ファイアーエムブレム覚醒~Darkside~ (謎多き殺人鬼)
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番外編
コラボ企画番外編:鴉頭と懐刀の再開


久々にエーブリス様とのコラボです!

久しぶり過ぎてキャラが変な感じになってしまっていないか心配です(´・ω・`; )


暗夜王国と白夜王国そして、透魔王国の存在した時代から遥か未来の時代の世界。

 

その地にはイーリス聖王国と言う、三国の時代よりも歴史は浅いが英雄王マルスと呼ばれた英雄の末裔が治める国があった。

 

そんなイーリスの中心とも言える王都にある王城では、エメリナの軍師メリラが仁王立ちに立って下を見下ろしていた。

 

「それで?貴方、誰?」

 

「いや、全く状況が飲み込めないだが?何でこうなってんの?ちょっと外に出て足場がいきなり消えて一気に落ちたら何で警戒されてんの?」

 

メリラが警戒しているのはあからさまに怪しく、見た事もない服装で、奇妙な義手と義足をしており、尚且つ側に巨大な鉄塊の様な大剣が側に置いている男だった。

 

「質問を質問で返さないでください。貴方は何者ですか?名前は?身分は?何で天井から落ちてきたんですか?」

 

「いやいや、本当に知らねぇよ!それよりお前、雰囲気変わったか?ベルカと確か同じ髪色してたし、暗夜の鎧じゃねぇし」

 

「何でお婆様の名前を貴方が知ってるのですか?まさか、間者じゃないですよね?」

 

「ちげぇよ!こんな大胆で目立つ様な奴が間者な訳がねぇだろ!」  

 

「それもそうね・・・こんな変なのが目立たないでイーリスの内情を調べられる訳がないですし・・・」

 

「何かお前、酷いな・・・」

 

メリラの然り気なく悪気の無い悪口が男のハートにヒビを入れた時、向こうからラクスがやって来た。

 

「どうしたメリラ?・・・おい、何でこいつが此処にいる?」

 

「おぉ、ラクス!久しぶりだな!」

 

「また面倒な奴が来たものだ・・・見ないうちに随分と痛々しい姿になったな。お前が腕と足を失うとは」

 

ラクスは男が腕と足が失われて義手と義足がとりつけられている事にいがいに思った。

 

「あの・・・この者とお知り合いですか?」

 

「こいつはマーシレス。別世界の人間で何度か会っては毎回、厄介事に巻き込まれた」

 

「おいおい、別に厄介事に巻き込んでねぇだろ?お前が勝手に巻き込まれてんだろ?」

 

「どの口が言う・・・突然、決闘になったり、見た事もない敵と戦う事になったり、娘に変な言葉を教えたりしただろ?」

 

「確かに色々あったがレーラに関しては違うから。たぶん・・・」

 

マーシレスはそう目線をそらしながら言うと、ラクスは大きく溜め息をついた時、イーリス兵が慌てた様子で走ってきた。

 

「申し上げます!王都近隣の村が盗賊団に襲われている模様!村人の一人が逃げのみ、救援を求めております!」

 

「何ですって!クロム様達は今は別の賊の討伐中の時に来るなんて・・・他に空いている人はいない・・・全く、エメリナ様のお膝元でクロム様達の留守に来るなんて良い度胸だわ・・・分かりました。私が軍を率いて救援に行きます。すぐに出撃の用意をしなさい」

 

「はッ!」

 

イーリス兵はそれを聞いてすぐに走って行く。

 

「申し訳ありません。私は賊の討伐に出ますのでまた後日に」

 

「待て。人手がいるなら私も行こう。マーシレスも来るか?」

 

「まぁ、もう成り行きだな。俺も行ってやるよ」

 

「ありがとうございます。では、行きましょう」

 

メリラ達は盗賊団から村を助けるべく、歩き出した。

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メリラ達が村へ駆け付けると、そこでは盗賊が武器を手に村人に襲い掛かり略奪している光景が写し出された。

 

「なんと言う事ですか・・・!とにかく、村人を助けないと」

 

「何処にでもこんなのがいるんだなぁ・・・とりあえず蹴散らせば良いんだな?」

 

「相手のやっている事がちゃんと見えているなら蹴散らせば良い。さて・・・仕事をするか」

 

メリラ達は其々の得物を手にすると、盗賊団に向かって攻撃を開始した。

 

「イーリスの援軍が来たぞ!」

 

「おい、彼奴はメリラじゃねぇのか!?」

 

「鉄血軍師が自ら出張ってきやがったぞ!」

 

盗賊はメリラの存在を確認すると、恐れを抱いて後退し始めた。

 

メリラはそんな盗賊団に容赦せずティソナとディアブロスで盗賊団を次々と切り捨てた。

 

「ち、ちくしょ!撤退だ!撤退するぞ!」

 

盗賊の一人がそう叫んで逃げようとした時、逃亡先にはラクスがディアブロスを片手に待ち構えていた。

 

「何処へ行く?散々暴れまわった後で疲れただろ・・・歓迎を受けていけ」

 

「ど、退け!」

 

盗賊が剣を手にラクスに切り掛かるが、ラクスは襲い掛かった盗賊を一刀両断にし、他の盗賊も切り捨てる。

 

「ひぃッ!」

 

「こいつら化け物だ!」

 

「助けてくれ!」

 

盗賊団はもはや士気は無く、次々と逃げようとバラバラに走り出して行く中、今度はマーシレスが空から巨大な鉄塊の剣、グレートソードを振り下ろし、盗賊団ごと地面を叩きつけた。

 

「おりゃあ!まだ終わりじゃねぇぞ!」

 

マーシレスはそう言ってグレートソードを軽々と振り回し、レイヴンタロンと呼ばれる猛禽類の様な鉤爪を持つ義足によるジャンプと掴み攻撃で武器に頼らない蹂躙も行う。

 

メリラ、ラクス、マーシレスの三人による人外染みた戦闘に盗賊団は大混乱に陥り、更にメリラ達が引き連れてきたイーリス兵の追撃もあり、盗賊団は逃げる事も出来ず、死ぬか捕縛と言う形で決着が着いた。

 

「終わりましたか・・・」

 

「終わった後に村人の様子を見たが幸いにも被害は少ない。死人こそ出てしまったがな」

 

「・・・私がもっと早く駆け付けていれば被害はもっと少なかったでしょうね」

 

ラクスの言葉にメリラは悲しげに村を見つめる。

 

もっと早く駆け付けていれば村人をもっと助ける事が出来たとメリラは自身を責めていると、突然、メリラの頭をわしゃわしゃと撫でる人物がいた。

 

「そんなに自分を追い詰めんなよ。お前はよくやった方じゃねぇか。村人を一人でも多く助けられたんだろ?だったら良いじゃねぇか」

 

「ですが・・・」

 

「ですがじゃねぇ。もし、この事でお前を非難する奴がいたら俺がぶっ潰す」

 

「マーシレスさん・・・」

 

メリラはマーシレスの事は最初は怪しい変人だと思っていたが案外、優しい人物だと改めた。

 

「それで?お前はこれからどうするつもりだ。帰る宛はあるのか?」

 

「まぁ、あるにはあるな・・・。俺はその宛の所に行く。じゃあな」

 

マーシレスはそう言って背中を向けて手を振って歩き出した時、マーシレスの足元に大きな穴が広がり、マーシレスは落ちていった。

 

「またかぁーーーーー!!!」

 

マーシレスはそう叫びながら落ちて行き、穴はすぐに塞がって消えた。

 

「相変わらず最後の最後までしまらん奴だな・・・」

 

ラクスのこの言葉を聞いたメリラは苦笑いするしかなかった。



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コラボ企画番外編2:過去へ赴く

エーブリス様とのコラボ企画です

たいへん、中途半端になっているかもしれません(汗)


とある森林。

 

鳥の囀ずりが聞こえる平穏な森林に立たずんでいるメリラは困惑していた。

 

「此処は・・・何処なのですか?」

 

何故こうなったのか時は遡る

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クロム達の仲間と張っている野営地にてメリラが歩いていると、仲間であるサーリャが何かの呪術書を読みながらブツブツと呟いている姿を見つけた。

 

「サーリャさん?」

 

メリラは声を掛けるも集中していて聞こえていないのか全く反応せず、メリラは首を傾げつつも今度は肩に触れて声を掛けた。

 

「聞こえますかサーリャさん?」

 

「ひぁッ!?」

 

サーリャは珍しく可愛らしい声を出して驚いてメリラの方を向いた時、呪術書が輝き、二人を包み込む様に光が広がる。

 

「な、何ですか!」

 

メリラは眩しい光の中でそう叫び、光が収まって目を開けた時には野営地ではなく、そこは森林だった。

 

「此処は・・・何処ですか?」

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時は戻り、メリラは突然、飛ばされた事に困惑しつつも森林を探索し、野営地は見つけられなくてもせめて何とか此処が何処なのかと探る為だ。

 

「困りました・・・野営地の近くには森林なんてなかったですし・・・兎に角、此処が何処なのか調べないと」

 

メリラはそう呟くも宛もなく、ただ歩くしか出来ずにいると、奥から足音が聞こえ、メリラは警戒し、様子を伺っていると、現れたのはメリラと瓜二つの姿をした少女だった。

 

違う所は少女の髪色は水色で、黒い鎧を着ていると言った所だ。

 

「え?私・・・じゃないわね?」

 

「うそ・・・私、そっくり・・・」

 

メリラと少女は困惑していると、奥から更に少女が現れた。

 

「レーラ。そんなに離れたら父さん達とはぐれるよ・・・て、レーラが二人!?」

 

少女はメリラとレーラと呼ばれた少女を見て叫ぶと、向こうから更に二人の男達が現れた。

 

メリラは男達を見てかなり見に覚えのある顔に困惑し始める。

 

「おいおい、何の騒ぎだ・・・え?」

 

「どうしたんだスミカ・・・何だと?」

 

男達もメリラとレーラを見て固まってしまい、メリラは困っていると、落ち着いたのか咳き込む仕草を見せた後、冷静そうな男が声を掛ける。

 

「そこのお前。お前、こんな所で何をしている?随分と家の娘に似ているが?」

 

「ラクスさんよ・・・世の中、似たような顔をした奴は三人はいるそうだぜ?何もレーラに似てるからってそこまで突っ掛かる事はねぇだろ?」

 

「マーシレス。確かにそうだが・・・何故、こんな森林に一人でいるのか気になるだろ?」

 

「(やっぱりラクスお爺さんとマーシレスさんだったのね。でも何だか若い気がする・・・あと、スミカさんは知りませんが・・・まさか、あの人がレーラお婆様なの?)」

 

メリラは祖先であるラクスの娘であるレーラを見て最初にラクスと出会った事を思い出す。

 

「(これは・・・確かに見間違えそうですね・・・でも、何で過去の人であるレーラお婆様が・・・まさか、私が過去に・・・?)」

 

メリラは頭の中で推測を立てていると、ラクスは明らかに不機嫌うに声を掛けてきた。

 

「おい、聞いているのか?」

 

「す、すみません。私はメリラと言います。実は訳があって旅をしているのですが恥ずかしながら迷ってしまったみたいで・・・」

 

嘘は言っていない。

 

メリラはまさか未来から来たとは言えず、過去に深く関わって何かしら未来に影響を与えてしまう訳にはいかないので黙っている事にした。

 

「そうなのか・・・何だか妙に引っ掛かるな」

 

ラクスは何かしら疑問を感じているのか疑いの目をメリラに向ける中、レーラは笑顔でメリラに接する。

 

「そうだったのですか。確かに此処は視界が悪くて迷いやすいですからね。良かったら森林を一緒に抜けましょう」

 

「おい、幾ら何でも素性のしれない者と行くのは」

 

「父さん。困っている人がいるなら助けるべきです。確かに素性こそしれませんが本当に迷っているなら尚更です。そうですよねスミカさん」

 

「え?う、うん・・・そうね」

 

レーラの突然の振りにスミカは戸惑いながらも返すと、ラクスは困った顔をしつつも、了承する。

 

「分かった。ただし、抜けるまでだぞ?そう言う事だマーシレス。ベルカ達の所へ戻るのは少し遅くなりそうだ」

 

「良いんじゃねぇのか?別に鬼の形相で待たれる程に遅くなるわけじゃねぇんだし」

 

ラクスとマーシレスの了承を得たレーラは笑顔を浮かべると、メリラの手を引く。

 

「では、父さん達の了承も得ましたし早く抜けましょう!」

 

「え、ちょっと待って!そこまで急がなくても!」

 

メリラはそう言うもレーラの手を引かれるままに連れられ、ラクス達も続いていく。

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レーラに連れられたメリラは森林を抜けると、そこはやはり前にいた野営地はなく、広い平原しかなかった。

 

「(やはり私は・・・)」 

 

メリラは自分が過去の世界に来てしまった事に確信を持ち始めた時、遠くから何かの呻き声の様な声が聞こえた。

 

「なに、何なの・・・!」  

 

メリラは呻き声のする方を見ると、そこには緑色の肌で皮の面を付けられた巨漢の怪物が此方に向けて前進していた。

 

「ノスフェラトゥ!」

 

レーラは怪物ノスフェラトゥの姿を見て叫ぶと同時に自身の得物であるティソナを抜刀すると、ラクス達も続いて武器を構える。

 

「ノスフェラトゥ?」

 

「暗夜の王国のクソ軍師が造った心の無い怪物だ。何でこんな所にも出てくんだよ。ゴキブリか?」  

 

「ゴキブリの方がまだマシだ」

 

マーシレスの説明の一部にラクスがツッコむと、ノスフェラトゥはメリラ達を認識し、向かってくる。

 

「来るぞ。レーラ、スミカそれにメリラ。油断するなよ」

 

ラクスがそう言うと、ノスフェラトゥの一体が襲い掛かってきた。   

 

ラクスはディアブロスで襲い掛かってきたノスフェラトゥを斬ると、それを切っ掛けにノスフェラトゥは次々と襲い掛かってくる。

 

「たくよぉ!本当に減らねぇ奴等だな!」

 

「アレでしょうか。やはり、繁殖を」

 

「貴方はそれ以上はいっちゃ駄目。腐向けの下ネタ扱いになるから」

 

マーシレス、レーラ、スミカは会話しつつノスフェラトゥを蹴散らしいく中、ラクスはディアブロスでノスフェラトゥを相手取りながらメリラの武器を見ていた。

 

「あれは・・・まさかな・・・」

 

ラクスの見ているメリラの武器はディアブロスとティソナそのもので、ラクスは何故、メリラがこの世に二つとない剣を両方手にして戦っているのか疑問に思っていたが、今はノスフェラトゥの相手をする事にした。

 

暫くしてノスフェラトゥは数を減らし、ラクスとマーシレスの二人が最後の一体に止めを刺して終わらせた。

 

「ふぅ、やっと片付いたな・・・」

 

「全くだ・・・あのワカメめ。今度会うときは小言を言ってやろう」

 

「せめてボコれよ」

 

「仮にもレーラの婿の父だからな。手が出せん」

 

マーシレスとラクスがそう会話する中、メリラはノスフェラトゥを見つめる。

 

「(過去にはこの様な怪物がいたのですね・・・)」  

 

メリラは自分の時代に蔓延る屍兵を思い出し、心の無い怪物の恐ろしさを再認識すると、ラクスがやって来る。

 

「メリラ。一つ聞きたい。お前の持つその二つの剣・・・それを何処で手にした?」

 

ラクスの問いにメリラは項垂れるも、ラクスの問いに答える。

 

「・・・これは、私の先祖から受け継いできた。大切な剣です。一つは勇敢な騎士の物。もう一つは心優しい騎士の物。そう聞いています。それ以上はいえません」

 

メリラはそう言うと、ラクスは暫く無言ではあったが何処か納得した様な表情を見せた後、視線を外す。

 

「そうか・・・なら、大切にすると良い。その二振りの剣がお前を守ると信じてな」

 

ラクスはそう言ってメリラの方を見ると、メリラはいなかった。

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メリラは次に目を開けた時、そこはサーリャと一緒にいた天幕だった。

 

メリラは回りを見ていると、サーリャから声を掛けられる。

 

「ちょっと、いきなり肩を触れないでよ」

 

「ご、ごめんなさい。聞こえていないのかと思いまして。それより、何もありませんでしたか?」

 

「何がよ?」

 

「え?だって、先ほど私が肩に触れた時に呪術書が光って・・・」

 

メリラがそう言うと、サーリャは手にしていた呪術書を見ながら首を傾げる。

 

「これは単なる歴史本よ。私の先祖がいた三国時代の」

 

「え?」

 

メリラは本を借り、題名を読むと確かに三国時代の歴史書だった。

 

「だったらなんで・・・」

 

メリラは自身に起きた体験にただ不思議に思うしかなかった。

 

あの過去の世界へ赴いた事は何だったのかとメリラには分からなかった。




ありがとうございましたm(_ _)m


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本編
イーリスの鉄血軍師


かつて、邪悪な暗黒司祭は透魔竜ハイドラを操り、透魔王国を乗っ取って世界を支配しようと目論んだ。

 

その野望は暗黒司祭が自ら産み出した者と英雄カムイによって打ち砕かれ、マフーは自身の武器であった魔導書に封じられた。

 

マフーの野望を打ち砕いたカムイ達はカムイが治める透魔王国、マークスの治める暗夜王国、リョウマが治める白夜王国の三国が結び、平和と安寧を誓い、人々はこの三国を中心として三国時代と呼ぶ様になった。

 

平和と安寧が長い戦乱の中、ゆっくりと癒され互いに恨み合う事はない。

 

だが、平和は長くは続かった・・・

 

戦乱の時代から何百年の月日が流れた後、巨大な邪竜が現れ、三国を滅ぼし、三国時代に終演をもたらした。

 

カムイを筆頭とした英雄の血を引く子孫達は邪竜に打ち勝つ事が出来ず、国を追われた。 

 

その後の子孫達の行方は知られていない・・・

 

~失われた神話 三国時代より~

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イーリス大陸にあるイーリス聖王国。 

 

 

その国はかつて、隣国ペレジアと聖戦と称された激しい戦争によって疲弊し、戦争が終わった後も深い傷痕を残す事になった。

 

そのイーリスを建て直し、民や臣下の信望を集めたのが聖王エメリナで、平和を求めるその理想に抱かれて誰もがエメリナに付いて行こうとしていた。

 

だが、そのエメリナの側にイーリス建て直しの功労者がもう一人いた事はあまり知られていない。

 

その功労者はイーリスの軍師メリラ。

 

エメリナの平和政策の一環である軍縮とは対の外敵からの脅威からの抵抗の為の軍拡を主張する。

 

その為、エメリナの慕う者達から良く思われず、不遇の扱いを受ける事もあり、周りからはイーリスの冷血軍師と呼ばれていた。

 

そんなある日、メリラはエメリナに仕える事に限界を感じる中、執務室で悩んでいた時、天井から二つの影が落ちてきた。

 

これは、後にイーリスの鉄血軍師と称されるメリラと先祖の物語である。

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イーリス聖王国の王城の大広間で、大きなテーブルを囲む様に座る国の大臣達とイーリスを治める聖王エメリナそして、その軍師であるメリラが集まっていた。

 

「えぇ・・・今回の議題ですが。軍縮の政策をエメリナ様より考案されましたが、何か意見はございますでしょうか?」  

 

司会役である大臣がそう聞くと、メリラが手を上げた。

 

手を上げたメリラに大臣達はまたかと、言わんばかりの顔をすると、メリラは立ち上がり発言する。

 

「エメリナ様。軍の軍縮とは、何処まで行うおつもりですか?」

 

「軍の軍縮の範囲はペガサスナイトの部隊を残し、後の兵士達はある程度に残し、それ以外の兵士達には故郷へ帰って貰います」  

 

エメリナの軍縮範囲は精鋭のペガサスナイト部隊と少数の兵士を残す事だった。

 

メリラは顔をしかめつつもエメリナに反論する。

 

「エメリナ様・・・平和を愛する気持ちは分かります。ですが、その軍縮はやり過ぎです。隣国ペレジアの王位にギャンレルと言う男が即位してから不穏な空気を見せています。ペレジアの不穏な動きを見せている以上は必要最低限の軍縮に留めるべきです」

 

メリラはそう言ってエメリナに提言するが、エメリナはメリラの提言に反論する。

 

「しかし、彼等も大きな痛手を負いました・・・その痛手を負いつつも戦いを仕掛けて来るとは思えません」 

 

「残念ですがその痛手もすぐに癒されますよ。イーリスへの復讐と言う名分でね。エメリナ様・・・人の心は優しさだけで何とかなる様な物ではありません。お考えを・・・」

 

メリラの願いとも取れる言葉にエメリナは考えつつも、やはり帰ってくる言葉は同じだった。

 

「それでも・・・私は信じたいのです。確かに人の心は単純な物ではありません。しかし」

 

「もう良いです」

 

エメリナの言葉を遮る様にメリラはそう言うと、残念そうな雰囲気を出しつつエメリナに向けて言った。

 

「とても残念ですが、致し方ないですね。私はこれ以上は付き合えません」

 

メリラはそう言って会議の場から立ち去ろうとする。

 

「メリラ!」

 

エメリナが呼び止め様とすると、メリラは後ろに向きつつエメリナに言い放った。

 

「これは一人言ですが・・・この会議、本当に馬鹿らし物です」

 

メリラはそう言って会議の場から立ち去った。

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メリラは不機嫌を露にしつつ城内を歩きていると、向こうからイーリス聖王国の第一王子クロムと第二王女リズ、そしてお目付け役の騎士フレデリクがやって来た。

 

「クロム様、リズ様。お帰りなさいませ」  

 

「メリラか。今回、自警団が盗賊の討伐を完了させた事を報告したいんだか今何処にいる?」

 

「エメリナ様は会議中です。私は少し、体調が優れないので席を外しました。もし、ご報告なさるのなら会議が終わるまでお待ちください」

 

メリラは遠回しに且つ、本当の理由を悟られない様に会議を抜けた事を伝えると、クロムはそうかと一言だけ言うと二人を連れて行った。

 

メリラも歩き出すと、後ろからの視線を感じつつも無視して歩いた。

   



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子孫と祖先

メリラは自分に宛がわれている執務室に来ると、椅子に深く座り溜め息をついた。

  

「軍縮、か・・・」

 

メリラはエメリナの政策である軍縮に危機感を抱いていた。

 

隣国ペレジアの不穏な動きを見せる中、軍縮を行えばそれは侵略してくださいと頼んでいる様な物なのだ。

 

ペレジアの新王ギャンレルは盗賊上がりで何を、どんな手を使ってイーリスに対応して来るかもまだ分かってすらいない中で軍縮は愚策でしかない。

 

それを知っているからこそエメリナに進言するが、エメリナは自分の意志が関わると何処か頑固になり、二人の意見が合わなくなってしまう。

 

しかも、エメリナを慕う者達から冷たい目で見られメリラの精神は安定させるのに手一杯の状態だった。

 

「もういっそ、軍師を止めようか・・・」

 

メリラがそう呟いた瞬間、突然天井が光だし、辺りを照らしたのだ。

 

「なに!?」

 

メリラは立ち上がって身構えると、光から二つの影が落ちてきて一つは地面に、もう一つはその影の上に落ちた。

 

メリラはゆっくりと落ちた物を見てみるとそこには、全身鎧兜に身を包んだ男とその上に乗っかる様に気絶しているバンダナを巻いた女性がいた。

 

「な、何なの・・・この状況・・・?」

 

メリラは困惑しながらそう呟いた時、男が動いた。

 

「くッ・・・此処は・・・」

 

男はそう呟きつつ、辺りを見渡すと女性に気付いたのか慌てて安否を確認し始めた。

 

「おい、ベルカ!しっかりしろ!」

 

男はそう呼び掛けると、ベルカと呼ばれた女性は唸り声を挙げ、男はそれを聞いて生きていると捉えたのか安堵の溜め息をついた。

 

メリラは騒ぎの中、ベルカと言う名を聞いて執務室の本棚かは自身の祖先の名前が書かれた名簿を取り出して一番目のページをガン見していた。

 

「まさか、そんな・・・!」

 

メリラはページを見ながら驚愕していると、首筋に刃を立てられた。

 

「貴様、我々に何をした?」

 

男は強烈な殺気を出し、メリラを睨む視線を感じるが今のメリラにはそれは関係なく、唖然としつつも男の方に顔を向けた。

 

「すみません、貴方の名前を聞いてもよろしいでしょうか・・・?」

 

メリラの言葉に男は警戒しつつ、名乗る。

 

「私はラクス。暗夜王の忠実なる騎士だ・・・」

 

メリラはその名を聞いて確信に至った。

 

「まさか、貴方は私の・・・祖父なのですか?」

 

「・・・は?」

 

メリラの言った祖父と言う言葉にラクスは唖然とすると、メリラは腰に差してある二振りの剣の内の一本を抜くと、ラクスは驚愕した。

 

「それは、ディアブロス・・・!?」

 

「はい・・・神剣ディアブロス。間違いなく本物です。それと」

 

メリラはもう片方の剣も抜くと、ラクスはまた驚愕した。

 

「神剣ティソナ。貴方の娘であるレーラお婆様が扱った神器・・・私はこの二振りを貴方様とレーラお婆様から続く一族の末裔として継承してきました」

 

「・・・偽物と言う事は?」

 

「疑うのなら打ち合っても構いません。偽物ならば容易く貴方様のディアブロスによって粉砕されるでしょう」

 

メリラはそう言って自信ありげに言うと、ラクスはそ子まで言ってのけたメリラに感心を抱きつつも、二振りの剣から発せられる力を感じて本物だと悟ると、ディアブロスを納めた。

 

「お前が本当に私の子孫ならば、此処は未来の白夜王国なのか?それとも、暗夜王国か?あるいは・・・透魔王国か?」   

 

ラクスの三つの国の名前を聞いてメリラは嫌な事に触れられたと感じ、顔を歪めた。

 

ラクスはメリラの反応に嫌な予感を感じた時、その予感は現実となった。

 

「その三国は・・・滅びました」  

 

「滅んだ・・・?」

 

ラクスは信じられないとばかりに動揺していると、寝かされていたベルカが起きた。

 

「此処は・・・?」

 

「気が付いたか」

 

「ラクス?それと、貴方は?」

 

ベルカはメリラの存在に気付くと困惑した顔でメリラを見つめる。

 

「レーラ・・・では、ないわね。あの子は黒髪じゃく、私と同じ色・・・貴方は誰なの?」

 

ベルカがそう聞くと、メリラは戸惑いどう説明するか悩んでいると、ラクスが答えた。

 

「ベルカ。どうやら私達は未来に来てしまったようだ・・・」

 

「未来?」  

 

「あぁ、信じられん事にな。だが、こいつの二振りの剣はディアブロスとティソナだ。間違いなく、本物の」

 

ベルカはそれを聞くとメリラを見て納得した。

 

「つまり、貴方は私の孫か何かと言う事?」 

 

「は、はい。メリラと言います。一様、お婆様達の時代から遥か未来の子孫と言う事になります」

 

メリラの言葉にベルカは少し複雑な表情をした。

 

自分の娘であるレイラが産んだ孫を得たばかりなのに遥か先の未来の孫を見て、更にはまだ若いのにお婆様と呼ばれた事に本当に複雑な心境だった。

 

「お婆様、ね・・・」

 

ベルカはそう呟くと、メリラはベルカの顔を見て失言した事に気付いた。

 

ベルカはお婆様と呼ばれる様な年齢ではなく、寧ろお姉さんの方があってるといった年齢だ。

 

もし、その年齢で婆さん呼ばわりされたら流石に誰でもショックを受けかねない。

 

「す、すみません・・・婆さん呼ばわりしてしまって・・・」

 

「別に言いわ。いつか婆さん呼ばわりされたりするんだから」

 

ベルカはメリラは申し訳なさそうに頭を下げて謝罪したメリラにそう言うと、微笑みかけた。

 

「さて、未来に来てしまったが・・・これからどうするべきか・・・」

 

「私が何とかします。これでもイーリスの軍師ですから」

 

「イーリス?それがお前の国の名前か?」

 

ラクスがそう聞くとメリラは頷く。

 

「正式にはイーリス聖王国。大陸の名前にもなっており、聖王エメリナ様を初めとする王族達はかつて、ドルーア帝国と呼ばれるマムクートの国家からの侵略をはね除けてドルーア帝国の皇帝を討って英雄となった英雄王マルスの血を引いています」

 

「ほぉ、この国は英雄の血を引いた者達の国か」

 

「はい。私はこの国の聖王エメリナ様に仕える軍師です。二人は私の身内と言う事にすれば大抵は誤魔化せます。嘘は言っていませんしね」

 

「そうか・・・なら、帰る手段を見つけるまで暫くお前のところで厄介になろう。ベルカも良いか?」

 

「構わないわ」

 

ラクスとベルカはメリアの元に身を寄せる事を了承した。

 

この事が後に過去の因縁と大きな異変に関わっていく切っ掛けになるとは知らず・・・



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自警団の軍師

ラクスとベルカを匿ったメリアは二人を自分の遠い親戚と言う事にし、エメリナに報告して二人を留める許可を貰った。

 

最初はエレインの側近のフィレインに怪しまれるも、エメリナのお人良しな性格とメリアへの信頼で、ラクスとベルカがイーリスに留める許可を得られ、メリアは無事に許可は得られて安堵する。

 

メリアに匿われたラクスとベルカは客分として扱われ、丁重なもてなしを行われ様としたがラクスはあえて断った。

 

そのもてなしの断りの理由は。

 

「素性の知れない我々を客分にして貰っただけでなく、もてなしまで受けてしまうのは申し訳ない。此処で暫く世話になるだけで満足です」

 

と、エメリナに直接申し出たのだ。

 

これが切っ掛けで素性の知れず尚且つ威圧的な雰囲気を出すラクスの評価は素性の知れない者から礼節と弁える心構えを持つ者等に上がったのは言うまでもない。

 

エメリナに客分として認められたラクスとベルカはメリアの執務室に戻り、今後の行動を考える。

 

「さて、無事に客分にはなれたが・・・これからの行動を考えなければな。元の時代に戻る方法はもとより、この時代での仕事も探したい」

 

「仕事をなさるのですか?」

 

メリアは首を傾げながら言うと、ベルカは微笑みながらメリアの疑問に答える。

 

「ラクスは仕事をしてないと落ち着けない性格なのよ。元の時代でも文句を言いつつも仕事浸けになってた位にね」

 

「穀潰しになりたくないだけだ。働かざる者、食うべからず。働かない者は食べ物は愚か、何も得る事はないと私は考えている・・・それだけだ」

 

ラクスは素っ気なく言うと、窓に近寄り外を眺めると城門から人が数人入ってくる姿を目撃した。

 

「メリア。奴等は何者だ?」

 

メリアは窓の外をラクスと見ると、説明する。

 

「あの方々はイーリス聖王国の第一王子のクロム様、第二王女のリズ様、二人のお目付け役で自警団の副団長を勤めているフレデリクです。後の一人は・・・分かりません」

 

「分からない?あの、変わったコートを着た奴がか?」

 

ラクスはクロム達の近くにいる変わったコートを着た青年の事を知らないメリアにそう問うと、メリアは首を傾げながら青年を見つめている。

 

「自警団にもいなかったと思うのですが・・・」

 

「疑問に思うなら調べて見たらどうかしら?クロムって人に聞けば答えるでしょ?」

  

「私はクロム様達に嫌われています。仮に問うとしても、素直に教えてくれるのでしょうか・・・」

 

ベルカの言葉にメリアは不安そうにそう返すと、ラクスは溜め息をついた。

 

「もう少し自信を持って対峙すれば良いだろう・・・」

 

「分かっています・・・ですが、やはり」

 

メリアはうつ向いた時、扉がノックされた。

 

「メリア様。クロム様が自警団の活動を報告を行う為、玉座の間に来る様にとエメリナ様からの言伝です」

 

「分かったわ。すぐに向かうとエメリナ様に伝えて頂戴」

 

「分かりました」

 

メリアは先程までの自信の無い姿から一変し、堂々とした態度で兵士にそう伝えた姿にラクスは唖然とした。

 

「・・・出来るじゃないか」

 

「これは私が自信の無い姿を見せない為の謂わば仮面・・・自信なんて・・・」

 

メリアはそう言った後、深く溜め息をついて一礼してから執務室を退出した。

__________________

___________

_______

 

メリアは玉座の間に来るとそこにはエメリナとフィレインが既におり、メリアはエメリナの前へと出る。

 

「遅れて申し訳ありません。今、此処に参上しました」

 

「いえ、貴方にも仕事があるにも関わらず無理に来て貰って・・・本当なら此方が謝らなければなりません」

 

「報告を聞くのも大事な仕事です。貴方の軍師なら尚更、不備の無い様にしなければなりません」

 

メリアの堅苦しい言葉使いにエメリナは苦笑いすると、メリアはエメリナの横に立ってクロム達が来るのを待った。

 

暫くして玉座の間の扉が開かれると、クロムとリズ、フレデリクにコートの青年が入って来た。  

 

「ご苦労様でした、クロム、リズ。それに、フレデリクも」

 

「山賊は無事に倒した」

 

「ありがとう・・・民達も皆無事ですか?」

 

「あぁ、大丈夫だ。だがやはり、辺境には賊が蔓延っている。それも隣国ペレジアから流れてきた連中ばかりだ」

 

「(やはりね・・・)」

 

クロムの報告を聞いたメリアは賊の発生源となっているペレジアの意図を簡単に読む事が出来た。

 

ペレジアは敢えて賊をイーリスに流し、蔓延らせる事でイーリスの治安を脅かし、イーリスを怒らせて戦争の名分を得ようと言う魂胆だとメリアは読んだが、敢えて言わなかった。

 

何故ならそんな事を言えばエメリナは兎も角、只でさえペレジアを良く思っていないクロムが怒り任せな事を何時かしかねない事になり、戦争の名分を得させるチャンスを与えかねないのだ。

 

「申し訳ありません、王子。我々天馬騎士団が動けていれば・・・」

  

「いや、フィレイン。今の騎士団の人数では王都の警備で手一杯いだ」

 

「大丈夫だよ。フィレインさん。此れからはルフレさんがいるもんね!」 

 

「ルフレさんとは、そちらの?」 

 

「(ルフレ・・・?)」

 

メリアはエメリナと共に青年を見ると、少し緊張しているのか少し固い。

 

「山賊退治に手を貸してくれた。自警団の新しい仲間だ」

 

「まぁ・・・弟達がお世話になったのですね。ありがとう、ルフレさん」

 

「い、いえ!」

 

ルフレはエメリナにたじろいでいると、フレデリクが発言する。

 

「恐れながら、エメリナ様。ルフレさんは記憶喪失との事で・・・賊の一味や密偵であると言う疑いが完全に解けた訳ではありません」

 

「フレデリク・・・!」

 

「記憶喪失?賊の一味や密偵?どういう事ですかクロム様」

 

メリアはフレデリクの発言に食い付いて瞳を鋭くし、クロムの方を見た。

 

クロムはまた嫌な奴に捕まったとばかりに嫌な顔をすると、ルフレは恐る恐るフレデリクに聞く。

 

「あの、あの人は・・・?」

 

「この方はイーリス聖王国の聖王エメリナ様の軍師、メリア様です。軍師としては非常に優秀な方なんですが・・・」

 

フレデリクはそう言って溜め息をつくと、メリアとクロムの口論が始まってしまった。

 

「クロム様。何故、怪しい人物を自警団に入れたのですか?もし、賊の一味や密偵ならこのイーリスにどれ程の危険があるか・・・!」

 

「ルフレは信用出来る!現に俺達に賊退治を手助けしてくれた!賊や密偵なら俺達は無事では済んでいない!」

 

「それだけならまだ信用に値しません!それに賊や密偵でなくとも民間の者を戦わせるなんて・・・もう少し考えて行動なさってください!」

 

「二人とももうそれぐらいにしてください」

 

エメリナに咎められたメリアとクロムは互いに睨み合いながら元の位置に戻った。 

 

「・・・貴方が此処へ連れてきたと言う事は、クロム、貴方はルフレさんを信じたのですね」

 

「あぁ、ルフレは俺と共に、民を守る為に命がけで戦ってくれた。一緒に戦ったからこそ分かるつもりだ。ルフレは信用できる」

 

クロムがエメリナにそう言ってのけ、メリアはエメリナに視線を向けて結果を待った。

 

「・・・そう・・・クロムが信じているなら、私も貴方を信じましょう」

 

エメリナの言葉にルフレは驚き、メリアはやっぱりかとばかりに溜め息をついた。

 

「フレデリク、貴方もありがとう。心からクロム達を心配してくれているのね。それと、メリア。貴方もこの国や民、クロム達の事を常に案じてくれてありがとう」 

 

「いえ・・・クロム様とリズ様をお守りする者として当然の事です」

 

「案じるも、疑うも・・・それが軍師としての勤めなので」

 

エメリナに礼を言われた二人はそう返すと、フレデリクはフィレインに問う。

 

「ところでフィレインさん。異形の化け物の事は・・・?」

 

「はい、各地に出没している様で、目撃談が寄せられています」

 

「現に只でさえ少ない軍を動かさなければならない程です・・・大人しいならまだ良いですが、人を襲うとなると・・・」

 

フィレインの現状報告に追加する様にメリアがそう言う。

 

「その対策を話し合う会議に・・・クロム、貴方も出席して欲しいのです」

 

「分かった」

 

クロムが了承すると、リズはルフレを連れて行き、残されたエメリナ達はそのまま会議の場へと歩いていった。



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会議と不穏

メリアは今、エメリナ達と共に異形に対しての会議の場で会議が始まるのを待っていた。

 

異形の存在はメリアの耳にも届いており、まるで死体が蠢く様な異形の報告書を読んでメリアは顔を歪ませた程にペレジアと同様、危険視した。

 

暫く、メリアは手元の報告書を読んでいると、司会役の大臣が立ち上がった。

 

「それでは、此度に置けるイーリスに現れた異形の対策についての会議を行いたいと思います。では先ず、異形に対してどの様な行動に出るべきかを意見し合いましょう」

 

司会役の大臣はそう言った後で席に座ると、メリアが立ち上がって意見する。

 

「恐れながら発言させて頂きます。今回、異形の対応策としては二つ。イーリスの戦力の向上か、他国の支援を得るかのどちらかが最適かと。もし、エメリナ様の軍縮の方針をお変えにならないとしたら・・・やはり、他国の支援かと」

 

「しかし、他国と言っても何処を・・・?」

 

大臣の一人の質問にメリアは大陸の地図を取り出して広げると指を指した。

 

「北の国、フェリア連合王国が妥当かと」

 

「フェリアですか・・・確かに支援される側としては十分ですが、何か見返りを求められる可能性があるのでは?」

 

フレデリクの指摘にメリアは険しい顔をしながら眉間を押さえる。

 

「そこなのよ、フレデリク。フェリアが場合によってこのイーリスにどんな見返りを求めるのか・・・領土か、金か、それ以外か・・・全く分からない」

 

フェリア連合王国、通称フェリア。

 

フェリアは蛮族の祖先を持つフェリアの民が起こした国で、連合王国だけに二人の王がおり、数年に一度行われる代理戦でフェリアの王として立つ、強さ重視の国。

 

強さを重視する国が故に掴み所がいまいち分からず、メリアを悩ませていた。

 

「とにかくフェリアに行ってみるべきだろ。今、悩んでも仕方ないだろ」

 

「クロム様。簡単に言いますが・・・いえ、確かにまだ何も言われてもないのに悩んでも確かに仕方ありませんね・・・エメリナ様はフェリアへの交渉のお考えは?」

 

「やれるだけでもやって見るべきだと私も思います」

 

エメリナの言葉にフェリアと交渉する事が決定したと確信したメリアは席を立ち上がった。

 

「では、私がフェリアへ赴いて交」

 

「俺が行く」

 

メリアの言葉を遮る様にフェリアへの特使にクロムが志願した。

 

メリアは政治と外交が苦手なクロムが志願した事に目を丸くしていると、エメリナは頷いて了承する。

 

「では、クロムにフェリアへの特使に任命します。あと、メリア。貴方にはクロムの補佐をお願いします」

 

メリアはクロムに外交の経験を積ませようとしている事をエメリナから読み取った。

 

クロムは政治と外交が苦手だ。

 

その為、もしクロムが他国に赴いた際に相手側から言葉巧みに誘導され、利用される可能性が大きかった。

 

故に少しでも苦手克服の為にクロムを派遣し、危なくなったらメリアが補佐し、手助けする事だ。

 

「・・・分かりました。クロム様の補佐として、フェリアへ赴く事を了解します」

 

「ありがとう、メリア」

 

エメリナは微笑みながら礼を言うと、メリアは呆れつつも微笑み返した。

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フェリアへ赴く事が決まったメリア達が会議をしていたその頃、青い蝶の様な仮面を着けた青年が息を切らしながら走っていた。

 

「待ちなさいよ、逃げられると思わないでさぁ」

 

その後ろをゆっくりと迫る様に黒髪を両端に結んだマーシナリーの装備を着て、目元に切り傷を付けた少女が闇を纏った剣を手に、追い掛けていた。

 

青年は走り続け少女から遠ざかろうとしたが、目の前に崖が現れ、青年は立ち往生をしていると、後ろに少女が現れた。

 

「やっと追い付いたわよ。さっさと、観念して貴方の首と・・・ファルシオンを寄越しなさい」

 

「くッ・・・私の首は兎も角、このファルシオンだけは渡す訳にはいかない。その剣、ディアブロスを継承している貴方なら分かる事でしょう?」

 

「・・・そうよね、神器ともなれば渡す訳にはいかない。そんな物よね・・・でもね、死ねばそんなの関係ないわ。さぁ、寄越しなさいよ・・・ファルシオンを。その次に貴方を殺すから」

 

少女は不気味に微笑みながらそう言うと、青年はファルシオンを構えて少女を睨む。

 

「何処までも墜ちるつもりなのですね・・・ロウラ!」

 

「貴方こそ、いつまでも負け戦なんてしないでよ・・・ルキナ!」

 

そうロウラが叫んだ時、二人は互いの神器を振るう。



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フェリアへ

メリアは会議を終え、ラクス達のいる自身の執務室に戻ると、ラクスは執務室に置いてあるメリアの管理する隠された歴史の断片の本を読んでいた。

 

ラクスは本を静かに閉じると、メリアの方に向かずに問う。

 

「邪竜の名は・・・ギムレー、だったな?ギムレーはかつて、私が対峙した例の双竜か?」

 

「そう、伝わっています」

 

「そうか・・・やはり、取り逃がすべきでなかったのか・・・今になってはどうしようもないが・・・」

 

「ラクス・・・」 

 

ギムレーを黙って逃がした事をラクスは悔やみ、ベルカは慰める様に背中を擦った。   

 

「私はこの先の子達に苦労を掛けさせてしまった・・・悔いても悔やみきれん・・・」

 

「お祖父様・・・」

 

メリアはラクスに声を掛けようとするも、どんな言葉を言えば良いのか分からず押し黙ると、メリアは手短に要件を伝える。

 

「お爺様、お婆様。私はフェリアへ協力を取り次ぐ為に暫くは此処を空けます。お爺様達は」

 

「私も行こう、メリア」

 

「お爺様、自ら・・・?」

 

「せめてもの償いだ。お前の側に立って守ってやりたい・・・無論、帰るまでだが・・・それぐらいなら良いだろ?」

 

「私も行くわ。ラクスだけに重みを背負わせたくない・・・それに、貴方は大切な家族。私も側で貴方を守りたい」

 

ラクスとベルカの言葉にメリアは暫く固まっていたが、微笑みを浮かべた。

 

「ありがとうございます・・・お爺様、お婆様」

 

メリアの感謝の言葉にラクスは微笑みを浮かべた後、手をパンッと叩いた。  

 

「さぁ、旅の準備を始めるぞ。フェリアがどんな国かは知らないが、長旅になるのは明白だろ?」

 

「はい。入念な準備をしてからフェリアに向かいます。特に防寒着は欠かさずにです」

 

「ほぉ、北国なのか?」

 

「はい、北に位置する国ですからね・・・常に雪が降り積もっていて行くのも大変です」 

 

「だけど、行くしかないのでしょ?」

 

ベルカの言葉にメリアは頷くと、三人はフェリアへ向けての旅支度を始める。

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翌日、メリア達が集合場所へとやって来るとそこにはクロム達と自警団の一員と思われる褐色の戦士とソシアルナイトの女性、貴族の様な面立ちをした男が既に集合場所で待っていた。

 

「お待たせしましたクロム様」

 

「やっと来たか・・・その二人は?」

 

「私の親戚に当たる者達で、今回の旅に動向したいと志願して此処に連れて参りました」

 

「ラクスです。隣にいるのは妻のベルカ。御会いできて光栄です、クロム様とリズ様」

 

ラクスはそう言って挨拶する。

 

「貴方方がメリア様々の親戚でしたか。私はフレデリクと申します。今回は何故、フェリアへの動向を?」

 

「なに、ただ世話に成りっぱなしなのは嫌だからせめて動向しようとな・・・駄目か?」

 

「いえ、客分の身でありながら動向して頂けるとは・・・感謝します」 

 

フレデリクが礼を言った時、向こうから鎧のぶつかる音と足音を聞こえてきた。

 

「おーい!待ってくれ!」

 

その声と共に緑が特徴的な鎧を纏った青年が走って来ると、息を切らしてクロムの前に立つ。

 

「ソール!?」

 

「ソール!?来ないからてっきりフェリアに一緒に来ないと思ったんだけど?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・いや、その事が自警団の皆に伝わってなくて・・・それで慌てて準備した追って来たんだ・・・」

 

「あ、そうえばフェリアの事を知らせる忘れてたぜ・・・」

 

戦士がそう言って頭をかきながらそう言うと、メリアは大きく溜め息をついて戦士を睨む。

 

「ヴェイク。貴方と言う人は・・・幾ら忘れっぽいとは言え自警団に回す重要な内容くらいきちんと伝えなさい。良いですか?貴方がもし重要な報告を忘れればクロムに迷惑が掛かるだけでなく」

 

「また、始まっちまった・・・」

 

メリアの説教が始まった事にヴェイクは文句も言えずメリアの説教を聞いていた。

 

この光景にラクスはソールの方を向いて問う。

 

「これは何時もの事なのか?」

 

「まぁ、そうだね・・・僕達が所属する自警団にはメリア様は所属はしていないけど何かと面倒を見てくれるんだ。特にヴェイクは何かと物忘れする度に長い時には三時間は説教をされてるよ」

 

「・・・貴方似ね」    

 

ベルカの指摘にラクスは暗夜王国で親衛隊に説教をする光景を思い出し、苦笑すると、今回は短く説教は終わったのかメリアは溜め息をつき、ヴェイクは安堵している。

 

「全く・・・まさかとは思いますが、武器である斧を忘れてはいませんよね?」

 

「忘れてねぇよ!ちゃんとあるぞ!」

 

ヴェイクはそう言って斧を見せると、メリアは不安そうな顔をしつつも頷く。

 

「まぁ、今はあるわね。今は」

 

「何でそこまで信用ねぇんだよ!?」

 

「前にも忘れてたわよね?私が間一髪の所で届けたから良かった物の・・・ヴェイク。武器を忘れる様なら腕に武器を縛り付けるなり何なり対策しなさい」

 

「(いやいや、腕に武器を縛り付けるって・・・)」

 

ヴェイクはそう心内にツッコミも口には出せず、黙った。

 

「メリア。もうその辺にしてやれ・・・ソール。他にも動向する者はいるか?」

 

「ミリエルが来るって聞いてるけど後から追い付くって」

 

「そうか。なら、そろそろフェリアに向かおう。他の者達には追い付いて貰うしかない」

 

クロムの号令で若干団員は抜けてはいるが、それでも十分な戦力のある状態で出発した。



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屍兵

クロム達が出発してから暫くして、草原らしい辺りまで来た所で向こうから多数の影が見つかった。

 

どう見ても人ではない人外が武器を手にしてゆっくりと迫っているのだ。

 

「あれは?」

 

「あれがフェリアへ協力を申し出て対処する屍兵です。まさか、此処にも現れるとは・・・」

 

フレデリクがメリアに説明を終えると、武器を手にして身構えた。

 

メリアもディアブロスとティソナを手に身構え、交戦の用意を整えた。

 

「あれが屍兵と言う者か・・・武装している分、ノスフェラトゥよりも厄介そうだな・・・」

 

「ノスフェラトゥ?何それ?」

 

「簡単に言えば・・・巨体で獣の様な緑の化け物だ。私の国にはウヨウヨいてな・・・厄介な奴等だった」

 

リズに説明を終えたラクスはかつてマクベスを産み出したノスフェラトゥを思い出し、顔をしかめた後、ラクスはディアブロスを抜いた。

 

「まぁ、話はこれくらいにして奴等を蹴散らすぞ」

 

ラクスがそう言った後、クロムが号令し、戦闘が始まった。

 

メリアはディアブロスとティソナの二つを使い分けて次々と屍兵を斬って捨てていく。

 

「なかなか、やるじゃないか。メリアの奴」

 

「他ならぬ貴方の孫娘よ。あの二つの剣を両方受け継げる程の力をあの子が秘めているとも言えるわね」

 

「そうだな・・・さて、私達も行くとするか」

 

ラクスはそう言って馬を駆けると、ディアブロスを横に勢いよく振るうと、屍兵が一気に凪ぎ払われた。

 

「凄い・・・!」

 

「たった一振りで屍兵数体を・・・!」

 

「流石はメリア様の御親戚ですね・・・」

 

ラクスの一振りにクロム達は驚いていると、ラクスはディアブロスを振るい、次々と屍兵を蹴散らしていく。

 

そこに空からベルカの支援攻撃が入り、ラクスとベルカとメリアの三人の激しい攻勢に屍兵は徐々に数を減らしていく。

 

クロム達も負けじと屍兵に立ち向かい、戦いはクロム達の優勢で動き続ける中、メリアは戦いの中でヴェイクがオロオロしている姿を見つけて駆け付けた。 

 

「何やってるのヴェイク!」

 

「げッ、メリア・・・いや、あれだ・・・」

 

「・・・まさか、武器をわすれたのですか?」

 

「忘れてねぇ!持ってたんだが落としたんだよ!」

 

「同じ様な事じゃないですか!!!」

 

開き直ったヴェイクにメリアは怒鳴ると向こうから人影が見え、メリアは武器を持たないヴェイクを庇いつつ身構えていると人影がやって来た。

 

「間に合いましか」

 

「ミリエル!貴方もフェリアへ行くのね?」

 

「えぇ・・・あ、ヴェイク。もしかしてこの斧は貴方のかしら?」 

 

ミリエルはそう言って斧を差し出すと、ヴェイクは笑いながら頭をかきつつ斧を受け取る。

 

「すまねぇなミリエル!」

 

「もう落とさないでくださいよ・・・出ないと、腕を切断して斧を取り付けてやりますよ?」

 

ミリエルの洒落にならない言葉にヴェイクは顔をひきつらせて頷くと、メリアは溜め息をついて戦場の方を見る。

 

屍兵は既にクロム達により壊滅寸前で、もはやメリア達の出番は無さそうだった。

 

「もうすぐで戦いは終わりますね」

 

「はぁ・・・結局、戦わずじまいかよ・・・」

 

「貴方が斧を落とすからでしょう・・・!」

 

ヴェイクの言葉にメリアはドスの効かした声でそう言うと、ヴェイクは怯み、ミリエルがメリアを抑える。

 

「メリア。何時もの事よ・・・どうしようもないわ」

 

「ですが武器を毎回忘れたり、落とされたらかないませんよ・・・」

 

メリアとミリエルの二人は深く溜め息をついた。



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フェリア

屍兵を退けたクロム一向は緑溢れるイーリスの大地から、フェリアの雪原へと足を踏み入れていた。

 

フェリアの雪原は吹雪が吹き荒れ、クロム達の歩みを妨げ続ける。

 

「うぅ、寒いよ~!」

 

「何で揃いも揃って防寒具を持ってこなかったのですか?」

 

「まさかフェリアが此処まで冷え込むとは思わなくてな・・・」

 

メリアとラクスとベルカを除いたクロム達は防寒具を忘れたり、持ち込んだりしていなかったせいでフェリアの風に凍えていた。

 

クロムは冷え込む程度の感覚で平然としていたが、リズはガタガタと震え、フレデリクは微笑みながら風除けをしているが、体の震えを隠せていなかった。

 

ソールはくしゃみをして鼻水を足らしたり、ミリエルは腕を擦り寒そうにしている等と防寒具を持たない仲間達がちらほらといる。

 

ルフレは大きな上着を着ているが、寒そうにしている。

 

「全く・・・リズ様。これを羽織ってください」

 

「え?これってメリアのじゃ・・・」

 

リズに差し出された物はメリアが羽織っていた防寒用のマントだった。

 

メリアはマントならいざ戦いになってもすぐに脱ぎ捨てられて邪魔にならないからと言う理由で愛用しており、フェリアに赴いた際にも羽織っていた。 

 

だが、寒がるリズに黙って見ている訳にもいかなかったメリアは自身が凍える事に構わず、リズに渡した。

 

「私は少し位なら平気です。それよりも、主君であるエメリナ様の妹君のリズ様が風を引かれたら大変でしょう」

 

メリアはそう言って先に進み始めるも、やはり防寒具も無い状態では流石のメリアでも寒かった。

 

「よくこんな状態で進める物ですね・・・」

 

メリアは防寒具を着ていない仲間達を見てそう呟くと、肩に何かを乗せられた感覚を受けて振り替えると、そこにはマントを脱いだ状態のラクスがいた。

 

「私のマントを使え」

 

「し、しかしそれでは・・・」

 

「お前が風邪を引いたらベルカに叱られてしまう・・・私を助けると思って着ていてくれ。それに、この程度の寒さなど氷の部族の故郷に比べればまだマシだしな」

 

「・・・ありがとうございます」

 

ラクスの行為にメリアは礼を言った時、目の前に長壁が特徴の大きな砦が現れた。

 

クロム達は砦を見て止まると、ルフレが目の前の砦が事をメリアに質問する。

 

「メリアさん、あれは?」

 

「あれがフェリア国内に入る為の砦です。軍師として立つなら各国の要所を覚えておきなさい。フェリアとは長い付き合いになるかもしれないし、他にも軍師として戦術以外にも覚えなきゃいけないのだから」

 

メリアはそう言うと、クロムの隣に出る。

 

「砦方の方は・・・妙に騒がしくなっているのは気のせいでしょうか?」

 

「気のせいじゃない・・・妙に騒がしくなっているのは気になるが俺が直接話に行く」

 

「待ってください。砦方の動きがオカシイ中で貴方様が直接行くのは危険です。最初は出方を見てから判断をした方が懸命です」

 

「分かっている。だが、姉さんが国で待っている以上、時間は掛けてられない」

 

メリアの提案を聞いてクロムはそう答えた後、砦の前に立つと砦の上からアーマーナイトの女が現れたのだ。

 

「何者だ!名を名乗れ!」

 

「俺はイーリス聖王国第一王子クロム!イーリスの特使として来た!」

 

クロムの言葉に女は困惑した表情を見せた後、警戒する表情に変えた。

 

「イーリス?さては、貴様ら!イーリスの名を語る賊か!」

 

「なに!?違う!俺達は」 

 

「問答無用!衛兵!衛兵!!!」

 

話を全く聞こうとしない女は兵を呼び寄せると、クロムに向けて弓矢を構えさせた。

 

クロムはファルシオンを抜いて身構え、女が合図を出して矢を放たさせようと手を下ろそうとした時、間に入る様にメリアが立ち入る。

 

「待ちなさい!イーリスの名だけで信用が出来ないのなら私の名、聖王エメリナの軍師メリアも出すわ!弓を下ろしてください!」

 

「賊が何を・・・その顔、その二本の剣・・・貴方はメリア殿!?では、特使と言うのは・・・」

 

「本当の事よ。全く、早とちりも良い所よ」

 

メリアの溜め息をつくと、フェリア側が前よりも慌ただしく動き回り、城門が開かれていく。

 

その様子にルフレは隣にいるフレデリクに問う。

 

「フレデリク。メリアさんの顔って広いの?」 

 

「イーリス聖王の軍師ですからね。外交でエメリナ様と共であったり単身で度々他国に出かける事もあります。軍師として、国の土台が崩れない様にしていてくれています。エメリナ様と同じ様にメリア様も平和を願っての行動です」

 

「でも、何でクロムとメリアさんの仲が」

 

「理想の叶え方の違い・・・と、言っておきます。はっきり言える事は一つ。メリア様もまた、平和を願う者の一人だと言う事だけです」

 

理想の叶え方の違いと言う言葉にルフレは首を傾げると、門の方からメリアが呼ぶ声が聞こえた。

 

「皆さん!フェリア側と話を着けましたので入国しますよ!」

 

「では、行きましょう」

 

フレデリクがそう言うと歩みだし、ルフレも続いていく。




投稿しようとしたらインフルに掛かって死んでました。すみません・・・


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神剣闘技~前夜~

砦を通過したクロム達はフェリアの東の王フラヴィアとの謁見を取り次ぎ、フラヴィアの城まで訪れていた。

 

一同がフラヴィアが来るのを待っている時、ラクスがメリアに問う。

 

「メリア。フラヴィア王はどんな人物なんだ?」

 

「政治よりも戦いを好むお人です。今いないのも訓練所等に出向いているからかと」

 

「戦いが好きか・・・」 

 

ラクスは戦いと聞いて暗夜の事を思い出す。  

 

ラクスがガロンの騎士として戦場に出ては戦い、殺戮の限りを尽くした記憶に顔をしかめた時、前から女性がやって来た。

 

「来ました。あの方がフラヴィア王です」

 

「ほぉ、戦いが好きだと聞いたが・・・まさか女性だったのか・・・」 

 

ラクスが珍しいとばかりに見ていると、謁見が始まった。

 

「貴方がフェリアの王か?・・・いや、王なのでしょうか?」

 

「(クロム様・・・もう少し、しっかりと敬語をお使いくださいよ・・・)」 

 

メリアはクロムの発言に呆れつつハラハラする中、フラヴィアも名乗る。

 

「あぁ、東の王フラヴィアさ。遠路はるばるようこそ、クロム王子。国境では、うちの連中が失礼したね」

 

「いや・・・あ、いいえ。先程、イーリスを騙る賊出没していると聞きましたが・・・」

 

「あぁ、国境沿いの村々を荒らしている。どうやらペレジアが仕組んでるようだね。フェリアとイーリス、両国を敵対させよう・・・って所じゃないねぇ」

 

「(またペレジア・・・!奴等、他国にまで迷惑を掛けているなんて・・・!)」 

 

メリアはペレジアの悪行に拳を強く握り締め、怒りを表に出さない様にする。

 

クロムもペレジアは悪行に怒りを露にするも、謁見の最中だと気付き怒りを納めた。

 

「し、失礼しました。王の御前で・・・」

 

「おやぁ?クロム王子・・・喋り方を無理しているだろう?良いんだよ、いつもの調子で話してみなよ。後ろにいるメリアも顔をしかめて冷や汗を流しちゃってるしね」

 

「あっ・・・き、気付かれていたか」 

 

「砕けた話し方しかできないのは、お互い様さ」

 

クロムはフラヴィアに促されていつもの調子になると、メリアもクロムが気を使った敬語を使わなくて良くなった事に安堵する。

 

「さて、本題に移ろうか。・・・早速で悪いんだが、今、うちの兵をイーリスに貸す事は出来ないんだよ」

 

「え?そんな・・・どうして?」

 

リズの疑問にメリアが難しい顔を答える。 

 

「・・・東西の王がまだ決まっていない、それが言いたいのですね、フラヴィア様」

 

「そうだよ、流石メリア。私が見込んだだけの事はあるねぇ。あんたがうちに来てくれたら助かるだがね」

 

「お戯れを・・・それで、東西王が決まっていない以上、もし西の王が勝てば」 

 

「同盟を結ばないかもね・・・」

 

難しい問題にメリアは難しい顔になりつつなる中、フラヴィアが切り出した。

 

「だが、方法はあるよ。闘技大会はもうすぐだ・・・大会に勝てば、願いを聞いてやれる」

 

「俺達が?」

 

「お前達の実力は・・・知らないが、かなりの物だろう。それにメリアもいる。東軍の代表として、あんた達が西軍に移ろう勝てば良い。そうすりゃ私が王様になって、同盟を結ぶ事ができる」  

 

フラヴィアの提案にメリアは自分が出る前提で話されている事に呆れ顔をしたいると、隣にいるラクスが問う。

 

「お前、余程この王に信頼されているが、何をしてそうなったんだ?」

 

「昔・・・フラヴィア様が新たに東の王として即位した時に親睦を兼ねて訪れた事がありまして・・・一度手合わせして気に入られてしまいました。フェリアに来いとしつこく勧誘もされる位には・・・」

 

メリアは思い出すだけでもキツいとばかりに軽く溜め息をつくと、ラクスはメリアのその行動を察して黙る。

 

メリアとラクスが話している内に纏まったのかフラヴィアがクロムに言う。

 

「良い顔だ。気に入ったよ。よっしゃ!じゃあ暴れておいで!メリアも参加するんだよ!」

 

「・・・やっぱり、ね」

 

メリアはまた軽く溜め息をはいた。



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神剣闘技~開戦~

闘技大会に出場する事となったクロム達は6対6による戦いの為、編成としてクロム、ルフレ、メリア、ソール、リズの6名で組んだ。 

 

相手側はクロムと同じロードの仮面の青年と顔を兜で隠した騎士が中心に6名で組んでいる。  

 

残ったメンバーは観客席から戦況を見守る事にし、クロム達は闘技場に足を踏み入れた。

 

「お兄ちゃん!あの人・・・」

 

「あぁ、分かっている」

 

「お知り合いですか?」

 

メリアはクロムに聞くと、クロムは頷く。

 

「彼奴はマルス。俺とリズ達が最初に屍兵と遭遇した時に助けられてな・・・騎士の方は知らない奴だ」

 

「マルス・・・伝説の英雄王と名前が同じなのね」

 

クロムの言葉を聞いてメリアは再び前を見ると、マルスは騎士と何かを話した後、クロム達の方を見つめる。

 

「マルスと言ったな。お前に聞きたい事がある」   

 

クロムがマルスに話し掛けるもマルスは口を開かず、黙ってクロムを見つめている。 

 

「黙りか。良いだろう。ならば、その剣に語ってもらおう!」

 

クロムがそう言ってファルシオンを抜いて構えると、マルスがクロムが持つファルシオンと似た剣を抜いて構えた。

 

これにはメリアは驚きを隠せなかった。

 

「嘘・・・何故、ファルシオンが・・・!」

 

メリアは驚きを隠せずにいた時、マルスの隣にいた騎士が腰からメリアが持つティソナに似た剣を抜いて構えたのだ。

 

「ティソナまで・・・!。どうやら、私も聞かないといけない事が出来た様だわ・・・」

 

メリアはディアブロスは抜かず、ティソナのみを抜くと構えた。

 

「構えまで同じ、ね・・・はぁ!」  

 

メリアは先手必勝とばかりに掛けて行き、ティソナを騎士に振るう。

 

騎士は攻撃を受け止めると反撃し、メリアとの激しい戦いを繰り広げる。

 

使う剣は同じ、技も同じ、動き方までも同じと、メリアは少し騎士に対して気味悪さを感じる。

 

「一体、誰からその技を学んだの?」

 

「・・・母に学んだ」

  

騎士はそう言って構えると、メリアも構えた。 

 

その頃、観客席ではラクスとベルカは驚いていた。

 

メリアの持つティソナと同じ形をした剣いや、ティソナその物と言える剣を見てだ。

 

「ラクス、あの剣は・・・!」

 

「ティソナ、なのかもな。二本も無い剣が何故・・・」

 

ラクスは何故、ティソナに二つ目があるのか疑問に感じていた。

 

「・・・とにかく、手強い相手であるのは間違いない。負けるなよ、メリア」

 

ラクスは聞こえないと分かっていてもメリアにそう呟く。

 

場所は戻り、メリアと騎士の戦いは熾烈を極め、つばぜり合いとなった。

 

「貴方の母は何者なの?私の剣の技を教えるなんて」

 

「それは言えない。どうしてもな・・・」

 

激しく金属がぶつかる音が響く中、互いに押し合い力負けしない様に立ち回る中、騎士から離れ、切り込んでくるもメリアは上手く避け、騎士にカウンターを決めた。 

 

攻撃を受けた騎士は吹き飛び倒れると、メリアは素早くティソナを騎士の首に突き付ける。

 

「貴方の負けよ」

 

「・・・参った」 

 

騎士が負けを認めると、クロムも決着を着けたのかマルスが膝を着いている。

 

ルフレ達も他の相手を下し終え、戦いはクロム達の勝利となった。

______________________

______________

______

 

戦いが終わり、クロムの元にルフレ達が集まると、フラヴィアがやって来た。

 

「すごいじゃないか!あんた達!これでイーリスとフェリアの同盟は成立だ。約束通り、兵士を出すよ」

 

「本当か!感謝する!」

 

「ありがとうございます、フラヴィア様」

 

クロムとメリアはフラヴィアに礼を言うと、フラヴィアは笑いながら礼を言う。

 

「それは此方の台詞さ。何せ久々の勝利だ。今夜は祭りだよ!」  

 

フラヴィアはそう言って立ち去ると、後ろから眼帯の男がやって来た。

 

「やれやれ、盛り上がってるな」

 

「あんたは・・・?」

 

「バジーリオ様。フェリアの西の王ですよ、クロム様」

 

メリアがそう説明を入れると、バジーリオは改めて名乗る。

 

「そこにいるメリアの言う通り、西の王をやっているバジーリオだ。よろしくな、王子さん。しかしお前さん、良い剣を使うな。うちの代表も良い線をいってたんだが・・・」

 

「彼奴は何者なんだ?」 

 

「んー・・・実は俺もよく分からん。もうどっかに行っちまったしな。顔の分からん騎士を連れてふらっと流れてきてうちの代表を軽く倒しちまってな。これは・・・!って事で、無理矢理口説いた」

 

メリアはそれを聞いて落胆した。 

 

マルスもそうだが、あの騎士がティソナを何故持っていたのかと技を誰から学んだのかと問いただしたかったのだが、いないとなるとどうしようもなかった。  

 

「(彼の使っていた剣・・・やはり、アレは・・・)」

 

メリアが考えを結びつけようとした時、大きな爆発が起こり地面が揺れた。

 

闘技場内は大パニックを起こし、逃げる群衆で溢れた。

 

「何だ!どうしたってんだ!」

 

バジーリオが体勢を崩しながら叫ぶと、報告に来たのかフェリアの兵が安定しない足取りの中、走ってきて報告する。

 

「ご報告申し上げます!この闘技場が何者かに襲撃を!」

 

報告した兵士がそう言った時、兵士の背中に矢が刺さった。

 

メリアは矢が飛んできた報告を見ると、明らかに暗殺向きの装備をした集団が剣や槍、暗器に弓等と手にして現れたのだ。

 

「何者だ!こんな時に襲撃を仕掛けやがって!」

 

バジーリオは怒りを露にしてそう叫ぶと、集団の奥から顔を布で隠した黒髪のツインテールをした少女が現れたのだ。

 

「ごめんねぇ。別に大した用事に来たんじゃないよバジーリオ王様。そこにいるメリアって人に用があるの」

 

少女は顔を隠していても分かる微笑みを浮かべ、腰から剣を抜いた。

 

メリアはそれを見て驚く。 

 

「それはディアブロス・・・!」

 

「ご名答!正真正銘、神剣ディアブロスだよ。さぁ、メリアさん。剣を抜いて私と戦いなさい。私は貴方よりも強いって証明して殺してあげるから」

 

少女の言葉にメリアは立ち上がってティソナとディアブロスを抜こうとした時、メリアの肩を掴む者がいた。

 

メリアは振り向くと、そこにはラクスがいた。

 

「叔父様・・・」

 

「・・・下がっていろ。奴の相手は私が代わりに受けよう」

 

ラクスがそう言ってディアブロスを抜くと、鋭い殺気を出した。

 

クロム達はラクスの殺気を浴びて背筋を凍らせていると、バジーリオが問う。

 

「あんた、何者だ?普通の騎士には見えねぇぜ・・・」

 

「・・・ただの叔父だよ」 

 

ラクスがそう言ってディアブロスを少女に突き付けた。



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激闘

ラクスは少女に向けてディアブロスを構えた後、少女は驚いたとばかりにラクスを見ている。 

  

「まさか・・・貴方は・・・」  

 

少女は明らかにラクスに対して戸惑っていると、ラクスは挑発する。

 

「何をぶつぶつ言っている?。早く掛かって来い」 

 

「言われなくても・・・!」

 

少女はラクスの元に走り、斬り付けるもラクスは容易く防ぐ。

 

少女は連続でラクスに斬りつけるも、ラクスは簡単に返し続け、遂にはラクスに軽く反撃を受ける。

 

「どうした?。メリアよりも強いのだろう?。もっと掛かってこい」

 

「くッ、いつもそうやって見下して・・・最低よ・・・!」

 

「いつも?。お前とは初めて会ったが・・・?」

 

ラクスは首を傾げると、少女は怨めしそうに睨みつつで構えると、回りにいた刺客に命令する。

 

「何やってるの!早くメリアを殺しなさい!これは命令よ!」

 

少女の指示に刺客達はメリアの元に向かっていき襲い掛かる。

 

メリアはディアブロスとティソナを抜くと、刺客達を相手に戦闘を開始する。

 

「俺達も戦うぞ!」

 

クロムもファルシオンを手に戦闘が参加し、刺客達と激しい交戦になった。

 

刺客達は多彩な技を駆使しクロム達に攻撃するも、クロムとルフレ達は怯む事なく戦う。

 

「怯むな!奴等の戦い方は冷静に見切れば勝てない事はないぞ!」

 

「この刺客達の技・・・何れも暗殺術において扱われる物ばかりだわ。しかも中々の手練れ・・・そこまでして私を殺したいのね」  

 

メリアは刺客達を倒しながらそう呟いた時、後ろから刺客の一人が剣を振り下ろそうとしており、メリアは急いで防ごうと身構えた時、刺客を吹き飛ばす様にサンダーの魔法が飛んできた。

 

「大丈夫かい!」 

  

「ルフレ・・・助かったわ。後ろを取られるなんて私もまだ甘いわ・・・でも」 

 

メリアがそう言うと、ルフレの後ろに向けてティソナを突くと、後ろからルフレを突き刺そうとした刺客を貫いた。

 

「貴方も甘いわよ。お互い、油断なく戦いましょう」 

 

「あぁ!」

 

メリアとルフレは互いの背中を預けた後、メリアは刺客を斬り付け、ルフレは魔法と剣を巧みに扱って凪ぎはらっていく。

 

一方、ラクスと少女の戦いはラクスの一方的な戦況だった。

 

少女の剣は鋭く、速いがラクスにとって見切れない物ではなく、簡単に防ぎ、弾き返していく。

 

「くそ!くそ!くそ!何で、何で当たらないの!!!」

 

「私から言わせれば・・・全く、足りないんだよ、お前の実力と経験が。確かにお前の剣の鋭さと速さは誉めてやる・・・だが、毎日手順通りのマニュアル通りの振り方で強くなれたとは言えんな」

 

「・・・ッ!黙れえぇぇぇぇぇ!!!」

 

少女はラクスの言葉に逆上して大振りにディアブロスを振るった時、ラクスが弾き返して少女は体勢を大きく崩して倒れた。

 

少女は立ち上がろうとした時、ラクスのディアブロスが喉元に突き付けられた。

 

「あの程度で逆上し、大振りに振るなど愚の骨頂・・・落第点だ」   

 

「まだ・・・まだ私は・・・!」

 

「お前の負けだ・・・認めろ、貴様の負けを」

 

ラクスは冷たい視線で少女を睨み、勝利を宣言した。



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疑問

大変お待たせしました。


少女に対して勝利宣言をしたラクス。

 

その言葉は周りで戦っていたクロム達と刺客達に届き、戦いは一時的に止まった。

 

静かな空間が広がる中、ラクスは油断無くディアブロスを少女に向けつつ問う。

 

「さぁ、何故メリラの命を狙ったか聞こうか?返答次第では生かして返す訳にはいかない」

 

「・・・誰が話す物ですか」 

 

「なら、その剣・・・ディアブロスを何処で手に入れた?この世界に二つと無い剣を」

 

「それは貴方も同じでしょ?二つと無い剣を持つのは」

 

「質問に答えろ。私を怒らせるな」

 

ラクスは苛立ちを覚えつつ少女にそう言った時、突如爆発と共に煙が撒かれ、視角を奪われた。

 

「目的は失敗した・・・けど、次は殺してやる・・・!」  

 

少女はそう言うと、走って逃げ、他の刺客達も逃げていった。   

 

煙が晴れた頃には既に少女達の姿は無く、ラクスは取り逃がしたと舌打ちした後にディアブロスを鞘に納めた。

 

「・・・三本目のディアブロス、か」 

 

ラクスは少女の手にしていたディアブロスの事を考えた。

 

少女の手にしていたディアブロスはラクスとメリラが保有するディアブロスと同等の力を感じた事で本物であるのはラクスにも分かった。

 

だが、現代と過去の遺物であるディアブロスが三本目として存在するのはラクスは出所を考えていた時、メリラがやって来た。

 

「叔父様。・・・彼女は何者だったのでしょうか?」  

 

「さぁな・・・ただ、分かるとすれば。奴のディアブロスもまた、本物だったと言う所だ」

 

ラクスがそう言った時、崩れかけた闘技場内にフェリアの救援部隊が駆け付け、事件は終息くし、トラブルこそあったが即位後、クロム達は約束通りフェリアと同盟を結ぶ事が出来た。

 

この事件に即位前にフラヴィアの耳にも届き、即位と同時にバジーリオと共に刺客達の捜索に力を入れた。

 

二人は闘技場を襲撃し、メリラの暗殺を謀った事にかなり怒り狂う姿はクロム達を引かせた。

 

クロム達は事件の後、吹雪の影響や戦いの疲れもある事からイーリスには明日出発する事をフラヴィアから勧められ、クロムはそれを了承して明日の朝、イーリスに戻る事になる。

 

メリラは宛がわれた客室の椅子に座り、今回の闘技場の戦いと事件について考えていた。

 

今ある現在と過去にしか存在しない筈のティソナとディアブロスが他に存在し、実際に振るわれた。

 

メリラは何故、過去以外に一つとない剣があったのかと考えても分からず、ただ一つだけ見に覚えはあった。

 

「まさか・・・お祖父様達と同じ様に過去から・・・」

 

メリラはその考えがあり得なくはない事はないと考えるが、確信もなく、ただの憶測でしかなかった。

 

メリラは一晩、考え込んだが結果としては明確な答えは出る事はなかった。



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時代の暗雲

多くのトラブルに合いながらも何とかペレジアとの交渉を成功させたクロム達はイーリス王城へ帰還し、エメリナに報告した。

 

「_______以上がフェリアとの交渉の結果です」

 

「そうですか・・・良かった。フェリアの方々が協力を。ですが、メリラ。貴方が命を狙われるなんて・・・」

 

メリラの命が狙われた事は報告を通してエメリナの耳にも入った。

 

どちらにしても隠す事でもなく、エメリナの軍師であるメリラの命を狙った以上はイーリスに害を及ぼそうとしているのは分かりきっていた。

 

「立場故に狙われたのでしょう。私を消せばイーリスが弱体化すると考えたのでしょう。浅はかなものです。とにかく、フェリアとの交渉は無事に終わったのは確かです」

 

「えぇ・・・皆さんのおかげです。ありがとうございます」

 

「これでイーリスの国内も暫くは」

 

クロムが平穏になると言い掛けた時、玉座の間の扉が勢いよく開かれ、慌てた様子でフィレインが走ってきた。

 

「失礼いたします、エメリナ様!クロム様!急な知らせが入りました!」

 

「何事ですか、フィレイン?」

 

「西のテミス領にペレジア軍の一団と思われる集団が侵入!村が襲われ、テミス伯のご令嬢が連れ去られた模様です!」

 

「何ですって・・・!」

 

メリラはペレジアが強行的な行動に移した事を聞いて顔を歪め怒りの表情になる。

 

ペレジアが不穏な動きを見せていたが強行的な動きを見せたのは初めてで、メリラは下手をすれば戦争になると予感した。

 

メリラは怒りを押さえ、フィレインからペレジアが何を考えているのかを聞く事にした。

 

「・・・ペレジアは何を?」

 

「ペレジア王ギャンレルはマリアベル様がペレジアに不法に侵入したと主張し、イーリスに賠償を求めています」

 

「またペレジアか!あいつら・・・!」

 

クロムが怒りを露にしてそう言い、メリラは自身のペレジアに対する考えがまだ甘かった事を悔いた。

 

「浅はかでした・・・!奴等がイーリスを挑発するなら強行的な行動も辞さない可能性も考えておくべきでした・・・私の責任です、申し訳ありません」

 

メリラは深々と頭を下げて謝罪すると、エメリナは静かにメリラの謝罪を制する。

 

「今回ばかりは誰も予想していなかった事です。貴方に非はありません・・・今はマリアベルを助ける為にも交渉ましょう」

 

「では、私が交渉に赴きます。エメリナ様は私に非は無いと言いましたがやはり、私の失態です。・・・今のペレジアが何を仕掛けて来るか分からない以上、私が行きます」

 

メリラがそう言うと、エメリナは首を横に振った。

 

「いいえ、私が直接赴きます」

 

「エメリナ様!?ペレジア方は何をするか分からないのですよ!貴方様にもしもの事があったら!」

 

「分かっています。ですが、危険なのは貴方も同じです。実際に誰の手先なのか分かりませんが貴方に刺客が放たれたのです。刺客を送り込まれた貴方だけに交渉をさせる訳にはいきません」  

 

「しかし!私はともかく、貴方様にもしもの事があったら・・・」

 

メリラは不安そうにそう言うと、エメリナは安心させる様にメリラの両手を包み込む様に持つ。

 

「大丈夫です。私には貴方がいる・・・貴方なら最良の判断をしてくれると信じています」

 

エメリナの言葉にメリラは項垂れると、クロムが前に出る。

 

「姉さん達だけでは心配だ。俺も行く」

 

「わ、私も!」

 

「クロム様、リズ様まで・・・!。分かりました。もう、何も言いませんが無理はしないでください。相手は本当に何をしでかすか分からないのですから」

 

メリラはそう言うと、ペレジアの王ギャンレルとの交渉の準備に向かった。



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聖王と暗愚王

メリラはマリアベルの返還と弁明の為の交渉の準備の為に場内を急いで歩いていると、ラクスが現れた。

 

「どうした?」

 

「お祖父様・・・テミス伯のご令嬢であるマリアベルがペレジア方に捕らえられました。私はエメリナ様達と共にマリアベルの返還を求める為に交渉に赴く準備に」

 

「ペレジアがそんな事を?ペレジアはイーリスに挑発行為を行っているのは聞いていたがそこまでするとはな・・・そんな奴等の所にエメリナ殿が自ら交渉に出るのは危険ではないか?」

 

「分かっています。分かっていますが・・・あの人も頑固ですから・・・」

 

メリラの言葉にラクスはエメリナを止められなかったのだと考えた。

 

「そうか・・・なら、私も行こう。万が一の為の戦力は多い方が良いだろう。ベルカにも声を掛けておく」

 

「ありがとうございます。私は、お祖父様には助けて貰ってばかりで情けないですね」

 

メリラはラクスにそう言うと歩き出して行く。

 

ラクスはメリラを見届けた後、メリラが無理をし過ぎていないか不安を抱く中、交渉に動向すべく準備しにいく。 

_______________

_________

_____

 

準備を終えたメリラ達はすぐさま、ギャンレルとの交渉の場であるイーリスとペレジアにある国境の峠へ赴くとそこには少数ながらペレジア兵の一団と露出の高い服装をする褐色の女と盗賊の身形の様な服を着る男がいた。

 

「おおう、これはこれは。ご丁寧に聖王とその軍師殿がおいでとは」

 

「ペレジア王、ギャンレル殿。この度の件、ご説明頂けますか?」

 

ギャンレルに対してエメリナがそう問うと、褐色の女が口を開く。

 

「それについては私が説明いたしますわ」

 

「貴方は?」

 

「インバースと申します。以後、お見知りおきを」

 

「マリアベルは無事なのでしょうか?」

 

「んん~?こいつの事かい?」

 

エメリナがマリアベルの安否を訪ねるとギャンレルは合図を出すと、マリアベルを捕らえているペレジア兵が現れた。

 

「無礼者!放しやがれですわ!」

 

「マリアベル!」

 

「リズ?リズですの!?」

 

捕らえられているマリアベルの元にリズは今にも駆け出しそうになるが、メリラが腕を出して制する。

 

「耐えてください。必ず、エメリナ様と私で彼女を助け出して見せますから」

 

メリラはそう言うと前に出る。

 

「マリアベルが何を貴方方に捕らえられる程の事をしたのですか?理由を聞かせてください」

 

「この者は無断で国境を越え、ペレジアに侵入し、その上、それを止めようとした我が国の兵士を傷を追わせた為」

 

「私、その様なしておりませんわ!良い歳こいて嘘をつくのは止めやがれですわ!」

 

「・・・ふふ、とまぁ、この様に騒ぎ立てたので捕らえた次第ですのよ」

 

インバースの言葉を遮るようにマリアベルはそう叫び、インバースは少し顔をひきつらせながらも話しきった。

 

メリラは気にせずに反論する。

 

「マリアベルが国境を越えた?我々は争いを望まないと言うのにイーリスとペレジアの国境をわざわざ越える理由ない。我々には貴国との関係を悪化させる様な事も望んでいない」

 

「そんなもん分からないじゃねぇか?本当はイーリスはペレジアに対して密偵を送り込み、攻め込む機会を伺っているんじゃねぇのか?」

 

「馬鹿な!ペレジアと再び戦火を交えるなどありはしない!」

 

メリラは怒りを抑えながらそう反論するも、ギャンレルはそれを予想してたとばかりにメリラに反論する。

 

「本当かなぁ~?お前にはあるんじゃねぇのか?何たってお前はペレジア旧王家に仕えてたてめぇの親父は俺達に殺されてんだからなぁ!」

 

「ッ!?」

 

メリラはギャンレルにそう言われた瞬間、頭に血が昇りそうになったが無理矢理抑え込み、相手のペースに押されない様にする。

 

「メリラ・・・」

 

「大丈夫です、エメリナ様・・・ペレジア王。今は貴方と私の因縁は関係ありません。此処は交渉場・・・争いではなく、話し合いましょう」

 

「だったらこいつがペレジアの国境を越えた賠償を支払えや。こいつのせいでてめぇらに非が出たんだからよ?」

 

「嘘ですわ!この者達がイーリスの国境に侵入して我が領内の村を焼き払ったのです!それを止めようとした私を捕らえ、ペレジアに連れ去ったのです!あの襲われた村の・・・酷い有り様を見て頂ければ分かります!」

 

マリアベルの主張にメリラはギャンレルを睨みつけると、ギャンレルはおどけた様な口調で言う。

 

「村?さぁて、知らねぇな?何処かの山賊の仕業じゃねぇのか?大勢殺されちまったんだって?おーおー可愛そうにな」

 

「くッ、外道め・・・!」

 

メリラはギャンレルがあからさまに嘘をついているのは分かった。

 

ギャンレルは山賊の襲撃に見せ掛け、村を襲ったのだと。

 

「(まさか、イーリスで起きた山賊や盗賊の襲撃はこの為に・・・!)」

 

「エメリナ様・・・!」

 

メリラは無駄な争いを避ける為、怒りを抱きつつギャンレルに対して何も出来ずにいた。

 

マリアベルは悲痛な表情でエメリナに向けると、エメリナは前に出た。

 

「マリアベル出来ずに大丈夫です。私は貴方を信じています。ギャンレル殿、マリアベルを解放してあげてください。意見の相違があるなら話し合いで真実を確かめましょう」

 

「そこまで話し合いがしたいって言うなら先ずは詫びて出すもんだせや。ごちゃごちゃ言うなら、この女。今すぐに処刑したって良いんだぜ?」

 

「何だと・・・!悪いのはお前達の方だろうが!」

 

後ろで待機していたクロムが怒りに任せてそう反論すると、ギャンレルは興味が無さそうにしている。

 

「ガキは引っ込んでな」

 

「なに・・・!」

 

ギャンレルの発言にクロムは怒りを露にするが、この場が交渉の場だと分かっている為か怒りを抑えた。

 

「エメリナさんよぉ。こいつを助けて欲しけりゃ、アレだ。炎の紋章って言う奴を寄越せや」

 

ギャンレルの要求にメリラは目を見開いてギャンレルに怒鳴った。

 

「ふざけないで!イーリスの国宝を渡せる筈がないでしょ!ましてや炎の紋章はもってのほかです!!!」

 

「何だよケチくさいな・・・なら、お前だメリラ。お前がペレジアに保証として人質に来れば炎の紋章は諦めてやる」 

 

ギャンレルの新たな要求にメリラは迷いを見せた。

 

炎の紋章はイーリス聖王家に伝わる国宝の中でも非常に重要で希少な物で、いつか再び現れる邪竜ギムレーに対して対抗する国宝の一つでもある。

 

それがもし、ギムレーを信仰するギムレー教団がいるペレジアに奪われればギムレーに対抗する手段を失う。

 

メリラが人質に行けば良くて幽閉、悪くて邪魔者として殺害される危険性を秘めていた。

 

メリラはイーリスにおいて立場は高く、メリラがいなくなるだけで国が厳しい立場に落とされる可能性がある。

 

「私は・・・」

 

メリラは迷った結果、炎の紋章を渡すよりも自分を渡した方が良いかもしれないと考え、人質になると言おうとした時、エメリナが発言する。

 

「彼女は渡せません。彼女は私の大切な軍師です。彼女だけに辛い思いをさせてペレジアに行かせてまで解決したくありません」

 

「エメリナ様・・・」

 

「なんだぁ?じゃあ、炎の紋章を渡すのかよ?」

 

「・・・炎の紋章も渡せません。貴方が炎の紋章を得たいのか分かりませんが国宝を明け渡せません」

 

「・・・だとしたらぁ。此方も相応の対応をしないとなぁ!やれ!」

 

ギャンレルがそう叫ぶと、ペレジア兵の一人が武器を手にエメリナに向かってきたのだ。

 

メリラは咄嗟に前に出て庇おうとした時、ペレジア兵の腕を掴むラクスがいた。

 

「止めろ。交渉の場で刃を向けるとは何事だ?それ以上の無礼は慎んで貰おうか・・・」

 

「ひぃッ!?」

 

ラクスの威圧感のある言葉と雰囲気に武器を向けたペレジア兵は怯み上がり腰を抜かした。

 

「てめぇ・・・何者だぁ?雰囲気からして只者じゃねぇな?」

 

「私はイーリスに世話になっているだけの者さ。ギャンレルと言ったな・・・これ以上の騒ぎは・・・止めて貰おうか?」

 

ラクスの雰囲気に異常を感じたギャンレルは今までの余裕が無くなった。

 

ラクスの威圧的な雰囲気はそれ程までに恐ろしく、ギャンレルが思わず怯む程だ。

 

「・・・ちッ、分かったよ。止めれば良いんだろ止めれば。そこのマリアなんとかも放してやりな」

 

「よろしいのですかギャンレル様?」

 

「彼奴は騎士の身形だが、俺には分かるぜ・・・彼奴は雰囲気からして相当な修羅場を潜ってやがる・・・普通の騎士じゃそこまでいかねぇよ。変に敵にするよりは避けた方が良いだろ?」

 

ギャンレルはそう言ってペレジアの方へ歩いて行こうとした時、小さな悲鳴が峠中に響き渡り、全員が発生源に向く。

 

そこにあったのはペレジア兵の一人の首に矢が突き刺さっていた死体だった。




※リヒト君は忘れてません。次回、登場します


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開戦と暗躍

ペレジア兵の首に矢が刺さった姿に静まり返る峠。

 

暫くその空間が広がっていたが、ギャンレルがふざけた表情なしで怒りを露にして怒鳴った。

 

「てめぇら!散々、人を悪者扱いしてよくも嵌めやがったな!」

 

「なッ!?嵌めたですって!これは貴方達の策略ではないのですか!」

 

「俺は自分の兵士を犠牲にして策を練る程に暗愚なんかじゃねぇよ!せっかく、今回は戦争は諦めてやろうとした矢先に・・・!許さねぇぞ!こうなったら血が枯れ果てるまでの泥沼の戦争だ!!!」

 

ギャンレルはそう叫ぶと、ペレジア兵達は一斉に怒号を挙げて戦闘の開始を宣言する様に行進を開始した。

 

「そんな・・・戦争が、始まるの・・・?」

 

メリラは信じられない物を見る様に立ち尽くしていると、後ろから何者かの指示が飛んでいるのが聞こえた。

 

「前方からドラゴンナイトが来てる!ヴィオールは弓で応戦!ヴェイクとスミアはヴィオールの援護を!リズは後方に!ロンクーは進んで!」

 

「ルフレ・・・」

 

後ろには自らも剣を手に指揮するルフレがおり、的確な指揮を行っていた。

 

クロムと自警団もルフレの指揮に合わせて動き、敵を撃破し、この戦場の雰囲気に飲まれずに戦っていた。

 

「何をしているメリラ!すぐに交戦の用意をしろ!今は戦うんだ!」

 

「お祖父様・・・」

 

ラクスの渇にメリラは正気を取り戻した時、一体のドラゴンナイトがメリラに向かって斧を振りかぶろうとしてきた。

 

メリラはディアブロスを抜こうとするが、間に合いそうにない時、ドラゴンナイトが横から飛んできた別のドラゴンナイトによって叩き落とされた。

 

「大丈夫?」

 

「お婆様!」

 

「ベルカ。状況は飲めているな?」

 

「ペレジア軍と交戦。今の所はそれでしょ?」

 

「そうだ。今はペレジア軍を撃破する。ルフレの指揮は的確だ。仲間の指揮は任せられる・・・が、今は別の問題に当たる」

 

「別の問題?」

 

「マリアベルだ。まだ助け出していないだろ?」

 

メリラはマリアベルの事を思い出して辺りを見渡した時、向こうから誰かが走ってくる姿が見えた。

 

メリラは目を凝らすと捕まっていた筈のマリアベルと少年が走ってきていたのだ。

 

「マリアベル!それと、リヒト!?どうして此処に!」

 

「わ、メリラさん!?」

 

「リヒト!貴方、戦場で何をしているのですか!」

 

「うぅ、実はクロムさん達に置いていかれたんだけど・・・着いてきちゃった。あと、どさくさに紛れておばさんからマリアベルを助けただけかな」

 

リヒトはそう言って舌を出して頭をかくと、メリラは怒鳴った。

 

「貴方!此処はもう危険な戦場なのよ!子供なのに何て危険な事をするの!」

 

「こ、子供じゃ」

 

「なに?」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

反論しようとしたリヒトをメリラは怒りのオーラだけで黙らせると、メリラは溜め息をついた。

 

「良い?今すぐに此処から離れて。マリアベルを連れてクロム様達に合流するのよ」

 

「メリラさんは?」

 

「私には野暮があるわ・・・叔父様、おば様。リヒトをお願いします」

 

「何をしに行く気だ?」

 

ラクスはメリラが単独で動く事に疑問を抱くと、メリラは微笑む。

 

だが、微笑んではあるが全く笑っておらず、かつてラクスとベルカが宿した獲物を仕留めに掛かる暗殺者の目をしていた。 

 

「少し、ペレジア王の所に」

 

「・・・奴を追って、殺すのか?」

 

「戦争なんです。致し方ありません・・・戦争になったからには数で劣るイーリスは不利。なら、敵の大将を討ち、戦いの早期終演を狙うしかありません」

 

「なら、単独で向かう事はないだろ?軍を率いてからでも狙える。暗殺者の真似事は止めろ」

 

ラクスは咎める様に言うが、メリラは静かに答える。

 

「叔父様達には知られたくなかった・・・イーリスの人達と自警団の皆にも・・・私は、確かに貴方の血を継いでいるんですよ・・・」

 

メリラはそう言って走って行ってしまい、ラクスは舌打ちする。

 

「ベルカ!二人を頼んだぞ!」

 

「ラクス!?」

 

ベルカの制止を聞かず、ラクスはメリラを追い掛ける。

 

『私は、確かに貴方の血を継いでいるんですよ・・・』

 

「(その言葉の意味は何だ・・・必ず、聞かせて貰おうぞ。メリラ)」

 

ラクスはそう思いながら巧みにペレジア兵を避けて進む中、メリラも上手く避けて抜けているのかペレジア兵が騒いですらおらず、寧ろ何もなかった素振りをしている。

 

「彼奴・・・隠密の技術を持っていたのか?」

 

ラクスはメリラの痕跡を辿りつつ追い掛け続ける。

___________________

___________

_____

 

イーリスとペレジアが開戦し、峠で起きる争いを見下ろすギャンレル。

 

ギャンレルは戦争の名分が欲しかったが、計画通りの物ではなく、何故こんな形で開戦したのか訳が分からずにいた。

 

ギャンレルはイーリスを討ち倒す為に多くの小細工を仕掛けた。

 

ギャンレルの記憶の奥に潜むまだ幼さを残したメリラの姿が写っていた。

 

「クソッたれが・・・!イーリスがまさか自分からやってくれるとはな・・・!」

 

ギャンレルは先のペレジア兵の殺害はイーリスがやったと考えていた。

 

エメリナがそんな事を許すとは思えないが、イーリスに潜む未だにペレジアに対して戦争を諦めていない主戦派が焚き付けたのだと考えた。

 

「まぁ、良い・・・戦争が始まれば此方のもんだ」

 

「何がもんだよ」

 

「ッ!?」

 

ギャンレルは振り向くと、そこには先程まで遠くにいたメリラがいたのだ。

 

返り血を浴び、二振りの剣を持ち、ギャンレルを殺さんとする殺気だったその瞳を宿して。

 

「メリラ・・・てめぇが自ら来たのかよ。その姿だと俺様の護衛を殺したな」

 

「護衛は邪魔だからね。さて・・・よくも、戦争を起こしてくれたわね?ギャンレル・・・貴方には少し、理性が残ってると思ってたわ。でも、違ったわね」

 

「戦争を起こした?てめぇらの後始末が出来てねぇから戦争がおきたんだえが!どうせイーリスの影でコソコソと戦争を仕掛けようとしてやがる主戦派の奴等が仕掛けたんだろ!お前が火種を燃え広がせない様にそいつらを消してんのも知ってるぞ!」

 

「えぇ、もしかしたら後始末が出来てなかったからかもしれない・・・でもね、それが露見したらエメリナ様はどうなるの?間違いなく、責任を取らされる。私がやった暗殺と言う非道も叩かれる口実になる。だから・・・全て貴方のせいにする。消えて、ギャンレル」

 

メリラはそう言ってティソナとディアブロスを構えると、ギャンレルは腰に差してあったサンダーソードを抜くが、メリラの動きの方が早く、ギャンレルのサンダーソードを弾き飛ばす。

 

「消えなさいギャンレル・・・全てはイーリスの為、聖王エメリナ様の為に」

 

「てめぇ・・・!」

 

ギャンレルはゆっくりと迫るメリラにジリジリと追い詰められていた時、遠くから馬の蹄の音が響いた。

 

「寄せ!メリラ殿!」

 

「貴方は・・・あの時の?」

 

現れたのはフェリアの闘技場でティソナ同士で刃を交えた騎士だった。

 

騎士はメリラとギャンレルの前に立ちはだかると、メリラを止めに掛かる。

 

「待つんだメリラ殿。今回の戦いはどちらにも非はない!」

 

「だから何?非はなくとも戦争は始まったのよ!もう、沢山の兵士が死んだ!今、こいつを討たないと取り返しのつかない事になるわ!」

 

「だからと言ってギャンレルを此処で殺せば余計に取り返しのつかない事になる!ペレジアの民が王が死んだからと言って止まるとは限らない!寧ろ激化するかもしれない!」

 

「他に方法がない・・・見つからないのよ・・・この戦争は私がもっとしっかりしてれば、もっと気をつけていれば起きなかったのよ・・・!」

 

メリラはそう言ってディアブロスの剣先を騎士に向けた。

 

「邪魔をするなら殺す!退きなさい!」

 

「・・・退きません。殺せる物なら殺してみてください」 

 

騎士はそう言ってティソナを抜くと、構えた。

 

二人は一新即発の雰囲気の中、構えていると、メリラのディアブロスを掴む腕を押さえる様に掴む手が現れた。

 

「なッ!?」 

 

「メリラ・・・もう良い・・・ティソナを納めろ」

 

「しかし・・・」

 

メリラは動揺していたが、メリラはいつの間にかギャンレルが消えている事に気づく。

 

「しまった!ギャンレルが!」  

 

「良いんだ。奴は逃がせ」  

 

「しかし・・・それでは・・・」

 

どうあってもギャンレルを殺そうと狙うメリラにラクスは平手打ちをした。

 

「いい加減にしろ!お前は自分を危険に晒した!私が一体どれだけお前を心配したのか分からないのか!次、追撃すると言ってみろ・・・今度は容赦はしないぞ」

 

ラクスの言葉にメリラは項垂れると、クロム達はペレジア軍を押しきったのかペレジア軍が次々とメリラ達を無視してペレジアへ戻っている。

 

「戦いは終わった。戻るぞ、メリラ」

 

「はい・・・」

 

メリラはそう返事をした後、騎士の方を見ると既におらず、ティソナの事を聞けず、更に借りを作ってしまった事に悔いた。

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メリラとラクスが戻ると、そこには既にエメリナ達がいた。

 

マリアベルも無事で、開戦した以外に何とか無事に済んだ。

 

「エメリナ様・・・」

 

「メリラ・・・マリアベルとリヒトから聞きました。何故、単独で危険な行動をしたのですか?」

 

「申し訳ありません・・・私は、ギャンレルを討ち取ろうと単独で敵陣に突っ込み、更に失敗に終わりました・・・」

 

「・・・メリラ。貴方は自分に責任を背負いすぎています。私は、貴方がペレジア軍に向かって単独で突き進んでしまったと聞いた時は死んでしまったのではと心配したのですよ?」

 

「申し訳ございません・・・」

 

メリラがそう謝罪すると、エメリナは溜め息をついた後、微笑んでメリラを抱き締める。

 

「でも、無事で本当に良かった・・・よく、生きてくれましたね」

 

「本当に、申し訳ありません・・・!」

 

エメリナに優しく抱き締められたメリラは耐えきれずに涙を流すと、今までの苦労が水の泡にされた事に悔しさを胸に秘めて泣き続ける。

 

「・・・クロム殿。メリラはペレジアの出身だったのか?私は今まで連絡すら取れなくてな・・・メリラの身元をはっきりしていないんだ」

 

「メリラはペレジアの出身だと姉さんは言っていた。それ以上の事は分からないが・・・メリラは姉さんにとって信頼の足る臣下だと言うのは分かる」

 

クロムはそう言うと、ラクスはメリラの事を考える。

 

ラクスはメリラの事をあまりよく知らない、知らないと言うよりもメリラ自身があまり過去を語らないだけだが、メリラが過去にペレジアで何が起き、何を思ってエメリナに仕えたのか。

 

ラクスは暫く考えたが、いつか語ってくれる日は来ると考え、今は静観する。

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イーリスとペレジアの軍事衝突が行われた光景を見ていた者がいた。

 

それは、フェリアでラクスと戦い、敗れた少女で、傍らには弓を持つ兵士が控えていた。

 

「ふふ、やっと戦争だよ・・・危うく戦争が無くなりそうになったけど、万が一に備えてはなった矢がイーリスが射ったとペレジアが思ってくれて良かったよ」

 

「して、その後は?」

 

「そうね・・・イーリス王城へ行こうかな。歴史がしっかりと動くなら・・・二人は必ず、そこに現れるよ。そこで今度こそ・・・それと、メリラの命もね」

 

「欲張りですな。貴方様は」

 

「ふふ、今さら?でも・・・確かに急ぎすぎてるかな?有余が与えられた時間はもう少ないのは確か・・・ケリを早々に着けないと思うけどね」

 

少女はそう笑いながら言うと立ち去って行く。

 

「全ては・・・"イーリス"の為なんだから・・・」

 

少女は微笑みつつ、悲しげにそう呟いてその場を後にした。



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暗殺劇

イーリスとペレジアの開戦。

 

その事件はイーリスとペレジアだけでなく、イーリス大陸全土に広がる物となった。

 

イーリスの民は今までの平和が壊されるかもしれない不安、ペレジアの悪行への怒りが広まる中、メリラは次の戦闘に備えて、徹底した武器、物資の管理と迎撃部隊の編成を始めていた。

 

一回目の軍事衝突後、メリラはよくルフレを頼る様になった。

 

メリラは戦略を考える事には誰も追従を許さなかった。

 

だが、国境の峠で自身は何も指揮出来ず、新参のルフレが的確な指示を出して持ちこたえたと言う結果にメリラのルフレに対する考えは変わった。

 

ルフレの軍師としての知恵にメリラは大きく助けられつつ、ペレジアとの戦いに備えつつあった。

 

メリラはルフレと共に執務室で夕暮れ時まで対ペレジア戦について戦略を組み立てていた。

 

「すみません、ルフレさん。夕暮れまで付き合わせてしまいましたね・・・」

 

「良いよ。メリラさんも最近、無理をしてる様に見えるから少しでも助けになりたいから」

 

「ありがとう。貴方は頼りになるわね・・・今更、クロム様が貴方に対しての深い信頼が分かるなんてね」

 

クロムはルフレの事を自身の半身の様に信頼している。

 

メリラは実際、ルフレに頼る様になってからルフレは本当に優秀な軍師だと分かり、クロムとルフレの二人の深い信頼関係は確かな物で、この二人がいる限りイーリスは落ちないとすら思えていた。

 

「(少し、過大評価し過ぎかしら・・・)」

 

メリラはそう思い微笑んでいると、ルフレが少し顔を赤くして立ち尽くしているのに気づく。

 

「ごめんなさい。待たせてしまったわね・・・少し、考え事をしてしまったわ。ルフレさんはもう休んでもらって構いません」  

 

「え?でも・・・」

 

「少しでも休んで。私はまだ少しやり残した事があるのでそれが終わったら休みますから」

 

「・・・うん、ありがとう。僕は休むからメリラさんも早く、休んでね」

 

メリラにそう言ってルフレは執務室から退出すると、メリラは小さく溜め息をついた後、メリラは残りの仕事に取り組む。

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____

 

ルフレはメリラに促されて休む事にし、歩いていた。

 

ペレジアと開戦してからメリラは自身の仕事に熱を入れ始め、鈍感な者が見ても無理をしているのは分かった。

 

峠で見たメリラの弱々しい姿はルフレの記憶に深く刻まれていた。

 

常に冷静、素早い判断、的確な対応。

 

イーリスの鉄血軍師と呼ばれるだけあって、人に対して冷たい所はあるが優秀な軍師であるのは間違いはなかった。

 

そのメリラが心の弱さを見せた所を見たルフレはメリラは軍師であり、一人の女性なのだと思った。

 

「女性、か・・・」

 

ルフレはメリラが執務室で一瞬ではあったが見せた微笑みを見て、綺麗だと思えた。

 

普段は遠目に見るだけであまり関わりはなく、話す事すら希であったのに開戦後、メリラの方から知恵を貸して欲しいと言ってきたのだ。

 

ルフレはこの非常事態だからこそ、他の者からの知恵が欲しいのだと考え、メリラと共にペレジア戦に備えた。

 

ルフレはメリラの軍師としての仕事を間近で見て、まだ学ぶべき物が多いと実感させられた。

 

優秀で美女、彼女程の才能と美貌の持ち主なら相手は選り取り見取りだろうに結婚は考えていないのかとルフレは考えた。

 

「ッ!?僕は何を考えているんだ・・・!///」

 

ルフレはメリラに対して失礼だと顔を赤くしつつ考え、早歩きで中庭の方へ歩いていく。

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夕刻から夜刻となり、蝋燭の火が灯る中、メリラは各報告書を睨み付ける様に読み、不備が無いか確かめていた。

 

峠での自身の無力さがどうしても許せないメリラは仕事に集中する事で辛さを軽減しようとしたが、やはり辛さは軽減出来ても消し去った訳でもないので苦しみを抱いていた。

 

「・・・少し、外の空気を吸いましょう」

 

メリラは仕事を中断し、外の空気を吸って気分転換しようと執務室から出た。

 

夜の王城は一部を除いて誰もが寝静まり、暗く静かな空間が広がる。

 

メリラは暗い王城内をただ目的もなく歩き続けていると、メリラは暗闇の中に何かが動いているのが見えた。

 

「誰かいるの?」

 

メリラは声を掛けてみるが、返事がなく、気のせいかと考えて歩きだそうとした時、暗闇から鋭く光る刃がメリラに向かって飛んできた。

 

「ッ!?」

 

メリラは咄嗟に避けると、暗闇から数人の男達が武器を手にメリラに向かって来た。

 

メリラはティソナとディアブロスを抜くと、ティソナとディアブロスを巧みに振るい、素早く男達を倒した後、装備を確認する。

 

「これは・・・ペレジア製の武器・・・!?服装はペレジア兵の正規の装備だけど・・・」

 

メリラは正規軍なら装備の一部に描かれている筈の紋章が何処にも無いのである。

 

つまり、ペレジア正規軍の装備が何らかの形で流れてメリラを襲った男達に渡ったと言う事である。

 

「もし、彼らがペレジアからの刺客ならエメリナ様が危険だわ・・・衛兵!衛兵!!!」

 

メリラが城内に十分響く程に声を響かせると、巡回していたのか数人のイーリス兵が駆け付けてきた。

 

「何事ですかメリラ様!・・・これは!?」

 

「何者かの刺客よ!黒幕は何となく分かるけど今は刺客からの防衛態勢を取りなさい!急いで!特にエメリナ様には一歩も近づけさせないで!」

 

「「「「はッ!」」」」

 

メリラの指示でイーリス兵は走って行くと、メリラはすぐにエメリナの元に向かう。

 

早歩きで歩く中、城内は徐々に騒がしくなり、次第に金属同士のぶつかる音まで響き始めた。

 

「戦闘が始まった!急がないと」

 

メリラは走り出そうとした時、城内の一角に二人の人物が斬り合っているのをを見つけた。

______________________

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イーリス城内。

 

そこでは、普段は平穏な場所である筈だが武装した刺客とイーリス兵が激しい交戦を始めた戦場となっていた。

 

その城内でティソナを手に戦う騎士が次々と刺客を凪ぎ払い、倒していた。

 

騎士はマルスと共にエメリナの危機をクロム達に伝える為に現れ、刺客の撃退を手助けする為に戦っていた。

 

「はぁッ!」

 

騎士は回りにいた最後の刺客を倒すと、息を整えて立ち尽くす。

 

回りは刺客の死体が転がり、騎士の強さを伺わせ、刺客も敵わないと知るとすぐさま距離を取って、騎士から退いて行く。

 

騎士は次の戦いに出向こうとした時、騎士の死角からの強い殺気と共に刃が振り下ろされた。

 

「・・・ッ!?」

 

騎士は咄嗟にティソナで弾き、後ろに転がり飛んで襲ってきた相手を見ると、そこにはディアブロスを構えた少女がいた。

 

「・・・仕留め損なちゃった」

 

「貴様は・・・ローラか!」

 

「そうだよ。貴方の姉のローラよ」

 

「誰が貴様を姉と思う物か!裏切り者め!」

 

騎士はそう言ってティソナでローラに斬り掛かると、ローラはディアブロスで応戦。

 

騎士とローラは互いに同じ形の剣技を振るい、互角の戦いをする中、互いに鍔迫り合いとなった。

 

「やるようになったじゃない。前まで私に一方的に負けてたのが懐かしいんじゃないかな?」

 

「黙れ!俺は貴様に一族の剣を汚れた目的に使った事を後悔させ、ディアブロスを取り戻す!」

 

「私は正しい事をしてるだけ。ギムレーには勝てないのよ・・・分かる?ギムレーに対抗する力を得られないまま民が無惨に死んでいく姿を見続けるのが貴方の望み?」

 

「違う!まだ負けた訳じゃない!まだこの時代には炎の紋章とファルシオンがあり、俺達の親も生きている!この時代で無くした物を補えれば勝てる!」

 

騎士はそう言ってローラを蹴り飛ばすと、ティソナで斬り掛かると、ローラはあっさりと返す。

 

「そんな観測的な希望しか無いのに無謀にも程があるのよ!炎の紋章がなに?宝玉の無い炎の紋章の何がギムレーに対抗できるの?ファルシオンがなに?昔の力が封じられてる神剣に何ができるの?馬鹿みたい・・・いや・・・馬鹿なのよ!それなら、ギムレーに勝てなくても少しでも民を救う道を私は選ぶよ!私は、これ以上の犠牲を出してまで戦いを続けたくない!」

 

「確かに何もかも不完全だ・・・もし、この時代も巻き込んだら犠牲は更に出るかもしれない・・・だが、ギムレーの好きにさせて俺達は生きていける道はあるのか!答えろ!ギムレーが俺達、人間を生かす保証はあるのか!」

 

「うるさい!貴方があくまでもルキナの側で戦うなら容赦はしない!」

 

ローラはそう言って騎士に斬り掛かる。

 

ローラと騎士の戦いは激しくなり、同じだが互いの技がぶつかり合う戦いに遂に決着が着いた。

 

「そこよ!」

 

ローラは騎士の一瞬の隙をついてガラ空きになっていた足を蹴り飛ばし、転ばした。

 

「しまった・・・ッ!?」

 

騎士は急いで立ち上がろうとしたが、ローラのディアブロスの刃の方が早く騎士の首元に向けられた。

 

「最後に聞くね・・・ギムレーの側に来ないかな?」

 

「・・・行く位なら死を選ぶ。さぁ、殺れ。今のお前なら容易いだろ」

 

騎士はそう言って諦めた姿勢を見せると、ローラは少し動揺しつつもディアブロスを突き立てようとした。

 

「止めなさい!」

 

だが、そこに通り掛かったメリラが現れ、ローラのディアブロスを弾き、ローラを遠退かせると、騎士を庇う様に立ちはだかる。

 

「・・・また会ったね、メリラ」

 

「闘技場以来かしら。貴方、ローラって言う名前なのね?」

 

「余計な事を知るなんて・・・でも、今は関係ない。貴方はまた後で仕留められる。さぁ、そこにいる騎士を渡して。さもないと予定を変更して貴方を殺すわよ」

 

ローラはディアブロスを構えて威圧的にそう言うと、メリラはディアブロスとティソナの二つを構え、対峙する。

 

「やれる物ならやってみなさい」

 

「・・・相変わらず凄い才能。神剣を二つ扱えるなんて・・・やっぱり、凄いよ・・・」

 

メリラのディアブロスとティソナを構える姿を見て、ローラは懐かしい物を見たと思うと、メリラに斬り掛かる。

 

メリラはティソナで受け流すと、ディアブロスで斬り掛かり、ローラはティソナを巧みに操り、ディアブロスを攻撃を防ぐと、メリラはディアブロスとティソナによる連続攻撃を行う。

 

メリラの猛攻にローラは厳しい状況に追い込まれるも、上手くメリラの隙を突いて攻撃を加えた。

 

「くッ!?」

 

メリラは上手く隙を突いた攻撃に何とか防ぐも、今度はローラの猛攻が始まった。

 

「ほらほら!追い込まれてるよ!」

 

激しいローラの攻撃は止まず、メリラは厳しい状況に追いやられ始めた時、メリラの後ろから雷が固まって放たれた様な魔法がローラに向かって飛んできた。

 

「ちッ!」

 

ローラは雷を避け、飛来した場所を見るとそこには魔導書を開き、身構えているルフレがそこにいた。

 

「ルフレさん!」

 

「メリラ。ごめん、遅くなったよ」

 

ルフレはそう言ってメリラの隣に立つと、ローラは顔をしかめ、自身が不利だと悟った。

 

「まさか・・・貴方まで来るなんて・・・運命も酷いイタズラを仕掛けるわね」

 

「なんだい?僕は君とは知り合いじゃないはずだけど・・・」

 

「いずれ、知り合い以上になるわよ・・・此方は今回は流石にお手上げね。でも、彼奴だけでも」

 

「彼奴とは私の事ですか?」

 

ローラはそう言われ振り向くと、そこにはマルスと同じ服装の少女がそこにいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい。申し訳ありません、マルス様・・・仮面は?」 

 

「壊されてしまいました・・・今は、もう素顔は露見しているので良いです」

 

マルスは苦笑いしながらそう言うと、騎士を立ち上がられる。

 

その姿にローラは自身が更に追い込まれた事を知る。

 

「貴方には私の部下を送り込んだ筈よ。どうしたの?」

 

「そいつに放たれた刺客は・・・我々が片付けた」

 

ローラはまた声のする方を見ると、今度はラクスとベルカ、クロムとフレデリク等と戦闘の猛者達が集結していた。

 

「腕の良い刺客だった・・・危うく、エメリナ殿だけに気に取られ、マルスを危険に晒しそうになったぞ」

 

ラクスはそう言うと、ローラは完全に詰みだと考えた時には遅く、窓には他の自警団とイーリス兵が集結し、ローラだけでは突破は不可能な状態だった。

 

「今すぐに投降するんだ!お前は完全に包囲されている!これ以上の抵抗は無駄だ!」

 

「一体、どうやったらこんなに早く包囲が出来るのよ・・・」

 

「それは僕が事前に伝令を出して君を足止めしたからさ。一瞬の足止めだったけど皆はもう中庭にいたし、伝令を送るだけですぐに包囲が出来たんだ」

 

「・・・流石、未来の神軍師。とても頭じゃ勝てないよ」

 

「?。君は何を言っているんだ?」

 

ルフレは訳が分からないとそう表情に出すと、ローラは諦めたのかディアブロスを下ろし始める。

 

「本当に、此所の軍は化け物染みてて敵わないよ。さて・・・私の負けは確定・・・もう、用済みにされたかな・・・繋がりが無くなってる・・・」

 

「お前は何を言っているんだ?兎に角、投降を」

 

クロムは投降を再び促そうとした時、ローラは首筋にディアブロスの刃を向けた。

 

「何をする気だ!?」

 

「見て分かるでしょ?自害するの・・・最後にメリラ・・・最後に、会えて・・・良かった・・・」

 

ローラはそう言って誰も間に合わせる事なく首を切り裂き、自害した・・・かの様に思われた。

 

ローラは手元が軽くなっている事に気づき、見てみるとそこにはディアブロスはなく、後から金属が落ちる音が響いた。

 

ローラが金属の響いた方を見ると、そこにはローラが手にしていたディアブロスその物が落ち、ローラの近くにはベルカが斧を手にそこにいた。

 

「どう、して・・・?」

 

ローラは唖然としていると、ベルカは素早くローラの鳩尾を殴ると、気絶させて寝かせる。

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫。この手の事は慣れてるから」

 

クロムの質問にベルカはそう答えると、ローラの頬を撫でる。

 

「まだ若いのに何で・・・」

 

「何かしらの事情はあるのだろうな・・・一先ず、尋問は必要になるだろう」

 

「手荒な尋問じゃないわよね?」

 

「今のイーリスではそれは認められていない。間違いないなく、手荒な事はしたりはしない」

 

クロムがそう言うと、ベルカは少し安堵した表情を見せる中、フレデリクが歩いてくる。

 

「メリラ様。この剣は?」

 

「それは・・・ディアブロス、ね」

 

「昔、エメリナ様から聞いた事があります。貴方様の剣は二振りとも唯一無二の名剣だと。なのに、唯一無二のその剣が何故、此処にもう一振りあるのですか?しかも、ラクス様も同じ物をお持ちです」

 

「・・・確かに、唯一無二の物よ。でも、だからと言って、その剣が本物と言う事はないです。偽物、あるいは似せた様な剣かもしれません。伯父様の剣・・・」

 

「私のは似せた物だ。本物は継承者が受け継がれ、他は剣を似せて贈り、他の者への敬意の表れとする我々の一族の伝統なんだ」

 

ラクスの咄嗟の嘘にフレデリクは首を傾げつつ、メリラに視線を向けた。

 

「そうなのですか・・・?」

 

「・・・そうよ。その剣、渡してくれるかしら。その剣が模造品として鍛えられ、送られた物なら、証拠としても私が直接管理するわ」

 

メリラの返答にフレデリクは少し疑問を浮かべたが、深くは追及せず、メリラにローラのディアブロスを渡した。

 

「本当に、似てるわね・・・そうえば、クロム様は?」

 

メリラはディアブロスを確認した後、クロムがいない事に気付き、フレデリクに聞くと、フレデリクは答える。

 

「いつの間にかいなくなったマルス様達を追い掛けて行きました。私も着いて行きたかったのですが此所の後始末を命じられました」

 

「そう・・・まぁ、良いわ。今後の事を決めないとエメリナ様の命が幾つ合っても足りないわ」

 

「それは貴方様も同じですからね」

 

フレデリクの言葉にメリラは黙ってフレデリクを見た後、ローラをイーリス兵と共に連行していった。



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戦争前夜

エメリナ暗殺事件を気に、エメリナは他国にも知られていない離宮に移る事が決まった。

 

本来ならフェリアへ移って欲しかったのはメリラだけでなく、クロム達も同じ考えであったがエメリナの意思でイーリスから離れようとはせず、せめてもの処置として離宮に移る事になったのだ。

 

「では、その様に手筈を整えますね。エメリナ様」

 

「はい。・・・メリラ」

 

「何でしょうか?」

 

メリラはエメリナに呼ばれて言葉を待っていると、エメリナは何かを迷っているのか表情を曇らせている。

 

「私は本当に安全な場所に一人で行かなければならないのでしょうか・・・」

 

「エメリナ様・・・貴方はイーリスの希望。あの時、暗殺にすぐに気付けたから対処できましたが次に気付くとは限りません。もしも、貴方様に何かあったら・・・」

 

メリラはそう言うと悲痛そうな表情を見せる。

 

本来ならメリラはまるで追い出すような形で安全な場所にエメリナは連れていかせたい訳ではない。

 

だが、メリラは恐れているのだ。

 

またエメリナに危害が加えられる様な事があれば、何かあってしまったらと考えればどんな形にせよ、安全な場所に逃げて欲しいのだ。

 

「メリラ・・・」

 

「・・・私は残りの天馬騎士団と兵士達で王都の守りに着きます。大丈夫です。もしもの事があっても負けるつもりはありません」

 

メリラはそう言って微笑みを見せた後、一礼して立ち去る。

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______

 

メリラは防衛の為の準備をする為に歩いていると、廊下の窓から外を眺めるラクスがいた。

 

メリラは今回は軽く解釈して通り過ぎようとした時、ラクスから声を掛けられた。

 

「死ぬ気か?」

 

「・・・何の事ですか?」

 

「メリラ。私がもし、ペレジアの将ならこの国に密偵の一人を仕込んでいてもおかしくない。例え何れだけエメリナ殿に人望があろうと裏切りとはあるもの。その裏切り者からこの王都が王不在の手薄だと知れば・・・真っ先に私は落としに掛かるだろう」

 

「それで私が死ぬのこ何の関係が?」

 

「お前は・・・意地でも此処を死守するつもりだな?例え、王不在と戦力の少ない手薄の王都でも。お前の性格の事だ。エメリナの愛したこの国の中心を壊されるのが嫌なのだろ?」

 

ラクスの問いにメリラは俯いた後、ラクスに向かって覚悟を決めた眼差しを送る。

 

「もう、決めた事です。私はペレジアに、ギャンレルにこのイーリスを壊される様な事はさせる訳にはいきません。奴を討ち、黙らせるまで私は戦います」

 

「メリラ・・・」

 

ラクスはメリラを咎めようとしたが、メリラの宿した覚悟は揺るぐ事はないと分かると何も言えなかった。

 

「お祖父様にお願いがあります」

 

「何だ?」

 

「エメリナ様を・・・エメリナ様をどうか守ってください。敵からも、間違った道からも。もし、エメリナ様が王都に戻ろうとするなら・・・止めてください」

 

メリラはそう言った後、立ち去っていき、ラクスは無言でその背中を見つめるしかなかった。



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侵略の始まり

エメリナは護衛として割かれたフィレイン率いる天馬騎士団とクロム達率いる自警団と共に離宮へと旅立った後、メリラは一人、エメリナのいない玉座の前に立っていた。

 

ラクスとベルカの二人にはエメリナを守って欲しいとメリラが直接言い、二人はおらず、今いるのは護衛から割かれた残りの天馬騎士団と少数の老兵と若く未熟な新兵しかいなかった。

 

「エメリナ様・・・」

 

メリラが徐々に近づく戦いの気配を感じつつエメリナの事を思っていると、玉座の間の扉が開かれる音が聞こえ、メリラは振り替えるとそこには赤い長髪が特徴的な天馬騎士団の鎧を着た女性がいた。

 

「ティアモ。どうしましたか?」

 

「少し、貴方と話がしたくて」

 

ティアモはそう微笑みながら言うが何処か暗く、メリラはペレジアとの戦争で不安を覚えているのだと悟った。

 

ティアモは天馬騎士団の若手で、メリラの数少ない友人だ。

 

ティアモは何をやってもこなす天才で、材料さえあれば一から手槍を作成する程の器用さもある。

 

だが、ティアモは本当はとても努力家な人物だとメリラは知っており、ティアモが一人で鍛練を行う姿を何度も見たり、付き合ったりしている。

 

そうしている内にティアモとメリラは親しくなり、友人となった。

 

「話ですか?。良いですよ。私も丁度、誰かと話がしたい所でした」

 

「ありがとう。・・・メリラ。この戦争、勝ち目はある?」

 

「・・・はっきり言えば、ほぼありません」

 

「ほぼ?」

 

「ペレジア王ギャンレルの首が取れれば・・・少なくとも、勝ち目はあります。私は、時が来れば・・・」

 

メリラは最後の言葉を濁すと、ティアモはより不安な面持ちとなった。

 

ティアモの聞いたメリラの勝ち目はまるで、メリラが死ぬ事を前提に考えられている様な物で、時が来ればギャンレルの元に突っ込むつもりなのかと考えられる。

 

「メリラ、貴方まさか・・・」

 

ティアモは嫌な予想を否定して欲しい一心で、メリラに死ぬ気なのかと問おうとした時、玉座の間に慌てて駆け込んで来る兵士が現れた。

 

「も、申し上げます!ペレジア軍の来襲!ペレジア王ギャンレルが自ら率いる部隊が我々のいる王都を包囲しようとしております!」

 

「来たわね・・・ティアモ。貴方に命令を下すわ」

 

「・・・出来る限りの事はするわ。言って」

 

ティアモはペレジア軍が来た事により戦闘体制に移行する様に他の天馬騎士団に伝えるのかと考えていた時、メリラから予想外の命令が下る。

 

「貴方にはクロム様への伝令を頼むわ。ペレジア軍の来襲、しかし、気にせず進めと伝えて。」

 

「く、クロム様への伝令へ?」

 

「そして・・・貴方にはクロム様と共に行動を共にして頂戴。ペレジア軍への時間稼ぎは私がやるわ」

 

「そ、そんな!そんな事をしたら貴方わ!」

 

ティアモは嫌な予感がこのままでは的中すると考え、メリラに踏みとどまって欲しいと思った時、フィレインから残りの部隊を任せられていた年長の天馬騎士がやって来た。

 

「メリラ様。ペレジア軍の事は御存知で?」

 

「えぇ、もう聞いたわ。伝令にティアモを任せたいのだけど・・・良いかしら?」

 

「それは丁度良いかと。私も知らせたい事があります。ペレジアがエメリナ様の行動に気付きました。追撃部隊が既にエメリナ様の元に向かっていると伝令にティアモを出そうと思っておりました」

 

ティアモはそれを聞いて信じられないとばかりに固まっていると、メリラの手がティアモの肩に触れる。

 

「・・・お願い、これは重要な事でもあって貴方に生きて欲しいのよ。他の天馬騎士団の皆も同じよ」

 

「え・・・?私は、天馬騎士団の皆から嫌われて・・・」 

 

「違う。貴方の天馬騎士団から受けていた行為は通過儀礼なのよ。貴方の実力も努力も皆は認めてる。貴方は、最高の天馬騎士になれる。だから、お願い・・・こんな所でその才能を発揮しないままむざむざ死なないで。私に大切な友人を死なせる様な事をさせないで。仲間達が生かそうとする行為を無駄にしないで」

 

メリラの言葉にティアモは俯いた後、頭を下げた。

 

「・・・分かり、ました。クロム様への伝令。確かにお受けしました」

 

ティアモはそう言った後、早足で玉座の間から立ち去り、メリラはその後ろ姿を見送った後、悲痛な表情をする。

 

「・・・すぐに城壁へ。ペレジア軍の規模を直接知りたい」

 

「分かりました」

 

メリラは己の成すべき事を見据え、玉座の間から出ていった。



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イーリス王都攻防戦~前編~

メリラはイーリス王都の街を護る最初の城壁まで来ると、そこで最初に見た物は数え切れない程の無数のペレジア兵だった。

 

見る場所、見る場所と変えてもペレジア兵や軍旗しか見えず、明らかな劣勢であるのは間違いなかった。

 

「メリラ様・・・」

 

若い兵士がペレジア軍の規模に不安そうな声を出すと、メリラは意を決し、待機しているイーリス軍に視線を向けた。

 

「皆さん。我々はこれより、王都に進攻してきたペレジア軍を相手取ります。この戦は負けるかもしれません。私達の故郷が燃やされるかもしれません。しかし!だからといって黙って負けを認めますか!」

 

「「「「「「「認めない!」」」」」」」

 

「ペレジア軍は我々を民を容赦なく殺すでしょう。その顔に微笑みを浮かべて。それが許せるか!」

 

「「「「「「「許せない!」」」」」」」

 

「我々は数が少ない。しかし誰の為に戦う!我々の今、此処で命を落とすかもしれない戦いの中で誰の為に!」

 

「「「「「「「聖王エメリナ様と民の為に!!!」」」」」」」

 

メリラは兵士達の言葉を聞いて士気は上々だと考えると、再びペレジア軍を睨み付ける様に見る。

_________________

__________

____

 

その頃、王都の外れの丘に本陣を張ったギャンレルはメリラが守る王都をどう攻略するかペレジア王国の臣下達と協議していた。

 

「数は我らが上だ!力押しでいけば簡単に落ちるわ!」

 

「馬鹿者!相手は鉄血軍師と呼ばれる名将メリラだぞ!力押しで挑んでどの様なしっぺ返しが反ってくるか考えろ!」 

 

「幾らメリラといえど少数の兵で王都を守れますかな?我らは大軍、一気に攻めれば幾ら策を講じようと敵うまい」

 

「本当に敵わないと思っているのか?かつて、メリラはイーリスとの戦が最終局面を迎えた最中に初陣し、少数の兵のみで我らペレジア軍の大軍を蹴散らして見せたのだぞ?今回のこの戦がその二の舞にならぬと確信できるのか?」

 

ペレジアの将達の其々の意見が飛び交う中、ギャンレルは何時とは違う何かを睨む様な形相でいた。

 

「(メリラ・・・てめぇがそこまで歯向かってくるなら俺が直々に苦しませずに潰してやるぜ。それがせめてもの情けって奴だ)」

 

ギャンレルはそう思うと、長くなるであろう協議の為に用意されていた椅子から立ち上がると、ペレジアの将達は一斉にギャンレルの方へと視線を向けた。

 

「くだらねぇ議論はいらねぇんだよ。さっさと王都をぶんどってエメリナを捕まえろや。邪魔をする奴は皆殺しにしろ・・・メリラ以外な」

 

「メリラ以外ですか?」

 

「彼奴は俺様が直々に殺してやる。それだけだ」

 

ギャンレルはそう言って、王都に向けて不適な笑顔を見せるのだった。



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