アカメが斬る!妄想は妄想だからイイのだ (小説家(笑))
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第一話 戦闘狂を斬る!

前に投稿していた小説がエタってしまったので
新しくリメイクして投稿します。

今度はエタらないように頑張りますのでよろしくお願いします。


ぽかぽかと包むような優しい春の陽気のある夜。大阪のとある一軒家で俺『赤松幸田』は自室に篭って昨日発売された『アカメが斬る!』の最終巻を読んでいる。

 

「おいおい嘘やろマジか。なんでわざわざレオーネ最後に殺すん!殺さんくったていいやないか」

 

タカヒロ先生め、あんたも虚淵側の人間か!最後くらい誰も死なへんハッピーエンドを迎えたって誰も文句なんて言わへんやろうに。

しかし、改めて今までのストーリーを振り返って思うんは……

 

「やっぱ、おもろいんだよな~アカメが斬るは」

 

『アカメが斬る!』とは、帝国の圧政によって苦しむ村の少年剣士・タツミが、旅の途中で殺し屋集団「ナイトレイド」の一員である赤目の少女・アカメと出会う。そして仲間達と共に、腐敗した帝国に立ち向かう。中世的なSF要素を織り交ぜたダークアクションファンタジーである。

 

前もって言うとっけど俺は姉萌え主義の変態である。

 

そう『姉萌え主義の変態』である。

 

つまり何が言いたいんかと言えば『アカメが斬る!』は俺のオアシスなんや。エスデス、レオーネ、ナジェンダさん、シェーレ どのキャラも最高スグる…。

結局ナジェンダさん以外い亡くなってしもたけど…。ちなみに言うと最高お姉さんはエスデスや。

 

ていうーかもう夜中の2時過ぎてるやん。早く寝んと。

 

「あーもうくっそ。アカメが斬るの世界で姉パラダイスしたいわ!おやすみ!」

 

む、そういえば枕の下に見たい夢の本置くとその本の夢が見れるっていうな

 

「でゅふふふ……夢の中で姉パラ、姉パラ♪」

 

 

そしてそのまま俺の意識は遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 朝

 

 

 

 

 ピピピピピピ……

 

朝の目覚ましの音ともに俺の意識は朝を迎える。

 

「イツッー。やっぱベットにして貰った方がええな」

 

結局、夢見られんかったな。誰やこんな根も葉もない噂流したんサイテー。

 

「さて、朝のラジオ体操をせなな…」

 

ムニュ 

 

どうしたんやろうか俺は今ただ手をついて(・・・・・)立とうとしただけ。ただそれだけやのに、それだけやのに!

 

どうしようもないくらい手が幸せなんやがああああああああ!

 

その至福の正体は一体……

 

「…………」

 

その時の俺はあまりの衝撃に時が止まったかのような感覚やった。これがクロックアップってやつか。

 

ふっ人間はあまりの衝撃を受けると言葉が出てこないというのは本当らしいな。

今、目の前に広がっているもんは言葉では表せないほど美しいものや。客観的に事実だけをいうと…

 

しゃぶりつきたい……

いやいやいや待って。ちょっと待ってみんなそんなに引かないでもええやん!つい本音がでただけやないか。思春期男子にはよくあることや

 

青く透き通るような長い髪。肌は病的に白いがそれも彼女の神様が手づから作ったような美しさの前ではただのアクセントにしかならない。

ちゅうかなんでエスデスが寝てんの。

 

あ、みんなちょっと待って。スウーーー

右手を鼻にもっていき深呼吸の用量で深く指の付け根から吸い込む。

 

アカンわ~、これはアカン。俺の手がゴッドハンドと化してしもたわ

 

「あのー」

 

左右にゆらゆら揺さぶってみる。

 

「ッ――」

 

俺の手がエスデスに触れる直前にものっすごい速さで組み伏せられたんやが……ていうか

 

「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」

 

「ここまで敵の接近を許すとは。私も焼きが回ったか」

 

俺を組伏せたままエスデスの値踏みするような視線が背中に刺さる。

そんな警戒されても!はっきりいうて俺へぼやで!

 

「ちょ、ま、待ってーな!俺は怪しもんやない!誤解やて!誤解」

 

「ほう。何が誤解というのだ。人の寝床に入りこみ寝首を搔こうとしていたのは貴様だろ」

 

「いやいやいやいや。エスデスさんの寝首なんて掻こうとしてへんし駆けへんよ!」

 

背中から冷たい冷気の様な感じが伝わってくる。

やばい、このままやと殺される。何かいい方法は……

 

「あ、周り!周り見てみて!エスデスさんの部屋とちゃうでしょ!」

 

「む」

 

部屋を見渡し、窓から外を確認している。外の風景があまりにも元の世界と違いすぎるせいかエスデスの視線が宙をさまよっている。

 

「どう?嘘やないで…グォ!」

 

胸倉を掴まれて足が浮く。これが文字通り浮足立つってか!ハハッ

 

「どういう仕掛けだ。私に気づかれずにどうやってここまで運んだのだ」

 

「いや違うって!エスデスさんはたぶんやけどポッとこの場に現れた感じなんかなと思うわ」

 

「どういうことだ。転移系の帝具か何かか。ここは明らかに帝都と暮らしに差がある。それに……あのような巨大な建物、帝都にある建築士には作れんぞ」

 

事の難解さに気づいたのか首回りがより一層閉められる。

 

「く、苦しい…。お、俺にだってはっきりわからへん…でもこれだけははっきりと言える…ここはエスデスさんがいた世界とはまた別の世界っていうことはな」

 

「ふざけたこと言うな。百歩譲って国が違うのは理解できるが世界が違うとはどうゆうことだ。世界が違うというなら何故お前にその違いがわかる。世界が違うのなら私の名前だって知らないだろ」

 

エスデスの言っていることは最もだ。

国が違うのは帝具の能力ということで理解できる。近隣の国ならば大将軍としてエスデスの名は帝都以外にも広まっていてもおかしくない。しかし、世界が違うというのは馬鹿げているとしか思えない。

 

「んな事言われたって……あっ!」

 

俺の視線の先にあるもの。エスデスとの揉めあいで枕の下にあるアカメが斬るのコミックスが転がっていた。

俺の視線につられてエスデスもそのクールな顔を崩す。

 

「なに!…こ、これはっ、アカメ!」

 

そう『アカメが斬る!』第一巻の表紙は主人公のアカメ。これ見たらさすがに理解するしかない。

エスデスの拘束が解かれて尻餅をつく。

 

エスデスはパラパラと中身を食い入るように見ている。

 

「なんだこれは、ナジェンダ、ブラート、マインそれに……タツミまで。どうゆうことだ貴様、この本は一体なんだ。文字は読めんがここに出てきているのはナイトレイドだろ。何故、帝国すら知り得ていないメンバーまで、ここに載っている!」

 

うわー。殺気、漏れてるよ。(答え、ミスったら死ぬやつやん)

 

「だから、この世界でエスデスさんは漫画の……まあ、かみ砕いていうんやったら絵本の登場人物で、俺はその本の愛読者っちゅうわけで。だから名前も見た目も知ってるですよ。ちなみに言うとくと一番好きなキャラはエスデスさんです」

 

「……っ」

 

エスデスは絶句してる。視線が俺の部屋を右往左往する。やがて机に視線が向く。

あ、そこには昨日全館読み返してたアカメが……。あ、エスデスさん崩れ落ちた。自分が表紙の本(アカメが斬る!4巻)を見てついに理解したいだ。

帝具シャンバラによってタツミと無人島に飛ばされたときとは次元が違う話なんだが。そのときには帰る方法がいくつかあったけどこのケースは未知数すぎてわからんが。心中お察しする。

 

すると、解決の糸口を求めてかエスデスさんは俺に希望を託して頼んできた。

 

「お前、戻る方法を知っているか?」

 

「分かりまテン☆ …ありがとうございますっ!」

 

エスデスの希望はあっけなく打ち砕かれた(打ち砕いた?)のだった。ふははははは、残念エスデスさん。私共の業界ではこれはご褒美なのさ!

 

ふはは!ふはは!ふっはははははははははは!

 

……ちょー痛ぇ

 

 

 

 




主人公の部屋の間取りはのび太の部屋を想像してください。

次回の投稿は1ヶ月以内を目指したいと思います。

2019/9/4 文を一人称に変更


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第二話 少年を斬る!

意外と早く投稿できた!

ではどうぞ!


エスデスは、帝国最強と謳われる女将軍。

若くして将軍になり、征伐に一年は掛かると言われた北方異民族の都市を瞬く間に滅ぼすほどの実力を持つというとんでも超人。

さらに40万人の異民族を生き埋めにして、拷問が手緩い(それでも十分酷い拷問やったんやが)ゆうことで拷問官達を逆に調教したり、性格は極めて冷酷非道の超ドS。

 

 

  拝啓、神様へ

 

 先日、非日常的な体験を夢でもいいから味わいたいとお祈りみたいなことをしましたね。

そしたら、こんな青髪ロングヘア美人で且つグンバツボディの持ち主を夢でなく現実に送ってくださるとは感謝してもしきれません……

 

 なんて

 

誰が言うか!くそったれな非日常をよくも寄越したなクソ野郎!一生呪ってやる!

目覚めて、俺が神様転生でもするならチート能力でイージー生活できるってのに向こう(アカメ)の最狂をこっち(現実)呼んでどうすんだよ!

俺なんかにエスデスの舵取りができると思ってんのか!できるわけねぇよ!3日ももたねぇよ!俺なんかヌマセイカ(ペット)にすらなれねぇよ!この世界の人間になんちゅう規格外なバケモン送り付けてんねん!身体能力ですら超強いのに、やのに帝具まで使えるって……ん、帝具って使え―――

 

「エスデスさん帝具って「問題ない」…さいですか」

 

エスデスは少年の机の上に氷でできた馬や人の人形を作っていく。

 

瞬く間に10対10の向かい合った部隊を出現させる。この平凡世界に来たことで弱体化をしていることに期待していた少年はガックリと肩を下げる。

 

「おい」

「ひ、ひゃい!」

 

突然の呼びかけに驚き、少し噛んだがエスデスの威圧感にもだんだんと体が慣れてきのか少年は返事をすることができた。

 

「お前の名前をまだ聞いていなかった。お前は私の名前を知っているのに私がお前の名前を知らんのも気にくわん」

 

「な、名前ですか。あ、赤松幸田っていいます」

 

少年もといコウタはエスデスの気に食わないことでもしたかと内心かなり焦っており冷や汗で全身を濡らしていたが、思いの外普通な質問に安心する。(エスデスって意外とまともなのかな?)

 

「アカマツコウタというのは名前か?姓か?」

 

「赤松が姓で幸田が名前です」

 

「なら、コウタと呼ばせてもらう。……ところでだがコウタ。湯浴びでもできるところはあるか?」

 

ゆ、湯浴び!?っとコウタは驚き目を見開く。

ただでさえ、見た目だけ、見た目だけ←(ココジュウヨウ)は傾国の美女と言っても差し支えないくらい綺麗なのだ。そんな美女が突然部屋にワイシャツを一枚だけ着て現れて……ん?ワイシャツ一枚?

 

「あ、あぱぱぱ、ばば……」

 

気づいた。気づいてしまった。エスデスが現実に来たことに気を取られて服のことなんて意識していなかったが気づいてしまった今、コウタの頭からプシューと蒸気を立たせ、顔はゆでダコのように真っ赤になる。

 

「ど、どうした…!」

 

浮浪者のようにプシュープシューとぶつぶつ呟き脳が限界の限界を越え、ショートしてしまう。

仰向けに倒れそうになるが、エスデスがぎりぎり受け止めるもコウタの意識は彼方へといく。

 

「な、なんなんだコイツは…」

 

思春期の高校2年生のチェリーの気持ちはエスデスにはわからなかったようだ。

 

 

 

「もう、コウタ!いつまで寝テンの…」

 

 

 

突然の訪問者。髪にはパンチパーマがあてられ、顔は平べったくそして、どこかコウタと似ている40代程の女性。何を隠そう「母ちゃん」である。

 

現在、時刻7時30分。大抵の子持ち母は部屋から出ていない我が子を起こしに来るであろう時間。

そんな、母ちゃんが息子の部屋のドアをノックもなしに開け、息子をたたき起こす(文字通り)。そんなありふれた光景が繰り返されるはずだった。

 

だがしかし!

 

なんということか!

ドアを開け広がるのはワイシャツ一枚の青髪美女がエビ反りになっている息子を抱き止めているではないか!。

 

「………」

 

「………」

 

エスデスも母ちゃんも一言も喋らなず無の時間がながれる。パシャンと乾いた音ともにドアが閉まる。

 

「ステイステイ。ふぅ…落ち着け私。疲れてるのかしら……ふぅ、よし」

 

再びドアを開ける。いつもの光景が広がるようにと祈りながら。

 

「ヘヤアアぁぁあぁ!」

 

そこには、氷でできた三角木馬にまたがる白目の息子と鞭を持つ青髪美女がいた。

 

「なんかさっきより酷いんですけど!」

 

母ちゃんはパニックを起こして、下に降りていった。

 

「はっ、はぁぁあ……何か一つ大切なモノを失った気がする」

 

コウタは母ちゃんの叫びで目を覚ます。

 

「やっと起きたか。さっき、何か叫んで行った女がいたがお前の母親か?」

 

「え、たぶんそうだと………って、いやぁぁあ!」

 

自分の股が妙に冷えると思い下半身を確認する。そして現状を理解する。

 

「まさか、この姿を見られた訳やないですよねエスデスさん」

 

「見られたに決まっているだろ」

 

「いやぁぁあああああ!」

 

三角木馬が消え、そのまま床に足を強打するが羞恥心が勝ち顔を両手で覆い叫ぶ

 

「うるさい、お前らは人の顔を見たら叫びだすのか!」

 

「てやんでいチキショーバロー!何で俺がこんな目にー」

 

エスデスを無視して自分の世界に浸っていると、視界に時計が目にはいる。

 

時刻は8時……学校!

 

全てを投げだし忘れようとその場しのぎの考えで学校に向かおうと駆け出す。

 

(ヤバっ、今日という日ほど学校に行きたいなんて思たことないわ)

 

ハンガーにかけられた制服をひったくり、そそくさとはや着替えをして何も入ってないが鞄を取り扉にダッシュ。

 

この間わずか5秒!

 

コウタは追い詰められたことで人の、人間の限界を越えた!

 

だがしかし!

 

人の限界を越えたコウタですらエスデスにはアリに羽が生えた程度。

ドアにたどり着こうとしたところで後ろから飛びかかられそのまま部屋の廊下の壁にコウタは背中を強打する。

 

エスデスとはというと、コウタに馬乗りになって口角を吊り上げて笑っていた。

 

「今のはいい動きだったぞ。だが、私を満足させるには毛ほども足りんがな」

 

「そいつはどうも、あっしは学校があるんで失礼します~」

 

立ち去ろうとするとエスデスの手がコウタの両腕を床に押し付て脱出を阻止する。

 

「おいおい、コウタ。まさか右も左もわからん今の私を放置して逃げだそうなんてしてないよな?」

 

エスデスの顔が目と鼻の先まで近づき囁く。

すぐにでも興奮で悶絶しそうだが、まだ余裕がある。顔が近くらいでは意識はとんだりしない。そう、それだけなら大丈夫だった。

 

エスデスの顔が耳元から離れてお互いに向き合う。エスデスの深い青に淡い緑が散りばめられた美しい瞳。見つめていたら吸い込まれそうな感覚がして視線を下にやると

 

(夕張メロンだ~)

 

意識がお花畑に向かっていく。首を持ち上げる力が抜けてコテンと床に頭をつける。そして、視線は廊下の先に向けられ…………目が合う。

 

瞬間、血の気が引いていくのを感じる。今一番見られたくない人に見られている。

端から見れば今の構図はまずい。一人は床に押し付けられ、一人はその上に馬乗りになり笑っている。馬乗りになっているのは男だと犯罪臭がするのだが今回のケースは女が馬乗りになり男を押さえつけている。逆レ○プ、騎○位……そんな単語が母と子の思考の中に流れる。

 

「ハヤク、ガッコウイキナサイネ…」

 

去っていく母の背中をただ見つめることしかできない。ここで止めたところで気まずいだけ。そう、それだけ。

 

「グスン…エスデス…も、もヴ…わかったから。離ぢて…」

 

若干、半泣きになるコウタ。

 

「何を泣いている。たかだか母親に見られただけだろ。それのどこになく必要がある。それより、湯浴びはどこでできる?」

 

「あっぢ…」

 

鼻をすすり、半べそで現代のお風呂の使い方をレクチャーする。一つ一つ使い方を説明する度に、面白いほど驚くので楽しかった。

説明が終わり、エスデスが風呂に入っている間に服を用意し、そして、学校へ…!

 

「逃げたら…わかっているな」

 

なんて、できるはずもなく。風呂に将軍がいる間にエスデスの説明をドアの陰から睨んでくる母にする。

 

「あの人はいったい誰」

 

「神様の贈り物☆ …ヒッ」

 

大変真面目のガチ回答をするとテーブルに置いていた手の指の間に(恐らく)母ちゃんの手から放たれたフォークが刺さる。

 

「次、当てるわよ」

 

目が笑ってねぇ~。つか、殺気…漏れてるよ。

 

母ちゃんが実は殺気を出せるほどの武道派だと知り、今日は初めてが多いな~と他人ごとのように考え始める。

 

「……で、あの人の名前は?まさか、知らないなん「エスデスです!」…あら、そう」

 

「で、そのエスデスさんとはどうゆう関係」

 

深呼吸をして、呼吸を整え頭をフル回転させ、エスデスの身分をでっち上げる。

 

「エスデスはね、日本が大好きで日本語も達者やねんな、確か生まれはロシアとかやったかな(早口)。今までホームステイしてた家がなんか市に届け出だしてへんくってな(早口)。府警さんがそこの家の管理してる人を書類送検しようとしてたんやけどエスデスまで見つかったら罰則が重くなるって思ったんかエスデスを追い出してもうてん(早口)。そのタイミングで他の友達と帰ってた帰り道に美人がいるってサトルが言い出してな、皆で見てみると向こうも気づいたみたいで僕たちの家に泊まれないかって言ってきてん(早口)。そんで、じゃんけんで勝った僕ん家に泊まることになったんや(早口)」

 

スゲー俺よくもまぁこんなでまかせスラスラと言えるもんやな自分でもドン引き。

 

「そんな話信用できると思う?」

 

こんのBBA俺の努力返せー!

 

「だいたいねぇ。百歩譲ってその話が本当だとしても見ず知らずの、しかも外人さんを家に入れるなんてアンタの頭アホなんちゃう」

 

ぐうの音もでね~。まごうことなき正論にただ黙るしかない自分が情けねぇ。

 

「あとね、見ず知らずの高校生の子どもに民泊お願いするようなあの人もあの人よ。外人さんは敷居が低いって聞くけどそれにしても、どうかと思うわ」

 

ホントに、とまだ説教を続けようとする。

このままだとエンドレス説教タイムから抜け出せなくなると思ったコウタは打開策はないかと頭を回転させるもどうやらハードディスクの限界のようでさっきみたく言葉が出てこない。

 

ちくせう、どうすれば…

 

「どうやら、大分手込めにされているようだな」

 

廊下からリビングに繋がるドアから唐突に声がする。この声の主はこの説教の元凶だった。

 

「エスデス…」

 

涙目になり、エスデスを見る。

 

「はぁー、お前は泣けば誰かに助けてもらえるとでも思っているのか」

 

自分の泣き癖を指摘され、返す言葉もなく俯く。

 

「だがまぁ、今回の事の原因は私だしな。それに今追い出されては路頭に迷いかねん」

 

「でもどうやって…グスン」

 

「簡単だ。嘘を言おうとするからややこしくなるのだ。ならば、そのままを話せばいい」

 

「信じるかな?」

 

「論より証拠というだろ」

 

そう言い、炊飯器くらいの氷の塊を出現させゴトンと氷の塊はテーブルの上に転がる。

 

「な、何よこれ!」

 

「母ちゃん、落ち着いて聞いてな。エスデスは漫画に出てくるキャラクターなんや」

 

「……」

「……」

「……」

 

 

「は…?」

 

 

赤松家に今日一の「は?」が響いた瞬間だった。

 

 

これは現代社会に飛ばされた戦闘狂とパンピー高校生のハートフルーな物語である。

 

 

 




いやー、なんか話を考えるのって難しいですね。

でも、めげずに頑張ります!
ここで、帝具とはなんぞや?という人のために解説

1000年前、帝国を築いた始皇帝の命により造られた48の超兵器。超級危険種やオリハルコン等の稀少な金属、太古に滅亡した国の技術等、既に再現不可と言える物品や人材、技術を寄せ集めて生み出され、その性能は強大で、一騎当千と言える力を発揮する。
強大な性能を誇る反面、個人の技量や個性、特性に左右され、使用者が帝具へ抱いた第一印象が相性に左右するらしい。不適合者が装備すると拒絶反応を起こしたり、無反応を示したり、最悪の場合、発狂や即死するものも存在する。また、性能や能力を大きく発揮するほど、体力、精神力を著しく消耗してしまう。
始皇帝の「ずっとこの国を守っていきたい」という願いと国の安寧を不動のものとする為に開発されたが、開発から500年後の内乱により半数近くが行方不明となっている。
また、その高い性能さ故、帝具の所有者同士が戦えば必ずどちらかが死ぬと言われている。

とまあ、『選ばれた人だけが使える強力な武器』という認識で大丈夫です。


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第三話 学校を斬る!

何とか書けたけどエスデスの性格考えてセリフ言わせるのくっそムズいんですけど
その前に、エスデスの帝具について解説
血液の帝具。北方に棲息していた超級危険種の生き血自体が帝具になっており、血を飲んで適合した者は氷を操る能力を得られる。ブラックマリンと違い、無から氷を発生させることも可能。飲むと常人であれば精神崩壊を起こすほどの強烈な破壊衝動に襲われる。その破壊衝動に耐えて適合した者は、身体に適合の印が浮かび上がる。
簡単にいうと、超強い奴の血を飲んだら氷を自在に操れるようになっちゃった。ってことです。


母ちゃんにエスデスが『アカメが斬る!』という漫画の登場人物だということと枕の下に漫画を入れたら朝に居たということを伝えるもなかなか納得しなかったので帝具の能力を見せ一様納得してもらう。エスデスは帰れる手だてが見つかるまで家に居候することとなった。

今日は学校を休むはめになると思ったが母ちゃんの言葉により四限目から行くこととなる。

 

「ところでさ、エスデス」

 

「なんだお前、さっきまで私に「さん」づけで敬語だったではないか」

 

「いや、なんか馴れたっていうかこれから暫く家にいんのにずっと畏まるのも疲れる思ただけ」

 

「別に構わんが。で、何か言いたかったのではないか?」

 

「そうそう、俺、これから学校だから一人で留守番お願いね。母ちゃんも店だし。部屋のもんは適当に使っていいから」

 

私はどうするんだ!と怒鳴られるだろうなと思いつつも一様伝える。

 

「そうか、なら暫く待っていよう」

 

(あれ、意外とあっさり。もっと噛みつくかと思たんやけどな)

 

エスデスのあっさりした返答に少しばかり疑問を持つが楽でいいかと深く考えずに家を出た。

 

 

 

「あら、あの子お弁当忘れてるじゃないの…」

 

 ここにまた、不安の風が吹き出す。

 

 

 

 

 ◆学校◆

 

 

「遅れましたー」

 

四限目の終わり5分前(かなり粘った)というこすい手を使いながらも授業に出席。国語の担当教師に嫌味を2、3言受け席につく。授業の5分は一瞬で終わる。チャイムの音と共に終了。弁当の時間となった。

 

「うい~。赤松さぼりか」

「お、お前サボりか、お 」

「今日は学食で食おうぜ」

 

授業の終わりと同時に茶々をいれてくる奴が4人。上から順にピラフ、ネンド、山ビ。

ピラフは高校になってから2年連続同じクラス。出会いは入学式の初日に俺がトイレでお花を摘みに行ったときに大便から助けを求める叫びが聞こえたのが始まり。

ネンドは中学の時からなんだが、いつの間にか居た。気づいたら居た。

 

山ビとは小学生の時からの付き合いで親とも仲がいい。よく冒険と称して山の中や洞窟を探検した。出会いは昔過ぎて覚えてない。

 

「なんか絶対に言われたない過去をばらされた気が…」

「お、お、お」

「まあ、良しとするか」

 

「ナチュラルに人の心読むの怖い」

 

自分の友達が超能力者だということを知ると遅刻した奴が必ず周りから受ける質問をされる。

 

「それにしてもなんで遅れたんや、珍しな」

 

山ビのいうとおりコウタはいたって真面目なのだ。

来るときは来る。来ないときは来ない。白黒はっきりしている。そんな、コウタが遅刻するのは珍しいことなのだ。

 

「朝から大変でな~、エスデスが…」

 

朝からの乱闘故に頭が回らずつい口が緩くなってしまい。溢してはいけない言葉を言ってしまう。

コウタは自分がやってしまったことに気づく。かつて交わした4人の誓い…

 

『もしこの中で抜けがけしようとした奴は校庭で丸裸で張り付けな』

 

まずい……。エスデスは確かに彼女ではないが美人だ。超美人だ。そんなんと知り合いとバレたら…しかも、家に居候しているとなると絶対に張り付けですまねえ。

 

だが時すでに遅し。山ビたちは鍛えられた第六感(リア充センサー)により何かに気づく。

 

「ん、まさか貴様!」

「ネンド押さえろ!」

 

「クソがァァああ!」

 

ドアに向かおうと振り向く前にネンドが後ろに回り込み脇から腕を通され固められる。

 

「オーケーへいジャプ。俺とタノシイコトシヨネ」

 

こんなときだけ知性が芽生えるネンド。

 

「さてさて……」

「話してもらうかエスデスさんとやらのハ・ナ・シ」

「HAHAHAHAHAHA」

 

「ナンのコトだかワカラナイヨ。Sデス?そんな自己主張ツヨイヒト知ラナイアルヨ」

(ここでバレたら張り付け待ったなし。絶対に言うわけにいかん)

 

必死に頭を回転させ打開策を模索するが目の前の女に飢えた猿は待ってくれない。

 

「バカ言うのも大概にしな兄ちゃん」

「オトナシク吐いたほうが身のためだぜルゥゥウフィ!」

「HAHAHAHAHAHA」

 

山ビは前髪を両手でかきあげオールバックにし、軽いジャブを打ち出し睨み付ける。ピラフはどこから取り出したのか、一回ナイフを舌で舐めコウタの顔に突き出す。

 

「いかれポンチどもめ…」

 

「話す気がねえなら…」

「イテェ目に……」

「HAHAHAHA「おい!すごいことになってんぞ!」…HAHA?」

 

山ビたちに拷問をされそうになったとき、山田ことジェイソンが慌てた様子でドアから入ってくる。

 

「んだジェイソン。今取り込み「超美人が」…よし、何だ早く言え!」

 

「切り替えはや!」

 

「いいから早く!」

 

「青い髪の超美人がセンコーと揉めてるらしいんだよ」

 

「「「なにいイィぃイイイ!!」」」

 

コウタは物凄く心当たりのある人物が学校に突撃しに来ていることに白目を剥き驚く。そんなコウタを他所にピラフがジェイソンに質問する。

 

「なんで揉めてんだ?」

 

「それがよ、ここからが耳寄りな情報なのよ。なんかその超美人守衛はっ倒して学校に入ってきて……でゅふでゅふふふふ」

 

不気味な笑いをしてニヤニヤしだす目の前の東南アジア系の顔を心底、気味悪げにその場の一同がキモいと思っていると一拍置いて話し出す。

 

「実はその超美人はなんでも「コウタ」っていう奴を探してんだと」

 

「「「あぁン 」」」

 

クラスに居た全員がネンドに拘束されている人物に視線を集める。

クラスの男子は皆無意識に目に殺気をほとばしらせる。その視線を向けられた本人は片眉を上げ反対の眉は下げるという器用なことをして口を半開きにさせる。

 

全力のはぁ?という顔を作る。この顔を見た人の大半は……

 

「作られ過ぎて逆に怪しいわぁああ!」

 

山ビの跳び蹴りによりコウタは拘束しているネンドごと吹き飛び、後ろに並ぶ机に突っ込む。

 

ネンドが下になったので落下による痛みはないが顔面に蹴りを貰い顔を押さえながら立ち上がる。

 

「てんめぇ…顔面蹴るこたぁねえだろ!」

 

「てめえは顔面の痛みより俺の心の方が痛いに決まってんだろ!」

 

「イヤイヤイヤ意味わからんし俺の顔面の方が痛いに決まっるだろ」

 

「はっ、確かにお前の顔面の方が痛すぎて直視できんわ」

 

「てんめぇぇえ!!ぜってぇシバく!シバき倒したる!」

 

二人の言葉は少し過激だが永年の親友だから出せる何処か見ていて暖かいやり取り、そんな空気が暫く続いたが廊下から聞こえてきた教師の声に気を取られ、コウタが視線を逸らしたことで終わりを迎える。廊下からは……

 

「……から身分証明を…」

「だから何度も言っているだろコウタの知り合いだ。これで十分だろ」

「学校に入るには書類を書いて身分証の提示を…」

 

教師は少しニュアンスを変えてはいるが、どうにかして追い出そうとする魂胆が感じられる。

エスデスもそれに気づいており半ば無視し続けて端の教室からコウタが中にいるかを確認している。

 

エスデスが教室を覗く度に起こるのは沈黙。そして、その場からエスデスがいなくなると巻き起こる、歓談の嵐。

 

エスデスを見た全員が口を揃えて言うのはその美しさに対する賛美。男子は余りの美しさに付き合いたいというより恐れ多いという感情が芽生え、女子には憧れや性への新しい扉まで開ける者がいた。

 

まさに傾国の美女……だがドSである

 

「うひょー!うおうおうおうおうおー!」

「な……」

 

山ビやピラフ、その他教室にいる大半の生徒が廊下側の窓や出入口から食い入るように騒ぎの元凶を見る。

 

ピラフは発狂し、山ビは口を広げ過ぎてアゴが外れ、開いた口が塞がらない。

 

そんな雑多を他所に神経を研ぎ澄まし気付かれない様に山ビたちが居る反対のドアから教室を出て、ゴキブリダッシュ!

 

廊下は今、エスデス見たさに集まった野次馬で人の壁が出来ておりエスデスに気付かれることはない……ハズだった。

 

「ジャプが逃げたぞーーーーーー!」

 

その声と共に野次馬の群れが廊下の真ん中で縦に割れ、逃走するコウタの背中が全員(・・)の視界に入る。

 

(何が起きて……)

 

突然縦に割れた野次馬を後ろを振り向き確認すると目が合う。今一番会いたく無い奴と…。そして、視界の端に映る、黄色いモヒカン。

 

「てめぇぇえか!チクショオ!」

 

そうそれはネンド。コチラを指差し口をあんぐりと開け間抜け面をさらしている。コウタは山ビとの口論でネンドのことなどすっかり頭から抜けきっており、考慮すらしていなかった。

 

「見つけたぞコウタ」

 

冷やりとしたものを背中に感じた。

 

 

 

◆20分前 赤松家◆

 

 

「ちょっと、エスデスさん。コウタにお弁当届けてくれる?」

 

朝からのどたばたで弁当を持っていくのを忘れてしまったコウタ。

 

「なぜ私が行かなければいけない。弁当を忘れたのはアイツだ。それで昼が食えないのはアイツの責任だ。アイツの尻拭いをなぜ私がしなければならない」

 

「もう、そんなこといわんと。そんな学校も離れてへんし、この辺の地理覚えんのにもエエと思うねんけど」

 

「距離なんて関係ない。地理は明日にでもアイツに案内させ把握する。それに、この世界に来て試したいこともある。行くなら貴様が行け」

 

エスデスは目を細め睨みを効かせる。その目からは殺気が入り交じっていた。

 

「もう、聞き分けない子やね~」

 

あっけからんと母ちゃんは答える。まるで殺気なんて効いていないように。

 

「そんな反抗期みたいにツンケンして~。これからあなたの家はここなのよ。要は家族(・・)みたいなもんなのよ」

 

「……だから何だというのだ」

 

それは一瞬、ほんの一瞬だがエスデスは言葉に詰まる。そして、エスデスの体が僅かに熱を帯びる。その事に本人は気づいていない。

 

「さっきあんた尻の拭い合いがどうたらこうたら言うてたけど家族は拭い合いやのうて助け合いや。エスデスさんが困ることもこれからいっぱいあるやろ。そんときはコウタと私、それと今はいないけどウチのバカ亭主が助けるさ」

 

だ・か・ら……と続け

 

「今回はあんたが助けとくれ」

 

そう言い、母ちゃんは腕時計を確認すると「やだ、そろそろ店に出ないと」と慌てた様子でエスデスの返事を待たず家を出て行く。しかし、玄関の前でエスデスの方に振り返り

 

「まあ、いつ元の世界に戻ってしまうかわからんけどそれまではゆっくりしてき~」

 

ハタハタと手を振り家を出ていき、家の中にはエスデス一人が残された。

 

「何なのだ。あの女は…」

 

私の殺気にも全く動じず、ペラペラとよく喋る。それに…私を家族と安易な………

 

…………だが、悪い気はしないな……

 

エスデスはテーブルに置かれた弁当を持って家を出ていく。その足取りは軽く、家から学校まで徒歩30分かかる道を3分でたどり着いたという。

 

 

 

これはドS将軍が家族愛というモノに触れ、その牙を甘く削られ丸くなる物語である。

 

 

 

 




一様確認してはいますが誤字などがあれば報告してくれると有り難いです。

ちなみに何ですけど、前回までの話を大筋は変えてないですけど描写を度々いじっていますので良かったら見てください。

ご意見、ご感想、評価、お待ちしておりまーす


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第四話 原因を斬る!

いやー大分、遅くなりましたねー。
でも、話自体はきっちり書ききるつもりなので見捨てずに読んでくださいww


コウタが通う型月高校は創立100年という歴史ある学校で生徒の評判も高い向上心と落ち着いた品格が売りなのなのだが―――

 

「うふぉおおおおおお!」

「誰!あの超美人!」

「吉岡◯帆くらい可愛くね?」

「バカそれ以上だろ!」

「私、女だけど惚れちゃったかも❤️」

「でゅふでゅふでゅふ、可愛い過ぎるでゴザルよ」

「これは神が俺に告れと言っているのか!」

 

それは全て1人の異世界の住人によって地に落ちた。

 

「嘘だろ何だよこれ。みんな発狂しすぎ」

 

「校長!ウチの生徒が!」

「何てことだ!落ち着きある風格がウチの売りなのに!」

 

余りの乱れっぷりに教師もコウタも(・・・・)立ち尽くす。

 

「余計な手間を掛けさせるな」

「なっ!しまっ…」

 

エスデスに隙を付かれガシリと腕を背中に回され組伏せられる。

 

「くっ殺せ…」

「何を言っているんだ」

 

コウタの目の前に持っていた弁当箱が置かれる。

 

「おまっ…いつの間に俺の弁当箱を。いつから食いしん坊キャラになった!」

「だから何を言っている」

「何でだよ!今のはわかんだろ!」

 

オタクにしかわからないネタにエスデスが気づくはずもないのだが、突っ込まずにいられないのがオタクである。

 

「お前の母親に頼まれて私が(・・)私が(・・)弁当を持ってきてやったのだ」

 

胸を強調するように腕組みをする。

エスデスの今の服装は中に半袖の布地が白く襟元が黒い真ん中に白ブチの犬がプリントされたTシャツ、上着に黒い長袖のパーカーにチャックを胸元まで下ろしている。ズボンは黒のスキニーといった服装である。

つまり何が言いたいかというと―――

 

「むちゃくちゃエロいブフゥ…。やめて!そんなゴミを見るような目で見ないで!」

 

いやんいやんと組伏せられたまま身をよじらせる。

 

「ねえ、あれってどういう関係?」

「あれって1組の子だよね」

「あんな美少女に馬乗りになれて組伏せられるなんて羨ましい!」

「さて男子諸君。あのリア充(ゴミ)の暗殺についてだが……」

 

やっべ!

 

コウタの耳に自身の暗殺計画の話が聞こえてくると冷やりと汗が背中に滲む。

 

「エスデスこっち!」

 

コウタはエスデスの股から這い出て(ナニコレ ヒワイ)

手を取り走る。

 

「おいどこえ行く!」

「あの男子共(クソ)の居ねーとこだよ!」

 

 

いつもなら健全な高校生たちがバスケをしたり卓球をしたりバレーボールをしたりと終始どったんばったんしている体育館は今は中に誰も居ないことから電気を消され普段の騒がしさとはうって変わって静まりかえっている。

 

「ぜぇぜぇ、ここまで来りゃさすがにこーへんやろ」

 

そんな体育館の体育倉庫に息を荒げたコウタとエスデスがマットの上に座っていた。

 

ん?今、一瞬エロいこと考えた?残念ボクは紳士です。そんなことしません!してもこの場合、殺される……。

 

「いい機械だ。いくつか質問がある」

 

コウタが呼吸を整えているとエスデスが話しだす。

 

「朝は私も少し混乱して聞き忘れたが、こんな…世界を越えるなんていう馬鹿げたことの原因に、お前は心当たりはないか?」

 

ふむ、と顎に手を当て思案する。しかし、特に思い当たることもなく首を横にふる。

 

「ここ最近はなーんもないし、いつも通り、平常運転、平々凡々だったけど」

「ん?最近ということは、それより前には何かあったのか?」

「まあ、半年くらい前にダンプカーに轢かれたんやけど奇跡的に無傷で済んだっていうのがあったけど……」

「それが原因と思うか?」

「ない」

「そうか……」

 

そうして会話が途切れ二人の間に静寂が広がる。それを絶ちきったのは今度はコウタだった。

 

「俺からも聞きたいんやけど、エスデスの記憶ってどうなん?」

「というと?」

「俺の知ってる話のどの辺りのエスデスなのかなーって思って」

「ああ、そういうことか、確か……タツミと無人島から、帝都に帰ってきた日から3日くらい経った夜だったと思う」

「んーなるほど。ん?でも、そこって……」

「どうした?」

「いや、なんでもないっす」

 

はっ、と慌てて顔を赤らめコウタは取り乱す。明らかに何かある。

 

「とぼけるな、何か思い当たることがあったんだろ」

「いや……それは…………ん?何か急に寒く……ぎゃあああああ!」

 

エスデスは手っ取り早くコウタの首から下を凍らして、氷河から発掘されたマンモスの疑似体験を味わわせる。

 

「言います、言いますから!たちけてぇぇえ!」

「最初からそう言え」

 

パチンッ、とエスデスが指を鳴らすと氷は跡形もなく消える。

 

「し、死ぬかと思った……」

「さっさとしろ」

「ううぅぅ……エスデスが無人島に行ったときタツミに子供の頃の話をしたじゃん。その時に…その…エスデスに一番惹かれたといいますか……この物語で一番好きになった瞬間でして…」

 

コウタはエスデスの子供時代の育った生活環境や母親を亡くした過去を原作六巻を読んで知ったときに思ったこととは「好き」というのもあるが「助けたい」だった。

エスデスの心を救うにはどうしたらいいのかと昔は毎夜、毎夜考えては寝坊して学校に遅刻していた。

 

「ふふふはははははは」

「え、ちょ、そこ笑う!?あーもう、だから言いたくなかったんだよ」

 

堰を切ったように笑いだしたエスデスに顔を男梅にして正直に言ったことを後悔するコウタ。

 

「いや、今まで私の素性知らずに寄ってくる連中は居たが知っていて来る奴なんてお前が初めてだよ」

「い、いや別にそういう意味じゃねーし」

「はは…たがまあ、そうかっかするな。お前が私を好きになった辺りの私が来たというのは少なからず、このことに関係しているだろう。そう考えれば話して良かっただろう」

「むむ、そう言われたらそうなんだけどさぁ…スッゴいもどかしい」

 

 

そうして、エスデスとのやり取りを続けていると、なにやら体育館が騒がしくなってきた。

 

「むむ!なんだ、なんだ…って、まさか!」

 

体育倉庫のドアをそーっと少しだけ開け外の様子を見ると5限目の体育の授業を始めようと生徒が集まっていた。

 

「ちっ、裏切り者(アイツ)何処へ逃げやがった」

「まあ、そう焦んなや。どうせ家に行けば居るんや、そこで血祭りにしたヒャヒャピャ」

「ん、今最後の笑い方だけおかしくなかった?」

「気のせいやろヒャヒャピャ」

「ほら言うてる」

「ちっ、バレちまったら仕方ねえ。これでもくらいな!」

「ぐぎゃっ、なんでヘッドロック!てめぇ!」

「HAHAHAHA」

 

山ビとピラフの5歳時のような会話に頭痛が痛くなるが、そんなことを言っている場合ではない。この時期、コウタのクラスでは体育でバレーボールをしている。つまり、体育倉庫にネットやらポールを取りに来る!

 

「まずいまずいまずいまずいまずい、まずい!どどどどーしたらあああエエんや!」

 

頭をかきむしり半ば錯乱状態に陥る。

 

「お、おい、どうした!」

「エスデスどうしよー、どないしよー、アイツらに見つかったら…しかも、体育倉庫でなんて…殺されるだけじゃすまねえ。くっ……かくなるうえはこの腹をかっ捌くしか…」

 

コウタはいつの間にか白装束になり、どこからか取り出した小刀で腹に突き立てようとする。

 

「馬鹿か貴様は!」

「あいったー」

 

エスデスの張り手をくらい正気に戻る。

 

「お前はどこから刀を取り出した!しかも、服もいつの間にか…ってあれ?戻っているだと…」

「何言ってんのかわからんけど…取り敢えず、ここから脱出せなアカン。出口はこの目の前にある扉一つだけ。他はノ。つまーり、どうあがいてもこの扉を開けなければならない。しかもかも!扉を抜けても体育館の外に出るには出入口は一つ、絶対に山ビとピラフにバレル…絶望だね☆…死ぬしかないじゃない、このままだったら死ぬしかないじゃない!」

 

いやあああああ!とまた発狂し始めたコウタ。もうこれは、一種の発作と言っても過言ではない。

 

「手ならいくつかある」

「な、なんだって……」

「………………」

「………………」

「おい、起きろ」

 

バチんバチんとフリーズしたコウタの頬を叩く、常人なら悶絶する痛みなのだが

 

「主よ、私は生きてもよいのですか…」

「お前の相手はいささか疲れる」

 

コウタが毎夜考えていたエスデス救済計画の一つにこんなものがあった『狂ってるなら、それ以上のイカれになればいい』と。

まあ、当の本人はそんなことは忘れているが、計らずも元からイカれていたことが幸いしてエスデスが割とまともにならざるおえない状態になっている。

 

「まず一つ、全員凍らして堂々と出ていく」

「却下」

「二つ、扉がなければ作ればいい」

「却下」

「三つ、ドアを凍らせて侵入を防ぐ」

「きゃ…それだ!さっそく頼む!」

 

みるみるうちに扉が凍結していき、でっかい氷塊ができる。

 

「こんなものか」

「ふむ、これなら……エスデス、この横の壁をぶち抜こう」

「その案はさっきお前が却下しただろ」

「いい考えを思いついんたんや。壁をぶち抜いて、その壁を凍らして、扉部分の氷塊を解凍して脱出!壁の先は教職員の駐車場、その先は通学路!これは必勝の策!」

「ふむ、できないことはないが、これでは私が弁当を持ってきた意味が「こーのとおりー一生のお願いですからー」では、対価を貰う」

「た、対価っすかー。なにを?」

「それは、戻ってから伝えよう。さっさと行くぞ」

 

 

 

こうして、無事に壁をぶち抜いて脱出に成功したコウタとエスデスはその後、特になにもなく家にたどり着いた。コウタは泣いて喜んだ。しかし、後にとてつもない悪魔がやって来るとも知らずに……。

 

 

 

 




さて、もっと字数多めに書きたかったんですが些か忍耐力がないものである程度、書き終わったら投稿したくなっちゃいましたー。
ここで、3馬鹿(山ビ、ピラフ、ネンド)の区別の仕方を紹介したいと思います。要は単純なキャラ紹介です。
山ビ→3馬鹿のなかでは割と常識人なので喋り方も割と普通。
ピラフ→少し世紀末のヒャッハー成分が入ってるので喋り方の癖が強い。
ネンド→基本的に語彙が足りない。
簡単に言うとこんな感じです。

感想、評価よろしくお願いします。


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第五話 たこ焼きを斬る!

更新遅くて申し訳ないです。あと駄文です。あと感想、評価お願いします。あと……なんでもないです。


エスデスとコウタは今、学校を抜けだし、帰路についていた。

 

「……んで、ここが型月商店街。用は色んな分野の店がたくさん(ようけ)あるとこって覚えてくれたらいい」

「ん?これは箱の中に人が小さくなって入っているのか!?これも帝具の力か!」

 

皆さん、どうも。コウタです。今、家に帰るまでの道のりでエスデスに地理や町、店を紹介しているんですが……くっそ、おもろいwwwwwやっべ、腹筋やっべ、『箱の中に人が』ってマジでいうのかよ。ぷはっ、ふははははははははは、ヤバい死ぬ、笑い死ぬ。持ったらバチッてなるペン持ったときの顔、最高かよ。すんげー楽しいわ。

 

「おーい、コウタ!今日も学校サボってんのか」

 

商店街を歩いていると斜め前の店からくっきりとしたほうれい線、頭には水玉もようのハチマキを着けた定年まじかのおっさんが顔をひょっこりと覗かせ、コウタたちを呼び止める。

 

「なーに言ってんだよ、昨日はしっかり行ったつの!」

一昨日(おとつい)はどーだったけか」

「い、行ったに決まってんだろ。なんだよ、もう耄碌しちまったんか?年はとりたかないねー」

「バカ野郎!誰が耄碌したって!?一昨日は誰の店で油売ってたと思ってんだ、ばろー」

「これだから、勘のいいガキは嫌いだよ」

「てめぇの方がガキだろが。で、ところでよ……」

 

たこ焼き屋の亭主こと『おやっさん』はカウンターから身を乗り出してコウタに肩を組ませて、ヒソヒソ声で話し出した。

 

「あのべっぴんさんは誰だよ。見たとこ外人だが、どこで引っ掻けたんだ。万年根なし女なしのコウタが女連れで歩いてっから商店街中がパニックだぞ」

「誰が根なしの女なしだよ!エスデスは今日からうちにホームステイするんだよ。最近、流行ってんだろ民泊だよ、み・ん・ぱ・く」

「あー民泊ね。ニュースでやってたやつか。詐欺じゃねえだろうな」

「それ母ちゃんが聞いたら、俺がおやっさんを生ゴミの日に出さなくちゃなんねえぞ」

「おっと、迂闊な発言やったわ。薫子さんだったらマジでやりかねねーからな」

 

「おい、コウタ。いつまで、待たせる」

 

エスデスはおやっさんとコウタのやり取りに痺れを切らして入ってきた。おやっさんはエスデスの流暢な日本語と透き通る様な声に目を丸くしてキョドっていた。

 

「あーすまんな。おやっさん、たこ焼き貰っていくわ。エスデス、腹減ってる?」

「そう言えば朝から何も食べてなかったな」

「おし、じゃあ、おやっさん。6個入りの8個ちょうだい」

「………………」

 

返事がないただの屍のようだ――――――――

 

「……じゃねえよ。おやっさん、おーい、戻ってこーい。それ系のリアクション見飽きたっつーの」

 

コウタはピトッとおやっさんの心臓に耳を当てる。

 

「し、死んでる……」

「生きとるわ!タコ!」

「タコ頭に言われたかねーんだよ、たこ焼き6個入り8つ、早くつくんねーとここの将軍様がこの店をスクラップにすんぞ(物理で)」

「そいつぁ、急がなくちゃな。やけどな、6個入り8つは15分くらい貰わねーと」

「あんよ、じゃあここら辺ぶらぶらしてるから15分経ったらまた来るわ」

「あいよ!」

 

商店街の中央に並んでるベンチに戻ってエスデスに少し待つことを説明すると

 

 

「そうか、ならどこかに空き地はあるか?」

 

 

 

 

どうしてこうなった?

 

もう一度いう……

 

どうしてこうなったああああああああああああ!

 

「ぶふぉッ⋯‼」

 

今までの人生において味わったことのない痛みが今、コウタに襲いかかっている。

空を切る音をたてエスデスの蹴りが顎を射抜き、二転三転と転がり空き地の壁に激突する。

 

「おい、冗談だろ。その程度では温室育ちの貴族にすら劣るぞ」

 

「あ、あうぁ⋯⋯」

 

顎に蹴りが当たったことで軽い脳震盪を起こしており呂律が回らない。

 

「まず基礎がなってない以前にパワーが足りていない。なんだその腹は、出てはいないが脂肪の塊ではないか!」

 

「ふぉんふぁふぃふぉひゅうにんとふらべふな⋯⋯」

 

「ファン⋯⋯何だかは知らんがこちらに来てからすれ違う奴らを見ていたが弱すぎる」

 

エスデスはコウタの家を出たあたりからすれ違う人間の力量を歩き方、重心の移動のさせ方、周囲への警戒など基本的に生きていく上で自然に身に付くであろう身体の使い方を自分の知る常識のうちで測っていた。もしかするとタツミの様な将軍級の逸材が見つかるかもしれない、僅かな期待を胸に抱かせていたが結果は…………到底、言葉で言い表せるようなモノでなかった。

 

「まず動体視力が低すぎる。蚊なんて何回も殺し損ねるな。なんなら止まる前に仕留めろ。次に足が遅すぎる。ここの大人でようやく子供レベルだぞ。それから……」

 

エスデスは帝都の大将軍でもあるが無頼の戦闘狂でもある。そのことが原因だろう、エスデスからすれば弱者ばかりのこの世界は居心地が悪いどころでわなかった。

 

 

エスデスの恨み節は止まらず次々溢れてくる。5分程たちコウタも流石に聞いていられなくなり

 

「げほッげほッ⋯⋯ンああ、エスデス。戦闘狂のあんたには酷なことかもしれんけど、多分この世界にエスデスに勝てる人っていうか勝負にすらならん人しかおらんで」

 

「………………」

 

エスデスも薄々気づいていた。よくよく思い返せばコウタと出会ったときに聞いていた気がする。この世界には自分たちの常識は当てはまらない。どれだけ身体を鍛え、武術に励んでもたった10mすら跳ぶことができない。圧倒的なまでに個としての戦闘力が低い弱者の世界。

 

「………ん?」

 

常識が当てはまらない……確かに個としての戦闘力は悪い意味(・・・・)で当てはまらないが、能力面で見た場合、目の前には良い意味(・・・・)で当てはまらない奴が居るではないか。

 

「フフ……フハハ……」

 

そもそも私がこんなことになっているのはコイツが原因だ。願ったら叶ったなんていうふざけた理由を言っていたが実際、私はここにいる。世界を跨いでまで干渉してくるような力がこの男にはあるのかもしれない。そう思うと心臓が高鳴り、頬は紅潮し、自然と笑みが零れてくる

 

 

(はッ、何か嫌な予感がする)

 

 

背筋に寒気を覚え二の腕を両手でこすり身震いする。この感覚は前にも味わった殺気……の様で少し違う。こう……ヘビに睨まれたカエル、天敵にであった動物の感n―――――

 

そこまで思考が行くと理性でなく本能が逃げの一手をとり一目散に逃げ出す。どうせ捕まるとわかっていても走らざる負えない。なぜって、本能がそう告げているからさァァァアアア!!!

 

「おい!コウタ!明日からは私がみっちり訓練をつけてやるぞ!!」

 

「でええええェェェ!!」

 

全力疾走のコウタに何事もなかったかのように追い付き、今までで一番のとびきりの笑顔でエスデスは修行(死刑)宣言をした。

 

 

その後、コウタはあっさりと捕まり、たこ焼きを受けとる。そのときのエスデスに担がれ意識のないコウタを見るおやっさんの目は生暖かった。

 

 

 

 

 

 

 




めっちゃ短いけどキリが良いのでここまでです。

コウタ「エスデス。結局なんで空き地に行ったん?」

エスデス「むしゃくしゃしてたら丁度良いサンドバッグを見つけてな」

コウタ「え、んー…え、んー……ヒドクネ?」


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第六話 曖昧を斬る!

よっしゃあァァァァァァァ!日間ランキングに乗ったぞォォォォ!

あ……今回も短いです。


エスデスが気絶させたコウタを運んでいた頃、学校では―――――

 

 

「ったく、あの野郎。まさかカバン置いてかえるたーな、スパー」

 

「ホンマにな。しかもあんな美人までお持ち帰りなんて…………スパー…」

 

「…………」スパー

 

ピラフと山ビの会話が途切れる。会話が無くなったから途切れたのではない。

ピラフは心の中で何か許してはならない何かを感じ取った。

山ビも言っていて心に何かが募っていくのを感じ取った。

二人は互いの目を見る。その距離はだんだん、だんだんと近づいていき――――――

 

「くヲおォォォおおおお!!キエキエぎョえええ―――!!!」

 

「ぬうぉぉぉぉぉぉおおお!!!せふぁふぁふぁあ゛ァァァアアア――――!!!」

 

狂気!圧倒的、狂気!!

二人は狂ったように叫ぶ。

旧校舎にある今はほとんど使われていない空き教室があまりの叫び声で揺れる。

ピラフと山ビは積み上げられた机と椅子の山の端に腰掛け、タバコを吸っている…………様に見せかけてココアシガレットをしゃぶっている。

ネンドは山ビ達が授業中に教室を抜け出すとき、目の前を飛んできた蝶々を捕まえようとして教師に見つかったので山ビ達は仕方なく置いていった。

今、何故二人が叫び散らかしているのか。

悔しさ、虚しさ、嫉妬といった色んな負の感情が混ざり合いしっちゃかめっちゃか色々あった結果、結局《殺意》が生まれた。

そんなドス黒い感情が形となり、あらん限りの声で叫ぶ。

 

「出陣じゃアァァァァァァァッ!!」

 

「敵は風果堂にありィィィィィイ!!」

 

アホ二人は嫉妬の念で強化、否、狂化され教室を抜けグランドを乱舞しながら学校を出ていく。

後に窓際にいた生徒『山内』はこう語る「いや、あれはもう人間じゃないですね。だって完全に頭のネジが外れて、訳のわからない叫び声をあげて走っていくなんて正直、恐怖すら覚えましたよ……」でも、と彼は続ける。「少し惹かれるとこもなくはないですね」。インタビュアーはこの時悟った、狂人は伝染病だということを―――――

 

 

 

 

◆風果堂(赤松家)◆

 

 

風果堂とは、赤松幸田の父『赤松次郎』が店主を勤める老舗和菓子屋の名前である。型月商店街から少しいった先の大通りから外れた住宅街に近いところに風果堂がある。裏手にはコウタたちの家がある。

店に着く直前に意識が戻ったコウタはエスデスに二、三言悪態をつき、たこ焼きをひったくる。

店の裏口の前でエスデスにここで待つよう言い、鍵を開けて入る。

 

「あら、コウタ君?どうしたん学校は?」

 

扉の奥には明日のための仕込みをしていた母ちゃんと同級生で親友の相模恵津子、通称『エツコのおばちゃん』

がいた。俺より5つ下の子持ちで、ここでもう20年以上働いてるベテランだ。よく小さい頃、母ちゃんに内緒で飴ちゃんをもらっていた。

 

「今日はな、学校は昼までやねん」

 

あらそうなの、と言ってエツコのおばちゃんはチラリと俺の手元を見る。

 

「あー、これは店のみんなに差し入れや。みんなで食べてな」

 

そう言うとおばちゃんはニッコリと顔をしわくちゃにし、嬉しそうな声音でおおきにねと言った。

 

「でも、今は(てぇ)離せへんからそこに置いといて」

 

指されたとこにたこ焼きを6つほど置く。

 

(そういえば、カバン置きっぱやったな。でもまあ、どうせ中身は空やしエエか)

 

「終わったか?」

 

エスデスが壁に背を預け、目の前の空を見ていた。

 

「ああ、終わったで。はよ家に帰ってたこ焼き食べよ」

 

「そうだな。ここの食文化がどんなものか私がみてやろう」

 

少し声のトーンが上がり、エスデスはどこか楽しそうに微笑む。

その足取りは商店街でも見せていた様に弾んでいた。そんな様を見ていたらこっちも楽しくなってきた。

 

「だが、不味かったら明日の訓練は最初からハードだな」

 

ズテンと盛大に蹴躓き、それを見たエスデスは声を出して笑っていた。

 

 

 

 

「美味いなこれ」

 

たこ焼きを一つ口に頬張り、まだ少し熱かったのかハフハフし、その味を堪能する。

おやっさんが長い時間を掛けて考え抜いた最高の生地、カリっとした食感から入り、歯が生地を進むにつれ柔らかくてジュワッとしたたこ焼きの元が口に広がり、粉もん特有の食欲をそそる香りを残していく。

 

「特にこのタレ、ソースといったか。これがいいな。舌にまとわりつかないあっさりとしているが鼻先を抜ける芳醇な香りと舌を刺激する少し辛めの味が病みつきになるな」

 

「……い○ちゃんかッ」

 

エスデスの食レポに驚いたがしっかりとツッコミを入れる。

エスデスは本当に美味しそうにたこ焼きを食べていく。そんなエスデスを見てると案外普通の人かと思ってしまう。

絵に描かれた部分(知っている部分)絵に描かれていない部分(知らない部分)

今までの俺は片方しか知らん。

 

そんな一側面しか見ていへんのに俺はエスデスは戦闘狂で相手を殺すことも厭わへん超危険人物。

その反面、部下の面倒見がよくて、信頼されてて、良くも悪くも最後まで自分を曲げん……そんな風に思ってた。

 

このイメージは決して間違ってるとは言えんけど、全て正しいとは思えへん。

今、俺の前で美味しそうにたこ焼き食べてるエスデスは悪い人間には到底思えん。

 

人を見る目がある……とは言えんがこれから俺が取るべきことは二つ。

目の前の(・・・・)のエスデスを見ていくこと。そして―――――――エスデスの考えが間違っていると思ったら―――――

 

「―――俺は逃げずに向き合うよ」

 

「そうか、なら明日は日の出とともに始めるぞ」

 

「へ?」

 

「今さら撤回はできないぞ。明日の訓練は私の隊の入隊試験と同じメニューでいくからな」

 

どうやら俺が頭ん中で覚悟を決めている間にコイツは俺を断頭台の上に担いで、あとは紐を切るだけっていうとこまで進めていたらしい………ッて言うてる場合か!

 

「いやいやいや、無理だって!エスデス軍の入隊試験って死人がでるって聞いてるんですけど」

 

「ああ、だから死ぬなよ」

 

「そんなあああァァァァァ!」

 

明日が自分の命日だということに絶望し、さっきの長ったらしい覚悟は何だったのか!

 

「そんなことを言わねーでくだせーエスデス様ァァァァァー!!」

 

「おい!まとわりつくな!離れろ!」

 

涙と鼻水でぐっしゃぐしゃになった顔でエスデスの足にまとわりついて、どうにか緩くしてもらおうとする。そこへ―――――――――

 

「ゴウラァァァァァァッ!!!」

 

「何さらしとんじゃァッ!ボケェェェェェェ!」

 

 

突如乱入してきたピラフと山ビの蹴りが俺の顔面に炸裂し、たて回転で奥の間に転がっていく。

あまりの威力に俺の意識は闇に沈んでいった。

 

 

 




風菓堂は3月のライオンの三日月堂がモデルです。

とりあえずこの話でゴールデンウィークの投稿は終了です。また何ヵ月か失踪すると思いますが皆様どうか見捨てないでッ!(切実)

感想、評価、応援、笑顔をよろしくお願いします


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第七話 心根を斬る!

まだ待っていてくれた皆さんどうもありがとうございます。お久しぶりです。(笑)です。一年ぶりくらいに書いたので見苦しいとこは生暖かい目で見守ってください。


ピラフと山ビがステップ、助走をつけ走り込む。

目標は外人の超美女の足にしがみつくゴミ(コウタ)

二人は跳躍する。宙を舞い両足を揃えて―――

 

「「ダブルライダーキック!!」」

 

二人の一連の動きはまるで数年来、苦楽を共にし汗と涙を流して練習を重ねてきた社交ダンサー顔負けのシンクロだった。

 

「へぷッシャアァァァっ!!!」

 

完全な隙を突かれた俺は襖を突き破り奥の部屋に凄まじい勢いで転がっていった。

山ビは立膝をついて歯にキランと星を乗せて手をさしのべる。

 

「お(ぜう)さん、立てるかい☆☆」

 

「いらん」パシッ

 

エスデスに手を叩かれ山ビは膝をついて「なぜだ……」と悲しみにうちひしがれる。

 

「ばか野郎、映画の見すぎや」

 

こうすんだよと言い

 

「あら~、転んじゃったの~。痛かったね~ほら、先生に捕まって起っきし――ぶふぉッ」

 

言い終わる前にエスデスの回し蹴りが炸裂し、コウタがのびている方に飛ばされた。

 

「なんつう力や。くっ、また俺は……何も守れないのか」

 

エスデスの怪力に山ビは自分が思っていたおしとやかで、優しくて可憐だが実は清楚ビッチというまるで安物のAVのような男子中学生も真っ青なイメージが崩れていくのを感じるのだった。最後のはただの猿芝居。

 

「まったく何なのだお前らは」

 

コウタに続きまたややこしいのが増えたと顔をひくつかせるエスデス。今までにも狂人と出会ったことはあるがコウタを含め山ビたちからは別のベクトルでイカれた狂気を感じる。

 

「エースデスさーん、あのバカなんかホットいてウチでお茶でもしましょう。そのあとは…デュフ、デュフデュフデュフデュフふふふふ、フェッブ!り!!!」

 

気色の悪い笑い声が途中で絶ちきれ、カエルを潰したときの断末魔のような声が響く。そこへ新たな挑戦者が参戦しました。

 

「おるぅあ!!!ヤンのかテメーら!!まとめて血祭りじゃあああああああ!!!!」

 

 

閑話休題

 

 

「なんなのだあの連中は帝都でもあんなイカれ見掛けないぞ」

 

「ほんとヤですわねー奥様」

 

「あ、や、すんません!なめたこと言ってすんません!だから無言で氷らすのはやめてえええええ!!!」

 

ピラフと山ビを寝かしつけた(物理)後、それぞれの家の前にケツを突きだした状態で返し現在6時すぎ。

 

「今日は疲れた。北の異民族の方が遥かに楽だった」

 

「え、ちょっと待ってよ!氷は放置!?わっち明日にはマンモスよ!!」

 

エスデスがため息をはいて、指パッチンをすると氷が結晶になって解放される。

 

「お、解けた。イヤーあのままだと死ぬところだったわ。エルザのほうがまーだ優しいしてくれ…ヒッ!」

 

また余計のことを言い出したコウタを凍らせようとするが本当に疲れているらしくその気もすぐ失せる。

 

「私は少し早いが寝る」

 

「まだ6時過ぎなのに?早くなーい?」

 

「主にお前らのせいだ」

 

「なんもいえねぇ。晩ご飯はいらんの?」

 

「いらん」

 

そう言うとエスデスは階段を上がって部屋に戻った。

 

「あーいっちまったよ」

 

ふぅ と一息ついて物思いに更ける。なんだかんだエスデスがうちに来てからまだ1日もたっていないことを思うと先がおもいやられる。

だが、ものすごくうきうきワクワクしている自分がいるのがわかる(テントもガチガチに)。よく考えればこの事態はどうゆうことなのか。昔から山ビとかとつるんで荒事には事欠かない自分でいうのもなんだが、かなり破天荒な人生を送ってきたと思う。ん?そういえばダンプカーに轢かれたときに何か力が目覚めたてきな、覚醒てきなあれか。うーむうーむ……プスー。

 

「あらコウタ。珍しいわねリビングに居るな……ってコウタ―――!」

 

そこにはツルツルの用量81KB程度の頭で難しいことを考えすぎて真っ白な灰になった赤松幸田17才の姿があった。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「たく、ちいせー脳ミソで考えることじゃなかったわ。アホはアホらしくなーんも考えんと今を懸命に生きんと」

 

そう言いながら二階の階段を登っていくと自分の部屋から明かりが漏れていることに気づく。なかの人にバレないよーにこっそり開ける。

部屋の照明が目につきささり目が自然と細くなる。目がなれると中の様子が見えてくる。

本を片手にメガネをかけワイシャツにゆるめのジーパンをきたエスデスがいた。

 

「覗き見とは趣味が悪いな」

 

なんとなくバレるだろうなとは思っていたがこうも簡単に言い当てられると……なんもいえね。

 

「だって寝るっていったじゃん」

 

「言葉のあやだ」

 

「ケッ。てゆーかその服どうしたんだよ」

 

「クローゼットにあったのを適当に見繕っただけだ。まあ適当に選べるほど数はなかったがな」フッ

 

「くぅ↑ムカつく。ん?今鼻で笑ったな!鼻で笑いやがったな!」

 

そんな押し問答を繰り返しているうちに時刻はもうすぐ12時。家族は就寝。ファイターは夜練、カップルも夜のファイトにいそしむ時間。

ふと視線がおちエスデスの手元を見ると『アカメが斬る!』の11巻を持っていた。

 

「あ!原作の先読みズッルーい!ずるいずるいずるいエスデスずっとズルしてた!」

 

「お前は一度医者に頭を見てもらえ。そうすればもうお前と2度と会わなくてすむ」

 

「ひどい!私たちもう2年も付き合ってるのよ!30手前でプロポーズもなしにフるなんて信じらんない。もういい別れる」

 

「結局別れるのか!?ってそうではない!くそ、ついペースに乗せられて突っ込んでしまった」

 

「乙でーす(釈迦で~す風)」

 

「いぎゃあああああ凍るううううう!ポトフ!ポトフになっちゃうううううう」

 

 

閑話休題

 

 

「己の先の未来が載っている本だ。読まないわけがないだろう」

 

「内容わかんの?」

 

「言葉はわからないが絵でなんとなくはわかる」

 

「ほーん。でもさ~、もし戻ったとして、先がわかっていても1回なんか本筋と違うアクションおこすとまた別の方向に話が進んだりするんじゃない?」

 

「ああ。だから変えるとしたら最も重要な場面を絞る必要がある」

 

「まあそうですな。んじゃあ、感想はどうなのよ」

 

「とりあえずはタツミに近づく女どもを捕まえて拷問し首でもはねてやろう」

 

「ブーブー、暴力反たーい。帝国に自由を!」

 

「タツミに手をだしたんだ死んで当然だ。それとこの国を見てますます革命など許せなくなった。平和が過ぎるせいで人間が腐っている。どいつもこいつも闘争というモノを知らない。もし帝国がそんな国になれば私1人で潰してやる」

 

「んーまあ平和ボケっていうのはわかるけどさ、どうしてそんなに戦いたがるのかわかんない」

 

「そんなの決まっているだろ」

 

『楽しいから』(ハモリ)

 

「ですよねー。言うと思った」

 

「なら聞くな」

 

「俺はやだよー痛いのやだー。もう僕は誰にも死んでほしくないんだ…!これはネタじゃなくてワリとガチめに。だっていい人が死ぬのは悲しいじゃん!」

 

「強い者が弱い者を喰う。そこに善悪は関係ない。善き人間であろうが弱ければ奪われる。強ければどんな奴であれ搾取する側にまわる。弱肉強食こそがすべてだ」

 

「くそ、言ってることはわかるし納得出来ちゃってる自分がいる、悔しみ。ぐぬぬぅ……」

 

変なうなり声をあげながらコウタは縮こまっていき、静止する。

 

 

 

 

 

 

「んが~ー!もお!よっくわかんねー!頭悪いやつにドタマ使わすな。弱肉強食とか強ければ生き弱ければ死ぬとかそんなんどうでもいい!俺は死んでほしくないだけなんだよ!ナイトレイドのみんなも!セリューちゃんもウェイブもクロメもミカもボルスさんも!それに……エスデスにも生きててほしいんだよ…コンチキショー」

 

頭に溜まった色んな思考のバケツをひっくり返したような言葉は恥も外聞もかなぐり捨てて津波のように吐き出され、最後は小さく絞る声が部屋の壁をふるわせた。

 

のもつかの間

 

床からコウタの足元数センチ横からするどい刃が飛び出す。

 

「ヒッ!」

 

「コウタ…、何時だと思ってるの。早く寝なさい」

 

母ちゃんの部屋はちょうどコウタの部家の真下にあり、今も母ちゃんは一階からしゃべっているハズなのに、声が真横から聞こえてくる不思議。

 

さっきまでのシリアスはどこふく風、コウタの「えー」という声が部屋に響くのであった。

 

 

 

 




エスデスとの論戦でもさせよっかなーとも思ったけど地頭がそこまでよくない主人公の頭なので論戦にならないなってことでこういう展開になりました。
好評価とお気に入りと感想いただけると励みになります。


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第八話 朝練を斬る!

気づいたらJOJOネタがやけに多かったので先に謝っときます。さーせん(粉蜜柑)


エスデスとのシリアスを繰り広げているところにオカンからの致命の一撃を受け場が氷点下を下まわり、裸のロシア人も寒さを覚える温度まで下がり、次の会話の開口一番をどう切ろうかと決めあぐねて「あー」とか「うーん」と唸っていると

 

「興が削がれた。今日はもう寝るぞ」

 

エスデスが意外にもげんなりした様子で口火を切り、その提案にオレも首を縦に有名人の首振り人形みたく激しく頷く。

 

「さんせーい…。んじゃ、おやすみ!」

 

さっと押し入れから布団を取り出し床に敷き中に潜り込む。その間わずか0.5秒❕❕

 

「お前は外で寝ろ」

 

「ぐふぇッ!」

 

エスデスの蹴りが布団に潜ったオレだけを正確に射抜き、ビリヤードの玉が如く部屋のポケットに打ち出され廊下に弾き出る。

 

「ちぇっ、いいーやんか減るもんじゃーないに。てかオレこの家の家主なのに!」

 

仕方なく一階の居間にあるソファで一人寂しくオレは一夜を明かすこととなった。

 

 

 

 

夜明け、つまり朝!

 

 

 

「起きろ」

 

「ぐふぇッ!!…いっつつぅ…オメーいちいち人をけりとばすなっつのォ!」

 

宵っ張りの朝寝坊とはいかず初の日の出よりも先にエスデスの蹴りをくらいソファの直線状にあるテーブルに弧を描きながら吹き飛ばされる。

 

「昨日言っただろ。今日からお前を鍛えると」

 

「そんなこと言いましったっけなー…っていやあああああ!引っ張らんといて!ってあいってえええええええ!ずってる!ひきずってるよォ!エスデスさん!わかったから自分で歩くから!あいててててててて」

 

オレのごねりに付き合う気はサラサラないようで無理矢理ひっぱり(というか引きずり)昨日の散策で案内した裏山に向かおうと、引きずられているオレのことは一ミリも気にしない様子でずんずんと進んでいく。そのせいで背中とお尻が悲鳴を上げ口から叫び声が止まない。

 

「うっさいわね…ムニュ」

 

「オウ!マイマザー!へるぷ、ヘぇルプ!ヘルプミー!レッツヘルプ!ミー!」

 

「ちゃんと晩御飯までに帰ってきなさいよね…ムニュ~」

 

「このクソば…カクン」

 

オカンに対して暴言を吐きかけるが言い終わる前に戸愚呂弟よろしく握りこぶしからの親指弾きにより空気の弾丸を飛ばし、見事オレの額を射抜き意識を喪失させ「心が痛むね くくくくくく…」

 

そのセリフとともにオカンの部屋のフスマが静かに、締まるのだった。

 

 

◆裏山◆

 

 

 

「いややややややややややあ!!!」(ドゴーン )

「きょえええええええええええええ!!!」(バコン)

 

家の裏側にある山で特訓という名の拷問。

エスデスに連れ去られてから7時間が経過。その間、山道をウサギとび、往復10セット。

腕立て1000回、10セット「途中で気絶」

足上げ腹筋(氷の重石つき)「途中で気絶」

胴体に氷を吊るした氷塊スクワット「力尽きて氷の下敷きに」

でかい氷を引っ張る氷塊ひき「一歩も動かず」

 

そして極めつけヒドイのが肺活量アップのためと川に5分間沈められ、途中で上がろうものなら、上から容赦ない踏みつけスタンプが繰り出されるのだ。「当然途中で気絶」

 

そして現在、氷塊兵(氷でできたゴーレムみたいな兵隊)との模擬戦という一方的なサウンドバック。ん?何故、サンドバッグじゃなく、サウンドバックかって?そんなの打てば響くか「ごふぇえええッ!!!」…こんな風に

「おい何を寝ている。まだ始めて3分しか経ってないぞ」

 

「残念ながらヒーローの地球上での活動時間は3分間なもんでねぇ。故に私はもう動けぇッエ!!あっぶね!この野郎、ツララ飛ばしやがった!しかも頭と鳩尾があった場所を的確に!」

 

「いい反応だ」

 

下あごに指を当て一服と考える動作をする。

 

(どうやら、危機的状況下でほどアイツの本領が発揮されるようだな。ふふ、それならば…)

 

手を差し出し不敵な笑みを浮かべて

 

「氷塊兵との戦闘は終わりだ。次は私と戦え」

 

得意気に、というか最早達人といった方がいいレベルの人が素人の高校生に戦えと申されている。だらりと両腕を垂らし、ファイティングポーズである腕を前後にするベーシックな構えもしていない。ほお、どうやら完全になめきっているようだ。くっくっくっくっ、私の恐ろしさをとくと見せてやろうでないか。いや、待てよ刀語の七花の姉ちゃんみたいな敢えて構えない状態なのか!?

 

「うおりゃあああああああ」

 

とりあえず雄叫びを上げてエスデスに向かって殴りかかり、左ストレートを打ち込もうと腕を伸ばしたところで腹に蹴りがめり込む。エスデスはただ棒立ちの状態から足をただ前にだす前蹴りで軽くカウンターを決める。軽くといってもそれはエスデスの視点からであって一般人(パンピー)であるオレにとっては

 

「のオオオオオオオオオオオオ…」ドシャンッ

 

プロのキックボクサー10人分の蹴りに相当し、5~6m軽くぶっ飛ぶ。受け身もとる間もなく地面に激突する。

 

「間合いの詰めが遅い。考えが安直すぎる。というか考えなしに向かって来ただろ。強き者ほど戦いにおいて頭を働かせるモノだ。次はしっかり頭を使ってこい」

 

「この…クソッ」

 

どうする、どうすればアイツに勝てる?考えろ、考えるんだ、そうオレにはできる、オレにはやれる、お、なんか出来る気がしてきたぜ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ…………コータは考えるのをやめ―――――

 

「考えすぎだ」ドゴッ

 

呆れた口調で目の前にいきなり現れ、さっきの倍近い威力の蹴りが腹を穿つ。

 

「コハッ…」

 

叫び声も上げられない、喉からは肺が圧迫されて空気が押しだされ乾いた声がでる。

 

「考えろとは言ったがさすがに限度がある。相手はお前を殺しに来ているんだぞ。そんな悠長な暇を相手が与えてくれるわけがないだろ」

 

「んならァ…まずはパンチとかキックとかおしえ…ウウェ…教えろっての」

 

腹への衝撃で胃の内容物が出そうになりながらもすんでのところでなんとか耐える。

 

「基本は実戦からだ。打たれて学べ」

 

「この畜生以下のゲロ野郎が!!」

 

気合いで立ち上がり、その勢いのまま走り出す。

 

「やっぱ!逃げるっきゃねぇ!!」

 

踵を返してエスデスと反対方向へ走る…と見せかけ、地面を蹴り上げる。そう、ここは川原!つまり地面の砂がふんわりしていて舞いやすい!

 

「ふッ」

 

エスデスは一歩下がり砂つぶてを避ける。まあ、そうなるわな!だが、甘い!

 

「うヲオウヲウヲオオオオォ!」

 

もうダッシュでエスデスの後ろへ回り込む。その間にエスデスの隣を普通に通過するが、どうやら私の速さに付いてこれないようだな!フハハハハハ!遅い、遅い!このノロマが!この私を舐めるからこうなるのだ!狙ってやるぞ、私は狙ってやる!!そして静止していた(※あくまで本人の意見です)かの様な時は動き出す

 

「ゴールデンボンバーだあああああああ!!!!!」※金的

 

「ブハハハハハハ!!!ここは男も女も弱いのだ!!」

 

ふっ勝ったながh…

 

あと一歩、ほんのエスデスの股下19cmというところで足が止まる。いや!止められただと!

 

「なにをするか気になり、様子をみていたのだが…まさかメキメキ(ヒギャー)いきなり姑息な手段にでるとわ。メキメキ(ちょ、まッ、ギブ!)まあ、どんな手段でも別に卑怯などと吠えたりしないが、ようやく頭を使ってだした策が金的とはグキギギ(イヤヤヤヤヤヤヤヤ!!)……ないわ」バコン!

 

会話の最中からジョジョに足の絞めがキツくなっていき骨と神経が叫びだす。それと同時に足先から感覚が無くなっていく。慌てて様子をみると足に霜がたち、その霜はオレの身体にどんどん浸食していく。悲鳴が山に木霊すが、そんなことは知ったことではないと最後のセリフと共に首から下が動かなくなり、顔面右ストレートを叩き込まれ川にまさしく人間水切りの如く数回跳ねて底に沈んでいく。

 

ああ…ダイア―さん。あなたの気持ち少しわかった気がします…

 

そこで俺の意識は途絶える。

 

エスデスとの模擬戦「途中で気絶」

 

 

閑話休題

 

 

目が覚めたると揺りかごのような心地いい揺れを感じる。揺れる度にくすぐったいものが顔に触れ、いい匂いが鼻を刺激する。

うっすらと目を開けると深い水色の髪が目に映る。足は動かしていないが景色が横に流れていく。どうやら俺はおんぶされているようだ。エスデスの普段のイメージから体温も低いのではないかと思っていたがそれは勘違いだったようだ。4月の終わり、気温が上昇し人が互いにくっつくのは多少暑い気もするが今は、その暑さも心地いい。

 

「起きたか」

 

「!?ぃッて!」

 

エスデスの上でもう少しまどろんでいたいと思い、意識を手放しかけると動きの変化を感じとったのかいきなり手を離される。そうすれば無防備に乗っていた俺が落ちるのは必然で容赦のないコンクリが尻に激突する。短い悲鳴が口から零れでる。

 

「おー痛てぇ。天国かと思ったら、地獄に蹴落とすなんて」

 

「ふん、私がここまでおぶってやっただけでも有難いと思え」

 

「元わといえばエスデスが原因なんやからな」

 

そういうと思い出したかのようにエスデスが呟いた。

 

「…そういえば、最後の金的狙いは評価できないが私に蹴り飛ばされてからのスパンで策を練ったことは評価できる。この短時間でより機転の効いたモノができれば上々だ」

 

「なんや急にほ、誉めても何もでーへんぞ」

 

「ハハハ」

 

エスデスが朗らかな笑顔を見せる。やはり違和感がある。オレと出会ってからのエスデスは漫画で読んでいたときの印象より何倍も優しい気がする。確かにやってることとかはハチャメチャなんだが、こう…なんと言ったらいいか……そう、可愛げがあるんだ。こういうと変な誤解を受けるかもしれないが(Are you ドM ?)、まあドM(YES I AM!)なんだが、とにかくそれは置いといてエスデスがやったことの絞めというか最後の方に妙に面倒見の良さを感じる。

部屋にいきなりリボップして、散々荒らしまわったこと思ったら母ちゃんの説得も助けてくれたし、

学校に行ったら弁当届けてくれたし、まあ凍ってたけど。

ピラフと山ビの撃退はなんだかんだ手伝ってくれたし、

今日の地獄特訓に関しては最後におんぶというご褒美がついてたし、

てゆーか、やったことを考えるとプラマイ0な気がしないこともないこともない、んだがまあ結構楽しんじゃってる自分がいることを否定できない。

 

「なあ、エスデスぅ~」

 

「なんだ」

 

「優しくない?」

 

「急になんだ」

 

「エスデスの印象ってさ、漫画で読んでときにはな、こう…もっと残酷で残忍なドSなんやけど部下に対しての面倒見はいいって感じなんやけど、今実際に目の前にしてエスデスと話してたらさ、なんか、実は気のいい姉ちゃんみたいな感じがするんや。やからな、とても人を殺すような人には見えへんねや」

 

「……」

 

俺の発言を最後に会話は途切れ、その後の帰り道には気まずい沈黙が二人の間に流れたのだった。

 

 

 

 

 

戸愚呂の名セリフ

 




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