せがた三四郎 ZERO(お試し) (赤バンブル)
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異世界での目覚め
1998年
かつてSEGAから発売された次世代のゲーム機「セガサターン」に命を賭けた男がSEGA本社を守るために発射されたミサイルと共に宇宙へと散った。
「セガサターンしろ・・・・・・セガサターンしろ・・・・・・」
男の名は「せがた三四郎」。他の軟弱な遊びなど一切許さず、セガサターン一筋に生きた男であり、ある時はセガサターンの遊び以外に現を抜かぬ軟弱な者達を成敗、ある時は過労で倒れてしまったサンタクロースに代わって、中身をすり替えたセガサターンを子供達に配り歩き、またある時は投げ飛ばしても起き上がってくるゾンビたちに恐怖し、またある時は分身したり、マグロを捌いたり、一言では語り尽くせない壮大なSEGAにかけた人生であった。
そして、彼は湯川専務含める当時のSEGAスタッフの方々、セガサターンに代わる次世代機「ドリームキャスト」を守るべく、本社に飛んできたミサイルに飛び移り、気合で軌道を変え、宇宙へと飛び立っていった。すべてはSEGAを守るために・・・・・・。
「セガサターン・・しろおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
彼はミサイルが爆発する瞬間まで、宇宙から人々に訴え続けた。
セガサターンをしろと。
そして、爆発と同時にせがた三四郎は姿を消した。
死んだという者もいれば、生きていると信じる者もいる。
その後彼が守り抜いたドリームキャストがプレステーション2に敗北し、SEGAが家庭用ゲーム機からのも退した後もセガサターンを愛した子供たちは今でも覚えている。
「せがた三四郎の真剣遊戯」を。
一方、ここは22XX年。
度重なる戦いにおいて世界は荒廃し、人間は極めて自分たちに近い思考を持つ『レプリロイド』に管理された『ネオ・アルカディア』と呼ばれる安息の地で暮らすようになっていた。
しかし、その裏で罪もないレプリロイドたちが次々とイレギュラーとして処分されていた。
イレギュラーと決めつけられたレプリロイドたちは元ネオ・アルカディアの科学者であった少女シエルと共にレジスタンスを結成し、一方的に処分するネオ・アルカディア側に抵抗するが圧倒的武力を持つネオ・アルカディアの前に徐々に追い込まれていく・・・・・。
「ハア・・・・ハア・・・ハア!」
「シエル!こっちだ!!」
レジスタンスのメンバーと共にシエルは、ある遺跡へと向かっていた。情報が正しければその遺跡にかつてネオ・アルカディアの創設者であり、英雄と呼ばれている「エックス」と並んだ「紅き英雄」が眠っているのだという。しかし、ネオ・アルカディア側は彼女たちの動きを察知し、殲滅せんと部隊を送り込んできた。大半のメンバーが犠牲覚悟のうえで自ら囮となり、シエルは一部のメンバーと共にどうにか遺跡の目の前へと辿り着いた。
「ここが・・・・・伝説の遺跡なの?」
『間違いないわ!ここから何かすごい力を感じる・・・・・』
息を切らしながらシエルは、目の前にある遺跡を見た。周囲が既に植物に覆われていたこともあって遺跡はほぼ忘れかけられたような姿をしていた。
『・・・・・・・しろ・・・・・』
「えっ?」
『セガサターン・・・・・・・しろ・・・・』
「せが・・・・・さたん?誰なの?」
「どうした?」
遺跡の周囲に爆弾をセットしていたレジスタンスのメンバー ミランは、不思議そうに声をかける。
「え・・・・・いいえ、何でもないわ。先を急ぎましょう。」
「そ、そうか・・・・・・爆破するからシエルは下がっててくれ。」
シエルが下がるとミランは起爆スイッチを押す。
一見固そうに見えた壁は時の流れと共に劣化していたこともあって呆気なく崩れ落ちた。中に入って行くとそこには空洞が広がっていた。
「ここは俺に任せろ!速く先へ!」
彼女と共に付いてきた残りのメンバーもミランを残して配置に着く。シエルたちが奥へと進んで行くとそこには円形の白色光が照らした先に在るモノが見えた。
「・・・こ、これが・・・・伝説の英雄・・・・・なのか?」
「・・・・・・・」
そこには紅いヘルメットを被った伝説のレプリロイド・・・・・・・ではなく、白い柔道着を来た男が眠っていた。
「・・・・・・」
話と全く違うためシエルは言葉を失う。
ここには伝説の英雄が眠っているはずだ。なのにどうして英雄ではなくこの謎の男が眠っているのか?それがさっぱりわからなかった。
「と、取り敢えずやっと見つけたんだ。早く・・・・・うわっ!?」
ミランは眠っている男に近づこうとしたが謎の見えない壁に阻まれる。
『プロテクトがかかっているみたい。』
「そんな・・・もうネオ・アルカディアの連中がすぐ近くにまで迫っているというのに・・・・・・」
シエルはプロテクトを解除しようと試みるが内側に装置が設けられているのか解除できない。
「ダメだわ・・・・・・」
「くそ!ここまで来たって言うのに・・・・・・・」
「うわっ!!」
「「!?」」
後ろからの悲鳴に二人は振り向く。そこにはレジスタンスのメンバーを殲滅したのか赤い単眼に青いボディを持つ「パンテオン」たちがバスターを構えて迫って来ていた。
「シエル、仕方ない。ここは一旦脱出しよう!」
ミランはシエルをかばいながらバスターショットで応戦する。
「で、でも・・・・・・・」
「時間がない!はや・・・・・」
そう言いかけたとき、パンテオンの撃った光弾がミランの頭部に直撃する。ミランの頭は吹き飛ばされ、その場に倒れた。
「ミラン!!」
ミランの最期を見てシエルは思わずそこに跪いてしまう。
自分以外皆やられてしまった。
脱出しようにも既に目の前にはパンテオンの集団。
逃げ場はなかった。
『シエル!』
すぐ傍にいるサイバーエルフのパッシィは必死にシエルに呼びかけるが反応はない。
『シエル、しっかりして!シエル!!』
「・・・・・・助けて・・・・・・・お願い。」
その声に反応したのか眠っている男は一瞬動いたような気がした。そうしている間にもパンテオンたちはすぐ目の前にまで迫っていた。
『・・・・・・・』
覚悟を決めたのかパッシィは、シエルから離れ男の方へと向かう。
「パッシィ?」
『私の力を使ってあの封印を解くわ。そうすれば助かるかもしれない。』
「!?でも、そんなことしたら!?」
サイバーエルフにはそれぞれ特殊な能力を持ち合わせている。しかし、その能力を使ってしまうとサイバーエルフは死んでしまう。
「やめて!そんなことしたら・・・・・・」
『みんなシエルの帰りを待っているの!それを忘れないで!!』
そう言うとパッシィは能力を開放して男の方へと飛んでいく。
「パッシィ――――――!!」
パッシィがプロテクトに差し掛かった瞬間、周囲は一瞬眩い光に満ちた。
『・・・・・えっ?』
しかし、パッシィは死んでいなかった。シエルも目を開いて驚く。
パッシィは、先ほどまで眠っていた男の手の中におり、男は闘志に燃えた目でそっと放してあげた。
「・・・・・・・あれは・・・・・」
「・・・・・」
男はパンテオンたちの方へと向き直る。パンテオンたちは突然目覚めた男を敵と認証してバスターを発射する。
「とりゃぁー!!」
男はパンテオンの光弾をものとせず一気に距離を狭め、次々と背負い投げをして撃破していく。その男の放った技の衝撃にパンテオンたちは耐え切れずショートを起こして倒れて行く。
「!?」
残ったパンテオンはこの得体の知れない男を見て思わず後ずさる。当の男は彼を残して既に目の前にいた。
「・・・・・・・・・」
バスターで応戦しようにもこの男には効き目があるとは思えない。応援を呼ぼうとその場から逃げ出すが男は許さなかった。
「チェスト―!!」
「!?」
勢いよく飛び蹴りを喰らい、パンテオンはすごい勢いで飛ばされる。そのパンテオンに後から追ってきたパンテオンたちが衝突し、シエルが気付いたときは周囲はまるで処刑所のような光景になっていた。
「・・・・・!」
「あ、あの・・・・・・・」
「こいつら人間じゃねえ!?」
「えっ?」
これがせがた三四郎、異世界における最初の戦いであった(汗)。
続くかわかりません(ロックマンXも連載中なので)。
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