念能力者の英雄譚 (煽りイカ)
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原作前
プロローグ


息抜きに書きました。
続くかわかりません。

主人公は現実→ハンター世界に転生→盾の勇者の世界に召喚となります。


 二人の男が立っていた。

 

 一人は人間。

 黒髪短髪で中肉中背で20代前半。

 

 もう一人は異形。

 青年のような体をしているが尾があり先端が注射器のようになっている。

 

 二人とも満身創痍でいつ倒れてもおかしくない。

 

「どうしたメルエム? もう終わりか?」

 

「余がここまで追い込まれるとはな…………」

 

「降参するか?」

 

「笑える冗談だな」

 

 

 蟻の王は笑う。

 

「ここで止めると上に立つ者としてな」

 

「もう止まらないか…………」

 

「ハジメよ」

 

「ん? 何だ」

 

「余は今楽しい」

 

「俺も同感だ」

 

 二人は同じ気持ちだ。もう死闘を楽しんでいる。

 

「そろそろ決着をつけようか」

 

「ああ」

 

 姿が両方とも消え、衝撃波が発生する。

 常人にはもう二人は見えない。

 

 

 

 □

 

 

 

「ガハッ!!」

「ゴブッ!!」

 

 

 決着は着いた。

 相討ちだ。

 

「やっぱ……おまえ強いよ……」

 

「貴様こそな……」

 

 両者共に地面に倒れる。

 もう立つこともない。

 

「なあハジメよ……」

 

「何だ……」

 

「名前を呼んでくれないか……」

 

「……おやすみ……メルエム」

 

「……ああ」

 

「……あの世で会えるといいな」

 

 二人とも両目を閉じた。

 

 二人の内の一人、山川ハジメは走馬灯を見ながら記憶を思い返していた。

 

 

 

 □

 

 

 

 まさかキメラアントの王と殴り会うなんてな。

 ネテロでも勝てなかったのに本当によくやったよ俺。

 

 思い返してみればこの世界にきたのは10年前。

 体がハイスペックで纒が出来ており、練習すると絶や練も出来た。

 

 そして能力を作り、荒稼ぎしていたら師匠に出会い意気投合し沢山の事を教えてもらった。

 

 そしてハンター試験を受け合格し、とある分野で星一つを貰い師匠を星二つにした。

 俺が星一つ取れたことを師匠はメチャクチャ喜んでいた。

 

 そんな俺にも弟子が出来た。

 ジャポンの忍者なのだが強く、師団長のライオンをぶっ殺している。俺の知らない場所で努力していたからなアイツ。

 

 弟子とグリードアイランドをプレイしたがカードを多く手に入れたものの実力だけじゃ取れないカードがありクリア出来ず、最後のクイズも負けてしまった。

 

 そしてキメラアント編。

 

 運が悪かったのかなぜかメルエムと一騎討ちになってしまった。んで結果は相討ち。

 

 ……だけどこんな終わり方も良いかもしれない。

 これで世界が救われたようなものだし俺の命で大勢助かるなら嬉しい。

 

 だけどゴメン皆。

 もう会えそうにない。

 

 師匠、ゴン、キルア、ナックル、シュート、パーム、モラウの旦那、ノヴさん、メレオロン、イカルゴ、そして弟子のヒミコ。

 

 ゴメン。先にいくよ。

 

 ああ意識が薄れてきた。

 

 

 

 

 □

 

 

 ドサッ

 

 イテッ、何だ? 床に落ちた?! 

 

「ああ勇者様、この世界をお救いください!」

 

「んえ?」

 

 いつの間にか違う場所にいる!? 

 俺死んだハズじゃなかったの? 

 

 ん? 俺の右腰に何か付いている。

 手にとって見ると、

 

「斧?」

 

 こうして斧の勇者の異世界冒険が始まった。

 




いかがでしょうか。


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第1話

やべ続いちゃったよ。

能力決めました。


 今俺は何故この世界に召喚されたのか説明を受けている。

 

 なんでも波という災害がこの世界に迫っているとか。それで勇者を召喚したんだってさ。

 

 前々の世界で読んだ盾の勇者の成り上がりの世界じゃねえか!! 

 

 読んだのは10年前位になるだろうか。

 

 それで最初の波から一週間たったらしい。

 

 そんでもって召喚されたのかゼルトプルって国だ。

 傭兵と商人の国と言われ、闇が深いとか記憶にある。戦争の裏にはこの国があるとか。

 とんでもない場所に召喚されたな俺。

 

「それで勇者様にこの国の専属の勇者になって欲しいと」

 

「いいんだけどさ、嫌な事だったら俺は拒否するし、色んな要求とかするけどそれでいいか?」

 

「もちろんです」

 

 後ろ楯は欲しい。

 支援金も欲しいし、強くなるために必要だ。

 

「それで要求なんだけどさ、まず字を教えてほしいんだけど」

 

「わかりました」

 

 確かこの世界って魔法あるんだったよな。

 便利そうだから覚えておきたい。

 

「後でいいから素材とか欲しい。武器屋へ行ってみたいかな」

 

「もちろんですハイ」

 

 武器の種類とか増やしたいし、異世界の町を見てみたい。ゼルトプルって武器の品揃えが良いって三勇者が言っていたような気がした。

 

「仲間の募集なんだけどさ、条件を付けて人数を絞りたい」

 

「どのような条件でしょうか?」

 

「ええっと奴隷になってもいいって事と、素行が問題ない奴がいい。実は人に裏切られたことがあってさ」

 

「…………わかりました。手配をしておきます」

 

 転生者等の波の尖兵避けである。

 クズやビッチを仲間にいれるのなんて百害あって一利もなし、絶対に足を引っ張る。

 

 全員頭がクソだからこの条件だと殆ど来ないだろう。

 

 ……まてよ、奴隷紋って消す事ができるって事だから奴隷になっても自分で設定を弄くる事も可能じゃないか? あり得るな。科学者タイプの転生者も居そうだし。

 猫を被って八方美人をしている奴も居そうだ。

 

 嘘を見破る能力はあるからいいけどさ。

 

 それで説明をしている商人風のおじさんが何か条件で気にかかる事があるみたいだ。

 

「取り敢えず腹へったから飯食いたいな」

 

「わかりました。少々お待ちを」

 

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 

「勇者様は相当場数を踏んでいますな。私達を疑ってらっしゃる」

 

 夜中、商人達の会合。

 今日召喚された勇者の話をしていた。

 

「デリッシャ、お前元Sランク冒険者だろ? どう感じた?」

 

「勇者様は相当強いぞ。私の最盛期でも瞬殺される」

 

 元冒険者のデリッシャはその場のノリで模擬戦をしたのだが、

 

「まさか斧を使わず勝つとは……」

 

「そんな強さの勇者が召喚された記録なんてないぞ……」

 

「勇者様には沢山この国の膿を取り除いて欲しいものですな」

 

「ええ、その為に召喚したのですから」

 

「最近不法な商売が多いですからな」

 

「商人として許せませんな」

 

 言葉に怒りがこもっており、恨み事のような話をしている。

 

(この国の膿ってなんだろう?)

 

 そんな会合をハジメは天井裏で絶を使いながら覗いていた。



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第2話

 朝食後。

 

「え、仲間1人しか居ないのか?」

 

「ええはい、条件を絞りこんだ結果補欠しかいなくなりまして。10人程候補がいたのですが全員条件に該当しませんでした」

 

 やっぱ絞りこんで正解かもしれない

 その中に波の尖兵がいる可能性がある。自己中な性格だし奴隷紋なんてつけられたくないだろうし。

 

 スパイだとしても奴隷紋で嘘を見破れるし。能力でも見破れる。嘘をついたら体が赤く光るって能力だ。

 

「そうだ、頼みたいことがあるんだけど?」

 

「なんでしょう?」

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 はい、それでは自己紹介してもらおう。

 今休憩スペースに2人で座っている。

 

「ローナです。よろしくお願いしますね勇者様」

 

 ローナって娘は簡単に言えば女騎士って感じだ。銀髪のポニーテールで150cm程、体格は細い。気が強そうな目をしている。八重歯か魅力的だな。

 得物はエストックだ。

 

 さてこの女に聞かなければならない事がある。

 

「さて質問するぞ」

 

 もう奴隷紋は着けており、嘘をついたら痛みを発するようにしてある。主人を攻撃すると発動するようにも設定。

 

「ハイかいいえで答えろ、お前はスパイか? それとも誰かの命令を受けてるか?」

 

「スパイってなんの話です? 自分の意思で来ているのでいいえで」

 

 うん、発動しないか。

 嘘発見能力も真実だと言っている。

 

「次の質問、何で俺のパーティーに志願したんだ?」

 

「は、はい玉の輿です」

 

 ストレートだな~オイ。

 コイツはビッチなんじゃ……

 

「じ、実は私は7人姉弟の一番上でして、ついでに家が貧乏なので稼がなくてはいけないんです。だからハジメ様のパーティーに入った方がお金が入るかなって」

 

 異世界にも貧困ってあるんだな。

 生きるのに必死って事か。

 

「そしてそのまま取りいっていい暮らしを下の弟と妹に楽させてあげたいなって」

 

「大変だな。偉いよ」

 

 大家族とかテレビで見るけども親とか大変そう。反面賑やかで楽しそうだけど。

 

「で次の質問、お前の周りに小さい頃から天才と呼ばれている人間っているか?」

 

「周りにはいませんがそう呼ばれているのは結構いますね。話したことはありませんが」

 

「有名なのはどんな奴?」

 

「例えばフォーブレイの鞭の勇者とか有名ですね。この国だとレイ・アースログって魔導師が有名でしょうか」

 

「レイ・アースログってのはどんな奴なんだ?」

 

「女好きの自己中心的な偽善者って聞きますね。噂だと冷酷非道な奴だそうです」

 

 クロ確定だな。

 脳内抹殺リストに載せておこう。

 

 波の尖兵を何とかしとかないとな。他の勇者も危ないし。波の時に足引っ張られちゃ嫌だしさ。

 

 まあ転生者殺しはまた後で考えるとして今は自分の事を考えるとしよう。

 

「取り敢えずレベル上げに行くか」

 

「あの~もう少し話しません? 私は斧の勇者の大ファンでして」

 

「少しだけな」

 



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第3話

「ハジメ様、あそこがアルーメの森です。初心者専用と言われているので強いモンスターはいません」

 

 俺はパーティーメンバーとレベル上げに初心者専用の狩り場に来ていた。

 

 丁度いいからローナの実力も見たい。

 

「あっウサピルですね」

 

「キシャァ」

 

「よし、それじゃローナ。倒して」

 

「はい、わかりました」

 

 ローナは素早くエストックを振りウサピルを斬る。

 剣は使い慣れてるみたいだ。

 

「キシャァ」

 

「また出てきたぞ」

 

「は、はい。ファスト・アクアスラッシュ!」

 

 おー水の刃が出て来てウサピルが切り裂かれる。

 水の適正を持っているみたいだ。

 

「どんな適正をもっているんだ?」

 

「み、水と回復です」

 

 俺もまた後で鑑定してもらおう。

 

「キシャァア」

 

「あ、また出てきましたね」

 

「次は俺がやる」

 

 ウサピルが突っ込んでくる。

 そんなに仇を取りたいのだろうか? 

 

 グシャァ

 

 俺はウサピルを踏み潰した。

 

「え!? 斧使わないんですか!?」

 

「使わなくても勝てるし」

 

「そ、そうなんですか」

 

 死んだモンスターを武器に入れる。ドロップは何があるだろうか? 

 

「ボフ!」

 

「ん?」

 

「げっ!」

 

 なんだ? 赤い猪が出てきたぞ?

 デカイな、体長3mくらいだろうか。

 

「レッドボアですよ! 逃げましょう!!」

 

「何なのあの猪?」

 

「あれはSランクの冒険者が相手するようなモンスターですよ。今のハジメ様には無理です」

 

 何かイラッと来たからそこら辺にあった拳大の石を拾う。そして周を纏わせて蹴り飛ばす。

 

 こんな動物以上の奴なんて前の世界で沢山討伐してきたんだよ!! キメラアント舐めんな! 

 

 そしてレッドボアの頭に当たり、石がめり込む。

 と思ったが貫通して地面にもめり込んだ。

 

「…………」

 

 ローナは絶句である。

 

「……ハジメ様ってLvって何でしたっけ?」

「今Lv18になった」

「何者ですか……」

 

 そんなに人外じみてる? 前の世界でも言われたけど。

 

「キュィィィィィ」

 

「え?」

 

「か、カイザーファルコン!?」

 

「次は何!?」

 

「Sランクの冒険者が数人がかりで倒すモンスターです……」

 

 えっ、ここ初心者の狩り場じゃなかったっけ? 

 ……何なのこのエンカウント率は? 

 

 まあいい倒すか。

 俺は鳥の方へジャンプする。地上から20m程だろうか。それで斧を振りかぶり鳥の頭を叩き割る。

 

 鳥は落下していった。

 

「案外普通に勝てたな」

 

「す、凄いです」

 

 そこまで強いのかこの鳥。……俺が強いだけか? 

 

 あっそうだ、解体して武器に吸わしておこう。

 新しい武器とかドロップも欲しいしね。

 

 なお、武器の強化方法は全部出しており、ヘルプに乗っている。多分勇者の中で俺は最強なのだろうか? 

 

 いやいや慢心は駄目だな。

 転生者は実力はともかく、先手を取ってるから地力が違うし油断しない方がいいな。特殊なアイテムとか作る転生者とか居そうだし。

 

「取り敢えずレベル上げを続けようか」

 

 



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第4話

 さて手に入れた武器を見てみよう。

 数人隠れているな…………。

 

 カイザーファルコンアックス 0/50 C

 

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「風王裂空斬」 視力上昇 風耐性(中) SP上昇(小)

 

 専用効果 翼帝の雄叫び 風属性付与 鳥特攻

 

 熟練度0

 

 

 カイザーファルコンミートアックス 0/30 C

 

 能力未解放……装備ボーナス、スタミナ上昇(中)

 

 

 カイザーファルコンボーンアックス 0/30 C

 

 能力未解放……装備ボーナス、SP上昇(中)

 

 

 カイザーファルコンレザーアックス 0/30 C

 

 能力未解放……装備ボーナス、防御力4

 

 

 結構強いなカイザーファルコン。

 ? 二手に別れたか……

 

 

 レッドボアアックス 0/30 C

 

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「クリムゾンチャージ」 攻撃力5

 

 専用効果 赤い牙

 

 熟練度0

 

 レッドボアミートアックス

 

 能力未解放……装備ボーナス、肉料理品質上昇

 

 レッドボアボーンアックス

 

 能力未解放……装備ボーナス、攻撃力3

 

 レッドボアレザーアックス

 

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「カリュドーン」

 

 

 後でカイザーファルコンを強化しておこう。

 

「はっ、バカな奴だぜ。まんまと囲まれたな」

 

 カイザーファルコンを討伐した後なのだがジメジメとした視線が少しあった。尾行されてるってすぐにわかったよ。

 

「うわぁ」

 

「ローナ、誰コイツ?」

 

「ケンタ=イヌザキって言うSランクの冒険者なのですが、腕はいいくせに凄い素行が悪い女好きクソ野郎なんです。いい噂は一言も聞きません」

 

 つーかコイツ転移者だろ。和名だって分かるし。

 一目見たときから日本人顔だなと思ったし。

 

 でもなんだろう? コイツのオーラが気持ち悪く感じる。得体の知れないとかじゃなくてお近づきになりたくないような感触だ。

 

「お前らわかってんのか? この状況で軽口叩くのバカじゃないのか!?」

 

「ナンパされた時気持ち悪かったですもん」

 

「……わかった、お前その男に洗脳されているんだな。助けてやる!!」

 

「ほら見てください、クソ野郎でしょう」

 

「うんよくわかった」

 

 自己中なのが波の尖兵の特徴なんだよな。

 ここまでくると哀れに見えてきた。

 

「まあいい、武器を貰おうか」

 

「頑張ってください、ケンタ様!」

 

「そのクズを殺して奴隷を救ってください!」

 

 取り巻きの女も見てみると二人ほどオーラが気持ち悪いのがいるようだ。

 もしかしてコイツらビッチの端末なんじゃ……。

 

 囲んでいる数は全員で6名。こちらは2名。

 

「じゃあな斧の勇者。その武器は俺が使ってや」

 

 最後まで言えなかったな。

 ケンタだったけ? お前みたいな格下に俺が負けるはずないだろう。

 俺は斧の形状を変え、バカを真っ二つの肉塊にジョブチェンジさせた。

 

 場は数秒間沈黙し、

 

「キャアアアアア!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

「ケンタ様ァァァァァァ!」

 

 うわっすげぇ悲鳴を挙げてるよ。

 無理もない。いきなり人間を縦に二つに切り裂かれたら誰だってビビる。

 

 だけど俺は悪人の悲鳴は大好きなんだ。

 

「や、止めてぎゃあっ!」

 

「だ、誰かきゃあ!!」

 

 全員逃がすわけないだろ。

 人を始末する人間は始末される覚悟を持って殺しに来ている。覚悟が無いわけないだろ? 

 ジョルノが言ってた。

 

「イヤアアアアアアア!!」

 

 とまあケンタパーティーは全滅した。

 

「これって問題ない?」

 

「ありませんよ! 囲んだ上に剣を抜いてたんじゃ正当防衛です。勇者とわかって襲ってましたし大罪ですよ」

 

 だろうね。剣は脅しの道具じゃなく人殺しの武器。

 構えた時点でアウトだ。

 

「で、でもなんで勇者って事と私が奴隷だってバレたんでしょうか?」

 

 推測は何個かあるがわからない。

 考えても埒が開かないし帰るか。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 夜、ゼルトプルの商人の会合。

 

「さて、勇者様に何と言って頼むか」

 

「そろそろやって貰わないとこの国がメチャクチャになってしまう」

 

 商人達が悩んでいる。

 

「お困りのようだな」

 

「「「「!!」」」」

 

 俺参上。

 いきなり現れたから全員びっくりしている。

 

「ゆ、勇者様。いつの間に!? ここは隠蔽魔法が使えないのですがどうして!?」

 

「俺が召喚された後の会合から盗み聞きしてた。この国の膿を取って欲しいんだろ」

 

「……隠し事はできませんな。実は……」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「……って事ですハイ」

 

 成る程、それは嫌だな。

 まあいい俺も取引したかったから丁度いい。多分俺がやりたい事に関わってくると思うしさ。

 

「いいぜ引き受けても。だが条件を呑んでからだ」

 

 多少強引な手段を使おうか。

 HAHAHA 狩りの時間ですぞ。

 



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第5話

 とある転生者Aside

 

「これで今日の仕事は終わりかな」

「お疲れ様でした」

「ラミリアもご苦労様」

 

 この世界にきて25年。

 俺は貴族の三男に生まれた。

 

 まったく神には頭が下がる。こんないい所に転生させてくれた。感謝しかない。

 

 そして今俺は領主をやっている。

 

 ん、兄貴はどうしたかって? 

 そんなの決まっているだろう。死んだのさ。

 

 上の兄は俺の事を性悪とよく言ってきており、仲が険悪だったのだ。

 ある日森で言い争いになり、顔を殴られた為ブチ殺して生き埋めにしてやった。

 まったく顔殴るとかありえないだろ。自分の程度の低さを棚に挙げてよ、嫉妬かっての。

 

 下の兄は大人しいタイプであり、表に出るタイプではなかった。しかし俺の事を裏では偽善者呼ばわりし、皆に言いふらしていた。

 そんな卑怯者に領主は勤まらない。毒盛って殺してやったよ。死体は上の兄貴が眠る森に埋めてきた。

 

 そして親父がタイミングよく病で亡くなり俺が領主になったと言うわけだ。

 

 タイミングと言えば斧の勇者が召喚されたって聞いたな。丁度いいから俺の戦略で武器を奪い取ってやろう。

 

「その為には兵力増やさないとな。増税するか」

 

 ドス

 

「へ?」

 

 胸から刃? な……ん……で……。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 とある転生者Bside

 

「よし、これを入れれば」

 

 これを入れればこの薬は完成する。

 金貨何枚儲かるだろうか。楽しみだ。

 

 この世界には楽しい事が沢山あるな。

 女も寄ってくるし、少し頭を使えば金なんていくらでも沸いてくる。

 

 それなのにこの国は邪魔してくるんだよな。この前なんか強制捜査とか言って家に入り込んで来たけどよ、なんも見つからないんだぜ!

 はっはっはバカだな、お前らじゃ見つかんねえよ。

 

 地下室のそのまた地下に隠し部屋があるなんて誰も気づかないんだよな。土魔法で地下の様子を知る事とか出来るのによマヌケな奴等だ。

 

 思えば俺の前世は周りにろくでもない人間しかいなかった。その上才能もなかった。だが今世は違う。

 

 才能を貰い沢山の人間からチヤホヤされる。こんな最高な世界はない。

 

 ん? 眠くなってきたな。寝るかな、明日早いし。

 

 俺は明かりを消し、ベッドに入った。

 明日は取引だし、上手く行くといいな。

 

 ドス

 

 なんだ? アーリーか? それにしても気配が無かったな。

 ん、胸が痛い? 

 

 あ……れ……意識が遠……の……く。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 とある転移者Aside

 

「リュウ様、好きです」

「お、俺もだ」

 

 転移してきて1ヶ月、ようやく軌道に乗ってきた。

 チート貰ったから簡単にSランク冒険者に成れたぜ。

 

 そして莫大な金を貰ったので家を買った。大きな家で、奴隷達と一緒に住むことになり、今告白されたところなのだ。

 

「よ、夜に体を清めてくるのでその時に契りを……」

「お、おう」

 

 夜まで待つのか、今ここで押し倒したいくらいだ。

 

「それではのちほど」

 

 ドアがしまる。

 

 やったぁぁぁぁぁぁぁこれで童貞卒業だぁぁぁぁぁぁぁ! イヤッホオオオオオゥ! 

 

 はっ、こうしてはいられない。こっちも身だしなみを整えなくちゃ。

 

 それにしても楽しみだなぁ。あの爆乳を触れるなんて幸せ者だ。

 

 ガサ

 

 ん!? 後ろで気配が? 

 

 振りかえると、

 

 ザシュ

 

 あれ? 何もいない? なんか変な音もしたな。

 何だろうか。疲れてるのか? 

 

 ボド

 

 は、頭が地面に落ちた? 自分の背中が見える!? 

 

 な…………に……こ……れ? 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 夜、ゼルトプルの裏路地。

 

「おい、聞いたか。俺ら側の人間が何十人も殺されているらしいぞ」

「俺も聞いた。誰がそんな事を……」

「僕が役人から手入れた情報だと、死体の側の壁に『転生者に災いあれ』とか書かれていたらしいぞ」

 

 三人の冒険者がひっそりと会話していた。この三人は神によりこの世界に送り込まれた存在だ。

 

 人格はそれぞれ違うが性格に難があり、自己中心的な性格をしている。

 

「俺はこの国から出る」

「マジか俺もだ。この国には何かある逃げた方が得策だ」

「僕は出ないぞ。家を買ったんだ。暗殺者なんて返り討ちだ」

「だがSランク冒険者で殺されたのがいるんだ。止めといた方がいい」

 

 ガシャァン ガシャァン ガシャァン

 

 猿の人形が三人へ向かってくる。

 金属音を発てながら。

 

「ん、なんだこのシンバルを持った猿は?」

「懐かしいな。これ家にあったよ」

「あのCM気持ち悪かったよな…………」

「おい、この猿の背n」

 

 ドカァァァァァァァァァァン

 

 猿は大爆発した。

 

「な……ん……で……」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 はい、ハジメさんです。

 今、ルール違反者を爆死させました。

 

「熱い……助け」

 

 グシャァ

 

 おっとまだ生きていたか。

 油断大敵だな。

 

 それで今俺がやっているのは波の尖兵やルール違反の商人の暗殺だ。

 実は転生者等がよく悪さをしており、ゼルトプルの商人が困っていたらしいのだ。俺も何とかしようと思っていたので丁度良かった。

 ゼルトプルは金と力があれば偉いけど、何をしてもいいって訳ではない。

 

 例えば、領主の権限を使い不法に奴隷狩りをしていたり、麻薬を密造して売りさばいていた奴もいたらしい。他にも奴隷商人へ強盗や強姦、連続殺人等もしているやつらがいるとか。

 明らかにクロなのだか証拠が無く、暗殺しようとしても返り討ちにされているとかもあるそうだ。

 

 何十人と殺して気づいたのだが、転生者はオーラが気持ち悪い感触がするのだ。

 今の三人も転生者であり、全員オーラが気持ち悪かった。うち一人は強盗殺人を犯したらしい。

 

 女も何人か殺したのだがオーラが気持ち悪い奴はみんな評判が悪かったらしい。

 ……ビッチ女神の端末の可能性があるな。

 

 つまり、俺は波の尖兵を見破れると言うことだ。

 これは大きなアドバンテージだ。

 

 科学者タイプの転生者やビッチには念のためソウルイートしており、転生を二度と出来なくしている。

 

 それで話は変わるが、気になるのがレイ=アースログと言う魔導師だ。

 コイツは今国外に要るらしく、何処にいるのかわからないそうだ。

 調べたところコイツは非道な人体実験を行っているとの事で帰国したら即殺そうと思う。

 

 取り敢えずギルドと提携し、新人で目立ったやつがいたら報告するようにしている。

 出る杭は打つ。

 

 今日の仕事はもう終わりだし帰るかな。

 

「ポータルアックス」

 

 ちなみに龍刻の砂時計の砂を貰い、スキル強化もしている。

 今度フォーブレイに遠征にでも行くかな? 

 

「さて、寝ますかね」

 

 ホント金も稼げてゴミ掃除も出来るんだ一石二鳥だな。

 あっ、アリバイ作っとかないとな。誰が数人と話そう。



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第6話

 取り敢えず召喚されて一週間の時がたった。

 

 昼はレベル上げや武器の強化、夜は波の尖兵共の暗殺を繰り返している。

 なお、暗殺時に手に入れた金や貴重な品は回収しスラムに巻いたり、孤児院にこっそり寄付している。

 まあ少し着服してるけどね。

 

 それでローナの事を裏ギルドで調べさせた。

 結果、転生者らしき人間は周りにはいないらしく、おまけに性格も良いらしい。

 つまり、シロ側の人間である事が判明した。

 

 しかしまだ謎が残っており、ローナがどこで生まれたのかよく分からないらしい。

 ローナが赤ん坊の時に父親がこの国に流れて来て再婚したとからしく、その後亡くなって出身がわからなくなったとか。

 そして母親の体調が悪くなり、日銭を稼ぐ為にギルドに登録し、登録後4日程だがスカウトされ俺のパーティーに入ったわけだ。

 

 信用できる人間なので念を教えることにした。

 

「えっとこれでいいんです?」

「そうそう合ってる」

 

 意外とローナは呑み込みが早い方みたいだ。

 まだ精孔が開いてないがな。

 

 少し出来るようになったら俺の能力を使用し、覚醒状態まで持っていこう。

 あと一、二か月くらいすれば能力を使うことが出来る筈だ。

 俺のって万能に近いんじゃないかと思えてきた。

 自分としてはそこまでいい能力だとは思えてないけどね。

 むしろ欠点を具現化したような能力って言った方が分かりやすい。

 

「よし、そろそろ終わりにしよう」

「はーい先生」

 

 先生か……色々教えてると弟子のヒミコを思い出す。

 アイツは元気にしてるかな? 

 

 キメラアント戦が終われば多分星一つもらえると思うけど。

 結構センスあるし。

 

「結構上達してるじゃないか」

「あ、ありがとうございます」

 

 正直強くなってもらわないと困る。

 ちなみにまだ仲間を集めるつもりなので、近々奴隷商や魔物商に行くつもりだ。

 

 資質上昇や奴隷のステータス補佐の斧も出しているため、私兵団も作るつもりだ。

 それで数人厳選して能力者を育成する。

 もちろんフィロリアルも育てるつもりだ。

 足が欲しい。ああモフモフしてえ。

 

 フィロリアルはフィロリアルのレースに出す予定であり、賞金とか稼いでもらう。

 資質上昇で敏捷を重点的に強化しよう。

 

 それで今フィトリアを探している。

 フィロリアルシリーズとか欲しいのでフィロリアルが多い地域や聖域とかも探している途中だ。

 七星勇者、本当は八だけどまともなのは俺とフィトリアだけだろうしコンタクトを取りたい。

 

「あ、そう言えば甘味処が出来たそうですよ」

「俺甘いもの大好きだし行くか」

 

 疲れた時には甘いものだよね。

 

「ん、ここ売り地になってますね」

「本当だ」

 

 そう、俺が暗殺した波の尖兵の家である。

 謎の死を遂げたし持ち主がいないからそうなるだろう。

 

「風の噂だと殺された人間はSランク冒険者で、密室殺人だったそうです。どうやって殺したんでしょうか?」

「怖いなぁ。俺も気を付けなくちゃな」

「金銭や希少な物も奪われたそうですよ」

「酷い事しやがる…………」

 

 まあ犯人は僕ですけどね。

 

 なお、まだ続きがある。

 ゼルトブルに頼んで情報操作をしてもらい、犯人の服装は金の長髪、バンダナ、革ジャン、ジーンズ、そして鞭を持っていると情報を流してもらった。

 

 そう、タクトである。

 あいつはもう真っ黒だからマイナスにマイナスを足しても問題ないだろうし。

 ついでにタクト派の商人も暗殺しておいた。

 聞いた話だとこの前ゼルトブルで迷惑行為を起こしたそうで、ゼルトブルの商人達はノリノリで協力してくれた。

 

「あ、あれです。並んでますね」

「仕方ない、待つか」

 

 後日わかった事だが、タクトはゼルトブルを出禁になったらしい。

 日頃の行いが祟ったなバカめ。

 

 本拠地で強盗殺人集団に会わなくても済む事を安心しながら俺はお団子を頬張るのだった。

 

 

 

 ゼルトブルの波まで後……2週間。



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第7話

「ごめんね、坊や。私たちはここまで」

「すまない、力不足だ……」

「ごめんね……」

 

 辺り一面焼け野原、空の色は夜よりも暗くなっている。

 この世界に生きているのは彼らだけだ。

 仲間の骸が地面に倒れている。

 

「頼む、生きてくれ」

「奴等に見つからないで……」

 

 二人は呪文のようなモノを唱える。

 

「いい旦那を探せよ」

「病気には気をつけなさいよ」

 

 最後の言葉をかける。

 もう会えないから。

 

 すると闇、彼らに世界の滅亡が迫ってくる。

 

「時間切れか……もう送るぞ!」

「お願い、幸せになって!」

 

 彼らは存在が闇に飲まれた。

 

 全て……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!? 何だこの夢は!!」

 

 俺は飛び起きた。

 何だこのシリアスな夢は、リアルだったからビックリだわ。

 

 疲れてるのかな俺? 

 

「ハージメ様、食事だそうですよー」

「わかった、今行く」

 

 今日は奴隷商へ行く予定だ。

 仲間を増やしておいた方が楽だろうし、俺は万能って訳じゃない。

 

「ん? 何だコレ?」

 

 なにか手に持っているな。

 卵の形の感触だな。

 と思って見たら本当に卵だった。

 

 寝る前にはこんなの無かったよな……何だこの卵? 

 

 ……まあ魔物も仲間に加えるつもりだし丁度いいか。

 魔物商に行って魔物紋と孵化器を貰おう。

 

 ……今日の朝飯は肉かな? 良い匂いだ。

 

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 

「これはこれは初めまして斧の勇者様、我が奴隷商会にようこそ」

 

 メルロマルクの奴隷商とそっくりだ、あれは黒だったけどこっちは白。

 ゲームとかで絵は同じなのに色は違うキャラがいて、種類を水増ししていたゲームがあったような気がする。

 

(何ですかこの胡散臭い人は?)

(黙っとけ)

 

 気持ちはわかるけどさ。

 

「なんと!? 胡散臭い?! 私は売り物を詐称したりしません!!」

「売り物はだろ、客は惑わすんじゃないか?」

「おっと知られていましたか」

 

 メルロマルクの奴隷商と親戚だし性格も同じじゃないか? 

 もしかしたらメルロマルクの奴隷商にも会うかもしれない。

 

「取り敢えずゆっくりしていってくださいハイ」

 

 まあ見て回るか。

 こういう所にくると異世界に来たって感じがするよな。

 異世界モノっていつも奴隷とか出てくるし。

 

 そう言えば誘拐されて奴隷にされているってあったな。

 ラフタリアの村の人間も奴隷狩りにあったんだっけ。

 

 ここ大丈夫か? 

 

「……少し高めだな、奴隷の体調も良さそうだし、ここ高級店か?」

「ほぉ今まで奴隷商に来たことが?」

「前の世界で少し」

 

 ちなみにハッタリではない。

 ハンターライセンスを使って立ち入り禁止の国へ行った事があるのだ。

 そこは無法の国なので法もスッカスッカだから抜け道とか多い。

 

 まあ色々安く買えるしメリットはあるんだけどね。

 

「へぇ~色んな人種がいるんですね」

「人間の坩堝だからなこの国は」

 

 治安は悪いけど差別がないのがこの国だ。

 そりゃ色んな人間がいるだろう。

 

 …………そうだ、ゼルトブルにいる原作キャラがいたよな。

 もしかしたら会うかもしれない。

 

 暇だったらコロシアムにでも行ってみようかな? 

 

 檻を見ているととある奴隷に目が止まる。

 狐耳の少年の様だ。

 

「ん? この子は?」

「フォクス種の子供です。右額に傷を負ってしまい、大幅に値引きしておりますハイ」

 

 あちゃーやっちまったな。

 

「どうでしょうか? 顔の作りは良いのですが……」

「あのなー俺は正義の味方でも無いしトモダチごっこじゃあないんだ。波だぞ? 命を懸けるんだぞ? こんなガキが戦えるのか? 同情で買うんだぞ、どんだけ傷つくと思うんだ?」

「……ごもっともで、失礼しましたハイ」

「だけど育てて強くすれば死なないし、顔に傷がついても戦っている人間もいる。第一に俺は勇者だ。絶望している人間に手を差しのべるのが常だろう。って事でいくらだ?」

「落としておいて結局買うんですか!?」

 

 ローナのツッコミが冴える。

 こうして俺は奴隷を購入するのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「それで名前は?」

「……シルフィ」

 

 奴隷商帰りだ。

 ただいま奴隷と一緒に手を繋いで歩いている。

 棒つきの飴も買ってやった。

 

「取り敢えず服買おう、奴隷服じゃ嫌だし配下としてカッコがつかない」

「でも少な目に買った方がいいですよ。レベル上げたら大人になりますし」

「確かにそうだな、一二着くらいでいいかな?」

「あっでも家に弟のお下がりありますよ。持ってきましょうか?」

「そうしようか。金使わないで済むし」

「えっとその……」

 

 卵の孵化器を2つもらい、フィロリアルと謎の卵を孵すつもりだ。

 謎の卵なんだが魔物商に聞いてもなんの魔物か分からないそうだ。

 変な夢も見たし、特別そうな感じだな。

 

「あの……ここは?」

「俺のクランハウス」

 

 そうゼルトブルから貰ったのである。

 二十程部屋があり、庭が広いのだ。

 

 掃除とかはローナの家族がやってくれるみたいだ。

 勿論金は出す。

 

「さあ、風呂でも入るか」

「それじゃ服取ってきますよ」

 

 ローナが家に取りに行くようだ。

 それではこの子と友好を深めますか。

 

「ほら一緒に入るぞ」

「え? は、はい」

 

 ん? 顔赤くなったぞ。

 あーいるよな、風呂で見せたくないやつとか小学生に。

 だけど湯槽にタオルとか入れちゃいけないんだぜ。

 

「よ、よろしくお願いします」

「? よろしく」

 

 体を洗ってほしいのか? 

 まあ一緒に洗うけどさ。

 

 そして脱衣所まで二人で一緒に来た。

 あっ風呂沸かしてなかった。

 

「一緒に洗ってから入ろうか」

「は、はい」

 

 俺達は浴槽内を洗った。

 入るんだったら綺麗な浴槽に入りたいし。

 

「さ、水を入れてと」

 

 ちなみに五右衛門式である。

 良いよね風情があって。

 

「俺がお湯見てるから火を焚いてくれ」

「わかりました」

 

 そして数分後。

 

「おい、丁度いいからそんくらいにしとこうか。火を消してこっち来てくれ」

「はーい」

 

 40度くらいかな、こんくらいだろう。

 体を洗って先に入ってよう。

 

 体を洗った後、湯に入る。

 いやぁ気持ちいな。

 

「ど、どうも」

 

 おっ来た来た。

 ん? タオルで股間を隠してる? 

 

「おい、なぜ隠している」

「えっ? だって恥ずかしいし……」

「男同士だろ! 全然恥ずかしくないだろ」

「えっ俺……」

「隠すな没収だ!」

「きゃああ!!」

「え?」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「本当にごめんな」

「いえ自分は奴隷なので……」

「ただいま戻りました……ん、何やってるんですか?」

 

 今シルフィと椅子に対面で座っている。

 ……ガチで悪い事しちゃった。

 

「コイツ女の子だった」

「え!?」

 

 外見が少年みたいだったから間違えた。

 俺とか言ってたし。

 

「男物持ってきましたけど変えて来た方がいいでしょうか?」

「いやいい、少しの間だけ着るだけだし」

 

 大きくなったら買えば良いよね。

 

「それでだ。お前を奴隷として買った理由は波と戦う事だ」

「波と……」

「ああそうだ。俺は斧の勇者だ。明日からお前を鍛えるから覚悟しておいてくれ」

「勇者様……」

「そのかわり俺がお前を守る」

「え?」

 

 いきなり波と戦うと言われても覚悟何て無いだろう。

 外見十歳くらいか?

 

 尚文も子供のラフタリアに魔物殺させてたし俺も同じか……。

 だけど信用できる戦力が欲しいから育てる。

 

 仲間を作っていこう。

 前の世界でも良い仲間や悪い仲間がいたけど結構楽しかった。

 

 ぐぅ

 

 ミルフィはお腹空いたみたいだ。

 外食行こうか、作るのめんどいし。



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第8話

お気に入り登録200突破です。
メインのポケモンより人気あるんじゃ…………。


「それで師匠の勧めてくれた株が上がってさー」

「私にはよくわかりませんよ……」

「あれ? 産まれますよ」

 

 そしてシルフィを仲間に加えて夜になった。

 皆で団らんしてたらフィロリアルの卵にヒビが入った。

 どうも産まれるらしい。

 

「ピイ!」

「白いフィロリアルだ」

 

 元気よく産まれ、俺に近づきスリスリしてくる。

 刷り込みだったっけ? 俺が良いハンターだからか? 

 

「ピイピイ」

「うっわあ~可愛いですね。雌みたいですが名前は何にするんですか?」

「そうだな~」

 

 白、雪、ピイ、鳥…………

 

「よし、決めた」

「ピイピイ」

「お前の名前はキラークイーンだ!」

「「何故!?」」

「ピイ!?」

「何でそんな名前に!?」

「いやぁ魔除けに良いかなって」

 

 魔除けの意味もあるんだけど他人の『平穏な人生』を守ってほしいって事なんだ。

 ……キングクリムゾンの方がよかったかな? 常に絶頂に居られるようにさ。

 まあ競争羽にしようと思ってるから強そうな名前の方がいい。

 

 卵の殻を武器にいれておこう。

 もしかしたらまた魔物を仲間に入れるかもしれない。魔物のステータス補正は欲しい。

 

 ピキピキ

 

 あ、もう一つの方も卵にヒビが入った。

 この卵は何の卵か分からないから気がかりだった。

 

 卵が割れ、中ら出てきたのは

 

「シャー」

 

 蛇、それも白い。

 確か白い蛇って縁起がいいんだったけ? 

 

「シャー」

 

 体長30cmくらいあるかな? 巻き付いてきたんだけどこれも刷り込みなのだろうか? 

 

「見た事無い蛇ですね。亜種の可能性もありますよ」

「亜種か……」

 

 前の世界でも突然変異した動物がいるって聞いたことがある。

 それでビーストハンターとかがハントするんだ。

 捕獲か討伐かどっちかだけどナックルは捕獲派なのだ。

 俺は知り合いに突然変異した動物いるし。

 

 魔物紋があるし暴れないと思うけど。

 

「……それで名前はどうするんです?」

「どーしようかな」

「普通の名前にしてくださいよ…………」

 

 白、蛇、どうしようか。

 D4Cとかメイドインヘブンとかつけたらローナに怒られそう。

 だけど

 

「ローナ何か無い?」

「んーシロとかハクとかあると思いますが……」

 

 カッコ良く名付けた方がやっぱりいいかもしれない。

 

「よし、お前の名前は夜刀だ」

「かっこいいですね」

 

 たしか夜刀神は蛇だった筈だ。

 

「ヤトちゃんとでも呼んでやれ」

「ピイピイ」

「シャー」

 

 ……なんか可愛いな。

 明日は皆でレベリングだし、速く寝ようっと。

 

「俺と一緒に寝てくれませんか? 一人だと怖くて……」

「しょうがねえな」

「あっ私も一緒に寝ます」

「川の字だな」

 

 次の朝、おねしょで大陸を作ったのは笑い話だ。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 はい、そして翌日。

 

「さあ! レベリングだ」

「ピイ」

「シャー」

「zzz」

「シルフィが寝たまま立ってますよ……」

「今回はローナはコイツらの護衛を頼む」

 

 コイツらのLvは1。

 フィトリアに会うまで資質上昇をしなければならない。

 ってことで山奥まで来てみた。

 

「GRUUUUUUUUUUUU!!」

「ピイ!」

 

 おっとフィロリアルの天敵のドラゴンですぞ。

 体長10m程の大きさですな。

 

「金剛瀑布X!」

 

 金色の衝撃波を放出し、ドラゴンを真っ二つにした。

 俺の勇姿をキラークイーンは見てくれましたかな? 

 

「ピイピイ」

 

 惚れ直したかのようにスリスリして、頭に乗ってきた。

 Lvを上げると天使の姿になるんだよな。

 早く見たい。

 

「GUGAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

「まだいたのか? エアストスラッシュX」

「GUUUUUUUUUU!?」

 

 番かな? 尾行して住みかに入るって手もあるな? 

 もしかしたら宝を貯めてるかもしれない。

 

『おい貴s』

「風王裂空斬X!」

 

 風で出来た斬撃が鳥を真っ二つにする。

 今喋って無かったか? 気のせいだろうか…………。

 

 喋る魔物なんてこの世界にはいるんだよな。

 前の世界でも不思議な動物とかいたし。

 つーか鳥って言うかグリフォン? 

 

 どっちみちフィロリアル様の天敵だからデストロイですな。

 解体して武器に吸わせよう。

 

 ふむふむ解体して入れると部位事によりボーナスが違うなぁ。

 おっスキルゲット。

 ドロップも結構良いな、グリフィンアーマーだって。

 

 …………何か引っ掛かるような気がする。デジャウ? 

 

「ハジメ様、凄いレベル上がりましたよ」

「それじゃ資質上昇するぞ」

 

 取り敢えず、レベルを下げて資質を上昇させる。

 この辺はLv55が適正であり、自分のレベルはもう60近いので下げておこう。

 

 レベルを下げてまたレベルを上げるので、スキルや魔法強化のポイントを増やす事が出来るのだ。

 活性地に行くのが楽しみになってきた。

 

「おっいたいたお前が斧の勇者か。黙って殺されて俺の糧になりな。死ね!!」

「トマホークボマーX!」

「ギャアアアアアアアアアアア!?」

 

 投げた斧が爆発してダメージを与える。

 よく波の尖兵のカス共が尾行したりして挑んでくるのだ。

 

 今の顔は抹殺者リストに乗っていた人間だな。

 転生者だし問題無しだし、後で家に乗り込んで何か奪おう。

 もう慈悲は無い。

 

「うっ……あ……」

「サンダーアックスV」ドシャ

 

 こいつら少し才能があるだけで努力しないし、油断が多い奴等が多い。

 念能力を使わずに容易く殺れる。

 

「ハジメ様! そろそろお昼にしましょう。グリフィンの焼き肉ですよ!」

「良い匂いだ……」

 

 ローナが何か作ってくれたようだ。

 ハーブか? そんなのが巻かれているようだ。

 

「おいしいっ!」

「シャー」

「ピイピイ」

「本当だ、美味しいな」

 

 凄い肉汁が噛むと出てくる。

 家で手伝いしてるとか聞いたけど相当家事スキルはあるようだ。

 

 ……キラークイーンと夜刀が大きくなっているような気がする。

 シルフィもたくさん食べているようだ。

 

 そろそろキラークイーンは天使になるのか……

 

 レベル上げと資質上昇を繰り返しながら夕方になるまで続くのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「お腹すいた~」

「ピイピイ」

「シャー」

 

 まだお肉の残りあるから家で焼いてやるか。

 肉料理品質上昇があるから味に補正がかかる。

 

 よくよく見るとキラークイーンが朝よりも大きくなっているようだ。

 明日辺りに天使化するだろう。

 

「うわー大きくなりましたね」

「明日に天使になるだろうな」

「死んじゃうんですか…………」

「死なねえよ」

 

 尚文もそんな事言ってたな。

 シルフィも大きくなるな。

 

 それじゃ帰るかな。

 

「ポータルアックス」

 

 家の前にポータルを記録したのだ。

 本当に便利だなこのスキル。

 

「さ、お風呂入りましょうか」

「ああ、汚れたからな」

 

 汗と泥まみれだしさっぱりしたいな。

 

 ん? ジメジメした視線を感じるな? 

 …………あれ? 視線が消えた。

 

 まあいいか、こんな近くでバレてる様じゃ大した事無いだろうし。

 

「ハジメ様! 一番風呂で良いですよ」

「いいの、じゃあお言葉に甘えて」

 

 今する事は風呂入った後飯食って寝る事だな。

 俺は休んで英気を養うのだった。

 

 

 




元々はオリ主の頭は狂っていませんでしたが前の世界で色々あったようです。


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第9話

ふええ、ランキングに初めて乗ったよぉ。
嬉しいので投稿します。


 翌日。

 

「行ったぞシルフィ!」

「はい! ハッ!」

 

 シルフィがピキュピキュを小太刀でぶった切り、経験値を多く摂取した。

 小太刀をドロップ品から調達し、防具もそこからだ。

 

「やったー! やりましたよお館様!」

 

 レベルが多く上がった為跳び跳ねている。

 俺とローナはそれを見ながら静観していた。

 

「なあローナ…………」

「ええ……なんでこんなに成長してるんですかね……」

 

 そう、亜人はレベルを上げると成長するのだ。

 

 今のシルフィの体は十代後半と言った所だろうか。

 背は160後半くらい。

 

「跳ねてる時凄い揺れていますね…………」

「俺も思ってた」

 

 スタイルグンパツなのだ。

 グラビア雑誌とかよく見る様な美女美少女と変わりない。

 推測だとG以上はあるだろうか? 

 

「ハジメ様は大きい方が好きなんですか?」

「いや? そんな拘りは無いぞ。むしろどっちも好き」

「そ、そうですか」

 

 どっちかって言うと美乳派なのだ。

 貴賤なんて無いのだよ。

 

「あれ? 拙者の事呼びました?」

「動きが良くなっているって言っただけだ」

「ありがとうございます!」

「チッ」

 

 俺から拙者に変わっており、精神も変わっているようだ。

 そして両上腕で胸を挟み、巨乳を強調するような悩殺ポーズを取ってきた。何処で覚えてきた? 

 眼福ですけど隣のローナはイラッと来ている様だが気にしているのだろうか? 

 

 腕立て伏せした方が良いかな? 大胸筋を鍛えた方がいいかも。

 

「隙あり! 死ねええええええ斧の勇者あああ!」

「カマイタチⅢ」

「かっはっ!?」

 

 変化が見られるのはシルフィだけではない。

 キラークイーンである。もうフィロリアルクイーン状態なのでずんぐりした状態なのだ。

 手を羽毛に入れると深く入る上にスッゴい温かい。

 

「クエ」ゴクン

 

 あっ魔物を飲み込んだ。

 よく噛まないとダメだぞ。

 

「ギイイイイイイイ」

「あっデストロールですね。Sランク冒険者が数十人掛かって」

 

 さて俺の主力武器4個紹介しよう。

 

 

 暴牛斧(覚醒) +9 70/70 SR+ 

 

 能力解放済み……装備ボーナス スキル「兜割り」「サザンクロスカット」

 

 専用効果 攻撃力上昇 防御力上昇 生命力上昇 重力操作 エナジードレイン カウンターホーン

 

 熟練度 100

 

 アイテムエンチャントLv7 攻撃力10%アップ

 レッドボアスピリット 体力50 

 ステータスエンチャント 攻撃力30+

 

 

 

 ヴァイキングハルバート(覚醒) +8 60/60 SR

 

 能力解放済み……装備ボーナス スキル「ウォーターレーザー」「ジェットトーピード」「ブルーソナー」

 

 専用効果 船上戦闘技能向上 海中戦闘技能向上 水泳技能向上 操舵技能向上 水耐性向上

 

 熟練度 100

 

 アイテムエンチャントLv9 攻撃力12%アップ

 クラーケンスピリット 水棲魔物へ攻撃力60 

 ステータスエンチャント SP30+

 

 

 

 金剛水晶の斧(覚醒) 60/60 +8 SR

 

 能力解放済み……装備ボーナス スキル「金剛瀑布」「二丁斧」「コンプリートスマッシュ」

 

 専用効果 防御力向上 魔法防御力向上 レアドロップ率上昇

 

 熟練度 100

 

 アイテムエンチャントLv8 防御力10%アップ

 ドラゴンスピリット 防御力50 

 ステータスエンチャント 魔法防御力30+

 

 

 

 カイザーファルコンアックス(覚醒) +7 50/50 SR

 

 能力解放済み……装備ボーナス スキル「風王裂空斬」視力上昇 風耐性(中) SP上昇(小)

 

 専用効果 翼帝の雄叫び 風属性付与 鳥特攻

 

 熟練度 100

 

 アイテムエンチャントLv5 敏捷8%アップ

 カイザーファルコンスピリット 攻撃力40 敏捷30

 ステータスエンチャント 攻撃力30+

 

 

 暴牛斧は巨大な斧。

 ヴァイキングハルバートは海のデザインの斧槍。

 金剛水晶の斧はきこりの泉に出てくるような金の斧。

 カイザーファルコンアックスは手斧。

 

 これらが主戦力の斧である。

 ローナを連れ回ってレベル上げついでに強化しまくった為疲労でフラフラだって。

 

 暴牛斧はゼルトブルの武器屋に置いており、凄い重い斧であり、素材やデザインはいいが誰にも持てないそうで展示用だったらしい。

 普通にウェポンコピーをして、その斧に変えると簡単に持ち上げる事が出来たし、性能もいい。

 

 ヴァイキングハルバートは海の近くの武器屋でウェポンコピーした。

 専用効果を見る通り水場では有能である武器だ。

 ゼルトブルは海にも面している為、いずれ役に立つ時もくるだろうし、この武器も性能が良い。

 

 金剛水晶の斧は多数の宝石を入れたら出てきた斧だ。

 鉱山でツルハシに武器を変えて沢山掘りまくり、石や宝石を武器に入れた。

 結果防御力が高い斧が出てしまった。

 なお、高価な鉱石は売った。

 

 カイザーファルコンアックスは攻撃力と素早さが良くなる。

 軽いし小さいので使いやすい。

 俺の戦い方は速さを生かした戦いなので助かる。

 

「ハジメ様! 来ましたよ」

「わかってるって、ウォーターレーザーX!」

 

 水を出して何をやってるんだと誰か言いそうだか違う。

 

「グ?」

 

 高圧力のウォータービームである。

 顔に風穴開けてデストロールは倒れた。

 

 何なんだろうかこの威力は。

 

「クエエ!」

 

 よく噛んで食べなさいなキラークイーン。

 …………人型の魔物を食べるのを見てるのも複雑な気持ちだ。

 

 もう夕方か…………上がりますか。

 

「今日はこのくらいにして帰ろう」

「いやーステータスが半端なくなってますね」

「キラークイーンちゃんから変な音してますよ…………」

 

 バキバキバキバキ

 

「ポータルアックス」

 

 デストロールを武器に入れるの忘れてた。

 

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 

「やっぱり私は斧派です。武勇伝だったら沢山ありますし」

「拙者は盾、槌、斧ですね。3つとも外せません」

「シャー」

 

 ピカーン☆

 

 フィロリアルが光った。

 天使降臨ですぞ。

 

 そして光が消えていき、

 

「ハジメー」

 

 銀髪の長髪の幼女が出てきて抱きついた。

 力……強いね。

 

「ねーねー頭撫でてー」

「よしよし」

 

 甘えん坊さんかな。

 名前が殺しにかかってるけどそのギャップが良い。

 

「ハジメ様、明日服を買いに行きましょう」

「別に気にしなーい」

 

 しろよ、俺の頭が可笑しく見えるだろ。

 

 こうしてキラークイーンがフィロリアルクイーンになるのだった。



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第10話

 キラークイーンが天使化してから数日後。

 

「それじゃいってくる」

「行ってらっしゃいお館様」

「ポータルアックス」

 

 さて今日は一人で遠征である。

 行き先はメルロマルクだ。

 

 この前キラークイーンでひとっ走りしてポータルを取っておいた。

 多分よくここに来る事になるだろうし。

 一応尚文に支援をしておこうと思う。

 俺の手には金貨が数十枚握られている。

 

 そして俺はとある建物に入った。

 

「おっいらっしゃい!」

 

 武器屋の親父の店である。

 スキンヘッズとその傷跡が特徴だ。

 

「お客さん何をさがしてんのか?」

「武器屋の親父さんの店ってここであってる?」

「ああ、あってるぜ」

 

 一応確認を。

 ちなみにまだ四聖はまだ召喚していないそうだ。

 そして俺は武器をハルバートに変える。

 

「少し頼みがあるんだけどさー」

「いきなりなんだよ兄ちゃん!?」

「俺斧の勇者なんだけどさー」

「勇者!? 話聞くから武器を降ろしてくれ!」

 

 うん? 普通の頼みかたってどうするんだっけ? 

 前の世界でよくわからなくなってきた。

 

「それで、兄ちゃんの頼みって?」

「盾の勇者がこの国に召喚されるって言ったら?」

「…………それマジか兄ちゃん」

「マジだ。宗教がらみでな」

「そう言えば女王は外交で他の国に居るって聞いたな」

「ああNo.2が好き勝手やるビションが見えるだろ。第一王女も」

「確かに…………ありえるな」

 

 …………本当に話の分かる親父さんだ。

 尚文が懇意にする気持ちが理解できる。

 

「それで迫害されると思うから助けたいんだ」

「でもよ、ありえる話だが本当にそうなんのか?」

「可能性が高いだけだ。この国の宗教と王族を知ってれば分かると思うし、信じる信じないはそっちに任せる」

「…………」

 

 この時間帯が槍直しでは無いことを祈る。

 

「…………わかった信じる」

「あれ? 信じるの?」

「長年接客してればわかるさ。で…………兄ちゃんは何かやるのか?」

「うん。盾の勇者に味方だよ」

 

 前の世界で尚文のノウハウでかなり儲けたのだ。

 いやぁ不労所得って最高。

 

「はい金貨三十枚。盾の勇者の防具や仲間の武器をこの金から引いて安くしてやってくれ」

「はいはいわかったよ」

「ビッチ王女と一緒に来たらその金から引かなくてもいいから。売った防具の登録番号とか記録しておいて、証拠になるから」

「…………証拠とか用心深いな兄ちゃん」

「叡知の賢王がいるし」

 

 お義父さんの冤罪をスムーズに晴らすためですぞ。

 今赤豚を爆破しに行った方がいいですかな? 

 

「ちなみに金を猫ババしたら」シャキン

「わかったわかった、降ろしてくれ!」

「たまに見に来るからな、すぐ分かるぞ」

 

 まあ性格は良さそうだし大丈夫だろうね。

 

「俺ゼルトブルから来ているんだけど、ここの武器も負けず劣らずだね」

「お、そうかい? 嬉しいねぇ」

 

 俺は親父さんとしばらく話をして店を後にした。

 そしてとある建物が目に止まる。

 

 …………取り敢えずやっておくか。

 

「隠蔽斧」

 

 俺は対象に近づく。

 そして、

 

「トマホークボマーX! ポータルアックス」

 

 ドッカァァァァァァァン

 

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 

「お土産を買うのを忘れていたな」

 

 ゼルトブルに帰還し、ようやく帰って来た。

 今日は午後から念の修行だ。

 シルフィにも教えており、キラークイーンにも教えるつもりだ。

 

「皆ただいま」

「父様ただいま~」

 

 黒髪のツインテイルの中学生程の女の子が抱き着いてきた。

 うん、癒し。

 

「父様、私も撫でて~」

「よしよし」

 

 わしわしと頭を撫でる。

 メルロマルクで破壊活動してきたから俺は機嫌が良い。

 

「ハジメ様! 大変です!」

「ローナか、どうした? この子誰?」

「ヤトちゃんですよ!? 知らないのに撫でてたんですか!?」

 

 はへ? 

 夜刀が? 人間状態になるの? 

 グリフィンも人間フォームになってたし、普通なのか? 

 

「お前夜刀なの?」

「うん、ヤトだよ?」

 

 なんだろうこの生物は。

 前の世界でも面白い生き物見てきたんだけど…………。

 

「ところでハジメ様は何故メルロマルクへ?」

「三勇教の教会を爆破してきたよ。いやぁスッキリ」

 

 ローナに上腕を強く掴まれる。

 ……顔怖いぞ。

 

「下手したら戦争だとわかってます?」

「…………あ」

「父様苛めちゃだめー」

「だめー」

「苛めてませんよ!?」

 

 後でわかった事だが戦争は起きなかった。

 盾教の仕業とかそんな話も無かった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「それでシルフィの服どうしようか」

 

 大人になったのできつくなってきた。

 変えようと思って洋裁屋にやってきた。

 

「シルフィはどんな服がいい?」

「うーん拙者は動きやすいのがいいですね」

 

 やっぱ忍者服っぽくしとこう。

 弟子が忍者だから親近感あるし落ち着く。

 

 キラークイーンとヤトちゃんの服も作っておこう。

 

 オーダーしてまた後日来る事になった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 それで当日。

 

「いいんですか? 相当高い生地ですが」

「そのかわりしっかり働けよ」

 

 緑の半纏にに黒のアンダーシャツとホットパンツ。

 破れても問題ないように再生機能付きだ。

 

「父様ありがとー」

「ハジメありがとー」

 

 ヤトちゃんは白い和服に水色のスカート。

 キラークイーンは黒を中心としたドレス。

 

 俺とローナがデザインを担当した。

 

「そろそろ波だからちゃんと整えなくちゃな」

「あと5、6日でしたっけ?」

 

 もう1週間を切っている。

 明日にはゼルトブルの商人達から呼ばれ、波の対策会議を行う予定だ。

 薬とか結構売れているらしい。

 強い傭兵もわんさか集まっているそうだ。

 

 まあ波の尖兵でSランクの冒険者を殺しているからその分俺は頑張るけどね。

 

「昼飯食ったら修行な」



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第11話

 俺は今玉座に座っている。

 そんで配下になった怪物達に傅かれている。

 

 鬼、天狗、河童、ハーピー、ミノタウロス、ケンタウロス、一つ目小僧等色々いる。

 50人程かな? 

 

「は、ハジメ様」

「お舘様……」

 

 ローナもシルフィも戸惑っているようだ。

 

「旦那、一生付いていきますぜ」

「俺もだ!!」

「ああっ! 俺達も波で戦うぜ!」

「救ってくれたこの命。アンタのために使わせてもらう。そうだよなみんな!!」

 

 何故こんなに仲間が増えたのか。

 

 それは1週間程前の波の当日に遡る。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「取り敢えず波のボスは俺らと冒険者精鋭で挑む。その他の人間は民間人の避難。その後避難所で防衛。一応海凄系の亜人・獣人を連れていく。単純に言えばボスを倒すのが仕事で、足りなかったらお前らがその他の事を手伝う事になる」

「了解です」

「拙者も」

「わかったー」

「父様頑張ろう!」

 

 波の当日。

 後6時間である。

 

 色々準備はしておいた。

 魔力の回復薬や傷薬を用意。

 魂癒水も作り、SPにも余裕を持たす。

 

 何があるかわからない人生だし、準備は大丈夫にしとかないと。

 

「ねーハジメ、これがオーラ?」

「おっもう感じるようになったのか。早いな~」

「ハジメ様、これでいいでしょうか?」

「練出来てるじゃないか」

 

 もう全員の洗礼を行ったのである。

 ローナとキラークイーンは覚醒し、念を一部使いこなしている。

 シルフィと夜刀はまだ半覚醒だがもう少しで感じる事が出来るだろう。

 皆センスある方だから良かった。

 

「ふん!」

「ふぅん! やった、キラークイーンの勝ちー」

 

 練の比らべっこをしているようだ。

 キラークイーンの方が練の放出量が多い。

 ローナの方が纏が滑らかで綺麗に見える。

 

 この二人はいい使い手になるだろう。

 

「ほらそんくらいにして。オーラ減ると疲れるから」

「はーい」

 

 波が終わったら本格的に念の修行に入ろう。

 発も見て、系統も確認したい。

 

「おーい! ハージーメちゃん!」

「ナディアか、どうした?」

「二人が力んでいたからどうしたのかと思って」

「気合いを確かめていたんだ」

 

 シャチの亜人のサディナさんである。

 酒を飲んでいたら絡まれたのだ。

 

「あらー? お姉さんには本当の事教えてくれないのかしら?」

「本当の事ってなんだ?」

「ひどいわー」

 

 直感力あるな。

 まあ一般人に教えられる事じゃないし教えない。

 配下で手一杯。

 

「そっちも何か隠してないか? 奴隷商から聞いたけど奴隷を探しているのか?」

「……あらーバレてるのねー」

「それが目的で近づいて来たのか?」

「そうよ。人探しかしら」

 

 知ってますよ。

 ラフタリアさんでしょ。

 

「そうか。見つかるといいな」

「…………何か隠してないかしら?」

 

 勘が鋭いな。

 と言っても俺が召喚された時期とセーアエット領が波に襲われた時期って同じなんだよな。

 あと1週間くらいで四聖が召喚らしい。

 原作ブレイクしそうだからあえて言わない。

 

「それにしても強そうな冒険者が多く集まったな」

「そうねー。この国冒険者多いし」

「さすが国力だったらこの世界で1.2を争うんだっけ?」

「はい?」

「……違うのか?」

「ハジメちゃん、アルドミティアを知らないの?」

 

 アルドミティア? 

 初耳の国だな。

 やっぱりイレギュラーがありやがったか。

 

 話を聞いてみると、軍事・商業・農業・工業・畜産業・漁業等が全部ナンバー1の国だそうだ。

 500年以上前からある由緒正しい国で、建国者が槌の勇者らしい。

 数々の戦争や問題を奇跡で乗り越えてきたとか伝説があって、他国からはこんな呼び方をされている。

 

 ───神の住む国と。

 

「とまあこんな国ね。前コロシアムでアルドミティアの人と戦ったけど負けちゃったわー」

「なるほど、ありがとうナディア」

「波が終わったら一緒に飲みましょう。や・く・そ・く・よ」

「覚えてたらな」

 

 サディナはそう言ってどっか行ってしまった。

 小説でもなに考えてるかわからない女なんだよな。

 

 それにしてもアルドミティアか……。

 

 確かどっかの漫画の悪役キャラが神は人間の職業の一つとか言っていた。

 何かトリックがあるのだろうか? 

 

 もしかしたら関わるかもしれない。

 少し調べておくか。

 

「ハジメ様、オーラ消してみたんですけどどうですか?」

「えっもう絶?」

 

 ローナ、もう絶を使っているのか…………。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 00:05

 

 後五秒。

 

「それじゃ行くぞ」

「はいっ!」

「承知!」

「ヒャッハー」

「うん!」

 

 00:00

 

 転送され、元居た場所から視界が変わった。

 ここは…………田舎の港町か? 

 

 50m程の先の空に波の亀裂を発見する。

 あっ巨大な何かが地上に落ちたみたいだ。

 

「ボスを先に刈る。その他は避難誘導と防衛を!」

 

 俺達や精鋭が波のボスの元へ急行する。

 被害数を少なく、早く終わらせるのが大事。

 

 止められなかったら他の国から攻められると言う事も考えられる。

 ゼルトブルの都市に今手練れは居ないしな。

 

 とまあボスの前に立つ。

 頭は牛で体は蜘蛛だ。

 

 次元の牛鬼 Lv80

 

 強そうだな。

 だが、

 

「アバランチX コンプリートスマッシュX!!」

「グガアアアアアアアア!!」

 

 恐竜の足跡の様な衝撃波を次元の牛鬼に打ち体勢を崩し、コンプリートスマッシュで牛鬼の頭をフルスイングする。

 

「す、すげぇ」

 

 冒険者の精鋭が一言呟いた。

 

 牛鬼は倒れた。後は雑魚モンスターの処理だ。

 まだ仕事は残ってるぞ。気張れ! 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「よーし、全部片付いたな。被害数は?」

「ほぼゼロです。軽重傷者はいますが」

「大勝利だな」

 

 早めに終わらせたのが正解だった。

 

「帰ったらローナの武器の新調するか」

「いいんですか!? ボロボロなんで助かります」

 

 普通のエストックだからな。

 結構使い込んで、壊れそうだ。

 

「た、大変です!」

「どうした? ……影?」

 

 振り替えるとメルロマルクの影の様な奴がいた。

 スッゴい息を切らしているけど……。

 

「何かあったのか?」

「ゼルトブルの商会館が…………レイ=アースログ達に乗っ取られました」




イレギュラーのオリ国家出ました。
衝撃事実が有るのでお楽しみに。

次回、とある真実が明らかに。


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第12話

 はあ? レイ=アースログってイカれた錬金術師だろ。

 多分波で俺がいないのがチャンスだと思ってたのかね? 

 

「それで……」

 

 話を聞くとこうだ。

 

 波で俺達が転移した後、乗り込んで制圧したらしい。

 流石に手薄だった。油断した。

 

 それでゼルトブルの商会館をジャックし、俺をパーティーに誘うと見せかけ、ぶっ殺すとか。

 数人だが人質に取られたらしい。

 

 人質を取られているので斧の勇者に黙っていようか意見が割れたらしい。強いからなんとかするだろうと。

 黙認派の権力が強く、黙っている事となった。

 

 俺の予想だとその派閥は商売仇を減らしたいのか、それともレイ派の商人と言うことも考えられる。

 つーか制圧した時点で内部犯がいる可能性が高い。

 多分俺の情報を転生者に流した人間も居そうだ。

 

 だが波に立ち向かったり、知らずに人助けしたお陰で容認出来ない奴等がおり、この影が知らせに来たって事だ。

 

 なお、この影に嘘発見能力を使用したが反応は無かったし、敵ではない。

 

 ふぅ、やってくれるじゃあないか。

 

「ゼルトブルをナメてるんですかね……」

「拙者もそう思います」

 

 闇が深い国だからな喧嘩売らない方がいいけどさ。

 放っておいてた方が崩れそうだ。

 だか、

 

「プッ……アッハッハッハッハッ!」

「? 何か企んだんですか?」

「いやぁ~この世界に来てもハントするんだってな」

 

 ここまでコケにされたし、人質が可哀想だから見せてやるよ。

 一ツ星テロリストハンターの攻城戦をな。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 ゼルトブル商館内。

 

「おい、ハヘヤ。首尾はどうなっている?」

「はい順調です。斧の勇者の命は時間の問題かと」

「やっと勇者の武器が手に入れますねレイ様」

「楽しみだな」

 

 レイ=アースログら20人が占拠していた。

 人質は5人。全員見張り付きで牢に閉じ込めている。

 

 

「デビルフィールドの準備は出来ているか?」

「はい、問題なく」

 

 数人がとある物を設置した。

 武器を奪う罠である。

 

「ナズラ、応答を。ナズラ?」

「どうかしたのか?」

「ナズラから応答が来ません」

「通信機が故障か? いや、そんなヘマは俺はしない」

 

 通信機を全員が持っている。

 全部レイが作った魔道具である。

 

「ミリナ、アリノ、サーシャからも応答がありません」

「なっ牢番全員が!? おかしい。誰か見に行ってくれ」

「はい」

 

 5人程出ていく。

 しかし、数分後。

 

「レイ様! あの5人の応答がありません!」

「はあ!? クソッタレ俺がいく!」

 

 大急ぎで走る。

 そして牢に行くと、

 

「なっ!? 人質がいないだと!!」

 

 もぬけの殻である。

 鍵は掛かったままであるが。

 

「クソッどうなってやがる!」

 

 そして元居た場所に戻ると、

 

「あ、あれ。みんな何処へ…………」

 

 罠のチェックをしていた人間8人が消える。

 いつの間にか回りにいた2人も。

 

 計画を実行するので位置につく。時間が無い。

 斧の勇者が来るまで後、

 

「よぉ~お前がレイ=アースログか、初めましてだな。斧の勇者のハジメ=ヤマカワだ。歓迎する人間は少ないようだが…………何かあったか?」

 

 0分である。

 ハジメがニヤリと笑う。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「なっ貴様俺の女に何をしやがった!」

「さあ? サボって寝てるんじゃないか?」

 

 俺が眠らせて違う場所にいる。

 ちなみに皆生きている。

 

「くっ」

「さてどうする?」

「…………フッ。久しぶりに会うがあんまり変わって無いな」

「はあ?」

 

 あれ? 初対面の筈だけど? 

 

「お前花川田中の山川だろ? 校舎裏で30万程借りたよな」

「…………お前、樋口礼次郎だな」

「当たりだ」

「ハジメ様? 知り合いですか?」

「学校のな」

 

 まさか、コイツとまた会うとはな。

 樋口礼次郎。小中高で学校が一緒だった。

 金持ちの癖に俺につっかかり、金を奪ったり、有ること無いこと言って俺を苦しめてくれたクズ野郎だ。

 

 コイツも転生してたのかよ…………。

 ナメクジにでも転生してればいいのに。

 

「まさかまたお前から奪うんだし因果だな」

「何でこの世界にいるんだ?」

「教えてやるよ。90歳で大往生したら女神様が出てきてな。才能を持たして転生させてくれたんだよ。秘密を喋ったら頭が破裂するらしいがそんな呪いなんて普通に解除できたわ」

「へー」

 

 カスだから選ばれたって事だな。

 なるほど。タクトでも出来なかったみたいだし才能があるようだ。

 

「だけどお前も転生したんだな。まあ俺が殺したんだけど!」

「………………は?」

 

 はい? どういう事? 

 

 …………考えてみればこいつが今までの事を謝罪したいからBBQしよう、って夜いきなり電話が来たんだ。

 呼び出された場所に来たけど誰もいなかったし、そこで記憶が途切れている。

 

「実は俺、酒飲んで無免許で運転した上に人跳ねて殺しちゃってさ。それでお前を呼び出して後ろから襲った。次に携帯を抜き取ってのLINEに酒飲んで人を跳ねた事を遺書として打った」

 

 レイ、いや樋口が楽しそうにお喋りする。

 

「そして眠っているお前の口に漏斗である程度酒を飲まして海に捨てたよ。浮かんで来なかったな」

「……」

「それでお前が無免許で飲酒運転して殺人したと言う事実が出来上がりだ。お前の家族は最後まで信じていなかったが」

 

 嘘だろ……確かに師匠に相談したら何かに巻き込まれてる可能性があると言っていたような…………。

 ふざけんなよコイツ……人に罪を被せてなんで楽しそうに話すんだ? 

 

「お前がニュースで出てきた皆で笑ったぜ。知り合いから有名人が出たってな」

「…………それで母さんと春菜は?」

 

 家族は、家族はどうなったんだ? 

 最後とか言ってたし最後を知っているのか。

 

「ああ母親は被害者家族に刺されて死んだよ。被害者家族は精神鑑定で無罪になったけどな。妹の方は呼び出して犯そうと思ったんだか真実を話したら掴みかかってきたから殴ったけど、倒れた頭の場所に釘があって即死だ。山奥に死体は埋めたけどなアッハッハッハ」

 

 カースシリーズ

 ──の斧の条件が解放されました。

 ──の斧の条件が解放されました。

 

 斧からドス黒い感触を感じる。

 

「コイツ……何様ですか」

「お舘様、コイツ殺していいですか?」

「敵だねハジメー!」

「父様の家族の仇!」

「あーあ知らないって損だな。発動! デビルフィールド!!」

 

 地面が光る。しまったこれ罠か? 

 ん? 斧のアイコンと武器がきえていく?! 

 なっ! 奴隷のアイコンも消えるだと!? 

 

「バァァァァァァァァカ! 全部手の平の上の事なんだよ!」

 

 樋口礼次郎を見てみると斧を持っている。

 しまった。武器を取られた。

 

「さてと女性達に聞くが脅されているんだろ? 大丈夫。君らを解放してあげるよ」

「ふざけるな! このクズが!」

「キモいんですよバカが!」

「バーカ!」

「キモーイ」

 

 本当に気持ち悪い男だ。

 めちゃくちゃ言われとる。

 

「あのなー。武器取られてるんだぞ? あんな力が出るのって武器の力だろ。ハジメ君のバカは一般人の力しか無いんだよ?」

「そんな事で裏切るわけ無いじゃないですか! 裏切った時点で末代まで恥ですよ!!」

「拙者達を見くびり過ぎでごさる!」

「…………ダメだな、洗脳されているらしい」

 

 樋口礼次郎は斧をカイザーファルコンアックスに変える。

 

「ハジメ様、逃げてください。時間を稼ぎます」

「お館様と会えて本当に良かったでござる」

「はぁ~残念だかデビルフィールドは結界も兼ねている。脱出不可能だ!」

 

 …………お前達は何言ってるの? 

 でも良い仲間を持ったって感じでちょっぴり嬉しい。

 

「本当に可哀想だなハジメちゃん。また奪われるなんて。まっ、これが社会の縮図ってやつだから悲しいよねー」

「…………言いたい事はそれだけか?」

「あ? 生意気だな。死ね! 風王裂空斬!」

 

 



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第13話

 ゼルトブルの刑務所。

 

「よぉカス」

「この卑怯者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ご覧の通り普通に返り討ちにした。

 武器を奪われたのだが、ステータス1割以下しかダウンしなかったし、特に問題なかったので徒手にてバカをボッコボコにした。

 デビルフィールドだったけ? 装置を壊してたら簡単に結界を脱出できたぞ。

 

 いるんだよね~力を持ったから調子に乗って自爆する奴。

 

「クソッ! 何故斧を取り返せる!? お前も神様からチートを貰ったのか?」

 

 ちなみに斧を取り返したのは能力である。

 あまり切り札を使いたくない物だ。まあ死人にネタばらししても問題ないけどね♠️

 

「ふざけんな! 俺の斧を返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「俺から奪っておいてその言いぐさってなんなの?」

「はぁ!? 盗人が調子に乗るんじゃねえ!!」

 

 そっくりそのまま返してやる。

 俺の家族を殺した時点で楽に殺してやるものか。

 

 苦しめる上に、得するような一石二鳥のアイデアがあるのだ。

 我ながら鬼だと自負できるぜ。

 

「おまえさ、他人に人殺しの罪を着せておいて自分は悪くないとか思ってんのか?」

「ハッ、クズのお前を殺して何故罪悪感があるんだ? 弱い奴が悪いんだ。自分自身を呪うんだな」

「ほぉ…………」

 

 これは面白い。

 自分はこの世界で人殺しをしていないから死刑にならないとでも思ってんのか? 

 甘えよカス。

 

「取り敢えず、今の状態を見ようか。どうなってる? 俺にボコボコにされて拘束されているんだよね? 勇者の武器を奪われた一般人にさ」

「テメェが汚ない真似したんだろうが!」

「立てこもりした上に俺を騙し討ちにして殺そうとするのは汚なくないのか? まあ影に伝わってたし話にならないけどさ」

「知るか! 俺の斧を返せ!」

 

 やっぱり波の尖兵は話し合いができないな。

 本当にクソ女神の人選は最高だとしか思えない。

 

「まあ裁きは楽しみにしていろ」

「地獄に堕ちろ!!」

 

 俺は刑務所を後にした。

 さーて、一仕事しますか。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「あー疲れたー」

 

 まだレイ=アースログの残党は居たので、レイが捕まったと言う情報を隠して呼び出した。

 レイから重大発表があるから親しい人間はゼルトブルのとある場所に集まってくれと。

 集まったのは10人程だが。

 

 情報は漏洩してないと思うんだけどね。評判が悪いと有名だったし人望がないんだなぁ。

 

 そして、レイ派の商人を嘘発見能力で摘発。3割程のギルドの闇の商人がアウトだった。

 レイが国外に出たのはリークした奴等がいたからだそうだ。

 

 後で教えてもらった事だが、人質の商人は俺の味方らしく、レイ派の商人の商売仇なので俺を殺したあとに殺す予定だったそうだ。

 良かった助けておいて。

 

 その後の打ち上げが終わり、部屋に帰って来た。

 

「ふぅー寝よう」

「わっ!!」

「うおっ!?」

 

 びっくりした! 

 ローナ? 絶上手いなオイ。

 

「なんかあったのか?」

「いやぁ聞きたいことがあって」

 

 なんだ? 

 

「……家族が殺されたってのに凄い冷静なので気になったので」

「ふむ」

「私の父さんが死んだときに取り乱しましたので……おかしいなと思ったんです。理由お聞かせくれませんか?」

 

 確かに自分でも冷静だと思ったよ。

 前の世界で色々あったんだ。

 

「実はさ俺テロリストを捕まえる人間と友達でさ。その友達は両親と弟と妹をテロリストに殺されたんだ」

 

 ヒミコを育てる前はチームで奴らと行動していた。

 俺はリーダーで奴が副リーダー。ちなみに同期である。

 

「それでテロリストをハンティングする仕事を手伝う事が多かった。だから見てきたんだ、俺より理不尽な目にあった人間達を沢山」

 

 見てて苦痛だった。

 何も悪くない人間が死んでいくのは。

 死んだ人間の目の前で泣いている人間も。

 

「それを無くすためには感情を殺して冷静になって行動するしかないんだ」

 

 なお、一緒に仇は打った。

 その際に星を一つ貰ったのである。

 今頃幹部クラスの数人は、仲間のハーレムに入って可愛がられてるだろう。

 

「だからさ俺の事なんて考えない方がいいんだ」

「…………ハジメ様、屈んで下さい」

「えっ、何しボフ!?」

 

 いきなりローナの胸に顔が押し付けられる。

 

「ハジメ様。皆家族が死んで悲しいのは同じなんです。悲しいことを我慢してたらおかしくなります。だから…………泣いていいんです。自分の事を考えてください」

 

 俺は抱き締められる。

 気付くと泣いていた。

 

「無い胸ですがいつでも貸し出しますよ」

「……ありがとう」

 

 シルフィが部屋に入ってくるまでこの状態が続くのであった。



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第14話

作者の活動報告見たけど、七星勇者はフィロリアルを大事に育てないとキング・クイーン化しないんだってさ。

一応天敵のドラゴンを目の前で惨殺&レベル上げからの資質上昇を繰り返す。
って事で大事に育ててるって事で……大丈夫かな?


「さてと、掃除は終わってないんだよな」

「ええ、速く終わらせて帰りたいです」

 

 さあ、今日来ているのはレイ=アースログの領地だ。

 実はこの領地は重税だったり行方不明者が結構いるらしい。

 

 レイの管理なので怪しいってことで家宅捜索だ。

 前の領主が身に覚えの無い罪で殺害され、レイが領主になったらしい。

 

 うん、クロの可能性が高い。

 

「ねぇハジメー。この家嫌な匂いするよ?」

「マジ?」

 

 そう、あのカスの屋敷である。

 円で確認したところ、地下室があるみたいだ。

 結果、多数の人間がいる事がわかった。

 

 尋問をしたところ、トラップ屋敷である事が判明。人の魔力を感知し、罠が発動するらしい。

 ただ登録した人間には発動しない、登録するためには屋敷の中央にある執務室にあるアイテムを手に入れれば登録できるそうだ。

 

 だが罠の電源を消せば良いらしい。

 コントロールルームは地下2階みたいだ。

 

 しかし! 対集団や侵入者用に作られたトラップだ。

 前数回、集団でカチコミや暗殺で何度も失敗しているとか。

 

 それで俺に白羽の矢がたったわけだ。

 

「さーて、侵入しますかな」

「気をつけてくださいよ」

「平気、住居侵入なんてよくやってるし」

「二つの意味で心配ですよ…………」

「じゃ行ってきます」

 

 俺は門を開け、突っ走る。

 さあ潜入スタートだ! 

 

 ヒュウン

 

 おっと振り子刃だ。

 両側から二つか。普通に避けるけどね。遅い。

 

 それで庭に入る。

 おっと結構綺麗な庭園だな。

 

 宙に浮かぶ丸いゴーレムの様な奴がワラワラ集まってきた。ナニコレ? 

 

 ! 目みたいな所からレーザーが出てきた。

 避ける、避ける、避ける。

 数は要るみたいだけどレーザーのスピードが遅い。試しに少しカスったが、俺も防御力はあるのでそこまでの威力は無いようだ。

 

 対応するのも面倒なので振り切って、屋敷の扉の前に直行。

 扉を開けて、円を確認すると落とし穴があるようだ。

 

 少し助走をつけ、横の壁を走る。

 隠し階段がある場所まで移動。

 

「トマホークボマーⅢ」

 

 突き当たりにあった棚を爆破する。

 壊した後から部屋が見える。

 

 さて、この部屋から地下室に行けるんだ。

 部屋の真ん中にまで行くと、

 

 ヒュウウウン

 

 うわっ吊り天井!? 

 トゲはついてないようだ。

 

 まあ予測はしてたけどね。

 取り敢えず受け止めた。

 

 軽いほうだな、10t位か? 

 手で支えながら移動し、部屋から出て階段を降りる。

 

 

 降りてみると牢獄みたいだった。

 行方不明の人間はここに閉じ込められているようだ。

 先を急ごう。

 

 歩いていくと坂みたいな廊下があった。

 なんだろうこれは? 

 

 それで降りていくと、

 

 ドゴン! 

 

 大きい鉄球が転がってきた!? 

 古典的だなオイ! 

 

「金剛瀑布X!」

 

 金色の衝撃波をぶっぱなし破壊。

 難易度が低いダンジョンのようだ。

 前の世界じゃもっと難しい要塞があった。

 

 進んでいくと強固そうな扉が出てきた。

 ここを突破するとコントロールルームに着くらしい。

 

 右横の壁に暗証番号を入れる機械が埋め込まれている。

 

「パスワードか…………」

 

 知らねえな。わざと言わなかったのかアイツ。

 普通に壊した方が利口か? 

 

「コンプリートスマッシュX!」

 

 壊れない!? うわっ硬い。

 結構威力あるスキルなんだけど…………。

 確かあのカスは錬金術師だったな。壊れない金属を作る事も可能じゃないか?

 

 …………仕方ない、能力使うか。

 

 こうして扉を突破し、コントロールルームの電源を解除するのだった。

 

 

 

 グリードアイランドのランクだとAって所かな? 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「うっわ……あの野郎」

「これはひどい……」

 

 あのカスが重税や誘拐をして、何をしていたんだと気になっていたがこれは酷い。

 

「まさか人体実験とは……」

「人間の形をしてないでごさる……」

 

 檻に鬼や天狗の奴等がいたし、マットな科学者が使うような水槽があった。

 罠解除後、専門家も呼んで早速救助した。

 

 あいつは人体改造で波の戦力にしようと企んでいたらしい。波と言う大義のために、色んな場所から誘拐をしていた。

 領民を誘拐して他国に奴隷として売り飛ばしていた。それを資金源にしていたらしい。

 

 ゼルトブルにその情報が入らなかったのはレイ派の商人がいたからと。甘い汁吸ってたのかよ。

 

「勇者様」

「ん?」

「この者達はどうしましょうか?」

 

 人体改造された人間達の事だ。

 他の錬金術師の話だともう元に戻らないそうだ。

 しかし肉体は改造されており、個体によって特殊な能力を持っているのもいるとか。

 

「普通はどうするんだ?」

「むむ、奴隷でしょうか。行き場も無いでしょうし」

 

 拉致されて奴隷にされてまた奴隷にされるって理不尽過ぎないか? 

 

「家に帰そう。調べあげて」

「よろしいのですか?」

「まあな」

 

 戦力にするという手もあるが、戦う意思の無い人間を戦わせたくない。

 家族がいるだろう。

 

 それにしてもあのクズには良心が無くって良かった。地獄に落としても罪悪感が無い。

 

「でも残るって奴がいたら教えてくれ。私兵が欲しい」

「承知しました」

「故郷へ送るのに旅費は出した方がいいか?」

「こっちで賄って置きますよ。もちろん食費もです」

「助かるよ」

 

 念のため宝物庫の場所は教えない。

 この町は重税で苦しんだからな。後で教えてやろう。

 

 さて、後は他人に任せて戻るか。

 

「斧の勇者様」

「影?」

「例の件が行われました」

「わかった」

 

 原作が始まったらしい。




次回カスへのお仕置き開始。


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原作開始
第15話


今日は2話投稿。


「らららららら~ららら~」

「「らららららら~ららら~」」

「ハジメ様…………何の歌です? 悲しい曲だとはわかりますけど」

「哀れな人間を運ぶときに歌いたくなる歌だ」

 

 そう、子牛を乗せて歌う奴である。

 レイの奴も自分がどうなるか察して怯えている。

 

 普通にやらかした時点で薄々気付くだろう。

 

「あっ見えてきました」

「あれがフォーブレイか」

 

 スチームパンク的な光景と、舗装された道路が目に映る。

 

 さて豚王と謁見だ。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ぶふふ、お主が斧の勇者か」

「ええ、お目にかかり光栄です陛下」

 

 午後になり謁見。

 見た目クリーチャーな国王である。

 こいつサドなんだろ。

 

「それで何の用かな?」

「いえ、大国に挨拶をしないと失礼かなと思いまして…………一応貢ぎ物を持って参りました。お気に召すかどうかはわかりませんが」

「ほう、何かな」

「レイ=アースログとその仲間の女、計30人です。結構顔が良い部類が多いのでどうかなと」

「やりますな。斧の勇者さん」

 

 豚王にご機嫌とりして、生け贄としてバカ共を差し出す。

 この国王は相当有能だからな。仲良くして損は無い。

 

「んで、プレイをリクエストしたいんですが」

「なにかね?」

「レイの目の前で自分の女が犯されるシチュエーションが良いんですけど」

「ぶふふ、いい趣味をしているな。言われなくてもそのつもりじゃ」

 

 ローナが居たら突っ込まれる事を言ってるな俺。

 

「死ぬと困るからギャグボール噛まして、ズボン脱がして"ピッー"してください」

「おお、いいアイデア」

「女共に取引して、解放してあげるからと言ってプレイに参加させるってのは? その後ゆっくりじっくりとこの世の柵から解放させると言うのはどうでしょう」

「ふむ……理解がありますな」

「"ピッー"は一人づつやって欲しいですね。叫びが甘美に聞こえると思いますよ。でも"ピッー"しないと寝取られっぽくならないと思うし"ピッー"したら不味いので片方が"ピッー"したら切り上げてくれたら嬉しいです」

「先生と呼ばしてくれんかな?」

「普通に呼んで構いませんよ。ちなみに嫁入りって事でレイの目の前で誓いの言葉とキスってのはどうですか? "ピッー"から涙が止まらないでしょうし、家族に肩代わりさせると言って脅せばいいかなと。断れば"ピッー"と」

「素晴らしい…………」

 

 

 

 

 

 30分後。

 

 

 

 

 

「それでいってやったんですよ。『お前の"ピッー"は何色に咲くかな?』って。情報を絞り尽くした状態からこれを言ったら顔が絶望してて」

「その後はどうなっているのかな?」

「刑務所で仲間の"ピッー"になってますね。終身刑なので希望は無いかと」

「ほぉ、中々いい仲間をもっているな」

「国王、そろそろ時間です」

「うむ、わかった。すまないな。この後も用事があるんだ」

「すいませんね。時間を取ってくれて。あと映像水晶を保存用と観賞用で二つ下さい」

「もちろん。久しぶりに話が合う人間がいてうれしい。そこでだ。折り入って頼み事があるんだが……」

「?」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「それでハジメ様、何処へ向かってるんです?」

「王族の身請けだって」

「はい!?」

「実はさ───」

 

 簡単に説明するとこうだ。

 国王の姪がとある問題を抱えてるらしい。

 だから連れ出して解決して欲しいとの事だ。

 

 だが姪が心から嫌がればこの話は断っていいそうだ。

 そして身請けすれば年金が支給されるとか。

 

「でも引きこもりって聞いたけどさ。なんで引き込もってんのか理由を聞いてないんだよね」

「何か辛いことでもあったんですかね」

「ありうる」

 

 転生者が多いから自分に挫折したとか。

 進んでるからねこの国。

 

「この部屋でございます。私はこれにて」

 

 案内してくれたメイドさんはそそくさ行ってしまった。

 

「ここでこざるか」

「取り敢えず入るか」

 

 俺は扉をノックし、ドアノブを触れると、

 

「入る……ぞってわっ!?」

「うわっ!?」

 

 火の玉が飛んできた!? 

 扉からすり抜けて攻撃かよ! 器用。

 

 拒絶って事か。上等じゃねえか。

 よし、爆弾をセットして……離れよう。

 そして離れた場所から、

 

 喝!

 

 ドッカァァァァァァァァァン!! 

 

「えええええええええ!? 穏便に出来ないんですか!?」

「ローナ殿、芸術は爆発でごさる」

「シルフィ!! 頭大丈夫ですか!?」

「ぐたぐだ言ってないで爆破したから乗り込むぞ!」

「え…………はい」

 

 最初はビビらした方がいいんだ。

 戦場で常識なんか通用しない。って言うか念能力も非常識だし。

 

「フリーズだ!」

「あれ? いないよ父様」

「お舘様、あれがオーラでいいんでしょうか?」

「イエス、覚醒状態になったみたいだな」

 

 隠れたと思ったのか? 

 幻覚魔法で姿を消したがオーラは丸わかりである。

 

 シルフィは詠唱を唱える。

 

「ドライファ・アンチミラージュ!」

「なっ!?」

 

 ようやく姿を見せてくれたか。

 十代後半くらい、うわぁ~凄い美少女だ。

 

「お前が引きこもりか?」

「はあ? アンタあのカスの回し者じゃないの?」

 

 カスって? もしかしてタクトの事か? 

 

「お前を身請けに来たんだ。嫌か?」

「知らない人に貰われるのなんて嫌よ!!」

「そうか……」

 

 心から拒絶されたみたいだし駄目だったか。

 別に金目的でやってる訳じゃないししつこくはしたくない。

 

「ハジメ様、これ飛行機の模型ですよ」

「そう言えば飛行機ってフォーブレイにあるっけ。前の世界じゃ移動手段あったから乗らなかったけど。日本じゃエコノミークラスしか乗った事無かったな」

「キラークイーンいますし、使う必要無いですね」

 

 俺の癒しのアッシーちゃんだ。

 

 前の世界のアッシー君は元気にしてるだろうか。

 鏡を使った移動能力でいろんな場所に移動できるのだ。

 

「………………え?」

「何だ?」

 

 この美少女ちゃんが驚愕な顔をした。

 あれ、俺変なことを言ってないよね。

 

「貴方……本名は?」

「ハジメ=ヤマカワだ」

「出身中学は?」

「花川田中だが、それが?」

「母親の名前は?」

「なんで答えなければならないんだ!」

「いいから!!」

「? 山川志穂」

「やっぱり…………」

 

 なんで個人情報教えなければならないんだよ。

 

「やっと会えたぁぁぁぁ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

 俺を抱きしめてくる。

 しばらく泣きまくり、涙と鼻水を流しまくっている。

 

「ハジメ様、知り合いですか?」

「いや初対面」

 

 見たことない顔だ。

 綺麗な顔なら忘れないと思うのに。

 

「ひっぐっ」

 

 ようやく泣き終わったか。

 何者だコイツ。

 

「お兄ちゃん…………また会えた」

 

 全員『はい!?』




12時に投稿予定です。


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第16話

本日2話目。


「えっ!? お前春菜!!」

「そうだよ!」

「全員靴を構えろ!」

「「何故に!?」」

 

 俺は靴を脱いで構える。

 ローナと春菜らしき生物がツッコミする。

 

 いや何って転生者ですよ? クッソ女神の手先の可能性があるじゃん。

 能力発動し嘘かどうか確かめるか。

 

「違う違う! クソ女神経由で転生なんかしてない!」

「誰経由だ?」

「誰も経由してない。死んだらいつの間にか転生してたのよ!」

 

 確かコイツも盾の勇者の成り上がりを読んでたんだ。

 能力も嘘だと言っていない。

 

「それでも信用出来ないんだったら奴隷紋でもつけてよ。どっち道お兄ちゃんと一緒の所へ行きたいし」

 

 そこまで言うなら本物のようだ。

 転生者だったらクズを選ぶが春菜は心優しく大人しい人間だ。

 

「それでお兄ちゃん。聞きたいんだけど」

「なんだ?」

「普通ドア壊すの?」

「そうですよハジメ様! どうかと思いま……あれ?」

「直ってる?」

 

 今さっきぶっ壊したドアが元通りに。

 

「お兄ちゃん……大人っぽくなってるけど何があったの?」

「ここ10年色々あった」

「そ、そうなの……」

 

 体を鍛えて、修羅場とかくぐった。

 数回死にかけた事もある。

 

「で、身請けって言ってたけどお兄ちゃん何者? 権力無いと王族を身請け出来ないよ」

「斧の勇者の山川ハジメでーす」

「勇者召喚されてたの!?」

「ゼルトブルに召喚されてさ。原作キャラにもうあってる」

「良いなぁ~」

「治安悪いがな。カツアゲ多いし」

 

 返り討ちにして金とか装具とか奪ってますけどね。

 俺は悪くない。治安が悪いんだ。

 

「こっちも質問だ。変な奴に目をつけられてる……そんな感じか?」

「その通りだよ!! あのカスが!!」

「タクトか?」

「その通りよ! 」

 

 話を聞くとこうだ。

 

 不幸にもタクトと学校が同じだったそうだ。

 案の定タクトは美少女に目がない"ピッー"野郎だ。

 猛アタックし凄いしつこかったらしい。

 いく先々でエンカウントし、自宅前にて待機していたり、マッチポンプみたいなのもやっていたとか。

 

 ウザいなオイ。犯罪者じゃん。

 原作で本性知ってるから苦痛だろう。

 

 それで引きこもったらしい。

 しかし、ある日部屋の壁がいきなり壊された。

 見てみるとタクトがドラゴンに乗り、手を差しのべてこんな事を行ったらしい。

 

『こんな部屋にいても何も始まらない。君は俺が守る。さあ一緒に行こう!』と。

 

 こうしてタクトは接近禁止令となった。

 だがタクトは女達を使い、謝りに来いと伝えに来た。接近禁止だけどそっちから来るのは問題ないそうだ。

 

 タクトは何様のつもりだろうか? 

 迷惑かけたのに被害者ぶるのかこのカスは? 

 

 だけど原作を知っているし、何をするかわからないので行かない。

 ちなみに悪い噂とか言いふらされたりしたそうだ。

 数人のメイドからも酷い扱いらしい。

 

 で、しばらく人間不信になってしまい、俺の事を考えていたら俺がドアをノックしたと。

 

 タクトは本当に気持ち悪いな。

 

「取り敢えず身請けの件はOK。準備とか必要だから時間も掛かるし観光でもしよっか」

 

 今日1日観光する事になった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「いやー平和ですな」

「そうだね父様。金平糖欲しいな」

「はい」

 

 とある仕事が一段落した後の甘いものは格別だわ。

 

 フォーブレイは人間と亜人の差別が無い国の一つである。

 種族関係なく子供が遊んでいる。

 

「わーい」

「キラークイーンちゃん待ってよー!」

「──ちゃん、わーい」

 

 キラークイーンと子供が遊んでいる。

 動物と子供が遊んでいる所を見るとほっこりする。

 

「ふっかふっかだ~。干し肉たべる?」

「ありがとー」

 

 干し肉をプレゼントしてくれた。

 相当フィロリアル好きなのか? 

 

「平和だな」

「平和だね」

 

 つーか女3人はまだかな? 

 買い物してるんだけど長いな。

 

「あら? そこにいるのは人形姫じゃないの?」

「あ」

「誰ーこの子?」

 

 小さな金髪のツインテールのガキンチョが現れた。

 …………なんだろう何か引っ掛かる。

 

「知らなくて良いのよ。えっと……あの人は雲の上な様に偉い人……だそうだから。ごめんあそばせ、私、この子とのお相手に忙しいのですが。何の用でしょう?」

「生意気ねアンタ。何ヘラヘラ笑ってんのよ」

「笑うことが何か問題でしょうか?」

 

 嫌なクソガキだな。

 

「そんな鳥畜生を相手にしているとは、公衆の事を考えずに愚かな子なのね」

「…………」

 

 沈黙するのが正解だな。権力有りそうだし反論はしない方がいいかも。

 つーか鳥好きで何が悪いのん?

 仲間に男だけど人形が好きな奴いるし。

 

「Lv39…………雑魚ね」

 

 うっわコイツ解析の魔法を使いやがった! 

 あり得ねえ。

 キラークイーンは結構強いんだけど。

 

「人のLvを勝手に見るのが偉い方のする事ですか? まるで覗きを働くいやしい者の様です」

「なんですって!?」

「違いますか? 他者の承諾も無くLvを覗き見る行為は褒められたものではありません。家柄に恥じない行為をしなければ、高貴な者などと自慢出来なくなりますよ?」

 

 どこかのバカ貴族だろう。

 育ちが悪すぎる。

 

「この子相手にしない方がいいよー」

「何よデブ鳥!」

「ハジメ言ってたよ。バカは相手にするなって。疲れるし相手しない方が得だって」

「ふざけんじゃないわよ! ツヴァイト・ファイア!」

「危ないドライファ・エアウォール!」

「じゃまするな!」

 

 魔法を繰り出した上にナイフを取り出しやがったこのガキ。

 テメェ……覚悟は出来てんだろうなぁ? 

 

「何よいきなり、あり得ないわ!」

「私を少しでも傷つける事が出来たら負けを認めてこれまでの事を謝罪してあげるわ」

 

 クソガキはナイフで少女を刺そうとする。

 キラークイーンは防御に入る。だが、

 

「ハイクイック!」

「ドラゴンクロウ!」

 

 グリフィンとドラゴン!? クソッ防御を邪魔された! 

 

「何するの!?」

「このフィロリアルが!」

 

 まずい! 間に合え! 

 

 ガキン! 

 

 よし! 間に合った! 

 つばぜり合い、クソガキが後ろに飛ぶ。

 

「やめろクソガキ。俺の配下に何をするんだ?」

「誰よアンタ!」

「こいつの飼い主だ。今見てたぞ。いきなり攻撃してきた。お前こんな往来で殺し合うとか程度低いぞ」

「は? アンタ何様よ」

 

 殴りたい。

 なんか解析のの魔法を唱えてる。

 

「Lvは70ね。あんたそんな強さで私に楯突くとかいい度胸してるわね」

「Lvで人の実力を決めるのは良くない。誰だそんな事を教えているバカは?」

 

 バカは? と言ったところから俺に襲いかかってきた。

 

「ガハッ!?」

 

 鳩尾にカウンターでキックする。

 うわっ弱い。

 モタリケ君と同じくらいの強さかな? 

 

「傷がついたな。お前の敗けだ」

「ぐっ…………」

 

 速く皆来ないかな? 

 トンズラしたい。

 

 ん? 右方向から殺意? 

 

「ドラゴンウィップ!」

 

 ガシッ

 

 どこからか飛んできた鞭を掴む。

 …………もしかして。

 

「これはこれは、俺の妹が何かやりましたか?」

「……妹の教育はしておいた方がいい」

「「タクト!!」」

「お兄ちゃん!」

 

 関わっちゃ行けないバカ筆頭のタクト君ではないですか。

 キラークイーンにバカとは関わるなって言ったばかりなのに。

 

「ナナ、一体何があったのかな?」

「あの子がコイツとフィロリアルを使って私に襲い掛かって来たの!」

「嘘よ! いきなり攻撃してきたのはそっちだわ!」

 

 本当に腹立つなこのクソガキ。

 しかし今はそれ所じゃない。

 

「「…………うぷ」」

「え?」

「「おえええええええええええええ!?」」

「え……!?」

 

 キラークイーンも思わず吐いてしまった。

 タクトのオーラ気持ち悪ッ!! 近づきたくないし触りたくもないよコイツ!! 

 なんなのこいつのオーラは!? 色んな人間を見てきたがこんなに汚いオーラは見たことない。

 もう汚ーラって呼ぼう。

 

「貴様! タクトに失礼だろ!」

「ハジメ、これ……おえええええええ」

「大丈夫か……おえええええええ」

「…………ええっと」

「お兄ちゃん、信じて。私は嘘なんて言ってないわ」

「どっちが正しいかはおいておいて、こんな場所で争うのはどうかと思うな。ナナ、お前は立派なレディになるんだろ?」

「でも……私は悪くないわ」

 

 立派なレディねー。バカにした上に返り討ちにされるとか立派なアホだな。

 

「少々頭に血が上っているようでして……俺の妹に限って自分から攻撃した、とは思い難いのは先に念を押しておきます」

「それが人に謝る態度かこのロリコンストーカー野郎」

「…………」ブチッ

 

 隣の少女が笑いを我慢する。

 青筋立ってるよコイツ。はっはっはっ。

 

「さっきから何なの! お兄ちゃんは七星勇者っていう偉い人なのにその態度は───え」

 

 俺は武器を変える。

 お兄さんと同じ七星勇者デスヨ?

 わかったかクソガキ? 頭を下げろや。

 

「……成る程今日到着した七星勇者の斧の勇者ですか。鞭の一撃を止めたのも納得です」

「斧の勇者のハジメ=ヤマカワだ。お前がタクトナントカカントカフォブレイかこの犯罪者が?」

「…………アルサホルンです」ブチッ ブチッ

 

 今のはやり過ぎ…………じゃないな。うん。

 原作で色んな悪事をしたことを忘れていない。

 

「ハジメ様! お待たせしました……へ」

「お舘様、お待たせし……い?」

「お兄ちゃんお待たせ。何も無いよ……って二人とも何を見て……ゲッ」

「「うっぷ……」」

 

 手を押さえた。

 二人とも我慢したようだ。やるね。

 

「おお……シフォン姫じゃないですか。お久しぶりです。ご機嫌いかがでしょうか」

「さっきまで良かったんだけどあなたの顔見たら最悪よ」

「……心配してあげたのにその態度はなんでしょうか?」

 

 シフォン……春菜の名前か。

 タクトの上から目線がウザイ。

 

「さあ? あなたの気持ち悪い行為が鬱陶しいからですが? そうだ。私は斧の勇者様に着いていく事になりましたのでオサラバですね。ああ、嬉しい」

「…………え」

 

 まあ嫌な奴と関わらなくて済むし、こっちに来た方が安全だしね。

 

「そ、そんな男の何処が良いんでしょうか?」

「全部よ。勇者様こっち向いて」

「えっ何んむ!?」

 

 いきなり唇にキスされた。

 マジかよお前。公衆の面前でそんな事する性格でしたっけ? 

 …………待て、ゲロ吐いた後だよ!? 

 

「…………そうですか。今夜、謝罪の為に祝いの席に招待を致しますよ。この国、この世界での注意事項もその時に非礼のお詫びをしますから是非いらしてください」

「誰が行くかバーカ」

「バンダナとか今時ダサいんですよ」

「…………」ブチッ ブチッ ブッチン

 

 俺達はその場を後にした。

 吐き気が止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は気づいていなかった。

 近くに隠れていたもう一人の勇者に。

 

 そいつと会うのはまだ先の事である。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「いやぁ吐き気が止まらなかった!」

「何ですかあのオーラは」

 

 春菜の部屋に皆で泊まってる。

 明日ゼルトブルに帰るつもりだ。

 

 なおこの場所はタクトの仲間は来ない。

 

「でも賑やかな場所だなフォーブレイって」

「うん、大国だからいろんな所があるんだ」

 

 ちなみに良いものを手に入れてしまった。

 まさかあれがフォーブレイにあるなんて。

 

 帰ったら使ってみよう。

 

「それで買い物とか言ってたけどケーキ食ってたか?」

「ドッキン!」

「あららバレましたか」

「すいませんハジメ様」

 

 キスの味でわかりましたけど。

 今度俺も連れていって下さいよ。

 



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第17話

主人公のハンター×ハンター世界での軌跡。


「ハンター×ハンターの世界!? 凄い!!」

「メルエムに相討ちになってこの世界に来たわ」

「どんな能力にしたのよ…………」

「能力で応戦したけどどう倒したかは秘密」

「zzz」

「グピィ……」

 

 

 夜、室内にて。

 積もる話があるので春菜と一緒にお喋りしており、他の奴等はとっくに寝ている。

 

 

「樋口のカスは死んだんだね…………」

「ああ結婚式は1ヶ月位かけてやるって。国王が凄い張り切っていたって側近の人に聞いたし」

「叔父さん…………」

「ゼルトブルで最高品質の縄と鞭を差し入れたんだ。喜んでくれたかな?」

「最高」

 

 

 樋口のカスは1ヶ月間寝取られプレイを味わうのだ。

 ドMには堪らないシチュエーションだね。

 良かったね樋口君♪ 

 

 

「それで話は変わるけどハンター×ハンターの世界でなにやって来たの?」

「極悪人退治」

「うん? 異世界転生した直後から説明を」

 

 最初から? いいけど。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 まず最初は目が覚めたら荒野にいた。

 自分を確認したら纒とか出来ていた上に身体能力が向上していたよ。

 

 それで歩き回って人里を見つけて金を稼いだ。

 その間に能力を作ったりした。

 

 

 金を稼いだ後に修行場を渡り歩いた。

 天空闘技場の他にも修行場があったので殴りまくった。

 修行場の炭鉱で護衛の仕事をしたり、ジャポンの修験場でも戦いまくった。

 結構知り合いとか増えた。

 

 

 この世界に来て2年後。

 天空闘技場で戦い、フロアマスターとなった。

 フロアマスターになったらその階の支配者なので飲食店等の代金が無料か割引なのだ。

 それで修行しながらのんびりしてた時に師匠に出会った。

 

 

 師匠は科学者でウィルスハンターのシングル。住み込みのボディーガードを探していたらしい。

 月給が500万~で、三食昼寝付きetc。修行も一緒に行うとの事だった。

 破格だったのでその条件で了承した。

 

 

 それでボディーガードは俺一人だけだった。

 師匠は強かったのだ。改めて技術や知識は格上なので弟子入りをした。井の中の蛙と俺は感じたよ。

 

 後々雇った理由を聞くと修行相手と話し相手が欲しかったそうで、戦っている姿に一目惚れしたそうだ。

 

 

 この世界に来て3年経ち、ハンター試験を受ける事にした。

 トンマ先輩から下剤ジュースを貰ったのでそれを無理矢理飲まさせた。

 

 とまあ合格した。

 

 

 それから同期のハンターと組み、暴れ回った。

 同期のアギレラとゴドルって奴と組んで盗賊を片っ端から狩りまくり、財宝を奪いまくった。

 二人は優秀で、アギレラは俺よりも火力があり、ゴドルは能力のサポートが上手かった。

 そして沢山の仲間が増えていった。

 

 

 この世界に来て5年後。

 アギレラの仇のテロリスト教団をぶっ潰す事となった。

 ジャシン教と言い、死こそ救いだと掲げているテロリスト集団だ。世の中不満を持つ人間を集め、上手く誘導しテロの工作員にする手法を取るとか。

 

 少しの手掛かりでアジトを見つけた。この数年仲間を集めたので、優秀なハッカーと斥候が居たので情報が筒抜け。

 教皇は面倒な念能力を使用しており、倒すのに時間が掛かった。

 

 念能力者は多数居たが人間が優秀な為無事制圧。これにより俺とアギレラは星一つをもらった。

 

 

 この世界に来て7年後。

 今度はジャポンの強盗団、百鬼衆を討伐する事となる。この盗賊の特徴は全員の能力が念獣の面白い集団なのだ。

 うちの仲間も重傷者も出たが互いに死人は出ず、全員捕縛する事が出来た。

 

 俺も星を貰ったが、アギレラは二つ星となった。

 この捕物帖が弟子との出会いの始まりだとはまだ知らなかった。

 

 

 しばらくチームから離れ、百鬼衆の頭領と司法取引し、ヒミコを育てる事になった。

 最初は険悪だったが色々あって仲良くなっていった。

 ハンター試験はゴン達と同期なんだわ。ヒミコと話して気付いた。

 修行に海賊とか狩らせたり、修行場に行ったりしてヒミコを鍛えていった。

 

 G.Iとか行ったが、大多数ゲットしたが、枚数超えとかで手に入らないカードや時期や専門家でないと取れないカードがあったのでカード集めが困難だった。クリア出来ず。

 

 

 キメラアント編では俺やヒミコも参戦した。

 

 俺は鬼ごっこ仕掛けてきたチーター野郎を捕まえた。

 ヒミコはライオンの師団長を溺死させた。

 

 

 

 

 そして、メルエムとのタイマン。

 

 まさか相討ちとはな…………。

 

 

 ヒミコはパーム救出の係だ。

 

 大丈夫かな…………。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「す、凄い…………」

「自分でも波乱万丈の10年だった。何回か死んだと思わせることとかあったし」

 

 本当に色々あった。

 

「でもお兄ちゃんの実力だとヒソカとは関係とかあったの?」

「大有りだ。絡まれた事が多い」

 

 場所をわきまえずに襲い掛かってくる事があった。

 まあ返り討ちですけどね。

 

 その後連絡先を交換し、狂暴なテロリストが居る時には呼んだ。ジャシン教の時には『88点と81点❤️』とか言った後また呼んでくれってさ。

 

「春菜の方はどうなんだ? 楽しい事とかあるか」

「私は────」

 

 

 夜は更けていった。

 

 

 ちなみにバレたら引くような事をしてるんだよな…………。

 嫌われたくないから黙っておこう。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「それじゃいってきまーす!」

「お元気でー!」

 

 

 ゼルトブルに帰還である。

 タクトもいるし、速く帰らなければ。

 

 タクトの女達がタクトと謁見するように求めてきたが、『ストーカー野郎』と伝えろと言ってやった。

 

 それと国王はタクトをゼルトブルや周辺の国には出国禁止令とした。この前の事はゼルトブルから発信した事なので、ダブルパンチである。

 

 一応頼んでおいたのでよくやってくれたと思う。

 

 まあタクトの日頃の行いが悪く、苦情が多数寄せられていたので自業自得ですね。

 

「ヨロシクねお兄ちゃん!」

「ああまた会えたんだ」

 

 俺は春菜を抱き締めた。



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第18話

「御館様、今日はなんの集まりですか?」

「報酬だってさ。波とか色々」

「期待できそうね」

「わーい」

 

 ポータルでゼルトブルに帰って来た翌日。

 ゼルトブルの商会館に集まり報酬を貰うことになった。

 

 金とか貰わないと本当にやってられない。

 タダ働きなんざ真っ平ごめんだね。

 

「そう言えばクラスアップはしてないんだよね? フィトリアにはもうあった?」

「いや、会ってない。捜索中」

「フィロリアルの多い地域とか回れば出てきそう」

「しらみ潰しにやってる」

 

 もう既に探している。

 そろそろだと思うんだけど…………。

 

「まあそれまで資質上昇をしまくるさ」

「私も頑張らなくちゃ」

「色々落ち着いたら発を見る。念で何をしたいか考えて楽しみにしてな」

「洗礼お願いしまーす」

 

 そろそろ本格的に念能力の修行に入らなくては。

 育成系の能力をフルに使う時が来る。

 

 でも時間が欲しいな。

 どっかに精神と時の部屋は無いだろうか? 

 

「うっふふ、何系かな~」

 

 気持ちは分かる。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「それで報酬は?」

「…………実は」

 

 話を聞くと金が無いらしい。

 実は先の件でレイがやらかした事があり、賠償金とかで流れてしまったそうだ。

 あの野郎…………まだ寝取られプレイ中なのに迷惑をかけるのか。

 

「わかった。金以外でいい」

「それでは領地等どうでしょうか? 最近領主がいない領地が沢山のありまして…………」

 

 多分誰かさんのせいだな。

 厄介払いか? 面倒事は勘弁してほしい。

 

 だが税金を徴収出来るし、色々自由な事も出来るそうだ。

 俺派の商人も協力してくれるってさ。

 

 勇者の治めている領地ってのも人とか集まりそうだ。

 

(どうする? 皆の意見が聞きたい)

(私は賛成です。拠点があるのは嬉しいですし)

(拙者は問題ないでござる)

(私も簿記とか出来るし、領地経営の本やゲームとかやった事あるよ。大変だったら代行や部下に任せればいいし)

(走る所欲しいなー)

(父様に任せる!)

 

 確かに便利だな。

 よし、受けるか。

 

 それで地図を持ってきた。

 で、丸を書いていった。5個位あるね。

 それから選ぶことになった。

 

 どこがいいのかよくわからんが。

 

「確かここは葡萄酒が有名ですね」

「あれ? ここウルト石の採掘地だ」

 

 色々名産品があるようだ。

 

「父様ここがいい!!」

「どれどれ」

「ここは有名な所はありませんね。交通の便が悪いですし、って言うかここは…………」

「こーこーがいいの!!」

「理由は?」

「わかんないけどここがいいの!!」

「ヤトちゃん。理由になってませんよ」

 

 ? 夜刀ちゃんの様子がおかしい。

 そこまでして入れ込む? 

 

 …………。

 

「よし夜刀ちゃんの選んだ領地にしよう」

「ハジメ様が決定権を持っているからいいんですか……」

 

 あれが手に入ったし、問題ない。

 特に目立った事が無い領地でも、私兵を育てられる場所ならばどこでもいい。

 

 俺達はその領主になるのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「さてと、水見式やりますか」

「待ってました!」

「春菜、洗礼はまだ少し待ってろ」

 

 水の入ったグラス、葉っぱを用意する。

 

「二次創作だとこの時が一番楽しいんだよね」

「分かる。俺もそうだった」

 

 俺も水見式や能力開発時にはテンション上がったし。気持ちが分かる。

 

 弟子を育成するのは初めてではないし、少しはコツがわかっている。

 

 さて始めましょうか。

 

「まずはローナから」

「はい」

「水にオーラを当てて」

 

 すると、

 

「葉っぱが動いてます……」

「操作系か」

 

 人や物を操作するのが得意な系統だ。

 考察だが物を操るよりも、人を操作する方が難易度が高い。人間の動作は複雑だしさ。

 長所はサポートに向いているって事と、操作精度が高いって事かな? 

 

「ん~」

「次はシルフィ」

「了解でごさる」

 

 シルフィがグラスに手をかざす。

 

「あっ、水が溢れました」

「強化系だな」

 

 強化系は人や物を強化したり、働きを強くするのが特徴だ。

 考察だが単純に力が強化されるという地味な系統だが、単純で地味ほど使いやすいのだ。複雑で派手な能力ほど使いにくく難しいものはない。

 長所は戦闘向きの系統って事かな? 

 

「はい、キラークイーン」

「うん」

 

 爆弾の能力を作ったらどうしよう……。

 

「水の中になんか出てきたよ」

「具現化系か」

 

 吉良吉影みたいにならないことを祈る。

 

 具現化系はオーラを物質化する系統だ。その物質化した物に能力を付けるのが基本的。

 俺の考察では特殊がある念能力だ。ぼくがかんがえたさいきょうのぶきとかも作れるのだ。

 

「父様、次は私」

 

 夜刀ちゃんが手をグラスにかざすと、

 

「父様? 葉っぱか沈んだよ?」

「特質系か…………」

 

 超レアである。

 能力を盗むとか借りるとか未来予知とかがいい例だ。

 このヘビは何者だろうか? 

 

 さてとオーラ量を増やしながら能力の開発を手伝うとしますか。

 春菜の念能力開花もしなければ。

 

「ねぇお兄ちゃん」

「何?」

「参考までにどんな能力を作ったか教えて欲しいんだけど」

「あっ! 私も気になってたんです」

「拙者もでござる」

「…………やっぱ聞きたいよな。頼むから絶対誰にも言うなよ。能力バレは痛いし」

 

 まあ知ってても知らなくても厄介な能力だし。

 俺は水見式を行う。

 

 

 

 ~斧の勇者説明中~

 

 

 

「──って事だ」

「……地味に強いね」

「念能力って凄いですね……」

 

 まあ制限があって使えないって能力とかあるし、万能ではない能力だ。

 

「取り敢えず修行するぞ。能力の作成はその最中で作るぞ」

 

 

 

 

 

 




12時に2話目投稿。


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第19話

本日2話目。


 数日後。

 

「ここあのカスの領地じゃねえか!?」

「ガルタイル領って所ですよ。知らなかったんですか?」

 

 そうこの前来たレイの領地である。

 全然気づかなかった。

 

「よくよく見たら値上げとか多いわ」

「家とかもボロボロでごさる」

「皆笑顔じゃないね」

「あの野郎…………」

 

 あのカス重税してたって言ってたな。

 それで領民から絞り取ってたって訳か。

 

「それで領主の娘がまだ生きているらしいから会いに行くぞ」

「生きてたんですね」

 

 話を聞くと、前領主が裏から逃げさせたらしい。

 それで他の領民の家に隠れたそうで無事だとか。

 最近知った。

 

 今後の経営について後で話し合うけど。

 それよりも、

 

「国葬だってさ。立派な人物だったんだって」

「花も買ってきましたし」

 

 今は弔うとしよう。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「斧の勇者様ですね。ワタクシ前領主の娘、アンナ=ガルタイルと申しますわ」

 

 前領主の娘さんである。

 領主の補佐をしてくれるそうだ。

 

 コイツが領主になればいいのにと思ったが、勇者がやれば知名度とか上がるのでこれでOKだそうだ。

 

「我が父の葬儀に参加してくれて頂きありがとうございます」

「取り敢えず父親の領地を復興しよう。それが弔いになる」

 

 俺と春菜、アンナが同じ方向に向く。

 向き先は、

 

「何この机……」

「汚ねえ」

「書類の下の方に帳簿のようなものがありますわ」

 

 机、いや、部屋全体が汚れている。

 食べかすとか絨毯にあるしさ。

 

 あのカスは内政を何だと思っているのだろうか? 

 グッチャグッチャなので何がなんだかわからない。

 

「片付けようか」

「ああ」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ふぅ……」

「これで綺麗になったね」

「何ですかこれ…………」

 

 アンナ? 何震えてるのさ。

 帳簿を見ているけど…………。

 

「税収が何か可笑しいですわ」

「?」

「確かに何かやってる可能性あるね。調べてみようか」

 

 数十分後。

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」

「クソがああああああ!!」

 

 おいおい、いきなり叫びだしたぞオイ。

 

「何があったんだ?」

「税金の使い道が九公一民なのよ!!」

「しかも誤魔化して着服してますわ!!」

「…………」

 

 取り敢えず豚王にカイザーナックルでも贈ろうか? 

 

「民を……民を何だと思って……」

「腐ってるよ」

 

 二人ともすっごい落胆しとる。

 あのカスは政治の才能は無いな。

 

「なぁ休憩して何か飲まないか?」

「うん」

 

 小休止した方がいいな。うん。

 アップルティーを淹れよう。師匠にうまいと評判なんだ。

 

「ハジメ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ローナ?」

「何かあったの?」

 

 ローナがいつもよりも騒がしい声で執務室に入ってきた。

 兵士と訓練してるんじゃなかったっけ? 

 

「飲むかアップルティー?」

「そんな場合じゃありませんよ!」

 

 ? そんな急な事か? 

 マトモなローナが言ってるんだし緊急か? 

 

「レイの奴が色んな商人に借金を作ってやがったんです!」

「はぁ!?」

「それで門の前に沢山商人が居るんです! 滞納していた金を返せと。担保に領主の代行権っていう取引もあるそうです」

「あの野郎…………」

 

 アイツ……宝払いか。

 なんであのカスは迷惑をかけるんだ! 

 

 止めようと思ったけど豚王に入れ墨の機械でも贈るとしよう。

 女に『国王専用』とでも彫っておけばいい。

 

「話してみたら困窮している商人もいるみたいです。人質を取られたり脅迫されたりして無理矢理に金を出させたとの証言がありました」

「クソッタレ……」

 

 しょうがない会いに行くか。

 嘘発見能力があるから良かった。

 

 アンナも着いていくと、見覚えがある商人が多くいたみたいだ。

 一列に並ばせて質問したりしていく。

 

 結果数人は詐欺だったが、殆どの商人が正直者だった。

 中に買い取りに詳しい商人がいたので宝物庫の物を鑑定し、金の工面をしていく。

 全員納得して帰っていったのだが宝物庫は空っぽだ。

 

「取り敢えず税金を取るのはしばらく止めよう」

「それがいいよ……」

 

 一応ポケットマネーがあるし多分賄える。

 金が無ければ回収すればいい話だし。

 転生者とか盗賊とか。

 

 でも領主って改めて就任すると大変なんだなぁ。

 

「さてと明日から金を集めますか」

「可哀想に」

 

 春菜以外の転生者にはとてもではないが同情ができない。

 好き勝手やってるので敵を掃除できるし金品を手に入れられるから一石二鳥だ。

 

 ドッガッァァァァァァァァァン!! 

 

「うおっ!?」

「きゃあ!!?」

「きゃっ!!?」

 

 なんだ!? すっごい音したぞ! 

 振動もしたのでどっかの地層の岩盤でも砕いたか? 

 

「な、何今の地震?」

「爆発音見たいのもしましたわ」

 

 夜刀ちゃんめ……何故こんな場所を選んだんだ。

 就任早々資金が尽きるとかどんな内政ゲーム? 

 

 するとドアが開き、シルフィが入ってくる。

 

「お館様! 平気でごさるか!」

「まさかシルフィがやったのか?」

「違いますしその事では無いでござる」

 

 強化系だからありえると思ったのだが。

 クレーター作れる人間がいるし。

 

「また何かあったのか?」

「ダンジョンがあったでごさる!」

「「「「ダンジョン?」」」」

 

 ダンジョンってあれだよね。ゲームとかに出てくるアレ。やり直しでもあったけど…………。

 

「近くの遺跡を見廻りしていたら隠し扉があったんです」

「マジで? モンスターは?」

「一応いましたが弱い上に経験値が高かったでござる」

 

 ? カルミラ島の様な経験値のダンジョンなのか? 

 気になるな行ってみよう。

 

 皆で行くことになり、館の門を出ると、

 

「ハジメー! 大変!」

「キラークイーン? 何があった?」

「お湯が出たよー!」

 

 うゆ? 

 

「一応詳しく」

「うん、念能力を使って地面を攻撃したら土の中の岩が割れた」

「それで?」

「そしたら大きな音がして、お湯が出てきたの」

 

 お前かーい。

 でも温泉か……ダンジョン見終わってからいくか。

 

「父様大変!!」

「夜刀か次はなんだ?」

「ドラゴンが来た!」



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第20話

「これだけ?」

『すいやせん、最近来なくって』

「これで献上分になるとでも思ってんの?」

『こ、これを、補填の山の幸です』

「しょうがねえな、気を付けろよ」

「お兄……ちゃん」

 

 財宝が少ないな。

 やっぱ強いのかこのドラゴン。

 

「このドラゴンは?」

「一応俺がケツモチしてる」

 

 そう、山で狩りをしているときに出会った竜帝だ。幸いにも命乞いをし、ショバ代を支払わせているのだ。

 後2体くらいそれと同じ竜帝がいる。

 

「お兄ちゃんってマフィアに知り合いいるの?」

「いるけど?」

「そ、そうなの……」

 

 一応グレーな事やってるけども問題無い。

 麻薬とかはやってないからセーフ。

 

「さてと、他の場所行くか」

『それでは私はこれで』

「稼げよ」

 

 ダンジョンと温泉か。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 まずは近かったから温泉の方に来た。

 

「私温泉とか行ったことないんですよね」

「俺は結構行ったことあるな」

 

 色々旅をしてきたのでよく入るのだ。

 お湯を触ってみると40℃以上はあるようだ。

 

「土魔法で整えて入ってみるか」

「このまま入るのもアレだし足湯見たいにしよっか」

「ツヴァイト・アースホール」

 

 俺は土魔法を唱える。

 俺の魔法適正は土・光・雷だ。

 

「あー気持ちいでござる」

「極楽~」

 

 意外と気持ちいいな。

 よくよく考えたらあまり休暇を取っていなかった。

 

「お兄ちゃん」

「なんだ?」

「結構湯量多いし、吹き出てる場所も多いし旅館とか出来るかも」

「いきなり言われてもな…………」

 

 旅館経営ってのも大変だと動画で見たことある。

 温泉旅館が増えると湯量が減ったりするとか。

 

「温泉って雨水らしいよ」

「知りませんでした…………」

 

 自然災害とかでいろいろあるらしい。

 

「なんかジュース飲みたくなってくるねー」

「俺も酒飲みたくなってくる」

 

 昼間っから飲む酒は最高である。

 温泉旅館の他にも銭湯とか作ろうかな? 

 

「さてとダンジョンの方にいきますかな?」

 

 一応タオル持ってきたんだ。

 さてと、ダンジョンに行くとしますか。

 

 ポカポカ

 

 あれ? 

 

「足が軽くなってます」

「疲れが取れてる……」

 

 ふくらはぎが温かい。

 疲れも取れてるぞ? 妙に足に力が入る。

 

「ローナ、ジャンプしてみろ」

「えっはい、ほっ!」

 

 ジャンプしてみると結構な高さを跳んでる。

 

「これって……」

「疲労回復とバフか……」

 

 えっ……何なのこの温泉。

 何らかの鉱物が染み込んだのだろうか? 

 これ金とか取れるな。

 

「このお湯で湯船に浸かりたいでござる」

「後で改造してみるか」

 

 俺も日本人だし肩まで浸かりたい。しかし他の用事かあるためゆっくり出来ない、後で土魔法で柵でも作って足とか広げたり、泳げるように大きく浴槽を作ろう。

 

 夜にまた入りに行くかな? 

 ダンジョンに行くとしよう。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ここを押せば開くでござる」ゴゴゴ

「おー本当だ」

 

 やって来たのは近くの遺跡である。

 少し古いから何か出土品があるかもしれないな。前の世界でもトレジャーハンターってのもいるし。

 

「人工的な通路ですね」

「何のためにこんなのがあるんだ?」

 

 何の遺跡なんだここは? 

 

「ピギ!」

 

 ん? オモチャ……いや機械の様なネズミが現れた? 

 モンスターで良いんだよな? 

 

「てい」

「ピギャ!?」

「一撃……」

 

 簡単に倒せた。

 おっ、経験値が高い方だ。

 

 もう少し進んでみよう。

 

 皆で歩くと蝙蝠型、犬型、蛙型、虎型のゴーレムが湧いてきて、俺らに襲い掛かって来るが返り討つ。

 そして広間があったので出てみると、

 

「ギャオオオオオ!!」

「あっ、ドラゴンだ」

 

 ゴーレムチックなドラゴンってのも良いものだよな。

 

「さすがに強そうですね」

「俺がやる、喰らえ! 俺のギャリック砲!!」

「ギャオオオオオオオオオ!?」

 

 俺は大きな念弾を飛ばす。

 うっわ、串刺しをされたかのように風穴が空いた…………。

 

「わっ! 大量の経験値が入りましたよ!」

「資質上昇しますかな」

 

 そろそろフィトリア探さないと困るな。

 クラスアップしたいんだけど早く現れてくれないだろうか? 

 

 そもそもこの遺跡はなんなんだろうか。

 カルミラ島等の活性化が起こっているダンジョンなんてあり得るのだろうか? 経験値を吸いとって貯めているのだろうか? 

 

「そろそろ帰るか、兵士も心配するだろうし」

「そうね。また今度攻略すればいいし」

 

 あのカスの改造された被害者達の殆どが俺らの兵隊になった。

 行く当てが無かったり、外見で恐怖されたりでここに残留したのだ。

 

 全員ステータスが高く、強力な固有能力を持っている奴等も居る。さてさて頑張って育てますかな。

 

「もう夜ですね」

 

 ダンジョンの入り口から出ると薄暗く、蝙蝠が出ていた。

 

「腹減ったでごさる」

「今日は牡丹鍋ですよ」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「ドライファ・アースウォール」

 

 ディテールを凝って壁を作り上げ、簡単な浴場を作った。

 湯船も広いしたまには羽目を伸ばす時間が欲しい。

 

 酒もタオルを用意したし準備オーケー。

 

「ふぅ」

 

 俺はお湯に入る。

 この温泉は疲労を回復効果があるので、肩まで浸かりたい。

 

 この酒いけるな。月も綺麗だし風流ってのはこの事を言うんだよな。グイ

 

 知り合いの宗教団体からよく果実酒を貰うのだか、それが美味いのなんの。

 …………アイツ元気かな? 面白い念能力を使用するし、世の中の貧困とか無くせそうだ。

 

 しかも儲かってるとか。その分貧しい人に還元してる。

 

「お兄ちゃん、やっぱ入ってたの?」

「掃除中の看板が見えなかったのか?」

 

 おっと春菜か。

 お兄ちゃん今入浴中なんだ。

 

「工事してるのが見えたから気になって来ちゃったし、タオルも持ってきたよ」

「入るのか?」

「そりゃそうだよ。兄弟水入らずでさ!」バサバサッ

 

 入るんだ!? 服脱いだし。

 前から思ってたけど唐突だなぁコイツ。

 

「ふぅ~気持ちいい~」

「一杯いくか?」

「いいや。酒弱いし」

 

 タオルを巻かないので、スタイルの良い肉体が丸分かりである。

 長い黒髪で、相当な美少女だ。

 転生前も結構可愛かったし。

 

「眼福ですな」

「そう♪ 襲っても良いけど、初めてだから優しくしてね?」

「…………保留で」

「いけずぅ。恋人でもいるの?」

「いるよ?」

「え?」

 

 前の世界で色々あったからな。

 残してきたものが多すぎるし、全部終わったら帰りたいのだ。

 

「…………だよね。世界を救ったらお別れかぁ…………」

 

 何を言ってるのかね君は? 

 

「何言ってんだ? 一緒に来いよ」

「えっ? いいの?」

「勿論、師匠やゴン達にも紹介するぜ」

「う、うわぁぁぁぁぁぁん!! ずっと一緒だからね!! 約束守ってよ!? わかってる!?」

 

 泣きながら抱き締められ、胸を押し付けられる。

 それの状態が数分続くのだった。

 

 

 



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第21話

アイツ、登場。


「ぬおっ!?」

「お兄ちゃん!」

 

 相手の攻撃に吹き飛ばされる。

 強い……何故だ? 

 

 前に俺は勇者の中でも一番強いと思っていた。

 スマン、やっぱり嘘だ。

 

「この程度?」

 

 コイツ、俺より身体能力が上だと…………。

 オーラ量はこっちの方が少し上だが。

 

 何故、何故コイツが念能力使えるんだ…………。

 

「フィトリアはもっと戦える」

 

 何故にフィトリアが念を使えるんだ!? 

 

 

 こうなるまで一時間前まで遡る。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「見つけた」

「「あ」」

「そこのフィロリアルの力を見たい」

 

 あーやっとフィトリア出たよ。

 やっとクラスアップ出来る。

 

「だれー?」

「私はフィトリア。フィロリアルを統括する女王」

 

 知ってる。

 道にいたりした野生のフィロリアルに干し肉を与えたりして聞いて回ったのだが全然だった。

 

「新たなクイーン候補がいると報告があったから来た」

 

 フィロリアルの井戸端会議でそんな報告があったのだろうか? 干し肉を消費した甲斐があったようだ。

 

「取り敢えず色々話を聞きたい、一緒に来て」

 

 ってことでフィロリアルの聖域に足を運ぶ事になる。

 馬車に入ったら一瞬で場所が変わったわ。

 

 そしてそしてキラークイーンとの戦いに。

 

「やぁ!」

「ツヴァイト・トルネイド」

 

 キラークイーンはオーラを纏う。

 

 実は実験したのだが、オーラによる防御は相当強いものであり、普通の攻撃や魔法でダメージを与えにくいみたいだ。

 およそ10分の1か? 

 

「くっ」

 

 攻撃成功。

 …………といっても大して効いてないようだが? 

 しかもフィトリアは纏が出来てる? 

 

 続いてキラークイーンは追撃。

 魔力で爪を作り、オーラも混ぜ攻撃。

 

「きゃあ!」

 

 結構喰らったようだ。思ったより高威力だ。

 ……あれ? 魔法にオーラを混ぜるとどうなるんだろうか? 

 今度やってみよう。

 

「合格だよ」バキン! 

「カハッ!」

 

 あーやっとクラスアップが出来るな。

 長かった、資質上昇するのも面倒くさくなってきたし。

 

「今度はあなた」

「はい?」

 

 

 冒頭にもどる。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ドライファ・ウインド」

「黒煙餓狼X!」

 

 黒い狼のような衝撃波を繰り出す。

 相殺か。

 

 ん、いない?

 後ろっ!! 

 

 振り返り、魔力の爪と俺のブーツがしのぎを削る。

 相殺仕切れないので受け流す。

 

 強い…………俺と互角程度に戦えるってマジ? 

 

「念能力者が勇者召喚されてたとは思って無かった」

「まさかこの世界に念能力を使える奴がいたとはなぁ…………」

 

 互いに驚きである。

 

「トマホークボマーX!」

「ドライファ・トルネイド」

 

 クッソ魔法の威力が高い。

 埒が空かない。

 

「あなた強い」

「…………」

「この能力で決める」

 

 …………言ったな? 俺も使ってやる。

 コイツは格上。なりふり構ってる場合じゃあない。

 

 するとフィトリアは赤と青の矢印の様な物を具現化する。

 オーケイ。真剣勝負の合図だね。

 

「神鳥の道標《クイーンズルール》」

「君の知らない物語《スターゲイザー》」

 

 

 

 

 

 

 ドドドドドドドドドドド

 

「ぎゃあああああああああ!!」

「ツヴァイトヒール」

「サンキューローナ」

 

 ふいー、死ぬかと思った。

 やっぱ強かったけど念能力者と戦った経験が少ないみたいだ。

 同じくらい強くても、経験が有る無しじゃ違うし。

 

 ドドドドドドドドドドド

 

「ひぎゃあああああああああ!!」

「いつまで続くでござる?」

「あと少し」

 

 この爆発地獄に耐えられるのか? 

 少し酷いような気がするような…………。

 

 ドカァァァァァァァァァァァン! 

 

「うぎゃああああああああああ!?」

「あっ、終わった」

 

 やっと断末魔と爆発音が終わった。

 …………見ると爆心地が出来ており、フィトリアが大の字になってる。

 

 …………やっべぇ。

 殺っちまったか? 

 

(どうすんのよお兄ちゃん! アホ毛と霊亀戦どうすんの!?)

(お前ザオリク使えない? レイズでもいい)

(他のゲーム! 死者蘇生なんて出来るわけないでしょ)

 

 世界樹の葉とか無いのかね? 

 ザキ系を唱えられたら不味いし、ザオリクを持たせた仲間を入れるし。

 

(どうしよう、味方の原作キャラ殺すとかマズイ)

(フィトリア以上に働くしかないわ)

(ハジメー)

(あ? なんだよキラークイーン?)

(足元)

(足元?)ガシィ

 

 ガシッ? 

 

「う………………」

「うわぁぁぁぁぁ生きてた!?」

 

 良かった生きてて。

 で、掴んだ足を離そうとしないんだけど? 

 

「あなたは…………波に立ち向かうの?」

「そうだ。波を打倒しておウチに帰るんだ」

 

 フィトリアは使命が有るんだよな。先代盾の勇者に育てられた恩で、波を止めると。

 長い時間その使命を果たし続けていたんだし、不老で死なないし孤独だろうよ。

 

「そう…………良かった」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「おかわり」ガツガツ

「こっちもおかわりー」ガツガツ

「俺もおかわり」ガツガツ

「父様頬についてる」ゴシゴシ

「ローナ殿の飯は美味いでござる」モグモグ

「打ち解けるの早くありませんか…………」

 

 フィトリアに回復薬を飲ましたり、回復魔法をかけたりして復活した。しかし重傷だったらしい。

 結構本気出したし、やり過ぎた感がある。

 

 て、今はガルタイルに戻ってきた。

 

「ごちそうさま」

「お粗末様でした」

「お風呂入ってから帰る、タオル頂戴」

「ほらよ」

「ありがとう」

「まあ、ゆっくりしてけ。温泉まんじゅうの試作品あるから試食していけ」

「うん」

 

 

 

 




Q 何でフィトリアが念能力を使えるの?
A まだ秘密です。この世界にはオリ主が知らないイレギュラーが沢山あります。


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第22話

本日2話目。


「また来た」モグモグ

「温泉まんじゅう気に入ったんだな」

 

 フィトリアがまたガルタイル領に来たようだ。

 まあ足湯しながら少し話そう。

 

 そしておまんじゅうとお茶を用意し、足湯に浸かる。

 

「見せたい物がある」モグモグ

「見せたい物?」モグモグ

「念の修行に役立つ」モグモグ

「丁度いい。今育てる所だったんだ」モグモグ

 

 フィトリアは育成系の能力を持ってるのだろうか? 

 何故フィトリアは強いのか知りたい。

 

「これ食べ終わってから行く」モグモグ

「俺もお茶飲んでから」ゴグゴク

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「取り敢えずこの中へ入って」

「?」

 

 馬車の中に? 

 …………入り口がワープホールみたい。

 

 んて恐る恐る入って見ると…………。

 

「森?」

「少し違う」

 

 違うの? じゃあ何? 

 

「亜空間」

「? 具現化系か」

「武器関係」

 

 勇者の武器でこんな空間が出るのか。

 

「フィトリアの飼い主の一部を入れたら出た」

「…………」

 

 フィトリアの飼い主って城野守だよな。

 って言うか何で入れた? 

 

「着いてきて」

 

 何があるんだこの空間は。

 着いてきて見ると、門? 

 これって…………! 

 

「1の扉の片方の扉は3tで合計6t。2の扉は12t、3の扉は24tと増えていく。全部で5の扉まである」

 

 ゾルディック家の試しの門に似ているぞ!? 

 何故、何故これがある!? 少しデザイン違うけど。

 

「何でこんなのがある?」

「わからない。他にもある」

 

 次に連れられて来たのはドでかい木である。

 幹の方に、削られて円になってる様なのがある。

 

「ナニコレ?」

「叩いてみて」

 

 叩いてどうなるんだ? 

 1割程度で殴る。

 

 ドン

 

 殴ると木の実が落ちてきた。

 

「開けてみて」

「?」カパ

 

 木の実を割ると……ハンバーガー? 

 

「この木を一定以上の威力で叩くと食べたい物が落ちてくる」

「ナニソレ」

「強く叩けば叩く程美味しい」モグモグ

「お前が食うのかよ」

「1人1日30回程できる」モグモグ

 

 久しぶりに食いたかったなハンバーガー。

 なんだ? この木は。

 

「それで何なんだこの空間?」

「偶然繋がった修行場みたい」ゴクン

「修行場か、懐かしい」

 

 昔結構行ったなー。

 色んな奴と交流したぜ。

 

「出てみて」

「?」

 

 馬車のワープホールを抜けると元の場所に。

 そこにはローナとシルフィがいた。

 入る前に待たせていた。

 

「この空間とは時間の流れが違う。この世界の1日は、この空間では30日」

「はい!? ローナ、入って出た時間は何分位だ?」

「? 一分も立ってませんよ」

 

 うそーん。20分位入ってたんだけど。

 

 簡易版の精神と時の部屋じゃないですか? 

 これ修行に役立つぞ! トレーニングにいいのも置いてあるし徹底的にしごく事が出来る。

 フィトリアァァァありがとう! また今度来たら温泉まんじゅうをたらふく食わせてやるぞこの鳥が! 

 

「修行するなら私の能力も役に立つ」

「?」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「さてと集まったか"ピッー"野郎共」

「鬼軍曹の予感しかしない……」

 

 集まったのは20名の配下達だ。

 用心の為に、奴隷紋を付けたり、嘘発見で信用はできる奴らである。

 コイツらに念を教える。

 

「取り敢えず七ヶ月間みっちり修行するから覚悟しろよテメェら!」

『サー、イエッサー!』

 

 こうして地獄の特訓が始まった。

 毎日胃の中の物をリバースしたり、絶叫しまくったりの日々が続いたのであった。

 

 他にも修行に役立つのが置いてあったので有効活用し、比較的に基礎体力が向上するのだった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「オイ! 何へばってんだこの"ピッー"野郎共が!!」

『サ、サーイエッサァァァ!!』

「ハジメ様ァ!! シルフィの息が止まってますぅ!!」

「戻ってこい! ファスト・ショックボルト!」

「あばばばばばばぁ!?」

「シルフィ!!」

「よし、意識戻ったな。オイ、オルク! 誰が休んでいいと言った"ピッー"が!!」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「ハジメ=ヤマカワ…………」

「グア?」

「昔、何処かで聞いたことあるような…………」

「グアー?」

 

 フィトリアは首を傾げる。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「この饅頭は塩味効いてるから良いだろ」モグモグ

「こっちの方があっさりしてる」モグモグ

「あっさり系だったらこれがいいぞ?」モグモグ

「あ、美味しい」モグモグ

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「んでアイツは言ったんだ『ガタガタ言ってると密輸の件を洗いざらいバラすぞと伝えておけ』って、翌日事務所にダンプカーが突っ込んたらしくてさ~」

「洒落にならない!!」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「…………なんでローナはこんな能力にしたんだ?」

「騒がしいと落ち着くって言うか…………」

 

 あの能力に似てるなぁ。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 こうして7か月後(1週間)

 

『久々のシャバだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 こうして修行は終了した。

 皆涙を流したり、抱き合ったりしてる。

 

 強くなったよ? 

 

「あと数日で波が来るから準備するぞ!」

『サーイエッサー!』

 

 あと数日で波が到来するのだ。

 少し抜けてたからゼルトブルにほぼ任せているが。

 

 強い兵隊も増えたのでより良い対応が出来る。

 レアな能力とかも持ってる奴もいるし、必要とあれば俺の能力も使う予定だ。

 

「ハジメーご飯行こう」

「父様、風呂でも入ろう!」

 

 俺も修行してたから休みたい。

 少しのんびりしよっか。




20人の能力は大抵決まってます。
中には皆も見覚えがある能力も………。


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第23話

「そう言えばクラスアップしなくちゃ」

「もう40越えたしね。フィロリアルの加護も貰ったし」

 

 波の数日前。

 打ち合わせがゼルトブルの都市であったので、クラスアップの事を思い出した。

 

 俺達は前と同じく、波のボスを倒す役目だ。

 私兵や他の冒険者は避難や防衛を手伝う事になった。

 

「それにしてもローナちゃんとかを結構資質上昇したんじゃないの?」

「結構連れ回したな…………」

 

 俺とローナ達じゃ体力が違いすぎるし、すぐヘバってしまうので、俺が背負って戦う時もあった。

 シルフィとか結構食べてた。

 

 今は地力が上がってきたのか疲れずに着いてくことが多くなった。

 

「そうだ、メルロマルクの波は出るの?」

「出る、貸しとか作りたいし」

 

 女王は有能。四聖と杖が所属しているし発言力はあるだろう。

 ただ他の国の協定を破り、四聖召喚してるため各国から批難されてる。

 シルトウェルトの商人から聞いたのだが、盾の勇者を陥れたので、シルトウェルトは戦争ムードらしく、女王が頭を下げまくってるとか。

 

 恩とか売ればいい立ち回り出来そうだし、勇者同士の結び付き(タクト等以外)ってのは大事。

 

「ドラキューア山脈は? もう活性地に成ってるって、知り合いの商人言ってたよ」

「そういえばそんな時期か……」

 

 確かLv70上限だったか? 

 強くなってるし、素材収集や金稼ぎに丁度いい。

 

「あっ砂時計に着いたでごさる」

 

 あっという間に到着ですぞ。

 全員40に上げて連れてきており、アホ毛を乗せたキラークイーンがスタンバーイ。

 

 一応希望性である。ステータス2倍or自分の好きな道を選ばせたい。

 まあほぼ全員が2倍を選びましたがね。

 

「じゃ皆クラスアップを始めるそ。最初はローナ」

「はい」

 

 トップバッターはこの世界で一番付き合いが長いローナだ。

 最初の頃はボロクソになるまでレベル上げてたし、懐かしいなぁ。

 

 ローナはクラスアップし始める。

 

「と、父様」

「どうし……!」

「光ってる!?」

 

 夜刀ちゃんが光ってる!? 

 キラークイーンのアホ毛も一緒に光って砂時計に飛んでいく! 

 

 フシュウウウウ

 

「どうなったんです……」

 

 クラスアップが終了したので確認してみよう。

 あれ!? 防御と魔法防御が4倍になってる!! しかも属性の耐性か2倍になってるぅ!? 

 その他のステータスは2倍なのは変わらない。

 

 も、もしかして夜刀ちゃんはクラスアップの際に素材になるのか!? 

 

「夜刀、何も体調とかには変化ないか?」

「ううん、何も? 光ったのにはビックリしたけど」

「光に心当たりは無いか?」

「……無い」

 

 何者だろうか? 

 変な夢見て卵握ってて、人型になるし、そのような生物はこの世界にはいないらしい。

 

 夜刀が大事な仲間である事は変わりない。だからこそ何者であるか知りたい。

 

「次は拙者でござる」

 

 ステータスの上昇はローナと変わらず、皆のクラスアップが終了するのであった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 波まであと数日。

 

「ボス、報告です」

「カリンか、何だ?」

 

 コイツはカリン、私設兵の中に3人いる隊長の中の1人である。

 三番隊、警備の隊長で、外見は九尾の狐の様な格好をしてる女だ。

 

「私の能力で、転生者がまた悪さを」

「またかよ……」

「北区A2・N8です。3日後くらい後だと」

「お前の能力便利だなぁ~」

 

 カリンの能力、満天の星詠人(アナザースカイ)

 特質系、詳しく言うと未来予知である。

 

 相当なレアな能力なので助けられる。

 春菜の能力も相当なレアであるが。

 

 トントン

 

 ドアが開くと、黒くて大きな目玉が現れた!! 

 

「カリン様、紅茶が入りましたぞ、ボスもどうですかな?」

「俺はいい、飲んだ」

 

 コイツはセバス。カリンの補佐、副隊長を勤める男だ。

 外見はバックベアード。触手か出ており、それを器用に扱い紅茶を淹れる。

 

「美味いですね」

「お褒めに預り光栄です」

 

 この二人は知り合いらしいけど、関係を喋りたくないらしい。敵か味方か聞いたけど味方だし、追求はしかなった。

 

「パレスとミリーは?」

「パレスは見回り、ミリーは部屋です」

 

 パレスとミリーとは三番隊の副隊長である。

 一番隊と二番隊の副隊長は二人だが、こっちは三人いる。

 ミリーの奴は吸血鬼の固有能力を持っており、日に浴びるとダメージを受ける(笑)。なので日中は棺桶に籠ってるのだ。本人曰く、心地好いって。

 しかし、デメリットはあるが強いので、副隊長に収まったのだ。

 

 トントン

 

「ボス、頼まれたブツの事なんだが…………材料が無い」

「マジで? 何が足りない?」

「ラオックス石ってやつなんだが」

「それ結構献上品にあったな。後で宝物庫からとってくる」

「ありがたい! また後で!」

 

 あれが完成するとなると戦力強化だ。

 

「ロクスに何を作らせるんです?」

「それはお楽しみだ。私兵の生存率が高くなるブツだ」

 

 今のはロクスって言う科学者だ。

 レイが改造した異形ではなく志願してきた人間。

 

 実はフォーブレイ出身で研究が異端扱いされ、奥さんに逃げられ、追放されたのでゼルトブルに身を置いていた。

 その研究ってのが発電関係らしく、タクトに目をつけられたってことだ。

 タクトって飛行船とか作ってたし、動力関係で商売仇だから排除されたと考えられる。タクトの被害者だ。

 

 なお、研究職のくせにガタイが良く、育てた20人の中でもトップクラスの戦闘力を持つ。

 

「さて、春菜の所へ行きますか」

「ハルナ殿なら今執務室でローナ殿と話しておりますぞ」

「サンキュ、便利な能力だな」

 

 セバスの能力、見帰り美人(ワンモア・イエスタデイ)

 一度行った場所を覗く事が出来る能力だ。

 監視向きの能力だわコレ。

 

 取り敢えず春菜の所へ行こうっと。

 

 フィトリアと戦い、もう少し切り札が欲しいと感じた。

 そのためにある実験を春菜と共同で行っている。

 

「あ、ハルナ殿が部屋から出ました」

「便利だなぁ」

 

 ストーカーに向いてるんじゃないか? 

 ちょっと怖くなってきた。




一応、出てきたキャラの能力を詳しく。

★満天の星詠人《アナザースカイ》
・拠点を作り、そこから半径500m以内の犯罪行為等を予知する領域を作る能力。5日間位までの未来がわかる。特質系。
・拠点を動かすと、3日程能力が使用不可。

★見返り美人《ワンモア・イエスタデイ》
・一度行った場所を覗く事が出来る能力。放出系。
・使用時、視界が無くなる


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第24話

「さーて、野郎共! 波を退けるぞ!!」

『サーイエッサー!』

 

 さてさて、波の30分前。

 俺の私兵と冒険者達だ。

 

 波は起きるほどレベルが高くなる。

 前回よりも戦力を増やした。

 

 前回と同様に作戦はシンプル。

 俺達や冒険者の精鋭で波のボスを倒し、他の冒険者は市民の避難と防衛。海凄獣人・亜人を連れていく。

 

 この前の対策としてゼルトブルの偉い商人は人質に取られないように避難。この前の失敗があったから油断しない。

 物資もあるし、怪我人がいても魔力尽きても平気。

 

「ハージーメーちゃん!!」

「ん、ナディアか」

 

 うん、また参加してくれた。

 

「この前のリスト、役にたったか?」

「助かったわー! 12人見つけられたわよ」

「メルロマルクの奴隷の方もリスト作ってるから、まだ長時間かかるぞ」

「闇深いわ…………」

 

 メルロマルクって亜人差別が根深いし、闇が深いために捜索が難航しているのだ。

 

 子供の亜人奴隷を拷問している変態"ピッー"野郎が生息している国、嫌だなぁ~俺、女王派を支持するぜ。

 

「ねぇ、あのクワガタ何かしら?」

「聖獣」

「聖獣!?」

「ああ、心が純粋な人間にしか使役することが出来ない聖なる獣だ。見ろよアイツの目、澄みきってるだろ?」

「…………」

 

 信じてくれだろうか? 

 この野郎、能力を見せびらかすとか何考えてんの? 

 もっと特訓が必要か? 

 

「うーんすごいわね」

「ホントだな」

 

 皆、ゲロとか吐いてたからね。

 あの地獄を乗り越えたからこそ強くなったからな。

 

 俺の私設兵に弱者等いないのだよ! 

 

「また今度ハジメちゃんの領地に遊びに行くわ」

「いつでもどうぞ、歓迎するぜ」

「まぁ嬉しい」

 

 俺達の領地について、調査したので説明しよう。

 

 地質調査によると、湯量が膨大な為に旅館や温泉街がたてられる事になり、春菜やアンナが大忙しだそうだ。

 あのお湯って、疲労回復とバフの他にも、美肌の効果が見られる為に国内外でも話題になってるって。

 

 そして遺跡なのだが、しばらくしたら一般人にも公開する予定で、余り奥まで入ることが出来ないように仕掛けを作り、転生者等が入れないようにしたい。

 敵に力を与えたくないし。

 まあ、全部攻略はしてないけどね。急ぐか。

 

 

 それで今後の予定。

 傘下の私設兵をドラキューア山脈に送り込み、レベル上げ、そして素材集め。ポータルは既に取った。

 

 その次にメルロマルクの波に参加し、四聖勇者を手伝う。まあ三勇者が波のボスを倒してくれるから、俺達は村人の避難をするか。

 

 その後は戦力強化したり、町おこししたり、金儲けしたりと大忙しですな。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 00:03

 

 波まで3秒前、人事を尽くして天命を待つ! 

 

 00:00

 

 俺達は光に包まれ転移する。

 着いてみるとそこは…………。

 

「町?」

 

 皆町の広場にいる? ここで起こるって事? 

 

「ここは私達の領地の隣です!」

「亀裂は何処だ!!」

 

 360度見回すが、空の色が変わってるだけで亀裂はない!? あれ? これって……。

 

「お館様! 上です!!」

「やっぱり!!」

 

 カルミラ島の時と同じかよ。

 それで亀裂から巨大な物体が落ちて、地響きを奏でる。

 

「GYAOOOOOOOOOOOOO!!」

 

 次元のガネーシャ Lv90

 

「俺らが波のボスを倒す! 他は避難と防衛を、急げぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 でっかい象だ。

 なるはやで倒し、被害者を減らす。

 

「風王列空斬X!」

「ドライファ・アクアランス!!」

「ドライファ・ダークショット!!」

「ドライファ・エアーショット!」

「ドライファ・エレメンタルバースト!!」

「天道・王黒雷!」

 

 最後は夜刀ちゃんね。

 何かオリジナルの固有魔法みたい。

 

 それで今の攻撃で3割減ったのか…………固っ。

 多分何かの弱点とかあると思うけどわかんないし。

 

「お兄ちゃん、合唱魔法!」

「OK」

 

 俺と春菜とローナで一緒に練習したのだ。

 行っけぇ! 

 

『力の根源たる私達が命ずる。理を今一度読み解き、猛り狂う嵐を吹かせ、敵を粉砕せよ!!』

「「「オーディン・トライデント!」」」

 

 風と雷と水で作った槍を突き刺す。

 

 ちなみにオーラを沢山込めている。

 実験した所、魔法にオーラを入れるとかなり強化される。だが、少しコツがいる。

 一応リベレイションの試し打ちをしたのだが…………山が削れちゃった。

 他の奴らにも魔法の試し打ちさせたけど、地形とか変える奴いたし。スゲーな。

 

「GYAOOOOOOOOOOOOO!?」

「よし、4割減った」

 

 相当な威力だし、結構効いた。

 つーか倒し方なんなのコイツ? 今の攻撃で結構倒せると思ったんだけど。

 後3割ほどだ。

 

「んじゃ後は俺が倒すか」

 

 スキルにもオーラを混ぜると威力が上がる。

 集中し、武器にオーラを注入する。

 

「バルムンクX!」

「GYAOOOOOOOOOOOOO!!?」

 

 頭をぶち割る! 

 よぅし、勝った。倒れたし。

 

「さて、残党を……?」

「あれ?」

 

 気づいたけどまだ空がワインレッドのままだ。

 波が終わってないのか…………? 

 

「春菜、どう考える?」

「まだボスが倒れてないか、それとも他世界の人間がいるか……」

 

 おいおいどうする、この波のボスの事よく知らないんだけど。

 

 まあ、取り敢えず波の亀裂を攻撃するか。

 

「オイ、亀裂にカチコむぞ」

 

 パチ パチ パチ

 

 ん? 拍手? 

 こんな時に拍手するのは誰だ? 

 

「いやぁー凄い。この世界にも能力者がいたとは」

 

 拍手と声が同じ場所、建物の影から人間が出てくる。

 全然気づかなかったし、今の言葉で能力者だってわかったので絶でも使ったのだろう。

 この世界にもって言ってたし、他の世界でも活動してる可能性が高い。

 

 建物の影から出てきたのは長身の男、髪は肩までかかる金髪。得物は小太刀か? 細目だな…………あれ? 

 

「危険そうだし早めに潰………………ハジメ?」

「…………ミレナリオ?」

「何やってんのお前」

「お前こそ」

「知り合いですか?」

 

 知り合いもなにもなぁ…………。

 

(前の世界のチームメイトだよ)

(えっ? お兄ちゃんの仲間?)

(ああ、たまに俺と組む事があった)

 

アギレラの弟子である。ちなみにクライムハンター。

 

「なんでお前がこの世界に?」

「事故で死んで本拠地の世界に召喚されてな」

「お前も死んだの!?」

「こっちのセリフだ。まさか互いに勇者になってたのか……」

 

 前の世界の同僚と会うとか。

 どんな巡り合わせ? 

 

「それでどうする? どうせ間引きだろ、戦るのか?」

「実は顔確認しないで出てきたんだ……」

「アギレラにもっと注意深くしろって言われてなかったけ?」

 

 コイツよく抜けてる事あるからなぁ。

 でも才能あるし、能力も厄介だし。

 

 この場面でもしも戦うなら勝てるが、数人死ぬだろう。

 

「で、返答は?」

「戦わねぇよ。死にたくないし」

「逃がすと思うのか?」

「…………ハジメの能力の切り札って拡張?」

「!?」

「隙有り! スモークパンサー改!!」

 

 うおっ! 煙幕かよ! 

 

「あばよ、ハジメ!」

「待ちやがれロリコン野郎!」

「黙れド外道!!」

 

 ド外道って酷くないか? 

 俺って慈悲深く無いの? 

 

 あっ、気配が無くなったみたいだ。

 逃がしたか…………クソ。

 

「まさかお兄ちゃんの仲間が居たなんて……」

「俺が居なかったら皆死んでたな…………」

 

 ミレナリオの能力は条件が整えば厄介な代物だ。

 この場で条件が整え掛かっていたので危なかった。

 

「あっ、空が」

 

 ワインレッドの空が水色に戻っていく。

 まだ波の魔物が蔓延っているし、掃討しなければな。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「お館様、全滅確認の報告でござる」

「御苦労、被害は?」

「冒険者や町人に重軽傷者数名、私設兵には擦り傷が数名程でござる」

「大勝利だ」

 

 善し善し、建物に損害はあるが俺らは壊した覚えが無いし。全部クソ女神が悪い。

 

「ハジメ様、アイツって強いんですか?」

「場数踏んでるし、犯罪者から恐れられてるって」

 

 そろそろ一ツ星取れるってアギレラが言ってた。

 

「ロリコン野郎ってなんなの?」

「アイツの特技なんだが…………この話はまた今度。帰るぞ、ドラキューア山脈にGoだ」

 

 また後で能力を教えておこう。

 

 こうして、波が終了したのだった。




次回、原作介入………!?


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第25話

「ハーッハッハッハッ! ぶっ殺したぜ斧の勇者ァァァァァ!」

「フッ、5人がかりで相手になるかな~?」

「後ろの女も助けてやるよっ!」

「はあ~」

「キモいでござる」

 

 波が終わった翌日、ショバ代払ってる竜帝から連絡が入り、不穏な人物が縄張りに出入りしてるので見てきて欲しいとの事だった。

 

 自分で倒せって話だが、番が産気付いてるらしくて手が離せないそうだ。

 後で赤ちゃん見せてもらおう。

 

 で、道中波の尖兵が絡んできた。

 頭が回る奴がいるのか知らんが集団で現れたようだ。

 

 武器を奪った後はどうなるんだろうね? 

 バトル・ロワイアルでもすんのかな? 

 

「お兄ちゃん」

「なぁに?」

「私が殺ってもいい?」

「……いいけど? 手早くな」

 

 春菜? マジでやるの? 

 コイツの能力、やべぇからな。

 

「それじゃ行きますかね!」

 

 春菜の手に螺子が握られる。

 

 

 ~妹様無双中~

 

 

「バカな…………」

 

 波の尖兵が最期の言葉を吐いて事切れる。

 無双って言っても10秒位しかかからなかったな。

 

「串刺しやん……」

「球磨川先輩風にやってみました」

 

 裸エプロン先輩みたいに、身体中にネジが刺さりまくっている。

 めだかボックスが懐かしい。善吉最高。

 

「バカめ! 隙有り!」

「知ってたし」

「ハッ、強がりを言っ」ドッカァァァァァァァァァァァン

 

 いやいや少し前から尾行してたの丸分かりでしたから。

 こっちも命懸けの鬼ごっことかしてたし(殆どが追いかける方)。

 

 まぁコイツら他国の人間だし、今度遠征にでもいきましょうかね。

 

 まあ、後だな。狩りは。

 仕事に取りかかろう。

 

 それで不審な人物が目撃された場所にいくと、転生者だったので取り抑えた。

 それで何をやってたのか聞いてみると…………。

 

「なぁ、良いこと考えた」

「良いこと?」

「春菜、協力して欲しい」

「?」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「さて、ドラキューア山脈に野郎共(警備班除く)送ったし、メルロマルクの波を手伝いに行きますかな」

「やっとだね」

 

 やっとこさ原作に突入だ。

 

「今回はいつものメンバーで行くぞ、手伝いだからな本腰でやる必要ないし、貸しを作るのが目的だ」

「お兄ちゃん狡いわ」

「ありがとう」

 

 無理する必要は無いし、顔合わせをするだけだし。

 

「でも原作介入するんだよね。興奮しますなぁ~」

「俺もハンター世界でやったなぁ」

 

 グリードアイランドで初めてゴン達と顔合わせたよ。

 

「そう言えばアルドミティアってどんな国だ? イレギュラー国家みたいだけど?」

「あそこか……フォーブレイもあまりよく知らないんだよね」

 

 なんで? 大国だから情報あるんじゃないの? 

 

「数百年前なんだけど、アルドミティアに戦争で負けたらしくて…………」

「それで?」

「アルドミティアについての情報が燃やされたの」

「焚書か…………」

 

 なんで情報統制するのか? 

 あまりよくわからないが…………。

 

「私は行った事無いけど、凄い近未来って聞いた」

「近未来………」

 

 発展してる国って事か、ますます怪しくなってくる。

 何があるんだ? 

 

「多分ゼルトブルにも情報は無いと思うよ、そっちの方も二百年前に戦争して焚書したし」

「確かに全然情報が無かった」

 

 確実にイレギュラーである。サディナも負けたとか言ってたような気が。

 敵か味方か…………謎だ。

 

「歴代王様は奇跡の力を持つ、って噂で聞いたことあるけど」

「まさか、念?」

 

 あり得る、だったら神のいる国と呼ばれるのも理解が出来る。

 もしかしたらワンフォーオールの個性の様な継承タイプの念能力があるかもしれない。

 召喚された勇者が念を使用出来るなら十分にあり得る話だ。今度召喚勇者の名前を調べておこう。知ってる名前が出るかもしれない。

 

 機会があったらアルドミティアに旅行してみようかな? まあ落ち着いてからだけど。

 

「ハジメ様、準備整いましたよ」

 

 やっと整ったか、何を準備していたんだシルフィは? 何持ってんの? 

 さっそくメルロマルクへゴーだ。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「久しぶりにきたなぁ、メルロマルク」

「私も前に来たことあるよ」

 

 親父さんとの交渉の他にも何回か来たのだ。

 仕込みをしにさ。フフッ。

 

「ここ女性優位の国なんだよねー、トップが女王だし」

「婿入りのクズが調子に乗ってんなぁ」

 

 クズのせいで女王派の人間が左遷や投獄されてる話をよくゼルトブルで聞く。

 亜人を誘拐し、奴隷に落とす事を黙認してる話なんかは他国にも伝わってるそうだ。

 

 勝手に色々やらかしてるのに、女王から許されるとか思っているのだろうか? 終わったな。

 

「ん? 前来たときよりも人少ないわ」

「シルトウェルトに喧嘩とか売ったからな、戦争になる可能性があるし来たくないだろ」

「なーにやってんだろここの王族~」

 

 戦争にもメリットはあるがデメリットの方が大きい。

 王族としては戦争しない方が有能だと思う。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「三勇教会か……」

「見事に建て直ってますね……」

「何の話?」

「知らないでいい」

 

 話は通しており、三勇教のシスターに案内される。

 仲間にシスター服の人間(男性)がいるんだよなぁ。アイツら元気かなぁ。今でもバカやってる気がする。

 

 それであっという間に龍刻の砂時計についた。

 階段を上がると光が差し、波までのタイムリミットが表示される。

 

 20:11

 

 あれれ~? この時間見覚えがあるぞ~? (コナン風)

すると気配が後ろに。

 

「え?」

「お、お、お、お兄ちゃん!? あれぇ!!」

「何だそんなに驚いた顔をして?」

「フッ、フッ、フッ!」

 

 何だ? 驚いた顔をして指差しやがって? 何故かローナも反応したし。 

 原作主人公が来たのがそんなに嬉しいのか? 

 

 まぁ初対面の10秒が大事だってどっかで聞いたことがあるし挨拶しよう。

 

「ああ、来たか。お前が……………………は?」

 

 振り向くとそこにいたのは三人。原作では二人のはず。尚文とラフタリアだ。

 それで三人目の人間だ………俺はコイツをよく知っている。

 

 あり得ないと言いたいが、俺がここにいる時点で十分あり得る。死んでるし。

 他の世界にも前の世界の人間が召喚されていたので可笑しくはない。

 

 マジかよ…………何故、何故お前がここにいるんだ!!? 

 

「何故テメェがここに居やがる…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒソカ」

「やぁ♥️」




死神、参戦。

12時より2話目投稿


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第26話

ヒソカ出して大丈夫だろうか…………


「ヒソカ、知り合いか?」

「僕の最愛の人さ♥️」

「黙れよクソが」

 

 つーかなんでここにいるの? 

 召喚されたとしか思えない。

 

「ヒソカ、もしかしてお前も勇者か?」

「うん、見てよ♠️」

 

 ナイフ? あっ、手裏剣に変わった。

 

「成る程、投擲具か」

「ハジメは斧かい?」

「ザッツライト、まさか同じ世界に呼ばれたとは奇遇だな」

「運命って奴かな♦️」

「嫌な縁だなホント」

 

 よくトランプ投げてるし、それが理由で選ばれたのか? 

 味方…………だよな。

 戦ってるときに襲ってこないよね後ろからとか。

 

「で、お前は何者だ? コイツと仲が良いようだか?」

「どこが?」

 

 仲良く見えたの? まあ少し仲良くしてたけどさ。

 

「お初にお目にかかる。斧の勇者の山川ハジメだ。専属はゼルトブル、メルロマルクの波を手伝いに来たからヨロシク」

「……四聖勇者の他にも勇者がいるのか?」

「七星勇者って言うんだけど知らないのか? 杖の勇者にはもう会ってるのに?」

 

 そう言えばこの世界の常識とか知らないのでしたね。1ヶ月経てば普通に調べると思うんだけど。

 ヒソカから聞かなかったのか? 

 

「あ、あの!」

「あ? 何だ?」

「サインくださいでござる!」

「は?」

 

 シルフィがサインを尚文にねだる。

 そう言えば出発前に色紙とペンを用意してた。確か盾の勇者のファンとかローナと話していた。

 

 斧の勇者のファンも結構いるらしく、冒険者に多いらしい。

 歴代の斧の勇者は優れた傭兵に多いとか。

 

「……別にいいぞ「ん? そこにいるのは尚文じゃねえか?」チッ」

 

 来たよ、バカ勇者の一角が。

 女好きの槍の勇者、北村元康だ。

 

「お前も波に備えて来たのか?」

 

 目付きがなんともいやらしい。蔑むような視線で尚文を上から下まで一瞥する。

 他人をバカにしてるけど、自分がバカだとは気づいていないとか本当に滑稽な野郎だな。

 

「なんだお前、まだその程度の装備で戦っているのか?」

 

 後ろのアバズレのせいでこうなってんだよ。

 早く気づいて愛の狩人になってくれない? 後ろの赤豚をバーストランスXをしてくれ。焼豚プリーズ! 

 

「ナオフミ様? こちらの方は……?」

「…………」

 

 あ、嫌なのか立ち去ろうとした。

 わかる。関わると疲れそうだ。

 

「チッ」

「あ、元康さんと……尚文さんと……」

 

 あー3バカの一角にまた会っちゃった。

 バカに構わないのが本当は楽。

 

 ほらほらヒソカも3バカには興味がなさそうだ。

 ……ウチのパーティーの奴等をジロジロ見てるけど。止めて、ターゲットにしないで。

 

「…………」

 

 ほら~剣の勇者が来たじゃないか。

 3バカ揃ったじゃないか。

 

「あの……」

「サイン……」

「誰だその子ら。すっごく可愛いな」

「…………」

 

 シルフィが嫌悪感を抱いている顔だ。

 真実も知ってるし、盾の勇者をバカにした態度取ればそうなる。

 

「始めましてお嬢さん。俺は異世界から召喚されし四人の勇者の一人、北村元康と言います。以後お見知りおきを」

「は、はぁ……勇者様だったのですか」

 

 ラフタリアさんの目が踊ってるよ。

 

「あなたの名前はなんでしょう?」

「えっと……ら、ラフタリアです。よろしくお願いします」

 

 ローナは元康を養豚場の豚を見る目である。

 ヒソカは眼中に無いらしい。今キラークイーンを見てる。

 

「アナタは本日、どのようなご用件でここに? アナタのような人が物騒な鎧と剣を持っているなんてどうしたというのです?」

「それは私がナオフミ様と一緒に戦うからです」

「尚文と!? ダメダメ!! あんな奴と一緒にいたら」

 

 尚文がキレて元康につっかかる。

 シルフィも事情をしってるからキレそうだ。

 

「……なんだよ本当の事だろ。ハッ、お前が波で出来ることは、せいぜい自分の命を守りながら俺の活躍を見守るくらいだよ!」

 

 こっちも腹立つと言いたいところだが、これから酷い目に会うのはそっちだし、まもなくするとゲームの知識が牙を向くだろう。本当に滑稽だ。

 

「お前、こんな可愛い子を何処で勧誘したんだよ」

「貴様に話す必要は無い」

「てっきり一人で参戦すると思っていたのに……ラフタリアお嬢さんの優しさに甘えているんだな」

「勝手に妄想してろ」

 

 ヒソカが俺のケツを見てる。なんで? 

 

「おや? その色紙は?」

「…………盾の勇者様にサイン貰おうかと」

「ダメダメ!! こんなクズに憧れちゃダメだ!! 貸して!!」

 

 おい……色紙をぶんだくったぞ。

 それでペンでサインを書く。『北村元康』と。

 空気読めよバカ。

 

「はい、どうぞ」

「…………」ビリッ!! 

「は? なんでクボハァァ!!?」

 

 槍の勇者のサインを破り、アッパーカットを顎にぶちかます。

 

 ナイスパンチだシルフィ! ヒソカも感心しているって顔してるぜ! 

 

 うっわ空中できりもみ回転してる。

 エンジェルビーツってアニメのテスト回を何故か思い出す。あのアニメの野球回も好きなんだ。

 

「モトヤス様ァァァァァ! 亜人風情が何するのよ!!」

「アンタらは何様のつもりですか? 女王が帰って来たら覚悟した方がいいですよ」

「この下民が!!」

「下民? 私達の事?」

「はぁ? アンタら以外に誰がいるのよ!?」

「ほぉ~」

 

 あーあ、ゼルトブルの勇者とフォーブレイの王族に喧嘩売っちゃった。

 出荷の日にちが早まったな豚が。

 

 元康は見事に気絶してる。こんなんで気絶すんなよ、シルフィは手加減してるのに…………。

 

「クックック、ハーッハッハッハッ!! 行くぞ、ラフタリア!」

「あ、はい! ナオフミ様!」

 

 少しだけスッキリした顔して、ここから出ていく。

 また後で。

 

「それで、あなたは何者なんです?」

「盾の勇者に説明したけど、斧の勇者の山川ハジメだ。専属はゼルトブル。メルロマルクの波を手伝いに来たからシクヨロ!」

「斧? 四聖勇者の他にも勇者がいるのか?」

「うん? さっき盾の勇者に説明したけど七星勇者って言う勇者もこの世界にはいるんだ。この国にもいるぞ? 一人」

「…………」

 

 コイツらもなんでこんなに常識とかわかんないんだ? 

 戦いで勝率上げたかったら情報収集とかするのに。

 

「フン、斧の勇者だかなんだか知らないが足手まといになるなよ」

「同感ですね。僕らだけで十分です」

「まあ、手伝いだからサポートするさ、村とかあったら防衛とかやっていくよ」

 

 こっちはアウェイなので下手に出よう。

 

「…………で、ヘルプの編隊機能は見たのか?」

「編隊機能?」

「何だそれは?」

 

 そう言えば見てなかったけ? 原作で知らないとか言ってたような。

 

「登録した人間を波の時に一緒に転移するって機能。軍隊とか大人数も連れていける。荷物とかもOKだ」

「平気ですよ、照明弾も持ってますし、僕らだけで十分な戦力でしょう」

「軍隊を率いて1時間かかる場所だったり、1日かかる場所もあるだろ? 近くに村かあったら避難誘導するのは誰だ? 町かもしれないし、規模もわからない。雑魚モンスターの掃討は? 人数いた方が得だ」

「確かに…………」

「なお、この編隊機能は結構役に立つ。ゼルトブルの波2回とも死人ゼロだった」

「流石ですね」

 

 死人0は本当に運が良かった。

 こっちも仕事だし、手は抜きたくないし。

 

「どっちか二人は国の軍と相談してくれ」

「わかった、俺が行こう」

 

 錬君ったら本当に話が分かる奴だな。

 冤罪の時に、何故尚文を庇わなかったのか不思議だ。

 

「それじゃまた波で会おう」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ああ、今回は俺一人に任せてくれ」

「え……でも」

「良いんだ!」

 

 ラフタリアはビクっと驚いて縮こまる。

 バルーンが尚文の目の前にやってきた。

 

「オラオラオラオラ!」

 

 尚文はバルーンを殴り付ける。

 それを少し離れた場所から見守るラフタリア。

 

「ナオフミ様…………」

「ウェェェェェェン! ローナァ! 助ケテェェェ!」

「え?」

 

 小人の様なナニカがバルーンに食われそうになっていた。

 ラフタリアはバルーンを切り裂き、小人を助ける。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「ウェェェェン! 見ツカッチャッタヨォ~!」

「はい?」

 

 小人は泣き出してしまった。

 

「ナオフミ様、ちょっと…………」

「どうした、ラフタリア?」

「小人みたいなのが…………」

「小人…………何処にだ?」

「えっ? あれ? 今さっきまでここにいたのに……って、なんで微笑んでいるんですか!?」

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ヒソカ、見つけたぞ」

「ハジメ」

 

 ヒソカを見つけた。ナオフミ達はいない。

 ちょっと聞きたい事がある。

 

「お前なんで死んだ?」

「団長とのデートさ、負けちゃった♣️」

「…………何処でデートしたんだ?」

「天空闘技場」

 

 やっぱり…………そう言えば心臓止まったけど死後の念で生き返ったアレか? それで死んで召喚されたのか? 

 

「酷いよ複数人でやるとか」

「確実に殺っておきたいだろ、ウザいし」

「元の世界に戻ったら皆殺るよ♦️」

「頑張れー」

 

 懲りないなコイツは。

 だから複数人でリンチされるんだよ。

 

「ねぇ、ハジメ。波終わったらデートしない?」

「嫌だ」

 

 波終わったらゆっくりしたいんだけど。

 

「でさ、君の部下相当いい点数だね♥️ 皆念能力者かい?」

「…………」

「怒らないでよ、それまでは協力するつもりさ♠️」

「…………本当だろうな?」

「OKすれば君の部下には手を出さないつもりだよ♣️」

「よぉしわかった。いいぜフルボッコにしてやる」

 

 コイツ…………脅迫とかしているから嫌われてんだよ。自分でも自覚してるだろう。

 しかし、心強い味方だ。

 

「じゃヒソカ、互いに頑張ろうか」

「ああ、最後に君とヤれるなら最高だよ」

 

 ヤれるってはうざいな。

 まあいい、デートは勝つ自信あるし。

 

 取り敢えず、やることやるか。

 

「少し言ってやらなければならない奴がいるな…………」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ただいま~」

「ハジメ様、何やったんです?」

「お兄ちゃん! ちょっと何やったの?」

 

 えっ? 何って…………。

 

「兵士が斧の勇者を探し回ってるけど何やったの!?」

「クズと遊んできた」

「「遊ぶな!!」」

 

 前の世界じゃしょっちゅうやってる事だし。

 チームの奴ら元気にしてるかな? 

 

「あのねーお兄ちゃん、他国で暴れたら不味いでしょ流石に」

「…………いや、しょうがないだろ。これ見てくれ」

 

 

 ~映像水晶再生中~

 

 

「確かにキレますけど……」

「不味いでしょ」

 

 前の世界じゃ俺って結構な異常者だったのか…………。

 

「兵士が騒いでいるでござる」

「あのクズを探しだせって言ってたよー?」

「…………」

 

 ヤベェ、どうしよう。暴れていい許可は俺は既に持ってるがやり過ぎた。

 

「まあいい、波終わったら考えよう」

「お兄ちゃん!!」

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 00:00

 

 ビキン! 

 

 転移したのは森、遠くには村が見えた。

 

 飛び出す影が3つ。そしてそれを追う12人。

 間違いない。3勇者、それを追う仲間達。

 

「ちょっと待てよ、お前等!」

 

 ん? 兵士が沢山来ている! ありがとう錬君。

 

「勇者達の援護に向かうぞ急げ!!」

 

 騎士団? 何処へ行く? そっち波のボスの方角。

 ちょっと、村の避難は? 

 

「おい、兵士共!! 民間人の避難はどうするんだ!!」

 

 すると隊長格はふんぞり返り、

 

「は? 知るか! 勇者様の援護と波の魔物の対処が優先だ!!」

「ふざけんな! 国民の命はどうでもいいのか!! 誰から徴収した税金で生かされているか教えてくれ!!」

「…………」

 

 良かった何人かは立ち止まって、村の方へ走っていった。真の公務員がいてよかった。

 

 雑魚モンスターの掃討はいいんだか、民間人の避難はどうすんだよ。

 

「ったく、あれ? 尚文は?」

「先に行ったよ♦️」

「出遅れた」

 

 皆で走った。途中で尚文達を追い抜いた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「俺とキラークイーンとシルフィは防衛線を、春菜、ローナ、夜刀は民間人の避難を!」

『了解!』

 

 取り敢えず波の亀裂から遠ざけるような形に避難する事にした。

 土地勘も無いし、避難誘導は他の奴等に任せてたからわからねぇ。反省だな。

 

「風王列空斬X!!」

「ドライファ・エアスラッシュ!!」

「孤空連打!」

 

 うん、結構いるから2、3割しか倒せなかった。

 それで数出てきてるから増えるしキリがない。

 

「あれやるか」

 

『我、斧の勇者が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る斧の勇者が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者等に光の矢を与えよ』

「アル・リベレイション・ホーリーレイX!」

 

 空中に沢山の光の矢が現れ射出し、魔物達に突き刺さる。ゲートオブバビロンみたいだ。

 

 防衛線近くの魔物は殆ど倒したし。

 あ、まだポップしてくるのか。

 

「何だ…………今のは…………」

 

 あれ? 尚文、遅くない? 

 

「よっ、遅かったな。避難誘導の方へ行ってて良かったぞ?」

「足りすぎてた。お前らの仲間かなり早いぞ」

「皆才能あるからね」

「ヒソカもニヤケ面して戦ってたんだが…………」

「殴っていいぞ? あ、トマホークボマーX!」

 

 チュドーン!! 

 

 防衛線にも過剰戦力だったかな? 

 俺1人でも十分かも。

 

「…………」

 

 何だよ? 

 

「…………七星勇者ってのはそんな強いのか?」

「さぁ? この国の勇者は頭が回るらしいけど」

「そんな奴がいるのか? 誰だ?」

 

 あのクズですよ。

 

『我、斧の勇者が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る斧の勇者が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者等に雷の雨を降らせ』

「アル・リベレイション・ライトニングX!!」

 

 これでここら辺の魔物は掃討できたな。

 ん? 波の亀裂が無くなっていく。

 

「それじゃ掃討しますか」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「行くのか宴?」

「…………支援金が欲しいんでな」

「明日でもいいんじゃない? 疲れてるだろうし」

「行った方が食費が浮く」

「そうか…………」

 

 無理強いして止めはしない。

 決闘で負けないとラフタリアさんの本音がわからないし。矢鱈無闇に原作を壊しては行けない。

 

「俺はしばらくここにいるよ」

「そうか、じゃあな」

 

 これから起こる事を話せないのは心苦しい。

 俺は手を振る事しか出来なかった。



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第27話

「世界中の全てがナオフミ様がやったと責め立てようとも、私は違うと……何度だって、ナオフミ様はそんな事をやっていないと言います」

 

 ふむふむそりゃそうだよ。

 証拠もあるしやってないよ。

 

 尚文はラフタリアさんに抱き締められている。

 決闘に横槍が入り、奴隷紋が解除された。つまり本当のラフタリアさんの心の中の真実である。

 乱暴されたり、嫌なことされたんだったら抱き締めないし、そんな言葉は吐かないだろ。

 

「どうか、信じてください。私は、ナオフミ様が何も罪を犯していないと確信しています。貴重な薬を分け与え、私の命を救い、生きる術と戦い方を教えてくださった偉大なる盾の勇者様……私はアナタの剣、例えどんな苦行の道であろうとも付き従います」

 

 呼吸器系の風邪引いてたんだっけ? 

 体調を考えてくれる上司ってホワイトだし、特に問題無いだろ。この部下愛をパリストンにも見習って欲しい。

 

「どうか、信じられないのなら私を奴隷にでも何でもしてください。しがみ付いてだって絶対に付いていきますから」

「くっ……う……うう……」

 

 師匠、元気にしてるかな? 

 

 あ、錬と樹が出てきた。

 反則だって言って、降りてきたよ。それで風の魔法等を説明していく。

 

「……ちぇっ! おもしろくなーい」

「ふむ……非常に遺憾な結果だな」

 

 本当に不愉快だなコイツら。

 自分らの国に呼んでおいて、この仕打ちはおかしいだろうが。結構この国に批判があるの知ってるのか? 

 あまりにも横暴だから女王キレてるらしいぞ。

 

「回復魔法ありがとう。次も勝ってくるか」

「では、これより槍の勇者と斧の勇者の決闘を開始する!」

「んむむ?」(酷くない?)

 

 今俺の状態はガムテープを口に張られ、手と腕を縛られそこに重りをつけられている。

 

 どっかの霊界探偵の様な状態だ。ハンディキャップがヤバ過ぎない? 

 

「んふぅ」(クズが)

「聞こえんなぁ~貴様がやった事を後悔するがいい」

 

 民間人を守った俺になんて仕打ちだ。

 つーかお前波に参加しなかったくせに何故ふんぞり返ってんだクズ? 

 

「勝敗の有無は敗北を認めることとする!」

「お前、何やったんだよ」

「んー」(教育)

 

 少し感情的になりすぎたと思う。

 だけどクズが哀れで仕方なかった。

 

「まあ自業自得だと思うぜ。それにせっかくサイン書いたのに破くような部下の上司だ。どうかしてるぜ」

 

 いやいやシルフィがお前にサイン書いてと頼んだのか? 

 お義父さんにした事も思い出して欲しいですな。

 

「少し可哀想だと思うが報酬が上がるんだ。悪く思うなよ」

 

 なお、最初は三勇者とその仲間達でリンチする予定だったが、錬と樹は拒否。まあ、波を手伝ったからな。

 

 元康は報酬が増える条件なので参加。

 春菜達には黙って見ておけと言っておいたから援軍は無い。

 

「では──」

 

 縛られたままじゃ戦えない。

 少し能力使うか。

 

「勝負!」

「うおおおおおおおおおお!」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「バカ……な…………」バタリ

「もう終わりか?」

 

 縄も外れ、普通に立つ。

 そこまで強くなかったし、あくびを数回しちゃった。

 

 ざわざわ

 

 あーらら、賭けとかやってたから大損みたいな様子だな、ローナに俺にベッドしろと言っておいたから儲かってるだろう。

 現にローナがホッカホカな顔してる。

 

「さ、帰るか」

 

 この後クズの命令で、城の兵士達が襲い掛かって来たので気絶させた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 翌朝、リュート村。

 

「…………死人が出たか」

「…………若干名ですが」

 

 俺の所の波は死人出してなかったけど、出たら悲しいよな。さすがに。

 

 こっちの兵隊も連れてこれば良かった。

 次来るときは連れて来よう。

 

「…………」ザッ

 

 あっ尚文だ。

 

「よっ、大変だったな」

「「…………」」

「ん?」

 

 あれ? どうした二人とも? 

 怖いよ顔が。

 

「お前のせいで大変だったんだが?」

「……?」

「逃げた時に兵士を傷つけたからその分を引かれて支援金が無しだった。味方って訳でもないのにだ」

「あ」

 

 そう言えば、クズに直談判しに行って尚文を擁護したな。

 …………それでとばっちり食らったか。

 

「ああ、それでも足りないから所持金殆どと装備の一部が奪われた」

「これ有り金全部だ」

「寄越せ」

「装備はどうする?」

「いらん、武器屋で調達するから売れる物だ」

 

 石でいいかな? 少し珍しい素材とかもいいだろうか? 行商するんだから丁度いいだろう。

 

「…………どこから出した」

「武器の中から」

 

 大きな袋に詰めてやろう。

 台車とか無いだろうか? あ、あった。

 

「こんくらいかな、希少な薬とかに使う素材も入ってる」

「一応貰っておく」

 

 ドロップの保有数の2、3割だろうか? 

 結構出した。

 

「って事だ、もう俺に関わるな」

 

 台車使ってどっかに行こうとする。

 不味い。勇者同士仲良くしないと。

 

「待って待って、三勇教って知ってる?」

「…………」スタスタ

「ちょっと! ウェポンコピーって知ってるか!?」

「…………」スタスタ

「なあ! クラスアップの斡旋するから勘弁してくれ!」

「………………」スタスタ

「待って止まって女王の……」

「……」ピタッ

 

 よーし、止まってくれた。

 人間だから話せば分かる。

 

「女王に会えば無実を証m」

「俺に関わるな!」ギロリ! 

 

 俺、前にネテロ会長をパリストンと一緒に虐めてたら、十二支んが無言でブチキレた事があったんだ。

 怖かったんだけど、尚文のブチキレもそれと同等に怖い。

 

 あー尚文が行っちゃった。

 

「やっちまった…………」

「自重しようね」

「うん」

 

 やっべぇ、主人公をキレさせちゃったよ。

 おいおい……どうする。有能だから付き合いたかったんだけど。

 

「どうしよう…………」

「名誉挽回のチャンスがあったら頑張りましょう…………」

「ああ……」

 

 物語上、多分また会うと思う。

 その時に挽回しよう。

 

「やぁ、嫌われたね♦️」

「ああ、出来ればゼルトブルにスカウトしたかったんだけどな」

 

 なんだヒソカか。

 シルドウェルトの使者の誘いにも乗らなかったので無理強いはしたくない。

 

「そう言えばどこで俺の事知ったんだ?」

「フォーブレイで見かけたよ。鞭の勇者だったけ? ソイツと揉めてるときにね♣️」

「全然気が付かなかった」

 

 砂時計で会った時ににやっと笑ったので、俺の事をどっかで知ったと思ってた。知らなかったら顔が驚くだろうし。

 

「取り敢えず、情報交換しないか?」

「賛成♠️」

 

 転生者等の波の尖兵、四霊結界、波の正体と黒幕の存在、フィトリアたんの事とか。ポータルとかも。

 

「それホント?」

「マジだ。能力等で調べた」

「凄いね♥️」

 

 ♥️マーク付けんな。

 

「じゃあ僕から、と言っても少ないけど──」

 

 

 ~投擲具の勇者説明中~

 

 

「…………それ本当か?」

「本当、逃げられたけど」

 

 それが本当ならあの事も説明がつく。

 やっぱり、イレギュラーの存在があったのか。

 

「情報提供感謝する」

「こっちも、フィトリアってのにも会ってみるよ♣️」

 

 フィトリア、ボコボコにしていいぞ。

 俺が許可するッ! 

 

「さてと、俺らは帰りますかな」

「僕はもう少し尚文と一緒にいるよ♦️」

「お手柔らかにな」

 

 こうして、俺達は本拠地に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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第28話

後々和解します。


「さて、ドラキューア山脈に行きますかな?」

「皆他の冒険者に迷惑とかかけてないよね?」

「アイツら個性強いから十分ありうる」

 

メルロマルクでやらかした翌日。

ドラキューア山脈に行かせた配下達の様子を見に出かける。

 

資質上昇とかもさせたいし、技術系の能力者もいるので素材とかも欲しい。

後方支援ってのは相当大事。

 

「さて、ミリーの棺桶持ったか?」

「はいでごさる」

「………zzz」

 

カリンの未来予知では特に悪いことは起きないので、暇なコイツを連れていく。つーか寝てる。

 

夜しか動けないけどね。

その代わり強いけど。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ボス! お疲れ様です!」

「ご苦労、オリガ。首尾は?」

「全隊殆どLv70を越えています!」

 

こいつはオリガ。一番隊の副隊長を務める女だ。

外見は鬼の様な感じで、人間の比率が多い。だからモテる。

 

「で? グランとテスタは?」

「昨日から帰ってません。夜通しレベル上げと素材を回収をしてます」

「マジで? 体力ついてんなアイツら」

「私とテスタは止めたのですが………親父がどうしてもと、心配なのでテスタが着いてきました」

「あの人豪快ですね………」

 

グランは隊長、テスタは副隊長だ。

グランの外見は体長3m程の巨大な鬼。テスタは体長2m程のオーク。

グランとオリガは親子。レイに捕まえられる前は大規模な盗賊団を率いてたらしい。

 

「他の兵は休舎で寛いでます」

「オーケイ、馬鹿コンビは?」

「二番隊の二人も帰ってきてません。マリオンは帰って来た見たいですけど」

「ちょっと見てくるわ。Lv上げ頑張れ」

「ハッ!」ビシッ

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「あれ? ボスではありませんか?」

「マリオン、馬鹿コンビは?」

「まだ帰ってきません………」

 

二番隊の宿舎に着くと、上半身が黒髪のショートヘアで下半身が蜘蛛の美女が出迎える。

マリオンはアラクネなのだ。

 

オリガと同等に綺麗なのでモテるとか。

 

「アイツら結構奥まで入ってるだろ?」

「ええ……あの二人を止めたのですが………」

「話とか聞かなそうだもんな………」

 

隊長のカクライ、副隊長のグスタフが馬鹿コンビだ。

カクライは天狗、グスタフがミノタウロスだ。

 

二人は元冒険者で同じパーティーに居たとか。二人ともテンション高く、よく領地で能力とか見せてる。

 

この隊の念能力者は、全員具現化系の念獣という面白い事になってる。

 

あの時クワガタを見せてたのはカクライ。

本人を叱った所、別に能力は作るとの事で念獣は名刺代わりと言うことになった。

 

「まあ強い方だし、大丈夫だろ」

「一昨日から帰ってきてないんですけど………」

「元気でござる………」

 

ザワザワ!

 

「ん? 何か合ったんですかね?」

「魔物でも表れたか?」

 

まぁ冒険者が駆逐しないといけないんだよね。

仕事しますかな?

 

俺達は外に出てみると、人だかりが出来ていた。

あれ、なんだあのデケェ猪と魚?

 

「おい! 俺らの方がデカイだろ!!」

「いや! こっちの方がデケェに決まったんだろうがボケ!!」

「あ!? ふざけんなよタコが!」

「………もう喧嘩止めましょうよ」

 

あれー? 何やってんの君ら?

今さっき話した一番隊と二番隊の四人だ。

 

「おい、なんの騒ぎだ?」

「「「「お疲れ様ですボス!」」」」

「……ああご苦労」

 

言い争いしてたのになんで息ピッタリの発言できるの?仲良いね。

 

「それで何があった?」

「数時間前にバッタリあって──」

 

話をまとめると、レベル上げしてる際にバッタリ会い、どんな大物倒したかって事を話したそうだ。

段々とヒートアップし、どれだけ大きな獲物を捕まえられるか勝負になったらしい。

 

多分グランらは水場で、カクライ達は森とかでハンティングしてたのだろう。能力的に。

 

「だからこっちの方がデカイだろ!!」

「いいやこっちだボケ!」

「ブァーカ!」

 

ブチッ×3

 

「「「やんのかテメェェェェ!!」」」

「止めましょうよ………」

 

うわっ戦うのか? 掛け声の息ピッタリ。テスタには戦う気無いみたい。

テスタ加勢したらグラン達の勝利なんだよな。

 

グランはカマキリの刃、カクライは大きなオオクワガタ、グスタフはティラノサウルスを具現化。

 

グ、グラン、お前カマキリって………マジ?

いや、ギリギリいけるか?

 

空気がピリピリした後、それが弾けた。

 

「マンティスブレイド!」

「月下美刃《ダブルボランチ》!」

「竜王戦《デンジャラスゲーム》!」

 

バカ! 人が結構多いんだぞ!?

暴れたら建物とかにも被害出るだろうが!!

 

仕方ない止めよう。

 

「いいよ、お兄ちゃん。私止めるから」

「いいのか?」

「うん」

 

ここまで言えるって成長したな。

春菜の能力って万能だしな。

 

「なっ!」

「ぐ!」

「がぁ!」

 

この三人の身体中に六角形の重りの様な棒が複数出現する。

ワートリの鉛弾って言った方が分かりやすいだろう。

重いために、三人は動けなくなる。

 

「さて、どうするの? 何だったらまとめて相手しよっか?」

「降参だ」

「「俺らも」」

 

三人共に能力を解除する。

おっふ。やるな。

 

「お兄ちゃん、どうする?」

「取り敢えず処理しよう。猪の肉は干し肉でいいかな?」

「魚は?」

「半分は皆で食べて、残りはシーラに運ばせる。今領地にいるし」

「後で連れてきましょう」

「ボス、食材になりそうな魔物を結構狩って血抜きしてるんですが、今氷魔法で保存してます」

「ナイス、それも運ばせよう」

 

シーラは20人の弟子の一人で、立て籠り時の人質だった商人の娘である。

助けた商人がお礼がしたいからと言って、俺の領地に送ってきたのだ。

 

後方支援系の職種も仲間に入れたいし、奴隷紋を付ける事を了承してくれ、能力者になった。

 

今、商会を設立して商いを始めてる所だ。

ロクスと提携したりして商品開発したり、冒険者用の武器や薬とか準備してるらしい。

 

「さて、猪と魚を運ぶぞ」

『へーい』

 

俺達は炊事場まで食材を運んでいく。

 

「さて、ローナ。頼めるか?」

「出来ますけど、全部捌けるかどうか………」

 

確かにこの量はな………。

俺も普通以上に出来るし手伝うか。

 

「よし、儂もやろう」

「グラン………?」

 

外見や行動が豪快だけど出来んの?

料理って繊細な事だぞ?

 

面白そうだからやらせてみるか。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「何これウマイ!」モグモク

「親父って昔から料理上手いんですよ。盗賊団の時もよく皆の食事作ってましたし」

「わーお」モグモク

 

グランの飯が思った以上に美味しかった。

ローナも美味しいんだけどこっちが上。

 

魚の柔らかさ加減や調味料の絶妙なハーモニーがたまらない。魚と森にある食材でこれだけ旨い料理を作れるって凄い。

 

「親父の技術も凄いんですけど、カクライやグスタフも凄いそうですよ」

「俺は鍛治ができる。実家が武器屋」モグモク

「俺は実家が漁師だから釣りが得意だ。罠とかも作れるぜ」モグモク

「後オルクは薬屋の三男坊なので薬草とか詳しいそうです」

「技術者多いな」モグモク

 

へ~オルクの奴も結構やるんだな。

 

「ローナの肉炒めイける。味付けもいいな」

「ありがとうございます………」

 

料理対決で負けたから落ち込んでるなコイツ。

慰めてやろうか。

 

「十代でそれだけ料理が旨ければ将来有望だろ。強いし役に立ってるし問題ねぇよ」

「ハジメ様………」

 

頭をポンポン軽く叩いてやる。

ローナはグランより強いからな。弟子の中では五本指に入る実力者だ。

 

「ボス、お代わりありますぜ」

「頂こう」

「拙者も食べるでござる」

 

俺は美味な料理に舌鼓を打つのだった。

 

 

 

 

 

 

数日後、ここにヒソカが来るのだが………隣に相方を連れていたらしい。

 

その相方がよーく知ってるキャラだということを知るのは、まだ先の未来であった。




暫くですが領地経営等が続きます。


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第29話

 グランの飯を食べた翌朝。本拠地と往復し、運び屋を連れて来た。

 

「すまんなシーラ、呼んじゃって」

「問題ナッシングです。結構な量ありますし、薬とかの材料があるのでそこから引いときますが」

「問題無し」

「そこに置いといて下さい。これで全部ですか? 閉めますよ?」

 

 そうしてシャッターが閉められる。

 そう、これがシーラの能力、宝物庫《スペーシア》。

 

 単純に言えば倉庫で、シャッターを具現化して、物品を出し入れする事ができるのだ。

 ノヴさんの能力の劣化版で、どこでもドアみたいな事は出来ないが。

 

 正直、商人向けの能力だと思う。

 だって、多少の数量の品物や貴重な商品を手ぶらで運べるんですもの。

 移動速度速くなるし、盗まれる事も無い。

 

 移動能力があれば更に良し、ポータル系とかと組ませると大量の商品を一瞬で遠くへ運べる。

 

「ボス、それではまた1週間後に」

 

 資質上昇はしておいた。

 また1週間後にな。

 

 さて、俺らのシマに戻りますか。

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

「魔貫光殺砲!!」

 

 念弾を飛ばし、機械の様な鳥の頭から尻まで貫く。

 声をも出せずに墜落していき、大量の経験値が入ってくる。

 

「ったく、このダンジョンはなんだ?」

「確かに…………活性地みたいなダンジョンってのもおかしいし」

 

 この遺跡はなんの為にあるか領民に聞いてみたが分からなかった。相当大昔からあるらしい。

 

 大昔で、特に代々領民が気にしてないって事は危険は無いってことか? もし龍脈から吸い取ってこのダンジョンを作っているのならブラド砂漠の様にクソ女神が関わってそうだ。

 

「この遺跡、転生者が作ったんじゃ…………」

「俺も思った」

 

 ダンジョン作るってのもロマンとかあると思う。

 

「GYAOOOOOOOOO!!」

「ちなみにここは30階ね」

 

 10階づつにボスがいるようだ。

 巨大な機械仕掛けのグリフォンですぞ。

 

「天道・煉獄刃!!」

 

 おっと、夜刀ちゃんのオリジナルが炸裂、頭部を縦一文字にぶった斬る。

 

「父様、勝ったよ!!」

「よーしよしよしよし」

 

 セッコって名前の方が良かったかな? 

 後で甘い物でもあげようか? 

 

「で…………ここがゴールみたいですね。下に降りる階段が見当たりません」

「ちょっと円でも使ってみますか…………あっ前の壁に空間があるぞ?」

 

 隠し扉でもあるのかな、ロマンだね! 

 あ、よく見てみるとパズルみたいになってる。

 

 懐かしいなぁ。アルフの遺跡のパズルとか良くやった。あのBGM嫌いなんだよなぁ。不気味だし。

 

「これどうやるんだ?」

「ええっとこれをこうやって…………」

「これをこうするんじゃ…………」

「分からないでござるよ」

「お腹空いたー」

「違う、それはここ」

 

 

 1時間後。

 

 

「で、俺とモン吉が揃って言ったんだ『このテロリスト共が!!』って」

「「「出来たー!!」」」

「あ、終わったごさる」

 

 声を上げたのは春奈とローナと夜刀ちゃんである。

 春奈ってば元々頭よかったし、パズルとかナンクロとか家でやってた。

 ローナも暗算が得意だと言ってたし。

 

 夜刀ちゃん? 君、産まれて何ヶ月でしたっけ? 

 もしかしてキメラアント? 

 

 ゴゴゴゴゴ

 

 開いた。

 入ってみると何かのコントロールルームぽい。

 

「なんか近未来だな」

「秘密基地っぽいね」

「ここに何か書いているでござる」

「何語ですかコレ?」

 

 いや、これは…………

 

「「日本語?」」

 

 日本語、って事は日本人かよ。

 で? 読んでみよう。

 

『私は日本から召喚された勇者だ』

 

 日本から召喚された勇者ってことか、波の尖兵ではないってことだな? 

 

 えっと、読んでみよう。

 何何、とある国に召喚されたそうだが追い出されたそうだ。

 最初は優しく接してくれたが、身に覚えの無いミスが多く、段々信頼を失っていき、仕舞いには犯罪の濡れ衣を負わされたって。

 国家反逆罪で国を追われることになった。

 

 仲間はクズで、戦士の男は金にがめつく、多額の金で寝返り、魔法使いの女は恋人だったがビッチで、国の王子に寝とらせプレイの一貫で仲間に入ってたので裏切り、頼りの盗賊の女は金を持って逃げた。

 

 こりゃ人間不信になるだろう。

 つーかその国に転生者居ない? 洗脳系、闇魔法の能力とかで魅了とか出来そうだし、王子辺りが怪しい。

 

 あ、王子に殺されかけたって書いてある。

 それを周りに言っても信じてくれなかったそうだ。惨い。このクソ女神が。

 

 で、その後の話。

 

 レジスタンスと合流し、この国の王族や元仲間をぶっ殺し回ったとか。

 

 王子が死ぬ前に「やっとやり直せたのに」って言ってたらしく、転生者がいる可能性が高いと書いてあった。うん、その通り。

 その後、レジスタンスに国の運営を任せ、人間が嫌になったのか、隠居生活をしてたとか。

 

 それで武器の力でダンジョンを作ったらしい。

 で、何故経験値が高いか書いてあった。

 

「プラド砂漠の経験値システムに繋がってるのか…………」

「武器の力と経験値エネルギーがあるから機械仕掛けの様な魔物が出るシステムを作れたって、書いてある」

 

 どうやって繋がったのかは知らないが、良い経験値を感謝するぜ。

 

「それでここらがエネルギーを溜め込んだりしたり、ダンジョンを動かしたりする部屋って事か」

「秘密基地みたいね」

 

 この部屋から入り口までの直通の抜け道があった。

 1分くらいで行けるみたいだ。

 

 さーて、このダンジョンで大儲けしますか。

 

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 

「やあ、尚文♦」

「なんだヒソカか」

 

 俺達は村の利権を掛けた元康とのレースに勝ち、村長から行商の通行手形を貰い、更には馬車まで譲ってくれた。

 

 それでヒソカの隣の奴って……

 

「そろそろ僕は本拠地に帰るとするよ♠︎」

「ああ元気でな」

 

 ヒソカとの初見は、俺らがレベルの高い魔物に襲われた際に助けられた。

 その時に俺達は死を覚悟した。

 

 魔物を一瞬で倒し、そのまま一緒にレベル上げを手伝い、更には時間を推し進めてまで波を手伝ってくれた。

 

 薄気味悪い奴だか、近づいた理由があるのだろうか? 

 恩はあるがロクな事考えてないな、多分。

 

「で、あのハジメって奴は何なんだ? アイツが暴れたせいで俺にとばっちりがきたんだが」

 

 斧の勇者って言ったか?

 俺の事を擁護したそうだが、それで暴れたら俺に矛先向いて来るだろうが。

 味方なのはいいが考えて行動しろ。

 

「前の世界でもあんな感じかな? 犯罪者とか狩ってたらしいよ♣」

「賞金稼ぎとかそんな感じか?」

「その通り」

 

 それならあの強さも納得できるな。

 …………いや、まだ秘密もありそうだ。

 

「風の噂だと領地経営してるらしいよ。かなり繁盛してるみたい。私設兵もいるらしいよ♦」

「領地か……」

 

 良い案だな。税金も取れる。

 波は集団で挑んだ方がいいし、ステータスの補正を使って強い奴隷を育てた方が俺も楽だ。

 俺も真似した方が良いだろうか? 

 

「温泉とかお菓子とか有名らしいよ」

「人が来そうだな」

 

 観光客で沢山人が来て金を落としてくれそうだ。

 

「あのアホ強いのか?」

「強いよ、僕より♠」

 

 お前と仲良くしてる時点で同等かそれ以上だろ。

 多分アイツもコイツで苦労してるだろうな。

 

 また会う時には連携でもとるか。

 …………少し言い過ぎたな、詫びに金と素材もくれたし、悪いやつではないかもしれない。

 

「それで? 隣の奴は?」

「うん、隣の村で気が合ってさ、貰って来ちゃった♦」

「気が合うってオイ…………」

 

 ロクでもないってことかコイツも。

 

「で、名前をどうしようかなって思ってさ、ナオフミに決めてもらおうと思って♣️」

 

 ヒソカが決めるとイタイ名前になりそうだ。

 

「そうだな────」




能力紹介。

◎宝物庫《スペーシア》
・念空間を具現化し、シャッターを具現化する事により物品を出し入れする。具現化系。
・本人が後で気付いた事だが、オーラの最大容量が増える度に体積が増える。ただ今の体積、12m×12m×6m。
・温度調節機能付き。


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第30話

今年最後の投稿。


「で、カマゲロスは言ったんだ『全員可愛がってやる』って」

「うん、分かんないー」

「分かんない方がいいね、あ」

 

 知ってる背中を発見する。

 

「おーいオルク! パリスもいるじゃん」

「あれ? ボスとキラークイーンじゃないですか」

「お疲れ様です」

 

 夕方、キラークイーンと一緒に風呂入ろうとしたらとある二人に見つけた。

 二人とも警備の仕事をしている。

 

 1人目はオルク。

 志願してきた1人で、元々冒険者のパーティーに所属していたが、とある事があり追放されてこの領地に辿り着いた。

 初対面では雨が降っており、目が死んでいた。

 しかし、地獄の特訓を潜り抜けてはもの凄い元気になった。尚文と同等の酷い事されたらしいのにだ。

 今では所属している場所はないが、もし4番隊を作る際にはコイツを隊長に置こうと思っている。

 意外と戦闘能力がある。

 

 2人目はパリス。

 レイに改造された人間で形は一つ目小僧である。コイツは3番隊の副隊長も勤める。

 可愛い外見だが声は渋く、よく女子にモテるらしい。

 元々猟師だったらしく、警備の時は猟銃を持っており、いい獲物がいたらよく狩ってくれる。

 

「二人ともどこ行くんだ? オルクは非番だろ?」

「新しいバイオプラントが出来たって聞いたので2人で見に行こうかなと」

「あれかー確かに耳に入ってた」

「キラークイーンも見たいー」

「俺らも着いてこうかな」

 

 そう、バイオプラントである。

 実はフォーブレイの観光で見つけたのだ。

 

 発見したのは春菜の知り合いの科学者がいる研究所だ。

 バイオ関係の研究をする所らしく、廃棄物の所に捨ててあったので許可を貰い武器に入れたのだ。

 他にも植物系や、ゼルトブルでは出現しない動物の素材があったのでそれも武器に入れた。

 

 面白半分で植えたら斜め上の結果になったが。

 

「これウツボカズラみたいになってるな」

「ここからジュースが出てくる見たいですね」

 

 ウツボカズラの様なバイオプラントだ。

 この中に実はジュースが溜まっている。

 

 植物改造と知能上昇をし組み合わせたらこうなった。他にもジュースの木はあるが、それぞれ味が違うのだ。

 さて、これ味見してないんだよな。

 

「ん、シュワッてして甘いですね」

「どれどれ俺も…………」

 

 ごくごく、炭酸だな。ぶどうの様な味似ていて、スッキリ後味だ。

 …………? 飲んだことあるぞ。

 

「シュワッてして美味しいねー」

「これコーラだ…………」

 

 嘘でしょ!? 異世界来てコーラ飲むなんて最高じゃないですか! 

 春菜にも後で教えておこう。

 

「他にも木があるみたいですぜ」

「よーし飲んでみよう」

 

 ごくごく、イチゴ? これは!? 

 

「いちごミルクじゃん。上手い」

「美味しいー!」

 

 美味しいや。小さい頃からいちごミルク大好きなんだ。

 子供とかに人気が出そう。

 

 次行きますかな? 

 

 ごくごく、甘い。乳酸飲料の様な味からスッキリとしたのどごしが良い。

 

「カルピスウォーターだ」

「これ美味しいですね」

「うまいー」

 

 カルピスってのもいいね。

 そろそろ甘いのから他のに行きたいね。風呂上がりに飲みたい。

 

 はい次、ごくごく。!!? 

 

「ブフッ!?」

「ボス? どんな味です?」

「湿布だ」

「はい?」

「ルートピアだ…………」

 

 沖縄とかで売られている飲料だ。

 家族旅行で飲んだが1割しか飲めなかった。何故こんな飲み物があるんだよ。

 

「スースーしてて美味しいよー?」ゴクゴク

「は? マジ?」

「確かに」ゴクゴク

「あ、ホントだ」ゴクゴク

「えっ……」

 

 異世界人とは舌の作りとか違うのか? 

 ありうるな。

 

 最後に1つのバイオプラントがある。

 これなんだろう? 

 

 ごくごく、甘

 

「ぶうへぇぇぇっ!?」

 

 思わず吐いてしまった。これ飲み物やない。

 

「ゴホッゴホッ!」

「ハジメ? 何の味……ブフフゥゥゥゥゥゥッ!!?」

 

 思わず咳き込んでしまった。

 キラークイーンも飲んだが思いっきり吹いた。

 

「ボス?」

「飲むなゴホッゴホッ!」

 

 この黒い液体は!? 

 これには本当にお世話になりました。

 

「焼肉のタレだ……」

「ええっ……」

 

 口が焼肉を食べた後の様な感じだ。

 まさかの調味料だとはビックリだ。卵かけご飯と会うんだよね。

 

 後で料理の方へ知らせに行こう。

 

 でもジュースの出る木ってのもいいよね。

 調味料とかでるとか料理のレパートリー増えそう。

 

 繁殖力無くして飢饉の村とかにでも配布しようかな? 後で見返りでも貰うがな。

 

「ボス、口直しにあの実どうですか?」

「あれ少し渋いからあの実の方がいい、リンゴ風味だから口が爽やかになる」

 

 木によって味が違う。

 知性を伸ばしたらみんな違う個性になったし。

 

 人によって性格が違うように、植物も違うんだな。

 植物同士コミュニケーションを取ってる種類のもいるって聞いた事ある。

 

 さて、後で温泉入った後にまた寄りますか。

 

 その後の話になるが、春菜はルートピアを飲んでも何ともなかった。平気でごくごくしてた。

 他の奴らもごくごくしてたが、夜刀ちゃんは飲んだ途端吹いた。個人差とかあるらしい。

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 ? side

 

「はい、授業はここまで」

「気を付け、礼」

『ありがとうございました』

 

 授業が終わり、昼休みに入る。

 僕に取っては最悪の時間だ。

 

「よぉ、一緒に飯食いに行こうぜ」

 

 クラスの人間が誘いに来たが、飯食いに誘っていない。

 僕には拒否権なんてないんだ。

 そして、体育館裏に連れてこられる。

 

「で、金持ってきたのか?」

「持ってこれる訳ないじゃないか……家が貧乏なんだ……」

「おっと〜罰だ。そんな事も出来ないのか」

 

 後ろからキックを食らう。その後地面に倒れるので、周りの人間が群がり、一斉に踏んでくる。

 

 うちは母子家庭な上に借金があり貧乏で、僕も生活費を稼ぐ為にバイトしている。

 学費が安いこの学校に来たのが間違いだった。

 

「ヂッ、三千円しか持ってない」

「役にたたねえ」

「行こうぜ」

 

 コイツらは俺が貧乏で金の無いからカツアゲして楽しんでいるんだ。

 くっそ、何でこんな理不尽受けなきゃならない。

 

「草野君大丈夫!?」

「あ、うん」

「保健室行く!? 何されたの!!」

 

 同じクラスの保健委員の橋平さんだ。

 

「何でも無いし」

「嘘つかないでよ! 見捨てられるわけないじゃないの!」

 

 適当に無視して校舎に戻る。

 そして、教室に戻り弁当を取って体育館倉庫に籠る。

 

「今日は卵焼きか」

 

 母さんの手づくり弁当だ。

 貧乏だから炊事である。

 

 美味い、心が洗われるようだ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 5時間目が終わり、6時間目に入る頃。

 

「それじゃ授業を初め……そうだ草野」

「はい?」

「お前の母さんが通勤中に事故だそうだ。行ってやったらどうだ?」

「は?」

 

 言った途端、クラスの人間がドって笑う。

 はぁ!? 通勤中って言ったら8時くらいか? 

 今2時だぞ!? 

 

「それ何時くらいに連絡入りました?」

「は? 9時位だ」

 

 携帯は一応持っているが、いつも家に置いてる。

 学校も授業中は携帯禁止なのだがみんなこっそりやってる。

 母さんとの約束で学校行く際には携帯を持ってかない事にしてる。個人情報の塊だし、この学校は信頼できない。

 

「何故すぐ教えてくれないんですか!?」

「すまん忘れてた」

「はあ?」

 

 命が関わってるのに他人事かよクズ教師。

 まあ、こんな理不尽な人間に関わってる暇はない。

 

 僕は急いで聞いた病院に向かう。

 

 だが、

 

「母……さん?」

「…………3時間前に息を引き取りました」

 

 間に……会わなかった。

 話によると、母さんは信号無視で死んだらしい。被害者側は生きてるとか。

 …………おかしい。今日は特に慌てた様子は無かった。更には結構運転が上手いし真面目な性格だ。

 

「畜生…………」

 

 何でこんな理不尽に会わなければならない。

 いつの間にか涙が多量に出てきた。

 

「母さん……なんでだよ……」

「最後まで貴方の名前を呼んでいました」

 

 クソクソクソ、何でだ。

 俺が何をしたんだ。前向きに善く生きてたのに。

 何故こんな目に会わなければならない! 

 

 




最後ら辺はこれからやる話の伏線です。

皆さん良いお年を!


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第31話

今年初めての投稿。今年もよろしくお願いします。orz



 とある案件が終わり、ローナと二人で歩いていた。

 

「いやぁーマリオンが裁縫出来て良かった」

「いい衣装が出来上がりましたね」

「これでライブも盛り上がる!」

「ハジメ様って……ん?」

 

 あれ? 警備の奴らが集まってる? 

 何やってるんだ? 

 

「縄を解け貴様らァ!」

「何故僕らが縛られなければならないんですか!?」

「なんだコイツら」

「何をやって……あ」

 

 グラン達1番隊と3番隊のメンツが集まり、ギャーギャー騒いでるから気になって見に来たけど知り合いがいた。

 

「樹じゃん。何やってんの」

「ハジメさん!? 何故ここに?」

「ここの領主だし」

 

 弓の勇者御一行である。

 何故ここにいるんだ。

 

「縄を解いてください! 何で縛られなければいけないんですか?!」

「………何があった?」

「実は……」

 

 

 

 ■

 

 

 

「親父、結構持ってたな」

「ああ、ボスも大喜びだ!」

 

 一番隊は盗賊狩りをしていたらしく、かなりの宝が眠っていたため運搬中だったそうだ。

 

「今日は宴だな」

「イヤッホホウ……ん?」バシッ

 

 オリガは飛んできた矢を掴んだ。

 

「止まりなさい! あなた達がフェイリス盗賊団ですね?」

「「「は?」」」

 

 弓の勇者、川澄樹君だ。

 いきなり攻撃とか何考えてんの? 

 

「イツキ様」

「ええ、あれがアレス家の短剣ですね」

「あの、何かご要件ですか」

 

 テスタか優しく話しかける。

 いきなり攻撃されて対話するとかマジ温和。

 

「その短剣をこっちに寄越して下さい」

「何言ってんだお前?」

「それは盗品です。依頼主からクエストで頼まれたしてね」

 

 お節介やきの冒険者みたいに近づいたんだな。

 副将軍様がよォ。

 

「それが本物だと言う証拠はあるのか?」

「ではその剣の裏を見てください。柄の部分に✕印の傷があるはずです」

「親父、本当だ」

 

 オリガが裏返してみると、✕があった。

 本物って事は間違いなさそう。

 

「それでなんだ? 俺達が苦労して取ってきたのに寄越せってのは酷いんじゃねえの?」

「返さないんですか……仕方ないですね」

 

 樹は武器を変える。

 

「おっと、勇者様か」

「いかにも、どうします?」

「やるよ」

 

 グランは短剣を樹に放り投げる。

 

(いいのか親父?)

(他にも高そうな奴があったし、少し無くなっても問題ねえよ)

 

 グランの判断は間違っていない。

 無益な戦いは避けるべき。戦ったら俺との関係に禍根が出てきそう。

 

「話が分かるので何よりです。ですが……」

 

 まだ何かあんのか天パ? 

 

「あなた達の悪逆は見過ごす事はできません。倒して役人に引き渡します。行きますよ皆さん!!」

『ハッ! イツキ様!!』

 

 結局戦うんじゃねえかよぉぉぉ!! 

 マジでコイツら何様なの!? 脳みそに何詰まってんだよ。

 

「流星弓!」

「山割手刀!!」

 

 樹がスキルを放るが、オリガは迎え撃つ。

 スキルを放った樹が驚いてる。

 

「なっ!? ウインドアロー!!」

 

 風を纏った一撃を放つも、

 

「は? 消え……うぐっ!?」

 

 技が当たる前に消えて、樹の脳天に踵落としを決める。

 脳天は急所だよ。

 

 ドサリと音を立てて樹は倒れる。

 なお、既に他の仲間もとっくに倒れてる。

 

 戦い初めて終わるまで約10秒。

 話にならないとテスタは語っていた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「ふざけないでください! あなたの子飼いの盗賊ですか!!」

「そもそも俺は盗賊を飼っていない」

「それにフェイリス盗賊団は一昨日カクライ達が殲滅しましたし」

「あの短剣はジルク山賊団からかっぱらってきたんだが」

「は?」

 

 短剣を渡したグランは全然悪くないな。

 盗賊だと勘違いした上に、善意で返したのに攻撃してきた。問題だねほんとに。

 

「どう落とし前つける?」

「巫山戯るな貴様ァ!!」

「黙れカス」バキ

「マルド!」

 

 はっは〜パーフェクト=ハイド=ジャスティス破れたりー。狩られる側になった気分はどうだ? 

 

 まあ、まだこの領地は財政難だからなぁ。寄付してもらおうか。

 

「それじゃ有り金全部とドロップ数割寄越せ。後そっちのゲーム知識でお得な情報も教えろ」

「なんですかそれ!? 理不尽じゃないですか!!」

「は?」チャキ

 

 俺は燻製に斧を差し向ける。

 理不尽なのはお前の頭だろうが。いきなり攻撃したり、武器を向けて来たのはお前らの方。殺されても文句言えないし。

 

「わ、分かりました」

「ただしドロップを寄越す割合はそっちが決めていい」

 

 金の方が使い道多い。

 ドロップは売ればいいか。

 

 有り金とドロップを落としてくれた。

 

「それでお得な情報は?」

「穴場の鉱脈はどうです?」

 

 樹は廃坑の採掘場なのに、まだ鉱石が眠っていると言う場所を教えてくれた。クエストでそんなのがあるらしい。

 

 高く売れるらしい宝石もあれば、いい武器の素材になる鉱石もあるようだ。

 

 落とし前はこんな所か。

 あ、ついでに聞いてみよう。

 

「そういえばアルドミティアってどんな国か知ってる?」

「…………なんですかその国?」

 

 知らない? ゲーム知識でも無いって事か? 

 …………他の勇者にも聞いてみよう。

 

 まあ、そろそろ解いてやるか。

 

「貴様ら……こんな事してただで済むと思っているのか!!」

「許さんぞ貴様らァ」

「皆さんやめましょう!」

 

 樹が窘める。

 正直会話が出来ない奴らとか前の世界にいるし。

 まあそんなヤツらを俺達は叩いていたのだが。

 

 こうして弓の勇者とその仲間達は帰っていった。

 

「さあて今日は宴だぞ!!」

「イヤッホホウィ!!」

 

 仕事したしな。お疲れさん。

 後で混ざるか。

 

 

 

 ■

 

 

 

 そして宴会時。

 

「本当に迷惑な奴らでしたね」

「本当だな、親の顔が見てみたい」

 

 アイツらどんな教育を受けたんだ? 

 樹はゲームだと思って羽目外れてるし、その他は三勇教の信者だし。

 

 やだなぁ環境ってのは。

 

「親の顔と言えばハジメ様の親と師匠ってどんな方なんですか?」

「母さんと師匠か…………」

「どんな大胆不敵な人かなと」

 

 大胆不敵って……あ、心当たりがある。

 三勇教会爆破やクズ強襲とか。

 

 前の世界でもテロリストを襲ったり、窃盗団のボスの娘を人質にして攻略を有利にした覚えもある。

 

 他にも破天荒な予定も立てている。

 

「母さんはシングルマザーで教師だったな」

「へぇ〜」

「外見が凄い若いんだ。中学生くらい」

「…………若作りの秘訣とかあるんですかね?」

 

 あんまそういうの聞いた事はないのだが。

 何であんなに若かったんだろうか。

 

 よくアニメで主人公の母親が若いのがよくあるが、現実では少ないんだよな。俺の所はレアだ。

 

「師匠の方は?」

「科学者だな。文化系の職なのにめちゃくちゃ強いんだ」

「凄い人なんですね」

 

 前の春菜に説明したが、ウイルスハンターの星1つ貰った人間である。さらに俺が星貰ったから星2つになったし。

 

「30代前半のくせに外見が10代女子なんだ」

「また若いんですね」

「ああ、能力使ってるみたいだ」

 

 師匠は優しいし気配りも効く出来た人間だ。俺は幸せ者と言ってもいい。

 

 少し変な性癖があるが、それはそれで気があったので問題は無い。

 

「何か話してたら会いたくなって来たわ」

「私も会って見たいです」

 

 ミレナリオの奴も転生して他の世界で勇者してるし、勇者しててまた会える可能性もあるかもしれない。

 

 …………いや、考えるのはよそう。母さんは死んでるからともかく、まだ生きてて欲しい人間はたくさんいるし。

 

 それに俺の仲間には教育上会わせるのはダメだ。

 俺の品性が疑われるし。

 

「そう言えばヒミコさんってどんな人ですか?」

「あー結構元気な奴」

 

 一応忍者なのだが、漁師も兼業でやってるのだ。魚の種類にも詳しいし、釣りも結構上手い。

 珍しい魚とかよく取って売っている。

 

 …………まさか狩猟具とか銛の武器とかで召喚されてないよな。

 

 あーでも俺は前の世界だと斧使わないしなー。それだとは限らない。

 信念とかそんな条件があるのかもしれない。

 

「ローナの家族とかも教えて」

「えっ〜とまず次女の─────」

 

 

 

 

 



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第32話

「そう言えばフィロリアル増えたんだって?」

「ああ、3匹な」

 

 春菜と話をしていたらフィロリアルの話になった。

 3匹ともドラキューア山脈で育てたのだ。

 

 結構レベルが上がったのでそろそろまん丸な形態になる頃だろう。

 

「午後暇だし、一緒に見に行かない?」

「夜に仕事あるから問題無し」

 

 よし、行こう。

 資質上昇で素早さを上げているのでみんな健脚なのだ。

 

「そう言えば叔父さんから連絡入ったけど、準備が整ったってさ」

「マジ? 速いな」

「狩る?」

「まだだ。絶望をプレゼントしないと。それに奪ってかないと損」

 

 ああ、まだやらないと行けない事がある。

 色々交渉とかしなければ。

 

「それと1ヶ月経ったのにあのカスまだ生きてる見たい」

「まだ生きてんのか」

「うん、NTR結婚式は後半に差し掛かったって」

「もう1ヶ月続くのか、ざまぁ」

「うん、そろそろ映像水晶が溜まってるから消化しないと」

「アンナも呼んで一緒に見よう」

 

 あのカスまだ生きてるんだな。

 生前、アイツは暴行や窃盗の常習で、家の権力で捕まらなかったとか。だから前科も無いらしい。強姦とかをやった噂があるとか聞いた事もある。

 好き勝手やってきたんだ。報いを受けろ。

 

「国王陛下にはもっと長く苦しめてくれと頼んでくれ」

「オッケー」

 

 

 

 ■

 

 

 

 到着! 

 

「グア!」

「グアグア」

「グアー」

「へーこの子達が?」

 

 紫、黄、桃色のフィロリアルが寄ってきて並ぶ。

 いやぁー大きくなったなぁ。

 

「名前はなんて言うの?」

「ああ、紫はオアシスちゃん、黄はクリーム君、ピンクはサンちゃんだ」

「え?」

「キラークイーンって名前もなんか鋭利だし可愛い名前にしたんだ」

 

 オアシスは計算高く、忠実、もしくは機転が利く様になって欲しいと思いが込められている。

 

 クリームは相手を見くびらず冷静に相手の性格・能力を分析し、強敵に対して一定の敬意を評する心を持って欲しいと名付けた。

 

 サンは高く強く、そして正確な行動を出来る様になって欲しいと名付ける。

 

「お兄ちゃんは何処まで業を重ねるの?」

「あれ? 不味かった?」

「何で敵キャラのスタンドの名前をつけるの?」

 

 そうか? 可愛い名前だと思ったし。

 

「なあ、俺って頭おかしいか?」

「グア」コクリ

「グアー」コクリ

「グア!」コクリ

「味方いないよ」

「うーん」

 

 チームの中では1、2位を争うほどの常識人なんだけどなぁ。

 やっぱ俺達チームは頭おかしいのか?

 パリストンから『本当に頭大丈夫ですか?』ってよく心配されるし。

 

「本当に大きな原作ブレイクとか止めてね。重要なキャラは殺しちゃダメだよ」

「分かったよ」

 

 やり直しとかでやっちゃ不味い事とかあったな。

 クズとか戦争の抑止力になってるし殺しちゃだめだし、同時にビッチの殺害もダメだ。

 後シルトヴェルドに尚文とか連れてったら戦争になりそう。

 

「ほぉら肉だ」ポイ(っ・-・)⊃ ⌒Ꮚ

「グアー」

「グアアア!」

「グア!!」

 

 ドラゴンを狩ってきましたから肉をプレゼントですぞ!! ガツガツ食っていますな。

 

「お味はどうですかな?」

「「「グアグア」」」フルフル

「え、良くないのか!」

 

 まあ、正直者で良いんだけどさ。

 

「グア?」

 

 ん? サンちゃんが何かに気づいたようだ。

 

「ハジメ様! 来客だそうです」

「は? 今日そんな予定無いぞ。誰だよ」

「ええ、予定無いって私も知ってます。実は━━━」

 

 ローナの話を聞く。

 

「……お兄ちゃん」

「ああ、狐狩りだ」

 

 取り敢えず来客には帰って貰い、後日会う事になった。

 本当にアポ取って欲しいよ。用事があったらどうなるんだ? 

 

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

 

 3日後。

 

「さて、カリン。予知を皆に教えてくれ」

「はい、30分後、暴れてキラークイーンに殺害されると」

「キラークイーンがー?」

 

 屋敷の中の玉座で俺と愉快な仲間たちが獲物を待ち構えていた。

 それで今確認中だ。

 

 さて、何が来ると言うと。

 

「爪の勇者か」

「この時期って……槌の勇者が死んでるよね」

「尚文が召喚されたところら辺だと偽物だろ」

 

 そう、タクトの配下の狐である。

 この前アポ無しで来たので追い返してたのだ。

 

 ったく、何しに来たのだろうか? 

 タクトとの仲介のつもりか? それとも催眠術でもかけて人質や乗っ取りとかか? 

 

 何にせよ面倒事だろう。

 狩るって事になったし。

 

 一応幻術対策として、とある魔法を覚えた。

 ここで披露しよう。

 

 後始末とかはもう考えてある。

 

「ハジメ様、来ます」

「おk」

 

 準備は万端。来い。

 俺は玉座に座る。

 

『爪の勇者様のおなーりー』

 

 デカい獣人がドシンドシンと音を立てて入ってくる。

 うわー迫力あるなー。

 

 やり直しじゃ匂いとかも真似してたらしい。

 光と闇の魔法で五感の電気信号を狂わせてると俺は推測する。

 

 あ、俺の所に止まった。よし。

 

『我、斧の勇者が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る斧の勇者が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者に全てを妨げよ』

「リベレイション・ジャミングⅩ!」

 

 ノースフェラト大森林の魔法の石碑を見てきた。

 四聖勇者とは違う魔法だな。

 

 この魔法は妨害魔法のオールマイティー版で、どんな属性魔法でも打ち消す事が可能なのだ。

 なお、登録したパーティーメンバーの魔法は妨害されない。

 

「なっ!? 貴様ァ!!」

 

 幻術も光と闇の魔法を使用した物なのでジャミングされる。

 なお、証拠の為に映像水晶を撮影している。

 

「よぉ、爪の勇者はどこ行ったんだ?」

「妾に何をした!」

「質問を質問で帰すなあーっ!! どこへ行ったか聞いてるんだッ!!」

 

 話する気ないのか? 敵と判断していいのかね? 

 

「フッ、まさか妾に勝てると思ってるのか?」

「勝てますけど?」

 

 あ、巨大な狐に変身した。

 レベルで勝敗とか決まらないんだけどね。

 念にも絶対って言葉は無いし。

 

「喰らええええ!」

「んー?」

 

 キラークイーンに突進か、外見弱そうだから勝てるとでも思ったのか? それとも人質か? 

 

 残念だが…………キラークイーン強いぞ。

 

「ウグッ!?」

「遅いよー」

 

 狐、トゥリナだったけ?

 隙間に挟まったハムスターみたいになった。ウォーターセブンのルフィ見たいな感じだ。

 

 何も無いところで挟まるってのも手品っぽくていいかもしれない。

 

 キラークイーンの能力は応用力高いな。

 ローナや春菜の能力も応用力がある方だ。

 

「はいくいっくすとらいくー!」グチャ! 

「ぎゃあああ!!?」

 

 動きを止めた上に、技で頭を潰す。

 強くなったな。

 

 さて、後始末しておこう。

 

「武器に死体を吸わせよう」

「……死体が出ないと事件にならないよね」

 

 あ、吸えた。

 なんか強そうな武器が出たぞ。

 

 あ、でもカーペットに着いた血は取れないみたいだ。

 後で戻しておこう。

 

 後は、目撃証人作りだな。

 

「シルフィ、今さっきの爪の勇者の姿になれるか?」

「出来るでござる」

「その姿で俺と一緒に国境付近に行ってくれ」

 

 タクト側から爪の勇者は何処へ行ったかと聞かれるだろうから、誰かに追われているから裏門から逃げさせたと言い訳すればいい。

 国境の門でその姿になってアリバイ工作すれば最高。それで他国に入ったらポータルで帰るっと。

 

 爪の勇者の死体はタクトが処理したと思うし、狐の死体は武器に吸ったからない。

 

「よし、隣の国行くぞ」

「ハイでござる」

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

「まったくタクトがうるさいなぁ」

「拙者もそう思うでござる」

 

 後日、タクトの使者が来て爪の勇者が何処へ行ったか聞かれた。何回も。他にも俺にタクトと会うようにと。

 波や勇者同士の連携について議論し、追われてるから裏門から逃がしたと説明。他国との国境付近での目撃があると言う事も教える。

 教えても何度も同じ事聞かれたから、豚王に爪の勇者様を招集してもらったらどうか提案もした。

 

 説明に不自然な所も無い。招集しても死んでるから出れないし、爪はタクトが持ってる。

 爪の勇者が偽物で襲って来たなんて無い。狐なんていなかった。

 国境での目撃証言もあるし、面会が終わってからは死んではいないと言う証拠だ。

 使者はしぶしぶ帰って行った。

 

「お兄ちゃーん!」

「何だ?」

「…………大物2人がアポ取ってきたよ」

「大物? 誰だ?」

 

 

 

 



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第33話

「ふぅ、まさかのまさかの大物ですね」

「でも計画が上手く行くね。うひひ」

「ああ、Xデーが楽しみだ」

 

 大物2人と面会して数日後。

 春菜とローナでランチタイムだ。

 

 これで作戦が速やかになりそうだ。

 アンナの能力も炸裂はしてないみたいだし、こりゃ信用出来るのかね。

 

「やっぱ異世界とかで蕎麦食うっても良いな」ズルズル

「ワサビとか麺つゆに付けて食べるのが通だよね」ズルズル

「ニホン食でしたっけ? 結構人気があるみたいですよ」

「へー」

 

 ジャポンでよく寿司とか食ったなぁ。

 ヒミコが魚とか取ってきて刺身にしてくれた。めちゃくちゃ美味しかった。

 知り合いのマフィアとも寿司食いに行ったけ?

 

「でもスシとかサシミでしたっけ、あんまり人気無いんですよね」

「あー生魚食う習慣は無いもんね」

「そうなんだ…………」

 

 海外にも魚の生食の文化はあるけどね。カルパッチョとか。

 日本は保存や衛生管理が出来てるからこその芸当だ。

 

「カレーってのが人気です」

「カレー粉よく作れたな」

「今度食べに行こうよ」

 

 本当にみんなカレー好きだよね。

 結構隠し味とかあったような気がする。

 

「何か懐かしくなってきたな」

「そう言えば前の世界でどんなの食べてたの?」

 

 美食だよな。前々の世界よりも美味い物が沢山あったし。

 

「白銀ミルクってのとムルムル貝ってのが美味しかった。他にも豚マグロってのも美味かった」

「名前からして凄そう」

「トリコとか食戟のソーマレベルだったぜ」

「話が着いてけないです…………」

 

 仲間とかにもおすそ分けした。

 コイツらにも食べさせて上げたい。

 

「バイオプラントの特産品の他にも何か欲しいな」

「こっちも探してみるよ」

 

 賑やかにした方が金を落としやすくなるし、その方が発展できるだろう。

 まあ、問題が起こりやすくなるだろうがそこは念で始末を付けよう。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 ? side

 

 母さんが事故で死んで2ヶ月の月日が経った。

 今日も仏壇に供え物を置く。

 

「母さん、僕負けないから」

 

 学校に行こう。めげない。

 遺産は大学へ行くくらいの予算がある。

 

 

 

「この教室に入りたきゃ金払え」

「は?」

「払えよ金持ち!」

 

 何なん? 何コイツら…………。

 遺産が入ったから金はある。何故通行税を取られなきゃならない。今まで無かったのに。

 

「母親が死んだから金持ってんだろ! 出せよ!」

 

 人の家族が死んだ。

 だから金持ちって訳じゃない。

 

 俺は無視して入る。

 

「無視してんじゃねえよ!!」バキッ! 

 

 顔を殴られる。

 それから数人で寄ってたかって殴る蹴るの暴行を加えられる。

 そして教師が入ってくる。

 

「ん、何があったんだ?」

「先生、アイツが他人の食べ物を盗もうとしたんです」

「はぁ!? 違ぐぅ!?」

「草野!! 母親に申し訳ないと思わないのか!! 後で生徒指導室に来い!!」

 

 教師ですら僕を蔑ろにする。

 味方がいない。

 

 

 

 そして昼になった。

 早く体育倉庫に行こう。

 

「待てよ、通行税払ってないぜ」

「知らないよ」

「脱税野郎が」

「この非国民〜」

「お前も山川創と同じ犯罪者だな〜」

 

 山川創〈ヤマカワハジメ〉、この前飲酒運転で人を轢き殺し、入水自殺をしたという話をニュースでやってた。

 

 まあ、この事件は冤罪だろうね。

 証拠も沢山ある。

 

 その1、評判が良い事。

 色々な人に親切にしてるらしく町内会の掃除とかにも参加したり、倒れた人が居たからAED使ったり救急車呼んだりして市から表彰されたとか。

 そんな人間が無責任な事するのか? 

 

 その2、飲んだ量が多いと言う事。

 実は山川創はあまり酒を好まないらしく、飲み会とか行っても少ししか飲まないそうだ。

 誰かに飲まされた可能性が出てくる。

 

 その3、盗まれた車の持ち主が評判が悪い事。

 ネットに載っていたのだが、その人物が山川創を殴る蹴るの暴行をしてたそうだ。余罪も結構あるとか。

 山川創は親にバーベキューに行くと伝えたそうなのだが、その人物はバーベキューなんてやっておらず、家に勝手に入られ車のキーを盗まれたと証言したとか。

 評判が悪い人間の証言なんてアテになるのか? 

 

 その4、目撃証言がある事。

 またネットだが、運良くご老人が犯人の人相を見ていたらしいが、すぐに医師に認知症判断されたらしい。

 その老人は現役のデイトレーダーで年に二千万程稼いどるとか。

 

 他にもアリバイあったり、その人物の家の傘下の会社はブラック企業が沢山とか。

 

「「「かーえれ! かーえれ!」」」

 

 山川創は無実だ。

 本当に嫌な社会だ。本人も可哀想過ぎる。

 

「やめろ!!」

「お前ら弱い者イジメか? 相手になるぜ」

「恥ずかしくないのか貴様ら」

「皆止めてよ! 草野君が何したの!」

「…………」

 

 出たよリア充5人組。

 剣城翔陽、鋼田太一、凰隆寺雪菜、橋平乃々華、イリス=J=シルバーランス。

 

「お前ら何でそんな事するんだ!!」

 剣城翔陽、スポーツ万能、学力良し、イケメンの主人公の様だ。大声で煩い。

 

「ったく、口だけかよ」

 鋼田太一、筋肉質で高身長、勿論スポーツ万能で格闘技のジムに通ってるとか。

 

「はぁ……情けない」

 鳳隆寺雪菜、剣術道場の娘、黒髪のポニーテールで男女共に人気ある。

 

「酷いよ皆…………」

 橋平乃々華、保健委員、黒髪ロング。

 

「…………」

 イリス=J=シルバーランス。ヨーロッパの国のどっかから留学して来たとか。無口だが剣城には心を開いている。

 

 何だろうな、どっかの異世界に召喚されそうな奴らだ。

 

 おっと、休み時間が刻刻と削られているな。

 今日は体育倉庫に行くか。

 

 逃げ出そうとすると、

 

「待てって言ってんだろ!」

「だから止めろ!!」

 

 周りにいるヤツに引っ張られる。だが握りが浅い為振り切った。

 

 まったく嫌な奴らだ。

 トンズラさせてもらうぜ。

 

 馬鹿には関わるべきではないな。

 さ、急ごう。

 

 ガシャ! ガシャ!

 

 ………………え? 教室の戸が閉まった。反対側も。

 何だろうイタズラか? あれ? 戸が開かない…………? 

 

「おい! 何だアレ!!」

 

 教室の床を見てみると…………魔法陣?

 何コレ? ありふれ?

 

 魔法陣は光っていたのだがその輝きが強くなっていく。

 光が目視出来なくなり、僕は目を瞑るのだった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

「何処だここは…………」

「恐い……」

 

 剣城とイリスの言葉で気がついた。

 真っ白な世界。そこに僕のクラスの人間達が多数居た。

 

 これって何なの? ネット小説で出てくるクラス転移ってモノだろうか? 

 嫌な予感しかしないんだけど。帰りたい。

 大体、僕が追放されそうなんだけどな…………。

 

「皆様ようこそお越しくださいました」

 

 声の方を振り向くと女神、物凄く美人が居た。

 でも、嫌な感じがするなぁ。心がトゲトゲしてそう。

 

「あの……貴女は?」

 

 剣城君が話しかける。

 まあ、女神っぽい人に話しかけるのも勇気がいるよな。

 

「お初にお目に掛かります。私の名はメディア・ピデス・マーキナーと申します」

 

 あ、あれ? この名前どっかで聞いたような。

 

「お願いします。どうか私の世界を波から救ってください…………」

 

 盾の勇者の成り上がりのラスボスだこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!? 

 

 何で!? 僕そこまで性格悪くないんだけど?! 

 

「…………話を聞かせてください」

「はい…………」

 

 説明を聞いていると出るわ出るわクソの様な発言が。

 波は自分の欲望で起こしてるのに助けろって…………。

 

「任せてください!! 絶対に救って見せます!!」

「ありがとうございます………………」ニヤリ

 

 嫌な笑顔だ。

 

「ですが、私達に戦う力なんてありませんが…………」

「それには安心を。ステータスと念じて開いてください。貴方達には才能を付与しました」

 

 ス、ステータス! 異世界のお約束だな。

 よし、ステータス! 

 

(´・ω・`)シーン.

 

 あれ? ステータス! 

 

(´・ω・`)シーン.

 

 おかしいな……壊れてるとか? 

 

「やった! 俺は『剣士』だ!」

「『斥候』? いいね」

「私『弓士』?」

「『闇魔術師』! きたっ〜」

 

 皆出てるよね。

 

「太一! 俺は『勇者』と『火魔術師』と『剣豪』ってのが出た!!」

「3つ! 俺『勇者』と『モンク』だ!」

「私は『勇者』と『侍』だな」

「私『勇者』と『回復魔術師』…………」

「……『勇者』と『賢者』」

 

 勇者って…………大丈夫かコイツら。

 正義面してバカやりそう。

 

「簡単に言うと、その才能による補正がかかります。剣士ならば剣技や見切りが上手くなったり、水魔術師の才能ならば水魔法の適正や耐性が上昇します」

 

 へぇー皆調子に乗りそうだな。

 

「勇者の才能は伝説の勇者武器を扱える才能です。ステータスを上昇させる効果もあります」

 

 勇者武器を扱える才能? 

 武器を奪うの間違いじゃないのか? 

 

「その才能は悪しき勇者から武器を取り返すことも出来ます。どうか極悪非道の勇者から武器達を救ってください…………」

 

 吐き気を催す邪悪とはコイツだな。

 世界を融合させて他人に迷惑を掛けているお前が1番極悪非道だろ。

 

 つーか原作分かってる奴はどんくらいいるんだろう? 

 僕達って捨て駒と言われても文句言えないよ? 

 

「任せてください女神様!」

「ああ! やってやるぜ!!」

「全く仕方ない奴らだ」

「イェェェェェェェェイ!!」

 

 周りを見てみると例外無く調子に乗ってる目だ。

 ダメだ。盾の勇者見てない。

 

 まあいい、それよりも大事な事だ。

 

「それでは皆さん時間です。私の世界に転移します」

 

 えっ、もう時間なの!? 

 僕の体がピカピカとなって薄くなっていく。

 メガヴィッチに質問しないと。

 

「あのーすいません……」

「…………誰でしょうか?」

「え」

 

 は? どう言う事? 

 

「貴方は呼んだ覚えが無いのですが…………なので才能はお渡ししておりません」

「じゃあなんでここに来てるの!?」

 

 まさかの巻きこまれクラス転移かよ!! 

 

「長い時間かけて集団転移の召喚を行うのですが………直前に入ると巻き込まれてしまうのです」

 

 あ、僕は3か月前から転入して来たんだ。

 もしかして来て浅いから、数に入って無かったのかよ。

 

「元の場所に戻してくれ!」

「無理です。諦めて下さい」

 

 はぁ!? 呼んでないのに無理矢理呼んでんだ何だこの女神!! 

 

「そうですね。波から世界を救えたら戻しましょう」

 

 はい嘘乙! 

 お前の本性知ってるから!! 

 

 クラスメイトが俺を見てニヤニヤしている。

 僕の目は真っ白になった。




ビッチ女神が選んだ集団=?


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第34話

「おーいパリスー!」

「ボスではありませんか」

 

 夜刀ちゃんと食事を取ったあと、お口直しにジュースを飲みに行こうとすると猟銃担いだパリスに遭遇した。

 

「警備帰りか?」

「ええ、そうです。この後獲物でも取ろうかなと」

「面白そうだから着いて言っていいか?」

「問題ありやせんぜ」

 

 一つ目小僧の固有能力は視力が強化されている事。

 動いている獲物にも普通にヒットさせ、射程距離は2000M程。

 

 前々の世界記録だと3540Mは行くそうだ。

 知り合いのスナイパーは5000Mはいくって。

 

 弾丸に周を使えば軌道も保てるし、空気抵抗も減少するしな。

 

「高台に行きましょう。能力使います」

「あれ使うのか? それで狙撃する所初めて見るな」

 

 俺達は高台に移動する。

 50M位あるかな? テスタが作ってくれたらしい。奴は元々工兵で土木建築が出来るらしく、戦争時に野戦築城等を作ってたとか。

 ……あれ? 工兵って事はどっかの兵隊だったのか? 

 

「階段長ぇな〜」

「父様おんぶ〜」

「はいはい」

 

 大きくなったなー。お父さん嬉しいよ。

 

「父様ぎゅー」

「ふぉっふぉっふぉっ」

 

 いい……温もりが感じる。

 重さに幸せを感じる。

 

「ねー父様。もし元の世界に帰るんだったら私も連れて行って」

「覗いてたな?」

「うん、偶然だけどね」

 

 春菜との風呂を覗いてたか。

 イケナイ娘ね。

 

「父様の世界の方が面白そうだし。色々なモノがありそう」

「その通りだな。美味しい食い物とか凄い景色とかもあるぞ」

「楽しみー!」

 

 他にも俺が見つけてない素晴らしい物とかある筈だ。

 懐かしくなってきたなぁ。

 

「ボス、着きましたぜ」

「結構見晴らしいいな」

 

 いつの間にか着いてた。

 町外れの森が見えたので狩りやすいだろう。

 

 ここでパリスは能力を具現化する。

 十字の様なドローン、その中心の下部にはミラーボールが埋め込まれてる。

 

 これがパリスの能力、悪魔の十字路《キラーポイント》である。

 

 能力はシンプルで銃弾の反射。

 角度を付けるので障害物を避けて狙撃する事が出来る。

 欠点と言えばフワフワと移動する為、遅い事とか? 

 

「お、獲物見っけ」

 

 オマケに固有能力で目が良いので獲物を狩りやすい。

 

「ボス話しかけないでくだせぇ」

「OK」

 

 やっぱ集中とかするんだな。銃口の先には鳥か? 

 数秒後。

 

 パァン! 

 

 放たれて、その先にある鳥が下に落ちていく。

 50M位かな。

 

「ああ、回収して血抜きとかしなきゃな」

「もう、回収したぞ」ヒョイ

「「え」」

 

 俺の手には大きな鳥さんが。

 パリスが撃った獲物だ。

 

「どうやって取ってきたんですか?」

「まあな。能力だ」

「凄い……」

 

 血抜きはしてないな。

 早く処理しなきゃな。臓物を取って冷やすんだっけ? 

 

「それじゃ調理室に持っていきましょうか。後ロクスに魔力銃の整備をお願いするかな」

「やっぱメンテナンスって必要なのか?」

「ええ、1ヶ月に1回は」

 

 さ、見張り台から降りよう。

 でもテスタって凄いよなぁ。この様な塔は後三つあるんだよな。

 1ヶ月で空いた時間に組み立てたからね。

 

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

 

「ん、パリスか」

「おう、メンテナンス頼む」

「いいぜ時間空いてるしな」

 

 ロクスの研究室だ。

 何か色んな機械がある。

 

「銃の調子はどうだ?」

「最高だな。スゲー発明だ」

 

 魔力銃。ウチの領地にて使われている武器である。

 簡単に言えば、魔力を銃弾にして放つ銃だ。

 

 攻撃ではなく魔法攻撃で、魔力の消費多いけどそのかわり威力・射程・速度がある兵器だ。

 この発明はレイのカスが発案した物で、国に押収される前に隠しておいた。

 

 材料は希少な素材が使われているので個数は少なく、俺達私設兵しか使っていない。

 拳銃型・突撃銃型・狙撃銃型をも開発。ローナ達も既に所持。

 一応狙撃手も作ろうと思って数人育ててる。見張り台も少し欲しい。

 

「大砲型の魔力銃はどうなってる?」

「アレはもう少し時間かかりますぜ。材料欲しいって所ですね」

 

 うん、大砲型の魔力銃もだ。

 いいなぁ。ロマン。

 

 ちなみに他にも発明した物もある。

 押収して隠しておいた。

 

「さて、この銃丁寧に扱ってるな」

 

 見ただけで分かるんだな。それはそれで凄い。

 

 あ、ロクスが能力使用した。背中からアームが出てくる。

 これがロクスの能力、六芒星《ムシュフシュ》である。

 

 この能力はロボットアームを具現化する能力である。

 戦闘にも使えるし、機械仕事でも効率が上がるとか。

 

「よし、整備完了。調整しといた」

「助かった。今度いい獲物あったら優先するぜ」

 

 いいなぁ。ロクス。

 よく大物取ってくるからなコイツ。

 

「パパー」

「セリア、どうした?」

「はなのかんむりつくったのー」

 

 あ、ロクスの娘のセリアちゃんだ。

 バツイチなんだよな。社員寮にて2人で住んでいる。

 

「ありがとう。後でお父さんとご飯行こうか」

「やったー」

 

 家族でご飯かー。

 …………今日は春菜と夕飯食べよう。

 

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

 

 尚文side

 

「いやぁ……神鳥の馬車に乗れるとは私も幸運でした」

「神鳥ですか?」

 

 その日は次の町に行きたいという商人が馬車に乗せてくれと言ったので、乗せていた。

 

「やはり、その神鳥は話せるのですか?」

「…………斧の勇者と知り合いか?」

 

 そう言えば、波の時にフィロリアルクイーンがハジメの配下にいたな。

 魔法の威力が強かったのが印象強い。

 

「ええ、弟の命の恩人です」

 

 アイツも結構実力ある。

 色々な場所で活躍してるだろう。

 

「ゼルトブルの立てこもりの話は聞いた事ありますでしょうか?」

「いや?」

 

 そう言えばゼルトブルの専属って言ってたな。

 クズが治めているこの国よりも、違う国に行った方がいいかもしれないな。

 

「商会館に立てこもりされ、人質を取られた事件です」

 

 立てこもりか、やっぱりテロリスト見たいな奴らもこの世界にはいるんだな。

 

「たった数分で20人もの人間を無力化したのです」

「アイツ人間か…………」

 

 ヒソカが言っていたが犯罪者を狩る仕事だったか? アイツ強過ぎだろ。

 

「他にも領地経営もしておりまして、発展しているそうです」

「確かダンジョンとか温泉があるって噂で聞いたな」

「はい、私の姪もそこで働いております」

 

 領地が人が来そうな場所にある。金とか零す人間が多そうだな。武器や薬とか売れそうだ。

 

「姪が言っていたそうなんですが、斧の勇者様やその兵隊達は屈強だとか」

「どのくらいだ?」

「同じLvでも歯が立たないとか聞きましたね…………私の姪も斧の勇者様の配下なのですか、素手で魔物を倒したとか」

 

 いったいどんな鍛え方をしているのだろうか? 

 魔法もスキルもとんでもない威力だったし、強化方法でもあるのだろうか? 

 

「他に奴の事で知っている事は無いか?」

「そうですな……そう言えば斧の勇者様のフィロリアルは空を走りますな」

「空?」

 

 空を飛ぶなら分かるが…………走る? 

 

「私も半信半疑でしたが実際に見て驚きました。本当に空で馬車を引いて走ってますよ」

「フィーロそんなことできないよー」

 

 そう言えばヒソカもトランプを宙に浮かせてたな。

 何かのトリックか? 見えない道路が空中にあるとか。

 

「他にも配下の数人は使い魔がいるとか。クワガタとか恐竜型の使い魔を領地で見ました」

「使い魔?」

 

 異世界ならではの要素だな。

 …………三勇者は持ってるのか? 機会があれば聞くか。

 

 一度集まって波に対しての作戦会議をした方がいいかもしれない。

 聞いた話じゃ錬がハジメのから編隊機能の事を聞いたらしい。

 根本から見直した方がいいだろう。

 

「後は山の形を変え━━」

「ナオフミ様! 前方に武器を持った人間が!」

 

 全くこの国の人間ときたら…………。

 俺は外に出る。




☆悪魔の十字路〈キラーポイント〉
・銃弾を反射し、軌道を変える能力。操作系。
・監視能力もあり、それでターゲットを定め撃つ。

モデルはジョンガリ・Aのスタンド。

☆六芒星〈ムシュフシュ〉
・六個のアーム付きのマジックハンドを具現化する能力。
・作業効率が上がる他、かなり戦闘でも活躍する。


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第35話

「やはり御館様の能力は凄いでござるな」

「まあな…………」

「どうしたでござる?」

 

 あまり自分の能力に胸を張れないんだよな。

 

 相当便利だけど罪悪感って物がさ。

 師匠からは人として素晴らしい能力って言われたけど。

 

 俺は能力便りは止めて、筋力や体術を鍛えた。勿論オーラ量を増やしたり、オーラを滑らかにしてきた。

 だから可能な限り能力は使わない。

 

「どうですかな御館様。元気出たでましたか?」ギュ

 

 シルフィが腕に抱きついてくる。

 ありがとう。元気が出るよ。

 

「あ、ボス」

 

 後ろに振り帰るとオルクが。

 気づかなかった。

 

「オルク、いつの間に?」

「まあな……の所ら辺からです」

 

 俺は深く考え事してると気づかない事あるからな。

 この様な事がある為に仲間が重宝される。

 

「あ、邪魔しちゃ不味かったですか」

「いや別に」

「…………」

 

 あ、シルフィが拗ねた。

 仕事ないから後で高台にでも登ろうか。

 

「そう言えばオルクは警備か?」

「ええ、カリンさんの予知でここら辺で乱闘が起きるらしくて……僕一人で十分と予知が」

「成長したな」

 

 確かにオルクは強くなったから十分だよな。

 最初は実際に弱かったし、修行していくとグングン強くなったし。

 初対面が嘘のようだ。

 

 今流行りのパーティー追放だし、絶望しか頭に無かったろうし。

 

「ええ、仕事しますよ」

 

 

 

 ■

 

 

 

 十年程前に遡る。

 オルク9歳。

 

「おーいオルク!」

「マイクとボブ、どうしたの?」

「見ろよ、この本買ってもらったんだ」

 

 幼馴染マイクとボブが持ってきたのは斧の勇者の絵本。

 冒険者の斧の勇者が旅をしていく物語だ。

 

「俺いつか斧の勇者様の家来になりたいんだ」

「凄いなボブは」

「もし為ったらお前も取り立ててやるよ」

「わぁー嬉しいな」

 

 金色の斧でドラゴンを倒し、悪い人間を懲らしめる。

 英雄譚が多い勇者の為、冒険者等に人気がある勇者だ。

 

「お兄ちゃーん」

「オルクー! お使いに行こう!」

「リンダ! キャシー!」

 

 幼馴染のリンダ、義妹のキャシー。

 

「もーオルクったら目を離したらすぐ遊ぶ」

「お兄ちゃん行こうよ!」

「ごめんごめん、行こうか」

 

 子供は純粋で悪意がない。

 この時は皆悪人では無かった。

 

 

 そして数年後。

 

「イリュシン草を混ぜて」グリグリ

「オルクー、ボブ君とマイク君よー」

「何だろう?」グリグリ

 

 アポの約束はしていない。

 

「なあ、オルク。お前三男だから跡継ぎじゃないよな……」

「ん? そうだけど?」

「一緒に冒険者やらないか?」

「僕が?」

「ああ、どうだ?」

 

 オルクは三男だから好き勝手出来る。

 長男も次男も薬師としての腕はピカイチ。

 

「うん、やるよ!」

 

 ボブとマイク、長い間付き合いのある幼馴染達だ。

 心配もあるけど力になりたかった。

 

「じゃあ私も行く!」

「お兄ちゃんを守る!」

 

 パーティー結成を聞いた幼馴染と妹が聞きつけ、急遽入る事になった。

 

「よーし! パーティー名は『金色の斧』だ!!」

 

 

 そして数年後。

 

「ボブ! フレアボアがそっちに!」

「分かってる!」

「たあっ!」

 

 ボブとリンダの連携攻撃が決まる。

 フレアボアは倒れた。

 

「お疲れ様、ボブ」

「…………ああ」

 

 オルクは回復薬をボブとリンダに渡す。

 

「はい、キャシー」

「寄越しなさい」バシ

 

 キャシーに魔力水をぶん取られる。

 

「あれ、キャシー? 機嫌悪いの?」

「そりゃそうだ。お前は大抵連携に加わらないからな」

「止めてやれよ。大して攻撃力も無いし、魔法適正が援護と回復だからな」

「仕事は依頼探しや荷物持ちや道具の管理だしさ」

「そして危険な仕事は私達」

「…………皆苦労掛けるね」

「…………」

 

 皆冷たい目で見ている。

 オルクは頭が良いがステータスが弱く、非戦闘員だった。

 

 フレアボアの討伐部位を持ち帰りし、Bランク冒険者パーティーに昇格するのだった。

 

 

 また数年後。

 

「いやぁ〜そろそろAランクからおさらばだな」

「ああ、名残惜しいわ」

 

 金色の斧はAランクからSランクへ昇格1歩手前まで来ていた。

 

「おい、次これにしようぜ」

 

 ボブがあるクエストを持ってきた。

 しかし、

 

「ダメだボブ。この時期のパープルスネークの討伐は止めておいた方がいい」

「あ!? オルク!! 何ビビってるんだよ!」

「チキン南蛮野郎が!」

「そうじゃなくて生息している森は今確か……」

「この前パープルスネークを討伐したじゃねえかよ」

「アンタ何様?」

「じゃあ来なくていいわよ」

 

 妹にアンタ呼ばわりされるオルク。

 皆オルクへの態度が変わってしまった。

 

「待って待って! 話聞いて」

「オルク、皆の士気を下げようとするならクビだぞ」

「はひ?」

「当たり前よ! 弱腰でどうすんのよ!」

「兄とは思えない…………」

「だとよ」

「ううっ…………」

「それに俺ら強いだろ、何かあってもなんとかなるって」

「…………」

 

 オルクの忠告は無視された。

 この話し合いがこのパーティーの衰退の始まりである。

 

 

 

「おい! なんだこの数は!!?」

「なぜヘイルマンティスが大量に!」

 

 パープルスネーク討伐なのだが別のモンスターに襲われる。

 

 ヘイルマンティス。

 通常は一体Aランクの冒険者一人程で足りるモンスター。

 何度もこのパーティーは倒している。

 しかし、

 

「何でこんなにいるんだ!?」

「この時期になると繁殖期になるからヘイルマンティスが卵を産む条件が整ったこの森に集まるんだ!!」

「嘘でしょ!」

「ギルドのミスクエストだってギルド職員が言ってた!!」

「巫山戯んな! 何故オルクは止めなかった!」

「クビをほのめかしてたのは誰だ!!」

 

 オルクは大量発生の事を知っていたので忠告はした。

 荷物持ちの他にも情報収集も行っていた。

 

 非は特に無い。

 

「きゃああああぁぁぁ!」

「キャシー! 危ない!!」

 

 キャシーを咄嗟に庇う。

 だが、

 

「うっ!!」

 

 肘関節近くの左前腕を斬られてしまった。

 しかし、まだ動ける。

 

 煙玉を持っていたので地面に叩きつける。

 

「今だ全速で逃げろ」

「クソっ!」

 

 

 

「いやぁ〜危なかった。この煙玉ホントに効くね、店主が怪しいヤツだから心配だったんだ」

『………………』

「ははは…………左腕の腱斬られて後遺症残るって。まあ皆が無事ならいいけどさ」

『………………』

 

 全員オルクに敵意を向ける。

 

「オルクお前はクビだ」

「…………え? 今回ミスしてないし、仕事は全力でやってるけど」

「アンタのせいで死にかけたんじゃない」

「止めたけど? 強いから何とかなるって?」

「そこはクビ覚悟で言うべきだろ!」

 

 責任の押し付けが始まった。

 

「僕だって辞めたくないし、ギルドとの交渉とか薬作りとかどうするの? 結構難しいよ」

「交渉なんて強気で行けば何とかなるだろうが! 薬なんざお前をクビにして浮いた金で買えばいい!!」

「ええ…………」

「第一お前なんざ戦いで活躍しないだろ。戦ってる時に何もしない様なやつを置いておけるか」

「力も無い人間が発言する権利があると思ってるの?」

「サイテー」

「いやそうじゃなくてさ、色々勘違いしている」

「勘違いしてんのはお前だ雑魚が」バキ! 

 

 ボブがオルクの顔面を剣の入った柄で殴る。

 続いてマイクが倒れたオルクを踏みつける。

 

「…………お前本当に調子のるなよ!」

「何を偉そうにしてんの?」

「痛った……」

 

 オルクは蹲る。

 

「ハッキリ言ってやる! お前は使えないんだ! 役に立たねえ人間なんて置いても何も得になんねえんだよ!!」

「それに何もしてないのに分け前貰うなんて図々しいわ」

「そんな…………」

 

 オルクは自分なりに後方支援を行っていた。

 他の冒険者にも負けないくらいの知識も持っている。

 

「もう教えた方がいいんじゃない?」

「ああ、そうだな」

 

 ボブとマイクがリンダとキャシーを抱き締めた。

 

「俺ら付き合ってんだ」

「ええ」

「ああ、オルクには秘密にしてたけどな」

「フフッ」

「…………は?」

 

 ちなみにリンダは親が約束した許嫁だ。

 ずっとオルクはリンダの事が好きだった。

 

「な、なんで…………」

「隠れてやった方が面白いに決まってるだろ」

「アッハハハハハハハ!」

「気づかねえのかよw」

 

 呆然としていた。

 空いた口が塞がらない。

 

「ツヴァイト・アクアバインド」

「な、キャシー!?」

 

 キャシーに拘束される。

 

「よーし! それじゃあ俺達の仲の良さを見せつけてやるか!!」

「きゃ〜」

「おっいいなぁ!」

「…………」コクリ

「脱ぎなリンダ、キャシー」

「「はーい」」

 

 オルクの前で好きな幼馴染と義妹の性交が行われた。

 絶望、それしか頭に無かった。

 

 

 

 それから情事の後、気絶させられたオルクは山奥に捨てられた。

 偶然魔物避けのアクセサリーを隠し持って居たため、魔物には襲われなかったが、山から抜け出すのに二週間かかった。

 

 しかし、

 

「え? 僕が除名!?」

「…………ええ、パーティーメンバーへの暴行です。心当たりありませんか?」

「無いよ!」

「しかし、証人が沢山おりまして…………」

 

 ギルドの規約。犯罪行為を行うと除名される事がある。

 

「でっち上げだ!」

「おい、兄ちゃん」

「来いよ」

 

 いきなり冒険者達にに引きずられる。ギルドの外に出され、路地裏に連れてこられる。

 

「実は『金色の斧』のリーダーから頼まれてな〜」

「は?」

「冒険者ギルドに来たら痛い目に合わせろってな!!」

 

 ドカ! ボス! バキ! ドカ! ゴキ! …………

 

「もう冒険者辞めた方がいいぞ」

「ハーハッハッハ!」

「おうち帰んな〜」

 

 ボロボロになったオルク。

 もう、家に帰ろう。そう思って家に帰ってきたが、

 

「この親不孝者!」

「お前がそんな事するなんて…………」

「リンダとキャシーに乱暴してよくもおめおめと!」

「お前なんざこの家の息子じゃない! 勘当だ出てけ!!」

「だから誤解だって言ってんだろ! そんな事してない!!」

「あのリンダとキャシーが嘘つく筈ないだろ!!」

 

 既に根回しされており、家族からも糾弾され、近所の村人からも非難される。

 

 信じるもなにもそろそろ『金色の斧』はSランクに昇格する。

 この村でSランク冒険者グループが出るのは鼻が高い。

 ゴマすって味方するのは当然だ。

 

「出ていけ! もう村に戻ってくるなクズ野郎!!」

 

 

 

 

 1ヶ月後、オルクは物乞いになってスラム街に暮らしていた。

 

「おい、聞いたか?」

「ああ、斧の勇者様があのレイ・アースログを豚王の生贄にしたって」

「聞いた聞いた。それで領地貰ったんだって? すげぇよな」

(斧の勇者?)

 

 子供の頃に読んだ話を思い出した。

 数々の冒険譚をして、人々を助けてきたのが心に残っている。

 

(僕も人の役に立って死にたい)

 

 オルクは歩き出した。

 ハジメの領地に。

 

 こんなカスみたいな命を、世の為人の為に使っていこうと。

 

 途中から土砂降りになったがオルクは気にしない。

 数十時間かかったがガルタイル領へ辿り着く。

 

 そして、領地の入り口の大きな木の下で、

 

「か〜め〜は〜め〜波ぁぁぁぁぁ! …………春菜、上手く出来てるか?」

「気持ち少し上欲しいかな?」

(何やってんだろこの人? あ……意識が薄…………)バタリ! 

 

 オルクは倒れた。

 何も食べてないし疲労で限界だ。

 

ドサッ!

 

「うわっ、ビックリした!」

「何だろうこの人? 取り敢えず治療院に連れてこう」

 

 こうしてオルクは斧の勇者の配下となるのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「それにしてもオルク雇って良かったよ。頭良いし、冒険者の知識とか役立ってるし」

「ありがとうございます」

 

 話を聞いてて、嘘発見能力があるので真実と言う事が分かった。

 嘘吐きでは無いので奴隷紋の条件で配下になり、能力者となった。

 

 ビフォーアフターが激しかったね。

 修行の前は目が死んでたからね。

 

 追放モノの小説って大体パーティーが酷い目に遭うよね。そう願うよ。

 

「オルク! 見つけたぞ!!」

 

 振り返ると4人の男女がいた。

 

「あ、ボブ、マイク、リンダ、キャリー?」

 

 外人とかでありそうな名前だな。

 キャリーじゃなくてキャシーな。どうでもいいけど。




皆さん、体調にはお気をつけを。


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第36話

「皆どうしたの?」

「この野郎…………」

「アンタのせいで大変だったのよ!」

「責任取りやがれ!」

「この唐変木」

 

 コイツら……何だろうか? 

 オルクの話を聞いてたらコイツらが被害者ぶるのは筋違いじゃないの? 

 

「皆久しぶり! マイク片腕無いけどどうしたの?」

「てめぇ…………」

 

 大体予想が着くな。身の丈にあったクエストじゃなかったんだろ。

 

 冒険者ギルドの職員から聞いた話だと、オルクの冒険者剥奪の件はギルドマスターと一部の職員が無断で起こしたそうだ。

 

 このクソ四匹がオルクへ悪事と濡れ衣を被せた事を酒の席で暴露しており、近くにオルクに助けられた人間が丁度いたらしく、もっと上の人間に直訴されたそうだ。

 

 結果ギルドマスターはクビ。その他の職員は左遷とかになったとか。

 

 ギルドマスター曰く、女二人によるハニートラップだそうだ。奥さんがいる為、いい弱みになったらしい。

 

 前々の世界でもあったな、政治家にハニートラップを仕掛けて自分達に都合のいいルールを作らせるとかそんなの。

 

「お前が抜けてからクエストは失敗続きだ!!」

「だから辞めたくないって言ったのに」

「こっちは大変だったんだ!! 失敗し過ぎてCランクまで落ちたんだぞ!!」

「だろうね」

 

 本当に災難だったね。

 故郷に帰れば? 

 

「だって皆は力=正義って考えてるし。時期とか場所によっている魔物とか把握してないでしょ」

「それがどうした!?」

「冒険者の知識ゼロって事。僕何度も冒険者ギルドから買った本を読めって言ったし、全然読んでなかったよね?」

「くっ……」

「それに交渉とかは威張ってるだろうし反感買うよ? 逆ギレとか依頼者に断れたこと無かった?」

「うっ…………」

「図星だよ。横柄な態度取るなって言ったのに」

 

 まあ力イコール正義って訳じゃないよな。

 前の世界でも医療や食関係で相当な権力持ってた奴もいるしね。

 

 交渉事か…………俺はあまりの得意じゃないな。

 

 このパーティーはオルクによって支えられてたって訳か。

 後方支援っては大事な要素だからな。

 

「自己責任なのになんで僕が責任を取らなければならないの?」

「てめぇのせいでマイクは…………」

「腕無いけど何あったの?」

「クエストでの失敗だよ!!」

 

 馬鹿だな。冒険者にとって大事なのは臆病さだ。

 

「オルク、お前の事は許してやるから戻ってこい」

「「「は?」」」

 

 俺やシルフィも声が出てしまった。

 散々オルクに酷い仕打ちしておいて悪人扱い? 何様のつもりだ。

 

 普通おかしいでしょ。土下座して懇願するのが普通ではなくて? 

 

「しっかたねぇな。ウザイけど」

「ホントよね〜薬代高いし」

「我慢する」

 

 ……………………………………。

 

(コイツら殴っていいでござるか?)

(気持ちはわかるがな、オルクの問題だ)

 

 シルフィが拳を鳴らす。

 俺も無意識に鳴らしていた。

 

「へーなんのメリットあるの?」

「メリット? 調子に乗るんじゃねぇぞ!!」

「ふざけてるの? 置いてもらってるだけで感謝すべきでしょう!!」

「サイテー」

 

 コイツらとは話にならない。

 話が通じない相手とは関わりたくない。

 

「断るよ。今この領地で大事な仕事してるんだ。邪魔しないでくれよ」

「聞いてるぜ〜斧の勇者の配下だって? お情けで入れてもらってんだろ」

「はっずかしい!」

「役に立たねえんだから辞めな」

「雑魚ね〜」

 

 お情け? 相当強いぞオルクは。

 その役立たずに支えられてのはどこのパーティーだ? 

 

「まあ、なんだったら俺らパーティーが配下になってやっても良いがな」

「いいわね。オルクが配下になれるんだったら私達でもなれるよね」

 

 もう話を中断させよう。

 耳が痛くなってきた。

 

「それで? お前らオルクに断られたよな。諦めて帰れば?」

「あ? 誰だテメェ」

「部外者は口出さないで!!」

 

 お〜斧の勇者様になんて口をきくのだ。

 てめえら出禁にしてやろうか。

 

「こうなったら実力行使だオルク!」

「無理矢理でも連れて行ってやる!」

 

 馬鹿四匹は得物を取って構える。

 そう言えばチンピラが暴れ出すとか予知出てたっけ? 

 

「オルク、一人でやれるな?」

「勿論です」

「は? 舐めてんのか…………」

 

 オルクを囲む。

 無駄だな。やっちまえ。

 

「うぉぉぉ!」

 

 一人が斬りかかる。

 だが、

 

「ふん」ドス! 

「がはっ!?」

「マイク!!?」

「嘘でしょ!?」

「えっ!?」

 

 マイクだったけ? 正拳突きで派手にぶっ飛ばされたね。

 隙が多すぎではありませんか? 

 

「隙があり過ぎ」ドン! 

「がはっ!?」

「シェリー!!?」

「左」バキ! 

「うぐっ!」

「ボブ!」

 

 囲まれてから数秒しか経ってないよ。

 よくSランク目前まで行けたね。

 

「それで?」

「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!!」

 

 あまりの強さにビビってるよ。

 修行の成果があったからね。

 

「剣を向けてきたよね? 脅しの道具じゃない、殺されても文句は言えない」

「ま、待って貴方と付き合ってあげるから許して!」

 

 巫山戯んなアバズレと付き合うなんて真っ平御免だね。

 

「ごめん。もう付き合ってる人いるんだ」

「は……?」

「カリンさんって言う人なんだけど…………」

 

 前、暗部からの情報で知ったのだが、カリンと付き合ってるらしい。もう皆に知れ渡ってる。

 もうデートとかしたり一線越えてるとか。

 

「もうそっちの事なんて忘れたよ。横たわってる人間持って帰ってくれる?」

 

 オルクは後ろを向く。

 しかし、女がナイフを持って突進してくる。

 

「やぁ!!」

「どこ刺してるの?」

「はあ!?」

 

 オルクを刺そうとした瞬間、真後ろに立っていた。

 おいおい、こんな奴に能力使うなって。

 

「えい!」ドカ! 

 

 後ろから首元を叩く。結構弱い相手だったな。

 

「お勤めご苦労様」

「ああ、ボス」

「さ、帰ろうぜ」

「ああ」

「御館様、一緒に夕食を食べに行きませんか?」

「いいぞ」

「僕はテスタと用事があるので…………」

 

 俺達はラーメンを食べて帰るのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「やっぱりラーメンにチャーハンだな」

「餃子付きも美味しいでござる」

 

 ふぅ、ラーメン美味かったな。

 味噌ラーメン頼んだけどこの世界に味噌があるんだな。

 トッピングで味玉とチャーシューも良い。

 

「屋台ってのは風情があるな」

「拙者も故郷を思い出すでござる」

「そう言えばシルフィの故郷ってどこ?」

 

 よく考えたらこいつの過去とか知らなかったな。奴隷になった経緯も。

 

「コアトルスピンって言う森や岩場に囲まれた国でござる。閉鎖的であまり有名ではない所です」

「聞いた事ないな」

「ええ、一応交易とかはあるみたいですけど」

「なんで奴隷になったんだ?」

「…………」

「スマンやっぱいい」

 

 俺は部下たちの過去は詮索しないようにしてる。

 過去を捨ててる人間とかも前の世界にもいたからな。

 

「どうする? 里帰りするか?」

「嫌でござる」

「…………わかった」

 

 帰りたくないのかな? 勢力争いとかあるのか? 。

 

「気を取り直して、もう1件行くか」

「お、良いでござるね」

「焼き鳥行くか」

 

 この前屋台であったのだ。

 小腹空いてるし、気になるから行くとしよう。

 

「ガハハハハハハハハ」

「あ、ミリー」

「あ! ボス!」

 

 コイツはミリー。三番隊の副隊長だ。

 夜にしか動けないので夕方になったら動き出すのだ。

 

 金髪、ロリ、ツインテの三拍子揃った女だ。

 

「御苦労」

「ガハハハハ」

「ん? 口に血が着いてますよ」

 

 能力使ったのか?

 不審者によく使うからな。

 

「そうだボス、転生者ってのがまた居たぞ!」

「またか」

 

 一応ダンジョンの番をさせているのだ。

 

「ああ、剣生成と瞬間記憶の能力を貰ってたらしいぞ!」

「暗殺とかテスト勉強に便利そうだな」

「使う暇もなく罠にハマったがな!」

 

 何故使う暇もないのに知ってたかって? 

 ミリーの能力、腐共和音《テラバイト》である。

 

 簡単に言えば吸血し、相手の個人情報を知ることが出来る解析系の能力者だ。

 

 解析できる上に身体能力も高い。しかし夜しか動く事が出来ない。日光を浴びるとダメージウケるし。

 

「ガハハハハハハハハ! パトロールしてるから失礼するぞボス!」

「ああ頑張ってな」

 

 元気があってよろしい。

 

「さ、焼き鳥食いに行くか」

「小腹が空いたでござる」

 

 俺は他の場所に行くのだった。




★腐協和音《テラバイト》
・質問を定め、噛みつき血を吸うことにより、答えの情報を知る能力。放出系。
・噛まれた相手の答えが間違った情報だとそのまま出てきて、知らない事だと出てこない。
・死人には使用不可。



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第37話

「あ、錬」

「ハジメ? 何故ここに?」

「俺の領地」

「そう言えばそんな話しあったな」

 

 とある日の昼下がり。剣の勇者、天木錬と遭遇した。

 

「ダンジョンにでも遊びに来たのか」

「まあな、メルロマルクでも有名だそうだからな」

 

 ほうほうダンジョンに来たとな。

 まだ見るものあるんだけどね。

 

「ここいい所だな」

「だろ? 温泉とかあるし」

「パーティー全員で昨日から泊まりに来ていてな」

 

 最近旅館とか増えたからな。

 相当賑わってる。

 

「暇だったらコーラ飲みに行かねえ?」

「コーラ!?」

「植物改造したら偶然な」

 

 他にも紅茶とかミルクティーとか出てきたのだ。

 

 そして喫茶店。

 

「それでどうよ景気は」グビクビ

「メルロマルクが怪しくなってきたな」ゴクゴク

 

 だろうね。三勇者の中では頭が回る方だからね。

 他は馬鹿しかいないし。

 

「あの時の決闘の時にあの王女の横槍もおかしいしな。尚文の扱いも酷すぎる。波のボスを倒すのも大事だが民間人の避難も同様に大事だ」

「なのに尚文が不遇」

「お前……何か知ってるんじゃないか?」

 

 まあ知ってますけどね。

 教えてもいいけど原作ブレイクしそうだ。

 

「知ってるけど? 教えないが」

「理由は?」

「直にわかるし教える必要が無い」

「そうか…………」

「ゲームでも自分で謎を解く事も大事だろ」

「そうだな」

 

 コイツ頭いいからな。すぐ分かるだろう。

 つーか真実教えたら国から逃げてブレイクしそう。

 

「気をつけろよ」

「分かっている」

 

 コーラをおかわりした。

 氷入ってたから沢山飲んだ。

 

 現代日本から来たんだし味わっておきたいだろう。

 

「そうだ、この後暇か?」

「ん? まあな」

「少し着いて来てくれ」

 

 んで、連れてこさせてきた先。

 ステージや音響機器を設置。

 

「何だこれ?」

「アイドルのライブ」

 

 そう、実は芸能関係にも手を出してたのである。

 

「錬は行ったことあるのか?」

「いや、知り合いが行ったことあると言ってたが」

 

 ちなみに俺の知り合いにアイドルがいるからそれが軸となっている。

 大体を真似てみた。

 

「あれなんて読むんだ?」

「夜刀ちゃんのライブ」

 

 試しに歌とか踊りをさせてみたら上手く、宴会で皆の前で歌わせてみると好評。

 俺から見ても才能あるし、金取れる腕前だ。

 

 それでサプライズで広場にてライブをしたら領民からも好評。それでクチコミでゼルトブル国内でも話が広がって行った。

 

 この前ゼルトブル首都にてライブした。

 いやぁ〜人が多いからグッズが売れる売れる。

 

 音響機器はロクスに作ってもらい、服はマリオン、作曲はアンナ。

 

 俺ラ○ライブとか好きだ。

 華やかで楽しそうな作曲と服にしてみた。

 

『みーんなー! 今日は来てくれてありがとー!』

『『『『わああああああああああああぁ!!』』』』

 

 1人じゃきついだろうし、ユニットとかも組んでみた方がいいかもしれない。

 

「音響も本格的だな」

「技術者が優秀なだけさ」

 

 良い部下を持っただけですよ。

 

『聞いてください、最初は《白雪姫》!!』

 

 夜刀ちゃんホントに踊り上手いな。

 2曲目3曲目を続けていく。

 

『〜♪♪ 〜♪♪ 〜♪♪♪♪』

 

 錬も魅入っているようだ。

 

『みーんな最後まで聞いてくれてありがとう!!』

『『『わあああああああああぁぁぁ!』』』

 

 すっごい盛り上がりである。

 ちなみに遠征とか考えているので、暫くしたら他の国へも行こうと思う。

 

「レベルが高いな…………」

「でしょ?」

 

 才能って凄いよね。

 この後は握手会ですな。

 

「そろそろ行くか。またこの領地に来るとするか」

「ああ、また来てくれ」

「コーラ美味かったぞ」

 

 その時までにパフォーマンスとか磨いているから楽しみにしていてくれ。

 

 あ〜オタ芸とかする人居ないかな。

 公式ファンクラブとか作ろうかな〜? 

 

「さーて仕事…………ん?」

 

 また誰かの視線を感じるな。

 本当に何なのだろうか。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ? side

 

「痛てぇ!」ドカ! 

 

 クソ女神に巻き込まれ認定されて、気が付いたら後頭部に衝撃が走った。

 他のクラスメイトも同様だ。

 

「ああ、救世主様達!! この国をお救い下さい!!」

 

 世界よりも国なんだな。

 

「あの……あなた達は?」

「私達はベールラル国の魔術師団です。まず女王様と謁見をして欲しいのですが…………」

「ええ、わかりました」

 

 盾の勇者の世界か? 名前が出てこない国名もあるだろうし。絆の世界って事も有り得る。

 

 つーかメガヴィッチに送られた時点でこの国が胡散臭い。

 

「ねえ、草野君?」

「何?」

「草野君ってゲームとかするの? こういう世界とか詳しい?」

「さあ」

 

 Web小説とかよく見るし、大体陰謀とか隠れているんだよな。

 権力争いに邪魔だから暗殺とかあるだろうし、領地拡大や資源略奪の為に使われるとか。

 

 このバカ共は操りやすいからいい人材だろ。

 

「では謁見なので頭を垂れて膝を着いて下さい」

「なんで救世主がそんな事しなければならないんだよ」

「止めないか雨宮君! 郷に入っては従えとあるだろう! 話が進まないじゃないか!!」

「わ、分かった」

 

 雨宮君の言葉も正論だと思うけど。

 やっぱり怪しいなこの国。

 

「女王陛下のおなーりー!」

 

 出てきたのは僕らと変わらない歳の女だった。

 少しケバい女だな。ビッチの端末の可能性もあるだろうな。

 

「皆様ようこそベールラルへ。私はこの国の女王エイリーと申します」

 

 でもなんで若いの? 継承権とかあるだろうし。

 

「私は夢を見ました。女神様があなた達が来ると言う夢を。そしてこの世界を救ってくれると!」

 

 隣を見ると剣城君が真剣な眼差しで話を聞いている。やめとけ。

 上手い話なんてこの世界にはないと思うよ。

 

「この国は数年前までは独裁国家でした…………ですが私は自由と平等、そして博愛の為に革命を起こしました。しかし、大勢の人間が死に、今人が居ないのです…………」

 

 ぽたぽたと涙を流す。嘘泣きっぽいなコイツ。

 革命ってのも胡散臭い。

 

「我が国は波や他国の侵略に怯えています。お願いします…………あなた達の力を私達に貸してください」

 

 簡単に言えば、労働力が欲しいんだな。

 独裁国家とか言ってたけどコイツらも独裁主義っぽい。

 

「皆! この話を受けようと思う。困っているんだし助けてやりたい!!」

「しょうがねえな。付き合ってやるか!」

「太一!」

「仕方ないな。手伝おう」

「雪菜!」

「私も頑張るよ!」

「乃々華!」

「私も…………」

「イリス!」

 

 えー? 疑わないの? 

 自由・平等・博愛なんて使ってる時点で信用出来ないんだけど。

 周りの人間を見ても同様疑ってない。

 

 取り敢えず、逃げる準備とかをしておこう。

 

「それでは別室へ。ステータスの確認をしますので」

 

 来たよクラス転移のお約束。

 俺が笑われるんだな。

 

 そして別室。

 

「おお、ツルギ殿。ステータスが常人よりも高いですぞ。攻撃力と魔法攻撃力がずば抜けておりますな。素早さも高い」

「いやぁ嬉しいですね」

「おお、ハガネダ殿もステータスが高いですな。攻撃力と防御力が凄まじいですな」

「へへっ、ありがとよ」

「ホウリュウジ殿は素早さが特段にありますな。我が軍でもこんなには無い」

「フン」

「ハシヒラ殿はMPが大量にありますな。回復や援護の適正ですし、治療院でも引っ張りだこでしょう」

「ふふっ、嬉しい」

「シルバーランス殿は魔法攻撃力や魔法防御力とMPが常識を超えていますな」

「…………」

 

 確かこの五人は勇者の補正がある上に、ステータスが上昇してるんだっけ。

 

 あ、次は僕の番か。

 

「クサノ殿は…………ステータスには変わった所はありませんね」

「だろうね」

「そりゃそうだろうな! だって女神様から加護を貰ってないんだしな〜」

 

 なんだろうなコイツらは信用出来ない。

 

「と、取り敢えずステータスって訳でもないので。レベルアップしていくと伸びが上昇するケースもあるので…………」

 

 この人いい人なのか? 

 そう言えば大器晩成のキャラとかいたな。

 

 

「それでは皆様、歓迎パーティーがあるのでご出席を」

 

 うわっパーティーとかあるんだ。

 まあ初日だし媚び売った方がいいか。

 

 で、パーティーに参加したが。

 

「こいつ何にも加護を貰ってないんだぜ〜!」

 

 って雨宮君が大声を出して指を指す為、人が全然来なかった。

 

 部屋は期待されていないのか城の空き倉庫だった。

 勿論使用人はいなかった。



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第38話

「さて、やりますか」

「本当にやるんですね」

「勿論、修行の一貫だからな」

 

 今日来たのはゼルトブルのカジノだ。

 ローナの能力を使い儲けようとする算段である。

 

 最近あまり構ってなかったので丁度いいだろう。

 

「少し罪悪感ありますね」

「承太郎も言ってたろ…………あれ? なんて言ってたんだっけ?」

「考えて言いましょうよ」

 

 さて、チップ買って入場しますかな。

 

 おっ、スロットがある。

 懐かしいな。知り合いがスロットマシンを違法改造してたっけ。

 

 チップを買って、スロットにイン。

 いやー懐かしいな。仲間と一緒にやったことがあるのだ。

 

「う〜ん同じ速さなのに止まり方が違いますね」

 

 そりゃそうだろうな。鑑定した所、魔法でプログラムされているのでタイミングが合わない。

 現代のスロットマシンと同じだな。大体は胴元が勝つ様に出来てるんだ。

 

「で、ローナ? 調べられてるのか?」

「ルーレットとチンチロの方には。やっぱりハジメ様の言う通り下に入ってました」

「ビンゴ。後で攻めに行くぞ」

「え、ええ……」

 

 運の勝負じゃないんだ。ギャンブルの世界は。

 このカジノもイカサマしてるのでおあいこである。

 

「あああクッソ! 何でフィーバーしないんだ」

 

 隣の客が騒ぎ立てる。

 熱くなるなよ。たかがスロットだぞ。

 

「元康様、コイン買ってきますわ!」

 

 へ? 

 

「なあ、ちょっとコインくれな…………ハジメ」

「元康…………」

 

 お前…………何やってんだよ。

 確かにカジノとか行きそうな雰囲気だけど。

 

「そう言えば本拠地だったな」

「まあな」

「コインを━」

「貸さねえよ」

 

 お前バカだから引いた方がいい。

 どうせビッチにせがまれたんじゃないのか? 

 

「それでなんでこのカジノにいるんだ?」

「まあな、マインに行ってみたいって頼まれてな」

「確かに派手好きだろうしな王女だし」

 

 国庫から金を引き出して、アクセサリーとかエステとか行ってたんだっけ。

 

「ああ、それで最初は結構当たってたんだが、今全然ダメなんだ」

「なるほど」

 

 ゼルトブルの情報力を舐めちゃダメよー。

 

「多分だけどこのスロットは遠隔操作出来るな」

「は? なんだそりゃ!?」

「カジノ側の戦法としては、勝てる! ツイてる! って思わせといてそのまま引きずるって事だ」

「…………どう言う意味だ?」

「ギャンブル依存症って知ってる? 大勝ちして負ければ取り返そうとするだろ。射幸心ってのもあるから依存するんだ」

「…………」

 

 係員がチラチラ見てるのも気になった。

 

「それに槍の勇者とメルロマルクの第一王女だろ。ゼルトブルは情報力高いから顔なんてすぐ分かる」

「そうなのか!?」

「闇ギルドなんて金を渡せば色んな情報を集めてくれるぞ? 金持ってるって事もな」

 

 この前の決闘の事とかもあるし、頭が悪いって事も分かる。ビッチは浪費とかするしな。

 

「そろそろスロットは止めておいた方がいい」

「ああ」

「お客様」

「ん?」

 

 支配人見たいな男性が元康の所へ。

 

「お客様は槍の勇者と見受けられます。どうでしょうか、VIPエリアで負けた分を取り返しませんか?」

「元康様やりましたね。行きましょう!」

「よーし、行くぞ!」

「お前バカだろ!! 話聞いてた!?」

 

 いつの間にかビッチが合流していた。

 

 調べたけどレート高いぞ? 

 お前乗せられやすいからカモだろ。

 

「斧の勇者様もよかったらどうでしょうか?」

「まあ、行くけど」

 

 最初からそのつもりですけど? 

 まあローナにやらせるつもりでしたけどね。

 

 

 ■

 

 

「最初はルーレットから行くか」

「よーしルーレットやるか」

 

 あれ? 元康? お前もやるのか? 

 利益率高いからなこれ。

 

 さてとどうするかな? 

 それじゃ俺は横の数字に賭けるか2ndの12。

 ローナは縦の数字だ。1の列だ。

 俺ら二人共に当たると2倍。

 

 元康達も当たると2倍の所にベットすると、ルーレットが回る。

 グルグル回り、それがゆっくりとしてくる。

 

 それが止まり、7だ。

 

「外れたか」

「あ、当たりました」

「あー外れた」

 

 ローナは当たったようだ。

 元康は外れたが。

 

(行けるか?)

(このスピードだったら対応可能です)

(失敗を混ぜてな)

 

 やっぱりイカサマに向いた能力だ。

 

 次のゲーム。ローナは5つの数字に賭ける。6倍。

 俺は6つの数字に賭ける。5倍。

 

 ルーレットスタート。同時にローナの能力もスタート。

 

 ルーレットが速度を落としていき、2番に入る。

 

「当たりましたね」

「サンキューローナ」

 

 二人共に当たったようだ。助かるよ。

 俺の方は結構ベットしてたから増えた。

 

「よし、当たった!」

「さすがですわ!」

 

 元康達は当たったようだか二倍だった。

 良かったな。

 

 次のルーレット。俺は5つの数字に賭ける。

 ローナは3つの数字に賭けた。

 

 そしてルーレットスタートするが、

 

「あー外れましたね」

「俺も」

「よし、当たった!」

 

 元康達は6つの数字に5倍でかけてた。

 俺らはベット数が少なかったのであまり被害は無い。

 もうそろそろいいかな? ローナに合図を送る。

 

「じゃあ私は12と15を」

「…………それじゃ俺は15と18」

「…………12から18の6つを」

 

 6割がたのチップをベットする。

 元康達も何か気づいたのか俺らと被せる。

 

 ルーレットスタート。見ていた支配人は笑みを浮かべている。

 そして止まったのは、15。

 

 2つなので、17倍である。

 支配人の顔が笑顔から無表情に変わる。

 

 下に人が入ってるの知ってるし、地下から入れる。

 磁石でルーレットの目を変えてる。

 

「なんか疲れてきたし他の所行くか。最後にするよ」

「さ、左様ですか…………」

「うん、儲けた分だけ30番へ」

「あ、私も」

「俺も賭けるか…………」

 

 ルーレットスタート。回り出した時に、支配人の顔に焦りがあった。

 ん? 何机蹴ってんの? 

 

 ルーレットはゆっくりとしていき、周りが沈黙していく。

 

 コロン! 

 

 30番に入った。35倍だったけ? 

 

「サンキューハジメ!」

「良いってことよ」

 

 一応恩とか売っておこう。

 

 さ、次だ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 よぉし次はポーカーやるか。

 

 形から見るとテキサスホールデムポーカーかな? 

 召喚された勇者の中にもカジノ好きがいるらしい。ゲームと言えばカジノだからな。

 

 ルールは「2枚の手札と5枚の共通カードの合計7枚のカードから、5枚を使って、強い役を作るゲーム」だ。

 

 ただし、7枚のカードが全部一度に配られるわけでは無く、

 

 ① 2枚の手札

 ② 3枚の共通カード

 ③ 1枚の共通カード

 ④ 1枚の共通カード

 

 という順にカードが増えていき、カードが増える都度、チップを賭けることができる。

 

 日本でも密かに人気があり、テキサスホールデムはブームになってるとかなんとか。

 10億円程の賞金が掛けられるほどのポーカーだそうだ。

 

 前の世界でもカジノによっては100億円近くの賞金があったな。

 イカサマはバレなければ大丈夫らしく、能力者が賞金を獲得する事もよくあった。

 

 勿論俺もイカサマして稼いでました。

 しかし場所によってはカジノ側にも能力者がいる所もあり、サクラを使って勝たせるやり方をしていた所もあった。

 

 後で聞いた話だと、カジノ内のゲームの結果を操ると言う能力者だったとか。

 

 さて、座るか。ローナが。

 

「お、ポーカーかい? やってみようかね」

「あ」

「何かようかい?」

 

 パンダ? ラーサズサだったけ? 

 ゼルトブルとシルトヴェルトに生息する傭兵。

そう言えばここでコロシアムとかやってたんだっけ。

 

「それでは私も」

 

 ん? 知らない老人が座ってきた。

 

「あ、キートだ」

「知り合い?」

「各地を渡り歩く伝説のギャンブラーさ」

 

 えーそんなのがいるのか。

 

「さて、やりますか」

「よーし負けねえぞ」

「アタイを舐めるなよ」

「ふぅ」

 

 こうしてポーカーが始まった。1回目。

 まずローナの最初の役は、

 

 ♥7 ♣5

 

 それで最初の3枚は、

 

 ♥3 ♠5 ♠Q

 

 今の所はワンペアだな。

 ここら辺で降りるか残るかなんだよな。

 

「アタイは止めておくよ」

 

 お、ラーサズサさん落ちたか。

 で、次のカードは、

 

 ♠7

 

 お、ツーペアじゃないですか。

 これは勝ったか? 

 

「あ、私降ります」

 

 ゑ? ローナは降りるの? 

 って事はだ。ツーペアよりも強い役を持ってるって事? 

 

 最後の役は♦4だ。

 

 それではショーダウン。そして出た役は、

 

 元康 ♠4 ♦4 ♣3 ♥3 ♠7

 キート ♦Q ♣Q ♠Q ♠7 ♥3

 

 キートの勝利。スリーオブカインド! 

 

「クソッ!」

「ふぉふぉ」

 

 この人初手でクイーンを2枚持ってたのか。

 侮れねぇ。

 

 

 

 はい第二試合。

 ローナの役は、

 

 ♠5 ♠9

 

 それで最初の3枚は、

 

 ♠A ♠J ♦3

 

 今の所は♠が四枚ある。

 フラッシュの可能性は大いにあり。

 

 で、今の所誰も落ちない。

 次の役は、

 

 ♥4

 

 クッソ♠出ろよ。

 

「私は止めて置きましょうかな」

 

 キートは勝ち目がないと悟ったのか降りた。

 次、次だ! 出てきたのは、

 

 ♠K

 

 よし! ショーダウンだ!! 

 

 ローナ ♠A ♠J ♠5 ♠9 ♠K

 元康 ♠A ♦A ♣4 ♥4 ♠J

 ラーズササ ♠K♣K ♠4 ♥2 ♦3

 

 ローナの勝利。フラッシュ!! 

 

 ツイてたな。

 

 

 第三試合。

 ローナの役は、

 

 ♦6 ♥9

 

 そして三枚は、

 

 ♥9♣5♠6

 

 今の所ツーペアってとこか。

 他の奴らはどんな役だ? 

 

 ♥6

 

「うん、アタイは降りようかね」

「俺も」

 

 二人共に落ちたか。ローナはフルハウスだ。

 次の役は何だ? 

 

 ♥Q

 

「私は落ちます」

 

 ええ? 結構いい訳なのに? 

 キートのカードは?! 

 

「ほぉ、勘がいいですな」

 

 ショーダウン! 

 

 ♣6♥6♠6♥Q♠Q

 

 こいつ…………♣の6を持ってたのか。

 流石伝説のギャンブラー。

 

 この後数十試合した。キートは強かったがローナは僅差で勝利したのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「いやー結構儲かりましたね」

「ああ、いい資金源になったな」

 

 ポーカーの後にも丁半とかやって爆勝ちした。

 元康は少し儲かったらしい。説得してビッチを遠ざけた甲斐があった。

 

 ちなみにこのカジノは転生者と組んでおり、資金源になってるとか。儲かったから多少経営が傾くだろうな。

 フォーブレイの転生者なので近いうちに狩るつもりだ。

 

「おねーちゃん花かってー」

「おやおや、1ついくらですか?」

「銅貨1まい」

「全部買いましょう。花瓶に入れる花が欲しかったんで」

「ありがとー」

 

 そう言えばローナって性格良いんでしたっけ。

 良い部下持ったな。

 

 こうして資金を調達するのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「もしもし? こちらキート」

『アメバだ。どうだった?』

「ああ、鳥肌立っちまった」

『俺も見たかったぜ』

 

 伝説のギャンブラー、キート。

 誰も居ない所で通話していた。

 

「ああ、やはり今代のようだ」

『そうか……』

「一緒に居たのも因果なのかもしれん」

 

 沈黙が少し続く。

 

『それにしても……無事で良かった』

「エネス殿から助けて貰ってたもんな」

『ああ、あの時の恩を返せてないからな……取り敢えず国に帰投してくれ』

「何かあったのか?」

『バレル王子の一派が数減らしに動くかもしれん。力を貸してほしい』

「OK、帰投する」

 

 ハジメ達水面下で何か動いていた。

 関わるのは少し先の未来だ。



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第39話

「兜割りX!」

「GAOOOOOOOOO!」

 

 次元ノピッポグリフ Lv80

 

「ようし、ボスを倒したし残党倒すぞ」

「了解です」

 

 いやー今回波は街が近くにないから良かったぜ。

 その分兵を回せたから早めに終わった。

 

「アル・ドライファ・ホーリーレインX」

 

 早くお風呂入って寝たい。

 最近夜とか活動してるから眠いのだ。

 

 実は俺と春菜とその一部しか知らない部隊がある。

 通称《暗部》の零番隊だ。

 

 俺と弟子の一人が経営。俺が隊長。

 その弟子の一人が元どこかの影らしく、他の人材をどこかから連れてきた。

 

 外見は皆NARUTOの暗部とそっくりの見た目だ。

 良い。雰囲気が。

 

「ハジメ様、お疲れ様です。全部倒したみたいですよ」

「ご苦労。さ、帰るか」

 

 

 

 ■

 

 

 

「ふぅ、気持ち良かったー」

 

 今回の波も被害者ゼロだったし運が良かった。

 これが続くといいな。

 

「あ、お兄ちゃん。どう? 一緒に麦茶でも?」

「お、丁度いい」

 

 パジャマの春菜が机の方で一人で飲んでいた。

 少しくらい付き合うかな。

 

「よっこいしょ」

「あ、ハジメ様」

「あ、御館様」

 

 あ、ローナとシルフィだ。お風呂上がりかな? 

 二人共に顔に赤みが出ている。あ、コーヒー牛乳を片手に持ってる。

 

「ご一緒でいいですか?」

「いいぞ」

「拙者も」

 

 俺は春菜から貰った麦茶に口を付ける。うまい。

 

「お兄ちゃんって前の世界の事聞きたいな」

「ん? 例えば?」

「誰と仲良かったりとか、ハンターとしての活動とか」

 

 んー。

 

「パリストンとは結構話したな。後は脱会長派とも関わりある」

「ええ?」

 

 やっぱり意外だよな。

 

「パリストンはよく協会の方へ行くと必ず会いに来るな」

「目とかつけられたんだね」

 

 まあ、とある事があって俺らには甘いからな。

 ジジイを何とかする時には必ず呼ぶ。

 

 例えば━━━

 

 

『フォフォフォ、同じハンター仲間として知っておくのが常じゃからのぅ』

『もしもし副会長? 会長が更衣室覗いたんですが』

『酷くね?』

『ダメじゃないですか会長〜』

『早いなオイ』

 

 

「って」

「仲良くなるわけだ」

 

 会長を何とかするには越したことはない。

 

「でも何で脱会長派とかかわり合いあるの?」

「俺らチームが結構やらかしてさ、ブシドラのとっつぁんから追いかけられてたんだ」

「何やったの…………」

「んで、多少仲良くなってさ」

「鬼ごっこで仲良くなるんだね」

 

 やばい時には脱会長派一丸となって追いかけて来たからね。

 

 

『まぁぁぁぁぁぁてハジメェェェ!!』

『あばよ〜とっつぁん〜』

 

 

「なんかルパンみたい」

 

 ジンさんもそうやって逃げてたって。

 流石バックレ屋ですわ。尊敬するぜ。

 

 ジンさんで思い出したけど、よくよく考えればパリストン以外の十二支んから疎まれてた。

 まあジジイ虐めとかしてたから。

 

「そう言えばハジメ様の仲間って──」

「あ、夜刀ちゃんのライブの事でミーティングあった」

「?」

「話したくないの?」

 

 みんな頭おかしいからな。

 ミレナリオなんて優しい方だ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 とある日の夕方。

 

「はーじーめ様、良かったら今日ウチにご飯食べに来ませんか?」

「ん? いいぞ?」

「社員寮で家族と一緒にですけど」

 

 そう、ローナの家族が社員寮にこの前越してきたのだ。

 

「結構肉とか持ってた方がいいか?」

「お、最高です。鍋にしようかなと」

 

 母親と6人の弟妹でしたっけ? 

 騒がしいって聞いたけど。

 

「それじゃ行くか」

 

 ローナの家族かー。

 何人か見たけど…………まあいい。

 

 えっとここか? 大きい家だな。

 ん? 少しボロボロだな? 

 

「お邪m」

「何やってんだお前はぁぁぁぁぁ!」

 

 ドカァァァン! 

 

 ドアノブを触ろうとしたらドアが飛んできた。瞬間的に避けたけど。

 

「いてぇなラピ姉……」

「アンタ私のコッペパン食ったでしょ!!」

「ふざけんなあれ腐ってたぞ! どんだけ腹壊したと思ってんだ!」

「なぁぁぁんだどぉぉぉぉぉ!」

 

 おい、小さなことで喧嘩してんじゃねえよ。

 

「あーローナいるか?」

「あ、斧の勇者様!」

「オラッ!」

「グヘッ!?」

「喧嘩はおやめなさーい、パラライズアックスⅢ」

 

 全くもー、やんちゃだな。

 

 コイツはラピ。次女。

 それで男の方はヤーリ。四男だ。

 

「あーハジメ様! どうぞ中へ」

「ああ、ヤーリを運ぶぞ」

 

 俺がローナの家族と会った時、実はかなりビックリした。

 

「全くも〜」ズシン ズシン

「う〜痺れる」ズシン ズシン

 

 次女は181cm 14歳

 四男は191cm 10歳

 ちなみに俺は172cm

 ローナは149cm

 

「あら〜斧の勇者様」ゴホゴホ

 

 この方がローナの母親。ミリセラさんである。

 180cm。

 

「あ〜斧の勇者様だ〜」

 

 三女のマリリンちゃん。背が高いけどツインテが似合ってる。

 178cm。9歳。

 

「ただいま」

「帰ったぜ」

「ローナ姉、今日は肉か?」

 

 長男ビック、次男パーズ、三男ターン。

 上から205cm、208cm、202cm。三つ子、12歳。

 

 お分かりだろうか。

 ローナを除いて全員高身長だ。

 

「勇者様、お久しぶりです!」

「おお、材木屋へ奉公だっけ?」

「パーズが材木屋です。俺はシータさんの商会で奉公です」

「顔そっくりだからな」

「ハッハッハ」

 

 ちなみにターンは旅館で奉公だ。

 

「皆〜鍋できましたよ」

「イヤホオう!」

 

 エプロン姿が似合ってるぜローナ。

 肉も貰ってきたから最高に鍋が盛り上がるぜ。

 

『頂きます』

 

 す、の所から肉に箸が届いた。

 皆肉好きなんだな。

 

「母さんどうです? 体調は?」

「だいぶ良くなったわ……」

「薬効果上昇が効いたな」

 

 実は呼吸器系が病気だったのでその専門の薬を調合(オルクに手伝ってもらった)し、処方した。

 それで快方に向かっている。

 

「うめぇ」

「イノシシか?」

「美味しい〜」

 

 なんかガリバー旅行記みたいだ。

 

 

 

 ■

 

 

 

「そう言えば、メルロマルクの波の準備は出来たんですか?」

「勿論、1番隊と2番隊を連れてく」

「盾の勇者様とはどうするんです?」

「隠れてサポートするさ」

 

 実は大物の一人がメルロマルクの女王陛下であったのだ。

 波に参加して欲しいとの事で頭下げに来て、一応交換条件は結んで置いたのでいい取引にはなったと思う。

 

 でもなんで俺達が参加するんだ? って思ったから聞いてみたら。

 

『勘…………でしょうか』

 

 だってさ。女の勘ってのは結構当たりやすいからな。信用できるのかもしれん。

 

「さて、俺は帰るかな」

「おやすみなさい〜」

 

 俺はローナの家を後にするのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 さてさて、寝ますかな。

 執務室から出ようとすると。

 

「ボス、報告があります」

「イメルダ? 何があった?」

 

 コイツはイメルダ。

 暗部に所属している念能力者だ。

 

「私のカードをアルドミティアへ偵察を送ったのですが…………消去されました」

「は?」

 

 イメルダの能力、誰が配ったの? 《ピラミッド》だ。

 カード一枚づつに認識阻害能力がある念獣であり、カード達を色々な場所へ忍ばせ諜報する能力だ。

 

 認識阻害と言っても、五感を感じさせないだけだ。

 どうやって消しやがった。

 

「私にもよく分かりません。カードもよく分からないで消滅したみたいなので…………」

「しばらくアルドミティアへは偵察を出すな…………」

 

 この偵察能力が出来ないとなると、この国は厄介そうだな。

 近づきたいけど何があるか分からない。

 

「とりあえず、了承したから休んでくれ」

「はっ」

 

 俺も休もう。

 意外と書類仕事も精神力使うわ。




そろそろ原作に戻ります。

★誰が配ったの?《ピラミッド》
・トランプのカードを媒体とし、色々な所へ忍び込むことが出来る念獣。操作系。
・どのカードも認識阻害されてるので見つかる事はほぼ無く、見破る事は不可能に近い。
・ジョーカーが親のようになっており、他のカードと連絡を取り合う。
・カードの二分の一損傷したらその念獣は二度と使用不可。

モデルはジョジョのムーロロのスタンド。


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第40話

二日連続で投稿します。


「さて、またやってきたな。メルロマルクへ」

「龍刻の砂時計は?」

「問題ない。女王陛下の委任状持ってる」

 

 さてさて、この波は尚文がソウルイーターを倒して、グラスが出てくるんだっけ? 

 

 あんまり原作ブレイクしたら不味いから村の避難をやろうと思っている。主人公の成長を邪魔しちゃ悪い。

 

 …………でも何で女王はこの波に参加して欲しかったんだ? 

 確か原作通りだとグラスと戦うけど逃げきったんだよな? 

 

 …………まさか、能力者が介入してるとか? ありうる、ミレナリオの他にもアギレラとかゴドルがいる可能性がある。

 …………勝てるのか俺? 

 

 まあ保険は付けとくか。念には念を。

 

「取り敢えず薬を確認しよう。魔力薬、回復薬、魂癒水もOK」

「兵隊も1番隊と2番隊+aでござる」

「やっぱり盾の勇者様と連携取った方がいいと思うよ父様」

「一応ローナに伝言頼んだ。俺らは民間人を避難させるって事を」

 

 俺は隠れてサポートするとしよう。

 隠蔽斧使って戦おう。パーフェクトハイドしてやるぜ。

 

「さて、他何か見落としてないか確認するぞ」

「うーん、あれ?」

「どうし、あ」

 

 尚文だ。ローナが連れてきたのか…………。

 こちらに近づいて来たぞ。

 

 よし、隠れよう。

 

「キラークイーン、ちょっと失礼」ファサ

「えー?」

「どこに入る気だ!?」

「なんでよりによって羽毛の中に!?」

 

 だって良い逃げ場だしな。

 うっへーあったけ〜。

 

「おい、ハジメ。話がある」ガサゴソ

「きゃーえっち」

「…………」

 

 俺、もうそこには居ないよ? 

 

「すまなかった……話を聞いてくれ」

「ナオフミ様…………」

「ごしゅじんさま…………」

「尚文…………」

『…………』

 

 ガサゴソしてた時から後ろに居た。

 絶は完璧。皆ビックリ。

 

「ああ…………波で連携したいんだが」

「あ、うん」

 

 尚文閣下と共同で波と戦う事になった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 波まで後二分。

 

「そう言えば三勇者は編隊機能使うのか?」

「いや、使わないらしい。クズが使うなだと」

「は? 国民に生かされている犬が調子に乗るなよ…………」

「全くだな」

「まあ、そろそろビッチ共々王族から堕ちる事になると思うけど」

「…………どう言う意味だ?」

 

 うーん。やっぱ調べないのか。

 仲良しの人間はいるはずなのに聞かないのか。

 

「そりゃ悪い事したからに決まってんでしょ? 国外じゃ有名だぞ」

「アイツらを罰する事が出来る存在がいるのか?」

「その通り。誰かは言わない」

 

 確か城の中に女王の肖像画とかあったし、王座に二つ椅子があったろうが。

 

 ネタバレしたらブレイクしそうだから詳しく言わない。

 

「そうか…………」

 

 尚文も納得したみたいだ。

 頼むぞ。

 

「そう言えば他の国ってどんな所があるんだ?」

「他国? ゼルドブルの他にはフォーブレイとかシルドヴェルトやシルドフリーデンだな」

「一応詳しく」

「ゼルドブルは傭兵と商業が盛んな国だな。盛んすぎて色んな人種がいる。だけどその分闇が深い国で治安も悪い」

「ふむ」

「フォーブレイはゼルドブルと同じ国力の国で、勇者の血を王族に取り入れて、現代知識で最先端の技術がある。車とか飛行船もあるぞ」

「異世界で車を再現か…………」

 

 国の事だったら教えても問題ないだろ。

 

「ナオフミ様、そろそろ」

「ハジメ様もですよ」

 

 0:03

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「フィーロ! 槍を蹴って亀裂に向おうとする奴等にぶつけろ。加減はしろよ」

「はーい!」

 

 よくよく考えたら波の会議とかしないんだな。ゼルドブルではやってるのに。

 

「「「わあああああああああああああああ!」」」

 

 他の連中も巻き込まれて吹っ飛ぶ。

 

「な、何をするんだ!」

「それはこっちの台詞だ馬鹿共!」

「いきなりなんだ!?」

「そうです! 僕達は波から湧き出る敵を倒さねばいけないのですよ!」

 

 おいおい? 話し合いとかしないの? 

 ゲームとは少し違うのよ? 

 

「まずは話を聞け、敵を倒しに行くのはその後だ」

「さては……僕達への妨害工作ですね!」

「違う!」

 

 尚文は視線で志願兵たちに近隣の村へ向うように指示する。

 俺もグラン達に村へ直行するよう指示を出す。

 

「落ち着け、そして考えろ。俺は援助金を貰えないから波の本体とは戦わない。精々近隣の町や村を守るのが仕事だ。そこは理解したか?」

「ああ」

「勇者としては失格ですね」

「そうだそうだ!」

 

 失格だと? お前らどんだけ尚文に尻拭いさせたと思ってるんだ?

 

 波の本体も倒すのも大事だが、国民の命を考えるのが何が悪いんだよ。人として立派。

 

「次にお前達。波の大本から湧き出る敵の撃破が仕事だ。ハジメの話では大物を倒すか、亀裂に攻撃して波は収まるでの合ってるか?」

「そうですよ!」

 

 一応波の仕組みを教えておいた。

 

「だけどな、俺達にはそれ以外に重要な仕事があるの……分かってない?」

「騎士団だな……」

 

 錬、やっぱりわかってんな。

 

「一応騎士団の方に編隊のパーティーを送ったんだがな…………」

「あのクズ王がどっかの誰かにボコられたからだそうだぞ」

 

 全くクズめ。

 あ、俺のせいでもあるか。反省。

 

「とりあえず確認だ。誰か、波での戦いについて、ヘルプなどの確認を行ったもの」

 

 手を上げたのが俺、尚文、錬。

 おっと? 錬がまともだな。

 

「熟知しているゲームのヘルプやチュートリアルを見る必要なんてねえだろ?」

「ええ、ですから早く波を抑えることを最優先にしましょう!」

「じゃあ波の戦いはお前等……他のゲームでなんて言う?」

「何のことだ?」

「それよりも早く行きましょう!」

 

 質問を無視して樹は走っていった。

 

「元康、お前は俺の質問の意味がわかるだろ?」

「まあ……インスタントダンジョン?」

「違う。タイムアタックウェーブだろ?」

「ギルド戦、またはチーム戦、もしくは大規模戦闘」

「…………ハジメが正解だ」

 

 よくチームを組んで戦ってたからな。

 つーか俺も時間が惜しい。村に直行しよう。

 

「尚文、スマンが俺は避難の方へ行ってる」

 

 国民の命が大事だからな。

 俺らパーティーは村の方へ走るのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「……遅い!」

 

 あれから3時間経過した。尚文が待ちくたびれてるな。

 やっぱり三勇者は戻ってこない。

 

 避難も大部分も終了、近隣の村も対処した。

 怪我人の治療も行っている。

 

 今は波の魔物の対処をしているところだ。

 

「金剛瀑布!」

 

 うっわ簡単に風穴空いたなぁ。怖い怖い。

 

「勇者様、ここは僕達に任せて、他の勇者様の援護に向われては?」

「行く意味はないんだがなぁ……」

「問題無いぜ尚文、ここは俺らだけで十分」

「マンティスブレード!」

「ひゃほおおおおおおおおぅ!」

「ひぃぃはああああああああ!」

「…………」

 

 ……なんだろうか。コイツらが心配になってきた。

 元気ですねー。

 

「任せるぞ」

「お任せ下さい!」

 

 うん、大丈夫だそうだ。

 

(ローナ、付けておけ)

(もう付けてますよ)

 

 こうして波のボスの方に走っていくのだった。

 そして数十分後、

 

「魔閃光ォ!」ドカァァァン

「うわぁ」

 

 三体とも念弾で一気に貫く。

 

「さて、そろそろだろ」

「うん、この波終わったらゼルドブルに戻ってカルミラ島だね」

「ああ、準備を──」

「オイ! ヤベェェゾ、ハジメ!!?」

「何かあったんですか?」

「何ガアッタモナニモ━━」

 

 

 

『ハア!?』

「急ゲ!」

 

 確かにやばいぞ。

 やはり女王陛下の勘は当たっていた。

 

「急ぐぞ、キラークイーン!」

「うん!」

 

 急げ急げ急げ! 

 お、キラークイーン結構早いな。資質上昇で素早さ上げたからな。

 

 そしてあっという間に船についた。

 

「みんな捕まってー!」

 

 キラークイーンのジャーンプ! 

 足にオーラを溜めてここまで飛べんのか? 

 

「輪舞零ノ型・逆式雪月花 十!」

 

 十!? どういうことだ! 

 鈍器の勇者と強化方法を共有してるのか!? 

 

「ぐあああああああ!?」

 

 尚文のやられたような声が聞こえる。

 そして、甲板出ると。

 

「ほう、結構耐えましたね」

 

 尚文とその仲間が横たわっていた。

 そして気絶したせいか、憤怒の盾がスモールシールドに変わってしまう。

 

「…………おや? この世界にも能力者がいたのですか」

 

 今、俺は練をしている。

 今の発言、間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故グラスが纏を出来ているんだ!?




感想とか評価あればモチベーションになります。


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第41話

 数十分前。

 小人は見ていた。

 

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は鉄の処女の抱擁による全身を貫かれる一撃也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!』

「アイアンメイデン!」

 

 三勇者の情報違いで時間がかかり、全員違う方法でソウルイーターを出現させてた。

 尚文の機転により影を攻撃し、ソウルイーター出現。

 

 三勇者が一斉攻撃しても駄目なので尚文頑張る。

 今ココ。

 

「これで波が━━━━━」

 

 ここにいる全員が寒気を覚える。

 ボスを倒しても空の亀裂が元に戻らない。

 

「この程度の雑魚に何を苦戦しているのか。どうやら勇者は一人しかいないと見える」

 

 誰かがマストの上から降りてくる。

 

「な、なんです? あなたは…………」

 

 するともう1匹のソウルイーターが出現。襲う。

 

「ふん」

 

 扇を1回降ると、

 

 シュパン!! 

 

「は!?」

「網目に……」

 

 ソウルイーターの顔に網目がつき、ところてんのような感じになる。

 サイコロステーキ先輩って言えばいいのか? 

 

「邪魔しないでもらいたいですね。これは崇高な戦い……」

 

 全員が身構える。

 

「……そう。本当の波の戦いはこれからです」

 

 武人だね。立派だよ。

 

「私の名はグラス、いうなればあなたたち勇者一行とは敵対関係にある者です」

「尚文だ」

「━━では初めましょうか。真の波の戦いを!!」

 

 戦いが始まった。

 それぞれ三勇者は総攻撃するも、グラスには当たらない。

 

「輪舞零ノ型・逆式雪月花!」

『ぐあああああああああああああ!』

 

 三勇者は吹き飛ばされる。

 丁度尚文達は守っているので無事。

 

「ぐぅっ!!」

「ほう、さすがですね。私の攻撃を受け止めるとは」

「はいくいっく!」

 

 フィーロたんの攻撃を軽く受け止める。

 

「効きませんね」

「はあっ!」

 

 ラフタリアさんが姿を消して後ろから斬りかかる。

 

 カキーン!! 

 

「おや? なにか?」

 

 ガードすらしない。

 全然効いてもいない。

 

「尚文、あの盾は使わないのですか?」

「お望み通り……使ってやるよ」

 

 尚文は憤怒の盾に変える。

 ダークカースバーニング。グラスを炎の中に━━━

 

「おや? この程度ですか?」

「なっ!?」

 

 尚文はスキルを使った。

 グラスは余裕そうに待つ。

 

「シールドプリズン! チェンジシールド(攻)!」

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は鉄の処女の抱擁による全身を貫かれる一撃也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!』

「アイアンメイデン!」

 

 ドガ バキ ガギン

 

「この程度ですか?」

「くっ…………」

「こちらの世界は使える人間はいない。私たちの勝利ですね……」

「……?」

「輪舞零ノ型・逆式雪月花 十!」

『ぐああああああああ!!?』

 

 

 

 ■

 

 

 

「そっちも使えるって事は仲間にもいるってことかな?」

「さぁ? 教えるとでも?」

 

 おいおい、なんでグラスが念能力を使えるんだよ。

 バックに念能力者がいるのが確定ですぞ。

 

「あなた、名前は?」

「もょもとだ」

「…………」

「もょもとですか……いい名前ですね」

「ええっ…………」

 

 からかったのにまともに受け答えされてもね。

 騙されやすいって言われない? 

 

「それじゃこっちも質問。波での戦いでどんな能力者と戦った?」

「…………」

「?」

 

 どうせ仲間の個人情報は教えてくれないだろうし、こんくらいだったら教えてくれるだろう。

 

 …………あり? 何か言いたくなさそう様子だな。

 もしかして敗戦したとか。

 

「私が知ってるのは三人です。まず1人目は人間のような念獣を使う棒使い。小柄で言葉が小さいのが特徴でしたね」

「…………」

「二人目は鋏を持った爆弾使い。金髪で鼻に傷が一文字でついていましたね」

「…………」

「三人目は車輪でしょうか…………特徴としては下半身はなにも履い……どうでもいいですね。下品な戦い方ですが私は死にかけました…………」

 

 そいつら俺の知り合いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 

 ちなみに全員星持ちの人間だよ!? 

 よく生き残れたなグラス。

 

「次の質問、そっちの世界には変態がいるのか?」

「…………」

 

 あっ申し訳無さそうに目を逸らした。

 グラスも苦労してるのだろうか? 

 

「まあ、もう雑談はいいでしょう」

「…………」

「始めましょう、もょもと。真の波の戦ぐはっ!?」

 

 

 

 数分後。

 

 

 

「くっ…………」

「もう止めようぜ……」

 

 そう言ってもグラスは涙を流しながら立ち上がろうとする。

 

「………………」ガクガク ウルウル

 

 なんかラモットと対峙している時のキルアみたいだ。

 

(どうしよう。何度も帰れって言ってんのに引いてくれない)

(確か狩猟具の勇者が行方不明だっけ)

 

 引きたくても引けないって事か。

 そう言えばゴンと同じ声優だっけ? 今どうでもいいか。

 

「あ、カウント出てきた」

 

 急に画面にカウントダウンが現れた。

 

「ほら、帰れよ」

「…………」

 

 グラスは宙に浮き、薄くなって…………消えた。

 …………波は終了した。

 

 俺は一息着いた。

 

「………」

 

 嘘だろ…………ミレナリオの他にもいんのかよ。

 もしかしたら戦うかもしれない。

 

「ハジメ様、コイツら運んで手当てしないと」

「あ、そうだそうだ。アイツと…………これで貰っておくか。手伝ってローナ」

 

 ついでだし、貰っておくものは貰っておこう。

 運ぶ代金だ。

 

「ん?」

「あれ?」

「どうした?」

 

 ローナとシルフィが能力を具現化したら反応した。

 

「これ…………どこかで見たような?」

「…………拙者もでござる」

「?」

 

 あれ? この能力は2人には始めて見せるんだけど? 

 この反応は気になる。

 

「昔どっかで見たような…………」

「取り敢えず運ぶか」

 

 …………おかしい話だ。

 見せてもないのに見たことあるような覚えってのは矛盾してるような話だ。

 二人とも発言してるってのが気になるが。

 

「これをこうやって」

「こうするんですね」

「そうそう」

「この能力って面白いね」

 

 だよね。この能力は俺も助けられている。

 

「馬車欲しいね」

「ローナ、待機している奴らに連絡して」

「あと少しかかるそうです」

「おっけー」

「怪我人を船から運び出そっか」

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、怪我人を運んだし、復興の手伝いしようか。

 まずは波の魔物の死骸を武器に入れるとしよう。

 全部は入れないがな。

 

 結構畑とか荒らされてるな。牧場も同じく荒れている。

 波が長引いたし、避難重視でやったから仕方ないか。

 

 ってな訳で。

 

「あ、この実美味いな」

「埋めてから五分で育つとは…………」

 

 一応念の為バイオプラントを持ってきたのだ。

 糖分が入っている木の実なので栄養価があり、味はバラバラだが皆美味しい。

 

 村人も俺の私設兵も一緒になって食べている。

 お前らのはウチの領地に戻れば沢山あるから。

 

「よーし皆さん! 出来ましたよー!」

「俺も食うか」

 

 ローナが炊き出ししてくれた。

 その辺の魔物と山菜と無事だった調味料で美味しそうなのが出来た。

 おー美味そう。腹減ってるから頂こう。

 

「美味い…………」

 

 豚かな? キノコと味噌らしき汁。

 美味しいな。うん。

 

 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

 

 あ、騎士団だ。今まで何やってたのだろうか? 一夜明けたけど? 

 

「貴様! 勝手に我が騎士団の兵をもって行きおって!」

「勇者様の所為ではありません! 僕達が勇者様の力になりたいと進言し、勇者様のお力を借りただけです」

「なに? それでも貴様等は栄誉あるメルロマルクの兵士か! 盾なんぞに惑わされおって!」

「お前さー……この惨状を見て、問題行動だって、部下を処分するわけ?」

 

 あ、尚文復活してる。いつの間に。

 

「こいつらが居なかったら被害はもっと出ていたと思うぞ?」

 

 その通りだな。他の村人も頷く。

 お前らよりも国民の命を大事にしてるんだよ。

 

「あと、お前達が頼りにしてる勇者達とその仲間達は全員、波で現れた強敵にやられてそこの建物に収容されているぞ」

 

 さっさと連れて行くのですな! 

 

「急いで勇者様とその仲間を運び出せ! 早急に治療院へ送るのだ!」

「おい……アイツ等は比較的軽症だぞ。他の重症を負ってる村人も居るんだからそっちを優先して……」

「勇者とその一行を最優先するのは、我が国、そして世界の為だ!」

 

 勇者達は軽傷だし放っておいても問題ない。

 村人達の方を優先して欲しいわ。怪我人多いし。

 

 …………って言うか勇者とその一行を最優先?

 民間人はどうでもいいのか? 波での避難を軽視してたろお前ら。

 責任は国の方にあると思うぞ。

 

 俺は何もしてないのに威張ってるような奴が大嫌いだ。

 

「はいはい。サッサと連れてけ、俺は忙しいんだ」

「待て、盾」

「今度は何だよ……」

「城へ報告に付いてきて貰おう」

「やだよ面倒くさい」

「良いから来るんだ!」

 

 ちなみに俺は隠れている。

 厄介事には関わりたくない。

 

 それで尚文は志願兵からお願いされ、王城へ呼び出される事になった。

 

「ハジメ様行かなくていいんですか?」

「そこまでは女王と約束してないからな」

「カルミラ島への準備があるからね」

 

 もう活性化が始まってる情報もゼルドブルに入っている。

 女王との取引で、俺ら御一行は高級リゾートの様な場所に泊まることになった。全面的に支援してくれるらしい。

 

 夜刀ちゃんのライブも行う予定なのでドキドキが止まらない。

 

 さあ、カルミラ島へゴーだ! 

 いやっほぉぉおおおう。



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第42話

 グラスとの出会いから数日。

 

「ふぅ、今日は大砲型の試運転の日か…………」

 

 ツンツン

 

「ん?」

「この前ぶり」

「フィトリア…………」

 

 あ? 何の用だ? 

 …………心当たりあるな、もしかして━━、

 

「盾の勇者が危ない」

「そう来たか…………」

 

 やっぱりそう来たか…………。

 でも原作じゃ俺が居なくても大丈夫だと思うんだけど? 

 

 フィトリアが少し手を貸した程度で普通に生き残ってたが。

 俺必要あるの? 

 

「今回は直感」

「?」

 

 勘か、女王も言ってたけどその通りになって念能力者のグラスが出てきて可愛がってくれたし、長い間生きてきた野生の獣の勘も無視できないな。

 

「わかった、いつ?」

「今」

「早急すぎね?」

 

 アポ取らずに頼み事してる時点でその言葉は酷い。

 

 

 

 ■

 

 

 

「さて、着いたけど」

「この辺にいるはず」

 

 勇者の反応とか分かるのかな? 

 

「ちょっと喉乾いたから水飲みたいー」

「あ、湖ありますね」

 

 近くに湖があったようだ。

 ヒミコと釣りした記憶が真新しい。

 

「そう言えばフィトリアって誰から念能力を教わったんだ?」

「私も気になる」

 

 原作じゃ念能力なんて概念なんて無いからな。

 

「フィトリアの主人が教えてくれた」

 

 城野守が?

 いや、違う。もしかしたらソイツじゃなくて念能力者なんじゃ。

 

「名前は?」

「忘れた」

 

 忘れるんだ。

 まあ、大昔の事だからな。

 

「優しかったのは覚えてる」

「…………」

「だけど敵には容赦無かった」

 

 尚文みたいな奴だな。

 優しくて敵には容赦無い奴なんて沢山いるからな。

 

 的が絞れないな。どんな奴だ? 

 

「そう言えばお兄ちゃん」

「ん?」

「ここアニメで見覚えのあるんだけど」

「あー」

「なにか来る」

 

 ドドドドドド

 

 何だこの音? 

 あ、尚文一行が出てきた。

 

 もしかして…………

 

「GAOOOOOOOOO!!」

 

 わータイラントドラゴンレックスだー! 

 恐竜キングが懐かしい。

 

「斧の勇者の配下の力を見たい」

「どうしろと?」

「倒して」

 

 まー出来ると思うけど。

 

「誰行く?」

「それじゃ私が」

 

 ローナか。だったら大丈夫だな。

 

「ロナたん頑張って」

「ロナたんって…………」

 

 可愛い名前付けられたな。

 

「ファスト・アクアショット!」

 

 ローナは水の魔法を出してきたな。

 

「何あれ!?」

「どうしたメルティ?」

「ファスト級であんな大きさ出ないわ! メルロマルクの宮廷魔導師のドライファ級と同じよ!」

 

 そうなのか? 

 結構育てましてからね。

 

 ヒョイ

 

 あ、ギリギリ避けた。

 意外とやるなこのドラゴン。

 

 だがな、計算違いをしてるぞ。

 

 ドォン! 

 

 ギリギリ避けたが、魔法が屈曲して側頭部に当たる。

 

「GYAOOOOOOOOO!?」

 

 頭部砕かれて大丈夫な生物なんかいない。

 ドラゴンはぶっ倒れた。

 

「魔法って屈曲する事って出来るのか?」

「普通はしないわ…………」

 

 一応マジックアイテム使えば可能らしい。

 フォーブレイは最新の技術とかあるから春菜から教えて貰ってる。

 

 まあ、ローナはマジックアイテムなんて使って無いですがね。

 

「ハジメ」

「ああ、紹介したい奴がここにいる」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

「たあっ!」

「ファスト・トルネイド!」

 

 ただいまフィーロたんとフィトリアたんが戦っていますぞ。

 女子同士の戦いは見ものですな。

 

「ハジメ、どっち勝つと思う♣️」

「フィトリアだろ」

 

 なんでヒソカ君が居るんだろう。

 それよりもビックリなのが。

 

「ヒソー遊ぼー」

「今良い所だから❤️」

「クロ遊びたいよー」

 

 そう、クロちゃん。いやブラックサンダーである。

 

 そう言えばフィロリアルを連れてたって話が耳に入ったけどクロちゃんだったとは。

 

「暇なんだから遊んでやれば?」

「んー♠」

「感謝する最強生物《アルティメット・ゼロ》」

 

 あれ? 変な名前付けられたぞ? 

 最強生物《アルティメット・ゼロ》? 

 

「なんでそんな名前付いてるの?」

「色んな国で噂になってるよ❤️」

「へー」

「結構活躍してるからね❤️」

「お前ら通常運転だな…………」

 

 まあ、フィトリア本気じゃないし。

 真面目に見なくても十分。

 

 長々と続いたらヒソカと大富豪でもやってようかな? 

 

「あれ、ローナさんでしたっけ? 何やってるんですか?」

「…………食事の時間なんです。昼食べるの忘れちゃって」

「…………今の状況で?」

「フィトリアさん本気じゃないですよ」

 

 仕方ないな制約だもの。

 

「見られたくないんでどっか行っててくれません?」

「ええ…………」

 

 ラフタリアさんとローナの絡みとか見てみたかったんだよな。2人共真面目系ですし。

 つーかローナは能力見せたくないからって冷たくするなよ。

 

「何呑気に食べてるんですか…………」

「ワァ! 飯ダ!」

「クワセロ!」

「ウェエエエエン!」

「コノヤロー!」

「イェェエエイ」

「ヤッター!」

「………………は?」

 

 あー見つかったよ。

 これはローナの能力、六武衆《シルバーバレット》である。

 常時発動の六匹の小人型の念獣で、オーラを分け与える事により、大きくなったり細かい操作も行える能力だ。

 結構便利で他の機能もある。

 

「ナオフミ様! ナオフミ様!」

「? どうした」

「見てください! 小人です!」

「小人?」

 

 ローナに尚文が近づいてくるが、

 

「あーこのおにぎり美味しいですね」モグモグ

「何もいないぞ」

「え? 今さっきまで確かに……ってなんで微笑むんですか!? あ、ローナさんまで微笑む!?」

 

 隠を使っただけだがな。

 しかしローナは隠が上手いな。少し教えただけですぐ出来たし。

 

「ねぇ、ババ抜きしない?♠」

「いいぜ」

「私もやるっ!」

「お前らの神経どうなってるんだ?」

 

 さっさとメルたん助けに行けよ。

 そうしないとフィーロたんが覚醒しないじゃないか。

 

「父様取って」

「ああ……駄目か」

 

 揃わないな。

 

 お、尚文がフィトリアの目を盗んでメルティを助けに行ったぞ。

 

「ズルは見逃さない」

「ぐっ!」

「ぐぉ!」

「うっ! ❤️」

 

 あれぇ? 俺達にも流れ弾が来たぞ? ズルしてないよね俺達。

 

 

「ご主人様を虐めるなぁぁぁぁぁ!」

 

 おっとフィーロたんが猛攻してますぞ。

 守るものがあるから強くなれるって話もありますからな。

 

 そしてフィーロが魔力で爪を作りフィトリアを攻撃。

 だがフィトリアはガード。

 

「合格だよ」ベチコン! 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 今、フィトリアと尚文が2人で話している。

 

「さて、大富豪しますか」

「勝負だ♠」

「マイペースですね…………」

 

 トランプとか最近してなかったからな。

 たまにやりたくなってくるのだ。

 

 夜刀ちゃんと春菜も混ざる。

 

「はい、7」

「9」

「Q♣」

「K」

「ホレ、2」

「ジョーカーだよ父様」

「げっ」

 

 夜刀ちゃんがジョーカー持ってましたか。

 

「あの…………」

「3」

「10! ん? なんだ?」

 

 メルティ第二王女じゃないですか。

 俺になにか用ですかな? 

 

「この前はありがとうございました」

「?」

 

 あれ? 何したっけ? 

 ここであったのが初対面じゃなかったけ? 

 

「俺何やった?」

「え?」

「J!」

 

 覚えがないな。

 

「えっとフォーブレイで会ったと思うんですけど…………」

「?」

「あ、わかった」

「春菜?」

「6のダブル♦」

「メルたん、ツインテール解いて」

「メルたんって…………」

 

 浸透しているな。

 で、メルたんがツインテを解く。

 

「あ!」

「9のダブル」

 

 タクトの妹に絡まれてた女の子じゃないですか。

 ツインテールで認識してたので、髪を降ろしたらわからなかった。

 

 よくあるよね。

 アニメのキャラで髪下ろすと誰か分からないの。

 

「5」

「とりあえず、あの時は怪我なくて良かったし」

「Q」

 

 ちなみに、あの時はいいモノを取れたのだ。

 関わってよかったし。

 

「ハジメの番だよ❤️」

「1」

 

 

 

 ■

 

 

 翌朝、

 

「フィトリア」

「どうしたの?」

「他の四聖勇者の所へ行く前に俺の領地によって欲しいんだけど」

 

 現時点の最新の情報が知りたいのだ。

 暗部は優秀だからな。

 

「わかった行こう」




★六武衆《シルバーバレット》
・六体の小人型の念獣。操作系。
・オーラを分け与える事により、多少の大きさの変化や、操作精度が良くなる。
・オーラや魔法を弾いたり、個体同士で念話をする事が可能。
・一日一食を食べさせないと、与えなかった日だけ動かない。

モデルはミスタのセックス・ピストルズ。


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第43話

「それじゃ盾の勇者の事をお願いねフィーロ」

「うん!」

 

 まずは説明しておこう。

 俺や尚文達とヒソカ。バラけて動く事に。

 

 俺、尚文とヒソカで勇者を説得する事になった。

 それでヒソカとクロちゃんはもう別の所へ飛ばされてる。

 

 フィトリア曰く、まだ三勇者は生きているそうだ。

 生存している反応があるらしい。

 

「斧の勇者」

「なに?」

「皆をお願い」

「……善処する」

 

 俺が呼ばれたって事は何かあるって事か? 

 …………原作と違う何かが。

 可能性はあるな。

 

 フィトリアやグラスが念能力を使用している時点で原作と違うし、前の世界の人間が関わっている事は間違いない。

 マジでこの世界線はどうなってやがる。

 

 

 

 ■

 

 

 

「関所か」

「うってつけだな」

「あ、槍の勇者ですよ」

「話が通じないのが来ちゃった」

 

 あーこれ原作通りの奴だ。

 

 とりあえず降りよう。

 

「元康、話をしたい」

「…………」

「大事な話だ」

「言いたい事は……それだけか」

「は?」

「盾の悪魔ぁぁぁぁぁ!」

 

 攻撃してきた。

 あ、錬と樹が死んだとか言われたんだっけ? 

 

「おい、元康!?」

「錬と樹はお前にとって、そんなモノだったのかよ!」

「あ?」

「俺が錬と樹の仇を取ってやる!」

 

 やっぱりか。

 尚文がアイコンタクトしてくる。騙されてるぞ。

 

 フィトリアに聞いたところまだ生きてるらしいぞ。

 

「落ち着け、元康。俺は殺していない。その必要が無い、お前は錬と樹の死体を見たのか?」

「……っ」

「教会の影からからの確かな情報ですわ。街に封印された魔物を解き放ち、その隙にレン様とイツキ様を殺したと」

 

 ビッチ、お前も利用されているのが気がついていないのか? 

 通常、人を貶めるような人間が信用出来ると思うの? 

 

 取引ってのは信頼できる相手と結びますからね。

 

「モトヤス様、盾の悪魔は洗脳の盾を使いますわよ。お気をつけください!」

「俺は……騙されない!!」

 

 洗脳って…………そうされてたらもっと様子がおかしいと思うけど。

 

「流星槍!」

 

 尚文に当たりそうになるが、

 

「えい」パシーン

「ハジメ」

「ちょっと俺に話さしてくれ」

「お前が話すとややこしくなりそうなんだか?」

 

 まあ、策はある。聞いててくれ。

 

「よぉ、元康」

「ハジメ、お前も洗脳されたのか!」

「待て、洗脳なんて無い。ただのデマだ」

「クソッ…………」

 

 洗脳の力持ってたら、操ってこの国を襲撃するだろう。

 …………流石にしないか。

 

「原点に戻って考えてみろ。何故洗脳なんて言葉が出た?」

「そりゃ国中の人間が尚文を称えてるんだぞ? おかしいだろ!」

「ほぉ? なんで?」

「弱職の盾なんて活躍出来るわけないだろ!!」

「ソウルイーターを倒したのは? 波の際、民間人の避難してたのは? 国外でも活躍してるって有名だぞ」

 

 お前タンクとか馬鹿にしてるだろ。

 俺のチームの中にも重戦士いるけど凄い頼りにされてるよ? 

 

「尚文は技能で作った薬を売りながら人助けをしていたんだ。更には三勇者がやらかした事の尻拭いもやってる。それで多くの人間が救われたんだ。皆称えるに決まってるだろ」

「だから洗脳してるからだろ!」

「盾の勇者が活躍して他の四聖が他人に迷惑かけてるんだぞ? 三勇教か嬉しいわけない。洗脳なんて話になるだろ」

「三勇教?」

「あーこの国の宗教。三勇者が偉くて、盾の勇者が悪魔って教えの国教。盾の勇者は神敵で完全アゥエイって事だ」

 

 三勇教知らなかったのか。

 不味くないかコイツ。

 

「だ、たけどマインを襲ったんだぞ! 強姦なんてするやつ信用出来るわけないだろ!」

「その王女様が人を陥れて楽しむ性悪だぞ? 国内外でも有名だが?」

「何かの間違いだ! マインを陥れようとしているんだろ!」

「それじゃ決闘の横槍、リユート村への重税はどう説明する?」

「くっ…………」

「モトヤス様! 騙されてはいけません!」

「第一に洗脳の武器なんてお前らのゲームの中にあるのか? あるんだったら他の勇者も怪しいだろ。何故尚文だけを疑う?」

「俺は…………俺の仲間を信じる!!」

 

 こいつが洗脳されてるんじゃないか? 

 これだけ証拠が集まったのに。自分でもおかしいと思ってるだろ。

 

「さ、ビッチ王女様。取引しようぜ」

「?」

 

 ここからは本題。

 コイツは悪知恵は働く。

 話がわかればいいんだが。

 

「実はメルロマルクの女王にもう会っている。盾の勇者の濡れ衣の事もその時に話した」

「フン」

「国民に施してきた神鳥の聖人と権力で他人を陥れる極悪人、どっちを信じるかな?」

 

 大将を落とすなら馬を射よってね。

 

「実は今各国が結成した反三勇教連合がもうメルロマルクに入ってる。もう三勇教は終わりだ」

「…………」

「ちなみに女王はクズ王とビッチ王女を許さないらしくてな、戦争も起きそうだったり死んだ人間も多いから、死刑も有り得るかもしれないな」

「…………」

「そこでだ。取り引きしよう。元康を止めろ、そしたら死刑の中止と多少の人権だったら守ってやる」

「…………」

「それに、三勇教が評判の悪い人間と仲良くしたいと思うか? 最後は毒盛られて死ぬぞ。他人を貶める人間は信用出来ないから継承権を下げられたんだろ?」

「長々説明どうも…………大法螺なので信じられませんわ!」

 

 ダメでしたわ。

 

「尚文スマン」

「いい、ん? 何がするみたいだぞ」

 

 ビッチがなにかするみたいだな。捕縛の雷鑑だっけ? 

 

 あれ? 俺の強さはビッチは知ってるよね? 

 だったらなんで俺との交渉を断った? 元康じゃ勝ち目ないのに。

 

 …………俺を封じる手があるって事か? 

 

「さあ、勝負の時ですわ!!」

 

 ビッチが何かすると、雷で出来た檻が出現。

 ん? 俺らの地面がマス目の様になる。

 あ、上にプラネタリウムのようなのが出現もしてるな。

 

「なっ!?」

「うっ!」

「わっ!」

「きゃ!?」

 

 俺らに重力がかかってくる。

 

「ほ、捕縛の雷鑑…………」

「それとグラビティフロアと断魔の夜? 確か値段張るよねこの術式?」

 

 あれ? 初めて聞く単語だな。

 

「春菜、説明よろしく」

「グラビティフロアは味方以外に重力をかける設置式の罠で、断魔の夜は味方以外の魔法威力を著しく下げる設置式の罠」

「確実に殺りに来てるな」

 

 フィトリア、グッジョブ。

 お前の勘は当たっていた。

 

 多分俺が助っ人に来ることをビッチか三勇教は読んでいたのか? 

 

「確かこれらはフォーブレイの最新の魔法トラップだったはず」

「フォーブレイは未来に行ってんな」

 

 今度調べてみよう。

 色々な事とか出来そう。

 

「お……い……」

 

 尚文? 声に元気無いぞ。

 

「大丈夫か?」

「お前……ら平気……なの……か?」

「もっと重くてもいいぞ」

「この位朝飯前ですよ」

 

 シルフィはスクワットし始めた。

 この位の重さ、ジジイの一撃より軽い。

 

 あれ? 元康達も驚いている顔してる。

 俺を殺りたいなら真面目にやってくれませんかね? 

 

「さて、誰が戦う?」

「父様! 私も戦いたい!」

「拙者が戦うでござる!」

「私やりたーい!」

「キラークイーンもー!」

「私もやりたいです!」

 

 皆戦いたいのかよ。

 もしかして皆さん元康さんの事嫌い? 

 

「あのビッチを殴りたいでござる!」

「ウザ男をボコボコにしたいです!」

 

 皆ストレスとか溜まってるんだね。

 シルフィも要らないサインを貰ってたし、冤罪で盾の勇者を格下扱いしてたから嫌いだろうな。

 

「それじゃこうしよう。全員で戦おう、その方が早い」

『はーい』

 

 あー元康の負けだな。

 

「な!? 洗脳した人間を使うのか!? ふざけるなよ尚文!!」

 

 説得しようとした俺が馬鹿だったよ。

 どうしたら納得してくれるんだ? 

 

 自分で物事考えられねぇのか? 

 

「ごめん君達、皆を元に戻す為に、そして錬と樹の為に俺は……」

「フン!!」

「ぐはぁ!?」

 

 ローナのアッパーカットの一撃により、空中にランデブーする。

 

 他の奴らは後ろにいる女共を襲撃。

 

「オラオラビッチが!!」

「往生しろでござる!」

「調子乗るなアバズレ!」

「"ピッー"」

 

 おやおや? キラークイーンが"ピッー"なんて言ってますよ。

 後、往生したら苦しめられないですぞ?

 

 攻撃開始から10数秒。

 元康のパーティーはボコボコだ。

 

「うっ……」

 

 お、まだ立ち上がるのか。

 道化だけどよく頑張るよ。

 

「俺は……こんな所で倒れる訳は行かない…………」

「よし、これでグラビティフロアを解除と」ガチャガチャガシャン! 

「錬と樹の仇を取って…………皆の洗脳解かないと…………」

「春菜ー! 断魔の夜ってどう解除するのー?」

「俺は諦めない。何故なら俺は……槍の勇者だからだ!!」

「断魔の夜の真ん中に装置があるから自分で探してー!」

「おっけー、えっーとここか? アクアレーザー!」ドカーン! 

 

 二つのトラップを解除。

 後は捕縛のの雷鑑か。

 えっと? グラビティフロアと同じく地面に隠されてたのか…………。ガチャガチャ

 

 尚文も解除されたので普通に立っている。

 今の元康の言葉聞いてて、呆れてる。

 

「俺は負ける訳には行かないんだ!!」

「!」ぞわり

 

 フィーロたんが何かに気づいたようだ。

 尚文・元康・俺パーティーを中央に蹴って集める。

 

「フィーロ! 何のつもり━━━」

「斧のひと!!」

「あ?」

「防いで!!」

「どういう意味だ?」

「早くして!!」

 

 おいおいなんで知っている!? 

 俺に防げる手段があるなんて何故わかった!? 

 

「フィーロ? なにを━━」

「早く!」

 

 くっやるしかないか。

 多分イレギュラーが可能性が高い。

 

「全員、守るけどこれを見た事は忘れろ」

 

 



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第44話

 ドオオオオオオオオオオン!! 

 

 うおっ!? 天井が凹んだ? 

 裁きの集団魔法じゃなかったのか? 

 

 裁きじゃなくて魔法陣の様なのが空に浮かびましたけど? 

 

「春菜?」

「あんな魔法見たことないし、魔力が感じないよ!?」

「え」

 

 何それ? 魔力感じないってことは魔法じゃないのか? 

 …………魔力って感じる事ってできるんだな。

 

 あれ? よくよく思えばこの感じはもしかしてオーラか? 

 

 そして空の魔法陣? どっかで聞いたような…………。

 

 ドオオオオオオオオン! …………

 

 終わったか。

 全くなんなんだ?

 

 能力を一部解除すると思ったより小さい範囲でクレーターが出来てる。穴は少し深いが。

 漫画やアニメよりも規模が小さいぞ? 

 

 さて、三勇教が来る気配があるし、そこで答え合わせしますか。

 

 俺は穴から出る。

 

 パチ パチ パチ

 

「いやぁ素晴らしい"先生"の攻撃を防ぐとは。さすがは最強の生物」

「ハッ! やるな。お前の能力は流体金属って事か? 応用性あるじゃねえか!」

「どこの奴か知らねえが…………やるな」

 

 イレギュラー2人。

 どっちも纏を使ってる。多分能力者だ。

 紫のロン毛と眼帯。

 

 …………この2人どっかで見た事あるような? 

 

「お目にかかりますよ斧の勇者様」

「教皇だな」

 

 三勇教の教皇様か。

 尚文迫害の元凶だな。

 

「それで? 残り二人はなんなの?」

「俺らか? お前、俺達の世界の出身じゃねえのか〜?」

「えっと…………どっかで見たことあるような……」

「ベリアス、やっぱりコイツの顔どっかで見たことあるぜ」

「エイン、うろ覚えだったら大した事ないだろ」

 

 …………確か昔の記憶だったような。

 

 ぞろぞろ他の奴らも出てくる。

 紫がベリアス、眼帯がエインだな。

 

「教えてやる。俺らはA級賞金首グループだよ。銀行強盗で有名なんだが覚えてないか? ホーネットって」

 

 あ、思い出した。

 4年くらい前かな? そのグループが壊滅したって話を聞いたことある。

 

 壊滅させたのはブシドラのとっつぁん率いるチームだったはず。

 

 ブシドラのとっつぁんは頭硬いけど強いし、計略・逃走重視の強盗団なので戦闘能力多少あるだけ。

 夜襲のような感じで手柄を立てたとか。

 

 戦闘能力が多少あるだけだったら俺らのチームでも制圧可能だ。

 

 だけど計略・逃走重視なのに何故出てくる?

 夜襲でやられたんだから表立った強さはないはず。

 

「お前は確か…………」

「覚えていただき光栄ですが、盾の勇者は聖水を恵んだ慈悲に感謝しなかったどころか我々から奪っていく、更にはこの国の人間を惑わし扇動しました……私は神の代行者として貴方たちを浄化いたします」

「テメェ…………」

 

 お布施を最高額寄付したのに低品質の聖水渡したくせになんだろうか。

 

 …………奪っていく? 

 

「教皇━━」

 

 自白中。

 次期女王って単語が出た時点で怪しいだろ。

 聞いたか元康? 

 

(なあ、奪っていくって?)

(ああ、教会が植物だらけだから除草剤を撒いたんだ。その分金額払って貰っただけなんだが……)

 

 あ、それ俺の仕業。

 尚文が行商してる時に洗脳だとかほざいてたから実験ついでに三勇教会内にバイオプラント仕込んでおいたんだ。

 

 一般人に危害を加えないように範囲を狭くしたり、枯れる速さをやや早めにしたんだがな。

 

 除草剤は薬草とか使うだけだから金もたいしてかからない。

 良い商売だったと思いますぞ。

 

「裏切るつもり…………」

「全て神の思し召しです」

 

 三勇教も色々嫌な組織だな。

 尚文が良いことしても唾吐くし、まともな取引も出来ねぇのか。

 

 はい、それで教皇も自白中。

 盾の勇者が活躍し、三勇者が各地で問題起こすから信仰に傷がつく。

 四聖を始末し腐ったビッチ王女と継承権第一位もついでに殺すと。

 

 どんだけやりたい放題なんだろうコイツら。

 

「俺は世界のために……錬と樹だってそうだ!! 良かれと思ってやってきたんだ! それを……」

「そう、そして要らぬ調査とやらを始めてしまったゆえに、神の裁きが下ったのです」

「な、尚文が殺したんじゃ……」

「ようやく話を聞く気になったか?」

「根拠も無いのに信用するなって」

 

 つーか尚文信じないで、ぽっと出の教皇の事はしんじるのか? 

 

 そして教皇は大爆笑。

 仲間思いもここまで来ると道化。

 

「なんと愚かな勇者……いえ、偽勇者でしょう」

 

 否定が出来ないのが辛い。

 

「この国に正しい秩序を」

 

 教皇は四聖の複製品を取り出した。

 そしてそれを振り下ろす。

 

「そこまで大した威力じゃないな」

 

 オーラを放出し、相殺する。

 

「使えるな? 場所を移そうか」

「味方を殺すのもなんだしな」

「いいぞ」

 

 こっちも聞きたいことがあるんでな。

 

 

 

 ■

 

 

 

「さて、こんな所でいいか」

「問題ない」

 

 いまさっきの所より離れた所へと移動した。

 

「俺らの世界から来たのか?」

「おお、同郷だな」

「どういう経緯で来た?」

「教えるわけねぇだろ!」

「言っちゃいけない約束なんでな」

「女神様との?」

「?」

「…………」

 

 反応が鈍いな。

 もしかしたら違う神とかか? 有り得る。

 他の神と協力プレイとかやりそう。

 

「つーかお前さ、なんでホーネットでビビらない訳?」

「あ?」

「A級の賞金首なんだがな〜」

 

 は? ビビると思ってんのか? 

 お前らなんかよりジジイやゾルディック家の方が怖いんだよ。

 

「田舎者なんだな〜」

「そういえば名前は? 所属してる所とかあんのか?」

「ハジメ・ヤマカワだ。所属してるチームはニーズヘッグって所なんだけど」

「…………は?」

 

 エインだっけ? 冷や汗かいてるぞ。

 

「エイン? 聞いたことあるか?」

「ある」

「は?」

 

 やっぱり俺って有名なのか? 

 まあ一ツ星ですから。

 

「…………確か一ツ星テロリストハンターだったはず」

「強いのか?」

「ジャシン教と魔猿ギギの討伐だぞ?」

「凄いのか?」

「お前田舎者とか言って無かったっけ!? 魔猿ギギなんてあのネテロ会長も任務失敗したやつだぞ!!」

 

 あーそんな事言ってたな。

 ギギの能力は厄介だから任務失敗するハンターが多かった。

 

「なんで厄介なやつと当たるんだよ…………」

「まあ待て。セット完了した」

「そうか…………施錠《ロック》」

「ん?」ガシャン

 

 あ、足に枷みたいのがハマった。

 俺でも動けないな。

 

「確実に死んでもらう」

「ほぉ」

「今さっきのレーザーとは威力が段違いだぜ?」

 

 やれるもんならやってみな。

 

「穿て! 天の槍《ロンギヌス》!」

 

 シ───(´-ω-`)───ン

 

 何も無いわねー。

 不発かしら? 

 

「どうなってやがる……」

「コイツ本当に変化系か?」

 

 核心を突く言葉だけど、これは俺の能力では無い。

 

(父様、成功だよ)ヒソヒソ

 

 そう、夜刀ちゃんの能力である。

 服の中で蛇状態でスタンバイしてたのである。

 

 能力名、円天下《サークルチェンジ》。

 相手の念能力・スキル・魔法等の射程距離を拡大・縮小する能力だ。

 ロン毛の能力の射程距離を超縮小し、不発の結果になった。

 

 ジョジョ5部の暗殺チームを例にして、簡単に説明しよう。

 

 リゾットのメタリカの射程距離は5〜10m。

 それを夜刀ちゃんは数倍に拡大する事ができて、もっと遠距離攻撃が行える。

 

 プロシュート兄貴のグレイトフル・デッドの射程距離を縮小し、周りを老化出来ない兄貴にするのも可能だ。

 

 それを夜刀ちゃんに頼みレーザー能力者に使用したのだ。

 

(でもなんでその人がレーザーの能力だって分かったの?)ヒソヒソ

 

 ブシドラのとっつぁんが記録に残してた。

 紫の髪の人間が魔法陣からレーザー出てたって証言。

 

 空に同じような魔法陣を浮かばせ攻撃したと目撃者も多数。

 

「ベリアス、撤退するぞ!」

「賛成!」

「逃がすと思うのか? バックに何がいるのか教えて貰う」

「「エスケイプ!」」シュン! 

「は?」

 

 急に二人が光りだし、上に凄い速さで飛んで消えた。

 逃げる手段があったとは。

 

「ねー父様、あの人達のオーラは気持ち悪いの無かったよ?」

「確かに」

 

 色々波の尖兵を見てきたけど全員気持ち悪かった。

 話し方にクズさも無かったし、クソ女神の配下じゃないのか?

 女神のことも知らないようだし。

 

 女神の他にもこの世界を滅ぼす存在がいるのか? 

 あるうる話だ。

 

 操りやすいクズよりも、強くて信頼できるクズを味方にする方がいいかも。

 奴らのバックも優秀だな。

 

「父様」

「どうした?」

「盾の勇者の方へ行った方がいいんじゃない?」

「そうだな。急ごう」

 

 




★円天下《サークルチェンジ》
・相手の念能力・スキル・魔法等の射程距離を拡大・縮小する能力。特質系。
・能力を対象に使用する際、ワッペンが具現化されて服に自動的に付けられる。
・能力使用時、そのワッペンが外されればその対象には二度と能力を使用することが出来ない。
・只今の射程距離は最低1M。最高50M程。


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第45話

「それでは弾劾裁判を始めます」カンカン

 

 教皇戦が終了し、数日が経った。

 加勢が間に合わず、尚文がブラットサクリファイスを使用し、重症アンド呪いで眠っていた。

 

 俺が起案した反三勇教連合も仕事してくれたらしい。

 参加したのはメルロマルクの女王派やゼルトブルやフォーブレイ、そしてシルドヴェルトやシルドフリーデンも参加。

 

 一緒に血を流すことが大事なのだ。

 それが波に対して結束を深めるので俺が発案。

 

 話を戻そう。

 

 尚文が復帰、女王が帰還したのでグズとビッチをボロクソにする裁判が始まった。

 

「マイン、任せろ! 絶対無実を証明してやるからな!」

 

 弁護人 元康。

 

 結構証拠出てるし、どう弁護するか楽しみ。

 

「無駄な足掻き…………」

 

 検事 春菜。

 

 なんか知らないが、異端審問官とか資格持ってたらしい。

 あとメガネとスーツ姿でノリノリ。

 

「被告人前へ!」

 

 裁判官 女王。

 

 誠実な判決をできそうだな。

 

「それではこの二人の罪状を━━━」

「待った! マインが何をしたんだ!?」

 

 は? そこから? 

 

「この二人は私が居ないのをいい事に三勇教と組み、国家の転覆を狙っていました」

「ワシはしらんぞ! 盾じゃ、皆盾がやったんじゃ!」

「私は無実よママ! 皆盾が悪いのよ!」

「…………」

「違うって言ってるじゃないか!」

 

 尚文パーティーは呆れてるな。

 ここまで来ると頭が心配。

 

「それでは罪状を読み上げますね。波の混乱時に女王派の人間を投獄、または左遷。更には四聖勇者を他国に無断で召喚。女王が沢山頭を下げてました」

 

 春菜検事が読み上げていく。

 ここまではクズが悪いな。

 

「そして四聖勇者を召喚するも盾の勇者に強姦容疑の濡れ衣。不純な理由で決闘を強要させ、反則で槍の勇者を勝利させ奴隷紋を解除」

 

 尚文になんの罪もないのに、なんでこんな仕打ち受けないといけないんだ? 

 

「三勇者が各地で問題を起こして死人を出しても、本人達には何も罰もない。それで三勇教と結託しメルティ王女と盾の勇者を葬ると計画」

「でっちあげだ!」

 

 また言ってんのか? 

 こっちも証拠も証人も揃ってんだよ。

 

「全部尚文の陰謀だ!」

「そうですか〜証人も沢山いるので登場してもらいましょうか」

 

 

 証人その1 ヴァン・ライヒノット卿

 

「ご無沙汰です。盾の勇者様」

 

 尚文を匿った優男の貴族である。

 鞭使いのデブ貴族にボコボコにされたそうだが回復したそうだ。

 今、国や亜人達の為に走り回ってるそうだ。

 

「それではライヒノット卿、証言をどうぞ」

「えっとまず最初の波が終わった後なんですけど━━」

 

 最初の波が終わった後の事なのだが、それを皮切りに亜人の難民がよく流れてくるようになった。

 

 聞き出したのだが、国の兵士が奴隷狩りをしているから逃げてきたと多くの亜人が証言。

 自分の領地にもちょっかいとかもかけられたらしい。

 

「それでちょっかいをかけてきた国の兵士が三勇教のロザリオを持っていました」

「なるほど、三勇教が国に癒着していた証拠になりますね」

 

 国と三勇教が結びついていた証言ですな。

 相当根深いな。

 

「それじゃ次の証人〜」

 

 

 証人その2 エクレール・セーアエット

 

「エクレール・セーアエット! 貴様!」

「久しぶりだな国王…………」

 

 女王派の人間なので、信頼出来るのである。

 

「牢から脱獄してどこへ行っていた!?」

 

 それは簡単。

 

 ★

 

 数ヶ月前。

 

「お前がエクレールか?」

「…………そうだが貴様は?」

「女王派の人間を助けに来たんだが……他にいるか?」

「は?」

 

 ★

 

 投獄された人間を女王への手土産にしていた。

 フォーブレイへ行った時に、ついでに女王にも会っていたのだ。

 いい恩を売れた。

 

「私は奴隷狩りの兵士を発見し、撃退していたのですが、捕らえられてしまい牢に入れられていました」

「ほうほう」

「それで拷問をかけられてた時ですが、『盾の悪魔』と何度もその単語を聞きました」

「『盾の悪魔』って単語は三勇教でよく使われる言葉ですね城の内部も三勇教が入り込んでいたって事が証明されました」

「待て! 証言だけじゃ犯罪者にならない! 証拠を出せ!」

 

 ここまで来て信じないのか。

 筋金入りだな。

 

 尚文の濡れ衣を証言だけで信じていたのに証拠を出せと? 

 

 

 証人その3 俺

 

「えーまず自分は配下の商人がいるので、それを情報源にしています」

 

 シーラとイメルダ等で連携している。

 だから相当なネットワークを築いている。

 

「盾の勇者の噂とか聞きますが、殆どが良い評判です」

 

 もう神鳥の聖人だって事はゼルトブルには広まってるぞ。

 

「多数の人間に施し救いをしてきた人間が強姦をする最低な事をするのでしょうか?」

「だから皆洗脳されてるからだろ!」

「えっと、この前も言ってたけど洗脳って証拠は無いし、洗脳の盾もあるんなら他の武器にもあるでしょ」

「だけどマインを襲ったんだぞ!」

「情報じゃその王女は人を陥れるのが好きだから継承権を下げられたってさ」

「その通りでございますキタムラ様、それはここにいる全員が知っております。更には国庫から無断で抜かれていますよ」

「なっ…………」

「エステやアクセサリーに使われてたらしいぞ」

「他にも槍の勇者様の元パーティーの冒険者の殆どはマルティ王女の陰湿なイジメで辞めたそうです。後で本人達に聞いてみますか?」

 

 何も波と関係無いじゃん。

 横領と一緒。

 

「あと人脈で手に入れたのですが」

 

 映像水晶オン。

 

 ★

 

 まず尚文の寝顔がアップで映る。

 

 次に方向を変えると、ビッチが銀貨の入った袋と鎖帷子を持っている映像が。

 

「フフフ……馬鹿な男、騙されちゃって……明日が楽しみだわ」

 

 酷い。

 だが尚文に着いてれば、継承権第一位になれたんじゃないか? 

 

 で、まだ映像が続く。

 

「あら、モトヤス様ではありませんか」

 

 バッチリ元康に鎖帷子を渡す所も捉えていた。

 これは言い逃れが出来ませんね。

 

 それでビッチが元康と離れたので、

 

「…………」ドガ! 

「うぐ!?」

 

 俺は元康に蹴りを食らわせた。

 

 ★

 

「捏造だ……」

「ほぉ?」

 

 まだ言うか。

 

 

 証人その4 天木錬

 

「錬? なんでお前が?」

 

 ああ、俺が頼んだら協力してくれた。

 

「俺もこの国がおかしいと感じていたんだ。尚文の扱いが酷すぎる。樹とも話してみたが同様だ」

 

 普通の頭だったら理解出来るでしょ。

 

「決闘騒ぎでもそうだった。この国は奴隷を禁止していないし、明らかに不正を行ったのに元康の勝ちだぞ?」

「そりゃそうだろ! 勇者が奴隷を使ったらダメだからな!」

「だったら勇者が民間人に迷惑をかけちゃいけないし、国家転覆を手伝っちゃだめだろ…………」

「うっ…………」

「それに完全アウェイで仲間を作れると思うのか? 尚文は民間人を避難させたのに奴隷を没収するのはどうなんだ?」

 

 なお、注意だけでお咎めなしだそうだ。

 尚文は女性を襲って国内外に悪評を出されたのに、三勇者は民間人の生活に危害を出したのに注意だけって? 

 

「でだ、仲間や他国からこの国の話を聞いてみて真実を知った。女王が不在だったり盾の勇者が神敵だってな。それで変な話も聞いた」

「変な話とは?」

「実は城下町の草原でレベル上げをしていたんだが、近くに尚文がいたらしくてな」

「ふむふむ」

「俺の仲間曰く、元康のくさりかたびらとそっくりの装備していたと言っていた。それだと今さっきの映像とも辻褄が合うし、尚文が枕荒らしをされた証言と合う」

「そう言えば最初の波の直前まで鎧を装備していなかったと情報があります。枕荒らしされて無いのならば装備してるはずですし」

 

 

 証人その5 武器屋の親父

 

「えっと、鎖帷子の登録番号を記録してたから確認するように届け出をだしてんだが……全然返答が無くてな」

 

 親父ぃ、トドメ刺してくださいよ。

 返答が無いって事はそれだけ知られたくない理由があるって事? 

 

「それじゃ脱いでくれますかね?」

「…………ほら」

「それでは調べて貰いましょうか」

 

 人が出てきて、レンズのような道具で調べていく。

 

「これはそちらの武器屋で作られたものですね。しかも良い鎖帷子だ。相当いい腕を持ってますな」

「おっと嬉しいねぇ」

 

 ゼルトブルの武器屋と遜色ないな。

 

「認め…………ない」

「はい?」

「マインをそんなに貶めて何が楽しいんだ!!」

 

 皆でっちあげでやってると思ってんの? 

 証人とか相当信頼出来る人間なんだけど。

 

「それでは本人の口から聞いてみましょうか?」

 

 今さっきからスタンバイしていた奴隷のインク。

 嘘を吐けなくしたり、行動を制限する事ができるのだ。

 

「ぎゃあああああああああああああ!!」

「マルティィィィィィ!!」

「ヒソー、お腹空いたー」

「後で食堂行こうか♦」

 

 お前らコンビ通常運転だな。

 まあ、どうでもいいだろうな。

 

 それでここからは原作通りビッチが白状。

 ここまで証拠や証人が揃ってるし。

 

 それで、ビッチの自白が終わった。

 そして女王が提案、尚文が罰を決めると。

 

 こうして、クズとビッチに改名されるのであった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「美味い美味い」ガツガツ

 

 キラークイーン、よく噛んで食えよ。

 ただ今パーティーの中。

 

「なあ、ハジメ♣️」

「どうしたヒソカ」

「今回そっちの方も能力者に会ったかい? ♠」

「…………会った」

 

 そっちにも? 

 やっぱりおかしい。

 

「こっちは三人組だったんだけど━━━」

 

 ヒソカの話を聞くと、一人殺したんだけど光になって上に飛んで行ったそうだ。

 残り二人は悲しむ様子もなく、敵わないのでまた光になって逃げた。

 

 これだけイレギュラーが多いとイベントが心配になってくるな。

 次はカルミラ島、霊亀戦、絆の世界もあるかもしれない。

 

 俺も気をつけなければ。

 

「ヒソーこれ美味しいよー」ガツガツ

 

 あ、ビッチが尚文に毒を盛って失敗して、痛い目に合うやつだ。

 見に行こう。



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第46話

「…………」

「…………」

「…………」

 

 ただ今、四聖アンド俺と女王でテーブル囲んでいる。

 情報交換なのだか沈黙が続いていた。

 

「ええ、そろそろ話し合いを始めたいと思うのですが…………あまり気が進まないご様子ですね」

「せっかく集まったんだ。腹を割って話さないか?」

 

 情報交換はもっと早いうちにやっとくべきだろうに。

 

「始めてくれ」

「此度は三勇教の起こした事件により、多大なご迷惑をお掛けしました。その補填をしたいと私共は考えております。近々カルミラ島が活性化する見込みです」

「本当か!」

「ボーナスフィールドが出現するんですね」

 

 もうポータル取って準備はしてある。

 夜刀のライブやシーラの店の出張もするって。

 

「活性化?」

「ああ、数十年に1度魔物の経験値が上がるって現象。この前ドラキューアって所で活性化があったんだけど、俺の私設兵もlv70くらい逝ってるぜ」

「そんな場所があるのか…………」

「尚文はそんなことも知らなかったのか?」

 

 うわっ腹立つ。

 この世界は俺も知らないこともあるし。

 

「勇者様同士の争いでレベルアップの弊害になっていたのは事実。つきましては効率よくレベルをあげるために、胸襟を開き情報交換等如何でしょうか?」

「そうだな、分かった」

「俺も」

「情報交換なんで言っても話すことはないぜ」

「ですね」

「ご理解頂けるように申し上げましょう。イワタニ様とヤマカワ様以外の勇者様がたにおいては、その強さに難ありとの意見がございます」

「「「!!」」」

 

 !! じゃねえだろ! 

 他の第三者から見ても普通に分かるだろが。

 

「どういう意味だ…………」

「前回の波で敗れた勇者様方が、次の波を生き残るとは考えられません」

「なんだと!」

「波を生き残るためには勇者様方の結束が必要です。この場はその為の話し合いだと考え下さい」

 

 つーかその言葉がもっと前に言う言葉だと思う。

 波はチームで挑むものではなく集団戦だ。

 

「まず、ハジメさんと尚文さんから話すべきでしょう」

「べき?」

「ハジメも?」

 

 まあ、わかるやつにはそうだよな。

 

「あなた方の仲間は異常に強すぎます。どこでチート性能の武器を手に入れたのですか」

「は?」

 

 尚文はともかく、俺の場合は努力だ。

 楽するのも大事だが、苦労する事も大事だぞ? 

 

「確かにローナちゃんとか凄い強いし」

「あの禍々しい盾にしてもそうです」

 

 尚文はゲーム知識無しでここまで来た人間だ。

 まさか尚文が努力せずに戦ってきたと思ってんのか。

 俺も原作知識を頼りにしてたけど、ミスとかも会ったぞ? 

 

「分かった、教えてやる」

 

 手が少し震えてるぞ。

 

「その代わりお前らも教えろ! ヘルプに乗ってるものでもいい。復習を兼ねて一から教えろ!」

 

 教えて欲しいならばお前らが先に教えろって話だ。

 

「どうする?」

「教えるしかないだろ」

「しょうがねぇな。まず基本だが武器は同じ系統の武器を持つことでコピーできる。ウェポンコピーシステムがあるよな」

「初期はタダで強い武器が手に入って助かりました」

「うん」

「お前ら自白じゃね?」

 

 よく考えてみれば違法アップロードと一緒だな。

 国内ではともかく、国外でやったら不味くない? 

 

「手にするだけでいいのか?」

「尚文さん。そんな事も知らなかったんですか?」

 

 まあ、知らなくても犯罪だからな。

 

「他はドロップだな。魔物とか武器に入れると武器とか素材とかが出てくるぞ。見せたよな?」

「ドロップ…………」

 

 俺もゲームとかでドロップ品とか出たっけ。

 ポケモンとかでも捕まえたポケモンが道具とか持ってたとか。

 

「後は道具の作成だよな」

「技能系ですね。これは元からありますよね」

「……一応、詳しく」

「技能のスキルとレシピを習得したら武器に材料を吸わせて、システムで作るんですよ。しばらくすると武器から出てきます」

 

 一応薬の作成の品質上昇のボーナスを持っているが、オルクがいるのであまり使わない。

 

「転移系のスキルもあるよな?」

「色々な国に行けて便利だな」

「何を入れた?」

「龍刻の砂時計の砂」

 

 口パクでもスキルは発動OKだ。

 屋内や魔物のテリトリーじゃ不可能だけど。

 

「では、特別に強くなる秘訣を教えて上げましょう。この世界はですね、武器のレア度が全てなんですよ。付与とかはついでです。元が強くないと意味が無いんです」

「嘘を言うな。武器の強さは熟練度だ」

「違う違う強化精錬とステータスの高さがものを言うんだ」

 

 やっぱ食い違うよな。

 強化方法は共有出来るし。

 

 あ、言い争いが始まった。

 止めるか。

 

「待て待ておかしいぞ」

「何がおかしいんですか!?」

「ウェポンコピーやドロップは共通してるのに、何故強化の方法は違う?」

 

 固有の強化方法の可能性もあるのに何故言い争いになるんだ? 

 

「ありうるのはそれぞれの武器が強化方法が異なる可能性か」

「確認するが嘘なんてついてないよな?」

「ついてねぇよ!」

「俺もだ」

「一応ハジメの強化方法は?」

「俺は肉体改造って強化方法だな。ステータスにポイントを入れて強化か? 他にもパズルのような方法の強化もあるぞ」

「そんな強化方法聞いたことねーよ」

 

 まあ、武器別に強化方法は違いますし。

 

「お前らも嘘ついてないんだろ? 俺も嘘つかない」

「本当か?」

「信頼出来ないんだったら帰るぞ」

 

 帰る場合は後で尚文に話すか。

 

「ヘルプ見てもウェポンコピーやドロップなんて見当たらないんだが」

「そんなはずない!」

「俺らのヘルプにはあるんだが……」

 

 なんかの妨害とか入ってるんじゃないの? 

 盾の強化方法は知られたら他の勇者が強くなるし。

 

「色々強化方法言ったし、どっち答える?」

「俺から行く」

 

 魔物使いの盾、奴隷使いの盾を説明。

 補正がかかり、どんなものを入れれば出現するか。

 

「何処であの力を手に入れたのですか? 違いますね……言い方を変えましょう。何処で神様に会えたのですか?」

「はぁ?」

 

 いる訳…………クソ女神! 

 

「何処で神様に出会いチートの力を授かったのですか?」

「チートぉ!?」

 

 チートって……どんだけゲーム脳なんだ? 

 

「そんなんじゃねえよ!」

「だってそうじゃないですか! 盾職が戦力になるなんて十分チートですよ!!」

 

 お前らそれ尚文が雑魚とでも言いたいのか? 

 今まで何を見てきたんだ。

 

「そうだそうだ。俺たちがその力を手に入れれば強くなるだろ」

「ああ、盾職より火力あるはずだ」

 

 …………。

 

「お前らさ、今まで何を見てきたんだ? 尚文が相当活躍してたけど盾職が弱職だと?」

「僕らのやってきたゲームでは役に立ちませんよ」

「各地で被害を出すし、この前の波でもズタボロ。それで三勇教の時も遊ばれて騙されてたのは?」

「…………」

「分かるか? ここはゲームとは違う。甘く見ると痛い目に会うぞ」

「ご忠告どうも。気をつけますよ」

 

 ヘラヘラすんな。

 

 それで憤怒の盾の説明をしていく。

 

「ヘルプに載ってるくらいだぞ? それ相応の代償を支払う。ちなみに教皇を倒すときに放ったスキルで俺は現在ステータスがだ」

「……ないぞ、そんな項目」

「俺もない……」

 

 あのカス野郎と話してて、負の感情が湧き上がって何か文字が出てきたけど読んでなかった。

 

「もしかしたら強い負の感情を抱くのが出現条件じゃないのか?」

「確かに漫画とかでありそうだな」

 

 七つの大罪だけではなく、三毒とかもありそうだ。

 

「さ、次はハジメだ」

「どうぞどうぞ」

 

 質問が始まった。

 

 Q 仲間の強さの秘訣は? by尚文

 A 筋トレと走り込み、武器の補正とか

 

 Q どうやって強くなった? By元康

 A 前の世界で修羅場をくぐったから

 

 Q そっちの領地で恐竜に乗りながら奇声をあげてる奴がいたんだかあれはなんだ? By錬

 A 私設兵です

 

 Q あなたの兵隊が一瞬消えて、上からかかと落とししてきましたけど、瞬間移動でも使えるんですか? By樹

 A 普通に素早く移動しただけです

 

 Q ローナちゃんとかとどこまで行ったの? By元康

 A 後でツラ貸せ

 

 Q 小人をラフタリアが見たって言ってるんだか? by尚文

 A ラフタリアさん疲れてるんじゃない? 大事にしてあげなよ? 

 

 Q 修羅場と言いましたが何やってたんです? By樹

 A 犯罪者狩りとか金策とか

 

 Q ヒソカってどんな奴だ? By尚文

 A 変態ピエロ

 

「ホントか〜? 筋トレとかで強くなんのか?」

「お前部活動とか馬鹿にしてるだろ。基礎体力とか反復練習とか馬鹿にならないからな」

「信じ難い話ですね…………」

「法螺でも吐いてんじゃねえの?」

「あ? 何で嘘吐き呼ばわりされなきゃならないんだ?」

 

 念能力の事は隠しているがそれ以前に能力者は基礎体力が大事。

 

 つーか大なり小なりそっちの事を信じてるのに法螺扱いは酷い。

 

「なあ、まだ隠してる事があるんじゃないか?」

「尚文? 他人の個人情報については話さないぞ」

「知り合いの商人から聞いたんだが、そっちのフィロリアルは空を走れるって聞いたんだが?」

「ああ、キラークイーンの?」

「使い魔を召喚するとか聞いたが?」

 

 まあ、そこまでの情報くらいは耳に入るな。

 

「使い魔なんてシステム無いぞ?」

「空を走るなんて初めて聞きました」

「…………カジノでも何かやってたんじゃないか?」

 

 元康、儲けさせたのに言っちゃうの? 

 まあ、言われるのは想定内。

 

「空を走るってのはキラークイーンの固有能力。元の世界でもあるだろ? 透視だったり未来予言したりする超能力者とか。そんな感じ」

「超能力?」

「まあ、そんな感覚だな。訳ありで俺の領地に沢山いる」

「訳あり? なんですそれ?」

「実験動物だが? 聞きたいか?」

 

 そっちの世界にも結構いるだろ。

 特に樹の方は説得できる。

 

「使い魔もか?」

「そうだ」

「お前も何か使えるのか?」

「? ある程度なら」

「SFみたいだな」

「面白そうだから見せてくれ」

 

 面白そうだから!? 

 まあ、わからない程度に教えよう。

 

「女王、ちょっと用意して欲しいんだが」

 

 数分後。

 

「それで何する気だ?」

 

 用意したのは水の入ったコップ。

 

「これをよく見ててくれ」

「?」

 

 俺はコップにオーラを込める。水見式だな。

 

ドハッ!

 

「な! 水が……」

「増えた……?」

 

 コップの水が湧き水の様に吹き出し、テーブルに水が零れていく。

 

「ちなみに俺は水の適性は持っていないから魔法は使っていない」

 

 見せるのはこんくらいか。

 これで満足してくれましたか? 

 

「超能力者っているんだな……」

「いるよ。隠れて静かに暮らしてるのも結構いるぞ」

 

 引退して静かな余生を送っている人間も前の世界にはいた。

 

「他に聞きたいことは?」

「波の被害がゼロって聞いたが何かしたのか?」

「そっちと違って集団でやってるからな。編成機能を使って波のボスを倒す組と避難誘導の組を連れていってる。重軽傷者は出てるけどな」

 

 普通の……思考だよな。

 だって民間人の命を考えるのが国だよな。

 

「他は?」

「まだあるか?」

「ねぇな」

「僕も」

「俺も無いな」

 

 こっちも聞きたいことがあるんだ。

 質問してみよう。

 

「なあ、アルドミティアって国知ってるか?」

「なんだその国?」

「聞いた事無いな……」

「ゲームにはそんな国ありませんよ」

 

 やっぱりゲームには出てこないイレギュラーか。

 

「俺は知ってるぞ」

「え?」

 

 尚文、アルドミティアのこと知ってるの? 

 なんで? 

 

「アルドミティアの商人と知り合ってな。国の事を教えてもらったぞ」

「どんな事教えてもらった?」

「国力がナンバーワンの国って事だけだな」

「そうか…………」

「だが不自然な所が会ってな」

「不自然?」

「ああ、ハジメの━━━━」

「大変です!!」

 

 おや? 兵士が飛び込んできたぞ。

 ビッチと燻製が何かやったのですかな?



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第47話

「ふぅ」

「あ〜ウザイわ」

「でもスッキリしましたね」

 

 宴が終わった。

 乱闘とか皆やってたらしい。

 

 主導してたのはウチらのパーティーだ。

 

「でもそこまで強くなかったでござる」

「こっちの方は鍛え方が違うからな。あっちもステータスは高い方らしいぞ」

 

 慢心とかしてるからトレーニングとか怠けてるだろう。

 

「それで? どうなって乱闘になった? 詳しい話聞いてないぞ」

 

 

 ■

 

 

 数時間前。

 

「それにしても女王が帰ってきてまともになりましたね」

「ホントだね」

「何人か投獄されたり左遷されたりしたって」

「怖いねー」ガツガツ

「これで盾の勇者様の名誉回復したでござる」ŧ ‹" ŧ ‹"

 

 ここまでは大人しくしていた。

 おかしな事しない限り平和。

 

「だけど三勇教は根深いからね。残党とか居る可能性もあるからまだ終わりじゃない」

「かなり昔から三勇教ってありますからね」

 

 一枚岩ではないからな。

 他の国に根を張っている事もありそう。

 

「ビッチは改心しますかね?」

「流石にしないでしょ」

「薄汚い亜人がいると酒が不味くなる!!」ドシン

「チッ、あそこに粛清対象がいますよ」

 

 鎧、もとい燻製がラフタリアお姉さんに絡んでますぞ。

 名前なんだっけコイツは? 

 

「盾の仲間だか知らんが図に乗るな! いいかよく聞け。樹様さえいれば他の勇者は必要ないのだ!」

 

 お前原作じゃ霊亀の生贄にしたり、都合の悪い時には賭けのツケ押し付けて逃げたよな? 

 槍直しじゃ手の平返して保身の為に殺してた。

 

 お前の言葉に価値なんて無い。

 

「特に盾の勇者の恥さらし。ヒック、お前の腰抜け主に言っておけ、痛い目に会う前に消え失せろ! とな」

 

 何考えてんだコイツ。

 恥さらしはお前だバカ。

 

 そしてこっちを向いた。

 で、近づいてきた。来んな。

 

「ローナちゃん、はい」

「ありがとうございます……」

「シルフィちゃんお願い」ヒソヒソ

「? 分かったでござる」

 

 春菜がとあるブツを渡す。

 

「おい、何故ここにクソ勇者の配下がいる!! 国に帰ったらどうだこの原人共が!!」

「「…………」」

「言葉が通じないとは、今さっきの薄汚い獣と同等だな!」ヒック

「言いたいことはそれだけですか?」シュン

 

 クソ勇者? 

 ローナが燻製の肩に飛び乗り、度数の高い酒ぶっかける。

 

「なっ、貴様!?」

「ファスト・ファイアでござる」パチン! 

 

 キルアみたいだな。

 

「ぎゃあああああああああああああああ!」

 

 うるせえよ。

 案の定上半身が火達磨になり床に転がる。

 

 それで俺と尚文パーティー戦闘態勢に。

 

 樹パーティーは戦闘態勢に。

 お前ら俺の領地でボコボコにされてなかったっけ? 

 

 オリガよりも強いぞコイツら。

 

「貴様らグハッ!?」

 

 立ち上がってきた燻製にローナはシャイニングウィザード。

 

 他の奴らも負けずと殲滅へ。

 

 

 

 ■

 

 

 

「間違った事やってないよね?」

「問題ない。薄汚い亜人とか盾の勇者の恥さらしとか言ったんだぞ。女王の意思に反してる」

「お咎めを受けるのは弓の勇者でござる」

 

 この国の民間人を救ったり、三勇教と言う膿を取り出すために頑張ったんだぞ。

 

 樹は隣国の財政を悪化させて余計苦しませた。

 

 どっちが偉いのかな? 

 

「そっちの会議はどうでした?」

「そっちと同じでぐだぐだ」

 

 ゲームとは違うからな。

 ウキウキするのはわかるがご都合主義が通じるとは限らない。

 

 前の世界でも油断して危なかった事もあるし、緊張感とか持って欲しいものだ。

 

「あれ? そう言えばヒソカは?」

「本拠地に帰りました」

「そうか」

 

 いつの間に…………。

 

 

 ■

 

 

 はい、翌日。

 

「さて、カルミラ島へ行きますか」

「やっとだね…………」

 

 だだいま俺はメルロマルクにいる。

 

 もう既に人員をカルミラ島へ送ったのだ。

 シーラに頼んで夜刀ちゃんの機材とかも運び出し完了している。

 

 誰が一緒に運ぶとしよう。

 ん? 尚文だ。

 

「あ、尚文」

「ハジメ?」

「なあ、時間あるか?」

「用事あるからまた今度にしてくれ」

「あ、うん」

 

 まあ、用事あるならしょうがねえな。

 

 さっき聞いたけど元康と樹は既に居ないし。

 後は、

 

「あ、錬」

「ハジメか、どうした?」

「今時間あるか?」

「まあ、出港の時間まで結構あるが……」

「一緒にポータルでカルミラ島へ行かないか?」

「何!?」

「ああ、夜刀ちゃんのライブとかあるから行かなければならないんだ。ついでにどうかなって」

「助かる! 少し待っててくれ仲間を呼ぶ!」

 

 確か船酔いしてたよな。

 先に行きたいだろうし。

 

 酔い耐性とか装備ボーナスとかあったな。

 今度教えよう。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「さて、カルミラ島だ!」

「暑い日差し!」

「青い海!」

「泳ぐでござる!」

 

 よくよく考えたら海に来たんだ。

 遊ばないと損だ。

 

 夜刀ちゃんのライブは夕方だし。

 少し遊んでもいいだろう。

 

「ハジメ様どうですかこの水着!」

「拙者のもどうでござる?」

「私のも私のも」

 

 ローナの水着は青の三角ビキニ。

 シルフィは明るい花柄のフレアビキニ。

 春菜はエプロンチェック柄のクロスホルダービキニのパレオ付き。

 

「お〜みんな凄い似合ってる。写真撮りたい」

「でしょ!」

 

 心の底でも似合ってるって感じる。

 あ、カメラ持ってきたんだ。

 

「よし、撮るぞ」

「あ、魔道カメラ」

 

 ロクスが作ってくれたカメラだ。

 タイマー式なので全員映る。

 

「お前らも入れ入れ」

「分かったー」

「うん!」

 

 夜刀ちゃんは白のホルダービキニ。

 キラークイーンは旧式の黒スク水。

 

 ちなみに俺はグラサンにアロハシャツと黒のハーフパンツ型の水着。

 久しぶりの南国だから気合いを入れた。

 

 はいチーズ。

 帰ったら現像してもらおう。

 

「ハジメ様、そろそろ昼なんでバーベキューしません?」

「おっけー焼くか」

「材料も足りなくなりそうだね」

「キラークイーン、取ってきてくれないか?」

「うん!」

「あ、飲み物も無い」

「あ、私買ってきますね」

「拙者も行くでござる」

 

 少し忙しかったから準備不足だったな。

 気をつけよう。

 

「それでキラークイーンの報告じゃ海底神殿とかここら辺じゃ見つからなかったみたいだ」

「他の海岸かな?」

「カルミラ島は保養地で有名だからな。海岸とか多いぞ」

「活性化は海の中でもあるし」

 

 気になっていた。

 ここで波が起こるかどうかって事。

 

 Web版か書籍版かどっちだ? 

 

 イレギュラーとかよくあるので注意したい。

 

「ラルク達や他の世界の勇者も来る可能性もあるよね」

「ミレナリオも来てたし当然有り得る話だ」

 

 どさくさに紛れて四聖を始末する。

 俺を倒すよりも四聖を殺害した方が楽。

 

 他にも俺のチームの奴らが来ているようなので、要注意だ。

 俺より攻撃力が高いメンバーもいる。

 

 グラスが能力者って事は他にも能力者がいるだろうし、尚文達じゃ太刀打ち出来ないだろ。

 

「お兄ちゃんの考えは?」

「波があると仮定する。それだとグラスの世界の能力者が沢山くる。もしくは来ない」

「沢山くるってのはわかる」

「グラスってのは相当実力あるはずだ。それをボコボコにした上に逃がしてくれたって事はめちゃくちゃ強いって思われてるだろうし、ヤバい奴とは戦闘を避けるのか普通だし」

「なるほど」

 

 あの三人と会って命があるって事はツキ過ぎてる。

 実力はある程度あると思う。

 

「取り敢えず薬とかポータルで多めに持ってきた」

「まあ、活性化だし結構売れてるらしいよ。シーラさんの方も繁盛してるって」

「薬草畑を作っておいて良かった」

 

 周の練習で畑を耕し、薬草を数種類植えました。

 肥料とか撒いたり、改造して弄ったら相当な数でしたよ。

 

 摘みに行く必要が無くなり、量を生産できるようになった。

 

「畑か……」

 

 アイツ元気にしてるかな? 

 

 

 

 ■

 

 

 尚文side

 

「も、申し訳ございません!! もちろん専用のお部屋はご用意していたのですが……先に来られた勇者様方が……お使いになると……」

 

 アイツら……。

 国の特権を何か勘違いしてないか!? 

 

「今一般船室の客を下船させるように手配してますので少々……」

「相部屋でもいい」

「あ、はいお仲間の方とご一緒してくださるのなら……」

「じゃなくて一般客との相部屋でもいいて言ってるんだ」

 

 ったく、船長室を占拠した勇者もだがあの船長……妙におどおどしやがって、更にイライラするだろ。

 

 船長室も奪われたって言ってたし、余程ワガママな事言ったのか? 

 

「つっ、着きました」

 

 船員が部屋の前に止まる。

 

「もうここしか空きがないのですが、六人部屋に先客は三名の冒険者なので、少しは広く使えるかと」

 

 今カルミラ島は入島制限するほど人気らしい。

 俺たちは国の援助を受けて島に行くが一般の冒険者はそうでなはない。

 

 きっと安くない金を払って乗ってるんだろう。

 追い出そうもんならそれこそアイツらと同じじゃないか。

 

「お前は馬鹿か!」ドゴッ

「グホッ!?」

 

 …………どうせ短い間の付き合いだ。

 何も問題ない。

 

 コンコン

 

「お前の頭はどうなってるんだ!!」ギイイイ

「ぎゃあ!?」

「ど、どうぞ」

 

 …………。

 

 

 

 



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カルミラ島
第48話


 尚文side

 

「俺たち四人で挨拶か」

「はい、伝説の勇者の皆さんから声をかけてもらえれば船員達も張り合いが出ますので」

「まあ、いいか」

 

 ついでだ。

 アイツらに他人のシステムを信じれば使えるようになる話をしておくか。

 

「ううっ……」

「何で尚文さんだけ平気なんですか…………」

「船室を占領した罰が当たったんだろ。それより聞いてくれこの前の会議で言っていた精錬度や色々な昨日だか━━」

「止めてくれ……今は難しい話は聞きたくない」

「大事な話だ。ところで、錬はどこだ?」

「そう言えば……どこ行ったんですかね」

「見てねえな…………」

「取り敢えず聞いてくれそのシステムがあると」

「おろろろろろろろろ」

 

 今はそれどころじゃないな。

 陸に上がったら教えるとするか。

 

「おや? よかったら酔い止めいかがかな?」

 

 半死半生の元康と樹に、男が近づいてきた。

 スコップを持っており、細身だが背の高い。

 ニコニコしているが目がギラギラだ。

 

「ほら、この葉っぱを口の中に含んで」

「あなた誰です……」モグモグ

「ただの農家ですよ」

「農家……」モグモグ

 

 酔い止めの薬、葉っぱを二人の口の中に入れる。

 

「念の為持ってきて良かった……」

「別に渡さなくても良かったと思うぞ。コイツらこの船に迷惑かけてる」

「それだからと言って苦しんでいる人間を見捨てる理由になりません。理不尽な飢えや苦しみから人を救うのが信条なんです」

 

 出来た人格者だな。

 勇者達に見習って欲しいモノだ。

 

「あ、酔いがひいてきた」

「……本当だ」

 

 即効性がある酔い止めなのか? 

 …………持ってる葉は見た事ない植物だ。

 

「その薬草初めてみるな」

「まあ、自分で育てて配合したので見かけることはないかと」

「配合?」

 

 農家って言ってたし、植物を配合して品種改良とかもするだろう。

 

「カルミラ島へは何しに?」

「仲間と一緒にレベル上げです。そっちは?」

「俺らも国の支援を受けてレベル上げだ」

「お互い怪我の無いように気をつけましょう」

「ああ、そうだな」

 

 気持ちのいい奴だな。

 

 ザパーン

 

 ん? 魚? 

 空中に上げられた。

 

「よっと」スパァン スパァン

 

 一瞬で飛び上がり、魚を三枚おろしにする。

 ……速い。

 あれ? 今一瞬鎌に変化したような…………。

 

「活きのいい魚だ」

「お前強いな…………」

「いやいや、師匠程では無いですよ。師匠はもっと早いですし」

「そんな超人いるんだな…………」

「ええ、強いですよ」

 

 こいつよりも強い奴がいるのか。

 波とかで活躍してそうだ。

 

「ごしゅじんさまー今日は焼き魚ー」

「いいですな。いいハーブがありますぞ」

 

 ハーブとかも持ってるだな。

 後で薬を買っておこうか。

 

「おーい、フェムト!」

「ああ、ベリト。今行く」

「またな」

「あ、そう言えば名前は?」

「尚文だ」

「それって四聖の盾の勇者の名前……極悪人と聞いてますよ。偽名は他の名前を使った方が?」

「バレたか。俺の名前はハジメ=ヤマカワだ」

「…………」

「…………」

 

 またあの同室三人と同じ事を言われたので、ハジメという偽名を使った方が良いとか言われたので答えてみる。

 沈黙するなよ…………。

 

「色んな人間を見てきているので、貴方は悪人には感じませんよ」

「……そうか」

「フェムト……聞いてへんの?」

「お互い気をつけましょう」

「会議やで緊急!」

 

 フェムトは仲間に連れられる。

 俺に手を振りながら。

 

 仲間か……そろそろ入れた方がいい。

 だがそれは裏切られるリスクを背負うのと一緒だ。

 考えて置かなければ。

 

 夕食は香草包みの焼き魚でフェムト達の仲間と一緒に食べるのだった。

 

 

 翌日、カルミラ島についた。

 二人の勇者はフェムトからもらった草で酔いから回復している。

 助けなくても良かったと思うんだけどなぁ。

 

 そういえばハジメと錬は何処だ? 

 船員に聞いたが乗ってなかったらしい。

 

「よぉ坊主」

「ラルク……」

 

 ラルク達が話しかけてきた。

 

「なあ、せっかくだから一緒にレベル上げしないか?」

「はあ?」

「船で一緒になったのも何かの縁だろ? 丁度六人だから問題ない」

「分かった。ただ俺たちの足を引っ張るなよ」

「それはこっちのセリフだ」

 

 ラルク達と一緒にレベル上げをする事になった。

 調子狂う奴だな。

 

「おや? ナオフミ」

「フェムト?」

「今さっきの人間と知り合いですか?」

「ああ、同室だった」

「…………」

「?」

「あ、いや! なんでもありません。お互い気をつけて」

 

 知り合いか? 

 顔広そうだし知ってる人間もいるだろう。

 

「まさか…………たとは」

「ハジ…………狩・」ボソ

「……拉……」

「…………」

 

 遠くて聞こえない。

 四人とも真剣な顔をしている。

 

 なーんか嫌な予感がするな。

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、せっかくだしレベル上げしましょっと。

 沢山休んだしもう十分と言いたいが、すこし時間あれば遊ぼう。

 

 もう少しレベルが高い場所に行っても問題ないな。

 

「ふん!」

「おらっ!」

 

 一撃で倒すか。

 

 ホント強くなったなコイツら。

 しばらく敵が居ないかもな。

 

「…………なあ、春菜」

「何?」

「ハーベンブルグ伯爵が変な話あるって言ってたな」

「人攫いとか密漁とかでしょ。人が多いから有り得ると思うよ」

 

 こんだけ人が多いと犯罪も加速しそう。

 数多ければ人が一人か二人消えても気づかないし、絶滅しそうな固有の動物もいるらしいく、経験値と素材がレアだとか。

 

「でさ、今気配があるから円を使ったんだわ」

「うんうん」

「20メートル前に落とし穴がある……」

「え?」

 

 人攫いが待ち構えてる事もあるので少量のオーラを使用し円を使っていた。

 

 で、案の定落とし穴の近くに数十人待ち構えていた。

 ここら辺は一般の冒険者がよくいるが、やや強めで森に囲まれた人気の無い場所である。

 

 人の目が無ければやりたい放題。

 

「とりあえずハンターたるものとして狩らなければならない」

「うん、ハンターの鏡」

 

 ハンターですから密漁等の事をしている事は見過ごせないのだ。

 

 狩るぞー。

 

「アル・ファスト・ライトニング!」

『ギャアアアアアアアアアアア』

 

 隠れていた奴らが電撃をくらい、飛び出してきた。

 

 ファストクラスで大ダメージ受けるからな。

 

「このやろおおおおおおおおおおおお!」

「やりやがったなぁああああああ!」

 

 おや? まだ息がありましたかな。

 さっさと眠れですぞ。

 

「銃を発射しまーす」

「やっちゃって」

 

 春菜がマシンガンをとりだした。

 

「ほらほらほら」ドドドドドドド

『ぎゃあああああああああ』

 

 一応威力を最小化してるみたいだ。

 

 それでコイツらの目的は拉致か? 

 多分拠点があるはず。

 

「さて、調べますか」

 

 

 

 ■

 

 

 

「あれですね。確かにこの商会は危ない噂が多いですな」

「やっぱり? 気配がする」

「権力があるのでなかなか迂闊に手を出せなかったので」

 

 とある港、そこに泊まっている船。

 気配がするので円を使用。

 

 あっ、船の底に隠しスペースがあるみたい。

 そこに何人か寝転がってる。

 

 他の人間からも自白(強要では無い)でウラは取れている。

 

 って事で。

 

「えーそれでは荷物を点検します」

「な、なんなんですあなた達は!?」

「人身売買の通報が入った。改めさせてもらう」

 

 ガサ入れ開始だな! ヒャッハー! 

 

「あなたらを名誉毀損罪で訴えます! 理由はもちろんお分かりですね? こんなデマで船に不法侵入するからです! 覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。裁判にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい! 貴方は犯罪者です! 刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!」

 

 ワザップジョルノみたいだ。

 だけど俺の円は嘘ついてない。

 

 ドカァアアアアアアアアアン!! 

 

「今、船の中から爆発音したよな?」

「なっなぁ!?」

「突入!!」

 

 ちなみに爆発音を出したのは俺の仕業。

 これで突入する口実が出来た。

 

「くらえでござる!」

「フン!」

「外の奴らは制圧頼むぞ!」

 

 弱い、弱すぎるぞぉぉぉ! 

 

 俺らは多数の兵士と船内に。

 ここは商船を装っているので貨物とかあるようだ。

 

 商人風の人間が襲ってくるが、戦闘タイプでは無いので相手にならない。

 

「よし、底に着いた! オラッ!」ドカーン! 

 

 俺は板底を殴る。

 

 すると、

 

「なっ……」

 

 なんと目を隠され縄で縛られている人間が沢山。

 奴隷狩りは普通にアウトだろ。

 

「な!? ベチャット!!」

「知り合いか?」

「ええ、この島出身の冒険者です。三日前からクエストに行ったきり戻ってこなかったのでここに居たとは…………」

 

 近くの兵士が知り合いがいたらしい。

 多少筋肉の着いた人間が縛られているので冒険者を拉致しているのだろう。

 

「キューキュー」

 

 あ、動物の密輸もか。

 ギンタさんが怒りそう。

 

 さて、外も静かになったし拉致被害者を連れていくか。

 

「キラークイーン、兵士を呼んでくれ」

「はーい」

 

 動物も体に以上が無ければリリースだ。

 

 後はコイツらの商会の隠し財産を密かに徴収だな。

 自白した人間の中に幹部クラスがおり、儲かりすぎて脱税の為に金貨とかを埋めたらしい。

 

 勿体ないので貰っておこう。

 波の打倒の為の資金にさせてもらおう。

 

 あ、尚文の村の復興の寄付にも良いかもな。

 

 




アニメ楽しみ。


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第49話

「なあ、春菜」

「何?」

 

 夕方、ホテル内にてみんな寛いでる。

 キラークイーンは寝てる。

 

「錬以外の四聖勇者が着いたらしいって聞いたけどさ」

「うんうん」

「元康と樹が酔って無かったらしい」

「あれ? 原作じゃグロッキーじゃなかったけ?」

 

 春菜の言う通り担架で運ばれていたはず。

 酔い止めでも持ってたのか? それともイレギュラーの仕業か? 

 

 どっちみちこの島で何か起こりそう。

 

「あ、ラルクとテリス見たよ」

「書籍版か…………」

「ぱっと見て纏が出来てたよ」

「マジ?」

 

 纏が出来てる一般人とかいるし、それ以上を使えるかどうか。

 

「まあ様子見だな」

 

 三勇者が問題起こしそう。

 俺らや一般冒険者の邪魔にならなければいいが。

 

 ネトゲのマナー講座とか見たけど、奴らが従うかどうか。

 勇者だから何でもやっていいとか考えてそう。

 

「三勇者は大人しくするかな?」

「無理でしょ。自分でゲーム知識が正しいとか思ってるだろうし」

 

 それが原因で実際に被害出てるしね。

 

 まさか死んでも生き返るとか普通無いだろ。まあ、そんな能力持ってたのは前の世界にいるがな。

 生き返りがあるなんで誰が言ったんだ? 

 

 漫画やなろう小説で死に戻りとかあるが、何らかの条件とかあるだろ。

 

「今は兵力強化や金策、情報収集に専念しよう。俺らのハントは波の打倒。敵は厄介だし、明日は我が身だから慎重にな」

「了解しましたお兄ちゃん大佐」ビシッ

「期待してるぞ春菜軍曹」ビシッ

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 夜。

 

「みんな〜! 来てくれてありがとう~!」

 

 夜刀ちゃんのライブである。

 

 夜間のアイドルコンサートってのも良いかも。

 ネオンと音響が夜とマッチする。

 

 1時間弱ほど歌う予定だ。

 有名らしく色んな人が集まってきた。

 

「それでは歌います『桜蘭』」

 

 歌が始まった。やっぱり綺麗な歌声ですな。

 

 ダンスも上手い。実は振り付けは誰も教えてなく、自己流だと言うのだ。

 

「〜〜♪ 〜〜〜♪」

 

 近くにいる錬も聞き入ってる。

 

 …………あれ? 錬がいる? 

 いつの間に。

 

(よぉ)

(ハジメ)

(やっぱり聞き入ってるか?)

(…………また聞きたくなってな)

(綺麗な歌声だからな。分かるぞ)

(これを買っちまった)

 

 見せたのは団扇。

 夜刀ちゃんの顔写真が写った団扇だ。

 

 よくあるよね。こんなファングッズ。

 他にもプロマイドやハッピも販売してます。

 

(まあ、よく領地でライブしてるからたまに来な)

(ああ、気が向いたら行く)

 

 一応ライブ会場とかあるので、設備は整っている。

 

 …………そろそろアイドルを増やした方がいいか。夜刀ちゃんにだけ負担をかけさせる訳にはいかんし。

 

 春菜辺りに知り合い多そうだから今度聞いてみよう。

 

「~~♪ ~~~~♪」

 

 いい歌声、あ、ラルクも立ち止まって聞いてる。

 

 …………ってラルク!? 

 なんでいんの?

 

 あ〜凄い目が魅入ってるから話しにくい。

 

 これは…………沢山グッズを買ってくれそうだな。

 今は……敵とか関係ないな。

 

 

 

 ■

 

 

 

 はい、朝。

 

「さて、レベル上げと素材回収するぞ」

 

 資質上昇したり、スキルポイントを沢山収集して、武器への強化も行っている。

 

 素材狩りは他の隊も行っており、薬に必要な素材とかも結構集まった。

 

「あ、槍の勇者でござる」

「ナンパか? 懲りないなアイツ」

 

 元康を発見。

 そういえばナンパしてるとか噂になってたな。

 

 そんな事してるとパーティーのメンバーから愛想つかれるぞ。

 

「アイツはいつか刺されるでござる」

 

 シルフィ、既に刺されたから。

 

 槍直し見てたらギャルゲーの主人公見たいなエピソードとかあったしな。

 

 そういえばギャルゲーで思い出したが、グリードアイランドでそんな指定ポケットカードの入手があったな。

 ヒミコの助言があったからすんなり入手出来た。

 

 ギャルゲーはあんまりやった事ないから不得意だ。

 

「あれ〜ローナちゃんじゃないか〜」

「チッ」

「なんで舌打ち!?」

 

 あ、いつの間にか接近されてた。

 

「よぉ、ハジメもレベル上げか?」

「まあな、そっちはナンパか?」

「いやいや、一緒にレベル上げしないかって誘ってるだけだって」

 

 明らかにナンパじゃないか。

 近くにいる女共は呆れているぞ。

 

「そうか、しっかり励めよ」

「…………なあ、この辺で深編笠被ったスタイル抜群の女見なかったか?」

 

 ? 虚無僧みたいなやつ? 

 

「いや知らない。何かあったのか?」

「凄いスタイル良いから狩りに誘ったんだけどことわられちゃって……」

「しつこく誘ったらボコボコにされた上に海に叩き落とされたとか?」

「何故分かった!?」

「ええっ?」

 

 適当に言ったのになんでか当たった。

 ナンパはいい加減にした方がいいぞ? 

 

 …………元康ボコボコにできるとか結構やるな。

 余程手練に違いない。

 

「そうか、程々にな」

「ああ」

 

 

 

 ■

 

 

 

「アイツ絶対愛想尽かされますよ」

「だろうね。女性の気持ちとかよく分かって無いんじゃない?」

「顔は良いけど頭は悪いのが残念だな」

 

 ハーレム状態でナンパして増えたら元々居た女はいい顔はしない。

 女性は愛情を受けたいと思っている。

 

 ビッチがイジメを起こす気持ちがよく分かるわ。

 

「ハジメ様って恋愛経験あるんですか?」

「ん? まあな……」

「あるの?」

 

 前の世界でも人生経験とかあったからな。

 強くなったり、金も稼いでるから出会いは沢山。

 

「草食系のお兄ちゃんが成長した…………」

 

 前々の世界じゃそこまで自己主張少ないからモテなかったな。

 俺はゲームや漫画、ラノベを愛するオタクだった。

 

 サブカルが好きだからこの能力になったようなものだ。

 春菜もサブカル好きだからあんな能力になったし、これも兄妹だな。

 

「私全然経験無いです……」

「拙者もでござる」

「あ、実は私も…………」

「その位の歳じゃ無いのが普通だろ。自分のペースでな」

「そうだ。ハジメ様デートしてください」

「ホワッツ?」

「いいね! エスコートしてよ。コミュニケーションの一環でさ」

「賛成でござる」

 

 おいおい、なぜそんな話になる。

 確かに観光スポットとか多いけど。

 

「分かった。俺を刺さないと約束するならしてやる」

「槍の勇者の"ピッー"よりもマトモですから安心して下さい」

「あんな勘違い男よりも御館様はカッコイイでござる」

「だね。比べるまでも無いと思うよ?」

「…………」

 

 俺って実は人望高かったんだな。

 前の世界じゃチームのリーダーやってたし。

 

 アイツら纏められるとか相当な器が無いとダメだな。

 

「アローレイン!」

「!?」

「いい、俺が止める」

 

 カキンカキンカキンカキンカキンカキン

 

 アローレインって言ったらあのクソ天パじゃねえか? 

 人がいるの知らないで無差別に撃ってんのかよ。

 

 あ、止んだ。

 

「いきなりなんなんですか!! 危ないでしょうが!!」

「おや? ハジメさん?」

「樹ィ」

 

 お前さーなんでよく問題起こす訳? 

 正義の味方がマナー違反してんじゃねぇよ。人間性疑うだろうが。

 

「すみません。よく見てなくて」

「他の冒険者に危害を加えちゃダメだろ? 前からそうだったけど考えて行動しろよ」

「貴様ら図々しいぞ!」

『は?』

 

 図々しい 自分勝手にふるまい、他人に迷惑をかけても気にしないような態度や行動。

 

 燻製、お前は何を言ってるのですかな? 

 ブーメランですぞ。

 

「謝罪したのに非難するとはどれだけ金品をせがむ気だ!? 厚かましいのではないか!!」

「厚かましい!? そっちが私達に撃ってきたんじゃないですか!! 注意して何が図々しいんですか!?」

 

 危ない行為したから注意したのに何故こんなにも言われなければならないのだろうか? 

 

「今は悪しき魔物を討つべき時! そんな事してる暇などないだろう!?」

「は? なんです? 私達に矢を放ってなんで偉そうなんですかね? このバカ貴族」

「…………なんだと小娘?」

「マルド、やめましょう! こっちに非があります。すみませんハジメさん、他の狩場に移動しますので…………」

「分かった。マナー違反には気をつけろよ」

 

 一応念は押す。

 

 わーわー燻製が凄い睨んでるよ。

 弓の勇者御一行は去って行った。

 

 

 

 ■

 

 

 

「全く燻製はクソだな」

「本当だよね〜凝り固まった貴族主義だもんね。フォーブレイにもよくいるよ」

 

 江戸時代の侍見たいだ。

 切り捨て御免とかやりそう。

 

「ハジメ様」

「どうしたローナ」

「他の冒険者から聞いたんですけど経験値と素材の横取り行為、暴言とか吐いてるらしいです」

 

 アイツら、念を押したのに。

 

「アイツを呼ぶか」

 

 

 

 




感想があればモチベーションとか上がります。


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第50話

「それで何かあったんですかいボス」

「まあな」

 

 それで呼んだのはパリス。

 樹パーティーの獲物を狙撃し、経験値をかっ攫う計画だ。

 

 勇者が横取りしていいのならば横取りしていいはず。

 そっちが先にルール違反をしているので問題は無い。

 

 悪質なことしておいて笑顔になれると思うなよ? 

 

「確か領地では目立ったことは無いから問題は無いですぜ」

「オルクも連れて行ってくれ。魔物避けのアクセサリーを持たしている」

「念の為にテスタから透明になる魔道具を借りていたよ」ヒョイ

 

 ぐへへ、2人とも絶が出来るし、パリスの能力は念弾でも使用可能だ。

 

「それでさっき弓の勇者の一行が宿を出て島に向かったらしいよ」

「台無しにしてこい」

「イエッサー」

 

 こうして、弓の勇者達の経験値は大して貰えなかったのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 尚文side

 

「よぉ、坊主」

「ラルク……もう帰ってきたのか?」

 

 船頭に声をかけ島の方へ行こうと思ったらラルク達に声を掛けられた。

 

「そういえば聞いたか坊主?」

「?」

「どうやらこの島に四聖勇者と斧の勇者が来てるらしいぞ」

「ふーん」

「なんだよ? 少しは驚かないのか?」

 

 お前の目の前に1人いるしな。

 

「何かあったのか?」

「ああ、さっき舟渡に聞いたんだが……斧の勇者が人身売買組織を潰したらしい」

「…………」

 

 アイツ、樹より正義の味方向いてないか? 

 

「斧の勇者の話を結構聞くけど短い期間で武勇伝を数々打ち立ててるらしいぜ」

「ああ、立てこもりの制圧だろ」

「他にも水虎って魔物の飼育法を確立したってさ」

 

 色々武勇伝打ち立ててるな。

 

「師匠と同じくらい武勇伝立ててるな」

「ラルク」

「おっといけねぇ」

「…………」

 

 師匠? あ〜隣の深編笠被った女、トヨの事を言ってるんだよな。

 

「トヨも武勇伝立ててるのか?」

「…………今は関係ないでしょ」

 

 同じ部屋だったが被ったままだったので顔を見てない。

 有名人なのか? 

 

「それで他の勇者達は?」

「剣の勇者は朝から仲間に送られて1人で狩りだと。槍の勇者はナンパ、今さっき師匠が殴って海に叩き落としたぜ」

「やるじゃないか」

「あんな軽薄な男に誰が着いていくかって話……」

 

 元康、お前いつか刺されるぞ。

 

「弓の勇者は……」

「弓の勇者はさっき会ったぜ」

「今から北西の島に渡るなら気をつけた方がいい。俺らは面倒で帰ってきちまった」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、またLv上げますか。

 

「ほらほらほらー」ドドドドド

 

 マシンガンってもいいもんだな。

 連射式だじ休む暇なく撃てる。

 

 俺もオーラを飛ばし、ボスモンスターを穿つ。

 

「もうここら辺には居ないですかね?」

「GRRRRRRRRR」

「あ、まだいたでござる」

 

 しょうがねぇな。

 

「あ、お兄ちゃん。私やる」

「いいぞ」

 

 行っけー春菜! 

 

「月牙……天衝!」シュバン! 

 

 うわっ、斬月やん。

 コイツジャンプ系好きだな。

 

「まさかBLEACHの斬魄刀か」

「まあね、螺旋丸と迷ったけど」

 

 螺旋丸か…………懐かしいなNARUTO。

 

「…………おい」

「あ!」

「なんだ今のは…………」

 

 あれ? 錬!? 

 人がいないと思ったらいたよ。

 

 あ、どうしよう。

 春菜の能力見られたか…………? 

 

 ①脅す

 ②泣かす

 ③殴る

 

 待て待て、何故か変な選択肢しかない。

 まだ言い訳程度で騙せる。

 

「よ、よお錬。ソロプレイか?」

「その斬撃は……なんなんだ? ブレイブスターオンラインにそんな技無かったんだが?」

 

 しっかり見られてた。

 包丁のような斬月もまだ具現化したままだ。

 

 話を押し通せる。

 

「達人になると斬撃を飛ばせるようなやつも結構いるぞ?」

「…………」

「実際に俺もやってみるぞ」

 

 俺も足にオーラを込め、木に目掛けて飛ばす。

 

 スジャン! 

 

 大木真っ二つ。

 まあ、勇者ならば朝飯前か。

 

「ってな風に。前の世界で積み重なった努力だ」

「そうか…………そいつもか?」

「この世界にも魔法とか飛ばすやついるだろ」

 

 疑ってるな。

 まあ、想定内だな。

 

「この世界はゲームとは違うから気をつけろよ」

「そういえばどんなゲームの世界から来たんだ?」

 

 あのなー、ゲームゲームって思ってたら痛い目合うぞ。

 

「ゲーム?」

「ああ、皆この世界と似たゲームをやった事があるんだが」

「…………俺は知らないな」

「そうか…………」

 

 事実です。

 あんまり変な事は教えない方がいい。

 

「どうする? ソロだろうし一緒にやるか?」

「いや、経験値が少なくなるからいい」

 

 まあ、それがソロの利点だよな。

 他にも思考が停止しないとかある。

 

「まあ、気をつけろよ」

「分かってる」

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、温泉に入りますか。

 和風の露天風呂のような風呂である。

 

 ちなみに俺の所はローマ風。

 テルマエ・ロマエ様式でデザインされてる。

 

 テルマエ・ロマエのも雰囲気はいいが、日本の銭湯や露天風呂もいい。

 

 さて、石鹸あるし体を洗う。

 体を綺麗にしてお風呂に入るのがマナー。

 

「ん?」

「あ」

 

 尚文じゃあないか。

 奇遇だな。

 

「よお、尚文。偶然だな」

「ハジメ」

「どうだ? レベル上げは?」

「ああ、上手くいってる」

 

 戦力強化してる時点で良かったよ。

 

 俺は体を洗ったので、尚文よりも先に湯船に入る。

 ン〜このお風呂の質よりもうちの領地の質のほうがいいな。

 

 でも普通の温泉よりはいいお湯の質だ。

 あ、尚文が入ってきた。

 

「ふぅ」

「日本人だし露天風呂だと落ち着くよな」

「まあな」

 

 富士山の書かれた銭湯とかも味があるよね。

 よくそれがジャポンにあるため、寄った時はたまに行く。

 

「それで? ラフタリアさんとはどこまで行った?」

「…………」

 

 なんで無言で睨む? 

 

「いやいや、他の人間からも見て仲良いし。付き合ってるのか?」

「…………そんな訳ないだろが」

 

 皆ラブラブだって言ってるぞ。

 鈍感野郎め! 

 

「お似合いだって。もうくっついたら?」

「俺は波が終わったら帰る。ラフタリア達が幸せになれるならそれでいい」

「多分無理矢理でもついてくるぞ?」

 

 尚文様がいない世界なんて嫌だとか言いそう。

 人徳が無いと出来ない芸当。

 

「ラフタリアやフィーロには苦労させてるからな…………」

「そうか? 幸せそうだけど?」

「…………俺は悪人だ」

「…………」

 

 今まで自分のやってきた事を考えろ。

 どれだけ人を救ってきたんだ。

 

 悪人だと言って信じる奴はいるのかなぁ〜? 

 

「そっちはどうなんだ? 波終わったらどうする?」

「俺は元の世界に帰るよ。彼女や仲間がどうなってるか気がかりだし」

「彼女いるのかよ…………」

 

 まあね。

 恋人もそうだけど、積み上げてきた財産や名声があるから名残惜しい。

 

「お、尚文じゃないか!」

「あ、尚文さん、ハジメさんまで…………」

「…………」

 

 三馬鹿勇者が揃っちゃった。

 そろそろ上がろうかな。

 

 チャポン

 

 三馬鹿はもう体を洗ったそうで入る。

 

「仲間の中で一番の美少女って誰だと思う?」

 

 勝手にやってろ。

 元康は話しているが完全ではないが無視。

 

 ただ俺のパーティー全員が可愛いって言ってる。

 

 元康のパーティーは全員言ってないぞ? 可愛くないのか? 

 

「下らん」

「不毛ですね」

 

 悔しいが同感だな。

 顔が良ければ得するとかよくあるが、外見で判断して馬鹿を見る経験とかあるだろ。

 

「女王は性格が悪いと言っていたが俺も気にならなかった」

 

 それで、ビッチの話題になったな。

 

 錬、樹はビッチの表裏の顔の使いように気づいていない。

 

 表面は凄い親切で良い人ぶってるけど、裏では悪い噂や陰口等を叩いたりってのも結構いるぞ? 

 反対に態度や素行が悪いが、裏では誰にも見られずに善行したり、見返りを求めず親切とかするのも少なからずいる。

 前者はクズ、後者は人間性が高い。

 

 意外と顔と外見で人を判断して馬鹿を見るって経験してる人間はいる。

 顔や体付きが怖いからと言って、性格は穏やかだったり、喧嘩を売られない為に体を鍛えてるのもいる。

 弱そうでヒョロガリの人間でも、ネット上じゃ攻撃的だとか普通にいる。

 

 ビスケだって少女姿だけど、あれの方はムキムキマッチョだから目立つ。目立たない方が厄介事は少ない。

 

 外見で判断するなとか聞くけど、意外と外見も大事なんだな。

 もちろん性格の方が大事だけどな。

 

 

 




カルミラ島はまだ続く。


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第51話

 フィーロたんが垣根を飛び越えて女湯へ帰る。

 その後元康が垣根の方に向かう。

 

「ここは男の約束として約束の覗きをするのが勇者としてのお勤めだよな」

「何がお勤めだ」

「犯罪だろ!」

「ほら、気になるだろ?」

 

 覗きは犯罪ですよ? 

 確か尚文を犯罪者扱いしたの忘れたっけか。

 

 んで、樹は正義の味方なのに覗きに参戦。

 誰が下になるかで揉める。

 

「くだらないな」

「多分連帯責任で怒られるから出た方がいいぞ」

「確かにな…………」

 

 俺、尚文、錬は出る事に。

 勝手にやっていろ。

 

 ちなみに俺の耳にローナの念獣がスタンバイしている。

 もうこの動きはあっちにバレてるのだ。

 

「ん? 盾の坊主じゃねえか」

 

 出ようとして出てきたのはラルクベルク。

 

「坊主も温泉入りに来たのか?」

「ここの宿に泊まってるんだよ」

 

 尚文がラルクに今の事情を話す。

 それで立ち去ろうとするが、

 

「待て、覗きだと!」

 

 ラルクは尚文の手を掴む。

 

「そんな素晴らしい催しに参加しないとはどういう事だ!?」

 

 未来予知した訳では無いけど、ラルクがテリスに怒られるイメージが湧いた。

 

 で、元康と意気投合しちゃった。

 ダメだよ異世界来てそんなことしたらダメだろ。

 

「おい、お前らも来いよ!」

「断る」

「この猥褻勇者」

「あ"!?」

「なんだと!?」

 

 いや事実だろ? 

 犯罪ってこと忘れてないか。

 

「尚文、ラフタリアちゃんと何処まで行ったんだ?」

 

 尚文は頭に手を当てる。

 どうせ親子みたいな関係とかしか思ってないだろ。

 

 皆で尚文とラフタリアさんの関係が良いと言われる。

 俺も同感だ。

 

 でだ。何かあったかどうか聞いてくる。

 さすがに詮索しすぎだろお前ら。

 

「はあ…………そういえば以前……」

 

 ここからは原作通りだ。

 

 ラフタリアさんがバスタオルを取って裸を見せる行為。

 更にはフィーロたんも全裸で突っ込んでくる。

 

 普通の人間だったら押し倒してる。

 

「「この鈍感野郎!!」」

 

 いや、気持ちわかるけどビッチの悪行に気づかなかったお前もどうなんだ? 

 

 それに妊娠して戦力外って事もある。

 …………あ、やり直しでお姉さんのお姉さんとパンダを妊娠させてたっけ? 

 

「筋金入りなのか……信じられねぇ」

「もしかして坊主……こっちか?」

 

 いやいや、だからといってホモ扱いってのは可哀想だろ。

 それにEDって可能性もあるし。

 

「真性か……信じられねぇ」

 

 お前らが真性の変態だよ。

 ブーメランだよブーメラン。

 

「それで? ハジメは誰とやった?」

「あ?」

「美人揃いだからな。色々あったろ」

 

 俺に話を降るなよ。

 

「知らん」

「俺には色々聞いといて自分は喋らないのか?」

 

 チッ、尚文乗り気かよ。

 

「確かに皆と仲良さそうですし、ラブコメとかありそうですね」

「…………」

 

 樹君もノリノリ。

 あれ? 錬も興味ありそうに聞いてる…………だと? 

 確かにラブコメみたいな場面はあったが。

 

「今さっきのラフタリアちゃんみたいな話とか無いのか〜?」

「あると思うんだよなぁ〜」

 

 こいつら俺の評価下げに来てないか? 

 でも尚文が言ったし俺も言わないとな…………。

 

「わかった。でも俺はノーマルだからな。変な勘違いするなよ」

「ハイハイわかった」

 

 

 

 ■

 

 

 

 あの時は夜だったな。

 俺もある程度のストレスは溜まる。

 

 なので買ったグラビア本で抜く事にした。

 

『写真とか印刷技術あるんだな』

『…………』

『お、いいくびれしてるぜへへへっ』

『…………』

『この歳だと期待ができるか…………ん?』

『あれー? 気づいたー?』

『!?』

 

 何故かそこにはキラークイーンが。

 絶使ったのか、全然分からなかった。

 

『なんでここにいる?』

『コソコソしてたからー』

 

 見られてたか……気をつけるか。

 

『ねえーハジメー』

『?』

『手伝おうかー?』

 

 キラークイーンは指を差す。

 

 

 

 ■

 

 

 

「それで…………どうなった?」

「…………何も無かった」

「何に指を指してたんですか…………」

「さ、次の話行くぞー!」

 

 湯冷めするのもあれなのでまた温泉へ。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 あの時は屋敷の個人浴場に入ってたな。

 春菜との特訓が終わって一汗かいたので風呂に浸かっていた。

 

『父様、お疲れ様!』

『夜刀ちゃん、レッスン終わったのか?』

 

 夜刀ちゃんが一糸まとわぬ姿で湯船に入ってくる。

 やっぱアイドルだから筋肉が少し着いている。

 

『父様の筋肉って結構ついてるね〜』

『鍛えたからな』

 

 腕に優しく抱きついてくる。

 ヒミコもよく抱きついてきたなぁ。

 

『ねぇ〜父様〜今度カレー食べに行こう〜』

『いいぞ』

『わーい父様だいちゅき!』チュッ

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「いつもの事なんだが」

「尚文、見習えよ」

「そうだそうだ」

「なんで真似を…………」

 

 身内の女子の裸を見ても興奮しろって言われてもな。

 

「おまえ一緒に入って欲情とかしないのか?」

「浴場だけに? 平気だな」

「…………」

 

 うーんあまりウケないな。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

「ふぅ眠いな」

 

 あの時は修行中だったな。

 皆が寝静まった所。

 

 トイレ行きたくなってきたから見れれない所へ行き、立ち小便しようとすると。

 

『御館様?』

『シルフィ』

 

 後ろからシルフィが着いてきていて、絶を使っていたがすぐ気づいた。

 

『あの〜眠れなくて〜。良かったら水浴びしませんか?』

『? いいぞ』

『タオル持ってきたので使うでござる』

 

 タオル持参か。

 あ、近くに湖あったけ。

 

『うわー水質きれいでござる』

『しかも冷たい』

 

 夜に水浴びするってのもロマンチックだな。

 

『お、御館様……』

『…………ん?』

『ど、どうでござるか……』

 

 泉に見とれていたらシルフィが服を脱いでいた。

 

 俺…………足とか浸かるだけだと思ってた。

 

『ああ、スタイル良いと思うぞ』

『そ、そうでござるか。嬉しいでござる……』

 

 シルフィは体を預けてきて…………、

 

『何やってるのー?』

『あ、キラークイーン』

『早く寝た方がいいよー?』

『そ、そうでござるな。寝るでござる』タタタッ

 

 

 

 ■

 

 

 

「絶対惚れてるって」

「やっぱりか?」

「完全にホの字だろ」

「なんで押し倒さねぇんだよ!」

 

 …………いや、もし妊娠してしまったら戦力外通告だろ? 

 ある程度強いし戦闘不可にはしたくない。

 

「それで他の娘は?」

「別に聞いても意味無いぞ」

 

 春菜はよく夜這いしてくるが俺は何もしてないし、ローナはたまにスキンシップで体を触ってくる。

 …………これもホの字なのか? 

 

「そういえばお前らのラブコメ話せ」

「さて、のぼせそうだから覗きに行くか」

「そうですね」

 

 あ、この2人逃げやがった。

 

「連帯責任で叱られるのは御免だ」

「俺も」

 

 この2人もか。

 尚文とかラブコメまだ話せそうなのに……俺には話させるんだな! 

 

「おい、土台になれよ!」

「元康さんがなって下さいよ!」

 

 俺もあーがろ。

 巻き込まれちゃ堪んないし。

 

 そそくさと風呂から退散するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もし覗きに参加していたらとある事実を知るのだが…………それは近日中に分かることになる。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ふう、風呂上がりのフルーツ牛乳は最高だぜ。

 

 いちごミルクやコーヒー牛乳も好きだが、フルーツの甘酸っぱい味が少しの水分が無くなった体に染み込む。

 

 自分がフルーツになるような感じ。

 

「ハジメ様お待たせしました」

「あれ? 他の奴らは?」

「まだ少し遅れるそうです。髪とか乾かしてるそうで」

 

 ローナが湯上がり姿でいちごミルクを持ちながら待っていた。

 

 そういえば念獣で盗聴してたな。

 普通に察知して逃げたのか?

 

「やっぱり聞いてた?」

「覗きを計画してる時にこっそり皆にも教えました。覗かれる前に風呂から上がりましたよ」

「そうか」

 

 ローナの念獣ってトランシーバーみたい。

 チーム戦じゃ便利。

 

「でもまさか他の人が過激なアプローチしてるとは…………」

「そこまで聞いてたのかよ」

 

 そこまで細かく聞いてたか。

 

「お兄ちゃんお待たせー」

「お待たせでござる」

「やっと来たか」

「ねーもう少し浸かり足りないから貸切風呂行かない?」

「あ、私も。覗きのせいでゆっくり入れなかったので」

「拙者も!」

 

 仕方ない。

 少し金額はあるので特に問題ない。

 

 俺達は貸切風呂で束の間の休みを味わうのだった。

 

 



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第52話

少し遅くなりましたがあけおめです。


昼のコーヒーブレイクタイム。

俺と春菜が楽しむ。

 

「そういえば海底遺跡は見つかったのか?」

「やっぱり広いしまだ難航してる」

 

この島広いからな。

ラルク達いるし原作の可能性が高い。

 

「やっぱり波起きるよな」

「大体書籍版の流れだし………」

 

フィトリアの人間版やラルクらが出てるのが書籍だから可能性としては高い。

あっちの世界に多数の能力者がいるのは確定。

 

「シーラさんに言って回復薬とか都合して貰ってるよ」

「こっちの私設兵も準備万端」

 

いつ起こっても問題は無し。薬も用意。

 

イレギュラーが来たら俺が対処だ。

 

「そういえば三勇教の時に現れた能力者って何者なの?」

「前の世界で有名な犯罪者だ。一応聞いてみたけど女神とは関係無さそうだった」

「嫌なオーラもしてなかったからね」

 

アイツらが壊滅したのは聞いたが死んだと言う話は聞かなかった。

何らかの事で死んだのか?

 

ありうる。行方不明の犯罪者も結構いるし、死んだかどうかもわからない。

 

「でもそれだったら不味くない? お兄ちゃんの世界の犯罪者って言ったらヤバいの多いでしょ」

「その通りだ。常軌を逸脱したのが結構いるぞ」

 

ヒソカとか旅団とかゾルディック家とか。

アイツら完全に狂ってやがる。

 

「ジャシン教の教祖とかきたらヤバいぞ」

「そうなの?」

「アイツはマインドコントロールとかやるの上手いし、能力も厄介」

「ん? 刑務所にぶち込まれてるんだったけ?」

「まあ………あの監獄は希望なんてないからな。きっと大丈夫だろ」

 

確か監獄内は自殺防止の能力があるとか聞いた。

内からも外からも堅固だから脱出困難。

 

それに終身刑+a。

カマゲロスがスカウトしてきた同じ趣味の奴らが多いからな。

きっと皆で仲良く教祖の"ピッー"を"ピッー"してるだろう。

 

「もしかしたら旅団とかキメラアントとかも出るかも」

「確かに死んだのいるからな。有り得るちゃ有り得るな」

 

キメラアントか………メルエムや護衛団、師団長等がいそうだ。

アイツら国を乗っとったりする実力あるからなぁ。

念能力者のハンターも何人も殺されてるからヤバさが理解出来る。

 

旅団もウボォーとかパクノダとかも出てきそうだし、オモカゲもいたら厄介。

 

その他にも原作に出てないだけで厄介なのはいる。

 

「あー私らも強くならなくちゃ」

「だな」

 

こっちもたまにフィトリアに頼み修行している。

俺も胡座かいてちゃ不味い。

 

あ〜コーヒーが美味い。

ズズズ。

 

「ハジメ様大変です!」

「どうしたローナ」

「盾の勇者様が龍刻の砂時計を発見したそうです!」

 

やっとか。

どんな答えが待っているのか。

 

「それで皆を集めてます!」

「さて、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

?side

 

えっとこれがハリアル草か。

効能は痛み止めと化膿止めで……よく冒険者ギルドの採取クエストにあるっと。

 

「こんくらいにしておくか」

 

べールラルに着て数週間。

上の人が流石に可哀想だと思い、広くは無いが個室を用意してくれた。

一応メイドも用意してくれた。

まあ、巻き込んでおいて酷い扱いってのもどうかと思う。

 

「クサノ様」

「ああ、キーノさん」

「どこへ行かれるのですが?」

「修練場、そろそろ訓練だからさ」

 

この人はメイドのキーノさん。

茶髪のサイドテールが似合うメイドさんだ。

日本だったらアイドルとしてやってけるんじゃないかっての容姿。

さすが異世界。

 

「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」

 

そう言われて俺は部屋を後にする。

メイドってのもいいものだ。

 

振り返ると数週間の間色々な事があったな。

調べたところ、ここは尚文達がいる世界だ。

 

この前盾の勇者が強姦の疑いをかけられたと聞き耳立てていて聞こえた。

 

訓練とかなのだが、アイツらサボりまくりなのである。

僕は訓練に欠かさず出ているのでよくわかる。

 

初日の訓練時には皆ステータスが高い方で加護もあるので普通に強いため、上官クラスの将兵や一般の兵士を圧倒。

その為驕ってしまい、訓練に顔を出さなくなった。

 

今や、自分の付きのメイドや執事とよく遊んでいるのが多い。

ハニートラップみたいな事をされてるらしく、訓練に参加するよう促す事もされてるとか。

噂じゃ妊娠したメイドもいるらしい。

 

「あれ? 草野君」

「美貴子先生」

 

この人は担任教師の美貴子先生。

貰った加護は"商人"。

 

加護により色々な補正があり、商人の場合は計算が早くなる事や、買取額を少し割引を出来るとか。

 

「ん? 城下で働いているって聞きましたが」

「たまには生徒の様子を見に行きますよ」

 

………この人は加護貰ってるんだよな。

クソッタレ女神に選ばれたし、僕のいじめが止まない時点で油断が出来ない。

 

「何か困った事があったら教えてくださいね。協力しますよ!」

「そうですか………」

 

美貴子先生は用事があるのか去っていく。

 

一応この教師にいじめの事を話したが何の解決にもならず、注意はしたらしいけどイジメが過激になってしまった。

この人はあまり信用が出来ないな。

さ、訓練所急ごう。

 

少し早足で向かう。

途中でクラスメイトを見かけるがみんなニヤニヤしている。

 

なんだ? 無駄な努力だってか?

盾しかなく防御力しかない人間でも成り上がったし、大して取り柄のない人間で努力して大成したのがいるぞ。

 

タクトを見てみろ。大して努力しないから勇者なのにボロクソにされてる。

やり直しじゃ瞬殺されてるし。

 

努力してるしてないだと違いがあるぞ。

 

「着いたけど………あんま居ないな」

 

皆怠けてるからな。一般兵士はいるけど。

 

今は朝だし二度寝や朝風呂、それか愛人と楽しんでいるのだろう。

僕はいつも朝は訓練してるよ。

 

「あ〜れ〜? 雑魚の草野君じゃん?」

「何してるの〜」

「もしかして強くなれるとか希望持ってる〜?」

 

雨宮、川野、誉田。

クラスの不良トリオだ。珍しい。

 

コイツらが中心となって俺をイジメてくる。

 

最近では俺と顔を合わせないので突っかかってこないのが救いだな。

 

「あ、そうだ稽古つけてやらね?」

「いいねぇ。弱いんだから厳しくやらなきゃ」

「ほら、こいよ」

 

は? 流石に行かねえよ。

体力の無駄だもん。

 

「嫌だ」

「は? 生意気だな」

「じゃお望み通りここでやってやるよ」

 

あー恥をかかすきだな。

結構人が集まってきた。

 

「きゃあー!」

「頑張ってアマミヤ様ー!」

「負けるなー!」

 

煽んなビッチ共。

 

「お前さー弱いんだから調子乗るなよ!」

 

川野が木刀を上段にして斬り掛かる。

だが僕はすかさず牙突の構えをし、川野の額を突く。

 

「がはっ!?」

「………は?」

 

周りの人間は驚いた顔をする。

何故一撃が入ったのか気になるだろう。

 

答えは簡単。

日々の努力だ。

 

イジメの時、ダメージを受ける事が多い。

なので最小限に抑える為に、衝撃を反らせることにした。

ボクシングとかで首を回して衝撃を逃がす技術がいい例。

 

なので衝撃を逃がしまくった。

それで、ある日。

 

(あれ? 拳が遅い?)

 

体育館裏で呼び出され、殴られてる時にそんな事があった。

スローモーションって言った方がいいか。

 

その後気づいたが、高速で車に乗ってる時に対向車のナンバープレートが見えたり、バッティングセンターで140kmの球を打ったりした。

 

結果、動体視力が上がったのだ。

川野が遅いので突いただけである。

 

「ツヴァイト・ヘルファイア!!」

「アンチ・ツヴァイト・ヘルファイア!」

「何い!? うぐぅ!」

 

誉田君が火の魔法を使用するが、バレバレの為妨害魔法を使用する。

隙が多いので木刀で頭を攻撃。

 

「こいつ!」

 

おっと雨宮君が振りかぶって襲ってくる。

大振りで太刀筋が読めるし、無駄な動きが多い。

 

「えい」

「なっ!?」

 

隙があり過ぎなので転ばせる。

尻から落ちる。

 

もうここまでにしておくか。

僕は剣を突きつける。

 

「無駄な動き多い。訓練が足」

 

足りないんじゃない? って言おうとしてたがその先は殺気が出たので言えなかった。

殺気を感じる事も学校生活で育まれた。

 

「疾風斬!」

 

振り向くと僕は顔面を木刀でぶっ叩かれ宙に舞う。

確かこの技は………、

 

「全く………やり過ぎだ馬鹿者」

 

なっ………凰隆寺……さん?

 

「大丈夫か雨宮君!」

 

あの五人組が現れた。

たまに参加するんだよなコイツら。

 

僕は地面に叩き落ちる。

 

「待っててツヴァイト・ヒール」

「ううっ……」

 

こっちを回復して欲しいんだけどな。

 

「ったく酷すぎるな」

「………惨い」

 

ん? なんで?

いきなり3人がかりで襲ってきたから返り討ちにしたんだけど。

 

「それで何があった?」

「ううっ、実はいきなり草野が襲ってきて………いきなりだから防げなくて………」

 

は?

 

「おい! 草野! いきなり闇討ちなんて卑怯じゃないのか!?」

「男として恥ずかしいぞ!」

「フン、貴様は男以下だな」

「酷いよ草野君………」

「………最低」

 

ええっ!?

待ってよ待って? 先に攻撃してきたのはこの3人だし、コイツら学校での素行も悪い。

闇討ちで3人共やられるのか?

 

なんで僕は信用されないの? さすがにおかしい。

 

「ううっ………」

 

衝撃を逃がしたけど、ダメージが大きい。

その為声が出せない。

 

「私見てましたわ! コイツが後ろから切りかかるところを!」

「わ、私も!」

 

テメェら………巫山戯んなよ。

嘘証言か?

 

立ち上がったら剣城君にみぞおちを殴られた。

 

「ぐおっ!?」

「草野……やっぱりお前最低だ」

「フン、全くだ」

「弱い者イジメは男として恥ずかしいんじゃねえのか?」

 

お前らがそれを言うの?

学校生活で僕は結構いじめられてんだけど。

 

「よし、皆で草野を稽古しよう」

「いいねぇ!」

「フン、仕方ないか」

「うん。仕方ないもんね草野君の為だもの」

「………絞ってやる」

 

クッソ声が出ない。

なんだこの馬鹿野郎共は。

 

僕は一時間程、武器や魔法を受け続けたので気絶した。

骨が10本程折れてたので城の治癒士に治してもらった。

 

もう早くこの国から離れる事にしよう。

 

 

 




Q ざまぁはあるの?
A あるに決まってるじゃないですか!


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第53話

「龍刻の砂時計が水中神殿に!?」

「嘘じゃない後で連れていく」

 

 尚文曰く、沖の方にあったらしい。

 キラークイーンがまだ探していない場所の近くだった。

 

「どうする?」

「どうするって?」

「無視するって選択肢もある」

 

 まだ人の手が入っていない砂時計もあるってフィトリア言ってたな。

 頑張るね。

 

「カルミラ諸島の周辺は地形的に海での戦いになる」

「水兵か…………」

 

 あ〜ヒミコは水場じゃ無敵なんだよなぁ。

 ベリトも水中大丈夫だし。

 

 居たら厄介な敵だな。

 

「海での戦いは正直俺には自信が無い。ハジメの方はどうなんだ?」

「俺? ゼルトブルじゃ海が近いから波の時に水生系の水兵を連れてく。私設兵の中にも水中戦も出来る奴いるぜ」

「それもそうなんだが……前の世界で海で戦いをしたかどうか聞いてるんだが? アドバイスはあるか?」

 

 ああ、そっちか。

 と言っても数回だけだが。

 

「船の上ってのは安定しないから体勢を保持しにくい。水中に落とされると難易度が上がって上下前後左右気をつけなければいけないし、息は出来ないし体はもっと動かしにくい。だから戦ってる際中には水中には落とされるなよ」

「なるほど。分かった」

「後海の魔物を武器に入れてれば分かるが、船上や水中での補正がかかる武器もあるから入れておくといい」

 

 水場の犯罪も多いのだ。

 飛行機よりも船の方が捕まるリスクは少ないし、誰もいない水上なんて結構あるので密輸入しやすいのだ。

 

 密入国なんてパスポート見せずに入れるだろ。空港程港は警備は厳しくないだろうし。

 

 なので水中や船上で有利に働く能力を作るのもいる。

 

「あと、二日」

「二日!?」

 

 二日あれば準備はできるな。

 

「愚問ですね。勇者に逃げるとは……そのためにここにレベル上げに来たんじゃありませんか」

「全くだ。丁度いい腕試しじゃないか!」

「同様に問題無し」

 

 んで船と水兵を一緒に転送させる事に。

 

「なんかネドゲの大規模戦闘みたいだな。SLG」

「俺やった事があるぞ!」

「じゃあ作戦案は? どのような陣形で臨むのか? 状況への対処パターンは?」

 

 俺そこまでやったことないから分からねえ。

 

 それでこの世界のことを知っていて指揮に長けた人間、女王陛下頼む事に。

 

「くだらんな」

「パードゥン?」

 

 錬は泳げないんだな。

 でも協力プレイじゃなければ手に入らないアイテムとかもあると思うぞ。

 大天使の息吹がいい例。

 

「馴れ合いはお前らだけでやってくれ」

「錬!」

「待て、錬」

「なんだ? お前がいるから大丈夫だろう」

「素材とか欲しくないのか?」

「お前らに譲ってやる」

 

 結構信頼されてるのか?

 でも可能な限り参加しなければダメだろ。

 

「泳げないのか?」

「俺は泳げるっ!」

 

 泳げないって顔に出てますよ? 

 俺は錬の体を持つ。

 

「おい! 止めろっ!」

「泳げるんだろ?」

 

 何を止めろって? 

 分からないなぁ(笑)

 

「あ、お兄ちゃん。足持とうか」

「ああ頼む」

 

 春菜と遭遇。

 協力してくれるって。

 

「巫山戯んなよお前らぁぁぁ!」

「せーの」

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

 ドボン

 

「春菜って泳げる?」

「家にプールあったから問題無し。お兄ちゃんは?」

「平気。水中で戦える能力持ってる」

 

 ゴポポ

 

 可哀想だから助けよ。

 入ると浅かった。

 

 コイツ悪魔の実の能力者か? あ、ルフィでも浅い所でも少しは大丈夫か。

 

「泳げないんですか?」

「ダッセェ」

 

 水溜まりでも窒息する事もあるし、小川の事故もニュースで結構あるぞ?

 

「…………」

「まあ、あれだ。一定時間息継ぎ無しで出来る魔法があるからそれを頼れ。あと潜水技能がついてる武器あるから」

「…………俺も参加させてもらおう」

 

 それがいい。

 最悪ビート板とかの浮具を持たせるか。

 

「それで海中神殿までどうやって行くんだ?」

「これを着て」

「…………」

 

 ペックル着ぐるみ。

 

「俺は魔法で行く」

「俺も」

「僕も」

 

 みんな着ないんだな。

 

「んじゃ俺は着るか」

 

 着てみて泳いだけどすいすい泳げた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、俺も働きますかね。

 

 さ、やって来ましたシルドウェルトへ! 

 

「さて、城へ行きますか」

 

 一応トップの奴らと話とかつけている。

 

「ゲンム翁」

「おお、斧の勇者様。何かありましたかな?」

「盾の勇者が水兵を欲しているぞ」

「なんと!!」

 

 シルドウェルトで部隊事に直ぐに集められるようにピックアップしていたんだ。

 水兵の招集だな。

 

「ほほう、2~3時間掛かりますな」

「オーケー。ゼルトブルでも集めてくる」

 

 ゼルトブルでもそんな感じでやっている。

 

「報酬は盾の勇者の顔写真でいいか?」

「いいのですか!?」

「よいよい。功績を立てたものは抱擁してくれるってさ」

「な、なんと……」

 

 一応尚文には許可取ってある。

 

「まさか新しい写真を貰えるとは……」

「この前の気に入ってくれたか?」

「ええ、久しぶりに妻と燃えましたぞ」

 

 満足してくれてよかったよかった。

 尚文はモテて羨ましいなぁ。

 

「是非盾の勇者にシルドウェルトに来てもらうようにお伝えくだされ……」

「多分反乱分子がいるから探しておけよ。尚文を利用して企むと思うからな」

「…………お任せ下さい」

 

 こうして何回か往復しカルミラ島へ送るのだった。

 人員制限? スキル強化やオーラを混ぜたら結構な数を送れた。

 

 

 

 ■

 

 

 

「ふぃー終わった」

「お兄ちゃんおかえり」

「おかえりでござる」

 

 ゼルトブルとシルドウェルトのメンバーを全員運んだ。

 宿泊費はメルロマルク持ち。

 女王陛下にも許可を取っている。

 

「俺が居ない間になんかあった?」

「女王がこの島に来ましたよ」

「薬とか爆売れだって」

「了解、後で会っておくか。あ、薬の在庫あるっけ?」

「シーラさん曰く結構あるって」

 

 売上を期待しておこう。

 

「他の勇者は?」

「波の準備中」

「わかった」

 

 とりあえず尚文に会っておくか。

 錬に浮具を渡すか。

 

「ヤマカワ様」ガチ

「あ、女王」

 

 あ、来てくれたのか。

 こっちから行くのに。

 

「人員の増員、誠に感謝します」

「いいよ。これで架け橋になればいいけどな」

「何から何まで…………」

 

 フフ、聡明な女王だから大きいリターンはあるだろう。

 いい投資ですぞ。

 

 その投資が暴落しないように、カス達の掃討作戦を開始しなければ。

 そのために豚王の死を防ぐ。結構趣味が合うからな。

 

「それにしても羨ましいパーティーです」

「そうか?」

「ええ、我が国は人間と亜人の友好を望んでいたもので……手を取り合っていくのが理想だったので」

 

 俺には分からんが、女王も相当な苦労をしたようだ。

 クズめ、貴様は重罪ですぞ! 

 

 前の世界でも人間とはかけ離れてたのと仲良くなってたし、あまり違和感とかは無いな

 魔獣とか知り合いにもいるし、動物にも仲間にいる。

 

「そうだ。女王」

「なんでしょう?」

「カジキとサザエ、後ロブスターが欲しいんだけど?」

「?」

 

 

 

 ■

 

 

 

「準備完了だな」

「やっとまともに戦えるねこの国」

 

 女王が来てくれてよかった。

 士気が上がるうえにまともな戦力。

 

「錬……」

 

 ふと錬を見ると背中に浮具をつけていた。

 今度泳ぎの練習でも手伝おうかな。

 

 あ、ラルクとテリスを発見。

 ん? もう一人傍にいるぞ? 誰だろうか? 

 

「ハジメ様」

「父様」

「どうした?」

 

 

 

 ■

 

 

 

 00:10

 

 転送まであと10秒。

 

 …………。

 

 …………。

 

「どうしたのハジメー?」

「………………何でもない」

 

 00:00

 

 景色が変わる。

 大海原に転移する。

 

「亀裂は!?」

 

 あ、この時は確か……。

 

「亀裂は上だァァァァァァァ! 何かに捕まれェェェェェェェェ!!」

 

 次元ノ勇魚

 

 ドガァァァァァァアン! 

 

 でけぇ魚だな。

 食えるのかな? 霊亀も食えたしいけんのか? 

 

「うわっ、船が大破した……」

「凄い威力……」

 

 相当の大物だって事。

 前の世界でもこんくらいのはいた。

 

「さて、終わらせて答え合わせするか」

「準備オーケー」

 

 あ、尚文が海にフィーロたんと入った。

 そろそろだな。

 

 顔出した所を攻撃だな。

 

「お兄ちゃん」

「ああ」

 

 水が盛り上がってきた。

 そこだな。

 

「出たな!」

「今度こそ!」

「これで、終いです!」

 

 尚文と次元の勇魚が海上へと出てくる。

 三勇者の一斉攻撃を行う。

 

 コイツらが総攻撃しても大した威力にならんし、俺がその攻撃を受けてもダメージは少ない。

 

 手伝うか。

 

喝!! 

 

 ドカァァァァァァァァン! 

 

「GUUOOOOOOOO!?!」

 

 実は口の中に仕込んでいたのだ。

 この能力は遠隔操作が出来て便利だね。

 

 飛び出た魚が力尽きたのか、海面に叩きつけられる。

 

 今回はウボォーをボロクソにするよりも簡単な作業だったな。

 

 

 

 ■

 

 

 

「いやぁ今回は楽勝でしたね」

「この魚呆気なかったな」

「レベル上げの効果が出てるかもな」

 

 ……しまった。調子に乗らせちゃったか。

 

「だけどおかしくないか?」

「何がだ?」

「前の波より簡単に倒せたが? 今まで一撃で倒せた波のボスがいたか?」

「確かに……」

「それにボスが倒れても亀裂が収まらない」

 

 やっぱり気づくか。

 多分ラルク達が出てくるだろ。

 

「亀裂を攻撃するぞ」

「おっとそれは困る」

「ラルク」

 

 ラルク出てきた。

 

「なんですか貴方達は?」

「なあ、坊主。誰が倒したか教えてやろうか?」

「ラルク? どういう事だ」

「ソイツだ」

 

 ラルクが指を指した先は……

 

「んー?」

「キラークイーン、お前倒したのか?」

「知らないよー」

「違う違う! 位置をすり変えるな!」

 

 場所を瞬時に交代。

 盾にするって方法もあった。

 

「お前倒したのか?」

「まあな。やり方は教えないが」

君の知らない物語(スターゲイザー)水銀粘獣(メタルスライム)の遠隔操作だろ」

「…………」

「?」

 

 …………………………あ、そういう事か。

 今まで全然気づかなかった

 

「お前ら何の用だ?」

「俺ら四聖勇者になにか用か?」

「勇者? 嘘だろこんなに弱い勇者いるのか?」

「なんだと?」

「言わせておけばこの覗き魔が━━━━」

 

 ブーメランだぞ?

 お前らさすがに学習してるよな? 

 

 ラルクは瞬時に鎌で周りを攻撃する。

 オーラは使用せずに技術で勇者を吹き飛ばした。

 

「これはなんだラルク?」

「いゃあ本当に、どうなってんだか俺の方が聞きたいくらいだ。まさか坊主が本当に盾の勇者だったとは……」

 

 確か仲良かったからな。互いに嫌だろう。

 

「お前に恨みはないが……世界の為に死んでくれ」

「あ、いいか? 話入っていい?」

「「…………」」

 

 あ…………いや? 空気読めてないってのは分かるよ。

 ただ聞いておかなければならないんだけどな。

 

「そこの虚無僧の女」

「何?」

「お前ヒミコだろ」

「…………」

 

 女は被り物を取ると、

 

「ああ、やっぱりあにさんにはバレるか」

「今さっき分かったけどな」

 

 声が変わり、ポニーテールの美少女が出てきた。

 お前なんでここにいるの? 死んだのか!? 

 

「でもよく分かったね? オーラの感じや匂いとか歩き方やサラシとか声も変えたのに…………」

水銀粘獣(メタルスライム)の能力名と遠隔操作の事はヒミコにしか教えてない」

「あ、なるほど……」

 

 チームから抜ける時点でこの能力はなかった。

 

「あれー?」

「ああ、この前はどうも」

「キラークイーンと関わりあるのか?」

 

 キラークイーンがヒミコに反応した。

 

「石鹸忘れたから貸してくれたんだ。お礼に背中を洗ったよ」

 

 あれれれ? お風呂に入ってたのか? 

 仲良くなりやがって。

 

「先生、もう戦っていいか?」

「いいよ。さっさとやれ」

 

 尚文とラルクが戦い始めると、

 

「ぬおっ!?」

「ナオフミ様!?」

「ごしゅじんさま!!?」

 

 遠くへ吹き飛ばされ……海までぶっ飛ばされたか。

 結構余裕だな。

 

「それで? やるのか?」

「は?」

「俺らとお前らの戦力をかち合わせてみろ。お前らは三人。俺らは十数人。倒せんのか?」

「やってみないと分からないじゃん。あにさん知ってるよね? 私の能力」

 

 確かに厄介。

 水中はヤツのテリトリーだからな。

 

「先生、やるんですか?」

「ひゅーう。先生の本気が見れるのか」

「分かってる? 本来の目的。作戦通りに動いて」

 

 目的? 作戦?

 目的は四聖の殺害じゃないの? それともグラスとかの援軍を待つとかか? 

 

「お前ら能力者同士の実戦だぞ」

「うん!」

「ぶっ倒したでござる!」

「分かったよ父様」

「ハジメ様? 奴らはどうなってるんですか?」

「あれ? 何で出てこないの?」

 

 あ、どうしたんだろう。

 空気読めてないからそろそろ出ると思うんだけど。

 

「皆気をつけて! あにさんの能力は━━━」

「全員海に落ちるな! ヒミコの能力は━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━━容量制限付きのコピー能力!」

「━━━━━━水中地中どんな場所でも泳ぐ念魚だ!」

 

周りが海だし、ヒミコの口寄せ・蛟龍(メガロドン)は厄介だ。

 

だから見せてやるよ。

俺の能力、海賊王(ジャンキーコレクション)を!

 

 




って事でオリ主の能力はコピー能力でした。
異能力系バトルの定番。

春夏なるさんへ→これが複数能力持ってる理由です。
ウルト兎さんへ→作中で能力のアイデアは使わせて頂きます。


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第54話

 数時間前。

 

「んで? 話って」

「道を歩いてた人が二人いたんだけど、纏が出来てたの」

「うんうん」

 

 俺は夜刀ちゃんが話があると言われ、裏へ。

 他のパーティーメンバーも同様。

 

「片方の人の声がどっかで見た事あると思ったら、もう片方の人がその人をミレナリオって呼んで…………」

「ミレナリオ…………」

 

 来てたのかよ。

 やっぱり波に参加しそうな感じだな。

 

「それで、もう片方の人の名は?」

「えっと……ゴドルだったけ? ボゾボソ言ってたから何言ってるか分からなかったけど」

「何ィィィィィィ!!」

「こんなに叫ぶの珍しいね…………」

 

 まずいまずいまずい。

 結構な強敵だぞオイ。

 

 俺だけで勝てるか? 

 

「ハジメ様、私も」

「?」

「実はその人達は全員で四名です」

「マジ?」

 

 は? まだいるの? 

 嘘だろ。

 

「他にはどんなのいるんだ? あと二人は」

「私の念獣で調べたんですけど」

 

 カキカキ

 

「この四人です。夜刀ちゃんのが言ったのも含めて」

 

 ローナは書いた似顔絵見せる。

 

「ん? フェムトとベリトもいるのか……」

「また知り合いでござるか……」

 

 えーコイツらもいんのかよ。

 厄介さが増したな。

 

「この人達の能力ってなんなの?」

 

 うーん。言わなければ駄目か。

 

「その代わり、誰にも言うなよ」

 

 

 

 ■

 

 

 

 数日前。

 

「さて、カルミラ島にあにさんがいるらしい」

「先生、そんなにヤバい相手なんですか?」

「ヤバいも何も怪物」

 

 ヒミコパーティー。

 ホテルで密談中。

 

「クソ爺と戦って一勝六敗した強者だし、数々の分野で功績をだしてる。皆戦いたくないとかよくいってるよ」

「クソ爺ってのがよく分からないんだが強いのか?」

「前の世界で最強の武人って言われてるってさ」

 

 ジジイと比べられるハジメ。

 

「船内見たけど他の世界の勇者もいるみたいだし……」

「ああ、鎌でその辺の魚斬っても経験値が入らなかった」

「さて、どうするか。計画の邪魔になりそうだし」

「あっちも何考えてるのか……」

「やる事被らなければいいけど」

 

 計画、とある水面下で計画を立てている。

 ただいま実施中なのだ。

 

「それじゃ、あにさんの能力を教えておく」

「最強の武人に一勝出来る能力ってのはなんなんだ?」

「うん、全部は分からないけど制限付きのコピー能力だって」

「「コピー能力?」」

「そう、他人の念能力をコピーするんだってさ」

「なるほど、相手によって相性の良い能力で戦えばいいでしょうし」

 

 コピー能力。

 色々な功績を立ててきたのも、この能力が活躍してきた。

 特に魔猿ギギはハジメじゃないと倒せなかったと言われている。

 

「でもどうやってコピーするんだ? さすがに戦闘中は無いだろ」

「まあね。あるとしたら戦闘後でボロボロにした後かな? 私もコピーする所見たこと無いから分からないけど」

 

 コピーした能力を使っている所は見た事あるが、コピーの手順や使用時のルール等は知らないヒミコ。

 

「とりあえず、知ってる能力は教えるよ」

 

 

 

 ■

 

 

 

「電撃銛 十!」

「銛!?」

 

 しまった。コイツ銛の勇者だったか。

 

 漁師だから似合ってるな。

 

「飛天大車輪 十!」

 

 いや、待て! 

 十!? 

 

「なんで十とかつけてるんだ?」

「え? スキル強化だけど?」

 

 鈍器の勇者は死んでないのか? 

 

 ……いや、それは問題ではない。

 スキルの威力が弱いような気がする。

 

「輝石・紅玉炎!」

 

 宝石魔法をテリスが打つが、対して威力は無くキラークイーンの能力で弾かれる。

 

 コイツら固まって動くようだ。

 何を考えてる? 俺が本気を出したら崩れるぞ。

 

「分散させる。俺ヒミコを、他を足止めして置いてくれ」

『了解』

 

 他の能力者は待機。

 他の兵隊は波の亀裂でも攻撃してこい。

 

「ねぇ、あにさん」ガギン

「なんだ」ガギン ガギン

「私達の世界へ来ない?」ガギン

 

 あ? なんだいきなり? 

 

「今こっちの世界でやってる事があるんだ。そっちには行けない」ガギン

「そっか」

 

 カスの掃討や四霊も。

 

「こっちの世界にユニちゃんがいるよ」

「マジか!」

 

 ユニが!? なんで!?

 死んだのかよ!! 

 

 なんで俺の知り合いばかり? 

 

「そう言えばお前なんで死んだの?」ガギン

「パームがいなかったから、ユピーの方を手伝ってぶっ飛ばされちゃった。アクアトライデント 十!」ガギン

 

 ああ、パームが念字で亡きものと考えろって言ってたやつか。

 で、ユピーに殴られたと。

 

「…………」ガキーン

 

 なんかおかしくないか? 

 俺か? 色んな知り合いが来てるし。

 

「オラオラ!」

「くっ、コイツら……」

「ラルク、持ちこたえて!」

 

 まーまーよく持ちこたえてるわね。

 ラルクもテリスも多少はやれるか。

 

「それで? グラスが来るまで持ちこたえられるのか?」

「……グラス? ああ、扇の勇者ね」

 

 反応が鈍い?

 

「弟子じゃないのか?」

「私の弟子じゃないよ? ユニちゃんでもないよ」

 

 じゃ誰だ? 変態が他にもいるだろうし。

 まだいるかわからないチームのメンバーか?

 

「じゃ誰だよ」

「どうせチームの━━」

「シールドプリズン!」

「「あ」」

 

 な、尚文。

 話の途中なんだが。

 

「話の途中だが今はそんな余裕は無い」

 

 空気嫁と言いたいが、他人の命がかかってるし責めはしない。

 

 だが、ヒミコにアイアンメイデンしても無駄だぞ。

 

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は鉄の処女の抱擁による全身を貫かれる一撃也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!』

「アイアンメイデン!」

 

 鉄の処女が現れ、シールドプリズンごと無数の針で串刺しにするが、

 

 ガシャン

 

「…………いない!」

「…………話の邪魔しないで欲しいな」ドン! 

「ぐっ!」

 

 後ろから蹴られる尚文。

 

「あのさーホントに邪魔しないでくれない? あにさんと会えるのどんだけ楽しみにしてたか…………分かるの?」

「ナオフミ様!」

「ごしゅじんさま!」

 

 流石に相手をさせるのは分が悪い。

 

「まて、ヒミコ。相手は俺だろ」

「あにさん……そう言うなら分かった」

 

 よしよし素直でよろし。

 コイツは油断させて拘束するか。

 

「それで話の続きは?」

「ああそれで━━━━」

「その戦い待った!」

 

 ん? その声は!? 

 

「おっ、フェムト! 久しぶり!」

「お久しぶりです師匠!」

 

 やっぱり出てきやがった。

 

「クッソあのアマ……」

「騙しやがって」ボソリ

 

 ミレナリオ、ゴドルまで……この世界に来てたんだな。

 

「よぉおひさ、遅くない?」

「あの女のせいだよ」

 

 ?

 

「ああ、今さっき……」

 

 

 ■

 

 

 波の前。

 

「あれ? 君らまだ編成機能の貰ってないの?」

「ああ」ボソリ

「私らの分隊でやる? 手続きあるし面倒だったよ?」

「…………じゃ頼むわ」ボソリ

「はい」ピロリーン

 

 ヒミコ変装中である。

 そして波の転送後。

 

「ゴドル、転送してないぞ?」

「…………分隊が破棄されてる」ボソリ

 

 

 

 ■

 

 

 

 意外とうっかり騙されるとかあるよな。

 よくある事だ。

 

「クソアマ……」ボソリ

 

 ゴドル君キレてるよ? 

 付いた二つ名が"カキンの狂犬"だからな。暴れさせると不味いことになる。

 

「ねえ、あにさん」

「なあに?」

「一時的に手を組まない?」

「嫌に決まってんだろ。お義父さんを傷つけてただで帰れると思うなよ?」

「えええ!?」

 

 ドカアアアアアアアアアアアン! 

 

 ぬおっ!? 何だ!? 

 

 ……海に何か落ちた! 

 もしかしてグラスか? 

 

「この気配どっかで…………」

「俺も……」

「もしかして…………」ボソリ

 

 あ、グラスじゃないなこの気配。

 

 この懐かしくて心強い気配。

 俺の顔見知りだな。

 

 …………何故だ、死んでたのかよ。

 

 気配が水上に上がってくる。

 

 バシャン! 

 

「ふううう、まさかベリト君がもう海にいるとはね。面倒だから気絶させておいたよ」

「「「「ベリトォォォォォォォォ!!」」」」

 

 その気配の持ち主が、全裸のベリトを抱えている。

 びっくりして俺まで声が出てしまった。

 

 中学生位の背丈、濡鴉の黒髪と泣きぼくろ。

 間違いない。

 

「よう、久しぶりだなハジメ! 来ちゃったゾ!」

「師匠……」

 

 俺の師匠、アノン=クルーガーだ。

 



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第55話

※今回、話が少し滅茶苦茶になります。


「あれれ? ってかなんで他の世界の奴らいるの?」

「アノンさん、ちょっと遅くない?」

「ゴメンゴメン、野暮用があってさ」

 

 師匠、なんでいるの? 

 目的は何? 

 

「で、師匠。そっちの目的は何?」

「決まってんだろ? ハジメの回収さ」

「あ!? ぶさけんな!」

「こっちと被ってやがった」ボソリ

「奇遇ですな。しかし引く訳にはいきませんが」

 

 お前らもかよ。

 確かに引き抜くメリットはあるにはあるが。

 

「で? あにさんはどうする? アノンさんもユニさんもいるよ?」

「「「………………」」」

「?」

 

 あれ? 何故この三人が黙る。

 …………ちょっと怒ってない? 

 

(なあ、言うべき?)コソコソ

(嫌だ)ボソリ

(汚すぎでしょ)コソコソ

 

 何言ってるか聞こえん。

 いやいや、それよりもこの三つ巴を何とかしないと。

 

 他の味方の能力者は亀裂攻撃か三勇者の避難と防衛だし俺一人しかいないのだ。

 とある理由で数個の能力を出せない事は気づかれてはいけない。

 

「師匠」

「何?」

「一時的に手を組まない?」

「…………」

 

 ん? 怒ってる? 

 

「……ねえ、結構私怒ってるんだけど」

「?」

「謝らなければならない事があるんじゃないのかな?」

 

 謝らなければならない事?

 

「会長を鳥葬した事?」

「違う。あれは会長の自業自得」

「痛車の事?」

「あれは大丈夫。会長の萌え写真で手を打ったし」

「会長のアヘ顔の写真を撮った事?」

「……何それ初耳」

「お前ら何をやった」ボソリ

 

 あれは……貴重な写真だった。

 パリストンが爆笑してたな。

 

 あの後パリストンがチードルさん以外にその写メを送っていた。

 

「だーかーら! キメラアントの事!」

「……」

「私に何も言わなかったろ!! 危険なのに何故私を呼ばなかった!! 答えろ!!」

「………」

「十分じゃないだろ! 死んでここに来てるだろうが!」

 

 そっちか……確かに頼らなかったし怒るよなぁ。

 久しぶりに怒ってるよ師匠。

 

「だから嫌。鞭で叩かれても蝋燭を垂らそうとも私は許さない!」

「それにあにさん、今さっき却下とか言ってなかった?」

「黙ってて」

 

 くっ、どうする。

 仕方ない。

 

「お前ら……組まない?」クルリ

「仕方ねぇな」

「確かに可哀想だし」ボソリ

「ここは手を貸しましょう」

 

 ミレナリオやフェムトとかはともかくゴドルはヤバい。

 今の俺だと負けるかも。

 

「行くぞ」ボソリ

 

 ゴドルの能力が具現化し、従者の姿が表れる。

 

「グララララ、海で呼んでくれるとは粋じゃねえか」

 

 クソ、コイツか。

 ヤバいぞ。

 

「ええええええええええええええ!?」

 

 遠くで春菜が絶叫している。

 何故ならそのはず。知ってるキャラですもの。

 

「白ひげか…………」

「お、久しいなハジメ」

 

 そう。白ひげ、エドワード・ニューゲート。

 ワンピースに出てくる四皇です。

 

 ………え、なんで出てくるかって? 

 

 ゴドルの能力。天の聖杯(ヘブンズフィール)

 この能力は死んだ人間を念獣として使役する能力である。

 まんまFateの聖杯戦争である。

 

 んで何故か他の漫画の強いキャラが出てくるようになった。

 白ひげのONEPIECEの他にも、NARUTO、鬼滅の刃とか。他にもヤバいのがいるってさ。

 一応制限があるのだがよくは分からん。

 

 結構有名なキャラが出てくるので、春菜の絶叫が止まらないだろう。

 

「さて、覚悟はいいかな?」

「やってみろ」

 

 やってみ、の所から師匠が殴りかかってきた。

 俺も拳で相殺する。

 

 俺、ゴドル、ミレナリオで師匠にかかる。

 ヒミコにはフェムトがかかる。

 

「オラッ!」

「フンッ」ボソリ

「おやおや? 効かないなぁ?」

 

 効かない理由はただ一つ。

 

 師匠の能力、小宇宙を燃やせ(サンイーター)

 簡単に言えば肉体改造能力だ。

 

 骨は超合金のように硬く、筋肉を超質量に圧縮している。だから一般の攻撃じゃダメージが少ない。

 もし怪我をしても筋や骨を繋ぐ事も可能だ。

 

 …………待て、どうやって死んだ? 

 

「師匠、どうやって死んだの?」

「何って……トラック事故なんだけどね」

「トラック?」

「うん。なんか知らないけど致命傷だったから力尽きた」

 

 嘘だろ……師匠は通常トラックに跳ねられて死ぬタマじゃないぞ。

 多分そのトラックは念能力じゃないのか? 

 

「おい!? 俺もトラック転生だぞ!」

「あ、私も!」

「俺もだ」ボソリ

「は!?」

「ベリトもトラック転生だってさ」

 

 皆……トラック? 

 トラック転生が流行ってんのか? 

 

 俺らがキメラアント討伐してた時にお前らトラックに跳ねられてたのか? 

 

「それにしても小さい女の子が運転してませんでした?」

「あ、してた」ボソリ

「危ないですね……」

「ん? あの子成人してるぞ」

「…………なんで分かるでしょうか?」

「特技だ。成人してない子の年齢は大体分かる」

 

 このロリコン野郎が。

 お前の特技ホントに怖いよ。

 

「待て待てホントだ。例えばハジメの所の狐の子は10才だ。黒髪ツインテ白浴衣の子は1歳以下」

「あってる」

「銀髪ポニーテールの子の歳は15だ」

「…………あいつ、この前聞いた時には14って言ってたぞ」

「ん? 間違えたか?」

 

 あれ? 結構高精度で正解するんだけど? 

 間違える事あるんだな。

 

「で、三つ編みで黒髪の子は成人してる」

「ふえ?」

 

 春菜は二十歳以下だが、精神年齢を加えてるのだろうか? 

 

 あ、精神年齢だったら俺よりも年上じゃん。

 

「グララ、テメェらは空気見やがれ。真剣勝負だろうが」

「だけどおかしくないか? トラックで殆ど轢かれてるだろ。お前らトラックで死ぬタマじゃないし、何らかの陰謀とか考えるだろ。で、その女の子ってどんな顔?」

「あにさん? もしかして波のタイムアップ狙ってない?」

「あ? そうだが?」

「正直に言っちゃ駄目だろ……ウチらと組んでるんだから」

 

 こっちはホームだからな。

 

「よし、おっ始めるか」

「その前に一つ、他の援軍は?」

「秘密」

「教えないよーん。べろべろばー」

「…………」

 

 さ、おっ始めるか。

 

「ミレナリオ! あれやるぞ!」

「オッケー、シルバニアハウスな!」

 

 コンボ技だ。

 喰らえ! 

 

水銀念獣(メタルスライム)!」

呪術人形殺人事件(ブードゥーナイト)!」

 

 ミレナリオの能力、極悪人形殺人事件

 とある状況下で能力を発動する人形を具現化する。

 

 俺は水銀念獣(メタルスライム)で家を作る。

 場作りの為だ。

 

「何をする気だうっ!!?」

 

 人形が師匠を攻撃。

 ミレナリオは隠が匠だ。

 

「? 不意を突かれたのは認める。だけど全然効いてないぞ?」

「ダメージ与える為の能力じゃないからな」

「発動!」

「なっ、オーラが?」

 

 攻撃が成功するとオーラが減っていくのだ。

 調子にはよるが、平均で1分で3%減る。

 

「……流石新規精鋭の犯罪ハンター」

「ありがとよ」

「ルーイのハッパ野郎も良い人材を手に入れたね」

「上司の事知ってんのかよ……」

 

 あ、あのハッパ野郎か。

 俺も会った事はあるが…………優秀な人格者だ。

 

「それで、制約はあるんだろ? 私が室内から出れば能力解けるとか?」

「さあな?」

剛柔自在(アンブロークン)!」

「うおっ!?」

 

 魚の表面を柔化させて師匠を捕え、硬質化させて動きを止める。

 更にミレナリオの人形が刃を首に突き付ける。

 

「チェックだ」

「誰が?」

 

 ドパン

 

 あ、拘束をぶっ壊して解いたぞ。

 

「まだ少し柔いね?」

「嘘だろ……」

 

 決まったとは思ったんだがね。

 やっぱり二ツ星は伊達じゃなーい。

 

「まさかこれで終わり?」

「…………と、思うじゃん?」

「ん? 何をうぐ!」ゴト!! 

 

 念による輪っかが師匠を拘束する。

 これでもう動けまい。

 

「しまった! いつの間に!?」

「イエース」

「クソ、取れない……」

 

 やっぱり便利だわこの能力。

 念の為に剛柔自在(アンブロークン)で二重拘束しておこう。

 

「今回俺いるか?」ボソリ

「師匠は油断出来ないからな」

「保険だ」

「そうか」

「グラララララ、外のお嬢ちゃんの奴が気になるなぁ」

 

 ああ、ヒミコの方か。

 フェムトはどうしてるだろうか。

 

 俺は水銀念獣(メタルスライム)を解除する。

 すると、

 

「グオオオオオオオオオオア!」

 

 ヒミコは雄叫びを挙げていた。

 なんだ……? 様子がおかしいぞ。

 

「…………」チーン

 

 フェムトがボロクソになって横たわっている。

 ついでにローナやシルフィも死屍累々。

 

 ……何があった? 

 

 




★天の聖杯《ヘブンズフィール》
・死者を具現化し、従者として使役する能力。特質系。
・使役限度数は7体まで。剣兵、槍兵、弓兵、騎兵、狂戦士、魔術師、暗殺者の枠組みに1つづつ入らなくてはいけない。
・具現化して動かすのでオーラを消費する為最大3体までしか出せない。戦わせなければ何体でも出せる。
・何が召喚されるのかは触媒やランダム。
・誰も知らないが、ハジメの世界の漫画のキャラが出るのは召喚時にその本人が触媒になっているから。

Fateの聖杯戦争と大体同じ。


★小宇宙を燃やせ《サンイーター》
・肉体を改造する能力。操作系。
・筋や骨を強化し戦闘を行え、血流や皮膚を操作し治療も出来る。
・他人にも使用できるが、威力や精度が多少落ちる。

あまりにも体を改造しているので体重が120㌔程ある。


★呪術人形殺人事件《ブードゥーナイト》
・とある状況下により発動する念人形を具現化する。操作系。
・室内で攻撃し成功すると、オーラが平均1分で3%減少する。
・室内から出るか、本人を気絶させると能力は解けて対象には二度と使えなくなる。

モデルはチャイルド・プレイのチャッキー。



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第56話

「オイ、何があった?」ベシベシ

「うう…………実は……」

 

 一応回復薬口に入れてやろ。

 

「あれ? 美味しい」

「だろ、ウチの回復薬は美味しい。少し値段が張るがな」

「私らの直営店に卸したいですよ……」

 

 まーこっちもお得意様増えたら嬉しい。

 世界同士繋がる方法があるなら考える。

 

「それで……」

 

 

 

 ■

 

 

 

「さて、兄弟子として揉んでやりますか」

 

 草の葉の形をした剣を袖から出す。

 更には種のようなものを撒き、それが犬の形をした植物に育つ。

 

 コイツの能力、緑化運動(グリーンランド)

 植物をオーラを込めて改造する能力。

 前の世界は結構変わった植物が多いのでバリエーションは多い。

 

 実はこの能力で一財産築いており、大富豪ランキングに入ってる事もある。

 本人はそれを知らない事もある程に興味は無い。

 

「バウバウ!」

「うお!? 何コレ? 新しい植物?」

「ええ、海洋植物なんですが改造して陸上でも使えるようにしました」

「凄い!」

 

 確か海って結構謎が多いよな。

 そこに未知があるから面白い仕事もありそう。

 

「ほらほらどうしました?」

「うっ!」

 

 ヒミコ、大丈夫ですかな?

 フェムトは弟子の中でも強い方ですぞ。

 

「あ、そういえば」

「?」

「師匠はパーティーの女の子と凄い仲良いですね」

「……」

 

 おい…………止めて差し上げろ。

 コイツにスイッチが入るぞ。

 

「聞いた話だと〜王族を身請けしたそうですよ? 玉の輿ですねwww」

「…………」

「多分側室や妾とかに囲まれそうですよ。人当たり良いですから」

「…………」

「貴女は良いんですか? 想像してみてください…………ウチの師匠が大勢の女に囲まれてる所を」

「…………」

「それで自分に提案があります。私らに師匠の身柄をください。女から守りきって見せましょう」

「…………」

「大丈夫です。和平条約を結べる様に私らの連合に話を通します。世界同士のワープホールは繋げられますし、通い妻と言うのも中々粋かもしれないですよ?」

 

 確か……沈黙すると、

 

「…………そっちに他の女いない?」

「いませんよ?」

「フェムトさん、嘘つく時にこめかみがピクピクなるってしってた?」

「は」ピタッ

「う・そ」

 

 フェムトはこめかみを押さえる。

 何引っかかったんだお前。動揺すんな。

 

「あにさんは……」

「…………ん? オーラ変ですよ」

「……私が守る! 女共から!」

 

 黒い魚から赤黒い魚へ変化し、そのまま宙に浮く。

 

「ん? なんだこの能力? うぐ!」ドカ!! 

 

 フェムトは後ろからヒミコに攻撃される。

 

「うぐっ」

「かはっ!?」

「よし、倒したでござる!」

 

 ローナやシルフィ、ラルクとテリスを撃破。

 

「お前らも潰してやる……」

「ローナ、クルゼェ!」

「来いでござる!」

 

 ローナやシルフィ、ヒミコと対戦。

 畳一畳分程の距離に詰められる。

 

「ローナァ! ウシロダ!」

「は!? ぎゃあ!!」

「ローナ殿!?」

 

 ローナに攻撃は当たるが、間一髪で体を捻り力を逸らす。

 後ろを向いていた念獣に感謝だ。

 

「なんか雰囲気変わってますよ!?」

「オーラがさっきとは別人でござる!」

 

 実はヒミコは怒ったり嫉妬したり感情が昂ぶると特質系にチェンジすると言う特異体質なのだ。

 

 泳ぐ能力以外に別の能力を作ったと話を聞く。

 それがこの能力か? 

 

「ふん!」

「うっ!?」

 

 次は真上からの攻撃。

 攻撃にモーションが見えない? 何の能力だ? 

 

 ローナが攻撃され、昏倒され地面に倒れる。

 

「ヤバいでござる!」

「お前も倒れろ……」シュン

「おっと!」

「は? 避けた?」

 

 あ、シルフィが避けた。

 

「何の能力?」シュン

「ふん! でござる!」

 

 シルフィがカウンターを決める。

 

 シルフィ能力、建御雷(クイックボルト)

 単純な能力であり、反射神経強化能力だ。

 

 今さっき避けたのは空気の流れで察知しただけだ。

 多少余裕なのかカウンターを決めたようだ。

 

「へーやるじゃん」

「あたりまえでござるよ」

「じゃこれは?」シュン

「おっと!」

 

 念魚が下から出てくるが避ける。

 

「流石に泳ぐ音でわかるでござうご!?」

「と思うじゃん?」

「なんで? 避けたのに!?」

 

 いつの間にか念魚に食べられているシルフィ。

 なんだこの能力は? 

 

「オラッ!!」

「ぎゃあ!?」

 

 銛を脳天にぶっ叩く。

 食いついてるため避けられないのでそのまま気絶する。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 さて、コイツをどうするかだ。

 

「あにさん…………」

「何?」

「汚らしい女から守ってやる……」

 

 う、ん? 会話がヤンデレなんだが。

 

「あと……お兄ちゃんとか呼ばれてたよね?」

「まあな」

「潰してやる……」

「なんで……」

「妹は1人だけでいい」

 

 春菜、お前なんかやったの? 

 同族嫌悪とかそんな感じか。

 

「あにさん……私とあの子どっちがいいの?」

「妹に優劣なんてつけられん」

 

 どっちも大切さ。

 元康程って訳じゃないが皆大事。

 

「あにさん、絶対連れて帰るよ」

「やってみろ」

 

 シュン

 

 ん、あれ? 視界に違和感が? 

 ヒミコは…………!? 

 

「ぬお!」

「避けたか……」

 

 今さっき見せたアクアトライデント!? 

 スキルを口に出してなかったぞ! 

 

「どうなってる……」

「そろそろ気づくんじゃないの?」

 

 なんだか懐かしい感じがするんだか。

 

 シュン

 

 また消えた? 

 次は……はっ! 

 

「うおっ!?」

 

 次は三日月の攻撃を放ち、俺は飛んで避ける。

 ぬっ! 傷がついた。

 

 シュン

 

 消えた! とこだ……ん? 

 なんだこの違和感は? 

 

 ドドドドド

 

 上から雷?! 

 

「どうしたのあにさん? 防戦一方だよ?」

 

 何舐めた顔してる? 

 コイツ……成長しやがったな。

 

 しっかしどんな能力だ? 

 時間を止める能力か? それとも動作を見えなくする能力? 

 

「お兄ちゃん!」

「春菜?」

 

 ん? 波の亀裂にカチ込んでる春菜が小船で来た。

 どうかした? 

 

「分かったよこの能力!」

「どういう事だ?」

「この能力はキング・クリムゾンと同じ!」

 

 ん? あ、そういえば視界に違和感があった。

 

「証拠にいつの間にかポーションを飲んでたし、目の前で転んだ人の動作も見えなかったし」

 

 シュン

 

「黙れ」

 

 グサ!! 

 

「なっ、春菜!!」

「かふっ!?」

「肺を突いた。喋るな」

 

 おい、そのまでにしとけよ。

 

「う、お兄……ちゃん。大丈夫……だから……」

「喋るなっつたろ」

「あっう!」

 

 グサ!! 

 

 腹部を突き刺す。

 

 止めろ。止めてくれ。

 

 グサ

 

 グサ

 

 グサ

 

 春菜に何回も腹部に刺していく。

 

 

 

 チカラガホシイカ? 

 

 いらない。

 

 ダガドウスル? カゾクガマタイナクナルゾ? 

 

 …………。

 

 カシテヤルヨ。チカラヲサ。トクベツダゼ。

 

 …………。

 

 

 カースシリーズ

 憤怒の斧

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「ボルトアクション」「エレファンテダウン」

 専用効果 雷纏 敏捷向上

 

 

「かはっ!?」

「ヤメロ」

「え? どうしたのあにさん!?」

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

 ア? オマエヲボロクソニスルンダヨ。

 

「ヒミコ、カクゴシロ」

「何急に!」

「ちょっと? 落ち着いて?」

 

 ナニヲオチツケトイウンダ? ヒサシビリニアタマニキタ。

 

「待って待って!? この子分身だよ!」

「そうだよ。ってかよくわかったね!」

 

 ハッ? 

 

「ブンシン?」

「私の能力知ってるでしょ。危ないから分身作って伝言しに来たのに」

「分身作った所を能力発動中に偶然見てたから……」

「おーい! 本体はこっちー!」

 

 ア、ホントウダ。

 キレツノトコロカラテヲフッテル。

 

「それにあにさんの仲間殺したら嫌われるでしょ? 流石に交渉もしにくくなるし……」

 

 シュウウウ

 

「あ、元に戻った」

「よかったー」

 

 短気は損気ってのは本当だ。

 落ち着いて考えよ。

 

「あ、もう分身消すよ」

 

 ドロン!! 

 

 消えたか。

 NARUTOの影分身が懐かしい。

 

「さて、続き行くか」

「返り討ちにして婿にしてやる」

「はい?」

 

 婿? 何を言ってる。

 

 この能力が本当にキング・クリムゾンならば試してみたいことがある。

 

 シュン

 

 視界が灰色になる。

 なるほど、これがキング・クリムゾンの能力か。

 

「あれれ!? なんであにさん動けるの!?」

「その能力は触れている人間にも効くようだな」

 

 発動中は多分触れる事が出来なくなりすり抜ける。

 それなのにナランチャがどう殺されたのか? 

 

 この能力は他人に触れても発動させる事が出来るんじゃないのかって考え。

 だからフェンスと融合してたんじゃないのか。

 

「あ、本当だ服を触られグホッ!?」

 

 視界の灰色は解除される。

 戦闘不能(リタイア)! 

 

「ハジメ、終わったか?」ボソリ

「まあな」

「スロウスティック改!」ボソリ

「ぎゃあ!?」

 

 あれ!? 右にゴドルがいると思ったら左から攻撃が? 

 どういう事? 多重影分身!? 

 

 あ、右のゴドルが白い煙と音を出した。

 

「すまんな、こっちも仕事なんだ…………許せ」

 

 この従者の特徴、万華鏡写輪眼、一文字傷の額当て、暁の服。

 

 これなーんだ? 

 

「うちはイタチ……」

「パラライズスティック改!」ボソリ

「グホッ!?」

 

 よくよく考えたらコイツら敵だったな。

 うっかりしてた。

 

「ううっ…………」

 

 あ、全裸のベリトも起きてきた。

 何をアウェイで全裸で気を失ってるんだよ。

 

 クソっ、多少は動けるがいつもより体が動かしにくい。

 麻痺と遅延かよ。

 

「ブラインドスティック改!」ボソリ

 

 お前本当に容赦無いな。

 いつもの事だが。

 

 なんだろ、少し薄暗くなって見にくい。

 

 てか耐性全般をボーナスで出しておいて良かった。

 

「七章・固縛!」

「げっ!」

 

 師匠がいつの間にか拘束から抜け出してる。

 スキルの固い紙の様な物を取り付けられたが重い? 

 

「急ぐぞ! ハジメは私達が貰う!」

「おい、二人とも急げ!」

「うっ……」ヨロォ

「くっ」ヨロォ

 

 ラルクとテリスはボロボロじゃないか。

 

「あ!? 巫山戯んな俺らの獲物だ!」ギュー

「あにさんは私のモノだ!」ギー

「ハジメ様を返してください!!」グゥー

 

 おいおいおい、なに引っ張ってんだよ。

 三つ巴で何引っ張ってるんだお前ら。

 

「さっさと離せよこの野郎!」

「お前が離せ!」

「痛い痛い! 止めて!」

 

 流石に痛い! 脱臼したらどうなる!? 

 俺の事好きなのはいいがいたわれよ! 

 

 おい、痛い!! やめて!!! 

 巫山戯んなお前ら! 

 

「…………引っ張るの辞めないか」

「ああ」ボソリ

「流石に痛めつけて拉致とか嫌ですし」

「そこまでしたくないしなぁ」

 

 パッ

 

 あ、ゴドル達は手を離した。

 

「…………可哀想になってきたんですけど」

「…………あまり痛くさせるのはダメでござる」

 

 パッ

 

 ローナ達も手を離した。

 

 待って!? それだと俺拉致されるよ? 

 あ、テリスがワープホールみたいなのを準備してる。

 

「よーし! 拉致だ!」

「え? いいのか師匠……」

「問題なーし! あにさんもよくやってるし」

 

 あ、そういえばやってる。

 人の事言えない。

 

 ヒミコ…………やっぱり根に持ってるのか? 

 

「待て、お前ら」

「尚文?」

 

 尚文、吹き飛ばされたけど戻ってきたのか。

 

「ハジメを離せ。お前ら負けだ」

「なんで?」

「体を引っ張られて痛がってる。コイツを想うんだったら離す筈だ」

「あにさんがこんなので腕がちぎれる訳ないだろ?」

「やわな鍛え方なんてしてないよ? ヤバかったら治すし」

「それに拉致すればそっちの世界の戦力低下と味方の兵隊増産が出来るしね」

「お前ら…………」

 

 鬼かお前ら? 

 

「ハジメを離しやがれ!」

「尚文、手伝うぜ」

「ああ」ボソリ

「酷すぎでしょ」

「同感です」

「フェムト、ゴドル、ミレナリオ、ベリト…………」

 

 あ、あら? 知り合いだったの? 

 いつの間に……。

 

「シャンブルス!」

「あ!?」

 

 テスタか! よくやった! 

 よし、状態異常の薬を飲んでと。

 

 ゴクゴク

 

「あにさぁぁぁぁん! 私諦めない!」

「おう、また来い」

「私も諦めないぞぉぉぉぉぉぉ!」

「ああ、わかった。またな」

 

 ヒミコ一行は消えていった。

 

「疲れた」

「…………後で色々聞くからな」

「…………わかった」

 

 こっちも情報が入りすぎて頭が疲れた。

 

「さ、こっちも帰るか!」

「逃がすかよ! どんだけやってくれたんだお前ら!」

「パンサースモーク改!」

「煙幕弾改!」

 

 ん? ベリトはボウガンの武器か?

 

「ハッハー↑あばよ!」

「待てぇぇぇぇい!」

 

 結局逃げられた。

 

 

 

 ■

 

 

 

「よし、お前らご苦労」

『お疲れ様です!』

 

 ふぅ、色々後処理が終わり俺らは解散。

 さ、お風呂入りますか。

 

 貸切露天風呂付客室だし。

 金が有るっていいね。

 

「ハジメ様。お背中流しましょうか?」

「頼む」

 

 助かるね。

 たまに届かない時もあるし。

 

 ゴシゴシ

 

「そういえば…………」

「?」

「違う世界から勧誘されましたけど、ハジメ様から考えてどうだったんですか?」

「んー。少しだけ行きたかったかな。顔見知りだし放って置いたら何するか分からんのもいるし」

「やっぱりそうですか……」

「だけどこの世界で助けたり狩ったりしないといけない奴らがいるからそれまで離れられないさ」

「…………ありがとうございます」

 

 全部終わったら帰るつもりだったけど、皆この世界に来てるかもしれない。

 後々どうするか考えておこう。

 

「好きな道を選んで良いですからね。私らも多少強いので御安心を」

「ありがとう」

 

 なんか離れられなくなってきたじゃないか。

 頼もしいぞ。

 

「ところでローナ」

「なんです?」

「歳いくつだっけ?」

「14s…………あ、一昨日で15歳になりました」

 

 

 




★緑化運動《グリーンランド》
・植物を操作したり、オーラを消費すれば植物の合成や改造をする能力。特質系。
・前の世界では食料不足を解消したり、綺麗な花や虫取り用の植物を作ったりして莫大な富を築いた。

バイオプラントと大体同じ。


★建御雷《クイックボルト》
・反射神経を強化する能力。強化系。
・使用時、オーラを3倍程消費する。



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第57話

「…………」

 

 波が終了した会議後。

 ほぼ原作通りだった。

 

 俺の事をよく聞かれたけど大したチートは使ってないと言っておいたが三勇者は不満タラタラ。

 それでメルロマルクに戻ったら修練する事になった。

 

 俺が指南役になる話が出たが、ビッチや燻製には関わりたくないし教えたくないので、選んだ人間を鍛える話となった。

 

 俺的には転生者達をちぎりたいがな。

 不確定要素を沢山粛清しておきたいものだ。

 

「それじゃ俺は用があるから」

「…………ああ、わかった」

 

 一緒にいた錬と別れる。

 今度機会があったら泳ぎの練習に付き合ってやるか。

 

 俺はやるべき事をやるだけだ。

 その為やる事はやっておこう。

 

 カルミラデート大作戦だ。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「まずは拙者でござるね」

 

 はい、シルフィと二人っきり。

 デートしたいってみんな言ってたからな。

 

 今回頑張ったので期待に応えなければならない。

 で、どこに行くか? 

 

「普通に町を歩くでござる」

「スタンダードだな」

 

 普通のデートスタイルだな。

 ヒミコとたまにこのような事してたし。

 

「御館様、あそこに射的があるでござる」

「なんか温泉街みたいだな」

 

 よく射的とかあるよな。

 雰囲気が出てる。

 

 ウチらの領地も真似してゲームをやった方がよろしいだろうか? 

 銀貨1枚? 

 

「やってみようか」

「おじさん、1回お願い」

 

 ござるってつけない事もあるんだな。

 さて、射的に集中するか。

 

 えっと景品は……人形だったりおもちゃとかか。

 ゲームとかないのかよ。

 

「んーもっといいのは…………なんだあれ?」

「これかい? 魔物の卵さ。魔物商と提携しててな、ドラゴンやグリフォンの卵等が当たるって評判だぜ? この島固有の魔物の卵もあるぜ?」

 

 確かドラゴンやグリフォンの卵って珍しいな。

 簡単に手に入るってどうなんだ? 裏とかありそう。

 

「で、実際はどうなんだ? その魔物らって銀貨数十枚位はするって聞いたけど、銀貨1枚ってのは割に合わないんじゃないのか?」

「訳あり商品でね」

 

 何の訳あり商品だよ。

 事故物件とか傷ありの野菜みたいなもんか? 

 

 それとも確率が極わずかな可能性もありだ。

 

 まあいい、食事券とかもあるしそれも取ろう。

 

 パンパンパン

 

 魔物、食事券二枚を手に入れた。

 案外簡単に手に入れたな。

 

「いやぁやられたな」

「食事券の所はなんか衝立見たいのしてるだろ」

「…………なんの話かね?」

 

 周使いました。

 イカサマイカサマ。

 

 だけど魔物の方は簡単に倒れた。

 魔物の方が価値あると思うけど。

 

 それで卵と食事券を貰う。

 

「頑張れよ兄ちゃん! 波を打倒してくれ!」

「バレてたか」

「まあな、結構有名だしな」

「さて、食事券手に入れたし飯行くか」

 

 俺は射的屋を後にする。

 …………なんか親父の微笑んだ顔が何か気にかかる。

 

「訳あり商品ってなんなんでござるかな?」

「まあ、育ててみないと分からんな」

 

 面白さと不気味さがマッチングしている。

 ソシャゲでガチャをひくような体感か。

 

「お腹空いてきたでござる」

 

 小腹も空いてきたし、この島で有名な海鮮丼でもいただきますか。

 海鮮丼か、イクラや切り身とかふんだんに使ったのが好きなんだよな俺。

 

「これは…………?」

「食事券だが? この店で使えるって」

「こんなの初めて見ましたが…………」

 

 店員さんが周りの人に聞いてみてもこの食事券の事は知らないそうだ。

 あのおっさん何考えてるんだ? 

 

「南通りの射的屋のおっさんの景品なんだが」

「南通りに射的屋なんてありましたっけ?」

「「…………」」

 

 ん? 確認したんだがな。

 確かに南通りだったぞ。

 

 能力使って嘘発見器してみたが、この店員さんは嘘はついていない。

 

 …………どうなってる? 

 

「御館様、拙者頭おかしくなってきたでござる」

「俺もだ」

 

 店員さんは他の店員に聞きに行った。

 なんだこの怪奇現象は? 

 

 て、年季の入った人がバタバタ出てきた。

 なんか渋い顔してる。

 

「失礼、この食事券はどこで…………」

「射的の景品だ。ここで使えるって赤髪リーゼントの親父さんがくれたんだ」

「ディクシア…………」

 

 あれ? なんか泣いてる? 

 

「実は……ソイツは20年程前に強盗に殺されてるんです」

「「は?」」

 

 店長の話によるとリーゼントの人と親友らしく、店と射的屋で提携してたそうだ。

 で、強盗に殺された。

 俺らがあったのは…………? 

 

 海鮮丼の店を後にするのだった。

 

 後で確認に言ったが、南通りに射的屋なんて無かった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「うーん」

「どうしたのハジメー」

「いや、幽霊ってのもいるんだってな」

 

 二人目はキラークイーン。

 民芸品を見て回りたいと言っていたので商店を回ってる。

 

「この腕輪綺麗だけど中身無いねー」

「ああ、綺麗だが魔力を込めてそう見せてるみたいだ」

 

 目利きをすると偽装してる。

 魔力を込めれば可能な事だ。

 

 ん? この髪飾りなんかいいんじゃないか? 

 

「キラークイーン、これどう?」

 

 三日月の形をしたヘアピンだ。

 偽装なんてしておらず。

 

「いいねこれー」

「似合ってるよ」

 

 って事で買った。

 少し値が着いたがいい買い物した。

 

 さて、グルメでも堪能していきますか。

 まだ回って無い所もあるし。

 

「ハジメーあれ行きたい」

「あ? 大食い大会?」

 

 こんなのやってるんだな……あ、ルール上早食いの要素もあるのか。

 景品があるみたい。

 

「お、エントリーしてるな。やってみるか」

「うん。やるー」

 

 キラークイーンは結構食べる。

 フィーロたんが出ない限り勝ったな。

 

「ごしゅじんさまー斧のひとがいるよー」

「あ」

「お前もやるのか…………」

 

 尚文とフィーロたんだ。

 思ったそばから。

 

「キラークイーンの食欲を甘く見るな…………」

「そうか…………」

 

 強敵だな。

 

 でもこの世界の大食い大会ってどんなのだろう。

 前々の世界じゃファイター共は過酷な戦いだとか言われてたけど。

 裏じゃ吐いたりするのが当たり前だとか。

 

『それでは始めまーす。まず最初は…………海鮮丼!!』

 

 あ、シルフィと食った奴だ。

 しかも見たのよりも巨大!? 

 

「美味い美味いー」

「おいしー!」

 

 キラークイーン・フィーロ、難なく平らげる。

 他の選手は敗色濃い顔色だ。

 

『お次は、海鮮ラーメンだぁぁぁ!』

 

 デカイなオイ! 大鍋位あるぞ!? 

 

「…………」ジュル ジュルジュル ジュル

「…………」ジュル ジュルジュル ジュル

 

 ふ、二人とも汁の中に顔を埋めてるだと!? 

 熱くないの? よく息持つな。

 

 て、二人は難なくクリア。

 

『続いて行くぞー! 海鮮バーガーだ!!』

 

 何この巨大なバーガーは? 

 直径50㎝はあるし、高さも数十cmあるし。

 

(コイツらの腹どうなってんだ?)

(俺が知りたい)

 

 あ、いつの間にか食い終わってた。

 他の参加者はもうギブアップしてる。

 

『これで最後だぁぁぁ海鮮ピッツァだああああ!』

 

 シーフードピザか。

 エビとかチーズとかトマトとかふんだんに使ったピザ。

 

 大きめな上に、それが十枚程重なってる。

 

「んー!」ガツガツガツ

 

 フィーロたんがラストスパートをかける勢い! 

 正念場だキラークイーン! 

 

「…………」

 

 あれ? キラークイーンの手が止まってる。

 …………何があった? 

 

「トマト…………食えない」

 

 フィーロたんが優勝した。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「キラークイーンがトマト食べれないとはな…………」

「そう言えばトマト避けてたよ」

 

 全然気づかなかった。

 好き嫌いも把握した方がいいか。

 

 で、今は夜刀ちゃんとデート。

 夜なのであまり人はいない。

 

「それで? ホタルがここに出るのか?」

「うん、ここって聞いたよ」

 

 今回は夏の風物詩、ホタルを見に来た。

 結構綺麗だとの話なので。

 

「出てくるまで待つか、魔除けのアイテム持ってるし」

「そうだね」

 

 魔除けだが蚊除けのアイテムも持ってくれば良かった。

 

「そう言えば父様の仲間って他にどんなのいるの?」

「ヤバいのがいるな」

 

 今回の波はベリトが全裸のままだったが、奴はまだ慎みがある方だ。

 

「もしかしたらまた波で会うかもしれないな。厄介なのもいるからやりたくたいが」

 

 アギレラとかも来てそうだ。

 弟子の方も何人かいるかもしれない。

 

 厄介なのもいるから気をつけよう。

 

「そう言えばこの前のギギってのはなんなの?」

「………………」

「?」

 

 おい……あんまり詮索しないで欲しい事を聞いてくるなぁ。

 

「ごめん父様、聞いちゃまずかった?」

「結構気まずい事があったからさ…………」

「よし、お詫びに抱きしめる!」

「う、うん」

 

 覆い被さるように背中に乗っかられる。

 アイドルにイチャイチャされるとかいいかもな。

 

 でも…………ギギ強かったなぁ。

 会長が失敗する程の脅威だし。

 

 アイツの能力、耐験学習(モンキーマジック)には俺も手を焼いた。

 

「まだかなホタル」

「ベリトとかいればな……」

「居たらなんかあるの?」

「アイツ昆虫学者だし虫には凄い詳しいぞ」

「職業あったんだ…………」

 

 ちなみに実家が猟師なのでそれと兼業している。

 他の奴は、

 

 ゴドル ボディーガード 人形職人

 ミレナリオ 刑事

 フェムト 教祖 農家

 俺 ボディーガード 便利屋

 

 って所である。

 ゴドルはとあるカキンの王子の私設兵で、死にかけた時に助けられたのでそのまま着いた。

 ミレナリオは刑事だ。この捜査一課がウチらチームと同等に変人だらけでアギレラの後輩。

 フェムトは宗教のトップをやっていて、食料支援をしたりし色んな方面の人間とコネを持つ。

 

「みんな頑張ってんなー」

「父様もでしょ」

「…………まあな」

 

 よくよく考えればテロリストをちぎったり投げたりしたな。

 テロ組織をしょっぴく他にも動物関係でもやった。

 

「火薬の匂いが懐かしい……」

「そ、そうなんだー」

 

 ん? 引かれてるのか? 

 変な事は言ってないけど。

 

「あ、父様! ホタル!」

「お、綺麗な青だ」

 

 なんか神秘的だな。

 秘境にも結構行ったがここも負けず劣らずだな。

 

 …………そう言えばゴン達とコクハクチョウの飛び立つのを見る約束してたっけ。

 

 勝つぞ、波に。



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第58話

「はい、次は私ですね!」

 

 デート後半戦。

 ローナとデートへ。

 

 どこでデートするのかって? 

 

「これだとプライベートビーチだな」

「人がいないってのもいいものですね」

 

 そう今回俺がいるのは無人島の砂浜。

 意外と魔物がいない無人島もあるらしく、現地の人に教えてもらいオススメのスポットを教えて貰った。

 

 俺はパラソルを開き、折りたたみのベッドを設置。

 

「さて、気合いを入れろ。休暇を全力で楽しむぞ」

「了解です」

 

 遊びの時こそ本気を。

 誰かが言っていた。

 

「ふぅ、波の音が心地いいな」

「ですね」

 

 よく考えれば元の世界でものんびりは少なかったな。

 アイツら変態達とバカやってたし騒がしかった。

 

 ん? 冷たそうなグレープジュースを顔にくっ付けてきた。

 ありがとう。トロピカルなジュースが飲みたかったんだ。

 気が利くなローナは。

 

「なあ、こうして休むのも良いけどなんか体を動かしたくない?」

「あ、よくありますね。飽きてくると思いますし」

 

 のんびりしてるとこんな事がよくある。

 

「砂で城でも作るか」

「良いですね」

 

 って事で砂の城を作ることになる。

 

「やっぱり湿っていた方がいいんでしょうか?」

「まあその方がいいんじゃないか?」

 

 よし、水銀粘獣使って型を取ろう。

 

「ん? これだと家みたいになりません?」

「お、いいかもな。一戸建てにするか」

 

 水銀粘獣でボックスみたいな形にし、その上から砂をかける。

 鎌倉とか作るのにいいかもしれん。

 

「こんくらいかな?」

「おお〜一戸建てですね」

 

 水銀粘獣を解除。

 

 立方体のような感じをイメージして作った。

 ディディールには屋根のトンガリを作る。

 

「ハジメ様ってどんな家に住んでたんですか?」

「ツリーハウス」

「ほぇー」

 

 ちなみにフェムトに手を借り、植物を改造しツリーハウスの木を作って貰った。

 木の中にスペースがある。

 

 特注なので凄い大きい。

 しかし、すぐ近くにトレーラーハウスを設置していてる。

 その中ではキッチンとかの水道光熱や、ウォシュレット付きのトイレがある。

 自然に囲まれるのもいいが、文明の機器に囲まれるのもまたいい。

 

 ちなみにフェムトはそのツリーハウスで儲けている。

 結構人気らしい。

 

「そっちの世界の面白い家ってあります?」

「水中にある家とかあったかな?」

 

 前々の世界にもそんなホテルがあるって聞いたことがある。

 岩の中にある家とかもあるし、地面の中にある家もあるって。

 

「次は何しようか」

「魚釣りとかも良いと思うんですけどもう昼ですし」

 

 朝来れば良かったか? 

 

「もうお昼ですし食事にしませんか?」

「いいね。ローナ特性弁当」

 

 三人分用意される。

 念獣用にも用意される。

 

「おーこの島の名物が沢山使用されてる」

「ええ、市場で値切りました」

 

 そう言えば朝市の値切りが特技だとか。

 レオリオ程じゃないとは思うけど。

 

「この鶏肉イケる」

「ミラクルカルミラ鳥って言うらしいですよ。珍しいそうですけど運良く市場にあったので」

「唐揚げが美味いぞ」

 

 尚文の料理とどっちがいいだろうか。

 よく考えれば適当に作って美味しいのだろうか? もしかしたらなんかの補正とか働いているとか。

 

「オラ、ジュースヨコセ!」

「ウエエエエエン!」

 

 おいおいMr.3、喧嘩すんな。

 ってか俺のグレープジュースじゃん。

 

「仲良く飲めよ」

「あれ? ハジメ様ってグレープジュース買ってたんですか?」

「ん?」

 

 あれ? 話が噛み合ってない。

 

「いや……このジュースをローナがくれたじゃん」

「自分グレープジュースを買った覚えも無いですし渡した覚えが無いんですけど…………」

 

 は? 

 

「見てくださいバックの中、リンゴジュースしか入ってませんよ? 売店はグレープジュースなんて売ってませんでしたし」

「…………」

「グレープジュース好きなの知ってますし、普通だったらハジメ様のために買ってますよ」

 

 え、じゃあ……何だったの? 

 

「確かカルミラ島のグレープジュースって凄い貴重って話ですが……」

 

 その後、俺は気になりながらもシュノーケルしたりして海を楽しむのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「そう言えは温泉地帯って怪奇現象が多いとか聞いたことある」

「確かに歴史ありそうな島だから有り得る話だ」

 

 イヌルトとかリースカとか言い伝えがある時点で歴史は古いかも。

 

 あー明日でカルミラ島を発つんだし名残惜しい。

 

「春菜、料理はまだかな」

「座ったばかりだけど?」

 

 今来ているのは超がつくほどの高級料理店で、1日5食しか食べられない超レアな料理を食べに来た。

 完全予約制だけど。

 

「んで何を食」

「ん? ハジメ?」

「錬?」

 

 錬? お前なんでここにいるのですかな? 

 

「お前らも料理を食べに来たのか?」

「まあな」

「あ、錬さん、ハジメさん?」

「…………」

 

 げっ、樹と燻製。

 何やってんだ? 

 

「もしかしてお前らも限定食を?」

「ええ、予約しておいたんですよ。そちらも?」

「まあな」

「…………」

 

 燻製が睨んでいるが知ったこちゃない。

 勇者だし予約が優先されそうだ。

 

「あ」

「あれ? 皆さん?」

 

 現れたのは尚文とラフタリアさん? 

 どうしてここに? 

 

「まさか…………尚文さんも予約を?」

「ああ、この島の高級料理を食べてみたくてな」

「あれ? おかしくないか?」

「1日5食だろ? オーバーしてるじゃん」

 

 ん? どうなってるんだろう。

 予約ミスか? 

 

「あ、お前らもか」

「チッ」

 

 元康とビッチ? 

 …………まさか。

 

「お前らも食べに来たのか?」

「ああ……」

 

 合計九人。

 

「申し訳ありません!!!」

 

 はい、説明によるとこう。

 手違いで予約ミスだそうだ。

 

 で、あと2食しかないそうだ。

 

「さて、どうするか」

「俺は食う……」

「ここまできたからな」

「僕らもです」

 

 みんな同じ気持ち。

 

「なあ、提案があるんだが?」

「どうした尚文」

「賭けをしないか? 」

「勝負って事か?」

「ああ、こっちも食べずに帰りたくねぇしな」

 

 俺もだ。

 

「だけど何で勝負する?」

「あ、偶然にもトランプ」

「元々置いてたのか」

 

 暇な時に遊べそう。

 

「大富豪やろうか」

「異議あり」

「……何故だ元康」

「……言わなくても分かるだろ」

 

 分かってる。

 イカサマでしょ? するけど? 

 

「じゃ納得出来る勝負はあるんだろうな? みんな同意しなきゃ駄目だろ」

「んー何がいいか…………」

「早く食いたいし、ジャンケンでもいいんじゃないか?」

「それだとつまんないだろ」

 

 もっと高級料理を巡り会うんだから熱い戦いをしたい。

 

「腕相撲は?」

「俺が圧勝」

 

 意外と公平な戦いってのも無いな。

 

「じゃチーム対抗でポーカーしようか」

「もうそれでいい。腹減ったしな」

 

 もう平行線になるのでポーカーに決まる。

 ディーラーは店の店員なのでイカサマはないだろう。

 

 シャッフルして五チームに配られる。

 さて、俺のカードは? 

 

 ………………。

 

「さて、俺はこのままでいい」

「俺もだ」

「僕もこれでいいですよ」

 

 尚文、俺、樹は交換しなくてもいいと。

 

「俺は2枚変える」

「俺もだ」

 

 錬、元康は2枚交換。

 

「ん? 2枚交換か? そんなに弱いの?」

「チッ」

 

 元康、顔に出てる。

 コイツポーカー向いてない。

 

 ん? 錬はそこまで表情無いな。

 

「尚文さん良いんですかカード変えなくて?」

「そっくりそのまま返してやるよ」

「ハジメ、怖かったらカード変えていいぞ? (笑)」

「へっ、こんな事でビビってると思うのか? 罰ゲームで会長の机でランバダ踊った時よりも難易度が低いゲームだ。そっちとは潜った場数が違うし甘く見るな。だけど慎重さを欠いて死んで逝った奴らは大勢いるしお言葉に甘えよう。2枚っと」

『…………』

 

 は? 何だんまりしてんの? 

 HXHで慢心して心折れたり死んだりした奴多いでしょ。

 

 それが数十人いるんだから慢心し過ぎたら駄目でしょ。

 

「俺はいいぞ?」

「俺も」

「俺もだ」

「僕もです」

「ショーダウンだ」

 

 せーのっ。

 

 俺 1のスリーカード。

 尚文 2とジョーカーのスリーカード。

 錬 JとKのツーペア。

 樹 4のワンペア。

 元康 ブタ。

 

「嘘だろ……自信あったのに」

 

 まさかの尚文勝利。

 面白くないからイカサマは使わなかったのに。

 

「まさかジョーカー持ってたとはな……」

「悪いな。高級料理は頂く」

 

 まあ、いいか。

 時間あった時にカルミラ島へ転移すりゃいいし。

 

「お待たせしましたー!」

 

 やっと店員さんが運んできたな。

 …………でも何の料理を出すか聞いてないんだよな。

 

 春菜に任せっきり。

 

「はい、こちらミラクルカルミラ鳥の唐揚げ、カルミラグレープジュースになりまーす」

 

 あ、もうそれ食ったからいいや。

 その後、違うレストランで春菜と一緒に夕食を取った。

 

 

 




評価や感想貰うと嬉しいです。


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第59話

「あ〜やっと帰ってきた」

「修学旅行から帰ってきた気分だね」

「確かに寝具とか変わったら寝りにくいでござる」

 

 はい、僕達は自分の縄張りに帰ってきました。

 ありがとうカルミラ島。

 

「次は霊亀だな。この前近くのポータルとったから安心か?」

「でも油断しないで薬とか武器とか用意した方がいいと思うよ」

「わかってる。ドロップとかからも出てるし、素材使って武器防具とか作ってる」

 

 他にもアクセサリーとか作った方がいいかも。

 バフ付きの装飾品とか欲しい。

 

 道具作成の能力やスキルを持った人材が欲しい。

 サポートの鍛治や料理や木工や細工系の能力者も欲しいものだ。

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

「なーにー」

「能力者増やさない?」

「それは俺も考えてる。だけど教える人間は慎重に選びたい」

 

 尚文に教えようか迷っている。

 原作ブレイクの可能性もあるので俺は責任を持てない。しかしヒソカ君のクソピエロが教えるかもしれないな。

 

 三勇者? 馬鹿が治ったらの話だし原作ブレイクもあるうる。

 原作キャラに教えるのは保留だ。

 

「後方支援の人間が多めに欲しい。春菜は何人か口が固くて優秀な奴いるか?」

「…………一応いるんだけど無理だね」

「?」

 

 心当たりはあるんだね。

 王族だし知り合いとかいそう。

 

「実はその子上流貴族なんだけどね…………政略結婚だから傷とかつけたく無いって。死んだら自分の家がやばい事になるって言ってた」

「…………それって悪役令嬢ルート辿るかも」

「…………あ、有り得る。美人だけど厳しいから氷の女とか呼ばれてる! 更には婚約者には厳しい態度を取ってるって!」

 

 フラグ立ててるのかよー! 

 まさか……波の尖兵のカス達も関わるかも。

 

「まさか婚約者の周りにイケメンとか沢山いないか?」

「あ、いるわ。オラオラ系やらインテリ系やら小動物系クール系も」

「立ちました!?」

 

 何を次次にフラグ立ててるんだよ…………乙女ゲーみたいじゃん。

 多分性格がクソ悪い転移者が間に入って来そうだ。

 

 王族貴族が参加しているパーティーで婚約破棄とか堂々としそう……ベタだな。

 

 互いに利がありそうな政略結婚なのに普通は断わらないとは思うが…………その子は不安だな。

 

 この雰囲気だとクラス転移とかもあるかも。

 まあそれだったら情報に引っかかるし、そんなのあったらウチの影が報告来るだろ。

 

「まさか……まだフラグとか立てる気あるのか?」

「あ、フラグ立てるって訳じゃないけど……コアトルスピンの事」

「ああ、シルフィの故郷か」

 

 そう言えば何があったんだろ。

 他国に奴隷として売られてたし何かあったのか? 

 

 確かラビット種の青年だっけ? シルドフリーデンの没落貴族って設定だったけど、メルロマルクで売られてるのって不自然だろうし。

 元々住んでいた人間はどうなったんだろうか? 人間史上で亜人敵対のメルロマルクにいるのだから恨みでもかったのか? 

 

「山奥で小国だしあまり人が来ない国。どっちかっていうとアステカ文明とかマヤ文明みたいな文化かな?」

「多様性あるなこの世界」

「で、おかしい点が一つある。八部族あって八つに治める地域が違うんだけど、その部族が何かの儀式を十数年置きにやってるんだって」

「…………何かってなんなんだ?」

「色んな人に聞いたんだけど情報が入ってこないのよ」

 

 謎認定だな。今度調べさせよう。

 

 ってかアルドミティアってのはなんだ? なんで原作に無い国がナンバーワンってなんだよ。

 

「まあ考えても仕方なないか。待とう」

「…………そうだね」

「ちょっと軽食が欲しいな。サンドイッチとかどう?」

 

 朝飯食べてなかった。

 うっかり。

 

 俺は帽子を被り春菜と喫茶店へ。

 

「あ、結構いるな」

「お、空いてた」

 

 俺らは座り、注文を待つ。

 サンドイッチとコーヒーを頼む。春菜はパフェとココア。

 

「あ、相席よろしいですか?」

「ん? どうぞ」

「あ」

 

 あ、混んでたから相席か。

 …………また虚無僧みたいな奴だな。

 

「…………」

「あ、見ない顔だけどどっから来たんですか?」

「え、ええ。ジャポ……いえ、東の方からです」

 

 …………。

 

(お兄ちゃん、この人もしかして)

(ああ。わかってる)

 

「あ、もしかしてカーネストラ国から来たんですかね?」

「え? ま、まあそんなとこです」

「…………カーネストラは西ですよ?」

「…………え? は、はははっ間違えちゃった」

 

 …………。

 

「はい」

「なんでしょう……杖?」

「持てますよね?」

「…………」アセ ダラ ダラ ダラ

 

 そろそろ出てきたらどうだ? 

 カリンの予知じゃ戦闘は無いはず。

 

 偵察あたりか? 

 

「お待たせしましたー」

 

 店員が調理を持ってきてくれた。

 相席の分も持ってきてた。

 

「どうした食えよ」ニヤニヤ

「…………」ニヤニヤ

「…………」

 

 お? 食えんのか? 編笠とれば? 

 食い逃げしないよな。

 

 パカリ

 

 あ、口の所取れるんだ。

 それだったら食べやすいよね。

 

 ŧ‹”ŧ‹”( ‘ч’ )ŧ‹”ŧ‹”

 

 このパフェ美味しいよね。

 

「………いやーこのパフェいけますね」

「わかる。バイオプラントってのは面白いからな」

「フェムトさんみたいの?」

「大体同じだな」

 

 良く考えればダブったな。

 だけど俺は細かく複雑な改造は出来ないが、フェムトの方が複雑な改造とか出来そうだ。

 

 あー軽くお腹は膨れたわ。

 ご勘定、そして、

 

「さて、俺は練兵のほうを視察するか」

「私は執務の方を優先するよ」

「それじゃ私は温泉に」

「「逃がすか」」ガシ

「え〜ここは『自分の領地を楽しんでくれ』とか言うんじゃないの〜あ・に・さ・ん」

「ヒミコ…………」

 

 

 

 ■

 

 

 

 ? side

 

「それじゃ行ってきます…………」

「……行ってらっしゃいませ」

 

 僕は部屋から出ていく。

 

 あの修練所の騒動の後の事を伝えておこう。

 本当に腹が立つのだが修練所を出禁となった。

 

 僕は何度も無実を訴えたのだが、女王は取り合ってくれずなのだ。

 他のクラスメイトも目撃者も女王と同じで何も信じてくれない。

 

 流石におかしいとしばしば感じる。

 僕を嵌める謀略をしてるとしか思えない。

 

 早めにトンズラした方がいい。

 そのためには強さと金と情報を集めなければ。後は念の為に脱出経路を確保しておこう。

 

 なお、ダンジョン探検やこの国の波に参加する予定だ。

 面倒事が起きそうなので断ったが、ダンジョンの方は浅い所で活動するそうなので問題無いらしく、波は僕は避難の方に行く事に。

 

 終わったらどさくさに紛れて逃げよう。

 原作主人公と交わるのも悪くないかも。

 

「さ、着いた」

 

 どこに来たかと言うと冒険者ギルドだ。

 流石に経験や知識を吸収しないと。

 

 と、言っても初めて来たんだ……緊張するなぁ。

 お約束としては柄のわるーい冒険者に囲まれたり、ランクの高い素材を狩ってきて階級が上がるとか。

 Sランクの美人冒険者とかと知り合いになるってのも定石だよな。

 

 …………まあ、冒険者ってのは臆病さが大事だから無理はしない。

 

「すいません、冒険者登録したいんですが」

「はい、登録料銀貨1枚です」

 

 一応キーノさんから借りた。

 大臣に借りようとしたが期待が持てないからと断られた。

 そこまで素行は悪くないし、不良3人を倒した。

 なんか悪巧みをしているな。

 

「まずはG級の冒険者か……」

 

 大体かけだし冒険者は薬草取りや掃除等のお使いだそうだ。

 まずは薬草取りでもするかな? 

 

 あ、クエストボードがあるんだ。

 ゆっくり見ておこう。

 

 へー異世界に来たって感じがするよ。

 バルーンやウサピルの駆除とか上のランクではあるみたいだ。

 

「よぉぉぉなんだな!」

「兄ちゃんや!」

「なんか探してるのか〜っ!」

「ん?」

 

 後ろを向くと柄の悪いヒゲ、チビ、デカいのがいた。

 ヒゲがリーダー格かな? 

 

「お? G級? 手伝ってやろうか?」

「ウチらと一緒にやるんだな?」

「…………」

 

 いやいや何も知らない人に着いてくのもアレだしな。

 

「いやいや草採りなんで大丈夫ですよ」

「遠慮すんなよって!」

「B級クエストのついでなんだな!」

「だって草採りなんかですよ? それで僕の付き添いってのもね…………」

「いや違」

「止めろ!!」

 

 …………また何か現れた。

 なんか勇者っぽい白い鎧を来てる金髪美青年、左右に美少女を連れている。

 

「また新人潰しかお前ら!!?」

「は? 俺らが?」

「お前らが関わったせいで何人潰れてると思うんだだ?」

「ほ〜う、俺らが関わってる証拠はあるのか?」

「関わった人間が数人だが理由も無く辞めたりいなくなってる! お前らが脅しや暴行を加えたと専らの噂だぞ!」

「無実だ!」

「でっち上げなんだな!」

「つーかお前この間他の冒」

「なんの騒ぎですか!?」

 

 あ、受付のお姉ちゃんが出てきた。

 ギルド内での喧嘩はご法度らしいからな。

 

「また貴方達ですか!」

「だってよーこの窃」

「黙れ! 新人狩りしてるくせに」

「してないんだな!」

「証拠だせよ!」

「ギルド内での戦闘は禁止です…………ですが貴方達、【アルケニース】でしたっけ? 他国から来たクランがこの国で我が者顔ですか?」

「あ?」

「貴方達から嫌な噂を良く聞きます。この前も迷惑行為を起こしましたし、ギルドマスターが出禁を考えてますよ?」

 

 ん? よく分からんが新人潰し?

 でも噂だけで証拠も無いってのはおかしくないか? 

 理由も無く辞めるなんておかしいし、普通に適当に理由付けて辞めると思うんだが。

 

「でもコイツらもル」

「…………出禁にとギルマスに報告されたいですが?」

「…………わかったよ」

「クソッ!」

「不愉快なんだな」

 

 ガラ悪い三人は去っていった。

 

「大丈夫だったかい?」

「…………ええ」

「何よその態度、助けたのに」

「コラ、メンハル。良いんだよ」

 

 今の話し合いだとどっちが悪人だか分からなかったな。

 ヒゲが何か言おうとしていたが、言葉の間に切られてたので気になる。

 

「ああ、そう言えば自己紹介遅れたね。俺はアフィリエ=オーエン。S級冒険者さ。こっちはメンハルとコルピ」

 

 あ、S級だったのか。

 

「あ、草野雪丸〈クサノユキマル〉って言います」

「よろしく! んで、ちょっと提案があるんだけど」

「?」

「良かったら一緒にクエストどう? 今トレント狩り行こうかなって思ってて。一緒に同時並行しようかなって。どうかな?」

「あ、良かったですね! この人と着いていけば死にませんよ!」

「死ぬ?」

「ああ、薬草取り時にモンスターに襲われるって事もありますし、毒虫とかに噛まれて死ぬとかも結構あるんです。だから薬草取りはルーキー殺しとか言われてるんです…………」

 

 なるほど、他の冒険者と並列してやった方がリスクも無いし得だな。

 

「んじゃ薬草取りのクエスト受注します」

「自分らもトレント討伐を」

 

 成り行きでクエストを行うことになった。

 あまり信用しないでおこう。

 

 ちなみに報酬は十束銀貨1枚。

 それより多く取ってきたら十束ごとにプラス銅貨50枚。

 

「それにしてもあの三人から逃れてよかったね?」

「…………なんで?」

「今さっきも言ったけど評判悪いし粗暴な奴らだ」

「この前他の冒険者を脅して金を巻き上げてました……気持ちが悪いです」

「ギルド外じゃ喧嘩も多いって話よ、品の悪い人間のクズね」

 

 重ねて信用が出来ないな。

 陰で悪口を言いふらしてる人間なんか近づきたくない。

 

「お、ここがトレントの群生地だ」

 

 トレント倒しながら薬草探しか。

 

「はっ!」

「ツヴァイトライトニング!」

「えいっ!」

 

 あ、薬草見っけ。

 所々にあるようだ。

 

「あんまり離れちゃダメだよ!」

「あ」

 

 確かに守られる側だしな。

 

「…………」ガサ

 

 と、言いつつトレントの目の前にいたよ。

 多少は僕も戦える。

 

「ツヴァイト・ファイアブレイク!」

「…………!?」

 

 ドカーァーン!! 

 

「え?」

「は?」

 

 ん? なんか驚いてる? 

 討伐部位の鼻は撃ってないが? 

 

「えっと……なんでそんなに威力が?」

「? 速度と射程を絞ったからだけど? ツヴァイト・ファイアブレイク!」

 

 ドカーァーン!! 

 

 その分威力にエネルギーを回す。

 皆は無意識でやってるのでそれを出来てないらしく、多少練習すればできる事だった。

 

「ちょっ!? そんな事出来るの!?」

「後で教えてくれないかい?」

 

 後で適当に教えておくか。

 

 お、薬草見っけ。

 …………ここ群生してるのか。

 

「「「…………」」」

 

 ? 多く薬草生えてるんだけど…………周りの三人は手伝わないのか? 

 トレント狩りを少しは手伝ったのに。

 

 教えてもらうんだから手伝うと思うよ? 

 

「よし、40束くらいか」

「あ、終わったかい?」

 

 銀貨2枚、銅貨50枚。

 まずまずの結果だな。もう少し時間が欲しかったか? 

 

 とりあえず帰ろう。

 帰り道、三人に魔力の調節の方法を教えた。

 

 

 

 ▷▶︎▷

 

 

 

 城への帰り道、僕は銀貨2枚と銅貨50枚を手に歩いていた。

 

 …………トレント少し倒したのに分け前が貰えなかったな。

 まあ受注したのはあっちだし、文句は言えないが腑に落ちない。

 

 ……まずは金銭と実力をつけて行こう。

 さっさと逃げなくちゃな。ゼルドブルがいいか? 

 

「す、すみませ〜ん!」

「ん?」

「お、おはないかがですか〜」

 

 花売りか。

 …………あ、子供が働くってのもどうなんだろうか? どれだけこの国クソなんだろう。

 

「一つどうか5まいです」

「はい、一つ銅貨50枚だね。どうぞ」

「え?」

 

 すまんが金が欲しいんだ。

 普通だったら銀貨1枚あげたいんだがな……許せ少女よ。

 

 この花どうしようか…………押し花でも作ろうかな。

 

 あ〜お腹空いた。今日のメニューはグラタンだったな。

 城の門へ着くと、

 

「よーぉー草野くうぅん!」

「待ってたよぉ!」

「うぇーい!」

 

 チッ、この不良トリオが待ち構えてやがった。

 なんのようだ? 

 

「城の大臣から聞いたぜぇ〜? 冒険者ギルドに登録したんだっけなぁ」

 

 お喋りな大臣だ。

 信用できんなこの国は。

 

「報酬あるだろ、寄越せよ」

「なんで渡さなきゃならないんだ?」

「うるせぇ寄越せ」

「お前が何言ったって悪だ。大人しく渡せよ」

「この前の事学習してないんじゃね?」

 

 周りの兵士も我関せず。

 女神の使徒だからか? それとも僕を貶める段取りか? 

 

「ほら」

「あ? これだけ?」

 

 全部渡せと言われてないので銀貨1枚のみ渡した。

 流石にキーノさんに借りた金返さないと。

 

「なんだ銀貨1枚だけかよ」

「いらね」

「俺ら毎月金貨10枚くらい貰ってるし」

 

 ポイ ポチャン!!

 

 …………は? 

 城の堀に捨てやがった……金貨10枚? お前らそんなに貰ってたのかよ。

 支給金貰えるなんて初耳なんだけど。

 

「あっーはっはっはっはっは」

「バイハーイ! じゃあね貧乏人!」

「無駄な努力ご苦労さま(笑)」

「…………」

 

 不良トリオは帰って行った。

 

 はぁ、なんでこんな目に会うんだろ……疲れてきた。

 さっさとこの国から出るとしよう。

 

 僕はキーノさんに銀貨を渡し、食堂でグラタンを口にするのだった。



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第60話

アニメ……延期だと?


「さ、親子丼とカツ丼と天丼。ラーメンやうどんの麺類もあるから好きなの選べ」

「意外と揃ってるんだね」

「俺の趣向だ。ジャポンの料理を多数食べられるようにしたい」

 

 俺は出前のメニューを渡す。

 

 ここは取り調べ室。こっちの趣で警察の取り調べの感じみたいにしている。

 ヒミコが来たので取り調べだ。

 

 キラークイーンが近くで傍聴し、鏡があるがマジックミラーとなっており春菜が待機している。

 

「とりあえずざるそばかな? 麺類あるでしょ」

「あるけど味は普通だぞ」

「わさびもつけてね? つゆに入れるから」

 

 ったく、やっぱり入れるよな。

 

「キラークイーン、頼みに行ってくれ。俺はカツ丼を」

「うん」

 

 卵とじのカツ丼だ。

 唾液が出てきた。

 

「さ、何をしに来た? 拉致じゃないのは分かってる」

「よく分かったね…………誰かの能力?」

「黙秘だ」

 

 取り調べる側が黙秘。

 

「確かに戦闘しに来たわけじゃない。あにさんと停戦と情報共有の協定を結びに来たの」

「メッセンジャーか……懐柔策でくるのか?」

「うん。強硬策じゃこっちが疲れそうだし」

 

 その方が被害がなさそうだしな。

 俺を拉致しようとするんならもっとヤバい能力者を連れてくるといい。ジジイとかゾルディック家とか。

 

 それに俺も顔見知りと戦いたくない。

 互いに害はない。

 

「しかし情報共有ってのは?」

「変な能力者とか現れなかった?」

「現われた」

 

 教皇戦で出てきたあの二人。

 通常版じゃ出てこないキャラなんですけど。

 

「こっちも出てきてる。結構強いのも襲ってきたし、危なかった事も少しあったし」

「マジか……なんか変な勢力が介入してる」

「んでその中にイゾウ=チョウソカベがいたって話」

「嘘でしょ? A級犯罪者じゃん」

 

 噂で聞いた話だと能力を与える能力らしい。

 しかし、貰うには代償が必要らしく条件を満たすと死ぬとか。

 写真を見たらまんま喪黒福造だったから印象に残ってる。

 

「で、ここから厄介なんだけど」

「うんうん」

「こっからは協定を結んでくれないと駄目」

「わかった。停戦と情報共有な。だけど俺らの一派限定だから国とかはそれに入らないぞ」

「いいよ。こっちの一派も限定ね」

 

 あ、書類を取り出した。

 簡単に今言ったことを守る制約が日本語で書かれている。

 透かしや極小の字とか無いか? 

 

 先に師匠の名前と拇印が押してある。

 

「えっと、これ血?」

「さすがに朱肉」

 

 まあ、そりゃそうか。

 

「これでよし」

「そう言えばそっちの勢力ってどのくらい?」

「うーん、全部は言えないけど能力者とか増えてるよ。扇の勇者の国を拠点としてるかな?」

 

 師匠も勢力とか広げてるんだな。

 こっちも広げよう。

 

「で、喪黒福造の話だったろ」

「喪黒福造?」

「あ、イゾウ=チョウソカベに似てる人」

「? まあ、いいや。実は転生者のクズ達に能力を与えてるらしいよ」

「は?」

「私達にも被害が出てるけど殆どは共食い。それにルールがあるのか突然死ぬらしい」

 

 わー利用されてるな。

 知らない人から物を貰うなとかよくあるし、代価があるとは考えないのだろうか。

 

 そんな事を考えないから操りやすいし、メガヴィッチはカスを転生させて手駒にする。

 

「そっちはどう? なんか情報ある?」

「こっちはホーネットってのがいた」

「あー強盗集団ね」

「ご飯持ってきたよー」

 

 お、キラークイーンが食事を持ってきてくれた。

 

「お、いただきマース」

「お、いいにおい!」

 

 カツ丼とざるそば。

 あ、天丼もあるぞ? キラークイーンか? 

 

「お、うめぇ」

「いけるいける」

「おいしー」

 

 ごはんターイム。

 

「やっぱり丼物は美味い」

「分かる。ざるそばのツーンとしたのも美味しい」

「美味し美味しー」

 

 コンコン

 

 チッ、分かったよ。

 

「あ、そうだ。転生者の背後に女神いるのわかってる?」

「…………女神? 背後になにかいるのは分かってるけど……」

「記憶を読む能力者がいてな。女神の事を話そうとすると頭が破裂するんだって」

 

 破裂する事を知らない奴がいるのは少しだが不憫。

 大切にするなら教えると思うし、捨て駒だというのがよくわかる。

 

「全く、酷い迷惑。転生者のせいでどれだけ傷付いたと思ってるんだよ」ŧ‹”ŧ‹”

「ああ、ソイツらの役目は勇者の妨害や世界の基盤を狂わせる事らしい」

「…………詳しいねあにさん? 関係者に知り合いいるの?」

「いませんよ。転生者みたいな人間が迷惑起こした話が過去にも沢山あるし、それだと国や勢力がめちゃくちゃになるからそう推測しただけだ」

「こっちも迷惑起こした話なんて沢山あるよ。クーデターとかして善良な領主とか殺してるし、商人を一家人中させたりとか」

「だろ?」

 

 そっちは相当暴れてそうだな。

 三勇教なんて転生者とか狩ってたらしいからメルロマルクじゃあまりいない。

 褒めてやるよ。

 

「あにさんは色々知ってるよね。話聞いてるとこの波って女神が起こしてるの?」

「多分な。でも違う勢力が介入してるからまだそんなのがいるかも」

 

 何か知らんが原作とは違った方向に進んでいる。

 なんでこんなになったんだろうか? 

 

「成程ね。あ、そうだ。アノンさんから異世界同士の貿易するかもしれないから様子をちょっと見て来いって言われたから技師とか商人とかいない? 紹介してほしいんだけど」

「良いぞ。だけど秘匿の情報は渡さないぞ?」

 

 念は押しておく。

 機密情報はバラしたくない。

 

 それにしても異世界貿易か。

 面白いかもしれない。互いに資金も増やしたいだろうし。

 

 ミレナリオやゴドルの世界とも貿易するかもしれないからな。

 

「そう言えばマルシダスさんを波で見かけたよ」

「知ってる。通常運転らしいな」

「ハジメ様大変です!!」

「どうしたローナ」

 

 あ? なんだ? もしかしてマルシダスが現れたのか? 衛兵はしょっぴいてやれよ。

 

「この前のミレナリオって人が夜刀ちゃんのコンサートに紛れ込んでました!」

 

 チッ、ミレナリオかよ。

 でも奴がやらかす予知は無かったぞ。

 

「俺が追うか」

「あと……フェムトって人が練兵場で訓練してます。兵士達と仲良くなってます」

 

 アイツは話術もよく出来る。

 交渉とかしたいのか? 

 

「ちょっと連れてこい」

 

 その前にカツ丼平らげないと。

 お口直しにリンゴに近い果物を食おう。

 

「あにさんそのリンゴちょうだい」

「ほれ」

 

 

 

 ■

 

 

 

「で?」

「こっちと停戦と情報共有の協定を結んで欲しい。最低停戦だけでもいい」

「お前ら……あにさんに手を出して虫のいい思わないのか!」バン

「いやそっちも手を出してたろ!?」Σ(゚д゚ll)

 

 俺、机に足を乗っける。

 ヒミコ、取り調べを手伝いたいのか手で机を叩いてる。

 

「ほら、メニュー選べ。奢りだ」

「カツ丼で」

「自分はフルーツパフェで」

「デザートだな。俺もフルーツパフェ」

「私はチョコパフェ」

「フルーツパフェ食べたーい」

「ガッツリは俺だけ?」

 

 ミレナリオだけカツ丼。

 今度始まった豚丼もオススメだ。

 

「それで? そっちはどうよ? 波との状況は」

「なんも問題ねぇぞ? 能力者も召喚される前からいたし、面白いシステムがあるから死人も少ない」

「面白いシステム?」

「それは企業秘密だな。そっちはどうだ?」

「ヒソカが召喚されてた。波で会わないように気をつけな」

「「「は?」」」

 

 能力者が召喚される前から居たってことか。

 数百年前とかに召喚された能力者とかいるかもしれないな。

 

「は、ははは。ヒソカいるの?」

「いるいるー。フィロリアル連れてる」

 

 クロちゃん元気かな。

 

「うわ……やだな」

「前俺のとこの部署にも来てな、ハッパ上司をじっくり品定めして帰ったよ…………」

「こっちは直に遊びにきましたよ。グールルの所もアポ無しで来そうですよ?」

 

 ハッパ上司って結構強いって聞いたし。

 ってかアポ無しで来るとか本当に迷惑だな。

 

 グールル。アイツ殺されてねぇよな? 

 トラックで轢かれるタマじゃない。

 

「でさ波の時から気になってたんだけどさ、あの翼生え」

「パフェ持ってきたよー」

「やっときたか」

 

 ここで採れたフルーツのパフェだ。

 チョコパフェはチョコ農家から仕入れた。

 

「あ〜美味し!」

「うっ」

「?」

 

 く、あの番外編を思い出したじゃねえかよ。

 あんなに頭おかしいから長男がグレて盗賊になるんだよ。

 

 環境って怖いな。

 

「みんなパフェ食ってるのに……俺だけカツ丼って浮いてるな」

「いいんじゃないの? 食いたいもの食べれば」

「そうだな」

 

 まあ、こっちも食べるか。

 俺は久しぶりに仲間と飯を食べるのだった。

 

 

 

 



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霊亀篇
第61話


2期待ち遠しいなー。


「なあローナ」

「なんですか?」

「俺の教え方っていつもあんな感じか?」

「そうですよ? 自分でやってて気づかないんですか?」

 

 ん? 今日は何をしてるかって? 

 

「オラ!」

「こんの"ピッー"が」

「どうしたもうへばったか!? お前の愛する女はどうしようもない"ピッー"だな!!」

「気持ちいかぁぁぁ!?」

「なんだコイツら……」

「おい! 誰が口を開いて良いと言った"ピッー"が」

 

 口を開いたのは元康。

 後で折檻だな。

 

 俺らは今四聖勇者の特訓中である。

 基礎体力が大事だと思うので鍛えている。

 

 大雑把で強力な技よりも、生き残れるだけの根性と体力だ。

 

「お前ら…………よくもここまで生きてこられたな」

「否定が出来ないのが辛いな」

 

 三勇者も尚文も多少常識知らずの事もある。

 国の事とか調べれる事ができたんじゃないか? そうすれば尚文の冤罪も不可解と感じるし、三勇教にも踊らされる事も無い。

 

 有名な敗因の一つに情報不足ってのがよくあるぞ。

 

「くっ、なんでワシまで…………」

 

 ああ、女王様に頼んだら快く参加させてくれたよ。

 クズよ、初心からやり直せ。

 

「おい、どうした? 尚文にした事忘れたのか?」

「あにさん? コイツ結構皆に叩かれてるけど何やったの?」

「コイツはねー」

 

 ちなみにヒミコも特訓に参加。

 クズのやってきた行いを教える。

 

「はぁ!! 被害者が怪しいし証拠も無いのに何その仕打ち!?」

「だろ? それで戦争になりそうだったんだぜ」

「罪だよ」

 

 三勇者とクズは毛利小五郎以下だな。

 光彦や元太でさえ根拠も無く犯人扱いはしないだろう。

 

 思い出したのだが、とあるラノベで主人公が売上金の窃盗の濡れ衣を着せられ、管理してた人間から暴力を振るわれるという場面があった。

 大した根拠も無いし、暴力を振るうとかどんだけ程度が低いんだよって話。

 

 主人公は不器用で足引っ張ってるが、性格は良いのになんでこんな仕打ちを受けなければならないと憤りを感じた。

 人間の縮図がよく分かる。

 

「オラ、尚文に謝れや」

「お義父さんにあやまれぇぇ!」

 

 ヒミコはクズを蹴る。

 よし、時間か。休憩やん。

 

 

 

 ■

 

 

 

「それにしてもまさかリーシアさんを追放するとはねぇ」

「アイツは本当に傲慢としか思えん」

 

 リーシアさんが追放された話を聞く。

 実は波の最中に活躍したらしく、女王様にお褒めの言葉を貰っていた。

 

 それなので少しは功績はあるのでありがたいはずなのだが。

 

「あ、そういえばアルドミティアの事だったか」

「? ああ、話が切れたから有耶無耶になってたな」

 

 あ、忘れてた。

 よくあるんだよなぁ。

 

「アルドミティアの商人に会ってな」

 

 尚文曰く、五人程の集団だったらしい。

 馬車が壊れて途方にくれていた時に尚文が通りかかり直したそうだ。

 お礼に食事と積荷を少し貰ったとか。

 

「それで食事を一緒にしてる際に奇妙な事があってな」

「奇妙?」

「ああ、その内の一人がハジメの事を根掘り葉掘り聞いてきたんだ」

「俺の事を?」

 

 確かに武器によってファンがいるのは分かってるけど。

 聞いても不自然じゃないし奇妙じゃないが? 

 

「奇妙なのはハジメの事を斧の勇者だとは知らなかった事だ」

「は?」

「聞いてみたんだが何の勇者か知らなかったぞ」

 

 ? ファンなのにどんな勇者武器か知らなかったのか? 

 流石に情報とか行くだろ。

 

 斧の勇者ではなく名前だけで? 

 

「じゃ俺は用事あるから」

「ああ、仮眠しとけよ。昼寝は体力回復量多いからな」

 

 少し俺も食べておこう。

 本当は食べない方が体に良いらしいが、甘い物だけでも食っとこ。

 

 俺は尚文と別れる。

 

 全く、アルドミティアの謎が一気に増えたぞ。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 昼食時。

 よし、お前らのまだ特訓は終わらねぇ! 

 

「なんて読むんだ?」

 

 分からないと食べられま10です。

 ただいま絶賛読み書きの練習であります。

 

「尚文、復習だ。これはなんて読む?」

「クールぶった自己中」

「これは?」

「人の話を聞かない女好き」

「んじゃこれ」

「傲慢な偽善者野郎」

「正解だ。食っていいぞ」

「お先」

 

 全く…………順応性が高いぜ。

 

「ほら、これはなんて読む?」

「うっ…………燕返……し?」

「違う、無明三段突きだ」

 

 あ、ゴドルの能力を移して使ったらどうなるんだろうか。

 停戦してるし会った時聞いてみよ。

 

「えっと…………ダニエルがジョンを部屋に連れ込みそのままズボンを下ろ」

「待て、何故官能小説がある?」

 

 俺持ってきた覚え無いんやけど。

 誰だ? 

 

「よし、これなんて読む?」

「この訳は〈右の頬をぶたれたら左の心臓を奪え〉ですね」

「正解だ。インテリっぽい雰囲気あるから多少物覚え良いな」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「…………俺だけ個別か?」

「まあな」

「泳ぎか」

「帰る!」

 

 今回、僕は錬君と一緒に海にきた。

 泳げないし、水中の敵とか倒すかもしれないのでレクチャーしに。

 

「いいかー錬。泳ぎっては大事なんだぞ」

「泳げなくても戦える」

「普通の小学生でも泳げるし、水中に入ったらどうするんよ? 泳げず他の仲間に救助されるのか? 足引っ張っていいの?」

「うっ」

「経験上、水場の戦いなんて少ないがな…………今後あるかもしれないのか人生だ」

「…………お前歳いくつ?」

「30」

 

 俺も歳を取ったものだ。

 

「ほら、水練始めるぞ。まずはこの重りを背負って」

「…………嘘だろ?」

「冗談では無い〜装備や仲間を救出する時に必要だ」

「…………」

「まあ、俺も背負うんだけど」

 

 前の世界でやったな。

 

「さ、泳いでみよ」

「…………」ゴボゴボ

 

 溺れてるよ。

 足がつく浅瀬なんだけど。

 

 バシャ

 

「大丈夫かお手本見せるぞ」

「…………」

 

 少し泳いでみるか。

 クロールで多少遠くに泳ぐ。

 

 お、獲物みっけ。

 念弾発射! 

 

 脳天をぶち抜く。

 よしよし、大物だな。錬と一緒に食うか。

 

「ん? 錬は何処だ?」

 

 いない…………逃げられたか。

 魚料理をご馳走したいのにな。

 

「やっぱり痛い目に会わないと学習しないか…………」

 

 基礎体力中心でレッスンしてやろ。

 後々分かった事だが、この魚は食用じゃなかったので武器に入れた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ? side

 

 

 

 誰かの夢。

 

「よう、ハジメ!」

「あ、ノブナガ」

「久しぶりじゃねえか! 団員に入るか?」

「嫌だ。俺は自由が大好きなんだ」

 

 ノブナガが肩を組んでくる。

 

「あ、ハジメ」ピキ

「よく面出せたもんだな……」ピキピキ

 

 フィンクス、フェイタン。

 ハジメの顔を見ただけで青筋が立つ。

 

「あっ、ハジメ! 元気だったか!?」

 

 ウボォーギン、ハジメの背中をバンバン叩く。

 痛そうな顔。

 

「それで? 何の用だ?」

「クロロ、久しぶりだな」

 

 クロロ=ルシルフル。

 

「実は緋の目について調べててな。そっちは売買したって聞いたし、売った相手の顧客名簿って無いか?」

「…………」

「やっぱり知らないか?」

「スマン……実はブローカーが殺されたらしくてな。名簿を探したが何処にあるか分からんらしい」

「そうか…………」

「仕事場を片付けたり円を使って隠し空間を探したんだが見つからないんだとさ」

「…………」

 

 沈黙が続く。

 

「名簿使って何する気だ?」

「多数数複製して売る。世界七大美色の出処だし、食いつく奴らがいるかもしれん」

「ちゃっかりしてるなお前」

 

 金儲け大好きと陰で言われているって事は本人は知らない。

 

「中々借りを返せないな」

「いいよ後で」

「おうおうハジメェ〜いつか借りは返すぜぇ〜」

「ゆっくり待ってる」

 

 

 

 

 映像が途切れ、夢の主が起きる。

 

「夢…………?」

 

 目を擦り、ベットから出る。

 

「春奈ァァァァァ! 見て見てデカい虫!」

「お兄ちゃん…………外に逃がしてきなよ」

 

 夢の主の上司が朝からうるさい。

 今日も一日が始まる。



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第62話

カキン カキン

 

「強いですなハルナ殿」

「剣は必修で成績は良かったので」

 

春奈、エクレアと打ち合い押し勝つ。

基礎体力もあるしそりゃ勝つでしょ。

 

「あにさん。私はそろそろ仕事があるから」

「OK。またな」

 

仕事ってなんだろうか。

霊亀関係か? その際の波の尖兵の件か。

 

停戦協定してるし襲って来ないと思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

「謎の魔物?」

 

訓練を初めて数日後。

四聖と俺が女王に集められた。

 

簡単に言えば、三勇者はこの国は気に食わない。

交換条件に謎の魔物の討伐と波の参加。

 

そしたら各国に行っていいよ? って話。

 

ダメだよ女王。

ビッチの負債を取り立てなきゃ。

 

続けて女王様が説明する。

亀の甲羅をした怪物が各地で繁殖していると。

 

「わかった! やってやろうじゃねぇか!!」

 

樹、何をニヤリしてるのですかな?

 

ちなみに霊亀の兆候は前から聞いていた。

ゼルトブルにもその話も入っており、ウチの縄張りにも亀の甲羅を持った魔物が。

 

一応その話が広まる前に噂を流しておいた。

亀の甲羅を持った化け物が襲ってくるって事を。

 

武器や薬が売れる売れる……ヒャッハー。

そして解散。

 

ここで霊亀の事を言うと、徒党を組んで鳳凰の所へ行って四霊結界コースになるだろう。

流石にヤバイ。

 

「ハジメ様、どうします?」

「一旦領地に帰って戦力の確認をする。キラークイーンを置いてきちゃったし、戻ってヒソカとかフィトリアと連絡して連携を取りたい」

「了解しました」

 

この世界の三羽烏だな。

ヒソカは難があるが、フィトリアは話は聞くだろ。

 

 

 

 

 

 

「―――だってさ」

「わかった」

 

フィトリアとの通信が終わった。

 

フィトリアは一時静観し、勇者の様子を見るそうだ。

ヒソカ組は今本拠地の防衛をしてるらしい。

 

「さてと、春奈。やる事は分かってるな?」

「封印の防衛。確か三勇者はそこへ現れるはず」

 

よし、ポータル取ってるから行くか!

 

「眷属器の勇者様であられますね?」

「?」

「私を倒してください」

「………」

「このままだと使命を果たせません」

 

あ、気配を感じたと思い振り向くと例のあの人が。

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

「原作通りだな」

 

こりゃキョウがいる可能性もあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉぉぉし野郎共!! 馬鹿勇者様からこの像を守りきるぞ!」

『ヒャッハー!!』

「ムーブ、ムーブ!」

 

作戦通りに別れる。

 

俺らは霊亀国へポータルでたどり着いた。

まだ霊亀の封印は破られてはおらず、象は壊されてないので三勇者達はまだ来ていない。

 

なので待ち伏せして拘束する作戦だ。

 

しかし、こっちは少数精鋭。

二隊程の人間しか集まってないが能力者多しだ。

 

なので2つの場所で守る事に。

 

「とりあえず、守りの要は春奈とキラークイーンだな」

「おっけー」

 

コイツらの能力はどっちかと言うと守備向けだからな。

もう既に春菜は定位置について守ってると通信が入る。

 

なお、守ってない像はローナの能力で見張る。

 

「キラークイーン、防御OK?」

「もう張ったよ」

「よし」

 

これでOK。

後は待つだけだな。

 

チッ、あの野郎共……手間かけさせやがって。

何回もボロボロにされてるんだからもっと考えて行動しろよな。

 

さて、あいつらはどんな方法でこの石像を攻めてくるか。

 

「ナッ、ローナ! ミハッテタ石像壊サレタゾ!」

「え?」

 

やっぱり近くにきやがったな。

 

「誰が壊した?」

「男ダ! 青髪ノボサボサデダンゴッパナダゾ!」

「………は?」

「ワカラネェガ念能力使エル見タイダ! ミエナイ柱ミタイナノデブッ壊シテタゾ!」

 

青髪ボサボサで団子っ鼻?

………そんなキャラいたっけ?

 

もしかして謎の念能力集団の仕業か?

 

「全員、警戒レベルあげて」

 

クソ、イレギュラーかよ。

めんどくさいな。

 

パンパンパン!!

 

んあ? 何の音だ?

爆竹か?

 

「No3、見に行ってくれ」

「三勇者の罠ですかね?」

 

偵察が帰ってきた。

 

「ヤベエゾ! 三勇者ガ縛ラレテ寝テルゾ!」

「は?」

 

あ? どういう事だ?

誰かが三馬鹿を襲撃したのか?

 

「身柄を持ってきてくれ」

 

で、持ってきた。

 

「? 外傷が無い?」

「仲間も居ないし怪しいでござる」

「そこまで弱くはないですし……」

 

爆竹鳴らす時点でおかしさMAXでしょ?

 

「ねー父様。コイツら本物?」

「変装した偽物かも。コイツら拘束した後に本命が現れるとか」

 

モノマネ芸人もびっくりの後ろからご本人登場ってか?

 

拘束して帰った後、油断した隙に像を壊す……とか?

イレギュラーも三勇者もうっとおしい!!

 

本人確認できるのないか?

 

「春奈の方はどうなってる?」

「まだ現れてないそうです!」

 

春奈で青髪ボサボサに勝てるか?

………どうしようか。最悪撤退させるとするか。

 

「ピンチになったら行くとしよう。間に合えばいいんだけどな」

「ピンチなのはそっちじゃない?」

「は?」

 

ドガアアアアア

 

「きゃー!?」

 

なっ!? 霊亀の石像がヒビ!?

キラークイーンの白鳥の湖(クリスタルパレス)が聞かないだと!?

 

「まさかあの百鬼衆を討伐したハンターと会うとはね」

「………あ」

 

顔を見てピンと来たね。

コイツの顔は黒髪の短髪で顔は細長い。

 

どんな奴でどんな能力を持っているかよく分かった。

 

「まさか有名な奇術師に会えるとは、座長モリトニオ……いや、殺人鬼ジョンドゥ」

「ほぉ、よくわかったじゃないか」

「簡単なトリックだ。そっちがいなくなった時期と殺人行為が止まった時期が大体同じだ。更に巨大な磁石を使って奇術やってたろ? 大きい磁石じゃないとペンダントとかの金属物質は引かれないし殺人の凶器は推測できる」

 

モリトニオは変装を解く。

マジ!? ヒソカ外伝の人間が出てくるなんて!

 

「凄いな。よく調べられてる」

「殺害場所は興行の近くでよくやってたし範囲が絞られるだろ?」

「あちゃー仕方ないんだ。興行の後に殺したくなるし」

 

ヒソカLvの変態と変わりないと思うよ。

 

ちなみに前々の世界で犯行パターンが絞れない殺人鬼とかもいる。

時期や場所、ターゲット、殺害方法らがバラバラなので行動が読めず数百人殺した殺人鬼がいるとか。

 

「で? 今回は興行しに来たのか? ネタバレしてるから面白くないんだけど」

「正直やりたいんだけどね。今回は別」

「霊亀を起こしたいのか?」

「まあね」

 

なんだ? エネルギーが欲しいのか?

コイツもキョウと同じ目的?

 

「って事で」

 

ドガン ドガン ドガン

 

バキッ

 

なっ! 石像が破壊されただと!!

キラークイーンの強化ガラスは相当な硬度だぞ!

 

「全員、春奈の方へ増援! こっちは俺が何とかする!」

「チョウドイイ! ソッチ側ニ三勇者ガ襲撃シテキタゾ!!」

 

この三勇者は偽物だったか。

やはり徒党を組んでいたなアイツら。

 

多分モリトニオ1人だけで仲間は居ないと思う。

いたら数人がかりで俺を襲うのがセオリーだし。

 

あ、君の知らない物語発動。

 

ドカァァァァァァァン

 

「からの〜トマホークボマーX!」

「くっ、やっぱり一人じゃ分が悪いか……ぬおっ!」

 

相手は殺人鬼……民間人ばかり襲ってるらしいし、そこまでの修羅場はくぐってないんじゃないのか?

便利そうな能力だけど万能って訳じゃないし。

 

「後数手で終わりだ。投降するか?」

「冗談、逃げるよ。エスケイプ!」

 

シュン

 

く、何だこの逃げるシステム。

俺らも欲しいな……敵地での特攻に使えそう。

 

「さて、あっちの方へ手伝うか」

 

バリィィィィィン

 

「ふえ?」

 

あ、あれ何の音だ?

まさかまさかまさか!

 

「ヤッチマッタ! 変ナメガネガ石像ブッ壊シタ!」

「勇者を拘束しろ! 俺も早く行くから待ってろ!」

 

確か書籍版じゃクソメガネに捕まってエネルギー源にされてたっけ。

三勇者が囚われたら不利になりそう。

 

ん? 師匠は本の勇者だったよな………キョウは何の武器を持ってるんだ?

 

いや……早く増援しに行こう。

 



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第63話

アニメ楽しみ。


「GUUOOOOOOOO」

「クッソー! 撤退だ!」

 

 結果から言うと、三勇者を取り逃してしまった。

 像を壊された時にはもう霊亀の方に向かっていったらしい。

 

 クソメガネはもう既にいなかった。

 さっさとポータルで逃げよう。

 

 確か町や砦が崩壊したとか言ってたな。

 そっちの避難をするとしよう。

 

 三勇者達は民間人そっちのけだし、俺らは波の魔物を倒すのも民間人の避難も大事だと思ってる。

 

「ポータルアックス」

 

 まずは尚文達と合流しよう。

 多分オストといるだろうし、霊亀の事だったらよく知っている。

 餅は餅屋だし。

 

 …………

 

 

 

 ■

 

 

 

「さ、話を聞こうか」

 

 尚文と合流し、オストと一緒だった。

 一部始終を説明すると訳を聞かれる。

 

 尚文達はオストと出会ったあと、霊亀に挑んだがメルロマルクに帰ってきた。

 

「まず女王が三勇者に交換条件を出す前に、亀の甲羅の魔物は少し前から耳に入っていたんだ。それで春菜がそっちの本とか読んでてな、霊亀やその国に睨みをつけていた」

 

 嘘は着いていない。

 

「それで霊亀の封印の事とか知ってな。単独でやらせて貰っていた。すまんかったな黙ってて」

「…………何故黙っていた」

「この前のレーザー野郎の派閥の人間が出てくるかもしれないし、もし知られてたら他の封印に行くかもしれないぞ? 霊亀って言ったら四霊…………鳳凰とか麒麟の封印とかあるらしい。手を組んで壊されたら地獄絵図になってアウトだ」

「間違った事は言っていないと思います…………他にも結界を作る守護獣はいますので…………」

「まだいるのか…………」

 

 専門家と案内を頼みたいし、会っといて良かったと思う。

 

「で、レーザー野郎の派閥の人間が襲撃してきた。尚文が束になっても勝てない」

「そうか……」

「尚文はどうする? フィトリアは勇者の様子見を決め込むらしい」

「そっちはどうする?」

「さあ?」

 

 助けるよ……決まってんじゃん。

 

「もう既に避難勧告を砦や街に出している」

「お前立派だな」

 

 避難訓練が楽しいと感じる事があるが不謹慎だな。

 

「で、話を戻す。三勇者を取り逃した。あと変なメガネを目撃したらしい」

「変なメガネ?」

「ああ、霊亀の像を壊した。なんの理由か分からんがな」

 

 嘘はついていない。

 

「そっちは? 霊亀の止め方は?」

「こっちは……」

 

 女王曰く、頭と心臓を何かするそうだ。

 原作通りだな。

 

 メガネがいるからコアの部分があるだろうけど。

 

「なあ、オストだっけ? 聞きたいことがあるんだけど?」

「なんでしょう?」

「結界を作る魂のエネルギーって強力なのか?」

「ええ……波から干渉を防ぎ世界を守るので強力かと」

「…………もしかしたら像を壊したメガネはそのエネルギーを何かに利用しようとしてるんじゃない?」

「どういう意味だ?」

「せっかくだからその魂エネルギーをネコババして利用してやるって人間もいるんじゃない? って考え。魂を使った研究をする人間とか……そのメガネは研究者っぽい服装してたし」

 

 殺して回るのも面倒事だし、第三者に頼んで殺した方が楽かも。

 

 ホムンクルスとか作ってる錬金術師もいるしありえるし。

 …………魂関係は禁忌だったと原作にあったような気が。

 

「それは…………ありえますね」

「その場合にはもう既に霊亀中に入ってる可能性が高いし、そのエネルギーで賄って頭心臓を止めても動き出すんじゃない……霊亀を止める方法ってまだないの? 霊亀なんだから中の様子とか把握出来ない?」

 

 ゴキブリも頭取れてもまだ生きてるとか聞いた事ある。

 

「すいません…………そこまでの力は。ですがコアを壊すのがもうひとつの止める方法です」

「サンクス、探しておく」

「探せんのかお前…………」

「出来る」

 

 半径1km程だが円は可能。

 ネフェルピトーの様にアメーバみたいにも出来る。

 

 オーラを光子状にするのは練習中だがな。

 

 こうして話は続き、精鋭で討伐する事になった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「フィトリアを待とう。一応連絡しておいた」

 

 ちなみに魔法部隊は準備OK。

 この部隊をフィトリアの馬車に乗せ、転移し運ぶ算段なのだ。

 

「ん?」

「どうしたんですか?」

「いや、遠くから見たんだけど…………あの霊亀最初あった時と違うような」

「あ、本当でござる」

「あ、本当だ」

 

 なんか肌が銀色になっており、甲羅が多少ずんぐりしてるんだけど。重そう。

 あれ? もう既に頭が3つあるぞ? 

 

 どうなってるの? 

 

(お兄ちゃん、もしかしたらイレギュラーかも)

(分かっている。気をつける)

 

 ありえる話だな。

 この状態は異常としか思えない。

 

「来た」

「よう、フィトリア。準備OK」

「分かった。出すよ」

 

 馬車が現れる。

 

「入って」

 

 うわ、広い。

 こういうので世界を回るってのも悪くないな。

 

「…………ふぅ」

「女王、なんかあったのか?」

「私はフィロリアルが好きだったもので…………女王に会えるとは」

「仲介しようか? 頑張って指揮したって事を話しとくし、もしかしたらフィロリアルの聖域に招待してくれるかもしれないぞ」

「…………」ガタ

 

 …………目の色変えたよ。

 

 普通だったらパリストンとか仲介料をふんだくるだろう。

 俺は流石にしない。貸しを作るだけ。

 

 

 

 ■

 

 

 

「本当に便利だな」

 

 フィトリアの馬車から降りる。

 知り合いのアッシー君の方も負けてはいないのだが。

 

「お待ちしておりましたでごじゃる」

 

 ごじゃる口調の影が現れた。

 

 んで、この影が現状を報告。

 少しの所まで探索終了したらしい。

 

 こっちも円を広げて探索しよう。

 だけど細かい動きは分からないから大雑把な動きしか反応しないが。

 

 んーと。

 丁度右に100mの所に6人ほどの反応が。

 

 原作だと3人。

 ラルクグラステリスだ。

 

 残りの3人はヒミコと師匠か? 

 後1人は? 誰だ? 

 

 …………あるぇ? 霊亀のコアらしき空間があるんだが、3人浮いていて…………近くにまた3人が。

 

 ん? キョウじゃないのか? 

 あいつプライド高いから一匹狼だと思うんだけど。

 

 眷属器は…………? 

 まあいいヒミコ辺りに聞くとしよう。

 

「尚文、心臓らしき所を発見。霊亀体内にいる人間がいる」

「わかった。道案内頼む」

「オスト、コアの場所に誰かいるみたいだ。その中の3人は浮いてるし勇者かも」

「やはり…………」

「コアの方を叩いた方がいいかもしれん。最短距離で行きたいんだけど。道分かる?」

「すいません……そこまでの力は」

 

 だよね。

 だったら霊亀を止められるはずだし。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 さて、あと一人は誰かな? 

 

「そろそろ、曲がり角でエンカウントする」

 

 パンでも加えてぶつかるのがセオリー。

 ベタ過ぎてつまらんけど。

 

 ん、こっちに気づいたのか手前で止まった? 

 なんかガサゴソやってる。

 

「んじゃ先制するか」

 

 先手先手と働かないとね。

 出ていこう。

 

「オラアッ、勇者だ! 話聞かキャアアアアアッ!!?」

「ん? 何かあっキャアアアアッ!?」

「お兄ちゃん? 大袈裟にってキャアアアアアッッ!?」

 

 なんで驚いているかって? 

 

 そこにいた六人が中国のかぶり面を装備して睨んでいるからである。

 

 何を霊亀の中で何を遊んでんだお前ら。

 

「イエイ! 大成功!」

「いゃあ〜出会い頭でこれだとみんなビビるよね〜」

 

 おい、聞いた事ある声だな。

 

「お師匠! お久しぶりです!」

「ユニ、久しぶり。元気そうで何よりだ」

 

 

 

 ■

 

 

 

 ヒミコと師匠、ラルクテリスグラス、それでユニ。

 拠点へ戻ってきた。

 

 情報交換中である。

 

「とりあえずコアの部分へはまだ行けないんだね?」

「心臓をなんとかすればいけるって話」

 

 ヒミコの能力で行く事は出来るのだが、定員があるので数往復しなければならん。

 しかもイレギュラーがいるのでだるい。

 

「心臓を破壊すればいいの?」

「確かなんだが、壁に文字が書かれていた。頭と心臓になにかするそうだ」

「ゲームだと同時破壊とかそんな感じか?」

 

 ネトゲとか協力プレイとかそんなのでよくありそう。

 

「つーかさ、心臓破壊しても再生するんじゃないか?」

「…………なるほどね。確か頭潰しても再生するんだから有り得る」

 

 キメラアントなんて首はねても生きてるし。

 つーかなんなのこの生き物? キメラアントよりもヤバいよ。

 

「女王、一応魔法部隊連れて行こう」

「後魔物避けのパウダーを体に撒いておくよ。結構な効き目だから安心して」

 

 なんかパウダー取り出して魔法部隊にかけていく。

 んで、全員撒き終わった。

 

「あとでなでなでしてね?」

「…………」ナデナデ

 

 今するよ。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

「ドライファ・ジャミングX!」

 

 妨害魔法を上手く使い、心臓の攻撃を無効化する。

 

「高等集団魔法『封』!!」

 

 魔法陣が数個心臓にまとわりつき、心臓は動きを止めたようだ。

 

 頭は既に3つとも破壊済み。

 

「さて、オスト。コアまでの道を開いてくれ」

 

 オストが呪文を唱える。

 

「行きましょう」

 

 さあ、何があるのか。

 

 

 

 



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第64話

 それで俺達は魔法部隊と別れ、精鋭で階段を降りていた。

 

 色々聞いておこう。

 

「んで? 霊亀の体内で何やってたの?」

「実は私らの世界の人間が悪事を働く情報があってね。来ちゃった訳」

 

 諜報機関とかあるのか? 

 まあありそうだな。

 

「それでユニもいたのか…………」

 

 コイツの名前はユニ=クロックデス。

 現役のアイドルである。

 

 元々NEETだったが俺と知り合い、意気投合し好きなことをやってみる事になった。

 それで初めての踊ってみた動画を投稿しマジでバズったのだ。

 

 それからトントン拍子に有名となり、アイドルにスカウトされ頭角をメキメキと表し、僅か数年でトップアイドルになったのだ。

 

 武器は楽器かな? 

 マイクを装備しとる。

 

「うん…………トラックにはねられてちゃって」

「またトラック」

 

 なんなの? 本当に悪意しか無いんだけど? 

 トラック運転してるの誰だよ。

 もうここまでくると酒気帯び運転や居眠り運転なんてしてないだろ運転手……わざと? 

 

「そう言えばさ、ハジメ。ニーズヘッグのメンバーが複数の世界に来てるみたい」

「え、マジ?」

「目撃情報からアギレラ、マルシダス、シンゲン、カマゲロスとかいるぜ?」

「わぉ、シンゲンとカマゲロスも?」

「後は弟子も来てるね。リットやノリズロもいるらしいぜ?」

「マジ?」

「まだ見てない所もあるから全員じゃないと思う」

 

 わぁ〜ヤバいヤツのオールスターだ。

 

 シンゲンもカマゲロスも超手練。

 リットとノリズロは頭脳派。

 

「また新しい名前がでたね」

「ああ、賑やかになりそう」

 

 味方であれは頼もしい。

 

「そっちはどう? なんか面白い事あった?」

「ぼちぼちかな? 町の領主になって事業してる」

「楽しそうだね。温泉とかでしょ。また遊びに来るね」

 

 でも〜まだ何かやりたいんだよな。

 

 天下一武道会でもやってみようかな? 

 勿論賭けはするよ、転生者が参加したら予選で落ちるように細工でもしようかね?

 

「キューキャー」

「何それ?」

 

 ヒミコの服、胸の谷間から出てきたのか? 

 小さなアザラシだ。

 

「これ? ゴマちゃん」

「ゴマちゃん」

「ペットか?」

「式神、この世界には無いの?」

「無い…………ああ、ハジメの部下に召喚獣とか居たって聞いたが? それと同じか?」

「召喚獣……ああ、そっちとは違うやり方で作ってるんだ。媒体を指定して式神を構築するんだ」

「それで、召喚獣とやらはどんな方法で呼び出す?」

「ああ、生命力で動かすような感じ。どう呼び出すかはイメージと努力だな」

 

 べ、別に嘘ついてないよな。

 

「やっぱり欲しいか? ゲームじゃ召喚士やテイマー職とかあるもんな」

「まあな…………」

 

 もう既にテイマーみたいなもんだもんな。

 

「師匠もユニもいるの?」

「私はいるよ?」

「私も」

 

 俺もやってみたいなぁ。

 キラークイーンや夜刀ちゃんをもうテイミングしてるし欲をかきたい。

 

「皆様もうそろそろ」

「それで? いいの?」

「どうしましたか?」

「お前霊亀の使い魔だろ? 本体殺したら消えるんじゃないのか?」

「…………」

「最終確認…………覚悟は?」

「あります。遠慮なくコアを破壊してください」

 

 だよね。

 だったらここまで案内しないだろうし。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ここが霊亀のコアルームか。

 なんか制御室の雰囲気を感じる。

 

「イツキ様っ!!」

 

 あら、三勇者よ。

 …………助けられなくてゴメン。

 

 最悪錬だけでも助けてあげたかった。

 

「あっれー? やっと来たかー」

「飛んで火に入る夏の虫とはこんな事を言う」

 

 ………………誰だよお前ら。

 

 原作には無いキャラクターだ。

 金髪マッシュと黒髪短髪の細目。

 

「ううっ…………」

 

 あれ? キョウが倒れている? お前何やってんの? なに横たわってるんだよ。

 

 お前をボロボロにする事をどれだけ楽しみにしてたと思うんだ!

 

「あ、このボロ雑巾は放っておいていいよー」

「所詮、かませ犬」

 

 おい、あのタクトよりも強いし、霊亀のエネルギーを吸い取るとかよくやってるんだけど。

 

 あと…………コイツらに既視感があるんだが。

 何処かであったような。

 

「で、お前らは?」

「別にー名乗る名は無いねー」

「死人に名乗る名は無い」

「あ、確かどっかの国の有名人だよね? 金髪は魔法剣士で細目は商人だっけ?」

「チ、お前の顔も知ってるよ。本の勇者で薬作るのが上手いんだってー?」

 

 オーラからみて転生者だよな。

 

 でもおかしいな…………ブレイクしてるし、何故かキョウが倒れてる。

 

「で? その錬金術師は? そっちも有名人だけど」

「あ、コイツー? 上手くおだてたり報酬を積んだら一緒に連れてきてくれてさー」

「笑止、もう用無しだ」

 

 酷くね? 帰り方分かってるのか? 

 

「それでこの武器を盗った訳ーマジウケるー」

「あれは……私達の世界の眷属器!」

 

 鏡…………キョウは鏡の勇者だったのか。

 

「んでさー」

「答えなさい!」

「あー?」

「お前は何者! なぜこんなことを!」

 

 転生者で世界をボロボロにするためよ。

 自分が捨て駒だって考えないのか? 

 

「だってーさ、勿体ないじゃん。滅ぶんだし」

「俺達が有効活用する。安心しろ」

 

 本当にエゴイストだな。

 殺しても心痛まねえ。

 

 つーか師匠はなんでこんな奴らを始末しないんだよ? 

 

「お前らはいいのー? お嬢様方?」

「こっちに付いた方が得だが、可憐な人間を傷付けるのは心痛む」

「付く訳ないだろ。流石に無抵抗の人間を殺すのは問題あるだろうが」

「バァーカ! 断られてやんの(笑)」

「「…………」」

 

 流石に民間人殺すのは俺でも抵抗ある。

 ゾルディック家でもターゲット以外はあまり狙わない。

 

「さっさと元の世界に帰れよ」

「まあいいや…………それにしても久しぶりだねー? クソゴミ。元気だったー?」

「挨拶も無し。屑め」

「?」

 

 おいおいおい。

 まさかお前らは!!! 

 

「あれ? やっと思い出した? 俺ら一目みただけでもわかったよ」

「山川創。思い出したか?」

「俺達にお小遣い、ありがとうございまーす!」

 

 お前らは樋口の腰巾着だった二人! 

 転生者の一味に入っていたのか!! 

 

「誰だコイツら」

「俺の元いた世界の人間だ」

「!!」

 

 まだ転生者の事を知らせるつもりは無かったんだがな。

 

「どういう事だ……?」

「後々言おうか思ってたけど、この世界に転生者や転移者見たいな奴らがいて凄い迷惑かけてるんだ」

「そんな奴らがいるのか…………」

「メルロマルクには少ないけど」

「こっちじゃフォーブレイやゼルトブルに多いよ」

 

 結構転生者狩りは進んで利権や金品等を貰ってるよ? 

 狩り尽くした地域は平和になってるらしい。

 

 タクトはまだだ。

 妹に嫌がらせした分嫌がらせしないと。

 

「確か…………羽鳥信輔と梶間光志だったけ?」

「あら覚えてたの? 偉いわねー…………でさ話変わるけどーレイの事知らないか?」

「通信が入らなくてな」

「あ? 知らない」

 

 通信? 異世界と通信とかしてたのか? 

 確かもうそろそろ寝取り結婚式は終盤らしい。

 

「おい」

「何?」

「その斧を寄越せ。貴様見たいな雑魚が持っていい代物では無い」

「…………」

「寄越せよーお前お小遣いくれたじゃん。ほらー頂戴」

 

 なんだコイツら。

 もしかして俺の事弱いと思われてんの? 

 

「やるわけ無いだろ」

「あのねールールなの。馬鹿は奪われるの」

「ルールは従うものだ。ゴミめ」

「だから濡れ衣を着せられて殺されるんだよ」

「あれは助かった。俺達も乗っていたからな」

 

 はぁ!?!? 

 お前らも共犯かよ! 

 

「ちなみに濡れ衣の提案は俺ねー。親が警察官僚だから揉み消してくれたよー」

 

 …………。

 

「それでねー。コイツの家は全テレビ局に根を張る会社だしーそれで凶悪で陰湿な人間に仕立てあげたのー」

「俺らに疑いの眼差しが来ないようにな」

 

 …………。

 

 感情の解放によるグロウアップ! 

 カースシリーズ、憤怒の斧の能力向上! ラースアックスに変化! 

 

 ラースアックス

 

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「ボルトアクション」「エレファンテダウン」「ヘブンズタイム」

 

 専用効果 雷纏 敏捷向上 腕力向上 MP自動回復

 

「やっぱりゴミだね。コイツら」

「クソゴミはハジメ君どぇーす」

「は、庶民が我々の役に立てた。光栄だろ?」

 

カースシリーズ、ラースアックスの能力向上! ラースアックスⅡに変化! 

 

 ラースアックスⅡ

 

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「ボルトアクション」「エレファンテダウン」「ヘブンズタイム」「スクリームオブゼウス」

 

 専用効果 雷纏 敏捷向上 腕力向上 MP自動回復 HP自動回復 避雷針

 

 ………………コイツらも結婚式に出席させよう。

 合同の結婚式にしてやろ。

 

「さて、貰おう。デビルフィールド」バチバチ

「…………!」

「な!! 武器が!!」

 

 シュウウウウアウウウウン!! 

 

 勇者武器のアイコンが消え、黒髪細目に斧を奪われる。

 デビルフィールドってのを共有していたのか。

 

 ん? 尚文の盾は奪われてない?

 何か制限でもあるのか? 

 

「レイの情報によるとスゲー強い武器らしいなー」

「俺にふさわしい武器だ」

 

 コイツらには十全に使いこなせないだろう。

 使いにくい斧とかもあるし。

 

「じゃーさー創君。せっかくだし俺の人形の実験台になってくれよー」

 

 金髪マッシュは…………なんだ? 巻物? 

 取り出してなんか呪文を唱えだした。

 

「ウッウウ」

「アアッ」

「グウウゥッ」

「何コレ…………」

 

 華美、いや悪趣味な人間が召喚陣から出てくる。

 体がツギハギだらけ、肌色悪い…………見てるだけで不愉快。

 

「あー! コイツらは!」

「ヒミコ?」

「確か行方不明になった上級冒険者だ! 似顔絵が精巧に書かれていたから見覚えある!!」

 

 レイと同じく実力者を拉致していたか。

 もしかしたら仲間を人質にとって脅迫とか。

 

「ああーそうだったけ? 俺の没人形って強い奴のしか作らないからそうだった」

 

 なんだコイツ? 人を操り人形にする能力でも持ってんのか? 

 

「おい、まさかそいつら…………」

「師匠? まさか…………」

「多分死んでる。肌の色も瞳孔も開いてる……匂いも」

 

 ゲッコーモリアのゾンビ兵のような感じか。

 確かに恐怖感ある。

 

「いいでしょー! 死んでるけどまだ意識あるんだー! 魂を定着させてーステータスや属性を再現してるんだー」

「生意気だったからいい気味だ」

「ちなみにー死体と魂を定着させると拒否反応起こるからね…………すっごーい苦しいよー?」

「なんて事を…………」

 

 …………なんなんだコイツら。

 殺されても文句が言えない。

 

「タスケ……テ」

「コロ……シテク……レ」

「コロ……シテ……」

「アッハッハッハッハッー! 自業自得だろ? 俺を陰でバカにしたしなー」

 

 没人形だったけ……涙を流して懇願する。

 

「はっ、お前なんかさー娘を人質にされてギャーギャー騒いで馬鹿みたーい。娘は売り飛ばしたから生死不明だけどね」

「アア……ウウ……」

「人質取られた時の顔。最高だったなー」

 

 ああ…………もう…………いいよね。

 

「さて、リンチタイムだ! シールドオーン!!」

「…………レイの事も聞かせて貰おう…………何か知ってるな?」

 

 後ろを向くと尚文や師匠達が入れないように柵が出来ている。

 

「…………とりあえず感謝してやる」

 

 シュパ! シュパ! シュパ! 

 

「へ?」

「は?」

 

 没人形の首がはねられる。

 

「やっと本気を出せるぜ…………」

 

 

 

 

 

 

 



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第65話

アニメ楽しみ。


「この柵……結構な出来だな。時間がかかりそう」

「師匠、いくらかかる?」

「1分くらい。私は科学者タイプだからね」

 

 1分くらいかかるって凄いのかよく分からん。

 

「それにしてもやっちゃったね〜敵」

「そうだね〜」

「…………なんかあったんですか?」

「あにさんはね〜実はまだ本気じゃ無かったんだよ」

『はい?』

 

 やっぱりわかってたのか。

 配下の方にも言ってないし。

 

「…………どういうことだ?」

「ハジメの海賊王(ジャンキーコレクション)なんだけどね……具現化した武器を持って戦う能力があるんだ」

「あ、まさか」

「その通り。具現化した武器は武器のカテゴリーに入る」

「実際、ヒミコちゃんに具現化した剣を持たせたけど弾かれたし」

 

 その通り。

 十全に本気を出せなかったからあの時に師匠を寄って集ってたのである。

 

「つまり?」

「武器を奪われた方が強くなる。その使えなかった能力の一つにバフをかける能力があるから、身体能力はもっと上がると思うよ」

「全く……この世界の転生者達はザコだね」

「本当に情けない……やる気あるのかな?」

「もう一度母親の胎内に戻って体作り直した方がいいね」

 

 ああ…………カッコイイこと言っても瞬殺される。

 ドジる事とかよくあるみたいで、その際に問題起こして国に迷惑かけるのもよくあるとか。

 

「おい!! 今何をした!!」

「あ?」

「貴様ァ……どんな汚い手を使ったァ!!」

 

 ああ、この能力? 

 この刀、月詠に入ってる能力の一つ、殺戮任侠殺助(ブロードウェイ)だ。

 

 簡単に言えば暗殺人形だな。

 標的と術者が50m以内の時に使える能力で、転生者を狩るために大変役に立った。

 

「クソクソ! ゴミのくせして俺の人形をっ!!」

「ゴミはお前だろうが」

「んだとテメェェェエエ工!!」

 

 あーあー、また巻物使ってなんか出す気だ。

 ん? 次は? 侍風だな。

 

「見ろ、こいつは10年前50人を殺した大量殺人鬼だ! お前なんか」

「てい」シュパン

「は?」

 

 ワープホールを出してゾンビの首をはねる。

 これも月詠に入ってる能力、瞬間少年ジャンプ(ディメンションスラッシュ)だ。

 

 説明するとワープホールを作り、剣戟のみを瞬間移動させて攻撃を行うのだ。

 

「ブサけんなよ! じゃコイツは特異な毒魔法をもった元宮廷魔術師だ! 戦争じゃ敵無しだとよぉ!!」

「鳳凰一文字!」シュパン

 

 別に説明要らないね。

 炎に剣を灯して特攻してるだけ。

 

「クソ、じゃコイツだ! 南の国で3年連続でチャンピオンになった最鋼の闘士!」

「滝流し!」

 

 飛んでからのぶった斬り。

 足が地面に着いてないと威力が上がる能力。

 

「呪術界最強のシャーマン!」

「飛燕斬」

 

 燕の様な体捌きで胴を斬る。

 

「歴史上最も被害を出した放火魔!」

「流星剣!!」

「銃の悪魔!」

「八極陣天明剣!」

「強盗殺人を行う極悪兄弟!」

「ハンドレッドソード!」

「…………」

 

 いつの間に盗ったんだ? と思ってるんじゃない? 

 グラスにやられてノビてる時にこっそり盗りました。

 

「クソくそくそくそっ! ちくしょう! 切り札だぁー! 最強の王国と言われた騎士団長!!!」

「迅速三枚下ろし!」

 

 常人には見えない速さで首と胴をぶった斬った! 

 この能力の使用者は駆け出しの剣士なんだがな。

 

「は、はははははっ嘘だろ……」

「待て、諦めるのは早い」

「だな……正直面倒だから出したくないが」

 

 なんだよ次は。

 

「グオオオオオオオオオオッ!」

「はっ、ははははははっ! 俺の奥の手だ!」

「ドラゴンゾンビか」

 

 うーん。ドラゴンゾンビはこの世界にもいたしな。

 

「えい!」

「グオオオオオオオオオオッ!?」

 

 普通にオーラを放出し、首、胴をたたっきる。

 

「やれやれ、私が2分かかるとはこの牢は堅いな」

「やろうと思えば私の蛟龍で抜け出せるんだけどね」

 

 あ、師匠達も出てきた。

 そのまま三勇者を助けるみたいだ。

 

「こんの……卑怯者ォォォォォォォ!!」

「どんな汚い手を使ってる!」

『…………』

 

 もうみんな沈黙だよ。

 コイツら好き勝手悪い事してるのに、自分の都合が悪くなったら卑怯か。

 

 俺は努力したりしてこの力を手に入れた。

 運が良かったのもあるんだがな。

 

「クソ! トマホークボマー!」

「てい」カキーン

「ぎゃあああああああああ」ドガーン!! 

 

 細目がスキルを使ってきたので弾き返すと、金髪マッシュに当たる。

 使い手が弱いからソイツは当たっても死なない。

 

「ふざけんなよテメェ!!」

「このクソが!」

「あのね〜。他人に濡れ衣着せて殺して〜他の世界に手を出して〜武器を奪って〜人をゾンビ兵にして苦しめてるのに…………自分が人間のクズだと分からないか?」

「ハッ、強い奴が正義だバカが!!!」

「アリの巣に水を流してなんの罪悪感がある?」

 

 あ〜良かった…………言質は取った。

 

 コイツらにはフォーブレイの国王に差し出しても罪悪感が無いや。

 レイのカスにイグドラシル製薬を渡して地獄を延長戦してやろうと思ってたし、コイツらも地獄を見せてやるとしよう。

 

 強い奴が正義ならば、俺の考え方は正義だな。

 

「クソクソクソ! クソ!」

「仕方ない、逃げるぞ」

「…………だな。収穫はあったしな」

 

 あ! 霊気のエネルギー! 

 ってか武器返せ…………あ、俺武器無い方が強いんじゃね? 

 

 ワープホールみたいのを出し、逃げようとする。

 

「待て!」

「じゃあなバカが!」

「この借りは……返す!」

 

 追おうとするが、数体の霊亀の使い魔が道を阻み覆う。

 逃がした。

 

 逃がすか…………合同結婚式に招待してやる。愛する人間も一緒にな。

 

「それよりもコアを!」

 

 だな。

 民間人を被害が増える一方だ。

 

「サンダーバード!」

 

 雷を纏った一撃をコアにぶつける。

 霊亀のコアは砕け散った。

 

 …………オスト、これでいいんだよな。

 

「よし、追いかけるぞ!!」

「あにさん! また今度会いに行く!」

「ハジメ、落とし前は絶対付けさせるから!!」

「待て! 生かして連れてこい! 考えがある!」

「師匠、善処する!」

 

 フォーブレイの国王に貢がないとな。

 この前あのカスを捧げたのは好評だったらしい。

 

「迷惑かけたな……すまんかったな」

 

 師匠達はワープホールを通って行った。

 

「オストさん!」

 

 オストは脱力し、消滅しかかってる。

 …………コイツは本当に霊亀なのか? 人の事考えてる時点で疑う。

 

「消滅する前にお伝えしなければならない事が…………」

「こんなのあんまりです……」

 

 こっちも同じ感想だ。

 魂のエネルギーを奪われて自分を犠牲に。

 

「オストさん、ありがとうございました」

「ああ、ここまで来れたのはそのお陰だよ」

 

 コイツがいなかったらここまで来れなかったろうし。

 

「お願いします……奴らに死の報いを」

「ああ、任せとけ」

 

 オストは粒子となり……ゆっくりと消えていった。

 

 シュ!! 

 

 うん…………なんだこれ? 

 白いロープ? 

 

「尚文」

「なんだ……は?」

「この巻きついてるのは……なんだろう?」

 

 白い……蛇? なぁにこれ? 

 あ、ワープホールの中から出てきてるんだけど。

 

 って! 引っ張られる!? 

 

「何これ何これ!」

「なんですかこれは?!」

「父様!」

 

 ローナと夜刀ちゃんが引っ張る。

 俺も踏ん張るが効果が無い。

 

「おい! 離せ! なんかに巻き込まれてるぞ!」

「そこまで薄情じゃないですよ!!」

「私も!」

 

 お前ら……良い部下持ったな。

 待て待て待て、引っ張られる力が強くなった! 

 

「「「わああああああああああ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドタ!! 

 

「「「ぎゃあ」」」

 

 後頭部打ったけどハンターにとって日常茶飯事。

 血反吐吐くよりはマシだな。

 

 着いてきた二人は無事のようだ。

 

 で、何処だここ? 白い……宮殿? 周りが砂漠。

 静かな所だな。

 

「やあ! 待ってたよ!」

 

 後ろを向くと……白い巨大な蛇が戸愚呂を巻いていた。

 煙管を吸ってるよ。

 

「ようこそ……世界の狭間へ!」

 

 

 

 

 

 




海賊王(ジャンキーコレクション)
・小さな本を具現化し、15人までの念能力をコピーする能力。特質系。
・コピーするには以下の条件を達成しなければならない。
① 実際に能力を見るか、能力名を唱える
② 対象に「降参する」と発言させる
③ 能力と能力名を対象に教える
④ ①〜③を対象に触れたまま行う
・系統や念のセンスをもコピーしたり、1度に2つ以上の能力を使う事も(オーラ消費は激しいが)可能。
・コピー元の能力者がコピーされた自分の能力の説明を書かれたページを触わると、その能力は消去される。



◎月詠
・相手の剣の技術、もしくは剣の能力をトレースする能力。特質系。
・トレース条件は、
①剣技、もしくは剣を使った能力を見る
②相手に柄を握らせる、もしくは後頭部に柄頭を当てる



口寄せ・蛟龍(メガロドン)
・どんな水中地中でも泳げる念魚。具現化系。
・中は大人が2.3人入れる大きさ。

この能力を使用し、本人は師匠よりも財を築いている。


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第66話

「とりあえず、席に座ってよ。お茶は飲むかい?」

「いや、いい」

「クッキーとケーキあるよ?」

「それよりもなんなんだここは?」

 

 俺らは近くにある椅子に座る。

 

「だよねー。それが気になるかー」

 

 この蛇なんだろう。

 重要なキーマンな雰囲気があるんだけど。

 

「じゃ、自己紹介するよ。私はマスラ、フリーの神狩りだ」

「神狩り!!?」

「と、言っても弱いよ? 下の下の実力ね。新人の神しか狩らないよ」

 

 ……新人潰しの神狩りって。

 何の用だよ。

 

「んで、質問に答えるよ。ここは世界の狭間にある隠れ家的な私のアジトだ」

「隠れ家っていい雰囲気だよな」

「あ、わかる? ロマンだよね」

「木の中とか水中の家とかグッとくるよな」

「自分の家がカラクリ屋敷だと楽しくなんない?」

「わかる! 俺の家には隠し扉や隠し部屋とかあるぜ」

「あーいいです? 話戻してくれませんか?」

「おい、ローナ。せっかく互いに友好を育んでいるのになぜわからん? 意外と趣味で気があって仲良くなったりして会社とか大きくなるとかよくあるぞ? だけどあの二人をボロクソにしたいし他の奴らがどうなったか気にかかる。元勇者に何の用だ? 神狩りさん?」

「…………」

 

 俺間違ってないよね? 

 

「ま、まあ。それが普通だよね。話を戻そう」

 

 マスラは吸殻を灰皿に捨てる。

 

「実はね。主人が君に力を与えて欲しいと言われてね」

 

 主人? なんだろう。

 …………どうなってるんだ? イレギュラーだよな。

 

「ホントは主人がやればいいのに忙しいってさ」

「神狩りなのか? つーかなんで俺に?」

「まあね。なんで君が勇者として召喚されたかも知ってるかって話になるけどね」

「……」

 

 …………召喚された理由? 

 

「単に強いからとか原作を知ってるとかじゃないの?」

「大体あってるよ?」

「…………俺の身の上話を話した覚えは無いけど」

「ああ、私の異能だよ。私は弱いけど解析が得意なんだ」

 

 そんな異能があるとは。

 

「ざっくり大まかに言うとね。神狩りにも色々いるんだ」

「……?」

「君は神狩りに選ばれて送り込まれたんだ」

「マジ?」

 

 え、俺は神狩りに選ばれて送り込まれたの? 

 

「神にも色々いてさ。君を送り込んだ神は面倒くさがりでね。上位世界の中でも強くて原作を知ってる人間を選んだんだ。行かなくても良いようにね」

「…………確かにその方が楽だよな」

 

 能力があり信頼出来る部下に仕事を頼んだ方がいいような感じか。

 

「あれ? 他の仲間も召喚されてるんだけど?」

「あーそれはね…………君が召喚されたから前居た世界に繋がりができたんだ。そこで神狩りは上位世界の人間で実力者をそのまま引っ張ってきたんだ」

「は?」

「轢き殺した人間は複数いるから探してみるといい。私は詳細はわからない」

 

 それでトラックで轢き殺したってわけね。

 …………その神狩りとはちょっとお話しなきゃな。

 

 パリストンとか轢き殺してないか? 

 それか幻影旅団とか。

 

「それで? 力ってなんですか?」チュー

「うんそれはお楽しみ。君らにもあげるからね」

 

 わーローナがいつの間にかジュース飲んでる。

 

「なあ、解析が得意ってことは他の質問していいか?」

「いいよ?」

「あの念能力者集団はなんなんだ?」

 

 あれが1番気になっていた。

 クソ女神よりも厄介そう。

 

「あれか……アイツらも神を詐称する奴らと同じなんだ。君の世界に繋がりがあるけど…………目的がイマイチわからない」

「アイツらも同じか」

「うん、勢力的には強敵だし気をつけて」

「わかった」

 

 厄介そうだ。

 天敵系の能力者とかもいそう。

 

「そういえば夜刀ちゃんて何者?」

「んー分からないな。でもなんか不思議な雰囲気だね…………長く神狩りしてるやつに聞けば何か分かるかも」

 

 この生き物はなんだろうか。

 特質系だし固有の魔法を使う。

 

 多分凄い生物だと良いな。

 

「ああそうだ。まだ君について分からない事がある」

「?」

「実はね……君は斧の武器に選ばれる予定は無かったんだよ」

「「?」」

 

 あい? 分からない。

 じゃなんで選ばれたんだ。

 

「選定される予定の武器は剣・鞭・刀・銃剣・三輪車・仏具だったらしい」

「三輪車でどう戦えと」

 

 三輪車? 突撃するの? 

 

「それで斧も1番で選んだけど、力関係とかもあって候補から弾かれた」

「? じゃあなんで選ばれた?」

「分からない……だけど解析したら斧の眷属器と何かの縁があるみたいだ」

「縁?」

 

 いやいや、前の世界で斧とか使った覚えないけど。

 

「もしかしたら斧の前任と縁があるかもね。それか運命をねじ曲げる程の触媒が近くあったとか」

「んーなんだろ」

「帰ったら調べて見るのも良いかもしれませんね…………」

「このクッキー美味しいね」

 

 縁ね……サーヴァントの触媒見たいな感じか。

 前の世界の人間が勇者の前任……ありうるな。

 

 ジジジ

 

「?」

「あ、時間切れみたいだね。言うの忘れてた」

「なんか体が薄くなってきました」

 

 ジジジ

 

「それじゃ加護あげるよ」

 

 ホワン ホワン ホワン! 

 

「君らにあった加護だから。使い方は自分が知ってるよ」

「なんか頭に入ってきた……」

「俺も」

「私もです」

 

 んーとなになに?

 

 JPDWTAG&★WMAGJATM (´Д`)ノ゛

 

 なんて書いてあるの? 

 顔文字利用しているぞ? 

 

「なあ文字化けして読めん」

「多分時間掛かるのかな」

 

 ジジジ

 

「もうそろそろだね。死ぬなよ」

「そっちもな」

「へーき。新人ばっかり潰して……らそこ……危険は無……」

 

 ダーウィンズゲームのバンダ君を思い浮かぶ。

 あと音が飛んでる

 

「君が……たい世……に送り込ん……から安心し……ね。ん? ……しいななんで……先が変わっ……よ」

 

 ん? なんか不穏な空気だな。

 

「しまっ……。……召……だ。し……も…………だ。武器の力…………らし……」

 

 何言ってる?

 あ、視界が霞んできた。

 

「確…………は君の……ある……呼ばれ……ん……。ゴメ……の……だ」

 

 んん? 音飛びだけどなんかミスしたのか? 

 

「……飛ん……るか……何言……も…………いよ……。……に……メ……。てへぺろっ!」

 

 おいおい! 最後聞こえたぞ! 

 ミスしたんだなコラっ!! 

 

 俺の目の前は真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドガ!! 

 

「いてっ」

「ああ勇者様、この世界をお救いください!」

「は?」

 

 あれ? デジャブ? 

 まさか巻き戻った? 

 

 いや違う……ここは見覚えは無い。

 

「ん? 何コレ……銃剣?」

 

 

 

 

 

 




もう1つの異世界へ。


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また勇者召喚されたけど平和でした
第67話


アニメ開始。


「んと? どうなってるんだ?」

「ええはい、勇者召喚です」

「…………」

 

 あれあれ? 勇者召喚? 

 …………なんかあの蛇なんか言ってたよな、てへぺろって。

 なんで…………あ! 

 

「他の召喚は!?」

「?」

 

 周りを確認する……! ど、どういう事だってばよ。

 ローナと夜刀ちゃんがいない? 

 

 俺1人? 

 

「あ、あの」

「あ?」

「代表にあって欲しいのですが…………」

「代表?」

「はい、この国【バムズガーデン】の女王に」

 

 バムズガーデン……この国の名前だな。

 ビッチの端末だったら他の国に逃げるとしよう。

 

 それにしても周りの奴らの身なりは商人風だな。

 ゼルトブルと同等の国だろうか? 

 

 外を見るとイギリスのような中世な感じの国か? 

 

「さて、んじゃ案内してくれ」

 

 ローナと夜刀ちゃんが心配だ。

 尚文と他の仲間はどうなったか気になる…………あら、キョウはどうなったんだろう? 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「女王陛下のおなーりー!」

 

 数分待っていたらやっと出てきたようだ。

 金髪のロングヘア、王冠を被っている。

 

 14歳くらい……と、言っても若さなんて誤魔化せる。

 

 ウチの師匠が良い例だ。

 ちなみに年齢は32……ロリババアだ。

 

「銃剣の勇者様、よく来てくれました!! 私女王のリーネと申します!」

「…………」

「あ、あれ? なんか……粗相しましたか!?」

「あ、いや。色々騙された事が会ってね。初対面の人間には警戒するんだ」

「えー!? そんな事しませんよ!!」

 

 嘘発見能力、邪のレンズ(ライトニング)

 嘘をついた人間の思考を読む能力。

 

 嘘はついていない。

 

「いいですかー勇者様。こっちに裏切りにメリットは無いです」

「?」

「この世界は全部で三カ国しか無いんですけど、我が国は勇者様含めて二人しか勇者はいないんですよ」

「なんかやらかしたのか?」

「いえ、やらかすのは他の二国です。後で説明します」

 

 なんだろうこの国……厄介事抱えてそう。

 ん、後一人の勇者は? 

 

「えー改めてようこそ、【バムズガーデン】へ」

 

 で、ロリ女王リーネの説明。

 

 波って災害が出て困った。

 それで召喚したと。

 

 まったくこの前の召喚時と同じやん。

 

「それで、この国を波と他の国から守って欲しいんです!」

「戦争か? 俺は売られた喧嘩は買う方だけど、自分からは売らないぞ?」

「いえいえ、戦争じゃないですし、こっちからは売りません」

「?」

 

 見えてこないな。

 よく分からんけど戦えと? 

 

「イクサってシステムがこの世界にありまして…………戦って殺されても死なないのです。条件がつきますが」

 

 死なないの? 

 世界にルールがつくなんて新鮮だな。

 

「それで……」シュ

「ん?」ジュワ

「使えるんですね……」

 

 あれ? 隠を使ったって事は……使えんのかい! 

 

「ええ、歴代の勇者に使える人がいましたので。結構能力者はいますよ。まあ一般人には秘匿ですけど」

「いるんだ…………」

 

 うーん能力者がもう既にいたとは。

 秘匿にしてるのは感心。

 

「それで、こっちからも質問。他の国は? 他の武器は? 噂も欲しい」

 

 これらは大事。

 どーなってんだろ。

 

 で、説明される。

 

 一つ目の国は武力と数の国【ライガーフェン】

 この国は武闘派のうえに人数が多く、何時どこでも喧嘩とか国内で起きているそうだ。

 この世界の防衛を基本的に任される。

 武器は四聖武器は忍具、眷属器は脇差・車輪・時計だそうだ。

 

 二つ目の国は自然と資源の国【アルコイリス】

 国面積は一番を誇り、多数の動物や珍しい植物が生い茂り、食料や鉱山資源が豊富。

 厳しい地形や気候が多いらしく難攻不落の国だってさ。

 この世界では食料生産等の資源物資を担う。

 武器は四聖武器は棒、眷属器は弩・農具・漁具・砲。

 

「それで最後に私達の国、技能と商業の国【バムズガーデン】です。鍛治や料理等の技術者や、お菓子から武器まで売ってる商人もいますよ。この世界では武装や薬の商売を担います。現在の武器は四聖武器は銃剣、眷属器は鋏です」

「…………」

 

 あーこれ知り合いいるわ。

 鋏って言ってたし、グラスが言ってた通り奴らがいるな。

 

「まだ召喚されてない武器がいるってことか?」

「……ええ、四聖は球、眷属器は十手と眼鏡がまだです」

 

 んんんんん? 

 

 四聖勇者=銃剣・棒・忍具・球

 眷属器=脇差・車輪・時計・弩・漁具・農具・砲・鋏・十手・眼鏡

 

 眷属器が10個? 

 

「四聖と十輝星です。他の世界では8つの筈ですが、この世界は10あるんです。不思議ですね」

 

 えっと、4と8だよな。

 オーバーしてるけど……なんか会ったのか? 

 

「他の球・十手・眼鏡は? 何処が召喚する?」

「十手は【ライガーフェル】で球は【アルコイリス】だった筈です。いつ召喚はわかりません」

「眼鏡は?」

「実は……眼鏡の聖遺物が行方不明で三カ国で探しているんです」

 

 あ、確かなんか使って勇者召喚するんだっけ? 

 聖杯戦争とそっくりだな。

 

 

 ☆

 

 

 一方、【アルコイリス】

 

「喰らえぇぇ!」

「スコーピオンシュート!」

「ヘビーキャノン!」

 

 ドカアアアアアアアアアアアアアアアン!!!! 

 

「うおっ!?」

「へいへーい、アギレラ〜残弾そろそろじゃないんの〜」

「さっさと帰りなさ〜い!」

「テメェら……」

 

【アルコイリス】のとある砦。

【バムズガーデン】VS【アルコイリス】のイクサ。

 

「アギレラ殿!」

「ん? なんだ」

「勇者召喚が成功したそうです」

「何!? おい、ベリト! カマゲロス! 停戦だ! 後でぶっ潰してやる!」

 

 

 ☆

 

 

 一方、【ライガーフェル】。

 

「おい、マルシダス。ネクタイ曲がってるぞ」

「ああ、スマン。朝とかよくあるんだ」

「身だしなみは大事だぞ。後輩勇者と初対面だしな」

「分かってる」

 

【ライガーフェル】、勇者召喚準備中。

 

「それにしてもミレナリオ、後輩ってのも懐かしいな」

「ああ、新人に指導したり一緒に仕事したりハラハラだったもんな」

「ああ、大変だったのが──―」

「お前ら集まってんな!」

 

 黒のセーラー服の女が現れる。

 

「ギンコ、やっと来たか」

「まあね。こっちも手がかか……おい、マルシダス。寝癖ついてるぞ」

「あ、悪ぃ」

「あ、目ヤニもついてる」

「勇者だろうが……しっかりしろよな」

「スマンスマン」

 

 賢者風の男が三人に近づく。

 

「勇者様、召喚準備出来ました」

「わかった。始めてくれ」

「そういえばハットは?」

「【バムズガーデン】にカチコミだそうだ」

 

 

 



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第68話

「うむ……」

「それじゃ歓迎会でもしましょうか」

「いやいやいいよ……」

「料理とかこの国は自慢ですよ! ライガーフェンは簡単な料理しかないですし、アルコイリスは焼いたりして調味料かけるだけですから」

 

 確か技術と商業の国だもんな。

 

 俺も料理は得意じゃあないんだけどね。

 結構美食はやったはずだけど。

 

「そういえばなんでこの国は二人しか勇者がいない?」

「じ、実は……」

 

 リーネはボツボツ話してくれた。

 元々勇者は一つの国に最低限二人らしい。

 

 それでイクサってモノがあり、勇者の所有権利を争った戦いがあったそうだ。

 一つの武器を奪い合う為にゲームとかあるシステムになっている。

 弩は狙撃のPK戦だったり、脇差はナイフの格闘戦、農具は野菜を使った料理バトル、車輪はチキチキマシンレース。

 

「野菜を使った料理では負けたのか? 料理技能はある方なんだろ?」

「ええ……新種の野菜を使ってきましたし、偵察されていたらしいんです」

「偵察…………」

 

 偵察までするのかよ…………時と場合によってはギンギンのブラックだぞ? 

 

「それで私らは負け続けて、最低限の武器の銃剣と鋏は手に入れました。哀れみなのか幸い眼鏡の武器の権利は譲ってくれましたけど…………」

「何処にあるか分からないし、見つけたら召喚していいよって事か」

 

 …………ん? なんで行方不明なんだ? 

 盗まれたんなら何処かで召喚されてるんじゃないの? 

 

「一応召喚されてるかどうか分かるアイテムってあるのか?」

「ええ【アルコイリス】の王都の地下、【アロウ遺跡】に四聖武器と十輝星勇者のレリーフがあります。そこで生存してるかどうか確かめれます」

 

 そこはフォーブレイと同じなんだな。

 

「捜し系の能力者とかは?」

「いたら召喚してますよ」

 

 ですよねー。

 俺の能力にも無いよ? 

 

 今後とヒミコの世界の能力者に期待するか。

 

「それで? 鋏の勇者は?」

「ただいま【アルコイリス】に遠征中です」

 

 そうか……アイツにはまだ会えないか。

 戦えれば魔物の大群は一溜りもない。

 

 勿論テロリストからも恐れられてる。

 この前ビル倒壊させてたし、一個小隊を壊滅させたとか噂もある。

 

 ドォォォォン

 

 ん? なんだ? 

 何の音? 

 

「女王、大変です!」

「何ですか? あの車輪の勇者が遊びに来たんですか?」

「違います! 時計の方です!」

「えーあの人?」

「邪魔するぜぇ」ドォン

 

 入って来た。

 金髪のチンピラ、ホストとかにいそうな感じ。

 

 多分車輪って言ったらアイツか……性格も良いし実力もあるんだが……あるだけど。

 

「こんにちは〜時計の勇者のハットで〜す」

「なんですかアポ取ってくださいよ!」

「すいませんねぇ、ちょっと銃剣の人と戦いたくてねぇ〜」

 

 あら〜挑戦者ね。

 ジジイと戦った時期があったし懐かしいわ。

 

「いま、お疲れなのでまた後にしてくれませんか?」

「あ、そう? じゃまた明日来るわ」

「ええ、来る時には連絡入れてくださいね」

「いいよ〜んじゃまた〜」

 

 スタスタ

 

 うっし、んじゃ戦うか…………あれ? なんで帰るの? 戦う気満々なのに。

 

 …………融通効くんだな時計の勇者って。

 連絡してもくれるようだし親切だな。

 

「いつもこんな感じか?」

「ええ、いつも粗暴な態度ですが話は分かるタイプですし、お年寄りとかには凄い親切だそうです」

 

 あら、見上げた若者だな。

 パリストンに見習って欲しい物だ。

 

「一見、態度が悪そうなので転生者に間違われる事もありますがね…………【ライガーフェン】では人気ですよ」

「!? 転生者の事知ってんのか?」

「ええ、まあ? 昔暴れてたそうです。結界があるのでここら世界には転生者や転移者等は入れませんが」

 

 転生者の事まで知っているんだな。

 つーか結界まであるのか。

 

「ええ、誰が結界を作ったか知りませんし、結界の生成場所とかは私含め誰も知らないのです」

「そうか…………」

 

 四聖結界とか神狩りが作ったとか書いてあったような気がする。

 魂エネルギーを使い結界生成……ここの結界のエネルギーは何を使ってるんだ? 

 

「もしいてもオーラが汚いし分かるので、即効駆除です」

「…………」

 

 そうだとしても、お偉いさんの身内が転生者等や端末だったらやりにくいだろうなぁ。

 メルロマルクの女王がいい例だ。

 

「……とりあえず、町にでも行こうかな」

「わかりました。ちょっと手配しますね」

 

 技能と商業の町だし賑わってるんだろうな。

 

 

 

 ■

 

 ザワ ザワ ザワ ザワザワ ザワザワ ザワ

 

 おお、人がすっげえいる。

 

「ここがメインストリートです。選ばれ選ばれた商店しかありません」

「うおー色んなの売ってるな」

 

 服もあるし、レストランもある。

 本屋も菓子も。

 

 この人はミスルさん。

 案内役の文官だ。

 

「ここは国の顔みたいなものです。このエリアは広いので一部でしかありませんよ」

「一部!?」

 

 確かに広いが…………全部じゃないのかよっ! 

 

「他にも職人エリアや外食エリア、居住エリア。オススメしませんが花街エリアに闇エリアもあります」

「闇エリアって何?」

 

 あまり考えずそこに突っ込んでしまった。

 ヤクト? 

 

「簡単に言えば治外法権のスラム街ですね。盗賊とか闇商人等がよくいるそうで非合法な事がある場所です。聞いた話だと価格は高いけど何でも買えるって話を聞きます」

「治外法権……」

「一般の人はあまり立ち入りしませんね…………」

 

 どんな所にもそんなのがあるんだよなぁ。

 治外法権の理由とかありそうだ。

 

「まあ、一応協定は結んでいます。闇エリアの人間は一般人に危害を加えない。そしてウチらは情報提供を受けたり、重犯罪者の引渡し条約を結んでいます」

「この国は優秀だな」

「ええ、清濁合わせ持つのが国ですし、必要悪ですからね……」

 

 カキンでもそんな感じだな。

 マフィアと手を組んでるのは綺麗事じゃ世の中上手く行かないしさ。

 

「巫山戯んな!」

「んだとテメェ!」

 

 あ、喧嘩が始まった。

 どんな世界でも争いはある。

 

「「イクサ オン!」」

 

 な、なんだ!? 

 回りに結界が!! 

 

「くらぇええ!」

「うおおおおっ!」

 

 わー戦いが始まった。

 …………と、言っても非能力者なので見応え無い。

 

「うおら!」

「ぎゃあ!?」

 

 あ、片方が勝った。

 負けた方は切り傷から煙のようなのが出てる。

 

 ん、結界が解かれると煙は止まった……あ、起き上がった。

 

「おい、犬の方が良いだろ!」

「あ? 猫に可愛いに決まってんだろ!」

「あ!? またやるか!?」

「おっ!? やんのかまた? 犬と猫どっちがいいかよぉ!!」

 

 お前ら犬と猫どっちがいいか争ってたのか!? 

 どんな次元だよ。

 

「あれがイクサです。世界のシステムのようなもので、殺されても死にはしません。兵士以上には緊急脱出システムが組み込まれてます。デメリットに魔力がゼロになったり、数十分ステータスがダウンしますがね」

「…………」

 

 なんかスゲー世界だな。

 

 

 

 



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第69話

「あれ? 奇遇?」

「時計の勇者ハットだっけ?」

 

 今海鮮丼屋の店で昼食をとっていたら、さっき城に乗り込んできた奴がいた。

 

「ここの海鮮丼屋はオススメなんだよね。アルコイリスから魚を今日取れたのを輸入してるって」

「へー」

 

 いいよなぁ。

 新鮮だな。

 

 鮪や鮭の刺身、イクラが多量に乗っており、適度に甘い醤油が垂らされている。

 

 何故ここの店に入ったかと言うと、客が食べてるのを見て羨ましいと思ったからだ。

 

「ここ技能だけは良いし。面白い物とかもあるから他の勇者もよく来るんだよね」

「勇者との交流とかもあるのか?」

「あるある。たまにアルコイリスのゴドルさんとかライガーフェンに闘技場荒らしに来るし」

 

 やっぱりゴトル達の世界か。

 ミレナリオやベリト、フェムトがいる世界か。

 

 闘技場? 気になる単語だ。

 

「今アギレラさんとかアルコイリスに遠征してるけど遊ばれてるって」

「…………」

 

 アギレラ…………久しぶりに会うなぁ。

 

 味方として優秀…………更に念能力は遠距離最強の一角とか言われてるからなぁ。

 

「飯の時にする話じゃないな」

「そう……ん? アギレラさんと知り合い?」

 

 あ、コイツはアギレラの能力知ってんな。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ? side

 

「それではダンジョン【鎧虫の洞穴】に入る!」

 

 そう皆に話すのは騎士団長のホラッタムさん。

 顎髭がクルってしてる筋骨隆々のオジサンだ。

 

 それで僕らクラスはベールラルの隣国にあるダンジョンに来た。

 来たよテンプレ…………普通だったら想像つくよコレ。

 

 まあ…………予測済みだ。

 一応ギルドで情報収集してきたからOK。

 

 どんなエネミーや罠があるのか隅々まで調べた。

 少し散財はしたが、命は一つしか無い。

 

「あ〜あ〜めんどくせぇ」

 

 今発言したのは不良グループのリーダー、北神君だ。

 色々聞いてみたけど何人かの派閥が出来てるらしい。

 

 勇者グループ 12

 不良グループ 15

 委員長グループ 10

 陰キャグループ 9

 

 の四つのグループに別れた。

 

 まず勇者グループから説明しよう。

 剣城君を筆頭に五人が中心に動くグループだ

 このグループが一番総合戦力が高く優秀な組だとか。

 しかし強すぎるせいかイキリ過ぎてトラブル続出し、何かと注意される事が多い。

 

 シュパン

 

 不良グループは男女混合のヤンキーチーム。

 派手で着崩した外見や言動が汚い人間が多く、このチームに雨宮君達が混ざる。

 筆頭の北神君の【重騎士】と【鉄魔術師】。

 鉄魔術とは鉄を具現や操作したり、防御力を上げる事が出来るとか。

 

 ドオオン

 

 委員長グループは女のみのグループ。

 大人しめの人間が集まっており、委員長を中心に行動するグループ。

 委員長こと相田香里さんの【兇賊】と言う職業だが、凄まじく強く、剣城君に勝った事もある。

 能力的にはカリスマ性と凶悪なナイフ術、あと逃げ足の速さってのもあるとか。

 

 ザシュ

 

 陰キャグループは文字通り陰キャ。

 真中慎介君率いるオタクチームで、あまりコミュニケーションを取れないのが特徴。

 筆頭の真中君の【ものまね師】と【学者】、能力は技術や魔法を模倣する事が出来、武器のセンスもあるし、属性も全部持ってる。

 学者は高速・並列思考や記憶力アップ。

 

 後に気づいた事だけど、加護は自分の個性や趣味特技に反映されるらしい。

 

 その証拠に北神君の実家は金属加工の会社で、たまに手伝ったりしてたとか。

 真中君は学力の成績は1番だし、【学者】が出たのだろうか。

 

 ん? 相田さんは【兇賊】って禍々しい加護なのに本人は大人しいんだよな…………そこまで凶暴に見えないんだけど。

 しかもその周りの人間も【盗賊】が多い…………なんでだろうか。

 

「お、おい……草野?」

「ん? なに崎田君」

「お前考えながら魔物倒せんの?」

 

 へ? 

 

「別にタイミング合わせて斬れば楽だよ」

「…………」

 

 別に難しくないよ? 

 お、他の奴らも戦ってるな。

 

 そういえば崎田君の加護は【土魔術師】。

 祖父母が農家で、野菜の事は詳しいとか。

 

「きゃ!!」

「危ない乃々華!!」

「おい、不注意だぞ橋平!」

「待て、そこまで怒るな雪菜。無事なんだから良いだろ?」

「そ、そこまで言うなら」カァァァ

 

 凰隆寺さんって剣城君の事好きなんだね。

 

「オラオラオラァ!!」

 

 北神君が金属物質を具現して放ち、猫のような魔物を倒している。

 

「…………」シュッシュパン! 

 

 相田さんがコウモリのようなのを切り裂く。

 

「…………」ドパァン

 

 真中君が特注した魔法武器で相手を斬る。

 剣にもなるし槍にもなれるとか、ボウガンのような形態にもなるとか。

 

「こんなの楽勝だぜ」

「本当にねwww」

 

 いやいや何言ってんの? 

 ここまだ1層だけど。

 

 全部で百層あるって。

 

 

 

 ★

 

 

 

 そして10層目。

 

「よし、今回の訓練はここまで!」

『ええ〜!』

 

 そりゃそうだろ……体力とかの問題もあるし、ここら辺で引くのが正しい。

 夜になったら魔物がもっと出てくるらしいし。

 

「あ、何これキレイ」

「ダイヤモンドかな〜」

 

 ん? 壁に宝石が突き出てる。

 

 …………あ! コレはマズイ!! 

 

「これ取れないかな〜」

「ストップ!! 触っちゃダメだ!!」

 

 大声出した。

 確か話に出ていたな……触っちゃダメな系。

 

「ん? どうかしたのか? クサノ」

「多分コレ罠です」

「はあ?」

 

 ギルドでこの事について何人か話していた。

 

「ねえ、確か【地図師】と【盗賊】に罠を見つける事ができる人いたよね? 調べてくれない?」

 

 確か罠感知出来るとか言ってたな。

 それにこんな浅い層で宝なんてある訳ない。

 

「は? 指図すんなよ。カスの分際で」

「え」

「なんで格下の言葉を聞かなければならないの?」

 

 は? いやいや何言ってんのコイツら。

 それで人が死んだら責任取れんのか? 

 

「確かここの層はトラップは無いはずだが……」

「ああ、それは──」

「これ採っちゃおうっ!」

「だから止めて!」ガシッ

 

 触ろうとした女子の手を掴み止める。

 

 話を聞けよ話を。

 運が悪いと全滅するぞ。

 

「最近この迷k」

「何してんだよお前えぇぇ!!!」

「ぅぐ!」

 

 うえ!? 殴られた! 

 

「ったくチキン野郎が……奈津子に触ってんじゃねえ!!」

「吉くん!!」

 

 いってえ……何考えてんだ。

 

「早く掘ろうぜ。土魔法で掘れるか?」

「触っちゃダメだ!」

 

 ピトリ

 

 さ、触っちゃった。

 

「ほら大丈夫じゃねぇかこのチキ」

 

 ピカアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!! 

 

「は? 何だこれ!!!」

 

 召喚陣のような物が僕らの地面に描かれる。

 やっぱり触らない方が良かった。

 

 一応この罠について喋っておこう。

 

「実は最近転移トラップってのが迷宮に現れたんだ。何処に転移するかはランダムらしいってギルドの人が言ってた」

 

 時すでに遅しだが。

 

 

 

 ★

 

 

 

「うぐっ」

 

 くっ、ここは…………何処だ? 

 

「ここは…………もしかして最下層!?」

「はい!?」

 

 嘘だろ……ホラッタムさんが驚愕している。

 ランダムとはいえ何故最下層? 

 

 ドオオン

 

 ん、なんの音……何これ。

 

「ドラゴン!!?」

 

 なんだよなんでドラゴンが出てくんのよ。

 ボスか……ボスなのか。

 

「GUUOOOOOOOO!!」

「全員、撤退!!」

「うおおおおぉ!」

 

 おいおい! 剣城君!? 

 なんで立ち向かってんの! 

 

「遷宮残!」

 

 ドオオン

 

「GUUOOOOOOOO!」

 

 効いてない…………マズイ、怒ってるようだ。

 

「逃げろ、ツルギ!!」

「くっ!」

 

 叶わないと思ったのか逃げるようだ。

 僕も逃げよう。

 

 ドン! 

 

「う!?」

 

 な、なんだ衝撃? 風魔法!? 

 転んでしまった! 

 

 クソ、小さな出口までもう少しなのに!! 

 

 ドドドッ

 

 はああああああああああ!? 

 出口が土で覆われた!!!??? 

 

 ふざけんなよ、まだいるんだよ僕が! 

 

「GUUOOOOOOOO!!」

 

 他に出口は…………無い!! 

 僕に土魔法は使えない! 

 

 コイツを倒すしか無いのか…………クソが!! 

 

「GUUOOOOOOOO!!」

「うお!!?」

 

 突っ込んできやがっ! 

 穴みっけ!! 

 

 ふう、しばらく大丈夫…………ん? 

 …………なるほど、そんなカラクリか。

 

「あ、そういう事か」

 

 だから鎧虫の洞穴か。

 上手いこと名付けんな。

 

 よし、早速トラップだ。

 ドラゴン? は僕を見失ってる。

 

 上手くしかけて…………よし。

 

「おい、こっちだ! クソムシ!」

「GUUOOOOOOOO!」

 

 よし、突っ込んでくる。

 コイツ行動パターンがわかりやす。

 

 タイミングよく…………スイッチオーン! 

 

 ドカアアアアアアン

 

 炎魔法をしかけて炸裂させた。

 お、ラッキーひっくり返った。

 

「行くぞクソムシ!」

 

 そうして僕はお腹の急所らしい所へ、

 

「ツヴァイト・フレアブレード!!」

 

 ぶっ刺す。

 頼む、終わってくれ!! 頼む! 

 

「GUUOOO!!」

 

 バタン

 

 首が倒れる。

 …………勝った。

 

「勝ったああああああああ!」

 

 このドラゴンのカラクリが分からなかったら危なかっただろう。

 

「まさかコイツが虫だとはな…………」

 

 その通り虫に近い生き物であった。

 見た目ドラゴンで硬そうな鱗で覆われていたが、穴の中に入ってたら…………お腹に口が見えたのだ。

 確か偽の頭を持つ虫がいたはずだ。

 

 実際、剣城君が攻撃しても別の方向を向いてたし。

 頭は動くけど別物なんだな。

 

 それで口が近くにあるんで、脳に近いかなと思いそこを炎のブレードで攻撃。

 賭けは勝った! 

 

 あ、なんか緊張が途切れ、疲れたのか眠くなってきた…………。

 モンスターはポップしない……よね……眠く。

 

 

 ★

 

 

『やあ、こんにちは! 君が迷宮踏破者だね!』

 

 ん? なんだここは? 

 真っ白な世界…………どこ!? 

 

『ああ、君の夢の中だよん。ちょっと話しかけてるんだ』

 

 誰!? 何の用!! 

 

『いや、悪意は無いよ? 敵じゃないからね』

 

 …………。

 

『とりあえず説明するよ。迷宮踏破おめでとう。君はとある力を持つ者に選ばれた』

 

 力を持つ者? 

 ありふれ系でよくあるテンプレか? 

 

『ああ、制限があったから12くらいしか貯められなかった……もっと欲しかったけどね。私のとある憧れの人間と同じ力さ』

 

 …………。

 

『その力を君に渡す。それで波を打倒してくれ』

 

 その力って何? 

 

『ん? まあ読んでからのお楽しみね? しばらくは数個くらいしか使えないけど』

 

 ああ、うん。

 

『でも君大変だね。周りがクソ転生者だし。幸い転生者にはこの迷宮はクリア出来ない仕組みにしてるんだけど』

 

 !? 転生者のこと知ってんのか! 

 

『そりゃそうだよ。数百年前からいるし』

 

 まあそりゃそうだよな。

 根底から崩した方がいいし、長い時間かけた方がいいかも。

 

『この力の事を詳しく知りたかったらアルドミティアに行ってみて。結構今は繁栄されてると思うから』

 

 アルドミティア? 初の国だな。

 

『とりあえず体を迷宮の1層に送っておくよ。多少の装備と金貨15枚くらい持たしておく……ご褒美だ』

 

 ありがとうございます。

 波を打倒するため善処します。

 

『よろしい。気をつけてね』

 

 

 

 ★

 

 

 

 さて、迷宮の外へ戻ってきたけど……今は朝。

 一晩過ぎたらしい。

 

 僕らが泊まってた宿に着いた。

 

「あれ? 皆いないの?」

 

 どーゆー系? いないの? 

 

 聞いてみたけどまだ戻って無いらしい。

 僕は早く帰ってきたみたいだった。

 

 グゥ

 

 お腹すいたな。

 多少腹ごしらえしたら迷宮に行こ。

 

 帰って来たら僕の事はどういうんだろか。

 

「何食べようかな…………」

 

 金はある。

 肉行くか、マンガ肉とか1度食べてみたい。

 

 

 

 ★

 

 

 

 3日後。

 

『………………』ザッザッザ

 

 あ、待ち構えていたらクラスの人間がやっと出てきた。

 みーんな目が暗い。

 

 3日経てば疲労困憊だろう。

 

「あ、あの何かあったんですか?」

 

 守兵がホラッタムさんに聞く。

 確かここに入った時にいたな。

 

「1人死んでしまった…………」

 

 マジか…………誰が? 

 

「草野君…………」

「アイツ……軽率にトラップなんかに触るから」

「罠って事も確認しないで」

「責任感じてドラゴンの足止めなんかしやがって…………」

「しかも土魔法で出口を塞いで……」

 

 は………………はい? 

 

 え、待って待って? 

 僕のせいにされてる。

 

 嘘だろこのクソ転生者達。

 あと誰だ? 風魔法放ったの。

 

「全員!!」

 

 何を言う気だホラッタムさん。

 

「クサノは愚かなやつだったが……勇敢なやつだった!! 私達は忘れない! 波を打倒する事が供養になる!!」

「草野! ぜってぇ波を打倒するからな!」

「草野君……私負けないから」

「仕方ない。弔い合戦してやるか」

「ヒヒヒ、しょうがねえな」

 

 えー。

 僕が死んだことにされてる。

 

 愚かなやつ? 誰の事? 

 そろそろネタばらししようか? 

 

「草野! お前の死を無駄にしない!」

「僕死んでないけど?」

『!!?』

 

 !!? じゃねえよ。

 

「あれ? どうしたの?」

「そんなに驚いて」

『…………』

 

 ご本人登場です。

 あれ? 嬉しくないの?

 

「な、なんでいるんだよお前…………死んだんじゃ」

「ほう、どうやって? ドラゴンは倒したけど?」

「は? どうやってもお前が倒せるはず無いだろ!」

「だったら? もう既にここにいるだろうし、転移のゲートがあったからすんなり戻ってきたし」

 

 ドラゴンを倒すしかなかった……誰のせいだ? 土魔法使ったのは。

 

「ああ、反論するけど。僕は軽率じゃないし日頃の行いは悪くない。土魔法の適正は無い……誰だろうねやったの」

『…………』

 

 顔が青い人間が数人。

 誰か知らんがやったことは殺人未遂であり、人を陥れる行為だ。

 

「疾風斬!」

「サイレンス!」

「金剛無常衝!」

「…………」ドゴォ

 

 ドオオオオオオオン! 

 

 は…………なんで…………殴ら……れる? 

 

「このクズめ! 勝手な行動をしてなんだ偉そうに!」

「てめぇのせいでどんだけ嫌な目にあったと思うんだ!」

 

 え……僕……なんで……危険を避けられるよう…………に頑張って……たのに。

 意識……が。

 

 その後、罰として装備が没収されて売られた。

 金貨は無事だったのだが。

 

 抗議しても無視され殴られるばかり。

 

 金貨を取れたし、もうそろそろこの国から逃げよう。

 無断でね。




このざまぁはまだ先です。
アルドミティア編が終わったらやります。


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第70話

「さて、ハット君。君の師匠ってウチの知り合い?」

「ええ、マルシダスって人なんですけど……」

「あいつか…………」

 

 マルシダスか! 

 あいつもこの世界に来てるんだよな。

 

 よくよく考えたらあいつとは結構仲良い。

 仲良くできる時点で俺の頭はオカシイと言われるが…………人間ってのは罪の存在だしなんもおかしくない。

 

「それで? アギレラは?」

「ああ、今アルコイリスに戦を仕掛けてるそうです。停戦になったと話を聞いてるんでそろそろ帰ってくるそうですよ」

「…………」

 

 やっと会えるな。

 アイツとの絶望爆弾コンボをするのが楽しみだ。

 

 うちらのチームの人間が揃ってきたぞ。

 勝つる! 

 

 この国も安泰だにゃ。

 

 

 

 ■

 

 

 翌日。

 

「さて、勝負してくれるんですよね」

「ええよええよ」

 

 待ってても暇なのでハット君と決闘。

 アギレラのやつはまだか? 

 

「それじゃイクサオン!!」

 

 なんか感じがバトルフィールドのようなのになった。

 

 そういやコイツって時計の武器だよな。

 どうやって戦うんだろ? 

 

「クイックブロウ!!」

「おっと」ヒョイ

 

 なんか拳が早いな。

 やっぱり時魔道士のようなタイプか? 

 

「彗星走法!」

 

 どうやら高速移動のようだ。

 これは……走れば走るほど早くなるスキルか。

 

 さて、コイツの能力はなにか? 

 簡単には出さない時点で厄介かも。

 

「やっぱ呼び出された時点でつえーわ」

「そっちもな」

 

 うちらの弟子とも変わらん強さだ。

 

「ブラインドスロウ!」

 

 ん? 動きにく!! 

 

 あれ! 目が見えにくい!! 

 

「クロックスター!」

「スケルターショット!」

 

 時計の部分で殴打しようとしてきたのでショットぶち込んで軌道を変えちゃう。

 

「イレギュラーショット」

 

 なんか初めて撃ったスキルだけどくねくねくねしたショットだな。

 

「うおっ」

「バランス崩れればそれだけで十分」

 

 鳩尾に掌底! 

 

 ドゴ

 

「ぐふっ!!」

 

 バタリ

 

 KO! 

 

 さて、医務室まで運ぶか。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

「それにしてもお強いですね」

「まあな。結構場数潜ってるからな」

「もしかしたらイクサの方とかやるかもしれませんね」

 

 そう言えば【アルコイリス】とイクサしてたんじゃなかったけ? 

 

「それで? アギレラ帰ってくるの?」

「帰ってくるって話ですよ。多分ハジメさんを連れてまた攻めると思いますが」

「やっぱり?」

 

 ありそうだな。

 

「今の【バムズガーデン】じゃとても倒せませんよ」

「だろうね。能力を撃ち落とされたら終わりだからな〜あの」

「汚い爆弾だろ?」

「ご名答。会いたかったぞアギレラ」

「俺もだよ」

 

 んでだ。

 今現れたのを紹介しよう。

 

 アギレラ=ブロッカー

テロリストハンタートリプル。

 ウチのチームの副たるものだ。

 

 服装は陰謀があるのだが、サイヤ人の肩パット着いた服装だ。

 俺が面白良いと思ったので勧めたらこうなった。

 

 実はこれ機能が良く、他の奴らも真似するようになり、チームの数人はサイヤ人の服装だ。

 

「アギレラさんおひさ〜」

「ハット……お前なんでここに? 確か十手の勇者の召喚は?」

「めんどくさいし、四聖の方が強そうだしさ」

 

 いやいやヒソカも眷属器だろ。

 アギレラもだし。

 

「なーるほど。まあ顔出す予定だし俺と行動するか?」

「いーよー」

「でだ。ハジメ」

「ん?」

「【アルコイリス】にカチ込むぞ」

「やるんかい」

 

 召喚直後にイクサとかさせんのかーい! 

 

「別にレベル上げしなくても変わらんだろ」

「確かに」

 

 まあ、武器取られても著明なダウンは無いし。

 特に問題ないよな。

 

「あとついでに球の勇者の面を見てくる」

「俺も行きまーす」

「俺も」

 

 もしかしたらローナか夜刀ちゃんかもしれん。

 

「よーし。【アルコイリス】にGOだ!」

 

 

 

 ■

 

 

 俺、アギレラ、ハット君。

 サイのようなのを引き連れた車に乗る。

 

「それで? 【アルコイリス】の勇者のメンツは?」

「棒ゴトル、砲カマゲロス、弩ベリト、農具フェムト。あとガゼルって言う漁具の勇者ってのがいるぜ」

 

 漁具の勇者は初見だな。

 海とか活動する時に有利そう…………銛や船やら網とか釣具とか。

 

「厄介な奴らだ。カマゲロスとベリトは要塞の中に閉じこもったらやばいんじゃね?」

「その通りそれで時間かかってたんでな。ハジメを呼んだというわけだ」

「…………」

 

 それで俺が助っ人って事だな。

 一応要塞崩すって事か。

 

「俺の能力で崩すって事だな」

「ああ、ちょっとアイツらオイタが過ぎるんでな」

 

 確かに…………武器の召喚関係でってのもあるし。

 元々国同士ってのも昔の事引きずって仲悪いってのもあるだろ。

 

「アイツら…………イクサで勝って加工の費用を削減しやがって」

「あーアイツら籠城とか得意だからなー。こっちも手を焼いてんだよなー」

「お前ん所も人のこと言えんだろ! イクサで勝って武器等の値下げしてんだろうが!!」

「…………」ペロリ

 

 舌出してんじゃねーよ。

 

「それで? いるのはカマゲロスとベリトか?」

「その通り。要塞は深い堀とかもある水深1m…………あと副官が能力者、布で拘束したり攻撃を防いだりとかか?」

「操作系か」

「いる能力者はこの3人だ」

 

 オッケー分かった。

 もしかしたらベリトは逃げるかもしれないな。

 

「一応緊急脱出のシステムがある」

「エスケイプか」

「エスケイプ?」

 

 あー? 誰か言ってたような。

 

「ちょっと登録しようか。この宝石を握って『エスケイプ』って言えば登録オーケイ」

「エスケイプ」

 

 シュウウウウウン

 

 なんかこれでいいのか? 

 

「アギレラさん、ハジメさん」

「どうした?」

「賊です」

 

 なんだと(笑)! 

 

 

 

 



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第71話

「よし、盗賊だ! 奪いに行くぞ!」

「待て待て話を聞け」

「どうした? ボーナスエネミーだぞ…………?」

「と、思うだろ。敵に能力者がいる」

「あ」

 

 ん? そうなのか? 

 能力者は国が管理してるんだよな? 

 

 って事は……他の国か? 

 

「まさか【アルコイリス】の?」

「いや、そこまで分からんが。味方では無いな」

 

 んーウチらの国じゃないって事だし。

【ライガーフェン】の可能性もある? 

 

「ハット君、ここら辺に盗賊飼ってる?」

「いえ? ここからだと遠いので無いです。そっちの国の闇エリアには情報収集に支部みたいのがありますが」

「一応スパイ行為はしてるんだな」

「多分【アルコイリス】側もしてますよ」

 

 それ言っちゃって大丈夫? 

 

「ハットの能力だろ? なんで盗賊ってわかったんだ?」

「秘密です」

 

 なんの能力だろうか? 

 ちょっと気になる。

 

「とりあえずどうする?」

「普通だったら宣戦布告してくるんだがな」

「は?」

 

 盗賊が宣戦布告? 

 

「盗賊ルールってのがあってな。初めに襲うぞって言って襲うんだ。他にも騎士道精神に反する事はしては行けないってルールもある」

「何なの堂々とした盗賊?」

 

 ソイツら盗賊かよ。

 紳士的な行為じゃん。

 

「と、言っても宣戦布告して来ないな」

「このメンバーじゃ襲ってこないだろ」

「どーします? 逆に襲いますか?」

「【アルコイリス】をボコるのが先だ」

 

 それもそうだな。

 目先のに捕らわれるもダメでしょ。

 

『おい、勇者共! 聞こえるか!』

「?」

 

 拡声器じゃん。

 なんだ? 盗賊か? 

 

『貴様らに宣戦布告する! タイムフラッグで勝負しろ!』

 

 タイムフラッグ? 

 イクサのゲームルールか? 

 

「簡単に言えば制限時間付きで、陣地に攻め行って旗を取るゲームです。こっちに陣地は無いので攻めると思います」

 

 簡単に言えばタイムアタックで旗取りゲームか。

 

『こっちは用事があるんだよ』

『ああ、行っても無駄だろ…………またUターンするんだから』

 

 いつの間にかアギレラが拡声器を。

 俺が行くんだからわかんねぇだろ。

 

「無視しよ」

「賛成」

 

 つーか戦っても旨みが無いしな。

 

『お? 良いのか? 豪華な食材があるんだかなあ?』

『今さっき飯食ったから』

『レアな魔法道具あるぜ』

『そんなん素材集めて特注すればいい』

 

 構って欲しいの? 

 もっと飛びつくのを寄越せ。

 

『良い情報あるぜ?』

『なんだよ。つまんなかったら無視だが?』

『球と十手の勇者の情報。もう既にこっちに入ってる』

「!?」

『球の勇者はな…………まあいい。十手の勇者は召喚されて今揉めてるらしい』

 

 今欲しい情報じゃねえか! 

 …………揉め? 

 

「つーかなんで揉めてんの?」

「十手って【ライガーフェン】だろ? なんかあったのか?」

「うーん。国王・将軍・宰相派でよく揉めるからな〜」

「揉めるんだ」

 

 その時にイクサでも仕掛けたらいいんじゃない? 

 

「アギレラ、受けるとしたら俺はどうなる?」

「コイツらのボスと副官の能力がちと厄介…………確かコイツらはタイムフラッグが得意な【フレイム山賊団】だ」

「ふむふむ」

「ボスは自分の陣地限定での幻覚。副官はカマキリとのコミュニケーションだったはず」

 

 カマキリとコミュニケーション? 

 なんか変な能力だな。

 

「言っとくが部下以前に友達として扱って…………相当な精密動作や連携が出来るらしい」

「…………」

「ちなみに食う時や寝る時も一緒だと」

 

 すげー。

 

『おい、どうする返答は?』

「ハジメ、受けるか?」

「受ける。ここまで来たらな」

「自分も協力しますよ」

「仕方ない。やってやるか」

 

 二人とも協力してくれるらしい。

 

『おい、お前らの挑戦受ける!』

『よし、イクサスタートだ!!』

 

 59:59 カチッ

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 50:12

 

「ハジメさん。こっちがアジトですよ」

「ハット君よく分かったね…………」

「沢山カマキリいるな」

 

 と、まあここまで来ましたけど。

 

 あれれ? アジトどこ? 

 円を使って見ますか。

 

「うおっ、あった!」

 

 円使わんと全然わからへん! 

 

「さて、旗取りだしな…………でもどこにあるのか?」

「室内だと思いますよ」

 

 そりゃそうだよな。

 見つけてから旗とるのムズいな。

 

 つーか見えないのに…………なんで十数人の賊共が動いてる? 

 見えないのに集まったり作業出来る訳が…………あ。

 

「アギレラ」

「どうした?」

「もしかしたら入れるかも」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 45:31

 

 

 ドカーン

 

「なんだこの火は?」

「オラッ」

「ゲブッ!?」

「グヘッ!?」

 

 3人ほど気絶させ、見えない所に拉致る。

 

「多分これかな?」

「なるほど首飾りか」

「それで幻覚防止してたんですね」

 

 探ってみると同じデザインの火の形の首飾りが。

 この首飾りがあるからアジトやその廊下や壁は見えたって事だな。

 

 アジトが見えないなら、自分の兵隊も見つけられない。

 外からは見えないならば、中からは見えるとは限らないし。

 

「ハジメさん。ビンゴです」

「よし、カチ込むぞ」

 

 三人とも準備OK。

 

 オラッ! 

 

 ドカアアアアアアン

 

「クソ、入ってきやがった!!」

「首飾りも奪われた!!」

 

 とりあえず人が多い所を探すか。

 

 オラオラ! 

 

「ぐほっ!」

 

 あ、なんかボスみたいのが来たから殴った。

 それで全員気絶したみたい。

 

「どこの部屋にあるか」

 

 ちょっと探すそ。

 手分けしてな。

 

「1階隅まで探しました」

「2階、見当たらない」

 

 うーんどこだ〜円!! 

 

「あ、隠し部屋があるな。近くに人がいる」

「ソイツだな」

 

 えっと、1階の食堂の空きスペースの下だ! 

 俺らは移動する。

 

「多分罠とか仕掛けられてるかもしれんから爆発させよ」

 

 ドカアアアアアアアアアアアアン

 

 フロアぶち抜き。

 あ、旗見っけ。

 

「ううっ…………」

「あ、人いたのね」

 

 俺は旗を取った。

 

 イクサ勝利! 

 



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第72話

 さてと、情報を整理しよう。

 

「まず球の勇者。変な事は起こってないらしい…………王様は人格者だ」

「そうか。勇者とか召喚して陰謀で殺されるとかよくあるしそこは安心」

「そして十手。この勇者はあまり知らないらしい。勇者について何か揉めてるのは分かるとか言ってるが…………」

「なんか問題起こしたのか?」

「さあな…………いつもこの国は問題起こす」

 

 情報を聞いたところそこまで進展する情報は無い。

 ただ十手はあやふや。

 

 傘下の国以外の事は知らないのは不思議じゃないが。

 

「とりあえず進もう」

「賛成です」

 

 多少の情報はわかった。

 今は【アルコイリス】に。

 

「この世界にも問題起こす国とかあるんだな」

「ん? そー言えは他の異世界でも勇者やってたって言ってたって聞いたが」

「まあな。少し色々あってな」

 

 これまでの話。

 勇者から召喚されここまで来るまでの物語を。

 

「そっちも波の最中で尖兵共が攻めてくるのか」

「そっちも?」

「ああ。いつも返り討ちだがな…………」

 

 ん? ヒミコがマルシダスを見たと言っていた。

 

「そー言えばミレナリオが波でこっちの世界きたけど」

「は? マジで? あまり攻めるのは問題だから可能な限りやめようって話になってたんだが…………」

「アイツめ…………ってかゴドルとかベリトとか波で攻めてきたぞ?」

「初耳なんだが…………まさか俺ハブられてた?」

「あら? 自分は初耳だ」

 

 おいおい。

 まさかドクダンだったのか? 

 

 問題あり過ぎだろこの世界!!

 

「ってか侵入した時点で敵対行為でしょ」

「まあ今不可侵してるから攻められ無いし」

「不可侵?」

「ああ、ウチの領地にミレナリオとフェムトが来て不可侵協定結んだんだ」

「待て、それも初耳」

「自分も初耳」

 

 え、アギレラ達も知らなかったの? 

 

「ちょっと【ライガーフェン】と【アルコイリス】に色々言わなきゃならんな」

「普通耳に入らない?」

「入らなかった。多分ヤツらは後で言うだろ」

「だがまあ戦わないんだし。ポジティブに行こっか」

「だな」

 

 まあ本当の敵は…………クソ女神だからな。

 勇者同士の戦いでは無い。

 

 最悪…………波を止められなかったらこの世界とかに移民させるか。

 絆達の世界と融合したらゲームオーバーなんだし、こっちに来た方がいいかも。

 

 でも移民難民ってのは凄い難しい問題なんだよなぁ…………受け入れ国の犯罪率とか上がるって聞くけどさ。

 YouTubeで移民難民の動画あったけど…………元いた住民が殴られてたし、元々住んでたのに肩身の狭い思いをするとか。

 

 いや、ネガティブ止めよ。

 

「この肉うめぇな」

「ああ、いい肉持ってやがった」

 

 あ、戦利品を盗賊から貰ったのだ。

 肉とか貴重な石とか。

 

「石とか何か作れんの?」

「やっぱりストーンアクセサリーかな? 色々組み合わせると効果が違うんだ」

「へぇー」

「物凄く貴重な石だと死者蘇生が出来るらしいぞー」

「………………ん?」

 

 …………マジで? 

 

「どうした?」

「死者蘇生?」

「まあ条件は付くぞ? 15分以内で寿命では無い事だ」

 

 え…………この世界ってザオリクみたいな道具ってのもあるんだ。

 もしかしたらヤバい技術とかあるかも。

 

「なあ、もしかして異世界言語理解とかある? 読むやつとか」

「ありますよ?」

「え」

「貴重な霊薬だし異世界旅行する人間は少ないからな…………あんまり使わんが」

 

 ぴえん。

 この世界ヤバくね? 

 

「そっちの世界の事も教えろよ」

「分かってるよ。んじゃSPが回復する魂癒水ってのは?」

「「は?」」

「ん」

「SPって自動回復なんだが」

「二三個持ってるからやろっか?」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 雪丸side

 

 あークッソ! 

 せっかく謎の声のやつから装備貰ったのに奪われた。

 

 女王様曰く、他の人間の方が危険が多いからだとよ! 

 ダンジョンで危険な目にあったのにさ。

 

 だが金貨15枚は無事だ。

 元々借りてた鎧に隠してたんだ。

 

(今更だけどこの国はおかしい。さっさと逃げてゼルトブルかメルロマルクに行こう)

 

 なんで勝手に召喚しておいてこの待遇なんだ? 

 あとクラスのやつの素行もおかしい…………僕の事が邪魔なのか? 

 

(ん、串焼き一本が銅貨5枚か)

 

 リュート村で泊まるのに銀貨1枚で大人は生きるのに20枚程。

 多分100円=銅貨1枚か? 

 

 普通の焼き鳥だったら百円二百円くらいだと思うけど。

 5枚だし500円? 物価高くね。

 

(あ、そー言えば。女王とその周り…………豪華だったな。ってか他の召喚されたのは金貨を貰ってるらしいし)

 

 あからさまにヤバい理由のクラス転移だ。

 

 修練にはサボりまくりでダンジョンで痛い目に会うのに…………僕は報われないか。

 

 さて、下見をしたし帰るか。

 

「そこの御仁。良かったら占って見ないかね?」

「?」

 

 占い師か? 

 水晶玉があるし雰囲気出てる。

 

「へー占い師か〜」

「この国は荒んでるのでな……迷えるのが多いのよ」

 

 荒んでんのね? 

 分かるわ。

 

「僕がやること。何か当ててみてよ」

「ふむ…………脱走かの?」

「…………脱走? なんの話ー?」

「分かっておるぞ。異界の人間よ」

「!」

 

 バレてたか。

 

「信用出来そうだね。だけど漏らしたら?」

「分かっておるわい! 守秘義務じゃ」

 

 分かってるならよし。

 

「んで?」

「暇じゃし占おうかの? 銀貨1枚での」

「いーよ。ホイッ」

 

 この前冒険者ギルドのクエストで貯蓄は少しあるのだ。

 当てたんだし上手い占い師だと思う。

 

 んで……水晶玉に手で力を入れ始めた。

 

 一分後。

 

「んんっーヤバいの」

「…………と、言うと?」

「この国にいると不幸が起きるぞ」

「ですよねー」

 

 まあそれは誰でも予想出来んだろ。

 

「脱走するなら波の際に逃げるとええ」

「なるほど……良い案だ」

 

 確かにごたついてるしワンチャンある。

 

「その代わり…………この国の貧民街には入るなと結果が出とる」

「貧民街?」

 

 スラムだよな? 

 確かにヤバい雰囲気とかありそうだけども。

 

「入ったら絶望しか無いと思った方がええよ?」

「?」

 

 何があるんだよスラムに…………追い剥ぎとかか? 

 それが絶望? 

 

「でも上手く逃げても絶望しても、最後はそれがチャラになる程の幸せが舞い込んでくるともある」

「??」

 

 なんだろ? 

 

「ともかく、スラムには入るな。分かったか?」

「わ、分かった。気をつける」

 

 

 

 ★

 

 

 

 シスターらしき女性から頭を下げられる。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 んでだ。

 僕は孤児院の方でクエストを受けた。

 

 クリアしそのまま持って行き薬草を渡す。

 

「おにーちゃんありがとー」

「はい、おはなー」

「ありがとー」

 

 へへっ、良いってことよ。

 報酬はギルドから貰ってるが…………ちょっと少ないしリスクあるから冒険者は受けないらしいクエストだった。

 

 なのでギルドポイントが増量されてたので受けたのだ。

 

「少なかったけどポイント多いな」

 

 一応他の国でもクエストとかやろうかなと思っている。

 クソの波の尖兵達とは付き合わないが。

 

 さて、報酬は奪われんように隠してっと。

 

 ワアアアアアアッ

 

 ん? なんだなんか集まってる。

 ちょっと覗いてみよ。

 

 ステージの上に…………奴隷? 

 

 あ、これ奴隷販売所かな? 

 ボロボロの服を着てる。

 

「はい! 最後はこの汚らしい雌犬だぁぁぁ!!」

 

 なんか…………ゴミを頭にかけられたようだ。

 こっからでも臭う。

 

「それじゃ初めよっ!! 金貨1枚から!」

「いらねーよこんなクセェ女!」

「さっさと首を跳ねろぉ!!」

「首跳ねるのを楽しみにしてたのによぉ!」

「殺ーせ! 殺せ!」

 

 まじ、これ異世界だよなぁ。

 見せしめのかよ…………趣味悪い。

 

 確か処刑って見せしめとかショーであるって聞いた事があるような。

 

 隣に大きい斧を持った処刑人が佇んでる。

 

「ん、あっ! 女神に選ばれた人間だ!」

 

 会場の人間がこっちを向く。

 

 …………ん? 知ってんの? 

 よくもまあ覚えてんな。

 

 ちなみに女神の事は話しても破裂は大丈夫らしい。

 女神に選ばれたって話だしその方が尊ばれるだろう。

 

「…………」ウルウル

 

 こっち見るなよ。

 これ助けた方が良いのか? 

 

「いいですねー!! 無いですねー! 処刑でいいですねー!!」

「…………」ウルウルウルウル

 

 助けよ。

 そんな眼差し受けたらな。

 

「よし、金貨1枚だな。買った!」

『!』

 

 ザワザワ

 

 やっぱり斬首を見に来た人が多いんだな。

 買ったから予想外だからとか。

 

「おい、空気読めよ!!」

「そーだ! そーだ!」

「それが楽しみだったんだ!!」

 

 まあ処刑がガス抜きになってんのは知ってるけど。

 

 僕は…………目や口で助けを求めても誰も助けて貰えなかった。

 クラスで殴られてもみんな傍観だ。

 

 この女の子の気持ちが分かるのだ。

 

「く、わかりましたよ!」

 

 僕は奥に行き、奴隷紋に血を垂らす。

 

「はい、金貨1枚を。奴隷紋の手数料の銀貨1枚!」

「どうぞ」

「ふん!」

 

 やっぱり機嫌悪そうだなぁ。

 処刑の邪魔しちゃったし。

 

「…………」

 

 この娘をどうするか……だな。

 

 やっぱり逃げる方針は変わらないし、一緒に冒険者にしてレベルを上げて逃げるとしよ。

 無理だったら置いてく。

 

 一見暴君かもしれない。

 尚文と変わらないがここは異世界。

 

 裏切られるリスクはあるが…………その分リターンはあるはず。

 奴隷紋はある。

 

「さ、行こう」

「…………」

 

 まずは風呂入らせるか。

 

 



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第73話

「んで俺言ったんだツェズゲラに。『やれやれ、また勝てなかったぜ』って」

「わーカッコイイ」

「んでツェズゲラが苦笑いだけど。多分俺が手に入れた金銭の事分かって無いし」

「マジで? いくらもらった?」

「100億」

 

 嘘だ…………1000億は越えてる。

 ヒミコも100億以上貰ってるよ。

 

 まだ時間がかかるので雑談していた。

 遠いなー。

 

 ガサリ

 

 ん?? 草むらが動いてるモンスターか?

 あれなんかいるぞ? 

 

「あ、ゴブリンだ」

「ここ森の奥だからな」

 

 ゴブリン…………この世界にはいるんだな。

 元いた世界に居ないし新鮮だな。

 

「とりあえず駆除しといた方がいいのか?」チャキ

「ダメだ!」

「やめてください!」

 

 ??? 

 あれ? 普通駆除じゃないの? 

 

「なんかあったのか?」

「ゴブリンは…………絶滅危惧種です」

「……………………ん、絶滅危惧種?」

 

 何言ってんだコイツら? 

 ゴブリンが…………絶滅危惧種? 

 

「説明よろ」

「実はゴブリンは数を減らしていて…………」

「なんかあったのか?」

「昔女を犯すのでゴブリンを見たら殺せとあったんです。なので数を減らして行きました」

「なるほどぉ…………それで?」

「でもゴブリンも知性はあったのでだんだん女性を犯すのを止めてったそうです」

 

 動物にも学習能力はあるんだな。

 

 確かゴブリンって言ったら繁殖力旺盛の定番モンスターだよな………女に嫌がられる。

 どんな世界でも違う設定がある場合があるんだぁ。

 

「たまにゴブリンの女王が産まれるので一妻多夫で繁殖しているようです」

「ゴブリンクイーンみたいな?」

 

 ゴブリンクイーン…………創作でしか聞いた事無いモンスターだけど本当にいるんだな。

 

「でもおかしい事になっちゃったらしくて」

「おかしい事に?」

「ほとんどのゴブリンは…………実は女が犯せないストレスで男に走るんです」

 

 は? 

 

「紳士的なのが多いですが、男しか興味無いです」

「うそん」

「被害があるとしても男のみです」

 

 なんだそのヤバいゴブリンは!? 

 

 あ、ゴブリンが手を振ってる。

 コイツは紳士的って事か。

 

「ちなみに男色が好きな人間はゴブリンの巣に遊びに」

「もういい…………」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「さて、ここが停戦中の城か」

「さて、カマゲロスとベリトがここにいるな」

「ベリトの能力で逃げる可能性があるな」

 

 ベリトの能力、万能槍(オールラウンダー)は厄介だからめんどくさい。

 アイツは逃げる戦法が1番得意だし。

 

 とりあえず行くか。

 

『おい、報復しに来たぞお前ら』

『えーまた来たの〜』

『助っ人誰連れてきたのよ〜』

 

 カマゲロス…………お前までトラックに跳ねられたのか? 

 どうするんだよ仕事場の刑務所は?

 

『久しぶりだなお前ら』

『!?』

 

 あーこれ俺が召喚されたって知らないやつだ。

 

『え、なんでハジメ来てんの?』

『銃剣の勇者だと』

『マジか……面倒ね』

 

 ゴドルがいるのも面倒だ。

 白ひげの他にもまだ面倒なのがいるんだけどね。

 

『ん? それで俺らとやるのか?』

『ん、ちょっと待ってて? 上の指示を仰ぐ』

『まあ良いけど…………』

 

 まあ、ヤバい相手だって分かるよ? 

 上に指示を仰ぐのも手だ。

 

 んでカマゲロスは筋金入りのサイコカマ野郎だ。

 チームのスカウトで入ってコネで刑務官になったのだ。

 

 んで犯罪者を狩って刑務所で囚人ハーレムを築いており、カマゲロスと同じ思考の人間がコネで入り囚人をおもてなしする組合になった。

 

 一般から見たらヤバいけど、まだ世の中の為に働いてるから常識的な奴だと思う。

 

(ハジメ、このイクサのルールは時間制限付きのフラッグゲームだ。あまり長くやるのはオススメしない)

(残り時間は?)

(あと30分)

(短ぇよ)

 

 いや、なんでそんな短い時間なんだよ。

 

(実は停戦になると残り時間が止まるんだ)

(全部で何時間?)

(24時間)

(えー)

(100VS100ルールだったんだけどな。殆どやられた)

 

 うっそん。

 終了時刻近くで停戦してコッチに来てた訳か。

 

(念の為3人程空白にしておいたから飛び入りで助っ人OKだぞ)

(なるほどぉ、俺ら保険か)

(だから俺も連れてこられたって事か)

 

 先の事考えて3人登録してなかったって事か。

 ルールの隙間を縫うのがいいかも。

 

(んで、奴らはタイムアップ狙いって事か?)

(ありうる。フラッグを守ったり隠す準備や2,3人空白にしてて助っ人を呼ぶ可能性もあるな)

(ん、空間転移って出来んの?)

(出来るぞ、ビーコンの設置や消費魔力と体力が極大だから多人数の助けがいるが)

 

 あ、空間転移は出来るけど消費が激しいって事ね。

 ポータル系の方が便利。

 

(能力を使う)

(賛成)

 

 俺のコピーした能力の1つを使う。

 恋人(タクティクスオウガ)を発動。

 

(なんですかコレ?)

(ワープホール)

 

 ワープホールの他にも使い道あるけどね。

 見せてもアドリブが効く能力だし。

 

 ちなみにこれでゼルトブルの商館の立てこもりを完封した。

 違う場所に空間を繋げ、ワープホールで拉致し眠らせてたのである。

 

(さて、潜入)

 

 さて、何処にフラッグがあるかね? 

 どこだー? 

 

 あ、ベリトが副官らしきのと話してる。

 大分落ち着いてるな。

 

『さて、勝ち逃げるよ』

『フラッグはどうするんです?』

『フラッグ壊されたら負け。だから硬い物質で覆う』

『ああ、隠れの能力者ですか』

 

 ん、硬い物質で覆うって事か。

 だったら壊れない。

 

『まさかダイヤモンド等の宝石を自在に操る能力か』

『彫金師の仕事をしてるそうです』

 

 あー良さそう。

 なんで兵士に? 

 

(多分兼業だろうな)

(副業とかOKなのか?)

(問題無い。普通市民でもイクサの参加OKだ)

 

 まあ確かに犬猫戦争やってたしな。

 

(報酬とか貰えんの?)

(勝てたら多く貰える。負けたら少し)

 

 死人は出ないし負けても金貰える。

 いい世界だな。

 

(んじゃまあ斬りますか。フラッグある場所何処?)

(天守閣だと思う)

 

 よし、レッツゴー。

 

 あ、案の定見っけた。

 窓近くにカマゲロスがいる。

 

 それにもう宝石で固められている…………旗の彫刻のようだ。

 これはチャンス。

 

(アギレラ、爆弾を合図するから投げてくれ)

(フラッグを壊す算段があるんだな)

(その通り)

 

 俺も能力の数には定評があってね。

 

(んでこの宝石って硬いの?)

(硬いですよ。オルリファスト鉱石っていって彫刻は硬くて難しいとか)

 

 やっぱりか。

 時間も無くなって来るしやるか。

 

(アギレラ、やってくれ)

(わかった)

 

 アギレラは爆弾を砦に投げつける。

 

 ドン

 

 やっぱ爆弾をベリトに撃ち落とされる。

 

 別に破壊に期待はしてないからいい。

 目的はカマゲロスの気を反らすこと。

 

 俺はワープホールを使い天守閣に侵入する。

 

「あ! しまった!」

「遅い。瞬間少年ジャンプ(ディメンションスラッシュ)骨喰(セレクション)

 

 宝石をすり抜けフラッグを斬る。

 

 俺らの勝ちだ。

 

 




恋人(タクティクスオウガ)
・輪状の念弾を自由自在に動かす。放出系。
・攻撃、偵察、追跡に使用する。

骨喰(セレクション)
・対象をすり抜け切断する。放出系。


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第74話

「あー負けた」

「まさか選んだ物を斬る能力があるとは」

 

 んで、俺らはカマゲロスとベリトと王都に向かう途中だ。

 

 んでまだイクサをするらしい。

 

「まさかのカマゲロスが勇者になってたとはな」

「トラックに跳ねられたわ」

 

 酷いな…………運転手のクセして責任は無いのかこの野郎。

 

 …………いや、待てよ? 

 カマゲロスの防御力は高い……何故死んだ? 

 

「それで球の勇者はどんなやつなんだ?」

「僕らも見てない」

「召喚されたって話を聞いただけよ」

 

 見てないんだ。

 まあ普通戦争放って顔見に行かないか。

 

「んで【アルコイリス】で3狩リアするそうよ」

「3狩リア?」

 

 ん、聞いた事あるぞ? 

 ボーボボでそんな戦い方があったな。

 

「3狩リアってのは3対3の決闘方式です。フィールドはホスト国が用意します。ギミックがよくありますよ」

 

 まんまじゃねえか。

 

「この2人が出るかは分からないですけど。残りの棒・漁具・農具・球が出てくるかもしれないですね」

「多分僕らやんないと思うよ? フィールドの事は聞いて無いし」

「イクサの後だし可能性は低いと思うわ」

 

 この2人は不参加か? 

 球が出てくるのは無いな。

 

 やっぱり2人の内どちらかか。

 

「んでどんなフィールドがあるんだ?」

「海フィールドでのイクサの可能性が多い。ゴドルも武器を銛に変えられたはず」

 

 自然溢れる国だからな。

 フィールドの要素も沢山あるだろうに。

 

 …………他の2つの国にはどんなのがある? 

 

「ん?」

 

 ガサリ

 

 あれ? また草むらが動いたぞ。

 

「スライムだ」

 

 んだよスライムかよ。

 定番だな。

 

「駆除していいのか?」

『いやダメだ!』

「?」

 

 ん? 駆除対象じゃないの? 

 定番RPGじゃ結構狩られてると思うけど。

 

「えっと、スライムってのは自然界の掃除屋みたいな存在なんだ」

「掃除屋?」

「倒木や魔物の死体を分解して土に返してくれるんだ」

 

 ゴキブリやシデムシみたいなスカベンジャーなんだね。

 

「スライムには無限の可能性があると専門家がいるな」

「そうなんだ…………」

「トイレ内に飼うテイマーもいるぞ?」

 

 なるほどぉ。

 便利だな。

 

「他にもそれで肥料とか作って【アルコイリス】は畜産や農業とかしてるらしい」

 

 わーいいなぁ。

 進んでるねこの国。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 はい、やって来ました【アルコイリス】へ! 

 

 王都の街並みは…………中世のイギリス。

【バムズガーデン】は中世のイタリア。

 

 んで3狩リアだっけ? 

 なにやるの? 

 

「んで、何処に行けばいいの?」

「王宮まで行こう」

 

 王宮にいるのか。

 ちょっと観光したい。

 

「昼食行かない?」

「王宮で何かあるだろ」

「アウェイだから」

 

 パイ投げでもされそう。

 ラーメンを被るとかも。

 

『ピンポンパーンポーン』

「?」

『おい、【バムズガーデン】の勇者共聞いているか!』

 

 なんだろ? 

 

「コイツの声は【アルコイリス】の第一王女のルリアンだ」

『3狩リアの準備が出来た。王宮に来るといい』

 

 お腹すいてるんだけどな。

 

「今すぐとは言ってないし。飯食ったら行こう」

「だな」

「僕のおすすめは海イノシシかな?」

「私は豚蟹ね」

 

 

 

 ■

 

 

 

「うぃーす師匠」

「ほら、来てやったぞ」

『1時間も何やっていたー!』

『飯』

 

 んで【アルコイリス】の王宮。

 ルリアン第1王女様か? 

 

「なんだよせっかく来たのに飯食わしてくれねーのか?」

「まあいい…………それより3狩リアだ」

 

 まあ、そのためにこさせたんだろうし。

 

「んでカマゲロスとベリトは不参加か?」

「まあ連チャンは酷いし休め」

 

 まあ慮ってくれるんだな。

 いい人かもな。

 

「んでこっちが勝ったら加工費を元通りにしろ」

「いいぞ」

 

 ああ、イクサの理由は武器防具薬の割引の停止だったな。

 

「ふ、実は新入戦力が入ってな…………そっちの負けだ」

「ほう」

 

 球の勇者か。

 誰だ。

 

「いでよー! 球の勇者!」

 

 シュバアアアアアアアアアアッ

 

 よくあるスモークが焚かれる。

 それで出てきたのは。

 

「あれ!? 父様!!」

「夜刀ちゃん」

 

 夜刀ちゃん! やっぱりこの世界に召喚されてたのか!! 球の勇者って! 

 

 …………ん? サッカーのユニフォームだ。

 なんで? 

 

「やっと会えた!」

「こっちも心配したぞ」

 

 俺らは抱き合う。

 

 パチパチ バチパチ パチパチ

 

 あれ? 拍手されてる。

 周りの人間から…………いや、これ近く建物の方からも聞こえるぞ。

 

「これ中継されてる?」

「よくイクサは生中継されるぞ」

 

 そ、そうだったんだ。

 まあ暇とか潰せそう。

 

「無事で良かった」

「うん。こっちも」

「で、ローナは?」

「…………わかんない」

 

 ですよねー。

 こっちも分からないならそうだし。

 

「さて、もういいか?」

「ああ、3狩リアだろ」

「フィールド移動するぞ」

 

 

 

 ■

 

 

 

 んでここは? 

 

「【マルセル墓地】だ」

 

 いや、分かりませんが? 

 詳しくないですけど。

 

「怨霊とか多すぎて駆除しきれないらしくて。もう放っていってる」

「壊しても問題ないって事か」

 

 と、言っても敷地から出たらアウトらしい。

 

「で、敵はフェムト、ガゼル、夜刀ちゃんか」

「一応無駄だがガゼルの能力を教えておく。物体の速度上昇する能力…………だけど放出系の能力で小回りは効かない」

「ふむふむ」

「船の推進の他にも大砲の威力も上昇する」

 

 船乗りみたいな能力だな。

 あれ? ゴドルは? 

 

『イクサスタート!』

 

 あ、始まった。

 俺、アギレラ、ハットの3人で殺るぞ。

 

「アースクエイク!」

「ガルヴァリン!」

 

 フェムトが地面を沿った衝撃波。

 ガゼル……かな? 大砲が具現化、漁具だよね。

 

 ん? 

 

「しまった夜刀ちゃんの能力だ。能力使えん」

「やられたな」

 

 剥がしたら能力使えなくなるし。

 武器の能力を借りるとしよう。

 

「ナパームレイン!」

 

 焼夷弾を雨のように降らすスキル。

 多少オーラも混ぜてるので威力が格段にやばい。

 

 ドゴォォォン!! 

 

「きゃあ!?」

 

 シュン

 

 あれ? 今の一撃で夜刀ちゃんがエスケイプした。

 よし、チャンス。

 

「鬼徹連弾!」

 

 またまたオーラを込めてマシンガン弾を打ち込む。

 

 ドドドドドドドド

 

「ぎゃあっ!?」

 

 シュン

 

 ガゼル、エスケイプ。

 フェムト、後はお前だけだ。

 

「行け、サイバイナイト!」

 

 サイバイナイト? 初めて聞くな。

 どんな能力だ。

 

 あ、緑の騎士が地面から出てきた。

 三体出てきたか。

 

「HAHAHA、師匠。このサイバイナイトを出させましたね」

「どんな植物?」

「物理耐性、魔法耐性、オーラも混じって身体強化もたっぷり」

 

 わー面倒ね。

 サイバイマンみたいに爆発するのかしら。

 

「キャンサースラッシュ!」

「クロックハンマー!」

「双魚の逆巻き!」

 

 俺ら3人で三体を攻撃する。

 

「どうです? 傷つかないでしょ」

「ほう」

「私の植物は世界一ぃぃぃぃ」

 

 ザシュ

 

「ぃぃぃぃ…………え?」

 

 後ろから剣がザシュリと、殺戮任侠殺助だ。

 

「俺らの勝ちだな」

 

 

 

 ■

 

 

 

「あーサイバイナイト自信作だったんですがね」

「でも攻撃や魔法に耐性付いてるのは良かったぜ。大量生産してイクサで使えば?」

「時間と材料がかかるんでひと月に3つ程です」

 

 んで、ウチらは友好を育むために宴をしていた。

 この国料理の量が多い。

 宴だからと言って贅沢過ぎだな。

 

「んで父様、これからどうする?」

「? 【ライガーフェン】に行こうと思う。多分この流れだと予想出来るし」

「だよねー」

 

 まあ、有り得る話だな。

 他の勇者の顔を見ておきたい。

 

「あ、そうだ。【ライガーフェン】にもカチコミしないとな」

「武器防具とかの値下げの件か?」

「結構下げられてるから職人達が怒ってたな」

 

 まー費用下げられちゃ怒るわね。

 

「ん? 別世界の方に行くのは出来るのか?」

「出来るぞ。あっちの方にやっぱ戻るのか」

「まあな。行っちゃ不味いか?」

「行ってもいいがちょくちょくでいいから来いよ。ウチの国の勇者だし」

 

 とられた斧はどうなったのだろう。

 複数持てるのか? 

 

「ところでゴドルは?」

「丁度休み。バカンスだってさ」

 

 

 



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第75話

 尚文side

 

「それにしてもあにさんは何処行ったんだろ」

「アイツ生存能力高そうだしな」

「前に殺し屋と鬼ごっこしたとか言ってたね」

「…………」

 

 ここに来て数日。

 ラフタリア達と合流し、絆の家で団欒していた。

 

 刀の勇者になっていたのは驚いた。

 

「やっぱり兎さんに捜索してもらっても見つからないでござる」

「もしかしたら他の異世界に紛れ込んでるかもしれないね。敵の仕掛けで」

 

 ハルナだっけ? 確かに異世界同士行き来出来るならそんな技術あってもおかしくない。

 

「おまえさーあにさんのなんな訳?」

「は?」

「妹を名乗ってるけどさーあにさんに妹としての仕事してるの?」

「してるよ。領主の仕事手伝ってるし、お風呂で背中流してるし一緒に寝てるし…………」

「及第点」

 

 及第点なのかよ。

 いつも何やってる? 

 

「例えば身支度とか手入れとかやらないとダメでしょ? 肌荒れがあったらクリーム塗るとか、服に埃があればローラーするとか、寝癖あれば整えるとか」

「あーなるほど」

「兄を立てなきゃ。それから甘えるの」

 

 こいつ立派に奴を立ててるな。

 

「もうくっついたらどうだ?」

「くっついてるよ?」

「ん」

「もう、恋人同士って事」

「は?」

「え?」

 

 あ、確か言ってたような。

 

「付き合ってたか…………」

「まあね。色々あったけど」

 

 狂ってそうだしなんかあったのか? 

 

「やっほ〜みんな集まってるかーい!」

「アノンさん」

「あのクソ二匹の情報が入った。明日乗り込むよ」

 

 それは良かった。

 アイツらは許せない。

 

 俺らの世界から奪ったお礼してやらなければな。

 

「んで、ハジメと他は?」

「わからんとさ。生きてると信じたいな」

「だろうね。だけど心配に越したことないな」

 

 生きてる……よな。

 武器無しでも強い話を聞くが。

 

「そう言えばアイツって前の世界で何してたんだ?」

「ん? 色々。凄い優秀なハンターだし自慢の弟子だよ」

「ハンター? 犯罪者を狩るのか?」

「まあ大体あってる。ハンターってのは 怪物・財宝・賞金首・美食・遺跡・幻獣など、稀少な事物を追求することに生涯を懸ける人々の総称なんだ」

「アイツは犯罪ハンターって事か?」

「ちょっと違う。ハジメはテロリストハンターって言ってテロリストを殴って取り締まる事をしてるんだ」

 

 確かに奴の動きは俊敏だし。

 

「対テロの特殊部隊とかに所属してたのか?」

「まあ…………うん。対…………テロって訳じゃ…………無いけど」

 

 ん? 妙に歯切れが悪いな。

 なんか思うところあるのか? 

 

「んてあにさんは凄い特殊部隊でリーダーやってた訳」

「アイツ、リーダーやってたのか?」

「うん。メンバーも凄い優秀で他のグループでエースを張れる程の実力だよ?」

「んじゃゴドル達もか?」

「フェムトさんは違うよ? あの人はあにさんの弟子」

 

 確かに弟子とかも居そうだな。

 フェムトはしっかりしてるし指導はしっかりしてるのだろうか? 

 

「んで弟子も優秀」

「?」

「ああ、実はハジメの弟子も優秀で殆ど大成してる」

「…………」

「あにさんは見る目はあるらしいんだ」

 

 アイツが武術の道場で師範の様なイメージが浮かぶんだが。

 教えるの上手いのか? 

 

「確かに教え方は上手いでござる」

「教え方は荒いけど」

 

 確かに。

 どっかの軍隊みたいなやり方だしな。

 

「確か教え子には騎士団長、大富豪、マフィア、占い師、王族、剣豪とかいたはず」

「コネやばいだろ。フェムトは?」

「農家……と教祖」

 

 教祖? 

 確かに人間出来てるが。

 

「万年豊作教って宗教なんだけど。農作物を主とした宗教で飢饉の場所に穀物とか送ったりしてる。たまに育てられた野菜とか食べるけど凄い美味しいよ」

「凄い教祖だな」

「だから金が入ってくる。有名な富豪の1人だ」

 

 フェムト……おまえ凄い奴だったんだな。

 

「んで、御館様は何をしたでござる?」

「んとジャシン教の打倒、ギギの討伐、百鬼衆の打倒だったかな」

「…………」

 

 ヒミコ? なんか思うところあるのか? 

 顔が曇ったのを見逃さなかったが。

 

「やっぱり凄いでござるか?」

「凄いに決まってるだろ。A級難易度三つだぞ?」

「Aが1番高いって事か?」

「その通り。不可能に近い仕事を成し遂げたんだぜ」

 

 …………だから異世界に召喚されたってことか? 

 その方が即戦力だしな。

 

「でもアノンさんも二ツ星でしょ? コンロン病の」

「まあね。だけど意外と簡単に出来たから達成感無かったけどね」

 

 二ツ星? 格付けかなんかか? 

 

「二ツ星ってなんでござる?」

「ああ、とある分野で成功したら貰える称号だよ? 特権中の特権を貰えるんだ」

「特権?」

「各種交通機関・公共機関のほとんどを無料で利用できたり、一般人立ち入り禁止区域の8割以上に立ち入りを許されるようになる。その他の面でも所有しているだけで一生不自由しないだけの信用を得ることができるんだ」

「それ以上の特権を貰うって事」

 

 やっぱりアイツ特権階級だったのか。

 自由だなと思った。

 

「アイツ、自由にし過ぎじゃないか?」

「…………なんかやったの?」

「メルロマルクの城で俺を擁護してクズを襲撃したらしい」

「やるじゃんあにさん」

「修繕費を俺に要求されて支援は貰え無かった。クズの髭が焦げ付いてたのは笑えたがな」

「でもお兄ちゃんは慰謝料や素材渡したでしょ? 情報も話したし問題無いと思うよ」

「まあな……」

 

 ちょっと悪い事してしまった。

 許してくれる時点で良い奴だな。

 

「まあ前の世界でも自由過ぎて煙たがれていたし」

「何やったの?」

「うん。ニーズヘッグのメンバーも自由過ぎるし」

「?」

「まあ、会えば分かるさ」

 

 会えばわかるか。

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 雪丸side

 

 

 んで奴隷を買って数時間。

 臭うので城のシャワーで洗った。

 

 この子の名前はジュリアン。

 

「…………」

 

 んで最初あった時は汚かったが、シャワー後は見違える程になった。

 

 なんつーか品のある大人しい感じだ。

 いい所のお嬢様って感じだ。

 

「クサノ様、古着ですが持って来ました」

「ありがとう」

 

 キーノさんに古着を持って来させた。

 貫頭衣よりもマシだな。

 

「…………」ゴホッ

「? やっぱり咳多いね」

 

 数時間の間咳多い。

 なんか病気か? 

 

 医者に見せてみよう。

 

「うむ、10日咳ですな」

「10日咳?」

「10日以内に死ぬ病気ですな。環境が悪い場所に居続ければ発症しますぞ。この状態だと後2日でしょうね」

「治す方法は?」

「薬ですな。この薬を三食後に飲むと良いですな」

「良かった…………」

「金貨三枚」

 

 は? 

 おまえなに言ってんの? 

 

「王城の人間でも無いし…………あなたは神から何も貰っていない。あたりまえでしょうに?」

「…………」

「なるほど。はい、三枚」

「!!」

 

 何を驚いてんだよ。

 まさか出せないと思ってたのか? 腹ただしい。

 

「いえ、思い出した。確か貴方には薬を出せません」

「は? 今金貨三枚とか言ってたでしょ」

「女王様からの直筆です」

 

 嘘だろ? 何を考えてるんだ!? 

 僕が何をやったと思うだよ? 

 

 つーか尚文もこんな事されてたな。

 これは腹立つ。

 

 他の所行こう。

 どこ…………薬屋に行こう。

 

「あーこれねー」

「難しいんですか?」

「在庫切らしてるんだよ。作るなら1時間で出来るけど」

「このキンリンソウってのを取って来ればいいんですね?」

「ああ、山岳にあるから見つかりにくいよ? 冒険者ギルドに頼んだ方がええ」

「時間かかるんで行ってきます!」

 

 んで僕は山岳へ。

 ToLOVEるは無ければ良いけど。

 

 んで入ると。

 

「へへ、兄ちゃん〜」

「よぉ、金目のものだしな」

 

 は? 盗賊? 

 なんで? 

 

 待ってましたばりに待ち構えてたけど? 

 

「ふん!」

「うおっ!」

「大人しくしててもらおうか」

 

 網投げられた! 

 なんで? 

 

「よし、捕まえた!」

「アジトに持ってこう!」

「三日後に奴隷に売ろうぜ!」

「傷つけんなよぉ」

 

 

 

 ★

 

 

 

 2日後、鍵をかけなかったらしく簡単に抜け出せた。

 クソ、なんでこんな時に盗賊に捕まるんだ! 

 

 んでキンリンソウを手に入れ、薬屋に作ってもらい全速力でジュリアンの部屋に入る。

 

「?」

「あれ?」

 

 何ともない? 

 顔色も良くなってる? 

 

「おや、クサノ様」

「…………何があったの?」

「実は…………ツルギ様が薬を買ってくれたのです」

 

 ホワッツ? 

 

 僕がやっていた事は…………なんだったの? 

 クラスメイトに頼りたく無かったのに。

 

「危なかった所でした」

「あ、うん」

 

 嫌になってきたな。

 この国消えれば良いのに。

 

 



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第76話

 よぅし、【ライガーフェン】に乗り込むぞ! 

 

「さて、【ライガーフェン】に行くぞ」

「父様、私も行く!」

「あ、自分も」

 

 あら、夜刀ちゃんは来るのは分かったけどフェムトも来るのか。

 

 んで5人に。

 

「? そう言えばポータルは?」

『ポータル?』

 

 ん? ポータル知らないのか? 

 …………だったら馬車を使わないか。

 

「龍刻の砂時計あるだろ?」

「あるな」

「その砂を入れれば空間転移の武器が出る。登録場所の数や制限はあるけど」

「…………そんなのあるのか!」

「試してみましょう」

 

 ものは試しだな……寄り道しよ。

 んでアギレラやフェムト達も砂を入れる。

 

「あ、本当だ。登録場所が登録できる」

「これで行き来しやすくなりますな」

「みんなに教えておきますか」

 

 役に立って何よりだよ。

 

「龍刻の砂時計ってどれだけこの世界にあるんだ?」

「3つ」

「少なっ!」

「少ないのか?」

 

 メルロマルク、ゼルトブルやシルドフリーデンや海底とかあるんだけどな。

 やはり世界によって違うのはあるんだよな。

 

「ウチら結構あるんだけど」

「ほー」

「六個以上あるぜ」

「多いな。国同士諍いとかあるんじゃないか」

「ある。人種差別とかあったぜ」

 

 メルロマルクとシルドウェルト。

 因縁は盾過去編で語られるほど昔からあるらしい。

 

 考えてみれば尚文もクズ等もそれが原因で嫌な目にあっている。

 

 女王もストレスで老けてもおかしくない。

 2児の母だしマジで歳幾つなんだろう。

 

「そっちの人種って?」

「俺の所は人間と獣人。獣人は人間に近いのや獣に近いのもいるし種類も多い」

「なるほどこっちは沢山いるな。人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔人」

 

 獣人とドワーフは見かけた。

 エルフと…………魔人? 見てない。

 

「エルフと魔人は見てない」

「エルフは森に篭ってる。魔人は夢魔界って所に住んでる」

「夢魔界?」

 

 また新しい単語だな。

 

「ああ、地下都市の事だ。賑やかな所だよ」

「差別でも受けてんの?」

「違う。太陽光が苦手でな」

 

 そゆこと。

 

「ちなみに天空都市もありますよ」

「天空都市」

「空上バスで行けますよ」

 

 天空都市って…………楽しそうだな。

 時間あったら行ってみよ。

 

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 

「あ、オークだ」

 

 馬車を転がしていたらオークを発見した。

 RPGの定番。

 

 まさかコイツも保護対象? 

 

「コイツは狩っていいのか?」

「駄目だ」

「ええ、オークはそこまで被害を出しません」

 

 またゴブリンと同じか。

 

「ゴブリンと比べて温厚で紳士的なモンスターですから」

「山であったらお辞儀を返してくれるし」

 

 あれ良い奴なのか? 

 

「女とか乱暴しないの?」

「そんな話聞いた事無いぞ」

 

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 

 

『とまれぇぇ!』

「あ?」

 

 こっちトラ【ライガーフェン】に行きたいんだけど。

 

『我らは【ミテルネ盗賊団】だ。貴様らにイクサを申し込む!』

「こっちは急いでるんだよ」

『残念だったな道は能力で塞いでいる。回り道してもいいがまた【バムズガーデン】に戻らなければならなくなるぞ〜』

 

 なるほど妨害されたくなければイクサを受けろか。

 

「それで? コイツら何処の所属?」

「ミテルネは【ライガーフェン】の直轄だったはず」

「ハット君」

「多分無理ですね」

「確かに…………顔は知ってる時点で挑むって事はだ」

 

 んで腕試しって訳ね。

 

『受けても受けなくてもいいぜ。回り道すればいいんだしな』

「回り道するか」

『は?』

 

 急がば回れって言うし。

 

「馬車はどうする?」

「中継の村の馬車駅に預けてポータルで【バムズガーデン】に飛ぼう」

『えっ』

「ポータルは便利…………あ、召喚された場所が登録されとる」

「ラッキー。預けたらすぐ飛ぼう」

「そう言えばハット君の登録場所は【ライガーフェン】は入ってる?」

『ちょっと』

「入ってないですねー」

「んじゃ行こうか」

 

 別に戦う理由も無いし。

 早く行きたい。

 

『おい、お前ら勇者なのに逃げんのか?』

「逃げるもなにも用事があるし、受ける受けないはこっちが決めること」

「通してくれないから回り道するだけ。逃げる訳じゃないよ」

『…………』

 

 確かに逃げる事は恥ずべき事かもしれない。

 しかし自然界では逃げの戦法が主流だし、あまりにも話が通じない相手には逃げの選択肢を取る事もある。

 

 実際逃げる能力を作るやつもいるし、それで成功した人間もいる。

 

 逃げ続けても最後に勝てばいいのだから。

 

『ま、待て。あれだろ何が欲しいんだ?』

「別に要らない」

 

 

 

 ■□▪▫■□▫

 

 

 

「あれで良かったのか?」

「問題無しだ。受ける受けないは自由」

 

 だよな。

 

 尚文が決闘の時はあれはおかしいよな。

 奴隷制度は国として認められてるのになんで尚文はダメなんだって事。

 国を批判するべきなのになんでこうなるのって話だ。

 奴隷狩りもしてるし問題だろう。

 

 元康だって奴隷を見て見ぬふりしてたし、パーティーメンバーがビッチに売られてやばい時にも無視してたし。

 さすがに自分に甘いな。

 

「あ、ドライアドだ」

 

 ドライアド? 

 森の精霊の感じか? 

 

「アースクエイク!」

「クロックバスター!」

「グレードスラッシュ!」

 

 ドゴオオオオオオン

 

 あれ攻撃した!!? なんで?! 

 森の主とかじゃないの!? 

 

「え、どゆこと? 害虫かなんかか?」

「…………ドライアドって生物は成体になると森を枯らすんだ」

「え」

「養分とか吸い取ってな」

「今のは幼体だけど人間から養分を吸い取る位はできる」

 

 …………寄生生物みたいじゃん。

 植物を司ると思ってた。

 

「そんなに迷惑生物なのか?」

「森が砂漠のようになった事例があるらしい。そうなったら10年くらいその状態が続くとか」

「…………」

「だから速攻で駆除するってわけだ」

 

 まあ世界ごとに魔物の善し悪しは違うしこんなのもあるだろう。

 ゴブリンやオークが益虫って事もあるのか。

 

「あ、そろそろ中継の村に着くぞ」

 

 こうして馬を置き、【バムズガーデン】に転移するのだった。

 

 




まだ他世界編は続く。


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第77話

 ブォン

 

 シュタッ

 

 俺らは【バムズガーデン】にポータルで戻ってきた。

 やっぱりこのスキルは便利だ。

 

 関所とかも通らずに済むし、労力がSPのみで一瞬で移動できる。

 

「さて、【ライガーフェン】には少し休止してから行くか」

「そうですね。食事でもして休みましょう」

「父様ーこの国何があるの?」

 

 この国初めてのやつがいるから案内したいが俺もそこまで分からない。

 

 まあいい、食事行こう。

 ここ調理の技術高いからいいな。

 

「何処行くか」

「牛丼屋とかは?」

「庶民だな…………まあ丼物専門はあるぞ」

 

 よし、そこ行こ。

 はい、って事で着いたと。

 

「みんな何頼む? 俺カツ丼」

「あ、俺もカツ丼」

「俺親子丼」

「私天丼」

「自分蝮丼」

 

 で、注文。

 

 俺はカツ丼…………よく食ってた。

 つーか召喚勇者か? 日本人としか思えないんだが。

 

「この丼物って召喚勇者が広めたのか?」

「ん? まあな。他の世界でパクってきたのもあるぞ」

「パクってきたんだな…………」

「まあ他世界には行き来しにくいし迷惑にはならないと思うけど」

 

 著作権違反は世界内ではありそうだけど、世界同士じゃ行き来しにくいから文句とか言われなさそう。

 

 そんな特許とかそんなルールありそうだ。

 

「それにしても世界間の移動って簡単に出来るのか?」

「出来ますよ」

「ただし四聖は全員は異世界に行けないがな」

 

 原作と同じ縛りで出来るんだな。

 

 もしかしたらこの世界独自のルールとかまだあるかもしれない。

 

 色々聞いてみるか。

 

「他に勇者としての常識ってあるか?」

「あるな。ケツモチ制度だ」

「「ケツモチ制度?」」

 

 ケツモチ…………マフィアとかいそうだな。

 

「簡単に言えば組織の用心棒や盗賊のケツモチだ」

「前にいた【フレイム山賊団】や【ミレイユ盗賊団】とかいたろ? アイツら勇者の傘下」

「え」

「言っておくが一般人に言うの禁止な。怒られる」

 

 え、そうなの? 

 じゃあ待て…………誰の傘下だ。

 

「んでフレイムはベリト、ミレイユはミレナリオだったはず」

「息かかってたのか…………」

「その通り。俺も持ってる」

「俺も」

「自分も」

 

 お前らもかい! 

 え、なんなの? 便利だし清濁併せ持つってのも大事だけどさーそこまで色々手を染めてるのか? 

 

「まあ、暗黙のルールで勇者一人につき盗賊は1つのみ傘下だがな」

「そんなに清濁併せ持つ事あるのか?」

「あるだろ…………どんだけこの国食い物にされてると思ってるんだ」

「納得」

 

 確かにやばい事に手を染められてるからな。

 目には目をってことだな。

 

「組織の用心棒ってのは?」

「商会とかを用心棒するんです。みかじめ料代わりに物品とかサービスを受け取るんですよ」

 

 なるほど〜勇者お抱えの商会って事ですね。

 それはそれで楽しそうだ。

 

「勇者一人につき二つまでの暗黙のルールがあるがな」

「へーアギレラ達はどんな所を回護してるんだ?」

「俺は製薬と鍛冶の組合だな」

「俺は冒険者ギルド1つ」

「私は林業と農業の方を」

 

 へーみんなお抱えとかあるんだな。

 他のやつも甘い汁啜ってそう。

 

「やっぱりウチらとかもやっていいの?」

「いいぜ。敵にはなるなよ」

 

 勇者一人しか居ないし、技能ギルドとか多そうだなこの国。

 

「んで盗賊を率いるんだし良い人材っているのか?」

「まあそれはトップに聞きな」

 

 女王の方が知ってるかもな。

 アギレラだって商売敵を作りたくないだろう。

 

 と言ってもこの世界に永住する気はない。

 早く仲間と合流しなければ。

 

「丼が来ましたよ」

「勇者だからサービスで盛ってるみたいだ」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 さあ、【ライガーフェン】に出発だ。

 

「なあ、移動系の能力者とか居ない?」

「【アルコイリス】に一人いますが条件が整いません」

 

 確かにルールがあるのもいるし。

 数千kmを一瞬で飛ぶとかすげーから縛りあるしな。

 

「ナルシスのやつ元気かな」

「元気じゃね?」

 

 俺のチームにいたアッシー君は元気だろうか? 

 

 ヤツの鏡の間(REFLECTION)は便利な能力だ。

 まあノヴさんの方と同じくらい優秀…………国家のお抱えになってもおかしくない。

 

「父様の仲間ってどんなのがいるの?」

「たくさんだ」

「あ、シンゲンは他の世界で見かけた」

「聞いた」

「蛮刀の勇者だって」

 

 アイツの得物は日本刀なんだが…………まあ大丈夫だろ。

 

 武器無しでも強いし戦えるしな。

 

「てか他の世界とも交流あるのか?」

「ある。技術交換や停戦とかな」

 

 この世界はコミュ力あるな。

 楽しそうな予感がする。

 

「あ、カーバンクルだ」

 

 あ、ハットが頭にルビーがついた動物を発見。

 可愛いな。

 

「イーグルキャンサー!」

 

 ズバッ

 

 はぇ? アギレラがぶった切った。

 

「え」

「コイツ害獣なんですよ。畑荒らしますし」

「頭のルビーは魔法薬の材料になるから回収」

 

 そ、そうなんだ…………可愛いのに。

 

 あ、スライムが近づいてきた。

 

「こうしてスライムが処理してくれてるから助かる」

「骨を溶かして地面に撒いてくれるんですよ」

 

 自然に優しい生物だな。

 

「そう言えばスライム使って肥料使うんだったけ?」

「ええ、腐葉土とかスライム使ってです」

 

 

 

 ■

 

 

 

「ようやく【ライガーフェン】に来れたか…………」

「でも良かったですよ。【バムズガーデン】の国境は俺やアギレラさんやマルシダス師匠ケツモチの盗賊の縄張りですし」

 

【アルコイリス】側はウチの国の盗賊縄張りは無いんだな。

 

「それでどうする? 城に直行するか」

「だな。長居はする気無いし」

 

 ローナが居ると思うし、確認をしなければならない。

 久々にマルシダスに合うな。

 

「師匠ー!」

 

 あれ? 聞いた事あるような声が。

 

「あ、ギンコさんだ」

「ギンコ!!?」

 

 はぁ!? なんでギンコがいるんだよ! 

 勇者召喚ってすげーな!! 

 

「師匠ー! お久しぶりですぅぅぅ!!」

 

 ドオオン! 

 

「げふっうっ!」

 

 おい!? なんでいつも低姿勢でタックルしてくるの? 

 吹っ飛ぶんだけど。

 

「ギンコ、久しぶり。正直会いたかったよ…………」

「私も会いたかった!」ギュウウウウ

「痛い痛い」

 

 死んだと聞かされた時はショックで1ヶ月立ち直れ無かったんだ。

 

 また…………会えた。

 

「父様、その人は?」

「紹介するよ。初めての弟子で…………元恋人のギンコだ」

「ギンコ=アルバータです。元の世界では殺し屋やってました!!」

 

 

 

 



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第78話

大丈夫かな………


 ギンコ=アルバータ。

 殺し屋、襲ってきた所を返り討ちにし、依頼者を半強制的に教えて貰い、交渉して依頼を解除した。

 

 金で解決できた事なので簡単だったが。

 

 んで…………返り討ちにされ依頼者の情報を出してしまったので家から追い出された。

 

 それで責任取ってくれと転がり込む。

 

「まさか師匠も勇者召喚されるとは」

「まーね。二回目の勇者召喚だけど」

「なるほど…………」

 

 二回も勇者召喚されるとか凄いな俺。

 

「勇者召喚されて何年くらいになる?」

「15年くらいかな? 勇者の中でも長いほう」

 

 コイツが死んだのは8年程前。

 享年18。

 

 18+15=32

 

 時間の進み方が違うらしい。

 年下なのにいつの間にか年上になってるとは。

 

「それじゃー王宮行こっか。新しい勇者に合わせるよ」

「ああ、行こうか」

 

 腕組みながら移動。

 

『…………』

 

 何お前ら暖かい目で見てんのよ。

 

 

 

 

 ■

 

 

 ドゴォォォン! 

 

 ギャアアアア! 

 

 バキュゥゥン! 

 

「ん、なんか騒がしくないか?」

「いつもの事だろ」

「?」

 

【ライガーフェン】の王宮…………城に着いた。

 なんだか騒がしい声がするんだが? 

 

 んでギンコが扉を開ける! 

 嫌な予感しかしないっ。

 

 ドォン

 

 ドカァン

 

 ドドォドド! 

 

「今内乱中だし」

「内乱中…………」

 

 やばいだろお前ら。

 内乱とかどうなってんだこの国。

 

「今日はまだ優しい方ですね」

 

 ハット君? 君はこの国でよく性格よくなったな。

 

「なんで内乱になったんだ?」

「今回の召喚勇者の話になるんだよね」

 

 召喚勇者の話になるの? 何故それで内乱になる。

 何処だ元凶の召喚勇者は? 

 

 ん、慣れた気配が後ろから。

 

「ハジメ様ー!!!」

「無事で良かった…………」

「って師匠の知り合い?」

 

 ってローナ。

 良かった無事そうで。

 

「あ、ローナ。召喚されてたか」

「そうなんですよ! 変な事で争いになっちゃって!」

 

 …………なんだよ変な事って。

 

 

 

 ■□▪▫■□

 

 

 

 数日前。

 ローナは十手の勇者として召喚された。

 

 んで服を新調する事になり、どんなデザインにするかみんなで相談していたそうだ。

 

「私らはメイド服がいいかと。戦闘でメイド服…………シックさが溢れて素晴らしいかと」←国王派

「いやいや、ナース服でしょう。見てるだけで癒される…………ナースキャップと黒ニーハイ。魅入られる…………」←宰相派

「水着…………ビキニアーマーはどうでしょうか? 動き安いですし何より肌面積が広い。国民みんな喜ぶでしょう」←将軍派

「巫女服」←ギンコ

「バニー」←マルシダス

「着ぐるみ」←ミレナリオ

 

 …………。

 

「んだとお前ら舐めた事言うなよ?」

「あ、舐めてんのはお前らだろ」

「ケッ、この阿呆共」

 

 内乱が始まった。

 

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「………………内乱はこれで始まるのか?」

「いつもこんな感じでこうなる」

「…………」

 

 この国やばくないか。

 よくもまあ消されないな。

 

「どうする? このまま放っておくか」

「【バムズガーデン】としてはこのままで良いんだが」

「【アルコイリス】としても」

「そりゃ他人事だな…………」

 

 まあ、この方が他国にしてはいいか。

 内乱してるんだし変な事はしてこないだろうし。

 

 んで…………マルシダスは何処だ? 

 

「あ、ハジメ。おひさ」

「よぉ、マルシダス。元気そうだな」

「え!」

 

 マルシダス=チターニ。

 アギレラの後輩、国際警察の人間の一人だ。

 独断専行が多いが強いし功績はある優秀な能力者だ。

 

 コイツは星持ち…………味方にいて嬉しい。

 

「ねぇ、父様…………」

「どうした? またマルシダスが何かやったの?」

「俺なんかやった?」

「いや、この人なんで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 下半身に何も履いてないの?」

「ハジメ様、私もびっくりしました…………なんでこの人丸出しなんですか?」

 

 ああ、コイツのチ○コ丸出しの事か。

 ウチらチームやハンター協会も既に諦めたし慣れた。

 

「まあ色々あってな。見て見ぬふりをしろ…………直に慣れる」

「マジで頭大丈夫なんですか?」

「父様…………」

 

 もうチームの皆もハンター協会の皆様も慣れたよ。

 この国も良い国なんじゃないか? 

 

「いいかお前ら。人間なんてチ○コ丸出しの変質者なんだぞ」

「えー」

「考えてみ? 人間は知らぬ間に罪を犯している。例えばうっかり人を傷つけたりとかあるだろ。物理でも言葉でも犯罪じゃなくても」

「ああ、うん」

「それで自分は罪を犯していて、他人の罪を批判するなんておかしいだろ」

 

 人間なんて歩く犯罪製造機だしな。

 どんな善人でも恨みは買うし罪は犯す。

 

「言っておくが見て見ぬふりは俺は出来るよ? 多少の犯罪でも見て見ぬふりはするし」

「あ、俺多少だったら見て見ぬふりするから」

「だとよ。よかったな」

「う、うん」

 

 尚文だって自分で罪深いと思ってるだろう。

 でも…………俺は見て見ぬふり出来る。

 

「あれ? ミレナリオは?」

「どっかにいるぜ」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「それにしても顔見知りの勇者多いな」

「本当だな」

 

 なんで俺ら関係が召喚されてるんだろうか。

 武器がなんか選んでるのか。

 

 俺達勇者は城の部屋で休んでいた。

 

「なあ、1度勇者同士で集まらない?」

「まあ、顔見せもしといた方がいいしな」

「勇者武器の強化方法が共有出来ると言ったら?」

「!?」

 

 やっぱり知らなかったか。

 

「それ本当か!?」

「マジだ。少しのバフしかかからないけどスキルは拡張出来るから地味に便利だ」

「なるほど」

「ちなみにポータルスキルは拡張出来る」

「やっぱりそうなのか…………」

 

 斧の時はもう10箇所程出来たな。

 あ、俺の武器どうなったんだろ。

 

「俺の鋏の強化方法は服飾だな」

「服飾…………?」

 

 服飾? どゆこと? 

 鋏だしそんな強化方法が? 

 

「簡単に言うといい服を着るとステータスが上がる。他にも作ったりすると技能とかバフとか」

 

 へー。

 鋏だけに仕立て屋みたいな強化方法だな。

 

「ハジメや夜刀の強化方法は?」

「そう言えば見てなかったな」

 

 別に強化方法しなくても念で大丈夫な感じがする。

 でも気になるから見とこ。

 

「えっと…………逆境、ソウルイーター、教導?」

「私のは…………集団行動、魔力吸収、魔法改造」

「ちなみに私はレベルダウンってのがありました」

 

 …………ってなんか前の世界の強化方法と違うな。

 鏡は食事だし少しズレててもおかしくは無いが。

 

「ギンコ達は?」

「私の忍具は…………武器エンチャント、ペット、宝石エンチャント」

「俺の車輪は……走行距離か。距離や何処へ行くかでステータスや技能が増える」

「農具は育てた農作物ですかね? 種類や数作ると強化します」

「時計は金銭エンチャントですかね。金を溶かしエネルギーにして武器を強化します」

 

 なんか違ってるぅ! 

 

 



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第79話

3期か……大丈夫かな?


はい、3日後。

 

勇者が全員集まった。

んでアギレラが強化方法を共有出来る事が出来たので皆で共有する事に。

 

「んじゃ脇差はスキル改造。威力や射程、速度を変えられるしSPで割増も出来るようになる」

「漁具は魚等の海産物の採取。ステータスが上がったりするな」

「砲は金属精錬、金属を入れて武器を強化よ」

「弩は動物精錬、肉や骨を入れて武器を強化」

「棒はガチャ、魂改造、デイリーボーナス」

 

んと。

整理してみよう。

 

 

銃剣

逆境 ソウルイーター 教導

 

集団行動 魔法改造 共有

 

忍具

宝石エンチャント 武器エンチャント ペット

 

ガチャ 魂改造 デイリーボーナス

 

 

服飾

 

十手

レベルダウン

 

車輪

走行距離

 

時計

金銭エンチャント

 

脇差

スキル改造

 

農具

農作物の育成、採取、摂取

 

漁具

海産物の育成、採取、摂取

 

金属精錬

 

動物精錬

 

 

って所だな。

なんか前世界と違うような違わないって所だな。

 

んで流れで色々試してみる事に。

俺も試そ。

 

さて、俺の強化方法からいくか。

 

・逆境………これはピンチの時にステータスが上がるって事らしい。

武器や魔法も上昇するみたい。

 

・ソウルイーター………魔物を殺して魂をエネルギーし、それがポイントに変わる。

ポイントをステータスに振るうもよし、他の武器の強化方法の比率を上がらせる事も可能。

 

・教導は………弟子、部下が多い程ステータスが上がる。

 

教導ってのは信頼チートみたい。

良いな。

 

 

んで球。

 

・集団行動は多数で行動すると自分以外にバフがかかるとか。

 

・魔法改造はミレナリオと同じく魔法の威力や精度を上げたりできる。

 

教導と集団行動…………足すと尚文の強化方法になる。

なんだろこれ。

 

 

忍具行こう。

・宝石エンチャント……宝石を溶かしエネルギーにし武器に貼り付ける。

威力が上がったりスキルを獲得したりとかあるとか。

 

・武器エンチャント………これは武器を溶かしエネルギーにし武器に貼り付ける。

これも貼り付けた武器の特性によってエンチャントが変わる。

 

・ペットは………自分の飼っているペットによりステータスが変動する。

自宅に何匹か飼っているらしい。

 

 

んで棒だ。

 

・ガチャ………敵を倒したりレベルを上げたりするとポイントが貰えガチャガチャが出来るらしい。

ステータス上昇、技能等色々出るとか。

 

・魂改造………精神を弄り、得手不得手を変える事が出来る強化方法らしい。

敏捷が弱かったりすると補正出来たりとか技能向上とか。

まあポイントを消費する。

 

デイリーボーナスは………日替わりのミッションを達成すると色々。

これもポイントを増える。

 

 

鋏。

 

・服飾………服でステータスが上がる。作った服飾を他人に着させる事によりステータス上昇。

 

 

十手。

 

・レベルダウン………レベルを下げる代わりに経験値上昇率やレアドロップ率が上昇。

ポイントも増える。

 

 

車輪

 

・走行距離………移動距離や行った場所によってボーナスが貰える。

ポイントも増える。

 

 

時計

 

・金銭エンチャント………金を溶かし、武器にエンチャントを貼り付ける。

金額が多かったり回数入れたりするとボーナス。

 

 

脇差

 

・スキル改造………スキルを改造し威力や精度を上昇する。

 

 

農具

 

・農作物の育成、採取、摂取………ステータス上昇や技能向上。

品質、量によりポイント。

 

 

漁具

 

・海産物の育成、採取、摂取………ステータス上昇や技能向上。

品質、量によりポイント。

 

 

 

・金属精錬………金属を溶かし武器を強化

 

 

 

・動物精錬………動物の肉や骨を溶かし武器強化。

 

 

ウチの世界や絆の世界と似てるようで似てない強化方法があるか。

 

んで眼鏡はどんな強化方法だろうか?

 

つーかどこにある? 誰かが隠したとかしか思えないんだけど。

 

多分【ライガーフェン】か【アルコイリス】のお偉いさんがわざと隠してるとか?

 

今度調べてみるか。

 

「ハジメ、ガチャやってみたか?」

「? まだだ」

「月毎に出るものが違うのがあるみたいだ。今月は武器らしい」

「武器!」

「と、言っても自分の勇者武器だがな」

 

え、なんか普通にスマホのゲームのガチャじゃない?

 

やってみよっか。

 

ゴロン

 

[アサシンショッター]R

 

なんか狙撃銃出ちゃった。

もっと出してみよ。

 

[アサルトライフル]R

[バイソンショット]c

[バイソンショット]c

[グランカイザー]SR

 

お、SRでた。

ダブりは………その武器が強化されるみたいだ。

 

なんか楽しいな。

 

「師匠」

「?」

「ペットの事なんだが飼ってるのによってスキルも付与されるみたい」

「そうなのか?」

 

ギンコ何飼ってるの?

 

「カメレオン飼ってるけど、回避+10とか透明化とかついてくるんだ」

 

あったよねードラえもんで。

飼い主がペットに変身するやつ。

 

そういえば俺はフィロリアルやその他動物を飼ってる。

 

どうなるんだろか。

調べ………あれ? 夜刀ちゃんの欄しかない。

 

んで魔法威力増大の項目がロックされているので………アンロック出来るので解除っと。

 

「あ、僕のペットの狐の欄が面白い」

「ベリト狐飼ってるんだ」

「うん。それで磁気感知ってのがアンロックした」

「それが面白い?」

「実は狐って磁気を感知して狩りするって話だし、アンロックしたら周りの気配を感知出来た」

 

狐って磁気感知出来るんだ。

 

鳥も磁気を見て渡り鳥するらしいし、出来る動物が居てもおかしくない。

 

「他にペット飼ってるのは?」

「自分モグラを飼ってます。それで掘削スキルと耕作スキルが開花しましたね。土耐性も出ました」

「俺のペットはオウムなんです。音響攻撃ってのが開花です。スピーカーの時計も出ました」

 

この強化方法ってば種類ありそうだね。

仲良くなったりするとスキルや技能等が増えるギミックみたい。

 

「ギンコって他に何飼ってる?」

「えっとカメレオンは言ったし犬2匹、鰐1匹、烏1匹、ベンギン3匹、猿1匹、ドラゴン1匹、鳳凰1匹」

「やべーな」

 

結構多いから強いかも。

 

 

 



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第80話

【ライガーフェン】、俺らは街を歩いていた。

 一旦夜になったので勇者は解散し、俺やローナと夜刀ちゃんはギンコの家に行く事になった。

 

 城は騒がしく内乱中なので泊まるのだ。

 普通に銃火器とか使ってるらしい。

 

「それで俺がヒミコの世界にはすぐさま行けるんだな?」

「普通に行けるよ〜だけどちょっと準備欲しいな」

「まあいいけど」

 

 なんか準備あるの? 

 制約とかあるとは思うけど。

 

「そっちは着いてくるのいるの?」

「四聖は行けないかな。マルシダスは行くって言ってたけど」

「あいつだとトラブル多そう」

「フェムトあたりを呼べば?」

 

 マルシダスは下半身があれだから衝突事故はあるんだよ。

 見て見ぬふりが出来ない奴ってのはよくいるし。

 

 俺らってば懐大きいな。

 

 あとパリストンが、

『ち〇こ丸出し? 会長の方がやばいですよ?』

 って言ってた。

 

「なんであの人は下半身がもまるだしなんです?」

「まあ色々あってな。スボン履けとか言うと殺人未遂になるから気をつけろよ」

「なんで!?」

「あと嫌な奴にヤバいの飛ばしてくるから気をつけろよ」

「何を?!」

 

 まあ…………良い奴なんだけどね。

 ハンター協会でも味方はいるんだよ。

 

「父様の世界の人やばいね」

「それで? なんでこの世界に来たんだ師匠」

 

 

 かくかくしかじか。

 

 

「うぇ、勇者の武器を盗られたの?」

「ああ、それで追いかけたらこの銃剣の武器に選ばれたって訳」

「やっぱり転生者達は調子に乗り過ぎだね。波の時にたまに現れるけど…………逃げるか派手に死ぬかのどっちか」

「逃げるん派手に死ぬんだな」

 

 こっちもよく調子づいて大言壮語してるのがいるんだけど…………それで瞬殺コース。

 かっこ悪いな。

 

 まあそこまで強くないから異世界で放任されてる可哀想な奴らだな。

 戦力ならば自分の傍に置く。

 

「それにしても早く行かないと」

「待っててね」

 

 イレギュラーの2匹だしな。

 何が起こるかさっぱり分からない。

 

 師匠がいるしヒミコも腕が経つから大丈夫だと思うが。

 

「よし、着いた」

「あら大きい家」

「でしょ」

 

 ギンコの家に着いたようだ。

 洋風の御屋敷みたいだ。

 

「あ、犬だ」

「狼なんだけどね」

 

 狼ってペットに出来るのか? 

 家畜化されたのが犬だし。

 

「よし、帰ったぞー!」

 

 ん? 誰かいるのか? 

 1人暮しなら言わないが。

 

 ペットに言ってるんだよな。

 

「じゃ師匠はここで寛いでて。料理作るから」

「OK」

 

 リビングにて寛ぐ事に。

 雑談でもしようか。

 

「それにしてもハジメ様。なんで私らが勇者になるんですかね?」

「なんでだろ…………結構鍛えたし選ばれる可能性はあると思うぞ」

 

 もしかしたら春菜やシルフィやキラークイーンも勇者になるかもしれない。

 それはそれで楽しみだ。

 

「んでお抱えとかどうします? 勇者になるのはよくても元の世界が主に動くでしょうし」

「まあ行き来がしやすいようになったらやってみるか」

「でも父様。フェムトさんが言ってたけど簡単に世界間を移動出来るらしいよ? 今日は星の巡りが悪いからって」

 

 星の巡りが悪いから? 

 多分なんかの能力だと思うけど。

 

 転移をする際にルールがあるのはよくあるし。

 

「でも何を御用達にしようかね」

「盗賊とかもバックにしていいらしいからね〜」

 

 こっちの国は技術系だし。

 なんか良い技術無いかな?

 

 ウチの縄張りに技師がいるな。

 そっちと交流させてみよっか。

 

 ついでにフェムトに嫌がらせの片棒でも担がせるか。

 

「ん? この家絵とか多くないですか?」

「確かに」

 

 全くギンコも良い趣味してますね。

 

「ハジメ様の趣味ってなんですか?」

「放火」

「自首しましょう」

「嘘だよ…………読書とオタクグッズ集めとか」

 

 さすがに嘘だよ…………たまにやるけど。

 

 読書は漫画や電子書籍も入る。

 

 オタクグッズはラブ○イブのフィギュアとかかな。

 飾る場所が無くなるほどに集めた。

 

 もうあの部屋には戻れないとなると寂しくなるな。

 

「オタクグッズって?」

「フィギュアとか。あとアイドルグッズ」

「あーだから夜刀ちゃんのに詳しいんですね…………」

 

 知り合いがアイドルファンなだけであまり深くは無いが。

 アニメオタクだな……よくマニアショップとか行ってる。

 

 ネットとか懐かしいなー。

 あ、いい匂いしてきた。

 

「ハジメ様、なんか漫談とか無いんですか?」

「んーローナは?」

「No.5が変な目撃してますね」

「変な目撃?」

「確かカリンさんとセバスさん、それとテスタさんが一緒に話す事が多いそうです」

 

 あれれ? おかしいな。

 そんな話耳に入った覚えが無いぞ。

 

 ウチの縄張り専属の影…………大したことは報告しなくて良いと言ったんだけど。

 何か怪しいな。

 

「どんな話してるんだ?」

「No.5はあまり話は聞かないタイプなんでキーワードしか入って来ないんです」

「話聞かないんだな」

「で、その単語は【クーデター】【生贄】【召喚】って所でしょうか」

 

 な、なんかやばい単語が出てるんだけど。

 クーデター? あまり重税はして無いし、繁盛してるとは思うんだが。

 

「やっぱり生贄を使う能力とか持ってるんですか?」

「近い能力はある。持ってる人はいるぞ」

 

 あれは…………アギレラとのコンボだ。

 

「儀式系の能力で生贄とか使うしな。生贄には条件がある場合もあるし、逃げたりして儀式を台無しにするリスクはあるから強力」

 

 やばい念獣とか召喚したり、除念に使う場合もある。

 

「召喚ってなんでしょうか?」

「勇者は大体出てるし…………魔物でも呼び出すのか?」

 

 なんだろ? 異界から化け物でも召喚してクーデターでもするのか? 

 

 …………いや、無いな。

 嘘発見能力を使って敵にはならないと言ってたし。

 

「帰ったら問いかけてみるか」

「ですね」

 

 あまり詮索したくないけど。

 

 よく考えて見ればカキンの王位継承戦も気になる所がある。

 ・継承戦のルール

 ・王子の数

 ・国王の愛情

 ・国王とハルケンブルグの会話

 ・ハンター協会の介入

 って所だ。

 

 ・継承戦のルール→生き残った王子が王位継承…………それだけじゃ儀式として成り立たない。

 儀式は手順や時間や場所、生贄等で構成されるし、だったらまだ隠されたルールがあるはずだ。

 逃げて死ぬルールを開示されなかったって事は…………そのルールは本当に継承戦のルールなのか? 

 

 ・王子の数→流石に10人以上の生贄は多いとは思う。少ない方が生贄に逃げれられるリスクが少ないだろう。団結されてボイコットされたらやばいし。

 

 ・国王の愛情→何人も甘やかされて育ってる人間がいるんだし、どうせ死ぬと分かってるなら1人しか愛さないしみんな道具みたいな扱いすると思うよ。

 

 ・国王とハルケンブルグの会話→「殺し合いだと聞かされていない!」と言ってたな。

 …………それが本当なら殺し合いの他にもクリア方法がある? 

 国王が「自分に出来ることは無いのだホイ」って言ってたし、逆に王子等には止める事が出来るって事になる。

 

 ・ハンター協会の介入→ハンター協会は念の歴史は上で守護霊獣は見えるし、暗黒大陸の邪魔になりそうだったりコネ作りたいだろうから継承戦を王子達と協力して打倒するだろう。

 儀式の術者からして邪魔な要素…………だから協会がカキンを崩す噂が立ったんじゃない? 

 

 まさか…………国王は殺し合いを望んでないのか? 

 

「怪しいのは国王の居住区だな。殺されないんだから警備なんていらないだろうし」

「何の話だか分からないんですけど」

 

 でも話の展開的に膠着とかしそうだ。

 もしかしたら空中分裂するようなルールが組み込まれてる可能性もある。

 

「出来たよーシチュー」

「お、シチューか。栄養ありそう」

「アオコー! ご飯出来たよー!」

 

 ん? アオコ? 

 聞きなれない名前だな。

 

 ペットか? 

 

「うん! 紹介するね」

 

 あ、ギンコと似たショートカットの女の子が出てきた。

 中学生くらいかな? 

 

 …………絵の具の匂いがする。

 

「ウチの娘のアオコ」

「…………」コクリ

 

 …………ああ、娘出来たのか。

 そりゃそうだよな…………やっぱり異世界は寂しいもんな。

 

 死んだんだし、もう俺とは縁が切れてるか。

 

「ハジメ様、凄い落ち込んでますね…………」

「? いや師匠との子だよ」

「…………え」

「死んだ時点で妊娠しててさ。召喚されてから2日目で診断された」

 

 …………え。

 ウチの娘? 

 

「アオコ、パパよー」

「…………」パアアア

 

 

 




自分なりの継承戦の考察をしてみました。
蠱毒を模した儀式ですので多分手順や時間や禁忌があると考えます。

〇 仮説なのですが、儀式は2つもしくは選択肢があるのかなと。

・儀式の同意時に壺の中に血を垂らすのと口に手を入れる時。ルールを遵守するなら血を垂らすだけでいいかなと。口に入れるのは余分………ではなく違う能力のルールを取り付けるから。

・蠱毒には禁忌があり、虫に噛まれるか全部死ぬと駄目。なので術者側にも儀式の失敗のリスクを背負う。

・行動できるフィールドはカキン国王だからカキン国内だと予想すると広い。グリードアイランドでも複数のゲームマスターがいるので術者は複数………もしくはそれを補う程のリスクがある場所が設定されてるとか。

自分の予想としては王子同士が手を組み、グーデターを起こし王に噛み付いて、あの空間で真ん中のを壊すのが正解の道だと思ってます。
もしかしたら王子に憑いた守護霊獣達は王子同士の殺し合いを望んでおらず、儀式を失敗させようとしているのが自分の予想です。


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