転生したけど普通に生きたい!!……え?ダメ? (紫蒼慧悟)
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転生とか望んでねえから!!!

暇潰しに書いてみたら
いつの間にか投稿していた…
何を言ってるか…(ry


皆さんこんにちは。

俺の名前は「おっと、そこまでだ」

はぁ、いったい誰だ?

声のした方に振り向くとそこにいたのは白いヒラヒラした服を着た…痴女だった。

「痴女じゃないわよ!!!!!!!!!」

「加害者は誰だってそういうんだよ」

「私、痴女じゃないもん!神様なんだもん!!」

「あいたたたたた」

やべえよ…もう手遅れだろ…

だって、エロ下着つけてその上からスケスケの服着てるなんて…

完璧に痴女じゃねえか…

「痴女の上に厨二病かよ…救いようがねえな…」

「ロリコンの上にMよりかはマシでしょう?」

「あ?てめえ、青ピのことディスってんのか!?愉快なオブジェに変えてやるぞ!?」

「何故に私は怒られてるんですか!?」

まったく…そんなこともわからねえのかよ…

「そんなことより貴方を『インフィニット・ストラトス』の世界に転生させます!」

「だが断る」

「即答しないでくださいよぉ~」

泣くなよ…

「なら特典用意しろよ?」

「構いませんがランダムでデメリットが発生しますよ?」

上等だな。

リスクもなしに貰ったんじゃつまんないしな…

「ISを作るための知能と見稽古をくれ」

「前者はわかりますが、後者はまさか刀語の…」

「そうだ。見ただけでその技術を使えるようにしてくれ」

「構いませんが、劣化版になりますよ?」

いいねえ。

簡単にはいかないから人生ってのは面白いんだろう?

「ではそのようにしておきますね?」

そういやデメリットはなんだろうな?

性別逆転?

自称オリ主化?

記憶消去?

他は馬鹿馬鹿しいのしか思いつかんな…

「デメリットは身体能力の弱体化(入院レベル)ですね」

これ…原作介入できなくね?

いや、無理にするつもりもないんだけどさあ…

「まあいいや。さっさと送ってくれよ」

そう言った瞬間足元の感覚がなくなった。

 

 

 

 

 

「う~ん。この人…大丈夫ですかねえ…」

自称神様は不安そうな顔をしていた。

「まあいいです。仕事は腐る程あるので悩んでる暇はないですね」

上司から与えられた仕事は膨大だ。

「さて、次は誰をどの世界に転生させましょう?」

上司のミスで死んだ人間はまだ大勢いるようだ…

「ムカついた奴は纏めてドラクエの世界にスライムとして転生させよう…」

自称神の仕事はまだまだ終わらない。

「あっ…間違えて記憶消しちゃった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん」

今俺は痴女に落とされている。

そう落ちている真っ最中だ。

「そういやあ、俺原作ほとんど読んでないや…アニメで福音倒したところと後は二次小説ぐらいか…

 まあいいや。」

なんとかなるさ。

そう…なんとかなる。

今までもそうして来た…そして、これからもそうだ

取り敢えず二度目の人生だ。

楽しくなるといいなあ。




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主人公「プロローグだけで出来るか!!」


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原作前
ISは兵器じゃねえから!!!


平行執筆の大変さに日に日に体力を奪われていってる……
大丈夫かって?
大丈夫だ、問題無い!!


病室の窓から見える光景に俺は何とも言えない気持ちになってしまった。

「なぁ…束姉(たばねえ)、"これ"は本当に必要だったのかな?」

隣にいるよくわからない奇抜な格好をしたもう一人の姉といってもいい人に聞くが、

「必要なんだよ…束さんの"あの子"を馬鹿にしたアイツ等に教えてやるんだ…

 あの子が…あの子がいれば、宇宙に行けるってことを!!」

違うよ…

こんなやり方じゃダメだよ…

「"しーくん"にはあの子の作製にも手伝わせちゃってごめんね…

 体弱いのに無理させちゃったね…」

"しーくん"

それが俺、織斑(おりむら)四季(しき)という人間に対する、篠ノ之束という天災が付けた渾名だ。

急にしおらしくなるのは卑怯だ。

確かに熱中しすぎて何回か薬を飲み忘れて姉さんに叱られた挙句に弟の一夏(未来のハーレム王)に説教をくらったが、

説教の内容覚えてないし…一応俺、お兄ちゃんなんだけどなぁ…

「大丈夫だよ…楽しかったしね。それになんとなくだけどコアの作り方もわかったし…」

「束さんにとってもしーくんの理解力には脱帽だよ…

 でもね…しーくんの作ったのはISのコアじゃないよ。アレは別物。

 ISであってISではない"別物"だよ。」

やっぱりか…俺程度の頭脳で理解できるなら苦労はないよなぁ…

「けどね…

 しーくんの作った物もISなんだよ?」

「どうゆうこと?」

どっちなの?

相変わらず束姉の言うことは大半が理解するのに時間がかかる…

「簡単に言えば従兄弟みたいな関係だよ」

そうゆうことか…

俺の作ったものはISに似た別物だが、同時にISでもある。

だからISと同じように女性しか使えないし、絶対防御やらなんやらもある。

だが、別物。

束姉のISが"上"に進化するものだとしたら、俺のISは"横"に進化するものだ。

似ているけど違う。故に従兄弟という言い方で表したんだろう…

「にしても…まるで弾幕ゲームみたいだな。見てる分にはだけど…」

窓の外…空には爆発の際の球体の光が幾つも現れては消えてまた現れていく。

「そうだね。間違ってはいないよ?ミサイルという名の弾幕だけど…」

あの弾幕の中心に俺の実姉がいるんだが…

「流石は姉さんだ。ミサイル2341発を苦もなく落として言ってる。」

「だよねだよね!流石はちーちゃん!!そこにシビれる!あこがれるゥ!!」

ミサイルもそうだが各国が送り込んできてる戦闘機までいるのがなぁ…

束姉と一緒に作った、超超高性能量子コンピューター《高天原》によって姉さんを中心にしてミサイルと機動兵器の補足が完了している。

「ミサイルは残り502発。

 戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻確認したけど残りは戦闘機42機、巡洋艦2隻だね。」

「あれ、空母は?」

「既に5隻とも無力化済みだね。

 対空機銃は使用不可能だし、通信も不能。本国に帰るしかできないだろうね」

戦闘機は姉さんが破壊し尽くして逝ってるから修理のしようがない

巡洋艦も同じだ。

砲塔は全て発射不能状態。

空を飛んでる姉さん相手に魚雷は意味がないから後は空母同様に本国へ帰るしか道はない。

戦闘機のパイロットはちゃんと脱出しているし、脱出できない奴は姉さんが無理矢理空中に放り出してるけど大丈夫だろう。

「あの高さから海面に叩きつけられたら痛そうだなぁ…」

「束さんには一生わからない痛みかな…」

いや、そのうち姉さんに紐無しバンジーさせられそうな気がするんだが…

まぁ…この人のことだからそれの対策も万全なんだろうな…

「ふっふっふ。流石は束さんの作り上げた子だね!圧倒的じゃないか!!」

確かに圧倒的だ。

今まで存在したどんな兵器でさえISには敵わない。

だけど……これじゃあ…

"兵器"としてしか認識されないよ、束姉?

それぐらいはわかってるはずだよね?

 

 

 

 

 

 

 

その後…俺の予想通りに世界はISを兵器として認識し、宇宙への進出は進まなかった。

だが、技術は進んだ。

その御陰か俺の余命が後十年から十五年に伸びることになった。

これも束姉は見越していたのか…?

だとしたら……本当に天才だわ…

間違えた。

天災だった。




プロローグはここまでかな?
次回から一話一話が長くなるよ!!


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喧嘩とか意味ねえから!!!

喧嘩はダメだよ
そして何故こうなったよ…


束姉がISを発表してそれを馬鹿にされてから、俺と束姉の共同ハッキングによって起こしたあの事件…

世間では、"白騎士事件"と言われている。

結果的に白騎士事件での死者は0人。怪我人は、各国が送り込んできた戦闘機のパイロットや巡洋艦、空母の乗員たちだ。

まあ、先に攻撃してきたのは向こうだからこっちは悪くないけどな。

パイロットに至っては海に落ちた時に怪我をした奴がいるらしい…

仮にもパイロットならパラシュートぐらい開けよ…

まあ、そんなことはさておき…

あれから一年…

今日は小学2年生になった双子の弟の"一夏"が見舞いに来るそうだ。

今の俺達に両親はいない。

何時の間にか消えていた。だから俺の家族は姉さんと一夏だけだ。

その為姉さんは俺達のために生活費を稼いでいる。

一夏はそんな姉さんのために家事全てを取り仕切っている。

俺は入院ばかりだから一夏のご飯を食べたことはない…

くっそ!!

この体ウザったい!!

ガラッ!

「死にたい…」

病室の扉が開くのと俺の愚痴が溢れたのは同時だった。

「「えっ?」」

同時に疑問の声を上げたのは俺と一夏の隣にいるポニテの子だった。

「四季…」

一夏がなんか絶望した顔をしている…

「違うぞ!?いや、違わないかもしれないけど違うからな!!」

「四季、死ぬな!!大丈夫だ!!すぐに健康になれるから…だから…」

泣いちゃったよ…

あ~もう…

俺の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

「わかった!!だから泣くな!!ほら、見ろ。

 昨日あたりからこうやって歩けるようになったんだぞ!」

一夏を泣きやませるためにベッドから起き上がって杖ありで立ってみせる。

これ、結構バランス感覚いるんだよな…

なんでかって?

体が病弱すぎて動くと疲れるからろくに動いてなかったせいでもう足が生まれたての小鹿なみにガクガクなんだよ…

頼むから泣き止むんだ、一夏!!

ポニテちゃんが置いてきぼりでポカーンとしてるから!!

それから5分ぐらいしてから泣き止みましたよ…

あー、疲れた…

見舞いに来て病人を疲れされるとは流石は俺の弟…

一夏さんマジパネェっす…

ベッドに戻るまで一苦労したぞ…

「それで?てっきりお前一人で来ると思ったんだが…」

ベッドに寝ている状態で息が落ち着いてから一夏に聞く。

一夏は俺が落ち着くまでに身の回りのモノの片付けや、持ってきた林檎を兎にしていたりしてた。

おい、兎は止めろ。あの人を連想しちまうだろうが!!

まあ、食うけどさ…

にしても…このポニテ、どっかで見た気がするなぁ…

「最初はそのつもりだったんだけどさ…"箒"がどうしても付いてくるっていうから…」

あ、思い出した。束姉の妹だ。

事あるごとに妹自慢してくるからウザったくて記憶の隅に追いやったんだっけ…

俺は学校に行けてないから妹さんに会うのは初めてだ。

「ああ。束姉の妹か。」

俺の発言に二人が疑問を浮かべる。

「知っているのか、四季?」

「何故姉さんの名を?」

一夏と妹さんの言葉に苦笑しつつ答える。

「だって、ISの開発手伝ってたし…」

俺の答えに二人は口を開けたまま固まっていた。そして…

「「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

叫びやがった。

「病院内では静かにしろよ…」

幸いにもこの部屋は防音もされてるから問題ないが、されてなかったら今の絶叫でぽっくり逝ってしまう御老人が続出だろう…

慌てて口を押さえる二人だが、遅えよ…

あ、林檎美味い…

「ちょっと待て!?」

妹ちゃんに両肩を掴まれて詰問される。

「それはどういうことだ!?お前もアレの製作に加担していたのか!?」

え?妹ちゃん普通に怖いんだけど!?

というかガクガク揺らさないで!!

気分が……悪く…なる…か…ら…

あ、なんか楽になってきたぞー…

「箒、止めろ!!」

一夏の怒鳴り声に俺と妹ちゃんの二人は正気に戻る。

訂正…

気持ち悪い…

「あ…その、済まない…」

妹ちゃんに離された俺はそのままベッドに倒れこむ。

「四季、大丈夫か!?」

「きぼぢわるい…」

一夏…お前の気遣いに俺は感謝しているぞ…

でも、コイツ将来女たらしになりそうで怖い…

「四季に何すんだよ!!四季の体は病弱だから乱暴すんなって来る前に言ったじゃないか!!」

「一夏…そう責めてやるな…」

妹ちゃんに対して怒鳴る一夏だが、それは間違ってる…

てか、乱暴すんなってどう言う意味だ?

そんなに妹ちゃんは危険なのか?

そこら辺含めて束姉に聞いておけばよかった…

というか…マジで…気持ち悪い…

俺の体病弱すぎる…

「けど!!」

「何か理由があるんだろ?正直驚いたけど、あの変態の妹なんだから色々とあるんだよ」

そうさ。そうに決まっている。

そうゆうことにしてくれ…

じゃないと、俺がこうなったのがアレじゃないか!

未だに起き上がれない俺(被害者)が妹ちゃん(加害者)を庇う姿は傍から見たらシュールすぎると思うが…

「四季がそう言うなら許すけど…」

「一夏…ちゃんと仲良くしろよ…?お前ただでさえ友達少ないんだから…」

「箒よりはいるぞ!!」

「余計なお世話だ!!」

何故か二人に怒られた…

あれ?これって俺が悪いのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹ちゃんに肩をガクブル事件(俺、命名)から数ヶ月…

あれから妹ちゃんは一夏とよく見舞いに来てくれる。

三回目の時にお互いに名前呼びになっていた。

そして、俺は箒の"貴重な"お友達になっていた。

"貴重"を忘れるなよ?

忘れたら怒られるぞ?

誰に?決まっているじゃないか…姉さん(未来の鬼教官)にだよ?

偶に来る姉さんに箒と友達になったことを教えたら、すごく笑顔だった。

まあ…入院ばかりだから友達なんて出来る可能性が極端に少ないから、死ぬまでできないと思われたのかもしれん…

そうゆうことにしておこう。

言っておくが俺にだって箒以外に友達いるぞ?

名前は出さないぞ?

個人情報保護法に引っかかるからな…

………俺って箒と同類?

いや、違う。俺とあいつは別だ。

あいつは学校に行ってなお友達がない。

俺は学校に行けなくて友達を作る機会がない。

ガラッ

「箒とは違うのだよ、箒とは!!」

アレ?なんかデジャブ…

「私がどうかしたのか?」

箒さんの登場…

「いや、なんでもない…」

目が怖かった。

束姉と姉妹って本当なのか?

全然似てないんだが…

アレ?

俺と一夏も似てない。

俺と姉さんも似てない。

一夏と姉さんは似てる…

俺って本当に織斑家の人間なのか?

なんかマジで不安になってきた…

「な、なんで泣いているんだ!?」

「おい、箒!四季を苛めるなよ!!」

「苛めてなどいないぞ!?」

あ、一夏いたんだ…

「あ、一夏いたんだ…」

「なんで口に出した!?」

いや、つい…

「気にするなよ、いつものことだろ?」

相変わらず一夏のツッコミは冴えてるな…

「なんでそうなってる!?」

突っ込みつつも一夏は何時もどおり着替えの交換や俺の体を拭いてくれたりしている。

一夏、便利だな。

一家に一台、織斑一夏。

掃除洗濯なんでもござれ!

ツッコミ機能も完全装備!!

ただし、女性の方は色々な意味でお気を付けください。

うん。

これは売れる!!

「また変なことを考えているな?」

「いや、新しいISの装備のことだ」

俺の発言に箒の機嫌が悪くなる。

相変わらず仲悪いな…

「仲良くしろよ…」

「ふん!!」

なんでこんなに仲悪くなったんだ?

前に聞いたときはここまでじゃなかったぞ?

眉をしかめることはあったが…

まあ、篠ノ之家のことだし俺が踏み込んでいいのかもわからんからこの話題は放置だな。

「それで?今日はどんな話なんだ?」

「ん?ああ、今日は一夏が給食のパンを投げて先生に怒られていた」

話題を変えると機嫌も直るのが唯一の救いだ。

「アレは手が滑ったんだよ!!」

「パンはどうなったんだよ?」

「ああ、クラスのガキ大将のスープの中に入ってな…

 そいつの目にスープが入ってそいつは床を転げまわっていた」

想像したら笑えてきたが、今笑うと体を拭いてくれている一夏の邪魔にしかならないので我慢だ。

「どんなピタゴラなんちゃらだよ…」

「その後、そいつが『ママに言いつけてやる!!』って一夏に言ったらクラスの全員が爆笑していた」

そらそうだ。

ガキ大将が『ママ』って…

おかしいだろ!!ガキ大将なら『母ちゃん』に決まってるじゃないか!!

「そいつのガキ大将歴も今日で最後か…」

「いや、それが昨日の出来事でな、今日そいつは周りから『ママちゃん』と呼ばれていた」

箒…淡々と言うな…

想像したらそいつがかわいそうになってきたよ…

というか『ママちゃん』って…

他になんかなかったのか?

「よし終わったぞ、四季」

「あんがと」

やっと服を着れる…

「しーくーん!!!」

なんか嫌な予感がしてきた…

というか、箒のほうから嫌なオーラが漂ってきてるんだが…

本当に何があったんだ、この姉妹は!?




兎さんがまたもややらかしてくれたようです…
そして次回もやらかします


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失敗とか有り得ねえから!!!

弾のIS何にしようかなぁ…
ラーズアングリフかな?
ゲシュペンストシリーズのどれかにするか…
ズィーガーリオンもいいなぁ…


今現在、俺…織斑四季の病室は冷戦状態だ。

妹(箒さん)VS姉(変態兎)だ。

「アレ?なんか私だけおかしくなかった、しーくん?」

「気のせいだな。それより箒に何して怒らせたんだよ?」

そこが気になる。

一夏は溜息をついて観戦している。

なんでコイツのんびり観戦してんの!?

「またかよ…」

え!?

いつものことなのこれ!?

な~んだ、心配して損した…

じゃあ、睨み合ってるだけだし放置しよ…

てか、昨日は夜更しにラノベ読んでたから眠いんだよ…

「一夏、俺寝るからアレが終わったら起こして…」

一夏の返事も聞かずに俺は意識を眠りの底へと沈める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏に起こされた時、そこにいたのは一夏だけだった。

「二人は?」

「帰った。」

え?束姉も?

俺に何か用事があったんじゃないの?

それともいつもの気まぐれ?

「じゃあ、俺も帰るから」

「そっか…気をつけてな」

「おう」

夜は嫌いだ。

「お前は一人だ」

そう言われている気がしてならない。

だから何時もふて寝しているか、暇つぶしで睡魔が来るのを待っている。

だが、今日は姉妹喧嘩をやり過ごすために昼寝してしまったので睡魔が来ない。

もうすぐ日が沈む…

まあ、まだ寝ないからいいんだけど…

「一人はつまんないなぁ…」

口から漏れる言葉に答えてくれる人はここにはいない。

もうすぐ夕食が運ばれてくるんだろうが、病人食ってあんまり美味しくないんだよなぁ…

一夏の御飯食べてみたいなぁ…

姉さんと束姉から聴いてる話だと普通に美味しいって聞いてるし…

「こんな体じゃなければなぁ…」

またもや漏れた言葉に今度は答えてくれる人がいた。

「ふっふっふ。その願い叶えてあげよう。天才の束さんがね!!」

ベッドの下から現れたのは人ではなく天災だった。

てか、帰ったんじゃないのか?

「なんか用?」

「あれ、すっごい冷めてる!?」

だって、それ前に見たし…

「で?」

「しーくん、冷たい!!

 でも、そんなしーくんも束さんは大好きだよ?」

ショタコン?

え?

え~…

救いようがねえな…

「まあ、俺も束姉は嫌いじゃないけどさあ…」

「うわ~い。相思相愛だね、しーくん」

すぐにご機嫌になる…

都合がいいな、この人…

というよりは…楽しそうだな、の方が正しいのか?

「それで、しーくん…叶えてあげようか?」

さっきの続き…

束姉の言葉通りの意味ならこの人には俺の体をどうにかする手があるのだろう。

だが、いまいち不安だ…

「できるの?」

「ISを私達で作ったことによって世界の技術水準は跳ね上がった。

 それは、医療分野にも言えることなの」

それはわかってる。

おかげで俺の寿命も伸びたんだから。

だが、それでも俺の体は治らなかった。

いや、正確にはそれでもこの体の脆弱性がわからないんだ。

「IS技術を使用した新型治療法でも考えついたの?」

心の中では有り得ないと思いつつも、「この人なら…」って、考えている自分がいる。

「うん。束さんが考えた治療法だけどね」

だから、この言葉を聞けたときは正直嘘でも嬉しかった。

「しーくん、どうして泣いてるの?」

涙が流れていた。

こうゆう時の涙って止めようと思っても止まらないって小説とかに書いてあったけど、

本当なんだな…

嬉しくて止まらないよ…

「なんでもない…なんでもないから…ちょっと待って…」

袖で拭っても拭っても涙が止まらず、無駄に袖が涙を含んで濡れていくだけだった。

ふわり、と。俺の体を何か優しくて暖かいものが包んだ。

束姉だった。

俺は束姉に抱きしめられて頭を撫でられていた。

束姉は何も言わずにいてくれた。

正直助かった。今の俺には何かを言われてもまともに喋れなかったから…

 

 

 

 

 

 

 

 

何分ぐらい泣いていたのか…もしかしたら何時間の間違いかもしれない…

だが、やっと涙は止まった。

「それで…俺の体は治るの?」

鼻を啜りながら束姉に聞くと、

「今よりはマシになるよ?

 全てが上手くいけば普通より体が弱い程度で済む状態まで持っていけれる。

 でも、これは理論上の話…」

今よりだいぶマシだ。

一夏や姉さんと一緒に入れる。

いつも一緒にいれるだろう…

通院はしなければならないだろうし、薬も毎食ごとにあるかもしれない…

それでもやる価値は大いにある。

「構わない」

俺の答えに束姉は目を悲しげなものに変える。

手術の成功確率が低いのか、それとも何か別の要因があるのか…

「成功するとは限らないし、例え成功したとしてもキツイリハビリが待ってるんだよ?」

ん?

リハビリは普通じゃね?

ああ。束姉は運動が苦手だからか?

というか、この人運動苦手なくせに体術とか強いから困る。

真面目にやればうちの姉さんと互角にやりあえるというのがすごい。

というかこの人も人外か…

「構わない。てか、リハビリは普通だからな?」

「だって、動くのめんどくさいじゃん?」

予想通りのセリフだ。

まあ。こうじゃないと束姉じゃないからいいんだけどさ…

「いいの?」

「構わないって言ってるじゃん」

そう…それが例えモルモット替わりだったとしてもね…

「実験も兼ねてるんでしょ?」

俺の言葉を聞いて束姉が固まる。表情はわからない。

「例えそれでも一夏達と一緒に過ごせるかもしれないんでしょ?

 なら、断るどおりはないよ」

「でも!失敗するかもしれないんだよ!?」

「大丈夫だよ」

そう、大丈夫。失敗は有り得ない。

「なんで…?」

だって…

「束姉が考えたんでしょ?じゃあ、失敗はありえないよ。

 俺は束姉を信じてるからね」

そう。束姉だから…

篠ノ之束だからこそ、この実験という名の手術は成功する。

「しーくん…」

あれ?

束姉、顔が赤いよ?

おっかしいなぁ…俺にも一夏と同じフラグ建築能力が備わっていたのか?

これはいろんな意味でヤバイ!

そして今後の一夏の面倒に巻き込まれる感がハンパない!!

「しーーーーーーーーくぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

なんかきたあああああああああ!?

「ちょっ!!抱きつくな!!」

「しーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくん

 しーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくん

 しーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくん」

「怖いわ!?」

軽くホラーだぞ?

というか、苦しい…

腰に抱きついて俺のお腹に顔を埋めている状態だが、苦しい。

というより、抱きしめてる腕の力が強くてくるしいのか?

まあ、さっきのお返しに我慢してやるけどさ…

俺の夕飯まだかなぁ…

結構腹減ってんだけど…

もうあの味がほとんどしない病人食でもいいから食べさせて欲しい…

「しーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくん

 しーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくん

 しーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくんしーくん」

あのさぁ…「文字数稼ぎ乙ww」とか言われかねないんでそろそろやめませんかね?

「わかったからストップしなさいな」

変な感じに言葉になっちまった…

「ありがとうね、しーくん…

 でも、成功確率は低いんだよ?」

「分の悪い賭けは嫌いじゃないよ?」

「……そっか…

 しーくんは強いなぁ…」

強い?

強くなんかないさ…

「束姉、俺の将来の夢はね『一夏と姉さんを守ること』なんだよ」

「そっか。じゃあ、もっと強くならないとね?」

そう、俺は弱すぎる…

だから、強くなりたい…

せめて、自分の大切なものだけは守れるように…




リーゼかっこいいよリーゼ!!!
個人的に一番のお気に入りだね


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シスコンは一夏だから!!!

今回はあんまり進まなかった…
というよりも文才が欲しい…


手術は無事に成功した。

え?いきなり飛びすぎ?

手術の描写なんて高度な物をこの作者が書けるわけないじゃないか…

それに俺は麻酔で寝てたからよくはわからん。

取り敢えず臓器のいくつかをIS技術を使用した、新型人工臓器に変えたらしい。

足の筋肉にも新型人工筋肉が使われているらしいが、人工筋肉って初めて聞いた気がする。

まあ、つまりは若干サイボーグ化してきたって事だ。

しかも今回は初めての事例なので、悪いところを全部変えるわけではなく、

一部だけに留めてあるらしい。

一部なのに臓器を複数入れ替えたことから、俺の体大丈夫か?って、不安がいっぱいなんだ。

今は手術後の経過を見るために絶対安静で、面会も家族限定なので箒とは会えていない。

一夏はここ最近は毎日来ているが、俺は現在体を殆ど動かせていない。

これに関しては人工臓器に人工筋肉が体にまだ馴染んでいないからだそうだ。

「にしても、束さんもすごいよな。四季を「仮面○イダー」みたいにしちまうなんてさ」

「言っとくけどな、普通の生活に戻れるようにするだけだからな?

 一飛びで高層ビルの屋上までジャンプなんてできないからな?」

「わかってるよ。でもさ、特殊能力みたいなのないのか?」

「ねえよ!!」

流石は俺の弟だな。

相手するのが最近めんどくさくなってきた。

まあ、普通の小学生の思考なんだろうな。

俺は、束姉と一緒にISを開発してたりして思考が普通じゃないからそう感じんのかな?

ガラッ

「四季、変わりないか?」

入ってきたのは黒髪の少女…とは言っても俺より年上。

世間一般で少女と言われる年齢だからそう言ってるだけだぞ?

俺と一夏の姉、織斑千冬姉さん。

後の世に《生身でISを倒した人間》、《世界最強のブラコン》等と記される(予定)の人だ。

「姉さん!!」

「あ、千冬姉(ちふゆねぇ)

そういえば姉さんに会うのも久しぶりだな。

身体を動かせないのが憎たらしいが、今は仕方ない。

「束から聞いたぞ。上手くいけば家に戻れるらしいな」

「うん。こっちでも俺の方で別に推測してみたけど失敗の確率は低いよ。

 むしろ、"コレ"のおかげで助かる人が多くて医者の人が困るぐらいだよ!」

なんか、久しぶりに姉さんと会えたからテンションが上がってきた気がする。

「そうか…」

あ、頭撫でられた…

姉さんも最近忙しいんだろうな。

目の下にクマが出来てる。

織斑家の財政ははっきり言って厳しい。

両親が消えた時にお金も持って行かれてたらどうしようもなかったぐらいだ。

そう。両親は何故かお金を置いていった。

現金じゃないぞ?口座にあった貯金だ。

だが、それでもギリギリだ。

だから、家長である姉さんが働いてお金を稼いでいるらしいが、何の仕事かはわからない。

取り敢えず体が動くようになったら《高天原》使って株で一儲けしよう。

そうすれば姉さんの負担も減ってもっと一緒にいられる。

「体はどうだ?」

「今はまだ喋ることぐらいしかできないよ。けど、大丈夫だよ」

「そうか…」

一夏はさっきから喋っていない。

どうせ、家に帰れば喋れるから今は俺に喋らせてやろうということなんだろうな…

一夏、俺の体が健康になったら覚えてろよ?

お前のその余裕を体が健康になったらぶち壊してやるからな…

「!?」

「一夏どうかしたのか?」

「いや、何か背中が冷たいって感じがして…」

おっと、流石は一夏。

俺の殺気(笑)に気づいたか…

というか、今気付いたけど…俺ってもしかしてシスコンか?

いや、それは違う!!

俺はただ年相応に姉さんに甘えているだけであってシスコンではない。

シスコンは一夏だ。

いいか?

シスコンは一夏だ。

俺は普通だ。

でも、姉さんはブラコンだ。

「四季、今変なこと考えなかったか?」

「ううん、体が健康になったら姉さんを楽にさせないといけないって考えてただけだよ?」

「そうか、四季は優しいな…」

危ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

丁度頭撫でられてた状態だったから速攻でアイアンクローに移行されるところだった。

俺は一回だけ受けたことがあるが3秒で落ちた。

よく餌食になっているのは束姉だ。

よくそのまま持ち上げられてプラーンってなってるのを何度も見たことがある。

「姉さん、ちゃんと休まないとダメだよ?」

「そうだぞ。千冬姉、最近睡眠時間削りすぎだよ」

「私は大丈夫だ。お前たちが心配することじゃない」

そうゆうと思った。

姉さんは俺達に心配かけたくないと思ってるんだろうけど、もうすでに遅いよ?

というか、もうすぐ高校生なんだから身だしなみぐらい気をつけてください。

俺は姉さんに嫁…じゃなかった。婿が出来るか心の底から心配です。

にしても今考えるとISの技術ってすごいなぁ…

俺の体も治りはしないもののかなり症状を和らげて普通の生活に戻れるようになる。

ISが発表されて…というよりも白騎士事件からまだ一年足らずしか立っていないのに、この技術力…

束姉がここら辺まで公開したのか?

あの人またなんかやる気なのか?

コア周りも一定範囲は公開してんだろうし…

これは俺も早めに"アイツ"を完成させないとな…

だけど、少し心配だなぁ…

"アイツ"は突破力に物を言わせただけだからなぁ…

やっぱりオールマイティーにしたほうがよかったのか?

いや、でも、今更変えるのもめんどいし…いっそのことそっち方面に昇華させるか?

そうだな…後は遠距離型とかも作って…武装も色々と詰め込まないと…

「四季、今日はもう帰るよ」

一夏の声で気がつくと、もう結構いい時間だった。

「うん。気をつけてね」

「ああ。じゃあまた明日な、四季」

「四季、お前は必ず元気になる」

「わかってるよ、姉さん」

今日はこれで一人か…

三人でいたのは久しぶりだったなぁ…

いつも三人で入れるように早く元気にならないとなぁ…

束姉も焦るなって言ってたし、焦っても俺の体は今は全然動かないから焦るどころの話じゃないんだけどなぁ…

馴染むのには個人差があるって言ってたから俺の場合はどうなるんだろうな…

「あ~、暇だ。暇過ぎて死にそうだ…」

せめて、《高天原》さえ起動できれば…

にしても暇だ。

こういう時に限って束姉は来ないんだよな~

ためしに呼んでみるか?

「束姉~」

「呼んだ?」

なんか普通に現れた。

この人マジ怖い…

しかもいつもとは違ってミニスカエロナースだし…

小学生相手にこの人なにやってんの!?

俺の貞操のピンチ?

そうなったら束姉が姉さんに物理的に消されるかもしれないから有り得ないな。

「何かようかな、しーくん?」

「暇だったから呼んだだけ」

「そんだけ?」

「ん」

なんかいきなりorzしだした。

意味がわからん。

「まあいいや。束さんは強い子いじけない!

 あ、それでね、しーくん。束さんと一緒に雲隠れしないかい?」

「忍者ごっこなら一夏とやってくれよ」

忍法・雲隠れの術

なんかだせえな…

「そっちじゃないよ!!」

「じゃあどれだよ?」

「今すぐってわけじゃないけど、束さんはね…

 世間から身を隠そうと思うんだ。」

「俺もついて来いと?」

「YES!!」

う~ん…

どうしようかなぁ…

束姉からISを学ぶのも今後につながるだろうし、着いていってもいいんだけど…

姉さんとあとついでに一夏と会えなくなるからなぁ…

「短期でいい?」

「バイトじゃないんだから…

 まあ、いいよ」

「あんがと」

「本当は一生一緒にいたいんだけどね…」

そこはそれ…結婚は人生の墓場って聞いたことがあるからちょっと億劫…

短期でいいんなら、《高天原》で稼ぎつつ、ISの研究もできるな。

それに稼ぎは姉さんの口座に入れれば問題なしだな。

「それじゃあ、また連絡するね」

さて、姉さんと一緒にいたいけど、ISのおかげで女尊男卑の世の中になりつつある。

ここから未来(さき)はいろいろとめんどくさそうだ。

買い物行くだけで一苦労しそうな感じがする。

まあ、それはその時に考えればいいや…

今は、体のことだけ考えよう…

行き当たりばったりだけど、まあいいさ。

束姉のことだからいろいろと準備だけは入念にしていそうだな…

幸いにも俺が開発者と知ってるのは数人の人達だけだからまあ、大丈夫だろ。

姉さんになんて説明しよう…




さて、弾の機体も決めないと…
次の次は中学生編


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お仕置きはトラウマだから!!!

ちょい時間かかった。
そして、四季ちゃんのISが少し登場。
皆さんの予想通りあの機体です。


あれから2年…俺も通院程度までに回復し、晴れて今日退院だ。

なのだが、なんでも束姉の失踪予定日が明日なので、学校には通えそうもない…

姉さんには束姉の方から説明するそうなのでいいけど、一夏には内緒らしい。

まあ、あいつは墓穴を掘る可能性が高いから当然だな。

取り敢えず束姉のところから帰るときは俺が中学生になる頃。

実質束姉から教われるのは2年が限界ということだ。

2年もあればいろんなことができる…

実質"俺"のISが3機ほど完成した。

そう"俺"のだ。

正確には織斑四季製のISだ。

篠ノ之束製ではない。

この3機はコアを共有して使用しているおかげか絶対防御が絶対じゃなくなった。

簡単に言おうとも思ったが、やっぱりやめておこう。

ぶっちゃけ今、束姉と逃走中だからだ。

「アイツ等しつこいぞ?」

「あっはっは。束さんに追いつけるのはちーちゃんと他数名だけなのだよ」

後ろから追ってくるのはどっかの軍人。

ちゃんと銃を持っている。

「排除する?」

「ダメだよ。しーくんは手を汚しちゃ…

 汚すのは私だけで十分だから」

束姉の言葉はいつもの楽しそうな雰囲気ではなく真面目な目でこちらを見据えて放たれた。

俺は何時も誰かの助けを受けて生きている。

今は束姉が一手にその"助け"を引き受けている状態だ。

俺は助けがないとこの世界では生きていけない状態にある。

束姉はこの逃亡生活のために色々と仕込みをやっていたらしいが、詳しいことは俺にもわからない。

だが、なんでこの人は俺の体の症状を和らげるための医療的知識を持っているんだろう?

俺のために知識を習得した?

天災であるこの人なら朝飯前なんだろうけど…

なんか申し訳ない……こともないな。うん。

「よ~し、束さんの特性催涙ガスだよ。喰らえ~」

ちょっと待て!!俺まだガスマスクしてないぃぃぃぃぃぃぃぃ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、危ないところだったね」

「本当だよ!!俺まで巻き込まれるところだったわ!!」

間一髪だった。

本当に危なかった。

アレを食らった軍人は酷い有様だった。

涙が溢れて止まらなくなり、絶叫していた。

それだけなら普通の催涙ガスと同じだ。

だが束製(コレ)は更なる効果を生み出しやがった。

正直、に言おう。アレは催涙ガスではなく、既に別のものであると。

だって、いきなり服を脱ぎ出すんだぜ?

泣きながら奇声をあげストリップをする軍人集団。

正直怖かった。

「催涙ガスに+αすんなよ…」

「いや~、まさかあんなことになるなんてね…

 作ったのは束さんだけどあんな効果があるなんて知らなかったよ…」

「なんでだよ!?」

「遊び半分に調合してみた」

アホか!!

遊び半分でなんてものを作り出したんだよ!?

「遊びでやんな!!危険だろう!?」

「ちっちっち。甘いね、しーくん。

 束さんは完璧だよ?あの程度の調合で失敗するわけないじゃないか」

ゆうと思った…

「完璧なら俺いらなくね?」

「やっぱり完璧じゃない!!」

どっちだ!!

まあいいけどさ。一緒にいると退屈しないし…

「それよりも、しーくん…

 もう期限過ぎてて夏休み間近だけどいいの?」

そう、俺が家に帰る時は既に過ぎてて既に3ヶ月程過ぎている。

「あ、忘れてた」

つまりはそういうことだ。

すっかり忘れていた。ただそれだけだ。

姉さんに怒られることは確定している。

「またこっちからも連絡するし、戻ったら?

 しーくんの御陰で第三世代型の開発及び研究は終了したし…」

因みに世界ではやっと第二世代型の終盤といったところだ。

少なくとも来年には第三世代型の開発に着手する国が出てくるだろう…

「第四世代型は予定通りに?」

「そのつもりだよ?

 試作機をどうするかはまたあった時に話し合おう?」

「わかった。じゃあ、またね。束姉」

さて、どうやって帰ろうか…

ここ太平洋のどこかだった気がするけど…

あ…エアーズロックみえた。

え?

『じゃあ、ちーちゃんによろしく言っといてね』

おい、なんで南半球なんだよ!?

まあいいや。

「リーゼ、起動」

俺のISは一つのコアで共有しているので、《起動キー》が必要になっている。

まあ、単純に各機体名の略称で設定している。

俺が初めて作った機体。

それが今起動させたIS。通称《リーゼ》だ。

それは"赤"だ。

別に全身真っ赤ってわけじゃない。

所々に白、黒など他の色が入っているが、5色以下しか色の種類がない。

定義的には第二世代型ISになり、非固定浮遊部位(アンロックユニット)はない。

一応束姉が作った第三世代型には負けない。

まあ、武装に物を言わせているだけだが…

にしても武装も多くなってきたなぁ…

ネタ武装とかいらないし、分解しておくか…

あ、そうだ。

「全方位ステルス迷彩システム、《天羽衣(あまのはごろも)》展開」

因みにこういう類のシステムや武器の命名は基本的に適当だ。

最近は日本神話とか読んでたからこんなふうになっている。

別に厨二病ってわけじゃない。

いいか?違うからな?

もうすぐ日本の領空だ。

《天羽衣》の御陰でレーダーには引っかからない。

このまま家に向かう。

何事もなければ直ぐに家に着くんだが…

何もないよな?

《天羽衣》展開中は攻撃ができない。

攻撃すると自動的に《天羽衣》が解除される。

「改良の余地ありだな…」

急いで帰って改良しよう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…」

今、俺の目の前には鬼がいます。

第一回モンドグロッソ優勝者、織斑千冬。

俺の姉で世界最強の称号を持つ女性。

「なんで連絡しなかった?」

完全に怒ってます。というか、目が据わってるんだよ…

正直ちびりそうだ…

しかも日本刀装備状態。

「忘れてました」

バゴン!!

痛ってえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!

頭潰れた、頭潰れた。これ絶対に頭潰れた。

というか、声が出ないし、体が動かない。

今現在の俺の状態は玄関(床ではなく地面)に潰れた蛙状態だ。

ここに一夏が友達連れて帰ってきたら最悪の状況になるな。

だが、俺はそんな馬鹿なことはしない。

今は昼前。

中学生は学校で授業中なのさ。

「ただいま~」

「「お邪魔しまーす」」

なん…だと…

まさか…テストか!?

「千冬姉…これ誰?」

「四季だ」

「は?」

というよりも一夏の後ろから聞いたことのない声が二人分聞こえてきたけど気のせいだよね?

え?現実から逃げるな?

これは逃げたくもなるぜ?

見事にフラグを回収してしまったからな。

「頭痛い…」

やっと動ける程度まで回復できた。

取り敢えず《潰れた蛙》から《頭を抑えて蹲る》に体勢を整える(トランスフォーム)する。

「四季?」

一夏の声だ。大事な弟の声だ

「ちょっと待って。姉さんに"本気"の拳骨喰らって頭痛い。」

俺、情けなさすぎるだろ…

一応、感動の再会場面みたいなシーンだぞ?

「本気の拳骨!?だ、大丈夫なのか!?

 この前それを食らったフライパンに穴が空いたんだぞ?」

マジで!?

俺の頭潰れてないよね?物理的に凹んでないよね?

「千冬姉、なんで四季にこんな仕打ちをしたんだ!?

 四季が死んじゃうだろ!!」

確かにさっきまで死を覚悟していたけどそこまで言ってやるな…

「本当は四月の頭に帰ってくるはずだったのに連絡もなしにしていた罰だ」

「それは四季が悪い」

「手の平返しすんな!!俺、お前の兄貴だぞ!?」

「せめて連絡をしろ。常識だぞ?」

一夏に正論で論破された。

それより、お腹が減ってきた。

「一夏…」

「なんだ?」

「ただいま。後、腹減った。」

「おう、おかえり。飯は5人分用意するから待っててくれ」

5人?

あ、そういえば一夏の数少ない友達が来てるんだっけ?

後ろを向いたとき、そこにいたのは大きいのと小さいのだった。

「プラスマイナスゼロ?」

咄嗟にそんな言葉が口から漏れていた。

「なんですって?」

不機嫌そうな声で口を開いたのは小さい方だった。

大きい方は苦笑しながら小さいのを宥めている。

まあ、これはどうでもいいや。

「姉さん…」

「なんだ、馬鹿」

「ただいま」

「ふん。帰ってくるのが遅い。」

今度は軽くコツンと。

優しく拳で頭を殴られた後、頭を撫でられた。

やっと、帰ってきた気がする。

にしても一夏のご飯は初めてだな…

流石は俺の弟。俺の初めてを奪っていくとは…

姉さんと一緒にリビングに入ると綺麗に掃除された我が家の姿があった。

一夏がちゃんと掃除しているみたいだ。

姉さんの家事スキルについては熟知している。あれは酷いものだった。

脱いだら脱ぎっぱなしで片付けないから最終的には魔窟みたいになっていた。

二階にある一夏の部屋には現在プラマイゼロコンビが学校のカバンを置きに行っている。

なんでもこの後テスト勉強をするらしい。

今日がテストの一日目で国語と社会は終わったのだが、

明日は理科、数学、英語の難関が待っているらしく勉強の苦手な学生にとっては地獄らしい。

料理を作りながら一夏がボヤいていた。

というよりも、現在進行系でボヤいている。

「ふーん。頑張れよ、弟」

「四季も手伝ってくれよ。IS作るよりは簡単だろ?」

確かにそうだけど、分野が違うぞ?

「別にいいけど、文句言うなよ?」

「おう」

さて、一夏の美味しいと評判の御飯の後には勉強か…

大丈夫かなー

ちょっち、不安だな…




ネタ武装とか考えておかねば…
ブレストなんちゃらとか、ゴルディオンなんとかとか…


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愚弟は許さねえから!!!

お待たせしました。
待ってるよね?
待ってなかったら盛大に滑ることになるな…

取り敢えず、原作揃ってないから後回しにしてた。


俺には兄が一人いる。

今はいない。ファースト幼馴染の箒のお姉さんである束さんと一緒にいるらしい…

正直俺には詳しいことは伝えられていない。

だから俺にはアイツが今どこで何をしているのかわからない。

俺の双子の兄である、織斑四季がどこで何をしているのかわからない。

正直心配だ。

束さんのおかげで昔よりは元気になったが、昔から病弱だったから未だに心配だ。

そういえば、束さんと四季がいなくなってから箒とも会えなくなったんだよな…

あいつ、友達できたのかなぁ…

昔から友達が少なかったから向こうでもできるのか、心配だ。

アレ?

俺、心配ばっかしてね?

キーンコーンカーンコーン

あ、テスト中だった。

やべ!?答え埋めきれてねぇ!!

「よーし、後ろから回収してこいよー」

ちょっと待って、先生!!

後3分でいいから!!

「後、悪あがきはやめて諦めろよー

 さっさと試合終了しろよー」

先生、名言を汚さないでください…

「先生!!バスケ部員としてその発言は許せません!!」

よし、その調子だバスケ部員の鈴木くん!!

鈴木くんを筆頭としたバスケ部員+αが先生に向かって騒いでいる。

よし、今のうちに…

「お前等全員補修にすんぞ?」

「「よーし、後ろから回収だー」」

バスケ部員+αの手のひら返し!?

オワタ…

「よー、一夏。どうだったよ?」

あ、コイツは…

赤髪にバンダナ…

そして、高身長の見た目だけはいい男。

五反田弾。

「お前、心の中で悪口言うのやめろよ。すぐにバレるぞ?」

マジかよ?

そんなはずは…

「取り敢えず、お仕置きな」

え?

いてててててててて!!

「おいそこ!!プロレスごっこは家でやれ」

先生、口じゃなく物理で止めてください

「なんだよ先生。彼女と別れて夜のプロレスごっこできないから羨ましいのか?」

弾!!お前は馬鹿か!?

見ろ周りを!

全員が弾から距離をとってるじゃないか!!

あ、やべ。

俺も離れないと…

「五反田、後ついでに織斑。お前等補修な?」

なんで俺まで!?

「先生、なんで俺まで何ですか!?」

「お前は前々から成績が悪いからだ」

「弾のせいだからな!!」

くっそ……って弾?

コイツ…落ち込んでる…

考えて喋れよ…

「弾、一夏、帰るわよ!」

そこに話しかけてくるのは隣のクラスのセカンド幼馴染、鈴だ。

小さめの身長に触覚のような茶色のツインテール。

そして、低身長…

バキッ!!

「2回も言うな、殴るわよ!!」

もう殴ってるじゃないか…

千冬姉に比べればどうってことないけど、結構痛い…

「殴ってから言うなよ、鈴」

タンコブできてないか心配なんだが…

「あ~、凰。まだこっちはホームルームは終わってないから廊下で待ってなさい。」

「は~い」

この先生は男性だが生徒からの信頼は厚いという、今じゃ珍しい人種だ。

なんとなく四季に似ている。

顔が似てるというわけじゃない。雰囲気がだ。

四季も先生も女尊男卑なんて気にもしていない。

そんなものなんてゴミ箱にでも捨ててしまえという感じだ。

正直言って俺もそれには同感だ。

男女で争っても意味なんて無いだろうに…

四季ならもっと具体的に説明できるんだけど、俺は四季みたいに頭がいいわけでもないから無理だ。

「それじゃあ、明日のために最後の悪あがきでもしてこい。以上解散」

ホームルームは一分程で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、どうだったのよ?」

学校からの帰り道…

弾と鈴と俺の3人で帰ってる途中で鈴が唐突に話しかけてきた。

何が?

とは言うまでもなく今回のテストのことだ。

鈴はちっこいのに頭がいい。

天才というほどではないが、並以上だ。

バキッ!!

「小さい言うな!!」

なんでわかるんだよ!?

「だからいい加減に気づけと…」

弾にすらバレてるのはちょっとアレだ。

なんとかしないと…

というか…痛い

「いきなり殴るなよ、鈴」

最近鈴に殴られてばっかの気がする…

転校してきた頃より打ち解けてきたということにもなるからそれはそれでいい。

仲が悪いよりはマシだ。

「それよりこの後どうするんだ?」

「そんなの予定通り一夏の家でお昼食べてから勉強会でしょ?」

弾と鈴のテスト前からの提案に俺は即座に了解の旨を述べていた。

だが、普段は国家代表で忙しく家にもろくに帰ってこれなかった千冬姉が昨日突然帰ってきて、

「一週間の休暇をもらった」

とか言ってたので、少し不安だ。

後、四季がどこにいるのかもわからないと言っていた。

近いうちに帰ってくるらしいとは言っていたが、その時の千冬姉の表情は怖かった。

「別にいいけど千冬姉が帰ってきてるから静かにしないと本気でヤバイから、頼むわ」

因みに弾と鈴は千冬姉の恐ろしさを知っているので、顔を青くさせている。

「ま、まじか……じゃあ、ゲーム休憩は無しだな…」

弾…成績的にお前はそんな暇はないだろ…

「うわあ…こりゃ、黙々とやるしかないわね…」

鈴の成績は悪くないので大いに期待だ。

テンションの下がった二人と他愛もない話をしながら、今だけは勉強のことを忘れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ると、千冬姉(日本刀装備+殺気ダダ漏れ)が鬼神のごとく仁王立ちしており、

四季がお仕置きされてたり、四季に初めて俺の料理を食べてもらってテンションマックスになったりしてたが…

まあ、そこは置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、一夏のターンは終わって四季君の出番です。

一夏の御飯はかなり美味かったけど頭が痛くてそれどころじゃなかった。

一夏達3人は一夏の部屋でテスト勉強に行っているので今リビングにいるのは俺と千冬姉だけだ。

「何故連絡をしなかった」

「忘れてたから…じゃ、ダメ?」

「それだけじゃないだろう?」

あ、バレてる…

「ちょっと某国の特殊部隊から逃げながらテロリストとドンパチしてた。」

「…………」

あ、姉さんが頭抑えてる…

「あ、それと姉さんのISのシステム面の改良版を作ってた。

 スラスターの排熱システムの改良とSE消費量の軽減が出来たから」

姉さんは苦笑するが直ぐにため息をつく。

え、なんで?

「全く…この愚弟が」

頭をくしゃくしゃにされながら言われるが、目が回って姉さんの表情はわからない。

とりあえず、なんか恥ずかしくなってきたので自分の部屋に逃げる。

目が回ったせいか階段上がるのに手間取った。

部屋に入ってすぐに気付いたのは荷物の少なさだった。

いろんな国に行って(不法入国)は、面白そうなモノを送って(束製特急便)いたのに…

「おかしい…俺のアメリカで買ったエロ本がない…」

なぜだ!?

あ、一夏だな!!

アイツ!!許せん!!

「あの愚弟めぇぇぇぇぇ!!」

取り敢えずあいつの部屋に殴り込みじゃああああああああああ!!

テスト勉強?

知ったことか!!!




短めで御免なさい。
一夏視点はたまにやるかも…

取り敢えずこっちもきちんと更新させますのでお許しを…

ではまた次回


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このゲーム楽勝だから!!!

なんかこっちが進むよ…
ちゃんと他のも書いているよ?
今回のはちょっと他作品キャラという名のオリキャラが出てしまった。
まあ、大丈夫でしょ(白目


「おっらぁぁぁ!!この愚弟がぁぁぁぁ!!!」

俺の蹴りによって一夏の部屋の扉が嫌な音を立てて開く。

階下からは姉さんのため息が聞こえた気がするがまずはスルー。

「いきなりなんだよ、四季。

 あ、後で直しておけよ」

「あ、はい」

我が家の生活が保っているのは単に一夏のおかげなのであまり逆らえない。

という訳で、扉を直すのは後回し。

後でちゃんと直しておくよ?

そのまま逃げたりなんかしないよ?

「俺の秘蔵の荷物をどうした!?」

一夏はこっちを見ずに問題集をやり続けながら淡々と答える。

「ああ、あのエロ本なら捨てたぞ……千冬姉が」

姉さんに見つかったらアウトなのを忘れていた。

「なんで隠しておいてくれなかったんだよ!?

 お前も立派な思春期の男子中学生だろう!?」

「四季みたいに欲望に忠実に動いたら逮捕されるわ!!」

何を失礼な…

「証拠はあるのか?」

言ったあとに気づいた…

小学生か、俺は…

「四季…」

「なんだよ?」

「五月蝿い。勉強の邪魔」

「はい。御免なさい」

完全に言い返せない。

まあ、エロ本をこっちに送った俺が悪かったのか?

でも、ラボに持って帰ると束姉に処分された挙句にヤンデレ走りで解剖しに来るからなぁ…

はあ、俺の30万が…

あのエロ本高かったんだよなぁ…

え?他の二人?

俺たちのやり取りを見ながら時が止まってたよ…

取り敢えずそのまま放置して一夏は勉強に戻る。

俺は暇なので一夏が勉強している姿をしばらく眺めた後、一夏の教科書を何冊か借りて流し読みする。

生まれつき忘れることができない俺には勉強なんてものは無意味だが、中学に行かなきゃいけないので必要な作業になる。

まずは今日のテストだった国語と社会の教科書をパラパラと流し読み、その間10秒…

「よし、覚えた」

「「はえーよ!?」」

3人に一斉に突っ込まれて流石に驚いた。

「相変わらず速いな…」

一夏は呆れて…

「嘘だろ…?」

大きいのは現実から目を背け…

「嘘つくんじゃないわよ!!」

小さいのはこっちに指を向けてギャーギャー騒いでいる。

取り敢えず、プラマイゼロは無視

「あ、一夏そこの途中式間違ってる」

「え、どこ?」

「ここ」

「あ、ホントだ」

一夏のノートの訂正箇所を指差すと一夏はその部分を消しゴムで消して正しい途中式に直す。

現在進行系で復習中なのは数学。

英語と理科はこの後らしい。

そして、今は使わないらしいので一夏の英語と理科の教科書を借りて、ループ。

「よし、覚えた。」

「「だから、はえーよ!!!!」」

ギャーギャー五月蝿い奴らだな…

「あ、それじゃあ四季…

 数学ってどの問題覚えてれば大丈夫なんだ?」

一夏よ、俺はバサ姉じゃないからそこまでわからんぞ?

「この公式を暗記して、この3つの問題の癖を覚えたらそれの応用をやれば70点はいけるんじゃない?」

取り敢えず答えるけど。

というか、中学生の問題って結構簡単だな。

小学校殆ど行ってないからちょっぴり不安だったんだが…

これなら楽勝っぽいな!!

体育以外は…

動くのは苦手ですしおすし

ベッドの上なら何時間でも動く自信はあるんだが…

「四季、エロいこと考えるな」

「なぜバレたし!?」

おかしい…ってほどでもないわ…

恋愛方面じゃなければ一夏は基本的に有能だった。

因みにプラマイゼロコンビは俺が教えた範囲を黙々と暗記している。

「よし、次は英語の範囲を…「やだよ、めんどい」……」

黙れよノッポ

俺はお前に対してよろしくつもりはねえ。

ミニマムに対してもだが…

「四季」

「15p~17pを丸暗記」

くっそ、プラマイゼロコンビめ…

一夏の有り難さに咽び泣くがいいわ!!

そんなこんなで俺には全くの無関係なテスト勉強が進んで行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

4人が織斑家の2階でテスト勉強に勤しんでいる頃、1階では千冬が携帯で連絡を取っていた。

『はい。』

電話口から聞こえるのは千冬にとって親しみのある声だ。

「私だ」

千冬が手短に答えると、電話口からため息が漏れる

『いや、貴女の番号は登録してありますからそれはわかりますけど…』

呆れたような声に千冬は苦笑する。

「四季が帰ってきたので連絡ぐらいはしておこうと思ってな…」

電話口からの声は先程までより少し明るくなっているがそれを隠すつもりでぶっきらぼうに答える。

それに対しても千冬は苦笑する。

『そうですか。明日あたりにでも病院に連れてきてください。』

今すぐではなくていいのかと、聞こうとしたが千冬は止めた。

「ああ。」

『それだけですか?それだけなら切りますよ?

 昼休みとは言え医者はほぼ年中無休なんですから』

やはりな。と、千冬は心の中で笑う。

昔から変わらない友人に千冬は安堵する。

「相変わらずだな、アリサ」

『貴女と束ほどではありませんよ、千冬』

束と一緒にするなと言いたかったが、どうせ明日会うのだから明日言おうと思ったがやはり我慢はできなかった。

篠ノ之束(アレ)と一緒にされるのは我慢ならん。

「アレと一緒にするな」

『はいはい。それじゃ』

もっと文句を言ってやりたかったが既に電話口からは通話が終了したという意味の電子音が聞こえるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

テスト勉強を俺のおかげで乗り切った学生組に混じって現在ゲーム中。

ソフトは少し前に発売された『超ラノベ大戦Ⅲ』。

このソフトは簡単に言えばラノベキャラで行われるス○ブラみたいなものだ。

余談だが出版社の垣根を越えすぎてファンからお手紙が制作側に殺到して現在てんてこ舞いらしい。

だが、それにもめげずに今度は『超エロゲ大戦』を企画したらしい。

特定の作品は入っているが、ダウンロードしないと手に入らない作品があるのでネット環境が整ってないと全キャラ揃えられないという素敵仕様。

ダウンロードしても、その作品のシナリオを進めないと初期キャラしか使えないというきちんとやり込み要素も入っている。

フリー大戦モードだと今まで手に入れたキャラを使っての大戦が可能。

シナリオモードでは選択した作品のシナリオしかできないが、

5作品以上クリアすると、カオスモードが解放される。

カオスモードでは今まで開放した作品全てのシナリオをランダムで選択されてシナリオが構成されるというモードだ。

なので最初からラスボス戦というのもありえる、名前通りの混沌仕様だ。

今日は丁度4人いるので普通にフリー大戦モードだ。

「俺はこいつだな」

『マズハソノゲンソウヲブチコロス!!』

最初にキャラを選んだのは一夏。

自分と同じ一級フラグ建築士を選んでいる。

「私はコイツよ!!」

『ピナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

次に選んだのはミニマム。

一夏と同じく自分にいろんな意味で似ている竜使いを選んでいた。

ロリ、ツインテ、ひんぬーの三拍子。

というより制作陣、何故そのセリフを選んだ!?

「俺はやっぱりコイツだな」

『ウッキィィィィィィィイイイイイ!!!!』

その次はノッポ。

自分と似たような声の二代目孫悟空を選んでいた。

そういえばそいつって原作でほとんど活躍してなくね?

残るは俺だけ。

正直キャラが結構解放されてるので迷う。

白髪のロリコンにすべきか、おっぱい好きのハーレム王にすべきか、閃光の抜刀妻にするかで迷う。

いや、ここは敢えて…

『マダゲンエキ、ゲンエキデスノヨ!!』

やっぱ、人狼女王だな。

ネイトの上位互換みたいなもんだし…

「あ、それ超扱いづらいぞ?」

「こりゃ、早めに決着がつきそうだな」

「勝ったな…」

上から順に一夏、ノッポ、ミニマムだ。

「操作法と癖は既に知っているから」

「「まじで!?」」

そう、俺がこのゲームをやってないと思ったか?

否!!断じて否!!

既に人狼女王の操作は完璧なのさ!!

それにこういうピーキーなキャラは操作を覚えて、癖を理解していればかなり使えるキャラになる。

『バトル…スタート!!』

テレビ画面から試合開始のゴングが鳴る。

「ていっ!!」

『ウワアアアア!!』

『ピナアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

『ウッキイイイイイイイイイイイイイイ!!』

「「瞬殺かよ!?」」

それぞれのキャラが画面外へ消えていく。

「さあ、ゲームを始めよう…」

俺のニヤついた笑みと言葉に絶句する3人。

「「オ、オワタ…」」

3人の言葉通り一撃も喰らわずに終わった。




人狼女王マジパネェ…
因みに他作品キャラという名のオリキャラがすぐにバレそう…

そういえばもうすぐ夏アニメか…
なんか今年はホモ枠が多くて腐女子が狂喜乱舞するとしと聞いたのだが、
そこらへんどうなんだろう…

取り敢えず難民キャンプがあればそれでいい。


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平穏なんてねぇから!!!

遅くなった。
早く原作に入りたい。
なら書くしかないよな…
今回は他作品キャラという名のオリキャラが出ます。



『超ラノベ大戦Ⅲ』の完全勝利の翌日、俺は姉さんと一緒に市内にある国立病院に来ている。

国が直接運営している病院で、IS関連の事故などで怪我したものが行くところだ。

後はISの技術を使った新型医療の研究所でもある。

俺は新型医療の一つ、『IS技術を利用しての新型人工臓器・義手・義足・筋肉の研究及び治療』の患者第一号である。

因みに患者の部分をモルモットに変えると姉さんと束姉がマジギレするので気をつけなければならない。

束姉と失踪する前に俺のことをモルモットと評した研究者がいたんだが、今はゲイバーで働いているらしい。

一体何があったのかは怖くて聞けないので割愛する。

「なんかまたでかくなってない?」

俺の最後に見た病院の姿よりも一回り大きくなっている。

「IS医療の幅が広がっているからな…

 今まで治療不可能と言われていた難病の数が年々減っていっているからその御陰で増改築の連続だ」

そう…ISはなにも兵器としての面しかないわけではない。

元々は宇宙へ進出するためのマルチパワードフォームスーツだ。

確か、そのはずだ。

ISは束姉が作り上げた、既存の技術を塗り替えるような技術が使われている。

それを利用しての医療技術の発展…

他にもエネルギー問題の改善や温暖化の対策、各種電子機器の小型化等等…

挙げればキリがないほどに利用されているのだ。

利用といっても束姉が主導になって技術を各分野に提供していたから特に問題といったような問題は皆無なんだが…

その御陰で医療分野の研究がまたもや進んだようで病院を増改築する羽目になったそうだ。

確か地下12階まであったはずなんだが…

そっちも増改築されてるんだろうなぁ

「そんで先生が捕まったって聞いたけど、何やったの?」

なんでも俺が失踪中に捕まったらしい…

「ああ、大車先生か…病院の予算を使い込んでいたらしくな…」

「ああ。だからバレないようにしておけって言っといたのに…」

あんなに使い込んでいたら速攻でバレるに決まっているだろうに…

まあ、あの先生の目はいやらしかったしな…

診察してる時なんていっつもハァハァしてたから、さりげに貞操の危険を感じた。

勿論後ろの危険だ。

「新しい先生ってどんな人なの?」

大体の予想はついてるけど外れて欲しい。

俺はあの人が苦手なので…

姉さんより怖いんだぜ…?

「お前の予想通りの人物だろう…」

姉さんが苦笑しながら俺の頭をワシャワシャと撫でてくる。

「うげぇ…」

思わず声が漏れてしまった。

マジかよ…

あの人かぁ…

束姉ですら苦手と言っていたからな…

「なんですか、その声は?」

げっ!?

後ろに振り返ると赤系等のフォーマルスーツの上に白衣を着た綺麗な銀髪の女性がいた。

「あ、アリサちゃん…いでっ!!」

殴られた…というよりは拳骨が落とされた。

「年上に向けてちゃん付けですか?

 ……ドン引きです」

姉さんの本気の拳骨に勝るとも劣らない威力だった。

頭を抑えて蹲ることしかできない。

「こうやって会うのはモンドグロッソ以来か?」

「ええ、アノ時は負けましたが次はありませんよ?」

俺を放置して握手する二人。

あ、そういえばアリサちゃんはロシア代表だったな…

あれ?なんでここにいんの?

「ほら、いつまでしゃがみこんでいる気ですか?」

アリサちゃんに半強制的に立ち上がらせられる。

「ああ、もう。男の子なんだから泣かないでください。」

泣かしたのはアリサちゃんだからね!?

後、泣いてない!!

泣きそうになっただけでまだセーフです!!

だから、頭を撫でるな!!拳骨された部位が現在進行系で痛いから!!

そんなこんなでいつまでたっても痛みで立てなかったので、痺れを切らしたアリサちゃんに引きずっていかれました。

どこにって?

アリサちゃんに割り与えられた研究室兼診察室兼自室だよ。

入った途端に異臭がした。

そういえば、アリサちゃんって姉さんと同じで家事ができない人種だったな…

「掃除ぐらいしなさい!!」

「してますよ。……半年に一度ぐらいは」

いやいや…

「せめて、週一でお願いします」

「そんな時間はないわ」

忙しいのはわかるけどさ…

「というか、俺が前にロシアに行った(不法入国)時にあげた『全自動掃除機』はどうしたの?」

「ああ、あれならすぐに壊れましたよ?」

ちょっと待て!!

アレって俗に言う『ゴミ屋敷』みたいな部屋でも新築同様にまでビフォーアフターできるんだぞ!?

どうやって壊したんだ!?

つまり…アリサちゃんの部屋は『ゴミ屋敷』以上ということに…

どうしよう…こんなところで診察とかどんな罰ゲームだよ…

「それで、体の調子はどうなんですか?」

「え?ああ。特に変わりはないよ?」

アリサちゃんは医療用スキャナのタッチパネルでスキャナを操作しながら聞いてくるがこっちはそれどころじゃない…

ヤバイ。前に上げた奴よりも更に強力なものを用意しないと…

「肝臓部分に劣化が確認。左腕の人工筋肉も各所に劣化が見られますね…

 近いうちに取り替えますよ?」

また手術か…

「はーい」

「千冬は四季の入院手続きをしてきてください。既に受付には伝えてあるので…」

「ああ、わかった。」

いつ知らせてかって?俺もわからない。

スキャナの操作しかしていないはずなんだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室の窓から見える景色は相変わらず夏特有の青々と茂った木々に空高く澄み渡るような青空だった。

ただ、最近はセミの鳴く声が減ってきていた。

それもそうだ。今日は8月29日…もうすぐ夏休みも終わり、学生どもは夏休みの宿題をやっていなくててんやわんやだろうな…

そう思うと、胸がスーっとする。

「へっ!!ざまぁ!!!」

「いきなり叫ぶな、鬱陶しい」

姉さんに怒られた。

それもそうだ。

「お前今、熱が何度あるかわかっているのか?

 40度だぞ?調子に乗ってないでさっさと直して学校に通え。この愚弟が」

「すんません、姉上」

生まれつき体が病弱なために、手術後は長期の高熱に魘されるのだ。

まあ、もうすぐ終わるだろう…

何故かって?勘だよ…

「くだらんこと考えてないで寝ろ」

なぜバレたし…

まあ、ここは大人しく寝ておこう。

初日から休みとか洒落にならん。

病室には俺と姉さんの他には誰もいない。

もうすぐアリサちゃんが診察に来るだろうけど…

「「お邪魔しマース」」

先に一夏とプラマイゼロが来たようだ。

「おー」

「静かにしろよ」

俺と姉さんの挨拶に3人は静かに入室する。

「四季、具合は?」

「任せろ。絶好調でダルイ…」

「ダメダメね」

「早く良くなってくれよ。こないだの時よりラノベの数増やしたからな。

 次は俺が勝つ。」

あー、ラノベ大戦の話か…

「おー」

正直返事するのもだるい。

「入りますよ」

あ、アリサちゃんも来た。

いつものように上着を脱いで聴診器の冷たさに安堵してると、姉さんが見ていたドラマがいきなりニュース番組に変わった。

『ここで突然ですが臨時ニュースをお伝えします』

「ちっ、いいところで…」

まあ、気持ちはわかるけどね…

『ISの生みの親の篠ノ之博士が発見されました』

「「あー、わざとだな…」」

俺と姉さんとアリサちゃんの言葉が重なる。

学生トリオは驚いてニュースにめが釘付けになっている。

テレビの画面が変わって、記者会見のような場所が画面に撮される。

『えー、最初にひとつだけ注意しておくけど、今ここにいるのは束さんであって、束さんじゃないんだ。

 まあ、メッセンジャーと思ったくれたまえ。あーっはっはっはっはっは!!』

記者たちが絶句しているが束姉の言葉が続く。

『えーとね、実は言い忘れていたことが一つだけあってね。だからこうして政府を脅し…じゃなくて、頼んで全国放送してもらったんだ。

 あ、間違えた世界配信だった。えへへ。』

記者たちが我に帰ってレコーダーを起動させて一字一句聞き逃しまいとする。

『実はね、ISは束さんが一人で作り上げたものじゃないんだ…』

束姉の言葉に悪寒が走る。あ、これアカンやつや。

会場の記者たちも驚きざわめいている。

『もうひとりいるんだよ。ISを生み出した人間がね』

記者たちは聞き逃さないように全員が黙りこくった。

『その名は、織斑四季。

 世界最強のIS操縦者、織斑千冬の弟だよ』

その瞬間世界に俺のことがバレた。

「あの馬鹿絶対に殴る。顔面にロケットパンチしてやる…」

俺の口から洩れた言葉に姉さんや一夏達がこっちを向く。

「俺の平穏を返せ、コノヤロー…」

天災は俺の平穏を奪って消えました。




下乳スタイルはエロい。
しかも二十代前半というか成人したて。
たまらんな(ゲヘヘ

次回はだいぶ飛ぶかも。
夏休み明けての転校シーンやろうかと思ったけど止めた。
取り敢えず楯無さんだそう。そうだ、そうしよう


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それは無理ゲーだから!!!

最近こっちが進むんだよ。
焼き鳥の処刑シーンは少し戸惑っている。


今回は例の姉妹が登場。
妹は喋らないけどね


束姉の『俺の個人情報バラして平穏を星の彼方に☆大作戦』からおおよそ半年が経った。

え?時間が飛びすぎ?

人間の醜い部分が見たいのか?

俺は嫌だ。という訳で割愛。

簡単に説明すると、政府の一部が拉致ろうとしたので自立行動型兵装の試験運転がてら無力化してから身ぐるみ剥いで警察を呼んだ。

その後IS装備の女性数名が上からの命令で襲いかかってきたので、そのISのコアを停止させて物理的にボコった。

因みにボコったのはアリサちゃんと姉さんです。

俺は無力化しただけだよ?

ということが何度か続いたので政府に「日本のIS全部止めてやろうか、コラ!?」って抗議したら普通に止めてくれた。

政府はチョロい、はっきりわかんだね…

という訳で現在…

「お願いします、織斑博士!!何卒ご協力をお願いします!!」

メンドクサイなぁ…

渡された資料に目を通すと…

『現ロシア代表に勝てるぐらいのISの強化』

アリサちゃんに敵対するとか死亡フラグしかないんだけど…

「めんどいから却下」

勿論断りますよ?まだ死にたくないので…

「そ、そんなぁ…そこをなんとか!!お願いします!!」

「やだ」

因みに場所は駅前の喫茶店なので他人の視線で針の筵です。

という訳で早々に退散。

もう3月なので外に出るとかなり寒い。

「うわ、雪降ってるし…」

しかも結構積もってた…

通行人がこっちを指差してヒソヒソ話してるが赤の他人なんて気にしてらんない。

今日はアリサちゃんがなんか相談があるからさっさと帰ってこいって言われているんだよねー

取り敢えず帰ってきたけど、今日はあの二人が一夏と遊ぶために家に来てた気がする。

「ただいまー」

「おかえりなさい、遅かったですね」

出迎えてくれたのは…アリサちゃんでした。

あれ?

しかも不機嫌。

なして!?

「お早いお着きで…」

「女性を待たせるなんてどうゆう神経をしてるんですか?……ドン引きです」

ごめんね、アリサちゃん……

俺はMじゃなくてSだからそれじゃあ喜べないんだ…

「あ、お帰り四季」

やったKYの一夏だ!!これで解放されるぞ!!

「ただいま」

やっと家に帰ってきた気分です。はい。

「私の用事が先ですよ?」

アリサちゃんからは逃げられないようです。しってた。

 

 

 

 

 

 

場所をリビングに移してアリサちゃんの用事の詳細を聞きに来ました。

というよりも上着の襟を掴まれてリビングまで引っ張られました。

「国家代表をやめる?」

「ええ。IS学園は知ってますね?」

IS学園…

ISの操縦者育成を目的とした教育機関で日本にある唯一のISに乗れる学園ってところだ。

まあ、某大国Aが「IS作ったんだからそっちに学校作って全部報告しろや。あ、金はてめえ持ちな」って感じで日本政府を脅して作った学園だ。

当の日本政府にしてみれば、「IS作ったのは篠ノ之博士と織斑博士なんですが、それは…」って感じだったそうだ。

まじざまぁ

「そりゃあ、束姉に頼まれてアソコの防犯システム組んだの俺だし…」

因みに束姉は日本政府に土下座されて頼まれました。

「そこの非常勤医師として勧誘されてましてね…

 研究室もくれるというのでやろうかと思ってます」

「国家代表の給料ってかなり高いと思うんだけどいいの?」

「へぇ…。私が金銭に執着するような俗物に見えるとでも?」

あ、やべ…

殺気が出てきてる

「思ってないです。はい。」

怒りを押しとどめください…はっきり言って怖いんですよ

姉さんが国家代表として今お仕事中で家にいないからストッパーがいないから俺の危険が危ない。

「……まあいいです。」

よかった助かった。

「あ、そうだ。そういえば日本のある学生が国家代表になるためにISの改造に手を貸してくれって言われててさ…

 ちょうどいいんじゃない?」

「……ふむ。せめて五分は持たせるようにして下さいね?」

「無茶をおっしゃる…」

アリサちゃん相手に五分持ったのって今のところ姉さん一人だけなんですが…

姉さんクラスとかマジ無理ゲー

まあ、向こうと連絡を取るとしますか…

 

 

 

 

 

 

 

というわけでアリサちゃんとの対話(殺気付き)から一週間、ちゃんとその日のうちに連絡を取ったよ。

アリサちゃんの代わりにロシア代表にする女子学生に直接連絡を取ったらキョドってて結構面白かったが…

協力する代わりに自由国籍権を持つこととロシアの代表候補生になるように言ったら既に準備完了していて、ロシア製のISも受け取っているそうだ。

俺の協力が取り付けられなかったらどうする気だったのか…

まあいいや、その彼女は今ISと共に家に帰ってるそうで…

俺は現在その家の使用人(黒服ハゲサングラスのヤクザっぽい人)に車に乗せられてその家に向かっている。

だが、問題は改造の方だな。

アリサちゃん相手に五分持たせられるほどの魔改造…

はっきり言って無理。

数日でできる作業量を超えてる。

まあ、春休み入ってるから泊まり込みでもいいんだけどさ…

「見えてきました…」

黒服さん口数が少なくてつまんない…

窓の外に流れていく景色に目を向けると結構高めの塀が続いていた。

土地が広いんだね…

さっきから景色あんまり変わんなくてつまんないんだよなぁ…

「ふわああぁぁぁ…」

昨日は深夜アニメ見てたからまだ眠いんだよなぁ…

「…退屈ですか?」

やっと喋りだしたよ。黒服ハゲ…

「同じ景色ばかりでつまらん。せめて壁画みたいな絵が塀全てに描かれていたならもう少し面白みはあるのにな…」

正直な感想を言うと、黒服が気まずそうな気配を醸し出す。

気まずいのはこっちも同じなんですけどね…

束姉と一緒にいたせいか他人のことがあまり気にならなくなってきたから非常にどうでもいいけど…

まあ、そんなこんなでやっとのことで到着したのはとても広い日本家屋だった。

そりゃあ、アレだけ時代劇でよくあるような塀の中に洋風建築が詰まってたらそれはそれで面白いけど引くわ。

「はじめまして、織斑博士」

出迎えてくれたのは姉妹だった。

姉の方はしっかりしていそうだが、好戦的な目をしていて扇子で口元を隠している。

妹の方は内気な性格のようで姉の背中に隠れてこちらの様子を伺っている。後眼鏡属性。

「帰りたいなぁ」

なんかきたのはいいけどめんどくさそう…

この二人の相手。

「え!?」

あ、姉が動揺した…

ちょっとイジメがいがありそう…

よし、やる気出た。

「で、ISは?」

「え!?…あ、はい。こちらです。」

好戦的な視線はなりを潜め、妹みたいに内気になっている姉。

面白くなってきた。

因みに俺は手ぶらだよ。束姉みたいに機械仕掛けの栗鼠を持ってるわけじゃないけど、あんな感じのは持ってるわけです。はい。

屋敷の地下に降りてしばらく歩くと広い場所に出た。

そこの中央に鎮座するように数多のコードに繋がれている一機のIS…

そして、そこかしこにいるロシアのIS研究者達…

「うわ、かなり帰りてぇ…」

絶対にめんどくさいことになる。

どうしよう、俺ロシア語は得意じゃないんだよな…

研究者共は俺に気付くなり大声を上げてこっちに近づいてくる。というか走ってくる。

正直かなり怖い。感染者か何かか?

「セイッ!!」

「ごふぅっ!?」

思わず黒服さんを盾にしてしまった。

ロシアの研究者×黒服ハゲサングラス…

「ふう、危なかった…」

「あの…織斑博士…。家の者を犠牲にしないでもらえます?」

「いやだって怖かったし…」

考えても見ろよ…

感染者みたいに10人近くの人間が走ってくるんだぜ?しかも奇声を発しながら…

俺はジョエルじゃないので殲滅できないから、この手法を取ったまでだ。

「黒服がいなかったらお前らのどっちかだったな…」

「「ひっ!?」」

想像したのか軽く悲鳴を上げる姉妹。

収拾つけるのもめんどくさいので、気絶している研究者と黒服、震えている姉妹は放置。

他の研究者?黒服を盾にした時点でフリーズした。

鎮座しているISの前に行く。

これを改造か…

見たところ第二世代型か…

第三世代型にしてワンオフ起動できればギリギリ5分持つかどうかかな…

まあ、やってみますか…




因みにアリサちゃんの戦闘力は生身で本気の千冬とほぼ互角。
ISでは千冬に一歩劣るものの世界最強クラスの腕前です。

そして、姉妹の姉の方…いったい何者なんだ!?(白目)

誤字脱字及び、感想お待ちしております


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ISとかすぐにできねえから!!!

結構難産だった。
別に艦これのイベント海域行ってたわけでも、積みゲーだったMGRやってたわけでも、部屋の掃除をしていたら発掘した戦国無双3Zやってたわけじゃない…(震え声)

因みに今回は気に入らない人が続出すると思う。


ISの第2世代型から第3世代型への改造自体は比較的楽に済んだ。

というか2時間で終わったので、俺以外の人間の思考がフリーズ状態だ。

「……嘘…」

「馬鹿な!?…早すぎる!!」

「俺は夢でも見ているのか…」

「有り得ない…」

「ちくわ大明神」

「誰だ今の!?」

おい、研究者共…現実を直視しろ。

基礎は結構出来てたから試しに試作型のシステム突っ込んで見たら意外とマッチングした。

後は人体実…じゃなくてデータ取りしてからの微調整だな。

「おい、扇子女。さっさと乗れ」

「扇子女!?」

姉妹の姉の名前がわからないので適当に呼ぶ。

扇子持ってるから丁度いい。

妹は『メガネっ娘』で確定。

姉のほうはブツブツと文句を言いながらISに身を預け、初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を済ませる。

俺は空間投影型ディスプレイに表示された情報に目を通していき、無駄な情報を削除していく。

「ほう…Dカップか…」

「博士、訴えますよ!!!」

怒られた。

 

 

 

 

一次移行が完了したのでデータ取りの開始。

「さて、本当にここでやっていいんだな?」

「ええ。ISでもここの壁を壊すにはかなりの時間がかかるのよ?」

本当にやっていいのか?

この程度の壁ならこないだ遊びで開発したオクスタンランチャーでブチ抜けそうだな…

管理局の白き冥王(高町家の末娘)みたいに…

まあ、やっていいんだったら遠慮はいらないか…

自立行動型機動兵装のテストにちょうどいいしな!

「それでどういうテストなのかしら?」

扇子の既に勝ち誇った顔が少しイラッと来たのでそれなりの"モノ"じゃないとな…

何にするか…

"紅蜘蛛"だと簡単に終わりそうだし…

かといって"悪狼"や"薔薇騎士"使ったら扇子のテストにならないし…

"黄金の獣"、"水銀の蛇"、"永遠の刹那"はまだ開発中だしなぁ…

妥当なのは…"焔獅子"かな…

よしこれで行くか…

俺たちがいる地下の研究所の更に地下にある実験場みたいなところに焔獅子の量子化を解除する。

扇子の前に現れたのは炎のように赤い外装を纏った機械の獅子。

「「!?」」

俺以外のこの場にいる全員が驚きに身を包む。

扇子は既に戦闘態勢に写っており、両手で槍を持っている。

まあ、槍といっても正確には馬上槍だがな…

実験場の中央には焔獅子が扇子の動きを見て、動き始める。

扇子は地上より10mぐらい上に滞空しつつ、焔獅子の動きに対応しようとしている。

今回はテストでもあるので簡単な命令しか出していない。

『単調な攻撃は避けろ』

『隙があれば攻撃』

『距離が空いたら接近しろ』

この3つしか指定していない。

まあ、自律行動できるからそれ以外の動きは自己判断だがな…

実験上では現在進行形で扇子と焔獅子のテストが行われており、ロシアの奴らがモニタリングしている。

まあ、こっちも"高天原"で両方の状況を自動モニタリングしているので…

「くっそ、またまるゆかよ…大和出ないな…」

「「溶鉱炉を開くな!!!」」

またもや怒られた。

いいじゃねえか、暇なんだし…

 

 

 

 

そんなこんなでテストは終了。

扇子の才能は結構いいほうだと思うが、この程度じゃアリサちゃんには10年経っても届かない。

という訳で現状のISを更に改良して武装をガン詰めにしないと無理という結論に達しました。

「ふふふ。それで博士どうですか?」

「アリサちゃんの足元以下」

「………」

扇子は落ち込み。研究者たちは「まあ、そうなるな」って顔をしている。

というかこいつは自分がそんなに強いとでも思っていたのか?

人生はそんなに甘くはないぞ、扇子?

さて、落ち込んでる扇子はそのまま放置することにして、既に改造したISを更に改造するということだ。

ん?

改造後に更に改造…

これって、改二じゃね?

よし、ちょっとやる気出てきた。

取り敢えず、第二~第四艦隊を遠征に出して資材を貯めないと…

後はオリョクルだな…

「博士……」

ちっ、見つかったか…

仕方なくブラウザを閉じる。

立ち上がった扇子の目は闘志のようなものが感じ取れたがそれ以上に目尻に溜まった涙が印象的だった。

「泣くなよ」

「な、泣いてないもん!!」

その時、俺と扇子の間に割り込む影があった。

その影は扇子の前に立つと両手を広げて扇子の盾になるように自己主張してくる。

その目には恐れが篭っていたが、それ以上に俺に対しての敵意が篭っていた。

「お、お姉ちゃんを…い、イジメ、ないで…」

影はメガネっ娘だった。

最初の印象は姉の後ろに隠れている引っ込み思案な奴だと思ってたけどこれは印象を改める必要があるな。

「か、簪ちゃん!?ち、違うのよ!!」

「へぇ…面白い…

 更識簪か…その名前、覚えておこう」

「「なっ!?」」

俺の笑みを含んだ言葉に研究者達が驚愕の声を上げる。

俺は基本的に気に入った相手の名前しか呼ぶことはない。

それ故に俺が名前で読んでいる相手は数える程しかいない。

「馬鹿な!!」

「博士が…認めた…だと!?」

「なんてこったい!!」

「ランサーが死んだ!!」

「「この人でなし!!!」」

研究者達は混乱しているみたいなので放置。

メガネっ娘改め簪は未だに扇子の前に立って、簪☆バリアを展開中だが、その目には敵意がなかった。

代わりに困惑が追加されたが…

「え?」

「「まあ、そうなるな」」

簪の顔は疑問に彩られ、首を傾げた。

簪を除く全員でネタに走ったのは当然とも言える流れだ。

 

 

 

 

 

 

 

結局一日でできる仕事ではないので、泊まりになってしまった。

姉さんには既に伝えていたので良かったのだが、一夏に伝え忘れていたのを思い出したため急遽連絡したら怒られた。

これは俺が悪いのか?

「どう思うよダブ子」

「ん~、それは博士が悪いと思うよ~」

俺は現在更識家の一部屋で案内してきたまま居座っている明らかにサイズの合ってないお手伝いさんに聞く。

ダブ子曰く、同い年だそうだ。

ダブ子は部屋のほぼ中央にあるソファーに座り、ダブダブの袖から駄菓子を取り出して食べている。

まあ、監視なんだろうとは思っているし、俺でもそうするから特に気にしない。

やろうと思えば簡単にハッキングやらなんやらできるので問題はないし、こっちの情報は流れないようにプロテクトはしてある。

対暗部用暗部だっけ…

ようはスパイみたいなもんだよなー

007の日本版ってか、忍者集団みたいなもんだろう…

アイサツは重要だな…

そうだな、という訳で…

俺は『高天原』を起動してインストールしてあるプログラムを起動する。

イヤホンをしていなかったというよりも家に忘れていたせいで音が部屋の中に響き渡る。

「博士~、エロゲは一人の時にやってくれないかな~」

顔を若干赤らめたダブ子が俺に言う。

まあ、今回は俺が悪かった。

一旦プログラムを停止してエロゲの仮想ディスプレイを非表示にする。

残ったディスプレイは3つ。

一つ目は扇子のテストの時の各種データが映ったもの。

二つ目は焔獅子の損傷具合及び現段階でのデータが写ったもの。

最後が扇子が武道場みたいな場所で組手をしているもの。

一つ目と二つ目は放置して問題はないので最後のディスプレイに集中する。

別に道着が捲れてポロリしないか?とかの理由で見ているわけではない。断じてない。

アリサちゃんに勝たせるために…じゃなくて、五分間持たせるためにはこの体術?のサポートモーションでも入れないといざとなった時に危ないかもしれん。

というか動き複雑だな…

う~ん…よし、一通り覚えたし、今度オータムにやってやろう。こないだ俺の紅蓮を半壊にしてくれたし…

扇子の武装も整えないといけないし、輻射波動もさっさと完成させないといけないし…

いや、やっぱりハドロン砲を完成させるべきか?

「あ、お姉ちゃ~ん」

扇子の動きを見ながら熟考していると何時の間にかダブ子の姉が来ていた。

因みに姉の方はダブダブではなくちゃんとサイズはあっている。

「申し訳ありません、織斑博士。返事がなかったものですから勝手ながら失礼しています」

「ん。考え事してただけだからいい。

 それで?」

「はい。お嬢様がお呼びです」

ダブ子姉の言葉にまさかと思いさっきまで見ていたディスプレイを見るとカメラ目線の扇子が…

あ、これ怒られるやつだ…

うげっ、メンドクサイ…




E-1はクリアしたけど妖怪『一足りない』が続出したので資材が予想以上に削れた。
なんでもE-5は最終形態時に姫クラスが2体追加されるらしいですね。
予想以上に地獄です。
果たして作者は『天城』を手に入れられるのか!?


誤字脱字などありましたら報告よろしくお願いします


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ニートにはキツ過ぎますから!!!

とりあえずギャグ回…
え?E-5?諦めたよ…
資材がもうなくなったからね…
とりあえず遠征出しつつ捕鯨してきます。


ダブ子姉に付いて行くと案の定、武道場的なところに着いた。

扉を開けて中に入ると、ほぼ中央に扇子がいる。

そして壁を埋め尽くすようにむさ苦しいおっさん共。

簪や数少ない女性陣は一ヶ所に固まっている。

まあ、汗臭いもんな…

「なんか用か、扇子?」

俺の言葉にこの場のプレッシャーが強まる。

いや、俺ニュータイプじゃないからわからんけど…

「覗き見してるようだから誘ってみただけよ」

「ん、ああ…プロテクトが脆すぎたからな、ちょっと散歩してただけだぜ?」

俺は扇子の目の前までゆっくりと歩いていく。

壁共は俺の動きに注視しており一挙手一投足も見逃さないように目を開く。

そういえば、扇子たちはここのお嬢様だったな…

馬鹿にされりゃ、怒るのは当然か…

あ、でもこういう状況って更に煽りたくなるわ…

「悪いな、扇子。お稽古の邪魔しちまって…」

「……お稽古…?」

「ああ。お稽古だよ」

「買ってあげましょうか?」

予想通り乗ってきやがったな…

「いや、止めとくよ。妹ちゃんに睨まれたくないし…」

「………」

おお!かなりイラついている。

これはもうちょっとか?

「じゃあな。こっちは依頼のISで忙しいんだよ」

扇子に背を向けて元の部屋に戻ろうと歩を進める。

「待ちな!!」

釣れ……?

「ここまでお嬢を馬鹿にされて黙ってられるかってんだい!!」

釣ろうとはしてたけどさ…

なんで壁が連れたかなぁ…

お前じゃないって…

ほら、扇子の顔見ろよ、ポカーンとしてるじゃねえか…

「おい、やめろって!!」

となりの壁が止めようとするがこの壁は止まりそうにない。

という訳で積極的に煽っていこう。

「なんだ、雑魚か…」

突っかかってきた壁は顔を赤くして突っ込んでくる。

殴りかかってくる腕を掴み、その勢いを利用して頭から床に沈める。

さっきカメラで見た扇子の動きと同じように…

釣れたな…

「博士、手合わせをお願いしても?」

「高くつくぞ?」

周りは更に騒然とするように騒めく。

扇子は既に構えているので、俺はカメラで見た構えを取る。

「「なっ!?」」

壁共が驚きの声を上げるが、俺と扇子には届かない。

ダブ子姉の声と共にどちらからともなく肉迫する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

俺と扇子の練習試合(?)は引き分けで終わった。

というか、俺は病弱なのでフィジカルが弱い。……というか体力がない。

一方の扇子は体力的には余裕なものの、俺が途中から扇子と逆の動きをするものだから攻めあぐねたっぽい。

要は鏡に映した自分と戦っているみたいな感じか?

「あ~、……疲れた…

 もう、動けねえ…ニートにはキツいわ…」

「なにこれ?いつ私は鏡の中に入り込んだの?

 あれ?ここって異世界なのかしら?」

なんか、扇子は精神的に参っているみたいだし…

というか、扇子のこと心配してる場合じゃねえや…

汗で服がベタベタしてきんもちわるい…

「あっつい…」

取り敢えず服を脱ごう…

衆人環視?

有象無象がどれだけいようが俺に興味はない。

ベチャッという音と共に俺の汗を吸って重くなったシャツが床に落ちる。

「あの、ここで服を脱がな…え?」

簪が扇子の汗を吹きながら俺に注意をするが途中で止まってしまう。

周りの壁も一部は知っているようで顔を顰めていた。

「ん、ああ。

 "コレ"か?」

そう、俺の体の3割は既に元の肉体ではない。

IS技術で新規設計された義体だ。

とりあえず、簪からは同志のかほりがするのでちょっと遊んでみよう。

「昔、悪の組織に誘拐された時に…ちょっとな…」

「え、本当に!?」

なんか、すっげぇ食いついてきた!!

「それで?博士はその組織と戦っているの?

 変身はできるよね?必殺技は?変身はどうやってするの?

 サポートメカとかがあるの?後は勇気で補うんだよね?」

「ちょっと待て、近い!!後、押し倒すな!!」

この俺が見えなかった…だと…!?

てか、ネタやってる場合じゃねえや!!

いきなり飛びかかるように押し倒されたと思ったら、すぐそこに簪の顔があった。

というか、視線を少し下げると道着の下から除く胸元が…

もうちょっとで…

「それで、博士!!どうやって変身するの!?」

肩を掴んで揺らすなあああああああああああ!!!!

ここで俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井でもなかった件…」

気づいたら元の部屋にいた。

まあ、俺病弱だし仕方ないね…

「あ~、気づいたみたいだね~」

「ダブ子か…」

丁度部屋に入ってきたダブダブメイドが声をかけてきたのでそれに応えるように起き上がる。

シーツが落ちて俺の今の姿が顕になる。

「なんで俺全裸なんだよ?」

目を細めてダブ子を睨むが、ダブ子は顔を真っ赤にしてダブダブの袖で顔を隠していた。

あれ、なんか嫌な予感が…

「本音?博士は起きました…か…」

え、なんで姉まで来たし

「きゃあああああああああああああああああああ!?」

「「いや、博士が叫ぶの!?」」

いや、こうしとかないと俺が悪い流れだったし…

御陰で姉妹からツッコミが入ったけどシーツ拾って大事なトコは隠したから無問題。

「てか、俺の服剥ぎ取ったの誰よ?」

「簪お嬢様が…」

あー…

「変身のスイッチはどこ~っていろいろやってたよ~」

いろいろってどんなことしてたんですかねー

なんかテンション下がってきた…

「で、その馬鹿は?」

「自分のやったことに気づいて部屋に引きこもっておられます」

えー

これは部屋に行って煽ってやるべきか?

「部屋にはいかないでくださいね?」

くっ!?

ダブ子姉…こいつ、まさか!?

「エスパーじゃありませんよ?」

じゃあなんでわかるんだよ?

「コールドリーディングですよ」

ああ。なるほどね…

あ!!

この状況はあれをやらないと失礼だな…

せーの、コイツ、直接脳内に!?

「それはどちらかというと私のセリフですけどね…」

意外とノリがいいなこの姉妹…

いや、扇子が恐ろしくノリが悪いだけか?

「お嬢様は真面目な方ですよ」

「というより~、博士はいい加減に喋ろうよ~」

「お前らのせいで恥ずかしいんだよ、わかれよ!!」

いくら俺でも羞恥心ぐらいはあるからな!?

「そういや、扇子は?」

「お嬢様でしたら精神的に参ってましたので部屋でお休みになられています。」

姉妹揃ってダウンか…

「煽りに行っては行けませんよ?」

「はいはい…

 というか、着替えたいのでいい加減に出て行ってくれませんかね?」

「これは失礼いたしました。

 いくわよ本音」

「は~い」

やっと一人になれたがあの姉妹は俺の天敵かもしれんな…

いろんな意味で疲れた。

「はぁ…」

ディスプレイを非表示から切り替えて投影する。

そこにあるのは開発中のものだが、いまいち出来が悪かった。

「さて、時間逆行は理論的にも無理だし…どうするか…」

画面には藍色の双頭の蛇が今か今かと己の出番を待っている。

「時間停止なんてどうやればいいんだ?」

いや、待てよ…

一定範囲内ならばなんとか出来るか…

というか怒りの日以外からも自律思考型機動兵装を取り入れてみるか…

ロボ系作品は法律で制作が禁じられてるから能力系作品からだな…

いや待て…むしろ艦娘を人工知能で再現してみるか?

そしたらディスプレイを開いた瞬間、「提督、お帰りなさいっぽーい!!」とか出来るかもしれん!!

あーくっそ、時間が足りねー!!!

これはアレか?

刹那を完成させろって神の啓示か!?

はっ!!あえて言おう!!

神などいない!!

まあ、依頼されてるし、このISの方が先だわな…

まずはさっきの戦闘データを元に体術のサポートモーションを完成させてからの話だな。

はい、完成っと…

焔獅子の修復も終わったし、そろそろ固有武装でも取り付けるか…

えっと…確か炎と剣だったな…

ナノマシンで炎でも操作できるようにするか…




最後の方に伏線を出しつつ今回はここまで
いつになったら本編に入れるのか…
とりあえず更識姉妹にフラグを立てて、その次は一夏が受験会場でIS機動って感じで
ああ、前々から言っておりますが弾もIS学園に来ますので…

という訳で原作入り前に弾の魔改造します。


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お茶会のマナーとか知らねえから!!!

よし、やっとできた。
ちょっと無茶苦茶感があるけどいいんじゃないかな?

遅れた理由?
他のも書いてたのもあるけど、アレだな…
マークニヒトの戦闘シーンがかっこよすぎて悶えてたり芹ちゃん可愛い、ヤッターって悶えてたからかな?


あれから数日…

試行錯誤を重ねながらもISの改二は徐々にだが進んできていた。

だが、いかんせん決め手に欠ける…

「これで十分すぎる気がするのだけど…」

扇子は幾分かオツムが弱いのでアリサちゃんの強さを理解しきれていないようだ。

「無理だな。これでも1分逃げ回るので精一杯だ。

 もう少し何かヒントがあれば…」

だが、何がある?

できることは大体やった。ロシアの研究者も四徹させてそこらへんで寝てるから使えない。

既に額に落書きも施したので暇つぶしにもできない…

ダメだな…

行き詰まってきたし、気分転換でもするか…

研究用のディスプレイを全て非表示にして…

「博士、気分転換にエロゲをしないでください…」

あ、いたのか…

「他の気分転換はできないんですか?健全な方で」

「ないな」

「断言しないでください!!

 それなら、少し付き合ってもらえませんか?」

えー…

「露骨に嫌そうな顔しないでくれません!?」

「はぁ、仕方ないな…」

『高天原』をスリープモードへ移行して扇子と地下施設から出る。

「うっ…眩しい…」

「私が?」

「鏡でも貸してやろうか?」

「それは一体どういう意味なのかしら!?」

あー、ヒッキーには太陽の光がキツイ…

そして、扇子からの睨みつける攻撃がウザイ。

お前はポケモンなのかもしれんが俺は違うので聞きません。

「で?

 どこまで付き合えばいいんだ?」

「そうね、博士…ううん、四季くんは…って、何その顔!?私何かした!?」

なんだこの扇子は?いきなり馴れ馴れしくなりやがって…

「べっつにぃ…」

「うわ、今のはイラッとしたわ…」

「で?」

積極的に煽ってくスタイル。

「お茶会なんていかがかしら?」

ぐぬぬ顔してたのをいつもどおりの表情にして提案してきたのは扇子にしては割とマシな提案だった。

「ダブ子姉の入れ知恵か…」

「ダブ子姉?………………もしかして、虚ちゃんのこと?」

「いや、名前なんか知らんが?」

そもそもあの姉妹を筆頭に俺はここに来てから自己紹介すらされていないんだが…

「じゃあ、尚更よ!!ほら行きましょ!!」

ここに来てから一番の笑顔で俺の手を取り引っ張る。

更識刀奈だっけ…

覚えてみてもいいかもしれんが、保留だな。

こいつヘタレだし…

 

 

 

 

 

 

お茶会の会場は更識邸の中庭にあった。

「いや、お茶会って…洋風か…」

そう家が日本家屋なだけに…枯山水があるだけに和風だと思い込んでいた俺が悪いんだが…

「あ~、博士だ~」

まずはダブ子からの歓迎という名のタックル。

病弱な俺では受け止めきれずに押し倒される。

「こら、本音!!」

「ふえ?」

「重い…」

「あ~!!博士ひどいよ~」

「いいから、貴方は退きなさい」

なんでこんな目に…

やっぱり篭り続けているべきだったか…

「大丈夫、四季君?」

あれ、それ固定なのか扇子よ…

「ああ」

扇子が差し出してきた手を取り立ち上がる。

押し倒された時についた汚れを服を叩くことで払い落とす。

「帰りたい…」

本当に帰りたい。もう本当に切実に…

一夏のご飯が恋しい。姉さんの膝枕が恋しい。アリサちゃんの厳しくも優しい気遣いが恋しい。

え?プラマイゼロコンビは知らない。

そういや、束姉はどうしてるんだろう?

多分地中海らへんにいると思う。今までの勘で…

「冗談にしても笑えないわよ…」

苦笑する扇子になんか違和感…

一体何があった?

こないだまで高圧的ってほどではなかったにしろ女尊男卑の風潮に沿った性格だった気がする。

まあ、いいや…

そこまで興味ないし。

「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」

屋敷の方から小走り気味に簪が来た。

走ってくるかんざしと目が合うと、簪が笑顔になった。

え?なんで?

俺なんかしたっけ?

「博士!!」

あれ?お茶会はこっちじゃないぞ?

ダブ子姉の方に行きなさいな…

まあ、心当たりがないわけでもないんだよ…

アレは確か…扇子と組手していた次の日…

たまたま簪が地下にいる扇子の様子を見に来ていた時に俺の携帯に一夏から連絡が入ったんだ。

着信音をとあるアニソンにしていたせいか簪が猛烈に反応したのは携帯が鳴ったことよりもビックリした。

それ以来、俺がおふざけでいった悪の組織に改造された正義の味方というのは流石に嘘だとわかるだろうから、オタク仲間みたいに見られているようだ。

そのうち簪のお尻から尻尾が見えそうで怖い。

なんか、人懐っこい犬みたいに近寄ってきてるし…

「むぅ、私の簪ちゃんが…」

そんな悔しそうな顔してないで簪をそっちのお茶会の会場へ引っ張っていけよ…

まあ、ダブ子姉がお茶会の準備から簪の対処まで全てをこなしていたが…

 

 

 

 

 

 

「ん~、やっぱり虚ちゃんのお茶は格別ね!」

「ありがとうございます、お嬢様」

まあ、普通に美味いな…

一夏は炊事洗濯の家事全般をソツなくこなすが、こういう系はそこまで上手くないから普通に美味しい。

そして、ダブ子はお茶ではなくクッキーを自身の袖を汚して頬張り…

簪は時折こちらをチラチラ見てくる…

なにこれ?すごく帰りたいんだが…

なんかすごく気まずい…

そう思って、視線を自分が先程まで飲んでいたカップに移す。

半分ほどまで減ったダブ子姉が淹れてくれた紅茶が入っている。

お茶…液体…ん?液体…

液体か……ナノマシン入れて操作すれば面白そう…

あ、これでいいじゃん…

そうか…焔獅子と同じ感じでいいんだよ…

大気中の水分を操れるように設定して…ISの方にも水分生成させるようにすればいいのか…

「後は…あれをこうして……こっちの機能をあっちで代用させれば……」

「博士?」

簪の方から疑問の声が上がるが気にしてる暇はない。

今すぐ戻って続きだな…

ナノマシンの方は焔獅子の予備を使えばいいか…

「四季君…?」

はははははは。なんだ、簡単じゃないか…

「見つけた…」

「へ?」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!

 刀奈!!お前の名前覚えておいてやる」

簡単すぎて草が生える勢いのまま研究室に戻りISを完成させる為に歩みを進める。

ここに来て一番の上機嫌かもしれない。

 

 

 

 

「名前で呼ばれた…」

四季が去った後のお茶会は有耶無耶になったものの刀奈は自室で悶えていた。

「名前で呼ばれちゃった…」

刀奈が思い出すのは先ほどの光景、IS開発の親の一人とも言われている年下の少年。

どんな人かと思っていたけど、根は素直だった。

部下からの報告と初対面での言動は酷かったが何故か憎めなかった。

ISを開発して貰う為?

確かにそれもあった。けどどこかで彼を憎めなかった。

一目惚れ?

わからない。自慢ではないが私は恋を知らないので文字通りわからないのだ。

この気持ちが恋なのか、それとも別の感情なのか…

ただ単に名前を読んでくれて嬉しかっただけなのか、私にはわからない。

「ふふっ…」

ただ、自然と笑みを作ってしまう。

この感情を忘れたくない。自然とそう思っている自分がいる。

だが、私は次期楯無となる存在だ。この感情が邪魔にならないことを祈ろう…

 

 

 

 

 

 

 

ISの完全改装が完了したのはお茶会から3日後のことだった。

ロシアから来日した研究者達は全員が老若男女関係なく目の下にものすごいクマを作ってISの起動を見守っていた。

睡魔が集団で襲ってくる幻覚を見つつ、ソレを気力で叩き潰し自分が関わったISの結果を見守る。まさに研究者の鏡と言えるだろう。

中央に鎮座するのは正しく"水"。

ISスーツに身を包んだ刀奈はその"水"を凝視していた。

別に水で濡れているわけではなく、表現するとしたら水になる。ただそれだけだ。

まだ初期設定すら終わっていない、穢れ無き機体()に刀奈はただ一言、美しいと漏らした。

機体の傍らには四季が最終チェックを行っていた。

「何してる、早く乗れ」

訂正、既に終わっているようだ。

刀奈はISに体を委ねて目を瞑る。

ISの装甲が刀奈にあわせて閉じていく。

刀奈が目を開くとハイパーセンサーが起動し、360°の視界を手に入れた気分になる。

目の前に展開された仮想ディスプレイにはフォーマットとフィッティングの残り時間が記されている。

だが、その時間は3分もなく、3分後には初期稼働テストが開始されるだろう。

隣にいる四季を見ると、ISが刀奈の思いに反応したのか彼の顔が大画面にそれも視界全体に映し出される。

「っ!!」

いきなりのことに声を上げそうになるがソレを堪え平静を保つように心懸ける。

「どうした?」

声を掛けてきたのは四季だった。

なんで?、と思ったがフォーマットとフィッティングのモニタリングをしているのだから心拍数が上がったのに気づいたのだろうと勝手に解釈する。

実際その通りにいきなり上がった心拍数に四季は疑問を抱いていた。

ISは宇宙用のマルチパワードスーツだが、先ず初めにこの"インフィニット・ストラトス"という技術は完成していないのだ。

それもそのはず。IS開発の親である篠ノ之束が四季と共に行方を眩ませたからだ。

研究者達には最低限の知識しか与えておらず、しかもコア周りに関しては束と四季を除いて理解できるものはいなかったのだ。

故に、コアを複製することは叶わなかった。

丁度500個あったコアも無理して分解し、研究したために使い物にならなくなった。その数33個。

まあ要するに、未完成のものを人体に試す以上、不調が出る場合もある。

実際件数は少ないものの"IS搭乗恐怖症"という病気すら存在している。

開発者である四季はその責任を負わなければならない。

そして、可能な限りその症例を抑える努力もだ。

「なんでもないの!"IS病"の方じゃないから…」

刀奈の"IS病"という言葉に四季は一瞬眉を潜め訝しむもモニタリングに集中するため追求はしなかった。

ただ、四季のモニタリングしている仮想ディスプレイが2つほど増えただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

フォーマットとフィッティング、及び一次移行の完了後刀奈のISが初めてその身を宙に浮く。

初期稼働テストも問題なく終了し今現在は訓練用バルーンを使用した武装テストだ。

初期武装として、ガトリングガンを4門内蔵した馬上槍"蒼流旋"、高圧水流を発する蛇腹剣"ラスティー・ネイル"。

そしてナノマシンの制御と水分生成を司る"アクア・クリスタル"主にこの3つだが、組み合わせればどんな距離でも対応できるだろう。

普通に水蒸気爆弾作れるしな、この機体…

武装テストも終了し、刀奈が機体から降りて小走り気味に俺に近づいてくる。

「終わったな。特に問題点は無し。アリサちゃんに勝てるかどうかはお前次第だ」

俺の言葉に刀奈は表情を引き締めて力強く返事をする。

「ええ!!そういえば、この子の名前って…」

名前?ああ、そういえばつけてなかったな…

そうだな…

「ミステリアス・レイディ…霧纏いの淑女ってところか…」

「ミステリアス・レイディ…」

俺が付けた名前を反芻するように呟いてから刀奈は笑顔で頷いた。

「うん。いい名前ね」

よし、仕事終わりだ。

これで家に帰れるぜい!!

あ、アリサちゃんにも報告しておかないと…

「そういえば、ロシア語じゃないのね…」

「すまねえ、ロシア語はさっぱりなんだ…」




次回でアリサちゃんvs刀奈事件
その次に一夏誘拐事件
その次に鈴ちゃんお引越し事件
その次に一夏&弾のIS起動事件
その次に五反田家誘拐事件
と、いつになったら原作に入れるやら状態。
ところどころに日常回を挟むのであと軽く10話は掛かるんじゃないかなって予想している。
え?ネタバレすんな?
この程度で何言ってるんだ?←マテ


次回!!アリサちゃんの下乳型ISスーツ!!エロいよ!!


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ロシアは寒すぎだから!!!

よし、できたぞ。
結構早めに出来上がった気がする。

これはアレか?
パソコンの壁紙を黄昏の女神にしたからか?

マリィ効果すげえ…


ミステリアス・レイディ開発から1月程たったある日、俺はロシアにいた。

いや、俺にもよくわかんないんだよ…

アリサちゃんがいきなり来たと思ったら、

「一週間程、預かりますね。ほら、四季行きますよ?」

とか言って問答無用でロシアに連れてこられた。

アリサちゃんのことは嫌いじゃないけど、こうゆうところは好きくない。

まあ、連れてこられた理由はなんとなくわかるんだけどね…

国賓で迎えられた時にはビビったけど…

思わずリーゼを起動しそうになったぐらいに…

まあ、連れてこられてきてから数日も経つと流石に慣れた。訳もなく…

3日程寝込んだ。熱が出たんだよ…

ほら、俺って病弱だからね!!仕方ないね。

熱が下がったらすることといったら、勿論観光だよ。

ただ寒かった記憶しかないけど…

覚えてるのはクレムリン広場に言って疲れたのと、ダイビングして響、じゃなくてデカブリストだったかあれを見に行ったぐらいか?

3日前には刀奈も来ていたし、今日明日あたりにやるんだろうな…

アリサちゃんの機体の血の復讐者(メスティーツェン・クローフィ)も万全状態らしいし…

まあいいや、今日はもう寝てしまおう。

国賓だからなのかこのベッド超フカフカなんだよな…

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の予想通り翌日に行われた。

現ロシアの国家代表《アリサ・イリニーチナ・アミエーラ》…

彼女は近々国家代表を辞めることを宣言しており挑戦者を募っていた。

既にロシアの代表候補生は全員が敗退。

後は数少ない自由国籍権を持つ者だけ…

これで居なければロシアの代表候補生でトーナメント戦を行うだけなのだが、どうもそれはやりたくないらしい。

まあ、考えてみればわかることだ。

現世界最強の我が姉、織斑千冬に一番近いのがアリサちゃんだ。

彼女に認められないということはモンドグロッソで優勝はできないということだ。

勝負は簡単なこと。

アリサちゃんとの真剣勝負に5分持てばいいだけ。

アリサちゃんは五分間本気の全力で攻めてくる。

ソレを防ぎ、躱し、逃げ切れば勝ち。

できなければ負け。

ただそれだけの簡単なこと…

なのに未だに誰もできていない。

代表候補生で一番の有望株だった者は開始直後に堕とされて戦意喪失。僅か6秒だったらしい。

一番持ったのは2分46秒。

回避に徹してこれだ。

だが、刀奈は一矢報いるつもりらしい。

だから俺は言ってやったんだ…

「遺書は書いたか?」

「私、死ぬの!?」

相変わらず認識不足だな…

姉さんと同等なんだぞ、あらゆる意味で…

生身でIS装備の相手に勝つんだぞ?

俺は悟ったね…

この人には一生勝てない…

まあ、結果は火を見るより明らかだが未来は誰にもわからない。

俺の眼前で繰り広げられる光景に期待しておこう。

これで刀奈が負けたら俺は何を言われるかたまったもんじゃない…

ロシアで一番の大きさのIS用演習場、この周囲には被害が出ることを予想して周囲十数kmには建物一つない。

その為、荒野にポツンと建つ風車小屋みたいなもんだ。

例えがわからない?

わからなくていいって…

要はアリサちゃんが規格外ってことだ。

ロシア語のアナウンスが流れてアリサちゃんがメスティーツェン・クローフィを、刀奈がミステリアス・レイディを展開してフィールドに出てくる。

メスティーツェン・クローフィ…

ロシアの第2世代型IS。赤と黒のツートンカラーで装備は2丁の銃剣(ガンブレード)

問題なのは大きさだ。2mを超える大型の銃剣。

その為、各関節部には新型アクチュエーターを通常の3倍使用されている。

まあ、新型アクチュエーターを作ったのは俺なんだが…

右の黒い銃剣がレイジングロア、左の赤い銃剣がアヴェンジャーという名だ。

両方に共通しているのはガトリングガンの下に片刃剣が付いているところだが、レイジングロアはガトリングが、アヴェンジャーは片刃剣が大型化されているところだろう。

更に、本体は装甲を最低限しか持っていなく、脚部、背部にスラスターがこれでもかと張り付いている。

要は低装甲・高機動・重武装というISだ。

因みに姉さんは、低装甲・高機動・刀オンリーだ。

ロシア語で再びアナウンスがされる。

10秒後にブザーが鳴り響き、戦闘が開始された。

 

 

 

 

 

 

ブザーがなった瞬間に両者が同時に動いた。

アリサはスラスターに火を吹かせて眼前の刀奈へと最高速で突っ込み、左手に握ったアヴェンジャーを遠心力を利用して振るう。

対する刀奈は全力で後ろに後退すると共に、アクア・クリスタルから水の防護膜を何重にも重ねて右から迫り来る赤い大剣から身を守る。

だが、いくらナノマシンを用いた水の膜であろうとアリサの振るうアヴェンジャーの前には紙に等しいかのごとく無残に切り裂かれる。

アリサは水の膜の向こうにいる刀奈に向けてアヴェンジャーの引き金を引く。

刀身の上に付いているガトリングガンから大量の弾丸が水の膜を越えて吐き出される。

水の膜が霧散した。

アリサの弾丸はアリサには当たらなかった。

避けたのか?否。

「ダミーですか…」

人型の水がアリサが放った弾丸を全て飲み込んだ状態で刀奈のいた場所に鎮座していた。

アリサは何かに気付いたように全力で後退した。

先程までアリサがいた場所が突然爆発したのだ。

アリサは爆風に煽られながらも上空に佇んでいる刀奈を睨む。

次にアリサがしたのは、睨むでもなく罵るでもなく、笑顔を向けることだった。

「っ!?」

刀奈はアリサの笑顔に恐怖し、体を震わせる。

その一瞬の隙をついてアリサの左手のレイジングロアから鉛玉が刀奈に向けて放たれる。

刀奈は余裕で回避できる攻撃に違和感を感じつつもスラスターに火を入れて後方に下がるように避ける。

その行動はアリサ相手には悪手だった。

刀奈は自分の後ろに何がいるかも知らずに後退し、一瞬遅れて全力で真下にブーストをかける。

一瞬後に先程まで刀奈の首があった場所を血のように赤い大剣が通り過ぎていった。

刀奈は冷や汗を流しつつ、アリサを探す。

見つけた。刀奈が先程アリサに笑顔を叩きつけられた場所にだ。

今度はアリサが笑顔で刀奈を見下ろしていた。

「一筋縄じゃ行かないわよね、やっぱり…」

刀奈は自分が挑んでいる相手の人外度を再認識しつつ呟く。

アリサから目を離したら次こそ終わる。

そう、頭の中に叩き込んでから蒼流旋を握り締め、攻勢に出る。

アリサは真下にいる挑戦者に残念に思いつつも期待していた。

機体の性能ではアリサが格段に不利だが、こちらには余りあるほどの経験がある。

逆に刀奈は機体性能が有利でも、圧倒的なまでの経験不足を感じていた。

蒼流旋に仕込まれた4門のガトリングガンがアリサを狙うもののアヴェンジャーを盾にするように防ぎ、レイジングロアを薙ぐように振るう。

ただそれだけの行動にアリサに対して恐怖を抱いてしまった刀奈はレイジングロアを避けるように動いてしまい、蒼流旋の射線からアリサが消えてしまう。

すかさずアリサは盾の役割を終えたアヴェンジャーを下から救うように薙ぐ。

刀奈はその場で宙返りをするように回転してアヴェンジャーを躱す。

だが、それはアリサに対して背中を向けるような行為だった。

その隙を逃すはずもなく刀に向けて斬撃を繰り出す。

「ちっ!!」

手応えがなかった。またダミーを攻撃したのだとアリサは悟った。

だが、いつ入れ替わったのか?そこがアリサにはわからなかった。

あり得るとすればアヴェンジャーを盾にして銃撃を防いだ時か?

それとも最初からダミーと戦っていたのか?

アリサが切り裂いた水分身は霧状に霧散し消える。

ふとアリサは最初の水分身を倒した位置を視界に収める。

自分が撃った銃弾しかなかった。

アリサは直ぐにその場を離れた。

地面に降り立つとその場で回るように銃撃を放つ。

アヴェンジャーを右に、レイジングロアを左に突き出し独楽のように回りだす。腕を徐々に上げて真上に上げた時、両手の銃剣を交差させた。

金属のぶつかり合う音が聞こえ、アリサが真上を見ると丁度刀奈が蒼流旋を振り下ろしてきた。

先程とは段違いのカナキリ音が演習場に響いた。

刀奈が振り下ろした蒼流旋はドリルのように水が動いていた。

四季の考案した特殊ナノマシンによって高周波振動しているからだ。

上の銃剣のレイジングロアの刀身には罅が入ってきていた。

メンテナンス不足というわけでも寿命が来ていたわけでもない。

第2世代型の装備は現在でも最強クラスだ。

だが、第3世代型の固有武装はその上を行く。ただ、それだけだった。

要は機体性能の差がここに来て現れただけなのだ。

アリサは表情一つ変えずにその場でスラスターを点火した。

「なっ!?」

通常の第2世代型なら抜け出すこともできなかっただろうが、アリサの機体は専用機だ。

無論、刀奈のミステリアス・レイディとて専用機だが、踏んできた場数、経験の差がここに出た。

刀奈は機体性能で、武装を破壊しての無力化を図り…

アリサは経験の差で叩き潰す。

両者は拮抗しているように見えるが、実際はアリサが有利だった。

レイジングロアの刀身には罅が入り、刀奈に翻弄されているように見えるが実は違う。

刀奈は内心いっぱいいっぱいだった。

それもそのはず、こないだ中学を卒業したばかりの少女が現役の国家代表に挑んでいるのだ。

緊張もすれば震えもする。

いくら、昔から実家の闇の部分を見てきたとは言っても少女であることに変わりはない。

刀奈は気付いていた。

アリサが未だ本気を出さずに様子見に徹していることに。

その事実が更に刀奈を焦らせる。

アリサにとっては手加減をしているつもりはなかった。

昔から本気で相手をすると簡単に勝ってしまう。

だから、必然と相手の力量に合わせて力をセーブしてしまうのだ。

今までに本気を出せたのは千冬と束だけだった。

だが、今回は少しばかり本気で言ってもいいのかもしれないとも思っていた。

そして、両者が共に負けられない理由もあった。

《"彼"が見ている前で無様な姿は見せられない。》

アリサの場合は刀奈に勝ってもらいたい気持ちと相反して少々複雑なのだが、それでも負けたくはない。

刀奈はISを改造してもらっている。きちんと対価は払っているものの負けるのは忍びない。

故に、アリサはスラスターを全開にして飛び上がる。

刀奈はそれに負けじと蒼流旋で押さえ込む。

アリサは一瞬だけレイジングロアを上にずらし、自由になったアヴェンジャーを真横に振るう。

刀奈は水の膜を何重にも張り巡らすがアヴェンジャーの斬撃はその速度を落とすことなく刀奈の脇腹に吸い込まれるように叩き込まれた。

アリサの斬撃で刀奈は壁際まで吹き飛ばされる。

刀奈の肺から空気がごっそりと出ていく。

絶対防御の御陰で死ぬことはないが、衝撃は搭乗者にそのままくる。

多少は緩和されているものの、先程の斬撃は刀奈の動きを縛るには十分すぎるほどだった。

刀奈は自分の体に動くように命令を出すもまるで他人の体のように動いてくれず、アリサの接近を許してしまう。

蒼流旋は奇跡的にも離さなかったので未だに右手で握りしめていた。

辛うじて動けるようになってきた体に無理を言わせてすぐ傍まで来ていたアリサに蒼流旋に鋒を向ける。

だが、アリサは既にアヴェンジャーを振りかぶっていた。

刀奈は蒼流旋で防ごうとするも体がゆうことを聞かず、水の膜を貼ろうにも遅かった。

刀奈に当たる直前でブザーがなった。

5分が経過した合図だ。

アリサは分かっていたのか、直ぐに両手の銃剣を量子化して刀奈を抱き抱える。

お姫様抱っこだ。

刀奈は限界が来ていたのか抱き抱えられてすぐに気を失ってしまっていた。

「お疲れ様です。更識刀奈さん」

アリサは穏やかな笑みで刀奈に微笑んでいた。




次回は鈴ちゃんの引越しシーンをキング・クリムゾンして一夏誘拐事件だと思う。

という訳で鈴ちゃんは四季くんのフラグを立ててしまいましたとさ…
鈴「ファッ!?」


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こんな感情しらねぇから!!!

前回モンドグロッソと言ったな、アレは嘘だ。


刀奈vsアリサちゃんの勝負は結果的に言えば刀奈の勝ちだ。

ただ、刀奈はその事実が気に入らないらしく医務室で目覚めてから帰国するまでずっと不貞腐れていた。

まぁ、放置したけど。

アリサちゃんはやっと肩の荷が下りたといった具合に清々しい笑顔だった。

ただ、今年いっぱいはロシア代表なのだがモンドグロッソ終了と同時に刀奈に看板を移譲するらしい。

そして俺は今何をしているかというと…

「それでね…一夏がさ…」

「いやな、鈴…一夏が超がつくほどの朴念仁なのはとっくの昔にわかってたことだろ?」

「そ、そうだけどさ…」

プラマイゼロコンビに拉致られて『織斑一夏攻略会議(命名:小さい方)』に強制参加させられている。

ぶっちゃけどうでもいい。

まあ、二人の奢りだから腹が膨れるまで注文するけどね。

「あ、すいません。鶏皮のグリル3人前追加で」

「はい、ありがとうございます!!」

「「ちょっ!?食い過ぎ!!」」

うるせえな…

「てゆうか、あんたも意見出しなさいよね!!」

「あ?姉さん並みのプロポーションになってから出直してこい」

「うわー、バッサリいったな…」

出せというから出した俺の意見(現実)に打ちのめされてテーブルに突っ伏している。

駅前に呼び出されたと思ったら、いきなりファミレスまで連れ込まれて、「奢るから相談に乗って欲しい」と言われたので乗ってやったらこれだ。

「だ、大丈夫よ…せ、成長期だし…」

「人間の体型は大体15歳で止まるから、身長体重は変われてもプロポーションは殆ど変わらんぞ?」

「え…嘘でしょ?」

ミニマムの顔が絶望色に染まる。

「お待たせしました、鶏皮のグリル3人前になります」

店員から料理を受け取り、一人でちびちびと食べる。

やっぱり鶏肉と言ったら皮だな。

セセリも捨てがたいが俺は皮派だ。

焼き鳥なら皮とネギマ以外は食べないぐらいの皮派だ。

「うわー、会計五千超えたし…」

ノッポはレシート見て財布確認して忙しそうだ。

同情の意味も込めて千円置いていってあげようか…

わぁ、俺やっさしー

にしても皮うめえ…

「ほ、他に方法はないの!?」

「薬物とか?」

「止めろ!!」

立ち直ったミニマムに第2案を提示するとノッポからストップがかかった。

まあ、ないだろうな…

薬で記憶消してミニマムの都合のいいように記憶を作り変えるとかできるけど、俺が弟を生贄にすることは有り得ない。今は。

後は媚薬使って既成事実を作って責任取らせるぐらいか…

あ、皮少なくなってきた…

追加注文するか…

「あ、すいません。鶏皮のグリル3人前追加で」

「「ちょっ!?おまっ!?」」

通りかかった店員に追加注文すると二人からツッコミがくるが、対価はキチンと搾り取る。

「注文されたくなければさっさと話を終わらせるしかないぞ?」

俺が残り少ない皮を味わいながら二人に言うと両者は頷いて早めに終わらせようと決意したように真剣に話し出す。

そして、ミニマムが語りだす一夏との出会いにどこでどのように惚れたのか…

時折ノッポが補足を入れたりしているのは何度も語られ協力させられたからだろう。

話してる時のミニマムの顔は輝いていた。とても綺麗だった。

今まで恋をした女の顔は何度も見てきたつもりだったが、今のミニマムの顔に比べれば月と鼈だろう。

不覚にも…その顔に見惚れていた。

追加で来た皮に手をつけずにその顔を見ていた。

この気持ちがなんなのかは多分気付いているが、意図的に無視して皮を頬張る。

味がしない…

 

 

 

 

 

 

話が終わった時点でファミレスを後にして、住宅街にある人気のない公園へ移動する。

「ようは、プロポーズしないと無理だ」

「えっ!?」

「まあ、そんぐらいしないと気づかんわな…」

俺の一夏攻略法は簡単だ。ド直球に行く。ただそれだけだ。

というか、これで無理なら既成事実作るしかないんだよな…

そして、あの愚弟(超絶鈍感)は超シスコンなので姉さん並みのスタイルじゃないと無理ゲーだと思う。

つまりはこれでダメなら背水の陣しかないのだ。

ただ、よくあるテンプレゼリフではあの馬鹿も冗談と受け取りかねないのでオリジナリティー溢れるプロポーズを考えねばならない。

「オリジナリティー…ねぇ…」

「要はお前の得意なものでメロさせろってことだよ、凰鈴音…」

「し、四季が鈴の名前を!?」

まあ、無視しきれなくなった結果だな…

まさかこんなことになるとはな…

自分でも信じられないわ。気付けば鈴の姿を目で追っていることに気付くが、止めようとも思わない。

だが、鈴が好きなのは一夏であって俺ではない。

奪うこと自体は簡単だ。朝飯前というよりも起床前だ。

だが、それは鈴の幸せを奪うことに繋がるだろう。

それは望むところじゃない。寧ろ、笑ってくれないと困るぐらいだ。

なら、俺がすることは鈴と一夏をくっつける事であってわざとフラれさせて慰めがてら合体することじゃない。

「四季…なんで…」

「自分の頭で考えろよ。その頭は飾りか?」

「お前……」

ノッポが意味深に呟いたが知らん。

今は鈴に言葉責めをすることで精一杯だから無視だ。

明日から新学期というよりも2年生だからな…

それにもうじきモンドグロッソだから姉さんは最近家に帰ってこないしアリサちゃんもこれが最後だからとロシアに行ったきりだ。

今年の開催国はドイツだったな…

観光できる場所なんてあったか、あそこ?

ドイツなんてジャガイモとビールとソーセージってイメージしかないんだよな。

偉人で言えば、"空の魔王"と"黄金の獣"と"水銀の蛇"ぐらいか?

アレ、水銀の蛇は違ったか?まあ、いいや。

鈴の告白が成功することを祈るだけだし、こっから先は俺に手伝えることはないだろう。

相談が終わると鈴は告白のセリフを考えるために速攻で家に帰っていった。

「なぁ、四季…」

「なんだ?」

「………好きなのか?」

「黙れ。お前には関係ない」

「…………そっか…」

ノッポはそれ以上は口を開かず俺の方を振り返ることもなく帰っていった。

俺は一人残された公園でブランコに座りながら自分の気持ちについて考えてみることにした。

俺の体重が乗っかったせいで、金属の擦れる音がキィキィと辺りに響く。

はっきりと言ってこの感情は面倒だった。鈴を応援すると決めてからキリキリと痛み出す。

面倒だ。めんどくさくてメンドクサイ。おまけにも一つメンドクサイ。

恋をしている女は輝く。誰が言ったかは知らないが実に的を射ている。

「束姉…あんたには悪いけどこの世界もあまり捨てたもんじゃないかもしれん…」

どうせこの言葉も聞いてるんだろうな…

あの人のことだから俺のことも切り捨てるんだろうけど、それならそれで俺はあの人に勝って従わせるだけだ。

まあ、敵にしたくないんだけどな…

今のこの世界は篠ノ之束の掌の上で転がされているようなものだ。

ISは本来宇宙用のマルチパワードフォームスーツ。要は宇宙へ飛び立つための翼だ。

だが、この世界はISを兵器としてしか見ていない。

現に各国政府はISの宇宙利用への研究は微塵もしていない。

戦争の道具としてしか見ていない。

この現状が束姉にはとても面白くないようだ。俺だってそうだ。

ISのコアには人間にとっての感情のようなものがある。本来の使い方をされず、人殺しの道具にされている。

その現状を俺も束姉も非常に宜しく思っていない。

だから俺は束姉が失踪する時についていった。白騎士事件のせいでこうなったのも確かにあるのだろうが、それだけで宇宙に行くのを諦めるわけがない。

まあ、つまりは束姉と俺にとってのコアっていうのは自分の子供みたいな側面もあるわけで…

各国の首脳陣にミサイルでもお見舞いしてやろうかってぐらいにイラついているわけだ。

「この考えを貴様等に言っても無駄なんだよなぁ…」

そう、俺の前にいる黒服共に向けるが返事は勿論帰ってこない。

今度はどこの馬鹿共だ?

以前からこういう事は起こっていた。姉さんとアリサちゃんは確実に気づいているだろうが特に何も言ってこなかった。

自分で対処できるだろうということなのだろうかはわからないが、信じてくれているのだろう。

つまり俺はその想いに答えるだけだ。

帰って対空兵器破壊ミッションをやらなければいけないし…

まあ、人間相手だし"紅蜘蛛"で十分だな。

量子化を解除して出てくるのは機械仕掛けの紅い大蜘蛛だ。

ISの装備として開発しているので大きさは人間にとってはでかいの一言に尽きる。

IS装備の人間と同等のサイズなので黒服達は"紅蜘蛛"を見上げる。

その顔はサングラスで分かりづらいが、多分恐怖しているんだろう。

一歩一歩徐々にだが後退していっている。

このままどっか行ってくれたらこっちも楽で助かるんだがな…

だが、黒服は行ってくれなかった。

懐から拳銃を取り出し俺に向けて撃つ。

確かにこの"紅蜘蛛"を操っているのは俺で俺をどうにかするのはいい判断だが、無駄だ。

銃弾は俺に中る前に"紅蜘蛛"の足に阻まれ、撃った黒服は"紅蜘蛛"の脚部に搭載された銃口から射出されたトリモチで体の自由を奪われその場で転倒してしまう。

これで一人脱落。

一人が脱落したことで黒服は俺を狙わなくなったが帰ってくれるわけでもなく膠着状態に陥る。

「はぁ…仕方ない」

携帯を取り出しある番号にかける。どうせあいつの差し金だろうしさっさと帰って貰おう。

『あら、貴方から掛けてくるなんて、珍しいこともあるのね』

「冗談に付き合うつもりはない。単刀直入に聞くが、なんのつもりだ?」

『ふふふ。今度会えないと思うのでその代わりよ?』

「モンドグロッソにまでちょっかい掛けるつもりか?」

『さあ?取り敢えず挨拶がわりですからもう下げておきますよ。ではまたいずれ、織斑博士』

「ああ。次に会ったときは覚悟しておけ、スコール・ミューゼル」

通話の途切れた携帯をしまうと黒服達は既に去った後だった。

"紅蜘蛛"によって固定された男は放置されていたが、使い捨てているところを見ると大して情報も持っていなさそうだ。

一応刀奈に連絡して尋問でもしてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中で通話の途切れた携帯端末を手にした人影がいた。

「ふふふ。楽しみだわ。」

手に持った端末の電源を切り、彼女は部屋の隅に設置されているダブルサイズのベッドまでゆっくりと歩んでいく。

既にベッドには人影があった。

彼女は構わずにベッドに入り既にいた人影と重なり合った。

「本当に楽しみね。ねえ、あなたもそう思わない?オータム?」

人影から返事がすることはなかった。その代わりに嬌声が部屋中に響き渡る。

第2回モンドグロッソ…

そこで、幾多の運命が交錯するとは、この時知る者は誰もいない。




使い捨ての黒服が相手ならシュピさんで十分対応できる。
IS使うとかめんどいし、今はまだ人前で使うわけにもいかないからね。
という訳で次回は本当にモンドグロッソだけど、ただの誘拐事件。
そして、面倒なことに同時に発動。
まあ、詳しくは次回。


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誘拐とか犯罪だから!!!

タイトルオチ。
何故かシリアス調だったはずなのにどうしてこうなった…


黒服に絡まれてから一ヶ月が経過するかしないかという4月の終わり頃。俺と一夏は学校を休んでドイツまで来ていた。

まあ、GWだし大丈夫だろう。理由は勿論姉さんの応援。

鈴とノッポには土産を買って来いと言われたので其処らへんの石ころでも拾っておいてやろう。

現在のドイツは世界中からモンドグロッソ観戦の旅行客でいっぱいいっぱいになっている。

今この時は人口密度が世界一になっていること間違いなしだ。

というよりも俺が行くことをどこで嗅ぎつけたのか知らないが、こないだのロシアと同じく国賓待遇でホテルまで連れて行かれた。

勿論一夏も一緒だ。

というよりも一緒じゃないとコアを停止させるところだったが、その心配はいらないようだった。

一夏に簡単なドイツ語講座を教え終えてモンドグロッソの会場に来たが、人口が密集しすぎて気持ち悪い。

一夏は姉さんの控え室へ行き、俺はアリサちゃんんぽ控え室へ行くため道を別れた。

というよりも丁度反対側らしい。何の因果だ?

3回のノックをした後に部屋に入るとアリサちゃんは瞑想していた。

俺が入ってきたことで中断して目を開き、俺を軽く睨む。

「決勝で姉さんと決着だって?」

「ええ。それで?敵情視察ですか?」

「まさか。教えてくれるわけでもないだろうに、よく言うよ」

「勿論です。それで?」

「"ヤツラ"が動いてるらしいから気をつけて」

俺の言葉にアリサちゃんは目を細めて話の続きを促す。

「理由はあんまりわかってないけどどうやら動いてる部隊が複数あるんだ。一応警戒はしておいて」

「そうですか。まあ、邪魔するなら誰であろうと潰すだけです」

アリサちゃんはそう言って瞑想に戻る。これ以上ここにいても邪魔になるだけなので潰されないうちに退散する。

にしてもおかしい…

一つは予定通りに行動に移す本命だとしても、揺動の数がおかしい。多すぎる。

しかも不規則に動きすぎている部隊がある。なんのつもりだ?

取り敢えず補足だけでもしておくか…

何故かは知らんがコアの反応までありやがる…

嫌な予感がする。何も起きない訳は無いが身内が巻き込まれないでいればいいんだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の部は無事に終わり、残すところは準決勝第2試合と決勝のみ。

準決勝第1試合は日本vsアメリカ。第2試合はロシアvsドイツという訳ありな対決になった。

第1試合は予想通りに姉さんの勝利で終わった。

そして、第2試合ももう間もなく始まる。ドイツの代表は漆黒の第2世代型ISで近距離防御型のスタイルのようだ。

にしてもドイツは黒いの好きだな…

特殊部隊の制服も黒一色だったな…

試合が開始されようとした時に二つの出来事が起こった。

一つ目は監視していた不規則な動きをしていた部隊の反応がロストしたこと。

もう一つは一夏が誘拐されたという刀奈からの連絡だった。

迷った。いや、迷ってしまった。

俺は一夏の兄であるはずなのに一瞬とはいえ迷ってしまった。

自己嫌悪に入りかけた思考を振り払って一目散に姉さんの控え室へと走る。

ドアを開くと鬼神のような表情の姉さんがそこにいた。

スタッフの全員が部屋の隅で突如入ってきた俺に助けの視線を向けて来るが知らん。

俺は構わずに姉さんに声をかける。

「どうする気?」

俺のこの行動にスタッフの全員が目を見開く。

あるものは尊敬の眼差しで、また、あるものは同情の視線で。

「助けに行くに決まっているだろう?」

姉さんの心は既に決まっていた。なのに俺は迷ってしまった。

家族の危機であるはずのこの状況で俺は迷ってしまった。

自己嫌悪していることに気づき、思考を切り替える。

「場所を割り出す。5分待って」

「急げよ」

ディスプレイを複数起動して、会場のシステムを掌握する。

案の定"ヤツラ"が動いていたがそんなことはどうでもいい。

一夏の場所を割り出すために隅々まで目を光らせると、ドイツの軍人が入室してくる。

そいつが言うには一夏の場所へ案内するということだった。

一応こっちでも見つけたが既にドイツ軍が包囲していた。

おかしい、いくらなんでも速すぎる…

そういうことなのか?

だが、ロシアに勝っていないこの状況で?一部の強行?

ダメだ。どの理由もそれっぽくはあるが憶測の域を出ない。

まあ、一夏が助かるならそれでいい。

自分が見つけれなかったことを悔やむよりも無事に救出されることを優先しろ!

思考を切り替えて、姉さんに一夏が捕まっている場所、既にドイツ軍が包囲していることを伝える。

ドイツ軍人は一瞬顔を強ばらせ、姉さんはそれを訝しむもすぐに部屋を出る。

俺もそれに続き、遠隔操作で姉さんのIS『暮桜』のリミッターを解除しておく。

通常、競技用のISはリミッターを施され本来の3割程の性能しか出せないようになっている。

そのリミッターを外し、本来の性能を出せるようにしておく。

その事は勿論秘匿回線(プライベートチャネル)で姉さんに伝えておく。

そして、アリサちゃんにも秘匿回線でこちらの現状を説明しドイツが何かしでかさないように時間稼ぎをしてもらうように要請しておく。

アリサちゃんにとっては児戯にも劣る行為なのか二つ返事で了承。

そして、一夏が監禁されている場所にたどり着く。

熱源を感知すると、部屋の中央に椅子に縛られたと思わしき状態の一夏。一夏とある程度距離を開けた状態で5人の反応がある。

だが、姉さんにとっては敵にすらなりえない。

だが、どうするかだな…

目的はこの状況による姉さんの不戦敗だろう…

展開したディスプレイでどうづるか検討していると、一番下のディスプレイが警告音を発して一番上に上がってくる。

そのディスプレイに写っていたのは、俺より年下の少女がISを纏ってこっちに全速で向かってくるところだった。

このタイミングで!?狙ってやがったな…

「防げ"紅蜘蛛"!!」

トリガーワードまで発した俺の言葉に応えるように通路いっぱいに広がるように展開される紅。

その光景に姉さんを含めてこの場にいる俺以外の人間の表情が今日が気で埋められる。

一瞬後に"紅蜘蛛"の体に衝撃が走り若干後退はさせられたものの、敵勢ISを受け止めた。

だが、それは一瞬に突き崩された。

切り捨てられた"紅蜘蛛"の向こうから現れたのはヘッドギアのせいで表情はわからないものの苦痛の声を上げている。

銀髪の長髪。苦痛の声。俺よりも年下の少女が俺達が生み出したISのせいで苦しんでいた。

以前にもISの登場で不幸になった人間がいた。俺と束姉が来た時には時すでに遅く事切れていた。

だが、今回は違う。今ならまだ助けられる。

だが、彼女を救うということは一夏を助けないということだ。

「行って来い」

背後からの声に振り返ると、姉さんが俺を見つめていた。

「お前がやらなければならないことだろう?」

「けど、一夏が…」

「私がいる。一夏は私が必ず助ける」

「…………わかった」

苦渋の決断だった。結果的に見れば俺は一夏を見捨てることを選んだのだ。

涙が出てきた。自分が許せない。この選択を選んでしまった自分が心の底から許せなかった。

目の前にいる赤の他人よりも一夏を助けたかった。だが、それをすることはできなかった。

一つだけわかったのはドイツのせいということ。

目の前で佇んでいるISのコアからの反応はドイツの研究機関が使用しているもの。

そして、ドイツはISの登場以前から最強の兵士を造り上げる研究をしていた。

その研究はISの登場で更に発展してしまった。つまり彼女は望まれて生まれたわけではなかった。

背後の軍人の会話を盗聴していると、"始末しろ"という単語が聞き取れた。

つまりはバレてはいけない類の研究なのだろう。

正直に言って反吐が出る。

彼女はISの被害者だ。つまりは俺が助けなければならない。後ろにいる軍人共の好きにされてたまるか!

『そうだよ。私達が救わなきゃいけないんだよ、しーくん』

いきなり束姉から通信が入ったと思ったら、目の前に束姉の顔がどアップで飛び出してきた。

「わかってる。それで?」

『あの娘は束さんが預かるよ。治療も必要そうだからね』

「まだ何人もいそうだけどな…」

『そうだね。できることならその娘達全員救いたいものなんだけど、そうもいかないだろうね…』

「出来たら苦労しないっての…」

『ホントだよ!!もう束さんてきには世界征服でもしてやろうかと思っちゃったよ!ぷんすか!!』

止めろよ、本当に!!あんたなら速攻でできるから。

「じゃあ、あれを止めて回収すればいいんだな?」

『そうゆうことだよ。回収用に無人機を一機向かわせたから』

「ゴーレム?」

『ううん。しーくんの作った無人機の"ガウェイン"を送ったよ!!』

「ちょっ!?アレ送ったのかよ!!自動迎撃システムとハドロン砲リンクさせたまんまなんだぞ!!」

『え?国の一つや二つぐらい滅んだって人間は絶滅しないから大丈夫だって』

いかん。この人かなりキレてらっしゃる。

というか、速攻で止めるぞ。やべえ。

こっちからのコアへの製作者権限での停止は効かなかった。

なら、虎の子で勝負。俺自身で止めることも考えているがそれは最終手段だ。

"紅蜘蛛"を量子化して回収し、"焔獅子"と"薔薇騎士"を呼び出す。

赤い狼の体にナノマシンで炎を操り、口には刃物を咥えている"焔獅子"

純白の鎧を纏った騎士のような体に血のように赤い杭がいたるところから生えている"薔薇騎士"

どちらも未だに完成とは程遠い試作型だが、十分すぎるほどの戦力だ。

"薔薇騎士"はその自身に内包したシステムにより彼女が乗るISのシールドエネルギーを吸収し出す。

このシステムの欠点はオンオフが聞かないことと周囲のIS全てに作用するということ。

つまり…姉さんごめん。アリサちゃんもごめん。

『四季ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』

いや、ほんとごめんなさい。

御陰で向こうの動きも鈍っている。ここで畳み掛ける。

"薔薇騎士"が動きを鈍らせ"焔獅子"が両手両足を身動きが出来なくなる程度に燃やし、動きを完全に止める。

後は俺の仕事だ。

コアへのアクセスが出来ないなら物理的に停止させる。

"薔薇騎士"へ指示を出し俯せにする。大抵のISは背中にコアが収納してある。

まあ、俺は束姉と同じで製作者権限があるから場所はわかるんだけどな。

背中にあるハッチをハッキングして開けコアを取り出す。

コアの抜き取られたISは動きが止まり、搭乗者の少女を吐き出す。

少女を受け止めお姫様抱っこ状態になる。軍人がこちらに近づいてくるのを"薔薇騎士"と"焔獅子"が間に割り込み阻止する。

ディスプレイの一つからアラーム音が鳴り響きガウェインが近くにまできていることを知らせる。

相変わらず束姉は完璧すぎるな。全然完璧じゃないけど。

天井の壁が破壊されて通常のISより一回り大きい黒い機体が降りてくる。

両手でポッドのようなものを抱えており、その中に少女を寝かせるとハッチが閉じて生命維持装置が作動する。

ガウェインはポッドを大切に抱きかかえ、来た時と同じように空に上がって帰っていった。

問題は背後にいるウザったい軍人共だな。




やっとギアスの機体が出た。
ん?これが初めてだっけ?まあいいや

因みにイタリアの代表はアリサちゃんが瞬殺しました。
テンペスタ?知らんな…

銀髪の少女…一体何者なんだ…


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人体実験とか禁止だから!!!

よし出来た。
次回あたりで鈴ちゃんを中国送りにしよう。


ガウェインを見送ったあとに"薔薇騎士"と"焔獅子"の両方を量子化して回収する。

それを切っ掛けにしたかのように軍人が俺を囲むが、俺はそれを気にせず一夏が誘拐された部屋へと近づく。

だが軍人共はそれを良しとせず、俺に拳銃を突きつける。

「先に言っておくが、俺も篠ノ之博士もドイツが人体実験を行っているのは知っていたし詳細レポートも掴んでいる。それとも俺を今ここで殺すか?」

一応ドイツ語で言ってやったが、こいつらは構えを解かない。

アレ?ドイツ語通じないのか?

まあいいや一斉射撃されても俺には効かないし…

この状況で何も対策を練らないはずもないだろうに…

膠着状態に陥ってしまって暇だったのでアリサちゃんに秘匿回線で無事に済んだことを伝える。

『貴方…何やったんですか?』

「ごめん。ドイツの人体実験に巻き込まれてやむを得ず…」

『人体実験?相変わらずこの国は…ドン引きです』

「いや、俺に言われても…」

『まあ、もう倒しましたけどね』

速いなぁ…

後は他愛ないことを話し回線を切る。

これで残るは決勝戦だが、姉さんは不戦敗になる。

リミッターは外すのは簡単だが付けるのに時間がかかる。

一応今すぐに姉さんが戻るのならギリギリで間に合うように出来るが、それをよく思わないものがいる。

まあ、国というか政府か?こうゆうのよくやってるから不思議にも思わんけど、俺の弟まで巻き込んだんだ…

ただで済ませるつもりはない。絶対に後悔させてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2回モンドグロッソが終了し、一週間が過ぎた。

俺と無事姉さんに救出された一夏は日本へ帰国し、姉さんはドイツで一年教官をやることになった。

モンドグロッソは結果を見れば姉さんの不戦敗によるアリサちゃんの不戦勝なのだが、アリサちゃんはそれを認めずブリュンヒルデを辞退した。

他の国家代表も同様で姉さんを倒さずにはブリュンヒルデにはなれないと口を揃えて言った。

姉さんは国家代表を引退し、単身ドイツへ渡って教官をしているが俺にもドイツ政府から要請があり数ヶ月に一度の割合でドイツへ行っている。

一夏は誘拐されて以来何かと思いつめるようになり、鈴とノッポに心配をかけている。

アリサちゃんはモンドグロッソが終わった後直ぐに国家代表を引退してIS学園の非常勤医師として専用のラボで平和を享受しているそうだ。

ただ、ロシア代表をアリサちゃんから継いだ刀奈は父親から当主の座を受け継ぎ現在かんざしと大喧嘩中らしい。

来年からIS学園に行くらしいけどアリサちゃんにドン引きされる未来しか見えない。マジでお気の毒。

まあ、姉妹なんだから喧嘩ぐらいいくらでもすればいい。俺も流石に一夏が暗くなり過ぎた時に鬱陶しくなってしばき倒した。

その後、大乱闘(文字通り)を学校で繰り広げて二人揃って自宅謹慎を言い渡され更に姉さんからのお説教をテレビ電話越しにされた。

喧嘩をしてそのままって時もあるが基本は仲直りをしてお互いの気持ちを確認するのが常だろう。

簪も何れわかるだろう。というかあの二人ろくに顔も合わせずにいるらしい。

『ねえ、博士。わたしって居ない方がいいのかな?』

「刀奈がどう思っているかはともかく、俺は簪と話せて楽しいぞ?」

『え…それって……』

「他人の不幸は蜜の味ってゆうじゃん?」

『あ、うん。知ってた。』

簪からは週一の割合で連絡が入り愚痴られる。だが、個人的には特別扱いされないこの距離感は結構気に入っている。

ただ、連絡するのはなんでいつも真夜中なのかを問い質したい。いや、どうせ深夜アニメ始まるまでの繋ぎなんだろうけどさ…

『あ、それじゃあ今日はこのへんで』

「はいはい」

連絡が途切れた携帯をベッドの脇に置いて、俺は目を閉じる。思い返すのはモンドグロッソで暴走していたISに乗せられていた少女のこと。

あれから束姉からの連絡はないが調整で忙しいんだろう。あれから調べてみたが、予想通り人工授精の試験管ベビーだった。

しかも量産済み。そして、あの少女はその中の失敗作の一人だったようだ。

成功例が既に生まれて既に量産は凍結しているが、既に生まれた分についてはどうするつもりかは大体の予想をしている。

外れていて欲しいとも思うし、あの計画もドイツ軍の一部が隠れてやっていたことだから大丈夫だとは思うが一応用心と脅しをかけておく。

いっそのこと穏健派にリークして保護してもらうのも手だが、下手なことすると今の世界情勢が崩れかねんから動きたくても動けん。

最悪こっちで保護すればいいだけだし、たったの数百人程度なら俺の貯金で余裕で保護できる。

だが、下手なことして動くわけにも行かない事情もある。暫くは束姉に任せるか。

時刻は既に2時過ぎ。そろそろ寝るか…

明日も学校あるし…

『ヤッホー、しーくん!!みんなのアイドル束さんからのラブコールだよ~ん』

はぁ、今日は徹夜か。授業中に寝よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束姉から安眠妨害されて授業中に惰眠を貪ってから数ヶ月が過ぎた。

特に珍しいこともなかった。あるとすればアメリカが馬鹿共にISを一機奪われたぐらいか?

ピザとコーラの国だからな。仕方ない。

御陰で俺にコアを作って欲しいと言われたので丁重にお断り頂いた。

あんまりにもしつこいのでかなり法外な値段を吹っ掛けたら迷った挙句に諦めた。

ふむ。流石に国家予算の数千倍は吹っ掛けすぎたか?

まあ、そんなことはいいや。

現在俺がいるのはIS学園の理事長室。この後ドイツにも行かないといけないというハードスケジュールなので真面目にやるとしよう。

目の前にいるのは優しそうなお爺さん。IS学園の真の親玉だ。

「博士にお越し頂いたのは他でもありません。どうか整備科の臨時講師をしていただけないでしょうか?」

爺さんは今まで俺に頼み事を言ってきた奴らとは一線を画すほどの真剣な表情で俺に頼み込んでくる。

その目には光があった。生徒たちに最高の環境を与えてやりたいという意思があった。

「来年からなら引き受ける。それと交換条件というわけじゃないがこちらの頼みも聞いて欲しい」

「ええ。構いませんよ」

「まだこっちは何も言っていないぜ?」

目の前にいる爺さんはニッコリと笑ってこちらの意見を封殺した。今までだってこんなことはあったが悪意をかけらも出さずにやられたのは今回が初めてだ。

いや、まさか…

この爺さんは俺に対して悪意を抱いていないのか?

今までの奴らは俺に対してかけらでも悪意を抱いていない者はいなかった。

それもそうだろう。女尊男卑の風潮になったとは言え国や政府、軍といった組織のトップには今でも男が居座っている。少なからずだが女性もいるが、その数は未だに少ない。

そして、女尊男卑の風潮の原因になった原因の一人が俺だ。憎むなという方が無理な話だ。現に女性権利団体からも恨み言が来ているくらいだ。

「わかった。じゃあ、今からアリサちゃん借りてくね」

爺さんは構いませんよとは言わずに微笑むだけだった。本当に変わっている。

憎まれなかったのは久しぶりだ。今時家族同士、兄弟姉妹でだって憎み合うのに…

姉さん以来かな、こういうのは…

気分もいいし、さっさと行こう。

部屋を出ると、すぐ傍にアリサちゃんがいた。それを遠巻きに見るように生徒達が野次馬のごとく群がっていた。

「それで?」

「ドイツに行くからボディーガードお願い」

「ISは?」

「準備万端」

「なら早く行きますよ」

アリサちゃんが校舎から出るために歩き出すのと同時に俺も歩き出す。

野次馬がモーゼのように割れて道ができる。まあ、アリサちゃんが視線で邪魔だと言っているだけなんだけど。

目指すはドイツのベルリンにあるドイツ軍最高司令部。

さあてと、救いに行こうか被害者を。俺のせいで不幸を望まれて生まれた子を。

既に何人もの犠牲が出ているが、これは全て俺の責任。その命を背負えるほど俺は人間性が出来ていないし間違っても背負えるとは言えない。

故に俺はこの時点で…いや、もうずっと前から殺人者だ。ISによって出来た傷は全て俺が悪い。

束姉は関係無いなんて言うつもりはないがあの人は他人に対して心を開くことがない。

全てに対して無関心。誰かがISのせいで傷ついたとしてもかけらも気にしないだろう。

だから俺だ。憎しみは全て引き受けよう。それで気が済むのなら安いものだ。俺が傷つくことで被害者の心が晴れるならお釣りが来るくらいだ。

何人救えるかはわからないが、俺は俺の全てを賭けてあいつらを救おう。

「また馬鹿なことを考えてますね?」

「なんのこと?」

「貴方が傷つくことで確かに気が晴れる人もいるでしょうが、私はあなたが傷つくことが嫌ですよ。そんなことになるぐらいなら私があなたを守ります」

「……………」

「貴方の考えていることがわかるなんて無責任なことを言い張るつもりはありませんが、無駄とだけ言っておきます。貴方が一人で背負えるものではありませんし少なくとも私はそんなことを望みません」

「わかってるさ。俺が犠牲になってもそれはただの逃げだ。」

「まあ、貴方の決めたことに口出しする理由も権利も私には有りません。好きにしなさい」

アリサちゃんはそれ以来黙ってしまった。

ドイツについてもそれは変わらなかった。ただ、俺の身を案じていてくれているということだけはわかった。




ギャグにしようと思ったら何時の間にかシリアスになっていた。
それだけまでならあるあるなんだが、四季くんがなんか詠唱しだしてるし…

おかしいな。アレ~?
取り敢えず、万仙陣やってくる


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助けるのは俺の意思だから!!!

できたのはいいけど、そのうち矛盾が出てきそうで怖い。


ドイツ軍との交渉は無事に終わった。

最初は難色を示していたので第3世代型の試作システムを提供したらアッサリと掌を返してきた。

ただ、成功例は渡せないと言ってきたのでソイツには人間としての尊厳を配慮するように言っておいた。

既に軍部でも有名なようで、姉さんに鍛えられているせいかメキメキと実力を上げているようだ。

姉さんが来る前は部隊でも最弱のお荷物扱いでイジメまで起きていたのが、今では嘘のように周りを統率しているらしい。

研究所に残っていたのは35人だけだった。100体近く生産されていたはずなのにこれだけしか残っていないのには理由があった。

別にドイツ軍の新薬のモルモットになったわけでも廃棄したわけでもない。

原因は"ヤツラ"だ。

((亡国企業|ファントムタスク))と名乗るテロリスト集団。

そこの諜報員が上の命令で研究所のシステムを改竄した。研究所内の研究者達は必死にシステムを復旧させた。

だが、間に合わなかった。残ったのが35体。たったこれだけしか残らなかった。

軍部でもこの計画は非人道的という見解があったのか永久凍結しようという意見が出ていたので俺の来訪は渡りに船だった。

だが、ただでやるわけにも行かなかった。国民の血税が浪費されているのだ。それに見合う対価が俺に払えないのなら軍部も断るつもりだったのだろうが、俺から齎されたのは期待以上のものだった。

成功例とこないだ束姉に送ったのと合わせても37人。

37人救えたことを喜ぶことは出来なかった。既に100人近くの犠牲が出ていることを知っているからだ。

俺がすることはこの35人を日常生活が送れるようにして幸せな人生を謳歌させてやること。

ただ、それを行うには難題がいくつも立ち塞がっている。

金銭に関しては貯金もある。株で儲けた分もある。IS関係の特許もある。

それらを合計すれば楽に養ってやれる。ただ問題があるとすれば彼女達の気持ちだろう。

彼女達がそれを受け入れるか、受け入れないかはわからんが俺は俺に出来ることをしよう。

あ、でもこの子達用にIS作ってやらないと…

研究所内では既に軍部からの通達があったのか慌ただしかった。

最奥まで行くと先客がいた。一人は知っているがもう一人は知らない。

知っている方は姉さんだった。世界最強の名を欲しいままにした人類最強に君臨し続ける者。

知らない方は恐らく件の成功例だろう。銀髪の少女が姉さんの隣にいた。

「千冬、何をしているんですか?」

アリサちゃんは俺の気持ちとか一切無視して姉さんに話しかける。

「アリサか。コイツの妹が誰に引き取られるか見に来たのだが、まさか私の関係者だったとはな…」

久々に姉さんから睨まれる。やべえ。股間が縮み上がった。

気不味いというよりも、怖いので姉さんから目を逸らす。

その選択をした俺の頭に姉さんの拳骨が降りてくる。してはいけない音が室内に響く。

俺は声もなくその場に頭を抑えて蹲る。

成功例は軽く悲鳴を上げて俺に同情の視線を向けてくる。

その視線はこう言っていた。

『泣かなかっただけマシだよ…』と…

泣きたくても泣けない。姉さんの威力により泣くという概念すら吹き飛んだ。そこに残されたのはただの痛み。

痛覚を刺激し、衝撃を残し更にはその衝撃で痛覚を更に刺激するという技。

声を出す余裕なんてない。今俺は全身全霊で痛みに耐えることを選択した。そしてその選択により他の行動は行えない。

既に頭の中には痛みに耐えることしかなかった。

さっきまで考えていた35人のことは頭から吹き飛んでいた。

アリサちゃんがIS学園で言っていた悩みは姉さんの一撃で文字通りに吹き飛んでいた。

「なまじ頭がいいだけに無駄なことを考える。それがコイツのダメなところだ」

「はぁ。私まで悩んでいたのが馬鹿らしくなってきました」

「四季はコイツ等をどうするつもりだ?」

「救うとしか聞いていませんし、本人に直接聞いてください」

蹲った俺を見下して二人はため息をつく。いや、やめて。これ俺のせいじゃないよ?

アリサちゃん、ドン引き扱いしないで。流石に泣くよ?

そして成功例よ。アタフタするな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと痛みが引いた。まさか30分も続くとは思わなかった。

「教官の全力から30分で立ち上がっただと!?馬鹿な…」

おい成功例、姉さんが睨んでんぞ…

「それで四季、どうするつもりだ?」

「そりゃ勿論キチンとした人生を送れるように…」

「こいつらには自分の出生が一生付きまとわるぞ?その時点でキチンとした人生なんて送れん」

「わかってる。いや、わかったつもりになってるだけかもしれないけど、考えはある」

「言ってみろ」

え?いや、言ったら怒られるんだろうな…

「俺の研究所の職員に…」

姉さんとアリサちゃんから視線が刺さる。二人は俺と長年の付き合いがあるから疑われて当然だった。

「何を作った?」

「まさか前みたいにブラックホールなんて起きませんよね?」

二人の発言に成功例が俺に視線を向ける。

『嘘だよな?教官達で私をからかってるんだよな?』と、言わんばかりの視線だ。

というかまってくれよ。

アレは俺のせいじゃないって。

束姉が強行しただけで周囲の人的被害もなかったから大丈夫だったし。

太平洋の上空500mの地点を中心に半径1kmが空間ごと消滅した程度だし…

せっかく設計した俺のブラックホールエンジンはそれで消滅したんだぞ?

しかも束姉のせいなのになんで俺のせいになってんだよ?

「ちょっと待って。アレは束姉が…」

「残骸から織斑四季謹製と彫られた合金が回収された」

「しかもハワイに来ていた旅行者が黒い穴が出現したのを見物していたそうですよ?」

「ぐっ…」

た、確かにアノ時は俺も束姉も変なテンションで特に何をするわけでもなく実験を強行したけど…

そっかー、どうりでアメリカから苦情が来てたわけだ…

それならコアの件も考えても良かったな。でも、俺の作るコアって不具合があるし人を選ぶからなぁ…

やっぱなし。

「大丈夫だって。今回のは戦艦が海に潜って完全ステルス迷彩でIS工場だから」

「どこの霧の艦隊ですか…」

え、ダメですかねアリサちゃん?

「はぁ、この愚弟が…」

あ、やっぱりダメですか?

というか、アリサちゃんアルペジオ知ってたんだな。そこに驚いたわ。

だが、大丈夫だって。あの戦艦は俺の新規設計だし。大和型でも長門型でも金剛型でも扶桑型でもない。

完全新型の戦艦。名前はまだない。どうしようか迷ってるんだよね。

いっそのこと伊吹でいっかな。

成功例はポカーンと黙ってしまった。いや、口を開けてるんだけどね…

既に名無しの潜水戦艦はIS学園の近海に待機してるんだけどね。

しかも何を隠そう俺が設計した『自立行動型機動兵装』はあそこにある。

しかも武装なんて防御面でしか効果を発揮できないように絶対防御を基にしたバリアシステムとか撃ち落とし用のミサイルとかそのへんだし。

というか会社として既に登録してあるしね。

調べれば普通に出てくるぞ。住所はキチンとステルス潜水戦艦ってやったから。

もしかしたら代表の欄に俺の名前書いたからスルーされたか…

まあ。戦艦という名のナニカになっちまったけどな…

折りたたみ式の飛行甲板はあるから空母としての側面もあるし、魚雷発射管もあるから雷撃戦もできるし…

アレだな、もう『戦艦』じゃなくて『超ド級重雷装航空潜水戦艦』だな。どこのレ級だっつぅの…

「大丈夫だって。ちゃんと調整槽も用意してあるし、今のままだとこいつ等20まで生きられないぜ?」

アレ?まるで昔の俺みたいな状況じゃね?う~ん…

なんか引っかかるけどいいか。

「昔の自分みたいだから今度は自分が助ける番だ。とか思ってませんよね?」

「うん?そういえばそんな感じだな。まったく考えてなかった」

そっか。俺は自分と重ねてたのか?ダメだ、わからん。けど、もしかしたらそういうことなのかもしれない。

まあ、どのみち俺がこいつらを助けることに変わりはない。こいつらがどんな未来を選択するにせよ俺はその未来を否定することはないだろう。




とりあえず被害を出すのは亡国企業という万能説。
そして意味のわからないテンションでブラックホールを起こすのはいつものこと。
アルペジオなんて多分目じゃないくらいになりそうな戦艦登場。
多分空も飛べる。てか、飛ばす。
35人のラウラ姉達。主な仕事は四季の機体整備になりそう。

そんなことはさておき、皆様方
UA50000、お気に入り500突破しました。
これもご愛読してくださっている皆様方のお陰です。
もしよろしければこれからもこの駄文にお付き合い戴ければと思います。

本当にありがとうございます。


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体調検査は大事だから!!!

名前を付けるのは難しい。
そして、最近は暑すぎる。こないだ室温が30度超えてたよ。窓全開にしていたのに…
この家はもうダメかもしれない…

まあ、愚痴はスルーして本編どうぞ


ドイツで最低限の調整を済ませ、例の戦艦に移しそこで最終的な調整を行う。

まあ、最悪外に射出するだけだからいいんだけどさ。

艦内の最重要機密区画内の特殊調整槽にそれぞれ入れて、必要な数値を入力し体の調整を施す。

一人一人数値が全く違う。成功例と瓜二つなことから成功例自体もどこか誰かのクローンなのか、それはわからないが正直必要な情報とも思っていない。

数値を狂い無く入力する傍らに背後で暇しているアリサちゃん用にコーヒーを用意させる。

持ってきたのは勿論ロボット。自立行動型機動兵装の試作型として作った家事ロボットだ。

姉さんと成功例とはドイツの軍港で別れているので艦内には居らず、ステルスシステムでレーダーからも逃れて潜行状態で日本へ向けて進行している。

「ありがとうございます」

「ミルクと砂糖はお好きにどうぞ」

ロボットの頭の部分がパカッと開き、ミルクの入ったポットとスティックシュガーが出てくる。

アリサちゃんは何も言わずにミルクを入れて口を付ける。

インスタントコーヒーはアリサちゃんが好んで飲んでるメーカーのものだから怒られることはないだろう。

だが、アリサちゃんが言葉を発することはなかった。聞こえるのは俺が仮想ディスプレイに数値を入力する音だけだった。

調整槽の入力を開始してどれだけ経過したのか、珍しく俺は時計を見ていなかった。

「入力終了。後は定期的に再調整するぐらいか…」

アリサちゃんの方に行くと何故かは知らんが悲しそうな目で俺を見ていた。

え、どゆこと?

「貴方はそれでいいんですか?」

「え、何が?」

アリサちゃんの言うことは偶に俺でもわからないことがある。

今回のはどういう意味合いが込められているのかさっぱりわからなかった。

はぁ。と、ため息を付かれて話は打ち切られた。

え、なにこれ?まるで意味がわからんぞ?

そういえば姉さんと束姉もこんな反応するんだよな…

なんでだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名無しの戦艦で日本に帰ってきてから半年ほどが経った。俺の日常にそこまでの変化はなく、強いて言うなら鈴ちゃんが中国に帰ることになったぐらいか?

クラスで送別会を行い、二次会のカラオケ(いつものメンバープラスアルファー)でせっかくなのでファフナーのED歌ったら全員から苦情が来た。解せぬ。

それはそうと鈴ちゃんは一夏に一世一代の告白(自称)をしたらしく、それを一夏に聞いてみれば案の定勘違いをしていた。

いやー、まさか試食になっているとは…

流石は俺の愚弟。いや、毎日酢豚はキツイじゃねえよ。だから、ローテーション組むとかそんな話じゃねえから。麻婆とか餃子も食べたいじゃねえから。

もうこの愚弟はおかしい。どうしてこうなったんだっけ?

箒もこんな感じだったしな。仕方ないな。これも運命なんだろうな。

そして、俺は来年から中学3年生兼IS学園整備科臨時講師なので月一でIS学園に行かないといけない。

きちんと給料も振込まれるので35人も養わないといけない身の上なので仕方ない。この世は金で大体のことは解決できるからな。あって困るものでもない以上あるだけ蓄える。

そして、来年から姉さんもIS学園で教師をすることになっている。ドイツの戦技教官も一年だけなのでもうじき家に帰ってくる。

まあ、姉さんは一年の寮長までやるそうだから家にいるときは少ないだろうけど…

そして、この時点で俺のIS学園での仕事に寮長室の掃除が追加された。アレ、もしかしてコレってアリサちゃんの部屋も掃除しなきゃいけないパターンじゃね?

よし、考えないようにしよう。

「御父様、どうされたんですか?」

「御父様、ポンポンが痛いのね?」

「御父様!私が暖めてあげる!!」

「だから、俺はお前らの父親じゃないって何度言えばわかるんだ!!!」

そう、今はこの35人の再調整兼体調検査が先だ。

にしても俺はまだ高校生にもなっていないんだが、娘が35人もいるとかマジないんですけど…

「「キャー!!御父様が怒ったー」」

俺の声に反応して楽しそうに駆け回る娘(仮)達。おい、医務室で走り回んな!!

「こら!!貴女達いい加減にしなさい!!」

「「キャー!!ヌル姉様も怒ったー!!」」

医務室で俺の補佐をしていたのはヌル。俺が引き取った35人の中で一番最初に全調整工程を完了した個体で、ドイツ語で『0』の意味を持つ名前の少女だ。

本人が言うには『始まりの意味を冠する0が私の役割だから…』って言っていたが、まるで意味がわからんかった。

まあ、ネット使えるし艦内には俺の持ち込んだゲーム、漫画、ラノベがあるから厨二病にでも罹ったのかとハラハラしたわ。

既に半数は終わり残り半数も直に終わる。

そして、名前に関してはヌルが数字からつけたせいで続く2番目から13番目まで数字で続いてしまった。

その連鎖を止めたのは14番目のラスターだ。ドイツ語で『悪』という意味の言葉を冠する子だ。

というよりも、数字が名前とか俺が嫌だったんで適当な単語をあみだくじでやった結果、ラスター以降は数字じゃなくなっただけだ。

ただ、こいつらの問題は見た目での判断がつかないので名前を間違えるとすごい勢いで怒られる。まあ、これに関しては俺が悪い。

まあ、こいつらは外見的には小学5年生ぐらいだが生まれてから2年ほどしか経過していないため仕方ないという点はある。

「全く、貴女達は御父様が困っているでしょう?」

「「ごめんなさーい」」

「だからやめろっつーの」

しかも俺のことを父親って言ってるのに言うこと聞かないし…

反抗期の娘を持った父親の気持ちがわかる気がする。世の中のお父さんマジザマァ。

「ヌル、アイン達は何してる?」

「アイン達ならVR訓練中です、御父様」

VR訓練か。アインのことだから『残月』のやつか?アレって確か1対1(タイマン)で姉さんとやりあう内容だったはずだけど大丈夫か?

こないだも瞬殺されまくって訓練装置に八つ当たりしていたな…

「ヌル。アインの見張り行って来い。訓練装置壊されそうだ」

「はい。御父様」

こいつらは、何が何でも俺を父親にする気か?いや、俺は認めんぞ?

だが、そんなことは今はいい。そう、ヌルが出て行った今残り半数以下にまで減ったが未だに10人以上が終わっていない体調検査。これをさっさと済まそう。

「ほら、大人しくしろ」

「「はーい」」

いままで燥いでいた3人は嘘のように大人しく俺の指示に従ってくれた。いつもこれなら苦労しないんだがな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体調検査も今は昔、結果的に見れば殆ど異常らしい異常は見られず概ね経過は良好といったところか。

既に戦艦は海底で待機しておりヌルを筆頭に訓練を繰り返し立派な兵士っぽくなっていっている。

なんでこうなったのかはわからんが、全員が望んでやっていることなので俺の口から止めろとも言えず現状に至っている。

そして、俺が今いるところは戦艦ではなくIS学園だ。

今日はIS学園の入学式で刀奈が入学する日だ。まあ、俺は刀奈のためにいるわけではなく仕事のためだ。

正直刀奈とか俺の中ではどうでもいいレベルまで落ちている。簪と現在進行系で喧嘩している原因を精査する限りこのヘタレはダメダメである。

そして、在学生でめぼしい者もいない。ダブ子姉ぐらいか。代表候補生が一人いるらしいが会っていないのでそこは保留だが、多分ダメだろう。

学園長の声で入学式が開始され、在校生代表やら新入生代表やらがお飾りに過ぎない在り来りな言葉を述べているが右から左へ聞き流す。

ただでさえ講堂内に入る人間の9割9部の視線が突き刺さっている状態だ。正直やってらんね。

両隣りに姉さんとアリサちゃんがいなけりゃ速攻で帰っている自信がある。

まあ、二人はそれを見越して俺を拘束しているんだが。現状若干グレイ状態に近い。俺は晒し者のようです。

退屈な時間も半分以上が終わり、残すところは教師の紹介程度だ。

一年の寮長兼担任として姉さんが、非常勤医師としてアリサちゃんが紹介された時は新入生の黄色い悲鳴で鼓膜が破れるかと思った。

なんなのこいつら?新型の音響兵器か何かか?帰ったら開発してみよう。

そして、学園長の声で俺の紹介がされる。

「そして、今年より整備科の非常勤講師としてISの生みの親の一人である織斑四季博士に講義をお願いしております」

その瞬間講堂内は静寂に包まれた。おい、誰かなんか言えよ!!

なにこれ?イジメか?泣くぞ、この野郎?

学園長の紹介が終わった瞬間に一歩前に出て頭を下げた俺の立場を考えろよな。

周りの先生から同情の視線が突き刺さって痛い。

くっそ、整備科の生徒共め…授業の時は覚えていろよ?




積極的に四季君を虐めていくスタイル。
まあ、いきなり有名人が来たら驚くよね?

そして、四季君は主人公なので娘が35人できました。
よし、ハーレムだな(錯乱)

次回は多分整備科の生徒に八つ当たり回。


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別に八つ当たりじゃねぇから!!!

結構早く出来た。
多分怒りの日の効果だ。


人というのは基本的には群れて暮らすことを望む。まあ、望まないうちに孤独を味わうのはよくあることだ。

女尊男卑の世の中になる前から『ニート』や『ヲタク』、『引きこもり』という存在はいたが、今はそれが途端に増えている。

まあ、学校に行ってもボッチ。更にクラスの女子からは虐められそれを告げ口しようものなら冤罪で警察行きなんてのはザラだ。

『女性権利団体』。ISが出来る前からその組織は存在していた。当時は男女平等を謳っていた真面目な組織だったが今では当時の面影はなく、男を虐げるための組織に成り果ててしまった。

まあ、組織の中には当時の思想を受け継いでいる真面目な構成員もいるが圧倒的に少ない。

要は何が言いたいのかというと、久々にイジメを受けたというそれだけの話だ。

まあ、一応教師でもある俺が生徒から虐められたなんて口が裂けても言えないとでも向こうは思っているのだろうが、それは悪手だ。

やったのは女尊男卑の考え方が凝り固まったはっきり言って害悪としか言えない新入生だった。

さてどうしたものかと思案しているところにやってきたのは俺と同じ非常勤という称号を手に入れたアリサちゃんだった。

そう、アリサちゃんに虐められていることがバレたのが全ての原因なのか、虐めてきたアホ女が原因なのかはわからんが俺に対する生徒の視線が妙になったのはその時からだった。

アホ女は入学から数日で退学した。まあ、はっきり言ってどうでもいいので記憶の隅に追いやっていたが数ヶ月経った今、女性権利団体から今更としか言い様がないような苦情が来た。

しかも、そのアホ女のことでだ。

はっきり言って呆れて何も言えない状態だ。職員室の自分に割り当てられた机でメールを見て硬直していたので姉さんやアリサちゃんを筆頭にした教師陣にも見られてしまった。

「え、今更?」

俺の口から絞り出せた言葉はそれが限界だった。

「呆れてモノも言えませんね、ドン引きです」

アリサちゃんはメールの送り主である女性権利団体に対して絶対零度の視線を送るがそれは届くことはなかった。向こうも元国家代表を敵に回したとは夢にも思っていないだろう。

というか、職員室の室温が下がった気がする。背筋が震えてるし。山田先生なんてガチで震えて顔色を青くしている。

「まあ、束姉がなんか手を打ってるし無視でいいか」

「そうだな。私からも束に言っておく。四季あまり気にするなよ?」

姉さんに頭を撫でながら言われ嬉しく思うもここが職員室だったのを思い出して姉さんの手を振り払う。だが、時すでに遅く教師陣からは慈愛の視線が送られてきた。

なんだ、俺はマスコットか何かか?

視線を無理矢理無視して束姉に連絡してみるとすでに処理済みらしく、ネットニュースを見てみると速報の欄に『女性権利団体、予算横領』という見出しで上の人間が何人か捕まっていた。

敵にした相手が悪かった。これがそこらの男だったら向こうの思い通りに運んだだろうが、俺や束姉に関係ある者に手を出せば当然こうなる。

というか、弱みを一つも握られていないとでも思っていたのだろうか?お粗末すぎて同情する。

姉さん達も済んだこととして自分の仕事に戻る。アリサちゃんも自分の研究室へと帰っていった。

さて、俺も2年生の相手と行きますか。入学式から数ヶ月が経過したが八つ当たりは未だに終わっていない。

俺は根に持つぞ、馬鹿ども。

「いい加減に許してやれ」

「………」

姉さんにはいつも考えが筒抜けになってるので最近は姉さんが苦手だ。

さて、授業(八つ当たり)授業(八つ当たり)

 

 

 

 

 

 

 

既に予鈴が成り終わった学園の廊下を白衣を身に纏い片手で整備科で教える教書を持ち人気のない廊下を目的地に向けて早歩きで歩く。

IS学園の教室というよりもこの学園自体が最先端技術を使用している。そのため昔あった黒板消しトラップとかは使えない。なぜなら教室の扉は自動ドアになっているからだ。

だが、自動ドアの機能を利用したトラップぐらいは出来る。つまりは次世代型黒板消しトラップというものが出来上がる。

そして、教室の前でそれが仕掛けてあることに気づいた。ドアを離れた位置から遠隔で開けて回避することもできるがせっかくなので無理矢理粉砕してみることにした。

にしても、黒板消しは既にIS学園では使ってないというよりも設計当初でデジタル式にしてあるのでチョークすらないはずなんだがな…

空気の抜けるような音と共にドアが開く。ドアに挟んであった紐が自由を得て先っぽに括りつけられた黒板消しの自重によって下へ落下する。つまりは俺の頭上だ。

教室内にいる一部の生徒たち(馬鹿ども)がガッツポーズをしてフラグを立てる。OKだ。そのフラグを活用しよう。

教書の持っていない自由な左手を真上へ上げて黒板消しを掴みそのまま()()()()()

左手はほぼ丸ごと義手に変えてあるのでこのように姉さんの真似をすることができる。まあ、それも片手で出来る範囲に限られるが…

左手からバキバキと音が教室中に響き黒板消しの上部分が粉々に砕け散り床にパラパラと零れ落ちる。下部分の布を片手でビリビリと中に入っているスポンジごと器用に引き裂く。

教室内は静寂に満たされているが俺はそれを気にせずに教卓へと歩を進める。丁度授業開始のチャイムもなったので俺は仕事の時間だ。

「よし、アレを仕掛けた奴は3秒にないに出頭しろ。でないと酷いぞ?」

教室内は未だに静寂に包まれている。いや、ダブ子姉は正気に戻って冷や汗を流している。

「3…零。ハイ終わり」

「「2と1は!?」」

「あん?ねぇよんなもん」

教室内の生徒の全員が再起動しているようなのでこのまま授業に移る。

「よし、36ページ開け。今回の主犯格の浅田はPICについて音読した後、お前なりの言葉で簡単に説明してみろ」

「え!?は、はい」

教室内の視線が窓際で冷や汗を流している浅田に注目している。というよりも非難の視線が集中している。

悪戯好きとは言っても流石にお嬢様なだけあって返事はきちんとしている。

浅田は周囲の視線に罪悪感を抱きつつも椅子から立ち上がり教書に書いてある基本的な内容を読み始める。

これは読んでいる本人がどこまで理解できており、かつ自分が本当に理解しているか解らせるためだ。理解していないのならそこを指摘すればいい。

『PIC』。パッシブ・イナーシャル・キャンセラーと呼ばれるISの基本システムの一つだ。

ISを浮遊させたり、加速減速などを行うシステムだ。まあ、簡単に言えば慣性を無効化するための装置だ。これは本来宇宙空間での使用を目的としたシステムなんだが、知っての通りISが宇宙空間で利用されたことはない。

これがないとISは浮かばないし、場合によっては歩くことはおろか立ち上がることすらできない。

「――このように『PIC』はISにとって一番重要な機関でもある。」

丁度浅田が読み終わったので俺は視線で浅田自身の答えを促す。

「えっと、『PIC』は…ISの心臓みたいなもの…かな?」

ギリギリ及第点レベルか?

「理由は?」

問題は浅田が自分の考えを説明できるかどうかだ…

「えっとですね。最初はコアが心臓に当たるかもと思ったんですが、コアはどちらかというと脳に当たるんじゃないかと思ったからです」

成程。人によって考え方は千差万別だがその考え方はなかなか面白い。

「まあ、及第点だな。座っていいぞ」

「よかった~」

浅田が胸を撫で下ろして着席するが教室内にいる生徒の半分ほどが未だに顔を強ばらせている。ダブ子姉は既に諦めムードだ。

「そういや、浅田。なんで黒板消しトラップなんかやった?」

「へ!?いや、先生の泣き顔が見たくて…」

浅田の声を聞いた瞬間教室内の空気が固まった。というか教室内の生徒全員が顔を強ばらせた。今まで以上に。

「そうか。じゃあ、全員連帯責任で評価段階一つ下げるから」

「「ええええええええええええええええええええええええええ!!??」」

教室内が阿鼻叫喚の悲鳴で包まれ、混沌と化す。

「という訳で赤点者が過半数超えたので来週と再来週の土日は朝から晩まで補修です。全員強制参加。不参加の場合は留年、以上」

「「そ、そんなあああああああああああ!!??」」

これも全て浅田が悪い。俺は悪くないというよりも俺の休みも潰されるんだぞ。

「先生!!来週私彼氏とデートがあるんですけど!!」

「そうか、残念だったな。お預けプレイを楽しめ」

「「裏切り者だ、囲め!!尋問の時間だ!!」」

「騒ぐなら授業が終わった後にしろ。もう一段階下げるぞ」

「「すいません!!」」

この騒ぎの中でダブ子姉だけが声を出さずにため息をついていた。はあ、帰りたい。




アニメ化決定したね。何がとは言わないけど。
この作品でも一応若干、それとなく関係あったりなかったりするのでステマ(?)しておく。

そういえば、35人の娘の名前って公表したほうがいいですか?
別にいらないようなら公表しませんけど


次回は一夏がIS起動しちゃうところだと思う。
原作と違って弾も起動しちゃうんだけどね


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そんなのありえねぇから!!!

よし、もうすぐ原作だ


季節の移り変わりはどれだけ技術が進歩しようが変えることはできず、そして突然である。こないだまで半袖で過ごしていたと思ったら何時の間にか雪が降るまでになっていた。

人は自然に勝てないという暗示なのかもしれない。軽くだが風邪ひいたし…

まあ、今回は手術後の重いタイプではなく単なる微熱なので大事をとって安静にしているだけだ。明後日には高校入試なのでそれまでには何があっても治さなくてはいかん。

正直行かなくても死ぬまで遊んで暮らせるだけの金なら特許料とかで余裕すぎるぐらいあるんだが、姉さんが絶対に行けというので行かなくてはならん。

まあ、どこでもいいんだがどうせならってことで一夏と同じとこにしておいた。確か、『藍越学園』だったか…

名前が似ていて紛らわしいな…

『やっほー、しーくん。束さんだよー』

あ、面倒事が来た。この人のことだからまた予想の斜め上を大気圏突破するような悪戯なんだろうな…

「なんだよ、俺熱出てるんだけど…」

『入試会場に私のコアとしーくんのコアをそれぞれ搭載したISを置いておくの』

アレ?思ったよりマシだぞ?というかIS学園の入試もあそこでやるんだっけ?

起動試験と筆記試験だけで後日IS学園のアリーナで耐久試験だっけ?

『まあ、いろいろあると思うけど束さんはフラグ立てをしに来ただけだからこれで通信を終わるけど、しーくんはお大事にするんだぞ?』

「はいはい。フラグ立てお疲れさん」

またなんかするのか?にしてもなんで俺のコアまで?

俺のコアは使える人間が限られる。姉さんのは女性であれば誰でも使えるが、その人の適正に依存される。

だが、俺が創ったコアは違う。コア自身が扱う人間を選ぶため俺のコアは世間に出回っていない。

一度ドイツが無理を言って俺のコアで起動実験を行おうとしたことがあった。その時の搭乗者は二度とISには乗れなくなったが…

別に躰が一部欠損したとか生命活動が停止したとかではない。身体的問題ではなく精神的問題だ。

コアとのリンクで精神を侵食されかかったからだ。俺の造ったコアは起動するだけでも問題を抱えているため世間に出回らないように厳重管理している。

流石に代表候補生が一人いなくなったのでリスクが高すぎると納得したのかドイツはそれ以上何も言ってこなかった。

流石に俺のコアでの事故とも呼べることなので日本にあるIS関係の病院への紹介状を渡しておいた。

今はもう日常生活を送るぶんには問題ないほどには回復しており、もうじき退院するそうだ。

にしてもドイツめ…どうやって俺のコアを手に入れたんだ?どうせスコールだろうけど…

『御父様!!お風邪は大丈夫ですか!?』

今度はヌルかよ…

『御父様、死なないでください!!』

『御父様、大丈夫ですか?』

『看病が必要ならいつでもお呼びください、御父様』

『あ、御父様。今度デートしよ』

声の多さに思わず耳から遠ざけた俺は悪くないと思う。未だに姦しい。

『貴女達、いい加減にしなさい!!御父様が迷惑しているでしょう!!』

『なにさ、ヌル姉が原因じゃんか』

「いや、お前ら全員黙れ。頭痛い…」

これ、受験大丈夫かなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験当日。なんとか微熱にまで下がったので駅前で弾を待つことに。となりには一夏がいるが、案の定逆ナンされている。仕方ないね。

弾からは既に連絡があって妹ちゃんと乳繰り合って遅れているらしい。まあ、遅刻しなければいいからどうでもいいけど。

隣の一夏は逆ナンを断り俺の心配をしてくる。嬉しいがそれを顔に出すほど俺は甘くない。

「大丈夫だから少し落ち着け。そんなんで試験は大丈夫か?」

「大丈夫だって、問題無い」

おいやめろ。フラグが立ったぞ。

ん?フラグ?まさか束姉のこの前の連絡ってこれに関することか?

あ、ダメだ。どうでもいいこと考えると知恵熱出そう…

ポケットに入れてある風邪薬兼頭痛薬を口に入れてそのまま飲み込む。一夏が水の入ったペットボトルを差し出してくれたのでありがたく貰う。

「ありがと」

俺のお礼の言葉に満足したのか微笑む一夏。周りの女共が騒ぎ出すが煩いのでシャットアウト。

「悪い。遅れた」

弾も来たので電車に乗って、隣の駅の近郊にある公民館へ向かう。なんでも去年の受験生が集団カンニングをしたおかげで会場が変わったらしい。まじウザイ。

その御陰でめんどくさいが隣の駅まで行かなくてはならない。去年の受験生ども灰になれ。

電車は何故か知らんが女性で溢れかえっていた。何、全車両女性専用ですか?

最後尾には男どもすし詰め状態だったのでそこに乗って隣駅へ移動することにした。

弾が文句言っていたので弾だけ残して最後尾に行くと弾が渋々付いて来た。一人じゃ乗れねえのかよ、ヘタレめ。

まあ、隣の駅だから少し我慢すればいいだけだしな。因みに女性のいる車両に乗った場合ほぼ100%の割合で痴漢扱いされて警察行きだ。

そのせいで男は電車に乗る場合最後尾の車両ですし詰め。女は残りの車両で伸び伸び。

2分ほどすし詰めされて駅に着き次第全力で電車から降りる。男のすし詰めなので汗臭いし、加齢臭がするわで本当にひどかった。そして、禿の割合も多かった。

こんなことならヌルか誰かに車の運転させるんだった。まあ、防弾用のバギーしか格納庫にしか無かった気がするけど。

「死ぬかと思った」

「新鮮な空気だ」

「俺たちも歳食ったらああなるのか…」

各々が文句を垂れつつもなんとか試験会場である公民館へ足を進める。疲れたので一夏に道案内を任せる。ああもう無理。疲れた。

公民館へは労せずに到着したが、試験会場の場所がなにやら複雑らしい。

そのまま一夏に任せてついて行くと、広い場所に着いた。暗いしここじゃないだろ?

一夏と弾が黙っているので不思議に思って前を見ると、そこには2機のISがあった。

両方共『打鉄』のようだが、片方には俺のコアが使われていることがわかった。とゆうか、なんでこんなところにISが?

ちょっと待て…

フラグ?俺のコア?まさか、束姉の狙いって…

いや、有り得ない。ISが使えるのは女性だけ。俺は唯一の例外のはず。製作者以外に女以外で使えるはずはない。そのはず…

この考え自体に理論的根拠はない。ただ、俺がそう思い込んでいただけだとしたら…

「おい、二人共それに触るな!!」

俺の叫びは時すでに遅く、二人が俺のことを振り返るのとISに触るのは同時だった。

一夏が束姉のコア。弾が俺のコア。そして、両方共起動した。

「は?」

誰の声だったのか…。俺か?一夏か?弾か?もしかしたら全員だったのかもしれない。ただ共通しているのは訳が解らないということだけ。

異常を感じて室内に飛び込んできたのはIS学園の教員だ。彼女たちはこの光景を見て困惑していた。そりゃそうだ。

男がISを動かしている光景なんて前代未聞な光景だ。思考が停止してもおかしくない。

一夏と弾を操縦者にして何がしたいんだ束姉は?相変わらず理解できない思考の持ち主だぜ…

しかも弾が俺のコアを動かしたなんてことがしれたら『亡国企業』も黙ってはいないな…

積極的に勧誘してくるだろうな。人質とったりは普通にするだろうし、薬物も平気で使うなアイツ等のことだし。

再起動したようにIS学園の教員の一人が恐らく姉さんに連絡する。

まあ、想定外の事態だしな…

当然姉さんにも連絡が行くわな…

ああ、これからめんどくさくなりそうだ…

「四季!!」

一夏は未だに混乱し、弾は流石に自体の深刻さを自分なりに理解し顔を青くさせている。

IS学園の教員も流石にどうしていいか分からず俺に視線を向けてくる。おい、俺の指示待ちかこれ?

「はあ、二人の身柄を確保。どこにも渡すな。IS学園で保護するしかない」

俺の言葉に教員が動き、一夏と弾はISから離され一時的に拘束される。

一夏と弾は俺の方を見るが、俺は目を瞑りこれからの展開をシュミレートしているので知らない。みえない。バカの相手をしている暇はない。さっさと連れて行かれてことの重要性を理解しろ。

「お、織斑博士…」

声に反応して目を開けると目の前に特大のオパーイがあった。これは山田先生か。

姉さんからの指示だろうな。俺に説明しろというところだろう。

ヌルに各国の動きを監視するように指示を出しながら山田先生のあとをついて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動かした男は2名。内一人は世界最強(ブリュンヒルデ)と製作者の一人の弟です。」

明かりのない暗闇に声が響き、室内で反響する。

「もう一人は何の後ろ盾もない一般人です。」

人の気配は全く無い空間に何人もの声が響く。

ヒソヒソと。ザワザワと。空間中に響き渡り、消える。

「その一般人を家族ごと()()しろ。大事な大事なお客様(モルモット)だ。失礼のないようにな」

この言葉を最後に空間内に声はしなかった。

だが、声の主たちは知らなかった。

怒らせてはいけない存在がいることに…

その逆鱗を触れていることに…




という訳で次回が原作前最後の事件だと思われます。
この事件を解決(物理)してから原作開始となります。
という訳で原作まだ?という方々はもうしばしお待ちください。


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絶対に許さないから!!!《前編》

長くなりそうなので二つに分けます。


一夏と弾がISを動かしたことは直様世界中に知れ渡った。まぁ、これは仕方ない。

前代未聞の大事件とも言えることだからだ。ISとは女性だけが動かせることのできる最強の兵器というのが今の世界の常識だからだ。

だが、この二人のおかげでそれが崩れた。女性権利団体なんて発狂してるぐらいだ。

そして、予想通りにめんどくさいことになった。

一夏はIS開発者と世界最強の弟なので余計な接触はないに等しいのだが、弾は違う。あいつは何の後ろ盾もないただの一般人だ。

いろいろな組織が狙っていたが、互いが互いに牽制をしていて硬直状態になっていたところに日本政府のある人物がかっ攫っていった。

それも弾一人ではなく一家全員である。

ヌルからそれを聞いたのは事件の翌日、太平洋の海底に潜行している戦艦でだった。

既にこの戦艦の存在は一部の奴らに知られている。よって、迷いはない。

「ハッチ開放。俺が行く」

『よろしいのですか、御父様?』

リーゼを全身装甲(フルスキン)状態で展開した俺にヌルが通信で聞いてくる。

「どのみちあいつらのせいでバレるんだ。遅いか早いかの違いだ」

ヌルは何も言わなかった。戦艦の左舷側のハッチが解放され、海水が流れ込み空気が上に向かう。

「リーゼ、発進する」

真上へと伸びた電磁射出機(レールカタパルト)を使い一瞬にも等しい時間で海中から出て上空へと飛ぶ。

正直、気づいていなかった。この気持ちも久しぶりだった。

いつからだったのかわからないが、俺はあいつのことを《弾》と呼んでいた。

厳さんには何度も美味しい食事をご馳走になった。

蓮さんには何度もサービスと称して唐揚げなどのおかずを増量してもらった。

妹ちゃんは特にない。というか、流石は弾の妹。ヘタレすぎる。

「ちっ!リーゼじゃ遅いか…」

コアから苦情が来るがそんなのに構っている場合じゃない。

「換装。《紅蓮》!!」

リーゼが輝きそのカタチを変える。赤から紅へと。

リーゼとは少し異なった同色系統。だが、その姿はリーゼのような無骨な面影はなくシャープな姿だった。

背面より展開された紅い翼、鈍く輝く特徴的な銀色の右腕。

目指すは倉持技研第4地下研究所。

リーゼとは比べるまでもないほどのスピードで紅蓮は飛ぶ。

全方位ステルスシステム(天の羽衣)を使用していないので既に各国に紅蓮の存在はバレている。

登場者が俺だということまではバレていないだろうがそんなことはどうでもいい。

打鉄が2機こちらに止まるように命令をするが無視だ。だが、このままではめんどくさいので落とす。

「展開、呂号乙型特斬刀(紅月)

左手に展開したのは紅い短刀。それを逆手に持ち、すれ違いざまに打鉄に振るう。

2機のスラスターを狙い振るわれたそれは寸分の狂いもなく吸い込まれるようにスラスターを破壊した。

絶対防御というのは搭乗者を守るための機能であり、ISの機体本体を守るためのものではない。

特に俺の開発したこの《紅月》は機体破壊機能を有しているからできる芸当だ。

打鉄はスピードが出ず、こちらを追うのは不可能だった。

このままスピードを上げて振り切る。

政府からの回線がウザイのでその回線を強制的にカットし、目的地に到着する。

そこは小高い山の頂上だった。

倉持技研第4地下研究所とはこの山の内部をくり抜くように建造されたISの研究機関のひとつだ。

日本はその土地に限りがあり、新たに作るとなると上か下に伸ばすしかないのだ。

だが、こうゆう地下施設というのは防壁が固くちょっとしたシェルターなみの硬さがある。

「輻射波動機構、起動」

右腕の五指を広げて地面に、いや施設に向けて放つ。

爆音が響き地下への道が口を開く。周りの地面は吹き飛び、溶けた施設の壁面が見え隠れしている。

さっきので施設中に警報が鳴り響き隔壁があちこちの道を封鎖する。

紅蓮の役目はこんなところか。さて、リーゼ壊すのはお前の仕事だぞ?

こんなことなら最初から紅蓮でこればよかったな…

紅蓮からリーゼに再び換装しながらそんなことを考えていたが、過ぎたことは仕方がない。

弾達が監禁されているのは最下層。大体真下あたりか?

「どんな隔壁だろうと、壊し尽くすだけだ」

右腕に付いている大型の杭打ち機。それを真下の床に向けて放つ。破壊という名の暴力を振りまきつつ下の階層へと到達する。

流石に防衛システムはあるよな?

周りから出てくるのはドラム缶のような防衛システム。それ等を左腕のチェーンガンと左手に展開した99口径超大型自動拳銃《不知火》で一掃する。

そのまま下へと突き壊し、無力化し進んでいく。目指すは最下層。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉持技研第4地下研究所の最下層には五反田一家の他に複数の人間がいた。

まずは日本政府の高官が一人、秘書の女性が一人、そしてISを装備した女性が一人。

政府の高官。この男が五反田一家をここに連れてきた張本人だが、日本政府がこの指示を下したというわけではない。寧ろこの男の独断だ。

秘書に関しては完全なとばっちりである。

ISを装備した女性に関しては何故この高官に協力しているのかは謎だった。

この高官の目的はISを動かした弾を研究することで男でもISを使えるようにすることだ。

だが、どこの誰が喜んで実験材料になるのか?

一家ごと攫ってきたのはつまりは人質だ。

協力しないならお前の家族がどうなってもしらないぞ?

この高官は弾に向けてそう言っているのだ。弾はこの意味をなんとなくだが理解していた。

自分のせいで家族を危険な目に遭わせている現状に弾は悔しくて泣いていた。祖父に父に母に妹に向けて何度も何度も泣きじゃくりながら謝っていた。

だが、誰も弾を責めることはなかった。そんな余裕がないのもあったが、誰も弾のせいだと思っていなかったからだ。

「さてさて、いい加減認めてくれないかね?君はこの歴史的な瞬間に立ち会える貴重な体験をしているのだよ?」

高官の言葉に弾は反応すらしなかった。いや、その余裕が無いと言ったほうが正しい。

弾一人だけがパイプ椅子に座らされ手足を縛られている。弾の家族は弾が座っている後方にある檻の中だ。

檻の格子を掴み弾の祖父である厳は高官に向けて力の限り叫ぶ。

だが、その声を意に介さぬように振舞う高官に厳の怒りはさらに高まる。

何の反応も示さない弾に向けて高官は左手を振りかぶり平手を弾に向けて繰り出した。

乾いた音が空間内に響き渡り一瞬無音になった後、椅子が倒れる音がした。

椅子に縛られている弾は受身も取れず床に叩きつけられた。それでも反応しない。

高官はゴミでも見るような目で弾を見下ろすが、その視線に晒されても弾は反応しなかった。

檻を突き破らんばかりの怒声を厳が上げるが、檻が破れることはなく今の厳には何もできない。

厳の怒声しか響いていなかった空間内に警報が鳴り響く。

「なんだ?」

高官の一言に反応してかはたまた偶然か大型仮想ディスプレイが開き、空間内の全員がその画面に注目する。

画面に映っていたのはリアルタイムでの研究所の一角で起こっている映像だった。

赤い未確認のISが警備ロボットを破壊している映像だった。

空間内の全員がその画面に注目する中、ISを展開していた女性が通信で未確認のISがどこから来たのか調べる。

最下層にまで振動が鈍く響く。

「な、なんだアレは?」

画面に映っている赤いISは右腕を振り上げて床を破壊して徐々に最下層(ここ)へ近づいている。

高官の顔は恐怖に染まっていた。

弾はそのISが誰かわかっていた。全身装甲で顔はおろか声すらも発していないのにわかった。

直感だったのかもしれない。ただの希望だったのかもしれない。

だが、弾の思いは通じた。

「四季…」

弾の独り言のような呟きに高官が反応した。

「まさか…」

織斑四季という男の恐ろしさを高官は知っていた。

過去に違法人体実験をしていた外国の施設が一人の男から現地の政府へと通報された。

だが、その施設は国営の施設だったため国はその発言を無視した。その結果、施設はたった一人の男によって制圧された。

防衛装置は動かず、内部の人員は男の傍にいた赤い獣によって無力化され、人体実験されていた者は全員が家族のもとへ返された。

そして、追い討ちをかけるようにその国の所有していたISのコアが全て数ヶ月の間動かなかった。

それを行ったのが織斑四季。

音は徐々に近くなってくる。高官にとっての死神は徐々に近づいていた。

そして…

爆音とともに最下層の天井が破壊されて真上から赤い死神が最下層へと降り立った。

「死ぬ準備は出来ているか?」

その赤はまるで怒りの色だった。




という訳で四季君激おこです。

次回は…アレです。
地獄?


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絶対に許さないから!!!《後編》

どうしようと悩んだけど結局こうなった。
まあ、時間停止ぐらいならなんとかなるけど永劫回帰なんてどうやろうか?


最期の隔壁を破壊し最下層にたどり着いた時、一番近くにいたのはISを装備していた女だった。

日本製のISじゃなく、フランスの第2世代型IS《ラファール・リヴァイヴ》だ。

フランス所有のISが一機盗まれる事件が数ヶ月前にあったがそうゆうことか。

一夏に手が出せないから日本政府の一部に手を回して弾を回収しようとした訳か。スコールにしては雑な作戦だな。

まあ、いいや。喧嘩売ってくんなら纏めて叩き潰すだけだ。

一瞬遅れて反応したラファールの動きに合わせてこちらも動く。

ラファールは量産目的に作られたバランス型のISだ。近接も遠距離もどちらもそれなりにできるようにシステムが調整されている。そしてこの女が選んだのは遠距離での銃撃。

だが、そう簡単にやらせるほど俺は甘くはないし、このリーゼは鈍重ではない。

リーゼの瞬間突破力は他の追随を許さない。後ろに下がったラファールに一瞬以下の時間で接近しゼロ距離からバンカーを見舞う。

女の顔が焦りから恐怖そして激痛に変わり最下層の壁まで一気に吹っ飛ぶ。壁に罅を入れそのまま床に崩れ落ちる。

床に崩れ落ちたラファールは損傷が酷く直ぐに待機状態に戻った。

静寂が空間内を支配し、俺は何も言わずに檻に囚われた五反田一家を開放する。ここまで来たらISがなくても問題ないのでリーゼを待機状態に戻す。

「四季君…」

蓮さんが声をかけてくるが俺は迷わず政府の馬鹿に向けて歩を進めてその馬鹿の顔面に渾身のストレートをブチ込む。

「グペッ!」

意味のわからない言葉を発して倒れる馬鹿を睨みつけ、もう一発殴ろうとしたところを厳さんに止められる。

「もういい。止めろ」

俺は掴まれた腕を振りほどき高官を殴るのを止めた。別に厳さんに言われたからではない。最初から一発だけと決めていたからだ。

弾は既に蓮さんと妹ちゃんに助けられており、拘束も解かれていた。

「何故だ…」

声がした方を向くと、秘書に支えられながら立ち上がった高官がいた。

「何故貴様はISに乗れるのだ!!」

なんだそんなことか…

「あのなぁ、自分の使えないものを開発するような間抜け共と俺を一緒くたにするな」

俺が無表情で冷ややかに言った言葉を聞き、高官は顔を赤くさせ怒りに震えた。

俺を睨みつけ、その目は怒りというよりは殺意に満ちていた。

怒りに震えていた高官は無言で懐に潜めていた拳銃を俺に向けて警告もなしに引き金を引いた。

最下層に銃声が響き渡り、俺は未だに立っていた。俺の姿を見て高官は残弾全てを俺に向けて撃ち、弾が尽きた後も引き金を引き続けていた。

それでも俺は倒れなかった。いや、正確には拳銃より放たれた弾丸は俺に届く前に止まっていた。

「危ない奴だな…」

今、この空間の視線は俺に向いている。俺がISを展開もせずに拳銃の弾丸を止めているからだ。

そして、床に崩れ落ちていたラファールが立ち上がり、その手にはアサルトライフルが握られていた。

銃口から火が吹くように、弾丸が連続で息をつく暇もなく俺を襲う。が、これも俺には当たらず俺に中る前にその速度を止めてその場に停滞する。

ラファールが射撃を止めると搭乗者は舌打ちをしてラファールを待機状態に戻す。

「"AIC"か?」

「いいや、俺の周囲の空間の時間を止めているだけだ」

俺の発言に空間内の全員の顔が驚愕する。

俺の背後には人型の機械がいた。その手に断頭台のような刃物を付けた3m程の人型。俺の作り上げた切り札の一つ。

"永遠の刹那"

まだ時間停止も完璧ではないし、体も素体の状態なのであんまり無茶はさせたくないのだが今回は仕方ない。

"死喰い"や"戦姫"を使ってもいいのだがあの2体にはこれから仕事があるので今は使えない。

他の奴らも今はメンテナンス中なので"永遠の刹那"の出番というわけだ。

「ちっ」

ISを解除した女は舌打ちをして俺の動向を伺う。

"ヤツラ"の仲間とは思ってたがまさかオータムとはな…

今回の計画はスコールまで絡んでるのか?相変わらず俺に対して虐めじみたことしてくる女だ。

まあ、いい。俺が吹っかけなきゃ大人しくしてるだろうし。

「ああ、そうだ。お前、逮捕状出てるから大人しくしておけよ?」

残弾の尽きた拳銃を握り締めて呆然としている高官に向けてそう言い放つと高官はさらに呆然としている。理解が追いついてないな、これは…

「簡単に逃げられると思うなよ?」

一応釘を刺しておくと観念したのか項垂れるように地面にへたり込む。

こっちはこれでいいとして、オータムは放置プレイ安定として、弾だな。

「四季…」

「迷惑かけたな」

「え?」

そう。これは俺に責任の一端がある。俺がISのコアを作らなければ弾は今までどおりの生活を送ることができた。だが、これからは違う。

もう弾には普通の生活を送ることはできないだろう。ISを動かした男。それが永遠に弾に付き纏うからだ。

「いや、お前の責任じゃねえ。不用意に触った俺自身の責任だ」

弾はそう言って俺の言葉を否定した。

「だが…」

そう。俺はお前のその言葉を否定する。

「俺のせいだよ。家族みんなに迷惑かけたのもIS動かしたのも全部俺の責任だよ」

弾はそれでもなお俺の言葉を否定し続ける。

「誰がなんと言おうとお前のせいなんかじゃない。」

俺はこの言葉も否定するつもりだった。だが、言葉が出てこなかった。

「はぁ、もういい。勝手にしろ」

「なんだ、四季坊。照れてんのか?」

「うるさい」

珍しく茶化してくる厳さんをあしらいつつ今いる最下層から出ようとする。

五反田一家もついて来ているのを確認してどうしようかと考える。

「おい」

声のした方へ振り向くとオータムがいた。

「あ、忘れてたわ」

「てめえ、死にてえのか?」

「できるものなら?」

喧嘩を売ってしまったものは仕方ない。脅してくる相手に煽りで返すのは俺の趣味だ。

「とゆうか、さっさと帰れよクソテロリスト。中東らへんで人殺しでもしてろ、このバカ」

「あぁ!?最初にてめぇからぶち殺すぞ、このクソガキが!!」

煽りすぎると殺気をぶち当ててくるオータム。沸点低すぎだろコイツ…

「だから、出来るもんならやってみろっつってんだろ?先に蒸発させるぞ?」

紅蓮の右腕を部分展開していつでも輻射波動機構(レンジでチン☆)をできるようにしておく。あ、俺も沸点低かったわ。

まあ、ただの脅し合いだしいっか。俺も向こうもそこまでやる気ないし。

オータムは舌打ちをして床に唾を吐いて《アラクネ》を展開して飛び去っていった。やっぱりアイツ等が盗んだのか。いや、わかってたけど。

流石オータムさん。マジバッチイっす。

「唾吐くなよな、汚い奴だなぁ…」

そんなことを呟きながらヌルに連絡して迎えをよこすように指示を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五反田家まで迎えに来た特殊軍用バギーで帰ってきた五反田一家と俺と運転手と護衛の5人の娘(仮)。

運転手のラウシュ。護衛の4人がヒュンフ、ノイン、エルフ、エルガだった。

ノインとエルガの二人を外で警備させ、内部での護衛として残り3人を配置する。

「一応説明は日本政府に任せるから」

「くるのか?」

俺の言葉に厳さんが苛立ちながらも聞いてくる。そりゃあ、起こるわな。俺が怒られていないのが不思議なくらいだわ…

「ああ。来ないなら日本政府が人体実験しようとしたの世界中にバラすって脅したから確実に来るだろう」

「お前、鬼だな…」

次に反応したのは弾だった。その実験されそうだったのはお前だぞ?

そのまま他愛のないことを話しながら待つこと10分。

「遅いな、バラすか…」

「もうちょっと待ってやれよ」

苦笑しながら弾が突っ込んできたので待つことにした瞬間、表で警備しているノインから通信が入る。

仮想ディスプレイに表示させると現総理と護衛が10人ほど来ていた。

「御父様、日本政府のクソ野郎どもがこられました。殺しますか?」

妙に苛立ったノインの言葉にそれもいいかと考えながらエルガにノインを落ち着かせるように言っておく。

「全員通せ」

「よろしいのですか御父様?」

「ああ。いざとなったら蒸発させるからいい」

俺の言葉が聞こえていたのか総理は顔を青ざめさせている。

通神を切って、ラウシュに迎えに行かせる。

「御父様?」

妹ちゃんが呟き、五反田家全員でこっちを見る。こっち見んなし。

「保護しているだけで実の娘じゃねえよ」

「そんな御父様!!私達のことがお嫌いなのですか!?」

あ、めんどくせえことやりやがったな、コイツ…

このバカヒュンフが。めんどくさいのでスルー。

「あ、無視ですか?無視なんですか、御父様?」

コイツの絡みウザイ…

エルフは俺も含めてスルーか。相変わらずのヒッキーだな。

さて、ラウシュに連れられて入ってくる総理に視線を向けて、思考を切り替える。

ヒュンフには言わなくても伝わったのか、既に真面目な顔で総理に視線を向けている。

ギャップでちょっとアレだわ。シリアスになれないわ。

「なんで人体実験しようとしたのか説明してもらおうか?」

まあ、まずはめんどいことから片付けるか。




時間停止はAICの超絶発展型とお考え下さい。
つまりは止める対象を空間に指定してその空間内にあるもの、空間内に入ってきたものの動きを止める。
未だに試作段階なので人間が入ってきてら時間停止じゃないことがバレる。
銃弾とかなら平気で止めれるけどね。
時間止めるとかどうやればいいんだろ…
まあ、なんとかなるだろ(白目


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御父様じゃねえから!!!

原作前最後のお話。

次回から原作開始だ。


五反田家で総理を迎えて圧迫面接っぽいことをしたり脅しをかけたりして五反田家の安全を確約させたり、ウチの娘(仮)達をかわりばんこで護衛させることを無理矢理承諾させて日から一週間ぐらい経った今日。

何の日かというと、一夏と弾のことが全世界へバレる日である。

本当はもっと早くバレる予定だったが、弾があんな目にあったので少し時間を開けるように情報工作しておいた。

政府からの正式な発表なので取材陣が馬糞に群がるGのようにいる。ホント気持ち悪い。バルサンしたい。

俺は自分の船から見ているが…

家に行くと一夏目当てのパパラッチがGのようにいたので逃げてきた。

弾のところも同様だが、営業妨害になるようなら実力行使でねじ伏せるように言ってあるし、それでもしつこい様なら《死喰い》と《戦姫》を使うように言ってあるし問題ないだろう。

あー、本当にメンドクサイ。何故か俺にまでIS学園で学生やれって言われるし。しかも姉さんが強制的に言ってきてるおかげで逃げ場がないし…

「やだもー」

艦内にある自室に備え付けの簡易ベッドの上でぐったりと寝転がっていると空気の抜けるような音と共に出入り口の扉が開く。

顔だけ音源に向けて動かすと、末っ子のメーヴェが中に入ってくるところだった。

「なんか用か、メーヴェ」

特に動く必要もないのでそのままの体勢で聞く。ぶっちゃけやる気が出ない。

「御父様に通信が入っています」

メーヴェの言葉に俺は疑問を持った。この戦艦にはキチンと通信機がある。だが、その回線は普通に知ろうと思って知れるものではない。

知っているとしてもスコールと束姉と姉さんとアリサちゃんぐらいだろう。未だに各国政府から連絡来てないし。

「誰だ」

「楯無と名乗っています」

なんだ、あいつか…

警戒して損した。たく、あのヘタレめ。もういい、八つ当たりしよ。

メーヴェから通信機の子機を受け取り、ベッドに座って通信を受ける。まるっきり電話だろうにこれ。あ、こらメーヴェ俺の上に座るな。そして寝ようとするな。

「何の用だ、ヘタレ」

『酷い!!いきなり罵倒された』

「うっさい。だから貴様はダメなんだよ。さっさと用件を言え」

『苦労して見つけたのになんで罵倒されてるの私。えと、ちょっと手伝って欲しいことが…』

「簪との仲直り」

『簪ちゃんと仲直りしたくて…ハッ!』

「自分で蒔いた種だろうが。悪いが俺は簪側だ。悪く思うなよ?」

こら、メーヴェ。足をブラブラさせるな。弁慶に当たって地味に痛い。

「それに、『無能であればいい』だったか?お前の言いたいこともわからんでもないが言い方に問題がありすぎだろうが」

『うぅ…』

「というかなんだ。この程度のことで連絡してきたのか?普通に俺の携帯にかけてくればいいだろう。馬鹿なのか?」

『わ、私だって反省してるのよ!!でも、簪ちゃんとお話しようと思っても簪ちゃんに露骨に避けられちゃって…』

「自業自得だな。同情の余地すらねえ。」

『そ、そうなんだけど!!そうなんだけど!!』

げ、ハールまで来やがったのか。あ、こらお前ら膝の上で暴れんな!!

「それで?お前の尻を拭えと?それでも当主か?」

『お願い!!』

「はぁ、仲直りの手伝いをすればいいのか?」

『ありがとう、四季君』

「ただし、条件が一つだけある」

『手伝ってくれるんだもの。私に可能な限りで叶えてみせるわ!!』

「男性操縦者の家の前に群がっているマスゴミ共をどうにかしろ。それができれば手伝ってやる」

『それは一時的にじゃなくて、長期間でいいのかしら?』

「ああ。永久には無理だからな。そのうち別の話題に飛びつくだろ」

『わかったわ。じゃあ、これで』

通信機からの音が消えた途端にメーヴェとハールが首に抱きつくように飛びついてきた。

「「御父様ー」」

「重っ!!」

いきなりのことに反応が出来ず通信機を床に落としてしまったが、仕方ない。

そんなことよりも今は俺の首に拘束具バリにくっついて離れようとしないこいつ等二人だ。

「「抱っこー」」

「離れろ!!」

「「やー」」

くっそ、めんどくせえ。ていうか、重い。

「御父様、少しご報告が…って、貴女達何をしているんですか!?」

今度はヌルかよ。これ以上は俺のSAN値がシャレにならん。逃げよ。

ヌルが二人を引き剥がしたのと同時に部屋を出る。3人の声が聞こえた気がするが、それは気のせいだ。

重要機密区画を抜けて格納庫に到着すればあとはこっちのもんだ。ハッチを開いて海中に飛び込んでリーゼを展開。

もうこのまま家まで行こう。本当に疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあやあ。お帰り、しーくん」

マスゴミのいなくなった家は実に快適だった。だが、自室に行くと何故か束姉がいた。

今日は厄日なんだろう。きっとそうなんだ。俺の心が折れた音が聞こえた気がしたが、もうどうでもいいや。

「どこ行くのさ…」

「二人っきりになれるところだよ」

束姉が妖艶な流し目をこちらに送りながら不敵な笑みを浮かべるが、俺はため息を付くだけだった。

束姉のいった意味は普通に考えればラブの方のホテルに行くとか想像できるが、この人は普通ではなく天災だ。間違ってもまともに捉えてはいけない。

そう、二人っきりになれる。束姉はそう言った。つまり誰もいない場所、無人島とか束姉のラボとかそこら辺だろう。

宇宙には行かないはずだ。多分。

「ラボ?」

「うん。ステルス月面基地はまだ未完成でね…」

あ、この人やりやがった…

「お、おう…」

「はいいくよ、そら行くよ~」

束姉に手を引かれて家の外に行くと、庭に巨大な人参が鎮座していた。意味がわからない。

「はい乗って~」

あ、やっぱりこれに乗るんだ。俺の精神がガリガリと削れていってるが大丈夫なのか、俺…

束姉と密着体制で暫くいると音も振動もなく到着した。流石だわ。

束姉のラボに来るのも2年半ぶりか?

自動扉をいくつか潜ると、白髪の少女がいた。

「これ誰だよ?」

少女に指差して束姉に聞くと、指を少女に優しく包み込まれた。

予想外過ぎてビクッと反応してしまった。いや、正直折ってくるのかと思った。こんな普通の反応とか久方ぶりだわ。

アリサちゃんも姉さんも基本的に折りに来るから…

「モンドグロッソの時の子だよ」

ああ、あの時の。

"焔獅子"と"薔薇騎士"で軽く捻ってガウェインに預けた子か。

「クロエ・クロニクルと申します。その節は大変お世話になりました、四季御父様」

「なんで御父様!?」

「束さんの教育の賜物なのだ!!」

やっぱりあんたのせいか!!

「私の妹たちも助けていただいたそうで、心の底から感謝しています」

クロエは指だけでなく掌全体を包み込む。優しく、まるで壊れ物を扱うかのように…

「お、おう…」

無理矢理に吐き出した言葉はこれが限界だった。いや、本当に無理です。

「しばらく手を繋いであげて。クーちゃん、君に会いたがってたから」

束姉に言われたからではないが手を解く気はなかった。なんでかは自分にも解らなかった。

「あ、それでね。ここに呼んだ本題なんだけど…」

「あ、このまま始めるんだ」

相変わらず読めない。というかクロエいていいんだ。どこまで話したんだ…

「第4世代型の件なんだけどね、予定通りに行こうと思うんだ」

「展開装甲か…」

「うん。一応第5世代型の試作案も考えているんだけれどアレは宇宙に行かないと意味がないからね」

「わかった。俺に異論はない」

そう。俺たちの目的のために必要なことだ。これでさらに政府の追跡は強まるしIS学園にすら特殊部隊が送り込まれるだろうが、仕方ない。

この程度の言葉で済ませていいことではないが、それでも俺たちの思惑は止まらない。

必要な犠牲。未来のための礎。どんな美辞麗句を並べ立てようが俺たちがやろうとしていることは犯罪だ。いや、それ以上か…

「しーくん、降りてもいいんだよ?」

束姉の言葉に俺は考えることを止めて首を横に振った。

「今更除け者にすんなよ。俺だって開発者の一人なんだ。背負うさ」

「そっか。無茶しちゃダメだからね?」

「束姉こそめんどくさいことするなよ?」

「ウンワカッタヨー」

最期の返事だけ明後日の方向を向いて棒読みだったのはなんだ?

アレか?ちょっかい出しにくんのか?

死なない程度に相手してやるけど俺の造った無人機使うなよ?

一応プロテクト掛けとくか…

あ、ダメだ。直ぐに破られるわ…

さて、娘がさらに増えたこの状況。一体どうするべきか…




クーちゃん出てなかったなと思って一応お情け程度に出しといた。
ごめんよクーちゃん。

あとついでに百式と紅椿のフラグ(?)を立てて、最後にシリアス(?)で締め。

次回は1-1の自己紹介とチョロイン(メシマズ)を絡ませてさっさとクラス代表決めてしまおう。
ただ、四季君参加させると四季くんの一人勝ちだからどうしようか…


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原作開始
見世物とか趣味じゃねえから!!!


これからはさらに更新が遅れるかも。
リアルが忙しいし、色々とやることも出来てきた。
つまりは年をとった。

別に誕生日が来たわけではないよ?


春。それは出会いと別れの季節にして変人が一番増える季節だ。まあ、そんなどうでもいいことは置いといて…

一夏と弾は政府から半ば強制的にIS学園へと入学させられた。キチンと試験を受けて。まあ、試験の結果が悪くても強制だっただろうが。

そして俺は2・3年の整備科の臨時講師を受け持ってるので断れた。そう思ってた時期が俺にもありました。

なんでだよ。俺にも一夏と弾に混じって動物園のパンダ(見世物)になれと申すか、姉上よ。アレ?アリサちゃんと束姉まで絡んでんの?そんなに俺が憎いか?え、愛?何故そこで愛!?

拒否りたいけど既に決まっちまったとか意味がわからない。もうやだ。イライラしたのでEUの株を軽く暴落させた。直ぐに元に戻しておいたし、大丈夫だろ。

今現在は入学式も終わったので教室で教師が来るのを待っている状態だ。というか周囲の視線がうざい。前の席にいる一夏、右隣にいる弾は気不味いのか硬直している。

まあ、アレだな。パンダさんはこんな気持ちなのかー。なんて、アホな感想を抱きつつ仮想ディスプレイに表示されたデータを見て仮想キーボードで別のデータを入力していく。

まあ、窓際の一番前に知った顔がいるので一夏は時折そちらに視線を飛ばすが、無効はガン無視。弾は弾で諦めたのか目を瞑って視覚を遮断。馬鹿だな、そんなことをすれば余計に気になるだろ。ほら、直ぐに目を開いた。

本当に暇な奴らだな。こっちを見ることしかできんのか?教科書開いて予習復習しろよ。こっちはこっちで束姉に渡す展開装甲の仮想実験データの整理中だし。

ヌル達にVRでやらせてみたところ結構高評価だったな。"残月"に取り付けて欲しいとか言ってきた。試作段階なので無理だと言ったら悄気てたのは印象的だったな。そんなに良かったか、アレ?

一夏と弾にとって拷問にも等しい時間は唐突に終わりを告げた。扉が開き副担任の山田先生が来たからだ。

一夏と弾はまるで女神でも見るような目で見ていた。山田先生が軽く悲鳴をあげそうになっていたが。

そこからは自己紹介が名簿順で始まった。正直どうでもいい。自己紹介は遂に一夏の番になった。

一夏は未だに硬直しており、自分の番が来たことに気づいていなかった。仕方ないので後ろの席にいる俺が一夏が座っている椅子を蹴って意識を現実に戻す。

愚弟の不始末をするのも兄の務め。断じて八つ当たりで蹴った訳ではない。いや、マジで。

「呼ばれてんだからさっさと済ましてこい、ド阿呆」

思わず本音が口から溢れてしまった。反省はしない。事実だし。

山田先生と弾は苦笑い、他のクラスメイトは呆然とし、被害者の一夏はこっちに抗議の視線を送りながら立ち上がる。

「えっと、織斑一夏です……」

終わった。え、これで終わりかよ…

そして、一夏に教室中の全視線が注がれる。それに気づかないほど一夏も間抜けではない。一時期は剣道を習っていたのだから。そうゆうことにしておこう。

一夏は息を吸う。その行動にクラスの全員が反応する。中には机に乗り出すものまで居るくらいに。

「……以上です!!!」

俺は頭を抑え、他の全員はギャグ漫画のように器用に転けていた。いや、本当に愚弟だわ。

「お前は自己紹介もマトモにできんのか!?」

教室に入ってきた姉上こと織斑千冬に一撃で沈められた愚弟を見て俺はちょっとビビった。

まあ、割といつもの光景だな。まあ、クラスメイトの前でやるとは思わなかったけど。弾もアチャーって顔してるし…

「げぇっ!?波旬!?」

「誰が第六天魔だ!?」

なんで姉さんが波旬知ってんだよ?束姉だな。あのアホロクなことしないな…

一夏の頭に降ろされた出席簿が俺の方にも向く。えー。俺もっすか?

視線で、キチンとやらないと殺すって言われても…

というか、俺のこと知らない奴っていないだろう。仮にもISのこと勉強しに来るやつらだぜ?その生みの親の一人を知らないとか草生えるわ。

姉さん。俺は飛ばしていいですよね?あ、ダメっすか。えー。

やりたくねえ。この愚弟の後とか気が滅入るわ。

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

「ああ。クラスへの挨拶を押し付けて済まなかったな」

山田先生と少し話をした姉上は俺たち生徒に向き直る。若干微笑んで。

「私が織斑千冬だ。貴様らを一年で使い物にするのが私の仕事だ。私の言葉をよく聞き、よく理解しろ。私の言うことには『はい』か『イエス』で答えろ。逆らってもいいがあとは知らんぞ」

姉上のよそ行きの微笑みに騙されたクラスメイトが黄色い悲鳴をあげる。鼓膜が破れんばかりの勢いで。

「キャーーーー!!千冬様、生の千冬様よ!!」

「ずっとファンでした!!」

「私お姉様に憧れてここに来たんです。北九州から!」

「あの千冬様に御指導いただけるなんて、感激です!」

「キャーーー!!お姉さま、夜戦しよ!!」

本当に五月蝿い。弾も耳を塞ぎながら辟易している。一夏はまたくだらない事を考えてるな。あの顔は南瓜の煮物定食のことを考えてんな。てか、なんでそれを考えた?

「……まったく。毎年良くもこれだけ馬鹿を見つけてこれるものだな。それとも馬鹿を私のクラスに押し込めているのか?」

姉上、ご苦労様です。でも、バカの部分で俺達3人を見るのは止めてください。少なくとも俺は違うんで。

「キャーーーーー!!千冬様!!もっと叱って、罵って!!」

「でも時には優しくして!!」

「ちくわ大明神」

「そしてつけあがらないように躾をして!!」

「誰だ今の?」

本当に五月蝿い。騒乱罪で逮捕出来んじゃないかってぐらいに五月蝿い。

にしても弾のやつ。さりげにちくわ大明神やりやがったな。よくやった。

「で?貴様は満足に自己紹介もできんのか?」

「いや、だって千冬姉…」

また叩かれた。本当に馬鹿だな。

「織斑先生と呼べ」

「はい」

もう叩かれたくないのか頭を抑えて返事をする。ただのアホ。

「え、織斑君って千冬様の弟?」

苗字で気づけよ。一応テレビで報道されただろう。

そして俺に視線を送る姉さん。

「俺も?」

「当たり前だ」

「いや、ぶっちゃけ俺のこと知らない奴いないだろ?」

「やれ」

視線で教室内の温度が下がっていく気がする。とゆうか殺気を込めないでください。

姉さんマジ怖い。

「えー、めんどい。織斑四季。整備科臨時講師兼任してます。以上」

一夏よりはマシだろう。と、思ったら出席簿が襲ってきた。

左手で止めると姉さんが睨んでくる。暴力はいけない。

「全く。この愚弟共が。」

自室も掃除できない人が何か言ってる。危ないから出席簿で攻撃するのやめてください。

暴力系ヒロインはディスられるだけなんで止めた方がいいと思います。まあ、攻略対象キャラでもなんでもないというかギャルゲでもないしどうでもいいか。

まあ、いいや。めんどいことは終わったし。

「え!?まさか、織斑博士?」

「ISの開発者の一人がなんで?」

本当になんで俺がここで生徒やらなきゃならないのかわからん。俺、講師も続投するんだぞ?講師兼生徒ってなんだよ?わけわからんわ

後、何故か箒が俺を睨んでくる。意味がわからん。お前の狙いは一夏であって俺ではないだろう?アレか?ISの開発に協力したことを未だに怒っているのか?それとも去年会いに行った時に膝カックンしたことを怒っているのか?アレはお茶目心を出してみただけだし許せよ。

おかしい、さらに睨まれた。まあいいや、ほっとこ。

「次」

姉さんが一言。命令のように吐き出す。というかほぼ命令だよなこれ。

立ち上がるのは俺の後ろではなく、右隣に座っていた弾だ。実は今の席順って割と適当なんだよね。

「えと、五反田弾です。実家が定食屋なんで料理はある程度できます。ISに関してはド素人ですので色々と迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」

弾の自己紹介に男子中で最高評価の栄誉なのか、拍手が疎らに送られた。姉さんも頷いている。

「なんで貴様らは弾のようにキチンと出来ないのだ!!常識をどこに忘れてきた?」

姉さんからの怒声に一夏が気まずそうに視線を逸らす。姉さんに追撃を掛けられ再び頭を抑えて痛みに耐える一夏。馬鹿だ。

そして、怒りの矛先が俺に向く。チョーコワイッス。

「常識なんてIS作ってる途中で捨てちまったよ」

出席簿が飛んできたがもう一度左手で止める。

「ごめんなさい、反省してます」

一応形だけでも言葉にしておくと、殺気を向けられた。やっぱり心にないこと言っても無駄か。

俺たちばかりに構ってるわけにも行かず、次の生徒の自己紹介に入る。

はあ。どうでもいいけど、ISの授業って俺受ける意味ないんだけどなぁ…

自己紹介中に箒が癇癪起こして、ダブ子がマイペースに挨拶していたのが少し印象的だったな。




という訳でやっとのことで原作開始。
次回、チョロイン登場。


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4回も捨てるとかありえないから!!!

やっとできた。
いや、特に何かあってわけではなくテンションの問題。

やっと戦国†恋姫Xの情報が解禁されてウハウハしてたら筆が乗った。
ということでセッシーは次回。


自己紹介という名のSHR(ショートホームルーム)が終わり、一時間目の授業である『IS基礎理論』が始まり、それがつい今しがた終わった。

弾は即席ではあるが俺が直接頭に叩き込んだのでなんとかついていけたようだが、一夏はダメだった。

燃え尽きている。

この一言に尽きる。

机に突っ伏してブツブツと呟く一夏。はっきり言ってウザイ。耳障りなので椅子を蹴って黙らす。

「何すんだよ!?」

「ウザイから黙れ」

一夏が立ち上がってこちらを見て怒ってくるが、即座に黙らす。

さらに一夏が言い返そうとしたところによく知る人影が現れる。

「少し、いいか」

箒だ。やっと来たかコノヤロー。

「箒?」

一夏は箒に対して「さっきなんで助けてくれなかったんだよー、まあいいや」的な視線を向ける。

「内容は言わずともわかった。さっさと連れてけ」

誰かが口を開く前に俺が言うことで黙殺する。一夏は何のことかわからず首を傾げ、弾は話に入り込む余地がないのを理解してか自ら口を開かず、箒は俺の顔を暫く見るなり何も言わずに一夏を連れ去った。

いや、何か言ってけよとは思ったものの、ボッチにはキツかったかと頭の片隅で納得することにした。コミュ障の箒ちゃんには荷が重かったか。

仮想ディスプレイに表示されたデータを目で追っていると視界の片隅に弾が映る。何かを言いたそうにしている。

「なあ…」

弾が珍しく聴きにくそうに声を掛ける。言おうとしている内容は理解している。

「一夏病の末期患者だ」

「やっぱりか…。鈴も大変そうだな…」

弾が天井を見上げて遠い目をする。別にお前には関係ない事なんだしそこまで心配することか?

「それで、お前としては誰を応援するんだ?」

弾の質問の意図がよくわからなかったので、ディスプレイから視線を外して弾に向ける。

「何がだ?」

「だから、お前としては一夏が誰を選ぶと思うんだって話」

弾の発言に先程から無視していたクラス内及び教室の外から聞こえていた見物人たちの一切の喧騒が消えた。

さっきからチラチラとこちらを見ていた視線が消え、代わりにこちらの微かな挙動も見逃さんとする視線が無数に…

所謂ガン見である。こっちみんな。

「一夏と結婚すると仮定してさ、千冬さんにとっては義妹、四季にとっては義姉になるわけだろ。其処らへんお前はどう思ってんのかなぁって」

「何故一番最初に結婚という単語が出てきたのかは聞かないでおくとして、どう思うも何も俺や姉さんが決めることじゃないだろ。アイツを惚れさせた女がそうなるだけだ。」

俺の発言に弾は「まあ、そうなるな」的な表情で頷く。外野が五月蝿いが無視だ無視。

「だけどさ、アレを惚れさせることが出来るのか?校舎の屋上に呼び出されて告白されたのにそれにすら気づかなかった男だぞ?」

「出来なきゃアイツが独身貴族のまま生涯を終えるだけだろう」

弾は納得いかないという顔で不満そうにしている。だから、お前に関係ないだろうに。おい、そこのアホ。カップリングすんな。

「まあ、俺と姉さんの共通見解としては…。今の女尊男卑の風潮に犯されている奴らはアウトだな。あとは物珍しさで近づいてくる奴らも」

俺が周りに視線を向けると殆どの生徒が顔を背けた。唯一の例外としてダブ子がニヘラとこっちに笑顔を向けているぐらいか。

弾もこれには同意見のようで「俺も同じだな」としきりに頷いている。そりゃそうだ。誰が好き好んでゴミとしてしか見ないような女と結婚したがるんだか…

視線の尽くを無視している俺だが、弾は気にしないということは無理なのか、周りを気にして気まずそうにしている。無視すればいいものを…

そんな弾を放っておいて俺はディスプレイに視線を戻し、再びデータを目で追う。おい、誰だ俺のことを総受けにした奴!?

「ま、俺も一夏もお前も姉さんとアリサちゃんクラスの美人は見飽きてるからなぁ…」

「アリサさんと千冬さん以上の美人なんているのか?」

「いないだろう。つまりは俺たち3人を誘惑(ハニトラ)したいならあの二人以上の美人になってから出直してこいって話な訳だ」

その瞬間、周りで俺たちの行動を伺っていた女子全員が無言で崩れ落ちた。

ダブ子は周りに付き合って崩れ落ちた真似をしていたが、首を傾げてこっちを見る。いや、こっち見んな。

弾はこの光景に入学前まで興奮したように燥いでいた女子高への妄想が砕けたような濁った目で「うわー」と棒読みで口にしている。

「織斑先生以上…どうすれば……」

「あの二人以上の美人?いるわけないじゃない…」

「私の美しさが……崩壊していく…」

「今日のお昼はカレーうどんにしよう」

「え、じゃあ私天ざるにする」

「私はスープ・ウ・ダンヌゥにするよ」

「何それかっこいい」

絶望していたと思ったらお昼ご飯の話になってた。女って強いよね。姉さんとか怖いだけだけど…

既に全員が立ち上がってワイワイと思い思いに昼飯の話をしている。麺類にする者、定食にする者、丼にする者。果てしなくどうでもいい。

「そういや、四季は昼飯どうするんだ?」

「食うけど?」

「いや、そうじゃなくて…」

「いつもどおり」

「よく太らないよな。一食4000kcal以上だろ?」

弾の発言に、今まで姦しく耳障りだった喧騒が止んだ。いや、こっちみんな。

「ああ。俺も一夏も姉さんもいくら食っても太らない体質だからな。ダイエットとか贅肉とか断食とかやったこともないしする必要もないね」

俺の発言に女は憎々しげにこちらを睨んでくる。いや、だからこっちみんなよ。

流石にこれにはダブ子も頭に青筋立ててこっちを睨んでくる。いや、ガン飛ばしてくんなよ…

流石は現役メイド。鋭い眼光です。姉さんとアリサちゃんには遠く及ばないものの…

てゆうか、お前の場合は全部胸に行ってるだけで、太ってないだろダブ子。体重が増えても胸が重くなっただけだ、安心しろ。え、ダメ?我侭な奴だな。

そんなこんなをしている内に休み時間も終わり、野次馬は帰り、一夏と箒も帰ってきた。未だに少数の野次馬(バカ)(特に新聞部の黛)が残っていたが戻ってきた千冬姉さんの怒声に蜘蛛の子を散らすように自分のクラスへと帰っていった。

 

 

 

「ではここまででわからない人はいますか?」

山田先生のかなり砕いた感じの馬鹿でも理解できそうな説明が終わり、念のためいないとは思うけど万が一いたらどうしようという顔で山田先生がクラスを見渡す。

挙げられている手はただ一人のもの。|唐変木と鈍感を無量大数で煮詰めて八百万した男《ただのアホ》、織斑一夏ただひとり。

「では織斑君。どこかわからないところがありましたか?」

ダメ男と結婚した妻のような顔で一夏に質問する山田先生。教師の鏡というよりは最早天使の領域だろう。

「はい。ほとんど全部わかりません!」

山田先生の顔が引きつった。天使でもこのバカをどうにかするのは無理だったようだ。

「えっと…。では今の段階でわからない方はいますか?」

顔を引きつらせながらもクラスを見渡して質問をするも、その数はない。一夏ただひとりがわからない。

「え?弾、お前わかるのかよ?」

「四季から叩き込まれたから、一応って程度には。てかお前、入学前に必読って書いてあった電話帳並みの冊子読んでないのか?」

「電話帳と間違えて捨てた」

一夏の馬鹿な発言に今まで黙っていた姉さんも額に青筋を浮かべて出席簿で一夏の頭を叩いた。スパーンと。

姉さんの眼光が俺に向くが、俺は首を横に振る。

「3回目まではちゃんと戻した。キチンと必読するようにも言った。なのにこの馬鹿は4回も捨てやがったんだぞ?これ以上面倒見切れんわ。仏の顔も三度までだ。」

俺の発言に姉さんは無言で一夏の頭を三度叩く。自業自得だ。

なんであいつは4回も同じ間違いをしたんだ?我が弟ながら不思議でならん。クラスの一部が、織斑君羨ましいとか言ってるがんなもん知るか。

「すいません…」

一夏の口から漏れ出るように謝罪の言葉が出るが、遅すぎるわ。

「後で再発行してやるから一週間で覚えろ」

「え、あの厚さはちょっと無理」

「やれ」

「はい」

姉さんに口答えするとか一夏も勇気あるよなー

ああいう部分は尊敬でき…ないな。

結果、一夏は山田先生と放課後の個人授業(意味深)を受ける羽目になった。また毒牙にかけるのか。これで何人目だよ。

いろんな意味で果てしなく不安だ。

しかもさっきからヌルから通信が入ってくるが授業中なのでふつうに無視。

通信機、携帯、ISの全部にかけてくんなよ…




次回、セッシー(笑)
さて、イギリス終了してあげようかな。
アーサー王の生まれ故郷だしそれなりに手加減はしよう。
でもFGOやってないんだよな…
艦これで手一杯だし。


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お前のことなんか知らねえから!!!

早めにできたけど恐らくこれが今年最後の投稿だと思う。


という訳でオルコッ党の皆様お待たせしました。
チョロインのご登場です


「ちょっと、よろしくて?」

「よろしくない」

いきなり声を掛けられたが3時間目が始まる前に職員室に行って整備科関連の資料を取ってこないとならない。あ、そうだ。次の整備科の授業は抜き打ちテストにしよう。そうしよう。

大して重くもない腰を上げて教室を出る。後ろから「なんなんですの、アレは!?」とか「ムッキーー!!」とか聞こえるが知らない。知らぬ知らぬ聞こえぬ見えん。いや、目は開けてるし耳栓もしてないけど。

にしてもあの金髪。女性権利団体みたいな思考してそうな顔だったな。アレはメンドクサイ。顔面に拳が飛んで行きそうなぐらいにメンドクサイ。

まあ、殴っても良かったとは思うけど姉さんに後で説教されるのが確実になるからやらないけど。あ、でも…。腹パンならギリセーフか?よし、腹パンにしよ。

「あ、四季君」

目の前に現れたのはシスコン生徒会長だった。腹パンしてやった。

「グホッ!?」

「無言の腹パン」

生徒会長は倒れた。特に何も手に入らなかったので額に「簪ちゃんLOVE」と書いて扇子を奪っておく。

あ、そういやコイツの扇子ってISの待機状態だっけ?まあいいや。序でに整備しておこう。あのあとの戦闘データも欲しいし。

「ちょっ…待って……」

俺は職員室へと急いだ。

後ろからの発言は咳き込んでてうまく聞き取れなかった。

そして、この時の発言を聞き取れなかったのを俺は後日後悔することになるがそれは特に語らない。

そう。せめて、一度振り返っておけば良かったと思うが特に語りはしない。あんなこと思い出したくもない。

この時の楯無の表情が恍惚の表情だったことを俺は知らない。

 

 

 

 

 

目の前の扉が音もなく開き、その内部へと歩を進める。

去年からそれなりに慣れ親しんだ光景だ。幾つものデスクが並びそれぞれのデスクで教師が次の授業の準備をしたり、談笑をしたり、抜き打ち用のテストを作ったりしている。

最初に俺に気づいたのはアリサちゃんだった。

「あら、どうしましたか四季?」

アリサちゃんの声に反応してか、職員室中の視線が俺を射抜く。こっちみんな。

「整備科の次の授業を抜き打ちテストにするから問題つくりに来ただけ」

アリサちゃんは興味が失せたのか「そうですか」と言って自分のデスクに置いてあるノートパソコンに向き直る。

因みに俺のデスクはアリサちゃんの正面にあり、俺の両隣は姉さんと山田先生になる。改めて思うがなんだこの配置。

自分のデスクに向かい、資料を探す傍らテストを作る。時折、部活棟管理担当の榊原や数学担当のエドワースがお菓子を持ってきたりお茶を淹れてくれたりするが、お前ら仕事しろよ。

「四季、授業はどうする?」

予鈴も鳴り、授業に向かうため準備をしている姉さんに聞かれ、考える。

「クラス代表決めるんでしょ?俺はなれないから居ても居なくても変わんないだろうし、テスト作り終わったら行く。」

姉さんの方を見ずに画面と睨めっこしながら答える。姉さんは「そうか」と一言だけ残し、俺の頭を一撫でして授業に向かう。山田先生もその後に続く。

アリサちゃんは保健室に向かい、俺と授業のない他数人が残る。轡木さんもいるし、ハーレム状態じゃないけどな。

授業のチャイムが鳴り、10分ぐらい経った頃、パソコンにメールが届いた。

差出人、織斑マドカ……

………無視でいいや。

この忙しい時に何がしたいんだ、あいつは?

後回しにして、テストを完成させる。またメールが届いた。

差出人、クロエ・クロニクル……

……後にしよう。授業に出なかったら姉さんに怒られるし。

俺はパソコンの電源を落として授業に向かう。

昼休みに戻った時にそれぞれ100通程来ていてウザくなるのはここだけの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

思わずため息が出るこの状況。本当に人間が愚かしいと心の底から思える状況に遭遇した時、他の人はどんな反応をするのか少しだけ興味が湧いた。あ、姉さんが睨んでるから現実逃避するの止めよ。

「四季!お前も何か言ってやれよ!!」

「貴方も私の祖国を馬鹿にしますの!?」

もう、めんどくせえよ。こいつ等。

弾。目を逸らしてないでどうにかしろ。

「くだらねえ」

取り敢えず、こいつら馬鹿にはこの言葉がお似合いだ。

「「なっ!?」」

馬鹿共が心の底から驚いているがそんなのどうでもいい。これを馬鹿だと言わなくてなんて言えばいいのか俺は知らない。

姉さんの視線が若干和らいだけど未だに睨まれてる。俺、なんかしたっけ?

「わからないか?今は授業中だろうが。常識的に考えて授業中に喧嘩するなって話だろうが。国を侮辱?知るかそんなもん。放課後にでも言い合っとけ、このアホども」

俺の言葉に弾は頷くだけ。いや、まずはお前が止めろよ。アホ共はグウのネも出ないのかぐぬぬ顔してる。姉さんはやっと終わったかという感じの顔で鼻で冷笑する。

「くっ「殺せ」…って誰ですの!?私のセリフをおかしくしたのわ!?」

ナイスだダブ子。俺はお前を賞賛しよう。

「貴方も所詮は愚かな男…。育ての親の顔が見てみたいですわ!!」

金髪の発言に俺の事情を知っている者は顔を青くし、それ以外は顔をムッとさせた。

幾ら女性優位の世の中になったとはいえ、金髪の言い方は反感を買うものだ。親兄弟を悪く言うのはどの時代でもNGということだ。

それに、この金髪は俺が来る前にも人種差別系の発言というより暴言をしているらしい。お前が先に言ってんじゃねえか!!

「俺と一夏の育ての親ならそこにいるぞ」

俺は迷わずに黒板を指差す。正確には教卓に立って額に青筋を浮かべながら殺気の漏れ出ている姉さんを…

この瞬間、金髪は自分が殺されたと錯覚した。

歯がガチガチと震えによって打ち鳴らされ、恐怖で身がすくみ、自分の全身から血の気が引いていくのが手に取るようにわかる。

他のクラスメイトも短い悲鳴を上げて震え上がる。

俺は迷わずに言葉を続ける。

「ほら、文句があるんだろ?言ってみろよ。俺たち兄弟の育ての親であり実の姉。世界最強のブリュンヒルデに言ってやれよ。『貴方の育て方は間違っている』とでも言いたかったのか?まあ、なんでもいいが…。言わなくていいのか?」

一夏の方を見ると一夏と弾の二人がもうダメと視線でメッセージを送っていた。え、もう?この程度でダメ?

姉さんの方を見ると、殺気がさっきよりも漏れでていた。俺に向けて。

あ、やべ。チビリそう。

ブリュンヒルデって言ったからスッゲェ怒ってる。姉さんこの二つ名嫌いだからな…

「四季、四季!落ち着け!!オルコットさんのライフはもうゼロだから」

「オルコットって誰?」

「………」

何故黙ったし?おい、そこで金髪に同情の視線を向けるなよ、可哀想だろ

「わ、私をしし、知らない…ですって…」

足をガクガクと震わせて俺に指を向ける金髪。顔が青いぞ。大丈夫か?

「知らねえよ。ウィキペディアに載ってから出直してこい!」

「何故ウィキペディア…」

「ん?ニコニコ大百科の方が良かったか?」

「ちがう、そうじゃない」

弾のツッコミが姉さんの殺気に当てられて冴え渡らない。微妙なツッコミにしかなってない。

「姉さん落ち着け」

「織斑先生だ」

「じゃあ、織斑先生落ち着いてください」

「ちっ…」

なんで舌打ちしたのかはわからないが、殺気は収まったのでよしとする。

「さて、話は纏まったな。勝負は一週間後の月曜。放課後に第3アリーナで執り行う。織斑弟と五反田とオルコットは各自準備をしておけ。では授業をはじめる」

何一つ纏まっていないが姉さんが無理やり纏めて決闘が成立したらしい。

「せ、先生。そこの男は何故参加していないんですの!?」

「ソレが出るとソレの一人勝ちで決まる。そうでなくても一応教師に一人だからな。クラス代表になることはできん」

金髪の質問に姉さんが答え、絶句する金髪を残して授業が始まる。

何故か当てられるのは俺。いや、IS関連だから教科書見る必要ないのは確かだけどさ…

姉さん、八つ当たりですか?それともブリュンヒルデって言ったこと怒ってる?

え、また俺?あ、はい…




次回は寮の話と多分簪ちゃんの話。
7割の確率で来年になると思う。

という訳で先に言っておきます。
皆様、良いお年を。


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着替えと充電器だけとかありえないから!!!

水が上から下に流れ、洗面台へとぶつかる。そんな音がする中、水音に紛れて啜り泣くような声が聞こえる。

声の主は学園最強の名を持つ生徒たちの長。更識楯無。生徒会室から直通の専用トイレで泣きながら額の文字を消していた。

彼女の今日の運勢は最悪だった。目覚まし時計は電池切れで鳴らず、彼女の従者である虚が起こしに来た。寝癖はなかなか治らず、いつもの倍の時間が掛かった。午前中は何故か自分がよく当てられたが、これは特に関係ない気がする。そして、極めつけは廊下で見かけた初恋の人に腹パンされた挙句に自身の半身とも言える専用機を奪われた挙句の額に落書き…

しかも、全然落ちない。油性じゃないのか?と疑問を抱くも彼女には考えている暇はない。生徒会長である以上授業に出ないという選択肢はないのだ。

必死に額を擦るのも痛くなってきた。額を鏡で除くと若干赤くなっていた。涙が出るが楯無は流れ落ちる前に袖で拭う。

「ぐすっ……ひっく…。私、何かしたっけ?」

だが、拭えども拭えども涙は溢れてくる。一向に止まること無く、滝のように目から溢れてくる。それでも拭う。

「お嬢様、この液体をお使いください」

ドアを開けて入ってきたのは楯無の従者である虚だ。彼女のから手渡されたのは薬品と思しき液体が入った容器だ。

「これは…」

「はい。先ほど四季博士…いえ、四季先生に整備課の件で質問に伺ったおりに頂きました。流石にやりすぎたと仰っておりました。それと、ISの方は点検しといてやる。とのことです」

「四季君…!!」

楯無は今、ここに居らず職員室にいるであろう四季に感謝した。元凶にも関わらず…。

虚は神に祈る体勢で四季の名を呼んでキャーキャー言ってる自分の主を見る。そして、ため息をつく。

ため息をついていても何も変わらないのは解りきったことなので、彼女は自分の主を宥めて授業に遅れないようにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうダメだ」

「まだ終わってないだろ。やれ」

「鬼!悪魔!四季!」

「2倍に増やすぞ?」

「すいません」

放課後になったIS学園内の1年1組の教室は喧騒に包まれていた。というか、五月蝿い。

今も放課後になったことで休み時間以上に野次馬が俺たち男子生徒を見物しに来ている。しかも、あちこちから話し声が聞こえるので、あんまり気分はいい物ではない。いや、はっきり言おう。かなりウザイ。

放課後になった途端に泣きついてきた愚弟にISの基礎知識を教えているのだが、正直に言って芳しくない。一夏はやればできる子なのだが、周囲の野次馬が集中力を削いでいるせいだろう。

「あ、良かったです。まだいましたね」

「山田先生?」

野次馬を掻き分けて現れたのは1年1組の副担任の山田先生だった。相変わらず生徒にしか見えない。おっぱいデカいけど。

弾も山田先生の胸をチラ見しては目を逸らしている。いや、それバレバレだぞ?

「皆さんの寮の部屋が決まりました」

ああ。そういえば、色々ときな臭く動いてる組織が複数あったから、急遽寮の部屋割りを見直すって姉さんが言ってたな。

「空き部屋はなかったはずだから、一人部屋の場所に無理やり押し込めたな?」

「あ、あはは」

否定しなかったってことはそういうことか…

いや、荷物どうすんだよ…

着替えすらないぞ。というか、下着すらないぞ…

「え、俺たちの入寮って一週間はかかるって話じゃ…」

「仕方ないわな…。各国の諜報機関の特殊部隊が非公式に入国している状況じゃ、家に帰すわけにも行かないしな」

「「え!?」」

弾と一夏、それにこの話を聞いている野次馬どもが驚きの声を上げる。

「だ、ダメですよ!それ機密なんですから!!」

「アメリカ、フランス、イタリア、イスラエル、アフリカ…他にも結構来てるな…。お、テロリストも来てる。日本の警備ガバガバだな」

案の定、スコールの部下まで来ている。いや、これは下部組織の連中か?

弾の実家である五反田食堂には《死喰い(トヴァルカイン)》と《戦乙女(ヴァルキュリア)》もステルス状態で待機させてるし問題ないだろう。

娘(仮)達も3人交代制で一週間程護衛に回してるし、我が家に関しては無人状態なので入ろうと思えば入れるが、捕獲されれば数ヶ月は誰にも発見されずに身動き一つ出来ず、声も上げられずにお陀仏だ。

一応周囲を探られているが特に面倒ごとを起こすわけでもないから放置。というか特殊部隊とか派遣するぐらいなら自国のために使えよ。税金の無駄だ。

「取り敢えず各国には警告文送ってコアいくつか停止させといたから問題ないだろ」

「「うわぁ……」」

コアが停止することはデメリットしか発生しない。ISの研究は進まない。防衛の要にもなっているので国家防衛が疎かになる。これだけでも小国の国家予算並みの損失が発生する。

まあ。自業自得なんですけどね。ハニトラは見つけ次第腹パンして拉致って眠らせて卵巣摘出するって脅しといたし大丈夫だろ。

という訳で各国からの謝罪文とか諸々がスパムメールのようにドシドシと送られてくる。そこはかとなくウザイ。

流石に悪いと……思わないな。自業自得だ。未だに特殊部隊が帰る気配ないしな。

よし。放置だ。

「弾、その一夏(バカ)面倒見とけ」

「ああ。けど、お前どこ行くんだ?」

「この状況だと姉さんが着替えと携帯の充電器だけを詰めた荷物渡してきそうな気がする…」

教室の扉が開き全員の視線が注目する。

姉さんだった。荷物を3つ持った姉さんだった。

「着替えと充電器?」

「よくわかったな…」

ダメだこの姉、早くなんとかしないと…

せめてなんか本とか、ね?

溜息をついて頭を抱える。姉さんがイライラしてる気配がするが知らん。フォローのしようがない。

山田先生も何も言えずになんとかフォローしようとして結局目をそらして苦笑いするしかない状態だし…

姉さんとすれ違いで教室を出る。

「どこに行く」

「用事。序でに特殊部隊を壊滅させてくる。ウザイし」

伝言を残したのでそのまま昇降口に向かう。

止められることはなかった。けど、睨まれてたみたいだし帰ったらお説教コースかな?

 

 

 

 

 

校門を出て、徒歩でIS学園の検問に向かう。

何故、検問が必要なのか?

そりゃ必要だろ。ISは単体で国家予算並みの値段がつく。そして不本意ながらもISには兵器としての側面もある。これだけでも検問をつけて出入りには厳しい検査をする価値がある。というかしなければならない。

検問を抜けたすぐ傍に軍用ジープが止まっていた。

運転席から降りてきたのはラウシュだった。20番目に調整が終わった子だ。クール系だったな、確か…

「お迎えにあがりました、御父様」

いい加減にこの呼び方をどうにかしないとめんどくさいことになりそうだ。

今も検問で女性職員がヒソヒソしてる。本当にうざい。

「五反田食堂」

「はい。現在の護衛はファウスト、ゼクス、ハールの3名になります」

助手席に座りシートベルトを締め、目的地をラウシュへ告げると運転席にて俺と同じようにシートベルトを締めたラウシュが現在の状況を知らせる。

ジープは音もなく発進し、五反田食堂へと向かう。道中、メールを確認すると千件を突破していたので問答無用でゴミ箱に送った。そして、繰り返しメールが送られてくる。キリがないが、だからといってここで許すわけにはいかない。

ここで許すと更に手がつけられない事態になりそうだし…

「めんどくせ…」

仮想ディスプレイを横目にサイドミラーを確認する。

「ラウシュ…」

「はい、御父様。少々遠回りになりますが、ご容赦を…」

スピードを上げ、緩めずに左折。道交法違反だが、仕方ない。

悪いのはこっちをつけてくる某国のスパイどもだ。俺は悪くない。

「はぁ、めんどくさい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパイどもを撒いて五反田食堂に着いたのは日も暮れた頃だった。

「アメリカと中国とブラジルとイスラエルだったな。後で覚えてろよ…」

扉を開けて五反田食堂に入る。中にいた客の中にイタリアの特殊部隊がいた。

「「あ…」」

「あ、じゃねえよ」

いい加減に帰れよ。冷や汗かいてる場合じゃねえだろ。いや、食事を続けろとも言ってねぇけど。

「おう、四季の坊主…」

「いらっしゃい、四季君」

厳さんと蓮さんが出迎えてくれるが、それどころじゃない。

気づいてないのか?

いや待て、それ以前に"死喰い"と"戦乙女"が動いてないなら大丈夫か。

「「御父様!!」」

そして、抱きついてくる、ファウスト、ゼクス、ハール。

「わかったから、抱きつくな」

やいのやいのと姦しい3人を脇に寄せて厳さんに注文する。

「明太クリームパスタ」

「んなシャレたもん、あるわけねえだろ。かぼちゃの甘煮定食な」

俺、あんまり好きじゃないんだよなー、甘すぎなんだよなー

「で、今日はどうした?」

「弾の荷物取りに来た。姉さんが着替えと携帯の充電器しか持ってこなかったからさ」

俺の言葉を聞いて蓮さんがあらあらと頬に手を当てながら困った顔をする。

「あらあら、千冬ちゃんったら、相変わらずダメ人間ね」

蓮さんの毒舌も久しぶりに聞いたな。蓮さん怒ると姉さんでも勝てないからなー

もし、蓮さんにISの適性があったら姉さんでも叶うかどうか…

俺のコアなら適合するかなぁ…

色々と考えてるうちに定食が来た。甘ったるいカボチャが来た。

「……甘っ!!」

予想以上に甘い。本当に甘い。サッカリン使ってんじゃないかってぐらい甘い。

「サッカリンでも使った?」

「使うわけねえだろ!!」

使ってなくてこれかよ…

仕方ないので、ゼクスに食べさせる。

「あーん、……甘い!!」

ゼクスに食べさせると、ファウストとハールが抱きついてくる。

「「ゼクスだけ狡い!!」」

さっきよりもやいのやいのと騒ぐ、二人にも食べさせてやる。

ゼクスと同じ反応をして騒ぐ二人を尻目に、ため息をつく。

亡国企業のアホ共が家に侵入してトラップに引っかかったとヌルから連絡があったからだ。

本当にロクなことしないなあいつら……



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門限は守らないとダメだから!!!

今回は簪ちゃんのお着替えシーンだよ!!


蓮さんから弾の荷物(マンガとラノベとゲームとエロ本)を受け取り、そのまま家へと向かう。

流石に荷物が邪魔なので車に置いておくが。

家の中に入ると、特に異常はなかった。既に地下に回収されたか…

束姉と一緒に姉さんに内緒で改造した家の地下にあるIS用の整備室。そこへと通じる扉を開け、中へと入る。

「やっぱり、"紅蜘蛛"置いといて良かったわ。お前らみたいな馬鹿が来るだろうからな」

合計6名。全員が身動きも取れずに声も出せない状態で喋ろうとしたり、手足を動かそうとしているが、無駄の一言に尽きる。

下っ端だし大した情報も持ってないだろうから生かしておく必要性すら感じないが、こうゆうことを考えると…

「しーくーん!!!」

本当にどこから湧いてきた…

「束姉、単体ワープするの止めない?」

「おやおや。流石は束さんの旦那様、私の神出鬼没の原因に気付いたようだね!!」

何時から俺はアンタの夫になった!?

絶句して何も言えないままの俺を見て、満足そうに頷く束姉。

「この塵芥共は私が回収するよ。チョットばかし気になることがあってね…」

珍しく真面目な顔でシリアスな雰囲気を演出する束姉。性格を知ってる俺としては超シュールに感じる。

俺の返事を待たずに、更に身動きを取れなくしたアホ6名を回収してロケットに詰め込む。

「じゃあ、アデュー」

そして、消える。

「まあ、いいか。深く考えたらキリがないし、後始末もめんどくさかったし…」

さっきまでの光景を封印して、地下室を後にする。

 

 

 

 

俺と一夏の荷物(マンガ、ラノベ、ゲーム)を詰めて学園に帰った頃には既に門限を過ぎていた。

ラウシュも帰らせたので重たい荷物を部分展開したリーゼで持っているわけなんだが、1年寮の入口に姉さんが日本刀を地面に突き刺して騎士王立ちしてるので入るに入れない状況です。

何故か姉さんの隣にいるアリサちゃんが両手に大量の文房具を持ってガハラさんスタイルで仁王立ちしてるのは訳がわからない。

そして、既にこちらをロックオンされてる状態。最早、詰んだ…

打てる手は何一つ残されてないので、正面から堂々と向かうと案の定二人がかりで襲撃して説教を始められた。俺が覚えているのはここまで。

「気付いたら部屋とか……、しかも夜も明けてるし」

既に次の日だった。寝落ちとかそんなレベルじゃない。ザ・ワールド使われた気分。

部屋を見回すと、入口側が俺のスペースのようだ。相方は誰なのか大体予想はついてる。窓際のベッドに向けて足音を殺して近づく。

ほら、早朝だし。お越したら可愛そうじゃん。俺は安眠を妨害されたら、束姉と遊び半分で再現したマクロスキャノンを撃ってる自信がある。

予想通り、簪だった。寝落ちしたような変な体勢で、周りには漫画やラノベが散乱しているしヨダレ垂れてるし、ドン引きです…

アリサちゃんの口癖が移った。仕方ないので見なかったふりをして部屋を出る。

早朝ということもあり、人影はない。食堂すら開いていないので、そのまま外へと出る。

俺の体は現在半分以上が義体状態だ。内蔵は一部を除いて人工臓器に入れ替えて、両手足は完全に入れ替えた。アリサちゃんは俺の生身の部分が少なくなっていくごとに顔を悲痛に歪ませた。

俺個人としてはもういっそのこと全身擬態にしてもいいぐらいだ。束姉とアリサちゃんが協力して作った俺専用の全身義体は船にあるが少々問題があるとのこと。

擬態関係に関しては門外漢なのでよくわからんが、ナノマシン型治療カプセルに入ってるところを見るに自己修復関連と見た。いや、わからんけど。

全身義体になればもう二度と成長はないと言われているがそれに関しては未だに予測の域を出ない。何故なら……

未だに全身義体になった者がいないからだ。アニメや漫画等では最早よくある設定ではあるが、現実にするに至っては問題は山ほどある。

ISの登場によって技術的問題は殆どがクリアされたが、ぶっちゃけ倫理やらが邪魔をする。

どうでもいいことだ。俺にはそれがそんなに重要なこととは思えない。そんなことでこの技術を批判している奴らもどうせ家族や大切な人がその技術でしか助からないとなったら見事な掌クルーテオしてくることだろう。

「"万人に受け入れられる人物がいないように、誰もが受け入れる技術は存在しない。"か…」

束姉がいつだったか言っていた言葉だが、まさにその通り。クローン技術なんかはその一例だ。生命への冒涜とか言うが、人口減少への対策や労働力の確保という側面があるのも事実だ。

まあ、クローンで生まれた者は迫害されるとかそんな展開になりそうだが…

そして、この義体技術も。事故などで手足を失った者に関しての医療行為が建前ではあるが、裏では兵士改造計画なんて噂もあったぐらいだ。というかどこかの国が考えてやがった。軍部の独断ではあったが…

まあ、計画が立ち上がったその日に束姉に頓挫させられたらしいが…

外は明け方ということもあって薄暗く、春先ということで肌寒い。義体にした体は未だに慣れない部分がある。なにせ、未だ研究開発中の技術だからだ。

仮想ディスプレイを複数展開し、リアルタイムで記録をつけていく。準備運動をし、ランニングがてら立ち寄ったIS整備室で楯無(ヘタレ)から預かった(強奪した)ミステリアスレイディの整備を始める。

そこそこ使ってるようで何よりだが、フレームに若干の歪みが見られる。無理して動かしてる証拠だ。オーバーホールしてもいいが、今回は矯正に留めておく。

コアの方にアクセスしてみると、ウェルカム状態だった。いらん情報まで見せられた。俺の作ったコアとは全然違うから勝手がわからん。いや、身長体重体脂肪率スリーサイズとかいらんから。あ、あいつ太ったな。

そろそろいい時間なので待機状態にして整備室を後にする。待機状態になったミステリアスレイディがキラリと光った。

 

 

 

 

 

 

寮に戻る途中で楯無と会ったのでミステリアスレイディを(投げて)返しておいた。勿論顔面に当たった。

お礼を言われたのは流石に引いた。こいつドMか…?

寮に戻ると普通に何人か起きていて食堂も開いていた。死肉に群がるハイエナのように俺の周りに寄ってくる(顔も知らない)同級生をデビルバットゴーストのようにすり抜けていく。

部屋に戻ると寝起きの簪がモソモソと着替えていた。貧乳か…

「本音ー、手伝ってー」

寝ぼけて俺を誰かと間違えているようだが、今は黙って従っておく。

キチンと制服を着せて…、パンツ見えた。髪を整えて…、谷間がない。顔を洗って、ナチュラルメイクを施しメガネをかけてやる。

「ありがと、本…音……じゃない…」

「おはようさん」

俺は既に制服なので着替える必要なし。顔を洗って荷物を持って食堂に向かう。

扉を閉めたところで中から悲鳴が聞こえた。にょわっ!?って感じの。

「おはよう、四季」

途中で弾と会い適当に挨拶を交わして食堂に向かう。弾の同室はダブ子か。なんでこいつは弾の背中に張り付いてるんだ?

「蝉の幼虫だよ~」

心を読むな。そして、そんな黄色い電気鼠のような蝉はこの世に存在しない。

「グンマー産なんだよ~」

グンマー産なら仕方ないな。

「という感じなんだ、助けてくれ四季」

「それなら鼻の下を伸ばしてんじゃねえよ」

昨日弾がダブ子と部屋でどんなことをしていたのかは知らないが未だに童貞であるのは確実なので、問題はなかったんだろう。

ただ、懐かれただけのようにも見えるがハニトラ……の可能性はないな。一応弾に其処ら辺の注意はしてるし大丈夫だろう。

されたらされたで更識家の管理下に置かれるだろうが悪いようにはならないだろう。現当主があのヘタレだし…

食堂につき朝食を食べ、教室に向かう。それだけのために1時間近くかかったのは言うまでもなくハイエナの存在だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決闘が決定した翌日の授業の合間に、一夏の専用機の話が出たのがそもそもの原因だった。

倉持技研。俺や弾にとっても因縁の研究所であり、日本のIS研究のお膝元とも言える場所が、現在の仕事を放り出した。

正確には束姉から送られてきた一夏の専用機の方に集中しだして、現在進行中だった日本の代表候補生の専用機を放り出したのだ。日本の代表候補生である簪は開発途中だった『打鉄弐式』を自分で開発させようとしている。

らしい、というのが先ほどヌルから送られてきた報告だった。もう倉持技研(あそこ)ダメだな。見限ろう。

教室では一夏の専用機の話で浮ついている。だが、弾の話はない。つまりはそういうことだ。

「あれ、でも弾はどうなるんですか……織斑先生」

姉呼びしそうになって少し吃ったが、きちんと先生呼びすることに成功した一夏が姉さんに聞くがその表情は冷徹そのもの。姉さん個人としては弾にも専用機を渡しておきたいんだろうがコアの数が限られてる現在、そう簡単にことが運ぶわけでもない。

「五反田のはない」

「ですよねー」

姉さんの発言に誰よりも早く反応したのは弾自身だ。

学力では中の下に分類されているが頭の回転自体は早いし、決断力もある。コアの数は世間に公開されているし、IS自体が小国の国家予算に匹敵するほどの値段がすることも知っている弾としてはそこまで期待はしていなかったのだろう。

だからこれは、俺からの祝福でありIS学園にまで付き合わせてしまった贖罪だ。いや、巻き込んだのは一夏だな。

「弾の専用機なら俺が今作ってる」

そして予想通りに騒がしくなる教室。遠巻きに覗いている野次馬たちから直ぐに全生徒に伝播するだろう。

姉さんもあまりに騒々しさに頭を抑えている。俺のせいじゃないです。

弾が珍しく目を見開いている。本当に珍しいことだ。

「いいのか?」

「いらないのか?」

弾が聞き、俺が返す。そして、いつもの表情で、

「頼むわ」

任された。言葉にはせずに開発を急がせる。作ってるのは船だから、ヌル達も少し忙しくなるな。



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一人で造り上げるとか無理だから!!!

結構難産だった。
パソコンの調子が悪いので次回の更新はパソコンを何とかしてからになりそうです

というわけで、よいお年を‼


昼休み中に職員室で今週中の仕事を終わらせ、放課後に行われた職員会議で弾のISを俺が作ると言って、てんやわんやの大騒ぎになりアリサちゃんと姉さんに怒られ、テンションダダ下がりになりながらもIS整備室に来た。

中にいるのは簪と製作途中のISが一機。『打鉄弐式』。簪専用の第3世代型のISであり、倉持技研が放り出した機体だ。

暗い顔で俯きながら仮想ディスプレイのデータを入力している。

簪の隣のハンガーにISを無人展開する。出てきたのは初期設定のリーゼ。重厚な装甲を持つ重武装・高機動という矛盾した機体だ。

リーゼを見た瞬間目を輝かせた簪は、さっきまでの暗い表情が嘘のように明るくなった。一瞬で立ち上がり、リーゼの前に来る。

前々から見せて欲しいと言われていたからちょうどいい機会だ。簪の表情がまた暗くなり、リーゼに溜息をついて自分の機体のところにトボトボと戻っていく。

まるで俺のリーゼが残念だったような行動にイラッときたが、ここは大人の対応(?)で済ましておく。後で覚えてろよ…

リーゼのデータを更新するため、ディスプレイを立ち上げプログラムを走らせる。暫く時間がかかるため、隣の辛気臭い簪の様子を見に行く。

機体は人型をしているが完成はしていないようで所々装甲がついていない。ハードでこれなのだからソフトは更にできていないんだろう。

簪の視線がたまにこっちを見ては元に戻すを繰り返している。つまりはこっちをチラチラ見てくる。

「なんか用か?」

「え!?う、ううん。なんでもないの……」

聞いてもこの返事。打つ手なしだな。まあどうでもいいんだが、簪の態度が気に入らん……

なので……、ハッキングだ!!

「え?……え!?……えぇぇ!?」

「なんだよ、この糞みたいなプログラム!?組んだのはどこの阿呆だ!?」

隣で簪が慌てているが無視だ。こっちみんな。

「下手くそなプログラム作りやがって。小学生が組んだプログラムの方がまだマシだぞ?」

杜撰にも程がある。下手くそすぎて何も言えないレベルだ。

基本的にISのOSは思考制御型だ。装着者の考えるように動くというのが一番簡単な説明になる。

当初はもっとちゃんとしたOSにしようとしたんだが、白騎士事件前に姉さんに説明したところ微塵も理解できていなかったので、急遽こうなった。というか、束姉が5分で組んだ。

だが、火器管制プログラムはそうもいかない。

下手なものを積むとロクなことにならないのは今までの歴史が証明している。最悪プログラムがエラー多発して爆発する。

だから、プログラムの中でも火器管制は最重要とも言える。

元々、ISには火器管制なんて載せる予定はなかった。

ISは『宇宙へ羽ばたく為の翼』であって『兵器』ではない。武器なんて載せるつもりは俺も束姉も微塵もなかった。載せるとしても小惑星やデブリ用の削岩機ぐらいだ。

だが、そうはならなかった。

世界は束姉のISを子供のガラクタと決めつけた。仮にも科学者が性能も見ていない科学の結果を決め付けるな。と、言ってやりたかったが俺も束姉もプッツンと来ていたので軍事衛星及び施設にハッキングをして『白騎士事件』を起こした。

本来はミサイルだけの予定だったが、どうせ国連軍が来るなら対空母戦、対戦闘機戦の予行演習にもなるだろうと言うことで国連のメインサーバーにハッキングして軍の出動要請を出し、ペンタゴンやらなんやらにハッキングしてこれを強制的に受理。

ミサイル迎撃に加え、イージス艦や戦闘空母や最新鋭の戦闘機といった現行最強の兵器を相手にしなくてはならなくなった。姉さんが。

それでもやり遂げた姉さんはやっぱりすごいと思う。束姉と一緒にバケモノ呼ばわりして怒られたのがいい思い出だ。束姉は半殺し寸前だったけど……

「なんで……」

簪の疑問に俺は答えずに沈黙が空間を支配する。

横目で簪を見ると困惑の表情で俺を見ていた。無視しておきたいが、答えておく。

「一人で開発していいのは俺と束姉だけだ。他の奴がやっていいことじゃない。だからお前の姉も俺に協力を要請した」

俺の言葉に簪は耳を傾けるが困惑の表情は消えていない。

「本来、こういうのは数十人規模で作り上げるのが常識だ。多角的な視点が必要だからというのは理解できるな?」

横目で簪の表情を確認すると、困惑の表情は消えており、今はコクコクと頷くだけだ。

「俺と束姉は一人でそれができるからやっているだけだ。まあ、本当なら俺と束姉もやっちゃいけないんだけどな」

「なら、なんで?」

「この世界が俺達を受け入れなかったからだ。ISは兵器じゃない。だが、世界はISのことを兵器としか見ていない。だから俺達はこの世界に何も思いはしない。だが、お前は違う。お前は俺達のようにはなるな」

そう。俺も束姉もこの世界がどうなろうと知ったことではないし、何の感情も湧かない。

世界大戦をしようが滅ぼうが反映しようがどうでもいい。こっちにちょっかいを仕掛けてくるのなら捻り潰すだけだ。

だが、簪は違う。世界から拒絶されたわけではないし、思ってくれる奴が近くにいる。

俺は束姉のことを心配してたりするし、束姉も同じだが、常人のそれとは違い限りなく薄い。

だからこそ、この道を簪に歩ませるわけには行かない。俺たちのように道を踏み外して欲しくないというただの俺の傲慢。

その思いをただ無理矢理に押し付ける。簪の思いも知らずに……

だから、簪の顔を見ないようにして打鉄弐式のOSを作り上げてハッキングを止める。

整備室を出るまで簪の顔は一切見なかった。だから、簪がどんな表情で俺のことを見ていたのかは知らない。

 

 

 

 

 

という訳で約束の日。第3アリーナで決闘開催の日、弾のISは一晩で完成し翌日には届いた。

弾の希望である遠距離での狙撃主体の中遠距離援護型の第3世代型だ。かなりゴテゴテした機体になった。

「これが……」

弾の目は機体に釘付けだった。まあ、男なら専用機という言葉には反応せざるを得ないからな。後ろの一夏も羨ましそうな目で見ている。

メインカラーは弾の希望通り赤。別に速度が3倍とかはない。

足回りが太く『鈍重』というイメージが付き纏う機体だが、速度は結構速い。武装は近接用にナイフが一本あるだけであとは実弾兵装となっている。

背部展開式の大型カノン砲に多弾頭ミサイル、腰部リニアミサイルガンを基本として、追加兵装としてショットガン、長距離狙撃用スナイパーライフル、対シェルター用ライフル、マシンガン、他にも各種銃器を追加してある。

更には通常状態と全身装甲(フルスキン)状態の選択展開が可能。

「……って、聞いてないな」

概要やらなんやら説明してたが弾の意識は既に機体にしか行っていない。仕方ないというよりは無駄なので説明を強制的に終える。

「四季、コイツの名前は?」

「五反田弾専用、中・遠距離狙撃及び援護主体、第3世代型IS『ラーズアングリフ』」

「『ラーズアングリフ』……」

弾が名前を呼びながら機体に触れる。これでこいつらは一心同体。

弾は力を手に入れ、『ラーズアングリフ』は自身が選んだパートナーを手に入れた。

「さっさと乗れ」

弾を急かして機体に乗せて初期設定を済ませることにする。

ディスプレイが幾つも無数に立ち上がるのをデータ入力を済ませることで5つ以上開かないように止める。

「姉さん、一夏のは?」

「遅れているそうだ。先に五反田を出すぞ」

「あいよ」

初期設定を済ませつつ姉さんに聞いて、一夏の機体の行方を確認するがやはりというか遅れているようだ。

やはり倉持技研(アソコ)はダメだな。納期も守れないとは……

敵の手に落ちたなら縮退砲で消し去ろう。絶対にそうしよう。はい、決定。

「初期設定完了」

開始から9分。まずまずだな。

弾が機体を自身の手足のように動かす。手を握り、そして開く。それを繰り返し、腕を動かし、可動域を確認する。

肩部と相対位置を固定するようにして浮いている非固定浮遊部位(アンロックユニット)を確認しつつ、腕を動かす。

「……よし。いける」

「あ、ダメだ。ジェネレーターがエラー吐いてる」

弾が機体ごとズッコケた。

「どれぐらいかかる?」

「10分」

弾をスルーして姉さんに時間を告げると苦い顔をされて舌打ちをされた。

その間も手を止めずにディスプレイに集中する。

「織斑君!!来ましたよ、あなたの専用機です」

作業を続けながら意識を向けると山田先生が走りながらこちらに手を振っていた。お胸様も揺れていた。当然のように。

一夏はお胸様に視線がいった瞬間に箒に腹パンされ、弾はハイパーセンサーで凝視して顔がだらしなくなっていたのをダブ子に目潰しをされていた。

弾は現状出られないので、初期設定も済んでいない機体に一夏を乗せて姉さんが叩き出した。一夏ェ……

ジェネレーターのエラーも処理したので管制室で一夏対オルなんとかとの試合の観戦に向かう。

箒にダブ子、弾も続く。姉さんが睨んできたがスルー。

オルなんとかの射撃を一夏が避けたことで戦端が開かれた。




次回は一夏対オルなんとかさん

弾の機体はラーズアングリフ。
という訳で福音戦ではアレになります。わかりますよね?


最近書きたいものが増えてきた。
デレマスとかオーバーロードとかダンまちとか劣等生とか



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