星屑十字軍をもう一度 (Dangouo)
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もうひとつの星

 【ある女性の記憶】

 

 満員電車を耐え抜き、何とかホームに降り立ったわたしを朝の日射しが出迎える。

 すっかり疲れきってはいたけれど、内心はとてもワクワクしていた。

 なぜかって?

 

 とうとう「あの人」への取材をOKしてもらえたのに嬉しくないわけがないじゃない!

 まあ、あんまり楽しみすぎて昨日から若干寝不足なのがつらいけど……

 

 そういえば、「取材はいいけど条件付きで」って言ってたっけ。

 まさか……いやいや。

 

 そんなことを考えながら歩いていたら、道に迷った。

 初めて来た場所だし、仕方ないといえば仕方ないけど、約束の時間に間に合うかな……

 

――――――――

 

 心優しいリーゼントの男性が道を教えてくれなかったらどうなっていたことやら。

 なんとか時間ギリギリに「あの人」のお宅に到着。

 表札を確認してから、インターホンを押す。彼はすぐに出てきて、家の内へ案内してくれた。

 

 その時ふと思い出して「条件」について聞いてみたら、なんでも昔話を聞いて欲しいんだとか。こういう場合の昔話って、体験談とかそういう意味なんだろうけど、そもそもそれっておじいちゃんとかがするものなんじゃ……

 

 なんて考えていると、和室で話そう、と言われた。わたし自身、話す場所にこだわりはないから二つ返事をしたわけだけど。

 

 そんなこんなで、和室で向かい合い、わたしは彼の昔話を聞くことになったのだった。

 

――――――――

 

 【ある男性の記憶】

 

 『ジャーニー氏は過去――大地震の――を予言してお――』

 

 ついに壊れたか。

 思えば、このラジオも買ってからもう八年になる。なるほど、壊れるのも別に不思議なことではないか。

 しかし、今度の旅行に持って行きたかったんだがな。

 

 それはそうと、予言、か。

 人は皆「力」に憧れるものだ。ひとえに「力」といっても、予言の他にも透視だとか超能力だとか色々あるが、とにかく、人という生物はそれらを求めて科学を発展させてきたと言っても過言ではないだろう。偏見かもしれないがね。

 だが、この「力」、持っているものからするとなかなかに煩いものなのだよ。

 

 私は元来、争いというものが大嫌いな性分でね。口論なども滅多にしないし、それこそ喧嘩などもってのほかだ。

 それなのに、あの石――そう。忘れもしない七年前のロンドン旅行で見つけた石だ。あの石に手を触れてからは、ろくなことがなかったな……

 

 とにかく、これから話すのは「あんなこと」、つまり、その石をめぐる私と三人の男達の三ヶ月にわたる奇妙な冒険についてだ。過去のことについてはあまり話さない性質なんだが、こればかりは話さずにはいられなくてね。

 それで今日、貴方に来てもらったってわけなんだ。

 

 だから『八時にな――た。ニ――をお伝えし――』

 

 おっと、ラジオをつけっぱなしだったな。

 

 『小説――幸田星一さんの新作が――』

 

 悪いが、消させてもらうよ。つけたままでは話しにくいからね。

 

 

 さて、始めようか。

 

 ちょうど五年前の今日のことだ……




初投稿です。
至らない点等、多々あると思いますが何卒宜しくお願い致します。

誤字等のご指摘や、感想をいただければ幸いです。


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再結成!星屑十字軍

 

 「もらったァァァ!」

 「防御だッ! ワン・モア・タイム!」

 

 何故だ。

 一体どういうわけでこの電柱のような男は私に襲いかかってきたんだ!

 

――――――――

 

 遡ること十分

 

 

 私は日課である散歩に出ていた。

 今朝は天気も良かったから、少し遠くまで歩こうと思い、普段は通らないこの辺りの道をふらふらと歩いていたのだ。

 

 そして、「空条」と表札に書かれた家の前を通ったときに事件は起きた。

 その家はあまり見ないような、それこそ邸宅と呼べるような広さだった。 私は珍しく思い、邸内をチラリと見た――

 

 

 そこには一人の男がいた。

 

 私は、その電信柱のような髪型の男と目を合わせてしまった。

 多分、私の行動が怪しく見えたのだろう。それとも、邸内を覗いたこと自体がいけなかったのか。

 まあ、この際そんなことはどうでもいい。

 重要なのは――

 

 

 

 その男がこちらを見るなり「背後霊」を出してきたことだ。

 

 私も同じものを持っているが故に、私にはそれが見えてしまう。

 この二年間、私を苦しめたのは、まさにそのことなのだ。

 色々と見えないはずのものが見える。それだけでこんなにも人生とは変わってしまうのかと。

 しかしまあ、これほどまでに見えるのを恨めしく思うことは、この先もないだろう。

 とにかく、その男は

 

 「てめえ、スタンドが見えているな! 怪しいとは思ったが、ヤツの刺客か!」

 

 戦闘を仕掛けてきた。

 

――――――――

 

 そして今に至る。

 

 

 「防御だ! ワン・モア・タイム!」

 

 そう叫ぶと同時に、ピラミッド状の頭部にスーツ姿の男が私の前に現れる。

 これが私の背後霊だ。まあ、背後霊では呼びづらいので、ワン・モア・タイムと名付けて呼んでいるが。

 しかし、この男は背後霊ではなく「スタンド」と呼んでいたな……

 

 「やはりスタンド使いか! ヤツめ、もう俺たちに気づいたのかッ」

 「待ってくれ、ヤツとは一体」

 「しらばっくれんじゃあねえ! チャリオッツ!」

 「ぐうッ!?」

 

 ワン・モア・タイムも並みの人間以上のパワーとスピードはあるが、この男の背後霊、もとい「スタンド」はそれを遥かに上回っている!

 このままではまずい。確実に負けてしまう。しかもこんな意味のわからない状況で!

 

 こうなったら、あれを使うしかない!

 

 

 「チャリオーーッツ!」

 「甘い!」

 「なにいッ!? 跳んで避けただと!」

 

 よし、何とか避けられたぞ! 

 追撃はくるだろうが、私の「能力」があれば、一発避けるだけで十分だ。

 

 「しかし、隙だらけだぜ! 勝負はあったようだな!」

 

 やはり追撃してきたな。

 だが、私の行動は既に終わっている。

 

 「な、なんだ? どうした! チャリオッツ、どこを攻撃している!」

 

 男のスタンド、チャリオッツは『さっき私が立っていた位置』を攻撃していた。

 

 その隙に私は男の後ろに立ち、ワン・モア・タイムの拳を振り下ろし――止める。

 

 「君の言うとおり、勝負はあったようだ」

 「な、何をした…… それになぜ攻撃しないんだ?」

 「言っただろう。君の言っている『ヤツ』を私は知らないんだよ」

 「本当なのか?」

 「勿論だ。私から君に攻撃を仕掛けるなんてとんでもないよ」

 「そうか……どうやら俺の早とちりだったらしい。すまなかった」

 

 「どうしたポルナレフ! 何かあったのか?」

 

 そう言いながら、空条邸の奥から見るからに屈強そうな男二人が出てきた。

 

 「その男は誰だ? まさか……」

 「おお、ジョースターさん! 承太郎! いや、敵じゃあないぜ。俺の勘違いだったらしい」

 「む、そうか」

 

 そのうちの一人、ガタイのいい老人と電柱男――ポルナレフが何やら話していたが、やがて老人はこちらを向き、話しかけてきた。

 

 「すまない、ポルナレフが失礼したな。何かお詫びをさせてほしい」

 「いえ、お気になさらず」

 「遠慮しないでくれ。なにより、それではワシの気がすまんのでな」

 「そういうことなら……では、貴方たちに刺客を送りつけてくるような『ヤツ』とは一体何者なのか、教えていただいても?」

 「うむ。実はだな――」

 

――――――――

 

 その老人はジョセフ=ジョースターと名乗り、彼の血統にまつわる深い因縁について語り出した。

 

 そして今、彼ら「星屑十字軍」が再びこうして集まっているのは、イギリスに潜む何者かが「DIOの骨」と「スタンドの矢の原石」なるものを用いて、邪悪の化身DIOを復活させようとしており、それを阻止すべく旅に出るからであって、今はちょうど明日の出発に向けての準備をしていたのだと教えてくれた。

 

――――――――

 

 「二年前、多くの犠牲の上でようやく倒した相手じゃ。それを復活させるなど、絶対に食い止めなければならん」

 「なるほど……では、私はあまり長居するべきではないですね」

 「いや、かまわんよ。それに――」

 「長旅のために荷造りをしなくては」

 「なんだ、旅行にでも行くのか?」

 「おい承太郎、他人の事情をとやかく聞くもんじゃあないぞ」

 「いや、旅行とは少し違うかな……」

 

 おそらく、この一言で私の運命は決定されるのだろう。

 

 「ジョースターさん、承太郎、そしてポルナレフ。私もその旅に同行させてもらえないだろうか」

 「なにィ!」

 「ほう……」

 「本当にいいのか? さっきの話にはそういう意図が含まれていたわけでは――」

 「ご心配なく、ジョースターさん」

 

 そう。私は決めたのだ。

 

 「貴方たちは何よりも白い『正義』です。私もそれを手助けしたい」

 「しかし、想像を遥かに越える危険な旅になると思うが……」

 「それも覚悟の上です」

 「ならば、ワシらも戦力が欲しいところだったからのう。渡りに船というやつじゃ。では、よろしくな。あー」

 「幸田星一です。星空の『ほし』に数字の『いち』で『しょういち』。星一と呼んでいただければと」

 「おお、そうか。じゃあ改めて星一。よろしく頼むぞ」

 「こちらこそ、ジョースターさん。そしてポルナレフと承太郎も、これからよろしく」

 「おう! この俺を倒したんだ、頼りにしてるぜ!」

 「ああ、よろしくな。星一」

 「ところで、星一はどんなスタンドを持っているんじゃ?」

 「ああ、そういや聞いてなかったな」

 「私はワン・モア・タイムと呼んでいるよ。名前のとおり、『物事をもう一度起こす』能力を持っている」

 「チャリオッツはその影響を受けてたってわけか?」

 「そういうことだね」

 「なるほど。なかなかに応用の効きそうな能力じゃな。これはますます期待できそうだわい」

 

――――――――

 

 「星……か。これも運命なのかもしれんのう……」

 

――――――――

 

斯くして、私たちの旅は始まったのだった。




本体名  幸田 星一
スタンド【ワン・モア・タイム】
     破壊力:C スピード:B 射程距離:C(A)
     持続力:A 精密動作性:C 成長性:B

行為や衝撃等の、あらゆる物理的な事柄を一つだけ切り取り、半永久的に保存でき、もう一度だけ発生させることができる。

能力によって発生した非生物が対象の事柄は物理法則よりも優先される。
対象が生物の行動の場合は、抵抗可能。

純粋な戦闘力は乏しい。

スタンド像はスーツ姿でピラミッドみたいな金属製の頭の男。

daft punk「one more time」
――――――――
やはり文章を書くのは難しいことですね……
精進して参ります。

今更ながら、独自設定にはご注意ください。

あと、次話から基本三人称で進めていきます。何卒。


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Reprise

 「前回の旅ではあまりに多くの民間人を巻き込んでしまった」

 

 ジョセフの言うことには、なるべく旅客機などでの移動は避けねばならないとのことだった。

 

 「しかし日本を出るには海を越えないといけないんでな。広東省までは旅客機に乗っていくぜ」

 

 承太郎は、これについては仕方がないので、なるべく乗客の少ない便を選んだという。

 

 「だが、それから先はなるべく陸路か海路での移動じゃ。ルートは前回と同じくインド洋の側から中東へ行き、地中海とヨーロッパを通ってイギリスへと向かおうと思う」

 「なるほど」

 「かなり遠回りをしている理由については、DIOは生前、自身の蘇生の方法をノートに記していてな。ヤツはその方法を使うと考えられておる。そうすると、復活までにはまだ三ヶ月ほどかかるので、それならばなるべく安全に行こうというわけじゃ。とにかく、旅費はこちらで出すから道中は観光程度に思ってくれてかまわんよ」

 

ーーーーーーーー

 

 翌日 空条邸門前

 

 「皆、準備はいいな? では、出発じゃ!」

 

 「「「「行くぞ!」」」」

 

ーーーーーーーー

 

 「これなら直接イギリスに向かっても良かったんじゃねーの?」

 

 ポルナレフは不満げに言った。

 

 「まあそう言うな。用心に越したことはないだろう」

 

 一行は常に目を光らせていたが、広州行きの機内では刺客による襲撃はなかった。

 なんとなく拍子抜けした一行だが、無事に広東省に到着したことを祝うのも兼ねて、まずは食事をしようということになった。

 

ーーーーーーーー

 

 「広東料理といえば酢豚やワンタン麺が有名だな。数多い中華料理の中でも、私の好きなものは広東料理が多いんだ」

 「じゃあ、その辺りのものを頼もうか」

 

 ジョセフが注文している間、承太郎とポルナレフは香港でのことを思い出していた。

 

 「そういえば、俺がジョースターさんたちに攻撃を仕掛けたのも料亭だったな。ジョースターさんに『メニューが読めないから助けてください』とか言って。ありゃあ聞く相手間違えたぜ」

 「ああ、じじいが頼んだ料理にはロクなもんがなかったよな……」

 「あ」

 

 そう。まさにそのジョセフが注文していたのだ。

 当然酢豚やワンタン麺が出てくるはずもなくーー

 

 「いや、ちゃんと出てきたようだぜ」

 「マジかよ!」

 「ワシもあれから少し勉強したんじゃよ」

 「さあ、冷めないうちにいただこう」

 

 そんな一行に一人のアメリカ人らしき男が近づいてきた。

 

 「すみません。私はアメリカ人なもので、漢字がよく読めません。助けて欲しいのですが」

 「ポルナレフか」

 「ポルナレフじゃな」

 「その方法はオレがもう検証済みだぜ」

 「まさか君がヤツの刺客で、私たちを襲うってわけじゃあないだろうね?」

 

 などと少々ふざけていた一行だったのだが。

 

 「なぜですか……」

 「へ?」

 「なぜワタシがウィルドボア様の刺客だとわかったのですか」

 「マジで刺客だったのかよ」

 「聞いてもいないのにヤツの名前まで教えてくれたな」

 

 「いや、バレてしまったからには隠しても仕方がありません。ワタシの名は マイス・ゴードン。ジャック・ウィルドボア様のために、アナタ方の旅をここで終わらせに参りました。さて、ワタシの最初の相手はドナタでしょうか?」

 「わざわざ名乗ってくる敵も珍しいな。コイツのスタンドは正統派の可能性が高い。ここは俺が相手をしよう」

 「うむ。任せたぞ、承太郎」

 

ーーーーーーーー

 

 店の外に出ると、承太郎とゴードンは向かい合った。

 

 「ジョウタロウ。アナタにお相手していただけるとは光栄です」

 「ほう、どうやら俺の情報は聞いているようだな」

 「アナタはDIO様を倒した男です。当然ですよ」

 「なるほどな」

 「では、行きますよ」

 「ああ、いつでもいいぜ……」

 

 一瞬の後、決戦の火蓋が切って落とされるーー

 

<To Be Continued……




1900年代だと、広州白雲国際空港はまだなかったみたいですね…
調べが足りていませんでした。申し訳ありません。

感想エネルギーこそ「仙道」パワー!!
何卒何卒。


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フラッシュゴードン接近中

「スタープラチナ!」「フラッシュ!」

 

 ぶつかり合う拳と拳、お互い全く譲らないラッシュの応酬!

 しかし若干―――僅かながら承太郎のパワーが勝ったッ!

 

 「オラオラオラーッ!!」

 

 たまらず後退したゴードン。だがーー

 

 「スタープラチナ……流石のパワーとスピードだ。それではワタシも本気を出すとしよう」

 「オラァッ」

 「遅いぞ!フラッシュ!」

 「グゥ!?」

 

 スタープラチナのパンチが命中するその瞬間、一瞬早くフラッシュの拳がスタープラチナのボディにめり込んだ!

 体勢を崩した承太郎に容赦のない追撃が襲いかかる―――

 

 「SYAAAAA!!」

 「くっ……オラオラァ!」

 「遅すぎるッ!」

 

 カウンターが決まる直前に拳が加速して、やはり一瞬早くフラッシュの攻撃がヒットする!

 

 「今の不自然なまでの拳の速さ、やはりあの男のスタンド、単なるパワー型じゃあねえ。何か能力を持っているらしいぜ」

 「どうやら、それがわからなければ承太郎に勝ち目はないようじゃな」

 「承太郎に負けず劣らず、相手もかなりの使い手だね」

 

 だが、三人の声は承太郎によって遮られた―――

 

 「いろいろと考えているところ悪いが、俺にはわかったぜ……コイツの能力が!」

 「「「うそだろ承太郎!」」」

 「いいや、嘘じゃあないぜ」

 「ふむ。ではジョウタロウ、聞かせていただきましょうか。ワタシの能力とやらを」

 

 一呼吸置いて、承太郎が答える。

 

 「相手の攻撃に対して先手をとる能力、といったところか」

 「OH! 素晴らしい! ほとんど正解です。ではその恐ろしいほどの観察眼に敬意を表して、答えをお教えしましょう……」

 

 一行が息をのむ中、ゴードンは再び口を開いた。

 

 「ワタシの―――いえ、フラッシュの能力はッ!『行動の直前に割り込み、その行動を行う』能力です!」

 「要するに、攻撃以外の行為にも割り込めるということか」

 「そのとおり。ではジョウタロウ、ワタシのこの能力をどう攻略するのか、とくと拝見させていただきますよ!」

 

 (それだけ、か? いや、確信したわけじゃあないが違和感がある。コイツの能力にはまだ何か秘密があるな……)

 

 熾烈な戦いが再び幕を開ける!

 

 「フラッシュ!」

 「俺の心のなかには今、ひとつの仮説がある。まずはそいつを確かめなくっちゃあな……」

 「SYAAAA―――AA!!」

 「オラッ」

 

 承太郎は地面を蹴ったッ!

 ジャンプしたのではない! 迫ってくるゴードンに向かって砂を飛ばしたのだ!

 予想外の出来事に反応が間に合わず、まともに目潰しを食らってしまうゴードン。

 

 「なんだと!? マズい……フラッシュ!」

 

 とっさにフラッシュの能力を発動した。しかしッ! ゴードンの額に飛来した何かがはっしとぶつかった!

 

 「何だッ!? ジョウタロウが投げたのか!」

 「……」

 「これは石、か……ハッ! ま、まさか!」

 「そのまさか、だぜ。俺はもうオメーの能力について一切の疑問も持っていない」

 「ジョウタロウ……」

 「俺は完全に見破った! だからもうてめーに勝ちはねえッ!」

 

 「承太郎! 教えてくれ。この男の能力の秘密は何だ!?」

 「それは、だな……」

 

――――――

 

 果たして承太郎の辿り着いた答えとは!

 

<To Be Continued……




感想こそ力 評価こそ望みッ


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不可能の王者

 「承太郎! 教えてくれ。この男の能力の秘密は何だ!?」

 「それは、だな……」

 

 静寂の中、承太郎の声のみが凛として響きわたる!

 

 「こいつは『相手の行動を予想できなかった』ときには、能力を使えねえッ!」

 「なるほどのう。あの目潰しも、石を投げたのもそれを確かめるためだったというわけじゃな」

 

 と、そのとき。

 

 「参りました」

 

 そう言いながら、ゴードンは地面に腰をおろしてしまった。

 

 「……?」

 「不思議に思うことはありません。アナタの言う通り、能力を完全に見破られればワタシに勝ち目はない。ワタシも闘士のはしくれです。無意味な戦闘は避けたい」

 「ほう……」

 「だが、このまま逃がしてジャックとやらに報告をされるとマズいんじゃないかな?」

 「そんなことは断じてしないと誓いましょう」

 

 なお訝しげな表情の一行に向けて、ゴードンは言葉を続ける。

 

 「ワタシはもうウィルドボア様の元に戻ることはありません。ジョウタロウに敗北したワタシがどうしてまたあの方に会うことができるでしょうか」

 「確かに一理ある、のかな?」

 「嘘はついてないようだぜ」

 「まあ、ここまで言うなら信じてもいいかのう。承太郎、お前はどう思っとるんじゃ?」

 「それが本当なら、別に構わねえぜ」

 

 「ありがとうございます。では皆様、ご武運を……」

 

 そう言い残して、ゴードンは去って行った。

 何か煮え切らないものはあるが、確かにここに決着はついたのだ。

 

 幸先の良いスタートを切ることができた一行。しかし、新たな試練が彼らを待ち受ける……

 

 再起不能?

 本体ーーマイス・ゴードン

 スタンド名ーーフラッシュ

 

 

――――――

 

 タイの首都バンコク。正式名称はクルンテープから始まり、ものすごく長いッ

 そのバンコクに一行は足を踏み入れていたーー

 

 「なんだ、ありゃ? バイクゥ?」

 「違うよ、ポルナレフ。あれはトゥクトゥクといって、タイ版のタクシーみたいなものだ。もちろん、タイにもタクシーはあるけどね」

 

 それを見て、近くにいたトゥクトゥクのドライバーが話しかけてきた。

 

 「兄ちゃんたち、良かったら乗ってくかい?」

 「ジョースターさん、どうします?」

 「そうじゃのう……ちょうど昼食でもと思っていたところじゃ。折角だし乗せてもらうとするか」

 「それなら、いい店を知ってますぜ」

 「じゃあ、そこまでよろしく頼むよ。そうだ、料金は幾らかな?」

 

 トゥクトゥクには料金メーターがないので、事前の値段交渉が大切なのだッ

 

 「50バーツ(160円)……だが、兄ちゃんたちみんなでっかいから、一台じゃあ収まらねえんで。」

 

 そんなわけで、二人ずつ二台に別れて乗ることにした。

 値段交渉をしたドライバーのトゥクトゥクはポルナレフと星一を、もう一方は承太郎とジョセフを乗せて目的地へと向かって行く―――

 

 

 <To Be Continued……




短くてスイませェん……

もっと頑張ります。



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神のみぞ知る

 トゥクトゥク車内(ポルナレフ・星一side)

 

 「ジョースターさんたちのトゥクトゥクはどこに行っちまったんだぁ?」

 「多分ちょっと遅れているだけだろう。心配ないさ……ところで運転手さん、道は合ってるのかい? 随分人気のない場所を通るじゃないか」

 「大丈夫ですぜ、なんせこっちの方が近いもんでねーーおっと」

 

 「どうした? もう着いたのか?」

 「いえね、申し訳ねぇんですが、なんというか、『もよおして』きちまいましてね……その、ちょいとそこの角に行きてぇんで」

 「そういうことなら、構わないよ。行ってくるといいさ」

 「あ、ありがとうごぜえやす!」

 

 そそくさと駆けていくドライバー。

 

 「大丈夫かぁ? アイツ。やけに慌ててるじゃねーか。なにか怪しいぜ……」

 「だからといってここで漏らされても困るよ」

 「まあな。ところで星一、右の肩になんか付いてるぜ。葉っぱか?」

 「ん? 本当だ。まあ、移動中に付いたんだろう」

 「いや待て、左肩にも付いてるぜ。紙……みてぇだな」

 「確かに紙だな……流石に偶然とは思えない。いつの間に付いたんだ?」

 

 不思議に思っている星一の顔に、何かが張り付いた!

 

 「今度は一体なんなんだッ!」

 「さっき支払った100バーツ札だ! よくわからんが、この状況はヤバいぜ……星一、とにかく一旦外に出るぞ!」

 「まずい、カミソリがッ!」

 「シルバーチャリオッツ!」

 

 トゥクトゥクを飛び出した2人。

 その瞬間、飛んできたカミソリはチャリオッツによって弾き飛ばされたッ

 

 「助かったよ、ありがとう」

 「それより、次はどこから何が飛んでくるんだ!?」

 「飛んでくるものには何かしらの共通点がある可能性が高い。それを見つけるのが先決だ!」

 

 背中合わせで身構える二人。

 

 「あれは……? キャッチしろ! ワン・モア・タイム!」

 

 飛来物を見つけたのは星一だった! そして掴んだものとは―――

 

 「ドアノブゥ?」

 「ドアノブか。なるほど、これで相手の能力は大方わかったよ」

 「今のでわかったのか?」

 「うん。おそらく、『指定したものに同じ性質を持つものを引き寄せる』ような能力だろう。始めは私の『薄い』シャツが標的だったんだろう。そして現在はたぶんポルナレフの服の『金属』の部分か何かが狙われているんだ。だから次に飛んでくる可能性が高いのはあそこにある……」

 「鉄柱か! よしッ」

 

 直後、予想通り鉄柱は地面から引っこ抜け、ポルナレフに向かって飛んできた!

 

 「チャリオッツ!」

 「ワン・モア・タイムッ!」

 

 二人の攻撃により、鉄柱はバラバラになって吹き飛んだ!

 

 「ヤリィ!」

 (なんとか凌げたか。だが、何か嫌な予感がする。さっき敵が標的を変えるタイミングで飛んできたのはカミソリだった。ここに何か理由がありそうなんだが……待てよ? 『カミソリ』『薄い』『金属』―――まさか!)

 

 「ポルナレフ! 危ない!」

 

 ポルナレフを突き飛ばす。

 そこに飛んできたのは―――

 

 

 『電柱』だった。

 

To Be Continued…… 




戦闘シーンにもっと緊張感というか、テンポが欲しいですね……

ご意見・感想待ってます


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We' re gonna celebrate 

 「守れッ! ワン・モア・タイムーーーー!!」

 

 重い電柱は防御してもなお、今までの鉄柱などとは比べ物にならないような凄まじい衝撃を与えてきた。

 幸い、衝突後は推進力を失うようで、諸とも壁にぶつかるようなことは避けられたがーー

 

 「さ、流石に腕の骨がやられたか……」

 「っーー大丈夫か!? 星一!」

 「ああ、死んではいないよ。それより気をつけろ! このパワー、相手は近くに来ているぞ!」

 「くそッ どこにいやがる!」

 「ここですぜ……ヘヘッ」

 「グァフ!?」

 

 角から現れたのはやはりあのドライバーだった!

 同時に、ポルナレフの脾腹が血を吹いたッ

 

 「今のは『石ころ』だぞ! こいつ、いったいどれだけのパワーをもっていやがる!?」

 「ただの石ころで握り拳大の穴を空けるなんて……まずいな、スタンドのルールのとおり、近づけばパワーとスピードが上がるのは予想していたが、これほどとは思わなかったよ」

 

 ドライバーの男が口を開く。

 

 「さて、お二人とも観念していただきますぜ。あっしもトドメを刺すためにわざわざ出てきたんでね……ヒヒッ」

 「ーーポルナレフ、どうやら私たちはここで終わりのようだね」

 「な、なに言ってやがるッ!」

 「落ち着いてくれ。彼は『わざわざ近づいて』私たちにトドメを刺しにきたんだよ。それは絶対に勝てるという確信があってのことだろう」

 「だからって……」

 

 それを遮り、星一はドライバーの男に向かって言う。

 

 「と、いうことだ。君は好きなだけ近づいてくるといいよ」

 「するってえと、なんです? もう抵抗はしねえんで?」

 「ああ、しても仕方ないだろう?」

 「なぁるほど。それじゃ、ありがたく……」

 

 男は一歩ずつ近づいてくる。

 そして5歩まで歩いたそのとき、星一が突然立ち上がった!

 

 「やれやれ……ギリギリセーフ、ってところかな?」

 「なッ!?」

 「君の弱点はその愚直さだ。それがなければ君に勝つことはできなかったかもしれないな。本当に恐ろしい能力だよ」

 「な、なにを言っーー」

 

 言い終えることは叶わなかった。

 そう、その暇も与えず「それ」は男を吹っ飛ばしたのだ!

 「それ」はすなわち……

 

 「『電柱』だッ!!」

 「星一がやったのか!?」

 「そのとおり。さっき防御したときに『電柱が飛んできた』ことをワン・モア・タイムで発動できるようにしておいたんだ」

 「なるほどな。やっぱりオメー、めちゃくちゃ強いんじゃあねーか?」

 「そうでもないさ。チャリオッツに守られなければあのカミソリでお陀仏だったかもーー」

 「む……話の途中に悪いんだが」

 「なんだい?」

 「『アレ』、どうする?」

 

 見ると、いつの間にか男が逃げ出そうとしていた。

 

 「おっと、逃がせないな」

 「グェ! 痛え、痛えです!」

 「まったく、私だって痛かったんだ。少しは我慢して貰うよ」

 「ご、後生ですから、どうか許してくだせぇ!」

 「とのことだ。ポルナレフ、どう思う?」

 「んー? 星一がどういう考えかは知らねーが、ここは心を承……いや、鬼にするべきだぜ」

 「おお、私も同じ考えだよ。」

 「よし、決まったな」

 

 ゆっくりと男に近づいていく二人。

 

 「ヒィィ! 許してくだせぇぇぇ!」

 「「だめだね」」

 

 「ウルァァァァァ!!」

 「ホラホラホラホラァッ!!」

 

再起不能 

 本体ーーピーチャルー

 スタンド名ーー涙のラナウェイ・ボーイ




【ピーチャルー】
スタンド【涙のラナウェイ・ボーイ】
    破壊力:D スピード:E 射程距離:B
持続力:B 精密動作性:D 成長性:D

対象と同じ性質のものを引き寄せるスタンド。
例えば針を対象にすれば、尖っているもの(ハサミなど)または、細いもの(電線など)等を針に向かって飛来させる。
性質は一種類のみに定める必要がある。
同じ種類のものはひとつまでしか飛んでこない。
また、性質を変更する場合は、二つの性質を併せ持つものを最初に飛ばす必要がある。

スタンド像は小人。

stray cats 「涙のラナウェイ・ボーイ」 より

ーーーーーーーー

評価してくださった方に御礼申し上げます。
本当に嬉しいです。そして何よりの励みになります。
ありがとうございます!


ご感想などいただければ幸いです。


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虐殺の味

 ドライバーの男を倒したポルナレフと星一は無事にジョセフたちと合流した。

 その後、食事などを済ませ、ベトナムを発ったのであった。

 

一行の旅は続く……

 

――――――

 

 我々はこの国を知っている! いや! この喧騒とこの人混みを知っている!

 

 ここはインド。

 そう、先の旅でポルナレフがJ・ガイルを倒し、妹・シェリーの敵を討ったあのインドなのだ。

 一行にとっては何かと縁の深いこの地で、一体何が起こるのか……

 

――――――

 

 「ねェ……バクシーシ(お金ちょうだい)!」

 「バクシーシ!バクシーシ!」

 「こ、これは……」

 「や、やっぱりこうなるのかよォー!」

 「これだからいいんだぜ、これが」

 「OH MY GOD!」

 

 バクシーシの洗礼を受け、それぞれ違った反応をする一行。

 スリなどに遭うのも避けたいので、一先ず近くの飲食店に入ることになった。

 

 「ちょっと騒がしいけれど、なかなかいい場所じゃあないか」

 「ほう、星一もそう思うか」

 「そんなにいいかのう……やはりワシには理解できんわい」

 

 そう言ってジョセフは席を立った。

 

 「どうした? じじい」

 「なに、トイレに行くだけじゃよ」

 「なら、ブタには気をつけたほうがいいぜ」

 「???」

 

――――――

 

 ブタに遭遇することもなく、無事に便所から出てこられたジョセフ。

 しかし席に戻る途中、ふと窓の外を見たそのときだった。ジョセフは見てしまったのだ。

 

 「うわぁぁぁ!」

 「な、なにをしている!?」

 

 窓の外は人通りの少ない店の裏通り。後からした声の主は警官で、その視線の先には男性がいた。

 一見するとちょっとした騒ぎでも起こった程度のことだ。

 しかし、変だ。単なる騒ぎ(喧嘩だか事故だか知らないが)とは思えない。ジョセフがよく見てみると、男性は何かに襲われていた。

 そしてその『何か』は―――

 

 スタンドだった。

 

 「おい! 大丈夫かッ!?」

 

 ジョセフは慌てて外に飛び出した、が。

 

 「ギャァァァ!!」

 

 間に合わなかった。そのスタンドの腕は、すでに男性の胸を貫いていたのだ。

 そして、男性が倒れると同時にスタンドも消えた。

 

 「自分のスタンドに殺されたのか? なんてこった……」

 「お、おい! どうしたんだ!」

 

 状況を理解できない警官は、男性を揺り起こしている。だが、目を覚ますはずもない。彼はすでに死んでいるのだ。

 

 「おい! 起きろ!」

 「残念ながら、もう無駄じゃよ。その男はもう生きとらん」

 「!?」

 「それよりも、ここは危険じゃ。はやく―――」

 「ひィィー!」

 「どうしたッ」

 「そ、そいつはなんなんだ!?」

 「そいつ……?」

 「死体の横にいるそいつだよォ―――ッ! そのバケモンはなんなんだァ―――!!」

 「後ろだと! なっ……」

 

振り返ったジョセフが見たものは―――

 

 

<To Be Continued……




いつもありがとうございます。

ご感想などいただければ嬉しいです。


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屈折する星くずの上昇と下降

 振り返ったジョセフ。そこにいたのは先ほどのスタンドだった!

 いや、ただ『いた』のではないッ それは『迫ってきて』いたのだ!

 

 「マズい……ハーミットパープル!」

 

 幸いそのスタンドは人型。ジョセフのハーミットパープルは首を締めあげた! だがッ

 

 「ぐァァァッーー!」

 「なにッ!?」

 

 苦しんだのはジョセフの背後にいる警官だった!

 

 「なるほど、スタンドが見えていたから怪しいとは思っとったが…… 悪いが、このまま気絶してもらうぞ」

 「グググ……な、なんなんだよォ――――いったいィ――――何が起こっているんだァ――――」

 (しかし、おかしいのう。コイツからは殺意もなにも感じなかったが……ハッ! マズい!)

 

 突然暴れ出したスタンドが、ハーミットパープルの拘束を引きちぎった!

 全ては一瞬の出来事。ジョセフにはどうすることもできなかった……

 

 スタンドが腕を振りおろし、血飛沫が辺りを染める。

 首をなくしたソレは、やがて大地に倒れ伏す……

 

――――――――

 

 ハーミットパープルがちぎれた瞬間、ジョセフは死を覚悟していた。腕を伸ばせばすぐに届くような距離、加えて自分には防御手段がない。それゆえ、彼は完全に生きることを諦めていた。

 

 しかし、彼は死ななかった。

 

――――――――

 

 警官の頭部が宙を舞うのを見ながら、ジョセフは考える。

 

 ・自分が彼を守ることは可能だったのではないか。

 ・何故自分は攻撃されなかったのか。

 ・何故警官を攻撃したのか。

 ・このスタンドの能力は何か。

 

 「答えを見つけられなければ、今度こそ死ぬのはワシじゃ……」

 

 数秒の後、警官の亡骸の隣にふわり、と影のように敵スタンドが現れる。

 

 「だが、ワシをそう簡単に殺せるとは思うなよ」

 

 そう言って、ハーミットパープルを構えるジョセフ。

 

 そのとき。

 

 「おい、じじい! ずいぶん戻るのが遅えじゃあねえか」

 「承太郎ッ」

 「ん? じじい、そいつは――――」

 「敵のスタンドじゃ!いや、今はワシのスタンドじゃが…… とにかく、こいつは敵で間違いないぞ!」

 「『今はワシのスタンド』だってのはどういうことだ?」

 

 承太郎が聞き返したそのとき、敵スタンドが突っ込んできたッ!

 

 「じじい! 避けろッ」

 

 (コイツの能力、発動には条件があるはずじゃ。それがわかれば…… 待てよ、『条件』……?)

 

 (そうか! あの警官もワシも『本体が死ぬのを見て』いたんじゃ! 『見られる』のが条件、そしてヤツが乗り移るまでには本体の死から数秒のタイムラグがある。なるほど、そういうことか…… と、なればッ)

 

 「承太郎、よく聞け! ワシにはコイツを倒す策がある! だから、これから『ワシに何が起ころうと』絶対にワシの言うとおりに動くんじゃ!」

 

 そう言うとジョセフは、スタンドの首にハーミットパープルを巻き付けたッ

 当然、苦しむのはジョセフ本人!

 

 「ウグァッ……」

 「な、何をしてやがる! じじいッ」

 「承太郎! ワシの方を見るなァーー!!」

 「……!?」

 

 DIOとの戦いにおいてすら見なかったほどのジョセフの剣幕に、流石の承太郎も驚き、後ろを向いた――――

 

 「グゥッ…… ワシのことを…… き、気にするんじゃあない……」

 「……」

 「いいか…… 『10秒』じゃ。ワシが地面に倒れてから…… ちょうど10秒後…… 頼んだ、ぞ……」

 

 そう言ってから数秒、承太郎は背後にドサリ、とジョセフの倒れる音を聞いた。

 

――――

 

~1秒 経過~

 

 (さて、どうやら敵は他人に取り憑くタイプのスタンドのようだぜ。そしてじじいがてめえで首を締めたのは、意識を失うことで精神のヴィジョンであるスタンドを引き摺り出すつもりだった、といったところか)

 

 (だが、未だにあのスタンドの動きはねえ。消えちまったのか、はたまた動いていねーだけか。まあ、どちらにせよ……)

 

~9秒 経過~

 (俺のやることはたった一つだ――――)

 

~10秒 経過~

 

 『ギィィィェァァァァァーーーーー!!!』

 「!!」

 (これはスタンドの断末魔、か。取り憑くスタンドは、何かしらの条件を満たしていないと消滅することがあると聞く…… なるほど、じじいの言うとおりだ。確かに……)

 

 「このタイミングしかねぇぜッ!」

 

 振り返り、走り出す承太郎! 恐るべき精神の爆発力は、最後の足掻きとばかりに襲いかかってきた敵スタンドを一撃の下に葬ったッ! さらにそれには目もくれず、倒れ伏すジョセフの元へ――――

 

 「やれやれ……どうやら、間に合ったようだぜ」

 「……」

 「スタープラチナ!」

 

 2年前、承太郎は多くのものを失った。しかしその中で、新たに会得したものもあった。

 それはッ! 『心肺蘇生術』!

 

――――――――

 

 「――――ハッ!」

 「起きたか、じじい」

 「承太郎……そうか、やり遂げたのか」

 「どうにか、な」

 「やはり今回の旅も一筋縄ではいかんようじゃな」

 「……」

 「しかし、人生で2回も生き返るやつなんか他にあるかのう……」

 

――――――――

 

 「承太郎、ジョースターさん!何かあったのか? やけに遅かったじゃあねーか」

 「ジョースターさんはともかく、呼びに行った承太郎まで帰って来ないから心配していたんだよ」

 

 ジョセフたちが店内に戻ると、そんなことを言いながらもデザートを楽しんでいる、ポルナレフと星一の姿があった。

 

 「まったく……」

 「やれやれだぜ」

 

 何かと先が思いやられる一行。

 しかしそんなことは気にせず目的のため、彼らはさらに西へと向かっていく――――

 

 

<To Be Continued……




投稿、遅れました。
感想などいただければ嬉しいです。月まで吹っ飛びます。

追記:誤字のご指摘を頂きました(12/14修正)

敵プロフィール↓

【ルドラ・バーグ】

スタンド【イニュエンドウ】
    破壊力:A スピード:A 射程距離:A(∞m)
持続力:A 精密動作性:D 成長性:D
    遠隔自動操縦型

 本体が死ぬと発動。
 本体の死から10秒後、最も近くで本体の死を目撃した者のスタンドになる。
 その後は本体を攻撃する。
 10秒以内に誰にも目撃されなければ消滅してしまう。
 
スタンド像は悪魔。


Queen「Innuendo」より


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砂漠の径

 

 「これから次の国へ向かうわけだが、実は皆に話しておくべきことがある」

 

 そう前置きして、ジョセフはおもむろに話し出した。

 

 「実はとある用ができてのう。それがなかなか大事な用事で、外すこともできなくてな。そういうわけで数日の間、別行動とさせてもらう」

 「……」

 「用が済んだらこのあと向かうであろうフランス辺りで合流することになると思うから、だいたい十日間くらいかのう。すまんがワシのいない間、よろしく頼むぞ」

 「なるほど、わかりました。ではジョースターさんもお気をつけて」

 「ジョースターさんがいねーってのも珍しいな。ま、ここからは俺に任せて安心して……」

 「ポルナレフ、お前が一番心配なんじゃよ」

 「……やれやれだぜ」

 

――――――――

 

 ここで一つ伝えておくことがある。

 空条邸での星一の同行宣言をあっさりと承諾したジョセフであったが、やはり裏切りはしないか、とか敵のスパイではないか、などの心配はしていた。そのため、SPW財団に秘密裏に星一の身元を調査するよう依頼しておいたのだ。

 調査結果の報告をしたい、との連絡がジョセフに届いたのはインドに滞在しているときのことであった……

 

――――――――

 

 ジョセフと別れた一行はヨーロッパへ渡るため、ポルナレフの運転するジープでイスタンブールへと向かっていた。

 その道中……

 

 

 トルコの首都アンカラ。

 都市の規模としてはイスタンブールに及ばないものの、歴史のある美しい街並みを見ることができる。ここでジョセフを除く一行は、食料の買い出しをしていたのだった。

 

 「これだけあれば三日は大丈夫だろう。水も一週間はもつね」

 「足りなけりゃあイスタンブールで買い足せばいいぜ」

 「しっかしよぉ、星一。なんだってあの肉屋のおっさん、金串なんかくれたんだ?」

 「ああ、これかい? 私達が日本人だと話したら、『日本じゃ箸ってのを使ってメシを食うらしいじゃあねーか!』とか言いながら肉と一緒に袋に入れてくれたんだよ。私と承太郎に2本ずつ、ね」

 

 そこまで多くない荷物を分配して運ぶ三人。何気ない会話をしながらジープへの道を戻っていた。

 しかし、先頭を歩いていた星一が角を曲がり、人通りの少ない薄暗い路地に踏み込んだときであった。

 

 「あの店主、日本が好きらしいんだ。私に日本にいた頃の話をしてくれと言うんで、こんな話を   」

 「なんだ? どうかしたか、星一……ハッ!」

 

 「承太郎! 星一が消えた!」

 「なにッ? ポルナレフ、てめー何言ってやがる……!?」

 

 星一よりも一歩遅れてポルナレフは角を曲がった。その一瞬、二秒と経たない間に星一が姿を消していたのだ!

 承太郎はすぐに冷静さを取り戻すと、あることに気がついた。

 

 「おい……この道は朝にも通ったよな?」

 「ん……? いや、通ってねーと思うぜ。似たような道はいくつかあったが、あれはもっと長かっただろ」

 「ああ。それは俺も覚えてはいるが……なら、こいつはなんだ?」

 

 それは『財布』だった。

 

 「あッ! 承太郎、その財布はまさか……」

 「ほう、ケッコーな額が入ってる上に、ご丁寧にイニシャルまで刺繍してあるな。『J・P・P』? やれやれ、マヌケなヤツがいたもんだぜ。なぁ、ポルナレフ?」

 「あ、ああ……」

 

 この状況で、俺の財布だとは言いづらい。

 ポルナレフが言うか言うまいか逡巡していると、承太郎はポケットに財布を入れ、言った。

 

 「『持ち主』が見つかるまでこれは俺が預かっておくぜ。それよりも、これでわかったな。この道は確実に朝と同じものだ。そして、長さが変わっているってのも確かだ」

 「ってことは……」

 「ああ、間違いねえ。これは『スタンド攻撃』だッ!」

 

 すると、そのとき。

 

 「『空条 承太郎』と『J.P.ポルナレフ』だなぁ?」

 「 誰だ、テメーは?」

 「オイオイオイオイ、質問には答えてくれよ……俺はお前らが『空条承太郎』と『J.P.ポルナレフ』で間違いないか、と聞いたんだぜぇ?」

 「なら人違いだ。なあ? ポール」

 「その通りだぜ、Q太郎。俺たちはその……ええと、『空条』と『ポルナレフ』だったか? そんな名前聞いたこともねーよ」

 「おっと、人違いだったか。 そいつはすまなかったなぁ。なら、他を当たるとするぜ」

 「ああ、そうしてくれ」

 「……」

 「……」

 「……」

 「『ダーティー・ダンシング』ッ!」

 「『星の白金』!」

 

 沈黙は一瞬! 直後、拳が衝突するッ

 

 「嘘を吐くのは別に構わねえ。一向に構わねえ。だが、それならそれでもっとマシな嘘を吐いたらどうだぁ? 頭悪ィのか?」

 「さあな、なんのことだ? わからないな 」

 「チッ……まあいいさ、別に変わりはねぇんだ……」

 

 「お前らはここで死ぬ。俺の『ダーティー・ダンシング』の能力によってなッ!」

 

――――――――

 【星一 side】

 

 星一は自分の目を疑った。

 当然だ。角を曲がって振り返ると、今の今まで会話をしていたポルナレフと承太郎、さらには歩いていた道までもが消え、虚無へと変わっていたのだから。

 しかし彼は冷静だった。何故なら彼は知っていたからだ。こういった状況はまず間違いなく……

 

 (スタンド攻撃、か)

 

 周囲からまるごと隔離された一本の小道。しかしその空間にはもう一人、男がいた。

 

 「うむ。あやつは上手くやったようじゃの」

 「何者だい?」

 「儂かね? 儂の名はタニン・サイード。わかっとるとは思うが、ジャックの命令でここにきた者じゃ」

 

 サイードと名乗ったその男は褐色の肌を持つ、物腰の柔らかい白髭の男性であった。

 

 「ジャック……そういえば、広東で戦った男もその名前を言っていたな。その男こそ私たちが倒すべき相手、というわけかな?」

 「そのとおり。フルネームはジャック・ウィルドボアじゃ。だが、果たしてお主はこの情報を持って帰ることができるかな……」

 

 サイードから並大抵のものではない殺気が放たれる。

 背筋が凍り、同時に身体が燻るような心持ちのするそれは、この老翁のくぐり抜けた修羅場の数を知らしめるようであった。

 

 「……戦いは苦手だが仕方がない、どうやら貴方には色々と喋って貰わなくてはいけないようだ」

 「ふむ。ま、とにかくかかってくるといい。格の違いを教えてやろう」

 

 サイードは自然体、泰然自若として淀みなく、少しも力む様子はない。

 対する星一はこの老人にやや気圧され気味であった。全身から発せられる『強さ』のオーラは星一の本能に直接打撃を与えるようであった。

 しかし、星一とて覚悟を決めた身。ここで怖じ気づくようなタマではない。

 

 「ウルァァ!!」

 

 『ワン・モア・タイム』……どこか無機質な印象を受けるそのスタンドが、サイードの頭部めがけて拳を振るうッ

 しかし……

 

 「鈍いのう……」

 「うっ!?」

 

 拳が命中する直前、スタンドの迅速な一撃をこの老人は事も無げに躱してみせたのだ。

 

 「ッ……ウラウラウルァーー!」

 「ふん、その程度の連撃、いつまで続けても同じことじゃろうて」

 

 全力のラッシュすらも軽く捌かれる。

 

 (そういうスタンド能力なのか? だが、だとすればこの切り離された空間は一体? クソッ、なんとしても一撃は与えて戦況を変えなければ……待てよ、さっき手に入れた『コレ』、使えるんじゃあないか? 少々猫騙しじみた攻撃にはなるが……まあ、致し方ないな)

 

 「どうした? まさかもう終わりじゃあないだろうな?」

 「当然、終わりではないさ」

 「そうか、ならば続けるといい。ずっと続けていれば一発くらいは当たるかもしれんぞ?」

 「いいや、同じことは繰り返さないよ。もっとも、繰り返す必要もないんだがね。まったく、運が良かったよ私は。そう、これを持っていたのは……」

 「む!?」

 「最高に幸運だッ!」

 

 星一はサイードに向かって何かを投擲した! 鋭く、それでいて鈍く光る物体。標的に向かって真っ直ぐ飛んでいったそれは……

 

 あっさりと避けられ、壁にヒット。突き刺さるわけでもなく、そのまま地面に落ちてしまった。

 

 「あれは……『金串』か?」

 「Bu doğru.(そのとおり)」

 「いや、そんなことは重要じゃあない……だが、不可解じゃ。なぜこの程度のことをお主があれほど喜んだのかがのう。避けられるのも予想はできていただろうに」

 「……」

 「となれば、じゃ。『避けられても問題ない』理由がある、ということになるな。そして、それはおそらくお主のスタンドの能力に関わることだろう」

 「なるほど、貴方は素晴らしい観察力を持っているようだな。しかし残念ながらタイムアップだ。回避行動の後、体勢を立て直したその時点で私の攻撃は既に終了しているッ!」

 

 瞬間、サイードの胸板を貫く一閃!

 

 「ガハッ――!? こ、これは……さっき避けたはずの金串が……何故……」

 「『One More Time』過去の出来事をもう一度発生させる――そんな能力だ。だが、まいったな……急所は外れたか。今ので優位に持ち込むつもりだったのに、なかなか元気そうじゃあないか」

 「むぅ……今のは一本取られたわい。どうやら儂が思っていたよりも、お主は戦闘技能に長けているのかもしれんのう。そうとあれば仕方あるまい、スタンド同士の勝負といこうではないか。ここからは儂も本気じゃ。覚悟はよいな?」

 「覚悟ならとっくにできているさ」

 

 「そうか……ならばいくぞ! 『エコー・アンド・ザ・バニーマン』ッ!」

 「『ワン・モア・タイム』!」

 

 

<To Be Continued……




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