胡蝶は舞う (チェルシー+)
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プロローグ

処女作です。
作者の妄想を垂れ流しているだけなのでみるに耐えない
かもしれません٩( 'ω' )و
それでもよろしければ御一読くださいませ

残酷な描写、アンチヘイトは念のためです。


 

ふと気がつくとそこは一尺先は見えない程に深い霧の立ち込める場所だった。

 

「どこだ?ここ」

 

少年はそう独り言ちて周囲を見渡したが、視界には白が広がるだけだった。

 

「ーーーーー」

 

何かが聴こえた様な気がした。

そう思いそちらへと歩を進めた。

 

「ーーーーと」

 

先程よりも近づいたようだった。

正体を知るために続けて歩を進めた。

 

「ーーーなと」

 

何かを言っているのか、誰かを呼んでいるのか、それは定かではないが何故が姿を見なければならないという思いがあった。

 

「ーーみなと」

 

「妾の声が聴こえておらんのか、湊!」

 

◇◆◇◆◇

 

「はー、夜一サンも人使いが荒いっスよねぇ。流魂街で強い霊圧が断続的に感じられるから見てこいだなんて」

 

そう独り言ちながらボサボサの頭に濃いクマ、シワシワの死覇装を纏った研究者然とした男ーー浦原喜助は西流魂街にある一地区 潤林安に向かっていた。

 

突然、かなりの実力者であるはずの喜助ですら身構える程の霊圧が辺りを襲った。

 

「これはっ!愚痴をこぼしてる場合じゃないみたいっスね」

 

そう言い、霊圧の元へと急行していくのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

遂に声の正体を見た。それは濡羽色の髪を簪で纏め、金の蝶の刺繍の入った藍色の着物を着た女性だった。端的に言ってしまえば少年がこれまで生きてきた短い時間の中で一番美しかった。

 

「あんた、誰だ?」

 

「名か?今名乗ったところで徒労に終わると思うと名乗るのも億劫じゃのう。知ってはいるが本人から聞いておきたいものであるし、其方こそなんというのじゃ?」

 

この美女は何を言っているんだ。名乗ることが徒労に終わるなんてことがあるか?それに知っている?何処がで会ったことがあったか?そんなことを思いながらも少年は言われた通りに名乗ることにした。

 

「あ、あぁ、悪いな、俺の名前は薄羽 湊だ。んで、あんたは誰なんだ?」

 

「ふむ、言われたことはやれるようじゃの。して、妾の名か。いいじゃろう。妾はーーーーーじゃ」

 

「なんだって?聴こえないぞ。済まないがもう一度頼む」

 

「じゃから、ーーーーーじゃ」

 

「本当に済まない。もう一度だけ頼む」

 

「無駄じゃと思うんじゃがのぅ。まぁ、良い、ーーーーーじゃ」

 

◇◆◇◆◇

 

現場と思われる場所へと急行すると元々は良くある家屋であったと思われる建物が鎌鼬が当たったかの如く鋭い断面を見せ、竜巻に見舞われたと思う程に荒れ果てていた。

 

「これは、一体どういうことっスか」

 

喜助は夜一からのちょっとしたお使い気分だったものが、別の何かに変わったようなキナ臭さを感じつつ、周辺を見回し始めるのだった。

 

しばらく元家屋の周りを調べ、同一の霊圧の残滓があることに気づきその大元が屋内にあるだろうとアタリをつけ、元家屋へと足を踏み入れた。

 

するとそこには一人の少年が佇んでいた。

 

「アンタ、誰だ?」

 

◇◆◇◆◇

 

目が覚めた。そこは濃い霧の立ち込める場所ではなく、自分がいつも寝泊まりを特に代わり映えのしないいつもの家だった。いや、代わり映えはしていた。壁は鎌鼬が当たったかの如く鋭い断面を見せ、屋根は吹き飛び、居間の用に使っていた場所は竜巻に見舞われたと思う程に荒れ果てていた。

 

「なんだよ、これ…」

 

少年ーー薄羽 湊はそう独り言ちた。そうしていると何かがものすごい勢いで近づいているのが感じられた。

 

「何か来てるな、虚か?なんにしろ見つからない方が良いな」

 

そう言いつつ湊は無意識の内に霊圧を抑え、部屋の隅に隠れたのだった。

 

隠れていると、黒い着物を纏った男が家の周りを見ていることがわかり、立ち去って行くことを期待していたが、遂に男が屋内に足を踏み入れてきた。

 

こうなれば仕方がない、そう思い謎の男と相見えることにした。

 

「アンタ、誰だ?」

 

◇◆◇◆◇

 

屋内に入ると突然話しかけられ、少々面食らいながらも喜助は返事をした。

 

「人に名前を聞くときは自分からっスよ」

 

「さっきも言われたよ、それ」

 

「?なんのことっスか?」

 

「いや、こっちの話だ、気にしないでくれ。名前だったな。俺は薄羽 湊だ。それで、アンタは?」

 

「アタシは浦原喜助っス。それで、少年、いや、薄羽クンはこんなところで何をしてるんスか?」

 

霊圧が抑えられているせいで断定はできないが十中八九この少年がこの惨状を生み出した原因だろうとアタリをつけつつも会話をすることにした。

 

「俺か?俺は寝てただけなんだが。気がついたらこんなことになってたんだ」

 

喜助はそんな、湊の様子を見つつ、ある提案をすることにした。

 

「薄羽クン。君はきっと、いや、ほぼ確実に強い霊圧を持ってるっスよ。辺りはこんなにもボロボロに傷ついているのにキミ自身は無傷なのが良い証拠だ。このまま放置しておくわけにもいかないし、どうっスか。死神にならないっスか?かく言うアタシも死神っス」

 

◇◆◇◆◇

 

突然現れた男ーー浦原喜助に死神にならないかと言われた。何を言っているんだと思いながらもどこか納得している自分がいるとこに気づいた。そうしていると、言葉が口をつくように出ていった。

 

「あぁ、そうだな。なるよ、死神」

 

「そっスか。なら、早い方が良いですし、早速行くっスよ」

 

「行くって、何処に?」

 

「そりゃあ、死神と言えば瀞霊廷っスよ」




後書きと前書きって使い分けわかんなくねって思ってる作者です。
ちなみに作者は文章の構成とかよくわかってません。
(´-`).。oO(どなたか教えていただきたく)


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死神になるには?

主人公の湊君なんですが自分でも口調とかまだしっかり定められて
ないのでよくわからん感じなることもあるかもなので、温かい目で
見守って貰えるとうれしいです。


ーーーーー「そりゃあ、死神になると言えば瀞霊廷っスよ」

 

喜助は瀞霊廷のある方角を指しながらそう言った。

 

◇◆◇◆◇

 

「詳しく言うと死神になるには大抵の場合は真央霊術院を卒業しなきゃならないっス。だから、薄羽クンにはまず真央霊術院に入学して貰うっスよ。あ、でも、その前にアタシの上司に会って貰うってスよ。会うついでに入学の推薦書を書いて貰うっス」

 

「上司に?まぁ、わかった。なら、行こうか」

 

湊はそう言うと、喜助を急かすような仕草をした。表情には現れていないが存外楽しみにしているのかもしてない、喜助はそんなとこを思いながら移動を開始するのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

喜助が件の霊圧を調べにいってから数刻、夜一は珍しく書類仕事をこなしながら喜助の帰りを待っていた。

 

「喜助のヤツ、存外に遅いのぅ。霊圧の原因を調べる程度のことなら手早く済ませられると思っとたんじゃが」

 

そんなとこを独り言ちていると、喜助ともう一人、見知らぬ霊圧の持ち主が近づいているのが感知された。

 

「誰かは知らぬがこの霊圧の量、質、密度、良い物を持っておるのぅ」

 

そう言いながら口元を釣り上げるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「夜一サン、遅くなりましたっス。ただ今帰りました。それと、霊圧の原因だった子どもを連れて来ちゃったっス!」

 

「何が「連れてきちゃったっス!」じゃ!連れてきてどうするつもりなんじゃ?」

 

大方予想はついてはいるが万が一ということもあり、夜一はそう尋ねた。

 

「大方はついてると思うっスけど、この少年ーー薄羽 湊クンを死神にしようと思ってるっス。なので、薄羽クンの為に推薦書を書いてもらえないっスか?」

 

「死神にするのはやぶかさではないが、推薦書を書くのには条件がある。ワシに現時点での実力を認めさせることじゃ。これでもワシは四楓院家の当主なのでの、下手な奴をホイホイと推薦する訳にはいかんのじゃ」

 

聞いてみると、なるほど、それもそうか、と思うようなことを言われ喜助と湊は納得するのだった。

 

「聞いての通りっス。実力のほどは大丈夫っスか?」

 

「さぁ、どうだろうな。まぁ、やるだけやってみるさ」

 

「よし、では実力を見るのは遊び場でも使おうかのぅ。喜助、湊付いて来い」

 

そう言って3人は隊首室をあとにするのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

所変わって遊び場。湊の実力の程を知る為に、湊と喜助は相対していた。ちなみに湊は手に浅打を携えているのに対し、喜助は無手である。

 

「なぁ、俺は浅打?ってのかしてもらってる訳だが、アンタは素手で大丈夫なのか?」

 

「心配は無用じゃ。並みの死神ならいざ知らず、喜助は隊長に匹敵する実力の持ち主じゃからの。無手であっても傷を付けることすら難しいじゃろう」

 

喜助本人の代わりに夜一がそう答えたが、喜助は泣き言を言っていた。

 

「えぇ、夜一サン、そりゃないっスよ。斬れたら痛いじゃないっスか」

 

「喧しいわ!とっとやらんか!」

 

そんな言葉を発端に試合の口火は切られたのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

まず動き出したのは湊、刀の鋒を地面にむけ、姿勢を低くして喜助の懐に潜り込むように駆けて行き、勢いそのままに右下から左上へと切り上げるように刀を振るった。

 

(ほぅ、振り上げた鋒はぶれぶれでお世辞にも上手いとは言えんが、動きそのものは中々のものがあるの)

 

迫り来る刀に対し、喜助は微塵の焦りも見せることはなく、手を添えるようにして刀を受け流した。

 

(なっ!そんなことができるのか!)

 

湊は戦意を昂らせ、更に喜助に剣戟を浴びせていくが、その悉くを受け、流し、躱される。一太刀たりともまともに入れることが出来ないでいた。

 

◇◆◇◆◇

 

(霊圧は凄いとは言ってもやっぱりこんなもんっスか。夜一サンに推薦してもらうのはちょっとばかし難しいっスかねぇ)

 

喜助はそんなことを考えながら湊の攻撃を対処していた。しかし、次の瞬間、湊は驚くべき行動に打って出た。

 

なんと、あろうことか浅打を投げ捨てその身一つで突貫してきたのだ。

 

◇◆◇◆◇

 

(こっちの攻撃をここまで対処されたんじゃ、刀を使ってもどうにもならないか。いっそのことこっちも無手になって組手にでも打って出るか?)

 

そう結論づけた湊は浅打を投げ捨て、脚に霊圧を込め、一気に喜助に近づき、同じように霊圧を込めた右の拳を鳩尾目掛けて繰り出したのだった。

 

「これならどうだ!」

 

そういいなが人体の弱点である中心線上にある頭、鼻、首、鳩尾、股間に間髪いれず、流れるように打撃を続けた。

 

その様は素人臭さは多分に含まれていながらも、あたかもや舞っているかの如く流麗さを観察していた夜一と喜助に見せつけたのだった。

 

しかし、そうはいっても所詮は素人、喜助に対し、有効打となるような一撃は入れることはできていなかった。

 

◇◆◇◆◇

 

(察するに、薄羽クンは斬術よりも白打と歩法、とりわけ白打の才能があるってことっスかね)

 

「びっくりはしたけどボクに一撃入れるのはまだできないみたいっスね」

 

そういいながらも喜助は湊の的確に相手の弱点を突いてくるその姿勢、動作と動作との間を極力無くすような体の使い方など湊の体術の才能を的確に見抜き、高く評価していた。

 

◇◆◇◆◇

 

(斬術はズブの素人じゃが、体術には光るものがあるのぅ。これは良い拾い物をしたやもしれん)

 

「そこまで、双方拳を下ろすのじゃ!」

 

夜一の号令を合図に2人は戦闘態勢を解くのだった。

 

「湊、お主は斬術に関しては大したものは持っておらぬが、体術には中々に光るものがある。その才能を見込んでこのワシが推薦書をしたためてやろうではないか!」

 

「ほんとか?まぁ、貰えるものは貰っておくとするよ」

 

◇◆◇◆◇

 

こうして、体術の才能を持つ少年ーー薄羽 湊は、四楓院夜一直々の推薦書を携え真央霊術院の門戸を叩くのだった。




UAとかの相場を知らないので周りと比べるとかはないんですが
自分のこれくらいはアクセスしてくれるかなーっていう予想を
遥かに上回っててウボァってなってます。
頑張って執筆していきたいと思います。
目安としては毎回2000文字くらいは書いていこうと思ってます。


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体術系男子とポニーテール系男子

すまぬさんの子供時代は「化け猫ーっ!」って言って
瞬歩で鬼ごっこしてる場面しか思いつかないんですよね。


「推薦書の提出に来た。受理を頼む」

 

「はい、かしこまりました。確認致しますので、少々お待ち下さい」

 

そう言って窓口の職員は推薦人の確認をほぼ流れ作業のように始めた。

 

(見ない顔だが、貴族出身だろうか? まぁ、顔が知られていないということは精々下級貴族くらいのものだろう)

 

呑気にそんな事を考えながら、蛇腹折りになった和紙を広げ、文章に目を通していく。

 

(なっ!四楓院家!?何かの間違えか!?)

 

推薦書の差出人は職員の予想をはるかに超え、四大貴族と名高い四楓院家のものだったのだ。加えて、現当主である四楓院夜一直々の推薦書であった。

 

「さっきから顔色が芳しくないが、どうした?大丈夫か?」

 

流魂街出身故に貴族の認識など、よく分からないがすごく偉い人達、程度のものでしかない湊は呑気にも推薦書を穴が空くほどに凝視している職員にそう声を掛けた。

 

「き、君っ!差出人は本当に四楓院夜一様で間違いはないんだねっ!?」

 

突然、湊に覆いかぶさるのではないかというほど身を乗り出し職員は湊に問いかけた。

 

「あぁ、推薦書は確かにその人に書いてもらったが、どうかしたか?」

 

そんな会話をしている2人だったが、職員の声が些か大きすぎたせいか四楓院家の推薦を受けて入学してきたという者がいることが一気に知れ渡り真央霊術院の推薦書の提出用の窓口は未曾有の大混乱に陥った。

 

貴族出身の者が入学することはよくあることであり、騒ぎになることはない。あるとすれば、朽木家などの四大貴族レベルの規模を誇る家の者が入学するときにちょっとした騒ぎになる程度だ。なぜならば、貴族の格が高くなればなるほど子息、息女の入学予定は知れ渡り、ほぼ周知の事実となるからだ。

 

しかし、今回は事前の情報は全くと言っていいほど無かった。加えて、その推薦人が朽木家と同じ四大貴族である四楓院家、更には現当主である四楓院夜一からの直々の推薦書であった。自由奔放で知られている夜一ではあるが、その実力は折り紙つきである。それほどの人物が推薦したとなれば騒ぎになることは必然であった。

 

◇◆◇◆◇

 

所変わってそこは入学式。なんとか推薦書の受理を済ませた湊は入学式に参加していた。各教員からの挨拶があり、最後に護廷十三隊総隊長である山本元柳斎重國による激励の言葉が送られていた。

 

「お主らはこれから死神になるべく、様々なことを学ばなければならぬ。特に斬拳走鬼の4つは死神とって欠くことの出来ぬのもである。日々研鑽を怠ることのないように、以上じゃ」

 

その言葉を締めとして入学式は終了し、各教室へと向かうことになった。湊は1から10まである学級のうち夜一直々の推薦もあってか学級は1になった。

 

◇◆◇◆◇

 

各教室へと別れた後には誰かしらの発案により自己紹介が行われることになっていた。

 

「薄羽 湊だ。流魂街出身故になにかと分からないこともあるだろうが、よろしく頼む」

 

そんな簡潔にまとめ過ぎたような挨拶をした為か反応は芳しくなかった。夜一の推薦というのが効き過ぎて、気後れしたのかもしれないな、と思う湊であった。

 

そうして、次々と自己紹介が進んでいき、湊と注目を二分している片割れが挨拶をしていた。

 

「朽木 白哉だ。祖父と父上の後を継ぐことの出来るような死神になる為にきた。馴れ合いは不要だ」

 

そんな突き放すような挨拶をしたのは長い髪を一つにまとめた美男子だった。その美男子は言うことを言うと席に着いてしまい、なんとも気まずい雰囲気が漂っていた。

 

◇◆◇◆◇

 

クラスメイトとなる者たちとの顔合わせが済むとその日は授業も特にないことから住まわせて貰うようになった四楓院家の離れへと歩を進めようとしたところを件の美男子に呼び止められた。

 

「少し待て。兄はあの化け猫の推薦で入ってきたそうだな。あいつとはどういう関係だ?」

 

「どういう関係もなにもあいつが言うには、俺には体術の才能があるから推薦した、だそうだ」

 

(あの化け猫が認めた才能だと!?アレは腐っても隊長を任されている身だ。加えて、隠密起動の総司令官も任されている。体術の専門家が認める才能か)

 

「黙り込んでどうした?」

 

「いや、なんでもない、兄は普段どんな修行をしているのだ?」

 

「修行か…猫の姿になったあの人と鬼ごとをするとか、かな」

 

「……兄も苦労しているのだな」

 

「あぁ…」

 

湊と白哉の2人は入学して初日にも関わらず疲れたような空気を漂わせ、謎の友情が生まれたのだった。

「なぁ、白哉って呼んでいいか?俺のことを湊でいいからよ」

 

「よかろう、これからよろしく頼む、湊」

 

◇◆◇◆◇

 

四楓院家の離れへと帰宅した湊はちょうど仕事を抜け出してきた夜一と会っていた。

 

「今日、朽木 白哉ってのと知り合ったが、アンタなにしたんだ?アンタのことを化け猫とか呼んでいたが」

 

「ほぅ!白哉坊と会ったのか。いやいや、別に大したことはしておらんぞ。ちょっとからかって鬼ごとをして遊んでやった程度のものじゃ」

 

(あぁ、あいつも苦労してんだな…)

 

「なんじゃその、あぁ、あいつも苦労してんだなとでも言いたげな目は」

 

「さらっと人の心を読むじゃねぇよ、あいつアンタのことを思い出して遠い目してたんどからな?」

 

「まぁ、良いではないか、才能豊かな若人にはちょっかいをかけたくなる老婆心とでもおもっておれ」

 

「そういうもんかねぇ」

 

そうやって夜は更けていくのだった。




真央霊術院編どれくらい書きましょうかね。
現時点では、死神になる前に適当な理由をつけて
何人か原作キャラと顔合わせ程度はさせておきたいと考えてます。


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斬魄刀の名 1

書く気はあるのに書けない症候群にかかってますW(`0`)W


「このように刃禅とは死神と斬魄刀とが対話するために最適な形へと昇華されたものだ。故に、斬魄刀と対話するときは刃禅を行うのが一番良いだろう。では、今日の授業はこれで終了する」

 

なるほど、そう湊は思った。自身は斬魄刀を与えられてからこれまで、自らの精神世界へと行ったことはなく、そろそろもう一度精神世界へと行きたいと考えていた。そこに渡りに船とばかりに刃禅を教えられた。こうしてはいられないとばかりに帰宅し、刃禅に取り組むのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

ふと気がつくと視界一面に濃い霧が立ち込めており、自身の精神世界へと入ったことがわかった。このまま突っ立っていてもな、と感じ移動しようとすると、誰かが近づいていることが感じ取れた。霧の中という視界の悪い中でも誰がきているのかが分かった。

 

「久しぶりじゃの、湊」

◇◆◇◆◇

 

いつもと変わらぬ景色、いつもと変わらぬ自身、一向に精神世界へと降りてこない我が主人、おおよそ知覚できる全てが変わらず、ーーーは退屈していた。

 

「退屈じゃな」

 

そう口に出しても変わるものはなかった。

そうして、無為に過ごしていると突然、この世界の主人、我が主人が降りてきたのが知覚できた。

 

湊が自分のことを見つけるのを待っていても良いが些か退屈過ぎたこともあり、ーーー自ら湊に会いに行くのだった。

 

「久しぶりじゃの、湊」

 

◇◆◇◆◇

 

「誰だと思えば、アンタか、結局アンタの名前はなんなんだ?」

 

「ふむ、そうじゃの、教えてやらんこともないがときに湊よ、斬魄刀の名前を知るための条件はなんと心得る?」

 

「そうだな、確か斬魄刀に認めさせることだった様な…」

 

「そうじゃの、その考えで行くと何故お主は妾の名前を知ることが出来ていないと考えるのかの?」

 

「あぁ、つまりアンタはまだ俺のことを認めてないってことか」

 

「有り体に言ってしまえばそういうことじゃの。のぅ湊よ、妾は退屈しておるのじゃ。少しでも妾の退屈を和らげてくれるのなら認めてやらんこともしないぞ?」

 

そういってーーーは霊圧を解き放った。すると、風が吹き荒れ始め、霧の動きによって鎌鼬や竜巻のようなものが発生していることが見てとれた。なるほど、どうやらこれがコイツの能力らしい、そう湊は考えるのだった。

 

「そうか、手っ取り早いのは好きなんだ。ただ俺は斬術が少し苦手なんでな、体術だけでいかせてもらう」

 

「よいよい、妾を楽しませられるのならばなんでも良いぞ」

 

その言葉を口火にーーーを認めさせる戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

ーーーは湊の出方を見るようゆるりと構え、佇んでいる。それ故に、先に仕掛けたのは湊だった。体術のみゆえに接近戦しか選択肢はなく、ーーーへと最短距離で駆け抜け二丈ほど手前で跳躍し、空中で一回転をしてエネルギーを生み出し、そのエネルギーに落下する力をも加えてつま先蹴りを繰り出した。これは、夜一との修行ーーー実質夜一の遊び相手ーーーの時に夜一が珍しくしっかりと稽古をつけてくれた技、『風車』であった。

 

「食らいやがれぇ!」

 

そう声を上げながら脚を振り下ろすが、ーーーは周囲の霧を纏わせた腕で振り下ろした脚をいなし、お返しとばかりに同じく霧を纏わせた腕を鳩尾めがけて繰り出してきた。脚をいなされたことで体勢を崩した湊は鳩尾への攻撃をもろに受けてしまい、思わず膝をついてしまう。すぐに起き上がろうとするが、攻撃を受けた鳩尾を中心に鋭利な刃で刻まれたかのような傷がいく筋もはしっていた。

 

「甘いのぅ、和三盆よりも甘いわい」

 

ーーーはそういって、まるでお手本を見せるかのように『風車』を繰り出してくる。咄嗟に横に転がって避けるが、それさえ予期されていたのだろうか、空中で腰を捻ることで脚の向きを変え、転がった先にいる湊目掛けて脚を繰り出したのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「少しやり過ぎてしまったかのぅ。湊よ、聞こえておるかの。お主を認めることはまだせぬ。せめて、妾に一撃入れられる様になることじゃの」

 

ーーーはそれだけ言うと湊を強制的に精神世界から押し出すのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「ちくしょうっ!」

 

湊は自らの弱さを嘆き、怒っていた。

 

「このままじゃ、いつまでたってもアイツに認めさせることは出来ない。霊術院の授業じゃ全く足りない。どうすれば…」

 

そう独り言ちながら自身に与えられた一室をぐるぐると回っていると、突然、襖が勢い良く開けられた。

 

「外から独り言は聞かせてもらった!悩んでおる様じゃの。どうじゃ?儂が稽古をつけてやらんこともないぞ?」

 

「いや、アンタの稽古って遊び相手ってだけじゃねぇか」

 

「うぐっ。それを言われるとキツいが約束しようではないか。儂の稽古に耐えられたならばいまの数倍もの力を身につけられるだろうと!」

 

「遊び相手ってとこは否定しないのな。まぁ、一人で悩んでても仕方ないし、よろしく頼むよ」

 

そういって二人は遊び場へと向かうのだった。




2000字は書くとか言いながら少し足りてません。
これには深いわけがあるんです。切りが良かったんです!!
いや、ほんとすみません。


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斬魄刀の名 2

UA、お気に入り共にじわじわと増えて喜びを感じてます!
これからもよろしくお願いします!



遊び場へと到着した二人は早速とばかりに修行の内容の相談を始めていた。

 

「なぁ、修行するっつっても何するんだ?」

 

「そうじゃのぅ、儂に教えられることと言ったらやはり白打と歩法、つまりは体術じゃの。一応暗器もあるがそれはまた別なのでの」

 

「なるほど、まぁ、俺も鬼道はギリギリ使えるが斬術はからっきしだしな。んじゃまぁ、よろしく頼むよ」

 

「うむ!任せておけ!」

 

そうして、差し当たっては斬魄刀の名前を聞きだせるだけの実力をつけるための修行は始まったのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

修行を始めてから早一週間、湊は体術のみに置いてだけで言えば下位席官程度の実力は身につけていた。

 

「今日は何をしようかの?何か希望はあるかの?」

 

「なら、瞬歩を教えてくれよ。これまで飽きるほどには見てきたがやり方は知らないんでな。なんとなくは出来るんだがいかんせんしっくりこないんだ」

 

「そういえば見せるだけで教えてはおらんかったの。よし、では今日は瞬歩の方法を教えるとするかの」

 

「あぁ、頼むよ」

 

「とはいっても、お主は喜助と手合わせした時に脚に霊圧を込めて移動しとったし、あれなんてもう瞬歩じゃしな。何がしっくりこなんだのじゃ?」

 

「なんていうか霊圧にばらつきがあるっていうか、瞬歩をするごとに移動できる距離に差が出るんだよ」

 

「うむ、それを解決する方法はあるぞ」

 

「お!教えてくれよ」

 

「それはな…鬼ごとをすることじゃ!」

 

「は?今は遊びの話はしてないだろ?しっかりしてくれよ」

 

「いやいや、馬鹿にしておるようじゃが、中々馬鹿にならんものじゃ。騙されたと思ってやるぞ。もちろん移動には瞬歩のみを用いることじゃ。半刻経つまでに湊が儂を捕まえられなかったら何か罰ゲームでもしてもらおうかの」

 

「瞬神サマを捕まえる、ねぇ。適当に理由をつけて書類仕事を押し付けたいだけに見えるけどな」

 

そう湊が指摘すると図星をつかれたような反応をして、なんとか丸め込もうと躍起になって説得を始める夜一の姿があった。

 

「うぐっ。ま、まぁ良いではないか。無論多少の手加減はしてやろうではないか」

 

「はぁ、まぁいいけどな。その代わり俺が捕まえられたら体術の技を一つ教えてもらうぞ」

 

「よし、では開始じゃっ!」

 

夜一の言葉を最後に二人の姿は掻き消えたかのように見えなくなるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

湊は遊び場という限られた空間の中でなら捕まえることも出来なくはないのではないかと少し甘く考えていた。しかし、瞬神の名は伊達ではなく、かれこれ四半刻の間追いすがることすら出来ないでいた。

 

(くそっ、やっぱり瞬神ってのは伊達じゃねぇな。どうにか出来ないものか…)

 

「ほらほら、どうした?突っ立っておっては捕まえられるものも捕まえられぬぞ?」

 

そう煽ってくる夜一を睨みながらこの状況を打開するための策を巡らせて行く。

 

(ただ追いかけるだけじゃ一生捕まえられない。となると、正攻法で行くのは一旦やめよう。だが、そうするとどうしたもんか。込める霊圧に緩急をつけてみるか?)

 

そう考えた湊は早速とばかりにかなりの霊圧を込め、その位置にいるということを印象付け、先程の半分程の霊圧を脚に込めて移動をした。そうすることで、濃い霊圧が残っている場所にまだ湊が残っていると錯覚させることができた。これにより、すんでのところで気づかれたものの夜一に対して不意打ちのようなものをすることが出来たのだった。

 

(よし!この状況を上手く作り出すことが出来ればなんとかなるかもしれない! )

 

内心でそう喜び再び行動を起こそうとした途端脚に力が入らなくなり、その場に倒れ込んでしまったのだった。

 

「なんだ、これ…力が入らねぇ」

 

「霊圧の使いすぎじゃな。休みなしで儂とここまで鬼ごとを続たのじゃ、こうなるのも無理はないがの」

 

そう夜一が呟くのを聞きながら湊の意識が途切れて行くのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「ん…」

 

「お、起きたかの。では、風呂に行くぞ」

 

そう言って歩き出した夜一について行き、温泉に浸かりながら常々思っていたことを口に出した。

 

「なぁ、俺はこれでも一応男なわけだ。なのになんでアンタは一緒に入ってくるんだよ」

 

「なんじゃ、そんなことを気にしておったのかの。初心じゃのぅ。まぁ、良いではないか、師匠との交流は積極的にしておくものじゃ」

 

「いや、言いたいことは分かるが、なんでわざわざお互いに一糸まとわぬ姿でしなきゃならないんだよ…」

 

「裸の付き合いというやつじゃな!」

 

「はぁ、まぁ、アンタが良いなら良いよ」

 

そんな会話をしながらも師弟ともにこの時間が心地いいものだと感じているのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

日を跨いで、湊は霊術院、夜一は死神としての責務を果たし終え、今日も今日とて遊び場に集まって修行をしていた。

 

「今日のところはこんなものかの。良いぞ、修行を始めてからかれこれ1ヶ月、なかなか実力がついてきたのではないかの?まぁ、体術だけ、という但し書きがつくが」

 

「そうだな、いまなら前に刃禅した時よりはマシになると思う。今日はこのまま刃禅しても良いか?」

 

「あぁ、良いぞ。勢いそのままに名を聞き出してくるのじゃ!」

 

「あぁ、やれるだけやってみるよ」

 

そういって湊は刃禅を始めるのだった。




後書きって、何を書けばいいのん?


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斬魄刀の名 3

突然ですがこの斬魄刀は化物語の忍野忍をイメージしてます。


精神世界に入り、いざ、アイツを探そうと目を開けるとすぐそこに立っていた。目は不機嫌そうに細められ、小首を傾げ、腕を組むといういかにも不機嫌ですという雰囲気を感じさせるオプション付きで、だが。

 

そんな、様子を目の当たりにして軽い感じに話しかけることが出来ず、少し上擦ったような声で話しかけることとなった。

 

「よ、よぅ、なんていうか、機嫌が悪そうだが、何かあったか…?」

 

「別になんともないぞ?我が主人がここ一月の間妾に一度たりとも会いに来ることはなく、どこかの黒猫と戯れておったことを咎めるつもりなどなく、ましてや気にしてなどおらんのじゃ」

 

(はちゃめちゃに咎めてるし気にしてらっしゃる…なんかコイツちょっと面倒くさいな)

 

そんなことを考えながらも表情には出さないように気をつけながら何か謝意が伝わるような言葉をかけようとして、口を開いた瞬間ーーー

 

「言っておくが、斬魄刀の所持者とその斬魄刀はある種、一心同体のやうなものじゃから妾には其方が何を考えておるかは何とは無しにはわかるんじゃぞ?」

 

「それは先に言って欲しかったな」

 

「悪かったのぅ、面倒くさい斬魄刀で。そうよな、其方もあの黒猫のようなサバサバしたのが好みよな」

 

ーーーはいじけた様子で蹲り、膝を抱えながらそう言った。

 

「いや、夜一は師として慕っているだけで、そう言った感情は欠片も持ち合わせていないぞ?むしろ、好みはアンタみたいな奴だ」

 

湊は深く考えることもなく、純粋な本心を伝えると、ーーーは途端に赤くなった。

 

「な、何を言っておるんじゃ!騙されんぞ!どうせ適当なことを言ってこの場を収めようなどと考えておるんじゃろ!」

 

「いや、さっき俺の考えてることが何となくわかるって言ってたじゃん」

 

ーーーは先程言った何を考えているかが何となくわかると言う発言を棚に上げて反論してくるが、そこは湊が突き、ーーーは何も言えないでいた。

 

「ま、まぁ良いわ。ともかくここにきたと言うことは其方に妾を認めさせることが出来るだけの実力がついたと言うことじゃろう?」

 

「あぁ、さっさとやろうぜ。夜一と修行した後だから疲れてんだ。早く寝たい」

 

「一月前とは見違えるが、そこまで付け上がるのを認めるわけにはいかぬのぅ。精々何も出来ないまま終わるのだけは辞めてくれよ?」

 

そう軽口を叩きあい、一月前とは違いーーーから仕掛けることで戦いの火蓋は切って落とされるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

視界から突然消えたと思わせる程の瞬歩で接近し、霧を纏わせた右脚で蹴りを繰り出してきたーーーに対し、湊は蹴りに逆らうことなく後ろに跳躍する事で蹴りの威力を軽減し、いなしきった。そして、一月前の借りを返すような形で『風車』を繰り出す。

 

ーーーは両腕を交差させ、『風車』を防ごうとするが、その蹴りの威力故に防御もろとも蹴り飛ばされてしまう。

 

「なるほどのぅ、一月の間黒猫と乳繰り合っていただけではないと言うことじゃの」

 

「いつまで根に持ってんだよ。そろそろ忘れてもいいんじゃねぇのか?」

 

湊がそう呆れた風に言うとお途端に顔を赤くさせて反論してくるのだった。

 

「なっ!別に根に持ってなどおらん!ただ退屈だっただけじゃ!」

 

「そりゃ、すまなかったな。まぁ、この一月でそこそこやれるようになったんだ。精々楽しんでくれよ!」

 

そう言って込める霊圧に緩急をつけることで、視界に入ってくる実像と霊圧知覚で感じる霊圧に齟齬を生じさせることで、ーーーを惑わし、その隙を突いて接近する。少し慌てた様子で右の突きを繰り出してくるーーーを逆手に取り、湊は『吊柿』によってーーーの突きを軸に、人体の急所である中心線上にある頭、鼻、首、鳩尾に流麗な動きで突きと蹴りを繰り出した。

 

「どうだ!毎日最低3回は夜一にやられたこの連撃!地獄を見たぜ!」

 

「なるほど、口だけでは無いと言うことじゃの。では、少しだけ本気でいかせて貰うとしようかの」

 

得意げな湊を賞賛し、なにやら物騒なことを言ったーーーは両手足に霧を纏わせ、先程の瞬歩など止まっているように感じられる程の速度で接近し、湊が急所を守る構えをするも、『吊柿』によって逆手に取られてしまい、ーーーの攻撃を全てモロに受けてしまう。これによって湊は意識をかりとられてしまったのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「ん…ここは…」

 

「起きたのかの。我が主人よ」

 

目を覚ますと、ーーーに膝枕されていた。自分でなにを言っているんだと思うが、そうとしか言いようのない状況だった。

 

「なぁ、なにしてるんだ?」

 

「良いではないか、一度してみたかったのじゃ」

 

「まぁ、アンタがいいなら良いけどよ」

 

「そのアンタと呼ぶのを辞めよ、黒猫のことは名前で呼ぶくせに何故斬魄刀の妾がそんな呼び方をされねばならぬのじゃ」

 

「そんなこといったって、アンタの名前聞いてねぇしな」

 

蝶舞(かれん)じゃ。金輪際アンタなどと呼ぶことは無しじゃ。わかったのかの?」

 

「あぁ、分かったよ。これからよろしく頼むよ、蝶舞」




お読み頂きありがとうございます!


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良い人過ぎる人は何か裏があるの法則

この小説は話の展開が思いついたら書くという
なんともアホな書き方をしているためにすぐに更新できる
時もあれば、中々更新できない時もあります。

(´-`).。oO(アイディアが石油みたいに湧いてこねぇかなぁ)

あ、今回はいつもより少し長めです。


晴れて斬魄刀から蝶舞という名前を聞き出すことができた湊は、いつもの様に真央霊術院で授業を受けていた。ぱっと見は普段通りの湊であったが、始解をまだ試せていないことからソワソワしているのだった。

 

「本日は臨時講師として五番隊副隊長である藍染 惣右介殿に来て頂いた。藍染殿は斬拳走鬼全てに秀でておられ、正にお手本のようなお方だ。今日の経験を今後の糧となるように」

 

そういっていつもの講師は教室の後ろへと下がっていった。どうやら、後ろから見ることで講師自身も藍染とやらの授業を見学するらしい。

 

「ご紹介に預かりました、藍染 惣右介です。本日は講師役として皆さんの授業を担当させてもらいます。折角なら体を動かしたいし、斬術、体術、鬼道なんでもありの模擬戦をしてもらおうと思う。それじゃあ、移動しようか」

 

藍染はそういって人の良さそうな笑みを浮かべ、女子からは黄色い声が、男子からは怨嗟の声が届くのだった。そんな中、湊はどうでも良いけど、始解確かめてみてぇなぁ、などと考えていたのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

既に何人かは模擬戦を終わらせ、藍染からの助言を聞いていた。

 

「さっきの斬撃は良かったね。腕で振るうだけでなく、しっかりと体全体を使って刀を振るうことができていた。だけど、一撃入れ損なった後がまずかったね。目先のことだけじゃなく、数手先を考えることが出来たらもっと上手く立ち回ることができるだろう。頑張ってね」

 

このように一人ひとりに的確な助言を授けることで、生徒たちの間で藍染の評価はうなぎ登りに上がっているのだった。

 

「では、次の二人、朽木君と薄羽君、出てきてくれるかな?」

 

そうこうしている内に順番が回ってきたようだった。この二人は学級内のツートップであり、白打と歩法では湊が、斬術と鬼道では白哉が優っているという正に好敵手とも言える関係性であった。

 

「まさか、お前とやる事になるとはな。手加減しねぇぞ、白哉」

 

「湊、兄は些か驕りが過ぎるようだ。その性根ここで叩き直してくれよう」

 

そんな軽口を叩きあい、湊は無手ながら四肢に霊圧を込める事で戦闘態勢に入り、白哉は刀を正面に構える事で同じく戦闘態勢に入った。その二人を見て薄く笑みを浮かべた藍染の掛け声によって戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

(万能型の朽木家の次期当主に四楓院夜一に体術の才能を認められた男か、摘んでしまうのは惜しいな。出来れば手駒にしたい所だがそう上手くもいかないか。一先ずは様子見といったところかな)

 

藍染は薄く浮かべた笑みの裏でそんなことを考えながらもそんなことはおくびにも出さず良い人を演じきっていた。

 

「では、始め!」

 

◇◆◇◆◇

 

湊は先手必勝とばかりに緩急をつけた瞬歩で肉薄し、認識の差異に一瞬の隙を作った白哉目掛けて『風車』を繰り出す。しかし、すんでのところでこれを回避した白哉は、同じく瞬歩で接近し、敢えて湊の専売特許とも言える体術に打って出た。

 

「てめぇ、俺に体術で挑むなんざちょっとばかし早ぇんじゃねぇの?」

 

「そのようなことはない。こちらとて技の一つや二つ覚えている。どれだけあの化け猫の被害に遭っているのか、ここで知るが良い!」

 

そんなどこか悲壮感漂う言葉を口にしながらも、『閃花』を用いることで、湊の背後を取り、勢いそのままに、魂魄の急所である鎖結と魄睡目掛けて刺突を繰り出した。

 

刺突が当たるスレスレのところで反応した湊は、伸ばされた腕目掛けて『吊柿』を用いる。確実に当てる自信のあった白哉は躱されるどころか、反撃を喰らってしまった。

 

「いやー、危なかったぜ。中々良い脚してんじゃねぇか。正直体術に関しては舐めてたわ、すまん」

 

「やはり兄に体術で勝ることは難しいな。ここは斬魄刀を解放するしかないか…」

 

「お?始解すんのか?白哉がするなら俺もするぜ?」

 

そう言い合い、湊は斬魄刀を抜き放ち、二人は共に中段に構え、開号を口にした。

 

「『裂き誇れ 蝶舞』!」

「『散れ 千本桜』!」

 

斬魄刀を解放することで、道場内に濃い霧が立ち込め、桜色の花弁が舞った。

 

双方出し惜しみをするつもりはない。湊は四肢に霧を纏わせ、白哉は自らの手で花弁を操作することで速度、操作性ともに高い水準に引き上げている。

 

「正直最近名前聞いたばっかだから、上手く扱うことができねぇ。間違っても死ぬんじゃねぇぞ」

 

「その言葉そのまま返してやろう」

 

「いや、なんで操作に慣れてないことをそんな尊大な態度で言えんだよ…」

 

一応とばかりに注意を促すと、同じような言葉が帰って来た為になんとも言えない雰囲気になったがそんなことは知らんとばかりに二人同時に動き出した。

 

◇◆◇◆◇

 

最短距離で一直線に肉薄する湊に対し、前後から挟み込むように花弁を操作し迎え撃ってでた白哉であった。が、この一幕においては湊に軍配が上がった。四肢に纏わせた霧のうち、両腕にあった霧を解き放つことで竜巻を起こし、花弁を散らした。そして、そのまま無傷圏まで入り込み鳩尾に突き刺さるような蹴りを放ち、脚が肉体に接触するタイミングで先程と同じように霧を解き放ち、今度は鎌鼬で刻んだような傷跡をつけながら、白哉を蹴り飛ばすのだった。

 

「兄の始解は正に兄の為にある様な能力だな」

 

そう言いながら立ち上がり、再度千本桜を操作しようとしたところで藍染から、止めの号令がかかり、始解をも用いた模擬戦は終了を迎えるのだった。

 

「いやぁ、二人とも凄かったね。朽木君は斬術、体術共に高い水準で使用することが出来ていたね。対して、薄羽君は、体術のみという一見不利に見える戦い方だったけどそれをものともしない見事な戦いだったね。流石は四楓院夜一のお墨付きといったところかな?

どうだい二人とも、霊術院を卒業して死神になったら、五番隊に来ないかい?うちは常に優秀な人材を求めているんだ」

 

未だ死神見習いの二人は副隊長というかなり高い地位の人に勧誘されたことで、周囲からどよめきが起こった。

 

「いや、俺は死神になるとしたら夜一のいる二番隊希望なんで、ご期待に添えそうにないです」

 

「私も祖父と父上のいる六番隊を希望しているので」

 

しかし、空気を読まない二人は平然と否と言い、場の空気が固まった。

 

「そうか、これは振られてしまったかな。まぁ、興味が湧いたらいつでも見学に来てくれて良いからね」

 

そういって固まった場のフォローをした藍染は授業の終わりを告げ、その日の授業は終了した。

 

◇◆◇◆◇

 

「今回は兄の勝ちだ、湊」

 

「馬鹿を言うなよ、体術で上を行かれかけた時点で胸を張って勝ったなんて言えるかよ。今回は引き分けだ」

 

「ふ、なら、そう言うことにしておこう」

 

そうして二人は拳を合わせ、再戦を誓うのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

その日の夜、刃禅を行い、蝶舞に会いに行き適当な会話をしていると、ふと思い出したように蝶舞が口を開いた。

 

「そうじゃ、湊よ。あの藍染とかいう男、気をつけておれよ」

 

「いきなりどうしたんだよ?いかにも良い人って感じだったじゃねぇか。何か気になることでもあるのか?」

 

「いや、これといって怪しいことはなかったのじゃが。強いて言うなら、完璧過ぎるといったところかの。一般的に言う良い人であっても一つくらいは目に見える欠点があるものじゃ。しかし、あの男にはそれが一切無かった。内に秘めた何かを完璧という布で覆ってしまったようにな。つまりはじゃな、何事も程々が一番というわけじゃな」

 

「ふーん。まぁ、一応気にかけておくよ。ありがとな、心配してくれて」

 

「べ、別に心配などしておらん!妾の持ち物に何かあったら困るのは妾じゃから言っただけじゃ!」

 

「なにもそこまでテンプレみたいにツンデレなくても良いじゃねぇか」




なんで評価貰えてるのに評価バーに色がつかねぇんだ!あぁん!ってな感じで取説読んでみたら五人未満では、色は付かないって書いてました。ショボンヌ(・ω・`)

蝶舞の開号ですが、裂くっていうのはわざとであって誤字ではないです。


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はじめてのにんむ 1

なん…だと…前話のあとがきで愚痴った途端めちゃめちゃ
評価貰えた((((;゚Д゚)))))))
なんなら、バーが色付くどころか橙なんですけど!?!?
あと、祝UA10000超え!!!
いや、あの、マジでありがとうございます。
記念にスクショ撮るレベルで嬉しかったです。(小並感)

あと、誤字報告の御礼をこの場を借りてさせて頂きます。
(形式的に「この場を借りて」っていったけどここ自分の作品の前書きなんだが?そうなるとどうなるんだ?この場を使ってになるのか?)


湊と白哉は能力の高さ故に本来ならば過ごすべき年数を飛ばす、所謂飛び級というものをして、真央霊術院を卒業した。湊は二番隊及び隠密機動に入り実力は申し分ないがいかんせん経験が不足しているという点から席官の地位的には最低の第二十席に、白哉は六番隊に入ると同時に朽木家次期当主として箔を付けるという意味でも第三席の座に就いた。

 

「入隊して早々に三席とは、恐れ入ったぜ。どうよ、今の気持ちとしては?」

 

「やはり少しではあるが、緊張するものだな。しかし、任された以上はその職務は全うするつもりだ。朽木家次期当主としてだけではなく、朽木 白哉個人としてもな」

 

「ふーん、まぁ、白哉らしくて良いんじゃねぇの?俺も入隊早々席官なんていう、夜一のーーーもしかしたら浦原もだがーーー告げ口があったに違いないような地位だからな。まぁ、ぼちぼちやっていくさ」

 

そんな会話をしながら二人はそれぞれの隊舎へ入隊式の為に足を向けるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

入隊式が恙無く終わり、入隊初日ということで今日のところは解散となり、現在はもう二年も住まわせてもらっている四楓院家の離れへの帰路に就いていた。もう、すっかり四楓院家の使用人の人たちとも顔馴染みとなり、軽い雑談程度なら交わす仲になっていた。

 

「薄羽です、ただいま戻りました」

 

そう言って四楓院家の門をくぐると、使用人の一人が挨拶を返してくれた。

 

「あら、薄羽様。おかえりなさいませ」

 

「何度言ったかもうわからないんですけど、もっと砕けた感じの口調にはならないんです?」

 

そう言って軽く不満を言うが、決まって「夜一様のお連れ様ですから、丁重に扱うべきなのです」と返されてしまうのだった。

 

「夜一様と浦原様が離れにてお待ちですので」

 

「あぁ、わかった。ありがとっす」

 

そんな感じで、湊は離れへ、使用人は仕事に戻っていくのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

離れに着くと玄関口に

"祝!第二十席就任おめでとう!"

と書かれた横断幕が掛けられていた。それを見た湊はげんなりとしつつも、まぁ、祝ってくれるならいいかと考えていた。

 

「ただいまー、夜一、喜助いるのかー?」

 

離れに入り、帰りの挨拶とともにいるかどうかの確認を取ると突然、何かがある弾ける音と共に二人がノリノリで飛び出してきた。

「湊!霊術院卒業と二番隊入隊おめでとう!これで湊も晴れて死神というわけじゃ。いやー、めでたいのぅ」

 

「薄羽クン、おめでとっス。明日っていうか、今日からは君の上司になるわけっスけど堅苦しいのは苦手なんで、態度とかは改めなくていいっスよ」

 

「祝ってくれるのは嬉しいんだけどよ、何でそんなにノリノリなんだ?」

 

「そりゃあ、自分の弟子の目に見える成長じゃからの。はしゃぎたくもなるわい」

 

「そういうことっス。ボクも多少は薄羽クンに教えたことはあるんで、夜一サンと一緒に喜んでたってわけっスよ」

 

「なるほどな、なんていうか、ありがとな」

 

四楓院家の離れはどこか温かな雰囲気が漂っているのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

数刻の間、使用人すらも呼び盛大にお祝いした後、夜一は突然真面目な顔つきになり、湊に任務について話し始めた。

 

「さて、折角のお祝いムードを壊すのも悪いんじゃが、湊にはこれより三日後に隠密機動として任務に当たってもらう。最近、流魂街の各所で夜間の虚の出現が増えておるらしいのじゃ。一昨日と昨日の夜に刑軍の隊士を向かわせたんじゃが、消息を絶っておっての。今日、明日と隊士を向かわせるつもりじゃが、それでも原因をつきとめられなかった場合はお主に出向いてもらうことになる。本当のことを言うと入隊したばかりのお主を向かわせるのは心苦しいんじゃが、いかんせん儂や喜助が行くには理由としては弱い。じゃから湊、お主に出向いてもらうことになる。入隊と同時に二十席に就任したその実力は伊達ではないことを証明するくらいの意気込みでよろしく頼むぞ」

 

「任務、任務か。まぁ、隠密機動に所属したんだしな。ましてや刑軍なんだから当たり前だよな。この三年間、稽古を付けてくれた夜一の顔に泥を塗らない程度にはやってくるよ」

 

入隊の三日後には任務に就くというなんとも強行軍と言えるような采配になってしまったが、夜一の期待の表れとも言える。任務が回ってきた時にはどうにか成功させようと意気込むのであった。

 

◇◆◇◆◇

 

そこは一見なんの変哲もない建物だが、中には様々な計測器などが配置されていた。その中に立つ三人の影があった。

 

「やはり一般隊士程度の魂魄では、原型を保てないみたいだね。最低でも席官程度の霊圧を持った魂魄じゃないといけないみたいだ。さて、明日の夜以降も虚を撒いて死神を釣ろうか」

 

そう独り言ちるよう呟く男に軽口を叩く声が響いた。

 

「ひゃあ、やっぱり藍染副隊長の考えることは物騒やわぁ」

 

「市丸、貴様藍染様を馬鹿にしているのか?」

 

軽口を叩いた男に向かって噛み付いたもう一人の男はそのまま斬魄刀を引き抜こうとするも、藍染本人に止められた。

 

「いいんだ、要、気にしていないよ。ギンもあまり要を刺激するような事は言わないでくれるかい?」

 

あくまで物腰柔らかにそう言いつけ、藍染は思考の海へと戻っていった。

 

(そういえば、三年前の二人はちょうど今年卒業して死神になったと聞いたな。経験はあまり積んでいないが、霊圧は申し分ない。どちらかが引っかかってくれるといいんだがな)

 

◇◆◇◆◇

 

そうして、湊の与り知らぬところで、湊にとって少し骨が折れる程度であったはずの任務は、巨大な陰謀が渦巻くものと様変わりして

いくのだった。

 




この話のタイトルははじめてのおつかいのパロディネタです。


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はじめてのにんむ 2

気がついたら前の投稿から割と日が経ってしまう現実。
どうにか更新頻度を上げたいものです。( ´Д`)


湊が夜一から任務について説明を受けてから三日が経った。消息不明となった隠密機動の隊士達は終ぞ帰ってくる事はなかった。これにより遂に湊が任務就くに至り、出発のために二番隊隊舎前に来ており、そこには湊、夜一、喜助の三人が集まっていた。

 

「それじゃあ、行ってくるわ。虚が出るって言ってもまぁ、何とかなるだろうしな」

 

そう軽い口調で話す湊であったが、対照的に夜一と喜助はいつにも増して真面目な顔つきで湊に注意を払うように促していた。

 

「気をつけるんじゃぞ。虚と遭遇しても、無理だと判断したら倒さずとも良い。ただ一つだけ。必ず生きて帰ってこい」

 

「そうっスよ。初任務だからって意気込むのも分かるっスけど、深追いはしてはダメっスよ」

 

「あぁ、分かったよ。二人とも見送りまでありがとな。んじゃあ、行ってくる」

 

「あぁ、それともう一つ」

 

瞬歩で移動しかけた直前、出鼻を挫く様に声を掛けてきた喜助を少し睨む様に振り返る。

 

「なんだよ、多いな。なんだ?」

 

「今のキミは少し気が緩んでそうっスからね。余裕を持つのは大事っスけど、それが油断になっちゃいけないっスよ」

 

これまで見てきた喜助の表情の中でもやけに真剣な表情でそういってくるのだった。

 

「あ、あぁ、肝に命じておくよ。それじゃあな」

 

そういって、瞬歩でアタリをつけた場所まで駆け抜けるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「確かにあやつは多少、天狗になっていかもしれんが、何もあそこまで言わずとも良かったのではないか?」

 

そう問いかける夜一に対して、何とも言えない表情で喜助は返した。

 

「今回の任務は何とも言えない嫌な予感がするんスよ。杞憂だったら良いんスけど、もしものことがあったらと考えるとどうも言わずにはいられなかったんス」

 

「そういうもんかの。まぁ、儂らには無事に帰ってくることを祈ることしかできんのじゃしな」

 

そういって二人は湊の無事を祈るのだった。

 

 

◇◆◇◆◇

「ここか、いつ来るか分かんねぇし面倒だな。いっそのこと出迎えでもしてくれたら良いんだが…」

 

目的の場所に着き、何とも物騒なことを独り言ちながら探索を始めるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

探索を開始してから早数刻、日は完全に落ち、今回は虚の発見及び殲滅又は観察は断念して帰還しようと考え出した矢先、突如として最下級大虚程の霊圧を持ちながら成人男性程度の大きさをした虚が現れた。

 

「なっ!どっから出てきやがった!」

 

一瞬取り乱すも、素早く戦闘態勢に入り、敢えて先手を譲り、後の先を取る様に動く。

 

こちらの動きを見ようとしたのか中々動き出さないでいた虚だったが、痺れを切らしたのか腰に下げた刀を抜き、正眼の構えを取ると、慣れた動きで右足を力強く踏み込むと勢いそのままに袈裟斬りを繰り出してきた。

 

「うおっ!あぶねぇなっ!」

 

言葉とは裏腹に懐ギリギリまで引きつけ虚が刀を振り下ろし切るのと同時に『閃花』によって背後に回り込み、首筋めがけて踵落としを繰り出した。

 

「うぉら!」

 

ヒット&アウェイの要領で踵落としをお見舞いした後にすぐさま離脱し、流石に一撃では仕留められないだろうと思いら虚へのダメージの入り具合を確認するために目を向けた。すると、踵落としによって地面に沈んだ顔面を何事もなかった様に引き抜き、様子を確かめる様に首を捻る。

 

「なっ、無傷だと?んな馬鹿なことがあるかよ。こちとら就任したてっつっても席官だぞ?」

 

動揺を抑え切ることが出来ずにいると、先ほどとよりも鋭い踏み込みからまたもや袈裟斬りを繰り出してくる。

 

「やばっ!」

 

ギリギリのところで避ける様に動くが、完全には避けることは叶わず、肩から脇腹にかけて刀傷がはしり、結構な量の血が流れることになった。

 

血が抜けたことで多少冷静になった湊は、虚の力量を確かめるために攻撃の手を増やした。

 

一隊士では捉えることも難しいとほどの疾さで攻撃と離脱を行うも結果は変わらず、ほとんどダメージを与えることはできていなかった。

 

「白打じゃあんまり効果がねぇのか?なら、お望み通り霊圧使ってやるよ!」

 

そう言いながら、四肢に霊圧を込めることで、素の状態での攻撃から霊圧を込めた攻撃に切り替えた。

 

◇◆◇◆◇

 

虚からの斬術を避け、次の動作へと動くための一瞬の隙を狙い、的確に人体の急所となっている鳩尾へと、鋭い踏み込みによって、通常の虚ならば一撃で葬りさることが出来るほどの威力を伴った掌底を繰り出した。

 

しかし、それでもただの白打よりは効いている程度のものとなり、虚は容易く耐え抜ぬと、右腕を突き出した態勢の湊へと、再度繰り出してきた斬術を辛くも避けるが次第にその動きは精彩を欠くものとなったてきた。

 

「喜助の忠告通りになったってわけか。ちょっとばかり癪だが背に腹は変えられねぇしな。良いぜ、始解して闘ってやるよ!」

 

そう言い放つと動きの邪魔にならない様に後ろに回していた斬魄刀を引き抜くと、二回戦の開幕とばかりに解号を口にした。

 

「『裂き誇れ 蝶舞』!!!」




解号言って締めるのってオシャレじゃん?っ思うんですよね。


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はじめてのにんむ 3

約二週間ぶりの投稿…
遅れてホントにすみませんでした!
斬魄刀の能力をあれこれ考えて自分なりに納得のいく
ものにしていたら気づいたら結構かかっちゃってました。

てか、過去編読み直してたらこの作品との齟齬が
ヤベェことになってました。でも、修正もめんどいという…
どうしましょうかね?(*´∀`)♪


「『裂き誇れ 蝶舞』!!!」

 

蝶舞を解放すると斬魄刀は虚空に溶け、その代わりに湊を中心として途端に濃い霧が立ち込め始め、周辺の木々はおろか相対していた虚さえも呑み込んだ。

 

何も知らない者が見れば何の変哲もないただの気象の一つである霧。しかし、その霧は全て湊の霊圧によって生み出されている。それはつまり、霧の中は湊の独壇場ーーー主人公が敵を打ち倒す舞台へと成り変わる、ということに他ならない。

 

◇◆◇◆◇

 

虚は辺りが霧に包まれたことに対して意に介した様子はなく、愚直なまでに攻撃を繰り出そうと右足を踏み込み、振り下ろす。が、当たるギリギリのところでふらりと避けられる。虚は再度斬撃を繰り出すが、避けられる。そんなことが先と合わせて数度繰り返され、目を閉じ霊圧を高めることに努めていた湊はおもむろに目を開いた。すると、湊の霊圧が爆発的に高まり次の手を切った。

 

「『儚導(ハカナキシルベ)』!!」

 

湊がそう口にした瞬間、刀を振り下ろしきろうとした虚の腕は鎌鼬にでもあったかの様な数多の裂傷が生まれ、勢い余って左肘から先を落とし、虚自体は突如発生した竜巻に巻き込まれ吹き飛ばされていた。

 

「今この瞬間、この霧が立ち込めている空間は俺の舞台だ。端役は精々キリキリ踊ってな」

 

湊はそう言い放つと、追撃を加える為に虚に追いつつ、始解に加えて『儚導』を使ったことで少し過去のことを思い出していた。

 

◇◆◇◆◇

 

ーーーそれは半年前、つまり蝶舞の名を聞き出してから二年と半年経った頃まで遡る。

 

いつものように刃禅を行い、自らの精神世界へと行き、蝶舞との修行を終えて何とは無しに話している時のことだった。

 

「ときに湊よ。お主、妾の正確な能力は把握出来ておるのか?」

 

「なんだよ、藪から棒に。蝶舞の能力つったらあれだろ?始解と同時に斬魄刀の代わりに霧が出て、それを纏えば身体能力が上がるし、打撃した時に開放したらすげぇ強い風を吹かせたり鎌鼬みてぇに使えるとかそんなとこだろ?」

 

湊は己の知りうる蝶舞の能力について余さず話した。すると、蝶舞は続きを促してきた。

 

「ふむ、他にはどのようなものがあるかの?」

 

「え、そんなもんじゃねぇの?」

 

湊は素直にそう口にすると蝶舞はどこか呆れた表情を作りながら言った。

 

「そうか。お主にとって妾はその程度の能力しか持たぬものじゃと思われとったのか」

 

「な、なんだよ。そこまで的外れな事は言ったつもりはねぇんだが…」

 

「確かに間違ってはおらん。しかしじゃ、妾を解放して生まれる霧はその程度の能力しか持たぬわけがなかろう?霧は言わば下地のようなものじゃ」

 

「つまりはなんだ?霧を出すのは前提条件だってのか?」

 

「然り。湊、お主が妾を用いた戦闘をする場合、始解をすることが他の死神にとって抜刀する程度のものじゃ」

 

「ん?つまりどういうことだ?」

 

「少しは自分で考えんか。つまりはお主にとって霧を展開することはそれだけ基本的なことじゃと言っておるのじゃ」

 

「なるほどなぁ。ん?でも待ってくれよ。それが基本って言うなら応用もあって然るべきなんじゃねぇの?」

 

「うむ、当然じゃな。珍しく的を射たことを言うではないか。褒美ついでに見せてやろう。これが妾の技、『儚導』じゃ。この技の能力はーーーー」

 

◇◆◇◆◇

 

虚を追いつき、駆けてきた勢いを乗せた『風車』を仮面めがけて放ち、更なる追撃とばかりに虚の全身を鎌鼬が襲った。

 

湊と虚が動き、空気を掻き乱すごとに虚の体には裂傷が生まれた。

 

それはさながら湊という主役と、虚という引き立て役の織りなす舞台。湊が舞えば、虚は裂ける。虚が舞えば、湊は避ける。そんな舞台が虚が倒れ伏すまで続くのだった。

 

「冥土の土産に蝶舞のことを教えてやるよ。蝶舞の始解の能力はただ単に霧を展開して内部の動きの完全把握っつうもんだ。が、『儚導』を上乗せすることで一気に様変わりし、力学系の変化を引き金とした事象の強制発動ってのを加える。細けぇことは置いといて要点を掻い摘んで言うとまぁ要は、蝶の羽ばたきは竜巻を起こすってことだ」

 

◇◆◇◆◇

 

湊と虚の舞台が繰り広げられている場から少し離れた、湊の霧の及ぶことのなかった場所。そこには三つの人影があった。

 

「ひゃあ、新人君とは思えへん身のこなしやね。あれで二十席やゆうんやから末恐ろしいわぁ」

糸目の男はそう言うと口元を吊り上げ笑った。

 

「そうだね。彼の実力には目を見張るものがある。それに彼の能力は中々面白いね。それに実に彼向きだ。このままじゃあの虚が倒されてしまうのも時間の問題かな?」

 

そう言いながら口元にうっすらと笑みを浮かべる男に、盲目の男は反応を見せた。

 

「一対一ならばそうでしょうが、一対多ならその限りではないでしょう。残りを向かわせるべきかと」

 

「正直、通常の隊士だった魂魄にはあまり期待していないが。そうだね、せっかくだし残りも出して彼の実力を測ろうかな」

 

優男のような雰囲気を纏った男はそう言うと

側に立っているだけであった三体の虚を解き放つのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

湊は圧倒的な優位に立つも、先程の失態が堪えているのか決して油断することはなく、確実に虚を削って行った。

 

「おら!これでトドメだ!」

 

そう言って腰の回転をしっかりと使った突きを虚の仮面めがけて放ち、遂に勝利をその手に収めたのだった。

 

「ふぅ、虚を確認する程度の任務だと思ってたってのに、貧乏くじ引かされた気分だ。周り確認して帰るかぁ」

 

序盤は少し空回ってしまったが、全体を通して見ると概ね悪くない結果であった戦闘を終え、周辺を確認し終わると、始解状態から斬魄刀を解き、帰投しようと帰路に足を向けた直後だった。突然、つい先程まで舞台を繰り広げた虚と同質の霊圧が三つ分湊を囲むように現れた。

 

「なっ!何処から湧いて出てきやがった!」

 

一瞬で戦闘態勢に入り、再び斬魄刀を解放するために右手を後ろ手に回し、引き抜きながら解号を口にし、続けざまに「『儚導』」を発動した。

 

「『裂き誇れ 蝶舞』!」

 

すると先程と同じように斬魄刀は虚空に溶け、代わりに霧が立ち込めた。そしてそこはまたしても舞台となった。居るはずのない蝶が舞う舞台へと。

 

◇◆◇◆◇

 

三体の虚に囲まれてた湊であったが蝶舞の能力である霧の内部の完全把握によって、数の差によって生まれる死角の増加などの問題はさして気にすることは無かった。それにより湊は、各虚を確実に削り、着実に勝ちへと駒を進め、遂に残り一体となっていた。

 

「手間掛けさせやがって、テメェらの戦い方といい、これまでの任務でいなくなった先輩達の人数との一致といい、怪しさ丸出しじゃねぇか。さっさと片付けて報告しねぇとな」

 

そんなことを言いながら最後の一体にトドメを刺した。合計で四体の虚を倒した湊は先程よりも注意深く周囲を確認し、終ぞ後続が出てこなかったことで、今度こそ帰路に就いたのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

(霧の内部の完全把握か…。あの子ならこの人にも通用するんやろか)

 

貼り付けた笑みの裏でそんなことを考える蛇のような男。

 

「やはりあの虚達では相手としては不足だったようだね。次の虚はもっと手の込んだものにしようか」

 

自ら作り出した虚を打倒されたにも関わらずさして悔しそうな表情は見せず、ただ次は、という優男。

 

「………」

 

無言の裏に様々な感情が渦巻いている盲目の男。

 

三者三様の男達はその場を後にするのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

そこは二番隊の隊舎。数刻前に任務へと赴いた弟子がどうしても気にかかりソワソワとしている猫のような女性が一人。あからさまな態度には出さないものの明らかに平時とは様子の違う研究者然とした男が一人いた。

 

二人はいくら実力があっても経験の全くない新人には荷が重い任務を任せてしまったことで、「本当に良かったのだろうか」というような感情が頭に過ぎり、遠方にて見知った霊圧が高まりを見せる度に無事を祈っていた。そして、遂に待ちに待った人物ーーー薄羽 湊が二番隊隊舎へと帰投してきた、その瞬間だった。

 

「おーう。ただいまー」

 

そんな気の抜けるような声で建物の中へと入ってきた湊目掛けて夜一は飛びかからんばかりの勢いで身を寄せた。

 

「湊!無事じゃったか!」

 

「お、おぅ。どうしたんだよ、そんなになって」

 

苦笑まじりにそう言われ、多少の気恥ずかしさを覚えながらも口を開き言った。

 

「よくぞ戻ってきた。おかえりじゃ」

 

こうして入隊したばかりの新人には荷の重すぎる任務は幕を閉じたのだった。




湊の斬魄刀の能力は兎に角蝶に関連するものにしていきたいなぁ

てか、夜一さんのキャラがよくわかんないことになっちゃってますね


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千変万化 1

そろそろ過去編終わらせたいなぁ。

前回の投稿から早一月。
時の流れって早く無い?いや。マジで。

キリはものすごく悪いですが、ちゃっちゃと投稿したいので
投稿しちゃいます。

次は多分一月も待たせることはないと思います。はい


辛くも初任務をこなした湊は現在、双殛の丘の地下に広がる"秘密の遊び場"にて一心不乱に夜一と体術を用いての組手をしていた。

 

相手をしていた夜一は攻める手は僅かも緩めることなく、ふと浮かんだ疑問を湊にぶつけた。

 

「のぅ、湊よ。任務を フッ、終えたばかりなんじゃし ハッ、少しは休もうとかは シッ、思わんのか?」

 

相対する湊は夜一の攻めの苛烈さ故に受け、流し、捌くことを主とした動きをしつつも疑問に答える。

 

「休んでられるわけ クッ、ねぇだろ!多少の自信はあった ハッ、体術が全くと言っていいほど フッ、効かなかったんだぞ!?」

 

そう、湊の純粋な体術のみの戦闘は件の虚に目に見えたダメージを与えることは能わず、刑軍の一人としてはなんとも納得のいかない結果となったのだった。

 

初任務にして初単独任務、初撃破となんとも初物尽くしで隠密機動内にその名を轟かせた湊であった。しかし、周囲の評価はいざ知らず、本人は刑軍であるのに情けないと何処までも自らに厳しい自己評価を下していた。

 

「なるほどのぅ。ヤッ、そういうことか。まぁ、良い フッ、気がすむまで付き合ってやろうではないか。どれ、これで詰みじゃっ!」

 

「すまん、恩にきる。なっ!?」

 

会話しながらの組手は一切の途切れなく攻め続け、最後まで反撃の糸口を掴ませなかった夜一に軍配が上がった。

 

その後も二人の組手は湊の体力が尽き、地に伏すまで続けられるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

隊舎の壁面に大きく一の文字が掲げられたその場所は一番隊隊舎。そこでは現在、一から十三までの各隊長が一堂に会していた。

 

「それではこれより、隊首会を執り行う」

 

そう口にするのは一番隊隊長及び護廷十三隊の総隊長である山本元柳斎重國その人だ。

 

「まず初めの議題として流魂街での魂魄の謎の失踪の件じゃが、何か進展はあったか?」

 

「それなら、ワシの秘蔵っ子が片付けたぞ」

 

自身が手塩にかけて育てた弟子の戦果に鼻を高くした様子で夜一が報告をする。そして、それに反応を示すものがいた。

 

「薄羽 湊クンだったっけ?彼、強いよねぇ。あれでまだ死神になったばかりだって言うんだからやんなっちゃうよ」

 

そんなどこか掴ませないような態度で湊を賞賛するのは八番隊隊長である京楽春水であった。

 

そんな様子で隊首会は恙無く進行し、湊が謎の失踪を遂げる魂魄の原因であるとされる虚を討伐したこと。十二番隊隊長であった曳舟が王属特務「零番隊」に選ばれたこと。それにより隊長の座に空きが生まれ、そこにーー 夜一の推薦もありーー 二番隊第三席である浦原が就くこと。以上の三つについて話し合いが設けられたのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「ーーーと、言うわけで喜助は来月から十二番隊の隊長となってもらう。そして、喜助が二番隊から抜ける為、席官は席次の移動があると思っておくことじゃ。以上じゃ、解散」

 

隊首会での連絡事項をそのまま伝えられ、喜助は困惑しながらも隊長となる決意を固めたらしかった。一方で二十席という席次に就く湊は、席次の移動に対してあまり喜べないでた。それは偏に自らの実力不足への懸念からである。

 

「湊、お主には喜助が抜けた後はそのまま三席に就いてもらおうと思うとるんじゃが、どうじゃ?」

 

「三席なんて俺には務まりっこねぇよ。今の四席の人をそのまま上げてくれ」

 

「ふむ、何故そう悲観する。身内贔屓抜きで見てもお主の実力は大したものじゃ。実力面では主にも十二分に務められるじゃろう」

 

「違うんだ。たとえ誰が言おうと俺自身が認められないんだよ!だから、頼むよ。頼む」

 

湊はそう言うと頭を下げた。どうやら頑なに三席に就くには無いらしかった。

 

「あい分かった!ならば、三年じゃ。三年時間をやる。その間にお主が胸を張れるようにしておけ。その時ワシは再度お主に話を持ちかけようではないか。その時もまだダメなようならきっぱりと諦めようでは無いか」

 

夜一のそんな言葉に目に見えて安堵の表情を浮かべるが、夜一の言葉は続く。

 

「ただし!ただしじゃ。手を抜くことは許さぬ。なんなら、これからの三年間お主をこれまで以上にみっちりと仕込んでやろう」

 

獲物を見つけた猫のような表情でそう言う夜一を見て湊は悟った。あぁ、これは大変なことになるな、と。

 

◇◆◇◆◇

 

夜一によるスパルタ特訓の宣言をされ、げんなりしつつ、瀞霊廷内をなんとはなしにぶらついていると自身の好敵手(ライバル)と言える存在、白哉を見かけた。

 

「よう。何してんだ、白哉?」

 

「湊か。いや、これと言って何かをしていたわけでは無い。強いて言うなら散歩だ」

 

「なら、甘味屋行こうぜ。話したい事をあるし」

 

「話をするのはいいが、甘味屋か。甘いものは苦手なんだ」

 

「んじゃあ、俺の部屋行こうぜ」

 

「良かろう」

 

そんなこんなで白哉を連れ立って宿代わりに使わせてもらっている四楓院家の離れに足を向けるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「それで?私に話とはなんだ?」

 

部屋に着くなり若干ピリついた雰囲気で尋ねてくる白哉。夜一の持ち家であるということで、少々刺激してしまったようだった。

 

「おう。それなんだけどな、三席ってのは実際どんな感じなんだ?」

 

「質問が抽象的すぎて返答に困るが、そうだな。相応の覚悟がいると言っておこう。三席ともなれば当然抱える部下は増える。それらをいかに死なせないか、万が一があったとしても、どれだけその死に意味を持たせられるかが重要となってくるだろう」

 

「なるほどな。ただ強いだけじゃダメって事だな。ありがとな。なんとなくだが、何かわかった気がした」

 

その後二人はお互いの近況を報告し合ったのだった。



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千変万化 2

気がついたら二ヶ月が経ってた。
びっくりですね!

正直、あ、コイツエタったなと思われた方もいらっしゃると思われます。
いや、違うんですよ!執筆しようにもマジで思い浮かばなかっただけなんです!信じてくださいなんでもしますから。

まぁ、二ヶ月待たせといて(誰も待ってない可能性も十二分にありますが)この程度の内容かよと思われる方もいるやもしれませんが、楽しんで頂けるなら幸いです。




白哉の話を聞いてから早一月が経った頃、喜助は晴れて十二番隊隊長となり、古巣から旅立っていった。

 

そして湊は夜一の宣言通り苛烈さを極めた特訓に日夜勤しんでいた。

 

日々の死神としての職務を果たした後は夜一が"遊び場"に来るまで一人で型の確認などを行い、その後夜一とより実戦に近い形で組手をしていた。

 

「さて、湊。お主には喜助の後を継いで三席になってもらわねばならぬ。しかし、お主は自らには実力不足だといって断ろうとしておるではないか。

 

そこでワシは考えた。

 

明確な実力の象徴とは何か、とな!そうして、遂に思い至ったのじゃ。

 

そう!卍解じゃ!卍解を使えるようになればお主が実力不足を盾にして逃げる事はできん!というかそのような事はさせぬ!」

 

そんなことをどうじゃ!と言わんばかりの様子で言っている夜一を見て湊は思った。

 

なるほど、確かに卍解を扱える者が三席に就く事は何らおかしくはない。むしろ、卍解を扱える者が三席など役不足も良いところだろう。空きがあれば隊長にさえ就くことも出来る。

 

しかし、少し考えて欲しい。

 

夜一は自身に三年時間をやると言った。しかし、本来卍解の修行にはーーそれこそ人であれば一生が過ぎてしまうほどのーー膨大な時間がかかるものだ。

 

それを三年で習得とはこれいかに、少しばかり現実から目を背けたくなった湊であった。

 

◇◆◇◆◇

 

夜一の夜一による夜一のための薄羽 湊三席就任計画が始動した事で湊の生活にはいくつかの変化が起こった。

 

一つ目に、卍解習得のための条件である"具象化"と"屈服"の片方、具象化を成功させ任務時以外は常に具象化させておけ、と夜一からお達しがあった。

 

本来であれば、最低でも十年は必要だといわれている具象化であったが、そこは気合でねじ伏せた。

 

具体的に言えば一ヶ月という通常の1/120という恐るべき早さで具象化を成功させたのであった。

 

しかし、具象化をさせ、常に蝶舞が側にいる事で「二番隊の新人がもの凄い美人をいつも侍らせている」という、根も葉もある噂が立つ事になってしまった。弁明をしようにも事実であるため碌な弁明をすることもできず、誤解とまではいかないが些か間違った認識を改めるには至らなかった。

 

二つ目に、修行内容が様変わりした。これまでの夜一は本気でやっているとは言っても、最悪大怪我で済む程度のものだった。

 

しかし、様変わりした後は最悪、死んでもおかしくない様な攻撃も仕掛けてくる様になったのだった。

 

さりげなく抗議した湊であったが、「虚に体術が聞かんかったのが、悔しかったんじゃろ?」と、言われると返す言葉もなかった。むしろ「そこまで言うならやってやるよ!」とまんまと罠にかかってしまう湊であった。

 

三つ目に、これまでは気が向いたら行う程度のものだった蝶舞との対話をこまめにするようになった。

 

具象化させているお陰で刃禅を組む必要が無いのが効果的だったようだ。これまでのように不定期に気が向いたら対話をするという蝶舞からすればなんとももどかしさを感じる状況は解消された。

 

以上三つの変化があった湊の生活はとんでも無く過密で、過酷で、充実したものであった。

 

◇◆◇◆◇

 

「それではこれより、薄羽 湊二十席の第三席就任の儀並びに入隊式を執り行う」

 

夜一の夜一による夜一のための薄羽 湊三席就任計画が幕を開けてから早三年。普段の声色とは及びもつかないような真面目な夜一の声が二番隊の修練場に朗々と響く。

湊はその様子を「あぁ、遂になってしまった…。や、別に良いけど。責任とか面倒だなぁ」みたいな事を一見真面目そうな顔で考えていたのだった。

 

そんなこんなで湊は三席となり、場は入隊式へと移って行く。

 

◇◆◇◆◇

 

「ほ、本日より隠密機動に加えさせて頂きます!砕蜂と申します。よ、よろしくお願いいたします!軍団長閣下!並びに先輩方!」

 

「かった、かったいのぅ。もっと砕けた感じで接してくれた方が此方もやりやすいんじゃがのぅ。のぅ、湊」

 

「あぁ、俺なんて夜一に敬語使ったことがあるかどうかすら怪しいしな」

 

「そうじゃな、そこな黒猫に敬語を使う必要なぞあるまいて」

 

「蝶舞!お主はいつも一言多いのじゃ!」

 

「これは失敬、ついつい本音が出てしもうた。許せ、黒猫」

 

緊張によって所々噛みながら挨拶をした少女ーーー砕蜂にそう返すのは三年の月日を掛け無事に湊を三席という立場に落とし込むことができてご満悦な表情の夜一その人であった。

 

そして、それに返事を返すのは側から見れば二十席から三席という異例も異例の大躍進を遂げた湊であり、過度に畏まることはないと暗に告げ砕蜂の緊張を和らげようとしていた。

 

加えて、湊に追従して口を開いたのは濡羽色の長髪を金の簪で留めた三年ほど前から瀞霊廷で話題沸騰中のーーー「二番隊の新人がもの凄い美人をいつも侍らせている」ーーー人物、というか斬魄刀その物だった。

 

なお余談ではあるが二番隊、特に隠密機動の面々は修業の地獄加減を知っていたので湊が三席に就くことに関しては欠片程の反発は出てこなかった。むしろよく耐え抜いたな、だったり、薄羽先輩ぱねぇっ!などと思われていたのだった。

 

「で、では夜一様、とお呼びしてもよろしいでしょうか」

 

「まだ固いのぅ。まぁ、それは追い追いかの。」

 

そんな和やかな雰囲気で場は進み砕蜂も緊張が解れてきたかに思われた。

 

が、途端に張り詰めた空気に変わる。

 

「時に砕蜂。隠密機動は完全な実力主義の場。そこに呼ばれているということは分かっておろうな?」

 

言葉に込められた期待と重責、それらを感じとった砕蜂は身を震わせながらも確かに口を開いた。

 

「一切承知しております。この身は夜一様の盾とも鉾ともなりましょう」

 

「その言葉、確と聞き取った。励めよ」

 

普段の様子からは考えられないような圧、凄味を出す姿は組織の長を務めるに相応しい物だった。

 

「いつもそんなだったら良いのにな」

 

「湊の言う通りじゃ。何故いつもそれをやらん」

 

「じゃからっ!一言余計じゃと言っておろうに!少しはカッコつけさせんか!」

 

が、場を締め切るには至らないのであった。




怖いので次回の更新はいついつにします!とかは言わないでおきます


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