木場裕斗GX (柳ノ介)
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プロローグ

「裕斗!こっちでお茶会しましょう!」

「はい、お伴します。部長」

「裕斗君、お茶を入れましたわ〜。どうぞ、飲んでください」

「ありがとうございます。頂きますね、朱乃さん」

「裕斗先輩、お菓子いりますか?」

「ありがとう、小猫ちゃん。いただくね」

「ゆ、裕斗先輩!一緒にゲームしませんか!?」

「うん、やろうか、ギャスパーくん」

 

 やぁ、こんにちは。僕の名前は木場裕斗。この春高校2年生になったばかりの16歳だ。そんな僕には世間の人たちとは大きく異なる点がある。それは僕が悪魔であるということだ。僕はこの駒王学園で二大お姉さまと呼ばれているリアス・グレモリー様の眷属なのだ。

 

 さらに、その眷属の仲間たちにも隠していることがある。僕はいわゆる転生者という存在なのである。だが、別に前世で死んだあと、神様に出会ったとか、特典を貰ったとかそういった事は一切ない。さらにはこの世界が実は物語で、その原作を知っている訳でもない。本当にただただ第2の生を得たというだけなのである。

 

 という訳で、転生してからこれまでについて、すごいザックリ説明しよう。タラタラ過去編とかやっても長くて飽きるしね。

 

 まず、僕は別に前世の記憶を急に思い出した訳じゃない。物心ついた頃には何となくわかっていたという感じだ。そんな僕は4歳まで普通に暮らしていた。僕の両親は教会関係者で特に不自由なく暮らしていた。

 

 そんなある日、家になんか汚いおじさんが来た。よくわからないが、計画がどうだの、聖剣がどうだの言っており、とりあえず僕はこの汚っさんに引き取られるらしい。両親は何か「がんばるのよ!」、「すごく名誉な事だぞ!」などと言っており、快く送り出してくる。汚っさんの目は僕にはどうにも気色悪く見え、ついて行きたくないなぁと思っていたが、両親がノリノリなためどうにも逆らえない。という訳でそのまま連れていかれてしまった。

 

 そこからの地獄が始まった。訓練と称して意味わからないほどの戦闘を繰り返し、計画のためとか言いながら人体実験を繰り返す。そんな日々を乗り越えられたのは僕の他にも多くの子供が頑張っていたからだ。みんな心折れそうになりながらも頑張り続けていた。そんな中僕だけが諦めるわけにはいかない。

 

 一年経った辺りから余裕ができ始め、周りの子たちの模範となれるよう、様々なことを率先してやっていた。自惚れでなければこんな僕にみんな付いてきてくれて、辛いが頑張って来れた。

 

 もう一年経った辺りで、唐突にその日はやってきた。ガスマスクを付けた大人たちが「お前たちはもう用無しだ!!」と叫びながら何かを撒いていく。子供たちが血を吐き倒れていく。状況を飲み込んだ僕は皆んなに逃げるよう叫ぶ。僕含め全員が一斉に逃げ出した。しかし、結構な数の子供たちはさっき撒かれた何かを吸ってしまっておりどんどん倒れていく。そんな倒れていく子供たちは「君は逃げて」と叫ぶのだ。僕は泣きながら雪の上を裸足のままかけていく。走って走って走っていくうちに、僕もどうやら何かを少し吸ってしまっていたようで、雪の上に倒れた。そして死を覚悟したが、頭の上から声が聞こえた。

 

「おや、随分とボロボロじゃないか。大丈夫かい?」

 

 その人物は僕に話しかけているようだが、返答する元気もない。

 

「ふむ、神器持ちか。ここで出会ったのも何かの縁だろう。よし、君を助けてあげよう。これから頑張ってみたまえ。願わくば、僕や僕の家族のために働いてくれるようになって欲しい」

 

 この時出会ったのが僕の最初の主、《紅髪の魔王(クリムゾンサタン)》ことサーゼクス・ルシファー様だった。

 

 そこから3年間僕はサーゼクス様の眷属である沖田総司に師事し、修行を重ねた。ある程度師匠に認められるようになった頃、僕は9歳になっていた。そのタイミングで僕はリアス・グレモリー様の眷属になった。リアス様とは修行中にちょいちょい会っていたので、ある程度仲良くなっていたので、これは素直に嬉しかった。

 

「イザイヤくん、君はとても強くなった。そこで、年も近いしリアスの事を任せたい。これからはリアスの騎士として支えてあげてほしい」

 

「わかりました。これからはリアス様の眷属として、騎士として精一杯頑張ります。サーゼクス様に助けていただいたこの命、決して無駄にはしません」

 

「うむ、頑張りたまえ。リアスは人間界の日本で暮らしている。あと、君の他にも眷属の子が1人いるので、仲良くするように。あとは、そうだな。これから日本で暮らしていくんだ。名前くらいは日本名がいいだろう。木場裕斗と名乗りたまえ」

 

「はい。木場裕斗、日本で頑張ります!

 

 ......ちなみに何故その名前なんですか?」

 

「ん?特に意味はないよ。なんとなくだ」

 

 そう言ってサーゼクス様は笑っていた。なので深く突っ込まないことにした。

 

 そこからはあっという間だった。部長「リアスと呼びなさい!」...リアスと、朱乃さん「あらあら、朱乃と呼び捨てにして下さい」...朱乃と三人で1年ほど過ごした後、小猫ちゃん「...小猫でいいです」...小猫が新たに仲間に加わった。

 

 さらにそこから3年が経ち、ギャスパーくん「ギャ、ギャスパーと、呼び捨てにして下さい!」...ギャスパーが仲間に加わった。

 

 またまた3年が経ち、現在に至る。気付けば僕はグレモリー眷属の皆んなととても仲良くなっていた。そう、とても、仲良くなっていた。どうしてこうなった。

 

 

  ...なんで回想してただけなのに、僕が呼び名変えてるのバレたんですかね…。

 




はじめまして、柳ノ介と書いてりゅうのすけと読みます。
処女作なので優しくしてください、何でもしますから!!
ぎゃーくんをtsさせるか悩ましい。


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堕天使たちとの初邂逅

「裕斗、ちょっといいかしら?」

 

部長に呼び出されたので、とりあえず向かった。ちなみに呼び方は2人きりの時だけ変えるということで、みんなには納得してもらった。

 

「どうやらこの町に堕天使が侵入してきたみたいなの。だから警告しに行ってくれない?まだ何もしてないみたいだけど、どうなるかわからないし」

 

「わかりました。どの辺にいるかの目星は付いてますか?」

 

「そうねぇ、堕天使が来たということは、神器所有者を探しに来てるはずだから、商店街とか駅前とかある程度人のいるところじゃないかしら」

 

「なるほど。その辺りを中心に探してみますね」

 

「お願いね」

 

というやり取りをしたので、早速商店街に向かうべく学校を出ようとすると後ろが騒がしいことに気がつく。 どうやらまたいつもの三人組が問題を起こしたようだ。

 

「待ちなさい!!変態三人組!!」

「また覗いてたわね!!今日こそはボコボコにしてやるんだから!!」

 

「やべぇ!!見つかったぞ!!」

「うおー!!逃げろー!!」

「別に減るもんじゃねぇんだからいいじゃねぇかー!!」

 

とお互いに叫びながら僕がいる校門の方へと突っ走ってきた。彼らは学校の平穏を脅かす存在で、部活のみんながいつその被害にあうか僕は不安でならない。

 

「ゲッ!!木場の野郎がいやがる!」

「またアイツに捕まっちまう!!」

「あのクソイケメン野郎!!俺たちに何の恨みがあるんだ!!」

 

「君たちが覗いていた人たちの中には僕の友達もいるからね。なら、僕が君たちにある程度恨みを持っててもおかしくないんじゃないかい?」

 

このやり取りから分かるように、僕は時々この三人を捕まえている。この変態たちと、捕まえる僕という関係のおかげか、この学校の女の子たちからの僕への評価が異様に高い。そんなに大した人間(悪魔だけど)じゃないので胃が痛くなる。是非やめていただきたい。

 

「クソッ!おい、あっちに逃げるぞ!」

「おうっ!」

「捕まるわけにはいかねぇんだ!!」

 

「いや、捕まえるよ。というかもう捕まえたよ。諦めてお説教を受けてきてくれないか?」

 

「ぬおっ!?いつの間に!」

「あああああ!」

「ちくしょおおおお!!」

 

と捕まえたところで、この三人を追いかけていた女子たちが追いついてきた。

 

「あっ、ありがとう木場くん///!!」

「いつも捕まえてくれて本当に感謝だよ///!!」

 

「いや、大丈夫だよ。でも僕はこのあと用事があるから、この三人を職員室に連れて行ってもらっていいかな?」

 

「それくらいなら任せてよ!」

「うんうん!用事、頑張ってね!」

 

「うん、ありがとう。また明日ね」

 

変態三人組を女子たちに任せて今度こそ商店街に僕は向かった。

 

商店街には多くの人たちがいて、堕天使を探すために3時間ほど散策していたが、見つけることは出来なかった。疲労感も溜まってきたところで、たまたま出店のある公園まで来ていた。せっかくなのでお土産でも買って行こうかと思っていると、

 

「ちょっと!売り切れってどういうことよ!」

「いや、そういうこともあるだろう...」

「そうっすよ〜。それにそんな騒ぐとちょっと恥ずかしいっす...」

 

という会話が聞こえて来た。そちらの方を見てみると、日本にはとてもいないような三人組がいた。1人目は黒髪の美女、これはまぁいい。2人目は金髪の美少女。これも珍しいが、まぁいいだろう。3人目は青髪の美女。いや、青て。はてしなく目立っていた。さらにこの三人、気配を探ってみるとどうやら僕が探していた堕天使なのである。いや、隠密行動しろよ。と、思ったが、目立っていたお陰で見つけられたので気にしないことにし、話しかけた。

 

「すみません。今大丈夫ですか?主人の使いで来たのですが」

 

「(使い?あぁ、悪魔ね)...いいわ。私たちの拠点までついて来てくれる?」

 

「わかりました。」

 

そのあと僕は三人に連れられしばらく歩いて行くと、一応この町唯一の教会である廃協会に連れていかれた。

 

「それで、話ってなにかしら?」

 

「まず、ご挨拶から。僕の名前は木場裕斗。悪魔です」

 

「あら、ご丁寧にどうも。私の名前はレイナーレ。堕天使よ」

「私の名前はカラワーナ。レイナーレ様の部下だ。」

「うちはミッテルトっす。同じくレイナーレ様の部下です」

「挨拶はこれぐらいで、本題はなにかしら?」

 

「はい。まずここは悪魔の領地であることは認識していますか?」

 

「ええ、知っているわ。でもこちらも仕事なの。仕方ないでしょ?」

 

「その仕事とは?」

 

「神器所有者の保護よ。ここに神器をもったシスターが来ることになってるから、その子を保護したあとこの教会で色々教えていくことになっていたの」

 

「でしたらそういうことを真っ先にここの領主である僕の主人に報告して頂かないと、こちらとしても対応に困ります」

 

「え?ちょっと待って。報告に行ってないの?ドーナシークが行くって言ってなかった?」

「言っていたな」「言ってたっす」

 

「本当ですか?しかし確かに報告はありませんでしたよ?」

 

「それは変ね。一昨日行くって言ってたから流石にもう行ってないとおかしいもの」

 

「...なんだか怪しいですね。その堕天使の行動はよく見張っておいて貰っていいですか?」

 

「ただ忘れてただけのような気もするけど、一応わかったわ。とりあえず警告、ありがとうね。しばらくこの町にいるつもりだからよろしくね?」

 

「はい。揉めるようなことはしたくないので、お互いその辺りは気をつけましょう」

 

「そうね。いい距離感でやっていきましょう。もう帰っていいわ。お疲れ様」

 

「では、失礼します」

 

こうして無事に部長の指示を達成した僕は部室に戻り、そのことを部長に報告しに来た。

 

「部長、ただいま戻りました」

 

「あら〜、裕斗くんお疲れ様」

 

「あれ?朱乃さんだけですか?」

 

「今は2人きりなんですから呼び捨てじゃないと嫌ですわ。話し方もいつも通りじゃないと」

 

「...朱乃、部長はどこかな?報告したいんだけど」

 

「うふふ。今リアスはお風呂ですわ。それにしても今日は当てもなく堕天使探しをしていたんでしょう?明日は私も手伝いますから、一緒に頑張りましょう?」

 

「え?もう見つけて話もしてきたから大丈夫だよ。それを部長に言いに来たんだ」

 

「まぁ!さすが裕斗くんですわ。それならゆっくりお茶でもしながらリアスを待ちましょう。今お茶をいれますから、そこに座って待っていてください」

 

「ありがとう。朱乃のお茶は美味しいから好きなんだ。でも、これならやっぱり何かお土産に買ってくるべきだったかな」

 

「そんなに気をつかわなくて大丈夫ですわ」

 

「あら裕斗。帰ってたのね、お疲れ様。頼んでた件どうなったかしら?」

 

「たまたまうまく堕天使を見つけられたので、そのまま警告しておきました。ただ、少し気になることがあって...」

 

「裕斗がそういう風に言うってことは何かあったのね?」

 

「はい。今日会った堕天使は3人いたのですが、どうやら他にもう1人いたらしく、その堕天使が僕たちに報告に来るようになってたらしいんです。なのに来てないじゃないですか。どうにもきな臭く感じてしまって...」

 

「確かにそれは変ね...。私たちの方でも監視を強化しましょう。ところで裕斗。その話して来た堕天使って、男?それとも女?」

 

「(ん?なにか不穏な流れになって来てる...)ぜ、全員女の子でした...」

 

「ふーん。まさか、落としてないわよね?」

 

「い、いやぁ。まさか、そんな事あるわけないですよ。ぼ、僕なんかがそんなにモテませんって」

 

「そう、ならいいのよ。でもね裕斗。私の眷属のことを悪く言うのはあなたでも許さないわよ」

 

「す、すみません」

 

「そうですわよ。裕斗くんはとても魅力的ですわ」

 

「あ、あまり褒めないで下さい。恥ずかしいですよ///」

 

((赤面する裕斗(くん)。可愛いわ(ですわ)//))

 

こんなやり取りをして1日が終わった。




どうも、おはこんばんにちわ。
2話目でした。数字と漢数字が入り乱れてますけどそんなに意識してないんで気にしないでください。
感想、評価、お気に入りしてくださった皆様ありがとナス!!本当に嬉しかったです(小並感)。
これからもばちこり頑張っていくので、よろしくお願いします!(受講生並感)


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堕天使(おじさん)との邂逅はノンケなので嬉しく無い

 堕天使たちとの邂逅から3日が経った今、僕は全力で走っている。僕の持つ騎士の駒の特性の力も使って全力で公園に向かっている。というのも、僕の使い魔の小鳥であるハウルが、公園で怪しい堕天使と駒王学園の生徒が一緒にいたと報告して来たのだ。会ったことのある3人の堕天使たちについてはハウルにも伝えているので、怪しい堕天使はまだ会ったことのない堕天使のはずだ。どうにもそいつの動向は怪しいし、学園の生徒も一緒ということでいよいよ怪しくなって来た。

 

「ほ、本当に格安でエロ本売ってる店あるのか?」

 

「ああ、こっちについて来ればいい」

 

 という非常にアホなやり取りが聞こえて来て、力が抜けてしまう。そちらの方を見てみると見るからに怪しいおじさんと、鼻が期待に膨らんでいる兵藤くんがいた。そんなお粗末すぎる誘拐まがいのことに引っかかるなんて、今時小学生にもいないよ...。

 

 ...しかし、よく気配を探って見ると怪しいおじさんの方は確かに堕天使だ。兵藤くんがいるので裏の話をするために話しかけるわけにもいかず、2人が別れるまで様子を見ることにした。

 

「なぁおっさん。まだ店にはつかないのか?」

 

「...いや、この辺りでいいだろう。唐突で悪いんだがね、

 

 

 君には死んでもらうよ」

 

「は?」

 

 その瞬間には僕はもう動き出していた。堕天使は兵藤くんを殺すべく、光の槍を出し、僕は僕の魔剣でそれを防いだ。

 

「君は何者だい?悪魔くん」

 

「僕はこの土地の管理者の眷属、木場裕斗だ!何故彼を殺そうとした!」

 

「ふん、気付いていないのか。そのゴミには神器が入っている。だから暴走する前に殺そうとしただけだ」

 

「そんなことくらい、こっちでも把握している。それよりもお前はレイナーレさんたちと一緒に来た堕天使じゃないのか?仕事はシスターの保護と聞いているぞ!」

 

「なに、ついでに仕事を減らそうとしていただけだよ」

 

「ここは悪魔の領地だ!勝手なことをするな!」

 

「(...今は時ではないか)いいだろう。今日は引いてやる。それではな」

 

 そう言い放つと、さっと飛んで行ってしまった。

 

「お、おい!木場!!なんだったんだよ、今の!!俺、殺されかけたのか!?なぁ、おい!なんとか言えよ!」

 

「...今は説明出来ない。これからのことも含めて明日説明するから、今日のところは一旦家に帰ってもらっていいかな?ごめんね...」

 

 裏の事情に理不尽に振り回される辛さは僕も知っている。だから、今はこんな対応しか出来ないのが心苦しいな...

 

「くそっ!わけわかんねぇけど、一応今日は納得してやるよ。ただ!絶対明日説明しろよな!」

 

「ありがとう。それじゃぁ、家まで送るよ」

 

「いらねぇよ!じゃ、また明日な!」

 

 そう言って兵藤くんは走り去ってしまった。今はとにかく部長にこのことを報告しないと。

 

 

 sideリアス

 

 

「ということがあって、兵藤くんには明日説明するよう伝えてあります」

 

「そう、ご苦労様、裕斗。今回はあなたのおかげで助かったわ。ありがとうね」

 

 私はリアス・グレモリー。上級悪魔で目の前の彼の主人だ。そんな私は目の前の彼に恋をしている。どんな相手にも優しく接し、守りたいもののためにはどこまでも熱く、強くなれる彼に。

 

「いえ、当然のことをしただけですよ」

 

「それで?説明した後はどうするつもりなの?」

 

「え?それは部長が決めることでは...」

 

「今回はあなたが助けたんだからあなたの意見も聞きたいのよ」

 

「そうですね...。眷属に加えるには彼は危ないですし...」

 

 っ!?裕斗はこういう無意識の優しさが本当に心臓に悪いわ...///

 だからこそ皆んなも、私もどうしても惹かれてしまうのだけど...///

 

「そっ、そうね!?彼は素行に問題があるものね!」

 

「は、はい。(急に焦ってどうしたんろう?)ですから、監視のもと、保護するのが妥当かと思います」

 

 優しい彼らしい判断だ。

 

「そうね。私もそのあたりが落とし所だと思うわ。細かいところは明日本人の態度を見て決めましょう。これで仕事の話はおしまい。

 裕斗!今日はあなたの家に泊まるわ!いいわよね?」

 

「え!?ぶ、ぶちょ「もう仕事は終わったんだからリアスと呼びなさい!敬語も禁止!」...リアス!本気かい?もう今週3回目だよ?」

 

「なによ、何か問題があるの?自分の主人を家に泊められない問題が」

 

「い、いや、ないけど...」

 

「ならいいじゃない!決定!早く帰りましょう?」

 

「あっ、ちょっ、引っ張らないで、リアス!」

 

「ふふっ!」

 

 今日も私は彼と一緒にいる。大好きな優しい私だけの騎士(ナイト)と。

 

 

 side out

 

 

 翌日になって放課後、僕は兵藤くんを連れてきた。

 

「それで?説明するためだけにわざわざ旧校舎まで連れてきたのか?」

 

「それなりに大事な話だからね。出来るだけ人には聞かれたくないんだ」

 

「まぁ、いいけどよ...」

 

 そのまま部室に着く。どうやら僕たちが最後のようだ。

 

「うぉい!なんだこのメンツは!?学園のマスコットの塔城小猫ちゃんに、学園の二大お姉様の姫島朱乃先輩にリアス・グレモリー先輩まで!!お前こんな所でハーレムを築き上げていたのか!?」

 

「そ、そんなわけないよ!///僕は部活としてここに参加していて...」

 

「「...///」」

「あらあら///」

 ↑ただ照れてるだけでなく、裕斗の赤面可愛いとかも考えてる

 

「ちっくしょおおおお!!!木場!!俺はお前が心底憎いぞおおお!!」

 

「そんな事話に来たんじゃないでしょ!説明をさせてくれ!!」

 

「っ!......わかったよ。非常に不満だが取りあえず説明は聞く」

 

「ふぅ...。じゃあ、部長。よろしくお願いします」

 

「ええ、ご苦労様、裕斗。まず最初にわかって欲しいのはこの世界には人間以外の知的存在がいるという事。その中で最もメジャーなのが三大種族と呼ばれる天使、堕天使、そして悪魔という事。あなたのことを昨日襲って来たのが堕天使。そして、私たちは悪魔。

 ここまではただの種族の説明よ。ここからが本題。あなたには神器(セイクリッドギア)と呼ばれる特殊な力が眠っているの。それが原因であなたは昨日堕天使に殺されかけた、というわけ。ここまで、大丈夫かしら?」

 

「は、はい!なんとなくですが、大丈夫だと思います!でも、俺そんな特別な力みたいなの感じたことないですよ?」

 

「なら今出してもらいましょう。深呼吸をして、心を落ち着けて、自分の中の最も強い存在を強く思い浮かべて。そして、力を解放する!」

 

「はい!ドラゴン波ァ!」

 

 なんで漫画、ドラグソボールの主人公、空孫悟の必殺技を叫んでるんだ...。

 

「ドラゴン波?よくわからないけどちゃんと出たわね。それがあなたの神器よ」

 

「うわっ!?なんか腕についてる!?」

 

「どうやら龍の手(トゥワイスクリティカル)のようね。そこそこ出回ってる神器だわ」

 

「そ、そうなんですか...。何となくちょっと残念だな...」

 

「そんなことないよ。神器っていうのはあるだけ儲けものなんだ。普通は無いものなんだからね」

 

「そっか。そうだよな!サンキュー木場!ちょっと元気出たよ!」

 

「仲がいいようで何よりよ。それで、兵藤くん。これからの事なんだけど、あなたには私たちの保護下に入ってもらいます。あなたも死にたくは無いでしょう?なら自分の身は自分で守れるように特訓をつけてあげる」

 

「リ、リアス先輩がです「裕斗がね!」..か...」

 

「一緒に頑張ろうね!兵藤くん!」

 

「うっせぇ!!やっぱお前は敵だあああああ!!!!」

 

 そう叫ぶと彼は部室から走って出て行ってしまった。あっけに取られ、すっかり彼の姿が見えなくなったところで、彼にいつから何時に特訓をするか伝えるのを忘れていることに気づいた。

 

「部長!彼に特訓はいつやるか伝え忘れてたので、追いかけて伝えて来ます!」

 

「行ってらっしゃい。伝えたら戻ってくるのよ」

 

「はい!」

 

 そう言うと、僕は校外に兵藤くんを探すため走り出した。

 




どうも、おはこんばんにちわ。
3話目でした。これからも木場くん以外の視点は取り入れていきたいですねぇ!
やっぱり僕はこういうのは、王道を征くって感じがして好きですね。
本日も最後に、感想、評価、お気に入りして下さった皆様、本当にありがとナス!!
次回も、ぜってぇ見てくれよな!(孫悟空感)


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元聖女も要するに聖女

 兵藤くんに特訓について話をするために探し始めて30分ほどが経った今、僕は住宅街をウロウロしていた。しかし兵藤くんの家も知らないし、全く見つからない。ただ当てもなく歩き続けていると白いベールが風に流され飛んできて、反射的に掴んでしまった。そのまま立っていると右のほうから

 

「あひゃんっ!?」

 

 という悲鳴とともにドシャァッ!と人が転んだ音が聞こえたのでそちらの方を向くと金色の髪を陽光に輝かせながら顔を抑えている少女がいた。

 

「あ、あの、大丈夫かい?」

 

「はっ、はい!心遣いありがとうございます!あっ、そのベール私のです!拾っててくれたんですね!重ねがさねありがとうございます!」

 

「いや、そんな、たまたまだよ」

 

「いえ、それは私にとってとても大事なものだったんです!だから本当にありがとうございます!」

 

「そういうことなら感謝を受け取るよ。どういたしまして」ニッコリ

 

「(はうっ!?か、カッコいいです...///)は、はい!主にこの出会いを感謝です!」

 

「つうっ!?」

 

「え?主へのお祈りで辛そうにしたらということは悪魔さんなんですか...?」

 

「...それについて話したいからこの町の教会までついてきてもらっていいかな?レイナーレさんがいるところなんだけど」

 

「わ、わかりました。案内よろしくお願いします」ペコッ

 

「それじゃあ、自己紹介するね。僕の名前は木場裕斗。この町にある学園の生徒だよ。よろしくね。君は?」

 

「私はアーシア・アルジェントといいます。この町に派遣されてきたシスターです。よろしくお願いします!」

 

「(簡単に信じてくれたけど、この娘大丈夫かなぁ。今後が心配だよ)うん、じゃあ付いてきて」

 

「はい!」

 

 そのあと教会に向かって歩いている途中で公園に差し掛かった。すると「うえーーん!!」と、大きな泣き声が聞こえてきた。どうやら小さい男の子が転んで怪我をしたようだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

「(アルジェントさんの言葉はイタリア語だから通じて無いな...)この娘は大丈夫か聞いて心配してくれてます」

 

「あら、そうなの?ありがとうね。ほら、もう泣き止んで!男の子でしょ!」

 

「だって痛いんだもーん!!!!」

 

「もう大丈夫ですよ」

 

 そういうとアルジェントさんの手が、いや、よく見ると手に付けている指輪から緑色の光が出たと思うと男の子の怪我が治っていた。これが彼女の神器か。回復系の神器珍しいけど、なんとなく彼女にとてもよく合っている気がした。

 

「治ったー!!」

 

「え!?あ、ありがとうね!ほら、さっさと行くよ!」

 

「ありがとうー!」

 

「(母親の方、気味悪がっていたな...。なんとも後味が悪い...)男の子、ありがとうって言ってたよ」

 

「ええ、ちゃんと治ったようで良かったです!」

 

「...触れていいところかわからないけれど、これまでもあの母親のような反応をされたことがあるんじゃないかい?」

 

「...はい、何度か..」

 

「辛くは無かったのかい?」

 

「私は感謝されたくて治療しているわけではありません。ただ、怪我はつらくて痛いですから、だから治療しているんです。それで私に対して笑ってくれなくても、他の誰かと笑ってくれていればそれでいいんです」

 

「(こんな優しい子が教会にもいたのか。やはり見るべきなのはどこの所属なのかではなくその個人だよね)アルジェントさんはまるで聖女さまみたいだね」

 

「...そんな、私はそんな立派な者じゃないですよ...」

 

「(顔を曇らさせてしまった。地雷だったかな...)そんなことないさ。君は素晴らしい人だよ。自信を持って!それじゃあ、教会に行こうか!」

 

「(励ましてくれたんですね。ありがとうございます、木場さん)はい!改めてよろしくお願いします!」

 

 そのまま2人で教会に向かった。

 

 

「ありがとうございました!助かりました!」

 

「ご苦労様。あんたのお陰でアーシアを探しに行く手間が省けたわ」

 

「いや、気にしないでください。僕もたまたま見かけただけですから。中に入ってアルジェントさんにこの町について説明したいんですが、大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫よ。入ってちょうだい」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 僕たちは教会の中に入って少し落ち着き、世間話をしてから本題に入った。

 

「それで、アルジェントさんはこの町についてどのくらい分かってる?」

 

「この町が悪魔さんの領土だということは知っているんですが、他のことはあまり...」

 

「なるほど。まずここは魔王サーゼクス・ルシファー様の妹君であらせられるリアス・グレモリー様の領土で、僕はリアス様の眷属悪魔なんだ」

 

「やっぱり悪魔さんだったんですね...でも、木場さんはいい悪魔さんです!これからこの町で、よろしくお願いします!」

 

「そうね、あんたのことはある程度信用してるわ。まだしばらくこの町に留まるつもりだから、よろしくね」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。それで、もう1つの本題なんですが...」

 

「もう1人の堕天使、ドーナシークのことね?あいつとはあなたと初めて会った日の後は1回しか会ってないわ。シスターが来たら連絡をくれ、とだけ言われたわ」

 

「そうですか。僕も1度だけ会えたんですが、その時僕の学園の生徒を神器を持っているというだけで殺そうとしていたんです。それは堕天使としては当たり前なんですか?」

 

「まさか!そんなわけないわ!本来ならある程度見極めてから保護か、最悪殺すまでを考えるのよ。でも殺すのは本当に一握りの暴走した者達だけ。しかもそういう手段を取るときはちゃんと許可状が必要なの。これは他の勢力との変な争いを避けるためね。だからそんないきなり殺すなんてことはあり得ないわ!」

 

「そうですよね。ちなみに彼との関係って聞いてもいいですか?」

 

「え、ええっ!?//あ、あいつとは別になんともないわよ!大した仲じゃないわ!!」

 

「え?いや、そうじゃなくて彼とはいつ頃からの知り合いかとか、信用してるかとか聞きたかったんですけど...」

 

「なっ!?///そういうことは先に言いなさい!...そうね、あいつとはここに来ることが決まった時に知り合ったのよ。「自分もここの担当になった」って。私達3人は以前からの仲なんだけどね。ちゃんとした書類も持ってたしそのまま合流したってとこよ」

 

「なるほど。...少し不安ですね。すみませんが、僕の使い魔のハウルの羽を4人とも持っておいてくれませんか?」

 

「何故かしら?お守り?」

 

「ふふっ。違いますよ。何かあった時この羽を折って貰えばそれがハウルに伝わって、そのまま僕にも伝わるという仕組みになってます。防犯ブザーみたいなものです」

 

「便利ね。ありがたく頂くわ」

「ありがとうございます!」

「ありがとう」

「ありがとうっす!」

 

「それにしても、レイナーレさんも冗談とか言うんですね。少し打ち解けたみたいで嬉しかったです」ニッコリ

 

「っ!?///そう言うことを急に言うのはやめなさい!」

「照れてるな」「照れてるっす」

 

「照れてない!!///」

 

「ふふっ。仲が良さそうで何よりです。それでは、今日はもう戻りますね。アルジェントさんもまたね。またそのうち様子を見に来るから」

 

「はい、またお会いしましょう!」

「また来なさい。あなたなら歓迎するわ。アーシアも喜ぶし(...私も)」

「そうだな。また土産話でも持って来てくれ。そうすれば、こちらもお茶くらいはご馳走しよう」

「また来て下さいっす!その時はトランプゲームでもしましょう!」

 

「ありがとうございます。また来ます。それでは」

 

 そう言って僕は教会を後にした。今日のことも部長に報告しなければと思ったのと、部長に戻って来るよう言われていたのを思い出し、夕焼けに染まる町並みを見るながら部室に戻ることにした。

 

「木場裕斗、ただいま戻りました!」

 

「裕斗先輩、お疲れ様です」

 

 部室に戻ると小猫ちゃんがソファに座ってケーキを食べていた。ケーキの皿の横にある、恐らくケーキを食べた後に残る台紙が山のように積み上がっているのは気にしない。いつものことだし、流石に慣れた。

 

「小猫ちゃ「小猫です」...小猫、部長がどこにあるか知らない?」

 

「部長は先ほど朱乃さんと一緒に大公からの連絡を確認しに行きました。出たばかりなので、恐らく30分くらいかかると思います」

 

「そっか。じゃあ、僕もお茶でも飲みながら待とうかな。小猫ちゃんもいる?」

 

「ありがとうございます。いただきます」

 

 お茶を入れてソファまで戻って座ると、膝の上に小猫が乗って来た。

 

「本当に小猫はそこが好きだね」

 

「はい。ここが1番落ち着きます(それに裕斗先輩の匂いも感じられますし...)」

 

「ふふっ。僕も小猫が膝に乗って来るの好きだよ。あったかいし」

 

「っ!?///あ、ありがとうございます。ならこれからは、2人きりになった時できるだけ膝の上に乗せて下さい///」

 

「うん、いいよ。いつでもおいで」

 

 というようなやりとりをしているとすぐに30分経ってしまった。

 

「部長がそろそろ戻って来そうなのでどきますね」

 

「うん、わかった」

 

 と言って小猫が膝の上から退いたらすぐに部長が帰って来た。

 

「あら、裕斗。おかえりなさい」

「裕斗くん、おかえりなさい」

 

「はい部長、朱乃さん。ただいまです。ご報告があるのですが、今大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫よ。何かあったの?」

 

「いえ、以前伝えていた堕天使の件なんです。その堕天使達の目的はある神器所有者の保護だったんですが、その保護されるシスターが道に迷っていたのでそのまま彼女達の元へ連れて行きました」

 

「なら、とりあえず堕天使のことは一旦大丈夫かしらね」

 

「いえ、その3人とは別の残りの堕天使のことなんですが、どうやら3人のもとにほとんど戻ってないみたいなんです。なんだかきな臭く感じたのでハウルの羽を渡しておきました」

 

「なるほどね。こういうことに関する裕斗の嗅覚は鋭いから、その判断は正解だと思うわ。まぁ、当たって欲しくない類のものではあるけれどね」

 

「たしかに、そうですね」苦笑

 

「それで?兵藤くんは見つけられたの?」

 

「あっ」

 

 部長に言われて初めて思い出したが、兵藤くんのことをすっかり忘れていた。本当は明日の朝から特訓始めたかったんだけどなぁ...。

 

「ふふっ。そういう少し抜けてるところも可愛いわよ」ニッコリ 

「あらあら、おっちょこちょいの裕斗くんも確かに可愛いですわ」ニッコリ

「ちょっとお間抜けな裕斗さん、可愛いです」ニッコリ

 

「ちょっ!?皆んなしてからかわないで下さいよ!///」

 

 この後、解散するまでいじられ続けた。うぅ...は、恥ずかしい...。

 




どうも、おはこんばんにちわ。
4話目でした。アーシアさんとの出会い方は原作一誠くんを踏襲しました。うまく思いつかなかったとかではない。そんなことはない。ないったら無い。

お互い元教会側ということから幼少期から知ってるゥ!!ルートも考えたんですが、本作の設定だとまともに関われるの4歳まで、なんですよねぇ..,。絶対覚えるわけないだろ!いい加減にしろ!と思って廃案になりました。


本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様、本当にありがとナス!!
次回も、見ろよ見ろよ。(淫夢感)
この最後の一言は1日1万回感謝の正拳突きと同じなんで、そんなに気にしなくていいです。そのうち音を置き去りにします。


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やって来た(こちらから襲った)はぐれ悪魔

「というわけで兵藤くん、特訓は学校のある日に早朝と部活の後、土日はどちらかでやったらどちらかは休みって感じでやろうと思ってるんだけど、どうかな?」

 

「あぁ、わかった。でも土日のどちらかってどうやって決めるんだ?」

 

「基本的には土曜日にやるつもりだけど、お互い何かしらの用事とかもあるかもしれないから、そこは柔軟に対応するよ。という訳で、連絡先聞いてもいいかな?」ニッコリ

 

「お、おう(か、顔が輝いてやがる...!?クソイケメンが!)ほら、LINEのQRだ」

 

「うん。...読み込めたよ。じゃあ、そっちも登録しておいてね」

 

「はいはい。...こっちも読み込めた。これで連絡できるな。それじゃあ俺は教室戻るな(周りの女子からの視線が痛いから、早く離れたいぜ...)」

 

「うん。授業が終わったら部室に来てくれればいいから、待ってるよ。それじゃ、特訓頑張ろうね!」

 

「おう、また放課後な」

 

 そう言うと兵藤くんはそそくさと教室に戻っていった。

 さて、察しの良い人はわかると思うけど今はアルジェントさんと出会った次の日の学校の休み時間。昨日伝えそびれた今後の予定を兵藤くんに伝えていたんだ。ちなみに昨日僕が彼を見つけられなかったのは、どうやら彼は昨日部室を出た後まだ校内にいたかららしい。なんと驚くべきことに、いつものようにあのいつもの三人組で覗きをしてたみたいなんだ。あんな事があった後なのにも関わらず、いつも通り変態行為を行う彼のメンタルの強さは見習うべきなのかもしれない。いや、気の迷いだな。無かったことにしよう。

 

 などとくだらないことを考えていると、あっという間に放課後になった。

 部室に行くとメンバーの皆んなはいたが、肝心の兵藤くんの姿がない。

 

「部長、兵藤くんはまだ来てなかったんですか?」

 

「そうね。確かに遅いわ。ちょっと見てみるからお茶でも飲んで待っててくれる?」

 

 うちの部活は学校を守るために監視カメラのような役割の遠見の魔法を学校のいたるところに設置しているのだ。

 

「はい、裕斗くん。どうぞ」

 

「ありがとうございます、朱乃さん」

 

「お菓子もどうぞ、裕斗先輩」

 

「ありがとうね、小猫ちゃん」

 

 と、即席お茶会をしていると「はー...」と部長が大きく深いため息を吐いた。

 

「どうしたんですか?」

 

「それがねあの彼、今まさに三人組で覗きをしてるわ...」

 

「本当ですか?」

 

「えぇ、本当よ。彼、自分が今どういう立場か分かってるのかしらね?裕斗以外全員女性のグループの保護下にあるのよ?それなのにそんな事してたらどういう扱いになるかわかりそうなものじゃない」

 

「いやぁ、彼は本能で動いてるタイプですから、あまり深いことは考えてないと思いますよ?」

 

「とにかく、そんな女性の尊厳を踏みにじるような行為は見ているだけで不快だわ。裕斗、止めに行ってちょうだい。場所は剣道場の裏よ」

 

「わかりました。いってきます」

 

 そう言って僕は剣道場の裏に向かった。

 

「君たち、何してるんだい?」

 

「うおぉ!何だ!?誰だ!?」

「ゲッ!?木場!?」

「何でバレたんだ!?」

 

「ちょっと、外から声聞こえない?」

「やだ、また覗き!?」

 

「うおい、バレたぞ!!」

「逃げろ!」

「急げ!!」

 

「逃がさないって。悪いことをしたんだからキチンと怒られないと」

 

 そういって僕は3人の襟をつかんだ。

 

「「「ぐげっ!!!」」」

 

 どうやら喉がしまってしまったようだ。まぁ自業自得だと思ってもらいたい。

 

「何すんだよ!」「いてぇじゃねぇか!」「ふざけんな!!」

 

「キチンと怒られないと、って言ったじゃないか。ほら、来たよ」

 

「コラァ!!!変態三人組!!って木場くん!?」

「今日は逃がさないわよ!!って木場くん!?」

 

「やぁ、村山さん、片瀬さん。3人は捕まえておいたよ」

 

「あ、ありがとう!///」

「いつも助かるわ///」

 

「ふふっ。それは言わない約束だよ」ニッコリ

 

「「(イケメンが人差し指を立てて口に当てて微笑んでる...///!?)」」

 

「(クソイケメンが!!)」

「(無駄に絵になってやがる!!)」

「(女子も顔真っ赤って、ふざけんな!!)」

 

「それじゃあ、職員室に3人を連れて行くから。部活、頑張ってね」

 

「「は、はい!本当にありがとうね!!」

 

 そう言って2人と別れた僕は3人を職員室に連行し、兵藤くんには説教が終わった後部室に来るように伝え、部室に戻った。

 

「ただいま戻りました」

 

「お帰りなさい、裕斗。こちらでも覗きを撃退する場面を確認してたわ。ところで裕斗、あの剣道部の女子たちとは一体どういう関係なのかしら?」ニッコリ

 

「あらあら、それは私も気になりますわ」ニッコリ

「私も気になります」

 

「(な、なにか悪寒が...)え?いや、あの2人とは三人組を捕まえる時に結構な頻度で会ってるうちに軽く話す仲になったんです。あの2人も可愛いですから、結構狙われるみたいで...」

 

「ふーん、そう。裕斗はああいう子がいいのね」プイッ

 

 何か不機嫌になってしまった。

 

「あの、皆んなも当然綺麗ですし、皆んなの方が好きですよ?ただあの三人組に狙われるのはあの2人も可愛いからっていうだけのことです」

 

「そっ、そう。///それならいいわよ」

「あらあら///」

「!?///」

 

 そういうと部長たちは頬を赤くしてそっぽを向いてしまったそういう所も可愛いんだけどなぁ。そんな事を思っていると

 

「ゆ、裕斗くん。どうぞ、お茶ですわ///」

 

 そう言って朱乃さんがお茶を出してくれた。「ありがとうございます」と伝え、お茶を楽しむことにした。

 

 お茶と会話を楽しんで、3時間が経過した。するとコンコンっとノック音が部室内に響いた。

 

「どうぞ」

 

「しっ、失礼します!!」

 

 裏返った声の主は兵藤くんだった。ようやく先生のお説教が終わったようだ。

 

「あなたねぇ、覗きなんてやめなさい!」

 

「うえっ!?何故その事を!?」

 

「あなたねぇ、この学園であなたが覗きをしている事を知らない人の方が少ないわよ。それより!あんな最低なことはやめなさい!!女性はあなたの性欲を満たすためにいるわけじゃないのよ!!」

 

「す、すみません。それでも俺は女体を求めます!!」

 

「はぁ、呆れた。言ってもわからないならもういいわ。勝手にしなさい」

 

「(あぁ、嫌われちゃったかなぁ...)」

 

「全く、少しは裕斗を見習ったらいいのに...」ボソッ

 

「(けっ!また木場のやつかよ!イケメンはいいよな!)」

 

「まぁまぁ部長。彼も今怒られてきた後なんですから、僕らからはあまり言わなくていいんじゃないですか?」

 

「ふぅ...。裕斗がそう言うなら...。ともかく、もうやらないこと!わかった!?」

 

「は、はい!!(勢いではいって言っちまった!!でもまぁ、こっそりやればバレないだろ)」

 

「今日は色々あって疲れただろうし特訓は明日からにしようか」

 

「あ、あぁ。助かるぜ」

 

「なら今日はあなたを保護している私たちがどれだけ強いのかを見せてあげる!!」

 

「はぐれ悪魔の討伐依頼でもあるんですか?」

 

「えぇ、その通りよ!大公からの依頼があったの。いい?兵藤くん。私たち悪魔の中には主人の元から離れ、色々な悪さを働くはぐれ悪魔と呼ばれる存在がいるの」

 

「ならそのはぐれ悪魔ってのは、先輩たちみたいないい悪魔たちが全員ぶっ倒すんすね?」

 

「いいえ、ただはぐれ悪魔と言うだけではだめなの。裕斗たちみたいに生まれた時からではなく、後天的に悪魔の駒(イーヴィルピース)というもので悪魔になった者たちを転生悪魔と呼ぶのだけれど、その転生は相手の同意がなくても出来てしまうの。これは無理矢理自分の眷属にできるということよ。そうやって眷属にされた悪魔たちまで殺してしまうのはどうなのか、という意見が最近ようやく認められてね、少しずつだけれど調査が進んでるの。

今回のはぐれ悪魔についてはもう調査もすんで退治してくれって大公からの依頼が来たの。だからその戦闘を見せてあげる」

 

「なるほど。よろしくお願いします!」

 

「なら早速行きましょう。居場所はもう突き止めてあるの」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 というわけで、やって来ました廃倉庫。そこに入ろうとすると

 

「うまそうな匂いと不味そうな匂いがするぞ?どっちなのかな」

 

 と言いながらとても大きな、上半身は女性の裸で、下半身が異形の存在が出て来た。

 

「出たわね!はぐれ悪魔バイザー!!」

 

「な、なんだあいつ!?」

 

「力に溺れたはぐれ悪魔はどんどん姿が異形のものになっていくんだ」

 

 そんな説明をしていると

 

「まずはお前からだーー!!!」

 

 と言いながらその大きな拳を小猫ちゃんに振り下ろした!

 

「小猫ちゃん!?」

 

「大丈夫よ、小猫の駒は戦車(ルーク)。その特性は馬鹿げた防御力と攻撃力!!」

 

「吹っ飛べ。あと、名前で呼ばないでください兵藤先輩」

 

「ご、ごめん...」

 

 そんなやりとりをしていると倉庫の中まで吹き飛ばされたバイザーから悲鳴が聞こえる。そちらを見ると雷に打たれている姿があった。

 

「おほほほほほ!痛いですか!?こちらの方が痛いですか!?」

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「うわぁ、こえぇ...」

 

「あれが最強の駒、女王(クイーン)。朱乃は最強のドS女王なの!

朱乃、それくらいでいいわ。後は私が消しとばしてあげる!」

 

「はい、部長。トドメはお任せしますわ」

 

 そう言ってバイザーに近づいていく。

 

「私は滅びの魔力を受け継ぐ、誇り高き(キング)!!リアス・グレモリーよ!!」

 

 そう言ってトドメを刺し、バイザーは影も形も無くなってしまった。

 

「それじゃあ、木場は?」

 

「ん?僕はね...」

 

 そう言って説明をしようとした瞬間、なんと倉庫の廃棄材の裏から人間の姿をしたバイザーが部長に向かって飛びかかった!!

 

「「「部長!!!?」」」

 

 しかし、その突進は地面から突然生えた剣に止められる。そして僕は怯んだバイザーを一刀のもとに切り捨てた。先ほど消しとばされたのはバイザーの下半身の異形の部分だけであり、外すことが出来たのだ。朱乃さんの雷で焦げた時に出てきた煙に紛れて隠れていたのだ。

 

「僕は部長の、リアス・グレモリーさまの騎士(ナイト)だよ。それより部長。油断しすぎです」

 

「うっ...。助けてくれてありがとう。でも裕斗も分かってたなら教えてくれてもいいじゃない!」

 

「いえ、僕はサーゼクス様に部長の教育を頼まれてますから」

 

「...ふふっ。というわけで、裕斗はうちで1番頼りになる騎士なの!彼に特訓をつけてもらえばきっと強くなるわ。頑張りなさい」

 

「...はっ、はい!頑張ります!」

 

 というわけで兵藤くんへの僕たちグレモリー眷属の紹介が終わった。

 

 sideリアス

 

「「「部長!!!?」」」

 

 っ!?まずい!死ぬことはないだろうけどそれでも一撃貰ってしまうことは確実だ。そう思って痛みをこらえるべく、ギュッと目をつむる。

 

 ...いつまでも痛みが来ないと思ってると

 

「僕は部長の、リアス・グレモリーさまの騎士(ナイト)だよ。それより部長。油断しすぎです」

 

 という声が聞こえて来た。その注意するような声の中に暖かさを感じて泣きそうになってしまう。バレてないだろうか...。

 

「うっ...。助けてくれてありがとう。でも裕斗も分かってたなら教えてくれてもいいじゃない!」

 

 そういうも

 

「いえ、僕はサーゼクス様に部長の教育を頼まれてますから」

 

 と、軽くあしらわれてしまう。だが彼は別に命令されているから私のことを見てくれているわけではない。彼はバレてないと思っていそうだが、長く一緒にいる皆んななら分かる程度に顔が赤くなっている。そう、照れ隠しなのだ。私は自分の意思で私のことを彼が見てくれていることを嬉しく思ってしまう。

 

「...ふふっ。というわけで、裕斗はうちで1番頼りになる騎士なの!彼に特訓をつけてもらえばきっと強くなるわ。頑張りなさい」

 

 だからこそ、嬉しくて微笑んでしまう。彼との小さな掛け合いも好きなのだ。これからも私のことを見ていてね?ゆ・う・と!




どうも、おはこんばんにちわ。
5話目でした。今回はvsバイザーでしたね。実際バイザーさんよく見ると、すごく...(胸が)大きいです...。って感じでエロくて好きです。見た目は。

ほ、ほげぇ!!評価バーに色がついてる!?ルーキー日間ランキングにもなってる!?やったねたえちゃ(以下略
いやほんといつも見てくれてる皆様のおかげです!!これからもオナシャス!!

本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様、本当にありがとナス!!
次回を見ないというならば、俺はこの星を破壊し尽くすだけだぁ!(ブロリー感)

この次回ネタ、早速尽きて来たぞ...

あの、木場くんの名前が祐斗くんではなく裕斗くんになっているのが気になった方は活動報告の方に載せてますので、そちらをご覧ください。気にならない方は一切気にしなくて大丈夫です。


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若白髪は苦労人かロクでも無いかの二択

 side一誠

 

 今朝からついに特訓が始まった。昨日皆んなの戦闘を見て度肝を抜かれ、これがこれから俺が関わっていく世界なのかと思うと目眩がした。そして、オカ研の皆んなを羨ましいと思った。あんなに厳しい世界の中で、あの4人の中に確かな繋がりを感じたからだ。その繋がりの中に俺はいない。これからどうなるかは分からないけど、少なくとも今は。あと1つ分かったことがある。それは.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  俺も強くなればモテモテになるかもしれないってことだ!!!!!!これは世紀の大発見である。木場はどっからどう見てもあのオカ研の皆んなから好意を寄せられている。美女美少女しかいないあのオカ研全員からである。最初はやはり顔なのかと絶望感を抱いていたが、昨日グレモリー先輩(何回かリアス先輩って言ったら優しくグレモリー先輩と呼ぶよう注意された)が木場に助けられた時の表情...とてもお美しかった......じゃなくて、その時の表情は完全に惚れ直した!って感じだった。

 

 つまり、俺も女の子たちをピンチから救うことができるくらい強くなれば、救うことができればその娘は俺のことが大好きになるに違いない!!そう思って木場の特訓に臨んだんだ。グレモリー先輩も木場が特訓をつけたら強くなれるって言ってたし、すぐ強くなれると思っていた。

 

 しかし、現実はそんなに甘くなかった。まず、俺の神器の龍の手は身体能力を2倍にするという能力なのだが、非常に地味だ。昨日木場が最後に剣を出してたからそれについて聞いてみると、あれは木場の神器である魔剣創造(ソード・バース)によって出していたらしい。神器までイケメンな能力だと思った。聞いた瞬間に殴りかかった俺は悪くない。返り討ちにされたけど。脱線したけど、俺の神器は身体能力を2倍にする、つまり身体能力自体を上げないと強くなれないということらしい。というわけで、しばらくは筋トレと走り込みがメインの修行になる。修行まで地味だ...。俺も木場みたいにバシバシ敵を倒せるように早くなりてーー!!!

 

 side out

 

 

 side 裕斗

 

 授業も終わり、今は放課後。今日から始めた兵藤くんの特訓について僕は考えていた。見ていた感じ、やはり筋トレと走り込みだけということに非常に不満そうにしていた。今後の方針を部室で考えている部長が「裕斗に依頼が来てるわよ」と教えてくれる。返事とお礼をして早速魔法陣で飛ぶ。その際に、何となく嫌な予感がした。だが、魔法陣が止まるわけもなくそのまま飛び、目的地に着くと目の前に血の池が広がっていた。

 

 幼少期の経験のせいで多少こういう事に慣れていた僕は、すぐにこの血の元の持ち主の男性の容体を調べだが、既に亡くなっているということだけが分かった。彼は僕のお得意様でよくお世話になっていたから非常に心にきた。

 

「ん?あーくまくんじゃあ、ないですか」

 

 後ろから白髪の若い男が話しかけて来る。

 

「お前がこの人を殺したのか」

 

「そーですよ!その人間はクソ悪魔に頼って生きていたドグサレ人間でしたからねぇ。この俺ちゃんが直々に主の元にお導きしてやったんだよ!!!」

 

「たったそれだけの理由で殺したのか!!?」

 

「それだけ?クソ悪魔に頼ってる時点で死刑確定なんですけどー。てゆーか、そんなことしてたら生きてる価値もないんですけど!!あ、でも死体になって君みたいなクソ悪魔くんを釣るっていう餌になってるから価値が出来たじゃん!生きてたら価値ないけど死体にして価値を付けてあげた俺ちゃんってちょー優しい!!」

 

「もうだまれ!お前はここで切り捨てる!!」

 

「へっ!さっさとかかってきんしゃい!!」

 

 と言いながらその男は待つではなく、いきなり発砲してきた!しかし危なげなくスピードを活かし避けると、そのまま男に急接近し出した刀でそのまま袈裟斬りを放つ。ガギンッ!!という音が部屋に響いた。

 

「あ、危ねぇ危ねぇ!!いきなり何しやがんだ!!」

 

「かかってこいと言いながら発砲する君には言われたくないな」

 

「俺ちゃんは良いんだよ!」

 

 そう言いながら思いっきり蹴りを放ってくるが、そんなものは読めている!蹴り足に向かって地面から刃先を伸ばさせる!!男の足には深々と剣が突き刺さった!

 

「グアッ!!て、てめぇが神器持ちなのは分かってたがそんな厄介な事もできんのかよ!」

 

「まぁね。さぁ、あとはとどめだけだ」

 

 そう言って男に近づいていくと

 

「キャアアアアアア!!」

 

 という女性の悲鳴が聞こえた。いや、この声は......

 

「アルジェントさん...?」

 

 

 side アーシア

 

 本日は教会のお仕事で悪魔さんと契約されている方を説得して、その契約を辞めてもらうためにフリード神父と一緒にある男性のお宅に伺いました。私はここの悪魔さんたちなら大丈夫です!とお伝えしたんですが、全く取り合ってもらえず押し切られてしまいました...。お宅に着くとすぐにフリード神父は

 

「アーシアちゃんは二階に他の人もいないか探しに行ってくれぃ。俺っちは先にあのドグサレ人間をせ・っ・と・く、しとくからSA☆!!」

 

 と言ってそそくさと一階のリビングに行ってしまいました。私は言われた通り二階をしばらく探していると一階から何か暴れまわっているような音が聞こえてきました。気になったので階段を降りてリビングに入りました。すると、目の前に広がる血の池、それをたどっていったところに倒れている男性。思わず悲鳴をあげてしまいました。

 

「アルジェントさん...?」

 

 この町にきて初めて話した男性、木場さんの声が聞こえました。

 

「木場さん...?」

 

「アーシアちゃぁあああん!助けてくれぇえ!そのクソ悪魔くんに足をぶっ刺されちまったよ!!」

 

「えっ!?ほ、本当なんですか?木場さん...。う、嘘ですよね...?」ウルッ

 

「いや、本当だ。彼の足は僕がやった」

 

「そ、それじゃあ、あの奥に倒れていた男性も...?」

 

「いや、あれは「そのクソ悪魔くんがやったんだよぉ!!この俺ちゃん様が人間殺したりするか「フリードさんは黙っててください!!!私は木場さんに聞いてるんです!!!!!」

 

「えっ、あっ、はい.........」

 

「......僕じゃないよ。さっき戦ってる時に彼がやったって言ってた」

 

「ちょ、ちくんなや!!!今のアーシアちゃんこわ「フリードさん?」え、あ、あの、はい。何でございましょうか?」

 

「何で嘘ついたんですか?」

 

「いや、だってクソ悪魔は存在が悪っていうか「フリードさん?」はい。助けて欲しくて嘘吐こうとしました」

 

「とりあえずフリードさんは帰ったらお説教です。反省するまで足も直してあげません!」

 

「えっ、マジかよ!?どうやって教会まで帰れば「自力で歩いて帰ってください」はい。すみませんでした」

 

「それじゃ、木場さん。私たちは教会に戻ります。また遊びに来てくださいね?」

 

「うん、わかった。レイナーレさんたちにもよろしく伝えておいてもらっていい?」

 

「はい!お安い御用です!では、また会いましょう!木場さん!」

 

「またね」フリフリ

 

 私は木場さんに別れを告げお辞儀をしてから教会に帰りました。木場さんが最後に手を振っていたのがとても可愛かったです///!

 

 side out

 

 

 

 side 裕斗

 

 アルジェントさんはお辞儀をすると帰って行った。振り返ってフリードが転がっていたところを見るとそこには血の跡があるだけでもう姿は見えなくなっていた。アルジェントさんと話している間に脱出していたようだ。抜け目ない奴、と思いながらこの事を部長に報告しなければと思い部室に戻ることにした。

 

 部室に戻ると兵藤くんと皆んながいた。そうか、もう彼の特訓の時間か。

 

「ただ今戻りました。兵藤くん、ちょっと部長に報告することがあるから待っててもらっていいかい?」

 

「お、おう。さっさと済ませろよな」

 

「うん。部長、今大丈夫ですか?」

 

「ええ。何かあったの?」

 

「はい。契約先の男性が神父に殺されていました」

 

「何ですって?私の領土で随分なことを勝手にやってくれるじゃない。そいつはどこの神父なの?」

 

「堕天使たちがいる廃教会の神父だと思われます」

 

「そう。それでその神父はどうしたの?」

 

「戦闘になったので、足に深手を負わせておきました。しかし、あまり意味はないでしょう」

 

「あら、どうしてかしら?貴方が深手と言うくらいだから1日2日で治るような怪我ではないでしょ?」

 

「本来ならそうですが、以前話した堕天使の保護下にあるシスターの神器は回復系です。おそらく聖母の微笑(トワイライトヒーリング)かと思われます」

 

「なるほどね...。それなら怪我は治ってるでしょうね」

 

「はい、以上が報告になります」

 

「ありがとう、裕斗。それじゃあこの件、貴方はどう思う?」

 

「...憶測にすぎませんが、今日遭遇した神父はレイナーレさんたち三人の部下であるとは考えにくいです。あの三人はこちらと事を荒立てるつもりはなさそうですし、ある程度信頼できると僕は思っています。そうなると単独で不審な行動を続けているドーナシークという堕天使の部下ということになります。1人いると言うことは他にも部下がいるかもしれません。ある程度の規模の組織であると言うことも考慮しつつ、厳重に警戒すべきかと思います」

 

「貴方は今回のことを重く受け止めているのね。分かったわ。監視用の使い魔を2倍、いえ、3倍に増やしましょう。特に廃教会の周りは要注意すること。皆んなもそれでいいわね?」

 

「「「はい!」」」

 

 使い魔を放ったあと、部室のソファの端にいた兵藤くんに話しかけた。

 

「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」

 

「お、おう。なんか大変そうだな?」

 

「いや、大丈夫だよ。君も、学園のみんなも、町のみんなもキチンと僕たちが守るから」

 

「そういうセリフは女の子に言えよ!!」

 

「ん?皆んなに言うさ。ここは部長の領土だからね。部長の眷属である僕はこの領土の皆んなを守るのさ」

 

「そ、そうか...(俺は女の子が無事ならそれでいいけどなぁ)。それはともかく、修行しようぜ!」

 

「うん、でも今日は僕も疲れちゃったから体を動かすんじゃなくて魔法の基本をこのまま部室でやろうか」

 

「魔法!?マジかよ、やったぜ!!楽しみだなぁ!」

 

「ふふっ。じゃあまず両手を水晶にかざす感じで向かい合わせて」

 

「おう!」

 

「ちょっとそのままにしてて。僕が兵藤くんに魔力を流して、魔力の感覚を覚えてもらうから」チュウニュ-

 

「おおっ!これが魔力か!?なんか流れてる感じするぞ!!」

 

「(あれ?何か違和感が...?)う、うん。多分それで合ってるよ。じゃあ今度今流れてたものを両手の中心に集めて丸くして?こんな感じに」

 

 そう言って兵藤くんに魔力を流すのをやめた僕は、兵藤くんと同じポーズをとり、その両手の間に魔力で球体をつくった。因みに僕の魔力は藍色だ。

 

「いつ見ても裕斗の魔力は綺麗よね」

「たしかに綺麗な色をしてますわ」

「裕斗先輩の魔力球見るの好きです」

 

「ありがとうございます。褒めてもらえると嬉しいです//。んんっ、じゃあ兵藤くんもやってみて?」

 

「(こいつこんなとこまでイケメンかよ!?抜け目ないな!!)おう!おりゃあああああ!!!」

 

「全然出てこないわね」

「あらあら、どうしたのでしょう?」

「影も形も見えません」

 

「も、もしかして...」

 

「何か心当たりがあるの?裕斗」

 

「何でだぁ!?原因わかんのか木場ぁ!!」

 

「さっき兵藤くんに魔力を流した時に違和感を覚えたんです。そして、魔力球を作ろうとするとこの結果。つまり...」

 

「「「「つまり......?」」」」

 

「兵藤くんにはほとんど魔力が無いんだと思われます」

 

「「「あぁ...」」」ナットク

 

「何でだあああああああああああああ!!!!!」

 

 そんな兵藤くんの魂の嘆きを聞きながら本日は解散となった。




どうも、おはこんばんにちわ。
6話目でした。vsフリード一回戦でした。彼は結構いいキャラしてて嫌いじゃ無いです。あとアーシアさんはメンタル何だかんだ最強だと思ってます。

昨日投稿できずにすいませんっした!!許してください何でもしますから(何でもするとはry
あとストーリー進行遅く無いっすか?大丈夫かたまに不安になります。まぁ多分何か言われても直せない気がするんで気にしないことにしました(自己完結)。

本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくれた皆様、本当にありがとナス!!!
次回も、見「熱盛ィ!」失礼しました。《熱盛》と出てしまいました。


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2度会う奴は3度以上会う

 side 一誠

 

「うわああああああああ!!!」

 

 今俺は全力で走っている。何故かって?よく分からんけど前にも襲われたことのある堕天使のおっさんがまた俺のことを追いかけてきてるんだよ!!せっかくの休みの日だし、真っ昼間からエロ本を買いに行こうと思ったのに!!ちくしょう!俺も追われるなら女の子に追われたい!!

 

「待て!!人間風情がこの私を前に逃げ切れると思うのか!」

 

 ヒィイイイイ!!おっさんが手から出した光ってる槍を転ぶようにして避ける。膝を擦りむいて痛いが、今はそんなことを気にしてる場合じゃない!急いで曲がり角を曲がり、ポケットから木場に渡されていた鳥の羽を取り出す。これを折ると木場が来てくれるらしい。いざ折ろうとした時に

 

「追いかけっこはお終いか?」

 

 さっきまでそこそこ距離が離れていたおっさんが真後ろにいた。

 

「ひっ!?」

 

 もうだめだぁ!お終いだぁ!!恐怖を堪えるように思いっきり目をつぶったが、一向に痛みは襲ってこない。恐る恐る目を開けるとおっさんは俺の方を見ていなかった。

 

「チッ、もう見つかったか。つくづく悪運のいい小僧だ。まぁいい。今回は見逃してやろう」

 

 そう言っておっさんは飛んでいってしまった。

 

「大丈夫かい!?兵藤くん!!」

 

「おせぇよ!俺のこと守ってくれるんじゃなかったのかよ!」

 

「本当にごめん。もうこんな事がないよう、また監視を強化しておくよ」

 

「チッ!もういいよ!」

 

 そう言って俺は木場を置いて家に帰った。ここが悪魔の領土だって言うならあんなやつらさったさと殺しちまえばいいんだ!そしたら俺もこんな危険な目にあわずにすむし、女の子を安心して追いかけられてきっと彼女も出来るんだ!

 

 side out

 

 side 裕斗

 

「チッ!もういいよ!」

 

 そう言って兵藤くんは帰って言ってしまった。彼は今日再び命の危機を感じた事が不満らしい。それも当然なのかもしれない。彼は僕たちの保護下に入ったんだからもっとちゃんと守ってあげないと、彼は恐怖で外も出歩かなくなってしまうかもしれない。もっとしっかりしないと...。

 

 少し、幼少期の皆んなを守れなかったことを思い出してしまう。何だかちょっと疲れてるみたいだ。公園で飲み物でも飲んで休憩しよう。

 

 そう思って公園に入るとそこにはおととい再会したアルジェントさんの姿がベンチにあった。

 

「やぁ、アルジェントさん。おとといぶりだね」

 

「あっ、木場さん!こんにち......は?」

 

 何だかアルジェントさんが怪訝そうな顔をしてこちらを見てくる。

 

「えぇっと、僕の顔に何かついてるかい?」

 

「いえ、何だか随分と思いつめてる顔をしてらっしゃったので。何かあったんですか?」

 

「いや、大した事じゃないよ」

 

「.........本当ですか?」ジトメ

 

「ほ、本当だよ....?」メソラシ

 

「......木場さんがそう言うなら信じます。でも、疲れてるのは明らかですよ。よ、良かったらどうぞ///!」

 

 そう言ってアルジェントさんは自らの膝をポンポン叩いている。顔を赤らめながらするその仕草はとても可愛いのだが、目の前の現実をうまく受け止められない。

 

「......え?」

 

「で、ですから///!!良かったら私の膝をお貸しします!......それとも、お嫌でしたか?そ、そうですよね!私なんて肉づきの薄いちんちくりんじゃ「そ、そうじゃないよ!嫌なんかじゃない。でも、本当にいいのかい?」

 

「はい!でしたら、どうぞ!」

 

「う、うん。じゃあ、失礼するね」

 

 僕はアルジェントさんの膝枕に頭を乗せた。その膝枕はとても暖かく、太陽のようにポカポカしていた。頭を撫でられていると気付かぬうちに僕は眠りに誘われてしまった。

 

「皆んな.......。守れなくて...ごめ...」ツ-

 

「木場さん...。やっぱり何かあったんですね?私では力になれそうもありませんが、主のご加護があらん事を......」

 

「ウッ!?うぅ......」

 

「はうっ!?そういえば悪魔さんにお祈りは毒でした!す、すみません木場さん!!」

 

 そのまま僕は夕方までしっかり眠ってしまっていた。この町には部活の皆んなの使い魔が監視用に飛び回っているのも忘れて......。

 

 side out

 

 

 side リアス

 

「で?どうしてあなたはシスターの娘の膝枕でこんな時間までぐっすり眠ってたのかしら?」ニッコリ

 

「ええっと...」

 

 私は今裕斗を尋問している。何故かですって?そんなの裕斗がシスターの娘に膝枕されてたからに決まってるでしょ!私でさえ小さい頃以来やってないのに!!こういうのを羨まけしからん!!と言うのよね。

 そんなことはともかく、最近裕斗はそのシスターの娘との仲を深めているようだし少し危機感を感じてるのよ。あんな過去があったとしても元々は裕斗も教会側だった人間。もしかしたらシスターに憧れがあるかもしれない...。そう思うと問い詰めずにはいられないわ!!

 

「はっきり答えなさい!!ど・う・し・て、あんな事をしてたの!」

 

「はっ、はい!あの娘に心配されてああ言うことになりました!」

 

「心配?何があったのかしら?」

 

「えぇっと、公園に行く直前に兵藤くんが堕天使に襲われそうになってたので救助に向かったんです。堕天使は兵藤くんを殺す前に僕の存在に気づいたようで特に何もせずに去っていたんですが、兵藤くんにもっとしっかり守ってくれと言われてしまいまして。それがちょっと、心に来たというか、何というか...。そんな僕を見かねてアルジェントさんが膝を貸してくれたって感じです」

 

「なるほどね。裕斗は彼が襲われ始めてからどれくらいでついたのかしら?」

 

「そうですね、大体5分くらいだったと思います」

 

「十分はやいじゃない!それで文句を言うって彼は何様のつもりなのかしら!!説教してやるわ!!!」

 

「いえ、彼は命の危険を感じてたんです。だからきっと遅いもはやいも関係ないんだと思います。そんなものを感じること自体許容出来ないんですよ」

 

「それは、そうかもしれないけど......」

 

「それに彼は僕たちの保護下にあるんです。なら僕たちが守らないと...」

 

「.......はぁ。貴方がそこまで言うなら今回のことは不問にしましょう。でもね?裕斗。あまり自分を追い込みすぎないで?いくら貴方が強いと言っても、貴方だけで全てを守りきるなんてことは出来ないわ。だから、私たちにも一緒に守らせて」

 

「!......はい!これからもよろしくお願いします!!」

 

「えぇ、皆んなで頑張りましょう?」

 

 私がそう言うと裕斗はなんだか憑き物が落ちたような感じがした。良かった。彼の悩みを少しは軽く出来たみたいね。非常に喜ばしいわね。王としても、女としても、ね?

 

 side out

 

 side 裕斗

 

 部長に慰められて、次の日になった。今日は日曜日。散歩しながらパトロールしていると昨日アルジェントさんが膝を貸してくれた公園に着いた。何となく覗き込むと今日もまたアルジェントさんがいた。

 

「やぁこんにちは、アルジェントさん。昨日はありがとうね」

 

「あっ、木場さん!こんにちは!いえ、気にしないで下さい。少しでもお力になれたなら幸いです。今日は顔色もいいですし、もう大丈夫そうですね!」

 

「うん、アルジェントさんのお陰もあってもうすっかり元気だよ」

 

「良かったです!」

 

 そう言った後、アルジェントさんの表情が少し沈んだように見えた。

 

「どうかしたのかい?少し表情が暗いようだけど...」

 

「い、いえ!大丈夫ですよ!?」

 

「......アルジェントさん。昨日は僕が君に助けられた。だから今日は僕が君の力になりたい。せめて話ぐらいは出来ないかな?」

 

「......そうですね。少し長くなるんですけど、聞いてもらっていいですか?」

 

「もちろん!ならベンチに行こうか」

 

 2人でベンチに座るとアルジェントさんはポツポツと話し始めてくれた。

 

「私は元々ある教会で働いてたんです。木場さんはもうご存知だと思いますけど、私の神器の能力は回復。教会に沢山の怪我をした方がいらっしゃって、私は皆さんを治し続けていたんです。そうしたら気付けば私は聖女と呼ばれるようになりました。私は周りの人から聖女として振る舞うように強制されて、1人になってしまったんです。そんな中でも1人だけ私と友達と接してくれる人がいたんですが、その人も私自身も周りの人に止められて次第に会えなくなってしまいました。

 

 そんなある日、教会の前に大怪我を負った悪魔さんが倒れていました。私は迷わずに神器で治しました。そこを誰かに見られていたんです。一気にその話が広がって、昨日まで私のことを聖女と呼んでくれていた皆さんは口を揃えて魔女だと私のことを罵るようになりました。そんな中でも友達は私を庇おうとしてくれました。ですが、私は彼女を巻き込まないようにすぐに教会を出ました。当てもなく歩いているとレイナーレさんにお声をかけて頂いたんです。「あなたの神器は強力だから、私たちの元へ来ない?待遇はある程度ちゃんとしてると思うわ。来る気になったらそのチケットで日本まで来て、この地図の場所まで来なさい。きちんと世の中を渡っていけるようにしてあげるわ」今でも一字一句間違えず覚えてます。

 

 あとは木場さんも知っている通りです。この町に来て、木場さんと出会って、レイナーレさんたちと再会しました。お三方ともとても私に優しくして下さって、友達のように接して下さっていました。

 

 ですが、先ほど聞いてしまったんです。「あのシスターの神器は有用だが、あのシスター自身はいらない。はやく神器を抜き取って殺してしまえ」そう言ってたんです。

 

 私、もうどうすればいいか、誰を信じればいいか分からなくなってしまって、あのお三方のことを友達だと思ってたのは私だけなのかなって。やっぱり人間の私と他の種族の方では友達にはなれないのかなって...。もしかしたら木場さんも私のことなん「アルジェントさん!」!?」

 

「少しだけ質問してもいいかな?」

 

「は、はい...」

 

「君のことを殺せと言ってたやつはどんな見た目、どんな格好をしてた?」

 

「えっと、シルクハットを被ったおじさまでした」

 

「やっぱり...。いいかい?そいつがドーナシークという堕天使だ。確かアルジェントさんも僕がレイナーレさんたちにそいつの情報を聞いてたときその場にいたよね?」

 

「は、はい。何だか不審な動きをしていると...」

 

「つまり、そいつとあの三人の繋がりは強固なものじゃない。いや、むしろあの三人もドーナシークには不信感を抱いているはずだよ。だからあの三人がドーナシークと同じ意見だとは思えない。

 

 それに、今日までアルジェントさんが見てきた三人はそんなに信用出来なさそうだった?」

 

「いえ、さっきも言いましたが、とてもよくしてくれました。ミッテルトさんはよく一緒に遊んでくださいましたし、カラワーナさんは優しく色々なことを教えてくれました。そしてレイナーレさんは私のことをからかってきたり、逆に私からからかったり、本当に仲の良い友達のように接してくれていました」

 

「なら、きっとそれが答えだよ。君が感じた三人を信じてあげなよ」

 

「はっ、はい!」

 

「それでも不安になった時はこの前渡したハウルの羽を折って僕を呼んで?必ず駆けつける。僕が君の友達だってことを行動で証明する。僕が君の友達だってことを忘れないでね?」ニッコリ

 

「っ!?......うっ、ぐすっ」

 

「えぇっ!?あ、アルジェントさんどうしたの!?」

 

「い、いえ、嬉しくて、そんな風に言ってくれて、私のことを友達だって言ってくれて、本当にありがとうございます」グスッ

 

「ううん、当然のことを言っただけだよ。何度でも言ってあげる。僕とアルジェントさんは友達だよ!」

 

「そ、それなら、その、私のことはアーシアと呼んでください!それと、裕斗さんって呼んでいいですか?」

 

「もちろんいいよ。これからもよろしくね、アーシアさん!」

 

「はい!」

 

 こうして僕とアルジェントさん、いや、アーシアさんの絆が深まっていった。これからも彼女とはうまくやっていけるだろう。

 

「くだらない茶番はここまでだ。聖母の微笑は持って行かせてもらうぞ!」

 

 その声が響いた瞬間僕の目を閃光が貫いた。

 

「ぐあっ!?目潰しか!」

 

「裕斗さん!裕斗さん!!!」

 

「ええぃ、大人しくしろ!」

 

「アーシアさん!くそっ!!どこだ!!」

 

「ふん、さらばだ。私はこいつを使ってやらなければならないことがある」

 

「くそっ!アーシアさん、必ず助けに行く!それまで待っててくれ!」

 

「わかりました!裕斗さんを待ってます!」

 

「ふはは、間に合うといいなぁ?」

 

 その声が聞こえた後、羽ばたきが聞こえ奴がアーシアさんを連れていってしまったことに気づいた。

 

 待っててアーシアさん。必ず助けに行く。僕が君の友達だってことを必ず行動で証明してみせる!!

 




どうも、おはこんばんにちわ。
7話目でした。今回遅れた分文量は多くなりましたね。でもストーリーはそんな進んでない気がする。いや、次回ようやく話動くんで、後2、3話くらいでこの章終わるんでこんくらいで許してくれさい。
次回は一体何ナシークさんがボコボコにされてしまうんだぁ...。

本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様、本当にありがとナス!!!
次回は「デュエル開始の宣言をしろ、磯野!!」って感じでバトル展開が始まると思われ。(海馬社長感)
バトル描写ほんと書けねぇなぁ。


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救出ミッションはクリア条件がシビア

 side 裕斗

 

 僕は部長に急いで電話をかけた。

 

「部長!アーシアさんが拐われました!街中の使い魔に探させてください!!」

 

「ちょ、ちょっとどうしたのよ裕斗?少し落ち着いて?」

 

「そんなことを言ってる場合じゃないんですよ!ドーナシークがアーシアさんをさらって行ったんです!!早く見つけないと手遅れになってしまう!!」

 

「なるほど、分かったわ。急いで探させましょう。あなたには心当たりはないの?」

 

「1番可能性が高いのは廃教会だと思います。ですがドーナシークはこれまで単独行動を続けていたのでほかにも拠点があるかもしれません」

 

「なら貴方は廃教会に急行して。私たちは他の場所をしらみつぶしに探しましょう」

 

「わかりました!行ってきます!」

 

「くれぐれも光には気をつけるのよ。私は他のみんなにも連絡をして探させるわ」

 

「わかりました!お願いします!!」

 

 僕は魔法で周りの人に見られないようにしてから全速力で廃教会に向かう。ドーナシークはアーシアさんのことを聖母の微笑と呼んでいた。つまり彼女のことを神器としてしか認識していないということだ。さらに、アーシアさんが言うにはドーナシークは神器を抜き取れとレイナーレさんたちにも言っていたらしい。なら、確実に神器を抜き取る気だ!!そうなったらアーシアさんは.........。急げ!!

 

 side out

 

 all side

 

 

 15分後、木場は廃教会の前にいた。そのままの勢いでその中へと突撃する。

 

「うおうっ!?すげぇ勢いで入ってきたなクソ悪魔くん。ダイナミック入室って感じですかぁ?思ってたよりは早く来たけどもう間に合わねーよ!!つまり、無駄な努力ってこった。クソ悪魔くんと仲良くしちゃうようなビッチシスターは死んで当然だよなぁ!!」

 

「ふざけるな!!彼女ほど立派なシスターはそういない!!それにまだ間に合うはずだ!彼女のことは僕が守る!!!」

 

「へっ、無理だって言ってんだろ?第一、お前は俺ちゃんに殺されちまうんだからさぁ!?」

 

 そう言うと同時にフリードは木場に向けて光の銃弾を放って来た。

 

「初めて会った時もそうやって不意打ちをして来たね。その時も僕には通じなかったけどね!」

 

「そんなことは百も承知ってなぁ!だからよぉ、罠をはらせてもらったぜぇ!!」

 

 僕は銃弾を避けた後何の警戒もすることなく、あの時と同じようにフリードに突撃していた。そこをフリードは狙ったのだ。なんと、フリードの周りには踏むと光を放つ地雷がばら撒かれていたのだ!!

 

「ひゃっひゃっひゃああああ!!!掛かったなぁクソ悪魔くん!!テメェがどんだけ強くても、種族的な弱点はどうしようもねぇよなぁ!!?これで動けなくなったテメェを嬲り殺すってぇ、寸法よ!!さぁて、どんな無様な格好になってるかなぁ〜?」

 

 煙が晴れるとそこには木場の姿はなかった。

 

「な!?ど、どこに消えやがったあの野郎!!っ!?ガハッ!!?」

 

 フリードが言い終わると同時に木場は背後から一刀両断、切り捨てたのだ!!

 

「て、テメェ、どうやってあの地雷原から逃れやがった......?」

 

「大したことじゃないよ。地雷が完全に起動しきる前に真っ二つに切ったのさ。この光喰剣(ホーリーイーター)でね。これは光を吸収する魔剣。つまり地雷の中につまっていた光は全てこの剣の中に吸い込まれたのさ。あと、爆発自体は普通に避けさせてもらったよ」

 

「この前はそんな剣持ってなかったよな...?しかもここに入って来た時も得物なんか持ってなかった。それがテメェの神器か!?」

 

「厳密には違うけどね。僕の神器は魔剣創造(ソードバース)。あらゆる魔剣を自在に作り出す能力さ」

 

「ちっ、チート野郎がぁ......!何故殺さねぇ!!なめてんのかよぉ!!」

 

「別に僕は誰でも彼でも殺したいわけじゃないさ、君とは違ってね。君を生かしてるのはアーシアさんがどこにいるかを吐いてもらうためだよ。アーシアさんはどこだ!」

 

「教えてやりゃあ、俺の命は助けてくれんのかよ」

 

「約束しよう」

 

「ちっ、下だよ。ここの下。だが、さっきも言ったがもうおせぇと思うけどなぁ!下にいったら待ってるのはアーシアちゃんのしたいかもしれねぇぞ?あっひゃっひゃ!!レイナーレたち雌豚どもも意気消沈して、精神的に死んでるかもしれねぇなぁ!あいつらはアーシアちゃんにご執心だったしな!!まぁ俺にとってはどうでもいいことだけどなぁ!!!ひゃーひゃっひゃっひゃー!!!」

 

「くそっ!」

 

 木場は教会の階段を駆け下りてドアの前に立つ。

 

「アーシアさん!レイナーレさん!カラワーナさん!ミッテルトさん!」

 

 ドアを開けると、そこには大量のエクソシストと十字架に磔にされたアーシアさん、檻に入れられているレイナーレさん達がいた。アーシアさんの顔色がどうにも悪く、レイナーレさんたちはまるで絶望したような表情をしている。そしてその3人の前には勝ち誇ったような顔をしたドーナシークがいた。

 

「ふっ、遅かったじゃないか。もう私の用事は全て済んでいる。そこの女は好きにするといい。まぁ、あと数分とない命だがね」

 

「アーシアさん......」

 

 木場は一瞬で十字架の前に着くとすぐにアーシアを降ろした。あまりの速さにドーナシークは顔が引きつっていた。

 

「ごめん...。アーシアさん......。僕が君を守るって約束したのに......」

 

「いいんですよ、裕斗さん。私のために泪を流してくれて嬉しいです。でも、最後は裕斗さんの笑った顔を見ていたいです......。友達には笑っていてほしいですから......」

 

「そ、そうだね。僕も友達には笑っていてほしい。それに、アーシアさんといると、自然に笑顔になれるからね!」

 

 そう言うと木場は涙を堪えつつアーシアに笑顔を見せた。

 

「よかったです。裕斗さん、どうか、幸せに......」

 

「アーシアさん?アーシアさん!!!」

 

 そのままアーシアは息を引き取った。まるで穏やかに眠っているかのように。裕斗は壊れ物を扱うかのように丁寧にアーシアの遺体を長椅子に横たわらせた。

 

「これでシスターの女は死んだ。さらにこいつの神器も手に入れた。これで計画はまた一歩進んだ。まぁこちらはサブプランだが、聖母の微笑みが手に入れられたのは大きい。これであの方も褒めて下さるだろう...。あとは兵藤とか言う小僧を殺せば完璧だ」

 

「貴様、アーシアさんだけでなく兵藤くんまで殺すつもりか!?」

 

「ふん、その通り。神器が有用だから抜き取らせてもらったが、あの女は殺したところで天界勢力はもはや何とも思わないだろう。だがあの小僧は今、魔王の妹たるリアス・グレモリーの保護下にある。そんな人間を殺せば一体どうなることやら....」

 

「そんなことをすれば堕天使と悪魔で戦争になるぞ!!それが貴様らにとって何の得になる!?」

 

「そこまで答えてやる義理はない。せいぜい色々考えるんだな。さて、先程は兵藤とか言う小僧を殺すと言ったが、それは別に奴でなければならないというわけではない。リアス・グレモリーに縁のあるものなら誰でもいいのだ。つまり、あの女の眷属である貴様でも良いと言うことだ。あの小僧よりは手を焼くだろうが可能だろう。かかれ!」

 

 そのドーナシークの合図とともに大量のエクソシストたちは同時に木場に襲いかかった!

 しかし木場は持ち前のスピードで全員を振り切り、距離をとった。

 

「そんなこと、僕が許さない!これ以上の犠牲なんて許さない!彼女が、アーシアさんがそんなことを望むわけがないんだから!アーシアさんを守ることのできなかった僕にできるせめてもの罪滅ぼしだ!

 くらえ!魔剣創造!!」

 

 そう木場が叫ぶと教会の床から大量の魔剣が飛び出てきた!それによって全てのエクソシストが無力化された。

 

「貴様!!転生悪魔で所有神器が魔剣創造の者など1人しかおらん!魔王サーゼクス・ルシファーの眷属!《無限の剣聖》!!」

 

「僕はそんな大したものじゃないけど、君ぐらいは倒せるよ」キッ

 

「何故貴様がこんなところにいる!?」

 

「今の僕はリアス・グレモリー様の眷属なのさ」

 

「くっ、貴様が相手なら話は別だ!私ではかなわん!」ダッ

 

「逃がさないよ!無限一刀流!加法七本!」

 

 一瞬でドーナシークに近づくと、魔剣創造で先ほど大量に作り出した魔剣のうち七本で切りつける!

 

「ぐはっ!」

 

 ドーナシークを切りつけた七本の魔剣は彼の体から離れない。

 

「まだ終わらないぞ!

 乗法十四本!!」

 

 先ほど切りつけた七本の魔剣自体を木場の手にある魔剣でさらに打ち込んでいく!!

 

「ぐあぁぁああ!!」

 

 切り捨てられたドーナシークは他に伏せた。木場は魔剣を首、手首、足首の上で交差するように作り出した。

 

「動けないと思うけど、一応ね」

 

 ドーナシークをそこに放置し、木場は檻に向かった。

 

「3人とも大丈夫ですか?」

 

「......私たちには何もできなかった」

「アーシアを死なせてしまった......」

「守れなかったっす......」

 

「アーシアさんはあなた達のことを友達のように接しってくれて嬉しいと言っていました。そして、友達には笑っていてほしいとも言っていました。だから、アーシアさんのためにも笑っていてあげてください」

 

「そんなあの子だからこそ!助けたかった...」

 

「なら、助けてあげましょうか?」

 

「部長!?」

「「「リアス・グレモリー!?」」」

 

「助けてあげるって、どう言うことですか?」

 

「あら、死人を助けるなんて方法は一つだけじゃない」

 

「悪魔の駒!!でも、いいんですか?僕のわがままみたいなものですよ?」

 

「いいのよ。裕斗は助けたいんでしょう?それに回復系の珍しい神器を失うのは惜しいっていう下心もあるのよ?それでもいい?」

 

「ありがとうございます!お願いします!!」

 

「なら早速あの子の上に抜き取られた神器を乗せて」

 

「はい!」

 

 木場はドーナシークの指にはめられた聖母の微笑みを取って来るとアーシアの上に乗せた。

 

「じゃあ、いくわよ」

 

 リアスが悪魔の駒の僧侶をアーシアの胸に当てると、体の中に吸い込まれていく。

 

「はい、これで完了よ」

 

「んっ、んぅ....。あれ?私、死んじゃったはずじゃ...?」

 

「アーシアさん!!」

「「「アーシア!!」」」

 

「裕斗さん!?それにレイナーレさんたちも!?皆さんも死んじゃったんですか...?」

 

「逆だよ!君が生き返ったんだ!!」

 

「えぇっ!?」

 

「アーシア・アルジェントさん、勝手に生き返らせてごめんなさいね。私があなたの主になったリアス・グレモリー。これからあなたは悪魔として生きていくの。それでも構わない?」

 

「私、悪魔さんになっちゃったんですか?」

 

「うん。でも部長の眷属になったってことはこれからは一緒にいられるね。僕も部長の眷属だから」

 

「そうなんですか?裕斗さんと一緒...///」

 

「んんっ、それで、どうかしら?」

 

「あっ、は。はいっ!これからよろしくお願いします!!」

 

「それで?あなたたちはどうするの?望むなら私の眷属にしてあげるけど?」

 

「私たちは...」

「うむ...」

「悩ましいっす...」

 

「まぁ、今すぐ決めろとは言わないわ。でも考えておいてね」

 

「この町には3人とも残れるんですか?今回の3人の仕事は実質的に偽物だったわけだし」

 

「そうね、騙されてたってことになるわ」

 

「一体誰に騙されたの?」

 

「私たちは上司に書類を見せられたからここにきたんだけど、その人は人を騙すような人じゃないわ」

 

「ならドーナシークに聞くしかないわね」

 

 

 

「で?あなたは誰に命令されて動いてたの?」

 

「ふ、答えるわけがないだろう」

 

「あら、消し飛ばされたいのかしら?」

 

「それで構わんよ。ただ、そうだな。一つ面白いことを教えてやろう。レイナーレ、貴様らにここに来るように言った上司。あいつは既に死んでいる」

 

「は!?なら、あの時のあの人は誰だったと言うのよ!?」

 

「私ではないがね、同じ志の仲間が化けてくれたのさ」

 

「あなたたちの目的は何!?」

 

「戦争を起こすこと」

 

「それで?戦争を起こしてどうするつもりよ!」

 

「これ以上言うことはない」

 

「くっ!いいわ、もう消し飛びなさい!」

 

 そう言ってリアスはドーナシークを消しとばした。その後には黒いカラスのような羽だけが残っていた。

 

 

 

 




どうも、おはこんばんにちわ。
8話目でした。なんか今回はほとんど会話だけだった気がしますね。こんなんでいいのか。こんなんでいいか。レイナーレとリアスの口調が被ってる件について。カギカッコの前に名前入れた方が良いですかね?よかったら意見ください。

さて、一体黒幕はどこのどなたなんだ!?さっぱりわかりませんねぇ......

本日も最後に、感想、評価、お気に入りして下さった皆様、本当にありがとナス!!!
次回も見てくれると、う、嬉しいんだなぁ......(裸の大将感)


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フェニックスは焼き鳥というか焼け鳥

 side 裕斗

 

 アーシアさんが部長の眷属になって、色々変わったことがある。まずは、彼女が学校に通うようになった。彼女は僕と同じクラスになったことを喜んでいた。次に、彼女もオカルト研究部に入った。それによって兵藤くんとも知り合いになっていた。その時鼻息を荒くした兵藤くんに若干引き気味だったが......。最後に......

 

「おい木場!どーゆーことだよ!!アーシアちゃんと一緒に暮らしてるそうじゃねぇか!!!」

 

 そうなのである。彼女はほかの部員に女子がいるにも関わらず僕の家に住んでいるのである。これは彼女の希望でもあったのだが、それだけではなく部長からの依頼でもあった。なんでも「アーシアは男性に慣れてないから日常生活の中であなたが慣らしてあげて?頼んだわ」とのことらしい。

 それを兵藤くんに伝えると

 

「はぁ!!??なら俺でも良いだろ!!」

 

「「「ダメよ(ダメですわ)(ダメです)」」」

 

「な、なんでですか!?」

 

「「「アーシア(ちゃん)(先輩)の教育に悪いわ(ですもの)(からです)」」」

 

「それとも裕斗よりもあなたの方が良い理由でもある?」

 

「そっ、それは...その...そうだ!!俺の方が男っていう生き物がどれだけ生き物かを教えられます!!」

 

「それがセールスポイントになると思ってるの?」

 

「思ってません!!」(泣)

 

「それじゃ、この話はおしまいね」

 

「ちくしょう!!!」orz

 

「ま、まぁ、新しい仲間のアーシアさんとは部室で会えるからいいじゃないか」

 

「そういうことじゃねぇだろ!!!」

 

「な、なんかごめん......」

 

「あ、あと裕斗。1つ伝え忘れてたんだけどあなたの家の隣にレイナーレ達が引っ越してくるら。いつまでもあの教会に住ませてるわけにもいかないでしょ?それとレイナーレは2年、カラワーナは3年、ミッテルトは1年に転入するから仲良くしてあげてね。当然オカ研にも入るから」

 

「その3人は女の子ですか!?」

 

「そうよ。でも彼女達に手を出せば私が消しとばしてあげるから」

 

「や、やだなぁ......。そんなことしませんよ......」

 

「信用できるわけないです」

 

「辛辣だなぁ...小猫ちゃん」

 

「下の名前で呼ばないで下さい」

 

「うぅ...。厳しい......」

 

「あ、あの、もうちょっと優しくしてあげても......」

 

「そ、そう思うよね!?アーシアちゃん!!!」

 

 と、飛びつかんばかりにアーシアさんに近づいていったので、彼女に触れる前に止めておく。

 

「何すんだよ木場!!せっかくの俺とアーシアちゃんの触れ合いを!!」

 

「そういうところだよ兵藤くん......。それに部長にも君がアーシアさんに触れそうになったら止めるよう頼まれてたし」

 

「ぬぁんでだあああぁぁあああ!!!」

 

「そういうところだよ......」

 

 というやり取りがあってその日の部活は終わり、アーシアさんとご飯を食べて1日が終わった。

 

 その日から2週間が経った。その間に部長の言っていた通り3人が引っ越しと編入をしてきた。良い隣人関係を築けていると思う。アーシアさんも同じクラスにレイナーレさんが入って来たので友達として仲良くしている。部活でも種族の壁を超えて皆んな友情を深めていくことができている。まぁ、兵藤くんは普段の行動のせいで3人と、というかアーシアさん以外と若干壁があるような気がするが。

 

 ちなみにこの2週間兵藤くんの特訓を続けてはいたが、未だこれと言った成果は出ていない。やはり龍の手の2倍というのは種族が人間だとなかなか火力になりにくい。頼みの綱の魔力もないし......。しかし1つだけ収穫があった。それは兵藤くんの動体視力が比較的良いことだ。その目の良さを活かすために、ある程度スピードが出せるようになれば...。という事を彼に伝えたが、スピードを出すようになるためには基礎トレーニングを増やさざるをえず、それが彼は気に食わなかったようで直接は言ってこないがたまにサボるようになってしまった。このトレーニングは他の誰でもない、彼のためなのに...。

 

 最終手段の説得としてスピードを上げるとのぞきをしたとき逃げやすいと言ったのだが、「お前が捕まえなくなってくれれば良いじゃねぇか」と言われてしまいなんとも言えない気持ちになった。余談だが、この2週間で僕はのぞきの現行犯で彼を13回捕まえた。当然土日は休みなので登校日は平日の10日間で、である。1日2回やってる日が何日かある。彼ら三人組は元気なのだ。正直勘弁してほしい。

 

 話は戻るが、なんやかんやでこの2週間皆んなうまくやっていた。リアス以外は。別に誰かとリアスが不仲とか、そういうことはない。ただ、どこか心ここにあらずなのである。だが何かあったのか聞いてみても「何でもないわ。大丈夫よ」としか答えてもらえない。心配だが、今日も特に何もしてあげることができなかった。そのまま家に帰り、アーシアさんとご飯を食べて寝ることにした。

 

 寝ようと思い、部屋の電気を消してベッドに入る。すると、床の部屋に魔法陣が浮かびあがり、光り出した。これは転移魔法だ。しかもグレモリーの陣。ならそこまで警戒する必要はないなと思っていると、現れたのは部長だった。ネグリジェで。僕も健全な16歳高校生男子。普段は紳士な行動を心掛けているが、あまりにも不意打ちだったため、その、普段隠されているところを思わず見てしまった。しかしすぐ気づき、背中を向けた。

 

「ど、どうしたんですか?リアス。そ、そんな格好で夜に来るなんて」

 

「私を抱いて、裕斗。貴方しかいない、いいえ。貴方だから抱かれたいの」

 

「!?え、えと、そんな、急すぎますよ!!そういうのは段階を踏んでと言いますか!!それに、リアスもそういう貞操観念は強い方だったじゃないですか!!」

 

「そうも言ってられなくなったの。早く!来ちゃうから!!」

 

 そう言うと、リアスは僕の背中側から手を回しズボンを下ろそうとして来る。

 

「ま、待って下さい!」

 

「なによ、私じゃ不満!?」

 

「そう言うことじゃなくて!そんな急に...。なにを焦ってるんですか?部長」

 

 あまりにも焦っているリアスを前に(後ろにいるが)して、逆に冷静になった。彼女は普段なら僕が丁寧語で話していると必ず注意してくるが、それに気づかないほと焦っているのだ。

 

「!?......そうね、ごめんなさい。焦りすぎていたの。 でも困っているのは本当。どうしようもないのかしらね?」

 

「そんなことありません。僕は、僕達はリアスの眷属です。僕達はあなただからこれまでついて来た。あなたが命じてくれれば僕達が必ずあなたの願いを、望みを叶えます。あなたは1人じゃありません」ニコッ

 

「裕斗......///」

 

「んんっ」

 

「「!?グ、グレイフィア様!?」」

 

 彼女はグレイフィア・ルキフグス。リアスの義理の姉にあたる悪魔で、魔王サーゼクス・ルシファー様の女王だ。僕がまだサーゼクス様の眷属だった頃からとてもお世話になった方なのだが......

「お二人とも仲がよろしいのは良いのですが、今回の件もありますからあまり良すぎるのも困りものですね」

 

「今回の件?」

 

「それについては明日詳しく話します。それより、久しぶりですね裕斗。随分と大きくなりましたね」

 

 そう言って僕のことを胸元に抱き寄せた。そう、この人は僕のことを実の息子のように扱って下さる。ありがたいが、どうにも子供扱いされてしまい、スキンシップが激しいのだ。

 

「ちょ、ちょっと!!離れなさいグレイフィア!!」

 

「母と息子の触れ合いに嫉妬なんかしないで下さい。あなたの女を下げますよ」

 

「本当の親子ではないでしょ!!それに、なんというか、絵面が安心できないのよ!」

 

「ふぅ、全く。そこまで言うなら離れてあげますよ。裕斗、また今度、しっかり触れあいましょう」

 

「あ、あはは......」

 

 僕としては非常にありがたいんだけど、やはりこの歳になってあのスキンシップの取られ方は少々恥ずかしい。子供の頃は普通に受け入れられてたんだけどなぁ...。スキンシップを断るとグレイフィア様はすごい、なんというか、ものすごい勢いで落ち込むのだ。それが分かっているから断るに断れない。

 

「今日は帰ります。明日部室で今日のことについて話しますので、よろしくお願いします」

「じゃあね、裕斗。また明日」

 

「はい、分かりました。また明日」

 

 そう言うとグレイフィア様が近づいて来た 。

 

「裕斗、明日から大変ですよ?頑張って下さい」ボソッ

 

 そう小声で伝えて来たのだ。これまでのリアスの様子でただ事ではないと思っていたが、いよいよきな臭くなって来た。

 

「分かりました。任せて下さい」ボソッ

 

「えぇ、裕斗。任せました」ボソッ

 

「なにを小声で話し合ってるの?」

 

「!!なんでもありません。では行きましょう。リアス様」

 

「まぁ、いいわ。行きましょう」

 

 そのまま2人は魔法陣で帰って言った。一体明日何が話されるのだろうか。

 

 

 翌日

 

 アーシアさんとレイナーレさんと一緒に、放課後になったので部室に向かう。どうやらもうグレイフィア様は来ているようだ。部室に入る直前にレイナーレさんが気付いたようだ。

 

「私がここまで気付かないなんて。部室に知らない誰かが居るわ。しかも相当強い」

 

 あぁ、そうか。レイナーレさん達3人とアーシアさんは知らないのか。

 

「大丈夫だよ。今来てる人は僕達グレモリー眷属がお世話になってた人だから、警戒する必要はないよ」

 

「なるほどね。って、分かってるなら先に言いなさい!無駄に警戒しちゃったじゃない!」

 

「あはは、ごめんごめん。言い忘れてたよ。それに、何かあっても僕がなんとかするしね」

 

「えぇっ///!そ、そう!ならいいのよ///!!」

 

「よ、よろしくお願いします///!!」

 

 ちなみにレイナーレさんたちに言われてタメ口で話すようになった。

 

「とりあえず入ろうか」

 

 そう言ってから3人で部室に入った。そこには予想通りグレイフィア様が既におり、他の部員も皆んないた。

 

「貴方達が最後よ。それじゃあ、皆んなに話があるの」

 

 そう言って部長が話し始めようとすると魔法陣が浮かび上がって来た。その魔法陣は炎を放ち始める。しかしこの部室は木製だ。燃え移るとまずいことになる。と言うわけで、氷結の魔剣で炎を凍らせた。

 

「っておい!誰だ!?俺様の登場を邪魔したやつは!?」

 

「えっと、僕です。ここは木製なので炎を使われると危険なので消させてもらいました」

 

「あぁん?なんで此処はこんなにボロいんだ?もっと良い場所があるだろう。おいリアス、この俺がもっといい場所を用意してやろうか?」

 

「結構よ!私は此処が気に入ってるの!」

 

「ははは!!そうかい、まぁ、お仲間と仲良しごっこするには丁度いいサイズとボロさなんじゃないか?それより俺のことを紹介してくれよ」

 

「...くっ!彼はライザー・フェニックス。一応、私の婚約者ということになっているわ。でも私は彼と結婚する気は無いわ!!」

 

「おいおいリアス、私達は結婚します、この人は私の夫です、ってちゃんと紹介してくれよ。この俺、上級悪魔であり、レーティングゲームも接待以外負けなしの超優秀な悪魔!ライザー・フェニックス様だってさ!」

 

「私は貴方と結婚する気は無いって言ってるの!裕斗、本当よ?変な勘違いしないでね?」

 

「ん?なんだそいつは?俺には劣るがそこそこ顔は整ってるな。だが、所詮は転生悪魔。程度が知れる。それにしても、こいつがリアスの思い人か?ただな優男にしか見えんな」

 

「裕斗は貴方なんかよりよっぽと強いわよ!」

 

「ふん!どうだかな」

 

「とにかく!私は貴方なんかと結婚しないわよ!」

 

「......おい、俺もフェニックス家の看板を背負って来てるんだ。その看板に泥を塗るような真似はやめてもらおうか」

 

「そもそも結婚の話は私が大学を出るまでは保留だったはずよ!」

 

「そんなに待てないさ。俺達の結婚は冥界中が注目している。なら、その期待にさっさと答えないとな」

 

「そんな勝手なことを言わないで!」

 

「お二人共、落ち着いて下さい。リアス様がこの結婚に納得してないことは旦那様やサーゼクス様も知っています。なので、お二人に決着はレーティングゲームでつけてもらいます」

 

「いいわ、それで決着をつけてあげる!」

 

「ふ、さっきも言ったが俺はレーティングゲーム実質無敗だぞ?それに、君の眷属はここにいる全員か?1,2....8人か?いや、1人は人間、3人は堕天使か。なら、眷属はたったの4人か。はっはっはっ!こんなの戦う前から勝負は見えてるじゃないか。出て来いお前達!」

 

 そういうとライザーの後ろから15人の女性悪魔たちが現れた。

 

「この15人が俺の眷属さ。このフルメンバーに対してたったの5人じゃ心許ないだろう」

 

「そんなことないわ!この4人でも勝てるわよ!」

 

「つまらない見栄は貼らない方がいいと思うが、楽に勝てるならそれに越したことはないさ。ところで、そこの人間くんはなんで泣いてるんだい?」

 

「え?さぁ、知らないわ。大方貴方がハーレムを築いてるのが羨ましいんでしょ」

 

「その通りです!こんな焼き鳥野郎にもハーレムが築けるなんて!くそぅ!羨ましすぎる!!!」

 

 そう言って泣く兵藤くんはなんというか、うん、情けなかった。

 

「みっともないからやめなよ......」

 

 そう言っても彼は泣き続けている。

 

「はっはっはっ!!そこまで欲望に素直だと見てるのは面白いな!お前にはこんなこともできまい!!」

 

 そういってライザーは眷属のうちの1人と深い方のキスをし始めた。見間違いでなければ若干拒まれてた気がする。

 

「ちっくしょぉぉおおお!!!」

 

「はっはっはっ!!」

 

 なんなんだこの空間......。

 

「んんっ!とにかく、この件に関してはレーティングゲームで決着をつけます。ただし、リアス様の方はレーティングゲーム初心者の上に眷属も足りません。なので準備期間に10日設けます。よって11日後にゲームの本番です。いいですね?」

 

「あぁ、いいとも。もっとハンデをやってもいいくらいだ」

 

「結構よ!それで行きましょう!」

 

 これで勝負の日程が決まった。僕はリアスのために戦うだけだ。今度こそ守ってみせる。




どうも、おはこんばんにちわ。
9話目でした。現れた焼け鳥編に突入です。ですが、特訓パートが長いのは個人的にあまり好きじゃないので次の話で終わると思います。なんか終わり方中途半端になった気がします。気にしないことにしました。眠いし。

本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくれた皆様、本当にありがとナス!!
次回も見てくださいね!じゃんけん、ポン!!ウフフフフフ!(サザエさん感)
ちなみに何を出したかは覚えてたら次回発表します、


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もしかしたら私は出来る子かもしれない

 side 裕斗

 

 ライザー・フェニックスとレーティングゲームすることが決まった日の夜、僕の家にギャスパーくんを除いた眷属のみんなが集まった。今後の方針を決めるためだ。

 

「明日からは山の別荘にこもって特訓よ」

 

「そうですわね。アーシアさんに戦闘のいろはを指導する必要もありますし、特訓に集中したいですもの」

 

「お手数おかけしますが、よろしくお願いします!私も部長さんのお役に立ちたいです!」

 

「ありがとう、アーシア。あなたの力は回復。ならやることは自ずと決まってくるわね」

 

「はい、アーシア先輩が学ぶべきことは…」

 

「逃げること、だね」

 

「逃げること?」

 

「うん、アーシアさんの神器が回復系ということは、君が残っている限り僕たちは何度でも戦える、ということさ。つまり君は僕たちの中でもかなり重要度が高いということになる。もしかしたら僕たちの中の誰かが犠牲になってでも守る場面が来るかもしれない。そういった意識改革も含めた特訓になるかもね」

 

「わ、わかりました。でも自分を犠牲にして私を守るとかはやめてくださいね?」

 

「あらあら、ならそうならないように相手に余裕をもって勝てるようにならないといけませんわね?」

 

「はい、アーシア先輩の要求しているレベルがさりげなくすごく高いです」

 

「ええっ!そ、そんなつもりは!」

 

「ふふっ、大丈夫よアーシア。みんなあなたをからかってるだけ。でも実際アーシアを守るためには手の数が足りないのよね。こちらが王である私含めても5人なのに対して相手はフルメンバーの眷属だけでも15人。これだけでも戦力差は3倍なのに、相手の王はフェニックスであるライザー。実際裕斗は勝てるとおもう?」

 

「そうですね。全力でやらせてもらえれば負けることはないと思います。魔剣創造なら不死殺しの魔剣も作れますし。ですが先ほど来たグレイフィア様からの連絡では、その類の魔剣を使うことを禁じられました。なんでも本当に殺してしまいかねないからだそうです」

 

「それは痛いわね。それ込みだとどう?」

 

「そうですね……。不死殺しが使えないとなると、少々大変ですね。僕の神器だとフェニックスの不死を打ち破るほどの火力は出せませんし。なので倒すのにはもう一つの手段、ライザーの心を折るという方法を使うことになります。時間がかかると思うので、1対1に持ち込ませてもらえれば倒せます」

 

「そう、ならライザーと戦う前に相手の眷属を全滅させるか、裕斗が戦ってる間他の全員で彼女たちの足止めをするかね。どちらの手段をとるにしてもやっぱり手の数が足りないわね。私とアーシアは前線に出るわけにもいかないし……」

 

「お困りのようね、リアス・グレモリー」

 

 そういってレイナーレさんたち3人が部屋に入ってきた。

 

「あの、どうやって入ってきたんですか……?」

 

「え?リアス・グレモリーに合いカギをもらったわよ?聞いてなかったの?」

 

「言ってないわよ、サプライズだもの」ニッコリ

 

「教えて下さいよ……」

 

「それで?どうしたのかしら」

 

「ええ、私たち3人で話し合って決めたのだけど、あなたの眷属になるという話、受けることにしたわ」

 

「本当!?歓迎するわ!でも急にどうして?」

 

「あなたたちは命の恩人だもの。それに、今は猫の手も借りたいんじゃない?」

 

「確かにその通りよ。でも転生したらもう元には戻れない、一生ものの決断なのよ。だからそういった恩とか気にしないで決めて欲しいの。その上で聞くわ、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト。あなた達3人は私の眷属になってくれる?」

 

「「「ええ(ああ)(はいっす)!!!」」」

 

「ありがとう、これからよろしくね?それじゃあ早速転生させるから私の前に並んでちょうだい」

 

 そう部長が言うと3人はまるで訓練されたかのように同時に並んだ。息ピッタリのようだ。

 

「なるほどね。元々そうするつもりだったけど、あなた達3人はチームワークが抜群のようだから駒を揃えて3人組で動きやすいようにしておくわね。というわけであなた達は3人とも兵士(ポーン)の駒よ」

 

 そう部長が言うと3人に悪魔の駒が入っていく。いや、レイナーレさんだけ上手くいっていない。

 

「わ、私だけなれないの?」ウルッ

 

「いえ、これは良い拾い物だったかもしれないわね」

 

「そうですわね、リアスの駒で転生できないなんて......」

 

「もう一つ入れてみましょう」

 

 今度は上手く転生出来たようだ。どうやら部長の兵士の駒一つではレイナーレさんを転生させるには足らず、二つ必要だったようだ。

 

「なるほど、私が優秀だったから駒が二つ必要だったってわけね!」ドヤァ

「さすがです、レイナーレさま」

「さすがレイナーレお姉様っす!!」

 

「さすがです!レイナーレさま!」

 

「心強い味方が一気に3人も増えて僕も嬉しいよ」ニッコリ

 

「ま、まぁそうね///!これからもよろしくしなさい木場裕斗!!」

 

「あっ、僕のことはそんなフルネームじゃなくて下の名前で呼んでください。これからは同じ眷属の仲間なんですし」

 

「わかったわ、裕斗って呼ばせてもらうわ。私のこともレイナーレって呼び捨てでいいわよ」

 

「「「ちょっと待ちなさい((待ってください))」」」

 

「な、なによ?」

 

「裕斗は部活中は全員さん付けで呼んでるの。それなのにあなただけずっと呼び捨てなんてずるいわ」

 

「そんな!?いいじゃない、これくらい!」

 

「だめよ!私なんて部活中は部長なんていう味気ない呼び方されてるのよ?それなのにあなただけ名前で呼び捨てなんかされてたらおかしくなりそうだわ!!」

 

「あら、でしたらこれを機に裕斗くんには部活中でもみんなの事を呼び捨てで呼んでもらいましょうか」

 

「「「「「「それだわ((です))(だな)(っす)!!」」」」」」

 

「決まりですわね」

 

「あの、僕の意見は......」

 

「いいじゃない裕斗。眷属も増えたし部活の時間中からフレンドリーに行きましょう?」

 

「......分かりました。でも部活中の敬語だけは外しませんからね!」

 

「部室内とかのプライベート空間ではいいと思いますが、私たちにとって部活中はある意味仕事中みたいなものですからね。裕斗先輩のプロ魂って感じですね」

 

「話は変わる、というか戻るんだけどみんなはどの駒で駒の数はどうなってるのかしら?」

 

「そうね、あなたも私の眷属になったんだからその辺のことを詳しく話すわね。

 まず朱乃は女王の駒。これは当然一つで済んでるわ。

 次に小猫は戦車の駒。小猫も一つで済んでるけど、戦車の駒は兵士の駒三つ分よ。

 あなた達があったことのない僧侶の駒の子もいるの。この子は変異の駒(ミューテーションピース)と呼ばれる複数消費が必要なところを一つで済ませてしまうという特殊な駒で転生してるわ。

 アーシアはあなた達も知ってる通り、僧侶の駒一つ。

 最後に裕斗は騎士の駒一つと兵士の駒二つという扱いなの。これは特殊な事情が絡んでるんだけど、あなた達は元々裕斗がルシファー様の眷属だったのは知ってる?」

 

「ええ、堕天使側では無限の剣聖の名を知らないものは居ないくらいだもの。流石に神器を見るまでは気づかなかったけれどね」

 

「そんなに有名なのね......。それはともかく、幼少期から魔王眷属だった裕斗はそこで鍛え上げられていったの。そしてある程度成長してから年が近くて現ルシファー様の妹である私の眷属になったの。当然その時の私では到底眷属に出来るような強さじゃなかったから、騎士の駒一つと兵士の駒二つで当時お兄様の兵士一つ分だった裕斗をトレードしたの。

 

 その時悪魔の駒の開発者であるアジュカ・ベルゼブブ様に協力していただいて、裕斗の中には私の騎士の駒と兵士の駒二つを統合した騎士の駒を入れて、元々入ってたお兄様の兵士の駒はルシファー様に返したの。

 

 これは本来許されないことなの。魔王様の眷属をトレードするなんて普通あり得ないわ。でもお兄様は裕斗を転生させる時元々そうしようと思ってたみたいなの。だから秘密裏にそんなトレードをしたわけ。

 

 公式の記録には裕斗が魔王眷属だったことは乗ってないわ。最初から私の眷属だったことになってるの」

 

「そんなのすぐバレちゃうんじゃない?少なくとも堕天使側では魔剣創造の所有者は魔王眷属だって有名だもの」

 

「実はね、裕斗の名前は悪魔側では有名じゃないの。むしろ無名といっても過言じゃないわ。これは裕斗が幼少期堕天使やエクソシストと特訓で戦ってあげた戦果が全て他のお兄様の眷属の方のものになってるからなの。だから悪魔たちは記録のない木場裕斗という名の魔王眷属がいたことを信じない。

 

 さらに堕天使側でも有名なのは木場裕斗という名前ではなく無限の剣聖という二つ名だけでしょ?年も顔も知らなかったからこそ貴方たちは裕斗が無限の剣聖だと気づかなかった。

 

 あと裕斗は幼少期から信じられないくらい強かったの。だから子供ではあり得ないような戦果を上げ続けていたわ。

 

 つまりこの話をまとめると、無限の剣聖はその強さからある程度年を重ねた熟達者だと思われているけれど、本当は裕斗の子供時代の話だから年齢が噛み合わなくて基本的には信じないのよ」

 

「でもドーナシークは気づいてなかった?」

 

「確かにそうね。どうしてかわかるかしら裕斗?」

 

「そうですね、もしかしたら過去に一回会ったことがあるかもしれません。あのシルクハットには少し見覚えがありました」

 

「それだけで気づいたのかしら?」

 

「一つ確実に言えることは、ドーナシークは一定以上の強さを持って居ました。だからこそレイナーレさんたちは捕まってしまったし、僕も全力で逃がさないようにしました」

 

「うっ、耳がいたいわ......」

 

「なるほどね、私はトドメを刺しただけだから気づかなかったわ」

 

「まぁ今は既に倒した敵のことはいいじゃないですか。明日からの特訓頑張りましょう!」

 

「そうね。みんな!明日からは学校を休んで10日間の特訓に入るわ。英気を養うために今日は皆んなでここに泊まって、そのまま別荘のある山まで行くわよ!というわけで、皆んな荷物を取りに一旦家に帰りなさい!解散のちすぐ再集合よ!!」

 

「「「「「「はい、部長!!!」」」」」」

 

「え、泊まるんですか?明日から合宿なんだから今日くらいはいいんじゃ......」

 

「「「「「「「だめよ(ですわ)((です))(だ)(っす)!!」」」」」」」

 

 と言うわけで今晩は有無を言わせず皆んなうちに泊まった。寝室や客室を皆んなに明け渡し、僕はリビングに布団を敷いて1人寝ていたが、朝起きたら皆んな布団に入ってきたり、僕の上で寝たりして凄い事になっていた。健全な高校生男子には非常に危険なものだった、とだけ伝えておく。

 

 

 

 

 あ、一応兵藤くんも最近特訓をサボりがちだったのでついて来てもらう事にした。何だか鼻息を荒くしながら喜んでいたのに危険なものを感じたので、思わずチョップしてしまった僕は悪くない。




どうも、おはこんばんにちわ。
10話目でした。ついに二桁に乗りましたね。まぁそれはともかく、前回「次回で特訓編終わります」みたいなこと書いてたのに特訓編に入ることすらできなくてすいませんっした!!なんか気づいたら今回は設定説明回みたいになってました。なので、今回つまんねぇーなおい!クソかよ!と思った方もまだ僕を見捨てないでください!何でもしますから!!ん?今なんでもって以下略。
最近会話文でしかストーリーが進んでないですね。たまには地の文がガッツリあるのも書きたいですな。書けるかは別にして。まぁ、そのうちね?

本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様本当にありがとナス!
次回も見て欲しいなぁ、俺もなぁ......(MUR大先輩感)
因みに前回のサザエさんのじゃんけんはチョキでした。勝てた皆んなはこの小説の評価に☆10を、負けた方は評価に☆10を、あいこだった方は評価に☆10をつけると異世界転生出来ますやってみてください。


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合宿ってのは一波乱か二波乱くらいある

 side 一誠

 

 うっひょおおおおお!!!今の気分は最高にハイ!って感じだぜ!!なんとなんと、オカルト研究部の合宿に行くことになったぜ!!そう!!あの美女美少女しかいない(木場?知らない子ですねぇ...)部活のみんなとの合宿!!しかも10日間のお泊まりという長期間で!!

 

 こんなのラブロマンスがあるに決まってる!!もう実質ハーレムと言っても過言じゃねぇ!!!最高 of 最高!!最 and 高!!!帰ってきたら松田と元浜に自慢してやろっと!!写真(お宝)をとって家宝にするんだ!!いや、写真なんて小さな目標じゃない!!必ず誰かのいや、全員の胸を、おっぱいを揉んでやる!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、思っていた時期もありました。この合宿で泊まる所は山の上、というか奥?にあるんだけど、そこまでは山の麓から徒歩で行くんだよ。しかも重りをつけて。40kgの。あれ?意外と軽くない?と思ったそこのあなた、二次元作品の読みすぎで感覚がバグってます。いや確かにちょっと歩くくらいなら40kgどころか60kgくらいでも持てますよ、最近ちょくちょく鍛えてますし。でもそれを背負って山を登るんですよ?いやーきついっす。さらに!俺の横で木場が明らかに俺より重いのを持ってるんですよ。そして!小猫ちゃんはその木場の倍くらい持ってるんですよ!つまり、疲れたー!とか、つれー!とか言えないんですよ!

 

 

 こんな修行みたいな合宿なんて聞いてないぞ!!(←こいつが合宿という言葉に浮かれて聞いてなかっただけ)

 俺のハーレム合宿の前途は多難だ......。

 

 

 side 裕斗

 

 兵藤くんが死にそうなりながら山を登りきり、リアスの別荘についた。うわぁ、大きいなぁ。これ屋敷じゃないのか......。それはともかく早速着替えて特訓を始めよう。時間は有限だ。

 

「それじゃあみんな着替えてきて。早速特訓開始よ!」

 

「「「「「「「はい(っす)!!!」」」」」」」

 

「俺は少し休んでから着替える......」

 

「わかったよ。兵藤くん...のぞかないでね?」

 

「誰がお前の着替えなんかのぞくか!!!!」

 

「えっ、僕は他のみんなの着替えのことを言ってたんだけど......。いや、その、趣味は人それぞれというか、うん、その、じゃあね!」

 

「はぁ!?ちょっ、ま、待て!!変な誤解したままどっか行くな、木場ああああああ!!!」

 

 これが「どうやらマヌケは見つかったようだな......」ってやつなんだね。それにしても兵藤くんにそっちの気まであったなんて...。普段いっしょにいる2人ともそういう関係なのかな?

 

 などとくだらない事を考えながら着替えを済ませ、屋敷の庭に集まった。各々動きやすい服になっているが、ほんとみんな綺麗でどんな格好をしても似合うなぁ......。

 

「なにボーっとしてんのよ。あ、もしかしてみんな可愛くて見惚れちゃった?」

 

「うん、本来ならジャージとかってやっぱり機能重視だから凄いオシャレ!ってことは無いはずなんだけど、みんな動きの邪魔にならない所でちゃんと可愛くしてるし、そもそも素材が凄くいいからね。似合ってて可愛いし綺麗......って、はっ!?思わず本音が///!」

 

 うぅ、皆んなに見惚れてボーっとしてたから急に話しかけられて何も考えずに答えてしまった......///。

 

「あ、あんたは急にそういう事をいうんじゃにゃいわよ///!!」

 

「さすがにそこまでストレートに言われると照れるな......///」

 

「嬉しいっすけど、恥ずかしいっす......///」

 

「......裕斗先輩のバカ///」

 

「あ、あらあら、うふふっ///」

 

「え、ええ、そう言ってくれると嬉しいわ///」

 

「けっ、クソイケメンが!!」

 

「ん、んんっ!それじゃあ特訓を始めるわ!遠距離攻撃を得意とする後衛組と近接攻撃を得意とする前衛組に分かれて」

 

 そう部長が言うと3つに分かれた。リアス、朱乃、レイナーレ、カラワーナが後衛組、小猫、ミッテルト、僕が前衛組に分かれ、アーシアと兵藤くんはどちらに入ればいいかわからず戸惑っていた。

 

「アーシアは私たちと同じ後衛組、兵藤くんは魔力がほとんど無いし前衛組ね。それじゃあ、それぞれの組で今後の方針を決めて?」

 

「分かりました。僕は昼間は兵藤くんの訓練に付き合うよ。2人は組手をやったり、1人で確認したいなら相手に言ってやったりすればいいんじゃないかな?僕も少しは見にこれると思うし」

 

「そうですね。お互いの実力の確認も含めてまずは組手しましょう」

 

「いいっすよ、うちの実力見せてやるっす!!」

 

「おい!勝手に決めんなよ!!なんでこんなに女の子がいるのに野郎のお前と2人で特訓しなきゃいけねぇんだよ!!」

 

「......兵藤先輩はここに何をしに来たんですか?」

 

「そりゃ女の子と楽しく過ごすためさ!」

 

「もういいっす。喋んないでもらっていいっすか?」

 

「な!?そんなひどい事言わなくてもいいじゃないか!」

 

「兵藤くん、昨日の僕の話聞いてなかったの?」

 

「合宿するとしか聞いてねぇけど?」

 

「はぁ......。きっと舞い上がって聞いてなかったんだね。この合宿は部長の、リアスの婚約をかけた戦いのための特訓なんだ。リアスが不満に思ってる婚約を破棄するために僕たちは戦うんだ」

 

「はぁ!?そんな事言ってなかった」「言ったよ!!全部説明した!君が聞いてなかったんじゃないか!!!......怒鳴ってごめん、今少し気が立ってるんだ。君は僕たちの保護下にある人間だし、最初に約束したから特訓は見るけど、みんなの邪魔だけはしないでね。お願いだから」

 

 こんな事なら彼のことは呼ぶんじゃなかったかもしれない。いや、今から無理矢理帰すわけにも行けないし、そう言うことは考えないようにしよう。

 

「裕斗、大丈夫?」

 

「はい、大丈夫です。特訓を始めましょう」

 

「そうね、じゃあそれぞれ特訓を始めなさい!」

 

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

 

「じゃあ兵藤くん、あっちに行こう」

 

「あ、ああ」

 

 少し気不味いが、特訓が始まった。

 

「前にも言ったけど君の神器は君自身が強くなればなるほど効果を発揮する。そして君自身の能力を上げるには地味で大変で辛い筋トレとか走り込みを続けなきゃならない。そこまでは分かってる?」

 

「あぁ、もう何回も言われたからな。でもいつもと同じことをするわけじゃないんだろ?」

 

「ううん、継続が大事だって言ったでしょ?だから辛くても同じことを続けるんだ。でも今日からは負荷を増やすためにこれをお風呂以外では外さないで欲しいんだ」

 

 そういって僕が取り出したのはリストバンド4つと重りだ。

 

「なんだこれ?」

 

「このリストバンドにはポケットがついてるんだ。そこに重りを入れて、手首と足首にそれぞれつけて。で、それを外さない。まずは1kgから、慣れて来たら500gずつ増やしていく。今後は特訓もこれをつけたままやってね」

 

「うっ、意外とくるな」

 

「そうじゃなきゃ意味ないからね」

 

 その日は兵藤くんにはそのまま基礎トレーニングをやってもらうことにして、小猫とミッテルトの様子を見に行った。

 

「おぉ、やってるなぁ。流石にミッテルトは光を使ってないな。その分もあってか小猫が優勢かな」

 

 一段落したところで話しかけた。

 

「2人ともお疲れ様」

 

「「裕斗先輩(さん)」」

 

「どうだい?お互い戦ってみて」

 

「そうですね、元々堕天使だったからか飛行に非常に長けていると感じました。これは結構転生悪魔に対しては重要なポイントだと思います。転生悪魔の中には元は飛べない種族だった方が多くいますから」

 

「うちが感じたのはやっぱりパワーっすね。油断したら一発で持ってかれかねないっすから」

 

「裕斗先輩からもアドバイスもらえませんか?」

 

「いいよ。まずミッテルトは飛行が得意ならヒットアンドアウェイ戦法を取ることになると思うんだ。だから飛行スピードをもっと上げられれば良いんじゃないかな?次に小猫は一撃で決められる威力があるならフェイントの練習をして誘いをかけて、確実に当てられるようにすれば良いと思うよ。あとは相手を逃さないように掴みが出来るようになるともっと戦術に幅ができるよ」

 

「なるほど、フェイント...。たしかに一撃で決められる分全部の攻撃を相手に当てようとしてしまっていたかもしれません」

 

「おぉ!なるほどっす!一撃離脱で一方的に相手に攻撃するっすね!さすが裕斗さんっす!」

 

「参考になったら嬉しいな」

 

「「ありがとうございました(したっす!!)」」

 

 夕方になり兵藤くんに今日はもうお終いだと告げて僕も自分の特訓に入る。

 

 先日のアーシアさんの件、ドーナシークにアーシアさんがさらわれた時確実に不覚を取った。実力的には僕の方が上だったのは別に自惚れでも何でもない純然たる事実だ。確かにサーゼクス様の眷属だった頃に比べて戦う機会が減って感覚が鈍っていたとはいえ、奴の接近には気付けたはずだ。それが出来なかったと言うことは......

 

「まだ、引きずってるのか......」

 

 正直、アーシアの話を聞くまで自覚はなかった。僕の過去、僕のトラウマ、僕の教会側に対するアレルギー。そこに触れられ僕は思い出してしまったのだ。あの地獄のような生活とその最悪な結末を。だから動揺した。いや、違うな、教会を討つべきだと言う思考に脳内が染まったのだ。今思うとよくアーシアを慰められたと思う。きっとあの時敵対していたのが不審な動きをしていた堕天使のドーナシークじゃなく、教会側の誰かだったらアーシアを置いて復讐心に突き動かされるままに敵を斬殺しに行っていただろう。

 

 あの施設の仲間たちのことを今でもふとした瞬間に思い出す。眷属の仲間と楽しく過ごしている時、一緒に辛い思いをしている時、様々な場面で思ってしまうのだ。ここに居たのはもしかしたら僕以外の誰かだったかもしれない。その他の誰かの方が上手くやれたかもしれない。仲間を幸せに出来たかもしれない。

 そんな思考が混ざり合い、頭の中がぐちゃぐちゃになったのだ。その隙をドーナシークにつかれた。そしてみすみすアーシアの誘拐を許し、一度は死なせてしまった。

 

 アーシアの話は悲惨で、聞くだけでも確かに辛いものだが、僕は聞いただけなのだ。その場面を見た訳でも体験した訳でもない。それなのにあれほど動揺し、隙を作ってしまったのは不味い。早く乗り越えないと少し教会の話を少し聞いただけで隙を生み、僕は負ける。そうしたら僕はまた誰も守れない。救えない。

 

 とは言っても1日2日でトラウマを乗り越えられたら苦労はしない。どうすれば良いのかな指針も見つけられないまま、その日は剣術の型を高速で確認して終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 特訓を繰り返し、折り返しの5日目の特訓を終え、まず女子の皆んながお風呂に入って行った。

 

 そんなタイミングでコソコソとお風呂に向かっていく気配を感じた。

 

「何をしてるのかな?兵藤くん」

 

「うおっ!?き、木場!?い、いやぁ、ちょっとな、トイレだよトイレ」

 

「そっちにはお風呂しかないよ」

 

「だ、脱衣所にもトイレはあるだろ?」

 

「なんでわざわざそこのトイレに行こうとしてるのかな?普通に他の場所にもトイレはあるでしょ。それにそれぞれの個室にもトイレはあるし」

 

「他のところのは全部故障してたんだよ」

 

「......はぁ、いい加減認めたらどうだい?のぞこうとしてましたって」

 

「...だーー!!!いいじゃねぇか、ちょっとくらいのぞいたって!減るもんじゃあるめぇし!」

 

「そうだね、確かに減るものは無いのかもしれない」

 

「なら!!」

 

「でもね、彼女たちの精神的負担が増えるんだよ。そんな人と1つ屋根の下に泊まってると思うとね。それはどうしても避けたいんだ。この合宿がどれだけ大切で重要なことかは初日に話しただろ?」

 

「バレなきゃ大丈夫だって!!」

 

「......そう言う問題じゃないよ!今は大事な時期なんだから余計なことはするなって言ってるんだよ!そんなことも分からないのかい!?それに、バレなきゃ大丈夫?君の実力で皆んなにバレないなんて無理に決まってるだろう!」

 

「はぁ!?それはお前がちゃんと俺の事を鍛えてくれねぇからだろ!いっつもいっつも筋トレと走り込み、たまにちょっと組手するくらいじゃねぇか!!そんなんじゃ強くなれるわけねぇだろ!」

 

「何度説明させる気だ!君が強くなるためには体を鍛えるのが1番の近道「もうそれは聞き飽きたよ!」

 

「本当は俺に強くなって欲しくないんじゃねぇか?俺が強くなったらオカ研の皆んなが俺の事好きになっちまうかもしれねぇもんな!」

 

「はぁ!?そんなの見当違いだよ!少なくとも変態行動を繰り返す君の事を好きになることは絶対ないよ!!」

 

「うるせぇ!!そんなの強くなんなきゃ分かんなぇだろ!!ともかく俺はのぞきに行く!!そこを退きやがれ!!!」

 

 そう言って兵藤くんが神器を出した。しかしその形は普段とは少し違い、よりゴツくなり、色も普段の赤色が若干暗くなっている。

 

「まさか、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!?神滅具の1つの!?」

 

「あぁ?何のことかわからねぇが、とにかくお前をぶっ飛ばす!!」

『Boost!!』

 

 やはり赤龍帝の籠手だ!しかしあれが強くなるには時間が必要だと聞いている。なので速攻で決めさせてもらう。

 

「あまり時間をかけるとめんどくさい事になりそうだから、すぐ終わらせてもらうよ」

 

 やはり兵藤くんは直情型だ。組手の時から彼にも伝えていたんだが、何も考えずに真っ直ぐ突っ込んでくる癖が治らない。その突進してきた兵藤くんは籠手ついた左手で殴ろうとしてくるが、首を傾けるだけで躱し彼の腹部にカウンターの一撃を見舞う。要するに当て身だ。そのまま兵藤くんは気絶した。

 

 一応確認のため本当に赤龍帝の籠手なのかを確認すべく籠手にふれる。そうすると頭の中に何者かが声をかけてきた。

 

『おい、そこの。聞こえるか』

 

『え、ええ。聞こえていますが、あなたは何者ですか?』

 

『ふん、察しはついているだろう。俺は赤龍帝、ドライグだ』

 

『やはりそうでしたか。ですが何故僕に話しかけたのですか?今目覚めたばかりなら僕ではなく所有者たる兵藤くんに語りかけるべきでは?』

 

『この小僧はダメだ。わざわざこの俺が語りかける意味もない。しかしこいつのそばに中々見込みがありそうな奴がいたからな。俺は運がいい。わざわざそいつが俺が語りかけられる為の条件を満たしてくれたんだからな』

 

『条件とは』

 

『所有者が睡眠、または気絶している状態で籠手に触れることだな。目覚めたにもかかわらず退屈そうだと思っていたところにこれだからな。本当に運がいい』

 

『それで、結局本題は何なんですか?』

 

『なに、簡単なことだ。こいつの代わりに俺の所有者にならんか?』

 

『そ、そんなことできるんですか!?』

 

『普通の神器なら無理だ。だが、俺のように何かの魂を封印している類の神器ならばその封印されているものの意思次第では可能ではある』

 

『でもその場合って、神器が所有者から無くなるということは......』

 

『そうだな。元の所有者は死ぬ』

 

『そんな、出来ませんよ!』

 

『いや、こいつはもうダメだろう。見込みは無い、向上心もない、鍛えてやってもやる気はない、あるのはスケベ心と他人に迷惑をかける能力くらいだ。こんな愚図、死んでしまった方がマシだ』

 

『僕はそこまで過激なことは考えてません!それに今は色々無くとも何かがキッカケで変わるかもしれないじゃないですか』

 

『言ってるだろう、そういった見込みが無いんだ。はぁ......。神もめんどくさいシステムを考えたものだ。前所有者がくたばったら完全ランダムで次の所有者がその後生まれてくる子供たちの中から選ばれるとは......。こちらにも多少の決定権をくれても良いとは思わんか?』

 

『確かに少し気の毒ですけど......』

 

『そこでお前だ。お前は中々強いし、今後もまだ伸びるだろう。俺はそういう成長してくれる相棒を求めている。白いのとの決着をつけるためにな』

 

『かの赤龍帝が僕のことを認めてくれるのはとても嬉しいし、非常に名誉だと思います。でも僕は彼が死んでも構わないと思ってません。僕は嫌われてると思いますし、仲も決して良好とは言えません。でもまだ希望はあると思ってます』

 

『......ふっ。そういうところもつくづく俺の好みだな。お前が相棒になってくれないのは非常に残念だ。とりあえず今は諦めよう。だが、その場合気をつけろよ。神器は所有者の思いに応える。応えてしまう。そこに俺の意思は介入できない。こいつに嫌われているならせいぜいその背中を撃ち抜かれないよう気をつけるべきだ』

 

『たしかに、あなた自身ではないとはいえ、あなたの能力と戦うのは骨が折れそうです。そうならないよう気をつけます』

 

『ではな』

 

『はい、またお話ししましょう』

 

 そう言って赤龍帝ドライグとの会話は終わった。驚きの連続だったが、この事は今回のことが終わってからリアスに報告しよう。今はあまりリアスに負担をかけたくない。

 

 このいざこざの後、兵藤くんはもう帰らせることになった。リアスが僕への負担が大きすぎるという理由で帰したのだ。彼は抵抗したが、強制的に家に魔法陣で送られてしまった。ちょっとだけありがたいと思ってしまったのは内緒だ。

 

 side out

 

 

 all side

 

 

 今日は合宿9日目。10日目は軽い調整だけ行うので実質今日が最後の特訓の日であった。全員その日の特訓も終わり、食事と入浴も済ませた。6日目以降全員一緒にお風呂に入ろうと裕斗のことを誘っているのだが、修行どころでは無くなってしまいそうなので全力で断っている。もしそんな事になったら色々と、ねぇ?言わずともお分かりいただけるだろう。

 

 裕斗は寝る前に喉が渇き、水をリビングの冷蔵庫から出して飲む。そのままリビングからベランダに出て空を見る。今日は満月だ。

 

「裕斗」

 

「リアス」

 

 後ろからリアスが話しかけてきて、そのまま裕斗の横に並んで空を眺めた。

 

「裕斗は修行の調子はどう?感は取り戻せてる?」

 

「......バレてたか。確かにサーゼクス様の眷属だった時ほどの感の良さはここに来る前はなかったからね。取り戻すのに必死だったけどもう大丈夫。今ならあの時の僕と戦っても勝てるくらいにはなったよ」

 

「さすがね。全盛期を更新したって感じかしら」クスクス

 

「ふふっ、そうだね。リアスのための一世一代の大勝負なんだ。しかも僕は相手の王を取るという晴れ舞台。全盛期以上の力で臨まなきゃ失礼ってものさ」ニッコリ

 

「ポ-......はっ!?そ、そうね///、あなたにとっても大勝負って事なのね///!!よろしく頼むわ!」

 

「うん、任せてよ。......リアスの夢は昔から今も変わらないのかい?」

 

「えぇ、私は私を、グレモリーじゃないリアスを見てくれる人と結婚したい。私が持ってるのはこんなちっぽけな夢。昔変わらない幼い夢。幻滅したかしら?」

 

「ううん、そんな事ないよ。僕はリアスがリアスだから、今こうやって君の眷属になってるんだ。覚えてるかい?僕とリアスが会ったばかりの頃のこと」

 

「えぇ、もちろん。あの頃の裕斗はまだ暗かったわよね。だから私がなんとかしてあげないとって思ったのだもの」

 

「あの頃でも一応マシにはなった後だったんだけどね。でもあの時のリアスは面白かったなぁ。僕の世話を色々焼こうとして失敗して泣いちゃったりして」フフッ

 

「ちょっと!恥ずかしところを思い出さないでちょうだい///!!」

 

「えぇ〜、その後拗ねちゃって朱乃とグレイフィア様と僕の3人で一生懸命慰めたのも思い出しちゃダメ?」

 

「もう思いっきり思い出してるじゃない!!いつからそんなイジワルな事を言うようになったのかしら!」

 

「ふふっ、でもそんな事が何回もあったから、かわいい人だなって思えたから僕の心の傷も癒えていったんだ。それでサーゼクス様にリアスの眷属になってくれないかと言われた時に快諾したんだ」

 

「そ、そうだったのね、何だか私がポンコツだったから眷属になってくれたみたいで複雑だわ///」

 

「照れなくていいよ。そんな君だから僕はリアスのことが大好きなんだ」

 

「......えっ///」

 

「僕だけじゃないよ、朱乃も小猫も、今回は参加できないけどギャスパーくんも、まだ眷属になったばかりだけどアーシアもレイナーレもカラワーナもミッテルトも、皆んな君が大好きだ。だから僕たちはリアスのためならどこまでも頑張れる。だから僕たちは負けない」

 

「(勘違いしちゃう言い回しはやめてよ///!!!でも......)ありがとう、裕斗。私もあなたが、あなたたちが大好きよ。絶対ゲームに勝ちましょう!」

 

「はい!!......それじゃあ、僕は先に部屋に戻りますね」

 

「えぇ、おやすみなさい」

 

「はい......リアス!」

 

 去ろうとしていた裕斗がリアスに話しかけた。

 

「どうしたの?裕斗」

 

「月が綺麗ですね」

 

「えっ?」

 

「おやすみなさい」

 

 そう告げると裕斗はリアスの返事は聞かず立ち去っていった。そこには顔を真っ赤にしたリアスだけが残されていた。

 2日後、リアスの今後の命運をかけた闘い(ゲーム)が始まる。




どうも、おはこんばんにちわ。
11話目でした。昨日投稿できなくてすんませんっしたぁああああああ!!!でも月曜は今後も投稿出来ません!!何故かって?バイトで疲れてるからさ!!
まぁ僕のリアル事情は置いておいて特訓編完結しました(8501字)。ん?普段の倍くらいあるぞ?1話で終わらせるとはなんだったのか。まぁ2話分の文字数でも1話にぶち込めば実質1話だよ!誰も気づかねーって!!はい、この話はやめやめ。閉廷!!ラブアンドピース!!

本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様、本当にありがとナス!!
次回もどーんと書いてすっと投稿するからパッと読んでな!

あ、本格的に次回云々のネタは尽きたのでどんどん適当になっていきます。


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決闘と書いてデュエルと読むとは限らない

 side 裕斗

 

 レーティングゲームの10分前、部室にギャスパーくん以外の眷属が全員集まっており、そこにグレイフィア様のアナウンサがかかった。

 

「あと10分でゲーム開始時刻となるため、今からゲーム会場まで転移を行います。準備はよろしいですか?」

 

「皆んな、準備はもう大丈夫?」

 

 そうリアスが皆んなに問いかけると全員頷いた(アーシアは緊張からか震えていたが)。

 

「それじゃあよろしく頼むわ、グレイフィア」

 

「はい、では」

 

 そうグレイフィア様が言うと一瞬視界が白に染まったかと思うと、目の前の景色は先ほどと変わらず見慣れている部室のままだった。

 

「転移失敗っすか?」

 

「転移失敗なんて、最強の女王も意外と抜けてるところがあるのね」

 

 ミッテルトは少し不安そうに、レイナーレは楽しそうにそう告げるが、これは別に失敗したわけではない。

 

「ううん、ちゃんと転移してるさ。窓から外を見てみなよ」

 

「「「!?」」」

 

 先ほどの2人+アーシアが外を見て驚いている。

 

「冥界の空!?いや、すこし違うような......?」

 

「ふふっ、レーティングゲームはゲーム会場として結界の中に空間を作り出すのですわ。今回の会場は学園のようですわね」

 

「私たちの慣れた環境......。一応ハンデ、と言うことだろうか?」

 

「まぁ貰えるものは貰っておけばいいんじゃないかな?」

 

「ふっ、そうだな」

 

 会場のことについて話していると再びグレイフィア様からアナウンスがあった。

 

「それではゲーム開始前のルールの確認をします。確認後両チームの承認が得られ次第ゲームを開始します。

 

 本日のゲームはライザー・フェニックス様とその眷属対リアス・グレモリー様とその眷属です。リアス様側は一名参加していません。

 特殊ルールとしましては、リアス様眷属の木場裕斗の神器での不死殺しの魔剣の製造禁止、そして両チームフェニックスの涙の使用は禁じます。以上になりますがよろしいでしょうか?」

 

「ええ、それで大丈夫よ」

 

「......両チームの承認が得られました。ではこれより、ゲームを開始します!」

 

 ついに運命のゲームが始まった。

 

 side out

 

 

 side 小猫

 

「まず、皆んなこれをつけてちょうだい」

 

 そう言うと、部長は皆んなに耳につけるタイプの通信機を渡してきた。

 

「音声のやり取りはこれ、あと部室では使い魔達によるそれぞれのメンバーの中継映像を見れるようにしておくわ。これで状況の把握手段は十分でしょう」

 

 中継映像は音声も拾えるが、指示は出来ないからこその通信機なんですね。こういうのがレーティングゲームでは当たり前なんでしょうか?

 

「それじゃあ、裕斗は旧校舎の裏の森に罠を張ってきてくれる?それが終わったら貴方はライザーとの戦いまで体力を温存しておいて」

 

「いえ、僕にも戦わせて「裕斗。このゲームは貴方への負担が1番大きいの。だからそれ以外は私たちに任せて起きなさい。それとも、私たちは信用できない?」......いえ、それじゃあ皆んなにお任せします。とりあえず罠を張ってきますね」

 

 そう告げると裕斗先輩は部室から出て行った。

 

「次に小猫とミッテルトは体育館に行ってちょうだい。相手は必ずあそこを拠点として確保しようするはずよ。たしかに本来なら押さえておいた方がいいんだろうけど、私たちの方が圧倒的に人数が足りないわ。だから2人はその体育館の中にライザーの眷属を留めておいて。そして通信機でタイミングを合わせて朱乃、レイナーレ、カラワーナの3人攻撃で体育館は破壊するわ」

 

「わかったっす。にしても、大胆な作戦っすね〜」

 

「あら、お嫌い?」

 

「大好きっす!!」

 

「それじゃあ、行きましょうミッテルト」

 

「おうっす!」

 

 実は合宿の特にミッテルトとは同じ前衛組として合宿中一緒にいた時間が1番長かったので仲良くなったので、お互いに呼び捨てで呼び合うようになりました。あの合宿は親睦を深めるためにも非常に良かったと思います。

 

 ですが、ただ仲良しこよしでやっていただけではないんです。特訓の成果を見せてやります!

 

 side out

 

 

 side レイナーレ

 

「レイナーレとカラワーナと朱乃は3人で空から偵察してちょうだい。そして小猫とミッテルトの合図で体育館を撃破した後は朱乃は1人で遊撃をしてちょうだい。貴方は対応力が高いから4人の行動を外側から見てその後の行動を自分の判断で決めていいわ。4人を援護するもよし、大丈夫そうなら先に進んでもよしって感じね。

 2人は小猫とミッテルトと合流して、体育館を落としたところにやってくるであろうライザーの他の眷属達の相手をして。思いっきり暴れて来なさい!」

 

「分かりましたわ」「分かったわ」「了解」

 

「それじゃあお願いね」

 

 私たちリアスの指示をうけ偵察を行っていたところ、体育館と本校舎の間あたりに敵の本隊と思われる7人がいた。いない8人のうち4人は体育館にいるとミッテルトから連絡があった。女王が見当たらないのは厄介ね...。

 

 それにしても、何か違和感がある。

 

「何かおかしくないか?」

 

「確かに違和感を感じるわね」

 

「......!首輪ですわ!1人以外全員つけてます!以前お会いした時にはつけて無かったですもの!」

 

「なるほど!それに加えて何だか顔色が悪くないかしら?」

 

「あぁ、異様に首輪を気にしているようにも見える」

 

 何だか怯えているようにも見える。顔も真っ青だ。そんな風に3人で違和感について話し合っているとミッテルト達から連絡がきた。いくらなんでも早すぎじゃない?

 

「もう準備は完了したの?」

 

『まだっすけど、急いで来て欲しいっす!!いや、でも、体育館は壊さないでくださいっす!!』

 

「どういうこと?リアスの指示とは違うわよ?」

 

『いいから!!早く来て欲しいっす!!来ればわかるっすから!!!』

 

 さすがにここまで狼狽えているとただ事じゃないのはわかる。

 

「わかった、すぐ行くわ」

 

「行きましょう」

 

 3人で体育館に向かうとそこには異様な光景が広がっていた。なんとライザーの眷属が1人は必死の形相で、1人はその頬を涙で濡らしながら、2人は体育館の隅でうずくまって泣いている。

 

「負けるわけにはいかない!絶対に!もうあんなのは沢山だ!」

 

「うっ、ぐすっ、お願い!負けてよ!私たちのために!」

 

「「いやだぁ!もうやだよぉ!助けてよ!!」」

 

「な、何これ......?」

 

「どうなってるんだ......?」

 

「全く状況が読めませんわ......」

 

「来てくれたっすか!?」

 

「くっ、増援!?そんな、そんなことって......」

 

「いやよ!そんなのいやよぉ!!」

 

「「いや、いやだぁ!!助けてぇ!!!」」

 

 どういうことなの......?レーティングゲームはリタイアになれば怪我は治るって聞いてるし、そこまで恐怖するようなことはないはずなのに...。

 

「話を聞いて見てもいいんじゃない?」

 

「私もそう思うが......」

 

「そうですわね、私に任せてください」

 

 そう言って朱乃が4人に語りかけ始めた。

 

「貴方たちはどうしてそんなに怯えてるんですか?その理由によっては攻撃はしませんわ。私たちは貴方たちの王さえ討てればいいんですもの」

 

「ほ、本当か?」「本当なの?」「「信じていいの?」」

 

「ええ、もちろん。グレモリーは慈悲深いんですのよ」

 

「その言葉、信じるぞ。......実は、この首輪は爆弾なんだ。私たちがリタイアになるとその瞬間に起爆する。もしかしたらギリギリ転移が間に合うかもしれないが、まず間違いなく死ぬ。何も今回が初めてじゃない。これまでも非公開のゲームの時は必ずそうだった。そして...死んでいった仲間もいた。もうそんなの沢山だ!自分がそうなるのも!仲間がそうなってしまうのをただ見ていることしか出来ないのも!

 ......ふっ、とは言えこんなことを告白してしまったんだ。私はこのゲームが終わった後どうせ殺される。もう私は戦わない。戦えない。もう、好きにしてくれ......」

 

「このゲームはサーゼクス様が見てくださってます!ですから彼はこのゲームのあと処罰されるんじゃ......?」

 

「あの男はあんなのでもフェニックス家の才能ある三男だ。そしてフェニックス家の秘宝、フェニックスの涙についての実権は奴が握っている。つまり悪魔界での発言力が非常に強く、眷属をどう扱ってるか程度の情報なら簡単に隠蔽できる。だから、もう......」

 

「そ、そんな......」

 

「何をしているのかしら」

 

 そこに相手の残りの眷属のうち1人を除いたが全員現れた。な!?どうなってんのよ!?

 

「いつのまに!?」

 

「ふ、ふふふっ。私たちが助かるためにはこうするしかなかったのよ!」

 

「そうよ。私たちは勝つしかないの、死にたくないならね。私だって強引に決められた婚約で結婚させられるリアス・グレモリーが不憫だと思うわ。でもね、私たちも死にたくはないのよ。仲間の死も見たくない。だから、彼女には悪いけど負けてもらうわよ」

 

「こんなのどうすれば......」

 

『絶対倒しちゃだめよ!』

 

「でもリアス!それじゃぁ貴方が!」

 

『捕縛するの!今裕斗にロープを持って向かってもらってるから、そのロープにレイナーレとカラワーナが光を纏わせなさい!そうすれば悪魔である彼女たちはそのロープを解けないはずよ!』

 

「助かりますわ」「任せなさい!」「任せてくれ!」

 

『それまで5人で時間稼ぎ「木場裕斗、ロープ持ってきました!」さすが裕斗ね!裕斗はそのまま2人がロープに光を纏わせ終わるまで護衛してあげて!』

 

「了解です!」

 

 いや、ほんと裕斗早すぎるわよ。14人縛るためのロープって相当の量よ?

 

「纏わせるのはまだなれてないから集中しなければならない。その間の護衛頼んだぞ」

「それに量も多いから結構時間がいるわ。貴方なら大丈夫だと思うけど、よろしくね」

 

「うん、任せてよ!」

 

 そうすると木刀を二本創造し、ライザーの眷属たちの攻撃を捌いていく。

 4人で相手を捌き続けて20分ほど経った。裕斗がなんか爆発を捌いているのからは目を背ける。だって明らかにバグってるもの。

 

「まだですの!?」

 

「下手に攻撃できないからっ、結構きついっす!」

 

「加減が難しい...」

 

「気分はサンドバックだね......」

 

 裕斗!冗談言ってる場合じゃないわよ!って!!

 

「はい!これで最後終わったわよ!!」

 

「捕縛、行けるぞ!!」

 

 それと同時にアーシアから通信が飛んできた。

 

『大変です!!リアスさんが相手の王の方からの一騎打ちを受けて出撃してしまいました!!!』

 

「なんでそんな事になってんのよ!!」

 

「勝てるのか!?」

 

「部長......!」

 

「リアス、どうしちゃったというの?」

 

「大丈夫なんすか!?」

 

「リアス......」

 

『それで本校舎の屋上に行ってしまいました!!私も今向かってます!!」

 

「いや、アーシア。本校舎には僕が行く。アーシアはこっちで皆んなの怪我を治してあげてくれ」

 

『わ、分かりました!リアスさんのことは裕斗さんにお任せします!』

 

「と、言うわけで僕はリアスのところに行く。リアスがそんな戦いに挑むなんて理由があるはずだ。だから絶対助けないと。ここはお願いね?」

 

「ええ、任せなさい!誰一人死なせてたまるもんですか!」

 

 そう言って裕斗はリアスのもとに向かった。まるでお姫様を救う騎士様みたいで、少し羨ましいわ。でも今はともかく、絶対にリアスを助けなさい!!

 

 side out

 

 all side

 

 時は10分前に遡る。

 

「ライザー......!!!女性をあんな風に扱うなんて、本当に見下げ果てたわ!!!」

 

「部長さん......」

 

 そこに1匹の赤い鳥がやってくる。そこから声が聞こえる。

 

『あー、あー、おい、聞こえるか?リアス』

 

「......何かしら、私は今貴方の声を聞くだけで反吐が出そうなのだけれど」

 

『はっはっはっ、そんな事言わないでくれよリアス。それよりこのゲーム、このままだと君の負けだぞ?』

 

「そんなことないわ!私の眷属たちは貴方の眷属に負けないわよ!」

 

『ふっ、だがうちの眷属たちが何をつけているのかは聞いたんだろう?その上で倒せると言うのか?』

 

「...くっ!」

 

『そこでだ、君にチャンスをあげよう』

 

「...なによ!」

 

『俺と一騎打ちしろ。俺が勝てば君には俺の言うことを何でも聞く妻になってもらう。そして君が勝てばこの俺の持てる権力全てを使ってでも何でも願いを叶えてやろう。おっと、もちろんこれに勝った方がレーティングゲームに勝った事になるから、君は勝てれば婚約を破棄できるし俺が願いを叶える』

 

「......いいわ。私が勝ったらこれまでの眷属扱いのことを公表させてもらうわよ!」

 

『そんなことでいいのか?まぁいい。それなら本校舎の屋上に来い。そこで俺は待っているよ、愛しのリアス』

 

「気持ち悪いから辞めて。そこで待ってなさい!私が消しとばしてあげる!」

 

 かくして、リアス・グレモリーはライザー・フェニックス一騎打ちする事になったのだ。

 

 

 

 そして現在、リアスは傷ついている。それに対してライザーは無傷。

 

「ははははは!!!どうやら俺の圧勝だな!今からお前が妻になるのが楽しみだよ!!」

 

「くっ!まるで攻撃が効かない......。こんなのどうすればいいのよ......?」

 

 リアスは絶望していた。戦うことでライザーと自分の実力の差を痛感したのだ。いや、これは正確な表現ではない。大きな差があることは分かるが、どの程度の差なのかすら把握出来なかったのだ。いくら攻撃してもまるで効かない。頭の中ではフェニックスを倒す方法は存在すると分かっていても、それが実行されるビジョンがわかないのだ。これではもしかしたら裕斗でも勝てないかもしれない。そんな思考に脳内が飲み込まれてしまう。

 

「どうだい?リアス。俺も未来の美しい妻を傷つけたくない。リザインしてくれないか?」

 

 そう言われて過ぎったのは、眷属の皆んなの顔。こんな自分のためにいつも良くしてくれる、尽くしてくれる。そんな最高の仲間たち。その仲間たちは今も必死に戦ってくれている。相手を倒してはいけないと言う、非常に辛い条件でも戦ってくれている。

 

「......皆んな私のために必死に戦ってくれてるのよ!だから私だけが諦めるわけには行かないの!この誇りに誓って、私は最後まで戦い抜くわ!」

 

「そうか、残念だよリアス。ならこれでおしまいだ!!」

 

 そう言ってリアスに向かって大火球を放った!思わずリアスは目をつぶってしまう。......しかしいつまで経っても痛みは襲ってこない。目を開けてみるとそこは微細な氷が光を反射する幻想的な光景が広がっていた。

 

「大丈夫ですか?リアス」

 

 そこには裕斗がいた。そう、彼はライザーが部室に登場した時と同様に氷結の魔剣で大火球を氷に変え、それがぶつかって来ないように切り刻んだのだ。

 

「ゆ、裕斗......」

 

「あまり無茶はしないでくださいよ、貴方は僕たちの王なんですから」

 

「ご、ごめんなさい。つい相手の誘いに乗ってしまったの」

 

「まぁその辺りのことは終わってから聞きます」

 

「いいや、それは無理だ。俺の妻になった暁には俺以外の男になど会わせん」

 

「......とりあえず、リアスから僕に選手交代してもいいですか?」

 

「ふん、俺もリアスに怪我はさせたくない。それに、レーティングゲーム内なら死んでも事故だよな?」

 

「出来るものならやってみてください」

 

「小僧、生意気な口を叩くな」

 

「そんなことより、何故彼女たちにあんなものをつけさせてるんですか?貴方のハーレムなのでしょう?」

 

「あぁん?そんなの決まっているだろう。ただ美しいだけの女ならそこら中にいる。しかし、その中からこの俺が眷属にしてやってるんだ。美しいだけでなく勝てる女でなければ意味がない。だから勝てない奴はいらない。それに、あれがあった方が相手も戦うのに躊躇うから勝ちやすいだろう?まぁ負けて死んだらそこまでだし、仮に生き残ってもそんな奴はいらないからな。俺が介錯をしてやるんだ。ははははは!俺は優しいだろう!?そう思うだろ?リアス!こんなに優しい俺の妻になれるのだぞ?何が不満なんだ!?」

 

「女性を物としか思ってないところよ!勝てなければ意味がない?勝てない奴はいらない?ふざけないで!!眷属は家族なの!仲間なの!そんな簡単に切り捨てていいものじゃないのよ!」

 

「......価値観が違いすぎるな。だがそれもこの小僧を殺すまでだ。こいつに勝てばお前は従順な妻になる。賭けは忘れるなよ」

 

「裕斗!!やっちゃいなさい!!」

 

「任せてください!リアスは離れていてください」

 

 リアスが離れていく。ある程度離れるとライザーが何の前触れもなく仕掛けてきた。先ほどと同じように火球を放ってきた。しかし先ほどとは違いサイズではなく弾数で当てに来たのだ。

 

「ははは!!お前に防げるか!?」

 

「......炎喰剣(フレイムイーター)

 

 炎を吸収する魔剣を創造しその悉くを吸いつくした。

 

「無限一刀流、垂直の並」

 

 ライザーの炎を凍らせた氷結の魔剣を空中に三本創造し、それを手に持っている炎喰剣でライザーに向かって打ち出す!

 

「ふん、そんなもの不死鳥たるこの俺に当たるか!!」

 

 そう言って三本の刀を避ける。

 

「それで終わるわけないじゃないか。無限一刀流、刀牙!!」

 

 今度は地面から生やした六本の氷結の魔剣を打ち放ち、それらがライザーに牙を剥く!!

 

「くっ!?」

 

 六本のうち四本がライザーに突き刺さり、全身が凍りついた。しかしすぐに中から炎が氷を食い破り出てくる。

 

「ふん、確かに剣の腕は立つようだがその程度の火力では到底フェニックスの不死は超えられん。とっととくたばれ!!」

 

 また火球を放つ。今度はまた特大の火球だ。先ほどリアスに向けて放ったものの3倍はある。どうやらここまで大きいものだと炎喰剣では吸収出来ないようで、そのままぶつかり砂塵が舞い上がる。

 

「ふふっ、はははははは!!大したことなかったな!!さぁ、これでお前は俺の妻「どうして貴方はリアスとの結婚にこだわるんですか?」!?」

 

 ライザーの後ろから裕斗が声をかける。いつ後ろに回られたのか全く分からなかったライザーは少し動揺したが質問に答え始めた。

 

「そんなの決まってるだろう。リアスは美しい。冥界でもトップクラスの美しさだ。それに加え家柄もいい。俺の立場をさらに向上させてくれることだろう。さらに俺たちは純潔悪魔どうしだ!純潔悪魔が減っている現状では冥界中から祝福されることだろう!そして何より、その素晴らしい肢体!!さぞ俺のことを色々と満足させてくれるだろうさ!!」

 

「......結局貴方はリアスの外見とグレモリーという家しか見てないんですね。そんなだからリアスに拒まれるんですよ!!貴方が強引に迫るから、無理矢理彼女の周囲の外堀まで埋めて彼女を追い詰めるから彼女は泣いていた!!!決して僕たち眷属には涙は見せないようにとその心で泣いていた!!!僕はリアスを泣かせた貴方を許さない!!!今ここで切り捨てる!!!!」

 

「こ、この婚約に反対するということは冥界中を敵に回すということなんだぞ!純潔悪魔同士の結婚を阻止するというのは悪魔にとって重大な損失なんだ!!貴様はそれが分かっているのか!?」

 

「そんなもの、知ったこっちゃない!!何が敵であっても僕はこの婚約に反対だという思いを貫き通す!!この僕の、僕たちのリアスを泣かせたくないという思いは、絶対に間違いなんかじゃないんだから!!!!」

 

 そう叫ぶと裕斗の体から何かがほとばしり始める。

 

「バランス・ブレイク!!」

 

 裕斗がそう告げると世界が塗り替えられた。無数の剣が墓標のように突き立っており、あたり一面は真っ白な雪に包まれていた。

 この世界は木場の心象世界。彼が過去のトラウマを乗り越えられていないことの象徴であり、まだ彼が過去の仲間たちのことを大切だと思っていることの証明でもある。

 

「な、何だこれは......」

 

「ここは僕の、僕だけの世界。ここで僕は貴方を倒そう。貴方はリアスにとって害悪すぎた。その死に様すら彼女の美しい瞳に写して欲しくない。

 いくぞ、不死鳥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ーーー命の貯蔵は十分か」




どうも、おはこんばんにちわ。
12話目でした。まーた長くなってしまいました。いやぁ、この辺の話が好きなのと、なんか設定をモリモリにしてたら中々描き終わりませんでした。
この話は結構前からかのセリフでしめようと考えてたんでよねー。あの時の士郎くんくそかっこよかったなぁ。あれの1割でもカッコ良さが伝われば嬉しいです。
本日も最後に、感想、評価、お気に入りして下さった皆様、本当にありがとナス!!!
いや、ほんと最近感想を送ってくれる方が増えてきて非常に嬉しい限りです!!
次回を読むときは、部屋を明るくしてスマホから顔面を遠ざけて見てね!!!


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データを取るやつの最終手段はゴリ押し

 all slde

 

「はっ、はっ、はっ」

 

 ライザーは今墓標のように無数の剣が突き立てられている白銀の世界を逃げ惑っている。理由を知るには少し時間を遡る必要がある。

 

 30分前ーーーー

 

「ここが貴様の世界だと?ふざけたことを抜かすな!そんなこと、あり得るわけがないなだろう!」

 

「僕は事実を伝えただけだ」

 

 そう告げると裕斗はライザーを中心として半球状に大量の魔剣を展開させる。

 

「な!?」

 

「貴方は何もわかっていない。ここで僕の敵になるということはこの世界を敵に回すことに等しい。リタイヤするなら早めにすることをお勧めするよ」

 

「ふざけるな!!下級悪魔風情がこの俺に勝てると思うなよ!!」

 

「なら、まず一回だ」

 

 裕斗が静かにそう告げると大量の魔剣がライザーを貫く。ライザーはこの寸前までまったくの別の世界に引きずり込まれた驚愕はあっても、焦りはなかった。先ほどまで裕斗が使っていた魔剣たちに一切の脅威を感じなかったからである。事実、裕斗はライザーの大火球は炎喰剣で防げていなかったし、氷結の魔剣が四本自分に刺さっても大したダメージではなかった。だからこそ大量の魔剣に刺されたところで大したダメージにはならないと踏んでいた。あえて貫かれた後余裕を見せてやることで裕斗の心を折ろうとしたのだ。しかしーーーー

 

「ぐはっ!?」

 

 想定を遥かに超える威力だった。

 

「今貴方に向けて放った魔剣たちは特に能力は付与していない。ただ、よく切れていい威力を持っているというだけの剣たちだ。そして、これからこれ以上のものが無限に貴方に襲いかかる。受け切れるものなら受けてみろ!!」

 

 先ほどまでとの火力の差の原因は当然ながらバランスブレイクしたことにある。魔剣創造(ソードバース)とそのバランスブレイクたる無限の剣製(unlimited blade works)の能力自体はほとんど変わらない。どちらも剣を作り出すという能力だ。しかし、その工程と性能は全く異なる。

 

 まず魔剣創造。こちらは能力と形状を軽く思い描くだけですぐに創造可能である。この即効性で、ある程度の能力が見込める。しかしこれは逆に言えばある程度の能力までしか見込めない。せいぜい武器としては二流が精一杯なのである。

 

 それに対して無限の剣製。こちらはあらゆる要素を想像しなければならない。つまり創造までに一定の時間を要する。しかしこの問題は訓練によって解消することができる。同じものを何度も反復して作り出すことによってあらゆる要素を瞬時に想像できるようになればいいのである。そして更に重要な点が1つ。こちらの創造はほとんど武器の性能に上限がない。想像出来るなら創造出来るという破格の性能なのである。ただ、ここは裕斗が作り出した世界なので、この世界を崩壊させるほどの威力を持ったものは作り出せないが。

 

 そしてもう一つ、明確な違いがある。魔剣創造はその性質状、剣の形でなければならないのに対し、無限の剣製は裕斗が剣だと思い込めれば何でも作れる。例えばーーー

 

「な、何だこれは!?」

 

 復活してきたライザー今まさに縛り上げている天の鎖である。これは先端に鏃が付いており、そこで切ろうと思えば切れ、刺そうと思えばさせるから裕斗は剣だと定義した。他にもーーー

 

「ははは!!油断したな!!!」

 

 ライザーはそういうと、今度は手のひらから裕斗にむけて火柱を放った。しかし、それは裕斗の前に展開された、七枚の美しい花弁のような何かによって防がれる。

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)

 

 伝承に残る盾の名前を冠するこれは剣ではないとも思える。しかし、裕斗はこれを防御に特化しているだけの剣であると定義した。

 

 このように裕斗の中でこじつけることさえできてしまえば、何でも創造することができる。当然ちゃんとした剣の方が創造しやすいのだが。

 

「くそっ!なぜだなぜだなぜだ!!何故この俺が追い詰められている!!」

 

「貴方がリアスを泣かせたからだ!だから貴方はここで僕に負ける!!」

 

 その宣言とともにまた大量の魔剣がライザーを囲う。

 

「ふざけるなあああああ!!!」

 

 そうライザーが叫ぶと炎の翼が展開され、周囲にあった魔剣を薙ぎ払った!!

 

「この俺はライザー・フェニックス!!最強の不死鳥なんだ!!負けるはずがないんだああああ!!!」

 

 これはライザーの必勝の技。裕斗にもはや自分の炎弾は効かないと悟ったライザーは、その不死身の体を持って自爆特攻を仕掛けたのだ。

 

「その程度の安い手でどうにかなると思わないで欲しいな。無限一刀流、乱立の並!!」

 

 そういって裕斗は自分の周りに大量の魔剣を展開する。こちらも最強の技の一つ。自分の周囲の魔剣たちは剣であり、盾であり、弾であるのだ。

 

「ふっ!!」

 

 まず八本の剣をライザーに向けて撃ち放った。ライザーは今自爆特攻中であり、避けることも防ぐこともしない。その剣たちが全て刺さったまま乱立の並に突っ込んでくる。そうするとひとりでに動き出し、裕斗の手にある一本を除いた十二本の魔剣たちがライザーを切りつけ始めた!!

 

「ぐはっ!!」

 

 さすがのライザーもここで少し勢いが落ちる。そしてそこに、最後の一本を持った裕斗が目にも留まらぬスピードで接近する。

 

「乗法二十四本!」

 

 ライザーを切りつけていた魔剣たちの上から打ち込むようにしてライザーを切る!

 

 こうしてライザーは3回目の死を迎えた。だが、そこは不死鳥。3回程度ではリタイヤにはならない。しかし、復活したライザーは四つん這いになっていた。

 

「まだ、やるのかい?」

 

「ひっ」

 

 その声を聞いただけで震え上がりライザーは逃げ出した。ここまでの時間はたったの8分。その間に自分は3回死亡し、逆に相手は傷一つ負っていない。その実力差にライザーは逃げ出した。しかしここは何度も言うが裕斗の世界。どこに逃げようとも、どこに隠れようともその居場所は割れている。元の時間に戻るまでにライザーは追加で23回、計26回死亡した。

 

 だがまだリタイヤにはならない。リザインもしない。ライザーはこの状況において、たった一つだけ希望を持っていた。それはバランスブレイク の時間切れである。この能力は明らかに強すぎる。しかし裕斗は冥界では無名の下級悪魔であり、自分から見ればヒヨッコのリアスの眷属なのである。こんなに強いわけがない。グレイフィアが何も言いださないことから、何かしらの不正でこの力を得ているとは考えにくい。なら、無理をしているに違いない。だから時間稼ぎさえ出来れば、こんな世界から出て行くことが出来ればこんな男を殺せる。そしてリアスは自分の嫁になる!ライザーは自分の考えを疑わなかった。しかし、そんな淡い希望もあの男の、木場裕斗の宣言で消されることになる。

 

「ライザー・フェニックス。貴方が考えていることは手に取るように分かる。僕がこの世界に連れてきた敵は皆同じことを考えるからね。明らかにこの能力は強すぎる、だから僕はどこか無理をしているはず、なら時間稼ぎが出来ればここから脱出できるってね。

 でも、それは違う。僕はもうこの能力を丸3日使い続けても倒れることはない。それほどの鍛錬を積んできた。それほどこの世界を作り慣れている。だから貴方に勝ち目は無いよ」

 

「で、デタラメを言うな!!これほど強力な能力ならそれ相応の対価が必要なはずだ!!」

 

「その対価を払うのにもう慣れ切っていると言うことだよ。僕にとっては大した問題じゃ無い」

 

「そんな......」

 

「ところで、貴方はあと自分が何回死ねるか分かりますか?」

 

「は?俺は不死鳥だぞ!何回死んでも蘇るからこその不死だ!それこそ存在ごと掻き消されでもしない限り死ぬことはない!!」

 

「疑問に思ったことは無いんですか?自分の家の不死という他の家には無い特性はどういう原理で成り立っているのか」

 

「......そんなこと考える必要もない!我々フェニックスは選ばれたものだから不死なのだ!!!」

 

「まぁフェニックス家に生まれたという一点においてはそうなのかもしれませんね。でも僕が聞いてるのはそんなことじゃない。何故フェニックスは死なないのか。もともとあたりは付けてたんだけど貴方を何度も殺しているうちに確信が持てたよ」

 

「........」

 

「魔力だよ。フェニックスの遺伝子に刻まれた特殊な魔法によって、極々微量な魔力で復活出来るようになっていたんだ。これまでは全員フェニックスを倒すには心を折るか、とんでもない一撃を与える以外に方法はないと思い込んでいたから誰もそんなことに注目していなかった。それに、そうかもしれないと思っていた僕が注視した上で貴方を30回近く殺すことでようやく気づけたんだ。その魔法を組んだものは天才だよ。

 でもそれでも魔力消費をゼロにすることは出来なかった。一度の復活に必要な魔力量と貴方の今残ってる魔力量から考えて貴方は、あと857回殺せば死ぬ」

 

 自分すら知らないフェニックス家の秘密を暴かれた驚愕もあるが、857という数字を聞いて安堵もした。しかし、少し考えて一気に恐怖に思考は染まった。今戦い始めてから30分ちょっと、死んだ回数は26回。戦闘だけでなく会話も少なからずあったので、おおよそ1分に1回のペースで死んでいることになる。つまり自分の余命は857分、14時間ちょっとということになる。ここまでの時間で抵抗しても勝てず、逃走すれば殺されるペースが上がることは分かっている。このままいけば自分は必ず......死ぬ。

 

 だが、857という数字がとても多いことも事実。何百回も特攻を仕掛ければあるいは...、と考えているとまた裕斗が喋り出す。

 

「ここまで特殊な能力の魔剣を使わなかったのは貴方の不死のメカニズムを探るためだけじゃない。その復活のトリガーも探っていたんだ。再生は恐らく意図的に起こさない限りしない。そして、オートで発動するのは貴方の意識が強制的にシャットアウトされることがトリガーになっている。つまり、貴方を殺さずに倒すには魔力切れの状態で意識を奪えばいい」

 

「出来ないことを言っても無駄だぞ、小僧!結局お前が856回死ぬのが先か、俺がお前に特攻を成功させるのが先かという勝負だ!!」

 

「いいえ、そんな長い勝負にはしない。だって僕には武器がある。ここまでは貴方を殺さないように僕の切り札を一本も使っていない。そしてその中にまさにこの状況にうってつけのものがある。

 

 僕が作り出した氷雪系最強の魔剣、その銘は『氷輪丸』」

 

 その手に一見普通の刀が握られる。

 

「さらに力を解放することで魔力どころか存在ごと凍てつかせる。卍解!『大紅蓮氷輪丸』!!!」

 

 そう裕斗が叫ぶと背中から氷の翼が生え、氷輪丸を握る右腕に氷の龍を纏っていた。

 裕斗が大紅蓮氷輪丸を出した影響か、そらは雨雲に包まれていた。裕斗の上を除いて。

 その雲の穴から裕斗に光が差す。氷の翼を背負い、日光を反射させるその姿は神々しさを感じさせた。

 そのまま雨雲は発達していき、ついには雪が降り始めた。その雪がライザーに当たるとまるで華のように凍りついた!!

 

「な!?なんだこれは!?」

 

「"氷天百華葬"。その雪に触れたものは瞬時に華のように凍りつく。百輪の華が咲き終える頃には貴方の命は消えている」

 

 そう言っている間にもどんどんライザーは凍りついていく。もう姿も見えないほとだ。

 

「安心していいよ。殺しはしない。でもこれて貴方の負けだ」

 

 そう言った時にはもう雪はやみ、空も晴れていた。氷の華の塔が日光にきらめく中、グレイフィアのアナウンスが流れ、このゲームは終了した。リアス・グレモリーの勝利という形で。

 

 side out

 

 

 side 裕斗

 

 勝負が終わり、僕はバランスブレイクを解いた。すると、リアスが凄い勢いで抱きついてきた。

 

「裕斗!!」

 

「ただいま戻りました、リアス」

 

「貴方のおかげて私は、私は......!本当にありがとう!」ウルッ

 

「泣かないで、リアス。僕は君に笑っていて欲しいんだ」

 

「!!ふふっ、やっぱり貴方は最高の騎士(ナイト)ね!」

 

「お褒めに預かり光栄です」フフッ

 

 リアスと話していると転移が始まった。

 

「そういえば皆んなは?」

 

「えぇ、全員無事よ。ライザーの眷属も誰一人リタイヤさせてないわ。皆んな本当によく戦ってくれたわ」

 

「そうですね、やっぱり皆んな頼りになります」

 

「本当にね」

 

 転移が終わり目を開けるといつもの見慣れた部室にいた。

 

「「「「「裕斗(くん)(さん)((先輩))!!」」」」」

 

「皆んな!」

 

「お疲れ様でした、裕斗くん。ほら、座って座って。お茶をどうぞ」

 

「ありがとうございます朱乃。でも朱乃も戦ってたんだから休まないと」

 

「いえ、私たちは割とすぐに観戦モードになってしまいましたわ」

 

「え?観戦?」

 

「えぇ、裕斗が行った後ロープで縛ろうとひながら説得してたのよ。そしたら向こうの眷属たちが「ライザー様の気配が消えた!?」って動きが止まったから何事かと思ってみたら貴方とライザーが居なくなってリアスだけが残ってたの。で、リアスに事情を聞いたら貴方がバランスブレイクでライザーごとどこかに行ったって聞いて全員戦闘はやめたの。それでグレイフィア様に頼んで貴方の世界の中継映像を見せてもらってたのよ」

 

「あの時中には僕とライザーだけしか......。いや、でも言われてみればなんか小さいのがいたような......?」

 

「ふふっ、きっと裕斗さんはフェニックスさんに集中してたんですね!リアスさんのために!」

 

「そうね。それで貴方がライザーを連れて行ったタイミングで中継用の使い魔も入ってたみたいなの。それで貴方たちの戦いを見てたってわけ」

 

「そうだったのか......。僕は追い詰めるような戦い方をした。怖かったろう?」

 

「そんなことないわ!貴方は私のために必死になってくれただけよ!」

 

「そうですわ。むしろかっこよかったです」

 

「あぁ、毅然とした態度で戦う君の姿は、その、素敵だったと思うぞ」

 

「裕斗先輩、すごかったです」

 

「カッコよかったっす〜!!」

 

「裕斗さんは色んな人を助けたんです。もっと誇っていいんですよ!」

 

「その通りだ裕斗くん。今回は君のおかげで非常に助かった」

 

 その発言とともに、部室にサーゼクス様が入ってきた。全員慌てて跪く。(アーシアたち最近入った四人組は周りにとりあえず合わせたようだった)

 

「そんなにかしこまらなくていいよ。今は仕事でここにいるわけじゃないからね」

 

 そう言われて全員立ち上がる。

 

「お兄様、どうしたんですか?」

 

「なに、今回のことについてお礼を言おうと思ってね。これまでライザーくんの悪事は巧みに隠蔽されていた。それを暴くことに成功したんだからね。彼の今後の処遇については冥界に帰ってから決まると思うよ。眷属の皆んなのこともね」

 

「そうですか。サーゼクス様が処理に当たってくれるなら安心ですね」

 

「まぁ任せておきたまえ。それにしても裕斗、強くなったね」

 

「そんな、恐れ多いです」

 

「あの最後の技はカッコよかったよ。...今後の作品の参考にしようボソッ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「うむ。これでライザーくんの検挙もできたし、リアスの婚約も解消出来たし、万々歳だよ」

 

「ちょっと待ってお兄様。もともと婚約には反対だったの?」

 

「もちろんさ、リーア。僕は君が誰のことを好いているかくらい分かっているからね。恋愛結婚をした僕がそれに反対するわけないじゃないか。それにお父様はこの婚約をフェニックス卿との飲みの席で決めてしまったらしく、お母様にこってりしぼられていたよ。一度結んだ手前、その婚約をお父様が無理矢理破棄するわけにも行かなかったんだ。だから今回のような形にした。ライザーくんは必ず裕斗がなんとかしてくれると思っていたからね。もし、万が一なんとかならなかったら無理矢理僕が解消させてたよ」

 

「あ、あはは、私の気苦労は一体......」

 

「あ、あらあら、落ち込まないで、リアス」

 

「ドンマイです、リアス...」アハハ

 

「まぁとにかく、これで万事解決さ。本当にお疲れ様。今日は皆んなゆっくりするといいよ」

 

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

 こうしてリアスの婚約騒動は幕を閉じた。

 

 後日談

 

 ライザーはフェニックス家から勘当され、懲役3000年になった。これは眷属を無下に扱っている悪魔たちへの見せしめであったのだ。悪魔には眷属を道具としか思っていない奴らが少数だが、一定数いるのだ。そいつらが今回のことで対応してを改めるかは分からないが、こういった前例を作っておくことで、また最低な扱いを受けた眷属の主人が捕まった時しっかり罰することができるのだ。これはよりクリーンな悪魔界への第一歩となったのだ。

 

 ライザーが担当していたフェニックスの涙の実権については、ライザーの眷属の中で唯一の首輪をしてなかった子であり、やつの妹のレイヴェル・フェニックスが引き継いだ。彼の眷属も全て彼女が引き取ったのだ。今はまだ上級悪魔ではないので正式なものではないが、いずれなった時の予約のようなものだ。

 彼女はもともとライザーの眷属として、彼の仕事の手伝いもしていたし、眷属同士は仲良くしていたのだ。いつになるかわからないが、ある程度家のことが落ち着いたら駒王学園に編入してくるそうだ。今回のゲームでは話す機会がなかったから、次に会うのが楽しみである。

 

 そして、僕に直接関わる変化はリアスがうちに住むようになったことだ。ゲームが終わった次の日、普通に学校から帰ると引越し業者がうちに来ていた。非常に心臓に悪いのでやめていただきたい。さらに部室で朱乃と小猫からは何か怪しいオーラが出ているし、リアス、アーシア、僕の3人で登校しているところを兵藤くんに見られ、彼は血の涙を流しながらこちらを睨んでくる。ちなみに兵藤くんとの特訓はやっていない。というか合宿の時以来まともに話せていない。何というか、あの時の彼とのやりとりで何かが切れてしまったように感じる。彼のことは好きではないが、死んでほしいとまでは思わない。適度に自主トレでもつんでくれればいいが...。

 

 まぁとにかく、これでこの騒動については終わった。しかし、この地にはまだ平穏は訪れない。その予兆はもう既に出ていたのだ。

 

 

 to be continued




どうも、おはこんばんにちわ。
13話目でした。前話から始まるライザーアンチはこれで終了です。僕が思ってるよりライザーファンの方がいたみたいでそこは申し訳ないかなと思います。でも僕は原作じゃなくてアニメとssという純然たるにわかなので彼にはあんまりいい印象がないです。気付いたらアンチになってました。そういうこともあります。
いよいよ次回から聖剣編です。原作だと木場くんが1番輝くところなのでこっちでも輝かせたいなぁ...。イルミネーションでも巻きつけとけばいいか。
そして、ついにやってしまったkbtit!!あの先生のお力を借りてしまいました。やっぱオサレやわぁ。はー、すこ。というわけで今後も何個か斬魄刀は出てくると思います。俺に力を貸せ!
本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様、本当にありがとナス!!
次回も、ポケモン!ゲットだぜ!!あ、この作品にザトゥーズィさんは出る予定ないです。


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どんなものも高低差がある方が辛い

 side 裕斗

 

「神父がこの町に入って来た?」

 

「ええ、そうよ。この私になんの挨拶もなく、無断で入って来たわ。だからちょっと探して見てくれないかしら?他のみんなももう探してもらってるから」

 

「......わかりました」

 

 と言うわけで神父探しに出た。ハウル(もうみんな忘れてるかもしれないけど僕の使い魔の鳥)にも出て来てもらって手伝ってもらう。

 

「どこにもいないな...。他のみんなにも聞いてみようかな」

 

 そう言って携帯を取り出そうとすると

 

「グアアアアアアア!!」

 

 男の悲鳴が聞こえた。しかし、悪魔の聴力でようやく聞こえる程度に距離が離れている。急いで向かうが少し時間がかかってしまった。

 

「!!」

 

 そこに残されていたのは一人の神父の死体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とにかく死体などから裏の世界のことが公にならないように処理をし、リアスに報告するために部室に帰った。

 

「というわけで処理はしておきました」

 

「ありがとう、お疲れ様裕斗。これはまた厄介なことになって来たわね。神父が殺されていたということは全く別の第三勢力がいるということになるわ。しかもそいつらは神父が来るよりも前にこの町に来ていた可能性が高い。でも私たちはそれに気づけていなかった。これはまた一波乱ありそうね」

 

「そうですね。しかも少し前にはドーナシーク対策で監視を強化していた期間がありました。それなのに見つけられていなかったということは中々実力があると思っていた方がいいでしょう」

 

「ふぅ......。どうしてこう次から次へと問題が起きるのかしら...?」

 

「そのことで心当たりがあります」

 

「何かしら?」

 

「これはこの前の合宿中に分かったこと何ですが、兵藤くんの神器は龍の手ではなく赤龍帝の籠手でした。なので、その力に引き寄せられているのかもしれません」

 

「え!?な、何で報告しなかったのよ裕斗!!」

 

「報告が遅れてすみません。ですが、あの時はタイミングがタイミングだったので皆んなに余計な負担をかけたくなくて......」

 

「...それもそうね。あの時そんな情報を報告されてたら特訓どころじゃなくなってたかもしれないもの。いい判断だわ、裕斗」

 

「ありがとうございます」

 

「リアス、今大丈夫かしら?」

 

 そう言って部室に入って来たのは朱乃だった。

 

「あら、どうしたの?」

 

「教会からの遣いが2人、明後日リアスに挨拶と交渉がしたいそうですわ。どうします?」

 

「神父は無断で入って来たのに遣いは挨拶に来るの?ということは神父は堕天使側の人間だったのかしら?......とりあえず分かったわ。許可を出しておいて」

 

「分かりましたわ。そのように返事をしておきます。裕斗くん、お疲れ様です。教会には思うこともあるでしょうから当日はお休みしてもいいんじゃないかしら?」

 

「そうね。ちゃんと情報の共有は行うから休んでもいいわよ?」

 

「いえ、僕もいつまでも引きずってるわけにもいきませんしこれもいい機会かも知れません。そんなピンポイントで聖剣関連のことが来るとも思えませんし、大丈夫ですよ」

 

「そう?でも無理だけはしないで下さいね?辛かったら私に甘えてもいいんですわよ?」

 

「ちょっ!?朱乃、抜け駆けはズルいわ!!裕斗!甘えたくなったら私に甘えなさい!!」

 

「と、とりあえずお気持ちだけ受け取っておきます」アハハ

 

 この日はそんな会話をして解散した。

 

 

 

 そして2日後、僕は一昨日の自分を切り捨てたくなった。あんな不用意な発言でフラグをバッチリ立ててしまっていたからだ。

 

「失礼する。私は教会の聖剣使い、ゼノヴィア・クァルタだ。よろしく頼む」

 

「私は紫藤イリナ。私も同じく教会の聖剣使いよ!!」

 

 聖剣、使い......?その言葉に動揺するが顔には出さないようにする。

 

「ゆ、裕斗さん大丈夫ですか?顔色が優れないようですが......?」

 

 前言撤回、しっかり出ていた。しかもアーシアに心配されてしまう始末だ。大丈夫とだけ告げて、僕は2人から目をそらした。

 

「それで?一体何のようなのかしら」

 

「あぁ、まず本題に入る前になぜ私たちがここにやって来たのかを話そう。教会からエクスカリバーが3本盗まれたんだ。それが全てこの町に集まっているからこそ私たちがここに派遣された」

 

「ちょっと待ちなさい!聖剣が盗まれた?何であんな超級武器が盗まれてるのよ!?」

 

「そこを責められると言葉もないが、今回は相手が相手なんだ」

 

「......その相手というのは?」

 

「堕天使の組織、神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部の一人、コカビエルだ」

 

「コカビエル!?聖書にも名前を残す超大物じゃない!?一体なぜそんなことを!?」

 

「さすがに目的までは分からない。だがコカビエルがこの町にいるのは確かな情報なんだ。そこで本題に入らせてもらう。あなた方には今回の件に一切の手出しをしないでもらいたいんだ」

 

「...それはどういうことかしら?」

 

「教会はこの話を聞いた悪魔であるあなた方は、コカビエル側につくのではないかと疑っている。悪魔たちからすれば聖剣が減ってくれるのは嬉しいだろうからな」

 

「見損なわないで!!私は誇り高い悪魔なの!わざわざ堕天使と手を組んでまで聖剣を破壊するつもりはないわ!!」

 

「その言葉、信じていいんだな?」

 

「もちろん、魔王様に誓って!!」

 

「ふむ、交渉が上手くいって何よりだ。ところでそこにいるのはアーシア・アルジェントか?」

 

「は、はい!?」

 

 急に話を振られてアーシアは驚いてしまったようだ。

 

「聖女と呼ばれていた君が悪魔を助けたことで魔女になってしまった事までは知っていたが、まさか悪魔になっていようとは」

 

「残念ね。一度は聖女と呼ばれるほどに敬虔な信徒であったというのに......。もうその心は失われてしまったのね......」

 

「いや、違う。君からはまだ信仰の匂いがする。まだ信じているのだろう?」

 

「......捨てられていないだけです。私にはこれしかありませんでしたから...」

 

「なら私が介錯してやろう。その首を差し出せ。そうすれば悪魔がまた一人減り、主もお喜びになるだろう」

 

「それ以上はやめてもらおうか」

 

 僕はアーシアとゼノヴィアの間に割って入った。

 

「彼女の心はまさしく聖女そのものだよ。命を切り捨てることしか出来ない君よりはよっぽどね?」

 

「なに?そこの女は悪魔を助けるなどという信徒にあるまじき行為をしたのだぞ。それにこの私が劣るだと!?」

 

「あぁ、そもそもアーシアは神器正しく使ったに過ぎないんだからね」

 

「正しく?悪魔を治療することが正しいわけないだろう!!」

 

「いいや、神器は神が、君たちが主と崇める存在が作ったものだ。そして聖母の微笑みは種族の違いが関係なく治療が出来る。神が本当に悪魔や堕天使を治療することを悪としているならそんな事は出来ないはずだ」

 

「な!?」

 

「つまり、君たちは誰一人神の意思を分かっておらず、アーシアだけが正しく理解していたんだ。まさしく聖女そのものじゃないか。それに、そんなこと関係なく彼女の心は、優しさは聖女以外の何者でもないよ」

 

「裕斗さん......」

 

「そ、そんなの詭弁だ!!」

 

「ちょっと、ゼノヴィア!!私も悔しいけど一理あると思っちゃったわ!だからとりあえず今はやめて!!」

 

「聖剣使いである私たちがそんなこと認められるか!認めてしまえば今の信徒の殆どが背信者ということになってしまう!」

 

「あなたのいうことも分かるけど!」

 

「貴様!私と勝負しろ!そして私が勝てば彼女は聖女などではないと認めろ!」

 

「......いいよ。そのかわり僕が勝ったら、いきなりアーシアの事を聖女と認めろとは言わない。でも謝罪はしてもらうよ。彼女は仮に聖女じゃなかったとしても、少なくともあなたたちのいう魔女なんていう存在じゃない」

 

 成り行きで決闘することになってしまった。でも、これは聖剣云々は関係なく、アーシアを悪く言われたから許せなかったんだ。

 

 場所を中庭に移し、人払いをする。

 

「勝負の前に名前を書いておこうか」

 

「木場裕斗。君たちの先輩にあたるのかな」

 

「先輩?貴様、まさか......」

 

「そうだよ。僕は聖剣計画の生き残り。よろしくね、天然の聖剣使いたるゼノヴィアさん?」

 

「!?何故知っている?」

 

「散々聞かされたからね。僕たちの同年代にゼノヴィア・クァルタという天然ものがいる。貴様ら愚図と違い選ばれた存在がいる、ってね。だから僕たちはひどく君を羨んだものだよ」

 

「......聖剣計画は教会の中でもタブー扱いになっている。その計画の立案者も追放された」

 

「!?そ、そいつの名前は!!?」

 

「バ、バルパー・ガリレイ。皆殺しの大司教と呼ばれている者だ」

 

「...バルパー......。そいつが僕の復讐すべき相手......」

 

「そ、それより!そろそろ話してほしいのだが!!」

 

「あ、ああ。ごめん」

 

 僕はどうやらゼノヴィアの肩を思いっきり掴んでしまっていたようだ。それに怒ったのかゼノヴィアは顔を真っ赤にしている。

 

「「「「「「「裕斗(くん)(さん)(先輩)?」」」」」」」

 

 なんだか皆んなが怖いオーラを放っているのでそちらは向けない。温厚なアーシアからも何かが出ている。

 

「そ、それじゃあ勝負を始めようか。リアス、合図お願いします」

 

「そうだな」

 

「あの時僕たちが憧れた聖剣の力、その片鱗でも見れると思うとワクワクするよ」

 

「ふん、そんな余裕があると思うなよ」

 

「両者いいわね、はじめ!!」

 

 僕はとりあえず使い慣れている刀を取り出した。そこにゼノヴィアが突っ込んで来る。防御しようとするが、悪寒を感じ少し焦りながら避けることにした。

 

「ふ、その判断は正解だ」

 

 ドガアアアアアアアン!!!!

 僕が避けた聖剣はそのまま地面にあたり、そこを吹き飛ばしていた。

 

「私が持つのは破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)。その名の通り破壊力が売りなのさ!」

 

「たしかに今のを受けていたら一溜まりも無かったね」

 

 やはりあの合宿で感を取り戻しておいてよかった。その前だったら判断を誤り、剣で防御しようとしてその上から剣ごと叩き切られていたかもしれない。でもーーー

 

「まだまだ行くぞ!!」

 

「いや、もう終わりだよ」

 

 また真っ直ぐゼノヴィアが突っ込んで来たので、今度は避けるのではなく振り下ろしを刀を合わせて横に流させる。そこに明確な隙が生まれたので、その十字架のようになっている鍔に刀を引っ掛けその手から離させ、僕の後方に弾き飛ばした。そのまま剣の切っ先をゼノヴィアの喉元にあてる。

 

「これで僕の勝ちだ」

 

「くっ...」

 

「早くアーシアに謝ってここから出て行ってくれ」

 

「.........わかった」

 

「ゼノヴィア......。私も謝った方がいい?」

 

「出来れば謝って欲しい。今の勝負の結果に納得できないならもう一回同じ条件で僕は君と戦うだけだから」

 

「いえ、十分よ。私も謝るわ」

 

「そ、そんな、私は裕斗さんのお心だけで十分ですよ」

 

「いや、これはもうそういう問題ではない。私は負け、彼が勝った。なら誠心誠意謝るのが筋だ。貴女のことを魔女と罵ったことを許してくれ。すまなかった」ペコリ

 

「私もごめんなさい。聖女の心は失われただなんて言ってしまって。悪魔が聖剣を相手に戦うほどに貴女は大切だと思われている。なら、きっと貴女はそれほど素敵な人なんでしょうね」ペコリ

 

「あ、頭をあげて下さい!も、もう大丈夫ですから!」

 

「寛大な心に感謝する」

 

「ありがとうね」

 

「...ところで話は変わるんだが、やっぱりこの件について関わるなというのは取り消せないだろうか」

 

「え?急にどうしたのよ」

 

「私たちの任務は聖剣3本の回収もしくは破壊力。それをコカビエル相手に行わなければならない。それほど過酷な任務なのに派遣されているのは私たち2人だけなんだ。だから手伝って欲しい。先ほどの決闘で少なくとも木場裕斗は私より実力が遥か高みにあることは理解した。だからこそ協力して欲しいんだ」

 

「ちょっと、ゼノヴィア!?いいの?」

 

「ここは柔軟に行こう、イリナ。話を持ちかけている相手は魔王の妹だ。そこらの悪魔に比べれば100倍信頼できる。それに、死ぬ覚悟もしてきてはいるが、生きて帰り今後も主に仕えた方が良いと思わないか?」

 

「そりゃ思うけど、魔王の妹とはいえ相手は悪魔よ?」

 

「なに、最悪共同戦線をあらかじめ張っていたことだけ誤魔化してしまえばいいんだ。戦闘にしていたら領地の悪魔の介入を受け、もっとも危険度の高いコカビエルと聖剣の排除を優先した、とな」

 

「なるほど!ゼノヴィアあったまいいー!!」

 

「ふふん!それで、どうだろう?」

 

「......この件に関してはすこし皆んなで話し合いたいから一旦保留にさせて?その、分かるでしょう?」

 

「......たしかに些か無遠慮だったかもしれない。返事は3日後にまたここに来るからその時聞かせてくれ。それでは失礼する」

 

「また、3日後にね!」

 

 そう言って2人は帰って行った。

 

「この件の決定権は裕斗、貴方に預けるわ」

 

「............え?何ですか?」

 

「聞いてなかったの?あの2人に協力するかどうかっていう話!」

 

「あぁ、はい。......少し、考えさせて下さい」

 

「...分かったわ。期限は3日後までよ」

 

「分かりました。今日は先に帰ります。失礼します」

 

 そう言って僕は学校から出た。

 

「裕斗、大丈夫かしら?」

 

 リアスの僕を心配する声は、もう耳には入って来ていなかった。




どうも、おはこんばんにちわ。
14話目でした。ついにここまで来ました聖剣編。これを楽しみに待ってくれている方も結構いたみたいで、その期待に胃が痛いです。穴ァ...空きそうだぜェ......。
ゼノヴィアアンチはないです(念のため)。彼女は登場の仕方からして最初は若干敵対せざるを得なくない?
あと実はイリナ聖剣計画の生き残りだったってぇ!!??何てこったい!?パターンも考えてたんですがなんかぐちゃぐちゃになって来てよくわかんなくなりそうで辞めました。ちなみにその場合ゼノヴィアはアーシアの知り合いになってました。ほーら、ぐちゃぐちゃだぁ!!
本日も最後に、感想、評価、お気に入りして下さった皆様、本当にありがとナス!!
次回は今回書こうかなぁと思って辞めた裕斗くんの最後の方の内心について触れて行こうかなと思うよ!(予定は未定)

ISのssはじめちゃおっかなぁ......。でも二作品平行なんてできんのかぁ?


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現れた白(あっちではない)

 side 裕斗

 

 僕は絶望していた。なぜなら聖剣使いであるゼノヴィアの実力が想像していたものより、あの時僕たちが目指していた聖剣使いに届いていなかったからだ。教会の最低なやつらに教えられていた聖剣使いの実力はまさに神の使者にふさわしい、勇者や英雄のようなものだったはずだ。それなのに相手が怒りで冷静でなかったとはいえ、あんなにあっさり勝ててしまうとは思っていなかった。言ってしまえば、弱かった。

 

 何故だ。どうしてそんなことになっている。僕たちは聖剣使いとは人間の中だと最強クラスの人間にしかなれず、そういった者が聖剣を使うことで怪物すら打倒すると教わっていた。だからこそ僕たちは辛い訓練にも耐えられた。実験だって精神修行の一環だと言われ耐えきってみせた!それがあんな結末を迎えた。あの殺されかけた時、やつらは用無しだと僕らに向かって言った。ということはおそらくあの実験で何かしらの目的が達成されたのだろう。僕たちは何かの犠牲にさせられたのだ。そして僕たちが犠牲になって出来たものの一部が彼女たち2人だ。それなのに、あの程度?あんなに多くの仲間を犠牲にしたのに?僕たちの憧れた聖剣使いって何だったんだろう......。

 

 頭の中がぐちゃぐちゃだ。今の僕には降りしきる雨の中、あてもなくふらふら歩くことしかできなかった。

 

 side out

 

 all side

 

 夜になった。まだ裕斗は帰っていない。

 

「裕斗さん、まだ帰ってきませんね......」

 

「どこか様子がおかしかったものね。ちょっと私探しに行ってくるわ!」

 

「わ、私も行きます!」

 

「いえ、アーシアには入れ違いにならないように家で待ってて欲しいの。それに2人とも探しに行ってる間にもし裕斗が家に帰ってきたら、誰も支えてあげられないでしょう?だから裕斗が帰ってきたらケアしてあげて欲しいの」

 

「分かりました。お家で待ってます!」

 

「ありがとう、行ってくるわ」

 

 そのまま裕斗を探しにリアスは家を出た。

 

 

 

 場所は変わってとある裏路地。そこに裕斗はいた。

 

「あれれ?そこにいるのはいつぞやのイケメンあーくま君じゃないですかぁ?」

 

 そして運の悪いことにそこにドーナシークの件で戦ったはぐれ白髪エクソシスト、フリード・セルゼンが現れた。裕斗はフリードの方を向くことなく答える。

 

「......フリード。まだこの町にいたのか」

 

「ええ、ええ。まだ目的を達成してないんでねぇ」

 

「目的?」

 

「はん、教えるわけないでちょ!でもたった今一個やりたいことが出来ちったなぁ〜」

 

 そう言いながらフリードはある剣を抜く。

 

「あの時の仕返しをさせてもらうぜぇ!!!」

 

 そう言って切りかかってきたフリードを裕斗はギリギリで刀を想像して受け止めた。

 

 受け止めた?前回の戦いでは不意打ちでも避けられた。なのに今僕は防御しかできなかった。スピードが上がっているのか?

 

 そんなことを思いながら、ここでようやくフリードの姿を視界に捉えた裕斗の表情は驚愕に染まる。

 

 その手に握られていたのは聖剣だった。

 

「!?何故お前がそれをもっている!!?」

 

「ああん?この天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)ちゃんのことか?いいだろこれ!!最強の聖剣の一振りさ!!なんで俺がもってるかって?決まってんだろ!選ばれたんだよ!!この聖剣にさぁ!!」

 

 そう言うとフリードは人間でありながら、裕斗の全速力と同じくらいのスピードで動き、裕斗の背後をとった!!

 

「ケケケ!!これで仕返しかんりょ「裕斗!!」危ねっ!!」

 

 そこにリアスが魔力弾を放ち、裕斗は危機を脱した。

 

「チッ!邪魔が入っちまった。おい、クソイケメン!次はそこの赤髪おっぱいと一緒にぶち殺してやるから覚悟してやがれ!!」

 

 フリードはまるで消えたかのようにその場から居なくなった。その場にはリアスと裕斗のみが残された。しかしそこにあるのは普段の2人の穏やかな空気ではなく、どこか気まずい空気だった。

 

「ゆ、裕斗?ほら、もう遅いし一緒に帰りましょう?」

 

「......リアス。今は1人にしてください」

 

「そんなこと言わないで?悩みがあるなら私たちに相談しなさい。一緒に考えるから。一緒に悩むから。仲間なんだから一緒に苦しませて?」

 

「......これはリアスには、今の仲間の皆んなには関係ない。昔の僕の仲間の問題なんです。だから関わらないでください」

 

「そんな「でも!」!」

 

「......結論が出たら、その時はそれが正しいのか間違ってるのか相談させてください」

 

「!待ってるわ。私たちは皆んなあなたを待ってる。でもね、裕斗。正しいとか間違ってるとかは考えなくていいわ。あなたのしたいようにしなさい。どんな結論だって、あなたが悩んで悩んで選んだ結論なら私たちは受け止めるから」

 

「......しばらく帰りません。でも、ありがとうリアス。またね」

 

 そう言って裕斗はリアスに少しだけ笑顔を向け去って行った。

 

 side out

 

 side リアス

 

「というわけで裕斗には時間が必要なの。だからとりあえず私たち7人があなたたちに協力するわ」

 

 裕斗が去ってから3日経った今、私たちは教会の2人に聖剣の回収もしくは破壊について協力すると伝えていた。私の領土で好き勝手させてたまるもんですか!

 

「そうか......。正直私を打ち倒したあの騎士にこそ協力してもらいたかったんだがな...。まぁ、それでもありがたい。協力感謝する」

 

「ありがとう!」

 

「それで、どうやって聖剣を見つけるかの算段はついてるの?」

 

「いや、全く。怪しい道をパトロールするくらいしか考えていない。だが、連中もそう目立つ場所にはいないはずだ。なら候補も絞れるだろう?」

 

「ずいぶんザックリとした計画ね。あ、そういえば一本だけなら私見たわよ」

 

「なに!?どこで、誰がもってた!?」

 

「どこかはあなたに言ってもわからないでしょう?まぁでも確かに薄暗くて怪しい路地裏ではあったわ。持ってたのはフリード・セルゼン。白髪の若いはぐれエクソシストよ」

 

「フリード・セルゼンか......」

 

「知ってるの?」

 

「あぁ。やつは教会でもその残虐さが問題視され追放された者だ。だが、その実力は確かで多くの悪魔を討伐していたはずだ」

 

「確かに人間とは思えない速さだったわ」

 

「ん?速かったのか?」

 

「えぇ、下手すると裕斗と同じくらいには」

 

「なるほど。ならやつの持つ聖剣は天閃の聖剣で決まりだな」

 

「何かしらそれは?」

 

「聖剣エクスカリバーが七本に分かれてるのは知ってるな?そのうちの一本で所有者に無類の速さを与える。因みに私の聖剣が破壊力でイリナの聖剣が」

 

「色んな物に形を変えられるのよ!」

 

「一本一本特別な力があるってことね」

 

「その通りだ」

 

「聖剣について分かったところで、パトロールのチーム分けをしましょう」

 

「そうだな。9人いるわけだし3チーム3人ずつがいいだろう」

 

「そうね。んー、どうしようかしら?」

 

「アーシア・アルジェントと私たちで組んでも構わないだろうか?」

 

「どうしてかしら」

 

「なに、あの騎士が聖女と認めたんだ。きちんと会話して彼女の人となりを知りたい。そしてあの時魔女と罵ってしまったことをもう一度しっかり、自分の意思で謝りたいんだ。あの決闘の後だと強制的に謝らさせられたようで、何だか納得いかなくてな」

 

「......アーシアはどうしたい?」

 

「私もお2人と行動したいです。お2人は優しそうですし、仲良くなりたいです!私も教会の人間でしたし、色々お話ししたいと思ってましたし!」

 

「なら決定ね。私たち6人はどうする?」

 

「そうね。元堕天使3人で固まる?」

 

「そうだな。今回戦闘もあるかもしれないし1番チームワークが良いチームで行動するのがいいだろう」

 

「そうっすね!元堕天使チームで行くっす!!」

 

「なら私たちは元祖オカ研のチームってところかしら」

 

「あらあら、これは失敗できませんわ」

 

「......頑張ります」

 

 このようにして教会(元含む)チーム、元堕天使チーム、元祖オカ研チームの3チームに分かれ怪しい場所をパトロールすることになった。

 

 そうして5日が経った。その5日間さまざまな怪しい人たちに出会った。怪しい取引をしていたり、露出狂の変態がいたり、泥棒をしようとしたりしていた。全員ひっ捕らえて警察署の前に放置した。あ、あと兵藤くんがのぞきをしようとしていたので、結構本気で叱ったあと今この町は危険だからウロウロしてないで家にいなさい、と伝えた。

 

 まぁ、色々あったわけだけど、目的は達成されず今は6日目のパトロール中。もくあたりはすっかり暗い。そこにアーシアから連絡があった。

 

「ふ、フリードさんが見つかりました!町外れの森の中の廃墟にいます!皆さん向かってください!!」

 

「わかったわ!今から行くから時間稼ぎしておいて!」

 

「はい!伝えておきます!」

 

 待ってなさい!この町に、裕斗に危害を加えるものはこの私が消しとばしてあげる!

 

 side out

 

 side ゼノヴィア

 

「その聖剣を返せ!フリード!!」

 

「やなこった!返して欲しけりゃ奪ってみやがれ!!」

 

 破壊の聖剣を振りかぶり切りつけようとするが、今のフリードのスピードの前には無意味だった。

 

「あたらねぇよ!」

 

「これならどうよ!」

 

 イリナは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を鞭のようにして範囲攻撃を仕掛けたが、それも上手くかわされる。

 

「はっはっは!!教会の聖剣使いは雑魚しかいねぇのかよ!!」

 

 そう言ったフリードは、とんでもないスピードで私たちの視界から消えた。

 

「「ぐあっ!!」」

 

 気づけば2人とも全身傷だらけになり、服だってボロボロだ。くそっ!聖剣の扱いも剣の腕も相手の方が上だ!正直フリードの武器が聖剣である以上、他の悪魔たちが合流しても被害が拡大するだけなような気がしてならない。せめて、彼がいてくれれば......。

 

「お前たちみてぇな雑魚にエクスカリバーは扱いきれませぇん!俺ちゃんみたいな天才イケメン青年じゃないとなぁ!!お前たちを殺してその2つも俺が有効利用してやるよ!!」

 

「2つも、だと?まさか貴様それ以外にもエクスカリバーを持ってるのか!?」

 

「その通り!正解です!!俺のところにあと二本もあるんだせぇ?そして、お前らがもってる2つで合計五本だぁ!!!」

 

 またフリードが視界から姿を消す。やられる!!と思った時、私とイリナの周りに大量の剣が地面から生えてきた。

 

「一応、形式上2人は僕の後輩なんだ。それに今はどうやら同盟関係でもあるみたいだしね。だから手出ししないでくれるかい?」

 

 そう言いながら廃墟の屋根に立つ彼は、その金髪に月明かりを反射させてどこか神々しさを感じさせた。

 

 side out

 

 

 side 裕斗

 

 リアスと別れた後、僕は一旦落ち着こうとホテルを取った。幸い貯蓄は結構ある。仮にホテル暮らしを数ヶ月続けても大丈夫だ。続けるつもりは無いが。

 

 チェックインした後も、シャワーを浴びてる時も、その後も、僕は1つの事に脳内が支配されていた。何故フリードは聖剣を使えるのか。それがわからない。

 

 聖剣を扱えるかどうかは生まれた瞬間、つまり先天的に決まる。いや決まっている。後天的にはどうしようもないのだ。それをなんとかしようとしたのが聖剣計画だった。僕たちの世代だと天然物はゼノヴィアだけだと聞いている。ならフリードは後天的に聖剣を使えるようになった者なのだ。そしてフリードは教会側にその残虐さで有名になるほどの男だ。

 

 ここから分かることは、やつは教会にいた間は聖剣を使っていないということだ。聖剣を使っていたとすれば残虐さで有名になることなど出来ない。そんなことをする前に悪魔が消滅さてしまうからだ。

 

 さらにこの町に来た後、具体的にはドーナシークの一件以降に使えるようになった、もしくは聖剣を手に入れたはずだ。僕が最初に戦った時奴は聖剣を持っていなかった。これは勘だが、この前戦った時の感じでは手に入れたのは最近で、今はならしているようにも思えた。なぜなら、あんな奴でも使っているのはエクスカリバー、僕と同じ程度のスピードが最高速な訳が無いのだ。仮に全開で扱えたのなら、あの時に僕は殺されていたように思う。それほどの力をあの剣からは感じた。

 

 話を戻す。僕が思うに、フリードの事を聖剣を使えるようにした人間はまだこの町にいる。使えるようにするだけして去るとは考えにくい。何かしらの組織か何かがやつのことを1つの戦力として仕立て上げたと考えるのが自然だろう。1人の人間を後天的に聖剣を使えるようにするなど、できる者は限られる。つまり、聖剣計画の首謀者にして教会を追い出された人間......。

 

「バルパー・ガリレイ......!!」

 

 いるのかもしれない。この町に。僕の復讐すべき相手が。

 そして、フリード。あいつも僕が倒すべきなんだろう。あんな奴に聖剣を持たせておくわけにはいかない。僕の仲間たちは聖剣使いを生み出すための計画の犠牲になったのだ。どんな人間が聖剣使いになるべきか、それを僕は考えなければならないのだろう。

 

 いや、それともそもそもの原因たる聖剣を破壊すべきなのかもしれない。あんなものが無ければあんな計画は無かったはずなんだから。でもそれは皆んなの犠牲を無意味にしてしまう。いやでも......。

 

 考え続けても答えは出ない。

 

 僕はまだホテルの部屋に引きこもっている。引きこもり始めてから何日経ったかも定かじゃない。だが、何をすべきか。どうすべきか。未だに答えは出ない。そう言えばリアスからのメールで教会の2人に協力することを知った。そんなことを考えてるうちに今日ももう夜になってしまった。気分転換に月でも見に行こう。

 

 そう思い、外に出る。あてもなく歩いていると町の外れから聖なるオーラのぶつかり合いを感じた。この状況でそんなこと、1つしかありえない。ゼノヴィアさんかイリナさんがフリードと戦っているのだ。

 

 そこに駆けつけると、ちょうどフリードが2人に切りかかるところだった。僕は2人を守るように、2人の周りに地面から大量の魔剣を生やす。

 

「一応、形式上2人は僕の後輩なんだ。それに今はどうやら同盟関係でもあるみたいだしね。だから手出ししないでくれるかい?」

 

 答えはまだ出ない。でもあの計画の仲間たちを侮辱するような存在である彼のことは少なくとも切らなければならないと感じた。




どうも、おはこんばんにちわ。
15話目でした。まだまだ木場裕斗の憂鬱は続きます。あー、イチャイチャさせてぇー。そんなもん書ける気しないけどなぁ!いつかやりたいですね。uaとかお気に入り件数とかのメモリアル回みたいな感じで。それはともかく木場くんがどういった結論を出すのか、皆さんも適当に推測したり妄想したりして楽しんでもらえたらいいなぁと思ったり思わなかったりします。
本日も最後に、感想、評価、お気に入りして下さった皆様、本当にありがとナス!!
次回も見てくれると嬉しさが滲み出て美味しい出汁がとれます。


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