ライブ事変の生還直後の時期に小日向未来が居なかった結果暗く心を閉ざした立花響。しかしその闇は違う世界の小日向未来の尽力により打ち払われた。今では同じ世界の小日向未来と共に明るい陽だまりで笑いあっている。
「今日も…楽しかったな」
夕方、響は公園の椅子に座り今日の未来とのデートの余韻を噛み締めていた。そんな折、声が聞こえた。
「ねえ」
突然の声に響はピクリとする。心の闇は払われたとは言え人付き合いはまだ苦手な事もあり恐る恐る顔を上げて返答した。
「何…?」
顔を上げるとそこには、立花響が居た。どこからどう見ても間違いない自分と同じ顔。響は驚き大きな声を上げた。
「うわぁッ!?」
すると目の前の立花響も鏡合わせのように驚き後ろに転び尻餅をついた。困惑していると目の前の立花響が痛そうにしていたので思わず手を伸ばした。
「いたた…」
「大丈夫?」
「あ、ありがとう。ごめんね驚かせちゃって」
「うん…大丈夫だけど…貴方は?」
「私?やだなぁもう、知ってる癖にぃ」
目の前の私がおちゃらける。少しイラっときたので少し語気を強めてもう一度聞くとおっかなそうな顔で答えた。
「私は並行世界の君だよ。ほら、前にクリスちゃんとマリアさんって来なかった?その世界から来たんだよ」
私は少し考えを巡らすと思い出した、赤いギアと白いギアを纏っていたあの二人だ。
「ああ、あの二人。その節はどうも。それで、わざわざ自分を訪ねて何しに来たの?」
聞くと目の前の私は明るい様子で話し始めた、私とは思えないが並行世界ならあり得た私なのだろうか。そう思うと少し羨ましくなる。
「貴方と話をしに来たんだよ」
「話…?」
そう言って首をかしげると目の前の私は「うん!」と答える、私はため息をついて答えた。
「…知ってる癖に」
「あー!さっきのお返し!?」
「まあそんなところ」
「こりゃ一本取られちゃいましたなぁ、タハハ」
「おちゃらけなくて良いから、何が聞きたいの」
私がそう言うと目の前の私は嬉しそうにして話し始めた。
「こっちの未来はどんな感じ!?やっぱりあったかい!?」
「…まあ、そうだね。側にいるだけであったかくて、私の陽だまり…かな」
「やっぱりかぁー、未来はどこでも優しいもんなぁ」
「そうだね、そっちの未来にも助けられたから」
「あ、今笑った」
目の前の私がそう言うと私は反射的にパーカーの襟で口元を隠して反論した。
「バッ…!笑ってなんか…!」
「笑ってたよー、ほらほら自分なんだし恥ずかしがらなくて良いからさー」
「うるさい…!」
そうやっていると後ろから気配がして振り返った。そこにはカラフルな無機質の集団、ノイズが遠目にだが居た。
「ノイズ…!」
「なんでこんなところに…!一旦逃げなきゃ!」
「待って!」
私は目の前の私を呼び止めたあと事情を話す間も無くノイズの集団に向かって走り出した。
「えっ!?なんでそっちに…あっ!」
後ろから気づいたような声が聞こえる、これなら「私」もすぐに来るだろう。私はノイズの集団の前に居た女の子を抱き上げるととんぼ返りに走り出した。
「今助けてあげるから」
「…うん」
とは言ったものの、ノイズの集団に近すぎた。これだと追いつかれるのが先かもしれない。そう思っていると「私」がギアを纏って突っ込んで来た。
「大丈夫!?」
「…大丈夫」
「早くその子を連れて逃げて!ここは私がなんとかするから!」
「分かった!」
私は走り出した。加わって助けたい気持ちは山々だが生憎今の私ではギアを纏えない、けど。
「絶対、助けるから」
誰に向けるつもりでも無い言葉を発して更に足を速める、公園から出ると女の子のお母さんが感謝をしながら女の子を連れて帰った。私は安堵するがすぐに踵を返して「私」の所に向かう。するとそこには翼さんと「私」が居た。よく見ると「私」が問い詰められているようだった。
「何故立花がギアを?あの時無くしたはずでは…」
「えっと…私並行世界からやって来た立花響なんです」
「並行世界…ああ、マリアや雪音が来たと言う」
「そう!それです!」
その光景に「私」は私と思えないくらい明るくて人付き合いが良く、人助けもこなす。人と関わるのに関してはとても上手なのだろう、そう思った。私はそこまで上手くないが。けど
「いつか…私も…」
たくさんの人と手を繋げられるようになれば、そう思いその場を後にした。
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