おーばーろーど・わんつー (黒猫鈎尻尾)
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閑話(い〜ち)ナザリックの社員旅行『企画編』

 ある国が滅び、魔導国となった日から、しばらくしてのこと。

 

 魔導王の執務室に、鮮血宰相が飛び込んできた。

 

「た……大変だっ! ナインズさん!」

 

 突然飛び込んできたエンシェントに、ギョッとする。

 ナインズが知る限り、エンシェントがここまで血相を変えた事は一度しか知らない。

 その結果、ある国は滅び魔導国が興ったのだが、それっきりだ。

 逆に言うとそれほどの事が起きたと言うことでもある。

 

「どうしたんですかっ!? そんな血相変えてっ! ツアーが動きましたかっ!?」

 

 今の所わかっているだけで、プレイヤーの影もなく、脅威足りえるのは評議国の竜王達だけだ。

 だから、真っ先に竜王達が動いたのかと思ったのだ。

 

「俺達……この世界を楽しんでないっ!」

 

 驚きで執務椅子から立ち上がったナインズは、エンシェントの言葉にポカンとした表情を浮かべる。

 

「いや、あんたは何を言ってんだ? 楽しんだだろう! 少なくともあんたはあんなことやこんなことまでして楽しんでただろ!」

 

 この世界で、エンシェントが行った事はあんなことやこんなことじゃ済まないのだが、怒りの咆哮がナインズから轟いた。

 だが、当のエンシェントは、冗談でもなく本気で言っていた。

 

「違う違う! そうじゃなくて……俺達みんなで楽しんでないって言ったんだよ」

 

 ナザリックがこの世界に飛んで、エンシェントを始め、ナインズも楽しんだ記憶はある。

 それなりに使命感に似た義務感や、必死なこともあったが、楽しんでなかったかと言われると、楽しんだ時もあった。

 

「俺達、この世界に来てさ。この綺麗な外に出て冒険に出たりしたけども、ナザリックから一歩も出たことが無い子供らも多いんだよ!」

 

 ナインズの体に電気が走った。それはもう三重最強化魔法(トリプル・マキシマイズ・マジック)された連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)を無抵抗で食らった位に走った!

 何しろ、その言葉のダメージで死の支配者(オーバーロード)がよろめいた程だ。

 

「俺達さ。楽しみ方を知らない子供達に、楽しめと休日与えてたんだぜ!?」

 

 追加ダメージで、遂には床に崩れ落ちる程の残HPとなってしまった。

 

「どどど……」

「童貞ちゃうわ? いや、あんた童貞だから」

「ちゃうわ! そうだけども! どうしましょう! 俺達はなんて馬鹿なことを……。こんなのブラックで更にパワハラじゃないですかっ!」

 

 エンシェントは動揺しまくりのナインズを見て、いつもの頼りになる光る笑みを浮かべると、指を一本立てて、左右に振りながらチッチッチと舌を鳴らした。

 

「俺には妙案があるんだよ!」

 

 その言葉に、まるで地獄の残業タイムに照らされた一日の休日の様な救いを見て、ナインズはよろよろと床から立ち上がった。

 

「お、教えてくださいっ! その妙案を……」

「これは彼の休日よりも、伝説……否、伝承となっているもの……それは……」

「そ……それは!?」

 

「社員旅行っ!」

 

「ん、SHIEN旅行っ!」

 

 あまりの興奮にパンドラ化したナインズは、それを口にしてから首を傾げた。

 

「SHIEN旅行ってなんですか?」

「まぢかっ!? ナインズさんまじですか!?」

 

 まさか休日が伝説と成り果てているのは知っていたが、社員旅行の概念まで消滅しはてていたとは、流石のエンシェントも思いもよらなかった。

 とはいえ、アーコロジーで閉ざされた世界で、旅行なんて言葉は絶えて久しかったからそれもしょうがない事ではある。

 

「えー。社員旅行とはですね。社員達の日頃の行いを労い、会社持ちで社員を旅行に連れ出して、常日頃から尽くされている特権階級側が、部下など被支配者階級に尽くしてあげようという旅行ですよ! 俺も情報でしか知らないですけど」

「えっ!? なんですかそれ! 超凄いじゃないですかっ!」

「そうでしょう? アーコロジーになる前はそんな超凄い世界だったらしいよ!」

 

 微妙に間違った知識と、微妙に夢見がちな過去への憧憬で二人は、過去をそんな理想郷へと変貌させていた。

 

 斯くしてこうして急遽決まったナザリック『第一回、一般メイドも連れて光り輝く旅行計画』が発動されたのであった。

 

 

 だが、まず二人には何をすれば良いのかが見当がつかない。

 エンシェントも昔見た情報であり、朧気ながらそんな物もあるのかー程度に覚えていた物である。

 中身までは覚えているはずもない。

 

 二人はとりあえず、最古図書館(アッシュールバニパル)で、資料の捜索を始めることにした。

 この書物の大半は、死獣天朱雀が集めた物である。

 その書物の種類は多岐に渡る。

 恋愛小説から落語文学まで、ここで探してない書物はないという有様だ。

 死獣天朱雀は逆に言えば本を集めて、ここで読書をするためにユグドラシルをやっていたと言っても過言ではない。

 アインズ・ウール・ゴウンでの合言葉、知りたい事があるなら、最古図書館(アッシュールバニパル)に行け。という名言(迷言)すらある。

 

 故に目的の物が見つからなかった。探しに探して変なものに目移りして、ついつい関係の無い物を読んでいるうちに、館内であるものが目に入ってきて、ページをめくる手を止めた。

 それはこの最古図書館(アッシュールバニパル)の司書長であり、死獣天朱雀が作ったNPC、ティトゥス・アンナエウス・セクンドゥスという死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)である。

 

「あーーー!」

「うわ、なんですか! いきなりっ!」

 

 自分のバカさ加減と漸く解決の糸口が見つかって、エンシェントは立ち上がり指さした。

 ナインズも思わず読み耽っていた本からビクッと顔を上げて、声の主に文句を告げる。

 

「恐れながら……至高の御方にこのような事を大変申し上げ難いのですが……館内ではなるべくお静かに……死獣天朱雀様がそう定められましたので……」

 

 大声を上げたのが至高の御方だっただけに、怒るに怒れず、仕方がなく今は居ない至高の四十一人である死獣天朱雀の名前を出して、注意を促してきた。

 

「すまん」

「……エンシェントさんが悪い」

「いえ! このナザリックは至高の御方の持ち物でありますれば、お好きになさってよろしいのですが……申し訳ございません」

「次から気をつける。所で司書長に聞きたい事があるんだが……」

「はい。なんでございましょう。私に答えられるような事ではあればなんなりと!」

 

 司書長というのは地味な仕事だ。

 長と言ってもやることなんて、スクロールの制作ぐらいで後は書庫の管理である。

 至高の御方から直々に問われる事すら稀である。

 命令のためなら司書長は、自ら喜んで善なる極撃(ホーリー・スマイト)に身を投げるであろう。

 

「旅行関係の書物が欲しいんだ。特に会社関係とかがあると助かる」

「旅行にございますか? 確かございました! 少々お待ちくださいませっ!」

 

 さっきまで大声云々を忘れてしまったのか。本人が大声で返事をしてバタバタと本を取りにゆく。

 

「エンシェントさんナイス!」

「でしょ。これでなんとかなりそうな感じですね!」

 

 しばらくして大量の書物を手に持つ司書長を見て、二人は呆然とするのであった。

 

 そこはどうやって情報を掬い上げてアーカイブしたのかしらないが、二十世紀の旅行雑誌から社内報に至るまでありとあらゆる物が、乱雑に積まれていた。

 

「これですかね? 『来月の社内旅行は八甲田雪山に置いての協調性の構築とチームの大切さの確認』と書いてありますけど?」

「八甲田ってどこだっけ? 雪山って事は雪が降ってる山で何するんだ?」

「さぁ?」

 

 二人は首を傾げた。そもそも、雪というものはなんとなくは情報として知っているものの、冷たい白いぐらいしかわからない。

 それをどう楽しむのかわからない。

 

「これは? 『ハワイを社員旅行で楽しむ社員達、アットホームな会社です』これか?」

「ハワイって米国アーコロジーでありましたけど、元々そういう名前の島は海に沈没したんじゃありませんでしたっけ?」

「アットホームがよくわからん。死語でなんかあった気はするが……」

 

 そもそも、この二人は旅行というものがよくわかっていなかった。

 なぜならリアルの世界において、旅行として他のアーコロジー内に入るなんて出来るはずもなく、この世界でも冒険してたのだ。

 

 二人の支配者による部下を救済しようとする思いは加速してゆく。

 しかし、その部下から言わせれば「至高の御方に尽くせる事こそ最高のレジャーです」とは夢にも思うことはない。

 




ついカッとなって書いた反省しないっ!


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地下大幼稚園。第一階層

 エンシェントはフラフラと立ち上がった。

 激しい頭痛を感じる。痛む頭を押さえて顔を顰めながら周囲へと視線を走らせた。

 高い天井、立ち並ぶ仲間たちのフラッグ、赤い絨毯が床に敷かれている。

 そして、すぐ脇には立派な玉座が存在している。

 

「俺は寝てたのか?」

 

 寝ていたと言った自分の言葉に、今更ながら違和感を覚える。

 

(寝ていた? アンデッドである自分が?)

 

 即座にありえないと否定する。そもそも頭痛なんてバッドステータスが起こるはずも無いのだ。

 自分の手を見つめると、人間の……それも()()()()の肌が飛び込んできた。

 

「はっ? えっ!?」

 

 慌てて自分の顔に手を這わせるが、触感でわかるはずもなく慌てて髪を抜いてみた。

 動転しているせいか数本が一気に抜けて痛みが起きるが、それどころではない。

 手の中にある髪、それは日本人特有の黒い毛をしていた。

 近くに鏡が無いかを探すと、玉座の影にもう一人倒れている日本人がいた。

 

「お……おい。あんた大丈夫かっ? って、ナインズさんか?」

 

 それはこの世界でも何度も見たことがあるナインズさんの人間バージョンの姿だ。

 

「ナインズさん。大丈夫かっ!」

「う……ううん。ふふ、もう童貞じゃありませんよぉ……」

 

 エンシェントはその一言にナインズの頭を引っ叩いた。

 

「夢の中で夢見てんじゃねぇ!」

「はっ!? っいたたた……なんなんですかぁ……、って誰だお前は!」

「いや、エンシェントだから! つか、何がどうなってるんですかこれ!?」

「え、エンシェントさん? 本当に!? リアルはそんな顔だったんですねえ」

「いや、俺の顔はどうでもいいよ。つか、何がどうなってこうなったかわかる?」

 

 ナインズはゆっくりと身体を起き上がらせると、痛みに眉を潜める。

 エンシェントはどうやらナインズも頭痛というバッドステータスを受けてる事を理解した。

 

「うーん。すみません。なんでこうなったか記憶がないんですけど。寧ろ会議の為にナザリックに帰還して、それで……そこから記憶が全く」

「安心してくれ。俺も同じだよ。その先の記憶がさっぱり……しかも、俺の場合はなんでリアルの姿になってるんだか……」

 

 二人して頭を捻るが、どうしても記憶が抜け落ちてしまって何も思い出せない。

 

「取り敢えずはデミウルゴスとセバスを呼んでみないか?」

「いえ……それがメッセージが使えないんですよね? エンシェントさんも体に違和感とかは?」

 

 エンシェントは取り敢えずは玉座の間の入口へと、全力で走ってみた。

 だが、異様に体が重く感じる。まるで()()のようだ。

 

「えっと……エンシェントさん? もしかして……」

「ああ、ヤバイな……人間に戻されたようだぞ。俺達……」

火球(ファイヤー・ボール)! 出ないですね」

 

 お互いに引き攣った笑みを浮かべて、これからの事を考えていると、玉座の間にノック音が飛び込んできた。

 

「やばい! 取り敢えずは人間の姿を見せた事があるナインズさん応対頼む! 俺が見られて下手に侵入者と思われるのはまずいっ!」

「え、ああ。確かにそうですね。取り敢えずは私がなんとかしますよ! ……入れっ!」

 

 エンシェントが玉座の後ろに隠れた事を確認したナインズは、なるべく厳かな声を意識して声を掛ける。

 

「危急故に無礼をお許しください! ナインズ様。大変で御座います! ナザリックがおかしな事にっ!」

 

 扉を開けて転がり込むように入ってきたのは輝く髪を持つ一般メイドのリュミエールであった。

 その顔には緊張の色が濃く出て、息も激しく切らしている事から並々ならぬ事態を予測させた。

 

「ま……まさか、こんな時に侵入者かっ!? 守護者達はどうしているっ!」 

「その守護者様たちを始め、ナザリックの者が皆おかしくなっているのですっ!」

「「な、なにぃぃいぃ!?」」

 

 玉座の間に二人の人間の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 そーっと玉座の間の扉を開けると、ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)の広間をキョロキョロと見回す。

 リュミエールはなるべくまともな守護者かプレアデスを探しに行ってもらった。

 誰もいない事を確認すると、エンシェントは恐る恐る広間へと足を踏み出した。

 油断なく周囲を見回すが、仕掛けられているゴーレムが起動しないことに安堵する。

 流石にこの内の一体でも起動すれば単なる人間など、容易く殺されてしまう。

 

「大丈夫っぽいね……?」

「良かった。流石に人間の身では掠っただけでも死にますからね……」

 

 そう言いながら扉を押さえて待機してナインズは、広間へと足を踏み出した。

 これは別にエンシェントを実験に使ったわけではなく、もしも動き始めたら玉座の間に避難をするために扉を押さえて貰っていたのだ。

 身体能力ではエンシェントの方が人間の体でも優れていた為の適材適所である。

 

「とりあえずはリングの力を試して移動しよう! 流石に雑魚にすら勝てないこの体でここは怖すぎる」

「それじゃあ、第九階層の私の部屋はどうでしょう?」

「えっ? 宝物殿の方が安全じゃない? パンドラもいるし、ナザリックと隔絶されてるしさ?」

 

 エンシェントの提案にナインズは、慌てて首を左右に振る。

 

「あそこは無理ですよ! 私達、今人間なんですよ! あそこの猛毒を少しでも吸っただけで死にかねませんよ!」

「ああ、くそ。そうか。それがあったか!」

 

 パンドラが管理する宝物殿には最悪、リングが敵の手に落ちて入られた時用にブラッド・オブ・ヨルムンガルドに依って猛毒のガスに汚染させてあるのだ。

 毒耐性のあるアンデッドの体ならいざしらず、毒耐性リングがあっても、人間の身では入りたくはない。

 青酸ガスが充満する部屋には、ガスマスクありでも人は入りたくないものである。

 二人はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに触れながら第九階層のナインズの自室へと跳んだ。

 

 ナインズの自室には幸いにも誰も居なかった。

 いつもならプレアデスかアルベドが詰めているはずである。

 プレアデスならまだしもアルベドだけは駄目だ。

 人間になったナインズとエンシェントの二人を見ればどうなるか。想像するだに寒気が走る。別の意味でHP(エッチポイント)ドレイン(吸いつく)されてしまう。

 

「アルベドは居なかったか」

 

 ナインズもエンシェントと同じこと考えていた事に苦笑する。

 しかし、悠長にここで話している時間はない。

 

「とりあえずはここはアルベドがいつ来るかわかったものじゃないから寝室に避難しようぜ」

「ええ、見つかったら()()にどうなることか判りませんからね」

 

 そそくさとベッドのある寝室に行くとそれはいた。

 ベッドに寝転がり、くふーくふー言っている物体。

 その姿を確認するなり、ナインズとエンシェントは即座に踵を返して、執務室へと逃げようとしたが、それよりも早く気付いて行動する者がいた。

 それはベッドから言葉通りに飛ぶ様に跳ね上がると一直線にナインズへとぶつかる。

 

「ひっ……アルベドっ!?」

 

 エンシェントの咄嗟の判断力は早い。役者はアドリブ力が必要な場面が多くあるのだから当然だ。

 だから、即座に判断を下して行動へと移す。

 

「友よ。貴方の犠牲は忘れないっ!」

「きさまぁぁ! 見捨てるのかぁ!」

 

 未だに閉じていないドアへと駆け抜けようとした足が、何者かに掴まれた。

 ゆっくりとそちらへと振り返ると、てっきりナインズに巻き込まれたと思っていたのだが、ナインズは手の届く所にいなかった。

 では、誰が? と下を見るとそれはいた。

 短く小さい手足とぺったんこな胸に相応しい小さなボディ。闇の中で尚も赤く光る瞳は野獣のように鋭く尖っている。

 

「しゃるてぃあ?」

「あい。上の方の階層しゅごちゃ。チャウティア・ブヤッドフォーリュンはっちゃいであいんすえ」

 

 そこには明らかに幼児化して残酷で冷酷で非道で可憐なシャルティアの見る影もない。

 潤んだ瞳はつぶらで、アンデッドにも関わらず、ぷにぷにの頬が赤らんでいるようにも見える。

 そんな幼女形態のシャルティアが、エンシェントの足に必死に引っ付いて、捨てられてなる物かと必死な表情で見上げている。

 

 離れた所をみると、ナインズも戸惑いが隠せない様子で、腰に抱きついている存在を見下ろしている。

 そちらも艷やかな烏の濡羽色な髪をした幼女が腰へと抱きついているようだ。

 アルベドの腰から生えた羽はとても小さく子供のコスプレにしか見えない。

 顔は金の目をこれまた潤ませて、頬を赤らめている。

 小さな口からはだらし無く緩み。ヨダレが垂れて呼吸もくふーという異様な音立てている。

 

(ああ、あっちは幼女じゃなくて妖女か) 

 

 明らかに子供がしてはいけない表情をしながら、ナインズの腰へと抱きつく姿は、俗に言うだいしゅきホールドと呼ばれるものだろう。

 

「ナインズさん。何が起こっているか理解は出来んがここから移動しよう!」

「ええ、一刻も早く移動しなければ……」

「「ここは奴らのバトルフィールド(得意な濡れ場)だ」」

 

 エンシェントは片足にシャルティアという名の幼女(ケダモノ)を引っ付けたまま、執務室へと続くドアへと向かい、ナインズはだいしゅきホールドのせいで極端に狭められた歩幅にて、腰に抱きついている淫獣(R18G)ごと、執務室へとなんとか逃れでることが出来た。

 

 

 

 

 

 現在、目の前には幼女化したアルベドとシャルティアを始め、少女と化したルプスレギナ、幼女化したソリュシャンとナーベラルがきゃいきゃいと騒いでいる。

 どうやら知的レベルも年相応に低下しているらしく、好き勝手に騒いでいる。それはいつもなら至高の御方の前では決して見せない姿だった。

 そして、それらをどうして良いかも判らずになんとか落ち着かせようと、オロオロとする大人のままのユリがいた。

 ちなみに子供の中に混じってシズが幼いナーベラルを抱っこして、エントマはソリュシャンを高い高いしている。

 何故か少女という微妙に幼女かしていないルプスレギナは、シャルティアの胸パッドを取り上げて上に持ち上げて、シャルティアを半泣きにさせていた。

 

「これはひどい……」

「ええ、完全にカオスですね」

 

 騒がしい執務室にノックの音が転がり込む。

 その音にナインズが一つ頷くと、扉前に控えていたシクススが扉を開いた。

 入ってきたのは犬の頭を持つ一般メイドの長であるペストーニャ・S・ワンコである。

 その澄んだつぶらな瞳は叡智と慈愛を常に湛えて、顔に浮かぶ慈母の笑みは、いつもよりも深くなっている気さえする。

 

「ペストーニャ・S・ワンコ。至高の御方へのお目通り叶いましたことを心より感謝いたします…………わん」

「う……うむ。よく来てくれたな。ペストーニャ……見てのとおりでな。一体何がどうなっているのか、さっぱりなのだ。だから、お前の神官としての力と知恵を借りたい」

「俺達じゃ、お手上げでな。とりあえずは俺達の体の事も含めて頼む」

「勿論です…………わん! 頼りにされた事に感激の至りでこの尻尾も震える思いです…………わん」

 

 ナインズは「そこは身が震えるんじゃないんだ?」と思いつつも、みるとペストーニャが着るメイド服のお尻のあたりが激しく動いているのがわかった。

 




誤字脱字訂正ありがとうごじゃいまちゅ!

so~tak様。

社員旅行はどうしたって?
あれは現在作られております。とある時期を待っているだけです!本当ですよ?
こっちは普通に次の話もプロットも作られておりますゆえ、大体ナザリックの階層ぐらいの話数となっております。


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