魔法のかかったようなテーブル(ヘタレ男がヤンデレ女に振り回される話) (バンバババルタリアン)
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NTRAVを見て鬱になった男と夫に一途過ぎる女が送る夫婦の話

初投稿です。NTRエロ漫画見て死にたくなって書きましたw楽しんで見てください!


「…………何してんの?」

 

 

俺は今、仕事が休みだったため一日中ゴロゴロした挙句とあることがキッカケにより自宅のリビングの4Kテレビで某凄腕A○男優のテクニック講座を受講していた。わかりやすい説明と引き込まれる女優の喘ぎのエロさに夢中になった俺はその日、高校の同窓会に行った妻の帰宅に気づくことができなかった。

 

 

「あっ…いや、これはその…」

 

 

俺に相反してしっかり者で気配りのできる妻に対してはいつも低姿勢のつもりだがこのことに関してはあまりの驚きと戸惑いに低姿勢どころか土下坐の覚悟すらできていた。

 

 

「……キレた…もうあんたなんか知らない。」

 

 

「う、うぉい!ちょっと待ってくれ!違うんだ! 頼む!せめて話だk「言い訳も聞きたくない!お風呂入ってくる。」

 

 

やばい。これはやばい。この事実をひっくり返すことはもはや不可能…現物証拠が既に卑猥な音声を現在進行形で流してるからな…しかし、ただ軽い気持ちでこんな事をしたわけではないのだ。この行動に至った経緯。それを話したら許してもらうどころか、火に油を注ぎかねん…それでもこのリビングでAVを大音量且つ大真面目に見ているという滑稽にもほどがある状況は何としても弁明したい…!

 

 

「わ、わかった!正直に話す!聞いてくれ!せめてもこれだけは!」

 

 

私はお風呂に行こうと振り向いた彼女のスカートを四つん這いの状態で掴み、縋る思いで言葉を振り絞った。

 

 

「いいわけ?はぁ…どうせくだんないし…女々しい理由なんじゃない?」

 

 

彼女の僕を見る目は正にタカが鋭く雀のような小さい鳥を威嚇するような恐ろしさを醸し出していた。いつも夫婦喧嘩などで僕に不服があったとしても、僕はこの目を向けられると何もいえなくなってしまう。でも…今日は言うんだ…言わなければ!

 

 

「今日僕はNTR(寝取られ)AVを見てしまったんだ!!」

 

彼女の顔がきょとんと鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。そりゃあそうだ。AVの鑑賞の言い訳がAV鑑賞だとは思うまいw

 

 

「君はもちろん知ってると思うけど…僕はMだ…だから以前からこのジャンルには興味があったんだ…だから…今日ぜひチャレンジしてみようと思ったんだ………」

 

 

「………で?」

 

 

「抜けたよ…あー!そうさ!抜けたよ!でもな!終わってからが地獄だったんだ!美しい妻を持つ僕は!ヘタレ!且つ!屈強でもない!且つ!別にルックスも特別良くもない!且つ!マイサンはあまり栄養が行き届かなかったんだ!……君は大学時代だって…男子からも女子からも人気があって…成績だって僕よりはるかに良かったし、ルックスはもちろん…スタイルだっていい!みんなが羨むような君を妻として迎えることができた僕は本当に幸せだ!だからこそ怖いんだ!今日は高校の同窓会!大学でもあんだけ人気だったのなら、高校でもさぞ人気だったろう!そしてクラスの陽キャと意気投合!夜も老けて!…『私の夫本当にダメなのよー』 『じゃあ俺が日頃のストレス…解放させてやるよ…』『あん!そんな…たくましい身体で押さえつけられたらぁん…』の流れでホテル行き!朝帰りも覚悟したんだ!クソゥ!

 

……だから…今からじゃ遅いかもしれないけど…その…夜のテクニックを少しでも豊かにする為に…あれを見てました…」

 

 

 

言い切った…俺は言い切ったぞ!僕の彼女に対する愛は伝わったはずだ!

 

…しかし彼女の表情は先ほどのあっけにとられたような物から険しいものへとまた一変した。

 

 

「…あなたに言いたいことが三つあります…

 

 

 

 

 

 

一つ目に…

 

 

 

 

 

 

私の高校は女子校です!「ええ!?そうだっけ!?」いつも言ってんでしょ!人の話を聞きなさい!」

 

よく考えるとそうだっけ…彼女は某一流女子校の出身で外的影響があまりにもなかった為、以前性欲こじらせた女子たちに襲われそうになったって言ってたもんな…いっけね!☆

 

 

「はぁ…二つ目に…私たちは夫婦なのよ?あなたは自分のことを不釣り合いだと思ってるのかもしれないけど、私は全くそうは思わないわ、まぁあくまで私だけど。あなたの主張を肯定するなら、逆を返せば他にもあなたなんかより何十、何百倍も優れてる人達に囲まれながらも選んだ夫よ?今更浮気なんてすると思う?夫婦ってのは、信頼関係なのよ?現に私は朝帰りせず、あなたの明日の朝ごはんの準備と着替えの支度と弁当の準備のために9時前には帰ってきてるじゃない。捻くれてるのはずっと前から知ってるけどそろそろそういうのやめた方が良いわよ。」

 

そうだ…僕は馬鹿だ…自分の弱さを棚に上げて、彼女の事を信用してなかったんだ…酷い夫だ…本当に最低だ…

 

 

「まぁ、最悪あなたに飽きて他の男に行く可能性もあるし?精々私に見合う男になるよう努力しなさいw」

 

 

「うぅ…し、精進いたします…」

 

 

僕はやっぱり、彼女のお陰で成長できる気がする…こんな馬鹿な話だけど、また一歩彼女のためにも進まなければ…

 

 

「ありがとう…俺頑張るよ!あっそうだ!お風呂を沸かしてないんだ!今すぐ沸かしてくr「待ちなさい。まだ三つ目が終わってないわよ。これが本題なのに。」」

 

立ち上がり、風呂場のスイッチをオンにしようとした時、呼び止められた。

 

「あっ…うん。そうだったね。最後までしっかり話を聞かないとね…あはは…」

 

僕はこの雰囲気を和やかにしたかった。だがなんと彼女はまだ怒っていた

のだ。それどころか、さっきの二つの説教なんかよりもより殺気立った目でこちらを睨んでる…

 

 

「あ、あの…三つ目とは。いったい…「座れ。」はいいい!」

 

 

命令に従いリビングのど真ん中で正座をし、ブルブルと震える。カーペットを伝わる床暖房の暖かさに反して僕の心と彼女の視線は冷たく凍えるほどだった。一体…何を言われるんだ…これがもしかしたら…今後の夫婦生活に関わるものだとしたら…おれは…

 

「三つ目は…何だと思う?」

 

 

 

 

 

 

 

え、問題形式?まじで…

 

 

 

「え、ええと…」「さっさと答えなさい!」

 

「は、はい!ええっとええっと…あのぉ…ば、ぼくが、自慰行為をしたことですか…ね…?」

 

 

積んだ(゜∀。)お疲れ様でしt「そうよ!」

 

そうなんすか!

 

「当たり前の話でしょ!?正直に言うわ!あなたの言うヘタレでマヌケで無愛想でクズで偏屈な男がどうして私が選んだか覚えてる!?答えは「愛」なのよ!「愛」!確かにさっき言ったみたいにあなたは良い所を探すよりも悪いところを探す方が楽な人間よ!でもそれはあなたのことを本当に知ろうとしてないゴミクズのカスのど底辺人間よ!あームカつく!私ならあなたの可愛くて素敵でかっこよくて大大大だーいすきなところなんて百倍は言えるわ♡いや千倍ね!♡大学では確かにかなりモテたし言いくるめようとしてきたクズどももたくさん居たわよね。でもその時あなたは世間知らずだった私を助けてくれたにもかかわらず、悪者役を自分から受け入れて救ってくれたのよ♡それももちろんだけどあなたのことは誰よりもいろんなところを好きになったわよ♡むしろ周りが偏屈だったりヘタレなところだって私にとってはむしろオカz…エフン!チャームポイントよ!♡あ、あと…私がさっきあなたに飽きて他の男を選んでしまうかもよって言ったでしょ…本当はあんなこと言うつもりじゃなかったの!あなたの可愛い困り顔が見たくてああやって言ったのよ!ねぇ信じて!あなたなら信じてくれるよねぇ!?…あと、イケメンじゃない⁉︎いや!あなたはイケメンでしょうが!♡あなたは単純に清潔感と明るさがないだけ!でもそれでいいのよ!♡そうすれば変なクソみたいな虫もつかずに済むし、あなたの綺麗なその顔を知ってるのは私だけなんてとても素敵じゃない♡…うふふふふふふふふふふふふふ♡♡♡♡」

 

 

 

あぁ…そうだ、結婚してからお互いの生活が安定して最近はあまり起きなかったけど彼女はこういう人間なんだっけ。忘れてた…

 

 

「というわけで今から…

 

あんたを犯す」 「ファッ⁉︎」

突然の強姦宣言の瞬間、俺は彼女に押し倒され、手首と腰を押さえつけられ動けなくなった。サークルすら所属してなかった僕にとって、運動部にいた彼女には腕っ節すら勝てないのである。

 

「あは♡つかまえたぁ♡ねぇ…あなた…♡私思ったの…最近あなたが仕事を真面目に頑張ってるのを言い訳にして性欲処理もしてなかったわね…♡私は自慰をした以前にその女優にすら欲情したことにも怒ってるの…あんたは私にだけ欲情してればいいのよ!♡何なら今から犯し倒して私なしには生活できないくらいの依存症にしてやるわぁぉぁ♡あぁぁ…その怖がってる顔も可愛いわぁ…♡好きぃ♡だぁいすき♡ふふ…浮気なんてするわけないじゃない…♡私はあなたのことだけを見てるから…ね?♡」

 

そういうと僕の頬を愛おしそうに撫で長い舌でレローッと舐める

 

 

「あはっ♡今までの寂しかった分の愛を受け取ってね♡あなた♡」

 

どうやら僕は彼女の浮気に対する信頼ともう一つの信頼をおろそかにしてたようだ…

彼女の目は鋭い目には変わりはないが、それは「威嚇」というよりも「捕食」をする時のようなドロドロとした瞳だった-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました!コメント 感想くれると今後もこんな感じで男女二人のお話を書いていこうと思います!多分基本デレデレだと思いますw
<追加編集>
1000UA超えありがとうございます!ただ感想がゼロなので感想ホチィィ!

…よろしくお願いしますw
〈再追記〉
皆様のおかげでデイリー短編小説ランキング9位且つデイリーオリジナル五位になりました!初投稿でここまでいくとは…w
しおりやお気に入りをしてくださった方々のためにも今夜もう一話投稿したいと思います!


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コンプレックスを抱え鬱になった男と夫の全てを受け入れるデレデレ女が送る休日の話

第2話です。今回は少しヤンデレ要素は少なめです。


 

バンッ!!

 

「どうなってんだこのミスは!こんなに初歩的なもの間違えするなんて頭でもイカれてんじゃねぇのか⁉︎あぁ!?」

「本当に申し訳ございません…直ちにミスを修正してきます…」

「謝れば済む問題じゃあねぇだろうが!今月で何回目だよおい!テメェのチームはそんなんで成り立つのかよぉ!おい!」

 

また始まった…今月で何回目だ…これ…数えるのもめんどくさくなってきた…

 

仕事ぶりが認められ、課長に昇進したものの慣れない管理職と新しくコネで入ってきた無能な部下のせいで評価はどんどん下がって行く一方だ…

 

「いいから修正してまとめろよ!資料だってまだできてないんだからな!」

 

今日も徹夜か…最近あまり早く帰ることができなくなったなぁ…

 

 

 

 

席に着き作業を続けてるとミスをしでかした張本人が通りすがりに

 

「あっ、課長さんおつかれっす!先上がらせていただきますねー」

と言った。

 

おいちょっと待て、お前がミスしたせいでこちとら残業するんだぞ!手伝うとか強いて謝るとかしろよ!

でも僕はそんなことすら言えるような人間ではない…

 

「あ…う、うん…お疲れ…」

 

もちろん注意したい気持ちは山々だ…だけど彼は社長の友人の一人息子で気にくわないことがあればチクられて僕の立場が危うくなることもある…人を怒ったり注意したことのないような人間には相手の尺に触らず注意する方法なんてわかるはずないんだ…やっぱり僕はダメな人間だ…

 

女子社員のうち、一人は僕をみて嫌悪し、ほとんどは嘲笑い、男性社員を含めその他はみんなこの状況を無視していた。強いて言うなら僕に対して好意的な目を向ける人なんていないのだ。社会、つまり人との関わりは僕にとってやっぱり向いてなかったのかもしれない。

 

携帯に一通のラインが届く

 

『今夜はパエリア!お仕事頑張って!』

 

…どれだけこの仕事が嫌になっても、やめたいと思ったことは一度もない…頑張らなきゃいけない理由があるから…

僕はいつもよりキーボードを打つスピードを速くした…

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

新調したダイニングテーブルの上にはサラダやパエリア、その他のおかずなど豪勢な食事が並んでいた。女は食器棚からワイングラス、貯蔵庫から彼の一番好きなお酒を手に取りテーブルに置いた。お酒をグラスに注ごうとキャップを外そうとした時、家のインターホンが鳴った。女はお酒を置き玄関へと小走りで向かっていく。

 

ガチャ

 

「おかえりなさい。」

「うん、ただいま。」

「今日もお疲れ様ーまた残業?」

「うん・まぁね…取り敢えずご飯を食べようよ。お腹ペコペコだよ笑」

「私もよー笑」

 

 

 

 

「「いただきまーす」」

 

二人は席につき食事に手をつけ始めた。

 

「美味しい?」

「うん、相変わらず美味しいよ。」

「ふふ、よかった。」

 

二人とも無言で食事を続ける。部屋には時計の針の音と食器の音、咀嚼音だけが聞こえる。そんな中先に口を破ったのは男の方からだった。

「ねぇ…僕はやっぱり、社会不適合者なのかな…?」

「…どうしたの?いきなり…」

「…実はさ…」

男は自分の今の現状と気持ちを洗いざらい彼女に話した。

 

「僕はやっぱり、心がないのかもしれない…情熱もないし努力もしない、ただ臆病で自尊心が高くてヘタレなんだよ…おまけに人ともろくに話せないしコミュニケーションも取れない…僕は社会に受け入れてもらってる感覚がないんだよ…こんな自分が本当に情けないと思うよ…」

 

彼女はその話を聞いてスプーンをテーブルの上に置いた。

 

「また悪い癖が出ちゃったわね…自分のことを低く見積もって勝手に落ち込むところ。」

「今回は思い込みとかじゃなくて本当のことだからね。揺るぎない事実なんだよ。」

彼女はため息をつき、こう話した。

「あのね?自分のいいところなんて自分でも見えないもんなのよ?鏡を見ても左右が逆になってるから本当の自分の顔はわからないみたいにね。逆に自分が悪いと思ってるところが相手にとっては良いところかもしれないわよ?」

「そんなもんなのかなぁ…試しにいくつかあげてみてよ?僕のことを一番知ってるのは君なんだからさ。」

「ま、まぁね…愛してるんだから、当然だわ…♡」

テーブルに肘をつき、頰を赤らめさせながら彼に熱い視線を送る。

普段は一筋縄ではいかない彼女は彼のことになるとこうなってしまう。

「そうね…やっぱり自発的には何もできないところじゃないかしら?あなたって消極的だから文句もあまり言わないし、かと言って気の利くことだってしないわよね。

 

 

つまりそれって私にずっと頼りっぱなしで私の言うことは何でも聞くってことじゃない♡ならばいつでも監禁してベッドの上で調教だってできるし、廃人にさせて私に依存させることだってできるし、一緒に永遠に狂い愛しあえることもできるわよね…♡ふふふ…♡」

 

…いつもの発作がまた出たな…彼女は感情を溜め込む性格だからたまにこういうことになる。

 

「そ、そう言う物騒なことはあまり良くないと思うなぁ…笑

は、他には無いかなぁ?」

「そうねぇ………ごめんなさい、認識する限りあなたは良いところばかりしかないから今すぐ探すのは難しいかも…」

 

そう言うと彼女は寂しそうな顔をする。

彼もまた自分の言動が彼女を困らせてしまったと思い、俯いた。

 

「そうか…いきなりこんなこと言ってごめんね…」

 

しばらく長い沈黙が続いた。時計の針の音だけがチクタクと聞こえる。

しばらくすると、彼女は自分のスプーンでパエリアを一口分すくい、フーッと息を拭いて彼の目の前に差し出した。

 

「はい、あーん♪

「えっ、あ、あーん…」

 

彼はそれを口に含み、ふわっと広がる香りと味をよく噛んで味わった。

 

「ふふ♡美味しい?」

「…こういうのは付き合いたてのカップルがやることだよ…」

 

彼は照れ臭くなって目線を彼女から、まだ手をつけてないマッシュポテトに移した。

 

「たまにはいいじゃない♪あなたの恥ずかしがってるその顔、私好きだから久しぶりに見たいなぁと思って…」

「僕はどちらかといえば嫌いな方だな。」

「ふふ…ならまた一つ見つかったじゃない♡」

 

やっぱり僕が今こうして満足に生きてられるのも全て彼女のおかげなんだなあと改めて感じた。

 

 

 

 

 

 

彼はすでに風呂から上がり、洗面所で歯ブラシをしている最中である。彼女は隣の洗濯機で洗濯をしている。

 

「あのさ、今日は…するの?」

「ん?するって何のことかしら?」

「その…性欲処理…」

「あぁ…したいのは山々だけど、かなり疲れてるみたいだし…それに今日は可愛い表情が見れたから十分満足したわ♡」

「ずるいなぁ…」

 

口の中をゆすぎ、大きなあくびをする。

 

「ふわぁぁ…じゃあお休み…今日も楽しかったよ。」

「うん、私も♪」

「よかった…あぁ、そうだこっちにきてよ。」

「ん?」

 

そう言われ、彼の近くに寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ…

 

彼は長い前髪を手で上に上げて、おでこに優しいキスをした。

 

「お休み。今日も明日からも君を愛してるよ。」

「……えっ//」

 

ブワァッと全身が熱くなる。

 

「いやぁ…いつも君の思いを通りにされるから、試しにこっちからアプローチしようとしたんだけど…ちょっとキザ過ぎて僕には合わなかったな…恥ずかしいなぁ…笑笑」

 

そう言い終わると寝室へと消えていった。彼女は普段の彼のヘタレさと臆病さを知る分、今の状況を飲み込めないまま立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴムってどこにあったかしら…」

 

 

彼の背中に少しだけ寒気がした…

 

 

 

 

 

 

 

 




今後もまたこの夫婦の話を投稿していこうと思いますー。感想お待ちしてます!


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少し調子のいい男と夫を独占できない嫉妬で狂う女が送る夫婦の話

「はい…はい…そうですか…はい…ありがとうございます…それでは、失礼します。」ガチャ…

 

僕はジョブローテションにより以前の部署から新たな部署へと異動することになった。人事異動自体僕にとっては初めての出来事であり、新しい仕事や役職にかなりの戸惑いがあった。でもこのくらいは以前の地獄のような生活に比べたらむしろ天国と言える…またこの部署はチームで動くこともなく、基本的に各々の仕事をしっかりとこなすのがモットーになってるので僕にとってはやりやすい。

 

「課長さん!お疲れ様です♪」

 

机の右側からお茶をスッと渡される。

 

「あぁ、ありがとう。助かるよ。」

「ふふ、課長さんは真面目なんですから少し休憩を取った方がいいと思いますよ?」

 

そう言い、優しく微笑みかけてくるのは先日、支社から転勤してきた新山さんだ。仕事をテキパキとこなし、愛想も良いので他部署からも人気急上昇中の女の子だ。

 

「良いんだよ。僕は集中出来る時に集中したいタイプでね。」

「そうなんですかーでは引き続き頑張ってくださいね♪」

 

そう言い終わると彼女は自分のデスクに戻って行った。

恥ずかしながら今の職場で仕事を頑張ろうと思うのは彼女の励ましが大きい。本当にいい部下を持ったと思う。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……最近あなた陰気な雰囲気がなくなったわね?」

「ん?そうかな?まぁ前の職場から移ってかなりモチベーション高くなったからねー」

 

彼女は少し面白くないと感じる。

 

「…それは何よりだけど。なんだか、いつものあなたに比べて自信がついたと言うか、ちょっと態度が積極的になってない?今日はケーキまで買ってくるし。いつもは絶対買わないでしょ…」

「ふふ、実はね…」

 

僕は新山さんのことを彼女に話そうとしたがすんでのところで、危険だと判断して、嘘をつくことにした。

彼女は人よりも何十倍も嫉妬深いから、他の女性の話をしたらきっと起こるに違いないと思ったからだ。

 

「…新しい上司に褒められてさ…これからも期待してるよーなんて言われてますますやる気になってね…ははは…」

 

もちろん嘘だ。普段から愛想なんて振る舞えない僕が上司に褒められるわけがない。

 

「ふーん…そうなのね…」

 

彼女はテーブルの木目を眺め、弧を描くようにそれをひたすら指でなぞり、やっぱり面白くない顔をした。

 

「それはそうと、そろそろ寝る時間だよ。寝室に行こう?」

「…そうね…」

 

リビングの明かりを消し、一緒に寝室に向入る。

僕が寝室の明かりをつけようとした時、彼女が珍しく僕に抱きついてきた。

 

「…する?」

コクッ…

 

こんなにしおらしい彼女は久しぶりに見たなぁ…そんなことを思った次の瞬間だった。

 

僕は彼女にベッドへ投げ飛ばされ、腹部にのしかかられる状態でマウントを取られた。

 

「うっ!な、何するんだよ!」

 

僕はあまりの驚きについ怒鳴り声を上げてしまう。しかし、その声など何も響かない様子で彼女は息を荒げて僕の首筋にがぶりと噛み付いてきた。

 

「痛い!痛い痛い痛い!」

 

それは愛情表現の一環である甘噛みなんかとは違い、本当に人の肉を抉るような勢いだった。首筋はガリガリと削られ、血がドクドクと垂れてくる。離そうと試みるも元々力では勝てない僕が成功するはずもなく、痛みだけがどんどん強くなってくる。

 

や、やばい…これはガチで死ぬ…死ぬ!

 

そう思った瞬間、彼女の口が首から離れた。

俯く彼女の顔を覗き込むとと、瞳は涙でいっぱいになってた。

 

「…どうしてこんなことしたのか、説明してくれるかな?」

 

首からは未だに血が流れ続けてる…

 

「グスッ…わかりゃない…わから…ないよぉ…ヒクッ…た、たぶん…多分なんだけど…ヒクッ…いいかな……」

「うん、ちゃんと話して。」

 

すると彼女は顔を上げ僕の顔を見つめて話した。

 

「私…あなたが今の職場が辛いって言ってた時…内心すごく嬉しかったの…私を頼ってくれるって…私だけがあなたを幸せにできるんだって…グスッ…でも…今みたいな元気な姿を見ると…私以外にもあなたを囲んで笑顔にしてくれる世界があるって思ったら…自然と…体が動いて…ヒクッ…」

 

その言葉からは彼女の行動が悪意の入りまじったものではなく、純粋な嫉妬によって起きたことだと理解した。

 

でも僕は許せなかった。だがそれはあくまで彼女の行動についてではなく言動と思考に対してだ。

 

「…君は少し支配欲にかられすぎなところが多いと思うよ?夫婦ってのは互いを幸せにしたいから成立するものであって、独善的な愛情は返って身を滅ぼすことになるよ?僕は君のそういう所が嫌いだよ。」

「…そうだよね…わかってる…でもこれだけはわかって…あなたを愛してるってこと…」

「もちろんだよ。僕も一番大切にしてるのは君なんだから…」

 

彼女は安心した顔つきで僕に抱きついてきた。

今日は少し冷たい態度を取ってしまったかもしれない…でも僕がここで受け入れてしまったら、僕らは何も成長できない。ただの共依存のカップルになってしまう。返ってよかったとすら思っている。でもまぁ…それを彼女が理解したかは別としてだけどね。

 

「好きい…♡スキィ…♡んん…♡」

 

溢れ出てくる僕の血を愛おしそうにペロペロ等の舐め回す。

もしあの時、僕が新山さんの名前を出していたら、いったいこれの何倍の量の血を出すことになったんだろう…

考えてみたが、怖くなったのでやめることにした。

 

 



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服を買いたい男とイメチェンした夫にメロメロデレデレな女が送る夫婦の話

今回は少しギャグ寄りです。まぁ番外編みたいなノリでみてください。


「今度の日曜、買い物にでもいかないか?」

「…ずいぶんと珍しいことを言うわね」

 

彼女は驚きと呆れたような表情で返事した。

 

「いやぁ、そろそろ社員旅行があるだろ?だから、できるだけ恥ずかしくないような格好じゃないといけないなぁって思って…だから僕よりも君に選んで欲しいんだ」

「確かにね。あなた私服のセンス全然ないわよね。

「さ、そこまで言わなくても…」

「ふふふ♪」

 

悪い笑顔だなぁ…笑

 

「じゃあ、それ相応の支度をしないとね。クローゼットにまだ着れるのあったっけ?」

「………それよりも、他に直すところがあるんじゃないかしら?」

 

うん?何のことだろう…

彼女はそう言うと僕の顔を指差した。

「その姿よ…清潔感のかけらもないわ!無精髭に重そうなまぶた、目の所まで伸びてる髪の毛!全てが最悪よ!」

「それはわかってるけど…なぜこのタイミングなんだよ…」

「それは…会社とか知り合いがいる場で身なりが良かったら、あなたの美しさにクソアマどもがたかってきちゃうじゃない…でもやっぱり二人で街に出るんだったら、私と並んで恥ずかしくない格好でいてほしいわ…」

「あ、そうなのね…」

 

まぁ大体察してはいたけどね…まぁせっかくの休日だし、いつもならめんどくさいけど…たまにはいいかな…

 

「うん…わかった。今日くらいはやっぱり身だしなみに気を使わないとね。」

「ほんと!?♡じゃあ早速このワックスで前髪を上げて香水もつけて!私の使いかけだけど、いいやつだから!後!服も出しておくからそれを着てね!後これ薬局にあった強制的に瞳孔を開く目薬ね!目もぱっちりしてなきゃね♪あ、あと全部整ったから私の前に現れてね♪それまで私押入れにこもってるから♪」

「そこまでするの!?」

 

彼女は変に上機嫌で押入れに篭った。気味が悪い。

まぁ少しぐらいやる気を出してみるか…

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「こんなんで良いかな…」

「出ても良い?」

「まぁ、良いよ。」

 

押入れから出てきた彼女の目が僕を捉えた瞬間、恥ずかしそうに顔をそらした。普段こんな態度はとらないんだけどな。

 

「ァァァァウツクシイウツクシイウツクシイイイ…///」

 

なんかブツブツ言ってて気持ちが悪い。

 

「はい、満足した?あんまりこう言うのはしたくないんだけどなぁ…早く君も支度しようよ。」

「待って!それ以上、近づかないで。全身のありとあらゆるところから汁が出ちゃいそうだから。」

「地獄絵図かよ…」

 

たしかに僕は少し身だしなみを整えれば並の人よりは雰囲気が出る人間だとわかってる。僕があえてそうしない理由の一つに彼女の態度だ。普段の僕と接するとは大違いな態度をとって終始ご機嫌になる。大学生の頃、彼女の誕生日におしゃれなレストランに行くことになり、全身をコーディネートしてもらったらプロデューサーである彼女が終始ニヘラニヘラと気持ち悪く笑っていたのを思い出した。この時から僕は、所詮女は顔が一番なんだなぁと思った。結局あんだけ愛してるだの好きだの言ってもイケメンが口説いてきたらホイホイ付いていくんだろ!クソが!

 

スッ「取り乱してしまったようね。じゃあ支度をするわ。」

「切り替え早いな。」

 

彼女の足腰はガクガク震えていた。本当に汁が出たんじゃないだろうな…

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

秋も終わりに近づき、冬が到来しようとしてる。昔は冬といえば動物や人々の静けさが趣深かったのに。今は車のクラクションや雑音だらけの住みづらい時代になったもんだ…

 

「都会に繰り出したものの…人混みが多くて困る…やっぱり好きになれないなぁ…」

「社会人がそんなこと言わないの。活気溢れる若者達だったり色々な情報や刺激をもらえる場所は素晴らしいわよ?ほら、服を買いに行くんでしょ?行くわよ。」

 

そう言うと彼女は、おもむろに腕を組んできた。普段は歩いてる時こんなことしないのに。

 

「……何の真似だい?もう君も僕も30才手前だろ?恥ずかしくないのか?」

「…// たまには…良いじゃない…// 最近あんまりデートしてなかったし…♪」

 

………可愛いから許す。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「んんん…よくわからないのばっか置いてあんなぁ…何を買えば良いんだ…」

「センスがない人はそう言うのよ。あら、こういうのとか良いんじゃない?」

「えー…そんな派手なジャケットは着てけないよ…もっと、こう…シックで大人っぽいやつない?」

「雰囲気がオヤジ臭い人は少しくらい派手な方がいいのよ。あなた、やっぱりもっと自分のことに関心を持った方がいいわよ。良いから私に任せなさい。」

 

彼女は文句を言いながらも楽しそうに僕の服を選ぶ。

 

「こんな感じかしら。はい!着替えてきて!」

「はいはい…」

 

〜数分後〜

 

ジャラジャラ「…どう?」

僕を見た瞬間相変わらず目をそらし、

「ウヒェ!// フヒヒ…♡どうやら私のセンスに間違いはなかったようね…♡」

と奇声をあげる。

気持ち悪いぞ。

 

「うわぁ〜すごくお似合いですぅ☆本当王子様、みたいなぁ?☆」

 

頭弱そうな店員がおだててきても何も嬉しくない。

 

ペースを崩されたな…一回落ち着こう。

 

「んー…でも俺にはちょっと派手すぎな気がすr…「これ一式ください!」おい。」

 

 

服を買った僕らは次に、彼女いたっての希望でアクセサリーショップに向かった。

 

中はキラキラとジャラジャラがたくさんで目に悪そうな感じがした。

 

「この店なんかすごいザ・若者みたいな感じで居心地悪いんですけど…」

「あなたみたいな雰囲気がおじさん臭い人はこれくらいがちょうど良いの。体の外から若返んなきゃ。」

 

普通内からじゃね?

と思った矢先、横から若い女性の店員が話しかけてきた。

 

「どちらをお探しですか〜☆?お二人のような若いカップルの方々には今こちらが人気なんですけどいかがでしょうか?☆」

 

おいおい姉ちゃん、俺らもう28だぜ?おだてにも無理があるだろ。

 

「えええ!?♪そう見えますうう?♡じつはぁ…♡わたし達すでに結婚してんですよねえええ!♡♡」ドヤァ 指輪キラリ-ン

 

単純かよ。

 

「あ、そうなんですかー。二人とも若々しくて全然見えませんでしたー。」

 

若干引いてんじゃねぇよ!…ダメだ…またペースを崩された。

 

「あー…実は彼女がs…「じゃあそれで!」おい!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

一通り買い物を終えて、デートを楽しんだ僕らはレストランで夕食をとることにした。

 

「今日はすっごく楽しかったなぁ…♡ 明日からも頑張れそう…」

「僕は最悪な1日だったよ…」

 

もう夜だと言うのに、彼女は今もこんな調子だ。

 

「それは私に失礼じゃない?せっかくここまで付いてきてあげたのに…」

「君がいつもと違う変なテンションで行動するからだろ…」

 

そう言うと、彼女は少し寂しそうな表情をした。

 

「ごめんなさい…あなたの姿がいつもより素敵で勝手に舞い上がってたけど…よく思い出してみると…今日のあなたはなんだか違う自分を演じてるような…なんというか、無理をしていた気がするわ…私だけ勝手に舞い上がっちゃって…本当利己的だわ…」

 

 

 

「その…なんというか、君が喜ぶことは何でもしたいつもりだ…けど…君の態度を見ると、君が喜んでるのが普段の僕に対してでなく、違う姿の僕に対してだと思うと…少し.妬けたのかもしれない…本当にごめん…」

「…ふふ。そんなことないわ…私はあなたの全てが好きなんだもの…私が嬉しかったのも…ただ身なりがいいとかじゃなくて、素敵な彼氏を連れてステキな街を歩いてるって状況に心踊ってたのよ。本当、こう言うところはいつまでたっても子供だわ…♪」

 

その言葉を聞いて、少しだけ安心したような気がした。

 

「じゃあ僕の湿原に対するお詫びだと思って今夜はいっぱい食べようか。」

「そうね。それじゃあ今日は久しぶりに強めのお酒でも飲んじゃおうかしら。気分が上がって落ち着かないわ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ…それは…ちょっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…その…今日はやめないか?家に帰ってもワインのストックはあるしさ…な?」

「ふふふ、ダメよ。今日は私のわがままを許しなさい。日頃の自分へのご褒美なんだから♪」

 

…めんどくさいことにならなきゃ良いんだが…

 

 

 

 

 

 

 

〜2時間後〜

 

 

 

 

「いやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!帰りたくにゃいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!このまま二人でおーるないしてラブホでしっぽりちゅっちゅっするにょぉぉおおぁぉぉ!!!うええええええん!!!」

「あああ…だから言ったのに…どうしよう…」

 

本当酒には弱いくせにガブガブ飲んで自滅するんだからなぁ…めんどくさいなぁ…

 

「びええええええん!!!!こうにゃったらここで犯してやりゅううう!青姦にしゃれこんで公開セク○スでがんぎまりゅんだぁぁぁぁぁ!」

「やめてくれぇ!//」

 

周りからの冷たい目線が心に刺さる。

 

その後、僕らはその店を出禁になった。これで8軒目。もちろん全部彼女のせいだ。

 

 




最近他にもアズールレーンというゲームの二次創作ヤンデレ小説を書き始めました。興味のある方は是非ご覧になってください


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困ってる人を放っておけない男と純粋一途デレデレOLが送る会社の話(前編)

今回は前編と後編に別れます。
前編はちょっぴりシリアスです。
後編はがっちりギャグとデレデレとヤンデレで固めますのでご安心ください笑


昔から、僕の人生は周りの人からすれば至極平凡でつまらない人生だと捉えられるようだ。でも、僕はこの人生が案外気に入ってたりする。といっても、平凡に暮らしてるのが一番の幸せというわけではない。僕の人生には必ず、本当に稀に、ある時「転機」が訪れる。その転機がプラスに働いたり、マイナスに働いたりするかはわからないがとても人生を豊かにしている。だから、結構僕は生を謳歌してる方かもしれない。

 

そんな転機が今日もまた訪れた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今日はいつもと違って元気がないじゃない?どうかしたの?」

 

最愛の妻が僕の顔を覗き込んで言う。

今は既に風呂も食事も済ませ、ベッドで寝るところだ。

 

「まぁ、仕事の話だよ。あんまり心配しなくてもいいよ。ありがとう。」

「…なんでも相談してみるのが一番かもよ?あなたすぐ一人で抱え込むし。」

 

クスッと笑って僕の方に身を寄せる。

 

「そうだね…このことは君に話した方がいいかもしれないなぁ…」

「そうよ。言ってみなさい?」

「実は…」

 

僕は、彼女にその日の事を話し始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

相変わらずの平日。僕は何の問題もなく仕事を続けていた。するとそこに僕の部署のアイドルである新山さんがお茶を持ってやってきた。

 

「課長さん、今日もお疲れ様です♪」

「あぁ、新山さん今日もありがとう。いつも助かるよ。」

「いえいえ、当然のことです。課長さんも相変わらず熱心ですね。」

「まぁ、君がここに来てから部署が活気づいたってのもあると思うよ。本当感謝することだらけだなぁ。」

 

僕が笑いながらこんなことを話すと、少し彼女の表情が暗くなった。

 

「実は…私相談したいことがあるんですけど…この後お時間よろしいでしょうか?」

「ん?別にいいけど…何かあったの?」

「詳しい事は後ほど話します…」

「そうか…じゃあ終わったらついでに食事にでも行こうか。」

 

ありがとうございます。と一礼し、彼女は自分のデスクへ戻って言った。

 

 

 

 

 

 

 

「ヘッドハンティング?」

「はい…今私…もともと課長さんがいらっしゃった部署からお声をかけてもらっていて…もちろん誘っていただいたのはとても嬉しく思っているんですが、この部署が私、すごく働きやすくて愛着があるのでお断りさせていただきました。」

 

まぁ…彼女のように綺麗で愛想も良いよく仕事もできる人材はどこも欲しがるものだ。珍しい話ではない。

 

「それが…何か問題でもあったのかな?」

「はい…お断りした直後は、ならしょうがない…みたいな態度だったんですけど…この前、またお誘いがあって、それが…もし異動しなかったら減給して左遷させる…と言われたんです…私…どうすれば良いのでしょうか…」

 

何だそれは?明らかにパワーハラスメントの一つじゃないか!てか、どうして異動を断ったら減給と左遷なんだ?いくらパワハラでも、あまりに条件が横暴すぎやしないか?

 

「新山さん…行くべきではないよ…それは完全にパワハラだから、ちゃんと証拠を抑えれば何とかなると思うよ。とにかく今は出来るだけその話を先延ばしにして…僕がなんとかするから。」

「課長さん…ありがとうございます…」

 

冗談じゃない。せっかく彼女のお陰で僕も仕事をスムーズにこなせるようになったいうのに…何としても阻止しなければ…

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ってことがあったんだよ。」

遺言はそれだけ?」ガッ!

「え、ちょっと!痛い痛い!やめてくれよ!」

 

彼女が僕の首を片手で掴み、ジリジリと締め上げてくる。

 

「当たり前でしょうが。今日は帰りが遅いと思ったら、私以外の他の女と食事に行ってたなんて…確実に浮気。殺すわ。てか死ね。」

「そ、そんなこと言われても!あくまで相談に乗っただけであって!卑しいことは何もなかったって!全て善意からの行動だよ!」

 

はぁ、と不満そうな顔をした後、パッと首から彼女の手が離れた。

 

「執行猶予ね。次やったら実刑よ。」

「は、はい…」

 

よかったぁ…僕はほっと胸を撫で下ろした。

 

「それで…そのことについてだけど…彼女が困ってるのは十分にわかったわ。でも、そんなバカみたいなペナルティを提示してくるって相当でかい権力が動いてる可能性もあるわねぇ。それかただの世間知らずの馬鹿かね。」

「後者ならいいんだけどね…」

「まぁ…最悪、裁判もあるかもね…そうならないようにまず相手の弱みを握ってそれから行動しないと確実にあなたの人生も終了するわね。」

 

不安そうな目で僕を見つめる。

 

「わかった…明日他の部署の女の子にもそういう誘いが来たか聞いてみるよ。そうすれば集団で交渉できるかもしれない。ありがとう。じゃあ・おやすみ。」

 

僕は、そう言い布団にくるまってぐっすりと寝た。

彼女は一人窓辺を見ながら黄昏てる。

 

「…昔と全く変わらないわね…」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌日、他の部署の女の子に異動の誘いを貰ったから聞いてみたが新山さん以外はどうやらそんな話は聞いてないらしい。つまり、彼女だけをターゲットにしてるのか…まぁ、ロクでもない理由に間違いはないな。しかし…どうやってこの状況を切り抜けるべきか…困ったなぁ。

僕は少し心を落ち着かせるために、非常階段でコーヒーでも飲むことにした。ここは少し冷たい風が吹いていて、頭がリセットされる。疲れてたり気分が落ち込んだらしてる時、僕はよくここに来るのだ。

 

「はぁ…参ったなぁ…」

 

二つ返事で引き受けたものの自分はこういうことに滅多に弱い。

人が困ってる所を見かけたり、助けを求められたりするとすぐに助けようとして勝手に自滅する。昔からの悪い癖だ。これのせいで今までいろんなものを失ってきた。もちろん手に入れたものもあるけど--

 

しばらくボーッとしてると、何やら話し声が下の階から響いている。

少し気になった僕は、足音を立てないように慎重に階段を降りていった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「新山ちゃん…いい加減返事を聞かせてよぉ?もちろん高待遇は保証するよぉ〜」

「……まだ、考えているので…」

「…ったく…何でそんなに迷う必要があるのかね?君の今いる経理は我が社の中でも地味で存在感もない、言わば底辺部署だ!あんなところじゃあ仕事に対してもやり甲斐を感じられないだろ?それに比べて我が広報はいいぞぉ?君と同じ女性もたくさんいるし、花形中の花形!何も文句はないだろう!?」

「…ですから、まだ検討させてください。」

 

僕は上の階から二人を眺めていた。

…あれは…新山さんと…広報のクソ部長…!俺を以前散々こき使って過労死寸前まで追い込みやがった張本人だ…あの野郎!あいつはよく女子社員にセクハラをしていたな…クソが!今度は新山さんをターゲットにしやがったのか!

 

「まぁ…もし…君が断れば…以前述べた処置を施すだけなんだけど…それでも…まだ考える必要があるのかね?」

「……」

「そういえば君に良い話があるんだよ〜。そろそろ君も遊びはやめて身を固めたい時期だろ?私の部に新しくいい男が入ってねぇ…彼は確か社長の友人である○○製鋼の社長の一人息子らしいんだよ。彼が君のことをすごく気に入っててねぇ〜!是非とも会って食事でもどうかな思うんだがね?」

 

部長の彼女を見る目は明らかに不純でいやらしさに塗れていた。

すると今まで黙っていた彼女が口を開いた。

 

「異動の話は無かったことにしてください…」

「!?…どういうことかね?」

「どうもこうもないです…お断りします。それでは…」

 

そう言い、彼女が非常ドアのドアノブに手をかけたその時、

 

部長は彼女の肩を乱暴に掴み反対側の壁に叩きつけた。

彼女は頭をぶつけたらしく、頭を抱えて床に寝転がった。

 

「ふざけるな!こちとらあのボンボンがお前を部署に招きたいだの、犯したいだの言いやがるから誘ってやったものの…舐めた態度しやがって…!こうなったら!てめぇを地方に飛ばして二度と故郷に帰れないほど働かせて過労死させてやる!覚悟しろy…「あっ、広報部長さんですか。どうもこんちゃす。」」

 

 

「課長さん…」

 

僕は階段を下り、倒れてる彼女の肩を持って起き上がらせた。

 

「大丈夫?頭ぐわんぐわんしない?」

「お前は…経理のところの課長だな…落ちこぼれが何しに来た?」

「いやぁね…今の話…聞いてたんですよ。部長ってキレると言葉遣い荒くなりますもんね。ダメですよ〜、僕なら良いものの…女の子にしちゃあ…

パワハラ及び、傷害、『犯す』『遊びはやめて身を固める』などのセクハラ発言。僕のスマホに全部残ってます。」

「て、てめぇ…!」

 

最初の方はただの異動の誘いと捉えても問題ない会話だったから、証拠として認められないのではないかと焦ったが…

彼女の勇気ある意思表示が身を結んだようだ。

 

「まぁ、今回は見逃してあげますよ。ただ、彼女の心と体に対する慰謝料及び今回の件に対する示談金諸々は弁護士を通じて、話し合いませんか?こちらは裁判をするつもりなど毛頭ないんで…ね?」

「くぅ…!わ、わかった…このことは誰にも言うなよ!」

「…はい♪」

 

そう言うと部長は非常ドアの扉を開け、逃げるように出て行った。

 

「その…もっと早く出てくればよかった…頭…痛いだろ?」

「いえ…大丈夫です…むしろ、感謝でいっぱいです、本当にありがとうございます…」

「いや、それほどでも…とにかく病院には必ず行ってね。後、示談金のことなんだけどこれも僕が個人的に弁護士を雇うからその後は君に任せるよ。いいね?」

「はい…課長さんは…本当に、優しい方ですね…」

 

彼女の安心しきった顔を見て思わず言葉が溢れた。

 

「それは…君が今の部署と僕らにとって大切な存在だからね…」

「」

「じゃあ今度また連絡するよ。」

 

そう言い、僕はその場を後にした。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

後日

 

「…そう、それじゃあ解決ということでいいのかしら?」

「そうだね。まぁ当分彼女に対して何か問題が起きることはないだろうね。」

「なら良かったわ。まぁ、私たちも被害に巻き込まれたりすることがなくて良かったわ。いい仕事したじゃない。」

「それは、どうも。今日も彼女と打ち合わせをするから遅くなるよ。」

「そう…なら仕方ないわね…何かしたらただじゃおかないわよ?」

「勿論だよ。じゃあ切るね。バイバイ。」ガチャ プ-ッ プ-ッ プ-ッ

愛しい彼との電話が終わってしまった。これで後2時間は絶対会えないし話もできない…

私はソファに寝転がった。

 

「はぁ…寂しいなぁ…最近彼とあまりすることもできなくなったし、料理も食べてもらえてない…浮気は…女の匂いがしないから多分ないとは思うけど……早く帰ってきてよぉ…」

 

心も体も彼の熱を求めている。部屋の空気は暖房がついて暖かいはずなのに、体の芯は冷たくどうしようもない切なさに覆われた。

 

………

 

……

 

 

ピンポ-ン♪

「!!♡」

 

あれから何時間待っただろうか。ついに彼が帰ってきた。全身が歓喜に湧き立つ。

早く開けてあげないと♡

急いで、玄関に向かって走る。そして鍵を開けドアをゆっくり開けた。

 

「おかえりなさい、あなた♡今日はすごく寂しかったんだからぎゅーってしながら一緒に寝るん…

 

 

 

 

 

だから…?」

 

彼女は目を見開いて絶句した。

 

彼は、みたことのない酔いつぶれた女をおんぶしていた…

 

 

 

 

 

 

 

 




後編は今日の夜か明日の夜に投稿します。
追記
新作投稿しました。


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純情一途デレデレOLと夫に一途過ぎる女が送る修羅場の話(後編)

後編です


「…殺すわ。」

「いやいや、待ってくれ!別に君が思うような危ない理由で連れて帰ってきたわけじゃ…!」

「私は言ったわよね?卑しい理由でその子と食事してるんじゃないかって…まさか…本当にそうだったなんて…」うう…うう…

 

そう言って、私は泣きじゃくりながら顔を伏せ、その場でしゃがみこんだ。もちろん、嘘泣きよ。

 

「…ごめん…本当に…君に忠告されながらも…こういうことになってしまったのは本当に申し訳ないと思ってるよ…僕は馬鹿だ。」

 

そう言い、彼は私の嘘泣きを見ておろおろと慌てている。こういう単純なところがいつか仇にならなきゃいいんだけど…でもそういう優しい所は好き!♡

 

「…じゃあ、今度一緒にお風呂入ってくれる?」

「うん。お風呂でも何でもするつもりだよ…」

 

やったぜ。

 

「…なら早くその子を中に入れてあげなさい。外は寒いんだから風邪でも引かれたら余計困るわ。」

「ああ、そうだよね。わかったよ。」

 

私たちは余計な女を一人引き連れて、リビングへと向かった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

とりあえず僕は酔っ払いをソファに寝かせた。

彼女が新山さんの肩を持ち、ゆさゆさと揺らす。しかし、腑抜けたまま、一向に起きようとはしない。

 

「この人が例の新山って女ね…どうしてここまで飲ませたの?」

「いや…なんか、最初は普通のペースで飲んでいたんだけど…僕がお腹痛くなってトイレに行った後、こうなってたんだ…」

「…ってか思ったんだけど、打ち合わせをしたんでしょ?…何で二人で飲みに行ってるのかしら?」

 

そう言い、彼女がギロッとこちらを睨む。

 

「ち、ち、違うんだよ!僕はそこらへんの牛丼屋さんでも行こうと思ってたんだけど…彼女がどうしても行きたいって言うから……っていうか君もよくこんな夜遅くまで起きてたね?」

「…それは…一人じゃ…寂しくてねれなかったから…」

 

可愛すぎかよ。

 

「そ、そうか…本当悪いことをしたよ……じゃあどうしようか…この子はまだ起きないし…とりあえず、布団に寝かせるために…身体を拭いて君の寝巻きを着せるしかないよね。」

「おーい。起きろクソ○マ。さもなきゃテメェの目ん玉くり抜くぞ、おい。」ベシベシ!

「やめたげてよぉ!」

 

彼女が新山さんの頰に往復ビンタを繰り返すと、

 

「…ん…うにゃあ…んぐ…」

 

と間抜けな声を上げ、彼女が起き上がった。

 

「…ほら起きたわよ…とりあえず、私はお風呂はいってくるから。全部一人でやりなさいよ。私関係ないし。」

「えっ!?まじで!?ダメだって!服脱がせて体拭くとか、逆に僕がセクハラになっちゃ…」バタン!

 

僕がそう言い終える前に彼女は、リビングを出て行ってしまった。

 

……

 

 

 

 

 

 

…どうしよう…

 

流石に体を拭くのはダメだろ…成人してる女の子なんだから…彼氏は…まぁ僕を飲みに誘うくらいだから、いない方が確立高いか…

 

「…うぐぅ…かちよー…さん…?」

 

そう言い、僕を虚ろな目で見つめる。

 

「あー…その、新山さん…今から手ぬぐい持ってきてあげるから、服を脱いである程度自分で体を拭いて欲しいんだ…背中とかは僕がやってあげるから…じゃ、じゃあ持ってくるね…」

 

そう言い、洗面所からタオルを持って来ようと振り返ったその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が僕の服の襟をつかんだ。

「……え?」

 

そして、ソファから起き上がってふらふらと不安定な足取りで僕の胸に飛び込み抱きついてきた。

 

「いっちゃ…いやです……」

 

突然のことに声も出せない僕。

彼女が僕を見つめる。

その瞳からは、涙がポロポロと溢れていた。

 

「グスッ…かちょーしゃん…わたし…あにゃたのことがしゅきなんでしゅ…グスッ…かちょーしゃんが…すでに結婚してりゅのは…ヒクッ…分かっていましゅ…でも…しょれでも…ヒクッ…わたし…あきらめること…できにゃいです…愛人でもいいからぁ…お願いでしゅ…ヒクッ…」

 

彼女の抱きしめる力をより一層強くなった。彼女の鼓動と暖かさが伝わり、どうしようもなく愛しい気持ちが溢れてくる。

 

「新山さん…」

「課長しゃあん……」

 

そう言い、僕は葛藤の中彼女を傷つけまいと

 

 

優しくその身を抱き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寄せず、肩を掴んで僕の体から引き離した。

 

「ダメだよ…こんなこと…君は間違ったことをしてる…」

「……え…?」

 

彼女はきょとんとした表情を浮かべる。

 

「君の好意は本当に嬉しい。その気持ちに応えたいとは十分に思ってる…だけど、僕は君の思ってるほど器用な人間じゃないし、人を裏切るようなことは絶対にしたくないんだ…それに、何より…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は世界中の誰よりも、妻のことを愛してるから…」

 

そう言い放った瞬間、風呂に行ったはずの僕の最愛の妻がリビングの扉を勢いよく開け、

 

ニヤニヤと気持ち悪い表情を浮かべて入ってきた。

 

 

 

 

「ふーん!よく言ったわ!我が最愛の夫よ♡さぁ、泥棒猫、

 

裁判の時間よ。

 

そうだった…彼女は一筋縄ではいかない人間だったっけ…

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

とりあえず僕は新山さんに水を飲ませて、酔いを覚ましてあげた。彼女がソファに座り、新山さんは目の前で正座してる。

 

「おい、クソ○マ…地獄はここからだぞ…これで済んだと思ったら大間違いだからな…あ?」

 

彼女が今まで見た中で一番怖い表情をしてる…!これはやばいぞ…最悪血が流れるかもしれない…!

 

「あの…本当…すいませんでした…本当、何というか、私が悪かったです。」

「当たり前だろうがぁ!あぁ!?人の夫散々引っ掻き回してくれてよぉ!どうせ、今回のことも全部仕組んでたんじゃねぇのか!?」

「ち、ちがいます!課長さんに助けてもらったのは事実です!ただ…その…それが原因で…

 

恋…しちゃって…♡」

「チッ!」

 

顔を赤らめる新山さんとそれを見て苛立つ我が妻。

何だこの構図。

 

「私…以前から課長さんは優しくて面倒見が良い方だなぁと。好意を寄せてたんですけど…その…課長さんが、私を助けてくださった時…

 

『君は僕にとって大切な存在だから…(イケボォ)』

 

とおっしゃって…それでもうハートを完全に射抜かれてしまって…♡』

「…だそうよ?あんた…」

 

いやいやいや!俺そんなこと言った覚えないよ!?まじで言ってないから!…

 

と言いたかったが、ビビって

 

「いやぁ…ぼ、ぼ、ぼくのきおくには…なぁー…………ないんじゃないかなあと思いますねぇ!はい!」

 

よくわかんない受け答えをしてしまった。

すると新山さんは僕に向かって自身の主張(笑)を言い放った。

 

「そもそも!所帯持ちである課長が私をたぶらかすのがいけないんです!幼気な女の子をこんな気持ちにさせて、挙げ句の果てにはお断りとか…

どんな神経してるんですか!?」

 

あ、あれ…?もしかしてまだ酔い冷めてない感じ…?

 

「…課長さん方って結婚して何年ですか…?」

「…確か6か7ね…」

「出会ってからは!?」

「10年いってるかいってないかぐらいね。」

 

それを聞いた新山さんは思い切り立ち上がり僕を見つめた。

 

「ならそろそろ倦怠期にもなるはずじゃないですか!?どうして私を抱かないんですか!何なんですか!?チ○コついてんですか!?えぇ!?」

 

あ、こいつダメだ。まだ酔ってる。

すると我が妻はまた気持ち悪い笑みを浮かべて言い放った。

 

「ふふふ…ぶっちゃけそんなのないわ。人の脳内の恋愛物質の期限は三年ほどらしいけど…私たちの愛はそれにすら打ち勝つのよ…」

 

あれ?もしかしてこいつも酔ってるの?黙って酒でも飲んでたか…

 

「私たちに終わりなんてないし、終わらせる気もないわ!今でもほとんど毎日ベッドでプロレスごっこしてるぐらいよ?まぁどこかの泥棒猫が来たせいで最近はご無沙汰になっちゃったけれど…なんなら、今あなたが見てるこの場で、おっぱじめても構わないけどねぇ!うふふふ♡」

 

あ、違うわ。こいつの場合「自分」に酔ってるんだ。これを覚ます方法はないんだっけ。

 

「ぐぬぬ…じゃあ分かりました!せめて!せめて、私を一回だけでも抱いてくれませんか?それでもう後腐れなし!今後お二方の家庭と性事情には二度足を突っ込んだりしませんから!ね?」

「どう考えたらその結論に至るんだよ!?そうだろ!?僕の妻よ!」

 

もういいや。後はもう彼女に任せてこの酔いどれをぶっ潰してもらおう…

 

 

「…

 

…別にいいわよ?」

「「!!!!?」」

 

僕と新山さんは予想斜め上の、彼女のあっさりとした承諾に目を丸くした。

 

「というか、一回とかそういうのつけると…また何かに洒落込んでズルズル関係が続きそうだから…いいわよ?愛人になっても。」

「ま、まじですか?本当!あっざす!いやぁ〜姉貴は話がわかる人でしたわ!ほんまかなわねぇっす!」

 

新山さんってキャラころころ変わるな…

 

「ただし一つ条件があるの?いいかしら?」

「はい!なんなりとお申し付けください!」

「ありがとう。じゃあ一つだけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…その時、彼の上半身を切って私にくれないかしら?」

 

…え?

 

「私は、あなた達が性交するのは構わないけど彼が何処の馬の骨かもわからない女のピ-で彼が感じてる姿なんて想像したくないもの…だったら、彼の上半身だけを切ってあなたは彼のピ-をどうにかして勃たせて使って私はその間冷たくなった彼の唇に激しくキスをするの…♡そうすればわたし達は心と愛は永遠に変わらないでしょ?♡彼は経験が少ないからあなたみたいなクソ○マのクソピ-に、多分ないと思うけど、いやあったら殺すけど、虜になってしまうかもしれないじゃない?そんなこと嫌♡そんなあなたの一回抱かれればいいみたいな考えは反吐がでるし、下半身で繋がる愛なんて言語道断よ♡でも…そうすると彼は死んじゃってもう会話もできなくなっちゃうわね…ふふふふふ…♡それならば、私がピ-してピ-した後にさらにピ-ピ-ピ---------------…」

「 ……」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は夜遅かったので新山さんはソファで寝ました。そして朝一番に何事もなかったかのようにかえっていきましたとさ。




ちょっとギャグ多すぎたかな…まぁ書いてて楽しかったからいいか。
次回の更新はアズレンヤンデレの次になると思います。
それではまた。
後感想がもっとあるとモチベ上がっていいのが書ける感じがします。(書けるとは言ってない。)
返信は必ずしますのでご意見やネタ提供も是非受け付けますのでどうぞよろしくお願いします。
追記
お気に入り100件超え、UA8000ありがとうございます!
アズレンヤンデレはまた今度にして記念に一話このシリーズで書こうと思ってます。多分今日の夜更新されるので是非ご覧ください!


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番外編 「妻が非処女だったことを知って鬱になった男と夫を選んで幸せになった女が送る新婚の話」

お気に入り100超え UA8000超え記念!
タイトルにもあるように、今回の話は苦手な人はバックしたほうがいいかもしれません。
最後はちゃんとハッピーエンドになるのでご安心ください。
皆さんの中には処女厨っていますか?今回の話の舞台は彼らの新婚当初です。
そんな人に送りたい話です。


○○月××日

今日の日をもって僕らは晴れて夫婦になった…と言いたいんだが

まぁあくまで婚姻届を市役所に届けただけだから全然実感もクソもないな。

僕も無事就職が決まったものの、収入が安定するまでは彼女もしばらくは働いてもらう生活になる。

 

「……」

 

だが僕は少し狼狽えていた。この記念すべき日に彼女…いや、今は妻と言うべきかな。我が妻の調子は普段と変わらないのだ。なぜそれが不気味かというと、彼女はお互いの誕生日などの記念日には、普段とかけ離れる程の高いテンションで僕にデレデレしてくるからだ。まして、パートナーとしてのゴールを今日ついに切ったというのに…僕は何か悪いことでもしてしまったのだろうか?

 

トントントントン

 

彼女はキッチンで料理をしている。部屋には包丁が具材を切る音だけが部屋中に響いてる。僕はテーブルで頬杖をつき、その姿を見ながら悶々としていた。

 

「…あのさ…今日なんか機嫌悪い?」

 

すると彼女は振り返って僕の方を見た。

 

「…別に何もないけど?」

「そ、そっか…ならいいんだけどね…」

 

意識的に彼女から目をそらした。

 

「…何かあるならはっきり言いなさいよ…」

「…じ、じゃあ、聞くけど…今日ってさぁ…役所に婚姻届出したじゃん?」

「そうね。それがどうかしたの?」

「いや、結構今日はめでたい日のはずだと思うんだけど…君のテンションが低いから…なんか…悪いことでもあったのかな…ってね…」

 

彼女はため息をついて呆れたような表情でこちらを見た。

 

「結婚なんてただの通過点よ。別にめでたくも何ともないわ。ただ強いて言うなら、これからの財産共有と家計の話をしなきゃいけない日ぐらいかもね。」

「なんか…君ってよくわかんないところでドライだよね…あはは…」

「…それは褒めてるの?」

 

ギロッと包丁を持って睨みつけてきた。あかん、死ぬ。

 

「う、うん!そうだよ!褒めてる褒めてる!」

「…あなたはどうやらいつもと変わらないようね…」

 

再び彼女は具材を切り始める。結構内面は激情家な方だと思っていたが、こういう所は現実的なんだなぁ。

 

「…君は結婚とか考えていた?」

「…女の夢だもの。そりゃ考えるわよ。まぁでも、もうちょっと遅くなると思ってたわ。大人になってやりたいこともあったし。」

「え…」

 

僕は彼女の思わぬ言葉に身が震えるのを感じた。

 

「やりたいことって…?」

「いや、単純に遊ぶことよ。色々なところに行きたかったし、友達とも遊びたかったわ。それに…機会があるなら恋愛だってもっとしたかったかもね。」

 

彼女の冷めきった告白は僕の心へと深く突き刺さった。

馬鹿だ…僕は…彼女の幸せなんか考えずにこんなことを…お互いの幸せなんて考えてたのも馬鹿らしい…結局僕は自己中心的な人間だったのか…

 

「どうして…早くそれを言わなかったんだい…?僕は自分よりも…人の幸せを叶えたいと思ってるんだ…言ってくれれば…僕はどうとでも…」

 

僕がそう言うと、包丁の切る音が止んだ。するといつもより、小さい声で彼女は呟いた。

 

「あなたに…惚れたからよ…」

「え…」

 

僕はまた驚いてしまった。返ってきた声のトーンからは、彼女が僕に気を遣って嘘をついてるようには思えなかった。

 

「私は確かに、社会に出て色々な事を経験したかったのかもしれない。でもね、あなたに出会って、あなたに恋したことで…そういう幸福論とか未来予想図が全部吹き飛んじゃったの…あなたとずっと共にいたい。あなたと一緒に笑っていたい。あなたのために、生きていたいってことばかりに頭が埋め尽くされちゃったのよ。」

「そ、それは…君にとって正解だったのかな…」

「正解なんてわからないわよ。これからの話だもの。もちろんあなたも…でもこれだけは言えるの…

人って必ず何かの「使命」を背負って生まれてくると思うの…それを知るために10代っていうのはあるのじゃないかしら?私は…「希望」はあったけど、その「使命」は見つけられなかったわ。でもね。今でもこうやって話してて、私はあなたの一つ一つにときめいてるの。これってあなたって存在が私の人生を輝かせてるって意味なんだと思うの。単なる恋愛体質なのかもしれないけれど…私は…少なくとも、今正しい「使命」を全うできてる気がするわ…」

「そうか…」

 

僕は安心と不安で心が落ち着かなかった。どうしても、彼女の言質だけでは深淵から逃れられない感覚に陥っていた。だから僕は、ついに聞こうと思った。

 

「今、恋愛体質って話を言ってたけど…その…君って僕以外の男性とお付き合いしたことあるのかい?」

 

本当は聞きたくなかった。この3年間、心の中でずっと留めていようと思っていたことだが、この日を境にまた一歩彼女に歩み寄ろうと思う。

でも現実は非情だ…やっぱり答えは期待してなかったものだった。

 

「…あるわよ…」

「そ、そうだよね…」

 

二人の間の空間が冷え切り、静寂が続く。

 

「…何人くらいと?」

「…あなた含めないで3人…まぁでも、一人は中学生の頃ですぐ別れたから二人でいいかもね。」

「…どんな人だったの…その人たちは…」

 

恐る恐る僕は聞いた。手の細胞の一つ一つから汗が流れてくる感覚がした。

 

「一人目は中学の同窓会で会った元同級生…二人目は友達の紹介であった男子高の一個上の人だったわ…あなたよりもよっぽど優秀な人たちだったわ…」

「へ、へぇ…そ、そうだったんだなぁ…」

 

もう、この時点で僕の心はノックダウンされてた。でもなぜか心に反して僕の口は動くことをやめない。

 

「…………した?」

 

言った…言ってしまった…実際僕は彼女で初めてを捨てたが、その時は無理やり奪われたので記憶が曖昧なのだ。だから、彼女が経験済みかどうかも分からなかった。

 

先程よりも小さい声で悪魔の3文字が放たれた。

 

「………したわ…」

 

………死にたい……てか、もう死のうかな…辛すぎる……だろうなとは思ってたけど、やっぱり本人から直接聞くのは本当に辛い…

 

「まぁ、回数は少ないけどね…その当時わたしは部活と勉強で忙しかったからあまりする機会はなかったわ…片手で数えられるほどしかね…まぁ、でもやったのは事実よ。あなたにとっては残念だと思うけど。」

 

「…はい…そうでしゅね…すいましぇんでした…」

 

僕は泣きかけていた。情けない人間だ…そりゃそうだ…本当なら彼女と僕とでは住んでいる世界が違うんはずなんだ…それなのに…勝手にエゴなんか持ち続けて…

 

落ち込んでる僕を見て、彼女は困ったように笑みを浮かべる。

 

「あなたに救いの手を差し伸べてあげましょうか?ふふふ」

「へ…?」

 

彼女は包丁をまな板の上に置き、僕の方へと歩み寄って来た。

 

「私ね…実は…エッチ嫌いなのよ…正確には嫌いだったと言うべきかしら。」

「そ、そうなの…?」

「うん…その二人は既に経験してて、本番はリードされたんだけれど…別にすごく気持ちいいってわけじゃなかったわ…それになんだか気持ち悪かったの…二人は繋がってるはずなのに…想いのベクトルが違う方向にお互い向いてる感じが…それと、これは私の特異体質だと思うのだけれど…交わってる時感覚が研ぎ澄まされて相手の心情とか手に取るようにわかっちゃうの…その二人からは純粋な気持ちが感じられなかったの。どっか、劣情が混ざってた感じ…」

 

彼女が僕の目をじーっと見つめる。

 

「あー恋愛って結局こんなものなのかなぁって思ってしまったの。その二人どちらも本当に好きって思えるほどではなくて単純に世間一般論の恋人としての手順を一応踏んだだけ…だから、大学では彼氏は無理に作らないこと前提に入ったんだけどね…それが一変、あなたに会ってしまったのよ♪」

 

ギュッと僕に抱きついてきた。それに答えるように僕はさらに強く抱きしめた。美しい曲線を描く、彼女の柔らかなボディを全身で感じる。

 

「あなたはやっぱり運命の人だったわ…交わってる時のあなたの目と声色は混じりけのない純粋な気持ちで満ち溢れてるの…別にそれ抜きにしてもあなたは本当に素敵な人だって元々わかってたけど…むしろそれで安心したの…この人は本当に裏がなくて、健気で相手を幸せにする心を持ってるんだなぁって…私はこんなに美しい人に愛されて幸せだなぁってね…」

 

僕の胸に溜まった重い何かが、スッと体をすり抜けどっかに落ちていったような感じがした。

 

「…僕を美しいだなんて…君の方が心も容貌だって美しいじゃないか…洞察力に優れてる君が、見当違いな考察を出すなんて珍しいじゃないか、ふふ。」

 

「そういう所よ…あなたの美しいところは…」

 

僕らはゆっくりと唇を重ね、より一層強く身を寄せ合った。キスを終えた彼女の顔は少しだけ後悔のような表情を浮かべていた。

 

「ごめんなさい…私…本当はあなたに初めてをあげたかった…それが…あなたに出会って思った唯一の後悔なの…でも今日、やっと話せて心が軽くなったわ…」

「ふふ…僕もだよ…でも安心して…僕は君に出会ったことで何一つ後悔はしてないからさ。」

「…ありがとう…//」

 

先程まで凍え切ってた部屋の中が、二人の笑顔によって溢れんばかりな暖かい空間に変わった。

 

庭には菜の花が二輪ほど咲いていた----

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

○○月××日

僕は今彼女へのプレゼントと花束を持って閑静な住宅街を歩いている。

 

あれから随分と月日が経ったなぁ…最近、彼女とゆっくり話す機会もなかったから、今日ぐらいは思い出話でもして楽しい夜にしよう。

 

家の前に着き、インターホンを鳴らす。数秒後、ガチャと鍵が開く音がした後、ドアが開かれた。

 

「おかえりなさい。あなた。今日もお疲れ様。」

「ただいま。帰ってきて早速なんだけど、目を瞑ってくれるかな?」

「…えっ//」

 

彼女はドキドキしながら腕を後ろに組んで目を瞑った。

僕はそうっと、彼女の耳に手をかけた。

 

「いいよ。目を開けて。」

 

彼女は目を開けて、自分の耳に手を当てた。

 

「これは…」

「イヤリングだよ。君に初めて買ったプレゼントはイヤリングだったろ?今年はあれより今の君に似合うものをつけて欲しくて選んだんだ…あと、これ。」

 

僕は彼女に花束を手渡した。

 

「これはクレマチスっていう花なんだ。花言葉は

『美しい精神』『あなたの心は美しく正しい』 だ。

これからも僕らは、美しい心を持ってお互いを支え合おうね。」

 

そう言い終えると、顔が徐々に火照ってきた。

やっぱり僕はこんなセリフが似合わない男だったな。 照れ臭いや…

 

 

そんなことを思ってると、突然彼女は顔がぐちゃぐちゃになるほどえんえんと泣き出した。

 

「うえええええええ!!!結婚記念日おぼえてぇくりぇたんでぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!しあわしぇだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!やっぱり何年たってもしゅきいいいいいいいいい!!♡♡♡これからもじゅっとじゅーーーーーっと一緒なんだかりゃぁぁぁぁぁぁ!♡♡♡」

 

 

あれ…僕は誰と結婚したんだっけかな…笑




いかがでしたか?
僕が思うに恋愛したことない人で処女厨が多いのは、「愛する人とは必ず繋がるもの」だと考えてるからではないかなと思ってます。人は関係を持つ中で必ず不満や矛盾を抱えて生きるものです。お互いの価値が矛盾し、愛想も尽きれば別れることだってあります。だからもし好きになった人、付き合うことになった人が非処女でも本人に歩み寄りその人の好きなところ、嫌いなところを見つけるのが大事です。良き夫婦とは、それを認め合って尊重し合うことで本当になれるものではないでしょうか?過去ではなく今と未来の彼女を愛しましょう!
ちなみに僕の嫌いなタイプは「彼氏のことや元カレの事をすぐ話題にする女」です笑笑
後、読んでくださった方々には活動報告にも書いてありますように是非とも投票やお気に入り、感想を積極的に入れていただきたいです!どうぞよろしくお願いします!


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ジレンマによって鬱になった男となんでも解決してくれる先輩が送る人生相談の話

今回はギャグ少なめで新キャラが出てきます。ただしおまけはエロギャグ注意です


プルルルルル ガチャ

 

「田村です。」

「田村先輩ですか?お久しぶりです。僕のことを覚えてますか?」

 

彼は数秒置いた後、驚いたように言った。

 

「あぁ!君か。久しぶりじゃないかー。それに君から連絡をしてくるなんて、今晩は雷雨でも起きそうだ。」

「ははっ、ご冗談を。いやぁ、久しぶりに先輩に会いたいと思いまして…今度の土曜にそちらへお伺いしても構いませんか?」

「うん、良いとも。君と話してて退屈することはないからね。」

 

毒のある口調と嫌味ったらしいジョーク。この人は相変わらずのようだ。

 

「では、土曜の午後に先輩のご自宅へ向かいます。」

「わかった。楽しみにしてるよ。」ガチャ プ-プ-プ-

 

………

 

……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

僕は先輩から送られてきた住所を頼りに高級住宅街を彷徨っていた。

ここかなと思われる場所に着くと、目の前には一軒家やマンションが立ち並ぶ中、一際異彩を放つ洋館が建っていた。それは決して豪華でも壮大でもないが、どことなく優雅で趣深い雰囲気を醸し出していた。

 

僕はその家の柵を開け、玄関のドアをノックした。するとドアが開き、中から白髪で古い丸渕眼鏡をかけた痩せた男性が現れた。その容貌は20代と言われても60代と言われても納得するなんだか不思議なものだった。

 

「よく来たね。面白くもない所だけどとりあえず上がってよ。」

「そんなまさか、とりあえず失礼します。」

 

玄関に靴を脱ぐ場所はなく、単なる洋風建築ではなく本当に洋館なんだなぁと感心した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

招かれた場所は木漏れ日が射す、美しい客室だった。

 

「どうぞ。」

 

先輩が紅茶と高価そうな茶菓子を僕の目の前にある小さなテーブルに置く。

 

「ありがとうございます…」

 

差し出された紅茶の水面に高い天井と部屋をびっしりと埋め尽くす本棚が映る。僕は思わず辺りを見渡し、感慨に浸った。

 

「ふふふ、驚いただろう?客室にある本は小説とちょっとした古い絵本だけなんだよ…リビングにはこれの5倍は軽く超える、洋書だったり学術書があるよ。」

「…さすが、先輩です…」

 

僕が先程から「先輩」と慕うこの人。彼は田村さんという僕の高校、大学時代での先輩だ。多分大学の中で僕が友達と唯一言えた人はこの人だけだ。僕はこの人から沢山のことを学び、偏屈だった自分でも沢山の考えを持てるようになった。今は哲学者として若年ながらも一線で活躍してるそうだ。

 

「君が僕のところを訪れたってことは…それ相応の理由があるに違いないな?まぁ…本題を聞こうか…君の悩みを聞くのは昔から好きだったからね。」

「はい…」

 

僕は客室の天井を映す、紅茶の水面をひたすら眺め続けた。

 

「僕の妻のことなんですけど。」

「ほぉ、あの君にはもったいないほど立派な彼女のことか?」

「余計なお世話です…ですが、本当にそうだと思います…僕は彼女の事をできる限り幸せにしてあげたいと思ってます。でも…先日、彼女に対して無礼を働いて、それのお詫びに二つ彼女のお願いを聞くことになったんです。一つは実現することを約束したんですけど…二つ目を聞いた時、僕は怒ってそれを断ってしまったのです。そしたら、彼女は泣きじゃくってしまって…それからは会話が途切れてしまいました。本当に僕は大馬鹿者です。僕は生来、不幸を永遠に背負って生きてくべき人間だと自覚してました。でも、彼女と出会ったことで全てが変わったのです。だから、いつまでも彼女を笑顔にすると覚悟を決めて結婚したんです。ですが…彼女の真摯なる好意をある時からなぜか恐ろしく思って素直に受け入れられない自分がでてきたのです…最近はあまり構ってもあげれず、ただでさえ寂しい思いをさせていたのに…挙げ句の果てにこんなことに…こんな人間、愛することも愛される資格すらありません…先輩。僕はどうすればこの性分を変えられると思いますか?」

「…」

 

先輩は信者の懺悔を聞くシスターのような優しさと、単純生物の行動を観察する科学者のような好奇心が入り混じった表情を浮かべる。

そして、普通よりも砂糖が何倍も盛られた甘い甘い紅茶を一口すすり、こう言った。

 

「…君はなんというか、言動や行動は随分と丸みを帯びたが…やっぱり芯は昔と変わらないんだね。なんというか安心したよ。」

 

その言葉を聞き、僕は顔を上げる。

穏やかな目が僕を見つめていた。

 

 

「今の話からわかる君の昔から変わらない性分は『過度な自己犠牲主義』と『悲観性』、他者との関わりの乏しさからの『精神的な耐久性の低さ』だよ。君が社会という鳥籠の中で生き続けると言うのなら、この三つを克服しなければならないかもね。要するに、わがままになれってことかな。」

「はぁ…」

「お人好しな君が断るほどの願い事なんて多分かなり無理難題なものなんだろうな。それを断ることは全然悪いことじゃないさ。増して、それは君の精神が歪んでいると言う証拠にと一切ならないしね。君の方ばかりが歩み寄るんではなく、逆に彼女を引き寄せてみてはいかがかな?」

 

いつもならこの時点で彼の言葉に納得し、心が楽になるはずなのだがまだ僕の気持ちは暗く、邪悪なものに包み込まれていた。

 

「彼女はすでに僕に歩み寄ってきてくれてます。僕が許せないのはそれを受け入れず、ただ被害者ヅラをして距離を取り続けてる僕の心です!そこには何かしらの悪魔が住み着いていて、僕の使命の遂行を阻もうとしているのです!このままでは彼女の人生を狂わせることになる!…僕は…ぼくは…本当に、情けない…この悪魔は…いったい何物なんだ!?」

 

ガンッ!

僕はテーブルに拳を叩きつけ、プルプルと全身を震わせた。

すると先輩は普段は決して見せない、険しい表情で僕に問い詰めた。

 

「それは単に君が『過度な幸せを感じている現状が怖い』だけなのではないのか?」

「…!」

「君は若い頃、多難で不幸な生涯を送っていたそうだね。僕も一部は知ってるよ。だから、今起きてる彼女との幸せな日々を偽りだと認識してしまい、ただ疑って信頼しようとしない。確かに同情するべき点もあるが、過去を捨て、もう少し今を生きることに精一杯の努力を費やしてみなよ。君の心に住みついてるのは悪魔なんかじゃない。過去の自分自身なんだよ。僕は君が聡明な人間であることは十分理解してる。もちろん、一時の色欲にも負けない道徳心も持ってるはずだ。そんな君が選んだ女性は必ず、これからの幸福を約束してくれるはずさ。これは、世間一般からすれば『人は化けの皮などいくらでも被れる。』と少し甘い考えと認識されるだろう。だけど、道を貫き続ける君には、これぐらいがちょうどいいんだよ。」

 

やっぱりだ…僕はこの人の言葉を聞くと、自身の弱い所が全て裸になったように感じる。

 

「ニーチェの名言の一つに『自己侮蔑という男子の病気には、賢い女に愛されるのがもっとも確実な療法である。』というのがあるんだ。まさに君らにぴったりの言葉だと思ったんだが…君がもし、自身の性分を改めようと決意を固めるのなら、この言葉を是非勧めたいね。

 

『みずから苦しむか、

 

もしくは他人を苦しませるか、

 

そのいずれかなしには

 

恋愛というものは存在しない。』

 

心に永遠の恋を留めるように。それが夫婦の一番の支えになるはずだよ。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今日はありがとうございました。おかげさまで気分が楽になりました。」

「いやいや、役に立ってくれたなら幸いだよ。」

 

先輩が見送る中、僕はバスに乗る。

 

「それでは先輩。またいつか。彼女のためにも頑張ります。」

「うん。バイバイ。」

 

バスが走り始め、我が家へと向かって行く。

先輩の姿はどんどん薄くなって行き、やがて視界から消えていった。

 

「………

 

『真面目に恋をする男は、

 

恋人の前では困惑したり拙劣であり、

 

愛嬌もろくにないものである。』

 

…これは言わなくてもよかったな…ふふふ…」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おまけ(今回のわずかなギャグ回)

 

「やっぱり僕、君の願いを叶えたいんだ!もう弱音は一切吐かないよ!」

「本当…?私のエゴなのに…?」

「そんなことないよ!君のことを幸せにするって決めたんだ!だから、ちょっとの辛いことなんて耐えてみせるよ!」

 

 

 

5時間後

 

 

 

 

 

「しゅきぃ…♡あっあっ♡だめぇ…♡ぎゅーってしてて♡離れてると切なくて恐くなっちゃうのぉ…♡ぎゅーっ…♡」

「こんなにトロトロな表情して…ふふふ…やっぱり前○腺開発は成功のようね…彼ならやっぱりいい反応してくれると思っていたのよ…♡願いが叶ってすごく嬉しいわ…♡…いいわよ♡ギューってしてあげる♡そのまま私の胸で眠りなさい♡」

 

辛いことには耐えられるけど、快楽には耐えられませんでした。

 

 

 

 

 

 




これからも新キャラは出して行こうと思ってます。
そろそろ、二人の名前も出して行こうかなぁ…どうしよう…
感想、投票、お気に入り登録よろしくお願いします。


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ヤンヤンヤンヤンデレ男とヤンヤンヤンヤンデレ女が送る共依存の話

(投稿頻度)こ わ れ る
許して読者さん

…すいません笑笑
ちょっとリアルが忙しくなって遅れてしまいました…
今回は久し振りに病み回です。


「や、やめてくれよ…これ結構きついんだって…今日もやるのかい?」

「ええ、やるわ。あなたが悪いんだから。私は悪くない。」

「ちょっ…痛いって…!とりあえず…落ち着いて…」

 

仕事から帰って来て早々に彼女は僕を玄関のドアへと追い詰め、両手首を強く掴んで押さえつけてきた。全身が叩きつけられ鈍い痛みが走る。

 

吐息がかかるくらい、顔を近づけてニヤリと笑ってる。

 

「なぁ…なんでこんなことするんだよ…君だけが辛いわけじゃ…」

「うるさい!…黙って。」

 

彼女の顔が笑みから怒りへと豹変する。

そして、ゆっくりと顔が近づいてお互いの唇同士が触れ合った。

 

僕は閉じていた両脚の間に足を強引にねじ込まれ、完全に逃げられない状態になった。

 

「…ぷはっ…こ、これで今日は満足…?」

「…なわけ。」

 

そう言うと彼女は再びキスをし、間髪入れず強引に口内を貪ってきた。

僕を押さえつける力がさらに強くなり、頭がおかしくなりそうなほどの被征服感で全身がぶるると震え始める。

 

しばらく濃厚なキスが続いた後、僕は舌先をガリッと思いっきり噛まれた。

 

「〜〜っ!〜〜!!」

 

逃げ出そうと抵抗しても全く逃れられない。脂汗が額から垂れてくる。いつもは自由に動かせるはずの自分の舌が拘束されると、人間は並々ならぬ恐怖を感じるのだ。

舌先から溢れる血をチューチューっと吸い上げられた後、やっと二人の唇が離れた。お互いの顔は紅潮し、全身がまだ震えてる。

 

「…お風呂湧いてるから…おやすみ…」

「う、うん…おやすみ…」

 

彼女は僕らの寝室へと寂しそうに歩いていった。

僕の舌は動かすだけで、ビリビリと鋭い痛みが走るほど痛めいていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ダイニングテーブルには、香ばしく焼かれたベーコンエッグと少し焦げ目のついたトースト、サラダ、そしてヨーグルトが彼女の前に並んでる。そして僕の目の前には冷めた中華粥と冬だと言うのに冷製ポタージュがならんでいる。彼女は黙々とそれらの食事を食べている。しかし、僕は手をつけようとしなかった。素晴らしく晴れた天気の日曜の朝。普段ならこんな憂鬱な気分になるはずがないんだが…

 

「…どうして…あんなことをするようになったんだい?」

 

その言葉で彼女の食事のペースが遅くなる。

 

「…あんなことって?」

「とぼけないでくれ…昨日の夜、いやここ一週間の君の行動だよ!あれのおかげで僕はまともに食事すらとることができないんだぞ!?」

「…そう。」

 

バンッ

 

「なんだよ!その返事は!気でも狂ってるのか?本当に…おかしいよ君は…」

 

僕がテーブルを叩くと、彼女の動きが止まった。

 

「…最近…あなた遅くに帰ってきて、何も会話も触れ合うこともできなかったじゃない…仕事なんだからしょうがない。それじゃあ、私…我慢できない…どうしてもあなたが欲しくて…つい…」

 

その言葉で僕の怒りは最高点に達した。

 

「ふざけるな!確かに、君に寂しい思いをさせたのは十分承知だ。その借りを返すことも考えてた!なのに!君は目先の利益ばかり考えて行動して…帰ってきて早々にあんなことされる僕の気持ちもかんがえてくれよ…」

 

僕は呆れと怒りの中、ただ頭を抱えるという行動しか取れなかった。

 

「なんで…僕の舌を噛んだんだ…」

 

普段より一層小さく、彼女はこう言った。

 

「あなたが…最近私の料理を食べてくれないのが…本当に辛くて…行きてる価値すら否定されてる感覚だったわ…だから…舌を噛んでモノを食べづらくできないかなって…ごめんなさい…」

 

テーブルの上に並んだ、中華粥と冷製ポタージュ。二つとも体の調子の悪い人が食べるような料理…料理自体は冷たくても、細部までしっかりこだわって作られたそれらは彼女の目一杯の愛が感じられた。

 

僕はより一層悲しくなってしまった。

 

「…僕らは…夫婦なんだぞ…カップルじゃないんだ…君のとってる行動は愛なんかじゃなくて単なる依存心からくる行動だ!僕らはそんなことのために結ばれたのか!僕らの絆は相手の実体や言質に触れてないと途切れるようなものなのか!?」

 

再び、沈黙が続く。彼女は僕に震えた声で話し始めた。

 

「それの…何が悪いの…あなたの恋愛観って結婚が全ての終わりだと思ってるの?結婚したらあなたを愛しちゃダメなの?心の絆?真実の愛?そんなの映画でしか通用しないわ…これは依存なんかじゃない。私が導いた正しい愛よ…」

「そう思ってる時点で既に依存じゃないのか?愛すことで全てが解決するならそう不幸な人間は生まれてこないさ!もし僕が明日死んだら君はどうなる?それで生きていけるのか!?」

「死ぬわ。」

 

やっぱりか…

 

「だったら…その性分が治るまで…君は僕に対する態度を少し抑える必要があるよ…いつかは情欲も自然と収まって来るはずだよ…」

 

そう言ってしまったのが…僕の最大の誤算だった。

 

 

 

彼女の目からハイライトが消え、顔が引きつって涙がこぼれ落ちそうなほど瞳が潤んできた。

 

「わ…私に…あなたを愛すことをやめろって言うの?」

 

久しぶりに見た、この瞳に恐怖と後悔を覚える。

あぁ…そうだ…彼女がこの目をしたら、止められないんだ…でも今日は言わなきゃいけない…

 

「そこまでとは言わないけど…君のその単純な快楽主義、物質主義は見るに耐えないよ…もっと僕のことを信頼してーー」

「何がダメなのよ!私は…私は…あなたの為に生きて…あなただけを求めて…あなたが笑顔で幸せにいられるように願ってるだけなのに…どうして…どうしてそんなことを言うのよ!」

「君がしてるのは僕のためではなく、ただの自分の為の行動だろ?自身の快楽のために僕の舌を噛んで口を吸う。僕は全く望んでないのに…結局それはあなたのため、とか、あなたを愛してるから、とか言う言葉で着飾らせているエゴでしかならない!わかるかい!?」

 

僕の言葉が響いたのだろうか。彼女は体全身を震わせて、この世の終わりでも見たかのような表情で椅子から立ち上がった。

 

「いやだ、そんなことない、エゴなんかじゃない…あなたのためなら…あなたの願うことなんだってするつもりよ?…そんなわがままでクズな女じゃない…お願い…治して欲しい所があるなら治すから…なんでも言ってくれれば受け止めるから…ただ…それだけは…それだけは言わないで…エゴなんて…エゴなんかじゃ…」

 

ヒグッ...グスッ...ウゥゥ..

 

彼女はついに泣き出してしまった。いつも見る嘘泣きなんかじゃない。心から恐怖し絶望した時の涙だ。そんな彼女を見て余計に嫌気がさしてしまった。

 

「…散歩してくる…」

 

僕は泣いてる彼女を置き去りにし、リビングを後にした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

外の空気は冷たかった。息をするたびに吐き出された暖かい吐息はたちまち白くなり、吸った空気は喉に刺さって咳き込んでしまうほどだった。數十分ほど、浮遊感を帯びながらふらふらと歩き回ったが、この行動で生まれたのは単に自分に対する形容しがたい喜ばしくもやるせないモノばかりであった。愉悦を邪魔する、後者の馬鹿らしくも情けない気持ちを埋めるにはもはや笑うしかなかった。

 

ははっ…はははは!

 

やったぞ!僕はついに行動し、成長することができたんだ!

 

自己犠牲を追っ払い、弱い精神に打ち勝ったんだ!

 

僕は何も間違ってないんだ!

 

だが、こんな気持ちに浸るのも束の間だった。

むしろ次の瞬間にはこれの何万、いや何億倍とも言える後悔の気持ちが雪崩のごとく溢れ出てきたのだ。住宅街のど真ん中で僕は膝から崩れ落ち、ただひたすら泣き続けた。

 

 

あぁぁ…!うぅぅぅぅ…!くそ!くそが!

 

何が成長だ!何が精神に打ち勝っただ!

 

僕が望む人生はそんなものじゃないだろ!

 

僕は彼女を幸せにして笑顔にすることが目的じゃないのか!

 

なんだ…この有様は…今頃彼女はどうしてるんだ…

 

こんな一人の散歩なんて何一つ楽しくもない…!

 

君と一緒じゃなきゃぁ…うううう…

 

そうは言っても…今更あんなこと言って、のうのうと帰ってこれるわけもないか…

 

あぁぁぁ…!あいたいよぉぉぉ…

 

ううう…いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!

 

 

道のど真ん中で一人泣く男を数人の警官たちが取り囲む。

 

「こいつ、なんでこんなところで泣いてんだ…」

「知るか。彼女に振られたんじゃねぇか。」

 

その後なんやかんやあって僕は連行された。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

警察から解放された頃には既に太陽は空のてっぺんに登っていた。

僕は家の前に着き、インターホンを鳴らした。

 

 

返事はなかった。試しに扉を開けようとドアの取っ手を引いてみた。ドアは開いた。きっと僕が出て行ったあと、一回も手をつけてなかったんだろう。

中に入ると女性のすすり泣く音が聞こえた。場所はどうやら寝室からのようだ…

寝室に向かい、扉を開ける。

ベッドには毛布にくるまって寝る彼女の姿が見えた。

 

…最低だ…僕は…

 

僕はベッドに寝て、泣きながら寝ている彼女を抱き寄せた。

 

 

しばらくすると毛布がモゾモゾと動き出し、中から涙でぐちゃぐちゃになった顔が露わになった。

 

「…あなた…?」

 

優しく、彼女を見つめてうなづく。

 

「…あなたぁ…」

 

二人はお互い強く抱きしめ合った。

 

「本当に…ごめん…僕らはどうやら自分の成長なんて生意気なことばかり気にして…君のことをないがしろにしてたようだ…本当…情けないよ…」

「ううん…大丈夫…私も…やっぱりあれは依存行為だったと思うわ………さっき怖い夢を見たの…あなたが私を裏切ってこの家を出て行くっていう夢…本当に怖かった…もしかしたら現実でも…あの時家から出て行ったきり、二度と帰ってこないんじゃないかもって思ってしまって…でも、あなたが今こうやって目の前にいて、ほんっとうに安心したわ…!」

 

本当に良かった…僕はあの時、くだらない理由で道を踏み外すところだった…

 

「ただね…これだけはわかってほしいの…決して依存できれば誰でもいいってわけじゃない…あなただから…あなたがいないとこうなってしまうの…でも…迷惑なのは変わりないわよね…」

「迷惑じゃないよ…僕も…君が僕を求めることが、幸せになる方法の一つだってことを理解して生きていくよ…たとえお互い依存してても、二人が同じ方向を向いているなら…永久に変わりはしないと思うよ…」

 

愛し合ってると言うが、喧嘩することなんて珍しくない。でも、次の日になればお互いけろっとして何事もなかったかのように終わる。けれど…今回ばかりは、自分の気持ちをしっかり話すことができて本当に良かったと思うな…

 

………

 

……

 

 

 

翌日

 

好き!(目覚めの挨拶)」

 

依存が悪化した…

 

 




ちょっと待って?
デレが少ないやん。
タイトル通りだ、安心しろ。
今回もなんかシリアス回になってしまいました…まぁ僕の脳内なんでね。しょうがないね。
次は書いてて死にたくなるようなデレデレデレイチャイチャ回です!
多分今日か明日の夜投稿します。


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ヤンデレデレデレデレな男とヤンデレデレデレデレデレな女が送るイチャイチャの話

ほらぁ!イチャイチャな時間だぁ!
タイトル通りデレ多めだぞゴラァ!
イチャイチャやべぇ!見直したら恥ずかしくて死ぬっ!
書きたくないけどやっぱり書いちゃう!
めっちゃ書いててニヤニヤしちゃうよぉぉぉぉぉぉ!
…それではご覧ください





先日の事件から彼女は僕に危害を加えることはなくなった。

 

朝は朝食だけを作り、夜遅く帰ると既に寝ている。

 

そんな生活に戻ってた。

 

だが、これは決して彼女の依存心がなくなったわけではない。

 

むしろあの一件で倍増してしまった…ほどである…

 

 

「…離れてくれない?」

 

「やだ。」

 

 

今日は日曜日。

 

休日出勤もなく、この一週間で唯一彼女と一緒に過ごすことのできる

日だ。

 

今日は普段の感謝のために僕が料理をしてあげようと思っていたのだが…

 

台所の前に立ち、鍋を下の収納から取り出そうとした瞬間…

 

彼女が後ろから抱きついてきた。

 

 

「…これから僕火とか刃物扱うから危ないと思うんだ…」

 

「やだ。」

 

「このままじゃ朝ごはんが作れないんだけど…」

 

「やだ。」

 

「…俺のこと好き?」

 

「好き!」

 

「じゃあ僕のために離れてね。」

 

「…ちっ」

 

 

舌打ちをすると僕の胸もとから腕を話して、テーブル席に座った。

 

おお、怖い怖い。

 

 

「いつになったら抱きついていいの?」

 

「食事が終わったらいくらでも。」

 

「じゃあ早く!」

 

 

どうやら僕には興味があっても、僕の作る料理には興味がないようだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

僕らは食事を終えた後、再び寝室に戻りベッドに寝転がった。

 

僕は疲れてるから、二度寝をするつもりだったんだけど…

どうやら彼女はさっきの続きがしたいそうだ。

 

 

「フーッ!フーッ!フーッ!//」

hshshshshshshs

 

 

彼女が僕に後ろから抱きついて、顔を僕の首元にうずめる。

 

荒い息が当たって気持ち悪い。

 

 

「…興奮してんの?」

 

「もちろんよ。」

 

 

やっぱり。

 

 

「…何してるの?」

 

「寝てる時、毛布の暑さで汗をかく、その汗が服に染み込む、特に襟、それを私は嗅ぐ!以上!」

 

「あ、はい。」

 

 

支離滅裂な返事に戸惑う。

 

 

「はぁぁ…あなたの匂い…//私だけが知ってるこの芳醇な香り…//」

 

相変わらずの変態だ…

 

…ちょっとイタズラしてみるか…

 

 

「えいっ。」

 

「えっ、

 

 

 

 

〜〜っっ!〜〜っ!!////♡」

 

 

僕は着ているトレーナーで彼女の頭を上から包み込んでみた。

 

もぞもぞと服の中で悶え始める。

 

 

「ほれほれ〜天国かぁ?」

 

「〜〜っっ!〜〜っ♡♡♡…っ!//

 

 

 

………」

 

「…えっ?」

 

 

もぞもぞと動いてた体が、急にピクリとも動かなくなった。

 

心配になった僕は、トレーナーをめくって彼女の顔を確認した。

 

 

「…気絶している…」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ゆさゆさと揺らしたりペチペチと額を叩くと、数分後に彼女は起き上がった。

 

どうやら興奮しすぎて頭に血が上りすぎたそうだ。

 

 

「ごめん…ちょっとしたいたずら心だったんだ…まさか、こんなことになるとわ。はは…」

 

「いやむしろ、最高だったわ。てか逆に最高すぎて死ぬかと思ったわ。」

 

 

まぁ、最近僕に触れることすらなかった分…匂いとか感触にはより敏感になったんだろうな。

 

とりあえずなんか言わなきゃダメだな…

 

 

「今回のは下手したら死ぬかもしれなかったかもな.やっぱりこういう行動は少し抑えた方が…」

「なんで抑える必要があるの?」

 

 

彼女の目のハイライトが消えた。

 

やべっ。

 

 

「私、一生懸命我慢してあなたのために普段の行動を抑えたんだから、今日くらいはいっぱい甘えていいじゃない?私言ったわよね?あなたがいないとダメだって。あなた成分が今私には足りないの。まぁいきなり不意打ちを食らって、幸せ逝きしそうになったけど、今はもう足りないわ。とりあえず今日中にあなたのことをぶち犯して赤ちゃんでもこしらえるつもりだけど、異論はないわね?ねぇ、そうよね?ねぇねぇねぇねぇ…」

 

「あー!わかったわかった!はいはい!君の気持ちは十分理解してるから!とりあえずそれは後でね!僕は本を取ってくるから!」

 

 

僕は恐ろしく吸い込まれそうな目から逃げるように、寝室から出ようとした。

 

 

「えっ…嘘っ…」

 

 

僕の言葉を聞き、目のハイライトが戻っていく。

 

寝室のドアノブに手をかけようとした瞬間、彼女のさっきまでの高圧的な口調が甘える子猫のような声へと変化した。

 

それは泣きそうで、まるで痛いげな少女のようだった。

 

 

「…本当にいっちゃうの…?」

 

ピクッ「…」

 

 

自然と動きが止まった。

 

 

「今日だけは…一秒足りとも離れたくないの…お願い…いかないで…」

 

 

僕は思わずニヤリと笑う。

 

 

「…君にしては随分と声色が違うな…僕の知ってる君はもっとクールな声だと思うんだけど…」

 

「…うん…今日だけ…明日になったら変わるから…お願い…素直にさせて…?」

 

 

…素直にさせて、ねぇ…

 

カチャ

 

僕は寝室の鍵を閉める。

 

 

「君のその態度は、明日になれば何もかも変わるんだよね。」

 

「…うん。もちろんよ…」

 

「…そんな君の姿を見て放っておくなんて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勿体無すぎるじゃないか!♡

 

 

ベッドにダイブ!そして彼女の目の前で両手を差し出す!

 

 

「さぁ、僕の胸に飛び込んできな!♡なでなでだってイチャイチャだって好きなだけしてあげるからなぁぁ!♡♡」

 

「あなたぁ!///♡超しゅきぃ!♡」ガバッ!!

 

 

その日はもう人に言ったら恥ずかしくて死にそうになるくらい、愛の言葉を語り合い触れ合った。

 

次の日の朝、顔を合わせるとすごい気まずかった。

 

学生かっぷるかよ。




…はい。
少し文章形式を変えて見ました。変更してほしい。これがいいなどがありましたら、ぜひ参考よろしくお願いします。
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感想たくさん欲しいな…(ボソッ)


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残業続きで車にはねられた男と過保護で嫉妬深すぎる女が送る深夜の話

今月は本当に濃い出来事ばかりだなぁ…

 

11月入って早々、部署を移動したり、パワハラ上司と示談交渉したり、挙げ句の果てに会社の部下に犯されそうになるわ…

 

全く、なんだか運が良いのか悪いのかよくわからない感じになってるなぁ…

 

今日も僕は残業を終え、今は駅からチャリで帰宅してる最中である。

 

深夜という事もあって、辺りにはほとんど誰もいない。

 

 

「…はぁ…今日はいつも以上に疲れたなぁ…書類のミスも倍以上あったし…」

 

 

平日が始まってから日々の睡眠時間は1日5時間にも満たない。

 

僕の体は限界寸前であった。

 

 

「家帰って寝たい…だるい…死にたい…お腹すいた…飯…いや、眠い…ベッド…風呂もだるい…」

 

 

こんなことをぶつぶつ呟いてると次第に瞼が重くなっていった。

 

チャリのハンドルを握る力も弱くなり、次第に体が前方へもたれかかっていく。

 

 

「うう…」

 

視界もぼやけ、だんだんと外の景色の色がなくなってくるように見えた。

 

完全に意識が落ちるその時だった。

 

 

 

 

 

ドゴォン!

 

全身に金属か何かで叩きつけられたかのような痛みが走る。

 

今まで感じたことのない浮遊感ーー

 

その浮遊感もつかの間、数秒後には着地し、さらに鈍い痛みが全身を駆け巡った。

 

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

車から降り、急いで駆けつけてくる運転手

 

 

朦朧とする意識の中…僕の体は…

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

別に大したことなかった。

 

どうやら、着地の時に肩から落ちたため軽傷で済んだようだ。

 

まぁ手が車との追突との瞬間、ハンドルを握ったままだったので少し打撲と捻りを起こしてしまった。

 

あとは顔にかすり傷程度か…ふー…不幸中の幸いだったなぁ…

 

ただ…

 

 

「す、すいません!完全に脇見してました!わ、わざとじゃないんです!治療代の用意と弁償は必ずします!」

 

 

チャリが完全にぶっ壊れてしまった。

 

部品がタイヤの向きがおかしかったり、サドルも原型がなくなっている…

 

これは当分修理しても時間がかかりそうだ…

 

 

「あー…そうですね…とりあえずこのことは…保険会社への連絡で…それで終わりにしましょ?」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

まぁ、命が助かったしお陰でこっちは目が覚めたから気分がいいな。

 

とりあえず元さえ取れれば問題ないか…

 

その後、僕らはお互いの保険会社に連絡してその日は普通通り帰宅することにした…

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ただいまー…って誰もいないか。」

 

 

一人寂しく笑いながら革靴を脱いでると、奥の方から足音が近づいてくる。

 

 

「おかえりなさい。あら、あなたはこの家に誰もいないと思ってるのかしら?…」

 

「う…こんな夜中起きてるなんて…珍しいなぁ…どうしたの?」

 

「失敬な。言葉を選ぶ時は慎重になりなさいよ…いや実は夜中にどうしても甘いものが食べたくなってきちゃって…思わず起き………

 

 

 

あな…た…?」

 

「…?」

 

彼女は顔を真っ青にして、僕の顔を指差す。

 

「そ、その傷……」

 

「ん?あーこれか、いやさっき帰ってる時自転車から落ちちゃってさぁ…」

 

「落ち…?」

 

「大したことないから、大丈夫。ただ手はちょっと打撲しちゃってさぁ…言うて全治2日程度のものだよ。ほら。」

 

 

そう言い、僕は彼女の目の前に打撲した方の手を出した。

 

 

「あ、あぁぁぁ…!」

 

「え…?」

 

 

彼女の反応におどろき、何事かと思って確認すると手から血が微量に流れ出ていた。

 

多分、さっきの場所は暗かったからちゃんと確認できなかったんだろう。

 

「…とりあえず絆創膏ってどこだっけ?」

 

僕がそう聞いた瞬間、彼女は僕の手をガッチリと掴んでペロペロと舐め回し始めた…

 

いやぁぁぁ…死んじゃいやだぁぁ…!お願いぃぃ…とまってぇぇぇ…!いやぁぁぁぁぁ!

 

「ち、ちょっちょっとくすぐったい!何するんだよ!?」

 

彼女の顔はいつも以上に絶望と狂気に満たされていた。

 

「いやぁ!いやぁぁぁぁ……はっ!…はぁはぁ…ご、ごめんなさい…少し取り乱してしまったわ……お、おやすみなさい…」

 

そういうと、再び寝室へと戻っていった。

 

「え…?あ、あぁ…おやすみ…」

 

僕が怪我したことなんてなかったからなぁ…彼女の新しい一面が露わになってドキドキしたなぁ…

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ふわぁ…寝むぃ…」

 

今日も残業…明日も残業…社会人ってこんなしんどかったっけ…

 

まぁしんどかったな。

 

さらに災難なのはチャリがぶっ壊れたせいで、駅から家まで歩きで帰らなきゃいけないこと…

 

全く…本当に今月は内容が濃すぎるよ。まった……

 

 

 

 

 

クルッ

 

 

…気のせいか…

 

誰かがこっちを見ていた気がしたんだが気のせいか…

 

まぁ…こんな男を尾行する馬鹿はいるはずないしな…

 

深夜の住宅街は普段あるはずの人通り、車の音…何一つなく少し不気味だった。

 

しばらく住宅街を歩いていると目の前に地べたに座り込んでる女性を見つけた。

 

 

「どうかされましたか?こんな夜中に…」

 

 

少し怖かったが、困っているかもしれないと信じてその人に話しかけた。

 

 

「あぁ…すいません…実は慣れてないハイヒール履いて足をくじいちゃって…歩こうとしても歩けないんですよー…」

 

「そ、そうなんですか…じ、じゃあ僕が肩でも貸しましょうか?」

 

「あ、そ、その…両足なんで…」

 

 

おい、まじかよ。

 

 

「じ、じゃあ…」

 

「は、はい…恥ずかしいんですけど…//」

 

「」

 

なんか背筋がぞわぞわってしたような…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁ…なんとか…着きましたね…」

 

「ありがとうございます!すいません!おんぶなんてさせてしまって!私重かったでしょ?」

 

「いやいや、全然。僕の体が貧弱なだけですよ…とにかく今度からは気をつけてくださいね。」

 

「は、はい…あ、あの!お、お礼を…」

 

 

彼女が何か言おうとしたようだが、僕はそれに構わず振り返って自分の家の方向へ歩いて行った。

 

 

ったく迷惑なものだなぁ…こんな夜遅く…早く家帰って寝たいなぁ…

 

…と言っても…美人のことをおんぶできたのはちょっと役得だったなぁ…//

 

…………

 

 

………

 

 

……

 

 

「ただいまー…ってあれ?」

 

 

家に帰るとリビングの部屋の明かりが点いていた。

 

おかしいな…普段は消えてるはずなのに…

 

ソファには彼女が座っていた。

 

 

「…君か?」

 

 

そう言うと立ち上がり、僕に抱きついてきた。

 

 

「…ふっ…ねれないのかい?しょうがないなぁ…風呂入ってくるから先にベッドで待っていてね。」

 

ちょっと嬉しくなってそんなことを言ってたのも束の間、

 

 

 

彼女は僕の背中に爪を立て、肉が避けるほどの勢いで引き裂いてきたのだ。

 

 

「い!痛い痛い痛い!何をするんだ!離せ!」

 

「うるさいうるさいうるさい!あのクソあばずれがこの背中に乗ってたのね…私以外の女を乗せたらなんかして!許さない許さない許さない許さない!」

 

「ちょっ…ちょっとまて!まずなんでそれを君が知ってるんだ!」

 

 

ピタッと背中の痛みが止まった。

 

 

「そ、それは…」

 

 

彼女は恥ずかしそうに俯く。

 

 

「なんか今日誰かにつけられてる気がしてたんだけど…まさか…君?」

 

 

 

「……それは…

 

 

 

 

 

 

心配だったのよ!!!

 

あなたが怪我したの見て…怖くなって…その…また怪我とかしないかなぁって思って…すごく心配で…」

 

「…僕がおんぶするのが嫌なら…君がすればよかったのに…」

 

「あなたの行動を見てて『私の夫優しすぎ…?好き好き!』ってなっちゃって…声をかけられなかったわ…でもあなたの行った行動は罪よ。償いは絶対してもらうわ。」

 

 

やれやれ。なんか時々ポンコツで抜けてるところが出てくるなこの人は。そういうところが可愛いんだけど…

 

 

「じゃあ、何で償えばいいかな?常識の範囲内で、だけど。」

 

 

すると・嬉しそうに彼女は口を開いた。

 

 

「私を寝室までおんぶしなさい!」

 

「…はいはい。じゃあ乗って。」

 

「♡//」

 

 

僕がしゃがむと、彼女はソワソワしながら背中に乗っかってきた。

 

 

「の、乗ったわ//早く上げなさい//」

 

「はいはい。よいしょ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重い…」

 

バキッ! 

 

 

 

全治一週間に伸びました。

 

 

 

 

 

 

 




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人と話すのが少し苦手な男と彼女の中学の友達が送る幸せの話

テーブルにはアッツアツのチーズグラタン、フランスパン、サラダ、そしてグラス一杯のワインが二つずつ並んでいる。

 

休日にしては早めの夕食である。

 

彼女がグラタンをスプーンで残さず綺麗に平らげた後、口を開いた。

 

 

「ねぇあなた、お願いがあるんだけど…」

 

 

僕は少し嫌な顔をして、持っていたスプーンを食べかけのグラタンの皿に置いた。

 

 

「君のお願いを聴くと僕の身にろくなことが起きないんだけど…」

 

「まぁまぁ、確かにそうかもしれないわね。でも今回は普通のお願いよ。リスクも何もないわ。」

 

「…一体なんだい?」

 

 

彼女もスプーンを置き、テーブルに頬杖をつく。

 

 

「実は、私の中学の同級生が最近近くに引っ越してきたのよ。当時は仲が良かったんだけど…大学入ってからは一回も会ってないのよ。でも、ようやく知り合いのつながりで連絡先を手に入れることができたの。」

 

「それは男か?」

 

「……女よ…」

 

 

思わず突拍子も無い発言をしてしまったことに気付き、我に返って顔を赤らめた。

 

 

「ご、ごめん…ちょっと妬いちゃった…」

 

「好き。でね、その子が、私の結婚相手であるあなたを観て見たい〜ってしつこく言ってきたのよ。本当に仕方ないんだけれど、明日会うから一緒について来てもらえる?」

 

「あー…不安だなぁ…君の友達だから多分大丈夫だとおもうけど…何を話せばいいかさっぱりわからないなぁ。」

 

「ただ質問に答えればいいだけよ。それにあなたとあの子との一対一じゃなくて私もいるから平気よ。」

 

「そ、そうかぁ…じゃあせっかくだし行こうかな。」

 

 

そう返事した瞬間、彼女は目を細くし、ニタァ…と不敵な笑みを浮かべて席を立ち上がった。

 

 

「じゃあ、人前に出ても恥ずかしくないようにしなきゃいけないわね♪」

 

「…へ?」

 

「ほら!私が顔から足先、髪の毛一本まで全身整えてあげるわよ!ほら立って!♪」

 

「ちょ…!まだご飯食べ終わって…!」

 

 

本当に…この人の心とかペースって読むことができないなぁ…

 

僕は腕を引っ張られ、浴室に連れ込まれてしまった…

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌日

 

 

「ちょうどこの前服を買っておいてよかったわねー。」

 

「やっぱりこの服派手だよ!君の友達がどんな人かは知らないけど、見たら幻滅するかも…」

 

「自信持ちなさいよ。」

 

 

電車から降り、駅を出ると冷たい夜の空気が僕たちの体を包み込んで来た。

 

厚着をしても足首や頬はビリビリと寒さで痺れてくる。

 

 

「確かこの辺にいるはずなんだけど…」

 

 

彼女は辺りをキョロキョロ見渡すがどうやらそれらしき人が見当たらないようだ。

 

 

 

…ん?

 

奥から一人の女性が近づいてくる。

 

肩までかかる長髪を持ち、キリッと凛々しい顔立ち、まさにキャリアウーマンという姿であった。

 

 

「橘さんですか?」

 

 

僕らの名字が呼ばれ、彼女が振り返る。

 

 

「杏…?」

 

「あら、久しぶりね。ふっ…何よ。あなたいつのまに金髪になんかしてるの?おまけにメイクもすっかり変わっちゃって…」

 

「この人の好みよ…紹介するわ。この人が私の夫よ。」

 

「あっ…よろしくお願いします…。」

 

 

そう挨拶すると、よくわかんないが杏さんはこちらを凄い勢いで睨みつけてきた。

 

こ、こわい!

 

い、イヤヤや…落ち着け落ち着け…もともとこう言う目なのかもしれないだろうが!それを信じるんだ!

 

「とりあえずレストラン予約してあるからそこに行きましょう?お二人さん。あなたとは積もる話もあるしねぇ。」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

レストランに着くと杏さんはコートを脱ぎ、マフラーを外した。

 

改めて見るとモデルみたいな体型だ。

 

僕は身長だけは自信があるのだが、ふつうに僕と変わらないから…きっと170後半は余裕であるんだろうなぁ。

 

 

「ここはコースがあらかじめ決まってるから、料理が来るまでお話ししましょう。」

 

「そうね。最後あったのは高校二年の時だったかしら?だいぶ身長が伸びたわねぇ。当時から高い方だったけど、もう一瞬誰かと思ったわ。」

 

「ふふ、あなたの方こそ最初黒い髪の毛を目印にしてたから見つけられなかったわよー。そしたらよりによって金髪とか、かなり遊んでたんじゃない?」

 

「まさか、そんなことないわよ。彼が選んでくれたのよ。」

 

 

本当だ。

 

彼女の髪で僕が一番好きなのは金髪のショートヘアなんだからな。

 

 

「ふーん。彼とはどうやって知り合ったの?」

 

「大学の新入生歓迎会でたまたま一緒になってね。少し話す機会があったからだんだん惹かれていったのよ。」

 

「そんな前なの!じゃあ一年の時?前の彼氏とはほとんど長続きなんてしなかったのにねぇ。」

 

 

杏さんがそう言うと、彼女は頰を赤らめた。

 

 

「…運命の人だから…//」

 

「」

 

 

杏さんは、はぁ…とため息をつき頭を抱えた。

 

 

「…あなたがそう言う事言うとは思わなかったわ…」

 

「あら?ダメかしら?人なんて十年経てば変わるものよ?趣向も性格も。」

 

「それもそうかしら…ところで旦那さん。彼女との生活ってすごい大変じゃない?」

 

今度は僕の方を向いて、質問してきた。

 

 

「えっ…そんなことはないですが、何故でしょうか?」

 

「いやぁね…彼女ってすごく冷淡で人と自分に厳しくて皮肉だったり小言ばっか言うから生活してて気になるでしょう?だから私絶対結婚なんてできないと思ってたのよ。ところがこんなイケメン連れてきて…まぁ…そう言う性格だから、わたしと馬があったのも事実だけどね。」

 

彼女の長いまつげがピクッと動く。

 

その表情はいかにも苦しそうだった。

 

 

「別に、そんなこと一つもないですよ…?少し、クールな部分もありますけど、可愛らしかったり愛嬌のあるところだってたくさんあると思います。」

 

「それは…本当…?」

 

 

ギロッと僕を睨みつける。

 

少し怖気付いたが、僕はそれをはねのけるように答える。

 

 

「本当です。」

 

「…そう…

 

あら、料理が来たわ。お話はこれくらいにして頂きましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

料理は非常に豪華なものばかりであった。

 

今までに食べたことのないような料理ばかりで少し困惑するほどだった。

 

 

「ごめんなさい、杏、お手洗いに行ってくるわ。」

 

「うん、わかったわ。」

 

そう言うと、食事中に彼女は席を立ちトイレへと向かった。

 

すると、

 

 

「…あなた…彼女のどんなところに惚れたの?」

 

「…え?」

 

 

彼女の姿が見えなくなった途端、杏さんは箸を置いて僕に問い詰めてきた。

 

 

「…」

 

 

正直何を言えばいいかわからなかった。

 

彼女と出会って10年。

 

紆余曲折あったが、それを全て受け入れて歩いてきたのだ。

 

今更好きなところと言われると困ってしまう…

 

 

「笑顔…ですかね。彼女が時折、見せてくれる優しい笑顔が好きです…普段あまり笑わないからそのギャップについクラッと来ちゃいますね…ハハハ…」

 

僕がそう笑いながら言うと、杏さんの顔はまるで信じられないことを聞いたかのような表情になっていた。

 

 

「…そうなのね。」

 

「何か問題でも?」

 

「いや、違うの…むしろ嬉しくて…」

 

 

表情が一変し、優しい笑みで杏さんは僕に語った。

 

 

「あの子って…中学の時本当に笑わなかったのよ…中学の頃男子に雪女ってあだ名がつけられたくらい…ふふふ…今思うと馬鹿らしいあだ名だけど、お似合いだったかもね…高校に入ってから少し笑うようになったけど、それはむしろ逆で冷笑というか皮肉な笑い方っていうそういう不純な笑い方が多くなってね…」

 

「…初めて知りました…」

 

「うん…でね、私って人と話すとその人の性格とか好みとか結構わかっちゃうのよ。昔、彼女の元カレとかとも会ったんだけど…なんていうか、付き合うことを単なるステータスとしか考えてないっていうか…相手をモノみたいに考えていたのよね…でも、あの子もそういう考えだったの…だから、別れろって言うにもなんだか悲しくて言えなくて…本当に辛かったの…」

 

「…」

 

 

人の過去を知っていいことなんてあまりない。

 

もちろん知ろうともしたくない。

 

だが、だがこの話は僕と彼女との関係をより密接になるきっかけになるだろうと真剣に耳を傾けた。

 

 

「あなたと話してわかったのは、とりあえずあなたは彼女を愛してるんだなぁってこと。それだけで及第点なんだけど…びっくりしたのはあなたの好きな所が笑顔だって所…どうやらあなたと過ごして、本当にあの子は変わったみたいね…ふふふ…」

 

 

杏さんはニコッと始めて自然な笑顔になった。

 

その笑顔は満面ではないものの心から彼女を祝福しているかのようだった。

 

 

「さすが、高級レストラン…トイレも一流だったわ…」

 

 

そんな事を話してるうちに彼女が帰ってきた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

僕らは食事を終え、駅で別れることになった。

 

 

「じゃあまたね。今度はいつでも会えるから、何かあったら連絡ちょうだい。」

 

「わかったわ。杏もお仕事頑張ってね。体調とか崩すとこっちが困るわ。」

 

「わかってるわよ。じゃあね。」

 

杏さんは手を振って、僕らとは反対側のホームへと向かった。

 

その途中、僕の方を向いてニコッと笑ったあと背を向けた。

 

あの笑顔はどう言う意味だったのかな。

 

きっと…

 

 

「ねぇ…あの子どうだった?」

 

「とてもいい人だったね。君に少し似てるところもあったよ。」

 

「…浮気はダメだから…」

 

「ふふ、まさか…

 

 

 

あのさ…」

 

「ん?」

 

 

僕は彼女の肩に手を置き、まっすぐ彼女の目を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君を絶対幸せにするから。」

 

 

 

「…い、いきなり何を言うのかしら…//」

 

 

自分でも少し恥ずかしくなったが、これでいいんだ。これで…

 

 

彼女は一瞬目を逸らしたが、また僕の方を見て呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。もう既に幸せよ。」

 

その笑顔はこの世界の誰よりも輝いていた。

 

 

 

 

 




ちょっとギャグすくねぇなぁ…

次はてんこ盛りにします。


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番外編「ヤンデレな女が好きな男とヤンデレな女が好きなその息子が送る結婚の挨拶の話」

UA15000記念!
今回は男と女が子供を作り、息子が結婚するときの話です。


ジ- ジ- ジ-…

 

カチッ

 

 

「こんなものかなぁ…」

 

 

普段、邪魔だと思うまで絶対に髭を剃らない僕がなんと2日ぶりに髭を剃っている。

 

別に生活習慣を変えたとか、ただ忘れていたと言うわけでもない。

 

今日はこの多難だった55年の人生の中で最も待ちわびていた日の一つであるからだ。

 

 

シャッ シャッ シャッ シャキ-ン

 

 

「…君は何をしてるんだい?」

 

 

僕の妻がなぜか台所で包丁を丹念に研いでいた。

 

 

「ふふふ…何って…挨拶のおもてなしの準備に決まってるじゃない…ねぇ?」

 

「…なんでおもてなしが包丁を研ぐことであると解釈したんだい…?」

 

「そりゃあねぇ…もしあの子がどこの馬の骨かもわからないあばずれクソアマだったらどうするのよぉ…そんな奴を連れて来たら、わたしがぁ…ふふふふふふふ♪」

 

 

…この人は相変わらずだなぁ…

 

今日はそう、僕らの長男である雄星が結婚相手を連れてくるのだ。

 

 

雄星は今26歳。彼女によく似た長い睫毛と端正な顔立ち、冷静でクールな所、僕に似た高身長と少し癖っ毛だが黒くて美しい髪に自分としては自覚はないが…真面目で強い正義感を持った青年だ。

 

彼女からしたら当然だが、僕にとってはこれこそまさに「トンビが鷹を産む」と言ったところだ。

 

彼は根っからの努力家で、一番は取れないもののいつも何事でも熱心に取り組み素晴らしい結果を残すタイプだ。

 

本当僕とは正反対だ…

 

そんな彼は学生の頃から色々な女の子からモテてたらしい。陽キャめ。

 

だが、その数多くの女子の中で最も彼を愛してたのは僕の妻だろう。

 

彼への愛は尋常でなく、過保護というか心配性というか…彼女が雄星にする母としての行動は、母親というより王を崇拝する家臣のような異常さであるのだ。

 

 

「私たちの愛の結晶を簡単に壊されてたまるものですか…絶対に…そんなこと許さない!」

 

 

彼女が包丁をプルプルと震えながら握りしめてると、家のインターホンが鳴った、

 

 

「お、ついに来たみたいだよ。」

 

 

玄関に向かい扉を開ける。

 

そこには僕らの自慢の息子、そして彼の婚約者であろう女性が立っていた。

 

 

「やぁ、父さん。紹介するよ、この人が今度結婚する楓さんだよ。」

 

「大祓楓ですぅ…この度はお機会を頂きありがとうございます…ふふふ…」

 

「あ、あぁ…どうも。」

 

 

その女性は柔らかくも妖艶な笑顔と色欲を狩られるような色気を醸し出していた。

 

多分彼とそれほど年齢は変わらないだろうが…20代とは思えないほどの魅力を持った人だ。

 

「あらぁ!こんばんは〜…その方が雄の結婚相手なのねぇ…まぁ、とりあえず中に入ってもらって…ね?」

 

 

彼女が僕の後ろで挨拶する。

 

普通に聞こえる挨拶だが、長年付き添って来た僕ならわかる。

 

 

 

この声はガチで怒っているーー

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なるほど…つまり、楓さんは会社の受付嬢の方でうちの息子に一目惚れしたと…」

 

「はい…♪その時は運命だと思いましたわ…そのあと、色々な手を打ってなんとか会う機会をいただくことができましたの…♪あの時は人生で最も嬉しかったくらいですぅ…」

 

「いやぁ…そんなこと言われると、照れるじゃないか。」

 

 

僕らがテーブルの席について和やかに普通の会話を続ける中、彼女は依然と愛想笑いを続けていた。

 

ただの愛想笑いではない、こめかみのところがピクピクと震えてるのをみるとなんとか怒りを抑えている、と言う感じだ。

 

僕は内心めちゃくちゃ焦っていた。

 

そんな中、

 

 

プルルルル

 

 

「ん?…あぁ、会社から電話だ。」

 

 

と言い、雄星は楓さんにスマホの画面を見せる。

 

 

「ごめん…三人とも話の途中だけど一回抜けるね!すぐ終わるから!」

 

 

そう言い残し、席を立って廊下へと去って行った。

 

 

部屋は沈黙に包まれた。

 

………

 

……

 

 

 

しばらく経ったあと、口を開いたのは彼女であった。

 

 

「…楓さん…だったかしら?あなたは雄のどこが好きなのかしら?」

 

 

楓さんは、笑顔は崩さないものの少し戸惑った表情に変わった。

 

 

「ええ…そうですね…雄星さんの好きな所…全てですかねぇ…一言では言い尽くせませんわ…」

 

「なら、お断りよ。」

 

そう言うと、彼女は鬼神の如き表情でそう言い放った。

 

「ええ!?」

 

「ちょ、ちょっと待て母さん!彼女はしっかりとした家柄だし、礼儀も整ってるし分別も常識だってある!非の打ち所がないじゃないか!それに君がそんなこと言う立場じゃないぞ!?」

 

 

咄嗟に僕が正論を言い放つも彼女はその表情を変えようとしない。

 

楓さんの笑顔も遂に崩れて半泣きである。

 

 

「結婚において大事なのはそう!愛よ!愛!あなたは雄のいいところを『全て』と言ったわね?そんなの誰でも言える常套文句じゃない!私なら夫のいいところを円周率の暗記の如くスラスラ言えるわよ!結局あの子のルックスと地位と金目当てなんでしょ!このアバズレ女が!」

 

「あ、アバズレ!そんな…ううう…」グスッ,,,

 

 

あー泣かした!この人、息子の結婚相手泣かせちゃったよ!

 

 

「あと、さっきから思ったのだけど…

 

 

 

なんで家の中なのにそんな厚着なの?」

 

「えっ…それは…」

 

 

たしかに、部屋の中で楓さんはマフラーと手袋をしていた。

 

冬だとは言え家の中は暖房を入れているはずなのに…

 

 

「そんだけ厚着…しかも部分的に着ているってことは、恐らく肌かなにかを見せたくないってことかしら?…ふっ、わかったわ…あなたもしかしてタトゥー入れてるんじゃないかしら?このヤリ○ンが…さんざん遊んだ挙句、身を固めようと雄くんに色仕掛けでもしたんじゃないの!?」

 

「母さん…それは言い過ぎだろ…」

 

「そんなことないです…ただ冷え性なだけで…」

 

「じゃあなんで服はそこまで厚着じゃないのよ!首とか手の甲までびっしりタトゥーなんて…あぁぁ!本当にクソビッチね!さぁ、その汚らわしい肌を見せつけなさい!」

 

「母さん!」

 

僕が止めようとするも彼女は椅子から立ち上がり、無理やり楓さんの服を引っ剥がそうとしている。

 

 

 

「や、やめてください!」

 

「うるさいわね!タトゥー野郎に処女は絶対いないはずよ!間違えないわ!」

 

「母さん!?」

 

「今までに最高何Pしたかも白状させてやるわよ!」

 

「母さん!?」

 

「もしかして、息子の純潔はあんたが……

 

 

 

 

 

 

 

だとしたら絶対許さねえええええ!

 

「かあさぁぁぁぁぁん!」

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

 

僕は彼女の愚行を止めるべく羽交い締めでなんとか動きを制御しようとした。

 

しかし、抵抗も虚しく彼女の身につけていた服はほとんど剥ぎ取られてしまった。

 

そこには…

 

 

「!!??」

 

 

 

 

 

全身手の甲から首筋にかけて火傷の跡で覆われており、背中は無数の深い傷が刻み込まれていた…

 

 

「あの…こ、これって…」

 

 

僕らが戸惑っていると楓さんは瞳孔がガンびらきになり、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。

 

 

「ふふふふ…見てしまったのですね…♪この傷は決して暴行だとか虐待でできた傷じゃないです…全て私がやったもの…これは全て彼への誠意の具現化なのです♡彼以外には決して肌を見せたりなんかしない…私は彼のものだっていうのをどう証明すればいいのかと思って。結果こんな感じにしてみましたの♪」

 

「」

 

 

僕は反応に困ったので目で合図を送ろうと彼女の顔を覗くと…

 

 

 

なぜか涙を流していた。

 

 

「うう…

 

 

 

 

息子をよろしくお願いします…」

 

「かあさぁぁぁぁぁぁん⁈」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ…あなたの誠意と愛、十分に伝わりました。あなたなら息子を安心して送り出せます…」

 

「母さん!?母さん!?ちょっと待って!なんでそんな手のひら返しに…」

 

「ね?そうよね?あ・な・た?♪」

 

 

なんでそんな笑顔なんですか…しかもその笑顔すごく怖いんですけど!

 

 

「あ、あぁ…いいんじゃないかなぁ?↑」

 

 

彼女の雰囲気に圧倒され思わず声が裏返った。

 

 

「よかったわ…さぁ楓さん♪今から雄の素晴らしい幼少の頃からの写真をアルバムに保存してあるから一緒に見ましょう♪」

 

「はい!お義母さま!♪」

 

 

そう言うと、二人は階段を登って二階へと行ってしまった。

 

僕は一人リビングに取り残され、立ちすくんでいた。

 

………

 

……

 

 

「いやーごめんごめん!上司の無駄話がまた始まってさぁ〜…ってあれ?なんで父さんだけなの?二人は?」

 

「……なぁ、雄星よ…お前はあの子のどんな所が好きなんだ?」

 

「え、どこって…うーん…彼女の美しい心かな?容貌ももちろんそうだけど、僕のことを気遣ってくれたら落ち込んでいたりしたらすぐ心配してくれるところとか好きだなぁ…」

 

「そうか…」

 

 

僕は雄星の肩に手を置き、生暖かい目でニコッと笑った。

 

 

 

 

 

 

「血は争えんな…我が息子よ…」

 

「何、それ!気持ち悪っ!」

 

ヤンデレは正義だって、はっきりわかったんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結婚するならヤンデレがいい(切実)
ついに、今月の目標であったオリジナル月間ランキング30位を達成しました!皆様のおかげです!ありがとうございます!
ついにただのオ○ニー作品だったこれが、一つの作品としてこのサイトに顕在したと言っても過言ではないじゃないでしょうか?
一応目標は達成しましたが今後もこの作品をもっとたくさんのヤンデレ愛好家の方に知ってもらうべく是非ともお気に入り登録、投票をよろしくお願いします!


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ストーブ信者の男と夫信者な女が送る物置の話

今回はヤンデレというよりバカップルっすね。さーせん。でも安心してください。クオリティはバッチリです。(当社比)


我が家に何故か衣替えの季節がやって来た。まぁ既に冬なのだがな。

 

と言うのも彼女は腐っても元お嬢様っぽいので、家の事は全部母親にさせてたらしく身の回りの掃除とかは出来るものの大規模な片付けは苦手らしい。

 

そのせいで秋になっても一向に衣替えが始まらずこの季節までほったらかしにしていたのである。

 

我が家は二階建てのごく普通な一軒家だ。

 

1階はリビングとキッチン、風呂と洗面所、そしてクローゼット。2階は僕の部屋と物置、寝室がある。

 

問題なのは物置である。

 

冬も本番になりそろそろストーブを出したい時期になって来た。

 

しかし僕らのせいではあるがそれをしまっている物置はかなりぐちゃぐちゃの状態なのである。

 

僕ら2人はマスクに頭巾を被り、階段を登っていた。

 

 

「最後にストーブ出したのっていつだったかしら?」

 

「さぁ、でもちょうど一年前くらいだったと思うよ。」

 

「…ねぇ、やっぱり暖房でいいんじゃない?部屋全体が温まるし私はそれの方がいいんだけど…」

 

「いや、ストーブは絶対必要だ!あの温かく包み込んでくれる空気!今の日本に足りないのはあの感覚なんだ!」

 

「…本当あなたって変なところで情熱があるわね…」

 

 

二階に上がり廊下の一番奥へと向かう。

 

突き当たりを右に曲がると『勝手に開けるな!』と書いてある張り紙が貼られてるドアが現れた。

 

僕がドアノブに手をかける。彼女は後ろで両手を僕の肩において隠れてる。

 

 

「…いくよ?」

 

振り返って彼女が頷いたのを確認すると僕は一気に扉を開いた。

 

部屋の中は埃まみれで大きいのから小さいのまで、多種多様なモノが棚や押入れからはみ出し、床にも沢山の古着やゴミが散乱していた。

 

「うわぁ…やっぱやめといたほうがよかったじゃない…」

 

「いや。やるよ、僕は。」

 

僕は意気揚々と部屋の中に足を踏み入れ、床のゴミやホコリを物ともせず進んで行く。

 

続いて彼女も部屋に一歩踏み入り、身を乗り出して不安そうに辺りを見渡している。

 

 

「えーっと…ストーブストーブ…あった!…ってこれ大丈夫かなぁ…」

 

数分歩き回って見つけたストーブは、僕の背より少し高いところにある、ギューギューにモノが詰め込まれた押入れの中にあった。

 

 

「…ゆっくり…ゆっくり…」

 

「大丈夫?それ?」

 

僕がストーブを、上に積み上がっている衣服や雑誌を崩さないように

ゆっくりゆっくり引っ張り出しているのを、彼女は心配そうに見つめている。

 

 

「お!いけるいける!」

 

 

しばらく引っ張り出していくと、ついに後数センチ出せば救出完了なところまで迫っていた。

 

僕はもう流石に大丈夫だろうと思い、最後は一気に本体を引き抜いた。

 

しかし、

 

 

「う…」

 

 

自分の家のストーブが電気ストーブだったことを忘れていた。

 

本体は取り出せたものの、コードはまだ山の中に埋まっている状態である。

 

僕はめんどくさくなって、少しばかり露わになったコードを掴んで一気に引き抜いてしまった。

 

すると、

 

 

「あ」

 

 

プラグの部分が衣服に引っかかっていたせいで、山だったモノは一気に雪崩となって僕に襲いかかって来た。

 

「うわぁぁ!」

 

「あーあ…横着するからよ…」

 

「た、たすけてくれぇ…」

 

辛うじて飲み込まれなかった左腕をブンブンと振り回す。

 

 

「はいはい、今退けますから。」

 

 

と言いって彼女は部屋に入り、下敷きになった僕を包み込む雑誌と衣服を片付け始めた。

 

 

「うわぁ…これとか、これも…全部懐かしいわぁ…ほら、これとか何年まえのデニムかしら。今入るかなぁ。」

 

 

一枚一枚どかしていっては、手にとって上にかざしてダラダラ眺めている。

 

お陰で僕は一向に外の光を見ることができないままである。

 

 

「ま、まだかなぁ〜!」

 

「はいはい、ちょっと待って…ってあら!これ私の高校の制服じゃない!」

 

「まじか!」ガバッ

 

 

僕は勢いよく身を揺らして、なんとか山の中から脱出した。

 

 

「もーJKの服で興奮するなんてぇ。すけべなんだからぁ〜。」

 

「すけべです!着ているの見たいです!」

 

「しょうがないなぁ。ちょっと待ってなさいよ。」

 

 

彼女はノリノリで部屋から出て行き、扉をバタンと閉めた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

数分後。体育座りで待っていると扉が開き、中から制服姿の28(笑)のJKが現れた。

 

 

「ふふふ、サイズぴったりだったわ。高校時代からスタイルは変わってない証拠ね。」

 

「く、黒セーラーだと…!素晴らしい。」

 

 

僕は全身が興奮に包まれ、立ち上がって腕を上下にブンブンと揺らす。

 

 

「ふふーん。もっと褒めてもいいのよぉ。」

 

「ただ、君が着ると金髪にピアスだからヤンキーっぽいよね。ハハハ。」

 

「うっ…それはしょうがないじゃない…ところであなたの制服は?確か学ランだったわよね?」

 

「実家だね。別に大したもんじゃないし、本当はブレザーの方が好きだからなぁ。」

 

「あら、そう…」

 

彼女は残念そうな表情をして腕を組む。

 

「?僕の制服姿なんて見たくないだろ?」

 

「いや、単純に制服プレイとか萌えるなぁと思ったのだけr「却下です。」」

 

 

 

「「………」」

 

 

二人は向かい合ったまま硬直して無言になった。

 

 

「…。

 

どうしてよ!」

 

「いやいや!だって俺らもう二十代後半だぞ!?流石に無理があるだろ!」

 

「若い心を持っていればいつでも高校生には戻れるのよ!」

 

「なら君はもうちょっと落ち着きを持ったほうがいいんじゃないか!?」

 

「したいのー!」

 

「だめだー!」

 

ハァ ハァ ハァ,,,,

 

 

先ほどまで窓から差していた西陽も消え、外はすっかり暗くなっていた。

 

彼女が口を開く。

 

 

「ねぇ、もしさ。私たちが高校生の頃出会って、付き合い始めたらどうなってたのかしらね…」

 

「あー…今とそんな変わらないと思うよ。でも高校生だからもっと無茶なことだったりパワフルなことはできたかも。」

 

「そうよね。パンケーキ食べに行ったり、プリクラ撮りに行ったり、一緒に勉強したり、登下校いっしょに並んで歩くとか想像しただけでワクワクするわ!」

 

「その当時僕はそんなアクティブな人間ではなかったけど、君となら是非行きたくなるかもね。」

 

 

彼女は膝を抱えてその場にしゃがみ込んだ。

 

スカートのせいで下半身が寒いだろうか、脛をスリスリと手でこすっている。

 

 

「本当、神様って意地悪ね…高校生でなくても幼馴染なら、もっと私の十代はもっと楽しかったのになぁ…大学は少し遅すぎよ…」

 

 

同時に太ももに肘を置いて頬杖をする。

 

 

「たしかに僕らが付き合った頃はお互いのこととか勉強とかで色々大変で遊びに行くなんて滅多にできなかったしね。もっと若い頃に遊んでいればよかったかも…でもね。」

 

 

その姿を見て僕もしゃがみ込み、彼女の頰をスリスリと擦ってみた。

 

彼女はほおを擦るたび目を細くしていく。

 

 

「…何するのよ。」

 

「遅いとか早いとかって実は関係ないんじゃないかなぁ?十代の頃、人はどんどん成長していくし周りもどんどん関係を作ってお互いを愛し合っていくものだよ。果たしてその時僕らが出会ってたらどんな人間になったのかな?今とは違う思想だったり性格になるかもしれないじゃないか。その場合、絶対二人は長く愛しあえるなんて確証はあるかい?」

 

「それは…そうだけど…」

 

 

僕は彼女の顔を見てニコッと笑って見せた。

 

 

「これからでいいさ。全部、これから。君がしたいこと、君がやりたいこと、全部は叶えられないけど出来る限りしたいと思ってるよ。二人とも二十代で既に自己の形成はできてるかもしれない。でも、二人の愛はまだ未完成だろ?まだ人生長いんだ。どんなに寒くてもどんなに苦しくても幸せはいつの時代も失われないものだから、ね?」

 

彼女は再び目を見開き、数秒真っ直ぐ見つめた後、僕から目をそらした。

 

 

「…ちょっとキュンときたかも。」

 

「うっ…照れること言わないでよ…」

 

「ふふふ、たまにそういう事言うの。かっこいいと思うわ。ほらストーブも出したし、帰りましょう。」

 

僕らはストーブを持って、階段を降りてリビングに戻っていった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ブ-ン

 

「あったかい〜〜。」

 

「あったかいわねぇ〜。」

 

リビングの真ん中にストーブを置き、二人で目の前に並んで座って暖かい風に直接当たる。

 

冬はやっぱりストーブがいいなと改めて実感する。

 

 

「ねぇ、あなた。」

 

「ん?」

 

 

そう言うと、彼女は僕の股の間に座って寄りかかって来た。

 

 

「じゃ、邪魔だよぉ…どいてくれない?」

 

「いやだ。こっちの方があったかいし幸せなの。」

 

「はぁ…全く、ずるい人だなぁ…フフフ。」

 

僕は後ろから彼女を抱きしめ、さらに密着した。

 

これじゃあ僕にはストーブの風がこない。

 

でもどうしてか、身も心もいつも以上にあったかくなった気がした。




そろそろ行くかぁ?(20000UAと200お気に入り)

ほんまぁ…読者様には感謝しかないなぁ…
質問やリクエスト随時受け付けております。是非感想書いてください!オナシャス!


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嫁の飯が不味い男と健康第一を勘違いしてる妻が送るお弁当の話

(投稿頻度)こわれちゃ〜う
すいません…かなり遅れました。ここ数日寝落ちを繰り返しました。





二つの時計の針がちょうど12の方向を指した。お昼休みの時間だ。

 

お昼休みといえば職場で唯一の楽しい時間である。

 

普通の人ならみんなで食事を楽しんだり、外で買い物や所用をすませるのに時間を使うだろう。

 

かく言う僕はパパッとデスクで弁当を食べて、残りの時間は細かい仕事を終わらせてしまう派である。周りから見たら寂しい男だろう。

 

僕にとってはこの昼休みすらあまり楽しい時間とは言えない…

 

彼女が丹精込めて作るちょっとした「訳あり」弁当を残さず食べなければいけないからだ。

 

僕は先ほどまでカタカタと打ち込んでいたキーボードから両手を離し、カバンからそれを取り出して机の上に置いた。

 

すると

 

 

「あ、課長さんってやっぱりお昼は愛妻弁当だったんですね!」

 

 

うっ…

 

蓋を開けようとした瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「前から課長さんって食堂で見かけることなかったからどうしてるのかなーって思ってたんですけど…ここにいたんですねぇ♪」

 

 

そう、新山さん(クソ○マ)が僕の真横に立っていたのだ。

 

 

「…そう言う君はどうしてここに?いつもは食堂か外でも行ってるじゃないか?」

 

「その通りなんですけど、今日仕事が溜まっちゃってるのでコンビニでサラダだけ買ってここでパパッと食べようかなぁって…それにしてもすごく豪華な弁当箱ですね!何が入ってるんですか?」

 

 

そう言うと、彼女は僕の漆塗りの弁当箱をヒョイっと持ち上げていろいろな角度から見つめる。

 

僕はそれを両手で掴み、バッと奪い返した。

 

 

「人の弁当をジロジロ見つめんじゃない。行儀が悪い…」

 

「えー、課長さんあの事あってから私に冷たくないですか?」

 

「当たり前だろ!危うく不倫になるところだったんだぞ!?」

 

「まぁ…そうですけど…あ、そうだ、愛人募集するときはいつでも言ってくださいね?♪」「死んでもするもんか!」

 

 

怒声を浴びた彼女は眉をひそめ、つまらなそうな顔をする。

 

 

「はー…まぁ冗談ですよ…それより弁当の中見て見たいです!あの純愛(笑)に溢れた奥様のことなんですから相当豪華なんでしょう?」

 

 

僕はその言葉を聞いてフフッと小さく冷笑した。

 

 

「あぁ、そうだね…いろんな意味で愛に溢れてるよ…」

 

 

僕は弁当の蓋を開けた。

 

するとなんということだろうか。

 

中には茶色い「何か」とニンニクやよくわからん生き物の丸焼きなどが小分けされて詰め込まれており、しかもそれは普通の人なら嗅いだことのないような奇妙な匂いがムワッと漂ってくるではないか…

 

 

「うっ!な、なんですか!?この匂いと見た目は!」

 

「これは、ニンニクのホイル焼きでこれは高麗人参を煮た奴…で、これは多分…中国の方の食用のトカゲかなんか、でこれは…」

 

 

僕が具を指差しながらメニューを言っていく度、彼女は目を見開いていく。見ていると少し面白い。

 

全て紹介し終わると彼女は珍しく態度を変え、声を荒げてきた。

 

 

「ふ、普通じゃないですよ!な、なんであの人はこんなものを弁当に入れるんですか!?おかしいでしょうが!」

 

「…多分…その…夜の…君に言うと立場的にセクハラになっちゃうようなことのためだよ…精力をつけるというか…」

 

「?……うーん、あっセッ○スですね!」「人の気遣いを無駄にしやがって!」

 

 

僕が再びツッコミを入れると、彼女は先ほどの激しい形相から一般不思議そうに首を傾げた。

 

 

「ていうか、これ弁当なんですか?ご飯もないですし、ましておかずになりそうなものすら一つもないですよ?」

 

「あぁ、それならーー」

 

そう言い、僕はカバンから2段重ねの重箱弁当を取り出し、ドンと机に大きい音を立てて置いてみせた。

 

 

「これが主食だよ。」

 

 

蓋をあけると中には、二段目には先ほどのゲテモノたちを料理した人の作品とは思えない美しいおかず達、一段目には白飯がぎっしりと詰まっていた。

 

 

「うわ!す、すごい…やっぱりあの奥様らしいです。完璧主義っぽいところとか几帳面そうなところとか…」

 

 

残念だが、その見当はハズレだ。フッ、本当の彼女のことを知っているのが自分だけというのはやはり優越感に浸れるな。

 

そんなことを考えてると、再び彼女は首を傾げた。

 

 

「でもこれ…

 

量多くないですか?」

 

「そう、そこなんだよ。あちらのゲテモノは量があまりないからなんとか食べ切れるんだけど…このいかにも体育会系の高校生が食べるみたいな量の弁当は小分けして食べてかないとしんどいんだよ…それも妻が『冬なんだから風邪ひかないように栄養つけてね!』って心配してくれるからなんだけど…流石にしんどいよねぇ。」

 

僕はため息をついて、橋をホルダーから取り出してゲテモノ弁当の中から一つつまみ出した。

 

「うーん…ちょっとこれはダメなんじゃないですか?課長さんの業務とかにも影響出ますし…奥様には言わないんですか?」

 

「言ったら絶対『あなたのために作ったのに!』みたいな感じでヒステリックになるからなぁ。それは避けたいな。」

 

「じゃあこうしましょ?『今日は食欲がなかったから全部たべれなかった』って言って残しましょ?それなら多分許してくれますよ!」

 

「そ、そんなもんなのかな、でもそれを毎日続けるのは流石に心が痛くなるよ…」

 

「そうですよね………これならどうですか!?『上の人に部下とのコミュニケーションのために一緒に食事をしろと言われたから。」どうでしょう!」

 

「いやいや!そんな無茶な命令があるか!速攻拒否だろうが!」

 

「もし奥様に言ってくれたら駅の近くに最近出来た海鮮丼のお店に連れてってあげますよ?」

 

「な、何だと…」

 

 

か、海鮮丼!冬は菌が繁殖するからと妻に止められてる刺身の丼!た、食べたすぎる!で、でもぉ…うーん……

 

 

「わ、わかった…今日の夜帰ったら言ってみるよ…」

 

「さすが課長さん♪よろしくお願いしますね!」

 

 

そう言うと、彼女は自分のデスクに戻り、僕は箸で持ったゲテモノのかけらを元あった場所に戻した。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

その日の夜

 

 

「ただいまー。」

 

「あれ?鍵持ってたの?ピンポン鳴らしてくれたら開けてあげたのに。」

 

「まぁ君も面倒だしいいだろ。あ、そうだ。弁当なんだけどさ、今日少し具合悪くて食欲がないせいで残しちゃったんだよね…本当ごめん…」

 

 

そう言い、僕は台所で料理をしてる彼女へ食べかけのゲテモノ弁当箱を差し出した。

 

すると、

 

 

「う…うそ…」

 

 

彼女が僕の方へ首を向け、プルプルと身を震わせ始めた。

 

あ、やっぱりダメだわ、死んだわ。と僕は思った。しかし、

 

 

「何で?どうして…なんでなんでなんで…」

 

「…え?」

 

 

彼女から発せられた言葉は怒りではなく嘆きであった。

 

 

「あなたのために栄養管理士の資格も取って…料理も済美までこだわって作ったのに…具合が悪いなんて…慢心してたわ…私…ただ料理を完成しただけで満足していた大馬鹿ものよ!あなたのためになんて言ってカッコつけて…本当の思いやりなんて微塵もしてなかった!」

 

「え、ええ…」

 

「ごめんなさい…あなた、本当にごめんなさい!あなたが体調を崩したのは私のせいよ…私がもっと心を込めてお弁当を作っていれば…私…私もっと料理を極めて満足してもらえるように頑張るわ!」

 

「いや、あのその…」

 

「ふふふ…安心して、あなたのことを一番に考えてるのは私…だから今回のことは本当に最低だったわ…でも改心してこれからは愛情をもっと費やしてあげるわ…だから期待してね♪」

 

 

彼女はなんか目の奥が暗いのに、笑顔で僕の手を痛いぐらい強く握ってきた。

 

こ、こんなこと言われたら『ごっめぇーん!☆明日から弁当いらねぇやぁい☆ばいぴょーん!」なんて事言えるわけねぇ!ど、どうしよう…

 

 

そうだ!

 

 

「あ、あぁ。わかったよ。でもあんまり無理しないでね…」

 

「うん…わかってるわ…あなたがそう言うのだから…♪」

 

 

彼女は嬉しそうにニコッと微笑んでくれた。可愛い。

 

 

「ご飯はいらないって言ったよね?じゃあ今日は風呂入って寝るよ。」

 

「うん…体調悪いなら今日は夜伽ぐらい我慢するわ…」

 

 

夜伽かぁ…こういうところで女の品が出てくるんだろうなぁ…

 

そんなことを考えながら僕は風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌朝

 

朝が来た。今日も素晴らしい心地で目覚められたわ…昨日の夜交尾できなかったのは残念だけど…まぁ、いいわ。朝の恒例彼への目覚めの口内直接洗浄キスをしてあげなきゃ…ってあれ?

 

起き上がって横を見ると彼の姿はなかった。

 

 

えっ?

 

 

私はベッドから降りて、階段を下ってリビングに向かう。

 

リビングにも彼はいなかった。しかし代わりにテーブルの上には一枚の置き手紙があった。

 

そこにはこう書いてあった。

 

「上司から早出のラインをもらっちゃった。

その後すぐに寝ちゃったから昨日の夜君に伝えられなかった。ごめん。

今日のお昼はコンビニで済ますよ。」

 

 

…………フフフ…

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

お昼休みがやってきた。

 

今日も僕のデスクにクソ○マ(新山さん)がやってきた。

 

 

「えー!結局ダメだったんですか!?」

 

「うん。なんか怒られたっていうより悲しませちゃってお昼いらないって言えなかったよ。本当ごめん。」

 

「もーしょうがないですね…じゃあ課長さんのお弁当少し食べてあげますよ。食費も浮きますし。ただし大きい方だけです。」

 

「言うと思ったよ…」

 

 

彼女はすごく残念そうな顔をしてる。よほどあの店に行きたかったのかもしれないな。

 

だが、僕も馬鹿ではない。少し頭の回転が早い方なんだぞ。

 

 

「じゃあ弁当箱をカバンから取り出さないとなぁ。ってあれ?ない!弁当がないぞ!」

 

 

僕はカバンの中をわざとらしく弄り回す。

 

 

「…課長さん?」

 

「あー!弁当忘れちゃった。ごめんごめん。じゃあ代わりにどっかでお昼取らないとなぁ?ねぇ?」

 

「課長さぁん…」

 

「…行こうか。」

 

 

彼女の顔がパァっと明るくなっていく。

 

 

「い、イケメンすぎます!い、行きましょう!是非とも行きましょう!」

 

「はは、全くしょうがないなぁ。」

 

僕は席を立って上に向かって大きく背伸びをした。しかし

 

こんな二人の勝利確定ムードに水を差すように横から一人の女性社員が現れた。

 

 

「あ、あの、経理部の橘課長ですよね!?」

 

「ん?そうだが、どうかしたのかな?」

 

「えっと!課長の奥様とおっしゃる方が本社にいら…「あらぁ?あなたぁ♪」ひいっ!」

 

 

彼女の後ろから殺気でビンビンの図太いがよく耳にする声が聞こえた。

 

それを聞いた瞬間、女性社員の子は怯えるように体を震わせてささっと走って逃げていった。

 

 

「な、なんで君がここにいるんだ!」

 

「なんでって…そりゃあお弁当を届けるために決まってるでしょう?あなたが体調を崩さないように朝からお昼まで一ミリ単位で調節して使ったのよぉ…うふふふ…」

 

「そ、そうなのかぁ…あ、ありがとう…丁重にお預かりするよ。」

 

 

僕は、多分怒り心頭の彼女から差し出された重箱をプルプルと震えた手でゆっくり受け取った。

 

 

「あぁ、受け取るのね…てっきり受け取らないと思ってたわぁ…」

 

「え?受け取らないって?」

 

「だってぇ…そこの女とご飯に行くのでしょう?

 

そう言うと、妻はクソ○マの方をギロっと睨んだ。

 

「ひいっ!しょ、しょれわぁ…」

 

彼女は白目を向いて失禁したんじゃないかと心配になるほどビクビク痙攣している。

 

 

「さっきからずっと聴いてたわよ…しかも海鮮丼って…あなた…あんだけ冬に生物は危ないって言ったのに、どうしてそんなところに行くのかしら?」

 

「しゅ、しゅいましぇん…」

 

「お仕置き。よね?」

 

「は、はい!」

 

 

あぁ、殺される。というより具体的にはけつの穴の中を犯される。やばいやばい!

 

僕はいつでも土下座ができるように両膝を地面をつけようとした。

 

すると

 

 

「か、課長しゃんはお弁当を食べるのが嫌だったから私とご飯を食べに行くんんでしゅ!」

 

「「!!」」

 

 

横からクソa…新山さんの震え声ながらも勇ましい叫び声が聞こえた。

 

彼女は口をポカンと開けて呆然としている。

 

新山さんは主張を続ける。

 

 

「あなたがお弁当を作ってあげるのは愛なんですよね!?なら思いやりという愛も必要だと思うんです!あなたが作る弁当は課長さんにしては多すぎるし、もう一つの弁当なんか食べれたもんじゃありません!増して時間制限があるお昼休みにです!課長さんは今まで頑張ってそれを全て完食していたんですよ!どう思ってるんですか!」

 

なんか言葉は聞き取れるんだけど、膝が震えすぎてなんかのダンスみたいになってる。ちょっと面白くなってきたぞ。

 

と思ってるのも束の間。我に帰って妻の方を振り返ると、彼女の頬を涙が一筋伝っていた。

 

 

「そうだったわ…私は同じ失敗を繰り返して…妻として失格よ…あなた…そんなに我慢してたなんて。」

 

「君が丁寧に作ってくれたのを残すなんて出来なかったんだ。でも…少し限界が来て…本当、ごめん…」

 

「ううん…今回は私がほとんど悪かったわ…ごめんなさい…でもね、私たちに隠し事はいらないわ、言ってくれたらいいものの…嘘をつかれたのは、悲しいわ…」

 

「それは僕の責任だ!君には本当に申し訳ないことをした。僕らは夫婦だっていうのに…嘘なんかついて…」

 

 

僕は面と向かい合い、妻の手を取ってぎゅっと握りしめた。

 

 

「やっぱり僕が代償を払うべきだよ。嘘が一番いけないことだってわかってたのにしたんだから。」

 

「わかったわ…弁当はもちろんあなたが作って欲しい通りにこれからは作るようにするわ。でも今回のことで少しだけ信用を失ったわ…」

 

「うん…もちろんわかってるよ…」

 

 

僕は俯いて握り締める手の力を弱くする。

 

すると今度は彼女の方から強く握りしめ、口を開く。

 

 

「だからね。しばらくの間…………

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……

 

 

 

 

あの…邪魔なんですけど…」

 

「やだぁ♪どかない♪」

 

「ええ…」

 

 

彼女がお願いしたこととは、出勤中も僕のそばにずっといるということだった。しかもゼロ距離で。

 

今、僕の妻は何十人もの部下がいる公衆の面前で後ろから、僕にあすなろ抱きをしている。

 

 

「あ、あの課長…書類にサインを…」

 

「あぁ、わかったよ。」

 

 

一人の女性社員が差し出した書類を受け取ろうとしたところ、うっかり彼女の指に触れてしまった。

 

すると僕の妻は腕を解いて、社員の方へ歩いていく。

 

顔はデレデレの緩んだ顔から即座に鬼の形相へと変化している。

 

 

「おい。」

 

ビクッ「ひいいい!な、なんでしょうか…」

 

 

彼女の唇が女性社員の耳元に近づく…

 

 

…色目使ってんじゃねぇぞ…

 

「イヤァァァァァァァ!」ビュ-ン

 

「あぁぁ!まだ書類のハンコ押してな…「ねぇあなた?」はい!何でしょうか…」

 

 

彼女がフーッと大きく息を吐くと僕の方へ振り返り、満面の笑みを見せた。

 

 

「ずっと

 

 

 

 

 

 

 

 

いっしょよね?

 

 

見開いた目の奥はまさに地獄のような色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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