一人一つの性格《カテゴリー》 (yourphone)
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起きる 頑なな態度で

 なんて言えばいいのか。今現在、警察にお世話になってる。

 

「名前は?」

「……」

 

 警察って怖いね。特に何もしてなくても、警察の人がなるべく優しい声を出してきてても、警察ってだけで緊張する。

 まあ、この人絶対見た目で損してきた感じだけど。

 

「家は?」

「……」

 

 で。何で警察にお世話になってるかって事なんだけど……。

 

 ここ何処? 僕は誰?

 

「ぁ―――」

「……」

「―――っぁ」

 

 なんで……喋れない?

 

「うぅむ……そうだ、筆談ならどうだ?」

「!」

 

 ぶんぶんと頭を振り回す勢いで頷く。身体は普通に動くからね!

 

「ほら、紙とペンだ。名前を書いてくれ」

 

 ……あーっと。やば。『分からない』―――っと。

 

「分からない?」

 

きおくそうしつ』―――っと。記憶の『憶』と喪失の『喪』の漢字が分からないから平仮名で。

 

「むぅ……それは困るな」

 

 う、唸らないで? 警察さんの厳つい顔だとそれだけで怖いから。

 

「仕方無い。デュエルといこうか」

「?」

 

 デュエル? なんでデュエル―――あれ、デュエルは分かるや。

 

「ちょっと待ってろ。見たところディスクを持ってないようだから持ってきてやる」

 

ありがとう』と紙に書く。けど、警察さんはそれを見せるよりも速く部屋を出ていった。

 

 ……整理しよう。

 

 僕は気付いたらこの部屋に居た。警察さんの言うことを信じるならバックを背負って公園で倒れていたらしい。

 さっき確認したところバックの中には筆箱と英語の教科書、デッキケースが2つ。デッキケースにはそれぞれ2つデッキが入っていたから、僕は合計4つのデッキを持っている事になる。

 服装は白系の厚い長袖とジーパン。長袖には赤字で英語が書いてあるけど、多分深い意味は無い。

 帽子は無し、手袋とか耳当てとかマフラー、上着といった防寒具も無し。マスクや眼鏡、サングラスなどのパーツも無し。

 ついでに言うと記憶も無し、と。

 

 あっははは、上手いこと言ったんじゃない? そうでもないか。

 

 あ、そうだ。教科書に名前ぐらい書いてあるんじゃない? 取り出してみる。

 ……書いてなかった。僕は教科書に名前を書かないタイプだったみたいだ。

 

「すまん、少し旧型のものしか無かった」

 

 あ、警察さんが戻ってきた。その手に持っているのは銀色に鈍く光るデュエルディスク。中央にドーム状の膨らみがあり、デッキの差し入れ口と墓地のカードを入れる溝が空いている。モンスターゾーンは2つに分けられ、まるで盾のようにドーム部分の両側に付いている。

 恐る恐る受け取り、左腕に装着する。メカメカしい見た目と裏腹に凄く軽いや。

 

「使い方は分かるか? デッキを差し込んで、そこのドームの部分を押すんだ」

 

 ドームを押す? 取り合えずデッキを1つ選び、デッキ入れに差し込んでおく。……こうかな? 手を広げてドームを上から押し込む。

 

 ガチャンッ!

 

「」

「うおっ!?」

 

 ものすごい勢いでフィールドが展開されて、反動が、いやていうかあぶなっ!?

 

「さ、錆び付いてたのか……? おお、そうだこれを付けなきゃな!」

 

 ジトーッと警察さんを見つめる。僕は自分の年齢も分からないんだけど、警察さんよりは子供だと思う。子供にこんな危ない物を渡すなんてどうなの?

 警察さんは冷や汗をかきながら僕のデュエルディスクにEXモンスターゾーンのオプションを取り付けた。

 

「よし、やるからには手は抜かないからな?」

 

 当然。デュエルディスクを構える。

 ……オートシャッフル機能ぐらいはあるんだ。

 

「デュエル!」

 

 先攻は……警察さんか。ライフ8000のスタートだ。

 

「む……俺は『手札抹殺』を発動だ!」

 

 早速手札交換!? 手札を全て捨てて、その枚数だけドローする。

 

「俺は4枚捨てて4枚ドロー! 悪いな、次に『手札断殺』!」

 

 はいぃ!? 仕方無い、2枚捨てて2枚ドロー。

 

「こちらも2枚捨てて2枚ドロー。……次だ、『増援』!」

 

『増援』……戦士族のサーチか。HEROかな?

 

「『GM・Hyw(ヒュー)』を手札に加える!」

 

 は、はい? GM? GMって何!?

 

「そのまま通常召喚だ! 俺は魔法カードを宣言してHywの効果を発動!」

 

 

『GM・Hyw』

 レベル3 地属性 戦士族

 ATK1200 DFE1200

 ①1ターンに1度、モンスター・魔法・罠カードのいずれかを宣言して発動できる。相手の手札1枚を確認し、宣言した種類のカードだった場合墓地に送るか自分のフィールドにセットする。違った場合相手は1枚ドローする。

 

 

 現れたのは警察さんと似たり寄ったりな感じに(いか)つい男。サングラスが余計に近寄りがたい雰囲気を出している。着ているスーツが筋肉ではち切れそうになっている。

 そんなちょっと関わり合いになりたくないようなモンスターが僕の手札から1枚を取り上げ、警察さんにそのカードを見せる。

 

 あのー、勝手に取らないで。それにそのカード……。

 

「ふむ、『オネスト』。モンスターか……1枚ドローしてくれ」

 

 あ、はい。Hyw(ヒュー)がペコペコしながら『オネスト』を返してくれる。更にどうぞどうぞとデュエルディスクを指差す。

 なんか、見た目に似合わず小動物みたい。ありがたくドローさせてもらう。

 

「よし、そちらの手札が6枚以上なので手札の『GM・Alfe(アルフェ)』を特殊召喚しよう」

 

 

『GM・Alfe(アルフェ)

 レベル4 地属性 戦士族

 ATK1600 DFE1600

 ①相手の手札が6枚以上の場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、モンスター・魔法・罠カードのいずれかを宣言して発動できる。相手の手札1枚を確認し、宣言した種類のカードだった場合表側でデッキの一番上に置く。デッキで表側のそのカードは手札に加えられる場合墓地に送られる。違った場合相手は1枚ドローする。

 

 

 現れたのはHywの胸元ほどの身長の女性。黒髪のHywと違って金髪でいかにもな外国人だ。スラリとした体型にスーツが似合っている。

 

「そうだな……今度はモンスターを宣言してAlfeの効果を発動する! さあ、手札を1枚見せて貰おうか」

 

 Alfeが手を出してくる。うーん……ランダムでしょ? 適当に手札をシャッフルして裏側で差し出す。Alfeは白いスラリとした指でその中の1枚をスルリと取っていく。

 うわ、そのカードは……。

 

「ぐ、『H(ヒロイック)・C(チャレンジャー) サウザンド・ブレード』か……。そいつはデッキの1番上に表側で置く事になる!」

 

 Alfeは笑顔でカードを返してくれる。……あ、デッキには自分で戻せと。

 なるほど、『GM』はハンデステーマなのか。

 

「俺は『死者蘇生』を発動だ! 2体目のHywを特殊召喚、モンスター……いや、魔法を宣言して効果だ!」

 

 え、名称で1度じゃないの!? うわ、だから勝手に取らないでよ! しかもそれ、ヤバい!

 

「ほう、『サイレント・バーニング』。魔法カードだな。こちらの場にセットさせてもらおう!」

 

 と、取られた……! 墓地に送りたかったのに!

 

「…うぅむ、だが……そうだな、あまり墓地に送りたくないか。ターンエンドだ」

 

 よーし、僕のターン!

 

「ドロー」

「む? ……残念だが、駄目だ」

 

 うわっ! 爆発したぁっ!?

 

「Alfeの効果でデッキに表側で置かれたカードは、手札に加えられる時に墓地へ送られる!」

 

 な……いや、まあ、サウザンド・ブレードだし。墓地に送る手間が省けたって考えればいいよね。

 さてじゃあどうしようかな。幸い、沢山墓地に送ってくれたから何でも出来る。警察さんの手札も無いし、一気に決めたい!

 まずは墓地から除外して、サーチだね!

 

「メイン。『沈黙(ちんもく)(つるぎ)』、『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

「ほう?」

 

 かーらーのー、2枚目!

 

「『沈黙の剣』、『サイレント・ソードマン LV(レベル)3』。『サイレント・バーニング』、『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

 

 いいね、やっぱり手札は沢山ないと。これで僕の手札は7枚になった!

 そしてー? 召喚をする!

 

「『Em(エンタメイジ) トリック・クラウン』」

 

 僕の目の前にピエロが現れる。背中から見ると結構痩せてるね、君。

 さぁ、ここからの展開の(かなめ)になってよ!

 

「『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

 

 ピエロがヒョイッと何かを投げた。僕も警察さんもそれを目で追い掛けて……気付くとピエロの姿は無く、ピエロとは似ても似つかない女性が居た。

 魔法使い族をリリースしなくちゃ出てこないけど、このデッキのキーカード!

 可愛い! 美しい! まさに最強!

 だけどまだまだ!

 

「『Em トリック・クラウン』」

 

 爆発と共に、リリースされた筈のピエロが現れる。爆発によって僕のライフに1000のダメージが入る……けど、この子は主のピンチに現れる!

 

「『H・C サウザンド・ブレード』」

 

 ギラッギラに輝く戦士が現れ、慌てたように駆け寄ってくる。

 この子は見た目通りに戦士族。よって、リリース!

 

「『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

 

 現れるのは静かなる剣士。サウブレを宥めて何処かへ帰らせてた。

 もー、そんなところも格好いい!

 

「サイレントを2体揃えてきたか!」

 

 そういうデッキだからね! よーし、乗ってきた!

『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』は攻撃力1000のままだけど手札が4枚だから『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』の攻撃力は2000アップの3000!

 一気に行く!

 

「バトル。『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

 

 Alfeを指差す。……なんか、サイレント・マジシャンを憎々しげに睨み付けてるんだけど……あぁ、うん、でかいよね。何がとは言わないけど。

 

「サイレント・バーニング」

「ぐ……また守備表示にするのを忘れていた!」

 

 美しき魔法攻撃。Alfeは何もできずに爆散。

 そして言われてみれば確かに全員攻撃表示だったね。おかげでなんなくダメージが通るよ。

 1400のダメージが通って、警察さんのライフは6600。

 

「『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

 

 片方のHywを指差す。……Hywの攻撃力は1200。こっちの攻撃力のが低い。ごめんサイレント・ソードマン!

 

「ソード・サイレント」

「迎え撃てHyw!」

 

 サイレント・ソードマンの剣は避けられ、逆に拳を鳩尾に叩き込まれる。

 僕のライフに更に200のダメージ。これぐらい、サイレント・ソードマンのダメージに比べればどうという事はない!

 

「『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

 

 それに、サイレントたちは負けを知って進化する! デッキより現れろ!

 

「―――『サイレント・ソードマン LV7』」

「来たか!」

 

 見た目はほとんど変わらない。けど、『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』の体からオレンジのオーラが吹き出る。

 その攻撃力は2800。バトルフェイズに現れたからもう1度攻撃できる! リベンジだよ!

 

「『サイレント・ソードマン LV7』」

 

 更に、更に更に!

 

「『沈黙の剣』」

「なっ、3枚目だと!?」

 

 手札から使った効果はサイレント・ソードマン1体の攻撃力が1500アップし、相手のカードの効果を受けないというもの……故に、攻撃力は4300!

 ついでに、これも!

 

「『オネスト』。―――ホーリーサイレントソード LV7」

「ぐああっ!」

 

 4300のダメージ! 警察さんの残りライフは2300!

 あ、ちなみに『沈黙の剣』の墓地効果は『墓地に送られたターンに発動できない』とか書いてないから。

 

「『沈黙の剣』、『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

「む、ぐぐ」

 

 これで『沈黙の剣』は使いきった。手札が3枚になっちゃったし、出来ればこのターンに決めたかったけど。

 

「『Em トリック・クラウン』」

「ぐ……全滅か」

 

 ……あー、ダメだ倒しきれなかった。トリック・クラウンの攻撃力は1600。Hywを攻撃して400ダメージ与えて、相手は残り1900。

 まー、仕方無いや。さてじゃあどうしようかな……うん。

 

「メイン2。セット。エンド」

 

 手札は2枚。『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』の攻撃力は2000にまで下がったけど破壊されたら進化するし、そう簡単には攻撃されないはず。

 

「ふむ、俺の手札は0枚でフィールドには発動出来ない魔法が1枚のみ、更に『サイレント・ソードマン LV7』によってフィールドの魔法カードは無効化される、か。厄介だな」

 

 それほどでも。……ここから逆転されたら少し辛いものがある。

 

「俺のターン、ドロー! まずは、俺のフィールドの元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地に送り、俺の墓地の『GM Vmbkzt(バンクット)』を特殊召喚!」

 

 

『GM Vmbkzt(バンクット)

 レベル6 地属性 戦士族

 ATK2000 DFE2000

 ①自分フィールド上に存在する元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地に送る事でのみ手札・墓地から特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、相手がカードを手札に加えた場合に発動できる。手札・デッキから『GM』モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 僕の『サイレント・バーニング』が墓地に送られ、警察さんの場に明らかにヤバそうな男が現れる。サングラスに通信機、背中には巨大な四角い鉄の箱を背負っている。

 っていうか前のターンに呟いてたのはそういう事か。このモンスターは既に墓地に居たけど、呼び出すと僕に『サイレント・バーニング』を使わせる事になったから見送ったと。

 

「墓地の『GM's Observe』を除外して効果を適用する! フィールドのセットカード1枚をバウンスだ」

 

 

『GM's Observe』

 通常魔法

 ①自分フィールド上に『GM』モンスターが存在する場合に発動できる。相手の手札を確認する。その後、相手はデッキから1枚ドローする。

 ②墓地のこのカードを除外し、フィールドにセットされているカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。この効果は墓地に送られたターンには発動できない。

 

 

『サイレント・ソードマン LV7』が無効化するのはフィールド上の魔法だけ。墓地で発動する効果は無効化できない。

 

「対象は勿論、貴様の場のセットカード」

「『貪欲な瓶』」

 

 ここは使うしかない。対象を5枚選ばなきゃ。

 

「『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』『サイレント・ソードマン LV5』『サイレント・マジシャン LV8』『オネスト』」

 

 この5枚を戻して……1枚ドロー!

 

「手札補充カードだったか。貴様が手札にカードを加えたので俺は『GM Vmbkzt』の効果を発動だ! デッキから『GM Qur(キュアー)』を特殊召喚!……守備表示だ」

 

 

『GM Qur(キュアー)

 レベル3 風属性 魔法使い族

 ATK1200 DFE1200

 ①1ターンに1度、モンスター・魔法・罠カードのいずれかを宣言して発動できる。相手のデッキの一番上を確認し、宣言した種類のカードだった場合墓地に送るか自分のフィールドにセットする。違った場合相手はそのカードを手札に加える。

 

 

 ピンク髪の女の子がVmbkzt(バンクット)の背中からピョコンと現れた。キョロキョロと周りを見回してから飛び降りる……あ、こけた。そのまましゃがんで守備表示になる。

 

「……Qurの効果だ。俺はモンスターを宣言。デッキトップの確認だ!」

 

 へー、Hywの効果のデッキトップ版なのかな。レベルも同じだし。

 なんて思ってたら、あれ、いつの間にかQurの手にカードが。……って、それ『サイレント・ソードマンLV5』! 僕のカード!

 

「よし、成功だ。俺の場にセットする。そのまま墓地に送り、俺の墓地の『GM Xipdnc(エクシップドンク)』を特殊召喚だ!」

 

 

『GM Xipdnc(エクシップドンク)

 レベル6 風属性 魔法使い族

 ATK2000 DFE2000

 ①自分フィールド上に存在する元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地に送る事でのみ手札・墓地から特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、相手がカードを手札に加えた場合に発動できる。手札・デッキから『GM's』魔法・罠1枚を自分フィールドにセットする。

 

 

 僕のカードを勝手に利用して出てきたのはバス。……バスだよ。ここ、部屋の中なんだけどバスが居るんだよ。

 側面に大きく『GM』のエンブレムみたいな絵が書かれている。

 

「貴様の手札は3枚、よって俺の手札に存在する『GM Jgso(ジグソー)』を特殊召喚だ! 守備表示で、な」

 

 

『GM・Jgso(ジグソー)

 レベル4 風属性 魔法使い族

 ATK1600 DFE1600

 ①相手の手札が3枚以下の場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、モンスター・魔法・罠カードのいずれかを宣言して発動できる。相手のデッキの一番上を確認し、宣言した種類のカードだった場合表側でデッキの一番上に置く。デッキに表側のそのカードは手札に加えられる場合墓地に送られる。違った場合相手はそのカードを手札に加える。

 

 

 赤い髪をボサボサにした眼鏡の男が出てきた。ヒョロヒョロだし、他の『GM』と違って外に出なさそう。

 

「罠を宣言してJgsoの効果だ。デッキトップを確認だ!」

 

 うん? Jgsoが何処かからパソコンを取り出してカタカタやってる。

 ん、僕のデッキに何か付いてる……盗聴器? いや、超小型のカメラだ。

 

「Jgso、解像度が悪いぞ」

 

 ……え、これでこっそり確認しようとしてたの!? あーもー面倒な事して、それぐらい自分で見せられるよ!

 

「おお、すまない。ふむ、『Em トリック・クラウン』か。手札に加えろ」

 

 手札には居なくていいんだけどね。既に1体居るし。

 

「手札にカードを加えたな。『GM Xipdnc』の効果! デッキから『GM's』魔法・罠カード1枚をセットする! 俺がセットするのはカウンター罠、『GM's Check』!」

 

 

『GM's Check』カウンター罠

 ①自分フィールド上に『GM』モンスターが存在する場合に相手がフィールド上で魔法・罠・モンスターの効果を発動した時に発動できる。その効果を無効にし手札に戻す。その後、自分フィールドの『GM』モンスター1体を手札に戻す。

 

 

 カウンター罠……どんな効果か分からないから注意しなくちゃ。

 

「バトルだ! Xipdnc、『Em トリック・クラウン』に攻撃!」

 

 バスがピエロに突撃……しない。あれ、てっきり突進攻撃かと思ったのに。

 突然バスの屋根が開き、大量のミサイルが姿を見せる。

 

 ま、待って。それ絶対オーバーキル―――

 

「発射!」

 

 うわあぁっ! トリック・クラウーン!

 

 ―――ん、あれ? トリック・クラウンは倒れてるけどやられてないよ? あ、バスからものものしい格好の人達が出てきてトリック・クラウンをバスの中に連れていった。

 Jgsoがパソコンの画面を見せてくる。なになに? ふーん、そっか、非殺傷ミサイルなのか。

 

 危ない事に変わりないよ!?

 

「『Em トリック・クラウン』、『H・C サウザンド・ブレード』」

 

 まぁいいや。クラウンとブレードを墓地から呼び出す。クラウンは当然守備表示。ブレードは攻撃表示。

 クラウンが逃げ出したせいか、なんかバスの中が騒がしくなってる。

 で、僕は戦闘ダメージを400とクラウンの効果で1000ダメージで1400ダメージ、前のターンに1200ダメージをくらっているから残りライフは5400。

 

「Vmbkztでもう1度トリック・クラウンに攻撃だ!」

 

 守備表示だからダメージは無い。けどトリック・クラウンがこれまた大量の銃に撃たれて消えた。ごめん、そういう役回りなんだ。

 

「ターンエンドだ」

 

 僕のターン!

 

「ドロー」

「その時、Vmbkzt(バンクット)Xipdnc(エクシップドンク)の効果だ」

 

 えっ!? あ、そうか『手札に加えた場合』だからドローフェイズに発動できるんだ。

 僕は手札から使うカードは無い。墓地にはある。

 

「『サイレント・バーニング』、『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

「よし、ではXipdncで2枚目の『GM's Check』をセット、次にVmbkztで『GM Alfe』を守備表示で特殊召喚だ」

 

 凄い。手札1枚フィールド1枚から5体のモンスターを展開した。それにバックも2枚(片方は使えないけど)。

 けど、少し遅かったね!

 

「バトル。『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

 

 バスを指差す。バスの攻撃力は2000、『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』の攻撃力は僕の手札が5枚だから2500アップして3500!

 

 バスの屋根が開くけど、それよりも『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』の攻撃のが速い。

 

「サイレントバーニング」

 

 大爆発した。迫力が凄いね! 流石美しきサイレント!

 警察さんに1500のダメージ! 残りライフはわずか400!

 

 これで終わりだ!

 

「『サイレント・ソードマン LV7』」

 

 Vmbkztの攻撃力も2000、こっちの攻撃力は2800!

 火力は充分!

 

「サイレントソード LV7」

 

 僕の勝ちだ!



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『GM』使いの警察、岡部 修二

「ぐぅ……俺の負けだ」

 

 ソリッドビジョンが消えていく。

『相性が悪かった』。『本気を出してなかった』。そんな言い訳は出来ない。ここは素直な称賛を送るべきだろう。

 

「強いな。『サイレント』は癖が強いデッキだが、それを使いこなすとは」

 

 目の前の子供は頷く事すらせず、少したどたどしい手付きで墓地のカードをデッキへ戻していく。

 ……く、俺が子供受けしない顔なのは理解しているさ。

 

「そうだ、お前喋れるじゃないか」

 

 子供は首を傾げる。気付いてなかったのか?

 

「ドローとかメインとか、カードの名前も言えたし技名も言ってただろ?」

 

 子供は両手で顔を隠す。照れているのだろうか? 確かに『サイレント』デッキを使う人は照れ屋が多い。

 

「……『サイレント・ソードマン LV7』」

「ほらな」

 

 子供が呟いたのは自身が使ったメインモンスター。

 しかし、照れ屋なのは良いとして記憶喪失なのはどうしたものか。既にHP(ホームページ)に情報を乗せて貰ってあるし……。

 

「おお、そうだそうだ。忘れていた。顔写真を取らなくては」

 

 顔から手を離し、子供が俺を見てくる。

 

「迷子なんだからインターネットを使って広く情報を発信しなくてはな。顔写真があった方が言葉での説明より分かりやすいだろう?」

 

 カメラカメラ……はて、カメラはどこだったか。確かあいつに渡して……おっと! そうだこの子が起きたら呼んでくれと言われていたな。俺としたことが慌てすぎたか?

 スマホを取り出しあいつに連絡を取る。数回のコールの後、電話が繋がった。

 

いはい待ってたよー、い

 ぁ最近の子供は寝起きが悪

 ないかい? 保護

 てから結構な時間たっ

 るよ。僕の方の準備はばっちり

 さいからさっさと連

 てきて。そんじゃ』

 

 通話が終了した。相変わらず早口だし話をさせてくれない奴だ。スマホをしまい、子供の方へ向き直る。

 

「ここじゃない所で取るらしい。歩けるな?」

 

 子供は小さく頷きバックを背負う。……ん? あぁ、デュエルディスクが邪魔になって上手く背負えないようだ。

 

「ほら、少し貸してみろ」

 

 子供の腕からデュエルディスクを抜き取り、1度も使われなかったオプションを外した後にドームを押す。

 

 ガチャンッ!

 

「ぐおっ!?」

「!?」

 

 腕に装着しないで押したせいか、凄い勢いで変形したデュエルディスクが腕に当たった。いてぇ……くそっ!

 

「ちっ……これは処分するべきか」

 

 現行のルールに対応していないしな。となるとこの子に合うデュエルディスクがあるか探すか、或いは買うか。

 

「はぁ。すまん、行こうか」

 

 ……子供が動いてくれない。しばし見つめ合う。

 

「おい。行くぞ?」

 

 再度そう言うとこの子は一歩下がり、また一歩下がり、軽く首を振ってから近付いてきた。

 あぁ、多分、少し誤解されたかもな。まあ……いつもの事だ。

 

「あいつの部屋は少し遠いからな」

 

 子供はバックを背負い、頷いた。

 

 

 ――― 少し歩いた後 ―――

 

 

 ようやく、着いたか。部屋の中へ入る。

 

、来たね……ふーん。大分か

 かわれたのかな? ずいぶんつ

 れてるみたいだけど。

 からなくは無いけどね。怖

 顔したお前が子供を連れて

 たら僕でもからかうさ」

 

 扉を開けたら言葉のマシンガン。図星なせいもあってぐうの音も出ない。

 確かに同僚にからかわれたし、それに食い付くとこの子が怯えて、それを見て同僚どもは更にからかってくるし……もう疲れた。

 

 とにかく、隣に居る子供を前に押し出す。

 

「ほら、この子が例の子供だ。顔写真を取るんだろう?」

んたんに言ってくれる。お前には

 からないかも知れな

 けど、綺麗に取るのは難し

 んだぞ?

 

 なんだし、手は抜けないん

 

「そうなのか?」

「いや、別に」

「おい」

 

 こいつは既にカメラを構え、俺に向かってしっしっと手を振る。

 

 カシャッ

 

ぅーん、

 ぁ、上げる奴はこれで

 いか」

 

 そう言うとこいつはパソコンを弄り始める。まったく、相変わらず(せわ)しない奴だ。

 ……と、子供が紙を突き出してきていた。なになに?

 

あの女の人とけっこんしているんですか?

 

「いや、あいつはただの同僚だ」

「んー?」

「何でも無いぞ」




『GM』
ハンデスしていきたいカテゴリー。
ハンデスはかなりの運ゲーだがピーピングも兼ねるので『マインドクラッシュ』などが使いやすくなる。
また、上手く当てれば自分のフィールドにゴヨウ出来るので『宇宙獣ガンギル』も採用する余地がある。
対策は先攻で手札を無くすぐらいしかない。あとは相手が外す事を祈ろう。アドバンテージがもらえる。


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強くなれるお薬二つ

 僕はベンチに座っている。目の前で子供たちがデュエルしているね。

 

「ぼくは3体のモンスターをリリースして、『神獣王バルバロス』をアドバンス召喚だ!」

「うげっ!」

「バルバロスの効果だ! 吹き飛ばせぇ!」

「うわあぁっ!」

 

 バルバロスが放つ暴風が少し離れていた僕の元まで届く。……これ、近くに居たら立ってられない強さなんだけど?

 それはともかく、あのデュエルは決まったね。『雲魔物(クラウディアン)』で耐えてバルバロスかぁ。面白いけどあんまり『雲魔物』が好きじゃない。

 

「―――っ」

 

 欠伸(あくび)。警察さん(岡部さんというらしい)から貰ったデュエルディスクを触る。あの古い奴をどうにか使えるようにしてもらったんだ。処分なんて可哀想だし。

 でもあの変な話し方の女の人が少し改造してEXモンスターゾーンが付いた。うん、凄かった。僕がこれを捨てて欲しくないって書いたらパパパッと、何してるのか分からなかったけどEXモンスターゾーンがくっついてた。ドーム部分を押してもゆっくり開閉されるようになってたし、あの人カッコいいなー。

 

 で、なんでこの公園に居るかっていうのはね、僕の記憶が戻るかもしれないって警察さんに言われたんだ。

 僕が倒れていたのはこの公園で、もしかしたら何か思い出したり僕の事を知っている人が居るかもしれないと言ってた。

 僕は何者なんだろう。どうして生きているんだろう。

 

 ―――なんて考えは僕には難しい。そんな事を考えられる程僕は賢くないみたいだ。

 

「お姉ちゃんもうやめようよぉ」

「やだ! ゆーかいはんを見つけて、絶対に見返してやるんだから!」

「!」

 

 うわっ、急に後ろから声が聞こえてきてビックリした。

 

「無理だってばぁ。危ないし怒られちゃうよ?」

「ゆーかいはんだってデュエルすれば倒せるよ!」

「じゃあ何処に居るの?」

「うっ……」

 

 誘拐犯、誘拐犯かぁ。怖いなぁ。そんな危ない人に捕まる前に戻った方が良いかも。そう思ってベンチから立つ。

 

「きっとこの辺りに……そう、その人がゆーかいはんだ!」

 

 え、誘拐犯近くに居るの? ヤバい、さっさと逃げよう!

 

「こら! 逃げるな悪者!」

「え、お姉ちゃん!?」

 

 公園から逃げようとした僕の腕が捕まれる。……ん? あれ、僕なんで捕まってるのかな?

 恐る恐る後ろを見る。

 

「捕まえたぁっ!」

「ひいぃっ、ごめんなさいごめんなさいお姉ちゃんがごめんなさい!」

「…………!?」

 

 僕よりも小さい女の子が1人、僕を捕まえていた。どうやら僕を噂の誘拐犯だと勘違いしたみたいだ、うん。

 そんなことがどうでもよくなる光景なんだ。問題はそんなところじゃなくて、その女の子の後ろに他の子供が居ないところだ。

 

 ……でも、女の子の声は2人分なんだ。

 

 

 Q.女の子が1人、声は2人。なーんだ。腹話術じゃないし声真似とかでも無いよ!

 

 A.『ツイン・フォトン・リザード』

 

 

「さあデュエルだ!」

「ごめんなさいお姉ちゃんこうなったら止められないんですー!」

 

 デュエルディスクを構えた女の子には瓜二つな顔が2つあった。

 顔というか首が2つある。何を言っているか分からないだろうけど僕も理解出来てない。に、人間ですか?

 

「ボーッとしてるなら私の先攻!」

「!」

 

 慌ててデュエルディスクを構える。デッキは……あ、これか。手札が悪いや。

 

「『心の眼の騎士(ハードアイズ・ナイト)』をP(ペンデュラム)スケールに発動!」

 

『ハードアイズ』ってまた知らないカテゴリー!

 

心の眼の騎士(ハードアイズ・ナイト)

 レベル4 闇属性 戦士族 ペンデュラム

 ATK1000 DFE1000 ◇5

 《このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①1ターンに1度、もう片方のPスケールにカードが存在しない場合に発動できる。デッキから『心の眼の魔術師』をPスケールに置く。その後デッキから『ハートアイズ』カードまたは『下降薬』を手札に加える》

 とある密命を受け弱き龍を捕獲する騎士。その手に持つは緑色の薬……。(通常モンスター)

 

 

「『心の眼の騎士』の効果です。デッキから『心の眼の魔術師(ハードアイズ・マジシャン)』をPスケールに置いて、更に『可愛いお目々の悲劇(ハートアイズ・ショック)』を手札に加えます」

 

 

心の眼の魔術師(ハードアイズ・マジシャン)

 レベル4 闇属性 魔法使い族 ペンデュラム

 ATK1000 DFE1000 ◇7

 《このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①もう片方のPスケールにカードが存在しない場合に発動できる。デッキから『心の眼の騎士』をPスケールに置く。その後デッキから『ハートアイズ』カードまたは『上昇薬』を手札に加える》

 とある密命を受け弱き龍を捕獲する魔術師。その手に持つは赤色の薬……。(通常モンスター)

 

 

可愛いお目々の悲劇(ハートアイズ・ショック)

 このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①自分フィールド上のカード1枚を破壊して発動できる。デッキ・墓地から『ハートアイズ』モンスター1枚と『上昇薬』または『下降薬』1枚を手札に加える。

 

 

 あれ……『ハー《ト》アイズ』? 『ハー《ド》アイズ』じゃないのか……紛らわしいなぁっ!

 っと、それよりもスケールが揃った!

 

「『可愛いお目々の悲劇』を使うよ!」

「『心の眼の騎士』を破壊して、『可愛いお目々の休息龍(ハートアイズ・リフレッシュドラゴン)』と『下降薬』を手札に加えます」

 

 

可愛いお目々の休息龍(ハートアイズ・リフレッシュドラゴン)

 レベル6 光属性 ドラゴン族

 ATK0 DFE1800

 このカード名の①②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。

 ①デッキから『ハートアイズ』モンスター1枚を手札に加える。

 ②デッキから『上昇薬』または『下降薬』1枚を手札に加える。

 ③墓地のレベル6通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

 

『下降薬』

 装備魔法

『ハートアイズ』モンスターにのみ装備可能。

 ①装備モンスターは他の魔法カードの効果を受けない。

 ②自分フィールド上に存在する『可愛いお目々の桃色龍(ハートアイズ・ピンキードラゴン)』とそのモンスターに装備されているこのカードを墓地へ送って発動できる。手札・デッキから『可愛いお目々の滅気龍(ハートアイズ・ダウナードラゴン)』1体を特殊召喚する。

 

 

 一瞬でスケールが無くなった。それに、名前に似合わずパワーカードだったし……ん? そう言えば今破壊された『心の眼の騎士』って『心の眼の魔術師』を呼び出していたような。

 

「スケールが無くなったから『心の眼の魔術師』の効果だー! 『心の眼の騎士』を呼び出して『可愛いお目々の桃色龍(ハートアイズ・ピンキードラゴン)』を手札に!」

 

 

『可愛いお目々の桃色龍』

 レベル6 光属性 ドラゴン族

 ATK1800 DFE1600

 桃色ゆえに他のドラゴンたちから襲われるドラゴン。ある日人間たちに捕まってしまい、怪しい薬を飲まされる……。(通常モンスター)

 

 

 やっぱり! 手札1枚からこんなにアドバンテージを取るなんてずるい! 気付けば手札7枚になってるし!

 

「スケールは5と7……ペンデュラム召喚!」

「『可愛いお目々の桃色龍』2体、『可愛いお目々の休息龍』を1体です。そして『可愛いお目々の休息龍』の効果発動」

「ええーと、②の効果! デッキから『上昇薬』を手札に!」

 

 

『上昇薬』

 装備魔法

『ハートアイズ』モンスターにのみ装備可能。

 ①装備モンスターの攻撃力はレベル×100ポイントアップする。

 ②自分フィールド上に存在する『可愛いお目々の桃色龍(ハートアイズ・ピンキードラゴン)』とそのモンスターに装備されているこのカードを墓地へ送って発動できる。手札・デッキから『可愛いお目々の覚醒龍(ハートアイズ・アッパードラゴン)』1体を特殊召喚する。

 

 

 わ、その、うん。ぼんやり見てたけど、この調子だと悪い筈の手札が最高の手札になる。

 

「片方の『可愛いお目々の桃色龍』に『上昇薬』!」

「もう片方に『下降薬』を装備です」

 

 桃色の鱗にハートの目をした龍が薬を一気飲みする。片方は若干赤くなってピョンピョン飛んでいる。頭の周りに星が(またた)いている。対してもう片方はがっくり項垂(うなだ)れている。鱗の色もどことなくくすんでいる。

 ……ってそれ絶対危ないお薬じゃん! 何てもの飲ませてるのさ!?

 

「『上昇薬』の効果!」

「お姉ちゃん、先に『下降薬』でしょ」

「先攻だし関係無いでしょ? 『上昇薬』と、これを装備している『可愛いお目々の桃色龍』を墓地へ送って進化だ!」

 

 姉妹(?)で少し言い合ってから装備魔法の効果が発動される。片方の龍は元気よく空へと飛び立つ。

 

「弾けたテンション、飛び出すファイアー、薬が回るは『可愛いお目々の覚醒龍(ハートアイズ・アッパードラゴン)』!」

 

 空から降り立ったのは赤い鱗の龍。滅茶苦茶な方向へ咆哮している。

 これ絶対危ないお薬だー!

 

 

可愛いお目々の覚醒龍(ハートアイズ・アッパードラゴン)

 レベル6 光属性 ドラゴン族

 ATK1800 DFE1600

 このモンスターは通常召喚できず、『上昇薬』の効果でのみ特殊召喚できる。

 ①自分フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力はそのモンスターのレベル×100アップする。

 ②1ターンに1度ライフを1000払って発動できる。フィールドのモンスター1枚を選んで破壊する。

 ③このモンスターが破壊された場合、自分の墓地のレベル6モンスター1枚を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「もぅ、お姉ちゃんは勝手なんだから……『下降薬』の効果です。『可愛いお目々の桃色龍』とそれに装備されている『下降薬』を墓地へ」

 

 今度は項垂れていた龍が丸くなる。どんどん色が煤けていって……え、ヤバいよ?

 

「駆け巡る悲劇、落ちる涙、薬が回るは『可愛いお目々の滅気龍(ハートアイズ・ダウナードラゴン)』」

 

 

可愛いお目々の滅気龍(ハートアイズ・ダウナードラゴン)

 レベル6 闇属性 ドラゴン族

 ATK1800 DFE1600

 このモンスターは通常召喚できず、『下降薬』の効果でのみ特殊召喚できる。

 ①自分フィールド上に表側で存在するモンスターは相手の魔法カードの効果を受けない。

 ②1ターンに1度発動できる。自分のライフを1000回復する。

 ③このモンスターが破壊された場合、自分の墓地のレベル6モンスター1枚を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

 もう……召喚口上だけで涙が出てくるよ……。

 その2体に囲まれている『可愛いお目々の休息龍』はほんわかとした雰囲気を崩さない……え、休息してるんだよね? お薬で無理矢理じゃないよね!?

 

「どうする? このまま出しちゃう?」

「それは弱いよお姉ちゃん。1枚伏せてターンエンド」

 

 なんか不穏な事言ってたけど……。

 

「ドロー」

 

 さてさてとにかくようやく僕のターンだ。本当はこのデッキ、先攻を取りたいんだけど……仕方無い。

 

「あ、そうだった。覚醒龍の効果で私たちのフィールドのモンスターの攻撃力・守備力はレベル×100アップしてるよ!」

「それに、滅気龍の効果で表側のモンスターはそちらの魔法の効果を受けません」

 

 む、魔法カードが効かないのは……ちょっと計画が崩れるね。けど相手にとって残念なことにドローカードが良いカードだ。

 

「メイン。『破壊剣士の伴竜』」

 

 っていうかこの子が来なかったら本当に何も出来なかったね。

 

「わあ、可愛い!」

「ドラゴン族……あっちもドラゴンデッキなのかな?」

 

 キューキュー鳴く伴龍に目を輝かせる女の子(たち?)。……でもあの反応、多分このデッキの事知らないね?

 じゃなきゃ『可愛い』なんて言ってられないし。

 

「『破壊剣士の伴竜』、『破壊剣―ドラゴン・バスターブレード』」

 

 召喚で万能サーチ。で、このデッキのメインモンスターは既に手札にある。……2枚。事故りすぎだー!

 

「『破壊剣士の伴竜』、『バスター・ブレーダー』」

 

 伴龍はリリースする事で手札の『バスター・ブレーダー』を特殊召喚出来る。ただし『破壊剣の使い手―バスター・ブレーダー』はフィールドか墓地に居ないと『バスター・ブレーダー』として扱わないから注意しないといけない。

 ……手札に来ちゃったんだけどね。どうやって墓地に送ろうか。

 まぁ、とにかくシンクロしようか

 

「『破壊剣―ドラゴン・バスターブレード』、『破壊剣―ドラゴン・バスターブレード』、『破戒蛮龍―バスター・ドラゴン』」

 

 一応動きを確認しておこうかな。まず『バスター・ブレーダー』に『破壊剣―バスター・ブレード』を装備してから特殊召喚、シンクロした。

 

『破壊蛮龍―バスター・ドラゴン』の効果の一つ、『相手をドラゴン族にする』というのは意味がないけど……

 

「『破壊蛮龍―バスター・ドラゴン』、『バスター・ブレイダー』」

 

 墓地蘇生ならいくらでも。さーて、と。

 

「『破壊剣士融合』」

 

 二人(?)には悪いけど地獄を見て貰うよ!

 

 蛮龍の意思を受け継ぎし剣士よ! その力をもって頂点をねじ伏せろ! 融合召喚!

 

「『龍破壊の剣士―バスター・ブレイダー』」

 

 長大な剣を持った剣士が立ちはだかる。おお、背が高くて大きくて凄く頼もしい! けどそのずんぐりとした鎧は結構動きにくそうだね。

 融合バスター・ブレイダーは剣を天高く掲げる。すると剣から謎のオーラが放たれ女の子(たち…?)の竜は本能のままにひれ伏す。

 うーん……ひれ伏してるのがあの薬漬けの竜たちだから……とても……うん、申し訳なく思うよ……。

 

「え!? なんで……」

「思い出した! お姉ちゃんヤバいヤバいこのままじゃ負けちゃう!」

 

 あ、妹(?)の方は『破壊剣』の事を知ってるみたいだね。けど手は抜かないよ!

 

「バトル。『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』、『可愛いお目々の覚醒龍』」

 

 融合バスター・ブレイダーはその剣の切っ先を赤い鱗をキラッキラさせている竜に向ける。……守備表示、だよね? 気絶してるみたいなんだけど……いや。そうか、そうだ! ここで倒してあの怪しいお薬を体から抜こう!

 

 相手の墓地にドラゴン族が二体、フィールドに三体もいるから、融合バスター・ブレイダーの攻撃力は2800+5000の7800!

 対して覚醒龍の守備力は1600+600の2200!

 

「スラッシュ・ドラゴン・バスター」

 

 融合バスター・ブレイダーが気絶している竜に突撃、真っ二つに斬る。

 喰らえ、貫通だぁっ!

 

「うわあっ!?」

「きゃうっ!」

 

 よーし……これで5600もの大ダメージ!

 

「いったた……破壊された『可愛いお目々の覚醒龍』の効果発動! 墓地に存在する『可愛いお目々の桃色龍』を蘇生させるっ! ……あれ?」

「お姉ちゃん! バスター・ブレイダーはドラゴン族の効果を使わせてくれないんだよ!」

「ええっ!?」

 

 うん、その、ごめんね? このデッキなのは偶然なんだけど……。

 カードを二枚伏せ……いや、片方は良いか。一枚伏せてターンを終了する。

 

「むっぐぐぐ……やるね!」

「お姉ちゃんサレンダーしようよぉ……私たちのドラゴンじゃ勝てないよぉ……」

 

 女の子の妹の方は泣きべそをかきながら姉に訴えるけど姉の方はまだまだやる気だ。『ブラックホール』でも入ってるのかな……?

 

「ドロー!」

「うぅ……スタンバイフェイズにトラップカード! 『八咫烏の骸』! 一枚、ドロー!」

 

 おぉう。一枚ドローする罠カードって……珍しいというか、確かに小学生っぽいというか……。それでも手札四枚なのは怖いね。

 

「……あ、これ!」

「うん、もしかしたら行けるかも!」

 

 ん、何か良いカードでも引けたみたいだね。……でも、どんなカードなんだろう?

 

「魔法カード発動!」

「『盗人ゴブリン』です!」

 

 ……へ? 『盗人ゴブリン』? え、え、何?

 

「ライフを500、貰うね!」

「いただきます!」

 

 あ、女の子たちのところに例のゴブリンが。バックを二人(ん、一人?)に渡してペコペコしてる……って! それ僕のバック!? ちゃんと背負ってたのにいつの間にっ!

 

「カードをセットします!」

「『ロード・オブ・ドラゴン―ドラゴンの支配者―』召喚っ! ……ターンエンド!」

 

 うん? 何もしてこなかった……ってだから僕のバッグ返してよぉっ!

 

「あ、お姉ちゃん。これどうしよう」

「え? あ、気付かなかった。はい」

 

 うんありがとう。良い子達だ……でもデュエルでは容赦しないよ?

 

「ドロー」

 

 デュエルディスクを確認したら僕のライフが500減ってた。女の子の言葉からして、恐らく僕のライフ500を女の子たちが吸った……じゃなくて()ったんだろうね。だから女の子たちのライフは2900。

 あ、何となくやりたい事が分かったかも。

 

「スタンバイ。『破壊剣士融合』」

 

 墓地の『破壊剣士融合』の効果を発動して、手札の『破壊剣一閃』を捨てて回収。これで『破壊輪』は怖くなくなった……ちょっと待って。それならもう使ってるよね? うーん。

 セットしたし恐らく罠カード……いや、こっちのバトルフェイズにしか使えない速攻魔法?

 

 うーん、分かんないや!

 

「バトル。『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』、『可愛いお目々の滅気龍』。スラッシュ・ドラゴン・バスター」

 

 融合バスター・ブレイダーが剣を振り上げ、うずくまりガタガタ震える竜へと斬りかかる。ごめんね……すぐ楽にしてあげるから!

 

「ここだあっ! トラップ!」

「『業炎のバリア―ファイヤー・フォース―』です!」

 

 うげぇっ!? これが返しの一手!

 むむむ……破壊されても全然大丈夫だけど……確か、破壊されたモンスターたちの元々の攻撃力の合計の半分をお互いにくらう……だったっけ? じゃあ、僕はこれで返させてもらうよ!

 

「『破壊剣の追憶』、『バスター・ブレイダー』」

 

 手札の『破壊剣の使い手―バスター・ブレイダー』を捨てて、デッキから『バスター・ブレイダー』を特殊召喚する。

 

「え、え? なんで、破壊されちゃうのに!」

 

 僕と女の子との中心部に球体状の爆炎が現れ、僕のバスター・ブレイダーたちが炎に飲み込まれる。

 うぁついぃぃぃっ!?

 

「「きゃあああっ!」」

 

 融合バスター・ブレイダーの攻撃力が2800、バスター・ブレイダーの攻撃力が2600だからお互いに2700ダメージ! ……女の子(たち)、『盗人ゴブリン』使ってなかったら負けてたね。残りライフ200か。

 うん、ごめんね。

 

「『破壊剣の追憶』、『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』」

「……え?」

 

 罠カードによる墓地融合。除外するのは『バスター・ブレイダー』と『破壊剣―ドラゴン・バスター・ブレイド』。

 

「スラッシュ・ドラゴン・バスター」

 

『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』が竜を切り裂く。

 

 ……うーん。うーーん。うん、その、メタっちゃってごめんね?



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可愛いお目々(ハートアイズ)』使いの少女、佐藤 美加/真加

「負けちゃった」

 

 私はうなだれる。私の横にいる私の片割れもがっくりと肩を落としてる。

 私たちはゆーかいはん? をつかまえる為に公園でデュエルしたんだけど、負けちゃった。

 

「……あっ」

「え、どうしたの真加?」

 

 真加がとうとつに声をあげた。

 真加は頭がいいから、私じゃあ気が付けない事に気が付いたんだと思う。なんだろう。

 

「お、お姉ちゃん……わ、私たち、誘拐犯に連れて行かれちゃう……!」

「え。……えぇっ!?」

 

『ゆーかいはんは子供を連れていって怖いことをする』。そういう悪い人だからデュエルで倒せば……。でも、負けた時のことは考えてなかった!

 

「あ、や……やだ……」

 

 さっきまでデュエルしていたゆーかいはんを見る。私たちを無ひょうじょうにじーっと見てる。

 そう、あれは、あれだ! あの、えーと……ようとんじょーのブタを見る目だ!

 

「うう……お姉ちゃん……」

「っ!」

 

 そう、私はお姉ちゃんなんだから。なんとかして逃げ出さなきゃ! でも上手く体が動かない。

 

「真加! 逃げよう!」

「無理だよぉ……嫌ぁ……」

 

 あーもうっ! 真加は頭が良いからかなんなのか、すごい……えーと……ひかんてきなんだから!

 ゆーかいはんはリュックに手を突っ込んで何か探してる。逃げるなら、今しかない!

 

「真加っ!」

「えっ、えっ!?」

 

 むりやりにでも体を動かす! ゆーかいはんとは逆の方向に走る!

 

 ―――あたっ!

 

「おっとと。おんやぁ~? 可愛い子供……じゃあ……ないなぁ? なんだこいつ気持ち悪いな」

 

 金髪のチャラチャラした、なんかいやそうな男の人にぶつかっちゃった。あわわ……どうしよう!

 

「その! 私たち誘拐犯に追われてるんです! 助けてください!」

 

 おぉ! 真加が良い感じにやってくれた! 真加はやっぱりかしこいなー。

 

「おん? 誘拐犯に? そりゃあ大変だ! なんてこった! ――――――俺がその誘拐犯なんだよ!」

 

 

 

「「……えっ」」

 

 ガシッと肩をつかまれる。いたいいたい! やだ、怖い、怖い! 逃げたいのに力が強くて逃げられない!

 

「けっけっ、ほぼ確実に旅人の野郎のお目当てじゃあねぇだろうが関係ねぇ! 珍しい奴だ、面白くしてやるよぉ!」

 

 ひぃっ! 怖くて目をつぶっちゃった。―――あれ? 手を離された?

 おそるおそる目を開く。

 

「おいおい、ガキ。邪魔すんならてめぇごと連れてっちまうぜぇ~……?」

 

 さっきまでデュエルしてた人が私たちの前に立ってる。デュエルディスクも展開してある。助けて、くれるの?

 

「あ、えっと……」

 

 その人は背中ごしに後ろを指さした。その先にはリュックと、スケッチブック。こっそりと下がってスケッチブックを見る。

 えっと……『私はゆうかいは けいさつに行って』って書いてある。

 

「お姉ちゃん! 行こう! 速く!」

「う……」

 

 でもあの人を置いていくのは……。ちょっと見ると、まだ男の人のターンみたい。

 ……大丈夫だよね?

 

「お姉ちゃんってば!」

「……うん、行こう!」

 

 けいさつは、あっちだ!




可愛いお目々(ハートアイズ)
Pモンスターのサポートも入れて大型モンスターを立てたいカテゴリー。
ドラゴン族というのもあってとにかくサポートが豊富。
メインとなる『可愛いお目々の(ハートアイズ)桃色龍(ピンキードラゴン)』をサーチ・特殊召喚して装備魔法で進化させるのが基本の動きとなる。
だが、全体的にステータスが低いので上手くカバーしていきたい。


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踏み潰す強さを

 うぐぐ……あの二人(?)を助ける為にタックルしたはものの、ここからどうしよう……。

 

「おいおい、ガキ。邪魔すんならてめぇごと連れてっちまうぜぇ~……?」

 

 ひいぃっ! こわ、こわぁっ! この人目がイっちゃってるんだけど!?

 そ、そうだ! とにかく、あの二人をここから離れさせないと! とりあえずあらかじめ用意しておいたスケッチブックで警察さんのところに行ってくれるはず!

 デュエルディスクを構える。今僕がやれることは、これしかないから。

 

「ぷっ、おいおいデュエルしようってか~? しかもそんなボロッチイディスクで~? ギャハハハハハ! 良いぜ! ぶっつぶしてやるよ! デュエル!」

 

 先攻は僕。手札は……まぁ完璧といっていいんじゃない?

 

「セット、セット、セット、セット、『カードカー・D』。ドロー、エンド」

 

 さて、ハーピィとかしないでね? 負けちゃうから。

 

「あのよぉ~。どうせやるならもっと派手にやれよ! じゃなきゃ……潰す楽しみがねぇってんだ! 俺のターン! ドローだ!」

 

 うるさいなぁ。……どうせ知らないカード使うんでしょ?

 

「ケッケッケッ、『テラフォーミング』!」

 

 あ、知ってるカードだ!

 

「デッキからフィールド魔法『ホームーブ』をサーチする!」

 

 やっぱり知らないカードじゃん!

 

 

『ホームーブ』

 フィールド魔法

 このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①手札・デッキから『ハウシサイド』モンスターを墓地へ送る。その後、そのモンスターよりレベルが1つ低い『ハウシサイド』モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

 

「そのまま発動! 効果でデッキからレベル12、『ハウシサイド・チョッピングモール』を墓地へ送りレベル11の『ハウシサイド・ディパーティドメント』を手札に加える!」

 

 墓地増やしてサーチとかなにそれ! ……でもレベル11じゃあそう簡単には出てこないよね?

 

「こいつは俺のフィールド魔法を踏み荒らして特殊召喚できる! まずはお披露目からだ! 『ハウシサイド・ディパーティドメント』!」

 

 簡単に出てきてるじゃんっ!?

 

 

『ハウシサイド・ディパーティドメント』

 レベル11 光属性 機械族

 ATK3000 DFE2800

 ①このカードは自分フィールドのフィールド魔法を墓地へ送る事でのみ特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、このカードをリリースして発動できる。自分の手札・デッキから合計レベルが10となるように『ハウシサイド』モンスター3体を特殊召喚する。(同名モンスターは1枚まで)

 

 

 でっかーい! 見上げる大きさのモンスターだ! ……上の方に薄気味悪い笑顔が見える。このデパートの看板なんだろうけど、なんか……気持ち悪い。嫌な感じ。文字通り上から目線だし。

 って、前を向いたら入り口に牙生えてるじゃん! 入ったら確実に食べられちゃうじゃんっ!?

 

「そしてこいつをリリースしてデッキから合計レベル10となるようにモンスターを3体! 特殊召喚するぜ!」

 

 だからずるいってば!

 

「出すのはレベル2、3、5! 『ハウシサイド・マウス』! 『ハウシサイド・ボーイ』! 『ハウシサイド・ファザー』!」

 

 

『ハウシサイド・マウス』

 レベル2 地属性 獣族

 ATK200 DFE200

 ①フィールド魔法1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、手札から『ハウシサイド』モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

『ハウシサイド・ボーイ』

 レベル3 光属性 戦士族

 ATK300 DFE300

 ①このカードが『ハウシサイド』モンスターの効果で特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから『ハウシサイド』カード1枚を手札に加える。

 

 

『ハウシサイド・ファザー』

 レベル5 闇属性 サイキック族

 ATK1500 DFE1500

 このモンスターの①②の効果は1ターンに1度、どちらか片方しか発動できない。

 ①墓地のレベル7以上の『ハウシサイド』モンスター1体をデッキに戻す。その後、シャッフルする。

 ②手札・フィールドのレベル4以下の『ハウシサイド』モンスター1体を墓地へ送って発動できる。自分の墓地のフィールド魔法1枚を手札に加える。

 

 

 茶色くて可愛らしいけど何かの内蔵を咥えているネズミと、スーツに身を包んでるけど清潔感が無い男の子、そしてディパーティドメントの看板とそっくりな笑いを浮かべたハゲ頭のおじさんが現れる。

 ……色々酷いね!?

 

「『ハウシサイド・ボーイ』の効果だ! デッキから『ハウシサイド・ホラピタル』をサーチ!」

 

 手札減ってないし! でも、これならステータスが低いからなんとかなる?

 

「『ハウシサイド・ファザー』の効果発動! フィールドの『ハウシサイド・マウス』を墓地へ送り墓地の『ホームーブ』を回収!」

「『苦紋様の土像』」

 

 フィールド魔法強いからここで出しておかないと!

 蜘蛛を模した変なのが出てきて、僕の前で縮こまる(守備表示)

 そしておじさんが持ってたファイルみたいなのでネズミをしっしっと追い払う。

 

「おぅ? 罠モンスターか……ククク、知ってるか? 罠モンスターを使うやつは狡猾なイメージがあるが……本当は根暗なだけなんだよぉっ!」

 

 うぐっ! ね、根暗じゃないし! 喋れないだけだし!

 

「手札を一枚捨てて『ライトニング・ボルテックス』! 破壊するぜ!」

「『宮廷のしきたり』」

「あるよなぁ! チェーンして『サイクロン』! 割れろ『苦紋様の土像』!」

「『偽物の罠』」

「ちっ!」

 

 あっぶなー……! なんとか耐えた! でも雷と嵐で髪がボサボサに……。

 

「フィールド魔法、『ホームーブ』!」

「『深淵のスタングレイ』」

 

 隠れていたエイがふわりと出てくる。守備表示で、お願い壁になって!

 そしてエイからビリビリと電気が流れて、『苦紋様の土像』の模様が発光する。破壊するのは勿論!

 

「『苦紋様の土像』、『ホームーブ』」

「めんどくせーなー! ……まぁこれで終わると思ってんならまだまだだぜ! 俺はフィールド魔法『ホームード』を発動!」

 

 

『ホームード』

 フィールド魔法

 このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①手札・デッキから『ハウシサイド』モンスターを墓地へ送る。その後、そのモンスターよりレベルが1つ高い『ハウシサイド』モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

 

 二枚目? ……いや、一文字違う! わかりにくっ!

 

「効果でデッキからレベル11、『ハウシサイド・ディパーティドメント』を墓地へ送りレベル12、『ハウシサイド・チョッピングモール』をサーチ!」

 

 また似たような効果使って……レベルが高いのをサーチになってるんだね?

 

「『ホームード』を墓地へ送り『ハウシサイド・チョッピングモール』を特殊召喚!」

 

 

『ハウシサイド・チョッピングモール』

 レベル12 地属性 機械族

 ATK2800 DFE3000

 ①このカードは自分フィールドのフィールド魔法を墓地へ送る事でのみ特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、このカードをリリースして発動できる。自分のデッキから合計レベルが11となるように『ハウシサイド』モンスターを3体まで特殊召喚する。(同名モンスターは1枚まで)

 

 

 またでっかいモンスターだ。建物から手が生えてて、両手に巨大ななたを持ってる。ひえっ、なたが地面に叩き付けられた!

 あ、待って。さっきのディパーティドメントと同じなら、もしかして……増える?

 

 

「リリース! 合計レベルが11となるようにデッキから3体まで特殊召喚! 出すのはレベル1、4、6! 『ハウシサイド・マーチン』『ハウシサイド・メイド』そして『ハウシサイド・マザー』!」

 

 

『ハウシサイド・マーチン』

 レベル1 風属性 鳥獣族

 ATK100 DFE100

 屋根裏に潜むつばめ。住人たちからの猛攻をマウスと共にかいくぐる。全ては生き残るため。この殺人屋敷(ハウシサイド)から逃げ出すため。(通常モンスター)

 

 

『ハウシサイド・メイド』

 レベル4 水属性 獣戦士族

 ATK400 DFE400

 ①このカードが『ハウシサイド』モンスターの効果で特殊召喚に成功した時に発動できる。フィールドの表側のカード1枚を持ち主の手札に戻す。

 

 

『ハウシサイド・マザー』

 レベル6 炎属性 魔法使い族

 ATK1600 DFE1600

 このモンスターの①②の効果は1ターンに1度、どちらか片方しか発動できない。

 ①墓地のレベル4以下の『ハウシサイド』モンスター1体をデッキに戻す。その後、シャッフルする。

 ②手札・フィールドのレベル7以上の『ハウシサイド』モンスター1体を墓地へ送って発動できる。自分の墓地のフィールド魔法1枚を手札に加える。

 

 

 いやーっ! 増えたーっ!

 羽根がほぼ抜けたつばめ、狂ったようにバケツを振り回すメイド服の女の子、そして怒り狂った女性が出てきた!

 だからなんでこんなに怖いのー!?

 

「『ハウシサイド・メイド』の効果! 『深淵のスタングレイ』をバウンスする!」

 

 ああっ、エイがメイドのバケツの中に! ん? ぐるぐる回って……投げたーっ! こっちに!

 いたっ!

 

「ケハハハハハッ!」

 

 むーっ、笑ってないで私の『苦紋様の土像』を越えてみせなよ!

 

「『ハウシサイド・マーチン』と『ハウシサイド・ボーイ』をリリースして『ハウシサイド・ホラピタル』をアドバイス召喚!」

 

 

『ハウシサイド・ホラピタル』

 レベル10 闇属性 機械族

 ATK2800 DFE2800

  ①このカードは自分フィールドのフィールド魔法を墓地へ送る事でのみ特殊召喚できる。

 ②1ターンに1度、このカードをリリースして発動できる。自分の墓地から合計レベルが9となるように『ハウシサイド』モンスターを任意の数だけ特殊召喚する。(同名モンスターは1枚まで)

 

 

 ギャーッ、ゾンビーッ! び、病院から! ゾンビがーっ!

 

「おいおい、もっと反応してくれよ~? つまんねぇじゃ~ねぇかよぉ~! バトルだ! 『ハウシサイド・ホラピタル』で攻撃ぃっ!」

 

 『苦紋様の土像』の守備力は2500。倒され―――ないや。『宮廷のしきたり』あるしね。

 うわ、ゾンビたちが『苦紋様の土像』に群がってる。……けど傷一つついてない。

 

「なんで壊れねぇんだよ!」

 

 だから『宮廷のしきたり』があるんだってば!

 

「あーうぜぇ、うぜぇうぜえっ! ターンエンドだ!」

 

 えーと、メイドが守備表示で残りは病院(2800)おじさん(1500)女性(1600)か。

 

「ドロー」

 

 うーん、なかなか。だけど本当に出していいのかなぁ……出さないほうがいい気がするなぁ……。

 えぇい、ままよ!

 

「『王家の神殿』、セット、『深淵のスタングレイ』。『苦紋様の土像』」

 

 そこの『ハウシサイド・ホラピタル』! 明らかに公害を越えて災害だから破壊だ!

 ―――おおぅ、電気系統が壊れたのか火花を出しながら爆発した。

 

「ち、この野郎!」

 

 んー。ん~~。どうしよ……出さなきゃ勝てないけど、出したらヤバいのは直感的に分かる。

 ―――あぁもう、後でいっぱい警察さんに怒られるとするよ!

 フィールドの永続罠3枚を墓地へ!

 

 黒雲が渦巻き、風が荒れ、雷が鳴る。

 赤き神と対立しろ、伝説に描かれし炎の幻魔!

 

「『神炎皇ウリア』」

 

 立ち上がる炎の柱、天災を体現する龍が姿を現す。そして敵対者に怒りの咆哮を放つ。

 ……いや、その、壮大に出過ぎ! 伝説なのは分かるからもっと静かに! せめて大人しく出てきて? 僕が怒られる事になっちゃうから。……やっぱり違うのにすれば良かったな……

 

「な……幻魔だと!? なんでこんなガキが!」

 

 破壊するカードが無いや。攻撃力もまだ3000しかないし。

 

「『失楽園』。ドロー」

 

 二枚ドローは……ふんふん、まぁまぁかな。

 

「『隣の芝刈り』」

「なっ、正気か!?」

 

 君に言われたくないな。そっちのデッキは大分減ってるよね……って21枚!? こっちは51枚だから……30枚を墓地へ。

 うわぁ。これは酷い。墓地の永続罠は21枚落ちて、24枚。

 だからウリアの攻撃力は24000。ダイレクトアタックで三人倒せるよこれ。

 

「あ……が、ば……かなぁ……!?」

「バトル。『神炎皇ウリア』、『ハウシサイド・ファザー』。ハイパーブレイズ」

「な、グアァァァアッ」

 

 一 撃 必 殺 だ! ふふん、次があるならエクストラデッキを使うんだね!



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『ハウシサイド』使いの誘拐犯、池田 十式

「が、は……」

 

 デュエルで負けるなんて、旅人とやったあの時以来じゃねぇか……!?

 俺様のモンスターたちが軽くねじふせられた……あんなガキに!

 ガキは無表情に俺様を見てくる。ちくしょう、ガキのくせに、ガキのくせにガキのくせにガキのくせに!

 幻魔なんて使いやがって、だったらもっと徹底的に潰してやったのによぉっ! 今すぐにだってヤってやりてぇ!

 

 だが……くそっ、あの幻魔のせいで体が動かねぇっ!

 

 くそっ、くそっくそっくそっ!

 

「おい大丈夫か!? ……杞憂だったようだな」

 

 無駄にごつい警察まで来やがった……あぁくそっ!

 警察に無理矢理立たされるが暴れる気力がねぇ。

 

「てめぇっ! 覚えてやがれ! ぜってぇぶっ潰してやる!」

「黙れ!さぁ逮捕だ! ―――あーこちら岡田。犯人を現行犯逮捕した。応援頼む」

 

 見慣れた手錠を嵌められる。ちっ……だが次は絶対、潰して、削って、なぶって、最後に笑いながら殺してやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 くはぁ……疲れたぁ……。何故か分からないけど、デュエル終わったとたんに凄い長い距離を走ったみたいになって、動けない。誘拐犯に逆ギレされて攻撃されなくて良かった。

 あ、もう立ってられないや。脱力するように座り込む。

 

「「あの!」」

 

 んー? もう首を動かすだけでも辛いんだけど……あ、あの姉妹(?)だ。

 

「「助けてくれてありがとうございます!」」

 

 いーよいーよ。困った時はお互い様だよ。……って喋れればいいんだけど。バックも無いし紙もペンも無い。この子たちが親切にも持ってってくれたみたい。

 仕方無く首だけを振る。気にしないで。

 

「その、どうお礼すればいいのか……」

「あなたすっごいデュエル強いねー! ねっねっ、デュエル教えて!」

 

 ありゃ、妹さんは僕にお礼したいみたい。お姉さんの方はデュエルしたいの?

 

「もー、お姉ちゃんは……」

「さっきのでっかい龍凄かったよ! ねえねえ、なんていうモンスターなの? 私たちにも見せてよ!」

 

 ごめんね、流石にもう一回はしたくないかな。っていうかウリアはだめ、封印! 二度と出してあげない!

 首を振る。

 

「え~」

「お姉ちゃん落ち着いて! 先にお礼しなくちゃ!」

 

 妹ちゃんも結構頑固だね?

 

 

 

 

 

 留置場。

 堅牢に作られたその中で十式(としき)は貧乏揺すりしながら座っていた。

 

「……どうせ居るんだろ~旅人さんよぉ~」

「まぁね」

 

 十式が虚空に向かって呟くと、目の前に闇が現れそこから楽しげな声が聞こえてきた。

 

 そうして、闇の中から少年が歩き出てくる。

 

「また捕まったんだね」

「……まぁな。ふざけたガキが居やがったぜぇ」

 

 十式は苦々しげに壁を叩く。その様子を見て少年はニコニコとした声で質問する。

 

「どんなカテゴリーだったの? ハウシサイドはそう簡単には負けない筈だけど」

「ウリア」

「ん?」

 

 少年はよく聞こえなかったと聞き返す。十式はイライラしつつも言い直す。

 

「罠モンスターを基本にしたウリアだ。しかも芝刈り型」

「ウリア……幻魔かぁ」

 

 少年はうんうんと頷く。

 

「じゃ、その子頂戴」

「……なんだって?」

 

 今度は十式が聞き返す事になった。

 

「はいコレ、ハウシサイドの新しい力」

「……良いのか? 俺は一度負けてんだぜぇ~?」

 

 十二枚のカードを渡してくる少年に、十式は疑問の声をあげる。

 十式に旅人と呼ばせているこの少年はおよそ少年とは言い難いほどの冷静さと、子供らしい無邪気な残酷さを持っている。

 使えない部下は切り捨てられる事を知っている十式には、自分を生き残らせる理由が分からない。

 勿論、切り捨てられないのならそれに越した事はないが。

 

「理由はね? まず君がそれなりに強いデュエリストだっていうこと。つまり今までで一番長続きしてるんだ。たった一回の負けで手放すのは惜しいかな。

 次に、君を倒したその子が僕の求めている相手の可能性が高いんだ。その子の顔とかを知ってるのは、僕じゃなくて君だ。

 それに今渡したハウシサイドたちは十分強いよ。使い方を間違えないようにね」

 

 旅人はそう言い残して闇の中に戻っていく。

 

「……あー、旅人さんよぉ~」

「なんだい?」

「さっきから表情がおかしいぜぇ~」

「そーう?」

 

 旅人はそう楽しげに言いながら、()()()()()()()()をぐにぐにと揉む。

 

「なかなかねー。こんな感じ?」

 

 眉根を寄せて鼻を上げる。つまり、子供が怒った顔。

 

「ん~微妙……ってか俺様も連れてくんだよなぁ?」

「みゅむ」

 

 顔を揉みながら頷き、旅人は今度こそ闇の中へ消えた。




『ハウシサイド』
上級モンスターからの大量展開を得意とするカテゴリー。
フィールド魔法で上級モンスターを呼び出し、そこから下級モンスターを展開し相手の場を荒らす事が基本の動きとなる。
下級モンスターはレベル・属性・種族がバラバラな上にチューナーも存在しない。よってアドバンス召喚のリリースとなるか、或いはリンク召喚の素材とするのが良いだろう。
だがフィールド魔法が無ければ上級モンスターも特殊召喚できず、展開も出来なくなる。


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承ける 二度寝、三度寝

「ただいまー!」

「ただいま」

 

 お邪魔しまーす!

 あの誘拐犯騒動から三日、僕は双子(?)ちゃんの家に遊びに来た。デュエルを教えるんだけど、僕に上手く出来るかなぁ?

 因みに今日まで遊びに来れなかった理由は簡単で、昨日までの二日間、僕の保護者となっている警察さんが忙しくて外出の許可が出なかったからだ。

 なんでも、あの誘拐犯がまた脱走してその責任を追及されたとか。あの誘拐犯、既に一度脱走しててやっと捕まったらしいからその責任は大きい……とかなんとか。

 確か誰かの手引きがあったとか言ってて、今はその内通者を探りだそうってなったらしい。

 僕も警察さんから色々聞かれたけど……新しい事は分かんなかったみたい。ウリアについては軽く注意されただけだった。

 

「こっちこっち!」

「お母さんはお仕事でいないから、ゆっくりしてください」

 

 うん。へー、普通にマンションの部屋だね。

 バッグからスケッチブックとペンを取り出す。警察さんの同僚の女の人はどっちも市販のやつだって言ってた。

 

「じゃあじゃあ、早速しようよ!」

「あの、お願いします」

 

 よーし、じゃあ……『デッキを見せて』っと。

 二人(?)はデッキを取り出して見せてくれた。

 

 ふむふむ。

 前デュエルしたときと全然代わってない、のかな? 『可愛いお目々の桃色龍』に『上昇薬』『下降薬』をつけて『可愛いお目々の覚醒龍』と『可愛いお目々の滅気龍』を並べる感じ。

 

 モンスターは―――

『可愛いお目々の桃色龍』、『可愛いお目々の休息龍』が3枚ずつ。

 ペンデュラムモンスターの『心の眼の騎士』、『心の眼の魔道士』も3枚ずつ。

『可愛いお目々の覚醒龍』と『可愛いお目々の滅気龍』は1枚ずつ。

『ロード・オブ・ドラゴン―ドラゴンの支配者』が2枚。

 

 支配者さん必要かなぁ。個人的にはコンボ性が高すぎて使いにくいと思うけど。

 

 

 魔法は―――

『上昇薬』『下降薬』と『可愛いお目々の悲劇』が3枚。

『盗人ゴブリン』が3枚。

『増援』に『ドラゴンを呼ぶ笛』、そして『融合』が1枚ずつ。

 

『可愛いお目々の悲劇』……イラストが酷い。ただ鱗の色がピンクだというだけで、意地悪なドラゴンたちから岩を投げられてて、その岩が眼にぶつかってて……そのせいで眼が凹んでハート型に……。

 むうぅ、うぅ、落ち着こう……ただのイラストなんだから。

 

 さて、『増援』は『心の眼の騎士』用かな。『盗人ゴブリン』は『復活の福音』に入れ替え……は駄目か。『可愛いお目々の桃色龍』はレベル6。入れるなら『銀龍の轟咆』だね。

 ……融合? そういえばエクストラデッキも見なきゃ。

 

 

 先に罠を見ようか。

 

『豪炎のバリア―ファイヤーフォース』に『八汰烏の骸』が3枚ずつ。

 これは知らないカードだね、『嘆きの大泣き小鳴き(ハートクライ)』が3枚。

 

 

『嘆きの大泣き小鳴き(ハートクライ)

 罠カード

 ①自分フィールドの『ハートアイズ』モンスターを対象として発動できる。このターン、相手はそのモンスターとその同名モンスターにのみ攻撃できる。

 ②墓地のこのカードを除外して発動できる。このカード及びその同名カード以外の、除外されているカードを2枚まで持ち主の墓地へ戻す。

 

 

 ふーん。専用の『仁王立ち』みたいな感じ。

 イラストは『可愛いお目々の桃色龍』がうずくまってわんわんと泣いているところを『心の眼の騎士』と『心の眼の魔道士』が慰めてる……のかな? 魔道士のほうは滝のように飛んでくる涙を傘で受けてる。

 

 うーん……罠は、『八汰烏の骸』を何か強いのに変えたいかな。欲を言えば『夢幻泡影(むげんほうよう)』とか『レッド・リブート』とか。

 

 

 そんな事をスケッチブックに書き出す。うーん、レベル6っていうのがネックだなぁ。『召喚士のスキル』も考えたけど手札に加えるだけならペンデュラムで十分だし。むしろペンデュラムモンスターをサーチする手段を考えた方がいいかな。どっちも通常モンスターだし何かあるでしょ。

 

 あ、そうだった。エクストラデッキも見せて!

 

「うん!」

「はい。えっと、これしか無いですけど」

 

 ふんふん。3枚か。『始祖竜ワイアーム』が2枚に……これも知らないカードだ。えぇと―――

 

 

可愛いお目々の龍娘(ハートアイズ・ドラゴンガール)

 レベル6 光属性 ドラゴン族 融合

 ATK1800 DFE0

 このモンスターはフィールド・墓地の『可愛いお目々の覚醒龍』『可愛いお目々の滅気龍』『上昇薬』『下降薬』をそれぞれ1枚以上除外することで融合召喚扱いで特殊召喚できる。

 ①このモンスターの攻撃力は除外されている装備魔法カードの数×300アップする。

 ②1ターンに1度自分フィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊し破壊した枚数×300ポイントのダメージを相手に与える。

 ③このカードが破壊される場合、代わりに除外されている自分のカード2枚を墓地へ戻す。

 

 

 ―――ピンクの服を着た女の子だ。え、待ってなんでどうしてこうなった!?

 腰まである長い髪もピンク色で、服もどちらかというと軽い鎧みたいな感じ。ピンクだけど。

 腰に付けてる武器は……剣? あ、違う。よく見たらハリセンだ。だから攻撃力が低いんじゃ……。

 ウインクしてるけど、開いてる方の眼の奥にハートが描いてある。

 あ、小さいけど背景で『心の眼の魔道士』と『心の眼の騎士』がグッジョブしてる。

 

 ……、えっと、やばいツッコミが追い付かない。というかどこからツッコムべきかわかんない。

 

「可愛いでしょ! 私たちの切り札なんだー!」

「なかなか強い状態では出せないんですけどね……」

 

 だよね。攻撃力上昇効果は除外されてる装備魔法……つまり実質的に除外されている『上昇薬』と『下降薬』の数に依存する。……けど、そんなに大量にサーチ出来ないし、2枚だけじゃ融合しないで『可愛いお目々の覚醒龍』と『可愛いお目々の滅気龍』を並べてる方が強い。

 っていうか『可愛いお目々の滅気龍』の全体魔法耐性効果が強すぎるよ。自分モンスターは相手の魔法の効果を受けないって……。

 だとすると『アームズ・ホール』なんていいかもね。どうせ滅多に通常召喚しないし。あとは、レベル1チューナー入れて『パワーツール・ドラゴン』とか? チューナーは……『ガード・オブ・フレムベル』とか『蒼き目の』シリーズとかかな。

 

 よーし、大体欲しいカードは分かった! それじゃあカードショップに行こう!

 

「「おー!」」

 

 

 

 

 

 警察さんからはある程度お小遣いを貰ってる。そんなに高くなければデッキ一つを強化するカード数枚は買える。

 カードショップは近くの小さなお店を選んでもらった。……あんまり大きい所に行くのは二人(?)が嫌がってるように見えたからね。案の定、他に人は居ない。

 僕自身、客観的に見たら記憶喪失で無表情で寡黙とかいう変人だから気にしてないけど、二人(……で、いいか)は一つの体に二つの頭っていう……その、奇形児だから……他人の目とか、今まで苦労してきてる筈。

 ここに来る途中だって不良っぽい人たちがニヤニヤしながらこっち見てたり、ギョッとした顔で早足になる女の人とかいたし。

 けど二人は気にしてないみたいに楽しそうにしてた。健気だなぁ……ホロリ。

 

「ねーねー! これ見て!」

 

 うん? 僕まだ『アームズ・ホール』見つけてないよ?

 

「このポスター! これ本当かな!?」

「本当だったら、凄く助かるんですけど……」

 

 んん? 何々? 張り紙に手書きで何か書いてある。

 

『店長とのデュエルに勝てば代金から二割引き。気楽に店員に言ってください』

 

 これだけ。簡潔だね。

 

 ―――え、ほんと!? タダにはならなくても、二割引はバカに出来ないよ!?

 

「ねー、やろーやろー!」

「正直私たちお金が少ないので……」

 

 うんうんと頷く。よーし、じゃあ予定より少し多目に選ぼう! ……でも予算内でね。負けてお金を払えませんなんて恥ずかしいし。

 

 っていう訳で、『銀龍の轟咆』二枚に『アームズ・ホール』一枚をレジで頼む。……いや、だって元々そんなにお金ないし……けっこう『アームズ・ホール』が高くて……。

 

「デュエルしてー!」

「お願いします!」

「はいはい、店長を呼んで来るからちょっと待ってね」

 

 店員さんは営業スマイルで店の奥に行く。お店って公平だなぁ。

 

「どんなデッキなんだろーね」

「私たちで勝てるかな……?」

 

 あ、お金は僕が払うから多分デュエルするのも僕だよ。

 ……ってスケッチブックに書いてる間に店長さんがやってきた。

 ポッチャリ体型で、大きくて、でかい男の人。

 

「ふわぁ~……ん、客はどこだぁ?」

 

 下だよ下! 僕たちそんな天井に張り付かないよ!

 

「こっちこっち!」

「ん~? おぉ!? ……お前さんたちカードの精霊か~? なんてな」

 

 眠そうにあくびした店長さんは僕たちを見て驚いたように眼を開けた。即座に冗談を言ってきたけど、カードの精霊?

 

「「カードの精霊?」」

「あ~、気にすんな。んでどっちがデュエルするんだ?」

「「はいっ!」」

 

 僕と二人は勢いよく手を上げた。……僕がやるんだよ? 二人は待っててね。

 

「「えぇー」」

「おぉ? んじゃあ、そうだな。本当は精霊とはやりたくないんだけどな~」

 

 むむむ、カードの精霊か~。まぁ悪口ではなさそうだし。

 

「ここじゃ~狭いしな、お嬢さんたち付いてこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュエル!

 

「俺の先攻だ~。モンスターをセット。まずはフィールド魔法、『スリーマー・ダブルベッド』だ~」

 

 フィールドが二つのベッドに変わる。うわー、ふかふかだっ!

 

 

『スリーマー・ダブルベッド』

 フィールド魔法

 ①フィールド上の『スリーマー』モンスターの守備力は200アップする。

 ②自分フィールド上の『スリーマー』モンスターの表示形式が変更された場合に発動できる。フィールド上のモンスター1体の表示形式をその『スリーマー』モンスターと同じ表示形式に変更する。

 

 

 んー、でもふわふわ過ぎて立ちにくい。店長さんは座ってるし。

 

「そして速攻魔法『スリーマー・トーク』を発動だ~」

 

 

『スリーマー・トーク』

 速攻魔法カード

 このカードと同名カードの①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動出来ない。

 ①自分フィールドの裏側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを表側守備表示にする。

 ②『スリーマー』モンスターの効果が発動した場合に発動できる。墓地のこのカードを手札に加える。

 

 

「効果でセットモンスターをリバ~ス、こいつは『スリーマー・エルフ』だ~。まずはリバース効果発動、チェーンで墓地の『スリーマー・トーク』の効果だ~」

 

 うーん、リバースモンスターのデッキか……。

 

 

『スリーマー・エルフ』

 レベル4 風属性 天使族 リバース

 ATK0 DFE1400

 ①このモンスターはフィールド上に存在する限り守備表示となり攻撃表示にならない。

 ②このカードがリバースした場合に発動できる。手札の『スリーマー』モンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する。

 

 

 出てきたのは切り株の上でうたた寝をしている小さなエルフ。ふわぁと可愛くあくびをして、矢を使ってのろしを上げた。

 

「『スリーマー・トーク』を回収、その後『スリーマー・エルフ』によって『スリーマー・ドワーフ』をセットだ。ん~で、『スリーマー・ダブルベッド』の効果だ~。『スリーマー・ドワーフ』の表示形式を『スリーマー・エルフ』と同じ、表側守備表示へと変更~」

 

 

『スリーマー・ドワーフ』

 レベル4 地属性 岩石族

 ATK0 DFE2100

 ①このモンスターはフィールド上に存在する限り守備表示となり攻撃表示にならない。

 ②このカードがリバースした場合に発動できる。このターンのエンドフェイズ、デッキから『スリーマー』カード1枚を手札に加える。

 

 

 エルフがぺしぺしとセットカードを叩くとカードがリバースする。

 出てきたのは酒樽にグダーっと寄りかかったドワーフだ。プカーっと口から泡が出ていった。……なんの泡なんだろうね?

 

「効果発動~……と言ってもエンドフェイズに効果が適用されるタイプだ」

 

 僕、気付いちゃったんだけどさ。店長さんの語尾を伸ばす口癖……あれ、意識してやってるよね。

 

「カードをセットしてエンドフェイズ、ドワーフの効果によって『スリーマー・ターンオーバー』をサーチ。これは速攻魔法~、よって発動~」

 

 

『スリーマー・ターンオーバー』

 速攻魔法

 このカードと同名カードの①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動出来ない。

 ①自分フィールドの表側表示モンスター2体以上を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。

 ②『スリーマー』モンスターの効果が発動した場合に発動できる。墓地のこのカードを手札に加える。

 

 

「エルフとドワーフを裏側に~。さ~ぁお前さんのターンだぁ~」

 

 

 さぁーて!

 

「ドロー」

 

 僕の四つ目のデッキ。これは……大丈夫かな? 来てほしいカードが無い。まぁ動けるしいいか。

 

「『メタファイズ・ラグナロク』」

 

 効果でデッキトップ3枚除外! ……『魂の解放』、『針虫の巣窟』、『メタファイズ・アセンション』。うーん微妙。

 攻撃力300アップして攻撃力1800だ! さーらーにー!

 

「『メタファイズ・アセンション』、『アシンメタファイズ』」

 

 除外されたからサーチ! んじゃあそのまま発動!

 

「『アシンメタファイズ』、ドロー」

 

『メタファイズ・ネフティス』を除外してドロー! お、いいね!

 ……一応攻撃力変動効果が勝手に発動するけど、適用されるモンスターが居ないね。

 

「セット、セット、セット。バトル」

 

 確かエルフの方なら倒せたよね。

 

「『メタファイズ・ラグナロク』」

「おぉ~っと。『スリーマー・エルフ』は破壊されるがリバース効果、チェーンして墓地の『スリーマー・ターンオーバー』の効果だ」

 

『スリーマー・ターンオーバー』が墓地から手札に戻って、エルフののろしがまた上がる。今度出てくるのは?

 

「『スリーマー・マーメイド』をセットだ~」

 

 

『スリーマー・マーメイド』

 レベル4 水属性 水族

 ATK0 DFE2000

 ①このモンスターはフィールド上に存在する限り守備表示となり攻撃表示にならない。

 ②このカードがリバースした場合にお互いのフィールドのモンスターを1体ずつ対象として発動できる。そのモンスターの表示形式を裏側守備表示にする。

 

 

 名前からして多分人魚だ。これ以上僕のやることは無いからターンエンドかな。

 

「ターンエンド」

「落ち着け~、エンドフェイズに速攻魔法『スリーマー・トーク』だ。効果で『スリーマー・ドワーフ』をリバ~ス。『スリーマー・ドワーフ』のリバース効果、続けて墓地にいった『スリーマー・トーク』の効果だ~」

 

 うーん、面倒だなぁ。『スリーマー・トーク』が回収されてドワーフがまた泡をはく。

 

「今はエンドフェイズだから、『スリーマー・サラマンドラ』をサーチだ~」

 

 

『スリーマー・サラマンドラ』

 レベル4 炎属性 炎族

 ATK0 DFE1800

 ①このモンスターはフィールド上に存在する限り守備表示となり攻撃表示にならない。

 ②このカードが戦闘によってリバースした場合に発動できる。相手に1000ポイントのダメージを与える。

 

 

 むぅ、サーチさせちゃったか。守備力高いからなぁ。

 

「んじゃあ俺のターン、ドロー。メタファイズはスタンバイフェイズに色々してくるんだったな~?」

 

 その通り! 流石に店長してるだけあるね!

 

「『メタファイズ・ネフティス』、『メタファイズ・ダイダロス』」

 

 何かチェーンしたほうが良いかな。……まだいいか。とりあえずモンスターをサーチしておく。

 

「メイン。『スリーマー・マーメイド』をリバースだぁ~。そして効果~」

 

 マーメイドが出てくる。……その、『強欲なウツボ』とよく似てる抱き枕だね。

 

「ラグナロクとマーメイドの表示形式は裏側守備表示だぁ~」

 

 ちょっ、人魚が釣りしないで!? なんかイメージと違うよ!

 っていうかラグナロク! 釣られないでよぉ!

 

「そしてモンスターをセット、『スリーマー・トーク』で即座にリバ―――」

「『マクロコスモス』」

「―――ァ~ス、『スリーマー・サラマンドラ』。効果で1000ダメージだぁ」

 

 うぐ、燃えてるトカゲが攻撃してきた。炭でできたお家素敵だね。

 

「『スリーマー・トーク』は除外される~。困るな~。『スリーマー・ターンオーバー』を発動~、ドワーフとサラマンドラを裏側守備表示に。カードをセットしてタ~ンエンド~」

 

 やっぱり強いなー、『マクロコスモス』。でも守備表示で耐えられるとメタファイズはつらい。

 

「ドロー。……スタンバイ、『メタファイズ・ディメンション』」

 

 永続罠カードを発動しておく。

 ドワーフは色々サーチしてくる守備力2100。だけどちょっぴりフィールド魔法で守備力上がって2300。

 マーメイドはお互いのモンスターを裏側守備表示にする。守備力は2000から上がって2200。

 サラマンドラは1000バーン。守備力は1800から上がって2000。

 

 マーメイドは戦闘で破壊しちゃえば……多分他に表側のモンスターが居なければ不発する。

 サラマンドラとドワーフはリバースしたらほぼ確実に効果が残っちゃう。じゃあ―――

 

「『アシンメタファイズ』、ドロー」

 

 あ、また『アシンメタファイズ』の攻撃力変動効果が無駄うちされた。弱くないんだけどね、どうしてもタイミングが難しいんだ。

 ちなみにダイダロスを除外した。

 

「『メタファイズ・ディメンション』」

 

 メタファイズが除外されたから、ドワーフを除外!

 

「ん~、やるな~」

 

 当然! ラグナロクをリバース。攻撃力が元に戻っちゃった。……そして!

 

「『メタファイズ・ラグナロク』」

 

 じゃーん、二体目! 三枚除外!

 ええっと、『メタファイズ・ネフティス』『ネクロフェイス』『メタファイズ・ファクター』。

 攻撃力は600アップで2100!

 

「『ネクロフェイス』」

「おぉ」

 

 更にお互い五枚除外!

 んーと、『メタファイズ・アセンション』『マクロコスモス』『次元の裂け目』『針虫の巣窟』『封印の黄金櫃』かぁ。また微妙な……。

 でも効果は連鎖する!

 

「『メタファイズ・アセンション』、『アシンメタファイズ』」

 

 サーチして発動! 更にそのまま『メタファイズ・タイラント・ドラゴン』を除外!

 

「『アシンメタファイズ』、ドロー」

 

 あー、んー。僕のフィールドは『メタファイズ・ラグナロク』が2体、『アシンメタファイズ』が2枚、『メタファイズ・ディメンション』。そして『マクロコスモス』と伏せカード。墓地にはメタファイズカードはない。

 対して店長さんのフィールドはセットカードに裏側のマーメイドとサラマンドラ。

 ……あ、そっかこのままじゃマーメイドを倒せないじゃん。

 

 

「バトル。『メタファイズ・タイラント・ドラゴン』」

 

 攻撃力2100のラグナロクでサラマンドラに攻撃!

 

「ぐっ、だがサラマンドラによってお前さんにダメージ!」

 

 あちちっ!

 うー、こっちはもう2000もダメージくらったのにダメージを与えられてない!

 

「ターンエンド」

「うひ~、どうしたもんだか。ドロー、スタンバイ」

「『メタファイズ・ネフティス』、『メタファイズ・タイラント・ドラゴン』。『メタファイズ・タイラント・ドラゴン』、『メタファイズ・タイラント・ドラゴン』」

 

 スタンバイフェイズとエンドフェイズは直接チェーンしなければ処理は別々に行われる。除外のネフティスでタイラント・ドラゴンをサーチして、除外のタイラント・ドラゴンでサーチしたタイラント・ドラゴンを特殊召喚!

 これでタイラント・ドラゴンは罠が効かないうえにモンスターにたいして二回攻撃が可能!

 

 まだあるよ!

 

「『メタファイズ・ダイダロス』、『メタファイズ・ネフティス』」

 

 ダイダロスによってデッキのネフティスを除外!

 そして、メタファイズが除外されたよ?

 

「『メタファイズ・ディメンション』」

 

 マーメイドは除外! フィールドはセットカードだけ! しかも手札は1枚!

 

「ん~……こりゃあ、どうしようも無いな~……たはは、俺の負けだ~」

 

 勝ったー!



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『スリーマー』使いの店長、神戸 凪

「やれやれ~。息子の様にはいかない、か」

 

 ふぅー、勝った勝った。かなりギリギリだった。っていうかサレンダーしてくれなければ泥試合だっただろうし。

 『スリーマー』……厄介な相手だったね。

 

「ねえねえ! 店長さんってもしかして」

「神戸君のお父さんですか? 同じカテゴリーを使ってたから……」

 

 少し離れて見てた二人が駆け寄ってきた。ふーん、学校の友達の家だったのかな。

 学校かぁ。家すら分からない僕はどうなるんだろう。気づいたら学校をやり直し! とかやだなぁ。

 

「ん~? 嬢ちゃんは……あー、嬢ちゃんたちは、息子を知ってるのか?」

「うん! いっつも寝てるよ!」

「いつ勉強してるんだろう? っていつも思います!」

 

 二人の言葉を聞いて、店長さんはその大きなお腹を抱えて笑いだした。

 

「ぶっ、はははははっ! そ~かそ~か! いやぁ息子は全然学校の話をしてくれなくてな! はっはっはっ、そりゃあ寝てたら話もなにも無いか!」

 

 おぉ……なんか真横で太鼓を鳴らされてるみたいだ。ぐわんぐわんくる。

 

「よーし、んじゃあ二割引きに加えて一枚だけサービスしてやろう」

「「 やったー! 」」

 

 え、いいの!? じゃあ『アームズ・ホール』をもう一枚買えるね!

 

 ということでお会計してと。

 

「また来てくれよ嬢ちゃんたち。今度は負けないからな!」

 

 また来るよ。今度も勝つからね!

 さてさて。『銀龍の轟咆』と『アームズ・ホール』が二枚ずつ買えたから、大分強くなるよ。

 

「ありがとう師匠!」

「ありがとうございます師匠!」

 

 うんうん……うん? 師匠?

 

「だって強くてクールでカッコいいし!」

「私たちに色々教えてくれるから……ダメ、ですか?」

 

 うん、名前が無いから呼びにくかったよね。別に悪口じゃないし良いよ。首をふる。

 警察さんはガキんちょとか呼んでくるから、それに比べたらね。

 

「やった! これからも一緒に遊んでね! 約束だよ!」

「やった! これからも色々教えて下さい! 約束です!」

 

 うん、約束! 指切りげんまん! 今日はもう帰るけど、また遊ぼうね!

 ばいばい!

 

「「 ばいばーい!」」

 

 

 

 

 

 

「……行っちゃったね」

「うん」

 

 今日は日曜日。明日から五日間はまたあの地獄を見る事になる。

 

 今までは絶望しか無かったけれど、今は師匠という光が出来た。

 

 希望が、出来た。

 

 自分たち(バケモノ)を見ても驚かなかった。自分たちよりも凄く強かった。誘拐犯と間違えた自分たちを許してくれた。誘拐犯から助けてくれた。

 

 自分たちには永遠に訪れないと思っていた、あの優しい世界を見せてくれた。

 

 だから生きていられる。また会いたいと思うから。

 

「帰ろっか」

「うん」

 

 二人は、買ってくれたカードをしっかりと握った。




『スリーマー』
リバースしてバーンダメージで勝利を目指すカテゴリー。
『スリーマー』モンスターはリンクモンスター含めて一切の攻撃が出来ない。従って勝つためにはどうにかしてバーンを与えていくか、その高い守備力を活かして『エクゾディア』や『ウィジャ盤』、『終焉のカウントダウン』等の特殊勝利を狙う必要がある。


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小さいから堪え忍ぶ

三人称視点にしてたら遅くなりました。……でも、こうしなきゃいけなかったんだ……ストーリー的に……!


「GM Qur(キュアー)の効果だ! モンスターを宣言!」

 

 うぐ……デッキトップはメタファイズ・ネフティス。

 

「うむ、セットさせてもらう。続けてHyw(ヒュー)の効果、同じくモンスターを宣言だ!」

 

 うわ、だから勝手に取らないでよ! ……しかもよりによってピン刺しのメタファイズ・エグゼキューターを捨てられるなんて……。

 

「終わりだ。QurとHywでダイレクトアタック!」

 

 うぎゃー! 負けたー!

 うぅ……せめてアシンメタファイズさえくればぁ……。

 

「ふぅ。今回は手札事故か?」

 

 頷く。

 警察さん、やっぱり強いなぁ。最初のデュエルから一回も勝てない。っていうか全体的にGMのモンスター効果当てすぎなんだよ……じゃなきゃ手札ボロボロの状態からスタートしないのに……。

 サイレントか破壊剣なら墓地発動あるけど、メタファイズと罠モンスターは無いんだよね。まあ罠モンスターは封印なんだけど。

 

前、少しは手加減しなよ。

 ーか手札無くさせるとか……

 わいそうに。こ

 じゃあデュエルと呼べないよ」

「む……ボロクソ言うじゃないか。そういうカテゴリーなんだから仕方無いだろ」

 

 変な話し方の女の人は川内水砂(みずな)っていう名前らしい。砂を『な』って読むんだって。

 クリストロンを使ってるらしいんだけど……デュエルしてくれない。なんでだろ?

 

「さーて休憩終わり、だ」

らなきゃいけないのが溶岩

 まりみたいに

 ってるからね……」

 

 二人ともお仕事頑張ってね! ……僕はどうしようかな。正直やることが無いんだよね。

 うーん。まぁ散歩でもするかな。

 

 

 

 

 

 

 

「へっへっ、こっち来いよ!」

「いた、いたい!」

「やめてよ!」

 

 とある小学校。その近くの路地裏にて。三人の男子が一人の、だが二人の少女を無理矢理引っ張っていた。

 だがそのうち一番身長が低い男子はビクビクと怯えており、もう一人は嫌そうな顔をしていた。

 

「ね、ねぇ涼。あんまりこれに関わらない方が良いって……」

「は? なんだよ洋司(ようじ)。びびってんのか?」

「いやそうだけどそうじゃなくてさ……」

 

 洋司と呼ばれた男子は気味悪そうに少女を、佐藤姉妹を見ていた。本当の所、彼は二つの頭を持つ化け物に関わりたくないのだ。

 だがいじめの主犯である涼は違った。

 

「はぁ、ほんっとお前……ま、いいか。洋司なんかよりも、おい化け物。なんでお前みたいな化け物が『アームズ・ホール』みたいなレア(光ってる)カードを持ってんだよ。生意気だぞ!」

 

 涼は佐藤姉妹を蹴ろうとするが既に姉妹は逃げ出していた。涼が洋司と話している間に逃げ出したのだろう。

 涼はイライラと地団駄を踏む。

 

「くっそ! 何やってんだ豆野郎! 探してこい!」

「え、で、でも昼休み終わっちゃうんじゃ……」

「うっせぇ行ってこい!」

 

 豆野郎と呼ばれた男子は慌てて駆け出す。

 佐藤姉妹は身体能力が低い。頭が二つもあるからかいつもフラフラとしていて走れない。せいぜい速歩き程度、きっとすぐ近くに居るはずだ。

 

 ちなみに握力も左右で変に偏る。しかも毎回強さが変わる。

 それと、テストも他の人と別の部屋でやっている。そのせいで良い点数をとっても周りからはズルいと思われている。二人がかりで相談しながらテストを受けているのではないのか、と。

 そしてデュエルも、カテゴリー的にそれなりの速さはあるのだが如何せんステータスが低く、あまり戦績はよくない。

 よくなかったのだ。先週までは。

 

「見つけた……!」

 

 特徴的な頭は学校に後頭部を向けていた。それを見た豆野郎―――種田は足を止める。

 捕まえるのを諦めたのではない。捕まえなければ涼に殴られる。それは嫌だ。

 単に捕まえるだけではなくついでに家を見つけてしまえ、と……まさしく悪魔のささやきが頭の中をよぎったのだ。

 種田はいじめられたくない。いじめるのも嫌いだがいじめられるよりは断然いい。

 あの姉妹は、種田がいじめられない為の『スケープ・ゴート』なのだ。

 

「……」

 

 もはや午後の授業に遅れるかもしれないというのは種田の頭の中から消えていた。

 

「ねぇ真加。学校戻らなきゃ」

「戻りたくないよお姉ちゃん……そうだ、師匠の所に行こう」

「師匠の……うん、そうだね!」

 

(師匠? もしかして、その師匠って人があの姉妹に『アームズ・ホール』を上げたのか?)

 

 種田は姉妹を追跡する。ちょっとだけ距離をおいて、こそこそと隠れながら。

 だが姉妹に見付からないようにするため、その他の人には見られてしまう事が頭から抜けていた。

 

 その結果。

 

「あ、師匠ー!」

(あ、二人ともやっほー……ってなんか居るー!?)

 

 こうなる。

 

(えっとえっと、えー)『後ろにいるのはお友だち?

「え?」

「後ろ?」

 

 佐藤姉妹が遂に後ろを向く。種田は慌てて電信柱の後ろに隠れるが時すでに遅し。

 

「「 なんか居るー! 」」

「げっ!」

 

 種田は見つかってしまったが、逃げるかどうするか混乱して決められない。決められるならパシリのような立場にならない。

 

「あー、でも、その、種田君は……」

「友だちではないです」

(ふーん……)『そうなんだ

 

 無表情にこてんと首を倒す師匠を、姉妹は見れない。この優しい師匠に「私たちいじめられてます」なんて言いたくない。

 しかし、棒立ちしてた種田は我にかえる。姉妹からは逃げられるだろう。だがあの無表情に文字を書いていく訳の分からない人形のような人間―――種田には人間のような人形に見える―――からは逃げれる気がしない。

 だがあれが師匠だというならば。

 

「そ、そこのお前! 俺とデュエルしろ!」

(へ?)

「へ、へへへ……お前のデッキ、きっとレアカードばっかりなんだろ? 俺が勝ったら、そのデッキを貰ってやる!」

(は?)

「「 え? 」」

 

 見知らぬ子のあんまりな言葉に師匠は姉妹ともども困惑する。

 だが種田はそんな困惑など気が付かずにデュエルディスクを構える。それを受けて師匠もディスクを構える。

 その態度は全く動揺していないように見えて、逆に種田が動揺する。実際は顔に出ていないだけなのだが。

 

「し、師匠!?」

「大丈夫なの!?」

(うん、大丈夫……かな?)

 

「俺の先攻だ! 『惑星探査車(プラネット・パスファインダー)』を召喚! リリースしてデッキからフィールド魔法、『化合電界(スパーク・フィールド)』をサーチだ!」

(デュアルかー。確かに召喚権増えるし『惑星探査車』でもいいのか)

 

 師匠は心の中でうんうんと頷く。デュエルが始まってしまえば集中できる。

 

「『化合電界』発動! これの効果を適用してデュアルモンスターを召喚できる……『デュアル・ソルジャー』を召喚」

 

 緑色の服を着た小さな戦士が現れる。

 種田は少し相手の様子を伺う。そこにはずっと変わらない無表情。

 

「 カードを2枚セットして装備魔法、『スーペルヴィス』を『デュアル・ソルジャー』に装備してターンエンド!」

「ドロー」

 

 装備魔法によって少し大きめのダーツが戦士の手に現れる。

 師匠は手札を見て、ちょっと考えてからモンスターを召喚する。

 

「『マスマティシャン』。『H(ヒロイック)・C(チャレンジャー) サウザンド・ブレード』」

 

 たっぷりと髭が生えたおじさんが現れ、デッキから物々しい鎧の戦士が墓地へ送られる。

 直後におじさんは光と共に消え去る。

 

「なっなんだ?」

「『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

 

 魔法使いをリリースすることでのみ特殊召喚可能な女性が光の中、降り立つ。

 

「ウルトラ、レアカード……」

 

 種田が茫然と呟くが、相手には聞こえていない。

 

(『デュアル・ソルジャー』は一回戦闘破壊できないし、バトルする度にモンスターが増えちゃう……となると)

「『愚かな埋葬』。『Em(エンタメイジ) トリック・クラウン』」

 

 ピエロが墓地に送られ、直後にフィールドに現れる。だがその際の爆発で師匠はダメージをくらう。……が、それも展開に必要なもの。

 

「『H・C サウザンド・ブレード』」

「うっ……レベル4が2体」

 

「師匠がエクシーズ?」

「見たことないけど……」

 

 姉妹の言う通り、エクシーズ召喚はしない。物々しい鎧が光とともに消え去る。

 

「また!」

「『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

 

 光の中から現れたのは剣を持ったイケメン。ちなみにソードマンもマジシャンもレア度はウルトラレアだ。

 攻撃の手は止まらない。

 

「『沈黙の剣』」

「なっ、攻撃力が!」

 

 サイレント・ソードマン専用の魔法により、攻撃力が1500もアップする。しかもこのターンだけとはいえ相手の効果に完全耐性を得ている。

 これで師匠の手札は1枚。そして種田の手札は0枚。

 

「バトル。『サイレント・バーニング』」

「っ! ……え?」

 

 種田は唐突に使われた魔法カードに警戒するが、直後に6枚ものカードがドロー出来る事に気付く。

 

「どういう……ドロー!」

「ドロー」

 

 お互いに6枚ドローし、手札が6枚になる。

『サイレント・バーニング』は相手よりも手札が多くなければ発動すら出来ないが、手札から発動する場合は自身も1枚として数える。よって発動可能。

 

「『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』、サイレント・バーニング」

「『月の書』だ!」

 

 月の光がマジシャンへと降り注ぐ。本来ならばそのまま眠りへと(いざな)われるのだが……マジシャンが光源へと杖を向けると光が消える。

 

「『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

「な、無効化!? うああっ!」

 

『月の書』はサイレント・マジシャンによって無力と化した。

 そして戦闘破壊されずとも戦闘ダメージは通る。種田は3500ものダメージを受ける。

 

「いったた……だけど、『デュアル・ソルジャー』の効果! デッキから『ミニマミー・ナッツ』を守備表示で特殊召喚!」

 

 

『ミニマミー・ナッツ』

 レベル1 地属性 植物族 デュアル

 ATK500 DFE300

 ①このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 ②フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

 その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

 ●1ターンに1度発動できる。手札からレベル2以下のデュアルモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 地面からちょこんと種が現れる。コミカルな目がついているのが人によっては気持ち悪いかもしれない。

 

(知らないカード……でも『デュアル・ソルジャー』を残しておきたくないし……)

「『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』、沈黙の剣」

「うわぁっ!」

 

 種田に更に2000のダメージ。残りライフは、2500。

 

(……あっ、もう少し削れたじゃん)

 

 墓地の『サイレント・バーニング』と『沈黙の剣』は除外することでサーチを行える。よって『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』の攻撃力を更にあげられた。

 

(まあいいか)

「『デュアル・ソルジャー』の効果! 『ミニマミー・ブルドック』を特殊召喚!」

 

 

『ミニマミー・ブルドック』

 レベル1 地属性 獣族 デュアル

 ATK800 DFE0

 ①このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 ②フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

 その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

 ●手札を1枚捨てて発動できる。デッキからレベル2以下のデュアルモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 爆発の跡に現れた子犬は、少し咳き込んでいる。

 

「更に『スーペルヴィス』で『デュアル・ソルジャー』を蘇生! 残念だったね!」

「メイン2、セットセット。ターンエンド」

 

 カードが2枚セットされてターンが移る。スタンバイフェイズにサイレントソードマンの攻撃力が上がり、3000となる。

 攻撃力3000のモンスターが2体、更に優秀な壁モンスターが1体。

 だが種田の手札は7枚もあり、モンスターも3体。更にセットカードも1枚残っている。

 

「なら……『フォース・リリース』! 俺の場のデュアルモンスターを全てデュアル状態にする! 」

 

(いくらなんでも実質3体召喚はだめ!)

 

「『沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン』」

「そこだっ! チェーンして『サモン・チェーン』!」

「……『沈黙の剣士―サイレント・ソードマン』」

「それも!?」

 

 地味に危ない場面だった。種田がサイレントたちの効果を知っていれば、止めきれなかったかもしれない。

 しかしこれでこのターン、師匠は魔法を止められない。

 

「ぐぐ……『化合電界』の追加召喚権で『ミニマミー・ナッツ』を再度召喚。効果発動! 手札のレベル2以下デュアルモンスターを特殊召喚! 『ミニマミー・エンジェル』!」

 

 

『ミニマミー・エンジェル』

 レベル2 光属性 天使族 デュアル

 ATK1400 DFE200

 ①このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 ②フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

 その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

 ●墓地のカード1枚を除外し、自分の墓地のレベル2以下のデュアルモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「更に『ミニマミー・デビル』を召喚!」

 

 

『ミニマミー・デビル』

 レベル2 闇属性 悪魔族 デュアル

 ATK1500 DFE100

 ①このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 ②フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

 その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

 ●除外されているレベル2以下のデュアルモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「永続罠、『ミニマミー・クリーニング』を発動! 『ミニマミー・ナッツ』を通常モンスターに戻して攻撃力をアップだ!」

「『王宮のお触れ』」

「えぇっ!?」

 

 

『ミニマミー・クリーニング』

 永続罠

 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

 ①再度召喚されたモンスターを任意の数選択して発動できる。そのモンスターを通常モンスター扱いに戻す。その後、この効果を受けたモンスターの攻撃力をレベル×100アップさせる。

 ②デュアルモンスターの戦闘で自分が戦闘ダメージを受けた場合に発動できる。デッキからレベル2以下のデュアルモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「そんな……ターンエンド……」

「ドロー」

(そ、そんなに意気消沈しなくても……)

 

 心の中でめちゃくちゃ焦りながらも、全く顔には出ない。

 スタンバイフェイズにサイレントソードマンの攻撃力が更に上がり3500となり、手札5枚によりサイレントマジシャンの攻撃力も3500となる。

 そして、種田のモンスターたちは全て低ステータス。

 

「バトル」

 

 デュエルの勝敗は決した。



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『ミニマミー』使いの小学生、種田伸豆(しんま)

じゃあデッキ見せてね。賭けデュエルを申し込んだのはそっちだし……ふんふん成る程。

 

「お、俺のデッキに何するんだ!」

「「 し、師匠? 」」

 

何もしないってば。

ふーん。ミニマミーたちは展開重視な効果なんだね。それに『ミニマミー・クリーニング』の効果も面白い。

一度再度召喚したモンスターを通常モンスターにすることでまた再度召喚できるようにする効果。

……あぁ、だから『弱肉一色』が入ってるのか。通常モンスター扱いのレベル2モンスターたちが並ぶから。

 

となると僕のサイレントデッキはかなり相性が悪かったんだね。逆転の手段が魔法カードだし。

 

はい、返すね。

 

「っ!? ……と、取らないの?」

 

小動物のようにデッキを奪い返した男の子は、驚いたように聞いてくる。

けど、え、なんで? ……あぁ、そういえば君僕のカードを取るとかいってデュエル仕掛けてきたんだったね。

じゃあ……カキカキ……と。あ、ちょっと長くなるから。

 

うーん、まあこんな感じかな。一枚目を見せる。

 

ミニマミーは君のデッキだから、ぼくが使うべきじゃない。

「……」

 

二枚目。

 

だけどかけデュエルは良くないからし、ストーカーもどうかと思うよ。

「うっ……」

 

か、書き間違えは気にしないで! 三枚目!

 

君のデッキはステータスが低いけど展開力があるからスピリットバリアみたいなダメージを受けなくするカードを入れるといいよ

 

でも『スピリット・バリア』って地味に見つからないんだよね。『アストラル・バリア』はそこそこ見つかるのに……。

 

「……」

 

なんで目をぱちくりしてるの? ……ま、いっか。今が何時だか分からないけど、お昼食べてない……し……。

僕、岡部さんたちの所出たの、12時少し過ぎたぐらいじゃ無かったっけ……? 普通小学校って、お昼の給食の後に掃除してお昼休みがあって―――

 

 

キーン……ーンコーン

 

 

遠くから鐘の鳴る音。多分、多分だけど、小学校の午後の授業始まりじゃないっけ……?

 

「げっ授業!」

「「 忘れてたぁっ! 」」

 

三人は慌てて走り出していく。……二人は転びそうになりながら走ってて、ちょっと怖かった。

それにしても、学校かぁ。そもそも自分の年齢さえ分からないけど、実際どうなってるんだろ。僕は多分中学生なんだと思うけど……うーん。一人で考えてても仕方ないし戻ろうかな。

 

 

 

 

 

 

 

僕は警察署の近くの寮に住んで(保護されて)いる。

といっても部屋に居ることはほとんどない。荷物もないしやることも無いし。服は買ってもらってるから、本当に寝泊まりするだけの場所だ。

ご飯は寮の食堂で作ってもらえる。ただ、お風呂がなぁ。シャワーだけなのはなぁ。今度おこづかいで温泉行こうかな。近くにあればいいんだけど。

 

ってそうじゃなくて。僕も勉強したーいって警察さんに伝えなきゃ。それか水砂さん。

 

こんこん、お仕事中失礼しまーす! あ、お客様? 取り込み中……邪魔だったかな?

 

「ん? 岡部、この子は?」

「あぁ、この間保護した迷子だ。色々手を広げて親を探しているんだが全く成果があがらなくてな」

「ほう」

 

緑と黒の雲模様の服を着た男の人は、僕をまじまじと見てくる。

警察さんとは違う怖さだ。なんていうか……ごつくないのに、大きく見える。

 

「迷子か。しかし何処かで……」

 

凄いじろじろ見てくる。僕の全部を見通そうとしてきて怖い。

 

「なんだ、心当たりがあるのか?」

「いや……この子供は見たことがない。ない、筈なのだが」

 

うむむと唸る男の人。熊の前にいるみたいだな、とか考えながら、僕はあらかじめ書いておいた紙を警察さんにわたす。

 

「うん? ……勉強したいのか」

 

そうだよと頷く。

 

「うーむ。なら明日にでもテストするか。今の学力を知らなければならないからな」

 

うえ、テスト!? ならやっぱりいいかな……なんちゃって。

 

ガターンッ

 

うわっ! なにっ!?

見たら男の人が立ち上がっていた。さっきの音は椅子が倒れた音だった。

 

「お、おいどうした急に立ち上がって。この子が怯えてしま―――」

「お前、デッキは?」

 

男の人は僕を睨み付けてくる。な、なんで怒ってるの……?

とにかくデッキを見せなきゃ殴られそうだから、全部見せる。

 

「……四つもあるのか? ふむ……これは『サイレント』。 そして、こっちは『破壊剣』か。気のせいだったか……っ、『メタファイズ』……そして罠デッキ―――ウリアか」

 

そうだったぁ! ど、どどうしよう、怒られる! 謝る準備を!

 

「おい、岡部。今日……いや、明日この子を借りるぞ」

「はぁ? 構わないが、何をするんだ?」

 

あれ、ウリアについてはスルー? っていうか警察さんそこはもっと構ってよ!

 

「ただの確認だ。この子はあいつの使っていたカードに……そっくりなんだ」

「なに?」

 

え? カードにそっくり?




『ミニマミー』
低レベルのデュアルモンスターたちのカテゴリー。
デュアル状態を戻すというトリッキーな魔法により通常モンスター専用のサポートを受けられる


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強さとは孤高なり

 ガタガタと 車に揺られて 何処へ行く

僕   

 

 いやほんとどこに向かってるの? なんか山を登ってるみたいだけど。

 ゴツくて四角い車を運転してるのはあの怖い男の人。小野寺さんって言うらしい。自衛隊なんだって。

 車の中だと文字を書けなくて僕は何故か喋れないから、車の中は沈黙で包まれている。

 

 ―――気まずっ! 気まずいよ! もっと親しくしたいよ!

 なんかたまに睨んでくるし。でなくてもずっと何か考え込んでるし。

 そう言えば僕の事カードに似てるとか言ってたな……。そのせいかな? どんなカードに似てるんだろう。

 

「着いたぞ」

 

 やっと着いたー! ……何ここ。荒野? 森を抜けてきたみたいだけど。

 黄色と黒のロープと進入禁止って看板があるけど?

 

「ここは……昔とある大罪人が死んだ場所だ」

 

 ひえっ!? なんて所に連れてくるのさ! ゆ、幽霊とかで、でないよね?

 出たとしてもデュエルでどうにかできるよね!?

 

「……何も感じないか?」

 

 え、んー? 特に何も……。と首をふった途端にぐるるるー、と。

 

「む、獣か? おいこっちだ!」

 

 小野寺さんに車の中に放り込まれた。力の差が酷い……抵抗出来なかったよ。で、でもね。そのー、あのー。

 そしてまたぐるるるー、と音がする。

 

 僕のお腹から。

 

「車の中からだと? ……あ。……す、すまん」

 

 ぎゃー! 恥ずかしいー! お腹すいてるんだよお昼食べてないんだよ緊張しっぱなしだったんだよー!

 

「そうだな、仕方ない。先に飯とするか……といっても携帯食とカロリーサモンしかないが」

 

 カロリーサモン? 僕はメェプル味がいいな。ピョコレート味も可。でもご飯って感じじゃないか……。

 携帯食ってどんなのだろう?

 

「ツナマヨとイクラがある」

 

 おにぎり……あの、その、思ってたのと違う! 普通!

 もっとこう缶詰めとかパックとか出てくるのかと思ったよ!?

 まぁイクラを貰おうかな……。

 

「……」

 

 もぐもぐと食べる。お喋りは無いけど、こうしてるとなんだか親戚のおじいちゃんと二人でこっそりお出かけしてるみたい。……実際は大分違うんだけど。

 小野寺さんはノーマル味のカロリーサモンをむしゃむしゃ食べてた。ノーマル味ってたしか水砂さんが、カロリーの塊な上に味なしだから絶対に食べちゃだめって言ってたやつ……。

 

「よし行くか。本当は岡部を待ちたい所だが……ここで日が暮れるのは不味いしな」

 

 カロリーサモンを一箱食べ終え(一箱四本入り)、そう声をかけてくる。

 えーと、警察さん待とうよ。なんか仕事で忙しくて後から来るって言ってたけど。

 

「行くぞ。……さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

 聞こえてるからね。そんな危険な所なのかなぁ……。そうだ。

 

大ざい人って何ですか?

「ん? 岡部から聞いてないのか。そうか……ならこの際だ、話しておこう」

 

 そして森の中を歩きながら語られたのは、とある男の復讐劇だった。

 

 

 

 

 

 

 まず、世界は一枚のカードから作り出されたらしい。カードの裏表に六つずつ、計十二の世界。その表側の世界の一つにその男は産まれた。

 男は孤児だった。貧乏故にろくに食事も取れず、勉学を学ぶ事も出来ず、周囲から見下されて育った。

 それでも必死に生き、足掻き、カードを集めた。そうして出来たデッキは決して勝率がいいとは言えなかったが男にとってかけがえのないものだった。

 そのデッキが心無い者たちに破り捨てられた時、一つのカテゴリーが生み出された。

 世界を憎み、怨み、妬むそのカテゴリーを持って男はその世界を滅ぼした。しかしそのカテゴリーの怒りは鎮まらなかった。

 世界を一つ滅ぼす程度では止まらないカテゴリーは数々の世界を攻撃し、この世界―――つまり僕たちの住むこの世界へとやってきた。

 

 

「―――そのカテゴリーの名前は『DOD』、使い手の男は、天野地草(あまの ちぐさ)という」

 

 あ ま の 、ち ぐ さ …… 。

 

 なんでだろう、聞いたことがある気がする。でも警察さんにも水砂さんにも勿論あの双子にだってこんな、話、は……。

 

「奴とのデュエルではダメージが実体化し、奴に倒された者は……今も、意識不明の重態だ」

 

ん、そう。……って、あれ? 普段ならもっとこうええぇぇ~!? って反応するのに。

あーもうっ、自分が自分じゃないみたい!

 

そうもやもやしてたら、突然目の前が開けた。森を抜けたんだろう。その先には何も無かった。

いや、正確には荒野が広がっていた。けどここは山の筈だしそれも上の方だし……。

 

「……ここは奴が最期を迎えた爆心地だ。もう少し歩くぞ」

 

 爆心地って、天野さんって爆散でもしたの? あー、でもダメージが実体化するって事は爆弾使うモンスターでも使われたのかな。アリジバクとかダイナマイトガイとかDDB(ダーク・ダイブ・ボンバー)とか。

 

「ここだ。ここで奴は倒された」

 

 ……えぇと……なんかある。あるっていうか、裂けてる……あ、これ、次元の裂け目だ! 次元が裂けてるよ!?

 いいの? こんなの放置して!

 

「……何も感じない、か?」

 

 感じるも何もヤバイのがあるんですけど! ……ん? なんか裂け目の中で何かがキラッと光った。あ、また。

 んー、取った方が良いのかな? でも次元の裂け目に手を突っ込みたくないよ?

 

「そうか……お前なら何か分かるかと思ったんだがな。例えば、『DOD』のデッキの場所とかな」

 

 それって天野さんを倒したのに『DOD』デッキがどっかいったって事? じゃあ、もしかしたらあの次元の裂け目の中で光ってるのは『DOD』?

 そうだよとでも言うように光が瞬く。そっかぁ。……覚悟を決めて手を突っ込む。ちょうど小野寺さんは周りを見回してる。

 

 つめたっ! あつぅっ! いたたたたっ!? ぎゃっ、舐められた! うわああっ引っ張らないでよ!

 

 ―――な、なんとかデッキを取り出せた。うわぁ手が真っ赤。ビリビリしてる。

 こっそりデッキをポケットに入れて手をさすってると、次元の裂け目がゆっくりと閉じていった。やっぱり天野さんが仕組んだんだろうね。

 んー、でもなんで僕はその仕組みに気付けたんだろう。

 

「っ! これは……この感覚は、『DOD』!」

 

 えっ、小野寺さんなんで気付いたの!? い、いやまだ僕が原因だとは気付いてない筈!

 

「何処だ……ん? ……お前、来るときは、ポケットに何も入ってなかったよな?」

 

 んんんんっ!? 目敏い! 自衛隊じゃなくて探偵になりなよ! 無駄かもしれないけどぶんぶんと首を振ってみる。

 

「おい、出せ」

 

 ひえっ、こわ! やっぱり駄目だったよ首ぶんぶん。

 ……渋々とデッキを差し出す。じゃなきゃ殺されそうだったし。

 

「……」

 

 大丈夫大丈夫、ちょっと仕組んだから。あれは―――

 

「……『ウリア』デッキか」

 

 そう! ポケットに入れたデッキは元から持ってたデッキだ!

 ふっふっふっ、デュエルディスクのデッキとすり替えたのには気付けまい!

 

「ならその旧式のデュエルディスクに入っているデッキはなんだ?」

 

 な ん で さ !

 なんでそんな目敏いんだよ! むしろ気持ち悪いよ!

 ここは逃げる! ……のは無理だから、あれだ! デュエルディスクを構える。

 

「……デュエルで確かめろ、と? 良いだろう」

 

 よーしこの世界の人たちはデュエルを拒まないからね!

 

「デュエル!」

 

 僕の先攻! ……んー? 『DOD』が居ない。いやまあ隠したいから良いんだけど。

 

「『闇の誘惑』」

 

 二枚ドロー! 『バトルフェーダー』を除外。

 

「『闇の誘惑』」

 

 二枚目! 二枚ドロー! ……『異次元の偵察機』を除外する。

 

「……『闇の誘惑』」

 

 三枚目ぇ! 二枚ドロー! うっそでしょ!? 『バトルフェーダー』を除外!

 

「『チキンレース』」

 

 ライフを1000払い一枚ドロー!

 

「セット、セット、セット。『カードカー・D』」

 

 効果で……リリースして……二枚ドロー!

 

「ターンエンド」

 

 『カードカー・D』の効果で『異次元の偵察機』は特殊召喚出来ない。

 ……っていうか『DOD』来ないんだけど!? なんでぇ!? あれ、もしかして『DOD』ってカードの種類少ない?

 

「……違うのか? まあいい。俺のターン、ドロー!」

 

 そう言えばどうして小野寺さんは天野さんとか『DOD』に詳しいんだろう。僕、未だに別の世界とか信じられないんだけど。でも警察さんが信頼してたし頭がイカれてるヤバい人じゃない筈。

 

「まずは『炎舞―「天キ」』を発動する! 発動時にデッキから獣戦士族である『ウルフソロジャー』をサーチする」

 

 

『ウルフソロジャー』

 レベル4 風属性 獣戦士族

 ATK 1800 DFE 1600

 自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このモンスターの元々の攻撃力は半分となり①の効果を発動出来ない。

 ①このカードが守備表示モンスターを攻撃するダメージ計算前に発動できる。その相手モンスターを破壊しこのモンスターに装備する。このモンスターの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

「そして『キャットソロジャー』を通常召喚」

 

 

『キャットソロジャー』

 レベル3 炎属性 獣族

 ATK 1100 DFE 200

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから『ソロジャー』カード1枚を手札に加える。

 ②自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4『ソロジャー』モンスター1体を特殊召喚し、このカードを攻撃力1100アップの装備カードとしてそのモンスターに装備する。

 

 

 現れたのは青紫の体毛の猫。二足歩行してるし眼帯してるし鎧着けてるしで可愛くはない。

 

「『キャットソロジャー』の効果発動! デッキから装備魔法『ソロジャーアーマー』を手札に加える!」

 

 

『ソロジャーアーマー』

 装備魔法

 このカードは自分フィールド上のモンスターが1体のみの場合にのみ発動できる。

 ①装備モンスターは効果では破壊されない。

 ②このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。手札・デッキから『ソロジャー』モンスター1体を特殊召喚し、このカードを装備する。

 

 

「俺のフィールドのモンスターは『キャットソロジャー』のみ。よって『キャットソロジャー』の効果発動! デッキから『グリズリソロジャー』を特殊召喚しこのモンスターを装備させる!」

 

 

『グリズリソロジャー』

 レベル4 地属性 獣戦士族

 ATK 1400 DFE 2000

 自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このモンスターの元々の攻撃力は半分となり①の効果を発動出来ない。

 ①1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。手札からレベル4以下のモンスター1体をこのモンスターに装備する。このモンスターの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

 猫がニ゛ャーと鳴くと何処からか熊が出てきた。こちらもまた眼帯を着けている。猫は腰に下げていたレイピアを熊に渡して地面の中へともぐっていった。……猫って地面掘るんだっけ?

 ちなみに熊は茶色のでっかいハンマーを背負ってる。レイピアが場違いだ。

 

「俺のフィールドには『グリズリソロジャー』のみ。よって効果発動! 手札の『ウルフソロジャー』を装備させる! 更に『ソロジャーアーマー』を装備!」

 

 おぉ、もう三枚もカードを装備してる! 武器はハンマーとレイピアに加えて短剣が宙に浮いている。

 それに(まばゆ)い光を放つ真っ白な鎧も合わさって、凄く強そう。

 

「『チキンレース』の効果でライフを1000払い……自壊させよう。バトル! 『グリズリソロジャー』でダイレクトアタック! 攻撃力は4400だ!」

 

 いっ!? それはダメ!

 

「『バトルフェーダー』」

「ふん、だろうな」

 

 ガッコンと鐘を鳴らしながら悪魔が現れる。取り敢えず、(しの)いだ。

 っていうか攻撃力4000オーバー!? 怖すぎるよ!

 

「カードを一枚セットしターンエンドだ」

 

 伏せ一枚か……。こっちの伏せ三枚は全部『デモンズ・チェーン』。相手の効果がよく分からなかったし『バトルフェーダー』を特殊召喚したかったから使わなかったけど……使った方が良かったかな?

 

「ドロー」

 

 っ、来た『DOD』! なになに……えー? んー。

 

「メイン。セット、『カードカー・D』」

「またドローか。エグゾディアでも揃えるのか?」

 

 だったらもっとドローしてるよ! リリースして、二枚ドロー!

 

「ターンエンド」

 

 ふんふん。ようやく『DOD』が来るようになったね。まだ動けないけど。

 

「俺のターン、ドロー! ならば攻めるのみ! まずはセットカード、『メタバース』! デッキからフィールド魔法、『強者の頂き』を発動!」

 

 

『強者の頂き』

 フィールド魔法

 ①このカードが存在する限り、自分フィールドの『ソロジャー』モンスターは相手ターンにも効果を発動できる。

 ②1ターンに1度、墓地の『ソロジャー』カード3枚を対象として発動できる。対象のカードをデッキに戻しシャッフルする。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 うわわ、荒野に山が出てきた! 熊が頂上で吼えると威圧感が襲ってくる。ぐぐぐ……っていうか小野寺さんも山の上に居るし!

 

「そして装備魔法、『ソロジャークロー』を『グリズリソロジャー』に装備!」

 

 

『ソロジャークロー』

 装備魔法

 『ソロジャー』モンスターにのみ装備可能。

 ①装備モンスターの攻撃力は300アップし、守備表示モンスターを攻撃した時に攻撃力が守備力を越えていた場合その分の戦闘ダメージを相手に与える。

 ②このカードが墓地へ送られた場合に発動する。このカードを自分フィールド上のモンスターに装備させるかデッキの一番上に戻す。

 

 

「これで攻撃力は4700、守備貫通、効果破壊耐性!」

 

 ちょっ、嘘でしょ!?

 

「バトル! やれ『グリズリソロジャー』!」

「『デモンズ・チェーン』」

 

 四つもの武器と長い鉤爪で襲いかかってくる熊に向けて鎖が発射される。

 一瞬でがんじがらめにされた熊はそれでも闘志を消さずに僕を睨んでる。こわっ!

 

「む……だが効果破壊耐性と守備貫通、攻撃力300アップは消えない。攻撃力は1700にまで下がってしまうがな」

 

 攻撃力1700なら、なんとかなる!

 

「残念だが魔法・罠ゾーンは埋まっている。ターンエンドだ」

「ドロー」

 

 さーてどうしようか。やっと『DOD』が動けそう。……動かして良いのかなぁ。出来れば隠したいんだけどなぁ。いやでも、負けたらどっちにしろデッキ取られると思う。

 

 なら動くしかないね!

 

「『DOD―ブラックタイガー』。『デモンズ・チェーン』をリリースし特殊召喚」

「やはり『DOD』だったか!」

 

 

『DOD―ブラックタイガー』

 レベル5 闇属性 悪魔族

 ATK 1200 DFE 1600

 このカード名の②の方法での特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

 ①このモンスターはリリース無しで通常召喚できる。その場合、このモンスターはレベル4、水属性、水族となる。

 ②このカードは自分フィールド上の表側の罠カード1枚を墓地へ送る事で特殊召喚できる。この方法で特殊召喚したこのモンスターはチューナーとして扱う。

 

 

 熊に巻き付いていた鎖が崩れ、真っ黒な影で出来た虎が現れる。……エビじゃないの?

 まぁ、『デモンズ・チェーン』はまだ二枚あるから恐れず進め!

 

「この効果で特殊召喚したブラックタイガーはチューナーとなる。『DOD―ヨウシトラ』召喚」

 

 

『DOD―ヨウシトラ』

 レベル5 闇属性 悪魔族 ペンデュラム

 ATK1800 DFE1000 ◇9

 《1ターンに1度フィールド上に表側で存在する魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す》

 ①このモンスターはリリース無しで通常召喚できる。その場合、このモンスターはレベル4、地属性、獣族として扱う。

 

 

 出てきたのは牛。普通の、白黒の、牛。……虎じゃないの?

 

「リリース無しの召喚の場合、レベルは4となり地属性、獣族として扱う。

 レベル4、『DOD―ヨウシトラ』にレベル5チューナー、『DOD―ブラックタイガー』をチューニング」

「来るか、黒きシンクロ!」

 

 牛と虎が星となり、重なる。合計9個の星が空に開いた裂け目に突入する。

 

「集いし星が重なりあうも、無味乾燥の終局を迎える。闇満ちる道となれ!」

 

 キイィィィィ―――

 

 遠くからかすかに聴こえるのはジェット音。徐々に徐々に、僕の体を、魂を、揺らしていく。

 

 ―――イィィィィイイイッ

 

「シンクロ召喚! 逃避せよ、『DOD―Star(スター) Dust(ダスト)』!」

 

 

 直後、裂け目から何かが()()()()()

 どす黒い紫の体表は光の反射を抑えているのかどこかざらついた印象を受ける。

 翼はボロボロだが飛行機のジェットのようなものが付いており、そこからは黒い炎が見えている。

 四つん這いの格好で尻尾を地面に叩き付け、それは吼えた。

 

 キイィィィィアァァァッッッ!

 

 

『DOD―Star Dust』

 レベル9 闇属性 ドラゴン族 シンクロ

 ATK 2500 DFE 1200

 『DOD』チューナー1体+『DOD』モンスター1体

 ①このカードが墓地へ送られる場合、エンドフェイズまでゲームから除外される。

 ②このモンスターは相手にダイレクトアタックできる。この効果を適用したバトルフェイズ終了時、このモンスターはエンドフェイズまで除外される。

 

 

 

「くっ……シンクロ次元の災いの象徴、絶望のあまり闇に堕ちた『スターダスト・ドラゴン』……」

 

 僕よりも『DOD』の事知ってるの、ちょっとムカつく。

 でもそっか、『スターダスト・ドラゴン』か。確かに黒い『スターダスト・ドラゴン』みたいにも見えるね。地に這いつくばってるけど。

 

「バトル。『DOD―StarDust』で攻撃」

 

 ブオォォ、ォォ…ボフッ………ブウゥゥウゥ……

 

 僕のその宣言と供にStar Dustがジェットの噴射を始める。

 更に四肢の位置を調整して、小野寺さんに襲いかかる体勢を整える。

 

「だが『デモンズ・チェーン』が外れた事により『グリズリソロジャー』の攻撃力は4700に戻っている!」

「『DOD―Star Dust』は相手にダイレクトアタックできる」

「ぐっ」

 

 バチィッと派手な音とともにStar Dustの前の次元が裂ける。

 

「ダッシュ・アウト・ディメンション」

 

 ふ、風圧が凄い……! 行くなら速く行って倒れる!

 そんな思いが通じたのか、唐突にStar Dustの姿が消える。消えた?

 

 キイィィィィ―――

 

 あ、でも例のジェット音が聞こえてくる。徐々に徐々に音が大きくなっていく。

 

 ―――イィィィィイイイッ

 

 あれ、僕の後ろから音が……!?

 

「」

 

 本能に従って地面に倒れこむ。そんな僕の上空すれすれを、Star Dustは音速(マッハ)で通過した。

 

「うおぉっ、『ピッグソロジャー』!」

 

 ちらっと小野寺さんの方を見ると、オークが小野寺さんの代わりにStar Dustの突撃を喰らって弾けてた。うへぇ、グロい。

 

 

『ピッグソロジャー』

 レベル3 地属性 獣族

 ATK 1000 DFE 0

 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①手札のこのカードを捨てて発動できる。このターンに受けるダメージを1度だけ0にする。

 ②自分フィールド上の『ソロジャー』モンスターが破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外する事ができる。

 

 

 

 それにしても2500ダメージぐらい受けてくれてもいいのに。立ち上がって服についた土を払う。

 

「……『DOD―Star Dust』が自身の効果でダイレクトアタックした場合、エンドフェイズまで除外される」

 

 いつの間にかStar Dustは次元の彼方へと飛び去っていった。静かになったなぁ。どうせすぐに戻ってくるけど。

 

「セット、エンドフェイズ。ディペンド・アワー・ディメンション」

 

 僕の上空に次元の裂け目が現れる。……ねぇまって真上はやめてよ!

 思わず腕で顔を覆ったけどそれが正解だったみたい。また暴風で吹き飛ばされるところだったから。

 もう! ギリギリ砂が目とか口とかに入るのは防げたけどさ!

 

 さて、これで手札全部使っちゃった。伏せは『デモンズ・チェーン』二枚に『DOD』が二枚。フィールドにはStar Dust。……と、『バトルフェーダー』。

 

「ちぃ、ドロー! まずはバトルだ! 『グリズリソロジャー』よ、『バトルフェーダー』を破壊せよ!」

「『デモンズ・チェーン』」

 

 貫通付与されてたよね? だから動くのは駄目!

 

「ならばメイン2! 『ライオソロジャー』通常召喚!」

 

 

『ライオソロジャー』

 レベル4 炎属性 獣戦士族

 ATK 1700 DFE 200

 自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このモンスターの元々の攻撃力は半分となり①の効果を発動出来ない。

 ①1ターンに1度、このモンスターより攻撃力の低いモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊しこのモンスターに装備する。このモンスターの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

 再び鎖に縛られた熊の横にライオンが立つ。ライオンは熊を笑い、熊はグルルと唸っている。……なんか、仲悪いの?

 

「俺の『ソロジャー』たちは孤高のモンスター。故にフィールド上に一人で居なければ本来の力は発動できない……だが、それだけが俺のデッキの戦い方だと思うな! 俺は2体のモンスターでエクシーズ召喚! 『恐牙狼(きょうがろう) ダイヤウルフ』!」

 

 うわ、綺麗。山の頂上で遠吠えをあげる美しい狼。……Star Dust? まだジェットは吹かさなくていいよ?

 

「そして墓地へ送られた『ソロジャークロー』の強制効果、そして『ソロジャーアーマー』の任意効果を発動!

 『ソロジャーアーマー』によりデッキから現れよ『ライオソロジャー』! そのまま『ソロジャーアーマー』を装備!

 その後墓地から『ソロジャークロー』を『ライオソロジャー』に装備! この効果は処理時にデッキの上に戻すか装備させるか選べる効果だ!」

 

 うわ、またライオンが出てきた。鎧に鉤爪も着けてる……けど忌々しげにダイヤウルフを睨んでる。でもどうせすぐに消えるんでしょ?

 

「一気に行くぞ! ダイヤウルフの効果! エクシーズ素材を取り除き、自身とStar Dustを破壊だ!」

「『デモンズ・チェーン』」

「それは読んでいる! チェーンし、『ダブル・サイクロン』! 『炎舞―「天キ」』と今発動された『デモンズ・チェーン』を破壊!」

 

 うげぇ、そこまでしてくるの? いいの? だったらこっちも容赦しないよ!

 

「相手の魔法カード発動時、『DOD―Protect』は発動可能」

「くっ……」

「『DOD―Protect』が存在する限りフィールドの全ての永続魔法・永続罠は破壊されない。効果も同時使用。セットカードは『DOD―Not』のみ」

 

 

『DOD―Protect』

 永続罠

 このカードは相手が魔法カードを発動した時にのみ発動できる。

 ①このカードが表側で存在する限り、フィールドに表側で存在する全ての永続魔法・永続罠カードは効果で破壊されない。

 ②1ターンに1度発動できる。フィールドにセットされた魔法・罠カードを全て確認する。その中に永続魔法・永続罠カードがあった場合表側にする。それ以外は元に戻す。

 

 

 まず僕の『DOD―Not』が表側になる。そして『DOD―Protect』によって永続魔法と永続罠を対象にしていた『ダブル・サイクロン』はどちらも破壊出来ない。

 よって破壊を免れた『デモンズ・チェーン』によって『恐牙狼 ダイヤウルフ』は効果を無効化される!

 小野寺さんが自分で言っていたように『ソロジャー』モンスターたちは他のモンスターが居ると効果を発動できない……。これは僕の勝ちじゃない? ほら、流石の小野寺さんも困ってるし。

 

「ぐ……まだ終わっていない! 『強者の頂き』の効果を発動! 墓地の『グリズリソロジャー』、『キャットソロジャー』、『ピッグソロジャー』の三枚をデッキに戻し、一枚ドロー!」

 

 これで小野寺さんの手札は二枚。『ライオソロジャー』に『デモンズ・チェーン』がかかってないのがちょっと怖いけど、『DOD―Not』があるからまだ安心できる。

 

 

『DOD―Not』

 永続罠

 このカードは相手がフィールド上でモンスターの効果を発動した時にのみ発動できる。

 ①このカードが表側で存在する限り、フィールド上のモンスターは効果を発動できない。

 ②このカードと自分フィールド上の他の永続罠カード1枚を墓地へ送って発動出来る。デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

「『烏合無象』を発動! ダイヤウルフをリリースし、同じ獣族である『マスター・オブ・OZ』を特殊召喚!」

 

 ん? 何してるの? このでかいボクサーコアラは確かに攻撃力は破格だけど、もう攻撃出来ないしエンドフェイズに破壊されちゃうし……あっ。

 

「エンドフェイズ、『烏合無象』の効果により『マスター・オブ・OZ』は破壊される。すまない!」

 

 だけどこれで小野寺さんのフィールドは『ソロジャー』モンスターのみっていう形になった。自分のカードを破壊するっていうデメリットを受け入れてでも『ソロジャー』の舞台にする……カッコいいよ、そういうの。

 

 もう遅いってとこに目をつぶればね!

 

「ドロー」

 

 うーん、今は必要ないかな。このまま攻撃して終わり!

 

「バトル」

 

 ブオォォ…ボフッ……ボフッ…ブウゥゥウゥ……ボフッ……

 

 待ってましたとばかりにStar Dustがジェット噴射を始める。……始められてないよ? 大丈夫? エンジン点火に手間取ってるけど攻撃できるよね?

 

「『DOD―Star Dust』で攻撃。ダッシュ・アウト―――」

 

「待て! そこまでだ!」

 

 ん? この声、警察さん?




Star Dustの効果を調整。6/20


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『ソロジャー』使いの強者、小野寺常勝

「岡部! 邪魔をするな!」

「そうはいかないだろ! お前が勝とうとその子が勝とうとろくな結果にならない! ……ましてや、あの『DOD』のデュエルなんだぞ……!」

 

 息も絶え絶えに岡部は訴えてくる。車を入れられるギリギリの場所からここまで全力で走ってきたのだろう。

 俺も、岡部も、天野地草のデュエルを知っている。相対した者にしか分からないプレッシャーも身をもって理解している。

 そして『ダメージの実体化』というのがどういうものかも、同時に体験している。故に1ポイントのダメージも受けられない……のだが俺の最後の手札は『ピッグソロジャー』ではない。

 一撃ならば、或いは。しかし先程の『DOD―Star(スター) Dust(ダスト)』の攻撃は俺を一撃で葬る勢いだった。

 

「分かっている……だが!」

「なぁ、すまないがサレンダーしてくれないか? このままなら『DOD』の勝ちは揺るがないだろう―――」

 

 岡部は俺を無視して子供に語りかける。そこへ子供を守るように黒い竜が間に入る。

 

 岡部の言う通りだ。『ソロジャー』は手札一枚から逆転を狙えるテーマだが、それも自分フィールドのモンスターが全滅した場合の話。

 ダイヤウルフは縛られ、効果破壊に耐性を持たせた『ライオソロジャー』は効果を使えない上に攻撃力は1250で、あの竜を破壊出来ない。

 そしてあの竜はこちらのモンスターを無視して攻撃してくる。打破するカードは……一枚だけ入れた『ブラックホール』。ドローによるデッキ圧縮をあまりしないテーマなのが裏目に出ている。『チキンレース』を破壊しなければ……関係ない、か?

 俺がデュエルの状況に思考する間も岡部は説得を続ける。

 

「―――だが『DOD』の勝利は、すなわち相手の死を意味する。あいつは俺の戦友なんだ。……少々失礼な奴だが俺に免じて許してくれないか?」

「おい」

 

 お前だって子供には()かれないじゃないか!

 と、突然山が、フィールド魔法『強者の頂き』が消えていく。サレンダーしたのか。……なんだと?

 思わず迷彩柄のデュエルディスクを二度見する。やはりサレンダーにより俺の勝ちとなっている。

 それはつまりこの子供が岡部の言うことを聞いたということで。

 

「……お前、『心変わり』でも使ったか?」

「何が言いたい。いや、やっぱりいい。俺としてもびっくりだしな」

 

 ちっ、カロリーサモンのメェプル味は買っておくべきだったか!

 

 キイィィィィ―――

 

 黒き竜の離脱の準備がようやく完了したようだ。……『DOD』のモンスターは実体化ができる。だからデュエルが終了した後しばらくモンスターが残る事がある。幸い、デュエル外では『DOD』は破壊行動は行わない。

 

 イィィィイアァァァッ―――!

 

 咆哮を残し、黒き竜は何処かへと消え去った。相変わらずうるさいものだ……天野地草を見つけるにはうってつけな騒音ではあったがな。

 

「……しかし、まさか『DOD』の後継者が、この子とは」

「ああ」

 

 どうしたものか。前回、俺の『ソロジャー』が勝てたのは偶然か奇跡。それはこのデュエルで証明されてしまった。だが俺よりもデュエルが強い者はプロのデュエリストの中でもごくわずかだ。

 弱くとも、『DOD』は除外を活用するデッキだから除外を封じれば勝てる……だろう、か? どちらにせよ 基本的にメタを張るデュエリストは少ない……俺を含めてもな。

 

「いや、待て。そもそもお前がこの子をここへ連れてこなければ『DOD』は目覚めなかった筈だ。どうして連れてきた?」

 

 その言葉には若干の苛立ちが含まれている。怒鳴らないのは、何も考えずにこんなことをするとは思ってないからか。信頼されたものだ……いや、それなりの付き合いだ、当然か。

 

「『DOD』だけならば、それは実体化すれどカテゴリーの一つ、使わなければ結局ただのカードだ。現に、『DOD』のカードの一部は俺が保管してある」

「なにっ、いつの間に」

「真に警戒するべきは、奴のエース。災害のごときモンスターだ。……お前は知らないだろうがな」

 

 知る筈がない。あの『D O D』は、天野地草が次元を破壊する際にしか使わないカードなのだから。全てを無に返すあのカードは、な。

 

「つまり、そのエースカードを探していたと言うことか」

「ああ。あれは召喚条件が厳しく、特定のカードがフィールドに存在しなければ出てこない。その特定のカードの一枚とその子供がそっくりだったから―――」

 

 そう言いながら指差そうとしたが、子供の姿がない。

 

「おい! ガキはどこ行った!」

「なっ、ちょっと目を離した隙に!? だがそんな事をするような子では……」

「なら尚更危険だ!」

 

 ちくしょう、逃げられるなんて思ってもみなかった! 完全に裏をかかれた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるー日ー、森のー中ー、黒い手にー、掴まーれーたー。

 ……何これぇっ!? いやー! たす、助けてー!

 

「ごめんね“君”。こうでもしないと彼らに邪魔されちゃうから」

 

 僕の横から僕と同じくらいの年の男の子が声をかけてくる。僕を手招きして連れ出した犯人だ。

 っていうか本当にこのでっかい手はなんなの? 僕は握ってるのに男の子は手のひらに立たせてる。その状態で森の中を移動してる。

 暗くて顔は見えないけど髪が真っ白なのは分かる。染めてるのかな。

 

「ふふっ、“君”は寡黙だね。僕はペラペラ喋ってないと……特に誰かと二人きりの時は落ち着かなくてね。あぁ、僕は今のところ名前がないから、旅人と呼んでくれないかい?」

 

 良いけど、そもそも喋れないんだ。ごめんね。……くそぅ、なんか分かんないけどこの自称旅人くんの声を聞くと凄く落ち着く。

 

「あ、ここらへんでいいかな。Xing(クロジング) Diabolic(ディアボリック)

 

 手は森の中の少し開けた場所で止まり、そのまま次元の裂け目へと消えていった。裂け目が根元にあったせいで気付かなかった。

 次元の裂け目に、黒い見た目? それに名前が独特ってまさか。

 

「『DOD』……?」

「ん、やっと喋ってくれたね。そう、さっきのは『DOD―Xing Diabolic』。僕の……僕らの切り札さ。“君”は思い出せないかい?」

 

 ……。……はっ、ちょっと意識が飛んでた!

 明るい場所だからようやく顔を見れたけど、旅人くん、くっそイケメンだ! なんか重要そうな事言ってた気がするけど全然聞いてなかった!

 

「そっか。うん、まあそういう時もあるよね」

 

 え、どういう時? あーもー喋れないのが憎い! 聞き返すぐらいはさせてよ!

 

「うーん……“君”の『DOD』にも入ってなさそうだね。あの強い人が『DOD』の一部を持ってる、だったっけ。ふふふっ。耳は良いんだ、僕」

 

 ていうかずっとニコニコしてるね旅人くん。顔が動かない僕からしたら羨ましいよ。……旅人、旅人かぁ。なーんか合わないなぁ。旅してるようには見えないし。旅人くんに合わせて、“君”って呼ぼう。うん、こっちの方がしっくりくるね。

 

「ん? ……うわ、真っ直ぐこっちに来てる。これは困るなぁ」

 

 そんなことを“君”は言ってるけど、全然困ってるようには見えない。変わらずニコニコしてる。

 

「本当はもっと“君”とお話したいけど、仕方無い。“君”にお願いがあるんだ」

 

 なになに? “君”の頼みならなんでも聞いてあげるよ! 出来る限りの事しか出来ないけどね!

 

「あの強い人……小野寺さん、だったかな? その人が持っている『DOD』を回収して欲しいんだ。恐らく自宅の机とか隠し部屋とかにある筈だからね。……きっと、僕らの力になる」

 

 了解! ……って、ええ!? 難しくない!? そもそも僕小野寺さんの家知らないよ?

 

「大丈夫、運命は僕らを祝福してくれる。さぁ、行くんだ」

 

 “君”が指差す方向に顔を向けると、小野寺さんと警察さんが飛び出してきた。凄い必死な表情で、ちょっと……凄く、怖いよ。

 

「居たぞ! ……む!」

「何者だ貴様!」

 

 今更だけど、二人ともゴツい体格にサングラスをかけてるせいでより怖いんだよね……。

 

「僕は旅人。次元を越える者の……後継者だよ」

 

 おお、カッコいい! でも次元を越える者ってもしかして。

 

「天野地草の後継者だと? ならば、悪さをしないうちに懲らしめておくか」

「岡部! もし本当に天野地草の後継者というならばお前には荷が重い! ここは俺が―――」

 

 一歩前に出た警察さんの肩を小野寺さんが掴む。けど警察さんは軽く振り払う。

 

「お前はさっきのデュエルで消耗している。でなければこんな足場の悪い場所で俺とお前が並走なぞ出来る訳がない」

「ぐっ……」

「お前はあの子を保護しろ! あの子も『DOD』を扱える以上、あいつの側に居させるのは危険だ!」

 

 “君”をあいつ呼ばわりって! むうぅ、警察さんってそういうとこあるよね!

 そう(いきどお)っていたらデュエルが始まった。先攻は、警察さんだ。

 

「俺のターン! 『GM Hyw』を召喚! 効果発動!」

「うん」

 

 警察さんのデュエルディスクはスタンダードなもので銀色が鈍く光ってる。対して“君”のデュエルディスクは髪と真逆の黒。刺々しくて腕を振ればそのまま武器になりそう。

 ……ん? でもさっきまで“君”はデュエルディスクを付けてなかったよ? んー?

 

「モンスターを宣言! さあ手札を一枚見させてもらうぞ!」

「どうぞどうぞ」

 

 なんだろうな。どうやら“君”の『DOD』と僕の『DOD』はちょっと違うみたいだし、このデュエルは見届けたい。

 デュエルをじっと見てたら、急な浮遊感。小脇を抱えられたらしい。見上げるとサングラスの怖い顔。思わず失神するところだったね。

 

「よし、岡部! 子供は回収した!」

「魔法か……ドローしろ! お前は逃げろ! 時間稼ぎぐらい出来る! いくぞ、相手の手札が六枚以上ある時、『GM Alfe』は特殊召喚可能!」

 

 僕が確認出来たのはそこまで。結局“君”がどんなカードを使うのか見れなかった。

 

 

 けど、またすぐ会おうね。

 

 会えるよね?




『ソロジャー』
この次元において最強に近いカテゴリー。レベル4の『ソロジャー』モンスターは一体のみの場合において力を発揮でき、全てモンスターを装備して自身の攻撃力を上げるという効果を持つ。
逆に言えばトークンや壊獣などを送りつけられると本来の動きが出来ずじり貧となってしまう。
対応するために汎用性の高いモンスターをエクストラデッキに入れるか、全体破壊できるカードをデッキへ入れるといい。
幸い、獣族と獣戦士族のモンスターのみなので種族サポートは豊富にある。モンスター一体でも火力のでるカテゴリーなので相手の展開を待たず一気に攻めよう。


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惚けて探して逃げて

今回はデュエル無しです。
デュエル無しが二連続なのは今回と最終回だけにしようと思います。


 五枚ドロー! えぇと、『カードカー・D』『チキンレース』『闇の誘惑』『闇の誘惑』『闇の誘惑』……固まるのは変わらずかぁ。うーん。

 

「……」

 

 僕は小野寺さんに連れてこられたこの場所、こざっぱりした部屋に軟禁されてる。あの後車の中で寝ちゃったからなぁ。ここが何処だか分からない。警察さんと“君”のデュエルもどうなったのか……。

 

 寝て冷静になったから分かるけど、名も無い“君”と出会った時の僕は暴走気味だった。お世話になった警察さんが負けてもいいやと思ってしまうぐらいには。それがちょっと怖い。

 だけど冷静になった今でも“君”の言葉は覚えてるし囚われてる。だからこの場所、小野寺さんの家に居ても慌ててないどころかラッキーって考えてる。おかしい……よね。実は僕こっそり洗脳されてたりしない?

 

「……」

 

 まぁそれはそれとして話は変わるけど、『DOD』がさ。デッキトップに来ないの。絶対来ないの。

 いやまぁイカサマすればね? デッキトップを確定させたら、それがいつの間にか変わってる、なんてことは無いんだけど。ランダムシャッフルだと必ず下に行っちゃう。だから汎用カードがドローカードばっかりなんだろうね。

 

「……」

 

 ……。あのー、メイドさん? そんなじっと見られるとちょっと恥ずかしいというか気になるというか。

 

「どうか致しましたか?」

 

 こっちのセリフだよ! 可愛らしく小首かしげても騙されないよこの冷酷(クール)メイド! 小野寺さんの手先! 鬼! 悪魔!

 

「まだおやつの時間ではありませんよ?」

 

 お腹はすいてないよーだ! うぅー、この見張りがあるせいで部屋の外で自由に出来ない。

 っていうか気になるから食事の時は一人にさせてよ食べるところ見られるのは気まずいよ! あと着替えぐらい自分でできるよ! トイレにまで付いてこないでよ! ……よ、夜は付いてきてもよし!

 

 んー、でもよく考えたら小野寺さんってメイドさんを雇うぐらい裕福なのか……それともそういう趣味? 黒髪ツインテールなだけのテンプレートなメイドさんが好きなの? うーん、ドン引き。

 まぁ僕が見たメイドさんはこの人と食事運んでくる人だけだけど。

 あと、この人いつ食事してるんだろう。僕が起きてる間は何も食べてないんだよね。少なくとも何かを食べてる姿は見たことない。

 

「……そんなに見つめられると、照れます」

 

 もー、無表情でそんな事言って! 僕も人の事言えないけどさ! もう無視する!

 

 といっても暇なんだよね。ご飯を食べるか『DOD』を眺めるか、あとはそれこそメイドさんを見るしかやれることがない。

 メイドさんデュエルしてくれないしなー。まあでも手持ちのデッキ、『DOD』と『ウリア』しかないからデュエルしなくていいや。『サイレント』と『メタファイズ』と『破壊剣』は警察さんの所に置きっぱ。スケッチブックとかが入ってるバックと一緒にね。

 だから意志疎通出来ない。せめて紙とペンがあればなぁ。それを伝える事も出来ない。

 

 いや、試したんだよ? なんとか伝えられないかなって、身ぶり手振りでお絵かきしたいなーって。

 無理だったね。うん。清々しいまでに伝わらなかったよ。わざとなんじゃないかと思うくらい分かってくれなかったね。

 ほんっとこのメイドさん嫌い。

 

 ポーン、ポーン

 

「おやつの時間です。ココアとマシュマロ、そして焼きプリンです」

 

 わーい、おやつだー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軟禁生活が始まって三日たった。今、僕は、小野寺さんの私室に忍び込んでいる。

 なんでも警察さんが怪我で病院に居るらしい。お見舞いに行きたいけど我慢。

 この情報を知った例のメイドさんが慌てて何処かに行ったから、僕はこの部屋に来れた。何かに呼ばれてる感じ。

 

「……!」

 

 有った、『DOD』のカード! 金庫をガチャガチャしてたら急に開いちゃった! セキュリティ大丈夫?

 えぇーっと、二枚あってどっちもペンデュラムモンスター。片方は『DOD―Pent in(ペント イン) Dream(ドリーム)』。僕そっくりな天使が檻の中で祈っている。これ、小野寺さんが言ってたカードだ。本当に、僕そっくり。

 もう片方は―――

 

「ここにも無い、か」

 

 うおわぁっ!? き、き、“君”!? ビックリした、何処から入ってきたの!?

 

「なら何処に? まだあの場所に隠されて……?」

 

 あれ? おーい。僕はここに居るよ? そんな悲しそうな顔しないで?

 

「となると……そうだな。じゃあ、“君”はその鍵を持っててくれる? 僕はそっちの鍵を持ってるから」

 

 “君”はそう言って僕から『DOD―Pent in Dream』を取る。カードじゃなくて、鍵?

 

「そうそう、“君”がもっと『DOD』の扱いに慣れれば、もっと面白い事が出来るんだよ。こんな風に」

 

 “君”が片手を上げると、その後ろの空間が十字に切り裂かれ、次元の裂け目が出来る。……うえぇぇっ!?

 

「場所さえ分かればいつでも会いに行けるんだ。……まぁ僕もまだまだ慣れてないから、そう頻繁には使えないけど」

 

 あ、そっか! 急に出てきたのは来るときもこれを使ったからか!

 ねえねえ、僕も連れてって! 一緒に居ようよ!

 

 僕は“君”の服を、黒いローブの裾を掴む。声が出せないから、行動で示すしかない。

 

「……なんだい?」

 

 “君”は変わらない悲しそうな顔で僕を見てくる。……一緒に居よ? “君”は、僕の事を知ってるから。『DOD』の事を知ってるから。僕は“君”の力になりたいんだ。

 

「離してくれないかな。これを開き続けるのも結構疲れるんだ」

 

 “君”の顔が、ゆっくりと、無表情になっていく。僕と同じ……うぅん、違う。僕の表情が仮面だとすれば、“君”のそれは仮面が剥がれた後の……。

 

「あぁ、一緒に居たいのかい? 僕らには探し物があるんだ。それを見つけなきゃいけない。その為には二手に別れた方が都合がいいんだ。だから、ね?」

 

 声は優しいのに、顔は冷たい。それが悲しくて悲しくて、でも僕には何も出来なくて。

 仮面を外せない僕には、“君”を軽く抱きしめるしかなかった。

 

 瞬間、何かの記憶と繋がった……気がした。

 

「……気は済んだかい? それじゃあ、またね」

 

 うん、大丈夫。僕は……なるべく間違えないようにするよ。

 またね、“君”。僕と一緒に天野地草から追い出された、僕の半身。

 

 “君”の姿が裂け目の中へと消え、裂け目は閉じられる。

 僕も行かないと。でも何処へ? んー……。とにかくこの家(すっごい広い豪邸だった)から脱出しよう!




『DOD』
天野地草が生み出したカテゴリー。除外を活用し、永続罠を多様する。
シンクロモンスターの『DOD―Star Dust』は相手のモンスターを無視してダイレクトアタックができ、更に自身の効果により場持ちがいい。

しかし『DOD』は主人公の持つものとは別にもうひとつある。そちらは『DOD―Xing Diabolic』というモンスターの名前だけ判明している。


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転じて 穏やかなる疾走

『DOD―Star Dust』の効果を少し変えました。
前:フィールドから離れる場合エンドフェイズまで除外。
後:墓地へ送られる場合、エンドフェイズまで除外。


 さてさてさて。脱出したはいいものの、ここどこ? 見たことのない通りをとたとた歩く。

 ここはデッキさえ持っていれば大抵の事は出来る世界だけどさ、今は警察に頼れないしお金も無い。

 警察に頼れればここがどこだか、そして警察さんに住まわせてもらってたあの寮までの距離がどれだけあるのか分かる。けどその場合小野寺さんの所に連絡が入る可能性が高い。

 僕一人であの人から逃げるのは……無理だ。デュエルならともかく単純な身体能力は比べていいのかどうかだし僕は人間止めてるようなデュエルマッスルは持ってない。“君”みたいに『DOD』の能力を引き出せれば別だろうけどなぁ。

 うーん。タクシー乗ってお代をデュエルで踏み倒す? でもそもそも何処へ向かえばいいかわかんないしそんな酷いこと出来ない。

 

 おっとと。考え事してたらぶつかっちゃった。ごめんなさい。

 

「「 あ、師匠! 」」

 

 ん? ああっ! その二つの顔は佐藤姉妹!

 

 

 

 

 

 

 

 

助かったよー! 迷子になってたから君たちに会えてよかった!

 

 久々に握る鉛筆。紙の匂い。んー、最高。これでようやくコミュニケーションがとれるようになった。ま、二人のノートと鉛筆を借りてるだけなんだけどね。

 それにしても小野寺さんの豪邸、わりと近くにあったんだね。

 

「迷子ですか?」

「師匠も迷子になるんだ」

 

 うぐっ。そりゃあ捕まってた所から逃げ出してきたなんて言えないよ。心配させちゃうし、この二人だと伝えたらそのまま「成敗だー」とか言って突貫しそうだし。なんとか誤魔化そう。

 

まあね、サルも木から落ちるんだよ。それにしても二人の両親は共働きなんだね

 

 今はいわゆる放課後なんだけど、この家……マンションの一部屋に、二人の親は居ないみたいなんだよね。

 

「……? これなんて読むの?」

「ふたりの、りょうしんは……うごきなんだね?」

 

 あらら、読めない? ふりがなふってあげよう。『ともばたらき』って読むんだよ。つまり、二人とも働いてるってこと。

 

「……あー。その……です、ね」

「お父さん居ないの!」

 

 ……んっ? 聞き間違いかな? 二人のお父さんは居ないって聞こえたけど。

 

「お姉ちゃん!」

「師匠なら大丈夫だって、真加」

 

 そっかぁ。どんな理由で居ないのかは聞かないでおこう。知らないかもしれないしね。代わりになでなでしよ。

 なでなで~なでなで~。無表情でごめんね?

 

「わっわっ」

「師匠っ!?」

 

今日はいっぱい遊ぼう!

 

 ウリアしかデッキないけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソリッドビジョン設定とかあったんだね。初めて知ったよ。おかげでウリアのあの派手すぎる召喚演出が無くなったうえにとっても小さくなった。可愛い。

 

「師匠強い……!」

「勝ーてーなーいー!」

 

 やっぱりウリアを出せればそれなりに強いや。でもそれまでにやられかけたりしたし、安定感が欲しいなぁ。

 でも新しいカード買うお金無いしなー。今あるカードでどうにかするしか無いかー。

 だからどんなカードがあるか見ーせてー!

 

「使ってないカードはこれです」

「どーだ!」

 

 おーいっぱいあるじゃん! ふんふん。……ふん、ふん? あーそりゃ使ってないカードの束じゃあこんなもんか。ペンデュラム召喚できるから『終焉の焔』もいらないし『心の眼の騎士(ハードアイズ・ナイト)』と『心の眼の魔導師(ハードアイズ・マジシャン)』がめちゃくちゃ強いから他のペンデュラムモンスターもいらないしなー。

 ん? これは知らないカード……『リベンジ・ハート』かぁ。

 

 

『リベンジ・ハート』

 速攻魔法

 このカード名の①の効果はデュエル中に一度しか発動できない。

 ①自分のライフが1000以下の時に1000ポイント以上のダメージを受ける場合に発動できる。そのダメージを0にし、自分のライフを100にする。

 ②このカードが墓地に送られた場合に発動する。自分フィールド上のモンスター一体を選び、その攻撃力をお互いのライフの差分アップさせる。

 

 

 

これハートって付いてるし、どう? 負けそうな時に使えばハートアイズの低い攻撃力を上げて逆転できるよ?

 

「あー……『リベンジ・ハート』」

「師匠。その逆転だぁっ! は皆考えた事がありますよ」

「だけど上手く使えなくって。結局はネタカードにしかならないの」

 

 だよねー。そもそもそんなダメージで負けちゃうような状況だったらまずモンスターは残ってないだろうし、墓地に送るギミックがあるなら他にもっと墓地に送りたいカードは沢山あるだろうしね。

 でもなんかピンッて来たんだよね。なんだろう、上手く言えないけどさ。僕が使ってもいいけど『ウリア』に入れるのは違うし、『DOD』は……むしろ使わせる側だしなぁ。

 

ハートアイズは手札一枚からでも動けるし、最近あんまり勝ててないんでしょ? ならこういう逆転のカードを入れておくのも良いと思うんだ。あと名前にハートって書いてあるし

 

「んー。いくら師匠でも、なー」

「だよね、お姉ちゃん」

 

 珍しい、美加ちゃんが反対するなんて。でもそっか、入れたくないなら無理に勧めないよ。

 

「1枚しか入れられないよ!」

「入れるの!?」

 

 入れるの!? あ、被った。それに誰か帰ってきたみたい……って帰ってきた!?

 

「ただいま……っ、誰!」

「お帰りなさいお母さん! この人は私たちの師匠だよ!」

「お帰りなさい」

 

 お邪魔してます、ペコリ。うわぁ、綺麗な人。そう言えば顔が二つあることに気をとられがちだけど美加ちゃんも真加ちゃんも可愛いんだよね。

 

「お母さん、あのね!」

「師匠がお泊まりしたいって言ってるの。良い?」

 

 もう一回ペコリ。おうちに泊まりたいっていうのは既に二人に伝えてある。……伝えてあったのさ!(言いたいだけ)

 だけど二人のお母さんは嫌そうな顔だ。ダメかぁ。まあ一晩ぐらい公園で過ごせるでしょ。そう考えてたら。

 

「……勝手にしなさい。けど夕食は増やさないから」

「「ありがとうお母さん!」」

 

 まさかのOK。しかも二人のお母さんはさっさと出掛けてしまった。

 うーん……何処に行ったんだろ? まぁいっか。

 

「そっか、もうご飯の時間だ!」

「用意しなきゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして泊めてもらった次の日。学校はお休みらしい。前にも行ったカードショップにおでかけしようと思う。……二人のお母さんは、ずっと寝てて朝ごはんは自分達で用意した。

 二人が言うにはこれが普通なんだって。一人で働いてるなら仕方ないのかな……。

 

「師匠食べるのおそーい」

 

 む、着替えるのは僕のが速いもんね! そもそも一人分の食事を二つの口で食べるんだもん、勝てないに決まってるでしょ!

 二人はワイシャツしか持って無くてボタンを着けるのに少し時間がかかってた。僕の服は昨日のと同じティーシャツ……着替えがないからね……。水砂さんなら見逃してくれるかなぁ。

 

 朝ごはんのパンを食べ終える。

 

むぐぐ。行くよ!

「「はーい!」」

 

 二人が元気に返事をすると同時に、部屋の扉が荒々しく開けられる。

 

「うるさいわよあんたたち……!」

 

 部屋から出てきたのは二人のお母さん。寝起きだから長いブロンドの髪の毛がぐちゃぐちゃだ。

 

「いつも言ってるでしょ! 休みの朝ぐらい寝かせなさいよ! なんで言う通りに出来ないのよ!」

「「ご、ごめんなさい」」

 

 ヒステリックに怒鳴られた二人は反射的に謝ってた。うぅ、こわ。

 

「私の朝ごはんは?」

「あ……」

「そ、その、えっと」

 

 二人がちらっと机の上を見る。そこには空のお皿が二つ。まさか、二人のお母さんの分のご飯、僕が食べちゃった……?

 

「用意しなさいって言ってるでしょ!? なんでそんないつもいつもどんくさいの!」

 

 っ!? 叩いた……ご丁寧にも二人それぞれに一回ずつ。

 

「あんたが、あんたたちが! 普通の子供だったら! あんな目で見られないのよ! なんでそんな頭なのよ! なんで、なんで!」

「おか、お母さん!」

「あうあうあうあう」

 

 二人のお母さんは二人の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。真加ちゃん(いもうとのほう)が何か言おうとしてるけどうまく喋れてない。

 僕は二人のお母さんの―――この女性の腕を掴む。多分、文字を書いてる暇はない。だからただ睨み付ける。睨めてるか分かんないけど。

 

「師匠……?」

「なによあんた。……この子の友達、だったわね?」

 

 頷く。ついでにデュエルディスク展開。女性も二人から離れてデュエルディスクを展開する。

 

「なに? やろうってんの? たかが子供が何も知らずに粋がってんじゃないわよ!」

「し、師匠!?」

 

 ごめんね二人とも。今、僕、凄く怒ってる。

 

「デュエル!」

 

 僕のターンからだ。……うーわ。

 

「『チキンレース』。ドロー。

 『カードカー・D』。『妖刀竹光』。

 『黄金色の竹光』。ドロー。『黄金色の竹光』、ドロー。」

 

 あ、三枚目引いた。

 

「『黄金色の竹光』、ドロー。

 『闇の誘惑』、ドロー。『バトルフェーダー』除外。『闇の誘惑』、ドロー。『異次元の偵察者』除外。『闇の誘惑』、ドロー。『バトルフェーダー』除外」

 

 うー、我ながら酷いデュエルだ。ドローばっかり。

 

「『チキンレース』、ドロー。『チキンレース』、ドロー」

 

 今のライフは5000、手札は6枚。フィールドは『妖刀竹光』を装備した『カードカー・D』と『チキンレース』。

 ……上下が薄い車におどろおどろしい刀が縄でくくりつけられてるのは、凄くシュール。

 

「ずいぶんとドローするじゃない。お目当てのカードは引けたのかしら?」

 

 ふん、どうだろうね?

 

「カードを4枚セット。『カードカー・D』効果。リリースして2枚ドロー。ターンエンド」

 

 手札四枚。モンスターゾーンはがら空き。ほら、攻撃してきなよ。出来るならね!

 

「私のターン、ドロー! 『龍魔導の守護者』を召喚! 手札を捨てて効果発動!」

 

 水色の鎧を身に付けた槍兵が現れる。確か『融合』か『フュージョン』をサーチだったよね。

 

「『DOD―Not』、チェーン、『デモンズチェーン』」

 

 これでフィールド上でモンスター効果は発動できなくなる!

 

「甘い! 手札を捨てて『ツインツイスター』!」

 

 ぎゃっ! くっそー、『DOD―Protect』さえあれば!

 

「ふん、『融合』を手札に加えるわよ! 更に『テラ・フォーミング』! 『混沌の場(カオス・フィールド)』をサーチ! そのまま発動! 発動時にデッキから『疾走の暗黒騎士 ガイア』をサーチ!」

 

 ガイア? それとも『カオスソルジャー』? どっちでも倒す!

 

「『融合』! 手札の『疾走の暗黒騎士 ガイア』と『霊廟の守護者』を融合!

 大地を駆ける騎士は、新たなる境地を求めて空へと飛び立つ! 『天翔の竜騎士 ガイア』!」

 

 来た! 真っ赤でとげとげした竜に乗る騎士! 槍届かないでしょ!

 そして融合モンスターならこれも使える!

 

「『混沌の場』にカウンターが二つ乗り、『天翔の竜騎士 ガイア』の効果!」

「チェーン。相手が融合召喚に成功した場合、『DOD―Change』は発動できる」

 

 

『DOD―Change』

 永続罠

 このカードは相手が融合モンスターの特殊召喚に成功した場合にのみ発動できる。

 ①1ターンに1度、このカードと自分フィールド上の『DOD』モンスターを除外して発動できる。エクストラデッキから『DOD―Five Dragon』を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 ②フィールド上のこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから『DOD―Change』以外の『DOD』罠カード1枚をセットする。

 

 

 

 女性は何かあるのかと身構えるけど、まだ効果使えないんだよね。でも発動はこのタイミングしかない。

 

「……何もないなら、『螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)』をサーチ。発動!

 『龍魔導の守護者』の効果! 『竜騎士ガイア』を見せることで墓地の『カース・オブ・ドラゴン』を裏側で特殊召喚!」

 

 『カース・オブ・ドラゴン』はドラゴン族の通常モンスター。倒すと墓地の『霊廟の守護者』が特殊召喚されるうえに回収されてしまう。裏側だから効果で処理する? でも『DOD』は案外効果破壊が無いんだよね。

 

「『チキンレース』の効果で自身を破壊して、バトル! 『龍魔導の守護者』で攻撃!」

 

 くらうよ! 攻撃力1800って結構あるね!

 

「『天翔の竜騎士 ガイア』で攻撃! スパイラル・シェイバー!」

「『死霊ゾーマ』」

 

 『デモンズ・チェーン』とはまた違った防御札。ウリアから移動させた。

 さあ、攻撃する? 僕に2100ダメージ与えて、2600のダメージを受ける?

 

「くっ……攻撃するわ!」

 

 いたっ! これは、ドロー優先かな。残りライフ、1100。もうダメージはもらえないね。

 

「『混沌の場』にカウンターが乗って、『螺旋槍殺』により2枚ドロー、1枚捨てる。……ターンエンドよ」

 

 セットは無しか。儀式魔法のサーチもしなかったし……カオスは無しかな。

 

「ドロー」

 

 手札は五枚。場には『DOD―Change』だけ。まあいいか。

 

「『DOD―ダーク』を召喚」

 

 

『DOD―ダーク』

 レベル4 闇属性 悪魔族

 ATK 0 DFE 0

 ①このカードが戦闘で破壊される場合、墓地へはいかず除外される。

 ②このカードが除外された場合に発動する。デッキから『DOD』罠カードをセットする。

 

 

 

 目の前に闇が生まれる。出てきたというより、その場所の光が無くなった……そんな感じ。

 

「攻撃力0?」

「『DOD―Change』の効果発動。『DOD―ダーク』と共に除外する事で融合召喚」

「モンスター1体で融合!?」

 

 僕の頭上へと移動した闇の塊が五つに分裂し、五角形の頂点へと移動する。

 

「世界の終末は五つの破滅から始まる」

 

 闇がスッと消える。けどこれは、嵐の前の静けさだ。

 

「火の破滅、冷然」

 

 ピシッと音がなり、闇の塊があった空間にヒビが入る。その隙間から赤い眼がガイアを見つめる。

 

「風の破滅、停滞。水の破滅、気化。地の破滅、不毛」

 

 告げる度に空間のヒビは増えていく。緑と、青と、茶色の眼が見える。

 

「そして光は消え、ただ闇だけが残る! 融合召喚!

 顕現せよ、『DOD―Five Dragon(ファイブ ドラゴン)』!」

 

 最後に見えたのは、真っ黒な眼。

 

 ゴルルゥアアッーー!

 

 バキンッと空間を破壊し、五つの首を持つ星型の竜がその姿を現す。手足は無い。顔から延びていくカラフルな体色は体の中心で混じり合い、目に悪い極彩色となっている。

 

 

 

 

 

『DOD―Five Dragon』

 レベル12 闇属性 ドラゴン族 融合

 ATK 5000 DFE 0

 『DOD』モンスター×5

 ①このモンスターは効果では破壊されず、除外された場合エンドフェイズに自分フィールド上に特殊召喚される。

 ②1ターンに1度、ライフを半分払って発動できる。このモンスターは5回攻撃することができる。このターン自分は他のモンスターで攻撃できず、相手に与える戦闘ダメージは半分になる。

 

 

 

 

 っていうかさ。僕、二人とのデュエルからデュエルディスクの設定<抑え目>から変えてないんだけど。なんで部屋いっぱいいっぱいの体格のまま出てるの!?

 

「なっ……何よこのモンスター!」

「除外された『DOD―ダーク』の効果。デッキから『DOD―Protect』をセット。ライフを半分にして『DOD―Five Dragon』の効果発動。ディファント・オンエンド・デイ」

 

 五つの首が咆哮をあげ、僕に噛みつく―――っ!?!? いだだだだっ、いぎっ!? 手足がちぎれるーっ!

 ふひゃっ! 目の前が真っ暗に! べちゃべちゃで生暖かい……頭の後ろで何か動いてる。

 

「「 師匠が食べられたー!? 」」

「何してんのよあんた!?」

 

 すぐにFive Dragonは離してくれた……痛い……。でも体には傷痕(きずあと)はない。頭もべとついてない。この、二度と効果使わないからね!

 

「……バトル。このターン、『DOD―Five Dragon』は五回攻撃可能、与えるダメージは半減」

「なっ!」

「ディザスター・アザー・ディメンション」

 

 一撃目、炎が竜騎士を包み込む。

 二撃目、風が『龍魔導の守護者』を吹き飛ばす。

 三撃目、氷が『カース・オブ・ドラゴン』に突き刺さる。

 

「『霊廟の守護者』を守備表示で特殊召喚! そして『カース・オブ・ドラゴン』を手札に加える!」

 

 そういえば『混沌の場』のカウンターがいっぱいいっぱいだね。

 四撃目、『霊廟の守護者』は大地の裂け目へと落ちていった。

 これでもうモンスターはいない。僕の怒りをくらえっゴレンダァッ!

 

「きゃーーーっ!」

 

 1200+1600+2500で5300もの大ダメージ! 『チキンレース』使ってるから、残り1700!

 例えどんな理由があっても、僕の友達を理不尽に叩くのは、許さない!

 

「カードを2枚セット。ターンエンド」

「う……ぐ……! ドロー!」

 

 さぁ、手札三枚でどうするの?

 

「『融合』! 」

「チェーン、『DOD―Protect』。永続罠を表側に、『DOD―Not』」

「それがどんな効果だろうと止まらないわ! 『カース・オブ・ドラゴン』と『暗黒騎士ガイア』で融合! 『天翔の竜騎士ガイア』! そして効果発動!」

 

 Notがある限りモンスターの効果は発動できないんだけど。

 

「ふふふ、『天翔の竜騎士ガイア』には攻撃宣言時に相手モンスターの表示形式を変更できる! そのモンスターは守備力が0……貫通ダメージであなたは終わりよ!

 ―――な、なんで効果が発動しないの!」

 

 んー。しかたない、効果の説明ぐらいしてあげようかな。

 

「『DOD―Not』が有る限り、フィールドでモンスターの効果を発動できない」

「な……」

 

 ほら、もう勝ち目は無いでしょ。ターンエンドするか、せめてサレンダーしてよ。



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『竜騎士ガイア』使いの主婦、佐藤美月

「「だめー!」」

 

 女性が力なくターンエンドし、僕のターン。そのままダイレクトアタックしようとしたんだけど二人が割り込んできた。

 二人とも、危ないよ? 明らかにFive Dragonは……いや、『DOD』はソリッドビジョンの枠を越えてる。直撃していなかったというのに、さっきのダイレクトアタックで女性はギリギリ立っているだけの状態。逆転の可能性があったから、気力だけで立ってたようなもの。次の一撃で確実に動けなくなる。

 

 だからさ、そこをどいて。その女性が居なくなれば、二人が殴られる事は無くなるんだよ?

 いじめられてたんでしょ? いや、いじめられて『いる』んだよね……だから僕が助けてあげる。二人をいじめる奴は……許 さ な い ! 絶対に! 例え二人が(かば)ってても!

 それにほら、どかないと、Five Dragonがイライラしてるよ?

 

 グルルルルゥ……ルアァッ

 

 Five Dragonの五つの首のうち、黒いのが僕の頭を舐める。……ってねぇほんとやめてよ! ただでさえその口僕の頭より大きいんだから食べられそうで怖いんだよ!

 

「師匠! もうやめてよ!」

 

 やめる? ただのデュエルでしょ? 大丈夫、殺さないよ。二人の生活に支障が出るからね。

 悪い事をしたら怒る。間違ったことはしてないよ。

 

「お母さんをいじめないでよ!」

 

 ―――っ!? い、いや、いじめてるのはその女性で、僕は!

 

「うっ、うう……師匠ぅ……やめてよ……なんでこんな酷いことするの……」

「真加……」

 

 泣き出した。違うよ、僕は、僕は二人の為に……、~~~っ!

 

 どうにもならない憤りとともにサレンダー。なんで分かってくれないのさ! 悪いのはそいつだ! そいつが悪者なんだよ! 二人なら分かるでしょ!?それとも、間違っているのは、僕なの!?

 ―――悪い事を、してる、のは……。ぼく……なの……?

 

 ……出ていこう。もうここに居られない。僕が悪くても悪くなくても、どうせ二人に嫌われた。二人を泣かせた。友達でいられない。

 玄関の扉を開ける前に、チラッと二人を見てみる。二人も僕を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、なんであんな事……。『DOD』のダイレクトアタックは危険だって知ってた筈なのに。

 二人のお母さんはボロボロだった。寝起きにデュエルしたらプレミなんて山ほど出てくるだろうに、そこを突くようにデュエルして。

 訳も分からないまま悪者にされて……。きっと、殴ったのだって寝起きでイライラしてて気の迷いみたいな感じだった……んだと思う。

 今ほど、喋れないのを辛く思った事はない。けど同時に、喋れなくてほっとしてる。きっと喋れてたら二人にも酷い言葉を言ってた。

 自己嫌悪。何が嫌いって僕が嫌い。喋れないのも、表情が無いのも、感情的なのも、全部。

 二人と、二人のお母さんに謝りたい。でも僕なんかに会いたくないかもしれない。

 一人になりたい。誰にも会いたくない。暗闇の中で膝を抱えて泣きたい。泣けないけど。

 

 ……“君”ならどうしたんだろう。“君”は何処に居るんだろう。頭が働かない。“君”に会いたい。けどこんな僕を見せたくない。

 

「ケッケッケッケッ」

 

 不快な笑い声だ。でも聞いたことがある。なんだっけな。

 ぼんやりした頭をのろのろと動かす。

 

「久しぶりだなぁ~~~クソガキィィイイイ!」

 

 ……えーと。青のニット帽? ちょっぴり見える髪は金髪に染めてある。地毛かもしれないけど。あとピアスつけてる。

 金髪の、ちゃらちゃらしてて、嫌な感じの男。

 

「さあデュエルだ! てめぇをめちゃくちゃにしてあん時の借りを返してやるぜ~! 旅人に渡すのはその後だ!」

 

 あぁ、思い出した。二人を誘拐しようとしてた誘拐犯だ。池田十式、だっけ? ウリアでちゅどーんされた人。

 え、まずくない? 僕は誘拐されたら探しに来てくれる人なんて居ないよ!?

 いやでも、もういいかな。もういいよ。僕がここにいることが間違ってたんだよ。

 

「おいおい、折角柄にもなく早起きしてやったってのによ~。けっけっ、自分に負けた奴とはデュエルする気はねぇってか?」

 

 そんなんじゃないよ。僕にはもうやることがないから。

 

「誰にもバレないようにしながらこの場所を用意すんのは大変だったんだぜ~?」

 

 言われてみれば凄い静かな場所だ。休日なのに人が居ない小さな広場。

 叫んでも誰も来ないだろう。叫べないけど。

 

「さあ、さあ、さあ! デュエルだぁっ!」

 

 ……じゃあ、いいよ。『DOD』の全力を見せてあげるよ! やけくそだ!




『DOD』
シンクロ→『DOD―Star Dust(スターダスト)
融合 → 『DOD―Five Dragon(ファイブドラゴン)
エクシーズ→ ?
儀式 → ?
リンク →?


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巨大な暴力 VS 絶望の闇

やっと……書けた……ぜ。2ヶ月ぶりの更新……遅くてすまねぇ!


「俺のターン!」

 

 先攻は誘拐犯。『DOD』は下準備が多いから、あの大型の『ハウシサイド』の攻撃力で速攻をかけられたら危険だ。

 

「けっけっけっ、フィールド魔法『ホームード』!」

 

 えーっと、デッキから墓地送ってそのレベルより低いのをサーチだったっけ。

 

「けっけっ! 見せてやるぜ新たなモンスター! レベル7、儀式モンスター『ハウシサイド・ワーハウス』を墓地へ送り! レベル8、儀式モンスター『ハウシサイド・ブラインドハウス』をサーチだ!」

 

 逆だった。って儀式モンスター?

 

 

 

『ハウシサイド・ワーハウス』

 レベル7 風属性 機械族 儀式

 ATK2400 DFE1800

 『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』により降臨。

 ①1ターンに1度、このカードをリリースして発動できる。自分の手札・デッキから合計レベルが6となるように『ハウシサイド』モンスター2体を特殊召喚する。(同名モンスターは1枚まで)

 ②このカードが墓地へ送られた場合、デッキ・墓地から『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を手札に加える。

 

 

『ハウシサイド・ブラインドハウス』

 レベル8 水属性 機械族 儀式

 ATK1800 DFE2400

 『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』により降臨。

 ①1ターンに1度、このカードをリリースして発動できる。自分のデッキ・墓地から合計レベルが7となるように『ハウシサイド』モンスター2体を特殊召喚する。(同名モンスターは1枚まで)

 ②このカードが墓地へ送られた場合、デッキ・墓地から『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を手札に加える。

 

 

「さぁらぁにぃ~! 墓地へ送られた『ハウシサイド・ワーハウス』の効果! デッキから儀式魔法、『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を手札にぃっ!」

 

 

『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』

 儀式魔法

 『ハウシサイド』儀式モンスターの降臨に必要。

 ①合計レベルが儀式モンスターのレベルと同じになるように手札・フィールドからモンスターをリリースし、手札から『ハウシサイド』儀式モンスターを儀式召喚する。

 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、リリースの代わりに墓地の『ハウシサイド』モンスターをデッキに戻すことができる。

 

 

 

 うわ、フィールド魔法一枚から儀式セット揃えてきたんだけど! これまずいんじゃ?

 

「まずはこっちだ! 『ホームード』を墓地へ送り、来いよ『ハウシサイド・チョッピングモール』!」

 

 うわ、包丁持ちの奴が出てきた! レベルは12で、三体に増えるんだっけ?

 

「効果発動! リリースし、デッキからレベル2、3、6の『ハウシサイド・マウス』『ハウシサイド・ボーイ』『ハウシサイド・マザー』を特殊召喚!

 『ハウシサイド・ボーイ』の効果! 『ハウシサイド・ディパーティドメント』をサーチ!」

 

 手札が減ってない……どころか増えてる! それなのにモンスターは三体!

 

「お披露目だぜぇ~……『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』! レベル2、『ハウシサイド・マウス』とレベル6、『ハウシサイド・マザー』をリリース!

 暗き海を闇に閉ざせ! レベル8! 『ハウシサイド・ブラインドハウス』!」

 

 でかい……というより、高い! 『ハウシサイド・チョッピングモール』とかはとにかくでかい、って感じなのに対して、このモンスターは縦長! 見上げるだけで首が疲れる!

 

「『ハウシサイド・ブラインドハウス』の効果! リリースし、デッキからレベル3、4の『ハウシサイド・ボーイ』『ハウシサイド・メイド』を特殊召喚!

 『ハウシサイド・ボーイ』の効果! 『ハウシサイド・ファザー』をサーチ!

 更に『ハウシサイド・ブラインドハウス』により墓地の『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を回収!」

 

 と、止まらない! っていうか『ハウシサイド・ボーイ』の効果1ターンに何回でも使えるの!?

 

「『ハウシサイド・ボーイ』をリリースし、『ハウシサイド・ファザー』を通常召喚! 効果発動、『ハウシサイド・ボーイ』をリリースし墓地の『ホームード』を回収!

 即座に発動! そして墓地へ送り、『ハウシサイド・ディパーティドメント』を特殊召喚! リリースし、デッキからレベル1、3、6! 『ハウシサイド・マーチン』『ハウシサイド・ボーイ』『ハウシサイド・マザー』を守備表示で特殊召喚!

 『ハウシサイド・ボーイ』の効果! 儀式モンスター、『ハウシサイド・ソールハウス』をサーチ!」

 

 

 

 

『ハウシサイド・ソールハウス』

 レベル9 炎属性 機械族

 ATK2400 DFE2400

 『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』により降臨。

 ①1ターンに1度、このカードをリリースして発動できる。自分の墓地または除外されているモンスターの中から、合計レベルが8となるように『ハウシサイド』モンスター2体を特殊召喚する。(同名モンスターは1枚まで)

 ②このカードが墓地へ送られた場合、デッキ・墓地から『ハウシサイド・クリストロンセレモニー』を手札に加える。

 

 

 

 

 

「当然、『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』! レベル4、『ハウシサイド・メイド』とレベル5、『ハウシサイド・ファザー』をリリース!

 熱くあれ、孤独であれ! レベル9! 『ハウシサイド・ソールハウス』!」

 

 でっかいサングラスをかけた家が出てくる。今までの大型の『ハウシサイド』モンスターに比べたら、けっこう小さい。それに怖い感じじゃなくて、ニコニコしてる。

 って燃えてる!?

 

「『ハウシサイド・ソールハウス』の効果! リリースし、墓地からレベル3、5である『ハウシサイド・ボーイ』『ハウシサイド・ファザー』を守備表示で特殊召喚!

 まず『ハウシサイド・ソールハウス』の効果により『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を回収!

 チェーンされた『ハウシサイド・ボーイ』の効果! デッキから『ハウシサイド・ホラピタル』をサーチ!

 更に『ハウシサイド・マザー』の効果発動! 手札のレベル7以上のモンスター、『ハウシサイド・ホラピタル』を捨てる事で、墓地の『ホームード』を回収だ!」

 

 ……ここまでぐるぐると回して、フィールドに残るのは下級モンスターだけなんだ。そこが弱点なのは変わらずかぁ。でもその展開力は馬鹿にならない。手札も五枚のままだし。

 

「けけけっ! 前回は見せられなかったからなぁ……『ハウシサイド・アップ』発動! こいつはレベル7以上のモンスターがフィールドに居なければ使える!」

 

 

『ハウシサイド・アップ』

 通常魔法

 このカードは1ターンに1度、自分フィールド上にレベル7以上のモンスターが存在しない場合に発動できる。

 ①自分フィールドの『ハウシサイド』モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、そのモンスターよりレベルの1つ高い『ハウシサイド』モンスターをデッキから特殊召喚する。

 

 

 

「対象は『ハウシサイド・ボーイ』! デッキに戻し、『ハウシサイド・メイド』を特殊召喚!」

 

 『ハウシサイド』専用の『トランスターン』? でもどうして?

 

「そしてぇ~、『ホームード』を発動し、フィニッシュにこれだ! 『建築大暴走』!」

 

 

 

『建築大暴走』

 通常魔法

 このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①自分フィールドにフィールド魔法が存在する場合に、自分フィールド上のモンスターを3体以上リリースして発動できる。自分の墓地から、リリースしたモンスターと同じ属性の、このターン特殊召喚した『ハウシサイド』モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する。

  その後、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターのレベルの合計×200のライフを失う。

 この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン効果の発動ができない。

 

 

 

 っ!? 嫌な、予感がする!

 

「けっけっけっ。コストとしてぇ~、水属性の『ハウシサイド・メイド』、光属性の『ハウシサイド・ボーイ』、炎属性の『ハウシサイド・マザー』をリリースぅ~。

 召喚条件を無視して墓地より復活しろ、水属性、『ハウシサイド・ブラインドハウス』! 光属性、『ハウシサイド・ディパーティドメント』! そして炎属性、『ハウシサイド・ソールハウス』!」

 

 うぇっ!? 唐突に巨大建築物が三つも! 重圧感が異常だよ!

 

「俺はこいつらのレベルの合計×200、つまり28×200である、5600のライフを失う」

 

 コストとデメリットが重いけど、それを差し引いても強い!

 

「カードをセットしてぇ~、ターンエンドだ!」

 

 ……まずい。突破は『DOD』じゃ難しいかも? いや、『DOD―Star Dust』で一撃か。

 

「ドロー」

 

 あ……手札が酷い。いやデュエルが始まった時点で分かってたけど、それでも改めて、酷い。

 

「『チキンレース』、ドロー」

 

 よ、良かった……竹光きた……。

 

「『妖刀竹光』、『ハウシサイド・チョッピングモール』」

 

 あれ、刀が出てこない? ……あっ、看板に入り込んでる。ただでさえ怖いのに更に禍々しくなってる……。

 

「『黄金色の竹光』。『黄金色の竹光』、『黄金色の竹光』」

「積み込んでるだろてめぇっ!」

 

 来ちゃうんだもん仕方ないじゃんっ! 八枚の手札、まだまだ回すよ!

 

「『闇の誘惑』、『異次元の偵察者』。『闇の誘惑』、『バトル・フェーダー』。『闇の誘惑』」

 

 手が止まる。これで『DOD』が三枚。それは計算通りなんだけど……“君”、いつ……いれたっけ?

 

「……『DOD―ダーク』除外。効果、『DOD―Accelerate』をセット。

 スケールセッティング、スケール9、『DODヨウシトラ』。スケール効果発動。『妖刀竹光』をデッキへ」

「だったらそこだ! 『ツインツイスター』! 手札を捨て、伏せたやつとペンデュラムスケールを破壊!」

「『DOD―Accelerate』が墓地へ送られたので効果。デッキから『DOD―Protect』をセット」

 

 『妖刀竹光』が邪魔だなぁ。……“君”は、使うしか、ないよね。

 

「スケールセッティング。スケール2。『DOD―Pent in(ペント イン) Death(デス)』」

 

 

 

『DOD―Pent in Death』

 レベル5 闇属性 悪魔族 ペンデュラム

 ATK 0 DFE 0 ◇2

 《1ターンに1度、除外されている『DOD』カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える》

 ①このモンスターはリリース無しで通常召喚できる。その場合、このモンスターはレベル4として扱う。

 

 

 

 

「あぁ~? ……なっ!? なんだそりゃ!」

 

 振り返って、見る。どこからか吊り下げられた鉄の鳥籠。その中に死神の装束をした“君”がいる。

 ……デッキに入れた覚えは、無いんだけど。“君”に、僕そっくりなモンスターが描かれていた『DOD―Pent in Dream』を持っていかれてから、デッキに入れず、絵柄も見ないで、ポケットに入れっぱだったのに。

 

「『DOD―Pent in Death』のスケール効果発動。除外されている『DOD―ダーク』を対象。手札へ。

 セット、セット。『カードカー・D』。リリース、ドロー。ターンエンド」

 

 手札六枚。潤沢だね?

 

「けっ旅人に似てるだけだ……関係ねぇ! 俺のターン! ドロースタンバイメインバトル! やれぇ『ハウシサイド・ソールハウス』!」

「『バトル・フェーダー』」

 

 あー、これ『バトル・フェーダー』あるの分かってる動きだ。

 

「だろうなぁっ! だがいつまで持つだろうなぁ~! メイン2! 『チキンレース』でドロー!

 そして『ホームード』の効果! 『ハウシサイド・ホラピタル』を墓地へ送り、『ハウシサイド・ディパーティドメント』をサーチ!

『ハウシサイド・ファザー』の効果発動! 墓地の『ハウシサイド・ワーハウス』をデッキに戻す!」

「『デモンズ・チェーン』、『ハウシサイド・ファザー』」

 

 『ハウシサイド』はデッキがどんどん薄くなっていくから、デッキに戻させなければ勝てるかも。

 

「ちっ、ならフィールド魔法『ホーメモリー』を発動!」

「魔法カードの発動にチェーン、『DOD―Protect』。起動効果は使わない」

 

 

『ホーメモリー』

 フィールド魔法

 このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①自分の墓地から属性の異なる『ハウシサイド』モンスター6枚を対象として発動できる。そのカードをデッキに戻しシャッフルする。その後、2枚ドローする。

 

 

「……破壊とかじゃあねぇのか。だったら『ハウシサイド・ファザー』と『ハウシサイド・マーチン』をリリース! アドバンス召喚は出来るんだぜぇ~、『ハウシサイド・ディパーティドメント』!」

 

 うわぁ、巨大建造物が四つも。広場が埋まっちゃうよ!

 

「『ホーメモリー』の効果発動! 墓地から地属性『ハウシサイド・マウス』、風属性『ハウシサイド・ワーハウス』、炎属性『ハウシサイド・マザー』、水属性『ハウシサイド・メイド』、光属性『ハウシサイド・ボーイ』、闇属性『ハウシサイド・ファザー』をデッキに戻し、二枚ドロー!」

 

 めっちゃ戻すじゃん。うーん、これじゃあデッキ切れは狙えないかな。

 

「『ハウシサイド・ブラインドハウス』をリリース! 墓地からレベル3、『ハウシサイド・ボーイ』とレベル4、『ハウシサイド・メイド』を特殊召喚!

 『ハウシサイド・ブラインドハウス』の効果、チェーンして『ハウシサイド・ボーイ』の効果、チェーンして『ハウシサイド・メイド』の効果! そのプロテクトとやらをバウンスだ!」

「『デモンズ・チェーン』、『ハウシサイド・メイド』」

 

 あっぶな! 発動条件厳しいんだからやめてよ!

 

「ちぃ~、『ハウシサイド・ボーイ』で『ハウシサイド・ワーハウス』をサーチ! 『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を回収! そのまま発動! フィールドの『ハウシサイド・メイド』と『ハウシサイド・ボーイ』をリリース!

 狼煙をあげろ! 『ハウシサイド・ワーハウス』!」

 

 屋根が狼の顔になっている小型の家が建つ。……斜め具合から、倉庫かな? めっちゃ唸ってる。

 

「カードを二枚セット! ターンエンドォ!」

「ドロー」

 

 誘拐犯のライフはもう1400しかない。けどフィールドのカードの枚数が多すぎる。

 

「『デモンズ・チェーン』をリリース。『DOD―ブラックタイガー』をチューナーとして特殊召喚。

 セット。『DOD―Protect』の効果発動。セットカードを全て確認」

 

 えーっと、相手の伏せカードは『魔法の筒(マジック・シリンダー)』と『ドレイン・シールド』か。って殺意たかっ! どうしよ……。

 

「『DOD―Connect』は永続罠。よって表側に」

「ぐっ……てめぇ~こそこそ盗み見てんじゃねぇ!」

 

 そういう効果だよ!?

 

 

『DOD―Connect』

 永続罠

 このカードは相手がリンクモンスターの特殊召喚に成功した場合にのみ発動できる。

 ①1ターンに1度、このカードと自分フィールド上の『DOD』モンスターを除外して発動できる。エクストラデッキから『DOD―Limitless Deleter』をリンク召喚扱いで特殊召喚する。

 ②フィールド上のこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから『DOD―Connect』以外の『DOD』罠カード1枚をセットする。

 

 

 

 うーん。このままシンクロすれば勝ち、って思ってたけど攻撃反応を処理しなきゃ……仕方無い。

 

「『DOD―ダーク』を召喚。『DOD―Connect』の効果発動。『DOD―ダーク』と供に除外しリンク召喚。

 アローヘッド確認、左、下、右下。召喚条件は『DOD』モンスター二体以上(ふみたおす)!」

 

 僕の目の前、上下に二つの『次元の裂け目』が現れる。

 

「全てを消し去るプログラム! その境界に自他は無し! Link3! 屹立せよ、『DOD―Limitless(リミットレス) Deleter(デリーター)』!」

 

 下の裂け目から、上の裂け目に向けてピンク色の光の線が沢山出てくる。その光は束になりまるで電子の塔のようになる。

 

 ピーーーー、プゥーーー、ガーーーーッ!

 

 異音を立て、光の中から腕が生える。無駄に大きなモニターが四方に取り付けられそこに顔が映る。イケメンな男の顔だ。

 

 ギギギギギギッ!

 

 だけど、そんな顔を醜く歪ませて嘲笑(わら)う。もったいない。

 

 ギャハァハハハハハッハァッ!

 

 

 

『DOD―Limitless Deleter』

 闇属性 サイバース族 リンク

 ATK 2300 link3

 『DOD』モンスター2体以上

 ①このモンスターがフィールドから離れる場合、エンドフェイズまで除外される。

 ②このモンスターがフィールド上に存在する限り1度だけ発動できる。自分フィールドに表側で存在する魔法・罠カードを全てデッキに戻す。その後、デッキに戻した枚数まで相手フィールドのカードを除外できる。

 

 

 

 

「除外された『DOD―ダーク』の効果発動。デッキから『DOD―Protect』をセット。

 『チキンレース』、ドロー。『DOD―Pent in Death』の効果発動。除外されている『DOD―ダーク』を回収。

 そして『DOD―Limitless Deleter』の効果発動。『チキンレース』、『デモンズ・チェーン』、『妖刀竹光』、『DOD―Protect』、『DOD―Pent in Death』をデッキに戻す」

 

 僕の場の魔法と罠がデータの海へと吸い込まれていく。当然“君”も。でも、“君”は達観したように目をつむっている。

 確かに僕じゃどうにも出来ないし、僕の望んだことだけど……手を伸ばすとか、僕を見るとか、してくれてもいいじゃん。けち。あほ。ばか。

 

 ギャヒ? ギャヒヒヒィッ?

 

「その数、五枚まで相手のカードを除外する」

「なにっ!?」

 

 さて、どうしようか。大型の『ハウシサイド』モンスターたちはLimitless Deleterの攻撃力じゃ越えられない。

 かといって伏せカードを残したら攻撃できない。

 

「伏せカード二枚、『ハウシサイド・ディパーティドメント』、『ハウシサイド・ブラインドハウス』、『ハウシサイド・ソールハウス』を除外。

 デリート・アザーワイズ・デリート」

 

 空間にノイズが走る。建造物たちが、その身の異変に気付く時にはもう遅い。ノイズが壁を削り、看板を削ぎ落とし、全てが『DOD―Limitless Deleter』へと吸い込まれていく。

 残った『ハウシサイド・ワーハウス』は面白いほどの驚愕顔だ。

 

 ギィヒヒヒヒッ、ギャハァハハハッハァッ!

 

 うるさいなぁ。攻撃力低くてワーハウスさえも倒せないくせに!

 

 ギャハッ!?

 

「セット、セット。ターンエンド」

 

 次のドローは三分の一で『チキンレース』、『デモンズ・チェーン』、『妖刀竹光』のどれか。

 『DOD―Protect』があるのが分かってるから、きっと魔法は使ってこない。

 

「ぐっ、ドロー! まずは『ホーメモリー』を墓地へ送り、『ハウシサイド・ホラピタル』を特殊召喚! バトル! いけ、『ハウシサイド・ホラピタル』! あいつに攻撃!」

 

 廃病院からゾンビがうじゃうじゃと湧き出てくる。そのまま、Limitless Deleterの下側の次元の裂け目をその身をもって埋める。案外、静かに消えた。

 そのままゾンビが僕へと突撃してくる! ひぃっ!……あ、あれ?

 そーっと目を開ける。直後にお腹に衝撃(無言の腹パン)。ぐふっ! い、痛い……!

 

「さらにいけっ、ワーハウス! 『DOD―ブラックタイガー』を破壊だっ!」

 

 狼が咆哮すると、扉から沢山の犬が飛び出してきてむしゃむしゃとエビを食べ始める。爆発し、その衝撃が僕の元へ届く。ぐぐ……守備表示だからまだまし……!

 

「メイン2! 『ハウシサイド・ホラピタル』をリリース!」

「モンスター効果の、発動に、チェーン、『DOD―Not』」

「いちいちうぜぇっ! 墓地より現れろ、レベル3、6! 『ハウシサイド・ボーイ』『ハウシサイド・マザー』!

 『ハウシサイド・ボーイ』効果! ……あぁ?」

 

 ぐぅ……リアルダメージがここまで効くなんて―――息も絶え絶えだよ。

 それと、『DOD―Not』適用下じゃモンスター効果は発動できないよ。発動のトリガーとなった効果は潰せないんだけどね。

 

「ちぃ~っめんどくせぇっ! ……くそっターンエンド!」

「エンドフェイズ、『DOD―Limitless Deleter』が帰還。ディペンド・アワー・ディメンション」

 

 裂け目を埋めていたゾンビたちがノイズに呑まれ、また電子の塔が現れる。

 

 イギィッ、ヒッヒッヒアァアァッ!

 

 笑い声が脳に響く。あんまりうるさいと警察さんたちが来ちゃう。

 

「ドロー。スタンバイ、メイン」

 

 『チキンレース』。僕のライフは残り5500。誘拐犯のライフは変わらず1400。ホラピタルが攻撃力2800、ワーハウスが2400だから……いや、『ハウシサイド』は簡単に大型モンスターが出てくるから油断できない。

 それに『DDD―Not』の制約は僕にもかかる。……『DOD―Limitless Deleter』の起動効果が使えない……はぁ。

 

 ギャヒヒッ!

 

「『チキンレース』。ドロー。

 ……セット、バトル。『DOD ―Limitless Deleter』で『ハウシサイド・マザー』を攻撃。デリート・オウン・データ」

 

 その巨大な両手で怒り狂うおばさんを潰す。そのまま両手ごと自らの中へと沈め、データの奔流へ消し去る。良い気味だ。

 

「ターンエンド」

「俺のターン! ドロー! 『チキンレース』! ドロー!」

 

 ライフ400の手札二枚か。さぁどうくる?

 

「……くそっ! モンスターをセット!

 バトル!やれ、『ハウシサイド・ワーハウス』!」

「『デモンズ・チェーン』」

「だろぅなっ! エンドだっ!」

 

 『チキンレース』は自分で破壊出来るから、ライフが低い相手にダメージを与えられないという効果は気にならない。

 ……ただ、次のドローが確定で『妖刀竹光』だから『チキンレース』でドローして……うーん。

 

「ドロー。『チキンレース』、ドロー」

 

 ……んー。動けなくは、ない。けどこのまま動いても弱い。

 

「セット、バトル。『ハウシサイド・ボーイ』を攻撃。デリート・オウン・データ」

 

 ギャハハハハハハッ!

 

 小汚ないとはいえ子供が無慈悲に処分されるのは……見てられない。

 

「ドローッ!」

 

 ……ん? 誘拐犯がふてぶてしく笑ってる。何をしかけてくるのかな。

 

「―――やってらんねぇ~よなぁ? こっちは魔法を使わなきゃそうそう動けねぇ~ってのによぉ~? 魔法を使ったらそっちも動き始めるしよぉ~。

 だが! 俺はちまちましてるのは好きじゃ~ねぇんだっ! 『ハウシサイド・ワーハウス』と伏せモンスターをリリース! こい、『ハウシサイド・ディパーティドメント』!」

 

 また出た。気持ち悪い看板の建物。さりげなく僕の『デモンズ・チェーン』を表側で残していくプレイングだ。意味ないけど。

 

「おら使えよ! 『ホームーブ』発動!」

「『DOD―Protect』発動」

「ハハハハハハハッ! チェーンして、『サイクロン』だっ! これで終わりだなぁ~っ!?」

 

 誘拐犯が高笑いしながら発動した速攻魔法。なるほど、『DOD―Protect』は永続罠。チェーンして破壊してしまえば『破壊できなくなる』という効果は適用できずに破壊されてしまう。

 そうなってしまうと、確かに僕のデッキは動けなくなる。いわゆる詰みの状態だ。

 完璧な作戦だ。『ハウシサイド』の狂暴性に(おご)らず、汎用カードで確実に相手をつぶすデュエルスタイル。強い。あの小野寺さんと同じぐらい。

 だから、思う。

 

 

 ―――なーんだ。この程度か。

 

 

「チェーンして()()()()()D()O()D()()P()r()o()t()e()c()t()()発動」

「ハハハハ……は?」

 

 デッキのキーカードだよ? エンジンだよ? ピン刺しな訳ないし、複数枚同時に使っても強いカードなんだからセットするよね。大抵の破壊カードに強いんだからさ。

 

「セットカード確認。『DOD―Change』。永続罠なので表側にする」

「ぐっ……『ホームーブ』の効果発動! デッキからレベル9、『ハウシサイド・ソールハウス』を墓地へ送り、レベル8、『ハウシサイド・ブラインドハウス』を手札に加える!

 そして墓地へ送られた『ハウシサイド・ソールハウス』の効果! 『ハウシサイド・グラウンドセレモニー』を回収する!」

 

 Notじゃ手札と墓地のモンスター効果は止められない。

 

「『ホームーブ』を墓地へ送り、こいよ『ハウシサイド・チョッピングモール』! ちくしょうバトルだ! 『ハウシサイド・チョッピングモール』で『DOD―Limitless Deleter』を攻撃!」

 

 巨大な鉈でデータの流れが絶ちきられる。衝撃が暴風となって僕を襲う。うぐぅ……。ゾンビと違って物理的なダメージじゃないだけマシ! のはず! やっぱキツイ!

 

「くっそ! ターンエンドだ!」

「エンドフェイズ。ディペンド・アワー・ディメンション」

 

 ギャハハハハハハハッ!

 

 また、途切れたデータの奔流が流れ出す。消えることがない笑いは、敵味方問わず狂気の波に乗せていく。

 

「ドロー」

 

 じゃあ始めよう。全力を持って終わりを告げよう。

 

「『DOD―Not』の効果発動。『DOD―Protect』とともに墓地へ送り二枚ドロー。

 『デモンズ・チェーン』を墓地へ送り『DOD―ブラックタイガー』をチューナーとして特殊召喚。更に『DOD―ダーク』を召喚。レベル4の『DOD―ダーク』にレベル5の『DOD―ブラックタイガー』をチューニング。

 集いし星が重なりあうも、無味乾燥の終局を迎える。闇満ちる道となれ!

 シンクロ召喚! 『DOD―Star Dust』!」

 

 キイィィィィィィアァァァァァアッ!

 

 データの奔流をぶち破って、黒い竜が飛び出てくる。とにかくうるさい。

 でもこれでデュエルはほぼ勝ち……。

 

「まだ。カードを二枚セットし、『DOD―Protect』の効果発動。セットカードは『DOD―Accelerate』と『DOD―Not』。『DOD―Not』の効果により『DOD―Accelerate』とともに墓地へ送り二枚ドロー。

 『DOD―Accelerate』が墓地へ送られたので効果。デッキから『DOD―Connect』をセットする。

 そして。ペンデュラムスケールに! スケール9の『DOD―ヨウシトラ』とスケール2の『DOD―Pent in Death』をセット!

 『DOD―Pent in Death』のスケール効果! 除外されている『DOD―Connect』を回収!

 ペンデュラム召喚! エクストラデッキからおいで、レベル5『DOD―ヨウシトラ』!」

 

 『DOD―Limitless Deleter』のリンク先は真横にも向いている。だからエクストラモンスターゾーンには『DOD―Star Dust』がいるけど問題なくペンデュラム召喚可能。

 

「『DOD―Change』を『DOD―ヨウシトラ』とともに除外して効果発動!」

 

 五つの次元の裂け目が新たに生成される。『DOD―Limitless Deleter』じゃ裂け目は二つだけだしね。足りないよね。

 

「世界の終末は五つの破滅から始まる。火の破滅・冷然。風の破滅・停滞。水の破滅・気化。地の破滅・不毛。……そして光は消え、ただ闇だけが残る! 融合召喚!

 顕現せよ、『DOD―Five Dragon』!」

 

 

 グルアァァァァッ!

 

 キイィィアァアッ!

 

 ギィヒッヒハハッ!

 

 

 うるさい! うるさいうるさいうるさいっ! 三体並べるの大変だったよ! なのになんでこんなにうるさいのさっ! もっと静かに、静かにして、静かにさせてやるっ!

 

「『チキンレース』効果で自壊! バトル! 『DOD―Star Dust』でダイレクトアタック! ダッシュ・アウト・ディメンション!」

「なにっ!?」

 

 ボフッ、ボッ、ボボボッ―――キイイィィイィィ―――!

 

 一瞬で始末しろ! 力には技術でとどめだっ!

 

「く、『クリボール』! 攻撃モンスターを守備表示に!」

 

 ボフンッ!

 

 Star Dustのエンジンに異物が混入。ジェット噴射に失敗……? だったら力で押す!

 

「『DOD―Five Dragon』で『ハウシサイド・チョッピングモール』を攻撃! 消滅しろ、ディザストラス・アザー・ディメンション!」

 

 グルアァァァァッ……ガアァアァァァアッ!

 

「ひっ、あ、う、うあぁぁっ! うぐっ、あぁぁっ!?」

 

 五つの首から放たれる光線は、建築物とともに誘拐犯を巻き込んだ。



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