痛み、ぶっつけ本番で三位一体攻撃なんてしたから、その反動とツケがやってきたってか?」

 

 あの時の戦いで、どこからともなく黒いノイズが現れ、凄まじい強さで朱色の髪の女と青髪女を含む俺達3人を圧倒、そのため俺は死を覚悟しながら黒いヒューマノイドノイズに、ぶっつけ本番の【三位一体魔弾斬り】を放った。ギリギリで倒すことに成功し、倒すことを確認した俺は安堵しながら気を失ったんだろう。

 

 そしてそれもあり、体はかなりの痛みを訴えているが、動けないと言う程でもない。恐らく基本的に日々のトレーニングを欠かさなかった賜物だ。

 

(………………………………………)

 

 無言でもう一度周囲を見回してみるが、これと言ったものはなく、ただ普通の自動ドアに見えるものも大方厳重な仕組みをしているため、簡単に抜け出すことは出来ないだろう。

 

(…………それに体を見てみたが、上半身のほとんどには包帯巻かれて、下半身には包帯とデカいガーゼが貼られてるな。右腕の手首より少し離れた所には注射用保護パッドのメディパッチが貼られてる。大方俺の血液を採取して検査したってところか…………)

 

 そう把握した俺は、呆れた顔をしながら溜め息を吐いて呟いた。

 

「はぁ、俺の体ひんむいて調べて楽しいかよ」

 

 ぼやくように呟けば、扉が横へと移動した。予想通り自動ドアだったようで、そこへ入ってきたのは俺が3日前に戦った、人間を辞めた大男だったのだ。

 

「おっ、どうやら目を覚ましたみたいだな!」

 

「……………………………………」

 

 大男のその馴れ馴れしい言い回しに、俺はただただ冷たい瞳を大男へと向けるだけであった。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 剣二が目覚める数時間前。

 

 機動二課研究室。

 

 

「了子! 検査結果が出たと聞いたが、どうだった?」

 

 プシューと言う音を立て研究室の扉が横に開けば、そこから司令官である風鳴弦十郎が入ってきた。研究室に入室すれば、向けられた声は研究責任者である桜井了子に対してであった。

 

 そしてその質問は、機動二課の医務室で眠っている、魔弾剣士リュウケンドー変身者。

 〈立花剣二〉のことであった。

 黒いノイズを倒した後、血を流しながら倒れた剣二を奏と翼が2人で抱え上げ、なんとかヘリに乗せて機動二課まで連れていき医務室で治療したのである。

 

 

 しかし、そのついでに機動二課の面々。特に科学者の桜井了子なのであるが、嬉しそうにしながらも剣二のことを隅から隅まで調べようとしたのだが、弦十郎から余計なことをしないよう強く釘を刺されたため、渋々と言った風に剣二の血液だけきちんと適量で抜き取り、後は少しだけであるが彼の細胞組織の皮膚片と口の中にある唾液を採取して研究室の機器で細かく調べ上げた。

 

「それで了子、検査の結果はどうなんだ?」

 

 弦十郎は真剣な表情で、了子に聞いた。

 

 

 それは弦十郎にとって、1番重要なことであった。

 数日前に弦十郎は、例えリュウケンドーが人間でなかろうと子供でなかろうと守ってやると発言した。しかしそれでも弦十郎は心の片隅から願っていた、リュウケンドーに変身する剣二が人間であることを、彼が化け物ではなく自分達と同じ人間であることを。

 そんなことを願いながら、弦十郎は真剣な眼差しで了子を見る。

 

「それじゃ、弦十郎君が気になっていることを報告するわね」

 

「ああ、頼む」

 

 桜井了子の台詞に、弦十郎は頷きながら返答し姿勢を一切崩さず一言も聞き逃さない態勢である。

 

「結果は…………」

 

「ッ…………」

 

 一度、弦十郎は息を飲んで了子の次の言葉を待つ、そして了子はゆっくりと口を動かし、立花剣二の検査結果を伝える。

 

「検査の結果…………彼は普通の人間よ。体の全てと言う全て、血液も細胞も勿論、私たちと同じ人間と断定できたわ」

 

「!? …………ッ、そうか…………そうなのか!」

 

 了子の報告を聞いた弦十郎は、満面の笑みを浮かべて物凄く喜んだ。立花剣二が自分達と同じ人間であることは、弦十郎にとって何よりも嬉しいことであった。

 

「でもね、弦十郎君」

 

 しかし、そんな弦十郎の喜びを遮るように桜井了子は口を開く。真剣味を帯びた了子の台詞に、弦十郎は彼女の方へと顔を向ける。

 

「確かに彼は人間だったんだけど、それでもおかしな事があるの」

 

「おかしな事?」

 

「ええ、確かに彼は検査の結果では人間と断定できたわ。でもね彼がここへ運ばれた時、彼の体は応急処置レベルだけど止血されていたの、医療器具も使わずに彼の体は止血をされていた。これは完全におかしな事よ」

 

「………………なら了子、彼は人間に完璧に擬態した“なにか”だとでも言うのか?」

 

 了子の報告に、弦十郎は再び深刻な顔になり了子を見つめ問う。しかし桜井了子の方も、立花剣二が何者であるのかをまだ断定できていないため、彼女の方も首を横に振りながら答える。

 

「それは私にも分からない…………それでも私が言ったことを頭の片隅に置いておくぐらいで良いから気を付けてくれる。弦十郎君」

 

「ああ分かっている。気を付けておくさ、了子」

 

 了子の真剣な言葉に、弦十郎も真剣に返す。そしてその時、弦十郎が使っている小型の通信機から人の声が流れた。

 

『司令、聞こえますか?』

 

「!  緒川か。どうかしたのか?」

 

 声の主は、弦十郎が信頼を置く部下、緒川慎次からであった。

 

『はいっ、実は未確認の騎士に変身していた彼が、今やっと目覚めました』

 

「ッ! そうか、彼が目覚めたのか!!」

 

 緒川からの報告に、弦十郎は声からも喜びが分かるレベルの声を上げて立ち上がった。

 

『はい、ですが念のために気を付けてください。彼は目を覚ましました後、今は周辺状況の確認を行っています』

 

 緒川の言葉に、弦十郎は通信機を軽くひっぱって頷いて答える。

 

「ああ、了子にも言われたから、ちゃんと気を付けるさ」

 

 緒川との話し合いを終えた弦十郎は、インカムの通信が切れ、最後に桜井了子に言葉を掛けて研究室を出ていく。

 

「それじゃあ了子、行ってくる」

 

「ええ、弦十郎君。気を付けて」

 

 

 そして場所は、剣二が眠っていた医務室に戻る。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

「おっ、どうやら目を覚ましたみたいだな!」

 

「……………………………………」

 

「そんなに冷たい目を向けないでくれよ。これでも重傷の君を保護したんだぞ?」

 

「保護と治療にはついては礼を言わなけりゃならないんだろうが、俺はそんなことを頼んだ覚えはない。第一にあれだけの傷でも充分に回復できたんだ。その必要はなかったと思うが?」

 

「確かに君のその回復力を見ればそうかもしれないようだが、俺達にだって人情はあるんだ。ほっとけるわけないだろ?」

 

「ふんっ…………」

 

 大男の台詞に、俺は鼻を鳴らしてそっぽを向く。大男は「これは参ったな」とでも言ってる顔をして、右手を後頭部まで持っていき髪を掻いた。

 すると、大男は困った顔から、なにか大事なことを思い出したようで、また俺に話し掛けてきた。

 

「そうだ! 大事なことを忘れていた!!」

 

「大事なこと…………?」

 

 その言葉に反応して俺は、大男を睨みながら顔を向けた。そして大男の台詞に俺は顔を青くしてしまうほどのことを聞いてしまった。

 なにせこの大男は、余計なお世話以上の厄介なことをしてくれたのだからな。

 

「“君の家には我々の方から連絡を入れておいたから〟安心してくれ!」

 

「は…………? おい、てめぇ今、なんて言った?」

 

 大男の言葉に俺は深刻そうな顔をして振り向き、痛む体のことなど無視して、立ち上がって大男に詰め寄った。大男は俺が詰め寄ってきたことに驚き、3歩ほど後ろへと下がるが、疑問の顔をしながらも俺に言葉を投げ掛けた。

 

「なにって、君のご家族のところに連絡を入れたんだ」

 

「…………ああっ! クソッ!? なんて余計なことをしてくれたんだ!!」

 

 大男の言葉を聞いた俺は、奴から離れ背を向けて悪態をついた。

 

「な、なんだ? どうした? なにか俺は余計なことをしたと言うのか?」

 

 疑問符を浮かべ話し掛けてくる大男に、俺は顔を向けて遠慮せず言い放つ。

 

「ああそうだよ! 余計も余計、余計なお節介を遠慮なくやってくれたよ!!」

 

「な!? 余計なお節介とはどう言うことだ!? 俺は君のことを思ってだな」

 

「それが余計だって! 言ってんだよ!!! くそったれ、ああもう!? どうすりゃいいんだ!」

 

 怒鳴りながらも、俺は大急ぎで自分の携帯を手に取り電源スイッチを押した。そしてその瞬間、俺は思いっきり絶望的な表情となる。

 それもそのはず、何せ今俺の携帯の履歴に100件を越えるほどの家族からの電話やメール、挙げ句の果てにLINEやDMが送られているのだから、そして家族の他には、喜一からの連絡も含まれている。

 

 

 それを見た俺は膝から崩れ落ちて、小さく呟いた。

 

「マジでどうすりゃいいんだよ、これ…………」

 

「なあ一体どういうことなんだ? 説明してくれないか、本当に君に余計なことをしてしまったのなら謝る!?」

 

 大男は俺に少し接近して声を掛けてきて、それに俺は大男を睨み付け、1度「チッ!」と大きな舌打ちをして、ドカッと乱暴に俺が眠っていたベットに座り、怒り全開で大男に説明を始めた。

 

「ああ良いぜ。何でてめぇが余計なことをしたのか説明してやるよ、俺は家族に親友の家に泊まるってのを言ったんだよ! そして俺は親友の家に泊まっていた。これだけ言えばもう充分に分かんだろ?」

 

「…………………………」

 

 俺の台詞を聞いた大男は、顔から見ても分かるようになんとも言えない苦い表情をしていた。だが、すぐにしっかりと俺を見て謝罪の言葉を放った。

 

「知らなかったとは言え…………それは本当に、すまなかった!?」

 

 そうして大男は、俺に面と向かって頭を下げた。しかしそれでも、俺は大男を許すことは出来ず、そっぽを向きながら言い放った。

 

「謝って済むんなら、俺はこんなに困ることはなかっただろうがな! 連絡が着かなくて親友の家に電話してくるだろうが、あいつなら色々と察して誤魔化してくれたのによ!」

 

「うッ…………」

 

 俺の台詞に、大男は頭を下げたまま気まずそうな声を上げた。しかし俺はそんなことなど一切関係なく、「チッ!」と大きな舌打ちをして、大男に対して言う。

 

「それで、一体なんの用なんだ。見たところあんたはこの組織の、トップか? 重役か? …………直接会いに来たってことは、俺に話があるんじゃないのか?」

 

 もう過ぎてしまったことは仕方がないため、俺はこの大男の本題を聞くために即した。

 

「あ、ああそうだった。まあその前に自己紹介からしようか…………俺の名前は風鳴弦十郎。ノイズを対処する組織、特異災害対策機動二課の司令官をやっている。よろしく!」

 

「…………………………………………」

 

 大男は満面の笑みで自己紹介をしてきたが、俺は睨みながら再び無言を貫く。

 

「俺が自己紹介したんだから、次は君が自己紹介する番だと思うんだがな?」

 

「…………どうせお前らの力なら俺の事を調べるなんて簡単だろ? なら言うことはこれだけだ。ただの人間、ごく普通の一般人だ」

 

 俺の言葉に、大男は顎に手を持っていき考える素振りをしながら俺を見て、呟いた。

 

「ごく普通の一般人か…………それなら聞かせて貰いたいのだが、君のあの力は一体なんなんだ?」

 

「答えてやる義理があると思ってるのか?」

 

「…………はぁ、君はなんでそこまで俺達を信用してくれないんだ? そこまでされると、いくら温厚な俺でも気分が悪い」

 

「温厚? 強引に俺を捕獲しようとした奴がよくそんなことが言えるな? それに…………信用なんて出来る訳がないだろ? 人の話を盗み聞きしてる鼠女2匹を飼ってる組織なんざ、なッ!」

 

 俺はそう言いながら棚に置いてある財布を手に取り、財布から既に使用できないポイントカードを取り出し、最後に強く言いながら扉の隙間に向けてポイントカードを勢いよく投げた。

 

「わっ!?」

「きゃっ!?」

 

 ポイントカードを隙間に向かって投げれば、そこから女2人の驚いた声が響いた。女の声を聞いた俺は大男に視線を向けると、大男の方は面倒そうな顔をしながら髪を掻いて、ドアの前まで歩いていき操作して開けた。

 

「何をやっているんだお前らは?」

 

 ドアを開けると共に、呆れた声で盗み聞きをしていた女どもに言ってやれば、ドアの前で盗み聞きをしていたのは、怪我をしまくっている朱色の髪の女と青髪の女だった。

 つまるところ、機械の鎧を纏って俺に喧嘩を売ってきた2人組である。

 

 盗み聞きがバレていたことに、朱色の髪の女は後頭部に手を触れながら罰の悪そうな顔をしながら口を開いた。

 

「い、いや~…………その、未確認の騎士に変身していた奴が目を覚ましたって聞いたから、つい」

 

「あ、あの、私は奏を止めようとしたんですけど、止められなくて」

 

(なんか簡単に想像できたぜ、つまり青髪女は朱色の髪を止められず、逆に引っ張られたって所か)

 

 この2人の言い分を聞けば、頭の中でそんなイメージが簡単に想像できてしまい、俺は無表情ながらも心の中で勝手に納得した。

 すると、大男は右手で顔の半分を隠して「はぁ~」と1度溜め息を吐けば、すぐに俺の方に顔を向けて、あることを言った。

 

「それにしても、扉の前に居たこの2人の気配に気付いていたんだな。君は?」

 

「消す気もサラサラないほどの気配が駄々漏れだったんだ。その程度なら難なく気付くさ、無駄に何年もノイズと戦っている訳じゃないんでな。この程度の技術、否が応でも身に付く」

 

「「「………………………………」」」

 

 俺の言葉に大男と2人組の女は無言で俺を見た。しかし、大男の方はどこか深刻そうな表情で俺を見ていたが、少々重苦しくなった雰囲気を、朱色の髪の女が呑気な声で破った。

 

「そんで弦十郎の旦那。こいつが何者かは後にして、こいつ二課に来るのか?」

 

 そう言いながら朱色の髪の女は俺にずいっと近付いてきて、俺をじろじろと見やる。

 

「その話をしようと思っていたのに、お前たちが盗み聞きなんてしていたせいで、出来なくなっているんだが?」

 

 大男の言葉に、2人組の女、特に朱色の髪の女が冷や汗でもかいているような感じで焦った表情になり、慌てながら言葉を発する。

 

「え、あ、いや…………それについては、いきなりこいつが扉にポイントカードを投げてきたせいで、あたしは……………」

 

「奏、言い訳が苦しすぎるよ」

 

「…………奏」

 

「………………………………」

 

 青髪女と大男の言葉に、朱色の髪の女はさらにばつが悪そうな顔になっていく。

 

「そ、それじゃ! あたしらもう戻るわ! じゃあなおっちゃん!!」

 

「あ!? まっ待って奏!!? …………えっと、黒いノイズから私達を助けてくれてありがとうございます! それじゃ!!」

 

 少々重苦しい空気となり、朱色の髪の女は耐えられなくなったのか、この空気をぶち破るように声を張り上げて病室から出ていった、最後にもう一度だけ俺に目線を配って。

 そして青髪女も朱色の髪の女の急な行動に慌てて、病室から出ようとしたが、助けてくれたことに感謝をして俺に向かって頭を下げてお礼を言って去っていった。

 

 

「………………………………」

 

 去っていく2人組の女を見ながら、俺は少々気まずそうな顔になってしまう。なにせ少なからず敵対していたのだ、それなのに敵対していた相手にまたお礼を言われるのはどうにも変な感じである。

 

 そのため、俺は気まずい顔でポリポリと人差し指で頬を掻いた。

 

「あー、っとなんだ。騒がしくてすまない」

 

 俺が無言でいると、大男も罰が悪そうな顔で俺に向かって謝罪をしてきた。

 

「別に…………なにかと楽しそうでいいじゃねえか」

 

 しかし俺は、大男の謝罪を気にすることなくぶっきらぼうに返した。

 

 

「まあそれでなんだが! 先程言ったように、俺達の組織に来ないか?」

 

「………………………」

 

 大男の台詞に、俺はまた無言となる。だが無言となりながらも、思案もしているが。

 

「…………もし君のその無言が答えだったら、一体どっちなんだ?」

 

 俺が無言になったことに、大男は疑問ながらも俺の答えを聞いてきた。そんなことを言う大男に、俺は面と向かって聞くことにした。

 

「1つ聞きたい、もしここで俺がNOと言ったらどうなる? 俺を拘束して監禁でもするのか? そして従わない場合は俺の家族や友人を人質にでもして強制的にでも従わせるのか?」

 

 言いながら、俺は大男が言葉を返す今のうちに、俺の頭の中に浮かんでいることを、遠慮なく口にする。

 

「そんなことをすれば俺は遠慮なく暴れるぜ、あの力を使ってこの組織もろとも上の連中も調べ上げて暴れさして貰うぜ。…………てめえらを全滅させることぐらい、簡単に出来るんだよ!」

 

 最後にそう言って、俺は鋭い瞳で大男を睨み付けた。俺のその目に大男は真剣な目、真剣な声で言い返してきた。

 

「そんなことは絶対にさせない! 君や君のご家族、君の周りに居る友人達は俺達が全力を尽くして守ることをここに誓う!」

 

「………………………」

 

 大男のこの言葉に嘘偽りはないのだろう。だがそれでも俺は信用できないものがあるため、はっきりと言葉にさせてもらうことにした。

 

「あんたのその言葉に嘘偽りはないんだろうな。…………それに俺が力を貸せば、お前らの負担はかなり減るだろうしノイズの対策も打てる。…………でもよ! それで終わらないのが『国』であり『軍』だろ!?」

 

 俺は止まることなく、続けて言う。

 

「お前らの事は多少なりとも信用していいんだろうが、それでもお前らの上層部は信用できないんでな! 現実離れした力を手中に収めたとき、簡単に人の道から逸れるのが政府の人間じゃねえのか!?」

 

 この俺の台詞を聞いた大男が、次には複雑と驚愕の入り混じった顔になり、俺を見ながら大男は言葉を出した。

 

「…………これは驚いたな。俺よりも年下なのに俺よりも世界の仕組みを理解してそうな口ぶりだ…………」

 

 大男の台詞に俺は無言で視線のみをぶつけるが、心の中でのみ発言する。

 

(ま、ある特撮ヒーローで国や軍、そして人間の『欲』を

題材にしたものがあったからな。…………あれのお陰で俺は、力を持つ人間がどれだけ愚かで最低なのかよく勉強できたみたいなもんだけどな)

 

 心の中で発しながら、地味に生きていたかつての俺自身のことを思い出していた。

 すると俺の言葉に納得でもしたのか、大男は深く頷けばそこから言葉を口にした。

 

「…………確かに君の言う通りだ、君のその力のことを考えれば、上の連中はノイズの対処だけでなく、下手をすれば君にとって望んでいないことを企む可能性は大いにあるだろう」

 

 大男は言葉を止め、一呼吸置いて再び口を開いた。

 

 

「…………だが君をそんな危険な欲から守るのも、俺達の務めでもあるんだ! だから信じてくれないか? 俺達のことを信じて、是非とも力を貸してくれないか!?」

 

「…………例えお前らがまともであろうと、あの2人組の女を戦場に出しているようじゃ、信用も信頼も置けやしねえよ…………」

 

「そうか…………分かった」

 

 俺の言葉に大男はゆっくりと顔を下げるが、すぐにまた俺の方に顔を向けた。

 

「なら俺は少し大事な話し合いがあるからここで失礼する。それと、君の傷は処置をしたとは言えまだまだかなり深い、もうしばらくほど安静にして横になっていてくれて構わない」

 

「…………ふんっ、どうせ家族からの怒りの説教コースは確定してるんだ。暫くはゆっくりするさ、だが15時過ぎになったらここから出ていかせて貰うぜ!」

 

「ああ、その時はここから出られる場所まで案内するさ」

 

「それと、俺の大事な相棒も返してくれねえか? あれは俺にとって家族や俺の命と同じぐらい大事なものなんでな」

 

 そう言って大男が出ていこうとしたが、その前に俺の相棒であるゲキリュウケンを返して貰おうと口にしたが、大男はこう言った。

 

「あれについては君が帰る時に返す。安心してくれ、君の大切なものは破壊したりしないさ。…………それにしてもあのオモチャのようなものを相棒と言うことは、君の力の秘密にはあのオモチャが関わっているようだね?」

 

「……………………チッ」

 

 やはりこの大男は、ここの司令官を勤めているだけはあり、こいつの目利きなどもあって、俺の言葉から俺の力の事があれにあることが分かってしまい、余計なことを言ってしまった自分自身に対して舌打ちをする。

 

「ふっ…………大人しくしてろよ。じゃあな」

 

 不適な笑みを俺に向けて、大男は病室から去っていった。

 

 

 

 

 

 プシューと扉が閉まり、機動二課の司令官である風鳴弦十郎は病室を出て、そして剣二がいる病室のドアをなにやら悲しそうな目で見ていた。

 

「…………俺達は彼から信頼や信用どころか、一切の心を開いて貰えていないな。…………ある意味自業自得とも言えるが、悲しいものだな」

 

 そんな言葉を小さく呟けば、弦十郎が持つインカムから連絡が入った。

 

『司令。大丈夫でしたか?』

 

 通信相手は先程と同じ緒川慎次であり、弦十郎はいつも通りで通信を開けば、剣二が居る病室から離れるように歩き出した。

 

「ああ緒川か。…………この通り無事さ、ただ彼からは全く持って心からの信頼も信用も得られていないがな」

 

『…………そうですか』

 

 弦十郎の言葉に緒川慎次は静かに返答するも、弦十郎の方はそんなことなど気にすることなく言葉を返した。

 

「それより緒川、司令室に奏や翼、みんな揃っているか?」

 

『はい。揃ってはいますが、桜井さんは彼の私物を解析していて、連絡しても出てくれませんが』

 

 それを聞いた弦十郎は、少し頭を抱えながら一度「ハァー」と溜め息を吐いた。

 

「了子の奴め、悪い癖が出たな? 彼が怒るような余計なことをしていなければいいが…………そっちに着いたら俺自身からも連絡をする」

 

『はい、分かりました。お待ちしております司令』

 

 緒川慎次はそう言って通信を切り、弦十郎は司令室に向かって歩み出した。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 プシューと扉の開閉音がすれば、機動二課の司令官を勤める風鳴弦十郎が入ってきて、最初に気付いたのは姪の風鳴翼であり、喜びながら弦十郎に声を掛けた。

 

「あ、叔父様。お帰りなさい」

 

「おっちゃん大丈夫だったか?」

 

「「「司令ッ!!!」」」

 

 

 翼に続いて、奏が本心なのかどうか分からない感じで声を掛け、最後には司令室に居た隊員たちが弦十郎に向かって敬礼をした。

 

「そこまで畏まらなくても良いといつも言ってるだろ? 楽にしていてくれ」

 

 組織上の体裁ゆえ仕方ないとは言え、隊員たちの行動に弦十郎は苦笑した。

 

「司令、お疲れ様でした」

 

「ああ緒川。そう言えば彼の事なんだが、なにか分かったか?」

 

 隊員たちの次に、部下の緒川慎次が弦十郎に声を掛ければ、弦十郎は緒川慎次に顔を向けてあることを聞いた。

 

「ええ…………まあ、彼の免許証で身元などが色々と分かったんですが、それでも私達が知りたいと思うようなものはありませんでした」

 

「それでも良い、聞かせてくれ緒川」

 

「緒川さん、あたしもあいつのことを知りたいから話してくれよ!」

 

 緒川のあまり見たことのない困った表情を見た弦十郎は、例え自分達が求めている情報ではなくとも伝えてほしいと願い、奏も弦十郎に続いて言い放った。

 

「…………分かりました。彼について説明を始めさせていただきます!」

 

 その言葉を聞いた緒川は、意を決してリュウケンドー変身者である立花剣二の説明に入った。

 

「彼の名前は立花剣二。1994年10月15日に誕生、現在の年齢は18歳で、城南大学人文学部に所属している青年です。家族構成は父親と母親、それと母方の祖母と妹の立花響さんとの5人家族で暮らしているそうです」

 

「ふむ」

 

「へぇ…………あいつには、妹がいるんだな」

 

「あ、奏…………」

 

 一旦緒川が言葉を区切れば、弦十郎は顎に手をやって考えて、そして剣二に妹がいるのを知った奏は、微笑みながらも辛そうな顔で暗く俯いていた。奏のその表情を見た翼は、いたたまれなくなるも相棒の名前を言うしかなった。

 

 天羽奏がこうなってしまうのには理由があった、それは彼女も立花剣二と同じく妹が居た。だが彼女の妹は、幼くして両親と共にノイズに殺されてしまったのである。

 

「…………緒川さん、続き聞かせてくれないか?」

 

「……………………分かりました」

 

 司令室が少し重い空気になるも、奏自身が破って緒川に立花剣二についての説明を求め、奏の言葉に緒川は頷き、立花剣二の説明を再開した。

 

「その、立花剣二さんなのですが…………彼自身や彼のご家族には怪しいところはありません。寧ろ一切と言っていいほど戸籍上も経歴上も家族全員普通の一般市民です」

 

「なんだと…………!?」

 

「はあぁぁっ!?」

 

「それは本当なんですか!? …………緒川さん?」

 

 緒川の調査結果の報告に、弦十郎は目を見開きながら驚愕し、奏は大口を開けて驚きの声を上げ、翼は冷静な雰囲気で緒川に問うた。

 

「ええ。私自身も最初、驚きを隠せませんでした。ですが…………逆にこれだけなにもないのが逆に怪しさを感じさせるのですが、彼の両親や祖父母も今出来る範囲で調べた結果、全くもっての真っ白でした」

 

 緒川の台詞に、弦十郎は顎に手を当てて考えながら口を開く。

 

「なら。彼の両親のどちらかが、不思議な力を持つ家系と考えるべきなのか?」

 

「そちらの方も考えて現在調べていますが、大方それらしいものは出てこないと思われます」

 

「……………………そうか」

 

「つまるところ八方塞がりってやつか」

 

「そうなりますが、まだ彼について深く調べているところですので、そこになにかあるかもしれません!」

 

 

 話し合いでそこまで辿り着くと、司令室に居る皆が黙り込んでしまうが、風鳴翼が叔父の風鳴弦十郎に向かって口を出した。

 

「それでは叔父様、了子さんにそろそろ連絡を入れても良いんじゃないでしょうか?」

 

「了子にか…………?」

 

「はい。了子さんなら、きっと既に彼が持っていたキーホルダーと鍵。それと私が回収したもう1つの鍵は解析できているんじゃないかと?」

 

「……………………………」

 

 翼の言葉に弦十郎は腕を組み思案する。数秒ほど思案すれば、腕組みを解いて言った。

 

「翼の言う通りだな。俺達だけで考えてもなにも分からん、了子の方がどうなってるかも分からないが、多少なりとも解析できているだろう」

 

 そう言って弦十郎は、膝を叩いて立ち上がった。

 

「とりあえず、了子に連絡を入れてみるか!」

 

 そうして立ち上がった弦十郎は、研究班に連絡を入れるため、近くにあったマイクを手に取り、研究所に連絡が入るよう機器を操作していく。

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 機動二課 科学研究所。

 

 研究所では、白衣を着た科学主任の桜井良子を筆頭に、白衣を着た多くの科学者が忙しなく動いていた。そしてモバイルモードのゲキリュウケンを解析している桜井了子は、真剣な目付きでゲキリュウケンを見ながら解析データの方も見るが、1度それから目を離し椅子に背を凭れかけて「ふぅ~」と溜め息を吐いた。

 

「桜井主任、こちらの解析結果が出ました」

 

「こちらも、全ての鍵の解析が終わりました」

 

 自分と同じ科学者で、助手の声を聞いた桜井了子は、椅子を回して部下の方に振り向いて言った。

 

「そう。…………それでどうだったかしら、解析の方は?」

 

「「……………………」」

 

 了子の助手を務める2人は、互いに顔を見合わせると、先に男の方が報告をした。

 

「解析結果なのですが…………未確認の騎士が持っていた絵柄の鍵は解析してもなにもありませんでした」

 

 男がそう報告すると、女の方もこくりと頷いて報告をする。

 

「こちらも同じでした。翼さんが回収したキーも含めて解析しましたが、その全てなんの解析結果も得られませんでした…………」

 

「…………………………」

 

 部下2名の報告を聞いた了子は、肩を落として残念そうな顔をする。了子のそんな顔を見て部下2人は申し訳ない顔になってしまうが、男の部下は桜井了子が解析した龍の顔をしたキーホルダーについて問うた。

 

「あの、桜井主任。主任が解析していた龍のキーホルダーはどうだったんですか?」

 

「………………………………」

 

 男の言葉を聞いた了子は、真剣な表情をする。桜井了子のそんな表情を見た2人は、同じく真剣な表情で了子を見て生唾を飲み込む。

 

「「……………………………………」」

 

 しかし真剣な表情から、すぐに了子は疲れた顔となって簡潔に答えた。

 

「こっちもなにも分からなかったわ。何度解析してみてもErrorの文字しか出てこないのよ~」

 

 

 半ば泣きそうな声で了子は言って項垂れ、それを見た部下の科学者は「「そ、そうですか」」と苦笑いをしながら言った。

 そんな2人の反応を気にも止めず、了子は続けてズラズラと言葉を並べながら喋り出した。

 

 

「大方と言うか。…………完全に彼の力には100パーセントあのキーホルダーみたいなものと、あの妙な絵が入った鍵にあると思うのよ。それで龍のキーホルダーには色々な方法で解析を試みたんだけど、全てに置いてError反応、翼ちゃんが回収して持ってきた鍵も調べたんだけど、それもError反応が出たり、なんの反応も出なかったりなのよ。一体あの子が持っている力ってなんなのかしら? 多分このキーホルダーみたいなものも、未確認の騎士が持っている剣だと思うんだけど?」

 

「「…………………………………………」」

 

 了子のありとあらゆる過程を出す話に、2人の科学者は納得して頷くも、毎度毎度了子の長話に付き合わされているのか、少々うんざりしているような感じである。

 

 

 そんな時である…………。

 

 

「桜井主任。風鳴司令から連絡が来ています!」

 

「あ、そうなの。通信回線ごと映像も開いてくれる? モニターで話し合うから」

 

「了解しました」

 

「「ッ…………」」

 

 研究班の1人から、機動二課の司令官を務める風鳴弦十郎から連絡が着たのを聞かされた了子は、すぐにそちらの方へ振り向きモニターも開いてくれと指示を出し、その連絡を受けた1人は了承して機器を操作していき、風鳴弦十郎から連絡が来たのを聞いた、了子の話を聞かされていた2人はその事に喜び、了子に気付かれないよう小さくガッツポーズをしてハイタッチをした。

 

『了子。出てくれたか』

 

「連絡してくるなんて、どうかしたの弦十郎君?」

 

『ああ…………まあお前の悪い癖が出ていないかの確認と、こっちで色々と話し合ったんだが、どうにも纏まらなくてな。それでそろそろ解析の方も終わっているだろうと思って連絡を入れたんだ』

 

 そう言いながら弦十郎は、真剣な表情へと変わり了子に尋ねた。

 

『それで了子、解析の方はどうだった』

 

「「「…………………………………」」」

 

 弦十郎の言葉に、ゲキリュウケンを解析していた了子とマダンキーを解析していた2名が同時に顔を見合わせる。そして桜井了子がモニター越しの弦十郎を見ながら告げた。

 

「ごめんなさい弦十郎君。今ここにあるもの全てで調べてみたんだけど、なにも分からなかったわ」

 

『…………………………』

 

 弦十郎にそう報告すれば、了子は申し訳ないという顔をするが、それに気付いている弦十郎はいつも通りの口調で話した。

 

『そうか、そう気に病むな了子。こちらとしても彼が所持していたモノが解析できなかったのは残念だが、解析できなかった程度でお前を攻めはしないさ』

 

「ありがとう…………弦十郎君」

 

 弦十郎の言葉に、了子は優しい微笑みを称えてお礼を言った。了子の笑みに弦十郎も笑みを返すがそれも束の間、すぐに口をへの字にして腕を組んで言う。

 

『しかし彼自身から聞いたが、あの龍のキーホルダーのようなものとあの奇妙な鍵が…………彼のあの謎の力に関係しているのは確かだが』

 

「えっ、弦十郎君! 彼からこれのこと聞いたのッ!?」

 

 弦十郎の台詞を聞いた了子は、驚愕の声を上げながらも、剣二が使用している魔弾龍の力について問い詰めた。

 弦十郎の方も少々驚き、慌てながら了子に向かって言葉を訂正した。

 

『い、いや…………そうじゃなくてだな! 彼自身が言ったんだ。あの龍のキーホルダーのことを〝相棒〟と、それを考えるのなら彼の力はそれにあると踏んだんだ』

 

「そうなの…………」

 

 弦十郎のその言葉を聞いた了子は、解析用の機材に置いてあるゲキリュウケンに目を向けた。

 

『それより了子。お前からの仮説を聞きたいんだが、解析できずとも科学者のお前から見て、彼のあの力はどう見える?』

 

 了子がゲキリュウケンに目を向けていれば、弦十郎は了子がゲキリュウケンを見ているのに気付き、弦十郎は人類の希望であるシンフォギアを開発した第一人者である桜井了子から、彼女から見て魔弾剣士リュウケンドーがどれ程のものか聞いておきたかったのであった。

 

「…………私の見解からしても彼のあの力、あれはシンフォギアと同等…………いえ、簡単に凌駕していると思われるわ」

 

「「「!!?」」」

『『!!?』』

 

『やはり、了子から見てもそう考えるか…………』

 

 了子の言葉を聞いた科学者3名とモニター越しの奏と翼は、小さな驚愕の声を出して顔を強ばらせた。そして司令官である弦十郎は、腕を組んで1度考える仕草をして言う。

 

「それに、もし彼のあの力がこの龍のキーホルダーと奇妙な鍵にあるとすれば…………これは私たちが今まで出会った聖遺物を越えた聖遺物と考えてもいいわ!」

 

 新たに了子が言ったことに、最早回りにいたものやモニター越しからのものたちも、言えることがなにもなかった。

 しかし、そんな中でも弦十郎は小さな溜め息を吐いた後で、言葉を告げる。

 

『…………了子にそこまで言わせるとはな、一体彼はあの力をどうやって持ったんだ?』

 

「その彼についてなんだけど? なにか分かったことってあるかしら?」

 

『緒川が調べてくれてはいるが、今のところそれらしい情報は全くない』

 

「そう…………そうなれば彼自身があの力をどこかで手に入れたって言うことになるのかしら?」

 

『それも充分に考えられるが、そうなると調べるのはかなり厳しいな。彼が行った場所を調べるには手掛かりが必要になる。それにあの力について彼自身が素直に話してくれるかどうか…………彼は俺達に凄まじい敵意を向けているからな…………』

 

「それを考えると、どうしようもないわね。…………ノイズの対抗策が聖遺物しかなくて、使えるのが奏ちゃんや翼ちゃんだけ。でも彼からすれば、それは何よりも許せないことみたいでしょうし」

 

 弦十郎と了子が互いに話し合いをして、周りに居るものはただ静かに、2人の話し合いを邪魔しないように黙っていたが、その時である。

 

「桜井主任ッ! 龍のキーホルダーがいきなり光り出しました!?」

 

「なんですって!?」

 

 ゲキリュウケンがいきなり光り出したことに、1人の科学者が驚きながらも桜井了子に報告すれば、その報告を聞いた桜井了子は驚きの声を上げながらそちらの方に振り向いた。

 

 すると…………。

 

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!

 

 

 それと同時に、機動二課全域からノイズの出現を報せる警報が鳴り響いたのである。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

「「「!!??」」」

 

『『『!!??』』』

 

『もしかしてこの光は、ノイズの出現を報せる光!?』

 

 ノイズの出現の警報に機動二課の面々は驚愕と戦慄の顔となるも、研究所へのモニターは着いたままでありながら、桜井了子の発言も気に止めず、弦十郎は素早くオペレーターの藤尭と友里に顔を向けて問うた。

 

「藤尭。友里。報告を頼む!」

 

「はい! 市街地から少し距離のある一方通行の道から複数のノイズが出現!」

 

「個体はクロール、ヒューマノイド、ダチョウ型ヒューマノイド、そして後方にギガノイズが5体!! 既に多くの犠牲者が出ています!?」

 

 2人の報告を聞いた弦十郎は、次に天羽奏と風鳴翼の方に顔を向けて言う。

 

「奏! 翼! かなりの怪我を負っているところすまない、だが彼を出撃させるわけにも行かない! お前たち2人で対処してくれるか!?」

 

「ああっ、あたしらに任せろおっちゃん!」

 

「はいっ、彼はあの黒いノイズとの戦いで私達より傷付きました。ならば彼の変わりに私達が戦うのは当然のことです!」

 

 2人の強い言葉を聞いた弦十郎は、真剣な表情で頷いて続けて言う。

 

「頼むぞッ2人とも!」

 

 弦十郎の言葉に、奏はサムズアップをして翼は静かに頷き、走って司令室を出た。

 

「よしっ、了子。お前たちはそのまま待機してくれ、彼の私物の解析はもうしなくていい」

 

『えっ? まだ他にも解析する方法はあるのに、やらなくていいの?』

 

 奏と翼の2人が司令室を出たのを見送った弦十郎は、次にモニターに映り出されたままの研究所に通信を再び入れて、桜井了子たちに指示をする。

 その指示を聞いた了子は、疑問を上げながら弦十郎に問えば、弦十郎はまた頷いて言葉を発する。

 

「ああ、あまり下手なことをすれば彼の怒りをさらに買ってしまうからな。出来ることならそれは避けたい」

 

『…………分かったわ弦十郎君。それじゃあこれ以上の解析は止めておくわ』

 

「ああ、そうしておいてくれ。それから俺は彼が居る病室に連絡を入れるから、ここでの連絡は終わらせる」

 

『はいはーい、じゃあ後でね弦十郎君』

 

 その言葉を最後に、弦十郎は研究所の連絡を切った。

 

 

「司令、奏さんと翼さんがヘリに乗りました」

 

「分かった。友里、彼の居る病室に繋いでくれ」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

(あの女の顔…………やっぱり、あの時の?)

 

 俺はベッドに寝っ転がりながら、あの朱色の髪の女のことを考えていた時である。

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!

 

「ッ!! これはノイズの出現警報!?」

 

 大男が出ていった後、時間が来るまでここから出られない俺は、どうにか時間を潰そうと思ったがなにも出来ず。寝る気も起きないが、この体じゃトレーニングも出来ないので、私服に着替えてベッドで寝っ転がるのを選択。

 

 ただベットにボーッと寝っ転がることに10分以上経てば、いきなりノイズの出現を報せる警報が鳴り響いて、俺は驚きながらベッドから飛び起きた。

 

「しまった…………!? ゲキリュウケンが奪われちまったから、奴らの出現が分からなかったんだ。クソッ!? こんなことなら無理矢理にでも返しといて貰えば良かったぜ!」

 

 そんなことを言っても遅いのだが、それでも俺は言葉にしなければ気が済まなかった。

 

 

『立花剣二君。聞こえるか?』

 

「!!?」

 

 いきなり俺の名前が呼ばれたことに驚き振り向くが、振り向いたところには小型のスピーカーが設置されており、人間を辞めている大男の声が届く。

 

「おいっノイズが出現したんだろ? なら俺の私物を返せ! 俺もノイズと戦う!」

 

 だが俺はそんなことも気にせず、ゲキリュウケンを返せと大男に言う。ノイズが出現して人間を襲っているのなら、指を咥えて黙って見ているわけにはいかない、俺の全てを懸けて戦わなくてはならないのだ。

 

 

 しかし、大男が出した言葉は、とても信じられないものだった。

 

『…………ダメだ』

 

「は…………ふざけんなっ!? ノイズが出現してるのに、俺には出るなって言うのかよ? 傷を負っているあいつらだけじゃ危険だろうがっ!」

 

『それでも2人より傷を負っている君よりはまだマシだ! 君は黒いノイズと戦ってかなりの大怪我を負っているんだぞ!? 下手にノイズと戦えば、君の命に関わりかねないんだ!?』

 

「俺は元からその覚悟で戦ってんだ! それぐらいの覚悟がなきゃ、今ごろ俺はノイズとの戦いから逃げ出してる!」

 

『…………………………』

 

 俺がそう言えば、スピーカーから大男の言葉が止まるが、それも数秒程であり、すぐに大男からの返答がきた。

 

『…………それでもダメだ。悪いが君にはここで大人しくしておいてもらう』

 

「トウシロウどもに任せろって言うのか? あんな中途半端な力じゃ、下手すりゃ二次被害も起きるぞ!」

 

『そんなことは決して起きない。悪いがここはあの2人とシンフォギアを信じてくれ』

 

「シンフォギア? …………なんだよそりゃ?」

 

『…………………………』

 

 聞いたこともない単語に俺は疑問の言葉を出して、大男にそのシンフォギアについて問うた。

 すると大男は1度無言になるも、シンフォギアというものの説明を始めた。

 

『…………シンフォギアについては一般人には極秘なんだが、君になら説明してもいいだろう』

 

「…………………………」

 

『シンフォギアというのは聖遺物、世界各地の伝説に登場する、超古代の異端技術の結晶の総称だ。現代の技術では製造不可能なオーバーテクノロジーの産物でもある』

 

 大男は休むことなく説明を続けていく。

 

『その中で遺跡から発掘される物は経年劣化や破損が激しく、廃棄物でしかない欠片が大半を占めていて、従来の力を遺した物はほとんど存在しない。だが…………極一部に本来の力を留めながら基底状態のものが存在している、聖遺物の力を引き出す素質を持つ者がな』

 

「……………………」

 

 俺は余計な口を挟まず、大男が教えているシンフォギアについて、一字一句聞き逃さないよう聴覚に全神経を集中させた。

 

 

『シンフォギアは聖遺物の欠片のエネルギーを用いて構成される鎧型武装、またはそのシステムの呼称をシンフォギアと俺達は名付けた。その欠片の中に残った聖遺物の力が、適合者による波動によって活性化しエネルギーに還元された後、鎧の形に再構成される』

 

 シンフォギアの説明に俺は沸々(ふつふつ)と怒りが沸いてきて、鋭い目付きに変わっていき、握り拳を強く作って、そこから血が流れるのが理解できた。

 

『シンフォギアを装着する適合者は装者と呼ばれる。ギアが装者にもたらすものは、身体機能の上昇、音波振動衝撃によるノイズの侵食を防護するバリアコーティング機能、更にはノイズの在り方を調律し人間界の物理法則下に強制固着させて攻撃を有効化する、位相差障壁の無効化の3つに大別されるんだ』

 

「つまりるところ、てめぇらは貴重な文化遺産をノイズに対抗する兵器に変えて、力を引き出す素質を持ったあの2人を戦場に出してるってわけか?」

 

『まあ…………その答えで概ね間違ってはない』

 

「はっ胸糞悪くてしょうがねえぜ!」

 

 シンフォギアについてのことを聞いた俺は、悪態を吐きながらも頭の中でもう1つの答えも出した。

 

(聖遺物と適合者ね。…………ほとんど魔弾戦記リュウケンドーと同じってことか、ゲキリュウケンも遺跡で発掘された古代文明の遺産だから聖遺物と言ってもいいし、魔弾龍たちの力を使いこなすには適合者が必要だからな。ほとんど)

 

 俺個人で納得と理解はしたが、それとこれとでは話が全くもって違うため、俺は大男に進言をした。

 

「なおさら余計に俺も出撃させろ! そんな危険物で戦ってたらなにが起こるか分かんねえだろッ!」

 

『何度も言わせるな! 君はただでさえ、前例のなかった黒いノイズと死闘を演じて重症を負っているんだ! そんな君をノイズとの戦いに出して、もしなにかあれば俺は君の家族にそれを報告しなければならないんだぞ!』

 

「そんなもんお前らが気にすることじゃねえ」

 

『…………悪いがあの2人がノイズを完全に消滅させるまで大人しくしていて貰う』

 

 大男は最後にそう言って、俺との通話を一方的に切りやがった。

 

 

「クソッタレ! これだから政府に所属している頭でっかちの大人は嫌いなんだよっ!」

 

 大男の対応に、俺は叫びながら、近くにある医務室のベッドを思いっきり蹴った。

 

 

 

『…………聞こえるか?』

 

「はい司令、聞こえます」

 

「どうかしましたか?」

 

 剣二がいる医務室の扉の前では、軍服を着た男性2名が立っていた。肩にはスリング付きのアサルトライフルを掛け、腰にはホルスターを巻き付けサイドアームの自動拳銃を装備していた。そして耳には通信用のインカムを付けており、司令官である風鳴弦十郎から連絡がきてそれに応答した。

 

『大丈夫だとは思うが、もしかすれば彼がなにか行動を起こしてここを強行突破するかもしれない。念には念を入れてしっかりと警戒していてくれ』

 

「了解です。任せてください」

 

「我々がいればすぐに取り抑えることが出来ます。あの男もそう簡単に出ることはしませんでしょう」

 

 そう簡単に剣二の見張りをしている軍人2人だが、彼らは驚愕することとなる。立花剣二はこの後とてつもない手を使い、この機動二課から脱走することになるとは知る由もないのだ。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 立花剣二が弦十郎から出動を拒否させられている時、シンフォギア装者である天羽奏と風鳴翼は、軍用ヘリに乗って複数のノイズが出現した現場に向かっていた。

 

 魔弾剣士リュウケンドーの変身適合者である立花剣二が、自分たち以上の大怪我を負っているため、剣二の変わりに自分たちが、今回現れた大多数のノイズと戦うことを決めた。

 

「奏さん。翼さん。もうすぐ現場に到着します、準備を!」

 

「はいッ! 分かりました!」

 

「任せときな、あいつの分まであたしらが戦ってやるさ!」

 

 そんなことをヘリコプターのパイロットと話し合っていれば、ヘリはノイズの大群が居る真下へと到達した。

 

「奏さん、翼さん、お願いします!」

 

「風鳴翼。…………行きます!」

 

「一気に殲滅してやる!!」

 

 到達とともにヘリのパイロットが声を掛け、奏と翼の2人は勢いよく扉を開けてヘリから飛び降りた。

 

 そして2人の歌姫はノイズと戦うための力である、シンフォギアを呼び出すための聖詠を口ずさんだ。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 聖詠を口ずさめば、オレンジ色の光と青色の光が2人の体を包み込み、そこからシンフォギアの鎧を身に纏っていった。

 

「しゃあッ!」

 

「はあぁッ!」

 

 シンフォギアを身に纏えば、2人は降下しながら互いの得物を持った。

 

「翼! ノイズはいつも以上の数だ。短期決戦を考えて全力の速攻で倒すぞ!」

 

「うんっ! 奏、私もそう思ってたところ。一気に行こうっ!」

 

 そう言って、天羽奏は自分が纏っている聖遺物ガングニールの武器である。槍をノイズに向かって投げ付ければ、その槍が大量に複製され、ノイズの大群へと迫る。風鳴翼も自らが纏っている聖遺物天羽々斬(あめのはばきり)の周囲から、無数の青いエネルギー剣を出現させ、ノイズの大群に狙いを定めて放った。

 

『『『『『!?!?』』』』』

 

 上空から大量の槍と青いエネルギー剣が迫ってきたことに驚愕するノイズ、シンフォギアの攻撃はなんの躊躇もなくノイズたちに炸裂し、なんの対処もできずにノイズの大群は炭素へと変化した。

 

「まだまだぁッ!」

 

「行くぞノイズッ!」

 

 しかし、シンフォギア装者の奏と翼は止まることなく、槍と剣を力強く握り締め、ノイズへと振るった。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

「…………やっぱ、黙って待ってられるか!」

 

 ベッドに腰を掛け考えるポーズをしながら大人しくしていた俺だが、やはりあの危険すぎる生命体どもをただ黙って放っておくことなど出来るわけもなく、俺はベッドから立ち上がって自動ドアを軽く触れながらも確認する。

 

(システム的には解析できれば開けられる。内部の回路を出して別々に直結させてショートさせるのもいける。だが手としてはダメだな、いくら奴らがノイズに集中しているとはいえ、電極に下手なことをすれば監視カメラかモニターでバレて、ここから出られなくなるかもしれない)

 

 ドアに軽く触れながら、ここから脱走するための思考を巡らせるが、ほとんどの方法は失敗するかもしれないと考えになってしまった。

 

「となれば、速攻のスピード勝負でここから出るしかないな」

 

 口にしながら決めた俺は、棚の上に置いてある財布と免許証を尻ポケットに入れて、スマホはすぐに取り出せるように右ポケットに半分だけ入れた。

 

「よしっ、やるとするか。…………地獄のような日常を生きてる現代学生を嘗めるなよ!」

 

 そう言って俺は、右足に履いているスニーカーの靴底を向けスライドさせた。靴底の半分を後ろへとスライドさせ、中にあったのは小型爆弾である。

 因みに小型爆弾は機械で被せられながらも、導火線が出ている爆弾であり、この爆弾には殺傷性は全く持ってないが、ドアノブ等の小さなものを破壊することぐらいは出来る威力はある。

 この自動扉を開けるため、俺はそのすぐ近くにある操作機器に小型爆弾を設置して、次に左足に履いているスニーカーの靴底を向け、靴底の半分をスライドさせれば、そこには10本のマッチが収納されており、マッチが収納されている近くには側薬が付いている。

 

(頼むぜ。なんとか開いてくれよな)

 

 俺は心の中で祈りながらマッチを1本取り出し、側薬に触れさせシュボっとマッチの火を着けた。

 そしてそのまま着火したマッチを小型爆弾の導火線に着け、導火線に火が着いたことにより、その火が走っていき爆弾を爆発させようとする。

 俺は少しだけ自動扉から離れ、この扉が開くことを祈りながら体を伏せた。

 

 

 

 

「? おい、なんか変な音がしないか?」

 

「そうか? 俺には聞こえないが?」

 

 ボカァァァーーーン!!!

 

「「!!?」」

 

 爆発音に扉の前に居た見張りの軍人は驚くが、運良く自動扉の機能がイカれたのか、自動扉は白い煙を周囲にあげながら、扉は半分ほど横にスライドした。

 

「な、なんだ!?」

 

 軍人の驚いている声など無視して、俺は半分ほど開いた扉を体を横にして飛び出て、目の前にいる1人の兵士に渾身の右ストレートを放った。

 

「なっ!?」

 

「この野郎ッ!」

 

「ぐほっ!?」

 

 男は鼻血を出しながら床へと倒れこみ、だが俺はそんなことに一切の心配も躊躇いも出さず、もう1人の見張りを担当している軍人に飛び掛かった。

 

「なっ!? なにをするっ!」

 

 男はそう言って肩に掛けていたアサルトライフルを俺に向けるが、そんなものを俺に撃ち放てば問題になるだろうし、ただの威嚇として向けたことを長年の経験で理解しているため、俺は止まることなくその男の顎に蹴りを浴びせた。

 

「ガハァッ!?」

 

 蹴りを顎に喰らったことで男の脳が軽く揺れたのか、男はフラフラしながら床へと倒れた。

 

「…………悪いな。俺にも譲れない覚悟があってな、力付くでいかせてもらったぜ」

 

 床に倒れた見張りの男2人に謝罪しながら言って、ここから離れようとするが、先程蹴って気絶させた男の右腰にハンドガンがあるのを見た俺は。

 

「ついでにこいつも借りるぜ、返すことは出来ないだろうが、護身用に持っていく」

 

 そう言って俺は、男が腰に装備しているホルスターからハンドガンを抜き取り、ダッシュでここから出られる扉を探すことにした。

 

「ふっ…………!」

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

『司令ッ申し訳ありません! 緊急事態が起きました!?』

 

「どうした。なにがあった?」

 

『彼が、未確認の騎士の彼が…………脱走をしました!』

 

「なんだとっ!?」

 

 見張りをしていた兵士から連絡がきて、その連絡に弦十郎は応答すれば、兵士の報告に弦十郎は驚愕するもそれも数秒ほどで、素早く部下に指示を出した。

 

 

「藤尭、彼が脱走した。どうやって脱走したのかは分からんが、大至急彼の居場所を突き止めてくれ!」

 

「ッ、了解ッ!!」

 

 弦十郎の指示を聞いたオペレーターの藤尭朔也は、しっかりとした返事をしながら機器を操作して、立花剣二の居場所を探った。

 

「司令、見つけました! 彼はエレベーターの前に居ます。どうやらエレベーターを操作してここから出るようです!」

 

 モニターには、10名ほどの人数が入れるほどのエレベーターに向かって、なになら操作している脱走者・立花剣二の姿が映し出された。

 

 それを見た弦十郎は、素早く藤尭に新たな指示を出した。

 

「藤尭ッ! すぐにエレベーターを操作できないようにするんだ! 友里は付近にいる警備員に連絡を入れて彼を捕獲するようにしてくれ!」

 

「「了解ッ!!」」

 

 弦十郎の指示を聞いた藤尭と友里の2人は、返事を返して機器を操作して互いの役割を行おうとするが…………。

 

「あ、あれ…………?」

 

「ん? どうした藤尭?」

 

 機器を操作しようとした藤尭が戸惑いの声を出した。その声を耳にした弦十郎は、疑問の声を出しながら藤尭に声を掛けた。

 

 

「…………司令!? エレベーターの操作が彼に奪われてこちらの捜査を受け付けません!?」

 

「なっ、どういうことだ!!?」

 

「「「!!??」」」

 

 藤尭の言葉に、司令官の弦十郎を含め隣にいるオペレーターの友里あおいや二課にいる他の隊員たちも驚いていた。

 

「彼がエレベーターに乗り込みました。司令!」

 

「藤尭、エレベーターの操作権限を取り戻すことは出来ないか?」

 

「無理です。どうにも彼にこのエレベーターだけ操作を奪われています。このままでは確実に機動二課から脱走します。取り戻すには時間が掛かります!」

 

「なら彼がエレベーターから出てくる場所は分かるか?」

 

「それなら分かります。彼が出る場所は恐らく軍施設です!」

 

 現在、機動二課の面々は立花剣二に好きに動かれてしまったが、それでもなんとか彼を止めようと考え、弦十郎は藤尭に剣二がどこから出るのかを確認してもらった。それを聞いた弦十郎は「よしっ」と言いながら頷き、通信機に手を伸ばし、軍施設へと連絡を入れる。

 

 だが、それでも弦十郎の心の中では、今とてつもない驚愕と疑問が産まれた。

 

(どうやってあそこから出たんだ? 彼は一体何者なんだ?)

 

 そんな疑問が弦十郎の頭の中で渦を巻いていた。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

「! …………あれはエレベーターか? 一か八か賭けてみるか!?」

 

 この訳の分からないだだっ広い基地を走っていた俺だが、偶然曲がったところでエレベーターらしきものを見つけた俺は、さらに走るスピードを上げエレベーターらしき前まで来た。

 

「…………時間がねぇんだ。力付くでやらせてもらうぜ!」

 

 俺が入れられていた脱走する扉と同じ作りなのであろうエレベーターは、すぐ近くに操作機器があるが、そんなものの操作をする時間が勿体ないため、左手に持っているハンドガンを機器に向け弾丸を撃った。

 

「シッ…………おらぁぁぁッ!!!」

 

 弾丸を5発ほど放ち機器を壊した俺は、その機器の壊れた隙間に手を入れて、力付くで機器を引き剥がした。そして右ポケットに入れてあるスマホと電装系のケーブルを取り出し、ケーブルを引き剥がした内部の機器に突き刺してスマホの電源を入れ、スマホの中にある解析ソフトも起動させた。

 

「解析ソフト始動。奴らに捕まる前に早くしてくれ…………」

 

 スマホを身ながら祈り、解析ソフトがこのエレベーターの操作権限を奪取するのを1分1秒と待った。

 

「居たぞっ! あそこだっ!!!」

 

「ッ!? しまった見つかったか!!」

 

 しかし、エレベーターの解析をしている途中で、この基地の銃を持った軍人に見つかり、俺は焦りの顔を現してしまう。

 

「早くしてくれ!? ここで捕まるわけにはいかねえんだ! ッ!?」

 

 軍人が俺の元まで迫ってくるため、俺は焦りながら解析ソフトがエレベーターの操作を奪ってくれと、祈るように叫べば、その願いが通じたのかエレベーターの扉が開いて、俺は急いでエレベーターに飛び乗って扉を閉めた。

 

「よっと…………!」

 

「しまった!? クソッ、申し訳ありません司令! 後一歩のところで逃しました!!」

 

 

「……………………」

 

 軍人がなにか言っていたが、俺はそんなことを気にすることなく、エレベーターの電子表示を見ながら心の中で呟く。

 

(一体どこに出るか知らねえが、頼むぜ神様。こんなところで俺の運をなくさないでくれよ!)

 

 祈りながらも俺は目付きを変え、体を動かした。

 

 

 

「「「「……………………」」」」

 

 キンッという音を立てて、エレベーターは静かに開いた。エレベーターの扉が開くとともに、周囲に居る軍人たちは一斉に銃を向けた。

 だが、扉が開いたというのに、一向に誰も出てくることがなかったので、軍人たちは疑問に思いながらもゆっくりと近付いて、エレベーターの扉の前までやってくれば静かに立ち止まり、警戒を高めながらエレベーターの中を目を離すことをせず、隊長を勤めているような1人の軍人が、隣に居る部下に指示を出した。

 

「見てこい加納。全方位しっかりと警戒をしてな」

 

「…………了解」

 

 指示を聞いた加納という軍人は、上官の顔を見ながらも頷いて了承し、静かにゆっくりとエレベーターの扉まで近付き入ったその時。

 

「…………!」

 

「んなっ!!?」

 

「下手なことはするんじゃねえぞ。でないとこいつの頭を撃ち抜くことになるぞ?」

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

「加納ッ!?」

 

 エレベーターの天井に張り付いていた俺は、1人の軍人が扉に入ってきたことを確認すれば、一気に軍人に飛び掛かり左腕を首に回し、軍人の右腕を無理矢理離して背中まで持っていき挟み込み、ハンドガンを持っている俺の右腕は軍人のこめかみに突き付けた。

 

 その光景に、扉の周りに居た軍人たちは驚愕の顔となった。

 

「こいつの頭を撃ち抜かれたくなかったら、今すぐお前らの武器を捨てて地面に膝を付けろ。そして両手は頭の後ろに持っていき、そこから動くなよ! さっさとしろ! やらなきゃこの人質を本当に撃つことになるぞ!?」

 

 思いっきり脅し全開だが、できることならこの軍人の頭を撃ち抜くなんてことはマジでやりたくない。

 

「あ、あぁ…………」

 

「わ、分かった。君の言う通りにしよう。全員武器を捨てて膝を付け、そして両手を頭の後ろに持っていって、一瞬たりとも動くんじゃないぞ!」

 

 恐らくこの軍人たちの指揮を任されている隊長らしき男が、武器を地面に置いて膝を付き両手を頭の後ろに持っていけば、周辺に居る軍人たちにそう言って、それを聞いた軍人たちは同じことをしていき、皆一瞬たりとも動かないようにしていた。

 

 それでも気が抜けないため、俺は全方位を警戒しながらハンドガンを軍人たちに向けながら、あるものに向かって足を進める。

 

「あ…………き、君がなにを思ってここから出てきたのかは知らないが、無駄なことはやめるんだ。こんなことをしてもここからは出られないぞ?」

 

 俺の手で人質となった軍人が、当初は驚愕と恐怖で声も出せなかったが、なんとか喉の奥から声を絞り出して俺に言ってきた。そんな度胸の良い軍人に向かって、俺はまた軍人のこめかみに銃を突き付けて言い返した。

 

「そんなもん知ったこっちゃないね、こちとら生まれたときからノイズと戦うことが決められてんだ。奴らを放って置くわけにはいかないんだよっ」

 

「な、なんだって? まさか君は…………」

 

 男がその先を言おうとした時であった。突如、近くに居た2名の軍人が立ち上がり、俺を取り抑え人質となっている男を解放しようとしたが…………。

 

 

「こっんのやろうっ! おらあぁぁっ! こいつの命がどうなってもいいってんだな!?」

 

 俺は派手に暴れて、襲い掛かってきた2人の軍人を引き離すように撥ね飛ばせば、先程より強く人質となっている軍人の男を締め上げ、叫びながらこめかみにハンドガンを突き付けた。

 

「わ、悪かった!? もうやらない!」

 

「俺も悪かった! だからやめてくれッ!?」

 

「悪かった! もうやらないから、どうか加納を撃たないでくれ!?」

 

 2人の軍人は手を上げて謝り、隊長らしき男も謝るが、俺は信用など出来る訳もなく、さらに全方位にハンドガンを向けながら警戒し、ある場所へと到達した。

 

「…………よしっキーも挿しっぱなしか」

 

「き、君の狙いはその偵察用オートバイだったのか?」

 

 軍人たちを警戒しながらも俺が手にしようとして居たのは、迷彩柄の軍人たちが使う軍用バイクであった。さらに運が良いことに、バイクのキーも挿しっぱなしであったのだ。

 

「ああ。流石にノイズの所まで行くには足が必要だからな、悪いがこの銃と同じで返すことが出来ないかもしんねぇけどな」

 

「…………ぐっ!?」

 

 そう言って俺は、人質にしていた軍人の男の背中を思いっきり蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた男は苦痛の表情をしながら、大人しくしていた軍人たちの所まで飛ばされるも、なんとか別の軍人に助けられた。俺はそんなことなど気にもせずに、偵察用オートバイに跨がり素早くキーを回して起動させ、ハンドルを握りアクセルを捻りペダルを思いっきり踏み込んだ。

 

「邪魔したなッ!」

 

 軍人たちに振り向きそう言って、ノーヘルであるがオートバイを発進させた。

 

 

 

 オートバイを発進させ、あの場から抜け出した俺は、ノイズの大群が居ると思われる方へと顔を向ける。

 

「恐らくノイズが現れたのは南方方面、川原の大通り。ここからだと回り道をして行くことになるが、仕方ないか。…………あの凹凸女ども、頼むから無事でいろよ!」

 

 俺はそう言いながら、さらにアクセルを回しギアを踏み込んで、バイクのスピードを上げた。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 剣二が機動二課から脱走した頃、シンフォギア装者である天羽奏と風鳴翼は。

 

「うらあぁぁ! ッ!? うあぁぁぁッ!?」

 

「奏!? ふっ、はあぁぁぁぁ!」

 

 押し寄せるノイズの大群に、思わぬ苦戦を強いられていた。特に正規適合者ではない奏は、時限式という重荷を背負いながらも懸命に戦ってはいるが、それでもノイズの数が減ることがなく、翼に助けられながらなんとかノイズを凌いでいた。

 

「くそっ、いつも通りで戦っているって言うのに、なんでこんなにも苦しいんだ!?」

 

「最近のノイズの出現数とかがおかしいだからだと思うよ奏。それともう1つ…………」

 

「あいつがいないからか。確かにあいつが戦ってたお陰であたしらの負担は少なかったからな。こんのぉー!」

 

 装者たちは苦戦をしながらも現状の把握をすれば、奏は叫びながら槍を振るって2体のクロールノイズを葬った。

 

「これならどう!?」

 

【逆羅刹】

 

 風鳴翼は逆立ちをすれば、横回転を行い脚部のブレード展開して、自分の周囲に居るノイズを切り裂いっていった。

 

「こいつを喰らいやがれッ!!?」

 

【LAST∞METEOR】

 

 翼の元まで跳んできた天羽奏は、槍の穂先を回転させ、それによって竜巻が生み出され、周囲の空間をとともに小型ノイズを吹き飛ばすが、大型のギガノイズには通用せず相殺され、ギガノイズは口から小型ノイズを吐き出し、さらにノイズの数を増やした。

 

「ッ…………数が多すぎる!?」

 

「このままじゃ後退させられるどころか。人々の命が!?」

 

 奏と翼は武器を握り締めながらノイズに1歩も退かぬ姿勢であるが、さすがに数に押されており後退させられていた。このまま2人が後退させられれば、彼女たちの後ろには守るべき多くの人間たちがいるのである。

 それを考えれば、なんとしてもここでノイズたちを死力を尽くして止めなければ、多くの犠牲が出てしまうが数に数で押されており、いくら覚悟しているとは言え奏と翼の頭には死の文字が(よぎ)っていた。

 

 

「こうなったらもう、絶唱を使うしかないのか!?」

 

「ダメだよ奏!? 今の私たちの状態で絶唱を使えば危険しかないよ!」

 

「だからって翼、このままだったらノイズのせいで死人が出るかもしれないんだぞ!?」

 

「でもここで使ったら、市民を巻き添えにしちゃうかもしれないんだよ!?」

 

 そうである。絶唱というものはシンフォギアの切り札なのであるが、その威力は凄まじく下手をすれば、ここら一帯を焦土と化す危険性もあれば、シンフォギア装者の命の危険もあるのだ。

 

 そのため絶唱を使うには、それ相応の覚悟と周囲の安全も考えて使わなくてはならないのである。翼の言葉を聞いた奏は苦しい顔をしながら、言葉を放った。

 

「それじゃあ八方塞がりってことかよ!?」

 

 奏がそう叫んだとき、自分達の後ろから凄まじいエンジン音が響いた。奏と翼はその音に驚きながらも、後ろを振り向けば驚愕の顔となり声を出した。

 

「なっ、あいつは!?」

 

「嘘っ!? どうやってここに?」

 

「お前ら少し、ノイズどもから距離取れ!!」

 

 それは予想通り、ノーヘルのままバイクで奏たちを助けに来た立花剣二であった。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

「ノイズどもから距離取れ!!」

 

 俺はそう叫べばバイクで女2人を突っ切り、バイクを転倒させてノイズに向かって突っ込ませ、俺は転倒とともにバイクの座席を蹴って飛び降り、ズボンに挟み込んでいた拳銃を取り出し、バイクのエンジンを精確に狙って弾丸を3発撃って、ノイズの大群にバイクが触れる前に大爆発を起こさせた。

 

「……………………」

 

 俺は多少痛む体のことなど気にせず立ち上がり、燃え盛る炎の向こうにいるノイズを警戒しながら見やる。ノイズを警戒していれば、俺の後ろにいた2人組の女が叫びながら俺の所までやってきた。

 

「おいお前、なんでここに来たんだよ!?」

 

「それに一体どうやって二課から出たの!?」

 

 この2人が聞いてきてるようだが、俺は2人の言葉に聞く耳持たずで、目の前に警戒を置いていれば、ノイズの大群が火を押し退けて出てきたのである。

 

『『『『……………………』』』』

 

「やっぱ、全然通用しねぇか」

 

「「!!?」」

 

 俺はノイズに銃を向けて撃つが、残っている弾全てが通り抜けてしまい、俺は舌打ちをしながらホールドオープンした拳銃をノイズに投げ付けた。

 

「チッ、こいつも貰っとけ!」

 

 しかし拳銃がノイズに触れたとしても、炭素になってしまうため、なんの意味もないのであるが。

 

「相変わらず、嫌な力を持った連中だぜ…………」

 

 小さな声で呟けば、後ろにいた2人組の女が俺を引き下がらせるように、叫びながら前に出ようとしてきた。

 

「だったらあたしたちに任せて下がってろ! お前はあたしたちより重い傷を負ってるんだぞ!?」

 

「それにあなたは、あの不思議な力は持っていないはず? なおさらこれ以上危険に去らすわけにはいかない。だから下がって!?」

 

 女どもがギャーギャー騒ぐが、それでも俺は俺などもの前に手を出して、守るように前に立って言う。

 

「なら言わせてもらうが、お前らこそ今の状態じゃ俺より酷い満身創痍だろうが、そんな奴らが戦ってたら余計に危ねぇよ」

 

「そんなこと言ってるとこじゃねぇだろ!?」

 

「早く逃げて!?」

 

 俺は一旦言葉を止めるも、女どもがまた叫んでるが続けて言う。

 

「それに俺は昔からヒーローに憧れてた。それでも戦いの辛さや悲しさはよく知ってる。でも、だからこそ! 守りたいものや救いたいものがある! 諦めたくないことがあるんだよ!」

 

 そして俺は、この台詞を言って天に向かって右腕を強く伸ばした。

 

「だから、龍よ。…………撃龍剣よ。俺に力を貸してくれッ!!!」

 

 

 

 ──────心を開いてくれたか─────

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 

「!? な、なんなの!? 急に龍のキーホルダーと全ての鍵が光り出すなんて!?」

 

 機動二課の研究室では、モバイルモードのゲキリュウケンとマダンキーが強く光り輝いていた。

 

 

 機動二課・司令室。

 

「司令ッ! 機動二課内部で尋常ではないほどのエネルギーを感知。場所は研究室です!」

 

「…………!? まさか彼のあの私物か!?」

 

 機動二課で緊急を伝えるサイレンが鳴り響けば、サイレンを聞いたオペレーターの友里は、急いでその緊急事態の場所を調査して、司令官である風鳴弦十郎に報告した。

 もう何度目か分からない驚愕の声を出す弦十郎だが、そんな時に研究室にいる桜井了子が大急ぎでモニターを開いた。

 

「了子!? そっちでなにかとてつもないエネルギーを感知したようだが、もしや?」

 

『ええ、そう。彼の持っていた私物がいきなり強い光を放ち始めたの!』

 

 弦十郎の予想に頷きながら、了子はモニター越しからその現象を見せた。

 すると、ゲキリュウケンとマダンキーはさらに強い光を放てば、宙へと浮いた。それをモニター越しから確認した弦十郎は、マイクを使って了子に伝えた。

 

「了子。すぐにその付近から離れるんだ! なにか嫌な予感がする!?」

 

『『『きゃあぁぁっ!?』』』

 

『『『うわあぁぁっ!?』』』

 

『いやぁあぁぁっ!!??』

 

 弦十郎からの警告も遅く、モバイルモードのゲキリュウケンと全てのマダンキーは光を放って宙に浮き、そのまま地下にある機動二課の天井と地面をぶち破り飛んでいったのである。

 

 そんな中、その現場にいた研究員全員はなんとか無事であるが、桜井了子は最早この事態に付いていけず、呆然としながら呟いた。

 

『一体、なんなの?』

 

 モニター越しからその現状を見た弦十郎も言葉を発せられなかったが、それでもすぐ気を取り戻してオペレーターに指示を送った。

 

「藤尭! 友里! 大至急彼の私物のエネルギーをキャッチして、行き先をマークしてくれ!」

 

「「りょ、了解!」」

 

(恐らくだが、あれが飛んでいったと言うことは、その行き先は)

 

 弦十郎は、ゲキリュウケンとマダンキーが飛んでいった方向に考えを付けるが、すぐにオペレーターの2人はその調査を終え、行き先を弦十郎に報告した。

 

「司令、調査の特定終わりました!」

 

「そして行き先も判明。場所は…………奏さんと翼さんとがいる場所、ノイズの出現場所に当たります!」

 

「…………やはりそうか。彼自身の想いかなにかが、あれを飛び寄せたと言うのか…………?」

 

 ゲキリュウケンとマダンキーは剣二が居る場所に向かって、弦十郎は深刻な顔を向けた。

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

「うわっ、なんだ!?」

 

「なにこの光!?」

 

『『『『!?!!?』』』』

 

 強い光がこの場にやってきたことに、2人組の女は手を顔の前にやりながらも、目を瞑って光を遮断し、ノイズの大群もこの光に驚愕していた。

 しかし俺だけは、この光に一切驚くことなどせず、落ち着きながらもその光を手にした。俺が手にし光にあったのは、剣の姿をしたゲキリュウケンと俺が今持っている全てのマダンキーがあった。

 

「心を開いてくれたんだな。…………お前の心、俺が熱くさせてやれたんだな!」

 

 そう言いながらも、俺はゲキリュウケンを強く握り締め、ノイズへと向かっていく。

 

「行くぜゲキリュウケン!」

 

「な、なにやってるの!?」

 

「おいバカ、やめろっ!!!」

 

 ノイズに向かって走り出せば、小型ノイズのヒューマノイドノイズは俺を炭素にしようと迫ってきた。

 

 

「ふっ、はっ、らあっ、であぁぁっ! シッ! せあっ、ぬんっ、おらあっ…………これで終わりだ!」

 

「嘘…………だろ」

 

「そんな、生身でノイズを倒すなんて…………!?」

 

 ゲキリュウケンを振るって、一撃の元で俺に向かってきた11体のヒューマノイドノイズを葬り去り、目の前で起きた出来事に朱色の髪の女と青髪女は驚いていたが、俺は気にするとなくゲキリュウケンの柄の部分を上げ、マダンキーを挿し込む場所を出現させた。

 

「リュウケンキー発動!」

 

『チェンジ リュウケンドー』

 

 リュウケンドーに変身するためのリュウケンキーを発動させ、ゲキリュウケンに挿し込んで回し、ゲキリュウケンから青白い光のエネルギーが発した。

 

 俺はゲキリュウケンを俺の前まで持っていき、強く変身の言葉を叫んだ。

 

「撃龍変身!!!」

 

 その言葉とともに、ゲキリュウケンから青白い龍が昇り、空で龍の咆哮を放てば、そのまま俺に向かって龍は突撃してくる。

 

「…………ふっ!」

 

 青白い龍をその身に受ければ、俺の体には青と白の鎧が身に纏い、手と足には龍の顔を模した手甲と足甲のガードが装着され、そして金色の龍の顔が入った仮面を纏って変身を遂げ、俺はゲキリュウケンを振りながら魔弾戦記リュウケンドー第1話での決め台詞を言う。

 

 

 

「光と共に生まれし龍が、闇にうごめく魔を叩く! 魔弾剣士リュウケンドー。…………ライジンッ!!!」

 

 

「魔弾剣士…………」

 

「リュウ、ケンドー…………?」

 

『それが彼の、あの姿の名前なのか?』

 

「お前らはそこで大人しく見てな。行くぜッ!」

 

『『『!?!?』』』

 

 俺は2人組の女にじっとしてろと言って、ゲキリュウケンを握り締め、小型ノイズの集団に先制攻撃の斬撃を与えた。だが、俺は止まることなどせず、ゲキリュウケンの柄をまた上げて、マダンキーを発動させる。

 

「レオンキー、発動!」

 

『ブレイブレオン』

 

「派手に暴れろブレイブレオン!」

 

 召喚魔法のエネルギーを地面に向ければ、魔方陣が現れてそこから獣王ブレイブレオンが誕生した。

 

『ガアァァァァァァァア!!!!』

 

「あの時の!?」

「ライオン野郎!?」

 

 魔方陣から出現したことにまた2人組の女は驚くが、ブレイブレオンもそんなこと気にすることなく、ノイズの大群に向かって飛び掛かっていった。

 

『『『!!?』』』

 

『グルルルゥゥゥゥゥ!!』

 

 ブレイブレオンはダチョウ型ノイズの喉元を噛み千切り、小型のヒューマノイドノイズやクロールノイズを踏み潰していき、今はギガノイズにぶち当たって押し合いをしていた。

 

 

「おらぁぁっ!」

 

『!?』

 

 俺はそんなことなど気にせず、ゲキリュウケンでヒューマノイドノイズを斬り倒し、次にマダンキーホルダーからナックルキーを引き抜き、ゲキリュウケンに挿し込んで回し発動させた。

 

「ナックルキー、発動!」

 

『マダンナックル』

 

「出ろ、マダンナックル!」

 

 左腕にマダンナックルが出現し、マダンナックルのキバを展開して、俺は周囲に居る小型ノイズに向かってナックルスパークを放った。

 

「ナックルスパーク!!」

 

『『『『!!??』』』』

 

 複数のノイズをナックルスパークで葬っていき、さらにゲキリュウケンを振るっていき、ノイズを炭素の塊にしていった。

 

「お次はこのマダンキーで行くぜ。…………スラッシャーキー発動!」

 

 マダンナックルを消して、次にエメラルドの色をした龍がブレスを放っているマダンキーを抜き取り、必殺技を発動させた。

 

『マダンスラッシャー』

 

「マダンスラッシャー…………斬り裂いてやるぜ!」

 

 その音声が鳴ると、ゲキリュウケンの剣の部分が緑色の光を放ち、俺は無数にいるノイズを斬り裂いていった。

 

『『『!?!?』』』

 

「ふっ! …………おらぁぁぁっ!」

 

『!?!!?』

 

 魔弾スラッシャーの発動時間がなくなりそうであったため、最後に俺はダチョウ型ノイズの首元を狙ってマダンスラッシャーで斬り裂いた。

 

 このスラッシャーキーと言うのは、かつてテレビマガジンの特典として付属していたマダンキーである。転生する前はその特典のマダンキーをよくゲキリュウケンや他の魔弾龍の武器に挿し込んで遊んでいたものだ。発動すれば龍の目が光り『マダンスラッシャー』と音声が鳴る。スラッシャーキーをセットした状態で、アクションボタンを押せば、龍の目が光り召喚音が鳴った。

 

 実は、このスラッシャーキーについて詳しいことは分かっていないのだが、俺の見解では恐らくリュウガンオーが持つショットキーと同じだろう。

 ショットキーは100発の弾丸を連続で発射していることが特徴だ、それならこのスラッシャーキーも敵を一掃する魔弾斬りに対して、威力は落ちるが100回分の必殺剣を放てられるのだろう。

 

「す、すげぇ…………」

 

「あんなにいたノイズを、あっという間に…………」

 

 驚嘆する2人組の女の声を耳にしながらも、俺は動きを止めずノイズを倒すことに集中する。

 

「今回は特別にマダンキーの大放出だ。お次はこいつだ! ダガーキー発動!」

 

『マダンダガー』

 

 マダンスラッシャーの発動時間が終えれば、次に俺はダガーキーをゲキリュウケンに挿し込み、発動させた。

 

「いでよ。マダンダガー」

 

 魔方陣が出現してマダンダガーが飛び出てくれば、難なくマダンダガーをキャッチして、ドーム状の部分をノイズに向けて、ダガースパイラルチェーンを放った。

 

「一網打尽にしてやるっ! ダガースパイラルチェーン!!」

 

『『『『『!!??』』』』』

 

 ドーム状の部分からダガースパイラルチェーンを放てば、複数のノイズどもが1ヶ所に集まっていき、その一瞬を狙ってゲキリュウケンを真横に向け、気合いを入れて集まったノイズを一刀両断で斬り裂いた。

 

「うおりぃやあぁぁッ!!」

 

『!!!??』

 

 1ヶ所に集まったノイズを斬り倒せば、すぐに俺は放っておいたブレイブレオンの方に顔を向けて、声を掛けた。

 

「ブレイブレオン大丈夫か!?」

 

『ガアァァァァァァッ!!!!』

 

『!!?!?』

 

 ブレイブレオンの方を見れば、ギガノイズの首に噛み付き、そのまま力任せに捩じ伏せギガノイズを葬り去り、周囲にいるギガノイズが出したと思われる小型ノイズを葬り去っていった。

 

「とんでもねぇな…………」

 

 そんな感想しか出なかったが、すぐ俺は残っているノイズの方へと移した。

 

(…………残るノイズはギガノイズが2体。ダチョウ型が6体。そしてヒューマノイドとクロールが10体越え…………ならこいつで決める!)

 

 心の中で残りのノイズの数を数えた俺は、勝負に出ることを決め、ブレイブレオンを先に牽制した。

 

「ブレイブレオン。残りは俺が片付けるから手を出すな」

 

『…………グルゥゥゥゥゥ』

 

 俺の言葉に、ブレイブレオンは納得がいかないと言った唸り声を出すが、俺の言うことを聞き大人しく後ろに留まった。

 そして俺はマダンキーホルダーを回して、ファイナルキーを抜き取り決めることにした。

 

「これ以上ノイズは出させねえ! ファイナルキー…………発動!」

 

『ファイナルブレイク』

 

 ファイナルキーを発動して、ゲキリュウケンに挿し込んで回せば、ゲキリュウケンに青白い光が纏い始めた。

 

「いくぜッ! こいつが俺の必殺技だ!」

 

 俺はゲキリュウケンを両手で握り締めながら走り出し、飛び上がれば1回転のジャンプをして、残っているノイズに向かって必殺技を放つ。

 

「ゲキリュウケン! 魔弾斬りッ!!!」

 

『『『『『!!?!?』』』』』

 

 必殺技の魔弾斬りを放ったことにより、残っていた全てのノイズは炭素も残さず纏めて消し飛び、俺は地面に着地し1度ノイズが居た場所を見詰めるも、すぐに背中を向けて右手に持っているゲキリュウケンの剣の部分を肩に乗せ、さらに顔半分をノイズが居た場所に向けてこの台詞を与えた。

 

 

 

「認定特異災害ノイズ…………闇に抱かれて眠れ!」

 

 リュウケンドーの決め台詞を言って、俺は視線とともに顔を戻し、肩に乗せていたゲキリュウケンを〝ジャ〟っと右斜め下へと下げた。

 

「…………これで終わりだな。ブレイブレオン、ビークルモードだ」

 

『ガアァァァァァァッ!』

 

 ブレイブレオンは咆哮を上げれば、ジャンプし空中でレオントライクに変形した。

 

「………………………………」

 

「!? な、なあッ!」

 

「ま、待って! 帰らないで!?」

 

 レオントライクに跨がり発進させようとしたが、それを黙ってじっとしていた2人組の女が俺を呼び止めようとするが、俺はそれになんの反応などせず伝えることだけ伝えることにした。

 

「てめぇらの基地で派手にやった。色々と大変なことになってんだろうが、お前らの命を救ったんだ、これでチャラにしてくれ。じゃあな」

 

 朱色の髪の女と青髪女に最後にそれだけ言って手を振り、俺はレオントライクを走らせここから去った。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「おい、待てよ!?」

 

 女の声など無視して、レオントライクのスピードをさらに加速させ、この場からさっさと退散した。

 

 

「あ~あ、今から帰ったら確実に響や両親、婆ちゃんからの説教コースか。最悪じゃねえか…………」

 

 俺はぼやきながら、家族からの説教に覚悟を決めてブレイブレオンを走らせる。

 ついでに喜一への謝罪の連絡も忘れずにやっておいた。

 

 to be continued.




 ちょっとだけタイトルを変えました。申し訳ございません。
 ここからはライジン!でいきます。
 やっぱりこっちの方がいいかなと思ったので、勝手ですみません!
 そしてテレビマガジン特典のマダンキーも使用しました。どうでしょうかね?


 もう録な息抜きが出来ないから嫌になるを通り越して、もうただ小説を描かずに金銭を稼いで終わっていく、なにも感じない1日です。

 もういっそのこと、ここのメッセージ機能を利用して、話し合おうかな?
 どなたか話し合ってくれますか?



 次回予告。

 あの人間の皮を被ったゴリラの身勝手な行いのせいで、俺は家族からとてつもない説教を受けた。
 さらには響からも説教を受け、なんとか許しを得ることに全力を尽くした。

 家族からの許しを得ることが出来れば、その数週間後に人間を辞めた司令官から連絡がきて、機動二課とやらに行くことになった。

 予想通りめんどくさいことが待っていやがった!?

 そしてそこから口にする、隠された俺の大罪。

 それなのに、シンフォギア装者で有名アイドルの天羽奏と風鳴翼と模擬戦をすることになった。
 俺とお前らとじゃ勝負の結果は分かりきってると思うんだが?

 そして語られる罪と天羽奏が俺を憎む理由。


 次回 魔弾戦姫リュウフォギア

 機動二課との対面と俺の罪

 次回も魔弾剣士リュウケンドー! ライジン!


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