ソードアート・オンライン 〜Dhampir Rosary〜 (黒月ノ夜)
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デスゲーム
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Key「ノ夜が遂に待ちきれなくなったそうです。ノ夜さんはあっちで東方とSAOを製作しています。東方は月曜あたりまでお待ちください」


「これがナーヴギアか」

 

マンションの一室に一人でナーヴギアの箱を開けて中を確認する青年がいた。青年は170前後の身長で少しクセが目立つ髪型だった。青年の名前は天草怜斗。高校1年である。

 

「早速遊んで見るか。ベーターテスターは無理だったけど買えた分いいな」

 

少年はナーヴギアの初期設定を無言でやり始めた。

 

「これで多分大丈夫かな」

 

少年はベッドに横になった。

 

「リンクスタート」

 

 

 

アバター名は天草をいじり空の意味を持つCiel(シエル)にし、他のアバターの設定等が終わり、気がつくとそこは先ほどまでのマンション一室ではなく西洋の街並みが広がっていた。

 

「これが仮想現実。あんまり現実と変わらないな。戦闘してみるか」

 

シエルはそういうと、始まりの街を出てフィールドへと出た。少し歩くとイノシシのようなモンスターがいたため戦闘を行ってみることにした。

 

「剣の感覚がしっかり伝わってくる。たしか、こう…」

 

シエルが構えを取ると剣が青色に輝きモンスターを貫いた。モンスターのHPバーが一気に削れ、無数のポリゴンとなって消滅した。

 

「楽しいな。まだ昼だしまだまだできるし、もっとやりたいな」

 

シエルはフィールドの奥へと進みモンスターと戦い続けた。日が沈見始めたことに気づいた少年はログアウトしようとメニューを開いた。

 

「もう5時半か、まだ Lv3だけど、とりあえず今日はここまでにしてまた明日やろう」

 

シエルがメニューを操作し、ログアウトをしようとする。しかし、普段ならそこにあるはずのログアウトボタンはなかった。

 

「……え?何でログアウトボタンがないんだ?まぁだったらもっと狩ろうかな」

 

しばらくすれば、強制ログアウトもしくはアナウンスが入るだろうと思いシエルは何処か引っかかった様な顔をしながらフィールドを歩こうとすると足元が急に光った。シエルは青白い光に呑まれ光がなくなる頃には始まりの街の広場にいた。

 

「強制テレポートってことは何かしらあるのか?」

 

周りのテレポートの光が全て消えると空が急に赤くなった。赤い部分を見るとパネルに分かれていてその1つ1つに文字が書いてあった。[Warning] 〔System Announcement]と書かれていた。するとそのパネルの隙間からすると中央部分から血液の様な巨大な雫が出現し、地面に落ちることなく一定の高さで止まった。

だんだんと雫の形が歪になり、最終的にはローブを纏った人の姿へと変わった。フードの中を覗いてもそこには何もなくただの空洞になっていた。たが、プレイヤー全員にそのローブは見覚えのあるものだった。何故ならそのローブはGMが着ているもの。つまり、アーガス社がチュートリアルの説明等で使うアバターだった。しかし、普段ならば中は空洞ではなく老人等のアバターであったためプレイヤーの不安を増強させていた。

周りからも「何で顔がないんだ?」「GMなの?」という声が沸き起こっていた。すると、アバターが動き出し両手を広げ話し出した。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

プレイヤーが動揺しているのを気にせず、GMアバターは両手を下ろしながら言葉を続けた。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

普段からあまり感情を顔に出さない少年もその名前を聞いた瞬間は驚きの顔を隠せなかった。

茅場晶彦……それはナーヴギアのそのものの基礎設計者でありこのゲーム、SAOの開発ディレクターなんである。

シエルも少し茅場に興味があったため雑誌を読んだことがあるが裏方に徹することを選びメディアの露出を最低限にしGMの役も当然のように一度もしたことがなかった。

茅場は理解しようとする者をあざ笑うが如く言葉を発した。

 

『プレイヤー諸君は、メインメニューからすでにログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

 

周りでは嘆くような声も聞こえるが茅場によるアナウンスは続く。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまでゲームから自発的にログアウトすることはできない』

 

シエルは一瞬、城とは何か分からなかったがすぐにこのアインクラッドであることを察した。だが、その思考も次の言葉で完全に吹き飛ぶことになる。

 

『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合ーー』

 

わずかな間により、プレイヤーは息を詰まらせ、重苦しい静寂のなか言葉がゆっくりと発せられた。

 

『ーーナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

シエルは数秒間意味を理解するどころか固まった。生命活動の停止それは死を意味するということと変わらなかった。ナーヴギアを停止させた場合はプレイヤーを殺す。そう宣言したのである。

一瞬、そんなことが可能なのかと思ったが、よくよく考えるとナーヴギアはヘルメットに埋め込まれた無数の信号素子によって微弱な電磁波を発生させ脳細胞そのものに擬似的感覚信号を与える。最先端テクノロジーと言えるが、しかし、原理的にはまったく同じである家電がずっと昔からあることを思い出す。そう、電子レンジである。出力さえあればナーヴギアは脳細胞の水分を摩擦熱によって蒸し焼きにすることは可能なのだ。さらには大容量バッテリーも付いている。

周りの叫び声が聞こえたのか茅場は話を続ける。

 

『より具体的には、10分間の外部電源切断、2時間のネットワーク切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試みーー以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点でらプレイヤーの家族、友人等が警告を無視してナーヴギアの強制徐装を試みた例が少なからずあり、その結果』

 

一呼吸分の間を入れ続ける。

 

『残念ながら、すでに213名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

何処かで細い悲鳴が1つだけ上がったが、大多数のプレイヤーは信じられない、信じたくないというかのように、放心したり薄い笑みを浮かべている。だが、シエルは違った。シエルだけは少し嬉しそうな顔をしていたのだ。はっきり言って青年は現実世界が嫌いだった。なぜなら親に捨てられ、様々な場所でイジメや邪魔者として扱われてきたためか現実世界よりもこのゲーム内の方が居心地いいともうすでに少なからず思い始めていたのだ。だが、茅場の言っていることが本当ならば200人以上が、すでに死んでいることになる。周りでは「ただのおどしたろ?」「ここから早く出せ」などと言った喚き声が聞こえてくる。しかし、その叫びを薙ぎ払うように茅場は続けた。

 

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に徐装される危険性はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま2時間の回線切断猶予のうちに病院らその他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には安心して……ゲーム攻略に励んで欲しい』

 

周りから野次が飛ぶなか、茅場が穏やかな声で告げた。

 

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう1つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』

 

ここまでくると次の言葉を予想するにはシエルには簡単だった。

 

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

つまり、自分の視界に映っているHPバーがなくなる、ゼロになった瞬間、自分の死ぬと言うことである。そう、この瞬間からこのゲームは遊びではなく命を賭けたデスゲームになったと言うことである。常に思考を読んでいるかのように茅場はアナウンスを続ける。

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった1つ。先に述べた通り、アインクラッド最上部、第100層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保障しよう』

 

シエルの予想は当たっていたようでシエルは動じなかったが、周囲のプレイヤーは「できるわけがない」「ベータ版ではろくに上がれなかったんだろ?」などという声が聞こえてくる。だか、その声には絶望感というものを感じられなかった。おそらく、大多数のプレイヤーはこれが《本物危機》なのか《過剰なオープニング演出》なのかいまだに判断できていないのだろう。発せられる言葉全てが恐るべきものがあるがゆえに、逆に現実感を遠ざけている。さらにここで茅場は追い討ちをかけてきた。

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

そう言われシエルはほぼ無意識にアイテムストレージを確認しようとしていた。表示された所持品リストの一番上にそれはあった。

アイテム名はーー手鏡

こんなものを渡したかったのか思考を巡らせながらオブジェクト化をする。覗きこむと自分で設定したアバターの顔が映っていた。キョトンとしているとまたもや光に飲み込まれた。今度は青ではなく、白である。光が消え辺りを見回すが何も変わらない。だが、よく見ると変わった箇所に気づいた。周りのプレイヤーの顔が違うのだ。青年はハッとし鏡を見る。そこに映っていたのは見覚えのある顔だった。青がかった黒髪に生まれつきの赤い瞳。少し女よりの顔。そう、現実世界の姿だった。シエルは姿を見られたくなくたまたま入手したローブを装備した。シエルはたまたま街で購入したこのローブを改めて買って正解だったと思った。それとは別にシエルにはどうやって現実世界での容姿を再現しているかに行く。そこでまず初期設定を思い出していた。ナーヴギアは顔をスッポリと覆う程の大きさであり、さらに体型はキャリブレーション、つまり装着者の体表感覚を再現するためのもので知ることができたのだと思った。

 

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私はーーSAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』

 

シエルが次に考えようとしたものに答えようとする茅場を改めて見た。

 

『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目標だったからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 

短い時間に続いて、茅場の無機質さを取り戻した声が響く。

 

『以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君のーー健闘を祈る』

 

その声が響きわたると同時に茅場のアバターは吸い込まれるように上空のパネルへと同化していった。全てが同化し消えると、パネルも出てきた時のように唐突に消滅した。NPCの楽団が演奏する市街地のBGMが遠くから聞こえてくる。ゲームが本来の姿を取り戻したのである。一部のルールを除いては。するとプレイヤー間で様々な悲鳴、叫びなどが聞こえるがシエルはそれを横目に広場を後にした。シエルは街から出るとマップで確認しつつ次の街へと向かって行った。始まりの街周辺のモンスターはすぐに狩り尽くされると思ったからだ。シエルは次々とモンスターを薙ぎ倒し、次の街へと走って行った。




ノ夜「東方が完結してから出そうと思ってましたが待ちきれず投稿しました。次の全体の投稿はSAOでその後からは東方とこうごに投稿していきます」


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攻略前夜

最初は1話にボス攻略までまとめるつもりでしたが、思いの外長くなったので分けさせてもらいました。

注意書きに書き忘れていたと思ったのでこの場を借りて言わせていただきます。ユウキの容姿は現実世界ではなく、ALOの方を採用させていだだいています。


デスゲームが始まって3日経った日。ある黒髪の少年は始まりの街の次の街のすぐ近くにある森のダンジョンへと向かっていた。プレイヤーネームはKiritと書かれていた。少年は少し気にかかっていることがあった。それは、クエストを受けて街を出る寸前に情報屋のアルゴから聞いたことだった。アルゴが言うには、

 

「最近、紅い眼のプレイヤーかモンスターなのかよくわからないのが頻繁に目撃されるらしいんダ。キリ坊も気をつけろよ」

 

とのことだった。キリトはベータテスターだったがそんなモンスターは見たこも聞いたこともなく、少し疑問を抱いた。

 

「紅い眼……一体なんなんだろう…」

 

考えながら歩いているうちにキリトは森への着いていた。クエストの内容としては植物系モンスターのドロップするアイテムの回収だった。そこで、キリトはおかしな点に気を付く。モンスターと全く遭遇しないのだ。良く出現するスポットに行っても、全くいなかった。

 

まるで、絶滅でもしたかの如く。

 

「どうなっているんだ?ここまで来ればモンスターと会ってもおかしくないんだが」

 

奥へ進んで行くと金属音が聞こえてきた。キリトは戦闘でもしているのかと思い、聞こえた方向へと走っていく。そこには探していた敵モブが4体ほどいるなか、たった一人でローブを着たプレイヤーが戦っていた。

その眼は血の様に紅く鮮やかだった。キリトはその眼を見てこのプレイヤーが吸血鬼と呼ばれる者の正体だと感じ取った。そう思考を巡らせている間にもそのプレイヤーは確実に敵モブの攻撃をかわし、ダメージを与えていく。最後には敵モブの攻撃を1度も喰らわずに敵モブ4体を倒してしまった。戦いが終わり、プレイヤーはキリトと目があった。

 

「よ、よう。君、凄く強いんだな。ベータテスターか?」

 

キリトは何を話せばいいのか分からずぎこちない言葉を発してしまった。その言葉に少し戸惑った様な反応をしたが思いのほか早く返事が返ってきた。

 

「ベータテストはやってない。貴方の名前は?」

 

「あぁ悪い。自己紹介がまだだったな。俺はソロプレイヤーのキリトだ」

 

「そう、俺はシエル。…何か用?」

 

「いや、それなんだがクエストで来たんだがモンスターと全然エンカウントしなくてな」

 

「そういうことか……ごめん。多分俺のせい」

 

シエルが何故謝ってきたのか、キリトは理解出来ていなかった。

 

「なんで、君が謝るんだ?」

 

「………多分、周辺にモンスターがいないのは俺が狩り続けてたせい」

 

「ん?狩り続けてたってどれくらい?」

 

「え〜と三徹目だから……72時間くらい?」

 

「はぁ!!3日間寝てないのか?」

 

あまりにも馬鹿げた発言にキリトは声を張り上げる。

 

「お前……3日間も寝ないで狩ってたって飯とかはどうしてたんだ?」

 

「……え?ゲーム世界に飯なんて概念あるの?」

 

「街を歩いていれば普通に目にすると思うんだが……」

 

「俺…デスゲームになってからずっとここでレベリングしてたから街に行ったことないんだ」

 

「街にも行ったことないのか?!」

 

「え、うん」

 

キリトはあまりにもの無茶苦茶さに呆れを通り越して何も感じなくなってきていた。

 

「よくそれで武器の耐久値持ってたな」

 

「うん…そろそろ危ない。そういえばクエストってどんな内容?」

 

「あぁペナント系のモブがドロップする胚珠を入手してNPCに届けるんだよ」

 

「胚珠って…これ?」

 

シエルはメニューを開きアイテムを1つ実体化させキリトに見せてきた。

 

「そ、そうだ。それだ。」

 

「何個要るの?」

 

「一個で十分だよ。1人につき1回までしかそのクエスト受けれないからな」

 

「そう、ならこれを持っていけば良い」

 

「え?いいのか?これレアドロップだろ?」

 

「大丈夫。後30個あるから」

 

「なんでそんなにあるんだよ……」

 

「敵モブ倒してたら自然と集まった」

 

「そ、そうか。じゃあ有り難く貰うよ。悪いが礼はこれくらいしか……」

 

「別に良いよ。有り余ってたから」

 

「そうか、でもタダで貰うって訳には……」

 

キリトは暫くどうするかていたが何か閃いたのか勢いのよく顔を上げた。

 

「そうだ!ならクエストを紹介するよ」

 

「……クエスト?」

 

「あぁ。今、受けているクエスト何だがアニールブレードっていう片手剣が報酬なんだ。剣の耐久がもう無いって言ってたから丁度いいかなって思ってさ」

 

「……うん、丁度いい。じゃあキリトについてく」

 

 

シエルはキリトの後ろについて街へと歩いて行った。道中に何体か敵モブが出てきたが、ハッキリ言ってシエルが強過ぎたため。何の問題もなく街へと着いた。

 

「ここが街か3日ぶりだな」

 

「中々に凄い発言だな」

 

「いや、そもそも街にそんな便利な機能があると思ってなかったから」

 

「でも、夜は敵モブが多かっただろ?」

 

「うん、Lev上げに丁度良かった」

 

「はぁ普通はそんな考えにならんぞ。というか聞くのは失礼かと思うが今って何レベだ?」

 

「えっと……Lev8だな」

 

「Lev8…俺の倍以上かよ…」

 

そんな話をしながら歩いていると前からローブを着た小柄な女性らしき人物が近づいて来た。

 

「よぉキリ坊。無事だったんだな。隣の奴は誰だい?」

 

「あぁ、紹介するよ此奴は森で会ったんだけどシエルだ。んでもってシエル。こっちの小柄な奴が情報屋のアルゴだ」

 

「よろしく、シー坊」

 

「よろしく…アルゴさん」

 

「さん付はやめてくれ。アルゴで良いよ」

 

「わかった。よろしく…アルゴ」

 

「にしてもアルゴ。ちょっとシー坊って語呂が悪くないか?」

 

「そうか?まぁ何でも良いさ。それより吸血鬼には出くわさなかったかい?」

 

「あぁそのことなんだが……多分シエルのこと」

 

「……え?俺って吸血鬼って呼ばれてるの?」

 

「そうか、シー坊が吸血鬼の正体だったんだな〜」

 

シエルはその名前を聞いて少し恥ずかしそうにしている。

 

「それより、早くクエストを受けたい」

 

「そうだな。俺らはアニールブレードのクエストをやりに行くがアルゴはどうする?」

 

「俺っちはこれからやる事があるんだ。悪いが此処でお別れだな」

 

「そうか、わかった」

 

「そうだ。なぁシー坊、俺っちとフレンド交換しとかないか?情報の取り引きとかがしやすくなるぞ?」

 

「…わかった。交換しよう」

 

「そういえば俺も交換してないな。俺とも交換しないか?」

 

「うん」

 

3人はメニュー画面を開きフレンド交換を済ませると、アルゴと別れクエストの場所へと向かった。目的地は意外と近く直ぐに着いた。

 

「此処だぜ。アニールブレードのクエストが受けれるのは」

 

そういうとキリトはさっきシエルから貰った胚珠をNPCに渡し、剣を受け取っていた。

 

「シエルもやってみろよ」

 

「そうする」

 

シエルもキリトと同じ様にクエストを受け、元々持っていた胚珠を渡し、剣を受け取った。

「これで終わりだ。俺はこれから宿に行くけどシエルはどうするんだ?」

 

「……折角だから街でアイテムを揃える。要らない素材も多いから」

 

「そうか。じゃあまた会おうな」

 

そう言い残すとキリトは宿の方へと歩いて行った。

キリトと別れた後、シエルはアイテムショップで要らない素材を売り、回復アイテムや装備を整え再びフィールドへと向かっていた。そして、再びフィールドへ出てキリトと会う前と同じような日々を送っていた。少し変わった事と言えばダンジョンでマッピングもやり出したことくらいだろう。そして、デスゲームとなってから1ヶ月程経ちシエルは街へと買い出しに来ていた。すると、偶然にもショップでアルゴと再開した。

 

「おぉ〜!シー坊じゃないか。また、無茶をしているそうじゃないか。たまには休まないとダメだぞ?」

 

「……わかった。気を付ける」

 

「それよりもシー坊はトールバーナへは行かないのか?」

 

アルゴの質問にシエルは疑問符を浮かべていた。

 

「何で?」

 

「やっぱり知らなかったんだな。明日の午後3時にボス攻略会議が始まりの街であるそうだよ。キリ坊は行くって言っていたよ」

 

「明日の3時。わかった。ありがとう」

 

「なぁにこれくらいなら安いもんさ。他に聞きたいことはあるかい?勿論ここからは取引になるけどな」

 

「…今は良い。また今度頼む」

 

シエルはショップをあとにし始まりの街へと向かっていった。

始まりの街には夜に着いたが特にやることもなかったため、フィールドで敵モブと戦っていた。始まりの街周辺の敵モブは比較的弱いためシエルは適当にあしらいながら暇を潰していた。気がつくと夜が開けてきたので始まり街へと足を進めた。

午後2時半を回ったためシエルは暇を潰していた店から出て広場へと歩いた。広場には既に多くの人が集まっておりその中にはキリトらしき人影もあったがシエルは後ろの方の席に座り始まるのを待っていた。すると、隣から声をかけられた。

 

「ねぇ君。隣空いてる?他の席には少し座りづらくてさ」

 

声の方向を見るとそこには紫がかった黒い髪を腰の位置まで下ろし、前髪を髪紐で上げバトルドレスを身に纏い、主張の強いアホ毛のある少女の姿があった。

 

「……空いているから座って構わない」

 

「本当!ありがとう!」

 

少女は両手を挙げながら喜んびながら横に座った。

3時を五分程過ぎ、ボス攻略会議が始まった。

 

「は〜い。そろそろ始めさせてもらいま〜す」

 

青髪の男性プレイヤーが手を叩きながら声をかける。

 

「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル。職業は気持ち的にナイトやってます」

 

ディアベルのジョークに周りからちょっとした野次や笑い声が聞こえてくる。それをディアベルは両手を使い静め、真剣な顔つきで話し始めた。

 

「今日、俺たちのパーティーがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した」

 

その言葉に周りは驚きの声を出す。

 

「俺たちはボスを倒し。第2層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリア出来るってことを始まりの街で待ってるプレイヤーに伝えなくちゃならない。それが、今この場所に居る俺たちの義務なんだ。そうだろ?みんな!」

 

周りは少し悩んでから覚悟したのか拍手が上がる。無論、シエルの隣にいる少女もだった。

 

「オッケー。それじゃあ早速だけど。ボス攻略会議を始めたいと思う。まずはパーティーを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティーじゃあ倒せない。パーティーを束ねたメイドを作るんだ」

 

その言葉にシエルはドキッとした。今までシエルはパーティーどころかろくにプレイヤーとも関わってきていなかったからだ。それこそ関わったといったらアルゴがキリトぐらいのものだ。シエルが悩んでいると隣から声がした。

 

「ねぇ君…あのさ。ボクとパーティー組まない?周りはもう組んじゃってるみたいだしさ」

 

シエルはどうしようか迷ったがシエル自身も組む相手がいなかったため、賛同することにした。

 

「あぁわかった……これからよろしく」

 

シエルはメニューを開きパーティー申請を出す。少女はOKボタンを押す。すると自分のHPバーの下に少し小さく少女のHPバーと名前が表示される。そこにはYuukiと書かれていた。

 

「よろしく…ユウキ」

 

シエルがそう言うとユウキは驚いたように言った。

 

「え?!何で名前知ってるの?」

 

ユウキは自分のHPバーの下に表示されていることに気づいていなかったらしい。

 

「HPバーの下に少し小さく表示されてる」

 

「え?そうなの?」

 

ユウキは頭の上に疑問符を浮かべながら左上へと視線を向けた。

 

「わぁ〜本当だ〜。え〜と君の名前は……クエル?」

 

「……シエル…」

 

「え、あ、あごめん」

 

ユウキは恥ずかしそうに顔を赤くして謝った。

 

「よ〜し。そろそろ組み終わったかな?じゃあ……」

 

「ちょうと待たんか!」

 

ディアベルの話に割り込むようにして後ろから声が聞こえた。そのプレイヤーは階段をジャンプしながら下りていく。シエルはそれを動きが重いと思いながら眺めていた。

 

「ワイはキバオウって言うもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。こんなかに今まで死んでいった2000人に詫び入れなあかん奴がおるはずや!」

 

シエルはその言葉の意味を理解出来なかった。なぜなら死んでいった理由は当人の能力不足だと判断していたからだ。勿論周りも少しざわついていた。

 

「キバオウさん、君が言う奴らとはつまり、元ベータテスターの人達のこと…かな?」

 

「決まってるやないか。ベータ上がりのもんはクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨ておった。奴らは上手い狩場やらクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なってその後はずーっと知らんぷりや。挙句の果てには森に吸血鬼とか言う訳の分からん者まで出おった」

 

吸血鬼が自分である事をこの前知ったシエルは少し動揺していた。

 

「こん中にもおるはずやで!ベータ上がりの者が!其奴らに土下座さして、溜め込んだ金や食い物を吐き出して貰わな、パーティーメンバーとして命は預けれんし、預からん」

 

「発言良いか?」

 

すると、1人のガタイの良い黒人男性が立ち上がり、広場の中央へと向かっていった。

 

「俺の名はエギル。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元々ベータテスターが面倒を見ないせいでビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろ。と言う事だな?」

 

「そ、そや」

 

エギルは腰のポーチから手帳はどの本を出し、周りが見えるように掲げた。

 

「このガイドブック。あんたも貰っただろ?道具屋で無料配布しているからな」

 

「もらたで、それがなんや」

 

「配布していたのは元ベータテスター達だ」

 

その言葉に周りがどよめく。しかし、森にこもっていたシエルは当然そんな物を貰っていなかったため取り残された様に感じていた。

 

「良いか?情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに沢山のプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、俺達はどうボスに挑むか。それがこの場で論議されると俺は思っていたのだがな」

 

シエルは立ち上がり、キバオウの方へ軽くジャンプをし、着地した。動きが華麗だったため、一部のプレイヤーが歓声を上げた。そしてシエルは広場全員に聞こえる声で言った。

 

「俺は…あんたらの言う吸血鬼って奴だ。勘違いされたくないから言っておく…俺はビギナーだ…それと…森にこもって敵モブを狩り続けてしまってすまない……」

 

周りが少しざわつき始めたがシエルは気にせず続ける。

 

「だが…1つ言いたい…ベータテスターが居なくても…知恵を使い生きることは可能だったと思う……現にそのガイドブック…俺は初めて見た…だから責任をベータテスターに押し付けるのは間違っふていると思う……それだけだ…」

 

話が終わるとキバオウは不貞腐れた様に最前列に座った。エギルも元の場所へと戻っていったので、シエルもユウキのいる場所へと戻った。すると、ユウキが少し小さな声、話しかけてきた。

 

「シエルってあの吸血鬼だったんだね」

 

「うん…俺が…怖くなった?」

 

「ううん。むしろに逆だよ。そんなに強いんなら凄く頼りになるなって思って」

 

「そう…ありがとう……」

 

ユウキと喋っているとディアベルが 話を進めた。

 

「よし、それじゃあ再開して良いかな?ボスの情報だが、実は先程、例のガイドブックの最新版が配布された」

 

周りがざわついたが気にせずディアベルは続ける。

 

「それによるとボスの名前はギルファングザコボルドロード。それにルインファングセンチネルと言う取り巻きがいる。ボスの武器は斧とバックラー。4本あるHPバーの最後の1本が赤くなると曲刀カテゴリのタインワームに武器を持ち替え、攻撃パターンも変わる。と言うことだ」

 

「これで攻略会議を終わる。最後にアイテム分配だが、金は全員で自動均等割、経験値はモンスターを倒したパーティーのもの、アイテムはゲットした人の物とする。異存はないかな?」

 

その問いかけに周りからは賛成の声が上がる。

 

「よし、明日は朝、10時に出発する。では解散!」

 

ユウキとシエルは広場を後にした。しばらく歩くとユウキが聞いてきた。

 

「ねぇ、シエル。これからどうするの?」

 

「フィールドに出て、レベル上げ」

 

「えぇー!今からレベル上げ行くの?もう5時だよ?一緒にご飯食べに行こうよ」

 

「どこに店があるのか、知らない」

 

「え?シエルってご飯食べたことないの?」

 

「……ログインしてから1回も…」

 

「じゃあ案内するよ。だから、一緒に行こう?」

 

まだ、宿や飲食店に行ったことがなく、気になったのでシエルはユウキについて行くことにした。

 

「……わかった…よろしく」

 

「おっけー、じゃあご飯食べに行こ。美味しいところ知ってるんだ〜」

 

ユウキに付いて行くと香ばしい匂いを漂わせ、少しレトロな雰囲気を醸し出す店に着いた。

 

「此処だよ!少し高いけど美味しいんだ〜」

 

「そう…なら奢る…」

 

「え?いいの?此処の値段設定高いよ」

 

「問題ない…1か月寝ないで狩ってたらいつのまにか20万コル溜まってた」

 

「も〜体には気をつけてないとダメだよ?いくらVRだからって脳は動いてるんだから」

 

「……善処する」

 

店に入るとエプロン姿のNPCが対応を始めた。

 

「いらっしゃいませ。2名様でよろしですか?」

 

「はい、出来ればテーブル席で」

 

「かしこまりました。お席へご案内致します」

 

広めのテーブル席に案内され2人は向かい合う様に座った。

 

「こちらが当店のメニューなります」

 

NPCはメニューを渡すと他の客の方へと歩いていった。メニューを一通り見終わるとユウキが聞いてきた。

 

「ボクはこれにするけど、シエルは何にする?」

 

「……ユウキと同じので良い」

 

「わかった。じゃあそうするね」

 

ユウキがNPCの方へ声をかけるとすぐにNPCが対応にやってきた。

 

「じゃあこのパスタを2人分お願いします」

 

「かしこまりました。暫くお待ちください」

 

NPCはそう言い残し、厨房の方へ去っていった。10分くらいして、NPCが料理を運んできた。

 

「お待たせしました。注文の品になります」

 

「どうも〜」

 

NPCは料理を並べるとその場を後にした。並べられた料理は現実的世界のカルボナーラに酷似していた。

 

「いただきま〜す♪」

 

「いただき…ます」

 

ユウキは勢い良く口にパスタを頬張り幸せそうな顔をする。

 

んん〜此処のはやっぱり美味しい

「んん〜ほほのはやっふぁりおいひい」

 

「……飲み込んでから…話そう?」

 

ゴクンと音と共にユウキは話しだす。

 

「ごめん、ごめん。此処のご飯好きでさ」

 

「うん…たしかに美味しい…」

 

「でしょ?此処はボクのお気に入りなんだ〜」

 

「……ユウキってら何が好きなの?」

 

「う〜ん基本なんでも好きだけど最近はよくパスタ食べてるかなぁ。でもそれより、冷めないうちに食べちゃお?」

その後、2人は淡々と食べ続け数分後にはパスタの乗っていた皿は綺麗になっていた。

 

「あぁ〜美味しかった。また来たいなぁ」

 

「……うん、美味しかった…ダンジョンに籠らないでこういう事をするのも良い…」

 

「へへ、そうでしょ?他にも紹介するよ?」

 

「……うん…ありがとう……」

 

「でも、本当に奢って貰って良いの?」

 

「……大丈夫……ほとんど使いみちないから……」

 

「そうなの?ありがとう♪」

 

2人は会計の場所へと向かい、宣言通りシエルが全額払い店を後にした。周りはすっかり暗くなり時刻は7時を回っていた。

 

「もうすっかり暗くなっちゃったねぇ。もう宿に行く?」

 

「……うん…何処にあるか…知らないけど」

 

「じゃあ着いてきて」

 

広場に出て左に曲がるとあるらしい宿へ向かう。途中の広場ではディアベルやキバオウが軽い宴会を行なっていた。2人は気にせず宿へと足を進めた。宿は渋いレンガ造りで始まりの街とマッチしていた。中へ入りユウキが受付のNPCに話しかける。

 

「此処で一泊するので2部屋お願いしま〜す」

 

「すみません。現在、1部屋しか空きがございません」

 

「え〜。どうするシエル?1部屋しか空いてないって」

 

「…なら…ユウキが此処で泊まっていけば良い…俺は外で野宿するから…明日の朝に迎えに来る」

 

シエルは少し残念そうな顔で提案する。シエルは最悪寝ないでレベル上げでもしようかと考えていた。

 

「え〜それはダメだよ。そんなこと言って結局寝ないんでしょ?」

 

ユウキに図星を突かれシエルは何も言えなかった。

 

「やっぱり。じゃあ2人で泊まろうよ」

 

「……でも2人分の部屋はない」

 

「う〜ん。それじゃあ……一緒の部屋で……泊まる?」

 

「…………え?」

 

ユウキの予想外な提案にシエルは少し思考が止まった。それもそうだろう今まで人と全く関わらなかったのに初対面の人と同じ部屋で泊まることになったのだ。しかも相手が同性ならまだ精神的には楽かもしれないが相手は異性だ。その2つの問題が重なり、シエルは放心状態になっていた。だが、そんなことに気づかずユウキはNPCと手続きを続け部屋を借りていた。

 

「おっけー。借りたよ〜シエル行こう。シエ…ル?」

 

放心状態のシエルに気づいたユウキが軽くシエルの揺らす。するとシエルは放心状態から戻った。

 

「……結局どうなったの?」

 

「え〜聞いてなかったの?同じ部屋で泊まることになったじゃん。ほら302号室だって。行くよ」

 

ユウキはシエルの手を引き、半強制的に部屋へ連れて行く。3階に登り、一番奥に302号室はあった。扉を開けて中を見ると部屋は思いの他広く1人用のベッドさらにはソファーがあった。

 

「……思ったより…広い…」

 

「そうだね。ボクもこんなに広い部屋は取ったことないなぁ。でも、やっぱりベッドは1つしかないんだね」

 

「……ユウキが使えばいい…俺はソファーで寝る…」

 

「え〜でもいいの?ボクが独り占めしちゃって?ご飯も奢って貰っちゃったのに…」

 

「……別に良い…何処でも寝れる…」

 

「でも、やっぱり悪いよ。シエルが使って」

 

「……女の子をソファーで寝かせる訳にはいかない……」

 

「じゃ…じゃあ2人で寝るのは?」

 

「それにしては狭いし、ユウキには案内してもらったりもしたからベッドでゆっくり休んで欲しい」

 

「わ、わかったよ。ボクがベッド使う」

 

ユウキは少し気がのらなそうに同意した。

 

「うん…それで良い…」

 

シエルは部屋の中央へと進み剣を外しソファーに腰を下ろした。ユウキも隣に剣を下ろして座る。

 

「……こんなにゆっくりするのは久しぶり……」

 

「一体今までどんな生活送ってきたの?」

 

「……フィールドに籠ってレベル上げ…アイテムが無くなったり武器の耐久が無くなって来たら街に行ってた」

 

「ご飯と睡眠は?」

 

「……ノータッチ…」

 

「はぁ…いくらここがゲームだからってあんまり無茶しちゃダメだよ?」

 

「……?…必要無い物を省いてレベル上げとかダンジョン攻略をした方が効率が良い……」

 

「ご飯と睡眠だって大切だよ」

 

「……ゲーム内だから食べても栄養化は取れない…睡眠は……そうかも…」

 

「だったら、せめて睡眠くらい取りなよ?」

 

「……気をつける……」

 

「うん、よろしい♪」

 

「…何でそんなに気にかけてくれるの?」

 

シエルの質問にユウキはキョトンとした顔で答えた。

 

「え、だってパーティーメンバーだから。それにシエルを見てると少し心配だよ。いっつも無茶してる話しか聞かないもん」

 

「……そうかも」

 

ユウキは頷いてから目の色を変えて聞いてくる。

 

「ねぇねぇ。それもりもさ。ローブ。取らないの?」

 

「……え?……何で?」

 

「え〜だってご飯の時と取らないで食べてたし。攻略会議の時だって一回も取ってないじゃん」

 

「……素顔を見られたくない…から」

 

「大丈夫だよ。現実だったらそんな格好してないでしょ?」

 

「してないけど……」

 

「じゃあ良いじゃん」

 

「……わかった……とるよ…」

 

シエルはユウキに対して根気負けし、メニューを開らき装備画面でローブを外した。

 

「わぁ〜シエルの体って案外細いんだね。もうちょっとしっかりしてるのかと思ってた」

 

「…地味に酷くない?…」

 

「ごめんごめん。別に馬鹿にしてる訳じゃないよ。でも、何でそんなにローブを取りたくなかったの?」

 

「……言わないとダメ?…」

 

「ううん。無理には聞かないよ。ボクの方こそまだ会って1日なのにごめんね」

 

「……別に謝らなくて良い…それより…もう遅い…から寝よう…」

 

「あ、本当だもうこんな時間!」

 

時刻はすでに10時を回っていた。どうやら会話に集中し過ぎていたらしい。

 

「じゃあ、悪いけどボクベッドで寝かせて貰うね?」

 

「うん、そうして」

 

ユウキは電気を消し横になった。シエルはそのまま座った態勢のまま眠りについた。2人とも疲れていたのか五分後には2人とも寝ていた。

 



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ビーター

翌朝、シエルが目覚めると右半身に違和感を感じた。目を開け違和感を感じた方へと目を向ける。違和感の正体はユウキだった。いつの間にかユウキはベッドから隣に移動しシエルによし掛かる形で寝ていた。

 

「……え?…どうして…こうなった?」

 

シエルは下手に動くとユウキを起こしてしまいそうでとても動く気にはなれなかった。

 

「……ユウキが起きるまで…このまま?」

 

シエルはユウキが起きるまで暇であることに気づきアイテム整理でもしようかとメニューを開いた。暫くの間アイテム整理をしていると、シエルの動きに反応したのかユウキが起きた。しばらくの間は寝ぼけているのか目をショボショボさせあくびをしていた。そこでシエルと目が合いユウキは状況を理解した。

 

「ふぁ?!シ、シエル!?こ、これはその…何というかあの…#/♪¥:=+|+€…」

 

ユウキは顔を真っ赤にして言葉にならない声を発していた。シエルは下手に刺激しない方が良いのかと思いつつ声をかける。

 

「……おはよう…ユウキ……」

 

「ふぇ?う、うん。おはよう………えっと…怒ってない?」

 

「……聞きたいことはあるけど…怒ってない。とりあえず、準備してご飯食べに行こう?」

 

「う、うんわかった」

 

シエルは立ち上がり、ローブや剣を装備し準備を進める。暫くして落ち着きを取り戻したユウキも剣を装備したりと準備を始めた。

 

「準備はいい?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

ユウキの返事を聞き、シエルはフードを被りながら扉を開けようとする。

 

「え〜また、フード被っちゃうの?」

 

「あまり、見られたくない」

 

「うーんしない方が良いと思うけどなぁ〜」

 

「………わかった……しない…」

 

シエルはフードを被ろうとしていた手を止め、ユウキと共に部屋を後にする。階段を降りチェックアウトを済ませる。

 

「ごめんね、宿代も払ってもらっちゃって」

 

「大丈夫。お金には余裕があるから」

 

「うん、ありがとう。それに、朝はごめんね」

 

「気にしてない。それより、朝ごはん食べよう?」

 

「うん、そうだね。何処か行きたいところある?」

 

「ユウキに任せる」

 

「そっか、じゃあ。昨日と別の所に行こう」

 

昨日とは違い店の外観は質素ではあったがヴィンテージか雰囲気があり、喫茶店の様な店だった。2人は店で朝食を済まし今回はユウキも払うと言うので割り勘にし店を後にした。時刻は9時を回った所だったので集合場所に向かうことにした。

 

10時になったので攻略者全員がボス部屋へと向かい移動を開始した。集合場所にはすでに多くのプレイヤーが集まっておりその中にはキリトの姿もあった。キリトはシエル達に気づき近くに歩いてきた。

 

「よぉ久しぶりだなシエル」

 

「うん、久しぶり。キリト」

 

シエルとキリトは軽い挨拶を交わした。

 

「にしてもお前の素顔、初めて見たな。いっつもお前、フード被ってて見れなかったからな」

 

「うん、色々あって今は外してる」

 

「そうか。んで、隣にいるのはシエルのパーティメンバーか?」

 

「うん、此奴は今パーティ組んでんるユウキ」

 

此奴という言われ方に反応したユウキが頬を膨らませながら言う。

 

「もー此奴って何さー。もっとマシな言い方できないの?」

 

「はは、2人とも仲良いんだな。シエルがこんなに心を開いてるの初めて見たかもな」

 

「うるさい、余計なことを言うな」

 

「はは、ごめんごめん。つい…な?」

 

「なになに〜シエルっていつもはこうじゃないの?」

 

「いつものシエルって言ったらほとんどしゃべr

 

「そう言うキリトだってパーティー組めたんだな。あと、キリト今度覚えてろよ?」

 

シエルがわざとらしくキリトの話を遮る。

 

「悪かったって。えっと隣に居るのは」

 

「アスナよ。よろしく」

 

アスナはキリトの言葉に繋がるような形で会話に入ってきた。彼女もまた、前のシエルと同じようにローブを着てフードを深くまでかぶっていた。

 

「よろしく」

 

「うん、よろしくね♪」

 

各々挨拶を済ませ雑談をしながら列について行く。道のりはかなり長く、途中モンスターの群れも来ていたようだが列の後ろの方にいたため4人は全くモンスターと戦うことはなかった。

ボス部屋の前に着くとディアベルが床に剣を刺し全員に聞こえるように話し始めた。

 

「聞いてくれ皆んな。俺から言うことはたった1つだ。勝とうぜ。よし、行くぞ」

 

ディアベルは扉をゆっくりと押した。すると、重々しい扉が開き中へと入れるようになった。

全員がボス部屋の中へと入る。部屋に入ると中は薄暗かった。全員が入りきってからだろうか、部屋の奥から赤く光るものが見えた。そして、部屋が明るくなり部屋の全体が見えるようになった。

赤い光りの正体はボスの目であることがわかり、ボスは大きな椅子に腰を下ろしていた。椅子から立ち上がるなやいなや大きくジャンプをし部屋の中央で着地した。

 

「グガァァァァァァァァッ!」

 

ボスは大きく吠え、同時にHPバーと取り巻きのセンチネルが現れた。

 

「攻撃っ開始ーー!!」

 

ディアベルの掛け声により、攻略者全員は与えられた役目を果たそうと持ち場に着く。シエルとユウキの役目はキリトとアスナと同様にセンチネルの一掃でだった。

シエルとユウキは次々と入れ替わりほとんど被弾せずセンチネルにダメージを与えていく。

 

「ユウキ、スイッチ」

 

「はいよ〜」

 

シエルがセンチネルの攻撃弾き返し怯ませたところでユウキとスイッチを行う。ユウキの放ったソードスキルによってセンチネルのHPバーがなくなりセンチネルは無数のポリゴンとなった。

 

「OK〜これで3体目だね」

 

「ボスの残り体力は……後3本かまだまだだな」

 

「まぁいいじゃんそれまで倒し続けよう!まだまだ余裕あるからね」

 

「そうだな」

 

シエルは一番近くにいたセンチネルに狙いを定めソードスキルを放つ。不意を突かれたセンチネルは防御が出来ず、シエルの攻撃をもろに喰らう。すると、センチネルの首が切断されると同時にMAXまであったセンチネルのHPバーが即座に無くなりセンチネルは無数のポリゴン片となり消滅した。

 

「首を飛ばした方が効率が良い」

 

「わかった!首だね?」

 

「うん、なるべく」

 

シエルはセンチネルを正面から攻撃を仕掛ける。勿論、センチネルはその攻撃を防いだ。シエルとセンチネルの鍔迫り合いになる。その隙を逃さずユウキは背後からセンチネルの首にソードスキルを放った。センチネルはユウキの攻撃を対処出来ずポリゴン片へと変わっていった。

一方でキリト達はスイッチを繰り返しセンチネルを淡々と倒していた。コボルドへ攻撃している者たちはタンクがパリィを行い、その隙をアタッカーが攻撃する。それを何度も繰り返していた。

気がつけばボスのHPバーは残り一本に減っておりあと少しで赤ゲージへと減らせそうであった。そうこうしている内にコボルドの硬直時間が終了し、アタッカーが退く。コボルドから攻撃を繰り出されたがタンクが再びパリィを決め隙を作った。アタッカーの追い打ちにコボルドは成す術無くHPが減らされていった。コボルドのHPバーはついに赤ゲージに達したところで、コボルドは大きく後退しバックラーと斧を投げ捨てた。

 

「情報通りみたいやな」

 

「退がれ!俺が出るっ!」

 

ディアベルはコボルドの前へ出てソードスキルを溜める。だが、持ち替えた物はタルワームではなくノダチだった。

 

「タルワームじゃなくてノダチ!?」

 

持ち替えた物が違うことに気づいたキリトがディアベル達に向かって大声で叫ぶ。

 

「ダメだっ!全力で後ろに飛べっ!」

 

だが、その声は遅かった。ディアベル達が動く前にコボルドのソードスキルが溜まったのだ。コボルドはディアベルに向かってソードスキル、幻月を放つ。ディアベルはかわす事が出来ずまともに喰らってしまう。その後もコボルドは攻撃の手を緩めず他のプレイヤーへも攻撃を開始した。キリトは急いでディアベルの元へと駆け寄った。

 

「ディアベル!何故1人で?」

 

キリトは声を描けなながらポーションで回復しようとした。だが、ディアベルはポーションを受け取らなかった。

 

「お前も……ベータテスターだったら…わかるだろ?」

 

「ラストアタックボーナスのレアアイテム狙い。お前もベータテスターだったのか?」

 

「……頼む……ボスを…ボスを倒してくれ……皆んなの……ために……」

 

ディアベルは最後の言葉を残すと無数のポリゴン片となり消えていった。キリトは覚悟を決めた目でボスを見つめ立ち上がった。

 

「私も行く」

 

声を掛け、隣にやって来たのはアスナだった。2人はコボルドの方へと駆け出した。

 

「手順はセンチネルと同じだ!」

 

「わかった」

 

2人の動きに気づいたコボルドはスキルを溜め突進攻撃を繰り出す。キリトはソードスキルによりコボルドの攻撃を弾いた。

 

「スイッチ!!」

 

キリトの声と共に横からアスナがコボルドに向かって攻撃を繰り出そうとした…が、コボルドはノダチをアスナの方へと再び振った。

 

「アスナ!!」

 

コボルドの攻撃はアスナのローブを破壊しただけで済み、アスナはコボルドへと突き攻撃を繰り出した。キリトは一瞬、ローブの中から現れたアスナに目を取られたが剣を強く握りアスナが作った隙を見逃さず攻撃を繰り出す。アスナも再び攻撃当てていく。コボルドも負けじとノダチを振るい攻撃をしようとする。コボルドの攻撃をキリトは防ぎそのまま斬撃戦へと持ち込む。しばらくキリトは打ち合っていたが此処で致命的なミスをしたためキリトの剣は大きく後ろに弾かれてしまった。

 

「しまった!」

 

コボルドの攻撃をくらい直線上にいたアスナもろとも数メートル吹き飛ばされた。2人は地面に横倒れそこにコボルドがトドメを刺そうとノダチを振るった。アスナはダメ押しで剣を片手で構えた。だが、コボルドの攻撃を受ける前に金属音がし、目を開くとそこには数メートル後退したコボルドの姿と剣を構えたユウキとシエルの姿があった。

 

「全く。2人とも無茶はダメだよ?」

 

「全くだな」

 

「シエルは人の事言えな〜い」

 

シエルとユウキは軽い言葉を残した後、怯んだコボルドへと走りだした。シエルがコボルドの攻撃を弾きそこにユウキが剣をたたき込む。シエルとユウキの周りにはいつの間にかエギル達も集まっていた。コボルドが攻撃の構えを取ったのを見てシエルは後退し、エギルに声を掛けた。

 

「エギル、頼む」

 

「任せろ」

 

エギルを含むタンクはコボルドの攻撃をパリィし他のアタッカーがコボルドへ攻撃を叩き込む。しかし、コボルドも負けじとアタッカーの攻撃を全ていなし側にいたプレイヤーをまとめて吹き飛ばしトドメを決めようと跳躍しスキルを溜める。

 

「危ない!」

 

立ち上がり、剣を握っていたキリトがスキルを溜め、コボルドの攻撃を阻止を狙う。

 

「届けぇーー!!」

 

攻撃は見事にヒットし、阻止に成功する。キリトは綺麗に着地しキリトはシエル、ユウキ、アスナに声をかける。

 

「3人とも、最後の攻撃。一緒に頼む」

 

「わかった」

「任せて!」

「了解!」

 

シエルとユウキは先制しコボルドに攻撃をし、終わったと同時にスペースを空けるため横に跳ぶ。そこにアスナが攻撃入れ、最後にキリトが2連撃を繰り出す。その怒涛の攻撃にコボルドのHPは成す術無く削りきられた。コボルドのHPバーは消滅し、無数のポリゴン片となり消滅した。すると空中に大きく《Congratulation》と表示された。その文字を見てしばらく沈黙の時間が続いたがプレイヤーが一層をクリアしたことに気づき完成が上がる。4人はその場に力が抜けた様に座り込んだ。そこにエギルが近づいてきた。

 

「見事な剣技だ。Congratulation。この勝利はあんたらのもんだ」

 

エギルの言葉に続いて周りのプレイヤーからも歓声が上がった。

 

「なんでやっ!!」

 

歓声の奥からキバオウの震えた、しかし力強い声が響き渡った。キバオウの叫び声によって一瞬にして辺りが静まり返った。

 

「なんで…なんでディアベルはんを見殺しにしたんや」

 

「見殺し?」

 

キリトの弱々しい声がキバオウの元へと返ってくる。

 

「そうやろが!自分はボスの使う技、知っといたやないか!最初からあの情報を教えていればディアベルはんは死ななかったんや」

 

キバオウの言葉で周りのプレイヤーがざわめき出した。すると、キバオウの隣にいたプレイヤーが言った。

 

「きっと奴、元ベータテスターだ。だから、ボスの攻撃パターンを全部知ってたんだ。知ってて隠してたんだ!他にも居るんだろ?ベータテスターども、出てこいよ!」

 

その言葉により、周りのプレイヤーは疑心暗鬼となり自分以外のプレイヤーを疑いだした。

すると、ざわめき以外が聞こえなかったボス部屋で笑い声が響いた。

 

「ハハハッ。フハハハハハハ」

 

プレイヤー全員が声の方へと視線を向けた。声の主人はキリトだった。

 

「元ベータテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないで欲しいな」

 

「な、なんやと!」

 

「ベータテスターに当選した殆どはレベリングもまともに知らない初心者だった。今のあんたらの方がまだマシさ。でも俺はあんな奴らとは違う。俺はベータテスト中に他に誰も到達出来なかった層まで行った。ボスの使う刀スキルを知ってたのはずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知っているぜ?情報屋なんか問題にならないくらいな」

 

「な、なんやそれ。そんなんベータテスターどころやないやんか…もうチートや!チーターや!そんなん!」

 

周りからもキリトを罵倒する声が上がる。「そうだそうだチーターだ!」「べータのチーター。略してビーターだ!」

 

「ビーター…いい呼び名だな、それ。そうだ。ビーターだこれからは元テスター如きと一緒にしないで欲しい」

 

そう言い残すとキリトはLABで入手した黒いコート。(コートオブミッドナイト)を装備し奥へと去って行った。アスナはキリトの跡を追うようにその場を後にした。

アスナがさって5分くらいした頃だろうか。ユウキは俯いたままシエルに問いかける。

 

「……キリト…なんであんなこと言ったのかなぁ?」

 

「……大体の考えは読める。でもまぁあんまり良い気分には慣れそうもない。もう暫くしたら俺らも第2層に行こう」

 

「うん……わかった」

 

後ろでまだ、キバオウ達が話してはいたが、2人とも聞く気になれず第2層を目指して歩いて行った。




前書きにも書きましたが、今回は攻略前夜とビーターをまとめて出してしまおうと思ったわけですが、思ったより長くなったので分けることにしました。次回は第2層からになりまずがリアルな方が忙しいため投稿が遅れる可能性大ですが楽しみにまっててくださると幸いです。


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心の傷と甘いモノ

長い間投票ができず申し訳ございませんでした。これからは毎週投稿を心掛けようと思いますのでよろしくお願いします。


結論からいうと第1層のボスモンスターイルファング・ザ・コボルドロードの攻略は成功した。攻略による死者は1名。それは客観的に見れば犠牲は少なかった。いや、ほぼ皆無と言ってもいいだろう。しかし、攻略に参加したプレイヤーのほとんどが複雑な感情を抱いていた。第1層を攻略したという歓びは勿論ある。だが、それ以上に唯一の死者であるディアベルの存在が大きかった。ディアベルは攻略の指揮をとっていた要であり、場を和ませていたムードメイカーでもあった。そのディアベルの死がプレイヤーに大きな影響を与えていた。ディアベルの死の悲しみ。そして、このような攻略がこの先99回と続くのかという絶望。次は自分かもしれないという死への恐怖。その影響はこの2人にも及んでいた。第2層の主街区へと続く道を並んで歩くシエルと少女ユウキ。この2人の間の空気は重々しいモノになっていた。そんな中嫌気を刺したのか、はたまた心の整理がついたのかユウキが口を開いた。

 

「ねぇシエル……ディアベルさんの事、どう思う?」

 

「……最後まで仲間思いのお人好し」

 

「お人好しか…うん、そうかもね。ディアベルさんは凄く優しくていい人だったもん。最後は1人で突撃しちゃったけど…」

 

「最後の突撃はトドメのためじゃない」

 

「え、それじゃあなんのために」

 

「……ラストアタックボーナス」

 

「ラストアタックボーナス?」

 

「…最後の1人での突撃…あれは、ラストアタックボーナスのレアアイテム狙い。こいうゲームには付き物」

 

「それじゃあ…それをわざわざ伝えるためにディアベルさんは」

 

「……最初から死ぬ気でだった…ディアベルはボス攻略の定石…可能性…プレイヤーの欲…それを自分の命と引き換えに授けた」

 

「ディアベルさんはどうしてそこまでして……」

 

「……わからない……ハッキリ言って…ディアベルの思考は理解できない」

 

「シエルはディアベルさんが死んで悲しくないの?」

 

「……何も思わない…それよりもディアベルの死を無駄にしない方が良い」

 

「……うん、わかったよ。」

 

シエルは先程よりも少しペースを上げて歩き始めた。しかし、少し歩いたところでシエルはユウキのへ振り向いた。

 

「……そういえば。パーティーはどうする?街に着いたら解散する?」

 

「……ううん。ボクはこれからもシエルと組みたいな。それとも嫌…かな?」

 

「いや、問題ない。じゃあこれからもよろしく」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

第2層、主街区ウルバス。テーブルマウンテンをくり抜いた様に外周部だけを残し、その中に街が広がっていた。いかにも石の街。というように家の壁など、多くの物が石で造られていた。傾いてきた太陽の日が街へと入り街全体をてらしていた。

どうやら既にキリトが来ていたようで転移門は有効化され1層から他のプレイヤーも来はじめていた。そんな中、シエルの目にあるものが止まった。それは「《トレンブリング・カウ》のミルクを贅沢に使用した《トレンブリング・ショートケーキ》」と描かれた看板だった。

 

「どうかしたのシエル?いきなり立ち止まって」

 

シエルはどうやら無意識に立ち止まっていたらしく、ユウキが少し心配そうな目で見上げていた。シエルはローブの隙間から腕を出し、看板に指をさした。

 

「トレンブリング・ショートケーキが気になった」

 

ユウキに再び目を向けと今度は驚いた表情でシエルを見ていた。

 

「え、シエルって甘い物とかよく食べてたの?」

 

「…何でそんなに驚かれてるの?……うん、甘い物は好きだよ?」

 

「だって、シエルと初めてあった時は全然食べ物に興味なさそうだったから」

 

「……まぁ甘い物以外はあんまり」

 

「でも、1層にも甘い物とか結構あったよ?」

 

「ユウキ…今、何て言った?」

 

何故かシエルのオーラが変わり、鋭くなった目でユウキを見つめてきた。

 

「えっと…1層にも甘い物があった…と」

 

「ユウキ」

 

「は、はい!」

 

「今度…案内して」

 

「え?あ、はい。わ、わかった」

 

「ユウキ…どうかした?」

 

「それはこっちのセリフだよ!」

 

「…………?」

 

「何、その顔!急に怖い顔してきたのはシエルでしょ!」

 

「そんなに顔怖かった?」

 

「うん」

 

「なんか…ごめん。とりあえずあれ食べに行こう」

 

そう言うとシエルは看板の出ている店へと足を進めて行った。

店に入りメニューを見るとユウキは凄く驚いた表情になった。しかし、その一方でシエルは表情1つ変えずに店員のNPCを呼び出そうとしていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってシエル」

 

「どうかした?」

 

「どうかしたじゃないよ。1個500コルだよ?500コルもあったら宿に2泊できるよ!」

 

「うん、そうだけど…?」

 

「ボク、そんなに持ってないよ」

 

「じゃあ俺が払うから良いよ。飲み物は何にするの?」

 

「シエルってあといくらくらい持ってるの?(汗)」

 

「んーと、あと2万コルくらい」

 

「な、何でそんなにあるの?」

 

「狩り」

 

「あーそういえば戦闘狂だったもんね」

 

「………戦いは楽しむものでしょ?」

 

「シエルの場合は楽しむのレベルが違うんだよ」

 

「……まぁいいや。ユウキは飲み物、何にするの?」

 

「あ、うん。じゃあボクはトロピカルジュースにする〜」

 

「わかった。じゃあそれね」

 

シエルは店員のNPCを呼び出し、注文を済ませ再びユウキへと目を向けた。

 

「シエルってさ、凄いね」

 

「…何が?」

 

「普通の人ならボス攻略の後にケーキ何て食べないと思うよ 」

 

「よそはよそ、うちはうちだよ、ユウキ」

 

「なんか適当に言いくるめられた気がするなぁ…」

 

「ハハッ、ソンナコトナイッテ」

 

「うわぁすごい棒読み!いや、いつもこんな感じかも…」

 

などと他愛のない話をしていると、2人の元にNPCが近づいてきた。

 

「お待たせ致しました、こちら『トレンブリング・ショートケーキ』でございます」

 

並べられたケーキの生クリームはきめ細かく、ケーキ全体に均等に塗られておりベリーのソースがかけられ、その上に苺とラズベリーがちょこんと可愛く盛り付けられていた。

 

「わぁ…美味しそうだねシエル!…シエル?」

 

「…(キラキラ)」

 

「シエ…ル?目がすごくキラキラしてる」

 

「気のせい…全然なってない(キラキラ)」

 

「いや、直ってないよ」

 

「ユウキ、早く食べよ」

 

ケーキのスポンジはマシュマロのように柔らかく、フォークがすんなりと入る。口の中でスポンジはスッと溶けてなくなり、生クリームの甘味とベリーのソースの甘酸っぱさが口全体に広がった。

 

「んっ〜美味し〜!!」

 

「久しぶりに甘い物を食べれた……」

 

「シエルってそんなに甘い物好きだったの?」

 

「うん、好き」

 

「それにしても本当に良いの?」

 

「何が?」

 

「ボクの分のケーキとか奢って貰っちゃってさ」

 

「うん…大丈夫だよ。ユウキの表情が戻って良かった」

 

「ふぇ?ボク、そんなに暗い顔してた?」

 

「会った時に比べると…暗かったよ」

 

「そうだったんだ。でも、もう大丈夫だよ。これ食べて元気が出たよ」

 

「そう。それは良かった。まぁお金は気にしないで良いよ。好きなだけ食べて」

 

そこからというもの2人は会話をしながらケーキを食べていたが気がついた頃にはケーキが綺麗に食べ切られており、紅茶やトロピカルジュースも残り僅かになっていた。

外を見ると傾いていた太陽も沈み月の光が街を包み込んでいた。

 

「いつの間にこんな暗くなってたの?」

 

「さぁ、時間の流れは怖い」

 

「そうだね。でも、これからどうする?ボク達この街に来てからまだケーキしか食べてないよ?」

 

「……確かに。でも、夕食は食べる気しないかな」

 

「うーんそうだね。ボクも何かケーキで満足しちゃった。それじゃあもう宿で休む?」

 

「賛成」

 

「それじゃあそうしよっか。じゃあお会計したら宿屋を探しに行かないとね」

 

「うん、わかった。じゃあもう行こっか」

 

会計を済まし、喫茶店を出た2人は宿を探しに周囲を探索していた。喫茶店から少し歩いた所に宿屋を見つけた2人はすぐさまチェックインを済ませ各々自分の部屋に入ると特にする事もなくベッドに横になると今日の分の疲れが出たのかすんなりと眠りに入る事が出来た。




もう1話出す予定したが間に合わなかったので近日中に投稿したいと思います。

後何か今回は色々詰め込もうと思ったのですが失敗して前半のシリアスが後半のせいで若干よく分からない方向になってしまってごめんなさい。次回の話は詰め込んで失敗しないように頑張ります。


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岩と拳とド根性

今回は格闘スキルについての話になってます。
まだギャグ感が抜けてませんが次回から少しシリアス味を帯びた内容になってます。まだ投稿頻度そこまで変わらないけど許してお願い


第1層を攻略した翌日、2人はレストランにて朝食を取っていた。

シエルはフレンチトーストを食べていたのだが、ユウキの食欲は尋常ではなかった。恐らく、昨日食べたものがショートケーキ1個だったためいつもよりも空腹を感じていたのだろう。そんなユウキのメニューがハンバーグにパスタ、プラスでフレンチトーストである。

 

「…ユウキ…そんなにお腹、空いてたの?」

 

「えへへー昨日、あんまり食べなかったからさ」

 

「まぁ確かに……それより、今日はどうする?」

 

「うーんレベル上げでも良いけど何か特別なクエストがあったらそっちの方がいいと思うんだよね」

 

「……特別なクエスト……それじゃあ知り合いの情報屋に聞いてみる?」

 

「え?シエルに知り合いがいたの!?」

 

「ユウキ?……怒るよ?」

 

「ごめんなさい」

 

「それじゃあメッセージ、飛ばしとく」

 

「にしても、その情報屋さんってどんな人なの?」

 

「……ちょっと謎めいてるけど面倒みがいい人?」

 

「へぇ〜楽しみだなぁボクも基本はソロだったから」

 

「じゃあ行こう…転移門で集合だから」

 

「はーい」

 

店を出て転移門に行くとまだ、アルゴの姿はなかった。5分程雑談をしているとシエル達の方へと歩いてくるアルゴの姿が目に入った。

 

「よぉシー坊。久しぶりダナ」

 

「……久しぶり」

 

「それにしてもシー坊からお誘いが来るなんてオネーサンは嬉しいゾ。それにしてもシー坊が人を連れてるなんて珍しいんじゃないカ?」

 

「あ、ボクはユウキって言います。今はシエルとパーティーを組んでて……」

 

「にゃハハ、そんなに堅くならなくていいゾ〜オネーサンはそう言うの苦手だからナ」

 

「うん、それじゃあよろしくアルゴ」

 

「うんうん。ユーちゃんは素直で良いナァ。何処ぞのシー坊とは大違いダ」

 

「素直じゃなくて悪かったな」

 

「それじゃあ場所を変えようカ。ここじゃあ他の人に聞かれるかもしれないしナ」

 

暫く歩き、3人は人気のない路地裏に来ていた。

 

「それで、今回はどんな情報が欲しいんダ?」

 

「特殊なクエスト、スキルとか武器とかの」

 

「なるほどナ。それだったら良いのがあるゾ。受注出来る場所も特殊だし、丁度オレっちも暇だからナ。案内してやるヨ」

 

「そう…いくら?」

 

「そうだナ〜案内代込で1500コルだナ」

 

「はいはい」

 

「OK。それじゃあ行くカ、クエストの場所は東の端にある山ダ」

 

3人はアルゴの案内で山の方へと歩いていた。道中のモンスターはシエルが戦闘狂を発病させていたため主にシエルが対処していた。ユウキとアルゴも戦いはしていたが基本は後ろで見守っていた。アルゴは軽く呆れながらも案内を続け、街を出て1時間程度歩いた所で目的の場所へと辿り着いた。その場所は岩石に囲まれており、拓けた場所にポツリと1軒の山小屋があった。

 

「此処が例のクエストを受けれる場所ダ。それじゃあオレっちは情報収集があるからここいらでお暇するとするカナ」

 

「そう、いつも通りだな」

 

「ありがとね、アルゴ」

 

「あぁ、シー坊はともかく、ユーちゃんには安くしとくヨ」

 

アルゴと別れ、クエストを受けようと小屋を訪ねると中から白く長い髭を蓄えた如何にも仙人と言わんばかりの老人が出てきた。

 

「お主らは入門者か?」

 

「……そう」

 

「修行の道は長く険しぞ?」

 

「問題ない」

 

「そうか、お主も大丈夫なのか?」

 

老人はそう言いながらユウキの方を指す。

 

「ボ、ボクですか?勿論です」

 

「そうか、ならば良い。ならば儂に着いて来るが良い」

 

すると、クエスト開始の表示が出され、老人が二人を連れて小屋からさらに奥へと案内をした。案内された場所には3つの大きな岩が並んでいた。その、一番奥の大岩に見覚えのある人影があったがツッコム暇もなく老人の話が始まった。

 

「汝らの修行はたった一つ。両の拳のみで、この岩を割るのだ。為し遂げれば、汝らに我が技の全てを授けよう。一人につき、一つ岩が用意してある。己が割るべき岩にのみ、意味がある」

 

話が終わり、人影の元に近づくとやはりその人影はキリトだった。最後に別れた時と同じく黒いコートに黒いズボンを履いていた。

 

「やっほーキリト。昨日ぶり」

 

「あぁ、ユウキ。昨日ぶりだな」

 

「……昨日ぶり、まっくろくろ助」

 

「俺はどこのジ〇リキャラクターだよ」

 

「それで、キリトはどのくらい前から?」

 

「1時間前だ」

 

「ねぇねぇキリト、これって素手で壊せるの?」

 

「あぁ、一応壊せる見たいだがかなりの地獄だ」

 

「そう、まぁやるだけやる」

 

「そうだね、やるだけやろっか」

 

〜20分後〜

 

3人の大岩にヒビは入り始めたもののほぼ変化は無かった。そこで、シエルはある疑問が思い浮かんだ。

 

「これ、両拳って言ってたけど。蹴りはダメなの?」

 

「さぁ?でも、両拳って言うくらいだから手だけなんじゃないか?」

 

「……NPCも居ないしやってみる」

 

「お、おう。それは良いと思うがどうして岩から離れるんだ?」

 

シエルはその質問には答えず20メートル程離れたところで立ち止まり、そして、振り返った。すると、シエルは思いっきり踏切全速力で岩へと突っ込み蹴りを繰り出した。

ドゴンッ!!という音がしたと思ったらシエルは岩に少し吹き飛ばされていた。しかし、音から察せられた様に岩にはパッと見て分かるほどヒビが入っていた。

 

「おい!大丈夫か?」

 

「シエル!大丈夫?」

 

「うん、大丈夫。それよりこっちの方が早い。あと蹴りはセーフ」

 

「あぁそうみたいだな。俺もその方法をやってみるか」

 

「ボクもやってみよっと」

 

「あ、でも、気を付けないとダメージを受ける」

 

「ちなみにどれくらいだ?」

 

「だいたい10前後だと思う」

 

「なるほど、それじゃあ最悪はポーションで何とかなるな」

 

「うん、いける」

 

「OK、じゃあ危なくなったらポーションだね」

 

それから3人は助走を付け岩を蹴り、殴るを繰り返した。それから40分程経った頃である。やっと3人に終わりが見えてきていた。

シエルが助走を付け渾身の蹴りを岩にお見舞いをした時……ドゴンッ!!と音がなったと思うとピキピキピキと岩全体にヒビが巡りそして、砕けきった。物凄い轟音と砂埃が辺り一帯を支配していた。轟音も無くなり、砂埃も晴れると目の前に『Congratulation』の文字が現れ、その下にスキル習得の表示がされていた。

 

「やっと…終わった…」

 

「ってことはボクもそろそろ終わるのかな?よーしラストスパート!!」

 

「なんで、俺が早く来てたのにシエルの方が早く終わったんだ」

 

「ステータスの差」

 

「非情だ……それより、俺もやるか」

 

〜10分後〜

結局、その後はキリトよりユウキの方が終わり、残すはキリトのみとなった。シエルとユウキは少し離れたところでその様子を眺めていた。

そして、キリトは再び岩へと向き直り助走を付け全力で拳を繰り出す。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

キリトの拳が岩に当たり、岩はヒビに包まれ轟音と共に砕けきった。

 

「よっしゃあぁぁぁぁぁ!」

 

「うるさい」

 

「お前は俺にとことん厳しいな!」

 

「キリト、耳キーンってなるからやめて?」

 

「ぬぅ、ユウキまで…」

 

「とりあえずおめでとう、キリト」

 

「ああ、ありがt」

 

「これからどうする?」 (……え?)

 

「うーんボクはお腹空いたから何か食べたいなぁ」

 

「じゃあ街に戻ってお昼にしよう」

 

「さんせーい!キリトもそれで良いでしょ?」

 

「はい…それでいいと思います(涙)」

 

「んじゃあしゅぱーつー!!」

 

 

 

To be continued……




key「オイコラノ夜、てめぇどんだけ間開けて投稿してんだオラ」

ノ夜「いやー戻ってきましたね、keyさん」

key「誰のせいだと思ってんだ」

ノ夜「…次回は新スキル登場予定です、投稿ペースあげる予定ですのでよろしくお願いします」

key「待て話をそらすn」

ユウキ「それより、投稿頻度頑張ってね?」

ノ夜 key「ウィッス」




以上、後書きの茶番でした(真面目に頑張ります)


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新しいスキルと以外な弱点


ピンポンパンポーン



この小説には以下のものが含まれています。





・オリジナルスキル

・低能な主(ノ夜)

・完成度の低いストーリー

・センスのない雑談、ギャグ要素

・言うことなくなった



大丈夫な方は本編へ







〜2層 ウルバス〜

 

シエル、キリト、ユウキの3人は《体術スキル》のクエストに成功し現在は昼食を取るためにキリト一押しのレストランに行くことになった。正面ゲートから入り中央通りの途中から延びる少し細い道の奥へ進むと看板に《辛虎》と描かれたいかにも辛い料理を扱いそうな中華料理店があった。

 

「ここ、激辛料理とかがあって結構行けるんだぜ?」

 

「へぇ〜ボク、最近辛いもの食べてなかったからちょうど良いなぁ〜ね、シエル」

 

「あっちの店にしない?」

 

「え〜どうして」

 

「まぁいいだろ、ほら行こうぜ」

 

「……わかった」

 

店の中はカウンター席とテーブル席に分かれており3人は空いているテーブル席に座った。メニューを見ているとNPCが水を持ってきたためついでに注文も済ませることにした。

 

「うんじゃあ俺は激辛担々麺で」

 

「ボクは……麻婆豆腐にしよっと」

 

「……杏仁豆腐」

 

「え、シエル。それしか食べないのか?他に食べた方が……」

 

「杏・仁・豆・腐(ゴゴゴゴゴゴ…)」

 

「うわ…わかったよ。んじゃあ注文はそれで」

 

雑談をして暇を潰していると割と早く料理が運ばれてきた。キリトの頼んだ担々麺の汁は赤く、見るからに辛そうであり、グツグツと煮立っていた。ユウキの頼んだ麻婆豆腐も当然の様に赤く見るからに香辛料が大量に入ってる。そんな中シエルの頼んだ杏仁豆腐は綺麗な白色をしており、上に可愛くクコの実が2つ乗っていた。

 

「シエル……本当にそれで良いのか?」

 

「大丈夫」

 

「でも、それじゃあまたアルゴに怒られるんじゃあ」

 

「これで良い(ゴゴゴゴゴゴ…)」

 

「ねぇシエル……辛いの苦手なの?」

 

「(ギクッ)」

 

「はは〜んなるほどな。だから、シエル店に入るのも嫌がってたのかなるほd……」(スンッ!!)

 

勢い良くキリトの頬を掠めて行ったモノは壁に当たり、カランカランと音を立てて床に落ちたそれはナイフだった。投剣用のモノだ。シエルの方へと向き直るとその手にはあと3本ナイフが握られており目からはただならなぬ殺気が放たれていた。

 

「次に余計な事を言ったら……」

 

「……すみませんでした(涙)…………クソ、何で俺だけ(ボソッ)」

 

「何か……言った?」

 

「何も言ってないです」

 

「ねぇねぇシエル〜明日もここに来よ?」

 

「やだ」

 

「えぇ〜でも、この麻婆豆腐も美味しいよ?ホラッ」

 

「ングゥア!!」

 

そう言ってユウキはシエルの口に麻婆豆腐を放り込まれ、唐辛子などの香辛料が口いっぱいに広がりシエルの絶叫が店全体に響き渡った。

 

「ウグァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

「え!?シエル大丈夫?!」

 

「み…水…ミズゥ……」

 

「凄い…こんなシエル初めて見た」

 

「こんなに取り乱したシエルは中々見れないぞ!」

(ゴスっ)

 

「……そ、それでも相変わらずのようで……」

 

「デュエル以外でも使い道はあるだね」

 

調子に乗ったキリトはシエルが持ち歩いている投剣用のナイフの柄の部分でぶん殴られ、ユウキはもはや慣れたかの如くそのカオスな状況に適応していた。

 

「それじゃあ杏仁豆腐食べて帰ろ」

 

「えぇーボクが食べ終わるまで待ってくれないの?」

 

「どうせ、俺とそんなに変わらない」

 

「たしかに、そうかもね」

 

「それで、2人は食べ終わったらどうするんだ?」

 

ダウンしていたキリトは復活したのか担々麺を食べながら話に入ってきた。

 

「ダンジョンに行って戦いたい」

 

「シエルは、まぁ相変わらずだな」

 

「ボクもシエルについて行こうかな。早く、このゲームを攻略したいから」

 

「そうか、まぁ俺とは一旦お別れだな」

 

「ふーん、そう。確かにね」

 

「え、どういうこと?」

 

「ベーターといつまでも一緒にいるのまずいだろ」

 

「あ、そっか。そうだね。一旦お別れだね」

 

汚れ役を引き受けたキリトは基本的にソロプレイを強いられるため現在、発生しているプレイヤー間でのベーターへの目が落ち着くまではそうそう会うことが出来ない。それを理解している3人は少し寂しさを感じているのか暗い雰囲気になりつつあった。しかし、3人は心を固め席を立ち上がった。

 

「よし、食べ終わったし行くか」

 

「うん、行く」

 

「あ、そうだ。ねぇキリト…ソロだからってそう簡単に死なないでね?」

 

「あぁもちろんだ。2人も死ぬなよ?」

 

「うん、もちろん」

 

「そう簡単に死ぬと思う?」

 

そう言って3人は前へと歩み出した。

『ゴンッ』とシエルの方から鈍い音が鳴った。

 

「痛った…スネぶつけた」

 

「台無しだぞシエル」

 

「台無しだねシエル」

 

「ごめんなさい」

 

3人の笑い声がまるで今までの固く暗い雰囲気をかき消すかのように店内に響いた。

 

 

 

 

 

〜15層 ダンジョン内〜

 

1層の攻略から3週間が経過した。デスゲーム開始から約2ヶ月が経ち生存しているプレイヤーはアインクラッドでの生活に慣れつつあった。そのかいあってか攻略の速度も上がり、3週間で14もの階層を攻略することが出来たのだろう。

そんな中、いつもと変わらず嬉嬉としてモンスターと戦う2人組がいた。

蛇の体から腕を生やした様なデザインのモンスターがシエルに向かって剣を振るおうとしていた。その剣をシエルは紙一重で交わし攻撃をした時に生じだ隙をつきカウンターをお見舞いする。さらに、距離を取るついでに左手で用意をしていた投剣用のナイフをモンスターの眼へ目掛けて飛ばした。

 

「スイッチ」

 

「OK、任せて」

 

眼に刺さったナイフでもがいているモンスターにユウキが渾身の一撃を叩き込むとモンスターのHPバーは無くなり、モンスターもポリゴンとなって消滅した。

リザルトを開き経験値やアイテムを受け取るとレベルアップと新スキル取得の知らせが表示された。新スキル取得の文字を見て心当たりのないシエルは確認すべくスキルスロットを開いた。そこに《暗躍》という全く聞き覚えのない文字がそこにはあった。精細を見ると強制取得の文字といくつかの能力が書かれていた。

 

 

《暗躍》

 

・分身

自分の居る場所に分身を設置できる。

同時に3体まで召喚可能。

任意で召喚、解除ができるがオブジェクトに接触した時、強制解除。

30秒後に強制解除

 

・移動速度が2倍

 

・隠蔽スキルの精度が向上

 

・暗視効果が自動で付与される

 

・クリティカル時の加算は4倍になる

 

・相手に与えるダメージは半減する

 

・被弾時のダメージが30%UP

 

・片手直剣以外の武器を使用するスキルは発動不可

 

 

これを目の当たりにしたシエルの反応はと言うと固まっていた。分身、隠蔽の精度アップ、移動速度2倍はかなり強い。特に分身は相手にダメージを与えることは出来ずともヘイトを一瞬でもそこへ向けられるかもしれないため非常に強力な能力である。しかし、その他のデメリットによって使いずらさが増しているように思える。攻撃力の半減、そして自分へのダメージがアップ。これはリスポーンができるゲームならまだしもデスゲームとなったこのゲームではかなりの博打にも思える。クリティカル時にダメージが4倍になってはいるが攻撃力半減により実質通常のクリティカルと何も変わらないのだ。特に最後の片手剣以外での武器によるスキルの使用が不可というのはシエルにとっては割と大打撃だった。いつも戦闘時にナイフを相手に投げその隙に攻撃をするのが基本だったため今後からはこれが出来ないのである。確かにスキルを発動せずにナイフを投げることは可能だ。しかし、それはスキルの自動標準もなく威力も下がってしまう。つまり、自力でやるしか無くなるのである。

 

「シエル〜そんなに固まってどうしたの?」

 

シエルの様子に気が付いたユウキが剣をしまいながら歩み寄ってきた。シエルはユウキにも見れるよう可視モードボタンを押しユウキの方へと画面を傾けた。ユウキが画面を見ての反応は羨ましそうな顔と微妙と言わんばかりの目である。

 

「強いけどさぁ。これ、使いずらくない?」

 

「ごもっとも」

 

「それじゃあ練習しに少し下の層に行く?」

 

「うん、このスキルの慣らしたい」

 

「OK。それで、どうせめんどうって言って転移結晶使うんでしょ?」

 

「正解」

 

2人は転移結晶をポーチから取り出し詠唱し7層へと転移した。

 

久しぶりに7層に来た2人はこの街並みに少し懐かしさを覚えつつも慣れた動きでフィールドに向かって歩いていた。しかし、道中でQ.マークを浮かべた少女のNPCを発見した。7層の攻略中はいなかったので2人はクエストを受けようと少女に話しかけようと近づいた。少女に近づいた分かっのだが目に涙を浮かべており困っているように見えた。

 

「ねぇ、キミ。どうして泣いているの?」

 

「うぅ〜グスンッ。大事なペンダントを森で落としちゃって」

 

「じゃあそのペンダントをお姉さん達が取ってきてあげようか?」

 

「え、本当?お姉さん達が取ってきてくれるの?」

 

「うん、絶対見つけて持ってきてあげるよ」

 

「本当!?ありがとう。じゃあワタシここで待ってるね」

 

ユウキは少女に別れの挨拶してからシエルの方へと向き直った。

 

「て、ことでシエル♪」

 

「大丈夫、最後まで付き合あう。クエストの場所に行こう」

 

「さっすがシエルだね」

 

そんなこんなで森に到着した2人は森の奥へと進んでいた。

 

「うぅ〜ボクやっぱりこういうの苦手だなぁシエルはこういうの平気そうだよね」

 

「うん、平気。お化け屋敷とかも好きだったし」

 

「やっぱりシエルって変わってるよね。じゃあさ、お化け屋敷が行けるなら今度辛いものにも挑戦してみたら」

 

「しない」

 

「つまんないの〜今度、唐辛子混ぜて渡そうかな

(ボソ)」

 

「ユウキ、聞こえてるよ?」

 

「ボ、ボク何も言ってないよー。あははは」

 

そうこうしているうちに目的の場所についたらしく目的のペンダントが特殊な形をした木に引っかかっていた。

 

「OK〜これを持ち帰ればクエストクリアだね」

 

「……」

 

そういながらもユウキは木からペンダントを外し手に取った。すると、周囲の地面が所々盛り上がりその盛り上がった部分からゾンビ系のモンスターが8体も出現した。

 

「ユウキ、大丈夫?」

 

「んーちょっとキツイかなぁ」

 

「まぁ慣らすのにはちょうど良い」

 

シエルはモンスターに向かって駆け出し、首元に向かって剣を振り下ろした。すると、2体の首と胴体が2つにわかれポリゴンとなって消滅した。ユウキも負けずとモンスター2体をポリゴンへと変え残りは4体。

 

 

「ユウキ、大丈夫?」

 

「んーちょっとキツイかなぁ」

 

「まぁ慣らすのにはちょうど良い」

 

シエルはモンスターに向かって駆け出し、首元に向かって剣を振り下ろした。すると、2体の首と胴体が2つにわかれポリゴンとなって消滅した。ユウキも負けずとモンスター2体をポリゴンへと変え残りは4体。

 

「ユウキ、試したいから手を出さないで」

 

「うーんわかった。でも、イエローになったらボクも参戦するから」

 

「それで良い」

 

ユウキはゾンビ4体と距離を置いた。その時点でゾンビのヘイトは全てシエルに向けられていた。

 

4体のゾンビはシエルに目掛けて突撃を仕掛けて来た。だが、シエルは動かない。いつもなら回避の態勢に入るはずなのに動かないシエルに対してユウキは疑問を抱いていた。シエルは最後まで動かずゾンビからのの攻撃を受けた筈だった。ゾンビの攻撃を受けた瞬間。いや、ゾンビの手がシエルに触れた瞬間にシエルは消えた。シエルが消えた瞬間にシエルはゾンビの背後から現れたのだ。まさに瞬間移動をしたように。そのままシエルは1番右側にいたゾンビへと剣を振るいゾンビの首へ当てた。その攻撃は首を跳ねさせることは出来なかったもののクリティカル判定となりそのゾンビはポリゴンへと変わった。しかし、その隙を狙ってか残りのゾンビがシエルへと攻撃をしてくる。しかし、またしてもシエルの体は瞬間移動をし、今度はゾンビの真正面に立っていた。しかし、さっきまでと違うのは左手に3本のナイフを握っていたことである。シエルはいつもシステムによって動かされる道理に体を動かし3本のナイフをゾンビ目掛けて放った。3本の内1本は見事ゾンビの目に命中した。しかし、残りの2本は宙を切った。当たったナイフも十分な隙は作ることは出来なかった。

そんな中、シエルが3体のゾンビ目掛けて突進を仕掛ける。その瞬間ユウキは眼を疑った。なぜならシエルが3人いたからだ。すぐにユウキはシエルが分身を使っていることに気付き分身の動きに注目した。と言っても姿形は瓜二つ。だからこそユウキは動きを見た。パーティを組んで3週間もの間ずっと1番近い所でシエルの戦闘を見てきたユウキにとって違和感を見付けることは簡単だからだ。そうしていつものシエルと見比べていると全てに違和感があった。つまり、この中には分身しかいないのだ。空中の分身は金縛りにあったかのように重力に任せて落下し走って突撃する2体の分身もスキルを溜める様子もないのだ。しかし、ゾンビ3体の視線を集めるのには十分な様で3体のゾンビは3体の分身に向かって爪を振るっていた。もちろん分身に攻撃を当ててもなんの意味もなく背後から現れた本物のシエルによって3体ともポリゴンに変えられた。

 

「疲れた」

 

「うん、お疲れ様。それよりシエル、分身を使ってる時なんでシエルの姿が消えたの?」

 

「分身を発動させたら隠蔽を使っている表示が出た」

 

「それじゃあ分身を使うと隠蔽が自動で発動するってこと?」

 

「多分……あと、ナイフの練習も今度しないといけない」

 

「まぁいいやこの話は宿でするとして早く街に戻ってあの子に届けてあげよう?」

 

 

「うん」

 

街に戻り先程の場所に行くと少女だけではなく少女の叔母らしき人も一緒に待っていた。

 

「あ、さっきのお姉ちゃんだ!もう、持ってきてくれたの?」

 

「うん、はい、これ」

 

「わぁ本当に取ってきてくれたんだ。ありがとう!お姉ちゃん」

 

「本当にすまないねぇ。お礼にって言っちゃああれなんだがこれを受け取ってくれないかねぇ」

 

そういうとその叔母はイヤリングを差し出して来た。アイテム名は《つがいの耳飾り》となっていた。

 

「そっちのお兄ちゃんとでも使っておくれ。それじゃあ私らは帰るよ。本当にありがとうねぇ」

 

そう言って2人を見送るとユウキは貰ったばかりの耳飾りを耳に付けていた。

 

「ねぇねぇシエル〜似合う〜?あ、あとこれシエルの分ね」

 

「うん、似合ってるよ。それじゃあ宿に戻ろうか」

 

「えぇ〜シエルも付けてよ」

 

「後でね」

 

「今が良いー」

 

そんなやり取りをしながらも2人は夕陽に染められた街を歩き去っていってた。

 

 

To be continued……




Key「おら、GW終わるぞ、泣けよ(号泣)」

ノ夜「おかしいなぁGW中に頑張れば2本行けんじゃねって思ってたんだけどなぁ」

Key「ちょっと黙れよお前」

シエル「早く編集して」

Key&ノ夜「すいません」


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苦杯の過去

ピーンポンパンポーーン


注意!!このクソ小説には以下のことが含まれてます。





・ナメクジ投稿



・下手くそな描写



・急展開


・オリジナルキャラクター


・なりきれなかったシリアス



・挟もうとして失敗したネタ



・不定期投稿




どうか承知の上でお読みください





 

 

「離してっ!ボクから手を離してよっ!」

 

「うるせぇんだよバイ菌野郎。ほら、こっち来いよ」

 

人気のない裏路地に複数の少年らしき笑い声。そして、少女の助けを求める声がそこには響いていた。

 

「やめてよっ!!やめてってばっ!!」

 

少女の声は虚しく響き路地裏の奥へと連れ込まれていた。少年たちから手を離されたと思っても次に飛んできたのは罵声、暴力。体の至る所を蹴られ殴られ痛みが広がる。

 

(助けて…誰か助けてよ……)

 

そんな思いとは裏腹に少年たちの手が怯むことなく襲いかかる。しかし、今度は聞き覚えのない声が聞こえてきた。

 

「何をしている」

 

声の主を見ようと顔を上げると癖の強い青みがかった髪に学ランを来た中学生ほどの青年だった。肌は白く、体は細かった。そして、青年の瞳は

綺麗な紅色をしていた。

 

「へっ、お前には関係ないだろ」

 

1人の少年が言った時、青年の目が鋭くなり、そこからは恐怖を感じる程の敵意を感じた。流石に怖くなった1人が逃げ出したのをキッカケに少年達は次々とその場を走り去って行った。最後に残ったリーダー格の少年は捨て台詞を吐き捨て逃げて行く。

 

「へっ!これで終わりだと思うなよ。じゃあなバイ菌野郎!」

 

最後の一人が走り去っていくのを最後まで確認した青年は何処から出したのか消毒液や絆創膏で少女の傷を手当してくれた。少女はそれに対して嬉しく思うのと同時に申し訳なかった……

少女がイジメられていた理由は少女が患わっている感染病だった。青年は手当とはいえ少女の体に触れてしまっている。感染してもおかしくはない。そこで少女は声を荒らげてしまった。

 

「ボ、ボクに触らないで!」

 

青年の手が止まる。嫌われてしまっただろうか。折角の恩を仇で返してしまった。少女は言ってから後悔をした。しかし、青年の手が再び動いていた。そして、青年は手を動かしながら話し始めた。

 

「…知ってる…」

 

「えっ?」

 

「君が…感染に掛かっていること。さっき、奴らの声が聞こえた時に察した。知ってて助けに来た」

 

「でも、ボクの血とかに触れたら人に感染するかもしれないんだよ?お兄さんだって……」

 

「うん、人みたいに生きられたら良かった……」

 

青年は悲しそうにそう言った。しかし、少女はその意味がよくわからなかった。その後、青年は何も話さなかった。そして、少女を家の前まで送ってくれた。玄関の扉を開ける前にもう一度振り返った時には青年は何処かへ行ってしまっていた……

 

 

 

 

 

頭にアラーム音が鳴り響く。SAO独特の目覚ましである。ユウキは体を起こし、周りを見渡した。窓からは朝日が差し込み部屋を明るく照らしていた。さっきの夢とは違う。少年たちも居ない。

 

「なんで昔の夢なんて見たんだろ……」

 

そして、ユウキは夢で見た青年を思い出した。

 

「あの、時の人。シエルに似てる……でも、同一人物だと、したら今頃……」

 

ユウキはそこで考えるのをやめた。怖かったのだ。自分を助けた余り感染したと思うのが……

ユウキはいつものように身支度を整えシエルとの集合場所へと向かった。

 

 

 

 

 

♤+:;;;;;;:+♤+:;;;;;;:+♤+:;;;;;;:+♤+:;;;;;;:+♤+:;;;;;;:+♤+:

 

 

ユウキとシエルはダンジョン内にある安全地帯にてお昼ご飯を食べていた。今日のお昼ご飯は小さめのサンドイッチを何個か作ったのでそれを2人で食べている。安全地帯にはシエルとユウキの他には誰もおらず、2人の声だけが安全地帯に広がっていた。

 

「そう言えばさ。今日、珍しく昔の夢を見たんだよね」

 

「昔の?」

 

「うん、ボク実はさ数年前は色々あっていじめられててさ。その時の夢だったんだ。でも、いじめられてる時に中学生くらいの人が助けてくれて。家まで送ってくれたんだよね。でも、その人名前も何も言わないで帰っちゃったからお礼も何も出来なかったんだよね」

 

「ふ〜んどんな人だったの?」

 

「うる覚えなんだけど、学ランを来てて…そうだ。シエルとよく似てたよ」

 

「俺と?」

 

「うん。シエルの目みたいにその人も綺麗な紅色だったな〜」

 

「ふーん。世の中にはそこまで似たような人もいるんだ…」

 

「確かに。まぁ色んな人がいるしね」

 

「じゃあそろそら行こう。闘いたくなってきた」

 

「アハハ…相変わらずだね」

 

そういうと食べ終わったサンドイッチの入れ物をしまい込むとシエルはスタスタと安全地帯の出口へと向かって行った。

 

「もーっ!待ってよシエルー!」

 

 

 

 

 

 

♧*:;;;;;;:*♧*:;;;;;;:*♧*:;;;;;;:*♧*:;;;;;;:*♧*:;;;;;;:*♧*:;;;;;;:*♧*:;;;

 

シエルは相変わらずモンスターを見つけると容赦なく斬り付けポリゴン片へと姿を変える。シエルとずっと一緒にいたせいなのかユウキも負けじとモンスターをポリゴン片へと変える。そう、いつの間にかシエルだけではなくユウキも戦闘狂の仲間入りを果たしていた。

 

そんな事をしながらマッピングをしていると大きな鉄扉の前まで来ていた。扉には不気味な装飾がされており、2人は直ぐにこの扉が何なのかを理解した。そう、フロアボスの部屋へと通じる扉である。

 

「これ…もしかしてボス部屋?」

 

「うん、もしかしなくてもボス部屋だね」

 

「やっぱり?じゃあしょうがない……ここで切上げてアルゴにでも言いに行こう」

 

「うん、そうだね。でもまさか闘いに夢中になってここまで来るなんてね。何回目だろ」

 

「5回目?」

 

「まぁとりあえず言いに行こうか」

 

そう言うと2人は後ろへと振り返りダンジョンの出口へと目指していく。その間もやはり視界に入ったモンスターを次々と倒していく。そんな事をしていたせいか、主街区に戻ったのは日が暮れてからである。合流場所に着くと「またか」という目をしたアルゴが立っていた。

 

「それでシー坊。またボス部屋でも見つけたのカ?」

 

「うん、これマップ」

 

「OKだ。それじゃあ公表しとくヨ。それじゃあこれからも頼んダヨ。ユーちゃん、シー坊が無茶しないよう頼むヨ。シー坊が倒れると大事な情報源が減るかラナ」

 

「アハハ…うん、任せてアルゴ」

 

「あぁそれじゃあまたな」

 

 

 

 

✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†

 

ボス攻略日当日。ついに攻略4分の1に到達するための戦いが始まろうとしていた……

 

 

 

 

 

 

To be continued……




Key「2ヶ月…」

ノ夜「え?」

Key「2ヶ月……この数字がお前には分かるか?」

ノ夜 「うーん…鰻が稚魚から成長する期間とか?」

Key「前回の投稿からの間隔だよナメクジ投稿者!」

ノ夜「ヒェッ……」
Key「んで、なんでこんなに遅れたんだ?」

ノ夜「え、いやーその……別にずっと没を出してなんて言えないんで……」

key「おいコラ作者(仮)」

ノ夜「はい……」

key「なにか遺言は?」ゴゴゴゴゴ

ノ夜「いや、Keyも割とサボってた(殴

key「最後にいいのこす言葉はそれでいいな…?このク〇が…ゴミクズナメクジ原稿押し付けて悠々とサボりやがって…」

ノ夜「テヘペロ(´>ω∂`)」

Key「( ^ω^) 」(ナイフ)

ノ夜「いや、まってそれは死んzy…」

ユウキ「次回、ついに25層のボス戦に!シエルがアイツらはナメクジ投稿だから何時になるか分からないって〜まぁボクはよくわかんないけど次回もお楽しみに〜♪」

ノ夜「ん?今ユウキの声g…」

Key「(っ’-‘)╮ =͟͟͞͞(ナイフ) ブォン」

ノ夜「あっ…」サクッ


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軋む心と嗤う炎

ピーンポンパンポーーン


注意!!このクソ小説には以下のことが含まれてます。





・ナメクジ投稿



・下手くそな描写



・急展開


・オリジナルキャラクター


・なりきれなかったシリアス



・挟もうとして失敗したネタ



・不定期投稿




どうか承知の上でお読みください


2017 年 12月21日

 

 

 

今日はある少年が誕生して12年になる記念の日。そう、誕生日である。5年間過ごしていた天草孤児院はきれいに装飾が施され、テーブルにはたくさんのご馳走が並んでいた。テーブルの周りには様々な年齢の子供が美味しそうにご馳走を方張っていた。また周囲には孤児院の職員らしき大人が子供を見守るように輪の中に入り食事を楽しんでいる。主席には青みがかった黒髪の少年がおり、その両隣にはカソックを着た優しそうで、どこか真面目そうな老人がおり、その反対側にはショートカットが似合う少年と同じくらいの少女が立っている。

 

「玲斗くん誕生日おめでとう。どうだい?楽しんでいるかい?」

 

「はい。ありがとうございます院長先生。僕は充分楽しいですよ」

 

「もー玲斗ったらそんなに固っ苦しくしないで楽しみなさいよ。今日はあなたの誕生日なのよ?それえとも私の企画に不満があるのかしら?」

 

「そんな事ないよ。ただ大きくなってこの孤児院を出たくないなって思ってさ」

 

「ふふっ。なによそれここは私たちの家なのよ?また好きな時に帰ってくればいいじゃない。ね、院長先生?」

 

「あぁその通りさ。私たちはもう家族なんだから」 

 

「はい!」

 

 少年は幸せだった。4歳の時には親に捨てられ、初めて入った孤児院ではいじめを受け外も孤児院に移された。2年間それが繰り返され、5年前にこの天草孤児院に引き取られた。

 この孤児院ではみんな何かしらの事情を抱えておりいじめはなくみんな仲良く暮らしていた。玲斗はポテトサラダを食べながら目に入ってくるそんな光景に。みんなが楽しそうに食事をする姿に。笑顔で話してくる少女、菫の姿に幸せを感じていた。

 

 

 

 

こんな日々がずっと続けば良い。少年はそう思っていた…

 

 

 

 

しかし、幸福とは手に入れるのは大変だが、失くなるのは一瞬だ。少年はその小さい体で、身をもって体験する事になるとは思ってもいなかった。

 

 

 唐突に真下から窓の割れる音がした。またそれと同時に焦げ臭い匂いが辺りに漂い始めていた。すると確認に行った職員がバタバタと階段を上がって来た。そして院長に駆け寄り耳打ちをする。すると院長の顔は途端に青ざめ険しくなった。そして院長が大きな声で指示を出し始めた。

 

「今、火災が発生している。落ち着いて一階に降りて避難するんだ‼︎」

 

しかし、孤児院の設計上、一度階段を降りて広間を経由し、Uの字を描くように出口へ向かわねばならない。そして一階に着く頃には炎は全体に回っており廊下も壁も炎に埋め尽くされていた。窓も外を見ると炎が建物を囲んでいる。しかし、院長は希望を求め外に避難するように指示を出す。しかし、その時だった。炎により柱が燃やされ重さに耐えられなくなり二階の一部が崩落したのだ。凄まじい轟音と共に瓦礫が院長達を巻き込み無慈悲に崩れ落ちる。瓦礫に潰され即死した者。生きながらに燃やされ生きながらに燃やされ死んでいく者。瓦礫で動けず絶望しながら燃える者。その光景はまさに地獄だった。運良く生き残った玲斗と菫は絶望し立ち竦んだ。二人の耳には阿鼻叫喚の悲鳴が嫌と言うほどに入り込んでくる。しかしそんな二人にまだ意識のあった院長先生が呼びかけた。

 

「君たち以外はもう助からないだろう…しかし…君たちは…まだ助かるかも知れない…進んでくれ…そして、生き延びるんだ……」

 

それからは院長は起きる事なく炎に包まれていった。

 

「みんな…嫌…いや…」

 

玲斗は菫の手を握り出口へと走った。

 

「菫、逃げよう!」

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!)

 

(熱い!助けて!誰か助けてぇぇぇぇぇっ!)

 

「いや…いやぁ」

 

「菫!急いで!」

 

菫の手を引き、玲斗は出口を目指す。しかし、炎に包まれた木材や瓦礫が二人を襲った。菫の右脚に瓦礫が落ちた。

 

「いやぁ!」

 

「菫、肩につかまって」

 

菫の脚からは血が噴き出し激しい痛みが走る。菫は痛みに耐えながら今、唯一、頼ることのできる玲斗にすがりつき出口を目指す。玲斗は菫が自分の肩を掴みついてきていることに希望を感じていた。菫を励ましながら必死に出口を目指した。燃える腹部の痛みに耐えながら。右手で隠し菫に悟られぬように。そしてようやく出口が後10mと言うところまで来ることができた。

 

「玲斗…私…右脚が…」

 

「大丈夫。生き残れば脚も治る。ほら!出口が見えたぞ!だから諦めるな」

 

そんことをしているうちに菫は熱に蝕まれ火傷がひろがっていく。そして扉まで後5m程というところまで来た。

 

「菫!もう着くぞ。俺たち助かったんだ!だからあと少ししっかりつかまっててくれ」

 

「本当⁈良かったこれで私、まだ玲斗といっsy」          ぐしゃり 

 

何かが起きた。頭の中で鈍い音が響き渡る。しかし、自分の右肩に菫の腕がしっかりとつかまっている事に安堵し事実を確かめようと音のした方向…自分の左側へと眼を向ける。すると、そこにあるべきはずのモノがない。自分の左腕が。何よりも大事な……菫の体が。

自分の右肩にしっかりとつかまっていたのは文字通り【菫の腕】がしっかりとつかまっていただけだった。自分のすぐ左には2mほどの大きな瓦礫が横たわっていた。

 

「……え?」

 

瓦礫から滲む深紅の血が炎を反射しギラギラと輝いていた。そして、少年は自分の頬に温かい感触がある事に気づいた。触れるとそこには赤くベッタリと菫の血がついていた。少年は残された菫の右腕を抱え泣き叫んだ。それと同時に自分がバケモノであることを自覚した。失くなったはずの左腕が生えているのである。

 少年は叫んだ。自分を呪うように。好きだった人を助けられなかった自分を…独り生き残ってしまった自分を……不死とも言えるこの体を……そんな彼を残し炎は嗤う様に燃え続けた。

 

 

 

 

 

 

▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《アインクラッド 25層 BOSS部屋》

 

 25層のBOSS部屋が発見されて数日。最前線のプレイヤーによる攻略チームが編成されていた。総勢50人規模のプレイヤーが参加し、BOSS攻略へと乗り出していた。

 そして、そのプレイヤーたちの闘うBOSS部屋では各グループのリーダーによる指示や剣撃。双頭の巨人であるBOSSの咆哮が静かだった部屋に響いていた。

 

「B隊、パリィ用意‼︎……今だ!」

 

司令塔の指示により的確にシールドを展開しボスの攻撃を跳ね返した。

 

「今だ!削れぇぇぇぇぇ‼︎」

 

ボスの態勢が崩れた隙を狙いアタッカーであるA隊がボスのHPを削りに一斉にかかる。3本目を削り切ったところでA隊は深追いはせずに距離理をとった。

 

「あと1本だ!モーション注意!」

 

その言葉に対して全員が再び気を引き締めた。この戦闘ではまだGame Over…すなわち死者は出ていない。しかしこのあとプレイヤーは地獄を見ることになった。

 HPバーが残り1本になったボスは両手を大きく広げると顔の前で腕を交差させた。その時、シエルの後ろにいたキリトは何かを察したのか最前線にいるB隊に向かって叫んだ。

 

「ブレスだ‼︎全員後退しろ‼︎」

 

 しかし、後退を始めた頃にはボスのブレス攻撃がB隊を包んでしまっていた。双頭の口からは炎が吐かれ、間合い内にいたプレイヤー。主に解放軍のタンクが炎に包まれていった。SAOではブレスにおける手段は回避しかなく、パリィができない。おそらくこのボスの最後の足掻きとして設定された攻撃だろう。

 最初のためが通常のモンスターに比べ長かったためか広範囲に及ぶブレスが連続して放たれる。これにより最初、12人いたB隊のタンクは残り3人まで減らされていた。また、A隊にも被害が出ており15人いたA隊は11人になっていた。あたりにはまだ炎が辺りを埋めつくさんとと燃え続けている。炎に燃やされているプレイヤーは悲痛な叫びと共にポリゴン片と化していく。先ほどまだ響いていた剣撃音はなく、ボスの吐くブレスの音。燃え盛る炎。炎に苦しむプレイヤーの叫びが響き渡る。当然、その光景をシエル。そしてユウキも見ていた。ただ茫然と立ちすくんで。

 そしてシエルにはとある記憶が蘇っていた。約5年前の火事である。燃え盛る炎。響き渡る悲鳴。あの時と酷似した光景にシエルのトラウマ。いや、それ以上とも言える記憶がみるみる蘇る。

あの時の院長の言葉が

 

(進んでくれ…生き延びるんだ)

 

あの時の菫の声が

 

(良かった。玲斗と一緒に…)

 

あの時の全てが玲斗の頭の中で何度も。何度も鳴り響いた。そしてシエルは。シエルの理性は壊れた。

 

「あ、あぁ」

 

「シエル?!どうしたの!」

 

いつものシエルからは想像できない様子にどうしたらいいのかユウキにはわからなかった。そしてシエルはユウキの声に気が付かず声を上げてボスへと走り出した。

 

「あああああああああああああああああああああ!」

 

「おい。シエル!戻れ!」

 

キリトの声も気がつくことなくシエルは真っ直ぐとボスへ走る。ボスの目の前に行くのに10秒もかからなかった。

 ボスの目の前まできたシエルは超人事見た跳躍力で飛び上がりボスの首を目掛けて真っ直ぐと突き進む。そんなシエルに気づいたボスは人の大きさほどもあるハンマーをシエルへ目掛けて振るってくる。しかし、ボスのハンマーは円の軌道を描いたシエルの剣に受け流される。シエルはボスの腕を使い受け身を取るとそのままボスの首へと走った。肩まで来たシエルは今度は天井に向かって跳躍しそのすれ違い様にボスの首を斬り裂いた。空中で体を半回転させたシエルは天井を蹴り重力と共に再びボスの首へ飛ぶ。

ボスは周囲を飛び回るシエルを捕らえることができず空を切る。そして、ボスのHPはみるみる減っていき残りが僅かになった。これが最後と言わんばかりにシエルは飛び上がる。しかし、ボスもシエルの動きを捉えハンマーを振るおうと腕を引く。しかし、ボスの視界から。いや、ボスだけではなくその場にいた全員の視界からシエルが消えた。ボスのハンマーが空を切った時、プレイヤーの目にシエルが映った。ボスの背後でソードスキルを構えたシエルが。そして、シエルはボスへソードスキル【スネーク・バイト】を繰りだす。

 

「消えろっ!」

 

シエルの剣はボスの背中を眼にも止まらないスピードで二度斬り裂く。同時に二度斬ったかの様にも見えた剣撃を受けたボスのHPは消滅し、ボスは大量のポリゴン片へと姿を変え消滅した。プレイヤーの視界には【Congratulation】と表示され少しの沈黙の後で大きな歓声が上がった。しかし、ユウキは歓声をあげるどころか不安げな表情で姿を消したシエルを探していた。

 

 

 

 

 

To be continued…

 




ノ夜「残暑見舞い申し上げます」
Key「もう過ぎた」
ノ夜「…ハッピーハロウィーン」
Key「それも過ぎた」
ノ夜「え、じゃあメリークリスマス?」
Key「それも過ぎたわ。てかもう年跨いだかんな?」
ノ夜「マジかよ。時間は無慈悲だな」
Key「ジジイかてめぇは」
ノ夜「あ゙?」
Key「おうそんなことはいいからとっとと謝れや」
ノ夜「お前もな」
Key「や!」
ノ夜「ガキかてめぇは」
シエル「いいからさっさと土下座しろ」
ノ夜&Key「放置しててマジすんませんでした」


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死神

ピーンポーンパンポーーン

注意!!このクソ小説には以下のことが含まれます。


ナメクジ投稿

下手糞な描写

急展開

拗らせた不治の中二病

オリジナルキャラクター

シリアスっぽい何か

滑り落ちたネタ

ご承知の方はどうぞお楽しみください。


25層が攻略されて数ヶ月経った。プレイヤーはある程度の考えに別れ、その差が顕著になった。大まかには三つのグループ別れる。最前線で攻略を行う攻略組。物資の調達、販売をする商業人。最前線より下の層のダンジョンに潜る中層プレイヤー。大体はこの三つに分類される。

 攻略組は最前線で攻略を行う。そのため、当然ではあるものの高レベルプレイヤーが集まる。また、その強さや功績から二つ名を持っている者も多い。その中の例としては素早い剣撃や身のこなしから閃光のアスナ。黒で全身を統一していることから黒の剣士キリトなどそのプレイヤーに見合う二つ名が付けられている。

 商業グループは物資の調達、販売にとどまる事は無い。中には武具の製造、強化やメンテナンスを請け負う武具屋を営むのも。攻略するための情報やアイテムなどの所在を示す情報といった様々な情報を売買する情報屋。など、攻略をするプレイヤーにとっては不可欠な存在だ。

 中層プレイヤーは前記の通り、攻略済みのダンジョンに潜るプレイヤーである。彼らの目的は様々であり、攻略組の一員になろうと自分を磨く者。モンスターがドロップするアイテムなどを売り生計を立てるものなどその目的は様々である。

 また、アインクラッドの攻略や時間の経過に伴いプレイヤーはSAO内での生活に慣れてきていた。人は慣れると余裕が生まれる。そうすると当然ながらシステムが歯車の様に噛み合い回りだす。システムが回り、人と人の交流が盛んになると飛び交う情報が増える。そして、噂が出始める。また、噂の真相が解明されず謎のベールに包まれ続ける噂は次第に都市伝説のように昇華していく。そして、今、このアインクラッド全体に広まっている都市伝説がある。ソレは神出鬼没の吸血鬼として語られる。またある場所では悪事を働いた者を始末する死神として語られる。その都市伝説に付いた呼び名は”サイレント・デス(静かなる死神)”である。

 こんなに痛々しい名前が付いたのにはそれなりのエピソードが存在する。霧の立ち込めているフィールドを歩いていたら音もなく現れ気が付くと居なくなっている。と言うモノや十数人規模の殺人ギルドがソレに壊滅させられた。空を飛んでいた。と幅が広く、目撃例が少ないため謎が多い。人間離れしたモノもあるためプレイヤーかどうかも怪しいとされている。信頼のある攻略組からも目撃例が多いためデマと言い切れないのが現状である。また、レッドプレイヤーしか殺さないと言う話もあるためレッドプレイヤーの被害者など救世主という声やボスを二度ソロクリアしたという噂から最強のプレイヤーとしての声もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

?層 フィールド内

 

 レッドカーソルのプレイヤー7人が松明を中心として座りたわいのない話をしていた。すると気が付けば森の方から一人。ローブを着たモノがいた。しかし、草木を掻き分ける音どころか足音すら彼ら7人の耳に届く事はなかった。

 

「あ?なんだテメェはどっから来やがった?」

 

しかし、ソレはただ何もせずそこに立っている。

 

「なんだ?だんまりか。まぁ良い。俺たちは今は機嫌が良い。テメェのアイテムを置いてけば見逃してやるよ」

 

そう話しかけながらスキンヘッドの男がソレに近づき、剣をチラつかせていた。しかし、話すどころかピクリとも動かない。

 

「チッ!良い加減なんかいったらどうだ?兄ちゃんよ」

 

「まぁまぁそう怒るなよ。ムド。ビビって固まってるのかもしれないだろ〜」

 

今度は奥にいた長髪の男が近付いてくる。

 

「ほら兄ちゃんアイテム置いてサッサと消えな。そしたら今回は逃してやるよっ」

 

長髪の男が肩を組もうとした時。ついに口を開いた。

 

「……汚い手で俺に触るな」

 

「あ?何か言ったか?」

 

ソレは腰の剣に手を当てると流れるような動作で長髪の男の左腕を斬り落とした。

 

「テッメェェッ何しやがる!」

 

近くにいたスキンヘッドの男が右手に握られた剣で斬りかかる。しかし、それはあまりにも大振りであり剣の軌道など容易に読むことができた。攻撃を剣で弾くと切り返しで無防備になった首へと剣を入れ込む。すると先ほどまで威勢の良かったムドとやらの首と体は2つに分かれ地へと倒れた。

 

「くそ何なんだこいつ…おいお前ら!こいつを殺るぞ!」

 

長髪の男が指示を出し、残りの5人がソレを取り囲むように武器を構えていた。

 

「ったく。金目のものを置いて行けば許してやったのによぉ、どうなるかわかってんだろうな」

 

そんな話を聞き終えることなくソレは長髪の男の首をはねた。

 

「クソ、調子に乗りやがって!」

 

「ここで殺してやんよ」

 

「抵抗するなら…楽しませて」

 

刹那、男たちがソレへと斬りかかる。その連携はならず者とはいえ洗練されたものであり、半端者なら何も出来ずにその肢体をポリゴンへと変換していただろう。にも関わらずソレはその両足を地面から少したりとも動かさず全てを剣で遇う。

 

「はッ…あぁ!?」

 

「なんだこいつ…ソードスキルかなんかか?…クソっもう1回行くぞ!」

 

再び斬りかかるも右手に握られた鈍い白金の刃が閃き吹き飛ばされる。

 

「おい…こいつなんかやべぇぞ!」

 

「落ち着け、こんなソードスキル無かったはずだが…まぁいい、スキル硬直を狙っていくぞ!」

「つまらない…もう良い…死ね」

 

「はっ…ぬかせ!」

 

3人が愚直にソレへとソードスキルを使用する。傍観者がいたとしたら誰もがまた同じように吹き飛ばされて終わりだと思っただろう。実際3人は吹き飛ばされ追い打ちに合い気が付けば頭に投擲用のナイフが刺さっていた。二人は絶命し、体力型だったもう一人はギリギリで耐えたかが麻痺で動けずにいる。その状況をまっていたように闇に潜んでいた2人が両脇から現れソレの心臓へ短剣を突き立てようとする。

 

「オラ、仲間の仇だ!」

 

火花が散る。

 

「…は?」

 

しかし、男たちは地に伏していた。何故だ?今間違いなく僅かとはいえ、投擲スキルで硬直中のソレを殺した。そう確信したはずだったのに…

 

「……硬直はないよ…使ってないから…」

 

「はは…ははは…」

 

化け物が残った2人の片割れを殺し振り向き様に言う。こんなの笑うしかない。乾いた笑い声と涙が自然と出てくる。

 

「この化け物が!」

 

剣が迫ってくるのが見える。そして視界は黒く塗りつぶされ、二度と光は戻らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

 

 ”ソレ”は先程の場所から南へと進んでいた。200mほど進むと足を止めた。

 

「…そこにいる3人…覗きとはいい性格をしている」

 

すると5m程先の木の影から黒いローブの3人組が姿を現した。

 

「oh…200mも離れんてんのに見つけるとはさすが伝説の死神だ。恐れ入ったぜ。本当にプレイヤーか疑う心もよくわかる。ソレにあの剣捌きと投擲の実力…まさに命を刈り取る死神だな」

 

「…死にたいなら、殺してあげるけど?」

 

「ハハハ。そう殺気立つなよ。俺たちは交渉しに来たんだ」

 

「…何の?」

 

ソレは先ほどよりも少し殺気だった様子だが気にせずPoHは続けた。

 

「俺たちに協力しないか?おっと先に言っとくが俺たちのギルドに入って欲しいんじゃあないぜ。あくまで同盟だ」

 

「……俺にメリットは?」

 

「もちろんあるぜ?殺人ギルドを潰して回ってんだろ?そいつらの潜伏場所を教えてやるよ。どうだ、悪い話じゃないだろ?」

 

「……そっちは邪魔な存在を消せると?」

 

「あぁそうだ。理解が早くて助かるぜ」

 

「…わかった…乗る…でも、敵と認識したときは殺す…それなら良い…」

 

「oh…おっかねぇなぁ。まぁいい。なら、契約成立だ……まぁ死神と契約なんて何が起こるかわからねぇけどな」

 

「……そう、じゃあいずれ」

 

去ろうとするソレをPoHが呼び止めてくる。

 

「おいおいそう急ぐなよ。お前を見付けるのは骨が折れるんだぜ?最初の情報をくれてやるよ」

 

「そう、なら早く話して」

 

そう言ううと取り巻きの一人が紙の入った筒を投げ渡した。

 

「そこに書いてある通りだ。後は頼んだぜ」

 

「…そうわかった」

 

ソレは素気なく答えると先ほどのメモをその場に残し最初から存在しなかったかのように消えていった。

 

「oh…筒に発信機をつけたがダメだったか。まぁ良いにしても。あれが本当の神出鬼没って奴か…恐ろしいねぇ死神は…」

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 




Key「おうノ夜さんよ」

ノ夜「あ、お久しぶりです。てか、この投稿頻度だといつもお久しぶりですっていってる気がする。なんか……戦闘描写がね?かけないんだよね(致命的)」

Key「この期間中特に用事無かっただろ?お前、強いて言うならバイトくらいかぁ?」

ノ夜「あぁーあと周k…そうですねバイトですね
イヤーイレスギタナー」

Key「よしこいつ燃やそう(マッチ)」

ノ夜「やめて、あえて小さい炎にしないで!」

Key「やっぱチリチリ燃やすに限るぜぇ…ぐへへ」

ノ夜「わかった。わかったから。どうせ外出自粛で家から出ないから。真面目に編集しますから許して」

Key「じゃあ次は2週間後かな?」

ノ夜「え、いや、あの……」

Key「2週間後だね。じゃあ次回をお楽しみに(^ω^)」

ノ夜「(´・ω・`)」


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悲壮な過去と非情な現実

ピーンポーンパンポーーン

注意!!このクソ小説には以下のことが含まれます。


ナメクジ投稿

下手糞な描写

急展開

拗らせた不治の中二病

オリジナルキャラクター

シリアスっぽい何か

滑り落ちたネタ

ご承知の方はどうぞお楽しみください。




 デスゲームが始まり月日が流れアインクラッドにも冬が来ていた。あと4週間もすればクリスマスである。そのためか、楽しげに街を歩くカップルも多い。しかし、キリトは46層にあるフィールドにいた。太陽は完全に沈んみ、フロアの間から差し込む月明かりが辺りをほのかに照らしている。そして、厳しい冬の寒さがキリトの身体を容赦なく蝕んで行く。

 キリトがここに、訪れた理由としてはここが効率の良い狩場だからだ。現在で知られている狩場の中でそこそこのポジションに位置付けている。巣穴から出てくる巨大なアリ型のモンスターは攻撃力がそこそこ高いもののHPと防御力が低いため倒すのに時間をあまり必要としない。スポーンのペースも早く、短時間に大量のモンスターを狩れるため経験値の獲得率が高いのだ。キリトはレベルを上げなければいけない理由があり、1日のほとんどをこの狩場で過ごしている。

 現在スポーンしてる巨大アリは残り2体。キリトは現段階で取得している最長連撃技の6連撃を半分ずつ叩き込み屠った。そしてキリトは次のスポーンの波が来る前に出口へと全力で駆け出した。約40mを5秒程度で走り抜けると凍っている地面へと突伏した。しばらくその状態でいると遠くから複数人の足音がした。どうやら、顔見知りの様だが挨拶するのも億劫だ。キリトは右手をノロノロと動かし先に行ってくれとサインを送った。すると、はぁという太いため息の後に錆びた声が聞こえた。

 

「ちょっとお前らとレベルの差がついちまったから、オリャあ今日は抜けるわ。いいな、円陣を崩さねぇで、両隣の奴のカバーを常に意識するんだぞ。危なくなったら遠慮しねぇで大声で呼べ。女王が出たらすぐ逃げろ」

 

 ようやく整ってきた呼吸を深く繰り返しながら、右手をついて近くの木の幹に寄り掛かった。ほれと飛ばされたポーションをありがたく受け取り、貪るように飲み干した。そして、顔を上げてポーションを投げ渡してくれた奴を見る。デスゲームであるSAOが始まってからの友人で悪趣味なバンダナの下に無精髭に囲まれた口をひん曲げて言った。

 

「いくらなんでも無茶しすぎじゃねぇのか。キリトよぉ。今日は何時からここでやってんだ?」

 

「ええと…夜の8時くらいだったかな」

 

「おいおい、今午前2時だから、6時間も籠りっぱなしかよ。こんな危ねぇ狩場、気力が切れたら即死ぬぞ」

 

「平気さ、待ちがいれば1、2時間は休める」

 

「間違いなけりゃぶっ通しなんだろうが」

 

「そのためにわざわざこんな時間に来てるんだ。昼間は5、6時間待たされるからな」

 

このバカったれがと舌打ちまじりに吐き捨てたクラインは腰からレア武器の刀を取ってキリトの前にどかっと座った。そのまま今のような会話を続け、ある話に着地した。今、このSAOに流れている噂だ。

 SAO開始から1年。2度目のクリスマスを目前に、とあるフラグボスの噂がアインクラッドを駆け巡っていた。各層のNPCがこぞって同じクエストのことを口にするようになったのだ。

 曰く、ヒイラギの月_つまり、12月24日の夜24時ちょうど、どっこかの森にある樅の巨木の下に《背教者ニコラス》なる伝説の怪物が現れるという。もし、倒すことができれば、怪物が背中に担いだ大袋の中にたっぷり入っている財宝が手に入るだろう_

 この噂に普段は迷宮攻略しかしないトップギルドも食いついた。大量のコルにしろ、レア武器にしろ、迷宮を攻略するのであれば大きな手助けとなる。しかし、ソロプレイヤーであるキリトは最初この話は興味がなかった。無論、ソロで狩れるような相手ではないことは目に見えていたし、コルが特別欲しいというわけでもない。何より、無数のギルド、プレイヤーが狙っているフラグMobに名乗りを上げて無用の注目を受けるのはまっぴらだった。

 しかし、あるNPCが発した一言が競争の火をさらに激しく燃やさせ、キリトの考えを180度返させた。それ以降、キリトは今日のように狩場に入り浸っていた。大勢の笑い物になりながらも狂ったようにレベルを上げ続けていた。

 

「やっぱりあの話のせいかよ…《蘇生アイテム》の…」

 

「……あぁ」

 

「…気持ちはわかるぜ…まさに夢のようなアイテムだからな。【ニコラスの大袋の中には、命尽きた者の魂を呼び戻す神器さえもが隠されている】…。でもな、大方のやつが言っているようにこれだけはデマだと思うぜ。デマというか、普通のMMORPGとして開発された時の台詞がそのまま残っちまった…。つまり、本来はデスペナルティなしに蘇生させるアイテムだったんだろうさ。だが、今のSAOじゃあ、ンなことはありえねぇ。ペナルティが命そのものなんだからよ。思い出したくねぇけど、最初の日、茅場の野郎が言ってたじゃねぇかよ」

 

「…そんなことはわかってる…わかってるけど……やらないわけにはいかないんだよ…」

 

「そうか…やっぱり、キリト…お前ぇ、まだ忘れらんねぇんだな、前のギルドのことが……もう半年になるのによ…」

 

キリトはソッポを向き、言い訳のように吐き出した。

 

「それを言うなら、まだ半年だ。忘れられるわけが無いだろうが……全滅したんだぞ、俺のせいで…」

 

キリトは立ち上がると、不器用な刀使いが不慣れな慰めの言葉を言おうとする前に街へと歩き出した。後ろではクラインが呼び止めようとしているのかまだ何かを言っているのが聞こえる。キリトはそれを背中で受けながらもただ街へと足を進める。

 

「おい、キリト。俺がお前ぇの心配したのは、別に情報を聞き出すためのカマかけばっかりじゃねぇからなこの野郎。無理してこんなことで死んでも、お前ぇに蘇生アイテムは使わねぇぞ」

 

そのクラインの叫び声がキリトに届いた最後の言葉だった。しばらく森の中を歩き続けたキリトは何かに向けられたように月夜へ視線を向け、忘れられない記憶が再び、キリトの脳内を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

〜半年前〜

 

俺はあるギルドに所属していた。《月夜の黒猫団》それがギルドの名だった。ギルド間の仲は非常に良く、俺がこのイカれたゲームを本気で攻略しているのはこのギルドなのかもしれないと思う程だった。最初の出会いは黒猫団がゴブリン群戦い苦戦しているところに、偶然通りかかった俺が助太刀に入ったことだった。正直助けに入るかは迷ったがHPバーを見て助からない可能性は0ではないと判断し、

 

「ちょっと前、支えてましょうか?」

 

と声をかけた。

ビーターなのがバレると面倒なことに…いや、俺は怖かったのだろう。彼らが俺の事を蔑みの目で見るのが。そうして俺は初歩のソードスキルだけを使い、実力を隠しながらゴブリン群を全て倒した。そこからはあまり覚えていない。ただ彼らが割れるような歓声を上げ、勝利を喜び俺を囲んで大はしゃぎしていたのは覚えている。ソロで戦い続けていたのでそういうのには慣れていなかったがなんというか、助けに入って良かった、と思えた。

彼らはとても気持ちのいい奴らだった。俺が嘘を吐き実力を隠すような事を言うと『月夜の黒猫団』のリーダー、ケイタは俺の事をギルドに誘ってきた。前衛が足りないのだという。とてもにこやかに、楽しそうに笑い合っている彼らを騙しているということに気は引けたが、俺は罪悪感を感じながらこくりと頷いた。

 

「じゃあ……仲間に入れてもらおうかな。改めて、よろしく」

 

そこから俺は彼らのレベル上げを手伝いながら、深夜になると宿屋を抜け出し最前線に出てソロでレベル上げを続けていた。しかし、サチを盾剣士へと育て上げる計画は頓挫していた。それも、サチは怖がりな性格であったせいで、前線に出るとどうしても怯んでしまうのだという。

そんな中、サチは俺たちの前から姿を消した。

ギルドメンバーは大慌てで迷宮区へ向かい、俺は一人でフィールドの追跡不可能エリアを探した。索敵の上位スキル《追跡》を使用し、主街区の外れの水路の中でサチを見つけた。

 

「……サチ」

 

「キリト。……どうしてこんなとこが判ったの?」

 

「カンかな」

 

「……そっか」

 

そしてサチは俺に心の内を明かした。

死ぬのがとても怖いこと。

恐怖で最近あまり眠れていないということ。

ゲームから出られない、なぜ本当に死ななければならないのか、茅場はなぜこんなことをしたのか。

そんな問いに俺は考えて、考えて、答えを絞り出した。

 

「多分、意味なんてない……誰も得なんてしないんだ。この世界ができたときにもう、大事なことはみんな終わっちゃったんだ」

 

そして俺は、言ってしまった。なんの根拠もなく、ただ『可哀想な』彼女を安心させるためだけに、ただこの場を逃れるためだけに、俺のために嘘を吐いた。吐いてしまった。

 

「……君は死なないよ」

 

この言葉が後々、俺自身を深く傷つけることも知らないで。

 

翌日からサチは夜が更けると俺の部屋で寝るようになった。君は死なないという言葉を聞かないと眠れなくなってしまったのだという。抱く罪悪感が増す感覚の中で、俺はサチになんの中身もない薄っぺらい言葉をかけ続けた。

 

地下水路での夜から1ヶ月ほど経ったある日、ケイタはギルド資金を全て使ってギルドハウスを不動産仲介プレイヤーの元に買いに行った。ケイタの帰りを待つ中、メイサーのテツオが、

 

「ケイタが帰ってくるまでに、迷宮区でちょっと金を稼いで、新しい家用の家具を全部揃えちまって、あいつをびっくりさせてやろうぜ」

 

そして俺たちは最前線から3層下の迷宮区に向かった。俺はそのダンジョンがトラップが多く仕掛けてあることを知っていたが、それを伝えることはしなかった。そして俺はそれを後悔する。

探索の帰りに見つけた宝箱をシーフが開けようとするのを止められなかった。そして──

 

まずシーフが死んだ。宝箱を開けた途端、アラームが鳴り響き、集まってくる大量のモンスターに推し潰れるようにして消えていった。次にメイサーのテツオが死んで、槍使いも死んだ。俺はそこから何も考えることが出来ず、ただ滅茶苦茶に上位ソードスキルを振り回した。そんな中、最後に残ったサチはモンスターに囲まれHPが消えゆく刹那、俺の方へ手を伸ばし何かを呟いて、ポリゴンへと姿を変えた。

 

何とか生き残った俺は何も残らなかった部屋を後にし、宿屋へと向かい、もう戻らないメンバーの帰りを今かと待ち続けているケイタに全てを話した。俺の話を聞いたケイタは徐々に感情を失っていき、最期はアインクラッドの外周部で、俺の目の前で遥かな空へと身を投じた。

 

あの時サチは俺に向かって何を呟いたのだろうか?今となってはわからないが、とてもそれを考える余裕はなかった。ただ光を失ったその眼でケイタが消えていった皮肉なほど美しい空を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリトは35層に転移し、ゲートから出ると、最前線の54層とは打って変わって静寂が広場を支配していた。中層プレイヤーの主戦場とも離れており、主街区もゲームで良くあるような農村のつくりだからだろう。しかし、ちらほらとプレイヤーが見える。そのためにキリトは人の目を避けるようにコートの襟を引き寄せ街区から足早に出た。

 雑魚モンスターを相手にしている時間も精神的余裕もないため尾行者がいない事を確かめたキリトは全力で走り始めた。この1ヶ月間の無茶なレベル上げによりキリトの敏捷度パラメーターもかなりアップしていた。そのため、積もった雪を蹴る足は羽のように軽かった。並大抵のプレイヤーは距離を保つ事さえ難しいだろう。しかしながら、今までの体の負担は大きいようで、こめかみ辺りに鈍痛が疼き続けていた。だが、キリトはその痛みに少し感謝をしている。鈍痛のお陰か眠気が一切ないからだ。

 10分もかからないくらいでキリトは迷いの森の入り口に到着したいた。このフィールド・ダンジョンは無数の四角いエリアに分けられている。それぞれのエリアへと繋がるポイントがランダムに入れ替わる仕組みになっているのだ。そのため、地図を見る事なく踏破するのは不可能に近い。

 キリトはフィールドの地図を開き、要所にマーカを付ける。目的地とマーカを逆から辿りルートを確認する。キリトは地図を睨み付けてルートを頭に叩き込むと、深夜の真っ暗な森へと独り足を踏み出した。

 

 

 

 キリトはどうしても避けることのできない戦闘だけを行い、走り続けた。目的地前の最後のエリアに入り、次のワープポイントを目指し数m走った時だった。背後のワープポイントから複数のプレイヤーが出現する気配がした。ハッとして振り返ったキリトの目に写ったのは約10人のプレイヤー。その中心には侍がつけるような軽鎧に腰挿の長刀。頭にバンダナを付けたプレイヤー…クラインがいた。ギルド風林火山の主要メンバーは各々表情に緊張感を漲らせながらもキリトへと歩み寄る。クラインの顔だけをまっすぐと凝視し、キリトはしゃがれた声を絞り出した。

 

「…尾けてたのか」

 

クラインはバンダナで逆立った髪をガリガリとかきながら頷く。

 

「まぁな。追跡スキルの達人がいるんでな」

 

「なぜ俺なんだ」

 

「お前ェが全部のツリー座標の情報を買ったっつう情報を買った。そしたら。念のため54層の転移門に貼り付けといた奴が、お前ェがどこの情報にも出てないフロアに向かったっつうじゃねぇか。オレは、こう言っちゃなんだけどよ、お前ェの戦闘能力とゲーム勘だけはマジですげぇと思ってるんだよ。攻略組の中でもトップクラス…あのヒースクリフにも引けをとらねぇってな。だからこそなぁ…お前ェを、こんなとこで死なすわけにはいかねぇんだよ、キリト!」

 

真っ直ぐ伸ばした右手でキリトを指差し、クラインは叫んだ。

 

「ソロ攻略とか無謀なことは諦めろ!オレらと合同パーティを組むんだ。蘇生アイテムは、ドロップさせた奴ので恨みっこなし、それで文句ねぇだろ!」

 

「……それじゃあ…」

 

キリトはクラインの言葉が本当に友情から来るものなのだと信じることができなかった。

 

「それじゃあ、意味ないんだよ…俺独りでやらなきゃ…」

 

キリトは剣の柄に手を伸ばし、そして強く握った。狂熱にうかされている頭で考える。…全員斬るか。

 ここまで生き残ってくれたクラインという名の数少ない友人を斬るか。そこまでして得たものに意味はあるのか…無意味だ。と微かに叫ぶ声と無意味な死こそ本当に望んでいるものだと圧倒的な音量でもうひとつの声が喚き出す。

 少しでも剣を引き抜けば自分自身を抑えることは出来ない。キリトは右手を細かく震わせる。ギリギリの鬩ぎ合いを続けるキリトをクラインはどこか悲しげな目でキリトを見ていた。

 まさにその瞬間。第三勢力が姿を現した。しかも、10人なんて規模ではない。その3倍はある。キリトは愕然とその大集団を眺める。同様に呆気を取られて振り向いていたクラインにボソリと声を投げかける。

 

「お前らも尾けられてたな、クライン」

 

「……あぁ。そうみてェだな…」

 

そうしていると、クラインの隣に居た風林火山のメンバーが、クラインに顔を近づけ、小さく低く呟いた。

 

「あいつら、《聖龍連合》っす。フラグボスのためなら一時的オレンジ化も辞さない連中っすよ」

 

その名はこの場にいる全員ならよく知っているだろう。《血盟騎士団》に並ぶ名声を誇る、攻略組中最大ギルドである。

 今度こそ、キリトは背中の剣を引き抜こうと思った。しかし、クラインの叫び声が、キリトの剣を抜かせなかった。

 

「くそっ!くそったれが!!」

 

クラインはキリトよりも先に刀を引き抜くと、キリトに背を向けたまま怒鳴った。

 

「行けっ、キリト!ここは俺らが食い止める!お前は行ってボスを倒せ!だがなぁ、死ぬなよ手前ェ!俺に前で死んだら許さねェぞ、ぜってぇ許さねェぞ!!」

 

「………」

 

ボスが出現するまでそう時間は残されていなかった。キリトは、クラインに背を向けると、礼の言葉ひとつ言わず最後のワープポイントへとその一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時計が零時になったと同時にキリトの耳にはどこからか鈴の音が届いていた。キリトはその音に釣られ梢の天辺を見つめていた。

 上層フロアの底を背景に二筋の黄色い光が延びていた。それに対して目を凝らすと鹿の様な四足歩行の奇妙な化け物に引かれた巨大なソリだった。

 モミの木の真上に来たと思うと今度は黒い影がソリから飛び降りてきていた。着地した風圧でキリトは数歩後ずさる。盛大に蹴散らされた雪落ち着くと、ようやくキリトの目がボスの姿を確認した。その背丈はキリトの3倍近くあるであろう痩せこけた人型の怪物だった。しかし、その腕は異常に長く、姿勢が前屈みのせいなのか地面に手が擦れている。せり出した額の影からは赤い眼が輝き、鼻下から伸びた歪な灰色の髭は下腹部まで届いていた。

 サンタクロースの衣装を着てはいるものの、右手に握られている手斧と、左手にぶら下げている赤い染みのついた大きな頭陀袋がグロテスクさを刺激している。

 台詞でも喋ろうとしたのか怪物が髭を動かすと、キリトは遮る様に言った。

 

「…うるせぇよ」

 

キリトは背中の剣を抜くと右足で思いっきり雪を蹴り、ボスへと突撃していった。

 

 

 

 

 キリトとボスが打ち合いを始めて40分ほどが経っただろうか。ボスの一撃一撃は重く、回復をしないで5発耐えるかギリギリなラインだった。また、キリトのHPはイエローゾーンに突入していた。

 ボスは体を大きく捻ると左手の頭陀袋でキリトに下段攻撃を仕掛けた。キリトは大きくジャンプすることで下段攻撃をかわし、空中からのカウンターを放とうとスキルを発動した。しかし、それが致命的なミスだった。ボスは右手の手斧でスキルを発動すると、キリトの直線状にスキルを放った。キリトはヴァーパル・ストライクを発動し、直線状に突進攻撃を放っているため回避することができなかった。キリトは死を覚悟しながらもただ、手斧に向かって進むことしかできなかった。

 すると、何もなっかったはずのキリトの右隣には自分と同じくらいの影が姿を現した。ソレはキリトに向かって体術スキルの蹴りを繰り出し、キリトをステージ端まで吹き飛ばしてしまった。HPバーは辛うじてレッドで止まった。かなりスピードが乗っていたらしくキリトはステージ端の木に寄り掛かる形で座っていた。

 当然ながら、ボスのヘイトはキリトに向いてはいなかった。さっき、虚空から現れたプレイヤーと闘っている。キリトは獲物を横取りされるわけにはいかないと、身体に鞭を打ち立ち上がろうとする。しかし、足どころか指にすら力が入らない。キリトは注意深く自分の身体を見渡すと左肩に1本のナイフが刺さっていることに気付いた。そのナイフからはスタンエフェクトが出されており、HPゲージの上にはスタンのマークが表示されていた。

 

「クソ!…なんなんだあいつ…」

 

キリトはそのプレイヤーに憎しみを抱くもただ見ていることしかできなかった。そのプレイヤーはと言うと、キリトなど目にも留めずただ正確にモンスターの攻撃を捌く。そして、生まれた隙を逃さずクリティカルポイントに攻撃を当てていた。キリトはソレほどの実力なら名の知れたトッププレイヤーかと思いアバター名を確認する。確認してどうしたかったのかはわからないが、ただ何も知らずに終わるのだけは嫌だった。そして、アバター名を見るために目を凝らす。だが、そこにはHPゲージ以外に表示されなかった。たとえモンスターだとしても名前が表示されないことはないはずだ。しかし、そのプレイヤーらしき者の名前は見れなかった。

 そうこうしている間にもソレは手を止めることなくボスのHPを刈り取っていく。ほんの4分前までは3本あったはずのHPゲージは残すところあと1本だった。そして、ボスのHPがレッドゾーンに入りソレはボスに向かって凄まじいスピードで距離を詰めていく。おそらくキリトのスピードの 1.5倍ほどのスピードだろう。ここでボスは最後の足掻きと言わんばかりに右手の斧を振りかざした。しかし、そのプレイヤーは今までとは違い回避をする素振りなくそのまま走り続けている。案の定、ボスの斧はプレイヤーを捉え残りのHPを消しとばした…そのはずだった。気が付くとそのプレイヤーはボスの背後にいた。まるで瞬間移動でもしたように。ボスもそのことに気づき振り返ろうとした。しかしその頃には遅く、ボスのHPはなくなり、体は無数のポリゴンとなり消滅した。

 プレイヤーはウィンドウを開きドロップアイテムを確認していた。その頃にはキリトのスタンも終わり動けるようになっていた。しかし、キリトは動かなかった。蘇生アイテムを手に入れることはおろか死ぬことすら許されなかった。キリトはあのプレイヤーを憎んでいるはずだった。恨んでいるはずだった。全てを踏み握ったあのプレイヤーを。しかし、その感情よりもキリトを支配していたのは絶望だった。おそらくソレが自分の動きを止めているのだろうとキリトは察した。ただ、遠くを見つめ、絶望に打ち拉がれていた。

 気がつけば、先程のローブを着ていたプレイヤーが目の前に立っていた。キリトは反射的に剣を強く握った。フードの下をよく見るとどうやら仮面をつけており、口から上を隠していた。額からは2本の角が生えており、目の部分は影になっており闇の中から赤い目がキリトを見つめていた。暫くの沈黙が続き、仮面のプレイヤーが口を開いた。

 

「……そんなにこのアイテムが欲しいならあげるよ…」

 

キリトはその言葉に唖然とした。剣を握る手からは力が抜け、ただ、茫然と仮面のプレイヤーを見つめていた。そんなことは気にせずプレイヤーは目の前にアイテムを投げて続けた。

 

「…それが蘇生アイテム。でも、それはキリトの願いを叶えられない…俺の望みも叶うことはない…期待が外れた…」

 

ここでキリトは声に聞き覚えがある気がした。ぼんやりとしていて声の主が思い出せない。しかし、ふわりとした風がキリトをすぎた時、ハッと我に戻った。辺りを見渡してもそこには誰もいなくなっていた。あるのは自分の足跡とまた別の出口へ向かっていく足跡だった。そして、キリトは何かに気がついたように小さく呟いた。

 

「……シエル」

 

 

 

 

 

To be continued…




Key「いや遅くなってほんとにごめんなさい課題マジでやばかったんです」

ノ夜「いや〜ダメでしょKeyさんよぉ〜今回は全面的にそっちが悪いよねぇ〜?(ニヤニヤ)」

Key「ぐっ…」

ノ夜「どう落とし前つけてくれんの?ほらほらほら」

Key「(イラッ)」

ノ夜「ほれほれどうs」

Key「シエルさーん!!!」

ノ夜「ちょっおま」

ノ夜さんがログアウトしました

Key「いやー助かりましたよシエルさ」

Keyさんがログアウトしました

シエル「…くだらないことで呼ぶな」




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