Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 (七宮 梅雨)
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Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』

初投稿ではないけど、初投稿です!!(謎発言)


  強盗「てめぇらぁ!!こいつがどうなってもいいのか!」

 

??「「「ママ!!」」」

 

 とある銀行にて、強盗が急に乱入し近くにいた1人の女性が人質にされてしまった。強盗は人質である彼女の頭に銃口を向け、銀行員に金を要求しながら脅しをかける。

 

強盗「早く金を出せぇ!!じゃなきゃ、この女の頭が吹っ飛ぶぞ!!」

 

銀行員「す、直ぐに用意します」

 

 銀行員の人達は慌てながら、金を金庫から取り出し、出来るだけかき集め、強盗が用意した袋にせっせと詰める。

 

 人質にされている女性はひたすら怯えており、恐らく人質となっている女性の子供3人もビクビクと泣き、そして震えていた。

 

??「お、お姉様、ママが………」

 

??「で、でも………」

 

 3人のうち、ツインテールである少女とサイドテールあるもう1人の少女が怯えながら寄り添っていた。

 

??(お姉ちゃん達が怖がってる…………。僕がママを助けないと!!)

 

 

??「う、うわぁぁぁぁ!!」

 

 

強盗「!?」

 

 3人のうち唯一、5歳くらいの男の子が、叫びながら強盗の足に目がけてタックルをぶちかます。当たりどころがちょうど関節部分かつ、大量の金が袋に詰められているという幸福感に浸っていた為油断していたのか、ガクッと強盗の体勢は崩れてしまい、隙を見た女性は男性から逃げ出す。

 

強盗「このガキが!!」

 

 キレた強盗は銃を持っている腕を振り回し、少年をぶっ飛ばす。

 

少年「いてて………ん??」

 

 吹っ飛ばされた少年の右手に、なにか掴んでいるような感触があった。少年が手にしてたのは…………

 

 

 

 犯人が持っていた銃だった。

 

 

 

 吹っ飛ばされた際に、たまたま掴んでしまったのであろう。

 

 

強盗「くそっ!!クソガキが、それを返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 強盗は頭に血管を浮かべ、目を血ばらせながら少年の方へと駆けつける。その姿は幼い子供からしたら化け物以外何者でもなかった。

 

 

 

少年「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

 

 

 

 強盗の姿に少年は叫びながら、反射行動で銃を強盗に向け、そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 発砲した際に、衝撃と発砲音によって驚き、少しの間だけ目を瞑っていた少年は恐る恐る目を開けると、そこには…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭から血を吹き出し、血塗れとなって倒れている強盗と、吹き出した血によって身体全体、血がべっとりと付いた少年の姿を見て、怯えている母親と2人の少女の姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??『人殺し』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀行強盗の事件後にサイドテールの方の少女が怯え声を震わせながら一言、その少年に向け呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして一年後、その少年である鹿角 明は大好きだった両親、姉であるサイドテールの鹿角 聖良、そして明の双子のもう1人姉であるツインテールの鹿角 理亞と離れ離れとなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10年後〜(明視点)

 

 

明「…………胸糞悪い夢を見たな」

 

 

 俺は溜息をつきながら、ゆっくりと身体を起き上がらせる。思い出したくもない夢を見たせいか、パジャマがびっしょりとなるぐらいまで汗をかいていた。

 

明「着替えないとな………」

 

 俺はベットから降り、湿っているパジャマを脱ぎ捨て、私服を取り出し着替え始める。

 

 

 

 あの事件から10年という月日が流れた。

 

 

 

 事件後、俺の何もかもが変わってしまった。

 

 

 俺が人を殺してしまったことが一気に地域に噂となり、俺は周りから『人殺し』というレッテルを貼られてしまった。そのぐらいだったら当時まだ耐えれた方だが、辛かったのはそのせいで実家で経営していた喫茶店『茶房 菊泉』の客足が減ってしまったことと、家族との関係に亀裂が入ってしまったことだった。

 

 

 

 

 

 そして、一年後遂にそれに耐えられなくなった両親は俺を他県にある有名な施設へと預けた。……………すなわち捨てられたのだ。

 

 

 

 

 

 

聖良『もう………私達に関わらないで』

 

 

 

 

 

 

 施設に預けられた時に、別れの際に俺は聖良姉ちゃんに言われたことを今でも記憶に残っている。別に俺はお姉ちゃん達を恨んでる訳では無い。多分、俺のせいでお姉ちゃん達はいじめの対象にされていたのであろう。最後にそう言われてしまうのは当たり前だ。

 

 

 だから捨てられた以降10年間、俺は鹿角家と関わっていない。今、何やってるのかも分からない。きっと、あっちも同じで俺が今、どこで何をやっているのか分からないだろう。いや、もう既に存在自体忘れられている可能性もある。きっとそうに違いない。うん。

 

 

 

 

 

??「明ちゃん、大丈夫??結構、唸ってたみたいけど………」

 

 

 

 

 ガチャリと俺の扉が開き、1人の赤毛のロングヘアの女性が入ってくる。彼女の名前は奥山 零さん。 27歳OL。俺が10歳の時に幼い頃に飼ってた犬とそっくりだったから、と今考えると凄くふざけた理由で施設から引き取ってくれた人で、俺の事情を知ってもなお、家族同然として育ててくれた俺の恩人と言っていいぐらいの人である。だから、俺の苗字は鹿角から奥山へ変わっている。

 

 

 

 

明「おはよう、零さん。大丈夫だよ。心配かけちゃってごめんね。」

 

零「そっか…………。朝ごはんできるからちゃんと食べてね。私、そろそろ時間だから」

 

明「もう行くの??最近、早出勤多くない??」

 

零「今、仕事が頑張り所だからね。」

 

 零さんはウィンクして言ってあと、素早く家から出て行った。あの人は社畜の鏡だな。毎日、零さんが帰り遅いので晩御飯を作っている俺は今日の晩御飯は元気が出るものにしようと決意しながらリビングにやって来て、朝ごはんであるバタートーストを齧りながら朝日新聞に目を通した。

 

 

明「お、そろそろ時間か」

 

 

 バタートーストを食べ終わった俺は、学校の制服へと着替える。

 

 

 

 

 俺は、年々入学者が減ってきたことにより、それを防ぐために今年から共学となった私立浦の星女学院へ入学した。

 

 

 

 そこを選んだ理由は2つ。1つは、年々入学者が減ってきたということだったので、入学しやすかったこと。そして、もう1つは女子高が今年から共学となったということなので入学する男子は少ないはず。だから、クラスで関わる人はほぼいないにいって等しいので正直、人とあまり関わりたくない俺からしたらありがたいと思ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 だが、その時の俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 浦の星女学院に通っているオレンジ頭の先輩によってスクールアイドルのマネージャーとして振り回され、いつの日か『人殺し』である俺が聖良姉ちゃんと理亞姉ちゃんのスクールアイドル『Saint Snow』と出会うことになることに……………




誤字脱字などあったら言ってください。

反応によって、モチベが上がります。


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『人殺し』はクラスで関わりを避ける

Saint Snowとの関わりはまだ当分先です。しばらくはAqoursの人たちとの関わりをお楽しみください。


 入学式で清楚感がある生徒会長のクソ長い 話がようやく終わり、俺たち1年生はクラスへと集まっていた。クラス1つ分しか居ないとかどんだけ生徒いないんだよ。共学にした意味あったのか??と思ってしまう。

 

 そして、驚いたのが男子が俺以外に1人もいなかったこと。これはこれでなかなかキツイ。いや、むしろクラスメイトの女子に『モテたいから、ここに来た』というキモイ印象を与えているかもしれない。それだといいな。

 

 ガララと扉を開け、先生らしき人物が入ってくる。

 

 

先生「今年からここのクラスの担任となった平山 静香だ。よろしくな。さて、早速だが、みんな自己紹介の方をしてもらう。」

 

 

 MA・JI・KA。と思った俺だったが、それは当たり前か。まぁ、適当かつシンプルにやればいいだろう。

 

 そして、俺の番にまわってくる。唯一、男性であるため周りからの注目度が凄い。思春期を迎えてる男の子にとってはなかなか辛いものであった。

 

 

明「奥山 明です。よろしくお願いします」

 

 

 俺はそう言って、ペコッと頭を下げる。

 

先生「…………それだけ??」

 

明「え?ダメですか??」

 

先生「いや、いいんだけどさ。他に何かないの??趣味とか」

 

明「ないですね。次の人、どーぞー」

 

 キッパリそう言って、俺は席へと戻る。これで、周りからは陰気臭い奴だと認識されたはずだ。計算通り…………(夜神月風)

 

 俺の次の子は、おっとり系の茶髪のロングヘアの美人な女の子だった。背が低い割には胸が…………。いやいや、どこ見てんの俺。変態じゃねぇか

 

 

??「国木田 花丸です。趣味は本を読むことズ…………です。よろしくお願いしますズ………じゃなかった。よろしくお願いします!!」

 

 

 いや、普通に方弁(?)言えばいいじゃん。隠す必要とかある??でも、それはそれで可愛いらしいからいっか。

 

 国木田 花丸さんの次の人も、身長が低くてなんか不安そうな表情を浮かべている赤髪のツーサイドアップの女の子だった。緊張してるのか??

 

 

??「く、黒澤ルビィです………。趣味はお裁縫です。よろしくお願いします。」

 

 

 黒澤ルビィさんはボソボソと小さい声で自己紹介をする。ん?黒澤…………??どっかで聞いた事あるような…………。あ、あのクソ長い話してた生徒会長と同じ苗字だ。確か、あの人も名前は忘れたけど宝石の名前だったと思うからルビィさんは妹か何かかな??てか、大事な娘の名前に宝石つけるってどんな親だよ。絶対に過去に名前のせいでいじめの経験あるだろ黒澤姉妹。

 

 

 そして、何人か自己紹介が終え、次に俺たちの目の前に立ったのは姫カットで、右側部分にシニヨンを作っている女の子だった。なんか、雰囲気がほかの子と比べて違う………。なんか、キメ顔かつカッコイイポーズ決めてるし………。

 

 

??「堕天使ヨハネと契約して、あなたも私のリトルデーモンになってみない??ふっ…………。」

 

 

 やべぇぇぇぇぇぇ!!この子、やべぇよ。普通にやべぇよ。いわゆる、厨二病ってやつじゃねぇか。お前、もう高校生だろ。しっかりしろ!!

 

 

 ゴクリと、若干引きながら生唾を飲む奴とかいるじゃねぇか。おい、黒澤ルビィ。何、ちょっとカッコイイ………みたいな眼差しであいつ見てんの??ああいうのに憧れてるの??ただの厨二病だよ??

 

 

 そのあと、堕天使ヨハネは「ピーンチ!!」と叫びながら教室から飛び出して行った。本当になんなの?あいつ。情緒不安定じゃん

 

 

 その後は何事もなくクラス全員の自己紹介が終え、そのまま帰宅となった。もちろん、堕天使ヨハネは最後まで教室に戻ってこなかった。

 

 

明「帰るか」

 

 

 カバンを持って、教室から出ようとした時、

 

 

??「君が噂の男子の1年生なんだねぇ!!噂通り、ちょっと暗い感じだぁ!!」

 

 

明「!?」

 

 

 唐突に、俺は話しかけられてビクッと体を震わせてしまう。

 

 俺に話しかけてきたのはオレンジ色の髪型で右側頭部に三つ編みをし、三つ編みの先には黄色いリボンをつけ、左側部分には三葉の髪留めをしている女性だった。そして、制服のネクタイ部分の色が赤色………つまり2年生であり先輩か??

 

 

??「千歌ちゃーん。その子、困ってるからその辺でね」

 

 

 千歌と呼ばれる先輩の背後から、灰色のボブカットでウェーブがかかっている女性が姿を現し、千歌先輩を引き止める。この人も2年生だった。この人は曜先輩と言うらしい。

 

 

千歌「いやいやー、この学校の唯一の1年生男子をどうしても見たくてね」

 

曜「気持ちはわからなくもないけど、いきなり2年生が話しかけたらビックリしちゃうでしょ??ほら、謝って」

 

千歌「むぅー。ごめんね。」

 

 千歌先輩が頭を下げる。いや、2年生が1年である俺に頭を下げられるとなんか困るんですけど

 

 

明「別に大丈夫ですよ。俺、急いでるんでこれで。失礼します」

 

 

 俺はこれ以上関わりたくないと思い、適当に嘘をついて、千歌先輩と曜先輩から離れる。

 

 

 

 曜先輩はともかく、あの千歌先輩は俺にとって危険な人物だ。あの人は見た感じ好奇心によってすぐに行動に出るタイプの人間だ。すなわち、この学校唯一の男子生徒である俺に興味を持ったとすれば、きっとこの先でも千歌先輩は俺の目の前に現れるだろう。

 

 

 

 

 

 それは、なんとしてでも避けなければならない。『人殺し』だとバレない為にも…………。

 

 

 

 

 

 俺は自転車で帰りながら、どうやってこの先、学校で周りの人と関わらずに過ごすか真剣に考えた。




誤字脱字とかあればご指摘お願いします。



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『人殺し』はライブを観に行かない

ラブライブサンシャインの話は転々と進展して行くつもりです。主人公はそこまでAqours結成のきっかけだけの干渉を控えるつもりでいます。メインはSaint Snowとの関わりなので………。


明「ライブですか??」

 

千歌「うん!!私達3人で、スクールアイドルをやるんだ!!奥山くんも良かったら見に来てよ」

 

 放課後、帰ろうとしたら校門の近くでビラを配っていた千歌先輩に捕まってしまう。話を聞くに、憧れであるスクールアイドルを浦の星女学院で設立したいらしく、小原理事長に条件として体育館を人いっぱいに埋めることができたら部として設立を了承してくれるということらしい。

 

 

??「千歌ちゃん、その子は??」

 

 隣から、見たことの無い2年生である女性が現れる。ロングヘアで左側にヘアピンを付けており後頭部をバレッタで髪を留めていた。この人が、千歌先輩が言っていた3人目の仲間であろうか。

 

 

千歌「1年生の奥山 明くんだよ。奥山くん、こちらは桜内梨子ちゃん。ピアノがとっても上手なんだよ!!」

 

 

明「どうも…………」

 

梨子「どういうこと??ここは女子校じゃないの??」

 

 

 ん?どういうことだ??この人、2年生なんだよな??なんで、浦の星女学院が共学になったことを知らないような感じなんだ??

 

 

千歌「そっか。梨子ちゃんは転校してきたばっかだから知らないんだ。浦の星女学院は今年から共学になったんだよ」

 

梨子「そうなの!?知らなかった!!」

 

 あ、そういうことね。転校生だったら知らなかった可能性は高いな。

 

明「まぁ、そういうことっす。千歌先輩、ライブの方は観に行けたら行きますね。それでは」

 

 

千歌「うん!!絶対に観に来てね!!約束だよ」

 

 

 俺は校門を出て、自転車に乗って、走り出すと共に渡されたビラを手から離す。ビラはそのままヒラヒラと風に乗ってどっか飛んで行った。

 

 

 千歌先輩達には申し訳ないが、彼女達が行うライブを観に行く気はさらさらない。興味もないし、あんまり関わりたくないからだ。

 

 

 家に帰る途中についでに買い物もしようと思った俺は近くのスーパーにやって来ていた。

 

 あ、今日はカレイが安くなってる。よし、今日の晩御飯はカレイの煮付けにしよう。

 

 カレイを購入した俺は次に、好きな作家さんの新作である本を買うべく本屋にも寄った。自己紹介では趣味はないと言ったものの、俺は本を読むことは好きだ。学校の休み時間とかでも小説をずっと読んでいる。

 

明「あったあった。これこれ」

 

 俺は目的であった小説を手に取り、レジに向かおうとすると

 

明(………なんか、見たことのある奴がいるな)

 

 よく分からんオカルト系の本が並んでいるスペースに、春なのにも関わらず分厚い服を着て、更にサングラスにマスクという見るからに怪しい奴がいた。しかし、そいつの髪型が姫カットでシニヨンを作っていた。

 

 明らかに、入学式以降、学校にすら来なくなった自称堕天使ヨハネさんだ。何やってんだあの人は。

 

ヨハネ(?)「あ…………」

 

明「あ…………」

 

 しまった。じっと見つめすぎたせいで、視線を感じたのか、堕天使ヨハネがこちらに気づき目を合わせてしまった。すると、すぐに堕天使ヨハネは俺の目の前から姿を消してしまった。ん?そういえば、あいつ、千歌先輩たちが配っていたビラらしきものを持っていたような………。まぁ、どうでもいいか。

 

 

 俺は本をちゃちゃっと購入し、家に帰った

 

 

 

 

〜次の日〜

 

 

 

??「チャオ〜。貴方がうちの学校唯一のボーイである奥山 明くんネ??」

 

 次の日、なぜか分からないけど俺は理事長室へと呼ばれた。中に入ると、2人の女性が出迎えてくれる。そのうち1人は見覚えのある人だ。生徒会長、黒澤ダイヤ。3年生であり、クラスメイトである黒澤ルビィのお姉ちゃんである。

 

 そして、もう1人の方は知らない。金髪で、セミロングヘアの前髪部分を編み込み、向かって右側に編み込んだ残りの髪を輪にして止めている女性だ。スカーフの色が青色なのでダイヤ先輩と同じく3年生であると分かる。

 

??「私の名前は小原鞠莉っていいマース!!気楽にマリーって呼んでネ!!」

 

明「はぁ…………。ん?小原?」

 

 小原という単語を聞いて、俺は1つ疑問を思い浮かべる。

 

明「あれ?小原ってここの理事長の苗字じゃなかったっけ??」

 

ダイヤ「その通りですわ。今、目の前にいる鞠莉さんが浦の星女学院の生徒兼理事長ですわ。」

 

明「はい?」

 

 この生徒会長、今なんて仰った??理事長??生徒なのに??

 

鞠莉「What??その顔から見るに知らなかったみたいな顔デスね。一応、全校生徒の目の前で自己紹介したのだけれど」

 

明「それってもしかして一昨日の話ですか??」

 

鞠莉「YES!!」

 

明「あー、その日、風邪ひいて休んでますわ」

 

鞠莉「Oh nooo!!!」

 

 俺が休んでいる間に凄いことが起きてた件について。てか、この人いちいちうるさいな。

 

明「んで、俺を呼んだ理由は何なんですか??」

 

 

 

鞠莉「……………『北海道銀行強盗事件』」

 

 

 

明「…………!?」

 

 

 鞠莉先輩が呟いた一言で俺はゾワッと武者震いをする。どうして、鞠莉先輩がその事件を………。

 

 

鞠莉「今から10年前、とある銀行に1人の強盗が入った。しかし、その事件は呆気なく解決した。なぜならその強盗は警察官が乱入してきた時点で頭を何者かに撃たれていたから。そして撃った犯人は人質にされていた母親の子供であった…………。」

 

 

 鞠莉先輩は流れるように言葉を出す。そして、最後に俺に指を刺しドン!!と効果音が出そうな勢いで言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「その子供はあなたね。『人殺し』の鹿角 明くん。」

 

 




3話にして最高峰の人間にバレる哀れな主人公。
どうなる4話!?


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『人殺し』は苦悩する。

 明「なんの事ですかね。俺は奥山 明ですが………」

 

鞠莉「嘘をついても無駄ヨ。調べはついているわ」

 

 鞠莉先輩はニコニコと微笑みながら、答える。

 

 

 どうやら………何言っても無駄なようだな。さよなら、俺の高校生生活。

 

 

 

明「…………俺の事を知ってどうするつもりですか??理事長の権限で退学にさせますか??」

 

 

鞠莉「sorrysorry。そんな身構えないデ。別に貴方のことを退学にしたり、過去を周りに広めたりなんかするつもりはないわ。」

 

明「じゃあ、なんのつもりで??」

 

 

 この人の考えてることが分からない。

 

 

鞠莉「私が貴方に言いたいことは1つだけ。スクールアイドルをやろうとしてる千歌っち達と関わりなさい。」

 

 

 は?何を言ってるんだ、この人は

 

 

明「鞠莉先輩…………。いくら陽気な貴女でもそんな冗談面白くないですよ」

 

鞠莉「Why??マリーはジョークのつもりで言ったつもりはないワ。」

 

 

明「もしそうだとしたら、貴女の考えは正気の沙汰じゃない!!!」

 

 

 俺は声を上げて鞠莉先輩に反論する。スクールアイドルをやろうとしている千歌先輩たちに『人殺し』である俺が彼女たちと関わりを持っていると世間にバレてみろ。その時点で彼女たちの挑戦は終わってしまう。

 

明「申し訳ありませんが、その話はお断りさせていただきます!!それでは!!」

 

 俺はくるりと周り、理事長室の扉のドアノブをつかもうとした瞬間

 

ダイヤ「お待ちなさい」

 

 今まで黙っていた生徒会長が俺を引き止めた。

 

ダイヤ「確かに、奥山さんの気持ち、大変分かります。けど、まだ話は終わっていませんわ。……………ですよね、鞠莉さん」

 

鞠莉「Of course!!流石、ダイヤね」

 

ダイヤ「貴女とは幼い頃からの仲ですから………。奥山さん、できれば話を最後まで聞いてからご判断されるのも悪くはないと思いますわ」

 

 ダイヤ先輩は俺の目をじっと見て答える。けど、彼女の言葉も一理ある。

 

明「ダイヤ先輩の言う通りですね。それでは、鞠莉先輩。説明の方をよろしくお願いします」

 

鞠莉「OK!!」

 

 鞠莉先輩は手でOKマークを作ったあと、ゆっくりと俺の方に近づき、俺の耳に向かって囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「千歌っち達と関われば、近い将来に鹿角姉妹に会えるかもしれないと言ったら貴方はどうする??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜家にて〜

 

 

零「ただいまー」

 

明「お帰り。ご飯、出来てるよ」

 

零「ありがと〜。うわぁ、いい匂い。すぐに着替えてくるね」

 

 零さんが自分の部屋で着替えを済ましたあと、俺と2人で向かいながらテーブルで食事を始める。今日のメニューは、肉じゃがだ。

 

零「んー♡美味しぃ♡」

 

明「良かった。今日のは自信あったんだ」

 

零「流石、明ちゃん!!2年後、私を貰って欲しいわ」

 

明「さらっとプロポーズするのやめてよ。俺、ビール持ってくるわ」

 

零「ありがと〜。んー♡肉じゃが、美味しぃ♡」

 

 俺は冷蔵庫の方に行き、缶ビール2本と缶ジュースを1本取り出してから、テーブルに戻る。

 

 カシャ………と、缶ジュースをあげ、ゴクゴクと飲みながら、理事長室への出来事を思い出す。

 

 

 〜数時間前〜

 

明『なんだと………』

 

鞠莉『貴方に言いたいことはこれだけ。あとはどうするか、貴方自身で決めてちょうだい♪』

 

明『どうして、俺がスクールアイドルと関わることによって2人に会うことが出来るんだよ!?』

 

鞠莉『それは少し考えてみれば分かることヨ。』

 

明『はぁ??』

 

ダイヤ『なるほどですわ。』

 

明『ダイヤ先輩、分かったのか??』

 

ダイヤ『えぇ。確かに、貴女がスクールアイドルと関わりを持ったら彼女たちと会える可能性は十分ありますわ』

 

明『じゃあ、教えてくれよ!!』

 

ダイヤ『いいえ。これは貴方自身の問題。貴方が答えを導きなさい。』

 

 

 

 

 

 

 

 

零「………ん」

 

零「………ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

零「明ちゃん!!」

 

明「!?」

 

 突然、零さんが声を上げる。驚いて、俺はビクッと体を震わせてしまった。

 

零「どうしたの??ぼーっとして」

 

明「なんでもないです。」

 

零「学校でなんかあったみたいだね。零さんに相談してみ。」

 

明「いや、だから何もないって」

 

零「明ちゃんやい。私は君とどれくらい一緒にいたと思ってるの。君が何か考えてることぐらいすぐに分かるよ。…………家族なんだから」

 

 

 家族……………か。

 

 

 

明「じゃあ、1個だけいい??」

 

零「うん!零さんになんでも言ってご覧なさい!!」

 

 零さんは胸にトンと手を置き、ムフフんとドヤ顔になる。その姿を見て零さんらしいなと安心した俺は、何も躊躇いもなく言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「部活に……………入ってもいいかな??」

 

 

 




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お待ちしておりますぜ。

次の更新は明日で…………。


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『人殺し』はスクールアイドルのマネージャーとなる

察してる人はいるかもしれませんが、この物語は鞠莉はSaint Snowの存在を初めから知ってる形で話が進んでいきます。

5話はライブの後から始まります。


明「千歌先輩…………」

 

千歌「あ、奥山くんだ!!ねぇ、聞いてよ!私たちね、色々とトラブルあったんだけど、ライブ成功することが出来たよ!!だからね、スクールアイドルを部活として正式に設立することができたんだ!!すごいでしょ??」

 

 よく喋るなー、この先輩。俺、ただ名前呼んだだけなんだけど。てか、近い近い近い近い!!思春期という単語を知らんのか!!

 

千歌「奥山くんは観に来てくれた??」

 

明「いえ………。行きたかったんですが、天気が悪くて家に出れるような状況ではなかったので………。」

 

 そう、本当は彼女たちのライブの姿を見たら鞠莉先輩の問いかけの答えとなるヒントが千歌先輩たちと関わらなくても見つかるかもしれないと思っていたが、運悪く天気が最悪で観に行くことができなかった。

 

千歌「そっかぁー。残念だったねぇ」

 

 千歌先輩は本当に残念そうにしている。

 

 

明「あの、千歌先輩。」

 

 

千歌「なぁに?」

 

 俺の呼びかけに千歌先輩はキョトンとした顔をしている。めちゃくちゃ可愛いな………じゃなかった!!

 

 

 伝えるんだ。答えを見つけるために………

 

 

 

明「お願いがあるんですけど………」

 

 

 

ーーーーー

 

 

千歌「なんと、Aqoursのマネージャーとして奥山くんが入ってくれることになりました!!ほら、奥山くん、挨拶!!」

 

明「奥山 明です。よろしくお願いします」

 

千歌「…………それだけ??」

 

明「それだけですが??」

 

千歌「趣味とかないの??」

 

明「特にないです」

 

 このやりとり、どっかでやったことある気がする。

 

千歌「まぁ、いいや。はい2人とも拍手〜」

 

曜・梨子「わーい…………じゃないわ!!」

 

千歌「!?」

 

 おー、すごい。見事に言葉がシンクロしていた。息ピッタリじゃないか

 

曜「千歌ちゃん、話が唐突すぎるよ」

 

梨子「うん。何があったか教えて??」

 

 そして千歌先輩は2人に俺がAqoursのマネージャーになった理由を説明する。説明すると言っても、シンプルに俺が千歌先輩にAqoursの何か手伝いさせてくれないかとお願いしただけだ。そしたら、千歌先輩はマネージャーとして入って欲しいということだったので、マネージャーとして入部することにした。

 

曜「でも、奥山くんはなんでマネージャーになろうと思ったの??見た感じ、あんまりこういうのはやらないタイプに見えたけど………」

 

 曜先輩の言っていることはごもっともだ。俺だって、正直いってマネージャーなんか、やりたくない。この質問は適当に答えとくか

 

 

明「………先輩たちの頑張る姿を見て、スクールアイドルというものに興味を持ったので、千歌先輩に俺も何か手伝えることはないか、とお願いしただけです。」

 

 

 うん。我ながらよく頑張った方である。

 

曜「そっか!!じゃあ、改めて。私の名前は渡辺 曜です。衣装作り担当してます。これからよろしくね、奥山くん!!」

 

明「こちらこそ、よろしくです」

 

 おー、あれで信用するんだ。チョロいな。

 

千歌「ほら、梨子ちゃんも」

 

梨子「う、うん。桜内 梨子です。作曲担当してます。よろしくね、奥山くん。」

 

明「はい。よろしくです。梨子先輩」

 

 うーん、この人はまだ少し警戒しているな。まぁ、それは当たり前だよな。このオレンジ頭の先輩がおかしいだけだ。

 

千歌「よーし!早速、始めるぞぉ!!」

 

明「なにやるんですか??」

 

千歌「勧誘!!私ね、どうしてもメンバーに入れたい子達がいるんだ!!」

 

 ふむふむ、この先輩に目をつけられている子がいるのか。可哀想に………

 

曜「あ、千歌ちゃん。奥山くん、1年生だからなんとかなるんじゃない??」

 

千歌「!!……流石、曜ちゃん!!天才か!!」

 

 このやりとりからするに、入れたいメンバーは1年生なのか??

 

 

明「ちなみに、一体誰を誘うんですか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「黒澤さんと国木田さんだよ!!」

 

 

 

 

 

 なかなか癖のある奴らじゃないっすか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜夜中にて〜(??視点)

 

 

 

 『人殺し』

 

 

 

??「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

??「姉様!?大丈夫!?」

 

 隣の部屋から、苦痛の叫び声が聞こえたので寝ていた私はすぐに起き上がり、隣の部屋へと駆けつける。すると、そこには着ているパジャマを汗でびっしょりと湿らし、涙を流していた姉様の姿があった。

 

 普段の姉様は、ちゃんとしており、家の手伝いや私と一緒にやっている部活動などでも何も心配されるような素振りはしない。

 

 けれど、たまに姉様は過去のトラウマを夢で見てしまうらしく、その度に叫び声を上げ、起き上がっていた。その度に、姉様はまるで別人のような感じになってしまう。

 

 

??「大丈夫よ、姉様。私がいるわ」

 

 

??「うぅ………。ごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」

 

 

??「……………姉様、今日は私と一緒に寝ましょ。ね??」

 

 

 私は姉様を、落ち着かせるために優しく抱きながら姉様のベッドへと入る。しばらくすると、落ち着いたのか姉様の寝息だけが聞こえるようになった。なので、私も安心してそのまま眠りにつくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねぇ、明。あなたは一体どこにいるの??

 

 




やっぱり、今日中に投稿しちゃった。えへ。

最後のあの二人の描写を入れるかどうか迷いましたが、とりあえず入れてみました。もしかしたら削るかもです。


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『人殺し』はのっぽパンを頬張り、本を読む

お腹が痛い。笑


 ガララと教室の扉を開け、机に座り教科書を机の中に入れている途中に後ろの席である花丸さんに話しかけられた。

 

花丸「奥山くん、お願いがあるんだけど………」

 

明「お願い??」

 

花丸「うん。ルビィちゃんのことなんだけど」

 

明「ルビィさんのこと??」

 

 珍しいな。いつも彼女と一緒にいる花丸さんが相談とは………。喧嘩でもしたんか??

 

花丸「ルビィちゃんを、千歌先輩たちがやっているスクールアイドル部に入れらせてあげたいの。だから協力して欲しいずら」

 

 まさかの展開だ。俺も先輩達に頼まれてどうにか2人をスクールアイドルに興味を持たせれないかと考えていたが、まさかの向こうからやって来てくれるとは。

 

 花丸さんによると、ルビィさんは元々スクールアイドル部が大好きだとこと。けれど、姉………ダイヤ先輩と色々あり、無理してスクールアイドルから疎遠してしまっていること。花丸さんはそれを辞めさせて、ルビィさんのやりたいことをやらせてあげたいというのが彼女の願いだった。

 

明「あぁ、もちろんだ。俺、千歌先輩たちがやってるスクールアイドル部のマネージャーになったんだ。全力で協力するよ」

 

花丸「ほんとずらか!!じゃあ、よろしく頼むずら!!」

 

明「早速なんだが、作戦を1つ思いついた。だけど、この作戦を成功するには花丸さんの協力が必要だ。」

 

花丸「なんずらか??のっぽパンなら沢山あるずらよ」

 

 いや、いらんわ。てか、どんだけ、カバンに詰め込んでんねん。好きなんか?のっぽパン。俺も好きだわ。

 

 

 

 

 コホンと、気持ちを切り替えるために咳を出したあと、俺は花丸さんに向かって言葉を出した。

 

 

 

 

 

明「お前もスクールアイドル部の練習に参加しな。それが条件だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

千歌「という訳で、黒澤さんと国木田さんが体験入部してくれることになりました!!」

 

ルビィ「黒澤ルビィです。よ、よろしくお願いします!!」

 

花丸「国木田花丸です。お願いしますず…………じゃなかった。お願いします!!」

 

 なんとか、作戦は上手くいったみたいだ。モグモグ、のっぽパンやっぱり美味いな。

 

梨子「奥山くん、一体なにしたの??てか、なんでのっぽパン食べてんの??」

 

 梨子先輩がボソッと周りに聞こえない程度の声の大きさで俺に囁く。

 

明「特に俺は何もやってないですよ。ただ、花丸さんからルビィさんに一緒にスクールアイドル部をやってみないかと誘ってあげてと言っただけです。クラスでも彼女は花丸さんと常に一緒にいますからね。俺からよりも花丸さんから言ってもらった方が効果はあると思ったんですよ。のっぽパンについては花丸さんに貰いました。後1本あるんすけど、梨子先輩食べます??」

 

梨子「だ、大丈夫です。」

 

 きっとルビィさんはこの体験入部を通じて千歌先輩たちと一緒にスクールアイドルをやりたいという気持ちになるに違いない。

 

 そして、その時が来たらきっと花丸さんはルビィさんの目の前から姿を消してしまうだろう。しかし、これに関しては特に俺は何も言うつもりは無い。彼女が決めたことだ。だったら、俺は花丸さんを尊重する

 

梨子「でも、奥山くんって結構見てるんだね」

 

明「……………偶然ですよ。あの二人、クラスでも結構浮いてますから。」

 

 『人殺し』になってからは、常に1人で過ごしてきたからな。人間観察とかは得意な方になってしまった。

 

千歌「それじゃあ、屋上にレッツラゴー!!」

 

 

全員「おー!!」

 

 

 こうして、梨子先輩が考案したハードな練習メニューが開始した。

 

 

〜次の日〜

 

明「よっ。もういいのか??」

 

 放課後、俺は図書室へと訪れていた。理由は花丸さんに会いにいくため。昨日、彼女たちが階段ダッシュをしていた時にルビィさんが花丸さんを置いて先に進むのを見ていた。ルビィさんが見えなくなった瞬間、花丸さんはいい笑顔で階段をゆっくりと降り、ルビィさんの目の前から姿を消したのを見かけた。

 

それを見た瞬間、確信した。花丸さんはもう、スクールアイドル部の体験入部をやめ、ルビィさんと関わるのを辞めるのだろうと。

 

花丸「奥山くん。………うん、ルビィちゃんならもう大丈夫。色々と協力してもらってありがとうずら」

 

明「俺は特に何もやってないよ。それよりも、思ったより早かったな」

 

花丸「オラもそう思ったずら。それほど、ルビィちゃんは楽しかったと思うずら」

 

 俺と花丸さんはお互い苦笑いした。

 

花丸「ところで、奥山くんは何しにここに来たずら??もしかして、オラを呼びに来たずらか??」

 

明「図書室に来る理由なんて、1つしかないだろ。ハイこれ」

 

 俺は手に持っていた本を1冊、彼女の目の前に出す。

 

花丸「え?」

 

明「え?じゃないわ。本を借りに来たんだよ。図書室に来る理由なんて、それしかないだろ。このあと、部活もあるんだ。早くしてくれ、図書委員さんよ。」

 

花丸「あ、はい。」

 

 花丸さんは本に着いているバーコードをピッ!!とやったあと、俺に差し出す。

 

花丸「それにしても意外ずら。奥山くんは読書が好きなの??」

 

明「まぁな。気づいてないだけで、俺、教室でも本読んでるぞ??」

 

花丸「知らなかったずら。その本の作者、オラも好きずらよ」

 

明「知ってるのか??この人、結構マイナーな人なんだけどな」

 

花丸「ふふ、マルも読書歴はそれなりに長いずらからね。」

 

明「そっか。じゃあまた今度、この人について語り合おうや。またな」

 

花丸「うん!!またね」

 

 俺は本をスクールバックの中にしまい、図書室から出ようとした瞬間に彼女の顔を見ないでボソッと呟いた。

 

 

明「もっと自分大切にしろ。自分に嘘ついて無理に人に合わせても辛いだけだ」

 

 

花丸「!?」

 

 

明「この言葉って、本当にルビィさんにだけ向けて言った言葉だったのか??」

 

花丸「な、何が言いたいずら??」

 

明「さぁな。俺が君に言いたいのはこれだけだ。またな、花丸さん。」

 

 俺はそう言って、図書室から出ていった。

 

 スクールアイドル部の部室に行く前に職員室へ寄ろうとしたら、背後からバタバタバタと何人かが急いで図書室へと入ってくるような音が聞こえてきた。

 

 

 俺はもうこれ以上はやることはない。あとは彼女たちに任せよう。

 

 

 

 そう思って、俺は職員室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、次の日、黒澤ルビィと国木田花丸が正式にスクールアイドル部、Aqoursに入ったことを千歌先輩に告げられた。




次はヨハネ回だぁーー!!
書くぞぉーー!!

応援よろしくー!!


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『人殺し』は堕天使にドン引きする

ヨハネ編。


 んー、これはどういう反応をすれば良いのだろうか。

 

 俺は、たまたま朝早く起きたので起きる時間帯になるまでニコニコ動画を見ていた。すると、生中継で急上昇1位に上がっているやつを見つけたのでそれを開いた瞬間、画面から現れたのは…………

 

ヨハネ(?)「感じます…精霊結界の損壊により、魔力構造が変化していくのが……。

世界の趨勢が、天界議決により決していくのが……。

かの約束の地に降臨した堕天使ヨハネの魔眼が、その総てを見通すのです!」

 

 現在進行形で不登校中である堕天使ヨハネさんだった。衣装もセリフもガチすぎるだろ。あと、なんか扇風機の音うるせーし。視聴者コメントもなんか、気持ち悪い。

 

ヨハネ(?)「全てのリトルデーモンに授ける。堕天に力を!!ふっ………。」

 

 堕天使ヨハネさんが最後にそう言うと、生放送は終了となった。

 

 俺はただ起きる時間帯まで、ポカーンとしているだけだった。

 

 

〜教室〜

 

 教室に入ると、なんと、今まで学校に来ていなかった堕天使ヨハネさんがいた。周りのクラスメイトの女の子達と楽しそうに会話している。彼女の本当の名前は津島善子って言うらしい。ようやく本名知れたわ。

 

 でも、こうやって見ると、あいつ普通に可愛い女の子にしか見えないな。

 

 ……と数分前に思っていた自分がいました。え、なんかこの子、唐突に黒いローブを着だしたんですけど。カバンの中から術式が印刷されている布取り出したんですけど。ロウソクに火をつけ出したんですけどぉ!?俺含めて周りの子がドン引きしていた。

 

明「そもそも、あれって不要物じゃね??ねぇ、ルビィさん」

 

ルビィ「それ、言っちゃったらなんか終わりな気がする」

 

 

 俺とルビィさんは軽く苦笑いをした。

 

 

 

 

 〜部室にて〜

 

 

 花丸さんが善子さんを部室へと連れてきた。いや、なんで連れてきたの??

 

 そこで、俺たちは善子さんの過去話を聞いた。中学の時に堕天使だと思い込み、それが癖となってしまっているということ。うん、重症やな。

 

善子「堕天使なんて、いないって分かってるんだけど…………」

 

 善子さん自身も、それは分かっているようだった。けれど、気を緩むとすぐに厨二病な発言かつ行動をしてしまうらしい。重症やな(2回目)

 

明「いや、でもお前、今日の朝の生放送めちゃくちゃノリノリでやってたじゃん」

 

善子「あなた、見てたの!?」

 

明「えぇと、なんだっけ??感じます………精霊結界の損壊により、魔力構造が………」

 

善子「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺は、放送で彼女がやっていたポーズをして言っていた言葉をそのまんま語り出すと善子さんは顔を真っ赤にしてガチで泣き始めた。

 

曜「ダメだよ。奥山くん。女の子泣かせたら………」

 

明「いや、そんなつもりでやった訳じゃないんですけどね。パソコン借りてもいいっすか??」

 

 俺は借りたパソコンを使い、ニコ生を開いて善子さんの映像を流した。

 

 

明「まぁ、こんな感じだったんですけど」

 

 

曜・梨子・花丸・ルビィ「うわぁ……」

 

 みんな気まずそうな気持ちで見ていた。だよね、それが普通だよね。だって、俺も朝そんな顔してたもん。

 

善子「なんで、流すの!?やめて!!」

 

 善子さんは顔をさらに真っ赤にさせ急いで、パソコンを閉じた。

 

善子「とにかく、私は普通の高校生になりたいの!!なんとかして!!」

 

 いや、知らんがな。

 

千歌「可愛い…………」

 

明「は?」

 

 今、なんて言ったこのオレンジ頭の先輩は…………

 

千歌「ねぇ!!」

 

善子「うわぁ!!」

 

 千歌先輩が膝を机の上に乗せ、目をキラキラさせる。まさか…………!?

 

 

千歌「スクールアイドル…………やりませんか??」

 

 

善子「へ?」

 

 

 あーあ、この人に目をつけられるとか終わったな。ドンマイ、津島善子。

 

 

 

〜数時間後〜

 

 

千歌「すごーい!!ランキング上がってるよ!!」

 

 堕天使をイメージした服を着て、千歌先輩はパソコンの前でウキウキしていた。

 

 どうやら、千歌先輩はAqoursに個性がないため人気が出ないと考えていたようだ。だから、Aqoursを堕天使アイドルとしてやってみることに。善子さんを中心に6人が堕天使キャラを演じ、PVを出すとあまり良くなかったランキングが徐々に上がり始めた。コメント数も沢山来ている。

 

 『ルビィちゃん可愛い』

 『ルビィちゃんと一緒に堕天する』

 『ルビィちゃん最高』

 『デュフ、ルビィたん。デュフフ』

 『ルビィィィィィィィ!!』などなど

 

 って、よく見たらルビィさんばっかじゃねぇか!!これ、ダイヤ先輩が見たらブチ切れるんじゃねぇの??特に4番目にコメントした人とか………

 

 まぁ、ルビィ本人がとても嬉しそうだからいっか。

 

 

明「でも、個性がないと人気が出ないは違う気がするけどな」

 

 

花丸「ん?奥山くん、何か言ったずらか???」

 

明「………ううん。なんも言ってないよ。」

 

 

 

 

 

 

〜夕方〜

 

 さっきまであんだけ喜んでいたのに、現在、Aqoursの6人は落胆していた。

 

 理由は簡単でさっきまで上がっていたランキングが次第に下がってきたからだ。反応が良かったのは最初だけだった。

 

 6人の中で、1番落ち込んでいたのは善子さんだった。

 

善子「みんな、ありがとうね。」

 

曜「え?」

 

善子「今日のおかげで、堕天使が通用しなかったのが分かったわ。だから、明日から普通の高校生としてやっていけそうな気がするわ」

 

花丸「善子ちゃん………」

 

善子「私が入ると、みんなに迷惑かけちゃうからスクールアイドルに入るのはやめておくわ。…………少しの間だけど堕天使に付き合ってくれてありがとうね」

 

 善子さんは笑顔でそう言ったあと、俺達の目の前から去っていった。善子さんは顔は笑っていたが、なんだか悲しそうにも見えた。

 

梨子「なんで堕天使だったんだろう」

 

花丸「オラ、善子ちゃんの気持ち分かる気がするずら」

 

梨子「え?」

 

 花丸さんが言うに、善子さんも自分が普通であまり目立たないと考えていたのではないか、今の自分が本当なのか、何かの軽はずみで今の状態になってしまっているのではないか………。だから、彼女は自分を堕天使だと思い込んで、過ごしてきたのではないか……と。

 

明「だったら、今まで通り堕天使やればいいのにな。」

 

千歌「え?」

 

明「あ………」

 

 俺は心の中で思ったことをつい口に出してしまった。他のみんなが、俺を「何言ってんだこいつ」みたいな眼差しで見てくる。

 

梨子「どういうこと??」

 

 あー、これは言わなければいけないやつかな。そうですよね。

 

明「だって、別に本人は堕天使キャラを本心で嫌っている訳では無いじゃないですか。逆に普通の高校生に戻ることに対して無理をしているように見える。無理するぐらいだったらそのまま堕天使キャラとして過ごせばいいんじゃないかと思っただけです。」

 

千歌「………そうだよ!!奥山くんの言う通りだよ!!」

 

 

 千歌先輩が俺の言葉で反応する。そして、千歌先輩は明日、善子さんを改めて『堕天使ヨハネ』としてAqoursに勧誘しようと言った。みんなはそれを反対しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、次の日、無事に堕天使ヨハネこと津島善子がAqoursの一員へと加わった。

 




ついに、6人が集結!!
てことは、遂にアレが来ますね


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『人殺し』は夢で夜空を照らす。

どうして、Aqoursの子達が明を苗字で呼ぶのか。

近い将来、分かります。


千歌「人殺し…………」

 

 え?

 

曜「人殺し…………」

 

 どうして…………それを………

 

梨子「人殺し…………」

 

 やめろ…………

 

花丸「人殺し…………」

 

 言うな………………

 

ルビィ「人殺し…………」

 

 黙れ………………

 

善子「人殺し…………」

 

 黙れって言ってるだろ…………

 

 

 

 

 

 千歌・曜・梨子・花丸・ルビィ・善子「人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺s『ピピピピピピピピピピピピ』………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「黙れって言ってるだろうが!!」

 

 

 目を覚めた俺は叫びながら、上半身を起き上がらせる。息が荒く、汗もびっしょりとかいていた。

 

 そして、右手の甲がジンジンと痛む。理由はすぐに分かった。すぐ向こう側に、壊れている目覚まし時計があるからにして、目覚める際に裏拳して吹っ飛ばしてしまったのであろう。

 

 「今回ばかりはマジでタチが悪いな………」

 

 俺はため息をつきながら、スマホで時間を確かめる。ちなみに、外はまだ暗かった。

 

 『3:25』

 

 時間を確認した俺はベットから降り、ジャージ姿へと着替えようとする。

 

零「明ちゃん…………大丈夫??」

 

 ジャージ姿である零さんが心配そうに扉を開け、顔だけをひょっこりと出す。原因は叫びながら起き上がってしまったからだろう。

 

零「もしかして、また見ちゃった??」

 

明「…………うん。」

 

零「今日はもうやめとこうか??」

 

明「大丈夫だよ。もう落ち着いたから」

 

零「でも…………」

 

明「大丈夫大丈夫!!あ、零さん。俺まだご飯食べてないから先行ってて。すぐに行くから」

 

零「………分かったわ。無理しないでね」

 

 俺は笑いながらそう言うと、少し安心したのか零さんは家から出ていった。

 

 それを確認したすぐに俺は口に手を抑え、トイレへ直行し、そして……………

 

 

 

明「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

 

 思いっきり吐いた。

 

 

 

 

 

 

〜海岸〜

 

 砂浜へ行くと、地域の方々が集まっていた。理由は今日から海開きということなので朝早く集まって掃除をするという毎年恒例の行事であった。

 

明「零さん、どこだろ」

 

千歌「奥山くーん、おはよう」

 

曜「おはヨーソロー」

 

 零さんを探していると、『十千万』と書かれた提灯とゴミ袋を持った千歌先輩と曜先輩の姿があった。

 

明「おはようござ…………」

 

 

 

 

 

千歌『人殺し…………』

 

曜『人殺し…………』

 

 

 

 

 

 

明「ッッ……………!?」

 

 2人の姿を見た瞬間、今日見た夢がフラッシュバックとして襲いかかった。俺はその場で動けなくなり、意識が飛びそうになった。

 

千歌「奥山くん??」

 

明「…………ハッ」

 

 千歌先輩が話しかけてくれたおかげで俺は正気を取り戻した。

 

曜「どうしたの??ボーッとして」

 

 曜先輩が心配そうに俺を見つめてくる。俺は誤魔化すように笑う。

 

明「いや、ただの寝不足ですよ。昨日、夜遅くまで勉強してたんで」

 

千歌「うっそだー!!奥山くん、勉強しないタイプに見えるのにー??」

 

 おいコラ、それはどういうことだ。ちゃんと勉強はしてるぞ。この前もテストも良かったし………

 

曜「千歌ちゃんは奥山くんを見習おうよ。この前のテストもやばかったでしょ??」

 

千歌「むぅ………」

 

明「まぁ、頑張ってください。俺はこれで」

 

曜「まったねー。」

 

千歌「あ、これ持っていきなよー。」

 

 

 

 

 千歌先輩と曜先輩と別れた俺は手に『十千万』と書かれた提灯を持って再び零さんを探していた。

 

花丸「奥山くんずらー。」

 

ルビィ「お、おはよう」

 

善子「遅いわよ、私のリトルデーモン。」

 

 1年生の3人だ。本当に仲良いんだな。あと、善子さん。俺はアンタのリトルデーモンになった覚えはない。

 

 そして、俺はおそらく来るであろう『アレ』に備えて予め唇を軽く噛みながら笑顔で答える。

 

 

明「おはようさん。」

 

 

 

 

 

 

花丸『人殺し…………』

 

ルビィ『人殺し…………』

 

善子『人殺し…………』

 

 

 

 

 

 来た…………!!俺は噛んでいた力を1層強めた。

 

 

 

 

 

 ーーブチィ……………

 

 

 

 

ルビィ「ピギィ、奥山くん!!血が出てるよ!!」

 

奥山「あ、本当だ。どうやら誤って噛んじまったみたいだ。」

 

 俺は知らなかった風に演じ、タラーっと出ている血を腕で拭う。幸い、ジャージが赤かったのでそこまで目立たなかった。てか、めちゃくちゃ痛い

 

善子「だ、大丈夫なの!?」

 

明「大丈夫だよ。」

 

花丸「今日はやめといた方がいいずら!!ゆっくり休んどくずら!!」

 

明「お前は俺の保護者か。ただ唇切っただけで大袈裟だよ。ほれ、のっぽパンでも食っとけ」

 

 俺は朝ごはん用に持ってきたけど結局食わなかったのっぽパンを花丸さんに差し出す。

 

花丸「のっぽパンずら〜」

 

 花丸さんは嬉しそうにのっぽパンを封を開け、むしゃむしゃと食べ始めた。この子、チョロいな。

 

 

 

 

 

零「あ、明ちゃん。来たんだ」

 

明「零さん。良かったぁー、やっと見つけた」

 

 花丸さんたちと別れたあと、再び零さんを探して数分後にようやく会えた。

 

零「大丈夫なの?」

 

明「まだ心配してたの??もう大丈夫だから掃除やろ」

 

 そして、1時間くらい掃除をやったあと、見覚えのあるオレンジ頭の先輩が俺たちに向かって大声を上げた。いや、何しての??

 

零「あら、明ちゃんの知り合い?」

 

明「部活動の先輩だよ………」

 

零「そっか。周りにいる子達も??」

 

 よく見ると、千歌先輩の側に曜先輩、梨子先輩、そして1年生3人がいた。

 

明「うん。」

 

零「面白そうな子達ね」

 

明「めちゃくちゃな人達だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

零「いつか、あの子達が君を救ってくれたら…………」

 

 

 

 

 

 

 

明「零さん?なんか言った??」

 

零「いや、何も♪」

 

 この時の零さんの顔はなんだかいつもと違う気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「皆さんに協力して欲しいことがあります!!みんなの形をひとつにするために!!」

 

 

 

 

 

 

 千歌先輩のこの言葉のおかげで、浦の星女学院の全生徒と地域の方々の協力を得たAqoursは『夢で夜空を照らしたい』のPVを完成させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




スヤスヤー


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『人殺し』はついに答えを見つける

お待たせしました。


明「東京でライブ!!??」

 

千歌「うん!すごくない??」

 

 地域の方々の協力と共に撮った『夢を夜空で照らしたい』のPVが物凄く好評で、再生回数5万5000、全国ランキング99位、人気急上昇1位という素晴らしい結果を出した。それによって、東京スクールアイドルワールドの運営委員会から先程メールが届き、内容は東京でライブをしないか、というものだった。

 

明「凄いっすね!」

 

千歌「みんなのおかげだよー!!」

 

梨子「交通費とかはどうするの??」

 

千歌「お……お小遣い前借りで!!」

 

明「いや、部費は??」

 

曜「部費は前のPVで結構使っちゃったからね〜。」

 

 まぁ、曜先輩の言う通り協力があったからとはいえライブする場所代やライブの衣装代、そして今回のPVの目玉である1000個のスカイランタンの材料費や制作費も部費で出したからな。流石にもう限界なのか。

 

明「そりゃあ、仕方がありませんね」

 

『ピンポンパンポーン…………ハァイ、1年生の奥山 明クゥンは今すぐに1人で理事長室に来てくだサーイ。繰り返しマース、1年生である奥山 明クゥンは今すぐに1人で理事長室に来てくだサーイ。よろしくお願いしマース。………ピンポンパンポーン』

 

 

 はい??

 

 

花丸「奥山くん、鞠莉さんに呼ばれてるずら。」

 

梨子「何かしたの??」

 

明「いや、何も…………。」

 

 てか、ピンポンパンポーンも口で言ったのがちょっと腹立つな

 

千歌「どうするの??」

 

明「どうするも何も、呼ばれたからには行くしかないでしょう。先輩達は先に練習を始めてください。」

 

千歌「分かった。みんな、着替えたら屋上ねー!!」

 

千歌以外と人達「はーい!!」

 

 俺は部室から出て、鞠莉先輩が待っている理事長室へと向かった。

 

 

 

 彼女はこの学校内でも数少ない、俺が『人殺し』であることを知っている人物だ。恐らく、俺を呼んだ理由はまたそれに関してだろう。

 

 

 

鞠莉『また鹿角姉妹に会えるかもしれないと言ったら貴方はどうする??』

 

 

 

 俺はふと、鞠莉先輩が言っていた言葉を思い出した。俺はまだ、どうして千歌先輩達と関わることによって彼女たちに会えるのか、その理由が分からなかった。

 

 

 そもそも、俺は姉ちゃん達に会いたいの…………か…………??

 

 

 俺は頭の中によく分からないモヤモヤを作りながら理事長室へとたどり着いた。

 

明「失礼します」

 

 2回ほどノックしてから扉を開け、頭をペコッと下げてから理事長室の中へとは入った。理事長室には鞠莉先輩1人だけだった。

 

鞠莉「いらっシャイニー。」

 

 鞠莉先輩は不気味な笑顔でよくわからん挨拶をして俺を迎え入れた。

 

明「ご要件は何で??」

 

鞠莉「いやん。そんな怖い顔しないデ。COOLな顔が台無しよ??SmileSmile♪」

 

明「あいにく、俺はあの事件を起こしてからは心の底から笑えなくなったんで無理っす。それよりも早くご要件を。俺、部活あるんで」

 

鞠莉「あら、嫌がってた割にはちゃんと活動はしてるんだネ」

 

明「さぁ、どうなんでしょうね。」

 

 この人の考えいることが本当に分からない。

 

鞠莉「呼び出した理由は東京の件ヨ。一応、この学校のスクールアイドルとして参加するのだから注意事項をいくつか言っておこうと思ってネ」

 

明「それだったら、別に俺じゃなくてもいいじゃないですか」

 

鞠莉「貴方、Aqoursのマネージャーでしょ??こういうのも立派な仕事よ♪」

 

明「…………メモとるんでちょっと待ってください。」

 

鞠莉「OK♪」

 

 そして、ポケットからメモを取り出した俺は鞠莉先輩が言う言葉をそのまんまメモに取る。今の彼女はふざけるような素振りは全くない。言葉も正論ばかりで、学校の頂点てまある理事長としての仕事を全うしていた。

 

鞠莉「…………ぐらいかしらね。ちゃんとメモ取ったかしら??」

 

明「はい。」

 

鞠莉「そう…………。ならいいわ。私があなたに言いたかったのはこれだけだから。ちゃんとマネージャーとして彼女達を支えてあげてね。もう、部活の方にLet's goしてもいいわよ。」

 

明「…………分かりました」

 

 今回、ふざけなかった彼女に俺は戸惑いを感じながら理事長室から退室しようとした。

 

 

 だが、俺が理事長室から出る直前に背後から鞠莉先輩が話しかける。

 

 

 

鞠莉「あの時の答え…………もう見つけたかしら??」

 

 

 

 

明「ッッ!?………………いえ。」

 

 

 

 

 

 話しかけられた言葉に動揺するも、俺は正直に応える。

 

 

 

鞠莉「じゃあ、そんな奥山くんの為にとっておきのヒントをあげる。私は、『千歌っち達がこうなることを予め予測してた』……以上よ。」

 

 

 

 

明「………………失礼します」

 

 

 

 

 理事長室へと退室した俺は、先輩達が練習している屋上へと向かった。鞠莉先輩が言っていたヒントの意味を考えながら………。

 

 

 『こうなること』??こうなることっていうのは、どういうことだ??まさか、鞠莉先輩はAqoursが近い将来に東京でライブをすることを分かっていたのか??だとしても、これが答えにどう繋がって…………

 

 

 

明「あっ…………………」

 

 

 

 俺はふと、鞠莉先輩のヒントによって、とある可能性が頭の中に思い浮かぶ。もし、2人が『アレ』をしているのならば、確かに俺は彼女達と会えるかもしれない。

 

 

 俺は思い浮かんだ可能性を確認するために屋上ではなく再び部室へと急いで向かった。そして、部屋に入ると俺はテーブルの上に置いてあるパソコンに手を取り、すぐに起動させカタカタとキーボードを打つ。

 

 

 

 そして、俺は東京アイドルスクールワールドのホームページを開き、今回のイベントの東京でライブするスクールアイドルの一覧を見た。

 

 

 

明「もし、俺の考えが合っているなら……」

 

 

 

 

 俺は1つずつ参加するスクールアイドルをクリックして、詳細を開きそのスクールアイドルに所属しているメンバーを見続けた。

 

 

 調べ始めてどれほど、時間が経過したのかは分からない。

 

 

 けど、ようやく分かったことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「見つけた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北海道出身スクールアイドル

 

 『Saint Snow』

 

 メンバー

 

 鹿角 聖良 3年生

 

 鹿角 理亞 1年生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「姉ちゃん……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の姉2人は千歌先輩達と同じ、スクールアイドルをやっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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『人殺し』は遂に東京へ。

いつもよりは少し長めです。


 Saint Snow。

 

 函館聖泉女子高等学院に通う2人の姉妹がユニットで組むスクールアイドル。

 

 メンバーは3年生である鹿角聖良と彼女の妹である1年生の鹿角理亞。

 

 結成してあまり月日は経っていないが、彼女達の綺麗な容姿や力強い歌声、ダイナミックなパフォーマンスが魅力的で全国のスクールアイドルの中でも注目を浴びている。

 

 俺は意外な気持ちだった。聖良姉ちゃんも理亞姉ちゃんも確かに幼い頃から容姿は凄く良かったが、別にアイドルとかは興味無かったはずだ。俺がいなくなった間に何かあったのだろうか??

 

 しばらく、Saint Snowについて調べていると、無料で見れる彼女達のPVを発見した。

 

 

明「姉ちゃん達の動画…………」

 

 

 俺は恐る恐るその動画を開いた。

 

 すると、映像の中から可愛らしい2人の姉妹が映し出されると……………

 

 

 

 

 

 

聖良『人殺し…………』

 

 

 

 

聖良『もう……………私達に関わらないで』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「うっ!!」

 

 

 

 フラッシュバックで過去に聖良姉ちゃんに言われたことを思い出し、その影響で体の中から何かが込み上げてくるのが分かった。なので、俺は口に手を当て男子トイレの方へと直行し、個室に入って便器に向かって込み上げてくる何かを吐き出すために口を開いた。

 

 

 

 

 

明「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 姉2人のことはもう受け入れたつもりだったのだが、どうやら俺はまだ弱かったようだ。

 

 

 

 そして、吐き終えた俺はあの動画を見たことによって、出来ては行けないとある欲が出来てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 姉ちゃん達に……………一目会いたいと。

 

 

 

 

 

 

 

 〜数日後〜

 

 ついに東京に行く日がやって来た。

 

 

 俺は集合場所である千歌先輩の家である旅館の前に行くと既に私服姿である梨子先輩が待っていた。早いなと思ったが、千歌先輩の家の隣だし当たり前か。

 

梨子「奥山くん!!おはよう」

 

奥山「おはようございます。」

 

梨子「あれ?奥山くんってメガネかけてたの??」

 

奥山「いつもはコンタクトですけど、たまたま昨日できれちゃって………。」

 

 俺は、あはは作り笑いしながら答えるが、もちろん嘘である。コンタクトはまだ家に沢山あるが、もし東京で偶然と彼女達に会ってしまった場合の対策として出来るだけ別人を装った。

 

 MARVELと刺繍してある帽子に、メガネ。そして、服装も黒いTシャツの上に灰色のパーカーというちょっと暗めの感じの服装にチョイスしてみた。これだったら、もし遭遇したとしても一瞬でバレることは無いだろう。

 

 そもそもあの二人が俺の事を覚えているのかどうかも疑問に思うところではあるが…………。

 

 

千歌「おっはよー。」

 

 

 旅館から千歌先輩がニコニコとしながらやって来た。めちゃくちゃダサい格好で。

 

明・梨子「………………」

 

 俺と梨子先輩は驚きすぎて、言葉が出なかった。本当にダサすぎる!!あまりファッションに詳しくない俺でもそれだけは分かる。

 

梨子「東京だからってそんなに構えなくても………」

 

 

 うん。梨子先輩の言う通りだ。

 

 

 

ルビィ・花丸「おはようございまーす」

 

 

 お、この声はルビィさんに花丸さんだな。

 

 

明「おはよう…………っておい。」

 

 やって来たルビィさんと花丸さんの2人は千歌先輩と劣らずのすごい格好でやって来た。

 

ルビィ「どうでしょう?ちゃんとしてますか??」

 

 してませんね。めちゃくちゃ小物つけとるやん。

 

花丸「こ、これで渋谷の険しい谷も超えられるずら??」

 

 俺達は東京に行くんですよ??なんで、登山の格好なんだよ。ヘルメット、点滅すな!!眩しいから!!

 

 このあと、3人は梨子先輩に怒られ、ようやくまともな格好に着替えた。もしかして、曜先輩や善子さんも服装ヤバいんじゃないだろうか??

 

 俺は不安な気持ちになりながらも、千歌先輩のお姉さんの車に乗り、駅に向かった。

 

 

 

〜駅前〜

 

 俺の予測は半分当たってて半分外れてた。

 

 駅前で待っていた曜先輩はまともな格好だったが………

 

善子「冥府より、数多のリトルデーモンを召喚しましょう」

 

 善子さんの格好が、3人よりも酷かったです。はい。

 

 周りに一般人が不思議がってスマホでパシャパシャと写真を撮っていた。これ、ネットの晒し者にならないだろうか??

 

千歌「クックックッ、善子ちゃんもやってしまいましたね」

 

 おい、そこのアホ3人。真面目ぶってるけどお前らも数分前まではアレと同類だったんだからな!!

 

千歌「そもそも奥山くんだって、格好変じゃん!!メガネだし!!帽子被ってるし!!」

 

 千歌先輩の言葉に、1年生3人も「そーだ、そーだ」と連呼する。やれやれ………

 

明「……だそうですが、どう思いますか??梨子先輩。曜先輩。」

 

梨子「少なくとも、貴方たちよりは何百倍もマシよ。」

 

曜「私も帽子被ってるしね…………」

 

明「だそうです。」

 

 ニッコリとして、そう言うと千歌先輩と1年生3人は「くそー!!」と叫びながらorzのポーズをとる。おいおい、ここ駅前だぞ!?やめれ!!

 

 

 

 

 

 この後、千歌先輩のクラスメイトの子が現れ、差し入れでのっぽパンをくれたあと、俺達は電車に乗って東京へ向かった。

 

 

 

 

 

千歌「ねぇねぇ、東京に着いたら絶対にμ'sが練習場所として使ってた階段登って、神田明神に行こうね!!」

 

 

 

 

 

 

〜国官理空港〜(??視点)

 

 

 私達は東京でライブする為、空港へと来ていた。もうすぐ、私達が乗る便がくる。

 

 

??「姉様??」

 

姉様「…………どうかした??」

 

??「………いえ、なんでもないわ。」

 

 お姉様は微笑みながら答える。けど、ずっと姉様と一緒にいた私は分かる。

 

 

 

 姉様は嘘をついている………と。

 

 

 

 原因も知っている。

 

 

 恐らく、あの時あの瞬間にあいつに言ってしまったことだろう。

 

 

 姉様は、自分のやってしまった過ちを自覚してからはずっと心の中で自分を責めている…………。

 

 

 私は姉様を助けたい。けど、どうしたらいいか、分からない。

 

 

 あいつを、姉様に会わせるのも考えたがそれは難しいし、効果としては諸刃の剣だ。確かにあいつに会えれば姉様は良くなるかもしれない。けど、きっと過去にやってしまった過ちを思い出し、自分をさらに傷つけてしまうかもしれない。あいつも、あいつで私達を恨んでいるかもしれない。

 

 

 

 だからこそ、私は姉様と一緒にいる。だって、私は姉様のことが好きだから…………。いつか、姉様を助けてあげたいから……………。

 

 

 

??「ねぇ。姉様。」

 

 

姉様「どうしたの??」

 

 

 私は姉様に向かって微笑みながら言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「もし、東京に着いたらライブの成功を祝って神田明神へ行きましょ。」

 

 




お気に入り登録してくれた皆様、本当にありがとございます。
この嬉しさをバネとして、更新頑張っていくのでよろしくお願いします。

そして、次回、遂に……………,!?


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『人殺し』は遂に出逢う。

奥山(鹿角) 明(15)
誕生日12月12日
異名『人殺し』

見た目は理亞と瓜二つと言わんばかりの容姿。つまり、美男子。
髪型も理亞と同じ色でボサボサ頭。
しかし、身長は178とそこそこ高め。
元々、運動自体は『人殺し』になってしまった以降はしなくなったが、身体能力は高い。バク転やロンダートも簡単に出来る。
頭もそれなり良い。



 〜電車〜

 

 俺達は今、電車に乗って東京に向かっている。目的地である秋葉原駅に着くまでまだ時間がかかるので、メンバーは車内でワイワイしていた。

 

 俺以外のメンバーは仲良くトランプで遊んでいた。チョロっと見た感じ、ババ抜きをしている。

 

 先輩たちの誘いを断った俺は窓で景色を見ながらポケーっとしながら、零さんに東京に行くことになったことを伝えた時のことを思い出していた。

 

 

 

〜数日前〜

 

 

 

明「ちょっと話があるんだけどさ…………」

 

 俺は晩御飯を食べている所に向かいの席に座っている零さんに今日あったことを伝えた。Aqoursが前のPVで結果を残したこと。そして、それが理由で東京のイベントでライブすることが決まったこと。そして………俺の姉2人もスクールアイドルをやっており、そのイベントに参加するということを………。

 

 

 俺の話を聞いた零さんはゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

零「あ、そう。じゃあ、お土産よろしく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………は?

 

 

 

 

 

 

 

明「それだけ??」

 

零「え?それだけだけど…………」

 

 零さんはキョトンとした顔で言う。

 

明「俺、結構真面目な話したつもりだったんだけど………」

 

零「だから、東京でライブすることが決まって、もしかしたらそこで明ちゃんの実のお姉さん達に会うかもしれないっていう話でしょ??」

 

 あっさり言うやん。こっちはそれを言うのにめっちゃ緊張したのに。

 

明「う、うん。」

 

零「それを知ってもなお、明ちゃんが行きたかったら行けばいいじゃないの。」

 

明「零さん…………」

 

 零さんは微笑みながら俺の頬を触れる。彼女の手は優しく、暖かった。

 

 

零「いい?明ちゃん、よく聞いて。例え『人殺し』になってしまったとしても、明ちゃんには明ちゃんだけの道があるの。そして、どの道を通るのかは明ちゃんが決めるの。私は明ちゃんの味方だし、君が選んだ道をならばどんな道でも全力で応援する。………………家族として当然のことよ」

 

 

 彼女の言葉が俺の心の中で響く。どうして、この人が言う言葉はいちいち安心感があるのだろうか。

 

 

零「それでどうするの??行くの??行かないの??」

 

 

 

 零さんのこの言葉で俺は曖昧だった気持ちをはっきりとさせて、初めて言葉として出した。

 

 

明「俺は……………姉ちゃん達に会いたい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「おはヨーソロー、奥山くん。秋葉原に着いたよ」

 

明「ふぇ??」

 

 曜先輩は笑いながら、俺の肩を叩き起こす。どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 

 俺は曜先輩にお礼を言いながら、座席から立ち上がり電車に降りる。

 

 

梨子先輩以外のメンバー「「おぉーーー!!!」」

 

 

 梨子先輩の人たちは秋葉原の様子を見て、感激していた。確かに、沼津とかはこんなに人はいないからな。千歌先輩達にとっては新鮮なんだろうな。

 

 

善子「ここが……あまねく魔の者が闊歩すると言い伝えられる、約束の他・魔都東京。」

 

 魔都じゃねぇよ。首都だよ

 

曜「はしゃいでいると、地方から来たって思われちゃうよ」

 

ルビィ「慣れてますーって感じにならないと

と」

 

 2人の言う通りだ。

 

千歌「そっか!!………ほんと原宿って、いっつもこれだからまじヤバくな〜い??」

 

明「千歌先輩。ここ、秋葉原っす。」

 

 俺は秋葉原駅に指を指し、ジト目で指摘してやる。すると、千歌先輩はてへぺろとする。うん、千歌先輩が美人じゃなかったら飛び蹴りしてたわ。

 

花丸「未来ずら〜!!」

 

 花丸さんは秋葉原の街風景を見て、目をキラキラさせている。そういえは、花丸さんはお家が寺だから今時の物をあまり熟知してないんだよな。この前、俺のスマホを見て「これ何ずら??」と聞かれた時はマジでビビったわ。

 

 

 それから、千歌先輩の案で各自で行きたいところに行って観光することとなった。

 

 

 千歌先輩とルビィさんはスクールアイドルのショップへ、曜先輩は制服ショップに。善子さんは堕天使ショップに行き、梨子先輩は本屋の同人誌コーナーへとお手洗いと嘘を言ってコソコソと入っていく様子を目撃した。あの人、百合系の人間だったんだ。意外だ………。

 

 そして、俺と花丸さんに誘われ、梨子先輩が入って行った同じ本屋へと立ち寄った。もちろん、同人誌コーナーではない。

 

花丸「ここの店、品揃えいいずら〜。」

 

 花丸さんは嬉しそうにどんどんと本を手に取り、カゴの中へと放り投げる。更にどんどん放り投げる。もっと更に……………え?君どんだけ買うん??カゴの中既にパンパンよ??

 

明「本当に本を読むのが好きなんだな」

 

花丸「ずら〜。特にこの張江先生が書かれた『人殺しの息子と呼ばれて』は本当に傑作で……………」

 

 

 

 『人殺し』…………

 

 

 

花丸「…………奥山くん??」

 

 

明「ハッ…………!?」

 

 

 しまった。『人殺し』という単語で、少しの間フリーズしてしまった。汗もかいてるし、息も少しだけ荒くなっていた。

 

花丸「体調…………悪いずらか??」

 

 花丸さんが心配そうに話しかけてくる。俺はなんとか誤魔化すように作り笑いをする。

 

明「いやいや、なんでもないよ。ただ、花丸さんが凄い量の本を買おうとしてるから驚いてただけ。」

 

花丸「そうずらか??これでもまだまだ少ない方ずらよ??ルビィちゃんと買いに行く時はもっと凄いずら」

 

 マジか。この子の家の本棚一体どうなってんの??

 

 

花丸「それにしても、奥山くんって時々だけど唐突にぼーっとしてる時があるずらよね??なにか、理由があるずら??」

 

 

明「ーーーーッッ!?…………特に何も無いよ。」

 

 危なかった。またしても、彼女の質問のせいでフリーズするところだったが、なんとか持ちこたえて普段通りの様子で答えることが出来た。

 

 

 …………国木田 花丸。この子とは距離をとった方がいいな。

 

 

 

 

 

 

 この後、観光を終えた俺達は無事合流した。善子さんは両手に恐らく堕天使ショップで購入したであろう紙袋を持っており、曜先輩は何故か巫女のコスプレをしていた。いや、何でだよ。

 

 そして、今俺達の目の前にあるのが、神田明神へと繋がる階段。しかし、この階段はただの階段ではないらしい。

 

ルビィ「これが、μ'sがいつも練習していたって階段。」

 

 音ノ木坂学院を廃校から救ったといわれる伝説のスクールアイドルμ'sが練習として使われていた階段……………。今となっては、ファンの人達が聖地巡礼として足を運ぶほどの人気スポットとなっているらしい。(ルビィさん情報)

 

 

 千歌「登ってみない??」

 

 

 千歌先輩の言葉でみんなが頷き、そのまま登って行った。毎日、走り込みをしているおかげか、みんなはあっという間に登りきっていた。

 

 

明「まぁ、俺は別に踊らないし、μ'sとか興味ないからここで待っとこ。」

 

 

 俺は階段に座り込み、フードを被って先程、本屋で買った本を取り出して読み始める。

 

 

 

 5分くらい経った時であろうか、上の方から誰かが階段を降りてくる音が聞こえた。

 

 

 

 俺はてっきり千歌先輩達かと思い、本を閉じ、ケツをパンパンと埃を落としながら立ち上がる。

 

 

明「みなさん、意外と早かっ……………………」

 

 

 言葉を出しながら振り返った俺は、途中で声が出なくなる。

 

 理由は降りてきたのはAqoursのメンバーではなかった。

 

 

 

 2人組で、1人は穏やかそうな顔つきにサイドテールである女性で、もう1人の方はキリッとした顔つきにツインテールである女性だった。

 

 

 

 

 

 そして、俺はこの2人に見覚えがある人物で、東京に来た目的でもある人物でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「Saint Snow……………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神田明神の階段から降りてきたのは、俺の実の姉である鹿角 聖良と俺の双子の姉である鹿角 理亞であった。

 




実質、この話がこの作品の1話といっても過言ではない。ようやく、物語が始まる笑

あと、この作品のヒロインは花丸さんにしようと思います。


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『人殺し』は涙を流す

 今、10年ぶりに俺は姉2人と遭遇した。まさか、こんな早く出会うことになるなんて…………。けど、不思議と姉ちゃん達を見ても拒絶反応は起こらなかった。

 

 

聖良「あのー、大丈夫ですか??」

 

 

 聖良姉ちゃんは心配そうな表情をして、俺に話しかける。困っていそうな人がいたら、優しく声をかけてくれる所は昔から変わってない……

 

 

明「は、はい………。大丈夫です」

 

 

 俺は目を逸らしながら、弱々しく答える。

 

 すると、俺を怪しく思ったのか理亞姉ちゃんが不機嫌そうな表情となる。

 

 

理亞「姉様。なんだかこの人、気味悪いわ。早く行きましょ」

 

 

 なんて、酷い言い様だ…………と思ってしまうが、理亞姉ちゃんの言う通りだった。こんな帽子の上にフードを被って、弱々しく答える男なんて一般人からしてもヤバい奴だ。言葉がキツイ所も昔からまんまだな。

 

 

 

聖良「どうして泣いているのですか??」

 

 

 

 

明「え?」

 

 

 聖良姉ちゃんの言葉で俺は自分の涙で頬を濡らしていたことにようやく気付く。

 

 腕で何度も涙を拭っても止まることはなかった。

 

 

 

 嬉しいんだ…………俺。姉ちゃん達と会えて…………。そして、同時に悲しい。だって、2人の弟、鹿角 明として話しかけられないのだから。

 

 

 

 

明「うっ…………ううっ………」

 

 15歳となった高校1年生の男が女性2人の前で泣き始めるなんて惨めだった。きっと、姉ちゃん2人は怪しがって俺の目の前から………

 

聖良「これ、良かったら使って下さい」

 

明「え?」

 

 聖良姉ちゃんは微笑みながら、俺にハンカチを差し出す。本当に昔から変わってないな。理亞姉ちゃんも呆れてるし………。

 

 俺は礼を言いながら、ハンカチを受け取って、涙を拭った。すると、自然と落ち着いた。

 

聖良「落ち着きましたか??」

 

明「はい。」

 

 俺の言葉を聞いて、ホッとする聖良姉ちゃん。

 

聖良「そういえば、私達のスクールアイドル名をご存知でしたよね??」

 

 そういえば、ポロッと言ってしまったな。

 

明「俺、Aqoursっていうスクールアイドルのマネージャーをやってまして………」

 

聖良・理亞「Aqours!?」

 

 ん?どうして、2人は驚いているんだ??

 

聖良「先程、神田明神でお会いしたんですよ。」

 

 あ、そういうことか。

 

聖良「では、また明日お会いすることになりますね」

 

 聖良姉ちゃんの言う通りだ。また、会うことが出来るなんて嬉しいな

 

 

理亞「姉様、そろそろ」

 

 

聖良「分かったわ。えぇと、名前だけ聞いてもいいですか??」

 

 

明「え?奥山……………」

 

 ここで、明と言ってしまったら、なんだかイケない気がするな。よし

 

 

明「零。奥山零です」

 

 

 ごめんなさい、零さん。貴方の名前使わせていただきます。

 

聖良「奥山くんね。それじゃあ、また明日ね」

 

明「はい。ハンカチは必ずお返ししますね。」

 

 そして、姉ちゃん達は歩き出すと、

 

明「あの!!」

 

 つい、呼び止めてしまった。2人はキョトンとして俺を見つめる。

 

 

明「Aqoursのマネージャーである俺が言うのもアレですけど……………明日のライブ頑張って下さい!!応援してるので!!」

 

 

 俺がそう言うと、聖良姉ちゃんは微笑み、そして最後まで不機嫌そうな表情をしていた理亞姉ちゃんは睨みつけながら、俺の目の前から去って行った。

 

 

 結果からして大満足だった。心の隅っこで、離れ離れとなってから10年間の間、会いたいと思っていた姉ちゃん達に会えたのだから。なんだか、今まで背負っていた重みが抜けている感じがする。

 

 

 俺はあまりにも嬉しくなってスキップを………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「『人殺し』の癖に、なに幸せそうな顔してんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ッッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突に、言葉が聞こえた俺はハッとなって周りを見回す。しかし、誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 気の…………せいだよな………………??

 

 

 

 

 

 この時、俺は気づいていなかった。俺の心の底にある黒いモヤが大きくなっていることに…………。

 

 

〜10分前〜(花丸視点)

 

 

 神田明神に来たオラ達は謎の美女2人に会ったずら。歌がとても綺麗だったずら。

 

 その美女2人うち、サイドテールの女性に話しかけられ、もう1人の女性がオラ達をロンダートをして追い越したあと、そのまま去って行ったずら。都会の人はあんな凄いこともできるんずらね。

 

曜「あの二人、一体何者なんだろうね??」

 

梨子「うん……。私達のこと知ってたみたいだし…………」

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんは、さっきの美女2人のことを気にしてるずら。

 

千歌「歌…………綺麗だったな……」

 

 千歌ちゃんはさっきの美女2人が歌ってた歌に感動していたずら。でも、オラもそう同感ずら。

 

ルビィ「でも、ちょっと怖かったな」

 

 ルビィちゃんは少し怖がっていた。なので、オラがルビィちゃんの近くに寄り添ったずら。

 

善子「まさか………暗黒の世界に繋がる扉が開いて…………」

 

 うん。善子ちゃん、それは無い。

 

善子「善子じゃくて、ヨハネ!!」

 

 

 …………心を読まないでほしいずらよ。

 

 

 こうして、おら達はライブの成功を祈ったあと、奥山くんと合流して旅館に向かったずら。

 

 

 

 

 そういえば、さっきのツインテールの子、どことなく奥山くんに凄く似ていたような……………。

 

 

 

明「あ、花丸さん。饅頭食べる??さっき買ったんだ」

 

花丸「食べるずら〜♡」

 

 

 

 ま、気のせいずらよね。モグモグ……………饅頭美味しいずら〜♡

 




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更新はまた明日に!!

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『人殺し』は決意する

 〜旅館にて〜

 

 旅館に着いた俺たちは、部屋でワイワイとしていた。もちろん、2つ部屋を借りた。6人と美女と一緒の部屋で夜を過ごすとか、無理無理。俺の理性が爆発するわ。

 

 そして現在、お互い温泉に入り、食事を済ましたあと、何故か俺の部屋に入ってきて、くつろいでいた。

 

 

曜「いやー、温泉気持ちよかったねぇ」

 

 

 ちょっと待て。何でアンタはCAのコスプレしてんだ。何で誰もツッコミ入れないの??

 

 

善子「堕天使ヨハネ、降臨!!はぁ………かっこいい」

 

 

 おめーもか、おめーもなのか津島善子。マントひらひらすな!!それ、絶対今日堕天使ショップで買ったやつだろ!!あと、テーブルの上に乗るのやめなさい!!

 

 

 俺は溜息をつきながら、熱いお茶を飲む。あー、熱いお茶を飲むと和菓子とか食べたくなるよな…………と思ってたら、曜先輩と梨子先輩が隣で饅頭を美味しそうに食べていた。あれ?あの饅頭、どこかで見覚えがあるぞ??

 

明「その饅頭、どうしたんすか??」

 

梨子「テーブルの上に置いてあったの。これ旅館のやつでしょ??」

 

 いや、違う。あれは…………

 

花丸「おみやげに買ってきたけど、夜食用にととってあるず………」

 

曜・梨子「え?」

 

 やっぱし……………。あれは花丸さんがお土産用と夜食用に購入した『ぴよこ万十』だった。本屋に寄った後に彼女が買っていたのを覚えている。

 

花丸「まるのバック・トゥ・ザ・ぴよこ万十ーーーー!!」

 

 いや、花丸さん。驚きすぎて謎発言してるぞ。

 

 

ルビィ「奥山くん。ルビィがお布団の準備してあげるね」

 

 こらこら、君は勝手に何してんの?………。別に俺まだ寝ないんですけど。ドジっ娘が君がそんなことしたら…………

 

ルビィ「きゃあ!!」

 

明以外のメンバー「きゃあ!!」

 

 ルビィさんは足を滑らせてテーブルの方に勢いよく倒れ込む。その衝撃で、饅頭やらお茶やらスマホやらが宙を舞い、部屋中に散らばり、悲惨な状態へとなった。

 

 

明「はぁ…………」

 

 

 

 

 俺が顔に手を置き、もう一度深いため息をついた。そして、すぐにメンバー全員を部屋から追い出したのは言う必要も無いだろう。

 

 

〜深夜〜

 

 

 メンバー全員を追い出した後、さっきまでの騒がしさが嘘だったと思わせるぐらいシーンとは………ならなかった。彼女達の部屋は隣なので微かだが、声が聞こえる。

 

 しばらくの間、明日のライブに使う機材やライブの演出やらの最終チェックを行ったあと、布団を敷いて寝ようとした。

 

 しかし、今日の出来事が濃密すぎて簡単に眠りにつくことはできなかった。

 

 

 10年ぶりに…………、俺は血の繋がった姉2人との再開を果たした。

 

 

 もちろん、向こうは俺のことを気づいてないことに悲しさはないと言ったら嘘となるが、『人殺し』である以上、仕方がない。

 

 

 恐らく、姉ちゃん達の顔を見れるのは明日のライブで最後となる。

 

 

 明日のステージで踊る姉ちゃん達の姿を見られるのだ。最後には十分相応しいだろう。

 

 

 Aqoursのメンバーには申し訳ないが、明日のライブはSaint Snowを応援させてもらおう。

 

 

 そして、ライブが終わったらAqoursのマネージャーを………

 

 

 トントン………

 

 

 

千歌「奥山くん………まだ起きてる??」

 

明「千歌先輩??」

 

 扉から軽いノック音が聞こえたあと、千歌先輩の声が聞こえてきた。

 

明「中、入ります??」

 

千歌「うぅん。このままでいい。」

 

明「そうですか。一体どうしたんですか??」

 

 

 千歌先輩のことだ。どうせくだらないことを……………

 

 

千歌「ありがとうね」

 

明「え?」

 

 突然、感謝の言葉を送られた俺は目を丸くする。

 

千歌「奥山くん………男の子なのにスクールアイドルのマネージャーとして、とても頑張ってくれたでしょ??」

 

明「そんな大したことしてないですよ」

 

 本当のことだ。別に特別なことをしている訳ではなく、マネージャーとしての基本的な仕事しかしていない。彼女たちの休憩の間に、飲み物やらタオルやらを渡したり、予定表を組みたてたり、Aqoursの作詞・作曲・振り付け・衣装作りなどの手伝いをしていただけだ。

 

 そもそも、俺がAqoursのマネージャーに入った理由は姉ちゃん達に会うため。しかし、それは今日の夕方に見事に達成された。

 

 

 

 だから、俺は明日のライブを以てAqoursのマネージャーを辞めるつもりでいた。目的が達成された今では俺はもう彼女たちと関わる必要はないのだから。

 

 

 

千歌「うぅん。そんなことでも私達は嬉しかったよ。」

 

明「………そうですか」

 

 

千歌「うん。だから、明日のライブ。精一杯頑張ろうね!!学校のみんなの為にも!!」

 

 

 そう言って、先輩はタタタと隣の部屋へと帰って行く音が聞こえた。最後の千歌先輩の声、なんだかいつもの先輩らしくなかった。不安の感情が込められた声だった。恐らく、学校にいる生徒の期待に応えられるかどうか不安になっているのだろうか。

 

 しかし、そんなの今の俺には知ったことではない。俺はAqoursのマネージャーを明日のライブを例え成功させたとしても辞める。

 

 

 『人殺し』である俺がこれ以上、彼女達と関わる訳にはいかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

??「なんだぁ、自分でも分かってるじゃねぇか。そうだ、お前は『人殺し』だ。それを忘れるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ッッ!?」

 

 

 

 

 

 …………まただ。またあの声だ。

 

 

 

 何も感情が込められていない冷たい声…………。

 

 

 

 

 俺はガバッと布団から起き上がり、周りを見回す。しかし、またしても誰もいなかった。

 

 

 俺は警戒しながらも再び布団に入り、眠りに着こうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「お前は俺からは逃げられない。なぜなら俺は………………」

 

 

 

 

 

 

 



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『人殺し』は我慢する。

お気に入り100件を超えました。

ありがとございます!!もっと、面白くかけれるよう頑張ります


 〜ライブ会場〜

 

明「こんなもんかな??」

 

 俺は、Aqoursのメンバーよりも先に会場に入り、ライブで使う音響機材やら照明機材のチェックを行っていた。一応、リハーサルでは上手くいったが念には念だ。交代の時間ギリギリまで触らせてもらった。

 

 あと、会場のスタッフさんに、Aqoursのライブは2番目であり、それが好評ならば、今年開催される『ラブライブ』という、いわば野球でいう甲子園的な大会に出場することができるかもしれないという話を聞いた。

 

 今のAqoursは絶賛人気急上昇中だ。今回のライブによって『ラブライブ』に出場する可能性は決してゼロではない…………。

 

 

明「まぁ、俺にはもう関係ない話だけどな」

 

 

 俺は苦笑いしながらボソッと呟くと、ポケットに入っていたスマホがブーブーと鳴る。スマホを取り出すと、どうやら彼女達も会場に入ったらしく、合流したいということだった。

 

 ちょうど、裏方の仕事は一通り終わったので俺は、彼女たちがいる控え室へと足を運んだ。

 

 部屋に入ると、『夢で夜空を照らしたい』で使用した衣装を来た彼女達がいた。周りにも他校のスクールアイドルが沢山いた。てか、俺はここに入ってよろしかったのだろうか??何人か、こっち見てるし気まずい。

 

曜「あ、奥山くん。おはヨーソロー」

 

明「おはようございます」

 

曜「そこはおはヨーソローでしょ〜」

 

 いや、知らんがな。絶対にやらんぞ。

 

花丸「ねぇ、奥山くん」

 

明「なに?」

 

 花丸さんが苦笑いしながら話しかけてくる。

 

花丸「ルビィちゃんを励ましてあげて欲しいずら」

 

明「ルビィさん??………あぁ、察し」

 

 花丸さんが指を指すと、その方向には緊張で怯えているルビィさんの姿があった。元々、彼女は人見知りな所があるからしょうがないか。

 

明「こういうのは、善子さんの仕事だろ」

 

花丸「善子ちゃんは…………」

 

明「??…………何してんだアイツ」

 

 花丸さんは違う方向に指を指すと、その方向には善子がなんやら怪しげな魔術師アイテムを広げて厨二病発言している最中であった。周りの人達が若干引いてるじゃねぇか。

 

 そんな、善子さんをスルーして俺は花丸さんと一緒にルビィさんに近づく。

 

ルビィ「あ、奥山くん………おはよう」

 

明「うん、おはよう。」

 

ルビィ「ルビィ………やっぱ無理だよ」

 

花丸「そんなことないずら。ルビィちゃん、ふんばルビィずら」

 

明「何それ、がんばリー○エのパクリ??」

 

花丸「こっちの方が先だから任○堂の方がパクリずらよ」

 

明「何でスマホとかは知らねぇくせに、ポケ○ンのネタは知ってんだよ。あと、メタ発言やめろ。色んな意味で潰される」

 

ルビィ「ぷぷっ………2人とも何やってんの??」

 

 ルビィさんが可愛らしく笑った。どうやら、このよく分からないやりとりで緊張がほぐれたようだ。

 

花丸「ずら!!」

 

 花丸さんよ、胸張ってドヤ顔するのやめてくんない??腹立つし、その………目のやり場が…………

 

 

〜ステージ裏〜

 

 出番が2番目だということなので、1番目のスクールアイドルが終わったらAqoursの番になるので、俺達はすぐに出られるようにステージ裏へとやって来ていた。ちなみに、俺は照明の手伝いを引き受けているのでヘルメットを装着している。

 

 メンバーを見てる感じ、緊張はしているものの、心配するような感じには見えない。大丈夫そうだ。

 

 

 このイベントが俺にとって彼女達と関わる最後のライブ…………。

 

 

 

 そう思うと、胸が少しだけ痛い。マネージャーとして入部したのは嫌々ではあったが、素直な気持ちで言うと居心地は悪くはなかった。彼女達といると、本来の自分が出せれている感じがした。

 

 

 

 もし、俺が『人殺し』じゃなかったらずっとこの部に……………と、そんな気持ちが湧き出てしまいそうになる。が、必死に俺は心の中に閉じ込める。

 

 

 ダメなのだ。そんな気持ち、『人殺し』である俺が持ってはいけないのだ。

 

 しかも、俺には姉ちゃん達の件もある。

 

 

 今しかないのだ。両方の気持ちを断ち切るタイミングは…………。きっと、この機会を逃してしまったら俺は…………。

 

 

 すると、急にバッと、目を瞑ってしまうぐらいの照明が照らされる。その照明の中から2人の人物が現れた。

 

 

 その人物とは…………。

 

 

 

千歌「スクールアイドルだったんですか??」

 

 

 

 Saint Snowである鹿角 聖良と鹿角 理亞だった。

 

 

 

 

明(1番目だったのかよ!!)

 

 

 

 俺は心の中でそう叫び、すぐに顔を見られないように、ヘルメットを深く被る。

 

 

聖良「見てて………。私達Saint Snowのステージを」

 

 

 

 聖良姉ちゃんがAqoursのメンバーにそう言うと、2人はライブステージへと歩みでる。

 

 

 

 

 俺の実の姉である2人のスクールアイドル、Saint Snowのライブが始まろうとしていた。

 

 




やばい。ストックがぁぁぁ!!

あと、ちょっとしたお知らせですが、今日の夜、次話を投稿するつもりでいますが、それを投稿したあと11月の3日まで用事があり、お休みです。

3日の夜、または4日以降からはまた投稿できると思いますので、それまで気長にお待ち下さいませ。

お気に入りや感想など、お待ちしております。


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『人殺し』は再び遭遇する

お久しぶりです。今日からまた投稿を開始しますので、気長に待ってて下さい。


 Saint Snow「♪大切なのは〜SELF CONTROL!!♪ 」

 

 Saint Snowのライブが終わった………。

 

明「すげぇ………」

 

 姉ちゃん達のライブを見て、俺はこれしか言葉にすることが出来なかった。

 

 心が踊るような、かっこいい歌詞に力強いパフォーマンス、そしてシンプルな照明さえもアクセントへとなっていた。

 

 チラッと横を見ると、Aqoursのメンバー、特に千歌先輩が感化されているように見えた。

 

司会「では、Aqoursの皆さんお願いします!!」

 

 2番目であるAqoursが呼ばれた。しかし、Saint Snowのライブの余韻が残っているのか、全員反応するのが一瞬遅かった。

 

千歌「よし!!みんな、行こう!!」

 

千歌以外「うん!!」

 

 ライブステージへと向かう彼女たちは俺の方をチラッと見たので、俺は「頑張れ」という気持ちを込め、拳を突き出すと彼女たちは可愛らしく微笑みながらステージへと走っていった。

 

明「…………うし!」

 

 俺は小声で気合を入れ、ヘルメットを深く被り直して音響・照明を操作する部屋へと向かう。

 

 

 俺が今、出来ることは最後のライブを支えることだ。

 

 

 俺は心の中でそう思いながら、彼女達が立ち位置に着いたところを確認したところで、俺は曲を流した。

 

 

 

〜数時間後〜

 

 イベントが終了した。だが、俺のテンションは決して高くはなかった。

 

 Aqoursのライブはミスひとつもなく、成功だった。むしろ、今までのやつに比べたら1番良い出来であった。

 

 Aqoursのライブが終わっても、俺はイベントの裏方の手伝いがあり、Aqoursのメンバーと会うことが出来なかったが、イベント終了後、投稿された票数がまとめられている紙を見せてもらった時に俺は唖然した。

 

 

 Aqours  0

 

 

 Aqoursの票数が0であった。あんだけ良いライブが出来たというのに………。きっと、彼女たちは落ち込んでいるであろう。

 

 ちなみに、Saint Snowは9位で惜しくも入選を逃していた。姉ちゃん達のライブも良かったのに落選したのも驚きだ。上には上がいる。

 

 

 ラブライブというものは遊びなんかではない……………

 

 

 なぜか、不思議とそのような結果論となった。

 

 

司会「みんな、お疲れ様〜。とても助かったわ〜」

 

 

 会場の片付けが終わり、俺たちイベントの助っ人達は解散となった。報酬として、司会のお姉さんからラムネを貰った。割合わないと思ったが、周りのみんなは喜んで飲んでいたのでそんなものなのか??と、思いながらラムネを飲んだ。

 

 LINEによると、Aqoursのメンバーは少し観光した後に、既に電車へと乗ったのこと。元々、帰りは別々という話になっていたので焦ることでもない。逆にトラブルもなく帰りの電車に乗れたことに安堵の気持ちへとなる。

 

明「次に会った時に辞めるって言えばいっか」

 

 もう、目的を果たした俺はマネージャーとしている理由が無くなったので次に会った時にAqoursのマネージャーを辞めると言おうと決めた。

 

 ピロンとLINEに通知が来た。俺はスマホを見ると6件入っていた。

 

 

千歌『裏方のお仕事お疲れ様!!明くんも帰り気をつけてね。』

 

曜『全力前進ヨーソローで帰るんだよー。無事に帰れるよう祈ってるであります(≧▽≦)ゞ』

 

梨子『お疲れ様です。また、明日ね!!』

 

花丸『まるずら。あかりくんおつかれさまずらー。』(ルビィのアカウント)

 

ルビィ『お疲れ様です!!ライブ前はありがとうね!!』

 

善子『我がリトルデーモンよ。しっかりと身体を休めるが良い。』

 

明「どうして………」

 

 

 本当は今、すごく辛いはずなのに…………。

 

 

 俺はなんだか、複雑な気持ちとなりながらも返信を送った。

 

 

 メンバーからのLINEを見たあとは、まだ少しだけ時間に余裕があったのでぶらぶらと秋葉原を観光していた。

 

 途中、可愛らしいメイドさんにメイド喫茶へ連行されそうになったが怖くて逃げた。だって、目が獲物を狙う肉食動物みたいな目だったもん。普通に怖いわ

 

女性「やめてください!!」

 

明「ん?」

 

 路地裏の方から、女性の声が聞こえてきた。

 

 ソローッと見ると、女性らしき1人が男性4人ぐらいに囲まれていた。囲まれているせいで、女性の顔があんまり見えないが、声のトーン的に嫌がっているように見えた。

 

 これは、関わったらメンドくさいことになるやつだ。警察にだけ連絡して離れよう。

 

 

 そして、俺は一通り警察に通報した後、警察に到着するまでおってほしいということだったので渋々とおることにした。

 

 俺は再びソローッと顔を出して、状況を確認した。

 

男性1「ねぇ、いいじゃん??俺達と遊ぼうよ」

 

女性「嫌だって何回も言ってるじゃないですか!!やめてください!!」

 

男性2「いいねぇ、こういう女好きだわ」

 

男性3「俺も俺も。早く車に乗せようぜ」

 

 

 ん?車??おいおい、これ、なかなかヤバい奴らじゃないか??そういえば、Yahooニュースで秋葉付近で女性が強姦の被害に遭っているという記事を見たけど、もしかして、コイツらか??

 

 

男性4「だな!!おら、こっち来いよ!!」

 

明(警察共は、何をやっている!?早く来いよ!!)

 

 男性4が女性の腕をグイッと無理やりと掴み上げる。

 

女性「きゃあ!!」

 

 男性2「ちっ………、これ以上騒がれると厄介だな。少し眠ってもらうか」

 

 男性2がそう言って、女性に目掛けて手を出そうとしていたところで、俺は身体が動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

明「やめろ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は男性2の拳を手のひらで受け止めたあと、すぐに男性2に目掛けて飛び蹴りを喰らわした。運良く、頭に入ったので男性2は白目になりながら倒れ込む。

 

男性1「なんだ、てめぇは!!」

 

 男性1の問いに何も答えず、男性1の腹に目がけて拳を突き出し、ダウンさせる。ちょうどそこで男性3が背後から飛びかかってきたので、しゃがんで攻撃を回避しつつ首にチョップをして気絶させた。

 

男性4「ひぃ!!」

 

 俺が男性4に向かって睨みつけると、彼はビビってその場で姿を消した。

 

明(ふぅ、零さんに鍛えてもらって良かったぜ。)

 

 俺は垂れた汗を拭いながら零さんに感謝する。今ではOLとして働いている彼女ではあるが、実は零さんは空手の達人であり数年前までは世界チャンピオンとして空手の業界では有名な人物であった。怪我をしてしまったせいで、空手から完全に離れてしまっていたが、俺が空手を教え欲しいと頼んだところ、ノリノリで彼女が編み出した奥義まで教えてくれた。そのおかげで、今では戦えれるようになった。

 

 埃をパンパンと払った後、襲われそうになった女性に話しかけられた。

 

 

女性「あの、ありがとうござ…………あれ?あなたは??」

 

 

明「え……………」

 

 女性を助けるあまり、無我夢中で彼女の顔をはっきりと見ていなかったが、改めて彼女の顔を見た俺は唖然となる。

 

 

 

 

聖良「奥山くん…………??」

 

 

 

 

 

 

 

 俺が助けた女性はなんと、聖良姉ちゃんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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『人殺し』は沼津へ帰る

 どうやら、俺は神様に嫌われているようだ。

 

 だって、普通助けた女性がもう合わないと心の中で決心した聖良姉ちゃんだとは誰も思わないだろう。

 

 俺はあの時、助けようと足を動かしてしまったことを歯を食いしばりながら後悔した。

 

 

明(今ならまだ間に合う!)

 

 

 俺は変な気持ちになる前に、その場から離れようとした。だが………

 

聖良「待ってください!!」

 

明「!?」

 

 聖良姉ちゃんが急に俺の背中に抱きつく。俺はテンパリながらも何とか彼女を離そうとするが、力が強く離すことが出来なかった。

 

 これ以上はやばい!!

 

 そう思った俺は、聖良姉ちゃんには申し訳ないが、怒りの感情を込めて言葉を出そうとした。

 

明「ちょ、いい加減に………」

 

 

 

 

聖良「ゔゔっ……………」

 

 

 

 

 

明「ッッ!?」

 

 

 彼女は…………聖良姉ちゃんは泣いていた。

 

 

 顔を俺の背中に押し付け、表情は見えないものの、身体を震わせ泣き声と嗚咽がはっきりと耳に入ってくる。そんな彼女の姿を見ていたら何も言うことが出来なかった。

 

 よほど、怖かったのだろう。あんな男性4人に囲まれ、車に乗せられそうになったのだ。怯えるのは当たり前だ。

 

 状況が状況だ。仕方がない…………。

 

明「あそこの公園に移動しましょうか」

 

 

 今だけだ。今だけ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「落ち着きましたか??」

 

聖良「はい。ありがとうございます…………」

 

 俺はとりあえず近くにあった公園まで訪れ、聖良姉ちゃんをベンチに座らせたあとに自販機で買ったお茶を渡した。その頃には、聖良姉ちゃんはまだ顔は目とかが腫れてて赤いものの、落ち着いていた。

 

明「…………」

 

聖良「…………」

 

 そこから互いに一言も喋らず、しばらく沈黙の時間が続いた。

 

 気まづい、と思っていたが先に口を開いたのは聖良姉ちゃんだった。

 

 

聖良「とりあえず、貴方に謝らなければなりません」

 

 

明「え?」

 

 突然、謝罪をされたので驚いたが話を聞くに、ライブの結果発表をされたあと、理亞姉ちゃんがAqoursのメンバーに対してつい失礼な言葉を言ってしまったらしい。Aqoursのメンバーと別れたあと、聖良姉ちゃんが理亞姉ちゃんに「今のは失礼ですよ」と注意したところ、そこからちょっとした言い争いとなってしまったようで、姉ちゃん達は離れ離れで行動するようになってしまったという。そして、1人で行動していた時に男性達に囲まれたという。

 

明「別に気にしてませんよ。多分、彼女たちも大丈夫だと思います」

 

聖良「そうですか。そう言ってもらえるとこちらかとしても助かります。あの子は昔から言葉に少しトゲのある言い方をするので…………」

 

 

 

 そんなこと、知ってるよ…………

 

 

 

 俺はそう思いながら、適当に彼女の言葉に相槌していた。内容はほとんど、妹である理亞姉ちゃんのことについてだった。

 

 

 

明「本当に妹さんのことが好きなんすね」

 

 

 無意識に口が開いてしまった。唐突の発言に聖良姉ちゃんはキョトンとしているが、すぐに笑顔となり

 

 

聖良「はい!!理亞は私の……大切な家族ですから」

 

 

 大切な家族ですから………

 

 

 たいせつな家族ですから………

 

 

 たいせつなかぞくですから………

 

 

 タイセツナカゾクデスカラ………

 

 

 

 

 

聖良『人殺し』

 

 

 

 

 

 

聖良『もう、私達と関わらないで』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「そっか。俺はもう違うのか………」

 

聖良「え?」

 

 

 

 

 

 

 

理亞「姉様!!」

 

 

 

 

 俺の呟きに、少し聖良姉ちゃんが反応した瞬間、理亞姉ちゃんが泣きそうな顔をしながら公園に現れた。

 

理亞「姉様!!大丈夫??どこも怪我ない??」

 

聖良「え、あ、うん。大丈夫よ」

 

 そして、理亞姉ちゃんは聖良姉ちゃんが無事だと改めて認識すると安堵のため息を吐く。その後、喧嘩きた件について聖良姉ちゃんに謝っていた。もちろん、聖良姉ちゃんはそれを直ぐに了承する。

 

理亞「ところで、どうして貴方がいるの??」

 

 理亞姉ちゃんは聖良姉ちゃんの前に立ち、俺の方を見て睨みつける。まぁ、当たり前っちゃあ当たり前だ。

 

聖良「り、理亞!!違うの!!話を聞いて」

 

 聖良姉ちゃんは理亞姉ちゃんに事情を説明した。すると、理亞姉ちゃんは今度は少し気まずそうな表情で俺の方に近づく。

 

理亞「姉様を助けてくれてありがとう………。そして、勘違いしてごめんなさい。それと、彼女たちにも…………」

 

 理亞姉ちゃんは頭を下げる。

 

明「俺は別に大丈夫ですよ。Aqoursのみんなには今度会った時に言ってあげてください。それじゃあ、俺はこれで。そろそろ電車が来ますので」

 

 本当はもう既に乗りたい便は行ってしまったが…………。

 

 しかし、俺はすぐにこの場から離れたいと思っていたので少し小走りで彼女たちと別れようとしていた。

 

 姉ちゃん達とこれ以上いると、色んな意味でおかしくなりそうだった。自分が自分で無くなりそうな感覚がある。

 

 

聖良「ちょっと待ってください!!」

 

 

 聖良姉ちゃんの呼びかけに俺は何故か足を止めてしまった。そして…………

 

 

 

聖良「あなたとは…………どこかで会ったことありますか??」

 

 

明「ッッ!!??………………さぁ。」

 

 

 

 

 俺は予想外の言葉に少しフリーズになりながらも、なんとか気を保ち、振り向かないまま素っ気なく答え、走った。

 

 

聖良『あなたとは……………どっかで会ったことありますか??』

 

 

 電車に乗った俺は最後の聖良姉ちゃんの言葉が頭の中で何度も何度もリピートしていた。

 

 

 例え、忘れようとしても…………。

 

 

 そして、気づいたら俺は沼津駅へと戻ってきていた。

 

 

 



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『人殺し』はタイミングを逃す。

昨日、投稿できなくてすみませんでした。


 遂に、この日がやってきた。

 

 

 俺は今日、部活の時にAqoursのマネージャーを辞めることをメンバーに伝える。

 

 

 何回か、深呼吸をしたあとカバン持ち部室へと行こうとした瞬間にトントンと肩を数回叩かれた。

 

 振り向くと、のっぽパンを美味しそうに頬張っている花丸さんがいた。

 

花丸「明くん、一緒に部室に行こうずら」

 

 うっ……、ルビヨハならまだしも、花丸さんとは出来るだけ関わりたくないんだけどなぁ。

 

明「お、おう。他の2人は??」

 

花丸「先に行っちゃったずら。」

 

 花丸さんは(´・ω・`)の顔をする。このまま放置したら人としてダメな気がするな。しょうがない…………。

 

明「そっか………。じゃあ、行こっか」

 

花丸「ずら♪」

 

 そして、俺達は他愛のない話をしながら部室へと向かった。すると、部室に近づくにつれ、言い争いが聞こえてきた。

 

明「騒がしいな」

 

花丸「なにか、あったんずらかね??」

 

 そして、部室の扉を開けると困った表情をしているAqoursのメンバーと、怒った表情をしている3年生である鞠莉先輩と……見たことの無い青髪のポニーテールの女性。スカーフの色的に3年生か??そして、呆れ顔をしているダイヤ先輩がいた。

 

 いや、どういう状況これ??

 

千歌「あー!!イライラするぅー!!」

 

鞠莉「本当に腹立つよね、こいつ!!」

 

??「勝手にそっちがイライラしてるだけでしょ??」

 

 やべー、話に途中参加だから何が何だか分かんねぇな。そして、鞠莉先輩や。こいつはねぇだろ。アンタどんだけキレてんねん。

 

ルビィ「でも、この前弁天島で踊っていたような………」

 

 ルビィさんの一言でポニーテール先輩は恥ずかしそうに顔を赤くしている。それを見て、鞠莉先輩はニヤニヤ顔で彼女を煽りまくっている。その姿を見てネット上で話題のペンギンの「ねぇねぇ、今どんな気持ち」のコラ画像を連想させる。

 

 

??「スクールアイドルは絶対にやらない」

 

 

 ポニーテール先輩はそう言って、部室から出て行った。話を改めて聞くに、彼女の名前は松浦果南。3年生で住んでいる家はダイビングショップを経営しているのこと。そして、千歌先輩と曜先輩の幼馴染。驚いたことに去年、鞠莉先輩とダイヤ先輩と3人でスクールアイドルをやっていたらしい。そこそこ人気はあったものの、東京のイベントのライブで何故か果南先輩が踊らなかったらしく、そこで3人にいざこざが発生し解散。鞠莉先輩は一時的に海外に留学してしまったが、スクールアイドルを諦めきれずに、浦の星女学院に戻って来たという。なんつー執念だ。

 

曜「でも、なんで果南ちゃんは踊らなかったんだろうね」

 

 曜先輩の言葉に他のメンバーは頷く。

 

 まぁ、大体は原因の予想はついてるけどな。

 

 その鍵を握っているのは…………………ダイヤ先輩だ。

 

 

明「ダイヤ先輩は何か知ってるんですよね??」

 

 

ダイヤ「!?」

 

 

 俺の問いかけに、ダイヤ先輩の表情は曇る。………ビンゴだ。

 

 

 すると、ダイヤ先輩は俺達から逃げるように部室から逃走を図ったが、善子さんのコブラツイストによって確保された。

 

ダイヤ「ピギャアアアアアアアア!!!」

 

 あ、うん。この人、ルビィさんの姉だわ。

 

 

 〜黒澤家〜

 

 観念したダイヤさんは俺達を黒澤家に招待し、全てを話した。東京のイベントで踊るライブの練習により、鞠莉先輩の足に負担の積み重ねで怪我をしていたこと。それを果南先輩が気付いて、これ以上足に負担をかけさせないため………、鞠莉先輩のこれからの将来を守るために歌わなかったこと。

 

 そう…………、頑固そうに見える果南先輩は全て、大好きな親友である鞠莉先輩の為にやった事だった。

 

鞠莉「ッッ!?」

 

 話を聞いて鞠莉先輩は驚愕の反応を見せる。まさか、彼女が歌わなかった理由が自分のせいであったとは予想外であったのだろう。

 

 すると、鞠莉先輩は部屋から出ようとしていた。

 

ダイヤ「どこ行くんですの!?」

 

鞠莉「ぶん殴る!!そんなこと、一言も相談しないで!!」

 

ダイヤ「果南さんはずっと、あなたのことを見てきたのですよ。立場も、気持ちも、誰よりも考えている。」

 

 ダイヤさんがそう言うと、鞠莉先輩は何も言わず果南先輩の所へ雨降っている中、傘もささずに飛び出して行った。

 

 残された俺達はシーンとなった。最も、この中で1番心配そうな表情をしているのはダイヤ先輩だった。

 

ルビィ「お姉ちゃん………」

 

ダイヤ「…………」

 

明「ダイヤ先輩は行かないんですか??」

 

ダイヤ「え?」

 

 俺の呼びかけにダイヤ先輩含め、Aqoursのメンバーを見つめる。

 

明「今の鞠莉先輩は失礼ながらめちゃくちゃカッコイイと思いました。友達………いや、親友の為にあそこまでできる人はそういませんよ。………それに比べてあなたは何をしてるんですか??」

 

ダイヤ「それは…………」

 

明「あなたにとって、あの二人は所詮その程度の関係…………」

 

 

 パシィィィィィィン!!

 

 

Aqours「!?」

 

 台詞の途中に、俺の頬に強い痛みが生じながら吹っ飛ばされた。そう、怒りの表情を見せるダイヤ先輩にビンタされたのである。

 

 

 ダイヤ「そんなこと…………そんなことないですわ!!」

 

 

明「うっ……………、じゃあ貴方にとってあの二人は??」

 

 

ダイヤ「鞠莉さんと果南さんは……………私の…………私の大切な親友ですわ!!」

 

 

 ダイヤ先輩は瞳に滴を溜めながら叫ぶ。

 

 

ダイヤ「私だって、あの頃のように戻りたい!!また、鞠莉さんと果南さんと一緒に…………いたい!!話したい!!遊びたい!!そして…………歌いたい!!」

 

 ダイヤ先輩の言葉に俺はニヤリと微笑む。

 

 

明「やっと本音を言いましたね」

 

 

ダイヤ「あ………」

 

Aqours「ダイヤさん!!」

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」

 

 そして、周りのみんなも涙を流しながら嬉しそうに微笑む。

 

千歌「私達も行こう!!」

 

 千歌先輩の言葉にみんな頷き、部屋から出て行った。

 

 ここで、俺はハッと大事なことに気づいた。状況が状況ですっかりと忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

明「辞めるって言うタイミング逃しちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、3年生である3人もAqoursへと加入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜茶房菊泉〜(理亞視点)

 

 

 東京のイベントのライブが終わって数日が経過した。惜しくも入選を逃した私達は、帰ってから反省会を開き、次のライブでより良いものが出来るように話し合った。

 

 そして、今は実家である喫茶店のお手伝いを姉様と2人でやっている。あ、また姉様、ぼーっとしてる。

 

理亞「姉様??大丈夫??」

 

聖良「はひ!?だ、大丈夫よ。オーダー取ってくるわ」

 

 姉様は顔を真っ赤にし、誤魔化すようにそう言って、お客さんの所へ行ってしまった。

 

 あの東京のイベント以降、姉様の様子がおかしい。いや、姉様の様子がおかしいのは10年前からそうなんだけど、前までとは少し違う。

 

 

 前までは、明の件で後悔や苦しみの表情をしていた。しかし、最近は少し嬉しそうかつ恥ずかしそうな表情をするようになった。

 

 

 私はその表情を知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 姉様が、最近するようになった表情。あれは………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恋をしている乙女の顔だ。

 

 





Aqoursの3年生加入編は少し無理やり感あったかな??笑


あと、Saint Snowはヤバい展開になってしまった。でも、後悔はしていない。


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『人殺し』は砂浜で気持ちよく眠る

 Aqoursに3年生であるダイヤ先輩、鞠莉先輩、果南先輩が加入し月日が流れ、季節が夏となり学生が楽しみにしている夏休みへと突入した。

 

 そして、俺は未だに彼女達に辞めると伝えてないまま、Aqoursのマネージャーをズルズルとやっている。

 

 自分でも、今の状況は不味いと思っている。しかし、中々言えないでいた。なにせ、3年生が加入してからは、賑やかへとなり俺にとって更に居心地の良い場所へとなってきている。辞めたくないという気持ちが無意識に勝ってしまうのだ。

 

 なので、近々、Aqoursのメンバーで俺の過去を知っている鞠莉先輩とダイヤ先輩の2人に相談することにした。元々、マネージャーをするきっかけを作ったのは彼女たちなので、それなりに親身になって考えてくれる……………はずだ。

 

 今日からAqoursは合宿なので、合宿中………もしくは合宿が終わった後に話しかけようと思う。

 

 

 

 

 

 そして、現在、朝の4時。俺はぽつんと1人で集合場所である砂浜で体操座りをしていた。

 

 んー??あれあれ??4時に集合って言ってなかったっけ??どうして、誰もいないの??おーい、Aqoursに入ってポンコツ化としたダイヤさん??決めた貴女がいないってどういうこと??

 

 とりあえず、俺はスマホを取り出しLINEを開いてダイヤ先輩に連絡する。

 

明『朝の4時に来たのに誰もいないんですけど。』

 

ダイヤ『………おはようございます。そして、本当に申し訳ございません。今起きましたわ』

 

 ダイヤ先輩が美人じゃなかったら、普通にぶっ飛ばしてた。他のメンバーに送っても、皆『今起きた。』という連絡が返ってきた。終いには、善子さんに『あなた、それ本気で信じてたの??まじウケるwww』とディスられたので絶対にいつか仕返ししてやろうと心の中で誓う。

 

 唯一、花丸さんだけスマホ持ってないので連絡することは出来なかったが、恐らく彼女も寝ているだろう。まぁ、今のところ俺は彼女のことを避けているのでそれはそれでありがたいんだけどな

 

 

明「まぁ、いいや。寝よ」

 

 俺は持ってきていたブルーシートを敷き、横になって目を閉じた。ザザーと波の音が心地よく耳の中に入り、気持ちよく寝れそうになっていたが…………

 

 

??「あれ?明くん??」

 

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、目を開けるとそこには

 

 

花丸「どうして、みんないないずら??もう集合時間過ぎてるのに…………」

 

 

 俺が今最も警戒している人物…………、国木田 花丸さんであった。

 

 

 えぇ……(困惑)。よりによって、花丸さんかよ。俺、さっき彼女のことを避けてるって言ったばかりじゃん。神様、俺の事嫌いすぎでしょ。

 

花丸「明くん??」

 

明「あ、いや、なんでも。他のみんなは寝坊しちゃったらしい。」

 

花丸「えぇーーー!!マル、せっかく早く起きたのにぃ!!」

 

 花丸さんは頬を膨らまし、プンスカと怒る。うわぁ、可愛いわぁ………。

 

花丸「奥山くんはこれからどうするずら??」

 

明「このまま、寝るよ。眠いし」

 

 あと、君と関わらなくて済むしな………

 

花丸「………………そうずらか。マル、一応本を何冊か持ってきたから読みたくなったら言って欲しいずら」

 

明「ん、了解。」

 

 

 会話が終わり、俺は再び目を閉じようとする。

 

 ピタッ…………

 

 

明「…………花丸さん??近くね??いや、近いよね??」

 

 目を開けると、横になっている俺の肩のすぐ側に花丸さんが本を読もうとしていた。てか、普通に俺の肩が花丸さんの腰と接触している。これはあかん!!

 

花丸「ん?そうずらか??」

 

 そうずらか??じゃねぇわ!!何?この子、思春期っていう言葉知らないの!?

 

明「ちょっと近いかな。気になって寝れないよ」

 

花丸「ごめんずら………これでいいずらか??」

 

明「うん。ごめんね」

 

 花丸さんが少しだけ距離を撮ってくれたので、ようやく俺は目を閉じ、寝ようとした。

 

 耳には、先ほどと同じく、波の音と新たに花丸さんがぺクリと本のページをめくる音が加わった。

 

 そして、俺はそのまま夢の中へと入っていった。

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

 スースーと、彼の方から寝息が聞こえる。きっと、もう夢の中に入っちゃったずらね。

 

 

 マルは、本を読むのをやめてこっそりと彼の顔を覗き込む。

 

 

 ……………やっぱり、似てる。東京で出会った北海道のスクールアイドル、Saint Snowのあの2人に……………。特にツインテールの鹿角 理亞っていう女の子に………。

 

 

 あの2人がステージに現れた時、彼が少しばかり焦りの表情を見せたのをマルは見逃さなかった。きっと、あの2人と何か関係があるんだ。

 

 

 東京のライブ以降、奥山くんはみんなの前ではなんとか元気を装っているけど、マルは知っている。

 

 

 奥山くん………いや、明くんはとてつもなく苦しんでいる。

 

 

 どうして、彼のことをそんなに気にかけるのかはマルにも分からない。けど、何故か見逃せないずら。

 

 

 マルは、ゆっくりと明くんの髪の毛を撫でたあと、顔を明くんの耳に近づけて一言だけ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「マルは…………明くんの味方ずら。例え、君がマルを嫌ってても………。」



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『人殺し』は料理をする。

久々に一日に2話投稿したわ


 あれから数時間後にようやくAqoursのメンバーが集まり、合宿が始まろうとしてい……………………ないな。

 

 だってAqoursのメンバー全員、今、絶賛、海を満喫中だもん。千歌先輩と鞠莉先輩はビーチボールで遊んでるし、果南先輩はサーフィン。曜先輩とルビィさんは百合百合でイチャコラしてるし、善子さんと花丸さんはビーチパラソルの日陰でくつろいでいる。ダイヤ先輩だけ、なんか1人だけギャーギャー騒いでいた。

 

 話を聞くに、俺達が手伝う海の家がボロすぎてどうしたら客が来るのか考えてるらしい。

 

明「いや、無理じゃないですか??だって、隣の店見てくださいよ。お客さん、めちゃくちゃいますやん。」

 

 俺はボロボロな海の家の隣に立っている店に指を指す。その方向には客が大勢いて賑やかなオーラを漂わせる店があった。ダイヤ先輩はアレに勝とうと考えているのだ。

 

 こればかりは、流石に勝てないと思う。俺以外のメンバーもそれには同じ意見のようだった。

 

 

 しかし、1人を除いて………

 

 

鞠莉「私達はラブライブを目指しているのでしょ??あんな、チャラチャラした店に負ける訳にはいかないわ!!」

 

 

 普段チャラチャラしてそうな貴女がそれ言いますか。しかも、この言葉のせいでダイヤ先輩もノリノリになっちゃったじゃねぇか!!

 

 

 こうして、俺達Aqoursはボロボロである海の家の救世主となるべく、ダイヤ先輩の指示に従うこととなった。てか、ダイヤ先輩や。屋根の上に登るのだけはやめようぜ。危なくて見てられないわ。

 

 

 千歌先輩と梨子先輩は『今年帰ってきた!!海の家』と書かれた看板的な物を見に纏い、海の家の宣伝。とにかく、ダサい。

 

 

 果南先輩はグラマーな体型を活かし、ビラ配り。確かに、果南先輩の身体は魅力的なのだが、ダイヤ先輩よ。砂利はねぇだろ。砂利は。失礼だけど、アンタもその1人ですからね??あとその今の顔な。果南先輩若干引いてるじゃねぇか。

 

 

 そして、俺、曜先輩、善子さん、鞠莉先輩の4人は料理担当となった。

 

鞠莉「それじゃあ、レッツクッキング〜」

 

曜・善子「おー!!」

 

 そして、各メンバーは料理に取り掛かった。

 

 さて、何を作ろうか、と俺は顎に手をつけて考える。料理の方は毎日作っているのでそこそこ自信はある方だ。

 

 他の3人は何を作っているのだろうか??参考程度にちょっと覗いてみることにしよう。

 

 曜先輩は焼きそばを作るようだ。見てる感じ、手際はめっちゃいい。そして、あっという間に美味そうな焼きそばを完成させた。

 

曜「ほい!美味しいヨキソバ!!ヨーソロー!!」

 

明「美味しそーっすね」

 

曜「なら、食べてみる??」

 

明「いいんですか??じゃあ、いただきます」

 

 割り箸をパキッと折って、焼きそばならぬヨキソバを口の中に入れる。うん、めちゃくちゃ美味いな。俺の作ったやつよりも数倍美味い。これなら、金払ってもいいレベルだわ

 

明「美味しいです」

 

曜「でしょでしょー!!」

 

 よし、決めた。後で、ヨキソバの作り方を教わろう。

 

 

 そして、ほかのメンバーはというと………。

 

 

善子「クックック………堕天使の涙、降臨」

 

 おいコラ、ちょっと待てや。お前は一体何を作っている??見た目はたこ焼き………だよな。あれ?たこ焼きって何か針状な物で指すと赤い液体を出す食べ物だっけ??違うよね??

 

 

鞠莉「アンビリバボー。シャイ煮〜、complete」

 

 いや、アンタもかい!!なんか、色んなもの混ぜてるし…………。シャイ煮からドス黒いオーラ纏ってるし。もう、やべぇよ、怖ぇよ、帰りてぇよ。

 

 

 何も参考が得られないまま、自分の持ち場へと戻る。うーむ、どうしようか。

 

曜「あれ??奥山くん、まだ作ってないの??」

 

 唯一、マトモな料理をしていた曜先輩が近づいてきた。少し相談してみるか

 

明「なんか、思いつかないんすよね。」

 

曜「それじゃあ、何かデザート系とか作ってみたら??ほら、私は焼きそばだし、あの2人が作る料理は………よく分からないけど多分甘いものじゃないと思うからちょうどピッタリじゃないかな??」

 

 甘いものか…………。俺が作れる甘い料理は1品しかないんだけどな。けど、その路線もアリだな。よし、久々にアレを作るか

 

 

明「ありがとうございます。作る料理、決まりました」

 

曜「そっかそっかー!!じゃあ、出来たら今度は私に食べさせてね!!」

 

明「もちろん!!」

 

 そして、俺は料理の方を始めた。

 

 

〜数十分後〜

 

 

明「できました!!」

 

 俺は出来た甘い料理を持って曜先輩の方へと向かい、皿を差し出す。

 

 

曜「これは………ぜんざい??」

 

 

明「はい。俺が唯一作れる甘い料理である………、小豆ぜんざいです!!」

 

 

曜「へぇ………、それにしては、なんかクオリティが高いんだけど………。気のせいかな??」

 

明「………………気のせいだと思いますよ。ただの小豆ぜんざいですし。」

 

 

 もちろん、嘘である。俺の実家は元々、喫茶店を経営しており幼い頃から店を手伝っていたのだ。とは言っても、あの時はまだ5歳6歳だったので、手伝いは軽いものだったし、数多くあるメニューから教えて貰ったのはこの小豆ぜんざいだけだった。それでも、素人が作るやつよりは上手く作れているはずだ。

 

 

曜「うん!美味しいよ!!」

 

明「良かったです!」

 

 

 これで、料理組は準備OKだ。あとはお客さんが沢山来れば、理想的なのだが………

 

 

 結果的には客は来なかった。

 

 挙句の果てには、千歌先輩が声をかけた友人達が遊びに来ていた。

 

明「最初から、こうすれば良かったのでは??」

 

果南「私もそう思った。ダイヤったらおバカさんなんだから」

 

鞠莉「ほんとオ・バ・サ・ン♪」

 

 ちょ、それは…………ダメやろ

 

 

ダイヤ「1文字抜けてますわぁ!!」

 

 

 案の定、ダイヤ先輩はガチキレた。

 

 

 

 

 

 友人達に声をかける作戦に切り替えると、客足はそこそこ伸びた。拡散力って凄いなぁ。

 

 そして、ヨキソバはもちろんのこと、俺の作った小豆ぜんざいも思ったよりもお客さんにウケて売れた。堕天使の涙とシャイ煮の方は………言わなくても分かるよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、俺はこの日、小豆ぜんざいを作ってしまったことにより後日、酷く後悔する日が来るとは思ってもいなかった。

 

 

 

 この意味を踏まえて、もう一度、先程言った言葉を改めて言っておきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拡散力は凄い…………………と。

 

 




最後の意味………分かったかな??

そう、クオリティが高いものを出されたらほとんどの人がやるアレだ。


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『人殺し』の双子の姉は『人殺し』の存在に気付こうとしている。

 〜裏庭〜(理亞視点)

 

聖良「理亞。ダンスのここのシーン、ワンテンポだけずれてますよ。」

 

理亞「ごめんなさい、姉様。」

 

聖良「大丈夫ですよ。でも、かれこれ朝からずっと練習してましたし少しだけ休憩にしましょうか。」

 

理亞「………えぇ。」

 

 夏休みに入って以降、私と姉様の2人は来週に地元でやるイベントでSaint Snowのライブをすることが決定したのでそれに向けて家の裏庭で練習していた。

 

理亞「姉様、はい。お茶」

 

聖良「………」

 

 

 …………まただ。またあの顔だ。

 

 

 最近の姉様は、過去のトラウマによって苦しむことはほとんど無くなった。それは、昔から願っていたことだったから、嬉しく思う。嬉しく思うけど…………

 

 胸の中がチクチクする。

 

 

 けど、その原因は分かっている。

 

 

 これは…………嫉妬だ。

 

 

 姉様はきっと、あのAqoursのマネージャーをやっている奥村 零という男性に助けられたことによって、好意を抱いている。

 

 

 恐らく、そのおかげでか、姉様は過去のトラウマによる発作は無くなり、普段通りに過ごせているのでしょう。

 

 

 でも…………

 

 

 私が、姉様を助けたかった…………。

 

 

 10年間、すっと一緒にいた私ではなく出会ったばかりのあの男にその役を奪われてしまった。

 

 

 多分、今の姉様は明のことについても、すっかり忘れてる…………。

 

 

 

理亞「………ここにお茶、置いとくから」

 

 

 

 何故か無性に苛立ってしまった私は姉様の側にドリンクを置いて裏庭から立ち去り、自分の部屋へと戻る。

 

 机の上に置いてあったスマホに手を取って、SNSのアプリを開く。こういうのはあまりやらない私だが、姉様曰くスクールアイドルをやるからには宣伝目的でやっておいた方が良いということだったので渋々入れてみたものの、案外面白くハマってしまった。

 

 フォローしている人や、フォローをしてくれている人のツイートを下にスライドさせながら見る。

 

 ふーん、最近はこういうのが人気で……

 

 

理亞「え?」

 

 

 私はふと、とあるツイートに目が止まった。

 

 別にそのツイートは特別なものではなく、ただの一般人が呟いたツイートで先日、海に遊びに行った時のものだった。

 

 

ツイート『昨日、友達と海行ってきた!!あと、ここの海の家の料理がすごく美味しかった!!』

 

 

 しかし、問題はそのツイートと共に貼られているこの画像…………。

 

 

 

 

 

 間違いない。多少の見た目は違うけれど、長年見てきた私ならすぐに分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 私達鹿角家の店である茶房菊泉で作る小豆ぜんざいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 まさか……………

 

 

 

 

 

 

 

 私はボトっとスマホを床に落とし、弱々しい声で一言だけ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「そこにいるの………??明」

 

 

 

 

 

 

 

〜海の家〜(明視点)

 

 海の家の手伝いが終わり、練習に励むAqoursのメンバー達。しかし、手伝いの疲れがあってか次第に動きが鈍くなってきている。

 

 練習が終わると、みんなバタンキュー。メンバーで1番体力のある果南先輩ですらキツそうに見える。

 

 そして、お楽しみの夕飯タイム…………のはずが

 

千歌「みと姉が、余った食材は自分たちで処分しなさいって」

 

 つまり、俺達の今日の晩飯は全く売れなかった堕天使の涙とシャイ煮ということである。

 

明「嘘だろ………」

 

 マジで言ってるの??あれ、食うの??あのドス黒い色しているたこ焼きに、色々と謎の食材が入っているあの鍋を??え?殺す気??

 

 

 こんなもの、食べたいって言う人なんて………

 

 

花丸「食べてみたいずら」

 

 ここにいたよ。本気で言ってるの??

 

鞠莉・善子「いいですわぁ!!」

 

 そして機嫌が良くなった2人はテーブルに堕天使の涙とシャイ煮を置く。うん、絶対に美味しくないやろ。

 

 決心した俺達は恐る恐る、シャイ煮を1口だけ口に入れる。すると

 

明「え?普通に美味い」

 

 美味い………美味いぞ??シャイ煮、美味いぞ??

 

 他のメンバーも美味しそうに食べている。特に花丸さん。行儀悪いな

 

 てか、よくよく具材を見たら伊勢海老やら松茸やらアワビやら………なんか高級食材ばかりなんですけど…………。

 

ダイヤ「これ、1杯いくらぐらいなのですか??」

 

 おぉ、流石ダイヤ先輩。聞きずらかったことを聞いてくれた。

 

鞠莉「さぁ?10万円ぐらいじゃない??」

 

鞠莉以外「ぶー!!」

 

 あっさりと高金額を言いやがったよ、この先輩。思わず吹き出しちゃったじゃねぇか!!

 

ルビィ「じゃあ、次は堕天使の涙を………」

 

明「マジ言ってる??いや、それだけはやめておいた方が………」

 

 しかし、時すでに遅し。

 

 堕天使の涙を口に入れたルビィさんはみるみる顔を赤くして外に飛び出して行った。そして、外から「辛い辛い辛い」と連呼されている。

 

ダイヤ「何を入れたんですの??」

 

善子「タコの代わりにタバスコで味付けした、これぞ堕天使の涙。」

 

 コイツ、馬鹿じゃねぇの??そんな危ないモノを客に食わそうとしてたの??逆に売れなくてよかったわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺達合宿1日目が終了を迎えようとした。

 

 

 

 

 

 

 Aqoursの皆が寝室へと向かおうとした時、俺は行動に出た

 

 

 

 

 

 

 

明「鞠莉先輩、ダイヤ先輩。お話があります。」



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『人殺し』は2人に感謝する。

明「鞠莉先輩、ダイヤ先輩。お話があります。」

 

 俺の言葉に、2人は何となく察したのか他のメンバーを先に行かせたあと、外に出て近くにあったベンチに座った。

 

鞠莉「それで、話はなんなのかしら??」

 

明「もう分かってるでしょ??」

 

鞠莉「さぁ。マリー、頭悪いから分かんナーイ。」

 

明「惚けないでください」

 

ダイヤ「鞠莉さん。ここはふざけるところではありませんよ。」

 

 ダイヤ先輩の言う通りだ。彼女の言葉で鞠莉先輩も「sorrysorry」と言いながら俺の方に顔を向ける。

 

鞠莉「マネージャーの件についてネ??」

 

明「分かってるじゃないですか」

 

鞠莉「そろそろ来るかな〜って思ってたからね。まさか、合宿中に来るとは思ってなかったけど」

 

ダイヤ「それで、貴方はどうするのですの??」

 

 

明「…………辞めるつもりでいます」

 

 

鞠莉「数秒躊躇ったってことは、まだ心の中では迷ってるってことかしら??」

 

 俺は小さく舌打ちをする。少しばかり躊躇ってしまったことを見逃さなかったか。これは正直に言わなくちゃな。

 

明「俺がマネージャーになったのは姉ちゃん達に会うためです。それはもう東京のイベントで達成されました。だから、俺がここにいる理由はもうないんです」

 

 俺は「けど………」と付け加える。

 

 

明「ここにいる時間が長くなればなるほど、ずっとここにいたいという気持ちが湧き出るんです。けど、俺は所詮『人殺し』。このまま、俺がスクールアイドルに関わればいつかAqoursと姉ちゃ……………Saint Snowに危険な立場に見回ってくるかもしれない。俺はそれが怖い」

 

 俺は俯きながら本音を答えると、数分沈黙の時間が流れた。

 

 

 唐突に俺は温かい感触に包まれた。

 

 

 俺は驚きながら、顔を上げると鞠莉先輩が俺に抱きついていた。

 

 

鞠莉「ごめんなさい。」

 

 

明「え?」

 

 

 何で…………俺、謝られたんだ??

 

 

鞠莉「今まで、私は奥山くんのためだと思ってマネージャーをやらせてたわ。けど、さっきの言葉を聞いてそれは違ってたというのに気づいた。逆に君を苦しませてしまっていたのね。」

 

 鞠莉先輩は涙を流し、肩を震わせながら言葉を発した。それを見て、俺は返す言葉を見つけることができなかった。いつもふざけている彼女が、俺のために涙を流すなんて想像もしていなかった。

 

 

ダイヤ「奥山さん」

 

 鞠莉先輩程ではないが、うっすらと瞳に涙を溜めているダイヤ先輩が俺に話しかける。

 

ダイヤ「私は貴方に感謝していますわ。あの時、貴方が言ってくれたおかげで私は自分に素直になることが出来た。だから、もし貴方の出した答えがどんなものだとしても私達はサポートしますわ。ね、鞠莉さん」

 

鞠莉「もちろんよ。だから、また相談したいことがあったらマリー達の所に来てちょうだい。」

 

明「……………はい。ありがとうございます」

 

 

 この2人に相談して良かった………と、心の底からそう思った。

 

 

 ダダッ……………

 

 

 

明「ん??」

 

 後ろの方から、何か走るような音が聞こえたような………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜十千万〜(花丸視点)

 

 

 

 軽い気持ちで、3人のあとを追いかけたらとんでもないことを聞いてしまったずら。

 

 マルは顔を青くしながら部屋へと戻ると、ルビィちゃんが心配そうに近づく。

 

 

ルビィ「花丸ちゃん、大丈夫??随分、トイレの方が長かったけど」

 

花丸「心配かけちゃってごめんずら。少しだけお腹が痛くなっちゃって………えへへ。」

 

ルビィ「そりゃあ大変だよ!!今日は早く寝た方がいいよ!!」

 

花丸「うん。そうさせてもらうずら」

 

 そう言って、マルは布団を敷いて横になる。

 

 そして、周りがワイワイ騒いでいる中、先程聞いてしまった彼の言葉がリピートとなって耳の中で流れる。

 

 

 俺は所詮『人殺し』。

 

 

 『人殺し』…………、つまり、この言葉通りならば明くんは過去に人を殺めてしまった過去があるということになる。

 

 

 まさか、それが原因で明くんは元気をなくしてるずら??けど、それだとSaint Snowの2人との関係性が分からないままずら。

 

 

 

 

 

 

花丸「もっと…………もっと、情報を調べないと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だって、マルは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜茶房菊泉〜(理亞視点)

 

 

聖良「理亞〜?」

 

理亞「!?」

 

 姉様の呼びかけで、私はビクッと肩を震わせてしまう。どうやら、ツイートを見てから少しばかりフリーズをしていたようだ。

 

聖良「理亞、大丈夫??気分が悪いように見えるけど」

 

理亞「なんともないわ。すぐに行くから」

 

聖良「そう。じゃあ、先に戻ってますよ」

 

 姉様は心配ながらも、そう言って私の部屋から出ようとする。

 

 

 すると、勝手に口が開いてしまった。

 

 

理亞「ねぇ、姉様!!」

 

聖良「ん?なんですか??」

 

理亞「あのね…………」

 

 

 

 もしかしたら、明がいるかもしれない…………。

 

 

 と、私は続けて言いたかった。けど、言おうとした瞬間に最近の姉様の様子を思い出す。

 

 今の姉様は過去のトラウマによるフラッシュバックはなく、活き活きとしている。むしろ、明のことを伝えたらまた元に戻るかもしれない。

 

 私は、続けて言葉を出すことが出来なかった。

 

聖良「何か言いたいことがあるんですか??」

 

理亞「いや、なんでも………ないわ。よくよく考えたら大したことじゃなかったし。」

 

聖良「そうですか。じゃあ、練習の方に戻りましょうか」

 

理亞「分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このやり取りで私は1つ分かったことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 私は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最低な姉であり妹だということに。



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『人殺し』は無意識に恐怖感を放つ

お久しぶりです??


 合宿2日目。

 

 1日目同様、午前中は海の家のお手伝いだ。

 

 しかし、1日目と違うのはお客さんの数が多くなってきて忙しくなっているということ。聞いた話によると、どうやら昨日来たお客さんがSNSで俺たちが働いている海の家のことをツイートした所、爆発的な拡散が起こったという。絶賛人気急上昇中のスクールアイドルのメンバーが働いてるとなれば、1目会いに行きたいという理由だろう。

 

花丸「曜ちゃん、ヨキソバ注文入ったずら!!」

 

曜「はい、ヨキソバ!」

 

花丸「ありがとうずら」

 

ルビィ「奥山くん!!小豆ぜんざい2つ追加で注文入ったよ!!」

 

明「はいよ。」

 

 料理組は、せっせと注文が来た料理を各自で作っていた。俺の小豆ぜんざいと曜先輩のヨキソバは昨日と同じく売り上げに貢献しているが、鞠莉先輩のシャイ煮と善子さんの堕天使の涙はというと……………、いや、これ以上言うのはやめておこう。

 

 ちなみに、千歌先輩と梨子先輩と果南先輩の3人は千歌先輩の部屋で、作詞の方を作っている。もうすぐ、ラブライブの予選が来るからな。

 

明「ほい、小豆ぜんざい2つ。よろしくな」

 

ルビィ「頑張ルビィ」

 

 その掛け声、気に入ったのね。

 

 作った小豆ぜんざいをルビィさんに渡した後、「うおぉぉぉ」と言いながら、軽く背伸びをする。長いこと、小豆ぜんざいを作っていたので、身体が少しだけダルい。

 

曜「奥山くん、休憩の時間だよ」

 

 お、ようやく俺の所に休憩の番が回ってきたか。丁度いいな。

 

明「わかりました。30分休憩いただきます。」

 

 俺はそう言って、調理場から離れる。

 

 作詞の方を頑張ってる3人になにか差し入れ持ってってあげるか、と思った俺は、俺達が手伝っている海の家とは、また違う方の店を目指して歩き出そうとした。

 

ルビィ「ねぇ、奥山くん」

 

明「ん?」

 

 ルビィさんが心配そうに俺の方に駆けつける

 

明「どうしたの?」

 

ルビィ「花丸ちゃん知らない?」

 

明「花丸さん?花丸さんだったら、曜先輩が作ったヨキソバを提供しに行ったはずだけど」

 

ルビィ「そっから花丸ちゃん、こっちに戻って来てないの」

 

明「どっかで道草してんじゃねぇの??」

 

 色んな所に出店あるしな。

 

ルビィ「そんなことないよ!休憩の時間になったら一緒にお好み焼きお腹いっぱいになるまで食べようねって約束してたもん」

 

 あー、それだったら道草はありえないな。いくら、食い意地が強い花丸さんでもルビィさんと約束していたならば、我慢して戻ってくるはずだ。

 

明「分かった。ちょっと花丸さんを探してくるからルビィさんは店の手伝いの方を続けてくれ」

 

 合宿でも、花丸さんとの接触はできる限り避けてきたがルビィさんのこんな顔を見せられたらほっとくことなんてできない。

 

ルビィ「うゆ…………」

 

明「そんな、しみったれた顔すんなよ。可愛い顔が台無しだぜ??」

 

ルビィ「ピギィ!!」

 

 おおっと。安心させようと思って、言ったつもりだったけど逆効果だったようだ。すまねぇ、ルビィさん。

 

明「じゃあ、行ってくるから」

 

ルビィ「う、うん。」

 

 

 

 

 

 

 さてさて、あの子はどこに行ったのかね。俺はとりあえず辺りを見回りながら小豆ぜんざいを渡した時に彼女が向かった方を歩いていた。

 

 渡してからそこまで時間経ってないから、そんな遠くの方までは行ってないはずだ。しかも、花丸さんはAqoursのメンバーの中で1番体力がないしな。

 

女1「ねぇねぇ、君〜」

 

明「はい?」

 

 花丸さんを探していると、顔の赤いビキニ姿のお姉さん2人に話しかけられた。

 

女1「私達とぉ、少し遊ばない??」

 

 これは、いわゆる逆ナンというやつか??なんか、この人たち口が酒臭いし面倒臭いな。

 

明「すみません、今、人を探しているので。」

 

女2「そんなの、後ででいいじゃん!!ほら、お姉さんがたこ焼き奢ってあげるからさぁ」

 

明「いえ、結構です。」

 

女1「釣れないなぁ〜。そんなんだと君、モテないぞぉ〜」

 

明「モテなくても結構ですよ。それでは」

 

 俺はペコッと頭を下げてその場を去る。後ろからは「えぇ~」と残念そうな声が聞こえてきたが無視だ無視。

 

 

 

 

 

 花丸さんの捜索が始まって早15分。一向に見つける気配がない。

 

 今は人混みの少ない海岸の方へと足を運んでいる。

 

 あんだけ探してもいないということは、最悪の場合、良からぬ人間に連れ去られたかもしれないという疑いが出る。彼女のことだ、「のっぽパンあげるからこっちおいでぇ」とか言ったら「行くずらぁ♪」と笑顔満載で言って着いていくに違いない。

 

 そんな訳で、連れ去られたと予想して人混みの少ない場所へとやって来たのだ。ほら、こういう展開だと海岸の方に無理やり連れてって強姦するパターンとか多いだろ??え、なんで俺が知ってるかって??高校生なめんな。

 

 

 

 そして、俺の考えは当たっており花丸さんを見つけるのは数分後のことだった。

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

 

男「へっへっへっ、いい女、GETしたぜ」

 

 

花丸「んーーーーーーー!!!」

 

 

 やられたずら。このお兄さんに昨日発売された新作ののっぽパンあげるから付いてきてって言われて危ないって分かってたのにのっぽパンの魅惑に負けて付いてきてしまったずら。恐るべきのっぽパン。

 

 そして、人混みの少ない所に連れてかれた瞬間、口にガムテープ付けられて両手も紐みたいなやつで縛られてしまったずら。

 

男「いやぁ、過去に色んな女食ってきたけど、今回は特上だなぁ」

 

 

花丸「んーーーーーーー!!!」

 

 

 逃げなくては!!、と本能が告げている。しかし、このお兄さんの身体がなかなか鍛えられていてオラみたいな力のないやつが足掻いてもなんも効果がなかったずら

 

男「ひっひっひっ」

 

 

 怖い。こんな怖い思いしたのは初めてだ。お兄さんが気持ち悪くくねくねさせながらマルの胸に手を触れようとする。

 

 

 やだ………やだよぉ

 

 

男「それじゃあ、楽しませてもらうぜ」

 

 

花丸「んんんーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 助けて……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明くん!!

 

 

 

 

 

 

 

 そう心の中で叫びながら、私は目をぎゅっと瞑った。

 

 

 

 

 

 

男「ぎゃあ!!」

 

 

 

 目を瞑った瞬間、勢いよく何かが通りすぎた感触が襲いかかり、その後に先程のお兄さんの痛そうな声が聞こえた。

 

 

 目を開けると、そこには

 

 

 

 

 白目を向いて倒れているお兄さんと

 

 

 

 

 

明「大丈夫だったか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 心配そうにマルの方を見る奥山 明くんがいた。

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 危ねぇ、本当に危なかった。

 

 だって、岩陰見たら気持ち悪い男が泣きそうになっている花丸さんを犯そうとしてたもん。マジで焦って、その男の脳天に目掛けて思いっ切り飛び蹴りしてしまったわ。大丈夫だよね??死んでないよね??

 

 とりあえず、俺は花丸さんの口についているガムテープを剥がし、縛っている腕も解放させる。

 

花丸「明くん!!」

 

明「わわ!!」

 

 腕を解放させた瞬間、花丸さんは俺のところに抱きついてきた。あれ?このやり取り、東京で経験したばかりなんですけど………。

 

 

花丸「明くん明くん明くん明くん明くん明くん!!」

 

 

 花丸さんは泣きながら、俺の名前を連呼する。てか、苗字じゃなくて、名前呼びかよ。それ、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

 

 

明「ひとまず、間に合って良かった。みんな心配してるから戻ろう」

 

 

花丸「ずらぁ」

 

 

男「ふざけんなよぉ……………」

 

 

花丸「ひぃ」

 

 

 飛び蹴りを喰らわした男がヨダレを垂らしながらもヨロヨロと立ち上がった。結構、脳天にクリティカルヒットしたつもりだったのだが………。

 

男「俺はもともと、ラグビーやってんだよ。そんな攻撃、屁でもねぇよ」

 

 いや、嘘つくなよ。確かにガタイは良いからラグビーやってるかもしれないけど、めっちゃ足震えてるやん。筋肉鍛えても、脳天にダメージ与えられてら、筋肉もクソもねぇからな。

 

明「無理すんなよ。特別に通報だけはしないようにこの子に説得してやるから、そのまま寝とけって」

 

 嘘だけどな。倒れたところで、警察署に突き出してやる。

 

 

 

男「分かりやすい嘘つくんじゃねぇよ!!お前だけは許せねぇ!!絶対に殺してやる!!」

 

 

 

 殺してやる…………ね。

 

 

 

 

 いるんだなぁ、簡単に『殺す』って言うやつ。そうやつを見ると非常に腹が立つ。

 

 

 

 

 

 だって……………

 

 

 

 

 

 

 

 

明「人を殺そうとしたことなんて生きてきて1度もないくせに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

明「人を殺そうとしたことなんて生きてきて1度もないくせに」

 

 

花丸・男「ッッ!?」

 

 

 何ずらか、今のは。背中が凍りつくような感じは……………。

 

 

 恐らく、お兄さんもこのオーラを感じたのか口から泡を吹き出して倒れてしまったずら

 

 

 明「ありゃりゃ、倒れちゃった」

 

 

 お兄さんが倒れたのを見て、明くんは驚きの表情を見せている。もしかして、今のオーラを与えたことに気づいていないずか??

 

明「まぁ、いいや。花丸さん、俺この変態を警察に突き出してくるから1人で海の家戻ってくれる??」

 

 今の明くんはさっきと違って今まで通りだ。

 

明「花丸さん??」

 

花丸「ん、なんでもないずら。分かったずら」

 

 

 マルはそう言って、明くんから離れるように走り出す。

 

 

 

 今日、明くんに助けてもらって、とても嬉しかった。

 

 

 

 だって、明くんはマルの初恋の相手だったから。たとえ、過去に殺人を犯してしまったとしても

 

 

 

 

 

 けど、『あの』明くんを見てしまったせいで、彼に対する感情が生まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『あの』…………いや、『人殺し』の奥山 明が怖くなってしまったずら

 

 

 

 

 




暗殺教室の渚の有名なセリフを少しだけいじって使いました。

このセリフだけはこの作品において使いたいと思ってたので、出されて良かったです。

では、また次話をお楽しみにしてお待ちください。


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『人殺し』は思わず吹き出してしまう

更新、遅くなってすいません!!

あと、お気に入り200件超えました!!ありがとうございます!!


 無事に気絶した変態野郎を警察に突き出して海の家に戻ると、他のメンバーが心配そうに迎え入れてくれた。

 

千歌「心配したよぉー!!2人とも無事で良かったぁ!!」

 

曜「奥山くん、意外と強かったんだね」

 

梨子「本当に無事で良かった。」

 

ダイヤ「本当に奥山さんがいてくれて良かったですわ。花丸さんからお話を聞いて驚きましたもの。」

 

ルビィ「奥山くん、花丸ちゃんを助けてくれてありがとうね!!」

 

鞠莉「見直したわよ〜、シャイニー!!」

 

果南「奥山くん、女の子守るなんてやるじゃん。」

 

善子「流石は、堕天使ヨハネである私が認めただけあるリトルデーモンね。礼を言うわ」

 

明「はいはい。………あれ?花丸さんは?」

 

ダイヤ「花丸さんなら、部屋で休んでますわ。」

 

 まぁ、ついさっきまで変態に襲われかけたもんな。精神的にも傷をついたことだと思うし、部屋で休んでて当然か

 

明「わかりました。ちょっとだけ顔出してきます」

 

 俺はそう言って、花丸さんがいる部屋へと赴き、扉をノックする。

 

花丸「はーい」

 

明「花丸さん??俺だけど、入ってもいいかな??」

 

花丸「いいずらよ〜」

 

 思ったよりも元気そうだな。俺は扉を開けて花丸さんのいる部屋へと入る。

 

 すると、俺が海の家に戻って来る少しの間だけ横になっていたのか敷布団の上に花丸さんがいた。

 

明「気分はどう……………って聞いても良くはないよね」

 

花丸「そんなことないずら。さっきまでのっぽパン食べてたし」

 

 花丸さんが指を指しながらちょっと恥ずかしそうに答える。指の先の方を見ると、のっぽパンの袋が5つぐらいゴミ箱に捨てられていた。

 

 それを見て、思わずプッと吹き出してしまった。

 

花丸「どうして、笑うずら??」

 

明「いや、普段の花丸さんだなって思って」

 

花丸「明くんにとって、マルはどんな印象持ってるずらか………」

 

明「大食いキャラじゃないの??」

 

花丸「ひどいずらぁ!!」

 

明「あはは、ごめんごめん」

 

花丸「もぉ…………」

 

 ぷくーっとジト目で頬を膨らませる花丸さん。機嫌を悪くさせちまったかな??

 

明「今度、のっぽパン奢るからさ」

 

花丸「じゃあ、許してあげるずら」

 

 やっぱり、この子チョロいな。

 

花丸「ねぇ、奥山くん」

 

明「ん?なに?」

 

花丸「………………」

 

 えぇ……….、名前を呼んでおきながら無言とかマジで怖いんですけど。

 

明「花丸さん?」

 

花丸「うぅん、やっぱなんでもないずら」

 

 いや、ないんかい。まぁ、どっちでもいいけどさ…………。

 

 

 しかし、この時の花丸さんの顔がなんだか悲しそうな顔をしていたのを俺は気づくことが出来なかった。

 

 

 そのあと、しばらく花丸さんと会話していると

 

 

曜「ひょっこりヨーソロー」

 

 

 曜先輩が扉からひょっこりと顔を出して現れた。

 

明「どうしたんすか?」

 

曜「2人とも、そろそろご飯の時間だよ〜。」

 

花丸「ご飯ずら!?」

 

 花丸さんは目をキラキラとさせる。あれ?君、のっぽパン5本食べたんだよね??

 

曜「今日は私特製の船乗りカレーだよー!!花丸ちゃん、食べれる??」

 

花丸「食べる!!食べるずらよ!!」

 

曜「そっか。それじゃあ下でみんな待ってるから早く行こ」

 

花丸「ずら!!」

 

 と、花丸さんが言った瞬間、フゥゥゥゥゥンとF1レーサーのような音が鳴り響いたと思ってら、あら不思議。既に花丸さんの姿がありませんでした。

 

明・曜「え!?」

 

 俺と曜先輩はあまりの速さに驚きの声を上げる。え、何?あの子は食い物に関わると、戦闘能力がどこぞの戦闘民族並に上がるの??

 

曜「ふふ、私達も行こうか」

 

明「そうですね。」

 

 そう言って、俺と曜先輩は苦笑いしながら、下へと降りていった。ちなみに、曜先輩が作ったカレーはなんと今日も売れなかった堕天使の涙とシャイ煮をアレンジしたものだった。味もめちゃくちゃ美味しかった。前から思ってたけど曜先輩って中々器用な人だよな。

 

 

 あと、もう分かってると思うが、メンバーで1番船乗りカレーを食べたのは花丸さんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、梨子先輩がラブライブ予選日の日に東京でピアノのイベントに参加するという話を聞いた。マジですか??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜茶房菊泉〜(理亜視点)

 

聖良・理亜「ありがとうございました!!」

 

観客「ワァァァァァァァァァァ!!」

 

 イベントの方が終了し、ライブは大いに盛り上がった。

 

聖良「無事に成功して良かったですね」

 

理亜「えぇ。」

 

 姉様、とても嬉しそう。ここ最近は、姉様も素直に笑うようになった。これも、奥山 零のおかげなのかしら。

 

聖良「ねぇ、理亜」

 

理亜「何、姉様。」

 

 楽屋で着替えている時に、姉様に話しかけられた。

 

聖良「今後の予定、どうします??」

 

理亜「どうとは??」

 

聖良「夏休みもあと1週間ほどですし………、このイベントのためにずっと頑張ってきたでしょ??だから、残りの時間は2人でどこか出掛けたいと思うんだけど…………」

 

理亜「姉様…………」

 

聖良「ほら、私、今まで理亜に迷惑かけちゃったし…………どうかな??」

 

 姉様も、一応自覚してたんだ………

 

理亜「分かったわ」

 

聖良「良かった!!それじゃあ、どこか行きたいところとかある??」

 

理亜「なら…………………、私、海に行きたいわ」

 

聖良「海??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亜「えぇ。私、内浦の海に行きたい!!」

 

 

 

 




えへえへ(≧▽≦)ゞ


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『人殺し』が所属するスクールアイドルのリーダーは優しい

オリジナル展開です。




 合宿が終わってから数日後、俺達は千歌先輩に呼び出され、彼女の家に集まっていた。どうやら重大報告があるらしい。昨日、梨子先輩がラブライブの予選に参加できないっていう話を聞いたから、それに関係する話なのかな??

 

 

千歌「3日後に、商店街でライブをやります!!」

 

 

千歌以外「は?」

 

 千歌先輩の発言に、周りのメンバーは戸惑いの表情を露わにする。てか、女の子とは思えないぐらいの声のトーンの低さに少しだけ恐怖を覚える。

 

ダイヤ「千歌さん、いくら貴女でもそれは唐突すぎですわ。少なくとも私達に相談するべきだったのでは??」

 

果南「そうだよ。そもそも、なんでそうなったのか説明してよ」

 

 ダイヤ先輩と果南先輩の言う通りである。ライブをやると言うのは簡単だが、行うための準備が大変だ。もし、本当に3日後にやるとしたら…………考えるだけでも恐ろしい。

 

千歌「3日後に商店街でやるイベントがあるんだけど、そのイベントに出るはずだったダンサーさん達がメンバーの病気で出れなくなっちゃったんだって。だから、その代わりとしてAqoursに出て欲しいって美渡姉が…………。最初はちゃんと断ったんだよ??だけど………………」

 

 千歌先輩が苦笑いで「あはは」と言いながら答える。

 

曜「強引に「はい」って言うまで追い詰められた…………と」

 

千歌「………………うん。」

 

曜「あぁ、なるほど」

 

果南「あの人、いつも強引だなぁ」

 

 美渡姉と言葉が出た瞬間、曜先輩と果南先輩は納得したと言わんばかりの表情をする。この2人は千歌先輩の幼馴染なので、その美渡姉が一体どういう人物なのか知っているのであろう。

 

 だが、千歌先輩は「けど」と言葉を付け加え、話を続ける。

 

 

千歌「美渡姉に強引にやらされたっていうのもあるけど、私は梨子ちゃんが東京に行く前に一緒に踊りたいと思ったの。」

 

 

梨子「えっ…………」

 

千歌「えへへ。」

 

 あぁ、なるほど。千歌先輩はやっぱり凄い人だ。どうして、梨子先輩がラブライブよりピアノの方を優先したのかは分からない。きっと、彼女なりの考えがあったからだろう。けど、やはり仲間としては梨子先輩を最高の形として送り出してやりたい。その方法がライブだという結論になったのだろう。

 

梨子「千歌ちゃん…………」

 

 そんな、千歌先輩の意図を汲み取ったのか梨子先輩は口に手を当てながら涙を流していた。

 

千歌「みんなに相談してなくて、ごめんなさい!!けど、私はやりたい!!だから…………………」

 

 千歌先輩は俺達の前で頭を深く下げた。

 

 

千歌「3日後に、一緒に踊って下さい!!」

 

 

 千歌先輩がそう言うと、しばらく沈黙の時間が流れる。

 

 しかし、それを最初に断ち切ったのは曜先輩であった。

 

曜「千歌ちゃん、顔を上げて」

 

 曜先輩の言葉に千歌先輩は顔を上げる。

 

 

曜「私達が嫌だって言う訳ないじゃん!!」

 

 

 と、曜先輩は微笑みながら答えた。

 

ルビィ「ルビィも、踊りたいです!!」

 

善子「クックックッ、我が堕天使ヨハネのリトルデーモンの為だもの。協力してあげるわ」

 

花丸「善子ちゃん、上から目線ずら。」

 

善子「善子言うな!!」

 

果南「全く、うちのリーダーはしょうがないんだから」

 

鞠莉「んー、これからが楽しみねぇ!!」

 

ダイヤ「今回ばかりは引き受けますが、次回からはちゃんと相談するようにしてくださいね??」

 

 曜先輩から始め、他のメンバーも賛成の声をあげる。うんうん、やっぱりこうでなくちゃな。

 

 ん?なんか花丸さんがジト目で俺の方を向いてるんですけど…………。「お前もなにか一言言えずら」みたいな表情してるんですけど…………。とりあえず何か言っとくか

 

明「まぁ、ラブライブ予選前に知名度をあげれるかもしれないですしね。良いと思いますよ」

 

千歌「奥山くん………、みんな………ありがとう!!」

 

梨子「こっちこそ、ありがとうね!!千歌ちゃん!!」

 

 

 

 こうして、俺達は3日後のライブに向けて準備に取りかかった。

 

 

 

 

 

〜空港〜(理亜視点)

 

 

 イベントが終わって数日後、私達は内浦の海へ行くべくキャリーバックを引いて空港へとやって来ていた。

 

聖良「海………楽しみですね」

 

理亜「えぇ」

 

聖良「でも、どうして内浦なの??海だったら他の場所でも良かったんじゃ」

 

 …………来た。きっといつかこの質問が来るかと思って答えをずっと考えてて困ってたけど昨日、その答えを見つかった。

 

理亜「それもあるけど、姉様、これ見て」

 

 私はスマホを姉様に見せる。画面を見た瞬間、姉様は目を丸くした。

 

 画面に映っていたのは………

 

 『浦の星女学院スクールアイドルAqoursは〇月〇日に地元の商店街でライブをやります!!詳細はーーーーーーー』

 

聖良「これって」

 

理亜「えぇ。丁度、私たちが内浦に行く日にAqoursが商店街でライブをやるみたいなの。だから、それを見たくて」

 

聖良「でも、貴女、Aqoursの皆さんを嫌ってたじゃない」

 

 ゔ…………、前にAqoursのメンバーに少しだけキツイ言葉を言ったのをまだ覚えてたのね。それを、指摘されると困る。

 

理亜「たまたまよ。最近は頑張ってるみたいだし」

 

聖良「ふふ、つまり理亜もAqoursの皆さんを注目してるってことですね」

 

 本当は明の有無を確認したかったのだけれど……、そういうことにしておこう。

 

 

聖良「ってことはつまり…………彼にまた会えるかもしれないってことですよね」

 

 

 姉様が顔を赤くしてボソッと呟いたのを私の耳は聞き逃さなかった。

 

 

 

 

〜とある場所〜(??視点)

 

 

 『浦の星女学院スクールアイドルAqoursは〇月〇日に地元の商店街でライブをやります!!詳細はーーーーーーー』

 

??「ハハ、まさかあの女がスクールアイドルをやっていたとはな。ってことは、あの男もいるってことだよな??」

 

 すると、??は気持ち悪くニヤケつけながら、一言呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「そのライブ、俺がめちゃくちゃにしてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました。このオリジナル展開を経て、『人殺し』である明くんはぐちゃぐちゃになる予定です。お楽しみに。


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『人殺し』は男子高校生である

タイトルは基本、適当です。

あと、少しだけ後半、付け加えました。


 3日後にライブを控えた俺たちは早速、ダイヤ先輩を中心にミーティングの方を開始した。

 

ダイヤ「せっかくのライブですので、新曲を披露したいところですが、流石に3日で作詞・作曲・振り付け・衣装を用意することは難しいので以前にやったことのある曲を披露した方がいいと思います。ですが、そうなると1つだけ問題がありますわ」

 

 ダイヤ先輩の言葉で他のメンバーは何が問題なのか顔をしかめる。俺も少し考えたが、意外にもすぐに分かった。

 

 

明「メンバー9人でやった曲といえば、『未熟Dreamer』と『恋するAQUARIUM 』の2曲だけ……………」

 

 

ダイヤ「ご名答」

 

ダイヤ・明以外「あっ……………」

 

 そう、Aqoursのメンバーに3年生が加入してからそんな月日は経っていない。なので、当然、9人で歌った曲も少ない。

 

 初めて9人で結成した時に歌った『未熟Dreamer』に、水族館のバイトかつイベントに参加した時に歌った『恋するAQUARIUM 』2曲だけだった。

 

 確かに、この2曲のうち1つをやれば慣れてるし、振り付けや衣装もあるので良いのだが、この2曲のPVをサイトに出してまだそんなに時間は経っていない。

 

 ましてや、Aqoursは今や人気急上昇中であるスクールアイドルである。今回のライブはほとんど、梨子先輩の為にやるものなのだが、やはりAqoursの知名度もラブライブ予選前なので上げておきたい。そうなると、既にやった曲を披露するのは難しいということなのだろう。

 

 やはり、ここは無理をしてまで新曲の方に取り掛かった方がいいのだろうか。

 

 Aqoursのメンバーも意見を言い合うが、なかなかしっくりとくる案は出てこなかった。

 

曜「あのー、1ついいかな??」

 

 メンバーの中で唯一、一言も意見を出していなかった曜先輩が手を上げる。

 

ダイヤ「どうかされたのですか??」

 

 

曜「私と千歌ちゃんと梨子ちゃんの3人でやった『ダイスキだったらダイジョウブ』をやってみたいんだけど…………」

 

 

 『ダイスキだったらダイジョウブ』とは、千歌先輩と曜先輩と梨子先輩の3人が鞠莉先輩と部活設立の条件として体育館ステージで披露した曲だったはずだ。いわば、Aqoursを3人で結成して初めて公に披露された曲でもある。

 

 

ダイヤ「でも、それは3人でやった曲なのでしょう??衣装や振り付けは………」

 

曜「衣装はあるであります!!」

 

曜以外「えぇーーーーー!!!」

 

 曜先輩以外のメンバーは驚きの声を上げる。

 

曜「実はね、この曲、いつか9人で歌えたらなと思って他の6人分の衣装をこっそりと作ってたんだ。」

 

千歌「曜ちゃん…………」

 

 

曜「これだったら曲もあるし、衣装もある。振り付けは元々、私たちのライブを明くん以外は見に来てくれたはずだから3日もあれば9人用の振り付けも出来ると思うんだ。サイトの方も3人から9人へとリメイクされた曲という形にしたらそれなりにもインパクトが出ると思うんだけど…………どうかな??」

 

 

 どうかな………だって??そんなの、決まってる。

 

曜以外「賛成ーーーーーー!!!」

 

 曜先輩の完璧な案に他のメンバーは賛成の声を一斉に上げる。

 

千歌「よし、『善は急げ』だ!!早速、振り付けの方を考えよー!!」

 

明「千歌先輩、『善は急げ』の意味知ってたんですね。」

 

千歌「ちょっと、奥山くん!!それ、どういうこと!!」

 

 おっと、心の中で呟いたはずがどうやら、声に出ていたようだ。千歌先輩がジト目で顔を近づける。てか、近い近い近い!!

 

花丸「奥山くん、顔が赤いずら」

 

 花丸さんが黒いオーラを放ちながら言葉を出す。ひぃ、怖いよぉ…………。

 

明「だ、男子高校生はそういう生き物なの!!そういう仕組みで出来てるの!!女の子には分からないものなの!!OK??」

 

 俺の必死な言い訳??に、花丸さんは「そういうことにしといてあげるずら」と言って黒いオーラを放つのをやめた。あれぇー??君って、そんなキャラだったっけ??

 

 

 

 こうして、3日間俺たちはライブに向けて練習を取り組み、ライブ当日へと迎えようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜ライブ当日〜

 

 

 

 大いに盛り上がっていたライブはとある出来事によって悲惨な状況へとなってしまった。

 

 

 その原因はほとんど、俺である。

 

 

千歌「奥山…………くん。」

 

 

 Aqoursのメンバーが俺をまるで怪物を見るかのような目で震えながら俺の方を見つめる。

 

 当然だろう、なにせ、今の俺は目を血走らせ、息も荒い。

 

 

 

 

 

 

 そして、俺の右手には赤い血のついている包丁を持っており、

 

 

 

 

 

 

 

 俺の目の前には………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肩から血をダラダラと流している花丸さんが倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

明「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 




予告的なやつを付け加えたかったです。
それだけです。


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『人殺し』は変わりつつある。

 〜事件の起こる2日前〜

 

 だいたいの振り付けや立ち位置などを話し合って決めたAqoursのみんなは、練習場所である屋上へとやって来て練習に励んでいた。

 

 マネージャーである俺は休憩時間になったら、みんなに渡すためのスポーツドリンクとレモンの蜂蜜漬けを作っていた。

 

 以前、ネットで調べた時に運動後などにオススメと書かれていたので、興味本位でレモンの蜂蜜漬けを作り彼女達に出したら意外にも好評だった。なので、今回も作ってみることにした。今日は、特に格段と気温も高く、暑いのでタイミング的には丁度良いと思う。

 

果南「それじゃあ、10分休憩にしようか

 

 人数分のドリンクとレモンの蜂蜜漬けを完成させると共に、彼女たちの練習も一段落着いたようだ。俺は籠に、ドリンクとレモンの蜂蜜漬けが入っているタッパーを入れて9人の元へと向かった。

 

 とりあえず、1番近くにいた果南先輩から渡していく。

 

明「先輩、練習お疲れ様です。良かったらどうぞ」

 

果南「お、気が利くねぇ。お礼にハグしてあげようか??」

 

明「結構です。」

 

果南「むぅ…………」

 

 一緒に過ごしてして分かったけど、果南先輩はあまり異性の壁というものをあまり気にしない人だ。この前も、俺の口にした飲料水を飲もうとしてたし、先程みたいに男子である俺にハグを誘ってくれたりする。あんなモデルさんみたいなダイナマイトボディにハグなんてされてみろ。色んな意味で天に召されるわ。

 

明「はい、ルビィさん」

 

ルビィ「ありがとう。ちょうど、喉が乾いてたんだ」

 

 ルビィさんはそう言って、渡したスポーツドリンクをごくごくと飲む。

 

ルビィ「ぷはぁ、美味しぃ〜」

 

 うむ…………凄く癒されるな。家に1人は欲しいぐらいだ。

 

千歌・善子・花丸「隙あり(ずら)!!」

 

明「あっ!!」

 

 手に持っていたレモンの蜂蜜漬けの入っているタッパーを問題児3人に奪われてしまった。

 

千歌「わーい!奥山くんの作ったレモンの蜂蜜漬けだぁ」

 

善子「クックックッ、堕天使ヨハネである私の舌をどれだけ満足させることが出来るのか……………楽しみね。」

 

花丸「お腹ペコペコずらぁ〜」

 

 3人はそう言って、タッパーの蓋を取り出してレモンの蜂蜜漬けを口に入れる。

 

千歌・善子・花丸「んーーー、すっぱぁーーい!!!」

 

 3人とも口を✽ の形にして声を上げる。

 

ダイヤ「当たり前でしょう??レモンですもの。あ、私も1ついいですか??」

 

鞠莉「マリーもぉ〜♪」

 

梨子「私も貰おうかな。奥山くんの作ったレモン漬け、美味しかったし」

 

曜「当然、私も貰うであります!!」

 

明「どーぞどーぞ。まだあるんで食べて下さい。」

 

 そう言うと、彼女達はわいわいと集まり、そして美味しそうにレモンの蜂蜜漬けを口の中に入れ始めた。

 

Aqours「すっぱーい!!」

 

明「ん?」

 

 突然、ズボンのポケットに入ってたスマホが鳴り出した。なんだろう………、と思い画面を開くと

 

 『零さん』という文字が表情されていた。

 

明「零さん??」

 

 珍しいな、あの人がこんな昼前に電話掛けてくるなんて………。しかも、今日は休日のはずだからずっと寝てるかアクション映画見てるかのはずなんだけどなぁ

 

明「ダイヤ先輩。」

 

ダイヤ「どうかされたのですか??」

 

明「保護者から何故か電話がかかってきたので少しだけここから離れてもいいですか??」

 

ダイヤ「分かりましたわ。皆さんには私から言っておきます」

 

明「ありがとうございます」

 

 ダイヤ先輩にお礼を言って俺は屋上から出ようとした時に、背後から

 

 「すっぱーい!!」

 

 と、彼女たちの楽しそうな声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 俺は部室へとやって来て、スマホを起動して耳に当てる。

 

明「もしもし??どうしたの??」

 

零「もー、明ちゃん出るの遅い!!早く来てよ!!」

 

明「ん?早く来て??どういうことだよ」

 

 

零「だから今、浦の星女学院の校門前にいるの!!」

 

 

明「は!?」

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、校門前まで行くと本当に零さんがいた。何してんだ、この人は。しかも、ジャージ姿かよ

 

零「明ちゃーん」

 

 零さんが俺の存在に気づき、笑顔で近づく。

 

明「マジで何しに来たの??」

 

零「明ちゃん、弁当忘れたでしょ??だから届けに来たんだ」

 

 零さんはそう言って、片手に持っていた手さげから俺の弁当袋を取り出す。そういえば、今日弁当をカバンに入れた記憶が無いな………………。

 

明「ごめん、わざわざありがとう」

 

 俺は謝りながら弁当袋を受け取る。

 

零「いいってことよ。彼女たちは今、練習中なの??」

 

明「さっきまで休憩時間だったけど多分、今は練習再開してると思う」

 

零「そっか…………大変なんだね」

 

明「まぁ、明後日にライブ控えてるからね…………。」

 

 

 

零「明ちゃん、変わったね」

 

 

 

明「え?」

 

零「最近の明ちゃん、なんだか楽しそう。笑顔も増えてきたし……………。これも、Aqoursのみんなのおかげかな」

 

 零さんは嬉しそうに言葉を出す。この10年間、俺の姿を見てきた零さんだからこそ言えるのだろうか。

 

 けど、言われてみれば確かに、最近の俺は前と比べて活発になった気がする。

 

 彼女たちと一緒にいれば、いるほど何だか心地が良くなる。まるで自分が『人殺し』であることを忘れてしまうぐらいに…………。

 

明「………そうかもね」

 

零「ふふ、それじゃあ私は帰るね。練習、頑張って」

 

明「うん。気をつけてね」

 

 零さんは手をひらひらとさせて、帰って行った。俺は零さんの姿が見えなくなるまで立ち続けた。

 

 

 

 

 




今年中には完結する予定ではある。


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『人殺し』は本格的に彼女を拒絶すると決めた

珍しくいつもよりは長めです。


 〜事件の起こる前日〜

 

 明日にライブを控えた彼女たちは、振り付け、立ち位置、衣装の修正などに時間をかけ練習を終えた。

 

千歌「よーし、みんな!!明日は精一杯楽しもうねー!!」

 

千歌以外「おー!!」

 

 練習着から制服へと着替え終えた後、千歌先輩の言葉で解散となった。

 

 明日はリハーサルもあるし、機材の準備なども早くしなければならないので今日は早めに帰って寝ようと思っていたが、

 

善子「ねぇ、奥山くん!!」

 

明「ん??」

 

 善子さんから話しかけられるなんて、珍しいな。

 

明「どうしたの??」

 

善子「この後、ずら丸とルビィと一緒に自主練するんだけど付き合ってくれないかしら??」

 

明「自主練??」

 

善子「えぇ。これ、見てくれないかしら」

 

 善子さんはスマホを取り出して、とある動画を流す。これは……………今日の練習の動画だ。いつの間に撮ってたんだ??

 

善子「ここのシーンを見て欲しいんだけど」

 

 善子さんが見て欲しいシーン、『ダイスキだったらダイジョウブ』の途中にある1年生3人が歌うパート部分だった。…………そこまで気になる要素はどこも見当たらないのだが…………。

 

善子「ここの私達のパートだけ、少しだけダンスがズレてるのよ」

 

明「ズレてる??」

 

 善子さんの指摘でもう一度巻き戻し、再生する。言われてみれば確かに微かだが、3人のダンスにズレが生じている。生じてはいるが

 

明「本当に微かの範囲だぞ??言われてみれば確かに………と思うぐらいなんだけど。」

 

善子「私達はそれが嫌なの!!」

 

明「お、おう。」

 

 びっくりした…………。いきなり大声出さないで欲しい。

 

善子「それを直すために練習をしたいの。だから、付き合ってくれない??」

 

明「それだったら俺は別に構わんが…………」

 

善子「やった!!じゃあ、コンビニ前で集合ね!!絶対に来なさいよ!!じゃなきゃ、堕天使ヨハネの魔術で呪っちゃうんだからね!」

 

 善子さんはそう言って、走り去ろうとした瞬間、俺は彼女に声をかけた。

 

明「なぁ」

 

善子「何??」

 

明「どうして、そこまで完璧を求めるんだ??さっきも言った通り、そこまで気にする必要はないと思うんだけど」

 

 俺の問いに、善子さんは「コイツ、バカなのか??」と言わんばかりの表情をして一言。

 

善子「私達が納得してないからよ。リリーを最高の形で東京に送り出してあげたい。その想いは千歌だけじゃないってこと…………仲間として当然のことでしょう??」

 

 この言葉を最後に善子さんは走り去って行った。

 

 彼女は第三者からしてみれば頭の痛い中二病にしか見えない。しかし、先程の言葉で俺は前から気づいていたことを改めて確信した。善子さんは仲間想いの女の子で諦めの悪い女の子であるということを。

 

 俺は何も言わないまま、思いっきりと両頬を叩く。パシィィィィンと気持ちの良い音が鳴り響いた。当たり前だが、両頬からジリジリと痛みを感じる。

 

明「痛てぇ…………」

 

 先程の俺の言葉は彼女にとって余りにも失言だった。

 

千歌「あれ?まだ誰かいて…………って奥山くん!?どうしたの??両頬真っ赤っ赤だよ!?」

 

 戸締りの確認に来たのか、千歌先輩が部室に入ってきて俺の両頬を見るなり心配そうな表情をして近づく。

 

明「大丈夫ですよ。少しケジメをつけただけです。」

 

千歌「ケツメイシ??」

 

明「どうして、そうなるんですか………。」

 

 せっかく、気を引き締めたつもりだったのに………。シリアスブレイカーかよ、この人は。

 

明「じゃあ、俺はこれで。」

 

千歌「うん。気をつけて帰るんだよ」

 

明「了解です。では、また明日」

 

千歌「奥山くん」

 

明「はい?」

 

 千歌先輩が俺に声をかける。振り向くと、千歌先輩は微笑みながら右手をグッジョブにして言葉を出した

 

 

千歌「明日はよろしくね!!」

 

 

 

明「はい!!」

 

 

 

 

 しかし、この時の俺はまだ知らない。俺のせいで先輩の笑顔を壊してしまうことを…………

 

 

 

 

 

 

〜コンビニ前〜

 

 

善子「遅かったわね!!」

 

 コンビニ前まで行くと、両手を組んで見るからに怒っているオーラを放つ善子さんの姿があった。後ろには花丸さんとルビィさんの姿もある。

 

明「悪い。ちょっとだけ千歌先輩に捕まってた」

 

善子「言い訳無用!!罰として私たちに何か奢りなさい!!」

 

 う、うぜぇ………。けど、俺のせいで彼女たちの自主練の時間を減らしてしまったのも事実。

 

明「分かったよ。ほれ、これで何か買ってこいや」

 

 俺は財布から2000円取り出して、善子さんに渡す。すると、善子さん達3人はキャピキャピとしながらコンビニへと入って行った。

 

 数分後に、お菓子やら飲み物やらのっぽパンやら一番くじのハズレ商品を持った彼女達がコンビニから出てきた。いや、ちょっと待て。誰だ、一番くじ引いてきたやつは!!善子か??善子なのか??善子なのだろう??

 

ルビィ「ごめんね、奥山くん。一番くじやっちゃった。」

 

明「いや、お前かよ!!」

 

 ごめん、善子さん。普通に疑ってたわ。てか、よくよく見てみたら一番くじの内容はサンリオ系のやつじゃないか。善子さんには無縁のものだな。

 

善子「あんた、私の事馬鹿にしてない??」

 

明「安心しろ。常に思ってるから」

 

善子「何よ、それー!!」

 

花丸「善子ちゃん、近所迷惑ずら」

 

善子「善子言うなーー!!!」

 

 

 その後、完全に拗ねてしまった善子さんを俺たち3人でなんとか復活させてから自主練の方を開始させた。

 

 

〜数時間後〜

 

 

善子「どう…………だったかしら」

 

 汗を流し、はぁはぁと息を切らして心配そうに俺の方を見つめる3人。俺は3人の顔を見ながら呟いた。

 

明「うん。完璧だ………」

 

善子・ルビィ・花丸「!!」

 

 俺の言葉に驚きの表情を見せる3人。確認として、手に持っていたスマホで先程の3人の動きを見直す。うん、やっぱり………

 

明「動画で見直しても、3人の動きはピッタリだ。………やったな」

 

善子・ルビィ・花丸「わーい!!」

 

 上手くいったおかげか、3人は歓喜の声を上げた。3人姿を見てると、こっちまで嬉しくなる。

 

ルビィ「ルビィ達、出来たんだね!!」

 

花丸「ずらぁ!!」

 

 バタン!!

 

明「!?」

 

 急に、善子さんが両膝を地につける。もしかして、体になにかあったのではと思い、直ぐに駆けつけたが

 

 

善子「ゔゔ…….良かったよぉ……………」

 

 

 善子さんは大粒の涙を流していた。よっぽど嬉しかったのだろう。

 

 俺は何も言わずに、堕天使ヨハネの頭を優しく撫でた。本当の本当の本当にこいつは強い女の子だ。まじで尊敬する

 

善子「ーーーー♪」

 

花丸「ずらぁ………」

 

ルビィ「ぴぎぃ………」

 

明「うわ!?」

 

 俺の背後からルビィさんと花丸さんがジト目で迫ってきた。いや、怖ぇよ。

 

花丸「善子ちゃんだけ、せこいずら」

 

明「は?」

 

ルビィ「うゆ」

 

明「あぁ、なるほど」

 

 2人の状況を見て何とかく理解した俺は右手で花丸さんの頭を、左手でルビィさんの頭を撫でてあげた。

 

花丸「ずらぁ♪」

 

ルビィ「ぴぎぃ♪」

 

 うん、満更でもなさそうだ。

 

明「もうだいぶ日が暮れてきたし、帰るか。いくら連絡してるからって言ってもそろそろ帰らないと厳しいだろ。特にルビィさんのとことか」

 

ルビィ「あはは」

 

 早く帰らせないと、この子の姉が面倒臭いからなぁ……。今頃「ルビィはまだ帰ってこないですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と発狂してそうだ。

 

明「暗いし、何かあったら怖いから3人とも家まで送ってくよ」

 

善子「そこまでしなくてもいいわよ」

 

明「馬鹿野郎、そういう奴ほど危ない目に遭うんだよ。フラグ立てんな!!」

 

 そういうことで俺は善子、ルビィ、花丸という順番で家まで送ることにした。

 

〜津島家の前〜

 

善子「ここまででいいわよ」

 

 善子さんが住んでるマンションのすぐそばまで行くと、彼女はここあたりで俺たちの足を止めた。

 

明「そうか。じゃあ、また明日な」

 

善子「うん。今日はその………ありがとう」

 

明「おう。堕天使様のためだからな」

 

善子「ふふ、それじゃあ」

 

 

 

 

〜黒澤家前〜

 

ダイヤ「ルビィィィィィン!!」

 

ルビィ「ぴぎゃあああ!!」

 

 ルビィさんの家に行くと、なんと入口の前で心配そうにダイヤ先輩が立っており、俺達の姿を視界にとらえた瞬間、泣きながらルビィに抱きついた。どんだけ、シスコンなん??

 

明「も、もうその辺にしといて上げてください。ルビィさん、疲れてるんで。」

 

 俺がフォローに入ると、ダイヤ先輩はルビィさんを解放させる。

 

ダイヤ「奥山さん、ルビィを家まで送ってくれてありがとうございます。助かりましたわ」

 

明「マネージャーとして当然のことをしただけですよ。それでは」

 

ルビィ「奥山くん!!今日はありがとうね!!」

 

明「あぁ」

 

ルビィ「ルビィの頭を撫でてくれた時、とても気持ちよかったよ」

 

明「ちょ、おまえ………」

 

ダイヤ「は?」

 

明「あ」

 

 ダイヤ先輩の口から聞いたことの無い声のトーンを耳にした瞬間に俺はまるで天敵から逃げるように超全力疾走で走った。あとで、LINEで誤解を解いておこう。

 

 

 

 

 

 何とか、ダイヤさんから逃げきれた俺は最後に花丸さんの家まで2人きりで向かっていた。

 

花丸「……………」

 

明「……………」

 

 ルビィさんを見送ってからは、ずっと沈黙の時間が流れている。彼女を避けている俺からしたら好都合なのだが、少しだけ気まづい。

 

花丸「あのね奥山くん」

 

明「!?………どうした??」

 

 唐突に花丸さんに話しかけられてビックリした。

 

花丸「マル………奥山くんに謝らなきゃいけないことがあるずら」

 

明「謝らないといけないこと??」

 

花丸「うん。」

 

 

 なんだろう…………。嫌な予感がする

 

 

花丸「合宿の時に、実は奥山くんと鞠莉ちゃんとダイヤさんの3人でしてた会話を聞いてしまったずら」

 

 

明「ーーーーーーーッッ!?」

 

 

 なんだと…………。いや、よくよく思い出してみるとあの3人で会話してる時に背後から音が聞こえたな。あの正体は花丸さんだったのか。

 

花丸「も、もちろん。奥山くんの過去のことは誰にも言ってないし、言うつもりもないずら!!」

 

 彼女の言葉で俺はひとまず安心して溜息を吐く。彼女のことだ。うそはついていないだろう

 

花丸「ごめんね。多分、東京に言った時も明くんの過去を思い出させるような言葉を言っちゃったからマルを避けるようになったんだよね??」

 

明「………………」

 

 花丸さんの言う通りだ。そこまで分かっていたか。この子も千歌先輩同様、馬鹿そうに見えて案外鋭いところがあるんだな

 

明「一つだけいいか??」

 

花丸「??」

 

明「どれだけ会話を聞いた??」

 

花丸「奥山くんが『人殺し』だったっていうことしか聞き取れなかったずら。あとは途切れ途切れで何を言っているのかわからなかったから…………」

 

明「そっか」

 

 なるほど。花丸さんが知っていることは俺が『人殺し』であるということだけ。つまり、俺がSaint Snowの鹿角姉妹の弟だということまでは分かっていないということか。

 

花丸「マルも一つだけ聞いていいかな??」

 

明「何だ??」

 

 

 

 

 

 

花丸「奥山くんは………………Saint Snowのあの2人とどういう関係なの??」

 

 

 

 

 

 

明「は?」

 

 …………おかしい。どうして、ここで彼女から姉ちゃん達の存在が出てくるんだ??会話は聞いてなかったんじゃないのか??

 

花丸「東京でSaint Snowに会った時にまず思ったのが、彼女達と奥山くんがなんとなく似ているなと思ったずら」

 

花丸「あとライブの日、Saint Snowが1番手だと知った時の奥山くんの表情がいつもと違ってたずら。まるで、彼女たちに素顔を見せないような動きだった。」

 

明「……………」

 

 

花丸「もしかして奥山くんはあの二人の………」

 

 

 

 ズガァァァァァァァァァン!!

 

 

花丸「ッッ!?」

 

 花丸さんが言い切る前に俺は、彼女の顔面すれすれの所に回し蹴りをする。当然、当てるつもりは無いので蹴りはそのまま彼女を通り過ぎ空き家だと思われる壁に蹴りが入る。すると、壁は大きいと音を立てながらヒビが入った。

 

 びくびくと震わせながら、花丸さんは腰を抜かして尻を地面につけた。

 

明「頼む。それ以上は言わないでくれ」

 

花丸「あ……………」

 

 

 

 理由は分からないが、花丸さんは俺の事について調べている。俺の入って欲しくない領域に足を踏み入れようとしている。それだけはどうしても避けておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本格的に彼女を拒絶すると決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はそのきっかけとなる言葉を……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「二度と、俺に話しかけんな。このド田舎無知女が…………」

 

 

 

 




これをきっかけにのちのち、明くんはぐちゃぐちゃとなります。


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『人殺し』は海の家で元凶と再び出会う

 〜ライブ当日〜

 

鞠莉「奥山くーん、小豆ぜんざい3つ追加お願いねー」

 

明「了解です」

 

 あれれー??どうして俺は今日、ライブ当日だというのに以前、合宿でお手伝いした『海の家』で鞠莉先輩と一緒に働いているのだろうか??そして、何故俺は再び小豆ぜんざいを作っているのだろうか??

 

鞠莉「奥山くーん、小豆ぜんざい追加で10つ追加ねー」

 

明「了解です。」

 

 うーん、小豆ぜんざいを作りながら思い出してみるか

 

鞠莉「奥山くーん、小豆ぜんざい追加で20つ追加ねー」

 

 鞠莉先輩や。事の出来事を思い出す前に俺の事、殺す気ですか??

 

 

 

 昨日は俺の領域に入ってきそうだった花丸さんに酷いことを言って、花丸さんとの関係を白紙にした。その時の花丸さんのあの悲しそうな表情を見た時は流石に心が痛かった。

 

 

 そんで、そのまま彼女と別れて今日を迎えた。当然、俺は花丸さんと距離を取った。彼女は何か言いたそうな素振りを何回か見せたが、昨日のことを気にしてなのか話しかけることは無かった。

 

 

 俺と花丸さんのとの様子を見て、何か察したのか俺は鞠莉先輩に呼び出された。そんで、何があったのかと問われたので正直に答えたら、めちゃくちゃ怒られた。

 

 

 鞠莉先輩は花丸さんとの仲を修繕するようにと言われたが、俺は彼女との関係を戻す気などはサラサラない。俺はもう決めたのだ。花丸さんと関わるのはもう辞めると。その方がお互い良い気に決まっている。まぁ、どっちみちもう遅いけどな。

 

 

 そして、俺は罰としてリハーサルまでは海の家で鞠莉先輩と一緒にお手伝いすることとなった。元々、合宿でここの海の家を気に入った鞠莉先輩は合宿以降、Aqoursの練習がない日はちょいちょい手伝いをしているらしい。流石にシャイ煮を作ることは無かったが、ホールの方で鞠莉先輩は活躍していた。

 

 流石は学園長をやっているだけあって、接客に関しては完璧だ。どうして、合宿の時に彼女を料理担当にしてしまったのだろうか、と思ってしまうほどに。

 

明「先輩、小豆ぜんざいできました。提供をお願いします」

 

鞠莉「OK♪」

 

 有難いことに、海の家に来たお客さんは小豆ぜんざいを買っていってくれる。話を聞くに、どうやら俺の作る小豆ぜんざいをSNSで知り、食べに行こうとして行くも買えなかったお客さんが大勢いたらしい。それによって、『幻の小豆ぜんざい』と呼ばれるほどにまで話題となったとか…………。

 

明「てか、日差しが眩しいなぁ」

 

鞠莉「じゃあ、これ付ける??」

 

 提供から戻って来た鞠莉先輩は胸の谷間からサングラスを取り出す。いや、あんたどこから出してんねん。

 

 でも、まぁ本当に日差しが眩しいし目がチカチカするから借りようかな

 

明「助かります」

 

 俺は先輩からサングラスを受け取り、目にかける。うわぁ、少しだけ生暖かいよぉぉ。

 

鞠莉「ワオ!とってもクールになったわ」

 

明「あはは、ありがとうございます」

 

 さすがにこれは苦笑いすることしか出来ない。

 

鞠莉「もうすぐリハーサルだから、それまでは頑張るわヨ。」

 

明「うっす」

 

 俺は肩にかけていたタオルを頭に巻いて、気合いを入れた。

 

 

〜数十分後〜

 

 

明「ん?ちょっと騒がしいな」

 

 俺は小豆ぜんざいを作っている途中だったが、一旦手を止める。フロアの方から女性の怒りの声が聞こえる。距離があって何を言っているのかは分からないがここまで聞こえてくるってことは相当大声を出してるんだが。

 

明「クレームか??」

 

 どうしようか。今、鞠莉先輩は俺たちの飲み物を買ってきているからフロアにいるのはここの海の家の店長とその娘さんだけのはず。

 

明「ちょっと行ってみるか」

 

 俺は厨房からフロアの方へと足を運ぶ。運ぶにつれて、あやふやだった怒りの声がハッキリと聞こえるようになった。

 

??「早くこの小豆ぜんざいを作っている人を出しなさい!!」

 

店長「いや、ですから…………」

 

??「いいから!!」

 

 ん?なんか聞き覚えのある声だな。とにかく、早く店長と娘さんの援護にまわらないと……………。

 

明「あのー、お客さ…………」

 

 

 俺はクレームを言っているのお客さんの顔を見て目を丸くする。

 

 

 

 

 俺の目の前にいる一人の女性、身長はルビィさんと同じくらいで低く、ツリ目とツインテールが彼女にとって特徴的な人物。そして、話し方に少しだけ刺がある。ここが海であるからか、水着を着てその上にピンク色のパーカーを着こなしていた。

 

 

 どうして……………

 

 

 

 

理亜「何よ………」

 

 

 

 

 

 どうして、ここに理亜姉ちゃんがいるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亜「あんた誰よ??」

 

 

 理亜姉ちゃんの言葉で俺はハッと意識を取り戻す。今の言葉からして俺の事を認識していない??いや、違うな。今の俺はサングラスを付けてるし、頭にタオルを巻いてるから理亜姉ちゃんは俺が奥山 零であると分かっていないんだ。

 

 だとしたら、幸いにも好都合だ。少しだけ声のトーンを変えて話せばいい。

 

明「俺はここのお手伝いをしている者だ。話があるなら俺が聞いてやる」

 

 この流れに乗って、どうしてこの人が内浦にやって来たのか聞き出すことにしよう。

 

 

理亜「あっそ。じゃあ、アンタに聞くわ。この小豆ぜんざいを作った人を出してちょうだい。」

 

明(ッッ!?…………なるほど、そういうことか)

 

 俺は理亜姉ちゃんの一言で全てを理解した。前も言った通り、俺の作った小豆ぜんざいはSNSで莫大的な拡散が起こった。それによって、理亜姉ちゃんにも俺の作る小豆ぜんざいの存在が伝わったのだろう。

 

 俺が作る小豆ぜんざいはいくら改良をしてあるとはいえ、実家の喫茶店で出しているやつをベースにしているから長年見てきた理亜姉ちゃんには気づかれてしまったようだ。

 

 しかし、まさかそれを確認するために北海道から内浦までわざわざ来るとはな。

 

明「どうしてです??」

 

理亜「あなたには関係ないでしょ」

 

明「関係無くはない。理由も無しに厨房の人間を出せって言われても困る。」

 

理亜「うるさいわねぇ!!早く出しなさいって言ってるでしょ!!」

 

 出せも何も、目の前にいるんだけどなぁ。でも、どうしようか。何を言ってもこの人、動く気は無さそうだし。昔から頑固だなぁ

 

 困っていると、この状況を打破してくれるあの先輩が帰ってきた。背後に見覚えのないイケメンのオッサンを連れてきて。てか、誰だよその人は。…………まさか引っ掛けてきたんか??んなわけないか。

 

鞠莉「お客様〜」

 

理亜「アンタは??」

 

鞠莉「この子の同じ、ここの店のヘルプに来ている者よ。マリーって呼んでちょうだい。」

 

理亜「んで、その後ろにいる男性は??」

 

鞠莉「彼はあなたが要求していた人物ヨ??」

 

理亜「え?」

 

鞠莉「この方は、ここの海の家でその小豆ぜんざいを作ってくれていたパティシエよ??」

 

理亜「な!?」

 

 理亜姉ちゃんは鞠莉先輩の言葉で驚きの表情を見せる。無理もない。恐らく、姉ちゃんは小豆ぜんざいを弟が作ったものだと確信していたのに違いないからな

 

鞠莉「それに、あなた見たことあると思ってたけど、スクールアイドルの子でしょ??こんな所で騒ぎを起こしてもいいのかしらん??」

 

理亜「ッッ!?……………ごめんなさい。」

 

 ようやく、自分の立場を理解したのか理亜姉ちゃんはシュンとして俺たちに頭を下げた。

 

 

??「理亜!!」

 

 

理亜「………姉様」

 

明・鞠莉「!!」

 

 このタイミングで1人の女性が心配そうな表情でやって来た。身長は女性にしては高く、優しそうなタレ目とサイドテールが特徴的である人物。可愛らしい青色の水着に理亜姉ちゃんと同じパーカーを着こなしている。

 

 

 

 そう、俺のもう1人の姉である聖良姉ちゃんだ。理亜姉ちゃんがいるからどこかにいるとは思っていたが、まさかここで会うとはな

 

 

 

聖良「すみません、うちの妹が迷惑を掛けてしまったみたいで」

 

鞠莉「気にしてないわよ。ね、太郎??」

 

 太郎って俺の事??

 

明「そうですね」

 

聖良「それでは。あと、鞠莉さん。Aqoursのライブ楽しみにしてます。」

 

鞠莉「あら、もしかしてその為に来てくれたのかしら??」

 

聖良「えぇ。理亜がどうしても行きたいって言うものですから」

 

理亜「姉様!!」

 

 いや、絶対に嘘だろそれ。このツインテール、Aqoursのライブを理由に俺の事、探りに来やがったな。

 

 

 その後、姉ちゃん達は去って行った。

 

 

明「鞠莉先輩、今回はマジで助かりました。ありがとうございます」

 

 俺は鞠莉先輩に頭を下げる。もし、あの時に鞠莉先輩が来なかったらバレていただろう。

 

鞠莉「No problem!!でも、あの二人がいるってことは気をつけた方がいいかもしれないわね。」

 

明「えぇ。」

 

鞠莉「このことは後でダイヤにも伝えておくわ。奥山くんもできるだけバレないようにね」

 

明「はい。」

 

鞠莉「じゃ、そろそろリハーサルの時間だから行きましょう」

 

明「分かりました。」

 

 

 こうして、俺と鞠莉先輩はライブ会場の方へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「ちゃんと、花丸ちゃんに謝るようにね!!」

 

 

 ちっ、忘れてなかったのか。まぁ、謝らないけど

 



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『人殺し』は頑固として掛け声を言わない。

忙しくて、なかなか更新できませんでした!!すみません!!

それなのに、お気に入りの数が増えてて驚きです。ありがとうございます!

なんとか、時間を見つけて更新していきたいと考えています!!


 「はい、OKでーす!!」

 

Aqours・明「ありがとうございました!」

 

 無事にリハーサルが終了した。音響証明共に問題なし。彼女達も問題は……………ないとは言えなかった。

 

 その原因は花丸さんだ。傍から見れば、花丸さんの踊りは何も問題ないように見える。しかし、昨日1年生3人と一緒に自主練を見てきた俺には分かる。

 

 

 彼女は所々、ミスをしていた。

 

 

善子「ずら丸、ちょっとどうしたのよ??」

 

 そのミスに気づいていた善子さんが、心配そうに花丸さんにコソコソと話しかける。

 

花丸「ごめんね、善子ちゃん。緊張しちゃって思ったより動けなかったずら」

 

 花丸さんは「あはは」と作り笑いをしてなんとか誤魔化すように答える。

 

善子「もぅー、しっかりしなさいよ。あと、ヨハネ!!」

 

 いつものやり取りをしたあとに、花丸さんは「お手洗いに行ってくるずら」と言ってどこかに行ってしまった。

 

 

 〜花丸視点〜

 

 

 昨日のことで彼に謝りたい。

 

 けど、彼の顔を見ると、あの表情と言葉を思い出してしまう。

 

 

明『二度と、俺に話しかけんな。このド田舎無知女が…………』

 

 

 この言葉によって、マルは酷くショックだったずら。言われて欲しくない言葉だったから。

 

 

 けど、あの時あの瞬間にマルは気づいてしまった。

 

 

 あの言葉を出した時の彼の表情は…………

 

 

 

 とても、辛そうな表情をしていた

 

 

 

 きっと、本人は自覚していないと思う。

 

 

 ねぇ、どうして君はあんな表情をしたの??

 

 

 あんな表情をされならマルは…………

 

 

 

善子「ずら丸、遅いわよ!!もうすぐ本番よ!?」

 

ルビィ「花丸ちゃん、大丈夫??みんな、待ってるよ??」

 

花丸「うん…………。」

 

 

 

 

 

 「Aqoursのみなさーん、スタンバイお願いしまーす」

 

 

 

 

 

Aqours「はーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 マルは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もっと、貴方のことを助けたくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 「Aqoursのみなさーん、スタンバイお願いしまーす」

 

 

Aqours「はーい!!」

 

 

 

 そろそろ、ライブ本番の時間だ。衣装を身に纏う彼女たちはステージ裏の方へと向かい、円の形へと並んで千歌先輩が今日のライブの意気込みを語る。

 

 

千歌「今日のライブは思いっ切り楽しんで、梨子ちゃんを笑顔で東京に送り出してあげよう!!」

 

 

梨子以外「うん!!」

 

 

梨子「千歌ちゃん………みんな」

 

 

 千歌先輩の言葉で梨子先輩は少しだけ嬉し涙を目に浮かべる。

 

 

千歌「それじゃあ、いつものいくよ!!…………………1!!」

 

曜「2!!」

 

梨子「3!!」

 

花丸「4!!」

 

ルビィ「5!!」

 

善子「6!!」

 

ダイヤ「7!!」

 

果南「8!!」

 

鞠莉「9!!」

 

 あれは、いつもライブ直前に彼女たちが行う行為だ。数字を言うことによって、自分たち9人が今ここに『在る』いうことを改めて認識させるためであろう。あれを見ると、こっちもやる気が出るんだよな

 

 …………ん?なんで皆さん俺の方を見るの??俺、なんかした??

 

 

千歌「奥山くんは言ってくれないの??」

 

 

 この先輩は、急に何を言い出すんだ??

 

明「いや、だって俺、歌いませんよ??」

 

千歌「でもぉ、奥山くんもAqoursの一員だし…………」

 

明「俺に気を遣わなくても大丈夫ですから……………。」

 

千歌「でもぉ」

 

 『それでは、Aqoursのみなさんの登場でーす!!』

 

 ステージの方からアナウンスが流れる。助かった…………。

 

明「ほら、もう出番ですよ。」

 

千歌「むぅ、今度は絶対に言わせるんだから!!………Aqoursーー!!」

 

 

Aqours「サーンシャイン!!」

 

 

 

 こうして、Aqoursはステージの方へと向かった。

 

 

 彼女たちが踊る立ち位置に着いたのを確認した俺は音響卓へと向かい、インカムを付けて曲を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー事件が起こるまであと5分

 

 

 

 

 

 〜理亜視点〜

 

 

Aqours「ありがとうございましたー!!」

 

 

 Aqoursのライブが終了した。

 

 

観客「ワァーーーーーー!!」

 

 

聖良「凄い…………」

 

 

 彼女たちのライブを見て、姉様がボソリと呟いた。私も言葉としては出さなかったけど、姉様と同じ気持ちだ。

 

 数ヶ月に東京で見たライブよりも遥かに良いものへとなっている。

 

 なんだか…………悔しいな。

 

 本来だったら、Aqoursのライブは内浦に来る理由のついでにしか過ぎないと思っていたけど、前言撤回。見に来てよかったわ

 

 

聖良「Aqoursの皆さんに負けてられないですね。家に帰ったら、練習ですよ。理亜」

 

 

 どうやら姉様もAqoursのライブを見て、対抗心に火が付いてしまったらしい。顔が活き活きとしてる。

 

 

理亜「えぇ、勿論よ。姉さ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「きゃーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良・理亜「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 私が姉様に言葉を出した瞬間、ステージの方から女性の叫び声が響き渡った。反射的に私と姉様はステージの方を振り向くとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不気味な笑みをしている謎の男性が、Aqoursのメンバーの1人である国木田 花丸を抱え込み、首筋にナイフを当てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然、周りは騒ぎとなりAqoursのメンバー含め観客がパニックに陥ると、ステージ上に1人の男性が怒りの声を発しながら現れた。

 

 

 

理亜・聖良「え?」

 

 

 

 その男性の姿を見て、私と姉様は驚きの表情を出す。

 

 

 

 

 私と瓜二つな顔つきに、私と同じ赤紫色の髪型。そして、見覚えのある表情に聞き覚えのあるあの声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良「明??」

 

 

 

 

 

 

 

 そう。

 

 

 

 

 

 

 現れた男性は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達の弟、鹿角 明に似ているAqoursのマネージャー、奥山 零だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、明 死す。

デュエルスタンバイ!!


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『人殺し』を想ってる少女は人質となる。

謝罪が2点。

1つは更新が遅れたこと。

そして、もう1つははまだ明くんはデュエルスタンバイすることができなかったことです。いや、したいんだすよ??したいんですけど、流れ的にここで切った方が良いと判断しました。

意味がわからない人は、本編の前話の後書きの方をご観覧ください。



 〜花丸視点〜

 

 本当に一瞬のことだったずら。

 

 1人の男の人がステージ上に上がり込んで、近くにいたマルを抱え込み、マルの首辺りにナイフを近づけてきたずら。

 

 

 「きゃああああああああああああ!!」

 

 

 当然、それを見てAqoursのみんなや観客達が悲鳴の声を上げていた。

 

 マルは恐怖で声を出すことが出来なかったずら。

 

男「うるせぇ!!さっさと黙らねぇとこの女、ぶっ殺すぞ!!」

 

 男の人が周りに向かって叫びまくる。それによって、先程の騒ぎが嘘のようにシーンとなった。

 

 それを確認した男の人は不気味に笑いながらマルの方に顔を向ける。

 

 

男「よぅ、久しぶりだな」

 

 

花丸「え……………」

 

 久しぶり??どこかでマルはこの人と会ったことがある??

 

男「まさか、あの時のお前がスクールアイドルをやっていたとはな。」

 

花丸「ーーーーーーあ。」

 

 

 そうだ、思い出した。捕まった恐怖で、この男の人の顔をよく見ていなかったが、よく見てるとAqoursの合宿の時にマルを騙して襲いかかろうとしたあの時の男性だ。

 

 

 でも、どうして??この人は、明くんに倒されて警察に捕まったはずじゃあ………

 

男「不思議に思ってる顔だな。あの後、警察の目を盗んで逃げ出したんだよ。俺を陥れたてめぇとあの時のガキを懲らしめるためになぁ!!」

 

 男の人は怒りの表情を露わにして怒鳴り散らす。もちろん、この人の考えは理不尽すぎるずら。

 

 

男「だから、逃げ出したあとにこのライブが開催されるって知った時には俺、嬉しかったんだぜ。てめぇとあのガキのことを復讐することができるってなぁ!!」

 

 

花丸「そんな…………」

 

ダイヤ「……………貴方、はっきり言ってクズですわね…………」

 

 つまり、この人は自分勝手な考えでマル達のこの大切なライブを壊したってことずらか??

 

 そう思うと、マルは悲しさからか瞳から涙をボロボロと流す。

 

 

 せっかく、このライブを良いものとしようとして善子ちゃん達と練習したのに………

 

 

花丸「そんなの…………そんなの酷いズラ」

 

 そんなマルの表情を見て、男の人は満足そうな表情をとる。

 

男「ハーハッハッハ!!いいねぇ、その表情。それだよそれ。俺が見たかったのはその顔だよ!!」

 

花丸「ゔぅ……………」

 

男の人が高笑いする度にマルは悲しさと悔しさで辛くなってきている。

 

 そこで、マルは以前同様、心の中で1人の同い年の男の子に助けを求めようとした。けど、することが出来なかった。

 

 『二度と俺に話しかけんな。このド田舎無知女が』

 

 あの言葉が頭の中に過り、声を出すことが出来なかった。そうだ。彼は今、マルの事を拒絶している。だから、助けに来てくれるはずがない。

 

 

 だから、マルはただこの男の人の虫唾が走るような高笑いを聞きながら涙を流すことしか出来なかった。

 

 

 しかし、男の人が走った一言で場の状況が一気に変わった。

 

 

男「さてさて、それじゃあやっちゃいますか………」

 

 

花丸「!?」

 

 高笑いしていた男の人は一気に真剣な表情となり、殺気??のようなオーラを漂わせながらこちらの方を見る。

 

 男の人はナイフを持っている腕を上にあげる。これは、正しく刺しにかかってくる体勢だった。

 

男「俺はあのガキを許さねぇ。だから、あのガキが助けたお前の死体を見た時にどんな反応するんだろうなぁ!?へへ、楽しみだ」

 

花丸「やだ…………」

 

千歌「やめて!!」

 

 マルと千歌ちゃんの言葉も男の人は無視して、ニヤリとしながらマルにとって最期の言葉を投げかける。

 

男「恨むなら、あの時俺に見つかった自分と俺を警察に突き出したあのガキを恨むんだ…………………な!!」

 

 そう言って、男の人はマルに向かって勢いよくナイフを振り下ろす。それによって、周りからは悲観な叫び声が響き渡る。

 

 その瞬間、まるでスライドショーのようにマルの過去が視界に映し出される

 

 これが所謂、『走馬灯』というものずらか??

 

 

 ーーーマルが産まれた時…………

 

 

 ーーーマルが幼稚園で善子ちゃんに出会った時………

 

 

 ーーー中学の図書室でスクールアイドルの雑誌を読んでいたルビィちゃんに出会った時…………

 

 

 ーーー高校で、スクールアイドル『Aqours』に入部し、それによって初めてマルが1人の男の子に恋をしてしまった時……………

 

 

 ーーー男の子と一緒に東京で本屋に行った時や、合宿でマルと2人だけ朝早く来てしまった時…………………

 

 

 ーーーそして、合宿中その男の子に助けられた時やその数日後に彼に酷いことを言われてしまった時…………

 

 

 あれ?思ったより彼との関わりが多い??

 

 

 そっか。マルは想像以上に彼のことが好きだったんだ。

 

 

 あーあ、どうせだったら彼のこと助けたかったな。何か力になりたかったな

 

 

 でも、もう遅い。だからせめて…………

 

 

 

 せてめこれだけは言わせて欲しいずら。

 

 

 

 

 ……………ごめんなさい、明くん。

 

 

 

 

 そして、マルが心の中で謝った時には、ナイフがマルの顔のすぐ側だった。

 

 

 

 

 

 マルはぎゅう!!と目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………グサっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 おかしい。今さっき、ナイフが何かに刺さった音が聞こえたのに何も痛みも感じなかった。もしかして、刺された瞬間にマルはあの世に行ってしまったずら??

 

 

 しかし、それは違うとすぐにわかった。なぜなら、顔に何か生暖かい液体が顔に付着してきたから。

 

 

 

 

 

 

 マルは恐る恐る目を開けるとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

明「お前ごときのクズが、彼女たちのことを笑うんじゃねぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マルの目の前で、腕にナイフが刺さって血を流しながらも鬼のように怖い顔を男の人に向けている想い人(明くん)が立っていた。

 

 

 

 

 




次回こそは明くんをデュエルスタンバイにさせるんで。詐欺じゃないっすよ??本当っす!!嘘じゃないです!!

なので、気長に待ってて下さい。


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『人殺し』はまたしても罪を犯す

お気に入りが300超えました!!ありがとうございます!!
まさか、超えるとは思ってもなかったんで嬉しいです!!
これからもよろしくお願いします!!

そして、お待たせしました!!タイトル通り、明くん、やらかします!!どうぞご観覧くださいませ!!


 〜明視点〜

 

 

 ーーーーー……………痛い。

 

 

 当たり前だ。なにせ、今の俺の左腕にはナイフが刺さっているんだからな。当然、血がポタポタと流れている。

 

 どうして、こんなことをしたのか、いくら考えても分からない。

 

 

 けど……………彼女が殺されてしまうと分かった瞬間に無意識に足が動いてしまった。

 

 

 花丸さんは目を丸くして驚きの表情をしていた。拒絶された相手にまさか助けられるとは思ってもいなかったのだろう。

 

 

男「ーーーッッ!?こいつ!!」

 

 

 まぁ、そんなことは今はどうでもいい。ひとまず、花丸さんをこの野郎から解放させることが優先だ。

 

明「はぁ!!」

 

男「ぐはっ!!」

 

 俺は得意の後ろ回し蹴りをして男を吹っ飛ばし、奴が彼女から手を離したところを見逃さず、花丸さんを自分の方へと抱き寄せる。

 

やはり怖かったのか、花丸さんは涙目で震えており、俺にしがみついていた。この時、彼女の胸が当たった時に少しだけ幸せな気分になったのは内緒だ。

 

 

明「……………大丈夫か??」

 

花丸「………うん。」

 

 

明「そっか……………。なら良かった。」

 

花丸「…………ゔん」

 

善子「ずら丸!!」

 

ルビィ「花丸ちゃん!!」

 

 花丸さんの側に涙目の善子さんとルビィさん含め、他の人先輩達が駆け寄る。

 

明「果南先輩………花丸さんをよろしくお願いします」

 

果南「うん……………任せて」

 

 俺はAqoursのメンバーの中で恐らく1番頼りになるであろう、果南先輩に花丸さんを託した。

 

果南「でも、君腕が…………」

 

明「大丈夫っすよ。これぐらい。」

 

 俺は作り笑いをして、そう答える。……………嘘です。めちゃくちゃ痛いです。だって、現在進行形でナイフ刺さってんのよ??血も止まらねぇし………。これ、抜く時に勇気いるやつだよな

 

 そう、心の中で色々と呟いていると背後から殺気の孕んだオーラを感じた。

 

 後ろを振り向くと、男がよろけながら立ち上がっていた。

 

男「てめぇだけは…………許さねぇ………」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 男はヨダレをだらしなく垂らしながらも、俺を酷く睨みつける。それによって、Aqoursのメンバーが表情を青くした。

 

明「大丈夫だ、ルビィさん。………皆さんはここから離れて下さい。あとは俺がやっておきます。」

 

 俺は彼女達に離れるようにと促したあと、男の方へと足を運ぶ。

 

明「また会ったな」

 

男「こ、このガキがぁぁぁあああああ!!」

 

 怒り狂った男はナイフを2本目の取り出して、俺の方へと襲いかかる。蹴りどころが良かったからもう動けないと思っていたが…………火事場の馬鹿力というやつか。

 

 俺はゆっくりと息を吐きながら構えをして、男に言葉を投げかける。

 

 

明「お前の罪は3つある。」

 

 

 男がナイフを突き刺すのを、俺は余裕で躱しその隙に手首を掴んでグイッと捻らせナイフを落とさせる。

 

 

明「1つ目は、Aqoursの大切なライブをめちゃくちゃにしたこと。」

 

 

 俺は肘を男の顔面に当て、相手が数歩後ずさりした後に、今度は男の頭を持って膝に当てる。奴の鼻からボキッと痛々しい音が聞こえてきたが、知ったこっちゃない。

 

 

明「2つ目は、彼女たちを泣かしたこと」

 

 

 そして、俺は男の胸ぐらを掴み立ち上がらせて腹に数発パンチを入れたあとに、蹴りを入れる。

 

 

男「ぐはぁ!!」

 

 

明「そして、3つ目は……………」

 

 

 俺は言葉を言う前に、奴の顎に目がけて全力でアッパーをぶちかました。顎に強力な刺激を与えると直接脳に衝撃が伝わる。

 

 

 男は白目を向いて、泡を拭きながらバタンと倒れた。

 

 

明「彼女のことを殺そうとしたことだ。」

 

 

 決まった……………。と心の中で、余韻に浸りながら彼女たちの所へと戻ろうとする。周りから「うぉぉおおおおおおおおおおお!!」と観客からの歓声がダイナミックに聞こえた。状況が状況だったから忘れてたけど、そういえばライブの後だったわ。

 

明「ーーーーーあ」

 

 

 俺は偶然、大勢いる観客の中からとある2人と目が合った。

 

 

 その2人とはSaint Snowのメンバーかつ俺の実の姉である鹿角 聖良と鹿角 理亜だった。

 

 

 2人の表情は周りの嬉しそうな表情をしている観客とは違い、まるで唖然、もしくは困惑しているかのような表情をしていた。

 

 

 しまった…………。今の俺はメガネも付けていなければ、帽子も身につけていない。まんま奥山 明の姿であった。

 

 

 これは確実にバレてしまったな。と直感的に思った。

 

 

 気まずさを感じながらも俺はそんな2人から目を逸らし、気絶している男の方へと向かう。早くこいつを警察に届けなくてはならない。

 

 

 

 そして、男を立ち上がらせようとした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

??「本当にそれだけでいいのか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明「…………………え?」

 

 

 

 頭の中から、聞き覚えのある声が聞こえると、周りがまるで時間が止まったような感じになった。

 

 

??「よぅ、久々だな」

 

 

 久々に聞こえてくるこの声は………………。姉ちゃん達にあった時や、合宿1日目の夜に聞こえてきたあの声だ。

 

 

明「なんのつもりだ??」

 

 

??「おいおい、久しぶりだというのに冷たい奴だな」

 

 

明「得体の知れないお前に優しくするわけないだろ」

 

 

??「まぁ、そういうことにしといてやるよ。俺はただお前にアドバイスをしにきただけだ」

 

明「アドバイス??」

 

 俺がそう聞くと、??は不気味に笑う。

 

 

??「そう。もう一度聞くが、お前はそれでいいのか??」

 

明「どういうことだ!」

 

 

 こいつは何が言いたいんだ!?

 

 

??「このライブはお前達にとって、とても大切なものなのだろう??」

 

 

 そうだ。このライブは………東京に行く梨子先輩を最高の形で送り出してやりたいという千歌先輩の案で行った大切なライブだ。

 

 

??「しかし、それをこの男はぶち壊した。お前はそれを許せるのか??」

 

 

 当然、許せる訳ないだろ。

 

 

??「あの女の仲間に対する気持ちをこの男は踏みにじったんだぞ??お前はそれを許せるか??」

 

 

 くっ、こいつは本当に何が言いたいんだ!?けど、なんだ!?この気持ち…………。この声をを聞く度に心のどこかで何かを納得している自分がいる。

 

 

 

??「しかも、この男はメンバーの1人を殺そうとしたのだろう??お前はそれを許せるのか??」

 

 

 そんなの、絶対に許せるはずがないだろ。だから警察に……………

 

 

 

??「その警察に1度任せた結果、こうなったのだろう??」

 

 

 

明「ーーーーーーッッ!?」

 

 

 

 

??「もし、あの時警察がちゃんとしていればこうなることは無かった。違うか??」

 

 

 そうだ。そもそも、警察共がこの男をちゃんと見張っていればこのライブがめちゃくちゃになることは無かった。

 

 

 俺はこの辺りで徐々に呼吸が荒くなっているのに気づく。

 

 

??「そうだろう??憎いだろう??」

 

 

 憎い………………。この男と警察が憎い

 

 

??「こいつをまた警察に出したらどうなると思う??また逃げ出して、お前達の迷惑になるようなことをするに決まっている。」

 

 

 それはダメだ……………。なら、ここで終わらせておく必要がある

 

 

 

??「じゃあ、どうすればいいと思う??」

 

 

 …………………どうすれば良いんだ??

 

 

??「そんなの、簡単だ。自分の左腕を見てみろ」

 

 

 

 

 

 俺は言葉通り、左腕を見る。左腕には、ナイフが刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

??「それで、この男を刺して殺せばいい。」

 

 

 

 

 刺す??殺す??こいつは何を…………

 

 

 

 

??「お前なら殺れるだろ??なにせ、お前は経験があるのだから。お前は『人殺し』なのだから」

 

 

 

 

 

 そうだ……………。確かに俺は『人殺し』だ…………。だけど、俺は………………

 

 

 

 

 

??「過去はともかく、今のお前がやることは悪くない。だって、全部悪いのはこいつだからな。」

 

 

 

 

 この時、俺が微かに保っていた最後の理性が崩れ落ちるのを感じた。

 

 

 

 

 そうだ。…………悪いのは全部こいつだ。

 

 

 

 

 花丸さんを騙して襲いかかり、復讐とか馬鹿みたいなことを抜かしてAqoursの大切なライブをめちゃくちゃにした。更にそれに加え、また花丸さんを傷つけようとした。

 

 

 

 

 こいつだけは許さねぇ!!絶対に殺してやる!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。……………

 

 

 

 

 そう決意した俺は、左腕に刺さっているナイフに手をつけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

~花丸視点~

 

 

 

 ーーー何かがおかしいずら。

 

 

 

 あれから、明くんは倒れている男性の目の前で立ち止まりずっと動かないままだった。けど、口が動いているのは分かる。

 

 

 まるで、目に見えない誰かと話しているかのように…………………。

 

 

 次第に、明くんは呼吸が荒くなっていき、汗も出るようになった。そして、興奮状態に陥ったせいか、目を剥き出しにしていた。

 

 

 

花丸「!?」

 

 

 

 明くんは急に、左腕に刺さっていたナイフを抜き出し始めたずら。抜いた傷口から、一気に血が溢れ出ている。周りからは悲鳴が聞こえる。

 

 

 

 そして、ナイフを抜いたと思ったらそのナイフを持ち上げ始めた。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーまさか!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪い予感を感じたマルは、咄嗟に足を前に出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~明視点~

 

 

 

 

 俺はナイフを抜き、手に持って男にとって最期の言葉を送る。

 

 

明「悪いのは全部お前だ。」

 

 

明「お前が生きていたからこんなことになったんだ」

 

 

明「だから、俺がお前を殺してやる」

 

 

??「そうだ。一思いに殺れ!!」

 

 

 

明「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 俺は叫びながら、ナイフを男に目がけて振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーグサっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やっと……………君の力になることができたずら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「ちっ………………余計なことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はここで、理性を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は一体……………………何をしていた??

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は恐る恐る周りを見回す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、Aqoursのメンバーがまるで怪物を見るかのような目で俺を見ながら震えていた。

 

 

 

 

 

 

 いや、待て。1人…………あいつがいない。

 

 

 

 

 

 

 

 まさか………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺は目線を下に下ろすと、そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肩にナイフが刺さっていて、そこから血を流して倒れている花丸さんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーー『人殺し』は絶望した表情で発狂した後に、ここで意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この後、どうなるのでしょうか??

さてさて、今から考えますか。笑

嘘です。ちゃんと考えてます。気楽に待ってて下さい。


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『人殺し』はまるで屍のように………

遅くなって申し訳ない

あと、いつもより大分短めです。


 ~千歌視点~

 

 

 あの事件から数日が経過した。

 

 

 肩にナイフが刺さった花丸ちゃんは救急車に運ばれて、ライブ後に乱入した男の人と気絶した奥山くんは警察の人達に連行された。

 

 事件の発端である男の人は、数日前に警察署から逃亡したこともあり有罪判決、奥山くんは2日ほど警察署にいたけど鞠莉ちゃんが手配したエリート弁護士の弁護によって無罪判決となり、昨日釈放されたらしい。

 

 その報せを聞いた私達は、すぐに奥山くんの住んでいる家へとやって来た。釈放されてからは、奥山くんに連絡を送っても一切返事は来ず、しかも気づいたらLINEのAqoursのグループから抜けていた。

 

曜「奥山くん………大丈夫かな??」

 

ダイヤ「少なくとも大丈夫ではないと思いますわ。じゃなきゃ、彼がAqoursのグループから抜けるはずないですもの。」

 

ルビィ「うゆ…………」

 

 きっと、奥山くんは責任を感じて私達から距離を取っているに違いない。それは違うんだって言うことを彼に伝えなきゃ。

 

 

千歌「よし、行こう!!」

 

 

 私達は玄関前まで行き、恐る恐るインターホンを押す。すると、

 

零『はーい。どちら様ですか??』

 

 押してから直ぐに女性らしい声が聞こえてきた。奥山くんのお母さんかな??

 

 

千歌「私達、奥山くんと一緒に活動してる浦の星女学院スクールアイドル『Aqours』です。…………今日は奥山くんのお見舞いに来たんですけど………」

 

 

零『……………ちょっと待っててね』

 

 少し待つと、ガチャと扉が開き中から1人の女性が現れた。

 

零「いらっしゃい。私の名前は奥山 零。まずは上がってちょうだい」

 

 零さんと名乗る女性は「どーぞどーぞ」と言いながら私達に家から上がるよう促す。私達は互いに顔を見つめあったあとに、「お邪魔します」と言って家に上がって行った。

 

千歌「あの………奥山くんの様子はどうですか??」

 

 

零「……………見てもらえれば分かるわ」

 

 

 そして、私達は零さんと共に、『明』という木製のネームプレートがぶら下がっている扉の前へとやって来ていた。この扉の向こうに奥山くんがいるんだ。

 

 

零「明ちゃん。お客さんが来たわよ。………入れるわね」

 

 

 

 コンコンと零さんがノックし、小声でそう呟いたあと扉を開ける。

 

 私達は奥山くんの部屋の中へと足を踏み入れる。するとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生気を全く感じられない奥山くんがベットの上で横たわっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「奥山くん…………」

 

 

 彼の今の姿は、最後に見た時と大いに変わっていた。髪の毛は更にボサボサとなっており、目の下には大きな隈、そして目のハイライトが無くなっていた。数日間、何も食べ物を口にしていないのか少しだけ頬が痩せこけていた。たった数日でこんなにも変わるものなの??

 

 彼の姿を見た他のみんなは私と同じく顔を青くしていた。ルビィちゃんや、善子ちゃんの2人に関してはく涙を流すほどだった。

 

千歌「み、みんなでお見舞いに来たよ。」

 

明「………………」

 

 問いかけても、奥山くんは何も反応しなかった。私達を無視しているだけなのか、それとも反応したくても反応することが出来ないのかどっちなのか分からなかった。

 

 

 それでも、私は諦めなかった。

 

 

千歌「まだ、花丸ちゃんのこと気にしてる??」

 

 

梨子「千歌ちゃん!?」

 

明「………………」

 

 

 彼にとって禁句といえる言葉を出しても、彼は無反応。ただ、ボーッとして天井を眺めるだけだった。

 

 

千歌「このあと、私達花丸ちゃんのお見舞いに行くんだけどさ、奥山くんも一緒にどう??」

 

 

明「………………」

 

 

 未だに、彼は反応してくれない。

 

 

千歌「お母さんに聞いた話によると、花丸ちゃん明日か明後日には退院できるんだって。でも、明後日だと梨子ちゃんが東京に行っちゃうから明日に退院して欲しいよね。」

 

 

明「………………」

 

 

 ねぇ………何か言ってよ。

 

 

千歌「だから……………もし明日花丸ちゃんが退院するなら…………一緒に………行かない??」

 

明「………………」

 

 

 どうして…………何も言ってくれないの??少しだけでも反応してよ。

 

 

ダイヤ「千歌さん…………」

 

 ダイヤさんが気まずそうに私の肩に手を置く。彼女の方に振り向くと、ダイヤさんは顔を左右に揺らす。

 

 

 まるで……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー彼にこれ以上、何を言っても無駄だと言っているかのように……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奥山くんの部屋から出ると、零さんが私達に近づいてきた。

 

 

零「その様子を見ると、ダメだったみたいだね」

 

 

果南「まるで、こうなることを分かっていたかのような言い方ですね。」

 

 

 少しだけ苛立った表情をしながら答える果南ちゃんに対して、零さんは「まぁね」と素っ気なく答える。

 

 

善子「貴女………自分の息子があんな風になってるのよ!?どうしてそんな態度がとれるのよ!!」

 

 

 零さんの態度に今度は善子ちゃんが顔を赤くして零さんに向かって怒りの言葉をぶつける。

 

 

 それでも、零さんは何一つ表情を変えずに私達に言葉を投げかけた。

 

 

零「貴女たちに話があるわ」

 

 

曜「話ですか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「えぇ。明ちゃんの過去について………ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零さんのこの言葉によって、私は偶然なのか鞠莉ちゃんとダイヤさんが少しだけバツの悪そうな表情をしていたのを見逃さなかった。

 




今年中に終わらすって言ったけど無理だ。
だって、急に忙しくなるなんて誰も思わんやん。

今年中にあと2、3話ほど更新できたら満足。


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『人殺し』以外にも、壊れた人物はいる

あけましておめでとうございます。

今年もこの作品をよろしくお願いします!!


 零さんはテーブルの上に私達の人数分の飲み物を置くと、椅子に座るよう促す。

 

 あともう少しで、花丸ちゃんのお見舞いの時間になるためあまり時間がとれないですけど…………と果南ちゃんは言うが、零さんはそんなに時間はとらないと主張。その言葉により、みんなは渋々だけど椅子に座った。

 

零「みんなは明ちゃんのことについてどれだけ知ってる??」

 

 

 奥山くんのことについて……??

 

 

 よくよく思い出してみても、奥山くんのことあまり知らないな。よく働いてくれる1年生の男の子という印象しかない。それは、曜ちゃんと梨子ちゃん、そして善子ちゃんにルビィちゃんに果南ちゃんも同じ考えだと思う。

 

 

 けど、この2人だけは違った。

 

 

零「貴方達2人は…………どうやら知ってるみたいね」

 

鞠莉・ダイヤ「…………はい」

 

 鞠莉ちゃんとダイヤちゃんの2人は、零さんの言葉に気まずそうに頷く。

 

 

 …………一体、2人は奥山くんのことについて何を知っているの??彼の過去に何があるの??

 

 

零「そこのお団子ヘアしてる貴女。名前は??」

 

 

善子「え!?私?クックックッ…………、そんなに知りたかったならば、教えてあげるわ。私の名前は堕天s「善子ちゃん!!ここは真面目に!!」ちょ、リリー!!………分かった分かったわよ。津島善子よ!!」

 

零「津島ちゃんね。貴女さっき明ちゃんは私の息子って言ったわよね??」

 

善子「え!?そうじゃないの??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「明ちゃんは私の本当の子供じゃないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉・ダイヤ以外「え!?」

 

零「てか、私まだ27よ!?間違えるなら普通、母親じゃなくて姉でしょ!?」

 

 零さんはそう言いたがら少し悲しそうに溜息を吐く。なんだか申し訳ない気持ちになったんだけど…………って注目するところはそこじゃないよ!!

 

千歌「ど、どういうことですか??」

 

 

零「簡単に言うと、約6年前に私が児童施設で彼を引き取ったの。」

 

 

 児童施設??引き取った??

 

 

 つまり、奥山くんは…………

 

 

零「そう。貴女が思っている通り、彼は捨て子だった。」

 

 

 

 ーーーーーーッッ。………やっぱり。

 

 

 

 

零「そして、彼の本当の名前は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鹿角明よ。」

 

 

 

 ーーーーーーえ?

 

 

 

曜「ちょっと待って下さい!!鹿角って言ったら…………」

 

 

 曜ちゃんは机に手をバンと置いて、立ちながら零さんに話しかける。当然、私達も驚きと表情をしている。

 

 

 

 

 最近、あのスクールアイドルはメンバーの体調不良を理由に活動を休止してるってサイトの方で知ったけど………偶然だよね??確かに、鹿角って珍しい苗字してるけど、彼女達のことじゃないよね??別の人なんだよね??

 

 

 

 

 

 けど、零さんの一言でそれは確信となった。

 

 

 

零「そう。明ちゃんはSaint Snowとして活動してる鹿角 聖良と鹿角 理亜の実の弟よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~茶房菊泉~(理亜視点)

 

 

 

 Aqoursのあの最悪なライブから数日が経過した。

 

 

 

 明によく似た容姿を持つ奥山 零がライブを荒らした男と共に警察の人達に連行されて行くのを私達は黙って見ることしか出来なかった。

 

 

 ただ…………あの奥山 零がナイフを刺した時にメンバーの顔を見たあの表情……………

 

 

 

 …………………似ていた

 

 

 

 かつて10年前に、あいつが強盗に向かって銃を発砲した後のあの表情に………

 

 

 

 そして、現在。私達がやっているスクールアイドル『Saint Snow』は休止している。

 

 

 

 何故ならば…………

 

 

理亜「姉様、入るわよ………って姉様!?」

 

 

 

 姉様の部屋に入ると、姉様は真顔でカッターナイフを使って自分の腕を傷付けていた。

 

 

 

 私はすぐに姉様の所まで飛びつき、カッターナイフを取り上げて遠くに放り投げた。

 

 

聖良「何…………するんですか」

 

 

理亜「何馬鹿なことをしているの!?」

 

 

聖良「どうせ………私なんて…………」

 

 

理亜「姉様!!」

 

 

 そう。あの事件以降、姉様は自虐行為をするようになった。目を離せばすぐに自分の体のどこかを傷つけていた。そのせいで姉様は体に傷が増えてしまった為、これでスクールアイドルの活動をするのはまずいと思い、活動を休止させた。

 

 

 なぜ、姉様がこうなってしまったのかはだいたい予想はつく。

 

 

 1つ目は、過去に酷いことを言ってしまった弟に似てる人物に出会ったため。そしてもう1つはその人物に姉様は好意を抱いていたためだ。

 

 そのせいで、今まで保っていた姉様の精神が完全に崩壊してしまいこのような事態へとなってしまった。

 

 

 これまでは何とか過ごしていけたけど今回ばかりは本当にどうしようもない。

 

 

 

 

 

 ねぇ、明。私、どうすればいいの??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




頑張って明日までに次話を投稿します!!


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『人殺し』の育ての親は謝罪する。

更新間に合わなくてすみませんでした。


 ~千歌視点~

 

 奥山くんの家を後にした私達は、花丸ちゃんのお見舞いに行くためにバスに乗って病院へと向かっていた。

 

 けど、みんなの顔はあまり優れてない。

 

 それもそうだよね。零さんにあんな話を聞かされたら誰だってテンション低くなるよ。

 

 私達は奥山くんの過去について色々と零さんに教えて貰った。

 

 奥山くんが本当はSaint Snowの鹿角聖良さんと鹿角理亜ちゃんの実の弟だったとか、10年前に彼の両親によって児童施設に送られたことや、児童施設に送られた原因として…………………

 

 

 家族を守るために人を殺めてしまったことなども…………

 

 

 零さんからこの話を聞いた時に、私達はもはや言葉すら出なかった。

 

 

 

曜「まさか、奥山くんにそんな過去があったなんて…………」

 

ルビィ「うん…………」

 

 曜ちゃんの言う通りだよ。普段の奥山くんは頭が良くて、器用で、真面目で、皆に気配りができて…………………強い男の子だった。どっからどう見ても『人殺し』には見えないよ。

 

果南「でもさ、どうして鞠莉とダイヤは知ってたの??」

 

 果南ちゃんが鞠莉ちゃんとダイヤさんに聞く。確かに…………、それは私も気になったやつだ。

 

鞠莉「…………うちの学校で唯一、男子で入学した生徒だったから気になって調べたの。その時に……………」

 

ダイヤ「私は鞠莉さんが彼に話しかけてるところに偶然、居合わせてしまって………………それで…………」

 

 鞠莉ちゃんとダイヤさんは気まずそうに答える。今ここで2人を責めても何も起きない。

 

 そして、私達は病院に着くまで会話をすることが無かった。

 

 

〜病院〜

 

 

 病院に着き、受付で手続きをしたあと花丸ちゃんがいる病室へと向かった。

 

 私達は花丸ちゃんのいる病室の扉の前まで来たが、誰も扉を開けようとしなかった。

 

 

 扉を開けようとすると、あの奥山くんの姿を連想させてしまうから。もし、花丸ちゃんも奥山くんと同じ状態へと陥っていたとしたら…………。そう考えるとなかなか扉を開けることが出来なかった。

 

 

 すると、突然ガララと扉が開いた。

 

 

花丸「誰ずら??」

 

 

花丸以外「ぎゃーー!!?」

 

花丸「ずら!?」

 

 突然の事だったので、ビックリした私達は大声を出して叫んでしまった。

 

花丸「み、みんな落ち着いて!!ここ、病院ずら!!」

 

 病室から出てきた花丸ちゃんの言葉で私達は何とか落ち着くことが出来た。てか……………

 

花丸以外「花丸ちゃん!?」

 

花丸「今、気づいたずら!?」

 

 

 みんなの言葉で花丸ちゃんはショックを受けてしまった。ご、ごめんね

 

 何やかんやあったけど、ようやく病室へと入った私達はお見舞いの品を花丸ちゃんに渡す。

 

花丸「ずらぁ!?これ、貰っていいずらか!?」

 

 花丸ちゃんは私達が持って来たフルーツの詰め合わせを見て目をキラキラとさせていた。でも、なんかこの姿を見てると

 

善子「な、なんかいつも通りのずら丸ね」

 

 うん。それ、私達も思った。

 

 

千歌「ーーーーーーあ」

 

 

 けど、私は見えてしまった。

 

 花丸ちゃんの左肩に包帯が巻かれていることを…………。そして、その包帯は微かだけど赤く滲んでることを…………。

 

花丸「見えちゃったずら??」

 

 私の視線に気が付いたのか、花丸ちゃんは肩に手を置いて悲しそうに答える。

 

千歌「ご、ごめんね」

 

花丸「うぅん。千歌ちゃんが謝ることじゃないよ。マルが勝手にやったことだから………」

 

善子「ずら丸……………あんた」

 

ルビィ「花丸ちゃん………」

 

花丸「お医者さんによると、傷は少しだけ残っちゃうみたいずら。でも、マルは後悔してないよ。だって…………」

 

 

 

花丸「明くんをまた『人殺し』になるのを阻止したから…………」

 

 

 

花丸以外「!?」

 

 

善子「ずら丸……………貴女知ってたの??」

 

 善子含め、私達も驚きの表情を見せる。鞠莉ちゃんやダイヤさんの他にも奥山くんの事情を知ってる人物がいたなんて………

 

花丸「うん。合宿の時に3人で話してるところを聞いちゃったずら」

 

ダイヤ「あの時ですか。なるほど…………」

 

 ダイヤさんは納得したかのように頷く。けど、鞠莉ちゃんはどうやら知ってたみたい。

 

花丸「その様子だと、他のみんなも知っちゃったみたいずらね」

 

千歌「うん…………。奥山くんのお見舞いに行った時にね」

 

 「奥山くん」という言葉を聞いた時、花丸ちゃんはピクっと反応した。

 

花丸「明くんの様子はどうだったずら??」

 

千歌「それは……………」

 

 花丸ちゃんの言葉に私は奥山くんの現状について話そうか迷った。その時、曜ちゃんと梨子ちゃんの2人が私の肩に手を置いた。

 

曜「千歌ちゃん、言おうよ。」

 

梨子「うん。花丸ちゃんも知った方がいいと思う」

 

千歌「…………分かった。」

 

 2人の言葉で、言う決心した私は花丸ちゃんの側まで駆け寄り言葉を出した。

 

 

千歌「あのね…………今の奥山くんは……」

 

 

 

 ~花丸視点~

 

 

 千歌ちゃんの口から、今の明くんの様子について教えて貰った。けど、想像以上に酷いものだったずら。

 

花丸「そうずらか………」

 

千歌「ごめんね、何も出来なくて」

 

 千歌ちゃんは少し悔しそうにして答える。どうして謝るの??別に千歌ちゃんが悪い訳でもないのに…………

 

 

 ーーーコンコン

 

 

Aqours「!?」

 

 扉から急にノックの音が聞こえてきたずら。誰ずら??おばあちゃんならみんなが来る前に来てくれたし…………、忘れ物でもしちゃったずら??

 

花丸「ど、どうぞ」

 

??「失礼するわね」

 

 病室に入ってきたのは、おばあちゃんではなく見知らぬ赤髪の女性だった。本当に誰ずら??

 

 

花丸以外「零さん!?」

 

 

 ん?零さん??みんなはこの人の事知ってるずら??

 

善子「奥山くんの育ての親よ」

 

 善子ちゃんがコソッと教えてくれたずら。そっか、この人が…………

 

梨子「どうして、ここに??」

 

零「まぁ、色々とね」

 

 零さんはそう言いながらマルの側まで駆け寄り、深く頭を下げ始めた。

 

Aqoursの 「!?」

 

 

零「言いに来るのが遅くなってしまいすみませんでした。そしてこの度は、うちの明が大変貴女に迷惑をかけてしまいました。本当にごめんなさい。」

 

 

花丸「ずら!?あ、あの!!顔を上げてください!!」

 

 零さんの唐突の謝罪にマルは困ってしまった。こういうこと初めてたがらどうすればいいのか、分からないずら。

 

 顔を上げた零さんは次にポケットからメモとペンを取り出してマルに話しかけた。

 

零「あと、貴女の住所教えてくれないかしら??」

 

花丸「え?あ、はい」

 

 そして、マルは零さんに住所を教え零さんはカキカキとマルの住所をメモに取った。

 

花丸「ーーーーーーです。」

 

零「ありがとう。」

 

千歌「あの………住所なんて聞いてどうするんですか??」

 

 千歌ちゃんの言葉に零さんは一言だけ呟いた。

 

 

零「どうするって、この子の両親に謝罪しに行くのよ。親として当然のことでしょう??行くの遅くなっちゃたけど………」

 

 

 そう言って、零さんは「また………」と言って病室から出ようとしたが出る寸前で止まり私たちの方へ顔を向けた。

 

 

零「あと、貴女たちはひとまずラブライブの方に集中しなさい。」

 

 

Aqours「!?」

 

 

 

零「明ちゃんのことは私に任せて。あの子を救えるきっかけを作ってあげるわ」

 

 

ダイヤ「きっかけ………ですか??」

 

零「えぇ。」

 

善子「どうして『きっかけ』だけなの??」

 

善子ちゃんの単純な質問に零さんは悔しそうにしながら言葉を出した

 

 

零「私が彼に出来ることは…………………それしかないから」

 

 

 零さんはそう言って部屋から出ていった。

 

 

曜「千歌ちゃん………どうする??」

 

 曜ちゃんの言葉に千歌ちゃんは………

 

 

 

千歌「零さんの言う通りにしよう!!私達にもやらなくちゃいけないことがあるから……………。」

 

 

 

 千歌ちゃんの言葉にマル含め、他のみんなも頷いた。

 

 

 

 




ラブライブの映画はまだ見てませんが、もうすぐ観に行きます。なんか、Saint Snowさんが素晴らしいという話を聞きました。この作品と関わされたら嬉しいなぁ…………。

次回から、本編に徐々に戻っていきます。

みんな大好き『想いよひとつになれ』編です

どうぞお楽しみに(* • ω • )b


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『人殺し』はエプロンを手に取る

ちょっと読み直した時に変だったので書き直しました。


 あれから…………あの事件からどれくらいの日にちが経過したのだろうか。

 

 

 分からない…………分かりたくもない。

 

 

 俺はまたしても罪を犯してしまった。得体の知れない何かの囁きによって、身体や精神を支配されて…………それであの男をナイフで殺そうとした。

 

 

 けど、急に花丸さんが奴を庇って……………俺は彼女の肩にナイフを刺してしまった。

 

 

 命に別状はないと零さんに聞いて少しだけ安堵な気持ちとなるが、内心それどころでは無かった。

 

 

 彼女達に合わせる顔がない。

 

 

 そりゃあ当然だ。あれだけ怖がらせてしまったのだから。

 

 しかし、今ここでどれだけ足掻こうとしてももう遅い。

 

 

 俺はもう……………あの場所へは戻れない。戻りたくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

明「………………………は??」

 

 

 

 

 

 

 ここは………どこだ??

 

 

 気がついたら、俺は辺り一帯が白い霧で包まれている空間へと立っていた。おかしい………俺は自分の部屋に居たはずなのに。

 

 

 するとビューと、強い風が吹きあっという間に白い霧が晴れて行った。

 

 そして、霧が晴れた俺の目の前に現れたのは…………

 

 

明「茶房菊泉……………」

 

 

 そう。俺が10年前まで住んでいた鹿角家の実家であった。どうして……………

 

 すると、誰かが俺の肩に手を置いた。

 

 振り向くと、そこには誰もが見ても怒ってると思わせるようなオーラを纏った俺と瓜二つのツインテールの女性…………俺の双子の姉である鹿角 理亜が立っていた。

 

 

明「理亜姉ちゃん…………」

 

 

理亜「ちょっと明!!あんた何サボってんのよ!!」

 

 

 ……………………は??

 

 

理亜「今はお客さんが1番多い時間帯って知ってるでしょ??今はママと姉様の2人で頑張ってるから早く行くよ!!」

 

 理亜姉ちゃんは俺の腕をつかみ、茶房菊泉の方へと向かわせる。俺は驚いてその手を振り払った。

 

 理亜ちゃんも驚いたのか目を丸くした。

 

理亜「な、何よ…………」

 

明「どうして…………そんなことすんだよ。俺は…………『人殺し』なのに………。」

 

理亜「はぁ??『人殺し』??あんた何言ってんの??馬鹿なの??」

 

 

 …………………はい??

 

 

理亜「そんな馬鹿なこと言ってないで早く行くわよ!!」

 

明「ちょ………!?」

 

 理亜ちゃんは再び俺の腕を掴み、歩き出す。この人、力強くない!?ビクともしないんだけど!?

 

 この人に、茶房菊泉の厨房の方へと引きずり出された。

 

理亜「ちょっと、姉様。明ったら自分は『人殺し』とか意味わかんないこと言ってこの忙しい中、サボろうとしてたのよ!」

 

 

 理亜ちゃんの言葉に、厨房でぜんざいを作っていたサイドテールの女性……………俺達の姉である鹿角聖良が優しく微笑んだ。

 

 

聖良「それは面白い冗談ですね。明、いくらサボりたくてもそれはどうかと思いますよ」

 

 

明「いや、そういう訳じゃ…………」

 

聖良「ほら、早く明もエプロン来てこっち手伝って下さい。」

 

 聖良姉ちゃんはそう言って、俺にエプロンを渡す。姉ちゃん達と違ってヒラヒラが付いていないシンプルな紺色のエプロンだった。

 

明「………………」

 

 俺は、エプロンを手に触れようとした寸前で手が止まった。

 

 俺は………本当にここにいていいのだろうか??彼女達と一緒にいてもいいのだろうか??という気持ちへとなる。

 

 

 なぜなら………俺は『人殺し』だから。『人殺し』になってしまった故、俺は彼女達と離れ離れへとなってしまった。

 

 

 しかし、この状況を見て俺は1つの考えを導き出す。

 

 

 

 

 ーーーもし、これまでのが夢だったとしたら??

 

 

 

 

 本当は俺は『人殺し』などしてなくて、そのまま彼女達と一緒に10年間過ごしていたら??

 

 

 

 

 

 いや、そんなことはない。俺は確かに人を殺めた。人を殺めて………俺は鹿角家に捨てられた。それで俺は彼女に引き取られその後、彼女達に出会って………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーあれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女って誰だっけ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達って誰だっけ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良「ほら、明。」

 

理亜「早くして、明。」

 

 聖良姉ちゃんは優しく………、理亜ちゃんは少しムッとしながら…………俺の方に手を差し出す。

 

 

 

 

 そうだ…………。今までのは全部夢だったんだ。

 

 

 

 

 

 今…………この瞬間俺はようやく夢から覚めたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そう思った俺は笑顔になりながら、エプロンを取ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 すると

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ーーーーーーーー!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ん?」

 

 

聖良「明、どうかしまたしたか??」

 

 

明「……………いやなんも。」

 

 

  俺の背後から、聞き覚えのある女性の声が聞こえてきたが、俺は気にせずエプロンの方を手に取った。




映画見に行きました!!

絶対にこの作品と絡めていきたいですね!!

今回の話の説明すると、明は現実逃避をして幻が見えるようになったという形になっております。見たらわかる通り、重症です!!


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こうして彼女は『人殺し』を引き取る。前編

更新遅れてすみませんでした。




 ラブライブ本戦の出場をかけた予選のライブが明日へと迫っている今日。

 

 奥山 明が住んでいる家から少しだけ離れた所にある小さなボロボロの道場の中で、1人の女性が正座をしていた。

 

 女性は正座をしたまま目を瞑った。いわゆる、瞑想というものである。

 

 彼女は瞑想をしている最中にふと、過去の事を思い出していた。

 

 

 ~20年前~

 

 

 『自分でやると言ったからには必ずやり遂げ。例え、それがどんなに高い壁だとしても。ゆっくりと時間をかけて乗り越えていきなさい。』

 

 

 この言葉は、彼女の父親がまだ幼かった頃の彼女に送った言葉である。

 

 20年前の彼女は身体が凄く弱かった。そのせいで周りから虐められていた。そんな自分が大嫌いだった。

 

 だから、彼女は空手の道場を開いて師範をしている父親に空手を教えて貰った。その際、彼女は父親に言った言葉が

 

 

 『弱い自分に勝ちたい。』

 

 

 だった。

 

 

 しかし、現実というものはそう上手くはいかない。当然、空手の稽古は辛いものだった。

 

 毎朝4時に起床して、2時間ランニング

 

 ランニング終わったあとは、学校に行く30分前までひたすら型の稽古。その後、30分間クールダウンさせ学校に向かわせる。

 

 もちろん、学校でも稽古は続いていた。彼女は父親に持たされた握力を鍛えるハンドグリッパーを持たせ、登校中や授業中、そして下校中にひたすら握らせるよう指示出していた。

 

 そして、学校から帰ってくるとまずは1時間から2時間ほど学校の宿題や予習、復習などの時間を与え、そこからは夜遅くまで型の稽古や組手をするという過酷な日々を彼女は送っていた。

 

 当時、まだ7歳だった彼女は稽古をして約2ヶ月ほどで稽古を辞めたいと父親に告げた。むしろ、この過酷な練習メニューを2ヶ月間続けたことに驚きである。

 

 しかし、父親はそれを許さなかった。むしろ稽古の量が更に増加した。

 

 それによって、彼女は泣いてしまった。

 

 

 その時に、父親は彼女にあの言葉を送った。優しい微笑みをしながら。そして、綺麗なタオルで彼女の涙を拭いながら。

 

 

 その言葉を聞いた彼女はどうして父親に稽古を頼んだのか、その理由を改めて思い出す。

 

 

 『弱い自分に勝ちたい』

 

 

 そうだ。自分は弱い自分に勝ちたくて父親に稽古を頼んだ。確かに稽古は辛い。けど、もし辞めてしまったら??

 

 

 

 弱い自分に負けてしまうことになる

 

 

 

 そんなの………………嫌だ!!

 

 

 

 そして、彼女は決心し真剣な表情をして父親に言葉を出した。

 

 

 『パパ…………、私を強くして』

 

 と。

 

 

 それから約10年間彼女は父親の稽古を文句一つやり遂げた。しかも、全国高等学校空手道選手権大会で見事優勝を成し遂げた。

 

 この時の決勝戦の相手は、彼女は何回か戦ったことがあったが、1回も勝つことが出来なかった。しかし、今大会は勝つことが出来た。

 

 大きなトロフィーを持って彼女は父親の所に行くと父親は彼女に一言だけ呟いた。

 

 

 『ようやく勝てたな。おめでとう』

 

 

 『勝てた』……………、この言葉の意味は当然、決勝戦の相手のことではない。

 

 弱い自分に勝てた……………。勝てたんだ!!

 

 

 改めてそう思った彼女は涙を流しながら、父親に抱き着いた。感謝を込めて。

 

 この瞬間はきっと彼女は一生忘れることの無い日となるだろう。

 

 

 …………………と、そう思っていた。

 

 

 しかし、その1週間後ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優勝祝いの家族旅行で交通事故に遭い、彼女以外の人物は他界してしまった。勿論、彼女を強くしてくれた父親までも……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重症を負いながらも奇跡的に無事であった彼女は1人となってしまった。しかし、事故の影響で彼女は空手が出来なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1ヶ月ほど、彼女は家族の死や、空手が出来なくなったことにより精神的に追い込まれ部屋に引きこもってしまった。だが、仲の良い親戚や学校の先生達の励ましによってなんとか2ヶ月後には高校に通えるまでは立ち上がることができた。

 

 

 彼女の親戚からは自分の家に来るよう何回も勧められたが、彼女はそれを断った。せめて場所だけでも残しておきたかったから。だから彼女は17歳にして1人暮ししていた。お金に関してはさほど問題は無かった。

 

 

 

 

 

 しかし、立ち直ったと言っても彼女はどこか上の空だった。

 

 

 

 

 

 

 高校を卒業してから数年後のこと、そんな彼女にある転機が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 それは、12月12日の寒い日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 担任の勧めで彼女は児童施設のボランティアへとやって来ていた。内容としては、普通に児童と関わるだけというシンプルなものだった。

 

 この施設にいるほとんどの子供達は物心がつく前にこの施設に送られてしたらしい。この子たちは自分と一緒で一人ぼっちの子ばっかなんだと、彼女は同情していた。だからこそ、少しでも楽しい時間を送らせてあげようと思っていた。

 

 

 そして、2時間ほど彼女は子供達と遊んだあと御手洗に行くためにトイレへ向かおうとした瞬間………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人ぼっちでいる赤紫色の髪型をした男の子が視界に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




近いうちに更新します


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こうして彼女は『人殺し』を引き取る 後編

お気に入りの数が400件突破しました!!あざす!!
こんなに反応して貰えるなんて思ってもみなかったです!!
これからもよろしくお願いします!!

あと、話が変わりますけど誰か暇な時でいいので鹿角明のイラストをお待ちしております。とりあえず、身長の高い理亜ちゃん似の男性を描いてもらえれば良いのでお願いします!!オナシャス!!

あと、また話変わりますけど劇場版3回観に行きました。



 彼女が少年を見つけてから数分が経過した。しかし、彼女はまるで時間が止まっているかのような感覚に襲われていた。

 

 恐らく、彼女以外の人物が少年を見てもただの人見知りな子なんだと思うだけだろう。別にその少年以外にも周りには1人で過ごしている子供たちは沢山いた。

 

 それでも彼女は少年のことを目が離すことができなかった。

 

 彼女が少年に目をつけた1番の理由。それは…………

 

 

 

 

 

 ーーー今の少年の表情だった。

 

 

 

 

 

 

 そして、彼女だけはその表情を知っている。

 

 

 

 

 

 

 なぜなら、今彼がしてる表情はかつて数年前に自分自身がしてたものだから。

 

 

 

 

 

 

 あれは…………………知っている顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして自分は家族と離れ離れになっているのかを。

 

 

 

 

 

 

 きっとこの少年も何か出来事があって唐突に家族と離れ離れになってしまい1人ぼっちへなってしまったのだろうと彼女は思った。

 

 そう思ってしまったからこそ、彼女は1つある気持ちが生まれた。

 

 

 

 この子と…………………一緒にいたい

 

 

 

 

 と言う気持ちが。

 

 

 そして、彼女は直ぐに行動に出た。

 

 

 「この子、かわいい!!」

 

 

少年「え?」

 

 

 「やばい!!この顔立ち、この目、この鼻、この口。昔、飼ってたポチを思い出すわ!!」

 

 

 彼女は少年の所へ駆け寄り、ガバッと強引に彼に抱き着いた。突然のことだったから少年も顔を赤くして驚いていた。ちなみに、ポチというのは彼女が幼い頃に飼っていた柴犬のことである。

 

 そして彼女の行動を見て心配になったのか、院長らしき人物が出てきたのを確認した彼女は笑顔で院長の方を振り向き

 

 

 「この子、引き取っていいですか??」

 

 

 と聞いた。この言葉によって当然のことだが、院長や周りの人間、そして少年すらも目を丸くしていた。

 

 院長は戸惑いながらも少年の意思もあるのでどうすることも出来ないと主張。ならば!!と思った彼女は少年の方へ顔を向き、優しく微笑みながら少年と一緒にいたいという気持ちを彼に伝えた。

 

 

 だが、彼はそれを断った。

 

 

 

 

 その理由が……………

 

 

 

 

 ーーー自分は『人殺し』だから。

 

 

 

 

 話を聞くに、彼は数年前に人を殺めてしまい、それによって自分のことを恐れた両親にこの施設に送られたという。

 

 この話を聞いて、彼女は自分の愚かさを呪った。少なくとも、彼女は少年のことを傷つけてしまった。

 

 

 この少年は自分が『人殺し』であることを10歳という幼い歳で自覚している。自覚しているからこそ、この施設で『孤独でいる』という行動に出ている。

 

 きっと、『人殺し』をしてしまったせいで少年は色々と苦労したのだろう。苦労したから故に、そうした方が周りの人間には迷惑かけないから、そうした方が少年自身に特に悲鳴とか罵声とかも耳にすることがないから…………という考えの元のものだろう。

 

 この少年の全てを悟った彼女は、何か最後に伝えようとしていた少年の言葉を遮るかのように先程の強引の勢いではなくゆっくりと優しく彼のことをもう一度、自分の胸の方へと抱きしめた。

 

 そして、少年の興味を惹かせるために自分が住んでいる町、内浦について語った。内浦のことについて語っていると少なくとも彼の表情に、変化が出てきているのを彼女は分かった。

 

 最後の一押しだと思った彼女は少年の目をじっと見つめながら

 

 

 「私は例え君が『人殺し』だとしても一緒にいたいという気持ちは変わらないよ。だからさ」

 

 

 彼女はこの言葉の続きを一旦言うのをやめて少年の顔を見た。彼のさっきまで普通だった表情がまるで嘘みたいに、今では泣くのを我慢して歯を食いしばっている。だが、我慢できずに瞳からボロボロと涙を流していた。

 

 そして、彼女は少年の目を見て微笑みながら言葉を呟いた。

 

 

 

 「私と一緒に家族になってくれないかな??」

 

 

 

 この言葉によって、少年が今まで培ってきた何かが崩れ落ちる音が聞こえたような気がした。そして、少年泣きながら彼女の胸に飛び込んだ。

 

 

 

少年「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 まるで産まれたばかりの赤ん坊のように少年は泣き続けた。その姿を、彼女は落ち着くまで彼の赤紫色の髪を優しく撫でながら見守っていた。

 

 

 そして、泣き疲れたのかそのまま少年は彼女の胸の中で眠りについた。しかし、少年の表情はとても安心しているかのような表情だった。

 

 

 彼女は少年が自分のことを『人殺し』だと言った時に彼女は1つ気づいたことがあった。

 

 

 それは…………

 

 

 

 

 自分ではこの子を助けることは出来ないということを。

 

 

 

 

 これに関しては、単なる彼女の勘違いかもしれない。しかし長年、武闘の道を進んできたからか、彼女はそう確信した。

 

 

 

 

 

 確信したからこそ、彼女は彼の表情を見て決心した。いや、決心したと言うよりも誓ったと言った方が正しいかもしれない。

 

 

 

 彼女はスヤスヤと眠っている少年の耳に顔を近づき、起こさない程度の小さな声で一言だけ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が誰かに救われる日が来るまで、私は君と一緒にいるからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞑想しながら昔のことを思い出していた彼女はゆっくりと目を開けた。まるで3時間ほど時間が過ぎているような感覚だったが、時計を見ても10分も過ぎていなかった。

 

 

 

 『あの子を救えるきっかけを作ってあげるわ』

 

 

 

 彼女は少年が現在、通っている高校でスクールアイドルをしている彼女達に向かって言った言葉を思い出した。

 

 

「『きっかけを作る。』そう私が彼女たちに言ったからには絶対に作らないとね。じゃなきゃダメなんだよね。師匠(父さん)

 

 

 

 そう言って彼女…………奥山 零は立ち上がると道場の正面に深く礼をして道場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 零(私が彼女たち………Aqoursにきっかけを作るって言ったからには明ちゃんをなんとかする。例え………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんな手を使っても)

 

 

 

 

 

 

 そして、零はバイクに乗り鹿角 明がいる自分の家へと向かって行った。

 




細々ですが、スクフェスの方をやってるので良かったら登録お願いします。

ID158909888


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『人殺し』は頭痛に襲われる

お久しぶりです。
スクフェスの登録ありがとうございます。
すぐにいっぱいになって驚きです。
急いでランク上げてフレンド数上げるので承認中の人は少しだけお待ち下さい。


~明の妄想世界~

 

明「はぁー、マジ疲れた。」

 

 俺は溜息を吐きながら、自分の部屋へと向かっていた。今日の仕事はいつもより忙しかった。まぁ、休日だから仕方がないのだが……………。

 

明「お?」

 

 自分の部屋に向かう途中に、隣にある聖良姉ちゃんの部屋の扉が微かに開いていた。そして、その隙間から聖良姉ちゃんが微笑みながら何かを見ているのが視界に入った。

 

 気になった俺はすぐに扉を開けて聖良姉ちゃんの部屋へと入った。当然、聖良姉ちゃんは驚きでビクッと身体を震わせたあと、ちょっとだけ怒った表情へと変わった。

 

聖良「こら、明。いくら姉弟だからって最低限、人の部屋に入る前はノックしなさい。」

 

明「ごめんごめん。次、気をつけるよ。てか、何見てんの??」

 

聖良「アルバムですよ。」

 

明「アルバム??」

 

 聖良姉ちゃんは微笑みながら、雪のマークがプリントされているそこそこ大きいアルバムを見せた。どうやら、過去に撮った写真を見ていたらしい。

 

明「へぇ~、どんなのがあんの??」

 

聖良「そうですね。………あ、これは私がまだ産まれたばっかりの明と理亜と一緒に寝ている写真ですね。」

 

 聖良姉ちゃんはそう言って、1枚の写真に指を指す。その写真はまだ赤ん坊だった俺と理亜姉ちゃんと2歳である聖良姉ちゃんがスヤスヤと寝ている写真だった。

 

明「俺と理亜姉ちゃん本当に顔似てんな。双子だから当たり前だと思うけど」

 

聖良「そうですね。私も最初に見た時にどっちが明で理亜なのか分かりませんでした。」

 

 聖良姉ちゃんは苦笑いをしながら答える。

 

明「お、これは俺達の誕生日の時の写真だ」

 

 確か、俺と理亜姉ちゃんの5歳の誕生日の時にやったパーティーの写真だったかな??理亜姉ちゃんの口の周りにケーキがついてる。

 

聖良「私が初めて2人にプレゼントを渡した時ですね。」

 

明「そうだったね。あの仮面ライダーのストラップ、ちゃんと持ってるよ。」

 

聖良「ふふ、ありがとうございます。」

 

 そして、聖良姉ちゃんは次のページへとめくる。すると、俺は1つ気になることを見つけて首を傾げた。

 

明「…………あれ?」

 

聖良「どうかしまたした??」

 

 

 

 

 

 

 

明「俺の写ってる写真…………1枚もなくね??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう。あの誕生日パーティーの写真からは俺が写っている写真が1枚も無かった。どれもこれも聖良姉ちゃんと理亜姉ちゃんばかりだった。

 

聖良「だって、この頃ぐらいから明は写真を撮られるのを嫌ってたじゃないですか」

 

明「…………そうだっけ??」

 

 聖良姉ちゃんはぽかんとした表情で言葉を出す。俺…………写真撮られるの嫌ってたっけ??そんな覚えないけれども。

 

 俺は聖良姉ちゃんに一言声をかけた後、自分の部屋に戻り恐らくアルバムが閉まってあるであろう、クローゼットを開ける。そして、ロボットがプリントされたアルバムを見つけた。

 

 俺はペラっとアルバムのページを開くと、赤ん坊だった俺と理亜姉ちゃんの写真が貼られていた。そして、ペラッペラと次から次へとページを開いていくと、5ページ目くらいからは何も貼られていなかった。

 

 

 何かがおかしい……………??

 

 

 『……………くん!!』

 

 

 ーーーーズキッ!!

 

 

明「ゔっ!!」

 

 俺は唐突に激しい頭痛に襲われ、頭を抑えた。あと、何か頭の中に声が響いたような…………。なんだ………………これ!?

 

 

 『お………や…………くん!!』

 

 

 ーーーーズキッズキッ!!

 

 

明「ゔぅ……………!!ぐはぁ…………!!」

 

 

 俺は頭に手を抑えたまま、自分の部屋どころか家を飛び出した。背後から姉2人の驚きの声が聞こえてきた気がしたがそれどころでは無かった。

 

 

 『奥……………君!!』

 

 

 ーーーーズキッズキッズキッズキッ!!

 

 

明「ゔぅぅううう!!」

 

 

 俺は歯を食いしばりながらひたすら走った。それでも頭痛は耐えない。それどころかますます痛みが強くなってきている。

 

 

 それに頭の中に響く誰かの声…………、あれはなんだ!?

 

 

 

 誰か………………俺を呼んでいる!!??

 

 

 

 

 俺は激しい痛みに耐えながら走っていると、目の前に1人の女性が目に映った。

 

 

 綺麗な赤髪をした美人な女性だった。

 

 

 そして、その女性は俺を見た瞬間……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いつまで逃げてんだよ。てめぇは」

 

 

 

 

 

 

 

 そう言って俺の頬に目掛けて思いっ切り殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、俺の視界が180°ぐるりと回転し………………プッツンと俺の意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここ…………は??

 

 

 

 

 

 意識が戻った俺は辺りを見回す。

 

 

 ここは…………………俺の部屋??

 

 

明「うっ!!」

 

 意識が戻った瞬間、頬から激しい痛みが生じた。俺はすぐに手を当てた。

 

 

 

 

 「ようやく覚めたか??」

 

 

 

 

 

 俺の右側辺りから、聞き覚えのある声が聞こえた。俺は恐る恐る顔を振り向けると

 

 

 

 

 

零「よぅ…………。目覚めの気分はどう??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿弟子(明ちゃん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の育て親であり俺の師匠である零さんが道着を着て殺気を纏いながら立っていた。

 

 

 

 

 

 

 




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『人殺し』の育ての親は『人殺し』のこと、どう思っているのか。

鹿角聖良さんの声優をやっている田野アサミさんが誕生日を迎えそうです。それにしてもアサミさんが32歳ということに驚きを隠せませんでした。嘘でしょ??同い年だと思ってたよ(作者、19歳)




 ーーーーバキッ

 

 

明「がはっ…………!!」

 

 

 俺の部屋で、鈍い音が響き渡る。零さんが倒れている俺の胸ぐらを掴んで、立ち上がらせてそのまま殴りかかったからだ。

 

 それによって、俺はまたしても吹っ飛んだ。ガシャーンと、棚の上に飾ってあった仮面ライダーのフィギュアやらが音を出して落ちた。

 

明「零……………ざん??」

 

零「ほら、立てよ。」

 

 今度は、俺の髪の毛をグイッと掴みあげ、無理やり立たせる。そして、またしても殴りかかった。

 

明「がはっ……………!!!」

 

 またしても、鈍い音と俺が倒れる音が部屋に響き渡る。しかも倒れるところで当たりところが悪かったのか、俺の頭からツーッと血が垂れてきた。そんな状況を見ても、零さんは何一つ表情を変えなかった。

 

 そして、零さんは俺の腕を引っ張りあげて立ち上がらせたあと、俺の頬を殴った。

 

零「みっともな」

 

 ボロボロである俺の姿を見て、零さんは冷たい目線を送りながら言葉を投げかけた。

 

 

零「そんなんだから、お前はいつまで経っても弱いんだよ。」

 

 

 零さんの言葉に俺は何も言えない。だって、正しいのだから。俺が弱いばかりに、色んな罪を犯してしまった。

 

 

零「そんなんだから、お前は彼女の事を簡単に傷付つけれるんだよ」

 

 

 その一言で、俺は一瞬だけイラッとした。彼女のこととは恐らくあいつのことだろう。しかし、零さんに殴られた跡や倒れる際にぶつけた所が痛すぎて何も言えなかった。

 

 

零「そんなんだからお前は…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉2人に失望させられて、家族に捨てられるんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーは???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この瞬間、ブチッ!!と俺の何かがキレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「それは………関係ねぇだろうが!!!!」

 

 

 

 俺は余りにも怒りで体の痛みを忘れ、立ち上がり零さんに拳を突き出した。その姿を見て、零さんは少しだけ驚きの表情を見せたが、難なく俺の攻撃を躱した。

 

 

零「本当のことでしょう??」

 

 

明「黙れよ!!!」

 

 俺は叫びながら、次から次へと零さんに目掛けて殴りにかかる。しかし、零さんはそれを全て躱す。

 

 

 

零「アンタのお母さんやお父さん、そして姉2人はさぞかしスッキリしたでしょうね。出来損ないで『人殺し』であるお前が家からいなくなったのだから。」

 

 

 

明「ーーーーーーーーッッ!!!!!!!」

 

 

 この言葉で、俺の怒りのボルテージがMAXになった。

 

 

 

 

 それ故に、俺は怒りに任せて零さんに対して絶対に言っていけない言葉を口に出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「アンタに俺の何が分かる!!!俺の本当の家族じゃないくせに!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハッと俺は我に返った。

 

 

 

 

 

 

 ーーーー俺は今、なんて言ってしまった??

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思いたがら零さんの方を見ると、零さんはポカンとした表情をしているが、次第にその表情のままポタポタと瞳から涙を流していた。

 

 

明「ち……違うんだ。零さん。今のは………」

 

 

 俺ら誤解を解くべく、焦りながら零さんの近くによろうとした瞬間

 

 

 

 ーーーーバキッ!!

 

 

 

明「がはっ!!」

 

 

 

 

 零さんは身体を横回転して、俺の顔面に目がけて踵で蹴りを入れた。これは、零さんの得意技である胴回し回転蹴りだ。喰らった俺は鼻から鼻血を流しながら尻餅を着いた。

 

 

零「……………ってるよ」

 

 

 零さんは隙を与えず、俺の腹の上に乗りかかって馬乗り状態になる。

 

 

零「そんなの、分かってるよ!!!」

 

 

 零さんは叫びながら、俺の顔面に目掛けて次々と殴り掛かりながら今まで溜めてきたであろう本当の気持ちを言葉にして吐き出した。

 

 

零「君と私との関係なんて所詮、ただの他人の関係だってそんなの分かってるよ!!自分が君のことを助けられないってよく分からない理由をつけて全部彼女達に任せるような最低な女だよ!!それでも私は!!私は!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明ちゃんのこと、本当の息子のように思ってたよ……………。」

 

 

 

明「ーーーーーー」

 

 

 零さんは既に殴るのやめて、俺の胸ぐらを掴み、そして胸部分に顔を埋めながら震えていた。

 

 

 

 

零「お腹を痛めて君を産んだわけじゃない。赤ん坊の頃から君を育ててきたわけじゃない。君はそんな風に思ってなかったのかもしれない。それでも私は君のことを………本当の家族のように思ってたよ。」

 

 

 

 

明「ーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

零「だから、そんな家族からのお願いを1つ聞いて。」

 

 

 

 

 

 

 そう言って、零さんは俺の胸ぐらをグイッと強引に引っ張り、顔を近づける。零さんの真剣な瞳には、虚ろになって情けない表情をしている俺が映っていた。

 

 

 そして、零さんは1回だけ溜息を吐いたあと、恐らく俺に掛ける最後の言葉を口に出した。

 

 

 

 

 

 

 

零「逃げるな。自分の罪から。彼女達から。そして……………君の本当の家族から。」

 

 

 

 

 

 

 

明「ーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 零さんは俺にそう言った後、胸ぐらから手を離し俺の腹から降りて俺の部屋から出ていった。

 

 1分をしない内に、零さんは俺の部屋に戻って来て、俺に1つの箱を無言で渡した。

 

 俺はそれを痛みを我慢してなんとか受け取り、箱を開けた。

 

 

 

 箱の中には2枚の紙と俺の髪型と同じ色をしているシュシュが1つ入っていた。

 

 

 

 そして、1枚目の紙はあともう数時間後に行われるラブライブ予選のライブチケット1枚と

 

 

 

 

 

 

 

 

 『待ってるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、書かれていた1枚の紙が入っていた。

 

 

 

 

 

明「……………行かないと」

 

 

 

 

 それを目にした俺はシュシュと紙2枚を箱の中に戻し、それを持ちながらヨロヨロとよろけながらも立ち上がり、扉のある方へと向かう。そしてドアノブに手をかけたところで俺は零さんの方に顔を向け一言だけ言葉を出した。

 

 

 

明「ありがと、零さん。そしてごめん。」

 

 

 

 俺はそう言って、自分の部屋から出ていき、10分ほど時間をかけてようやく家から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明ちゃんが部屋から出て行き、部屋に残された私は一旦、ぐるりと彼の部屋を見回した。当然、部屋は悲惨な状況へとなっていた。物は飛び散ってるし、本棚とかも倒れていた。そして、窓とかもヒビが入っていた。

 

 

 ペタンと私は膝から崩れ落ちたあと、顔に手を置いて声を噛み殺しながら泣いた。

 

 

 いくら、きっかけを作ったとはいえ自分は彼にとって最低な行動をしてしまった。他にもやり方はあっただろう。もっと、最適な言葉が他にもあっただろう。それでも私は最低な方法をとった。とってしまった。

 

 

 

 

 

 

零(これで、私の仕事は終わり。あとは任せたわよ。みんな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう心の中で祈った私はその後、落ち着くまでひたすら明ちゃんの部屋で泣き続けた。

 

 

 

 

 

 




次回、まさかの人物が登場する予定でいます。

え??お前、ここで出てくんの??みたいな反応をして貰えるように執筆頑張ります。

お楽しみに。( ੭ ˙ᗜ˙ )੭


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『人殺し』はまさかのあの人に拾われる

意外な人物の登場です。


明「はぁ………はぁ………」

 

 俺は腹に手を当て、壁に寄り添いながらゆらゆらと歩いていた。

 

明「ゔぅ………!!!」

 

 家を飛び出したものはいいものの、零さんに殴られた箇所から強烈な痛みが響いて思うように身体を動かすことが出来ない。きっと、骨も何本かヒビが入ってるだろう。ちょっと動かすだけでもめちゃくちゃ痛い。

 

 通り過ぎてく通行人が俺の姿を見て心配そうな表情をするが、俺は気にせずゆっくりと足を前に進ませる。けど、余りにもペースが遅すぎる。

 

 ライブまでまだ時間はあるものの、今の状況でいうと5メートル歩くだけでも1、2分要するペースだ。このペースだときっとライブに間に合わないだろう。けど、これ以上ペースを上げると身体にかかる負担が大きくなる。

 

 どうにか、進むペースを上げたいと考えていたら唐突に脇腹辺りから鋭い痛みを感じた。

 

明「ぐっ…………!?」

 

 俺は膝を地面につけ、蹲る。こんなことしてる場合ではないと分かっているが、身体が言うことを聞かなかった。けど、こんなことをしている間にも彼女たちのライブの時間が迫っている。

 

 

明(くそ!!どうすれば!!)

 

 

 俺は歯を食いしばりながら、脇腹に手を当て考えていると…………

 

 

 

 

 

 プップー!!

 

 

 

 

 

 

 俺の右側から、車のクラクションが鳴り響いた。俺は右側に顔を振り向くと、1台の車が止まっていた。そして、その車の窓がウィーンと下がる。そして、その窓からひょこっと顔を出したのは………………

 

 

 

 

 

 

 

 

平山「あれ?奥山。そこで何してんだ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「………………先生??」

 

 

 

 

 

 俺のクラスの担任である平山 静香先生であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平山「ほれ、これ使え。やり方は知ってるよな??」

 

 

 平山先生は助手席に座っている俺の方に雑に救急箱を投げつけた。

 

明「ありがとう………ございます」

 

 俺は先生に感謝の言葉を述べてから、救急箱を開けて消毒液やら絆創膏やら包帯やらを取り出し、傷があるとこには消毒液をつけてから絆創膏を貼り、頭や恐らく骨にヒビが入っているであろう場所には包帯を巻き付けた。

 

 しばらくの間、俺と先生は一言も口に出すことは無く、車が走る音とCDの曲だけが車内で響き渡っていた。

 

 今、流れている曲が終わり次の曲が流れ始めた途端、俺は少しだけ反応してしまった。理由は流れたのがAqoursの曲である『未熟Dreamer』だったからだ。

 

平山「いい曲だよな。私もよく聴いてるんだ」

 

 平山先生はそう言って、隣に置いてあった缶コーヒーを手にして飲む。正直言って意外だな。

 

 そして、目の前の信号が赤になり車を停車した所で先生は口を開いた。

 

 

 

平山「それで、お前は何を悩んでるんだ??」

 

 

 

明「え?」

 

 突然の言葉に俺は目を丸くして先生の方を振り向く。運転してることもあって先生は俺の方を見ずに前だけ見つめていた。

 

明「言ってる意味が…………」

 

平山「言葉通りの意味だよ。お前、なんか悩んでることあるだろ。」

 

明「そんなこと…………」

 

平山「じゃあ、何でAqoursのマネージャーであるお前がライブ当日にこんな時間にあんな場所にいた??本来なら、既に会場にいるだろ」

 

明「うぐ…………」

 

 先生の正論に俺は何も言うことができなかった。

 

平山「図星だな。とにかく、先生に言ってみろ。言ってみるだけでもだいぶ変わるぞ」

 

明「じゃあ……………1つだけ聞いてもいいですか??」

 

平山「おう。なんでも言ってみろ」

 

 俺は1回深呼吸を行ってから先生に向かって言葉を出した。

 

 

明「俺、ずっと昔からとある事に逃げてきたんです。逃げて逃げて逃げまくって。そのせいでAqoursのみんなも巻き込んでしまった。そして、俺は怖くなってその事からも逃げてしまったんです。そんな時、ついさっきある人からこう言われたんです。『逃げるな』って。でも、俺どうしたらいいか分からなくて……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もし、先生が俺の立場だったらどうしますか??」

 

 

 俺の問いに、先生は「ふむ」と言いながら顎に片手をつけた。

 

 そこから、また少しの間に沈黙の時間が流れ、『未熟Dreamer』の曲が終わった所で先生は言葉を出した。

 

 

平山「私も君と同じで逃げるかな」

 

 

明「え?」

 

 

 予想外の回答に、俺は驚きの声を上げる。この人も、逃げない的なことを言うと思ってんだけどな。

 

 

平山「だって、逃げることってことは自分にとって嫌なことなんでしょ??そりゃあ、逃げる逃げる。ルパン三世並に逃げるね。『あばよぉー、とっつぁぁぁん』ってドヤ顔しながら言って逃げるわ」

 

 

 平山先生は何気なく上手いルパン三世の声真似をして笑いながら自分の気持ちを答える。

 

 

平山「けど…………、時間を置いたら立ち向かうかな」

 

 

明「はい?」

 

 

 一瞬、俺は先生が何を言っているのか分からなかった。

 

 

明「どういうことですか??」

 

 

平山「私が逃げる理由は、ただ1つ。その嫌なことに立ち向かう為に準備することだ。準備を整えてから嫌なことに立ち向かう。それで、もし無理だと思ったらまた逃げて、準備して再び立ち向かう。それでもまだ無理ならまた逃げて、準備して立ち向かう。嫌なことから乗り越えるまでそれを繰り返す。」

 

 

 

 平山先生はそう答えると、俺の方顔を向けて手を伸ばし、わしゃわしゃと強引に俺の頭を撫でた。そして、俺の頭を撫で終わったら今度は俺の頬に優しく手を置いた。女性にしては結構ゴツゴツしている。空手か格闘技でもやっていたのだろうか。でも、とても温かかった。

 

 

 

平山「だから、奥山も長い間その事から逃げてきたなら、たまには向き合ったらどうだ??何かが変わるかもしれないぞ」

 

 

 

 

明「ーーーーーーッッ…………」

 

 

 平山先生はニヤッとしながらそう言うと、目の前の信号が赤から青に変わり、先生は前を向いて再び車を動かした。

 

 

 

 それからはお互い何も言葉を発することは無かった。

 

 

 

 そして、20分ほど時間が経つとライブ会場に着いた。

 

 

平山「私は車を停めてくるから、奥山は先に行っててくれ」

 

 平山先生はライブ会場の入口付近で一旦車を停めてから、先生の言葉に従って俺は助手席から降りた。そして、扉を閉める前に先生に言葉を投げかけた。

 

 

明「先生…………。色々とありがとうございました。」

 

 

 ここまで車を乗せてくれたり、救急箱を貸してくれたり、話を聞いてくれたのだ。こんなにしてくれる先生なんて、どこを探しても少人数しかいないだろう。

 

 

平山「気にするな。ほれ、行った行った。早くしないと駐車場が埋まる。」

 

 

 平山先生はしっしっとまるで虫を払うかのように手を動かす。確かに、周りを見ると車がかなりの頻度で通っていくのが分かる。

 

 最後に俺は何も言わずペコッと頭を下げたあと扉を閉めるとすぐに車が動き出し駐車場の方へと向かった。

 

 

 

 

 

明「たまには…………向き合う………か。」

 

 

 

 

 

 

 俺は平山先生の言った言葉が頭の中にこびりつき、何回もリピートを繰り返していた。

 

 

 

 俺はそのリピートしてる言葉を何回も聞きながらライブ会場の入口へとゆっくり進んで行った。

 

 

 

 

 

 




まさかの平山先生の登場でしたー。

1回しか出てないから忘れてる人も多いのではないでしょーかー!!

私もまさかここで出すことになるとは思ってもなかったです笑


ちなみに裏ネタですが、平山先生は過去に奥山 零と空手の全国大会の決勝戦で戦った相手です。もちろん、そのあとの零さんに起きた事情も知っています。だからこそ、彼女は『人殺し』である明に対して何も知らなくてもどこか想う部分があったのでしょう。まぁ、この設定は使う場面がないと思うのでここで発表しておきます笑。使ってもそんなに物語には支障ないので。

お気に入りや感想などお待ちしております。


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『人殺し』でも想いはひとつ。

今回は今まで以上に作るの大変でした。


 〜ライブ前〜(花丸視点)

 

 『それでは、Aqoursのみなさん。準備の方に取り掛かって下さい!!』

 

Aqours「はい!」

 

 遂に、ラブライブ予選突破を掛けたこの日がやって来たずら。

 

 今日に至るまで、色んなことがあった。

 

 まず、梨子ちゃんがいなくなってしまったことにより、元々千歌ちゃんと踊るはずだった所に空きが出来てしまい、代わりに曜ちゃんが入った。けど、何度もやってもテンポが合わず、どんよりとした空気が続いていた。あの時の曜ちゃん、笑ってたけど、なんとなくとても辛そうに見えたずら。

 

 けど、次の日はいつも通り元気な曜ちゃんに戻ってたずら。話を聞くに、前日の夜に千歌ちゃんと会ったらしく、千歌ちゃんの勧めで2人で踊るパートの振り付けを1から作り直すということだった。これ関してはマル含め、他のみんなも賛成してたずら。結果的に、ダンスのクオリティは数段と良くなった。

 

 

 マル達8人はお互いの顔を見たあと、円の形を作り、中心に梨子ちゃんから貰ったシュシュが付いている方の手を指し伸ばして重ねた。

 

 あと、1分もしない内にマル達はステージに上がってライブを行う。このライブだけは絶対に負けられない。

 

 

 負けられないけど…………

 

 

 どうしても、マルは彼のことを考えてしまう。

 

花丸「ちゃんと来てくれるかな…………」

 

 と、無意識にボソッと呟いてしまった。慌ててみんなの顔を見てみるとマルの方に顔を向けていたずら。な、なんか恥ずかしいずら。

 

 マルが恥ずかしがってると、隣にいた善子ちゃんがマルの肩に手を優しく置いた。善子ちゃんの方に顔を向けると

 

 

 

 ーーーー大丈夫。あいつはきっと来るわ

 

 

 

 と、言わんばかりの表情をしていた。

 

 全く…………、普段は厨二病でポンコツの癖にこういう時だけはしっかりとしてるんだから…………。

 

 

 でも、ありがとう。善子ちゃん。

 

 

善子「だからヨハネよ!!」

 

 

 ………………善子ちゃんは心の声が聞こえるずらか??

 

 

千歌「さぁ、行こう!!ラブライブに向けて!!私達………………10人の第1歩に向けて!!

 

 

 

 

 

 

 

 今、全力で輝こう!!」

 

 

 千歌の言葉に続けてマルたちは「おー!」と言いながら中心に置いていた手を上に上げた。

 

 

 そして、Aqoursのみんなはステージの上に立ち自分の立ち位置へと着いた。

 

 

 音楽が流れ始め、千歌ちゃんが歌い出す。

 

 

千歌「♪想いよひとつになれ〜♪」

 

 

 

 

 Aqoursにとって、負けられないライブが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 改めて思い出すと俺はAqoursのライブを観客側から見るのがこのライブで初めてだった。

 

 だからこそなのかもしれない。今のAqoursのライブを目の前にして衝撃が止まらない。

 

 

 なんだよ…………これは。

 

 

 とても凄い………………。

 

 

 とてもシンプルで安易な感想だが、逆にこの言葉以外何も思い浮かばない。そう思わせるほど今の彼女たちのライブは凄い。現に身体中の痛みを忘れるぐらいに。

 

 

 見てる場所が少しだけ違うだけなのに、こんなにも変わるものなのか。

 

 

 

 

 

 それにしても「想いよひとつになれ」………か。

 

 

 今のAqoursの状況にピッタリな歌だ。きっとこの歌の歌詞を考えたのは千歌先輩だろう。

 

 きっと、この場にいない梨子先輩とAqoursの想いは遠くに離れていても繋がってるという意図が込められてるんだろう。曲のピアノのメロディや、まるでピアニストのようなダンスの振り付けなどがそれを物語っている。

 

 

 本当に…………、本当に仲間想いなスクールアイドルだ。

 

 

 

 

 

 俺は彼女たちのライブを見ていて1つ確信し、1つ決意した。

 

 

 

 それは………………

 

 

 

 やはり、俺のような『人殺し』はAqoursにいるべき存在ではないということだ。

 

 

 

 数日前のライブ、俺のせいでめちゃくちゃになってしまったのにも関わらず、この場にいる大勢の観客にこの盛り上がり。つまり、Aqoursは俺が起こしてしまった事件を覆すほどの力を持つ人気のスクールアイドルになっているということが分かる。

 

 

 

 そして、俺が決意したことは……………

 

 

 

 

 Aqoursのマネージャーを正式に辞退するということだ。

 

 

 先程、述べた通り今のAqoursは人気急上昇中のスクールアイドル。このライブでさらに人気は上がるだろう。

 

 そんなグループに俺のような『人殺し』がいていいはずがない。そもそも、既に俺はやらかしている。今後も俺のせいでAqoursに迷惑がかかるかもしれない。

 

 

 なら、そうなる前に俺はAqoursのマネージャーを辞める。

 

 

 けど、それをちゃんと逃げずに彼女達と面あって伝えることにしよう。あと、謝罪も。特にあいつには。

 

 

 

 じゃなきゃ、零さんの行動が無駄になってしまう。

 

 

 

 そして、辞めたあとは1人で姉ちゃん達と向き合うことにしよう。ここに向かう途中に分かったけど今、Saint Snowは休止中だということを知り、確実に原因は俺のせいなのが分かる。何とかしなくては。

 

 

 

 じゃなきゃ、平山先生の教えが無駄になってしまう。

 

 

 

 これでいい。これでいいんだ。

 

 

 

 だから最後にせめて、彼女たちのライブを1人のファンとして楽しむことにしよう。

 

 

 

 

 俺は持っていたペンライトを黄色に光らせて彼女たちを応援しようとした瞬間

 

 

 

 

 

 『…………が………よ。』

 

 

 

 

明「ーーーーーえ??」

 

 

 突然、俺の耳に誰かの声が聞こえてきた。けど、なんて言ったかは聞き取れなかった。

 

 

 気の所為………………だよな??今はAqoursのライブ中で大いに盛り上がっている所だ。それなのに、声なんか聞こえるはずがない。

 

 

明「ん?」

 

 

 ふと、ズボンの右側のポケットの中がジーンと熱くなってきているのに気づいた。確か、そのポケットの中に入れていたのは零さんに渡された小箱のはず。

 

 俺はポケットから箱を取り出すと、やっぱり零さんから渡された小箱だった。しかし、一つだけ違うことと言えば、何故か小箱が光り輝いていた。

 

 

 

 いや、正確に言えば小箱の中に入ってる物が輝いている。

 

 

 

 俺は恐る恐る箱の中身を開ける。すると、そこには

 

 

 まるで彼女たちのライブのように光輝いているシュシュがあった。

 

 

 このシュシュは、色は違うけど今まさしく彼女たちAqoursのみんなの手首に付いている奴と同じやつだ。

 

 

 どうしてこれを俺に送ってきたのかは分からない。分からないけど…………

 

 

 このシュシュは付けろと俺に伝えているかのように光り輝いていた。

 

 

 俺はゆっくりとシュシュを彼女たちと同じ右腕の手首に付けた瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『違うよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「!?」

 

 

 またしても、俺の耳に声が聞こえてきた。しかも今回ははっきりと聞こえた。

 

 

 しかも、この声はあいつの……………!!!

 

 

 俺はすぐ様、今まさしく踊っているAqoursのメンバーの1人に顔を向ける。

 

 

 あいつは、楽しそうに歌いながら踊っていた。一瞬だけ彼女と目が合った。すると、彼女たちはとても嬉しそうな表情に変わった気がする。

 

 

 

 

 『梨子ちゃんだけじゃないよ。明くんの想いもAqoursと繋がっているずら。』

 

 

 

 

明「ーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 まただ。また聞こえてきた。

 

 

 なぜ、あいつの声が聞こえてくる!?今現在進行形で歌っているあいつの声が!?

 

 

Aqours「♪想いよひとつになれ〜♪」

 

 

 俺の想いもAqoursと繋がっている??そんな訳ないだろ…………

 

 

Aqours「♪どこにいても〜♪」

 

 

 だって、俺は……………

 

 

Aqours「♪同じ明日を〜♪」

 

 

 俺は……………

 

 

Aqours「♪信じてる〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、Aqoursのライブは無事、終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライブが終了し、出口に出ると平山先生がコーヒを飲みながら待っていた。

 

 平山先生は俺の顔を見ると、驚いた表情をしていた。

 

 

 

平山「どうした??奥山。涙なんか流して」

 

 

 

明「え?」

 

 

 先生の言葉で俺は頬を触ると、しっとりと濡れていた。汗なんかではない。涙で濡らしていた。

 

 

 

 どうして涙が??

 

 

 

 理由は分からいけど、俺はすぐに腕で涙を拭った。

 

平山「泣くほど感動したってことかね」

 

明「まぁ……………そんな感じです。」

 

 

 

平山「うむ、それは良いことだ。それより、君を家まで送ってやろうと思ったが、どうやらまだ帰るのには早いらしいな」

 

 

 

 平山先生はニコッと意地悪そうに笑う。言っている意味が分からない。俺の考えがよめたのか、平山先生は俺の後方に指を指した。

 

 

 

 

 そして、俺は先生が指した方に振り向くと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「奥山くん……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「千歌先輩…………それにみんな………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程までステージにいたAqoursのみんなが目の前にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、明とAqoursの本音のぶつかり合いをお楽しみにしてて下さい。


あと、話変わるけど花丸さんセンター獲得おめでとうございます。
いつかその話も番外編で書こうと思います


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『人殺し』は伝える。

シリアス展開難しスギィ。

あと、Aqoursの5thライブ当選してました。

やったぜ☆



 〜花丸視点〜

 

 今、マル達はステージ上に立って歌を歌って踊っている。曲名は『想いよひとつになれ』。遠く離れていても想いは繋がっているという気持ちが込められている歌。

 

 

 今の所、特に何も問題は起きずに順調にライブが続いている。みんなは楽しそうに歌を歌って踊っている。もちろん、マルも今この瞬間を楽しんでいるずら。

 

 もし、ここに梨子ちゃんと彼がいたらもっと楽しかったんだろうなぁ………。とマルは心の中でそう思ってしまった。

 

 そして、マルは踊りながら客席に目線を配り彼を探す。けど、中々見つからない。

 

 無理もないずら。だって目の前にいるのは数えきれないぐらい大勢いるお客さんがいる。しかも、マル達の周りは照明とかで光り輝いているのに対して客席はペンライトで点々と光はあるものの全体的には暗い。そんな中、彼を見つけるのは至難だ。

 

 そもそも、彼がこの会場に来てくれているのだろうか。善子ちゃんは来ると言っていたけど、やっぱり不安になるな。

 

 

 けど、マルは諦めない。

 

 

 このライブが終わる1秒前になっても、マルは彼のことを探してやるずら。

 

 そして、サビに入るため踊る立ち位置に移動しようとした瞬間

 

 

花丸(ん??)

 

 

 暗いはずの観客席のとある場所に小さく輝く光が目に入った。あれは、何ずらか??見た感じ、ペンライトによるものの光では無かった。

 

 そこに視線を集中させるとそこには…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相変わらずボサボサの赤紫色の髪型に、ツリ目、そして顔中に絆創膏が貼られていて何か不安そうな表情でマル達のライブを見ている1人の男の子がいた………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう。紛れもなく明くん本人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 来てくれたんだ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、ふと明くんと視線が合った。明くんは気付いているかどうか分からないけどマルはとても嬉しくて、つい口元が緩んでしまったずら。

 

 

 

 

 

 

Aqours「♪同じ明日を信じてる〜♪」

 

 

 マル達8人はシュシュが付いている方の腕を上に伸ばして、Aqoursのライブは無事に終了した。

 

 

『Aqoursの皆さん、ありがとうございました〜』

 

 

Aqours「ありがとうございました!!」

 

 ライブが終わり、みんなと舞台袖へと移動したあと、マルは誰に話しかけることなく真っ先に出口へと走り出した。

 

 

 早く行かないと彼は帰ってしまうかもしれない。

 

 

 

千歌「花丸ちゃん!?」

 

善子「ずら丸!?どうしたの!?」

 

 

 

 背後から、みんなの驚きの声が聞こえきたけどマルは何も答えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 早く、彼と……………明くんに会いたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その想いでマルは走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 どうして彼女達がライブ衣装のままで俺の目の前にいるのか、とても疑問に思う所ではあるが、今はそれよりも俺の中では「気まずい」という気持ちが勝っていた。

 

 仮にも、俺は彼女達Aqoursに多大な迷惑を掛けてしまった身であるのにも関わらず、あの日以降、俺は彼女達に会っていない。零さん曰く彼女達は俺に会いに来てくれてたらしいが、全く覚えがない。

 

 それゆえ、俺は必然的に彼女達から目を逸らす。

 

 俺もそうなのだが、彼女達も特に何も言葉を出さなかった。なので、沈黙の時間が続いていた。

 

 

 無駄に流れる沈黙の時間に痺れを切らしたのか、平山先生は頭を掻きながら俺たちに言葉を出した。

 

 

平山「あのさぁー、特に何もないならお前ら早く楽屋に戻って着替えて帰れ。いつまでもそんな格好でおられても迷惑だ。…………奥山も、何もないなら私が家まで送ってあげるから、早く車まで行くぞ」

 

 

 平山先生は少しだけ棘のある言い方をして、俺達に言葉を投げかける。

 

 確かに、先生の言う通りだ。ただ何もせずにここにいたって無駄な時間が経過するだけ。しかも、彼女達はライブ衣装のまま。きっとライブが終わってからすぐにここに来たのだろう。周りに人がいないのが不幸中の幸いだが、1人でもファンがここを通れば騒ぎになるのは確実だ。

 それによって、Aqoursの何人かの表情が曇る。

 

 そもそも、彼女達はここに浦の星女学院の教師である平山先生がいるなんて思ってもみなかったに違いない。なんなら、この先生は俺達1年生組の担任でもある。

 

 

 きっと俺たちの事を心配しての言葉なんだよな。学校でも生徒から尊敬されてるだけではある。もちろん、俺もその1人だ。

 

 俺は平山先生の方にくるりと振り向いて、歩きだす。それによって、俺が帰ると思ったのか彼女達は「あ……」と言葉を漏らしていた。

 

 

 きっと帰ってただろうな。前までの俺だったら…………………。

 

 

 そう思いながら俺は先生のすぐ目の前まで来て微笑みながら言葉を出す。

 

 

明「大丈夫です、先生。すぐに終わらせるので。」

 

 

 俺の言葉に、先生は目を丸くしていた。まさか俺がこんなことを言うなんて思ってもみなかったのだろう。

 

 

平山「……………そうか。私は待ってた方が良いか??」

 

 意外にも、先生はすぐに折れてくれた。そして俺は先生の問いに、首を横に振る。

 

明「先生のおかげで身体もだいぶ良くなったので、電車なりタクシーなり使って1人で帰りますよ」

 

平山「………………分かった。では、また学校でな」

 

明「はい」

 

 先生は俺の肩にポンと手を置いたあと、「頑張れよ」と言い残して去って行った。最後の最後までこの先生は…………。

 

 先生を見送ったあと、再び彼女達の方へ身体を振り向かせたあと、歩き出す。

 

 彼女達との距離を縮める度に、心拍数が早くなっているのを感じる。今までに経験したことがないぐらい自分が緊張しているのが分かる。俺は落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸を行った。うん、だいぶ良くなった。

 

 

 さぁ、『人殺し』よ。そろそろ覚悟を決めろ。

 

 

 そう、自分に言い聞かせたあと彼女達の側まで近付いた俺は…………………

 

 

 

 

明「すみませんでした」

 

 

 

 

 と、深く頭を下げて謝罪した。

 

 

Aqours「!?」

 

 

 本音を言うならば、頭を下げるだけではなく土下座もしたかった。しかし、先程も言った通り、いつここに人が通りかかるかも分からない。もし、彼女達に土下座をしてる最中に人が通りかかったら、またしてもAqoursに迷惑を掛けてしまう。それだけは絶対に避けたい。

 

 俺の行動た彼女達何人かが驚きの声を出すが、俺は頭を下げたまま続けて言葉を出す。

 

 

明「俺のせいで、せっかく成功したライブをめちゃくちゃにしてしまいました。しかも、俺は…………………花丸さんに大怪我を負わせて、しかもそれだけでなく俺は貴女たちに謝罪1つなく逃げてしまった。…………………本当にすみませんでした。」

 

 

 俺は顔を上げ、彼女達の顔を見る。みんな真剣な表情で俺の話を聞いていた。

 

 

 謝罪はした。あとはアレを言うだけだ。

 

 

 俺はもう1度、深呼吸をしてから言葉を出した。

 

 

明「あと、今日限りで俺はAqoursのマネージャーをやめます。多分、もう全員知ったと思いますけど俺は10年前に人を殺めました。こんな俺みたいな『人殺し』がAqoursにいたら今回だけでなく、今後も貴女達に迷惑掛けるかも知れません。短い間でしたけど、お世話になりました。これからは1人のファンとして陰ながら応援します。」

 

 

 俺はそう言って、再び頭を下げる。一体、今、彼女達はどんな反応をしているのだろうか。怖くて見れない。

 

 

 けど、言いたいことは言った。あとはもうこの場から離れれば終わりだ。彼女達の関係と共に。

 

 

 あと、これは誰にも言ってないことだが俺はもう今後、浦の星女学院には足を踏み入れない。なんなら、内浦から出るつもりでいる。零さんにも内緒で。

 

 

 内浦から出たあとは北海道に行って、俺の本当の家族……………鹿角家に向かおうと思っている。まだ細かいことは決めていないが、後々決めていけばいいだろう。

 

 

明「それでは……………」

 

 

 早くこの場から離れたかった俺は彼女達の顔を見ずに、くるりと身体を回転させ歩きだそうとした。

 

 

 

千歌「待って」

 

 

 歩き出そうとしたら、背後から千歌先輩の声が聞こえた。ここで、俺は足を止めれば良かったのかもしれない。けど、足を止めてしまった。

 

 

 

 足は止めたが、顔は振り向かなかった。それでも、千歌先輩は言葉を続けた。

 

 

 

千歌「奥山くんの気持ちは伝わったよ。伝わったからこそ、私から…………うぅん、私達Aqoursから君に1つ言わせて欲しい。」

 

 

 

 

 

 

 千歌先輩はそう言ったあと、大きく息を吸って大声で俺の予想を遥かに超えた発言をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ねぇ、奥山くん…………いや、明くん!!Aqoursのマネージャーをやってくれませんか??」

 




明とAqoursの本音のぶつかり合いはどうやら次回に持ち越しの様です。つまり、何が言いたいかと言うと、すみませんでした。



お気に入り・感想・評価お待ちしております。


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『人殺し』はこうして迎えられる。

更新…………頑張ったよ。


 ーーーーかつて、彼女がスクールアイドルをやると幼馴染に言ったように

 

 

 ーーーーかつて、彼女が内浦にやってきた後に親友となる女性にスクールアイドルをやらないかと聞いたように

 

 

 ーーーーかつて、彼女が友達想いの女性にスクールアイドルをやりたいかどうかと言葉を送ったように

 

 

 ーーーーかつて、彼女が堕天使を名乗る女性に堕天使としてスクールアイドルに受け入れたように

 

 

 ーーーーかつて、彼女が0から1へと変えると泣きながら決意したように

 

 

 ーーーーかつて、彼女がクラスで喧嘩する3年生3人に対して辞めるよう怒鳴ったように

 

 

 ーーーーかつて、彼女が親友を勇気づけて東京に送り出したように

 

 

 ーーーーかつて、彼女が幼馴染に2人だけのパートを作り直そうと笑いながら言ったように

 

 

 

 この女性………高海 千歌先輩は『人殺し』である俺にAqoursのマネージャーをやらないかと勧誘してきた。

 

 

 

明「何を……………」

 

 

 予測を遥かに超えた言葉に俺は返す言葉を見つけることが出来なかった。この人はさっき俺が言ったことを聞いてなかったのだろうか。

 

千歌「明くん、Aqoursのマネージャーやりませんか??」

 

 唖然してる俺を見て、聞いて無かったと思ったのか千歌先輩はもう一度、俺に勧誘の言葉を投げかけた。

 

明「どうして…………」

 

 分からない…………本当に分からない。この人の考えてることが。

 

 

千歌「どうしてって言われても、Aqoursには明くんが必要だからだよ。」

 

 千歌先輩はえへへと微笑みながら俺の問いに答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 必要だから??こんな俺が??

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aqoursの大切なライブをぶち壊して、メンバーを傷つけたこの俺が??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』であるこの俺が??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この瞬間、俺の中の何かがプツリと切れるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「………ないだろ」

 

 

千歌「え?」

 

 

 

 

明「そんな訳ねぇだろ!!」

 

 

 

曜「千歌ちゃん!?」

 

ダイヤ「明さん!!落ち着きなさい!!」

 

 

 

 俺は素早く千歌先輩に近づき胸ぐらを掴んで怒鳴りつけた。普段、声とかこういう行動をしないので驚いたのか、苦しそうな千歌先輩含め他のメンバーもビクリと身体を震わせていた。

 

 しかし、そんなの今の俺は気にしない。胸ぐらを掴んだまま千歌先輩のことを睨みつけ、言葉を続けた。

 

 

明「俺は『人殺し』だぞ!?人を殺めたんだぞ!?例え殺めた相手が銀行強盗だったとしても!!例え殺めた理由が母さんや姉ちゃん達を守る為であっても!!俺が人を殺してしまったことには変わりはない!!」

 

 

 そう。俺が言っていることは全て事実。

 

 俺は『人殺し』。『人殺し』だからこそ俺は家族に捨てられた存在。

 

 本来だったらこんな素敵な場所にいてはいけない存在だ。

 

 だからこそ、俺は口にする。彼女自身が今、自分が愚かな行動をしているということを気づかせる為に。

 

 

 

 

明「俺みたいな『人殺し』がAqoursにいてみろ!!また何かが起こるに決まってる!!俺のせいで、お前らが今までに培ってきたものが全て失うかもしれないんだぞ!!ファンも信頼も名誉も、そして何より守りたい学校も!!それでもお前は……………お前らは俺の事を受け入れるって言うのかよ!!」

 

 

 

 

 言葉を言い終わった俺は荒く呼吸を繰り返しながらも彼女のことを睨みつける。そんな彼女の瞳には、汚く酷く醜い自分の姿が映し出されていた。

 

 

 これだけ言えば、流石の彼女も気付くだろう。俺がもしAqoursに居続けたあとの今後のことを考えたら俺は排除するべき存在だと。

 

 

 

 さぁ、言ってくれ。こんな『人殺し』なんて要らないと。

 

 

 さぁ、切り捨ててくれ。こんな醜い『人殺し』を。

 

 

 さぁ、立ち去ってくれ。こんな哀れな『人殺し』の前から!!

 

 

 さぁ、早く…………。じゃないと俺は……………。

 

 

 

 

 しかし、俺の微かな希望も彼女の一言によって打ち壊された。

 

 

 

 

千歌「うん。例えそうなっても、Aqoursは君を受け入れる。」

 

 

 

 

 

明「ーーーーーーッッ!?」

 

 

 

 

 胸ぐらを掴まれているのにも関わらず、千歌先輩は真剣な表情で…………真っ直ぐな瞳で俺に向かって言葉を出した。

 

 

 千歌先輩の言葉に俺は顔を横に振りながらパッと千歌先輩の胸ぐらを掴んでいた手を離し、何歩か後ずさりした。

 

 

 そして、バタンと尻を地につけてしまった。

 

 

 どうして、この人はそんなことが言える!?

 

 

 どうして、この人はそんなことが考えられる!?

 

 

 どうして、この人はそんなに優しくすることが出来る!?

 

 

 

 分からない、分からない!!

 

 

 どうして、言わない!?どうして、見捨てない!?どうして、立ち去らない!?

 

 俺は『人殺し』なんだぞ………??

 

 

 どうして………………どうして!!!

 

 

 

 

 

 

 俺が顔を俯かせていると、今度は千歌先輩が俺の胸ぐらをグイッと掴み、顔を近づけて言葉を出した。

 

 

千歌「例え、明くんが私達の前からいなくなったとしても、私達は全力で君のことを追っかける。例え、君がどん底まで堕ちていくなら、私達が君を全力引っ張りあげる。だって明くんは…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達の大切な仲間だから!!」

 

 

 

 

 

 

 千歌先輩はそう言うと、優しく俺の胸ぐらから手を離した。彼女の顔を見ると、彼女は泣いていた。

 

 こんな『人殺し』のために、千歌先輩は涙を流していた。

 

 しかも、千歌先輩だけではない。曜先輩やダイヤ先輩、鞠莉先輩に果南先輩。そして………………、花丸さんやルビィさん、善子さんまでもが涙を流していた。

 

 そして、俺も。俺も自分の頬が涙で濡れているのに気づいた。

 

 何度も何度も腕で涙を拭っても、止まることは無かった。

 

 

 これ以上………俺の意志を揺るぐのをやめてくれ。

 

 

 せっかく、やめると決意したのに…………。せっかく、やめると覚悟したのに…………。

 

 

 

 そんなことされたら俺は……………

 

 

 

 

 けど、その気持ちを持つことは許されない。許されないんだ。

 

 

 

 だって俺は…………

 

 

 

花丸「『もっと自分の気持ちを大切にしろ。自分に嘘ついて無理に人に合わせても辛いだけだ』」

 

 

明「え?」

 

 

 突然、花丸さんが俺に話しかける。俺は花丸さんの方に顔を振り向くと同時に彼女は言葉を続けた。

 

 

花丸「この言葉、覚えてるずらか?」

 

 

 ……………覚えてる。確か、花丸さんがルビィさんに体験入部の時に言った言葉だ。

 

 

花丸「マルは、これはルビィちゃんに対して言ったつもりだった。けど、そうじゃなかった。この言葉はマル自身にも投げかけていたんだ。それに気づかせてくれたのは明くんなんだよ」

 

 

 それが………どうした。正直言ってその言葉しか出てこない。なんで、このタイミングでその事を俺に??

 

 

花丸「今だからこそ、この言葉を明くんに送るずら。」

 

 

 そう言って、花丸さんは俺の胸に顔を埋めて声を震わせながら言葉を出した。

 

 

花丸「もっと明くん自身の…………本当の気持ちを大切にして。自分に嘘ついて周りに合わせても互いに辛くなるだけずら」

 

 

 花丸さんはそう言って、少し経ったあと俺の胸部からそっと離れた。花丸さんが埋めていた部分が湿っていた。どうして湿っていたのか、そんなの考えなくても分かる。

 

 

 それにしても、俺の本当の気持ち…………か。

 

 

 あるかないかと聞かれたら当然ある。

 

 

 あるけど…………

 

 

 良いのだろうか??『人殺し』がこの気持ちを持ってしまって………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aqoursにいたい、辞めたくないという気持ちを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「明くん!!」

 

曜「明くん!!」

 

ダイヤ「明さん!!」

 

鞠莉「明♪」

 

果南「明!!」

 

ルビィ「明くん!!」

 

善子「明!!」

 

花丸「明くん!!」

 

 

 俺の目の前に、8人が並び立ち手を重ね合って差し伸べる。そして、声を揃えて俺に向かって最高の笑顔で言葉を出した。

 

 

 

 

8人「Aqoursのマネージャー、やってくれませんか??」

 

 

明「………はは」

 

 

 

 全く…………もう色々通り越して、笑いしか出てこない。狂ってるな、俺も彼女達も

 

 

 

 けど、彼女たちは生半端な覚悟でここにいる訳では無い。

 

 

 

 相当な覚悟を、持って『人殺し』である俺を受け入れようとしている。

 

 

 あんだけやらかし、彼女達に罵倒をしまくったのにも関わらず……………………だ。

 

 

 

 だったら俺は……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達の想いに応えるしかないじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、見届けよう。浦の星女学院のスクールアイドルAqoursのこれこらを。彼女達のマネージャーとして。

 

 

 

 俺は重ね合わされた彼女達8人の手の上にゆっくりと自分の手を置いた。

 

 

 

 

明「………今更ですけど、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 俺の行動、そして言葉に彼女達は涙を流しながらも微笑みながら声を揃えて言葉を出した。

 

 

 

 

 

8人「ようこそ、明くん!!スクールアイドルAqoursへ!!」

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺は正式に10人目のAqoursのメンバーとして加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 




これで、『想いよひとつになれ』編完結です。

ようやく、明はAqoursと和解しました。長かったよぉ(><)
けど、まだまだ終わりませんよ。

次はこの作品の最骨頂、SaintSnow編突入です。

お楽しみ下さい!!

お気に入り・感想・高評価よろしく!!



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『人殺し』は前に進む。

今日は「BelieveAgain」を聞きながら友達のチャリのパンクを直していました。現場からは以上です。


 千歌先輩達がライブ衣装から制服へと着替えた後、俺達は浦の星女学院の理事長である鞠莉先輩が手配したバスに乗り込んで各自家へと向かっていた。ライブや俺の件もあってよっぽど疲れたのか、何人かは目を擦るなどして眠たそうな表情をしていた。

 

千歌「ねぇ、明くん。」

 

明「何ですか??」

 

 前の席に座っていた千歌先輩が俺の方に振り向いて話しかけた。今から寝ようと思ってたんだけど…………。

 

千歌「今日のライブ……どうだった??」

 

明「ライブ………ですか??」

 

 千歌先輩の言葉に、他のメンバーもハッとした表情となり俺の方に顔を向ける。………ちょ、恥ずかしいんだけど。

 

 しかし、聞かれてからには答えなければならない。俺は彼女達から目を逸らしながらゴノョゴニョとして答えた。

 

 

明「……………良かったです。それに…………みんな可愛かったです。」

 

 

 きっと、今の俺は超絶に顔を赤くしているだろう。そーっと、彼女達を見てみると千歌先輩と曜先輩は嬉しそうにニコニコと微笑み、ダイヤ先輩とルビィさんと花丸さんは恥ずかしそうに照れ、善子さんは当たり前と言わんばかりにドヤ顔し、鞠莉先輩と果南先輩はニヤニヤと意地の悪い笑みを零していた。

 

鞠莉「ふぅーん♪」

 

明「な、なんすか」

 

鞠莉「なんでもないワ♪」

 

 本当になんなんだ、この人………。そんなニヤニヤしないでくれませんかね。ちょ、頰をグリグリしないで。痛いです。お返しにデコピンしてやったぜ。

 

 

千歌「けど、私は今日のライブ…………………嫌だったな」

 

 

明「え?」

 

 千歌先輩の言葉に俺は驚きの声を上げる。ライブの時の彼女はそんな嫌な風には見えなかったけどな。

 

 

 ………………あ。そういうことか。

 

 

明「梨子先輩がいなかったから??」

 

千歌「うん。よく分かったね。」

 

 どうやら、俺の考えは当たっていたようだ。なるほど…………確かに、今回のライブは梨子先輩は不在の上で行ったライブ。仲間想いな千歌先輩にとってはそれは良い事では無かったのかもな。

 

 

千歌「梨子ちゃんだけじゃないよ。明くんも同じ」

 

 

明「え?」

 

 

 俺も同じ??どういうことだろうか。

 

 

千歌「今日のライブの音や照明は会場のスタッフさんがやってくれたんだけど、私は嫌だった。私ね、ライブをやる前に必ず明くんを見てたの。見てるとね、私達の後ろには明くんがいるんだって思って安心するの。だから、今日のライブも本当は明くんにやって欲しかった。」

 

 

 千歌先輩は残念そうに言葉を出す。そう言われると、罪悪感が申し訳ないほど出てくる。

 

 

千歌「だからまた今度、いつか梨子ちゃんと明くん含めた10人で『想いよひとつになれ』をやろうね!!はい、約束だよ」

 

 

 千歌先輩は先程の残念そうな表情が嘘だったかのように今度は「えへへ」と笑いながら小指を俺の方に差し出す。

 

 Aqours10人でやる『想いよひとつになれ』か…………。確かにやってみたい。音も照明も俺が操作したい。

 

 そう思った俺は自分の小指を差し出し、千歌先輩の小指と絡める。いわゆる、指切りげんまんというやつだ。絡めた瞬間、千歌先輩はぶんぶんと激しく上下に揺らしながら歌い始めた。

 

千歌「指切りげーんまん、嘘ついたらミカン千個のーます。指切った!!ちゃんと約束したからね!!」

 

 ちょっとだけ歌詞が違った気がするが気にしないことにしておこう。歌を終えると、指も離し千歌先輩は隣に座っている曜先輩と話し始めた。

 

 さて、まだ距離もあるし寝るk…………

 

鞠莉「えい♪」

 

明「痛っ!?」

 

 瞼を閉じて寝ようとした瞬間、隣に座っていた鞠莉先輩が俺の耳たぶに目掛けてデコピンしてきた。俺は鞠莉先輩を睨みつけるのに対して、彼女はニヤニヤしていた。

 

明「………眠いんすけど」

 

鞠莉「まだ寝かせてあげない♪」

 

 いや、寝かせて下さい。お願いしますから

 

明「果南先輩の所に行ってきたらどうですか??ほら、あの人今眠たそうにしてるからセクハラし放題ですよ。」

 

鞠莉「んー、それもExcellentな案だけどまた後でいいわ♪」

 

 また後でってことは結局、セクハラするんですね。何で、この人訴えられないの??あ、金の力か。納得。

 

明「んで、何の用ですか??」

 

鞠莉「特に何も♪ただ明を弄りたかっただけよん♪」

 

 誰かぁぁぁ、頼むからこの人と代わって!!嫌だ!!俺、この人嫌だわ!!絶対、目的の場所まで弄り倒され…………

 

 

 ーーーーモニュ

 

 

明「ふぁ!?」

 

 俺が悶えていると突然、鞠莉先輩が俺のことを抱きしめた。Aqoursのメンバーの中でトップ3に入るであろう大きくて素晴らしい胸が俺の顔を包み込む。なんか、幸せ…………じゃない!!

 

明「鞠莉先輩!?何ひて………」

 

 思いがけない行動に俺は思わず噛んでしまった。

 

 しかし、俺の問いに鞠莉先輩は何一つ言葉も出さずそっと俺の頭を撫で始める。

 

明「ちょ、鞠莉s……」

 

 

鞠莉「本当に………本当に良かったわ。」

 

 

 鞠莉先輩の行動に怒りの声を掛けようとした瞬間、鞠莉先輩はボソッと弱々しい声で呟いた。

 

 

 ここで、俺は察した。

 

 

 彼女は………鞠莉先輩は、Aqoursの中で一番最初に俺が『人殺し』であると知った人だ。基本、おふざけしかしない先輩だが、千歌先輩に負けないぐらいの仲間想いで周りが見える人で優しい人だ。

 

 きっと、俺の事を長い間心配してくれていたのだろう。学校の理事長として、先輩として、そして………………仲間として。

 

 

 東京でライブに行った以降からAqoursとの関係に悩んでいた俺であったが、今日のことでそれは解決した。それだけでも鞠莉先輩にとっては嬉しいことだったに違いない。

 

鞠莉「明にはマリー達がついてるわ♪だから、安心してね♪」

 

 鞠莉先輩はニコッと微笑んだ後、俺から離れた。嫌がらせの要素が全くない、鞠莉先輩自身の俺に対する本音だと感じた。

 

鞠莉「でーも」

 

明「痛っ!?」

 

 鞠莉先輩はそう言って、俺に目掛けてチョップを入れた。何で!?

 

 俺が突然の鞠莉先輩の行動にテンパっていると彼女は俺の耳に近づきそっと呟いた。

 

 

 

鞠莉「君にはまだ………やるべき事が残ってるでしょ??」

 

 

 

明「ッッ!?……………うす。」

 

 

鞠莉「OK♪ちゃんと分かってるなら、マリーは何も言わないわ♪さてさて、それじゃあ果南のナイスバディな胸を堪能してくるワ♪」

 

 鞠莉先輩は俺に向かってウィンクをし、手をひらひらさせた後、既に夢の世界に入っている果南先輩の方へと移動して行った。果南先輩、ご愁傷さまです。南無南無…………

 

 

 そして、俺は鞠莉先輩が言ったやるべき事を早速、実行する為にバスが赤信号に止まったのを見計らって行動に出た。

 

 よっこらせと座席から立ち上がり、とある人物の方へと向かう。その人物は相変わらずのっぽパンを美味しそうに頬張っていたが俺の姿を確認したあと俺の行動を察したのか隣に座れるスペースを作ってくれた。

 

 俺はその人物が作ってくれた隣のスペースに座ったあと、ゆっくりと話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「なぁ、花丸さん。明日空いてる??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜数時間後〜

 

 

 

 バスから降りた俺はとある場所に寄った後、そのまま家へと直進した。

 

 そして、現在家の扉の前で突っ立っている。かれこれ10分ぐらいは家の中に入る勇気が湧いてこなかった。

 

 

 どんな顔で零さんに会えば良いのだろう。めちゃくちゃ気まずい。

 

 

 数時間前のことがあるからなおさらだ。

 

 

 時間はもう遅いので、もしかしたら寝てる可能性もあるが、もしそうだったとしても、結局明日には顔を合わせるんだよなぁ。

 

 

鞠莉『君にはまだ……やるべき事が残ってるでしょ??』

 

 

 扉の前でウジウジしている途中で、数十分前に聞いた鞠莉先輩の言葉を思い出した。

 

 

明「…………このままじゃダメだよな。前に進むためには」

 

 

 俺はそう言って何回か深呼吸した後、ようやく入る決心をして扉を開けて家の中へと入って行った。

 

 

明「…………ただいま。」

 

零「ッッ…………………おかえりなさい。」

 

 リビングに入ると、テーブルの前の席に零さんが座っていた。俺に気づくまでウトウトとしていたからきっと、俺が帰ってくるまで眠気を我慢して待っててくれていたのだろう。

 

 そして、零さんの目がだいぶ腫れていて泣いた跡のようなものも付いていたのも見逃さなかった。それを見た瞬間、心がズキンと痛くなった。

 

 零さんは冷蔵庫に指をさして俺に向かって言葉を出した。

 

零「冷蔵庫に唐揚げあるからチンして食べてね」

 

明「…………………うん。」

 

 思ったより、普通な対応に少しだけ動揺してしまった。

 

零「それじゃあ私は寝るね。お休み」

 

 零さんはそう言って、テーブルの前の席から立ち上がり、リビングから出ようとした。扉のドアノブに手を触れようとした瞬間、俺は言葉を出した。

 

 

明「あのさ、零さん」

 

 

零「…………何?」

 

 俺は片手に持っていた袋をテーブルの上に置く。

 

明「コンビニでプリン買ってきたんだけどさ、良かったら一緒に食べない??」

 

 俺は家に帰る前に寄ったコンビニで購入したプリン(零さんの大好物)を袋から出してテーブルの上に置く。

 

 さぁ…………どうだ??一瞬だけだけど、零さんの目が輝いた気がしたんだが………

 

零「…………………食べる」

 

 よし!!俺は心の中でガッツポーズを決める。

 

 零さんはテーブルに戻り、俺の正面に座ってから、プリンを手にして食べ始めた。

 

 そこからは俺も零さんも何も言葉を出さず、お互いの咀嚼する音だけが響き渡るだけだっが、それではいけないと思い俺はAqoursとの関係について零さんに話した。

 

 

明「俺さ…………Aqoursと向き合うことにしたよ。」

 

 

零「…………………そう。」

 

 零さんは何一つ表情を変えずにプリンを食べ続け、後に彼女はプリンをぺろりと完食した

 

零「…………ご馳走様。今度こそ、寝るね。おやすみ」

 

 彼女はテーブルから立ち上がり、本格的に部屋から出ようとしたが俺は彼女の腕を掴む。零さんは少しだけ驚いたような表情でこちらの方を向く。

 

零「…………何?」

 

 

明「零さんのおかげで俺はAqoursと向き合うことが出来た。ありがとう。」

 

 

零「そんな…………礼なんて」

 

明「あと、ごめんな。家族じゃないとか言って。」

 

零「そんなことないわよ。本当の…………ことだし」

 

 気にしてない風に言う零さんであったが、徐々に言葉が震えてきている。気にしない訳ないよな。俺も彼女も。

 

 それを分かってるからこそ、俺は零さんに言わなければならない。

 

 自分の気持ちを…………感謝を。

 

 

明「零さん、改めて言わせて欲しい。俺みたいな『人殺し』と……………家族になってくれてありがとう。」

 

 

 俺を引き取った時、零さんはまだ20代前半の時。一般の女性ならば、友達と遊んだり恋人とか作って一緒に過ごしたりとするはずなのだが、零さんは俺を引き取ったことにより、その時間を全て俺みたいな『人殺し』のために費やしてくれた。

 

 それでも、彼女は後悔した表情を一切見せず「私も楽しいから」と言って俺と一緒にいてくれた。

 

 

 心の底から嬉しかった。

 

 

 1度、失った家族の愛というものを俺にくれたのだから。

 

 

 ーーーーペチン

 

 

 ふと、俺は零さんにビンタされた。しかし、威力はなかった。

 

 ーーーーペチンペチンペチン

 

それでも、彼女は俺に何回もビンタした。

 

零「馬鹿……………」

 

 零さんはそう呟いたあと、俺に思いっきり抱き締め、そして

 

 

零「うわぁぁぁぁぁぁぁん、私もごめんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 と、まるで子供のように泣きながら俺に謝罪した。

 

 零さんも零さんで辛かったのだろう。それが痛いほどよく分かる。

 

 

零「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

 俺もギュッと泣き続ける零さんを抱きしめた。

 

 

 そして、もう出尽くしたと思われた涙が、また俺の瞳からポロリと頬を伝った。

 

 

 

 

 

 

 




ちょっとずつ、日常系かつコメディな感じに戻ってきます。


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『人殺し』は眠る。

零さんと和解した次の日の話です。


〜明視点〜

 

明「…………ここか。」

 

 片手にはメモを、もう片方の手には菓子折りが入っている袋を持って俺はとある場所に来ていた。

 

 扉の前まで行き、何回か深呼吸をした後にインターホンを押す。すると、すぐに『はーい』という声が聞こえた後、ガチャと扉が開くと私服姿の花丸さんが姿を現す。

 

 

 そう、俺が来たとある場所とは花丸さんが住んでいるお寺である。

 

 

花丸「いらっしゃ…………って何その格好!?」

 

 出てきた花丸さんが俺の姿を見るなり驚いた表情をする。無理もない。なにせ、今の俺の姿は普段着ることの無いスーツ姿なのだから。

 

明「ちょっとな…………。お家の人って今いる??」

 

花丸「うん。明くんが来たら家の中に上げるよう言われてるずら。」

 

明「ん、了解」

 

 花丸さんに「どうぞずら」と言われたので、靴を脱ぎ家の中へと入らさせてもらう。流石は寺であるためか、少し新鮮な気持ちとなる。

 

花丸「おばあちゃん、明くんが来たずら」

 

 花丸さんはそう言って、襖を開けるとそこは6畳くらいの和室で中心には赤い眼鏡を掛けている顔の優しそうな高齢者の女性が正座して座っていた。

この人が、花丸さんと一緒に暮らしているおばあちゃんか。

 

 花丸さんの祖母が俺の姿を見ると、ニコッと優しく微笑みながら話しかける。

 

祖母「よう来たねぇ〜。君が明くんかい??」

 

明「は、はい。奥山 明って言いまひゅ。」

 

 やべ、緊張しすぎて噛んじゃった。恥ずかしい…………

 

祖母「よく花丸ちゃんから聞いてるわ。花丸ちゃんがやってる部活のお手伝いさんをしてるんでしょ??偉いわね〜」

 

明「いや………それほどでも。」

 

祖母「あ、そうだ。美味しい煎餅あるけど、食べるかい??」

 

明「大丈夫です。」

 

祖母「あらそう。じゃあ………」

 

明「あの!!」

 

 そろそろ前置きはこんなものでいいだろう。俺がここに来た目的を実行しなくては。

 

 

 俺は緊張しながらも花丸さんの祖母の近くまで寄った後、正座してから頭をさげた。いわゆる土下座である。デコから畳のひんやりした冷たさが伝わってきた。

 

 

花丸「明くん…………」

 

 俺の姿を見て、花丸さんは気まずそうに俺の名前を言う。俺は昨日には彼女にこうすると言ってたけど、動揺するのはあたりまえか。

 

 

 今日、俺がここに来た目的。それは花丸さんの家族に謝罪するためである。

 

 

 既に零さんは俺の代わりに花丸さんの家族に謝罪してくれたらしいが、それで主犯である俺は家族に謝罪しなくても良い訳ではないだろう。

 

 

明「今日、ここに来た理由は貴女に謝罪をするためです。俺は貴女の大切な家族である花丸さんに大怪我を負わせてしまいました。本当にすみませんでした。」

 

 

 俺は頭をさげたまま、彼女の祖母に言葉を出した。頭を下げているため、彼女の表情は見えないがきっと良い顔では無いはずだ。

 

 当たり前だ。自分と一緒に暮らしている唯一の可愛い孫が俺によって傷つけられたのだから。きっと、彼女にとっては俺は憎くて仕方がない存在だ。

 

 

 だから、俺は何があっても受け止める。

 

 

 たとえ、彼女の口から批判的な言葉や罵声を言われたとしても。

 

 

祖母「明くん、まずは顔を上げてちょうだい。」

 

 花丸さんの祖母の声が耳に入る。意外にも怒りや憎しみが孕んでない優しい口調だった。俺は言葉通り、顔を上げると目の前には花丸さんのおばあちゃんが相変わらずニコニコとした表情で俺の事を見ていた。

 

 

祖母「ありがとうね」

 

 

明「え…………??」

 

 

 唐突の感謝の言葉に、俺は目を丸くする。

 

 

 なぜ………俺は彼女に感謝されたんだ??

 

 

明「言ってる意味が…………」

 

 彼女の言葉に俺は困惑していると、更に彼女は口を開いた。

 

 

祖母「貴方は花丸ちゃんを助けてくれたのでしょう??」

 

 

明「ーーーーッッ!?」

 

 

 確かに、俺は花丸さんを2回ほど助けた。助けたが、それは今の話とは関係ないはずだ。なのにどうして………??

 

 

祖母「確かに、貴方は花丸ちゃんを傷付けた。その事実だけはどうしても変わらないわ。だけどね……………私は貴方に感謝してるのよ。だって………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もし、貴方がいなかったら私の大切な家族が失っていたのかもしれないのだから。」

 

 

 花丸さんの祖母は予想外の言葉で動揺してる俺の両手に手をかけてくれた。それは、とても優しくて温かいものだった。

 

 

 

祖母「だからね、明くん。もう一度言わせて欲しいわ。……………ありがとう!!私の大切な家族を守ってくれて」

 

 

 

 花丸さんの祖母は瞳に涙を浮かべながら俺に感謝の言葉を述べてくれた。隣を見れば、花丸さんも涙を流してるし俺も花丸さんの祖母の言葉による影響か、涙を流していた。

 

 

 正直言ってここ数日の俺…………涙、流しすぎだろ。なんか、情けない気もするが、それはそれで悪くないと思う自分がここにいた。

 

 

 

 

〜花丸の部屋〜

 

 

 彼女の祖母に謝罪し終わった俺は、花丸さんの部屋へとやって来ていた。そして、部屋に入った瞬間、俺は驚きを隠せなかった。

 

 なぜなら、彼女の部屋はまるで図書館だと思わせるぐらい、本が沢山あったからだ。

 

 花丸さんが本を読むのが好きだというのは誰もが知っていることだったが、まさかここまでだとは。流石は台車を使うほど本を購入してるだけはある。

 

明「俺も結構な量を読んできたと思うけど花丸さんには適わないな。」

 

花丸「本の好きさなら誰にも負けないずら!!」

 

 花丸さんはドヤ顔しながら、胸を張って答える。やっぱり………目のやり場に困るからやめて欲しいな。

 

明「ふぁ〜…………」

 

 未だに胸を張り続ける花丸さんに目を逸らしていると突然、俺は睡魔に襲われつい大きな欠伸をしてしまった。

 

花丸「明くん、眠いずら??」

 

 花丸さんは心配そうに俺に話しかける。そんなに大きな欠伸をしてしまったのだろうか。

 

明「まぁね。今日のことで緊張して、昨晩は余り眠れなかったから………」

 

 俺は目を擦りながら花丸さんに答える。ここだけの話、昨日は本当に緊張して一睡も出来なかったからな。

 

 そして、緊張してた原因が終わったからか、今は凄い眠い。今ならば少しでも瞼を閉じれば夢の世界に突入できる程だ。

 

 けど、ここは花丸さんの部屋だ。寝るのを我慢しなくては…………

 

花丸「明くん」

 

明「何??」

 

花丸「少し寝るずらか??」

 

明「ハハ、君は何を言っているんだい??」

 

 どうしたのだろうか??見てない間に変なものでも食べちゃったのかな??男である俺が女性の部屋で寝るとかダメなやつだから。

 

花丸「でも、すごく眠たそう」

 

明「これぐらい我慢でき………ふぁ〜」

 

 やば…………。言葉を言ってる途中に欠伸をしてしまった。花丸さんがジト目で俺の方を睨みつける。

 

花丸「説得力ないずらよ」

 

明「ご最もです」

 

 でも、今はマジで眠たいから彼女の言葉に甘えさせて貰おうかな。

 

明「じゃあ、30分だけ………。でも、本当にいいの??男である俺が花丸さんの部屋で寝ちゃっても」

 

花丸「全然、大丈夫ずら。」

 

明「分かった。ありがとうな。お言葉に甘えて少しだけ寝るわ」

 

花丸「おやすみなさいずら」

 

 俺も花丸さんに「おやすみ」と言った後、横になって瞼を閉じた。瞼を閉じたのはいいけど、やはり女の子の部屋で寝ているという自覚があるせいか、なかなか寝られなかった。

 

 

花丸「♪特別な〜事じゃなくて♪」

 

 

明「え??」

 

 緊張で眠れないと自分の中で唸っていると耳に彼女の…………歌声??が耳に入ってきた。

 

 

花丸「♪そばで毎日笑い合える♪」

 

 

 これは………子守唄??だけど俺の知ってる子守唄とは違う。もしかして………、彼女のオリジナルソングか??

 

 

花丸「♪言葉には出来ないような悲しみたち知った時♪」

 

 

 やっぱり、花丸さんは歌が上手いな。幼い頃から歌唱隊に入ってたって言ってたっけ。

 

 

花丸「♪無力な〜自分悔しいと涙ぽろり落ちる♪」

 

 なんだろう…………。

 

 

花丸「♪だけど笑顔で〜明日の♪」

 

 

 彼女の歌声を聞いてるとなんだか落ち着く。

 

 

花丸「♪ちょっとしたお楽しみ考えていたら♪」

 

 

 心の中がポカポカと温かい気持ちとなる。まるで優しく包み込んでくれているかのように。

 

 

花丸「♪晴れるよ〜胸の空は〜♪」

 

 

 それに………なんだ、この気持ちは。温かい気持ちとはまた違うこの気持ち………

 

 

花丸「♪あぁ、いつも幸せを望んでるから♪」

 

 

 まるで胸が締め付けられるようなこの気持ち………。こんな気持ちになるのは産まれて初めてだ

 

 

花丸「♪なんて文学的な気分で眠ろうか〜♪」

 

 

 花丸さんの歌声を聞いて初めて抱えるこの気持ちに疑問を浮かべていると、緊張がいつの間にか解けたのか再び睡魔に襲われ欠伸をした。あ、これはもう寝れるやつだ。花丸さんに感謝しないとな。

 

 

花丸「♪おやすみなさん〜♪」

 

 

 この歌詞を聞いたあと、俺は意識を手放して夢の世界へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

花丸「♪おやすみなさん〜♪」

 

 

 なんだか、明くんが緊張して眠れなさそうだったから少しでも安心させようと思ってマルが考えたマルだけの歌『おやすみなさん』を歌い終える頃には明くんは寝息をたてて寝ていた。良かったずら。

 

 スーツ姿にも驚いたけど、なによりも明くんの目の下のクマが大きかったからよっぽど緊張してたと思う。

 

 マルも、内心とても緊張してた。もし、おばあちゃんが明くんに批判的な行動をしたらどうしようって………。

 

 けど、それは心配無用だった。おばあちゃんは明くんを憎んでいなかった。むしろ感謝していたずら。

 

 おばあちゃんの言葉を聞いてマルは嬉しかった。あぁ、マルはおばあちゃんに愛されてるんだなって改めてそう思った。

 

 マルは寝ている明くんの顔に近づく。近づいても明くんは起きる気配がない。ふふ、明くんの寝顔を見るのは2回目だけどやっぱり可愛いしカッコイイずら。

 

 

花丸「明くん、ありがとう。大好きだよ」

 

 

 …………チュ

 

 

 

 マルはこっそり寝ている明くんの、頬にキスをした。

 

 

 そして、寝ている明くんの顔を見ている内に次第にマルも眠くなってきちゃったずら。

 

 

 少しぐらい…………いいずらよね??

 

 

花丸「えい!!」

 

 

 そして、マルは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祖母「2人とも〜おやつ持って………あらあら」

 

 

 

 

 

 

 部屋に花丸の祖母が入ると、祖母は一瞬だけ驚くがすぐに微笑みの表情へと変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の目の前では、スヤスヤと安心したように眠るスーツを着た明と幸せそうに気持ちよく明に抱きついて寝ている花丸の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、明の驚きの叫び声が寺中に響き渡ったのは言わなくても分かるだろう。




少し無理矢理感あったかな??笑

次は12話に突入します。


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『人殺し』はかき氷を吹き出す。

久々のコメディ回です。
本編にガッツリ入ってます。


 Aqoursのラブライブ予備予選のライブから1週間ほど経過した。

 

 今日は運命のラブライブ予備予選の結果発表の日だ。なので、俺達はいつも通っている喫茶店『松月』で集まり結果を待っていた。

 

 曜先輩が持っているスマホの目の前には千歌先輩、果南先輩、ダイヤ先輩が睨めっこしているかのように見つめていた。

 

鞠莉「あんまり食べると太るよ??」

 

花丸「食べてないと落ち着かないずら」

 

 松月のベンチには鞠莉先輩と花丸さんが座っていた。こいつ、常になんか食ってるよな。

 

 ふと、花丸さんと目が合った。花丸さんは手を振って微笑むが、俺はつい目を逸らしてしまった。

 

 

 最近、花丸さんのことを見ると胸がモヤモヤする。こんな経験………生まれて初めてだ。

 

 

善子「リトルデーモンの皆さん。この堕天使ヨハネに魔力を!精霊を!全ての力を」

 

 お前にに至っては通常運転すぎだな。何してんだ!!周りの人に迷惑かけんな!!バカ堕天使!!

 

曜「きた!!」

 

 どうやら、結果発表されたらしい。すぐに他のメンバーも曜先輩のスマホの前に集まる。めっちゃ緊張するな………

 

ダイヤ「Aqoursのアですわよ!!ア!ア!ア!」

 

明「ダイヤ先輩、少し落ち着いて下さい」

 

 そして、頭文字が『あ』から始まるスクールアイドルを調べるが、Aqoursの文字は全く出てこない。これは……もしや……

 

 

 そして、結局Aqoursの文字は出ず『い』から始まるスクールアイドルの名前が表示された。つまり………

 

 

千歌「落ちた………」

 

ダイヤ「そんなぁ〜」

 

 Aqoursはラブライブ予備予選で敗退が決定してしまった。みんなはとても悔しそうな表情をしている………もちろん俺も。

 

 そんな中、曜先輩はある事に気づき声を出した。

 

 

曜「あ、エントリー番号順だった。」

 

 

 曜先輩の言葉で、俺達は吉本新喜劇でよく見るズッコケをしてしまった。

 

 そして、再び下に画面をスライドしていくと…………

 

 『★イーズエクスプレズ

 

  ★グリーンティーズ

 

  ★ミーナーナ

 

  ★Aqours

 

  ★海音おとめ

 

  ★………………』

 

 

 と、表示されていた。

 

 つまり…………

 

千歌「Aqoursあったー!」

 

 Aqoursは無事にラブライブ予備予選を突破した。さっきの敗退した下りがあったから他のみんなもとても嬉しそうな表情をしている。

 

明「うわっ!!」

 

 

 あまりの嬉しさのせいなのか、1年生3人が俺に飛びついてきた。俺は驚きながらも3人を受け止める。

 

 

花丸「明くん!!やったね!!」

 

ヨハネ「私がいるんだもの。当然よ!!」

 

ルビィ「うゆぅ〜♪」

 

明「分かった!!分かったから離れろ!!」

 

 俺は顔を赤くしながらバカ3人組に離れるよう言葉を出す。ちょ、他のみなさんも助けて!!そんなニヤニヤしてこっち見ないで!!

 

鞠莉「予備予選突破……オーマイガー!」

 

 残念ながら今の俺の状況の方がオーマイガーです。誰か早く助けてください!!

 

 

 

 〜部室〜

 

 ラブライブ予備予選突破でお祝いしようとなり、部室へとやってきた俺達。相変わらず、花丸さんはのっぽパンを食しています。

 

果南「さぁ、今朝捕れたばかりの魚だよ」

 

 果南先輩はそう言って、テーブルに大量の刺身の乗った大皿をドンと置く。いや、凄いし美味そうだけどここまでよく運んでこれたな。

 

 1切れ貰ったけど、とても美味しかったです。

 

ルビィ「見て下さい!PVの再生回数が……」

 

 皆で刺身を頂いてる途中、ルビィさんが慌てた表情で、パソコンをこちらの方に向ける。俺達はパソコンに覗き込むと、『想いよひとつになれ』のPVが15万回以上の再生数を取っていた。1週間程でこれだけの再生数を取れたということはやっぱり素晴らしいライブだったということが分かる。

 

千歌「凄い再生数!」

 

 うん。千歌先輩も嬉しそうだ

 

ルビィ「コメントも沢山付いていて!」

 

 ふむ。おぉ、本当に沢山付いてる。ちょっと覗いてみよう。

 

 『Aqoursのメンバーマジで可愛い』

 

 『メンバー1人欠けてるのに凄い』

 

 『ますますファンになっちゃいました♥』

 

 『もうヨハネ様に堕天します!!』

 

 『デュフフ………相変わらずルビィたん。可愛いな………デュフフ』

 

 『祝え!!全スクールアイドルを抑え、友情を超え、希望と夢をしろしめすスクールアイドル。その名もAqours。まさに生誕の瞬間である。』

 

 なんか…………色々とツッコミたい。

 

 とりあえず、以前も出てきたこの気持ち悪いルビィさんオタクと、どこぞの時の王の側近野郎はブロックしておこう。

 

ダイヤ「全国くるかもね………」

 

果南「これはダークホース」

 

善子「暗黒面!?」

 

 それはダークフォースだろ。ダークホースだわ、ボケ。

 

千歌「ハハハ………ん?」

 

 突然、千歌先輩のスマホが鳴り出した。取り出すと、どうやら梨子先輩から電話が掛かってきたみたいだ。

 

梨子『予選突破おめでとう』

 

 どうやら、梨子先輩もサイトを見てAqoursが予選突破したのを知ったみたいだ。その後、皆で集まって今度は歌おうと約束してから通話は終了した。

 

ダイヤ「ラブライブで有名になって、浦女を存続させるのですわ!」

 

ルビィ「頑張ルビィ!」

 

 おぉ、黒澤姉妹が熱くなってる。てか、ダイヤ先輩の持ってる扇子の絵柄が『浦女』て………。それ、どこで手に入れたんですか??

 

果南「これは、学校説明会も期待出来そうだね!!」

 

 果南先輩の言葉に、皆も頷く。もうすぐ、浦の星女学院では学校説明会が開催される。今回のAqoursのライブによって少なくとも興味を持ってくれた人はいるはずだ。

 

鞠莉「そうね、説明会参加希望の数も………」

 

 鞠莉先輩はウキウキとしながら、スマホを取り出し説明会希望数を調べる。俺の予想は軽く50人はいると思うんだけどなぁ。

 

 しかし、俺の予想は全く外れていた。なぜなら…………

 

 

鞠莉「………ゼロ。ゼロだね」

 

 

 50どころか…………1人もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、みんなのテンションが低いまま俺達は解散となった。家にそのまま直進しようと思ったら、千歌先輩と曜先輩にかき氷食べに行かないかと誘われたので付いて行った。

 

千歌「はぁ………また0か」

 

 千歌先輩………相当落ち込んでるな。

 

千歌「あれだけ再生されてるんだよ??」

 

 まぁ、確かに。あれだけ再生数を取れてるのに1人も参加希望がいないっていうのもなかなか珍しいものである。

 

曜「μ'sは、この時期にはもう廃校を阻止してたんだよね??」

 

千歌「え、そうだっけ!?」

 

曜「学校存続が、ほぼ決まってたらしいよ」

 

 曜先輩はかき氷をパクパクと食べて言葉を出す。すると、さっきまで泳いでいた果南先輩がこちらの方に近づいてきた。スウェットスーツで…………。ここに男の子いますよー??

 

果南「ここでスクールアイドルをやるってことはそれほど大変だっていうこと。」

 

 と、を出しながらさらっとスウェットスーツを脱ぎ水着姿となる果南先輩。余りの衝撃に俺は吹き出してしまった。

 

明「ぶはっ!?」

 

曜「明くん!?」

 

 ゲホゲホとむせる俺の背中に曜先輩が優しくさすってくれた。

 

果南「どうしたの??」

 

 どうしたの??じゃないです。なんで分からないの??何で頭の上に『?』を浮かべながら傾げるの??貴女ポンコツなの??あとやっぱり、大きいですね!!

 

明「先輩………一応、ここに男子いるんでそういうことされると困るんですよ」

 

 俺の言葉に果南先輩はようやく自分がやらかした行為を理解し「あちゃー」と一言。本当にあちゃーですよ。

 

果南「ごめんね。私、そういうのは余り気にしないタイプだからさ」

 

 知ってるよ。気にしてる人だったら、簡単にハグしよ♪なんて言わないから。

 

明「とりあえず、服着てくれると嬉しいです。」

 

果南「けど、取りに行くの面倒臭いからこのままで♪」

 

 嘘だろ、オイ………。もう帰ろうかな。理性が持たん。

 

果南「話戻すけどさ、東京みたいにほっといても集まる場所ではないんだよ。ここは」

 

 話戻さないで欲しい所だが、果南先輩の言葉も一理ある。ここは都会と違って田舎に分類される場所。つまり、立地条件が悪い。そんな場所に高校3年間通おうと考えるならば、少なくとも違う高校を選んでしまうのだろうか。

 

 

千歌「でも、それを言い訳にしちゃダメだと思う。それを分かった上で私達はスクールアイドルをやってるんだもん。」

 

 

 千歌先輩はそう言いながら、少し溶けてきたかき氷を一気食いし始める。ちょ………そんな一気に食べたら………。

 

 

 案の定、千歌先輩は頭を抑え走り出した。あれ………めちゃくちゃ痛いよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜夜〜

 

 

零「ただいま」

 

明「おかえりなさい。晩御飯今、出来たとこだから」

 

零「やったー。すぐに手を洗ってくるね」

 

 零さんはルンルンとしながら手洗い場へと直行していった。今日の晩御飯のメニューは唐揚げだ。

 

零「んー♪やっぱり美味し〜♪」

 

 手を洗い、私服へと着替えた零さんは俺が作った唐揚げを幸せそうに頬張る。こういうの見ると、作った甲斐が有る。

 

零「そう言えば、来週留守番よろしくね」

 

明「来週??………あ、社員旅行ね」

 

 零さんが通ってる仕事場はこの時期になると社員旅行に行くこととなっている。

 

 

明「今年はどこに行くの??去年は大阪だったよね??」

 

 

零「ふふふ…………聞いて驚け。今年は……」

 

 

 

 

 

 

 零さんはニヤニヤとしながら言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

零「北海道よ」

 

 

 

 

 

 

 

明「え……………」

 

 

 

 

 マジ……………??

 

 

 

 

 

 ちなみに、数時間後千歌先輩からみんなで東京に行くという連絡が来たが零さんの社員旅行の行き先場所が衝撃的すぎて頭に入ってこなかった。

 

 

 

 

 

 




次回は東京編突入。

お気に入りや感想、評価の方よろしくお願いします。


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『人殺し』よ。おかえりなさい

普段より、少し短めです。



 

 〜電車〜

 

千歌『見つけたいんだ。μ'sと私達のどこが違うのか。μ'sがどうして音ノ木坂を救えたのか。それをこの目で見て、皆で考えたいの。』

 

 

 この言葉は、数日前に千歌先輩がAqoursのLINEグループで通話した時に発言したもの。この時の俺は、零さんの社員旅行の行き先場所の驚きはあったものの、この言葉だけは印象が強く頭の中に残り続けていた。

 

 

 現在、俺達Aqoursは電車に乗って東京駅へと向かっている。

 

 

 他のメンバーは楽しく会話したり、ゲームしたりなどして時間を潰しているが俺は1人で窓をポケーっと眺めていた。

 

 

 そして、気づかれない程度で俺は千歌先輩の方に視線を移す。今は曜先輩と果南先輩の3人でトランプを楽しんでやっている。だが、何かを悩んで焦っているようにも見える。

 

 その原因の種は千歌先輩の言葉からある程度察している。

 

 

明「察しているからこそ………これだけは放っておけないな。」

 

花丸「ん?明くん、何か言ったずら??」

 

明「別に何もだよ。あ、じゃがりこあるけど食べる??」

 

花丸「食べるずら〜♡」

 

 例え、相手が女性で1つ上の先輩でAqoursのリーダーだとしても関係ない。俺は俺のやるべきことを全うする。

 

 

 なぜなら、俺はAqoursのマネージャーだから。

 

 

 

 

 ~東京駅〜

 

 

 

 こうして数時間電車に揺られていた俺たちAqoursは再び東京へとやって来ていた。

 

千歌「賑やかだねぇ………」

 

 まぁ………東京ですからね。俺は2回目だからまだ少しだけ緊張してるけど………

 

ダイヤ「負けてはなりませんわ!!東京に飲まれないよう!」

 

 なんか、ダイヤ先輩が東京に着いてからギャーギャー言ってる。周りの人に迷惑なんでやめていただきたいんだけど

 

千歌「なんであんなに敵対視してるの??」

 

ルビィ「お姉ちゃん、小さい頃東京で迷子になったことがあるらしくて」

 

 なるほど………。確かにそれは敵対視しちゃうわ。一瞬で、幼い頃のダイヤ先輩が線路図見て『ぴぎゃー』って叫んでいるのを頭の中で思い浮かんでしまった。いや、本当に言ったのかは分からないけどね。

 

千歌「トラウシだね」

 

明・善子「トラウマです(ね)」

 

 お、珍しく善子さんと言葉がシンクロした。ハイタッチしておこう。イエーイ。

 

 

 そんなわちゃわちゃしながら、歩いているとロッカーで何か必死そうに荷物を詰めている見慣れた人物を発見した。

 

千歌「あ、梨子ちゃん!!」

 

梨子「み、みんな!?」

 

 久しぶりに見た梨子先輩は俺達の姿を見て、嬉しそうな表情を………………せずに逆に少しだけ気まづそうな表情をした。いや、まさかな………

 

千歌「何入れてるの〜??」

 

梨子「えぇと………お土産とか〜」

 

 あ、察し。よく見たら、詰めている袋の中のほとんどが薄い本じゃないか。つまり……あれは………

 

 

 ドサッ

 

 

梨子「あ」

 

明「あ」

 

 必死に詰めていた袋が落ち、中からは『カベドン』と書かれている薄い本が出てきた。やっぱりか…………。しかも、どんだけ買ってるん??夏コミでも行った??

 

 そして、千歌先輩がそれを拾おうとした瞬間、梨子先輩が千歌先輩を目隠して見せないようにしていた。しかし、梨子先輩よ。この行為のせいで確かに千歌先輩にはバレなかったけど、他のメンバーには普通にバレましたよ。

 

 

梨子「さぁ!!じゃあ行きましょうか!!」

 

 

 こと無くして、無事に薄い本をロッカーにぶち込んだ梨子先輩は笑顔で言葉を出した。そして、俺の姿を見た瞬間に彼女は微笑みながら俺の近くまで寄ってきた。

 

梨子「久しぶりだね、明くん。」

 

明「…………そうですね。」

 

 実の話、Aqoursに再び戻ってきてからは梨子先輩に何度かは連絡していた。だが、こうしてお互いに顔を合わせたのは俺がやらかしてしまったあのライブ以来だ。なので、少しだけ緊張してしまう。

 

 

 

梨子「おかえりなさい。」

 

 

 

明「え?」

 

 彼女に何を言おうか考えていると、梨子先輩が言す。唐突の言葉に俺は驚いてしまった。

 

曜「梨子ちゃんね………。東京にいる間、ずっと明くんのこと心配してたんだよ??」

 

 いつの間にか俺の傍まで来ていた曜先輩が俺の耳に顔を近づけてコソッと小声で呟いた。本音を言うと、驚きだ。

 

 

曜「それにね………。私達が付けてたあのシュシュも実は梨子ちゃんから貰ったやつなんだよ。勿論、明くんが付けていたやつも。」

 

 

明「え!?」

 

 それも知らなかった。てっきり………あれは曜先輩かルビィさん辺りが衣装関係で作ったものだと思っていた。

 

 

 俺は再び、梨子先輩の方に顔を向ける。すると、彼女は優しく微笑んでいた。

 

 

明「はは…………」

 

 

 そして、俺はその姿を見て全てが納得したかのようについ笑ってしまった。思わず顔に手をつけてしまった。

 

 

 あぁ、そうだ。そうだった。彼女………桜内梨子先輩はこの『人殺し』を受け入れてくれたスクールアイドルAqoursの内の1人だ。

 

 

 例え、俺を受け入れてくれたあの日にいなかったとしても。

 

 

 ならば、俺も彼女に返す言葉はタダ1つ。余計な言葉なんていらない。

 

 

 緊張しながらも、俺はビシッと気をつけをしてから梨子先輩の目を見て、はっきりと口を動かした。

 

 

明「ただいま………です!!」

 

 

梨子「うん!!」

 

 

 こうして、俺達Aqoursは約1ヶ月ぶりにメンバーが揃った。

 

 

 

 

 

 




次回、明、Aqoursのリーダーに物申す!?

ぜってぇ、見てくれよな。


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『人殺し』は物申す。

明「今回、7000文字以上だって。」

千歌「7000文字!?」
曜「7000文字!?」
梨子「7000文字!?」
ルビィ「7000文字!?」
花丸「7000文字!?」
善子「7000文字!?」
ダイヤ「7000文字!?」
果南「7000文字!?」
鞠莉「7000文字!?」
七宮「合わせて63000文字!?」

明「合わすな!!そして、何故作者!?」

このやり取りだけがやりたかっただけです。では、この作品にしては珍しい7000文字をどうぞ。


 梨子先輩と合流した俺達は、千歌先輩の希望で神田明神へと来ていた。前回は階段で留守番してたから今日、初めて本殿を見たけど思ったよりも立派な神社だなぁ。あとで御守りとか買おっかな。

 

 それにしても、どうして千歌先輩は神田明神に行きたかったんだろう。

 

千歌「やっぱりいないかぁ………」

 

 ん??俺の近くにいた千歌先輩が何か小さな声でボソッと呟いた。やっぱりいない??何かを探しているのか??

 

明「やっぱりって??」

 

千歌「げげっ!?今の聞こえてた!?」

 

 千歌先輩に言葉を掛けると、ビクッと身体を震わせる。そんなに、驚かなくてもいいんじゃないですかね。

 

曜「なになにー??どうしたの??」

 

 しかも、千歌先輩が大袈裟に驚いたせいで他のメンバーも気になったのか千歌先輩の周りへと集まる。これによって、さらに千歌先輩の表情が青くなっていくのが分かる。

 

 そして、数分後。遂に諦めたのか、千歌先輩がここに来た目的を話し始めた。

 

 

 申し訳なさそうにチラチラと俺の顔を伺いながら。

 

 

千歌「実はね……………」

 

 

 

 

 

 

 

 〜説明後〜

 

 

ダイヤ「全く貴女っていう人はー!!!」

 

千歌「ご、ごめんなさーい!!」

 

 

 UTX学園内にある喫茶店で、神田明神に来た目的を吐いた千歌先輩はダイヤ先輩含め他のメンバーにボロクソに怒られていた。てか、ダイヤ先輩よ。いつも思うけど声が大きいです。周りの人ビックリしてるでしょ。一応、ここ喫茶店だよ??

 

曜「千歌ちゃん。謝るのは私達じゃないでしょ??」

 

梨子「うん………流石に今回は千歌ちゃんが悪いよ」

 

 いつもなら怒られる千歌先輩をフォローしてくれる曜先輩や梨子先輩も今回ばかりは怒る側のダイヤ先輩の味方だった。

 

 

千歌「………うん。ごめんなさい、明くん」

 

 

 千歌先輩は東京に行くと決心した直後に、なんと皆に内緒で俺の実の姉であるSaintSnowの2人に東京で会ってくれないかと連絡をしていたらしい。当然ながら、返信は返って来なかったらしいが。

 

 それでも、もしかしたらと思い神田明神へと足を運んだという。

 

 いつもなら元気よくぴょこんとしてるアホ毛も元気無さそうにシナシナして頭を下げている千歌先輩の前に移動した後に俺は彼女に話しかける。

 

明「どうして、先輩はSaint Snowに連絡を??」

 

 なぜ、俺はこの言葉を彼女に送ったのか。そもそも、千歌先輩のその行動自体に俺は疑問を抱いていた。失礼な話だが、千歌先輩は頭は良くない。簡単にいったらバカだ。だが、バカな千歌先輩でも仲間である俺に対してそんな嫌がらせのような事なんて決してしないはずだ。彼女なりの考えがあっての行動だろう。

 

千歌「SaintSnowの2人と色々と話したかったから…………………です。」

 

 千歌先輩はぶるぶると震えながら後輩である俺に対して敬語で言葉を出す。そんなに、ビビらなくても良くない??軽く傷つくんだけど…………。

 

 そして、そこから更に聞いてみると千歌先輩は姉ちゃん達にμ'sはどこが凄いのかを聞いてみたかったそうだ。

 

明(またμ'sか………。)

 

 俺はコホンと気持ちを整理させるために咳払いをした後に千歌先輩に話しかける。

 

 

明「姉ちゃん達は………….μ'sではなくA‐RISEを見てスクールアイドルを始めたらしいです。」

 

千歌「え??」

 

 千歌先輩は唖然とした表情をして、俺の方に顔を向ける。他のメンバーもどうして、そんなことを知っているのかと言わんばかりの表情をしていた。

 

果南「何で明がそんなこと知ってるの??」

 

明「まぁ、ちょっと以前にSaint Snowと色々ありましてね。事情が事情で詳しくは言えないですけど」

 

 どうして、俺がSaint Snowの結成理由を知っているのか。そんなに難しい話ではない。東京で襲われてた聖良姉ちゃんを助けた後に行ったあの公園で理亜姉ちゃんが来るまでの間、聖良姉ちゃんが色々と俺に教えてくれたのだ。

 

明「聖良姉ちゃん言ってました。A‐RISEやμ'sは何が凄いのか。何が違うのか考えたことがあるって。」

 

千歌「聖良さん達は………その答えは出したのかな。」

 

 俺は千歌先輩の言葉に反応するかのように、顔を左右に揺らす。

 

明「いいえ…………。残念ながら答えは出なかったみたいです。けど、答えを出せなかったからこそ、姉ちゃん達は勝つしかないって言ってましたね。勝って追いついて、同じ景色を見るしか無いのかもって。」

 

 A‐RISEは、μ'sが現れる前までは当時のスクールアイドル界ではほぼ負け無しと言われていたぐらいまで人気のあったスクールアイドル。答えが出なかったSaint Snowは、だったら実際に自分達のこの目で確かめればいいと判断したのだろう。

 

 

 勝った者しか見ることが出来ない景色を。

 

 

千歌「勝ちたいのかな………。」

 

 千歌先輩は元気なさそうな表情で心細く呟いた。

 

 恐らく、もし理亜姉ちゃんがこの言葉を聞いたら間違いなく千歌先輩のことに苛立ってディスるだろうな。「この子、バカ??」って。だって、双子である俺が今少しだけ苛立っているのだから。

 

 俺は「はぁ〜」と溜息を吐きながら千歌先輩に言葉を投げかける。

 

 

明「先輩はさ…………μ'sになりたいんですか??」

 

 

千歌「え?」

 

 俺の言葉に、千歌先輩は戸惑いの表情を浮かべながら俺の方に顔を向ける。きっと、何を言っているのか分からないのだろう。分からないなら分からないままでいい。俺は気にせず言葉を続ける。

 

明「確かに、μ'sやA‐RISEはスクールアイドルとして凄い。この2組に憧れてスクールアイドルを始めた学校も少なくはない。けどね、千歌先輩。貴女がAqoursに対するμ'sとの比較は通常を通り越して異常なんですよ。」

 

 千歌先輩がなぜそこまでμ'sに拘るのか。俺の記憶が正しければ、千歌先輩がスクールアイドルを始めようと思ったきっかけは東京に旅行に行った時にスクリーンで映し出されていたμ'sを見たからだと曜先輩が俺に教えてくれた。

 

 そして、現在の浦の星女学院の統廃合の危機。俺達は、それを阻止するべく日々頑張っている。

 

 偶然にも、今のAqoursはμ'sがスクールアイドルとして活動していた理由と同じ状況へとなっている。

 

 そんなμ'sは我が校である音ノ木坂学院を廃校の危機から無事に救った。

 

 けれど、μ'sが廃校の危機から救った時期が経過してもAqoursは浦の星女学院の廃校の危機のままだ。知名度はある程度広まっているはずだが、学校説明会の希望者数が0であることが全てを物語っている。

 

 

 ーーーだからこそ、高海千歌は焦っている。

 

 

 ーーーだからこそ、高海千歌はμ'sと同じ行動に出ようとしてしまう。

 

 

 ーーーだからこそ、どうしても高海千歌はAqoursとμ'sを比較してしまう。

 

 

 ーーーだからこそ………………高海千歌は自分が何がしたいのか分からなくなってしまった。

 

 

 

明「先輩、これだけは覚えてて下さい。貴女は……………浦の星女学院スクールアイドルAqoursだということを。」

 

 

千歌「ーーーーーッッ…………。」

 

 俺がこの言葉を送った瞬間、スマホがピピピと鳴り響く。おっと、もうそんな時間か。

 

明「俺からの話はこれで終わりです。そろそろ、今年の決勝大会の発表があります。見に行きましょう。」

 

 俺はそう言って立ち上がる。他のメンバーも浮かない顔をしながらも立ち上がった。

 

善子「ねぇ」

 

明「何??」

 

 UTX学院を出たところ辺りで善子さんが少しだけ怒った表情をして俺に話しかける。

 

善子「どうしてあんな言い方したのよ。少しだけキツかったんじゃない??」

 

 彼女がこの言葉を俺に言うのも当たり前だ。俺が千歌先輩に物申してしまったせいで、さらに彼女を困惑させてしまったのだから。

 

 けど、後悔は全くない。

 

 どうせ、千歌先輩なら俺が別に物申さなくても答え、もしくはヒントぐらい見つけられる。そんな確信があるからだ。

 

 じゃあ、なぜ俺が千歌先輩に物申したのか。

 

 俺は歩きながら善子さんに返答した。

 

 

明「あの人はこんな『人殺し』を受け入れてくれたスクールアイドルのリーダーだぞ。そんなリーダーがあんな元気なさそうな表情されたらこっちが困るんだよ。リーダーはリーダーらしく笑顔で皆を導いてもらわなきゃ困る。」

 

 俺の言葉に一瞬だけ、善子さんは目を丸くするがすぐにニッと笑いだして一言。

 

善子「アンタ………優しいのね」

 

 何言ってんだろう、この厨二病は。俺は元々常に優しいわい。

 

 

 

 そして、決勝大会のステージはなんとアキバドームだということが分かった。

 

果南「アキバドーム………。本当にあの会場でやるんだ」

 

千歌「ちょっと想像出来ないな。」

 

 俺も千歌先輩に同感だ。アキバドームって確か一般だと野球場とかで使われる施設だと聞いている。あんなどデカい会場でライブを行うと考えると想像するのが難しいな。

 

 

梨子「ねぇ、音ノ木坂行ってみない??」

 

千歌「え?」

 

 梨子先輩が微笑みながらAqoursに問いかける。

 

 音ノ木坂学院は梨子先輩が浦の星女学院に転校する前に通っていた場所だ。彼女なりの未練の場所でもある。前回も、音ノ木坂学院に行こうとしたが、彼女のために行くのやめたぐらいまでに。

 

 そんな梨子先輩自身が音ノ木坂学院に行こうなんて口にするってことは、梨子先輩はもう大丈夫みたいだ。

 

 

果南「良いんじゃない??見れば何か思うことがあるかもしれないし。」

 

 なるほど。果南先輩の言葉も一理ある。

 

ルビィ・ダイヤ「音ノ木坂!?μ'sの……母校!?」

 

 そこ。テンション上げない。

 

 

 

 

 移動すること10分。俺たちの目の前には大きな階段がある。そして、この上に音ノ木坂学院があるらしい。

 

ルビィ「どうしよう!?μ'sの人がいたりしたら」

 

ダイヤ「へ……平気ですわ!?その時はサインと写真と………」

 

 その可能性はほぼ皆無だから、諦めて下さい。

 

 そして、階段を登ると目の前に現れた大きい校舎。ここが……

 

明「音ノ木坂学院…………」

 

 ここにμ'sがいて………。

 

 μ'sがこの学校を守って……

 

 ラブライブに出て、奇跡を成し遂げた場所だ。

 

 感動に浸っていると、そこに通り掛かった銀髪の女性が俺達に話しかけた。音ノ木坂学院の制服を着てるからこの学校の生徒さんだろう。

 

生徒「あの、何か?」

 

ヨハネ「私の姿を検知している??」

 

花丸「やめるずら」

 

 この堕天使はいつになったら、初対面の人に対して厨二病を辞めるっということを覚えるのだろうか。あとで花丸さんと一緒にお説教だな

 

生徒「もしかして、スクールアイドルの方ですか?」

 

千歌「はい!μ'sのことが知りたくて来てみたんですけど」

 

 千歌先輩の言葉に生徒さんは少しだけ気まずそうな表情をして口を動かした。

 

生徒「残念ですけど、ここには何も残ってなくて。μ'sの人達、なにも残していかなかったらしいです。自分たちの物も、優勝の記念品も、記録も。物なんかなくても心は繋がっているからって。それでいいんだよって」

 

 

 ほぅ………。それは素敵な話だ。それを聞くと、μ'sも仲間想いだったスクールアイドルだということが分かる。メンバー1人1人が信頼出来たからこそ出来る行為だ。

 

 

 すると、ふと近くに親子が通りかかる。そして、5歳くらいの女の子が急に走り出して階段の手すりに尻を付けて滑り出した。そして、何故か千歌先輩に向けて笑顔でピースをした。それを見て、千歌先輩は何かを感じとったようにも見える。

 

 

梨子「私は良かった。ここに来てハッキリ分かった。私、この学校が好きなんだなって」

 

 

 梨子先輩の言葉を聞いたあとに、俺達はお互いの顔を見合い、コクっと頷き1列に並ぶ。

 

 そして、ビシッと気をつけをして、深く頭を下げた。

 

 

 

 まるで、お世話になったものに心の底から感謝するように大きな言葉で俺達は一斉に言葉を発した。

 

 

 

Aqours「ありがとうございました!!」

 

 

 

 ちなみに、μ'sについて語ってくれた生徒さんは既に跡形も無くいなくなっていた。え、怖い。

 

 

 〜電車〜

 

 

 音ノ木坂学院を訪れたあと少しだけ観光してから俺達は帰りの電車へと乗って沼津駅へと戻っている。

 

 結局、俺達はμ'sが何が凄いのかを見つけることができなかった。

 

 果南先輩も悔しそうにそれを口にする。それを励ますかのように鞠莉先輩は果南先輩の胸を堪能し始める。う、羨ましい………じゃなかった。果南先輩、もうその人訴えていいっすよ。むしろ、訴えて!!

 

花丸「ずらぁ〜」

 

明「どうしたの、花丸さん。てか、近くね??近いよね??」

 

花丸「別にぃ〜」

 

 花丸さんが何故かジト目で頬を膨らませながら俺のそばに近づく。

 

 それによって、俺はテンパリながらもまたしても謎の胸の痛みに襲われる。本当になんだよ、これ。どうして、こんなにドキドキするん??

 

千歌「ねぇ、海見ていかない??」

 

 夕暮れの海を見て先程の少女と同じ何かを感じたのか、千歌先輩が俺達に問いかける。

 

 

 きっと、千歌先輩なりの答えを見つけたに違いない。

 

 

 そして、海へとやって来た俺達。夕日の光が海に反射してキラキラしてて綺麗だった。

 

 千歌先輩はゆっくりと歩みながら自分で出した答えを口にし始めた。

 

 

千歌「私ね、ようやく分かった気がする。μ'sの何が凄かったのか。多分、比べたらダメだったんだよ。追いかけたらダメだったんだよ。μ'sもラブライブも輝きも。」

 

善子「どういうこと??」

 

ダイヤ「さっぱり、分かりせんわ。」

 

 

果南「私は………何となくわかる。1番になりたいとか、誰かに勝ちたいとか、μ'sってそうじゃなかったんじゃないかな。」

 

 

千歌「μ'sの凄い所って……きっと何もない所を、何もない場所を思いっきり走ったことだと思う。みんなの夢を叶えるために」

 

 

 

千歌「自由に!真っ直ぐに!だから、飛べたんだ!!」

 

 

千歌「μ'sみたいに輝くってことは、μ'sの背中を追いかけることじゃない。自由に走るってことじゃないかな。全身全霊!!なんにも捕らわれずに!!自分たちの気持ちに従って!!」

 

 

 それが千歌先輩が辿り着いた答え。正直言って、俺が求めいたそのものだ。

 

 

 今までのAqoursは、憧れであるμ'sの背中を追いかけていたに過ぎない。だが、今はもう違う。

 

 

 なぜなら、今のAqoursは…………

 

 

 

果南「自由に」

 

鞠莉「ランアンドラン」

 

ダイヤ「自分たちで決めて、自分たちの足で」

 

花丸「なんか、ワクワクするズラ」

 

ルビィ「ルビィも!」

 

曜「全速前進……だね!!」

 

善子「自由に走ったらバラバラになっちゃわない??」

 

梨子「どこに向かって走るの??」

 

 

千歌「私は……0を1にしたい!!あの時のままで、終わりたくない!!………それが今、向かいたいところ。」

 

 

 なぜなら………今のAqoursはようやく向かうべき目的を見つけられたのだから。

 

果南「なんか、これで本当に1つにまとまれそうな気がするね」

 

ダイヤ「遅すぎですわ」

 

鞠莉「みんな、シャイですから」

 

 

 自分たちの目的を見つけれた記念として、俺達は手を重ねる。ここで、曜先輩は何かを思いついたかのか、言葉を出す。

 

曜「ねぇ、指をこうしない??皆で繋いで0から………1へ!!」

 

 おぉ………。それは凄くいい案だ。

 

 早速、俺達は人差し指と親指を差し出して隣通しくっ付ける。すると、俺達10人の指が繋ぎあって綺麗な0の形へとなった。

 

 

千歌「0から1へ!!今、全力で輝こう!!Aqoursーーーーー」

 

 

 千歌先輩の言葉に合わせて、今度は中心に向かって人差し指を指す。そして、最後にみんなで輝くように笑って大声を出しながら砂浜を飛んだ。

 

 

 

 

 

Aqours「サンシャイーーーーーン!!!」

 

 

 

 

 

 俺達はきっと、この瞬間はこれから先何があっても忘れることはない。

 

 

 

 

 ーーー新生Aqoursここにて爆誕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜バス停〜

 

 

 えぇと………これはどういう状況なのでしょうか??

 

 俺の右肩にはルビィさん、左肩には善子さん。そして、膝には花丸さんがもたれかかって爆睡しております。

 

 今の気持ちを言葉に出すとしたら…………

 

 

 ヤバいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!本当にやばいよ!!何これ!?何で、こいつら俺にもたれかかって寝てんだよ!!俺、男だぞ!?普通は嫌だろ!!左右下から甘いいい匂いが漂ってくるし、なんだか柔らかいし!!おいコラ、ちょっと待て。善子、お前、口からヨダレ垂れてるぞ!!ちょ、嘘だろ!?善子さん!?起きて!?ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!チ───(´-ω-`)───ン。俺の左肩が死亡したことをお知らせします。はいそこの3年生3人、笑わない。ダイヤ先輩も妹さんに注意して!!

 

 

千歌「ありがとうね、明くん。」

 

明「何がですか??」

 

 美少女3人組に囲まれて色々と困っている俺に対して千歌先輩はお礼の言葉を述べる。よく、俺がこんな状況なのに言えましたね。

 

 

千歌「明くんのおかげで私は答えを見つけることが出来た。」

 

 

明「そんなことないですよ。俺はただ思ったことを言っただけですから。」

 

千歌「ふふ、明くんらしいね。」

 

 俺らしいって………なんですかそれは。

 

 

千歌「見つけようね。一緒に私達だけの景色を」

 

 

 千歌先輩はまるで光輝くような笑顔で俺に話しかける。そんな笑顔で言われたら断れないじゃないか。元々、断る気はないけれども。

 

明「そうですね。」

 

 俺は頬を掻きながら答えた。

 

明「ん?」

 

 空からヒラヒラと何かが落ちてきた。あれは………白い羽??

 

 その白い羽は千歌先輩の方に向かって落ちていき、最終的に千歌先輩はそれを優しく掴んでキャッチした。

 

 

 この白い羽はどこから来たのか分からない。別に近くに白い鳥が飛んでた訳でもないし。

 

 けど、なんだかこの白い羽を見てると悪い気はしなかった。

 




次回からは本編に入る前に花丸回とSaintSnow回をやる予定です。

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『人殺し』は国木田花丸と…………。前編

予定していた通り、花丸回です。



 0から1にするという目的を決めた俺達Aqoursは、ラブライブ決勝進出するために日々練習に明け暮れていた。

 

 歌詞も作曲もダンスの振り付けもだいたいは形となっており、今のところは問題なく順調に進んでいる。

 

明「この歌詞のタイミングで、照明を白から赤に切り替えてっと……………あ、ここで千歌先輩にスポットライト当てるのもいいかもな。あとで先輩に相談してこよう。それで…………」

 

 俺も、Aqoursのマネージャーとしての仕事を全うしていた。今は、屋上の片隅でライブの照明を考えている。今回のライブで良い演出を出すには照明が重要となっている。なので、今まで以上に照明案は丁寧に考えなければならない。

 

明「そろそろ、先輩達も休憩かな。」

 

 照明案が一段落ついた俺は立ち上がって、近くに置いておいたクーラーボックスに手をかける。パカッとクーラーボックスを開けて中からスポーツドリンクを9本取り出して、カゴのなかに入れる。くぅ〜、キンキンに冷えてやがるぜ。あと、毎度お馴染み俺特製のレモンの蜂蜜漬けに、塩飴も。

 

 Aqoursの元に行くと、やはり休憩していた。みんなの表情を見た感じ、辛そう。まぁ、こんなクソ暑い中、屋上でひたすら練習してたら疲れるわな。

 

 俺はすぐにメンバーのところに駆け寄り、スポーツドリンクを渡しに行こうとした。まずは1番近くにいたダイヤ先輩からだ。

 

明「ダイヤ先輩、お疲れ様です。これ、どうぞ」

 

ダイヤ「これはどうもご親切に。ありがとうございます。」

 

 ダイヤ先輩はそう言って、スポーツドリンクを受け取りゴクゴクと飲んでいく。飲む姿はおしとやかで美しいんだけど、減っていく勢いが凄い…………。めっちゃ喉渇いてるじゃん。

 

ダイヤ「ぷはっ………。やっぱり、明さんが作ったドリンクは美味しいですわ。」

 

明「ありがとうございます。」

 

 美味しいって言われると、嬉しいし作った甲斐が有るよね。また明日作ってこよ。

 

明「はい、ルビィさん」

 

ルビィ「わーい。ありがとう」

 

 ルビィさんは嬉しそうにスポーツドリンクを受け取り、ゴキュゴキュと可愛らしく飲んでいく。中身が減る勢いは、姉と同じく凄かった。

 

ルビィ「ぷはっ………、はぁー、とても美味しい!」

 

 うむ。何度もこの光景を見てるけどやっぱり癒しだな。あ、ダイヤ先輩に頼んで1週間ほど貸してもらおうかな…………。やめておこう。色んな意味で命が足りないや。

 

 っと、もうそろそろかな。

 

 

千歌・善子・花丸「隙あり!!」

 

 残念ながら、隙はない。俺は持っていたカゴを上にあげる。すると、横から問題児3人がザザーツと滑りコケた。

 

 3人は頬を膨らませて涙目になりながら俺に睨みつける。

 

千歌「明くん、ひどいよー!!鬼ー!!」

 

花丸「千歌ちゃんの言う通りずら!!バカー!!」

 

善子「リトルデーモン『アカリリー』の癖にぃ!!アホー!!」

 

 なんで俺、そんなにボロクソに言われなきゃいけないの??アンタら3人加害者で、俺被害者だよね??ていうか、善子さんよ。アカリリーってなんだよ。リリーこと梨子先輩に怒られるぞ。

 

明「わざわざ奪おうとしなくても普通にあげますって。」

 

 俺は「はい」と言いながら千歌先輩達にレモンの蜂蜜漬けが入ってるタッパーを差し出す。すると、千歌先輩達は、ぱぁぁと表情を輝かせてそれを受け取る。単純すぎだろ………。

 

千歌・花丸・善子「すっぱーい♪」

 

 相変わらず、3人は口を*の形にして嬉しそうにワイワイしていた。楽しそうでなによりです。

 

 その後、他のメンバーにもドリンクとレモンの蜂蜜漬け、塩飴などを配ってから照明案の方に取り掛かった。

 

 

 

 

 

果南「今日の練習はここまでにしようか」

 

果南以外Aqours「は〜い。」

 

 休憩が、終わり千歌先輩達が再びライブ練習に取り掛かって数時間後、腕時計を見た果南先輩の言葉で本日の練習が終了した。現在、みんなはクールダウンをし終わったあと更衣室で着替えている。

 

善子「明、今日もお願いしていいかしら??」

 

 早く着替え終えたので、部室でスマホをいじっていると善子さんに話しかけられる。彼女の背後には、ルビィさんと花丸さんがいた。

 

 今日もか………。今日から少しアレだから早めに帰ろうと思ったけどまぁ、いいか。

 

明「分かった。またいつもの場所か??」

 

善子「えぇ。」

 

明「了解。それじゃあ早く行こうぜ」

 

 ここ最近、俺は善子さん達に練習後、個人練習を見てくれないかとお願いされている。普段の練習だけでは、彼女達にとっては足りないらしい。本当はとても疲れているはずなのに。

 

 

 それでも彼女達は本気だ。だったら、俺が出来ることは彼女達を見届け、支えることだ。

 

 

明「あ、個人練習する前にコンビニ寄ろう。何か奢ってやるよ」

 

花丸「本当ずらか!?」

 

 花丸さんが嬉しそうに食いつく。どうせ、お前はのっぽパンだろ。知ってるぞ。

 

明「あぁ。」

 

ルビィ「明くん、ありがとう!!」

 

善子「流石は私のリトルデーモンね。堕天使ヨハネとして鼻が高いわ。」

 

明「はいはい。全ては善子様の為に」

 

善子「だからヨハネ!!」

 

 そんな感じで俺達は善子さんを弄りながらコンビニへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「明くん、花丸ちゃんバイバイ!!」

 

花丸「バイバイずら!!」

 

明「また明日な。」

 

 自主練習を見届けた俺は、善子さんから順に家まで送り、たった今ルビィさんを家まで送った。ルビィさんを送る時に毎回、ダイヤ先輩が玄関で待ってるんだけど、その姿がマジでオカンにしか見えない。

 

 

 そして、現在、俺は花丸さんと2人で歩いている。

 

 

明「…………」

 

花丸「…………」

 

 善子さんや、ルビィさんがいる時はお互い話す俺達であるが、2人きりになると無言になってしまい、花丸さんの家に着くまで一言も話さない。

 

 理由はまぁ、だいたい分かっている。

 

 以前、俺はここで花丸さんに酷い仕打ちをしてしまった。多分、それがあるからこの瞬間だけはお互いに気まずくて話しかけられないのだろう。

 

 

 

 …………それはなんか嫌だ。

 

 

 

 

 ふいにそう思ってしまった。彼女の祖母に謝罪しに行った以来、花丸さんに対して俺は他人とは違う何かを想うようになってしまった。それが何かはまだ知らないが、それでも俺は何故か花丸さんと関わるようになりたいという気持ちが存在していた。まるで、彼女のことを拒絶しようと決意したあの日が嘘みたいだ。

 

 花丸さんに話しかけたい………、けど何を話したら良いか分からない。

 

明「はぁ〜、今日から家俺1人なのにコレとかマジで災難かよ…………」

 

 俺はまるで愚痴を吐くかのようにボソッと呟いた。

 

花丸「1人??」

 

 あ、もしかして聞こえてしまったのだろうか。花丸さんが首を傾げて反応してしまった。

 

明「あ、あぁ。今日から零さんが社員旅行でいなくてな。1週間ぐらい俺1人なんだよ。」

 

 そう。今日から零さんが社員旅行で北海道に旅立ってしまったのであの人が帰ってくるまで俺は1人なのだ。と、言ってもこれは毎年恒例なことなのでそんなに気にすることではないが。

 

花丸「そうなんずらか!?」

 

明「お、おう。」

 

花丸「1人って………寂しくないずらか??」

 

 花丸さんは少し悲しそうに俺に言葉を投げかける。寂しくないのか…………か。

 

 

明「んー、社員旅行は毎年恒例のことだから慣れてるけど、やっぱり少しは寂しいかな。」

 

 

 1人でいることには昔から慣れてるけど、やはり誰しもは『孤独の寂しさ』というものには勝てない。寂しいものは寂しい。例え、それが『人殺し』でも。

 

 すると、花丸さんは顎に手を当てて何かを悩むような仕草をとる。そして、何かを決意したのか「よし!!」と言いながら1回だけコクリと頷いたあとに俺の方に向いて言葉を出した。

 

 

花丸「今日、明くんの家に泊まるずら!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………はい??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 うぅ…………。気まずいずら。

 

 今、マルはルビィちゃんを家まで送ったあと明くんと2人で歩いています。

 

 さっきまでは今まで通りに話せていたのに、この瞬間だけはどうしても話しかけれないずら。

 

 

 この瞬間になると、マルはどうしても明くんがマルのことを拒絶したあの日を思い出してしまう。

 

 もう、その事はマル自身も気にしていないはずなのに…………。

 

 でも、好きな男の子に拒絶されたあの日を忘れようと思っても忘れられない。

 

 多分………、そうなってしまうほど、マルは明くんのことが好きになってるんだなぁ。。そして、そうなってしまうほどに悲しかったんだと思うずら。

 

 けど、なんか嫌だな。

 

 きっと、これから先も何回かこの時間が訪れる。すなわち、その度にきっと明くんと2人で歩く機会もあるということ。

 

 せっかくの、2人きりの時間を過ごせるのにお互い何も話せれないというのは勿体ないずらよ………。

 

 チラッと明くんの方に視線を移すと、彼もマルに話しかけたいような表情をしている。

 

 そして、彼はまるで愚痴を零すかなように一言だけボソッと呟いた。

 

明「はぁ〜、今日から家俺1人なのにコレとかマジで災難かよ。」

 

 小さな声だったが、近くにいたせいか彼の言葉が聞こえてしまった。それにしても、1人??それはどういうことずら??

 

花丸「1人??」

 

 マルが反応してしまったせいか、明くんは驚いたような表情をする。

 

明「あ、あぁ。今日から零さんが社員旅行でいなくてな。1週間ぐらい俺1人なんだよ」

 

花丸「そうなんずらか!?」

 

明「お、おう。」

 

 『1人』。マルはこの単語を聞くとつい反応してしまう。マルはルビィちゃんに出会うまではずっと1人だった。1人でもマルには本があったから気にすることもなかったけど心のどこかには寂しいという思う気持ちがあった。多分、今のマルが1人になってしまったら寂しさのあまり泣いちゃうんだろうなぁ。

 

 明くんは零さんと離れて………寂しくないのかな??

 

花丸「1人って寂しくないずらか??」

 

 マルの言葉で明くんは少しだけ考えたあと言葉を出した。

 

 

明「んー、社員旅行は毎年恒例のことだから慣れてるけど、やっぱり少しは寂しいかな。」

 

 

 この時の明くんは笑っていたけどなんだか残念そうな表情をしていた。

 

 

 どうにか、明くんの力になりたいなぁ。何か方法がないかなぁ…………。

 

 

 あっ。いい方法を思いついたずら!!もしかしたら、マルは天才なのかもしれない。

 

 

花丸「よし!!」

 

 マルはコクリと頷いたあと、明くんの方に顔を向いて言葉を投げかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「今日、明くんの家に泊まるずら!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時の明くんのポカンとした表情をマルはこの先、忘れることは無かった。

 




後編へと続く。


あと、Twitterというものを始めてみました。
こういうのは初めてやりますが、良かったらフォローよろしくです。

@shitimiya0808


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『人殺し』は国木田花丸と…………。中編

七宮「後編だと思ってた??残念ながら中編でしたぁ〜」

明「ムカつく言い方だな、オイ!!」

花丸「作者と明くん、仲良いずら」

七宮「あ、どうでもいいけどクレヨンしんちゃんのカンフーの映画を見ながら書いてました。」

明「本当にどうでもいい!!」

七宮「ていうことで、中編どうぞ」



 どうしてこうなった…………。

 

 俺はテーブルについて深い溜息を吐きながら、頭を抱えていた。

 

 あいつは何を考えてるんだ。年頃の女性が男性の家にお泊まりするだなんて…………。いや、先程はもっと花丸さんと関わりたいと言ったよ??言ったけれども、順序っていうのがあるじゃん??

 

 念のために言っておくが、ちゃんと最初は断ったよ??断ったけど、彼女はなかなか引かなかった。むしろ、泊まりたいという願望を強くしてしまった。それゆえ、遂に俺は折れてしまいお泊まりを許してしまった。どうして、許すかなー俺よ。

 

 花丸さんは1度、家に帰って祖母にお泊まりの件を伝え、着替えやらを準備してから俺の家に来るという話になった。あーあ、花丸さんのおばあちゃんがお泊まりの件をダメって言ってくれねぇかなぁ………。

 

 プルルルルルル

 

 ん?電話??誰からだろう。

 

明「もしもし」

 

花丸『もすもす。花丸です』

 

 もすもすが気になるところではあるが、それは置いておいて。これは………、もしや…………、おばあちゃんが泊まりを許してくれなかったとか??よし。ナイスだ、おばあちゃん。

 

花丸『おばあちゃんがお泊まりしていいよって言ってくれたずら♪』

 

 おばあちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁん!?なんで許しちゃったの!?どうして許しちゃったの!?お泊まり先はルビヨハの家とかじゃなくて男の家だよ!?そこは止めないと!?

 

 俺はますます頭を抱えてしまった。頭が痛い…………。

 

 

 仮にも彼女は………国木田 花丸は今、人気急上昇中のスクールアイドルで……………とても可愛らしい美人さんだ。

 

 

 それに対して、俺、奥山 明は思春期nowの男子高校生で………………『人殺し』だ。

 

 

明「やっぱり断ろう。」

 

 うん、色々考えてみたけどそれが良い。特に、俺から彼女に手を出すことは100%ないと信じたい所ではあるがどうなるのかは分からない。もし、なにか問題があったら大変だ。

 

 恐らく、花丸さんは俺のことを想っての行為だと思うが、何かあったら遅い。彼女には申し訳ないけどここは引かずに強く言おう。

 

 

 ピンポーン

 

 

 来た………。思ったよりも早いな。もう少し時間がかかると思ってたんだけど……。まぁ、そんなことはどうでもいいか。俺は立ち上がって玄関の方まで行き、扉をガチャと開けた。

 

明「あのね、花丸さん。申し訳ないんだけd……………」

 

 目の前に映る予想外の光景に俺は絶句してしまった。

 

祖母「花丸ちゃん、ここで合ってるのよね??」

 

花丸「うん。おばあちゃん、送ってくれてありがとう」

 

祖母「いえいえ♪」

 

 どうして、途中で言葉をやめたかって??答えは簡単。俺の目の前には、ハーレーダビッドソンにヘルメットとゴーグルをかけた花丸さんの祖母と大きい風呂敷を背負った花丸さんが玄関先で待っていたからだ。勿論、運転席には花丸さんの祖母がいた。

 

 あれ?あの子のおばあちゃんってターミ〇ーターか何かだっけ??

 

祖母「明くん、こんばんは〜」

 

明「こ、こんばんは!!」

 

 こんばんは〜………じゃないよ!!何、この人!?ゴツいバイク乗りながら穏やかな表情でサラッと挨拶してきたよ!?ヘルメットを取る姿が様になってて怖い!!

 

祖母「今日はごめんね〜。花丸ちゃんを家にお邪魔させちゃって〜」

 

明「あ、いえ………」

 

祖母「これ、つまらないものだけど良かったら食べてちょうだい」

 

明「あの………泊まりの件についてなんですけど………」

 

祖母「それにしても、明くんは偉いわね〜。お家の人がいなくても1人でやっていけれるなんて〜」

 

明「あの、話を…………」

 

祖母「でも、大丈夫よ!!花丸ちゃんもあぁ見えてしっかりしてるから!!なにせ、私の自慢の孫だからね」

 

 お願いだから、俺の話を聞いて欲しい。この人、こんなに耳遠かったっけ!?わざとじゃないよね!?

 

祖母「もう遅いし、おばあちゃんそろそろ帰るわね、花丸ちゃん。明くんに迷惑かけちゃダメよ」ブンブンブーン

 

花丸「うん。分かったずら」

 

祖母「明くんも花丸ちゃんの事よろしくお願いね。それじゃぁ、お休みなさい。」ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

 

 花丸さんの祖母はそう言いながらハーレーダビッドソンに乗り、スロットルを回してエンジンをかけてから早々に風と共に消えて行った。

 

明「君のおばあちゃん、マジで何者??」

 

花丸「マルの自慢のおばあちゃんずら!!」

 

明「答えになってねぇよ…………」

 

 

 予想外な展開が起きてしまったせいで、俺は結局、断るタイミングを失い花丸さんを家の中へと入れてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「本当にどうしてこうなった………」

 

 俺は花丸さんを家の中へと招き入れたあと、再びテーブルについて頭を抱えていた。

 

花丸「ずら〜♪」

 

 花丸さんは俺の目の前で、俺が出した熱いお茶を飲みながら幸せそうな表情をしていた。ったく…………、人が頭を必死に抱えてるのに原因であるこいつは呑気でいいな。

 

 俺も一旦、気持ちを落ち着かせるために熱いお茶に手をつける。そして、未だに幸せそうにしている彼女のことを見ながらズズズと飲んだ。

 

 

 改めてじっくり見ると…………、本当にこいつ美人さんだよな…………。

 

 

明「ーーーーーーッッ!??」

 

 そう思った瞬間、唐突に心臓がバクバクと鳴り出した。顔もトマトのように赤くなっているのも分かる。ん

 

花丸「明くん、どうかした??」

 

 花丸さんは首を傾げ、心配そうに俺に話しかける。ヤバい!!

 

明「な、なんでもでもない!!あ、そうだ。そろそろお腹減ってないか??」

 

 焦った俺は誤魔化すかのように別の話題を出す。これは、少し不自然すぎたか??

 

花丸「ご飯ずら!?」

 

 あ、そうでもなかったみたい。だって、花丸さんの目が凄くキラキラしてるもん。

 

 俺は安堵の息を吐いてから、「よいしょ」と言って立ち上がり台所へと向かう。

 

明「花丸さん。何か食いたいもんでもある??」

 

 まぁ、何がどうあれせっかく来てくれたんだ。それなりには、もてなそうではないか。

 

 と思っていたが、なぜか向日葵が刺繍されているエプロンを身につけた花丸さんが俺の隣にいた。いつの間に!?

 

明「花丸さん??」

 

花丸「マルもお手伝いするずら!!」

 

 え、えぇ…………(困惑)

 

明「だ、大丈夫だよ。花丸さんはお客さんなんだから………」

 

花丸「嫌ずら!!マルもお手伝いしたいずら!!」

 

 そう言って、花丸さんはまるで子供のようにジタバタし始める。ここ、台所なんですけど…………。ちょ、危ない危ない!!そこに包丁とかあるから!!

 

明「分かった!!分かったからジタバタするのやめて!!」

 

花丸「やった〜♪」

 

 

 花丸さんって、しっかりしてるけどどこか抜けてるよなぁ……………と、思いながら俺はいつも付けているエプロンを腰に巻くのであった。

 

 

 トントントン

 

 

 ジュ〜〜〜〜

 

 

 料理している間、俺達は特に何も話さず花丸さんが包丁で野菜や肉を切る音と俺がフライパンで彼女が切った野菜や肉を焼く音が鳴り響いていた。

 

花丸「はい、明くん。」

 

明「ありがとう。じゃあ、次は……」

 

 俺は彼女に次から次へと指示を出して、料理を進めていた。思ったよりも、花丸さんの手際が良いのでスムーズに進んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、なんか………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これ、新婚さんみたいだ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ーーーーーーッッ!!?」

 

 

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!何考えてるの、俺!?キモイ!!キモいよ!!こんな、俺みたいな『人殺し』が花丸さんなんかと結婚出来るわけ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーあれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、俺は花丸さんと結婚するのを想像してしまったんだ…………??

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「ん??明くん、顔が赤いよ??どうかした??」

 

 

 

明「…………さっき飲んだ熱いお茶のせいだよ、きっと。」

 

 

 

 

 そうだ。きっと、そうに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

花丸「ずらぁー、美味しそうずら♪」

 

明「花丸さんのおかげで早くできたよ。ありがとう」

 

 俺と花丸さんが協力して作ったのは、八宝菜だ。出来は言わなくてもいいだろう。めちゃくちゃ美味そう。

 

明・花丸「いただきます!!」

 

 手を合わせて俺と花丸さんは同時に言葉を出す。そして、箸を手に取って八宝菜を口の中へと入れる。

 

花丸「美味し〜♡」

 

明「うん。本当に美味しいな」

 

 

 予想を遥かに超える美味しさだ。これはきっと、俺1人で作ってもこんな味は出せなかった。花丸さんの協力あっての味だ。

 

 

 

 

 

 

 俺は花丸さんに感謝しながら食事を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、花丸さんは八宝菜をおかずにご飯大盛り8杯ほど食べてました。え、この子、フードファイターだっけ??

 




後編へと続く。

あと、クレヨンしんちゃんの映画はやっぱり面白いですね。笑いながら書いてました


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『人殺し』は国木田 花丸と…………。後編

後編だぁ


 夕飯である八宝菜を食い終え、お風呂を互いに済ました俺達。練習して、沢山汗をかいているであろう花丸さんに先に入ってもらったのだが、それは間違いだった。

 

 

 

 風呂から出てきた時の花丸さんの姿がなんだか……………その…………

 

 

 

 

 凄く魅力的だった。

 

 

 

 

 体の芯まで温まったと分かるぐらいの火照った顔に、しっとりとしている髪の毛、そして寝巻きがぴたっと湿った体に張り付きいつもよりボディラインがハッキリとしている。

 

 

 彼女の姿を見てドキドキと心臓が鳴っているのが分かる。

 

 

 俺は出来るだけ、目を逸らしながら彼女に俺が風呂に入っている間、適当に過ごしといてとだけ伝えてから、逃げるように風呂場へと向かった。

 

 

 そして、俺は風呂上がりの花丸さんの姿を見てしまったせいで色々と興奮してしまった気持ちが落ち着くまでお風呂に浸かっていた。そのせいで、のぼせてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういえば、風呂に上がった時の花丸さんの表情が何だか優れてなかったけど何かあったのかな??

 

 

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

 

 落ち着いて考えてみたらマルはとんでもないことをしてしまったずら………。

 

 マルは今、明くんの家のお風呂の湯船に浸かりながら今日の自分の行いに反省しています。

 

 いくら明くんの為だと思って、思い切ってやった事だったけど少し強引にやり過ぎてしまった。彼には悪いことをしてしまった。

 

 よくよく考えてみれば、年頃の男女が1つの屋根の下で過ごすなんて普通に考えてみてありえないことだよ。

 

 こういうのは、お付き合いしているカップルがやることずら!!そもそも、どうしておばあちゃんもマルのことを止めてくれなかったの??はーれーだびっとそん??に乗って送る場合じゃなかったずらよ!!

 

 

 

 ゔぅぅ…………、もしかして明くんに嫌われちゃったかな…………。

 

 

 

 マルは不安になってしまい、顔が半分湯船に付くぐらいまで身体を沈める。

 

 

 

 

 あー、もう!!考えても考えても余計に不安になるだけずら!!

 

 

 

 だったら、マルがやることはただ1つ。

 

 

 

花丸「後でちゃんと謝ろう。」

 

 

 

 そう決意したマルは湯船から出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 でも………………いつか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明くんと…………ちゃんとした関係を築いてから、またこういうことしたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 お風呂から出たあとは特に何もすることが無かったので、適当に録画していた映画を見ていた。この時、録画を知った花丸さんは「未来ずらーー!!」と目をキラキラとさせながら大声で叫んでいた。近所迷惑だからやめようね。

 

花丸「それにしても、やっぱりクレヨ〇しんちゃんの映画は面白いずら」

 

明「あぁ。それには同感だ。」

 

 あの作品の映画ってどれも面白いよな。ロボとーちゃんの奴とか、感動しすぎて零さんと一緒に映画館で号泣したもん。

 

明「でも、個人的にはカスカベボーイズが1番かな」

 

花丸「マルはヤキニクロードとB級グルメがお気に入りかな♪」

 

 いや、2作品とも食べ物がテーマになってるやつじゃん!!ヨダレを流しながら映像を見ている花丸さんの姿が頭の中で思い浮かんじゃったよ。

 

花丸「今年やる新作も面白そうずら」

 

明「それな」

 

 既にテレビとか動画とかで予告が放送されてるけど、絶対に面白いでしょ。確か、上映は明日だっけな。あ、やば。楽しみすぎてテンション上がってきたわ。今のうちに上映時間でも調べとこ

 

花丸「ふぁ〜〜」

 

 俺がスマホで上映時間を調べていると、隣にいる花丸さんが大きな欠伸を出した。そのあと、コクリコクリとしながら目をゴシゴシとしている。

 

明「もうそろそろ…………寝るか。」

 

花丸「うん。」

 

 ピッと、テレビを消したあと俺達は立ち上がり寝室の方へと進む。もちろん、花丸さんは俺の部屋で寝かせる訳には行かないので零さんの部屋で寝てもらう。

 

 まぁ、花丸さんの唐突のお泊まり会も今夜限りのことだからそんなに気にすることもないだろう。後はお互いに寝て、明日を迎えるだけだからな。

 

花丸「明くん………」

 

明「ん?どうかした??」

 

 花丸さんがシュンとした表情で俺に話しかける。そして、彼女は俺の目の前で頭を下げ始めた。

 

明「花丸さん!?」

 

 

 

花丸「今日はごめんなさい。」

 

 

 

明「え…………??」

 

 なんで俺に謝ったんだ!?何かこの子、謝るような悪いことしたっけ??

 

 

 

花丸「急にお泊まりしたいって言っちゃって…………。明くんも迷惑だったよね………」

 

 

 

 

 

 花丸さんは今でも少し泣きそうな表情をしていた。確かに、迷惑では無かったと言えば嘘になる。嘘になってしまうが…………

 

 俺は微笑みながら花丸さんの頭を優しく撫でながら言葉を出した。

 

明「そんなに気にすんなよ。その…………なんだ。俺は花丸さんといてとても楽しかったから。」

 

 

 

 この言葉に嘘はない。紛れもない事実だ。

 

 

 

 本当だったら、俺は1人で過ごす予定だった。それなのに、彼女のめちゃくちゃな提案によって色々と問題は起きたものの楽しい時間を過ごすことができた。むしろ、俺の方が花丸さんに感謝してるぐらいだ。

 

 けど、未だに花丸さんは悲しそうな表情をしている。

 

 

 ならば………………

 

 

明「明日、良かったら2人で映画でも見に行くか??」

 

花丸「え?」

 

 俺の唐突の誘いに花丸さんは目を丸くする。俺は少しだけ頬をポリポリと掻き、照れながら言葉を続けた。

 

 

明「明日は練習も休みだしな。泊まるついでに明日は2人でパァーっと遊びに行こうぜ」

 

 

 軽い気持ちで言っているように見えるだろ??内心、めっちゃ緊張してるわ。だって、女の子に遊びの誘いするなんて初めてのことだからな!!

 

 

花丸「……………うん!!!」

 

 

 俺の言葉を聞いて、安心したのか花丸さんは嬉しそうな表情に変わっていた。うん。こいつはやっぱり悲しい顔してるよりも笑っている顔の方が素敵だ。

 

 

明「じゃあ、花丸さん。おやすみ。また明日な」

 

花丸「おやすみら明くん。また明日ずら。」

 

 そう言って、俺達は互いに寝室の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜花丸視点〜

 

 

 良かったずらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 マルは今、零さんのお布団に入りながらとても安心しています。

 

 本当に良かった………。もしかしたら、明くんに嫌われたかもしれないと内心思っていた。

 

 だから、明くんに謝る時も凄く緊張した。もし、あそこで明くんに拒絶されてたらと考えると………………やめよう。もう、終わったことずら。

 

 それにしても、明くんに頭を撫でられた時、とても気持ちよかったなぁ………。何回かして貰ったことがあるけど全然飽きないずら。

 

 そう考えると、マルはすっかり明くんの虜になってきてるなぁ………。

 

 

 でも、それも悪くないずら。( •̀ω•́ )✧

 

 

 それに、まさか明くんと明日、映画を観に行くことになるなんて………。これっていわゆるデートっていうやつずらよね??

 

 マルは幸せ者ずら。明日、不幸な事が起きてしまわないかと心配になってしまうずら。

 

 

 ふふふ…………。ニヤニヤが嬉しくて止まらないずら〜(◦ˉ ˘ ˉ◦)

 

 でも、これ以上起きてるとせっかくのデートが台無しになってしまうかもしれない。

 

 そうならないように、マルは瞼を………

 

 

 

 

 「ーーーーーーーーー!!!」

 

 

 

花丸「!?」

 

 瞼を閉じようとした瞬間に、隣の方から………明くんの部屋から苦しそうな声が聞こえてきた。

 

 

花丸「明くん………??」

 

 

 マルはすぐにガバッと身体を起き上がらせて零さんの部屋から出たあと、明くん部屋へと突入した。

 

花丸「明くん!?」

 

 

明「ーーーーーーー!!」

 

 

 やっぱり、声の正体は明くんだった。

 

 けど、明くんは寝ている状態で苦しそうな声を出していた。怖い夢でも見ているかのように…………。

 

 そういえば、以前にたまに『人殺し』に関する夢を見ることがあるって明くんが言っていたような気がする。

 

 その時の明くんはサラッと何事も無かったかのように言っていたけど、実際に見てみると深刻なものだった。

 

 

 どうすれば………良いの!?

 

 

 

 どう動けば良いのか分からないマルは涙を浮かべながら焦っていた。

 

 

 こうしている間にも、明くんは苦しそうな表情をしながら良くないであろう汗もかき続けている。

 

 

花丸「ーーーーーーーあ。」

 

 

 そうだ。昔、おばあちゃんに教えて貰ったアレをやってみよう。それが、明くんにとって効果があるのか分からないけど、やってみる価値はあるずら!!

 

 

 

花丸「明くん、大丈夫だよ。マルがついてるからね」

 

 

 マルは明くんにそう呟くと、早速行動に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は闇の終わり無き道をひたすら走っていた。

 

 

 まるで、何かから逃げるように。

 

 

 そして、背後からは憎しみや怒り、嫉妬などが孕んでいる恐怖の声が耳の中に嫌でも入ってくる。

 

 

 この『人殺し』と。

 

 

 俺は足を止めることは無かった。

 

 

 例え、息が切れようとも…………

 

 

 例え、次第に足から痛みが生じてきていても…………

 

 

 例え、意識が何回か飛びそうになっても…………

 

 

 

 俺はただひたすら走り続けた。

 

 

 『人殺し』

 

 

 やめろ…………

 

 

 『人殺し』

 

 

 来るな…………

 

 

 『人殺し』

 

 

 やめてくれ…………

 

 

 『人殺し』

 

 

 もう……放っておいてくれ………

 

 

 『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』………………

 

 

 

 

 

 

  この『人殺し』が!!!

 

 

 

 

明「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 このままじゃ、狂ってしまいそうだ。

 

 

 

 

 誰か…………助けてくれ

 

 

 

 

 

 『明くん、大丈夫だよ。マルがついてるからね』

 

 

 

 ーーーーーーーッッ!?

 

 

 

 周りが闇しかないこの世界で、ふと俺の耳の中にこんな言葉が聞こえてきた。

 

 

 

 

 しかも、今の声って…………………。

 

 

 

 そして次の瞬間、驚きの光景を目にした。闇しかなかった世界に大きな光が生じ、闇を払っていったのだ。数分も経たないうちに闇の世界から、光の世界へと変わっていった。

 

 

 

 

 最後に、その光は俺の方に向かっていき、俺の身体ごと包み込んだ。

 

 

 

 

 なんだこれ………凄く温かい……………。

 

 

 

 

 そう感じながら俺は意識が失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと目を開ける。

 

 朝日の光が視界に入り込んできたので、少なくとも朝を迎えられたということだけは理解できた。

 

 裸眼のため、視界はボヤけて全く見えてないがグイッと身体をゆっくりと起き上がらせる。

 

 身体がとてもベタベタしているのを感じる………。きっと、昨日見た悪夢のせいだな。

 

 よりによって、彼女が泊まりに来てる時に見るとか………本当に災難だな。

 

 

 ここで、俺は右手辺りから違和感があるのに気づく。そちらの方に視界を移すとそこには…………

 

 

 スースーと寝息を立てながら寝ている花丸さんの姿があった。

 

 

 両手で俺の右手を優しく握りながら。

 

 

 

 彼女の手は夢の中で見たあの光と同じく………とても温かいものだった。

 

 

 

 やっぱり、あの声と光は……………

 

 

 

明「お前だったんだな。」

 

 

 

 この瞬間、俺は彼女に抱いていた謎の気持ちが分かった。

 

 

 いや………元々は理解していたのかもしれない。だが、俺みたいな『人殺し』がそんな感情を抱いてはいけないと自らその事実に避けていた。

 

 

 

 

 けど、もうそんな自分に嘘をつくのは辞めようと彼女の姿を見て決意する。

 

 

 

 どうやら俺、奥山 明は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この少女、国木田 花丸のことを好きになってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は左手で、花丸さんの髪を優しく撫でる。すると、彼女はムフフーと嬉しそうな表情に変わる。本当に笑顔が素敵な女性だな。

 

 

 

 

 

 

 

明「ありがとうな、()()。大好きだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は照れながらそう言ったあと、彼女を起こさないようにベッドから降り、朝ごはんを作るために台所へと向かった。

 




ようやく、明くんが花丸さんに好意を抱くようになりましたね。ここまで来るのに長かった……………。




次回はSaintSnow視点で行きます。


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『人殺し』の姉2人の現在は…………

お気に入りが500件突破しました。
ありがとうございます!!

今回はSaint Snow編です。久しぶりですね。
あと、これを読む前に番外編の2話目を先に読むことをオススメします。


  ーーーザクリ

 

 

 ………憎い

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 ………憎い

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 ………憎い

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 ………こんな自分が憎い。

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 ………憎くて憎くて堪らない。

 

 

 ーーーザクリ

 

 ………痛い。痛いけど

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 ………仕方がない。

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 ………だってこれは

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 

 

 ………私が犯した重い重い罪の罰なのだから。

 

 

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 これぐらいしないと……………

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 じゃなきゃ私は…………

 

 

 

 「姉様!!」

 

 

 あぁ………。何するんですか。

 

 

 私の邪魔をしないで下さい。

 

 

 ………隠し持っていたカッターナイフを取られてしまいました。それに、傷口の治療も。

 

 

 もう………私のことは放っておけばいいじゃないですか。

 

 

 「姉様…………もうこんなことはやめて。ママもパパも心配してる。」

 

 

 どうしてそんなことを言うのです??どうして涙を流すのです??

 

 

 両親や妹が何を言っても私はやめるつもりはありません。

 

 

 

 

 

 

 

 だって…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人の人間を傷つけておいて、傷つけた本人が傷つかないなんて可笑しな話じゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、私は何度でもやります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、何度でも………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーザクリ

 

 

 

 

 

 

 

 〜理亜視点〜

 

 

 姉様が自虐行為をやめてくれない。

 

 

 何度も何度も私や両親が止めて、刃物を取り上げてもどこからか取り出して姉様は自分の身体を傷つけていた。

 

 

 ここ最近、ずっとその繰り返し。

 

 

 そのせいで、私や両親も心身もろとも疲れ果てていた。

 

 

 

 

 

 そして昨日の夜、私はたまたま聞いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 両親が、姉様を精神病院に入院させた方が良いのではないか………という話を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 確か………このタイミング辺りでAqoursのリーダーから連絡があった気がするがそれどころではなかった。なので、普通に無視をした。

 

 

 

 

 

 姉様を病院に……………??

 

 

 

 

 

 そんなこと………、絶対に許さない。

 

 

 

 

 

 

 もし、そんなことをしてしまったら………

 

 

 

 

 

 Saint Snowはどうなるの??

 

 

 

 

 

 あの日…………私達2人で決めたラブライブで頂点に立つという夢はどうなってしまうの??

 

 

 

 

 

 

 それを壊させないため、私は諦めない。諦めてたまるか。

 

 

 

 

 

 

 

 いつか、姉様を元に戻す。元に戻して、また2人でステージに立つんだ。

 

 

 

 

 けど、方法は分からない。だから、どう動けばいいのか分からない。

 

 

 ♪カラカラーン♪

 

 

理亜「…………いらっしゃいませ。」

 

 

 私はお客さんに聞こえない程度で舌打ちをした。こんなことしてる場合じゃないのに…………。

 

 けど、仕事は仕事だ。やるべき事はやってしまおう。

 

 客の数は5名………か。そこそこいるな。見た感じ、旅行客かな。

 

客1「ん〜、北海道は他の県に比べて涼しいわね。」

 

客2「なんなら、少しだけ寒いぐらいよ」

 

客3「それにしても、今年は北海道だなんて………。社長、太っ腹よね」

 

 

 

客4「それにしても、ここ素敵な場所ね。ねぇ、零。どこでここを知ったの??」

 

 

 

 

 

 

 

 零。

 

 

 

 

 

 

 

 この単語が耳に入った瞬間、私はお客さんの方にガバッと顔を向けてしまった。まさか………

 

 

 

零「なんかね〜、息子の好きなスクールアイドル??をやっている女の子がここで働いてるんだって。味も美味しいらしいから気になってたの。」

 

 

客1「そうなんだ〜。」

 

 

 しかし、あのお客さんの中に奥山 零の姿はなかった。零と呼ばれた人は、赤髪でポニーテールに髪を結んでいる女性だった。関係ない話だけど…………この人、ぽわわーんとしてて案外強いな。日々、鍛えてるからか直感的にそう思った。

 

 

 私は少し溜息を吐きながらお客さん達の方へと向かった。

 

理亜「ご注文はお決まりになりましたか??」

 

客3「あら、可愛い定員さんね。」

 

理亜「ありがとうございます」

 

客2「オススメとかってあるかしら??」

 

理亜「そうですね…………。こちらの、白玉ぜんざいがオススメとなっております。」

 

客1「じゃあ、それ5つとお茶をお願いします。」

 

理亜「かしこまりました。少々お待ちください。」

 

 私はペコりと頭を下げたあと、厨房の方へと向かう。あの零っていう女性、私の顔をずっと見ていたような…………。多分、気のせいよね。

 

 私はトレンチの上に作り終えた白玉ぜんざいとお茶を5つずつ乗せたあと、再びお客さん達の方に足を運んだ。

 

理亜「お待たせしました。白玉ぜんざいです。」

 

客2「きゃー、とても美味しそう」

 

客4「インスタ映え〜♪」

 

客1「これで、300円!?安いわね。」

 

客3「んー♪美味しい!!ね、零!!」

 

零「そうね〜♪息子に感謝だわ〜」

 

 

 

 

 そう言って、お客さん達は私が作った白玉ぜんざいを美味しそうに食べ雑談を楽しんでいた。

 

 1時間ぐらい経過した所で、お客さん達はテーブルから立ち上がりレジの方へと向かう。

 

 会計を済ませた所でお客さん達は店へ出て行こうとした。

 

客2「あれ?零、行くよ??」

 

零「ごめんごめん。ちょっとお手洗いに行ってくるから外で待ってて。…………すみません、お手洗いはどこですか??」

 

理亜「あ、あそこの通路に出て右側の方にあります。」

 

零「ありがとう。」

 

 

 零さんは頭を下げた所でお手洗いの方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーザクリ

 

 憎い………

 

 ーーーザクリ

 

 憎い………

 

 ーーーザクリ

 

 憎い………

 

 ーーーザクリ

 

 憎い………

 

 ーーーザクリ

 

 憎i…………。

 

 

 「へぇ………、これは重症だ」

 

 

 !?

 

 

 再び理亜に隠れて自虐行為をしていると、唐突に刃物を持っていた腕を誰かに掴まれた。掴まれた方に顔を振り向くと、そこには見覚えのない1人の赤髪のポニーテールの女性が視界に入った。

 

 

 …………誰ですか??

 

 

 

 「とりあえず、身体を傷つけるのはやめようか。」

 

 

 謎の女性はそう言って、刃物を取り上げようとする。私は奪われないように力を込めますが、あっさりと取り上げられてしまいました。この女性…………強いです。

 

 

 ですが、まだ私は刃物を数本、隠して持っています。

 

 

 だから、この女性が消えたらまた…………

 

 

 「……………今日はもう寝なさい。」

 

 

 ーーーーーーー!?

 

 

 謎の女性がそう呟いたあと、私の首の後ろに強い衝撃を感じました。

 

 

 「これは………明ちゃんに報告ね。」

 

 

 聞き取れない程の小さな声で謎の女性が呟いた所で私の意識は無くなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜理亜視点〜

 

 

零「ふぃー、出た出た。」

 

 零と呼ばれていた女性は満更でも無い顔でハンカチで両手を拭きながらお手洗いから出てきた。案外、長かったわね。15分ぐらい経ってる。絶対に大きい方だったでしょ

 

 

零「ねぇ、貴女」

 

 

理亜「ひゃ、ひゃい!?」

 

 きゅ、急に話しかけないでよ。驚いてかんじゃったでしょ。

 

零「これ、受け取ってくれないかしら。」

 

 女性はそう言って、鞄から1つの箱を取り出し私に差し出す。

 

理亜「これは??」

 

零「私の息子が、貴女達の大ファンなのよ。だから、もしここの店に来た時に渡しておいて欲しいって言われてるのよ。良かったら貰ってちょうだい」

 

理亜「あ、ありがとうございます」

 

 私は頭を軽く下げてから、箱を受け取る。何だか………こういうの初めてだから少しだけ嬉しいかも。

 

零「それじゃあね。あと、どうでもいいけど貴女、私の息子にそっくりね♪」

 

 何よ、それ。なんで、貴女の息子と私が似てるのよ。本当にどうでもいいわ。

 

 そして、零さんも店から出て行った。なんだかんだで面白い人だったわね。

 

 

理亜「それにしても、何が入ってるんだろ」

 

 

 私は貰った箱の中身が気になって、パカッと開ける。もし危ないものとかだったならばこちらで処理をすればいい。

 

 

 だけど中に入っていたのは衝撃的なものだった。

 

 

理亜「どうして………これが………」

 

 

 箱の中に入っていたもの。それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昔、姉様が明にあげた仮面ライダーのストラップだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、あの人がこれを!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ストラップとは別に入っていた1枚の紙があることに気づくとすぐにその紙を取り出して見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 『Aqoursのライブ。中継でも良いから絶対に姉さんと一緒に見てくれ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はすぐにあの客にこれについて問い詰めようと思い、外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、既にあの女性の姿は無かった。

 




次回、本編に入ります

もうすぐ、1期が終わりますね。


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『人殺し』よ。『さん』『先輩』は禁止!!前編

すみません!!本編入る前にこの話を入れておきたかったので急遽書きました。

コメディ満載です。


 花丸さんとのお泊まり会からの映画館デート(?)から数日が経過した。

 

 

 俺は自分が花丸さんに好意を抱いていると確信してからは、彼女の接する時に少しだけ緊張するようになってしまった。

 

 

 まさか、『人殺し』である俺が女性に恋をするなんて思いもしなかったから、どうしたらいいのかわからない。

 

 

 

 けど、もしこのまま何もせずに花丸さんが他の男性に奪われたら………………と思うと胸が苦しくなる。多分、それぐらいになるまで俺は彼女のことが好きなのだろう。

 

 

 このことを誰かに相談しようとしてもAqoursのメンバーに恋愛相談したら面倒くさい(特にポンコツでシスコンである生徒会長)だろうし、零さんも男性とお付き合いしたことが1度もないらしく戦力にならない。てか、零さんや。貴女、もうすぐ28でしょ。俺が言えることじゃないけど、そろそろ結婚相手を探しなさい。

 

 うーん………。ダメ元で練習後に沼津の本屋さんにでも寄って、恋愛に関する本でも買おうかな。少なくとも何か参考になることは載ってるだろ。

 

 

 

 こうして、俺は財布の中身を確認しながらAqoursの練習場所である屋上へと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「今更だけど、アンタって私たちのこと『さん』付けで呼ぶよね」

 

明「なんだよ、唐突に」

 

 お昼休憩で屋上の隅でいつも通り1年生組(現在、花丸さんとルビィさんは飲み物を買いに行っている。)と弁当を食べていると、善子さんが俺に向かって言葉を出す。どうでもいいけど、彼女のほっぺにはソースがついていた。

 

善子「なんか、下から見られているようで嫌なのよね」

 

明「別にそんなつもりで呼んでる訳ではないんだけどな」

 

 俺の言葉に善子さんは「知ってるわよ」と言いながら、弁当のおかずであるハンバーグを口の中に入れて美味しそうにもぐもぐと咀嚼する。あ、更にソースがついた。

 

 そして、ゴクリと口の中のものを飲み込むと、フォークを俺の方に向けながら言葉を出した。

 

善子「ということで、明。これからは、せめて私たちのことは呼び捨てで呼びなさい。てか、呼べ」

 

明「えぇ……………。」

 

 まさかの強制かよ。てか、フォークを人に向けるなよ。お前はベビーサ○ンか。

 

善子「嫌なの??」

 

明「嫌ではないけど…………」

 

 嫌ではないけど、女性の名前を呼び捨てで口に出すのは結構、恥ずかしいものである。この前も、花丸さんのことを呼び捨てで呼んだ時は背中が馬鹿みたいに熱かったからな。

 

善子「あと、千歌達も『先輩』って呼ばれるの嫌がってるから。」

 

明「マジかよ……………。」

 

 それは知らなかった。先輩なんだから先輩って呼んで当たり前じゃん。なんで、嫌がってるの??

 

善子「私なんて、みんなのこと呼び捨てだしタメ口なのよ??少しは見習いなさい」

 

 それは逆にお前が図々しいだけだろ。その度胸を俺に少しだけでもいいから分けてくれ。お前の好きな辛い料理作ってあげるから。

 

善子「と・に・か・く!!今日はアンタは人を呼ぶ時『さん』もしくは『先輩』を禁止!!じゃないと、私の動画に出てもらうから」

 

 な、なんだと!?お前のあの非常に痛い動画(笑)に出るだと…………!!それだけは勘弁だ。いや、マジで。冗談抜きで。

 

明「分かった。」

 

善子「ふふ、流石は私のリトルデーモンね。じゃあ、早速私の本当の名前を呼びなさい。」

 

 本当の名前………、つまりはヨハネと呼べということだろうか??うーん、なんかこのままこいつの言う通りに従うっていうのも癪だな。口の周りにソースついてる癖に、ニヤニヤしてるし。

 

 ………よーし。

 

明「津島」

 

 

善子「なんで苗字なのよーーーーー!!!」

 

 

明「おい、津島。口の周りににソースついてるぞ。これで拭けよ」

 

善子「あ、本当だ………。ありがとう……………じゃなくて、名前で呼べーーーーーーーーーー!!!」

 

 

 津島(少なくとも今日は津島と呼ぶ)はそう言って顔を真っ赤にしながらも俺が差し出したハンカチで口の周りを拭いた。

 

 

ルビィ・花丸「ただいまー」

 

明「おかえり」

 

花丸「善子ちゃん、どうしたの??」

 

善子「ズラ丸ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」

 

 津島を弄ってると、2人が帰ってきた。花丸さんが半泣き状態の津島に声をかけると津島は泣きながら花丸さんの胸に飛び込む。う、羨ましい。

 

ルビィ「うゆ………何かあったの??」

 

明「特に何も。あいつがただ自滅しただけ」

 

ルビィ「そうなんだ。はい、明くん。」

 

 

 ルビィさんは俺に缶ジュースを差し出す。よ、よーし………。

 

 

 

 

 

明「あ、ありがとうな。ルビィ」

 

 

 

ルビィ「………………え??」

 

 俺の言葉に、ルビィ含め津島と花丸が目を丸くして俺の方に顔を向ける。

 

 そして、ルビィはどんどんと顔を赤くしていき最終的には

 

 

 

ルビィ「ピギァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 と、大声を出しながら走ってどこかへ去ってしまった。

 

花丸「ルビィちゃん!?」

 

 何これ………すごく恥ずかしいし申し訳ないのだが………。

 

花丸「明くん!!どういうことズラ!!」

 

 花丸さんが怒りのオーラを出しながら近づく。いい匂いが漂ってくるけど、まずい!!何か言い訳を…………

 

明「は、花丸!!違うんだ!!話を……」

 

花丸「え………」

 

明「あ」

 

 し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!つい、呼び捨てで呼んでしまったぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 ヤバイ…………!!場合によっては嫌われる!!それだけは避けないと!!今すぐに土下座をしなくては!!

 

花丸「ず………」

 

明「ず??」

 

 

 

花丸「ずらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 花丸さんも顔を真っ赤にさせながら走ってどこかに去ってしまった。あ、これ完全に嫌われたやつだ。

 

 

明「な、な、な、なぁ、善子。どうしよう!?」

 

 俺は半泣き状態でテンパリながらも善子に助けを求める。え、苗字じゃなくて名前で呼んでるって??んなもん、知るか!!こっちはそれどころじゃねぇんだよ!!

 

善子「………え??」

 

 あれ??善子がフリーズしちゃった。何で!?頭叩けば治るか??

 

 そして、次第に善子は顔を赤くして

 

 

 

善子「ヨハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 と、謎な言葉を叫びながら2人と同様に走って屋上から去って行った。

 

 

 

 ぽつんと1人だけ残されてしまった俺。恥ずかしいのに勇気を出して呼び捨てで呼んだのにこれとか………………。

 

 

 

明「ハハ………」

 

 

 

 この後、俺は何も言わずに走って昼休みが終わるまで屋上から出て行きました。

 

 

 

 

 

 

 

俺………先輩達のこと『先輩』無しで呼べるかなぁ…………。心配だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、名前を呼び捨てで呼ばれた1年生3人によると明に名前を呼ばれた時の破壊力が凄まじかったという………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こういうのもいいと思いません??
後編に続きます。
お気に入りや感想をお待ちしております。


活動報告にてリクエスト募集してるので良かったら応募してください。全員じゃなくても、推しキャラのみとかでも大丈夫です。


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『人殺し』よ。『さん』『先輩』は禁止!!後編

令和になりましたね。
令和初日は友達とカラオケ行ってました。てへ。

後編どうぞ。
ちょっとだけ2期のある部分をフライングで登場させました。


明「皆さんにお話があります。」

 

 昼休みが終わる直前までになんとか気持ちを立ち直らせた俺は少しだけ時間を貰い、Aqoursのみんな(1年生3人は未だに顔が赤い。)に集まってもらった。

 

 俺がこうやって話があるからとメンバーを集めたのは初めてなことだったので少しだけざわざわとしていた。

 

鞠莉「それは明達が急に飛び出して行った理由と何か関係があるのかしら??」

 

 くっ………、相変わらず鋭い人だな。

 

明「えぇ。」

 

 ここだけの話、俺は屋上を飛び出したあと個室の男子トイレで名前呼びの件についてどうすれば良いのかを気持ちを立ち直らせながら考えていた。

 

 そもそも、俺は何も言わずにルビィと花丸のことを、呼び捨てにしまった。それゆえ、彼女達は顔を赤くして飛び出して行った。

 

 そりゃあ、そうだ。唐突に異性に呼び捨てにされたら誰だって混乱してしまう。逆にどうして予め知っていた善子が飛び出してしまったのかは分からない。

 

 

 だから、俺は閃いた。

 

 

明「皆さんは俺になんて呼ばれたいですか??」

 

 

 予め彼女達に伝えておこうと!!!

 

 

Aqours「は??」

 

 

 Aqoursの先輩方はポカンとした表情へと変わる。

 

 けど、これはこれで俺の中では想定内なので、事情を詳しく説明した。

 

 

鞠莉「なるほどね〜♪」

 

曜「確かに明くんに『先輩』って呼ばれるの、学年の壁を感じて嫌だったな。」

 

果南「昨日もそれについて皆で話してたよね」

 

 うむ…………。彼女の会話からしてなんとか俺の意図は伝わったようだ。良かった良かった。

 

明「まぁ、そういうことです。なので、皆さんが俺になんて名前を呼ばれたいのかを聞いたということです。」

 

千歌「はいはいはーい!!」

 

 千歌先輩がぴょんぴょんと跳ねながら嬉しそうに手を挙げる。ついでにアホ毛もぴょこぴょこと左右に揺れていた。可愛いな、おい

 

明「はい、千歌先輩」

 

 

 

千歌「私のことは千歌お姉ちゃんって呼んで!!」

 

 

明「却下で」

 

千歌「何で!?」

 

 逆にこっちが何で!?だよ。後輩にお姉ちゃんなんて呼ばす先輩がどこにおる。あ、目の前にいたわ。

 

千歌「私、末っ子だからお姉ちゃんって呼ばれたいのーーー!!」

 

明「それだったら、俺じゃなくても他の3人に呼んでもらえればいいじゃないですか。」

 

千歌「チッチッチッ、明くんは分かってないな。男の子に呼ばれるからこそ意味があるんだよ!!ほら、うち三姉妹だから」

 

 なるほど。確かに、思い出してみれば、高海家は三姉妹だったな。

 

 

 

 けど、俺は千歌先輩のことを冗談だとしても姉とは呼ばない。

 

 

 

 なぜなら…………。

 

 

 

 

明「俺にとって姉はあの2人だけですから。」

 

 

 

 

千歌「ッッ……………ごめん。」

 

 

 千歌先輩は顔を俯きながらポソッと言葉を出す。ちょ………、そこまで暗くならなくてもいいから!!それはそれでこっちが反応に困るわ!!

 

千歌「じゃあ、普通に千歌で。あと、敬語も禁止!!それだったらいいでしょ??」

 

 まぁ…………それだったら。俺はコホンと咳払いをしたあとに彼女に向かって言葉を出した。

 

明「分かりました…………じゃなかった。分かったよ、千歌。」

 

千歌「ーーーーーーーッッ」

 

 

花丸・ルビィ・善子(あーあ、やっちゃったな。)

 

 

 ん?どうして、この人も顔を赤くしてんだ??そして、そこのお前ら。あーあ、コイツやっちまったなみたいな顔をするんじゃない。

 

千歌(よくよく思い出してみれば男の子に呼び捨てで名前を呼ばれるのお父さん以外で初めてかも。こんな破壊力があるの!?)

 

 よく分からないけど、千歌はこれでOKかな。他のメンバーはどうだ??

 

 

曜「私は船長って呼ばれたい♪」

 

 

 曜先輩はビシッと敬礼して答える。確か、この人の親父さんは船の船長で彼女も憧れてるんだっけな。まぁ、お姉ちゃんって呼ぶよりはマシだな。

 

明「曜船長。」

 

曜「うん!!じゃあ、記念として明くんもご一緒に!!………全力前進〜〜〜」

 

 え、え、え!?それ、俺もやるの!?えぇい!!こうなったらヤケクソだ!!俺は曜船長と一緒に敬礼をして声を揃えてあのお馴染みの言葉を出した。

 

 

明・曜「ヨーソロー!!」

 

 

 何気にヨーソローって言うのこれで初めてだな。曜船長もとても嬉しそうにニコニコしてるし……………。

 

 

梨子「私は普通に梨子でいいよ。」

 

 

 ヨーソローしてる俺を見て苦笑いしながら梨子先輩は答える。特に弄りとかは無い方がこちらとしてもありがたいしな。

 

 

明「梨子」

 

 

梨子「ッッ。なんだか………恥ずかしいね」

 

 

 梨子も千歌と同じく顔を赤くして答える。こっちだって、めちゃくちゃ恥ずかしいわ!!

 

梨子(あとで頼んだら壁ドンとか顎クイしてくれるかな??)

 

 ん??なんだろう??少しだけ梨子から余りよろしくない気配を感じた。気のせい……だよな。

 

 これで2年生組は終わりか。あとは3年生組だけ……………。

 

 

果南「そうだなぁ。かなっちとかはどう??」

 

 

 そんな、たま○っちみたいな感じでいいんですか!?それでいいならいいけど…………。

 

明「かなっち」

 

果南「アハハ、いいね。………えい♪」

 

明「え??」

 

 かなっちは、急に俺に抱きついてきた。彼女の十八番であるハグである。

 

果南「ハグ〜♪」

 

 ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!やばい、やばいよ!!何がやばいかというと、彼女の胸がダイレクトに当たってるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

明「と、とりあえず離してくれ」

 

果南「分かった♪」

 

 今度は俺が顔を赤くしながら、かなっちになんとか解放してもらった。そして、俺は息切れしながらもサムズアップしてかなっちに一言だけ呟いた。あと、花丸よ。そんなジト目でこっちを見るな。怖いから。

 

 

明「かなっち………。お前がNO.1だ」

 

 

果南「??何がNO.1なのかよく分からないけど褒め言葉として受け取るよ。」

 

 よし。これであと2人!!1人はともかく次の人が問題児なんだよなぁ

 

鞠莉「ふふふ〜♪」

 

 ほらぁーーー、この時点でこの人、凄いニヤニヤしてるもん。絶対に何か企んでるよ

 

 

鞠莉「私のことは鞠莉にゃんって呼んで♪」

 

 

明「貴女、それ正気で言ってます??」

 

 もし、これでこの人が正気とか答えたらマジでドン引きなんだけど…………。

 

鞠莉「It’s joke♪」

 

明「心臓に悪いんでそういうのやめてもらっていいですかね!?」

 

 よ、良かった……………。手を頭の上に乗せて「にゃんにゃん」と言いながらネコミミのようにやるから本気かと思ったよ。

 

 

鞠莉「これからはマリーって呼んでね♪」

 

 

 そう言えば、この人に初めて会った時もそう言われたな。先輩だから気を使って言わなかったけど…………。この際だしいいか。

 

 

明「マリー」

 

 

鞠莉「VeryGood♪」

 

 よし。これであとはこの人だけだ。

 

 

明「ダイヤ先輩はなんて呼べばいいですか??」

 

 

 そう。あと残っているのはダイヤ先輩だけだ。

 

 この人の場合は、特に頭を悩ませる必要はない。1年生3人や千歌や梨子と同じく普通に名前を呼ばせるに違いない。なんなら、この人だけでも今まで通り先輩呼びにしてもいい気がする。

 

ダイヤ「あの………ですね。」

 

 ん??なんで、この人顔を赤くしてモジモジし始めたんだ??可愛いけどそんなことするタイプじゃないだろ。

 

ダイヤ「あ、明さん。耳をお借りしてもいいでしょうか??」

 

明「別にいいですけど」

 

 俺がOK出すと、ダイヤ先輩は俺の耳に顔を近づけコソッと言葉を呟こうとする。あれ??何か、嫌な予感が…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「ダ………………ダイヤちゃんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ハッ!!

 

 

 ダイヤ先輩の言葉が衝撃的すぎて少しの間だけ意識が飛んでいた。どれぐらい飛んでた??俺の中では3時間ぐらい経ってる気がするが、周りを見た感じそうでもないっぽい。

 

 それにしても、ちゃん付け!?この人が!?

 

ダイヤ「うぅ…………」

 

 ダイヤ先輩も言ったことが恥ずかしかったのか、顔を赤くして悶えている。それだったら言わなくても良かったのに

 

明「でも、どうしてちゃん付けを??」

 

ダイヤ「そうすればもっと明さんと親しめるかな………と思いまして」

 

 だからといって、別にちゃん付けしなくてもいいでしょ。距離を縮めるだけだったら、『さん』や『先輩』とかでも縮めれるわ

 

ダイヤ「あと、千歌さん達からは『さん』付けしか呼ばれたことがないので…………。」

 

 ダイヤ先輩は少し俯きながら答える。あぁ、なるほど。俺はダイヤ先輩の意図を理解した。

 

 元々、ダイヤ先輩は性格が固い故にみんなから悪い意味ではないが、少しだけ距離を置かれている存在だ。それを彼女は気にしているのだろう。

 

明「それだったら俺だけじゃなくてみんなにも言えばいいじゃないですか。」

 

 そもそも、俺だって今日、唐突に『さん』『先輩』禁止になってんだから。

 

ダイヤ「だって、恥ずかしいじゃないですか!!」

 

明「俺だって恥ずかしいですよ!!」

 

ダイヤ「貴方は男の子でしょ!!我慢しなさい!!」

 

明「それは理不尽すぎじゃね!?」

 

 あぁ、もう!!これは拉致があかねぇ!!こんなくだらない争いで練習時間削って溜まるか!!分かりましたよ、言えばいいんでしょ!!言えば!!どうなっても知らないぞ!!

 

 

 

明「ダイヤちゃん。」

 

 

 

ダイヤ「あう…………」

 

 

 あう………………。

 

 

 俺とダイヤちゃんは恥ずかしさのあまり互いにあうあうしてしまった。そして、それがあってか彼女からは2人きりの時だけちゃん付けするようにとお願いされた。俺もみんながいる前では彼女のことをちゃん付けしたくないしな。ありがてぇ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺は彼女達のことを『さん』や『先輩』と付けずに名前を呼んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは余談で明は知らないことだが、彼に名前を呼ばれたことによってその日の夜だけは、ドキドキして寝れなかったメンバーがいたという。

 

 

 

 

千歌・花丸・善子・ルビィ・ダイヤ・梨子

 「ドキドキして寝れねぇ!!」

 

 

 

明「( ˇωˇ ) zzZZZZ」




次回は本当に本編に入ります。
お気に入りや感想、高評価お待ちしております。
活動報告にてリクエスト募集してるのでよろしくです!!


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『人殺し』はコンビニへと行く。

投稿遅れてすみませんでしたぁぁぁぁ!!<(_ _)>〈 ゴン!〕



 とある日の夜のこと。俺は北海道に社員旅行している零さんと通話していた。

 

 

 Saint Snowである姉ちゃん達に関することで…………だ。

 

 

 零さんから教えて貰った内容は俺が想像していたものよりも遥かに超える残酷な内容だった。

 

 

明「………そっか。そこまで酷くなってたんだ。」

 

零『うん。見た感じ、相当自分の身体を傷つけてるわね………………。』

 

明「理亜姉ちゃんは??」

 

零『彼女もきっとお姉さんのことで頭を抱え込んでる。表情があまり優れてなかったから』

 

明「そうなんだ…………。ところで、例の箱は渡してくれた??」

 

零『うん。ちゃんと渡したよ』

 

明「ありがとう。」

 

零『他に何か私がやれることはない??』

 

明「大丈夫。あとは『俺達』がやるから」

 

零『そう…………。』

 

明「だから、零さんは安心して北海道を楽しんできてよ」

 

零『…………分かった。明ちゃんがそう言うなら、零さん。思いっきり楽しんでくるね』

 

明「うん。」

 

零『お土産、彼女たちの分まで買ってくるから!!』

 

明『分かった』

 

零『それじゃあ、おやすみなさい』

 

明「おやすみなさい」プツッ

 

 

 零さんとの通話を切ったあと、俺は何も言わず無造作にベットに目掛けてスマホを投げ捨てた。そして、「はぁ」と深いため息を吐く。

 

 

 まさか、そこまで聖良姉ちゃん達が深刻な状況へと陥っているなんて思ってもみなかった。

 

 

明「その原因は多分………俺のせいだよな」

 

 

 いや、多分ではない。絶対そうだ。俺のせいでSaint Snowは崩壊しかけている。そう意識すると、罪悪感が半端ないほど俺に襲いかかってくる。

 

 

明「けど、布石は零さんのおかげでなんとか打てた。あとは俺の行動次第……………か。」

 

 

 俺はそう呟いたあと、机の上に置いてあるパソコンを開きカタカタとキーボードを打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜数日後〜

 

 

果南「1・2・3・4!1・2・3・4!今の移動はもう少し早く。」

 

ルビィ「はい!!」

 

 俺が屋上の片隅で頭の中である程度に完成させた照明案をひたすらノートにまとめていると、ラブライブ地区予選に向けて熱心にライブの練習をしている彼女達の声が耳の中に入ってくる。ルビィ、頑張れ。

 

果南「善子ちゃんは………」

 

善子「ヨハネ!!」

 

果南「ふふ………、今のとこ気持ち急いで」

 

善子「承知。空間移動使います。」

 

 使うな使うな!!お前はどこの孫〇空だよ。普通に移動しろ!!

 

 こんな感じで、暫くかなっちがみんなのダンスの振り付けを手を叩きながらテンポをとって確認していた。

 

果南「はい。じゃあ、少し休憩しよ」

 

 かなっちの言葉で船長以外のメンバーが疲れた表情を見せて崩れ落ちた。さてさて、休憩に入ったしみんなの所に行きますかね。

 

花丸「暑すぎずら〜」

 

ルビィ「今日、真夏日だって。」

 

明「ほらよ。水分補給は欠かせない約束だろ。」

 

 俺はメンバーの中で明らかに限界そうである花丸とルビィに俺特製であるスポーツドリンクを差し出した。

 

ルビィ「ありがとう」

 

花丸「ずら」

 

 2人はお礼を言いながら、スポーツドリンクを受け取る。ちゃんと、水分取れよ。熱中症に掛かったら大変だからな。

 

果南「明〜、私にも1本投げてちょうだーい。」

 

 かなっちが手を振って、スポーツドリンクを俺から求める。投げるとか行儀悪いと思うけど本人がそう言うなら、まぁ……………いいか。

 

明「はいよー」

 

 俺は力加減を考えて、かなっちに目掛けてスポーツドリンクを下から優しく投げた。……………よし。上手くかなっちの手に収まった。

 

果南「ナイス〜♪」

 

 かなっちは嬉しそうにそう言いながら、スポーツドリンクを口にした。その後、ダイヤちゃんとマリーがかなっちに寄り添って会話をし始めた。本当に仲良いな、あの3人。

 

 

 バタン!!

 

 

明「え!?」

 

 背後から誰かが倒れた音が聞こえてきた。なので、心配して振り向いてみると、そこにはこんなクソ暑い天気の中で分厚い黒の服を着ている津島 善子がいつもの決めポーズをして倒れていた。心配して、損したよ。いや、実際に倒れてるから心配してるけれども。

 

明「お前さ〜、マジでその黒いやつ取れ!!」

 

善子「嫌よ!!黒は堕天使のアイディンティティだもの!!黒がないと生きていけない!!」

 

明「現に、今死にかけてるじゃねぇか!」

 

 腹たってきたな。こいつ、踏んでいいかな??いいよね??

 

千歌「明くーん!!私も投げていいからこっちに飲み物ちょーだい!!」

 

 くっ………、命拾いしたな、善子よ。

 

明「はーい」

 

 善子を踏むのを諦めた俺は千歌に目掛けて先程と同じようにスポーツドリンクを下から投げる。2回目も千歌の手に収まった。よっしゃ。

 

曜「ナイスキャッチ♪」

 

千歌「私……夏好きだな。なんか熱くなれる」

 

 千歌が言ったそれ………、よく分かる。夏に空手とかやってた時、そうだったもん。

 

曜「私も。」

 

 どうなら、船長も同じ意見だったようだ。この人も、確か飛び込みやってるもんな。

 

千歌「よーし!!そろそろと再開しようか」

 

 え?少し早くない??他のメンバーとか死にそうだよ??特にその黒いやつとか。

 

 

ダイヤ「ぶっぶーーーーーーー!!」

 

 

明・千歌「うわぁ!!」

 

 唐突に、俺達の視界にダイヤ先輩の顔面がいっぱいに映りこんだ。本当にビックリしたんだけど。

 

ダイヤ「オーバーワークは禁物ですわ」

 

鞠莉「By果南。みんなのことを考えてね」

 

千歌「そっか。これからもっと熱くなる時間帯だもんね。」

 

 そんなこと、言わないでくれ。もっと暑くなっちゃうから

 

ダイヤ「ラブライブの地区予選が迫って焦る気持ちも分かりますが、休むのもトレーニングの内ですわよ」

 

 流石はダイヤちゃん。いい事言うな〜。

 

果南「その前に、みんな100円出して」

 

 お、いつものアレか。俺はポケットの中に入っているリラッ〇マの小銭入れを取り出して100円を手に取る。

 

善子「やってきたのですね。本日のアルティメットラグナロク。クックック………、時が未来が…………見える!!」

 

 お、もうネタバレしちゃうけど、そのアルティメットラグナロクに必ず敗北する堕天使が何か言ってるぞ。誰か何か答えてやれ

 

果南「じゃあーいくよー」

 

花丸「じゃんけーん」

 

Aqours「ぽん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜コンビニ〜

 

 

善子「なんでいつも負けるのかしら」

 

 

 善子は謎のチョキポーズをプルプルと震えながら愚痴っていた。それだよ、それ。それが敗因。

 

 

明「逆に何で分からねぇんだよ」

 

善子「知らないわよ!!てか、なんでアンタまでいるのよ。これ、買い出しジャンケンでしょ。」

 

明「しょうがねぇだろ。仮面ライダージ〇ウの装動の新商品が発売してたのをすっかり忘れてたんだから」

 

 

 買いに行くのを遅れてしまったから慌てて来たけど売り切れてしまってないか、かなり心配してた。けど、なんとか残ってて良かった。田舎は最高だぜ。

 

 

善子「へぇー、アンタ装動も買ってんのね」

 

明「RKFも、もちろん買ってるぞ」

 

善子「私、エボ〇トだけ買ったわ。コブラとブラックホールの2体。」

 

 癖が強いな!!いや、俺も好きなライダーではあるけれども。

 

 お、善子の方の会計が終わったようだ。

 

店員「1158円です。」

 

善子「てか、誰よ!!高いアイス頼んだの!!足りないじゃない!!」

 

 よく見てみろよ。普通にハーゲンダッツ入ってるじゃねぇか。しかもコレ、頼んだの絶対に千歌だな。だって、みかん味だし。ちなみに、俺はガリガリくんな。

 

 

 俺は近くにいたちびっ子達と一緒に、善子が涙目で会計を済ませているのを眺めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜図書室〜

 

 

 

花丸「ずらぁ〜」

 

ルビィ「ぴぎぃ〜」

 

善子「ヨハァ〜」

 

 

 1年生3人が、アイスを食べながら扇風機の前を陣取って風を浴びていた。こっちまで風が来ないんだけど。

 

曜「教室に冷房着いてたらなぁ」

 

梨子「廃校の話が出てる学校なのに、着くはずがないでしょ。」

 

 まぁ、確かにな。そんなの買うお金ないだろ。

 

千歌「学校説明会の参加人数って今どうなってるの??」

 

 千歌の言葉にマリーが図書室のパソコンを起動させてホームページを開く。

 

鞠莉「今のところ…………」

 

千歌「今のところ…………」

 

鞠莉「今のところ〜」

 

千歌「今のところ〜」

 

鞠莉「今のところ〜♪」

 

千歌「今のところ〜??」

 

 はよ、言え。アンタ、もうとっくにページ開いてるだろ。溜めるな

 

 

鞠莉「0〜♪」

 

 

 いや、0なんかーい。予想はしてたけれども。

 

 

 参加人数が0だと知って、千歌は残念そうにペタッとテーブルに頬を付ける。

 

千歌「そんなに、この学校魅力がないのかな………。少しぐらい、来てもいいのに」

 

 

明「この学校は充分、魅力はあるよ。立地条件がすごく悪いところ以外は…………。」

 

 

果南「だよね。」

 

 そもそも、どうして女子高だというのに、あんな丘の上に学校を建てようと思ったのだろうか。建てるなら、せめて共学にした方が良かったと思う。

 

 ガララ

 

 ん?見知らぬ3人組の女性が図書室に入ってきた。

 

千歌「あれ?むっちゃん達、どうしたの??」

 

 どうやら、千歌のクラスメイトのようだ。よくよく思い出してみたら、ライブとかにいたな。

 

むつ「図書室に本返しに………。」

 

 むつ先輩の言葉で、花丸は受け付けの所まで駆けつける。流石は、図書委員だな。

 

いつき「もしかして、今日も練習??」

 

千歌「もうすぐ地区予選だし」

 

よしみ「この暑さだよ」

 

千歌「ほぼ毎日だから慣れちゃった」

 

 

 千歌の言葉にクラスメイト3人は驚きの表情を浮かべる。休日はあるものの、ほとんど毎日はライブに向けて練習していたからな。それを知らないとなると、驚くのも無理はないか。

 

 

果南「そろそろ始めるよ〜」

 

 

 そろそろ休憩も終わりか。結構、休んだからな。

 

 

千歌「あ、うん。じゃあねー。」

 

 千歌はクラスメイト3人に手を振ったあと、メンバーと共に屋上に向かった。

 

 俺も照明案の記録をやるべく、屋上へと向かおうとした瞬間に背後からむつ先輩に声を掛けられた。

 

むつ「ねぇ。」

 

明「はい??」

 

むつ「Aqoursってほぼ毎日練習してたんだよね。」

 

明「そうですね。」

 

いつき「千歌達って学校存続のために頑張ってるんだよね」

 

明「はい」

 

よしみ「でも、凄くキラキラしてて眩しいね」

 

明「それは俺も同感です。」

 

 

 あのキラキラに『人殺し』である俺は何度も救われたからな。

 

 

明「それじゃあ、俺はこれで」

 

むつ「あ、うん。ごめんね、急に引き止めちゃって」

 

明「いえ、大丈夫です。それでは」

 

 

 俺はぺこりと頭を軽く下げてから、屋上へと向かった。千歌の友達だけあって、良い先輩達だったな〜。さて、今日中には照明案を完成させますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むつ「ねぇ、2人とも。私たちにも何か出来ることってないかな??」




3日以内に投稿しまーす。(期待はするな。)


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『人殺し』が所属するスクールアイドルは周りに影響を与えていた。

区切るシーンがここしか無かったので短めです。


 むつ先輩達と別れたあと、屋上からプールサイドに場所を移してライブの練習をしていると、あっという間に夕方になっていた。

 

千歌「ふぅー、今日も目一杯だったね。」

 

明「あの休憩以降、何回かは休憩入れたけどほぼ練習に時間使ってたからな」

 

曜「でも、日に日に良くなってきている感じがする。」

 

 

 俺も、千歌達が練習している間にほぼ照明案を完成させたので後で千歌達に見てもらおうと思っている。今回の歌に合わせて色んな所に細かくこだわっているため、自信は大アリだ。むしろ、これで却下されたら泣くレベル。

 

 

ダイヤ「歌の方はどうですの??」

 

梨子「花丸ちゃんと歌詞を詰めてから、果南ちゃんとステップ決めてるところ。」

 

 

 どうやら、照明だけでなく作詞や作曲の方も順調のようだ。良かった良かった。

 

 

鞠莉「聴いてる人に、シャイニー出来ると良いんだけど」

 

果南「ま、とにかく今は疲れを取ってまた明日に備えよ。」

 

 

 かなっちの言う通りだな。今日は今までに比べて気温も高かったし、練習もハードだった。本人達は常に楽しそうに笑っていて気付いていないかもしれないが、彼女達は疲労の表情を所々浮かべている。明日もあるし少しでも身体を休ませた方が賢明だ。と、思ってた傍から、かなっちと善子とマリーがプールに飛び込んでた。何してん、アンタら。

 

 

千歌「あ。」

 

明「ん??」

 

 

 

 千歌が上を向いて何かに気付いたのか、声を上げた。なので、俺達も釣られて上をあげると夕日が差し掛かっているオレンジ色の空に綺麗な飛行機雲が浮かんでいた。なんだか、神秘的な景色だった。

 

 

 

善子「なんか…………「君の〇は」に出てきそう…………。」

 

 それ、俺も本気で思ったことだけど、言っちゃダメなやつな。てか、はよプールから上がってこい。風邪ひくぞ。

 

むつ「あ、いたいた。千歌〜」

 

千歌「あれ?むっちゃん??どうしたの??」

 

 図書室で別れたはずのむつ先輩達が、なぜかプールサイドへとやって来ていた。何しに来たんだろう??また差し入れとか持ってきてくれたのかな??

 

 

 だが、俺が想像していた内容ではなく、衝撃的な内容だった。

 

 

むつ「私達も………、一緒にスクールアイドルになれたりするのかなぁ。学校を救うために。」

 

 

 むつ先輩の言葉で俺達は驚きの表情をしてしまったが、話を聞くにどうやら最近、むつ先輩達だけでなく学校を救うために何か力になることがないかと考えるようになった他の生徒もいるらしい。

 

 統廃合の話を聞いて、最初は仕方がないと思っていた人が多かったが、やはり自分たちは浦の星女学院のことが好きだということを改めて実感し、そう考えるようになったという。

 

むつ「だから、学校救ったり、キラキラしたり、輝きたいのは千歌達だけじゃない。私達も一緒に何か出来ることあるんじゃないかって。」

 

 むつ先輩達は嘘偽りもない、真剣な表情でそう言葉に出した。

 

 

 ーーー『しょうがない』

 

 

 ーーー『仕方がない』

 

 

 ーーー『こうなるのは当たり前だ』

 

 

 ーーー『何かしたいけど……………』

 

 

 

 ーーー『どうせ自分たちが何をやったって何も変わらない。』

 

 

 

 恐らく、今までの生徒は統廃合が決まってからはこのような考えで学校生活を送ってきたであろう。実際、クラスや廊下などにも似たような言葉を耳にしたことがある。

 

 

 だが、彼女達は変わった。

 

 

 

 この絶望的な状況の中でも学校を救うために日々、努力し輝きを求めている浦の星スクールアイドル、Aqoursの姿を自分たちの目で見たことによって。

 

 

 

 彼女達の頑張っている姿に影響された、生徒はこう思ったのだろう。

 

 

 

 

 『自分たちも何か、学校を救える為に出来ることはないか。』と。

 

 

 

 

 

 そして、逆に考えてみるとAqoursは学校を救うために頑張っているつもりが、いつの間にか他の生徒が「自分たちも何かしたい!」気持ちにさせた強い影響と刺激を与えていたことになる。

 

 

 

 

明「やっぱり、Aqoursはすげぇな。」

 

 

 

 

 俺はボソッと誰にも聞こえないような小声で呟いた。

 

 むつ先輩達の意思が伝わった千歌は少しの間、俯き嬉しさで涙をポタポタと数滴落とすが、直ぐに笑顔で顔を上げてむつ先輩達に向かって言葉を出した。

 

 

 

千歌「やろう!!みんなで一緒に!!」

 

 

 

 千歌の言葉に、むつ先輩達は嬉しそうな反応をする。自分たちもようやく、学校を救うために何か手伝いをすることができると思ったからであろう。

 

 

梨子「ッッ………………」

 

 

 嬉しそうなメンバーに対して、梨子だけが何か切ないような表情をしていた。

 

 

 理由は勿論、分かっている。

 

 

 ただ、今の状況が状況だから恐らく言うことが出来ないのだろう。俺も出来れば、彼女達に伝えたい所ではあるが梨子と同じく言えない状態でいた。

 

梨子「どうしよう………明くん。」

 

明「少なくとも、今日でアレについて伝えるのはやめおこう。どこかで伝えるタイミングぐらいあるだろ。」

 

梨子「だと、良いんだけど…………。」

 

 

 大丈夫。まだ本番まで少しだけだけど、時間はある。その間に伝えるタイミングぐらいはあるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、思っていた自分が数日前までありました。

 

 

梨子「ねぇ、明くん。マジでどうする??」

 

明「……………とりあえず、土下座しましょ」

 

梨子「えぇ…………(困惑)」

 

 結局、俺と梨子はあの件についてメンバーに伝えることなくライブ当日を迎えてしまったのであった。

 

 

 やばい………………、本気でどうしよう。

 




あっさりと最後にコメディチックにライブ当日迎えましたけど、こんな形のまま入りませんよ笑。
次の話はライブ前日に明が明日に迎えるライブ当日、言い方を変えるならば明とSaint Snowの今後の運命が決まる日なのでそれに向けての内容を書こうと思います。なので是非ら楽しみにしてくれると、作者的にも嬉しいです。(/ω\)

お気に入り・感想・高評価・番外編のリクエストなどお待ちしております∠( ̄^ ̄)


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『人殺し』は幸せ者である。

少しだけ遡って、ラブライブ地区予選の前日のお話

難産すぎて辛かった。


 ラブライブの地区予選のライブが遂に明日へと迫ってきた。

 

 なので、今日の練習は明日に備えて早めに終了となって解散となった。

 

 俺はスムーズ良く後片付けをした後に、着替えをしたあと校門前でスマホを弄りながら待機していた。どうせ、今日も善子達の自主練に付き合うことになるからな。

 

花丸「お待たせずら」

 

明「おう…………。あれ?」

 

 おかしいな。善子とルビィの姿が見当たらないぞ??何かあったのか??

 

明「他の2人は??」

 

花丸「善子ちゃんは用事で、ルビィちゃんは曜ちゃんと一緒に衣装の最終調整するって言ってたずら」

 

明「マジか」

 

 そうなると、今日の自主練は中止か。まぁ…………、明日本番だし逆に良かったと思ってるけど。流石に花丸1人だけで練習っていうのは難しいからなぁ………。

 

明「一緒に帰るか。」

 

花丸「ずら。」

 

 俺と花丸は肩を並べて、他愛のない話をしながら一緒に歩き出した。

 

 

花丸「遂に明日ずらね」

 

 

 少し歩いたところで、花丸が緊張しているのか弱々しく言葉を出した。明日の本番は、浦の星女学院の今後の運命が決まるかもしれない日だからな。緊張するのは当然か。

 

明「そう……だな。」

 

 

 それに、浦の星女学院だけではない。

 

 

 俺にとって………、いや『俺達』にとっても明日のライブはとても重要な日だ。

 

 

 明日のライブで、俺はある行動に出る。

 

 この行動の詳細を知っているのは今のところ零さんと千歌だけだ。他のメンバーにも明日に伝える気ではいるが、良い顔はしないだろうな。実際、千歌にこの件について伝えた時もそうだったし。

 

 それも、そうだろう。

 

 その行動によって、『人殺し』である俺は10年間遠ざけていたSaint Snowである姉ちゃん達の関係に踏み込むつもりなのだから。

 

 

 例え………………、それがどんなに悲惨な結末へと迎えるかもしれないとしても。

 

 

花丸「明くん…………??」

 

明「お、おう。悪ぃ」

 

 花丸が心配そうに俺の表情を伺う。どうやら、良からぬ表情を浮かべていたらしい。

 

 俺ってやつは本当に馬鹿野郎だ。自分のことばっかり考えてしまっていた。明日は俺だけじゃなくAqoursにとっても大切な日だというのに。俺のせいで、彼女を不安にさせてしまうなんて、マネージャー失格だ。

 

 くそ!くそ!くそ!

 

 

 ーーーーーーぎゅっ………。

 

 

明「え?」

 

 俺は自分の先程の行動で恨んでいると、誰かに右手を握られた。それは誰か………言わなくても分かるだろう。

 

 

 俺の右手を左手で、ぎゅっと握っている花丸が俺の顔を見つめていた。

 

 

 かつて、俺が彼女のことを好きだと気付いたあの日と同じく、彼女が握っている左手は暖かった。

 

 

花丸「明くん。少しだけあそこの公園に寄ろう」

 

 花丸は片方の右手でとある場所に指を指して俺に言葉をかける。彼女の指の先には、小さい公園があった。俺はあの公園で1度も遊んだことはないが、花丸が幼い頃に善子と遊んだことのある公園だという。

 

 花丸に引っ張られながら、その公園の中へと入る。この時間帯なのに、遊んでいる子供が誰一人いない。まるで、俺達のために用意したかのように感じる。

 

 そして、俺と花丸は入口の近くにあったベンチに横に並んで座った。

 

花丸「あの滑り台の上で、よく善子ちゃんは『天に帰るの』とか言ってたずら。懐かしいなぁ」

 

 あいつ、幼稚園児の頃からそんな中二病発言してたのかよ。普通にやべぇな。

 

 その後、しばらく花丸と善子のエピソードに付き合っていると………

 

 

花丸「ねぇ、明くん」

 

明「な、なんだ??」

 

 び、びっくりした。唐突に声をかけられたから、少しだけビクッ!?となってしまった。

 

 そんな俺を気にしないで、花丸は言葉を口にした。

 

 

 

 

花丸「そんなに、強がらなくてもいいんだよ。」

 

 

 

明「ーーーーーーーーーーーーは??」

 

 

 俺は、一瞬彼女の言っていることが分からなかった。

 

 彼女の顔を見ると、いつも以上に真剣な表情で俺の事を見ていた。花丸もこんな顔…………するんだな。

 

花丸「明くん、最近寝てないで練習来てたでしょ??」

 

明「そ、そんなことはない。」

 

花丸「嘘ずら。目の下のクマがマルの家に来た時よりも大きいずら。最近、分厚いフレームのメガネを掛けてくるようになったのも、みんなに気づかれないようにするためでしょ??」

 

明「うぐっ…………」

 

 悔しいところではあるが、ほぼ正解だ。ここ最近は、明日のことで頭がいっぱいになってしまって寝れていない。花丸の奴、よく見てんな。

 

花丸「それに明くん、皆に内緒で裏で凄く動いてる。何かを誤魔化してるかのように。………違う??」

 

 花丸は言葉を続ける。どうして、そんなに核心を突いてくるんだ…………この少女は。

 

明「それは…………」

 

 なんとか、嘘の言葉で誤魔化そうとしても言葉が見つからない。それを見て、花丸は「やっぱり………」と呆れたような表情を浮かべながら一言呟いた。

 

 

 

花丸「ねぇ、明くん………。今、明くんが心の中に溜めている想いを全部マルに聞かせて欲しい。」

 

 

 

 

明「俺の…………想い??」

 

 

 

 

 

花丸「うん。明くんの想い。」

 

 

 

 

 ーーー俺の心の中に溜めている想い??

 

 

 

 ーーーそんなの、あるはずがないだろ。

 

 

 

 ーーー逆に、なんだよ。それは。

 

 

 

 ーーーあるとしたら、明日のライブが成功でいますように、という祈りだけだ。

 

 

 ーーーだから、それこそ花丸の勘違いに決まって…………………。

 

 

 

 

聖良『人殺し』

 

 

 

聖良『もう、私達には近づかないで。』

 

 

 

明「ーーーーーッッ」

 

 

 突然、10年前に俺が聖良姉ちゃんに言われた言葉とその時にしていた表情をフラッシュバックで視界に映し出された。

 

 

 しかも、それだけじゃない。

 

 

理亜『姉様。なんだかこの人、気味悪いわ。早く行きましょ』

 

聖良『どうして泣いているのですか??』

 

 

 これは、10年ぶりに東京で姉ちゃん達に再開したとき………。

 

 

聖良『理亜は私の………大切な家族ですから』

 

 

 これは、東京のイベントのあとに襲われていた聖良姉ちゃんを助けたとき………。

 

 

理亜『この小豆ぜんざいを作った人を出してちょうだい。』

 

聖良『すみません、うちの妹が迷惑を掛けてしまったみたいで…………。』

 

 

 これは……………マリーと海の家で手伝いするときに理亜姉ちゃんが押しかけてきたときだ。

 

 

聖良・理亜「………………」

 

 

 そして、最後に忘れたくても忘れられない俺が商店街のライブで事件を起こした時に俺の姿を見て驚愕する2人の姿が映し出された。

 

 

 俺は、恐る恐るその映像に手を伸ばすと…………

 

 

 ーーーピギピギ…………パリン!!!

 

 

 フラッシュバックによって映し出された全ての映像にヒビが入り、そのまま跡形もなく砕け散った。

 

 

 …………そうか。そういうことだったのか。

 

 

 その瞬間、俺は彼女が言っていた『想い』の正体に気付いた。そして、無意識で小声ながらもそれを口にした。

 

 

 

明「…………い。」

 

 

花丸「え?」

 

 

 ーーーーーガバッ!

 

 

花丸「きゃっ………!?」

 

 

 俺は横にいる花丸に抱きつき、そして彼女の胸に顔を埋めてから大声を出して『想い』を吐き出した。

 

 

明「俺、明日が……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怖い!!」

 

 

 

 

 

 

 『怖い』

 

 

 

 

 それが、俺が無意識ながらも心の中に貯めていた『想い』の正体だった。

 

 

 それを口に出してしまった瞬間、まるで蓋を抜かれたかのように、どんどんと溜めてしまっていた想いが次から次へと吐き出される。

 

 

明「怖い、怖いんだ。明日のライブが。」

 

 

花丸「うん。」

 

 

 言葉を出す度に次第に目からは涙が、鼻からは鼻水が、口からは涎が情けなく出続け、顔がぐちゃぐちゃとなっていた。身体も震えている。つい、彼女を抱きしめている力も強めてしまう。

 

 それでも、花丸は嫌な顔を1つ見せずに、こんな情けない俺の頭を優しく撫でながら見守ってくれていた。

 

 

 

明「もし、明日失格したらどうしようって。もし、姉ちゃん達にもう会えなくなったらどうしようって。もし、会えたとしても、またあの表情で………あの目で『人殺し』って言われたらどうしようって考えちゃうんだよぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 まるで、泣きじゃくる子供のように俺は嗚咽を交えながら『想い』を吐き出す。 手で目を抑えるが、それでも涙は止まる気配はない。

 

花丸「うん。明くんは頑張ってる。それはマルたち、みんな分かってるよ」スリスリ

 

 

 花丸はそんな惨めな俺の背中を優しく擦りながら、励ましの言葉を何度も送ってくれた。

 

 

明「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 それから、俺はしばらくの間、彼女の胸を借りてひたすら泣きまくった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「いや、本当にマジですみませんでした。」

 

 馬鹿みたいに泣いた俺は、ようやく落ち着いたあと、自分がこの数十分の間に無意識に犯してしまった罪を理解し、花丸の前で土下座していた。

 

 

花丸「だ、大丈夫だから…………」

 

 

 花丸は苦笑いをしながら俺の罪を許してくれるが、俺は納得出来なかった。全然、大丈夫じゃないだろ。

 

 なんだよ、いい歳した高校生が好きな女の子に抱き着いて、えんえんと子供みたいに泣いてしまうなんて…………。彼女の制服の胸部分を見てみろよ。俺の涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃだよ。マジで申し訳ない。

 

 

 とにかく恥ずかしい!!マジで恥ずかしい!!この場からダッシュして逃げたい!!思い出すだけで黒歴史決定だよ!!死にたいと心の底から思ったのはコレで初めてだよ!!

 

 

花丸「スッキリした??」

 

 

 花丸の言葉に、俺は無言ながらもコクリと頷く。

 

 好きな女の子の前で醜態は晒したものの、溜まっていた想いを全部吐き出すことができたので、今はスッキリした気持ちとなっている。

 

 

花丸「なら、良かったずら。これだけは、忘れないでね。明くんは1人じゃない。マルもいるし、ルビィちゃんや善子ちゃん。他のAqoursのメンバーも明くんの味方ずら!!」

 

 

 花丸は、そう言ってにぱぁ〜と笑顔となった。彼女の笑顔に俺はドキリと胸が鳴った。

 

 

 何があってもその言葉は絶対に忘れないでおこうと、俺は心の中で誓った。

 

 

明「花丸、ありがとうな。」

 

 

花丸「ずら〜♪」

 

 

 俺は、少し照れながら花丸にお礼の言葉を言って、今度は俺が彼女の頭の上を撫でた。色々とあったものの、彼女のおかげで気持ちが随分と楽になった。その事実だけは変わらない。

 

 

 

 

 

 

 俺は、ますます花丸のことが好きになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつか、この気持ちを彼女に伝えたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、花丸と別れて家に帰ってきた俺は玄関の扉を開けて家の中へと入る。

 

 

明「ただいま。」

 

 言ったものの、家には俺しかいないのだから返ってくる言葉なんてない……………と思っていた。

 

零「おかえり〜♪」

 

 まだ北海道にいるはずの零さんが両手にお土産袋を持ちながら俺の目の前に姿を現した。俺は目を丸くして彼女に声をかける。

 

明「零さん!?どうして!?」

 

 予定では帰ってくるのは明後日の筈じゃ……。

 

零「明ちゃん達のことが心配になって帰ってきちゃった。」

 

明「そんな………、俺の事なんて気にしないでいいのに。」

 

 せっかくの年に1度しかない社員旅行なのに………。俺を優先してしまうなんて、勿体ないじゃないか。申し訳ない気持ちになるんだけど。

 

零「そんなこと、言わない!!」ペチン

 

明「痛っ!!」

 

 むぅーと、頬を膨らませた零さんは俺に目掛けてデコピンした。ペチン!!と気持ちよくいい音が部屋中に鳴り響く。めちゃくちゃ痛いです。

 

 

零「明日は明ちゃん達にとって、とても大切な日なんでしょ。それを見届けないで、何が家族よ。絶対に観に行くんだから!!」

 

 

 零さんはそう言って、ドヤ顔でブレードを数本用意していた。どうやら、北海道にあるスクールアイドルショップで購入したらしい。ぶんぶんとブレードを可愛らしく振りまくる零さんの姿を見て、ぷっとつい吹き出してしまった。

 

 その姿を見て、振り回すのを辞めた零さんは一言だけ呟く。

 

零「明ちゃんは、アレだね。なんだか前に通話した時と違っていい感じで落ち着いてる。何かいい事でもあった??」

 

 さ、流石は零さんだな。すぐに分かるなんて。

 

零「当然よ。私を誰だと思ってるのよ。」

 

 零さんはまたしてもドヤ顔して答える。ハハ………、やっぱりこの人には敵わないや。

 

 

明「部屋で着替えてくる。すぐにご飯の支度するから待ってて」

 

 

 俺はそう言って、自分の部屋に向かおうとした。

 

 

零「明ちゃん。」

 

 

明「ん?」

 

 

 リビングの扉を開けたところで、零さんに声を掛けられる。なので、零さんの方に振り向くと、彼女はニヒッと笑いながら俺に向かってビシッと拳を突き出してこう言葉を出した。

 

 

 

零「大丈夫。明ちゃんなら、きっとやり遂げれる。だから、自信持ちなさい!!」

 

 

明「ーーーーーッッ!!」

 

 

 零さんの言葉に、俺は胸がジーンと熱くなった。数時間前に、あんだけ涙を流したのに、またしても泣きそうになった。俺は何も言わず、零さんと同じくニヒッと笑って拳を彼女に向かって突き出した。

 

 

 この時、俺は零さんと家族になれて本当に良かった。と改めて実感した。

 

 

 

 

 ありがとう、零さん。

 

 

 

 

 あぁ、俺はなんて幸せ者なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』である俺が………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなにも素敵な家族と仲間に出会えたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか、明日は上手くいきそうな気がするな。そう思いながら、俺は自分の部屋へと向かった。

 




次回もお楽しみに。


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『人殺し』の運命が決まるライブまであと…………。

明「よし。」

 

 俺は、自分の部屋に置いてある鏡を見ながら身だしなみを整える。制服は、昨日の夜に丁寧にアイロンをかけておいたからシワが1つもなく、まるで新品のように綺麗だ。

 

 今日はラブライブ地区予選のライブ当日。浦の星女学院の今後の運命を背負っているAqoursにとって、そして『人殺し』である俺にとっても凄く大事な日だ。

 

 緊張はとてもしている。心臓も馬鹿みたいに鳴ってるほどにな。けど、自然と落ち着いている。

 

 

 これも、花丸と零さんのおかげかな。

 

 

 目の下にあった酷いクマも完全ではないが、ほぼ無くなっているし顔色も悪くない。むしろ、前より活き活きしているかのように感じられる。

 

 

明「っし!!行きますか!!」

 

 

 ベシッと頬を叩いて気合いを入れる。そして、机の上に置いてある鞄を持って部屋から出ていき、そのまま玄関まで移動する。

 

零「もう行くの??」

 

 靴を履いている途中に、お洒落な格好をした零さんに声を掛けられる。

 

明「うん。色々と準備しなきゃだから」

 

零「そっか。私もすぐに向かうからね」

 

明「ありがとう。」

 

 靴を履き終えた俺は立ち上がって玄関の扉のドアノブに手を触れようとした瞬間

 

 

 ーーーーガバッ

 

 

明「え?」

 

 急に背後から零さんが、俺を包み込むかのように抱き締めた。意外にもそこそこある彼女の胸が、背中にダイレクトに当たり少しだけドキリとしてしまう。

 

 

 

 

 

 

零「信じてるから」

 

 

 

 

 

 

 零さんは、ゆっくりと俺の背中でそう言葉を告げると俺から離れてリビングの方へと向かって行った。

 

 

 

 たった短い一言ではあるが、俺はこの一言に零さんのこれまでの俺に対する想いが充分に積もられていると感じた。

 

 

 

明「…………………ありがとう。零さん」

 

 

 

 

 俺はぺこりと頭を下げたあと、玄関の扉を開けて集合時間である沼津駅へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜名古屋駅〜

 

 

 沼津駅からガタンゴトンと数時間、電車に揺られた俺達Aqoursは遂に、ライブ会場のある名古屋駅へと辿り着いた。

 

 他の生徒達と集合する場所に向かっている途中に、花丸はある建物を見つけ目をキラキラさせながら指を指す。

 

花丸「わぁ〜、あれは何ずら??」

 

 彼女が指を刺したのは、全長6メートル以上ある女性の人形の建物だった。俺は、スマホを見ながら彼女の質問に答える。

 

明「あれはナナちゃん人形っていうんだって。花丸、その人形の足元まで来てみ」

 

花丸「ずら??」

 

 俺の指示通りに、花丸はナナちゃん人形の足元まで移動する。すると、ナナちゃん人形の鼻の下から花丸の頭に目がけてブオォーと白い煙が発射された。

 

 

花丸「だぎゃああああああ!!!」

 

 

 白い煙をモロに喰らった花丸は、嬉しそうな表情へと変わる。ちなみに、この様子はバッチリとスマホで録画してるのであとで個人的に純粋に楽しもうと思います。

 

ルビィ「だぎゃあ??」

 

 やったな、ルビィ。俺の想い人で君の親友は感動レベルが一定数超えると「ずら」から「だぎゃあ」に進化すると判明したぞ。お互いに覚えておこうな。

 

 

善子「これが来たるべき、聖戦の地!」

 

 

 言いたいことは分かるけど、そんな厨二病発言を大都会のど真ん中で大声で言うのやめなさい。あと、その黒い服!!見てるこっちまで暑くなるわ!!

 

 その後、なんとか善子に黒い服を脱いでもらうよう説得しながら歩く俺達。名古屋駅の構造が思ったよりも複雑すぎてなかなか待ち合わせ場所へと辿り着けなかったが、マップを見たり駅員さんに詳しく聞いたりして、ようやく着くことが出来た。

 

曜「むっちゃん達、来てないね」

 

千歌「ここで合ってるはずなんだけど。」

 

 千歌と船長かキョロキョロとむつ先輩達を探す。その時の梨子が気まづそうな表情を浮かべていたのを俺は見逃さなかった。

 

 

 そうなんだよなぁ…………、結局あの件についてこの日まで伝えること出来なかったからな。本当にどうしよう………。

 

 

むつ「千歌〜」

 

 当初の予定より少しだけ遅れているがむつ先輩達3人がやって来た。どうやら彼女達も、道に迷っていたらしい。

 

 

 でも、あれ??3人………だけ??

 

 

曜「他の子達は??」

 

 船長も気になったのか、むつ先輩に質問する。俺の予想だが、もっと人数いるかと思ってたんだけどな。

 

よしみ「うん………、それなんだけど……実は…………」

 

 あ、察し。まぁ、そうだよな。むつ先輩が周りの生徒達に声を掛け始めのも本番の数日前らしいしな。予定とか入って来れなかった人が多かったのだろう。ここまで来るのにお金とかもかかるし。

 

千歌「そっか。」

 

曜「しょうがないよ。夏休みなんだし」

 

 千歌と船長も俺と同じ考えに辿り着いたのか、少しだけ寂しそうな表情をしながらも納得していた。

 

よしみ「私達は何度も言ったんだよ??」

 

明・千歌・曜「ん??」

 

 

 …………どういうこと??

 

 

いつき「でも…………そうしたら………」

 

 

明・千歌・曜「え?」

 

 

むつ「みんな〜、準備はいいー??」

 

 

生徒「イェーイ!!!!」

 

 

 むつ先輩の言葉で、いつの間にか浦の星女学院の制服を着た生徒が手にブレードを持ってゾロゾロと集まっていた。あれ?これ見た感じ……………

 

むつ「全員で参加するって!!」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 ですよね。だって、クラスの子達みんな来てるもん。2年生も3年生も相当な数いるし…………。やっぱり全校生徒来てたか。

 

千歌「みんな…………」

 

むつ「びっくりした??」

 

千歌「うん。全員でステージで歌ったら、絶対にキラキラする!!学校の魅力も伝わるよ!!」

 

 千歌は嬉しそうに言葉を出す。

 

 

 これは………まずいな。

 

 

 俺は、梨子の方に顔を向ける。すると、彼女もそう思ったのか、目が合ったあとコクリと頷く。

 

 

 

 そして……………

 

 

 

明・梨子「ごめんなさい!!!」

 

 

 

 

 梨子は頭を深く下げ、俺は情けなくも土下座をして彼女達に謝罪の言葉を述べた。

 

 

千歌「梨子ちゃん??明くん??」

 

 

 千歌はポカンとした表情で首を傾げている中、俺と梨子は彼女達に申し訳なさそうに言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この全員でステージの上に…………………立つことは出来ないということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜会場前〜

 

 

 俺達は、生徒達と別れたあとライブ会場の目の前までやって来た。

 

 その会場にはデカデカと

 

 

 『ラブライブ!東海地区予選会場』

 

 

 と、書かれている布が付いていてかなり目立っていた。

 

 それを眺めながら、俺は先程のむつ先輩達との会話を思い出す。

 

 

 

 

 

梨子『実は、歌えるのは事前にエントリーしたメンバーに限るって決まりがあったの。』

 

千歌『そんな』

 

明『それに、ステージに近づいたりするのもダメみたいで…………。本当にすみません。もっと早く言えば良かったんですけど』

 

千歌『ごめんね、むっちゃん。』

 

 

 千歌がAqoursの代表として彼女達に頭を下げて謝罪する。Aqoursの手伝いをするためにわざわざ遠い名古屋まで足を運んでくれたのに、結局何もすることが無かったとなれば、少なくとも良い気はしない。何を言われても、こっちは何も言い返す権利はない。

 

 

 だが、むつ先輩達は怒るどころか、むしろ申し訳なさそうな表情をしながら言葉を出す。

 

むつ『いいの。いきなり言い出した私達も悪いし。』

 

いつき『じゃあ、私達は客席から宇宙1の応援してみせるから』

 

よしみ『だから、宇宙1の歌を聞かせてね!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「宇宙1の歌…………か。」

 

 

 千歌先輩も俺と同じく思い出していのかボソッと先程言われた言葉を口に出す。すると、曜船長と梨子が微笑みながら彼女の両肩にそれぞれ手を置いていた。

 

 3年生組であるダイヤちゃんとマリーと果南は、既に覚悟を決めているような表情を浮かべていた。あの3人に至っては特に心配は無さそうだ。

 

 逆に心配するのは1年生組である花丸と善子とルビィの3人か。他のメンバーと違って不安そうな表情をしていた。まぁ、内気な3人にとっては少し厳しいものか。

 

 

明「お前らなら大丈夫だって。だから、自信持てよ。」

 

 

 俺は拳を出して彼女達にそう言う。すると、花丸達も少しは安心したのか、自分達の拳を出してグータッチをした。表情を見た感じ、もう大丈夫そうだ。

 

 そして、俺達10人は互いにそれぞれのメンバーの顔を見つめ合ったあと千歌を先頭に会場の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aqoursと『人殺し』の運命が決まるライブまであと僅かへと迫っていた。




遂にここまで来ちまったよ。


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『人殺し』は1年生3人に感謝する。

 〜茶房菊泉〜(理亜視点)

 

 

 遂に、この日を迎えてしまった。

 

 

 今日は、ラブライブ東海地区予選のライブ当日。

 

 

 つまり………、浦の星女学院のスクールアイドルであるAqoursがライブを行う日でもある。

 

 

理亜「姉様…………入るわよ」

 

 

 私はコンコンと数回ノックをしたあとに、姉様の部屋へと入る。すると、姉様はベットの上で横になっていて天井を眺めていた。良かった………。どうやら、自虐行為はしてなさそう。

 

 

聖良「…………………」

 

 

 

 今の姉様の姿は以前とは見違える程に変わってしまった。サラサラで綺麗だった姉様の髪も手入れしていないのか、ボサボサだった。目の下のクマもかなり酷いし、何より目に生気が宿っていない。前に比べて、頬も痩せこけている。両腕には、所々赤く染った包帯が痛々しく巻かれていた。

 

 

 姉様の知人が、この姿を見てもきっと姉様とは気付かない。それほどまで見違えてしまった。私も姉様の姿を見るだけで、心が痛くなってしまう。はち切れてしまいそう

だ。

 

理亜「姉様………」

 

聖良「……………」

 

 姉様は、ちらっと私の方を見たけどすぐに天井の方へ視線を戻してしまった。

 

 

 

 この時点で、私は泣きそうになってしまう。好きな姉様に見捨てられてしまったように感じてしまうから…………。

 

 

 

 けど、ここで折れたらダメだ。しっかりしろ、私!!!

 

 

 そう、心の中で何度も何度も復唱した私はいつの間にか浮かべていた涙をゴシゴシと腕で拭き取り、横になっている姉様の上半身を強引に起き上がらせる。

 

 

 そして、私はスカートのポケットからスマホとイヤフォンを取り出す。

 

 

 その後、スマホでラブライブの公式サイトを開きながら、イヤフォンプラグをスマホに繋げる。

 

 

理亜「姉様…………付けるわね」

 

 

 私は姉様にそう言ったあと、イヤフォンの左側部分を姉様の左耳に付けようとした。何か抵抗してくるかもしれない、と思ってたけどそんなことは無く、すんなりと付けてくれた。もちろん、右側部分は私の右耳に付ける。

 

 

 

理亜「………よし!」

 

 私は覚悟を決めて、ラブライブの公式サイトのトップにある『ラブライブ東海地区予選中継』をポチッと指で押すのと同時にしわくちゃとなっている1枚の紙を開く。

 

 

 『Aqoursのライブ、中継でも良いから絶対に姉さんと一緒に見てくれ。』

 

 

 この文章を書いて送ってきたのは、きっとあいつで……………あいつは間違いなくAqoursにいるはずだ。奥山零という偽名を使って。

 

 どんな考えがあって……………どんな想いを持って、あいつがこの紙を私達に送ってきたのかは分からない。

 

 

 姉様を救うためなのか…………いや、もしくはあいつの罠で私達に長年の復讐をするために送ってきたのかもしれない。

 

 

 そのような考えをしてしまうため、私はこの日が来るまでに何度も何度も慎重に考えた。この紙に………………あいつの指示に従うのか従わないのか。

 

 

 そして、昨晩。私は日に日に変わり果てていく姉様の姿を見て決心した。

 

 

 

 

 あいつの…………明の指示に従おうと。

 

 

 

 

 さっきでも言った通り、もしかしたらこれは罠かもしれない。この判断によって、何をやっても取り返しがつかない結果に陥るかもしれない。そのせいで、私はこの残りの人生を一生後悔して行き続けることになるかもしれない。

 

 

 

 それでも、私は明の指示に従う。

 

 

 

 

 この、絶望的な状況の中で……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1%でも、姉様を救えるきっかけが見つかる可能性が生まれるのなら…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロード中となっていたスマホの画面には、いつの間にかひとつの大きいステージが映し出されていた。

 

 

 

 そして、アナウンスがステージ中に鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 『只今よりラブライブ!東海地区予選を開催します。』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜控え室〜(明視点)

 

 

 現在、俺はAqoursの控え室でパソコンを開き、今日のライブで行う音響と照明の操作を細かく見直して頭の中でシュミレーションをしていた。俺の隣では花丸とルビィがメイクをしており、善子は髪の毛を結び直している。

 

ルビィ「実はまだ、信じられないんだ。今、こうしてここにいられることが」

 

 ルビィはメイクをしながらそう語る。元々、ルビィは姉であるダイヤちゃんと共にスクールアイドルは大好きだが、内気で人見知りで、男子が苦手な女の子だ。

 

 失礼な話、アイドルには向いていない。

 

 だが、そんな自分がまさか憧れであったラブライブに出れることに驚きが隠せれないのだろう。

 

花丸「夢みたいずら」

 

 花丸もルビィの言葉に同意する。

 

 花丸も、ルビィ程ではないが内気な性格だ。友達もルビィと出会う前まではずっと1人で図書室で本を読んでいた女の子だ。

 

 今までは、表で行動するよりかは裏方に徹していた彼女は自分がこうしてスクールアイドルに入部して、こんな大きな大会に出るなんて思ってもいなかったのだろうな。

 

善子「何今更言ってるの??今こそがリアル、リアルことが正義」

 

 何か言葉を送ろうとした瞬間に、善子がいつものお団子を結いながら厨二病らしき言葉を出す。全く…………こいつって奴は。メイクしてる2人も何言ってんだ??みたいな表情してるだろ。

 

 

善子「ありがとね」

 

 

 え??今、この子なんて言っt……………

 

 

 ーーーガバッ!!

 

 

明・花丸・ルビィ「うわっ!?」

 

 

 善子から思いがけない言葉を耳にしたあと、善子は俺と花丸とルビィを覆うように抱きつく。うおぉぉぉぉぉぉ!?こいつ、何してんの!?何かとは言わないけど、当たってる当たってる!!羞恥心というものがないのか、この堕天使は!!?

 

 ついでに、真ん中にいた花丸はダイレクトに顔が善子の胸に埋めていた。う、羨ましいなんて思ってないんだからね!!

 

 善子「さ、あとはスクールアイドルになってステージで堕天するだけ!」

 

ルビィ「うん!」

 

花丸「たひょはれのりはいひゃふら(黄昏の理解者ずら)」モフモフ

 

明「いや、花丸よ。なんて言ってるか全然分からん。」

 

 あと、善子。早く離せ。じゃなきゃ、理性が持たん。あ、普通に離した。

 

 

善子「行くわよ!!堕天使ヨハネとリトルデーモン!!ラブライブに〜降☆臨!!」

 

 

 はは…………。やっぱり、こいつ………すげぇ奴だわ。いろんな意味で尊敬する。

 

 

 

明「こっちこそ、ありがとうな」ボソッ

 

 

 

善子「ん?明、何か言った??」

 

明「別になんも。早く、善子もメイクしろ。」

 

善子「善子じゃなくてヨハネ!!」

 

明「はいはい。ヨハネヨハネチョココロネっと………。」

 

善子「むきーーーーーーーー!!!」

 

花丸・ルビィ「あははは!」

 

 

 

 俺と善子のやり取りに花丸とルビィは声を出して笑う。それに釣られて俺と善子も笑った。

 

 

 あぁ………、こいつらといると、どうしてこんなにも居心地が良いのだろうか。

 

 

 

 あと、さっきの言葉………3人の前で言葉として出すのは少しばかり恥ずかしいから心の中で改めてはっきりと言わせてもらう。

 

 

 

 

 本当にありがとう。3人とも……………。

 

 

 

 

 こんな『人殺し』と一緒にいてくれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、3人に感謝の言葉を送りながら、何故か儀式の準備をし始めた善子の頭に目掛けてチョップを繰り出した。

 

 

 

善子「きゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準備が完了した俺達は、途中で3年生3人と合流したあとに入口へと向かっていると入口の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

 この声は…………千歌か??

 

 

 

 そして、入口付近まで近づくとやはり声の主は千歌だった。彼女の近くには船長と梨子もいる。

 

 

 

 千歌はそばに俺たちがいることを気付かないまま、両手を広げながら自分の想いを口にした。

 

 

千歌「これからも、色んなことがあると思う。嬉しいことばかりじゃなくて辛くて大変なことだっていっぱいあると思う。でも、私、それを楽しみたい!!全部を楽しんで、皆と進んでいきたい!!それがきっと輝くってことなんだと思う!!」

 

 

 辛いことも大変なことも全てありのままで受け止めて、それをメンバーと共に楽しみながら進んでいけば良い……………ということを千歌は伝えたかったのだろう。少なくとも、俺はそう思った。

 

 

 

 流石は俺たちAqoursのリーダーだな。言うことが一味………いや二味ほど違う。心にジーンと響いちまったよ。

 

 

 

ダイヤ「そうね。」

 

 

 ダイヤちゃんの言葉に、ようやく2年生組3人は俺達の存在に気付く。

 

 

鞠莉「10人もいるし♪」

 

 

千歌「10人だけじゃないよ」

 

 マリーの言葉で、千歌はそう答えながら入口の扉に手を触れる。腕時計を見ると、そろそろAqoursの番だった。

 

 

 いよいよか………………。

 

 

 

 

千歌「行くよ!!!」

 

 

 

 

 リーダーの言葉に、俺たち全員は頷く。皆、覚悟が出来ている表情を浮かべていた。

 

 

 千歌も同じく顔を頷けたあと、彼女は入口の扉を勢いよく開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遂に、Aqoursと俺の運命が決まるであろうライブが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 




遂に、ここまで来ました。
予定では、あと5話か6話ほどでひとまず完結予定です。
お気に入り・感想・高評価お待ちしております(*´ ∨`)


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『人殺し』は遂に…………。

わっしょい☆


2019/11/30に修正しました。


 俺を除いた9人が周りの観客席によってきらきら輝いているステージに上がり横に1列へと並ぶと同時に、俺は調光室へと入ってインカムを付けて席に座る。そして、真ん中にいる千歌に照明を当てた。

 

 

 

 それを合図に、彼女は1歩前に出て語り始める。

 

 

千歌「今日は皆さんに伝えたいことがあります!!それは………私たちの学校のこと!!街のことです!!」

 

 

 地区予選に出場するスクールアイドルは約10分間ほど、ライブを行う前に自己アピール的なスピーチをするという決まりがあるらしい。

 

 なので、俺達は数日前に話し合いをして、このスピーチでAqoursが結成された経緯、自分たちが住んでいる内浦の魅力、そして………自分たちが通っている浦の星女学院についてを演劇風に語ろうという形で決まった。

 

 

千歌「Aqoursが生まれたのは、海が広がり、太陽が輝く内浦という街です。」

 

 

 千歌はステージを走りながら、内浦について語り始める。

 

千歌「小さくて、人も居ないけど、海にはたくさんの魚がいて、いっぱいみかんが取れて………暖かな人で溢れる街。」

 

 

 それが………俺達が思う内浦の魅力。

 

 

 千歌が言っている通り、内浦でとれる魚はどれも新鮮で美味しいし、みかんも太陽のめぐみをたっぷりと浴びているからか、とても甘い。千歌がくれるみかんとか特に甘いから俺は大好きだ。

 

 

 内浦に住んでいる人も皆……すごく暖かい。

 

 街の人が暖かかったからこそ、俺達は1000個のスカイランタンを使って『夢の夜空を照らしたい』のPVを完成することが出来た。あのPVがきっかけで、Aqoursの知名度は莫大に上がった。

 つまり、今こうしてAqoursがラブライブのステージに立てているのは俺たち10人の力だけではなく、内浦に住んでいる人達の協力もあったからということ。むしろ、逆に考えてみれば、あの時に街の住民の協力が無かったら、今のAqoursは無かったに等しい。

 

千歌「その街にある小さな学校。今、ここにいるのが、全校生徒!!」

 

 千歌は手を伸ばして、青く光らせているブレードを持った浦の星女学院の生徒全員が固まって座っている場所を伝える。

 

千歌「そこで私達は、スクールアイドルを始めました。」

 

 ここで、千歌から船長に照明を当て直す。

 

曜「アキバで見たμ'sのようになりたい!!同じように輝きたい!でも…………」

 

千歌・曜「作曲!?」

 

 はい、ここでドヤ顔でスタンバイしているダイヤちゃんにも照明を当てる。

 

ダイヤ「そう。作曲が出来なければ、ラブライブには出られませんわ!!」

 

千歌・曜「ハードル高っ!!」

 

 いや、マジでドヤ顔してんな、あの人。当時、絶対にそんな表情で言ってなかっただろ。

 

曜「そんな時、作曲のできる少女、梨子ちゃんが転校してきたのです!」

 

千歌「奇跡だよ!!」

 

 今度は、梨子に照明を当てる。てか、よくよく考えたら本当に奇跡だよな。偶然にも程がある。

 

梨子「ごめんなさい!!」

 

千歌・曜「ガーン」

 

観客「あははは!!!」

 

 梨子が頭を下げ、千歌と船長が古くさいリアクションを取ると観客席から笑い声が聞こてえくる。あれ………ウケたんだ。

 

千歌「東京から来た梨子ちゃんは、最初はスクールアイドルに興味無かった。東京で辛いことがあったから…………」

 

 まだ梨子が東京で、音ノ木坂学院にいた時

、梨子はピアノでスランプに陥り、コンクールでは弾けなかった過去がある。それ以降、彼女はピアノを楽しむことは出来なくなっていた。本当は大好きなはずなのに。

 

 それでも彼女は変わった。

 

 1人のオレンジ頭の女性がしつこいほど梨子にスクールアイドルに勧誘してきたおかげで彼女は再びピアノと向き合うことができるようになった。

 

 その女子の言葉に続けて、梨子は飛びっきりの笑顔とともに大声で声を出した。

 

 

梨子「輝きたい!!」

 

曜「その想いは梨子ちゃんの中にもあった。……………そして」

 

 

 次に、1年生3人組にそれぞれの色に合わせて照明を当てる。3人共、頑張れよ。

 

 

 

花丸「お、おら。私……運動苦手ずら……だし。」

 

 

 黄色の光を当てられた花丸はオドオドとした表情で方言を出しつつ、なんとか言葉出していた。

 

 

ルビィ「ルビィ、スクールアイドル好きだけど人見知りだから………。」

 

 

 赤い光を当てられたルビィも悲しそうな表情を浮かべて自分の心境を語る。

 

 

善子「堕天使ヨハネ、ここに降臨!!私の羽を広げられる場所はどこ??」

 

 

 うわぁ………、あのバカ堕天使やりやがった。いつの間に観客席の後ろに移動したんだよ。本当に空間移動でもしたん!?観客の皆さんも苦笑いしながら拍手してるし………。とりま、はよ帰ってこい!!

 

 

千歌「こうして6人になった私達は、歌を歌いました。街のみんなと一緒に」

 

 

 あれは本当にいい思い出だ。この先、忘れることは一生ないだろう。

 

 

梨子「そんな時、私達は東京のイベントに出ることになった。」

 

花丸「未来ずらー!!」

 

ルビィ「人がいっぱい!!」

 

善子「ここが魔都、東京!!」

 

 

 『夢の夜空を照らしたい』のPVが好評で、東京のイベントに呼ばれたんだよな。そして、このイベントによって俺は姉ちゃん達…………Saint Snowの存在を知って10年ぶりに再会した。

 

曜「ここで歌うんだね。頑張ろう!!」

 

 

 

千歌「でも、結果は……………最下位。」

 

 

 

 千歌は悲しい表情を浮かべて言葉を出す。そして、セリフに合わせてそれぞれ1人ずつに照明を当てる。

 

 

千歌「私達を応援してくれた人は……0」

 

曜「0」

 

 

梨子「0」

 

 

ルビィ「0」

 

 

花丸「0」

 

 

善子「0」

 

 

 

 ミス1つなく、やり遂げたあのライブでも0という結果にどれだけ絶望したのだろうか。マネージャーである俺ですら、相当ショックを受けたのだから実際に踊った彼女達はその何倍もショックを受けただろう。

 

 

ルビィ「スクールアイドルは厳しい世界」

 

花丸「そんな、簡単では無かったのです。」

 

 

 あの時、帰りは別々だったから花丸から聞いた話になるが、他のメンバーは沼津に着いた時にダイヤちゃんによってスクールアイドルの世界は厳しいということを教わったという。

 

 船長は座り込んでいる千歌のそばまで駆け寄り、コソッと呟く。

 

 

 

 

 千歌ちゃん、やめる??…………と。

 

 

 

 

 千歌はスクールアイドルを始めようとする前は、特にやりたいものが無くすぐに諦めるような性格だったらしい。今の彼女の姿を見ると全く考えられないことだが。

 

 

 しかし、そんな彼女は大声を出して当時、彼女が心の中に閉まっていた気持ちを吐き出す。

 

 

 

 悔しい………と。

 

 

 

 何度も何度も悔しいと口にする。

 

 

 

 

 なぜ、悔しいのか。理由は1つしかない。

 

 

 

 

千歌「0だったんだよ!?悔しいじゃん!!」

 

 

 

 負けて悔しいという感情を抱くのは当たり前だ。俺だって、空手の試合とかで負けると悔しい。本気で挑んでいるというなら尚更な。

 

梨子「その時、私たちの目標が出来ました。」

 

 

曜「0から1へ。」

 

 

花丸「0のままで、終わりなくない」

 

 

善子「とにかく前に進もう」

 

ルビィ「目の前の0を1にしよう!!」

 

千歌「そう、心に決めて。」

 

 その目標が出来たことによって、意気消沈だったAqoursは活気を取り戻した。まぁ、その時俺はいなかったけれども。

 

 

梨子「そんな時、新たな仲間が現れたの!」

 

 

 このタイミングで、セリフに合わせて3年生組1人ずつに照明を当てる。

 

 

ダイヤ「生徒会長の黒澤ダイヤですわ」

 

 

明「ぶふっ………w」

 

 

 赤色の光に照らされた彼女の姿を見て思わず俺は吹き出してしまった。少し前に彼女からどういうポーズで登場したら良いのかと相談されたので、軽い冗談でセクシーポーズと言ったら本当にしちゃったんですよ。まさか、本当にするとは思わんやん。やっぱり、あの人ポンコツだわ。

 

 

果南「スクールアイドルやるんだって??」

 

 

 緑色の光に照らされたかなっちは腕を組んで、少し上から目線で言葉を出す。まぁ、実際に学年でもスクールアイドルでも先輩だしな。

 

鞠莉「Hello、everybody♪」

 

 

 紫色の光に照らされたマリーは両手を広げ、ウィンクをしながら相変わらず発音が良い英語で観客の人達に挨拶する。

 

 

曜「以前、スクールアイドルをやっていた3人はもう一度手を繋いで私たちは9人になりました。」

 

 

明「よし。」

 

 

 マリーの挨拶が終わったところで、俺はインカムを外し一旦スタッフさんにこの場を任せる。

 

 そして、調光室を出て俺は彼女達が立っているステージへと向かう。

 

 向かっている途中、ステージからは彼女たちの声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

花丸「そして!!私達Aqoursにはもう1人のかけがえのない仲間がいます!!」

 

 

 

 

 

 花丸の言葉で、観客からはザワザワとし始める。そりゃあ、そうだ。スクールアイドルのサイト内だと、Aqoursのプロフィールには9人しか載っていないのだから。

 

ルビィ「その人は、男の子にも関わらずAqoursが結成されて間もない頃からずっと陰で私達のことを支えてくれていました。」

 

 

善子「その人がいてくれたおかげで、今の私達がいると言っても過言ではありません!!」

 

 

 ルビィに続けて、善子も言葉を出す。このセリフ少しは言い過ぎだから変えて欲しいと何度も言ったんだけどな。彼女達はそれを許してくれなかった。

 

 

 照れさで、頬が熱くなっているのを感じながら俺はステージのすぐそばまでやってきた。

 

 

 あとは、千歌の言葉に合わせて行動すれば良い。

 

 

 タイミングを見計らいながら、しゃがむと同時に俺は数日前の千歌とのやり取りを思い出した。

 

 

 〜数日前〜

 

 

千歌『明くん………それ本気で言ってる??』

 

 

明『……………あぁ。』

 

 

千歌『でも、そんなことしたら………』

 

 

明『分かってる。それがどれだけ危険な賭けかということは………』

 

 

千歌『じゃあ!?』

 

明『でも、俺決めたんだ。Aqoursに受け入れてもらったあの日からずっと。』

 

 

千歌『ーーーーーーーッッ』

 

 

明『だから、お願いします。ーーーーーーする時は俺がさっき言った通りにやって欲しい。』

 

 

千歌『もう〜、しょうがない後輩くんだなぁ。分かったよ。』

 

 

明『ッッ!?』

 

 

千歌『その代わり、ちゃんとやり切るんだよ??千歌との約束だからね。』

 

 

 

明『あぁ!!ありがとう!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーダーと約束したんだ。絶対にやり切るって。

 

 

 そろそろか………と、いつでも出れるように準備しているとステージに立っている千歌と目が合った。

 

 

 

 そして、彼女は何も言わないが目線で俺にこうメッセージを送る。

 

 

 

 

 

 

 『本当に……………いいんだね??』

 

 

 

 

 

 

 俺はそれを肯定の意味を込めてはっきりと頷く。それを見た千歌も覚悟を決めたのか彼女も頷くと前を向いて言葉を出した。

 

 

 

 

 千歌「それでは、登場してもらいます。Aqoursのマネージャーをしてくれている…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さぁ、始めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この憎くて醜い哀しき『人殺し』の最後の足掻きを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は千歌が発する言葉と同時にステージに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「1年生の鹿角 明くんです!!!」




ようやくここまで来れたよぉ(歓喜)

お気に入り・感想・高評価お待ちしております!!


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『人殺し』達が送るMIRAI TICKET

先に言っておきます。
Saint Snow推しである読者の皆様には本当に申し訳ない描写が中盤辺りで何点かあります。
作者もSaint Snow推しであるため、今回の話、かなりの難産ゆえに書いてて心が凄く痛くなりました。

本当にすみませんでした<(_ _)>〈 ゴン!〕


千歌「1年生の鹿角 明くんです!!」

 

 

 

 千歌の言葉に合わせて、俺はステージに足を踏み入れる。

 

 

 

 踏み入れたあと、俺は彼女達の方に目掛けてロンダートからの連続バク転をしながらステージ中心へと向かう。そして、最後に綺麗なムーンサルトを披露して彼女達を飛び越してからステージのど真ん中へと着地した。

 

 

 

 今度の俺は、フードも帽子もメガネもサングラスもタオルなど、身を隠すためのアイテムは一切付けていない。だから、きっと俺の姿を見ればあの二人はすぐに気付くだろう。

 

 

 

 そして、どうして俺はこんな登場をしたのか。まぁ、そんな大した理由はない。ちょっとした意地みたいなもんだ。誰かさんと似て俺は負けず嫌いなだけだ。バク転からのムーンサルトだって??笑わせるなよ。

 

 

 着地と同時に、俺に赤紫色の照明が当てられる。よし、予定通りだ。スタッフさんも指示通り動いてくれた。

 

 

 この体操選手並みのダイナミックな登場に、観客からは多くの歓声と拍手で包まれる。

 

 

 

 俺がステージに立ったのは、これで2回目。

 

 

 

 1回目は、俺がライブでやらかしてしまった時。その時は、俺の行動のせいでメンバー含め、観客全員の顔はまさに絶望しているかのような表情を浮かべていた。

 

 

 けど、今回は違う。

 

 

 360度から、視界に入るのは各色で美しく照らされた数々のブレードの光に、本当にAqoursのライブを楽しみにしているんだな、と分かるぐらいのワクワクした表情を浮かべる観客全員の顔だった。

 

 

 千歌達はいつもライブの度にこんな環境の中で歌っていたのか…………。

 

 

明「ッッーーーーーー!?」ゾワッ

 

 

 くそっ!!ここまで来たのに、思わず周りの雰囲気に押し負けてしまいそうになっちまった。頭が真っ白になってしまいそうだ。そう考えると共に、心臓がバクバクと鳴り響き、嫌な汗がたらりと垂れる。

 

 この時点で、既に俺は焦ってしまってかなりテンパっていた。

 

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤ………………

 

 

 

 

 「負けちゃダメずらよ。」

 

 

 

 周りの雰囲気に動揺して焦っている俺に対し、ふと隣から馴染みのある女性の声が耳に入った。声が聞こえた方に振り向くと、茶髪のふわっとしたロングヘアーに茶髪の瞳が特徴的な女性………

 

 

 

 俺の想い人である国木田 花丸の姿があった。

 

 

 

 彼女は、俺の顔をじっと見ながら優しく微笑みながら口を動かす。言葉は出てないものの、口の動きで彼女がなんて言ってるのか分かった。

 

 

『頑張れ』

 

 

 

明「ーーーーッッ」

 

 

 彼女のこの一言のおかげで、今までの緊張が嘘だったかのようにストンと落ち着くことが出来た。

 

 

 

 しかも、花丸だけではない。

 

 

 

 千歌、曜船長、梨子、ルビィ、善子、ダイヤちゃん、かなっち、マリーもまるで見守るかのように俺の事を見つめていた。

 

 

 しまったな…………。余計な緊張のせいで大切なことを忘れてしまっていた。

 

 

 

 そうだ……………。『人殺し』である俺は1人じゃない。

 

 

 

 大事なことを思い出した俺は1度、気持ちを落ち着かせるために、そして………改めて覚悟を決めるために深く深呼吸を行った。

 

 

 

 よし…………………、いける。

 

 

 

 俺は、観客席のど真ん中に設置されているカメラの方に身体を向ける。確か、あのカメラでサイトの方で中継を流しているんだったな。

 

 

 俺は右手で銃のポーズを作って、そのカメラに向ける。

 

 

 もう一度、深く息を吸った後に、ここにいる誰もが聞こえるようにはっきりと大きな声で……………口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「このライブが終わった3日後に、俺達の運命を変えたあの場所で待ってるから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後に、パァンと銃を撃つような仕草を後に、俺に当てられた照明が消えようとしていた。

 

 この場にいる数百を超える観客は、俺が発した言葉の意味は分からないだろう。分からなくて当然だ。むしろ、分からなくても良い。

 

 

 

 

 ここから遥か遠くにいるあの2人に伝われば………………それでいい。

 

 

 

 

 

 俺は、照明が完全に消えるまでカメラの方を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜茶房菊泉〜(理亜視点)

 

 

 

千歌『1年生の鹿角 明くんです!!』

 

 

理亜「ーーーーーーえ??」

 

 

 Aqoursのリーダーである高海 千歌が発したこと一言によって、まるで時が止まったかのように感じられた。

 

 

 今のは私の聞き間違い??いや……………そんなはずはない。

 

 

 この女は、はっきりと言った。

 

 

 

 鹿角 明と。

 

 

 

 すると、ステージ横から1人の男性が姿が現れる。暗くて顔があまり分からないが、その男はロンダートからの連続バク転、そして最後にムーンサルトをやってステージの中央へと着地した。

 

 

 これは…………

 

 

 少しだけあっちの方が派手だけど、私たちが初めて神田明神でAqoursに出会っときに、私が彼女達の目の前で披露したものに似ている。

 

 

 いや、違う…………。わざと、似せてきたんだ。

 

 

 その男が中央へと着地すると同時に赤紫色の照明が当てられた。

 

 

理亜「ーーーーーーッッッ!!!」

 

 

 照明に当たり、ようやく男の正体が判明した。とは言っても、予想通りの人物であった。

 

 

 私と同じ赤紫色をしたボサボサ頭に、赤系の瞳を持ったキリッとしたツリ目が特徴的である男性。

 

 

 間違いない。間違えるはずがない。以前、あった時はフードやらメガネを掛け私達に奥山 零という偽名を使っていたが、あいつは正真正銘の私達の弟で……………

 

 

 

 

 

 『人殺し』である鹿角 明の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 明はステージの中央に立ったまま、少しの間動かなかったが

 

 

 

 

理亜「ーーーーーーッッ!?」

 

 

 

 なぜか、明は私たちの方に顔を向けた。正確にいえばこの中継を撮影しているカメラに対してだけど。カメラ越しだが、明と視線がバッチリ合う。どうして、そんなことを??

 

 

 明は右手で銃のポーズを作って、私達の方に向ける。

 

 

 一体…………何をする気なの!?

 

 

 

 そして、明はゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

明『このライブが終わった3日後に、俺達の運命を変えたあの場所で待ってるから。』

 

 

 

 

 

理亜「なっ!?」

 

 

 明の一言で、私は驚きの声を上げる。あいつと私達の運命を変えてしまった場所なんて1つしかない。

 

 

 まさか、あいつ………

 

 

 それを伝えるためだけにあの紙を送ったというの!?

 

 

 どうしてそんなことを…………??

 

 

 …………まさか、やっぱり私達のことを復讐するために!?

 

 

理亜「ーーーーーーあっ」

 

 

 しかし、私は気付いてしまった。

 

 

 明の身体が………………微かに震えていることに。

 

 

 あの震えは見覚えがある。緊張や不安、自嘲に葛藤による震えだ。

 

 

 

 

 明らかに復讐を企んでいる人間の姿ではない。

 

 

 

聖良「…………や」

 

 

理亜「ね、姉様??」

 

 

 

聖良「いやぁあぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

理亜「姉様!?」

 

 

 突然、姉様は私が生きてきて1度も聞いたこともないような声で絶叫した。涙を流し、両手で頭を抱えながらその場で暴れ始める。

 

 

聖良「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!」ドタバタ

 

 

 今の姉様の視界に、明はどのように写っているのだろうか。あいつは、姉様を変えてしまった原因そのもの。そのため、姉様に拒絶反応が起こってしまったに違いない。

 

 

 とりあえず、今はサイトを消して姉様を落ち着かせることを優先しよう。

 

 

 そう思った私はスマホの電源を切ろうとしたが………

 

 

 

 『俺達の運命を変えたあの場所で待ってるから。』

 

 

 

理亜「ーーーーーーッッ」

 

 

 

 消すことが……………出来なかった。

 

 

 明の言葉がべっとりと頭の中に残っていて、ウザイと思ってしまうほどに永遠とリピートしている。

 

 

 

 それと同時に『本当にこれで良いのか??』という新たな感情が芽生え始める。

 

 

聖良「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!」ドタバタ

 

 

 あいつは、鹿角 明として私達の前で姿を現した。もし、復讐の目的ではなく本当に姉様を救うための行動なら…………………

 

 

 なら、私がやることはただ1つだけ。

 

 

 ギュッ!!

 

 

 

理亜「姉様………逃げちゃダメ!!」

 

 

 

 私は暴れる姉様に抑えるように抱き締め、声を上げる。

 

 

聖良「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!」

 

 

 精一杯、力を込めて抱き締めても姉様は止まることなく暴れ続ける。一瞬でも力を抜いたら、すぐに払い除けられそうだ。

 

 

 でも、私も負けてられない。

 

 

理亜「最後までこの映像を………明の姿を見るの!!」

 

 

聖良「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!」

 

 

 バキッ!!

 

 

理亜「ーーーーうぐっ!!」

 

 

 暴れる姉様の拳が、運悪く私の顔面に当たる。その後、すぐにタラーっと少し生暖かい血が鼻から垂れてきているのが分かる。

 

 

 それでも、私は力を緩めず姉様のことを抱きしめ続けた。

 

 

理亜「お願いだから………………」

 

 

 

聖良「あぁああーーーーーー」

 

 

 

理亜「逃げないでよ…………姉様。私の知ってる姉様はそんなやり方は絶対にしない」

 

 

聖良「ーーーーーーー……………」

 

 

 姉様は私にとって憧れでカッコイイ存在だ。自分の持っている意志を周りからなんて言われようと、最後まで貫き通す強い力を持っている。

 

 

 私はそんな姉様が大好きだ。

 

 

理亜「お願い………………」

 

 

 最後の最後に、私が残ってる力を全て使って姉様を抱き締める。

喉が痛くて、だんだんと声が掠れてきている上に、溢れ出る涙と鼻血が混じり合ってすごく酷い顔になっているのが分かる。

 

 

聖良「…………………」

 

 

理亜「姉様??」

 

 

 私の言葉が伝わったのか。それとも自然に落ち着いたからなのか分からないが、姉様はピタリと暴れることをやめた。

 

 

 そして、意外にも姉様は何も話さないものの、自分からイヤフォンを耳に付けた。

 

 

 

理亜「姉様………………」

 

 

 

 私は、姉様の行動に嬉しくなりつつ、腕でゴシゴシと強引に涙と鼻血を拭き取る。こんな酷い顔であいつの姿を見たくないから。この頃には、もう鼻血は止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 そして、私ももう片方のイヤフォンを付けて2人で再びスマホの画面を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 ステージ中央に立っている明に照らされた赤紫色の照明が徐々に消えていく。

 

 

 

 

 完全に照明が消えるまで、明はずっと視線を変えることなくカメラの方を眺め続けていた。

 

 

 

 

 

 まるで……………、私達のことを見ているかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 俺の自己紹介が終わっても、Aqoursとしてのスピーチはまだ終わらない。ここからは、彼女達と一瞬に言葉を出していく。

 

 

千歌「こうして、ラブライブ!予備予選に出た私達、結果は見事突破!」

 

 

 もう一度、ピアノと向き合うために東京のコンクールへと参加した梨子。そして、ライブを壊し花丸を怪我させて逃げた俺の2人がいない状態で行ったラブライブ予備予選のライブ。

 

 

 彼女達が歌った『想いよひとつになれ』は本当に素敵なライブだった。今でも脳に焼き付いていて最初から最後まで頭の中で思い出せれるほどにだ。

 

 

 そして、Aqoursが『人殺し』である俺を受け入れてくれた日でもある。

 

 

 俺はその日を、一瞬忘れることはない。それほど、俺にとってかけがえのない日へとなった。

 

 

 千歌の言葉で楽しそうに見えた表情は、1年生組の発言によって一変し、暗い表情へと変わる。

 

 

ルビィ「入部希望者はゼロ」

 

 

善子「忌まわしきゼロが………」

 

 

明「俺たちにとって天敵といっても過言ではないゼロが…………」

 

 

花丸「また私達に突きつけられたのです。」

 

 

 俺達の言葉が終わったあと、千歌に照明が当てられる。

 

 

千歌「どうして、ゼロなのーーーー!!!」

 

 

 彼女は頭を抱えて、叫ぶ。

 

 

 ーーーこんなに、頑張っているのに。

 

 

 ーーーこんなに努力しているのに。

 

 

 ーーーそこそこだが、人気も出てきているはずなのに。

 

 

 結果は………………ゼロ。

 

 

 

 だが、ゼロによってAqoursは救われた部分もある。

 

 

 

 数秒前まで、悩んでいた表情を浮かべていた千歌はさっきの発言でスッキリしたのか、笑顔を浮かべながら言葉を出した。

 

 

千歌「そして、決めました。」

 

 

曜「私達は」

 

 

梨子「この街と」

 

 

花丸「この学校と」

 

 

ルビィ「この仲間と一瞬に」

 

 

善子「私達だけの道を歩こうと」

 

 

果南「起きること全てを受け止めて」

 

 

ダイヤ「全て楽しもうと」

 

 

鞠莉「それが………輝くことだから!!」

 

 

明「そういうこと………なんですよね。」

 

 千歌の発言に合わさて、メンバー1人1人が各々発言しながらステージ中央へと向かっていく。当然、俺もだ。ポンと、発言と一緒に千歌の肩に手を置いてからマリーのあとを追うようにステージの中央へと向かう。

 

 

 

千歌「輝くって楽しむこと。」

 

 

 

千歌「あの日、0だったものを1にするために!!」

 

 

 千歌は、そう言って俺達の方へと向かう。

 

 

 これで、全ての準備は整った。あとは、今まで語ってきた夢の言葉を今度は歌としてこの場にいる観客やサイトの中継を見ている者達全員に伝えるだけだ。

 

 

 

 Aqoursによる………最高のステージとして!!

 

 

千歌「さぁ、行くよ!!」

 

 

 千歌の言葉で、手を差し出して重ねていく。そして、1人1人が数字を言葉にした。

 

 

千歌「1!!」

 

 

 1人の少女は、普通怪獣チカチーである自分に付いてきてくれたこの9人と一緒に輝くために。

 

 

曜「2!!」

 

 

 1人の少女は、大好きな幼馴染と一緒に何かを頑張りたいという夢をこのスクールアイドルで叶えるために。

 

 

 

梨子「3!!」

 

 

 1人の少女は、大好きだったピアノともう1度向き合わせれてくれたこの大好きなメンバーのために。

 

 

花丸「4!!」

 

 

 1人の少女は、内気でずっと図書室で過ごしていた自分に、外の景色を見せてくれた皆のために。

 

 

 そして………1人の恋する男の子に良い所を見せるために。

 

 

ルビィ「5!!」

 

 

 1人の少女は、極度の人見知りで男性恐怖症である自分に、大好きで憧れでもあるスクールアイドルをやろうと手を差し伸べてくれた皆のために。

 

 

善子「6!!」

 

 

 1人の少女は、厨二病という難病(笑)を抱えどこにも居場所がなかった自分に、堕天使として迎え入れてくれ、かけがえのない居場所を作ってくれた大切なリトルデーモン達のために。

 

 

ダイヤ「7!!」

 

 

 1人の少女は、1度諦めてしまった夢をもう1度、大好きである幼馴染2人と最愛なる妹と共に挑戦するきっかけをくれた皆のために。

 

 

果南「8!!」

 

 

 1人の少女は、2年前のライブが原因で拒絶してしまった2人の幼馴染と共に、あの日置いてきてしまった夢を叶えるために。

 

 

鞠莉「9!!」

 

 

 1人の少女は、留学していた学校を辞めてしまうほど、叶えたかった夢を2年という時を経て皆と共に叶えるために。そして、1人の理事長として学校を救うために。

 

 

 

 

 

 

 

明「10!!」

 

 

 

 

 

 

 

 1人の少年は、『人殺し』である自分を何一つ嫌な顔せず、1人の大切な仲間として受け入れてくれた浦の星女学院スクールアイドル、Aqoursのこの先を最後まで見届けるために!!

 

 そして、想い人である1人の少女に少しでもカッコイイ姿をみせるために。

 

 

 

 

生徒「「「11ーーーー!!」」」

 

 

 

 この場で戦っているのはら俺達10人だけじゃない。あそこにいる浦の星女学院の生徒や俺達の家族という大切な仲間もいる。

 

 

 

 

千歌「今、全力で輝こう!!!」

 

 

 

 

 あの日の同じ様に、親指と人差し指を互いに繋ぎ合わせて円のような形を作ったあと、すぐに中心に目掛けて人差し指を指した。

 

 

 

 

千歌「0から1へ!!Aqoursーーーー!!」

 

 

 

 

Aqours「サーンシャイーン!!!」

 

 

 

 10人と言葉に合わせて、人差し指を上へと掲げた。

 

 

 

 

 その後、俺は再び調光室へと戻る。

 

 

 

 

 そして、ライブ衣装に着替えた彼女達9人がステージへと現れ、立ち位置に着くのを確認した俺は、音響のボタンを押し、すぐ様、照明の作業に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達9人がラブライブ予備予選で歌う曲名は………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『MIRAI TICKET』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この曲を彼女達が楽しそうに歌う表情は、辺り全体を様々な色で鮮やかに照らし続けている照明もあってか、今まで以上に輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あと、3、4話ほどでひとまず完結する予定です。

次回、函館で遂に3人がーーーーー!!??

お楽しみに。

お気に入り・感想・高評価お待ちしております。


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『人殺し』は遂に函館に向かう

Aqours5thライブday1を見てきました。もう……ね、凄かったよ。

Saint Snowさんのライブ演出が最高過ぎて泣けた。Believe Againも生で見れて良かったです。やっぱり、衣装がエッチでした(*/ω\*)キャー!!

来年の1月にやるラブライブフェスも行きたいという気持ちが生まれてしまった。だから、それまで良い子でいようも思う。みんなもだぞ!!


それでは本編どうぞ。色々と頑張って詰め込みました。
あと一つだけお詫びを。
まだ、明はSaint Snowとは出会いません。出会いませんが、あいつが現れます。きっと、ほとんどの読者が忘れているであろう、あいつが。実質、作者も昨日まで忘れてました笑



 〜沼津駅〜

 

 

 ラブライブ東海地区予選のあの最高のライブから2日ほど経過した。途中、千歌の言葉によって生徒や保護者全員と一緒に輝いたあの時間ははっきりと頭の中に残っている。

 

 

 

 『一部』を除いて、誰もが認める素晴らしいライブだった。

 

 

 そして、現在俺は片手に大きいキャリーバックを持って沼津駅にいる。

 

 

 

 

 

 函館に行って…………姉ちゃん達との関係に決着を付けるために。

 

 

 

 

 ちなみに、出発時間は零さんにしか伝えてない。Aqoursのメンバーに伝えると、どうせ見送りに来るとか言うからな。

 

 明日に、ラブライブ地区予選の結果発表があるからマネージャーとしては、そっちに優先して欲しい。

 

 

 けど、俺の希望は儚く散った。

 

 

 本来なら、零さん一人しか居ないはずなのに俺の目の前には10人の女性が立っていた。

 

 

 そのうち9人が………お怒りの表情を浮かべながら。

 

 

明「零さん………あんたやったな。」

 

零「…………(・ω<) テヘペロ☆」

 

 恐らく、彼女達に伝えた犯人である零さんを睨みつけると彼女は誤魔化すかのようにウィンクして下を出した。28間近の女性がそれをやるのは正直いって見ててキツい

 

千歌「明くん!!私たちは怒ってるんだからね!!」

 

 代表として千歌が1歩前に出て、頬を膨らませながら俺に向かってお怒りの言葉を出す。頭の上のアホ毛がぴょんぴょんと激しく動いているので、相当怒ってることが分かる。

 

曜「どうして、私たちに言ってくれなかったの??」

 

 曜船長は、少しだけ残念そうな表情をして俺に話しかける。Aqoursの仲間として、伝えて欲しかったのだろう。

 

 

 うーむ、この質問についてどうやって答えようか………。

 

 

零「明ちゃんは、みんなに見送られるのが恥ずかしくて言えなかったのよ♪」

 

 

明「ーーーなっ!?」

 

 

 この人、真剣に人が言葉を選んでいる途中に何余計なこと言っちゃってるの!?いや、確かにそれもあったけど!!あったけれども、1番はそれじゃない!!みんなに少しシャイな子だと思われるじゃん!!

 

 

果南「今日、函館に行ってSaint Snowの2人に会ってくるんでしょ??そんな明くんにとって大切な日………仲間として見送らない訳ないじゃん。」

 

 

ダイヤ「果南さんの言う通りですわ!!」

 

 

ダイヤちゃんの言葉に他のメンバーも腕を組みながら真剣な表情をしているかなっちの言葉に同じ気持ちだったのか、コクリと頷いた。

 

 

 仲間として…………か。俺も仲間だからこそ、みんなには見送って欲しく無かったんだけどな。

 

 

 けど、みんながここに来てくれたことに対して嫌がっているはずなのに…………、凄く嬉しく思ってしまう自分がいるのも確かだ。

 

 

 

 心のどこかにはやっぱり、Aqoursのみんなに見送って欲しかったという気持ちがあったのかも…………な。

 

 

花丸「明くん……これ、どうぞずら。」

 

 

 花丸が、俺の傍に近づいて来てそこそこと膨らみのある袋を渡す。

 

 

明「これは??」

 

 

花丸「みんなからの餞別ずら」

 

 

明「餞別??」

 

 俺は、貰った袋を軽く開けて、中身を確認する。

 

 

 袋の中には、みかん(大量)、制服のストラップ、ピアノの楽譜、スクールアイドルの雑誌、黒い羽、小説(3冊)、抹茶味の焼き菓子、イルカのぬいぐるみ、シャイ煮らしきものが入ってるタッパーが入っていた。

 

 

 

 見ただけで、誰が何を贈ってくれたのかすぐに分かる。

 

 

 何だよ、そのサプライズは…………。めちゃくちゃ嬉しいじゃないか。この時点で既に泣きそうだよ。

 

 

明「みんな………、ありがとう!!」

 

 

 俺は大事そうに袋を両手で抱えて、みんなに頭を下げる。その姿を見て、千歌達は「良かったぁ〜」と言いながら微笑んだ。

 

 

花丸「あとね……、明くん。これも」

 

 

 更に、花丸は俺に1つあるものを渡す。今度は、彼女の後ろにはニコニコとしているルビィといつものギランポーズをしているよしこの姿があった。

 

 

明「これは………御守り??」

 

 

 花丸に渡されたのは『復縁成熟』と刺繍されている手作り満載な御守りだった。ほかの6人はこのことを知らなかったのか、驚きの表情を浮かべている。

 

花丸「うん!!みんなに内緒で内緒でルビィちゃんと善子ちゃんの3人で作ったんだ!!」

 

ルビィ「うゆ!!」

 

善子「ヨハネ!!…………まぁ、感謝しなさいよね。」

 

 

 はぁー………、本当にこの3人って奴らは………。どんだけ、俺に勇気をくれれば気が済むんだよ。

 

 

 そんなこと、されたら俺は…………,。

 

 

明「なぁ、3人とも。ちょっと俺の近くまで来てくんない??」

 

 

3人「ん??」

 

 

 俺の呼びかけに、3人は疑問抱きながらも俺のすぐ側まで駆け寄る。

 

 

 …………よし!!

 

 

 

 ーーーガバッ!!

 

 

 

3人「きゃあ(ずら)!!」

 

 

 俺は近くまで駆け寄った3人に目掛けて優しく抱き締めた。当然のことながら、3人は顔を赤くしてテンパっている。

 

 

 他のメンバーはニヤニヤとしているのが分かって腹が立つが、今は放っておこう。

 

 

 何とか抱き締めるのを解かれないように頑張りながら、俺はこの3人しか聞こえないような小さな声で言葉を出した。

 

 

 

 

明「3人とも、ありがとな。俺は…………お前らに出会えて本当に良かったよ。」

 

 かつて、地区予選前に恥ずかしさの故に言葉として伝えられなかった気持ちを俺は言葉として3人に伝えた。あんな嬉しいことされたら、感謝の気持ちをはっきりと3人に伝えるしかないじゃないか。

 

 

花丸「ずらぁ………」プシュー

 

ルビィ「うゆぅ………」プシュー

 

善子「ヨハァ…………」プシュー

 

 

 あらら………、解放したのにも関わらず3人の顔はまだ赤い。なんなら、湯気が出てる。なんか………、申し訳ないことしたな。

 

 

千歌「善子ちゃん達だけズルいよ!!そんな計画してたなんて!!」

 

 

 1年生3人だけのサプライズに、千歌は再びぷんすかと怒る。どうやら、悔しそうだ。

 

 

曜「これは私達も何かやった方がいいでありますな!!ね、梨子隊員」ビシッ

 

梨子「曜船長の言う通りでありますね!!けど、何をやりましょうか!?」ビシッ

 

 

 いやいやいや、そんな張り合わなくて大丈夫だから。みんなから貰ったプレゼントだけでも充分嬉しいし、満足してるよ??

 

 

果南「そうだ!!明に気合いを入れるためにみんなで1発、明の背中を叩いてあげようよ!!」

 

 

 え、ちょ!?何言ってんの??この人。

 

 

鞠莉「Wow♪それはniceなアイデアね♪」

 

 

ダイヤ「闘魂注入ってやつですわね!!」

 

 

 貴女たちも乗らなくていいから!!え、マジでやるの!?

 

 

零「明ちゃん。もう諦めなさい」グルグル

 

 

 肩をぐるぐると回している零さんはニコニコとしながら、俺に言葉を出す。いや、ちょっと待って。

 

 

明「あれ?俺の見間違いかな??零さんが肩を温めてるように見えるんだけど………」

 

 

零「温めてるよ♪私も叩くから♪」グルグル

 

 

明「冗談抜きで俺、死ぬやつだよ!?」

 

 

 武道を極めている零さんの攻撃力は、もう霊長類最強と言われているあのレスリング選手よりも強いんじゃないか、と思わされてしまうぐらいの破壊力がある。

 

 

 もし、零さんに背中を叩かれると思うと………恐ろしくてイメージが湧かない。

 

 

千歌「じゃあ、まずは千歌からいきまーす!!」ハァーハァー

 

 やる気満々な千歌が手に行きを吹きかけて、構えに入る。もうこれ………断っても無理なパターンだな。

 

明「はぁー、分かりましたよ。その代わり、優しくお願いしますよ」

 

 キャリーバックを置いて、俺は叩きやすいように少し猫背になってから彼女達の前まで移動する。

 

千歌「分かってる分かってる」ニコニコ

 

 その顔………、絶対に分かってない顔だからな。思いっ切り来るやつじゃないか。

 

 

千歌「明くん!!ファイトーーー!!」パチーン

 

 

 おぉ……、叩いた音の割には全然、痛くない。まぁ、服も上から2枚ぐらい着てるし千歌もそんな力がないから当たり前か。これだったら、別にあとの人達の分も耐えれるかもな。

 

 

曜「明くん。全力前進〜、ヨーソロー!!」パチィィィン

 

 

明「痛ッッッ!!!」

 

 そんなこと無かった。そこそこ鍛えてる人に叩かれるとそれなりには痛いわ。めっちゃ背中がヒリヒリする………。その後、震えながらも敬礼した。ヨ、ヨーソロ〜………。

 

 

梨子「頑張ってね!!」パチン

 

 

明「うおっ!?」

 

 梨子のは千歌と同じく威力はないので大丈夫だと思っていたが、先程の曜船長の1発のヒリヒリが残っていてそれが刺激されてめっちゃ痛い。あ、これが続くならもう詰みじゃね??

 

 

ルビィ「がんばルビィだよ!!」ペチン

 

 

 復活したルビィが俺の背中に叩く。きっと、ルビィ自身は思いっ切り叩いたつもりだと思うけど全然痛くなかった。けど、ありがとう。がんばルビるわ。

 

 

善子「さっきのお返しよ!!喰らいなさい!!」パシィン

 

 

 くっ……、コイツ。さっきのやつ根に持ってやがった。そこそこ痛いじゃないか。流石は自称堕天使ヨハネだ………。

 

 

花丸「」コソッ

 

 

明「え………!?」

 

 

 想い人である花丸は俺の耳のそばでとある言葉を呟いたあと、軽く俺の背中を叩いた。きっと、『あの日』のことについて言っているのだろう。花丸の言葉を聞いてなんとしても、上手くいかなければ………、という気持ちになってしまった。

 

 

 花丸に………俺の想いを伝えるために。

 

 

 

ダイヤ「何もなしに帰ってきたらブッブーですわよ!!」パシン

 

 

鞠莉「シャイニ〜♪」パシィン

 

 

果南「上手くいったらハグしてあげるからね♪」パシィィィィン

 

 

明「痛てぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 3年生3人は間をいれずにダイヤちゃん先頭に連続で俺の背中に叩いてきやがった。せ、背中がぁぁぁぁぁ!!!鬼だ!!目の前に鬼がいやがる!!特に最後のかなっちの一撃が1番効いた。流石はAqoursの中で1番力がある人だ…………。

 

 

 そして、最後にまだこの人がいる。

 

 

零「ふっふっふーん♪」

 

 

 奥山 零という化け物が。

 

 

明「か、勘弁して貰えませんかね??」

 

 もう背中が痛すぎて限界が近づいている。もし、零さんに叩かれたらこの場で内蔵吐きそう………,。

 

 

零「いや♡」

 

 

 嘘だろ…………。もう俺、死を確定してるもんじゃないか。嫌だよ、ここで死ぬなんて!!

 

 

零「……………………」スッ

 

 

 

明(あ、これマジで死んだわ)

 

 

 零さんは無言で手を挙げて構え始めたので諦めた俺は目をぎゅっと瞑って歯を食いしばった。

 

 

 く、来るなら来いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

零「えい♡」

 

 

 

  パシィィィィィィィィン!!!

 

 

 

明「痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 今まで以上の破壊力を背中に喰らった俺は目に涙を浮かべつつ歯が折れるんじゃないか、と思うぐらい歯を食いしばった。本来なら、地面に倒れ込んでジタバタしたい所ではあるが、ここは公共施設。人様に迷惑をかける訳にはいかない。けど、めちゃくちゃ痛い。

 

 

零「どう??元気出た??」

 

 

 元気出るどころか、死にかけはしましたけどね…………。てか、今の俺の状態を見てよくそんな言葉を掛けれたな。

 

 

明「まぁ………、大体は。」

 

 

 零さんだけでなく、千歌達9人に叩かれる時にそれぞれ1人1人の想いが俺の背中に伝わってきたのが感じられた。

 

 

 そのおかげで、陰ながら少しだけ緊張していた気持ちはもう無くなっていた。

 

 

 

 今なら、自信持って函館に向かうことが出来ると思う。

 

 

 

 おっと………、そろそろ時間だな。

 

 

 

 俺はAqoursの方に顔を向けて言葉を出した。

 

 

明「じゃ、そろそろ行くよ。プレゼント、本当にありがとうな」

 

 

Aqours「うん!!」

 

 

 Aqoursの次は………彼女だ。

 

 

明「零さん………」

 

 

零「うん。」

 

 

 

 俺は6年前のあの日から………零さんに家族・苗字・強さ・愛など色んなものを貰った。その恩は、大きすぎて返そうと思っても返しきれない。

 

 

 

 

 ーーートン

 

 

 

 零さんは突然、俺の胸に拳を当てた。

 

 

 

零「明ちゃんなら、きっとやれるよ。だって、明ちゃんは………私の自慢の息子だもん。だから………安心して行ってきなさい。」

 

 

 

明「ーーーーーーーッッ…………。」

 

 

 零さんはそう………まるで母親のような優しい笑顔で俺に目がけて言葉を出した。零さんはどんな想いを持って、この言葉を俺に掛けたのかが分かる。

 

 

 本当に彼女は俺のことを家族として愛してくれていることがハッキリと伝わってくる。

 

 

 

 

 

 ーーーいい?明ちゃん、よく聞いて。例え『人殺し』になってしまったとしても、明ちゃんには明ちゃんだけの道があるの。そして、どの道を通るのかは明ちゃんが決めるの。私は明ちゃんの味方だし、君が選んだ道をならばどんな道でも全力で応援する。………………家族として当然のことよ

 

 

 

 ーーーお腹を痛めて君を産んだわけじゃない。赤ん坊の頃から君を育ててきたわけじゃない。君はそんな風に思ってなかったのかもしれない。それでも私は君のことを………本当の家族のように思ってたよ。

 

 

 

 ーーー大丈夫。明ちゃんなら、きっとやり遂げれる。だから、自信持ちなさい!!

 

 

 

 ーーー信じてるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー私と一緒に家族になってくれないかな??

 

 

 

 

 

 

 

 

 これまでに、零さんが俺に送ってくれた言葉が次から次へと思い浮かぶ。この1つ1つのの言葉に俺は救われて今の俺がいるんだ。

 

 

 

 ーーーガバッ

 

 

 

零「きゃっ!?」

 

 

 

 

 

 

 俺は頬を緩ませながら今度は零さんを抱き締める。零さんからは可愛らしい声が聞こえたが、気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 零さんは俺にとってもう1人の…………

 

 

 

 

 

 

 

明「行ってきます…………。母さん。」

 

 

 

 

 

零「ーーーーーーッッ!?」

 

 

 

 

 

 

 ボソッと零さんの耳元で呟いたあと、すぐに彼女を解放して改札口の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 背後からは彼女たちの綺麗な声援が聞こえてくるが、さっきの行動の恥ずかしさのあまり、1回も彼女たちの方に振り向くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「今のは………少しせこいかな」ポロポロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜花丸視点〜

 

 

千歌「行っちゃったね」

 

 

 遂にマルの想い人である明くんは、零さんを抱き締めて何か言ったあとにそのまま改札口の方に行ってしまいました。

 

 

 

 函館にいるお姉さん達と決着をつけるために。

 

 

 千歌ちゃん達が、声援を送っても明くんは手を振るだけでこっちの方に顔を向けなかった。けど、マルは明くんの耳が赤く染っているのを見逃さなかった。きっと、零さんとの間に何かあったずらね。少しだけ嫉妬しちゃうずら。

 

 

 

 マルはここで2日前に明くんとのやり取りを思い出す。

 

 

〜2日前〜

 

 

明『悪いな、花丸。ライブ前に呼び出しちゃって』

 

 

 マルは千歌ちゃん達と合流する前に、実は明くんに話があるから……、と呼び出されたことがあった。

 

 

花丸『大丈夫だよ。』

 

 

 この時、もしかしたら………と思って凄くドキドキしていたのを覚えてる。まぁ、違ってたんだけどね

 

 

明『実は俺、このライブが終わってから数日後に函館に行って姉ちゃん達に会ってくるんだ』

 

 

花丸『!?』

 

 

 明くんの言葉に、マルは衝撃を受けた。すぐに明くんに言葉を出そうとしたけど、

 

花丸『なんdーーーーー』

 

 

明『最後まで……言わせてほしい。言わせてくれ』

 

 

 と、遮られてしまったずら。この時の明くんの表情はいつも以上に真剣だった。そんな顔されたら何も言えなくなるよ………

 

 

明『この事はまだ零さんしか知らない。また後でAqoursのみんなには伝える予定だけど、先に花丸には伝えたかった。』

 

 

 

 マルを先に……………??どうして??

 

 

 

明『それでだ、花丸。函館に行って、何もかも全て終わらせたらお前に…………伝えたいことがあるんだ。』

 

 

 

 

 ーーーーーッッ!?それって……………

 

 

 

 

 

明『だから……その…………花丸にお願いがある。それが終わるまで…………待ってて………くれませんか??』

 

 

 

 

 

 明くんは、顔を真っ赤に染まらせて目を逸らしながら言葉を出した。きっと、この言葉をマルに送るのに凄く勇気を出したのが見てて分かる。

 

 

 

 

 それに対して、マルは明くんの言葉を聞いて口に手を当てて涙を流していたずら。

 

 

 

 

 嬉しい。嬉しくて嬉しくてたまらない。

 

 

 

 

 

 

 きっと…………そういうことなんずらよね??

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして………マルはニコッと微笑みながら明くんにこう告げたずら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸『はい…………………。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「花丸ちゃん??」

 

 

花丸「え、あ………ん??どうしたずら??」

 

 

ルビィ「いや……、顔が赤くなってるから大丈夫かなって………。」

 

 

 ルビィちゃんが心配そうな表情を浮かべてマルの方に顔を向けていた。確かに、顔が熱くなっているのが分かる。明くんのやり取りを思い出して顔を赤くしてしまったずら………。は、恥ずかし〜………。

 

 

ルビィ「花丸ちゃん??」

 

 

花丸「な、なんでもないずらよ。」

 

 

ルビィ「そっか。なら良かった〜」

 

 

 よ、よし。なんとか誤魔化せれたずら。念の為、あとでルビィちゃんに飴玉をあげよう。

 

 

千歌「ねぇ、みんな!!零さんがランチ一緒にどう??だって!!」

 

 

零「ふっふっふーん。零さん、みんなの分奢っちゃうぞ」

 

 

曜「いいんですか!?」

 

 

零「もち」(* • ω • )b

 

 

Aqours「わーい!!!」

 

 

 どうやら、零さんの奢りでみんなでランチに行くみたい。もうお昼の時間だしね………。マルのお腹も限界ずら。

 

 

 みんながワイワイとしながら沼津駅から出ようとしている所で、マルはもう一度改札口の方に顔を向けて小さな声で言葉を出した。

 

 

 

 

 

 

花丸「行ってらっしゃい、明くん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 『待ってるからね』

 

 

 花丸に背中を叩かれる前に言われた言葉を思い出しながら、俺は飛行機の中で本を読んでいた。

 

 

 

 

 姉ちゃん達との件が終わったら………………俺は花丸に面と向かって告白をする。

 

 

 

 きっと、花丸にもその意図が伝わったのだろう。伝わっている故に、俺にあの言葉を送ってくれたってことは…………そういうことなんだよな??

 

 

 

 

 やべ…………、そう思うとめちゃくちゃ嬉しい。ますます、姉ちゃん達との決着をつけなければいけない。

 

 

 

 

 

 けど………………、姉ちゃん達と決着をつける前に俺はしなくてはならないことがある。

 

 

 まずはそれを終わらせよう。

 

 

 俺はパタンと本をカバンの中にしまって、目を閉じてから一言だけ言葉を出した。

 

 

 

 

 

明「………いるんだろ??いい加減、隠れてないで出てこいよ。俺とお話しようぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「………………………」ニタァ

 

 

 

 




個人的に何度も修正入れた結果、こうなりました。笑


お気に入り・感想・高評価の方お待ちしております。


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『人殺し』と??

久しぶりの本編更新です。




 突如、目の前の景色が180度ぐにゃりと代わり次第に何も無い白い空間が作り出される。

 

 

 そして、その空間には俺と…………

 

 

 

 俺をここに呼んだであろう、黒いモヤが浮かんでいた。

 

 

??「久しぶりだなぁ………」

 

 

 黒いモヤから忘れたくても忘れられない声が発される。相変わらず何も感情が込められていないような冷たい声をしている。

 

 

 こいつは、あの日のライブで俺を狂わせた謎の存在だ。

 

 

??「珍しいじゃねぇか。『人殺し』であるお前から俺に声を掛けるなんて。」

 

 黒いモヤは挑発的な発言をする。だが、残念ながら今の俺にはそれは通じない。

 

 

 『今』の姿をしているこいつとは言葉のキャッチボールを交わす気は一切ない。

 

 

 黒いモヤの挑発的な言葉を無視して俺は言葉を奴に向かって発した。

 

 

明「俺はAqoursに受け入れて貰ったあの日から、ずっとお前の存在について考えていた。」

 

 

??「…………………」

 

 

 ーーーなぜ、こいつは俺の中にいるのか。

 

 

 ーーーなぜ、こいつは俺が『人殺し』であると知っているのか。

 

 

 ーーーなぜ、こいつは俺のトラウマを抉るかのように過去を話題に出すのか。

 

 

 

 脳をフル回転させながら考えて考えて考えて考えて考えて考えて……………

 

 

 

 その結果、1つの結論に結びついた。

 

 

 

 俺は黒いに向かって、人差し指を指しながら名探偵が犯人を言い当てるような感じで声を張って言葉を出した。

 

 

 もし、俺の考えが当たっていたら俺は大バカ野郎だ。

 

 

 なぜなら…………………

 

 

 

明「お前の正体は…………『人殺し』()だ。」

 

 

 

 ??は…………俺自身なのだから。

 

 

 

??「ハハ、ご名答。」

 

 

 黒いモヤはボソッと言葉を出すと同時にヤツは自分の身体である黒いモヤをキュルキュル、と音を立てながら渦巻きを作り始めた。

 

 

明「くっ!!」

 

 

 渦巻きによって生じた突風によって、俺は目をつぶって両腕を顔を守るかのように前に出す。

 

 そして、突風が止み、ゆっくりと目を開けると目の前には衝撃のものがあった。

 

 

 一瞬は見間違いだと思った。だけど、違う。見間違いなんかではない。

 

 

 

 

 

??「これが俺の本当の姿だ。懐かしいだろう??お前の言う通り、俺は…………『人殺し』(お前)だ。」

 

 

 

 10年前、姉ちゃん達を守るために銃を発砲し、人を殺めてしまった当時5歳だった幼き俺の姿をした…………………『人殺し』()が立っていた。

 

 

『人殺し』「んで、俺の正体を突き止めてお前は何をする気なんだ??今までの憎しみを俺にぶつけるのか??」

 

 

 『人殺し』はニタァと不気味に微笑みながら、またしても挑発的に発言する。

 

 

明「あぁ。そうしたいのは山々だよ。なんなら、今すぐにお前を殺してやりたい気分だ。」ゾワッ

 

 

『人殺し』(こいつ………………本気で言ってやがる。)ビクッ

 

 

 俺は今までに出したことがないぐらいの殺意を放ちながらも、平然とした笑顔で答える。その殺意を感じ取ったのか、『人殺し』の表情が一瞬だけしかめたのを俺は見逃さなかった。

 

 

 憎しみをぶつける??冗談はよせよ。

 

 

 たったそんだけで……………………俺が許すと思ってるのか??

 

 

 お前のせいで、本当に色々とあったんだぞ??

 

 

 こいつの巧妙な囁きによって、精神が参っていた俺はAqoursの大切なライブをめちゃくちゃに壊してしまった。さらには、またしても俺は人を殺してしまいそうだった。

 

 

 

 

 そして、なにより1番許せないのは………

 

 

 

 

 

 俺の想い人である花丸に大怪我を負わせてしまったことだ。

 

 

 

 

 

 今で鮮明に覚えている。花丸の肩をナイフで刺してしまったあの感触が…………。忘れたくても忘れられない。

 

 

 まるで、呪いにかかっているかのように………。

 

 

明「けど……、まずお前に再開したら絶対に伝えたい言葉があるんだ。」

 

 

 俺の言葉に『人殺し』は「ハッ」と鼻で笑う。

 

 

『人殺し』「何だよ。俺に愛の告白でもするのか??」ニヤニヤ

 

 

明「お前、マジで殺してやろうか??」

 

 

 残念ながら愛の告白をするのはお前なんかじゃねぇんだよ。俺が全て終わらせて帰るのを祈りながら待ってくれている健気で愛しいあいつだけだ。

 

 

『人殺し』「そんな怒るなって。冗談だよ。………んで、伝えたい言葉って何??まぁ、ある程度分かってるけどな。」

 

 

 どうやら、『人殺し』は俺が何を伝えたいのか察しているようだ。恐らく、俺から批判的な言葉を喰らうと思っているのだろう。

 

 

 

 

 

 だけどな『人殺し』。お前の予想は違うんだよ。

 

 

 

 

 

 お前に送りたい言葉は…………その『逆』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ありがとな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人殺し』「ーーーーーーーーーーは??」

 

 

 

 

 頭を下げて、感謝の言葉を送った俺の姿を見て『人殺し』は数秒ほど、何を言っているのか分からないようにポカンとなり、次第に信じられないような表情を浮かべる。きっと、俺からそんな言葉を俺にられるなんて思ってもいなかったのだろう。

 

 

 

『人殺し』「お前………自分が何を言ってるのか分かってその言葉を俺に言ったのか??」

 

 

 

明「あぁ。」

 

 

 

 

『人殺し』「俺の事……………殺したいぐらいに憎いんじゃねぇのかよ!!」

 

 

 『人殺し』は珍しく怒りを孕みながら声を上げる。

 

 

 あぁ、その通りだ。今まで言った言葉に嘘は1つもない。お前のこと、憎いよ。憎くて憎くて堪らない。本当に今すぐにでもお前のことを殴り殺してやりたいぐらいだ。

 

 

 だけど………………

 

 

 

明「お前がいたから………あの事件があったからこうして俺は姉ちゃん達と向き合おうという気持ちになった。」

 

 

 

『人殺し』「ーーーーーッッ!?」

 

 

 

 今まではネガティブな思考であの事件について述べていたが俺が今、こうして函館を目指して姉ちゃん達と向き合おうとしているきっかけはあの事件があったからだ。

 

 

 

 あの事件があったから、俺はAqoursのみんなに受け入れてもらったし、零さんが俺の事を家族として愛してくれているということも改めて知れた。

なんなら、俺はあいつに恋をしたのも事件があったからなのかもしれない。

 

 

 

明「だからよ……….、少なくとも俺はお前に感謝してるんだよ。」

 

 

 8割りぐらいはお前に対しての憎しみで埋まってるけどな、と俺は最後に付け加えた。

 

 

『人殺し』「…………………」

 

 

 俺の言葉を聞いて、『人殺し』は何も表情を変えなかった。だから、こいつが今、何を考えているのか分からない。

 

 

明「お、おい。何か言えよ」

 

 

 あまりにも無反応すぎたので、俺は少しだけ焦りながら『人殺し』に声を掛ける。

 

 

 

 すると………………

 

 

 

『人殺し』「ーーーーーぷっ」

 

 

明「ん??」

 

 

『人殺し』「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

 

 

 唐突に『人殺し』はお腹に手を当てて大声で笑い始めた。え、こいつ急にどうしたの??リアルに怖いんですけど。

 

 

『人殺し』「なんだよ『ありがとな』って。普通、憎い相手にそんなこと言うか??頭おかしいんじゃねぇの??あー、腹痛てぇ。」クククッ

 

 

 『人殺し』は笑いで出た涙を指で拭き取りながら言葉を出す。まだ余韻が残っているのか、クククと歯を食いしばりながらも笑っていた。

 

 

 

 そして、ようやく落ち着いたのか笑うのを止めたこいつは少しだけ残念そうな表情を浮かべる。

 

 

 

 

『人殺し』「あーあ、これからも何度かお前のことを弄って楽しもうと思ってたのにもう何言っても無理そうだな。」

 

 

 

 うわぁ〜、こいつ。陰でそんな計画を立てていたのか。タチ悪いな。もう、あんなことは二度と御免だ。

 

 

 

『人殺し』「しゃーねー。これからは黙ってお前のこれからの人生を眺めることにするわ」

 

 

明「なんだよ、それ。消えるっていう選択肢は無いのかよ」

 

 

『人殺し』「いいか??これだけは忘れるな。俺はお前で、お前は俺だ。つまり、俺が消える=お前の死以外はありえない。まぁ、そんなにも俺を消したかったら自分の喉でも裂け斬るんだな」

 

 

明「ったく………嫌な言い方しやがって。」

 

 

 こいつの存在が消えないのは嫌だな。でも本人はこの先、俺の目の前には現れることはないって言ってたし…………ひとまずは安心かな。

 

 

『人殺し』「おっと、そろそろ時間のようだ。」

 

 

 『人殺し』は周りを見て呟く。俺も続いて周りを見回すと、何も無い空間からビキビキとヒビのようなものが生じ始めた。

 

 

 ヒビの進行は意外にも早く、あっという間に崩壊しそうなぐらいまでに至る。あと、1分もしないうちにこの空間は完璧に崩壊するだろう。

 

 

 俺と『人殺し』は分かっていたかのようにお互いの顔を見合わせる。

 

 

『人殺し』「お別れだな。」

 

明「そうみたいだな。」

 

『人殺し』「寂しいか??」

 

明「全く。」

 

『人殺し』「即答だな………」

 

 当たり前だろ。もう、お前の顔を見るのは今回で最後にしたいところだ。

 

 

 

『人殺し』「最後にこれだけは言っておく。お前のような『人殺し』は…………何があっても幸せにはなれない。最後はBADENDだ」

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』は最後の最後で、胸糞が悪くなるような言葉を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 それに対しては俺は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

明「上等だ!!『人殺し』らしく足掻いて足掻いて足掻きまくって幸せを掴み取ってやる!!BADENDをHappyENDに変えてやるよ!!だから、それまでてめぇはおっ〇っとーをつまみにしてコーラでも飲みながらその様子でも眺めてやがれ!!!」

 

 

 

 

 

 俺の言葉を聞いて、『人殺し』がニタァとまるで楽しみにしているかのような微笑みを最後に目にして………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全に俺達がいた空間が崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『まもなくー、函館空港に着陸致します。お客様はーーーーーーーー』

 

 

 飛行機のアナウンスで、俺はゆっくりと目を開ける。どうやら、無事に現実世界に戻ってきたようだ。

 

 

 窓に目を移すと、あいつと話している間に深夜の時間帯になっていたみたいで辺りは真っ暗になっていた。だけど、下の方はキラキラと輝いている。

 

 

明「もうすぐ…………か。」

 

 

 俺は胸に手を当てる。すると、思った通り心臓がバクバクと鳴っていた。やっぱり、緊張してるな。まぁ、当然か。

 

 

 そして、無事に飛行機は函館空港へと着陸し俺含めた客は飛行機から降りて、流れてくる自分のキャリーバッグを間違えずに手にしてから空港を出る。

 

明「うお………、寒っ。」

 

 

 空港から出た瞬間、冷たい風が当たり思わず身を固める。流石は北海道。季節は夏だというのにも関わらず少しだけ寒い。北海道の夏ってこんな感じだったっけ??ずっと、内浦にいたから忘れてしまった。

 

 

 

明「それにしても………10年ぶりか。」

 

 

 

 俺は周りを見てボソッと呟く。ここで、俺は…………理亜姉ちゃんと一緒に生まれてきたんだ。10年ぶりに故郷に戻ってきたことに感動する。

 

 

 

 確か…………、ここの近くによく3人で遊びに行った公園があったはずだ。まだあるよな??

 

 

 

 あ、そうだそうだ。そこからあの道を辿ればピエロのハンバーガーショップがあった気がする。よく姉ちゃん達やたまに遊びに来てくれていた従兄弟と一緒に食べに行ったっけ。

 

 

 冬とかだと天文台とかに行ってたっけ………。ロープウェイ……………だっけ??それに乗って高いところまで登っていたのも覚えてる。

 

 

 そして、ここからあの道を行って行って行ってそこから右に曲がって直進すれば………………

 

 

 

 

 俺の本当の家族が住んでいる『茶房 菊泉』がある。

 

 

 

 

 なんだよ………。ここに戻ってきたのは10年ぶりのはずなのに意外にも覚えてるじゃねぇか。

 

 

 当時は5歳だったし、両親に捨てられて施設で4年間過ごして、6年間内浦で零さんと一緒に生活しているうちにとっくに忘れてたと思ってたんだけどな。

 

 

 

 

 あー、ちくしょう。思い出に浸っているだけで涙が出てしまいそうだ。

 

 

 

 だけど、泣くのはまだ早い。

 

 

 

 俺にはまだやらなくちゃいけないことがある。それをやってから…………思い切って泣くことにしよう。

 

 

 

 

 俺はキャリーバッグから、上着を取り出してそれを上着の上から重ねて着る。そして、気合いを入れるために両頬をペシン!!と叩く。

 

 

 そして、最後にあいつらから貰った御守りをポケットから取り出してギュッと握りしめる。

 

 

 

 俺は…………1人じゃない。ここには居ないけど………頼もしい仲間9人がいる。

 

 

 

 

明「よし!!行きますか!!」

 

 

 

 気合いを十分に入れた俺は、キャリーバッグを引きずりながらあの場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』の弟と姉であるSaint Snowが出会うまであと僅かへと迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ーーー最終章ーー

『人殺し』とSaint Snow。 全3話(予定)


お楽しみに。

お気に入り・感想・高評価お待ちしております。

〜質問コーナー〜

Q、Saint Snowの小説をいつも楽しく読ませてもらっています。番外編の果南ちゃんの救命のシーンですが、ショックを行ったあとも心電図の解析を行っているので救急隊に渡すまでに身体に付けたまんまが一般的です。細かいツッコミ申し訳ありません。それにしても、明くんの判断は素晴らしいですね。頼れる男です。

A、初めて知りました。将来、看護師目指す者として改めて、勉強してきます。ご指摘、ありがとうございます!!

Q、運命なんてものはない!……………よね??

A、そのはず!!…………………………だよな??

Q、尊敬できる人の条件は??

A、この作品を面白いと思ってくれている人。いつもありがとうございますm(_ _)m

Q、(゚ー゚)(。_。)ウンウンそれで??←顔文字が見つかりませんでした。すみません。

A、(((( ˙-˙ ))))プルプルプルプルプルプルプル

Q、なるべく人前で愚痴を言わないような人間になりたいですよね。

A、そうですね。基本、私も愚痴はあまり言わない人間ですよ。そういう人は多分、乳酸菌不足だと思うのでカルピスでも渡しておけば大丈夫だと思います。体にピース✌️

質問箱にどんどん送ってくださいませ〜。


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『人殺し』の姉、聖良のこれまで

3日に更新すると言って、2日遅刻してしまった。
申し訳ないです。m(__)m

さてさて、遂に『人殺し』、最終章に入りました。ここまで来れたのは面白いと言って読んでくださる皆さんのおかげです!!

最終話までの流れはだいぶ出来ているので、出来上がり次第どんどんと更新していくと思います。
なので、最終話までどうか七宮 梅雨がお送りする「Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』」を楽しんで貰えたらな……、と心から願います。

では、記念すべき最終章の1話をどうぞ(꜆ ˙-˙ )꜆


 〜10年前〜

 

 

 『ねぇ、聞いた??聖良ちゃんの弟、人を殺したらしいよ。』ヒソヒソ

 

 『聞いた聞いた。』ヒソヒソ

 

 『もう関わるのやめようよ。』ヒソヒソ

 

 『うん。昨日、ママやパパも聖良ちゃんとはもう遊んじゃダメだって言われたし………』ヒソヒソ

 

 

 『私も。『人殺し』の姉なんかと関わりたくない』ヒソヒソ

 

 

 当時、小学校に通っていた私はある日を境に誰からも声をかけられなくなりました。

 

 

 理由は分かってます。

 

 

 私の…………弟の明が銀行で人を殺めてしまったのが周りに広まったからでしょう……。

 

 

 現在、明は警察の人に連れてかれて家にはいません。近いうちに戻ってくると、目が死んでいるお父さんは言っていましたが…………。

 

 

 ここ最近、周りの子が私を見てコソコソと何か話しているのをよく見かけるようになりました。多分………、私の事を言っているのでしょうね。

 

 生徒だけじゃなく、先生も私のことを批判的な目で見てくるようになりました。この前、分からなかった授業の内容を聞きに行ったらすごく嫌そうな表情をされてしまいました。少しだけ………悲しかったです。

 

 

 そんな日々が続く中、ある日保健室で休んでいる時に養護教諭の人にこう言われました。

 

 

 ーーー罪を犯した弟を恨んでいるのか?と。

 

 

 この言葉を聞いて、私は言い方が悪いですが、『は?』という気持ちになりました。

 

 

 私が明を恨んでいる??そんな訳ないでしょう。

 

 

 明は私の大切な家族であり、理亜と同じくらいに大好きな弟ですよ??

 

 

 なにより、明は私達の命の恩人です。もし、明がいなかったら私やママや理亜は殺されていたのかもしれません。

 

 

 だから………今度は私が1人の姉として明を助けます。例え、何があっても明の味方です。

 

 

 そもそも、噂というものは一時的なものです。時間が経てば解決してくれます。

 

 

 きっと………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件から1ヶ月が経ちました。明はまだ帰ってきていません。

 

 明の噂については、数週間ぐらいでほとぼりが冷めると予測していましたが全くそんなことはありませんでした。むしろ、酷い方へとエスカレートしていくばかりです。

 

 

理亜「うぐっ………えぐっ」ポロポロ

 

 

 私は、悲しそうな表情を浮かべながら涙をポロポロと流している理亜を抱きしめながら家へと向かっています。話を聞くに、周りの子から酷い『いじめ』をされているそうです。

 

 

 ……………『人殺し』の双子だと。

 

 

 周りの子から笑われながら筆箱を隠されたり机に文字を彫られたりされているそうです。私の大切な理亜をいじめるなんて……。そんなの、姉として許せません。

 

 

 あとここだけの話、被害にあっているのは理亜だけじゃありません。姉としてのプライドが許せなくて誰にも話していませんが、私もクラスメイトから『いじめ』をされています。

 

 上履きを隠されたり、教科書をゴミ箱に捨てられたり、トイレで女子から水をぶっかけられたりとされてきました。

 

 

 あまりにも酷いと思い私は担任の先生にそれを報告しても、まるで虐められる私達の方が悪いような言葉を残して私の目の前から立ち去っていたのを覚えています。あまりにも理不尽だとは思いませんか??

 

 

理亜「私は………何もしていないのに。うぅ…………」ポロポロ

 

 

 理亜は泣きながら言葉を出していました。理亜の言う通りです。私達は何もしていません。それなのに、どうしてここまで仕打ちをされるのでしょうか。

 

 

 

 

 悪いのは全部あきr………………

 

 

 

 

 ………………は!!私ったら何を!!

 

 

 いけません!!それだけは何があっても絶対に思ってはいけません!!あの子は私たちの為にやったことなんです!!決して悪くはありません!!

 

 

理亜「姉様ぁ…………」ポロポロ

 

 

 泣きながら抱き締めてくる理亜の頭を優しく撫でながら私は理亜の耳元で囁きました。

 

 

聖良「大丈夫ですよ、理亜。私が守ってあげますからね。」

 

 

 大丈夫…………大丈夫です。あともう少しだけ辛抱すればこの地獄から脱げ出せれるに違いまりません。

 

 

 また、いつもの様に家族で楽しく過ごせる日々が戻ってします。

 

 

 

 きっと……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明の事件から2ヶ月が経ちました。どうやら2週間後ぐらいにようやく明が帰ってくるそうです。

 

 

母親「あなた!!飲み過ぎですよ!!もう、それぐらいにして下さい!!」

 

 

父親「うるせぇ!!てめぇはすっこんでろ!!」パァン

 

 

母親「きゃあ!!」バタン

 

 

聖良・理亜「ママ!!」

 

 

 最近、普段は温厚で優しくて大好きなパバがお酒を飲みまくって家で暴れるようになってしまいました。その姿を見ると、毎回恐怖で理亜と一緒に身体を震わせながらママが暴力を振るわれるのを見てきました。

 

 理由は、明の噂が広まってしまい『茶房 菊泉』にお客さんが1人も来なくなってしまったからです。当然、売上金は0に等しく生活が困難な状況へとなってしまいました。

 

 

 

 学校生活だけでなく、私達家族内も少しずつ少しずつと以前のような生活から狂い始めてしまいました。

 

 

 

父親「誰なんだよ。『人殺し』のいる店だって言いふらしているクソ野郎は………。うちはな、曾曾曾爺さんから代々受け継がれてきた大切な店なんだよ…………。なのに………」ポロポロ

 

 

 パパは悪酔いで一通り暴れると、今度は店についての歴史を語りながら泣き始め、そのまま寝てしまいます。

 

 

 スースーと涙を流しながら寝息を立てるパパの上に、頬が赤黒くなっているママは何も言わずに毛布を掛けていきます。

 

 

母親「2人とも、パパのこと嫌いにならないであげてね。パパもパパでここの店主として頑張っているから…………。」

 

聖良「はい、分かってます。」

 

理亜「………うん。」

 

 

 それは分かっています。どうにかお客さんに来てもらうと新商品を考えたりセールを行ったりと試行錯誤してるパパに、パパを近くで支えてるママの姿は毎日見かけます。この場にいる誰も悪くはありません。仕方がないことだと思っています。

 

 

 

 ……………どうして、私達4人は悪くないのにこんな仕打ちをされなければいけないのでしょうか。

 

 

 

 

 全部悪いのは………………のに。

 

 

 

 

 

 

 

 この時期辺りから、私自身の何かが壊れ始めていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 「『人殺し』の姉のくせに学校来てんじゃねぇよ」バシャーン

 

 

 

 

 どうしてですか……………

 

 

 

 

「うわ、『人殺し』の姉2人よ。私達も殺されちゃうかもだからどっか行こ」ヒソヒソ

 

 

 

 

 どうして……………

 

 

 

 「茶房菊泉には近づかない方がいいわよ。なにせ、あそこは『人殺し』の家族だからね。」ニヤニヤ

 

 

 

 

 もう、やめてくださいよ…………

 

 

 

 

理亜「姉様ぁ……………」ポロポロ

 

 

 

 

 私達は何もしていないじゃないですか。

 

 

 

 

 

聖良「理亜……………」

 

 

 

 

 

 どうして、何もしていない私達がこんな目に遭わないといけないんですか……………。

 

 

 

 

 

理亜「私………、もう嫌だよぉ…………。」ポロポロ

 

 

 

 

 

 

 

 こうなってしまったのはどれもこれも全部…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人殺し』()のせいなのに!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、私はいつかの日に聞いた養護教諭の人に言われた言葉を思い出しました。

 

 

 

 

 

 

 ーーー罪を犯した弟のことを恨んでいるのか…………と。

 

 

 

 

 

 

 どうしてその言葉を聞いた直後に、私はそれを否定してしまったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 憎い……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私や理亜、ママやパパを傷つけたあいつが憎い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶対に……………絶対に許さない!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、私は勉強机に飾っている私と理亜と明の3人で写っている写真とカッターナイフを取り出して、明だけ写っている部分を嫌悪の感情を込めながら切り刻みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 明が帰ってくる1週間前。

 

 

 

 

 

 パパが私と理亜に食卓に来て欲しい、と言っていたので向かうとパパとママが真剣な表情を浮かべて席に座っていました。いつもと、何かが違う雰囲気に戸惑いならも私と理亜はいつもの席へ座りました。

 

 

父親「よし、みんな揃ったな」

 

 

聖良「何かあるのですか??」

 

 

父親「あぁ。2人とも、落ち着いて今から言う俺の言葉を聞いて欲しい。」

 

 

聖良・理亜「??」

 

 

 首を傾げる私達に対して、パパは少し時間を置いてから衝撃的な言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

父親「来週、帰ってくる明を…………ここから遠くにある児童施設に入らせることにした。」

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良・理亜「ーーーーーーーッッッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 あの子を児童施設に送る??それって、つまり…………

 

 

 

 

父親「あぁ、聖良。お前の思っている通りだよ。明を…………家から追い出す」

 

 

 

 

 父親が子供に対して言ってはならない言葉を平然と口に出すパパ。隣にいるママは何も言わなかったが、かすかに震えていました。

 

 

 

理亜「どうして………明を追い出すの??」ウルウル

 

 

 

 理亜はまだ状況を把握していないみたいです。目に涙を貯めて震えながら言葉を出していきました。

 

 

理亜「明は………大事な家族じゃないの??」

 

 

 

父親・母親「ーーーーーーーッッ」

 

 

 

 家族。

 

 

 

 この単語を聞いて、パパとママは気まずそうな表情へと変わりました。きっと、2人もこんなことを口に出したくなかったはずです。2人で話し合ったり考えたりした結果、あのような苦渋な決断に至ったのでしょう。

 

 

 

どうやら理亜は明を追い出すのは反対のようでした。理亜は優しい子ですね。あんなひどい仕打ちをされているのにも関わらず、明の味方になるなんて。流石はお姉ちゃんです。

 

 

 

理亜「ねーさまもそう思うでしょ??」

 

 

 理亜は私の方に顔を向けて言葉を出していきました。そうですね。『以前』の私ならば、理亜と同じ考えになっていたでしょう。

 

 

 でもね、理亜。私はもう無理なんです。限界なんです。

 

 

聖良「確かに、理亜の気持ちも分かります。けど………、パパやママがそう言っているんです。仕方がないことでしょう。」

 

 

理亜「え……………」

 

 

 私がこんな言葉を言うなんて思ってもみなかったのでしょうか………、理亜は目を丸くして、何も言わなくなってしまいました。

 

 

 私は理亜のそばまで近寄り、優しく抱き締めます。すると、理亜は震えながら私の胸の中で泣き始めました。それを見た私は理亜の頭を撫でながら落ち着くまでずっと抱きしめていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後に、ママから教えて貰ったのですがこの時の私は口を三日月のような形をして微笑んでいてとても不気味だったそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明が帰ってくる当日。

 

 

 お昼辺りに明は死人のような表情を浮かべながら警察官の人達と一緒に帰ってきました。

 

 そして、私達の姿を視線に捉えた明は涙を流しながらまずはママとパパの方に走っていきました。

 

 

明「ごめんなざい。ごめんなざい。僕のせいで……僕のせいで!!」ポロポロ

 

 

 明は泣きながらママとパパに謝っていました。何回も何回もごめんなさいと口に出していました。明はこの数ヶ月の間に、私たちの現状を警察の人から聞いていたようです。ママとパパも涙を浮かべながら明を抱き締めていました。

 

 

理亜「明!!」ポロポロ

 

 

明「理亜お姉ぢゃん!!」ポロポロ

 

 

 理亜もすぐに明の方へと駆け寄り、抱きしめました。

 

 

 私は明のそばまで駆け寄ることはありませんでした。距離を置いて、明とママとパパと理亜が抱きしめ合っているのを眺めているだけでした。

 

 

 

 

 

 明が家に帰ってきてから半年が経過しました。ぎこちない雰囲気が流れていたものの、今日まで過ごしていきました。

 

 

 そして、ついにこの日を迎えてしまいました。

 

 「鹿角様。」

父親「はい。お待ちしておりました。」

 

 スーツを着た男性が3人ほど、『茶房 菊泉』にへとやって来ました。決して怪しい人ではありません。児童施設のスタッフさんだそうです。

 

 

 30分ほど、パパとスタッフさんが会話したあと、3人のうちの1人が明の方へと向かいました。

 

 

 「それじゃあ、明くん。行きましょうか」

 

 

明「……………はい」

 

 

 荷物を持った明はコクリと頷きました。両親はこのことについて、本人に何も言わなかったそうですが、察しのよい明はきっと分かっていたのだと思います。

 

 

 

 今日、この瞬間に『人殺し』である自分は捨てられるのだと。

 

 

 

 「お姉ちゃん達に最後、何か言うことあるかい??」

 

 

明「………………じゃあ、バイバイって言ってきてもいいですか??」

 

 

 「あぁ、勿論。言っておいで」

 

 

明「ありがとうございます」

 

 

 明とスタッフさんが何か話したあと、明は何故か私と理亜の方へと足を運ぶ。どうして、こっちの方に来るのでしょうか。

 

 

 もう………、私は貴方の顔なんて見たくなかったのに。

 

 

 そして、明が私たちに何か言おうとする前に私は彼に向かって今までに出したこともないトーンで最低な言葉を出してしまいました。

 

 

 

明「お姉ちゃ「『人殺し』」…………え??」

 

 

 

 今までに聞いたことも無いトーンで言われたせいか、明は何かを伝えるはずだった言葉を途中で止めてしまいそのまま戸惑っていました。

 

 

 

 

 そして、最後に気が狂ってしまった私はトドメを刺すような感じで言葉を続けてしまった。

 

 

 

聖良「もう………、私達に関わらないで。」

 

 

 

明「ーーーーーーーッッ」

 

 

 

 私の言葉を聞いた明の表情はきっと長い年月が経ったとしても忘れることはないでしょう。

 

 

 

 

 

 大好きな姉に拒絶されてしまったあの悲しそうな顔を………。

 

 

 

 

 

 

 結局、明は私たちに何も言わずに児童施設のスタッフさんと一緒に去っていきました。

 

 

 

 

聖良「……………………」

 

 

 明がいなくなったことで、内心嬉しく思う自分がいるはずなのに何故か心がズキンと痛みを感じた。

 

 

 

 

 

 

 あの子がいなくなってから数ヶ月が経ちました。

 

 

 この頃は、ようやくあの子の噂が無くなりつつあり他人がひそひそ話をする姿をあまり見なくなりました。

 

 あんなに酷かったいじめも、運良く善良な心を持つ学校の先生が数人にいじめられている私を見つけたことが発端で色々と動いてくれたことがあり、いじめられることは無くなりました。

 

 『茶房 菊泉』の方も、とある新メニューが予想を遥かに超える勢いで大ヒットしたことにより、お客さんが来店するようになりました。

 

 

聖良「理亜。少しだけ手伝って下さい」

 

 

理亜「……………分かった」

 

 

 あの子がいなくなってから、変わったことと言えば純粋だった理亜が無愛想な感じへとなってしまったことですかね。とは言っても、私のことは姉様と強く慕ってはくれていますが……………,。

 

 

 

 チリリリーン

 

 

 理亜について心配していると、1人の男性がお店にやって来ました。あれ??この男性、どこかで見たような………。

 

聖良「いらっしゃいませ。1名様でよろしかったですか??」

 

男性「あ、いえ。自分は客じゃないので大丈夫です。こういう者です。」

 

 男性はそう言って、胸ポケットから刑事手帳を見せる。刑事さん………??

 

 あ、思い出しました。明を家まで送ってきてくれた警察官の中にいた人です。どうして、ここに来たのでしょうか??もう、あの子はいないのに。

 

男性「いや、渡しそびれたのがあってね。それを届けに来たのだよ。」

 

 刑事さんはハイ、と言って私に1冊のノートを渡しました。

 

聖良「これは……………??」

 

男性「彼が留置所にいた時にずっと使っていたやつでね。」

 

聖良「はぁ…………。」

 

 刑事さんからノートを貰うと、彼は「私はこれで失礼するよ。」と言って敬礼したあと、店から出ていっちゃいました。

 

 

 刑事さんがいなくなってから数分間、私は渡されたノートを眺めていました。

 

 

 私たちは、あの子が留置所で何をして過ごしていたのかは知りません。けど、恐らくですがこのノートを開けば分かる気がします。

 

 

 私は、興味本位でそれを開いてしまいました。

 

 

 ーーーペラリ

 

 

聖良「ふふ」

 

 

 最初の2、3ページは色鉛筆の絵が描かれていました。5歳児の絵にしては十分に可愛らしく、そして上手に描かれていて思わず口元が緩んでしまいました。

 

 

 ーーーペラリ

 

 

聖良「おぉ………」

 

 

 絵の次は、数字や+や-といった計算らしき文字が書かれていました。きっと、様子を見に来た刑事さんや警察官の人から簡単な計算問題を教えて貰っていたのでしょうか。

 

 

 次のページは何が書かれているのでしょうか。

 

 

 ーーーペラリ

 

 

聖良「ーーーーーーーッッ!?」

 

 

 私は次のページをめくり、そのページに書かれている内容を目にした瞬間、息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 『ごめんなさい』

 

 

 

 

 

 と、ぐちゃぐちゃの文字で書かれていた。紙はしわくちゃだし、所々に染みが付いていた。きっと、あの子は泣きながらこの文字を書いたと分かる。

 

 

 

 

 私は震えながらページを進めました。

 

 

 

 

 ーーーペラリ

 

 

 

 『ごめんなさい』

 

 

 

 

 ーーーペラリ

 

 

 

 『ごめんなさい』

 

 

 

 

 ーーーペラリ

 

 

 

 

 『みんなを守れなくてごめんなさい』

 

 

 

 

 

 ーーーペラリ

 

 

 

 

 『人を殺してごめんなさい』

 

 

 

 

 ーーーペラリ

 

 

 

 

 『会いたい』

 

 

 

 

 

 ーーーペラリ

 

 

 

 

 

 

 『ママやパパ………お姉ちゃん達に会いたいよ』

 

 

 

 

 

 

 

聖良「ーーーーーーーッッ」ポロポロ

 

 

 

 気付いたら、私は涙を流していました。膝が地につき、口元に手を当てても涙は止まりません。

 

 

 それと、同時に自分の愚かさを理解しました。いや、改めて思い出したも言った方が正しいのでしょうか。

 

 

 どうして………、明は人を殺してしまったのか。

 

 

 

 それは…………私たち家族を守るためだということを。

 

 

 

聖良「あぁ……………」ポロポロ

 

 

 私は明になんてことをしてしまったのでしょうか。

 

 

 私が今度はあの子を守ると言ったのに!!

 

 

 逆に私は自分を守るためだけに、明を傷つけてしまった!!

 

 

 ーーートントン

 

 

 ここで、私は誰かに肩を叩かれた気がした。なので、振り向くとそこには………

 

 

 

 ここにいるはずのない、明が立っていました。目に光は無く、服装は事件を起こした時のものでした。

 

 

 

聖良「明………??」

 

 

明『どうして、僕のことを助けてくれなかったの??僕はお姉ちゃん達を助けるためにやったのに……』

 

 

 明はそう言って右手に持っていた銃を私の方に向ける。

 

 

聖良「やめて……………」

 

 

明『僕は一生許さない。お姉ちゃんのことを。』

 

 

聖良「いや…………」

 

 

明『だから…………』

 

 

 

 『殺すね

 

 

 

 そして、明は持っていた銃の引き金を引こうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良「いやぁあぁああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこからどうなったのか、私は覚えていない。気がついたら、自分の部屋のベットで横になっていた。理亜から話を聞くに、私は店で涙を流しながら倒れていたそうです。明のことを聞いても、理亜は見てないと言い張ります。

 

 ですが、そんな理亜の隣には未だに目に光が灯っておらず、うっすらと笑みを零している明がいました。

 

 

 恐らく、私だけしか見えない明という幻が。

 

 

 きっとこの先、私はこの幻に苦しまれることになるのでしょうか。

 

 

 これは、私が愚かな行為を犯してしまった故にできた罰………いや、呪いなのだと思いました。

 

 

 その時、幻の明は私に向かって小さな声でこう言いました。

 

 

 

 『お前はもう、逃げられない』と…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亜「姉様?」

 

 理亜が私に声を掛けたことによって、私は意識を取り戻した。なんだか、とっても懐かしいようで辛い夢を見た気がします。

 

 

 それにしても、どうして私は車椅子に乗せられて外にいるのでしょうか??

 

 

理亜「もうすぐ………着くよ。」

 

 

 着く??どこにですか??

 

 

 あれ??………この道って……………

 

 

 

 車椅子が進む度に、私の心臓音は大きくなっていく。そして、呼吸も上がって嫌な汗もたらりと垂れる。

 

 

 

 やめて……………、理亜。その道だけは通らないで下さい。

 

 

 

 身体を動かそうとしても震えて動かすことが出来なかった。どうして動かないのですか!?動いて下さい!!

 

 

 

 だが、私の身体は動かないまま、辿り着いてしまった。

 

 

 

 

 10年前に、明が人を撃ち殺してしまったあの銀行に……………。

 

 

 

 

 もう時間はだいぶ遅く、その銀行には私たち以外いない。

 

 

 

 

 いないはずなのに。

 

 

 

 

 入口付近の階段には1つの人影が。

 

 

 

 

 そして、その人影は私たちに気付いたのかゆっくりと私たちの方へと向かう。

 

 

 

 

 ーーードクン、ドクンと心臓の音がさらに強くなっていく。

 

 

 

 

 まさか……、本当に??

 

 

 

 そして………、遂に影で見えなかった人物は街灯によってその姿を現した。

 

 

 

 

明「久しぶり…………だな。姉ちゃん達。」

 

 

 

 

 

 

 私が最も会いたくて………心の底から会いたくなかった人物。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』でSaint Snowの私たちの弟である鹿角 明が10年ぶりに目の前に姿を現した。




遂に、この3人が出会いましたね。いやぁ、マジで長かった!!

最終章、第2話。「『人殺し』とSaint Snowの行く末」を出来上がり次第更新していきます。

お気に入り・感想・高評価をお待ちしております。




〜質問回答コーナー〜

Q、七宮 梅雨という名前の由来は??
A、私は一宮駅が好きで、私の苗字が七から始まることから七宮にしました。梅雨は初めてハーメルンでアカウントを作った日が雨だったため。

Q、付き合いたい理想の女性。(ラブライブ!サンシャイン!!の限定キャラで)
A、理想な女性ならば、高海 志満さんですかね。全てを受け入れてくれそうな感じがたまらないほど好き。

Q、設定の練り込みに何かこだわっていることはありますか??
A、コメディな話を書くならガッツリと読んでくれている人が笑ってくれるようにコメディをやるし、シリアスな所はガッツリとシリアスな展開へと持っていくなど、メリハリを分けている所をこだわっています。銀魂みたいな感じですね。



質問、どんどん募集しているので送ってくださいまし。


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『人殺し』とSaint Snowの行く末は。

遂に!!遂にここまでやってきましたよ!!奥さん!!めちゃくちゃ長かった!!長かったけど嬉しい!!

このタイトル通り、『人殺し』とSaint Snowの行く末を見届けて欲しいです。よろしくお願いします。

あと、文字数は過去最長に約1万文字です。どへー。


 ある者は言った。

 

 

 ーーー10年なんてあっという間だったと。

 

 

 ある者は言った。

 

 

 ーーー10年は長いものだったと。

 

 

 ある者は言った。

 

 

 ーーーこの10年は特に何も無かったと。

 

 

 ある3人の姉弟は言った。

 

 

 ーーーこの10年は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日の夜は8月半ばだというのにも関わらず、涼しく気持ちの良い風がよく吹いていた。まぁ、場所が北海道であるからかもしれないが……………。

 

 

 その風によって、1枚の新聞紙が空を舞っていた。その新聞紙は黄ばんでいるため、かなり古いものだということが分かる。

 

 そしてその新聞紙の記事には、デカデカとこう書かれていた。

 

 

 『20××年。〇月〇日。午前10時43分に函館にある銀行に立川 洋平容疑者48歳が銃を銀行員やその場にいた一般人に向けながら押し入っていった。立川容疑者は人質をとり、銀行員に現金を要求した。だが、不思議なことに警察が現地に到着した頃には立川容疑者は死亡していた。警察は立川容疑者が自ら罪を感じ自殺したのかもしれないという方面で調査を続けている。』………と。

 

 

 その新聞紙は長いこと風に乗って放浪したあと、とある場所に辿り着く。

 

 

 そこは1軒の銀行。そして、夜遅く本来ならば誰もいないはずなのに、そこには1人の少年と2人の少女が向かい合っていた。

 

 

 1人の少年の名は鹿角 明。

 

 

 目の前にいる少女達2人の弟で、先程新聞紙に載っていた事件の重要人物の1人。新聞では、自殺とされていたが本来は彼が銀行強盗が持っていた銃の引き金を引いて、人質にされていた母親を助けるために立川容疑者を射殺した。それ故に、彼は『人殺し』となり鹿角家から追い出された哀れで悲しき少年である。

 

 2人いるうちの車椅子に乗っている方の少女の名は鹿角 聖良。

 

 

 『人殺し』で実の弟である明を自分が守りたいために最低な発言をしてしまった過去を持ち、それがトラウマとなって精神病を患う。しかも、一時期はその弟に1人の異性として恋に落ちてしまっていたこともあり、それが明だということが判明してからは症状がさらに悪化する羽目となった。自分の身体を刃物等で傷付けるようになる。

 

 

 もう1人の車椅子を引いている方の少女の名は鹿角 理亜。

 

 

 聖良の妹で、明の双子の姉である。彼女はこの10年間、ずっと悔やみ続けていた。自分は何も出来なかったからだ。明が追い出された時も姉がトラウマでもがき苦しんでいる時も。ただ、自分は…………見ているだけだった。どうにか、姉を助けるべく色々と試すがどれもダメだった。スクールアイドルを始めてからは少しだけ良い方へと進んだ気がしたが、とある出来事によって逆に姉を追い詰める形になってしまった。その後の姉の変貌に彼女はずっと頭を悩ませていた。

 

 

 

 奇跡的に、その新聞紙に載っている事件に関わった人物3人が当時、事件が起きた場所に揃っていた。

 

 

 

 新聞紙は3人の間をひらひらと舞ったあと、再び強い風が吹いたことによってどこかへ吹き飛んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人は互いに対面してからは、まだ一言も口を発していない。それもそのはず。なにせ、明の目の前にいるのは自分を拒絶した姉で彼女達2人の目の前にいるのは拒絶してしまった弟なのだ。友達と会う感覚とはだいぶ訳が違う。

 

 

 理亜は明の姿を見ても特に表情を変えることは無かった。前もって彼がこの場所にいると分かっていたからこそ、相当な覚悟を持ってここに来たことが分かる。だが、本人は気付いていないが微かに身体が震えている。

 

 

 そして、理亜に対して車椅子に乗せられている聖良はとても分かりやすいものだった。明の姿を見て、かなり動揺している。

 

 

 普段はおっとりとした目を丸くし、まるで過呼吸になったかのような勢いで息を上げ、内浦と比べて気温も低いはずなのに汗が大量に垂れていた。

 

 

 明の場合、彼が姉2人の姿を見て特に1番驚いたのは聖良の豹変ぶりだった。

 

 

 彼女の容姿が最後に見た姿とだいぶ変わっていてとても見てられないものになっており、更には彼女の両手にぐるぐる巻きにされている包帯は彼自身が目を逸らしてしまいたいほど、見てて痛くなるものだった。

 

 そして、彼は唇を深く噛みながら心の中で自分を責める。なにせ、姉をこのような姿へとしてしまったのは自分自身に原因があるからだ。

 

 

明(ダメだダメだダメだ。消極的な考えしか出てこねぇ………。落ち着け、俺。)

 

 

 明は首を横にブンブンと振ったあと、大きく、そしてゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 

 

 そして、彼は口を開いた。

 

 

明「俺がここに来たのは姉ちゃん達を別に陥れる為だとか復讐の為とかじゃない。まずは、それを分かって欲しい」

 

 彼は、まず彼女達が真っ先に思い浮かぶであろう明が2人に会いに来た理由の候補を潰すことにした。

 

 きっと、聖良達は明が来た理由は自分達が憎く、復讐するために来たのではないかと疑っていることに違いない。そう明は思っていた。

 

 

 しかし、その明の心配は無用だった。

 

 

 聖良はともかく、理亜は少なくとも明がここに来たのは自分たちに復讐するためではないということを理解していた。あの日のライブ中継の彼の姿を見て理亜は半信半疑だったが、目の前にいる明の覚悟を決めた堂々とした姿を見て彼女は確信した。

 

 

 確信したからこそ、鹿角 理亜は今まで閉じていた口を開けた。

 

 

理亜「………じゃあ、アンタは何しにここへ来たのよ!!これまで奥山 零として私達に接してきたアンタが!!『人殺し』のアンタが!!鹿角 明としてライブ中継でわざわざあんなことをして姉様や私をここに呼び出した理由は一体何なのよ!!」

 

 

 理亜は大声を出して叫びながら彼に……明に問う。

 

 

 しかし、理亜はもうこの時点で分かっていた。

 

 

 どうして、明が自分たちにあんなことをしてまで、函館まで来て会いに来たのかを。

 

 

 

 だが、これは彼女の勝手な予想に過ぎない。だからこそ、理亜は会いに来た本当の理由を明自身の口から聞きたかった。

 

 

 そして、明は理亜の問いに答えるために真剣な目線を送りながらハッキリと言葉を出した。

 

 

明「俺がここに来たのは理由は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姉ちゃん達とやり直したいと思ったからだ。」

 

 

理亜「ーーーーーーーッッ…………」

 

 

 明の言葉を聞いて、理亜は胸が熱くなる。そして、危うく泣きそうになる。彼女が予想していた通りだった。

 

 明は、また10年前に止まってしまった姉達との時間を再び動かそうとしている。

 

 この決断を下すのはそう簡単なことではない。なにせ、明は拒絶された存在なのだ。本来ならば、彼は彼女達に近づかない方が幸せなのかもしれない。

 

 

 だが、それでも明は聖良達とやり直したいという道を選んだ。他にも数多くある選択肢があるというのにも関わらず。

 

 

 しかし、その道は恐らく明にとって茨の道だろう。それは明自身も分かっている。

 

 

 なにせ、理亜と違ってこの女がいるのだから。

 

 

聖良「…………です。」

 

 

理亜「姉様??」

 

 

聖良「嘘です!!!!」

 

 

理亜「ーーーー!?」ビクッ

 

 今までに聞いたことの無い姉の怒りを孕んでいるかのような大声を聞いて理亜は体を震わせ、怯む。

 

 

聖良「嘘です!!嘘です嘘です!!貴方は絶対に私達のことを復讐するためにここへ来た!!貴方を傷つけた私を貴方が恨んでないはずがない!!」

 

 

 聖良はわなわなと身体を震わせ、顔に手を当てながら叫ぶ。彼女は明の人生を大きく狂わせてしまった張本人。彼が家に帰ってきてから、施設に行ってしまう直前まで彼女は明に対して姉らしきことをしてこなかった。その挙句、最後の別れでは明に向かって姉として最低な言葉を送ってしまった罪もある。

 

 

 それによって、どれだけ明は傷ついてしまったのか。聖良は予想もつかなかった。実際、家を離れてからは明についての情報が一切来なかったからだ。

 

 

 離れ離れとなって10年、明は今どうしているのかは分からない。分からないが、1つだけハッキリとして分かることがある。

 

 

 

 明は聖良のことを必ず恨んでいるということを。

 

 

 

 それゆえ、明の言葉を彼女は信じることが出来なかった。

 

 

 

聖良「貴方は私のことを殺してしまいたいほど恨んでいるに決まってます!!違いますか!?私達とやり直したい??そんなの出来るわけないでしょう!!壊れてしまった物は二度と戻らない!!」

 

 

 

 

 『人殺し』

 

 

 『もう、私達には関わらないで!!』

 

 

明「………………………」

 

 

 彼女の言う通りだ。壊れてしまったものは以前のような元には戻れない。割れてしまった皿。破れてしまった本。砕けてしまった宝石。どれも初めて手にした時のようなあの頃に戻すのは不可能だ。

 

 

 それは明も分かっている。分かっているからこそ…………

 

 

 

 

明「それでも俺は…………」

 

 

 

 

聖良「いい加減にしてください!!!」

 

 

理亜「姉様!?」

 

 

 聖良は明の言葉を遮り、ガバッと車椅子から明に向かって飛び掛かかる。そして、彼の胸元を掴みあげる。

 

 聖良の表情は普段のおっとしている表情の面影が一切なく、眉を皺ができるほどしかめ、目を最大限まで大きくして明を睨みつけたりと、まるで鬼のような顔付きへとなっていた。

 

 

理亜「姉…………様」

 

 

 初めて見る姉の顔を見て、理亜は恐怖で体を震わせ、動かすことが出来なかった。

 

 

 恐怖で身動き出来ない理亜を気にも止めず、聖良は明に向かって怒号を上げる。

 

 

聖良「私は貴方を10年間、苦しませてしまったのですよ!!『人殺し』になってまで私達の助けてくれた貴方を今度は私が守ると誓ったのにも関わらず!!私は自分の立場を真っ先に優先して貴方を陥れてしまった!!」

 

 

 大好きな弟を犠牲にしたことによって、彼女は以前のような生活を手に入れることが出来た。だが、それがどれだけ彼女にとって大きな代償だったのかは警部から渡されたノートを手に入れるまで彼女は分からなかった。

 

 

 しかも、聖良が犯した罪はそれだけじゃない。

 

 

聖良「私は貴方のことを異性として好意を抱いていました!!その間、私は貴方の存在や自分の罪を忘れていた!!」

 

 

 そう。彼女は一時期、奥山 零という偽名を名乗っていた明に対して好意を抱いていた。東京のイベントで見知らぬ男達に襲われていたのを明が助けたのがきっかけだった。

 

 

 聖良は、その奥山 零が明であると分かるまでの間は彼女の発言通り弟である明の存在や自分の罪を忘れていた。忘れていたからこそ、その短い期間の間は彼女は禁断症状は起きなかった。

 

 

 しかし、それが1番の過ちだった。

 

 

 内浦の商店街で行われたAqoursのライブ、一時期は成功だと思われていたが一人の男性と一人のAqoursのマネージャーによって全てを壊された。

 

 そのマネージャーの人物が自分が好意を抱いていた奥山 零であり自分が拒絶してしまった実の弟であり、『人殺し』の鹿角 明だった。

 

 

 それが分かった時の聖良の絶望感は誰もが予想できるものでは無いだろう。

 

 

 

 そして、同時に彼女は思い出す。

 

 

 

 弟の存在と自分の犯した罪を。

 

 

 そう、彼女は1つ罪を犯してしまったのだ。

 

 

 

 その結果、彼女は自らの身体を傷つけてしまうほどまで精神を追いやられてしまった。そうでもしないと、彼女自身が正気を保つことが出来ないからである。

 

 

 

聖良「それでも、貴方はこんな最低な私を家族だと!!姉だと受け入れると言うのですか!!」

 

 

 胸ぐらを掴まれて、少し苦しそうな表情をしている明の瞳には綺麗で有名だといわれている聖良の顔が汚く酷く醜い表情へと変わって映し出されていた。

 

 

聖良「お願いします…………。もう帰って下さい。これ以上………、私を………私達を苦しませないでください。」

 

 

 聖良は今、自分がどれだけ自分勝手なことを明に向かって発言しているのか痛いほど分かっていた。

 

 

 

 結局、聖良は既に姉として明と立ち向かおうとしている理亜と違って……………

 

 

 

 最後の最後まで姉として明に向かい合うことから逃げようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、しかし!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この男はそれを許さない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今の聖良の表情に彼は見覚えがあった。

 

 

 

 なぜなら、つい1ヶ月ほど前に彼自身が聖良と同じような表情を8人の女性に向かって浮かべていたからだ。改めて見てみると、こんなに酷い表情をしていたのかと彼は少しだけ後悔していた。

 

 

 やはり、似てしまうのは血が繋がっているからなのかもしれない。

 

 

 そして、彼は聖良に向かってあの日、自分を救ってくれたAqoursのリーダーと同じような真っ直ぐな視線を送りながら口を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

明「あぁ。それでも、俺は…………姉ちゃん達を受け入れる。」

 

 

 

 

 

 

 

聖良「ーーーーーーーッッ」!?

 

 

 

 

 彼はあの日、自分が逃げ出すことを許してくれなかったあの10人の様に彼もまた、聖良が逃げることを許さなかった。

 

 

 

 ここまで来れば、流石の聖良も動揺が隠せない。胸ぐらを掴んでいた手を離し、その場から崩れ落ちる。

 

 

聖良「どうして………そこまで」

 

 

 どうして、そこまで彼が自分を受け入れてくれるのか聖良には理解することが出来なかった。

 

 

明「んなもん、決まってるだろ。それは…………」

 

 

 明は聖良の問いに答えるために口を動かそうとした。だが、簡単には口を開くことが出来なかった。それは何故か。

 

 

 

明「俺が……………俺が!!」ボロボロ

 

 

 

聖良・理亜「ーーーーーーーッッ…………」

 

 

 明は泣いていたからだ。ただでさえ、10年ぶりに故郷に帰ってきて泣きそうになったのだ。こんな大切な場面となれば涙が流れるに決まっている。

 

 

 嗚咽によって、彼は未だに言葉を出すことが出来なかった。明の涙を見て、聖良と理亜も徐々に瞳から涙が溜まっていく。

 

 

 

 そして、遂に彼は言葉としてハッキリと彼女達2人に伝えた。

 

 

 

明「俺が……………姉ちゃん達のことが好きだからに………決まってるだろうが!!」ボロボロ

 

 

 

聖良「ーーーーーーーッッ!?」ボロボロ

 

 

理亜「明………………」ボロボロ

 

 

 明は例え拒絶されたとしても、両親はもちろん聖良達のことを嫌いになることは無かった。

 

 先程の言葉を先頭に、彼は次から次へと溜まっていた想いを口に出す

 

明「この10年間、ずっと会いだがっだよ!!ぞじで謝りだがっだ!!」ボロボロ

 

 彼は止まらない。もう涙や鼻水、嗚咽とかを関係なしに言葉を続ける

 

明「だけど、出来ながっだ!!俺ば『人殺し』だがら!!」

 

 ぶっちゃけた話、明が精神的に強ければいつでも函館に向かい聖良や理亜に会う機会はあった。だけど、明は行かなかった。いや、行けなかったと言った方が正しいのかもしれない。

 

 怖かったからだ。『人殺し』である自分が会いに行って10年前のように拒絶されてしまうかもしれないという未来が。

 

 

 だが、こうして偶然なのかそれとも必然だったのか分からないが明は聖良達と向き合えるチャンスが到来し、1人の恩人と9人の仲間達に背中を押されてここまでやって来た。

 

 

 明は涙と鼻水を腕で雑に拭ったあと、またしても真剣な表情で彼女達の方を見る。

 

 

明「だから!!」

 

 

 そして、彼は両手を伸ばして聖良達にずっと言いたかった言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「仲直りのハグをしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良・理亜「ーーーーーーーッッ…………」ボロボロ

 

 

 

 明の発言で、聖良と理亜は今まで生きてきて1度も味わったことの無い衝撃を味わう。

 

 ちなみに、どうしてハグなのか。函館に向かう数日前に明はある人物に相談したことがきっかけだ。

 

 その青髪のポニーテールである彼女は明にハグしながらこう答えたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「仲直りにはハグが1番だよ♪私だって、明ほどじゃないけど2年間離れてた鞠莉とハグして仲直りしたからね♪効果は保証するよ〜」ハグハグゥー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを思い出しながら明は両手を広げたまま彼女達を見つめる。

 

 

 

 

 明がここでやるべき事は終わった。

 

 

 

 あとは、彼女達自身の問題だ。

 

 

 

 とは言っても、理亜はいつでも明の方には行けた。だが、行くのは今ではないと彼女は判断した。

 

 

 どうせなら…………姉と2人で行きたいと思ったからだ。

 

 

 だがら、その時が来るまで待つ。姉である聖良が覚悟を決め決断を下すその時まで。

 

 

 聖良は明の姿から視線を逸らし、ボソッと呟く。

 

 

聖良「たった、そんなので………」

 

 

 たったそんなので、関係が取り戻せる訳がない。聖良はこう言いたかったのだろう。だが、彼女は言えなかった。

 

 

 賢い聖良なら、もう分かっているはずだ。明の考えと行動を。そして覚悟を。

 

 

 壊れてしまった関係は元に戻すことは出来ない。

 

 

 元に戻すことは出来なかいが…………

 

 

明「確かに!!このハグで何もかもが解決する訳ではない。けど、やり直すことは出来る。」

 

 

 

聖良「………………」

 

 

 

明「だからさ、聖良姉ちゃん。またやり直そうよ。俺達の関係を。」

 

 

 明は微笑みながら、聖良に向かって両手を改めて広げ直す。

 

 

聖良「………………」ボロボロ

 

 

 明の発言を聞いて、聖良は大粒の涙を流す。口元に手を当てても、止まることは無かった。

 

 

 2人より少し離れている理亜も聖良同様に大粒を涙を流しながら見守る。

 

 

明「このハグで………10年前のあの日、0になってしまった俺達の関係を1にしよう。」

 

 

聖良「………………」ボロボロ

 

 

 

明「ほら、確かここの近くにピエロが目印になってるハンバーガー屋があっただろ??あそこでさ、いつか互いにこの10年間どうやって過ごしてきたのか語り合おう。」

 

 

 

 

 明の言葉を聞いているだけの聖良だったが、言葉を震わせて明に問う。

 

 

聖良「……………本当にいいのですか??」

 

 

 明は聖良の言葉に何も言わず、コクリと頷いた。

 

 

聖良「私は貴方を傷つけたんですよ??」

 

 

 もう何度も同じ言葉を口を出す聖良に対して、明も聖良に向き合うように言葉出す。

 

 

明「分かってる。それは俺も同じだ。」

 

 

聖良「私は貴方に苦しい思いをさせてしまったんですよ??」

 

 

明「………うん。」

 

 

聖良「私は貴方に好意を抱いていたんですよ??」

 

 

明「ごめん。さっきの発言から気になってたけどさ、何それ。俺、初耳なんですけどぉ!?そうだったの!?」

 

 

聖良「………………ふふ」

 

 

 ここで予想外な発言に、明は思わずツッコミを入れてしまう。その姿を見て、聖良は思わず微笑んでしまった。

 

 その姉の顔を見て、明はやっぱり聖良は美人だなということを改めて思った。

 

理亜「姉様。」

 

 

 理亜は微笑みながら聖良のそばまで近づき、肩に手を触れる。

 

 

 理亜の顔を見て、聖良もまた表情を緩ませる。

 

 

 そして、2人は肩を寄り合わせながら明の方に向かう。

 

 

 ザッザッと靴とコンクリートが擦り合う音がゆっくりと響く。

 

 

 その距離は約3mほど。

 

 

 ザッザッと靴とコンクリートが擦り合う音がどんどんと明の方まで近づいていく。それと同時に3人の心拍音が向上。

 

 

 その距離は約2mほど。

 

 

 ザッザッと調子よく靴とコンクリートが擦り合う音が響いていたのに途中で聖良は足を止める。理亜と明は心配そうに彼女の方へと向くが、聖良は何回か深呼吸を行ったあと「大丈夫です」と言葉をかけて再び歩み出す。

 

 

 

 その距離は約1mほど。もうすぐに手を伸ばせば彼女たちに触れることが出来る距離だ。

 

 

 

 ザッザッと靴とコンクリートが擦り合う音が響き渡り、遂に2人は明の目の前まで辿り着いた。3人の表情にはもう迷いはない。覚悟を決めた顔だ。

 

 

 

 その距離、約30cm。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして………遂に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ーーーガバッ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その距離は0となり……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明と聖良と理亜は抱き締め合った。

 

 

 

 

 

 

 抱き締めることによって、聖良と理亜は弟が自分たちよりも背が高いということに驚く。彼女達が知っているのは5歳の時まで。それに比べて、明は身長が178もある。

 

 

聖良「こんなにも………大きくなって」

 

 

明「そりゃあ成長期真っ只だから………な。聖良姉ちゃんも立派に大きくなって…………」

 

 

理亜「ちょっと………あんたどこ見て言ってんのよ…………。」

 

 

 抱きしめながら、3人はそれぞれ言葉を出す。理亜の最後の一言で3人は微笑み合う。

 

 

 それと同時に3人は思い出す。それぞれの温もりを。

 

 

 ずっとずっと…………この10年間に求め続けていた温もりを3人はひたすら感じ続けた。

 

 

明「あはは……はは」ボロボロ

 

理亜「ちょっと………あんた何泣いてんのよ」ボロボロ

 

聖良「ふふ………、理亜も………泣いてますよ」ボロボロ

 

 

 3人はさっきまで笑っていたのに、抱きしめている間にまたしても大粒な涙を瞳から流す。

 

 

 

 そして、次第に3人は言葉を発すること無く、抱き締め合う力を強め………………

 

 

 

 

明・聖良・理亜「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!」ボロボロ

 

 

 

 

 

 まるで子供のように泣いた。

 

 

 

 

 聖良は泣きながら何度も何度も明に謝っていた。「ごめんなさい、ごめんなさい」と。明も「良がっだよぉ」と泣きながら言葉を出し、理亜は何も言わずずっと大声を出して泣き続けた。

 

 

 

 

 

 3人は落ち着くこと無くずっと泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜花丸視点〜

 

 

 明くんが函館に旅立ってから1日が経った。

 

 

 大好きな明くんがいないこの1日はとても辛かった。好きな人と会えないというものはこんなにも辛いものだったとは知らなかったずら。

 

 だけど、今日はマルだけでなく千歌ちゃん達の表情も暗い。

 

 

 理由はただ一つ。

 

 

 ラブライブ東海地区予選の結果が発表されたのだが………Aqoursは全国には行くことが出来なかった。

 

 

 とても悔しい。こんな思いをするのは初めてだった。

 

 

 だけど、私達はこれで終わりではない。まだもう1つ、結果を待っているものがある。

 

 

花丸「明くん…………」

 

 

 マルはテーブルの上に置かれている自分のスマホを眺めながら心配そうに呟く。

 

 

 もし、ダメだったら…………と考えただけでも胸が苦しくなる。ついさっき食べたコッペパンをリバースしてしまいそうになるぐらい緊張しているずら。

 

 

 〜ピロリン♪

 

 

Aqours「!?」

 

 

 マルのスマホが鳴る。

 

 

善子「ずら丸!!」

 

ルビィ「花丸ちゃん!!」

 

花丸「ずら!!」

 

 

 マルは素早くスマホを手にして、ロック画面を外す。あまりにも急ぎ過ぎて2回ほどパスワードを間違えてしまったずら。

 

 

 ロックを解除し、連絡アプリを起動させる。

 

 

 通知は2件。相手はもちろん明くんだ。

 

 

千歌「花丸ちゃん………」

 

 

 マルは指を震わせながら目を閉じて明くんのアイコンへとタップする。それによって、トーク画面に切り替わる。

 

 

 

 お願いします。神様。どうか………明くんが上手く行っていますように!!!!

 

 

 そして、ゆっくりと目を開けると1つのメッセージと1枚の写真。その内容を目に通すと……………

 

 

果南「花丸!!どうだった!?」

 

花丸「………………」

 

鞠莉「花丸??」

 

花丸「………………」ボロボロ

 

ダイヤ「花丸さん!?」

 

 マルはスマホをテーブルに置き、みんなが見えるようにする。当然、みんなは食いつくようにスマホを覗き込んだ。

 

 

 明くんから来ていた内容は…………

 

 

 『Mission Complete ( ¯꒳¯ )b』

 

 

 の一言と…………

 

 

 明くんと………その両端にいるSaint Snowである鹿角 聖良さんと鹿角 理亜ちゃんが笑っているスリーショットの写真だった。

 

 

 一目瞭然、明くんはどうやらお姉さん達と上手くいったようだった。

 

 

Aqours「やったぁーーーーーーー!!」ボロボロ

 

 他のみんなも涙を浮かべながら喜びの声を上げる。特に善子ちゃんとルビィちゃんは号泣していた。

 

 そして、自らスマホやガラケーを取り出して各々明くんにメッセージを送る。きっと、今頃、明くんのスマホは通知でいっぱいになっていることだろう。

 

 マルはメッセージを送らず、もう1度ゆっくりと写真を眺める。

 

 3人の目がとても赤い。涙を流したであろう跡もくっきりと残っている。きっと、この3人はマル達が予想もつかないであろう会話を繰り広げたのに違いない。

 

 

千歌「そうだ!!明くんがこっちに戻ってきた時、サプライズでお祝いしてあげようよ!!」

 

曜「それ、いいね!!」

 

梨子「うん!!流石、千歌ちゃん!!」

 

千歌「えへへ。よーし!!早速、買い出しだー!!!」

 

Aqours「おー!」

 

 他のみんなはそう言って、バタバタと部室から飛び出ていく。

 

ルビィ「花丸ちゃんも行こう!!」

 

花丸「うん。明くんにメッセージ送るから先行ってて欲しいずら」

 

ルビィ「うゆ、分かった。………ちょ、善子ちゃん!?ルビィを置いてかないでーー!!」

 

 ルビィちゃんがいなくなり、部室でマル1人になる。マルは再びスマホで明くんの写真をみて一言。

 

 

花丸「おめでとう、明くん。」

 

 

 傍から見て、誰しもが本当の姉弟にしか見えない彼らの写真を眺めながらマルは微笑むのだった。

 

 

 

 

 




うわぁぁぁぁぁぁぉぁ!!
仲直りできて良かったよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
うおぉおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

母上「梅雨ー。うるさいわよー。八つ裂きにするわよー。」
七宮「うす、すいません」

最終章最終話「『人殺し』は想いを告げる」を書き上がり次第投稿するのでお楽しみに!!

お気に入り・感想・高評価の方をお待ちしております。


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『人殺し』は思いを告げる

夏休みもあと1日ですね。
それまでになんとか最終章を投稿出来て良かったです!!

それではどうぞ!!


 聖良姉ちゃん達との関係を取り戻した俺は、ひとまず姉ちゃん達と別れて空港の近くにあるホテルで一夜を過した。

 

 別れる時、聖良姉ちゃんから実家である茶房菊泉で泊まることを勧められたが丁寧に断っておいた。まだ、両親に会うときでは無いと思うからな。

 

 そして現在、俺はキャリーバックを手にして空港にいる。目の前には聖良姉ちゃんと理亜姉ちゃんの2人が見送りに来てくれていた。

 

 

聖良「本当に良かったんですか??………母さん達に会わなくて」

 

 

 聖良は心配そうな表情を浮かべて俺に言葉をかける。

 

 

明「うん。今回、函館に来た理由は姉ちゃん達とやり直すためだったからね。また、近い内に会いに行くよ」

 

 

聖良「そうですか。」

 

 

 姉ちゃん達と関係を取り戻しても、まだ両親がいる。きっと、姉ちゃん達は俺の味方になってくれると思うが、それでも厳しい道のりになるだろう。

 

 

 

 だけど、俺は諦めない。

 

 

 

 

 

 どれくらい時間がかかったとしても俺は……絶対に両親とも関係を取り戻してやるんだ。

 

 

 

 

理亜「ねぇ、明」

 

明「ん??」

 

 理亜姉ちゃんは俺の服の裾を摘んで、顔を赤くしながらオドオドとして俺に話しかける。

 

 

理亜「Aqoursのみんなと………アンタの里親の奥山 零さんにお礼言って貰えると………助かる。」

 

 

 俺がこうして姉ちゃん達のやり直すことが、出来たのは俺だけの力だけじゃない。

 

 

 千歌、船長、梨子、ルビィ、花丸、善子、ダイヤちゃん、かなっち、マリーの心強い9人の仲間と………

 

 

 俺の恩人で里親である零さんの協力があってこそのこの結果だ。

 

 

明「分かった。必ず伝えとくよ」

 

 

 俺の言葉を聞いて、理亜姉ちゃんは安心したのか可愛らしく微笑んで俺の服の裾から手を離した。

 

 

明「そういえば、姉ちゃん達ってスクールアイドルの活動を続けるの??」

 

 

 今なお現在、聖良姉ちゃんと理亜姉ちゃんの2人がやっているスクールアイドルグループ、Saint Snowはメンバー(聖良姉ちゃん)の体調不良を理由に活動を休止していた。

 

 だから、この先どうするのか気になっていたがどうやら心配するのは杞憂だったようだ。

 

理亜「当然!!」

 

聖良「えぇ。昨日の夜に理亜と話し合って決めました。」

 

 

 姉ちゃん達の目は死んでおらず、やる気に満ち溢れていた。

 

 

 とは言っても、今の聖良姉ちゃんの両腕は自身が傷つけた怪我で酷いものとなっているため、そちらの治療がだいたい終わるまでは公の場に出ずに軽いトレーニングなどを行うなどして、リハビリに専念するらしい。

 

明「そっか。良かった」

 

 俺は姉弟とか関係なしでSaint Snowは好きなスクールアイドルグループの1つである。それが近い内に活動を復帰するとなればこの先が楽しみだ。

 

 それに、Saint Snowが復活となれば当然、Aqoursにも良い刺激となるだろう。その逆もまた然りだ。

 

 

理亜「それに、もう新曲の案は出来てる」

 

 

明「そうなの??」

 

 

聖良「はい。私達が過ごした10年間をテーマにしています。」

 

 

 

 

 姉ちゃん達が過ごした10年間をテーマにした曲か…………。なにそれ、すっげぇ気になる。

 

 

明「そうなんだ。楽しみにしとくよ。」

 

聖良「はい!!」

 

理亜「任せといて!!」

 

 そして、このタイミングで俺が乗る便のアナウンスが空港中に響き渡る。俺は姉ちゃん達の方に振り向いて言葉を出す。

 

明「じゃあ……そろそろ行くよ」

 

聖良「はい………」

 

理亜「うん…………」

 

 俺は目の前にいる姉ちゃん達にゆっくりと抱き締める。またすぐに会えるとは思うが、それでも少しでも長く彼女達の温もりを感じていたかった。それは姉ちゃん達も同じだったのか、2人も俺の方に腕を伸ばして抱き絞めた。

 

 

明「またね、2人とも」

 

 

 そう言って俺達は離れて、俺は改札の方へと歩き出した。

 

 すると、すぐに背後から聖良姉ちゃんの大きな声が聞こえてきた。

 

 

 

 

聖良「明!!私達に会いに来てくれて!!関係をやり直そうと言ってくれて!!私達のことをまた姉として受け入れてくれて!!本当にありがとうございます!!」ボロボロ

 

 

 

 

理亜「姉様…………」ボロボロ

 

 聖良姉ちゃんは涙を流しながら大きく手を振ってくれた。その近くで理亜姉ちゃんも小さく俺に手を振ってくれている。

 

 

 これを見て、本当に俺は姉ちゃん達とやり直すことが出来たんだ、やり遂げたんだ。と改めて実感が湧いて少しだけ泣きそうになった。

 

 

 そして、気付いたら俺も姉ちゃん達に向かって腹から声を出していた。

 

 

 

明「俺の方こそありがとう!!近い内に里親と愛する彼女(予定)を連れてここに来るからよろしくな!!」

 

 

 

聖良・理亜「彼女!?」

 

 

 この時の2人の驚いた表情を見て、俺は二ヒヒと笑いながら飛行機の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、これは余談なのだが…………。

 

 

 俺が姉ちゃんと関係を取り戻してから数ヶ月後。

 

 Saint Snowはスクールアイドルのサイトの方で活動を再開するという報告を新たな曲と共に発表された。

 

 そして、彼女達がサイトにアップした新曲のタイトルは…………

 

 

 

 

 

 

 

 『DROP OUT!?』

 

 

 

 

 

 

 

 聖良姉ちゃん達の宣言通り、彼女達が道に外れて過ごしてきた今までの10年間の全てが込められている良い曲だった。

 

 

 

 

 

 

 

〜沼津駅〜

 

 

 長かった旅を終えて、ようやく沼津駅へと到着した。くっ、函館と違ってやっぱり暑いな。

 

 えぇと、確か………零さんがこの辺りで待っててくれてるはずなんだけどな。

 

零「明ちゃーん。こっちこっち」

 

 キョロキョロしていると、お馴染みの車の近くで零さんが俺に手を振りながら声をかけてくれた。

 

 俺は零さんの方まで走って駆け寄る。途中で、転びそうになったけどなんとか体勢を保ちながら零さんの方へと足を運んだ。

 

 そして、彼女の側まで行くと零さんに抱き締められる。

 

零「おかえり。明ちゃん」

 

明「ただいま、零さん。」

 

 俺も零さんの方に腕を伸ばして抱き締めた。10年間ぶりの姉ちゃん達の温もりは良かったけど、零さんの温もりも良かった。

 

 

 

 

零「遂に…………やり遂げたんだね」

 

 

 

 

 

明「ーーーッッ…………うん。」

 

 ここで、俺は零さんの体が微かに震えていることが分かった。どうして震えているのかはあえて言わないでおこう。俺は出来るだけ零さんの姿を見ないようにした。

 

 

 

零「やっぱり……私の息子は凄い子だ。うん、間違いない」

 

 

 

明「…………そうかな??多分、6年間俺を育ててくれた母親の教育方針が良かったからだよ。」

 

 

 

零「…………そう言って貰えると零さん的に嬉しいかも」

 

 

 

明「はは。零さん、照れてる。」

 

 そして、少し経ったあとに俺と零さんは互いの顔を見つめながら笑い合った。

 

零「帰ろっか。」

 

明「うん」

 

 零さんの言葉に頷いた俺は零さんの愛車に乗り込み、我が家を目指して零さんはエンジンを掛けたあとアクセルを踏んだ。

 

零「そういえば、あの子達……Aqoursは予選で落ちちゃったみたいだね」

 

明「みたいだね」

 

零「あれ?知ってたんだ。」

 

 サイトの方で確認したし、花丸にメッセージを送ったあとに千歌達から個人で大量にメッセージが来たからな。

 

 

零「でも、こうなることを予想してたみたいな言い方だね。」

 

 

明「あ、相変わらず鋭いね。零さんは……」

 

 まぁ……、零さんの言う通りなんだけどね。

 

 確かに、Aqoursの東海地区予選のライブはとても良かった。良かったのたが、Aqoursは1つ公式大会のルールを破ってしまった。

 

 本来ならば、ステージ上に近付いては行けないという決まりがあるのにも関わらず千歌の呼びかけによって彼女たちの保護者や学校の生徒はステージに近付いてAqoursと共にライブを行った。

 

 傍から見たら素晴らしい演出だったが、それは身内だけの意見だ。

 

 もし、第三者である一般客や審査員はそのライブを見てどう思うのだろうか。少なからず良い気分ではない。

 

 実際に、俺は操作室で彼女達のライブを見ていた審査員が呆れたような表情をしていたのを目撃していたのでその時点でこうなることは察していた。

 

 

 だけど、あのライブによって嬉しいことも起きていた。

 

 

明「あのライブのおかげで浦の星女学院の入学説明会の応募者が何人か来たらしいからね。」

 

 

 そう。この情報はマリーが教えてくれたのだが今まで0だった応募者がライブが終わったあと、確認したら5人へと増えていたらしい。5人となればまだまだ全然だと思うが、それでもAqoursにとっては大きな変化だろう。廃校阻止への希望が少しだけ見えてきたのだ。

 

 

零「そうなんだ。やったじゃん」

 

明「うん。これからももっと頑張らないとね」

 

 俺がそう呟いたところで、我が家へと到着した。長旅の疲れがあるため、早く部屋に行って身体を休めたい気分だった。

 

 休めてる間に、色々と決めなければ行けないことがある。

 

 夏休み中にはもう1回ほど函館に行きたいので、予定の埋め合わせや夏休み中のAqoursの今後について。

 

 

 

 そして………花丸に想いを伝える日などその他諸々と考えなければならない。

 

 

 

明「ただいま〜」

 

 ガチャと、玄関の扉を開けて俺は言葉を出す。駐車場で零さんが車を停めている最中なので返ってくる言葉はないのだが、もうこれは癖だな。つい、言ってしまう

 

 自分の部屋に行く前に、喉を潤すためにお茶だけ飲もうとリビングの扉を開けた瞬間…………

 

 

 

 「明くん!!おかえりーーー!!!」パンパンパーン

 

 

明「うわっ!?」ガタッ

 

 

 突然の言葉に突然のクラッカー音がリビング中に鳴り響き、驚いた俺は思わず尻もちを付いてしまった。

 

 尻に手を当てながら目の前を見ると、驚きの光景を目にした。

 

 リビングがまるでパーティーのように豪華な飾り付けをされており、テーブルの上には数々の料理が置かれていた。

 

 そして………目の前には千歌、曜船長、梨子、ルビィ、花丸、善子、ダイヤちゃん、かなっち、マリーの9人がクラッカーを手にして嬉しそうに微笑みながら立っていた。

 

 

 え…………何で、みんな家にいるの??

 

 

 突然の光景に少しばかり思考停止していると、背後から送れてやって来た零さんが状況を説明してくれた。

 

零「千歌ちゃん達がね………、明ちゃんがここに戻ってきた時にサプライズでお祝いしたいって言ってたの。だから、零さん。協力しちゃった☆」

 

明「………マジ?」

 

零「マジマジ。」

 

 零さんがさし伸ばしてくれた手を取って俺は立ち上がる。

 

千歌「明くん。」

 

 千歌を先頭に9人が俺の側まで近づいたあと、じっと俺の方へと見つめる。ゔっ、美人な人達に見つめられると緊張するんだが………。

 

 そして、俺に向かって1人ずつ彼女達は言葉を出してくれた。

 

 

 

千歌「おめでとう!!はいこれ、みかん!!美味しいよ!!」

 

 

曜「おめでとう!!ヨーソロー!!」

 

 

梨子「ふふ、おめでとう」

 

 

ルビィ「うゆ!!おめでとう!!」

 

 

花丸「おめでとうずら!!」

 

 

善子「この堕天使ヨハネがリトルデーモンである貴方にお祝いの言葉を送ってあげるわ!!感謝しなさい!!」

 

 

ダイヤ「明さん、おめでとうございます!!」

 

 

果南「おめでとう!!ハグしよ♪」

 

 

マリー「Congratulation♪」

 

 

 

明「ーーーーーッッ…………」

 

 

 彼女達の言葉を聞いて、俺は思わずみんなから顔を隠すように手を抑える。もう、我慢の限界だった。

 

 

明「なんだよぉ……それ。反則すぎるだろおぉ…………」ボロボロ

 

 

 こんな素敵なサプライズをしてもらって、あんな素敵なお祝いの言葉を送ってもらって…………嬉しくないはずがないだろう。

 

 

零「ほら、明ちゃん。みんなに言わなくちゃいけないことがあるでしょ??」

 

 

 零さんはそう言って、泣いている俺の肩に手を置く。そして、もう片方の手にはハンカチを持っていた。

 

 

 

 そんなの分かってる………分かってるよ。

 

 

 

 俺は立ち上がって、零さんからハンカチを受け取り涙を拭ったあと今度は俺が目の前にいる彼女達に向かって言葉を出した。

 

 

明「みんな、ありがとう。それと……ただいま。」

 

 

Aqours「ーーーッッ………明くーん!!」ガバッ

 

 

明「うおぉ!!???」

 

 

 俺の言葉で、千歌達は俺の方に飛びかかる。慌てて彼女達を受け止めたが、9人が一斉に飛びかかったもんだから重さに耐えきれずそのまま床に倒れ込んだ。

 

 

 やばい。何これ。どういう状況??

 

 

零「明ちゃん、モテモテだねぇ。零さん、妬けちゃうわ♪」ニヤニヤ

 

明「あはは……………。」

 

 そんなこと言ってないで、早く助けて欲しいです。色々と当たっちゃってるから!!ちなみに、右腕に当たってるのは多分、かなっちのやつですね。ありがとうございます。ご馳走様です。

 

零「ふふ。はい、みんな〜。そろそろパーティーの方を始めましょうか。料理が冷めちゃうわ」

 

Aqours「はーい!!」

 

 零さんの言葉に、みんなは俺から離れていく。た、助かった……。あともう少しで理性が飛ぶところだった。

 

 

 

花丸「明くん………」

 

 

 

明「ん??」

 

 他のみんなはもうテーブルの方へと足を運んでいる中、花丸だけは俺のそばで待っててくれていた。

 

 そして、俺の右手を優しく掴んだあと俺の目を見て若干顔を赤くさせながら微笑みながら一言だけ呟いた。

 

 

花丸「………行こ??」

 

 

明「お……………おう」

 

 

 この時、俺は改めて彼女のことを綺麗だと思った。

 

 顔が熱くなるのを感じてしまうぐらいまで赤くなっているし、心臓の音も手を当てなくても分かるぐらいまでドクドクと鳴り響いている。ば、バレてないよな??

 

 そして、そのまま俺は花丸に手を掴まれたまま引かれて、テーブルで待っている彼女達の方へと向かった。

 

 花丸に手を引かれているまま、俺は心の中で1つあることを決断した。

 

 

 

 

 

 このパーティーのあとに…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー俺は花丸に告白する。

 

 

 

 

 

 

 花丸と一緒にテーブルにつくと、梨子からみかんジュースが入ったコップを渡される。他のみんなもコップを持っていた。

 

 そして、このお祝いパーティーの考案者である千歌が片手にコップを持ち、コホンと咳払いをしたあとに言葉を出した。

 

 

 

千歌「それじゃあ、今から明くんのお祝いパーティーを始めたいと思います!!皆さん、準備はいいですかー??それじゃ〜、乾杯ー!!!」

 

 

 

Aqours「乾杯ー!!」カンカンカーン!!!

 

 千歌の言葉によって、俺たち10人のコップが互いにぶつかり合う。

 

 気持ちの良い音がリビングを鳴り響くと共に、俺のお祝いパーティーが開催された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティーが始まってから結構長い時間が経ち、もう夕日も沈みかかって少しだけ外が暗くなってきているところでパーティーはお開きとなった。

 

 時間が時間なので、千歌のお姉さんである美渡さんと黒澤家の使いの人が車で迎えに来てくれた。

 

 美渡さんの車には、千歌と梨子。黒澤家の使いの人の車にはルビィ、ダイヤ、果南、マリー。

 

 そして、俺の家から近いので俺と零さんが付き添っての徒歩組である俺、零さん、曜、善子、花丸という感じで別れた。

 

千歌「花丸ちゃん、本当にいいの??家まで送ってくよ??」

 

 美渡さんの車に乗った千歌が花丸に言葉を投げかける。

 

 それもそのはず。花丸はどっちかと言うとここからはそこそこの距離がある。歩きでは行けないという訳ではないが、それでも車で送って貰った方が彼女のためだろう。

 

 だけど、花丸曰くここの近くに住んでいる知り合いに用事があるらしく徒歩組の方へと加わった。

 

 

 正直言って、凄く助かった!!パーティー中にどうやって徒歩組の方に誘うかずっと考えてたけど、考える必要は無かったみたいだ。

 

 

花丸「うん、大丈夫ずら!!ありがとね、千歌ちゃん!!」

 

 

 その後、そのまま車組はそれぞれの家へと向かって走って行った。

 

 

零「じゃあ、私達も行きますか」

 

曜「了解であります!!」

 

善子「御意!!」

 

花丸「ずら!!」

 

 車組の姿が見えなくなるまで見送ったあと、徒歩組である俺達もそれぞれの家に向かって歩き出す。

 

明「距離的に最初は善子かな」

 

善子「そうなるわね」

 

 ということで、まずは善子の家へと目指す。

 

 元々、今いるメンバーの組み合わせはなかなかの珍しいものなので新鮮な気持ちだ。

 

零「へぇー、善子ちゃんは堕天使奥義っていうのが使えるのね。」

 

善子「ヨハネよ!!クックック、その内貴女にもお披露目してあげるわ!!」

 

零「そう!!じゃあ、私もお礼として奥山家に代々伝わる空手の奥義を善子ちゃんに教えちゃおっかな」

 

曜「なんですか!!それ!!凄く気になります!!」

 

花丸「マルもずら!!明くんもその奥義は使えるの??」

 

明「一応な。その奥義を覚えるのに3年かかったけどね。」

 

 と、こんな感じで零さんと俺の空手について話してるとあっという間に善子が住んでいるマンションの近くへと辿り着いた。

 

 

明「今日はありがとうな、善子」

 

 

善子「堕天使ヨハネのリトルデーモンの為よ。気にしないで。それと…………明。改めて聖良達と関係を取り戻せておめでとう。」

 

 そして、善子は最後に俺たちに向かって「さらば!」と言ったあとマンションの方へと走って行った。

 

零「善子ちゃん、とてもいい子ね。」

 

 零さんはマンションの中へと入っていく善子の姿を見てボソッと呟く。彼女の言う通り、善子は厨二病だけど仲間思いで良い奴だ。正しく名前通りに。

 

零「次は曜ちゃんの家だね。行こっか」

 

曜「はい!!」

 

 善子を見送ったあと、今度は船長の家へと向かう。

 

零「そっか、Aqoursはそうやって出来たのね。」

 

 船長の家に目指している間、今度は零さんはAqoursについて彼女たちに聞いていた。

 

零「私も今からアイドル目指そうかしら………なんてね。こんな三十路が近くなってきてる女には無理か………。」

 

 スクールアイドルの話を聞いて零さんは恐らく冗談であろう言葉を苦笑いしながら出す。

 

曜「いやいや、零さんはとても美人だから今からでも遅くないと思います!!」

 

花丸「曜ちゃんの言う通りずら!!零さんは綺麗ずら!!」

 

 零さんの冗談を船長と花丸が抗議する。確かに、零さんは6年間過ごしてきた俺からしてもかなりの美人さんだと思う。

 

 顔は整ってるし身長も高くてまるでモデルさんのようにスラットしてるし、空手もやってたからか筋肉もそこそこある。

 

曜「明くんもそう思うよね??」

 

 船長が零さんについて俺にふる。マジか………。でも、ちゃんと嘘ひとつなく本心を言っておくか。

 

明「………そうっすね。」

 

零「ッッ………あ、ありがと。」

 

 普段は美人やら綺麗やらと褒められ慣れていない零さんは顔を赤くして照れていた。

 

 そして、その後零さんを褒め殺していると曜船長の家へと辿り着く。

 

 

明「船長、今日はありがとうございました」ビシッ

 

 

 俺は船長に向かって、敬礼をしながらお礼の言葉を出す。すると、船長も

 

 

曜「うん!!どういたしまして!!これからも一緒に頑張ろうね!!」ビシッ

 

 

 と、敬礼しながら俺に向かって言ってくれた。

 

 

 そして、曜船長がいなくなって花丸の知り合いの家に向かってる途中、

 

 

 

 

零「あーーーー!!!」

 

 

 

 

 突然、零さんが涙目になって叫び出す。俺と花丸は驚いてビクッと体をふるわせた。

 

明「どうしたの!?」

 

 

零「今日の夜に奈乃くんと会う約束してたんだった!!」

 

 

明「え??」

 

 

 な、奈乃くん??え、誰それ??

 

 

零「ごめん、明ちゃん。花丸ちゃん。私、先に家に戻るね!!」

 

明「ちょっと待って!?奈乃くんって誰!?どなた様!?」

 

零「奈乃くんは職場の後輩で最近、仲良くなった男の子。今日の夜に2人で食事はどうですかって誘われてたの。」

 

明「は??」

 

 今日、2度目の思考停止に陥っていると零さんが俺のそばまで駆け寄り俺にだけしか聞こえないような声量でボソッと囁く

 

 

 

 

零「明ちゃん。あの子に告白するんでしょ??頑張れ。」

 

 

 

 

 

明「なっーーー!?」

 

 

 

 ニコッと零さんは意地悪そうに微笑んだあと、「うおぉおおお!!!待ってろ奈乃ぉぉぉぉぉぉ!!!」と雄叫びをあげながら走って去って行った。

 

 

 てか、何で知ってんだよ、あの人。そういうことは一切、零さんと過ごしてて口に出さなかったっていうのに。

 

 

花丸「…………奈乃さんって人は零さんのこと好きなのかな??」

 

明「いや、俺は認めないからね??」

 

花丸「明くんは零さんのお父さんずらか??」

 

 花丸はため息を吐きながら俺に向かって言葉を出すと同時に花丸の知り合いの家へと辿り着いた。

 

 花丸曰く、すぐに終わるということなのでその知り合いの家の近くで待機することに。

 

 

 

明「このあと、俺………花丸に告白するのか。」

 

 

 

 彼女が居ないことをいいことに、俺は空を見上げて特に何も考えずに綺麗な満月を眺めながら無意識でボソッと言葉を出す。

 

 だが、それは間違いだった。すぐに今の発言で恥ずかしさが込み上げてきて顔が赤くなってしまう。

 

 やばい。やばすぎる。告白する前とはこんなにも緊張するもんなのか。

 

 

 全国のお付き合いしている人達も告白する前は俺と同じような想いをしていたのだろうか。

 

花丸「お待たせずら〜。………って何やってるずら??」

 

明「…………瞑想だ」

 

 花丸が用事を終わらせている頃には、俺は気持ちを落ち着かせるために座禅を組んで瞑想していた。花丸の顔を見ると、若干ドン引きしていた。まぁ、そうなるよね………。

 

明「よし、行くか」

 

花丸「うん。」

 

 俺は座禅を崩してから立ち上がり、花丸と共に歩き始める。

 

 

明「…………………」

 

 

花丸「………………」

 

 

 歩き始めて、結構経つが俺と花丸はお互いに一言も口に出すことは無かった。

 

 せっかくの二人きりだと言うのにも関わらず、俺は彼女に話しかけるタイミングを完全に失ってしまった。前の時と一緒だ。

 

 頭の中では、ひたすらどうすれば良いのかという言葉しか出てこない。

 

 いざと言う時に限ってヘタレになってしまう自分を死ぬほど恨んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 そんな中、俺にとって些細で大きな転機が訪れる。

 

 

 

 

 『しゃーねーから人肌脱いでやるよ。』

 

 

 

 

 

 

 ーーービュー!!!

 

 

 

 

 

 

明「うお!?」

 

花丸「ずら!?」

 

 俺たちの方に向かって、突風のような強い風が吹き上がる。

 

 

 今の声は…………!?

 

 

花丸「あ!!マルのが!!」

 

 この時、彼女が髪に付けていたリボンが突風によって外れ宙に浮いた。そして、そのまま風に乗せられてどこかへと飛んでいく。

 

花丸「ま、待って!!」

 

明「ちょ、花丸!?」

 

 花丸は風に流されるリボンのあとを走って追う。それに続けて俺も走り出した。すぐに花丸に追いつき彼女に話しかける。

 

明「あのリボンは大事なものなのか??」

 

花丸「うん!!あれは亡くなったおじいちゃんがマルにくれたものずら!!」

 

 花丸は若干涙目になりながら言葉を出す。亡くなった祖父から貰ったものならば、花丸にとってとても大切なものだろう。よくよく思い出してみれば、あのリボンだけは気おつけて扱ってた気がする。

 

 

 …………よし!!

 

 

明「そっか!!じゃあ、待ってろ!!俺が取ってきてやるから!!」

 

 俺は彼女にそう言ったあと、スピードを上げてリボンのあとを追う。

 

 手が届きそうな所まで追いつき、なんとか手を伸ばして掴み取ろうとするが、縦横無尽に動き回るのでなかなか掴むことができなかった。

 

 

明「てやぁーーーー!!」

 

 

 俺は叫びながら飛び上がり、ようやくリボンを掴むことが出来た。

 

明「よ、良かった〜」ゲホゲホ

 

 安心してリボンを見つめながら、俺はむせる。結構、長時間走ったからな。むせて当然か。

 

花丸「明くん!!大丈夫!?」

 

 しばらくむせてると、花丸がやって来て俺の背中を摩ってくれた。そのおかげか、なんとか落ち着きむせは治まった。

 

明「花丸、はいこれ」

 

 むせが治まったところで、俺は花丸にリボンを渡す。

 

花丸「明くん!!ありがとうずら!!」

 

 花丸は嬉しそうにリボンを受け取る。大事そうに抱えてるので、本当に花丸にとって大切なものだということが分かる。

 

 もう少ししたら、花丸に声をかけてまた歩きだそうと思った瞬間に俺はあることに気づいた。

 

 

 

明「ここは………………」

 

 

 

 

 リボンに取る事に必死で気づかなかったが、今いる場所が俺たちにとって特別な場所だった。

 

 これは………偶然なのか??

 

 すると、先程ではないがそこそこ強い風がまたしても吹き上がる。

 

 

 

 『ま、あとは頑張りな。俺よ。』

 

 

 

 またしても聞き覚えのある声が耳の中へと入ってくる。

 

 

 

 まさか、零さんだけじゃなくてあいつにも背中を押されることになるとはな。

 

 

 

 この瞬間、俺は覚悟を決めた。この時点で、もう特に緊張とかはしていなかった。

 

 

 

 そして、未だにリボンを大事そうに抱えている美しき彼女の名を……………呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「なぁ……………花丸。お前に伝えたいことがある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

明「なぁ…………………花丸。お前に伝えたいことがある。」

 

 

 

花丸「ーーーーーーッッ!?」

 

 

 マルが大事にリボンを抱えていると、明くんが突然、マルに向かって言葉を出す。

 

 その言葉を聞いて、すぐに心臓がドクンと鳴り響くのを感じた。

 

 

 伝えたいこと??それってもしかして………

 

 

 明くんはマルの反応を伺ったあと、続けて言葉を出した。

 

明「ここだけの話、俺さ千歌や花丸達と出会う前は誰とも話したこともないし、1度も遊びにとか行ったことがないんだよね。」

 

花丸「え………??」

 

 突然のカミングアウトにマルは目を丸くした。あの陽気な明くんが??

 

明「まぁ、さっきも言った通りその時は零さんの元で空手やってたっていうのもあったけど、やっぱり『人殺し』の俺は誰かと関係を持つのが怖かったんだ。」

 

花丸「明くん…………」

 

明「浦の星女学院に入学した理由だって、今年から共学になったからっていう容易な考えだよ。周りが女子ばっかだから男子である俺に話しかけることは無いだろうって思ってた。」

 

 明くんは次から次へと当時、思っていたことを嘘ひとつなく話してくれる。マルは何も言わず、彼の言葉を聞いていた。

 

 

明「誰とも話しかけること無く、誰とも関係を持つことも無く、ただ単にこの3年間を1人で過ごすことになるんだろうなって思ってた。中学と同じように。」

 

花丸「…………………」

 

 

明「だけど、千歌と出会ってからは俺の何もかもが変わった。誰とも関係を持たないって決めてた俺がAqoursのマネージャーをやることになった。」

 

 

明「だけど元々、俺がマネージャーをやってた理由も姉ちゃん達に会うため。だから、東京で2人に会ってからはマネージャーをすぐに辞める予定だった。なのに……辞めることはできなかった。」

 

 

明「多分………何もかもが初めてで新鮮であの空間が好きだったからだと思う。千歌や善子やマリーがふざけて、それを俺や花丸、ダイヤちゃん辺りがツッコミ入れたりして…………みんなで笑い合ってたあの雰囲気が。」

 

 

 それは明くんだけじゃない。マルもみんなと過ごしてきた時間はとても有意義で楽しかったずら。

 

 

 明くんは懐かしがるような雰囲気である程度語ったあと、マルに向かって下に指を指して言葉を出した。

 

 

 

明「なぁ、花丸。今、俺らがいるこの場所を覚えているか??」

 

 

 

 この場所…………??あっ!!

 

 

 

明「そう。ここは………前に俺が花丸に酷いことを言ってしまった場所だ」

 

 

 

 リボンのことであまり気にしてなかったけど、明くんの言う通り今、マル達がいる場所は前に明くんに拒絶されてしまった所だった。実際に、彼がヒビを入れた壁もすぐそこにある。

 

 

明「あの時は本当にごめんな。『人殺し』の俺の姉がSaint Snowのあの2人っていうのがバレるのが怖かったんだ。」

 

 

花丸「あ、明くんが謝ることじゃないよ!!マルが盗み聞きなんてしちゃったから………」

 

 

 確かに、明くんに罵倒されたのは間違いない。けど元々はマルが明くん達との会話を盗み聞きしちゃったからいけなかったんだし…………。

 

 

明「それに…………肩の傷も。」

 

 

 明くんは申し訳なさそうな表情を浮かべて言葉を出す。今はもうすっかりと傷口が塞がり、包帯も外れてるけど、やっぱり傷跡はくっきりと残ってしまっている。

 

 

 だけど、前も千歌ちゃん達がお見舞いに来てくれた時も言ったけどこれに関しては後悔は一切していない。だから、明くんが気にすることじゃないずら。

 

 

 それに……………

 

 

花丸「あの時に関してなら、マルも謝らないといけないずら。」

 

 

 傷を負ったのは、マルだけじゃない。

 

 

 明くんもマルを助けるために、左腕に大怪我を負っている。左腕を見てみると、マルと同じ様にくっきりと傷跡が残っていた。

 

 

花丸「明くんは何であの時にマルを助けてくれたの??」

 

 

 マルはずっと前から気になっていたことを口に出す。拒絶していた明くんがどうして庇ってマルを助けてくれたのか。まだ、理由を聞いていなかった。

 

 

明「それは……………分からない」

 

 

 明くんは視線を落として、マルの質問について言葉を出す。

 

 

明「なんで、あの時に花丸を助けに行ったのか未だに分からないんだ。勝手に身体が動いたというか………。」

 

 

 そうなんだ。明くんも余り分かってなかったんだ。

 

 

 マルの質問の答えはこれで終わりかと思ったけど、「でも!!!」と明くんは言葉を続けた

 

 

明「今、考えてみれば嫌だったんだと思う。花丸が殺されてしまうということが。」

 

 

 明くんの言葉で、嬉しさと恥ずかしさでマルは顔を赤くしてしまう。明くんも自分の発言が照れくさかったのか顔を赤くしていた。

 

 だけど、気持ちを入れ替えるためなのか明くんは顔を左右にぶんぶんと揺らしたあとに再びマルに向かって話しかける。

 

 

明「俺さ…………花丸のおばぁちゃんに謝罪しに行った以降から少しだけおかしくなったんだ。」

 

 

 おかしく………??それは、どういうことずら??

 

 

 

明「花丸のことを見ると……とても胸が苦しくなるんだ。」

 

 

 

 …………………え??

 

 

 

明「特に何も無いはずなのに何故か緊張とかしてさ、心臓とかもめっちゃ鳴るし。こんなの産まれて初めてのことだった。」

 

 

花丸「明くん………」

 

 

 

明「だけど、俺はこの気持ちが一体どういうことなのかは分かってて分からなかった。今までずっと1人だったから、確証がつかなかったんだ。」

 

 

 

花丸「明………くん……」

 

 

 

 この時点で、マルは既に泣きそうになっていたずら。だけど、最後まで彼の言葉を聞くべく堪える。

 

 

明「そして、この気持ちが確証ついたのは花丸がうちに泊まりに来てくれた時。あの日の夜は最悪だった。悪夢を見せられてとても苦しかった。1人ぼっちで辛くて苦しくて寂しくてとても堪らなかった。」

 

 

 

 

 明くんの家のお泊まりは楽しかったのと、大変だったのを覚えてる。そんなに辛かったんだ…………。

 

 

 

明「だけど、お前が……………花丸が苦しんでいた俺をあの闇から助けてくれた。1人にしないでくれた。ずっと朝まで手を握ってくれながら一緒にいてくれた。あの時…………本当にとても嬉しかったんだ。」

 

 

 そう言ったあと、明くんはマルにゆっくりと近づく。そして、マルの目の前に来たあと明くんがこの場で1番伝えたくて………マルが1番聞きたかった言葉を口に出した。

 

 

 

 明「それで、俺はあの朝に花丸を見て分かったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ………俺は花丸のことが好きだったんだなって。」

 

 

花丸「ーーーーーーッッ」

 

 

 この瞬間、マルは我慢の限界を越して口元に手を当てながら瞳から大粒の涙を流す。心臓も過去1番にドキドキしていた。

 

 

 

 

 それと同時にとても嬉しかった。

 

 

 

 そして、明くんは左腕を指し伸ばして大きな声でハッキリとマルに想いをを告げてくれた。

 

 

 

 

 

明「国木田 花丸さん。俺、奥山 明は貴女のことが大好きです。もし、良かったら………どうか俺と付き合ってくれませんか??」

 

 

 

 

 

 彼の言葉を聞いてマルは………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜明視点〜

 

 

 俺はようやく花丸に自分の想いを伝えることが出来た。

 

 俺はカタカタと壊れかけのロボットのように震えていた。

 

 いや、だってしょうがないじゃん??初めて好きな女の子に告白したんだよ??そりゃあ、震えるよ!!

 

 緊張して、未だに花丸の顔を見ることが出来ない。ひたすら彼女の返答を待つことしか出来ない。

 

 

花丸「明くん………顔を上げて」

 

 

 しばらくの沈黙の後、花丸はようやく口を動かした。その瞬間、胸が熱くなる。

 

 彼女の言う通り、俺は顔を上げると…………

 

 

 

 まるで、華麗な花のように美しく涙を流して微笑んでいた花丸が俺の方を見つめていた。満月の光に照らされて更に華麗さが増している。

 

 

 

 

 花丸の余りの美しさに俺は見惚れてしまった。

 

 

 そして、花丸は俺に向かって言葉を出した。

 

 

 

 

花丸「マルも……ずっと明くんのことが…………だ、大好きでした。だから…………マルからもよろしくお願いします。」

 

 

 

 花丸は顔を赤くしながらそう言って………俺の差し出した左手を優しく握ってくれた。

 

 

 彼女の手は…………とても温かかった。

 

 

 花丸が手を握ってくれてから、しばらくの間、俺は衝撃の出来事で固まっていたがなんとか意識を取り戻して彼女に話しかける。

 

 

明「つまり……俺達は付き合うってことだよな??」

 

 

花丸「そ……そうずらね。」

 

 改めてお付き合いできたのかどうかを花丸本人に確認してみたところ、彼女も照れながら頷いたのでこれが現実だということが分かる。

 

 

 そっか………。俺、花丸と付き合えるのか。

 

 

 

明「……あれ??」ボロボロ

 

 無事に告白が成功し、安心した所で俺が涙を流していることに気付く。これは…………嬉し涙だな。

 

 花丸は相変わらず涙を流していた。

 

明「なぁ、花丸」

 

花丸「ずら??」

 

 

 俺は腕で涙を拭ったあと、愛する彼女を優しく抱き締めてから言葉を出した。

 

 

明「これから………よろしくな」

 

 

花丸「こちらこそずら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして『人殺し』である俺は過去に拒絶した場所で……………想い人である花丸とかけがえのない恋人となった。

 




ようやく………明と花丸が結ばれました。我ながらおめでとうございます。この話を書き終えて、あぁ、もうこの物語も終わりを迎えるのか。と少しだけ寂しく思えます。

あ、あと最終章最終話となってますが、まだ本編は2話続きます。笑

ブクマ・感想・高評価お待ちしております。


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『人殺し』が見た10分程の夢とは如何に。

あとがきに報告があるので最後まで読んでくれよな。




 ーーーーーくん。

 

 

 誰かが俺の名前を呼ぶ。それは、愛おしくてどんな時でもずっと聞いていたい素敵な声。

 

 

 ーーーーーりくん。

 

 

 まただ。また呼んでくれた。胸が熱くなるのを感じる。でも、ちょっとだけ待ってくれ。今、俺は不思議な夢を見ているんだ。もう少しだけこの夢を見させてくれ。

 

 

 ーーーーかりくん。

 

 

 あと、もう少しだけ………多分、もうすぐで終わると思うから………。あと5分だけお願いします。

 

 

 ーーーーあかりくん

 

 

 …………分かった、分かったから。こんなに呼ばれて反応しなかったら彼氏として最低だよな。

 

 ーーー明くん。

 

 

 今からそっちの方へ行くよ………、花丸。

 

 

 俺は今まで見ていた光景を遮断させて、自分の名前を何度も呼んでくれる愛しき人の元へと意識を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭部に柔らかくて気持ちの良い感触を感じながら俺はゆっくりと目を開ける。すると、視界のすぐ目の前には大きな2つの膨らみが目に入った。

 

 

 こ、こ、これは…………!!男の夢と希望が大いに込められたおっp………

 

 

花丸「あ、明くん。」

 

 その2つの膨らみからひょっこりと可愛らしい花丸の顔が現れ、何度も見ても相変わらず胸を高鳴らせるような微笑みをしながら俺の顔を見つめる。

 

 そうだ。今日は夏休み最終日で、ピクニックがてらに近くの大きな公園で花丸と2人で過ごしてたんだ。

 

 公園に植えてある花を眺めたり、キャッチボールしたり、互いに作ったお弁当を食べ合ったりして…………

 

 それで、少しだけ疲れて眠たくなったから花柄のシートを敷いて日陰で横になってた筈なんだが……いつの間にか寝ていたようだ。多分、寝ている間に花丸が膝枕してくれたのだろう。

 

明「ごめん………。膝枕、疲れたろ??すぐに退くわ」

 

 名残惜しいが、花丸の膝枕から起き上がろうとするが花丸に押さえつけられる。

 

花丸「大丈夫ずらよ。マルも好きでやったことだし、大好きな明くんの寝顔も間近で見れたから♪」

 

明「そ、そうか…………。」

 

 その後、花丸が「このままで良いよ」と言ってくれたので、もうしばらく花丸の膝枕を堪能することにする。正直言って、ずっとここに居たいです。

 

明「それにしても俺って結構寝てた感じ??」

 

花丸「そんなことないよ??10分ぐらいかな??」

 

明「そっか」

 

花丸「夢でも見てた??」

 

明「うん。それは……もう凄い夢だった」

 

 記憶があやふやでハッキリも覚えてるのと、曖昧な所があるけど………一つだけ言えるのは俺たちAqoursに関しての夢だったということ。

 

花丸「どんな夢だったか聞いてもいい??」

 

明「もちろん。それじゃあ……まず良かった夢と悪かった夢……どっちから聞きたい??」

 

花丸「じゃあ……悪かった夢から聞こうかな」

 

 俺の問いかけに花丸は水筒に入っているお茶を飲みながら悪かった方の夢を選択。なので、彼女の所望通り悪かった夢の内容を口に出した。

 

 

 

明「夢の中で浦の星女学院が廃校になった」

 

 

 

花丸「ブベボ!?」

 

 俺の言葉に、花丸は驚愕の表情を浮かべながら飲んでいたお茶を吹き出した。まぁ……、当然な反応だよね。あと、吹き出したお茶が満遍なく俺の顔に付いた。冷たい………。

 

明「なんか………不謹慎な夢でごめんな」

 

花丸「そうずらよ!!皆でそうならないように頑張ってるのにそんな夢見ちゃダメずら!!」

 

 花丸は頬を膨らませ、ぷんぷんと怒りながらも「ごめんね」と言ってハンカチで俺の顔を拭ってくれた。ありがとうな。

 

 

花丸「じゃあ………、良かった方の夢は??」

 

 

 あ………、聞くんだ。てっきりもう聞かないと思ってたけど。それなりに、気になっていたのかな。

 

 

明「まず、早速これは良い夢に入れていいか微妙のラインだけど…………俺達1年生組と3年生組が対立してたな」

 

 

花丸「鞠莉ちゃん達とマル達が??」

 

明「うん。」

 

花丸「それは、どうして??」

 

明「ごめん。理由までは覚えてないわ」

 

 

 本当に何であの3人と喧嘩してたんだ??何かあったのだろうか??でも、よくよく思い出してみれば俺達1年生と3年生って……あんまり関わってない気がする。近い内にそういう場を設けてみるか………。

 

 

明「けどな。そのあとに和風をイメージした衣装着てAqoursの皆がどこかのステージで踊ってたんだよ。それはもう美しかった。」

 

 

 そのライブで踊ってたダイヤちゃんが1番印象に残っていてAqoursの中でもとびきりに綺麗だった気がする。あ、もちろん。花丸も、綺麗だったよ??だから、そんな睨まないで………。

 

 

明「あ、そうそう。夢の中で梨子がしいたけを触れるようになってた」

 

 

 

花丸「あの梨子ちゃんが!?」

 

明「あの梨子が。」

 

 めちゃくちゃ失礼な反応を見せているが、梨子以外の他のメンバーに同じようなことを伝えても皆揃って同じ反応を見せると思う。それほどの梨子の犬嫌いは相当なものだ。

 

 だって、しいたけから逃げるために千歌の家から隣の梨子の家のベランダまで飛び移るほどだよ??普通にやべぇよ。

 

 

 

明「あとは………Aqoursの何かのライブで千歌がロンダートからのバク転を決めてたな。」

 

 

 

花丸「何で!?」

 

明「ごめん。これも覚えてない」

 

 花丸は「気になるずらぁ!!」も言って、俺の頬をペチペチ叩く。地味に痛いからやめて。

 

 でも、その千歌のロンダートとバク転のシーンは鳥肌が立ってしまうほどの迫力のあるライブだったな。

 

 花丸が「他には??他には??」と興味津々で聞いてくるので覚えている限り俺は口を動かした。

 

 

 

明「浦の星女学院が廃校って決まった時な、やっぱり………みんな落ち込んでた。特に千歌とかが。」

 

 

 

花丸「そうずらよね…………」

 

 元々、Aqoursはμ'sと同じ学校を救うために活動してきたスクールアイドルだ。結成するきっかけを作った張本人である千歌が学校の廃校が決まってメンバーの中で1番ショックを受けるに違いなかった。

 

 

 

明「でもな、屋上にいたAqoursに向かってむつ先輩、いつき先輩、よしみ先輩を中心とした全校生徒が何か言ってたんだよ。そのおかげで吹っ切れたのか、千歌にやる気が戻ってた。」

 

 

 

 あの絶望の状況の中で、彼女たちはAqoursに向かって………何を言葉として口に出したのだろうか。並大抵な言葉では、そんなに人の心を動かすことはできない。それほど、Aqoursにとって士気を取り戻すほどに心を動かした言葉だったのだろう。

 

 

 

明「あとな………あ、これは凄いぞ??夢の中でAqoursとSaint Snowが一緒に路上でライブしてた。」

 

 

 

花丸「えぇー!?」

 

 キラキラと街灯が路上で光り輝いている中で千歌達と聖良姉ちゃん達が楽しそうに踊っていた。どういう経緯があって犬猿の仲だった2つのグループが手を組んだのかは謎だが、もしそれが現実で起きるのならば是非見てみたいものだ。

 

 あと、これは少し余談だが………そのライブの前に俺と花丸と善子の3人が何かを見て互いにめちゃくちゃ号泣してたけど何を見たんだろうか。気になる。

 

花丸「マル達がSaint Snowさんと一緒に踊るなんて……想像もつかないずら」

 

明「それは俺もだよ。もし、あったとしても練習中に理亜姉ちゃんがAqoursのメンバーに向かってキツい言葉を言ってるのが安易にイメージできるもん。」

 

 『〇〇がダメ!!』『体力なさすぎ!!』『もっとここは早く!!』『どうして出来ないの!?』『ラブライブは遊びじゃないって言ってるでしょうが!!』『姉様を見習いなさい!!』『リトルデーモン??あんた、頭大丈夫??病院行く??』など………他にも色々とメンバーに向かって言ってそうだ。

 

 花丸もイメージ出来たのか、苦笑いをする。

 

明「けど、まぁ………きっと忘れることの無い凄いライブになるんだろうな。」

 

花丸「………うん。」

 

 ロックバント風のダイナミックでクールな踊りを魅せるSaint Snowと『輝き』を追い求め続けながらも9人のそれぞれの個性を発揮しているAqoursが一緒に踊ると考えただけでと胸が高鳴る。

 

花丸「まだあるずら??」

 

 

明「ちょっと待ってな。少し思い出すから………。あ、なんか全校生徒や地方の方々と一緒に皆で学校で祭りみたいのやってた。」

 

 

花丸「祭り??」

 

明「そそ。」

 

 

 ーーーある人は中庭で出店を開いて色んな食べ物やゲームを開催したり

 

 

 ーーーある人は和風な衣装を着て喫茶店を開いたり

 

 

 ーーーある人はスクールアイドルのクイズ大会を行って競い合わせたり

 

 

 ーーーある人はご当地キャラの着ぐるみを来て、子供たちに内浦の良さを伝えたり

 

 

 ーーーある人はとある教室で結構、本格的な占いをやるが誰も来なくて女3人と男1人が酷く落ち込んでたり…………

 

 

 ーーー夜にはキャンプファイヤーを行い、それを囲んでその場にいるAqoursの皆や全校生徒、そして地方の方々と一緒に歌を歌っていた。

 

 

明「見てた感じ………とても楽しそうだったな。」

 

花丸「その祭り………マルもやりたかったずら!!」

 

 やりたいも何も夢だからなぁ………。どうしようもないんだよな。

 

 

花丸「もっと夢の話、聞きたいずら!!」

 

 

明「お、落ち着けって!!まだあるから!!………………Aqoursが過去に出た中で1番大きなステージで踊ってたよ。」 

 

 

花丸「1番大きなステージ??」

 

明「もう……凄かったぞ??花丸の『ずら』の進化系である『だぎゃあ』が更にメガ進化するぐらいの大きさよ。」

 

花丸「『アレ』が出るぐらいずら!?」

 

 『アレ』があるってことは本当にメガ進化した奴があるのかよ………。

 

 まぁ、茶番は置いておいて、そのライブは見た夢の中で2番目に曖昧とかではなく、はっきりと覚えている。

 

 このライブはどのような意図で行われたかどうかまでは分からないが、皆の表情がかなり真剣なものだったのでAqoursにとって大切なライブだったのだろう。

 

 Aqoursが誕生した場所である内浦の海をイメージしたかのような美しい青の衣装を着こなした9人の女の子がステージの上で鮮やかに歌や踊りを披露していた。

 

 

 その姿はこれまでのライブの中で1番、輝いていてとても綺麗だった。

 

 

花丸「ずらぁ〜♪」

 

 

 聞いていた花丸も想像してたのか目をキラキラとさせて楽しそうに聞き入っている。

 

 

 その他にも、俺が見た夢の内容を花丸に教えた。

 

 

 浦の星女学院の体育館で全校生徒と一緒に千歌がやって来るのを待っていたこと。そして、彼女達Aqoursと全校生徒が一緒になって歌って踊ったこと。

 

 

 Saint Snowの2人が内浦に来て、聖良姉ちゃんがAqoursに何か指摘していたこと。表情が優れていなかったのでキツいことを言われたのだろう。てか、なんで3年生組がいなかったんだろう………。

 

 

 その後、どこかで見覚えのある顔をした女性(?)と一緒に外国に行って、3年生と合流したこと。そして、そこで9人と踊ったこと。

 

 

 観客の中にマリーに似た女性がいたんだが………まさか…………な。

 

 

明「外国から帰ってきてからな、俺はとある場所に向かってた。」

 

花丸「とある場所??」

 

 花丸は頭の上に「?」を浮かべて首を傾げる。クイズ出してみるか。

 

明「どこだと思う??」

 

花丸「うーん………」

 

 花丸は腕を組んでうーんと考える。その姿は可愛らしいのだが、腕を組むと彼女の胸が強調されて膝枕されている俺から見るとそれはかなり壮大なものだった。

 

 あれ??俺って近くの公園にピクニックに来たんだよな??いつから国木田山脈に山登りしてたんだ??

 

 まぁ、そんなことはどうでもいい。今は目の前に広がる国木田山脈の景色を楽しむことにしよう。やっほー!!

 

 ……………はい。ふざけすぎました。すみません。

 

花丸「分からないずら。どこ行ってたの??」

 

 結局、分からなかったのか、花丸は俺に答えを問う。なので、俺は素直に答えた。

 

 

明「函館」

 

 

花丸「ーーーーーッッ!?」

 

 函館、と口にした瞬間に花丸はポ〇モンSMに出てくるどこぞのキャラクターみたいに口をあんぐりとさせる。候補ある中で、函館だけは絶対に無いと思っていたのだろうか。

 

 函館は俺の姉2人がやっているSaint Snowが活動している場所だからな。

 

 

明「どうして俺が函館に向かったのかは分からない。けどな、そこでSaint Snowはライブを披露したんだ。その時、曲を流したり、踊っている姉ちゃん達を俺は照らしていた。」

 

 

 これが、夢の中で1番記憶に残っていて、1番印象に残った内容だった。

 

 

 踊っている姉ちゃん達は………綺麗でとてもカッコ良かったのも覚えている。 終わった後は、3人で抱き締め合っていたな。

 

 

 まさか『人殺し』である俺がこんなことになるなんてな。数年前の俺ならばこんな未来が訪れるなんて、1ミリたりとも思わなかっただろう。

 

 

 今回は夢だったが…………現実でもいつか姉ちゃん達Saint Snowだけと一緒にライブをやってみたいものだ。

 

 

 ーーーーーぎゅ

 

 

明「ん??」

 

 優越感に浸っていると、花丸が俺の袖をギュッと掴む。少しだけ……寂しそうな表情を浮かべながら。

 

明「ど、どうしたん??」

 

花丸「明くん………今、お姉さん達と一緒にライブしたいって思ってたでしょ??」

 

明「お、おう。」

 

 え??何で分かったの??そんなに表情に出てた??

 

 そんなことを思っている中で、花丸はボソボソと言葉を呟いた。

 

 

花丸「確かに明くんにはこれから先、もっともっとお姉さん達と一緒に関わる時間を増やして欲しいずら。けど…………マルとしてはやっぱり寂しいよ。明くんと離れたくないずら」

 

 

明「ーーーーーッッ…………」

 

 俺は花丸の言葉に特に何も言わず、両手で自分の顔を覆う。

 

 

 目の前にいる自分の彼女がすっごく可愛い件について。これを世間で言う……尊いというやつか。

 

 

 だけど、寂しそうにしている花丸の気持ちも痛いというほど分かる。もし、逆の立場だったら、きっと俺が彼女の袖を掴んで寂しそうにして同じことを伝えているはずだ。

 

 

 俺も花丸とは離れたくない。一緒にいたい。隣で笑い合いたい。

 

 

 この気持ちだけは例え何があろうとも決して変わることは無い。

 

 

 なにせ、花丸の親友であるあいつにもそれは誓ったことだからな。

 

 

 

 だから、俺はそれを証明するために………

 

 

 

明「花丸………」

 

花丸「え??」

 

 俺は上半身をグイッと起き上がらせて、彼女の顔と自分の顔を近づけて……………

 

 

 

 自分の唇を花丸の唇に重ねた。

 

 

 

花丸「ーーーーーッッ!!!!????」

 

 

 唐突のことで花丸は顔を赤くして固まってしまっている。

 

 そんな彼女の頭の上に手を乗せて撫でながら俺は言葉を発した。

 

明「安心しろ。俺は……どんな時でも花丸と一緒にいる。だから、心配すんな」

 

花丸「……………ずら♪」

 

 俺の言葉を聞いて安心したのか、花丸はニコッとまるで花が満開しているような笑顔で笑ってくれた。

 

 

 花丸「それで……もう夢は終わりずら??」

 

 

明「最後に『♪これからもっと、もっと!夢のカタチかわるんだ♪』………善子??」

 

 話している最中に俺のスマホに着信音が鳴り響く。スマホを手に取り、開くと相手は善子だった。1年生のグループに何やらメッセージを送って来ている。

 

 その送られてきた内容は…………

 

善子『リトルデーモン達に告ぐ。我、堕天使ヨハネは明日までに完成しなければならない灼熱のタスクがまだ未完成なので早急に応援を要求する。場所は堕天使ヨハネの拠点である魔の城よ。よろしく(◦`꒳´◦)』

 

 

 これって………つまり…………

 

 

花丸「善子ちゃん………、夏休みの宿題、まだ終わってなかったずらね。」

 

 そういうことだよな??何やってんだ、あいつ。

 

明「無視だ。無視。ほっとけ」

 

 せっかくの花丸との二人きりの時間をあいつの宿題の手伝いなんかに潰されてたまるか。自業自得だ。

 

 

花丸「でも………そしたら、善子ちゃん。補習とかになっちゃうずら」

 

 花丸がシュンとして俯きながら言葉を呟く。

 

明「まぁ、そうだな。」

 

花丸「可哀想ずら………」

 

明「宿題溜めたあいつが悪くないか??」

 

花丸「もし……居残りとかになったらAqoursの練習に出られないずら」

 

明「うぐっ!?」

 

 言われてみれば……確かに。これから先、Aqoursはもっと学校を救うために練習を励まなければならない。家の用事や学校行事関係で遅れるならばともかく、そんな宿題やってなくて居残りさせられて練習に出られないというのは周りにちょっとした障害が少なからず出てくるだろう。

 

 

明「分かったよ………。行こう、善子の家に」

 

花丸「明くん!!」

 

 善子は………とりあえず俺たちの時間を潰した代償として最近知り合ったマリーの使用人さんに教えて貰ったジャーマンスープレックスの練習台にさせて許してやることにしよう。

 

 俺は返信で「行く」と答えたあと、花丸の膝枕から惜しみながらも起き上がり、ブルーシートや弁当箱を片付けてから公園を後にしようとした。

 

花丸「そう言えば………結局、夢の内容って続きがあったずら??」

 

 大きなリュックをよいしょと抱えながら花丸は俺に問う。そういえば、善子のせいで話が中断したんだっけな。

 

明「…………いや、あれで終わりだよ。」

 

 

 ごめんな、花丸。

 

 

 あと、もう一個だけあるんだ

 

 

 沼津でAqoursはまた1曲歌を披露したんだ。けど………その場にはまたしても3年生の3人はいない。

 

 

 どうしてだろう??と考えてみたら、意外にもすぐに結論は出た。なぜなら、季節的に考えて、ごく当たり前の事なのだから。

 

 

 今では花丸含めた1、2年生の6人はメンバーに3年生がいるのが普通だと思っている。実質、俺も夢を見るまではその中の1人だった。

 

 

 けど、その夢を見たことのよって現実を思い知らされた。

 

 

 これから先、ずっとマリー・ダイヤちゃん・かなっちの3人がAqoursにずっといるという訳では無い。

 

 

 必ずしも…………別れというものが生じてしまう。

 

 

 だからこそ、俺は花丸に伝えなかった。

 

 

 もし、それを言ったら花丸は学校が廃校になったと聞いた以上に悲しくなるかもしれないからな。

 

 

 

花丸「そっか………。じゃあ、行こ♪」

 

 

 花丸は小さい手を俺に差し出して、それを俺は優しく繋ぐ。彼女の手の温もりがダイレクトに伝わってくる。

 

 

 結局、あの見た夢は何だったのかは分からない。

 

 

 妙に現実的な夢だったので、もしかしたらあれは未来のAqoursの姿なのかもしれないな。……って、それだと本当に学校が廃校になっちゃうじゃねぇか。

 

 

 そんな訳無い………よな??やべ、少しだけ不安になってきた

 

 

花丸「明くん??どうかした??」

 

 隣にいた花丸は首を傾げ、心配そうする。

 

明「………何でもないよ。早く行くか」

 

花丸「ずら♪」

 

 なんか………、花丸の顔を見てたら、もうそんなのどうでも良くなってきた。

 

 もし、本当にあの夢が正夢になるとしたら、その運命を覆せばいい。

 

 

 大丈夫。Aqoursなら………千歌達なら絶対にやり遂げられる。

 

 

 

 そう信じながら、俺は右手から伝わってくる温もりを感じながら、彼女と一緒に歩き出した。

 

 

 

 




圧倒的、打ち切り感満載な今回のお話です。二期や劇場版を執筆しない分、こういう形にしたのをご了承ください。

Twitterでも報告したのですが、私、七宮 梅雨が執筆している「Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』」の最終話を10月12日(土)の24:00に更新致します。誰が何を言おうとこれで終わりです。
ですので、それまで「人殺し」をよろしくお願いします。

あと、最終話までにもう1話だけ更新します。

お気に入り・感想・高評価お待ちしております。



Twitterで募集した質問箱を回答していきます。(わ、忘れてたとかじゃないんだからね=͟͟͞͞(//`^´//)フンッ)

Q、主人公の設定SAOのパクリですよね??
A、これ、めっちゃ言われます。正直に言うと、パクってません。言われてみれば、確かに被ってるな〜程度の認識です。シノンさんの過去を意識してこの設定にした訳じゃないです。

Q、聖良さんやその妹も可愛いですよねー。聖良さんや妹、どちらか1日デートできるならどっちを選びますか??
A、どっちもがいい。というのが無しなら聖良さんを選びます。

Q、Saint Snowを好きになったのは何故ですか??
A、YouTubeにたまたまあったSelf controlのPVを見て大好きになりました。ついでにそれがきっかけでラブライバーの道を歩むようにもなりました。

Q、月に行きたいと思いますか??
A、惑星の月はどうでもいいけど、渡辺の方の月には行きたい(謎解答)

Q、最近、歳とったなーって思う??
A、今年で成人して父と一緒にお酒を飲んでる時に成長したなーって思いますね笑

Q、部活は何をやっていましたか??
A、中学はバレーボール部。高校は演劇部でした

Q、手軽に出来るダイエット方法を知りませんか??
A、ダンベル何キロ持てる??を読みましょう。はい、サイドチェストォォォォォォ!!!

Q、異性のメガネ姿ってキュンとしますか??
A、する。なので、誰か聖良さんか理亜ちゃんのメガネ掛けてるイラストを送ってください。お願いします。

Q、好きな強化は南ですか??
A、数学です。(南!?)

Q、東京都内で1番クリームパンが美味いパン屋さんはどこだと思いますか??
A、七宮は愛知県民なのでよく分からん。けど、コンビニに売ってるクリームパンはよく食べる。あれが最強。いぇあ 

Q、良い恋してますか??
A、当時、付き合ってた女の子が腐女子だったっていう話でもする??

一旦、ここで切らさせて頂きます。続きは次話で!!



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【最終話】『人殺し』である鹿角 明の物語はこうして幕を閉じる

『人殺し』最終話です。


 『速報です!!銀行強盗の罪を犯した桐島 庸太容疑者は車に乗って逃走後、現在、西木野総合病院に逃げ込み、医師や看護師、入院している患者を人質に取って立てこもっています!!桐島 庸太容疑者は銃を所持しており既に数発ほど威嚇のために発砲しているのことです!繰り返します!!銀行強盗のーーーーーー』

 

 

 ウー、ウーと多くのパトカーが西木野総合病院の入口前で鳴り響く。そこには多くの警察官や自衛隊、一般人である野次馬などがいた。

 

 

警察官「桐島ぁ!!お前は既に包囲されている!!こんな馬鹿なことを辞めて潔く自首して人質を解放しなさい!!」

 

 

 警察官がメガホンを口元に当てて病院に向かって叫ぶ。だが………

 

 

桐島「うるせぇ!!」

 

 

 

 パァン、パァン!!

 

 

 

 「うわぁ!!」

 

 

 強盗である桐島が病院の窓から姿を現したあと怒号を上げながら銃を空の方に向けて発砲する。その瞬間、その場にいた人達は驚愕し、耳に手を当てて伏せていた。

 

 

桐島「早く、新しい逃走用の車を用意しろ!!じゃなきゃ、この女……ぶっ殺すぞ!!!」

 

 

 桐島には1人の女性が抱え込まれおり、彼は彼女の頭に銃口を強く突きつける。その女性は恐怖で怯え、涙を流していた。

 

 

 

桐島「30分だぁ!!30分以内に車を用意しなければこの女を殺す。そして、1分遅れるごとに病院内にいる奴らを殺してやる!!殺されたくなければ早く用意するんだなぁ!!」アヒャヒャ

 

 

 

 桐島は人間として狂気の沙汰じゃない言葉を言い残して病院内へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病院内は静寂の雰囲気に包まれていた。

 

 それもそのはずだ。なぜなら、目の前には銃を持ち女性を人質にしている強盗犯がいるのだから。もし、何か小さなことをやらかしたら、自分たちが、もしくは女性の命が危ないからだ。

 

 

 だが………、その中に1人だけ様子を伺っている5歳ぐらいの少年がいた。

 

 

少年(このままじゃ………ママの命が危ない!!僕が………僕が助けないと………)

 

 

 どうやら、この少年は強盗に抱えられている女性の子供のようだ。

 

 そして、強盗が「このまま逃げ切って空港に………それで…………」

 

 とボソボソ抱え込み始めたところで………

 

 

 

少年「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

強盗「!?」ガクッ

 

 

 その少年はタイミングを見計らって、強盗の腰に目掛けてタックルをぶちかます。当たった所が足の間接部分かつ考え事をしていて油断していたのだろう。少年のタックルによって強盗は体勢を崩す。隙を見た女性は強盗から逃げ出した。

 

 

強盗「この糞ガキがぁ!!!」

 

 

 余計な事をした少年に向かって、強盗は腕を思いっ切り振り回して少年を吹っ飛ばした。

 

 少年は吹っ飛ばされて受付の壁に激突する。

 

 

少年「いてて…………ん??」

 

 

 吹っ飛ばされた少年の手には何かを掴んでいるような感触があった。少年は自分の手に目を移す。

 

 すると、そこには………

 

 

 強盗が手に持っていた銃だった。

 

 

 吹っ飛ばされた際に、偶然にも掴んでしまったのだろう。

 

 

強盗「おい、クソガキィィィィ!!!それを俺に寄越せぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 強盗は頭に血管を浮かばせ、目を散らばせながら少年の方へと駆けつける。その姿は幼い子供からしたらトラウマが残るほどの化け物以外何者でも無かった。

 

 

 

少年「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 自分の方へと走ってくる強盗の姿に少年は叫びながら、反射行動で銃を強盗に向ける。

 

 

 

 

 

 そして、少年は銃の引き金を引こうとした瞬間……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「少年。それだけはダメだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年「え??」

 

 

 少年が恐怖に任せて引き金を引こうとしたところ、背後から急速に1人の男性が通り過ぎ、少年が両手に持っていた銃を蹴りで弾いた。

 

 弾かれた銃は運良く銃弾が発砲されることなく、彼らがいる遠く離れた所に着地した。

 

 

強盗「なんだてめーーーー」

 

 

??「はぁ!!」

 

 

強盗「ぐはっ!!」

 

 突如、自分達の目の前に現れた男性に何か言葉を出そうとする強盗。だが、最後まで言いきることは出来なかった。

 

 男性は強盗の顔面に目掛けて、鮮やかに内回し蹴りを喰らわして吹っ飛ばしたからだ。

 

 

警察官「警察だ!!すぐに桐島を取り押さえろ!!」

 

 

 それと同時に、まるでこうなることを分かっていたかのように大人数の警察官が病院の入口から突入する。

 

警察官「12時38分。銀行で現金の窃盗及び病院にて人質をとり立てこもった容疑によって桐島 庸太!!お前を逮捕する!! 」ガチャ

 

 

警察官「皆さん!!もう大丈夫です!!我々の誘導に従って進んで下さい!!」

 

 

 突入した警察官は二手にわかり、片方は強盗を取り押さえ、もう片方は人質にされていた人達の保護を行っていた。

 

 

 これにて、銀行強盗による恐怖の西木野病院での立てこもり事件は無事、解決された。

 

 

 

少年「あわわ………」

 

 

 突然の事で瞳に涙を浮かべながら尻もちを付いてしまった少年に対し、男性は弾いた銃を手に取ってから、彼の元へと近づく。

 

 その男性は赤紫色の髪型で凄くボサボサ頭であった。少年がビクッと身体を震わせるほどの赤系の瞳をしたキリッとした目付き。まるで睨みつけているように見える。

 

 服装は、現在放送されている仮面ライダーがプリントされているTシャツの上に白衣を羽織っていた。そして、よく見たら肩には聴診器が掛けられていた。

 

 

 どうやら、この男性は………医者のようだった。

 

 

 医者の男性は少年の目の前まで近づくと片足を膝について少年の視線より低い体勢を取ってから、優しく微笑んで少年に話しかけた。

 

??「怖かったか??」

 

少年「…………うん。」

 

 男性の言葉に、少年は頷く。

 

 当たり前だ。彼はまだ5歳なのだ。怖く無いはずがない。下手すれば、トラウマとして精神的な心の病院になってしまう可能性もある。

 

??「怪我はないか??」

 

 2回目の問いに、少年は首を左右に振る。怪我は無いみたいだが、彼の頬が赤い。さっき、強盗に吹っ飛ばされた時のやつだろう。念の為、男性は懐から携帯用のポーチを取り出して湿布を取り出す。

 

 

 

 そして、彼の頬に湿布を張りながら男性は言葉を呟いた。

 

 

 

??「なんで、あんなことをしようとした??」

 

 

 

 

少年「ーーーーーッッ!?」

 

 

 

 男性からの3つ目の問い。だが、この質問をした彼は前の2つの質問に比べてかなり威圧的なオーラを放っていた。

 

 

 あんなこと、とはどういうことか。それは詳しく言わなくても少年は理解していた。

 

 

 だが、少年はその威圧に動揺して固まってしまう。

 

 

 この男性自身は別に怒っている訳でもないように見える。なのに…………どうしてこんな威圧を放つのだろうか。

 

 

 少しの間、沈黙の時間が流れていたが

 

 

少年「ーーーーーった。」

 

 

男性「ん??」

 

 男性に話す決心をしたのか、少年はボソボソと呟き始める。

 

 

 

少年「ママのお腹に……妹がいるから守りたかった………」ボロボロ

 

 

 

 大粒の涙を瞳から流しながら少年は言葉を出す。

 

 その言葉を聞いて、男性は先程、強盗によって抱えられていた少年の母親らしき女性の方に視線を移す。確かに、彼女のお腹は、中に赤ちゃんが居るからか大きくなっていた。しかも、見た感じ、いつ陣痛がきて破水してもおかしくは無い状況だった。

 

 

少年「僕………もうすぐお兄ちゃんになるんだ。だから、お兄ちゃんとして………家族を守りたかった」ボロボロ

 

 

 少年は止まることなく流れ続けている涙や鼻水を腕で拭い、嗚咽しながら自分の想いを男性に明かす。

 

 

 

??「そうか…………。」

 

 

 男性は目の前にいる少年を優しく抱き締めた。

 

 

少年「え??」

 

 

 男性に突然、抱き締められた少年は驚愕して目を丸くする。

 

 

??「少年…………お前のその勇気、すげぇよ。そんな小さな身体なのに自分のママと妹を守ろうとしたんだからな」

 

 

少年「ーーーーーッッ………」

 

 

 抱き締めながら、男性は少年の耳元で優しく呟く。

 

 

 

??「けどな…………。さっき、お前がやろうとしたことはこの世で生きていく上で決してやってはいけないことなんだよ。」

 

 

 

少年「ーーーーーッッ」ボロボロ

 

 

 どうしてか、男性の放つ一言一言が少年の胸に突き刺さる。

 

 

??「例え相手が犯罪者だとしても、家族を守るためだとしても………人の命を奪ったらその時点で『人殺し』になるんだよ。」

 

 

少年「人………殺し………」ボロボロ

 

 

 

??「そうだ。もし、『人殺し』になったら人を殺めたという罪が。人を殺したという悲鳴が。人を殺してしまったという罪悪感が………死ぬまで一生付きまとってくる。」

 

 

 

 まるで、今も自分がその立場にいるような言い方を男性はする。

 

 

 だからだろうか……。男性が話す言葉の説得力が大いにあった。

 

 

??「お前の勇気が………家族と離れ離れになるきっかけになっていたかもしれない。嫌だろ??ママ達と離れるのは」

 

 

 少年は何度も何度も頷く。少年にとって、母親は勇気を出してまで助けたかった存在なのだ。離れるなんて、嫌に決まっている。

 

 

??「だから……………、あんなやり方じゃなくてもっと正しい方法で強くなって………ママと妹を守ってやるんだ。」

 

 

 男性はそう言って、ポケットから1枚の紙を取り出して少年に渡す。

 

少年「これは………??」

 

??「俺の知り合いがここの近くで無料で剣道の道場開いてるんだよ。まぁ、シスコンで面倒くさい性格してるけどオリンピックでメダルを獲得する程の実力の持ち主だから、もし良かったらここに行くといい。」

 

 男性が少年に渡したのは剣道の入門チラシだった。そのチラシには内浦にある綱元で名家である黒澤家の長男が映っていた。

 

 少年は感銘を受けたようにずっとチラシを眺めていた。

 

 その時の少年の顔は兄として………そして、男として覚悟を決めたような良い表情となっていた。

 

 すると、警察官が何人か、こちらの方に近付いてくる。それに気づいた男性は少年の頭に手を置き

 

??「じゃあな、少年。俺はもう行くよ。」

 

 

 と、頭を撫でながら少年に言ったあと、最後に「頑張れよ」と言い残して、少年から背を向けて病院の奥へと進もうとした。

 

 

少年「あの!!」

 

 

??「ん??」

 

 

 少年は大きな声を出して、男性に声を掛ける。男性が振り向くと、少年はモジモジとしながら言葉を続けた。

 

 

??「お兄さんの名前……聞いても良いですか!?また、会いたいから………」

 

 

 

 少年にとって、この男性は二つの意味で恩人のような存在になっていた。

 

 

 1つは自分が犯しそうになった罪を防いでくれたこと。

 

 

 そして、もう1つは自分がこれから先、家族を守るために歩むべき正しき道を開いてくれたこと。

 

 

 もっともっと、少年は彼と会って色んなことを話したいという気持ちになっていた。

 

 

 少年の言葉に男性はニコッと笑い

 

 

 

 

 

??「俺の名前は鹿角 明。この西木野総合病院で小児科担当の医師として働いている。怪我したらいつでもここに来な。俺が治してやっから」

 

 

 

 明と名乗った男性はシュッと2本の指でキメたあと、病院の奥へと歩き出して少年の前から姿を消した。

 

 

 

 

 その彼の歩く後ろ姿は少年にとっては、凄くカッコよく………一生忘れないものへとなった。

 

 

 

 

 後日、チラシに載っていた黒澤家の長男が開く剣道道場に赤ん坊を抱えた母親によって連れてってもらった1人の少年が新たに入門したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「お疲れ様。はい、これ」

 

 病院内の休憩室にあるソファに座って休んでいたら、1人の赤髪の女性が俺に缶コーヒーを差し出しながら話しかける。

 

 

明「西木野院長…………。」

 

 

 彼女の名前は西木野 真姫さん。苗字から分かる通り、俺が務めている西木野総合病院を経営している西木野家の一人娘であり現在ではこの病院の院長である。しかも、あの伝説のスクールアイドルμ'sのメンバーの1人でもある。

 

 そして、『人殺し』である俺をここの病院で小児科の医師として迎えてくれたのも彼女本人であり、勤務してから最初の1年間は院長であるのにも関わらず教育担当者として俺の傍にいてくれた。

 

 俺は彼女から頂いた缶コーヒーを開けてから飲んでいると、西木野院長も俺の隣へと座る。

 

 

真姫「今日は本当に助かった。院長として感謝するわ。」

 

 

 彼女はそう言って、缶コーヒーを開けて飲み始める。サバサバとしているが、彼女が俺なんかにこんな事を言うなんて珍しい。いつもは、従兄の情報を寄越せってしつこいのに。

 

 まぁ、今回は取り返しのつかないような大きな出来事は起こらなかったが、もし何かが起きていたら………と考えるだけでも恐ろしい。

 

  西木野総合病院は東京の中でもトップ3を争うほどの大きな病院だからな。何かあって泥が付くようなことだけは絶対に避けたいに決まっている。

 

明「勿体ないお言葉です。ありがとうございます。」

 

 西木野院長のお礼の言葉は有難くちょうだいしておこう。ここで何か言っても、それは誠意に俺に感謝の言葉を贈ってくれた彼女にとって失礼な行為だ。

 

真姫「それだけ、伝えたかったから私はもう行くわ。事件の後始末しなきゃだし。…………あ、あと明。」

 

明「なんでしょうか??」

 

真姫「来月に行う予定の立川君の腫瘍の切除手術を……………明にお願いしようと考えてるわ」

 

明「ーーーーーッッ!?」

 

 西木野院長から発せれた突然の言葉に俺は言葉を失ってしまう。

 

 立川君の腫瘍はかなり大きいもので難易度も高く、その手術は西木野院長自身が行うものだと思っていた。それは俺だけでなく、他の医師も同じ気持ちだろう。

 

 だけど、心のどこかでは立川君の手術は俺がやりたいと思っていた。立川君とは意外にも俺と趣味が似ていたからか、よく互いに会話をして、良好な関係を築いてきている。よく、彼の悩みとかも話してくれて聞いていた。

 

明「俺で………いいんでしょうか??」

 

 俺は西木野院長の目を見ながら彼女に問う。すると、院長は俺の両肩に手を置いてフッと笑いながら言葉を出してくれた。

 

 

真姫「貴方だからこそ、私は頼みたいのよ。立川君の手術………お願いしても良いかしら??」

 

 

 西木野院長は俺の目をじっと見つめる。俺も同じように彼女の目を見る。

 

 

 ………………これは俺のことを信じてくれている目だ。

 

 

 俺はその場で何回か深呼吸を行ったあと、胸にトン!!と拳を当てて彼女に向かって言葉を出した。

 

 

 

明「…………はい!!!任せて下さい!!!絶対に成功させます!!!」

 

 

 

 立川君は……必ず俺が救う。俺のこの手で。じゃなきゃ、俺が医師になった意味が無い。

 

 

真姫「貴方ならそう言ってくれる思ったわ。期待してるからね」

 

明「はい!!」

 

真姫「それじゃあ、もう今日は早く上がっていいわよ。」

 

ーーーーーは??

 

明「え、でも………まだ事件の後片付けが………。」

 

 

真姫「今日は……………函館からお姉さん達が来るんでしょ??」

 

 

明「ーーーーーッッ」

 

 

 ………なんで、この人がそれを知ってんだよ。一言も今日のことは言ってないはずなのに。

 

 

真姫「この前、明の奥さんとお茶した時に教えて貰ったのよ」

 

 

明「花丸が??」

 

 

 ……………そう言えば、俺が院長を家に招待した時に仲良くしてたな。まさか、知らない内にお茶しにいく程まで発展してたとは。てか、なんで教えるんだよ。花丸ぅ………

 

 

真姫「あと最近、娘さんに嫌われてるらしいわね。」

 

明「あ、院長。その辺でやめときましょう。このままじゃ俺、貴女のことを本気でジャーマンスープレックスして沈めそうっす。」

 

 べ、別に娘(3歳)に嫌われてないし。1週間前ぐらいに「パパ嫌いじゅら。あっち行ってー」って真顔で言われて3日ほど寝込んだくらいだし。

 

真姫「最近の貴方のプロレス技推しはなんなの??」

 

 

明「高校生の時に知り合ったサトウさんっていう小原家の使用人に教えて貰ってるんです。」ドヤサッ

 

 

真姫「ゔぇえ!?何それ、意味分かんない………」

 

 ゔぇえ!?西木野院長が理由を聞いてきたんじゃないか。

 

真姫「まぁ、とにかく!!今日はもう早く上がって駅まで彼女達を迎えに行ってあげなさい。これは院長命令よ。」

 

明「………良いんですか??」

 

 

真姫「えぇ。その代わり、今度修也をデートに誘う時に色々と手伝ってもらうから」

 

 

明「……………」

 

 修也という単語を聞いて、俺は頭が痛くなるのを感じる。修也とは俺の従兄で、西木野院長が病んでしまうほど、大好きな人物である。

 

 俺が修兄ぃの弟ということを知ってからは、ひたすら彼の情報や私物(髪の毛や下着)などを彼女に提供するよう言われている。その時の西木野院長が怖ぇんだよ。だって、目のハイライトが消えてるもん。

 

 しかもタチが悪いことに、断ると「そういえば、この病院……小児科担当の医者が多いわよね。1人ぐらいクビにしても問題ないと思うんだけど…………」と、パワハラ発言してくるので俺は泣き泣きと従っている。

 

明「…………分かりました」

 

 とりあえず断ったら怖そうなので引き受けておく。後で、修兄ぃに連絡しておこう。

 

 

明「では、院長のお言葉に甘えまして俺はここで先に失礼します。お疲れ様でした。」タッタッタ

 

 

真姫「えぇ。お疲れ様。」

 

 缶コーヒーをゴミ箱に入れてから俺は西木野院長に頭を下げてその場を後にした。

 

 

 

真姫「さて、私も行こうかしら」

 

 

 明の姿が見えなくなるまで見送っていた真姫は残っている缶コーヒーの中身を飲み干したあと、ゴミ箱に入れて立ち上がる。

 

 

 すると………

 

 

医師1「院長!!聞きましたよ」

 

真姫「ん??」

 

 何人かの医師が真姫の方へと駆けつける。表情を見た限りだと、何か怒っているようにも見える。

 

真姫「何かしら??」

 

 

医師2「立川君の手術を鹿角に任せるらしいですね」

 

 

 この言葉で、どうして彼らがここに赴いたのか、ある程度察することはできた。

 

 

真姫「………それが何か問題でも??」

 

 

 それを知った上で真姫は彼らの質問を肯定する。

 

 

医師3「失礼ですが………、鹿角くんはまだ経験が浅いです。それなのに、初めて行う手術が立川君の腫瘍の切除手術となると厳しいのでは??」

 

 

 3人目の医師がメガネをクイッと上げて話しかける。

 

 だが、真姫は平然な表情を浮かべて彼の問いに答える。真姫だって、何も考えずに明に任せたわけではない。ちゃんとした理由はあるのだ。

 

 

真姫「明は私が手術している時、隣でずっと私のサポートに徹してくれていたわ。技術面でいったら心配はないわよ。勿論、今度は私が彼の隣に立ってサポートするつもり。」

 

 

 理由を述べても、彼らは納得しないようだった。

 

 

医師2「ですが………。もし、それで失敗したらどうするんですか!?」

 

 

真姫「責任は私がとるわ。」

 

 

医者1「前から思っていたのですが…………どうして、そこまで院長は鹿角のことを??」

 

 

 この質問をした女性の医師は前から疑問に思っていた。いや、彼女だけではない。ここで働く従業員、みんなが1度は思っている。

 

 

 真姫は明のことを少なからず優遇しているんじゃないか………と。

 

 

 実質、そんなことはない。真姫は別に明のことを特別重視とかはしておらず、他の従業員同様に接しているつもりだ。

 

 今回の手術も彼のこれまでの経験と日々の努力が積み重なったからこそ、立川君の手術を任せたいと思ったから彼に任命した。

 

 

 たった、それだけ。それだけなのだが…………

 

 

 ここで、真姫は数年前に明が西木野総合病院に面接に来た時に、どうして医者になろうとしたのか、という質問に対して彼が放った言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明『私は…………幼い頃に家族を守る為に人を殺めた過去があります。』

 

 

 ーーーこいつは何を言っているのだろうか。

 

 

 最初の言葉を聞いて真姫が最初に思った事だった。動揺するのも無理はない。

 

 

 彼女の旦那である修也(真姫の思い込み)の紹介で明の面接をわざわざ院長である真姫がやってあげた訳なのだが………医師を目指した理由を聞いたら、突然自分は『人殺し』であるということを明かしたのだ。

 

 

 真姫は聞き間違いだと思い、彼にもう一度言ってもらうよう頼んだ。

 

 

 しかし、結果としてはまたしても彼は自分が『人殺し』であることとを明かしただけだった。

 

 

 ーーーうん………、不採用にしよう

 

 

 ペラペラと緊張しながらも続きを話している明を見ながら真姫は心の中で決意した。

 

 

 

 いくら、愛すべき旦那の修也(勘違いつってんだろ。)の紹介とはいえ、明が前科持ちならば話は別だ。こんな危険な人を我が病院に雇う訳には行かない。

 

 

 

 真姫は適当に質問して明の話を聞いていた。

 

 

 

 そして、最後に何か言い残したことはないか………と無意味ながら聞く。

 

 

 

 すると………明は自分の手を見ながら言葉を出した。

 

 

 

 

明『私は………人の命を殺めてしまった分………………数多く人の『命』を救いたい。自分のこの手で!!』

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーッッ!!??

 

 

 

 明が最後に放った一言によって、真姫に衝撃を与える。正確には、言葉では無く明の顔を見て衝撃を受けた。

 

 

 明の目は真剣な目をしていた。それは嘘偽りが1つもなく、覚悟を決めた目だった。

 

 

 

 そして、彼の目は真姫が今までに出会ってきた誰かに似ていた。

 

 

 

 ……………そうだ。思い出した。あの人だ。

 

 

 高校生時代に、スクールアイドル部を立ち上げ、廃校の危機を救ったスクールアイドルμ'sのリーダーだったあの人に明は似ているんだ。

 

 

 

 

 ーーーーーークスッ

 

 

 

 いつの間にか真姫は頬を緩ませていた。

 

 

 そして、今のが聞こえてしまったのか、明はポカンとして彼女を見ていた。

 

 

 

 真姫は「コホン」としたあと、それを無かったかのように目の前にある書類をトントンと整理してから、その場で明に向けて微笑みながら一言呟いた。

 

 

 

 

 

 ーーー採用。来月からお願いするわ。

 

 

 

 

 

 

 

 その時の明の表情は今でも真姫は覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫「私は彼なら………鹿角 明なら必ず立川君の手術を成功してくれると信じているからよ。過去に人の命を自分の手で失わせてしまったからこそ、明は命の大切さが、ここにいる誰よりも身にしめて理解している。だから、私は彼に手術を任せた。それだけよ。分かったなら、早く自分の仕事に戻りなさい。」

 

 

 

医師1・2・3「ーーーーーッッ!!??」

 

 

 

 真姫は彼らにそう言葉を残したあと、彼らの反応を伺わずにその場から離れて、自分の作業する部屋へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「はっ……はっ………」タッタッタ

 

 西木野総合病院から出た俺はすぐに最寄りである東京駅に向かって走る。

 

 このまま行けば、彼女達が駅に着くと同時に俺も辿りつくことができるであろう。

 

 念の為、東京駅に着いたら地下一階にある銀の鈴のオブジェの前で待つように連絡してある。

 

 

 10分ほど時間が経ったあと、俺は汗を垂らせながら東京駅に辿り着き、止まることなく急いで銀の鈴のオブジェの方へと進む。

 

 

 そして、銀の鈴のオブジェに着くと、そこには待ち人らしき多くの人が立っていた。

 

 

明「ーーーーーあ」

 

 

 その多くの待ち人の中に、大きなキャリーバックを持った2人の女性が目に映る。

 

 

 1人は穏やかな表情が特徴的で髪形がサイドテールにしている美人な女性。

 

 

 もう1人は瓜二つと言わんばかりの明にそっくりな顔つきで、キリッとした表情が特徴的になっていて髪形はツインテールにしている美人な女性だ。

 

 

 2人も俺の姿を見た瞬間、とても嬉しそうに微笑んだあと俺の方へと駆け寄る。

 

 

 

 『うわぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

 パァン

 

 

 『人殺し』

 

 

 『もう、私達には関わらないで』

 

 

 未だに彼女の姿を見ると、俺は20年前以上のあの出来後を思い出す。

 

 

 もし、あの時、『人殺し』である1人の恩人の誘いを受け入れなかったらどうなっていたか。

 

 

 もし、あの時、『人殺し』である俺は今は亡き浦の星女学院に入学してなかったらどうなっていたのだろうか。

 

 

 もし、あの時、『人殺し』である俺は9人の仲間に出会わなかったらどうなっていたのだろうか。

 

 

 もし、あの時、『人殺し』である俺は目の前に差し出される8人の手を取らなかったらどうなっていたのだろうか。

 

 

 今まで過ごして来た過去のどれかの違う道を進んでいたら………と考えるとゾッとする。

 

 

 きっと、どれか1つでも違う道を歩んでいたとしたら、少なくとも今はないと思う。

 

 

 ーーーもしかしたら、ずっと人と関わらなかった未来があったのかもしれない。

 

 

 ーーーもしかしたら、ずっと自分を責め続ける未来があったのかもしれない。

 

 

 ーーーもしかしたら、この歳になる前に俺は自ら命を絶っていたのかもしれない。

 

 

 様々な思考が頭の中でよぎってきたが、もうやめよう。

 

 

 彼女達が俺の目の前まで近付いたあと、俺達は3人でゆっくりとその場で抱き締め合う。

 

 他の人からしてみれば、異形な光景であほう。

 

 だが、俺達にとっては、とても大切なことだった。

 

 そして、俺は抱き締めながら愛すべき姉2人に向けて言葉を出した。

 

 

明「久しぶりだな、姉ちゃん達!!」

 

 

聖良「お久しぶりです。明」

 

 

理亜「久しぶり。明。」

 

 

 

 俺達は互いに顔を見合って、嬉しそうに笑った。

 

 

 そして、3人で並んで会話を弾みながらその場から歩き出す。

 

 

 

 その姿は正に仲の良い姉弟以外、何者でも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鹿角 明はSaint Snowだった鹿角聖良と鹿角 理亜の2人の弟で『人殺し』。

 

 

 

 

 例え、今……明が幸せな日々を過ごしているとしても『人殺し』という罪は彼の命が絶えるまで胸に刻まれていくことだろう。

 

 

 

 それでも………鹿角 明は逃げずに、『人殺し』という罪を受け入れ前に進む。

 

 

 

 

 

 

 彼、1人だけではなく……………大好きな姉である聖良と理亜、最愛なる妻である花丸と2人の間に出来た可愛い娘。そして………これまでに出会ってきた最高の仲間達と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』………完

 

 




『人殺し』の投稿を初めて、約1年間程ですが遂に完結させることが出来ました!!これも、こんな駄文な作品なのにも関わらず、応援してくださる皆さんのおかげです!!本当にありがとうございました!!
この1年間、皆様の暇潰しになれるような作品に仕上がることは出来たでしょうか??出来ていたなら、嬉しい限りです。

最終話ということなので、特別ゲストとしてこれまでに『人殺し』に登場したコラボ作品のキャラも名前だけ出させて頂きました!!べーたさん、アドミラル△さん、ぱすえさんありがとうございます!!

あと、この最終話ではある伏線を回収していたのですが、皆様はお気づきでしょうか??分からなかった人はもう一度、読んでみて下さい。詳細は後日。投稿予定のあとがきにて。

次回作はテロップは既に完成済みなので、近い内に投稿します。次回作もSaint Snowをメインとして執筆していくので楽しみにしてくれたらな………と思います。

最後にSaintSnowの2人の弟である俺は『人殺し』を読んでくれてた皆様、本当にありがとうございました!!
七宮 梅雨でした!!


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番外編
『人殺し』はポケカをする。


最近、マイブームがポケカなのでポケカ編を作りました笑

ポケカを知らない人は、多分話についていけないと思うのでそのままスライドして戻ることをオススメします。

それでも良いなら、楽しんでお読みください!!


千歌「さぁ、始まりました!!第1回、Aqoursポケカ大会ー!!」

 

Aqours「わー!!」パチパチパチ、パフパフパフ〜

 

 おいおいおい、なんか急に変なの始まったんだけど…………。

 

曜「この日をずっと待ってました!!全力前進ヨーソロー!!」

 

果南「曜、自信満々だね。でも、私は負ける気は無いよ」

 

梨子「私もです!!」

 

善子「クックックッ、堕天使ヨハネが勝つことは決定事項なのです」

 

ルビィ「優勝目指してがんばリー…………じゃなくてがんばルビィ!!」

 

ダイヤ「ルビィ、手加減はしないですからね!!」

 

鞠莉「シャイニー!!私のレアデッキに勝てるかしら♪」

 

花丸「ポケカって未来ずら〜!!」

 

 マジか!!Aqoursのメンバーのやる気がヤバいんですけど!?てか、みんなポケカやってたのかよ!!

 

千歌「奥山くんもポケカやってるよね??」

 

明「まぁ、やってるけど」

 

 とは言っても、対戦相手は零さんしかいないけどな。あの人、めちゃくちゃ強いんだよなぁ。

 

千歌「よーし、じゃあクジで対戦相手を決めよう!!」

 

Aqours「おー!!」

 

 あ、俺は強制参加なんですね。

 

 

〜くじ引き後〜

 

 

第1回 果南 VS ルビィ

 

第2回ダイヤ VS 梨子

 

第3回 千歌VS 花丸

 

第4回 善子VS 曜

 

第5回 明 VS鞠莉

 

という形となった。

 

 俺の初戦の相手は鞠莉先輩かぁ。どんなデッキで来るんだろうな。先が読めねぇ

 

 

千歌「よぉし!!対戦相手も決まったことだし、ポケカ大会の始まりだぁ!!」

 

 

Aqours「おー!!」

 

 まぁ、たまにはこういうのもいいか。

 

 

 そして、第1回目である果南先輩とルビィさんのポケカ対戦が始まった。

 

 

〜第1回戦終了後〜

 

 

ダイヤ「よしよし、ルビィはよく頑張りましたわ」

 

ルビィ「うゆぅ………」

 

果南「あはは………、やりすぎちゃったかな」

 

 果南先輩とルビィさんのポケカ対戦の結果、果南先輩の圧勝だった。

 

 ルビィさんはワタッコやネイティなどの

ロストマーチデッキでなんとか頑張ったのだが、果南先輩のアーゴヨンとズガドーンを主軸とした高火力デッキによりあっさりと翻弄された。果南先輩強すぎん!?

 

ルビィ「果南ちゃん!!私の分まで頑張ってね!!」

 

果南「うん!!じゃあ、次も勝つから私とハグして」

 

ルビィ「うん!!」

 

 そう言って、ルビィさんは果南先輩とハグした。見てる感じ、この2人の絆はより一層強くなった気がする。これも、トレーディングカードの良いところだよな。

 

 

ダイヤ「次は私達ですわね!!」

 

梨子「はい!!負けませんよ!!」

 

 

〜第2回戦終了後〜

 

 

梨子「あーあ、負けちゃった」

 

ダイヤ「いい勝負でしたわ。」

 

 第2回戦、ダイヤ先輩と梨子先輩のポケカ対戦の結果はダイヤ先輩が苦しみながらも勝利した。

 

 梨子先輩は『ゾロアークGX』をメインとしたデッキで特性『とりひき』を上手く使いながら手札を補充し、場面を揃えていたが、ダイヤ先輩もアローナナッシーデッキを使い、技である『トロピカルシェイク』を低コストで高火力を撃てる技を素早く出しながら返り討ちにしていた。そして、最後の最後でダイヤ先輩は『グズマ』を使いベンチにいた体力の低いポケモンを引きずり出して勝利を掴み取った。なかなか熱いバトルであった。

 

ダイヤ「梨子さん、またやりましょう」

 

梨子「望むところです!!今度は負けませんよ!!」

 

 

 

千歌「今度は私達の番だよ、花丸ちゃん!!」

 

花丸「ずらー!!」

 

 

〜第3回戦終了後〜

 

 

明「1ターンキル!?」

 

千歌「ガーン!!」

 

花丸「わーい、勝ったずらぁ!!」

 

 千歌先輩と花丸さんのポケカ対決の結果は、花丸さんの1ターンキルで終了した。

 

 花丸さんがバトル場に出したのは『フェリーチェGX』。先行でも攻撃が出来る能力を持つポケモンで、『ブーストエネルギー』という火力を上げるエネルギーを付けることによって60ダメージというそこそこなダメージを与えられる。運が悪く、千歌先輩がバトル場に出したのはHPが60であるアローラロコン。つまり、そういうことである。

 

千歌「悔しいよ!!だって、ワンキルだよ!?悔しいに決まってるじゃん!!」

 

 おぉと、この先輩、ワンキルが悔しすぎて名セリフ言っちゃったよ。

 

花丸「ずらぁ♪」

 

 

 

曜「ようやく、私達だよ、善子ちゃん!!」

 

善子「ヨハネ!!絶対に負けないんだから!!」

 

 

〜第4回戦終了後〜

 

 

善子「これは夢よ…………くっ、いつの間に私のリトルデーモンが幻想を使えるようになっていたとは!!」

 

花丸「善子ちゃん、幻想じゃなくて現実ずらよ」

 

善子「ヨハネ!!」

 

曜「全力勝利!!ヨーソロ!!」

 

 第4回戦、善子さんと曜先輩のポケカ対戦の結果は曜先輩の勝利だった。

 

 善子さんは、ギラティナとカラマネロを主軸として組まれた死神デッキで、エネ加速をしつつ、高火力を出すデッキなのに対して、曜先輩もゼラオラとレックウザを主軸としたデッキを使用し、死神デッキと同じでエネ加速をしながら高火力を出すというデッキであった。

 

 しかし、善子さんは手札の内容が悪かったらしくあまり展開をすることが出来なかったのに対して、曜先輩はいい感じに展開をして行きそのまま善子さんを押し切って勝利した。

 

善子「絶対に優勝しなさいよ!!」

 

曜「うん!!」

 

 

 

 

鞠莉「ハーイ、明。遂に私たちの番ヨ。」

 

明「はいはい、お手柔らかにお願いしますよ。」

 

 そして、俺と鞠莉先輩の対戦が始まった。

 

 

〜第5回戦終了後〜

 

明「なんとか………勝った」

 

鞠莉「アーン、明強すぎぃ!!」

 

 鞠莉先輩は悔しそうに嘆く。彼女のデッキ自体はそこまで強くはなかった。強くはなかったのだが…………

 

明「先輩のデッキ、キラキラし過ぎでしょ!!」

 

鞠莉「Of course!!さっきも言ったでしょ??私はレアデッキだって」

 

 そう、鞠莉先輩が使うカードはどれも最高レアだった。GXポケモンはどれもHRかSSRだし、普通のポケモンも色違いカードを使用。そして、グッズやエネルギーは全てUR。決まりつけは、トレーナーカードも全てSRだったということ。がんばリーリエのSRなんて初めて見たわ!!

 

 

 

 ちなみに、俺が使ったのはニダンギルデッキです。

 

 

 

 

 こうして、なんやかんやでポケカ大会は進んでいき最終的に優勝したのは花丸さんであった。

 

 

花丸「優勝ずらぁ。嬉しいずらぁ」

 

 

 あの子、普通にやべぇよ。だって、全員ワンキルで終わらせたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜おまけ〜

 

 

理亞「わわわ!!見て見て、姉様!!シロナのSR出たわ!!後ろにガブリアスがいる!!」

 

聖良「ふふ、良かったですね。じゃあ、家に帰ったら早速デッキ作りましょうか」

 

理亞「うん!!………あ、SSR枠は色違いレックウザだわ!!」

 

聖良「凄いじゃないですか!!それは神箱でしたね!!」

 

 

 Saint Snowである彼女2人もポケカを楽しんでいた。

 

 




今回、適当にAqoursの使うデッキをセレクトしてみたけど、もし本当にポケカやってるならどんなデッキを使うんだろね。

あと、ウルトラシャイニーみなさん買えましたか??
僕は今のところ5パック買ってテテフを当てました。イェイ!


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『人殺し』は誕生日を迎える。

遅くなってしまったけど、理亜ちゃん誕生日おめでとう!!

という訳で第2回の番外編です。どうぞ


「「おぎゃおぎゃあ」」

 

 20✕✕年12月12日の夜、北海道のとある街にある病院で2人の命がこの世界に誕生した。

 

 産まれてきた赤ちゃんは双子であり、女の子と男の子であった。

 

 その日の夜は、満月でしかも雪も降っていたこともあり、とても綺麗な景色であった。

 

??「マンマー。」

 

 数日後、父親らしき人物に抱っこされている1人の女の子が母親らしき人物の隣にある赤ちゃんケースですやすやと眠っている2人の赤ちゃんをじっと見つめる。

 

 その様子を見た母親は、にっこりと微笑みながら言葉を出す。

 

母親「聖良、貴女の妹と弟よ。」

 

 聖良と呼ばれた女の子は、母親の言葉を聞いても首を傾げるだけであった。

 

 それもそのはず。彼女はまだ2歳であるため、理解できないのは当然の話であった。

 

 それでもなお、母親は話を続けた。

 

 

母親「女の子の方は『理亜』。そして、男の子の方は『明』っていうの。これからよろしくね、お姉ちゃん。」

 

 

聖良「いあ〜、あいあ〜。」

 

父親「聖良ちゃん、よく言えましたね〜」

 

母親「………ふふ」

 

 この時、父親は聖良がただ母親の言葉をオウム返しのように呟いただけに見えたが、母親のは違った。

 

母親(この子なら、きっと上手くいけるわね)

 と、心の中で確信していた。

 

 なぜたら、今の聖良の目が今まで見たこともないぐらいとてもキラキラと輝いていたからである。

 

 

 

 

 〜数年後〜

 

 

 理亜と明が産まれて5回目の誕生日を迎えた。5回目の誕生日は、2人が産まれた日と同じ大きい満月に雪が降っていた。

 

 

聖良「理亜、明。お誕生日おめでとうございます。はい、これプレゼントです」

 

 

 聖良は2人の妹と弟にそれぞれのプレゼント箱を渡す。

 

理亜「ねーさま、ありがとう。」

 

明「聖良ねーちゃん、ありがとう」

 

 理亜と明は礼を言いながら、聖良から箱を受け取りその場で開ける。

 

理亜・明「わぁー!!」

 

 

 理亜はピンク色のクマのキーホルダーで、明には当時放送されていた仮面ライダーのキーホルダーであった。

 

 

理亜「かわいい!!」

 

明「かっこい!!」

 

 2人は大喜びしながら、姉である聖良に抱き着く。聖良も可愛らしく微笑みながら、2人を抱き返す。傍から見れば、本当に仲の良い3姉弟であった。

 

 

母親「みんな、ケーキよー!!さぁ、主役の2人は真ん中に来てちょうだい」

 

 

 母親がケーキをテーブルの上に置く。ケーキの上には『理亜ちゃん、明くん。誕生日おめでとう』とチョコレートソースで書かれているホワイトチョコレートがあった。

 

母親「パパ、聖良。2人の為にハッピーバースデーを歌いましょ」

 

父親「そうだな。」

 

聖良「うん!!」

 

 そして、母親と父親と聖良の3人が理亜と明の誕生日を祝う歌を仲良く歌った。

 

母親・父親・聖良「HappyBirthday、Dear理亜と明〜♪HappyBirthday To You〜♪おめでとうー!!」

 

 

 歌を歌い終えると、理亜と明はケーキの上についている5本のロウソクの火を一緒に仲良く息を吹いて消した。

 

 その後、家族全員でケーキを食べたり、テレビゲームをしたりと最高の誕生日を過ごした理亜と明。

 

 しかし、楽しい時間もあっという間に過ぎ、子供たちが寝る時間となった。理亜と明は一緒に布団の中に入りながら今日の誕生日パーティーを振り返っていた。

 

明「今日とても楽しかったね、理亜ねーちゃん」

 

理亜「うん!!また、来年が楽しみ!!」

 

明「そうだね!!」

 

聖良「そしたら、またお姉ちゃんがプレゼントあげますからね」

 

 2人の隣に聖良が2人の顔を向けながら答えた。

 

理亜・明「「ありがとう聖良ねーちゃん(姉様)!!」」

 

 

 そして、1人の姉と2人の双子はすぐに眠りについた。

 

 

 〜1年後〜

 

 

 あれから、1年が経ち再び誕生日を迎えた。

 

 

 しかし、去年と違うことが1つだけある。

 

 

 それは、鹿角家で祝われる人物が理亜の1人だけということ。プレゼントも理亜の1人分だけ。ケーキの上にあるホワイトチョコレートに書かれている文字も『理亜ちゃん、お誕生日おめでとう』という文字だけだった。

 

 誕生日の歌も本来なら呼ばれるべき人物の名前が呼ばれず理亜だけだった。

 

 去年、明は銀行で人を殺め『人殺し』となり、彼を恐れた両親によって施設の方へと送られてしまった。

 

 ずっと、一緒にいた弟がこの場にいない誕生日を迎えた理亜はなんだか違和感しか感じられなかった。

 

 両親は何事もないかのように理亜の誕生を祝う。

 

聖良「理亜」

 

理亜「なぁに??姉様。」

 

聖良「これ、誕生日おめでとうございます。」

 

 聖良は理亜にリボンのついた箱を差し出し、理亜はそれを受け取った。

 

理亜「あ…………」

 

 聖良から貰った箱の中には、猫のぬいぐるみが入っていた。理亜は前からこの猫のぬいぐるみを欲しがっていたので、「姉様、ありがとう!!」と言ってとても嬉しそうな表情をとった。とったのだが…………

 

 

理亜「ねぇ、姉様。明の分は??」

 

 

聖良「え?」

 

 この一言で、聖良含め両親の表情も固まった。

 

理亜「ねぇ、明の分は??ねぇ??」

 

聖良「それは…………」

 

 こんなに、大好きな姉に追い詰めるかのように言葉を出すのは理亜自身初めてであった。実際、理亜の言葉によって聖良も戸惑いの表情を見せる。

 

理亜「去年、姉様言ったよね??嘘ついたの??」

 

母親「こら、理亜!!」

 

 

 バシン!!

 

 

 堪忍の尾が切れた母親は理亜の頬を叩いた。 理亜は目に涙を浮かべながらヒリヒリする頬に手を当てながら、母親を見る。

 

母親「お姉ちゃんを困らせるんではありません。それと、もうあの子について言うのはやめなさい。次、それ言ったらタダじゃ起きませんからね」

 

 母親はそう言って、泣きそうになっている聖良の方へと向かった。

 

 

 

 この時、理亜は6歳ながらにして分かったことが2つある。

 

 

 

 1つは明についてもう口を出さないこと。じゃないと、雰囲気が悪くなってしまうため。

 

 

 

 

 

 

 そして、もう1つは明という存在は鹿角家から本格的に消えてしまったということであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜4年後〜

 

 

 明が両親に施設に送られてから4年という月日が流れた。

 

 4年経った今でも、明は施設内で1人で過ごしていた。

 

 人と関わることによって、自分が『人殺し』だということを避けるために。

 

 他の子供達は今日この施設に来たボランティアの方々と外で遊んでいる中、明は部屋で本を読んでいた。そして、ふと黒板に目をやるとあることに気づく。

 

 

明(あ、今日俺の誕生日だ)

 

 

 そう、黒板には白いチョーク12月12日と書かれていた。つまり、明が産まれてから10回目の誕生日を迎えたこととなる。

 

 明のいる施設は子供たちの誕生日とかを祝うイベントとかは実行されないこともあり、ここに来てから4年間、明は誕生日を迎えても誰からも祝われることが無かった。

 

 

 1回目はそれによって悲しさを感じ、

 

 

 2回目も少しだけ悲しさを感じ、

 

 

 3回目からは慣れのせいか特に何も感じなくなり、

 

 

 4回目にして、自分が誕生日を迎えていることすら忘れてしまっていた。

 

 

 

 明はふと、ポケットの中に手を入れ、とある物を取り出す。

 

 取り出したのは、4年前に聖良が明に誕生日プレゼントでくれた仮面ライダーのキーホルダーであった。年月が経っているせいか色が褪せている。

 

 

聖良「『人殺し』」

 

 

聖良「『もう、私達に関わらないで』」

 

 

 

明「ーーーーーッッ!!」

 

 

 4年前に聖良に言われてしまった言葉を思い出してしまい、咄嗟に明はポケットの中にしまう。そして、胃の中から込み上げてくる何かを口から吐き出さないようにぐっと堪える。堪えた頃には、明は汗びっしょりで息も荒かった。

 

 明はこの仮面ライダーのキーホルダーを手放したいと思っても、手放すことが出来なかった。少しだけでも、姉との繋がりの証拠を残したかったからである。

 

 

明(もう………今日は寝よう。明日になっちまえば、落ち着く。)

 

 

 明は腰をゆっくりと上げ、この施設に来て4回目の誕生日の日の残りを睡眠で使おうと思った瞬間、

 

 

??「この子、かわいい!!」

 

 

明「え?」

 

 唐突に、明は誰かに強く抱きしめられた。

 

 

??「やばい!!この顔立ち、この目、この鼻、この口。昔、飼ってたポチを思い出すわ!!」

 

 明の事を抱きしめいたのはボランティアとしてこの施設に来ていた1人の若い女性の方だった。明を見てや興奮状態となり、早口で言葉を出しまくる。

 

明「え?え?え?」

 

 当然、明もテンパっていた。

 

 

??「院長さん!!私、この子引き取る!!」

 

 

院長「本気で言ってます??」

 

 女性の発言に、近くにいた院長は目を丸くする。

 

??「えぇ!!何か問題でも??」

 

院長「いや、その子の意思を聞いてみないと………」

 

??「そういうこと!!ねぇ、君!!」

 

明「ひゃい??」

 

 その頃の明はもう、何がなんなのか全く分からない状態だった。

 

??「私、奥山 零っていいます!!突然なんだこど私、君と家族となりたいんだけどいいかな??」

 

明「はい??」

 

 奥山 零と名乗った女性が明と家族になりたいと言うことに対して明は理解することが出来なかった。

 

 だから、明は目を逸らしながら零に言葉を出す。

 

 

 

明「やめておいた方がいいです」

 

 

 

零「え?」

 

明「だって…………」

 

 明はあの単語を口に出すかどうか一瞬だけ迷ったが、決心して口に出した。

 

 

 

明「俺、『人殺し』だから」

 

 

 

 

零「……………」

 

 

明「俺、過去に人を殺したことがあるんです。だから、両親にここに送られた。だから、お姉さんと…………」

 

 

 

 家族にならない方が良いですよ

 

 

 

 

 

 と言おうとした瞬間だった。またしても急に明は零に抱きつかれる。

 

 しかし、さっきみたいに少し乱暴な感じではなく、今度はまるでお母さんのように優しく包み込んでくれる暖かさが感じられた。

 

零「ねぇ、鹿角くん」

 

 零は明の側に顔を近づかせ、彼だけに聞こえるようにそっと囁きかける。

 

 

零「鹿角くんは海を見たことがある??」

 

 

 零の言葉に、明は何も言わず首を横に振る。明は本やテレビでは見たことはあるが、1回も海を自分の目で見たことが無かった。

 

零「私ね、今内浦っていう所で住んでるの。海がとっても綺麗な場所なんだ。どう、気になるでしょ??」

 

 

明「……………」

 

 

零「鹿角くん。私は例え君が『人殺し』だとしても一緒にいたいという気持ちは変わらないよ。だからさ」

 

 零は一旦言葉を言うのをやめて明の顔を見る。彼のさっきまで普通だったのに、今では泣くのを我慢して歯を食いしばっているが、我慢できずに瞳からボロボロと涙を流していた。

 

 そして、零は優しく微笑みながら

 

 

 

零「私と一緒に家族になってくれないかな??」

 

 

 

 この言葉によって、明の中にある何かが崩れ、泣きながら彼は彼女の胸に飛び込んだ。

 

 

 

明「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 まるで産まれたばかりの赤ん坊のように『人殺し』は泣き続けた。その姿を、彼女は落ち着くまで髪を優しく撫でながら見守っていた。

 

 

 

 

 約3年ぶりに、『人殺し』である鹿角 明は『奥山』という苗字と『奥山 零』という新たな家族が彼の誕生日プレゼントとして送られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10年後〜(明視点)

 

 

 

善子「奥山くんって仮面ライダー好きなの??」

 

 

 

明「え?」

 

 たまたま廊下で出くわした善子さんと一緒に部室に向かっていると、善子さんに質問された。

 

明「別にそこまで好きではないけど」

 

善子「だって、そのキーホルダー、ずっと付けてるよね??」

 

 善子さんは俺の肩に背負っているリュックに付いているとあるものに指を指す。

 

明「ん??………あぁ。」

 

 

 それを見た俺は納得した。

 

 

 それは、色褪せてるボロボロな仮面ライダーのキーホルダーであった。

 

 

 俺はこのキーホルダーを優しく手に触れながら善子さんに向かって喋った。

 

 

 

 

明「これは俺の宝物なんだよ。色んな意味でな」

 

 

 

 




もう三人称で書きたくないと思いました。



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『人殺し』の姉は誕生日を迎える

遅くなったけど聖良さん誕生日おめでとうございます!!

初めから言っておきますが、明くんは出ません。笑

なので、理亜ちゃん視点でどうぞ(꜆ ˙-˙ )꜆♡


 明日は5月4日。

 

 他人からしたらGWの1日だと思われるけど、私………いや私達からしたらとても大切な日。

 

 

 なぜなら、その日は姉様の誕生日だからだ。

 

 

 当然、姉様の誕生日なのだから妹として最高のプレゼントを贈りたい。

 

 

 今年から私は高校生になった故に、月のお小遣いも大幅にupした。とは言ってもまだ高校に進学してまだ1ヶ月しか経過してないから1回しか貰ってないけど、私はこの日のために進学する数ヶ月前からお小遣いを貯金してきた。

 

 その甲斐があってか、そこそこ値段が張れる商品も購入することが可能なぐらいまで貯まっていた。

 

 

 今の姉様はあの事件のせいで情緒不安定な状況へと至っている。だから、少しでも私のプレゼントで元気になってもらいたい。これが私の狙いだ。

 

 

 私は、そのお金を全て封筒に入れてから荷物を持って、家を飛び出した。今日はちゃんと、両親に事情を説明したので仕事のお手伝いは無しにしてくれた。

 

 

 電車に乗って、私は最近オープンした隣町にあるショッピングモールへとやって来た。ここだったら、噂によるといろんな店があるらしいので姉様に喜んで貰えそうなプレゼントがあるに違いない。

 

 

 まずは無難に服屋へ足を運んだ。

 

 

 けど、どの商品もピンとくるようなものは無かった。どれを着ても姉様は可愛いから似合うとは思うけどなんか……………なんか違う。

 

 

 今度はぬいぐるみ屋さんへと足を運んだ。姉様はあぁ見えてぬいぐるみとか好きだから良いのがあるのかもしれない。ふふ、あんなにクールなのにぬいぐるみが好きとか本当に姉様は可愛いわ。

 

 

 あ、このリラッ〇マのぬいぐるみ……、中々可愛いわね。まぁ、姉様の方が可愛いけど。よし。候補の1つにしておこう。

 

 

 3つ目の店はゲーム屋さん。私も姉様も普段はゲームとかは余りやらない。室内でゲームやるより、外で身体を動かした方が楽しいもん。けど、最近のテレビゲームはどうやらダンス出来たり歌を歌えたり身体を動かせれるゲームがあると聞いている。なので、前々から少しだけ気になっていた。

 

 

 見た感じ、今はこの任天堂Swi〇chっていうのが人気なのね。一応候補に入れておこう。………へぇ〜、またポ〇モンの新作出るんだ。けど、作品名が少しだけダサくない??もうネタ切れなのかしら。私の頃は宝石だったけど。

 

 

 

 ゲーム屋さんを出た私はマップを広げて次にどこに行こうか探そうとした時

 

 

 「えーん。えーん。」

 

 

 子供の泣き声??らしきものが聞こえてきた。

 

 

 

 私は気になって、泣き声が聞こえてくる方向に移動すると5歳ぐらいの男の子が目に手を当てて泣いていた。迷子…………になってしまったのかしら。

 

 

理亜「どうしたの??」

 

 

男の子「ママとはぐれちゃったの」

 

 

 男の子はヒクヒクとしながらも言葉を出した。案の定、迷子だった。

 

 

理亜「分かった。私が一緒にママを探してあげる」

 

 

 こんな所で一人ぼっちっていうのも可哀想だしね。

 

 

男の子「本当に!?」

 

 

理亜「うん。だから、泣かないで」

 

 

 私は手で男の子の涙を拭ってあげた。すると、男の子は今度は笑顔になって私にこう言った。

 

 

男の子「ありがとう、お姉ちゃん!!」

 

 

 

 ーーー理亜姉ちゃん。

 

 

 

理亜「ーーーーーーーーッッ」

 

 

男の子「お姉…………ちゃん??」

 

 

理亜「なんでも…………ない」

 

 

 お姉ちゃんなんて、呼ばれたの随分と久しぶりな気がする。いや、久しぶりだ。なんなら、10年前にあいつが家からいなくなってしまった以降、お姉ちゃんと呼ばれたことがない。だから、少しだけこの子にお姉ちゃんと呼ばれると複雑な気持ちになる。

 

男の子「大丈夫??」

 

理亜「うん。心配かけてごめん。ママ探そっか。」

 

男の子「うん!」

 

 そして、私と男の子は手を繋いでこの子のお母さんを探しに歩き出した。

 

理亜「ところで、アンタは何しにここへ??」

 

 探している時にお互い無言は嫌だったので私は男の子に話しかける。すると、男の子はニコッと微笑みながら私の質問に答える。

 

男の子「明日、僕の妹の誕生日なんだ!!だから、ママと一緒にプレゼントを選びに行ってたの!!」

 

 まさかの私と同じ理由だった。この子の妹と姉様が同じ誕生日だなんて………。少し羨ましいかも。

 

男の子「お姉ちゃんは??」

 

 今度は男の子が私に質問する。せっかく答えてくれたもんね。私も答えなきゃ不公平よね。

 

理亜「私も明日、姉様の誕生日なの。だから君と同じプレゼントを選びに来たのよ」

 

男の子「そうなんだ!!僕と一緒!!」

 

 ふふ、とても嬉しそう。子供って何気に純粋よね。

 

 そのまま他愛のない話をしながら道を歩いていた。

 

男の子「ん??」

 

理亜「どうしたの??ママいた??」

 

 

 何かに反応した男の子に対し私は男の子に話しかけるが、男の子は私の言葉に答えずにそのまま走り出した。

 

 

理亜「ちょ!?」

 

 私は驚きながらも男の子の後を追う。足の速さには自信がある私だけどなかなか追いつくことができなかった。今時の子ってあんなに足が早いの!?

 

 

 そして、次第に男の子はとある1件の店の中に入って行った。

 

 

理亜「ここ………は??」

 

 

 店の雰囲気を見た感じ、雑貨屋に見えるけどなんだろう…………。怪しさが満載すぎる。

 

 

 とりあえず、男の子を見つけなきゃ。私は警戒しながらも店の中に入る。すると、直ぐに男の子は見つかった。

 

 

理亜「ダメでしょ、急に走っちゃ」

 

男の子「ごめんなさい。けど、これ見て!!」

 

理亜「ん??」

 

 男の子はとある商品棚に指を指す。彼が指す方向に目線を移す。

 

 

 すると、そこには1つの何かの白い花がモデルとなっているネックレスが飾ってあった。

 

 

理亜「…………綺麗。」

 

 

 私はそのネックレスの魅力に釘付けされた。これはなんの花がモデルとなってるんだろう。

 

 

 

店員「これは松雪草という花っていいます。中々素敵な花でしょ??」

 

 

 

 ずっと眺めていたから気になったのか、レジにいた店員さんが私に話しかけてきた。

 

 

 

 松雪草…………ね。よし。

 

 

 

理亜「このネックレス………、買うわ」

 

店員「ありがとうございます。ちなみに誰かの贈り物ですか??」

 

 店員さんの言葉に対し、私は微笑みたがら答えた。

 

 

 

理亜「えぇ。私のとても大切な人に贈るものです。」

 

 

 

 そう言うと、定員さんはニコッと優しく微笑みネックレスを大事そうに手を取ってレジの方へと向かい豪華にラッピングしてくれた。

 

 

店員「ありがとうございました」

 

 

 代金を払い、ラッピングされたネックレスを受け取った私は男の子と再び手を繋いで店を出た。

 

理亜「ごめんね。買い物しちゃって」

 

男の子「大丈夫!!それに、買う時のお姉ちゃんの顔、とてもキラキラしてたから!!」

 

理亜「そ、そう」

 

 な、なんか照れるわね。そんなに嬉しそうな顔してかしら。

 

女性「秋!!」

 

 店を出て少し歩くと近くにいた1人の女性が心配した表情をして私たちに近づき、男の子に抱きつく。きっと、この人が……………。

 

 

男の子「ママ!!!」

 

 

 やっぱり…………。

 

 

女性「あの、ありがとうございます!!うちの子と一緒にいてくれて」

 

 男の子の母親が私に向かって頭を下げて感謝の言葉を述べる。ちょっと、これは困るな。

 

理亜「だ、大丈夫です。だから、頭を上げてください」

 

 私の言葉に母親は頭をあげる。まぁ、とにかく母親と合流できて良かったわ。

 

女性「秋くんもほら。お姉さんにお礼言いなさい」

 

 母親に言われ、男の子は「うん!」と頷き、私の方へ近づく。

 

 

男の子「うん!!お姉ちゃん、ありがとう!!!」

 

 

 男の子も私にお礼を言う。私は彼の頭を優しく撫でながら言葉を出した。

 

 

 

理亜「ありがとうね。君のおかげでプレゼント決まったよ」

 

 

 

 なんやかんやあったけど、この子のおかげであのネックレスを見つけることが出来た。だから、こっちもお礼を言うのが礼儀っていうものでしょ。

 

 

男の子「バイバイ、お姉ちゃん!!」

 

 

 男の子はお母さんと手を繋ぎ、もう片方の手で私に向かって笑顔で振りながら去っていった。私も少し照れながら手を振り、2人の親子の姿が見えなくなるまで見届けた。

 

 

理亜「お姉ちゃん……………か。」

 

 

 

 

 また、あいつにそう呼ばれる日がいつか来るのだろうか。

 

 

 

 

 そう思いながら、私は家に向かって歩きだした。

 

 

 〜次の日〜

 

 

理亜「姉様、お誕生日おめでとう。」

 

聖良「ありがとうございます。」

 

 あれから朝日を迎え、私は後ろにプレゼントを隠しながら姉様がリビングに来るまでスタンバイしていた。そして、姉様がリビングにやって来たあと私は姉様のところへ行き、祝いの言葉を送った。姉様は嬉しそうに微笑んでくれた。

 

 

理亜「姉様………これ。」

 

 

 私は緊張しながらも、姉様にプレゼントを差し出す。すると、姉様は大事そうに受け取ってくれた。

 

 

聖良「ありがとう、理亜。今、開けてもいいですか??」

 

 

理亜「ええ。」

 

 

 姉様は微笑みながらラッピングされている箱を解き、そして遂に箱を開けてあのネックレスを目にした。姉様は目を丸くしながら私の方に顔を向ける。

 

 

聖良「凄いネックレスですね。高かったんじゃ…………」

 

 もしかして、気を遣わせてしまったかしら。値段なんて気にしなくていいのに。

 

理亜「姉様の誕生日だもん。気にしないで」

 

聖良「そう………ですか。」

 

 納得してくれた姉様は改めてネックレスに目を戻す。きっと、姉様もこのネックレスの魅力に釘付けに違いない。

 

聖良「本当に綺麗なネックレスですね。これはなんの花なんでしょうか??」

 

 

理亜「これは松雪草っていう花らしいわ」

 

 

聖良「可愛らしい名前ですね。今、付けてみてもいいですか??」

 

理亜「うん!!」

 

 姉様は嬉しそうにネックレスを付ける。あぁ、ネックレスを付ける仕草も美しい。流石は姉様ね。

 

 何も問題もなくネックレスを付け終えた姉様は嬉しそうに微笑みながら私の方に体を向ける。姉様の胸部分には私が贈った松雪草のネックレスが日光に反射して綺麗に輝いていた。

 

 

 

姉様「理亜………本当にありがとうございます。」

 

 

 

 姉様はそう言って、私に抱き着いた。一瞬だけ戸惑ったものの次第に私も嬉しくなって姉様を抱き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ……………。この時間が永遠に続けばいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、いつかあいつと2人で姉様の誕生日を祝いたい……………………な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに今回、贈った松雪草の花言葉は…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『慰め』そして『希望』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姉様があの日を思い出し、挙動不審な行動をしたら私は落ち着くまで姉様を『慰める』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつか、あいつが戻ってくる日が来ると『希望』を抱きながら………………。




今回、明を出さなかった理由はシンプルに姉2人と和解していないからです。和解した程、もしくはifとかも考えたのですがやっぱり和解してから書いた方が良いかな、とこちらで判断し理亜ちゃんメインとして書きました。

明は聖良さんの誕生日はもちろん覚えていますが、プレゼントを贈りたくても贈れない感じで5月4日を過ごしたと思います。

そして、本編では明に対して結構ドライな理亜ちゃんですが、彼女は彼女なりに明のことを心配しています。とは言っても、聖良さん第一で行動していますが。


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[コラボ企画!!]『人殺し』は運命的な出会いを果たす。

コラボ企画です!!!!

コラボして下さる作者さんはなんと現在、ハーメルンで連載しているあの超有名なラブライブ!の二次創作小説である「ラブライブ!〜ヤンデレミーティング〜」を執筆なさっているべーたさんです!!

コラボ企画を快く引き受けて下さって本当にありがとうございます!!感謝感激です!!嬉しすぎて、右の乳首が破裂しました(ごめんなさい。それはさすがに嘘です。けど、それほど嬉しかったんです。)

執筆中も、べーたさんと何回かやり取りしたので登場人物の口調などは特に気にしないと思います。書いてて、とても楽しかったです。

時系列としては、本編最近話での明が沼津駅に着く前のお話となっております。それではどうぞ!!m(_ _)m


ふと、懐かしい夢を見た。

 

 いつの時かは忘れてしまったけど、見た感じ俺がまだ鹿角家にいた頃だ。

 

 まだ幼かった俺の目の前に、1人の男がいて俺に話しかける。誰なのかと顔を伺ってもモザイクのようなものが掛かっており、青系の色をした髪型に赤系の瞳をしているという所しか分からなかった。

 

 その男は、テーブルについて俺の両親が作ったぜんざいを美味しそうに食べ、片手に持っているブラックの缶コーヒーを飲みながら俺に向かってコソッと言葉を呟いた。

 

 『俺さ、将来パイロットになりたいんだ』

 

 『ぱいろっと??』

 

 聞きなれない職業を耳にして幼い俺は首を傾げる。

 

 『飛行機とかを操縦するお仕事さ。俺の父さんが、そのパイロットをやっててな。それに憧れてるんだ。どうだ??かっこいいだろ??』

 

 『うん!!とてもかっこいい!!』

 

 『だろ??お前も何か夢とかあるのか??』

 

 『うん、あるよ!!僕は仮面ライダーになりたい!!』

 

 腰につけている仮面ライダーのベルトを見せながら笑顔で言う俺に対して、男は笑い声をあげる。

 

 『あはははは!!仮面ライダーか!!それはいい夢だな!!』

 

 『うん!!変身してママやパパ、聖良おねーちゃんに理亜おねーちゃんを悪いヤツから救ってあげるんだ!!』

 

 『へぇ……そりゃ頼りになるな。もし何かあったら、俺も救ってくれると助かるよ』

 

 『もちろん!!お兄ちゃんも僕が守ってあげるね!!』

 

 俺の言葉に、男はニカッと微笑みながら俺の頭にそっと手を置いて優しく撫でてくれた。

 

 『ありがとうな』ナデナデ

 

 『うん♪』ニパァ

 

 

 10年前のことだからほとんど覚えてないけど、この人に撫でられる感触だけは気持ち良くて大好きだったなぁ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「んへぁ???」

 

 俺は情けない声を出して目をゴシゴシと擦りながら、上半身を起き上がらせる。

 

 頭がぼーっとしながらも周りを見回して、俺が今どこにいるのかを確認する。

 

 

 ここは……………沼津駅の近くにある喫茶店だ。

 

 ……………そうだ。思い出したぞ。

 

 

 今日は……………俺が姉ちゃん達に会うために函館に向かう日だ。

 

 

 それで、俺が乗る電車の時間までまだ2時間ほどあるとあるというのにも関わらず気持ちが昂ってしまって沼津駅に来たんだ。それで、時間を潰すために適当にこの喫茶店に入って暇すぎて寝ちゃったんだった。うわぁ、何それ。めちゃくちゃ恥ずいんですけど。

 

 

明「それにしても、何だか懐かしい夢を見たな」

 

 

 俺はそう言いながらボリボリと髪の毛を掻き、冷めてしまっているコーヒーをグイッと飲む。とは言っても、あんまり夢の内容も覚えてないんだけどな。

 

 飲んだコーヒーの独特の苦さによって、俺は完全に目を覚ました。やっぱりカフェインは最強だな。

 

 スマホを開いて、現在の時刻を確認する。ふむ、どうやら結構寝ていたそうだ。1時間ほど時間が経っている。

 

 もう1杯、コーヒーを注文して30分ほど時間を潰してからここに出ることにしよう。そしたら、時間もピッタリだろ。

 

 そう決めた俺は店員さんを呼ぶために、声をかけようとした瞬間…………

 

 

??「すみません。」

 

 

明「はい??」

 

 

 帽子を被り、ラフな服装を着て結構ガタイが良い見知らぬサングラスを掛けた男性に声をかけられた。誰なんだ、この人??一体、どうして俺に話しかけたのだろうか。

 

??「相席、いいですか??空いてるのがもうここしか無くて………。」

 

 

 あぁ、なるほど。この人は相席希望者か。確かに周りを見た感じ、店内の状況はモーニングの時間帯であるためか満席に近い状況だった。お客さんも家族やカップルなどが多くて、1人でテーブルについているのも俺しか見当たらない。

 

 まぁ、相席ぐらいだったらいいかな。どうせ、あと30分ぐらいしか居ないんだし。

 

明「どうぞ。」

 

??「ありがとうございます。では失礼して……」

 

 俺がOKを出すと、男性は相席に座る。その同時に店員さんがやって来たので互いに注文をする。

 

 俺はさっきも頼んだブレンドコーヒーをもう一杯注文し、男性はアイスココアを注文していた。そのガタイで、アイスココアって…………。ちょっとだけ、可愛く思えてしまった。

 

店員「お待たせしました」

 

 5分程で、店員さんはブレンドコーヒーとアイスココアを持ってきて、それぞれ俺達の目の前に置く。

 

店員「ごゆっくりどうぞ。」

 

 店員さんはぺこりと頭を下げると、そのまま去って行った。

 

 今度は温かい内に飲みたかったので、フーフーとしながらコーヒーをズズズと飲む。うん、当たり前だけど熱い。けど、美味い。身体が温まるわ。

 

 男性の方をチラッと見ると、提供されたアイスココアに大量の砂糖をぶち込んでいた。それはもう糖尿病に掛かってしまうのではないか、と心配してしまうほどに。

 

 俺の心配する視線に気付いたのか、男性は苦笑いをしながら言葉を呟く。

 

??「驚きましたか??」

 

明「まぁ………多少は。」

 

??「付き合いの長い知り合いの影響でして。こういうのもいいかなー……って最近試してみてるんです。普段は君と同じようにコーヒーを飲んでるんですけどね。」

 

明「そうなんですか。」

 

??「あぁ。それにしても、君は若いのにブラックとは中々やるね。周りの人に『親父くさい』とか言われててmせんか??」

 

明「いや、別に。」

 

??「そ、そうですか……。やはり俺の周りが辛辣なだけだったか。」

 

 なんだよ、その反応は。もしかして、過去に『親父くさい』と言われたことがあるのだろうか。見た感じ、そこまで歳はとってないように見えるけどな。俺の………5か6つぐらい上か??

 

 けど、よくよく考えてみれば俺っていつからブラックを飲むようになったんだっけか。覚えてる限り、施設にいた頃ぐらいからは飲めたかどうかは別として口にしていたし………。うーん、思い出せねぇ。ま、いっか。

 

 その後、俺はスマホを手にしてモン〇トを。男性はパソコンを鞄から出して起動し、仕事をしているのか、カタカタとキーボードを打っていた。

 

 

 『ユメノトビラ〜♪』ピロリン

 

 

??「……ああ、マナーにしてなかった。失礼します。」

 

 パソコンの隣に置いてあった男性のスマホから何やら聞き覚えのあるメロディの着信音が鳴り響く。男性は俺に一言、言葉を出してからスマホを手にする。仕事関係の連絡だろうか。特に男性は何も表情を変えずにすぐにスマホをテーブルの上に置いた。

 

 

 『ユメノトビラ〜♪』ピロリン

 

 

??「……失礼、します。」

 

 置いてから1分ぐらい経った辺りで再び男性のスマホが鳴り響く。何か伝え忘れてしまったことがあったのだろうか。少し眉間を寄せた男性はもう一度スマホを手に取ったあと、すぐにテーブルを置いた。

 

 

 『ユメノトビラ〜♪』ピロリン

 

 

??「し、失礼……………………」ダラダラ

 

 

 まただ。今度は、10秒も経たずにスマホが鳴り響く。表情が青くなってしまった男性は俺に何も言わず、すぐにスマホを手にしてポチポチと操作する。そして、スマホをテーブルに置こうとした瞬間…………

 

 

 『ユメノトビラ〜♪』ピロリン

 

 

??「ーーーーーーーッッ!?」ビクッ

 

 テーブルに置いた瞬間にスマホが鳴り響いた。もう、何がなんなのか全く分からん。ただ唯一分かるのは夢の扉??が鳴る度に男性の表情が悪くなっていってることだ。男性はスマホを手に取ってダダダと神業と言わんばかりの早さでスマホを操作するが

 

 

 『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノトビラ〜♪』ピロリン『ユメノ……………』

 

 

 

 

明・男性「ひぃ!?」

 

 

 突然、男性のスマホがサイコパス化してしまったので俺と男性は同じタイミングで声を漏らした。

 

 いや、流石に怖ぇよ!!なんで夢の扉がこんなに集中砲火すんだよ!!夢の扉じゃなくて、悪夢の扉じゃねぇか!!もう恐怖でしかねぇよ!!なんなの!?この人のスマホには貞子でも住んでるの!?笑えねぇよ!!

 

 俺と同じく恐怖の声を上げた男性は急いでスマホの電源を切った。そうか、電源を切っちまえばもう鳴ることはない。良かった〜。

 

 俺と男性は安堵の息を吐く。

 

 

 『ユメノトビラ〜』ピロリン

 

 

明・男性「「ぎゃあ!!!」」

 

 

 電源を切ったスマホからではなく、今度は男性が仕事用に使っていたパソコンから着信音が鳴り響いた。

 

 この人、本当に大丈夫か??何かに呪われてるんじゃないだろうかと心配になる。こうなったら今すぐに、自称堕天使ヨハネこと善子呼ぶか!?あいつならノリでなんとかしてくれるだろ。多分だけど。

 

 ちなみに現在、男性は焦りながらもパソコンの電源も切って鞄の中にぶち込んでいた。バキッとあまりおよろしくない音が聞こえた気がするが、聞かなかったことにしておこう。これで、ようやく平和が訪れたって訳だ。

 

 

 ったく………。どうして、こんな大切な日に限って恐怖体験を味わらなきゃいけないんだよ。夢とかに出ないよな??

 

 

 

??「ああ……驚かせて本当にすまない。たまにあるんですよ、こういうことも。」

 

 

 男性は俺に向かって頭を下げる。まぁ、悪気があった訳でもないしな。

 

 

明「大丈夫です。それにしても、色々と大変っすね」

 

 

??「大人になるとどうしてもね。特に人間関係とか……。いや、これは昔からだから違うか………」

 

 

 

明「人間関係じゃなくて、女性関係の間違いでは??」

 

 

 反応を伺いたくて面白半分でつい、こんな意地悪な冗談を言ってしまった。この人、真面目そうに見えるから絶対に無いとは思うけどな。HAHAHA。

 

??「…………。」ダラダラ

 

 あ、あれ??なんか………急にこの人黙っちゃったんですけど。汗が滝のように出てるんですけど。まさか………図星なんか??

 

明「マジですか…………??」

 

??「……いや! 女性関係とは言っても、そんな大したことではないんですよ?? ただ10人くらい、色々と複雑な関係だけだから。複雑なだけですから、色々!!」

 

明「はぁ!?」

 

??「見ず知らずの人にする話ではなかったですね……。どうもキミとは他人の気がしなくて……。」

 

 この人、今なんて言った!?10人!?10人の女性と関係を持っている!?いや、どんなハーレム!?ToLO〇Eるの結〇リトくんもビックリだよ!!

 

 しかもこの焦りよう。絶対に素で言ってはいけないこと言っちゃっただろ。

 

??「そんなに疑り深い目で見ないでくれ。主に向こうからのアタックだし、親御さんたちも公認してるレースみたいになってきてるんだよ。」

 

 こ、公認なんだ。10股もしてる男を認めるとかそれもそれで女性側も懐が大きいな。一般常識なら、刺されてもおかしくはない状況だと思うが。

 

 でも、ちょっとこの人とこれ以上居るのは危険だな。少し早めだけどこの場から退散するか。

 

 そう思った俺は伝票を手に取って席から立とうとした瞬間、つい先程まで焦りに焦っていた男性が落ち着いた言葉で俺に言葉を投げかけた。

 

 

 

??「それに……『他人の気がしない』とは言ったが、女性関係で悩みがあるのは君もじゃないか??」

 

 

 

 

明「…………は??」

 

 俺はこの男性の唐突の言葉に目を丸くする。それを見た男性は俺に指をさして「ビンゴ」と呟いた。

 

 どうして、この人がそれを知っている??少なくとも、それに関する言葉は俺の方からは一言たりとも発言してはいないはずだが。サングラスを掛けているので、この人が抱いている感情も読み取ることが出来なかった。

 

 

??「どうして、それを??みたいな顔してるな。答えは簡単だ。俺も当時、女性関係で悩んでいる時に君と同じような顔をしていたからさ。鏡をみてるみたいでよくわかる。」

 

 

 男性はその頃を懐かしんでいるかのように言葉を出した。

 

 

??「良かったらさ、話してくれよ。ここは大人として俺が持つからさ。あ、敬語はそろそろ外そう。あまり堅苦しくても相談しづらいだろう。」

 

 

 男性はそう言ってビュッと、俺から伝票を奪い取った。俺は溜息を吐きながら、席に戻る。俺は溜息を吐きながら席に戻る。

 

 

 どうして見知らぬ人物に俺の出来事について話さなくてはならないのだろう、と思いながらもまだ時間もあるし特にやることも無い。時間を潰すにはちょうどいいか。

 

明「………………コーヒーもう一杯頼んでいいっすか??」

 

??「ハハ、こやつめ。好きなだけ頼むといい。なんなら、チョコレートワッフルも付けてやろうか??」

 

明「………どうも。」

 

 

 そして、店員さんに追加で注文した所で俺は男性に今までの出来事をだいたいで口にした。『人殺し』や『Aqours』は流石に言わなかったけどな。

 

 

??「………そうか。色々と…………大変だったんだな」

 

 

 俺の出来事を聞いた男性はサングラスのせいで正確にどんな表情をしているのかは分からないが、悲しそうな表情を浮かべているような気がした。内容が内容だからな。

 

明「まぁ………。でも、恩人や部活の仲間のおかげでこうして家族に立ち向かえるようにはなりましたからね。あまり、気にしてないでください」

 

 俺はそう言って、提供されたチョコレートワッフルを口の中に入れる。うむ、美味いな。

 

 そんな俺を横目に男は人差し指をピンと立てて俺に話しかける。

 

 

??「1つだけ君に質問してもいいか?」

 

 

明「どうぞ。」

 

 

 

??「君は……………彼女達の目の前から逃げたことに後悔はしているか??」

 

 

 

 

明「ッッ!?後悔………ですか。」

 

 俺は、男性が発した質問の言葉の圧の重さに少しだけ動揺してしまった。

 

 どうして、この人がこんな質問をしたのかは分からない。けど、これは真面目に答えないといけないような感じがした。

 

 だからこそ、俺は男性の顔をしっかりと見ながら質問の答えを口に出した。

 

 

 

明「後悔はしてないといえば嘘になります。けど、俺はあの時逃げてしまったからこそ、色んな事に気付いて………教えて貰って…………受け入れて貰えて………今の自分がいると思ってます。」

 

 

 俺の嘘ひとつない本音に男は口元を緩ませた。

 

??「そうか。変なこと聞いて悪かったな」

 

 

明「そうですよ。まるで、自分もそんな経験をしたことがあるような言い方ですね。」

 

 

 俺は男性にそう言いながら最後の一口であるワッフルを口の中に入れたあと、コーヒーを飲んで流し込んだ。

 

 

??「あぁ。俺も逃げようとしたことがあるぞ」

 

 

明「え……………」

 

 男性の言葉に衝撃を受けて、危うくコーヒーを零しそうになってしまった。

 

 

??「当時、一緒にいた仲間たちがどんどんと自分たちの夢に近づいていく度に、俺はどうしてこうなんだろう。俺も彼女たちに追いつきたいって思って……。嫉妬の気持ちを抱いていて、でもその後ろめたさに耐えきれなくなった俺は………彼女達の前から去ろうとした。自分では逃げだとは思ってなかったけど、あれは確かに逃げだったんだろう。」

 

 

 当時を懐かしみたがら語る男性は追加で注文していたコーヒーを口にした後に言葉を続けた。

 

 

??「けど、俺はそれ自体に後悔はしていない。あの頃にそうしようとしたからこそ、彼女達の俺に対する気持ちに気付くことが出来たし、もっと絆が深まった。みんなの大切な想いも受け取って……長年、叶えたかった夢も叶えられた。みんなと同じように。」

 

 

 男性は少しだけ寂しそうに、そして自慢げに語る。その彼女たちが、関係を持っている女性と同一人物なのかどうか気になるところではあるがとても興味深い話であった。

 

 

 『♪想いよひとつになれ〜♪』ピロリロリン

 

 

 男性のではなく、今度は俺のスマホが鳴り響いた。これは事前に設定しておいたアラーム音だ。

 

??「……お互い、そろそろ時間みたいだな。」

 

明「そうですね」

 

 俺と男性は席から立って、レジへと向かう。

 

 

店員「ありがとうございました〜」

 

 

 男性が会計を済ましたあと、店を出た。

 

 

明「ご馳走してもらってありがとうございました。」

 

??「こっちこそ。相席を座らせてもらった故におっさんの話し相手になってもらったんだ。それぐらいしないとな」

 

 男性はニカッと笑って答える。

 

明「あの………1ついいですか??」

 

??「なんだ??」

 

 

 俺は男性の目の前まで駆け寄って、言葉を出した。

 

 

明「また、何かの運命で巡り会ったら……お兄さんが女性達の目の前から逃げようとしたっていう話、詳しく聞いてもいいですか??」

 

 

 

 

 唐突の俺の言葉に、男性は動揺してたのか言葉を出さなかった。だが、すぐに微笑んだ後、小声で言葉を出した。

 

 

??「あぁ。勿論。っても、すぐにまた会えると思うけどな。」ボソッ

 

 

明「え………。」

 

 

 勿論のあとに男性がなんて言ったか聞き取ることが出来なかった。その後、男性はサングラスと帽子を外し始める。すると、俺や姉達と同じような青系の髪型に赤系の瞳が特徴的な顔が俺の視界に映った。

 

 

 あれ…………この人、どこかで………。

 

 

 すぐにサングラスと帽子を装着した男性は今度は俺の頭の上に手を置いて、優しく撫で始めた。

 

 

明「なっ!?」

 

 

??「大丈夫。お前なら、きっとあいつらを救える。」ナデナデ

 

 

明「ーーーーッッッ!!??」

 

 

 男性の言葉に、俺は返す言葉が見当たらなかった。それでもなお、男性は俺の頭を撫で続ける。

 

 

 この感触は…………

 

 

??「またな。」

 

 

 撫でるのを止めた男性は俺にそう言って、この場から去って行った。俺は、男性の姿が見えなくなるまで眺めていた。

 

 

明「俺も………行くか。」

 

 

 男性が居なくなったのを確認した俺は沼津駅へと向かった。

 

明「ん??」

 

 向かっている途中に掲示板に貼られている1枚の紙が目に入り近くまで寄ると俺は目を疑った。

 

 

 

 『〇月✕日。航空自衛官による演説会in内浦』

 

 

 ○月✕日は、明日だが注目する場所はそこじゃない。

 

 

 その紙に貼られている写真には多くの航空自衛官が写っていて、その中に………

 

 

明「あの人………航空自衛官だったんだ」

 

 

 そう……………。ついさっきまで一緒にいた男性が写っていた。

 

 

 先程、着ていたラフな服装とは大違いで、紺色の制服の制服を着て周りの人達と一緒にビシッと敬礼していた。

 

 

 航空自衛官ってことは、要はパイロットのことだよな………。

 

 

 この瞬間、俺はさっき見た夢の内容を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 『俺さ、将来パイロットになりたいんだ』

 

 

 

 『うん!!変身してママやパパ、聖良おねーちゃんに理亜おねーちゃんを悪いヤツから救ってあげるんだ!!』

 

 

 

 『ありがとうな』ナデナデ

 

 

 

 

 『うん♪』ニパァ

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ーーーーーーーッッッ!!??」

 

 

 

 

 この数秒の間に色々と思い出した俺はふと、とある人物の名前を声を震わせながら口に出した。

 

 

 

 

 

 

明「修兄ぃ………???」

 

 

 

 

 

 

 言葉を発した後に、俺は苦笑いをしながら首を左右に振る。

 

 

 

 いや……….、そんな筈はない。普通に考えてありえない。

 

 

 

 修兄ぃは俺にとって従兄弟にあたる存在ではあるが、会ったことは覚えていても数回ぐらいしかないし、もう10年前のことだ。

 

 

 数年前に風の噂でなんか大怪我を負ったみたいな話を耳にしたことがあるけど、もし、それが本当ならパイロットなんてなれないだろう。

 

 

 

 

 

 そもそもの話、彼も俺みたいな『人殺し』のことなんて彼が覚えてるはずかない。

 

 

 

 

 

 

 そう結論づけた俺は掲示板から目を離して、そのまま沼津駅へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「サングラス貸してくれてありがとうな、助かったよ。公園前に俺を探してるあの娘に見つかりたくなかったからな。『長いこと連絡してなかったのに突然帰ってくるなんて勘当デース!』とか言われなくて済んだ。」

 

女性「別にいいわよ。ま、私としては他の女の子と縁が切れてくれた方が助かるけど、修也の頼みだし。あぁ………、貴方の温もりを感じるわ。これは、ジップロックに入れて永遠保存ね。」ジュルリ

 

??「それ高いヤツだろ!? いつでもそんなもの感じさせてやるから普段から使ってやれよ。」

 

女性「それにしても……なんだか嬉しそうな表情をしているわね。何か良いことでもあったの??ハッ………、また違う女と!?ありえない話じゃないわね……。」

 

 

修也「違う違う違う!!!これから人生の大海原に漕ぎ出そうって言う大切な家族を見届けたってだけだ。……恥ずかしいことに、最初見たときはあんまり成長してたから気づかなかったけどな。」

 

 

女性「え………、家族!?今、家族って言ったわよね!?ついに私と結婚する決心がついたのね!!嬉しいわ!!早速、市役所の方に……………」

 

 

修也「いや、ツバサ!? なんでこんなところでその書類もってるんだよ!? しかも俺の名前書いてあるし!!押印まで!!わ、渡せ~!」




改めて、べーたさん。コラボ企画を引き受けて下さって本当にありがとうございました!!今度はどこかでお会いしてゆっくりとお話出来たらな、と思います。

あと、べーたさんの作品にもうちの明が登場しているので良かったら読んでください!!とても、面白いし感動します!!


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[コラボ]『人殺し』は独白をする。

こちらが今回、アドミラル△さんが執筆してくださった『人殺し』の3次創作です。

当たり前の話ですが、七宮とは違うスタイルで書かれている方なので一味違う雰囲気で楽しめると思います。

それでは、アドミラル△さんが描く『人殺し』をどうぞ!!


道路を通る車の音が鮮明に聞こえるこんな夜中に起きるのは何度目だろうか。息が荒くなって過呼吸になりそうになるのを必死にこらえ、これが現実であることを頭で理解する。壁の時計を見ると既に丑三つ時を迎え、ただでさえ閑散としている街は本当に静まりかえっていた。荒れた呼吸を整えながら左手を胸に当て拍動が正常であるかを確認する

 

 

その一連の流れによって今見ていた映像が夢であると安堵して胸を撫で下ろすのと同時に、あの時の映像がフラッシュバックして湧き上がる気持ち悪さが安堵とは裏腹に胃の中からせり上がってくる。寝ていたベッドは寝汗によって俺の寝姿を形づくり、肌にべっとりと張り付いた汗が怨念のようにも感じられる。それを振り払うように拭いさり新しいシャツをタンスから1枚取りだした。そのひんやりとした感触に少しの安心感を覚えたのだった

 

 

「『人殺し』なのだからもう私の前に現れないで…本当に関わらないで…」

 

忘れたくても忘れられず今もクリアに映し出される…聖良姉ちゃんの引きつった頬が身体を抱き寄せる腕が…怯えた目があの時の俺という存在と相対していたのだ。人の記憶というのが物事をあやふやに記憶する中で、唯一鮮明に記憶するといわれているのは感情と強く結びついた時だと言われている。それなら俺のこの絶望で結びついた記憶が鮮明じゃなくなるのに一体何年かかるのだろう。だって見えないようにした所でこうして思い起こされるのだから…

 

 

 

白い天井のシミを数えることにも飽き、目を閉じて寝ようとしてもずっとその光景に追いかけられている。慌てふためく銀行員がバッグに急いでお金を積み込むところや銃を向けられた多くの人の畏怖の顔。そして恐怖に歪んだママの顔。けたたましいサイレンの音と警察の人のメガホンの声、そしてその中で覆面の男が銃口を辺りに振り回す恐怖の光景が今も脳裏に焼き付いている。黒く渦巻いた感情と結びついた記憶は、一夜漬けの暗記のように簡単に忘れさられるものでもなく、それはまるで赤錆みたいに俺の脳にこびりついていた

 

 

言い聞かせる。言い聞かせて理解して飲み込む。きっとそれしかなかったのだと…そう俺はそれでも“家族”を守りたくて勇気を振り絞って相手に体当たりをしたのだと。ただそうするしか無かったから小さいながらに頑張った。そうして犯人から偶然奪ったそれを初めて握った時は銃のことをただ強い武器だとしか認識してなかったけど、今思えばたった3センチ程度の鉄の塊だけで人は殺せてしまう。例えそれが5歳の俺だって例外ではない。引き金を引けば目の前の理不尽だって倒せてしまう。そう考えてあの時の僕は人差し指をぐっと引いたのだった

 

バンッ

 

と鼓膜が破れそうになるほどの爆音が鳴り響いた。その驚くような反動で銃は手放してしまったけど標準なんて分からずただ相手に向かって撃ったその弾丸は良いか悪いか相手の相手の頭を的確に穿っていた。まさしく『勧善懲悪』。僕という善によって銀行強盗という悪は倒されこの美談は幕を閉じるのだと。それが例えば小説や芝居であればの話だけれど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実はそうでなく

 

 

理不尽って言葉はきっと俺のためにあるのだと思った

 

 

 

守りたかった。ただそれだけのために俺は犯人に突撃して震える手で引き金を引いたのに…待っていたのは畏怖と拒絶の視線だった。

 

『人殺し』『人殺し』

 

目の前がぐちゃぐちゃになって両脇に警察官が座るという狭苦しさやあの時かけられた手錠の重みは誰だって理解してくれない。それなのに強盗から助けてくれなかった警察が何故か僕を逮捕しているということに、耐え難い理不尽さを感じたのを覚えている。恐怖に脅えていた僕たちのことなんて知らずに外から声をかけていただけなのに随分偉そうなんだなとその時は思った。腰についているその黒いものはなんのためにあるんだと。守れないならそんなもの付けないでくれと思ったのだ。そんな憎悪にまみれた黒い感情が己の中でずっとずっと渦巻いていた。

 

 

誰もあの凄惨なさまを見た時の俺の気持ちなんて分からないくせに…誰も粘りのある血液が額の隙間からだらだらと流れ血溜まりをつくっている光景なんて見たことないくせに!どうして…否定の言葉ばかりを浴びせられないといけないんだ。フィクションなら少しばかりは称えられてもいいはずなのに…なんて現実はこう非情なんだろう。…それから俺は記憶に蓋をしているはずなのにそれらに関係するものをみてしまうと吐き気を催すような身体になってしまった。気持ち悪いんだ…何もかも

 

 

そうして今でも目をつぶれば聖良姉ちゃんからの侮蔑の目が…憎しみの籠ったその『人殺し』という言葉が反芻されるようにリフレインする。長い時があったから推測はいくらでもできた。俺をシンプルに人殺しと見定めたのか、それとも関係を断ちたくて拒絶したのか、恐怖からうっかりそれが漏れたのか。まあ…でもこの際それはなんだっていいんだ。俺は実の姉であり家族だった人から『人殺し』と言われ憎まれている。それが分かればもうどうだっていい。

 

 

 

今ではどこにあるか分からないけど、警察に拘束されてた時に書き殴ったノートの中にはその時の感情を詰め込んで詰め込んで書いたような気がする。ごめんなさい、あいたい、ごめんなさい、あいたい、ごめんなさい、まもれなくてごめんなさいほんとうにごめんなさい、あいたい…なんて子供ながらに純粋で今の俺では目をおおってしまうものだ

 

 

当時からだいぶ経って姉ちゃん達に会いたいなんて感情は絶望が塗り替えた。家族に対する愛情はそれ以上の憎悪が塗り潰した。そして何も無い俺が残った。関係を絶つ訳でもなく構築するわけでもない。ただ“無”関係であることだけを求め日々を過ごす。何も期待しないし何も絶望したりしない。だってもう既に家族からの拒絶という最大の絶望を知ってしまったのだから。例えるなら普段100kgでウエイトトレーニングをしている人間が5kgでやったらどうなるのかという話だ。端的に言えば何も感じない。感情の弦が音を立てないこういう人のことを植物のような人間というらしいけど、そう言われてしまえばそうだ。思えば俺はあの時からずっと人間的には死んでいるのだろう。“心は身体のガソリン‘’だとするならば俺はきっと永遠にガス欠状態だ。がんじがらめで過去に縛られて動かないし動けない。なんせ枯れ果てて心が輝いても潤ってもいないんだから

 

 

 

あぁどうして2人の姉があんなにも笑って、楽しんで踊っているのに…どうして俺は背中から刺すような痛みを感じながら幻覚に追い回されないといけないんだ?侮蔑、恐怖、憎悪、拒絶、虚無、非情それら全てを内包したような目で俺を見下したってのにステージではにこやかってか?笑わせないでくれよ。守ったのに拒絶した心無い姉妹が…

 

 

 

 

ほら笑ってよ俺という存在を。楽しんでよ僕の人生以上に。もっと踊ってよ俺はもう動けないから。僕という人間的に死んだ屍の上に姉ちゃん2人は立ってるんだからさ。だって…『人殺し』に怯えるような弱い心じゃダメなんでしょ?

 

 

 

…なんて少し俺らしくなかったかな。ここ静岡と函館じゃ偶然だって起こりえない。買い物に行ったスーパーで同級生とばったりなんて感覚であの姉妹と会うなんて到底ありえないのだ。人の噂も七十五日、血の繋がった家族の記憶も10年だって持たない。名前だって変わったし時が経てば全てが解決する。東京では偶然見てしまったけどそれでも俺があの姉妹を忘れて、あの姉妹が俺を忘れれば全てが丸く収まる。そんな未来はすぐそこにあるだろう。俺も甘えを捨てる選択する時がくる。この想いを切り捨てなければいけない時が…

 




アドミラル△さんが描くこのバットエンド風な書き方がたまらなく大好きです。

アドミラル△さん、今回『人殺し』の3次創作を執筆してくださって本当にありがとうございました!!m(_ _)m

アドミラル△さんが執筆されている『ラブライブ!サンシャイン!! 黒澤家長男の日常』をまだ呼んでないよ。という方は是非呼んでみてください。オススメですよ(* • ω • )b


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〔コラボ〕『人殺し』は襲われる

アドミラル△さんが執筆されている『ラブライブ!サンシャイン!! 黒澤家長男の日常』とのクロスオーバー作品です。

知らないうちに、七宮が尊敬する作家の1人であるアドミラル△さんが『人殺し』の3次創作を執筆してくださっててたまらず私も執筆しました。執筆してて、とても楽しかったです。

今回は、お互いに執筆した2作品をお互いのアカウントで投稿されるので2度楽しめれると思います。

アドミラル△さん、本当にありがとうございました。


 突然なのだが、今俺が心の底から思っていることをこの作品を読んでいる読者に伝えようと思う。え?そんなのどうでもいいって??おいおい、そんな事言うなよ。泣くぞ??

 

 

 俺、奥山 明は今、この場からめちゃくちゃ帰りたいと思っている。本当に今この状況においてはこの一言に限る。

 

 

ルビィ「うゆ………、明くん。ごめんね。」

 

 

 俺の隣で申しわけなさそうな表情をしているルビィはAqoursのメンバーの中で1番身長が低いのに、体全体を収縮してしまって更に小さく見える。

 

 今、俺達が向かっているのはルビィの家……………すなわち黒澤家だ。どうして、彼女の家に向かっているのかというと

 

ルビィ「ルビィがもっと計画的に宿題をやっていればこうならなかったのに………。」

 

 そう。ルビィは明日から学校があるというのにも関わらず、宿題を終わらせていないらしい。そして、その中にルビィの苦手な教科があるらしく宿題を消化するついでに俺から勉強を教わりたいということだ。

 

 ちなみちKKDことダイヤちゃんは今日、かなっちとマリーの3人で遊びに行くんだとか。ス〇バの新作を飲みに行くらしい。今どきのJKって感じだな。いいと思います。

 

明「気にすんな。あとから花丸と善子も来るんだ。すぐに終わるよ」

 

ルビィ「でも、明くんはあまりルビィの家に………来たくないんだよね。」

 

明「…………否定はしない。」

 

 いや、別にルビィやダイヤちゃんのことが嫌だから黒澤家に行きたくないという訳では無い。むしろ、凄く行きたいよ??行きたいけど…………

 

明「あの人がいるんだよなぁ………」

 

 俺は頭を掻きながらボソッと呟く。あの人とは一体誰のことなのか。きっと、すぐに分かるから詳細はここで言うのはやめておこう。

 

 そして、ルビィと軽く雑談をしながら歩いていると黒澤家に到着。相変わらず立派な家だな。

 

ルビィ「多分、この時間はシャワー浴びてるから大丈夫だとは思うけど………」

 

 ルビィはそう言って、玄関の扉を開けた瞬間

 

 

??「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

ルビィ「ピギイ!?」

 

 玄関の中から、1人の男性が手に木刀を持ち殺意をバリバリ放出させながら俺に向かって来る。

 

 

明「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」

 

 

 俺は叫びながらもその男性の本気100%の一振を白刃取りでなんとか受け止める。うわ、なんか上手くいったわ。てか、めっちゃ手がビリビリして痛てぇ。

 

ルビィ「明くん、凄い!!」

 

??「貴様ぁぁぉぁぁぁ!!!」

 

明「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 俺は掴んだ木刀を男性ごと放り投げた。男性は慣れていると言わんばかりに綺麗に受身を取って、素早く立ち上がる。

 

 俺は溜息を吐きながらその男性に声をかける。

 

明「なぁ、銀先輩。いい加減、急に攻撃仕掛けてくるのやめてくれませんか??」

 

銀「うるせぇ!!ルビィに手を出すお邪魔虫は俺が排除してやる!!」

 

 そう言って、再び木刀を構える男性の名前は黒澤 銀先輩。ルビィの兄で、ダイヤちゃんの弟だ。まぁ、見てわかる通り重症レベルのシスコンである。

 

 彼は俺と同じ武道を嗜んでおり、ルビィ曰く剣道、空手、柔道は中学の時に全国大会に出場した経験があり、その内剣道は2回全国大会を優勝しているらしい。

 

 そして、俺と同じくAqoursのマネージャーもやっている。俺が加入する前から銀先輩はマネージャーとしていた。幼馴染である千歌や船長にお願いされたらしい。最初は断ってたらしいが、なんか相撲をとってそれで負けたらしい。女に負けるとか………プークスクス

 

銀「お前、絶対俺の事を馬鹿にしてるだろ。」

 

明「そんな訳ないじゃないですか。常に銀先輩のことを尊敬してますよ(棒)」

 

銀「やっぱり殺す」ムカ

 

ルビィ「もぅ、お兄ちゃん!!これ以上、明くんを困らせるならお兄ちゃんとは口聞かない!!」(-ω-´ )ぷい

 

銀「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!それだけは勘弁をぉぉぉぉ!」

 

 皆の者よ。これが黒澤 銀という男である。つい数秒前まで殺気だだ漏れ青年だったのに、愛する妹の冷たい目線からのキツい一言でスライディング土下座をぶちかましていた。

 

ルビィ「ふんだ!!明くん、早くルビィの部屋に行こ」プンスカ

 

明「お、おう。てか、銀先輩はいいのか??スライディング土下座の影響で、顔が地面に埋まってっけど」

 

ルビィ「お兄ちゃんなんて知らない!!セミさんと一緒に地面の中に7年ぐらい生活すればいいんだ!!」

 

 この子、実の兄になんて恐ろしいことを言うんだ。

 

銀「奥山ぁぁ!!貴様、ルビィの部屋に行って何をする気だぁ!!まさか……、不純な行為を」

 

 するわけねぇだろ。俺には花丸という愛しい想い人がいるんじゃい。想い人の親友に手を出すとかそんな恐ろしいこと出来るか!!はっ倒すぞ。

 

ルビィ「黙ルビィ」バキッ

 

銀「ピギイ!?」ブクフク

 

明「ひぃ!!」

 

 そろそろ1発かましてやろうかな、と思っていたら真っ先にルビィが飛び出して実の兄の股間を思いっきり踏みつける。恐らく、先程の銀先輩の発言が原因だろう。それによって、銀先輩は白目剥いて口から泡を吹き出して気絶した。

 

 やられてない俺も無意識に股間に手を抑えてしまう。これに関しては男の象徴を持つものならば誰しもが共感できることだろう。女の子には分からないやつよ。

 

ルビィ「さ、明くん。行こっか」

 

明「りょ、了解です。姐さん」

 

 普段は人見知りで、か弱い女の子のはずなのに兄に関すると物凄く頼もしくなる。つい、彼女のことを姐さんと呼んでしまった。

 

 

 こうして、俺はルビィの部屋に行って勉強を教えるのだった。

 

 

 

 ちなみに、彼女の部屋に向かう途中に銀先輩の部屋らしきものがチラッと見えたのだが、なんかとても赤かった。どうして赤いのかはまぁ………察してくれると助かるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「この問題はな、最初見たら難しいと思うかもしれないけどここに代入するとな」

 

ルビィ「うゆうゆ」

 

明「あーら、不思議。あんなに難しいと思われてた問題が代入しただけで簡単な式になっちゃいました。」

 

ルビィ「わぁー、凄い!!本当だ!!」パチパチ

 

 ルビィは嬉しそうに手を叩く。いや、これ普通に授業で習った内容だからね??平山先生泣いちゃうよ??

 

ルビィ「よーし、次の問題はルビィだけでやってみりゅ」

 

明「おー、頑張れ〜。」

 

 ルビィが1人で問題を解いている間、俺は分厚い参考書を取り出して個人的な勉強へと移る。

 

 30分ぐらいやったところで俺は尿意を感じたため、ルビィに許可を取って御手洗場へと向かう。

 

 それにしても、黒澤家って本当にでかいなぁ。何回か訪れたことあるけど、未だに迷いそうになる

 

 

 ーーービュン

 

 

 ん??

 

 

 ーーービュン

 

 

 なんだ、この音は。

 

 庭の方から何かを素振りする音が聞こえてくる。気になってそちらの方に足を運ぶと、先程まで気絶していた銀先輩が竹刀を素振りしていた。自主練だろうか。

 

 

ーーービュン

 

 

 ほぉ………、普段はシスコンで気持ち悪い銀先輩だが自主練している姿はまるで別人だった。竹刀の一振り一振りに一切無駄がない。流石は全国大会の優勝記録を持つだけはある。普通にかっこいいな。

 

銀「何見てんだよ、変態野郎。」

 

 視線に気がついたのか、銀先輩は俺の方に振り向いた瞬間、とても嫌そうな表情を浮かべた。あと、変態なのはアンタだ。

 

明「いや、御手洗行こうとしたら素振りしてる銀先輩を見つけたんですよ。それにしても、やっぱり様になってますね。ルビィが教えてくれた通りかっこいいっすよ」

 

 普段は銀先輩のことを避けているルビィだが、彼女は彼女で何気に銀先輩のことが好きである。お兄ちゃんはこうだったとか、ルビィの為に〜〜してくれた。とかどうでもいいことを嬉しそうに口に出している。ルビィも何気にシスコンでブラコンなのかもしれない。

 

銀「え!?ルビィがそんなことを!?照れるなぁ〜」

 

 ハハ、銀先輩とても嬉しそうだ。そりゃあ、大好きな妹にカッコイイなんて言われたら嬉しいに決まってる。

 

銀「なぁ、奥山」

 

明「はい??」

 

銀「俺と少し………やらないか??」

 

明「ごめんなさい。俺、そんな趣味ないです。」

 

銀「違ぇよ。俺もそんな趣味はねぇわ」

 

 銀先輩はツッコミを入れながらも俺に竹刀を放り投げる。マジか……………。

 

銀「メインは空手らしいが、剣道もやれるだろ??」

 

明「言うても、少しかじった程度ですよ??」

 

銀「基礎できてるなら充分だ。ささ、来い」

 

 銀先輩は竹刀を構える。おいおい、マジか。この人。俺、小便しに来ただけなんだけど……………。何で日本で注目されている人と剣道しなくちゃいけないんだよ。

 

 まぁ、1戦ぐらいなら付き合ってあげるか。瞬殺だと思うけど。

 

 俺は竹刀を手に取り、基本的な剣道の構えを取る。

 

銀「よし。構えたな。それじゃあ………始め!!」ダッ

 

明「うおっ!?」バチッ

 

 始めって言った瞬間、銀先輩が俺に向かって竹刀を振りおろす。突然の事で、思考が一瞬だけ停止した俺だが身体が勝手に反応し先輩の一振を竹刀で受け止める。

 

銀「流石だな」

 

明「それは……どーも!!」

 

銀「ぐはっ!」

 

 俺は先輩の腹に目がけて蹴りを入れて、先輩の力が緩まったのを確認して一旦距離を取る。剣道のルールでは反則かもしれんけど、気にしたら負けだ。

 

明「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 今度は俺から攻撃を仕掛ける。ジグザグしながら銀先輩の方まで近づき、胴に目がけて竹刀を振る。

 

銀「ふん!!」

 

 復活した銀先輩は俺の攻撃を容易く受け止める。だが、俺は攻撃をやめない。ひたすら竹刀を振りまくる。

 

 バチン、バチンと竹刀と竹刀が激しく接触する音が何度も何度も響き渡る。

 

 ちっ………、やっぱそう簡単には行かないか。だったら…………

 

 

明「全集中 水の呼吸 壱の型 」スゥ

 

 

銀「なんで呼吸法!?現実で出来るわけねぇだろ!!」

 

 ですよねー。いやぁ、最近鬼滅の刃にハマってるからついやってしまったぜ。読んでない人は是非読んでみてくれ。漫画もアニメも最高だから。

 

明「てか、先輩も読んでるんですね」

 

銀「家が家だからこっそとりと…………な!!」

 

明「うおっ!?」

 

 あ、あっぶねぇー。今のは正直いってヤバかった。

 

銀「はぁ!!」

 

明「ぐっ!」

 

 銀先輩の攻撃の重みが先程のより強くなっている。なるほど、今までは遊びで今からは本気で来るらしい。

 

銀「オラオラオラァ!!どうしたぁ!?」

 

明「ぐっ………、アンタ普段はそんなキャラじゃねぇだろ!!」

 

銀「コラボだから気合い入ってんだよ!」

 

明「バリバリ、メタ発言してんじゃねぇか!!やめろ!!」

 

 俺はそう言って、銀先輩の一撃を竹刀で弾き彼の胸元まで素早く接近する。

 

明「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺は雄叫びをあげながらそのまま彼の腹に目がけて竹刀を振るう。このまま当てれば俺の勝ちだと思われていたが

 

銀「あっぶね!!」

 

 焦った銀先輩は上半身を後ろの方に沿い、ブリッジのような形をとって俺の攻撃を紙一重で躱した。何、その躱し方。気持ち悪っ

 

 空ぶってしまった俺はすぐに構い直して振り向くがその数秒の余裕を見逃すほど目の前にいる男は馬鹿じゃない。

 

 振り向くと、俺の視界の目の前には竹刀の先端があった。

 

明「………降参です」

 

 俺は苦笑いしながらそう言って、竹刀を手から離して両手を上げる。

 

銀「よし。俺の勝ちだな。という訳ですぐに俺の家から出ていきな。あと、二度とルビィに話しかけるな。」

 

明「何で!?そんな約束してなかったですよね!?」

 

 俺のツッコミに銀先輩は「冗談だよ」とケラケラ笑いながら言葉を出す。こいつスキンヘッドにしてやろうか。

 

明「そもそも、どうして俺と?」

 

銀「ルビィと普段接してるお前をぶちのめしたかっ…………ゲフンゲフン。武道を嗜んでいるお前と1度は戦ってみたいと思ってたんだ。」

 

 

 おい、会話の前半に本音が出かけてたぞ。てか、ほとんど出てたぞ。むせるタイミングが少々遅かったぞ。絶対にわざとだな。

 

 

銀「というのは9割で残りの1割が最近のお前の態度に腹が立ったからだ。」

 

明「俺の態度??」

 

 それは…………どいうことだ??全く分からない

 

 

 

銀「お前、聖良達に会うことに関してビビってるだろ」

 

 

 

明「ーーーーーーッッ!?」

 

 銀先輩の言葉に俺は何も言えなくなる。ちなみに、銀先輩は何回か偶然にも聖良姉ちゃんと理亜姉ちゃんに会ったことがあるらしい。

 

銀「お前は何気にそういうのは隠すのは得意だと思うけど俺の前では無力だ。あと、あいつにもな………」

 

 あいつ??あいつとは一体誰だ??

 

銀「名前はプライバシーに反するから伏せとくけどな。お前のその態度でいつかAqoursの活動に影響が出るかもしれねぇからよ。マネージャーの先輩である俺が喝入れてやろうとした訳だ」

 

 …………貴方に俺の何が分かるんだよ。絶対に分からない。俺のこの苦しみが。『人殺し』になって家族に………大好きな姉ちゃん達にも拒絶された俺の気持ちが!!

 

 

 

 

銀「『考え方ひとつで人生が変わる』」

 

 

 

 

明「え??」

 

銀「俺が過去にとあることで悩んでいた時にある人から言われたら言葉だ。俺はこの一言によって救われた。」

 

 銀先輩は俺が使っていた竹刀を回収し俺に背を向いて何歩か歩いたところで一言だけ呟いた。

 

 

 

銀「だから、奥山も覆してみろよ。今までの考え方を」

 

 

 

 銀先輩はそう言って俺の目の前から去って行った。俺は少しの間、その場から動くことが出来なかった。先輩の言葉が頭の中から離れない。鳥肌が凄いことになっている。

 

 俺は今まで、姉ちゃん達に会うことをイメージした時に再び拒絶される未来を描いていた。これは俺が弱くてビビっていたからだ。

 

 

 

 じゃあ、もしそれが違ったら??

 

 

 

 

 もし、拒絶される未来じゃなく俺と姉ちゃん達が笑い合える未来になったとしたら??

 

 

 

 

 

 

 あぁ、それはなんて素晴らしい未来なのだろうか。

 

 

 

 

 

 確かにこれは俺の勝手な妄想に過ぎない。だけど、悪くは無い。少なくとも、拒絶される未来を描いていた今までに比べたら……。

 

 

 俺は立ち上がって、銀先輩が向かった方向に目がけて一礼をする。その後、ルビィの部屋へと戻った。

 

 

ルビィ「明くん、遅かったね。大丈夫??」

 

 部屋に戻ると、ルビィは心配そうに俺の側まで駆け寄って声をかける。手洗い行くって言ってから随分時間が経っていたからな。迷惑をかけてしまった。ちなみに、花丸と善子は既にルビィの部屋にいた。

 

明「ごめんごめん。ちょっと色々あって」

 

ルビィ「またお兄ちゃん??」

 

明「まぁ……、否定はしない。」

 

ルビィ「もぅー、本当に口聞くのやめようかな」

 

 やめてあげて。そんなことされたら、あの人再起不可能になっちゃう。

 

善子「クックックッ。リトルデーモン達よ。仲間同士で争うのはやめておきなさい。じゃないとこの堕天使ヨハネの天罰が下されるわよ」

 

明「善子は黙って宿題やってろ」

 

善子「善子言うな!!ヨハネ!!」

 

 善子はブーブー言っている隣で花丸が何かに気付き、首を傾げながら俺に言葉をかける。

 

花丸「あれ??明くん。なんか顔色が良くなった気がするずら。何かあった??」

 

明「ん??まぁ、少しな」

 

花丸「そっか…………。良かった」

 

明「何か言ったか??」

 

花丸「うぅん。何も。よし、ルビィちゃんと善子ちゃんの宿題を早く終わらせるずら!!」

 

善子「ねぇ、ずら丸。アンタが見せてくれたらすぐに終わるんだけど」

 

ルビィ「善子ちゃん。それはダメだよ。ここの部分は次のテスト範囲に入れるって先生言ってたよ」

 

花丸「ルビィちゃんよ言う通りずらよ。善子ちゃん」

 

善子「だからヨハネだってば!!次行ったら堕天使奥義使うからね!!」

 

 

明「…………ハハ」

 

 

 考え方ひとつで人生は変わる………ね。何だか、この3人のアホみたいな光景見てたらその通りかもしれないと思う自分がいる。

 

 

 まさか、あの人に背中を押される事になるとはな。全く予想していなかったわ。頭の中で、自分の部屋でドヤ顔しながら優越感に浸っている銀先輩の姿が思い浮かぶ。

 

 

 

 それはそれで腹が立つな。よーし……

 

 

 

 

明「なぁ、ルビィ。さっき銀先輩がルビィの下着を頭に被って未熟DREAMER踊ってたぞ」

 

ルビィ「ピギイ!?もう絶対にお兄ちゃんとは口聞かない!!」

 

 

 

 花丸曰く、この時の俺の表情はなんだか取り憑いたものが全て落ちたように楽しくそして悪そうな感じ笑っていたらしい。




最後に改めてアドミラル△さん。『人殺し』の3次創作の方を執筆してくださってありがとうございました。

またどこかで機会があればお会いしてお話したいですね。

アドミラル△の方でも是非この2作品を読んでみてください。また一味違って楽しめると思います。



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『人殺し』は罰としてAqours1人1人から使命を与えられる。
『人殺し』は高海 千歌に使命を与えられる


本編の前に前からやりたかった番外編の話が書き終えたのでそれを投稿します。明がAqoursに受け入れられ、花丸の家に謝罪したあとからのお話となっております。




 これは、俺がみんなに『人殺し』だと知ってもなお受け入れられ、正式にAqoursに加入して何日か経ったあとのお話だ。

 

千歌「明くん!!早く早く!!お客様来ちゃう!!」

 

明「う、うす!!」

 

 俺は現在、千歌先輩が住んでいる旅館『十千万』の制服を見に纏い同じく制服を来ている千歌先輩と共に部屋の整備をしていた。

 

 

 なぜ、俺がこんなことをしているのか。

 

 

 それは、一応問題を起こした身として何か罰を与えてやろうという話(提案したのはどこぞの理事長。)となり、練習後または休日の時にメンバー1人1人の使命に絶対に従うということになったのが理由だ。

 

 

 そして、トップバッターはAqoursのリーダーである千歌先輩。彼女から下された使命は、彼女の実家である旅館の仕事を1日手伝うというものだった。

 

 

千歌「明くん!!ベットのシーツにシワがある!!ちゃんとやって!!」

 

明 「は、はい!!」

 

 おいおい…………。一応、俺手伝いとはいえ素人だぞ??そんな完璧を求められても困るのだが……。

 

千歌「ベットのシーツはね………、こうしてね……………こうするんだよ!!」

 

 千歌先輩はドヤ顔をしながら俺にレクチャーをしてくれるが、あらやだ不思議!!レクチャーしてる千歌先輩もベットにシワを作っていた。あれ?本当に貴女、旅館の娘さんですか??

 

千歌「分かった!?」

 

 分かった!?じゃねぇよ!!シワを作ったことを無かったことにすな!!

 

 

??「明ちゃん、いる??」

 

 

 ギャーギャー言いながらも2人でベットのシーツを敷いていると黒髪ロングである1人の女性が部屋に入ってきた。彼女は、千歌先輩の姉でありここの旅館の若女将である志満さんだ。おっとりとした表情が特徴的である。

 

 

 初めて見た時は、千歌先輩の母親かと思ったが姉であると知った時は驚いた。だって、千歌先輩ともう1人の姉である美渡さんと全然似てないもん。あと、彼女も零さんと同じく俺の事を明ちゃんと呼ぶ。なんだか、少しだけ恥ずかしい。

 

 

明「はい、ここにいます。どうかされまさたか??」

 

志満「明ちゃんって、確か料理できるのよね??」

 

明「はい。一通りは作れますが………」

 

志満「そう、なら良かった。それで、お願いがあるんだけど………」

 

明「お願い………ですか??」

 

志満「うん。実はね、料理担当のスタッフさんが急病で出られなくなってしまったの。だから、急遽明ちゃんにヘルプに入って欲しくて」

 

 志満さんな申し訳なさそうに言葉を出す。料理のヘルプか…………。

 

明「そういうことなら全然大丈夫ですよ」

 

 少なくとも、部屋の整備とかよりは全然動けれそうだ。なんなら、旅館ならではの料理を教えてもらえるかもしれない。

 

志満「良かった!!じゃあ、早速厨房に案内するわ」

 

 よっしゃ!!俺は心の中でガッツポーズを決める。

 

千歌「ちょっと待って!!私は!?」

 

 あ、そう言えば千歌先輩いたんだった。すっかり、忘れてたわ

 

志満「千歌ちゃんは、そのまま部屋の整備をお願いね」

 

千歌「えぇ〜」

 

志満「あと、今日の夜にシーツの敷き方を改めて教えてあげるから、私の部屋にいらっしゃい♪いいわね♪」

 

 この時の志満さんの顔はとても笑顔だったが、なんだかとても怖かった。少しだけ身震いしてしまった。

 

千歌「ひぃぃ!!」

 

 千歌先輩、哀れなり。安らかに眠って下さい。

 

志満「それじゃあ、行きましょうか」

 

明「はい」

 

 こうして、俺は志満さんのあとに続いた。あ、千歌先輩は未だにorzポーズをとっていた。早くしないと、お客様来ますよ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志満「お父さん、明ちゃん連れてきたよ」

 

高海父「…………おう」

 

 

 志満さんに案内され、厨房らしい場所に入ると1人の男性が料理を作っていた。この人が、千歌先輩と志満さんの親父さんか。なんか、料理作る背中がかっけぇ。

 

 

高海父「今日は済まないな。こんなこと頼んじまって」

 

明「い、いえ。自分も料理作るのが好きなので…………」

 

 

高海父「だろうな。料理人だからこそ、君の手を見ただけで分かる。これは、毎日料理を作っている手だ。しかも、なかなか腕が良い」

 

 

 こ、この人かっけぇぇぇぇぇぇぇぇ。料理人として弟子入りしたくなるわ!!

 

 

高海父「じゃあ、早速だがよろしく頼む。」

 

明「はい!!」

 

 

 こうして、俺と千歌先輩の親父さんの2人で調理の方を開始した。調理しながら会話して分かったことだが、千歌先輩の親父さんはめちゃくちゃの親バカでした。見た目と反してギャップありすぎだろ。まぁ、娘3人とも美人さんだもんね!!

 

 

高海父「明くんは………3人の内の誰かを狙っているのかい??」

 

 

 安心して下さい。狙ってません。だから、そんな「ゴゴゴゴゴ」オーラを出さないて下さい。あなたはスタンド使いか何かですか??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志満「明ちゃん、今日はお疲れ様。助かったわ」

 

 仕事が終わり、休憩スペースでぐったりしていると志満さんが声をかけてくれた。あぁ〜、この人見てると元気が湧いてくるな。ルビィさんとは違ったタイプで癒される。

 

明「少しでも力になれたのならこっちとしても嬉しいです」

 

志満「良かったら、将来、うちに就職する??お父さんも明ちゃんのことを気に入ってるし歓迎するわよ」

 

明「結構っす。俺、将来なりたいものがあるので………。」

 

志満「へぇ、どんなものか聞いてもいい??」

 

 志満さんの問いに俺は将来の夢を答える。これも、名前と同じく零さんにしか教えたことがないから恥ずかしい。

 

 

 俺の将来の夢を聞いた志満さんはニッコリと優しく微笑む。

 

 

志満「素敵な夢ね。」

 

 

明「本当ですか??」

 

 

志満「えぇ。本当に素敵な夢。叶えられるといいわね。」

 

 

明「…………ありがとうございます」

 

 ヤバイ………、この人いい人すぎる。分かってたことだけど、本当にいい人すぎる。もう、この人がこの作品のヒロインで良くね??作者さんどう??え、メタ発言やめろだって??ごめんなさい。気をつけます。

 

志満「あ、そうだ。明ちゃん、良かったら温泉入ってく??」

 

明「良いんですか??」

 

志満「えぇ。今日は頑張ってくれたからね」

 

明「ありがとうございます。お言葉に甘えます」

 

 俺はぺこりと頭を下げてから温泉のある方へと向かう。この旅館の温泉は気持ちが良い。以前、合宿の時に入らせてもらったけどかなり良かった。

 

 温泉に向かっていると、1人の見覚えのある女性が目に入る。まるで、何かから逃げるかのように

 

明「先輩、何やってんすか」

 

千歌「ギクゥ」

 

 それ、口で言うやつちゃう。

 

明「まさか、志満さんから逃げようとしてません??」

 

千歌「ギクゥギクゥ!!」

 

 だから、それは口で言うやつちゃいますって。怪しさ満載だぞ

 

千歌「そ、そんな訳ないじゃーん。明くん、馬鹿なの??カルシウム不足なんじゃなーい??あそこの自販機でコーヒ牛乳買いなよ。1本120円デース!!」

 

 千歌先輩は汗をダラダラと垂らしながら意味もない言い訳をし始める。本当にこの人、Aqoursのリーダーなのだろうか??俺、受け入れられる人物、間違えちゃったかなぁ。

 

千歌「あ、そうだ!!私、今夜曜ちゃんと果南ちゃんの3人でガバディする約束あったんだった!!だから、またね明くん!!」

 

 千歌先輩はわざとらしく今思い付いた感じで言葉を出し、俺の目の前から姿を消そうとする。

 

 まぁ、なんだ。せっかく若女将さんに今日のご褒美として温泉に入る許可を頂けたんだ。

 

 最後の最後ぐらい仕事をこなしても良いよな??

 

 

 ガシッ!!

 

 

千歌「ほえ!?あ、明くん!?」

 

 俺に頭を掴まれた千歌先輩はロボットのようにガチガチとしながら俺の方に振り向く。俺は笑顔で千歌に言葉を出した。

 

明「逃がしませんよ。学校またはこの仕事場の後輩として、貴女を志満さんの所へと連行します。」

 

 

 

 

 

千歌「この裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 千歌先輩は半泣き状態でバタバタとするが俺は彼女のことを逃がさずに志満さんの所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁー。それにしても今回の使命は疲れたなぁ。せめて次の人の使命は疲れないやつがいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 えっと確か、次の人は………………。

 

 

 




次回は誰で使命は何なのか??
それを決めるのは読者のみなさんだ!!!

詳しくは活動報告で!!


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『人殺し』は渡辺 曜に使命を与えられる

番外編第2話です。

2話目は曜ちゃんです。
どうぞε=┏(・ω・)┛


 とある日の休日。今日は2人目の人物に使命を下される日であった。

 

 俺はその2人目である人物に呼ばれたため、その人物の家までやって来ていた。

 

 ピンポーン

 

 『はーい。』

 

 インターフォンを押したあと、すぐにガチャと扉が開き、ひょこっとお馴染みの灰色でボブカットでウェーブの髪型が特徴的である女性の顔が現れた。今日は休日だからなのか、眼鏡をかけている。

 

 

 そう……………。俺に使命を下す2人目は曜先輩であった。

 

 

曜「いらっしゃい!!ささ、入ってよ」

 

明「あ、はい。」

 

 曜先輩は、すんなりと男である俺を自分の部屋へと招き入れた。意外と慣れてんな。

 

曜「今、飲み物とお菓子持ってくるから少しだけ待ってて」

 

 曜先輩はそう言って、部屋から出ていってしまった。そのため、ポツンと俺は女子の部屋に取り残されてしまった。え、何これ。拷問か何かですか??

 

 何もやることがないので、とりあえず部屋を見回してみる。普通に女の子らしい部屋だなと思いました。…………………部屋の隅に綺麗に飾られている何かの職業の制服の山を見るまでは。

 

 流石は制服マニアと自らも名乗る曜先輩だ。まさかこんなに保持してるなんて驚きである。これ、何着あるんだ??見た感じでも余裕で50は超えてるぞ??

 

 しかも、さらに驚きなのがこれのほとんどが手作りであるということである。普通に凄くね??何あの人。もう、これだけで食ってけれるやん。

 

 もう少しだけ近くで見てみようかな、と思ったところで曜先輩がお菓子と飲み物を持って戻ってきた。ちなみに、お菓子はポ〇キーで飲み物はフ〇ンタグレープだった。どれも、美味しいよね。大好き。

 

曜「お待たせ〜。ここに置いておくから自由に食べてね」

 

明「ありがとうございます。」

 

 曜先輩はテーブルにお菓子と飲み物を置くと「さて」と言って笑顔で俺の方に顔を向ける。こ、怖い。

 

 

 そして、曜先輩は俺に下す使命を口に出した。

 

 

曜「私が今回、明くんに下す使命は〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日1日、私の着せ替え人形になってもらうことであります♪」

 

 

 ビシッと敬礼をして曜先輩は言葉を出した。

 

 

明「着せ替え人形…………ですか。」

 

曜「うん!!前から明くんに色々な服を着せたいって思ってたんだ〜」

 

 曜先輩はウキウキとしながら、クローゼットの方に向かう。うわぁ………、クローゼットの中にも色々な制服出てきた。どんだけあるんだよ。

 

 でもまぁ、特に何も動くことなく曜先輩に出された服をただ着るだけっていうなら意外と楽な方かな。

 

曜「まずはコレね〜♪」

 

 曜先輩は俺に恐らく何かの制服が入っているであろう紙袋を差し出す。早速かよ。

 

明「分かりました」

 

 俺が紙袋を受けとると、曜先輩は「着替え完了したら呼んでね」と言って部屋から出て行った。

 

 年上の女性の部屋で男性1人が着替えるっていう謎の状況だが、彼女の使命ならば仕方ない。チャチャッと着て終わらそう。

 

 そう思って、俺は紙袋を開けて中に入っている制服を身に纏った。

 

 

 〜10分後〜

 

 

明「OKです。」

 

曜「はーい。」

 

 なんとか着替えを完了させた俺は曜先輩に声をかけると、すぐに曜先輩は部屋の中へと入ってきた。

 

明「どうですかね……………」

 

曜「うんうんうん!!凄く似合ってるよ!!やはり、私の目に狂いはなかったであります!!」

 

 曜先輩はそう言いながらパシャパシャといつの間にか手に持っていた一眼レフカメラで今の俺の姿を連写し始めた。

 

 

 ちなみに、曜先輩が渡してきたのは警察官の制服だった。しかも、ご丁寧に帽子まで入っていたので一応それも被っている。

 

曜「明くん!!敬礼して!!敬礼!!」

 

明「こ、こうですかね」ビシッ

 

曜「きゃー!!もう最高!!」パシャパシャ

 

 敬礼してる俺の姿を曜先輩は止まることなくカメラで連写する。めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…………。アンタはカメコか!!

 

曜「次はこれをお願いね」

 

 若干、興奮気味である曜先輩は再び俺に紙袋を差し出す。

 

明「………分かりました」

 

 渋々、紙袋を受け取るとまた曜先輩は部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 この時点で俺は1つ、とあることを察した。

 

 

 

 

 

 

 これ、精神的に疲れるやつだわ。

 

 

 

 

 

 

 

明「着替え完了しました。」

 

曜「じゃあ、入るね〜」

 

 2着目の制服はまさかの王子服だった。名称通り、王子様とかが着るやつ。こんなの、テレビとかでしか見たこと無かったわ。てか、相変わらずクオリティが高くて驚いている。

 

曜「カッコイイ!!カッコイイよ、明くん!!」パシャパシャ

 

 

 曜先輩はヨダレを垂らしながら嬉しそうに王子服を身に纏った俺の姿をカメラで連写している。こんな、曜先輩見たくなかったのだが…………。

 

 

曜(あとで花丸ちゃんに送ってあげよ)

 

 

 ん、あれ?今、曜先輩から良からぬオーラを感じ取ったんだけど。この人、何も企んでないよね??

 

 

曜「次はこれ。3着目から少しだけ趣旨が変わってるから」

 

 

明「趣旨??」

 

 

 どういうことだろう。まぁ、いいや。とにかく受け取って早く着替えよう。

 

 

 曜先輩が部屋から出て行くのを確認した俺は紙袋の中身を確認してみると予想外な服装が入っていた。

 

 

明「は??」

 

 

 あの人…………正気か??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「お、OKです………」

 

曜「はーい♪………」

 

 

 3着目の制服を着た俺の姿を見て曜先輩はとても嬉しそうな表情へと変わる。

 

 

 嬉しそうなところ、申し訳ないが曜先輩。貴女に一言だけ物申す。

 

 

明「サ〇シの服はねぇだろ。」

 

 

 そう。3着目の服装はポケ〇ンのサ〇シの服装だった。しかも、サンムーン世代の。どっちかと言えば、ダイパ世代が良かったな。てか、趣旨が違うってこういうことだったのかよ!!

 

 

明「いや、もうこれアニメのコスプレじゃん!!」

 

 

曜「そうだよピカ!!」

 

 

 いつの間にか、曜先輩はピカ〇ュウの着ぐるみを身に纏っていた。本当にいつ着替えたんだよ。数秒前まで私服だっただろ、アンタ。けど、可愛いから許します!!(単純)

 

曜「ふふふ〜♪まだまだコスプレショーは終わらないピカYo!!」

 

 ピ〇チュウフォームの曜先輩は腰をフリフリしながら楽しそうに紙袋をどんどん俺に差し出す。

 

 既に俺は結構お疲れではあるが、きっと曜先輩はそれを許さないだろう。目がガチだしな。

 

明「着るか…………」

 

 俺はため息を吐きながら、次の制服に手を出した。

 

 

 

 ちなみに、4着目は現在、放送されている仮面ライダーの主人公の側近の服装だった。これもまた丁寧にいつも持っている本やビヨ〇ドライバーまで用意されている。これは「祝え!!」とか言った方が良きかな??

 

 これを着たあと、曜先輩を呼んだら彼女はニコニコとしながらジ〇ウドライバーを腰に巻き付けてからの主人公のコスプレをして部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 つい「魔王」と役に入りながら言葉として呟いてしまったのはここだけの秘密な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数時間が経過した。

 

 

 色々と言いたいことがあるけど1つだけ言わせて欲しい。

 

 

 

 コスプレ…………めちゃくちゃ楽しいな。

 

 

 服を着る度に最初の頃の羞恥心が嘘だったように無くなり、むしろ逆にワクワクした気持ちとなってきている。普段、曜先輩が頻繁に色々な制服を着てる理由が分かった気がする。

 

 よくよく思い出してみるとこの数時間で色々なコスプレしたなぁ。

 

 

 職業系なら、刑事や探偵、消防士に弁護士にスポーツ選手とかやったでしょ??

 

 

 アニメや特撮系だったら、ワン〇ースやBL〇ACH、戦隊モノや他の仮面ライダーのコスプレとかやった。特にふたりはプ〇キュアの変身ポーズからの名乗りを曜先輩とやった時が1番楽しかった。もちろん、俺は光の使者であるブラックな。

 

 

曜「いや〜、今日は凄く楽しかった。ありがとう、明くん!!」

 

 

 私服姿へと戻った曜先輩は満足そうな表情で俺にお礼を述べる。

 

 

明「こっちこそですよ。俺も今日は楽しかったです!!」

 

 嘘ではない。今日はマジで楽しかった。なんなら、明日もまたやりたいもん。明日は練習あるから無理だけど。

 

曜「最後になにか着たい服とかってある??」

 

 曜先輩はクローゼットを開けて、今日はまだ未登場だった制服を俺に見せる。まだあったんですね。

 

明「そうですね。………あ!!」

 

 そう言えば、今日色々とコスプレしたのに『アレ』だけ着てないな。

 

 折角の機会だし、着てみるか。

 

明「これ………着てみてもいいですか??」

 

 俺がとある服に指を指すと、曜先輩は目を丸くする。まさか、俺がこの服を選ぶとは思ってもみなかったからであろう。

 

曜「うん。いいよ」

 

 曜先輩から許可を頂いたので、早速その服に手を出す。この服は羽織るタイプのやつなので今着ているTシャツの上にそのまま羽織ってみた。

 

 おぉ………。いくらコスプレとはいえ………憧れの制服を身に纏うって思うとなんか嬉しい気持ちとなるな。

 

曜「明くんは将来、『それ』になりたいの??」

 

明「はい。昔からの夢なんです。似合ってますか??」

 

 俺の言葉に曜先輩は首にぶら下げていたカメラを構えて笑顔でこう言葉に出した。

 

 

 

曜「すっごく似合ってるよ。記念にはいチーズ!!」パシャリ

 

 

明「え!?」

 

 

 唐突のカメラ撮影だったので、焦ってしまいきっと変な顔になっているだろう。現に、確認している曜先輩も苦笑いしてるし。

 

 

 

 曜先輩からその写真を見せてもらったが、予想通り変な顔をしていた。彼女からは「撮り直す??」と聞かれたが、俺はそれを断った。なんか、消したくなかったからだ。

 

 

 

 後日に曜先輩は今日撮った写真をスマホに送ってくれるらしいので、それが届き次第俺は最後に撮った写真をLINEのトプ画にしようと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、曜先輩は花丸さんに昨日撮った写真を見せようとしたのでウサイン・ボルトに負けない速さで全力で阻止した。危ねぇ。やはり、何かを企んでいた曜先輩であった。

 

 

 

 

 




活動報告にてまだリクエスト募集してるので良かったら応募してね。

あと、本編は土曜日の夜に投稿予定ですのでお楽しみに。


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『人殺し』は桜内梨子に使命を与えられる

番外編第3弾です。

3人目は〜サンドイッチー


 〜沼津駅前〜

 

 俺は、今回3人目となる俺に使命を下す人物に呼ばれ沼津駅前へとやって来ていた。だが、少しだけ問題が発生していた。

 

明「うーん………、そろそろ時間なんだけどな。」

 

 集合時間になっても、俺を呼んだ人物は来ないのだ。………あれ?おかしいな。あの人、真面目だから決められた時間とか守るタイプだと思ってたんだけどな。

 

 

 ちょんちょん

 

 

明「ん??」

 

 誰かに軽く肩を叩かれたので、そちらの方に振り向くと帽子にサングラス、そしてマスクを装着した明らかに不審者であろう人物が俺の目の前にいた。

 

 すぐに通報したい所ではあるが、この場所でこの時間に俺と接触したってことは多分…………あの人…………なんだよな??

 

 

明「梨子先輩…………ですよね??」

 

 

 俺の言葉に、不審者(?)はサングラスを取って、マスクをずらす。すると、馴染みのある綺麗な顔が現れた。

 

梨子「えぇ。驚かせてごめんなさい。」

 

 やっぱり…………。謎の不審者の正体は梨子先輩だった。この人が今回、使命を下す人物である。

 

明「その格好、どうしたんですか??」

 

 まずは、純粋にその謎の格好について聞きたい。すると、彼女はサングラスとマスクを再び装着しながら言葉を出した。

 

 

梨子「今日は何があっても欠かせない大事な日だからよ。」

 

 

 梨子先輩にとって大事な日??…………あ、音楽関係なやつとか??でも、だからってその格好は無いだろ。ここに来る前に、よく通報されなかったな。

 

 

梨子「そして、その日は、どうしても明くんの協力が必要なの。荷物とか沢山できちゃうからね。だから、私からの使命はそのお手伝いをして欲しい」

 

 

 …………なるほど。簡単な話、俺は今日、梨子先輩の荷物持ちをすれば良いということか。音楽関係な日とかで出来る荷物といえば楽譜とかかな??それぐらいだったら、お安い御用だ。

 

明「分かりました。」

 

梨子「ありがとう。じゃあ、早速行きましょう。」

 

 

 こうして、俺達は電車に乗って梨子先輩の行き先である場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電車に乗って、1時間ほどで俺は梨子先輩の目的場所へと到着した。だが、その場所は俺が想像していたものとは違った。

 

 俺は、頬をピクピクとさせながら目の前にある会場のデカデカとした看板に目を通す。

 

 

 

 『百合同人誌フェスティバル2019』

 

 

 

 まさかの、同人誌のイベントだった。

 

 

梨子「じゃあ、明くんは西の方のエリアある同人誌をよろしくね。私はこのエリアを………」

 

明「待って!?話を勝手に続けないでくれます!?俺、まだ状況に追いついてないから!

!」

 

 俺は、若干キャラ崩壊している梨子先輩をなんとか抑えながらこの状況について冷静に考える。

 

 つまり、音楽関係なイベントに行くと俺が勝手に思っていたが、それは大ハズレでこの同人誌イベントだった………と。

 

 だから、その変な格好をしていたのか。他のメンバーにバレない為に。

 

 そして、先程の梨子先輩の言葉からして俺は荷物持ちだけではなく梨子先輩の戦利品の入手のお手伝いもしろってことか??

 

 え、なにその拷問レベルの使命は。千歌先輩と曜先輩の使命が可愛く思えるレベルだぞ??

 

 

梨子「ささ、頭の良い明くんならもう状況を理解したでしょ??ほら、早く行きましょ。じゃなきゃ、売り切れちゃう。」ハァハァ

 

 

 やばい………。梨子先輩の目がガチだ。こんなに盛ってる梨子先輩、初めて見た。いや、彼女のこんな姿、見たくなかったんだけど………。

 

 

明「絶対に行かないとダメですか??」

 

 正直言ってこんなことするのは、いくら梨子先輩の使命だとしてとゴメンだ。降りさせてもらう。

 

梨子「使命は絶対…………よね。」ニコッ。

 

明「…………はい。」

 

 

 梨子先輩の闇のある笑顔には勝てなかったよ。なにあの笑顔、すっごく怖かったんだけど。そして、笑顔だった先輩の背中になんか般若みたいな化身がいたんだけど。

 

 こうして、俺は梨子先輩に指示されたエリアの同人誌を買うために足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「まずは………ここか。」

 

 俺は指示されたエリアまで移動し、梨子先輩に渡されたリストの同人誌が販売されている第1店舗へとやって来ていた。

 

 5分程、並んだあとようやく俺の番になったので百合同人誌を何冊か手に取ってレジの人に渡す。

 

 

明「これ、下さい」

 

店員「はい。4冊で2000円です」

 

明「はい」

 

 俺は、梨子先輩から更に渡されていた封筒から千円札2枚を取り出して、レジの人に渡す。

 

店員「それにしても、貴方も百合同人誌読むんですか??」

 

明「はい?」

 

 何言ってんだ、この人??

 

店員「いやぁ、やっぱり百合同人誌いいですよね。今回の新作の『新妻』×『女子中学生』はなかなか萌えますよ」グヘヘ

 

 店員はだらしなく微笑む。ぶっちゃけ、ドン引きだ。

 

明「へ、へぇ…………。自分は、知り合いに頼まれてここに来たので、余り知らないというか…………。」

 

店員「チッ…………。」

 

 あれ??この人、今、舌打ちしたよね??絶対にしたよね??聞き逃さなかったよ??

 

 

 

 その後、逃げるかのように店を離れても店員さんは俺の事を睨みつけていた。もう、怖いわ!!!

 

 

 〜2店舗目〜

 

 

 一店舗から少し離れたところにある2店舗目へとやって来た。

 

 うわぁ…………、人がかなり並んでいる。さっきの店よりも人気のある店なのか??

 

 30分ほど、並んだところでようやく俺の番となった。長かった。

 

 先程、同様に何冊か手に取ってレジの人に渡す。一店舗みたいな人じゃないよう心の底から祈る自分がいる。

 

店員「2冊で1000円です」

 

明「はい。」

 

 俺はまたしても、封筒から千円札を取り出してレジの人に渡す。

 

店員「百合同人誌とか読むんですか??」

 

 うわっ………、また聞かれちゃったよ。そんなに、男性が百合同人誌を購入するのは珍しいの??まぁ、周りを見てもほとんど女性しかいないからそうなんだろうけど。

 

明「いえ。知り合いに頼まれて………」

 

店員「そうなんですね。」

 

明「やっぱり、おかしいですかね??」

 

店員「そんなことないですよ。そういう人、結構女性の方でも多いですので。」

 

明「そうなんですか??」

 

店員「はい♪」

 

 良かった………。この人、いい人だ。気分を害されたような顔もせず、舌打ちもしない。今の俺にとって、女神にしか見えんわ

 

店員「良かったら、これどうぞ」

 

 店員さんから、1冊の本を渡される。

 

明「これは??」

 

店員「私が、以前書いてた百合同人誌です。興味なくても、せっかくここに来たんですもの。時間がある時でもいいので良かったら読んでみて下さい。」

 

 店員さんはニッコリと微笑みながら言葉を出す。まぁ………、彼女が言うことも一理ある………のかもな。この人、いい人だし無料で貰えるなら貰っておくか。

 

明「ありがとうございます。それでは」

 

店員「ふふ。良い百合人生を。」

 

 百合を愛する者の中には心が綺麗な人もいるっていうことを学んだ。え?梨子先輩は??だって??ノーコメで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

 あれから、数店舗回ってリストに載っている同人誌をなんとか全部購入し終わり、待ち合わせ場所で梨子先輩を待っていた。

 

 だが、予定時間になっても梨子先輩は来ない。まだ並んでいるのかな??

 

 とりあえず、梨子先輩がおるであろうエリアに足を運んで、彼女を探す。

 

 意外にも、早く見つけることが出来た。だが、俺は梨子先輩を探しに行ったことを後悔する。

 

 

 

 なぜなら、梨子先輩は現在、見知らぬ軍部服を着た女性に顎クイをされていたからだ。

 

 

 

 え、どんな状況??顎クイしてる人もめちゃくちゃドヤ顔してるし、されている梨子先輩もトロンとした表情を浮かべている。

 

 

 これは、見てはいけない物を見てしまったようだ。バレないように、退散しよう。

 

 

 そう思って、再び待ち合わせ場所へと向かおうとした瞬間

 

 

 

 バタン

 

 

 

明「え?」

 

 背後から誰かが倒れたような音が聞こえてきた。なので、振り向くと案の定、梨子先輩を顎クイしていた女性が倒れていた。

 

梨子「大丈夫ですか!?」

 

梨子先輩は顔を青くして、軍部服を着た彼女に声をかけるが反応は無かった。

 

 

 周りの人達はざわざわとし始める。

 

 

明「ちょっと、どいてください!!」

 

梨子「明くん!?」

 

 俺は、直ぐに倒れている彼女の傍へ駆けつける。梨子先輩は目を丸くしていたが、今はそれどころじゃない。彼女のことを見ないと!!

 

 心臓と脈は………よし。一応、動いているな。ん?顔がとても赤い。おでこや頬を手の甲で触れてみると…………うわ、熱い。よく見ると、汗も凄く出ている。この室内の蒸し暑い空間に、この分厚い軍部服…………。

 

 

 これらをまとめてみると…………

 

 

明「大丈夫です。これは、軽い熱中症ですね」

 

梨子「熱中症??」

 

明「はい。きっと、こんな暑さでこの服装にも関わらず水分補給を一切せずに動いていたんでしょうね。」

 

梨子「なるほど。」

 

明「梨子先輩。係の人に頼んで、タンカを持ってきてもらってください。下手に頭を動かしてしまうと、負担がかかってしまいますから。それまで、俺は彼女にうちわで扇ぎます。」

 

 

梨子「分かったわ。」

 

 

 梨子先輩はすぐに係の人の所へ向かった。その間に、俺は彼女に向かってうちわを動かし風邪を送る。

 

 

 10分ほどで、タンカを持った係人が梨子先輩と共にやって来て倒れている彼女をタンカで運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜電車〜

 

 

梨子「いや〜、本当に助かったわ。ありがとう、明くん。」

 

 帰りの電車の中で、大量の同人誌が入っている紙袋を持って梨子先輩は幸せそうな表情をしていた。その紙袋からは『幼馴染み×美人宅配人』と書かれた表紙がぴょこっと、こんにちはしてた。どうして、幼馴染みと宅配人を組み合わせた??発想の癖が強いぞ。

 

明「使命っすから………」

 

 それにしても、今日は本当に疲れたな。心身ともにヘトヘトだわ。

 

梨子「それにしても明くん、さっきのやつ凄かったわね。私、びっくりしちゃった。」

 

 

 

 きっと、先程の俺の行動のことを言っているのであろう。

 

 

 俺は頬をポリポリと掻きながらボソッと呟く。

 

 

明「まぁ、将来アレを目指す者としては当たり前っすよ」

 

 

梨子「アレ?」

 

明「…………いや、なんでも」

 

 俺は誤魔化すかのように、袋の中から2店舗目の店員さんに貰った同人誌を手に取る。

 

 すると、梨子先輩はバッ!!とその同人誌を強引に奪い取ってきた。

 

明「ちょ……………」

 

梨子「そ、それは!!○○先生の幻の同人誌!?どうして、明くんがそれを!?」

 

 え、何??あの店員さん、そんな有名な人だったの??

 

明「2店舗目の店員さんに貰ったんすよ」

 

梨子「な、な、なんですってぇー!!!」

 

 

 

 梨子先輩や。ここ、電車。大声、ダメ絶対。

 

 

 そして、口で注意しても梨子先輩は「キャーキャー」と歓喜しまくるので仕方がなく壁ドンからの顎クイをして黙らせました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、店員さんから貰った百合同人誌の内容は『女性殺人者』×『美人な田舎者』だった。わーお☆




書いてて楽しかった 


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『人殺し』は小原鞠莉に使命を与えられる

番外編の使命シリーズでーす。
4人目は〜Shiny〜☆

そしてそしてそして〜( ´﹀` )



明「相変わらず、でけぇよなぁ。」

 

 俺は使命を下す4人目に来るように指定されたのでとある場所まで足を運び、顔を上に上げて口をこぼす。 てか、朝の4時に集合とか馬鹿げてるだろ。あの人は一体何考えてんだ??

 

 やって来た場所は内浦で1番大きいとされる「ホテルオハラ」。内浦に住んでる者ならば、誰しもが知っているホテルだ。

 

 

 そして、読者の皆さんならばもうこの時点で4人目が誰かなのかはもうお分かりだろう。ほら、噂をすればってやつだ。ベランダから姿を現して悪魔のような微笑みをしながら俺に目がけて手を振る金髪女性。

 

 

鞠莉「明〜♪hurry up〜♪」

 

 

 俺がこの罰ゲームの中で1番警戒している女性………3年生である小原鞠莉先輩の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「ようこそ明。ここがMy roomよ♪」

 

 受付の人に案内されて俺は鞠莉先輩の部屋へとやって来た。流石はお嬢様って感じだな。1人部屋のはずなのにデカいし豪華だ。天井についてるあれ、確かシャンデリアっていうやつだろ??初めて見たわ。ゴージャスだな〜。

 

 

鞠莉「荷物は適当な所に置いてちょうだい。明はコーヒー派??紅茶派??」

 

明「コーヒーで。ブラックでお願いします。」

 

鞠莉「Wow!!ダンディね♪」

 

 鞠莉先輩はウィンクしてそう言うと、カップを2つ取り出して1つには紅茶を。もう1つにはコーヒーを入れだした。その間に、俺は大きいソファに荷物を置いてその隣に腰を下ろした。

 

鞠莉「はい、ブラックコーヒーよん」

 

明「ありがとうございます。」

 

 鞠莉先輩が淹れてくれたコーヒーを受け取り、熱いうちに頂く。うおっ………、超うめぇ。ちゃんとコーヒー豆のコクを感じる。これなら、お金を払っても満足するぐらいだ。

 

鞠莉「美味しい??」

 

明「はい。とても」

 

鞠莉「それなら良かったわ♪」

 

 んんっ!??あれ…………なんだろう、この違和感は。

 

 この人のことだから、2年生3人組以上の鬼畜な対応をしてくるかと思ったけど、普通におもてなししてるぞ??ここに来る前に一応、遺書を書いてきたけど意味なかったか??

 

 

鞠莉「さぁて…………」ニタァ

 

 

明「ーーーーッッ!?」ビクッ

 

 

 あ、前言撤回。遺書書いた意味バリバリあったわ。だって、今の一言のトーンが普段の鞠莉先輩からは出ないトーンだったもん。

 

 これは…………絶対に何か悪巧みを孕んでいる声のトーンだ。

 

 やべぇ………、どうしよう。恐怖で身体が震える。これなら、まだホラー映画を観た方がマシなレベルなんだけど。

 

鞠莉「そんなに、震えなくてもいいわよ♪悪いようにら扱わないから♪」ωウフフ

 

 アンタのその一言一言が特に怖ぇんだよ!!なんだよその口の形は!!

 

鞠莉「来なさい。」パチン

 

男女「御意。」シュタ

 

明「うおっ!?」

 

 鞠莉先輩が指パッチンすると、俺の周りに5人の男女が唐突に現れた。いや、どこから現れたん!?マジでビックリしたんだけど!?なんなん!?小原家はジャパニーズ☆ニンジャでも雇ってるの!?

 

鞠莉「明をあそこに連れて行きなさい。手段は選ばなくてもいいわ。」

男女「御意!!」

 

明「え、ちょ、何するんですか!?」

 

 5人組の男女がじわじわと俺に迫る。身の危険を感じた俺は無意識に戦闘態勢の体勢に入る。だが、それは無意味に等しくいつの間にか縄で拘束されていた。てか、この動き………。この5人組、まさかの本物の忍者じゃねぇか!!

 

 

男女「「「お嬢様の命令は絶対。伊賀家の名に恥じないように遂行させて頂く。」」」

 

 

 あ、伊賀家出身の方達なんだ…………。と最後はどうしようもない知識を知って、俺は5人組に強制的に連行された。これ………地下帝国とかに連れてかれないよな??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「Wow〜♡Very coolよ。明」パシャッ

 

明「…………どうも。」

 

 鞠莉先輩は今の俺の姿を見て、ニコニコと微笑む。パシャ、と聞こえたのは俺の聞き間違いかな??

 

 あと結局、地下帝国ではなく男子用の更衣室へと連れてかれた俺は着ていた服を全部脱がされ、とある服を着せられた。そして、その後再び鞠莉先輩の部屋へと連れて行かれたのである。

 

 

 

明「んで、これはどういうつもりですか??俺なんかに執事服なんて着させて。」

 

 

 

 5人組に着させられたのは、執事とかがよく着ている黒色の執事服だった。サイズがジャストフィットだったので前もって俺用に用意していたことが分かる。

 

 俺の言葉に鞠莉先輩は相変わらずニコニコとしながら鞠莉先輩は衝撃的な言葉を口に出した。

 

 

 

 

鞠莉「そりゃあ今日1日、明はマリーの執事をやってもらうんですもの。身だしなみはしっかりとしてもらわなきゃ」

 

 

 

 

明「はぁーーー!!??」

 

 

 鞠莉先輩の言葉に俺は声を上げる。この先輩、何を言ってんだ!?

 

鞠莉「それが、マリーの使命よ♪」

 

明「ッッ………、使命ですか??」

 

 鞠莉先輩は「Yes」と言いながら頷き、更に言葉を続ける。

 

鞠莉「マリーが幼い頃から、ここにいるサトウっていう使用人がいるんだけど………数日前に私の命を狙ったテロリストに立ち向かって、その際に怪我を負って病院にいるのよ。」

 

 

明「いや、ちょっと待てちょっと待て!!」

 

鞠莉「…………お兄さん??」

 

明「違う!!!」

 

 違う!!違うよ、鞠莉先輩!!別にそのネタをやりたかった訳じゃない!!サラッと口にした爆弾発言の方!!

 

鞠莉「テロリストの方??」

 

 そう!!それそれ!!てか、普通に考えてそれしかないだろうが!!!

 

明「大丈夫だったんですか!?」

 

鞠莉「大丈夫だったから、ここにいるんじゃない♪」

 

明「まぁ、そうですけど」

 

鞠莉「さっき言った、使用人のサトウがね。怪我を負ってもなおテロリスト達全員を倒してくれてたおかげで解決したの。……………ジャーマンスープレックスでね。」

 

 ジャーマンスープレックス!?ジャーマンスープレックスってあの!?その使用人さん、よく怪我負ってるのにそんな高テクニックであるプロレス技を使ったな!!

 

鞠莉「サトウのジャーマンスープレックスの威力は凄いわヨ♪」

 

明「まさか、喰らったことあるんですか??」

 

鞠莉「えぇ。1年生の頃に、ちょっとした事でママのブラやパンティーをサトウの引き出しの中に入れて貶めようとしたことがあったの。それがバレてね………」

 

明「そりゃあ、アンタが悪いわ!!!」

 

 色々と苦労してるんだろうなぁ、使用人のサトウさん。鞠莉先輩みたいな人を幼い頃から見てるんだろ??何それ、辛ッッ!!!考えただけでも恐ろしいわ!!サトウさん、今はゆっくりと休養して治療に励んで下さい。

 

明「それで、サトウさんの代わりに俺が執事をやれと」

 

鞠莉「Yes♪」

 

明「そもそも執事とか要らなくないですか??あの忍者さん達とかもいるんだし。」

 

鞠莉「彼らは護衛用」

 

 護衛用なの!?だったら、なぜテロリスト達が襲ってきた時に参戦しなかった!?サトウさんが身体張る理由無かったんじゃねぇか!!

 

鞠莉「あの時は、確か5人とも伊賀に帰省中だったわね」

 

 まさかの帰省中かよ。タイミングが悪いな、おい!!!てことは、もう俺がやるしか無いじゃないか!!

 

 俺は顔に手を当て、溜息を吐いてから彼女の顔を見て言葉を出す。

 

明「分かりましたよ。先輩の執事、やればいいんでしょやれば。でも、何をやればいいのか分かんないですよ??」

 

 それも当然だ。執事なんて何をやればいいのか全く分からん。今日の小原家のスケジュールとか未知だし。何ができることなんて考えても掃除か料理ぐらいだぞ??

 

 

鞠莉「そこは心配しないで。今日はマリーのサポートをしてくれればいいわ」

 

 鞠莉先輩はそう言いながら、1枚と紙を差し出す。俺はそれを受け取り、開く。すると、そこには今日の鞠莉先輩のスケジュールが書かれていた。

 

 どれも、学校関連に関する内容だった。

 

明「結構ハードですね」

 

鞠莉「理事長だもの。ちゃんと仕事はしなくちゃ。」

 

明「ーーーッッ。」

 

 

 そうだ、そうだった…………。

 

 

 鞠莉先輩は浦の星女学院の生徒でもあるけど、その学校の理事長でもある。理事長ならば、当然仕事もあるだろう。廃校が危機とされている今の現状ならばなおさらだ。

 

 だから、鞠莉先輩は週1、2ほどAqoursの練習に顔を出さない時があったんだ。

 

 彼女は今まで、休む理由をはっきりとは伝えてこなかったから疑問を抱いていたが、Aqoursのメンバーに心配をかけさせないようにする為だったのか。

 

 そう考えると、鞠莉先輩は俺たち以上に負担を抱えてるじゃないか。さっき、ゴミ箱を見た時に栄養ドリンクの空瓶が大量に捨てられていたのもそれが理由か。

 

 ったく…………。普段は凄くふざけてメンバーを困らせてくる癖に、裏で1人でこんなにも頑張りやがって。

 

 こんなの見せられたら、逆に心配になってやるしか無いじゃないか。

 

 腕時間を見ると、あと1時間ほどで学校会議が始まってしまう。急がないと間に合わないな。

 

 俺は姿勢を但し、腹に手を当てて軽くお辞儀をしながら彼女に言葉を出した。

 

 

 

明「鞠莉お嬢様。外に出るご準備を」

 

 

 

 

 今日1日だけは俺は小原鞠莉お嬢様の執事、奥山 明だ。

 

 

 

鞠莉「ふふっ。じゃあ、明。これを」

 

 鞠莉先輩は俺に何かを投げつける。それを受け取ると、車の鍵らしきものだった。

 

鞠莉「車を出してちょうだい。場所は学校まで♪」

 

明「ウッソだろ、アンタ。」

 

 

 車の免許取れるのは18からって知ってる??俺、一応まだ15だからな??

 

 

 こうして、俺達は免許持ってるメイドさんに学校まで連れてって貰った。

 

 

〜会議〜

 

 

鞠莉「ーーーーーーで〜〜〜〜〜を行い、○○○○○○を……………」

 

 

 会議室から鞠莉先輩の声が聞こえてくる。いくら執事とはいえ俺は部外者であることには変わりはないので、会議室の隣にあるAqoursの部室で待機していた。聞いてる感じ、当たり前っちゃ当たり前だが真面目にやっているそうだ。話の内容は全くわからんけど。

 

鞠莉「これで会議を終わります。」

 

 1時間ほどで会議は終わった。けど、彼女の一日はまだ始まったばかり。まだ予定はどんどんある

 

明「次は沼津の学校との会議です」

 

鞠莉「OK」

 

 

 

 

 

 

 

〜沼津の学校〜

 

 

鞠莉「本日はありがとうございました」

 

 沼津との学校との会議も終了した。今回は少し長めだったな。もうお昼だぞ??けど、またすぐに次の予定が入っている。

 

鞠莉「次は??」

 

明「次は、内浦の市長との打ち合わせです。」

 

鞠莉「OKよ。」

 

明「お昼はどうしますか??」

 

鞠莉「途中でコンビニに寄ってもらって、何か適当に買うわ。あまり時間ないし。」

 

明「あの………一応、お嬢様が会議してる最中に家庭科室をお借りして軽く作ったのですが………」

 

 俺はランチボックスを取り出して、家庭科室を借りてそこで作ったおにぎりやらサンドウィッチやらを見せる。どうせ、食べる時間とか無いと思ったし特にやること無くて暇だったからな。

 

 生徒会長の少しボーイッシュな女性も俺の頼みに難なく了承してくれてたのは助かった。余談だが、その生徒会長が誰かに似ている気がした。多分、気の所為だとは思うけどな。

 

 鞠莉先輩は、ランチボックスを見て目を丸くしたが、すぐに笑った。

 

鞠莉「niceよ、明♪」

 

明「ありがとうございます。」

 

 

 こうして、俺は鞠莉先輩のハードなスケジュールを最後まで見届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜夜〜

 

 結局、夜遅くまで彼女の予定は続き、ようやくついさっき終了した。いやぁ…….、マジで疲れた。今は鞠莉先輩に促されて、リビングらしき場所にやって来た。

 

鞠莉「今日はお疲れ様だったわね。」

 

明「それはこっちのセリフっすよ」

 

 いや、ホンマに。よくあんなハードなスケジュールを顔色1つ変えることなく過ごせたな。慣れというやつなのだろうか。

 

鞠莉「それもそうね。ささ、遠慮なく食べてちょうだい。今日のお礼よ」

 

 そう言って、鞠莉先輩は手をとある場所に差し出す。そこには、大量に美味そうな料理が並べられていた。

 

明「美味そう………」

 

 つい、本音が零れてしまう。今日一日中は動いてばかりで俺も食べ物を口にすることがほとんど無かった。だから、めちゃくちゃお腹が空いている。

 

明「本当にいいんですか??ご馳走してもらって………」

 

鞠莉「Of course!!いくら罰ゲームとはいえ、1日働いて貰ったからにはそれなりのお礼はするわ♪」

 

明「じゃあ………いただきます。」

 

 鞠莉先輩とテーブルに座った俺は手を合したあと、手前に置いてあったハンバーグを口の中に入れる。うわぁ………、予想してたけど超うめぇ。

 

 それが引き金となり、止まらなくなってしまった俺は次から次へと料理に手を出した。どれも、美味しかったです。あとで、料理長さんにレシピ教えてもらえないかな……。

 

 

鞠莉「そう言えば、明。1ついい??」

 

明「なんですか??」

 

 片手にワイングラス(中身はグレープジュース)を持った鞠莉先輩が俺に話しかける。

 

 

鞠莉「明って○○大学を目指すの??」

 

 

明「ーーーーーーッッ!?」

 

 

 鞠莉先輩の一言に俺は手が止まる。

 

 

明「どうして……それを??」

 

鞠莉「夏休みに入る前に、進路希望調査の紙を出してもらったでしょ??私、理事長だから仕事の一環として目を通したのよ。」

 

明「なるほど……。」

 

 そう言えば、夏休みに入る前にそんなの書いて提出したな。普通、1年生に進路希望調査の紙なんて書かせるか??と疑問に思ったけど。

 

明「驚きましたか??」

 

鞠莉「そりゃあね。マリー、5度見ぐらいしちゃったもん」

 

 めっちゃ見ますやん。せめて2度見で理解してくださいよ

 

鞠莉「いやでも、明が○○とはね。」

 

明「あはは。無謀な挑戦だとは思いますけどね。」

 

 

 

 『人殺し』である俺が、○○を目指すなんてな。

 

 

 

鞠莉「NOよ、明。そんなこと言わないで!!」

 

 

 鞠莉先輩は大声を上げる。この人が声を上げることなんてほとんどないからビクッと身体を震わせてしまった。その後、先輩は俺の方へ近づき、頬に手を当てる。

 

 

鞠莉「『人殺し』だからって関係ない。だから、そんなこと二度と言わないで。明の夢はとてもWonderfulなんだから。」

 

 

最後に鞠莉先輩はニコッと可愛らしく微笑んで、俺の頬から手を離した。まだ頬からは彼女の手の温もりがジーンと残っていた。

 

 

 まさか、鞠莉先輩にそんなこと言われるなんてな。思っても見なかった。

 

 

 彼女のおかげで少しは自信が付いた……………気がする。

 

 

明「なら、理事長特権で俺を○○大学に推薦してくださいよ。」

 

 

鞠莉「んー、そうね。じゃあ、来月にやる全統マーク模試で全教科A判定取ったら考えてあげるわ♪」

 

 

 この人、鬼か!!いや、悪魔の間違いだな。

 

 

 でも…………、このチャンスを逃すほど俺は馬鹿じゃない。

 

 

明「言質とりましたからね。約束っすよ」ニヤッ

 

 

鞠莉「OK♪」ニヤッ

 

 

 

 こうして、とある休日の夜に『人殺し』と理事長のちょっとした賭け事が成立した。

 

 

 

 

 

 




 読者の皆さんでお気づきになった方はいらっしゃると思いますが、今回の話で出てきたサトウという人物は、ぱすえさんが描く『ラブライブ!サンシャイン!!小原家の使用人!!』に出てくる登場人物です。
サトウの登場許可をOKしてくださったぱすえさん、本当にありがとうございます!!読んだことがない人は、是非読んでみてください。めっちゃくちゃ面白いので。

 あと、他にも色んな企画が控えているのでお楽しみにして欲しいです。

 5人目は〜ブッブーデスワー。


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『人殺し』は黒澤 ダイヤに使命を与えられる

使命シリーズ5人目でごわす。
5thライブ前に投稿できて良かったぞよ。

5人目は〜ブッブーデスワ


明「あちー………」

 

 たらりと垂れる汗を拭いながら、俺は浦の星女学院の廊下を歩いていた。

 

 休日なのに、どうしてわざわざ学校に来ているのか。それは、俺に使命を出す5人目の人物に呼ばれたためだった。

 

 

 それにしても学校か。前の4人は、自分の家かイベント会場だったから少し新鮮な気持ちだな。

 

明「栄養ドリンクを持ってくるように………って言われたけど意味あんのかな??」

 

 

 

 俺はそう呟きながら、その人物がいるであろう、とある教室の前まで行きコンコンと扉に数回ノックする。すると、教室の方から掠れたような声が聞こえてくる。

 

??「はい…………」

 

明「俺です。」

 

??「入ってきて…………下さい。」

 

明「失礼します。」

 

 ん??どうしたんだろうか。声に生気が宿っていない。いつものあの人なら凛とした美しい声のはずなのに…………。入室許可を得たため、俺はガララと扉を開けて入室した。

 

 

 ちなみに、俺が入った教室は生徒会室。

 

 

 Aqoursのメンバーで生徒会と関係ある人物といったらこの人しかいない。

 

 艶のある黒髪ロングに口元にあるホクロが特徴的である人物。

 

 

 

ダイヤ「お、お待ちしておりましたわ…………明さん」

 

 

 

 今日、俺に使命を与える4人目の人物は3年生組2人目である黒澤ダイヤ先輩がニコッと微笑みながら俺の事を迎え入れてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大量の書類に囲まれて今でも死にそうな表情を浮かべながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え??どゆこと??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「要するに、ライブの練習に集中しすぎて生徒会の仕事をやるのを忘れてしまった………と。」

 

ダイヤ「えぇ………。お恥ずかしい話ですが………」ゲッソリ

 

 事情を聞いたところ、ダイヤ先輩はAqoursのライブ練習に力を入れすぎて明日までに終わらせないといけない生徒会の仕事をすっかりと忘れていたらしい。

 

 普段は真面目そうなダイヤ先輩ではあるため意外に思うかもしれないが、この人は最愛なる妹、ルビィに関することやスクールアイドルのことになると熱が入りすぎて偶にポンコツへと化する。

 

 多分、仕事を忘れてしまった原因はそれだろうな。

 

明「それで、俺にその山のようにある生徒会の仕事を手伝えってことですか??」

 

ダイヤ「はい…………。それが、私の使命ですわ」

 

明「なるほど。でも、俺、生徒会じゃないんでやり方とかよく分からないんすけど」

 

 鞠莉先輩の時の執事もそうだったけど、どうしてそんな普段の人はやらなさそうな特殊な仕事をやらせるんだろうか。

 

ダイヤ「大丈夫ですわ。主に、重要な学校関係の方は私が処理します。明さんは、それ以外の簡単な書類をお願いします。」

 

 ダイヤ先輩はそう言って、俺の目の前にドン!!!と書類を置く。うわぁ…………、山のようにあるじゃん。これ、全部やれと??俺のこと殺す気??

 

 でも、この生徒会の仕事を終わらせないと多分、ダイヤ先輩は練習に出られなくなるよな??いくら、彼女の自業自得とはいえ練習に出てもらわないと、こちら側も困る。

 

 

 はぁ………、しょうがない。いっちょ、やりますか。

 

 

明「ペンと判子、貸して貰えます??」

 

 

ダイヤ「ッッ………。えぇ!!」

 

 

 こうして、俺とダイヤ先輩は終わりの見えない作業に手をつけるのであった。

 

 

 〜1時間経過〜

 

明「………………」カキカキ

 

ダイヤ「……………」カキカキ

 

 仕事に手をつけてから1時間ほど経過した。俺とダイヤ先輩は特に話しかけることなく、ひたすら書類を片付けていく。だが、終わる気配が全く見えない。

 

 

 そろそろ、この雰囲気で作業するのも飽きたな。よし………。

 

 

明「ダイヤ先輩」

 

ダイヤ「なんですの??」

 

 口に栄養ドリンクの空瓶を咥えながら作業しているダイヤ先輩は手を止めて俺の方に顔を向ける。いや、漫画家かよ。

 

明「音楽を流してもいいですか??」

 

ダイヤ「音楽ですか??」

 

明「はい。少しモチベを上げたくて」

 

ダイヤ「まぁ、音楽ぐらいならいいですわ。その代わり、スクールアイドルの曲でお願いしますわね」

 

明「はいはい」

 

 心配しなくても、俺のスマホのアプリに入ってるのは有名なスクールアイドルが歌っている曲か特撮関係の曲しか入ってない。

 

 プレイリストの中にある『Aqours+その他』をタップして、何十曲もあるスクールアイドルの歌のリストが画面に縦で並ぶ。1番上の曲から順に流れる形でも大丈夫だろう。

 

 1番上にある曲をタッチしたあと、音量を上げる。その後、テーブルの上に置いて作業に戻る。

 

 

 『♪いつもそばに居ると伝えきれない想いが〜♪』

 

 

 1曲目に流れたのは『未熟Dreamer』。3年生3人がAqoursに加入して9人で初めて歌った曲でもある。懐かしいなぁ〜、と思う所ではあるけどまだ歌って1ヶ月半ぐらいしか経ってないんだよな。

 

 

 よし。音楽を流したことによって、モチベは充分に上がった気がする。この調子でやって行きますか。

 

 

 きっと、ダイヤ先輩も俺と同じくやる気が出ているはz…………………

 

 

ダイヤ「……………ゔぅ」ポロポロ

 

 

 なんか…………泣いてた。いや、なんで??

 

 

明「先輩!?どうしたんですか??」

 

 

 俺は未だに泣き続けるダイヤ先輩にあたふたしながら声を掛ける。俺、何かダイヤ先輩を泣かせるようなことをしたっけ!?

 

 

ダイヤ「ごめんなさい。その曲を聞いて、また鞠莉さんや果南さんと一緒にスクールアイドルをやれるんだって思って嬉し泣きしてしまいましたわ」

 

 

 ダイヤ先輩は指で涙を拭いながら、答える。

 

 

 元々、ダイヤ先輩と鞠莉先輩と果南先輩は2年前にスクールアイドルをやっていた。だが、東京のイベントで足を怪我していた鞠莉先輩のことを想って果南先輩は歌わなかったことで、2人の間にヒビが入った。そして、鞠莉先輩の留学を理由に3人は解散してしまった。

 

 

 鞠莉先輩と果南先輩のやりとりを1年生の頃からずっと見守ってきたダイヤ先輩にとって、和解した2人と一緒にスクールアイドルをやれることが本当に嬉しかったのだろう。

 

 

 

 実際、この3人が加入してくれたおかげでAqoursの人気が出始めたのも確かだ。特にダイヤ先輩のこのオタク知識に何度、助けられたことやら…………。

 

 

 

 まぁ、三度の飯より大好きであるスクールアイドルの想いを2年間の間、心の中に閉まっていたせいか熱くなってポンコツになる事はあるけど………。

 

 

 

ダイヤ「………よし。やりますわ」キリッ

 

 

 どうやら、ダイヤ先輩は落ち着いたみたいだ。そろそろ、1曲目も終わる。2曲目からは頑張ってもらいたいところだ。

 

 

 

 『♪いつもそばにいると伝えきれない想いが〜♪』

 

 

 

ダイヤ「うおぉぉぉぉぉぉぉん!」ナミダブシャー

 

 

 あっれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??なんで、また『未熟Dreamer』が流れてんの!?また、ダイヤ先輩が泣き出しちゃったじゃん!!どこぞの梨の妖精みたいに涙がブシャーしてるよ!!

 

 

 あ、リピート設定にしてた……。バリバリ俺のせいだったわ。すまぬ、ダイヤ先輩。

 

 

 よ、よし。リピート設定を解除したから次からは違う曲が流れるはずだ。1曲目からポチッとな。……………あっ!!!

 

 

 

 『♪いつもそばにいr………』ブチッ

 

 

 

 あっぶねぇぇぇぇぇ!!リピート設定を解除したとはいえ、1曲目から流れるなら当然、『未熟Dreamer』に決まってるじゃないか!!バカか、俺は!!

 

 

 2曲目から流してっと………。よし、これでもう大丈夫のはずだ。

 

 

 

 『♪Ah〜、ほのかな〜。予感が始まり〜♪』

 

 

 

 2曲目はAqoursではなく、伝説のスクールアイドルμ'sが歌っている『僕たちは光の中で』だ。μ'sが最後にライブで披露した曲らしい(ルビィさん情報)。歌詞にμ'sのメンバーの名前が入ってるんだとか。歌詞を作った人、天才だな。

 

 

 

 流石に、憧れのスクールアイドルの曲だしダイヤ先輩もこれで頑張れるだろ…………。

 

 

 

 

ダイヤ「うおぉぉぉぉぉぉぉん」ナミダハナミズブシャー

 

 

 

 

 うそーん!?泣いてるやん!!この人バリバリ、泣いてるじゃん!!今度は、涙だけじゃなくて鼻水も追加されちゃったよ!!

 

 

 

ダイヤ「この曲はμ'sがラブライブで2度目のアンコールの締めに歌った曲でもあり、μ'sの真のラストステージになった曲。だけど、実際にどこで歌ったのかは誰も分からず謎が多き歌!!でも、この曲があるからこそμ'sは伝説となり、今でも名をスクールアイドル界に轟かせている。更には…………うおぉぉぉぉぉぉぉん!!!」ブシャー

 

 

 

 うっわ!?この人、泣きながらこの曲の解説し始めやがった!!めんどくさっっ!!泣くか喋るかのどっちかにしてくれ!!

 

 

 

 この後のダイヤ先輩の暴走は止まらず、とある曲の合間には大声でコールを入れたり、最終的にはどこから出したのか両手にサイリウムを取り出してキレの良いオタ芸をし始めたりしたので当然のことながら曲を流すのを辞めた。

 

 

 

ダイヤ「どうして止めるのですのぉぉぉぉ!!ライブはまだ終わってないですわぁぁぁぁぁぁ!!!」ブンブン

 

 

 

明「目を覚ませ!!」ペシッ

 

 

 

ダイヤ「あひん」(>_<)

 

 

 

 

 

 もう、この人の前でスクールアイドルの曲(特にμ's)を流すのは金輪際やめようと俺は決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

 

 曲を流すのを辞めてからはダイヤ先輩も真面目に取り掛かり、ようやく終わらせることができた。俺とダイヤ先輩は疲労でテーブルに顔を埋めていた。硬いな…………。

 

 

ダイヤ「ようやく終わりましたわ」ゲッソリ

 

明「色々と疲れましたね」ゲッソリ

 

 

 どっかの誰かさんのせいでな。

 

 

ダイヤ「明さん、今日は本当に助かりましたわ。」

 

 ゲッソリとしているが、凛とした動きでダイヤ先輩は俺に頭を下げて礼を言う。

 

明「まぁ……使命ですから。」

 

ダイヤ「それにしても、予定より早く終わってしまいましたね。」

 

明「そうですね………」

 

 俺とダイヤ先輩が発狂しながら急いでやったおかげで、予定よりも早く終わった。本来なら、もう少しあとで終わる予定だったんだけどな。

 

 

ダイヤ「私は、ここで少し勉強してきますが、明さんはどうしますか??もう帰られますか??」

 

 

 ダイヤ先輩は、鞄から教材を取り出して俺に話しかける。まぁ、先輩も3年生だしな。受験とかあるだろうし………。そう思うとこの人、文武両道出来てて凄いな。どこぞのハグ先輩も見習って欲しい。

 

 

明「いや……、俺も少しだけ勉強しますよ」

 

 

 元々、この使命が終わったら図書館で勉強する気でいたから、教材は持ってる。しかも、この学校の3年生の中でトップクラスの成績を持つダイヤ先輩もいるんだ。わからない所があればぜひ聞こう。

 

 

 そう思いながら、俺も教材を出す。

 

 

ダイヤ「あら………」

 

 ダイヤ先輩は、俺が出した教材を見て声を漏らす。彼女が目にしたのは、とある大学の過去問題集だった。

 

 

ダイヤ「この大学って……」

 

明「えぇ。○○大学です。」

 

ダイヤ「てことは、つまり明さんは○○になりたいんですか??」

 

明「はい。それになるのが、昔からの夢なんです。」

 

 俺は問題集を片手には持って、パラパラと大量の付箋が着いているページを開いたあとに、再びパタンと閉じて苦笑いをしながら言葉を出した。

 

明「けど………、やっぱりレベルが高くて分からないところがめちゃくちゃあるんですよね…………。」

 

 ○○になるためには、相当頑張らなくてはならない。それは充分承知だ。承知だからこそ、俺はAqoursのマネージャーをしながら勉強の方にも、すごく力を入れている。けど…………それでも○○大学の問題は凌駕する程に難しく点数が驚く程に取れない。

 

 

ダイヤ「ちょっと問題を見せてもらっても??」

 

 

明「は、はい。」

 

 

 俺は、ダイヤ先輩に過去問題集を渡す。受け取った彼女はパラパラとページを開き「なるほど………」と呟く。

 

 

ダイヤ「この問題レベルなら、いけそうですわね」

 

 

明「マジですかい………」

 

 

 一応、それ日本のトップクラスの国公立大学の過去問題集なんですけど………。サラッと出来ます発言しちゃったよ、この人。

 

 

ダイヤ「良かったら、付箋がついてる所の問題、教えましょうか??」

 

 

明「だ、大丈夫ですよ!!ダイヤ先輩だって、自分の勉強があるでしょうに」

 

 

ダイヤ「ふふ。私のことなら大丈夫ですわ。どっちみち………」

 

 

明「??」

 

 

ダイヤ「いえ。今は言わない方がいいのかもしれませんね。」

 

 

 えぇ………(困惑)。それ、1番気になるヤツなんですけど。そこまで言ったなら教えて下さいよ。

 

 

ダイヤ「なら、今日の使命のお礼だと思って下さい。それなら、いいでしょう??」

 

 

明「まぁ………、それなら。じゃあ、早速このページの問題からいいですか??」

 

 

ダイヤ「OKですわ。………ふむふむ、それはですね。少しコツがあって…………」

 

 

 こうして、俺はダイヤ先輩に分からなかった所の問題を教えて貰った。解説に書かれているやつよりも丁寧で分かりやすく教えてくれたので、付箋がついてあるところの全部をほぼ、理解することが出来た。

 

 

 

 

 

 ただ………一つだけ問題があったのは……。

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「ぶっぶーですわ!!何度言ったら分かりますの!?ここは、こうして〜〜〜」

 

 

 

 

 

明「ひぃ!?」

 

 

 

 

 

 

 分かりやすく解説してくれたものの、めちゃくちゃスパルタでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けど、少し先の話をするならばダイヤ先輩にスパルタで教えて貰ったおかけで全統マーク模試の結果、全教科A判定だった。約束通り、鞠莉先輩も推薦してくれると言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイヤ先輩に超大型バケツ抹茶プリンを感謝の気持ちを込めて作ろうと心の底から決意した。

 

 

 




今日の深夜の夜行バスで東京に向かう予定です。
もし、お会いしたらよろしくお願いします  

5thライブ、思いっ切り楽しむぞーーーーーーーーー!!!!!!


あと、もうお気づきの方も居るかもしれないですけど今回の使命シリーズであるテーマを取り入れてます。さて、何でしょう(´ω`)

6人目はもちろん、あの人。


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『人殺し』は松浦 果南に使命を与えられる

お久しぶりです

リアルが忙しくて更新どころか執筆自体することが出来ませんでした。

八月以降まではこのペースで更新していくと思うのでご了承ください

6人目は………ハグシヨ


明「気持ち悪い………」

 

 船から降りてグロッキー状態になっている俺はそう一言呟いた。船に乗る前に、調子に乗って朝飯をバカ食いしたのが間違いだった。

 

 本来だったら、俺に使命を下す6人目の所まで行かなくてはならないが今はそれどころではない。LINEで、少しだけ遅れますいう連絡だけして、近くにあるベンチに座る。

 

 念の為、持ってきておいた薬を水と一緒に飲んで顔にタオルを当てて少しの間、ベンチで横になる。気持ちの良い海風とカモメの鳴き声がいい感じに耳の中に入ってくる。……………あ、これ寝ちゃうやつだ。あかんあかん!!睡魔に耐えなければ!!……………スピースピー

 

 

 ーーーピタッ

 

 

明「冷たっ!!」ビクッ

 

 睡魔と戦っている最中(既に敗北してる)に、俺の頬に何か冷たくてヌメっとしたものが当たった。あまりにも唐突の事だったので、俺は跳ね上がるように起き上がった。

 

 そして、俺の隣には頬に冷たい何かを当てた犯人かつ俺に使命を与える6人目が意地悪そうな笑みを浮かべて立っていた。

 

明「俺の事、殺す気ですか??果南先輩。」

 

 そう。今回、俺に使命を与えるのは青髪のポニーテールでスウェットスーツを見に纏っている女性………、松浦果南先輩だ。

 

果南「あはは。そこに寝てた明が悪いんだよ。」

 

明「寝てませんから」

 

果南「いや、寝てたからね………。はいコレ」

 

 果南先輩は俺の掌にずっと持っていたものを乗せる。

 

明「これは??」

 

果南「今朝、採ったナマコ」ヌメヌメ

 

明「気持ち悪ッッ!!!!」ビュン

 

 この人、何で飲み物渡す感覚でナチュラルに後輩にナマコ渡してんだよ。驚きすぎて、ナマコ海に向かって思いっきり全力投球しちゃったじゃねぇか。

 

明「てか、先輩。俺の顔に当てたやつって……………絶対にナマコですよね??」

 

果南「さぁ………。どうだろうねぇ」(・∀・)ニヤニヤ

 

 どうだろうねぇ………じゃない。そのニヤけ顔でもう確実にそうだって理解したわ!!

 

 今日中に仕返ししてやると誓いながら、俺は使命の詳細について果南先輩に話しかける。今回は珍しく、事前にLINEで先輩から使命の内容が大まかに送られているのである程度は分かっている。

 

 

明「今回の使命は先輩の家のダイビングショップの手伝いでいいんですよね??」

 

 

果南「そうそう。」

 

 今回の使命は、千歌先輩と似ていて果南先輩の実家で経営しているダイビングショップの手伝いだ。

 

 今日は30人を超える団体さんがダイビング体験しに来るらしく、最低でも1人はヘルプが欲しかったという。

 

果南「水着とか、ちゃんと持ってきてくれた??」

 

明「はい。なんなら、今履いてますよ。」

 

 もちろん、換えのパンツは持参しているぞ。ノーパンで帰宅するっていうのは御免だからな。

 

果南「うむ、よろしい。ちなみに、明は泳げるよね??」

 

明「まぁ…………。それなりには」

 

果南「よし。なら、大丈夫だね。仕事内容は歩きながら説明するよ」

 

明「分かりました。」

 

 

 こうして、俺は果南先輩に今日の仕事の主な役割を聞きながら先輩の家へと向かった。

 

 

 

 

〜ダイビングショップ前〜

 

 

 

果南「ーーーーーーと、こんな感じかな。」

 

 

 果南先輩に仕事内容を聞きながら歩いていたら、いつの間にか先輩の実家であるダイビングショップに辿り着いていた。

 

果南「お父さーん。明、来たよ〜」

 

松浦父「おー」

 

 果南先輩の掛け声で、店からはいい感じに肌がやけている上半身裸で青髪の男性が出てくる。この人が、果南先輩の父親か。

 

松浦父「君が明か……。今日はよろしくな」

 

明「はい。よろしくお願いします」

 

 おぉ………、この人なんか渋いな。The・海の男って感じがしてかっこいい。仕事関係で鍛えられたのか、上半身もムキムキだ。

 

松浦父「そうだ、はいこれ。」

 

 松浦父は俺の掌に何かをのせる。

 

明「なんですか、これ??」

 

松浦父「今朝、採ったナマコだ」ヌメヌメ

 

明「気持ち悪ッッ!!!!」ビュン

 

 

 親子、揃って何を渡してるの??松浦家のルールなの??またしても、驚いてナマコを海の方に向かって全力投球しちゃったじゃないか。初めてだよ、1日にナマコを2回全力投球したことなんて…………。

 

 

松浦母(…………ここは出る流れではないみたいね)ヌメヌメ

 

 

 わーお、よく見てみたら部屋の隅で果南先輩の母親らしき女性が既に今朝、採ったであろうナマコを手にしてスタンバってたよ。どういうこと!?どんだけ、この家族はナマコを渡したいの!?

 

 

松浦父「よし。これで明くんと松浦家との交流が深まったということで………、店開ける準備するか!!」

 

 

果南・松浦母「おー!!」

 

 

 

 まさか、ナマコで果南先輩の両親と交流が深まることになるとは…………。いや、むしろ深まったのか??深まった実感が湧かないんだけど………。

 

 

 まぁ、いいや。果南先輩の両親が深まったと言うなら、そういうことにしておこう。さて、俺もそろそろ何かを手伝うことにしよう。

 

 

明「俺……何かできることあります??」

 

 

 

松浦父「そうだな。じゃあ、家の倉庫にあるガスボンベを船まで運んでくれるか??」

 

 

明「分かりました。」

 

 

松浦父「果南。明くんに倉庫の場所を教えてやってくれ」

 

 

果南「はーい。じゃあ明、行こっか」

 

 

明「了解です。」

 

 

 果南先輩に案内されて、店の裏にある倉庫へと足を運び、倉庫の中にあるガスボンベを運び出す。

 

 

明(うわ……重っ……)ドスン

 

 

 それなりに鍛えている俺でも、1本のガスボンベを持ち上げ、運び出すのに苦労した。

 

 

果南「アハハ、それ重いよね」ヒョイ

 

 

 と、果南先輩は笑いたがらガスボンベを2本ほど軽々しく持ち上げる。嘘でしょ…………。

 

 

明「1本でもこんな重いのに2本って……」

 

果南「んー、昔からやってるしね。私も明に負けないぐらい鍛えてるから………。」

 

 彼女は「ふんっ!」と言って、女子高校生では中々見ることのない実に見事な腕の筋肉を俺に披露する。確か、毎日ランニングしてるんだっけな。

 

明「先輩………、良かったら空手始めませんか??」

 

 器が元々出来てる果南先輩だったら、空手を始めたらいい所まで行きそうな気がする。てか、飲み込みの早い彼女なら絶対に行く気がする。

 

果南「空手かぁ〜。ちょっと私には似合わないかな〜」

 

 そんなことはないと思うけどな。むしろ、確信的に似合う。道着を着て型をやる果南先輩をイメージしてみよう………。おぉ………、型の1つ1つの動きでアレがゆさゆさと揺れる。少しだけ、エッチだな。…………やめよう、彼女に失礼だ。

 

明「そうですか。残念です」

 

果南「また気が向いたらね〜」

 

 そんな感じで、果南先輩と会話を交わしながらガスボンベを船まで運び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

客「すいませーん、予約していた○○ですけど〜」

 

松浦父「はーい、○○様ですね。お待ちしておりました。」

 

 

 ガスボンベを全て船に運び出した辺りで、予約していた団体さんがダイビングショップへとやって来ていた。30人予約しているだけあって若い人から、そこそこ年寄りの人もいる。

 

 

松浦父「では、まず皆さんウェットスーツの方へと着替えましょうか。着替え方はこちらのスタッフが説明するので、女性の方は右の部屋へ。男性の方は左の部屋へとお願いします」

 

 

果南「はーい、女性の方は私に付いてきて下さーい。」

 

 

明「だ、男性の方は俺に付いてきて下さーい。」

 

 

 女性客は、果南先輩が。男性客は俺が率いて更衣室へと案内する。

 

 

 そして、松浦父がウェットスーツの着替え方を丁寧に客にレクチャーする。俺は特に潜る予定はないので、上の服だけ脱くことにした。

 

 

 着替え終わったあと、さっきいた場所へと再び集合して松浦父がこれからの行動を説明し始める。

 

 

松浦父「流石に1隻の船で30人同時は厳しいですのでA、Bと2グループに別れてダイビング体験を行いたいと思います。」

 

 

 まぁ、そうなるよな。こんな大人数の団体さんが予約してくることなんて初めてだって先輩も言ってたし。2グループ作るってことは先に15人ほどダイビング体験して残りの15人はここで待機するって感じかな。

 

 

松浦父「船を2隻出します」

 

 

 …………ん?2隻??船2隻出すの??片方は松浦父が運転するとしてもう片方は??あ、松浦母が運転するのかな??

 

 

松浦父「Aグループの船は私が。Bグループの船は……」

 

 

果南「私が引き受けまーす」

 

 

明「え!?」

 

果南「ん??」

 

 

 「ん??」じゃないです。サラッと船を運転する発言しないで下さい。

 

 

明「先輩、船運転できるんすか??」

 

果南「できるよ。てか、仕事関係上必要だしね。ちゃんと、免許も持ってるから安心して」

 

 ほぇー、それは驚きだ。船の免許取るのは結構大変って本かテレビで聞いたことがあるんですけど………。すごいな。

 

 

 感心している間に、どうやらお客さんが2つのグループに別れたようだ。Bグループは………少しだけ男性が多いな。表情がニヤニヤしてる感じ、果南先輩目的だな。Aグループにいる男性陣が悔しそうな表情してるから、男性陣でジャンケンとかで争ったのだろう。

 

松浦父「明くんは、果南が操縦する船に乗ってサポートしてくれ」

 

 松浦父が俺に近づいて、話しかける。

 

明「分かりました。」

 

松浦父「そして…………最後に」

 

明「うわっ!!」

 

 急に、松浦父が強引に俺と肩を組み、耳元でボソッと少しだけ殺意を湧かせながら呟いた。

 

松浦父「もし、客の中に果南に手を出す命知らずの輩がいたらよろしく頼む。最悪、○して魚の餌にしてくれても構わん。責任は俺が持つ。」

 

 いや、怖ぇよ。この人、『人殺し』である俺よりもヤバい人じゃねぇか。千歌先輩のお父さんと言い、美人な娘さんを持つと父親って怖い生き物になるんだな。

 

明「わ、分かりました。」

 

松浦父「よし!!男同士の約束だぜ??」

 

 嫌だよ!!そんな恐ろしい約束なんて交わしたくないわ!!

 

 松浦父は「じゃ、よろしく頼むぜ」と言って肩をポンと叩いたあと店の方へと向かった。

 

明「はぁー、ある意味災難だったな。」

 

 俺は溜息を吐き、再び倉庫へと向かう。すると、シュノーケルやら足ヒレやらを大量に運んでいる果南先輩の姿があったので急いで駆けつける。

 

明「先輩、手伝いますよ」

 

果南「お、助かる。」

 

 半分ほど、物品を受け取り船まで運び出す。

 

 そして、また倉庫まで戻り残りを運ぼうとした時

 

明「お………、これは」

 

 俺は、倉庫の中にあるとあるものに目をつけた。

 

果南「ん??……あぁ、『それ』ね。うちの仕事って、気を付けているものの、一応危ないじゃん??念の為に持っておこうって言ってお父さんが買ってきたの。」

 

 後からやって来た果南先輩は、俺が目につけた『それ』を苦笑いしながら手に取る。

 

果南「だけど私、これの使い方あまり知らないんだよね」

 

明「え??どうして!?」

 

 これ………、意外と大切なんですけど。

 

果南「面倒くさかったからね……。多分、使うことないだろうし。」

 

明「でも、何かあった時大変じゃないですか??」

 

果南「大丈夫大丈夫。そうならないように、私達がいるんだから。そもそも、それ買って数年経つけど未だに使ってないし………。」

 

 果南先輩はそう言って、『それ』を元にあった場所へと戻す。そして、残りの物品を手にして船の方へと向かって行った。

 

 

果南「よーし。明、そろそろ行くから乗りな〜」

 

 

 準備が完了したのか、港の方から果南先輩の声が聞こえる。なので、船の方へと向かおうとしたが、

 

 

明「………念の為、持っていこ」

 

 

 俺は『それ』を手にして持ってきていた手さげの中に入れたあと船の方へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「それでは、皆さーん。準備はいいですかー??」

 

 

客「はーい!!」

 

 

果南「じゃあ、私に続いて海の方へとゆっくりと入ってくださーい。気分が悪くなったりした方は無理をせずに私に報告してください。それでは、行きまーす!!」

 

 

 バシャーン!!!

 

 

 果南先輩に続き、他の客も海へとゆっくりダイブして行く。その時、俺は船の上でここに来る途中に気分を悪くしてしまった客と一緒にぐったりとしていた。俺、ここに来る時にグロッキー状態になってたこと、すっかりと忘れてたわ。

 

 

女性客「気持ち悪い………」ゲッソリ

 

明「大丈夫ですか??」ゲッソリ

 

女性客「大丈夫に見えます??」ゲッソリ

 

明「全然」ゲッソリ

 

明・女性客「あははははは!!」ゲッソリ

 

 と、海の方で魚達とキャッキャウフフしている果南先輩やお客さんに対してグロッキー状態である船の上組は上組で楽しく(?)会話を弾ませていた。

 

 

 

 そして、このまま順調に終わると誰もが思っていたが………

 

 

 

 事件は起きてしまった。

 

 

 

客「スタッフさん!!!」

 

明「はい??」ゲッソリ

 

 

 海に泳いでいた客が表情を青くしながら俺に大声で呼びかける。

 

 

客「スタッフさんがピクリと動かなくなって………海の底へと沈んでるんです!!」

 

 

明「は!?」

 

 

 この時、俺は考えるよりも行動の方が早かった。グロッキー状態でありながらも近くにあったシュノーケルを身につけすぐに海の方に飛び込んだ。

 

 

明「!?」

 

 

 海に飛び込み、海のそこに視線を移すと客が言っていた通り果南先輩がピクリとも動かず海の底へと沈んでいっている。

 

 

 ガスボンベのチューブが外れたのか??それとも足がつってしまったのか!?

 

 

 動かなくなってしまった原因を考えるのは後だ!!今はかなり危ない状況だ!!

 

 

 ひとまず、俺は海から顔を出して腹の底から大声を出す。

 

 

明「緊急事態です!!海の中にいる方は直ぐに船の上に戻って下さい!!」

 

 

 そう言ったあと、大きく息を吸って再び海の中へと飛び込む。

 

 

 そして、モノフィンと呼ばれるイルカのような泳ぎ方で未だに沈んでいっている果南先輩の方へと向かう。

 

 

 沈む勢いが遅かったのが、不幸中の幸いだった。すぐに追いつき、果南先輩を俺の身体へと寄せ抱きしめる。そして、そのまま話さないように再びモノフィンで海上へと向かう。

 

明「ぷはっ」

 

 顔を海の外へと出したあと、すぐさま船の方へと向かう。既に上がっていたお客さんに協力してもらい、船の上へと運び出す。

 

明「果南先輩!!」

 

 意識が失っている果南先輩に声をかけるも、反応はない。

 

 俺はすぐに彼女の胸に耳を当てる。

 

 

 だが…………

 

 

 果南先輩の心臓は………動いていなかった。

 

 

明「ーーーくっ………。」

 

 

 落ち着け………。焦ったところで何も起こらないぞ………。

 

 

 俺は気持ちを落ち着かせるために浅い呼吸を何回か繰り返す。………………よし。少し落ち着いたぞ。

 

 

 こうなった場合は確か………………。

 

 

明「先輩………失礼します!!」

 

 

 溺れてしまった人を救助したあと、身体を冷やさせないために、まずは着ているものを脱がせ、毛布などで身体を温めると良い。

 

 

 俺はその場で果南先輩が着ているウェットスーツを脱がす。果南先輩のナイスバディな上半身が露出するが、今はそれどころじゃない。ちなみに、周りにはさっきまで一緒に話していたあの女性客が中心となって囲んでくれていて、男性陣に見られないようにしてくれている。ありがてぇ。

 

 船に常備されていた毛布を女性客に持ってきてもらい、それを彼女に被せ温める。その後、俺は果南先輩の心臓部に両手を当てて力強く圧迫していく。いわゆる、心臓マッサージだ。

 

 1分間に30回ほど行ったあとは………

 

 

明「果南先輩………本当にすみません!!!」

 

 

 俺は果南先輩の顎に手を当て、顔を上向きにしたあと、彼女に口付けする。周りは「きゃー」と言っているが、俺にとってはマジでそれどころではなかった。そして、彼女の気管に呼吸を送り込んでいく。よし、先輩の胸部が膨らんでいるから、ちゃんと人口呼吸が出来ているようだ。

 

 

 ーーーゲボっ

 

 

 人口呼吸を何回か行っていくと、途中で沈んでいっている時に飲んでしまったであろう海水が口から吐き出される。その場合は、顔を横に向けさせて出していく。

 

 

 心臓マッサージ→人口呼吸→海水を吐かせる

 

 この流れを3回ほど行ったが、それでも果南先輩は目覚めることはなかった。

 

 

 これじゃあ、埒が明かない………。そうだ!!そういえば、アレを持ってきていた!!最後にアレに掛けよう………。

 

 

 俺は念の為だと思って、持ってきた『それ』を手さげから取り出す。大丈夫………、使い方は頭の中に入っている。

 

 

 俺は『それ』の中身を開けて、中にあるものをスムーズ良く出していく。

 

 

 そして、身体に貼るであろうシールらしきものを果南先輩の胸あたりと横腹あたりに貼っていく。

 

 

 そして、そのシールと繋がっている装置をポチポチと押し、最後に………

 

 

明「皆さん!!ここから離れて下さい!!」

 

 

 俺の掛け声によって、俺含め周りのお客もこの場から少しだけ離れる。

 

 

 数秒たったあと…………

 

 

 ーーービクン!!!

 

 

 ビリリとまるで電流が流れたような大きな音が鳴り響き、それと同時に寝ている果南先輩が跳ね上がる。

 

 

 直ぐに、シールを剥がして俺は再び心臓マッサージを絶え間なく行う。

 

 

明(戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!戻ってこい!……………)

 

 

 心の中で、それを願いながら俺はひたすら心臓マッサージを行う。

 

 こんなところで彼女を死なせるわけにはいかない。死なせる訳にはいかないんだ!!

 

 

 先輩だってそうだろう??こんなところで終わりたくないだろう??鞠莉先輩やダイヤ先輩とAqoursを盛り上げるって言ってたじゃないですか!!

 

 

 だから………戻って来て下さいよ!!

 

 

 

 そして……………その願いが叶ったのか……

 

 

 

果南「ゲホゲホ…………」ゴボッ

 

 

 果南先輩は水を吐き出すと同時に、意識を取り戻して目を覚ました。それによって、周りから喜びの歓声が沸く。

 

 

果南「あれ………私、確か足をつらせて………それで………」

 

 

明「先輩…………良かった………。」バタリ

 

 

 俺は果南先輩が目を覚ましたことによって、安心してその場から倒れる。

 

果南「明!?大丈夫!?」

 

 果南先輩はすぐ様、起き上がり俺のそばまで駆けつけるが正直言って大丈夫ではない。

 

 元々、船酔いで体力がかなり衰弱しているのにも関わらず、海に飛び込びからの果南先輩を救出。それに続けて神経ガリガリ削りながらの絶え間なく行った心肺蘇生だぞ??そりゃあ、倒れるよ。

 

松浦父「お…ー…い!だい……うぶか!?」

 

 遠くから、松浦父の声が聞こえてくる。誰かが呼んでくれたのか………な??

 

 

 そこから、すぐに俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ーーーーーんにゃ??」

 

 目を覚めると、見たことがない白い天井が視界に入った。ここは、どこだろうか??

 

果南「明!?目が覚めたんだね!?良かったぁぁぁ〜」ホッ

 

 隣を見ると、目に涙を浮かべた果南先輩が安心して俺の事を見つめていた。

 

明「かにゃん………しぇんぱい??」

 

 寝起きのせいか、上手く呂律が回らない。そのせいで、果南先輩と言うことができなかった。なんだよ、これ。めっちゃ、気まずいやないか。

 

果南「うん。果南先輩だよ……」

 

明「ここは??」

 

果南「病院」

 

明「病院??」

 

果南「うん。」

 

 話を聞くに、あのあと直ぐに気絶した俺と一応、心肺停止だった果南先輩は病院へと連行されたという。

 

明「俺、どれくらい寝てました??」

 

果南「2時間くらいかな。私達、最低1日は入院だって。」

 

明「そうですか……。」

 

果南「千歌達にはもう伝えてあるよ。運が悪く、他の8人はそれぞれ予定があって今日は病院に来れないって。だから、明日来ると思う」

 

明「零さんは??」

 

果南「零さんは、すぐに来るって。今、お父さんが迎えに行ってるからもうすぐ来るんじゃないかな」

 

明「そうですか………。」

 

 今日の夕飯は、海鮮チャーハンにしようと思ってたんだけどな。すまぬ、零さん。今日の夕飯は外食するなりインスタントに手を出すなりして、なんとかしてくれ。

 

果南「ねぇ、明。ちょっとこっちの方に来てくれない??」

 

明「え?あ、はい。」

 

 果南先輩に言われた通りに、俺は先輩のそばに寄る。

 

 

 そして…………

 

 

 

 ーーーギュッ

 

 

 

明「( ˙꒳˙ )ファ!?」

 

 

 果南果南のそばに寄った瞬間、俺は彼女に抱きしめられた。10秒ぐらい思考が停止したが、すぐに俺は顔を真っ赤にさせる。パイオツが当たってる!!当たってるよ!!

 

 俺があうあうしてると、彼女はボソッと言葉を呟いた。

 

 

果南「ありがとう。私の命を救ってくれて。」

 

 

明「ーーーーーッッ!?」

 

 

 先輩は抱きしめながら泣いていた。きっと、後々から考えてしまったのだろうか。もしもの事を。

 

 

 もしも、自分があれから目覚めることがなかったかもしれない未来を…………。

 

 

果南「明は私の命の恩人だよ」

 

 

 果南先輩はそう言って、離れる。『人殺し』である俺がまさか、そんなこと言われる日が来るとは思ってもみなかったから、少しだけ照れる。

 

 

果南「そういえば、明ってAEDの使い方知ってたんだね。」

 

 

明「まぁ………、そうですね。」

 

 

 そう、前から言っていた『それ』の正体は自動体外式除細動器………通称AED。

 

 

 心肺停止してる人に対して、心臓に電気ショックを与える医療機器だ。

 

 

果南「流石、将来○○を目指すだけあるね」

 

 

明「どうして、それを!?」

 

 

果南「え??鞠莉がこの前に言いふらしてたよ。」

 

明「え!?って事は………」

 

果南「Aqoursの子達はみんな知ってるね」

 

明「あの金髪め…………。いつか、口の中にわさび1本まるまる注入してやる」

 

 なんなら、お見舞いに来た瞬間に実行しても良いと考えている。

 

果南「あはは。でも、良い夢じゃん。実際、私も助けられたし。」

 

明「そういうもんなんですかね………」

 

果南「そういうもんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、部屋に入ってきた松浦父と松浦母が意識が戻った俺を見た瞬間に泣きながら俺に感謝した。そして、2人からもハグをしてもらった。なるほど、子があれなら、親もそれか。

 

 

 そして、零さんからは「よくやったね。」と頭を撫でてもらった。恥ずかしいけど、そう言われると嬉しいな。

 

 

 

 将来………、必ず○○になろう。

 

 

 

 心の中で強くそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜後日談〜

 

 

鞠莉「シャイニ〜♪お見舞いに来たわよ〜♪」

 

 

明「えい」ズボッ

 

 

鞠莉「ぐぶ!?」

 

 

明「(☆´ิ罒´ิ)ニヤ」

 

 

鞠莉「(((( ˙-˙ ))))プルプルプルプルプルプルプル」

 

 

 ーーーギュッ!!!

 

 

鞠莉「ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!」

 

 




果南パイセンのヒロイン感がやべぇ。

この作品のヒロインは花丸ですからね!?人工呼吸に関してはノーカンっと言うことで……。

ここで、Twitterで送られてきた質問箱の質問を答えていきたいと思います。

Q.小説を書く時どうやってモチベーションをあげているのか
A.Aqoursの曲を聴きながらやってます。

Q.明日は地球最後の日です。一緒に過ごす相手を2つから選んで下さい。aドラえもんbのび太
A.cしずかちゃんがないのです。なので、出直してきてください

Q.日本の未来、割と暗くね??大丈夫この国??
A.ラブライブを鑑賞すれば、そんなのありんこ並に気にしなくなるのでとりあえずラブライブを観ましょう。

Q.こんなポケモンは嫌だ
A.ワンパンマンのサイタマみたいなやつ

Q.LINE pay使ってますか?
A.使ってないです

Q.何時間ぐらい寝れば調子良い??
A.6時間ぐらいかな

Q.Saint Snowのどちらが好きですか??
A.選べるわけないじゃん。二人とも心の底から愛してるよ。


以上です。こんな感じで答えていくので、質問あれば質問箱に送って下さいm(_ _)m



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『人殺し』は津島 善子に使命を与えられる

マークが何個が削除されてたのを今朝気づいたので書き直しました。すみません。


 周りが真っ暗闇に包まれている空間の中で中心に置かれている1本のロウソクが微かな光を灯していた。

 

 そして、ロウソクの前に1人の女性が立っていた。彼女はまるで悪魔のような服装を見に纏い、クックックッと不気味そうに口を緩ませる。

 

 「さぁ、我がリトルデーモン達よ。今宵も堕天な時間を過ごしましょう。」

 

 

 彼女は両手を大きく広げ、大声を上げる。一体、誰に向かって言っているのか。よくよく見てみると、彼女の前には1台のビデオカメラと1台のパソコンが置いてある。

 

 そのパソコンを覗いてみると、彼女が映し出されていて画面には多くのコメントが寄せられていた。

 

 

 どうやら、彼女はインターネットを通じて生放送をしているらしい。実際にコメントの数からして相当人気な配信者だと伺える。

 

 

 「今宵、私が行う儀式は数多の商品を扱う秘密な場所から調達した堕天使ルシファーが精製し漆黒刺激液体と堕天使ベルゼブブが精製し甘糖丸菓子を使った儀式よ。」

 

 

 女性はそう言って、黒い袋から彼女の言う漆黒刺激液体と甘糖丸菓子を取り出す。

 

 「クックックッ………。この2つを出して何を行うのか想像もつかないでしょう。でも、安心しなさい。この甘糖丸菓子を、この漆黒刺激液体に投入するだけだから。一体、どうなるのか想像もつかないでしょう??」

 

 彼女はまるで毒薬を作る魔女のように不気味そうに笑いながら、甘糖丸菓子の封を開け、いくつか本体を取り出してそれを漆黒刺激液体の中へとぶち込もうとする。

 

 「さぁ、見てなさい。今宵のこの瞬間、新たな堕天使歴史が誕生すr」

 

 

 

 

「誕生させてたまるかぁぁぁぁぁ!!!」バタン

 

 

 

 

 甘糖丸菓子が漆黒刺激液体に触れようとした瞬間に部屋から1人の男性が乱入し、彼女から儀式で使おうとした2つを強引に取り上げる。

 

 その後、ビデオカメラの電源を消して強制的に放送は終了となった。

 

 「ちょっと何するのよ!!明!!」

 

 女性は怒りの感情を孕ませた声で、男性の名を呼ぶ。すると、明と呼ばれた男性は彼女の頭をガシッと掴んだあと、ニッコリィ〜と顔は笑っているが明らかにブチ切れのオーラを漂わせて一言呟いた。

 

明「善子。………お前、今すぐ正座な。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「…………うす。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

明「おい、馬鹿善子。どうして自分が正座させられてるのか分かるよな??」

 

 俺は善子の部屋に置いてあった椅子を足を組みながら座り、目の前でビクビクと震えている善子を睨みつけていた。

 

善子「目の前で誰もが見出すことの無かった驚愕の儀式を「真面目に答えないと、そのシニオンを引きちぎるぞ。」………はい、分かってます」

 

 ったく………、こいつはどうしてすぐに厨二病発言と行動をするのだろうか。何かあった時のために密かにまとめている有名な精神科病院のリストを渡してやろうか。

 

 

明「あのな。確かに、今日はお前からの使命で出たくもない動画の手伝いを引き受けてるけどな。俺が来る前から撮影始めてんじゃねぇよ。」

 

善子「うぐぅ…」

 

 そもそも、どうして善子の生放送中に俺が彼女の部屋に飛び込んできたのか。

 

 それは数週間ほどの前か続いているAqoursのメンバーからの使命を引き受けるという罰がある。過去に2年生組と3年生組と来て遂に1年生組の3人のみとなり、その1人目が善子。

 

 使命内容は彼女が定期的に放送している動画内容を手伝うというものだった。

 

 せっかくの花丸との大切な時間をこんなことで潰されることになるとは………。津島 善子許すまじ。

 

 

 俺は嫌々という気持ちでありながらも、使命なので善子の住むマンションへと赴いて、善子の母親によって中に入れさせて貰った。

 

 善子の母親に挨拶した時、彼女は頬に手を当ててこう言ったのだ。

 

善子ママ「おかしいわねぇ………。善子、もう撮影始めてるけど…………」

 

明「ーーーーーーーはい!?」

 

 善子母の言葉を聞いて、すぐに彼女の部屋に入ったら本当に撮影してて、しかもその放送内容が明らかにおかしかったので全力で止めたのである。

 

明「てか、なんだよ。漆黒刺激液体と甘糖丸菓子って。ただのコーラとメントスじゃねぇか。」

 

 俺は片手にコーラ。そしてもう片方の手にメントスを持ってツッコミを入れる。この2つの組み合わせと言ったらアレしかないだろう

 

明「お前さ、なにあんなシリアスな雰囲気を漂わせながらごく自然とメントスコーラをしようとしてんだよ。善子よ…………お前はいつから底辺You〇uberになった??」

 

善子「ゆ、You〇uberじゃないわい!!ニ〇生配信者よ!!あと、ヨハネ!!」

 

 そんな大差ないわ!!You〇ubeもニ〇生も!! 会社が違うだけだろ!!

 

 

明「はぁ………、とりあえずお前にもう1度聞くぞ??俺は今日、お前の動画配信の手伝いをする。これでいいんだよな??」

 

 

善子「………ふん、そうよ。」プイッ

 

 なんで、ちょっと怒ってんだよ。怒りたいのは俺の方だわ。プイッってしてないで、俺の顔を見ろ。

 

 

明「じゃあ、何で俺が来る前にやったんだよ。」

 

 

善子「アンタが来るのが遅いから我慢できなかったのよ!!何で10時に来るの!!」

 

 

 何で10時に来たかって??それはね………

 

 

明「お前が10時に来いって言ってたからだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」グリグリィ

 

 

善子「にゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 ブチッと俺の何かがキレると俺は叫びながら善子の頭に目掛けて全力グリグリの刑を処す。善子は当然ながら、涙目となって痛がっていた。

 

善子「し、死ぬかと思った………」

 

明「ったく……。こうなるなら、今日、花丸と出掛ければ良かったわ」

 

善子「リア充爆発しろ」ボソッ

 

明「なんか言ったか??」ガシッ

 

善子「い、いえ。何も言っておりません。」

 

 こいつは目を離したら直ぐに何かやらかすな。本当にそのシニオンを引きちぎってやろうか。

 

明「んで、なに??俺って結局帰っていいの??」

 

 善子は何も言わず、首を左右に振る。どうやら、ダメらしい。なんなんだ、こいつは。

 

善子「今日、放送するネタが1人だけじゃ不可能だから明に協力して欲しいの。」

 

明「協力??」

 

 てか、この子普通にネタって言っちゃったよ。

 

善子「えぇ。内容は撮影中に説明するわ」

 

明「打ち合わせはしない流れなのか??」

 

善子「ここで説明しちゃったら、動画内で説明するとき二度手間でしょ。それにリアクションとかもその場のやつが欲しいしね。打ち合わせなしでも、明のトーク力だったらいけるわよ。」

 

 そういうものなのだろうか。まぁ、動画撮影とか経験豊富な彼女がそう言うのならばそうに違いないか。ここは、善子に従っておこう。

 

善子「明。はい、これ」

 

 善子は棚からゴソゴソと漁り、ある物を俺に差し出す。それを受け取ると仮面ライダーの敵としてよく出てくるショ〇カー隊員のマスクだった。よくこんなの持ってんな

 

明「何これ??」

 

善子「一応、身バレ防止用のマスクよ。特定されたら困るでしょ」

 

 ほぉ〜、なるほど。そこら辺のプライバシーとかはちゃんと考えてくれてるのね。

 

善子「あと、ズラ丸からもこれしない限り、明を動画に出すなって言われてるから」

 

明「花丸??」

 

 花丸?るどうしてあいつが善子の使命内容を知ってるんだ??

 

 

善子「いくら使命とはいえ、彼氏が違う女と一緒に過ごすとなったら、彼女のズラ丸からしたら嫌な気持ちになっちゃうでしょ??例え、それがグループの大切なメンバーだとしても。だから、私とルビィは事前にズラ丸に使命内容を伝えてあるのよ。」

 

 

明「……………ッッ」

 

 

 善子の言葉を聞いて、俺は自分の頬を全力で殴りたい気持ちとなる。

 

 もし、これが逆の立場になった場合………、つまり花丸が俺とは違う男と2人で過ごすと考えると

 

 口から心臓が出るほど不愉快で心配になる。その男を殴ってやりたいほどに。

 

 彼女の気持ちを配慮することが出来なかったこんな自分が恥ずかしい。

 

 俺って奴は花丸の彼氏……失格だな。

 

善子「………あと、ズラ丸はこう言ってたわよ」

 

明「??」

 

善子「『もし、マスク付けずにそのまま素顔で動画に出ちゃったら……放送を見た女の子がカッコイイ明くんのことを好きになっちゃうかもしれないずら。それだけは……嫌かな。明くんはマルの彼氏さんだもん』だって。良かったじゃない。ズラ丸から愛されて」

 

 なんだよ………それ。やべぇ、俺、今めちゃくちゃ泣きそう。俺の彼女が優し過ぎてかなり辛い。けど、凄く嬉しい。

 

善子「嬉しすぎて泣きたい気持ちは分かるけど、そろそろ撮影始めるわよ」

 

明「分かった。」

 

 今度、花丸を高級な店に連れてってやろうと心の中で決意する。ルビィにはSaint Snow のグッズでいいか。どうでもいいけど、確か今、黒澤家って旅行行ってるんだっけな。本当にどうでもいいな。

 

 俺はショッカー隊員のマスクを被る。よし、これを被ったらやると言ったらアレしかない。

 

明「(・罒・)/イー!!!」

 

善子「プッ………ククッ、絶対にやると思った」

 

 善子は手を口に当て笑うのを我慢しながら黒いローブを再び身に纏い、部屋を消してから目の前にある蝋燭に火をつける。

 

善子「あぁ………、やっぱりこうすると雰囲気が出てかっこいいわぁ」クックック

 

 まぁ………、否定はしないな。俺も男の子だからこういう雰囲気は嫌いではない。

 

 そして、善子はカメラの位置を確認したあと撮影ボタンをポチッと押した。

 

善子「我がリトルデーモン達よ。御機嫌よう。貴方達の支配人である堕天使ヨハネよ。今宵も堕天の時間を楽しみましょう。」

 

 善子はいつもの堕天使ポーズを決めながらカメラの前で語る。こいつ、相変わらず見た目だけは一丁前に様になってるんだよな。

 

 カメラの画面外で、パソコンに目を移すと案の定数多くのコメントが送られていた。

 

善子「今宵の今日は、特別なゲストを呼んでるの。紹介するわ。リトルデーモン0号『アカリリー』よ!!」

 

 お、堕天使ヨハネ(爆笑)に呼ばれたので行かなくては。てか、アカリリーって呼んじゃったら知ってる奴は俺って分かるじゃねぇか!!マスク被ってる意味ねぇよ!?

 

 少しだけ緊張しながらも俺は善子の隣に立ってまたしてもショッカー隊員のポーズを取って高い声を出す。

 

明「( ˙罒˙)/イー!!!」

 

善子「ッッ!?(ちょ、それでやってくの!?www待ってwww無理www絶対に笑っちゃうwww)ケホケホ………よwよろしくね、アカリリー。」

 

明「( ˙罒˙)/イー!!!」

 

善子「ッッ(待ってwww本当に無理なんだけどwww)……い、今から行うぎしぃきは……こ、これよ。」

 

 

 俺のショッカー隊員のモノマネがツボってるのか、善子は笑うのを我慢しながら真顔を装って言葉を述べていく。次第に彼女から青筋が見事に浮かび上がっていることを確認したところで、ふざけるのを辞める。

 

 

 コホンと咳き込んだ善子は懐から1つあるものを取り出してテーブルの上に置く。

 

 

 善子「これは数多の堕天使が己の魔術力を競い合うために作られしマジックアイテム。その名も『テレパシー』よ。」

 

 

明「『テレパシー』??」

 

 善子がテーブルの上に『テレパシー』というマジックアイテム(?)の箱から中身を取り出し、準備を始めていく。

 

善子「これ、あんたのね」

 

明「??」

 

 善子から1枚のボートを渡される。そのボードには色んなマークが書かれていた。

 

善子「『テレパシー』が分からないリトルデーモン、そしてこの作品を呼んでくれてる読者のために説明するわね」

 

 読者とか言うな、読者とか。メタ発言やめい。

 

善子「ルールは至ってシンプル。このボードにはA~Rの横列。1〜18の縦列に9色、9つのマークがそれぞれ書かれているわ。それぞれ違う組み合わせで計320種以上のマークがあるのよ。」

 

 あ、本当だ。善子の言う通り、横列には英語。縦列は数字。そして ●・★・♦・♣︎・☀︎・☪︎・▪️・⚡︎・♥の9つのマークが書かれていた。

 

善子「そして、挑戦者はそのマークを1つ選択してボードに印をつけるの。それを互いに問い掛けあってこの320種類以上ある中から選び抜かれたマークを当てるっていう儀式よ。解答権は1回だから慎重に言葉を選ばなければならない、この儀式。クックック……、どう??楽しそうでしょ??」

 

 なるほどねぇ……。頭脳戦ってわけか。確かに、ルールを聞いた感じ楽しそうではあるが…………

 

 それ………儀式じゃなくて…………ボードゲームじゃね??

 

 え、何??こいつは『テレパシー』の商品紹介するつもりなの??企業さんから案件でも貰ってる??

 

 そう思うと、ますますYou〇uberっぽい。

 

善子「ちなみに質問の問は必ず本当のことを言うことよ。」

 

 ふむ。了解だ。

 

善子「それじゃあ、アカリリーよ。マークを1つ選びなさい」

 

 どうなら、ゲームは開始されるようだ。んー、そうだな。適当に青色の☪︎マークにしておこう。

 

善子「決まったかしら??」

 

明「( ˙罒˙)/ィー!!!」

 

善子「そう。じゃあ始めるわよ。あ、負けたら罰ゲームありで。『テレパシー』開始!!」

 

 ちっ………、もう慣れやがったか。

 

 まぁ、それは置いておいて。ゲームは始まった訳だが俺は善子が選んだマークを当てなければならない。てか、何ちゃっかり罰ゲームも入れてんだよ。

 

 さて………どんな質問にしようか。

 

善子「私から質問いいかしら??」

 

明「どうぞ。」

 

善子「あなたが選んだマークは暖色系かしら??それとも冷色系??」

 

 こいつ、最初の質問から飛ばしてくるな。これだけでもかなり絞られてしまう。

 

 赤、青、黄、緑、桃、橙、茶、灰、紫の9色あるうち、4色は潰される。

 

 まぁ、まだ1回目の質問だ。正直に答えておこう。

 

 「冷色系だ。」

 

 「…………なるほどね。」

 

 カキカキと善子はメモをする

 

 「次は俺の番だ」

 

 「どうぞ。」

 

 「お前が選んだマークは現実で今までに俺はお前の目の前で目撃、もしくは手にしたことはあるか??」

 

 「…………………フゥム」

 

 俺も最初の質問は結構攻めてみた。善子は顎に手を当てて何を答えようか悩んでいるように見える。

 

 この質問の意外のポイント。それは『善子の目の前で』というワードを入れたことだ。

 

 もし、普通の質問ならばどれも目にしてるし手にしてるから簡単に「Yes‼︎」と答えられる。だが、善子の前ということになると話は別になる。

 

 例えば、⚡︎とかそうだ。⚡︎だったら、過去に何度も目にしたことがある。だが、善子の目の前ではまだ1度も見たことは無い。

 

 つまり、色同様、この質問の回答だけで善子が選んだマークを絞ることができるのだ。

 

 

 「……質問の答えはYesね。」

 

 

 「Yes………か。」

 

 ふむ。もし、彼女が言ってることが正しければ残ったマークは5つに絞られたって訳か。メモしておこう。

 

善子「貴方が選んだマークは………今この場から見えるかしら??」

 

 んー、どうだろう。昼間でも は見ることができるとは思うけど……ここは窓やカーテンで閉めきってるから見えねぇ。

 

明「見えない」

 

 俺は正直に答えると、善子はクックックと笑い出す。え……なんなん??

 

善子「貴方が選んだマークは☀︎か☪︎、もしくは★の3つのどれかね」

 

明「ーーーーーッッ!?」

 

 なっ!?どうして、そこまで絞ることが出来た!?

 

善子「どうしてって顔ね。理由は至って簡単よ。私の問いかけに貴方は一瞬だけど窓の方に視線を移した。つまり、選んだマークは外………いや、空にあるものだと推測される。」

 

 くっ………、やってしまった。どうやら俺は善子の策にまんまとハマってしまったようだな。

 

 これで、圧倒的に不利な状況へとなってしまった。

 

善子「次はアカリリーの質問よ。なんなら、2回連続で質問しても構わないわ。有難いと思いなさい。」

 

 うわぁ………、俺とは逆に余裕があるからか、舐めプしてきやがった。まぁ、でも状況が不利だということは事実。悔しいところではあるが、有難くその権利は頂戴しておこう。

 

明「じゃあ、まず1つ目。お前が選んだマークは今日中に必ず俺は目にすることは可能か??」

 

 俺の問いに善子は真顔ですぐに答える。

 

善子「…………ないわ。」

 

明「…………は??」

 

 ちょっと待て。ない………だと。

 

 それはおかしいな。残っている候補5つの内、必ずしも今日中には目にするはずだ。

 

 つまり、こいつはどこかで嘘を言っている??いや、そんなはずは無い。質問の問いはルール上本当のことを言わなければならない。

 

 善子の顔を伺うと、ムカつくほどとドヤ顔をしてギランとしていた。これは………なにかを企んでいる顔だな。

 

 ………ん??てか、ちょっと待て。

 

 俺は1つ、ある仮定が頭の中で思い浮かぶ。しかし、これはとても邪道なものだ。

 

 本当ならば、ありえないことだがこれじゃないと辻褄が合わないし、どうせ善子のことだ。めちゃくちゃやりそう…………。

 

 よし、この仮定が本当ならばマークは特定できた。あとは色だけだな。

 

 それにまだ質問権は1個残っている。

 

明「ヨハネよ…………。お前が選んだマークの色はお前が好きな色か??」

 

善子「…………」

 

 今まではマークだったのに、突然と色に関しての質問にチェンジしたので一瞬だが、表情を、しかめたのを俺は見逃さない。

 

 それに……………

 

善子「えぇ。……好きね。」

 

明「分かった」ニヤ

 

 よし、これで2つまで絞れた。最後の質問で決まるな。

 

 善子の質問は適当に答えることにしよう

 

善子「マークは明るい時に見えるもの??それとも暗い時に見えるものかしら??」

 

明「基本的には暗い時に見えるな」

 

善子「…………ん」

 

 

 これで、善子の中で俺が選んだマークは☪︎か★のどちらに絞られたはず。だが、まだ特定は出来ないはずだ。

 

 

 次の俺の質問で決めてやる

 

 

明「お前が選んだマークの色は暖色系か??それとも冷色系か??」

 

 

 善子が最初にしたやつと同じ質問を行う。この質問の答えによって勝負は決まる。

 

 

善子「……冷色系よ。」

 

 

 冷色系…………ね。つまり、善子が選んだ色はあれに違いない……。

 

 

善子「次は私の質問ね」

 

 

 悪いな、善子。お前に次の質問はないぜ。

 

 

明「紫色の♦」

 

 

善子「ーーーーーーーッッ!?」

 

 

明「それが、お前が選んだマークだ。」

 

 俺の唐突の解答に善子は目を丸くする。

 

 俺は善子の傍にある伏せてあるボードを手にしてひっくり返す。

 

 すると、善子のボードに印が付いてあったマークは…………

 

 

 紫色の♦だった。

 

 

 

明「ビンゴ」

 

 

 

 この勝負………俺の勝ちだ。

 

 

 

善子「どうして………分かったのよ。色はともかくマークは……」

 

 

 勝負に負けた善子はありえないといった表情を浮かべ、声を震わせる。

 

明「確かに俺はお前の目の前で を目にしたことは1度も無い。だから、最初の質問以降は候補から外していた。」

 

善子「うん。そうよね」

 

明「だけど、2回目の質問の答えを聞いておかしいと思った。今日中には目にすることは無いとお前は否定した。」

 

 元々あった5つの候補は絶対に目に通すと思うし、元々外してあった4つの候補だとしても「ないと思う」みたいな感じで答えるのが基本だ。でも、善子は「ない」と完全否定した。

 

 つまり…….善子は選んだダイヤのマークは絶対に今日は見ることは無いというもの。だが、ダイヤは本物じゃなくともテレビやSNSなどで目にする可能性は十分にある。

 

 今日中に絶対に見ることは出来ないダイヤ。

 

 

 それは………

 

 

明「お前、♦をダイヤちゃんとして捉えて答えてたろ」

 

 

善子「なっ!?どうしてそれを!?」

 

 

 どうやら、この過程は当たっていたらしい。確かに、 をダイヤちゃんとして捉えていれば全てがまとまる。まとまらなきゃおかしいんだ。

 

 1つ目の質問。確かに は見たことは無いものの、ダイヤちゃんならば当然ながらメンバーなので、善子の目の前で目にしたことがある。

 

 2つ目の質問。今日中に見ることは可能かどうかのやつ。善子の言う通り不可能だ。なぜなら、今、黒澤家は旅行満喫中だ。それはグループみんな知ってること。今日中に彼女に会うことは不可能だ。

 

 めちゃくちゃ汚いやり方ではあるが、ここでマークは特定できた。

 

 続いて色に関して。これはすぐに分かった。

 

 善子の好きな色………、本来ならば黒とかが好きなイメージがあるが、今回はない。

 

 ここだけの話、善子は梨子のことが大好きだ。これは、別に同性として好きとかではなく、後輩が先輩に懐いているみたいな感じだが、最近は常に一緒にいる覚えがある。リトルデーモン『リリー』と名付けられるぐらいだしな。

 

 

 さらに、1年生組で出かける時とかだと、「リリーの色だ。買お」と梨子の髪色である赤紫色系のアイテムをたまに購入する場面も目にする。

 

 

 だからこそ、善子の好きな色は赤紫色となる。

 

 だが、今回は赤紫色はないので紫色としたいが赤色という可能性もあるので、暖色系である赤、冷色系である紫のどっちかを最後に聞いたわけである。

 

 まぁ、冷色系って答えたから紫色って分かったんだけどな。

 

 

善子「くっ………、私のしたことがまんまと敗北してしまうなんて………」

 

 善子はガクッと手と肘を地に付ける。表情を見た感じ、とても悔しそうだ。

 

 

善子「………これにて、今日の配信は終わるわ。また明日の夜に会いましょう。」

 

 

 立ち上がった善子は締めの言葉を言ったあと、ビデオカメラの撮影を止めた。ついでに俺はショッカーのマスクを外す。あ、涼しい…………。

 

 

善子「お疲れ様、明。」

 

明「お、おう。お疲れ」

 

 俺と善子はボードゲームを片付ける。善子の顔を伺っても少し暗いままだ。

 

明「楽しかったな」

 

善子「えぇ。」

 

明「今度は花丸やルビィ達とやろうぜ」

 

善子「えぇ。」

 

明「…………まだ根に持ってんのか??」

 

善子「別に………ただ、 ほぼイカサマっぽいことしておきながら負けたことについて根に持ってるわけじゃないし」

 

明「バリバリ根に持ってんじゃねぇか…………」

 

 相変わらずプライド高くて面倒くさい女の子だな。そうなるなら、しないほうがよかったのに…………。しょうがねぇな〜………

 

明「また、今度……動画に出てやるよ」

 

善子「ーーーーーーーッッ」

 

明「リベンジ戦っていうネタでまた今度出てやる。その代わり、イカサマは無しな。あと、もっと面白いボードゲーム見つけてこいよ」

 

 初めてボードゲームやってみたけど、楽しかったしな。

 

善子「…………そこまで明がやりたいっていうなら仕方ないわねー。堕天使ヨハネがその願い、叶えてあげましょう!!」

 

 えぇ………(困惑)。ヨハネ様………チョロすぎませんか??まぁ、この時の善子の方が俺は好きだけどな。

 

 

善子「ありがとう……明」ボソッ

 

 

明「ん??何か言ったか??」

 

善子「いいえ、何も言ってないわ」

 

 なんだよ、それ。気になるじゃんか。別に言及しないけど……。

 

 

 ………あ、そういえば。

 

 

 

明「お前、言ったよな??負けた人は罰ゲームだって。」

 

善子「何それ??」

 

明「言ったよな??」ガシッ

 

 ムカついたので、善子の頭を掴む。

 

善子「………言いました」

 

明「よろしい」

 

 俺は思いっきり掴んでいた手を離す。すると、善子は涙目で俺を睨みつける

 

明「なんだよ」

 

善子「将来、〇〇になる奴がこんなことして良いと思ってるの??」

 

明「これも荒治療の1つだからいいんだよ。」

 

善子「良くないからね!?」

 

 善子はそう言ってため息を吐く。冗談だよ、冗談。

 

明「それじゃあ、罰ゲームの内容いいか??」

 

善子「えぇ。なんでも来なさい。その代わり、処女はあげないわよ」

 

 なんでそうなるん!?要らなくはないけど、要らんわ!!って、そんな事言うなよ。

 

善子「さっきのお返しよ」

 

 善子はニヤッと可愛らしく微笑む。それを見てドキッとしてしまったが、それを含めてムカついたので罰ゲーム内容を口にした。

 

明「罰ゲーム内容は………………」

 

 それを聞いて、善子は……………

 

善子「は??」

 

 案の定、めちゃくちゃ嫌な顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、次の日の夜。いつもの時間に堕天使ヨハネは動画を配信したのだが、その時の彼女は厨二病発言の語尾に「にゃ」がついていたらしい。

 




改めてお気に入り・感想・高評価お待ちしております。


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『人殺し』は黒澤 ルビィに使命を与えられる

使命シリーズルビィ編です。今までに比べたらそこそこ短めですが、ご了承ください。




 今日の静岡県は朝から天気が悪く全地域に渡ってザーザーと雨が激しく降り注でいた。

 

 外に歩いている人達は皆、当然ながら傘をさしており、雨を弾く音がリズミカルに、そして何気に心地よく鳴り響いていることだろう。

 

 俺もその内の1人で、こんな天気の悪い中に沼津駅付近でとある人物を待っていた。

 

 少し早めに到着してしまったため、俺は音楽アプリで『未体験Horizon』をループで聞くことにする。この曲は彼女である花丸がセンターを務めた特別な曲だ。リリースされてからは100万回ぐらいは聞いてる。まぁ、彼氏としては当然だな。

 

 サイトの方で配信したPVも急上昇で1位をランキングするほど好評であった。これはAqoursにとって、そしてマネージャーとしても嬉しいことだ。

 

 だが、今回のライブ衣装は蝶をイメージしており結構際どい衣装であるため、コメントでもそこを性的な感じで指摘するファンも多数いた。そいつらは即退会させたんですけどね。

 

 てか、最近のAqoursのライブ衣装が攻めてる気がするのは俺だけでしょうか??今回の『未体験Horizon』だけでなく来週辺りに配信する予定である新曲の『KOKORO Magic AtoZ』もアラビアンなテーマであるため、セクシー寄りなライブ衣装になってた気がする。衣装組よ、何考えてんだ。いいぞ、もっとやれ。(矛盾)

 

 

 余談は置いておいて、曲が3回目に入ろうとした所で誰かにちょんちょんと肩を叩かれる。振り向くと今日会う人物がニコーと微笑みながら赤髪のツインテールを揺らせて立っていた。

 

ルビィ「明くん!!おはよう!!」

 

明「おはようさん。」

 

 今日、会う人物とはルビィのことだった。はい、もうここでお察しでしょう。そうです。例の使命シリーズの件です。詳細はもう言わなくても大丈夫だろう。分からない人は過去の7人分の話を読んでくれ。

 

 てか、おかしいな。来るのはルビィだけのはず。なのに……………

 

明「なんで、ダイヤちゃ………さんまでいるんすか」

 

ダイヤ「ルビィを見送りに来たのですわ。」

 

 ルビィの隣には彼女の姉であるダイヤちゃんがいた。なぜか、黒服にサングラスをかけて。SPか、何かかアンタは。

 

ダイヤ「明さんなら特に問題無いと思いますが………ルビィをよろしくお願いします。」

 

明「あ、はい。…………まさか、それだけを言いにわざわざここまで??」

 

ダイヤ「えぇ。そうですが??」

 

明「いえ、何も………。」

 

 流石はシスコンin内浦でNO.1であるダイヤちゃんだ。それを言いにわざわざ沼津駅まで来てくるんだから。でも、それほどルビィのことが大好きで心配だったんだろうな。

 

ダイヤ「では、私はこれで。ルビィ、頼みましたわよ」

 

ルビィ「うん!!任せて、お姉ちゃん!!」

 

 ダイヤちゃんは微笑みながらルビィにそう言って、帰って行った。

 

明「なぁ、ルビィ。結局、お前の使命ってなんなの??」

 

 ピッと改札を通り、電車が来るのを待っている間、俺はルビィに話しかける。未だに使命の内容は聞いてないからな。電車使うってことはどこかで何かのイベントがやるのか??………ゔっ、過去の百合イベントを思い出してしまった。

 

ルビィ「隣町にある店で期間限定でスクールアイドルのショップがオープンしたの。だから、明くんに付き添いで来て欲しくて………。」

 

 あぁ、なんかその情報、SNSで見た気がするな。でも………

 

明「付き添い??」

 

ルビィ「うゆ。」

 

 スクールアイドルオタクの黒澤姉妹だったら既に行ってると思ったんだけどな。それに、わざわざ使命件を使わずともダイヤちゃんが付き添いでいれば大丈夫だったろうに。

 

ルビィ「お姉ちゃん……、ここ最近はお稽古の予定が入ってて一緒に行ける機会が無かったんだ…………」

 

  あ、そゆこと。だから、1人じゃ危ないからせめて俺を付き添いで行かせるという条件を両親かダイヤちゃんに言われたのかな。

 

ルビィ「それにルビィも明くんに用があったから………」

 

明「用??」

 

ルビィ「うん。また、後で言うけど……」

 

 ルビィから俺に用があるなんて、珍しいな。どういう内容なのか、思い付きもしない。

 

 『次は〜〇〇駅〜。〇〇駅〜』

 

ルビィ「この次だよね!!」ニコニコワクワク

 

明「違う違う!!ここだから!!早く降りる準備しろ!!」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 俺とルビィという珍しい組み合わせの1日はドタバタしながらも幕が開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「わぁ〜〜〜♪」

 

 目的の店に到着し、中に入るとそれは凄いものだった。

 

 周りはスクールアイドルのグッズで埋め尽くされていた。今日だけでなく、以前にも何店舗か1年生組でスクールアイドルのショップとか行ったことはあるがそれを遥かに凌駕するほどの規模の大きさだった。

 

 伝説のスクールアイドル、μ'sやそのライバルA‐RISEといった有名なスクールアイドルの他にも現在、活躍してるスクールアイドルやマイナーなスクールアイドルまで。とにかく種類が豊富だった

 

 隣にいるルビィも目をキラキラとさせている。

 

ルビィ「明くん!!行こう!!」グイグイ

 

明「分かった!!分かったから腕を引っ張るな!!」

 

 ルビィに腕を引っ張られて店の奥へと進む。へぇー、本当に色んなグッズがあるな。店のBGMも聞いた事があるスクールアイドルの曲だし………。これは、確かにスクールアイドル好きにとっては楽しい場所だな。

 

ルビィ「このスクールアイドルのグッズも売ってるんだぁ!!ピギィ!?こ、このグループも!?す、凄すぎるよぉぉぉ。」

 

 ルビィは色んなグッズを物色しながらいちいち驚き、そして嬉しそうな反応を見せる。本当に好きなんだな。

 

 …………お。ここは

 

明「ルビィ。Aqoursのグッズが売ってるぞ」

 

ルビィ「本当に!?………わぁ〜」

 

 とある場所にはAqoursのグッズコーナーがあった。しかも、有難いことにそこそこ大きな規模で。

 

 クリアファイル、アクリル、下敷き、缶バッチなどにAqoursのメンバーが全員で、若しくは個人でプリントされているグッズが数多く売られていた。

 

 しかも、商品の数の減り具合を見た感じそこそこ売れているそうだ。

 

ルビィ「ルビィがいる!!えへへ……。なんか嬉しいな」

 

明「当たり前だろ。お前もAqoursの1人なんだからな」

 

ルビィ「ありがとう!!……あ、明くんのグッズもあるよ??」

 

明「( *'ω')ファッ!?」

 

 

 おい、今なんて言った!?俺のグッズがある!?そんな訳…………

 

 

明「あったよ………」

 

 俺がプリントされているグッズが何種類か販売していた。いや、なんで!?どうして、俺が売られているの!?俺、マネージャーだよ!?

 

ルビィ「あれ??明くん知らない??」

 

明「何が??」

 

ルビィ「前の地区予選のスピーチの時、明くん出たでしょ??」

 

明「うん。」

 

ルビィ「ネットで結構話題になってたんだよ。『Aqoursを支えた1人のイケメンマネージャー』って。」

 

明「なんだよ、それ…………」

 

 俺の知らないところでそんなのが取り上げられていたとは…………。あれ、姉ちゃん達に俺の存在を知ってもらうためだけにやった事なのに……………。めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。

 

ルビィ「それにほら」

 

明「ん??」

 

 ルビィがとある場所に指を刺す。その方向に視線を移してみると

 

 

女性1「明様のグッズだぁー。使用用、観賞用、保存用買おっと。」

 

女性2「この人を見下してるようなキリッとした目………堪らない!!」

 

女性3「はぁ………尊い!!」

 

 

明「……………ッッ!!!!????」

 

 

 ごめん、ちょっと待て!!もう、状況がわからないです!!ちょっと、ルビィさん。説明お願いします!!

 

ルビィ「うゆ………。どうやら、明くんのキリッとした目がMっ気あるファンの中で人気らしいよ。」

 

明「嘘でしょ…………。俺、今日で初めて理亜姉ちゃんと同じ容姿で産まれてきたことを後悔したよ。」

 

 理亜姉ちゃんならともかく、俺はそんなSとかじゃないから。NormalのNだから。え??『人殺し』がNormalな訳ないだろって??正論だよ、チクショー。

 

ルビィ「明くん………、がんばルビィだよ。」

 

 何に対してのがんばルビィだよ。頑張る意欲なんて全く湧かんわ。フォロー下手か、お主。

 

 なんか、色々と知りたくない事実を知ってしまったが………折角ここに来たので気を取り直して楽しむことにしよう。考えたら負けだ。

 

 よーし。俺のグッズなんか放っておいて、他のメンバーのグッズでも見よう。

 

 

 ーーーーーお。

 

 

明「………これは」

 

 俺が手にしたのは花丸(未体験Horizonの衣装ver)の抱き枕だった。他にも花丸のグッズは売られているのだが……やけにこの商品だけが気になってしまう。

 

 ぶっちゃけた話をするならば、かなり欲しいです。でも、彼氏がスクールアイドルやってる彼女の抱き枕を購入するっていうのもなんだか気が引ける。てか、ドン引きする。

 

 けどな〜……うーん……どうしよう……。

 

ルビィ「…………」ニヤニヤ

 

 俺が悩んでいると、隣にいたルビィはニヤニヤと小悪魔のような微笑みをしながら俺を見つめていた。

 

明「なんだよ………」

 

ルビィ「別に。明くんは本当に花丸ちゃんのことが好きなんだなって」

 

明「…………当たり前だろ。」

 

 俺にとって、花丸は自分の命よりも大切な存在だ。彼女の為ならば何だって出来る。例え、それが身を滅ぼすような事だとしても………。

 

ルビィ「ねぇ、明くん。1ついいかな??」

 

明「ん??」

 

 さっきまでニヤニヤしてたルビィが過去に1度も見たことがないぐらいに真剣な表情を浮かべて俺に話しかける。

 

 

ルビィ「絶対に花丸ちゃんを幸せにしてあげてね。」

 

 

明「ーーーーーッッ…………」

 

 ルビィの一言で俺は一瞬だけ動揺してしまう。それほど、彼女から発せられたたった一言の重みは相当なものだった。

 

 

ルビィ「ルビィにとってもね、花丸ちゃんは明くんと同じ凄ーく大切な人なんだ。」

 

 

 ルビィは花丸のグッズを手に取り、懐かしむように言葉を続ける

 

 

ルビィ「人見知りで臆病で………ずっと1人だったルビィに花丸ちゃんは声を掛けてくれた。それからね、ルビィの人生は大きく変わったの。花丸ちゃんはルビィと一緒にいてくれた。高校に進学してもルビィの隣にいてくれた。Aqoursに入部する時もルビィの背中を押してくれて勇気をくれた。そのあとも花丸ちゃんもAqoursに入ってくれて……また一緒になることが出来た。」

 

 

明「………………」

 

 

ルビィ「ルビィね。花丸ちゃんが、明くんとお付き合いするって聞いた時、とても嬉しかったんだ。花丸ちゃんと明くんはお似合いだと思うし、最近の花丸ちゃんは本当に幸せそうだったから…………。」

 

 

明「……………ルビィ」

 

ルビィ「花丸ちゃんが幸せなら、親友としても嬉しいよ。だけどね、時々心配になっちゃうことがあるんだ。明くんならありえないことだと思うけど………、もしかしたら花丸ちゃんを裏切ってしまうんじゃないかって………。」

 

 

 そんなことは…………

 

 

ルビィ「ないよね。それは分かってるよ。だから、今……ここでルビィの前で誓って欲しい。」

 

 

明「誓う??」

 

 

ルビィ「うゆ。花丸ちゃんをこれから先、裏切らないこと。そして………絶対に花丸ちゃんを幸せにするっていうことを。親友であるルビィの前で…………誓って欲しいの。」

 

 

 ルビィは真剣な眼差しで俺を見つめる。恐らく、俺に用があるっていうことはこれの事………なんだよな。

 

 

 彼女にとって、花丸は俺と同じ様に特別な存在だ。俺にとって人生を変えてくれた奥山 零さんが恩人のようにルビィにとっての国木田 花丸も恩人なのだろう。

 

 そんな恩人かつ親友が俺と付き合うとなれば、例え俺を信頼してくれているとしても、花丸のことを心配してしまうのも無理はない。

 

 

ルビィ「もし、花丸ちゃんを悲しませたり、傷つけるようなことをしたら………ルビィは明くんを絶対に許さない。」

 

 

 ルビィのこの言葉に嘘はない。もし、そのようなことをしてしまったら本当に彼女は俺のことを軽蔑するだろう。なんなら………手を血に染めるような勢いだ。

 

 でも、心の底から花丸のことが大好きだからこそルビィは俺に忠告していることが分かる。普段のルビィならこんなこと必ず言わない。

 

 だからこそ、俺は瞳に涙を溜めているルビィの頭の上に手を置いて優しく撫でながら彼女に言葉を出した。

 

 

明「あぁ………、誓うよ。俺は花丸を悲しませないし、裏切らない。絶対に彼女を幸せにする。だから……心配するな」

 

 

ルビィ「…………本当に??」

 

明「うん。約束すルビィだ。」

 

ルビィ「えへへ♪」

 

 俺の誓いの言葉を聞いて、ルビィはいつものように可愛らしく微笑む。

 

 よし、ルビィも安心したところで…………覚悟を決めて買いますか。

 

 

 俺は花丸と………ルビィの抱き枕を手にして籠の中に入れる。

 

 

ルビィ「ピギィ!?そ、そ、それ!!ルビィだよ!?」

 

 俺の行動にルビィは顔を赤くして声を上げる。俺は真顔でルビィに向かって言葉を出した。

 

明「ん??知ってるよ。今日はルビィの抱き枕を抱き締めて寝てやろうかな………と。」

 

ルビィ「何で!?」

 

明「理由は特にない!!誰が何を言おうと、俺は今夜、ルビィの抱き枕を抱き締めて寝てやる!!顔とか埋めちゃうもんね!!」

 

 俺はドヤ顔しながら彼女にそう言ったあと、逃げるようにレジの方へ向かった。

 

 

 

ルビィ「ピ、ピギャアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 背後からは彼女の羞恥が籠った悲鳴が響き渡るが無視することにした。南無阿弥…………

 

 

 

 

 

 

 

明「さぁてと、レジレジ〜」

 

 レジの方へスキップしながら向かっていると、俺の視界にとあるブースが視界に入る。

 

明「これは………」

 

 そのブースには俺にとってかけがえのない人物2人のグッズが売られていた。最近は活動中止してるから無いと思っていたが………。

 

明「………………ハハ」

 

 俺は微笑みながら目の前に置かれていたキーホルダーをふたつ手に取って籠の中に入れたあと、レジの方へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「なぁ、悪かったって」

 

ルビィ「ふんだ。明くんなんて知らないもん!!」プクー

 

 俺はぷんすかと可愛らしく怒っているルビィに何度も謝ってるが、彼女は許してくれる気配を全く見せない。因みに、ルビィの両手には俺が購入したルビィの抱き枕があります。没収されました。

 

明「今日のお前が籠に入れてたライブグッズ、全部俺がお金出したからいいだろ??」

 

ルビィ「そう言う問題じゃないもん!!」

 

明「あ、はい………。」

 

ルビィ「お姉ちゃんと花丸ちゃんに言いつけてやるもん!!」

 

明「おまっ!?それはダメだって!!」

 

 うわぁ………、完全にルビィの奴、激おこぷんぷん丸だよ。どうしよう………。ダイヤちゃんと花丸にバレたら絶対に怒られるよなぁ………。俺、次の日の朝日を拝めれるかな…………。

 

ルビィ「ふふ。」

 

 困ってる俺の顔を見て、突然ルビィは笑い出した。え??この子、人の不幸を見て笑うような子だっけ??

 

ルビィ「冗談だよ、明くん。意地悪いことしてごめんね。」

 

明「え??」

 

 話を聞いた感じ、ルビィは花丸を取った俺に対して少しだけ嫉妬の気持ちがあったらしく、それで意地悪をしてしまったという。舌をペロッと出して「テヘペロ」するルビィ。

 

 まぁ………気持ちは分からんでもないが……。

 

 テヘペロがムカついたので、ルビィの両頬をむにーと引っ張り、軽く抓って許してあげました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「あれ??明くん……それって」

 

 両頬が赤く染まっているルビィは俺が持ってるリュックに付いてる2つのキーホルダーを見て指を刺す。

 

明「あぁ、これね。売ってたから買っちゃった」

 

 俺はリュックについてるキーホルダーの方に手を伸ばして触れる。プラスチックのひんやりとした冷たい感触が心地よく伝わる。

 

ルビィ「ふふ。」

 

 ルビィは俺の表情を見て微笑む。その時の俺の顔がなんだか嬉しそうに笑っていたらしい。

 

 『〇〇駅行き〜〇〇駅行き〜』

 

 お、どうやら俺達が乗る電車が来たらしい。

 

ルビィ「もちろん、ルビィの家まで送ってくれるよね。明くん♪」

 

明「仰せのままに………。お姫様。」

 

明・ルビィ「………あははは!!!」

 

 よく分からないやり取りをして俺達は揃って笑いながら電車に乗り込む。

 

 その際、雪の日に見つけた雪の結晶がモチーフとなった姉妹ユニットの2人がプリントされているキーホルダーが微かに揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、函館に建てられているとある店も同じようなイベントがやっていたらしく、当然ながらAqoursのグッズコーナーがあるのだが………

 

 

 

 明のグッズだけ1個残らず完売したらしい。

 

 

 

 たまたま目撃した通行人曰く………

 

 

 サイドテールとツインテールの女性2人が嬉しそうにしながら明のグッズを大量購入していたという………。




 お気に入り・感想・高評価待ってます。

 残り4話となりましたが………楽しんで貰えたら何よりです!!












明「もうすぐ夏休み終わっちゃうけど花丸って俺に使命ある??」

花丸「特にないずら………」

明「そっか。また何かあったら言ってくれよ」

花丸「分かったずら♪」










 だが、結局……………。俺達が高校を卒業するまで彼女は俺に使命を与えることは無かった。


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『人殺し』は国木田 花丸に使命を与えられる

使命シリーズもここで締めっすね。

時系列としては高校を卒業して数年経ってます。




明「はっ………はっ………」タッタッタ

 

 8月が後半へと差し掛かかり多少は涼しくなってきた、とあるの日の夜………俺は息を荒らげながら街中を全力で走っていた。

 

 多分、今の俺の顔は凄いことになっているも思う。途中にすれ違った何人かの通行人が揃って俺の姿を見て驚いていたからな。

 

 だけど、俺はそんなことを気にしてる場合では無かった。とにかく、足を動かさなければならない。

 

 途中、運悪くも信号に捕まってしまったため、その場で足踏みをしながら腕時計に目を通す。

 

 

明「うげ!?やっべぇ!!約束の時間過ぎてるぅ!?」タッタッタ

 

 

 早く!早く!と焦りながら俺は信号が変わるのを待ち、赤から青に変わった瞬間、誰よりも早く駆け出した。

 

 止まることなく走り出して10分後ぐらい経っただろうか。

 

 

 俺はとある高級なレストランの前で止まった。足を止めてからは、膝に手を付けて呼吸を整える。

 

 

 呼吸が整ったあと、俺は走っている最中に落としてないか………と急に心配となってポケットの中に手を入れる。

 

 

 

 すると、手からは小さな箱のような形をした何かの感触が伝わってきた。

 

 

 

明「良かった………。ちゃんとあるわ」

 

 俺は安心しながらそう呟いたあと、そもそも今も時間が遅れてるため、こんなことしてる場合ではないと思い、すぐに店の中へと入る。

 

店員「いらっしゃいませ」ビシツ

 

 店に入ると、ビシッとかっこよく制服を着こなした店員さんが俺の方に近づく。

 

明「あ、今日の8時に予約していた鹿角です。」

 

店員「鹿角様ですね。お待ちしておりました。」

 

明「多分、先に1人来てると思うんですけど………」

 

店員「そうですね。15分ほど前に1人の女性が来店されております。」

 

 

 うわぁ……マジか。15分遅刻かよ。

 

 

店員「それでは、鹿角様。テーブルまでご案内させていただきます」

 

 そう言って、店員さんは店の奥へと進むんでいく。店員さんの後を追っていくと、窓側にあるテーブルへと案内された。

 

 

 

 そのテーブルには1人の女性が席に座っていた。

 

 

 

 茶髪のふわっとしたロングヘアーにクリッとした茶色の瞳が特徴的で現在は丸型のメガネを装着して、服装は今日は記念日だからか、普段は見ることの無い綺麗な黄色のワンピースを着ていた。

 

 そんな彼女は俺の姿を視界に捉えた瞬間、ニコッと微笑む。

 

 その微笑みにときめき、そして同時に罪悪感を感じながら俺は席について彼女に一言呟いた。

 

 

 

明「ごめん………花丸。遅くなった。」

 

 

 

 俺の言葉に、花丸は手をブンブンとさせながら慌てて言葉を出す。

 

花丸「しょうがないずらよ。今日……お仕事忙しかったんでしょ??」

 

 花丸の言葉に俺は無言でコクリと頷く。職場が大手な所なので普段でも多忙なのだが、今日は特に仕事量がエグいほど多かった。

 

花丸「やっぱり………大変ずらよね。」

 

明「覚悟はしてたけど、こんなにもこの職業が大変だとは思ってなかったよ」

 

 

 俺が昔から叶えたかった夢をどうにか叶えることに成功し、今の仕事に就いてからもう2年ほど経過している。それでも、まだ職員の中では下っ端中の下っ端だ。これからも勉強を励まなければならない。

 

 

花丸「でも、辞めるつもりはないんでしょ??」

 

明「もちろん。」

 

 例え、予想以上に多忙だったとしても………俺が叶えたかった夢なのだ。辞めるつもりなど、サラサラない。

 

 っと、こんな俺の職場の事なんて今はどうでもいいな。

 

明「花丸、遅れた俺が言うのもアレだけど……そろそろ注文するか」

 

 俺はテーブルの上に置いてあったメニューを花丸の方へと渡す。

 

 

 今日は俺たちにとって、大切な記念日なんだ。今は仕事なんて忘れて二人きりの時間を楽しむことにしよう。

 

 

 うーむ……。それにしても、どれを頼もうか。メニュー表に載ってる料理の写真を見た感じ、どれも美味しそうだ。

 

 よし。このオススメ!ってなってるローストビーフにしよう。

 

明「花丸は決まった??」

 

花丸「うん」

 

明「じゃあ、注文するぞ。すいませーん」

 

 俺は近くにいた女性の店員さんに手を振りながら声を掛ける。すると、「はい。ただいま」と言ってすぐに俺達のテーブルの方へと来てくれた。

 

店員「ご注文の方お願い致します。」

 

 

明「俺はこの”帆立貝のポワレ フレッシュマッシュルームと共に”と”イベリコ豚のロースト ローズマリー風味”に赤ワインで。花丸は??」

 

 

 花丸のことだ。目をキラキラとさせながら、ここが高級レストランということにも関わらず、多くの料理を頼むだろう。

 

 

 だが、ご安心を。俺はこうなることを予め予測していたため、普段よりも多くお金を降ろしてきた。だから、いつも通り多く注文しても問題ナッシングだ。

 

 

 あと、料理を食べる花丸の姿は高校生の時から相変わらず可愛いからな!!いっぱい食べる君が好き〜、みたいな感じだ。

 

 

 だが、俺の予想を花丸はメニューのとある料理名に指をさしながらぶち壊した。

 

 

花丸「マルは”グリーンアスパラガスと甲殻類のリゾット”とオレンジジュースでお願いします。」

 

 

 ……………え??

 

 

 

店員「かしこまりました。少々お待ち下さい。」

 

 手に持っていた紙に注文した料理をメモした店員さんは厨房の方へと向かって行った。

 

明「なぁ、花丸」

 

花丸「ん??」

 

明「料理………あれだけでいいのか??」

 

 彼女が頼んだのは前菜のヘルシーな料理だけだった。Aqoursのメンバーの中で群を抜いて食いしん坊な花丸がこれしか頼まないというのはおかしい。

 

 だってさ、1年前ぐらいに花丸と一緒に函館の実家に帰省した時に近くのハンバーガーショップで期間限定でやってた『10人前!?超ドデカビックハンバーガー』を15分足らずでペロリと完食しちゃったぐらいの食欲の持ち主だよ??

 

 流石に俺や、一緒に来ていた聖良姉ちゃんと理亜姉ちゃんもドン引きしていたのを今でも覚えている。店長さんなんて、目玉飛び出てたもん。まぁ、出てもおかしくはないよね。

 

花丸「うん。」

 

 花丸は普通に肯定した。特に注文を忘れたとかでもないらしい。

 

 

 ということは…………

 

 

明「もしかして……料理の値段を気にしてるのか??それだったら……」

 

花丸「うぅん。そういう訳じゃないずら。最近………食欲が無いの。」

 

明「え!?」

 

 

 あの花丸に食欲がない!?それって……緊急事態じゃないのか!?ある意味、大事件だよ??

 

 

明「体調がどこか悪いとか!?」

 

花丸「別に、そんなことはないずらよ??」

 

明「そ、そうか…………。」

 

花丸「本当に今日は食欲が無いだけずら。だから、気にしないで」

 

明「花丸がそう言うなら………分かったよ」

 

 花丸があまり食べないということに対して、何か彼女自身に事情はあると思っていたが、特には無いらしい。俺の思い違いだったようだ。

 

店員「お待たせしました」

 

 ここで、店員さんが俺達が頼んだ料理をテーブルの上へと運んでいく。

 

 流石は高級レストランの出す料理だ。どれも、めちゃくちゃ美味そう。

 

店員「それでは、ごゆっくりとお楽しみ下さい。」

 

 店員さんはペコッと頭を下げたあと、声を掛けられて他のお客さんの方へと向かった。

 

 俺は赤ワインの入ったグラスを。花丸はオレンジジュースが入ったグラスをそれぞれ手に取る。

 

 

 ここに辿り着くまでに色々と起こってしまったが………ようやく始めることが出来るな。

 

 

明「今日は俺達が付き合って8年目の記念日だ。花丸、俺と一緒にいてくれてありがとう」

 

 

 そう。今日は俺が花丸に告白して付き合い始めてから8年目の記念すべき日なのだ。

 

 

 

 付き合い始めてからは花丸とは一緒に笑い合ったり、泣き合ったり、意外にも喧嘩し合ったりなどした。たが、別れることなくこうして8年目を迎えることが出来た。

 

 

 

花丸「それはマルもずら♪明くん、これからもよろしくずら♪」ニコッ

 

 

 

 花丸がそう言ったあと、俺たちは互いにグラスを優しく当て合う。すると、カツンと心地よい音が鳴り響いた。

 

 

明「それにしても、今日の服。凄く可愛いよな。どこで買ったんだ??」

 

 俺は料理を食べながら花丸に話しかける。すると、花丸はドヤ顔になり、

 

 

花丸「ふふん。このワンピースに気付くとは明くんも隅に置けないずら。これはね、曜ちゃんとルビィちゃんが今日のために作ってくれたやつずら!!」

 

 

明「船長とルビィが??」

 

 俺は驚きの声を上げる。ここで、2人の名前が出るなんて思ってもみなかった。

 

 

花丸「マルがね……、1ヶ月前ぐらいに今日着てく服装に悩んでたら2人がマルに似合う服を作って送ってくれたんだ!!」

 

 

明「へぇ………。良かったな。」

 

 それにしても、凄いな。あの2人の裁縫技術は。流石、Aqoursの衣装担当をしてきただけはある。てか、どう見ても売り物にしか見えん。クオリティが高すぎる。

 

 

明「てか、ここ最近はAqoursの皆に会ってないな」

 

 

花丸「それは………仕方がないずらよ。皆、仕事してるし…………」

 

 船長とルビィの名前を聞いて、ふとAqoursのメンバーに会ってないことに気付く。

 

 

 最後に皆に会ったのは………2年前に俺が将来の夢を叶えたお祝いパーティーの以来だろうか。忙しいはずなのにわざわざ時間を作って来てくれてとても嬉しかった覚えがある。

 

 

 それ以降は………今日に至るまでほとんど会ってないな。LINEや通話などはたまにしているが、暫く会ってないと寂しく感じてしまう。

 

 でも、会いたくても花丸の言う通り、Aqoursの皆が現在、仕事に就いていて中々予定が合わないのだ。特に俺とか俺とか俺とか。

 

 

 千歌は実家の旅館である『十千万』に就いて、お姉さんで若女将である美渡さんのサポートをしていてる。

 

 

 曜船長は本当に船長になってしまった。船長だったお父さんの跡をついたらしい。彼女が船長になったからか、内浦の海からは「ヨーソロー」という声が常に聞こえるらしい。

 

 

 梨子は世界でも注目を浴びているピアニストとなった。世界中を飛び回っており、たまに彼女のコンサートのチケットが送られてくるが、仕事で1度も行けたことがない。毎回行ってる花丸曰く、凄く良い演奏ということなので、次回は時間を作って行ってみたいものだ。偶にTwitterとかで百合イベントに梨子が出現したみたいなツイートを見るが気にしたら負けだ。

 

 

 善子は愛知県にある一般企業でOLとして働いているが、副業(?)として堕天使You〇uber『ヨハネ』として動画配信をしている。意外にも登録者数が400万人以上おり、何気に大手企業であるuu〇mに所属。昨日は大物You〇uberであるHIK〇KINとコラボ動画上げていた。

 

 

 ダイヤちゃんは実家である旧綱元の家系を継いで当主となり、業務に全うしている。それからは黒澤家が誕生してから1番に繁栄しているんだとか。彼女の妹であるルビィは当主になったダイヤちゃんの秘書をしながら、地元にある服屋さんで働いている。

 

 

 マリーはイタリアで自身の会社を開いて、現在ではトップを争うほどの大手企業となっている。そんな彼女は最近、多くの男性(もちろん、金持ち)からアプローチを受けているらしく悩みの種になっているらしい。この前、LINEで『明〜、マリーとmarryしましょ〜。マリーだけにぃ〜♪』という頭のおかしな連絡が来たが普通に既読無視しておいた。

 

 

 かなっちは、実家のダイビングショップを親父さんから継いで働いている。彼女が継いでからは『美人の店長が働くダイビングショップ』という噂が流れ、かなっち目的として来ているお客さんの後が絶たないという。それで、内浦の観光名所として名を響かせている。それに関して、通話で彼女から愚痴を聞かされたので流石の俺も苦笑いするしか無かった。

 

 

花丸「それに、マル達は東京にいるし……」

 

 

 花丸の言う通り、俺達は現在、東京にある小さなアパートを借りて2人で同棲している。

 

 どうして東京にいるのかというと、俺が今、働いている職場が東京にあるからである。

 

 

 就職先が東京にあるというならば、当然ながら俺は内浦から離れる必要がある。そこで、俺は花丸に一緒に住まないか………と緊張しながら誘った所、快くOKしてくれたのだ。

 

 

 花丸と一緒に住み始めて2年経つが、そろそろ今住んでいる所から引っ越したいと考えている。

 

 

 ちなみに、花丸は今、作家さんとして働いている。本を読むのが好きだった彼女にはピッタリな仕事だ。彼女の出した本は今のところ、どれも大ヒットしており重版が常に掛かっている。今、執筆しているのは人を殺めてしまった男の子が9人の女の子によって救われる話を書いているらしい。もし、その本が出たら読書用、観賞用、保存用として3冊買っておこう。

 

 

明「忙しいっていのは承知だけど、それでも会いたいよな〜」

 

 

花丸「うん…………。」

 

 

 ピロリン♪

 

 

明・花丸「ん?」

 

 俺と花丸のスマホから着信音が鳴る。俺達のが同時に鳴ったということは、AqoursのグループLINEだろう。

 

 俺が代表として自分のスマホからLINEを開き、内容を見てみると………

 

 

 

千歌『来月のどこかで皆で会おうよ!!』

 

 

 

 千歌からだった。しかも、その内容がたった今、思っていた希望していたものだ。

 

明「あの人………、本当に期待を裏切らない人だよな」

 

花丸「そこが、千歌ちゃんの良い所ずら」

 

明「間違いない。」

 

花丸「どう??来月、予定……空けれそう??」

 

 

明「なんとか上司を説得して、休みを貰うよ。あの人なら、トマトあげればなんとかなると思うからさ。」

 

 

花丸「意味不明ずら…………。」

 

 苦笑いする花丸を置いておいて、俺はポチポチと文字を打つ。この時点で、もう他のメンバーは『賛成!!』という返信を送っていた。なので俺も………

 

 

明『俺と花丸も大丈夫( '-' )b』

 

 

 と送っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「そういえば、零さんは元気ずら??」

 

明「零さん??」

 

 花丸と雑談しながら食事をしていると、彼女から零さんについて話しかけられる。

 

 

明「零さんは今も元気そうだよ。毎日、凪の写真が送られてくるもん」

 

 

 零さんは俺が大学に進学した時に、働いていた職場の後輩である菜乃という男性と結婚し、その次の年には零さんは妊娠して無事に男の子を出産した。その子の名前が凪である。

 

 あと、零さんの苗字が奥山から菜乃に変わったのと同時に俺は零さんの養子から外れて、鹿角家に復縁した。だから、今では苗字を聞かれても鹿角と名乗るようにしている。

 

 だが、それでも俺は零さんのことを母親のように思ってるし、零さんも俺のことを息子として思ってくれている。なので、例え歳が20歳以上離れてたり、血が繋がっていなくても凪は正真正銘、俺の弟だ。

 

 

 ちなみに、聖良姉ちゃん達が凪を見て

 

 

聖良『明の弟ってことは、私達の弟でもあるってことですよね!?ね!?ね!?』ハァハァハァ

 

 

理亜『姉様の言う通りよ!!凪〜、お姉ちゃんの所においで~。』ハァハァハァ

 

 と、興奮気味に言っていた。だが、2人の姿を見て凪は泣いてしまい、キャラ崩壊しつつある姉2人はショックを受けていたのが印象に残っている。

 

明「近々、空手をやらせる気らしい」

 

花丸「へぇ……。零さん、厳しそうずら」

 

明「多分、厳しいと思うよ。俺の時も厳しかったから」

 

 今でも彼女の元で空手を習っている時を思い出すと、恐怖で思わず体を震わせてしまう。本当にあの頃は地獄といってもおかしくは無い日々だった。凪も近いうちにあの地獄を味わうと考えると心が痛む。もし、何かあったら兄弟子として助けてあげよう。

 

 

明「そうだ。おばさんは最近、調子はどうだ??」

 

 

 ふと突然、花丸の祖母の顔が頭によぎってきてきたので花丸に話しかける。あの人も歳だからな。心配になる。

 

花丸「おばあちゃんは元気ずら。この前もはーれーだびっとそんで、内浦を走り回ってるって聞いたずら。」

 

 何やってんの、あの人!?最近は高齢者の交通事後が多発してるから気をつけて欲しいだけど!?

 

花丸「あ、でも。最近は足腰が弱ってきたからはーれーだびっとそんを明くんに譲るって言ってたよ」

 

 えぇ………。花丸のおばさんには申し訳ないけど要らないです。二輪車の免許も持ってないしな………。

 

花丸「マル……、明くんと一緒に乗りたいな」

 

 よし。今度、車校に行って二輪車免許取りに行こう。ハーレーダビッドソンを譲ってくれる花丸のおばさんには今度、お礼としてディズニーランドへと連れてってあげるか。

 

 

 

 

 

 それから、俺と花丸は食事をしながら2人で色んな事を会話して素敵な時間を過ごした。

 

明「そろそろ行くか………」

 

花丸「うん。」

 

 腕時計を見て、いい時間になったのを確認した俺は席を立つ。花丸も頷いて、彼女も席を立とうとするが

 

 

 ーーーガタッ

 

 

明「花丸!?」

 

 突然、花丸は膝を床に付けてしまう。驚いた俺はすぐに彼女に駆け寄り声を掛ける。

 

花丸「ごめん。少しだけ立ちくらみしちゃって………」

 

明「大丈夫かよ!?なんなら、今から病院に………」

 

花丸「大丈夫ずら。多分………仕事の疲れが出ちゃったんだと思う」

 

 花丸は「ずらぁ〜!!」と言いながら立ち上がる。念の為、手を彼女のおでこに当てるが異常はない。もちろん、脈も測るが正常だった。

 

明「心配させんなよ。めっちゃ焦ったじゃんか。」

 

花丸「ごめんずら」

 

明「仕事も程々にな。」

 

花丸「それ、明くんが言う??」

 

明「ん??何が??」

 

 

花丸「だって……、今年になってから明くん。ずっと働いてるから………」

 

 

明「ーーーーーッッ…………。」

 

 花丸の言葉に俺は何も言うことが出来なかった。確かに、俺は今年に入ってからは今まで以上に出勤するようになった。

 

 赤髪の上司も最近は「休みなさいよ」とキツく言ってくるようになったが、休むわけにはいかなった。

 

 

 今日の俺達の記念日までに『ある物』を購入するために、俺は死にものぐるいで働く必要があったのだ。

 

 そして、先週にようやくお金が溜まり、目的である『ある物』を購入することが出来た。

 

 

 それは、今、俺のポケットの中にある小さな箱に入っている。

 

 

明「…………なぁ、花丸。」

 

 

花丸「ん??」

 

 

 

明「お前に………渡したい物がある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会計を終えたあと、俺は花丸と手を繋いで街中を歩いていた。夜はもう遅いというのにも関わらず、色んな店に電気が点いていて騒ぎ声が聞こえてくる。

 

 そして、俺はとある場所へと足を運んだ。

 

 そこは、俺達にとってもAqoursにとってもかけがえの無い場所であった。

 

花丸「ふふ。やっぱり、マルはここが好きずら」

 

明「俺もだよ」

 

 俺達が赴いたのは、秋葉原にある長い階段を登ることによって辿り着く大きな神社だ。

 

 

 そう………神田明神である。

 

 

 俺と花丸は何か記念日で出掛けたあとは必ず最後にここに足を運ぶようにしている。ここに来るきっかけとなった理由は忘れてしまったが、俺としては花丸と2人で過ごした日の締めとしてここが適していると思っている。

 

 それは花丸も同じ気持ちだろう。

 

 

 確か………この場所で『人殺し』である俺はSaint Snowの2人と10年振りに再開したんだよな。

 

 

 ここに来ると、色んな事を思い出す。

 

 

花丸「それで、渡したい物って何ずら??」

 

 

 お賽銭にお金を入れて2人でお願い事をした後、花丸はその場で俺に話しかける。

 

 

 雰囲気的に少しは察しても良いのだが………どうやら彼女は気付いていないらしい。

 

 

 俺は花丸の方に顔を向けて言葉を出した。

 

 

明「俺たちってさ………。もう付き合ってからもう………8年経つんだよな」

 

 

花丸「そ、そうずらね。」

 

 俺の突然の語りに花丸は動揺しながらも俺の言葉に頷く。

 

 

明「俺はさ。花丸と付き合い始めてからは、いつだって幸せだった。」

 

 

花丸「それは、マルもずら。」

 

 どうやら、花丸も俺と同じように幸せな気持ちだったらしい。彼氏として嬉しい。

 

 

明「だけどな。途中に不安になることもあるんだ。『人殺し』である俺が……こんな幸せな日々を送っても良いんだろうかって」

 

 

花丸「そんなことは………」

 

 無いって言ってくれようとしてるんだよな。ありがとう。

 

 でもな、花丸。無くはないんだよ。俺はどんな状況になったって、俺が『人殺し』であることには決して変わりはない。例え、今、○○として人を助ける仕事場で働いていたとしても。

 

 俺の言いたいことが分かったのか、花丸はシュンと悲しそうに俯く。

 

 そんな彼女の姿を見て、俺は花丸の手を触れながら言葉を呟く。

 

 

 

明「けどな、花丸。それでも俺は…………やっぱりお前といたい。」

 

 

 

花丸「え??」

 

 俺の言葉を聞いて、花丸は顔を上げる。彼女の瞳には真剣な表情をしている俺の顔が映っていた。

 

 

明「これから先、ずっとずっとお前と一緒にいたい。それが、例え俺達がおじいちゃんおばあちゃんになったとしても。」

 

 

 

花丸「ーーーッッ!?それって……」

 

 

 ここで、花丸もようやく自分が今、どんな立場に立っているのか、理解したようだ。

 

 俺はドクンドクンと心臓が爆音で鳴り響いているのを感じながらポケットに手を入れ、小箱を取り出す。

 

 

 その小箱を目にした瞬間、花丸は目を丸くして口元に両手を当てていた。

 

 

 

 

 そして………手に持っている小箱をゆっくりと開けながら俺は…………

 

 

 

 

 

 

明「花丸、俺は君のことを絶対に幸せにします。なので、これから先は………『鹿角 花丸』として生涯、俺と隣にずっといてくれませんか??」

 

 

 

 

 キラキラと月の光で反射して輝いている黄色の宝石がついた指輪を花丸に見せながら俺は彼女に一世一代のプロポーズをした。

 

 

 身体全身が熱い。きっと、体温計で測ったら40度はあるだろう。

 

 

 彼女になって欲しい、と告白したあの時と比べても非にもならないほど緊張している。

 

 

 ずっと長い間、お付き合いしてもプロポーズしたら別れてしまったという話を仕事場で働いていたら偶然にも耳にしたことがあるため、とても不安だった。

 

 

 だから、俺は彼女の声が耳に入るまでギュッと目を瞑った。

 

 

 

花丸「………ねぇ、明くんは覚えてる??」

 

 

 

明「え??」

 

 

 プロポーズの言葉を聞いて、YESかNOのどちらかの返事を待っていたが、花丸は俺にある事を問い始める。

 

 

花丸「マル達が高校1年生の時……Aqoursのメンバーが1人ずつ明くんに使命出して、それを叶えるっていうことをしていたよね。」

 

明「あ、あぁ。覚えてるよ」

 

 

 俺がAqoursに正式に加入した後に、迷惑をかけたから♪という理由で始まった謎の使命シリーズだ。

 

 

 確か、千歌は実家の旅館の手伝いで船長は着せ替え。梨子は百合イベ同伴にマリーは使用人。ダイヤちゃんは生徒会の手伝いにかなっちはダイビングショップの手伝い。善子のは動画の出演にルビィはスクールアイドルのショップの付き添いだったか。

 

 

 どれも中々濃い日だったので忘れることは無い。

 

 

 

花丸「まだ………マルから使命は言ってなかったよね??」

 

 

 

明「そういえば………」

 

 ルビィのが終わって、次の練習の時に花丸に使命があるか聞いたらその頃は「ない」と言っていた。なので、何かあったら言ってくれよ、と伝えていたが結局は俺達が卒業するまで花丸は何も言わなかったな。

 

 

花丸「だから……今、ここでマルは明くんに使命を与えるずら!!!」タッタッタ

 

 

 花丸は俺の方に向かって走り出す。

 

 

 そして、そこから大きくジャンプして俺の胸に飛び込んできたあと花丸はボソッと呟いた。

 

 

 

 

花丸「絶対に………マル達を幸せにしてね」

 

 

 

 

明「ーーーーーーーーーーッッ」

 

 

 花丸の言葉を聞いて、俺は衝撃を受け動揺したが………

 

 

明「ありがとう………」

 

 

 そう言って、彼女のことを抱き締めた。さっき走ってジャンプしたからか……それとも俺のプロポーズを聞いて嬉しかったのか、彼女の心音が強く伝わってくる

 

 

 今、この瞬間は過去最大に幸せな気持ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーん??ちょっと待て。そう言えば………

 

 

明「なぁ、花丸」

 

花丸「何ずら??」

 

 

 花丸はずっと自分の頬を俺の胸に埋めていて、とても幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 

 いや、俺も今、めちゃくちゃ幸せなんだけどね…………。

 

 

 

明「あのさ。マル『達』ってどういうこと??」

 

 

 

花丸「……ふふ」

 

 

 俺の問いかけに花丸は微笑んだあと、俺から少し距離を開けて離れる。

 

 

 そして、彼女は満面な笑みを浮かべながら自分のお腹を優しく撫でていた。

 

 

明「…………え??」

 

 

 彼女の行動に、俺はある1つの仮定が頭の中に思い浮かぶ。

 

 

 そして、それと同時に今日の彼女の言動も思い出した。

 

 

 あの食いしん坊な花丸が食欲が無かったのも、最近、疲れているように見えたのも、立ちくらみがするようにもなったのも………

 

 

 まさか…………嘘だろ??いや、そんなはずは…………。

 

 

 わなわな、と動揺して震えている俺の姿を見て花丸はトドメの一言をぶちかました。

 

 

 

 

 

 

 

花丸「どうやら………出来ちゃったみたいずら♪」

 

 

 

 

 

 

明「ーーーッッ………」ダッ

 

 

 

 彼女のそんな言葉を聞いて、俺はすぐに花丸の元へ駆け寄り、またしても抱き締める。今度はさっきよりも力を込めて。

 

 

 

花丸「明くん??」

 

 

 

明「ーーーーーー!!!」

 

 

 

 多分………俺は泣いていると思う。頬に熱い何かが流れているのかが分かるから。

 

 

 何だよ………。そのサプライズは。

 

 

 せっかく……カッコつけて泣かないように耐えてたのに………。そんなこと知ってしまったら、泣くに決まってるだろ。

 

 花丸は細かく震えて、泣いている俺の頭の上に手を置いて優しく撫でてくれていた。

 

 

 

 花丸からの使命…………絶対に成し遂げよう。

 

 

 

 俺は愛する花丸と………近い未来に誕生するであろう新たな命を必ず幸せにする。

 

 

 

 

 

 俺は泣きながら、そう心の中で強く誓った。

 

 

 

 

 

 今日は『人殺し』である俺が、目の前にいる国木田 花丸に告白をして付き合うようになってから8年という月日が経過した記念すべき日。

 

 

 

 それに加えて新たに『人殺し』である俺が彼女にプロポーズして成功した日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…………花丸のお腹の中に新たな生命が宿っていることを知った俺たちにとってかけがえの無い記念日となった。

 

 

 

 

 

 

 




遂に………あとは、もう最終話のみとなってしまいました!!
12日(土)に投稿する予定ですので、楽しみにして欲しいです!

お気に入り・感想・高評価お待ちしております。


質問箱に来た質問を答えていきまーす。

Q、このフォロワーでお姉ちゃんだったら良いなって人いる??
A、いるっちゃいる。名前は伏せておきますが……。

Q、きゅうりの漬物とたくあんあったらどちらに先に食べる
A、きゅうりの漬物です。

Q、最近、テンション上がることあります??
A、自分の作品がもうすぐ終わるので、それに関してはテンションが上がっております。

Q、電子レンジでサンマ焼いたことある??
A、ありません。サンマは余り食べません

Q、好きなミステリー作家は??
A、東野圭吾

Q、牛乳かゆって聞いたことある??
A、ない。何それ??美味しいの??

Q、バンド組むなら何担当??
A、ドラム

Q、これは無いわーっていう感じの質問
A、無いけど、どういう意図をもってこの質問を送ったのかが知りたい。

Q、好きな芸能人とその理由を教えてください
A、田村亮。理由、ラブライバーに目覚めたため。

Q、宇宙旅行に持って行きたいもの。
A、かぼちゃ

Q、アイスコーヒーに牛乳入れる??
A、高確率で入れる。美味しいよね〜

Q食事の時、パンでおかずのタレを吸い取って食べますか??
A、つけパンはあんまり食べないです。基本、バターやジャム、小豆とかつけて食べてます

残りは最終話に回しますね。


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復活投稿
【コラボ】「『人殺し』とシスコン」


お久しぶりです。それと、ただいま。
『人殺し』の投稿を月1程度で復活しようと思ってるので、良かったらお付き合いください。
第1弾としてはコラボ作品でお相手はふらんどるさんとです!!どうぞ!!

この作品を読む前に「『人殺し』は独白する」を目にしといてください。あれの世界線で話が進むので。


 キーンコーンカーンコーン

 

 退屈で退屈で仕方が無かった午前授業がチャイムの音で終了を知らせ、数学を教えていた………平山だったっけな?まぁ、その人に挨拶をした後、クラスの奴らは嬉しそうに弁当箱を手にして各場所に散っていく。

 

 当然、俺もその輪の中に入って…………とはいかず、誰にも気づかれないように鞄を持って教室から出ていく。

 

 俺は今年から共学化した浦の星女学院に入学して半年が経とうとしているが、誰とも関わらなかった。いや、関わろうとしなかったと言った方が正しいかもしれない。

 

 

 こんな、俺みたいな『人殺し』が輪の中に入れる訳ないだろ。こっちからお断りだ。

 

 

 もうアレは10年近く前の出来事だし、場所が場所だから知らない人は多い。そのため、何も問題は無いと思うかもしれない。

 

 だけど、必ずとも大丈夫だという訳では無い。

 

 もし、どこかで俺のことを知ってしまったら…………、という恐怖がいつどこでも俺に襲いかかってくる。

 

 あの日…………あの場所を離れる時に最後に目にし、頭の中に焼き付けてしまった姉のあの表情を他の人にされたら、と思うと恐怖で身体を震えてしまう。

 

 

 だからこそ、俺は誰とも関わらない。

 

 

 それが、俺にとっても周りにとっても1番の安全策なのだから。

 

 

 別にそんな難しい話ではない。中学の時だって3年間、誰とも関わらずに過ごすことが出来たのだ。だからきっと、この高校生活も何気なく過ごせるはず。

 

 ギィィ………と、俺はとある場所の扉を開けて前に進む。

 

 俺がやって来たのは屋上だった。

 

 本来なら、屋上は半年ほど前に設立したスクールアイドル部が練習場所として使われているらしいが、それは放課後の話であって、基本的に昼休みは誰もいない。

 

 まさに俺にとって最適で素晴らしい場所だ。

 

 屋上の隅に腰を下ろして、鞄から弁当箱の入っている仮面ライダーの包袋を取り出す。

 

 そして、その包袋から弁当箱を取り出す。普段は一緒に暮らしている里親が夜遅くまで仕事があるため、朝は俺が早起きして弁当を里親の分まで作っているのだが

 

 

 「今日は明ちゃんにとって、何かいい日になるも思うから私が作っちゃった!!」

 

 

 と、珍しく里親が弁当を作ってくれていた。よく分からない理由とともに。

 

 俺にとっていい日?何言ってんだ、貴女は。そんなの『人殺し』である俺なんかにある訳ないだろ。頭狂ってんのか?

 

 『人殺し』になって約10年間。自分自身で心の底から良かったと思えたことなんて、たった1度しかない。

 

 それは…………今の里親である奥山 零という女性に家族として受け入れてもらえたこと。

 

 本来なら拒絶されて当然な『人殺し』を彼女は何も嫌な顔をせずに受け入れてくれた。

 

 当時、周りの視線に怯えながら生きてきた俺は生きる希望を失っていた。

 

 

 "死にたい"

 

 

 この言葉ををどれほど心の中で呟いただろうか。この感情をどれくらい抱いただろうか。

 

 ……………今思い出してみても正気の沙汰じゃなかったということが改めて分かる。

 

 だけど………、その負の感情を里親はぶち壊してくれた。だからそこ、こうして今も俺は生きている。

 

 俺がこうして生きる理由は、いつか里親に恩を返すため。それだけだ。どんな形で恩を返すかはまだ決まってないけど、高校を卒業するまでには決めておきたいところではある。

 

 おっと………いけないいけない。こんなことしているうちに昼休みが終わってしまう。早く食べてしまおう。

 

 そう思い、弁当箱を開けようとした瞬間ーーー

 

 「あれ?まだ来てないのか」ギィィ

 

 屋上の扉がギィィ、と開き1人の人物が屋上へと足を踏み入れる。珍しいな。昼休みは基本、俺以外来ないというのに。

 

 誰が来たのだろうか、とさり気なく顔を振り向いてみるとーーー

 

 

 「おかしいなぁ。かな姉、屋上で待ってるって言ってたのに。」

 

 

 青髪の短髪で細身白肌が特徴な男性が頭を掻きながら屋上の周りを見渡していた。

 

 は?男?何で男がここにいる?いやいや、おかしいだろ。この学校の生徒で男は俺だけのはずなのに。まさか………不審者か?

 

 …………いや、ちょっと待て。よく見たら首に特別来校者証みたいなのがぶら下がってる。てことは、ちゃんと許可を得てここに来たっていうことか?

 

 「ん?あそこに誰がいる。少し聞いてみよう。おーい!!!」

 

 男性は俺の姿を視界に捉えた瞬間、手を振りながら声をかけてくる。はぁ………、何か面倒臭いのに捕まったな。隠れておけば良かった。

 

 「………………何?」

 

 「あの、1つ聞きたいんだけど………。ここに青髪でポニーテールにしてる女の人来なかった?」

 

 青髪のポニーテールの女性?少なくとも、俺が屋上に来てからはこの人が来るまでの間は誰も来てないはずだ。

 

 「誰も来てねぇよ。」

 

 「そっかぁ。てことは、僕が早く来すぎたのか、部室とかに寄ってるのかなん??」

 

 「そもそも、アンタ誰?ここの生徒じゃないよな?」

 

 「ん?………あぁ!そうだよね!急に男がここに来たら誰だって困惑しちゃうよね!?ごめん、ごめん!!僕の名前は松浦 玲士。高校2年生で、浦の星女学院スクールアイドルAqoursのマネージャーをやっています。あと、そのメンバーの1人、松浦 果南の実弟です。」

 

 まさかの先輩かよ。見た目からして歳下だと思ってたわ。しかも、この学校のスクールアイドルのマネージャーでそのメンバーの弟ときた。クラスの…………黒澤と国木田、津島辺りがそんなことを言っていたような記憶がある。

 

 でも………、なんでそんなスクールアイドルほマネージャーが ここに?今はまだ、昼休みだ。部活帯の時間じゃない。それに、この人、学校はどうした??今日、普通に平日だぞ??

 

 「…………何しにここへ?今日、学校あるんじゃないですか?」

 

 「今日は振替休日。そんで、かな姉が弁当を忘れちゃったから届けに来たんだよ。あと、ついでにお昼も一緒に過ごそうかなと。」

 

 「あ、そうっすか。」

 

 自分で聞いておいてアレだけど、俺は弁当のおかずを食いながら松浦先輩の話を適当に流した。結構、どうでも良かったからな。

 

 「あ、かな姉からL〇NE来た。……ぷっ、かな姉らしいや。ねぇ、これ見て見てよ。」

 

 弁当のおかずを食べてると、隣に座っていた松浦先輩が俺にスマホを差し伸べ画面を見せてくる。最初は無視していたが、あまりにも鬱陶しく見せてくるので、呆れた表情で画面を除くと

 

 『ごめん、玲士。今日の小テストの点数が悪くてダイヤに捕まっちゃたから少し遅れる。終わり次第、すぐ向かうから屋上で待ってて!!』

 

 「あはは、かな姉もダイヤさんも相変わらずだなぁ。」

 

 松浦先輩はスマホの画面を見ながら楽しそうに言葉を出す。俺からしたら、誰?ってなるし、何も面白くなかったけどな。

 

 それより、早くここから離れたい。じゃないと、あと少ししたらここに人が集まりそうな気がする。さっさと、食べ終えて図書室でも向かうか。

 

 「なぁ、君はAqoursの中で誰推しとかいる?」

 

 「はい?」

 

 唐突に松浦先輩に話しかけられてしまった。

 

 「ほら、やっぱりAqoursって今人気急上昇中のスクールアイドルじゃん?だからメンバーの中に推しとかいるのかな……って。」

 

 推し…………ねぇ。そもそも、あくあ?とか知らんし興味もない。スクールアイドルなんて…………

 

 

 『それでは、今、最も大注目を浴びている函館が生んだスクールアイドル、Saint Snowについてお話をーーーーーーーー!!!!』

 

 

 スクールアイドルなんて以ての外だ。

 

 「で、誰なの?」

 

 グイッと松浦先輩は顔を近づけて俺に聞く。近い近い近い。つい、先輩の顔面に目掛けて手を出してしまいそうになったが、何とか片方の手で抑え、

 

 「…………………国木田」

 

 ボソッと俺は国木田の苗字を口にした。津島、黒澤もいる中でどうして国木田を選んだのかは分からない。だけど、別に国木田のことを推してる訳ではない。あいつと関わったことがあることなんて授業のグループワークで一緒になったことがあるぐらいだ。

 

 

 『奥山くん、今日からよろしくずら♪』

 

 『……………よろしくな。』

 

 『ッッ…………ずら///』

 

 

 「そっか〜、花丸ちゃんか。可愛いもんね。」

 

 「………そうですね」

 

 確かに国木田は容姿は可愛いの部類に入ると思う。しかも、何気に成長を素晴らしく、しっかりと出てるところは出てるしな。

 

 「でも、やっぱりかな姉でしょ。」

 

 「かな姉?」

 

 「そうそう。僕のお姉ちゃん。本当に凄い人なんだよ。歌も上手いしダンスも凄いし体力あるし料理も一流シェフには負けないぐらいの腕なんだ。」

 

 「……………へぇ。」

 

 

 ーーーズキ

 

 

 松浦先輩の言葉を聞いて胸に痛みが生じる。

 

 「しかも、よくかな姉とハグするんだけどそれがまた気持ち良いんだ。何だろう………とても、落ち着くって感じがしてさ。」

 

 俺が胸に痛みを感じていることに当然ながら気付かない松浦先輩はさらにその"かな姉"と呼ぶ姉らしき人物の言葉を続ける。

 

 

 ーーーズキズキ

 

 

 それによって、さらに胸の痛みが増す。それと同時に次第にイラつきも募っているのも感じる。

 

 

 「こんなスペックが高いのに、実は凄く怖がりなんだ。3日前、雷が酷かった日があったじゃん?もう……その日のかな姉、まるで子犬みたいに震えててさ。ずっと僕の傍から離れなかったんだよ。それがまた可愛くてさ。」

 

 

 ーーーズキズキズキ

 

 

 やめろ…………

 

 

 「それで、かな姉がーーー」

 

 

 黙れ……………

 

 

 「その時にね、かな姉がーーー」

 

 

 喋るな……………

 

 

 「本当にかな姉はーーー」

 

 

 これ以上は……………

 

 

 「そんな、かな姉が僕は大好きなんだー。」

 

 

 

 

 この瞬間、プツンと俺の中で必死に引き止めていた何かが切れた。そこからの俺の行動はとても早かった。

 

 

 「ちょっと黙れよ」

 

 

 ーーーガシッ

 

 

 「ーーーーーーーーーーッッッ!!???」

 

 

 俺は目の前にある松浦先輩の言葉を止めるように口元に手を差し伸ばして彼の両頬を強く掴み、強制的に黙らせた。

 

 俺の唐突の行動に松浦先輩はかなり困惑した表情が浮かび上がっているのかが分かる。

 

 それを知っていてなおかつ、俺は離すことはなかった。むしろ、さらに力を入れたあと今までに出したことがない低いトーンで彼に話しかける。

 

 「先輩…………うぜぇよ。さっきから、かな姉かな姉って。シスコンか、何かか。気持ちわりぃな。」

 

 「がっ………あっ………!?」

 

 「先輩みたいなのを見ると心の底から腹が立つんだよな。大好きだった人から裏切られた経験を知らずにそうやって、のほほんと幸せそうな顔を浮かべることができるんだから。」

 

 「うぅ…………、あぁ………。」

 

 「いいか?これだけ覚えておけ。人をあまり信用するな。それが例え自分の家族の一員が相手だったとても。」

 

 

 『人殺し』

 

 『もう…………私達に関わらないで』

 

 

 人間っていうものは、普通に裏切る生き物だ。自分の立場が危うくなった時、それを改善させる為ならば平然と何気ない顔で家族を生け贄に捧げる。

 

 俺は『人殺し』になったことで、鹿角家に棄てられた。けど、俺は好きで人を殺めた訳ではない。家族を………、家族だった元・母親と元・姉2人を助けるために人を偶然的だったが、殺めたんだ。確かに他に方法は考えればあったかもしれない。けど、それしか方法はなかったと思う。

 

 それなのに、今はどうだ。当時、俺の小さかった背中に『人殺し』というレッテルを貼ってでも守った家族に……………俺は棄てられた。あいつらは重荷を全部俺に背負わせるだけ背負わせて棄てたんだ。

 

 きっと、今頃はあの甘味処で商売繁盛させて幸せに過ごしているんだろう。当たり前だ、そうなるように息子を生贄にしたんだから。

 

 「先輩もいつか分かる時が絶対に来る。スクールアイドルのメンバーや家族………、アンタの大好きなかな姉という人物に裏切られた時とかにな。」

 

 俺がこの言葉を松浦先輩に呟いた瞬間ーーー

 

 

 「玲士ー。ごめんねー、遅くなっちゃって」ガチャ

 

 

 ガチャ、と屋上の扉が開く音がして、すぐに女性の声が耳に入る。明らかに松浦先輩の姉だろう。しかも、足音からして1人じゃない。少なくとも3人はいる。

 

 俺は彼女達にバレないように、すぐに松浦先輩の口元を掴んでいる手を離したあと、荷物を持って屋上の出口へと進める。

 

 「あ、奥山くーーー」

 

 スクールアイドルのメンバーらしき女性何人かは俺の姿を見て驚いているが、俺はそれを気にせず横を通り過ぎる。途中、俺の名を呼ばれた気がするがそれも無視した。

 

 階段を降り、中庭へと出た俺は隅に設置されていたベンチに深く座り込んでため息を吐きながら顔に手を置く。

 

 

 やってしまった…………。

 

 

 今、この言葉しか出てこない。くそ…………、初対面の人の姉とのやり取りを聞いただけで頭に血を上らせるとかガキかよ。

 

 

 別に松浦先輩は悪くない。悪いのは全部………

 

 

 あの人の話を聞いて『羨望』と『嫉妬』を感じてしまった俺の不甲斐なさが原因だ。途中の胸の痛みもきっとこれが関わっているに違いない。

 

 きっと、松浦先輩は彼女達にさっきの出来事を話すだろう。それによって、メンバーは俺に問い詰めてくるはずだ。特に松浦先輩の姉とかな。あーあ、こうなるから人と関わるのが嫌なんだよ。マジでクソだわ。

 

 まぁ………、そうなったらそうなったらで、ちゃんと受け入れよう。大丈夫、批判的な言葉を言われるのは慣れてる事だ。しっかりと謝って許しを貰えればそれで良い。

 

 ブー……ブー……

 

 「ん?」

 

 ポケットに入っているスマホが震える。零さんかな?思い、取り出して画面を見ると知らない人からだった。嫌な気がしたのでキャンセルを押す。

 

 ブー………ブー………

 

 すぐにまた鳴り出した。きっと、拒否しても出るまでずっとかかってきそうな気がしたので仕方なく通話に出ることにした。

 

 「はい」

 

 『あ、もしもし。奥山くん?僕、松浦だけど』

 

 「ーーーッッ!?」

 

 どうして松浦先輩が??どうやって俺の電話番号を…………。それに名前も。あまりにも驚いてその場から立ち上がってしまった。

 

 「ごめん。鞠莉姉に奥山くんの電話番号を調べてもらって聞いたんだ。」

 

 鞠莉姉?…………あ、小原鞠莉のことか。なるほど、それなら納得がいく。小原先輩はここの生徒でありながら浦の星女学院の理事長もやっている。確かに、全校生徒の個人情報を手にしている彼女ならば俺の電話番号ぐらい調べるのは容易い事だろう。

 

 「なんですかね?」

 

 要件を聞くが、内容はさっきの事だろうな。

 

 「あのね、放課後にAqoursの部室に来て欲しいんだ。」

 

 「部室に?」

 

 『うん。少し君と話がしたくて。』

 

 やっぱり………さっきの事についてか。きっと、部室で俺はメンバーに怒られるんだろう。その未来しか見えない。

 

 「わかりました。放課後に……ですね」

 

 『うん。じゃあ、またね。』プツン

 

 松浦先輩と話が終えたあと、スマホをポケットにしまったあと、再びベンチへと座る。

 

 「はぁ………めんどくさ」

 

 あと数分で昼休みが終わるが、俺はその場から動く気は無かった。

 

 

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 そして、あれから午後の授業を終えた俺はスクールアイドル部の部室に向かうために教材を鞄の中に入れて席から立ち上がると

 

 「奥山くん」

 

 「ん?」

 

 聞き覚えのある声で名前を呼ばれる。振り向くと、そこには不安そうな表情を、浮かべている国木田が立っていた。

 

 「国木田………」

 

 「部室に……玲士さんに会いに行くんだよね?」

 

 「………あぁ。」

 

 国木田の言葉を正直に肯定する。こいつも事の顛末を松浦先輩から聞いてるから知ってると思うのだが。

 

 「場所分かるずら?」

 

 「……………」

 

 そう言えば、俺………部室の場所分からねぇな。

 

 「マルが連れてってあげるずら」

 

 部室がどこにあるのか知らないのを察したのか、国木田が言葉を出す。ここは断りたいところだが、虱潰しに探しても時間を無駄にしてしまうだけ。ならば、ここは素直に連れてって貰った方がいい。

 

 大丈夫。こいつのとやり取りもこれだけ。今日が終わればまたいつものように誰とも関わらない日常が戻ってくるはずだ。

 

 「………お願いしてもいいか?」

 

 「ッッ///…………ずら♪」

 

 なんで、そんなに嬉しそうな表情すんだよ。そんなに俺がメンバーに陥れられるところが見たいのか?こいつ、可愛い顔してとんでもない性格してんな。

 

 俺は教室から出て廊下を歩く。いつもと違うのは隣に国木田がいることだろうか。

 

 国木田の言葉通りに廊下を歩いていると

 

 

 『スクールアイドル部』と書かれた表札らしきものがついた部室へとたどり着く。ここに恐らく国木田以外のメンバーとマネージャーである松浦 怜士がいる。

 

 俺は1回、ゆっくりと深呼吸を行い扉に数回ノックする。すると「どうぞ」と可愛らしい女性の声が聞こえたので中に入る。

 

 中に入ると、案の定、部屋には松浦先輩と国木田以外のメンバーが揃っていた。

 

 「ごめんね、急に呼んだりして」

 

 松浦先輩は俺にあんなことされたのにも関わらず笑顔で俺に近寄り話しかける。よく見ると、彼の両頬は少し赤くなり腫れていた。申し訳ない気持ちとなる。

 

 「いえ………。俺も先輩に用があったんで」

 

 「そっか。じゃあお互い丁度良かったね」

 

 「…………そうですね。」

 

 「じゃあ、僕から先にいい?」

 

 松浦先輩は手を挙げて先行を要求してくる。まぁ、先にバッシングを喰らった方がいいか。

 

 「どうぞ」

 

 「ありがとう」

 

 そして、彼は真剣な表情を浮かべてさらに俺に近づき、言葉を出した。

 

 「僕は…………君がどんな過去を過ごしたのかは分からない。奥山くんがあんな行動をしたってことは、きっと僕らの想像以上に辛い過去があったんだと思う」

 

 「……………」

 

 

 「君は言ったよね?大好きだった人から裏切られた経験を知らずにって。確かにそうだ。僕はまだそんな経験は1度もしたことがない。多分、経験したら…………悲しくなると思う。」

 

 

 悲しいっていうレベルではない。それ以上の辛さだ。

 

 

 「だけど…………そうだとしても、そうなったとしても僕は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 人を信用するよ。Aqoursのみんなも当然…………家族も。」

 

 

 「……………」

 

 それは無理だ。絶対に無理だ。そんなの、妄言に過ぎない。それは裏切られた経験がないからこそ、言えることだ。しかし、現実というものは残酷だ。そうにはいかない。

 

 俺だって、最初は信じてたさ。『人殺し』とはいえ、やっぱり可愛い可愛いわが子だ。後から考え直して迎えに来てくれるかもしれない、って微かな希望を持って信じてた!!

 

 

 だけど………それでも結局、あいつらは迎えに来なかった。

 

 

 「はは………。そんなの無理だって顔してるね。」

 

 「ーーーッッ」

 

 くっ……….、表情に出てしまっていたか。この人、意外と見る目があるな。

 

 「確かに今の奥山くんなら仕方が無い事なのかもしれない。けど…………」

 

 そう言って、松浦先輩は俺の肩に手を置いて言葉を出した。

 

 

 「少しの間だけ、後ろを振り返るのをやめて…………前だけを見てみない?」

 

 

 「え?」

 

 この人、何を言って…………

 

 「少なくとも、ここにいるみんなは人を………仲間を決して裏切らない。これだけはマネージャーとして命を懸けてでも言える。」

 

 言ってる意味が全く分からない。そもそも、俺のことを貶めるためにここに呼んだんじゃないのか?

 

 そして、松浦先輩は俺の目の前に手をさし伸ばしてニコッと微笑みながら衝撃の言葉を発した。

 

 「だからさ、奥山 明くん。君が良かったらなんだけど……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aqoursのマネージャーに入ってくれないかな?」

 

 

 「…………は?」

 

 

 最初、先輩が口にした言葉を理解することが出来なかった。俺が想像していたものとかけ離れていた言葉だったからだ。

 

 なんとか理解したあと、俺は顔に手を付けて松浦先輩を睨みつけながら一言。

 

 

 「…………正気ですか?」

 

 

 「うん。全く持って正気だよ。」

 

 「でも、なんで………」

 

 

 「なんでかな。僕が信用しているAqoursのみんなと一緒にいれば…………君は変われるかなって。」

 

 

 そんな根拠が皆無なのに、俺を誘ったのか、この男は。それに先輩は良くても他のメンバーは………

 

 「大丈夫。みんなも奥山くんがマネージャーに入ることは賛成だよ。」

 

 は?なんでだよ………。俺はこの人に手を出した男なんだぞ??そんな奴をどうして………

 

 「これからラブライブに向けてもっと忙しくなるだろうし………、その分怜士くんも大変になると思う。だから、奥山くんがマネージャーに入ってくれば怜士くんの負担も減ると思うんだ。」

 

 オレンジ頭の…………高海 千歌だっけな?この部活のリーダーが俺に向かって言葉を出す。

 

 

 「それに……….怜士くんが連れてきた人だもん。だから、私は……私たちAqoursは信用する!!」

 

 

 

 「ーーーッッ!?」

 

 この人………、本気で言ってる。嘘ひとつ言ってない。そんな瞳をしている。初めてだ、こんな心の底から信じてる目をしているのは。

 

 どうして、そんなに人を信用できるんだよ。信用しすぎるから裏切られた時に辛くなるんだろ。

 

 それに、俺は『人殺し』だ。俺が『人殺し』って知ったらどうせ、みんなは俺を見捨てる。

 

 それは当たり前の話でーーー

 

 

 「ーーーーーーーーーーッッ」

 

 

 途中で、俺の思考は止まってしまった。なぜなら、リーダーだけじゃない。他のメンバーもリーダーと同じ信じると本気で篭っている瞳をして俺のことを見ている。

 

 普段は厨二病発言をして周りを困らせている津島や人見知りで常に怯えている印象がある黒澤、それに国木田すらも同じような瞳をしていた。お前ら、そんな顔できるのかよ。

 

 

 

 「ま、とりあえず1ヶ月だけ。試しに入ってみてよ。それでも、考えが変わらなければ普通にやめていいからさ。ね?」

 

 

 

 くそ………、なんだよこの気持ちは。本当ならすぐに断りたいのに!!人と関わりたくないのに!!それなのに、どうして…………

 

 

 この人達なら………と思ってしまう自分がいる。

 

 

 こんな気持ち、とうに『人殺し』になって捨てたはずなのに………どうして今頃になって感じてしまうんだよ!! クソ!

 

 もう、俺は信じたくないんだよ!!あの人以外、信用したくないんだ!!よく考えてみろよ、こんな出会って間もない奴らなんかに何が出来るっていうんだ!?この『人殺し』相手に!!

 

 

 「奥山くん………君、泣いてるの気づいてる?」

 

 

 「え?」

 

 松浦先輩の言葉で俺は涙を流しているのに気付いた。全く気付いていなかった。いつの間に泣いてたんだ?

 

 あぁ、くそ。腕で拭っても止まる気配はなく、滝のように流れやがる。なんだよ一体!!

 

 もう色々なことが一度に起きすぎて頭がごちゃごちゃして何がなんなのか分からなくなってしまった。俺はどうしたらいいんだよ!!

 

 なぁ、教えてくれ!!どうしたら…………

 

 

 ーーーーガバッ

 

 

 俯かせながら頭を悩ませていると、誰かに包み込まれるような感触に襲われる。恐る恐る前を見てみるとそこには国木田の顔がすぐ目の前にあった。

 

 

 「大丈夫、大丈夫ずらよ。」

 

 

 国木田はまるで泣いている赤子をあやす様に俺の頭を撫で優しい言葉をかけた。その一つ一つの動作や言葉に温かさを感じ思わず全身の力がスっと抜けてしまった。それによって、彼女の豊満な胸に顔が突っ込む形となってしまったが、国木田は気にすることなく受け止めてくれた。

 

 そうか…………。俺は、もしかしたら心のどこかでは変わりたいと思っていたのかもしれない。誰かに助けを求めていたのかもしれない。

 

 もし、これがきっかけで自分を変えれるとしたら…………

 

 なら、俺はーーーー

 

 

 「………すか??」

 

 

 「ん?」

 

 俺は国木田の胸に顔を押し付けながらも伝わるように言葉を松浦先輩に向かって出した。

 

 

 「俺はまず…………何からすればいいです………かね?」

 

 

 「ッッ!?それってつまり?」

 

 これ以上は恥ずかしいのと、自分のプライドの関係で何も言わなかった。それでも真意は伝わったのか松浦先輩含め、他のメンバーの表情を良かったと言わんばかりに緩み始める。

 

 「そうだね。まずはメンバーのことを知るところから始めようか。…………ようこそ、奥山くん。浦の星スクールアイドルAqoursのマネージャーへ。」

 

 松浦先輩は微笑みながら、再び俺に腕を差し伸ばす。

 

 

 『今日は明ちゃんにとって、何かいい日になるも思うから私が作っちゃった!!』

 

 

 ここで、俺は朝、零さんの言葉を思い出した。それと同時につい、苦笑いする。

 

 何がいい日だよ、零さん。普通に厄日じゃねぇか。

 

 そう思いながら、俺は松浦先輩の手を握手する形で掴んだ。これで、俺はAqoursの2人目のマネージャーってわけだ。まさか、あんだけ人を嫌っていた『人殺し』の俺がマネージャーをやるなんてな。

 

 まぁ、今日から1ヶ月だけ頑張ってみることにしよう。自分が変わることができるも祈りながら。

 

 

 

 こうして、俺はシスコンであり松浦果南の弟である松浦 玲士の勧めでAqoursのマネージャーになった。

 

 

 しかし、これがきっかけで『人殺し』である俺は本当の姉であるSaint Snowの鹿角 聖良と鹿角 理亞の2人と色々あったり、とある人物に恋をしたり、最終的に松浦 玲士の影響でシスコン気味になったりとするのだが、またそれは別の機会に話すとしよう。

 

 




色々と『人殺し』を投稿していくので良かったらどうぞ。



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『人殺し』の里親が彼氏呼ぶってよ。前編

前々から温めてた話です。2話構成となってます。


 これは俺が高校2年生で、もうすぐ新生Aqoursとしてのラブライブの予選が始まろうとしていたある日のこと、それは唐突に起きた。

 

零「今度の日曜日、菜乃くんを家に呼ぶね」

 

明「………………え?」

 

 ポロッと、俺は朝早く起きて朝ごはん用に焼いたウインナーを口に運ぶ直前、零さんから発しられた言葉に衝撃を受け、つい皿の上へ落としてしまった。

 

明「ごめん、零さん。もう1回言ってくれる?」

 

零「だから、今度の日曜日に彼氏の菜乃くんを家に連れてくるって言ってるの!」

 

 零さんは少しだけ乙女らしく頬を染め、恥ずかしそうに大声をあげる。そんなに、怒らなくてもいいじゃん………。

 

 因みに、菜乃というのは現在、零さんとお付き合いしてる2個下の男性で元は働いている職場の後輩らしい。それで、零さんに一目惚れた菜乃さんは彼女に猛アピールして、最終的にお付き合いする形になったという。

 

 まだ1度も会ったことはないが、零さんから聞くにとても優しい男性ということは分かる。デートとかも月に何度かしてるらしいが、全て満足そうにして帰ってきていることから、少なくとも彼女のことを粗末にして扱ってはいない事が分かる。

 

 今まで空手と仕事だけしか真剣に取り組んでおらず、1度も恋愛をしてこなかった零さんは、仕事の休日やデート前日とかに俺の彼女である花丸や他のAqoursのメンバーにお願いしてイマドキの服や化粧の仕方などを教えて貰っていたのが記憶として新しい。

 

 曜船長や、ルビィ辺りがノリノリで教えていたなぁ………。花丸に関しては特に零さんから連絡来てたから少しだけノイローゼ気味になりかけて支えるのに苦労したものだ。

 

零「…………ダメ………だったかな?」

 

 零さんは申し訳なさそうに言葉を出す。彼女なりに色々と俺のことを思って、そう言ってくれたのだろう。

 

 決してダメなんかではない。むしろ、全然俺としてはOKだ。ただ、あまりにも唐突のことだったから驚いただけであって………。

 

 

 だけど、なんだろう。家族として、零さんに遂に春が来たことで喜びたいはずなのに。

 

 

 胸が気持ち悪い感じにモヤモヤとする。花丸とまだ付き合う前に感じていたものとはまた違う胸騒ぎだ。

 

 

明「そ、そんなことないよ。今度の日曜日ね、了解。予定空けとくよ。」

 

 そう言ったあと、俺は目の前にあるご飯とおかずをかきこんで、味噌汁で胃に全て流し込む。

 

明「ごちそうさま!!じゃ、練習行ってくるね!!」

 

 

 俺は空いた皿を流しに置いたあと、荷物を持って、この場から逃げるように学校へと向かった。背後から、零さんが何か言っているが、何を言っていたのかは分からなかった。

 

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

明「なぁ………、俺はどうすればいいんだ?」

 

善子「急にどうしたのよ。何か変なものでも食べた?」

 

明「そんな訳ないだろ。善子じゃないんだから」

 

善子「私を何だと思ってるのよ!?あと、ヨハネ!」

 

ルビィ「あはは………」

 

 昼休憩の途中、俺はいつメンである花丸、ルビィ、善子の3人に朝の件について相談に乗ってもらおうとした。

 

花丸「何かあったずらか?」

 

 ムキーッと俺の言葉に頬を膨らませながら怒る善子を見て、ルビィが苦笑いする中、花丸が超特大おにぎりを手にしながら俺に話しかける。

 

明「あぁ。実はなーーー」

 

 俺は3人に朝の出来事を嘘ひとつなく話した。零さんが彼氏を連れてくることや、それに対して俺が抱いている感情についてなど。

 

善子「なるほどねぇ………。」

 

ルビィ「うゆ………」

 

花丸「ずら…………」

 

 事情をある程度知った3人は各々と表情を浮かべる。

 

 善子「あんた、それ………普通に"嫉妬"してるんじゃないの?」

 

明「ッッ、嫉妬…………ねぇ。」

 

 

 確かに善子の言う通りかもしれない。

 

 

 散々、零さんに恋愛しろ、彼氏を作れなど高校に入る前から言ってきたが、いざ、彼女が他の男と付き合うとなると少しだけ嫌な気持ちとなる。

 

 別に俺は零さんのことを異性として、そういう目で見ている訳では無い。俺には花丸がいるし…………。零さんのことは勿論、大好きだが、それは家族としての大好きだ。

 

 だけど、俺は零さんに引き取って貰ってからは約7年は2人で一緒に暮らしてきたのだ。当然ながら、俺にとって彼女は恩人であり、2人目の母親的な存在となる。

 

 そんな、俺のことをずっと見守ってくれていた零さんが、俺の元から離れるかもしれないと考えると…………寂しく感じてしまうのだ。

 

 

 我ながら、凄い我儘である。なにせ、あれだけ零さんの幸せを望んでおきながら、いざ、彼女が幸せになろうとすると妬いてしまうのだから。

 

 

明「俺って案外、マザコンなのかも」

 

善子「え、今更?」

 

 善子は何を今更、と言わんばかりの表情を浮かべる。いや、善子だけじゃない。ルビィや花丸も同じ表情を浮かべていた。

 

明「え……、お前ら、今まで俺のことを、そんな認識してたの??めっちゃ悲しいんだけど」

 

善子「いや、だって本当のことじゃない。」

 

明「は??どこが??」

 

ルビィ「先週、零さんの誕生日のときに、プレゼントを買いに行くだけでイタリアまで行ったよね??」

 

 ルビィはジト目で言葉を出す。確かに、先週は零さんの誕生日だったのでその三日前ぐらいにイタリアに行ってきた。

 

明「だって、零さんが欲しいって言ってたネックレスがイタリアにしか売ってなかったから……」

 

善子「だからってイタリアまで行く必要無かったでしょうが!!最低、鞠莉にでもお願いして郵送してもらえれば良かったじゃない!!」

 

明「でも、実際に自分の目で決めたかったし、しょうがないだろ!!」

 

 なんでここまで責められなければいけないのだろうか。零さんに喜んで貰えるように一生懸命やったことなのに。

 

花丸「あと、今年の母の日のイベントで行われた腕相撲大会に必死になってたずらよね………」

 

明「あれは、優勝賞品が欲しかったから……」

 

 今年の母の日に、沼津の商店街でイベントとして腕相撲大会が開催され、なんとその優勝賞品が有名な温泉旅行のチケットだったので、それを零さんに渡したく参加した。

 

 俺含め、自分の母親に温泉旅行のチケットを渡したいという気持ちを持った屈強の男性陣が参加していた中、見事に俺は優勝しチケットを手に入れることが出来た。

 

 まぁ、その日の夜に、温泉旅行のチケットを零さんに渡したら

 

零『え……、十千万の温泉だけで十分なんだけど……』

 

 と、真顔で言われて少しだけ悲しくなったのはいい思い出だ。 結局は近い内に零さんと2人で行く予定だけどね。

 

明「…………俺がマザコンであるかないかの件は置いておいて………、どうすればいいと思う??」

 

 話が少し逸れてしまったので、なんとか話題を戻す。すると、3人は………

 

ルビィ「え……、明くん、まだ分からない?」

 

明「は?」

 

 何を言ってるんだ、こいつは。

 

花丸「もう今のでわかってると思ってたずら」

 

 は、花丸まで!?

 

善子「あんたって基本、頭良いのにこういう時だけは鈍感よね。」

 

 まさかの善子までも!?まるで、3人は俺がこの先、どうしたらいいのか分かっているかのような口ぶりをする。

 

明「何だよ。勿体ぶってないで教えてくれよ」

 

花丸「ダメずら」

 

明「はい?」

 

 花丸は両手で✕を作り、呆れたような表情を浮かべて言葉を出す。

 

花丸「こればかりは明くん自身で気付くべきずら。」

 

明「俺自身が?」

 

花丸「そうずら。でも、きっとすぐに気付くと思うよ。それほど、零さんのことを大切に想っているならば。」

 

ルビィ「うゆ!」

 

善子「ふん!」

 

明「花丸…………、お前ら。」

 

 ここでオレンジ頭の先輩が「休憩終わりー!!」と大声を上げる。どうやら、あっという間に休憩時間は終わったらしい。それを聞いて、3人は腰を上げて練習場へと向かおうとする。俺も腰を上げて彼女たちの後を追う。

 

 俺は一体、どうすればいいんだ??くそ……、花丸はすぐに分かると言っていたが、全然分からない。分かる気がしない。

 

明「零さん…………」

 

 俺はつい、彼女の名前を口にする。ハッとした俺は周りを見るが、他のメンバーは練習に集中して気付いていないようだった。

 

 結局、俺は部活が終わっても、どうしたらいいのか気付くことは出来なかった。

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

  明「ただいまー」

 

 ガチャと扉を開けて、リビングへと足を進める。零さんは今日、残業のため帰りが遅くなるという連絡があったので晩御飯は1人だ。

 

 少しだけ休憩を取ったあと、夕食を作り始める。今晩のメニューはひき肉とピーマンが冷蔵庫にあったので肉詰めピーマンにした。我ながら、よく出来たと思う。

 

 ご飯を食べ終わったあと、自室に向かおうとした途中ーーー

 

明「うわ………」

 

 零さんの部屋の扉が少しだけ空いていてたため、閉めようとして向かったのだが、部屋の中を見て驚きの声を上げる。

 

明「汚ぇ………」

 

 とにかく部屋が汚かった。漫画やら化粧品やら服やらが床に転がっていて悲惨な状況へとなっている。あまり掃除とかが得意な人では無かったけど、これは流石に酷い。彼氏さんも見たらビックリするだろう。

 

明「掃除しよ」

 

 俺はそう言って、彼女の部屋に入り床に転がっている物を拾い上げる。別に零さんの部屋を掃除するのは珍しいことではない。月に最低1、2回はやっている。本当ならば、彼女自身にやってもらいたいが、しつこく言っても反応は無かったので諦めた。

 

 30分ほど掃除をして、半分ぐらいが綺麗になったところ、山のように積まれていた本を本棚に戻している時、

 

明「ん?」

 

 本の中に、1冊の分厚い赤紫色の本が目に止まる。表紙には『明ちゃんとの思い出』と書かれていた。

 

 これは…………

 

明「アルバム??」

 

 1ページ目をペラリとめくると、思った通りアルバムだった。何枚かの写真が綴じられている。こんなアルバムがあっただなんて知らなかった。

 

 思い出してみると、よく零さんは使い捨てカメラとかで写真を撮っていた記憶がある。まさか、その時の写真なのか??今までの全部??

 

 気になった俺は、とりあえずアルバムを閉じて零さんの机の上に置いておく。その後、速攻で部屋を片付けた俺はアルバムを手にして自室へと入る。

 

 そして、自分の机の上にアルバムを置いて再度、1ページ目をめくり、詳しく写真を1枚1枚を目に通す。

 

 最初の1~3ページは俺が零さんに引き取って貰ってから間も無い頃の写真だった。この頃の俺は、まだ色々と警戒して何に対しても疑心暗鬼していた。それだからか、表情がどの写真も死人のような感じだった。

 

 アルバムの中盤は、少しずつ笑顔になっている自分の写真があった。新しい小学校の時の行事の写真や零さんとの旅行の写真などがある。そういえば、小学校の授業参観のときに下手な化粧をしてよく来てくれたっけな。周りにいる親たちに不審な目で見られながらも…………。

 

 それだけじゃない。運動会や発表劇、合唱コンクールにマラソン大会など、どれも俺の為に来てくれていた。

 

明「………………」

 

 アルバム終盤の写真は、俺が高校に進学してからの写真で今までは零さんだけだったのに対し、AqoursのメンバーやSaint Snowの姉ちゃん達、そして新しい高校先で出来た友達との写真もちらほらと映っている。こんな最近のやつまでもあったのか。

 

 恐らく、最後であろうと思われるページをペラリとめくる。それを見て、俺は言葉が出なくなる。

 

明「ーーーーッッ」

 

 最後のページは一寛としていて、俺と零さんが家の前、もしくは学校の入学式や卒業式などの看板の前で並んでいる写真だった。このページを見ただけで俺がどれぐらい成長したのかが1発で分かる。懐かしい………。

 

 そして、そのページには

 

 

 『明ちゃんの結婚式、もしくは私の結婚式の時に使う写真♡』

 

 

 と、零さんが書いたであろう文字が書かれていた。文字が薄くなってることから、恐らく何年か前に書いたものだと思われる。

 

明「………………」

 

 俺は再び、1ページに戻って1枚ずつ写真を眺める。

 

 ペラリ、ペラリと最後までめくっては。

 

 再び、1ページに戻る。

 

 写真を見る度に、その時の思い出が頭の中で映像となって流れ込んでくる。しっかりと覚えているやつもあれば、こんな出来事なんてあったっけ??と首を傾げてしまうものもあった。

 

 これを何度繰り返しただろうか。少なくとも2桁は超えている気がする。

 

 

明「そうか………。そういうことだったのか。」

 

 

 俺はバタンとアルバムを閉じて、天井を見上げながら言葉を呟いた。この写真を眺めているうちに、アイツらが言っていたことの意味をようやく気付くことができた。

 

明「あいつらの言う通り、簡単な事じゃねぇか。」

 

 

 俺のやるべきことはたったひとつ。

 

 

 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇すること。これだけじゃないか。

 

 

 俺はアルバムを元々、本が山積みにされていた場所に置いて零さんの部屋から出る。

 

零「ただいまー」

 

 それと同時に、零さんが家に帰ってきた。どうやら、相当長いことアルバムを見ていたらしい。

 

 俺は部屋から出たあと、恒例のように玄関に向かって靴を脱ごうとする零さんに向かって微笑みながら声を出した。

 

明「おかえり、零さん。今日は肉詰めピーマンだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、遂に零さんの彼氏が家に来る運命の日曜日を迎えた。




後編はまた近いうちに投稿するので楽しみに待って貰えたら嬉しいです。


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『人殺し』の里親が彼氏呼ぶってよ。中編

本当は後編にしたかったけど、長かったので中編で。


 零さんの彼氏である奈乃さんがもうすぐ家にやってくると、迎えに行った零さんから連絡がきたので、そわそわとさせながらもリビングで待っていた。

 

 零さん達が来るまでの間に俺は緊張を和らげるために、LINEのいつメン(花丸・ルビィ・善子)グループにメッセージを送る。

 

明『もうすぐ、零さんの彼氏さんが来るんだが、めちゃくちゃ緊張する。どうしたらいいと思う??』

 

 メッセージを送ると、すぐに既読が3ついた。

 

花丸『手のひらに「人」って文字を3回書いて、飲み込むといいずらよ。』

 

 最初に返信をくれたのは愛すべき花丸だった。内容としては、本を沢山読んでいる花丸らしい。メッセージを見て、頬が緩む。

 

ルビィ『スクールアイドルの曲を聞いてみるといいかも。オススメはねーーー』

 

 花丸の次はルビィから返信がきた。こちらも内容はスクールアイドル好きのルビィらしい。確かに、その案もいいかもしれない。早速、音楽アプリを開いてAqoursの曲を流した。うん、いいかも。

 

善子『生殺与奪の件を他人に握らせるな!!』

 

 おいコラ、ちょっと待て。1人だけなんか違うのがいるんだが………。堕天使(自称)じゃなくて、ド天然水柱がいるんだけど。

 

善子『あ、ごめんwww。送るところ間違えたわwww』

 

 逆にどこに送るつもりだったんだよ、そのメッセージは。あと、草生やすのやめろ。

 

善子『手のひらの中心を親指とかでグイッと押してみなさい。そしたら、緊張は和らぐから。』

 

明「マジか」

 

 てっきり、善子の場合は堕天使口調でボケをかましてくると思っていたが、普通にアドバイスを送ってきたので、思わず口をポカンとさせてしまった。善子の言う通りに、俺は右手をパーにして、中心部を左の親指でグイグイと少し強めに押してみる。

 

明「お、おぉ………。」

 

 予想以上の気持ちよさに俺は言葉を零してしまった。何これ………。永遠にやれるんですけど。

 

善子『やってみた?』

 

明『おう。めちゃくちゃ気持ちいいわ』

 

善子『当然でしょ!(*`ω´*)ドヤッ。堕天使ヨハネに感謝することね。』

 

ルビィ『わぁー、善子ちゃん凄い!!』

 

花丸『流石は善子ちゃんずら!!』

 

善子『善子じゃなくて、ヨハネ!!』

 

明「………アハハ。」

 

 もう、お決まりといっても過言ではないこのやり取りを目にして、俺は笑ってしまった。やっぱり、この3人とのやり取りは俺の中では特別だな。

 

 気付いたら、緊張も無くなっていた。あいつらに感謝しなくちゃだな。

 

零「ただいまぁー。」ガチャ

 

 「お、お邪魔します!!」

 

 おっと。零さん達が遂に家に到着してしまったようだ。俺はメッセージで彼氏さんが来たから頑張るわ、と送りスマホをボケットの中に入れた。

 

 数時間前から着ていたスーツに皺がないか、改めて確認してからネクタイを締め直して2人がリビングにやってくるのを待った。

 

零「ささ、入って入って。」ガチャ

 

 「こ、こんにちは!」

 

 リビングの扉が開き、2人の男女が姿を現す。1人は、俺の里親である零さん。そして、彼女の隣にいるのが、彼氏である奈乃さんだろう。写真で何回か見たことがあるが、こう改めて見ると、小動物系男子って感じがする。例えで言うならば、ルビィの男版って感じだ。

 

 俺は席から立ち上がって、奈乃さんの前に行く。

 

明「はじめまして。」

 

 「こ、こちらこそはじめまして。あ、これつまらないものですけど良かったら食べてください。」

 

 俺が挨拶しながら頭を下げると、奈乃さんも返すように返事をして、手に持っていた紙袋を俺に差し出したので受け取る。中身がチラッと見えたが、これ………。今、人気すぎてあまり手に入らない最新作の抹茶プリンじゃないか。

 

明「わざわざ、ありがとうございます。今日はとても楽しみにしていました」

 

 「ぼ、僕もです。今日はよろしくお願いします」

 

 互いに頭を下げ合い、握手を交わした。軽く会話した感じ、やっぱりいい人そうだ。もし、皮を被ってるゲス野郎だったら、その場でボコボコにして家を追い出そうと考えたけど、その必要はないみたいだ。

 

零「2人とも固いよー。ささ、座って3人で仲良く喋ろ♪」

 

 間に入ってきた零さんに促され、俺たちは席へと座る。当然だが、俺の目の前には零さんと奈乃さんが並んで座っている。

 

零「じゃあ、明ちゃん。私の方から紹介するね。こちらは奈乃くん。2歳歳下で、職場内では私が所属する部署の後輩。んで、半年前に奈乃くんに告白されて付き合うことになったの。」

 

 「奈乃です。初勤務で奥山さんとお会いした時に一目惚れしまして…………。絶対にお付き合いしたいと思い、猛アタックさせていただきました!!」

 

 奈乃さんは恥ずかしそうに顔を赤くしながらも自己紹介をしてくれた。

 

 今の言葉を聞いた感じ、この人は緊張しながらも思ったことを嘘ひとつなく口にしてしまうタイプの人間だな。隣をチラッと見ると、零さんも平常心を装いながらも少しだけ嬉しそうに頬を赤く染めていたのが良い証拠である。ラブラブですね。

 

零「コ、コホン。んでね、奈乃くん。この子が前から言ってた私と一緒に暮らしている明ちゃん。今年、高校2年生でスクールアイドルのマネージャーをやってるの。」

 

明「奥山 明です。まぁ………、色々と家庭の事情があって7年前からここに暮らしています。」

 

 今度は零さんが奈乃さんに俺の説明をし始めたので、それに続いて俺も自己紹介を行う。とは言っても、零さんが彼に俺のどこまでを事前に説明しているからは分からないため、簡易な形の自己紹介になってしまった。さすがに『人殺し』のことについては話してはいないと思うけど………。

 

 「スクールアイドルのマネージャー………ですか?」

 

 所属している部活を聞いて、奈乃さんが反応を示した。

 

明「はい、一応…………。何かありました?」

 

 「あ、いえ。てっきり、奥山さんの影響で武道に関する部活に入ってると思っていたので。身体も鍛えられてるし………。」

 

 あぁ、なるほど。そういうことね。確かに、そう思われても仕方がないのかもしれない。

 

 零さんが空手をやっていたということは基本的には彼女のことを知っている人はほぼ認知している。隠す必要も無く、普通に自分で言っているしね。

 

 だからこそ、一緒に暮らしている俺も零さんの影響で空手、もしくは他の武道に関する部活に所属していると思ったのかもしれない。スーツ着ているとはいえ、俺の身体はガッチリとしているしな。

 

明「そうですね。高校に入るまでは、奈乃さんが思っている通り、彼女の影響で空手をやっていましたよ。」

 

 今、思い出すとブルっと身体が震えてしまうほどの稽古内容でしたけど。まぁ、あれがあったからこそ、そこそこ戦えるようにはなったから、ありがたいことだったけどな。

 

 「やっぱり………、辛かったですか?」

 

明「それなりに。」

 

 「ッッ、ですよね………。」

 

 奈乃さんは俺の話を聞いて、肩をガックリとさせてしまった。何かあったのだろうか?

 

明「どうかされたんですか?」

 

 「あ、いえ。奥山さんに僕の身体がヒョロいから鍛えてやるって前々から言われてて………。」

 

明「あぁ、それは………。ドンマイとしか言えないですね。」

 

 それに関しては、本当にドンマイしか言えない。確かに、奈乃さんは男にしては少しヒョロヒョロな気がするけど………。零さんの彼氏になったことが運の尽きだな。

 

零「だ、大丈夫だって!!ちゃんと奈乃くんにあったトレーニングにするから」

 

 零さんは奈乃さんを励ますようにそう言葉をかける。ここで余談だが、俺がまだ空手を始めようとした時(当時11歳)にも零さんは俺に同じことを言ったが、そのトレーニングの内容が内浦をまるまる1周のランニングだったということをこの瞬間に思い出したが、敢えて言わなかった。

 

 

 その後、2時間くらい3人でまったりと会話を交わした。

 

 

 この2時間、奈乃さんと関わって分かったけど、やっぱりこの人は良い人だった。人見知りで緊張しがちだけど、それでも人のことをよく見てる。見た目や偏見だけで絶対に人を見捨てない。しかも、しっかりと思ったことを口に出してくれる。

 

 

 この人になら俺は…………。

 

 

 ………よし!!

 

 

 覚悟を決めた俺は、そろそろお開きになりそうな雰囲気のタイミングで零さんの方に顔を向ける。

 

明「ごめん、零さん。少しいい?」

 

零「どうしたの?」

 

 

明「奈乃さんと………2人で少し話がしたい。」

 

 

零「え?何で?」

 

 ふきんでテーブルを吹いていた零さんは目を丸くする。まぁ………、当然の結果だよね。

 

明「そりゃあ………、将来、2人が結婚したら奈乃さんは俺の…………父親になるかもしれない人だからね。男2人でよりよい親睦を深めようかな………と。」

 

零「結婚………///」

 

 「父親………///」

 

 こら、2人とも。『結婚』と『父親』というワードで顔を赤くさせるんじゃない。1番恥ずかしいのは、この言葉を話してる俺だからね??

 

 

明「だからお願い。少しだけ席を外して欲しい。」

 

 俺は零さんの目をしっかりと見ながら、お願いした。

 

零「ーーーーッッ………。」

 

 どうして俺がこんなことを零さんに言ったのか。長年、一緒に過ごして鋭い零さんなら、俺の考えを理解したことだろう。理解したからこそ、彼女がこれを許してくれるかどうか。

 

 数十秒、沈黙の時間が流れたあと、零さんは目を瞑りながらゆっくりと口を動かした。

 

 

零「………分かった。じゃあ、コンビニ行ってアイス買ってくるわ」

 

 

明「ーーーッッ!零さん……。」

 

零「奈乃くんもごめんね。少しだけ明ちゃんの我儘に付き合ってくれる?」

 

 「僕は全然、大丈夫ですけど………。」

 

零「ありがと。じゃあ、行ってくるね」

 

 零さんはそう言って、財布を片手に持ったあとに部屋から出て行った。心の中で、零さんに感謝しながら俺は彼女を見送った。

 

 ガチャ、と聞き慣れた玄関の扉が閉まる音が耳に入ったあと、俺は奈乃さんの方に顔を向けて言葉を出した。

 

明「すみません、奈乃さん。無理言っちゃって」

 

 「い、いえ!とんでもないです。」

 

明「何か淹れますよ。お茶かコーヒーどっちがいいですか?」

 

 俺の無理を引き受けてくれたのに、何も出さないというのは失礼なので俺は奈乃さんに声をかけながら台所へと行く。

 

 「じゃあ、コーヒーを」

 

明「分かりました。ミルクや砂糖はどうします?」

 

 「ブラックでよろしくお願いします。」

 

明「ブラックですね。了解です。」

 

 ブラックか……。高校生の俺が言うのもなんだけど、奈乃さんも飲むんだな。少し意外だ。

 

 手際よく、カップ2つにブラックコーヒーを淹れた俺はそれをテーブルに持って行って、カップ1つを奈乃さんの前に置く。

 

明「どうぞ」

 

 「ありがとうございます。」

 

 奈乃さんは頭を下げたあと、早速俺が淹れたコーヒーに口をつける。

 

 「ッッ!!美味しいです!!」

 

 俺特製のコーヒーを飲んで、奈乃さんは嬉しそうに言葉を口にする。本当に美味しそうに飲んでくれるから、見ててこっちも嬉しくなる

 

明「ありがとうございます。喜んで貰えて良かった。」

 

 最近はコーヒーの淹れ方にも拘り始めたからな。次は紅茶とかにも挑戦してみようかね。

 

 

 「それで………話っていうのは?」

 

 

 互いにコーヒータイムをほんの僅かな時間、過ごしたあと、奈乃さんの方から、この対談の機会の内容を聞かれた。

 

 その瞬間、俺は姿勢を正したあとに奈乃さんの方に目線を移す。今まで以上に真剣な表情で。

 

 

明「単刀直入に聞きます。奈乃さんは零さんに俺について…………、『奥山 明』という人物についてどこまで聞いていますか?」

 

 

 「明くんについてですか?さっき言われたようにご家庭の事情で一緒に奥山さんと暮らすようになった以外には特に何も聞いてませんね………。」

 

明「そうですか………。彼氏さんからしたら、俺は少し邪魔だと思いません?」

 

 「そ、そんなことはないですよ!!家庭の事情ならば仕方がないですし。元々は他人である僕が何か言ってはいいものではありませんから。少なくとも、僕は明くんの存在を邪魔だなんて今までに1度もたりとも思ったことはないですよ。」

 

明「ッッ………そう言って貰えると助かります。」

 

 

 この言葉を聞いて、最後の最後で決心がついた。やっぱり、この人なら…………大丈夫だ。

 

 

明「奈乃さん。今から貴方に大事な話があります。」

 

 

 「話ですか?」

 

 

明「はい。内容は俺について………です。」

 

 

 俺は何回か、深呼吸を整えたあと、聞く状態になってくれた奈乃さんの目をしっかりと見ながら口を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「俺………、奥山 明は11年前に人を殺しました。」

 

 

 この言葉を初めとして、俺は自分の過去について奈乃さんに語り始めた。

 




後編、近いうちに投稿しますので少しばかりお待ちを。

お気に入り・感想・高評価待ってます。


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『人殺し』の里親が彼氏呼ぶってよ『後編』

後編です。

少し懐かしいシーンがあります。


 「…………え?」

 

 俺が放った言葉に、現状が追いついていないのか、奈乃さんはポカンとさせていた。唐突に、目の前にいる青年に過去に殺人経験があると告白されれば当然の反応なのかもしれない。

 

 それでも、俺は口を止めることなく言葉を続ける。

 

明「今から11年前に………函館にある銀行に1人の強盗が立て篭り事件を起こしたんです。その強盗には一丁の拳銃と1人の女性がいました。その女性が……………俺の本当の母親でした。」

 

 当時のあの様子を…………。視界に入り、脳の奥底に未だにこびり付いているあの景色を、俺は鮮明に頭の中で思い浮かべながら、あの日の出来事を口にした。

 

明「拳銃を頭に付けられ、"死ぬかもしれない"という恐怖に泣き、震える母親を俺と2人の姉は怯えながら見ていました。」

 

 急に弾け飛ばされ、気付いた時には、さっきまで近くにいた大好きな母親が、拳銃を持った怖い男の人に押さえつけられているのだ。恐怖以外何も出てこないに決まっている。

 

明「けど…………なんとかこの状況をどうにかしようと………、母親を助けないと!!、と思った俺は強盗が油断している隙に立ち向かいました。」

 

 よくよく、思い出してみると凄い行動をしたなと我ながら思う。なにせ、相手は拳銃を持った強盗なのだ。はっきり言って無理がある。

 

 それでも……………、なんとか母親を助けたいという気持ちの方が勝っていたんだろうな。

 

明「結果からしては、なんとか母親を解放することが出来ました。とは言っても、すぐに強盗にすっ飛ばされましたけどね。けど…………、ただで吹っ飛ばされた訳では無いんですよ。何かしらの拍子で俺は……………吹っ飛ばされたのと同時に強盗が持っていた拳銃を手にしてしまったんです。」

 

 これについても、どうして吹っ飛ばされた際に俺の手に拳銃があったのかは分からない。いや、だって普通に考えてありえないじゃん。何回も言うけど、当時の俺…………5歳だよ?どうして5歳に拳銃取られるんだよ。握力に関しては天と地の差あるだろうが。

 

明「当然、それに気付いた強盗は俺から拳銃を奪い返そうとしました。その時の姿が本当に恐ろしくて、怖くなった俺は、無我夢中で拳銃を強盗に向けて………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いたら、引き金を引いていました。」

 

 

 あの時、あの瞬間。一体、何が起こったのか、自分は何をしてしまったのか最初は理解することができなかった。けど、次第に…………自分のこの手で引き金を引いてしまったという感覚が、感触がじわじわと伝わってきたのを覚えている。

 

 そして、目の前を見てみれば、頭に穴が空き、そこから大量の血を溢れだしながら倒れる強盗の姿が。そして、周りを見てみれば、俺の事を恐れるかのようにして目にする人達。顔や手、服を見てみると、ドロドロとした真っ赤な血で染まられていた。

 

 

 この瞬間から俺は…………『人殺し』になってしまったということを理解した。

 

 

明「『人殺し』になった以降は、正直地獄のような生活でした。母親や父親、姉2人に会って謝りたいのに、会えない。家族は家族で俺のせいで暫くの間は苦労させてしまった。」

 

 

 『人殺し』がいる家族。

 

 

 これだけで、どれほど鹿角家に迷惑をかけてしまったのだろうか。話を聞いた感じ、甘味処である『茶房 菊泉』では客が全く来なくなったり、姉ちゃん達は学校でクラスに虐めにあったりしたそうだ。

 

 全ては俺のせいで………。俺のせいで関係のない家族にまで被害が及ぶようになってしまった。

 

明「その結果、俺は1年後に…………孤児院へと送られました。まぁ、当然ですよね。」

 

 孤児院に送られた………。すなわち、棄てられたと言っても過言ではない。この言葉を聞いて、奈乃さんは気まずそうに表情をしかめる。どれも、聞いてて気持ちの良いものではないからな。申し訳ない話だ。

 

明「送られた孤児院で俺は3年間過ごしました。他の子達に『人殺し』だと気付かれたくなかったので、基本的には1人で。」

 

 ぶっちゃけた話、孤児院で過ごした日々はそこまで覚えていない。なにせ、本当に何もなかったからだ。あの頃の俺は、まさに死人に等しい存在であった。

 

明「きっと、このままこんな感じの生活が続くんだろうな………、とあの日まで思っていました。」

 

 

 そう、あの日。

 

 

 今でも忘れない10回目の誕生日だった12月12日。

 

 

 俺が再び、"人"として動き始めることができたあの運命の日。

 

 

 

明「俺が10歳になる12月12日の誕生日の日に………零さんに出会いました。」

 

 

 

 最初は、彼女は定期的に施設に来るボランティアの大人数の1人にしか過ぎなかった。ボランティアが来ても、基本的に関わらなかった俺は、その日もいつものように1人で過ごすはずだった。

 

 はずだったのにーーー。

 

 

 

零『この子、引き取っていいですか??』

 

 

 

明「あの人……….、俺を見て院長にそう言ったんです。その理由がなんだったと思います??昔、飼ってた犬に俺が似てからって言うんですよ。今、考えると相当頭狂ってると思いません??」

 

 苦笑いで奈乃さんにそう聞くと、彼は小さな声で「奥山さんらしい………」と呟いていた。

 

 急に目の前に現れ、素性も名前も知らない女性に、家族になろうと言われても困るだけ。それに、他の子ならばまだしも自分は『人殺し』なのだ。

 

 だから、最初は断った。少しだけ、名残惜しい気持ちもあったがしょうがないこと。

 

 もし、『人殺し』である俺を引き取ってしまったら、今後、彼女に迷惑をかけてしまうかもしれない。それだけはどうしても避けたかった。もう、自分のせいで周りに被害が及ぶのは嫌なのだ。

 

 本来なら、ここで彼女が諦めて終わるはずだった。しかし………

 

 

 

 『私は例え君が『人殺し』だとしても一緒にいたいという気持ちは変わらないよ。だからさ……』

 

 

 

 零さんは俺の意思関係無しに、俺という存在に足を踏み入れようとした。

 

 

 どうしてだよ。どうして、そんなことが言える??話を聞いていなかったのか??俺は『人殺し』なんだぞ??

 

 

 やめろ。それ以降のことを口にしないでください。

 

 

 ダメなんだ。俺みたいな『人殺し』は。それを、もう手にしてはいけない。手にしてしまったら、またしても俺のせいで傷つく人がでる。もう嫌なんだよ。

 

 

 嫌なのに…………

 

 

 今まで、俺の中で培ってきた何かにピキピキとヒビが入っていく。

 

 

 嫌だ嫌だと対抗していても、ヒビが止まることは無かった。

 

 もしかしたら、俺は……………、『人殺し』でありながらも、心のどこかでは微かに望んでいたのかもしれない。

 

 2度と手にすることは決して無いであろうと、思っていたもの。

 

 

 そして…………。

 

 

 

 『私と一緒に家族になってくれないかな??』

 

 

 

 ーーーパリィィィン!!!!

 

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

 

 彼女のこの一言で、俺は奥山 明として生まれ変わり…………、奥山 零というかけがえの無い家族を手にすることが出来たのだ。

 

 

 

明「……………俺についてはこんな感じです。すみません、急にこんな話しちゃって」

 

 「い、いえ…………。」

 

 一通り、俺の過去を伝えた俺は最後に奈乃さんにお詫びの言葉を出した。先程言ったように、話していた内容は全て、聞いてて気持ちの良い話ではない。少なからず、気分を悪くしてしまっただろう。これで、何も言わないのは失礼なことだ。

 

 「けど………、どうしてその話を僕に?」

 

 気持ちを切り替えるためか、冷めてしまったコーヒーを口にした奈乃さんは俺に声をかける。確かに、急にこんな話をされたら気になるよな。

 

明「そんな大した理由ではないですよ。ただ……、奈乃さんは零さんの彼氏さんだから俺の事を知って欲しいと思っただけです。」

 

 「はぁ…………。」

 

 でも、この先…………、もし奈乃さんが零さんと別れることとなったら無駄じゃないか、と思うかもしれない。確かにその通りだ。

 

 だけど、それでも俺は話したかった。

 

 奥山 零が選んだ男だからかもしれない。確証はないけれど…………これだけで信用はできる。

 

明「奈乃さん…………。」

 

 俺は席から立ち上がったあと、座ってる奈乃さんの前まで移動する。突然の行動に奈乃さんは少し困惑するが、それを気にせず俺は…………

 

 

 ーーーゴン!!!

 

 

 「ーーーーッッ!?」

 

 両膝と手を地につけて、勢いよく頭を下げた。簡単に言えば土下座である。これに関しては、流石に奈乃さんも驚き、思わず席から立ち上がっていた。

 

 「明くん!?」

 

 

明「奈乃さん!!『人殺し』である俺から貴方にお願いがあります!!!」

 

 

 「ーーーーッッ」

 

 

 俺が零さんに席を外させ、奈乃さんと2人きりで会話したいと思った理由は過去を話すことだけではなかった。むしろ、こっちが本題だといえる。

 

 

 俺は腹いっぱいに力を入れながら大声で言葉を出した。

 

 

 

明「絶対に零さんを………幸せにしてあげてください!!!」

 

 

 

 「ーーーーッッ!?」

 

 

 

明「零さんは俺の恩人です!!彼女は『人殺し』である俺に………家族や愛、強さなど色々とくれました!!彼女がいたから今の俺がいます!!彼女がいたから俺は多くの友達や愛すべき彼女、そして本当の家族と向き合えることができた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けど、その分…………俺は彼女から相当な時間を奪ってしまった!!」

 

 

 零さんが俺を引き取ったのは21歳の大学生の時。その歳ならば、本来なら友達や彼氏とワイワイ楽しめる時間が多くあったに違いない。

 

 

 けど、零さんは違った。お金を多く稼ぐために、バイトや夜勤をひたすら入れまくって、それ以外の時間を俺のために費やしてくれた。

 

 

 

 俺は彼女のこの優しさは心の底から嬉しくて………とても嫌だった。

 

 

 

 当たり前だろう。俺のせいで、楽しく過ごせた時間のほとんどを失わせてしまったのだから。

 

 

 卒業後もOLとして働き始めたから、尚更だ。零さんは俺と過ごしていること自体が楽しいし、家事や料理をしてくれているから別に気にしなくていいと言うが、そうにはいかないのだ。

 

 

 時間というものは戻ってこない。例え、どれほどの金を積もうとも。

 

 

 だからこそ……………

 

 

明「知ってます??零さん、よく家で奈乃さんについてめちゃくちゃ熱く語るんですよ」

 

 「え?」

 

明「その時の零さん。本当に嬉しそうなんですね。まさに恋する乙女って感じの顔で………。」

 

 「……………」

 

明「それ見て、毎回思うんです。あぁ……….今、零さんは幸せなんだろうなぁ………って。」

 

 「明くん…………」

 

明「だからこそ、このまま俺は零さんに幸せになって欲しいんです。俺が失わせてしまった分の零さんの時間を…………奈乃さんに任せたいんです!!」

 

 気づいたら頬に湿った感触が伝わる。目を開けると、目の前に小さな水溜まりができていた。気づいたら、俺は涙を流していたらしい。

 

 この姿を見て、奈乃さんはどう思うのだろうか。

 

 惨めでもいい。奈乃さんの口から出されるたった……………あの一言だけを聞ければそれでいいんだ。

 

明「お願いします………。お願いします……。」

 

 俺は嗚咽しながらも何度も何度も「お願いします。」と口にした。

 

 「明くん。」

 

 すると、奈乃さんはゆっくりも立ち上がって俺の両肩に手を置く。

 

 そして、彼は俺の顔を見ながら真剣な表情を、浮かばせて言葉を出した。

 

 

 

 「約束するよ。奥山さんは…………れ、零さんは僕が絶対に幸せにする。だから………安心して」

 

 

 

 「ーーーッッ、ありがとうございます」

 

 

 彼から放たれたこの一言を聞いて、俺はとても満足するのだった。今までにあった枷が外れたような気がした。

 

 この人なら………大丈夫。嘘つかずに絶対に零さんを幸せにしてくれるだろう。

 

 今回のこの会話(?)、お願い(?)を通じて、俺は奈乃さんと仲良くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、数年後。

 

 小さな教会で大勢の人が見守る中、神父の前で白いスーツを着て誰かを待つ1人の男性があった。

 

 

 ーーーキィィ…………

 

 

 教会の大きな扉がゆっくり開き出す。その先から、コツ………コツと2人の男女が赤い絨毯の上で歩き始め、男性の方へと向かう。

 

 

 1人の赤髪の女性は真っ白なウェディングドレスを纏い、誰もが見惚れてしまうほど美しかった。近くにいた女性が思わず「綺麗ずら…………」と呟いてしまうほどに。

 

 

 そして、そんな美しい女性と腕を組んでいる男性は新品のスーツを着ている。赤紫色の髪を揺らし、普段はキリッとした目つきをしているが、今だけはとても穏やかで、

 

 

 

そして………

 

 

 

 今、とても幸せな表情を浮かべながら隣にいる彼女を見て彼は微笑んでいた。

 




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『人殺し』ともう1人の母親

お久しぶりですヘ(°◇、°)ノ


 これは、去年の12月12日から明ちゃんが私の家に住むようになってから半年が経った頃の話。

 

零「ただいま、明ちゃん」

 

明「…………」ペコリ

 

 大学の講義を終え、途中にスーパーに寄って買い物をしてから家に帰った私はリビングの中に入ると明ちゃんがテーブルで学校の宿題をしていた。

 

 声を掛けた私に視界に捉えると、明ちゃんは言葉を発さずに頭を下げる。これはいつものことだった。

 

 私は彼と住むようになってからまだ1度も会話らしい会話をしたことがなかった。勿論、私から声を掛けるようにしている。しかし、彼からの言葉での反応をしてもらったことがなかった。

 

 当然かもしれない。彼は過去に1度、『人殺し』になってしまい、本当の両親に捨てられ、施設で4年もの時間を過ごしてきた。そんな中、得体の知れない私に引き取られる形になったのだ。警戒して無理もない。むしろ、すぐに馴染む方がおかしいのかもしれない。

 

零「すぐにご飯作っちゃうね!」

 

 私は着ている服の上からエプロンを装着し、台所へと行く。この後、2時間後にバイトのシフトが入っているため、それまでに夕飯の準備をしなくてはならない

 

明「…………」

 

 今年の春から明ちゃんは地元の小学校に通わせている。そのために色んな出費が必要となった。それ以前に元々1人だった生活が2人へと変わったのだ。そのため、必然的にお金が必要となる。だから、私は明ちゃんを引き取ってからはずっとバイト三昧だ。友達と遊びに出掛けることも無くなった。

 

 だからといって、私は後悔はしていない。

 

 私は決めたんだ。明ちゃんが助かるまで………。幸せになるまで一緒にいるって!

 

 "1度決めたことは最後まで成し遂げる。"

 

 私を変えてくれた大好きな父さんが遺してくれた言葉だ。この言葉通り、私は何があろうとも達成するまで折れる訳にはいかない。

 

零「お待たせー♡今日は肉じゃがと味噌汁だよー」

 

 完成した肉じゃがと味噌汁と炊きたてご飯を2つずつテーブルに乗せたあと、明ちゃんも向かい合う形で座る。

 

零「いただきます!」

 

明「…………」スッ

 

 互いに手を合わせ、言葉を出した私達(言ったのは私だけだけど)は目の前にある食事に手をつける。もぐもぐ…………、うん!美味しい!

 

 チラッと明ちゃんの方に目線を移すと、明ちゃんも、もぐもぐと肉じゃがを、頬張っていた。まるでリスみたいに頬を膨らませるもんだから思わず吹いてしまった。

 

明「…………」

 

 すると、明ちゃんは手を止めて俯いてしまった。しまった………。

 

零「ごめんごめん!別に明ちゃんが悪い訳じゃないよ!じゃんじゃん食べておっきくなりな!!」

 

 私はそう言って、心にズキズキと痛みを感じながら明ちゃんの肩を軽く叩く。すると、明ちゃんは再び食事を再開し、それを見て安堵の息を吐く。

 

 達成の道のりは長いな。と思いながら食事を続けていくと……

 

明「…………」スッ

 

零「ん?」

 

 明ちゃんがテーブルの傍においてあったランドセルに手を伸ばし、ガサガサと中身を探り始める。何をしているのだろうか。

 

 そして、1枚のクリアファイルを取り出したあと、中から1枚の紙を取り出して私の前に差し出す。

 

零「なにそれ?」

 

明「…………」

 

 明ちゃんが差し出した紙に手を伸ばし、詳しく見てみるとそれは授業参観についての案内だった。どうやら、来週の金曜日に授業参観があるらしい。

 

 確か、来週の金曜日は講義が無いから朝から晩までバイトのシフト入れてた気がする。

 

零「ん……」

 

 私はすぐさま、スマホを出してとある場所に電話をかける。

 

明「……??」

 

零「あ、もしもし。お疲れ様です、奥山です。……あ、はい。シフトの件についてなんですけど、来週の金曜日、少し用事が出来ちゃったんでお休みを頂きたいのですが………。あ、はい。いいですか?ありがとうございます。えぇ、はい、はい。あ、私の方から連絡させていただきます。はい、ありがとうございます。失礼します」

 

 私は誰もいないのに、頭を下げながらバイト先の店長とのやり取りを終えたあとスマホをあったところに置いて明ちゃんに話しかける。

 

零「これで授業参観行けるね♡」

 

明「…………!?」

 

 明ちゃんは言葉は出さないものの、信じられないような目で私の方を見る。まさか、自分の授業参観のためにバイトを休むとは思ってもみなかったのかな?それとも………もしかして嫌だったとか?

 

明「…………」スッ

 

 食事を終えた明ちゃんは空になった食器を重ねて洗い場の方へと向かった

 

零「あ、いいよ、明ちゃん。私やっとくから!」

 

明「…………」ペコリ

 

 私が声を掛けると、明ちゃんは私に頭を下げ、ランドセルを手にして自分の部屋へと戻ってしまった。

 

 それを見届けた私も空になった食器を重ね、洗い場へと向かいスポンジに洗剤を付けて泡つけながら洗っていく。

 

零「私………上手くできてるのかなぁ」

 

 つい、そう言葉をこぼしてしまった。

 

 

 ーーーーー

 

 

 そして、やってきました授業参観!

 

 慣れない手つきで化粧をし、就活のために購入した新品のビジネススーツを着た私は明ちゃんが通う地元の小学校へとやって来た。どうでもいいけど、私の母校でもある。本当にどうでもいいな!

 

 見た目に関しては、普通にまともに見えると思う。恐らく、身長が一般女性と比べたら高いからかもしれない。ビジネスママって感じだ。………まだ21だけどね!?

 

 学校の中に入った私は明ちゃんがいる教室へと目指す。えぇと、確か明ちゃんは5年B組だから………えぇと……。あれ?どこだっけ?

 

 やばいな、もうすぐ始まっちゃうのに5年生のクラスが見つからない!

 

??「あの、何かお困りですか?」

 

 困っていると、背後から声を掛けられたため、振り向くとそこには柑橘系の綺麗な色をしたショートカットの女の子………?に声を掛けられた。

 

零「あ、はい。実は5年生のクラスを探してて」

 

??「あら、そうなの?なら、一緒に行きましょうか?私も6年生の娘がいるから、道中に5年生のクラス、通ると思いますよ」

 

零「本当ですか?凄く助かり………え?」

 

 え、え、え?この女の子、今、なんて言った?6年生の………娘ぇ!?え、この人、ママなん!?見た目、普通に小学校低学年に見えるんですけど!?

 

??「もしかして、驚いてます?」

 

零「………すみません。」

 

??「よくあることですから、気にしないでください。時間も時間なので、行きましょうか」

 

零「はい………」

 

 親切な女の子………、いや親切な女性のおかげでなんとか授業が始まる前に明ちゃんの教室にたどり着けそうだ。

 

??「ところで、お姉さんはあれかな?弟くんの授業を見に来たのかな?」

 

 並んで歩いていると、女性からそう話しかけられた。弟……か。やっぱり、お母さんには見えないのかな?

 

 うーん……、なんて答えればいいんだ??返答に難しい質問きちゃったな。

 

??「なんか………訳ありな感じかしら?」

 

 表情が出てたのか、核心的なところを突かれてしまった。

 

零「まぁ……、そうですね。訳あり………みたいなものですね」

 

??「そう……」

 

 本当なら、ここでこの内容の会話を終わらせても良かった。けど、何だろう。この人になら……、会って間も無い名前すら知らないこの人になら少し打ち明けても良い気がした。

 

零「実は半年ぐらい前に、とある事情で1人の男の子を引き取って一緒に住み始めたんです。」

 

??「………うん」

 

零「当然ちゃ当然だと思うんですけど、その子と上手くいってない気がして。一緒に住み始めてからは特に会話とかもした事なくて」

 

??「………」

 

零「時間が解決してくれるかな?って最初は思ってたんです。けど、逆に時間が経てば経つほど、不安になってきて……。本当にこれで良かったのかと。ちゃんと、あの子の家族になれているのか、と怖くなっちゃって……。」

 

??「………うん」

 

零「って、急にすみません。変なこといっちゃって」

 

 私は「あはは」と作り笑いをしながら女性に謝る。すると、女性は優しく微笑みながら私に話しかけた。

 

 

??「子供っていうのはね、私達が思っている以上によく私達のことを見てるのよ」

 

 

零「……え?」

 

 

??「貴女がその子の為に頑張っていることは、きっとその子も知ってると思う。」

 

 

零「………」

 

 

??「だから、そんな身構えなくて良いと私は思うわ。貴方は貴女らしく普段通りにやればいい。きっと、その頑張りが間違ってなかったということが証明される日が来るから」

 

 

 彼女の暖かい言葉に一瞬、泣きそうになってしまった。本当のママさんからの言葉にこんなに説得力があるものなのか。

 

 

??「ほら、もう5年生のクラスに着くからシャキッとしなさい。そんな顔、その子に見せたら逆に不安にさせちゃうでしょ。」

 

 

 そうだ。彼女の言う通りだ。

 

 

 こんな顔はこの場ではふさわしくない。

 

 

 私はポケットからハンカチを取り出して少しの間、顔に当てる。そして、何度か深呼吸をしながら気持ちを整えた。

 

??「うん、貴女にはその表情がお似合いよ」

 

 彼女はそう言って、ニッコリとさせる。そして、すぐに『5年生』という文字が掘られた教室へとたどり着いた。

 

??「はい、ここが5年生の教室よ。頑張って!」

 

零「はい!」

 

??「じゃ、私はこれで」

 

零「あの!」

 

??「?」

 

 6年生の教室へと向かおうとした女性に私は声をかける。

 

零「今日は本当にありがとうございました!!あの子と向き合う覚悟を改めて決めることができました。」

 

??「なら、良かった」

 

零「ちなみに、お名前を聞いてもよろしいですか?」

 

 私がそう言うと、彼女は1枚の名刺を取り出して私に差し出す。それを受け取って見ると……

 

 

??「私、ここの近くにある『十千万』っていう旅館の経営者なの。もし良かったら、その子と一緒に来てちょうだいな。娘たちと一緒に待ってるから♡」

 

 

 最後にウィンクをして、彼女は行ってしまった。

 

零「………来週辺り、明ちゃんと行こうかな」

 

 そう呟いて私は教室の中へと入った。

 

 すると、周りのママさんの目線が一気に私の方へと刺さった。そして、ヒソヒソ声も聞こえてくる。高校生で産んだのかしら?とか。まだ卒業して3年しか経ってねぇわ、ぶっ飛ばすぞ。

 

 そう思いながら、授業を受ける明ちゃんの様子をずっと眺めていた。

 

 ーーーーー

 

 授業参観が無事に終えた日の夜のこと。

 

 

零「ーーーーはっ!!」

 

 

 私はベットから飛び上がるように起き上がる。あれ………、どうして私、ベットに?それに、おでこには貼った記憶のない冷えピタが貼られていた。

 

 確か……帰ったら今までの疲れがグイッと身体に襲いかかって5分だけ横になろうと思って横になったんだ。

 

 けど、横になったのは1階のリビングのソファだ。しかも、アラームもセットしていたはず

 

 まさか………

 

 私はベットから降りて、ゆっくりと階段を降りる。降りると、リビングの方から美味しそうな匂いがしてくる。

 

零「明ちゃん…………??」ガチャ

 

 私は扉を開けてリビングの中を除く。するとそこには………

 

零「ーーーーッッ!!?」

 

明「……………」グツグツ

 

 エプロンを身につけた明ちゃんが台所で料理をしていた。しかも、テーブルの方を見てみると既に完成されて料理が何品か置いてある。

 

 どうして明ちゃんが料理してるの?意味が分からないんだけど。

 

明「……………ふぅ」

 

 汗を拭った明ちゃんは完成した料理……あれは、ロールキャベツ?をさらに盛り付け、それもテーブルの上に置いた。

 

零「…………あ」

 

明「…………!!」

 

 その際、明ちゃんの目が合ってしまった。バレたら仕方がないと、私はリビングの中へと入り、彼に話しかける。

 

零「これ、全部明ちゃんが?」

 

明「…………」コクリ

 

 やっぱり、テーブルの上に置いてある豪華な料理は明ちゃんが作ってくれたものらしい。

 

零「どうして………??別に私が作ったのに?」

 

明「……………」スッ

 

 すると、明ちゃんは私にとあるものを渡す。これはピンク色のバラで作られた綺麗なブーケだった。

 

 どうしてこれを私に?

 

 

 

明「きょ、今日は……………は、母の日だから」

 

 

 

零「ーーー!!」

 

 確か、今日は…………5月9日。母の日だ。既に母が亡くなってる私にとっては無縁のものだったから存在自体忘れていた。

 

 てことは、このバラのブーケも豪華な料理も全部、私のために………??

 

 少しずつ、少しずつと目尻が熱くなっていくのを感じる。力を一瞬でも抜いたら膝から崩れ落ちる自信しかない。

 

明「れ、零……さん」

 

零「ん……?」

 

 

明「いつも………いつもぼ、僕のためにありがとう!零さん………だ、大好きだよ。」

 

 

零「ーーーーーッッ、明ちゃん!!」ガシッ

 

 もう無理だ。私は涙を浮かばせながら明ちゃんに抱きついた。

 

 

零「ああ……あぁ………あぁああああああーーー!!!」

 

 

 そして、21歳だというのにも関わらず、子供の目の前で声を出して私は泣いた。多分、両親の葬式の日の次ぐらいに泣いたと思う。

 

 

 『子供っていうのはね、私達が思っている以上によく私達のことを見てるのよ』

 

 

 彼女の言う通りだった。明ちゃんはずっと、私のことを見ていた。見ててくれていた。

 

 

 『貴女がその子の為に頑張っていることは、きっとその子も知ってると思う。』

 

 

 彼女の言う通りだった。明ちゃんはずっと、私のこれまでを知っていた。知ってくれていた。

 

 

 『だから、そんな身構えなくて良いと私は思うわ。貴方は貴女らしく普段通りにやればいい。きっと、その頑張りが間違ってなかったということが証明される日が来るから』

 

 

 

 彼女の言う通りだった。まさか、それを言われた当日に証明されるとは思わなかったけど、私の今までは間違ってなかった。間違ってなかったんだ。

 

 

明「れ、零さん、大丈夫?な、泣かないで……」アタフタ

 

 まさか、私が抱きつくほどに号泣するなんて思ってもみなかったのか、明ちゃんはそんなことを言いながら戸惑っていた。

 

 何やってんだ、私は。せっかく、この子が私のために色々と頑張ってくれたのに、泣いたら困るに決まってるだろうが。

 

零「………うん、もう大丈夫だよ!明ちゃんが私のために作ってくれた料理、食べるね。」

 

明「………うん!!」

 

 私は涙を腕で強引に拭き取り、彼が作ってくれた料理が並ぶテーブルへと手を繋ぎながら向かった。

 

 この日から、私と明ちゃんの間にあった大きな壁が無くなり、普通に話せるようになった。

 

 

 

 そして、時が過ぎーーー

 

 

 

零「ただいまー。」

 

 私が仕事から帰り、リビングへと入ると今年から高校1年生になった明ちゃんが普段よりも少し豪華な料理をテーブルに並べていた。

 

明「おかえり、零さん。……はい、これ」

 

零「これは?」

 

 すると、彼は私に紙袋を渡す。それを受け取り、中を開けると私が前から気になっていたコスメが入っていた。これ、結構値段するやつなのに………

 

 私の視線がだんだんと、潤んで視線が歪んできたところで明ちゃんは満面な笑みで私に一言。

 

 

 

明「零さん、いつもありがとう!!」

 

 

 

 今日は5月9日、母の日である。

 

 

 『人殺し』の彼は恩人であり、もう1人の母親に改めて感謝するのであった。




皆さんは今年の母の日は何を贈りますか?
是非、感想コメントのついでに教えてくれたら嬉しいです


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