少年は幻想を辿る (ゼロニャン)
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プロローグ

少し闇を持った高校生のお話です

思った事をそのまま綴ったような物語です
優しい目でご覧頂ければ幸いです


 

 

 

 

 

 

 

 また何時もの夢だ

 同じ場所、そして目が覚める前に必ず見てしまう

 

【不気味なナニカ】が俺を追いかけてくる

 

 全身はボロボロで皮は爛れ、容姿はゾンビにそっくりだったが、人間には無い角がある

 

 今も俺を追いかけている

 

 …1つだけ言わせてくれ……

 

 

 

 

 

 

(走んの早すぎだろおぉぉ!!)

 

 

 

 そう、このゾンビはとてつもなく早い

 某メタルモンスター並みに早い

 

 

 こちらも走っているが、距離がどんどんと詰めてくる

 

 

 ヒタヒタヒタっとおぞましい足音が俺に近づいてきている

 

 俺は無我夢中で走る

 

 足音が近づいて…

 

 無我夢中で走る

 

 足音が…

 

 無我夢中で…

 

 

 

 

 

 トンッ

 

 

 

 

 

 

 肩に手を置かれる

 

 

 

 

 

 俺は恐る恐る後ろを振り返ると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………よし、今日の授業はここまで

 次のテストまで個人で予習しておくように」

 

 

 

「……….う…ん?」

 

 

 目を開けると、教壇に立った数学の先生が書類を持って部屋を出て行こうとしていた

 

 

 

(………夢かぁ…でもマジでリアルな夢だったなぁ…)

 

 

 俺は机の書類を片付けて、家に帰ろうとすると

 

「黒野!一緒に帰ろうぜ!」

 

 友達に会った

 

「あぁ、んじゃいくか」

 

 俺は友達と共に家に帰る事に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺には友達がいる

 しかし、心の底から信頼できる人、親友がいない

 俺は子供の頃から周りの人とはあまり関わらなかったからだ

 

 まぁ関わりたくなかったし、“関われなかった”からな

 

 こいつは高校からの友達だ

 

 自分の趣味と合っていたから仲良くなった

 

 その趣味というのが……

 

 

 

「………んでさ、そいつ壁貼りのタイミングが上手くてエイムが効かなくてさぁ

 黒野はどうするんだ?」

 

「あのなぁ、壁で隠れてるんならミサイルやグレネード使えばいいじゃん」

 

 

 ゲームだ

 因みに俺はゲーマーだと自負している

 

 

「えぇ?ミサイル使うのかよ

 ここはライフルでカッコよく「そこでやられてたのは何処のどいつなんだ?」……俺だよ!チクショウ!」

 

 

 終始FPSゲームで盛り上がり、家の近くなる

 

 

「そんじゃ俺は帰るな、じゃあな」

 

「おう、また明日な」

 

 

 

 

 

 “また明日”か……

 

 

 

 

 

 

 

 俺は家に帰宅し、玄関のドアを開ける

 

 

 

 

 

 ガチャッ

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガチャ

 

 

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

「はあああああああああ!?」

 

 ゑ!? 俺の家に知らん女いるんだけど!

 

 

 あぁ成る程 どこぞの空き巣狙いのコソ泥か

 俺はそう思いポケットにあるスマホに手を掛ける

 

 

 

「待って、…少し話を聞いて欲しいの」

 

 ドアを開け、落ち着いた様子で話かけた女性

 

 コイツ、コソ泥じゃないのか…?

 

 

 

「…わかったよ、勝手に家に入った事は後で聴くとして、取り敢えず中で話そうか」

 

 俺はそう言い、彼女を中へ入れた

 彼女は意外な目を向けてきたが、すぐに微笑みこちらへついてくる

 

 なんだか不気味なんだよなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取り敢えず客室に上がってもらい、適当に麦茶を出す

 というより、俺の家は他人が入るという事がないからどういう振る舞いをすればいいのかわからないのだ

 

 麦茶を受け取った彼女は礼を言って、少しずつ飲んでいく

 さっきは慌てていたからよく見なかったが、彼女の姿に目を向けてしまう

 

 その格好は不思議、そう言うしかないほど特殊な服装だった

 恐らく商店街やらの人が多い場所に居れば、誰でも必ず二度見してしまうレベルだろう

 

 さて…話を聴くとするか………

 

 

 

 

「さて…それじゃああんたの名前、そしてなんの目的で俺の家に勝手に入っていたのか聴かせてもらおうか」

 

「ええ、私は八雲 紫

 まずは貴方にお詫びしないといけないわね

 勝手に貴方の家に上がってしまって申し訳ないわ」

 

 八雲 紫と名乗った女性は頭を下げ謝る

 

「…まぁいいとして、ちゃんとした理由があるんだろ?八雲さん」

 

「ええ、それは貴方…【黒野 浩介】さんの事を待っていたから」

 

 

「…ん?ちょっと待て、何故俺の名前を知ってるんだ?」

 

「それは貴方の事を少しだけ調べたからなの

 …それに私が外で待っていたら、他の人から不審な目で見られるでしょう?」

 

 

 まぁ、そんな服装だとなんかのコスプレみたいだしな…

 ただ…

 

「俺の事を調べた?」

 

「えぇ、それにはある理由があるの

 …これから起こる貴方についての….」

 

「…勿体ぶらずにさっさと吐いてくれ、勝手に調べられてこちとらいい気じゃないんだがね」

 

「えぇもちろんよ…

 

 

 ではなく貴方、最近変な夢を見ない?」

 

 質問を質問で返すんかい…

 そう言おうとすると

 

「そうねぇ、【内容はボロボロの角が生えたゾンビの様な生き物に追いかけられる】といったものかしら?」

 

 

 !?

 

 

 こ、コイツ…

「何故それを…!」

 

 思わず口に出してしまったが、彼女は「やはりね…」と知っている様な口ぶりで納得する

 

 

「単刀直入に言うわ

 もしこのままだと貴方はそのゾンビに【殺される】わよ」

 

 

 

 

 

 殺される?

 

 

「…お、おい…なにデタラメ抜かしてんだ?

 ふざけた事言うなよ…怒るぞ?」

「ふざけてないわ」

 

 いきなり真剣な表情で顔を近づけてくる

 その緊迫した雰囲気に俺は思わず生唾を飲む

 

「貴方の中に私にも分からない【謎の力】がそうさせているの…

 最近変な夢を見る様になるのは、力が暴走する兆候があるという事なの…」

 

「な…謎の力?力の暴走…?

 サッパリわからん…」

 

「そうね…それじゃあよくわかる様にしてあげるわ」

 

 

 

「…は?」

 

 

 そう言うと、彼女は俺の額に手を当てる

 その直後、身体に電流が走る

 

「ガ…!?あ゛ァっ!!?」

 

 あまりの痛みに声をあげてしまう

 しかし、その痛みはすぐに引いていく

 

 一瞬だったな……

 そう思い彼女をみると、彼女は奇異の目でこちらを見ていた

 

「……お、おい…、なにをしたんだよ…」

 

 

「………貴方の力を少し表面的に出してあげたの

 …貴方、自分の身体をご覧なさい」

 

 

 

 言っている意味があまり分からなかったが、恐る恐る自分の手を確認する

 

 

 

 

 

 

 ?

 

 

 黒いモヤモヤが…

 

 

 

 

 は? 俺の手はどこ???

 

 へ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本来自分の手があるはずであろう場所には、黒い靄の様なものがあり、その中に自分の手はない

 

 いや、手だけではない

 

 確認出来る部位は全て黒い靄になっていたのだ

 

 脚、腹部、胸、腕………

 

「な……なんだよこれ………あ…え……??」

 

 思わず絶句してしまう

 明らかに自分の知っている身体ではない事を目にして、半ば放心になってしまう

 

 

 

 

 

 

「な…なぁ、お…俺の顔、どうなってんの?」

 

「顔は………そうね

「いや、やっぱりいい!

 怖えから聴きたくない……」

 …そう」

 

 そう言うと彼女は俺の額からパッと手を離す

 

 すると、黒いモヤモヤが一瞬にして消え失せ、元の腕がパッと現れる

 

 俺は思わず自分の手を触って確認した

 

 

 

 なんだったんだ今の………

 

 

 

 

 

 

 

 

 いまいち状況が飲み込めない

 

 

 このままだと、俺は死んでしまうのか…?

 

 じゃあどうしたら…?

 

 

 

 

 絶望感に浸る俺に彼女はこう告げた

 

 

 

 

「生きたい………そう願うなら、私の世界に来なさい」

 

 

 

 

 

「……ぇえ?」

 

 思わず変な声を出してしまう

 

 

 私の世界?

 

 どんな世界かもわからない

 コイツなにを言ってんだ?

 そこでなら生きられるのか?

 

 

 

 

 

 いろんな疑問が頭を巡るが、答えは一つだった

 

 

 

 

 

 

「生きる事が出来るなら………俺は生きたい

 

 

 このまま死にたくはない、というかこれからもずっと生きていたい!」

 

 

 

 

「…では、ようこそ」

 

 

 

 

 幻想郷へ

 

 

 

 

 

 

 唐突に浮遊感を覚えた

 

 

 浮いてる……というか………

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 謎の空間に落ちていた

 

 いたるところに謎の目玉を覗かせて

 

 

 

 あ、あの女………

 

 

 

「俺を殺す気かあぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふう、行ったわね

 

 彼……このままだとこの世界は疎か、【幻想郷】も消滅させてしまう危険があるわ……

 

 今すぐコロしても良かったけど、力の暴走が何より怖いわ…

 

 さて……どこまで使えるようになるかしら」



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1話

サブタイトルが無いのは気まぐれです
決まったものは付けてません

誤字脱字あるかもしれませんが……….


 

 

 

 

 

 穏やかな風を感じながら一人木の上で佇む少女がいた

 彼女は心地よい風を受け少し眠そうな様子

 

 

 っと、いけない まだ仕事の途中だった

 

 

 彼女は眠気眼を擦り自分の仕事に専念する

 

 …と

 

 

 麓の森が騒がしく感じた

 野鳥が飛び交う中心を彼女は見る

 

「また人間が侵入してきたのかしら…」

 

 彼女はそういいつつ腰を上げ、その中心へ向かおうとするが、彼女の目に飛び込んだのは

 

 

 

 何もない空から、一人の人間が落ちているという光景だった

 

 

 

「!? ちょっと、あんな高さだと怪我じゃ済まないわ!」

 

 彼女は速度を上げて向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木々を潜り抜け、たどり着いた先は

 

 

 すでに全身葉だらけの男の人間が倒れていた

 

 

 

 遅かったか…?

 

 

 彼女は近付き、意識があるか確認しようとすると…

 

 

 

「………んぅ…」

 

 

 唸る声が聞こえた

 

 

 !? 生きているの!?

 

 

 彼女は近付き、声をかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体中が痛い…

 

 その痛みでようやく覚醒する

 一体何故こんな事に…?

 

 

 確か、八雲 紫とかいう奴に落とされたんだっけか?

 

 あいつ…俺を殺すつもりかよ……

 

 身体を動かそうにも、あまりの痛みで動けそうにない

 

 俺は唸り声を上げる

 

 その時…

 

「……すか…………うぶですか!?」

 

 

 女性の声が聞こえる

 

 明らかに俺に呼びかけてるな

 

 痛みを我慢して、俺はその声の主に顔を向け、声をかける

 

 

「……あ…、だ…大丈夫……だと思う…」

 

 その声を聞き、ホッとする女性

 

 …というか、コイツ女性というより少女といった方が正しいな

 

 っていうかケモ耳ついてる

 ここどっかのコスプレ会場か?

 

 謎の疑問を抱えつつ、彼女を見つめる

 

 

 

「よかった、気がついたのですね」

 

 彼女は俺の身体を起こして、こう口にした

 

 

「何故貴方は空から降ってきたのかはわかりませんが、ここは妖怪の山

 人間の貴方が無断で入って来ていい場所じゃありませんよ?」

 

 

 よ、妖怪の山ぁ?

 

 いきなりのパワーワードにびっくりするが、俺は彼女の質問に答える

 

 

「お、俺は八雲という女性に落とされてここに来たんだ

 妖怪の山なんて聞いたことがないぞ」

 

 

 

 

 …というか、この説明で納得するのか?

 恐る恐る彼女の顔をみる

 

 

 

「成る程…紫さんならあり得ますね」

 

 

 謎に納得していた

 

「納得してくれるならありがたい

 ここはどこなんだ」

 

「この場所を知らないのに紫さんの名前を知っているという事は…貴方は一体何者なんですか?」

 

 少し彼女の視線が鋭くなる

 不審者を怪しむような目で

 

 弁解するべく、俺は身に起こった事を話す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり、貴方は外の世界にいた所、紫さんに落とされこの場所で倒れていた

 紫さんとは外の世界でお会いになられて、いきなりスキマに落とされた…で間違いないですね?」

 

「す…スキマかどうかはわからんが、それで大体合ってる」

 

「そう…ですか…何故また人間をこの場所に落としたのでしょうか…?」

 

 ケモ耳彼女は考える

 俺は考えていることを他所に、ずっと気になっていることを話す

 

「な…なぁ、ずっと気になってたんだが、その耳はなんだ?

 犬…じゃなさそうだし、白い狼のコスプレかなんかか?」

 

 この言葉を聞き、こちらを向き少し驚く彼女

 

「よ、よくわかりましたね

 てっきり犬と思われると思ってましたが、まさか白狼が出てくるとは…」

 

「以前やってたゲームでそういう動物出てたし、それなりの知識はある…と自負してる

 不定期に動いてるってことは…ソレ本物か?」

 

「えぇ、もちろんホンモノですよ?

 

 …申し遅れました、私は白狼天狗の哨戒隊長の犬走 椛と言います」

 

「は、白狼天狗?

 …天狗にそんなのいたっけ?…っと、こっちも名前言わないとだな…

 黒野 浩介 ただの一般人…だと思う」

 

「浩介さん、ですね

 先ずは、この世界について簡潔に説明しますね」

 

 

 う、初対面なのに下の名前で呼ぶのか…

 

 っと、慣れない事に戸惑いつつ彼女の説明を聞く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………つまり、この世界は妖怪や神、魑魅魍魎と蔓延っている場所

 俺みたいな人間はそいつらの餌になるらしい…が、それなりのルールがあり秩序は保たれている

 外の世界…言うところの俺が来た世界から来た人物の名称を「外来人」と呼ぶ

 ここ、妖怪の山は…まぁ名前の通りだな

 故に人間はこの地には無断で入ってはいけないルールがある…と解釈していいのか?」

 

 

「………は、はい…そんなところです」

 

 

 

 な、何ですかこの人!

 ほんの3分くらいしか話してないのに内容を事細かく理解している!?

 それに短絡的にしか話していないのに…

 

 こ、この人、案外凄いのかも…

 

 

 

 

「……ん?どした?なんか変な事言ったか?俺」

 

「へ…あ、いや!簡単に説明しただけでよく理解出来たなぁと思って…」

 

「まぁ八雲があんな事するからな、幽霊、死神やらが出てきてもおかしくはないかなぁとは薄々感じてたから」

 

 

 

 出会って僅か5分ぐらいで…

 この人、吸収するのが上手いんですかね…

 

 

 

 

 

「…んで、俺はここに来ちゃいけないんだろ?

 なら俺はこの山から下山するよ」

 

「は、はい

 ……え?下りるんですか?」

 

「いや、だって俺みたい人間は理由もなく来てはいけないだろ?

 それにさっき言ってただろ?哨戒隊長だって

 哨戒と言うことは見張り、監視っていう意味だったはず、その仕事の邪魔をする気は無いししたくもないからな

 だから俺は邪魔にならないように下山する」

 

「で、ですが、貴方の様な人間は一人で行動するべきではありませんよ!

 それに、下山したところで何かアテでもあるんですか?」

 

「人間を追い返す、と言うことは何処かに人が住んでいる場所があるはずだろ?

 

 あくまで俺の持論だが…人間は妖怪を恐れているというなら、村やら里やら人が繁栄している場所があるはずだ…人数で対抗するためにな

 しかしこの山から見渡しても建物の類は見当たらない

 ということはそこまで大きくはない村がある

 それなら物資やら食料の確保はどうなるか?村の中だけで収まるのか?

 自然に考えれば、外から素材を集めてくる考えに至る

 恐らくここに来た人間は大半は俺みたいなバカで、ごく少数は山菜採取やらの人が来ている…はず

 

 ここまでの持論が正しければ、活動している跡があるはずだろ?それを探して村に行くつもりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この人、本当に人間?

 

 

 

 彼女は少し唖然としていたが、我に帰る

 

「た、確かに人里はありますがここからは少し遠いですし、人間である貴方一人では到底辿り付くことなんて出来ません

 …それに貴方はあの「賢者」によってこの世界に意図的に呼ばれた身

 ここで人里に下すのは腑に落ちません

 

 …私について来て下さい

 天魔様の元へご案内します」

 

「天魔様?」

 

「私たち天狗の長です

 あの方なら御手を貸して下さるはずです」

 

 天魔…聞いたことがないな…

 その人ならなんとかしてくれるか…?

 まぁ、普通考えたら手を貸してくれるかも知れないなら、それに頼るが得策かな

 

 

「…んじゃあお願い出来るか?犬走さん」

 

「えぇ、任せて下さい

 …それでは、逸れないようについて来て下さい」

 

 俺は彼女に促されるように、山を登っていった

 獣道をひたすら登山する

 しかし、比較的歩きやすい道を先導してくれる

 彼女は中々気が利いている、本当に有難い

 

 …八雲とは違って………

 

 あ、さん付けしているのはあくまで俺の気まぐれで深い理由はないです、はい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 到着したのは山の7合目か8合目辺りだろう場所で、中々賑わいのある和の趣溢れる街だった

 目に見える人達を見ると、犬走さんの頭に被っている頭襟を付けてる人やら、緑帽子を被っている人、その他諸々が談笑をしたり団子を食べたり、楽しい雰囲気を醸し出していた

 

 恐らくここにいる人たちは皆、妖怪なのだろう

 

 奥には立派な門が建っている

 恐らく天魔様とかいう人はこの奥にいるのだろうか

 

 

 

「なぁ犬走さん…不躾な質問だとは思うが、天魔様とかいう人って、もしかして鞍馬天狗?」

 

「えぇ、よくご存知ですね」

 と感心そうに

 

「いや、歴史の授業で習ってたし、その辺りの知識はネットやら何やらで…

 確か鞍馬天狗は源義経と何か深い関係があったとか…その辺りは忘れたが」

 

「天魔様は大昔、牛若丸…今で言う源義経に剣術を教えたと言われているんです

 そのため、外界では伝説と謳われているのでしょうね」

 

「大昔って…どんだけ長生きしてるんだよその鞍馬天狗…」

 

「あら?私たちもある程度長生きはしていますよ?少なくとも貴方のおばあちゃんよりもずっと」

 

「……末恐ろしいなぁ」

 

 そうこう言っている内に大きな門の前に到着する

 門の前に立つ大柄な男天狗が俺をみて驚き、高圧的に話す

 

「何故人間がここにいる?

 …ここはお前の様な者が来ていい場所ではないぞ」

 

「彼は賢者殿に呼ばれた人間です

 ……天魔様との謁見を願います」

 

「何?紫殿の…

 

 …わかった くれぐれも粗相のない様に」

 

 男天狗は道を開け扇を仰いだ途端、大きな門が開く

 つくづくこの世界は凄いと実感してしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の部屋に蝋燭の火明かりが薄々と灯る

 不思議と懐かしい気分になってしまう

 

 まだ17なんだがな…

 

 

 

「…着きました、この奥に天魔様がおられます」

 

「そうか、それじゃあ行くか」

 

 襖に手をかけ開く

 そこには他の天狗よりも巨大な姿の天狗が鎮座していた

 白い髭を伸ばした大天狗だった

 その傍らには年老いた天狗が三人いる

 恐らく相談者か側近なのだろうか

 

「天魔様、こちらは賢者殿に呼ばれた外来人です

 こちらの山に落とされた…との事です」

 

 大天狗は口を開く

 

「…うむ………卿は名を何と申す?」

 

「く、黒野 浩介と申します」

 

「うむ……浩介というか…」

 

 圧倒的な威圧に少したじろいでしまう

 普通に話しているだろうが、その一言一言に強い圧をひしひしと感じる

 

 

 側近であろう老天狗が声を出す

 

「犬走よ、かよう人間を何故追い返さん?

 この山には他の妖怪は愚か、人間は断固入れてはいかんのだぞ?」

 

「最近では山の頂上に守矢とかいう神社の所為でこの山の訪問者も少なくもない

 それに加えその者…人間が我らの長の前に現れるなど、これでは我ら天狗の威厳が丸潰れではないか」

 

「…人間は我ら天狗の格下の生物

 その下等生物に舐められる様な真似をしないで頂きたい」

 

 

 この御三方は否定派か

 しかもボロクソに言ってくるのな

 

 

「…浩介と言ったな

 …卿は何を望む…?」

 

 大天狗もとい天魔は俺に問いを投げる

 

「え…?望みと言っても……」

 

「卿は何故ここに来たのだ…?」

 

「え…は?いや、自分の意思でこの山に来たというわけでは…」

 

 天魔はふっと微笑む

 

「…少々難問だったか…

 …では質問を変えよう

 

 卿はこの世界…幻想郷に何故きたのだ?」

 

 少し空気がピリついた

 

「…賢者殿に呼ばれたとは言え、理由もなくこの山に落とすとは到底思えぬ

 この山での外来人の発見は頂におる東風谷とかいう風祝の巫女しかおらぬからだ

 

 …卿は自分の意思でこの世界にきた…

 …違うか?」

 

 まだ会って3分も満たないのに全てを見据えての発言

 流石天狗の長…と言ったところか

 

 ここは素直にきた理由を述べよう

 変に嘘をつくと返って危険だ…

 

 俺は口を開こうとした

 

 

 

 が、

 

 

 

「彼をここに連れてきたのにはある理由があるからですわ

 

 …一馬殿」

 

 目の前に謎の亀裂が走り、その口が開かれる

 

 中から出てきたのは黒野を落とした張本人の八雲 紫だった

 

 その登場幕に、側近達は戸惑いの声が上がり、天魔は呆れた様な顔をしている

 

 

「…賢者殿、その名はあまり出さないで頂きたいのだが…」

 

「あら、いいじゃありませんか?天魔殿

 昔のよしみじゃありませんか」

 

「他の者がおる中で幼名を言われるのは些か…」

 

 

 

 

「八雲…一応俺に言わなきゃいけない事はあるよな?」

 

 途轍もなく低い声を出す

 

 周りの連中は化け物を見たような顔で俺を見る

 八雲も堪らずこちらに振り返り、「ヒッ」と声を出す

 

 ……俺そんなに怖い顔してたか?

 

「ご…ごめんなさい!そ、そんな顔で睨まないで欲しいなぁ……」

 

「いや…睨んでるつもりは無かったんだが…」

 

 

 

(いや、十分怖い形相で睨みつけてましたよ)

 

 周りの人はそう思う

 

 

「っと、兎に角何故俺をこの山に連れてきたんだ?理由があるんだろ?」

 

 そう切り出すと、八雲はすぐに真剣な表情に切り替わる

 

「えぇ、もちろんよ

 なんの理由もなくこの山に連れてくる事はないわ

 

 ……彼の中にあるモノの為にはこうするしかないのよ

 少々スパルタだけど、こうでもしないと遅かれ早かれ大変な事になるから」

 

「…むぅ、質問の意味が分かり兼ねる

 彼の中にあるモノとは一体…」

 

「それは私にも分からないわ」

 

 その答えに唖然とする天狗達

 が

 

「でもね…それをなんとかしないと幻想郷が

 …この世界が大変な事になってしまうのよ」

 

 

 

 

 自分が置かれている状況がものすごく大変な事だと納得するのに時間がかかってしまう

 

 世界が大変な事に?

 

 俺が?

 

 俺の中にいるあのゾンビがか?

 

 何故?ナゼ?

 

 ワカラナイ

 

 

 

 

 

 

 

 

「賢者殿、結論から言ってもらいたい

 …あの少年をこの山に連れてどうするつもりなのだ?」

 

「簡単な話

 

 彼をこの山で修行をさせて、彼の中に眠るモノに対抗するための力をつける

 

 たったこれだけよ?」

 

 

 

 至ってシンプルな回答だった

 

 俺は八雲に力を表面に出された時の事を思い出した

 身体中が消滅し、代わりに黒い靄がかかる奇怪な現象

 それが世界の危機になるという

 修行してその力に対抗すれば大丈夫だというのか…?

 

 

 …いや、今は本当かどうか悩むより今出来る事を一つずつこなす事

 

 

 それが一番かもな

 

 まだ死にたくはない

 

 

 

 

 

 死ぬなら目的を果たしてから死にたい

 

 

 

 

 

 

 

「…随分と簡潔な回答でしたな

 危険なこの山を選んだのには不可思議な力…と言ったものか、それの力を対抗するため

 …と言った所か」

 

 

「長よ、紫殿の口車に乗ってはいけませぬぞ」

 

「如何なる理由があろうとも、我ら天狗の顔に泥を塗るような事はあってはなりませぬ」

 

「…世界の危機というなら今すぐ其奴を殺めて仕舞えばよかろう」

 

 

「!

  待ってください!流石にそれは言い過ぎかと存じます!」

 

 犬走が相談者達に声を上げる

 

 流石に彼女には迷惑かけられないなぁ…

 

 

「犬走よ、何故こうまでしてその少年を庇おうとするのだ?」

 

「その小童に恋でもしたのか?」

 

「…笑止」

 

「ち、違います!私は、ただ…」

 

 

 

「犬走さん、もういい」

 

 

 俺は天狗達の前に立つ

 

「…確かに勝手に来ておいてここで修行させて下さいというのは礼儀にもなってない

 が、私が人間であるという理由でそこまで差別をするという事には強く憤りを感じています

 

 …貴方方が仰る通り、私はこの山から下りる次第です

 迷惑をかけるつもりは毛頭ございません」

 

 

 はっきりとした口調で天狗達に言い放つ

 

「ダメよ、貴方はここで修行をしなさい

 

 …貴方、死んでしまうかもしれないのよ?」

 

「その時はその時

 あんたも場所選びが悪かったんだ

 ゲームでもあるだろ?いきなり初心者が終盤に出てくるベヒーモスやら何やらの強敵の真っ只中に落とされるか?

 普通スライムやらの雑魚敵がいる中に落として、そこから強くさせるだろ

 

 …俺はここにいる人達と違って空を飛ぶことも、その謎の空間を出す力もない

 

 ……危険な場所での修行は100歩譲って良いとして、差別主義者の奴らと修行?

 巫山戯たこというなよ!」

 

 

 

 言いたい事全て言ってしまった

 言っては行けない差別的発言も

 

 つい感情任せに言っちゃいけないことも言ってしまうんだよなぁ

 

 

 

 

「……悪い、感情的になって」

 

「浩介さん…」

 

 

 

 

 

 

「黒野よ……」

 

 天魔は声を出した

 

「儂は賢者殿には昔世話になってな、この山の長になってからも妖怪を纏め上げてくれたのも…な

 

 賢者殿…

 もし、彼をこの山での移住を許可するというのであれば、我ら天狗にはこれ以上面倒を寄越さないで頂けますかな…?」

 

 

 は?

 

 天魔様という人は何考えてんの?

 

 

「あら?貴方は肯定派なのね?」

 

 

「い、いけませぬぞ!天魔様!」

 

「我ら天狗社会にとっては人間を移住したさせることはタブー同然」

 

「…人間など、100年も経たんうちにすぐ生き果てる

 その少ない時間生きるなら、今死に楽にした方が少年の為…」

 

「黙らぬか」

 

 天魔のドスの効いた声が響いた

 相談者達は身体を震わせ、言葉を無くした

 

 その迫力に犬走と俺も内心ビクつく

 

 

 

 

 

「世界の危機になるというなら我ら天狗にも一概に無関係とは言えぬ

 もし彼奴を殺めた所でその力が暴走でもすればどうする?

 …賢者殿がそこまで恐れられているというのなれば、我ら天狗にも脅威とある力であると考えるのが妥当であろう」

 

 

 

 情報量が多すぎて、少し思考が止まる

 

 

 

「黒野よ…老人の発言をどうか水に流しては貰えぬか?

 …この天狗社会には、人間には排他的な所があってな」

 

「え、えぇ…まぁ差別的発言をした自分にも非があると思いますし…

 …しかし私がここにいて大丈夫なんですか?」

 

「構わぬ、儂が許可するのだ

 …もし儂に刃向かおうというなら、この手で斬るがな…」

 

 

 

 あんたパネェよ天魔様…

 

 

「しかし…そのままでは同胞はおろか、妖怪に変な目を向けられかねぬ…黒野よ、側に」

 

 俺は言われるがまま天魔の側に行く

 

 

 

 すると、天魔は俺の頭に手を翳し始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 10秒か?それぐらいの時間が経つと、天魔は手を下ろし、こう告げた

 

 

「……うむ、これで周りからは人間扱いはされぬだろう」

 

 

「? 何をしたんですか?」

 

「卿に少しばかり妖力を流したのだ

 …人間に悪影響を与えんぐらいにな

 これならば卿が人間だと気付かぬはずじゃ」

 

 

 

 妖力………

 

 妖怪の力と書いて妖力だよな…

 

 

 この世界は摩訶不思議だな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天魔との謁見を終わらせ、門の外に出る

 出る途中相談者から睨まれたような気がしたが、気付かぬふりをしてスタコラと去る

 

 どうやら俺の住居があるみたいだ

 はなれにある古屋だ

 小さいながらも住居としては十分使えるそうだ

 

 

 

 

「…ごめんなさい、浩介さん…」

 

 犬走が唐突に謝る

 多分俺があの時言った言葉を気にしているんだろう

 

「いや、犬走さんが謝る必要は全く無いよ

 逆に謝らないといけないのは俺だ

 まるで天狗全員に向けて差別してるみたいな発言したし」

 

「浩介さんが言った事はごもっともですよ

 …あと、私の事はさん付けしなくても結構ですよ?あと、下の名前でも」

 

「まぁさん付けしないのはいいけど、上の名前で呼んでるのはあくまで癖だし、直すつもりはないな

 …じゃあ犬走、住居まで案内頼むよ」

 

「はい、お任せください」

 

 俺は犬走と共に新たな住居に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2話

誤字脱字はお許しをm(_ _)m


 

 

 

 

 

 

 連れて来られたのはごくごく普通の小さな古屋だった

 水回り、寝室、生活するには申し分ないだろう

 

 唯一不便なのが、商店から少し遠いぐらいだろう

 

 

 昔ながらの佇まいに少々感慨深くなってしまい、少しフリーズする

 

 

 

「あの…何かお気に召しませんか?」

 

 少し覗き込みながら伺う犬走

 

「いや、そんな事はないよ

 ただ、古風な感じの家に住むのは初めてで…」

 

 

 それもそのはず

 この黒野浩介、IHやオートロックドア、インターホン等現代では当たり前にある環境の中育ったのだ

 

 こういう場所に来たことがあるのは少し前に…

 

 っと、そんな事は置いといて先ずは中に入って掃除やらなんやらするか

 誰も住んでない古屋が野晒になってたら埃やら何やらの宝物庫になってるし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度綺麗にはした

 犬走も進んで手伝ってくれた

 本当に有難い

 

 

 

「…それにしても、浩介さんって色々物知りなんですね

 私驚きましたよ?」

 

 

「ん?そうか?そんな事は無いとは思うんだが…」

 

 家事やら何やらはネットから色々学んだ

 そこまで驚かれる事はしていないはずだがなぁ…

 

「そんな事ないですよ?

 山を降りるって行った時の事覚えてます?

 その時の洞察力は凄いなぁって思いました」

 

「あぁ、まぁそれはサバゲーをしていたからで…」

 

「さばげー??」

 

 あ、犬走にはサバゲーという言葉は知らないのか

 

 まぁこっちの世界の人もサバゲー知らない人いるからなぁ…

 

「サバゲーっていうのはな、こういう森の中とか荒野とかで擬似的な戦闘をするっていう遊びでな、正式名称はサバイバルゲームってところだな」

 

「擬似的な戦闘…

 それって弾幕ごっこと似たようなものなのですか?」

 

 耳と頭を傾けて聞く犬走

 

 

 

 

 可愛い

 

 

 

 

 

「弾幕ごっこ、それはなんぞ?」

 

「あぁ、そうでしたね

 

 …弾幕ごっこというのは弾幕、スペルカードを使い、闘う決闘の事です

 それらを使い相手を降参させれば勝ちで、決められたスペルカードを全て攻略しても勝ち

 というものです」

 

「すぺるかあど?

 それに弾幕って、銃やらなんやら使うのか?」

 

「そうですね…

 先ずは一つずつ教えますね

 

 先ずはスペルカードです」

 

 そういうと犬走は懐から白いカードを取り出す

 そこには絵柄が書かれていて、タロットカードのようなものだった

 

「これがスペルカードです

 まぁ一つの技みたいなものですね

 

 …因みにこのカードの名前は狗符「レイビーズバイト」と言います」

 

「これがスペルカード…

 それは制限とかあるのか?」

 

「そうですね

 絶対に攻略が出来ない物は禁止されていますし、同じスペルカードはその決闘中一度限りしか使えません」

 

 あぁなるほど

 サバゲーで例えるならこちらは小銃での装備に対して、向こうは重戦車と装甲車で来るみたいなもんか

 その時はトンズラするが

 

 

「…では次に弾幕の説明に入ります

 

 …弾幕は気の弾…と行ったほうがいいんですかね…

 自分のイメージした弾を多く放つ事を弾幕といいます」

 

「イメージした弾?そんなことも出来るのか…」

 

 

 

 頭の中でパッと思いついたのは某野菜の人と人造人間さん

 そして18禁のコアなゲームぐらいか?

 

 しかしよく考える

 

「…まぁ俺はそんな力は出せないから俺には無縁な話だったかもな」

 

 

 そんな気を扱うような力は無い

 ごく普通の一般ピーポーが出来るはずもない

 

 が、

 

「いいえ?貴方にも出来るはずですよ

 

 …というより、少なくとも出来ないとこの先やっていけないですよ

 

 

 

 …この世界は人喰い妖怪やら何やら貴方にとっても危険なものでいっぱいなんです

 その対抗手段がこの弾幕ごっこなんです

 普段の弾幕ごっこでは人を殺してはいけないルールがあって、非殺傷の弾幕を使い物事の勝ち負けを競うものなのですが、全ての妖怪がそのルールを守るとは言い切れません

 弾幕ごっこを覚えるという事は、自己防衛手段を会得すると同じ事なんですよ」

 

 

 

 下手したら命に関わることになんのか…

 

 

「…まぁ自分の身を守る為には是が非でも覚えとけって話だな」

 

「そういう事です

 …さて、それでは早速やってみましょうか

 

 …手の上に小さな気の玉みたいなものを作りましょうか

 良くイメージして下さい…」

 

 言われるがまま手を出してみる

 

 ここは元気を分けてくれた時に出せる玉をイメージしてみるか…

 すると、ものの数秒で掌の上に黒と白が合わさった色の弾幕が出来上がっていた

ってか色モノクロかよ、まぁ好きだからいいけど

 

「おお…!ホントに出来た!」

 

「呑み込みが早いですね、驚きましたよ」

 

 と、笑みを浮かべた犬走

 現実では起こりうることが出来ない事が出来た事になんとも言えない喜びを感じてしまう

 

 

 と同時に多少の恐怖も込み上げてくる

 

 

「んで、これを飛ばしたりすんのか…

 

 こうやって…」

 

 俺は掌の上に出来た弾幕を投げるような形で飛ばしてみる

 

 投げてみたが、どれも狙った的には当たらずポンポンッと消えていく

 

「うーん、難しいなぁ」

 

「たしかにそのやり方だと難しいですね…

 こう掌から出すようにすれば狙いやすいですよ?」

 

 そういうと犬走は的に向けて掌を出し、小さな弾幕を出した

 5.6個撃ち出された弾幕は見事に全て的に命中して、軽い破裂音を出し消えていく

 

「おお…すごいなぁ」

 

「練習すれば出来ますよ

 …さて、掃除も終わったことですし

 表で練習してみましょう」

 

 弾幕ベテラン勢の犬走に教えてくれるなら分かりやすいかもな

 俺は素直に促され、外へと出る

 

 

 

 

 外へ出た瞬間、ある異変に気付く

 

 

 誰かに見られてるような気がする

 

 確信はないが、視線が気になる

 

 

 

 

 ビュっと風が吹いた

 

 

 俺は見上げる

 

 

 そこに翼の生えた少女がいた

 

 

 

 

 

 

 ……白

 

 

 

 

 

 

「最近この山に落ちて来た外来人が可愛い狼に連れられて二人離れの山小屋へと消えていく……」

 

 カメラを持っているということは…写真家か何かか?

 

「その噂を聞いてここに来て見たんですが…

 あやや、椛

 あなた案外大胆だったんですねぇ」

 

 すたっと着地して、犬走を見て微笑みながら話す

 当の本人は、何故か顔を赤らめていた

 

「ち、ちち違いますよ!

 これは仕事ですから、そんな不埒な事は!」

 

 え?何

 話が見えてこないんだが……

 山小屋に案内されただけなのに不埒はないだろ

 

 呆然とする俺に翼の彼女が話しかけて来た

 

 

「ふむふむ…貴方が黒野浩介さんですか

 

 …微量な妖力が備わっていますが、これは天魔様のものですね」

 

「わかるのか?」

 

「私、こう見えて優秀な烏天狗ですから」

 

 

 烏天狗って、あの鳥の鴉からきてるのか?

 いや、それよりも俺の事を知っていていきなり現れて来たわけだし、何かしら用があるんだろう

 

「…で、君は誰なんだ?」

 

「おっと、自己紹介が遅れましたね

 私は射命丸 文

 文々。新聞で御馴染みの清く正しい射命丸です!」

 

 

 

 どう突っ込めばいいんだ?

 

 

 

 

「…黒野 浩介

 それで射命丸、俺に何か用なのか?」

 

「まぁ用という用はないんですがね

 外来人の様子を見にきただけでして」

 

 

 

 

 …あぁ、観察か

 まぁそりゃそうだわな

 

 

 

「…それで、見たところ貴方は弾幕ごっこの練習をしようとしていたと見ました」

 

「…小屋の中でやっていた事なのに何故君が知っているんだ?」

 

「あややぁ、そんな細かい事は気にしない気にしない」

 

 

 うわぁ……ぅっぜぇ……

 

 

「…で、どうです?私が弾幕ごっこの練習相手になりましょうか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 一体何故そうなる

 

 

 それに…

 

「練習相手なら犬走がいるんだが…」

 

「彼女は近接特化型でして、この弾幕ごっこでは少々不利な立ち位置なんですよ

 弾幕ごっこを教わるのなら偏った型ではなく、多面性があった型の方がいいんではないですかね?」

 

 すると、犬走はバツが悪そうに

 

「…確かに、私はこの大太刀と盾を用いた弾幕を使います

 遠距離は苦手…です

 

 …悔しいですが浩介さん、ここは文先輩の言う通りにした方がいいですよ」

 

 

 耳、尻尾が垂れ下がる

 そんなにショックなのか

 

 

 

「では、決まりですね」

 

 そう言うと、射命丸は空へ飛んで扇のようなものを構える

 いきなりかよ!?っと若干驚きつつも、いつでもすぐ動けるように態勢をとる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれれ?貴方、空飛べないんですか?」

 

 

 弾幕ごっこ云々よりそれ以前の問題だった

 

 皆は当然のように空を飛んだりしているが、俺は一般ピーポーだ

 空を自由に飛べるはずがない

 

 

 唖然としている俺に射命丸は少し困った表情をしてから少しの間フリーズ

 ハッとした表情で手を叩き、何かを思いついた様子

 

 

 

「それじゃあ1分の間に私の弾幕を避け切る事が出来れば貴方の勝ちってことでどうでしょうかね?」

 

 

 あぁ、言うなれば「お前、マトな」的なものか

 

 

「貴方は空を飛ぶことが出来ないと言うことは、ルールに法っての対戦をしたとしてもその時点で私には勝てないことは言わずもがなですよね?」

 

 まぁそうだろうな

 

 っと俺は頷く

 

「ですが、貴方にある程度のハンディキャップがあれば話は別ですよね?

 私の弾幕を避けきる、そして私に一つでも弾幕を当てる事が出来れば貴方の勝ち

 逆に…そうですねぇ、貴方は10回被弾してもセーフとしましょうか

 私の弾幕に11回当たれば貴方の負け…

 どうです?これなら私と戦えますよね?」

 

 

 

 ……悔しいが、正直そのぐらいのハンデがないと勝てないだろうな

 相手は恐らく古参、いやガチ勢プレイヤーなんだろう、ゲームで考えたら

 そんな奴にまともに戦うのは自殺行為としか言えない

 

 

 …ホントは断ろうかと思ったが、何故だか心のどこかでワクワクしている自分がいる

 

 

 弾幕ごっことはどう言うものなのか

 

 サバゲー、FPSと比べたらどんなものなのか

 

 

 

 

 

 …射命丸のご厚意に甘えてそのハンデで戦ってみようか

 まぁ負けても初心者って事でセーフだな!

 

 そう言って乗り切ろう…

 

 

 

「……それとももう少しハンデか必要ですか?」

 

「いや、もうそれでいい

 女性相手にそこまでハンデを貰ったら男として情け無くなりそうだ

 

 …その条件で戦おう」

 

「おお、乗ってくれましたね!

 …では椛、1分測って下さいね?」

 

 小屋の縁側で耳を垂れ下がってる犬走は元気無さげに「はい」と返事を出す

 

 

 

 

 

 そんなにショックだったのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…では、準備はいいですかね?」

 

「いつでも良いですよ」

「あぁ、いつでも良いぞ」

 

 空と大地

 両者それぞれ距離を開け、構えを取る

 

 

 

「それでは始めます

 …試合開始ッ!」

 

 椛の号令とともに二人は動いた

 

「初心者ですから手加減しますよ、安心して私に弾幕を撃ってみなさい!」

 

 射命丸は開けた場所で仁王立ちする(空飛びながら)

 

 随分な余裕だなぁ…

 俺は木々に隠れる

 

 

 あまり相手の口車には乗らない事

 と油断させておいて………馬鹿め死ね!

 …というオチが見える

 

 

 

 中々攻撃して来ないことに射命丸は少し呆れる

 

「あやや、臆病ですねぇ…

 では、こちらから行きますよ!」

 

 射命丸は扇を仰ぎ弾幕を放つ

 数はそんなに多くなく、バラバラに放たれる

 恐らくどう動けるかの小手調べだろう

 

 ドン、ドン!っと木にあたり破裂する弾幕を見て、これ当たると死ぬんじゃね?っと思いながら即座に回避行動をとる

 

 

 俺は木を使っての回避行動を取った

 何しろ相手は空から攻撃してくるわけだ

 開けた場所だと格好のマト

 ならばどの場所からでも壁を作れる木さえあれば避けることは可能と踏んだのだ

 

 空から不規則に放たれる弾幕は黒野にはカスリもせず、木や地面にぶつかり破裂する

 

 

 

 

(あやや、地の利は向こうにあるってことですかね…なら)

 

 射命丸は少し弾幕の数を増やし、速度を上げる

 しかしその半数は黒野の方向には向けておらず、明後日の方向へと飛んでいく

 

 

 

 しっちゃかめっちゃか撃ってんのか?と思いつつ俺は危うげもなく回避する

 正直走って避けることができるから案外簡単だった

 

 が、俺は途中で気付く

 

 

 

 

 嵌められた、と

 

 

 

 気付いた時は木々が周りにはなく、開けた場所に来てしまった

 

 明後日の方向に撃っていた弾幕、実は陽動として使われていたようだ

 

 

 

「さぁ!これで逃げ場はありませんよ!」

 

 射命丸はニヤリと笑い弾幕を次々に放っていく

 

 大きな隙間を開けての弾幕だったが、それでも空を飛べない人間からしたらたまったものじゃない

 

 俺は走ったり、スライディングしたりフェイントをかましたりと次々に避けていく

 

 …が、

 

 

 

 バンッ「っ!」

 

 左脚に被弾してしまう

 

 痛いことは痛いが、死ぬほどではないが

 怯み、竦んだ所で背中に被弾

 反動で倒れ込んでしまった

 

 が、咄嗟に右手で地を掴み転がり込んで弾幕を避け、すぐさま起き上がり態勢を立て直す

 

(あや、あの人中々やりますねぇ…手加減していたとは言え、よくあそこまで避けることが出来るとは…面白い)

 一瞬不敵な笑みを浮かべ、射命丸は懐から何かカードを取る

 

「30秒経過!」

 犬走からの伝令が聞こえ、あと半分だと気付く

 

 体感だと、本当に長く感じてしまう

 

 まだ2回くらいしか被弾していない

 この調子で良ければ勝てるんじゃないか?

 

 

 そう思ったのもつかの間、射命丸はカードを掲げて声を出す

「疾風【風神少女】!」

 すると、射命丸はとてつもない速さで動き出した

 

「早ッ!?」

 

 素早く動いた射命丸は空を飛びつつ、彼女の中心から無数の弾幕が飛んでくる

 それは自分に目掛けてではなく、周りに向かって飛ばしていた

 

 これが犬走が言っていたスペルカードか!

 

 時間制限があるよな?確か

 その試合中1回しか使えないって事は

 

 そうこう考えてるうちに俺に向かって無数の弾幕が飛んできた

 

 する事はただ一つ

 

 

 逃げる事

 

 弾幕を撃とうにも撃つ隙がない

 というか、そんなヒマがない

 逃げる事で精一杯なんだよ!

 せめて銃さえあれば…

 

 

 

 

 

 

 転がりつつも走って回避するが、数弾か背中、腕に被弾してしまう

 

 恐らく被弾数は7回、残り時間20秒程だろう

 このままだとまずい 本当にマズイ

 

 

 

 そういえば射命丸はスペルカードを使っていたな…

 俺にも使うことが出来るなら…

 

 しかしカードの類など持っているはずも…

 

 

 

 

 

 

 

 あった

 

 右ポケットの中に

 

 

 

 手を突っ込んだら1枚の白紙のカードが入っていた

 

 俺こんなの入れた覚えないんだが…

 それに白紙だろ?使い方も…

 

 

 ドッ 「うわっ!」

 

「ほらほら!考え事をしている余裕は貴方にあるんですかねぇ!このまま終わらせても良いんですよ?」

 

 弾幕の勢いが激しくなってきた

 

 

 

「ええいままよ!なるようになれ!」

 

 

 

 俺は白紙のカードを掲げた

 

 

 

 

 すると、そのカードに絵と文字が浮かんできた

 

 !!これがスペルカードなのか!

 

 

 すかさず俺は叫ぶように唱えた

 

 

 

 

「盾符【ピクセルガード】ッ!!」

 

 すると俺の周りから1センチほどだろうサイコロのような立方体が無数現れ、幾多も重なり合い半ドーム状の壁が出来上がる

 その壁一つ一つ真っ白な立方体が互いにくっついているようなものだった

 

 

 !?彼はスペルカードを使えるんですか!

 

 いつの間にスペルカードを!?

 

 

 射命丸と犬走は驚きを隠せないが、

 

「…面白い!ならばスペルブレイクするのみ!」

 

 

 射命丸は風神少女を放った状態で俺に向けて激しい弾幕を放つ

 

 盾となった壁は激しい音と共に崩壊していく

 

 

 

 が、

 

「な…何ですかそれは!」

 

 

 

 

 射命丸に向けて幾多の弾幕が襲いかかる

 

 しかし、実際のところ黒野は弾幕を撃ってはおらず、ただただ自分が出した壁に驚き立ち竦んでいるだけ

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 盾符【ピクセルガード】

 それは1cm×1cmの立方体を出し、盾のように使うスペルカード

 

 一つだけでは盾の機能としては全く使えないが、数百、数千と数を増やして重ねていくと立派な壁になる

 

 その一つ一つの立方体が破壊されてしまうと、破壊された周りに向かって複数の弾幕を放つという言わばカウンターのようなものなのだ

 

 射命丸が撃った多量の弾幕の数々が壁にぶつかり、相殺され立方体………もといブロックから数量の弾幕を放ち射命丸に襲う

 

 これだけでは一般的なカウンターと同じなのだが、問題はその量だ

 

 ピクセルガードのガードを成り立たせるためには多量のブロックが必要になる

 厚さ、大きさが無ければただの遊撃ボムとしか使えないが、ちゃんとした厚み等があれば弾幕を凌ぐ立派な壁となる

 

 先程黒野が出したブロックの数量は…

 

 

 8000程

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 咄嗟に回避を取ろうとするが…

 

 ブゥン… 「!?しまった!」

 

 

 射命丸のスペルカードの効果が切れた

 それにより射命丸の先程のスピードが嘘みたいに無くなる

 

 だが、弾幕ごっこガチ勢の射命丸は扇で弾幕を放ち、相殺

 次々と向かってくる弾幕を避けて………

 

 

 こちらに向かってくる!?

 

 

 

(油断したわ……!だったら接近戦ならどうかしら?)

 

 半ば興奮気味の射命丸はこちらに向かって弾幕を放ちつつ向かってくる弾幕を相殺、回避する

 

 対する俺は使い慣れないピクセルガードを何とか維持させて、考えを練る

 だが…

 壁の周りは射命丸の弾幕により完全に退路は封じられてしまい完全に絶対絶命だった

 

 

 射命丸の弾幕はより激しさを増し、遂にピクセルガードの壁の一部に穴を開けてしまった

 

 ここまでか……ッ

 

(この勝負…貰ったわ!)

 

 射命丸の弾幕が壁をくぐり抜け…

 

 

 

「そこまで!!」

 

 

 犬走の声が聞こえた

 なんだ?まだ被弾してないぞ?

 と同時にドゴンッと頭に見事命中

 

 

 

 え…酷くね……?

 

 

 

 そのまま俺は意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 私は声が聞こえたと同時に弾幕の撃ち方をやめた

 …が、一発浩介さんの頭に当ててしまったようだ

 

 小屋の方から椛が走ってくる

 

「そ、そこまでそこまで!時間切れです!」

 

「…え?椛、今何と言いました? じ、時間切れ?」

 

「そうです!黒野さんの被弾数は8回しか当たっていません

 これにより、勝者は浩介さんです!」

 

 

 し…信じられない

 弾幕初心者に負けるだなんて…

 

 でも…彼、私の弾幕を初めてな割によく躱していたし、何よりスペルカードの難易度が高かったわ

 

 

 八雲紫…

 彼女、面白いのを連れて来ましたね…

 

 

 

 

 

 ひと時考え事をした後…

 

 

 

「ハンデがあったとは言え、私の負けですねぇ

 彼、案外弾幕ごっこに向いてるかもしれませんよ?弾幕こそ撃ちませんでしたが

 

 …じゃあ椛、彼を頼みましたよ?」

 

 そう言い、私は里の方へと向かっていく

 取材はまた今度にしよう

 

 後ろの方から椛が何か言ってるが、気にしない気にしない!

 

 

 

 



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3話

 

 

 

 

 またあの夢だ

 

 

 ツノが生えたゾンビが追いかけてくる夢だ

 

 俺は相変わらず全力で逃げている

 

 

 夢の中だから捕まっても大丈夫だろうと考える暇もない

 本能か何かは知らんが俺にはわかる

 

 

 アイツに捕まってはいけない

 捕まったらが最期

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何もなく、暗い場所を闇雲に走り、喉が枯れ、血の味すらする程無我夢中で逃げるが、それでもアイツは勢いを増し、挙動不審な動きをしながらヒタヒタッと追いかけてくる

 

 

 や……やば……

 

 

 

 このままだとまた捕まる

 

 

 

 ……また?? 

 

 

 そういえば、捕まったと思ったら目が覚めていたよな……

 その後の内容がよくわからんのだが……

 

 

 俺、捕まった後、どうなった? 

 

 

 

 

 ガッ

 

 

 何かに躓いたのか、俺は盛大に転ける

 体力もなく、体制を立て直すことが出来ず、ただ息を整えることしかできない

 

「ぜぇ……ハァ……ハァ…………くっ……そ……」

 

 

 

 

 

 夢の中でも十分シンドい

 

「くっそ……俺……何に躓い……」

 

 ふと俺は躓いた先を見る

 

 

 

 

 

 子供だ

 

 

 

 

 幼稚園児ぐらいか? 

 その子供が倒れている

 

 

 

 ……は? 

 

 

 俺、まさか子供を蹴飛ばしたのか……? 

 

 そう思っていたが、その子供の後ろを見てその予想が吹き飛んだ

 

 

 

 同じぐらいの子供、更に赤子が山のように積み重なって倒れていた

 

 

「う、あああ!?」

 

 思わず腰が抜けてしまった

 倒れてる子供達は恐らく死体

 

 目が半開きになり白目を剥き出しにしている子供達

 その状況が正気じゃなかった

 

 

 

 

 頼む!! 

 

 これが夢なら早く醒めてくれ!! 

 

 

 

 ガッ

 

 

 

 肩を掴まれた

 

 

 背後に誰かいる

 

 

 

 

 俺は恐怖で振り返ることも立ち上がる事も出来ない

 今起きてる状況にアタマが追いつかない

 

 

 すると、背後のナニモノかが掠れ声で

 

 

 

 

 

「……ウラやマ……しいナァ……」

 

 

 

 

 

 う……羨ましい?? 

 

 それってどういう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん」

 

 目を開けると古びた木材の天井

 

 そして後から来る頭痛

 少し頭を押させつつ起き上がる

 

 どうやらあの夢から解放されたようだ

 

 

 

 夢でも恐ろしかったなぁ……

 

 少しボーッとしていると縁側から足音が聞こえてくる

 犬走か

 

 

「……あ、目が覚めましたか!」

 

 犬走はタトタトと小走りしてきた

 

 

「……ん〜、俺、どの位まで寝てた?」

 

「1時間程ですね」

 

 

 結構時間経ってたなぁ……

 

 

「……そして、勝負の結果ですが、被弾数8回で1分間逃げ切った浩介さんの勝ちです」

 

 

 おぉ……危ねぇ所だったなぁ

 

 ただ…………

 

 

「……全然弾幕撃てなかったからなぁ……なんか勝った感全然ないわ……」

 

「でも、初めてスペルカード出したじゃないですか

 それだけでも大きいと思いますよ!」

 

 っと、犬走は慰めてくれる

 優しいなぁ……

 

 

 だけど……なんか悔しい

 

 俺は立ち上がって歩いて行く

 

 

「浩介さん? どこへ行くんですか?」

 

「弾幕の練習でもするよ

 流石に自衛出来るぐらい上達せんとなぁ……」

 

 俺はヘラヘラと笑って縁側に揃えられてる靴を履き、開けた場所に行く

 

 後ろから犬走も来ている

 まぁ見られても特になんともないが……

 

 気が散る

 

 そんくらいかぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イメージが大事……か」

 そう呟いて、俺は手を前に突き出して少し大きめの弾を沢山出して見た

 

 

 イメージでは、その大きめの弾が弾けると中から小さな弾を広範囲に飛ばすというものを考えていたが、そこまで甘くはなかった

 

 その大きめの弾は炸裂音を出して、小爆発を起こしたぐらいだった

 

 

「……かぁ〜、そんなに上手く行かんか」

 

 そう言いつつ俺はまた構えを取る

 

 次は袋の中にBB弾が入ってるようにイメージしてみて、撃ってみる

 

 が、

 

 

 

「弾道遅くね?」

 

 ふわふわと風に揺れて飛んでいき、先程より大きめの爆発を起こす

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん、やっぱりいきなりイメージだけで凄い技みたいなのは無理かぁ……」

 

「直ぐに出来るのなら苦労はしませんよ

 私だって2月かけてやっと弾幕をマスターしたんですから」

 

 と、犬走が茶菓子の差し入れを持って来る

 

 

「一先ず休憩しましょう

 時間ならありますから、少しづつ頑張っていきましょうね」

 

「ああ、ありがと」

 

 俺は茶の入った茶碗を持つ

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっっっっっっっつぁっ!!!!!」

 

 

 

 

 自慢ではないが、俺は極度の猫舌だ

 

 治したい…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 犬走は哨戒天狗としての仕事を果たすためその場を後にした

 心配そうな目でこちらを見つつ名残惜しそうに去って行った

 

 

 俺そんなに頼りないかな? 

 

 

 

 

 …………頼りないかぁ……

 

 

 

 俺は一息ついた後、再び立ち上がり構えを取る

 

 

 今度は基本をマスターしよう

 

 

 そう思い通常弾幕の練習を開始する

 

 

 

 

 

 そういえば射命丸……と言ってたっけ? あの人

 あの人移動しながら広範囲に撃ちまくってたっけ? 

 

 俺も射命丸みたいに鮮やかに弾幕撃ってみてえなー

 

 

 

 まぁ人の良し悪しあるから長所があればガンガン伸ばすっていう形にしようかな……

 

 

 

 俺は射命丸がバラバラにかつ、対象に当てるように小さな弾幕を撃ってみる

 

「……ふっ!!」

 

 

 的には当たっていないが、数は少なくとも20ぐらいは出せてるはず

 

 後はこの動作を何度も行い、命中精度、数の増加を目指そう

 

 俺は時々走り込みを行いつつ、適当に置いた的の数々を狙い弾幕を撃ち続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 20分後……

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ…………はぁ……ハァ…………クッソしんどい……」

 

 

 確かに数も増えた

 恐らく一発で20から50は撃てた

 

 それに何度か的にも命中させる事も出来た

 

 

 ただ、途轍もなく疲労が溜まる

 例えるならば全速力で1km走り、休みなく始めの場所までまた全速力で走った後みたいなものか

 

 正直、1時間は行けると思ってたんだが、15分ぐらい? だろうか、次第に弾道が弱くなり数も減って言ってしまい

 終いには単発でしか撃てなくなってしまった

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛〜、今なら飯4合楽勝で食えそうだわ……

 ……腹減ったあァ…………」

 

 

 ここに来て口にしたのは犬走が持って来てくれた茶と菓子

 

 そういや今日学校で昼飯食ってから飯食ってなかったなぁ……

 

 太陽を見て恐らく18時前か? 

 まだ明るく、夕方の17時前と思ってしまう

 まぁ、ただいま絶賛夏真っ盛りだからなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よし……

 

 俺は重い身体を起こした

 

 

 

「さっきの里に行こ……飯食わなやってられんわ……マジで」

 

 ヨロヨロになりつつ、俺は里へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程の里に到着ッ

 

 腹が減っていたのか、食べ物の匂いやら看板やらが目に付いてしまう

 

 

(団子もいいなぁ)

 

 

 

 しかし、懐事情が気になる

 

 

 

 

 ここ来る時、サイフ持って来たっけ? 

 

 小さい折り畳むやつなら…………

 

 ケツポケットにあった

 

 

 

 さて……中身の方は……オープンザ……

 

 プライスッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8000円

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁそんなもんか……

 というか

 

 

 

 

 

 

 

「ここってこの通貨、使えんのか? …………」

 

 

 

 試しに近くの団子屋に聞いてみた

 

 

 

 

「スミませェ〜ん……このお金使えますかね?」

 

 と、店主のおばちゃんに千円札を見せて聞いてみた

 

 

「あぁ、もちろん使えるよ

 ……コレを聴くって事はアンタ外来人かい? 

 妖力があるから全く気付かなかったよ」

 

 

 

 あ、だから道中あんまり怪しまれなかったのか

 天魔様様だなぁ……

 

 

 まぁ怪しまれん用に真実8割嘘2割程度で話すか

 

 

「そうなんですよ、ちょっと特殊な方でして……

 ……それより実は今途轍もなく空腹真っ盛りでして、予算3000円ぐらいで何か食べれる所ないですかね? 

 ……あ、三色団子2つ頂きます」

 

 そういい一本70円程の団子を貰う

 安いなおい

 

「あら、どうも

 ……そうねぇ、外から来たならわかると思うけど、だいたい物価は外よりかは安いと思うわ

 だから比較的1000円でもお腹いっぱいになれるんじゃないかしら? 

 

 オススメはねぇ……向こうの大きな屋敷の道を突き当たりに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 団子屋のおばちゃんに教えてもらった道を団子を頬張りながら向かう

 少し妖力があるからだろうか、そこらの妖怪であろう人たちは俺の事をあまり気にはしていない

 

 

 しかし、烏天狗……と呼ばれるものだったっけ? 

 その一部は俺をみては不審そうにみて、仲間と小声で話をしている

 まぁ烏天狗のテッペンに少し優遇されてる感じだからかなぁ……

 まぁそんな事を考えても拉致あかねぇな

 

 俺はさっさと飯が食いたいんだ

 

 俺は残りの団子を全てぐわしぐわしと口に放り込み、小走りで向かう事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 着いた先は御飯処とシンプルに書かれた料亭だった

 比較的大きな店だが、和風感は否めない

 というか、出てくる店ほぼ全てが和風で、洋風の店はほぼないに等しい

 

 まぁ美味い飯さえ食えれば俺は満足だ

 

 そうして俺は暖簾をめくり中に入る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと

 

 

 

 

 

「クッソ美味えなおい!」

 

 お吸い物はおろか、白飯ですら桁違いに美味い

 大自然溢れているからだろうか、都会にはない美味しさがあり、正直どこの高級料理店よりも絶品だった

 

 それに結構食っても約2000円内で収まるくらいなので安いにも程がある

 

 

「やべぇ、いい所見つけてしまった……

 距離はまあまあ有るけど、来ようと思ったら来れるしな

 

 

 ……もう少し食ってくか」

 

 俺はまた注文を取ろうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……あの人まだ食う気か?」

「もう5度目だぞ!? 細い癖にどんだけ食うんだよ!」

「ガッハッハ! いい食いっぷりじゃないか! 気に入ったぞあの坊主!!」

 

 スタッフルームからであろう場所から人の話し声が聞こえる

 

 

「ちょっと店長! 感心してる場合じゃないっすよ! 

 この調子だと僕ら他の人の料理間に合わないっすよ!」

 

 とヒョロヒョロオカッパが慌て

 

「馬鹿言うんじゃあねぇよタァコ! 

 お客様は神様だぞ! それにあんなに嬉しそうに食ってるときた

 こりゃあ作った甲斐があったってもんだろうが! 

 ハッハッハ!」

 

 と巨人強面がすっげえ万遍の笑みで豪快に笑い

 

「作ったのは店長じゃなくて俺らなんだがな……

 でもまぁ……悪くはねぇな」

 

 とそっぽ向き呆れつつも微笑む見た目が完璧ヤクザの従業員達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てんちょー! 鮎天御膳と日替わり定食追加です! 

 ……またあの人からです」

 

 真面目な感じの髪型素敵カットの青年は伝票を書きつつ店長の元へ

 

「っしゃあ! そんじゃ不甲斐ないお前らに代わってワシが作ってやるとするか! 

 こんなものワシの手にかかれば4分足らずの「て、てんちょー……」早わ……って、なんだよ! せっかく人が喋ってんのに話遮ってんじゃ……」

 

「な、なんかやばそうなんすけど……」

 

「こりゃ一騒ぎ起きそうだなァ」

 

 3人組の下っ端従業員が張り詰めた用に有る場所を見る

 

「ぁあ? どした、そんなに真剣に見て……!」

 

 

 

 

 店長は見た

 

 

 

 

 注文を取った客が3人の烏天狗に絡まれている所を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、君たち何のようなんですかね……」

 

 俺はからんできたチンピラよろしく3人組の天狗を相手にしていた

 

 注文終えて店主が戻った瞬間こいつらが外から来て俺の周りに来たと言う

 

 言っとくけど、俺何もしとらんよ?? 

 

 

「とぼけんじゃねぇよ

 ……てめえ天魔様のトコにいた人間だろ」

 

「……あれ? 俺の事人間だって何でわかんの?」

 

「とぼけても無駄だよ、僕らはこう見えて位は上の方にいるからね

 他のお馬鹿な奴らよりも鼻が利くんだよ」

 

「……天狗だけに?」

 

「上手い! ……て、そうじゃなくてぇ……」

 

 

 一人は目つき悪いツンツン短髪

 一人は少し長髪眼鏡のいけ好かない奴

 もう一人は……髪型には疎いからどう言う髪型だ? 

 長髪で頭に団子作ってる可愛らしい女の人

 

 どして個性的なチンピラが俺に絡んでくんのかなぁ……

 

 

「……で、結局なに? アンタらには何もしとらんでしょう

 迷惑かけてもないんだし、ここは見なかったって事で終わりにしようよ」

 

「巫山戯んな、所詮人間如きが天魔様に一目置かれてるぐらいで調子にのりやがって……

 許可が下りてたら速攻ぶっ殺してたんだぜ?」

 

「篝ィ、そんなに熱く何なくてもいいじゃん

 たかが人間如きにそんなにムキにならなくてもぉ」

 

「そーそー、俺如きにムキになっても疲れるだけなの

 って事で、見なかった事で」

 

「無理に決まってるでしょ……君知ってるよね

 天狗達は排他的なイキモノでね、それも僕ら以下のクズ達にはとても厳しく……

 だから人間である君が僕らの縄張りで好き勝手されると虫唾が走るんだよ」

 

 

 まぁ自宅に勝手に上がり込み、好き勝手されると誰でもムカつくよな……それは分かる……

 

 ただ……

 

 

 

「……それは申し訳ないと思う

 ただ、これは八雲……ここでいう賢者殿が決めた事なんだ

 それも俺が抗議をしても引かないぐらいの

 さらに言うなら天魔様が承諾して下さったんだ

 ……俺にはどうする事も出来んよ」

 

 俺は箸を置き溜息をつく

 

「俺だって本当だったらこの差別主義者ばかりの山を抜けたいさ、すぐに

 なんだったらみんなで仲良く天魔様に相談しにいくか? 

 八雲も呼んで」

 

 と、少し挑発じみた提案をする

 

「その必要はねぇよ

 てめえさえ黙っていりゃあよ」

 

 好戦的だなぁ、この篝『カガリ』っていうやつ

 

 

 

「おい、てめえ等……」

 

 

 ドスの聞いた声が聞こえた

 

 その声の主はスタッフルームであろう暖簾の前にいた

 中々でけえ身体つきの強面のおっさんがメンチ効かせてキレてきた

 

 

 

「ここはメシを食う所だ、ケンカなら他所でやりな

 ……わかってんのか?」

 

 

 

 

 は……迫力が凄え……

 

 思わず震えあがりそうになる

 

 

 

「あ…………アハハ、す、すみませんおじさん……」

 

「……公共の場でお見苦しい所をお見せしてしまいすみません」

 

「……悪かったよ……」

 

 天狗トリオもここは素直に謝る

 どうやらこの強面、中々怖い人のようだ

 

 ……というか、この強面も妖怪なのか? 

 

 

 まぁ妖怪か、

 

 

 

 

「全く……身分が高えてめえ等がこんな事してたらお前等の下なもんに示しがつかねぇだろ?」

 

「しかし、彼は人間です

 彼を野放しにする事こそ、私達にとって舐められたも同然」

 

「そーですよおじさん、理由はどうであれこのお兄さんを叩き出さないとアタシ達、夜も眠れませんよぅ」

 

「だがそこのアンちゃんは俺のお客様だ

 それをわかった上で言ってんのか?」

 

 

 更に威圧が飛ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はぁ」

 

 

 

 声を出したのは……俺だった

 

 

 立ち上がり……

 

 

 

「わかりましたよ……ここには迷惑かけたくないし……

 表でお話ししましょうよ」

 

「……てめえ」

 

「おじさん、ごちそうさん。釣りはいらないから」

 

 

 そういい2000円を出す

 

 

「……はぁ、まあいい

 だが、まだ注文した料理がのこってんだろ?」

 

「それは何かの容器に入れといてくれると助かります

 今夜の晩飯として頂くんで」

 

「……ハッハッハ! コイツァ気に入った! 

 じゃあ残りの飯、作ってくるか!」

 

 そういい強面は暖簾の中へと消えていった

 

 

 

 

 

 

 

「……さ、いくぞー天狗三兄弟」

 

 

「な……さんきょー……!!」

 

「…………はぁ……」

 

 俺とトリオは店を後にする事に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………アンちゃん……くたばんじゃねぇぞ

 おめえにはまだ注文残ってんだからよう」

 

 手洗い気付等済ませ、強面店長は野菜を切る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………さ、話の続きしようや」

 

 

 俺はある程度店から離れた場所にきた

 

 

 

「いい度胸してんじゃねぇか

 ヤンのか俺と、あ?」

 

「俺は平和主義者なの、あんた等脳筋共とは違って俺は話で解決したいの

 お分かり?」

 

「聞く気は毛頭ありませんがねぇ……」

 

「ならどうすんの? 俺をボコボコにすんの?? 

 それも弾幕も全然打てなくて戦いのトーシロの弱っちい俺を

 格上の天狗様が弱い者いじめするのは品性を疑うんですけどねぇ……」

 

「て、てめえ!!」

 

 篝が頭真っ赤にして突っ掛かってきた

 

 

 

 

 

「やめなよ、篝ィ」

 

 それを止めたのは団子女だ

 

「……花梨、どういうつもりだ?」

 

「だって、このままコイツ殴るとコイツの思う壺じゃん」

 

「……はぁ?」

 

「…………成る程」

 

 

 

 あ、これもしかしてバレた? 

 

 

 

「君ィ……ワザと殴られてアタシ達ハメようとしてたでしょ」

 

 

 

 

 

 

 この女、中々キレるな

 

「怒りに身を任せてコイツに暴力を払えば、僕らは天魔様の命に背く事になる

 それに賢者殿が一目を置かれている以上コイツが傷付けば、僕らはただじゃ済まないだろう」

 

 

 

 

「……脳筋だけかと思ってたけど、頭のキレる奴がいたとはなぁ……」

 

 

 こりゃお手上げかも

 

 

 ここで問題起こしておいてくれたらもうコイツ等とは関わり合う事もないし、陰湿な事も無くなる

 

 ……が、バレてしまった以上問題にならないぐらいの嫌がらせ行為が来るだろうなぁ……

 俺、そういうのマジで嫌いなんだよね……

 

 

 

「……なら傷が付かない程度ならいいんだろ? 

 これから下っ端共にてめえの周りにつかせててめえを玩具みてえにこきつかってやるとか、色々考えは浮かぶからなあ!」

 

「えー、陰湿な嫌がらせすんの? 天狗なのに??」

 

「けっ、もう挑発には乗んねぇよ

 これからはお前をいかにして潰すかの問題だ」

 

「まぁ……悪くないですね、これで僕らの目覚めが良くなれば一石二鳥ですし……」

 

 

 

 うわあ…………最悪

 

 なに? その初っ端の死刑宣告

 精神病んで勝手に死ねと? 

 

 俺、何だかここでやっていけそうにないんだけど……

 八雲はこういうの、予想してなかったのか? 

 

 ……いや、アイツ妖怪だし、人間の事なんて知ったことかって感じか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしているんですか? 貴方達」

 

 不意に声が聞こえた

 

 聞き覚えのある声だ

 

 

 

 それは空からだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………白

 

 

 

 

 

「あ……文様!」

 

「ちっ、このタイミングで……」

 

「…………」

 

 

 射命丸 文は、ゆっくりと地に降り

 

「はぁ……天狗ともあろう者が情けない……

 たかが人間一匹にムキにならなくてもいいじゃないですか」

 

 ウザい顔をしてトリオに放つ

 

 

「け……けど文様ァ、コイツは

「口出しは無用……ですよ??」

 !」

 

 

 彼女から何やらとてつもないオーラみないなものを感じる

 それを感じたトリオは震える

 

 これが妖力というものなのか……多分

 

「…………しかし……このままでは貴方達は納得しないでしょうね

 陰でコソコソとされても此方からすれば見るに耐えないモノなので……

 

 

 そうですね、ここは一つ勝負といきませんか?」

 

 

 

 

「……は? 勝負?」

 

 

 俺は気の抜けた声を出す

 

 対して射命丸は楽しそうにこう続けた

 

 

「えぇ浩介さん、貴方はこのおバカトリオのどちらか一人と弾幕勝負してもらいます

 この幻想郷は、弾幕ごっこで全てが決まると言っても過言ではない世界ですからね!」

 

 

 

 

 ま……マジでかあ……

 

 

 

「……文殿、この雑魚と勝負をしろと言うんですか?」

 

「ええ、そう言いましたが……なにか?」

 

「文様……俺達を舐めてんですか?」

 

「いいえ? ただ、今の状況では浩介さんには勝ち目がゼロに等しいでしょう

 

 ですので! 今から一週間浩介さんには弾幕の修行をしてもらいます

 そして一週間後、貴方方と決闘という形で……どうです?」

 

 

 あぁ……成る程、確かにそれなら公平性もあるしいいかも知れんが……俺……弾幕まだまだよ?? 

 

 

「文殿……ソイツはそこまでの人間なのですか? 

 妖力も私達とは桁違いに弱いですし、そして何より今日この幻想郷にきた者なのですよ? 

 そんな勝負を……」

 

「おや? 彼はこう見えても私に勝ったんですよ? 

 まぁハンデ諸々つけた状態で制限時間逃げ回っての勝負ですが、彼

 中々筋がありますよ?」

 

 

「な……!」

 

「なんですとー!?」

 

 トリオは驚きを隠せない様子

 

 そこまですごいのか……? 

 俺がした事……

 

 

 

 というより……

 

 

 

「射命丸……あまりハードル上げないでくれないか? 

 そろそろ胃が痛くなる」

 

「あやや、本当のことなのに……

 と、それよりこの勝負……引き受けてくれますか? 

 あ、浩介さん、貴方は拒否権ありませんよ? 貴方の問題なんですから」

 

 

 

「……いいだろう、この勝負受けてやりますよ」

 

 篝はそういうと、少し下がりこう続ける

 

「相手はこの俺だ……文句ないですね?」

 

「ええ、では篝さんと浩介さん、貴方達は一週間後、演習場に来てくださいね

 あ! 浩介さんは、その時私が案内しますから」

 

 そういうと射命丸は途轍も無い速さで飛び去った

 

 

 

「…………て事だ、それまで首洗っとけよ?」

 

 そういうと篝達は飛び立とうとする

 

「あ、そういやお前等の名前なんだよ、篝と……かりん? だっけ、それしか聞いてねぇから、そこのメガネの名前知らないんだけど」

 

 

「メガネ……ですか

 そう呼ばれるのは心底ムカつくので、名乗っておきましょうか

 僕は霞 隼」

 

 ハヤブサか、無駄にカッコいい名前だなあオイ

 

「アタシは桔梗 花梨 よろしくぅ浩介君」

 

「……四ノ宮 篝」

 

「俺は黒野 浩介、人間って言うんじゃなくてちゃんと名前でいってくれよ?」

 

 そう言うと俺はさっきの食事処に戻る

 それと同時にトリオも空へと飛んでいった

 

 

 

 

 

 面倒だけど、俺の中のナニカへの対抗策だと思って割り切るとするか

 どうせ天狗と人間問題も避けては通れない道だろうし

 

 

 

 

 

 

 




失踪はしませんよ?
自己満足かつ気まぐれで書いてるので遅くても気にしないでね
あと、日本語がなってない所があったとしても直す気は更々ないので、そこは何とか雰囲気で(笑


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