プリキュアDOOMSDAY (宇宙とまと)
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第0話 予告

【前書き】

 プリキュアが、タイムスリップして戦争に巻き込まれる内容です。

 内容の一部や作中の展開の一部は十数年前に、著者が《にじファン》に投稿した、

 『涼宮ハルヒの消滅』のリメイクです。

 (同作品は掲載サイトが消滅したので、閲覧する事は出来ません)

 

 

【注意事項】

 1)  プリキュアが戦争に巻き込まれます。

     嫌悪感を覚える方はブラウザの《戻る》をクリックしてください

 2)  プリキュアへのアンチ要素が内容に含まれます

 3)  史実上の人物が登場します(軍人、及び政治家)

 4)  米英所属軍艦の主砲口径は、インチ表記。(1インチ=2.54センチ)

 5)  合衆国は、今だにメートル法を施行されていない時代です。

     しかし、米側の場面において距離を示すヤードは換算が困難なため、

     あえてメートル表記します。

     高さを示すフィートも使用しませんが、クライマックスシーンだけは、

     雰囲気を出す為に使用します。

    (おおよそ、3分の1にするとメートルになります。3万フィート=1万メートル)

 6)  作中では一部架空の地名が登場する事があります

 7)  一週間に1話から2話の投稿予定です。中断や延期の場合は活動報告に記載します

 8)  涼宮ハルヒシリーズの登場人物の登場は無い予定です

 9)  作者は、物理学などの知識はありませんので、専門的な質問はご遠慮ください

 10) 結末や、重要な伏線等については回答いたしませんので、ご了承ください

 11) 十数年前に、著者が《にじファン》にて掲載していた、

     『涼宮ハルヒの消滅』のリメイクになります

 12) 一部、寄稿していただいた文章を使っていますが、作者様の諒解は得ています

 13) 作者はスイートプリキュアより以前の作品は、視聴していません。

     公式オールスターズ映画みたいに、出番はあっても台詞はほぼ無いです。

     戦争物なので、年少組の出番はほぼありません。

 

【凡例】

 1)  ” ”は引用した著者、文献を示す

 2)  「 」はセリフ、若しくは、発せられた言葉として

 3)  《》は船舶、航空機、戦車の固有名詞に使う

     

 4)  ( )は口に出さない言葉、及び説明としてつかう

 5)  『 』は作戦名、名言、強調などで使う

 6)  【 】は章題

 7)  ~ ~は時間、場所説明。

     なお、~ ~に続けて船舶名などを出す場合は次の行にて明記する

 8)  ――は強調説明など。セリフ中には使わないようにし、

     ―― ――のように使うようにする。

 9)  ……は感情や間などを示すときに使う

 10) ?や!は文末に無い限り、全角スペースを一文字分空ける

 11) 英数字は全て全角とする。ただし、四字熟語、慣用句などは漢字を使用する

 12) 桁数を示す漢字は十万を超える数値から使用する

 13) セリフ中、表現として若い女性においては、あえて、以下を使用することがある

     ・何々〈たち〉

 14) 名称の定まっていない兵士などについては、以下のように定める

     ・連合国側 A、B、C

     ・日本側  ア、イ、ウ

     

 

【航空機の略表記(合衆国)】

 《海軍》

  F:海軍戦闘機

  S:艦上爆撃機

  T:艦上攻撃機(魚雷装備)

  P:偵察機・対潜哨戒機

 

 《陸軍》(合衆国空軍が独立するのは戦後です)

  P:陸軍戦闘機

  A:陸軍攻撃機

  B:中型爆撃機・大型爆撃機

  C:輸送機

 

 

【航空機の略表記(ドイツ軍)】

  A: アラド社

  B: ブローム・ウント・フォス社

  F: フォッケウルフ社

  D: ドルニエ社

  H: ハインケル社

  M: メッサ―シュミット社

  Ju:ユンカース社

 

 

初回投稿は10月27日午前9時前後を予定しています。




 誤字修正しました


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第1話【2017年】 

 【序】

 

 ニューハンプシャーのコンコードでは、月が上天に輝き、星々の煌(きらめ)きで満ち溢(あふ)れていた。その空を見上げていた若者は、本を閉じ、こう呟いた。

 

 《自然は、観測する者とされるモノが一体となった時に初めて本当の姿を現わす》

                       ”ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ”

 

 

 

  【2017年、アメリカにて】

 

 情報機関で分析官をしているジョン・ケインは、その日、ワシントンDCから西に50キロほど離れた町から帰っている途中だった。

 ケインが50キロ離れた町に行ったのは、公務では無く、完全に私事の範囲だ。

 

 数日前、ワシントンDCを含むアメリカ東岸一帯を春の――いや時期的には早春の――嵐が襲い、各地で強風や浸水、沿岸部では高潮の被害も出た。

 ケインの叔父が住む家に隣接する土地には、老朽化した空き家が有ったが、その空き家が強風で倒壊し、叔父の家に、その破片が多数飛び込んでいた。

 

 ケインが非番を利用し叔父の家に行き、後始末を手伝い一冊の本を見つけた――ここまでなら何処にでもある話で、事実、それで終わる筈であった――

 その本は少し奇妙な物だったが、こう書くと何か妙な事件――コロンボ警部辺りに、お出ましを願う事態――が発生した様に勘違いするかも知れないが、別に、何か死体を発見したとか、変な白い粉が見つかったとかでは無かった。

 

 その奇妙な物は、死体でも謎の拳銃でも白い粉でも無く、一冊の日本語で書かれていた、アニメ誌と呼ばれる類の本だった。

 ケインが叔父の部屋を見渡すと、あちらこちらが、倒壊した空き家の破片で傷つけられているのに、なぜか、このアニメ誌だけは傷ついていなかった。

 ケインが、そのアニメ誌を開くと、そこには、日本で放映されているアニメらしい記事が掲載されていた。

 ケインは何故、叔父がアニメ誌などを所持していたか訝(いぶか)しく思った。

 叔父は某有名商社で長年勤務しており、日本には何度も渡航経験が有り知人も多く、所謂(いわゆる)、親日家であり、日本の歌舞伎や伝統芸能のマニアで、剣道をやっていた趣味が高じ、一地方の剣道愛好会の会長もやっていたはずだ。 

 しかし、日本のアニメファンという訳では無かっただろう。と、ケインは疑問に思ったが、深く考えることはしなかった。

 

 ケインは、気分を変えようとカーラジオのスイッチを入れた。すると、ちょうどニュースの時間だった。そのニュースは、先週土曜日に95歳で老衰により死去した、元上院議員の軍部葬が行われた事を報じていた。

 軍部葬になったのは、死去した元上院議員が、かつて軍人だったからだ。その人物は、ウェストポイント合衆国陸軍士官学校を極めて優秀な成績で卒業した。

 士官としての必須科目だけではなく、彼は歴史や文学、さらに哲学にも精通し、愛読書としてゲーテ、スタンダール、ドフトエフスキー、カント、パスカルなどがある才人でもあったそうだ。

 その後、彼は最前線を志願し、英国駐留の第8航空軍の《B-17フォートレス》爆撃機の尾部機銃員に配属された。

 数か月後、ドイツ西部の工業都市デュッセルドルフ爆撃の際に、当時、多数の米爆撃を撃墜したロケット推進戦闘機《Me-163》に狙われたが、奇跡的に返り討ちにして撃墜した。しかし、運悪く破片で負傷し、一旦前線を離れる事になった。

 

 その翌年、彼は、ある任務に志願する事になった。その後、彼は志願者、100人の中では部隊の隊長を除いて、最も栄光に満ちた人生を送った。

 朝鮮戦争では、爆撃機乗員として北朝鮮軍や共産党軍に対し活躍し、ベトナム戦争では、爆撃部隊司令官として味方の窮地を幾度も救った。

 

 その後、彼は1982年の上院選挙で故郷のニューハンプシャー州から立候補し当選し、2008年に政界引退を表明するまで、26年間に渡り上院議員として共和党の要職を歴任した。

 

 政界引退後も、故郷、ニューハンプシャー州の退役軍人会会長などの名誉職に就いていたが、昨年、春先に体調不良説が報じられた。

 彼は11月半ばに入院し、マスコミが重病説を報じた。その後、元上院議員の死が賭けの対象にされた。

 人の生死を賭け事の対象にすることはタブーだと考える運営元は動かなかったが、こっそりと賭けをした連中は相当数に上るだろう。賭けの内容は、上院議員が特定の日に亡くなるかどうかであり、特定の日に亡くなるとする方には、数百倍以上の高い倍率が設定されていたらしい。

 結果、議員が全く無関係の2月に死亡した事で、大穴に賭けていた連中は全員、大損をした事だろう。

 

 20分後、ケインは途中のドライブインに入り、駐車場に車を止める。ラジオは日本の話題を流している。

 ニューヨークの有名観光地で、日本の有名な果物ゆるキャラが撮影されていて、通行人が集まったという内容だった。ケインはラジオを止め、メニューを眺め、コーヒーとハンバーガーセットに目を留めた。 

 

 ケインは、いくつかのメニューに目移りしたが、結局、ハンバーガーとコーヒーを注文した。周りはもう薄暗くなって来ていたので、室内灯を点けて、叔父の家から持って来たアニメ誌を開いてみた。

 アニメ誌の内容は、特段、変わった事は無い。アニメの今後の見所や、声優のコメントが掲載されていた。

 アニメ誌の発行日付は10日前の一月末で、同名のアニメ誌が日本に存在する事は、叔父の家を出る前に検索を掛けて確認してあった。ケインがページを開いてる所には、2017年2月5日に放映開始される予定の子供向けアニメの情報が書かれていた。

 

 その内容は、それ自体はおかしい所は無かった。お菓子作りに興味がある主人公が、不思議な出会いをして仲間達と知り合う。という初回あらすじの他に、担当声優のコメントが掲載されていた。主人公を含めて担当声優4人と脚本家は、確かに日本に存在し活躍していた。

 しかし、2月5日も次回放映日の2月12日も日本の番組表で確認したが、そのアニメは番組表のどこにも記されていなかった。

 番組表によると、朝7時から8時までは報道番組で、9時からは子供向けアクション番組(実写)が放映されていた。8時から9時までは、妙なバラエティ番組の放映だった。

 その内容は、日本のコメディアン達が観光地に行き、そこで2人から3人ぐらいに別れ、買い物や食事をしながら互いに遭遇するまで帰れない。又は、ローカルバスやローカル線に乗り、ダイスを振って出た数だけ進んだ駅で、飲食店が見つかるまで歩いて探すという、中々に大変そうな番組が放映されていた。

 

 

 ケインは、そのことを訝しく思い謎のアニメ誌を調べたくなったが、あいにく業務もある。

 そこで、日本人の知人に調査を依頼する事にした。

 昔、彼が法務省のエリート官僚時代に研修でニューヨークに数週間滞在した時知り合った知人で、今は別の職務についているとのことだった。

 新しい職場でも多忙だろうから、それを理由に断られるかと思ったが、すんなりと了解の返事を得た。なぜか現在は暇らしい。余談だが、彼は10年以上前に読んだ日本の

学園マンガ……暴走族出身の熱血教師が、荒れた学級を立て直す内容だが、それの実写版ドラマで、主人公の教師役を演じた俳優にかなり似ている。

 そして、その知人から今日、連絡が入った。その知人によると、このアニメ誌で記事を書いていた記者数名の内、3人ほどは、もう担当部署には居ない事が明らかになった。3人の内、半年以上も前に、一人は退職し、もう一人は別の部署に栄転していた。残りの一人は、3か月前に死亡していた事を知らされた。

 

 知人

「中々、興味深い案件でした。本件、むしろ私の上司の方が興味津々でね。日本の言葉で死人に口無し。死人にアニメ誌の記事は書けないでしょう。ちなみに、この死亡した記者、女性だったのですが、自殺だと思われてたんです。しかし、現在、他殺の線も出て来て捜査が始まりました。結論が出たら、また、お知らせしますよ」

 彼は法務省から、警察に出向でもしているんだろうか?

 以上から、ケインは謎のアニメ誌が、この世ならざる物という確信を得た。

 

 

 このページを誰かが見たら、「ふうん」とでも言って、ダストシュートかリサイクルボックスに直行とはならない。不幸にも発展途上国で学校に行けず、働かなければならない児童労働者なら、そんな感想でも誰も責めないだろうが。

「まっとうな高等教育を受けた人が『別に』程度の感想だったら、良識を疑われるだろうなあ」

 何故なら70年前、ケインの父や祖父の世代は死力と知略の限りを尽くし、アニメ誌のページに書かれている彼ら、いや、彼女達と戦わなくてはならなかったからだ。

 



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第2話【天空の凶事】

  【悪夢】

 

 野々はなは、うなされていた。

 彼女の脳裏に一つの光景が見えていた。

 

 「月は陰り、冷たい風が館のカーテンを激しく揺らしていた。

 暗い森の奥にある、その館に続く道の灯りだけが、細々と周囲を照らしていた。

 一瞬、その灯りも消え、深い闇に包まれた館の中で何かが蠢(うごめ)いた。

 暫(しばら)くして、激しい風が雲を晴らしたのか、月の光が館を照らしたとき、その館の窓から一羽の梟(ふくろう)が飛び立ち、月に向かって羽ばたき、不気味な鳴き声を月夜に響かせた。

 梟(ふくろう)の姿が消えた後、静寂が戻り、暫(しば)しの時を経て月は西の空に陰り、東の空に明けの明星が輝きはじめた。

 それは。ルシファーと呼ばれる星だった」

 

 はっと目を覚ました野々はなは、先日、薬師寺さあやに借りていて、昨晩、読んだ本を見出した。

 そのタイトルには――『闇に蠢(うごめ)くモノ』 Sivaji著――とあった。

 野々はなは、気分を変えようと風を取り込もうとし、窓を開けて空を眺めた。

 そこには、明けの明星が輝いていた。

 

 

 

  【天空の凶事】

 

「間も無く、雲が切れそうですな」

「そうだな」

 

 戦艦《ワシントン》の艦長、ネリー・ハウスマン大佐に対し、第18任務部隊司令長官ウィリアム・フレデリック・ハルゼー中将は軽く頷き返した。

 第18任務部隊は10日前から、およそ2週間の予定でサンフランシスコと、シアトルの中間にある、オレゴン州西沖の北緯43度の海域で訓練を行っていた。

 艦隊はノースカロライナ級戦艦《ノースカロライナ》と《ワシントン》、巡洋空母『インディペンデンス』及び軽巡洋艦3隻、駆逐艦10隻から編成されている。

 一週間後には、増援の新鋭《ボルティモア》級重巡《セント・ポール》が新たに艦隊に合流する予定だ。

 

 第18任務部隊は4年前の1939年9月に、第三帝国のポーランド侵攻に端を発した第二次世界大戦――後にそう命名されることになる――開戦以降、今年3月までは西大西洋や、カリブ海での中立哨戒行動に従事して来た。

 

 ルーズベルト政権は、1939年11月に中立法を改正し、翌年の春以降、大英帝国に対し公然と軍需物資の輸出を開始した。

 更に、1941年3月にはレンドリース法が制定され、公然と英国に対し武器援助が可能となった。

 同年6月22日の独ソ開戦以降は、ソ連政府も援助の対象になり、輸送トラックのみならず、戦車、戦闘機や中型爆撃機も多数供与された。それらを運ぶ船団には一部、星条旗を掲げた駆逐艦が、護衛に従事していた。

 最早中立を完全に逸脱した行為であり、第三帝国の宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッペルス氏は、度々、ラジオで合衆国の行動を非難していた。

 

 しかし、あくまでも形式上は未だ中立を保っており、ドイツ上空や北アフリカの砂漠、又はロシアの荒野や雪原で血みどろの戦いが日々繰り返され、一時間ごとに数百人単位で戦死者が増えている最中でも、合衆国本土や太平洋では、未だ、一発の銃声も鳴り響いてはいなかった。

 

 第18任務部隊は、本来、空母《サラトガ》が旗艦だが、同艦は7月以降サンフランシスコのドッグで、8インチ砲を5インチ両用砲に換装している。更に対空機関銃の増設と、新型対空レーダーの搭載工事を行っている。

 代わりに臨時の旗艦に選ばれたのは、高速戦艦《ノースカロライナ》級の2番艦、《ワシントン》だ。《ノースカロライナ》級戦艦は、ロンドン軍縮条約の効力停止後に、合衆国海軍が最初に完成させた新型高速戦艦である。

 排水量36000トン、全長222.6メートル、最大速力は前級のコロラド級戦艦より、6ノットも速い27.0ノットを出せる。艦橋部は、旧式戦艦の籠形状から円柱状に大きく変更されている。

 

 当初、太平洋艦隊司令長官ハズバンド・キンメル大将は、《ノースカロライナ》級戦艦を太平洋艦隊旗艦に据えようと希望していた。だが、幕僚から一部、反対意見が出て断念した。《ノースカロライナ》級は防御に欠点があったからだ。

 設計時は、未だ軍縮条約が機能していた為、《テネシー級》戦艦と同じ14インチ砲9門を搭載する予定だった。当然、防御も14インチ砲の攻撃に耐えられる装備になる。

 だが、大日本帝国がロンドン軍縮条約からの脱退を表明した為、急遽、16インチ砲9門に変更される事になった。しかし防御は14インチ砲の攻撃に耐えられる装備から変更は無かった。戦艦の主砲口径と、対応防御に開きがある事は運用上、好ましいとは言えない。

 

 

 第18任務部隊は、今日、抜き打ちで夜間対潜戦闘訓練を行っていた。訓練終了後、各艦から訓練の評価が届いていて、ハルゼーがそれに目を通していた。

「雨天の中の抜き打ち訓練、よくやってくれた。訓練は……まあ合格だ」

 乗員達に、ほっとした雰囲気が流れる。

「だが、戦闘配置完了まで今回は平均6分30秒だったが、これを6分まで短縮したい。対潜戦闘は一分一秒を争う。可能なら、敵潜が魚雷を撃つ前に撃沈しなければならない。訓練の期間中に、また、抜き打ちの訓練を行うぞ。1時間休憩し、午後11時から夜間対空射撃訓練をやるぞ」

「ハルゼー親父は張り切っているな」

「そりゃ張り切るだろうぜ。親父のジャップ嫌いは有名だ。そのジャップどもが遂に、合衆国に牙を剥いて来たんだ。張り切るのも当然だろうよ」

「誰が言ったか知らないが、もうすぐ20年の停戦期間が完全に終わるんだな」

 

 その言葉は、1919年6月28日のヴェルサイユ講和条約締結の直後、この条約に対し、連合軍総司令官のフェルディナン・フォッシュ仏陸軍元帥が以下のように評したものだ。

「これは平和などでは無い。たかだか20年の停戦に過ぎない」

 そして、事実、その論評は正鵠を射ていた。

 現状、戦争は大西洋から、ウラル山脈の西の間で行われている。だが、対日戦争が始まれば第二次世界大戦――後に、そう命名される――は、文字通り世界大戦となるだろう。

 

 ハルゼーは、東側の外を見ていた。間もなく、雨雲の下を抜けるだろう。

(いよいよ近代的合衆国海軍のデビュー戦か。スペイン王国とは戦争になりかけたが、連中がへたれて手を上げてしまって戦争にはならなかった。先の世界大戦では、祖国が参戦した後は、もう大きな海戦は無かった)

 

 ハルゼーは、ハバナ葉巻を咥え笑みを浮かべた。ついでに、なぜかベーブ・ルースのようにバッドでスタンドを指すという、ホームラン予告のポーズを取っている。

(今度の戦いの主役は航空機だ。頭の固い戦艦屋どもに見せてやるぜ)

 

 ハルゼーは大日本帝国海軍こそが、合衆国海軍と戦うのに相応しい相手だと考えている。

 仮にスペイン王国と戦争になっていても、恐らくは合衆国の圧勝だっただろう。現在の第三帝国海軍は潜水艦中心、フランス海軍はツーロン港の漁礁(1)、イタリア海軍は雑魚と来ている。開国してから僅か半世紀で、ロシア帝国海軍に完全勝利した彼らこそ、合衆国近代海軍の敵として相応しい。

 

 ハルゼーが、艦隊参謀長マイルズ・ブローニング大佐に話しかける。

「参謀長、開戦時期は、やはり来月かな?」

「待って、後、一ヶ月でしょうな。来年以降まで伸びる可能性は極めて低いでしょう。開戦予想ですが、私は来月、第2週ではないかと。艦隊がパール―ハーバーに集結する時期を計算に入れてですが」

 

 既にパナマ運河を抜けた、空母《ヨークタウン》、《ホーネット》を主軸とする艦隊が、数日以内にサンディエゴ軍港に入港する。ここで数日の間、整備と休養を行い出港。11月20日頃までには、パールハーバー軍港に到着し、太平洋艦隊主力と合流するだろう。

 

 第18任務部隊も10日の演習終了後、12日頃にはサンフランシスコに入港予定だ。入港後、補給と数日の休養を取る。その後、改修を完了させた《サラトガ》と共に、11月下旬に出港し、月末までにはパールハーバー軍港に入港する。

(開戦には間に合いそうだ。ジャップどもも航空戦力を、かなり増強しているらしい。だが空母一隻辺りの搭載機数は、我が軍がやや多い。彼我の国力差は甘く見て1対10)

 

 無論、ハルゼーは日本軍を楽に勝てる相手だとは思っていない。場合によっては、一時的に太平洋艦隊が、守勢に立たされるという可能性も十分にあると考えている。

(一時的に不利な情勢になっても、来年の春以降、新型空母が続々と戦列に加わる。空母の数だけでは無い。航空機の生産能力や、予備の搭乗員の数でも圧倒的に我が国が勝っている。敵は一度大敗し、大量の航空機搭乗員を喪失したら、再建は困難だろう)

 

 そこまで考えた時、不意に艦橋が騒がしくなった。

「どうした? 何事だ? 僚艦で火災でも起きたのか!」

 ハルゼーは、護衛の駆逐艦か巡洋艦で、火事でも起きたのかと考えた。直後、窓の外を見て絶句した。赤いオーロラが北の空に見えたからだ。

 

 乗員達が口々に気味が悪い等と騒ぎながら、外を見ている。

「おい、オーロラは北欧では異なる世界と繋がる予兆とされているらしいぞ。何か凶事の予兆かもな」

「こらっ! 上官が、あまり下士官や兵士を怖がらせるのは良くないぞ」

 

 ハルゼーは、故意に大声で部下を怖がらせた航海長ジミー・アーバスノット少佐を注意した。

「す、すみません提督」

(だが奴の言う通り、不気味な色をしている。これまで見た事のあるオーロラと違い、なにか、その背筋がぞわぞわとする。例えるなら子供の悪戯が母親にばれて、怒られる寸前の様な)

「低緯度でオーロラが目撃された事は、少なくないぞ」

 ハウスマン艦長の発言に乗員達は、やや落ち着きを取り戻した様だ。

 

 不気味なオーロラは、およそ一時間で消えた。ハルゼーは各艦に計器類に異常が無いか、報告を求めたが異常が起きた艦は無かった。

「提督、夜間対空訓練は予定通り行いますか?」

 ハルゼーは、10秒ほど考えてから判断を示した。

「いや、他の艦でも騒ぎになっていて、皆、動揺しているだろう。転落事故でも起きるとまずいから、明日夜に延期しよう」

 直ぐに発光信号で全艦に演習の終了が通達され、非番の乗員達は、兵員室や食堂に消えて行った。

 ハルゼーも、ハウスマン艦長もオーロラが見えた範囲は、流石に艦隊の真上だけだとは考えなかったが、せいぜい、北米沿岸のアラスカ州からオレゴン州の間だけだろうと考えていた。事実を知れば、流石に平静ではいられなかったかもしれない。

 

 

 その日、およそ各々、現地時間午後10時から11時にかけて、北緯、南緯各40度より北と南で不気味なオーロラが目撃された。南半球で目撃された地域は狭い。

 アフリカ大陸は緯度的に不可能であり、豪州で目撃出来たのは、ニュージーランド南島及びタスマニア島の住民だけで、豪州本土で目撃出来たのは、一部の遠洋漁業に従事する漁師だけだった。

 

 南米では、アルゼンチン及びチリの南、3分の1くらいの範囲で目撃された。両国とも、この地方は、さほど人口は多くない。それでも、豪州と合わせれば数万人以上の人々が不気味な天体現象を目撃した。

 一方、北半球では、より多くの範囲で目撃された。

 

 日本では、帝都東京や名古屋では観測できなかったのだが、東北の北部より北で目撃された。

 青森駅の桟橋で、青函連絡船の到着を待つ乗客達。反対に、連絡船で青森に到着し、夜行急行で東京に向かっている乗客達。

 

 オーロラは海の上でも目撃された。大西洋でカナダ東岸から英国西岸に向け、物資を運んでいた複数の輸送船団で目撃された。

 護衛艦の艦橋で、率先して双眼鏡で海上を監視するベテラン艦長。逆に、欧州よりの大西洋にて、夜間浮上して本国に定時連絡を入れている最中、双眼鏡で洋上を監視している、若いナチ党員のエリートUボート艦長。

 

 ロンドンやベルリンでも目撃された。

 ロンドンでは第三帝国空軍の夜間爆撃に備え、防空壕を点検していたロンドン市職員。一方、空襲下でも店を開き、お客に一時の憩いの場を提供している酒場の店主。

 

 東部戦線では、その一時間の間だけ銃声や砲撃音が完全に停止した。

 ソ連軍の夜襲に備え、小銃の点検をしているドイツ軍兵士。他方、家族を悪名高いナチス親衛隊に殺害され、復讐の為、パルチザン部隊に加わった14歳の少女。

 

 不気味な、天空の赤いカーテンを見た多くの人が、一時の間、仕事や任務、家族の事、更には敵への怒りや憎悪を忘れてオーロラに見入った。

 

 

 翌日以降、数日間、オーロラの記事が新聞紙面を飾った。しかし、ほどなくして世間の注目は、欧州戦線や日米開戦の有無に戻った。ハルゼーも、数日後にはオーロラの事を気にする事は無くなった。

 

 ハルゼー中将は苦い思いと共に、件の航海長の発言を思い出す事になる。合衆国建国以来、最大の苦難と悪夢に直面するのには、未だ一月余りの時間が必要だった。

 

 




1 1943年11月の、ヴィシーフランス占領の際に主力艦の大半は、トゥーロンで自沈


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第3話【不思議な夢】

 【不思議な夢】

 

 宇佐美いちかは、不思議な情景を目にしていた。

(あれ、私、ありすちゃんの家で、お茶会していた筈なのに)

 テレビのニュースで、偶(たま)に見る海上自衛隊の護衛艦と比べると、古い塔の様な構造物を持つ軍艦が見える。

 数日前に行った、某中古書店で積まれていたタ〇ヤ製の軍艦のプラモデルに、かなり似ている船の上の乗組員の声まで、何故か聞こえてくる。

 

 乗員C(兵士)

「いよいよ発進するみたいだぞ」

 双眼鏡で10キロメートル右方を航行する艦隊旗艦(新型大型空母)の甲板を見ていた一人の下士官が、周囲の乗員に伝えた。肉眼では見えないが、甲板員や機銃員の退避が始まっているだろう。

 乗員B(下士官)

「波も収まって良かったですね」

 乗員A(特務士官)

「今日の朝までは波が高かったからな」

 乗員C

「成功しますかね?」

 乗員B

「ロングアイランド沖で実験した時は成功したらしいから大丈夫だ……多分」

 

 本来、昨日に作戦が行われる筈だったのだが、低気圧の影響で波が高く、発進は危険と判断され、止む無く一日だけ延期を決断したのだった。今日も朝の間は未だ波が高かったが、太陽が昇ると同時に波は急速に収まった。

 

 戦隊司令(少将)

「私の勘だが作戦を行うチャンスは今日が最後だろう」

 艦長(大佐)

「我らが宿敵である桃色兎達ですが、現時点で動きは無い様ですね。尤(もっと)も動かれては困りますが」

 

 もし、何らかの兆候が有れば、即座に真珠湾の太平洋艦隊総司令部より緊急電が入るだろう。今や桃色兎達は、全世界の注目を集めている。

 太平洋全域のみならず合衆国本土、豪州、英領インド、連合国の全ての通信傍受基地が24時間体制で耳を澄ませている。

 桃色兎に比べれば、『ティーゲル』戦車だろうが、タンク博士の『最新作戦闘機』も『墳進式戦闘機』も、旧式爆撃機でソ連戦車を破壊しまくっている『魔王』も、脅威と言う点では著しく落ちる。

 

 

 少将の思考は、見張り員の言葉で終わった。

 

 艦橋見張り員(兵士)

「間も無く発艦します!」

 少将や艦長も一斉に双眼鏡を覗く。直後、1番機が滑走を開始する。発艦した航空機は一瞬だけ沈み込むが、無事に力強く大空に飛びたって行った。

 艦橋では、周囲の士官や兵士の歓声と拍手が起きた。続いて2番機3番機も、無事に発艦して行く。

 20分後、何度かひやりとしたが、無事、最後の20番機も大空に舞い上がって行く。

 やがて編隊を組んだ爆撃機は、軽く主翼を振って挨拶すると、西の空に向けて飛んで行く。

 艦橋員(下士官)

「桃色兎達に別れを告げて来い!」

 艦長

「祭りは終わった。浮かれるんじゃないぞ。この作戦は今の所、99%成功しているだろう。だが、我々に1%の油断や敵に1%のツキが有ったら、この作戦は、たちまち失敗してしまう」

 見張り員

「失礼しました!」

 信号員

「旗艦より信号! 艦隊一斉反転! 速力22ノット新針路E-E-E(真東)、発動180秒後」

 作戦の成功率を99%から100%に近づける為に艦隊がすべき事は、1分1秒でも早く、この海域から離脱する事だ。

 

 ~数分後~

 

 艦隊は真東に転進し、巡航速度よりも、やや速い速度で急速に離脱を開始している。今までは、艦橋前方に重巡『ヒューストン』が見えていたが、今は逆に、対空巡洋艦『フリント』が見えている。

 発進した爆撃機は、もう水平線の向こうだ。次に会えるのはニューヨークの大通りだろう。

 戦隊司令

「運命が決するのは何時頃かな?」

 艦長

「桃色兎達の最大速度から考えると、現地時間で午後5時……いや午後5時20分から5時半でしょう」

 戦隊司令

「あと3時間か。ちなみに、かの名将ロンメル元帥は、ノルマンディー上陸作戦の直前にこう言ったそうだ。まあ噂だがね。《連合軍がノルマンディ海岸に張り付いてからの24時間は、ドイツにとっても連合国にとっても、最も長い24時間になるだろう》と」

 艦長

「我々には《最も長い3時間》ですか」

 戦隊司令

(攻撃隊が攻撃後、安全空域に離脱するのに1時間と考えると、全てが決するのは現地時間の午後7時か)

 

 後世に、こう呼ばれる事になる。

 《合衆国建国史上、最も長い5時間》

 

 

 



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第4話【春の? 細雪】

いよいよ本編開始です


本編中の(数字)は注釈で、意味は後書きを見て下さい


  【春の? 細雪】

 

 小柄な少女が、いちかをゆさぶっている。やがて、いちかは、ゆっくりと目を覚ます。

「……ちゃん……起きて……」

「美味しいスイーツ……出来上がりぃー」

「いちかちゃん、起きてください」

「ほへ……」

 

 確か他のプリキュアの皆と、四葉家が所有する庭園で、花見会をやっていた筈だけど……

 まず、いちかが気付いた異変は、4月とは思えないほど寒い事で、次に空気が非常に澄み渡っていて、排気ガスや工場排煙の嫌な臭いを全く感じない事だ。

 先程までとは違う冷たい風が野草を揺らし、彼女達の頬を撫でた。

 

「寒いよー」

「さっきまで快晴だったのに、雲量10です。完全に曇りです」

 彼女達の肩に、白い粉が模様を作り始めていた。

「曇りどころじゃないぞ、雪降ってるよ」

「あ、あおいちゃん……本当だ雪降ってる」

 同じく起きて来た立神あおいの言う通り、本降りでは無いが、細かな雪が降り始めている。

「ひまりちゃん、東京で4月に雪降った事あるのかな?」

「確か2009年の4月17日に降雪記録があるみたいなので、おかしくは無いです」

 

 それなら4月に雪降ってるのは、十分にあり得る事態だろうと、いちかは安堵したが……

「いちか。確か、あたしたちは全員、大貝町の庭園でお花見してた筈だぞ」

 周囲を見渡すと、そこは河川敷で、左手を見ると京浜急行らしい鉄道車両が、川を渡って行く。

 

「きらっとひらめいた! ここは多摩川だ」

 あおいとひまりが、それに同意しようとした瞬間……

「ぺこー」

 と間の抜けた声が聞こえて来た。

「ぺこりん、良かった無事だったんだね」

「ぺこりん、慌ててどうしたんだ。まさか、いちご坂が消えたとか?」

「あおいちゃん、科学的にそんな事は起きませんよ」

「そうぺこ! いちご坂が消えてなくなったペコ!」

「なっ!」

 あおいは絶句して停止してしまったので、いちかが交代した。

「ぺこりん、落ち着いて説明して。いちご坂の町が無かったの?」

「町は有ったペコ。でも、いちご山は無くなって、水田や畑だったペコ」

「どういう事でしょう? まさか新たな敵! でも、今までのプリキュアの敵は、そんな事……」

「キラパティも無かったペコ! いちかや皆の家も無かったペコ」

「どういう事だ? やはりエリシオみたいに、キラキラルを奪う敵の仕業では? それに妙に静かだ。いや静かすぎる」

 

 いちかとひまりは、あおいの発言に頷いた。妙に静かすぎる。ここは品川の南という事になり、本来なら車の走行音や、羽田に離着陸する飛行機の騒音が聞こえなければならない。

 全く聞こえないと言う訳でも無く、工場の操業音は聞こえるし、遠くから微かに車の走行音も聞こえてくる。

 空を見上げると、一機の旅客機らしき飛行機が羽田に向け降下している。

「あおいちゃん、あの飛行機プロペラ機だよ」

 現代の日本でも一部の離島にある空港にプロペラ機が就航しているので、おかしくは無いが……

 羽田に着陸しようとしている飛行機は、それとは次元が違うほど古い機体に見えた。

 3人は知らなかったが、着陸しようとしていたのは、米ダグラス社の傑作旅客機ダグラス『DC-3』で、世界中で愛用され2017年でも一部は現役だと言われるほど長く使用されており、日本でもライセンス生産され、『零式輸送機』として活躍した。

 

「大変ペコ! 東京タワーもドームも無いペコ。都庁もスカイツリーも無いペコ! 豊洲市場予定地は海だったペコ。でも、築地市場は有ったペコ」(1)

 3人は不思議に思い、自分達の周囲に視線を向けた。

 剣城あきらが落ちていた新聞を見つた。それは古いものではなく、昨日今日、捨てられたであろう新しい紙面だった。

 立神あおいが、その日付を見て声に出した。それを聞いた残りの二人が目を見張った。

「昭和18年11月5日?」

「え、これって新しい新聞よね? どういうこと?」

「あたしたち、2017年に居たわよね?」

 

 確かにぺこりんが言う通り、辺りの風景が全く違った。自分達の住む世界と違うという疑念が、3人の脳裏をかすめた。

 

「今すぐ、いちご坂に行ってみる?」

 あおいの提案に、ひまりといちかが同意しかけた時、上流から叫び声が聞こえて来た。何人かの子供が川沿いを走っている。子供達の視線の先を見ると、一人の子供が溺れている。

 いちかとあおいは、即座にホイップとジェラートに変身し、空を飛んで助けに向かう。

「ひまりちゃんは誰か大人の人を呼んできて!」

「わかりました!」

 ホイップとジェラートは、水の流れが弱まった瞬間に、溺れていた小学生くらいの男子を無事救いだし、そのまま向こう岸に下りた。

 少年の意識はあり、咳き込み、水を吐き出した。

「よしよし、よく頑張ったね」

 まだ恐慌を来たしている少年の頭を、安堵させるかのようにいちかが撫で、優しく声をかけた。

「水も吐いたから大丈夫だね」

「油断しないで、全身が濡れてしまっているから、この寒さだと直ぐに拭かないと肺炎になる危険が」

 キュアショコラこと剣城あきらが、子供にタオルが差し出した。

「まだ小さいから、万一、肺炎になったら命の危機だよ」

「お医者さんを連れて来たわ」

 そこに、ひまりと合流したらしい琴爪ゆかりが、大人の人や近くの病院の医者を連れて来た。

 医者の診た所、水は全て吐き出したので、命に別状は無いだろう。しかし、念の為に病院で診察が必要だと言うことだった。

「お姉ちゃん、ありがとうございました」

 少年は礼儀正しく挨拶する。

「お兄ちゃんも、ありがとうございました」

 落ち込んだあきらを、ゆかりが慰めている。

「あきらさん、あの子も悪気が有った訳じゃないから」

「あたしも、最初は、あきらさんを男の人だと勘違いしたから」

 追い打ちをかけられたようで、憮然とするあきらであった。

「私たち、何か忘れてませんか?」

「何だろう? ぺこりんが何か変な事、言って無かった? 都庁も、東京タワーも無かったとか」

 

 並んで首をかしげる、あおいとひまり。気が付くと、2台ほどのトラックが堤防で停止し、カーキ色の軍服を着用した10人ほどの男性が走り出した。腕には、《憲兵》と書かれた腕章を付けている。

「憲兵? なんで、そんな人たちが居るの?」

「戦時中では、軍内の違反者を拘束したりするのが仕事だったかしら? でも実際は、東条英機総理の私兵として、自分に反抗するものや軍内部の和平派を拘束していた筈よ」

 班長らしき憲兵と思われる男が、いちか達に向かって来る。

「妙な服を着た人達が、倒れていると通報を受けた。君達は……その服はどう見ても外国製だな? アメリカのスパイかも知れないので、連行する」

 





1 築地市場は、1935年3月に日本橋から築地に移転

 タイムスリップした人が、異変に気付くパターン
1 ラジオ放送を傍受して、ニュースの内容から異変に気付く。(檜山良昭氏の架空戦記)
2 月齢が一夜で、満月から半月に変わる。(かわぐちかいじ氏作・ジパング)


続きは明日投稿します。近日中に番外編で、年表を投下します。





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第5話【忘れられたシエル】

【忘れられたシエル】

 

「スパイー?」

「アメリカの?」

 事態の急変に付いていけない、いちかとひまり。逆に、ゆかりは相手を思いきり軽蔑する表情を浮かべる。

「人命救助をして、感謝状と金一封よこせとは言わないけど、これがあなた方の感謝という訳ね。アメリカに無……」

 危険を察したあきらが、ゆかりの口元を塞ぐ。

「何を言っているんだ?」

(どうする)

(飛んで逃げる?)

 対峙している時、彼女達が見慣れない高級車が停車し、車中から50代くらいの男性と、その部下らしい若い男性が降りて来た。二人とも、古い記録映像で見た陸軍軍人と思われた。その人物を見た憲兵達は、バネ仕掛けのおもちゃみたいに飛びあがり、敬礼を行った。

 

「石原大将閣下!」

「石原閣下、なぜこのような場所に?」

 石原と呼ばれた男は、彼らを鎮めるように語り始めた。

「知人の法要に参加していたのだ。ところで君達は、その子達を連行するつもりなのか?」

 彼らは、普段、自分達が声をかけられることもない上官からの質問に、たじろぎながらも事情を説明した。

「住民から妙な連中が川原で倒れていると、通報を受けましたので調査に来たのです」

 その報告を聞いて、石原は軍部全体に走っている緊張を改めて感じていた。

「今、国全体がピリピリしているのは仕方ないが、少し焦りが過ぎるぞ。実は、彼女達は今しがた、多摩川に落ちた子供を助けたそうだ。本物のスパイは、見て見ぬふりをすると思えるが」

 そう言われ、憲兵らしき者達が上官に意見した。

「隊長、彼女達の服はドイツやイタリアにすら無さそうな服です。完全に目立ち過ぎです」

「悪目立ちですね。昔のマタ・ハリ(1)じゃあるまいし、スパイに使うなら、もっと地味で警戒心を持たせない様な衣服を使うのではないでしょうか?」

「皆さん、どうやら誤解が有った様です。申し訳ない」

 ばつが悪そうな表情を浮かべ、トラックに戻ろうとする憲兵だが……石原は何かを感じ取ったのか、憲兵達に忠告した。

「隊長、彼女達はスパイじゃあるまいが、一応、話は聞いた方が良いかもしれんぞ」

「と言いますと?」

「今、君の部下が言った通り、彼女達の服はドイツやフランス(2)……いや、アメリカの最新のファッション雑誌でも載ってないだろうからな」

 石原大将と呼ばれた人物は、いたずら小僧みたいな笑みを浮かべると帰って行った。

 

 彼女達は、周囲の風景と捨てられた新聞紙の日付、そして石原莞爾という歴史上の人物を目の辺りにして、自分達が70年前の世界に来てしまったことを確信した。

 

 ~60分後。近くの憲兵隊本部~

 

「息子の命を救ってくれた方をスパイと勘違いして申し訳ありません! 腹を切って詫びます!」

 憲兵の隊長は、助けられた少年が自分の息子と知って混乱していた。

「おおおおお、落ち着いて!」

 いちか、ひまり、あおいの三人が、必死に隊長を止めている。そうしないと、彼は拳銃の引き金を自分に向けて引きかねない。

 琴爪ゆかり

「それで、私たちが70年後の世界からやって来たことは、理解してもらえたかしら」

 憲兵

「品川や川崎の住民の方が、10メートルほど上空に穴みたいなのが出て、皆さんが、ふわりと下りて来るのを目撃したとのことです。しかし……どうにも、信じがたいことです」

 まあ、信じろという方が無理だろうと彼女達は思った。何より、なぜ、自分達が、この時代に居るのかすら納得出来ないのだから。

 自分達が、この時代に来た瞬間は、いちか達は気絶していたので覚えていない。ジャバ長老は、どうやら今回の天変地異に巻き込まれなかった様だ。

 ぺこりんだけは、本来、いちご坂が在る近くで目を覚ました。

 

 60分の間に、いちかとゆかりが、全員を代表する形で変身して、東京上空を一周して来た。

 ぺこりんが言った通り、スカイツリーも東京タワーも、新宿の高層ビル群も、とにかく有名な建造物は全て影も形も無かった。東京湾もアクアラインもレインボーブリッジも、石油コンビナートなども存在してなかった。浦安に在る有名遊興施設も無く、ただ青い海が広がっていただけだった。反対に東京湾には、自然の海岸が多く残り、のんびりと釣りをしている人の姿も確認できた。

 陸上でも70年後には、商業街や住宅街になっている所にも、信じられないほど水田や畑があった。

 

 立花あおい

「あたしたちの住んでいた東京は、多くの自然を犠牲にして成り立ったんだな」

 有栖川ひまり

「私たちは本当に豊かになったんでしょうか? 何か大切なものを無くしたのでは?」

 妙に沈んでいる二人とは正反対に、この時代の憲兵達は、70年後の東京は凄い未来都市になっているのか? と不可思議に感じながらも、そうであれば喜ばしいと思ったようだった。

 その後、彼女達は簡単にプリキュアという存在を説明した。

 隊長

「皆さんは70年後の世界で、アメリカと戦っているのではなく、つまり世界を支配しようとしている……宇宙人みたいな連中と戦っていると言うことなのですか?」

 憲兵

「アメリカには、アメリカ人のプリキュアなる者が居て、彼女達も宇宙人とか秘密結社みたいな連中から、町を守っているのでしょうかね?」

 彼らはプリキュアというものを聞かされても、あり得ない話としか思えなかったが、大人の対応をとった。

 数時間後、班長の部下達が関東近郊の警察署や憲兵隊に電話確認を行った結果、他のプリキュアチームも全員無事な事が確認された。

 陸軍に所属すると思われる人が手配してくれたのか、最近、経営者が倒産し、海軍が保養所目的で買い上げた日本式旅館を確保できた。

 東京五輪が開催断念になり、不景気で経営に行き詰ったそうだ。

 

 宇佐美いちか

(あれ、1940年の東京五輪は中止になったんじゃ?)

 ひまり

「私がプリキュアになった事も、当時は信じられませんでしたが、今度は時間旅行をする事になるとは、非科学的です」

 剣城あきら

「私たち、未来に帰れるかな?」

 ゆかり

「ダメよあきら、言葉には言霊が宿るから迂闊な事を口にしてはならないわ」

 あおい

「ま、なんとかなるよ! な、シエル……シエルが居ない!」

 それを聞いたいちかが震え出す。

 いちか

「ああああああ、わすれてたーーーー」

 

 シエルの所在は程なく判明した。一人だけ逸れて現れたシエルは、空腹で妖精キラリンに戻ってしまい、珍獣として保健所に運ばれた。

 保健所には某、榊マリコさんみたいな人はいなくて、無事シエルは回収された。

 キラリン

「お腹すいたキラ」

 海軍軍人

「しゃべっていますよ! どうすればよいので?」

 いちか

「空腹が酷いと妖精に戻ってしまうんです。何か食べ物を」

 海軍士官守屋信介少佐

「お土産の羊羹(ようかん)を」

 モグモグ。ボン(キラリン→シエル)

 松田千秋大佐

「妖精が美少女に!」

 士官達は、あり得ない事実に手品でも見ているかのように目をこすった。

 キラ星シエル

「皆、酷いわよ、私の事忘れちゃうとか!」

 取りあえず謝罪する人間5人と妖精1匹。

 シエル

「軍人さん! 何時まで私を、お姫様抱っこしてるの。セクハラはダメよ!」

 守谷少佐

「これは失礼をお嬢さん!」

 慌てて椅子に降ろす海軍士官。

 しかし、海軍士官がセクハラという単語の意味を知る事は最後までなかった。

 




1 WW1のパリで暗躍した女スパイ
2 この時期フランスは完全に第三帝国領に


石原莞爾は実在の人物ですが、某気象予報士等とは無関係です。

続きは来週


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第6話【旅館にて】

 【旅館にて】

 

 数日後、いちか達が宿泊している旅館に、先日、助け船を出してくれた石原大将という人が、海軍の参謀らしき人を連れて訪ねて来た。

 石原大将というのは石原莞爾陸軍大将で、現在は東京三宅坂に在る陸軍参謀本部にて参謀総長の要職にあるらしい。仮に陸軍大臣を帝国陸軍ナンバー1とすると、参謀総長はナンバー2かもしれない。

 

 いちか達は石原大将に、自分達の世界のことを色々語った。

 石原は信じがたいことだと思ったが、彼女達の真剣な眼差しから嘘をついているとは感じず、なにか理由でもあるのだろうと考えた。

 

 しばらく話を聞き続けてきた石原は、彼女達が話し疲れただろうと席を外した。

 そして、旅館の仲居に土産として持参して来た和菓子を取り出し、茶とともに彼女達に出してくれるよう頼み、席に戻った。

 しばらくして、仲居が各位にそれらを配膳した。

 石原

「土産の外郎(ういろう)だ。君達の口にあうかどうか、わかりかねるが」 

 いちか

「ありがとうございます。私はパティシェ……西洋菓子を作る職人になるのが夢なんです。主に西洋菓子を作ってますが、勉強の為に和菓子や、中華菓子を作った事もあるんです」

 真琴

「ういろうの由来について、少し前の朝の報道番組で、クイズを出していたわね。〇先生によると、元王朝(モンゴル帝国系列)から亡命した政治家の息子が、ういろう作りを始めたそうだけど、その亡命した親が、元王朝で就いていた官職から採られているらしいわ。ま、〇先生曰く、諸説あるそうですが……」

 シエル

「私たちの時代で、ういろうが何処が発祥の地かで揉めているわ。名古屋と小田原の老舗で、論争になっているとか」

 石原

「うむ、名古屋も有名なのだが、私としては小田原説を採りたいところだな。知ってるかね? 歌舞伎の外郎売を?」

 マナ

「ほへ?」

 

 皆が、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になっていた。歌舞伎に詳しい一部のプリキュアは逆に「へー、外郎売かー」と喜んでいる。

 その声を聞いた石原が、得意げに口上の一節を披露し始めた。

 石原

「拙者親方と申すは、御立会の内に御存知の御方も御座りましょうが、御江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町を御過ぎなされて、青物町を上りへ御出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、只今では剃髪致して圓斎と名乗りまする……」

 得意げに外郎売(ういろううり)を演じる石原に、このままでは埒が明かぬと富岡が止めに入った。

 富岡

「閣下、口上はまた後日に……」

 石原

「う、うむ。そうだな」

 いい所で打ち切られた石原は、ばつが悪そうに話題を変えた。 

 石原

「私は山形県の日本海に面した鶴岡の生まれなんだが、山形県にも芋煮や板ソバに、だだちゃ餅など名産が色々と……」

 その後も二人は世間話を続け、中々、本題を切り出さなかった。それを口にすることを、非常に迷っている事が感じられた。

 彼女達を巻き込んでしまう恐れと、彼女達が本当に未来から来た特別な者であるという確証もなかったからだ。

 

 既に、この日の夕方までに、未だ合流していなかったプリキュア達も無事合流していた。

 富岡

「はなさん、さあやさん、ほまれさんは、関東近辺の何処からも彼女達と思える子が保護された。との報告は来ていないんだ。後、リオ君と言う子も同様だ」

 ゆかり

「彼女たちは学校行事と重なり、お花見に来れなかったんです。リオは確か図書館で、どうしても読みたい本がある(製菓関連本)とのことで来れませんでした」

 れいか

「あゆみさんも、お花見にお誘いしたのですが、学校の方で地域の清掃ボランティア活動があると言うことで、来れませんでした」

 れいか

「茨城県大洗町で、大洗を舞台にしたアニメのイベントがあるそうです。大洗に親戚

いるお友達が居て誘われたので、一泊二日で行かれるそうですわ」

 

 陸軍上層部は、甲府の連隊に周辺地域の捜索をさせたが、石和温泉の旅館に向かった筈の亜久里、レジーナ、アコと、亜久里の友人と彼女らを引率していた、その友人の兄も見つからなかったそうだ。

 どうやら、あの花見に来ることができなかったプリキュア達は、異変に遭遇せずに済んだ様だ。

 

 四葉ありす

「そろそろ本題に入りませんか?」

 菱川六花

「つまり、この日本、大日本帝国を助けて欲しい……という事ですね」

 石原

「君達を、このような事に巻き込んでしまい、誠に申し訳ない」

 六花

「数日、考える時間を頂けませんか?」

 富岡

「無論です。何日でも、皆さんで話し合ってください」

 石原

「皆さんが協力を拒まれても、皆さんが70年後の未来に帰れる方法が無いか、物理学者に協力を依頼し研究して貰うつもりだ。万が一、いや、残念ながら、未来へ帰る方法が無いと言う結論が出てしまった場合でも、皆さんの生活が成り立つ様に助力する」

 富岡

「それに、まだ100%戦争になるとは限りません。今も、ワシントンで駐米大使が必死に戦争回避の交渉を継続中です。最後の最後で米国人が冷静さを取り戻し、全面戦争を回避できるかもしれません」

 石原

「考えがまとまったら、連絡してもらえると助かる」

 二人は彼女達が、ゆっくり考える時間を与えようと、立ち去って行った。

 

 

 旅館の一室で出された茶を飲みながら、彼女達は真剣に語り合った。

 

 いちか

「個人的には助けたい。日本史の授業で東京大空襲とか、広島、長崎の原爆被害とか学んだから、私たちプリキュアの力で助けられるなら助けたい」

 白雪ひめ

「私も助けられるなら助けたいけどね。でも痛いの嫌だし、ほらプリキュアの敵って、幹部以外は魔法生物的な奴だから、あんまり抵抗なかったんだよね。スターウォーズのクローントルーパーみたいな感じ。でも合衆国や大英帝国相手だと、生身の人間だから流石に抵抗が……」

 花見ことは

「はー、でもここで戦ったら歴史が変わってとんでもない事になるよ」

 青木れいか

「ことはさん、じつは、その心配は無いと思います」

 ことは

「ほへ?」

 ゆかり

「この世界は私たちが生きてきた世界とは別の世界。かなり似てはいるけどね」

 十六夜リコ

「平行世界って事ね? 根拠は?」

 れいか

「石原大将は、この世界では陸軍参謀総長になってましたはずです。でも、私たちの世界では、参謀総長のような要職には就けなかったはずです。それどころか……昭和17年の今は11月8日ですが、私たちの世界の歴史では、既に軍を追われているんです」

 

 れいかの説明によると、石原将軍は日本の運命を決めたと言われる1931年の満州事変の首謀者で、日中戦争の頃までは有力な出世候補だった。しかし、ライバルの東条英機将軍との出世レースで負けた。

 東条英機中将は、満州に駐留していた関東軍副参謀長から陸軍次官へと進み、近衛内閣で陸軍大臣に任命された。そして昭和16年10月に、遂に総理大臣にまでなった。

 反対に石原将軍は、その東条英機により閑職に飛ばされた。

 やがて、それすらも辞めさせられ民間人になるも、その後も秘密警察の監視を受けたり、終戦まで理不尽な扱いを受けたりすることになるのだった。

 

 いちか

「この世界では二人の立場は逆転しているのかな?」

 ひまり

「東条英機さんは、どうなってしまったんでしょう?」

 ゆかり

「軍主流を外されたか、怪我とか病気とかで引退を余儀なくされたか、あるいは……」

 シエル

「最初から存在していないとか?」

 ひめ

(シエルはフランス人形みたいに可愛いのに平然と毒を吐く。そこに痺れるあこがれる)

 

 その後も、深夜まで議論は続いたのだが……

 あきら

「この事は本当は、あのお花見の時に言うつもりだったんだけど」

 みらい

「まさか、遂にゆかりさんと結婚ですか? わくわくもんだぁー」

 あきら

「違うよ! なんでそうなるの」

 ゆかり

「私は何時でもOKなんだけどね(ニヤリ)」

 

 あきらは二人に茶化されて、話したいことを言えなかった。

 

 ゆかり

「日本帝国を助ける、もしくは積極的に助けない。どちらを選択するかは、まだ決まってないけど、何方を選ぶにしても、私たちは、この世界で一つ確認する事があるわ」

 

 ゆかりの一言で、今の世界の日本に自分達が、どう関わるのかとの話となり、あきらは伝えたいことを伝える機会を失った。

 しかし、この世界の日本をどうしたいのか。という重要な問題を彼女達は真剣に語り合った。後日、彼女達が《プリキュア会議》と呼び、彼女達の貴重な思い出の一コマとなる時間だった。

 



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第7話【決意】

 数日後、いちか達は再度、石原大将と対面した。石原大将は彼女達を見て軽く息を飲んだ。彼は、いちか達の表情から、いちか達が真剣に話し合った事を悟った。

 彼女達の真剣な眼差しから、軍の重鎮としては、簡単にその立場上あり得ない話を信じることはできないが、一個人として、彼女達を信じてみようと思った。

 

 いちか

「私たち……この世界の……日本に住んでいる人たちを助けたいです」

 いちかの返答を聞いた石原大将は、安堵するよりも、むしろ驚いた様だ。

 石原

「本当に良いのか? 結論に至った理由を聞かせてくれないかね」

 六花

「この世界は、私たちが住んでいた世界とは少し違う世界だと言う事。石原閣下に信じてもらえるか、わかりませんが、私たちの世界の70年前より、ずっと自由があるんです」

 その時、静かに紅城トワが挙手した。

 天の川きらら

「どうしたのトワっち?」

 紅城トワ

「この世界とか、私たちの世界とか混乱しません?」

 つまり、何か区別のための呼称を付けるべき、という意見だ。確かに何か区別が有った方が良い。

 

 今、いちか達が居る世界                        世界A

 いちか達プリキュアが生まれ育った世界                 世界B

 

 という風に区別を付ける事になった。

 

 最初にキュアホイップとキュアマカロンが東京上空を飛行して調べて来た事で、世界AとBの違いも少し明らかになっていた。

 世界Bでは昭和10年代に入ると、左翼政党は徹底弾圧を受け、政治犯として関係者の多くが獄中にあった。

 しかし、世界Aでは左翼政党は一定の監視などは受けてはいるが、未だ活動が出来ているようで、集会など自分達の考えを書いた配布物を配る事も可能の様だ。

 更に、世界Aは中華民国(1)と戦争にならずに済んでいるという大きな違いがあった。1937年の七夕の日北京郊外で発砲事件は、世界B同様発生していた。しかし、世界Aで強硬に反撃を行った、連隊長が世界Bでは事件の少し前に自動車事故で死亡していて、日本側からの反撃は回避された。(2)更に、穏健で部下の人望も厚い総司令官田代中将が、必死に鎮静化を図り武力衝突は避けられた。その後12月に中立条約が締結され、ひとまず戦争の危機は去った。

 ゆかりは中学時代、自由研究で世界Bにおける戦時中の人々の生活を調べた事があり、未だ戦争に至っていない世界Aは、現代と比べる事は出来ないにしろ、世界Bの70年前よりは、未だ生活必需品に余裕があった。

 東京偵察飛行から帰る時、ゆかりはいちかにこう漏らした。

 

 ゆかり

「私が中学生の時、調べた資料で見た戦時中の人の写真よりも、今、見て来た東京の人たちの方が明るい表情をしていたわ」

 あきら

「石原閣下が先日、帰られる際に一瞬かなり深刻そうな表情をされました。世界A……今、私たちが居る日本は逆に相当な窮地に陥っているのではありませんか? 日本が、何かをやってしまったのではなく」

 相田マナ

「逆に日本が罠に嵌められた……」

 石原

「むう、表情には出ないようにしたはずなのだが」

 いちか

「あきらさんは医者志望なんです」

 六花

「医者は患者さんの状態を正確に見抜いて、正しい診断をしなければならないんです」

 石原

「ほー。70年後の世界Bでは、女性の医者もかなり存在するのか」

 石原莞爾は、迷うことなくあきらを女性と見抜いた。 帝国陸軍随一の天才と称された男なら当然の帰結だった。

 

 

 六花が話を元に戻そうと石原に質問した。

 六花

「今、何が起きているのか、教えていただけませんか?」

 

 その時、石原の部下が石原大将に小声で囁いた。どうやら誰か来客があった様だが?

 石原

「今回の件は海軍も大きく関わってる。故に来て貰った。それに、彼とは奥羽列藩同盟仲間だからな」

 奥羽列藩同盟は、明治維新の直後、旧幕府側に付いた東北諸藩の集合体だ。有名なのは会津、米沢、長岡、仙台だろうか。

 シエル

「確か将軍の出身地は山形県でしたね」

 石原

「日本海に面した鶴岡市だ。出羽三山で有名だ」

 

 鶴岡市は江戸時代は庄内藩で、幕末奥羽列藩同盟にも加盟した。加盟しても、新政府軍が来たら即座に降伏した藩も少なくなかったのだが、庄内藩は西洋式の軍備が揃っていて、官軍を何度も撃退した。

 最終的には降伏するのだが、あの西郷隆盛が庄内藩に寛大な対応を取った。そんな訳で、庄内地方では西郷が大いに尊敬されているそうだ。

 その来客者は花火で有名な新潟県長岡市出身で、維新後処刑された長岡藩の家老の家があるが、その家に養子に入り、名跡を継いだらしい。

 

 いちか

(あれ、この人何処かで……歴史番組とかで見た記憶が?)

「山本です。遅れて申し訳ない」 

 丁寧に名を告げ、その人物は続けて謝罪した。

 山本五十六(3)

「皆さんを巻き込んでしまい、誠に申し訳ありません」

 年齢的には親子以上離れているが、いちか達に深々と一礼する聯合艦隊司令長官、山本五十六大将。

 いちか

「こここここちらこそ、大変、お世話になっております」

 山本

「長門から飛行艇で横須賀に来るはずだったのですが、駿河湾上空で飛行艇のエンジンの調子がおかしくなって、沼津港に着水して、急いで東海道線の急行に向かったんです」

 

 どうやら呉軍港の聯合艦隊『武蔵』から飛行艇で上京したが、トラブルで途中着水し遅くなった様だ。

 現代なら羽田に下りる筈が、悪天候で関空に着陸する。といった感じだろうか?

 山本提督の説明によると、世界Aでも世界B同様、日米関係は徐々に悪化して行ったようだ。

 1920年代には、合衆国で日本からの移民を禁じる法案が成立。その後も、時々、政府や合衆国の新聞が日本を非難する記事を書く事も有った。しかし、世界Aでは日本は中華民国と戦争に至っていない為に、世界Bほど日米関係は悪化していなかった。

 関東大震災の時には、合衆国から多大な支援物資が義援金が届いた。

 10年後、ベーブ・ルース率いる大リーグチームが来日し、日米野球が開催された際には、日本人は大リーグチームを大歓迎した。

 南太平洋でアメリカ人の女性飛行士が遭難した(4)時には、日米が共同で捜索を行った。数年前までは、日米関係は危ういながらも、なんとか平穏を保って来た。

 世界Aでも、1939年9月1日に第三帝国によるポーランド侵攻を発端にして、第二次世界大戦が勃発していた。

 合衆国は翌年から英国に軍事援助を開始(独ソ開戦後にはソ連にも援助)したが、未だ直接、参戦していなかった。

 ルーズベルト大統領も、1940年に三選を果たした際に、公約で「戦争に参加しない」ことを明言してしまったため、合衆国からの宣戦は難しいと思われた。

 同年8月の世論調査によると、参戦に賛成した合衆国市民は未だ3割程度に留まっていた。

 日米全面戦争にはならずに済みそうな雰囲気は、いちか達が世界Aに迷い込む40日前で突如終わりを迎えた。この世界Aで、およそ60年先に某オンライン百科事典が出来た場合、事件の記事タイトルには、こう表示されるだろう。

 《巡洋艦オーガスタ号爆沈事件》と。

 




1 首都は北京では無く南京。後共産勢力(代表は毛沢東)がいます
2 インパールの地獄を引き起こした牟田口
3 元の名前は高野五十六
4 アメリア・イアハートの事 某博物館映画に登場 彼女の死亡原因(墜落原因)は現在も不明ですが、日本軍関与説もあるそうです


続きは明日投稿します。


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第8話【オーガスタ号爆沈事件】

 第8話【オーガスタ号爆沈事件】

 

 フィリピンは16世紀半ば以降、およそ350年に渡りスペインの植民地だったが、20世紀初頭に領有権が合衆国に移った。その後1935年に至り、1946年に独立する事が決定していた。

 1943年9月15日に重巡洋艦《オーガスタ》がフィリピンを友好訪問し、マニラに近いキャビて軍港に入港した。

 

 《オーガスタ》は、1931年1月に《重巡ノーザンプトン》級の6番艦として完成した。排水量9050トン、全長183メートル、速力32.7ノット。主砲は8インチ砲9門で、合衆国の巡洋艦としては珍しい魚雷発射管を装備していた。

 

 その数日後、自治政府やマニラ市長などの要人を招待し見学会等が行われて、9月20日夕刻に出港し、次の訪問地であるオーストラリア東岸のシドニーに向かった。

 しかし、出港して1時間後の午後6時にマニラ湾内で突如大爆発を起こして轟沈し、乗員667名が死亡もしくは行方不明となる大惨事となった。

 しかも、《オーガスタ》が大爆発を起こし爆沈する瞬間の写真が、合衆国の写真誌記者であったモーリー・ロルソンにより、彼がチャーターしていた漁船の上から偶然、撮影されていた。

 フィリピンの漁船員やマニラ湾に居た輸送船乗員等が、爆沈直前に魚雷の様な物を見ていた事も明らかにした。

 この記事が公表されると合衆国の報道機関は、「日本帝国の卑劣な陰謀」と大々的に報道し、世論も参戦を支持する意見が一気に70%を超え、10月に入り更に「日本撃つべし」の意見が広がった。

 この世論を受けて、ルーズベルト政権は、10月10日を期して対日全面禁輸と在米日本資産凍結を断行した。

 

 いちか

「日本海軍を信じていますが、念の為に聞かせてください。《オーガスタ号》の爆沈について、一切、帝国海軍は関与していないんですね?」

 山本

「無論です」

 

 山本提督は事件が大きく報道されると、即座に外洋に居る全潜水艦に即時帰還命令を出し、全潜水艦が帰還した後、潜水艦の航路情報を全て公表し、事件の時刻にマニラ湾に潜水艦はいなかった事を公表した

 しかし、合衆国政府は「こんなものは、いくらでも偽造できる」と切り捨てた。

 

 マナ

「『メイン号事件』みたいだね」

 石原

「メイン号事件?」

 六花

「あれ、もしかして世界Aでは『メイン号事件』……いや、米西戦争は起きていないとか?」

 

 『メイン号事件』とは、世界Bでの1898年1月にキューバで反スペイン暴動が発生し、キューバ滞在合衆国の国民保護の為に派遣された合衆国戦艦《メイン》が同年2月15日、キューバのハバナ湾に停泊していたところ、突然爆発し沈没して、270名が犠牲となった事件である。(1)

 爆沈後、米メディアは「爆沈はスペインの陰謀」と大きく報道し、4月25日には戦争が開始された。スペインは合衆国に連戦連敗であり、1903年のパリ和平条約にて、スペイン帝国はフィリピン、キューバ、プエルトリコを合衆国に割譲し、スペインの領土はほぼ本土のみとなった。

 

 山本

「君達の世界ではアメリカとスペインが戦争になり、オーガスタ事件みたいな事件も起きたと」

 いちか

「世界Aでは、戦争にならなかったんですね」

 石原

「なる前に経済が疲弊していたスペイン帝国が、お手上げになってしまったのだ」

 

 スペインは欧州の主役の座を大英帝国に奪われていたが、未だ中南米(ブラジル除く)に大帝国を保っていた。しかし、18世紀以降、中南米の植民地が続々と独立。

 世界Aでは、ロシア帝国がアラスカを合衆国に売却した様に、フィリピンとプエルトリコは合衆国に、キューバは大英帝国に売却していた。

 その後のスペインは、両方の世界で同じ道をたどった様だ。

(1930年に君主制廃止→左翼政権→スペイン内戦→フランコ将軍による右派独裁政権、第二次大戦ではドイツ寄り中立)

 




1 日本人も留学していた海軍士官などが巻き添えで7名死亡。


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第9話【ハル・ノート】

 【ハル・ノート】

 

 いちか達が世界Aに来て半月が経過した。

 

 プリキュア達は、チーム毎に清掃活動などのボランティアに出かけていた。もしくは、人目に付かないところで、他のチームと模擬訓練をやっていた。

 

 新聞を見ると、合衆国の世論は更に日本撃つべしの声が増えていて、既に日系人への暴行や不買運動も発生している様で、未だ戦争も始まっていないにも関わらず、一部の州では日系人の強制収容が開始されているとの事。

 日本と、アメリカ、ヨーロッパやオーストラリアなどを結ぶ定期航路も、11月初めには日本に戻る便を最後に全て運休となった。

 アメリカや欧州、大英帝国の植民地であるシンガポールなどに駐在していた商社員や家族の帰国も、相次いでいると聞かされた。

 

 米太平洋艦隊の拠点真珠湾には、11月10日前後にこれまで大西洋や、地中海で英国艦隊と行動を共にしていた正規空母《ヨークタウン》、《ホーネット》の2隻が到着し、当初から太平洋に配備されていた《レキシントン》、《エンタープライズ》と合わせて4隻となった。更に西海岸のサンフランシスコで改造工事を受けていた《サラトガ》も、数日以内にはドックを出てハワイに向かう可能性が高いと考えられた。

 

 太平洋艦隊司令長官、ハズバンド・キンメル大将が直接指揮する主力戦艦部隊と合わせると、戦艦8、重巡10、航空母艦9(4隻は、商船改造の小型低速空母)、軽巡10、駆逐艦50以上の大兵力となった。

 更に、西方からも戦争の足音が迫っていた。3日前にセイロン島(現スリランカ共和国)北東部の軍港トリンコマリーに、T・V・フィリップス大将率いる英極東艦隊が入港。戦艦《プリンス・オブ・ウェールズ》、巡洋戦艦《レパルス》、空母《インドミダブル》、《アークロイヤル》を主力としていた。

 数日の補給、休養の後、シンガポールに向かうのは確実だった。

 

 

 ひまりと六花が窓から外を見ている。最初の日と違いとても暖かい。小春日和というやつだ。道を歩く人の姿からも、郊外から野菜を行商に来た老婦人の姿からも、戦争の足音が速度を増しつつ近付いているようには感じられない。

 

 ひまり

「あそこの空き地で子供たちが野球をやってます」

 六花

「私たちの時代と変わらないなあ。でも、70年先はこんな遠くまで見えないんだろうね」

 ひまり

「この方角だと、ちょうど品川や大井町の方角だからビルとかホテルとかたくさんあるから……」

 二人

「……」

 その時二人の視界が覆われる。

「だーれーだー?」

 六花

「もうーマナでしょ」

 ひまり

「いちかちゃん、どうしたのです?」

 マナ

「大丈夫だよ六花」

 いちか

「安心して、ひまりちゃん」

 マナ

「レジーナがキングジコチューに連れ帰られた時に比べたら、大した事じゃ無いよ。だから、戦争にはならないよ」

 いちか

「エリシオに操られたり、世界中の人から心が消えたりしたけど、私たちは光を取り戻せたよ。だから、きらっと安心ですぞ」

 マナといちかの言葉には根拠は無い……でも、二人の笑顔には強い説得力を他の面々に感じさせていた。

 六花

「マナが言うと根拠が無くても、その通りになる……そんな気がする」

 ひまり

「同感です。いちかちゃんが言うと、本当に何とかなりそうです。お日様の様な人ですから」

 

 しかし、11月26日。必死に対米交渉を行う、全ての日本人とマナや、いちか達の希望を木っ端微塵に打ち砕く書簡が、米国政府から駐米大使野村吉三郎に手渡される。

 その文章は、当時の国務長官の名前を取り、こう呼ばれる。

 『ハル・ノート』と。

 




続きは明日投稿します。


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第10話【親指トム】

  【親指トム】

 

 ~1943年11月23日。マラッカ海峡アンダマン海側出口~

 

 トーマス・フィリップス大将――背が低かったため《親指トム》と渾名されていた。

提督は、数年間海軍作戦部長の、ダドリー・パウンド大将の下で作戦部次長を務めていた。しかし、本年9月に脳腫瘍が悪化したパウンド提督は退任し、後任は英本国艦隊司令官の、ジョン・トーヴィ大将に交代した。同時にフィリップスは大将に昇進し、英極東艦隊司令官に着任した。

 

 フィリップス提督率いる英極東艦隊は、21日にセイロン島トリンコマリーを出港し、ベンガル湾を東に向かいニコバル・アンダマン諸島の間を抜け、アンダマン海に入り針路を南東に転じた。

「間も無くマラッカ海峡に入る。ここから先は、船の往来や沿岸漁船も増える。見張りを怠るな」

 

 《プリンス・オブ・ウェールズ》の艦長ジョン・リーチ大佐は、貨物船や、多数の英領マレーやオランダ領インドネシアの沿岸漁船が、多く航行する海の難所たるマラッカ海峡に入ったので、衝突を避ける為に水上見張り員を増やす事を命じた。

 

「長官、明後日の夕刻までにはシンガポールに入港できるかと」

 参謀長パリサー少将の報告に対し、フィリップス提督は鷹揚に頷いただけで、直ぐに右手に見えるスマトラ島の海岸線に視線を移した。

 艦隊旗艦《プリンス・オブ・ウェールズ》は、大英帝国の誇る新鋭戦艦キングジョージ5世級戦艦の2番艦で、1941年1月に完成した。排水量36727トン、全長227メートル、速力28ノット、主砲は14インチ砲10門だが、そのうち8門は、列強戦艦では珍しい4連装砲塔だ。(時々故障するのは機密事項であった)(1)

 就役した直後に、独戦艦《ビスマルク》迎撃に駆り出され、デンマーク海峡で巡洋戦艦《フッド》と共に、《ビスマルク》と交戦した。しかし、《フッド》が弾薬庫への直撃で轟沈(1)し、《ウェールズ》も3発被弾し退避した。しかし、《ウェールズ》の砲弾は、《ビスマルク》の重油庫に命中し重油漏れを起こさせた。漏れ出た重油の痕跡は、遠くからも良く見え英海軍の追跡を受け続ける。その後英海軍の集中攻撃を受けて沈む事となった。

 

 後続する巡洋戦艦《レパルス》は《レナウン級》2番艦で、排水量32000トン、全長242メートル、速力29ノット、主砲は15インチ砲6門で、砲弾は一発あたりの破壊力なら、キングジョージ5世級戦艦より勝っている。

 完成は1916年8月。(何と第一次世界大戦の海戦に参加し、ドイツ帝国海軍と戦った事もある)

 既に艦齢27年に及び、装甲の薄い巡洋戦艦なので防御に不安もあるが、乗員による手入れは行き届いていて、油断できぬ力を持っている。

 後方5000メートルには、空母《インドミダブル》、《アークロイヤル》が続いている。

 

 《インドミダブル》は世界初の装甲空母で、航空機格納庫の天井部分に装甲を施している。500キロ爆弾に耐えられる能力があり、実際にイタリア軍機の爆撃で効果を証明した。

 しかし、装甲のせいで搭載できる航空機は、他国の中型空母程度の50機弱しか搭載できない。

 《アークロイヤル》は戦前から残存している貴重な大型空母で、装甲空母では無いが搭載機は《インドミダブル》よりも多い。

 

 《アークロイヤル》は、1941年11月10日にスペイン南部沖で独潜水艦《U-81》に捕捉され攻撃目標にされた。

 しかし、ジブラルタル基地から飛来した飛行艇《サンダーランド》に発見された。

《サンダーランド》が対潜爆弾を投下寸前に、《U-81》は慌てて魚雷を発射して潜航して逃げた。

 《U-81》が慌てて撃った魚雷は一本も、《アークロイヤル》に命中させる事は出来なかった。

 《アークロイヤル》は開戦以来、大きな損傷も無く、他の乗員達の間では幸運艦として羨ましがられていた。(2)

 

「長官! ロンドンの海軍軍部より電文です」

 通信参謀からの電文を受け取り、目を通すフィリップス提督。

 フィリップス

「諸君! 我らが友人(米国)は遂に対日全面戦争を決めたぞ」

 参謀長

「開戦ですか?」

 フィリップス

「数日以内には、駐米日本大使に宣戦布告同然の最後通告が出るそうだ。米国政府の宣戦布告と同時に、我が国も日本帝国に宣戦する。我が艦隊は、12月4日までにシンガポールを出港し南シナ海に進出。開戦の場合、香港やフィリピン攻略を目論む敵を粉砕せよと言う、ありがたい命令だ」

 




 1 生存者僅か3名
 2 チャーチル首相曰く「戦艦の様な物」フランス海軍の4連装主砲は、故障は少なかったそうな。戦闘する機会が少なかったから当然・・・
 3 史実ではこの日魚雷が命中し、救援作業もむなしく喪失


明日また投稿します。


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第11話【接触】

  【接触】

 

 ~1943年11月28日、15:00。足摺岬南西120キロ~

 

 米軍潜水艦『デイス』は日本近海にまで潜航していた。

 

「艦長、敵の主力艦隊がブンゴ(豊後)水道を出て来るのは、今日だと思われますか?」

 先任仕官ヨーゼフ大尉の質問に対し、潜水艦『デイス』艦長ジョセフ・エンライト少佐は答えた。

「恐らく数時間以内だ。遅くても明日朝までにはブンゴ(豊後)水道を出て、恐らくは重要拠点トラック諸島に向かうだろう」(1)

 

 潜水艦『デイス』はガトー級潜水艦の32番艦で、完成してから、まだ半年しか経過していない。(ちなみにガトー級70隻+準同型艦のバラオ級101隻=171隻)(2)

 訓練を終えた『デイス』は、10月末に日本近海での隠密偵察を行う様に命令を受けており、『デイス』は3日前に命令されていた偵察場所に到着していた。

 

 その翌日(11月26日)の昼に、ハワイの潜水艦隊司令部より、

「本日、駐米日本大使に最後通告が交付された。エンライト艦長は日本海軍出撃の有無を確認せよ」

 との命令が届いた。

 艦長

「日本海軍も開戦は避けられぬと判断して、出撃準備に入るだろう。準備に24時間掛り、昨日午後にクレ(呉)軍港を出たと仮定すると、ブンゴ(豊後)水道を抜けて来るのは今日の日没前後だろう」

 既に午前中から、何度も対潜哨戒と思われる小型艦艇や水上機を探知していて、その度に潜航して回避していた。現時点では未だ平時なので、いきなり攻撃される事は考えにくいが……

 

 

 ~同日、15:20~

  潜水艦『デイス』

 

 目的地に到達していた『デイス』内部に、緊張が走った。

「艦長! 推進音探知!」

「方向は?」

「ブンゴ(豊後)水道北から南下中、先頭は対潜艦隊の海防艦と思われます」

 潜望鏡を上げると、10隻前後の小型対潜艦が確認された。一旦、潜望鏡を降ろし海中に身を隠す。程なく大型艦を含む多数の推進音を確認した。

「よしそろそろだ。潜望鏡上げろ」

「アイアイサー」

 エンライト艦長が潜望鏡を覗くと、予測通り豊後水道を出て南下する敵主力空母機動艦隊が見える。

 艦長

「小沢提督の主力空母艦隊だ。大型4小型2……」

 

 艦橋が進行方向左側に見えるのは『赤城』、それに匹敵する大きさの『加賀』、やや中型なのは『蒼龍』と『飛龍』だろう。その他に小型空母や、空母の前後に1隻ずつ、金剛型高速戦艦や護衛艦多数が確認できる。

 

 艦長

「30分後に通信! 敵空母艦隊発見、位置、アシズリ(足摺)岬南西120キロ、大型4、小型空母2もしくは3、戦艦2、速力20ノット……敵は南東に進路を変えつつあり」

 潜望鏡を降ろそうとした艦長は、敵艦隊の上空を舞う10羽前後の《鳥》を目撃した。

 艦長

(渡り鳥か? いや何か鳥にしてはおかしいが……)

 艦長は、よく確認しようとするが西日が差し込んでよく見えない。白い羽根は見えるのだが。その時、一瞬桃色の頭部らしきものが見えた。

「艦長どうしました?」

「いや、敵艦隊の近くを何か変な鳥が飛んでいるんだ。む、何羽かこちらに来るぞ。10時の方向に水上偵察機! 急速潜航!」

 

 水上機は『デイス』を発見できなかったらしく、駆逐艦が向かって来る事も無く、30分後に無事通信を完了した。

 艦長

(先ほど見えたピンク色の鳥は日本固有の鳥だろう)

 エンライト少佐は、言わば連合国側で《最初にプリキュアを目撃した人物》になるのだが、本人が、それを知るのは、まだ先の話だった。

 




 1 現在はミクロネシア共和国領土。チューク諸島と呼ばれる。19世紀末から、30年ほどドイツ帝国領土だったが、ベルサイユ講和条約で日本領となった。
SLGゲームでは最重要拠点。相棒劇場版Ⅳで、空襲を受けている島はこのトラック島(昭和19年2月)
 2 戦後海上自衛隊に1隻貸し出された。


 ウェインライト艦長は、実在の人物であるギネス記録を所持しています。興味がある人は調べてみよう。


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第12話【レインボー5号計画発動】

  【和解の意思なし】

 

 ~1943年11月26日、夕方~ 

 

 木島中尉は、海軍省がいちか達との連絡担当につけてくれた仕官だ。未だ20代で彼女達(50人くらい、いるが)の兄と言った感じだ。

 その木島から彼女達に驚愕の内容が伝えられた。

 

 木島

「その内容だけど他の子達も含めて、まだ秘密にしてほしい」

 ゆかり

「報道発表は、なさらないんですか?」

 木島

「明日の朝刊で、合衆国から最後通告が来た事は報じられる筈だ。でも詳細が出ると、全国で反米暴動が起きかねないから、新聞社と協議して詳細は記事にしない事にしたんだ」

 

 詳細が書かれた紙を読んだゆかりから、形容し難い怒気が湧きあがったように見えた。

 内容には日独伊三国同盟からの脱退――まあ、これは予想されていたが――、オーガスタ号事件の謝罪と賠償、及び責任者の米側への引き渡し、更に償いとして南洋諸島(マーシャル、マリアナ諸島、パラオ等)の米側への割譲。重巡、戦艦、空母艦の所有禁止と保有している全艦の米側へ引き渡し等の、到底受け入れられない内容が書かれていた。

 

 六花

「これでは日本に死ねと言ってい居るのに等しい。アメリカは……日本と和解する意志は、砂粒すらも持って無いわ」

 ゆかり

「未だエリシオの方がまともね」

 

 

  【レインボー5号計画発動】

 

 ~1943年12月3日、14:00。ハワイ真珠湾~

 

 真珠湾軍港に面した太平洋艦隊総司令部では、出撃前最後の作戦会議が開かれ、各司令官や太平洋艦隊司令部幕僚達が揃って出席していた。

「先ほど、ワシントンの海軍作戦本部から最終命令が届きました。本国は12月7日、東部標準時正午を期して、日本帝国に対し国交断絶、及び宣戦布告を行う事を決定しました」

 太平洋艦隊参謀長スミス少将の発言で、会議室内にざわめきや息を飲み音が聞こえた。

 

 急激な米日関係の悪化に開戦は、まず避けられないと考えていはいたが、改めて、それを知らされると衝撃は少なくない。

 太平洋艦隊司令長官にして、米海軍大将にあるハズバンド・キンメル提督が命令した。

 キンメル大将

「英国も数日以内には対日宣戦を行うとの事だ。我々は数年前に策定されたレインボー5号計画に沿って、まずはマーシャル諸島に侵攻する」

 

 日独伊三国同盟では、構成国が宣戦布告を受けた場合、他の2国もその国に宣戦布告しなくてはならないとある。合衆国が大日本帝国に宣戦布告した場合、第三帝国とイタリア王国は、合衆国に宣戦布告する事になり、合衆国は堂々と第二次世界大戦に参戦可能となる。

 

 レインボー5号計画では、米軍は太平洋においては守勢を保ち、対独勝利を優先する事になっていたが、それでも米軍はマーシャル諸島方面に進出し、迎撃に出て来るであろう聯合艦隊を撃破することを目指した。日本軍に勝利した場合は、マーシャル諸島に第一海兵師団20000名を上陸させ占拠し、前進拠点を設ける予定だった。

 

 その後、新型空母と新鋭高速戦艦が一定程度、揃うのを待ってから攻勢を開始する。

 トラック諸島→マリアナ諸島→硫黄島+沖縄と前進し、日本の海上輸送線を寸断し、大日本帝国を降伏に追い込む。

 

 参謀長

「明日午前8時に、まず空母機動艦隊が出撃」

 ヘンリー・ニューマン少将と、フランク・ジャック・フレッチャー少将が頷く。

 参謀長

「同日正午を期して、キンメル提督率いる戦艦部隊が出撃し、数時間後に敵地に上陸する海兵隊を乗せた輸送船団や給油艦が出撃します」

 フレッチャー少将

「しかし、この大作戦に参加できないとは、ハルゼー中将も運が無い」

 ニューマン少将

「少し早いクリスマス休暇という事ですね」

 

 レキシントン級2番艦の『サラトガ』は、本来なら既に真珠湾に到着している筈だったが、ドックを出る直前、隣で修理していた駆逐艦が作業員の過失で火災事故を起こし、『サラトガ』も被害を受け、10日ほど出港が遅れてしまった。

 強硬派で知られるウィリアム・フレデリック・ハルゼー中将も視察に行っていて巻き込まれ、火傷で入院する事になった。

 

 キンメル大将

「『サラトガ』の到着を待っている訳にはいかん。サラトガ部隊は真珠湾到着後、開戦冒頭の真珠湾攻撃(可能性は高くは無いが)に備えて貰う」

 フレッチャー少将

「聯合艦隊の動きはどうかな参謀長」

 参謀長

「《デイス》と《ダーター》が通報して来た艦隊は、トラック諸島で補給を行っている最中でしょう。正規空母4、客船改造の中型2、小型3から4。戦艦はコンゴウ型高速戦艦2の他に、《ナガト》《ムツ》と《イセ》型戦艦2……それに噂の新戦艦2隻」

 キンメル大将

「日本帝国が軍縮条約無効後に建造して来た新鋭戦艦か。本国は45000トン前後で、16インチ(40センチ)砲9門を搭載した高速戦艦と見ている」

 実際は65000トンで主砲は46センチ砲9門なのだが、米海軍は、それを知る術を持たなかった。

 参謀長

「台湾北部には大型空母2、小型数隻とコンゴウ級戦艦2隻、重巡5から6隻が集結している模様です。更に陸軍師団を搭載した輸送艦隊も台湾北部に集結中」

 ニューマン少将

「英極東艦隊に対抗する為ですな。敵は主力空母を分散せざるを得ないでしょう」

 

 中部太平洋に展開する正規空母は4対4だが、搭載機の数は米側が3割多い。よって4対5で米側有利と言える。

 米国はフィリピンにアジア艦隊を配備しているが、重巡《ヒューストン》以下、軽巡2、駆逐艦10程度なので、被害を避ける為にオーストラリア北部ダーウィンへの退避命令が出ている。現在は、蘭領インドネシア東部のモルッカ諸島沖を南下している。

 

 キンメル大将

「では解散とする。今日は休んで出撃に備えてくれ。なお開戦は既に決定してはいるが、未だ議会の承認は下りてはいない。それまではあくまでも平時だ。途中、敵と遭遇しても、こちらからの攻撃は控えてくれ。我々は100年前まで鎖国の惰眠を貪っていた田舎国とは違う。文明国家だと言う事を忘れるな」

 

 キンメルはハルゼーがここに居ない事は、むしろ幸いだと思った。ハルゼーの反日感情は尋常ではないからだ。開戦期日前から日本の航空機や潜水艦を彼が目にした場合、容赦なく攻撃せよと命令を出す危険性が高かった。(1)

 

 

艦隊編成表

 

 

第一艦隊 山本五十六大将(連合艦隊司令長官)

呉軍港からミクロネシア・トラック島へ移動中

 

第一戦隊

『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』『日向』『伊勢』」

第六戦隊 五藤存知少将

『青葉』『衣笠』『加古』「古鷹」

第十一戦隊 原口恭一少将

 防空巡『吉野』『四万十』

 

第三水雷戦隊 橋本信太郎少将

軽巡『能代』+駆逐艦9隻

第六航空艦隊 桑原虎雄少将

軽空母 『雷祥』『祥鳳』

 

第四航空戦隊 角田中将

 

中型空母『隼鷹』『飛鷹』

駆逐艦6

 

 

第二艦隊 近藤信竹中将 

 

在高雄港(台湾南部)

 

第三戦隊 近藤中将

戦艦『金剛』『榛名』

第四戦隊 阿部弘毅少将

重巡『愛宕』『鳥海』

第七戦隊 栗田健男少将

軽巡『最上』『鈴谷』『三隅』『熊野』

 

第二水雷戦隊 田中頼三少将

 

旗艦 『神通』 駆逐艦9隻

 

 

第五航空戦隊 原忠一少将

空母『瑞鶴』『翔鶴』軽空母『瑞鳳』

第十二戦隊 下山少将

防空巡『手取』『黒部』

駆逐艦6隻

 

 

 

 

第一航空艦隊 小沢治三郎中将

 

呉軍港からトラック島へ移動中

第一航空戦隊

空母『赤城』『加賀』

第二航空戦隊 山口多門少将

空母『蒼龍』『飛龍』軽空母『千代田』

第八戦隊 三川軍一中将

戦艦『比叡』『榛名』

第十戦隊 城島高次少将

重巡『利根』『筑摩』

 

第一水雷戦隊 大森仙太郎少将

旗艦軽巡『阿賀野』+駆逐艦8隻

 

本土で待機

 

戦艦『山城』『扶桑』重巡『妙高』『那智』

 

 

英極東艦隊 トーマス・フィリップス大将

 

 

戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』巡洋戦艦『レパルス』

 

航空艦隊 クラッチレー少将

空母『インドミダブル』『アークロイヤル』

重巡『エクゼター』

防空巡洋艦『ナイアド』『デリー』

軽巡『ドラゴン』『ダーバン』『ダナエ』

駆逐艦10隻

 

オランダとオーストラリア海軍は省略




1 史実では実際にそのような命令を、許可も無く出していた。

米艦隊の編成はまた後日


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第13話【残された謎の物】

  【残された謎の物】

 

 ~1943年12月7日、22:00。和歌山県串本町~

 

 和歌山県串本町は、本州最南端で潮岬灯台がある。

 航路上の要所ではあるので、町には「怪しい人物に警戒せよ」等のスパイへの警戒を促す張り紙が、他の町村よりは多い。

 11月になってから、町民や漁師などの間で、近くアメリカと戦争になるのではないか、と言う噂話は増えた。しかし、全体的には未だのんびりした雰囲気だった。

 その日は12月とは思えない暖かい日で、夜になっても寒さを感じなかった。

 灯台に続く道に自転車が止まり、巡回中の二人の警官が降りて、灯台に続く道を歩き出す。

 

 小島光彦巡査

「やはり戦争になるんですかね」

 飯塚平次巡査部長

「さてどうかな。明日の事は明日にならんと判らん。知ってるのは、お上とお天道様くらいだろう。俺達はやる事をやるだけさ?」

 小島巡査

「どうしたんです」

 飯塚巡査部長

「あそこに誰か居ないか?」

 

 ベテランの巡査部長が指さす先には、灯台手前の緩やかな丘があり、丘の上に誰かが確かに居て、海の方角を眺めている。それは、妙な衣装を纏い、海に向け手を伸ばしている謎の人物だった。

 警官達からは距離があり、顔や衣装はよく見えない。

 

 小島巡査

「山伏でしょうか?」

 紀州は古くから山伏も多く、熊野三山で修行するものも多い。後の世では世界遺産になっている。修行者が潮岬に居てもおかしくは無いが。

 飯塚巡査部長

「モンゴル軍の襲来の時には、行者が味方の勝利を祈願したらしい。今度も外敵打倒の祈願でもしていたのかもな」

 小島巡査

「一応、確認しますか」

 

 若い巡査が走って丘の上に確認に向かう。しばらくして、年輩の巡査部長が丘の上に行くと、若い巡査しか居ない。年輩の巡査部長が彼に尋ねると、誰も居なかったとの事だ。ここ以外に丘を下りる道は無いのだが。

 見間違いだったのかも知れない。ふと足元を見ると、何か長方形の紙みたいなモノが落ちている。拾おうとすると、突如、風が吹き、紙らしきモノは空中に飛ばされ海の方に消えた。

 

 小島巡査

「何か落ちていたんですか?」

 飯塚巡査部長

「占いか何かに使いそうな紙が落ちていた。ちらっと見ただけだが、妖怪の絵が書いてあった」

 

 二人は紀州に生まれ、紀州で育った。徴兵で軍に居た時も含め、和歌山県から外に出た事は一度も無い。もし二人に外国の知識がある程度あったら、そのモノが何であるが判ったかもしれない。

 その後、灯台職員にも聞いてみたが、部外者は誰も来ていないという答えが返って来た。

 二人は見間違いと考え、そのまま帰って行った。

 







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第14話【開戦】

  【対日宣戦布告】

 

 

 ~1943年12月7日、10:50(米東部標準時)~

 

 駐米大使、野村吉三郎が国務省応接室に入ると、国務長官コーデル・ハルが僅かに憐憫(れんびん)の表情を浮かべた。それに気づいた野村は、ついに来るべきものが来るかと覚悟を決めた。

 

 

 野村

「国務長官、本職は我が国政府を代表して抗議しますぞ。我が国はオーガスタ号事件に何の関与もありません。それなのに貴国政府は悪意に満ちた……」

 

 ハル国務長官は片手を上げ発言を制止し、ハーマン対日課長に合図する。

 ハーマン課長が野村大使に文章を手渡す。野村は英語と予め和訳されている文章を受け取る。

 

 ハル

「我が合衆国政府は今から一時間後……本日正午をもって、日本帝国政府との国交断絶、及び戦闘状態に入ると宣言します」

 

 野村

「本国に打電する事は可能でしょうな?」

 ハーマン

「無論です。一切、妨害しないと約束します」

 

 ハル

「議会での開戦承認後、大使館員及び在留日本人の方は監視下に置かれますが、安全は保障します。半年以内に交換船(1)で帰国できるように取り計らいます」

 

 野村

「その配慮には感謝します」

 

 野村は別れの挨拶もせずに帰ろうと踵を返すも、一言、告げておかねばならぬと、再度、振り返った。

 

 野村

「最後に一言、ご忠告申し上げる。貴国政府が我が国を望まぬ戦争に引きずり込んだ事を、貴国政府が心から後悔する、その様な日が来ない事をお祈りします」

 

 退室する野村大使を、ハル長官とハーマン課長は侮蔑の表情で見送る。

 

 野村大使の忠告が僅か半月で的中するとは、ハル長官は想像すら出来なかった。

 

 

 

  【敵機探知】

 

 

 ~1943年12月8日、午前6時~ 台湾南部、高雄海軍航空隊基地~

 

 先ほどから空を睨み、一人の下士官が唸り声をあげ、時折、うろうろと滑走路を歩き回っている。

 

 周囲にいる作業員や、他の搭乗員も同じような行動をしている。彼らは何かおかしな宗教に、はまっている訳では無い。

 

 高雄海軍航空隊基地は一面濃霧に覆われていた。

 

 本来なら既に明るくなっている時間だが、今日は深い霧が台湾全体を覆い隠していて、数メートル先も見えないくらいだ。

 

 今朝は全員が午前4時に叩き起こされ、基地に展開する第1航空戦隊司令官、塚原二四三中将より、

 

「午前5時に米国政府は日本帝国に宣戦布告する。先ほど海軍軍令部より通知が有った。各員総力を挙げて、事に臨んでほしい」

 

 との連絡が入っていた。

 

 本来なら開戦と同時に、フィリピンの米極東軍航空隊への空襲を行うのが最善の方法と思われた。しかし、今回はアメリカ側から宣戦布告する形になるので、日本側から開戦と同時に空爆を行うのは難しい。

 

 

 

 堺 次郎曹長(戦闘機搭乗員 下士官)

 

「何も見えねぇ」

 

 60年ほど未来に、競泳で大活躍する金メダリストみたいな台詞を吐いていると……

 

 笹山少佐(戦闘機搭乗員 小隊長 士官)

「堺、落ち着け。逆にこの霧だ。敵さんの先制空爆も難しいだろう」

 

 堺

「まあそうですが」

 

 その時、基地にサイレンが鳴り響いた。

 

 笹山

「空襲か!」

 

 伝令

「ガランピの電探基地が敵機探知! ガランピの南、70キロを北上中ですが大編隊ではない模様」

 

 

 

 ガランピは台湾最南端の岬で、レーダー基地が設置されている。先制空爆では無く、恐らく偵察兼気象観測だろう。空襲が可能かどうかを調べるのが、主目的と考えられる。

 

 一時間後、南の方から爆撃機らしき爆音が近付いて来た。

 

 基地に配備されている対空砲は、一切動きを見せない。迂闊に発射すれば、基地の所在を知られる事になる。偵察でも爆撃機ゆえ、爆弾を搭載している可能性もある。

 

 やがて一旦爆音が大きくなり、北に消えて行った。30分後再び大きくなり、南に消えて行った。

 

 

 

 

 

 




1 敵地に残された民間人などを帰国させるために、中立国の客船を使いアフリカの、ポルトガル植民地の港で、乗客を交換させて帰国させた。


 ハル・ノートを作成した、人物はソ連のスパイだという説が有力です。ソ連はナチスと日本に挟み撃ちされるのを恐れていて、それを防ぐ為に日米開戦に追い込む事を画策した。
作成した人物は、戦後スパイの疑いがかかった直後に自殺しています。


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第15話【奇襲】



原作タグをプリキュアに変更しました。


  【奇襲】

 

 ~1943年12月8日、午後0時。米極東空軍、マニラ、クラークフィールド基地~

 

 トーマス・ブレリートン少将(米極東空軍司令)

「午前中には結局、空襲は無かったな」

 参謀(米陸軍中佐)

「偵察機搭乗員によると、台湾の大部分が深い霧や雲に覆われているみたいですね」

 

 夜明けと同時に米極東空軍は戦闘機の大半を発進させ、台湾や台湾近海に居るはずの敵空母からの空襲に備えた。しかし、何時間経過しても敵機は姿を見せない。かなりの悪天候で、今日の空襲は断念した可能性もある。

 

 午後になれば流石に霧も晴れるだろう。午後に空爆隊を出す事を決め、現在は準備中だ。それまでに、朝から迎撃に発進した戦闘機に燃料給油を終えなければならない。搭乗員に昼食を採らせる必要もある。

 ブレリートン少将

(今、空襲を受けたら大変な事になるが、いかんいかん縁起でもない)

 兵士

「アパリのレーダー基地より至急電! 敵機、大編隊探知! バシー海峡上空を南下中!」

 アパリはマニラの在るルソン島北岸の町で、バシー海峡に面している。

 

 

 ~同日、午後0時45分。クラークフィールド基地上空~

 

 堺次郎

「上空の敵機は少ないぞ。敵さん燃料補給の途中だな」

 午前9時に漸く濃霧が晴れて、攻撃隊を発進させたが、結果的に最良のタイミングとなった。堺は慌てて上昇する敵戦闘機を発見した。

 その中にイワシを天日干しにして塩漬けし、数尾ごと藁で貫いた伝統料理、メザシに似た形の大型戦闘機を発見。慌てて操縦桿を倒し機関砲を避ける。

 堺

(あれが噂の《P-38》か? 変な形だが時速600キロは出ているな)

 

 同盟国ドイツ経由で入手した情報だと、《P-38ライトニング》は中東などでは、重戦闘機や戦闘爆撃機として活躍しているらしい。

 堺は続いて上昇して来る《ライトニング》を発見して、後ろ上空に回り込み、20ミリ機関砲を発射する。狙い通り左エンジンに命中し、敵機は破片をばらまきながら墜落して行った。

 堺

(あの図体だから機動戦は苦手そうだな。しかも練度も高くない)

 更に、もう1機撃墜した時には、上空を飛んでいるのは味方機ばかりで、撃墜された米戦闘機の黒煙が多数、たなびいている。その時、小隊長の笹山中尉から無線が入る。

 

 笹山

「今から滑走路の爆撃機を銃撃する。お前も来い」

 堺

「了解!」

 

 滑走路には、多数の爆撃機《B-17フライングフォートレス》が並んでいる。

 《B-17フォートレス》はアメリカ初の大型爆撃機で、最大速力はおよそ時速530キロ、航続距離は2000キロで爆弾は大体5トン前後搭載できる。後期生産型は非常に撃墜しにくく《空飛ぶ要塞》の異名で知られる。

 欧州では連日、英国の基地から発進し、ドイツ工業地帯や交通インフラを爆撃している。

 

 笹山小隊長機と2番機に続き、堺の《零式艦上戦闘機》も滑走路に向け降下を開始する。急降下だと空中分解するので浅い角度で降下する。

 空中戦なら《B-17フォートレス》に多数配備されたブローニング・12.7ミリ機銃が一斉に発砲されるが、空港に駐機している状態では反撃も出来ない。

 高度200メートルまで降下して、20ミリ機関砲を発砲する。

 

 堺

(空飛ぶ要塞と言われるほど頑丈な機体だ。反撃が無い状態でも破壊できるだろうか)

 しかし、それは杞憂だったようで、エンジンから出た火が補給されたばかりのガソリンに引火し、右主翼が吹き飛んだ。

 笹山中尉はエンジンだけでは無く爆弾庫にも機関砲をぶち込んで、搭載準備中の爆弾を誘爆させ大爆発を起こさせた。

 堺が3機目の《フォートレス》を銃撃し始めた時、弾切れになり20ミリ機関砲は停止した。

 7.7ミリ機銃は未だ弾があるが、7.7ミリ機銃では《B-17フォートレス》を破壊する事は困難だった。

 笹山

「そろそろ爆撃隊の爆撃が開始されるから撤収するぞ」

 

 高度を上げる寸前、目の前にいた燃料給油車に7.7ミリ機銃をついでに撃ち込んでおく。が、期待していた大爆発は起きない。

 堺

(残念、既に給油した後で、空のタンクローリーだったか。後は、爆撃隊に任せるぞ)

 数分後、大混乱に陥っているクラーク・フィールド基地上空に、乱れなく飛行していた高雄航空隊、《一式陸上攻撃機》40機が整然と突入を開始した。

 

 

 ~同日、14:00~

 

 第一次爆撃隊が離脱を開始するのと入れ違いに、戦闘機30、爆撃機35からなる第二次爆撃隊が襲来し、クラークフィールド基地やマニラ近郊にあるイヴァ飛行場に爆弾の雨を降らせた。

 

 木村幸太郎(爆撃担当)

「機長、黒煙で敵飛行場、視認困難です」

 機長(海軍大尉)

「クラークフィールド基地は滑走路も破壊されている様だ。格納庫らしき建物は激しい黒煙の中に、辛うじて輪郭が見える程度だ」

 機長が爆撃担当の乗員に指示を伝える。

 機長

「小隊長、宮田少佐より命令だ。敵飛行場、視認困難につき、第二小隊6機はキャビテ軍港に向かい、在泊艦船もしくは港湾施設を攻撃する」

 

 出撃前に、敵飛行場に甚大な被害を与えた場合や、黒煙などで視認困難な場合は軍港を爆撃しても良い。という許可は出ている。マニラ湾には巡洋艦のような大物は、やはり居ない様だ。

 篠田(尾部機銃担当)

「大型艦は居ませんね」

 機長

「事前の情報通り、豪州北部に一時退避したのだろう」

 

 湾内には5000トン級輸送船1、かなり旧式の駆逐艦2、潜水艦3~4隻が停泊しているのが確認できた。輸送船はボイラーが故障でもしているのか動きは無い。しかし、他の艦は急いで逃走しようとしていた。

 《一式陸攻》6機が港に近付くと、駆逐艦が対空砲と機関銃を撃って来たが、装備が古すぎるのか乗員の腕が悪いのか、砲弾は全て見当違いの方向へ飛んで行った。

 宮田少佐機と2番機は、駆逐艦を無視して中型輸送船に爆弾を投下。250キロ爆弾4発から5発が命中し、炎上し大きく傾いた。

 3、4番機は旧式駆逐艦《ピアリー》《ヒルズバリー》を上空500メートルから爆撃し、それぞれ2発ずつ250キロ爆弾を直撃させた。20年前に完成した旧式の老朽駆逐艦には完全に致命傷で、爆発炎上しマニラ湾に消えた。

 

 




霧のおかげで奇襲になったのは史実通り。

 小話

 1940年5月10日、ナチス第三帝国軍はベルギー・オランダ・ルクセンブルクに侵攻を開始し、瞬く間に占領しフランス軍の防錆ラインも突破し、6月にはパリを陥落させました。その時未だ、イタリア王国は未だ参戦していなかったのですが……



 「総統閣下! イタリアが参戦しました」
ヒトラーは全く慌てず、
 「3個師団も派遣して防衛すればよい」

 「違います、イタリアは我らの味方として参戦したのです!」
ヒトラーは仰天して、椅子から立ち上がり、
 「それでは、10個師団を派遣してイタリアを救援しなくてはならない!」

 有名な戦争ジョークなので、何処かで見た事がある人も居るかも。
 
続きは明日投稿します。


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第16話【奇襲後編】


艦これに初の夜間戦闘機《月光》実装。斜め上の爆撃機を撃てる機関銃が装備されてます。

感想ありがとうございます。


木村(爆撃手)

「俺達は、あそこの潜水艦を狙いましょう」

 機長

「桟橋に隣接しているのを狙うぞ」

 5、6番機が潜水艦停泊地にあと1500メートルに迫った時、

 篠田

「敵機接近! 4機です」

 機長

「《P-40》か。未だ爆撃していない飛行場から来たか」

 

 《P-40ウォーホーク》が米陸軍に採用されたのは、第二次世界大戦前の1938年で既に旧式機の部類に入る。同盟国が不時着機を調べた結果、機体重量から『零戦』様な機動戦は苦手だが、頑丈な構造で撃墜しにくく、操縦や整備も容易で、新米飛行士でも楽に操縦できる利点がある。

 しかし、多勢に無勢。即座に護衛戦闘機に気付かれ、2機は袋叩きにされ墜落した。が、その隙に残り2機が直衛戦闘機をかいくぐり、小隊5、6番機に迫って来た。

 

 5番機は20ミリ機銃と7.7ミリ機銃で反撃するが、《ウォーホーク》戦闘機の12.7ミリ機銃6丁の強力な弾幕射撃を受けてマニラ湾に墜落。

 《一式陸攻》34型は22型に比べ航続距離を抑える代わりに燃料タンクの防弾化と自動消火装置を搭載し、生存性を上昇させていた。しかし、12.7ミリ機銃6丁の弾幕を短時間で撃ち込まれては、どうしようもない。

 《ウォーホーク》戦闘機4番機も、後ろ上方から6番機を狙って来た。

 

 篠田

(確か爆撃機の機関銃は命中率が低い。だから、敵機の針路を読んでそこを撃て! と教わった)

 彼は反射的に《ウォーホーク》の針路先に20ミリ機関砲を撃ち込んだ。狙い通り《ウォーホーク》が弾幕にまともに突っ込んで、操縦席の風防ガラスが砕けるのが見えた。 

 篠田には搭乗員が銃弾を喰らって、のけぞるのも見えた気がした。

 機長

「篠田! よくやったぞ!」

 

 5番機を撃墜した《ウォーホーク》戦闘機も、《零戦》の追撃を受けて、自らが撃墜した《一式陸攻》と同じくマニラ湾に消えて行った。

 6番機は、そのまま潜水艦を撃沈すべく接近したが、今しがた撃墜された《ウォーホーク》は黒煙を吐きながら6番機の真下に墜落して行き、爆発して空中分解してしまった。

 6番機は失速や破片が突き刺さる事は無かったが、大きく煽られて、爆撃手は反射的に爆弾を投下してしまい、4発の250キロ爆弾は倉庫らしき施設に落ちて行った。

 

「機長、すみません」

「不可抗力だ。気にする……」

 そう言った瞬間、後方から聞いた事も無いような爆発音が聞こえ、機体は激しく振動した。

 機長

「篠田! 怪我は無いか? それと何が起きた?」

 篠田

「怪我はありません。今、爆弾が落ちて行った建物が凄まじい爆発を起こし、凄い黒煙を発しています」

 機長

「味方機、いや今の爆発で巻き込まれた飛行機はあるか?」

 篠田

「いいえ、敵味方共に巻き添えは無いと思います」

 爆撃手

「何が起きたんでしょうか?」

 機長

「恐らく弾薬庫の類だとは思うが」

 

 結局、在泊艦船を爆撃した5機(投弾前に撃墜された機を除く)の中で、最大の戦果を挙げたのは、間違えて爆弾を投下した6番機だった。

 弾薬庫は正確には潜水艦用の魚雷貯蔵庫だった。爆発で倉庫内に在った200本以上の魚雷が、一瞬で爆発してしまった。

 米アジア艦隊には旧式艦ばかりとは言え、潜水艦15隻以上が配備されていた。しかし搭載魚雷の消滅で、《短時間潜水可能なただの鉄の塊》となってしまい、存在価値をほぼ消滅させてしまった。

 

 

 ~同日、午後4時。南シナ海、北緯19度43分、東経114度92分~

  英極東艦隊旗艦、戦艦《プリンス・オブ・ウェールズ》

 

 フィリップス提督

「フィリピンの米極東空軍が大損害を受けた! 何が起きたんだ」

 パリサー少将(参謀長)

「戦闘機の燃料補給中に奇襲を受けたそうです」

 ゴードン大佐(航空参謀)

「戦闘機120機の内50機以上が撃墜、もしくは滑走路などで破壊。B-17爆撃機も40機以上が滑走路で破壊されたそうです」

 フィリップス提督

「恐らく数日中に北部フィリピンの制空権は、日本軍に掌握されるだろう」

 ゴードン大佐

「艦隊が台湾の海軍航空隊と空母艦隊の双方から、攻撃を受ける危険性が高いと懸念されます」

 フィリップス提督

「過ぎた事を嘆いても始まらない。一旦、後退しよう」

 パリサー少将

「撤退では無いのですか?」

 フィリップス提督

「一旦、後退して敵空母と距離を置く。夜半過ぎから再度前進して距離を詰める」

 パリサー少将

「まずは敵空母を優先すると言う事ですね。順当に考えて、それしか手段は無いでしょう」

 フィリップス提督

「そのうえで余力があれば、台湾の海軍航空隊基地や陸軍師団を満載した輸送船団を叩く。日本側も被害皆無ではあるまい?」

 

 情報によると、日本側の戦闘機と爆撃機を合計して15機前後は撃墜との事。

 他にも撃墜は免れたが損傷が酷くて、不時着や墜落、又は帰還後に廃棄処分となる機体も出ただろう。

 

 極東艦隊司令部は、クラークフィールド等に来襲した新型戦闘機を、洋上の航空母艦から発進したと判断した。ルソン島上空で多少とも撃墜機を出していれば、明日の航空戦では味方が有利になると判断した。

 しかし、その判断は日本軍を過小評価していた。《零戦》の航続距離を過少に見積もっていたのである。《零戦》は台湾南部からマニラまで余裕で往復できるとは夢にも思わなかった。

 

 

 余談

 

米軍機の合理的な点

 

 

1 戦闘機も爆撃機も座席は全て同じので統一

2 搭載機関銃も、ごく一部を除きブローニング12.7ミリ機関銃で統一

 

日独は上の逆をやってます。国力圧倒的に低いのに。

 

 




 フィリピンに備蓄された、潜水艦用魚雷が全部誘爆してしまった件も史実 


また明日投稿します。


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第17話【南シナ海航空戦前編】

 【南シナ海航空戦前編】

 

 ~1943年12月9日、6:00。北緯22度9分、東経119度4分。

  南シナ海(台湾高雄市南西100キロ)~     

  第五航空戦隊、旗艦《瑞鶴》

 

 後に、世界初の航空母艦同士の航空戦として、歴史に名前が残る『台湾南西沖航空戦』は、どちらが先に敵艦隊を発見するかという『偵察戦』から幕を開けた。

 第五航空戦隊(五航戦)は空母《瑞鶴》、《翔鶴》から艦上偵察機《二式艦上偵察機》を2機と雷撃機《天山》を各3機が。

 他に重巡《利根》と、近藤信竹中将の第二艦隊から支援に廻してもらった軽巡《鈴谷》、《熊野》から水上偵察機各2機が、南シナ海に向け偵察に発進した。

 更に、台湾南部の飛行場からも《一式陸上攻撃機》4機と、高雄港からは日本が誇る傑作飛行艇《二式飛行艇》2機も偵察に向かった。

 

 一方の英極東海軍も空母《インドミダブル》、《アークロイヤル》から艦上攻撃機《バラクーダー》各2機と、フィリピン中部の未だ爆撃を受けていないパナイ島と、セブ島の飛行場から《B-17》爆撃機数機が偵察に向け発進した。

 

 

 ~同日、6:50~

 

 輪形陣の南側に居た高速戦艦《榛名》の13号対空レーダーが、北上して来る航空機を探知した。距離は艦隊の南100キロで、編隊では無く偵察機と推定された。

 貝塚武男大佐(瑞鶴艦長)

「恐らくセブ島かパナイ島から離陸した《B-17》と思われます」

 原 忠一少将(五航戦司令)

「直ちに迎撃機を出してくれ」

 即座に岸部少尉と横島一等兵曹の《零式》戦闘機が、発進し迎撃に向かった。

 

 

 ~同日、7:10~

 

 横島

「岸部少尉! やはり《B-17》ですね」

 岸部

「上空から攻撃する。《B-17》は重武装だ。気を付けろ」

 《B-17》も迎撃機に気付いたのか、高度を6000から上昇させ回避しようとする。

 《零式》戦闘機は高度6000~7000を超えると、エンジン出力が低下して上昇速度が落ちる。

 岸部と横島は何とか《B-17》の上空に回り込み、攻撃を開始したが、《B-17》も12.7ミリ機銃12門の重武装で激しく撃ち返して来た。

 《零戦》は20ミリ機銃を何発か《B-17》のエンジンに命中させたが、それでも尚、《B-17》は煙を出しているにとどまり、悠々と飛び続けている。

 

 横島

「エンジン不調、離脱します」

 《B-17》の12.7ミリ機銃による攻撃を冷却器にでも被弾したのか、プロペラの回転がおかしくなっている。

 岸部

「離脱しろ」

 岸部は、今度は左上方から銃撃を加え、ようやく《B-17》のエンジンから黒煙が噴き出た。

 しかし、墜落したり炎上したりする事も無く飛行している。やや高度を下げつつ、積雲の中に退避しようとしている。

 更に追撃しようとしたが、20ミリ機関砲弾が、もう残り少ない事に気付き撃墜を断念した。

 岸部

「空飛ぶ要塞にふさわしい重防御だな。早く新型戦闘機を配備して貰わないと、かなりの難敵になるぞ」

 

 《B-17》から通信が発信された。

「日本艦隊発見。位置、台湾高雄南西50海里。正規空母2、小型1、戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦10以上。大型空母は艦載機発進準備中、艦隊針路南西」

 英極東艦隊は、その通信を受信し、即座に攻撃隊の出撃を命令した。

 《インドミダブル》からはグラマン社製《マートレット》15機、フェアリー社製《バラクーダー》雷撃機15機。《アークロイヤル》からは《マートレット》18、《バラクーダー》雷撃機18機の合計66機が出撃した。

 《マートレット》は米海軍の《ワイルドキャット》戦闘機を英国に輸出したバージョンで、性能に違いは無く、速力530キロ。武装は12.7ミリ機銃4丁で、これも米国版と同じだ。

 

 

 ~同日、8:30~

 

 《B-17》に発見された第五航空戦隊は、まず第一次攻撃隊を空中に退避させ、索敵機から発見の報告が入り次第、攻撃に向かわせる事になった。

 

 

 ~同日、8:45~

 

 英空母攻撃隊が日本艦隊上空に到達したが、彼らを待ち受けていたのは、予想を超える多数の戦闘機だった。

 

 ショーン少佐(攻撃隊戦闘機隊隊長)

「艦長が敵の戦闘機は、昨日のマニラ空襲で多少は消耗しているだろうと言っていたが、どう見ても、そうは思えないぞ」

 日本軍の戦闘機は50機以上は居る。

 

 ショーン少佐は知る由も無いが、聯合艦隊は艦隊の小型空母に搭載する飛行機のほとんどを戦闘機に変更する事に決定し、一部の偵察機や対潜哨戒機を除き、爆撃機と雷撃機を廃止する方針を決定していた。

 五航戦の小型空母《瑞鳳》は戦闘機20、攻撃機15から、戦闘機38、偵察機3に変更されていた。

 戦闘機は爆撃機などよりは小型なので、戦闘機だけを搭載する場合、戦闘機以外を搭載するより、搭載機数が多くなる。更に爆弾庫や魚雷庫も廃止するので、空襲時に誘爆のリスクを下げる事も可能になる利点もある。

 

 英国の33機の戦闘機は、たちまち優勢な敵戦闘機隊から激しい攻撃を受ける。その行動も一糸乱れぬ動きで英搭乗員を驚かせた。

 ショーン

「くそっ! 誰だ、日本の戦闘機、《ジーク》(零戦)のレベルはイタリア空軍並だと吐かしたバカは!」

 《マートレット》より30キロ以上は速度が速いとショーンは感じた。恐らく《零戦》に新型のエンジンを搭載し、性能を向上させた機体だと判断した。

 

 周囲を見ると、《零戦》が1機落ちる間に《マートレット》は4機から5機が落ちて行く。 

 ショーン少佐も目についた敵機を攻撃するも、敵機は急旋回し回避していく。

 ショーンは新たな敵を探そうと愛機を飛ばし、それを見出した。

 ショーン

(あいつはスピードが出ていない? 銃撃されてエンジンがやられたか?)

 一機の《零戦》が銃弾を受けて損傷しているのか、ゆっくりと離脱しようとしているのが見えた。

 

 ショーン

「やってやる……!」

 その瞬間、ショーンは何か嫌な気配を感じた。

 周囲を確認しようと僅かに顔を動かした瞬間に、後方から20ミリ機関砲弾が操縦席に突入し、ショーンの後頭部に命中した。

 ショーンは熱い衝撃を感じた瞬間に意識を失い、うめき声を上げる事も無く、機体ごと南シナ海に落ちて行った。

 その間に艦上雷撃機《バラクーダー》は、3隻の空母――中でも大型空母《瑞鶴》、《翔鶴》――の2隻に向けて進撃したが、20機近くの戦闘機に阻まれた。

 

 《バラクーダー》雷撃機は、4月に配備が開始された最新鋭の艦上雷撃機の筈だ。最大速力は時速370キロを誇っていた。

(ちなみに、7年も前に初飛行した日本帝国海軍の《九七式艦上攻撃機》の最大速度は377キロだ。つまり日本軍の7年前の旧式機と同程度の最高速度しか出ない)

 無論、日米の新型雷撃機に比べ70キロ以上は低速だ。最新鋭雷撃機どころか、完全に周回遅れの駄作機でしかないとの事実を証明してしまった。

 《バラクーダー》は、もう魚雷攻撃どころか戦闘機から必死に逃げ回るしかなくなっていた。

 

 零式搭乗員

「おいおい、あいつら本当に新型機かよ」

「《バラクーダー》ってのは、干物にするカマスって魚と同じらしいぞ。今日は美味い干物が、たっぷり食べられるぞ」

 その日の戦闘は、後年、『南シナ海の干物狩り』という英国にとって、不名誉極まりない名前を付けられてしまう。

 無論、魚雷は一本も命中せず――投弾前に大半が撃墜された――、10機ほどが辛うじて攻撃をかいくぐり逃走に成功した。

 戦闘の終盤、撃墜された《マートレット》戦闘機が操縦不能で、戦艦《金剛》の左舷甲板に墜落。機銃座一基が破壊され、乗員約10名が死傷し黒煙が上がった。(すぐに鎮火された)

 更に撃墜された《バラクーダー》雷撃機の破片で、《雪風》の乗員2名が軽傷を負った。

 

 

 

 

 余談 サリヴァン兄弟の悲劇(史実)

 

 

 1942年(昭和17年)11月13日 ガダルカナル島を巡る攻防戦の最中、第3次ソロモン海戦で、《アトランタ》級軽巡洋艦《ジュノー》は、酸素魚雷が命中し大きな損傷を受け、後方に向け離脱を開始しました。しかし、数時間後潜水艦《伊-26》

の魚雷3本を被弾して轟沈。生存者も最初は100名ほどいましたが、サメや飢えで次々と死亡し、最終的に生還したのは10名でした。

 

 《ジュノー》には、アイオワ州出身者のサリヴァン兄弟5名が勤務していましたが、全員戦死しました。その後同様の悲劇を避ける為に、兄弟や近親者を同じ艦に配属する事は禁止されました。陸軍でも兄弟全員が戦死した場合、残った一人は実家断絶を避ける為に、前線勤務から外される事になりました。

 

 

 ちなみに、このエピソードは某ハリウッド映画の構想に繋がったそうです。(監督は宇宙人と少年が遭遇する映画の監督)

 




後編は明日投稿予定


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第18話【南シナ海航空戦後編】

 艦これ造船神様へ、そろそろ《大和》《武蔵》《大鳳》を出してください。


~同日、午前9時30分~

 英空母艦隊 旗艦《インドミダブル》

 

 インドミダブル乗員や空母部隊司令クラッチレー豪州海軍少将は、帰還機の少なさに愕然とした。

 クラッチレー少将

「日本機の能力は、イタリア機を遥かに凌駕している様だ」

 参謀

「報告によると極めて格闘戦に強いそうです。かなり機体重量を削っていると考えられます」

 クラッチレー少将

「私達にも新型戦闘機が有れば……」

 もっと性能の良い艦上戦闘機も有るが、本国艦隊の空母に優先配備されてしまっている。

 残存機の収容が半ばまで終わった時、

「航空機らしい編隊を探知!」

 参謀

「味方機を尾行しやがったな」

 

 敵の攻撃を撃退した後、空中退避していた攻撃隊は、敵機を尾行して英艦隊に辿り着いた。

 村田重治(攻撃隊指揮官 少佐)

「ジョンブル(英国)は意外に近い所に居たな? マニラの米軍が大損害を受けたから、一旦後退するかと思ったが」

 未明から出していた偵察機には、英艦隊は遠距離に居ると考えていたので、発見できなかったのだろう。

 第一次攻撃隊は《零式》艦上戦闘機が各18機、艦上爆撃機《彗星》各20機、艦上雷撃機《天山》が各18機、合計すると113機となる。

 英空母は収容作業を中断し、戦闘機を発進させたが、その数は少ない。

 米極東空軍にも支援を要請したが、この日も朝から台湾より発進した、第十一航空艦隊の攻撃を受けており、支援は不可能だった。

 

 村田

「瑞鶴隊は戦艦をやれ。翔鶴隊は空母をやれ」

 村田は翔鶴隊《天山》18機を率いて、空母《インドミダブル》に向かう。

 天山乗員

「敵の巡洋艦の対空射撃が激しいですね。あれが英国自慢の防空巡洋艦《ダイドー》級ですか」

 

 《ダイドー級》巡洋艦は排水量6000トン、全長156メートル、速力32ノットの軽巡だが、特筆すべきは、史上初の対空戦闘を主任務にした巡洋艦として知られる。主砲は5.5インチ対空砲8門と、多数の対空機関砲を装備している。

 

 乗員

「隊長、他の軽巡……20年前の旧式艦ですが、あいつらも防空巡洋艦に改造されていますね」

 村田が確認すると、第一次世界大戦の末期に建造された旧式巡洋艦も、主砲が5.5インチ対空砲に交換され、更に対空機関砲が多数増設されているのが確認できた。

 村田

「全機、海面近くまで降りろ。高度10メートル以下だ。そこに天井があると思え!」

 天山隊18機は対空射撃を避ける為に、高度10メートルまで降下する。僅かでも操縦を誤れば墜落は免れなく、高度な技術が必要とされる。

 まず、中島大尉率いる《彗星》による急降下爆撃が開始される。

 《インドミダブル》と護衛艦の対空射撃で、3機が撃墜されるが、高度500から必殺の500キロ爆弾を投下し、2発直撃する。

 しかし、格納庫天井が装甲化されていたので、貫通できず命中した直後に黒煙が上がった。

 

 村田

「500キロ爆弾の直撃に、耐えられると豪語しているそうだが真実だったか」

 平山清志一飛曹(無線担当)  

「魚雷をぶち込んでやりましょう。魚雷に対しての装甲は無いのでは」

 村田

「そこまでやったら、とても30ノット以上は出せない。魚雷に対する防御は他の空母と同じだろう」

 

 天山隊18機に対し、英艦隊は対空射撃を開始するが命中しない。高射砲も何故か天山隊のはるか後方で爆発している。

 星野要二飛曹長(操縦士)

「敵さん、天山の最高速度を自分達の雷撃機と同じくらいだと思いこんでいるんですね」

 空母《インドミダブル》まで距離1200……1000……800と近づいていく天山隊。 

「距離600!」

 村田

「魚雷投下」

 

 操縦士が魚雷投下レバーを下げて、九一式航空魚雷が《天山》を離れて着水する。

 同時に《天山》は反動で、一瞬ふわりと浮き上がる。雷撃機にとって非常に危険な瞬間だ。

 3番機が魚雷を投下しようとした瞬間、村田機をかすめた機関銃弾で、3番機から霧状にガソリンが噴き出す。

 3番機の黒木曹長は軍令部総長の遠縁に当たり、当人も、それを鼻にかけ自慢するので周囲からは浮いていた。

 

 村田

「黒木、早まるな!」

 黒木は、いつも通りふざけた感じで敬礼をすると、そのまま《インドミダブル》に突入して行く。

 それを目撃した英空母や護衛艦の乗員が壮絶な自爆に怯んで、数秒間、対空射撃が止んだ。その隙に残りの《天山》は、急いで急上昇して逃れる。

 村田

「魚雷は命中したか?」

 清水

「水柱2……2本命中! 魚雷ごと突入した黒木曹長の分を入れると、魚雷3本命中です」

 艦体中央に都合3本の魚雷を喰らった《インドミダブル》は、つんのめった様に停止し、左舷に大きく傾いた。特に魚雷ごと突入した青木機の魚雷で、発電機室が浸水し電力の半分が落ちたのが致命的だった。

 村田

「黒木……《インドミダブル》は沈むぞ……」

 

 翔鶴隊に、戦艦を攻撃していた瑞鶴隊が合流して来る。

 フィリップス提督の旗艦《プリンス・オブ・ウェールズ》には、500キロ爆弾3、魚雷2が命中。艦橋の後ろに在る特徴ある14インチ四連装砲塔は、破壊され炎上している。

 しかし、機関部は無事の様で、未だ全速で退避しようとしているのが見える。

 巡洋戦艦《レパルス》にも、偶然、同じ爆弾3に加え魚雷2が命中していた。

 しかし、こちらは魚雷の内、1本が艦尾にある舵を破壊してしまい、ちょうど回避行動中だった《レパルス》は、そのまま左旋回を続けるしかなくなった。

 第二次攻撃を受ければ、まともに回避できない《レパルス》の命運は既に尽きていた。

 

 ~同日、午後1時50分~

 

 第五航空戦隊は、もっと早い時間に第二次攻撃隊を出すつもりで、敵の空襲を撃退してから、直ぐに準備を開始していた。

 しかし、10時ごろから艦隊は、断続的に米軍機の爆撃を受けた。

 極東空軍司令プレリートン少将は、昨日の戦闘で破壊を免れた戦闘機や、爆撃機をかき集めて五空戦に爆撃を命じた。もっとも、ルソン島北部の飛行場は大半が破壊されていた。

 そのため、攻撃に加わったのはルソン島中部と、南部の飛行場から、かき集めた航空隊である。

 極東空軍の主力は、マニラ近くの基地に集中していたので、ルソン島中部や南部の航空隊は大半が旧式機だった。

 戦闘機も《P-38ライトニング》の様な新型機は無く、《P-40ウォーホーク》ならまだましで、もう10年近く前に完成した《P-36ホーク》や《P-35》等の、現在では練習機くらいにしか使えない戦闘機も攻撃に参加した。

 搭乗員の技量も極めて低く、そもそも機数も少なかった。攻撃も少数機での爆撃が断続的に行われただけだった。

 無論、10年前の戦闘機や爆撃機で戦果が挙がるはずも無く、大半が撃墜され、撃墜マークを配給するだけだった。しかし、少数機の攻撃が数時間続き、攻撃隊発進が遅れてしまったのは事実だった。

 

 漸く空襲が一段落した12:45に、第二次攻撃隊(戦闘機28、《彗星》艦爆34、《天山》32)が発進し、英極東艦隊攻撃に向かった。

 英艦隊上空に辿り着くと、戦艦《プリンス・オブ・ウェールズ》は、南海名物のスコールの下にでも隠れたのか、姿が見えなかった。

 《レパルス》は浸水が限界に達したのか、完全に停止していた。

 半身不随の《レパルス》は回避もままならず、瑞鶴攻撃隊の爆弾と魚雷を喰らって、《レパルス》艦長テナント大佐以下多数の乗員諸共、南シナ海の藻屑と化した。

 

 一方、翔鶴攻撃隊は《アークロイヤル》の攻撃に向かう。

 江草隆繁少佐(攻撃隊指揮官)

「航空機の大半を失って置物と化している空母より防空巡洋艦の方が厄介だな。彗星隊は防空巡洋艦をやるぞ」

 《アークロイヤル》よりも激しく対空射撃をしている防空巡洋艦を爆撃した方が、天山隊による空母攻撃が成功する確率を高くできると江草は考え、半数はダイドー級防空巡《ナイアド》を。

 残りの半数は、その後方にいる旧式巡洋艦を防空巡に改造した艦艇を、爆撃するように指示を出した。

 江草少佐の《彗星》を先頭に、8機が《ナイアド》に向け急降下を開始した。

 《ナイアド》も真上の《彗星》に向け、20ミリ対空機関砲と5.5インチ対空砲を撃ってきた。

 周囲は直ぐに炸裂する対空砲の至近弾による黒煙と、対空機関銃の弾で満たされた。

 

 江草

(下から上がって来る対空機関銃の弾道は、確かに駄菓子屋で売ってる氷菓子に見える)

 機銃手

「5番機被弾! 6番機もです!」

 不運にも、『氷菓子』にエンジンや主翼をやられた《彗星》が、破片をまき散らしながら墜落して行く。

 高度計が600を切った瞬間、江草は爆弾を投下し、操縦桿を引く。目の前に迫っていた敵艦の船体と海面が機体の下に消えて行く。

 江草の投下した500キロ爆弾は《ナイアド》の艦橋を直撃し、艦長以下の艦橋要員を纏めてなぎ倒した。

 2発目は第一主砲を直撃。3発目は煙突に命中し、そのまま機関室まで貫通した。4発目は左舷後方の対空機関銃に命中し、周囲の機銃を破壊した。

 直前まで激しく射撃していた《ナイアド》は黒煙に包まれ、被害を免れた対空砲が、散発的に射撃しているだけだ。

 

 別隊も旧式巡洋艦《デリー》に爆弾3発を直撃させていた。

 命中弾は《ナイアド》より1発少ないが、旧式巡洋艦にとって耐え難い打撃だった様で、3発目の命中弾が装甲を貫通し主砲弾薬庫で爆発。《デリー》は海底火山の様に爆発し、中央で二つに折れて轟沈してしまった。

 対空攻撃が大きく弱まった所で、天山が《アークロイヤル》に接近し魚雷を投下した。

 が、《アークロイヤル》もベテラン艦長の操艦で回避を続けた。

 それでも遂に魚雷が左舷前部に命中し、他に2本の魚雷が命中コースに乗っているのを目撃した天山隊乗員は、撃沈を確信した。

 しかし、2本目の魚雷は1本目の15秒後に命中したが、命中角度が悪かったのか、信管が作動しなかったため、魚雷は爆発せず、直ぐに波の力で外れて海中に沈んで行った。

 3本目の魚雷も僅かに艦首を逸れてしまい、目撃した天山隊搭乗員は全員、諦めの溜息を吐いた。

 《アークロイヤル》は魚雷命中の影響から速度が落ちているが、停止せずにスコールの下に逃げて行った。どうやら撃沈させることは、諦めなければならないだろう。

 スコールの範囲はかなり広く、日没までに再度攻撃を行うのは難しいだろう。

 結局、世界初の航空母艦同士の戦闘《南シナ海航空戦》は、一応、日本側の勝利と言える形で終わった。

 

 巡洋戦艦《レパルス》と正規空母《インドミダブル》が沈没。

 戦艦に命中しそこなった魚雷が駆逐艦《ヴァンパイア》に命中し、同艦は轟沈。

 《彗星》の急降下爆撃で4発の直撃を受けた《ナイアド》は、乗員を救助し味方駆逐艦の魚雷で処分された。

 旗艦《プリンス・オブ・ウェールズ》は大破、《アークロイヤル》は魚雷命中で速度が20ノットしか出なくなったが、沈没は免れた。

 最後に《アークロイヤル》を外れた魚雷は、重巡《エクゼター》に命中し、同艦を中破させた。

 一方、日本側は艦艇の被害はほぼ無かったが、戦闘機と爆撃機合計して25機を喪失した。アメリカ合衆国(1)と比較して予備搭乗員の数に限界がある日本にとって、無視できぬ被害だ。

 

 

 ~同日、2時50分~

 

 赤井直人中尉(天山機長)

「2発目の魚雷が不発とか、そんな事も起きるんだな? 何が原因だろう?」

 青田銀二上等兵曹(操縦)

「1発目の直後だったから、衝撃波とか空母の振動が悪く働いたんじゃないですか?」

 赤井

「衝撃波で信管が壊れたんかもしれんな。あっ、俺達の魚雷もそれが原因で外れたのか?」

 白田陽介上等兵(無線担当)

「場所がかなり離れていますから違うでしょう」

 

 彼らの魚雷は、あとわずかで艦首に命中しそうだったが僅かにずれ、《アークロイヤル》の反対側に消えていた。

 白田

「でも外れた魚雷は、反対側にいた重巡に命中したからよかったじゃないですか」

 赤井

「うーん、でも重巡は魚雷1本じゃ沈まんだろうなあ」

 赤井の愚痴に呼応する様に《天山》も重苦しく高度が下がって……

 赤井

「エンジンの調子がおかしいぞ! 攻撃とか受けてない筈だが」

 白田

「離脱する際に敵駆逐艦の対空砲が至近距離で爆発しましたが」

 青田

「あの時、破片がエンジンに当たったのかも」

 そうしている内にエンジンはプスンプスンと情けない音になって、やがて止まってしまった。

 やむを得ず、赤井は《天山》を不時着水させた。既に視界に味方の空母や駆逐艦が見える距離なので、直ぐに助けが来るだろう。

 

 赤井

「二人とも無事か?」

「大丈夫です」

「ちょっとぬるい温泉だと考えましょう」

 赤井

「いや完全に水風呂だろこれ」

 三人が漂っていると、ふわりと直ぐ近くに救命いかだが降ろされた。

 赤井

「早いな、ありが……」

 目の前に美少女が二人立っていた。ポカンとなる3人。

 キュアトウィンクル

「そのいかだの上で助けを待っていて。水に漬かっていたら風邪ひくよ」

 キュアスカーレット

「お怪我はございませんか? 僅かな血の匂いでもサメさんに気付かれるそうですよ」

 白田

「3人とも多分、大丈夫です」

 二人の美少女は、ごきげんようと優雅にあいさつし飛び去った。

 赤井

「これは夢か? イテテテ」

 青田

「いや現実です」

 赤井

「自分の顔でやってくれ」

 

 

 ~同時刻~

 空母《瑞鶴》

 

 貝塚大佐

「二人が新たに不時着機を見つけたみたいですね」

 原少将

「今回は彼女達を直接戦闘に巻き込まずに済んだか」

 貝塚

「それは幸いでした。後数日以内にフィリピンの制空権は、我々の物になるでしょう」

 原少将

「こちらには現状、彼女達を参加させなくてはならない強敵はいない。が……」

 貝塚

「あちらは、そうはいかんでしょう」

 

 二人は艦橋の反対側に歩き、東の空を指さす。その地より東へ8000キロ彼方より、強大な敵がマーシャル諸島に向け近付いている。

 

 数時間前から、やや遠距離との無線交信がノイズで混線し入り辛くなっている。

意図的なものでは無く、どうやら自然的なものらしい。通信長曰く今年は太陽活動が活発になっており、それが原因かもしれないとの進言は受けていた。

 

 フィリピンを300年支配したスペインが誇った『無敵艦隊』を遥かに凌駕する、『新・無敵艦隊』が日本本土への第一歩として、まずマーシャル諸島を占領し、日本の超重要拠点トラック諸島や、マリアナ諸島を攻略する前進拠点を作る為に。

 

 

 しかし、古来より「無敵」だの「不沈」だと言われたものがあっけなく、敗れ去った事例は多い。スペイン帝国の『無敵艦隊』もおよそ350年前、フランスカレー沖で

フランシス・ドレーク提督率いるイングランド海軍に大敗を喫した。キンメルも、ノックス海軍長官もルーズベルト大統領も、アロンソ・ペレス・デ・グスマン提督(2)以上の悪夢を味わう事になるとは想像すらしていなかった。

 





1 ガチのチートとか、リアルチート国家等と言われる。車の免許を持っている若者が多かったので、航空機搭乗員の予備は大量に居た。シュミレーションゲームでは、故意に合衆国の国力を抑え気味にしてあるそうな。

2 アルマダ海戦のスペイン側海軍司令官 海戦の経験皆無



来週に続く・・・


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第19話【新・無敵艦隊】


 


 【新・無敵艦隊】

 

〈第33・2任務艦隊(TF・タスクフリート)〉

 司令官  :ヘンリー・ニューマン少将

 空母   :《レキシントン》、《エンタープライズ》

 重巡洋艦 :《ノーザンプトン》、《シカゴ》、《チェスター》

 対空巡洋艦:《アトランタ》

 駆逐艦  :12隻

 

〈第33・3任務艦隊

 司令官  :フランク・ジャック・フレッチャー少将

 空母   :《ホーネット》、《ヨークタウン》

 重巡洋艦 :《ソルト・レイク・シティー》、《ルイスビル》、《アストリア》

 対空巡洋艦:《リノ》

 駆逐艦  :12隻

 

〈第33・1任務艦隊 (太平洋艦隊主力〉

 司令官 :ハズバンド・キンメル大将直接指揮

 戦艦  :《オクラホマ》、《ネヴァダ》、《アリゾナ》、《ペンシルヴァニア》

      《テネシー》、《カリフォルニア》、《ウェストヴァージニア》

      《メリーランド》

 重巡洋艦:《サンフランシスコ》、《ニューオーリンズ》、《バルチモア》

      《ミネアポリス》

 軽巡洋艦:《グリーブランド》、《コロンビア》、《セントルイス》、《ホノルル》

      《フェニックス》

 護衛空母:《トラッカー》、《カード》、《クロアタン》、《ブレトン》

 駆逐艦 :25隻

 

 

 ~1943年12月7日、午後5時 北緯8度30分、東経173度50分。真珠湾より南西1000キロ~

 TF33・3、航空母艦《ヨークタウン》

 

 12月5日、8時にハワイ真珠湾を出撃したTF33・3は針路を南西に転じ、6日夕刻にはオアフ島南西1900キロ、マーシャル諸島北東400キロに接近していた。

 ジョンストン環礁は1807年に英装甲巡洋艦《コーンウォリス》の艦長が発見し、その艦長の名前が由来となっていた。

 1898年にハワイ王国が米国に併合されて以来、米国領になり、1934年には海軍基地が設けられ、その後、小規模ながら航空基地も設置されていた。

 

 空母《ヨークタウン》は、6年前の1937年9月30日に竣工した。

 排水量19500トン、全長247メートル、速力32.5ノットで、搭載できる航空機は資料により、若干の違いがあるが90機から100機。

 30ノットを超える高速空母としては《レキシントン》、《サラトガ》に続き3隻目となるが、《レキシントン》、《サラトガ》は元々、巡洋戦艦として建造が開始され、ワシントン軍縮条約で中止となり、その後、航空母艦に変更された。

 《ヨークタウン》は、アメリカ合衆国では初めて空母として建造された本格空母となる。(低速空母《レンジャー》を除く)

 《ヨークタウン》の後方2キロには、アトランタ級対空巡洋艦《リノ》が続いていた。

 《リノ》の後方2000メートルには、1941年10月に就役した《ヨークタウン》の姉妹艦《ホーネット》が続いている。

 《ヨークタウン》、《ホーネット》は、数か月前までは大西洋で英国に向かう米輸送船を護衛したり、カリブ海で訓練したり、また、アメリカの民間船にドイツの《Uボート》が不用意に接近しない様、監視しする任務に従事していた。

 9月に米本土に戻り、整備と休養をしていたがオーガスタ号事件が起き、急遽対日戦に備える為にパナマ運河を超えて真珠湾に向かった。

 《ヨークタウン》左舷中央にある20ミリ機銃の中で、機銃指揮官のケリー上等兵曹は、部下のノイマン一等兵曹とラムソン上等水兵と夕日を眺めながら雑談をしていた。

 

 ケリー

「平和な内に拝める最後の夕日だ。よく見とけよ」

 ラムソン

「ジャップも夕日を眺めているんでしょうかね?」

 ケリー

「そうだろうよ。今日、夕陽を見たジャップ野郎の何人かは、生涯最後の夕日となるんだろうよ」

 ノイマン

「日いずる国の天子、日没する国の王に、ご挨拶申し上げます」

 ラムソン

「どういう意味です? なんか言い回しが日本とかアジアみたいですが?」

 ノイマン

「今から1300年ほど前、日本のショートク・タイシ(聖徳太子)が、当時の中国の皇帝に送った手紙らしいですよ」

 ケリー

「日本人も、なかなか味な真似をするな。ノイマン、お前、昔、日本に住んでいた事があるのか? それとも日本人に知人でもいるのか?」

 ノイマン

「叔父が大西洋艦隊参謀なんですが、昔、アジア艦隊の駆逐艦の艦長だった時に、親善訪問した事があるそうで日本に詳しいんです」

 ラムソン

「今度は日昇る国アメリカが、日の沈む国、日本帝国に挨拶しながら、ぶっ飛ばすんですね」

 ケリー

「ガハハハハ、そういうことだぜ」

 他の乗員も夕日を眺めながら、日本の国旗の日の丸を夕日に例えて、日本を小馬鹿にし、『最後の平和な夕日』を楽しんでいた。

 

 一方、艦長のフレデリック・シャーマン大佐と飛行長は、実りある会話をしている。

 飛行長(ヨークタウンの搭乗員の長)

「50キロほど南に敵機らしい反応を捉えたのですが、こちらには気付きませんでしたね」

 シャーマン艦長

「マーシャルに配備された偵察機か水上飛行艇だろう」

 今しがたレーダーで捕捉した日本機は艦隊に気付かなかったが、既に昨日から何度か艦隊の近くで、潜水艦らしい電波を捉えている。

 

 ちょうど対潜哨戒から戻った艦上攻撃・偵察機のグラマン《TBFアベンジャー》が、着艦する45分前に艦隊前方に潜水艦らしい影が目撃されたので、確認に向かった。

 しかし、今回は乗員が鯨と見間違えたらしい。

 《アベンジャー》は、昨年4月に性能が低すぎた《TBDデバステーター》(1)から配備が更新された。

 《アベンジャー》は時速438キロメートル、魚雷もしくは500キロ爆弾1発を搭載できる。機体重量は7トンあり、非常に重いが故障する事は少なく、頑丈で撃墜されにくい。

 

 爆撃機はダグラス《SBDドーントレス》を搭載している。

 本来なら新型の《SB2Cヘルダイバー》(2)を配備する筈が、《ヘルダイバー》は試作機が完成してから、度々、事故やトラブルを繰り返し修正が繰り返されていた。

 漸く、まともな量産機が完成したのは先月で、向こう数か月は《ドーントレス》を使い続ける必要があった。

 《ドーントレス》も、やや旧式といえ爆弾454キロを搭載可能で、頑丈で故障が少ない名機として知られている。ミッドウェーで『魔の5分間』をやってのけたのは、この《ドーントレス》だ。

(《彗星》艦爆は、その《ドーントレス》より150キロも早い事は、未だ知られていない)

 

 航空参謀

「攻撃機と艦爆は良いとしても、戦闘機は新型機が欲しいですね」

 シャーマン大佐

「しかし、空母で使うのは危険な戦闘機を配備するわけにはいかんからな」

 

 数年前、米海軍は新型艦上戦闘機の試作を航空機メーカーに求めた。

 その中でチャンスボート社が完成させた試作機は、初期段階で時速650キロ以上を記録した。

 軍は大喜びで制式採用を決定した。2000馬力の強力なエンジンのお陰で、大きい機体には余裕があり、12.7ミリ機銃6丁の他に対地ロケットや爆弾を900キロも搭載可能で、戦闘機相手の戦闘だけでは無く、爆撃任務なども出来る万能機のはずだった。

 しかし、航空母艦での運用試験を開始した途端、致命的な欠陥が明らかになった。

 《F4Uコルセアー》戦闘機は、操縦席から前方の視界が悪い事が発覚した。つまり、着艦時に飛行甲板が良く見えず、また、着艦時に失速しやすい欠点も判明した。

 空母への着艦は、現代でも針に糸を通す技量が必要とされる。搭乗員の中でも最も優秀な者だけが、空母艦載機搭乗員になれるのだった。

 《コルセアー》は空母では危なくて使えないため、陸上航空基地で使用される事になった。

 海軍上層部は慌てて次点の戦闘機を制式採用。しかし、前線に配備されるのは早くて来年初頭になる。

 そんな訳で、米海軍は1940年に採用された《F4Fワイルドキャット》戦闘機を当面の間、使わざるを得ない。

 

 シャーマン大佐

「敵の戦闘機(零戦)は機体形状から恐らく、速度や上昇速度より低空での格闘戦を重視した機体だと思う。味方搭乗員は格闘戦の挑発に乗らず、一撃離脱に徹するべきだ」

 航空参謀

「1対1では戦わず、必ず2機から3機の《ワイルドキャット》で敵機に対抗する様に指示を出しています。十分に敵戦闘機に対処か……」

 言いかけた時に通信長がやって来たので、二人は会話を切り上げた。

 

 

 ~空母《ヨークタウン》甲板~

 

 ラムソン

「明日か明後日に戦争が始まったら、クリスマスまでには帰れるかな?」

 ケリー

「クリスマスまでに帰れると言われて、そうなった事が無いそうだぜ」

 ノイマン

「第一、もうクリスマスまで20日も無いぞ。日本軍が弱くても流石に無理さ」

 ラムソン

「今年は流石に無理ですよ。来年……1944年のクリスマスならどうです?」

 ノイマン

「来年のクリスマスか。それなら、あるかも知れんな」

 ケリー

「開戦初頭の戦いで、味方が大勝ちすれば可能かもな。味方が大勝ちしても、流石に直ぐにお手上げにはならんだろうから、半年くらいは連中も戦うだろう。うーん、そうだなあ、来年の10月位までに戦争が終わればクリスマスまでには帰れるんじゃ……」

 

 ビービーとマイクの音声が響いた。会話したりタバコを吸ったりしていた兵士が動きを止め、スピーカーの方に視線を向ける。

「3分後に重大通告がある。各員は手を休め、静聴するように」

 その放送は2度繰り返された。

 

 3分後、決戦の火蓋を告げる放送が全艦に送られた。

 シャーマン大佐

「艦長より通達する。先ほど海軍作戦本部長ハロルド・スターク大将より通達があった。米東部標準時7日正午を期して、合衆国政府は大日本帝国に対し国交断絶、及び両国が戦闘状態に入った事を宣告する。その後、数時間以内に大英帝国も、日本帝国に対し宣戦する。各員は各々の部署で、アメリカ合衆国の為にベストを尽くす事を期待する」

 

 一瞬の静寂の後、乗員からは歓声が上がった。

「オーガスタの仇討ちだ!」

「日本野郎をマーシャル諸島の海に蹴りこんでやる」

「それじゃ腹の虫がおさまらん、月まで蹴とばしてやろうぜ」

 ノイマン

「日本や中国じゃ、月には伝説の白兎が住んでいると言い伝えがあるそうだ」

「へぇー、アジア人の風習は面白いな。月の穴ぼこ(クレーター)を兎に例えている訳か」

 ノイマン

「月まで蹴とばされた日本人が、うっかり月の兎の尻尾を踏んでしまって……」

「兎が怒って日本兵を追いかけまわすってか。傑作だぜ」

 

 ノイマンの軽口に、周囲からは歓声と笑い声が沸き起こる。確かに、兎には追いかけられる事になる。月の兎では無く桃色兎により追いかけられ、恐怖のどん底を味わう事になる。

 しかし、被害者は『月まで蹴とばされた日本兵』では無く《ヨークタウン》のアメリカ兵なのだが、能天気に浮かれる彼らは、未だ、そのことを知らない。

 




1 史実ではミッドウェー海戦で壊滅的な被害を出し、実戦部隊から姿を消した。艦これでも装備品として登場しているが、図鑑を埋める以外には全く利用価値が無い
2 直訳すれば地獄の急降下爆撃? 《大和》等の日本軍艦を地獄に送り、故障で味方搭乗員が少なからず地獄へ行った。更に、終戦後メーカーも地獄に旅立った(倒産)


次回投稿未定です。年末は艦これ冬イベントがあるので、年明け以降になるかも。


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第20話【悪夢の始まり】



お待たせしました。


艦これ冬イベ駆逐艦ジョンストンは確保 前イベで取り逃がしたゴトランドは断念 


 

~1943年12月8日、午前6時(時差日本より+3)~

 空母《ヨークタウン》

 

「《ホーネット》より信号! 攻撃隊発進せよです」

 ケリー達乗員が声援を送る中、マーシャル諸島への第一次攻撃隊が発艦して行く。

 まずは一番身軽な戦闘機が発艦し、次いで454キロ爆弾を搭載した《ドーントレス》艦爆が発艦。最後に最も重い《アベンジャー》雷撃機が発艦する。

 第一次攻撃隊は、ヨークタウン級3隻から《ワイルドキャット》戦闘機各10機、《ドーントレス》12機、《アベンジャー》6機。《レキシントン》からは《ワイルドキャット》戦闘機10機、《ドーントレス》10機、《アベンジャー》5機が向かった。

 戦闘機40機、爆撃機46機、攻撃機23機、合計109機は相当な打撃を日本帝国最東端の基地に与えると考えられる。

 なお残りの空母搭載機は、陸上基地攻撃の成果に関わらず、日本艦隊発見に備える為に待機している。

 

 マーシャル諸島は1528年にイスパニア(スペイン)の航海士が発見したが、イスパニアは長らく、ここを放置していた。

 1885年に帝政ドイツが植民地化したが、WW1以降は日本の信託統治領になっている。

 ちなみに由来はフランス革命の頃に、この辺を航海した英国の航海士、ジョン・マーシャルから来ている。ちょっと複雑かも知れない。

 

 ヨークタウン攻撃隊は北緯09度26分、東経170度01分にあるウォッゼ環礁への爆撃を命じられた。

 目標は航空基地、及び基地施設(燃料タンク、対空砲、通信施設等)で飛行場や港の航空機や水上飛行艇、及び船舶も発見次第、攻撃せよと言う指示を受けている。

 日本帝国海軍は数年前からマーシャル諸島に多くの航空基地を建設し、米国をけん制しようとしたが、米英豪の3か国が、

「日本帝国のマーシャル諸島基地化は、豪州やハワイ侵攻の際の拠点とするのが狙いであり、容認する事は出来ない」

 と激しく主張した。尚且つ、経済制裁をちらつかせたので、日本としても爆撃機などの配備を断念せざるを得なかった。

 オーガスタ号事件の後、もはや日米戦争が避けられなくなった10月以降、急いで基地への航空隊配備を目指していたが未だ半ばだった。

 ヨークタウン隊の《ドーントレス》12機は454キロ爆弾1発、《アベンジャー》は500キロ爆弾1発ずつを搭載している。

 

 

「隊長、ウォッゼには敵艦はいるんですか?」

 ヘンダーソン少佐(ヨークタウン攻撃隊隊長)

「戦艦や空母は居ないだろう。環礁の中では回避できないからな。敵の暗号通信を分析した所、4000トン級の機雷敷設艦(機雷を海に設置する船)が、一隻居るらしい」

偵察員のハロルド兵長の問いかけに、《ドーントレス》隊を率いている、攻撃隊指揮官ヘンダーソン少佐が答えた。

 

 

「機関の故障でしょうか?」

「可能性は高いな。普通なら昨日の夜までに出港させるだろう」

 

 偵察機の報告によると、敷設艦は偵察機に対して対空砲を撃って来た

らしいので、完全に故障している訳では無さそうだ。

 

  【悪夢の始まり】

 

 ~1943年12月8日、午前6時50分

 

 

 同じくウォッゼ攻撃を命じられた、《ホーネット》と《ヨークタウン》の《ワイルドキャット》戦闘機隊が、爆撃機の前に出てサンゴ礁の島に向かう。

 敵もレーダーで米軍機接近を知ったのか、環礁手前に迎撃戦闘機を上げて来た。

「俺が一番槍だ!」

「お前ら指示通り、敵戦闘機と単独での戦闘は避けろよ」

 迎撃の《零戦》は、30機以上が《ワイルドキャット》に向かっていく。《ワイルドキャット》は3対1の戦闘に持ち込もうとするも、数が多くてなかなか上手く行かない。

 《ワイルドキャット》パイロットの中には新人や経験の浅い者もいて、頭に血が昇って指示を忘れ、格闘戦や1対1の戦闘に入ってしまい、撃墜されることもあった。

 逆に《ワイルドキャット》搭乗員が、上手く同僚の《ワイルドキャット》戦闘機の機銃の前に《零戦》をおびき出して撃墜したり、《ワイルドキャット》戦闘機を追い詰めていた《零戦》が一瞬油断し、別の《ワイルドキャット》に横から撃たれたりして撃墜される。

 

 戦闘機隊が敵戦闘機と戦っている間に、爆撃機隊がウオッゼ島に向かう。

「敵戦闘機いません」

「戦闘機を優先して攻撃するのか? それなら、その間に好き放題攻撃してやるぜ」

ヘンダーソンは、戦闘機がいない事を知りラッキーだと思った。

 

 滑走路が見えて来るが、航空隊は事前に空中退避させた様だ。しかし、周囲に数機の戦闘機や、予備の中型爆撃機か輸送機らしい機体を確認した。

 

 

「ヨークタウン隊は滑走路と航空機をやるぞ。全機、続け!」

 ホーネット隊は基地施設や、燃料タンクを破壊する事に決めた。

 《アベンジャー》は情報通り、停泊している機雷敷設艦や小型艦に向かっていく。

 島に近付いても、対空砲火はほとんど無い。散発的に撃って来るだけだ。

 

「日本人め、まだ寝ているのかよ」

「貧乏国なので節約節約なんだろうよ」

 搭乗員達から一斉に笑い声が起きる。

 

「少佐、日本はマーシャル諸島を放棄しようとしているとか?」

「ありえなくも無いが……」

 マーシャル諸島は日本本土から離れすぎている。補給も困難だろうから、戦力集中の為に放棄する事は考えられる話ではある。

 ヘンダーソンは雲の中から戦闘機が奇襲して来るかと思い、周囲を確認するが、そんな気配は無さそうだ。

「間も無く基地上空だ! 急降下の準備を急げ」

 

 その時、ヘンダーソンは基地上空に複数の『鳥』を見た。

 それは見た事のない鳥なので、この辺に生息する独特の鳥なのだろうと彼は思った。そして、ここにいると巻き込まれるから、もっと遠くに逃げた方が良いぞと呟いた。

 《ホーネット》から発艦した《ドーントレス》2番機のパイロットが、鳥に向けバカにしたような動作をする。

(鳥なんか相手にするなよ、全く)

 軽くあきれるヘンダーソンの目の前で、その『鳥』から光の様な物が飛んできて、その《ドーントレス》は搭載している爆弾が誘爆し、バラバラに吹き飛んだ。

 

 目の前で何が起きたのか、ヘンダーソンには理解できなかった。

 気付くと、鳥がヘンダーソン機のコックピットの斜め上に舞い降りた。それを見たヘンダーソンの目は大きく見開いた。

(鳥じゃない……人?)

 呆然としているヘンダーソンに対し、紫色の頭部を持つ鳥?(キュアマカロン) は優雅に一礼した。 そして、口を開いた。

 

「おはよう」

 ヘンダーソンは日本語を理解できないが、なぜか、この時は理解できた。

(なぜ、鳥が日本語を話す? そしてなぜ……こんなに美しい?)

 

「そして、さようなら」

 次の瞬間、日本語を話す鳥からクリームのような物体が飛来し、ヘンダーソンの《ドーントレス》は中心から分断された。

 

 

 ヘンダーソン少佐の《ドーントレス》が分断されて墜落して行くのを見て、ようやく他の搭乗員は異常事態に気付いた。

「鳥の化け物だー」

「助けてくれー」

 異常な事態を知らせた無線に気付いた戦闘機隊から、何機かが《零戦》との戦闘を中断し、救援に駆け付けた。

 《ワイルドキャット》数機が《ドーントレス》を追尾している謎の『鳥』の背後に近付く。

 ホーネット戦闘機隊長ガイ・オルソン少佐は、悲鳴のような無線交信を聞くまでに、《零戦》2機を撃墜していた。

 異様な姿の『鳥』に一瞬驚くが、構わず向かって行く。

 「日本の新兵器に違いない。今、陸軍が垂直に飛べるオートジャイロ(ヘリコプター原型)を研究しているらしい。日本に先を越されたんだろうよ。まあ戦闘機には勝てんよ」

 

 赤い頭部を持つ鳥の背後に近付き、12.7ミリ機銃を発射するが、機銃弾は何も無い空間を通り過ぎる。

 オルソン

「なにぃ」

 

 赤い頭部を持つ謎の『鳥』(キュアショコラ )は、戦闘機には絶対に不可能な軌道と速度で宙返りをすると、オルソン機の背後に舞い降りた。

 オルソン

(鳥じゃ無く人間……だと? しかも男……これは夢だ)

「貴方に恨みは無いけれど……私たちの世界の日本と同じにはさせない! 覚悟」

 オルソン少佐機も謎の物体を喰らい墜落して行く。

 

 戦闘機ですら瞬く間に撃墜されるのを目撃した米軍機搭乗員は、爆弾を捨てて逃走を開始した。最早、攻撃どころでは無い。

 逃げ出した所に、今度は《零戦》の攻撃を受けて撃墜される機も続出した。

 戦闘で最も犠牲者が出るのは、追撃戦に入ってからだとも言われる。追われる側は逃げるのに精一杯で、追う側は手柄を求めて殺到する。

 《ヨークタウン》のアベンジャー隊も謎の鳥の攻撃受けた。

 小隊長機から5番機までは高度を上げて、逃げようとした。

 しかし、最後尾のコックリル大尉の《アベンジャー》は真逆の選択を取った。海面近くまで急降下して逃走した。

 その途中、高度を上げた《アベンジャー》が、次々と撃墜されるのがちらりと見えた。

 

 数十秒後、コックリル大尉の《アベンジャー》も謎の鳥に追撃されていた。

「鳥じゃ無くて人間の女の子です。ピンクです! なんで人間の子に兎の耳が付いているんだ?」

 謎のうさ耳付き敵を目撃した、操縦手のリーブス少尉がわめく。

「日本の兎が突然進化したんだ。そうに違いない!」

「機長! 高度を上げて逃げましょう」

「馬鹿野郎! 少しでも高度を上げたら、あの桃色兎(キュアホイップ)に3人仲良くハンバーガーにされるぞ! 海面近くを蛇行しながら飛べ!」

海面近くを蛇行しながら飛べば、敵は射線を上手く取る事は難しい。

キュアホイップの攻撃を必死に蛇行しながら逃げる《アベンジャー》。

 後部12.7ミリ・ブローニング機銃を撃ちまくるが掠りもしない。

 しかし、遂に至近弾を受けエンジンから煙が出る。

 

 

 ~5分後~

 

 コックリル大尉機は何とか、安全な空域まで逃げ延びた。

「煙も止まりました。黒煙が出たので撃墜したと勘違いしたんでしょう」

 周囲を見るが日本機も鳥少女もいない。

「兎だからな」

「頑丈な機体で助かった。何とか母艦までは持ちこたえるだろう? 他の《アベンジャー》はどうだ? 逃げ延びてくれると良いが」

 後部機銃員が絶望的に頭を振る。彼は高度を上げた《アベンジャー》が、次々と射的の的みたいに撃墜されるのを見ていた。

 

 

 

 小ネタ ボリビア海軍

 

 ボリビアには海軍が有ります。え、ボリビアは海無いじゃんよ。と思われると思いますが、南米ボリビアには海軍が有ります。150年前までは、太平洋岸に領土が有りました。しかし、1884年にチリに戦争で負けて取られてしまいました。

 

 しかし、海軍は解散せず現存しています。いずれは、チリから領土を奪い返して海軍を再建するんだとか。

 現在は哨戒艇を使い、アマゾン川の支流を使った密輸や密漁の取り締まりをやっています。小型の病院船も持っているので、病院が無い町へ巡回診療を行っているそうです。

 



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第21話【生還者】


大坂選手全豪オープン初優勝おめでとうございます。


 

  【生還者】

 

 ~1943年12月8日、午前7時40分~

 空母《ヨークタウン》

 

 12月8日、午前6時50分にヘンダーソン少佐機から攻撃開始の無線が入電し、艦長や飛行長は攻撃の成果を見守っていた。しかし、数分後から奇妙な無線通信が次々と入って来た。

 日本の新兵器だとか、鳥に光線を喰らったから助けてくれとか、鳥じゃ無い羽根のある女の子に襲撃されているとか。それを聞いていた通信手や、飛行長とシャーマン艦長は最初、激怒した。

 

「あいつら、ふざけやがって! 帰ってきたら便所掃除をさせてやる!」

 艦長達は、搭乗員達が悪ふざけの通信をして遊んでいると判断した。

 しかし、数分後、『悪ふざけ無線』の大半は沈黙した。こちらから呼び出そうと考えたが、無線交信を傍受されるのはまずい。

 やがて、第一次攻撃隊が戻って来た。飛行長は搭乗員を叱りつけようと考え、甲板で待ち構えていた。しかし、戻ってきた攻撃隊を見た飛行長は息をのんだ。

 戻って来たのは、発進した半数にも満たなかったからだ。しかも、小隊ごとでは無くバラバラに一機ずつ戻って来た。

 

「飛び方がおかしい機もいるぞ。エンジン不調か搭乗員が怪我をしているな」

「俺達も救助作業を手伝いましょう!」

 手の空いている甲板員や対空機銃員も駆け付け、消火作業や負傷した搭乗員の救助作業に加わった。

 《F4Fワイルドキャット》戦闘機は3機、《SBDドーントレス》は4機戻って来たが、1機は着艦直前で力尽きて不時着水し、駆逐艦から小型ボートが降ろされて、搭乗員は救助された。

 《TBFアベンジャー》はコックリル大尉機だけが生還した。

 飛行長は、帰還した搭乗員を怒鳴りつけた。

「鳥の様な敵とは何だ! そんなものがある筈がない!」

 艦爆隊生還者のヨーク大尉は、青ざめた表情で答える。

「全て真実です! あっという間に《ドーントレス》が何機も叩き落されました。鳥のような人間の様な……」

 更に飛行長が叱責しようとした時、整備兵が飛行長を呼び止めた。

「これを見てください」

 整備兵は、飛行長を大尉の《ドーントレス》爆撃機の所に呼び出した。

「私の目には機銃や対空砲の破片には見えません」

 

 《ドーントレス》の傷は、どう見ても機銃や対空砲弾の破片ではありえない形状だった。

 飛行長も、ようやく事態が極めて深刻である事に気付かされた。

 飛行長は数秒間、自分を落ち着かせてからヨーク大尉に向き直った。

「謎の敵の詳細は見ていないのか?」

「とてもそんな余裕は……。敵戦闘機より、遥かに速い速度で追って来ました。とにかく逃げるのに精一杯で、確認する余裕はありませんでした」

 12.7ミリ機銃を乱射しながら逃げ、気が付くと安全な空域まで逃げることに成功したらしい。

「怒鳴って悪かった。直ぐに医務室で治療を受けるんだ」

 

 戦闘機搭乗員によると、戦闘機ですら全く相手にならず、撃墜された事が明らかになった。

 生還した、その搭乗員が乗っていた《ワイルドキャット》の機体には、20ミリ機関砲らしい弾痕が多数見つかった。

 彼は《零戦》に襲撃されたが、それが理由で生還できたともいえる。

 ただ一機、生還したコックリル大尉機の後部機銃員は、白人としては珍しく、かなり視力が良かった。

 プロでは無いが写生が趣味だったので、襲撃して来た桃色兎のスケッチを描かせた。

 ラフスケッチは、何とか桃色兎(キュアホイップ)の輪郭は捉えていた。

 

 飛行長は、そのスケッチを艦長に見せた。

「鳥では無く、人間の女の子にみえますね。それとも人型兵器でしょうか?」

 当時はアンドロイドという概念は未だ無い。

「ナチスが、人間の限界を超えた超人間兵士を研究していると言う噂はある。しかし、実現できるとも思えん。仮に可能としても、日本にそんな技術があるとは思えん」

「やはり人間なのでしょうか。何故、兎の耳が頭部についているのかは不明ですが」

 

 《ホーネット》の航空隊も同様の被害を出した。《アベンジャー》6機は全滅したらしい。

 《レキシントン》、《エンタープライズ》の攻撃隊も無事では無いだろう。

 乗員達は誰もが不安な表情で、ひそひそと話している。2時間前の明るさは微塵も無い。

 

 その時、通信室担当の下士官が大声で叫びながら走って来る。

「大変だ!」

「桃色兎の襲撃か!」

 ノイマンが慌てて、周囲を見るが何もいない。

「ニューマン提督の部隊が敵機の攻撃を受けている!」

 

 

 

年表

 

この年表史実と違う個所もあるので、テストなどで使わない様に。何かあっても責任は取りません。

 

 

1914年

 6月28日

  サラエボ事件

  オーストリアのボスニア地方の町サラエボで、

  オーストリア皇位継承者フランツ・フェルディナント大公夫妻が、

  セルビア人青年によって暗殺される(サラエボ事件)

 7月28日

  オーストリア・ハンガリー二重帝国がセルビア王国に宣戦布告し、第一次世界大戦勃発。

  10日の間に、ドイツ帝国、ロシア、フランス、英国が参戦

 8月23日

  大日本帝国、日英同盟の規約に基づき対独宣戦布告。米国は中立を宣言

 

1915年

 2月4日

  ドイツ海軍がイギリス周辺を交戦海域に指定して、

  Uボートによる無制限潜水艦戦が開始される。(意味は無警告での商船撃沈開始)

 5月7日

  ルシタニア号事件。

  英国客船ルシタニア号独潜水艦の雷撃で撃沈。犠牲者1198名だが、その内198名が米国人。

  以後、合衆国で急激に反独感状高まる

 

1916年

 11月

  合衆国でウッドロウ・ウィルソン(民主党)が大統領に再選

 

1917年

 2月3日

  合衆国政府、対独国交断絶

 3月12日

  ロシア革命開始。ロマノフ王朝滅亡

 4月6日

  合衆国、ドイツに宣戦布告

 

1918年

 3月3日

  ソビエト政権と、ドイツ帝国との間でブレスト=リトフスク条約が締結される。

  ロシアでは数年間、ソ連派と帝政派で内戦に。列強各国も介入

 11月9日

  独国内で水兵の叛乱開始

 11月11日

  ドイツ帝国、休戦協定署名し、世界大戦終結。皇帝ウィルヘルム2世は退位しオランダに亡命。

スペイン風邪、世界中で猛威。日本でも推定48万人が死亡 

 

1919年

 1月18日

  パリ講和会議開始

 3月23日

  イタリアでベニート・ムッソリーニが、《戦士のファッショ(後のファシスト党)》を結成 

 4月30日

   パリ講和会議で、中国山東省のドイツ利権に関する日本の要求を承認

 5月7日

   パリ講和会議で、赤道以北の旧ドイツ領を日本が委任統治することに決定

  (グアム以外のマリアナ諸島・マーシャル諸島)(1)

 6月28日

  ヴェルサイユ講和条約締結

 8月11日

  ドイツでヴァイマル憲法(ワイマール憲法)が成立(ヴァイマル共和政)

 

1920年

 1月10日

  国際連盟(本部ジュネーブ)成立するが、合衆国は国内世論で反対で不参加

 2月24日

  ドイツ労働者党が、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)に改称

 

1921年

 8月10日

  フランクリン・ルーズベルトがカナダ、キャンポベロー島の別荘で、

  ポリオを発症し、のちの生涯で下半身を不自由にする

 11月21日

  ワシントン軍縮会議開始(翌年2月6日まで)

 12月13日

  ワシントン会議で日本、米国、英国、フランスの四か国条約が調印される。日英同盟が廃棄

 

1922年  

 2月6日

  ワシントン海軍軍縮条約、九か国条約調印 

 4月3日

  ヨシフ・スターリンが、ロシア共産党書記長に選出

 10月27日

  ファシスト党がローマ進軍を行う。31日に、ムッソリーニが首相に就任

 11月17日

  オスマントルコ滅亡

 12月30日

  ソビエト社会主義連邦成立

 

1923年

 1月11日

  フランス、ベルギーがドイツの賠償不払いを口実にルール地方を占領(ルール占領)

 9月1日

  関東大震災発生、犠牲者10万人以上

 11月8日

  ミュンヘン一機失敗し、ヒトラー逮捕(2)

 

1924年

 1月21日

  ロシア革命の父、ウラジーミル・レーニン死去

 5月26日

  合衆国で排日条項を含む移民法が成立。日本人の移民が全面禁止される(排日移民法)

 

1925年

 1月20日

  日ソ基本条約締結 日本政府ソ連政府国家承認

 4月26日

  ドイツ大統領選挙でパウル・フォン・ヒンデンブルクが当選  

 7月18日

  アドルフ・ヒトラー《我が闘争・第1巻》公表

 11月9日

  アドルフ・ヒトラーを保護する組織としてナチス親衛隊設立

 

1926年

 12月25日

  大正天皇崩御し、皇太子が新天皇に。元号は昭和に改元

 

1927年

 3月7日

  北丹後地震 M7.1 兵庫県北部と京都府北部で甚大な被害。犠牲者2925名

 3月17日

  孫文死去。以後、蒋介石が中国国民党の指導者になる 

 

1928年

 11月6日

  アメリカ合衆国大統領選挙で、共和党のハーバート・フーバーが大差で当選

 

1929年

 1月31日

  ヨシフ・スターリンが、レフ・トロツキーを国外追放。スターリンの独裁体制が、ここに完成

 10月24日

  ニューヨーク、ウォール街で株価大暴落。世界恐慌始まる

 

1930年

 1月21日

  ロンドン海軍軍縮会議開催

 4月22日

  ロンドン海軍軍縮会議終結。米英日の3国で軍備制限条約締結

 9月14日

  独議会総選挙で、ナチス党大躍進

 

1931年 

 5月1日

  ニューヨークでエンパイア・ステート・ビルディング完成

 9月18日

  柳条湖事件(満州事変勃発)

 11月27日

  中華ソビエト共和国臨時政府樹立

 

1932年

 3月1日

  満州国成立宣言

 5月15日

  五・一五事件で、犬養毅首相が殺害される

 7月30日

  第10回ロサンゼルスオリンピック開幕(~8月14日)

 8月2日

  ドイツ議会総選挙でナチス党が圧勝

 11月8日

  米大統領選挙で、民主党フランクリン・ルーズベルトが現職フーヴァーを破り当選

 

1933年

 1月28日

   独、シュライヒャー内閣総辞職

 1月30日

  ヒトラー首相就任

 2月24日

  国際連盟が日本軍の満洲撤退勧告案を42対1で可決。松岡代表退場

 2月27日

  ドイツ国会議事堂放火事件。それを口実にして、共産主義者、社会主義者大量弾圧

 3月3日

  昭和三陸地震 M8.4、津波により死者行方不明者3064名

 3月4日

  フランクリン・ルーズベルトが、第32代合衆国大統領就任

 3月10日

  米国ロングビーチ(カリフォルニア州)地震

 7月25日

  山形市で気温40.8度を記録

 10月14日

  独、国際連盟脱退

 10月17日

  アインシュタインがアメリカ合衆国に亡命

 11月17日

  合衆国、ソ連を国家承認

 

1934年

 3月1日

  満州国にて帝政実施。執政、溥儀が皇帝となる(元清帝国ラストエンペラー 映画のタイトルとしても有名)

 8月2日

  ドイツ、ヒンデンブルク大統領死亡

 8月19日

  独、国民投票により、ヒトラーの総統という地位が承認される 

 11月2日

  ベーブ・ルースら17名が米大リーグ選抜チームとして来日(12月1日)  

 12月

  ソ連大粛清開始

 12月29日

  日本が合衆国に、ワシントン海軍軍縮条約の単独破棄を通告

 

1935年

 3月16日

  ナチス、ヴェルサイユ講和条約破棄し、再軍備宣言

 10月3日

  イタリア、エチオピアに侵攻

 12月9日

  第二次ロンドン軍縮会議(最終的に不成立)

 

1936年

 1月20日

  大英帝国国王ジョージ5世陛下死去

  皇太子エドワード8世即位

 2月26日

  二・二六事件発生。3日後に鎮圧される。

 3月7日

  独、ラインラント進駐

 3月9日

  広田弘毅内閣成立

 5月30日

  牟田口廉也、支那駐屯歩兵第1連隊長に

 7月17日

  スペイン内戦開始

 7月31日

  国際オリンピック委員会で第12回夏季オリンピック開催地を東京に決定

 8月1日

  第11回夏季オリンピックがベルリンで開幕。

  日本、金メダル6個獲得(~16日)

 9月26日

  ソ連でニコライ・エジョフが、秘密警察長官にあたる内務人民委員に任命され、

  スターリンの大粛清が本格的に開始

 11月3日

  アメリカ合衆国大統領選挙で、フランクリン・ルーズベルトが再選

 11月25日

  日独防共協定締結

12月11日

  エドワード8世王冠より恋愛を選び退位。弟ジョージ6世即位。

 12月31日

  ワシントン軍縮条約失効

 

1937年

 1月23日

  広田内閣総辞職。2月2日、林 銑十郎内閣成立

 5月28日

  英、ボールドウィン内閣総辞職。チェンバレン内閣成立

 5月31日

  林内閣総辞職。第一次近衛内閣成立(6月4日)

 6月

  北京郊外で牟田口連隊長事故死

 

 7月7日

  盧溝橋で発砲事件起きるも、後任の連隊長は応戦せず

  共産党(毛沢東)工作員逮捕され陰謀を自白

 11月6日

  日独伊防共協定成立

 12月

  日華中立条約締結

 

1938年

 3月13日

  ナチス・ドイツ、オーストリアを併合(アンシュルス)

 7月11日

  張鼓峰事件勃発(~8月10日)

 9月29日

  ミュンヘン会談(英独仏伊)で、ドイツにズデーテン地方(チェコ)割譲が決定

 

1939年

 3月16日

  ドイツがボヘミア・モラヴィアの保護領化を宣言(チェコスロバキア併合)

 3月28日

  フランコ軍がマドリードを占領(スペイン内戦終結)

 5月12日

  満蒙国境で日本・ソビエト連邦両軍が衝突(ノモンハン事件)

 7月26日

  アメリカ合衆国は日本に対して日米通商航海条約の破棄を通告

 8月2日

  アインシュタインがルーズベルト米大統領宛に原子爆弾開発を促す書簡を送付、

  マンハッタン計画の契機となる(アインシュタイン=シラードの手紙)

 8月23日

  独ソ不可侵条約締結(モロトフ・リッペンドロップ協定)

 9月1日

  ナチス・ドイツとスロバキアのポーランド侵攻。第二次世界大戦勃発

 9月3日

  イギリス、フランス、オーストラリアが、ドイツに宣戦布告

 9月5日

  米国が中立を表明

 9月15日

  モスクワで東郷茂徳大使とモロトフ外相間で、ノモンハン事件停戦協定成立

9月17日

 ソビエト政府、ポーランド東部に侵攻開始

 9月27日

  ワルシャワがドイツの空爆で陥落

 9月28日

  独ソ友好条約調印 ポーランドは独ソにより分割占領

 11月

  IOCの方から世界大戦勃発による、東京五輪開催断念を提案

 11月30日

  ソ連軍フィンランドに侵攻開始(冬戦争)

 12月

  大日本帝国、東京五輪の開催断念を決定 

 

1940年

 1月10日

  近衛首相交通事故で負傷し、辞任

 1月18日

  米内光政内閣成立

 3月12日

  ソビエト連邦・フィンランド講和条約がモスクワで調印(冬戦争終結)

 4月9日

  ドイツ軍がデンマーク王国、ノルウェー王国に侵攻開始。デンマークが降伏。

 5月10日

  ドイツ軍が、オランダ王国、ベルギー王国、ルクセンブルク大公国、フランスに侵攻開始

  英、チェンバレン内閣総辞職。チャーチル挙国一致内閣成立

 5月13日

  独軍、先遣隊によりウィルヘルミナ女王以下、王室全員拘束される。閣僚も全員拘束

 5月17日

  オランダ占領。王家と閣僚は、ドイツ本国に連行し軟禁

  親ナチ派による傀儡政権樹立(ベルギー王室は、英国に脱出成功)

 6月4日

  ドイツ軍がダンケルクを占領したが、包囲された英軍は、ほぼ脱出に成功

 6月15日

  イタリア軍がフランス領に侵攻

 6月22日

  独仏休戦協定

 7月10日

  独空軍による英本土空襲開始(バトル・オブ・ブリテン)

  親独派の多い陸軍の圧力で、米内内閣総辞職

 7月22日

  第2次近衛内閣成立

 8月31日

  杉原千畝カウナス副領事が、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等から逃れて来た、

  ユダヤ人に大量ビザを発給      

 9月27日

  日独伊三国軍事同盟成立

 10月28日

  イタリア軍がギリシャに侵攻を開始するが、返り討ちにされる 

 11月5日

  米大統領選挙でフランクリン・ルーズベルトが3選される

 11月11日

  イギリス海軍が空母艦載機により、南部イタリアのターラント軍港を攻撃(タラント空襲)

 11月

  旧日本海軍の艦上戦闘機、零式艦上戦闘機が正式に採用される

 

1941年

 4月3日

  ロンメル将軍のドイツ軍が、北アフリカ戦線でイギリス軍を撃破

 4月6日

  ナチス・ドイツを始めとする枢軸国が、ユーゴスラビアとギリシャに侵攻

 4月13日

  日ソ中立条約成立

 4月17日

  ユーゴスラビアがドイツに降伏

 4月23日

  ギリシャがドイツに降伏

 6月22日

  第三帝国が、ソビエト連邦に対して攻撃開始。独ソ戦が始まる

 6月30日

  独からの対ソ参戦を求められるも、日本政府は拒否

 8月

  キエフ占領。包囲されたソ連軍兵士65万人が捕虜に

 10月2日

  モスクワ攻略作戦開始(タイフーン作戦)

 10月

  ゾルゲ逮捕

 12月5日

  モスクワ前面で、ソ連軍による反撃作戦開始 

 

 

1942年

 2月

  合衆国による対日軍事挑発開始

  マーシャル諸島の日本領海に、米巡洋艦侵入

  南シナ海を航行する、日本艦船や輸送船の上空ギリギリを米爆撃機が飛行

 5月

  合衆国国内でも、挑発行為に市民から非難が殺到し断念

 6月28日

  独、ブラウ(青)作戦開始 

 9月

  スターリングラード(現、ボルゴグラード)で戦闘開始 

 11月9日

  スターリングラードでソ連軍大反撃開始

 

1943年

 2月2日

  スターリングラードで、パウルス元帥の第6軍降伏

 3月

  ソ連軍に対して大規模攻勢に出るも、名将マンシュタイン将軍に袋叩きにされ、

  史実以上のぼろ負けで東部戦線完全に膠着

 7月

  ルーズベルト大統領参戦を決意。密かに正規空母の建造工程を繰り上げさせる。

  タンカー設計改造の護衛空母50隻工事開始

 9月10日

  鳥取地震 鳥取平野を中心に被害。死者1083名

 9月20日

  マニラ湾で《オーガスタ号事件》発生

  月末以降、米市民の対日感情急激に悪化 

 10月10日

  対日全面禁輸と、在米日本資産凍結を断行

  日本側も戦争の可能性が高まり、開戦準備を急ぐ

  石原莞爾が大将に昇進し、参謀総長就任

 10月12日

  近衛内閣総辞職

 10月15日

  陸軍大将、畑 俊六に組閣の大命が下る

 11月上旬

  プリキュア50名ほど(ハグプリと、年少組以外)現れる。

  いちかが、川でおぼれている少年を救出

 





戦争ジョーク
日本陸軍最優秀の戦車は、フィリピンで回収した米陸軍の《M3スチュアート戦車》らしい;;他の日本戦車より攻撃・防御・速度のバランスが優れているからねえ。

1 グアム島はアメリカ合衆国領
2 ミュンヘン事件と紛らわしい。ミュンヘン事件は、ミュンヘン五輪で発生したテロ事件。


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第22話【レディL沈む】


レディL=米空母《レキシントン》の愛称


  【レディL沈む】

 

 ~1943年12月8日、午前8時~

 

 マジュロ環礁(北緯7度05分、東経171度7分。現在のマーシャル諸島共和国首都)を攻撃した《エンタープライズ》、《レキシントン》の攻撃隊も、迎撃戦闘機と謎の鳥人間(プリキュア)の迎撃で多数の被害を出し、残存機は離脱して母艦に戻った。

 が、収容作業中に基地航空隊の攻撃を受けた。

 

 マジュロ環礁上空で米攻撃隊が謎の敵に迎撃され大混乱に陥った際、日本軍の高速偵察機が雲を巧みに利用し、ニューマン部隊上空へ侵入していた。

 ニューマン隊の情報収集担当の者達は、マジュロ攻撃隊の『悲鳴の様な無線交信』に注意を割かれ、海域に侵入した日本軍偵察機を察知できていただけではなく、その偵察機が発した無線も傍受していたにも関わらず、それらを見逃してしまった。

 それが無くても、逃げ帰る攻撃隊を追跡すればよかっただろうが……

《零戦64型》48機と《一式陸攻34型》50機は、《F4F》戦闘機の迎撃を掻い潜り、混乱している米艦隊に襲い掛かった。

 

 2隻の空母は、必死に逃げ回ったが遂に捕まった。

 左右から挟み撃ちにされた《エンタープライズ》は、左舷に2本、右舷に1本の魚雷を受けた。特に、右舷の魚雷は航空機用ガソリン庫を直撃し、たちまち手の付けられない大火災となった。

 米艦自慢の応急隊(ダメージコントロール隊)も、多くがガソリン庫の火災に巻き込まれた。

 乗員も必死に消火作業を続けたが、9時半ごろに火災が発電機室に延焼し停電してしまった。電気が止まってしまえば、消火ポンプも動かなくなってしまう。

 エンタープライズ艦長は、9時45分に最早《エンタープライズ》を救う事は不可能と判断し、総員退去を命じた。

 10時30分に乗員の退去が完了し、《エンタープライズ》は米駆逐艦の魚雷で処分され、太平洋戦争における米空母喪失1番艦という、不名誉な記録と共に太平洋の藻屑と消えた。

 

 《レキシントン》は、ベテラン艦長マレー大佐の操艦で航空魚雷を次々と回避。しかし、終盤、遂に左舷前方に魚雷1本の直撃を許してしまう。

 速度が25ノットまで低下し、甲板に航空機を運ぶエレベーターが故障した。

 しかし、元々巡洋戦艦として建造開始された為、強靭な船体を持つ《レキシントン》は、それ以上の被害拡大を許さなかった。

 ニューマン少将は北東へ退避しフレッチャー艦隊と合流後、キンメル大将直接指揮下の主力艦隊と合流する事を決めた。

 

 正午前に再び攻撃を受けるが、被害なしで切り抜けたとき、既に速力は28ノットまで回復していた。

 しかし、午後2時頃、艦内に漂う異臭に乗員が気付く。急ぎ換気装置を動かし、異臭は急速に艦外に排出されていった。

 だが午後2時32分頃、突如《レキシントン》は大爆発を起こした。護衛の駆逐艦の乗員は、後に新聞記者に次のように話した。

「一瞬、《レキシントン》の船体がぶれて見えて、次の瞬間、大爆発を起こした。《レキシントン》の塗装が、粉みたいに剥がれて飛んだのが見えた」

 

 実は、朝に命中した魚雷により、ガソリンをガソリン庫から航空機格納庫に運ぶ配管に亀裂が入り、ガソリンが漏れ出していたのだ。

 レキシントン級は1910年代に、当初、14インチ砲を8門を搭載した巡洋戦艦として建造開始された。第一次世界大戦当時の古い設計を引き摺っている。その後、空母に改造されていた。

 大正末期という時代は、日米英共に航空機や空母については、未だ試行錯誤を繰り返していた頃だった。 被弾した時における空母の危険性や、気化したガソリンの危険性について未だ知識が乏しかった。

 《ヨークタウン級》以降の空母では、気化ガソリンの爆発を防ぐ対策が設計時から盛り込まれている。しかし、それ以前の空母には、そのような対策は無かった。

 

 更に格納庫と甲板を繋ぐエレベーターが故障して、気化ガソリンの逃げ場も無くなった。

 又、第二次攻撃を回避した時に、衝撃により更に亀裂が拡大し、気化したガソリンも増えていた。

 午後2時32分前後に、恐らくは換気装置で何らかの静電気による火花が発生し、大量の気化ガソリンに引火して、大爆発を引き起こしたとされる。(甲板より下にいた乗員の大半が死亡した為、直接の原因は不明)

 

 艦長ジョン・マレー大佐は、軍医に負傷者を助ける様に命じた。

「私は大丈夫だ。早くニューマン少将を……」

 だが、軍医は力なく首を横に振った。

「ダメです。恐らく即死だと思われます」

 マレー大佐は直ちに、総員退去命令を下した

「《レキシントン》は、もう沈む。総員直ちに離艦せよ」

 

 《レキシントン》は2時間燃え続けて、午後4時半過ぎに沈没した。爆発時に乗員の大半が死傷してしまい、乗員2791名の内、生存者は僅か300名に過ぎなかった。

 一方、フレッチャー少将指揮下のTF33・3は戦場を離脱して北東、すなわちジョンストン環礁の方向に向かっていた。

 せめて戦闘機を発進させて、ニューマン部隊を支援するべきなのだが、フレッチャー少将は勝手に離脱してしまった。

 これは、敵前逃亡とされてもおかしくない行為だ。何しろ上官に当たる太平洋艦隊司令長官ハズバンド・キンメル大将の命令(退却命令)や、許可も出ていないのだから。

 しかし、フレッチャー少将にも言い分はあった。

 

「日本軍機だけなら未だしも、恐るべき強敵(プリキュア)が居るかも知れない戦場に、援護の戦闘機を出した場合、戦闘機隊が大損害を出した可能性は高い。更に、戦闘機の飛来した方向等から、《ヨークタウン》等の位置がばれて、攻撃を受ける危険性があった」

 勝手にフレッチャー隊が退却して来たと知ったキンメル大将は激怒したが、今更、敵に向け突撃しろとも言えない。

 更に謎の強敵については、フレッチャー艦隊から情報を得る必要があった。謎の敵の存在に対し、太平洋艦隊司令部も慎重にならざるを得ない。

 フレッチャー艦隊は以下の2つの理由で、奇跡的に索敵機から逃れる事に成功した。無論日本側も多数の艦上偵察機、飛行艇を偵察に出していた。

 

 1 奇跡的に偵察ラインの僅かな隙間に入り込み発見を免れた

 2 日本側はフレッチャー提督が逃げ出すと予測できなかった

 

 

 

 枢軸国と連合国の構成国(史実版・太平洋戦争開戦時)

 

枢軸国

大日本帝国

ナチス第三帝国

イタリア王国

ルーマニア王国

ハンガリー王国

フィンランド

タイ王国

ブルガリア王国

 

連合国

アメリカ合衆国

大英帝国

ソビエト社会主義連邦

自由フランス

中華民国

カナダ

オーストラリア

ニュージーランド

南アフリカ

その他の大英連邦

 




 この当時アフリカの独立国は数か国(南アフリカ、エジプト、エチオピア、リベリア)
後は英仏ベルギーポルトガルの植民地。


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第23話【未知の敵?】


 プリキュアはもう少ししたら再登場します。

 去年は、180センチほど積雪がありましたが、今年はほぼ0です。


 

  【未知の敵?】

 

 ~1943年12月8日、午後5時。ジョンストン環礁南西~

 太平洋艦隊総旗艦、戦艦《ウェストバージニア》

 

 空母《ホーネット》から、一機の《TBFアベンジャー》が発進した。この《アベンジャー》には航空参謀が同乗していて、搭乗員からかき集めた、謎の敵――プリキュア――に対する情報を伝えてきた。

 

 キンメル大将は、自ら航空参謀マリオン中佐を尋問した。

「この謎の敵は真実だろうな?」

「フレッチャー提督は、このような虚言を弄する方ではありません」

 太平洋艦隊参謀長スミス少将も、マリオン中佐に質問した。

「謎の敵は、日本軍と同盟関係にあると見て良いですか?」

「はい。ウォッゼ環礁では敵戦闘機が我が方の《F4Fワイルドキャット》戦闘機を攻撃し、爆撃機が謎の敵により、迎撃されたとの報告がありました」

「もし日本の盟友でなければ、日本機が《エンタープライズ》、《レキシントン》を攻撃する余裕は無いだろう。さて、この謎の敵だが鳥か人どちらだろう?」

「鳥では無いでしょう。ホラー映画ではあるまいし、日本人に、そのような能力と知性を持った生態兵器を作れるとは思えません。ナチスでも無理ですね」

 

そこに作戦参謀が割って入った。

「本国にはどう報告します? 何も報告しない訳にもいかないでしょう」

「だんまりという訳にはいかんな。文面は少し考えさせてくれ」

 

 数分後、キンメルは海軍作戦本部に打電した。

 

「日本軍及び同盟者は未知の新兵器多数を使用。形状は、わが国で開発中のヘリコブターに類する兵器と思われる。日本及び同盟者の新兵器は、やや人型に似ている。極めて高性能であり、新型のロケット兵器で戦闘機、爆撃機多数を喪失」

 戦闘機より速いとか羽がある少女だとか、頭の上にウサ耳が在るとかは、流石に電文に書く事が出来なかった。

 

(さてどうするか、これ以上の被害を防ぐ為にハワイへ撤退すると言う選択肢もあるが……いや未だ負けと決まった訳では無い)

「ニューマン隊を攻撃した敵に、謎の敵部隊は加わっていたのか?」

 キンメル大将は、参謀長に味方への謎の敵からの攻撃の有無を聞いた。 

「いいえ、日本軍機だけだったそうです」

「この謎の敵は、軍艦を攻撃する様な手段は無いのかも知れんな。そうでなければ攻撃に加わった筈だ」

 報告を聞いた太平洋艦隊首脳陣は、やや安堵したような表情を浮かべた。

 

 事実は全く違う。いちか達は自分達もニューマン艦隊攻撃に参加する事を伝えたが、第一航空艦隊司令、小沢治三郎中将が理由をつけて、それを止めていた。

 

「今回の敵は我々だけで対処できる。君達は今度の様な敵と戦うのは初めての筈だ。疲れもあるだろうから、今日はゆっくり休んで欲しい」

 それは小沢の彼女達への配慮でもあった。

 

 再度、米艦隊に場面を戻す。

「一日、様子を見よう。日本海軍が調子に乗ってジョンストンまで攻め込んで来たら、逆襲のチャンスは未だあるぞ! 通信長、ハルゼー隊の給油作業は、どうなっている?」

「既に給油作業に入っています。後、数時間で終了するかと。真珠湾の外で給油しているので、短時間で済みそうです」

 

 真珠湾(パールハーバー)にいったん入港してからの給油だと時間がかかるので、オアフ島南西洋上での給油に切り替えている。無論、潜水艦の攻撃を防ぐ為に多数の駆逐艦が必要となるが、給油の時間は大幅に短縮できる。

「給油が終わり次第、ハルゼーにジョンストンに急行する様に命令を出せ」

 

 その間に、ミッドウェー島とウェーキ島から敵の空襲を受けつつありとの緊急電が届いた。

 ミッドウェー島は、空母艦載機の空襲を受けている様だ。

 どうやら、合衆国側が所在を把握できなかった、別動隊がいるのだろう。戦闘機の迎撃と対空射撃で10機前後を撃墜したが、滑走路や燃料タンク、格納庫が炎上した。

 

 ウェーキ島では、クェゼリンから20機前後の中型爆撃機が爆撃に向かっているのを、米潜水艦が目撃しウェーキ島守備隊に通報した。

 どうやら護衛の戦闘機は無い様だ。戦闘機では航続距離が足りないのだろう。

 護衛戦闘機が無い爆撃隊なら、楽勝だろうとウェーキ島守備隊は戦闘機12機を高度4000で待機させた。だが、《九六式陸攻》24機は、海面ギリギリの超低空から侵入し、戦闘機体が慌てて降りてくる前に、飛行場を猛爆して離脱して行った。ウェーキ島の滑走路は使用不能で、航空隊も壊滅した。

 

 ハルゼーはサンディエゴの病院を退院すると、陸軍の輸送機に便乗しハワイに向かい《サラトガ》に乗り込んだ。

 サラトガ隊は正規空母《サラトガ》(搭載機90)の他に、新鋭中型空母《インディペンデンス》(戦闘機30+爆撃機15)が配備されている。

 更に去年完成した37200トンの新型高速戦艦《ノースカロライナ》、《ワシントン》(28ノット、主砲16インチ砲9門)が合流すれば、戦艦の数は10隻対6隻になり、万一、戦艦による砲撃戦になった場合でも、米側有利とキンメルは考えた。

 





ウェーキ島壊滅の所は史実。戦前から昭和30年ごろまでは、アジアと合衆国本土を結ぶ航空路の給油地でした。小説「ローレライ」原作の舞台。


艦これは4月に平成最後の限定イベントがある予感。大規模だろうから資源を備蓄しないとね。


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第24話【決戦】

 

  【決戦】

 

 ~1943年12月9日、午前10時30分 北緯15度57分、西経172度30分~

 米空母《ヨークタウン》

 

 甲板員達が、空を見上げながら話している。

「撤退命令などが出るかと思ったんですが」

「キンメル提督にも面子が有るだろうから、まだ、この時点で退くという事は無いだろう。パールハーバーから援軍も来るらしいぞ」

「キンメル提督は有名な大鑑巨砲主義者でしょ。巡洋艦や空母は所詮、『戦艦を補助する戦力』って発言した事もあるんじゃ?」

 

 当時、海軍には日米とも、二つの大きな派閥が有った。戦艦と航空母艦(+航空機)、どちらが海軍の主力であるかで、二つに分かれている。

 

 戦艦優先主義者

「戦艦こそが海軍の主力だ。空母や巡洋艦はあくまでも『艦隊決戦における、戦艦の補助戦力』でしかない。洋上を航行中の戦艦が、航空機単独の攻撃で沈んだ事は無い」

 航空機優先主義者

「戦艦は既に時代遅れ。これからは空母の時代だ。戦艦は金と重油を無駄遣いするだけで、役に立たない」

 

 結果は歴史を見ればわかるように、航空機優先主義者が正しかったが、当時は未だ戦艦優先主義も多かった。 

 確かに、洋上で戦艦が航空機の攻撃のみで沈んだ事は無い。戦艦優先主義者にとって空母は、その攻撃力はともかく、空襲を受けた場合は危険が大きいという懸念もあった。

 キンメル大将も内心「作戦中止、撤退せよ」の命令を僅かには期待していたが、4時間前にワシントンから命令が届いた。

 

「日本海軍が、その様な高性能兵器を所持出来る可能性は無い。報告は、全て搭乗員の勘違いであると推測される。貴官は神のご加護を信じ、任務を遂行されたし」

 要するに、日本人が米国やドイツも所持していない新技術を開発出来るはずがない。戯言を言ってないで作戦を継続しろとされた。キンメルも最早、早期撤退は不可能と判断した。

 

 ほぼ同時に敵艦隊発見の報告が入った。

「敵の位置は!」

 キンメルは、参謀に大声で敵艦隊の位置を聞いた。

「北緯14度52分、西経176度32分です。敵空母艦隊は2群で、それぞれ大型空母2、小型1を戦艦1、巡洋艦3から4及び駆逐艦が護衛しているそうです」

(およそ400キロか、先制攻撃可能だ)

 数分後、無線室から続報が届いた。

「偵察機の連絡が途絶しました。撃墜された模様です!」

「敵戦闘機か、それとも……」

 

 今まで敵を発見していたはずの偵察機が、撃墜されるとしたら可能性は2つだった。

 偶然、エンジンが故障して墜落するという低い確率の事故を除けば、警戒中の戦闘機に撃墜されるか、敵艦に近付き過ぎて対空砲で撃墜されるかだ。

 しかし、一昨日以降、第3の可能性『謎の空飛ぶ敵』に撃墜される。が追加された。

「敵戦闘機の攻撃を受けつつあり、という通信を受けています」

「フレッチャーに攻撃機を発進させるよう命じろ」

 

 

 ~同日、正午~

 

 《ヨークタウン》、《ホーネット》から、敵高速機動艦隊に向け攻撃隊が発進した。

 《F4Fワイルドキャット》20、《SBDドーントレス》20、《TBFアベンジャー》攻撃機14機。2艦合計で98機だ。

 本来、もっと多くの機を出す筈が、前日のマーシャル諸島空襲で出撃機は壊滅的な被害を受けてしまった。生還した機も多くが修理不能な損害を受けていて、廃棄処分するしか無かったからだ。

 

「今度は大丈夫でしょうかね?」

「どうやら今度は、敵の発見を遅らせる為に、低空から侵入するそうだ」

「最低一隻の空母を血祭りに挙げろって、飛行長からの指示らしいです」

 ノイマン達乗員が、発進する攻撃隊を見送っている。

 

 合衆国と日本帝国の建造能力の差を考えると、仮に正規空母2隻ずつ沈んだとしても、生産力は合衆国の方が遥かに高いので米国側が有利だ。

 米海軍では、本来、新型空母や新型高速戦艦は、その大半が既に1943年12月現在までに完成している筈だった。

 しかし、日本帝国も必死に米側の挑発を躱し、参戦の口実を与えない為に我慢して来た。

 更に1940年にルーズベルト大統領が、共和党のウェンデル・ウィルキー候補を破り3選目(1)を果たした際に、「世界大戦には参戦しない」との公約で当選していた。

 ルーズベルトは新型艦は予定通り建造しようとしたが、野党共和党議員や参戦反対の市民の非難を受けた。

「ルーズベルト大統領は、戦争不介入と言いながら多数の新型艦を建造している。公約を破るのではないか!」

 ルーズベルト政権は、渋々ながら新型艦の建造スケジュールを1年以上遅らせる事を余儀なくされた。

 

 既に新型空母《エセックス》級(2)(27000トン、全長265メートル、速力33ノット、搭載機100機)の1番艦《エセックス》が11月に完成している。今後、多数の姉妹艦が完成して来る。(ちなみに艦これには3番艦《イントレビッド》が登場している)

 

 護衛空母は、《カサブランカ》級の大量造船を開始している。カサブランカ級はタンカーの設計を流用した低速護衛空母で、7800トン、速力は18ノットしか出ない。(主力空母は30ノットは出る)

 搭載機も《ワイルドキャット》戦闘機12機、《TBFアベンジャー》攻撃機の合計24機しかないが、姉妹艦は、50隻も造船が計画されている。

 

 米日関係が急激に悪化する前の1943年8月から(開戦後の)1944年8月までに、50隻すべて完成させる計画だ。

 来年2月以降、週刊誌みたいに一週間に1隻ずつ姉妹艦が増えて行くことになりそうだ。その反面、装甲は皆無なので、プリキュアの攻撃を喰らったら、一発で船体に大穴が出来てしまうだろう。

 巡洋艦と駆逐艦は更に恐ろしい数が建造されている。

 が、米海軍が十分な戦力を確保できるのは、まだしばらく先の話になる。

 

 空母機98機に今回はジョンストン基地航空隊も加わる。

 《ワイルドキャット》戦闘機10機に《ドーントレス》爆撃機12機、更に陸軍の中型爆撃機《B-26マローダー》12機が加わる。

 《マローダー》は、初期型は故障率が高く『未亡人製造機』の汚名を甘受したが、改良されて事故も少なくなっている。

 陸軍機だが、800キロの航空魚雷も装備できる。

 しかし、残念ながらジョンストン基地は小さく、魚雷は無いので、500キロ対艦爆弾2発ずつを装備している。

 《ヨークタウン》は攻撃機を発進させようとしたが、機体のトラブルで30分ほど遅れてしまった。フレッチャー提督は、止むを得ずホーネット隊を先に先行させた。

 ヨークタウン乗員が不安そうに見守る中で、何とか30分でトラブルを解決し、ヨークタウン隊も出撃しホーネット隊を追った。

 全機発進した数分後、案の定、対空レーダーが接近してくる敵機を捉えた。2機の《ワイルドキャット》戦闘機が迎撃に向かった。

 

 フレッチャー艦隊上空に飛来したのは、艦上爆撃機《彗星》の偵察機版の《二式艦上偵察機》だ。(ちなみに艦これにも登場している《彩雲》と違いT字不利阻止できないので、使う機会は少ない)

 速力は560キロと、《零戦》や《ワイルドキャット》戦闘機に匹敵する速力が出せる。

 乗員達が見守る中、《ワイルドキャット》が必死に追いかけるも、追いつく事は出来ず取り逃がしてしまった。

 






1 2期までに制限されたのは戦後
2 名前の由来は、マサチューセッツ州の郡名から。R-18とは一切関係ないですw


艦これに出てる米軍機は、性能的に使えるのは《F6F》《TBF》だけで、後は使えないのが残念。そろそろ陸軍機も出そうよ運営山。マスタング戦闘機や、ミッチェル爆撃機とか。


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第25話【コックリル隊の勇戦】

 

  【コックリル隊の勇戦】

 

 30分遅れて発進したヨークタウン攻撃隊にも、トラブルが起きていた。

 新しいヨークタウン攻撃隊長は、突然の大任であがっていた。(前任者のヘンダーソン少佐は、前日のウオッゼ環礁攻撃でキュアマカロンの攻撃で戦死)

 本来、発進した機体が全部編隊を組んでから進撃する。しかし、後任の攻撃隊長は、未だ全機が編隊を組んでいないのに先に行ってしまった。

 仕方なく取り残された10数機は、コックリル大尉が率いて味方の後を追った。

 大尉の《TBFアベンジャー》は前日のウォッゼ環礁攻撃に参加した6機の中で、ただ一機生還した。

 しかし、桃色兎(キュアホイップ)の攻撃でエンジンをやられ、辛うじて帰還した後、調べられ修理不能で廃棄処分された。今日は予備の《アベンジャー》で出撃している。

 

「かなり天候が悪くなってますよ。確か、明日朝から急激に天気が崩れて来ると聞いてましたが」

 コックリル大尉は、外の様子を見て軽く舌打ちをした。

「恐らく予想より早く、低気圧が進んでいるんだろう」

 現在、ジョストン環礁北西から南東に向かって、低気圧が進んで来ている。

 気象担当士官によると、天気が悪化するのは明日朝以降の筈だった。しかし、気象班の予測より、低気圧の速度が速まったのだろう。

 未だ戦闘不可能とまで言えないが、周囲を見ると積乱雲や、積雲が増えている。

 それらの厚い雲に視界を遮られ、攻撃隊長等の機体を探したが、見出すことができない。

 

 その時、味方が謎の敵から攻撃を受けているという通信をキャッチした。

「ホーネット隊が例の敵に攻撃を受けています!」

「作戦を読まれたな。今回は我々が低空から侵入して来る事を見破られたようだ」

(頭にウサギ耳が付いていたから奴らはバカだと思ったが、よく考えてみると人間の頭にウサ耳が生える筈が無い。日本にはシノビ『忍』という、謎の戦闘集団がいるらしい。あいつらは日本に古くからいる戦闘集団なのかもしれない。カラフルな色の服やウサ耳は、奴らの戦闘衣装なのかも知れん。桃色ウサギの一味は、ウサギを信仰しているのか?)

 

 ホーネット隊とヨークタウン隊の大半は、戦闘機と謎の敵に攻撃され、大半が撃墜されてしまった様だ。

 中高度から侵入したジョンストン基地航空隊は、待ち受けていた《零戦》多数の攻撃を受けて撃墜されるか、適当に爆弾を投下して逃げ出したらしい。

 コックリル大尉は頭を抱えたくなった。もうまともに残っている隊は、ここにいる16機しかいない。大尉も逃げたくなったが、まだ何も起きていないので逃げる事は出来ない。

 取りあえず、どこか奇襲できる隙が無いか、探りながら進む事にした。

 

 予想より半日早く、天気が崩れ出したのが幸いした。急激に増えてきた積雲は、敵からコックリル隊が発見されるのを防いだ。16機という少なさも幸いした。

 しかし、20分以上探ったが奇襲できそうな隙は無かった。

 雲の隙間から遠くに主力空母らしい影も見えたが、その近くには《零戦》の他に、桃色兎(キュアホイップ )の仲間が多数飛んでいた。

 しかし、何時までも飛んでいる訳にはいかない。帰りの燃料が無くなる前に決断する必要がある。さてどうするかと考えた瞬間、視界の影をふわりと白い影がよぎった。

 一瞬青ざめたが、幸いにもその影は本物の鳥だった。

 

「お前達は気楽でうらやましいよ」

 そう愚痴って鳥の飛んでいく方向を見た時、水平線近くに空母らしい平たい船体が見えた。近付いてみると、3隻の小型空母と、水上機母艦及び7000トン級の防空巡洋艦が確認できた。

 周囲を見ると、運良く数機の戦闘機は居るが謎の敵は居ない。

 

 コックリル

「奴らは恐らく対潜空母に違いない。大型空母や主力戦艦隊に、潜水艦が近付かない様にしているのだろう。よし、あいつらをやるぞ!」

 

 大尉は《ワイルドキャット》6機、《ドーントレス》8機、《アベンジャー》4機に小型空母の近くにある大きな積乱雲を迂回して、低空から近付くように指示を出した。

 

 

 ~1943年12月9日、午後2時~

 

 対潜空母《雷鷹》(らいよう)は、沖鷹(ちゅうよう)型空母2番艦で、排水量10000トン、速力は20ノットとアメリカの護衛空母よりやや速い。

 搭載機は、戦闘機12機と対潜攻撃機用の《97式艦上攻撃機》12機の合計24機だ。

 数時間前に幸先よく、米潜水艦1隻を撃沈していて士気も高まっていた。

 それは完全な奇襲だった。

 突如、上空で《零戦》が《ワイルドキャット》と戦闘を開始したと知った瞬間……

 

 乗員

「敵、急降下爆撃機! 直上です!」

 艦長、大倉留三郎大佐は即座に回避命令を出した。

「面舵一杯!」

 

 しかし、時すでに遅し。

 舵が動く前に、454キロ爆弾が3発命中した。1発は機関室内で爆発し、機関員は瞬時に全員消し飛んだ。

 残り2発は格納庫内部で爆発。整備中の《97式艦攻》と対潜爆弾が爆発した。

 10000トン前後の小型空母に、0.5トン爆弾が3発も命中すれば致命傷になるのは当然だ。1発だけでも、沈没は免れなかっただろう。

 《雷鷹》は1時間後に沈んで行った。救助された乗員は、乗員750名の内228人だった。多くの乗員が爆弾の命中時に死亡していた。

 《雷鷹》は日本海軍最初の喪失空母となった。

 

 コックリル大尉は、別の空母を雷撃しようかと一瞬思ったが、《アベンジャー》は、自分の機も含めて4機しかいない。4機では撃沈できるかは微妙だ。

 コックリル

「あの水上機母艦はリストに無い新型だ。《TBF》隊は水上機母艦を沈めるぞ」

 

 そこに居た水上機母艦は、昨年2月に完成した、新型水上機母艦《瑞穂》だ。

 全長192.6メートル、速力22ノットで、水上偵察機を24機搭載できる。史実で空母に改造された《千歳》、《千代田》と同等の能力を持っている。

 今後、水上機母艦は軽空母に改造される可能性が高く、ここで撃沈しておく事は、かなり有意義だと大尉は判断した。

 《アベンジャー》は積乱雲をかすめて、超低空から接近したので、《瑞穂》も気付くのが遅れた。

 12センチ対空砲や、25ミリ機関銃で射撃して来たが、桃色兎(キュアホイップ)の激しい攻撃に比べると間延びしているように感じた。

 魚雷4本の内、2本が命中した。特にコックリル大尉が発射した魚雷は、水上機に搭載するガソリン庫の真横に命中した。

 ガソリン庫が爆発し、ちょうど対潜哨戒から戻って来た水上機に給油作業を行っていたので、給油管と給油中の水上偵察機が、ドミノ倒しのように次々と爆発炎上した。

 《瑞穂》は30分後には沈没してしまい、同艦は帝国海軍大型艦の中で、最初の喪失艦となった。《瑞穂》も魚雷命中時に多数の乗員が爆発と火災で戦死し、生存者は少数だった。

 《アベンジャー》が《瑞穂》の上を飛び越え、近くの海防艦を回避して4機が集合する。その直後、その海防艦に水柱が上がる。

 

「何事だ?」

「水上機母艦に命中しなかった魚雷の1本が、小型駆逐艦に命中しました」

 水柱が消えると、海防艦は海面に僅かな残骸を残しているだけだった。

「あの艦の乗員でなくて良かったよ」

「全く同感ですね」

 コックリル大尉達は、自分達の境遇に感謝し、僅かだが敵艦乗員の冥福を祈った。

 

吉野型防空巡洋艦は、《ドーントレス》3機の爆撃を受けたが奮闘し、2機を叩き落とした。

「日本版の《アトランタ》は中々やるな。艦の性能が良いのか、もしくは、あの艦の艦長や乗員が優秀なのか?」

 しかし《ドーントレス》3番機が、僅かな隙を突いて爆弾投下に成功。艦橋や機関室、煙突等には惜しくも命中しなかったが、対空機関砲に命中し艦内で爆発した。

 爆弾1発で7000トン級巡洋艦が沈む可能性は低いが、火災による黒煙に視界を遮られ、コックリル隊がいる側の対空射撃は止んだ。

 戦闘機を除けば8機の《ドーントレス》と4機の《アベンジャー》で、小型空母1、新型水上機母艦1と海防艦1を撃沈し、防空巡洋艦に命中弾で火災を起こさせた。12機の小部隊としては大戦果と言える。

 この戦果によりコックリルは、『初めて日本海軍に被害を与えた男』と讃えられた。

 そして、戦後、コックリル隊の戦果は『プリキュアと日本海軍の足に、強力な蹴りを入れた』と称されることになる。

 

 だが、無邪気に喜んでいる時間は無い。

「各機戦闘終了! 浮かれるのはまだ早い! 直ちに逃走するぞ!」

 大尉は奇襲をする際に利用した積乱雲に、逃げ込むように命令を下す。攻撃隊が積乱雲の方角に機首を向け、60秒ほど飛行した時、忌々しい桃色兎(キュアホイップ )の仲間が10人ほど現れた。

 

「今度はライオンのたてがみとリスの尻尾が付いてます!」(キュアジェラート・キュアカスタード)

「俺は死ぬまで動物園には行かんぞ!」

 

 大尉の《アベンジャー》は、積乱雲の下に逃げ込む。

 落雷も怖いが、謎の敵よりは100倍ましだろう。

 10分後、集結した時に合流できたのは、《ワイルドキャット》1機、《ドーントレス》3機、《アベンジャー》2機(コックリル大尉機含む)に減っていた。

 コックリル大尉は《ヨークタウン》に戻るのは危険と判断し、ジョンストン環礁に向かい無事生還した。

 

 





 防空巡洋艦は史実でも、計画はあったらしいです。しかし、防空巡洋艦は中止となり、代わりに大型防空駆逐艦が建造されて、秋月型として完成。


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第26話【被害甚大】

  【被害甚大】

 

 コックリル大尉率いる隊が対潜艦隊に攻撃を開始したのと同時刻に、フレッチャー艦隊も、小沢中将の第一航空戦隊艦載機の空襲を受けていた。第一次攻撃隊は、航空母艦に攻撃を集中して来た。

 

 ラムソンが、敵攻撃隊の動きを確認し報告する。

「左舷30度、距離2000、高度10に敵雷撃機6機」

 ケリーも、部下達に指示を出している。

「良く引き付けてから撃て。それと、魚雷を発射していない機から優先的に撃て!」

 ケリー達は接近して来た《天山》に、20ミリ機関砲を発射する。

 まず一機が火だるまになって墜落、更にもう一機が操縦手を射殺され海に突っ込む。

 残りの《天山》が魚雷を発射するが、全て《ヨークタウン》の後方に流れて行く。

 《ヨークタウン》は、名艦長フレデリック・シャーマン大佐の巧みな操船で反撃を開始して行く。しかし、遂に第三波の雷撃機の投下した魚雷1本が、ノイマン達の直ぐ近くに向け突入して来る。

 

 ケリーの怒号が飛び、機銃員達は慌てて伏せる。

「命中するぞ! 全員伏せろ!」

 

 しかし、あと5メートルまで来た時、その魚雷を発射した《天山》が被弾して、偶然にも自分が発射した魚雷に激突した。大きな水柱が発生し、機銃座や甲板に甲板に伏せていた乗員に降り注いだ。

 

「直撃……じゃないですね?」

ノイマンは、魚雷が暴発した海面を指さしながら、ラムソンに説明した。

「その寸前に墜落した雷撃機が魚雷の上にドスンで、信管が作動してしまったんだろう」

「レディーYには、ツキ(運)があるぞ」

 ラムソンが異常に気付く。どうやら僅かに速度が低下している。

「あれっ、速度が落ちてませんか?」

「直撃はしなかったけど、3メートルか5メートルくらいで爆発したからな。ある程度の浸水は仕方ないよ」

 

 浸水の影響で、《ヨークタウン》は32ノットから25ノットまでしか出せなくなった。この影響が操舵に影響したのか、とうとう、《彗星》の500キロ爆弾一発を被弾してしまった。飛行甲板の前方に穴が開き、艦載機の発進は困難になった。

 《ホーネット》も懸命に回避したが、爆弾3発に魚雷3本が命中し、船体は大きく傾いた。必死にダメコン隊が対応するも、浸水は止まるどころか、ますます酷くなった。

 午後2時20分に総員退去命令が出され、乗員が退去した後に、駆逐艦の魚雷で処分された。

 

 同時刻、キンメル艦隊も攻撃を受けた。大西少将率いる第6航空戦隊の装甲空母《大鳳》、《白鳳》から発進した50機が襲来した。大鳳型装甲空母は、1943年6月に完成した新型装甲空母だ。(排水量29200トン 速力32ノット)

 大鳳型装甲空母は、急降下爆撃機の500キロ爆弾に耐えられる設計となっている。設計時にガソリン漏れの危険性が指摘され、米空母のような対策が施された。

 搭載機は英装甲空母と同様にやや少なく、60機となっている。

 大西艦隊から飛来した《彗星》は、キンメル艦隊に4隻配備された、《ボーグ》級護衛空母をまず血祭りに挙げた。

 日本側の護衛空母と似たような性能で、搭載機は24機となっている。こちらも、500キロ爆弾1から2発の直撃を受け、海の藻屑となった。

 

 

 ~1943年12月9日、午後3時~

 

 スミス少将達の太平洋艦隊参謀陣は、キンメルに対し撤退を具申していた。

「残念ですが、今回は、退くべきではないでしょうか? 《レキシントン》、《エンタープライズ》、《ホーネット》を失い、《ヨークタウン》も艦載機発進不能になりました。これ以上の犠牲が出る前に、撤退するべきです」

「しかし、間もなく《サラトガ》も到着する。戦艦は未だ全艦健在だ。砲撃戦なら、まだ勝ち目はある」

 更に参謀長が何か言いかけた時、大編隊の敵機を探知したとの知らせが入った。

 

 

 ~同日、午後3時半~

 

 まず血祭りに挙げられたのは、最後尾にいた戦艦《アリゾナ》だ。高度3000メートルで、接近して来た天山編隊の水平爆撃を受けた。

 水平爆撃に使用されたのは、戦艦《長門》の41センチ主砲弾を改造した800キロ爆弾だ。水平爆撃の命中率は低く、命中したのは1発だけだった。

 しかし、そこは弾薬庫の真上で、命中後、一瞬、茶色の煙が上がった瞬間、《アリゾナ》はヴェスビオ火山のように大爆発を起こし、海面下に消えた。

 飛散した破片で、周囲の護衛艦にも死傷者が出るほどだ。

 《アリゾナ》は戦隊指揮官アイザック・C・キッド少将及び、艦長フランケン・ヴァーグ大佐以下全乗員が戦死し『米海軍最大の悲劇』と呼ばれる事になる。

 

 後続する姉妹艦《ペンシルヴァニア》の対空射撃で、《アリゾナ》を轟沈させた天山隊の一機が操縦不能に陥り、《ペンシルヴァニア》の近くに不時着水した。

 

 《ペンシルヴァニア》の艦長、モーガン大佐は不時着機を銃撃する様に命令した。

「機銃で始末しろ」

 副長は、慌てて反対意見を述べる。

「しかし、彼らはもう戦えません」

「奴らは降伏していない。撃っても問題無い!《アリゾナ》の仇討ちだ」

 

 副長は、この戦争狂野郎! と思ったが命令には逆らえない。

 しかも、艦長の言にも一理あるのも確かだ。降伏していないのは事実であり、国際法上、違法とまでは言えない。

 止むを得ず副長は、対空機関砲に銃撃を命じた。《天山》は穴だらけにされ、乗員諸共沈んで行く。

 沈没を確認し、満足そうに笑う艦長を見て、副長は本気で殴ろうかと考えた。

 それを見たキュアマリンの目に、憤激の色が浮かぶ。

「なんて事を……海より広い心を持つあたしも、許しちゃ置けないな」

 

 

 ~その直後~

 

 戦艦《ペンシルヴァニア》

 

「敵機接近! 噂の飛ぶ連中です!」

「日本人の癖にキラキラした服を着やがって。対空砲で叩き落としてやれ!」

 

 モーガン大佐は、にやにや笑いながら攻撃を命じたが、10秒もたたない内に、余裕の表情から驚愕のそれへと変わった。

 4人の謎の空飛ぶ少女(ハートキャッチチーム)は、いとも容易く対空銃撃を回避して急速に突入して来る。

 モーガンが懇願するが……

「ま、待て……」

 キュアサンシャシンは、無視してモーガン大佐を睨みつける。

「今更、手遅れです。向こうの世界で反省してください」

 

 光が集まり、その光が二つに別れ、第三帝国空軍機を超える速度で《ペンシルヴァニア》を直撃した。

 光は第一主砲と艦橋後方の煙突を直撃し、装甲を貫き、艦内まで突入した。直後、第一主砲の弾薬庫が爆発し、副長は意識を失った。

 気が付くと、艦長は何か大きな破片を受けて死亡していた。艦橋要員も助かったのは数名だけだ。

「前部砲塔、通信途絶!」

「機関室、死傷者多数。救援を……」

 

 《アリゾナ》の様に瞬間的な轟沈は免れたが、艦の前部は激しく炎上している。艦首部分は既に沈没しかけていた。

 副長は直ちに指揮権を引き継ぎ、全乗員に退艦命令を出した。

 凄まじい光景を目にしたキンメル大将以下の太平洋艦隊司令部要員は、全員、衝撃で色を失った。

 謎の空飛ぶ敵に、主力艦を沈める力は無い。という予測が、単なる願望に過ぎなかった事に気付かされた。

 

 衝撃が冷めやらぬ内に、帝国海軍機と謎の空飛ぶ敵は、今度は戦艦《テネシー》、《カリフォルニア》に襲い掛かった。

 《テネシー》は爆弾4、魚雷4本を被弾し大破し停止した。

 《カリフォルニア》は別の空飛ぶ敵のチームに、《光の様な》攻撃を受け、こちらも大破して機関停止してしまった。

 

 謎の敵(プリキュア)の恐るべき戦闘能力を見せつけられたキンメル大将は、作戦中止命令を出した。

 《天山》、《彗星》と空飛ぶ兎は嵐の如く襲い掛かってくる。まず輪形陣外側の巡洋艦を攻撃した。

 最新鋭重巡《ボルティモア》(12000トン)も、スクラップ運搬船の如く、ぼろぼろにされた。

 衝撃で第4次ティアマト星域会戦の、ロボス元帥みたいに椅子からずり落ちるキンメル提督。(1)

 

 『最早、これまでか』

 と米兵の誰もが絶望を感じていた。

 




1 銀河英雄伝説劇場版「わが征くは星の大海」ネタ ドクター・トラウムの中の人が、
ラインハルト艦隊参謀長メックリンガー少将役で出演。

本編では、愛崎えみるの祖父が猛将ビッテンフェルト提督役で出演。106話か107話辺りではメックリンガー提督との、罵倒合戦が見れます。


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第27話【猛牛来る】


今年は、花粉症が酷いので早めに病院に。花粉症じゃない人も気を付けて。


 

  【猛牛来る】

 

 その時、背後の雲から多数の戦闘機が現れた。

確認した乗員が大げさに報告する。味方の救援の時などは、故意に歓声をあげる等をして、味方の士気を回復させる事も必要だからだ。

「味方です! ハルゼー提督が救援に来たぞ!」

「ブル(猛牛)ハルゼーが来てくれたか」

 

 《サラトガ》、《インディペンデンス》から発進した多数の《F4Fワイルドキャット》戦闘機が《零戦》に向かって行く。

 スミス少将

「《SBDドーントレス》や《TBFアベンジャー》もいます」

 キンメル大将

「ハルゼーも無茶をするな」

 

 ハルゼー艦隊は未明に給油を終えると、28ノットという超高速でジョンストン環礁に急行した。

 途中、もし日本軍潜水艦と遭遇していたとすると危機に陥っていたかもしれない。が、幸いにも遭遇せずに済んだ。

 

 

「戦闘機の大半を支援に出せ。《ド-ントレス》と《アベンジャー》もだ!」

「敵空母の正確な位置が判りません。それに、今からでは帰るのは日没後になってしまいます」

ブローニング参謀長は、ハルゼー提督が爆撃機と雷撃機も防空戦闘に出撃させるという意思に気付いた。他の幹部士官も反対意見を述べたが、ハルゼーは却下した。

 

「日本機だけじゃなく、得体の知れない空飛ぶ軍団も居るんだ。このままではキンメル艦隊は全滅してしまう。《ドーントレス》と《アベンジャー》には、敵爆撃機と雷撃機と戦わせる。撃墜しなくてもいい、銃撃で妨害させろ」

 

 相当無茶な指令だが、《ドーントレス》や《アベンジャー》の搭乗員は恨み言は言わなかった。

 むしろ、「俺達が味方を助けるんだ!」との想いで発進して行った。

 結果的に、この無茶な命令は成功したと言える。

 戦闘機だけでは無く、爆撃機や攻撃機まで味方を壊滅から守る為に立ち向かって来た、猛牛ハルゼー隊の雄姿もとい蛮勇は、日本軍の航空機のみならずプリキュアをも怯ませる事に成功した。

 

 《ドーントレス》、《アベンジャー》は、それぞれが12.7ミリ機銃を複数装備しており、《天山》、《彗星》にとっては強敵だった。

史実でも、名搭乗員として2000年まで存命だった坂井三郎氏が、ガダルカナル島上空で、《ドーントレス》の編隊に不用意に単機で攻撃を行い、後方機銃の反撃で、戦死寸前に追い込まれている。(1)

 撃墜されなくても執拗に纏わりつき、日本軍の爆撃や雷撃を妨害した。

 新鋭軽巡《グリーブランド》がプリキュアの攻撃で大破したが、戦艦《ネバダ》、《オクラホマ》、《ウェストバージニア》、《メリーランド》は壊滅を免れた。

 

 

 ~同じ頃~

 空母《ヨークタウン》

 

「敵機が引き上げて行くぞ。俺達は助かった」

 敵戦闘機や雷撃機が潮が引くように引き上げて行く。

 同じく《サラトガ》、《インディペンデンス》から発進した艦載機も引き上げて行く。両空母とも、搭乗員達にかなりの犠牲を出してしまったが、彼らの勇戦が無ければ、あと何隻かは撃沈されていただろう。

 米海軍にとって『悪夢の30分』は、終わりを告げたように思えた。

 

 しかし、未だ終わってはいなかった。

 

 フレッチャー隊残存艦が北東に進路を取った直後……

「謎の敵が来た! 高度300……数は……5……いや9だ!」

「対空砲発射しろ!」

 対空砲や対空機関砲を撃ちまくるが全く命中しない。

「おい、《ソルト・レイク・シティー》の時間が止まっているぞ!」

「お前、戦闘中に何をふざ……」

 上官の罵声は途中で止まった。

 

前方2000メートルにいる重巡《ソルト・レイク・シティー》から発射された対空砲弾が、空中で静止していた。対空機関銃の銃弾も空中で止まっている。他の乗員も、それに気づいた。

「悪夢なら覚めてくれ」

普段、日曜日の礼拝を、さぼり気味のノイマンも必死に神に祈る。

 

 ブロンドとパープル、ストロベリーピンクの頭部を持つホウキに乗った少女らしき3人が、光線のような攻撃を《ソルト・レイク・シティー》に放った。

 回避もままならず、直撃を受けた《ソルト・レイク・シティー》は洋上に停止してしまった。乗員が脱出を開始している。どうやら時間も動き出した様だ。

 驚いている時間は与えられなかった。

 残りの鳥が、(プリキュア)《ヨークタウン》に急速に迫って来た。

 ホウキは無いが空を飛んでいる。今度は濃いピンクにブルー、イエローとパープル、レッド、レインボーの九つの色の頭部を持っている。

 

「おい、あれを見ろ! 頭に兎の耳が付いているぞ!」

「確かコックリル大尉のアベンジャーを襲撃して来た奴だ」

 乗員達が怪獣だとかバケモノだとか騒ぎ立てる。

 兎の様な耳が付いたバケモノ……もといキュアホイップは怒りで震えた。

 

「私は怪獣じゃないですぞ!」

「いちかちゃんを怪獣呼ばわりなんて許せません」

「これはお仕置きが必要ね(だね)」

「ここで逃がしたら、次はもっと多くの人命が奪われるかも知れない」

「Adlieuですわ」(2)

 キュアカスタードや、キュアジェラートがホイップを中傷されて、怒っている。

 

 《ヨークタウン》も必死に撃ちまくるが、当たる気配すらない。やがて数100メートルに迫った6人……いや、正確には後ろの5人から、何やら光の様な物が先頭にいる桃色兎に集まり……

 

 

「来るぞ! 伏せろ!」

 回避する時間も与えられず、光る綿菓子のような物体が《ヨークタウン》の側面を直撃した。数時間前の魚雷の爆発より、数倍の衝撃が《ヨークタウン》を襲った。

「ラムソン無事か?」

「イテテテ、俺は無事です……ケリー上等兵曹!」

 

 ノイマンとラムソンは軽傷で済んだが、ラムソンが倒れている。

「お前ら無事か? 俺は助からんな」

「何を言っているんですか! 休暇が出たら、テキサスの美味い牛肉を喰わせてくれるんじゃないんですか」

 ケリーが、家族らしい写真をラムソンに渡す。

「この写真を実家に郵送してくれ」

「判りました。必ず実家の方に郵送します」

「やられるんなら、先頭の兎の子じゃ無く後ろの、紫の綺麗な姉ちゃんにやられたかったぜ」

「ケリー上等兵曹!!!!! ウサ耳野郎、この借りは必ず返すぞ!」

(ちなみに、野郎ではありません)

 

 キラキラ☆プリキュアアラモード(以降、キラプリ)チームは、止めを刺そうと少し離れた所に再集結した。その時、《ヨークタウン》は黒煙を噴き上げて停止してしまった。攻撃が直撃した場所は、教わった話だと確か魚雷、爆弾庫がある辺りだ。

 

「止めは必要なさそうかな」

 流石に沈没確実な船を、これ以上攻撃するのは気が進まない。

 キュアマカロンとショコラは、再攻撃は必要ないと判断した。

「止めは潜水艦に任せるべきね」

「そろそろ帰らないと日没になっちゃうぜ」

 ジェラートの言う通り確かに陽も西に傾いている。この辺りは日本よりは南に位置するが、それでも、後1時間半で日没になってしまう。

 キュアマジカル達も、引き上げようとしている。

「あの空母の弾薬が爆発したら、こっちも危険よ。離れた方が良いわよ!」

 それを聞いていた、キュアホイップは判断を下す。

「みんな帰ろう」

 

 プリキュアオールスターズも、魔法使いチームとキラプリチームを殿(最後尾)にして、撤収を開始した。

 

 

 ~同時刻~

 空母《サラトガ》

 

 ハルゼーは更に艦隊を前に出そうとしたが、流石に艦長と参謀が制止した。

 開戦冒頭に正規空母3隻を失い、《ヨークタウン》も戦闘不能となった現在、《サラトガ》は、太平洋で唯一、作戦行動可能な正規空母だ。(《ワスプ》は大西洋側)

 これ以上、危険に晒す訳にはいかない。――ここにいる事自体が危険なのだが――

 ハルゼーは止むを得ず、謎の空飛ぶ敵を発見しても、敵が、こちらに気付かない場合は、攻撃するなと命令を出した。

 ハルゼー艦隊は、フレッチャー艦隊の南西5キロの位置に居た。ただし、発達して来た積乱雲に遮られ直接、視認する事は出来ない。

 その時、艦橋の電話が鳴り、《サラトガ》艦長エリオット・バックマスター大佐が電話に出た。

 

「何があった?」

「《ヨークタウン》が謎の敵に攻撃されています!」

「くそっ! 未だ殿が居たか!」

 

 ハルゼーは《サラトガ》、《インディペンデンス》から支援に出した航空機を、早く撤収させ過ぎたかと考えた。彼らも敵戦闘機や、謎の空飛ぶ敵との戦闘で、かなりの被害を出していた。

 敵機や謎の敵が撤収を開始したので、早目に退却させたのだった。戦闘で負傷した搭乗員も居るので、止むを得ない判断だ。

 数秒後、ドドーンと音が響いて来た。ハルゼーは北側の窓に走った。

 2、3分経過した時、艦橋勤務の水兵が北東から南西に向け飛行する敵に気付いた。

 

「提督、本当に空を飛んでいます!」

 ハルゼーは水兵の双眼鏡を借りると、北の空を双眼鏡で覗いた。

 積乱雲の陰から、まず黄色、紫、ストロベリーピンクでホウキに乗った空飛ぶ敵が見えた。(魔法つかいプリキュアチーム)

 しかし、彼女達はハルゼーが双眼鏡を借りている内に飛び去り、別の雲の影に隠れてしまった。

 20秒ほど間を開けて、今度は6人の空飛ぶ敵が現れた。先頭は紫で、黄色、青、虹色、赤と続く。更に、少し後ろに濃いピンク色の髪の敵を確認した。

 

 ハルゼーは、双眼鏡から目を離し、手で目をこするが謎の敵は消えない。

「おい、本当に兎の耳が付いているぞ! 顔は人間みたいだが」

 ハルゼーはベテラン海軍軍人の勘で、彼女が《ヨークタウン》を攻撃した、敵チームのリーダーだと確信した。敵の顔を脳裏に刻み付け、睨みつける。

「今日は逃がしてやる。だが、いずれ、お前達にも、太平洋の塩水を、たっぷりと飲ませてやる」

 

 

 

 設定

 

日・合衆国・第三帝国の政権メンバー 表記はSLGゲーム『ハーツオブアイアン2」風

 

大日本帝国

国家主席   書く事を憚られるお方

政府首班(3)畑 俊六(陸軍大将)

外務大臣   重光 葵

軍需大臣(4)賀屋興宣

内務大臣   木戸幸一(5)

陸軍大臣   首相兼任

参謀総長   石原莞爾

海軍大臣   吉田善吾

 

合衆国

 

国家主席     フランクリン・ルーズベルト

政府首班  (6)ヘンリー・ウォレス

外務大臣  (7)コーデル・ハル

軍需大臣  (8)ヘンリー・モーゲンソー

内務大臣  (9)エドガー・フーバー

陸軍参謀総長   ジョージ・C・マーシャル

陸軍大臣     ヘンリー・スティムソン

海軍作戦部長   ハロルド・スターク

海軍大臣     フランク・ノックス

陸軍航空隊長官  ヘンリー・アーノルド

 

第三帝国

 

国家主席      アドルフ・ヒトラー

政府首班  (10)マルチン・ボルマン

外務大臣      フォン・リッヘンドロップ

経済担当      アルベルト・シュペーア

内務大臣      ハインリッヒ・ヒムラー

陸軍総司令官     アドルフ・ヒトラー

参謀総長      ハインツ・グデーリアン

海軍長官      カール・デーニッツ

空軍長官      ヘルマン・ゲーリング





1 戦闘機の編隊と勘違いしたらしい
2 仏語でさようなら
3 内閣総理大臣
4 大蔵大臣
5 維新の元勲木戸孝允の孫
6 副大統領
7 国務長官(外交)
8 財務長官
9 FBI長官 40年近く長官職に留まる。大統領も盗聴していた
10 副総統


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第28話【真相?前編】


花粉症はまだまだ続く;;

 チコちゃん「勝手に宇宙人とコンタクトしてはならない―」(2019年3月15日放映)
 星名ひかる「ええー?」
 ララ   「オヨ―」
 キョエちゃん 「バカー」

 
今日から映画公開ですね。


 【真相?前編】

 

 ~1943年12月9日、午後6時半~

 第一航空戦隊旗艦、空母《赤城》

 

 小沢中将

「皆、怪我は無かったか?」

 いちか

「はい、大丈夫です」

 源田 実(航空参謀 大佐)

「どうした、何か元気が無いが」

 いちか

「私たちが、もっと早く気づいていれば、《雷鷹》や《瑞穂》は……」

 小沢中将

「いや、その責任は全て私にある」

 源田大佐

「君達の対潜空母にも、警戒要員を向かわせるという提案を、米空母機が攻撃して来る可能性は、低いと考えて辞退した。君達が責任を感じる必要は無いよ」

 小沢中将

「君達の支援が無ければ、もっと多くの犠牲が……いや、マーシャル諸島を占領されて居たかもしれない。ありがとう」

 源田大佐

「そろそろ夕食の時間だ。今日は赤城名物の特性お汁粉が付くぞ」

 

 その時、いちかのお腹が鳴る。

 いちか

「はわわわわわ」

 小沢中将

「後で君達が我々を助けてくれる理由……この日本を守りたいという以外の理由……それを、教えてくれないだろうか」

 源田大佐

「我々の方でも、何か力になれるかもしれない」

 頷く、いちかだった。

 あきら

「提督、《ヨークタウン》級空母が航行不能になっています」

 小沢中将

「了解した。潜水艦隊に連絡しよう」

 源田大佐

「既に沈没しているか乗員を収容して、自沈処分している可能性も高そうですね」

 

 

 ~数時間後~

 

 小沢中将

「君達の世界とこっちの世界に、そんな縁があるというのか……」

 話は彼女達が、この世界に来て2週間後に遡る。

 

 この日本を助けるか否か、という重要な『プリキュア会議』が行われた。

 シエル

「あきら、確認って何の事?」

 ゆかり

「この世界には私たちの大半の、ご先祖様が居るみたいなの。まだ確定では無いけどね」

 あおい

「ご、ご先祖ー」

 ありす

「全員ではありませんわ。せつなさんみたいに光落ちされた方や、トワさんみたいに異世界の方、エレンさんや、シエルさんみたいに妖精だった方以外の全員だと思われます」

 

 ゆかりとあきらは、自分達の世界の2月頃、神保町の古書店巡りをしていて、ある書店に入った。

 そこで棚の上から何冊かの本が落ちてきて、拾うのだが……その中に古い新聞記事があった。

 

 疎開した10歳から12歳くらいの子が戦争が終わり、その翌日、東京に帰るという記事なのだが、おおよそ、以下のようなことが書かれていた。

 少女は火事で家族を失い、児童養護施設に預けられた。しかし、そこは酷い施設で人身売買をしていたが、その後、数人の少女達に救い出された。

 その後、アメリカ軍の長距離爆撃機《B-36ピースメーカー》の実戦投入が近いという事で学童疎開が始まり、彼女も避難した。

 最初は友達も居なかったそうだが、本人の証言として『いちかお姉さん達』のお陰で、たくさんの友達が出来、『いちかお姉さん』からは、お菓子作りなども教えて貰った。と書いてあった。

 そして2枚目の写真には、その子が描いた『いちかお姉さん』の絵が映っているのだが、その姿は宇佐美いちか、そのものであった。

 

 いちか

「ええええええ、私、この子に、あった事無いですぞ!」

 ありす

「これは未だ今日の時点では、未来の出来事だと思います。日付も」

 リコ

「この写真の日本が、この世界だという根拠は?」

 あきら

「この記事に出ている、《B-36》爆撃機だけど、私たちの世界では、初飛行したのは1946年の11月なんだ。映画とかに出た事はあるみたいだけど、朝鮮戦争でも、一度も実戦に出ず、10年後に退役したんだ」

 《B-29》の次の爆撃機は、《B-52》だと思っている人も多いだろう。

 《B-52》は配備されて、60年以上経過するがまだ現役だ。(ガチで)祖父子供孫と三代で、《B-52》に搭乗した軍人一家もいるらしい。

 ゆかりが、《B-36》のイラストを見せる。

 ひめ

「すごくおおきいです」

 

 《B-29》と《B-36》の比較 左が《B-29》で右が《B-36》となっている。

 

 全長         30.2m      49.2m

 横幅         43.1m      70.1m

 重量         32トン       75トン

 速力         576キロ      685キロ

 作戦可能距離     3000キロ     10000~12000キロ

 爆弾搭載量      4~6トン      20トン以上

 

 

 はるか

「日本本土に対する初空襲が行われたのは、昭和19年の11月下旬ごろだっけ? 日本史の先生は、東京郊外にある航空機工場が目標だったと言っていたよ」

 六花

「本土初空襲は、実は、その5か月前の6月よ。誤解している人も多いかも」

 きらら

「《B-29》は、サイパン島やグアム島から出撃したんでしょ? 6月は未だマリアナ諸島に、米軍の基地は無い筈だよ」

 六花

「マリアナ諸島からじゃ無く、中国四川省の成都市から発進して、北九州の八幡にある鉄工所や、工業地帯が攻撃目標」

 

 1944年6月15日の八幡空襲では、75機の《B-29》が参加するが被害は軽微だった。逆に米側は、2機撃墜と5機の事故墜落の被害を出した。

 四川省からの空爆は、他に満州国の重要施設等にも行われたが、飛行時に日本側支配地の上を通過する必要があり、速やかに通報されてしまう。

 更に四川省からでは、日本本土は北九州の空爆が限界だ。

 それらを解消し、本土主要都市を爆撃する為に、米軍はマリアナ諸島を占領する必要があった。

 サイパン島と東京の距離はおよそ3000キロで、東北北部と北海道以外は、爆撃範囲に入る。

 

 ひめ

「私たちのほぼ全員が、同じ一族だったとは」

 シエル

「ワオ、私たちが全員同じ女性の子孫って素敵かも」

 めぐみ

「シエルとかは違うんじゃ」

 ショックを受けたシエルは、キラリンに戻り隅でいじけた。

 ゆかり

「先月、私が全員に家系図を探す様に頼んだのを覚えている?」

 頷くオールスターズ。それは先月(世界Bでの事。2月)、いちかやみらい達が、野乃はな達と共に『闇の鬼火』と戦った数日後の事だ。(映画プリキュアスーパーズターズ)

 ゆかり

「試しに私とあきらの家系図を遡って調べたら、二人とも同じ女性の子孫だったの」

 あきら

「調べてみたら、全員同じ子孫だった」

 

 更にその半年前、シエルの弟で妖精のピカリオことリオ君が、一旦深い眠りに付いた頃、東京郊外にある旧家の蔵から、古い日記が発見されており、某バード司会の報道番組で報道されていた。

 日付は、ちょうど3代目将軍、徳川家光が征夷大将軍になった頃だ。

 

 とある商人の長男が、ある日倒れていた少女(10代前半)を助けた。

 商家のボンボンと聞くと、時代劇では軽薄な遊び人が多いが、彼は立派な人物で、その少女を献身的に看病した。

 その後、助けられた少女は必死に商売を覚え、若旦那(と言っても10代)を助けた。

 二人は程なく相思相愛となり、やがて結婚した。親族達は反対したが、長男は意志を曲げなかった。

 嫁の努力する姿を見た親族も、後に彼女を認め、夫婦の間は何人もの子宝に恵まれた。

 二人はおしどり夫婦として知られ、当時では珍しい90歳まで長生きした。いちか達も、この日誌の事はニュースで知っていて感激していた。

 

 ありす

「彼女は、とある恩人からもらった別れの手紙を、生涯の宝物として持っていたそうです」

 その手紙には『私達は遠い場所に帰るので、もう会う事は出来ないけど、貴女の幸福をずっと願っている。貴女は素敵な男性と巡り合えると思うから、何があっても希望を持って』と書かれていた。

 いちか

「その手紙を出した人も素敵だなぁ」

 あきら

「いちかちゃん、なにを他人事みたいに言っているのかい」

 いちか

「ほえ」

 ゆかり

「手紙の差出人は、宇佐美いちか……貴女よ」

 いちか

「なんですとおおおおお」

 マナ

「この新聞の子が、何年か先に江戸時代に行ってしまうんだ」

 あきら

「ただし、今いる世界Aでは無く、私たちが生まれた世界Bの江戸時代にね」

 六花

(……そんなこと、ありえるのかしら?)

と思ったが、よくよく考えればプリキュア自体が「ぶっちゃけありえなーい!」(CVキュアブラック)存在だと思いだし苦笑した。

 異世界に行ったり赤ちゃん妖精が卵から生まれたり、突如竹取物語みたいに急成長して美少女になったり、赤ちゃんが未来から飛んで来たり(1)……と挙げればきりがない。

 六花は時々、マナがプリキュアになってからの物語は、全て夢なのではと考える事もある。

 

ありす

「日記に有った若旦那の実家の商家ですが、数日前に、海軍におられる歴史に精通されている方に、調べて頂いたのです。それによると、その家は世界Aにも存在していました。相模の戦国大名、北条氏に仕えていたのですが、房総半島に勢力を持っていた里見氏との戦に加わりました。この戦いで里見氏は北条氏に大勝利し、房総半島では里見氏が優位に立つことになったそうですわ。恐らく北条軍の兵糧運搬の支援をしていた、世界Aの若旦那の、たぶん父親か祖父は、里見軍の追撃で戦死し、同道していた男子全員が戦死した。とのことです」

 

 里見氏は、早くから秀吉に従い北条氏滅亡後安房一国は残ったが、慶長一九年(1614年)に突如、安房を没収されて伯耆……現在の鳥取県倉吉3万石に移され、その八年後に後継者がいないまま没し、改易となった。(2) ちなみに、五代目水戸黄門の人は子孫では無いらしい。

 

 六花

「私たちの歴史とは少し違うわね」

 六花が世界Bの状況を説明し始めた。

 

 六花

「私たちの世界では、若旦那の実家は北条家に仕えていて、房総半島に勢力を持っていた里見氏との戦に加わった。そこで里見家側の奇襲を受けて、軍需物資(兵糧等)が奪われてしまったの。でも、きっと近くにいた北条家の弓兵が反撃などして、何とか若旦那さんの先祖たちは無事、後方に離脱に成功したのだと思うわ」

 

 里見家の武将数名は、両方の世界で主君から感状を授与されたらしい。

 感状は勲章の様な物だと考えて欲しい。

 

 主君から感状を賜る事は、武士にとって最高の名誉だ。そのことは北条家だけでなく、里見家の文書にも記録され残っていた。

 それを件の歴史に非常に精通した海軍士官が、調査してくれたおかげで、世界Aでの状況が明らかになり、六花の記憶と比較して、二つの世界の小さな違いの一つが判明した。

 

 あおい

「滅亡していたら、子孫も存在しないし若旦那も、この世に生をうけてすらいないだろうね」

 次に話題に上がったのは、謎の手紙の事だ。

 

 いちか

「この手紙は、何時、里美ちゃんに渡すのだろう。はっ! 私も一緒に江戸時代に飛ばされるの?! めちょっく!」

 動揺したいちかは、野乃はな(キュアエール)の台詞が伝染しているほどだった。

 

 真琴

「この手紙、見方によっては遺書か遺言書にも見えるわ」

 マナ

「現代では簡単に治る病気やケガも、江戸時代じゃ致命傷になる事も少なくないんじゃ? ドラマの南〇先生は、幕末でもあれだけ大変だったのに、江戸時代の初期なら、もっと危険なのかも」

 いちか

「私は江戸時代で、謎の病気にかかり里美ちゃんに見守られながら、あっけない最期を……そんなの嫌ですぞ!」

 ゆかり

「いちか、落ち着いて。私たちの世界で見つかった日誌によると、若旦那さんと里美ちゃんが出会った時、彼女の年齢は13歳くらいだったらしいわ」

 あきら

「新聞記事を見ると、終戦後、里美ちゃんが疎開先から東京に帰るとき11歳とあるから、戦後何年かは、彼女は世界Aに留まるのではないかな」

 シエル

「私たちは、戦争が終結した直後に世界Bに帰還してしまうのではないかしら」

 リコ

「別れを予感したいちかが、手紙を書いて渡したのでは? 『もし何か、今後とんでもない事が起きたら、この手紙を読んでね』と言って渡したのかも」

 みらい

「里美ちゃんは、その手紙をお守りみたいに大切にして、世界Bの江戸時代に行ってしまった後で、その手紙を読むんだね。ワクワクもんだあ」

 トワ

「私たちが、元の世界に戻ってしまうのは合衆国と日本帝国の間で、講和条約が成立した数日後かしら」

 はるか

「更に、その数か月間、この世界に留まり、里美ちゃんが東京に無事帰るのを見届けた直後に戻ることになるのかも」

 ひめ

「朝起きたら、元の……四葉家の庭ってとこですな。そして5分だけ経過していたとか、有りそうですよ」

 いちか

「うーむ。里美ちゃんは、その数年後に世界Bの江戸時代に飛ばされてしまうのですかな? 何か直接の原因が?」

 れいか

「私たちの世界では、最近、主人公が、異世界やアニメの世界に飛ばされるという小説や、二次小説が多いです。トラックに撥ねられたり、階段から転落したりなどが多いですね。ちなみに某南〇先生は後者です」

 ゆかり

「10日ほど前、中古書店で日本軍が突如転移してしまう作品を二つほど読んだわ。2003年の世界に戦艦武蔵が突如現れる作品と、日米開戦前に、三陸海岸沖で大規模な軍事演習をしていた連合艦隊主力が、一夜にして大西洋に飛ばされたと言う内容だったけど、直接の転移の原因は、台風と暴風雨となっていたわね」

 あおい

「現実ではどうか判らないけど、地震とか台風とかで超常現象が起きて、里美ちゃんが巻き込まれて、私たちの世界の江戸時代に飛ばされてしまうとか有るのかなー?」

 シエル

「私たちも70年前の過去に飛ばされたわね」

 六花

「関東一円に、子孫が広がるには最低、数百年は必要ね」

 

 





一章はもう少し続くんじゃよ。年号公表までに終わるかな?


1 アイちゃん、キュアフェリーチェ、はぐたん
2 その悲劇が元で、南総里見八犬伝が創作された。作者は滝沢馬琴
 アメリカは、《B-36》爆撃機に原子炉搭載して、原子力爆撃機を制作しようとしていたらしいです。後原子力戦車も計画していました。乗員が被ばくして死んでしまう事に気付き計画中止。




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第29話【真相? 後編】


 「おしん」の再放送で、また舞台となった山形県北部や銀山温泉がまたブームになると期待されているそうです。



 【真相? 後編】

 ゆかり、あきら、ありすの3人は、皆から集めた複数の系図を床に並べ繋ぎ合わせた。

 すると、完成した一枚の家系図の末端には、それぞれのプリキュアの名前がある。

 その家系図の一番下はバラバラに分かれているが、上に向かうに連れ、何本かの線に集約され、やがて、それは一つの点に辿り着く。

 更に、プリキュアの大半は、その直系の子孫だという事も判明した。

 

 江戸時代の藩の中で、全て直系だけで繋がれてきた藩等は、ほぼ無いかもしれない。

 何処かで必ず養子が入っている。ごく近い親族から養子を取る事も多いが、全く遠い家から養子に入る事もある。

 無論、養子で入り、跡を継いだ藩主がダメだという事は決してない。

 米沢藩の財政を立て直した上杉鷹山は、日向高鍋藩、秋月家からの養子だ。

 幕末の名君として知られる越前福井藩主、松平春嶽も御三卿の田安家からの養子だ。

 他家から来て名を遺した偉人も多い事は、記憶に留めて置いて欲しい。

 

 シエル

「プリキュアの血ってのがあるとすると、養子じゃ意味は無いわね」

 ゆかり

「恐らく、遠くない内に米国は、日本帝国を無理やりにでも戦争に引きずり込む。そんな気がしてならないわ」

 ひまり

「戦況が悪化したら、空襲に巻き込まれる危険がありますね」

 みらい

「でも、この写真、何処かの田舎みたいだし、大丈夫じゃないの?」

 ありす

「みらいさん、私たちの世界では敗戦間際には、地方都市も空襲を受けていました。地方と言えども危険です」

 真琴

「戦局が悪化したら、彼女も危険になる訳ね。新聞記事を見ると無事みたいだけど、未来は変動するとも言うわ」

 あきら

「真琴ちゃん、例え日本軍がハワイを占領しても、アメリカは空襲できる」

 ゆかり

「《B-36》の作戦可能範囲は、およそ12000キロよ。アンカレッジから東京間が約5500キロ。アラスカ州に基地を造れば、日本本土大半を空爆できるわね」

 

 更に、英国の支配下にあるインド中部に、もう一つ《B-36》が発進できる基地を造る可能性もある。インドから発進する《B-36》に、西日本の爆撃を任せるかもしれない。

 突然、いちかが真っ青になり震え出す。

 

 ゆかり

「いちかは気付いたわね。もし彼女に万一の事が在ったら恐ろしい事になるわ」

 やがて全員が気が付いた様だ。

 真琴

「私たちの、ほぼ全員が消滅して……いいえ、最初から存在すら無くなってしまうわ」

 シエル

「私は消滅はしないけど、プリキュアに対する目標も無くなるから、スイーツ修行したり人間になったりする可能性は無くなるわ。更に歴史も大きく変わり、いちご坂も町の名前が変わったり、街並みも他の町と変わらない住宅地になったりするかもしれないわ。いちご山も、住宅開発で山の大半が無くなってしまう可能性もある。そうなったら私も消滅ね」

 みらい

「リコとお別れなんて嫌だよ!」

 リコ

「私も、そんなの嫌よ!」

 

 異世界とか妖精界とか魔法界も、悪の軍団に占領されたままになってしまうだろう。

 ありす

「私たちだけが消えるのなら、私たちの事を思い出して、みんな悲しんでくれます。でも、私たちプリキュアだけじゃ無く、家族も……この家系図にある子孫の人たちも、全員が消滅しますわ」

 ことは

「そうなったら日本が滅亡しちゃうよ!」

 マナ

「うーん滅亡は、しないんじゃないかな」

 六花

「最初に、ご先祖様と結婚した若旦那を含め、プリキュア一族じゃなく、他の異性と結婚した事になるだろうから、新しい別の歴史が始まる事になるわね。もちろん、誰もそれに気づく事も無いわ。例えコナン君でも気付かないわね」

 日野あかね

「うちらが、過去の平行世界に来てしまったのは、あまり、こんな言い方はしたくないんやけど、里美ちゃんや、この世界の日本の人を助けるのが使命やと思うんや」

 海藤みなみ

「逆に里美ちゃんは、数年後、世界Bの江戸時代……私たちの世界に飛ばされて、そこで最高の出会いをして結婚し子供を産み、その子孫が、やがて私たち、ほぼ全員に繋がって行く……それが彼女の使命なのかもしれないわね」

 いちか

「この繋がりが絶たれたら大変な事に」

 シエル

「私たちが消滅しても、世界Aは、それほど大きな影響は受けないかも知れないわ」

 

 しかし、世界Bは致命的な事態となるだろう。彼女達が戦って来た闇の勢力が、地球を支配する可能性は高い。いや世界Bの宇宙全てが支配されるかも知れない。銀河帝国(ルー〇ス監督の方)に、宇宙全てが支配されると想像して欲しい。

 

 六花

「90%は、そうなる危険性が高いわ」

 真琴

「残り10%は?」

 六花

「光と闇は、どちらか片方だけでは、存在できないという説もあるみたいね」

 ファイナルファンタジー3では、一部、その様なテーマで描かれている。

 ありす

「プリキュアが全員消滅する事で、闇の勢力も同時に存在できなくなり、最初から存在しなかった事になるかも」

 マナ

「世界Bは、プリキュアも闇の勢力も最初から存在しなかった事になって、普通の世界になるって事だね」

 ゆかり

「どうやら結論は出たみたいね」

 ??

「ちょっと待ったー!!」

 いおな

「何か異論があるの、ひめ?」

 ヒメルダ

「戦争に参加まではしなくて良いんじゃないですかな。この新聞記事が正しいのなら、積極的に軍に協力しなくても、里美ちゃんは戦争に巻き込まれずに済むという訳です。万一、里美ちゃんが疎開している町に、米軍の爆撃機が来た時、里美ちゃんや町の人を避難させるとか……もう少し踏み込んだとしても、東京や名古屋などが空襲を受けた時に、プリキュアの技で、爆弾を破壊し、消火作業に参加すれば良いのでは?」

 れいか

「確かに、ヒメルダさんが、おっしゃる通りかもしれませんね」

 やよい

「もう少し結論を出すのを待っても良いと……」

 更に、何人かが同意しようとした、その時、……キィィィィィン……

 愛乃めぐみ

「ひめ、何か変な気配を感じるよ……」

 ヒメルダ

「何も感じないよ」

 

 めぐみはヒメルダに否定されたが不安だったので、気配を感じた窓の外を確認するために、窓を開けて外を見ると、酔っ払いが一人、何か嫌な事でもあったのか文句を言いながら歩いていた。

 ヒメルダ

「あの、おじさんの気配を感じたんじゃないの」

 めぐみも、そうだと気を取り直し、直ぐに窓を閉めて本題を続けた。

 

 めぐみ

「ひめの意見も一理あるけど、私は、この国の人たちを助けたいな。私たちの世界では、日本人が軍人と民間人を合わせて330万人の犠牲者が出たって、歴史番組で言っていたよ。合衆国を降伏させる等は無理だけど、やはり一人でも多くの日本人を助けたいよ」

 結局、ヒメルダ達も同意して、この世界の日本に住む人達を助ける事で落ち着いた。

 

 

 ~1時間後~

 

 会議も終わり、プリキュア達も眠ろうとしていた。マナが布団に入ろうとするが、六花が何か考え込んでいた。

 マナ

「どうしたの六花?」

 六花

「さっき、ひめが異論を唱えたけど、結局、却下された時に、何というかよく判らないんだけど、嫌な気配というか匂いみたいなのを感じたわ。マナは感じなかった?」

 マナ

「えー、何も感じなかったよ」

 ドキプリ部屋に、真琴が入って来る。

 真琴

「それ多分、この宿の南にある、工業地帯にある工場からの匂いじゃないかしら?」

 たしか、今日は11月とは思えない暖かさだったので、星空みゆきが換気の為に、少しだけ窓を開けて置いたのを六花も見ていた。

 

 70年後みたいに、公害対策も全く進んでいない時代だ。工場などからの匂いは、未来より、かなり強く感じていた。

 六花

「少し神経過敏になってたのかもね」

 程なく、ありすが入って来て互いに、お休みのあいさつを交わし、布団に入り電気を消した。

 眠気に襲われマナ達は、自分達の選択の是非や、プリキュアの秘密が果たして本当に真実かどうか、考える前に眠ってしまった。

 

 

 小沢中将

「そういうことに、なっていたのか……」

 源田大佐

「この子の素性は判明しているのかい?」

 マナ

「木下里美という名前だけは判明しているんです」

 小沢中将

「疎開先は山形県の町かな?」(1)

 

 ちなみに、この家系図も新聞記事もコピーだ。ゆかりが念の為にコピーしておいた。

 無論、2017年に元の世界に居た時の話だ。ゆかりは、あのお花見の時に公表しようとしていた。

 ちょうど、それを袋から出した時に異変が起きて、ゆかりは手を放してしまった。

 コピーは、あきらのバッグに入っていたので無事だった。オリジナルは発見できなかった。元の公園に残されたのかも知れない。

 

 あきら

「実は、その古書店には、もっと、まずい物があったんだ」

 ひめ

「18歳未満が買えない本?」

 ゆかり

「プリキュア事典よ。プリキュア妖精を教育する学校の教材だったわ。誰が書店に売ったかは判らないそうよ。私たちの名前や、性格……本名も書いてあったわ。それも当日、皆に見せようと思って……」

 真琴

「それも紛失! 拙いわよ」

 ゆかり

「安心して、こっちの世界に来た時、川に、その本らしきのが沈んで行くのが見えたわ」

 

世界Bの神保町で、ゆかりとあきらが立ち寄った古書店は戦前から代々続いていた老舗だったが、世界Aでは関東大震災の余震で倒壊し、一家全員が死亡しているらしい

 源田大佐によると、10年ほど前に親善訪問で来日したアジア(2)艦隊の駆逐艦艦長が、その書店を探していた。知り合った源田が一緒に探したが、地震で倒壊していた事が判明した。

 





1 町名だけは架空の予定、連続テレビ小説「おしん」の主人公の故郷の近く。
2 母港はフィリピンマニラのキャビテ軍港 戦艦や空母のような大型艦はいない。


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第30話【31ノット・バーク】


 艦これイベントで「レーダー射撃マス」が追加されてしまったのは、多分バーク提督のせい。イージス艦の名前にもなっています。海自の「こんごう型」イージス艦も、「アーレイ・バーク級」の準同型艦らしいです。


【31ノット・バーク】

 

 いちか達が、小沢中将に『日本帝国を助ける事を決意した、もう一つの理由』を話していた頃……

 

 ~1943年12月9日~

 米空母《ヨークタウン》

 

「艦長、機関修理完了しました。何とか20ノットまで可能です」

 シャーマン大佐も笑顔を浮かべ、乗員達を誉める。

「皆、よくやってくれた。それにしても、あのウサ耳達の攻撃を受けた時は、ダメかと思ったがね。可愛い姿をしているくせに、恐ろしい……」

 いちか達の攻撃は、確かに魚雷庫に命中した。

 しかし、魚雷や爆弾は多く使用されていた為、ほぼ空だった事が幸いした。魚雷庫は大きく破損したが、誘爆は起きなかった。

「しかし、この匂いはどうにかならんかね?」

 

 《ヨークタウン》の魚雷庫付近は、異臭が漂っている。

 重油や火薬の匂いだけでは無い、甘い匂いが漂っている。魚雷庫の周辺には、生クリームや砂糖の残骸や、焼け焦げたカラメルが大量にこびり付いていた。

 手の空いている乗員は、夜通し機械で海水をくみ上げて、ホイップクリームの成れの果てを洗い流さなければならなかった。

「あのウサ耳女め、俺達のレディYをケーキ塗(まみ)れにしやがって!」

 乗員の中には、甘いのが苦手な乗員も居る。

 30人以上が医務室に運ばれる惨事となった。そればかりかヨークタウン乗員に、トラウマを遺す事になる。

 

 この世界Aでも、世界Bと同じく、戦後70年が経過した頃に艦船擬人化ゲームが公開されたとしたら、合衆国空母娘に、妙な性格上の設定が追加されてしまうのかもしれない。(その事は、後日、書く事もあるかもしれない)

 

 

 ~同時刻~

 

 駆逐艦《チャールズ・オースバーン》

 

 米側は駆逐艦13隻が犠牲となっていた。内訳は……

 

 敵潜水艦により         3隻

 空母や戦艦を外れた魚雷が命中  3隻

 被弾炎上した敵機が突入     2隻

 普通に爆弾、魚雷を投下された  2隻

 

 更に、自沈処分した損傷艦3隻が加わる。

 犠牲となった艦の中に、キンメル艦隊の駆逐艦艦隊の旗艦が入っていて、司令官は重傷を負った。

 そこで、副指令だったアーレイ・バーク中佐が臨時に指揮を執り、撃沈された艦の乗員を収容していた。

 引き上げて行く日本機も、謎の空飛ぶ敵も、救助作業中の艦に手出しはして来なかった。

 果たして、それは武士道の発露なのか、単に日本人が甘いのか……バーク中佐には判別できなかった。

 たとえ、日本人が単に甘いのであっても、それに感謝したい気分だった。

 駆逐艦は、他の船舶と比較して容量が低い。故に、救助作業中の駆逐艦は、艦内も通路も甲板の外も救助した兵士で溢れていた。攻撃でも受けたら、まず応戦できない。

 事実、潜水艦を二度探知して、援護に当たる駆逐艦が対潜爆雷を叩きこんで追い払っていた。

 艦長が撤退を進言する。

「司令、そろそろ引き上げるべきかと」

 アーレイ・バーク中佐も同意した。負傷者の中には重傷者もいる。

「あと10分捜索して、新たな発見者が居なければ引き上げよう」

 10分後、新しい要救助者は見つからず、救助作業は打ち切られた。

 救助された負傷者は医務室に運ばれていた。

 

 しばらくして、治療を終えた軍医中佐に報告を上げる。

「負傷者への応急措置を終えました」

「お疲れ様です」

「重傷者も居ますので、引き続き、治療にあたります」

 軍医は、そう告げて、医務室に戻った。

 バーク中佐は、しばし物思いにふけり、そして、軍医の治療という言葉から、謎の敵の可愛らしさと合わせて、プリティー・キュアという単語を思い浮かべた。双眼鏡で先ほど、近くを飛んだ謎の敵を覗いたが、かなりの美少女だった。

『略して、プリキュアか……。その攻撃は全く、可愛げがないのだが……』

 そう感じていた中佐を部下が現実に引き戻す。

 

「敵潜水艦、一隻を撃沈確実との事です」

「《スペンス》はどうだ? 31ノット以上は無理かな?」

「魚雷至近距離での爆発による浸水で、やはり30ノットが限界との事です」

 バーグ中佐は、戦場付近に敵潜水艦が徘徊している可能性が高いので、1時間ほどは最高速度で退却させるつもりだった。

「キンメル提督より通信、我々の状況を尋ねています」

 

 艦橋に、やれやれまたか、という愚痴が飛んだ。

 心配なのは理解できるが、一時間前にも大体の救助者数知らせたばかりである。通信を行えば、敵潜水艦に傍受されるリスクも増えるのだ。

「無視するわけにもいかんし、こう通信してくれ。我、31ノットで、日本海軍及び謎の敵から撤退中と」

 通信士官が、ある懸念を述べた。

「謎の敵って、文章に入れて大丈夫でしょうか? 艦隊はともかく真珠湾基地や、西海岸の海軍通信基地を混乱させる危険も」

「うーん、まあ任せるよ。まあ、私は、彼女達のことをプリキュアと呼ぼうと考えているが」

 通信士官は適当に考え、中佐の思いつきも加え、こう通信した。その通信は歴史に残ってしまうとは、つゆ知らず……

 

 発   アーレイ・バーク中佐

 宛   ハズバンド・キンメル大将

 通信文 我、31ノットで、日本海軍及びプリキュアから撤退中

 

 

 

 スタプリ、チコちゃんに叱られるの巻

 

チコちゃん

「今日は、日々宇宙から来た不審者軍団と戦っている、プリキュアの4人に来て貰いました」

 ひかる

「いぇーい」

 チコ

「ねえねえ、ひかるちゃん。最新話では南十字星が重要な要素なんだって?」

ひかる

「うんそうだよ。今週は負けたけど、来週は多分南十字星の力で、キラやばーな成長をするんだよ」

 チコ

「宇宙船で南十字星見ようとしてたけど、プリキュアみたいに空飛べたり、魔法のホウキ無い普通の人は、実際に南十字星見る時は、何処へ行けば見れるのか教えてちょうだい」

 エレナ

「それは、プラネタリウムとかじゃなくあくまで自分でって事?」

 チコ

「そうです」

 ひかる

「南へ行けば見れるんじゃないかな」

 チコ

「範囲が広すぎだって。もっと国名とか具体的な地名とか出して」

ララ

「オーストラリアルン」

 エレナ

「赤道の辺りまで行ければ見れるんじゃないかな。インドネシアのバリ島とか」

 まどか

「フィリピンまで行けば見れるんじゃないでしょうか。フィリピンは昔はスペインの植民地で、マニラとメキシコ西岸を交易船が往復していたそうですから、南十字星は方角を知るのに必要だったと思います」

 

 チコ

「なるほど、東南アジアまで行けないと見れないと。ぼーっと生きてるんじゃねえよ!!」

 ララ

「本当ルン?」

 チコ

「バリ島って昔は、爆弾テロとかあったし、最近は火山が噴火して危ないから、そんな物騒な所まで行かなくても見えるって」

 

 視聴者

「南ってついているから、南の島まで行かないと見えないんじゃ?」

「南の島で、南十字星見ながらプロポーズとか憧れますね」

ナレ

「南の島まで行かないと見れないとか、南十字星見ながらデートとか憧れますとか、南という文字に騙されている日本人のなんと多い事でしょうかプルンス。でもチコちゃんは知っているでプルンス」

 

 チコ

「南十字星は、実は沖縄から見る事が出来るー」

 まどか

「そうだったんですか」

チコ

「沖縄と言っても、本島からは見えません」

 

ディレクター

「先生、沖縄から南十字星見れるんですか?」

 先生

「見れます。北緯26度より南なら見れます。残念ながら那覇市では見れません。北緯26度線は、沖縄本島の南の海上なのです」

 デ

「じゃ、石垣島や宮古島では見れるんですね」

 先生

「見れますが、少しでもきれいに見たかったら、もっと南の島に行った方が良いです」

 

 デ

「沖ノ鳥島ですか?」

先生

「確かにそうなんですが、あそこは人が行けませんからね。というか知らない内に海に沈んでいるかも」

 チコ

「先生、勝手に沈めないで! あそこ沈んだら大変な事になっちゃうよ」

 先生

「人が住んでいる最南端、波照間島が良いですね」

 

 ナレ

「波照間島は、北緯24度3分にある島で、面積は12.73平方キロメートルで、人口は496人です。主な産業は昭和30年ごろは、鰹漁と鰹節の加工業が盛んでしたが、現在は高級な泡盛の生産や観光業に力を入れてます

 

 デ

「南十字星を見るなら何時頃が良いですか?」

 先生

「4月から5月頃ですね。新月の日がおすすめです。プラネタリウムもあって日本本土では、見れない星座も見れます。実はとある探偵マンガで登場しているんですよ」

 

 ひかる

「コナン?」

チコ

「惜しい! コナンじゃなく金田一少年の事件簿。怪盗紳士の殺人で、重要なポイントして出て来るの。マンガに出たのひかるちゃん達が生まれる前かも知れないから、知らないかもねー」

 ひかる

「昔の探偵物の、実写ドラマとかは怖いって聞いたよ」

 チコ

「そうなのよ。初代の実写金田一少年とか、梨汁じゃ無く血しぶきぶしゃーよ。今の必殺仕事人でもそこまで怖くないわよ。十津川警部も、誘拐犯の口に拳銃突っ込んで、お前撃ち殺しても始末書書けば終わりだよって。他には、動機が、プリキュアのラスボスでも逃げたくなるようなおぞましい奴とか、当時の探偵物や刑事ドラマ、今とても地上波で再放映できないの多いのよ。去年の黄色の子なんか、見たら気絶どころか死んじゃうかも」

 えれな

「チコちゃんは本当に5歳?」

 チコ

「5歳です!」

 

 デ

「先生、先島諸島の人とかにとって、南十字星は今でも馴染みがあるのでしょうか?」

 先生

「昔は、遠洋漁業に出ている漁師さんにとっては、方角を知る目印だったでしょう。今はGPSの発達で必要性も薄れていますが。南十字星と関係はありませんが、沖縄の南には南波照間島という島があり、圧政を逃れた人がその島に逃れたという、伝説があるんですよ。他に昔、交易で東南アジアと往復していた、船員達も南十字星を、目印にして航海していたでしょう」

 デ

「あれ、江戸時代は鎖国していたのでは?」

 

 ナレ

「無知なディレクターに代わって、プルンスが説明するでプルンス。戦国時代の末期から、江戸時代の初め頃にかけて、日本と台湾や、フィリピン、ベトナム、タイ等に許可をもらって交易が行われていましたプルンス。これを朱印船貿易と呼ぶプルンス」

 

 チコ

「でも、鎖国が始まって海外貿易は禁止になって、南十字星は日本人にとって縁が無い星になったのね」

 

 先生

「チコちゃんが好きな星はなんですか?」

 チコ

「梅干しと、大洗の干し芋かな」

 ララ

「星と関係が無いルン」

 

 





 チコちゃん番外編、スタプリ本編でネタが浮かんだらまたやります。どうやら平成の内に第1章は終わりそうな。ナレーターがプルンスなのは、オリジナルのままだと規約違反になるからです。


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第31話【お仕置き】(番外編有り)


平成も、残り期間大相撲1回分を切りました。


【お仕置き】

 

 12月13日に、いちか達と連合艦隊は中部太平洋の最重要拠点トラック諸島(チューク諸島 相棒劇場版Ⅳに登場)に入港した。

 その数日前の12月10日に、第十四軍(本間雅晴中将)の一部がルソン島北部のアパリとビガンに上陸。

 12日にはルソン島南端のレガスピーに上陸し、現地の飛行場を占領していた。

 米領グアムは、12月10日には第五十五師団の南海支隊が、ほぼ犠牲無しに占領していた。

 中部太平洋の孤島ウェーキ(ウェーク)島は、第一回の攻略作戦は、猛反撃を喰らい撃退されてしまった。別の艦隊が空母数隻と巡洋艦の支援の下に向かい、2週間以内に占領する予定だ。

 いちか達は、数日間、南国の島で休養した後、海軍が手配した輸送用飛行艇で本土に戻った。

 

 ひめ

「長官! 半分くらいは、こっちに残った方が良いんじゃないですか? アメリカ軍が反撃して来るかも知れません」

(ぬふふ、この時代の東京は温暖化してないから寒そう。こっちは温かいから、こっちに残ろう)

 しかし、小沢中将に「しばらくは米軍の反攻も無いだろうから、皆でゆっくり休んでおいで」、と言われては、ひめも断念せざるを得なかった。

 ひめ

(みんな揃って、本土でお正月を過ごしておいでって事だよね。アメリカの反撃が始まったら、全員で休養するわけにはいかないだろうし。それに飛行艇に乗る経験は、多分、現代の日本じゃできないだろうな。豚が空を飛ぶ映画みたいだ)

 

 

 ~数日後~

 

 飛行艇は、羽田沖(1)に到着した。

 いちか

「お尻が痛いですぞ」

 疲れていたが、いちか達は、ある事を確認する必要があった。

 通称『プリキュア宿屋』に戻ると、あの憲兵隊長が待っていた。いちかに息子を助けて貰った人だ。

 

 憲兵隊長

「あの孤児院では、我々の予想通り、人身売買が行われていました」

 いちか達が、この世界に来る以前より、警視庁と憲兵が内偵を進めていたそうだ。

 どうも一部、軍の下士官や兵士が、この組織に協力しているらしい。憲兵の仕事は、軍内部の不祥事の取り締まりだ。

 ちなみにスパイを拘束するのは、特別高等警察の仕事だ。有名なソ連スパイのゾルゲを逮捕したのも、特別高等警察と警視庁の外事課だ。

 史実では、憲兵は東条英機首相兼、陸軍大臣の私兵と化して、東条に対する批判的な政治家や文化人、更に報道関係者の監視を行っていた。

 

 ありす

「次の取引はいつなんですか?」

 隊長

「それが、今夜……」

 マナ

「行くよ!」

 マナは疲れなんか気にせずに、飛び出していった。

 

 

 ~東京都麻布区(戦前は35区。現在の港区)~

 

 悪徳孤児院運営者

「今日も儲けさせて貰いますか。アメリカと戦争になったから、ますます儲かるかもな。戦争で子供を失う夫婦に、器量の良い孤児を売る。万一、戦況が悪化したら、田舎にでも逃げるか……」

 その男は客を待たせている離れに向かう。

 

 運営者

「金蔵さん、お待たせしました……」

 男は金蔵(仲買人)に挨拶するが、返答が無い。妙なので中に入ってみる。

 金蔵は縛られて転がされていた。むぐーと情けない声を上げる。男は、持っていた杖を構えるも、その杖を、あっという間に叩き落された。マナ達は変身しなくても十分に強い。

 

 運営者

「は……離せ……」

 ありす

「子供たちは無事ですか?」

 マナ

「もし、一人でも無事でなかったら……」

 運営者

「……」

 マナ

「その時は、貴方の命を貰うね」

 運営者

(アカン、この目はガチだ……)

 

 幸い、子供達は全員無事で、悪徳運営者はマナに命を貰われず済んだが、同行していた憲兵に逮捕された。

 他の子は里親を探すか、新たな孤児院を行政が探す事になった。里美は一先ず、軍が保護した。

 マナ

「よしよし、もう大丈夫だよ」

 

 数分後、マナとありすが話し込んでいる。過去の平行世界に来てからの話や、里美の話をしている。

「どうかしましたかマナちゃん?」

 突然話を止め、辺りを覗うマナ。暗がりに向け鋭い視線を向ける。

 マナ

「誰か居るの!?」

 ありすも、犯罪組織の残党かと思い、戦闘態勢を取る。だが……

 猫が、のんきにニャーンと鳴きながら歩いてくる。どうやら近くの飼い猫が、気ままに夜の散歩をしていたらしい。

 猫は悠然と、二人の前を通り過ぎる。マナとありすは、また話を再開した。

 

 マナ達と共に孤児の救助に出向き、孤児院からプリキュア宿屋に戻って来たシエルは、花海ことはが祈りを捧げている姿を目にした。

 シエル

「ことはは、精神統一でもしてるの? それとも、犠牲になった両軍の兵士の為に、お祈りしてるの?」

 ビブリー

「それはさっき終わった。お茶どうぞ」

 シエル

「ありがとうビブリー」

 やがてお祈り? が終わり、ことはが出て来る。

 ことは

「はあーダメだったよ。この世界に魔法界は無いみたい」

 ことはは、この世界に魔法界があれば、そこで元の世界に戻る方法が見つかるかもしれない。と考え、この世界での魔法界を探していた。

 この世界に、もし魔法界が在ったら、こちらでのリコが、そこに居るかもしれないので、会ってみたかったらしい。

 魔法界を見い出すことができなかったため、次元の壁を越えて、魔法界に向かうテレパシーを送ろうとしたが、それもダメだったそうだ。魔法界は、世界Aには存在しないのだろう。

 だが、それ以外の魔法に異常は無かった。ことはは、軍艦の中に場所を取らない四次元空間に、シャワー室を作ってしまった。(ちなみに湯も魔法で無制限に出るようだ)

 プリキュアが乗っている船だけでは無く、全ての軍艦と輸送船に作り上げた。流石に海中の潜水艦には無理だったが。

 それと、プリキュア寝室は魔法バリアでプリキュア以外は勝手に入る事は出来ないようにしてある。

 安全の為には必要な措置だ。チートか? と思われるかもしれないが……(ことはこと、はーちゃんはガチの公式チートだから)

 

 更に、設定上、飛べないプリキュアも魔法で飛行可能にした。

 はーちゃんは魔法を用い、一瞬で女子大生を女子中学生に戻す。と言う、ガチの公式チートだから、あり得る話だ。

 アメリカ合衆国という強大な国力、物的資源、人的資源、技術力を兼ね備えたリアルチート――20世紀のローマ帝国――に対抗する為には、更なるチートが必要なのだろう。

 多分……

 

 この世界の戦後では、「欧州戦線は、ナチズムと自由主義の戦いだが、太平洋戦争はチートとチートの戦い」だと、一部歴史学者やネット掲示板で、記されることになるかもしれない。

 

 シエル

「ビブリーなんでここに!」

 ビブリー

「気付くの遅すぎー、私は3日前に現れたの」

 そこに居たのは、消息不明だったビブリーだ。

 いつまでも見つからないので、ビブリーは巻き込まれずに済んだと思われていた。

 

 

 

 番外編 いちか謎の黒いナマモノ(江戸川方面から飛んで来たらしい)と遭遇するの巻

 

 羽田飛行場付近に、飛行艇が着水しいちか達は、数時間ぶりに硬い地面の上を歩く。《九七式飛行艇》は、その優雅な外見を愛され民間旅客機としても使用された。主に、本土とマリアナ諸島や南洋諸島との航空路に使用されている。でも、悲しいかな現代の飛行機と比べ速度は極めて遅く、乗り心地も劣る。(新幹線と同じくらいの最高速度)

 

「疲れましたぞ」

飛行艇桟橋から、陸地に上がり歩いていると北東の方角から、一羽のカラスが舞い降りて、生ごみを漁っている。それを見たいちかはがっかりしてしまった。童謡にもなるくらいだから、昔のカラスはもっと可愛いのかと思っていたが、どうやらそんな事は全く無かった様だ。田舎のカラスならまだしも、都会のカラスが生きて行くのは大変なのだろう。

 

 疲れていたいちかが、横を通り過ぎようとするが、カラスは全く動じず生ごみを漁っている。いちかは一瞬カラスを見るが、再び歩き出した。だが、直ぐに立ち止まって今度はじっくりとカラスを見る。

 

カラスは何故か目つきが悪い。更に外見が完全にぬいぐるみに見える。

「戦争が始まってから、生ごみの質が落ちてきた気がする。アメリカ人はホットドックとか食ってるそうだけど、キ○エも食べてみたいなー」

「しゃ、喋ってますぞー!!」

 

 いちかの絶叫を聞いた謎の喋るカラスが、いちかの方を向く。

「おい、何勝手に見てるんだよ。見世物じゃねえぞ。金払えバカー!」

「カラスが恐喝!」

「お金払って。あ、日本円やドイツマルクの様な枢軸国の通貨はお断りです。戦争に負けたら紙切れになっちゃうじゃん。だからアメリカドルか、スイスフランでお支払いください」

「これが噂の意識高い系? でも、アメリカドルは無いですぞ」

「一文無しかよ。という訳でバカー!」

 

 謎の黒いカラスは、北東の方角に飛んで行った。

「いちか、どうしたの疲れちゃった?」

気付くと、シエルがいちかを心配そうにのぞき込んでいる。

「シエル、今変なカラスが!」

「カラス?」

 

 説明したら皆が生暖かい目で、いちかを見る。

「いちかちゃん、疲れてしまったんですね」

「いちかは、疲れているのよ」

「誰も信じてくれない!」

 





謎の黒い生物の正体は、金曜夜7時57分から始まるNHKの番組の終わりの方に搭乗します。とうとう歌手デビューしてしまいました。公式では女の子らしいです。アメリカドルでの支払いを求めるシーンは、横山信義氏の架空戦記「修羅の波濤」外伝「黒海の渡し守」のオマージュ。キョ〇ちゃんの次の出番はあるんでしょうかw?


1 新東京国際空港ができるのは昭和53年5月


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第32話【M計画】

「大和、知らない子ですね」
「武蔵、知らない子ですね」
「大鳳、知らない子ですね」
「ゴトランド、知らない子ですね」
「ジョンストン、知らない子ですね」
「タシュケント、知らない子ですね」

神威は……無くても困らないか


週末に第1章最終話を投稿します。


 【M計画】

 

 ~1943年、12月20日、午前9時(米東部標準時)ホワイトハウス~

 

 フランクリン・ルーズベルト(第33代、合衆国大統領)が沈痛な表情を浮かべて椅子に腰かけている。

「何か朗報の一つでも無いのかね」

 会議室で行われている会議には、陸軍参謀総長ジョージ・C・マーシャル大将、統合参謀本部議長ウィリアム・レーヒ提督、陸軍長官ヘンリー・スティムソン氏、海軍長官フランク・ノックス氏が出席している。(1)

 晴れやかな表情を浮かべる者は一人も居ない。ここ数日、入って来るニュースは、凶報もしくは、とてつもない凶報か。どちらかでしか無いからだ。

 

「一つだけ、朗報がありますが」

 マーシャルが、報告書の一つを指し示す。

「先ず、それから聞こうじゃないか」

 マーシャル大将は、北西アフリカの地図を広げる。

 そこには敵味方の配置状況として、ヴィシーフランス軍の航空基地の場所が示され、逆に、上陸の支援をする連合軍の艦船が、地図の海上部分に示されている。

「トーチ作戦は、順調に進行しております。海岸部の橋頭保を確保し、既に内陸部に進撃を開始しました。現地のヴィシー政府軍は戦意に乏しく、戦わずに逃走する部隊も多数、出ています」

 

『トーチ(松明)作戦』は、フランスの第三帝国による傀儡政府であるヴィシー政府の植民地軍が駐留している、仏領モロッコ及びアルジェリアへの上陸作戦だ。

 上陸後は東進し、最終的にはエジプトに居る英国第8軍と共に、ドイツ、アフリカ軍(ロンメル元帥)を挟撃、殲滅する事が任務だ。

 16日にモロッコ北西のラバトに上陸。その48時間後には、英国軍が仏領アルジェリアのオランとアルジェに上陸した。

 ヴィシー政府軍は、第三帝国により軍備制限を受けている上に、植民地軍のフランス製戦車や航空機は、米英軍の装備に比べ相当劣っている。

 さらに、現地ヴィシー空軍は事前の空襲で、大半が破壊され無力化されていた。

 『トーチ作戦』は、先ず順調に滑り出した様だ。

 閣僚達の顔に、僅かに明るさが戻った。しかし、朗報は、この件だけだった。

 

 ウェーキ(ウェーク)島は11日に攻撃を受けたが、ウェーキ(ウェーク)島守備隊は勇戦し、駆逐艦2隻及び、輸送船1隻が炎上という予想外の被害を日本軍に与え、日本軍の司令官、梶岡少将は撤退した。(2)

 これは吉報と言えなくも無いが、恐らく来週には、再び攻撃を受ける事は間違いないだろう。

 今度は空母2隻に巡洋艦隊……それに謎の敵も数名加わるかもしれない。

 今度こそ間違いなくウェーキ(ウェーク)島は、玉砕か降伏のどちらかを選ぶ事になるだろうから、吉報とは言えない。

 

 16日にマニラ北にあるリンエガン湾に、帝国陸軍第一四軍主力が上陸を開始し、一部の敵部隊は既にマニラ付近に迫っている。現状、フィリピンを救援する事は不可能で、不本意ながら見殺しにせざるを得ないだろう。

 だが、フィリピンに居るマッカーサー大将指揮下の米極東軍の苦境等は、まだまだ凶報の序の口でしかない。

 

「この謎の敵というのは、確実に存在するのかね?」

 ルーズベルトは、やや疑わしそうにレーヒ提督に聞く。

「残念ですが、まず間違いないかと。大勢の乗員やパイロットが目撃しております。空を飛び、多数の艦載機を撃墜し、更に、恐るべき光の様な攻撃で戦艦をやられました。空母、《ヨークタウン》も危うく撃沈されかけました」

「誰だ! 日本帝国を戦争に引きずり込んだのは!」

 大統領以外の全員は、あんたと背後にいる軍需企業だよ。と心の声で返答し、冷たい視線を大統領に送った。

 しかし、ここにいる閣僚の大半は、軍需企業と何らかの関わりがあるのだ。それを思い出し、幾人かは肩を落とした。

「少し取り乱してしまった様だ。謎の敵は見た所、宇宙人や天使でもあるまい、戦闘機で対処できないのか?」

 マーシャル大将が無理だという様に、首を振る。

「戦闘機は、重量の差はありますが基本金属製です。限界を超えた機動は出来ません。まあ、腕の良いパイロットであれば、敵機の動きを見切るのは十分に可能ですが。しかし、この謎の敵は戦闘において、あり得ない様な軌道で回避し、攻撃を行って来るそうです。また、空中で鳥の様に止まる事も可能と見られます」

 更に一部の敵は、光の楯の様な防具で攻撃を防ぐ技を持っている事も判明している。

 しかも、最高速度は第三帝国の最新鋭レシプロ戦闘機フォッケウルフ社の《Ta-152》どころか、世界初の実戦墳進式(ジェット推進)戦闘機《Me-262》の最高速度、およそ時速860キロメートルに勝る可能性大という分析が出ている。

 

「人数は、どれ位、居るのか?」

「恐らく30人は、居ると思われます」

「増援を送るしかありませんな」

 レーヒ提督は、大西洋方面に居る正規空母と高速戦艦のリストを取り出す。

「《ヨークタウン》は、修理に3か月はかかるでしょう。無論、急がせますがね。大西洋に居る《ワスプ》、《エセックス》を急ぎ、パナマ運河経由で西海岸に派遣します」

 

ノックス長官が、やや声を低くして切り出しにくいが、ある重大な議題を切り出す。

「問題は敗戦の責任を誰に負わせるか。という事ですが……」

 順当に行けば、キンメル大将を更迭という事になるが……

 レーヒ提督が反対意見を唱える。

「しかし、今回の敗北の原因は、謎の恐るべき敵の存在が大きいと言えるでしょう。例えば、異星人が攻めて来たのと同じです。通常の敗戦とは別に考えるべきではないでしょうか」

 しばし、考えるルーズベルト大統領だった。

 

 数分間、熟慮した大統領が、決断を伝える。

「近く、海軍作戦部長ハロド・スターク大将が病気療養に入る事になっていたな。よし、それを早めよう。それと、勝手に前線から後退したフレッチャー提督を左遷……まあ、こんな辺りだろう」

 フレッチャー少将は、西海岸にある物資集積所の所長に左遷され、軍務の第一線から外された。

 同時に、太平洋艦隊作戦参謀のチャールズ・マクモリス少将が、アリューシャン方面の艦隊司令に転任したが、これは開戦前から決まっており、敗戦の責任追及では無い。

 少将は開戦時は真珠湾に留まっており、戦闘には参加していない。

 

「英国軍は完敗だが、我々は敵に一泡吹かせたな。コックリル大尉達は、よくやってくれた」

 ノックス長官もやや、表情を緩め報告する。

「僅か15機程度で、小型空母1、水上機母艦1、駆逐艦1撃沈。更に防空巡洋艦に爆弾命中」

「何を言っている? 彼らが沈めたのは敵の正規空母だ。敵正規空母1、水上機母艦1撃沈。新型防空巡洋艦1を大破……マスコミには、そう公表したまえ。ああ、攻撃に参加したコックリル大尉以下の全員に勲章を授与する」

 要するに戦果の水増しだ。史実でも合衆国が不利だったころにやっている。

 

 更に、ルーズベルトは一枚の紙を取り上げる。それはバーグ中佐からキンメル提督宛の通信文だ。

「このプリキュアという名称は何だね? 誰か捕虜にでもした……いや、それはあるまい」

 ノックス長官が事情を説明し、それを受けたスチムソン長官が続ける。

「名称を付けようが付けまいが、五十歩百歩だと思います。しかし、何時までも謎の敵だとか言い続けるのも確かに問題でしょう。コードネームを決めた方が良い事も事実です」

 ルーズベルトは、やや面白げな表情を浮かべ、

「プリキュアか。中々、皮肉が効いていてよいかもしれんな。よし、面倒だしプリキュアを敵のコードネームにしておこう」

 

 更に日本が中立国を通じ講話の打診をしてきた場合、即座に拒否するように命令を出したことを説明した。

「それは当然として、プリキュアの事ですが、永久に外部に露見させない事は無理でしょう。そうなる前に、今一度、多少でも国民の士気を上げておくべきですね」

 側近のハリー・ホプキンス氏は、何らか国民の士気を上げる軍事行動が必要だと、大統領に意見を述べる。

「それは悪くない案だ。慎重にやる必要があるが……まあ、それらが上手く行かなくても、我々には例の計画がある」

 ルーズベルト大統領は、にやりと笑い何処から出したのか、ニューヨーク市街地図を広げ、ある場所を示す。その計画にはニューヨークのある地名が、コードネームになっている。

「例の計画が完成すれば、プリキュアが100人居ようが、恐れる必要もなくなる」

 その時、陸軍航空隊司令ヘンリー・アーノルド大将から成功の一報が入った。

 

 

 

 国際情勢

 

 

1943年12月20日

 

アメリカ合衆国のイベント

「太平洋艦隊司令長官の処遇」

 

において

 

「今回は留任を認める」

を選択したとの事です。

 

1943年12月22日

 

第三帝国のイベント

北アフリカのフランス植民地の危機」

 

において

 

「アントン作戦だ、フランス全土を占領せよ」

を選択したとの事です。

 

ヴィシーフランスのイベント

「アントン作戦発動」

 

において

 

「降伏しかあるまい」

を選択したとの事です。

 

第三帝国が、ヴィシーフランスを併合しました。

国際社会はこの暴挙を許さないでしょう。

 





ヴィシーフランスは、1940年6月22日に、第三帝国に敗北したフランス政府と、独伊との間で休戦協定が締結された後に、フランス北部はドイツに併合されて、残りの南部に存続が許された独の傀儡政権です。ヴィシーの由来は首都の街名。ド・ゴール大佐は、直前に
ロンドンへ脱出し勝手に自由フランス軍を結成。ヴィシー政府は、北アフリカに連合軍が上陸した直後に、独軍による武力進駐を受けて解体されました。
1 戦後陸軍長官と海軍長官職が統合されて、国防長官が誕生。
2 艦これアニメ版悲劇の地

上に出ている国際情勢は、ハーツオブアイアン風です。自国以外のイベントは上の様に表示されます。自国だと詳細や選択肢等が表示されます。


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第33話【平和製造機】

見て頂いている方ありがとうございました。第一章は完結です。


 【招かれざる客】

 

 ~同時刻 中西部~

 

 無事着陸した、《XB-36》(1)は無事に滑走路で停止し、牽引車が誘導路まで引っ張って行き停止する。初飛行なので、未だガソリンは半分だけ、爆弾も搭載していないし、機銃は弾どころか機銃そのものが未だ搭載されていない。

 停止した機体から、機長のローレンス・ ブラナー中佐が滑走路に下りると、満面の笑みを浮かべながらアーノルド大将が近づいて来る。軍の撮影班が映像や写真を撮影している。

 

 アーノルド大将は、まず《XB-36》の感想を聞いて来た。

「《B-29》より、一回り以上も大きいので操縦が不安でしたが、想像していたより良いです。ただし、かなり全長が長い機体なので、乱気流に遭遇した時が不安ですね。今後、重要な改善項目になると考えます」

「この爆撃機だが、当初、実戦投入は早くても来年の初夏頃だと考えていた。しかし、半年は無理でも最低、三カ月程度は早まる可能性が高い」

「緒戦で敗退したという噂は本当ですか?」

「残念ながら事実だ。今日の夜に公表される予定だ」

 アーノルド大将は、敗北の事実は認めたが詳細は機密だから、ここでは言えないと語った。

「6年前のあれは、笑い話で済んだのだがね」

 《XB-36》の搭乗員達は、アーノルド大将が何の事を言っているのか、よく判らなかった。

「《B-29》は既に実戦配備されているが、あれはマリアナ諸島を占領しないと使用する事は出来ない」

 アーノルド大将の発言を聞いていた乗員達の間に、緊張が走った。マリアナ諸島の制圧が困難だと言っているのに等しいからだ。

「だからこそ、アラスカ辺りから日本本土を、空爆できる爆撃機が、今後、必要になるのだ」

 さらに多少訓示し、互いに敬礼し、大将が帰りかけた時だった。

「先ほど試験飛行の際に、無線の異常は無かったかな?」

 いきなりアーノルド大将が、再び質問して来たので機長は慌てた。

「特に異常はありませんでした」

 機長が視線を向けた通信士のヴァルター・フォルツ軍曹も、即座に否定をした。

「いや、何も無かったのなら問題は無いんだ。実は、今日に日付が変わった頃、突如、オクラホマシティ近辺で10分くらい無線が繋がらなくなった。夜間飛行していた民間機と、飛行場との通信も途絶した。直ぐに回復したので、恐らく自然現象だろう」

「昨日の夜、ネブラスカ州方面からカンザス州、オクラホマ州方面に向かって火球の目撃情報が、多数あったとニュースでやってました。時間的に考えると、通信に異常を来した時間と同じです」

 そのニュースは朝、アーノルド大将もホテルのロビーで聞いた。実は、その時間に衝撃音が窓の外から響いて、アーノルド大将も飛び起きていた。隕石が上空で爆散して、その影響で通信が一時的途絶したのだろう。

 

 いったん解散となり、飛行場の建物に移動する。試験飛行成功を祝って細やかなパーティの準備がしてあった。

 大将が言っていた『6年前のあれ』とは、H・G・ウェルズが、1898年に発売したSFを、1938年10月のハロウィン特別番組として、ラジオ放映した時の事だ。

 音楽番組の中で突如、宇宙人が地球を侵略しに来て、その事件が臨時ニュースとして流れる。という形態をとっていた。

 

 この時、ニュースキャスター役は、完璧に演技を行った。いや、完璧にやり過ぎてしまった。

 多くのリスナーが、このフェイク・ニュースを事実だと誤解してしまい、東海岸を中心にして大パニックになってしまった。

 実際は、それほどの騒ぎは無かったという説もあるが……

 原作やリメイク映画では、宇宙人は10日後には、地球の風邪ウィルスで全滅してしまうという賛否両論のオチで終わるが、今度の敵はタコ型宇宙人では無さそうなので、その様な幸運は無いとアーノルド大将も諦めている。(2)

 ちなみに乗員達が宇宙戦争のラジオ事件を思い出したのは、かなり後になってからの事だ。

 

 【招かれざる客】

 

 

 搭乗員達が細やかな祝宴を楽しんでいる頃、空軍基地から15キロほど離れた場所にある、肉牛牧場の中にあるサイロ(牛のエサ用飼料)で、警察署長が絶句していた。

 中に誰かの遺体があったとか、この牧場の牛が謎の大量死をしたとかでは無い。

 後者の場合、警察では無く、まず保健所を呼ぶだろう。しかし、事態はより深刻で謎めいている。本来、そこに転がっている筈が無い物が転がっている。

 

 オクラホマ・シティ警察署長サムソン・オースティンに、幼馴染で親友で牧場主のオーレリー・タレーランから通報があったのは今日の朝だ。緊急通報には外から大きな衝撃音がした、という内容だった。偶然部屋に入って来た、署長が電話を変わった。

 親友からの通報でなければ、「朝から、つまらない、いたずら通報をするな」とでも言って、電話を切っただろう。オーレリーは、そんな人物でない事を理解している署長は、運転手の若い警官と共に自ら牧場を訪れた。

 

「念の為に確認するが、これをここに置いたのはオーレリー君じゃないんだね?」

「俺がこんなすごいのを発明出来ていたら、カーネギーじゃ無く、俺が鉄鋼王と呼ばれていたさ」

「確かにこの代物は、カーネギーにもトーマス・エジソンにも作れないだろう。無論ハワード・ヒューズにも」

 ハワード・ヒューズ氏がこれを聞いていたら、よし俺が同じものを作って見せるとか言い出しただろう。その光景を想像した署長は、ついクスリと笑ってしまう。(3)

「それ、危険物では無さそうですね」

 サイロに人を近づけない役回りをしていた、運転手のアルベルト巡査が、興味深そうに見ている。

「これが危険物だったら、全米中いや世界中の子供が泣くぞ」

「サムソン、これを製造したのはジャパンの企業みたいだぞ」

 オーレリーがどうやら、製造企業を示すプレートを見つけたらしい。そこには会社名らしい名称があったが、三人とも日本語は読めない。

「日本人に、こんな凄そうなのが作れるんですか? つい数か月前まで屑鉄とか、解体したビルの廃材とかを、我が国から輸入している様な国が?」

 それに対しては全員異論は無かった。日本人に対して差別感情が皆無なアメリカ人でも、同じ感想を抱くだろう。

 

「おい、それよりこれが製造された年月表示もおかしいぞ。日本の暦は未だ20年に達していないんじゃないか?」

 確かにプレートには〇〇25年と記されている。

 そして、オーレリーの言う通り、確かネンゴウとかいう暦が新しくなってから、まだ20年も経過していない筈だ。

 前のエンペラー崩御のニュースを聞いた時、年末だったので印象に残っていた。

(実は、その後ろに、2013とあったのだがその部分は傷が付いていて判読不能だった)

「とりあえず、当面はここにいる3人の秘密にしておくべきだな。家族には今日の夕食時に口外しないように注意しておく。それと報告書はどうするね? 一応作成しないとならんだろ?」

 

 オーレリーがにやにやしながら聞いて来る。確かに報告書は作成しないといけない。

「それは助かるよ。それと、この代物を永久にここに保管するのも難しいだろう。政府か軍の高官にコネは無いかい?」

「妻の親友の親戚が、海軍中央にいるらしい。確か大西洋艦隊の参謀で階級は、大佐か少将の筈だ。何とかその人に連絡を取ってみよう」

「エリート参謀さんかな、それだったら、この代物にも興味を持ってくれるかもな」

 署長は、報告書をどうするか考えていると、トムソン巡査が、署長に語りかけた。

「サイロの外に、報告書の大義名分が転がってますよ」

 

 署長が、サイロの外に出ると一個の石が転がっていた。

 触ろうとすると、トムソン巡査が制止した。

「直接、手を触れない方が良いかもしれません。これで突いてみてください」

 署長は棒きれを受け取り、突いてみた。その石は、棒で突いたくらいでは微動だにせず、見た目とは比較にならないほど重いようだった。

「これはもしや隕石か?」

「その可能性が高いのでは」

 署長は、若い巡査が10年前に自宅庭で、隕石を発見し新聞記事になったのを覚えていた。トムソンは石を見て隕石ではないかと思ったのだ。通報担当者は、「夜中自宅外で、大きな音と衝撃音がした」としか聞いていない。

 

大きな音の原因は、隕石だと報告書に記載すれば良いだろう。実は朝から同様の通報が複数、警察に掛っていた。その報告を聞いた署長は、確認の為に通信室に向かったのだ。署長は例の招かれざる客が来てしまったのは、隕石の爆発が偶発的に引き起こした、天文学的奇跡なのかと思った。

「署長、本当に隕石が低空で爆発したのなら、死傷者が出ているかもしれません」

「それが良さそうだ」

 

 

『報告書』

  作成者  オクラホマ・シティ市警察署署長

  通報日時 1943年12月20日 午前7時

  通報者  オーレリー・タレーラン(50歳)

  職業   畜産業・牧場主

  住所   オクラホマ州〇郡

  通報内容 未明に、突然衝撃音と共に大きな音がしたとの通報。同様の通報多数

  原因   来年解体予定の飼料サイトの横で、隕石(直径10センチ)を発見。

       衝撃波と衝突音は、この隕石の音と考えられる。

  被害   特に無いが、広い牧場なので他の落下隕石がある可能性もあり

 

 『別紙 隕石被害報告書』

  発見された隕石片 55個

  人的被害     0人

  住宅の被害    半壊1 一部損壊12

           半壊した住宅は、手抜き工事の可能性で調査を指示

  車両被害     15台 (普通車9、大型トラック3、バス2、原付バイク1)

  店舗への被害   5件(レストラン2、個人商店2、自動車販売会社建物1)

           被害額は算定中

           ライフラインへの被害は報告無し

 追記

   隕石で怪我をしたと、病院に虚偽の申告をした詐欺の前科者がいた。

   同様の保険金詐欺行為が行われる可能性大。注意を要する。

   建築物や、車両に対しても同様の詐欺行為が懸念される。

 

  隕石の保管

   警察署で保管し、博物館と共に学術的な価値を調査し、希望者に売却もしくは寄付。

   その際は希望者と隕石発見個所の地権者で、金額等を相談させ警察は関知しない。

 

 

12月20日未明に、ネブラスカ州からオクラホマ州方面にかけ、火球が目撃された。 火球はオクラホマ州上空で爆発した模様。

 その後、数日間に数十個の隕石や破片が発見された。幸い、死傷者は出なかったが、隕石で自宅の窓ガラスが割れたり、買ったばかりの新車が破損してしまったりなどの被害が出た。(数日後の新聞記事)

 

 その数時間後、日没が迫る首都ワシントンでも、一つの騒動が発生していた。

 連邦議会議事堂近くを、一人の東洋人らしい女性が走って逃げている。その背後を数名の警官が追いかけて行く。

「ひぇー、なんで追いかけて来るんですか! っていうかここ何処ですか? あの建物は……ワシントンの連邦議事堂じゃないですか? じゃここはアメリカ合衆国?」

 

 その背後から、警官ジムと相棒のトニーが追いかけるが、なかなか追いつけない。爆破ドッキリから全力疾走した、某梨型妖精みたいに速い。

「あの東洋人の女、なかなか足が速いぞ」

 追いかけられた女は、鬼気迫った声を上げて、逃走の速度をさらにあげた。

「あの女、何者だ」

「言葉を聞く限り、日本人のようだが……」

「ならば、隔離されていたホテルから逃げ出したのか?」

「いや、そんな通報は無いぞ」

 

 合衆国に滞在していた枢軸国(日独伊とルーマニア人等)の留学生や、外交官とその家族や、ビジネスで滞在していて開戦前に帰国できなかった人等は、収容施設や合衆国が借り上げたホテルに軟禁されている。いずれ中立国の客船を使い、米日交換船が計画されている。

 

 女は、道路を横断して逃げようとしている。大型のトラックが、近くの交差点から道路に入って来るのが見えた。

「おい、危ないぞ!」

 警官トムが大声で、女に危険を知らせたが時すでに遅く、女は……

「死んじまったのか?」

 追いついて来たジムが、トラック運転手に詰め寄る。

「事故を起こしちゃいませんよ!」

 

 ジムが運転手に、何か言おうとしたが、

「いや、接触はしていない。衝突する前に自分で転んだんだろう。そして、トラックに衝突したと脳が錯覚し、ショックで気絶したんだな」

 トムが呼吸を確認するが、気絶しているだけで怪我などは無い。

 ジムはトラック運転手に、行って良いと合図を送りトラックは走り去った。

「取りあえず救急車を手配しよう」

 

 

イベントの報告

 

アメリカ合衆国のイベント

 

「オクラホマ州周辺で、隕石による軽微な被害が発生」

が近ごろ起こったとの事です

 

 

 ここからおまけ

 

軍事ネタフェイクニュース

 

1 合衆国海軍は、アリューシャン列島でほぼ無傷で捕獲した《零戦》を分析し、それを基に主力戦闘機《ヘルキャット》を開発した。これは嘘です。《ヘルキャット》戦闘機は開戦前から設計が始まっていました。

 

2 米海軍の主力雷撃機《TBFアベンジャー》(復讐者)の復讐は、パールハーバー攻撃に対する復讐という意味。これも嘘です。名称が決まったのは、1941年10月なので開戦前です。

 

3 朝鮮戦争で、米空軍を恐怖させたソ連空軍の最新鋭ジェット戦闘機《ミグ15》は、ナチス計画機《Ta-183》のコピー機。これも嘘? 昔はそう言われていましたが、近年ロシアの専門家が否定したとの事。偶然、機体形状がに少し似ているだけとの事。

 

4 第二次世界大戦が無かったら、ボー〇ング社は危なかった。どうもこれは本当らしいです。大型爆撃機《B-17》を制作したけど、金の無駄という世論で、39機しか採用されずに、危うく倒産寸前に。しかし戦争が始まり大量の発注が入り持ち直した。世界大戦が始まる前ライセンス権を海外に、ドイツや日本帝国にまで売り飛ばそうとしていたところまで危なかったそうな。某宮崎アニメは、「世界大戦が起きなかった世界]らしいので、某魔女映画ではボーイ〇グ社は無いのかも。




 
1 正式採用されるとXが取れる。
2 オヨルン風邪ひいたら生命の危機説。ちなみに「宇宙戦争」は、21世紀にトム・クルーズ主演でリメイクされました。
3 実際世界最大の飛行艇を作ってしまいました。

 最後のイベント報告、ハーツオブアイアン2で選択肢の無いイベントは、その様に表示されます。弱小国プレイも出来ます。(ルクセンブルクとかは、六花様でも無理ゲーなレベル)

 謎の人物のヒントは出てます。再度登場するのはかなり後?

 第2章は、艦これ令和初イベント終了後になるでしょう。中規模5面らしいけど、実質その倍はあると思います。そろそろ4ゲージ面出るのでは。


 


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第34話 【南海の異変】



 艦これ令和初イベ取りあえずクリアしたので、再開します。(なお新掘り艦はまだ取れない模様)


 

 

 【南海の異変】

 

 戦略会議は、一旦散会となったが急遽再開される事になった。

ニューブリテン島は、オーストラリア領ニューギニア北東部にある島で、由来は1700年にこの地を探検した、英国探検家ウィリアム・ダンピアが、この地を「新しいブリテン」と名付けた事に由来する。同島西部はオランダ領インドネシア領となっている。

同島東部のそのまた北半分は、19世紀末から20年ほどドイツ帝国領土だったが、ヴェルサイユ講和条約で、没収され豪州領土に編入された。

 

面積はほぼ九州と同じで、主な産業はココア、コプラ、コーヒーなどの農産物が大半である。先年亡くなった某大妖怪漫画家が、戦時中出征していた事でも知られる。

 

11月下旬から、火山噴火の予兆が起きていたのだが、どうやら一週間から10日以内に大規模噴火が起こる可能性が高くなって来たと、豪州駐アメリカ大使館から国務省に連絡が入った。オーストラリア政府は、駐留している1400人ほどの守備兵と5千人ほどの民間人を、オーストラリア本土に避難させる事になった。

 

 

 

「フィリピンから脱出した米アジア艦隊も、救助任務に参加させるように」

「了解しました。直ちにポートモレスビーに向かわせます」

ルーズベルト大統領は、ノックス海軍長官とハル国務長官に調整の指示を出した。

 

マニラからオーストラリア北部のダーウィンに入港した、米アジア艦隊は、重巡《ヒューストン》と軽巡《マーブルヘッド》《ホノルル》と20隻前後の駆逐艦から編成されている。艦隊は補給を終えるとニューギニア島南東にあるポートモレスビーに向かった。モレスビー港で、開戦前オーストラリアに輸送任務で向かっていた水上機母艦《ラングレー》と合流した。

 

 

 「ラングレー」は、1917年に石炭運搬船から小型空母に改造された。アメリカ初の航空母艦となったが、旧式なので、6年ほど前に水上機母艦に改造された。今回は水上機の格納庫も、避難民の収容に使われる予定だ。

 

 

12月29日午前10時、最後の避難者を乗せた船団が、安全海域に抜けた直後にダブルブル山が大噴火を起こした。

 

 

 12月30日 午前10時

ワシントン ホワイトハウス

 

 

 

「島民に、犠牲者が出なかったのは幸いです」

ノックス海軍長官が、報告書を読み上げている。事前に中立国を通じ、船団は避難民が多数乗船しているので、手出しむように願いたいと大日本帝国政府に通達していたので、潜水艦の攻撃は無かった。

 

「しかし、ニューブリテン島ラバウルの飛行場を拡張して、爆撃機《B-17》や《B-24》を派遣してトラック諸島を空襲する計画は、当面断念せざるを得ませんな」

陸軍航空隊長官の、ヘンリー・アーノルド中将はやや落胆の表情を浮かべている。トラック島は、極東のジブラルタルと称される海軍基地だ。ラバウルからなら十分長距離爆撃機の爆撃範囲に入る。成功していたら、コンバインド・フリート(連合艦隊)も同島を艦隊拠点に使うのが困難になっただろう。

 

 

「しかし、爆撃機と護衛の《P-38》を派遣する前で幸いだった。戦闘の結果ならともかく、火山の噴火で大損害を出すのでは勿体なさすぎる」

モレスビーの飛行場から、爆撃機に偵察に向かわせたが、噴火は収まる気配は皆無の様だ。

「日本軍も、ラバウルやソロモン諸島に進出する事がほぼ不可能になったのですから、痛み分けで良しとしましょう」

「人命救助成功で、多少は政府の面目も立った。次は追加点と行きたいものだな」

ルーズベルトは、数時間前同様に再びにやりと笑って見せた。

 

 

 ここから番外編

 

 ドイツは植民地大国だった?

 

 海外に広い植民地を持っていた国といえば、双璧は大英帝国とフランスで、アフリカからインドと東南アジアに、20世紀になっても広大な植民地を持っていました。オランダとポルトガルも、アフリカやインドネシア等に植民地を持っています。

 

 意外な事にドイツも一時期かなりの海外領土を持っていました。悪名高い第三帝国では無く、帝政ドイツです。第一次世界大戦のヴェルサイユ講和条約で、草……英仏にボッシュートされて消滅しました。

 

 

1 ドイツ領南西アフリカ(現ナミビア共和国)1884年~1919年

2 ドイツ領東アフリカ(現ルワンダ、ブルンジ、タンザニアの大半)

  1885年から1919年 人口700万(1913)

3 ドイツ領カメルーン(現カメルーン共和国)1884年~1916年

4 ドイツ領トーゴラント(現トーゴと、ガーナの一部) 

5 ドイツ領ニューギニア(現・パプアニューギニア)ソロモン諸島と、マーシャル諸島

パラオ諸島、グアム以外のマリアナ諸島1885年~1918年 人口48万

6 ドイツ領サモア(現在のサモア)1899年~1918年 

 

ヴェルサイユ講和条約で、1と2は大英帝国、3と4は英仏で分割、5はニューギニアとソロモン諸島は、オーストラリアでそれ以外は日本の領土になりました。産業は農業(ゴムとかコーヒーとか)がメインで、本国からの移民は石炭やダイヤモンドが期待された、南西アフリカだけだったみたいです。

 

 他に中国の青島市もドイツ領でした。青島ビールはドイツ人が持ち込んだ物。日本軍に占領され、ドイツ軍は捕虜となります。その後、その捕虜が日本の収容所で日本人にドイツ文学や、バウムクーヘンのレシピを伝えた話は有名です。

 






 ちなみにこの火山、史実では平成に入ってから噴火し、火山灰でラバウル旧市街は放棄されたそうな。現在も廃墟です。


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第35話【破竹の勢い】



 今年は梅雨入りが速かったです。平年より一週間以上早い。


 

 

 ウェーク島は、第一次の占領失敗の敗因を分析し、今度は機動艦隊から山口多門少将の第二航空戦隊(空母《蒼龍》、《飛龍》と、阿部弘毅少将の第八戦隊(《利根》型重巡2)及び、五藤少将の第六戦隊(重巡4)を増援に廻した。小島一つを占領するに対し、かなり過剰戦力とも言えた。陸戦隊が上陸し激闘の末、4時間後に守備隊は降伏した。

 

同日、本間中将率いる第一四軍(第四八師団および第一六師団の一部)はマニラ北西のリンガエン湾に上陸し、第一六師団主力も24日に東側のラモン湾に上陸を果たした。

極東方面軍総司令官ダグラス・マッカーサー大将は、市街戦を回避する為にマニラ放棄を決定し、米比軍主力はバターン半島とコレヒドール島に、後退する許可を本国に求めた。

 

1月2日、マニラはほぼ無血で占領された。本間中将は犠牲が大きい力攻めを避けて、相手の消耗を待つ持久戦を選択し、バターン半島で膠着状態に陥っていた。が、米軍はすでに食料不足に陥り出していた。アメリカ人用の小麦の備蓄は余裕があったが、フィリピン軍兵士の主食のお米の備蓄が不十分だった。

 

1月10日、ボルネオ島北部の英領ボルネオに陸軍部隊が上陸し、10日後にはほぼ完全に制圧した。

 

1月11日 ボルネオ島北東タラカン占領

      セレベス島北東のメナド占領

1月24日 セレベス島南東部のケンダリー降伏

      ボルネオ島南東の油田都市バリクパパン降伏

1月30日 アンボイナ降伏

2月10日 ボルネオ島南部のバンジェルマシン降伏

 

インドネシアを支配していた、オランダ王国は1940年5月の第三帝国軍の侵攻で、占領されていた。しかも、ウィルヘルミナ女王陛下等の政府要人が脱出に失敗し、ドイツ本国に軟禁されていた為に、オランダ軍は抵抗すらできずに降伏・武装解除せざるを得なかった。

 

2月1日、フランス領インドシナ(現在のベトナムとカンボジアに)に、武力進駐を開始した。ヴィシーフランス政府は、既に第三帝国により解体されフランス全土が、占領されていた為に、現地軍は全く戦意喪失しており、こちらもほぼ戦闘無しで占領された。

 

 

 

いちか達は、お正月をのんびり過ごした後、数チーム毎に重要拠点を警備する事になった。プリキュア同士で模擬訓練したり、敵機や敵軍艦の見分け方を勉強していた。

 ひまりん

「私達は、マレー半島方面に支援に行かなくて良いのでしょうか?」

連合艦隊の一部航空母艦と、戦艦の一部は仏印上陸と同時に、マレー半島の英空軍基地攻撃を行っている。マレー半島の英空軍を壊滅させ、その隙に占領した仏印の空軍基地に、陸海軍の基地航空隊が進出する予定だ。

 

 れいか

「マレー半島や、シンガポールの英国軍ですが最新鋭の航空機や、戦車とかは少数で大半は旧式の兵器ばかりらしいです」

 あかね

「セイロン島(1)って島に、英海軍の基地があるって聞いたんやけど、旧式の戦艦2隻と旧式の小型空母数隻しか無いから、動く気配が無いんやってさ」

あおい

「精鋭や新型機は北アフリカや、英本土が最優先じゃないかな。それとインドやビルマに火が付きだしたみたいだし」

 

 みゆき

「山火事でも起きてるの?」

ゆかり

「山火事じゃ無く、独立運動よ。もっともその原因の一部は私達にもあるわね」

いちか

「どういう事ですか?」

 

あきら

「私達と帝国海軍が、米海軍に大打撃を与えて撃退し、英極東艦隊も撃破してから、インドやビルマの独立派が、勢い盛んになっているみたいなんだ。インドの大都市でも暴動や、労働者のストライキが頻発して、治安が悪化しているみたい。シンガポールを支援するどころではないという事かな」(2)

 

 

 北アフリカ戦線では、『トーチ作戦』は順調に進展し、連合軍はモロッコとアルジェリアの大半を制圧し、残るチュニジアに迫っている。東からも、エル・アラメインでロンメル元帥の独アフリカ軍団を撃破した、英第8軍の追撃を受けリビアの大半が占領され、残存戦力はチュニジアに集結している。

 

 やよい

「でも、最近ドイツ空軍も次々と新型戦闘機を開発して、連合軍の爆撃機に大損害を与えていて、かなり犠牲者がでているみたいだね」

メカ好きのやよいは目を輝かせているが、シエルはグヌヌヌと悔しそうにしている。

 やよい

「あっ、ごめんねシエルちゃん」

 

 シエルにとってフランスは、スイーツ修行をした第二の故郷だ。そのフランス全土がナチス第三帝国の軍靴で踏みにじられているのは、シエルには耐えがたい事だろう。

史実では、ヒトラーはパリにアイゼンハワーの連合軍が迫った時に、パリを完全に破壊せよと命令した。しかし、パリ防衛司令官のフォン・コルティッツ将軍が命令を無視して、連合軍に降伏した為に、破壊を免れているが、この世界でもそうなるとは限らない。(3)

 

 仮にも大日本帝国と、第三帝国とは同盟関係なので攻撃したり、あまり悪く言いたくはない。でも、第三帝国が連合国に勝つのも避けたい。そうなったら超独裁国家が誕生してしまうかもしれない。

 

 プリキュアや日本政府上層部はまだ知らない事だが、プリキュアの存在と戦闘能力に驚倒したチャーチルとルーズベルトは、インド洋や東太平洋に多数の哨戒部隊を配備する事を決めていた。必然的に大西洋を往復する輸送船団の護衛戦力が、削減されてしまい今後

独潜水艦Uボートによる船舶撃沈が増える事になるのは避けられないだろう。

 

 ゆかり

「ヒトラー総統には冷静な判断を何とか期待したいわね。もしパリが総統の命令で破壊される事になったら……」

その時は、ヒトラーを暗殺した人物として、キラ星シエルの名前が永遠に刻まれる事になるだろう;;

 

 いちか

「あっ、里美ちゃんだいぶ元気になったそうですぞ」

暗い雰囲気になって来たので、いちかが話題を変えた。

里美は、次第に元気を取り戻しているが、喘息の持病があるみたいなので通院している。

 

 

 リコ

「今は未だ安全だけど、本当に《B-36ピースメーカー》が出て来そうになったら、地方に避難させないとならないわね」

昨年12月の試験飛行は成功したらしい事が、駐独日本大使館からもたらされていた。

ちなみに里美は、いちかを少し幼くした感じなので、いちかにとっては妹が出来た気がしていた。だから危険な目に遭ってほしくない。

 

 

 

 

 1944年2月11日トラック諸島

 

 

 あきら

「いちかちゃん、ハルゼー提督率いる米空母艦隊が真珠湾を出港したみたいなんだ」

 いちか

「何と素早い。まるで疾風……」

いちかは、自由惑星同盟軍第九艦隊司令官の台詞をぱくって、米海軍の動きの速さを誉めた。(4)

 あおい

「問題はどっちに向かったかなんだよね。ハワイ周辺は警戒が厳しくなって、潜水艦が近付いて監視するのは危険なんだって」

 

 

米空母艦隊は、通信解析の結果大型空母《サラトガ》と新型空母と中型空母各1隻から編成されていて、1月上旬に一度ハワイ真珠湾を出て西海岸に向かい、3週間ほど訓練を行っていた後、2月初めに真珠湾に戻って来ていた。

 

 

 

 

 ことは

「またマーシャル諸島に来るのかな?」

 みらい

「はーちゃん、マーシャル諸島にはハトプリチームと、スイプリチームが居るから大丈夫だよ」

 リコ

「でも、全ての島を警戒するのは無理よ。プリキュアが居なさそうな島を空襲して、プリキュアが来る前に撤収するかもしれない」

所謂一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)戦方で、史実でも何度か米空母が離島に攻撃を加えている。

 

 

 

 

 

2月12日 午前8時(ハワイ時間)

 

北緯23度19分 西経152度13分 

 

 

 

 《伊―165》は、《海大5型》潜水艦の一隻で昭和7年に完成している。魚雷は前方に4門、後方に2門で魚雷は14本搭載されている。

《伊-165》は、2月初めからハワイ北東沖で偵察任務に従事している。3日前には、中型輸送船を1隻撃沈していた。

 

 

その日、日の出と同時に潜水した《伊-165》は、午前7時に南西から接近する複数の推進音を探知した。

艦長原田少佐は、最初ハワイから本土に戻る輸送船団かと思ったが、敵艦は20ノットという輸送船団では考えにくい高速で移動している。

 

 

「空母の内1隻は《レキシントン》級……《サラトガ》だ。もう一隻は新型だ、噂の《エセックス》だろう。戦艦は、居ない様だな」

 

 

原田少佐は直ちに追跡を命じたが、当時の潜水艦は水中では8~10ノットしか出ない。少佐は30分後には追跡を断念した。

 

 

 

《伊-165》から《サラトガ》と《エセックス》中型空母1巡洋艦4隻を含む艦隊が、オアフ島北東500キロを北東に向け航行中との一報は、早朝5時過ぎで、未だ夜が明けたばかりであるトラック島の小沢連合艦隊司令部に届いた。

 

 

年明け後、海軍軍令部総長の永野大将が病気の為退役する事になり、後任には山本五十六連合艦隊司令長官が就任した。後任の司令長官には、小沢治三郎中将が選出され、同時に海軍大将に昇進した。

《伊-165》からの通信は、小沢司令部を困惑させた。再び西海岸に向かっている真意が良く分からなかった。

 

 

 

 4時間後

 

 

 ひまり

「昨日の午後に、パナマ運河を米艦隊が通過したそうですよ」

本土から入った情報だと、正規空母と高速戦艦数隻がパナマ運河をカリブ海から、太平洋に抜けたらしい。

 

 いちか

「むむ、ハルゼー提督は、増援艦隊と合同するつもりかもしれませんぞ」

 ゆかり

「西海岸に輸送船が集結している可能性があるそうね。本土からハワイ方面に増援部隊や、航空機を輸送するつもりかもね」

 

 あきら

「空母《サラトガ》も、その輸送任務支援の為に駆り出されたのかも知れない。大規模輸送任務だと、潜水艦に発見される危険が大きいからね」

そこに、伝令がやって来て艦隊の出動は、とりあえず一旦中止になった事を告げられた。

 





1 現スリランカ共和国
2 ここら辺はやや史実
3 映画パリは燃えているかで有名
4 銀河英雄伝説ネタ


日本の潜水艦 艦名が「伊」=大型潜水艦「呂」=中型潜水艦


 破竹の勢いの由来を知りたい人は


1 自分で調べる
2 知っていそうな人に聞く
3 林修氏の「ことば検定」で取り上げられるのを待つ
4 「チコちゃんに怒られる」でクイズになるのを待つ

のお好きなのをお選びくださいw


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第36話 【南鳥島空襲】


 破竹の勢いの語源は、確か三国志末期の呉攻撃の時の逸話。そういえば既に「ことば検定」に出ていた記憶が。


 

 

2月18日 午前6時

 

 

 南鳥島(マーカス島)は、北緯24度17分、東経153度58分にある絶海の孤島で、本土からは南東に1500キロ離れている。

現在は日本最東端として、地理の授業で名前が出る事もある。ちなみに戦前は委任統治領の、ミリ環礁(東経172度)が日本最東端となる。

 

 

面積は僅か1.52平方キロメートルに過ぎず、1933年に民間人は全て退去している。島には気象観測所もあり、800人の守備隊が配置されていた。ただし、一般向けの気象発表は開戦直後に中断されている。米側に天気状況を知られるのを防ぐ為で、史実では終戦数日後まで継続された。

 

 狭い島なので戦闘機や爆撃機の配備は無く、10機程度の《九六式陸攻》を改造した偵察機(対潜哨戒も兼務)と《九四式水上偵察機》4機が配備されているに過ぎない。

 

 

 その日も朝予定通りに偵察機が発進の為、滑走路に移動していた。米空母が真珠湾を出た事は知っていたが、どうやら本土に向かったらしい事から、基地の中はのんびりした雰囲気が漂っていた。

 

偵察機がゆっくりと、滑走を開始する。間もなく離陸という時機長は、低空を向かって来る鳥に気付いた。

よく見ようと意識を集中させた時、その『鳥』が12.7ミリブローニング機銃をぶっ放して来た。機長は叫ぶ暇も無く、ボロ雑巾みたいに穴だらけになって機体諸共消し飛んだ。

 

 

《サラトガ》《エセックス》から発進した、60機の攻撃隊は超低空から南鳥島

に襲い掛かり、マーシャルの鬱憤を晴らした。多くの兵士は未だ就寝していたが、宿舎に機銃や爆弾をぶち込まれてそのまま永眠となった。滑走路や航空燃料の入ったドラム缶や、対空砲も徹底的に銃爆撃を受けた。

 

 

午前7時20分 マーカス島北東400キロ

 

《空母《サラトガ》に着艦した、ロイ・オルスター少佐が戦果報告を行っている。

「提督、作戦は大成功です。マーカス島は今後当分使用できないでしょう。航空機は全て破壊し、滑走路も使用不能です。更にガソリンタンクや、航空燃料入ったドラム缶も炎上させました。更に中型貨物船一隻を爆撃で転覆させ、小型哨戒艇数隻を撃沈しました」

 

 

 ハルゼー中将は、キンメル大将より何処を空襲するかについては、一任されていた。もっとも、航空母艦の安全を最優先にという但し書き付きだが。マーシャル諸島にはプリキュアが配備されていると考え、艦隊保全の点からも危険と判断し、一計を案じた。

 

真珠湾から北東に進み、本土に戻るように偽装した。潜水艦に発見されたので、その日の夕方までは北東に進んだ。日没後に北に転進し、ミッドウェー島を迂回して西に進み17日午後には、マーカス島北東に達した。

 

ハルゼーは最初、『東京都』を空爆すると宣言し、参謀たちは仰天し反対した。しかし理由を聞いて納得した。南鳥島は小笠原村に編入されており、間違いなく東京都に属する。

 

「味方の損害は」

「皆無です。敵の対空射撃すらありませんでした」

「少しは手加減したか」

「はい宿舎の中の一つと、通信塔及び気象観測所を攻撃しないようにしました」

 

オルスターは、出撃前に指示された時怪訝な表情を浮かべたが、理由を知らされると二つ返事で了承した。

「例のお土産は、きっちりと配送しました」

 

 ハルゼーが良くやったと、少佐を労った時参謀達が、第2波攻撃を具申して来た。

更に、護衛巡洋艦部隊の、トーマス・キンケード少将から重巡4隻を派遣して、マーカス島に艦砲射撃を行ってはどうかとの意見具申があった。

 

 

「諸君の敢闘精神は素晴らしい。敵が帝国海軍だけなら俺もさらに攻撃をするだろう。だが今回は見送ろう。何時プリキュアが現れるかもしれん。空襲なら未だしも艦砲射撃だと、重巡がマーカス島に到着するのに最低でも4時間はかかる。日本人やプリキュアを吹っ飛ばしたい気持ちは判るが、今回は自重してくれ」

 

 プリキュアが存在しないのなら、一旦艦隊を東に退避させ、攻撃はもう無いと判断した日本側が、のこのこと南鳥島に救援の船団なり、艦隊なりを派遣して来た所を空襲し更に戦果拡大を狙うという積極策もあるのだが。

 

ここにいる空母は、緒戦で正規空母を3隻撃沈され、《ヨークタウン》が修理中の現在宝石よりも貴重な存在だ。これ以上危険に晒す訳にはいかない。《エセックス》級の新型空母が続々と、完成して来る年末までは、耐えがたい時を耐える事を求められるだろう。

 

「帰る時に、ウェーク島をついでに空襲してはどうでしょうか」

「私も賛成します。ウェーク島は戦闘機も配備されていますが、数は15機前後の様です。撃破する事は困難ではありません」

オルスター少佐と、参謀長のブローニング大佐が帰還途上のウェーク島空襲を提案した。

 

「ウェーク島か、確かにここで一度叩いておいた方が良いかもしれない。が、マーシャル諸島からプリキュアがウェーク島に、援軍に向かう可能性もある」

今度はハルゼーも迷っている風に、30秒ほど窓の外を眺めながら考えている。

 

「ウェーク島も空襲しよう。ただし、プリキュアが向かったらしい兆候が有ったら即座に中止する」

直後艦隊は直ちに、反転退避を開始した。

「置き土産を見た時の、プリキュア……あの桃色兎がどう反応するのか、見れないのが残念だが」

 

2月22日

 

リコ

「皆諦めないで! 必ず助かるから!」

南鳥島空襲により被害甚大との一報は、文字通り中部太平洋の帝国海軍を叩き起こした。

漸くハルゼー艦隊に、一杯食わされた事に気付いたのだ。

 あおい

「体育会系みたいな顔しているのに、中々やるじゃないか」

 

 

連合艦隊司令部の命令で、急遽救援艦隊が派遣される事になった。南鳥島守備隊員800名の内、300名が死亡し、残りも大半が緊急の治療を要していた。

 

ゆかり

「大丈夫あきら?」

ゆかりに呼び止められた、あきらも作業を止めてゆかりに近付く。

 

あきら

「今の所は……それに、もし元の世界に戻れて、医者になれたら、今日みたいに緊急を要する患者さんを大勢助ける様な事があると思う。それよりも父島に大きな軍の病院があったとは知らなかった」

 ゆかり

「父島は本土と南方を結ぶ、重要な拠点だからね」

父島にある海軍の病院は、かなり設備が整っているので重傷者は父島に搬送し、それ以外は横須賀基地に運ぶ事になった。

 

 

数時間後 プリキュア達は軍医さんから休息する様に言われた。

軍医さん

「敵機の一部が、爆弾じゃ無くビラをばらまいて行ったそうだよ」

シエル

「何が書いてあるのかしら」

ゆかり

「日本に勝ち目は無いとでも書いてあるんじゃないかしら。気にする必要は無いわ」

 

 史実でも、戦争末期に《B-29》が日本本土で宣伝ビラや、爆撃予告を散布している。しかし、拾った住民がそれを読む事は厳禁とされて、速やかに警察や隣組の班長に提出すると定められていた。

 

その時、ひまりとことはが走って来た。何か慌てている様だ。

ひまり

「大変です!」

あきら

「どうしたの? 敵襲?」

ことは

「いちかの様子が変だよ! 震えているよ!」

 

 

急いで外に出ると、いちかが震えていた。

あおい

「どうした? 具合でも悪くなったのかよ」

 

よく見ると、いちかは具合が悪くなったのではなく、怒りで震えているらしい事が判明した。

みらい

「宣伝ビラなんて別に気にしなくても」

いちかの手から落ちたビラを、シエルが拾う。それを見たシエルも硬直した。

 

 

ウィリアム・ハルゼー提督より親愛なる桃色兎に

出て来い桃色兎、次はお前もこうしてやる。

 

 

 その下には、ハルゼー提督とやらが桃色兎……つまりキュアホイップを海に蹴りこんでいるイラストが描かれている。むかつく事にカラーで印刷され、キュアホイップの絵はかなり本物に近い絵で描かれていた。

 

 

その瞬間、熱帯である筈なのに空気が真冬の北海道の様になった。救援の兵員や軽傷や無傷の守備隊員が、何人か思わず後退する。

 

あおい

「これはお礼参りって奴が必要だよね」

ゆかり

「ハルゼー提督、提督を私の敵に認定するわ。ふふふ」

 

 

 いちかは悔しがったが、ハルゼー提督の艦隊は既に遠く逃げ去った後だった。

南鳥島空襲の10時間後、ウェーク島とマーシャル島の中間点で、哨戒任務に就いていた、《P級》潜水艦の《パイク》が、水平線上を北上するプリキュア数名を目撃した。

 

 《P級》潜水艦は、1930年代前半に10隻が建造されたが、《ガトー級》や改良型の《バラオ級》の大量就役が開始されたので、近く前線任務を離れ、練習艦として使用される予定となっている。《パイク》艦長は、直ちにパールハーバーの潜水艦隊司令部に通報し、太平洋艦隊司令部はハルゼーに対し直ちに、ウェーク島にプリキュアが増援した可能性大。同島空襲は危険度大と思われる。ミッドウェー方面に退避せよと打電した。

 

 ハルゼーも即座に、ウェーク空襲を断念し艦隊針路を北東に転じミッドウェー方面に退避した。

 

 数日後、攻撃隊が撮影した南鳥島の写真は新聞に大きく掲載され、多くの合衆国市民が留飲を下げた。

 





 史実でも南豊島はハルゼー艦隊の空襲を受けています。これらの戦果は大いに新聞で報道され、戦意高揚に一役買いました。


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第37話【読みはたんかんでは無いよ]



 だいぶ間が空いてしまいました。


 

 

4月2日 

ハワイパールハーバー

 

 

 

「日本海軍に何か動きがあるのか?」

作戦参謀レイトン中佐の報告を受けたキンメル大将に驚きは無かった。初戦で大損害を受け戦力回復中の合衆国海軍に比べ、大きな損害を受けていない。コンバインド・フリート(連合艦隊)の方が遥かに早く動ける。

 

 

 フィリピンの米極東軍は、既にコレヒドール島とバターン半島に籠城するのみで、あと数週間しか持たないだろうと予測されている。

香港は既に陥落し、現在は日本陸軍第二五軍がフランス領インドシナ(ベトナム・ラオス・カンボジア)に進駐し、陸軍と海軍の航空隊が進出して、英領マレーへの侵攻準備を急いでいる。2月下旬頃まで、航空母艦の一部がマレー半島の英空軍基地を爆撃したり、

豪州北部ダーウィンを空襲したりと、陸軍を支援していたが、現在は整備と補給の為に日本本土に帰還している様だ。(1)

 

 

「先月20日頃から、暗号通信が活発になっております」

レイトン中佐が、報告書の束を示して説明する。 3月初めに、帝国海軍は暗号コードを改訂した、しかし解読班の努力で半月後には解読に成功していた。

 

 

解読班によると 『AL』『HM』『SB』など複数の単語が出ている事が判明している。レイトンを退室させた、キンメルは今敵が動く場合目的地は何処かを考え、いくつかの候補地を考えた。

 

 

1 マレー攻略作戦を再度支援する

 

 

敵空母数隻が支援に向かう可能性はあるが、全力で来る可能性は低い。

マレー半島及び、シンガポールに配備されている航空機は、新型機は一部で大半は旧式機だ。英国はやはり、新型機や新型戦車は本国や地中海を優先せざるを得ない。それに英領インドでの反英暴動は、沈静化どころか更に悪化している。

 

 

2 豪州遮断作戦

 

 

 ニューギニアや、ソロモン諸島を占領して合衆国とオーストラリアの交通を遮断し、オーストラリアを連合国から脱落させる。

 

オーストラリアが連合国から脱落すれば、米英にとってはかなり打撃にはなる。しかし、ソロモン諸島は現状火山噴火による、火山灰で占領は不可能だ。日本の補給能力から考えても、可能性は少ないだろう。(2)

 

 

 

 

「やはり、危険なのはハワイもしくはミッドウェーでしょうか?『HM』はハワイ・ミッドウェーの頭文字とも取れます」

レイトン中佐は、ハワイもしくはミッドウェーへの攻撃の可能性を述べた。パールハーバーが破壊されれば、太平洋艦隊は本土まで後退せざるを得なくなるだろう。

 

「『AL』という文字は、アリューシャン列島の事でしょうか?」

「しかし、アリューシャン列島に戦略的価値があるとも思えん」

スミス参謀長は即座に否定した。アリューシャン列島には、天然資源は無く産業も水産業と狩猟(毛皮)位だ。

 

 

 

 

「アリューシャン列島に、もし攻撃があるとしてもそれは主攻撃から、我々の目を逸らす為の陽動だろう」(3)

キンメルも、アリューシャン諸島が攻撃される可能性はほぼ無いと感じた。まあ、本土のアンカレッジが空襲でもされたら、国民は多少動揺するだろうが。

 

 しかし、一応は合衆国領土(アラスカ州)には間違い無く、民間人が居住する島もある。何も対策をしない訳にも行かず、ダッチハーバーにある海軍航空基地に50機ほど増援し、アリューシャン方面艦隊に護衛空母を3隻派遣した。

 

 

 

 

 

「先ずミッドウェーを占領し、航空隊を進出させてハワイ攻略の拠点とする可能性も考えられます」

 

ミッドウェーと、オアフ島の距離は2100キロで海軍の『葉巻型中型爆撃機』なら、往復は可能だろう。しかし戦闘機の護衛は不可能だ。しかし、空母機動艦隊やプリキュアと連携すれば、ハワイ攻撃も可能だろう。

 

 

 「私ならミッドウェーなど無視して、直接パールハーバーを叩きに来ますな」

まず敵の侵攻目標を特定する必要がある。そこでレイトン大佐は一計を案じた。

暗号解読班のアイデアだが、「ミッドウェー島の、海水ろ過装置が故障」という電文を暗号化させずに、打電させた。

 

ミッドウェー島には、真水が湧き出る水源は無く、海水から塩分をろ過して飲料水としてして使用している。実際にろ過装置が故障した場合、深刻な水不足に陥る。

 

 

 史実では、まんまとこのトリックに引っ掛かり、「『AF』では真水不足、攻略部隊は真水精製装置を準備されたし」と発信してしまい、ミッドウェーが目標である事が露見してしまう。

「『SB』とは何の意味でしょう。Sはサンフランシスコとして、Bは何を意味するのか? ボルチモアに、ボストンは……無いですよね」

ボストンとボルチモアは、大西洋岸の都市だ。

 

 

 30分ほど議論したがBの意味が出て来ない。そこで、参謀達に思いつく単語を言わせてみる。

「橋」

「橋かも知れんぞ。シスコと言えば金門橋だ」

 

 

金門橋(ゴールデン・ゲートブリッジ)は、サンフランシスコ湾と太平洋の繋ぐ全長2737メートルのつり橋だ。1933年から4年の歳月をかけて建設された。

 

サンフランシスコは、交通の要衝でさまざまな工業が発達している。大規模な軍港・造船所もあり、史実では戦争末期に、ハンターズ・ポイント基地から重巡《インディアナポリス》に原爆が積み込まれ、テニアン島に運ばれた。サンフランシスコが空襲でもされたら、国民が受ける衝撃は極めて大きいだろう。

 

「こちらも何か罠を仕掛けてみますか」?

「どんなネタで釣るかな?」

 

参謀の一人が案を提示した。

「今年は異常なほど、カリフォルニア州で空気が乾燥しています。各所で森林火災が発生し住宅が焼けたり空港や、航空基地の離着陸が妨げられる事例も発生しています」

 

 

翌日平文でサンフランシスコ周辺で断続的に、森林火災発生。鎮火の目途立たず、市民生活にも重大な影響が出ていると打電させた。その後各通信所は、息を殺して反応を待った。

 

 

 

4月4日

 

「敵が罠にかかりました!」

「本当か!」

 

 

日本側の複数「『SB』では山火事が頻発、攻撃時は山火事による煤煙で生じる視界不良に注意」という通信が、オーストラリアダーウィン近郊の通信傍受施設で、傍受され解読された。逆にミッドウェー島の通信には、反応は無かった。

 

 

 キンメルは直ちに幹部会議を招集し、帝国海軍の攻撃目標をサンフランシスコ(更に距離的に近いロサンゼルス)と判断した。本土に空爆を行い、米市民を動揺させ厭戦気分を高めようという意図だろう。米国は130年前の米英戦争以来、他国の侵略や攻撃を受けた事が無い。(南北戦争は内戦)被害が出れば、米市民の中で反戦世論が増える可能性は否定できない。

 

 

翌日サンフランシスコに飛び、海軍作戦本部長代理ロイヤル・インガソル中将と協議を行い、正規空母と新型高速戦艦を西海岸に移動させ、防衛の任に当たらせる事を決めた。《ヨークタウン》は、既に3月半ばに修理を完了し現在は、新兵の訓練を行っている。

 

 

4月11日 午後3時

択捉島 単冠湾(ヒトカップ湾)

 

 

 

いちか

「寒いですぞ」

あおい

「北の外れだからーなー」

 

いちかと、あおいが揃って震える。温暖化の進んだ70年後なら、東京ではこの時期最高気温が20度を超える事は珍しくない。内陸部の熊谷などでは夏日になる事もある。

桜も既に満開どころか、半分くらい散っていてもおかしくない。

 

 

霧が出ていて、択捉富士どころか海岸線もはっきりとは視認できない。

北海道島北部や、千島列島は霧が多く晴れ間は少ない。霧にぼんやりと浮かぶ海岸線を見ながらひまりは、この気象条件の悪さが原因で、史実のアメリカ軍は北太平洋経由での日本本土侵攻作戦を断念したのかなと、分析している。

 

船の汽笛の音が響きひまりの視線の先を、一隻の輸送船が海防艦の後に続いて港の方角に向かっている。

 

シエル

「島の住民の生活物資を運んでいるみたい。いつもなら週に一回定期船が運んでくるんだけど、今この湾は封鎖されていては入れないから、代わりにあの船が食料とかを運んでいるんだって」

島民の漁船も出漁を禁じられ、島民には海岸線に近付いてはならないという通達も出ているそうだ。

 

 

この択捉島は、北緯45度東経147度にある千島列島最大の面積を持つ島だ。総人口は約4千人で、産業は漁業と水産加工業が多い。

単冠湾は択捉島南側中央部にある湾で、史実では真珠湾奇襲攻撃に向かう南雲艦隊が、事前に集結した事で知られている。無論乗員は、島への上陸は禁止されている。

 

 

はるか

「皆、せっかく入港しているのに上陸できないのは、少し可哀想かな」

みなみ

「でもこの島は、あまり遊ぶところも無さそうですし」

トワ

「島一番の集落には、映画館や料亭もあるそうですわ」

 きらら

「大手水産会社の缶詰工場もあって、他の島から出稼ぎに来ている人も多いってさ」

 

 

この日いちか達は、飛行甲板の清掃を手伝っていたが・・・・

「おーい、霧が深くなってきたから作業は中止だよー」

戦闘機搭乗員の、山上中尉が作業の中止を知らせに来た。気付くとぼんやりと見えていた海岸線すらも、見えなくなってきている。

 

山上

「霧が出て来て冷え込んでいるから、体調に気を付けてるんだぞ」

 

あおい 

「中尉さんもね。あっ、山上中尉は山形北部の出身だから、寒いのは慣れているんじゃ?」

山上

「確かにな。でも夏は逆に暑いから結構大変だぞ。内陸部は何処も周囲を山に囲まれた盆地だからなあ。何年か前に、最高気温が40℃を超えた日は、かなりの人が病院に運ばれたんだ。あの時は休暇で帰っていたんだが、気分が悪くなったよ」

 

ひまり

「3月に結婚されたそうですね、おめでとうございます」

 山上

「ありがとうな」

いちか達は、のろけ話でも聞こうとしたが山上中尉によると、本当なら2日程度は故郷で過ごせるはずだったのだが、急に予定が繰り上がり挙式当日夜の夜行列車で、急ぎ横須賀に戻らなくてはならなくなってしまったそうだ。 

 

清掃作業を中断し、艦内に入って行くプリキュア達。ゆかりとあきらが足を止め、霧に完全に包まれてしまった択捉島の方角を眺める。

 

 

ゆかり

「私達がお花見の途中、異変に巻き込まれた時も、今日の様に急に霧が深くなったわね」

あきら

「そうそう……いや快晴だったよ」

 





タイトルは 佐々木譲氏の小説「エトロフ発緊急電」のネタ。日系アメリカ人のスパイが、
開戦直前の択捉島に潜入して来る。東京から追ってきた憲兵が、湾の名前を聞いてつい「たんかん湾」と読んでしまう。


1 史実では昭和17年2月19日 船舶11隻を沈め、豪州空軍基地を壊滅させた。
2 史実でも計画されたが、山本五十六連合艦隊司令長官が、強引にミッドウエー攻略作戦を主張し、ミッドウェー攻略が決定。
3 ミッドウェー作戦の際に、陽動作戦として実行された。当然米側は引っ掛からず。攻撃も天候不良で大きな戦果は無かった。それどころか、不時着した《零戦》が飛行可能な状態で捕獲される最悪の結末となった。(搭乗員は不時着時の衝撃で即死)


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第38話【霧の中】


 「ホテルニュー岡村」のキョエ料理長に大爆笑w
 
 キョエ「ねえねえ、オヨルン」
 ララ 「オヨルンじゃないルン!」
 キョエ「キョエは、4月からおしんの再放映を見てるんだけど、毎日イライラしながら見てます」
 ララ 「オヨッ?」
 キョエ「竜三(おしんの亭主)のヘタレにいらいらしながら見てます」
 ララ 「確かに竜三は、ヘタレのボンボンの軟弱ルン」
 キョエ「ヘタレの竜三には、ガンダムのセイラさんの平手打ちを、喰らわすべきだと思います」
 まどか「でも、今何とかいい感じに」
 キョエ「残念なお知らせ。今後舞台が佐賀に移ると、更に竜三のヘタレが加速度的に悪化します。最早平手打ちでは手遅れに」
 ユニ 「セイラさんとやらの、右ストレート? あっ、深夜アニメ見たけど彼女の声は、ヒメルダに似てるわね」(1) 
 キョエ「セイラさんでは無く、ドズル中将の右ストレートが必要だと思います。グフフ……ドーン」
 エレナ(竜三さん死んじゃうんじゃ?) 


 

 

4月13日 午前8時

 

 

北緯44度56分・東経156度43分

根室より東北東600Km

 

 

 《ガトー》級潜水艦《ドラム](2)は、2週間前から千島列島南東沖で哨戒任務に従事していた。

数日前から北海道東方沖は、非常に濃い霧に覆われている。午前7時過ぎに《ドラム》は、東に向かう複数の大型艦を含む艦隊のスクリュー音を探知し、直ちに潜航した。

 

《ガトー》級潜水艦は、史実では準同型艦と合計すると100隻以上が建造され、日本側の対潜への軽視にも助けられ、多数の商船やタンカーを沈め戦争勝利の大きな要因となった。《ドラム》は1941年11月に完成し、1年ほど大西洋やカリブ海で訓練を行った後、43年1月に太平洋に回航し真珠湾に配備された。

 

 

「霧が濃くて肉眼での確認は無理だな」

潜望鏡を覗いても見えるのは、白い霧と自艦周囲の海水だけだ。この時代潜水艦乗員に頼る事が出来るのは、己の目と耳だけだ。えっ、GPSに偵察衛星……そんなもんある訳ないでしょうが。

「浮上して追跡してみますか? この霧では敵の見張り員も気付かないないでしょう。プリキュアとかいう小娘達も、飛行監視には出ないでしょう」

 

艦長は浮上して追跡する事を決め、20ノットで追跡を開始した。水上レーダーを警戒し、

20kmは距離を開けて追跡する様に指示を出す。

 

 

 30分ほど浮上航行して追跡をしていたが、突如白い霧の中から黒い物体が現れた。

 

 

「駆逐艦だ! 急速潜航!」

 

見張り員が艦内に飛び込み、最後に艦長がハッチを閉める。直ぐにソナー員が、目標の出している音が軍艦では無くクジラか大型のシャチだと気付いた。

 

潜水艦の艦長は、石橋を叩いて渡る慎重さが求められる。今の判断は妥当だ。再度浮上しようとしたが、潜航している間に距離が開いてしまった。

「20分後に浮上して、敵艦隊発見の可能性を通報しよう」

艦長は、浮上追跡を断念し敵艦隊発見を通報する事を決めた。

 

 

 

4月12日 午後1時(ハワイ時間)

 

 

 

「敵艦隊を直接確認は、出来なかったのだな」

「酷い霧との事です。複数の大型艦らしき推進音を探知したそうです。」

参謀長の言う通りアリューシャン方面は、島に配属された気象観測班等からも、濃霧が数日続く見込みとの報告が入っていた。この当時は沈黙の艦隊の様に、スクリュー音から敵艦の艦名を割り出す装置は無い。

 

 

 

 

「敵艦隊の目標はサンフランシスコでしょう。途中まで北太平洋を東進し途中で、南東に進路を変える。4月19日前後にはサンフランシスコ沖に来るでしょう」

作戦参謀レイトン大佐は、やはり攻撃はシスコではないかとの意見を述べた。

「ハルゼーに直ぐに連絡せよ」

「イエッサー!」

 

直ちに西海岸にいるハルゼー艦隊に、敵主力艦隊がエトロフアイランドの泊地より出撃した可能性大と知らせた。同時に、ワシントンの海軍作戦本部にも同様の報告を送る。

カリフォルニア州に、警報を出して住民に対して外出禁止令などを布告したり、略奪などに備え州兵を出動させる必要等の、措置の準備をする必要がある。

 

 太平洋艦隊司令部も、海軍作戦本部も敵攻撃目標はサンフランシスコ及び、ロサンゼルスと判断している。が、キンメルは言いようの無い、不安を感じていた。

 

 

(日本海軍だけならまだしも、敵にはコードネーム『プリキュア』とか呼ばれる、人知を超えた少女達が味方に付いている。彼女達は、いったい何者なのだ? まさか未来から来たのではあるまいな。万が一この恐ろしい想像が的中しているとなると、我々の作戦も全て知られている事になる。彼女達は、アメリカ合衆国が強引に日本帝国を戦争に引きずり込んだ事に、神がお怒りになられて、我々に罰を与えようと……いや神が、日本人なんぞにお味方されるはずが無い)

 

 

 既に、数日前からカリフォルニア州沖に多数の駆逐艦や護衛空母を配備して、警戒を強化していた。

 

昨夜未明から哨戒部隊外縁にいた、数隻の艦に対し敵潜水艦から断続的に攻撃が行われ、駆逐艦2沈没、旧式軽巡が魚雷一本を喰らって大破。

 

更に夜明け前には、護衛空母が魚雷2本を被弾して沈没していた。キンメル達は、明らかに本土攻撃の前触れと判断した。

 

 

本編ここまで

 

米海軍保有戦艦リスト

 

《ネヴァダ級》

1916年 29000トン 全長177.70M 速力20.5ノット

主砲14インチ砲10門(1インチ=2.54cm)

 

BB-36《ネヴァダ》 キンメル艦隊に配備

BB-37《アリゾナ》 1943年12月 ジョンストン島南西沖航空戦で、800キロ対艦爆弾を投下され、弾薬庫誘爆で轟沈

 

《ペンシルベニア》級

1916年 33100トン 全長185.3m 速力21ノット

主砲 14インチ砲12門

 

BB-38《ペンシルベニア》1943年12月 ジョンストン南西沖航空戦で、プリキュアの攻撃を受け喪失。

BB-39《オクラホマ》  キンメル艦隊に配備

 

《ニューメキシコ》級

1918年 33400トン 全長192.2メートル 速力21ノット

主砲14インチ砲12門

 

BB-40《ニューメキシコ》 大西洋で輸送船団護衛中

BB-41《ミシシッピ》   同上

BB-42《アイダホ》    ソ連向け輸送船団護衛中

 

《テネシー》級 

1920年 33190トン 全長190.35m 速力21ノット

主砲14インチ砲12門

 

BB-43 《テネシー》   1943年12月 ジョンストン南西沖航空戦で、日本機の爆雷撃を受け喪失

BB-44 《カリフォルニア》1943年12月 ジョンストン島南西沖航空戦で、プリキュアの攻撃を受けて喪失

 

《コロラド》級

1923年 32500トン 全長190.20m 速力21ノット

主砲16インチ砲8門

 

BB-45《コロラド》開戦時はサンディエゴにいた為、戦闘参加は無し。

44年1月、真珠湾への回航中に日潜水艦の魚雷2本命中し中破。現在はサンディエゴで修理中。

BB-46《メリーランド》   キンメル艦隊に配備。

BB-47《ウェストバージニア》同上

 

 

 ここからは開戦前後に完成した、新鋭高速戦艦 艦番号が飛んでいるのは、ワシントン軍縮会議で建造中止になった戦艦を含んでいる為。

 

《ノースカロライナ》

1941年 36600トン 全長222.11m 速力27ノット

主砲16インチ砲9門

BB-55 《ノースカロライナ》ハルゼー艦隊配備(西海岸)

BB-56 《ワシントン》   同上

 

《サウスダコタ》

1942年 35500トン 全長207.33m 速力27.8ノット

 

BB-57 《サウスダコタ》  カリブ海で訓練中に、主砲暴発事故発生し現在は修理中。

BB-58 《インディアナ》  太平洋艦隊に増援。サンフランシスコ入港

BB-59 《マサチューセッツ》英地中海艦隊に同行。7月のシチリア島上陸作戦に参加予定。

BB-60 《アラバマ》    同上 

 

アイオワ級高速戦艦4隻が、秋から年末にかけて4隻完成予定。

リストより更に古い戦艦が3隻あるけど、多分太平洋には来ないので省略

 




1 中の人ネタ オリジンではヒメルダの人が声優
2 史実では現在博物館船として保存中


キョエ「言い忘れたけど、某映画でキョエのお家を水に沈めた主人公とヒロインに、賠償と謝罪を要求します。バカー」


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第39話【メザシ】


 猛暑はやや収まりましたが、長期予報によると9月も平年より高温が続くそうです。未だ熱中症に気を付けましょう。

 艦これ夏イベ8月30日開始、ギリギリ夏ですw夏イベにしては珍しい小規模イベント。ボスゲージ4本とかそろそろ出そうな予感。


4月19日 午前8時

 

 

 

北緯30度51分 西経165度52分 オアフ島北西1050km

 

 

 

 

 午前7時にミッドウエー島を離水した飛行艇4番機は、90度即ち真東に向け飛行していた。

《PBYカタリナ》は、アメリカ海軍で愛用されている多目的水上飛行艇だ。速度は250kmと余り速くは無いが、4600kmの航続距離を持ち、偵察機や対潜哨戒機や輸送任務の他に、海上に不時着した搭乗員の救助機としても大活躍している。

 

 

 ミッドウェー島守備隊員は、日本海軍が北太平洋方面に出撃している事は知っていたが、本土が攻撃目標らしく島が攻撃を受ける可能性は低いと考えていた。万一ミッドウェー島が空襲を受けるとしても、敵が来るのは島の北から西だろう。

 

 

「機長!」

レーダー員マイク・スウィフト軍曹が、機内電話で機長兼操縦士のベネット・ オニール中尉に呼びかける。

「どうした」

「レーダーに反応です」

《カタリナ》には、英国が開発した機上レーダーが搭載されていた。機長が機上レーダー盤を見ると、確かに反応がある。 この当時の航空機搭載レーダーは、レーダー盤に〇や三角のシグナルが出るのではなく、地震計の様に、波みたいに反応が出る。

 

 

 機長は最初、日本本土沖に哨戒任務で出ていた潜水艦が、帰還途中に浮上航行しているのかと思った。しかし、レーダー反応は単艦の反応とは思えない。

今日はこの付近に、味方艦隊やミッドウェー島に補給物資を運ぶ、輸送船団が来ているという話は聞いていない。機長は、反応が大きくなる方向に機首を向ける。

 

 

 20分後

 

 

「レーダー反応恐らくこの近くです」

「雲の下に出て確認するぞ」

 

《カタリナ》は雲の間を降下して行く。雲の下に出た時、南東に向かう多数の艦影が見えた。

 

「敵空母艦隊だ!ハワイに向かっているぞ!通信を……」

その瞬間、雲の間から2機の戦闘機が襲い掛かって来た。鈍足の《カタリナ》は反撃する事も出来ずに、撃墜された。

 

 

20分後

 

 

ハワイ 真珠湾

 

 

 

「ミッドウェーから東方向に偵察に出た、《カタリナ》の通信が途絶したそうです」

「《B-17》を確認に向かわせよう」

 

 

キンメルは、陸軍のハワイ方面陸軍司令長官ウォルター・ショート大将(ハワイ陸軍航空隊司令兼任)に連絡を取り、ヒッカム基地から《B-17》数機をミッドウェー東方に偵察に向かう様に要請した。

 

 

「ミッドウェー北東沖を、有力な空母機動艦隊が航行中 正規空母5中型2小型3、戦艦6、針路南東速力18ノット」

 

 

 敵艦隊針路から考えて、真珠湾を目指しているのは明らかだ。

「本土攻撃は、フェイクだったのでしょう」

「敵は我々が暗号を解読している事に気付いていた。それを逆手にとってトラップを仕掛けたのだ。ウェーク島で撃沈した敵駆逐艦の残骸から、暗号帳を回収した事が露見したのだろう」

 

第一次ウェーク島攻撃で撃沈した、日駆逐艦の残骸から暗号ノートが回収され、数日後《カタリナ》飛行艇で、ミッドウェー島を経由して真珠湾に運ばれた。

極秘裏に進めた筈だが、その後占領され捕虜になった兵士の誰かがそれに気付いていて、日本側に話したのだろう。

 

「西海岸にいるハルゼー艦隊に、救援を要請してもまず間に合いませんね」

レイトン大佐の言う通り、ハルゼーに救援を命じても、真珠湾に急行するのに数日は必要だ。

 

 

 現状真珠湾に居る艦隊と、在ハワイ航空隊で対抗するしかない。航空兵力は陸軍機300機(戦闘機100爆撃200輸送機は含まず)+海兵隊航空隊200(偵察機除く)

ある。しかし、陸軍爆撃機の内半数は艦船攻撃は苦手な大型爆撃機だ。しかも、敵は連合艦隊だけでは無く恐るべき力を持つプリキュアもいる。

 

 

 

「艦隊は、準備完了次第出港する。湾内にいたら攻撃を受けた時ひとたまりも無いからな」

キンメルは、即座に出撃準備を命じた。上陸していた乗員にも即時帰還命令が出された。

 

 

 戦艦《ウェストバージニア》《[メリーランド》《ネバダ》《オクラホマ》及び護衛空母6隻を主力とする、キンメル艦隊が真珠湾と太平洋を繋ぐフォード水道を出た直後、ミッドウェー島が空襲を受けているとの緊急電が入った。

 

 

 

ミッドウェー島は正午過ぎに《飛鷹》《隼鷹》《飛龍》を発進した、80機の空襲を受けた。ミッドウェー航空隊は果敢にも、攻撃隊を発進しようとしたが運悪く準備が完了した所に、攻撃隊が殺到して来た。滑走路にいた《B-26マローダー》16機、《TBFアベンジャー》雷撃機、10機《SBDドーントレス》爆撃機14機が破壊された。戦闘機も10機が破壊された。

 

 

 

「サンド島(西の島)滑走路使用不能!」

「イースタン島(東の島)水上機基地破壊されました。攻撃には数名のプリキュアも参加している模様です」

 

 

 滑走路だけでは無く、燃料タンクや対空砲も破壊された。アメリカは滑走路を破壊されても、豊富な機械力で短時間で修復する事が出来る。

しかし、プリキュアに滑走路修復に使う重機類をついでに破壊されてしまった。機械が無ければ修復能力は、日本軍と同レベルに落ちてしまう。

 

ミッドウェー島司令部は、泣き言は言わず無線所が破壊される寸前に、

「司令部健在! 敵機7機以上撃墜確実」と通信して来た。

 キンメル提督は、オアフ島とカウアイ島の間にあるカウアイ海峡を抜けた所に、艦隊を展開させた。作戦としては、ハワイの基地航空隊と連携して戦う以外に方法は無い。

 

 

4月19日 午後3時

 

 

まず在ハワイ航空隊が、先手を打った。《P-38ライトニング》F型40機に護衛された、《B-26マローダー》35機、《B-25ミッチェル》』中型爆撃機20機

が攻撃を行った。未だ単発機の《F4Fワイルドキャット》《TBFアベンジャー》と、陸軍機の《P-40ウォーホーク》等は、航続距離が足りないので参加していない。

 

 

「プリキュアのお嬢さんたちに、カッコ悪いところ見せちゃならんぞ。《メザシ》は650kmほどでるそうだ。武装も強力だから、奇襲に警戒しろ」(1)

 

《ライトニング》は、機首に20ミリ機関砲1門と、12.7ミリ銃4丁を装備している。高速性を生かし、5丁の機銃による一撃離脱が《ライトニング》の得意技だ。

爆弾や対地ロケット弾も、最大1.5トンほど搭載できる。欧州でも大いに活躍し、北アフリカ戦線では戦闘爆撃機としても大活躍している。ドイツ側からは《双胴の悪魔》

と恐れられた。

 

一機の《ライトニング》が、横合いから仕掛けて来る。《P-38》の20ミリ機銃は、《零戦》64型に届く前に失速して落ちて行く。未だ距離が足りないのに、撃ってしまっているのだ。

 

 

 

 

「敵さん、未だ訓練が足りんかな? 温暖なハワイでついつい怠けてしまったか?」

 

 

 日本側は月月火水木金金で、厳しい訓練を行って来た。既に実戦経験があるという差も大きい。

逆にアメリカ側は、日本人は近視で戦闘機の操縦は難しい等と言った、根拠なき偏見で油断していた。

 

《零戦》は新米搭乗員が操縦する《ライトニング》の攻撃を回避し、上に回り込み20ミリ機銃を発射する。64型は、初期型の21型に搭載されていた九九式一号20ミリ機銃(60発)から、九九式二号20機銃2挺(125発)に変更している。

 

炎上した《ライトニング》』は、海面に突入してバラバラになった。一瞬だけ、敵搭乗員の冥福を祈りすぐさま意識を切り替える。

 

《零戦》と戦った部隊は、未だ勇戦出来たと言える。少なくとも6機の《零戦》を撃墜し、更に数機に損傷を与えた。

プリキュアに向かって行った、《ライトニング》は大損害を出してしまう。それは開戦冒頭の再現だった。

 

 

 

「速過ぎて、追尾できない!」

 

「オレンジの服を着たプリキュアが四つ葉の楯で、攻撃を吸収したぞ」(キュアロゼッタ)

 

 

「クローバの楯が飛んできた……ザーー」

他にも氷漬けにされ墜落したり、剣で主翼を叩き切られたり巨大なハートが……

 

 

中型攻撃機《B-25ミッチェル》《マローダー》も、《零戦》とプリキュアの攻撃を受けている。

 

「くそっ! 全く弾が当たらん」

ホールマーク中尉が、嘆きプリキュアを睨むが何の効果も無い。《ミッチェル》爆撃機は10丁以上の12.7ミリ機銃を装備しているが、全く命中しない。

 

 

 

「目で追うのもしんどいですね」

「ライフルで、蜂を撃ち落とせって言われてる感じだ」

某経歴不詳の某S級スナイパーなら、可能かもしれないが 

 

 

 

 爆撃機の旋回機関銃は、戦闘機の固定機関銃に比べ命中率が低い。無論未来のイージス艦みたいにレーダー連動や、高性能コンピューターも無い。射撃は全て機銃員の勘頼りだ。

普通の戦闘機を撃墜するのも簡単では無いのに、高速と変幻自在の動きをするプリキュアを撃墜出来るはずが無い。

 

 

「《マローダー》隊もやられています!」

通信を傍受していた、無線士のポール・アレン軍曹が報告する。

 

《マローダー》は故障による事故墜落が多い事から未亡人製造機と呼ばれていたが、今もまたその名の通り一機撃墜される毎に、7人前後の未亡人と戦災孤児を生み出していた。

 

 

「いよいよこっちも危ないですね」

「やられるんなら、ジャップ野郎が操縦する戦闘機じゃなく、美少女にやられたいですね」

「俺は長髪派だから、髪の長いプリキュアにやられたいな」

ホールマークはまどか派の様だ。

 

 

「敵機撃墜!」

味方機を狙っている、《零戦》に12.7ミリ機銃で攻撃し、左主翼が吹っ飛んだ《零戦》が、コマのように回転しながら落ちて行く。

 

乗員が歓声を上げた瞬間、無線機から退却命令が来た。周囲を見ると既に半数以上が撃墜されている。

「爆弾を捨てて退却!」

 

 残存機は、搭載していた250kg爆弾を投棄して逃げ出した。ろくに狙いも付けずに投下した爆弾の中で、命中しそうな爆弾はプリキュアが始末したのだが……

 

 

 

 ホールマーク中尉の《ミッチェル》が投棄した爆弾が、海面でバウンドして《朝潮》型駆逐艦6番艦《山雲》の機関室に命中し、航行不能になり自沈処分。

《山雲》被弾にプリキュアが一瞬気を取られた間隙を突いて、《マローダー》の投下した250キロ爆弾が、防空巡洋艦《吉野》の65口径10センチ対空砲に命中し、

火災が発生した。しかし航行に影響を与えるような被害では無い。更に《長門》に250kg爆弾が命中するも、装甲で弾き飛ばされ被害は皆無だった。

 

駆逐艦1隻撃沈、防空巡洋艦に軽微な損傷を与えたのと引き換えに、攻撃隊は半数以上の被撃墜機を出して撃退された。

 






1 《P-38》の機体の形が、鰯の保存食「メザシ」に似ている事から、《零戦》搭乗員等からそう呼ばれた。


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第40話【オリンポス山は世界に何個もある】

 最近プリキュアの出番が無いけど、架空戦記だと敵側視点賀多い作品が多いので。


チコ
「ねえねえ、プルンス。とうとうまだ上映が始まっていなかった地方でも、ガールズ&パンツァー最終章第2幕の上映が始まったわね」
プルンス
「まさかの奇策が飛び出したでプルンス! ガルパンは良いぞでプルンス」
チコ
「そこで、ガルパンとプリキュアに関するクイズ。戦車道チームとプリキュア両方に搭乗している子は何人いるの? ただし戦車道は大洗女子に限ります。そしてプリキュアは正規のメンバーに限る。キュアトゥモローみたいなゲストは含みません」
プルンス
「他校のチームは福内でプルンスな?」
チコ
「そうです。黒森峰の西住姉とか、次期隊長の怖い人や、カチューシャの副隊長等は含みません。A3人 B6人 C7人の中から選んでちょうだい」
プルンス
「かばさんチームのカエサルが、ミルキィーローズ。レオポンチームのツチヤは、確かダージリンと同じ声優だから、彼女もプリキュア。同じチームのツチヤは、カチューシャの人と同じ声優だから、キュアピースプルンス。ネトゲーチームのぴよたんは、ユニと同じ人プルンス。それと西住みほと、角谷前生徒会会長を入れて、Bの6人プルンス」
チコ
「6人でOK?}
プルンス
「OKでプルンス」
チコ
「ぼーっと、ガルパン見てんじゃねえよ!!」
プルンス
「そんな馬鹿なでプルンス! 6人の筈プルンス!」
チコ
「まどかちゃん泣いちゃうよ。」
プルンス
「まどかはガルパンには出てないでプルンス!」
その時、弓矢がプルンスの近くに刺さる。
まどか
「ちょうちょ、薬莢捨てるとこ、観覧車」
プルンス
「しまったでプルンス!」
まどか
「プルンス、少し向こうでお話ししましょう」
プルンス
「お助けでプルンス―!」
キョエ
「その後プルンスの姿を見た者は誰もいなかった。めでたしめでたし。バカー」
プルンス
「めでたくないでプルンス!」



 

 

 30分後、米軍は大型爆撃機《B-17》《b-24リベレーター》各30機と、海兵隊航空隊《PB4Yシーリベレーター》(《Bー24》の海軍供与機で、性能は『B-24』に準じる)20機が来襲した。

 

 

 

 爆撃隊は高度6千から爆撃を敢行したが、高高度からの水平爆撃で高速回避中の水上艦艇に、命中弾が出る確率は極めて低い。よほどの幸運か、低速輸送船

でないと命中させる事は困難だ。

 

《B-17》は、エンジンや燃料タンクを強固な防弾装備で補強し、自動消火装置等もある為に20ミリ機銃を多少被弾した程度では、撃墜は出来ない。

だが、それらの防御はあくまでも常識的な、敵戦闘機との戦闘を想定して設計されていて、プリキュアの攻撃に耐えられなかった。

 

 

 

 

同日午後9時

 

サンフランシスコ北西沖 ハルゼー艦隊旗艦《サラトガ》

 

ハルゼー艦隊は昨日の昼前から、サンフランシスコ沖から北上していた。理由を尋ねられた際に、ハルゼー中将は躊躇せずに、嫌な予感がするからだと答えた。部下達は渋い表情を浮かべたが、ハルゼーの直感は結構当たる。先だってのジョンストン沖航空戦でも、飛行しているプリキュア(アラモードチーム)を目撃した際に、瞬時に桃色プリキュアがチームのリーダーだと見抜いている。更に、「サンフランシスコ沖から断じて動くな」と命令されてはいなかったので、部下は説得を断念した。

 

 

「どうやら《B-17》は、『空飛ぶ要塞』の異名を返上せねばならないな」

 ハルゼー中将は、報告書の束を見ながら無念そうに述べる。

第二波攻撃隊は、第一波攻撃隊同様に甚大な被害を出した。特にプリキュアの迎撃を受けた隊は、半数以上が撃墜された。

 

辛うじてプリキュアの魔手から逃れ得た、爆撃機も帰還途上で墜落もしくは不時着水、あるいは生還したが損傷が酷く修理不能と判断される爆撃機が多数出る事は、想像に難くない。

 

 

 第一波攻撃隊は、偶然の産物とはいえ駆逐艦1隻撃沈、防空巡洋艦に爆弾命中の戦果を挙げたが、第二波攻撃隊が投下した爆弾は、一発の命中弾も無かった。

銀河英雄伝説のアニメ化作品第一作目となる、劇場版アニメ「我が往くは星の大海」で、ミッターマイヤー提督の台詞に「弾の無駄撃ちか、命の無駄撃ちよりはましか」

があるが、重爆隊の攻撃は双方の無駄撃ちと言えた。

 

 

 

 ハルゼーは中将は、直ちに艦隊を率いて救援に向かいたかったが自重した。未だ敵の正規空母全ての居場所が判明していない。第一、今からハワイに向かったところで、到着した時には既に戦いは終わっている。

 

 

 

「予定通り、サンフランシスコを攻撃して来る可能性は無さそうですね。」

艦隊参謀長、ブローニング大佐の言う通りカリフォルニア州沖には、敵艦隊は発見されていない。

 

 

「いや、敵には恐ろしい戦闘能力を持ったプリキュアが付いている。小沢提督が攻撃可能と判断する恐れはある」

ロサンゼルスやサンフランシスコが攻撃され、艦隊にも大きな被害が出れば、米国民が受ける心理的ダメージは甚大だろう。

参謀達は、やれやれだの困ったものだとか小声でぼやいた。プリキュアがいなければ帝国海軍もここまで大胆な、合衆国本土攻撃などはできなかっただろう。

いや、太平洋艦隊が開戦直後のマーシャル諸島占領に成功し、今頃はマリアナ諸島に攻撃でもしていたかもしれない。

 

 

 ハルゼー達は、敵の未だ所在が判明していない空母の目標を話し合った。

アリューシャン列島や、アラスカを攻撃する価値があるとは考えられないので却下。

ミッドウェー占領は可能性皆無とまでは断定できないが、仮に占領しても補給は相当な負担となるだろう。

 

潜水艦を使用して、ミッドウェー島に補給に来る輸送船を撃沈し兵糧攻めにすればよい。日本側は、ウェーク島への補給もかなり苦労している様だ。潜水艦の攻撃で何隻かの輸送船が撃沈され、ウェーク島の守備隊員は、栄養失調に陥っている可能性が高いと分析されている。

 

 

 

 

「発見済みの艦隊と協力して、ハワイの西側からキンメル艦隊を挟撃するつもりでは?」

「その可能性はありそうだな。オアフ島の西で敵艦隊発見の報告はあるか? もしくは偵察機が行方不明になった、敵機もしくはプリキュアと交戦中との通信が入り、直後に通信が切れたとかは?」

 

通信室によると、ハワイの総司令部よりその様な情報は届いていないとの事だ。つまりハワイから西~南西に向け発進した偵察機は、消息不明になったり、敵艦隊を発見した機体は出ていない事になる。

 

 

 

「提督、実は南太平洋が少しきな臭くなっています。」

「何かあったのか?」

ブローニングは、海図を広げハワイからはるか南にあるサモア諸島を示した。

「一昨日、米領サモアのパゴパゴ港沖合で、水上機母艦《ラングレー》と駆逐艦1隻が撃沈されました。潜水艦の魚雷攻撃と考えられます」

 

 

 《ラングレー》を含む旧米アジア艦隊は、ニューブリテン島からの火山噴火避難民輸送任務終了後、米領サモア(南緯14度16分 西経170度42分)に移動した。

 

 

サモアは19世紀末に、合衆国と帝政ドイツの間で領有権争いが起きたが、1900年に協定が結ばれ西側の島はドイツ帝国、東側は合衆国の領有と決まった。

帝政ドイツ領サモアが現在のサモア独立国に該当する。米領サモア主島ツツイラー島付近では、数日の間に何回か敵潜水艦らしい通信を傍受しているとの事。

 

「陽動でしょうか? 参謀長」

「一概に断定はできないかもしれんな。サモアは米本土とオーストラリアを繋ぐ重要な補給ルートだ。占領するとは考えにくいが、航空攻撃を受ける可能性は否定できない」

「確か、南東太平洋艦隊が創設されてサモアに派遣された筈だ。確か明日くらいには到着する筈だ」

 

 

 艦隊と言っても、高速給油艦を改造した護衛空母《サンティー》と、貨物船の設計を流用した《カサブランカ級》護衛空母2隻及び、巡洋艦3駆逐艦6しかない。連合艦隊の主力空母を含む艦隊やプリキュアと正面から戦う事は出来ないので、来ない事を祈るしかない。

「どっちにしろ、今から向かっても手遅れだ。ここで待ち受けるしかねえな。」

 

 

 

 

 

 

 

 4月20日 午前6:00(米西部標準時)

 

 

ワシントン州 オリンポス山レーダーサイト

 

 

オリンポス山はシアトル市から北西100kmにある2420メートルの山で、山の西側に数年前にレーダー基地が設置された。レーダー基地は、標高の高い場所に置いた方が探知距離が延びる。

 

 

当直員達は、眠気覚ましのコーヒーを飲みながらレーダー画面を見張っていた。10日ほど前には、日本艦隊がサンフランシスコを攻撃するという噂が流れて、レーダー員達も緊張した。シアトルもついでに攻撃される危険が無いとは言えないからだ。

 

しかし、昨日日本艦隊がハワイ北西沖に現れ戦闘が起こった事から、日本海軍はサンフランシスコを攻撃すると見せて真珠湾攻撃を企んでいるとのラジオ放送を聞いた。

 

 

 

「日本人に、本土を攻撃する様な度胸は無いぜガハハ」

能天気な第2レーダー班長、アーニー・ワイルド大尉に対し班員の、ウィリー ・マクドナルド少尉は一瞬咎めるような表情を向けるが、口にはしなかった。

「お前らも、眠気覚ましに飲むか?」

アーニーは、部下に小瓶に入ったウィスキーを勧めるが、部下達は全員断った。勤務中の飲酒は禁止されているが、こっそりと持ち込んで飲んでいる士官や下士官は多い。上層部も夜勤の兵士が眠気覚ましに少し飲む程度は、黙認していた。

 

数日前から、ワシントン州は低気圧の接近で雨が降り続いていた。激しい雨では無いがその為に哨戒機が飛行不能になっていたが、各所ともに、本土攻撃は無いだろうという憶測が流れ緊張感が薄れていた。夜中に低気圧は東に去り、雨も止んで今日は3日ぶりに晴天になりそうだ。つい1時間ほど前に、施設の上空を数機の偵察機が西に向け飛行して行った。

 

 

 

 

ウィリーがマグカップを皿に乗せた時、レーダー画面に多数の光点が表示された。目をこすってみたが光点は消えない。

「敵機でしょうか?」

「味方機が帰って来るには時間が早い! 敵だ!」

大尉は、即座に敵機と判断し、ウィリーに通報を命じた。

「オリンポス山レーダー基地より、シアトル防衛司令部に緊急通報! 敵大編隊探知、方位300度! (北西)距離80km目標はシアトル! 0635」

 

 

 

大尉は、全員に敵が見えたら防空壕に避難する様に指示を出した。施設に対空砲や、対空機関砲を設置する予定になっていたが、完了は6月下旬でまだ工事始まっていない。大尉は双眼鏡を取り出し西の空を覗く。

 

 

 

 西海岸の主要基地や、レーダー施設要員はプリキュアの存在は知らされてはいた。しかし、「油断して、ジャップにやられた間抜けの戯言」

と言った感じで、信じていない兵士が大半だった。

 

 

 

 20分後西の空から、多数の敵機が接近して来るのが見える。朝日を反射してキラキラと光っている。

 

「お前たちは先に避難しろ」

「大尉! 上を見て下さい!」

 

見張り員のセバスティアン・ミレール一等兵に言われ大尉が上を見ると、複数の鳥が急降下して来るのが見えた。野鳥観測が趣味の大尉は、直ぐに鳥の違和感に気付いた。部下を避難させ、最後に防空壕に飛び込み扉を閉める。

 

 

 その直後何かが破壊される音が聞こえ、防空壕が激しく振動する。数分後静かになったので外に出ると、レーダー設備は無残にも破壊されていた。片方のレーダー設備は戦闘機の機関銃らしい弾痕が付いていたが、もう片方の設備には明らかに機銃や、爆弾とは考えられない痕跡が見える。

 

 

 

「あの鳥みたいに見えたのがプリキュアか。おい、レーダー施設が破壊された事と、プリキュアも攻撃に参加していたと伝えろ。無線は、多分アンテナをやられているだろうから、有線(電話)で伝えるんだ」

 

少佐は忌々しそうに、言いながら飲酒の痕跡を隠す為に、酒瓶の始末を始めた。

 

 



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41話 シアトル防空戦 アニマル軍団VS野生馬


 艦これ夏イベと、大航海時代5(コーエー)の投資イベント終了したので再会します。今回のドロップレア艦 磯風とグリーレ(イタリア駆逐艦)
ジョンストンは出なかった。

本日は久々にプリキュア登場します



 

 

 

 

 

 1944年 4月21日 午前7時10分

 ワシントン州シアトル

 

 

 シアトル市内に空襲警報のサイレンが鳴り響き、同時に朝のニュースを伝えていたラジオ放送は中断し、アナウンサーが緊急事態を告げた。

日本機がシアトルに向かっている事を伝え、これは訓練や演習では無いと付け加えた。

航空基地からは、急ぎ《P-40ウォーホーク》《P-38ライトニング》各20機と《P-51》20機が急遽迎撃に発進した。

 

 

 

 マスタング戦闘機は、第二次世界大戦で最も有名な航空機とされる。ある日ノースアメリカン社は、軍当局から《P-40》のライセンス生産を打診された。しかしノースアメリカン社はもっと性能の良い戦闘機を、150日以内に開発すると宣言した。

 

そして120日後本当に開発して初飛行に成功した。しかし初期型は《P-40》と同じアリソンエンジンを搭載していたので、低高度では高性能を発揮するも、

高高度では、性能が大きく低下してしまった。最初は、北アフリカや、フランス上空で戦闘機では無く、強行偵察機や爆弾を搭載しての戦闘爆撃機として運用された。

 

 

ある日、試しに輸入した英国製のマーリンエンジンを搭載してみたら、速力は40km以上上昇し航続距離は大きく伸び、高高度での性能も飛躍的に上昇した。米陸軍航空隊は《P-51B》として採用を決めた。

 

最新型のD型は英国に優先配備されているが、B型も高度9000mで時速700kmでの戦闘が可能だ。

 

 

 

 

「俺達はプリキュアをやるぞ。 海軍の戦闘機では勝てなかったらしいが《マスタング》の敵では無いぞ!」《マスタング》戦闘機隊の小隊長トーマス・マクガイヤー少佐は、やがて、敵戦闘機に交じって空を飛んでくるプリキュアを視認した。

 

 

 

「日本海軍は女の子に、戦争させているんですかい? それは少し酷い話じゃ?」

「かもしれんがプリキュアは海軍さんの軍艦を何隻を沈めているらしい。手加減は無用だ。海軍さんの敵討ちだと思え」

 

 

「敵発見! 2時の方向にプリキュア数6!」

2番機のヴィルギル・マーリン兵曹が、プリキュアの小隊を発見する。

 

マクガイヤー少佐は、部下に6人のプリキュアに向かう様に命じた。少佐は、髪が青くライオンの尻尾らしい物体が付いているプリキュアに狙いを定める。

(本当に女の子が空を飛んでいるぞ。可哀想だが死んでもらうぞ)

 

 

 

マクガイヤーは、ブローニング12.7ミリ機銃6丁の銃弾がプリキュアを貫いたのが見え……

 

「馬鹿な!」

マクガイヤーは、驚愕の叫びをあげた。銃弾が通過した時には、もうそこには誰もいなかった。慌てて下を見るとライオンプリキュアことキュアジェラートが、《マスタング》を見て不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「瞬時に真下に垂直移動したのか? なんて野郎だ(野郎じゃないっつーの BYバケニャーンの正体に、全く気付かなかった宇宙人)」

 

 

キュアジェラート

「次はこっちから行くぜ!」

 

 

 

キュアジェラートの攻撃を《マスタング》が辛うじて回避し、逃走に移る。数度攻撃されるが、上手く他の日本機を盾にして何とか逃れた。

 

 

 

 

 味方の高射砲弾の黒煙の間を抜けて来た、《ジーク》(零戦)が不意に少佐の《マスタング》』の前に躍り出る。一瞬だけ少佐の反応が勝り、《ジーク》は多数の12.7ミリ機銃弾を喰らって爆発した。一息ついた少佐は無線で、味方の状況を探る。

 

 

「エンジンをやられた……ザアアアーーー」

 

「熱い!脱出できない! ……ザアアアアアーーーー」

 

「戦闘不能! 脱出する!」

 

 

 

 

残存機の報告を纏めると数分で小隊は、半数以下にまで減らされてしまった様だ。無論プリキュアは一人も仕留める事も出来なかった。

プリキュアの勇戦に勢いを得た、攻撃隊は迎撃機に対し優位に戦闘を進めている様だ。

 

とにかく敵を探そうと動き出した瞬間、また謎の物体がマクガイヤー機を掠めて飛び去る。後ろを見ると、今度は小さなリスの耳と、尻尾が付いたプリキュアがこっちを睨んでいる。

 

 

キュアカスタード

「敵討ちです(今マクガイヤーが撃墜した、《零戦》搭乗員の事)!」

 

 

 

「来い! リス野郎!(だから、野郎じゃ無いルン! BYサマーンのオヨルン)」

再び12.7ミリ機銃で射撃したが、今度はふわりと上に避けられてしまった。

 

 

キュアカスタード

「リスの身軽さをバカにしないでください!」

 

 

謎のクリーム状の物体が飛んできて、《マスタング》のエンジンに突き刺さり破壊した。少佐は急いで脱出しパラシュートを開いた。機体はファン・デ・フカ海峡の水面に墜落して、一回転して海の中に消えた。

 

 

キュアカスタードは、パラシュート降下中のマクガイヤーに近付いたが攻撃はして来なかった。飛び去るキュアカスタードに向け、一瞬にやりと笑うマクガイヤー。彼は護身用の拳銃を取り出そうとした。しかし、強い力で腕を押さえつけられる。

 

 

後ろを見ると、今度はペガサス様な姿をした、虹色のプリキュアがマクガイヤーに、笑みを浮かべる。

 

キュアパルフェ

「拳銃を少しでも動かそうとしたら、即座に貴方の愛機の後を追わせるわ」

観念したマクガイヤーは、拳銃をキュアパルフェに渡す。直ぐに拳銃は海峡に捨てられてしまった。

 






 野生馬=ムスタングつまり、《P-51戦闘機》の事
 アニマル軍団=プリキュアアラモードチーム


戦後作成された戦争映画に登場するドイツ空軍の戦闘機は大半が、《P-51》戦闘機の塗装や、識別マークをドイツ軍仕様に塗装して撮影されている。





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【第42話】レディYの受難


 最近大雨や洪水が多いです。避難する際は明るい内に。


 

4月21日 午前7時半

  

北緯43度28分 西経127度6分 オレゴン州バンドン北西200Km

TF-16(第16任務部隊旗艦)《サラトガ》

 

 ハルゼー中将の元に、「シアトル空襲される、これは演習に非ず」(1)の緊急電が届いたのは午前7時15分過ぎだった。

「チッ、フェイントを掛けてシアトルを狙って来たか。相変わらずせこい事が好きな民族だぜ」

司令官ハルゼー中将は、忌々しい表情で葉巻をゴミ箱に放り込んだ。

 

 

                                        

「上手く行けば敵機が発進直前か、 帰還した直後を奇襲できるかもしれんぞ。 それと《ヨークタウン》隊は今どの辺りだ?」

タイミングが難しいが、特に発艦直前の空母に1発でも命中させれば、飛行甲板に並んでいる航空機が次々と爆発して、ガソリンや爆弾が爆発し空母は火達磨になるだろう。(2)

爆風で、多くの熟練搭乗員を死傷させれば人的資源も乏しいジャップには、かなりの打撃になるだろう。いや、もしかしたらプリキュアも何人か巻き込めるかもしれない。

そこまで上手くいかないとしても、プリキュアの目の前で敵空母を沈めて見せて精神に打撃を与えるのは、かなり効果がありそうだと、ハルゼーは猛将らしからぬ思考を進めていた。

 

 

 

 

「恐らくカリフォルニア州と、オレゴン州の州境沖位ですかね。」

「よし、《ヨークタウン》隊到着まで速度を落とすぞ」

参謀長の報告を受けた、ハルゼーは合流まで速度を落とす事を決定した。

 

 

 

同時刻

 

 

北緯41度54分 西経124度21分

 

カリフォルニア州 ヨントケット西沖

 

 

空母《ヨークタウン》

 

 

 《ヨークタウン》隊は、昨日午前9時にアラメダ海軍基地を出港し、ハルゼー艦隊に合流するべく北上していた。《ヨークタウン》艦載機隊は、修理中に新たに補充された搭乗員と共に、陸上航空基地で猛訓練を重ねていた。午前9時前後に陸上航空基地を発進し、《ヨークタウン》に着艦する予定だ。

 

 

 

 

 東10kmには、大西洋から回航されてきた新鋭高速戦艦、《サウスダコタ》級戦艦《インディアナ》と護衛の駆逐艦6隻が、同じくTF-16に合流するべく北上していた。

 

《サウスダコタ》級戦艦は、排水量35000トン全長は207mで速力は28ノットだ。攻撃・防御・速度のバランスが取れている戦艦という評価を受けている。

《マサチューセッツ》《アラバマ》も太平洋に回航させたかったが、大英帝国の強い要望で英艦隊の支援に出さざるを得なくなった。

 

 

 

《マサチューセッツ》は、モロッコ上陸時にカサブランカ沖で仏戦艦《ジャン・パール》(3)交戦した。この2戦艦は6月か7月に実施されるシチリア島上陸作戦『ハスキー作戦』にも参加が決定している。

 

 

《サウスダコタ》は太平洋戦線に派遣される予定だったが、2月にカリブ海で主砲暴発事件が発生し、死傷者30名を出してしまい現在は修理中だ。

 

 

 

 

 

「戦闘機も新型の《ヘルキャット》に換装された。憎いプリキュアをぎゃふんと言わせてやるぞ」

「しかし《ヘルキャット》』は、見た目がビ―ル樽みたいで不格好ですね」

ノイマンと、ラムソンが新鋭戦闘機の外見について話している。

「戦闘機や見た目じゃなく、撃墜されにくさだぞ。新米パイロットの戦死率が下がれば、ベテラン搭乗員に成長できる割合が増えて、全体の戦力底上げに繋がるんだ」

 

 

 

「防弾措置で増えた重量は、パワーのある発動機で補うですね。」

 

 

生存率が高い《ヘルキャット》戦闘機は、グラマン鉄工所の異名で呼ばれている。速度は610kmほどで《零戦64型》より30kmほど勝っている。

しかし、格闘戦は劣っている可能性が高く搭乗員には、速度と上昇力を生かした、一撃離脱戦を徹底する予定だ。

 

 

 

 

 ここ数日、米海軍、沿岸警備隊、対潜哨戒機が共同で潜水艦狩りを行い、撃沈2隻と撃破3隻の戦果を挙げていた。反撃で何隻かの船が撃沈されてはいたが、

沿岸近くから追い出す事に成功した。しかし、裏をかいて沿岸に潜み攻撃の機会を覗っている、「鋼鉄の鮫」がいた。

 

 

 

 

 

「《ヨークタウン》もしかしたらと思っていたが、しぶとく生きていやがったな」

《伊―19》木梨鷹一少佐は、丸で久しぶりに友人と再会したように明るい声で乗員に知らせた。《伊―19》は、昭和16年4月28日に就役した大型潜水艦で、魚雷発射管6門を装備している。更に水上偵察機を1機搭載している。2週間前には、米本土からハワイに向かっていた、輸送船と油タンカー1隻ずつを撃沈していた。

「《エンタープライズ》《ホーネット》は初日に沈んでいますからね。《ヨークタウン》に間違いないでしょう」

 

 

いちか達から、《ヨークタウン》洋上停止の報告を受けた連合艦隊司令部は、潜水艦隊に撃沈を命令し、翌日夜明けに現場に到着した。しかし、周囲を捜索するも《ヨークタウン》は見当たらない。結局乗員を収容後自沈処分されたと判断した。

 

「彼女達が気に止まない様に、ここで引導を渡してやりましょう」

先任士官の渡辺大尉が、艦長に攻撃を促す。

 

《ヨークタウン》との距離は6千メートル、できればこの半分くらいまで近づきたいが、これ以上は近付いて来ないだろう。

 

 

 

「魚雷発射! 速度40ノット調整深度5m!」

 

 

 

 

 ラムソン達は、艦載機が来るまでは未だ時間があるのでのんびりと海を見ていた。

 

(今日は波が高いな)

この日は晴天だが、風が強く海も少し波が高い。その時、高い波の間から一瞬黒い物体が見えた。その物体は先頭部が日光を反射して光って見えた。

 

 

 

「左舷機銃より艦橋へ! 左舷3000に筒状の不審物発見! 魚雷かもしれません」

ラムソンは即座に、電話で艦橋に伝える。

 

 

 

 シャーマン艦長は躊躇せずに、取り舵一杯を命じた。魚雷が接近している時は接近している方向に全力で転舵し、被弾する確率を下げる必要がある。

だが大型空母ともなると、舵を切っても駆逐艦みたいに直ぐには舵が効いて来ない。同時に駆逐艦に、隊内電話で潜水艦の捜索と撃沈を命じる。

 

 

 

 

「魚雷接近! 数6本!」

 

 

シャーマン艦長は、双眼鏡で海面を捜す。確かに魚雷の航跡がかすかに見える。

 

 

「あれが噂の航跡が見えない魚雷か。速度もわが軍の魚雷より速いぞ」

 

最初の2本は《ヨークタウン》の前後を外れて行く。次の3本目も辛うじて艦首の20m先を外れて行った。

 

 

「魚雷3本接近中!」

「総員衝撃に備えろ! 応急隊は準備せよ!」

 

 

 

 しかし4本目の魚雷は、左舷側で護衛についていた《シムス》級駆逐艦《ハンマン》後部に命中した。水柱が上がった瞬間に、一瞬閃光が見え次いでオレンジ色の爆炎が上がった。恐らく、魚雷か対潜爆雷のどちらかが誘爆したのだろう。《ハンマン》は艦の後部がちぎれて分断され、水柱が消えると《ハンマン》が分断された後部から、急速に沈んで行くのが見えた。

 

「《ハンマン》沈みます!」

 

 

《ハンマン》が沈んで行くが、何もできる事は無い。魚雷2本が《ヨークタウン》の前部と艦尾に向かって突進して来ているのだ。他の艦の事を考えている余裕は無い。

 

 

数十秒後まず前部格納庫付近に、1本目の魚雷が直撃した。魚雷はバルジ(装甲)をぶち破り爆発し、格納庫に海水が流れ込んだ。周囲の予備機が爆発し火災も発生した。

 

 

 直後艦尾に最後の魚雷が……

 

(なんだ最初の魚雷より、衝撃が小さいぞ?)

ノイマン達は、衝撃が1本目の魚雷より小さい事に気付いた。

 

「後部甲板より艦橋へ、2本目の魚雷は命中寸前に爆発しました。」

 

 

日本の《九三式酸素魚雷》は命中すれば、大型艦でも1本で大破できる。速力と破壊力更に、発射距離も米海軍の魚雷に勝っている。しかじ、高い波などが魚雷前部に当たるとその衝撃で、信管が起爆してしまう欠陥があった。

 

 

「敵潜水艦の第2撃に警戒しろ。手の空いている乗員は応急隊の支援に向かえ」

シャーマン大佐は、再度の攻撃に備え左舷側の見張りを厳重にするように命じた。それ以外の乗員で手の空いている乗員は、応急隊を支援させ消火や、浸水阻止に加わらせた。

 

 

 

「敵潜水艦がまた撃って来るかも知れないから、左舷側を見張るぞ」

「りょうか……」

 

 

 ラムソンが応答した直後、東の方から轟音が響いて来た。慌てて東の方を見ると、10km彼方の駆逐艦の艦首から水柱が上がったのが見えた。その水柱が消えない内に、今度は戦艦《インディアナ》の艦首にも魚雷命中した事を示す水柱が上がった。

 

 

「別の潜水艦が居るぞ!」

 

 

 

《伊-19》は魚雷再装填をしようとしたが、直ぐに複数の駆逐艦と、近くを飛んでいた対潜哨戒機が殺到して来たので、追撃は断念し退避に入らざるを得なかった。《伊-19》は3時間以上の爆雷攻撃を生き延びて生還した。《インディアナ》被雷から、別の潜水艦が潜んでいると判断し、対潜攻撃が分散してしまった。実際は、《ヨークタウン》を外れた魚雷が、そのまま10km彼方の《インディアナ》に到達し命中したのだが、合衆国側がそれを知るのは戦後の事になる。

 

 

午前8時

 

空母《サラトガ》

 

 

 ハルゼーは朝食にホットドックを食べ、コーヒーで流し込んでいた。

 

「緊急電です!」

 

 

 

「どうした、プリキュアでも来たか!」

 

 

 

「発《ヨークタウン》艦長フレデリック・シャーマン大佐 《ヨークタウン》は敵潜水艦の雷撃を受け魚雷1本命中。更に艦尾至近距離で魚雷暴発。直撃は免れるも、舵機室浸水で舵反応悪化せり。更に爆発でスクリューシャフト損傷の可能性あり。最大速力20ノットに低下。艦隊への合流は困難と考える」

 

 

更に、別の潜水艦により戦艦《インディアナ》にも魚雷命中と付け加えられていた。電文を読んだハルゼー中将は、天を仰ぎたくなった。

 

最初から戦力で日本軍に劣っているのに、(日本側はプリキュア込み)味方空母艦載機の内、25%が消えてしまった。《インディアナ》は、最新の対空砲を多数装備しておりこれの離脱も痛い。

 

「《ヨークタウン》と《インディアナ》には、サンフランシスコに引き上げるように伝えろ」

 

 

 ハルゼーは通信参謀に、損傷を受けた艦に撤退命令を出させた。

周囲を見ると、艦橋士官や兵士が不安そうな表情でこちらを見ている。

 

 

「レディYは、急に二枚目野郎とデートでシスコに帰るらしいから、こっちには来られないそうだぜ」

それを聞いた乗員達は、思わず吹き出してしまった。

 




《ヨークタウン》被雷のシーンは彼女と、空母《ワスプ》沈没の史実ネタを合わせてあります。

《ヨークタウン》ミッドウェー海戦で、反撃を受け大破。翌日《伊ー168》の魚雷攻撃を受けて沈没。この時《ハンマン》も巻き添えで沈没。

《ワスプ》1942年9月15日に、ソロモン海で《伊-19》の魚雷4本命中し沈没。この時外れた残りの魚雷が、10キロ離れた所にいた戦艦《ノースカロライナ》の艦首に命中。修理の為に数か月前線を離れる事になった。

1 元ネタはairraid on pearlharbor x this is not drill(真珠湾空襲さる。これは演習ではない)昭和16年12月8日の真珠湾攻撃開始直後に、パトリック・ベリンジャー少将が全海軍部隊に向けて発信した電文。

2 ミッドウェー作戦(史実)では、実際に起きた。

3 《リシュリュー》級戦艦の2番艦 姉は艦これに実装。


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番外編 チコの部屋スタプリ版前 

 新年おめでとうございます(遅いw)キョエちゃん
「今からひかるにクイズを出します」
ひかる
「どんなクイズかな?」
キョエ
「大河ドラマに関するクイズ。令和生まれのひかるには難しいと思うので、特別にスマホで調べる事を許可します」
ひかる
「平成生まれだよー。でもそれなら何とかなりそう。じゃキョエちゃんクイズを出して」
キョエ
「昭和最後に放映された、大河ドラマのタイトルは?」
ひかる
「ええーーっと、(中略)武田信玄だー! ミキプルーンの人が主演なんだね」
キョエ
「ブブー、不正解です。バカー!」
ひかる
「そんな筈は無いよ! キョエちゃん嘘つきは詐欺師の始まりだよ」
キョエ
「詐欺師じゃ無く泥棒だよ。じゃ1989年のカレンダー検索して。表示されたらカメラに1月の部分を見せてね」
ひかる
「元日が日曜日なんだね。……確か昭和64年の1月7日に昭和天皇が崩御されて、次の日から平成に……しまったー」
キョエ
「全国のお茶の間の皆さん、これがひっかけクイズに見事にかかった可哀想なJCの画です。春日局は22年ぶりに元日に初回が放映されたんだよ」
ひかる
「元日はまだ昭和だね。でも去年の11月に、2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」が始まるどころか、始まる前に消し飛ぶかもしれない大事件が起きたよね」
キョエ
「キョエは顔面蒼白になったよ。カラスなのに」
ひかる
「その時に、大河ドラマの放映が延期になった前例として、春日局の事が書いてあったよ」
キョエ
「それ初回じゃ無くて、第2話が延期になったって事」
ひかる
「1月1日の次は8日だけど、天皇崩御で1週間延期されたって事なんだね。昭和64年って7日しか無かったんだけど、全国ではいろんなドラマが有ったんだろうね」
キョエ
「悲しい事件が起きました」
ひかる
「確か誘拐殺人事件が……酷いね」
キョエ
「それ映画で現実じゃ無いよ。全国で子供達のお年玉が、親に回収されると言う悲しい事件が」
ひかる
「確かにそれは悲しい事件だね」
キョエ
「ひかるは昭和64年ってどんな思い出があるの?」
ひかる
「お正月だからお説料理食べて……って生まれてないよー。で、キョエちゃんは何かあった?」
キョエ
「キョエはずっと寝ていたのでキオクニゴザイマセン。バカー」






 

徳川時代の大名のランク

 

1 徳川本家と御三家(尾張・紀伊・水戸)

2 親藩(徳川家一門)福井藩や松江藩

3 譜代大名     徳川家が未だ三河にいた頃からの家臣

          本多とか酒井とか榊原とか 幕府要職に就任できる

4 外様大名    関ヶ原以降に徳川家に臣従 仙台藩とか加賀藩

          領地は江戸から遠い。幕府要職には就けない。

          木曽川治水をさせられた島津藩みたいに、

          過酷な工事をさせられることも多い。       

          ただし、将軍家から特別な信頼を受けて

          縁組で譜代大名と同格の待遇を受ける藩も。

 

 

ルルルールルルールルル(徹○の部屋BGM)

 

 

チコ

「今日はチコの部屋に、スター☆トゥインクルプリキュアの皆に来て貰いました」

「キラヤバ―」

「ルンッ」

「よろしくお願いします」

「ニャン」

 

チコ

「映画スター☆トゥインクルプリキュア_星のうたに想いをこめて 大好評だったわね。ユーマちゃんとの感動的な展開だったわよ。

最後のひかるの台詞が良かったって、キョエちゃんも言ってたわ」

ひかる

「ありがとうー」

 

チコ

「でも、キョエちゃんは映画終盤の展開に言いたい事があるんだって」

えれな

「えっと、何か疑問でもあるのかな?」

チコ

「終盤で、ユーマちゃんが悪いお星さまになりかけていた時、襲って来たトレジャハンターとかと戦闘になっていたわね?」

ユニ

「戦いっていうか、同士討ちしてたような気が」

 

チコ

「背後の方では、凄まじい……プリキュア作品では見た事が無いような宇宙的激戦だったわね」

ララ

「流れ弾が飛んで来たルン」

チコ

「宇宙戦艦ヤマトとか、銀河英雄伝説の戦闘シーンみたいなエフェクトが表示されていたわよ。あれに一切気付かない人類どうなのよ?

宇宙軍作るとか言っているトラ○プ、月の裏側に軍事基地作るとか言っているイ某国。あの宇宙大戦争に気付かないようでは1000年早いばかーって、

キョエちゃんは言ってたの」

 

まどか

「えっと、何かのステルス技術とか」

ひかる

「きっとキラヤバな技術があるんだよ」

チコ

「まあ、そういう事にしといてあげるわね。じゃそろそろ本題に。今年終盤だけど、プリキュアでは過去のプリキュアはともかく、本編のプリキュアが死亡したりする展開は流石に無いわね。二次創作とか、薄い本とかピクシブの、R-18Gタグ付きイラストはともかくとして」(1)

ユニ

「本編でそれをやったら、大炎上必至ニャン」

 

ララ

「マナは最終回で一回死ぬという構想が有ったと聞いたルン」

チコ

「でも安易な奇跡な展開だという事で、採用されなかったそうね」

ひかる

「でも、魔法少女が死んでしまう作品もあるとか」

 

チコ

「マミさんショックのあるあれね。2013年に、ドキプリ映画と叛逆の物語は同日公開だったんだけど、見る順番を間違えた親子連れ多数を地獄に叩き込んだ

そうよ」

えれな

「チコちゃんが生まれる前の話なのに、何で知っているのかな?」

チコ

「カネオ君に聞いたの。所で、プリキュア以外にもいろいろ秋の映画が有ったけど、何か面白いのあった?」

ララ

「天気の子ルン!」

 

チコ

「あれ公開日7月20日ごろだって。真夏の映画だってよ。設定も真夏だし秋映画じゃありません。ちなみにチコは、引っ越し大名を見に行きました。原作にはないチャンバラシーンがあって、

高〇さんがノリノリで、戦ってた」

エレナ

「確か、超高速参勤交代の監督さんの新作だよね」

チコ

「そうみたいね。でもでもあの作品は完全にオリジナルで、主役のお殿様は架空の人ね」

まどか

「引っ越し大名の藩主は、実在の人物で6回も国替えさせられたそうです」

 

ひかる

「でも最後はハッピーエンドなんでしょまどかさん?」

まどか

「確かにそうでしたけど、史実では最後の引っ越しから数年で病死してしまうそうです」

ララ

「およよよよ」

ユニ

「引っ越し疲れが出たのかもね。哀れニャン」

チコ

「でも、国替えや減封ならまだましよ。改易じゃないんだから」

 

ナレ(AI)

「改易……なんと恐ろしい言葉でしょうか。江戸時代200以上あったとされる大名家にとって、改易即ち領地ボッシュートは死刑宣告に等しい。

藩主はおろか藩に仕えるお侍さんは、全て失職します。農民と商人さんとかは次の藩主か、幕府代官に期待しましょう。名君が来てくれるかもしれませんよ」

 

チコ

「改易の大半は、初代徳川家康から三代将軍家光の頃に行われているのね。潰しに潰してます」

ユニ

「改易になった大名は、敗者復活とか無いの?」

チコ

「完全に元に戻るという事なら、ほぼ無いみたい。でも皆無という事でもないみたい」

 

 

ナレ

「チコちゃんの言う通り、改易された後で完全復活した大名も少数ですが存在します」

 

立花宗茂       筑後柳川13万国→関ヶ原で西軍加担で改易→一旦1万石の大名に復帰し、元和(げんな)6年(1620年)筑後柳川10万石に復帰

丹羽宗重(むねしげ)加賀小松10万石→関ヶ原で西軍加担で改易→一旦1万石の大名に復帰し、陸奥二本松10万石に。

 

チコ

「お江戸から近い所でも、復活できた例があるわよ。はい、この写真に注目」

ララ

「桜がきれいルン!」

えれな

「お花見スポットとしても、有名なお城って事かな」

ひかる

「テレビで見た記憶があるよ。何処のお城だったかな」

まどか

「これは、小田原城でしょうか?」

 

 

チコ

「はい、まどか正解」

ユニ

「ういろうと、かまぼこで有名な町よねニャン」ジュルリ

ひかる

「泥棒はダメだよ!」

ユニ

「盗んで無いニャン!」

 

えれな

「小田原藩のお殿様も、関ケ原で西軍に加担して没収されたの?」

まどか

「小田原は重要な場所だと思います。多分徳川家の重臣を配置したと思いますので、関ヶ原は無関係では?」

チコ

「関ケ原からおよそ15年後に、小田原藩主大久保忠隣(ただちか)さんは、徳川家内部での派閥争いに巻き込まれて、改易になってしまいましたとさ」

 

 

 

AI

「しかし、幸運にも大久保家はおよそ70年後、相模小田原10万石に返り咲く事が出来ました」

ユニ

「故郷に戻れてよかったわね」

チコ

「めでたしめでたしって、言いたいけど戻るのは100年後くらいに、なった方が幸福だったかも知れないのよ」

ユニ

「故郷に帰れたことが不幸だと言うの! チコに何が解ると言うの!」

ララ

「お、落ち付くルン」

ひかる

「ダメだよ、チコちゃんは5歳だよ」

ユニ

「何を言ってるの! あれの中の人はおっさ」キーン(音声の不具合で、ユニの不規則発言は録音に失敗したよ。バカー BYキョエ)(2)

 

まどか

「でも、ユニの言う通り故郷に帰る事が良くなかった何て事は、無いと思います」

エレナ

「それとも、この後小田原藩は天変地異に襲われるとか?」

チコ

「悲しいけれど、それが史実なのよ。しかも何回も」

 

 

AI

「チコちゃんの言う通り、この後小田原は、何度も大災害に遭遇してしまうのです。小田原に帰還した17年後の1703年11月に、発生した元禄大地震で

大きな被害を受けてしまいました。その4年後の1707年10月に、発生した宝暦地震で被害が出ました」

ひかる

「確か江戸時代に発生した、南海トラフ地震だよ」

ララ

「駿河湾などで、津波で大勢の犠牲者が出たと、AIから聞いた事があるルン……」

まどか

「その次が、150年後の安政南海地震です。二つの大きな地震が、32時間の時間差で発生したそうです」

ユニ

「立て続けに、大地震が起きたとは確かに悲惨と言えるわね」

 

元禄大震災の小田原藩の被害 小田原藩の所領は 相模国の西部(神奈川県)駿河(静岡県)東部と伊豆半島の一部

 

死者

 

小田原城下  845

相模国    793

駿河国    38

伊豆     743

 

家屋の被害(全半壊と火災消失)

小田原城下  1575

相模国    6625

駿河国     855

伊豆      485

 

川崎から小田原の間が特に被害が大きかった。更に房総半島から熱海にかけて津波被害も甚大。全体の犠牲者は20万人を超える。

(シリーズ藩物語 小田原藩)

 

 

チコ

「4年後の1707年10月28日に、駿河湾を震源に宝永地震が発生したのね。この時にも小田原には津波が襲来しました」

 

全国の犠牲者数 推定5000人~2万人

 

 

 

AI

「しかし最大の悲劇は、地震発生からおよそ50日後の12月10日正午前に発生しました。富士山が300年ぶりに大噴火したのです」

 

 

えれな

「今で言う御殿場市周辺が、噴火で最も被害を受けたと本で見た事があるわ」

 

チコ

「被害は、小田原の城下町にも被害を出したみたい。火山灰が酒匂川に流れ込んで、洪水被害が起きたのね」

まどか

「流れ込んだ火山灰で、川が浅くなって少ない雨でも、洪水になってしまったんですね」

AI

「さらに、田畑に火山灰が大量に降り積もり、収穫が出来なくなってしまいました」

 

チコ

「小田原藩の財政では自力復興不可能なので、現在の御殿場市付近6万石を幕府に返上してしまったの」

 

ひかる

「でも、そういうときこそ助け合いだよ」

ララ

「トモダチ作戦ルン!」

ユニ

「今年の台風被害でも、全国からボランティアの人が来ていたわ」

 

 

チコ

「幕府が、全国の諸藩から48万両の復興資金を集めました」

えれな

「江戸時代のドラえもん募金、多分強制だから違うね」

まどか

「でも。お金も必要です。これで復興も早まりそうですね」

チコ

「うち24万両をが、徳川幕府がピンハネして、勝手に使われたみたい」(3)

 

AI

「どうやら衝撃の余り、きらやばーすら出ないようですね。小田原藩が噴火被害から完全な復興を果たすまで、およそ80年が必要でした」(4)

チコ

「話脱線してしまったねえ。まあ、最終的には復興できたんだからまあ良しとして貰わないと。大抵の藩は改易後復帰出来なかったんだからね」

ユニ

「他の大名は、その後どうなったの?」

AI

「子供や、親戚が一万石以下の旗本として存続という形で、なんとか家の名前だけは残る事も、少なくないみたいです」

 

チコ

「徳川家譜代で、ご先祖様に大きな功績があった場合には、処罰が軽くなる事もあるみたい」

 

ララ

「改易されたお殿様はどうなるのルン?」

AI

「他の藩に軟禁……座敷牢みたいな所に入れられたのでしょう」

チコ

「改易された理由によっては、切腹させられる事も」ドシュッ(5)

 

ひかる

「はわわ、痛そうだよ」

まどか

「大丈夫です。即座に介錯人が止めを刺したそうです」

えれな

「ひぃいいいい」

チコ

「えれなは、ホラー映画以外に、サスペンスとかのシーンも苦手みたいね。今度血糊とトマトソースを持って、観星町にお邪魔しようかと思います」

えれな

「お願いだからやめて!」

 

 

AI

「では次は、お取り潰しの主な理由について説明しましょう。主に3つの理由で改易となりました」

 

1 政治的な物

2 お家騒動や、藩主の不祥事

3 ??

 

ユニ

「政治的ってどういう事ニャン?」

AI

「大半は、関ヶ原の戦いで西軍加担した大名ですね。有名な所では、備前・備中(岡山県と兵庫県)の大大名で西軍主力だった、宇喜多秀家は備中57万国を没収され、八丈島に流刑になりました。

他に、改易まではいかなくても毛利家や上杉家が、所領の7割ほどを没収されました」

 

チコ

「それと、常陸国……今の茨城県の源氏の名門佐竹家は、55万国から半分くらいにされた上で、今まの秋田に国替えになりました。えーとその理由はと……」

まどか

「関ケ原の戦いに、直接参加はしていないんですが、石田三成と親密だったことに加えて、江戸に近い常陸国に外様大名が存在する事に、徳川家が不安を感じたと言う説が有力です」

チコ

「ちょっと、チコの台詞取らないでよ。その処分が不満だったのか、領内の美女美少女を全て秋田に連れて行ってしまったとさ」

ひかる

「じゃ、それが今の秋田美人なの?」

チコ

「そういう説もございます。美女と美少女がいなくなった茨城県は、現在日本さ……」

えれな

「それ以上はいけない」

 

 

AI

「1615年の大坂夏の陣で、豊臣家が滅亡しその翌年4月に、初代将軍徳川家康が亡くなります。その数年後、安芸備後(現在の広島県)50万石の大大名、福島正則が突如改易されます。

福島家は、関ケ原で東軍主力として活躍し戦後尾張清州22万国から、安芸広島50万石に加増となりました」

ララ

「福島正則は、豊臣秀吉の忠臣だと聞いたルン。それなのになんで家康の味方になったルン?」

チコ

「この人、石田三成がとにかく大嫌いなのね。まあコナンの赤井さんと、安室さんみたいな感じなの。関ケ原で東軍に参加した豊臣系の大名達は、とにかく石田三成が大嫌いなの。そこを上手く家康が付けこんだという説が一般的ね」

 

AI

「福島正則は、裏切りを警戒された為に大坂の陣では、江戸城の警備を命じられて戦闘には参加していません。その後豊臣家滅亡の後家康が亡くなる直前に、武家を統率する武家諸法度が作成されました」

エレナ

「お殿様とかがやってはならない事を、規則化した法案みたいなやつだよね」

 

 

1 大名は許可なく婚姻してはならない

2 勝手に城を新造したり、修理してはならない

3 領内に逃げ込んだ咎人(罪人)を匿ってはならない

 

AI

「福島正則は、2番目に引っ掛かってしまったのです」

チコ

「1619年に、広島で大雨が有ってお城の石垣が崩れてしまって、それを修理したら武家諸法度違反で改易になってしまったのね」

ユニ

「申請書は、出さなかったのかしら」

ひかる

「石垣の修理位なら、出さなくても良いと思ったんじゃないかなあ」

まどか

「ほうれんそうは大切です」

 

チコ

「表向きはそれが理由なんだけど、豊臣恩顧の大名を消しておきたかったみたい。葵三代では本多正純に修復の許可申請を出していたけど、その時はもう正純の権力も大きく低下していて、無意味だったと言う展開だったわね」

えれな

「なんだかかわいそうな気もするね」

 

AI

「正則は、泥酔して些細な事で家臣を手討ちにして、翌朝酔いがさめた時にはその事をすっかり忘れていた。加増されて安芸広島に入った時に、悪い風が吹いたと言って

水夫を殺害した。更に幼少の頃にも大人を殺害したと……」

 

ララ

「ただの鬼畜ルン!」

ひかる

「死刑でいいと思うよ」

エレナ

「過去の殺人で切腹で良かったんじゃないかな」

 

AI

「他に、将軍の権威を見せつける為の改易もありました。1681年に改易された越後高田藩が有名です」

まどか

「高田って、上杉謙信の居城春日山城が有った町でしょうか?」

チコ

「春日山城よりちょっと南にあるみたい」(5)

 

AI

「高田藩は、徳川一門の松平光長が藩主でしたが、10年程前に長男が病死した後に、新たな後継者を誰にするかで藩を二分する大騒動に発展してしまいました。

チコ

「一旦幕府が裁定を下したんだけど、負けた方が納得しなかったのね。ちょうどそのころ4代将軍家綱が病死して、舘林藩主だった綱吉が将軍になったのね。負けた方が老中を介して、

真偽のやり直しを求めた所、綱吉が自ら陣頭指揮で審議し前の処分が覆って、切腹になったみたい」

ユニ

「執念が実ったと言う事ニャン」

 

チコ

「勝った方も、藩の政治を乱したとされて八丈島に島流しに。その一週間後に藩自体も改易となりましたとさ」

ひかる

「将軍の権威を見せつける為って言ってるけど、将軍様は武家の頂点なんだから、わざわざ権威を見せつけるような事しなくても良さそうなのに」

 

 

AI

「綱吉は本来なら将軍になれませんでした。綱吉は三代将軍家光の4男で、家光死後に館林藩主に出されました。もし家綱に、後継者の男子がいれば館林25万石の

藩主として、その生涯を追えたでしょう。家綱に後継者が無く、更に上2人の兄も亡くなっていたので、5代将軍になれたのです」

ララ

「立場は弱かったと言う事ルン?」

チコ

「京のお公家さんを将軍に担ぎ出そうと言う動きもあったみたいよ。この時綱吉を支持した一人が、水戸藩主徳川光圀、つまり黄門様」

ユニ

「そういえば綱吉って、メリー・アンと気が合いそうね」(6)

 

 





後編は今週中には

1 18歳以下は見てはだめだよ(BY泉こなた)
2 ガチです。ちなみにキョエちゃんの声優は国家機密並みの管理体制で、MCの岡村氏ですら知らないそうです。
3 6万両以外は横領されたとの記録も。〇本以上のブラック
4 幕府に返上した領地は40年後に返還
5 切腹すら許されなかった藩主がいます。島原の乱を引き起こした松倉勝家(島原藩4万石)暴政で反乱を引き起こした責めで、島原の乱鎮圧後5カ月後の7月に、江戸で斬首刑に。藩主の死刑は何例かありますが、泥棒みたいに打ち首にされたのはこの一例のみ。
5 北の直江津市と内陸の高田市が合併して現在の上越市に。
6 犬公方ですからw 徳川家で兄から弟に将軍位が映ったのはこの時のみ。


艦これ冬イベ 新規追加ドロップ船入手0で断念 ;;


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番外編後編


 ようやく「麒麟がくる」第一話放映。不届き者のせいで2話分減るそうです。(尤も五輪で5回休み)


 

AI

「では次に、2のお家騒動や藩主の不祥事による、改易について説明します。今解説した、越後高田藩もきっかけは後継者を決める際の、お家騒動なので2番にも該当します」

まどか

「山形の名門最上家が、お家騒動でお取り潰しになったと、何処かで聞いた事が」

チコ

「まどかは物知りねー。最上家を大きくしたのは最上義光って人。お家騒動が起きた10年程前に、お亡くなりになってます」

 

ララ

「伊達政宗の叔父さんルン! 妹の某全国看護師会会長の人がお母さんルン」

えれな

「ララ、何処で知ったの?」

ララ

「AIに、視聴率が高いドラマが見たいと言ったら、独眼竜政宗を見せられたルン」(1)

 

AI

「2代藩主は、3年後に病死してしまい長男が13歳で藩主になったんですが、その後お家騒動が発生してしまうんです」

ひかる

「13歳だと、藩主のお仕事はまだ無理なんじゃないかな」

ララ

「幼少過ぎるので、反対派は義光の四男を藩主にするべきだと、(当時30歳 山野辺義忠)主張したみたいルン」

 

 

AI

「その後、お家騒動が起きて結局幕府により改易となってしまいました。その後山形藩は、不祥事で左遷された大名の転封先となってしまい、次々と大名家が入れ替わったために、発展が阻害されたという見方もあります」

チコ

「四男さんは10年程幽閉されたのちに、水戸徳川家の家老になりました」

ひかる

「山野辺さんって、おじいちゃんが見ていた時代劇にいた気がする」

 

チコ

「この紋所が目に入らぬかぁー」

ひかる

「水戸黄門に出て来る、口やかましいご家老様だ。いつも黄門様の事を心配してるんだよ」

ユニ

「人の歴史も面白いわね」

まどか

「最上家は、山形藩を失ったけど水戸黄門に一人の名脇役を生んだのですね」

 

AI

「お家騒動だと、お殿様が幼少だったり病気だったりしたのが、原因である事も多く同情できる点もあるのですが、次は全く同情できないケースです。殿様のせいでお取り潰しになったケースです」

チコ

「一番有名なのは、やはり忠臣蔵の発端となった松の廊下事件かしら」

 

まどか

「1701年(元禄14年)12月に、赤穂藩主浅野内匠頭(あさの たくみのかみ 本名浅野長矩)が突然、吉良上野介に切りかかって負傷させた事件です。松の廊下で起きた為に、松の廊下事件と呼ばれる事が多いみたいです」

ララ

「偉い人の接待役だったルン!」

 

 

チコ

「またざっくりと言ってくれちゃって。勅使……京都におわします当時の天皇陛下から徳川家に勅使、即ち朝廷の使者の方を接待するお役目だったの。吉良はその時のマナーを伝授する役目だったのね」

ひかる

「お師匠さんと、お弟子さんみたいな感じだったんだね」

ユニ

「電柱でござるとか言いながら、切りかかったとか?」

AI

「それは止めようとした幕府の役人の台詞です。電柱じゃ無く殿中です。お城の中ですと言う意味です」

ララ

「本当は何と言ったルン?」

 

エレナ

「確か、この前の遺恨覚えたかとかのはず」

まどか

「この前の恨みを、晴らしてやると言う意味でしょうか」

AI

「襲撃の動機は、賄賂を断ったので吉良からパワハラを受けたとか、無視されて恥をかかされたとか色々ありますが、解明されてはいません」

ひかる

「おじいちゃんが、赤穂は質の良い塩を塩田で生産していたけど、吉良さんからそのやり方を聞かれても教えなかったから、恨まれていたとか聞いた事があるよ」

チコ

「その説は昔からあるけど、現在は否定されているみたいね。将来、何処かから詳細な資料とかが出て来る可能性もあるから、それに期待すると言う事で」

 

AI

「本当に、パワハラみたいなことがおこなれていたのなら、浅野内匠頭僅かには同情すべき点があるのかもしれません。では次は、同情の余地は全く無い改易事件を紹介しましょう」

チコ

「名付けて寒ブリの恨み事件」

 

AI

「稲葉紀通(いなばのりみち)は、伊勢国田丸藩主(三重県度会郡玉城町 県南東部)4万5千石の長男として生まれました。紀通は、美濃斎藤家の重臣、稲葉一鉄の曾孫です」

えれな

「頑固一徹っていう言葉あるけど、その人が語源なのかな?」

AI

「現在はその説がかなり高いみたいですね」

チコ

「一鉄さんは、藤吉郎……のちの豊臣秀吉の誘いで、斎藤家を見限り織田家に仕官してます。今年の大河ドラマ「麒麟がくる」でも、明智光秀と重要な局面で関わるかもしれないから、名前を覚えておいてね」

 

AI

「稲葉紀通は、僅か4歳で父親が病死し藩主となります。大坂の陣で初陣を飾った後、1617年に摂津(大阪府)中島藩に国替えとなり、1624年に丹波福知山藩に再度国替えとなりました」(2)

チコ

「福知山は明智光秀の領地で、現地では今でも名君として慕われているから、もし行く機会が有っても悪口とか言わない方が良さそうな。さて、京都県北部の地図を見て、何か気付く事は?」

ユニ

「ニャン」

チコ

「はいどうぞ」

 

ユニ

「伊勢にいた時と違い、福知山は内陸ね。港が無いから新鮮なお魚が入手できないニャン」

チコ

「その通り、内陸の町だから新鮮な魚は手に入りにくいのね」

ララ

「江戸時代の人は、新鮮な魚が食べられないルン?」

ひかる

「内陸部の人は、それこそ年に一回のごちそうだったと聞いた事があるよ。それも塩漬けされたお魚だったんだって」

 

AI

「福井県南部の鯖のへしこ等が代表例ですね。塩分が多いので食べる際は食べ過ぎに注意してください」

えれな

「田舎の人は冬場は塩分が多い保存食が多く、都市部より寿命が短かったと何処かで見た気がする」

まどか

「直接関係は無いかもしれませんが、上杉謙信の死因は、お酒の飲み過ぎと塩辛い梅干しの食べ過ぎによる、高血圧ではないかという意見もあるみたいです」

チコ

「でもね、塩分けちると保存ができないからねー。止むを得ないのよ。」

 

AI

「現代なら、スーパーや鮮魚店で新鮮な魚を手に入れられますが、江戸時代はそうはいきません」

チコ

「1648年……徳川家光時代の終わりの頃に、家臣と雪見酒を楽しんでいたら、つい寒ブリが食べたくなったんだって。そこで、福知山の北にある丹後宮津藩7万8千石藩主京極高広に対し、寒ブリ100匹送ってくださいとお手紙書いたのね」

 

ひかる

「100匹は多すぎるよ」

ユニ

「私でも食べきれないわよ」

まどか

「家臣の方にも、食べさせようとしたんじゃないでしょうか」

ララ

「良いお殿様ルン」

 

 

チコ

「でも、京極高広さんはブリ100匹は多すぎるだろと思ったのね。幕府老中や将軍様への付け届け、つまり賄賂に使うんじゃないかと考えたのね」

えれな

「ブリは縁起が良い魚だからそう思われても、仕方ないかもね」

ララ

「どういう意味ルン?」

ひかる

「ブリは、成長すると名前が変わるの。だから出世魚って呼ばれるんだよ」

ユニ

「そうだとしても、賄賂に使うと言う断定する理由でもあったのかしら」

 

AI

「稲葉紀通は、若いころから気に入らない家臣を手討ちにしたり、不正の疑いがあった役人をまともに、調べもせずに処刑したりしていたのです」

まどか

「暴君じゃないですか、よく改易されませんでしたね」

AI

「大叔母が斎藤ふくなので」

チコ

「ちょっと、その本名じゃ判らないって。春日局って言わないと」(3)

ひかる

「将軍家光のお母さんだ」

チコ

「お母さんじゃ無くて、乳母……まあ育ての親みたいなやつね。実際家光にとって母親みたいなものだし」

まどか

「確かに家光は手を出しにくい藩ですね」

 

AI

「結局京極家は寒ブリ100匹は渡しましたが、全てのブリの頭部を切断して渡しました」

えれな

「ひぇえええ」

チコ

「もう賄賂には使えないねえ」

まどか

「斬首や討ち死にを連想させます」

 

AI

「紀通は、激怒して寒ブリを庭に投げ捨てたそうです」

ユニ

「なんてことを! 私によこすニャン!」

ララ

「そのあとジャンプマンガみたいに、殴り合いになったルン?」

チコ

「この写真を見て下さい」

まどか

「古いライフルですか?」

ユニ

「300年くらいの火縄銃かしら。博物館で見たにゃん」

エレナ

「宇宙にもああいう古い銃があるんだ」

 

 

 

ひかる

「腹いせに、領民を撃ったの? 許せない!」

ララ

「頭に来たルン!」

チコ

「自藩の領民は撃ってないと思われます」

まどか

「そうなんですか、少しだけ安心しました」

えれな

「まどか、チコちゃんは自分の藩に住んでいる、領民は撃っていないとしか言っていない」

 

ひかる

「まさか、宮津藩の領民を……」

ララ

「鬼畜ルン!」

えれな

「外道……」

 

ユニ

「でもどうやって、宮津藩の人を判別したのかしら?」

AI

「宮津藩のある宮津市から、京都や大坂へ向かうには宮津から現在の北近畿丹後鉄道宮福線沿いに南下し、一旦福知山藩領へ入り大坂へは、現在の福知山線沿いに南下して三田や宝塚を経由して向かいます。京都も福知山から、山陰本線沿いに東に向かうのが最短です」

ひかる

「ここで網を張っていたら、どんどん捕まっちゃうよ」

まどか

「関所を臨時に設置して、北から来る人を宮津藩の人かどうか調べたんだと思います。江戸時代は何処かのお寺の檀家になる事を義務付けられていたので、お寺の書類と照合すれば、判別可能です」

ララ

「迂回路は無いルン?」

AI

「あるには、あると思います。宮津から西に進んで、兵庫県の豊岡から和田山へ進み、そこから現在の播但線沿いを南下して、姫路を経由して大坂に向かう事は出来ます。でも現代なら車や鉄道があるから、迂回しても何時間かくらいの差だけど、昔は基本徒歩だから何日も余分に必要になってしまいます」

えれな

「その分余計に宿泊費とか、食費が掛ってしまうから宮津藩の商人さんとかには死活問題ね」

 

チコ

「時には、遠眼鏡で自ら標的を見つけ殿様自らが鉄砲で撃ったとの記録もあります。その後、一説によると飛脚……江戸時代の郵便職員を撃ったんだけど、間違えて他の藩の飛脚を射殺してしまったみたいね。そしてついに、幕府から謀反として討伐命令が出たのね」

まどか

「大坂の陣みたいに、幕府の大軍が福知山に来たんでしょうか?」

AI

「徳川家は基本ケチなので、近畿地方の諸藩に出動命令が出たのではないでしょうか」

 

チコ

「福知山藩の動員兵力は1500人くらいだから、大したことは無いわよ。最後はやけで鉄砲を乱射して、その後切腹して果てたみたい。別の書簡だと銃で自殺したとも伝えられますとさ」(4)

ユニ

「宮津藩にはとんだ災難ね」

AI

「京極高広も実は、かなりの暴君で領民は高い税や年貢に苦しんだそうです。およそ20年後実の息子との間に、深刻な対立が生じ改易となります」

チコ

「まあ、似た者同士という事ね。時代が違えば二人は親友になれたんではなかろうかと」

全員

「絶対無理!」

 

 

AI

「では最後に、一番多い改易の理由についての解説をします」

チコ

「一言で言えば、後継者不足。いつの世も後継ぎがいないと言う事は多いみたい」

チコ

「立花宗茂が柳川藩10万石に戻れたのも、柳川藩の前藩主が後継者の男子がいなくて、改易されたからなのね。宗茂って人望もあったみたいだけど、運にも恵まれていたのね」

 

 

AI

「江戸時代の改易理由では、やはり無嗣断絶が多いですね。昔は今のように簡単に病気が治ったり、予防接種もありませんから簡単に、乳幼児が死亡してしまいます。事実徳川家康も、何人かの子供を病気で幼少の時に失っています」

ひかる

「おじいちゃんが、関ヶ原で西軍を裏切った小早川秀秋が二年後に病死したけど、後継者がいないからお取り潰しになったって教えてくれたな」

AI

「小早川秀秋は、裏切りの功績で旧宇喜多秀家の所領備前・備中55万石に栄転しますが、2年後に21歳で病死します」

まどか

「関ケ原で自害した、大谷吉継の呪いですね」

えれな

「それ多分大河ドラマの演出だから」

チコ

「徳川葵三代再放映 チコも毎週見ています。小早川秀秋は……裏切り行為について、良心の呵責に耐えられなくなっていたのかもね NH〇の番組で幼少期から、アルコール依存症になっていたみたいだから、かなり健康を害していたみたい」

 

AI

「無嗣断絶の有名な例を先に言われてしまいました。ではちょっと改易理由ではなく、改易になった年の一覧を見て下さい。何か気付きませんか」

ララ

「ほとんどが、江戸時代の初期に集中しているルン!」

えれな

「徳川幕府が成立して数年後から、およそ一世紀の間に集中していますね」

ユニ

「その後は急激に少なくなるわね」

ひかる

「最後の70年は4人しかいないよ」

まどか

「最後の林忠崇(はやしただむね)さんは、徳川幕府に忠義を尽くし、明治維新政府に反抗したので改易されたので、19世紀は3人だけです」

チコ

「最後のお殿様ね。ヒストリアでやってました。昭和16年1月(1941年)まで長生きをされました」

 

ユニ

「初期にお取り潰しが多いのは、後継ぎがいない理由のは別にして、やはり見せしめとか徳川家の威信を見せつけるためかしらニャン?」

 

チコ

「江戸時代の初期は、旗本の不良軍団と町人の不良軍団の間で殺人事件みたいな事件や、犬や猫で刀の試し斬りみたいな事をする不届き物もいたそうなの」

えれな

「悪法と言われる生類憐みの令は、戦国時代の名残の様な物騒な事件を無くしたいと、五代将軍綱吉が考えたからという意見もあるみたいだよ」

AI

「元禄文化もそのような乱世の風潮が、収まってきて花開いたのです」

 

チコ

「綱吉が将軍になる頃までに、大量の藩が改易になってます。改易理由の見本市状態なのね」

 

幕府内部での派閥抗争

下野宇都宮     15万5千石 本多正純

土井利勝等の権力闘争に負け、将軍暗殺未遂事件の容疑で改易(宇都宮釣り天井事件)

 

殺人事件

水野忠胤(みずのたたざね) 三河(愛知県東部)水野藩1万石

茶会を開いたらその席で、殺人事件が発生

 

お家騒動

堀 忠俊(ほり ただとし)越後高田藩45万石 1609年

家老同士の抗争激化で改易

 

権力の誇示

加藤忠広(かとうただひろ)肥後熊本藩52万石 1632年

有名な加藤清正の息子 直前に大御所徳川秀忠が死去し、名実と共に三代目将軍となった家光が、「生まれながらの将軍」の力を見せる為に粛清。

現在は暗愚説や、家臣同士の対立説悪化も。

 

チコ

「こんな調子で、どんどん藩を改易して行ったのね。当然その藩にいる家臣も全て解雇」

ユニ

「全員失業ニャン」

AI

「その結果、多数の浪人が江戸や大坂に集まり治安が悪化しました」

えれな

「確か幕府から改易された藩の、浪人を自分の藩に仕官させてはならないという命令も出ていたとか」

ララ

「悲しいルン」

 

ひかる

「それじゃ生活できないよ。剣術の達人なら何とかなりそうな」

まどか

「もう戦もありませんから、多少剣術が出来てもダメでしょうね。宮本武蔵位強ければ、幕府が仕官させてくれるかもしれませんが」

ユニ

「怪盗になって、悪党から小判を盗んで困っている人にばらまくニャン」

ララ

「義賊とか言うルン」

チコ

「いやいや江戸時代の有名な盗賊は、ほぼ捕まって打ち首か磔か、もしくは長谷川平蔵に斬られて終わりだから。まあ困って犯罪者になった浪人もいそうね」

えれな

「武士を諦めて、町人や農民になってしまった人もかなりいるんじゃないかしら」

ララ

「皆幕府を恨んでいそうルン」

 

チコ

「そしてついに大事件がおき……起きそうになります」

AI

「1651年4月に、三代将軍家光は48歳で世を去ります。その後若干11歳の家綱が4代将軍になりました。その最中ある幕府転覆計画が進行していました」

チコ

「静岡出身の怪しげな学者、由比正雪と槍の達人丸橋忠也とその一味が、江戸や京都でテロを起こそうとしました」

 

1 風の強い日に、江戸で放火で火災を起こし慌てて、登城して来る幕府老中等を殺害し、将軍を拉致する

2 正雪達は、久能山(静岡市)東照宮を占領し、家康と共に埋葬された金銀財宝を奪う

3 大坂城を制圧し、京都の天皇を拉致する(5)

 

ララ

「失敗しそうな気がするルン」

ユニ

「そんな都合良く、成功するはずが無いニャン」

AI

「丸橋の弟子が、幕府に通報して呆気なく露見しました」

ひかる

「始まる事すらなかったよ」

えれな

「無茶な計画を知って、怖くなったのかな?」

まどか

「そのお弟子さんは、いわゆる潜入捜査官みたいな方だったのでは?」

チコ

「どっちもありそうな話よね」

 

AI

「丸橋忠也は幕府の役人に逮捕。正雪達は駿府で宿泊した家を役人に包囲され全員自害して果てました」

ひかる

「大失敗だったんだね」

チコ

「そうなんだけど、前代未聞の大事件で幕府高官も流石にこのままでは拙い、という事に気付いて改易やり過ぎたんじゃね? という結論に達しました」

 

ララ

「浪人が多すぎるから、減らさないとならないルン。再雇用ルン」

ひかる

「確かに再び何処かの藩で、雇ってくれたらみんな助かるね」

AI

「幕府は、浪人の雇用を諸藩に奨励し更に、後継者がいなくての改易になるのを減らす為に、末期養子の禁の緩和を決めました」

チコ

「簡単に言うと、後継者がいない藩主が重病になった場合、養子を迎えてその人を次の藩主にしてよいですよ。という事ね」

 

エレナ

「お家騒動とか、お殿様が事件起こしたとかは従前通り救済無しって事だね」

AI

「原則的にそうなります」

 

ユニ

「末期養子っていうけど、突然重病になったり容態が急変したらどうなるニャン?」

チコ

「死亡したと言う幕府への届を遅らせ、その間に急いで末期養子の届を出して、その後藩主が亡くなったと言う届けを幕府に出しました。WIKIを見ると、5個ほど実例があるみたいね」

 

AI

「この中で一番有名なのは、安政の大獄で有名な大老兼近江彦根藩32万石の藩主、井伊直弼(いいなおすけ)でしょうか。ちなみに大河ドラマ初代主人公は直弼です」

まどか

「子供はいなかったんですか?」

AI

「桜田門外の変で、薩摩・水戸脱藩浪人により暗殺された時点では、未だ後継者の届を出していなかったみたいです」

チコ

「一旦重傷で療養中という事にしました」

ひかる

「あれっ、歴史漫画とかだと首を討たれていた気が」

ルル

「ホラールン?」

ユニ

「恐怖映画?」

チコ

「えれながまた震えております」

 

 

1 1860年3月3日 桜田門外で、薩摩及び水戸脱藩浪士の襲撃で死亡 幕府は井伊直弼は負傷により休養と言う形をとる。

 

2 3月10日     次男を後継者として、幕府に届けが出される。(長男は既に病死)

 

3 3月28日      表向きの命日

 

4 3月末       幕府直弼の大老職を免職。死亡を公表する。

 

5 4月28日     次男が彦根藩相続することが認められる。

 

AI

「井伊家は譜代大名筆頭の名家なので、幕府が忖度しました」

えれな

「もしかして、改易してしまったら彦根藩士が赤穂浪士みたいに、水戸徳川家や島津家に報復する危険性もあったのかも?」

チコ

「石ノ森章太郎のマンガ日本の歴史には、幕府が今えれなが言った事を恐れているシーンがありました」

 

 

AI

「ではそろそろチコちゃんクイズの時間です」

ユニ

「やっぱりクイズはあるニャン」

チコ

「太陽が東から昇るみたいに、クイズはあります」

まどか

「誰が答えるんでしょうか?」

チコ

「誰にしようかな……」

チコ移動中

 

チコ

「ここはやはりひかるかな。今期のプリキュアのリーダーで、子供達の憧れのヒーロー兼ヒロインだからチコのクイズに、ささっと正解すると信じています」

AI

「実は末期養子には年齢制限があります。重病に陥った藩主の年齢に上限と下限が有りました。17歳~50歳の間であれば、末期養子が認められました」

ひかる

「つまり、子供や51歳以上の人は、末期養子がもらえないっていう事なんだね」

AI

「そういう事になります]

 

ララ

「時間稼ぎするルン。17歳まで何とか生きた事にして、養子探して幕府に届けるルン」

チコ

「16歳とか、15歳半とかならまあそれで何とかなるかも。でも、例えば10歳とかでなくなったらどうする?そうね、 5歳で前の藩主つまり父親が亡くなって藩主になって、10歳とかで病死したと仮定しましょう。流石に5年とか時間稼ぐのは無理よねー。で、それをどうやって切り抜けたのか答えてちょうだい」

ひかる

「ええと」

チコ

「では答えて下さい」

 

ひかる

「ピヨピヨピヨピヨ(中略)ピヨピヨピヨ」

ララ

「けいおんの平沢姉妹が入れ替わって、事件を起こす奴ルン? アニメの見過ぎルン」

えれな

「いやそれ二次創作の類だから」

チコ

「チッ、つまんねんやつだなあ」

 

まどか

「これが噂のチコるって奴でしょうか?」

ユニ

「じゃあ正解なの」

ひかる

「正解なの? キラヤバ―!」

チコ

「何で正解した本人が一番驚いるのよ」

AI

「ひかるは地球人の常識に当てはまりません」

 

チコ

「じゃあそろそろ例の奴いってみよう」

 

 

〇HK もしかしたらそうだったのかも劇場

 

 

 某所スタプリ藩 幼少の藩主は、重い病気だったがこの数日、回復の兆しが見えていた。

 

国家老(プルンス)

「ZZZZZZZZ……お殿様は重病だったけど、どうやら回復の兆しが見えるでプルンス。……zzzzzz」

家臣(フワ)

「ご家老様起きるでフワ!」

家老

「未だ夜明け前でプルンス。どうしたでプルンス? もしやお殿様が急逝なされたとか?」

家臣

「そのまさかでフワ」

家老

「そうでプルン……なんですとープルンス―!」

AI

「スタプリ藩〇代藩主は僅か11歳で、流行り病にて死去しました。スタプリ藩10万石は未曾有の危機に陥る事になってしまいました」

 

家老

「大変な事になったでプルンス」

家臣

「お殿様は当然ながら、未だ後継者はいないでフワ」

家老

「このままでは、スタプリ藩はお取り潰しでプルンス」

家臣

「良い考えがあるでフワ!」

家老

「何か秘策が有るでプルンスな。よくやったでプルンス」

プルンス家老襖を開ける。

 

家老

「これは切腹の用意でプルンス! 切腹は痛いでプルンス! 不祥事で改易で無いんだから、そこまでのお咎めは無いでプルンス」

チコ

「でも殉死というのもありまして」

AI

「徳川家光が死去した際には、数人の家臣が殉死しました」

まどか

「藩によっては殉死禁止令が出る事もあったそうですね」

家老

「このままでは、藩士と家族全員が路頭に迷うでプルンス」

家臣

「弟君は、たいそう健やかに育っているのに無念フワ」

家老

「兄弟だからお顔も大層似ておられて、家臣でも時折間違えそうになった……」キラーン

 

 

数か月後 キョ江戸城

 

 

幕府高官

「将軍様お成りでございます」

将軍様(キョエちゃん)

「バカー」

家老

「将軍様の拝謁を賜りまして、誠に恐悦至極でございますプルンス」

キョエ将軍

「プルンス家老、相変わらずタコかイカか、毒クラゲみたいな姿をしてんな」

家老

「ははーっ」

将軍様

「本題に入るけど、お前の所のスタプリ藩幼少の藩主が、重病で危ない言う噂が入っているけど、本当? もし死亡したらスタプリ藩は改易な」

 

家老

「確かに重病で一時は、危なかったのですが何とか奇跡的に回復しましたプルンス」

将軍様

「その病気キョエはカラ〇だからかからないけど、回復する可能性は極めて低いって聞いているよ。諸藩でも少なくない犠牲者が出ているよ。ねえねえプルンス家老お前嘘ついていない?」

家老

「滅相もございませんプルンス」

将軍

「じーっーーーー」

 

役人

「キョエ将軍様! スタプリ藩から献上品が届きました」

将軍様

「お土産―? 見たい楽しみ―、持って来て」

 

お土産を持って来た人(アイワーン)

「目録を読み上げるつーの」

将軍様

「楽しみ楽しみ」

アイワーン

「絹織物百着」

将軍様

「トキメカンワー」

アイワーン

「白磁の大皿」

将軍様

「トキメカンワー」

アイワーン

「ドジョウ100尾」

将軍様

「バカー!」バタバタバタ(嬉しそうに羽を動かす)

 

その後

「プルンス家老、多分こちらの勘違いだったみたい。めんごめんご。スタプリ藩に疑念無しと判断するよ」

家老

「ありがたきお言葉でプルンス」

将軍様

「今日はこれまで。一同大義! キョエはこれからドジョウ料理を、献上品の大皿に盛りつけて食べるね。バカー!」

 

 

スタプリ藩 江戸上屋敷

 

家老

 

「大成功でプルンス」

家臣

「うまく行って良かったフワー」

家老

「酒盛りでもするでプルンス」

アイワーン

「ちょっと待てっつーの」

家老

「何事でプルンス」

アイワーン

「安心するのはまだ早いっつーの! 弟を亡くなった兄の替え玉にしたからには、弟の存在を、無かった事にしなくてはならないっーの」

家臣

「弟君の事が掲載されている公式文章や、家臣の日記等も処分するフワ」

家老

「口止め命令も出さねばプルンス」

アイワーン

「気を付けないと、藩上役を脅迫して来る輩もいるかも」

家臣

「うっかり他人に喋ったり、秘密をネタに脅してくる人は消えて貰うフワー」

アイワーン

「お前黒過ぎ! スタプリ本編の真のラスボスお前じゃねえだろうな?」

家臣

「ご家老様は、酔うと口が軽くなるフワ」

アイワーン

「じゃご家老様禁酒」

家老

「期間は何時まででプルンス?」

家臣

「無論、死ぬまでフワー」

家老

「殺生なでプルンス」

アイワーン

「往生際が悪いっ―の」

 

ドラマ 完

 

チコ

「弟を密かに死んだ兄の替え玉にして、病気が治った事にするで正解ね」

ひかる

「露見したら拙い事になるような気もするよ」

チコ

「しかし、改易となると色々面倒な手続きも必要なのね。城の明け渡しとか改易された領地に、何処から別の藩を転封するとか」

ユニ

「見て見ぬふりをするニャン?」

ララ

「ドラマのスタプリ藩みたいに賄賂を贈ったルン? 贈賄罪ルン!」

まどか

「江戸時代に贈賄罪は無いです」

AI

「藩主替え玉をやった藩は複数ありますから、本当に賄賂を贈って、見逃してもらった藩もあるかもしれません」

えれな

「見逃す代わりに、何か面倒な仕事を引き受けさせる可能性もあると思う」

チコ

「それはありそうね。見なかった事にする代わりに、洪水で破壊された何とか川の堤防をお前の藩の金で直せとか」

ひかる

「キョエ将軍様……徳川幕府が全く替え玉に気付いていない可能性もあるのかな?」

ユニ

「実の兄弟で顔が似ていたら、そういう可能性もあると思うニャン」

まどか

「画像認証とか、DNA鑑定とか無いですから」

ララ

「学者さん達も誰も気付いていない、藩主すり替えとかもあるかもルン」

ひかる

「知っている人を密かに抹殺とか」

チコ

「秘密をネタに藩重役を脅して来た人は、小判を渡すと見せてズバー……」

えれな

「ひいいいいい」

チコ

「えれなが震えておりますので、今日はお開きにしましょう。またねー」

 

 

キョエちゃんメッセージ

「外国にワープするのは違法だから自重して。バカー! 仮病で市議会休んで旅行行って、それがニュース映像に映って、議員辞職した某議員みたいになっちゃうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





1 最高視聴率47.8%で大河史上一位。ちなみにおしんは62%ほど(イランでは8割越え)
2 wikiの記事が2行にも満たない。ガチで資料が存在しないらしい。
3 麒麟がくるで登場はあるだろうか?本能寺の変の時は8歳くらい。父親は明智光秀の重臣齋藤利三。
4 一万石辺り大体250人~300
5 当時は後光明天皇


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第43話【キュアミラクルとは関係なし】

 遂に隣の県で新型コロナウィルスの感染者が。うがい手洗いが重要です。


 

 

 

 TF-16は午前10時前に、サンフランシスコから出撃して来た増援部隊と合流した。肝心の《ヨークタウン》《インディアナ》が、潜水艦の魚雷を喰らって撤収せざるを得なくなったために、その価値は大きく落ちていた。それでも重巡《ウィチタ》、新鋭軽巡《デンバー》《モントピーリア》と《アトランタ級》防空巡洋艦《ジュノー》と駆逐艦9隻の合流は、味方将兵を勇気づけた、巡洋艦以上の船は、対空・対水上レーダーを新型に換装し、対空砲を多数装備している。

 

増備された『ボフォース40ミリ連装機関砲』は、21世紀でもまだ使用している国があるほどの、傑作対空機関砲で敵機にとっては大いに

脅威になるだろう。(ただし、プリキュアは別)

 

 

 

 

タコマ市ボー○ング社工場

 

 

 この日、不運な事にボーイング社タコマ工場では重要な会議が行われていた。次期主力爆撃機《B-29》の生産や品質管理についての会議が開催され、ボーイング社の幹部や、技術部門の責任者などを筆頭に大勢の関係者がタコマに集結していた。

ボーイング社は、1916年7月15日にウィリアム・E・ボー○ングとアメリカ合衆国海軍技師ジョージ・コンラッド・ウエスターバレットによって、シアトルで創業された。最初に作った航空機は、水上機を改造した練習機で海軍向けに700機生産し、以後のボー○ング社発展の基礎になった。

 

大型機専門というイメージが強いが、戦前は中型旅客機《ボーイング247》や、小型戦闘機《P-12》等も生産している。

 

 

 ボーイング社は、日本人にとっては光と影両方の歴史がある。闇の方は《B-17》と《B-29》で、特に《B-29》の空襲で100万人以上の

死傷者を出した。広島と長崎に原子爆弾を投下したのも《B-29》だ。

しかし、空襲で家を焼かれたり家族や友人を失った人も、その後仕事や旅行で《B-707》や《B-747》を利用した人は大勢いる。

 

 

 

 

 

 若手技術者ヤング・レンは、上司のお供で会議に参加していた。会議は一度中止が検討されたが、ボーイング社上層部に陸軍幹部から、敵攻撃目標はサンフランシスコと伝えられ、会議は予定通り開催となった。いやシアトルも空爆されるのではないかとの意見も社内にはあったが、上層部の判断で開催と決まってしまった。

遠方から来た社員や、技術者は前日夕方に到着し宿舎やホテルに泊まっていた。朝食堂で朝食を食べていると、突如空襲警報が鳴り響いた。直後は皆意外に冷静だった。

誤報か抜き打ちの避難訓練だと考えたからだ。だが数分後に、ラジオ放送で訓練ではなく本物の空襲だと知らされ大騒ぎになった。

 

 

 レン達は、食堂のある建物を出て外に避難した。工場には、万一に備え避難用の地下室は用意されていた。しかし、空襲に備えてというよりも、工場での火災事故に

備えての物だったので、耐久性には問題があった。

まず女性社員を地下室に避難させ、男性社員や労働者の一部は未だ外で空を見ていた。やがて西の空から多数の黒点が近付いて来た。レンは近くの警備員に双眼鏡を借りて、覗いた。

 

 

「あれが《ジーク》(《零戦》の米コードネーム)か、噂通りスマートな戦闘機だ」

合衆国の戦闘機には無い美しさを感じた。反対側から迎撃戦闘機が上昇して来ると、工員や社員達は歓声を送った。全てライバル会社の戦闘機だがこんな時は、関係無い事だ。

 

 

「日本の戦闘機はかなり小回りが利いてますよ」

「拙いなあ、味方戦闘機が挑発に乗せられているぞ。」

同量の社員に言われて、レンが上を見ると《P-38ライトニング》が、敵戦闘機の背後を取ろうとしているが、上手くいかない。その内に

身軽な《ジーク》に背後を取られて、あっけなく撃墜された。

 

「《ジーク》の特性を知らされていないんでしょうか?」

 

レン

「知らされていなという事も無いだろうが、初めての相手だから失念しているのかも知れない。」

 

 

 史実では、アリューシャン列島のアクタン島で、飛行可能な状態で不時着した《零戦》が捕獲されている。その調査で《零戦》の弱点が明らかになり、それを基に、米海軍は《零戦》に対する戦い方を研究した。しかし、この世界Aではそのような出来事は起きていない。ほっぽちゃんはこの世界では、《アクタン》を貰えそうにない。残念!(1)

 

 

 

 

 

 

「何だあれは!」

 

 

突然の叫び声に驚いていると、何人かの労働者が空を指差して騒いでいる。双眼鏡で彼らが指さす方向を見ると、一羽の『鳥』が新型戦闘機《P-51マスタング》と対峙している。よく見ると、鳥だと思ったがカラフルな服を着た人間で、背中に天使のような羽があり空を飛んでいる。

《マスタング》が、謎の存在に銃撃を加えるも、鮮やかに回避され逆に光の様な物体が機体を直撃し、右主翼が吹き飛んだ。パイロットが脱出した直後、その《マスタング》が、真っ逆さまに地面に向け落ちて行くのが見えた。

 

「朝だと思っていたが、どうやら未だ夜で夢を見ているんだろう。夢よ覚めろ」

レンは、全身に力を込めて夢から覚めようとしたが、全く効果が無かった。

 

 

 戦闘機隊が、離脱して行ったが数分も経過しない内に、再び敵機の大群が工場上空に現れた。今度はさっきと違い戦闘機だけでは無く、複座の爆撃機らしい機体も見える。レンの周囲では、外で様子を見ていた社員や作業員が、急いで地下室に避難を開始している。

 

 

 

 

 

 同時刻 

 

 

 高橋赫一(たかはしかくいち)少佐率いる第二次シアトル攻撃隊の内、《彗星》艦爆60機の中で、40機は航空基地の攻撃に向かわせ残り20機は、高橋少佐自身が率いてボーイ○グ社の工場に向かった。

 

「でかい工場ですね。国内の航空機メーカーの工場を見学に行ったことがありますが、こんなでかい工場は見た事がありません。《彗星》20機では少なかったのでは?」

「確かににそうだが、流石に航空基地を優先せにゃならんからな。それにしても、お前の言う通りでかい工場だな。日本のメーカーはこの工場と比べると残念だが、せいぜい町工場だろう」

 

 

 

 

 長方形の工場が10個近くも並んで立っている。普段は人で溢れているのかもしれないが、今日は人の姿は少ない。恐らく防空壕にでも避難してしまったのだろう。

工場に隣接している飛行場には、これから試験飛行でもする予定だったのだろう、爆撃機が何機か待機している。

工場の外を見ると、多数の家らしき建物が見える。工場で勤務している従業員の宿舎だろう。奥に見える少し大きな宿舎は、管理職用かもしれない。

更に従業員の福利厚生と思われる、野球場やテニスコート更には、商店や食堂らしい建物も見える。

 

 

 

(まるで一つの町だな。流石は合衆国と言うべきだろう。いやだからこそここで可能な限り叩かなくては)

高橋は関心しながら眼下に近付く、航空機工場を眺める。その時シアトル市の方角で閃光が何個も走り、黒煙が立ち上って来た。

 

「滑走路に5番(500キロ爆弾)3発命中!」(2)

「滑走路上で中型爆撃機3機破壊!」

「燃料貯蔵庫炎上!」

「敵対空砲陣地の反撃熾烈。全機注意せよ」

無線からは、続々と戦果報告や戦況報告が入って来る。シアトル近郊の、敵航空基地への攻撃は成功しつつあるようだ。

 

「敵戦闘機接近! およそ30」

機銃員の報告を聞いた、高橋が東側の空を見ると、《P40ウォーホーク》戦闘機の編隊が、接近して来るのが見えた。」

「ワシントン州の他の基地か、隣のモンタナ州辺りからの増援だろう」

 

 合衆国は、日本と比較にならない豊かな国だが物資が無限にある訳では無い。同盟国や中立国の大使館経由の情報によると、最新の戦闘機は、英本土や、最前線の北アフリカやハワイに優先的に配備されている。本土では、首都ワシントンやニューヨークがある東海岸、大規模油田があるテキサス州、軍港や産業地帯のある、カリフォルニア州は、新型機が配備されているとの事だ。

 

 しかし、西海岸でも軍事基地が少ないオレゴン州と、それ以外の州の航空隊は、旧式機が配備されている場所も多く、搭乗員のレベルも最前線よりは落ちる。との事だ。

即座に、高橋隊を護衛していた戦闘機隊が米戦闘機隊の迎撃に向かう。

 

「今のうちに工場を爆撃するぞ! 全機続け」

 

 

 

 レンは地下室に避難しようとした時、一人の女性事務員が足が竦んだのか、動けなくなっているのに気づいた。

 

 

 

(確かマリーさんだったかな)

レンは、素早く走り動けないでいるマリーを落ち着かせて立ち上がらせる。避難しようとした時、1機の戦闘機らしい機体が、工場に向け低空で迫って来るのに気付く。

 

 

レンは、マリーの腕をつかんだまま、反射的に地下室入り口とは正反対の方向に逃げた。直後日戦闘機が12.7ミリ機銃で射撃して来たが、レンが工場と正反対の方向に逃げた為に、コンクリートの破片をまき散らしただけだった。

 

(ここにいては危ない)

レンは、工場にいては危険だと判断し、敷地の外に避難するべきだと考え、マリーと共に走り出した。他にも何人かの社員や工員が敷地外に避難

した方が安全と判断したのか、二人に続くように門の外に向け走り出した。

 

 

 

 200mほど走りゲートの外に出たレン達は、社員向けレストランの店主が自前で作った、防空壕に飛び込んだ。店主が、他の避難者が逃げ込んだ後、扉を閉めて1分も経過しない内に、ヒューーーーという風の様な音が聞こえ、数秒後防空壕は、サンフランシスコ大地震みたいな揺れに襲われた。

 

 

 同時刻シアトル

 

 

 戦闘機と《彗星》《天山》隊による第二次攻撃隊は、プリキュア第二陣と共にシアトル近辺の軍事施設を攻撃していた。

 

 プリキュアと《天山》艦上攻撃機は、ファン・デ・フカ海峡やシアトルに隣接するピュージェット湾にいた米海軍と、英連邦に加盟しているカナダ海軍の艦艇

及び、輸送船やタンカー等に攻撃を開始。

 

残念ながら、戦艦や空母の様な大物はいない様だ。最大の艦は旧式化している《オマハ級》軽巡《コンコード》で、後は駆逐艦が護衛駆逐艦も含めて10隻前後

後は潜水艦を攻撃する小型艇や、湾内に潜水艦の侵入を防ぐ防潜網を設置する敷設艦の様な特務艦が、5隻ほど待機していた。

 

 

 

 1925年に完成した《コンコード》は、勇敢にも貧弱な対空火力でプリキュアに挑むが衆寡敵せず、前部7インチ主砲と煙突に直撃を受けた。

旧式巡洋艦の「無いよりはまし」な装甲を貫通し内部で爆発。《コンコード》は炎上しながら海峡内で転覆。

 

駆逐艦や小型特務艦は、5インチ対空砲や対空機関砲を撃ちまくって数機を撃墜するも、プリキュアにはかすり傷すら負わせる事も出来ず

反撃で次々と撃沈か転覆、又は大破炎上させられた。

 

 

 

ピュージェット湾や、ファン・デ・フカ海峡にいた米海軍とカナダ海軍艦船を全て片づけたプリキュアと、《天山》はピュージェット湾対岸にあるピュージェット・サウンド海軍工廠や、海軍基地攻撃を開始。

プリキュア達は、港湾作業員が逃げるのを確認してから、手始めに修理用ドックに置かれている、クレーンを破壊した。クレーンはそのまま倒れ

機関不調で、修理していた『ジョン・C・バトラー』級対潜護衛駆逐艦の船体を直撃し、艦橋が押しつぶされた。

 

 

 

 村田少佐(天山隊隊長)

「おっ、彼女達早速やってるな」

 

 星野(操縦員)

「俺達も、びしっと決めたいですね」

 

 村田

「やはり、大物はいないか?」

「いませんねえ」

 

 

 星野が湾内を見ても、最大の艦軽巡《コンコード》は既にプリキュアの攻撃で、沈没寸前だ。貨物船や輸送船も、沈没寸前か大破炎上している。

「バンクーバー付近まで北上して、カナダ海軍の船か貨物船を探しますか?」

大英連邦(3)の一員であるカナダと、大日本帝国は交戦状態にあるので、出撃前に余力有れば、カナダ海軍の船舶がいたら攻撃せよと指示されている。

 

「空母が修理中です!」

後部偵察員が、ドックで修理中の空母を発見する。

「大型空母か!」

「いいえ、中型いや1万トン級の小型空母です」

「対潜用の小型空母だな。よし、そいつをやろう」

 

 

 

 

 村田隊小隊6機は、修理用ドッグの方に進路を変えた。プリキュア達も空母に向かっていたが、天山隊を見て引き返した。

 

 

「彼女達、俺達に譲ってくれるそうですよ。武士の情けですね」

「武士の情けと言うより、戦乙女の情けだろう。ありがたく頂戴するぞ。各機に告げる、洋上ならともかく相手は陸に上がった河童だ。必ず仕留めるぞ」

 

洋上で、全速回避中の軍艦に水平からの爆弾命中率は極めて低い。だが、停止中の相手なら命中率は高くなる。爆撃コースに入った直後、ドック周辺から

散発的な高射砲の攻撃を受け、最後尾の1機が不運にも直撃弾を受けて撃墜された。

 

 

 

 

 5機の《天山》は高度3000メートルから、800kg対艦爆弾を投下し、4発が護衛空母《ロング・アイランド》』に命中した。同艦は、1941年6月に貨物船を改造した、米海軍の「対潜護衛空母第一号艦」と言える。

3発が飛行甲板、1発が艦首を直撃し、修理中で可燃物は撤去されていた為、大きな誘爆は無かったが、《ロング・アイランド》は、完全に破壊された。

「旗艦に連絡、我入渠中の対潜空母爆撃し4発命中。敵艦は完全破壊」

 

 

 

 湾内にいた輸送艦や、貨物船も攻撃を受けていた。見逃されたのは、漁船の他にはシアトルと対岸のブレマートン市や、海峡で繋がっているカナダ西岸最大の都市バンクーバー市を結んでいた、フェリーだけだった。

 

輸送艦や貨物船にも、多少は対空砲が装備されている。しかし、それを撃つ船員の多くは専門的な訓練を受けてはいなかった。

ろくに狙いも付けずに、撃った所で命中させる事は出来ない。いや、それだけならまだしも流れ弾の破片が港湾施設や、避難中の作業員に命中し無駄な犠牲者がでてしまった。重油備蓄タンク群も、プリキュアに爆破されブレマートン上空は黒煙に包まれた。





高橋少佐は実在の人物です。史実では昭和17年5月のサンゴ海海戦で戦死。キュアミラクルの中の人と、関係は無い……と思われます。

一部伏字になっているのは、規約上です。

1 ほっぽちゃん(艦これ)のイラストで、彼女が手に持っているのは、アクタン島で捕獲された《零戦》。次は次期主力艦上戦闘機《烈風》を欲しがっています。
2 250キロ爆弾=25番 800キロ爆弾=80番
3 他にはオーストラリア、ニュージーランド、ジャマイカなどが加入


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第44話「ハートシュート」

同日午前7時(ハワイ時間)

 

 

 

 ハワイでは第2ラウンドが開幕しようとしている。敵との距離が近付いた為単発戦闘機や単発攻撃機も攻撃可能となった。陸軍航空隊の他に、オアフ島エワ飛行場の海兵隊航空隊も参加する。キンメル艦隊の6隻の《ボーグ級》護衛空母艦載機も、発進準備を行っている。

 

搭載機は、各《F4Fワイルドキャット》12《TBFアベンジャー》」12だが6隻合計すると144機で、日本空母《飛龍》2隻分となり軽視はできない。戦闘機が《ワイルドキャット》なのは、短い護衛空母の甲板からは、新型戦闘機の発艦は困難だからだ。史実でも《ワイルドキャット》の改良版が、護衛空母の搭載機として終戦まで活躍した。

 

 

 

 

午前8時 エワ海兵隊基地から発進した、《シーリベレーター》が敵艦隊を発見し、味方に通報した。

 

「敵艦隊発見 北緯26度1分西経157度1分 正規空母5中型2小型3 戦艦6。針路南東、速力20ノット3隊に別れている」

直後プリキュアの攻撃を受けているとの急報の直後に、通信が途絶した。

 

 ショート大将(在ハワイ陸軍司令官 陸軍航空隊司令も兼任)直ちに、攻撃隊に発進命令を出した。

 

戦闘機《P-38ライトニング》25、《P-40ウォーホーク》20、中型爆撃機《B-26マローダー》20、《A-20ハボック》20、 重爆《B-17》30、《B-24リベレーター》35

海兵隊航空隊からは《F6Fヘルキャット》50、《SBDドーントレス》爆撃機、40《TBFアベンジャー》雷撃機20《シーリベレーター》重爆撃機30が発進した。

 

 

 

 

 同時刻キンメル大将は、護衛空母の航空隊にも発進命令を出した。

各護衛空母から、《ワイルドキャット》戦闘機10機と、《アベンジャー》12機を出撃させる事になったのだが、攻撃隊が発艦を開始した矢先……

 

「《ブロック・アイランド》被雷!」

見張り員の絶叫が、司令部内にに轟いた。キンメル達は、双眼鏡で護衛空母隊の方角を確認する。

 

 護衛空母隊列最後尾にいた、《ボーグ》級護衛空母8番艦、《ブロック・アイランド》左舷甲板に水柱が上がっている。どうやら3発以上直撃した様だ。

程なく甲板で待機していた、雷撃機の航空魚雷が次々と爆発。航空機のガソリンにも引火し、消火活動が行われる時間すらなく、後世の表現を用いるならば、1980年5月に起きた『セント・ヘレンズ山大噴火』(1)みたいに、船体が吹き飛び

海中に消えた。生存者は、被雷直前に発艦した2機の戦闘機搭乗員だけだった。

 

 

 

午前8時30分

 

 

合計390機のオアフ島陸海航空攻撃隊と、角田中将率いる第三航空戦隊艦載機+プリキュア連合軍の激闘が開始された。しかし、米側護衛空母艦載機隊は、潜水艦雷撃による空母轟沈の混乱で集結が遅れ、しばらく到着が遅れる見込みだ。

米戦闘機隊の内、半数は日戦闘機隊とプリキュアにに向かい残り半数は、攻撃機の周囲を守る様に展開した。

 

 

 

「敵の新型機だ。南鳥島を攻撃した奴かも知れんぞ」

 

南鳥島守備隊の証言によると、空襲を掛けてきた敵戦闘機は新型機だった。との事だがその機体の外見と一致している。生存者の一人は、以前ウィスキー工場で働いていたが、

「洋酒を発酵させる樽みたいな形」

と言っていたと聞いた。彼の証言通り、見た目は不格好だ。

 

 

 

 

 渡部大尉は近くにいた新型戦闘機に、20ミリ機関砲を発射する。気付いた敵機は急降下して逃げて行く。

その寸前に何発か命中している筈だが、敵機は火を噴かない。

 

 

「かなり硬そうな機体だな。まるで鉄工所だ」

 

 

その時、新米搭乗員が別の《ヘルキャット》戦闘機に追いかけられているのが見えた。後方から追いすがって12.7ミリ機銃を執拗に撃っている。

 

 

 

「今助けるぞ」

 

味方を追尾している《ヘルキャット》戦闘機が、近距離を通り過ぎた瞬間に真横から操縦席に20ミリ機関砲を発射。風防ガラスをぶち抜いた弾丸が、米搭乗員を射殺し、敵機は火を噴く事無く真っ逆さまに墜落して行く。追撃されていた味方機は

無事な様だ。

 

 

 

 戦闘開始から数分は、日本側搭乗員が敵新型戦闘機に戸惑った事から、米側有利に進むかと思われたが、程なく次第に日本側に押され始めた。

《F6F》戦闘機は《零戦64型》に対し、速度では30km/h勝り、防弾装備や上昇力でもかなり勝っている。敵が日本機だけなら、史実通り大活躍できただろう。

 

しかし、日本側には『朝鮮戦争時のジェット戦闘機』(2)級の速度が出る、プリキュアが居た事が《ヘルキャット》にとっては最大限の不運だった。

 

 

 《Me-262》は米爆撃機との戦闘で、速度差が大きくて攻撃が外れたり、タイミングを逸したり

という事も少なくなかったそうだ。更に、飛行中にエンジンの片方が故障する事も少なくなく、レシプロ戦闘機にあっけなく撃墜された事もある。更に離陸の直後や、着陸直前に米陸軍戦闘機の奇襲で撃墜されてしまう事もあり、《Me-262》の離着陸の時は、飛行場上空を従来のレシプロ戦闘機隊で護衛するという、情けない事態になった。

 

残念ながらプリキュアにはそのような欠点は無く、水平飛行ならまだしも、機動力は著しく劣る《Me-262》と違い、プリキュアは変幻自在な動きで米戦闘機を翻弄して来る。

 

 

 

 

 《零戦》に対し有利に戦っていた米戦闘機隊だったが、戦闘開始後ほどなくしてプリキュアが戦闘に参加すると、次第に恐怖心から冷静さを欠いてしまい、浮足立った所をや戦闘機や対空砲に撃墜される機体が続出した。

その結果、余裕が出て来た《零戦》隊は、一部が攻撃機に対する銃撃を開始。

 

 

 低空から接近していた雷撃隊が攻撃を受ける。《アベンジャー》は、12.7ミリ機銃を主翼に2丁後方旋回機銃と後下方に各1丁装備しており、日英の雷撃機に比べると遥かに重武装だ。しかし、重い航空魚雷を搭載している時に、戦闘機に攻撃された場合、回避する事は難しい。進路がずれてしまった場合元に戻すのも難しく、低空を飛行しているので、無理な機動をすれば海面に墜落してしまう。

 

 

《アベンジャー》隊は、必死に機関銃を撃ちまくり攻撃目標に向かおうとしたが、半数が撃墜され残りは、適当に魚雷を投下して逃走した。

 

 

 

 

 直後クラレンス・マクラスキー少佐率いる《ドーントレス》40機が上空に到着していた。

 

 

「敵戦闘機は、《アベンジャー》隊に気を取られているぞ! この隙に空母をやるぞ!」

マクラスキー少佐は、傍受していた味方戦闘機隊の無線交信から、プリキュアの単語が聞こえてこない事を、一瞬疑問に感じるも直ぐに無視した。

 

史実のミッドウェー海戦では、低空から侵入して来た《デバステーター》雷撃機隊を壊滅させて、安堵した僅かな瞬間に、マクラスキー少佐率いる《SBDドーントレス》隊が、急降下爆撃を敢行し《赤城》《加賀》《蒼龍》の三空母を被弾炎上させた。それはわずか数分間の間とされる。(3)

 

 

 

 

 

マクラスキーの脳裏には、被弾炎上した敵空母の姿が脳裏に浮かんだ。だが実際に目にしたのは被弾炎上した友軍機だった。

 

 

「クソッ! プリキュアの待ち伏せだ!」

 

マクラスキーは、《ジーク》隊は、油断していたのでは無い。信頼すべき盟友に上空の守りを託していたのだ、と言う事にようやく気付いた。

 

 

 腹を立てても意味は無い、少佐は12.7ミリ機銃をを撃ちまくれと命じる。編隊が撃ちまくる《ドーントレス》の後方機銃は、かなりの脅威となる。史実ではガダルカナル島上空で、名搭乗員坂井三郎氏に重傷を負わせている。

だがプリキュア達は、いともたやすく機銃弾を回避して攻撃して来る。

 

 

急降下に入っていれば、時速700kmは出せる。突っ込んで来る急降下爆撃機を対空砲で狙い撃つのは難しい。だが、急降下に入る前は重い爆弾を抱えて自在には動けない。まな板の上の高級鯛みたいに美味しく、プリキュアの餌食にされてしまう。

 

 

4割近くが撃墜された時少佐は決断した。このままでは全滅は避けられないだろう。護衛の戦闘機も自分達を守るのが限界で、こちらを助ける余裕は無い。

 

 

 

「全機爆弾を投棄して逃げろ!」

 

 

爆弾を投棄して身軽になった、《ドーントレス》は全機バラバラに逃げ出した。集団で逃げるのはこの場合かえって危険だ。纏めて全滅してしまう危険が高い。40機の内離脱に成功したのは、隊長機を含め16機だった。

 

(プリキュアめ! 戦死者の仇は必ず取るぞ! その日まで決して死なんぞ)

 

 

 

 ホールマーク中尉率いる《B-25ミッチェル》爆撃機10機が到着した時、戦闘は酣(4)になっていた。戦場を見ると、落ちて行くのは多くは米軍機だ。無線機からは、悲惨な悲鳴が多数聞こえる。

 

海面を見ると、駆逐艦らしき1隻がまぐれ弾でもあったのか洋上に停止している。更に別の1隻が、命中弾で火災が発生し速度が落ちている様だった。

 

 

 

(これでは昨日の繰り返しでは無いか。だが敵を放置して何もしない訳にはいかないだろう)

 

 ホールマーク大尉は、プリキュアに対する怒りと、いかに戦闘集団の少女と言っても恐らく10代半ばの少女たちに、戦いに参加させる帝国海軍に対する怒りと、プリキュアに無謀な攻撃を繰り返さなければならない自分達への不甲斐なさが過る。

 

 

 

 その時、敵戦闘機とプリキュアらしき影が一部南西に向かって移動しているのが見えた。

 

「キンメル提督の艦隊から発進した護衛空母攻撃隊でしょう。遅れてますが何かあったのかも」

「俺達みたいに、出がけに何かあったのかもな?」

 

 

 

護衛空母艦載機は、発進時の護衛空母被雷轟沈による混乱の遅れだが、ホールマーク中尉達は、倉庫から格納庫に爆弾を運搬していた、運搬車が突然パンクして動けなくなり爆弾搭載が遅れた。

そのお陰か他の小隊より発進時間が遅れ、ホールマーク隊は未だプリキュアには見つかってはいない。だが、そういつまでも発見を免れはするまい。

 

 

 

 

「機長! あれを見て下さい」

操縦士が、前方の一角を指さす。ホールマークが、前方を見ると2隻の中型空母の周囲に、プリキュアが居ない事に気付いた。遅れて来た護衛空母隊を迎撃する為に分散し、一部に僅かな間隙が出来ていた。上空に戦闘機はいるが、プリキュアはいない。

 

 

 

 

「あの中型空母に向かうぞ!」

 

 

 

その中型空母は、《隼鷹》型中型空母だ。元は日本郵船の《橿原丸》《出雲丸》として建造開始されたが、建造費用の6割を帝国海軍が負担している。最初から、有事に備え航空母艦に改造する前提で建造が開始された。速度は、25.5ノットで正規空母に比べるとかなり遅い。だが、最大53機を搭載可能で2隻では、《飛龍》と小型空母1隻の合計よりも多く、帝国海軍にとっては重要な戦力だ。

 

 

 

 

 あと1500メートルで敵に気付かれた。上空にいた戦闘機が慌てて高度を下げて来た。空母と周囲の護衛艦も慌てて対空砲撃を開始。

 

現代なら、慌てて射撃しても高確率で命中できるだろう。だが、この当時は多少はレーダーから得られる情報があるにしても、担当者の腕と勘が頼りだ。それでも、運が無かったのか《ミッチェル》の一機が、主翼を分断され落ちて行った。

 

 

 

 

(早く早く飛べ、プリキュアが来てしまうぞ)

ホールマーク中尉は、500km/h以上の速度で飛んでいる筈が、急に時間の感覚がゆっくりになった気がした。

 

「プリキュア接近中! 距離800!」

「爆弾投下!」

 

 

各機450kg徹甲(対艦)4発ずつ爆弾を投下する。爆弾は中型空母に吸い込まれていく……

 

 

キュアハート

「させないよ!」

 

 

 

 プリキュア達は、爆撃機よりも投下した爆弾を狙って来た。ハートや氷や光の盾や剣圧で、投下した爆弾が次々と破壊されるか、空母の上から弾き飛ばされた。

 

「な! 何だと……」

ホールマークは怒りで震え、今にも口から洪水の如くプリキュアに対する罵声が流れ出ようとした瞬間、素晴らしい光景が見えた。

 

 

 

 ホールマーク機が投下した、450キロ爆弾がギリギリでプリキュアハートシュートの迎撃を潜り抜け艦首と、前部飛行甲板に吸い込まれていった。

飛行甲板に落ちて行った爆弾は、前部昇降機を直撃貫通し格納庫内で爆発。

艦首に命中した爆弾は、キュアハートの迎撃で信管が狂ったのか、命中した瞬間に爆発してしまった様だ。

 

しかし、艦首と前部昇降機付近で甲板が大きく破壊され火災も発生した。二次誘爆は残念ながら起きず撃沈には至らない可能性が高いが、航空機の発着は不可能だろう。

 

 

 

 

「基地に打電! 我敵中型空母に爆弾2発命中」

しかし喜んでいる訳にも行かない。一旦爆炎を避ける為に分散したプリキュア達が

集結し《ミッチェル》隊を追撃して来る。数分後安全圏に離脱出来たのは、ホールマーク中尉機を含め、3機だけだった。それを見た、ホールマークも一瞬の興奮が直ぐに冷めてしまった。

 

 

 空母炎上が僅かに敵を混乱させたのか、直後《B-24》が投下した爆弾が駆逐艦1隻に命中し同艦は轟沈。護衛空母から飛来した雷撃機が発射した魚雷2本が、防空巡洋艦《石狩》に命中。《石狩》は洋上に停止し、30分後に放棄が決定された。

 

 

 





1 ワシントン州スカマニア郡にある火山。1980年5月に火山噴火で山頂部が吹き飛び、57名死亡。他にも橋や鉄道も被害を受けた。

2 ソ連《ミグ15》米《F-86》くらいか 速度は両者とも1100キロくらい

3 魔の5分間

4 たけなわ  クライマックス


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第45話「演習に非ず」


プルンス
「新銀河英雄伝説の、フレデリカさんは美人プルンス」
ララ
「中の人はテンジョウの人ルン」
プルンス
「しかしこんな美人を未亡人にするとは、地球教の連中は絶……」
ユニ
「それ以上はいけないニャン」


午前11時 カウアイ海峡北沖

 

 

前方警戒の米駆逐艦から、「敵機多数発見」との急報が届いた。

角田中将は、敵攻撃隊を撃退した後逃げ帰る敵機を追尾させた。

 

 

攻撃隊は

 

《加賀》 《零戦》18 《彗星》15《天山》15

 

《雲龍》《天城》 各《零戦》12《彗星》12《天山》12

《蒼龍》《飛龍》 《零戦》14《彗星》12《天山》』12

《隼鷹》 《零戦》9《彗》』9《天山》6

 

 

 

 

 キンメル艦隊外縁部にいた、《リバモア級》駆逐艦DD-647《ソーン》は、11:30に艦隊に向かって来る敵攻撃隊を発見した。《ソーン》は既に総員戦闘配置に付き、戦闘準備を終えている。

 

 

 

「敵機が射程に入り次第攻撃開始だ!」

艦長ハウエル・ エイリー少佐は、マイクで攻撃準備を命じる。

《リバモア級》は5インチ両用砲5門と、20ミリ対空機関砲6門を装備している。艦長が射撃用意を命じた直後、乗員が敵の動きに気付いた。

 

 

 

「敵に動きがあります。二手に分かれる模様です!」

「本当か?」

 

艦長が北東の方角を確認すると、確かに敵機が二手に分かれるように動いている。

半数は艦隊の方角に向かって来るが、半数は艦隊の対空砲火の射程を迂回する様に飛んで行く。プリキュアも全て、艦隊を迂回して南東の方角に飛行して行くのが見える。

 

 

「旗艦に通信! 敵攻撃隊は、二手に分かれる模様! 半数は迂回して真珠湾基地を攻撃するものとみられる。尚、プリキュアは全員真珠湾に向かっている」

 

《ソーン》から緊急電が発せられるのと同時に、残り半数の攻撃隊が向かって来る。

 

「敵機距離3000!」

「ファイヤー」

 

《ソーン》を含む周囲の駆逐艦や、巡洋艦から対空砲撃を開始。《ソーン》も

5インチ両用砲を発射するが、敵編隊は乱れる事無く主力部隊目指して飛んで行く。

敵機は戦艦を無視して、護衛空母に向かって来る。護衛空母の戦闘機は10数機しかいないが、果敢にも敵機に向かって行く。

 

 

《ボーグ》級護衛空母《ナッソー》

 

 

「日本機が来るぞ! 対空砲撃用意!」

イタリア系移民の、艦長マリオ・ドノスティ大佐は、向かってくる敵機を見て舌打ちをする。

 

《ボーグ》級護衛空母は、艦前方に5インチ両用砲を1門ずつ装備している。更に、ボフォース40ミリ対空砲14門と、20ミリ対空機関砲14門を装備していてかなりの重装備だ。

 

「《ジュデイ》(《彗星》のコードネーム)護衛の巡洋艦を爆撃!」

《彗星》隊は、まず《アトランタ》級対空巡洋艦2番《ジュノー》を爆撃。5インチ砲と40ミリ機関砲の激しい砲撃を受け、4番機が右主翼を破壊され、錐もみ状態で海面に突っ込み、更に5番機が燃料タンクに被弾し、炎上しながら墜落した。しかし、残りの4機は怯む事無《ジュノー》に500キロ爆弾を投下。

 

 

 

 爆弾は《ジュノー》の前部主砲に命中し火災が発生。更に6番機が爆弾を投下して、離脱に入った直後に異変が起きた。

 

6番機の投下した500キロ爆弾は、後部にある魚雷発射管をに命中。《アトランタ》級は駆逐艦隊の旗艦の役割もあったため、米海軍の巡洋艦としては珍しく、魚雷発射管を装備している。

 

爆弾は甲板を貫通し、魚雷庫で爆発。直後凄まじい爆発が起き、《ジュノー》の姿は黒煙で見えなくなった。

 

爆弾を命中させた《彗星》も衝撃波で危うく失速しかけたが、辛うじて墜落を免れた。

爆発が収まった時、《ジュノー》は後方から急速に海面下に沈みつつあった。

 

 

《ブルックリン》級軽巡《サバンナ》も《彗星》の爆撃を受ける。《サバンナ》は1938年に完成し、大西洋方面に配備されていたが、開戦後の44年2月に、西海岸サンディエゴに回航された。

 

 

1発目は、艦尾にある水上機カタパルトに命中。カタパルトは引き剥がされ海中に転落した。更に水上機と、搭載用ガソリン庫が炎上。

直後に、右舷中央部にある5インチ対空砲に2発目が直撃し、爆発で周囲の対空機関砲が破壊された。

 

 

更に近くにいた駆逐艦数隻も爆撃を受け、500キロ爆弾2発被弾した、駆逐艦《モンセン》は大きく左舷に傾いて、停止してしまった。

 

 

 《天山》隊30機は、《彗星》隊がこじ開けた対空砲火の穴から、輪形陣の内側に侵入して来る。

 

「敵雷撃機接近! 機数4! 距離2000!」

 

 

「攻撃開始」

 

 

《ナッソー》が対空射撃を始めたのとほぼ同時に、他の4隻の《ボーグ級》護衛空母も、《天山》に対し射撃可能な対空砲を総動員して射撃を開始した。

 

《ナッソー》には、《天山》4機が向かって来る。魚雷投下寸前に《天山》1機が、海面に突っ込み飛沫を上げた。

 

「敵機魚雷投下!」 

《ナッソー》は18ノットしか出ないが、機関をフル回転させ回避を図る。1本は辛うじて回避するが、魚雷2本が命中した。

 

 

「前部魚雷庫に延焼の恐れあり!」

「兵員室で火災!」

「発電室に浸水!」

「後部格納庫で火災」

 

 

直後浸水と火災で発電機は停止して停電。更に格納庫での火災は広がりつつある。

 

 

 

「前部魚雷庫に向かった、消火隊との連絡が途絶しました。」

 

 

「残念ながら、消火も排水も不可能だろう。総員退艦を命じる」

マリオ大佐は、沈没は免れないと判断し総員退艦命令を出す。

 

 直ぐに乗員は、退避する為に甲板に集合した。乗員の中には、何処かにぶつかって骨折でもしたのか他の乗員に支えられている人も居る。又火傷を負っている乗員も少なくない。

後方にいる姉妹艦《コア》も炎上し停止している。こちらも既に乗員に退船命令が出ているのか、乗員が続々と海に飛び込んでいる。《ナッソー》《コア》は、幸運にも未だ乗員が退船する時間的余裕があった。

 

 

《ナッソー》の前方3千メートル先で、同じく炎上していた姉妹艦《コパピー》が、突如大爆発した。恐らく航空機用ガソリンか航空魚雷に引火したのだろう。

 

「アチッ!」

《ナッソー》乗員や、周囲の護衛艦の乗員複数が皮膚に熱さを感じた。黒煙が治まると、海面には《コパピー》の僅かな残骸が浮かんでいた。無論乗員の生存は考える事も出来ない。

 

 

その直後後方から爆発音が聞こえ、乗員が一斉に後方を見ると、頃最後尾の姉妹艦《プリンス・ウィリアム》が、浸水により横転し退去途中の乗員大半を、道連れに沈んで行くのが見えた。

 

 

同時刻 オアフ島

 

 

オアフ島は、北緯21度28分 西経157度59分に位置する。面積はハワイ諸島の中では、ハワイ島マウイ島に続く、第三位の面積を持つ。(国後島とほぼ同じ)

19世紀末に、ハワイ王国を併合した合衆国政府は1920年代から、オアフ島の軍事拠点化を進行した。更に、観光地としての需要も高まりホテルなどの建設も相次いだ。

 

 

1940年7月合衆国政府は、反対論を無視してカリフォルニア州サンディエゴ軍港に在った太平洋艦隊司令部を、オアフ島に移転させ、対日戦争準備を進めた。真珠湾基地には艦船の停泊地だけでは無く、大規模な修理を行えるドッグも完備されている。

 

 

航空基地は、ホイラー基地、ヒッカム基地(いずれも陸軍航空隊)エワ海兵隊航空隊基地があり、更に小規模な航空基地も何個かある。更に真珠湾には、大規模な水上飛行艇基地もあった。

 

 

 

 しかし、今迎撃に飛び立った戦闘機の数は少ない。二日間の戦闘で大半が撃墜され、帰還した残存機も多くが損傷を受けていた。 それでも残っていた30機と、急遽マウイ島やカウアイ島から増援させた戦闘機20機が、迎撃に飛び立った。迎撃機は、極めて不利な条件だが勇戦。10機以上の敵機を撃墜した。

 

特にカウアイ島から援軍に来た、《P-40》戦闘機3機は雲を巧みに利用して、《天山》隊を奇襲し一気に3機を撃墜する戦果を挙げた。

 

 

だが、勇戦しても多勢に無勢。程なく駆逐され、僅かな生存機はマウイ島方面に逃走した。

空母機は、対空砲火を掻い潜り、ホイラー基地とヒッカム基地を爆撃。滑走路のみならず格納庫及び整備場も破壊され、逃げ遅れた爆撃機も破壊された。

 

 

 

プリキュアチームは真珠湾軍港より北西に在る、エワ海兵隊航空基地を攻撃。

 

基地防空隊はM1/90ミリ高射砲や、各種対空機関銃や、対空機関銃を装甲車やジープの車体に搭載した対空自走砲で、激しく抵抗した。更には対空攻撃に使えない、トンプソン・サブマシンガンや、M1ガーランド小銃。更には、M1903スプリングフィールド小銃、即ち1903年に採用された、旧式ライフルまで持ち出して撃ちまくった。

 

が、時速950kmで自在に飛ぶ彼女達に命中させる事は不可能だ。攻撃の巻き添えを喰らって戦死する者や、恐怖心から、持ち場を捨てて逃げ出す兵士も多かった。

 

 

 

 

 プリキュアの別チームは、真珠湾軍港を攻撃した。優先すべきは米海軍の目となる、飛行艇・水上機基地だ。しかし肝心の水上偵察機や、飛行艇の姿は無かった。湾内に戦艦や空母が居ないだろう事は、事前に予測していたが輸送船や、タンカーも残っていない。恐らくは数日の間に避難したのだろう。

 

 

 

真珠湾に居た、水上機や飛行艇を避難させたのは、真珠湾第二哨戒航空隊司令官のパトリック・ベリンジャー少将だ。

少将は、速度の遅い水上機や飛行艇の損失を回避する為に、事前に退避命令を出した。最後の飛行艇が離脱したのは、攻撃が開始される僅か20分前だった。

 

 

攻撃が開始された後、ベリンジャー少将は海軍省と、海軍作戦本部に対し歴史に残る通信をした事で知られる。

 

「真珠湾空襲さる。これは演習ではない」(Air raid. Pearl Harbor - this is no drill.)

一連の攻撃で、オアフ島の主要飛行所は使用不能に陥り米側は、制空権を喪失した。

 

 

「ここからおまけにゃん」

 

きらやば米国面

 

 

プルンス

「アメリカは、核爆弾や核ミサイル以外にも、たくさんの核兵器を開発したプルンス」

 

原子力潜水艦(《ロサンゼルス級》・《オハイオ級》

原子力空母(《ニミッツ級》)

核バズーカ(《ディビー・クロケット》)(1)

核弾頭付魚雷

 

プルンス

「アメリカは、原子力爆撃機や原子力戦車も開発しようとしたプルンス。

原子力戦車は、航続距離が6000キロを計画していたプルンス。爆撃機の方は《B-36》を改造して、小型原子炉を装備する予定だったプルンス」(2)

 

「きらやばー!」

 

プルンス

「でも、原子炉から放射能が漏れて乗員が死んでしまう危険性に気付き、程なく計画は中止されたプルンス」

 

「きらやばー!」

 

 

 

1 ガンダムのジオン軍のザク初期型が装備していた、核バズーカーのモデルかも。

ルウム戦役後の南極条約で廃止。

2 戦車の移動距離は通常300キロほど

 





 新型コロナウィルス感染者が出たので、もうすぐ図書館も閉鎖されそうな予感。

タイトルの電文は、史実でも開戦初日に発信されています。ベリンジャー少将は真珠湾奇襲の責任は取らされずに済んだみたいです。


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第46話 「アメリカ版カミカゼ」


新型コロナウイルスで、図書館が全て閉鎖。書店にも休業要請来るかも。我が県は東京に次ぐ感染率。


 

 

午後2時10分

 

 

 ハルゼー艦隊から発進した、攻撃隊は雲を利用して低空から敵艦隊に接近していた。

 

だが、敵艦隊までおよそ半分の距離まで迫った時、編隊左舷外縁部にいた《エセックス》攻撃隊の《TBFアベンジャー》の機長が、自機の北西側を雲に隠れる様にして南下する、機影を発見した。

 

 

 

「あれを見ろ、日本機だ」

機長のヘンリー・ハワード中尉が、乗員に敵発見を伝える。

 

乗員達が北西の空を見ると、雲の僅かな隙間から反対方向に向かう敵機の編隊が見える。

 

「プリキュアは見えるか?」

「確認します」

ハワード中尉は、後席の機銃員サム・シーマン上等兵曹に敵編隊に、プリキュアが混じっているか確認する様に命じる。

 

後部機銃員は、注意して北西の方角を見る。すると、敵機の速度に合わせる様に飛んでいる鳥の様な飛行体

が見える。

 

「プリキュアらしいのが見えます」

「数は判るか?」

「雲に隠れていますから、全体の数は判りませんが私は3人確認しました」

シーマンは機長に、確認できたプリキュアらしき数を報告する。恐らく雲の向こうに、他のプリキュアが居る可能性は高そうだ。

 

 

互いの攻撃隊は、相手に対し一切の動きを見せる事無くすれ違って行く。ここで戦闘機が戦いを挑めば、燃料や機銃弾を浪費し肝心の護衛が出来なくなる。

 

 

(敵戦闘機は攻撃して来ないだろうが、プリキュアは違うかも知れない。戦闘機の機銃弾には限りがあるが、プリキュアの力に残弾というものは存在しないかも知れない)

 

 

だが、中尉の懸念は杞憂で終わった。《零戦》もプリキュアも襲撃しては来なかった。自分達も敵機やプリキュアの姿は、僅かな雲の切れ間から目視しただけだ。日本側は気付いていないのかもしれなかった。

 

 

 

午後二時半

 

 

日本艦隊上空(バンクーバー島南西沖)

 

 

山口艦隊上空に到達した米攻撃隊は低空から奇襲を目論むが、肝心の雲が艦隊付近で大きく開けていた為奇襲は出来なかった。

 

 

「制空隊は、敵戦闘機に向かえ!護衛隊は、攻撃機を戦闘機やプリキュアから守れ!」

 

制空隊の《F6Fヘルキャット》隊は、一斉に予備燃料タンクを切り離し敵戦闘機に向かって行く。

 

 

数分後 オレゴン州ポートランド基地から発進した、ジョン・チャールズ大尉の《P-38》F型10機が戦場に到着した時、既に激しい戦闘が行われていた。

 

 

敵戦闘機と戦っている《F6F》隊は未だしも、空を飛ぶ人と戦っている隊は一方的に撃墜されていく。

 

「あれがプリキュアか」

 

空を鳥の様に舞い、攻撃を回避し戦闘機を周囲の仲間と連携し撃墜して行く様は、恐ろしくもあり美しくもある。

 

 

 

(見ている場合では無い、気付かれる前に一仕事終えるぞ)

 

 

 オレゴン州の航空隊は、サンフランシスコが攻撃される可能性大と言う事で、多くがカリフォルニア州に増援に出されていた。

複数の大都市や工業地帯を有するカリフォルニア州や、港湾基地があるワシントン州に対し、オレゴン州の重要度はかなり落ちるのは致し方無い。クイズ番組などで西海岸三州の中で、カリフォルニアとワシントン州は出て来ても、オレゴン州は出て来ない人も多そうな……

 

オレゴン州陸軍航空隊は、ハルゼー艦隊の攻撃に呼応して戦闘機を出撃させた。と言っても《P-40ウォーホーク》15機と、《ライトニング》10機だけだが。

 

『ライトニング》10機は、各機250キロ爆弾1発ずつを搭載している。同機は爆弾や対地ロケットを最大1.5トンほど搭載可能で、史実では北アフリカやイタリア戦線で、戦闘爆撃機として活躍している。

 

本来はもっと大型の爆弾を搭載可能だが、サンフランシスコに援軍に行った部隊が持って行ってしまったので、手持ちの残り物を装備せざるを得なかった。

 

 

 

(戦艦や空母に近付くのが困難なら、巡洋艦でも攻撃するか)

チャールズは、主力艦への攻撃が困難なら巡洋艦への目標変更を考え、部下に命令しようとした。

 

 

その時、チャールズはひと塊の積雲の下に、大型空母を含む艦隊を発見した。

 

 

 

「10時の方角(北西)の雲の下に大型空母発見だ!」

 

チャールズは、即座に小隊を北西方向に向けた。

チャールズ隊は、少数機だという事が幸いした。更に空母上空の積雲により空母側からの目視を困難にしていた。

 

 

しかし、後僅かという時に上空で戦っていた《零戦》が、《P-38》に気付いた。

 

 

 

 

 「5~10番機は戦闘機に向かえ!」

指示を受けた、5から10番機は爆弾を放棄して《零戦》に向かって行く。

 

 

その間にチャールズ大尉機を含む残り5機は、雲の下に見え隠れする大型空母に向かって行く。チャールズは、2隻を沈めるのは無理と考え、先頭の空母に攻撃を集中させる事にした。

 

 

 

「距離500! 全機爆撃用意!」

 

 

チャールズが指示を出した次の瞬間、数条の光が大尉の視界左方向から右方向に抜けて行った。

 

直後5番機と4番機が爆散して、無数の破片となり消えて行った。

 

 

 

「プリキュアだ!」

 

 

数秒後今度は、3番機が尾翼を破壊され海面に突入して消えた。空母の至近距離となって、対空砲の誤爆を恐れたのかプリキュアの攻撃は止んだ。反対に艦隊からの対空砲撃が始まった。

 

 

 

「爆弾投下!」

 

 

爆弾を投下し、空母の上空を通過した直後、後方で爆炎が二つ上がるのを見た。

 

 

 

「やった2発命中だ!」

 

 

大尉は、高度を上げて退避を図ると同時に味方に撤収を命じた。高度を3000メートルまで上げた時、チャールズは微かに殺気を感じた。

 

 

 

キュアスカーレット

「プリキュア・スカーレット・スパーク !」

 

キュアトゥインクル

「プリキュア・ミーティア・ハミング !」

 

流星と炎を辛うじて回避する。チャールズ大尉は方角を変え650km/hの高速を生かし一目散に逃げだした。

 

 

(プリキュアは時速950km以上出るそうだが、それでも高速で逃げる戦闘機に命中させるのは難しいのだろう)

 

 

程なく、攻撃が止み一安心……

 

 

??

「お覚悟はよろしくて?」

 

 

チャールズは何か、聞こえる筈が無い声が聞こえた気がした。気付くと前方上空に二人のプリキュアが居る。

 

 

 

「罠だあああ!」

 

 

チャールズは、後方のプリキュアによってハンターに追われる鹿と同じ様に、罠に誘い込まれた事を悟った。

 

 

キュアフローラ

「プリキュア・リィス・トルビヨン!」

 

キュアマーメイド

「プリキュア・バブル・リップル!」

 

 

超高速・高威力の花弁と水の奔流が、チャールズ大尉の機体に無数の穴を開けて、数秒後堪え切れなくなった機体は空中分解し、落ちて行った。

 

 

 

(海に落ちる前に爆死か、プリキュアめやるじゃなねえか。だが、敵大型空母に一矢報いてやった……ぞ)

意識を失う寸前、チャールズ大尉は微かな満足感を感じた。

 

 

チャールズ大尉の最後は撃墜されたが幸福だった。理由は「敵大型空母に、かなりの損傷を与えたと思ったまま戦死出来た」からだ。

 

 

チャールズ大尉が爆弾命中と思った内、一発は対空砲火で撃墜された2番機の爆発を、爆弾命中と勘違いした。

大尉機が投下した爆弾は、確かに命中したが甲板では無く10センチ対空砲に命中した。陸用爆弾だったので、対空砲を破壊し周囲に機関銃座に損傷を与え、30名の死傷者を出したが貫通は出来ず、飛行甲板には軽微な損傷を与えただけで、戦闘に影響は無かった。

 

 

つまるところ大尉の死はほぼ無駄死だった。

 

 

 

同時刻

 

 

《TBFアベンジャー》隊は、《零戦》とプリキュアの攻撃を受け、既に少なくない数が撃墜されるか、損傷を受けて離脱していた。

護衛の《ヘルキャット》戦闘機も、敵戦闘機やプリキュアに対応するので精一杯で、雷撃機を助ける余裕はなさそうだ。

 

 

その時ヘンリー・ハワード中尉の《アベンジャー》機の真後ろに、一人のプリキュアが舞い降りた。後部機銃手が即座に12.7ミリブローニング機銃を発射した。無論簡単に回避されたが、間合いを取る為に、プリキュアは《アベンジャー》隊の真横に移動した。

 

 

だが、そこに戦闘機2機が駆け付けプリキュアを攻撃した。そのプリキュアは戦いながら離れて行った。

 

 

 

 ハワード中尉は、一安心して海面を見るが、雷撃や爆弾が命中した敵艦はほぼいない様だ。

 

 

「敵艦隊まで距離5千」

 

操縦士の報告を聞いたハワードは、レバーを操作して魚雷格納庫の扉を開いた。《天山》や《九七式艦上攻撃機》等は、魚雷は雷撃機の真下に直に装備されているが、機体が大型の《アベンジャー》は、爆撃機の爆弾庫みたいに、専用の格納庫に収容されている。

 

 

「敵戦闘機接近!」

 

 

数機の《零戦》が接近し、20ミリ機銃を発射して来る。反対に《アベンジャー》隊からも、反撃の12.7ミリ機銃が放たれる。

 

 

 機銃の集中射撃受けた戦闘機が、炎上し墜落して行く。ハワード機を狙っていた、《零戦》はエンジンに被弾し黒煙が噴き出た。墜落はしなかったが、攻撃を断念し離脱して行った。

 

 

 最後に銃撃して来た《零戦》の機銃弾が、右横を飛行していた《アベンジャー》』の魚雷に命中し、魚雷が大爆発した。機体も四散し無数の破片が周囲にまき散らされた。エンジンの部品が、自機に向かって来るのを見た、ハワード中尉は驚いたが、命中寸前に失速して落ちて行った。ほっとしたが、落ちて行った破片が機体に接触したのか、軽い衝撃を感じた。

 

 

乗員2《ジーク》海面に降下していきます。爆発に巻き込まれたようですね」

 

 

破片が油圧系統を破壊でもしたのか、海面に不時着するべくゆっくりと降下して行く。

 

 

 

 

「プリキュアが来ます! ……一人いや二人です!」

 

 

シーマンの警告に、ハワードが何か言おうとした時、隣の《アベンジャー》機長が臆病風に吹かれたのか、魚雷を投下して離脱を開始した。

「おい、野郎何の真似だ……」

 

 

その時、ハワード中尉機もふわりと持ち上がった。何が起きたかは明らかだ。ハワード中尉機の《アベンジャー雷撃機》からも航空魚雷が投下され着水した。

 

 

 

「俺は何も動かしていないぞ!」

 

「確かにそうです。多分さっき爆発した味方機の破片が原因でしょう」

 

ハワード中尉はため息をついた。さっきぶつかった味方機の破片が、電気系統の回路を狂わせて誤作動させ、勝手に魚雷が投下されてしまったのだろう。

距離はまだ4000メートル強ある。魚雷の射程は5200メートルほどだが、そんな遠距離から撃っても命中はしない。

 

 

最低でも1キロ以内、理想では600メートルくらいで撃つのが理想だ。

 

 

 

「機長、どうします?」

「どうもこうも、魚雷が無いんだから離脱するしかないだろう」

 

 

ハワード中尉は、《アベンジャー》をオレゴン州の方角に向ける。事前に、味方艦隊が敵航空攻撃を受ける。可能性が高い場合、攻撃隊は空母に帰還せず、オレゴン州の秘密基地に着陸する様に命じられていた。

 

 

程なく近くを、プリキュアが通り過ぎた。プリキュアは一瞬こちらを見たが、何もして来なかった。

 

 

 

「プリキュアの野郎! こっちを憐れむ目で見るんじゃない! 臆病風に吹かれたのは、隣の機だ」

 

 

 

「プリキュアは野郎じゃ無く女の子……」

 

「何か言ったか?」

 

「いいえ、なにも」

 

 

 

雷撃機同様急降下爆撃機《SB2Cヘルダイバー》隊もまた、苦闘の只中にいた。《ヘルダイバー》は故障が少なくないが、頑丈な構造で容易には撃墜できない。

(ただし普通の戦闘機相手に限る)主翼に装備された20ミリ機銃も強力だ。

 

 

「凄い連携だ!」

小隊指揮官フレミング大尉は、プリキュアの連携の巧みさに驚く。《零戦》も巧みに3機で、攻撃を加えて来るがプリキュアはそれ以上だ。5人くらいの小隊単位か、3人と2人位に別れて攻撃して来るが、戦闘機より遥かに巧妙な連携で攻撃して来る。一旦攻撃が止むと、今度は《零戦》隊が攻撃して来る。

 

 

大尉は前方に向け20ミリ機銃を発射。命中しなかったように見えたが、《零戦》は高度を上げ離脱して行く。

 

 

 

「あいつ何故戻って撃って来ない? 機銃の故障かな?」

 

 

ようやく《ヘルダイバー》隊は、敵艦隊の近くまで到達していた。フレミング大尉も航空母艦の方角に、機体を向けようとした瞬間、複数の光の筋がジョニー隊を貫いた。

 

 

近くの《ヘルダイバー》が四散したのが見えた瞬間、ジョニー中尉機も大きな衝撃を受けた。

 

 

「ギャアッ」

 

 

「ぐはっ!」

 

周囲の《ヘルダイバー》と違い、瞬時に機体が爆発する事は避けられたが、エンジンは大きな穴が開き、黒煙と炎が上がった。操縦席の中も、計器盤の下から燃え上がった。消火器で消火せねばと思ったが、激痛で動く事も出来ない。

 

 

「無事か?」

「腹をやられました。機長は脱出できそうですか?」

「俺もだ。こりゃ助からんな」

 

 

機体もエンジンは今にも止まりそうだ。いや、それより早く機体が爆発するだろう。

プリキュアが近くに来るが、もう撃っては来なかった。いや、何か短く祈りを捧げているような動きをしている。

 

 

「プリキュアの小娘、ゴハッ! もう自分達が勝った気でいますよ」

「おうよ、少し教育してやろうぜ」

 

 

 

 

 フレミング大尉は、ゆっくりと機体を傾けて行く。近くの空母までは距離がある。気付かれて撃墜されるか、こっちが力尽きて海に落ちる可能性もある。

やがて《ヘルダイバー》は、炎を上げながら墜落して行った……戦闘機搭乗員や、プリキュアや洋上の艦船の乗員の目にはそう見えた。無論墜落しているのは事実だから、勘違いしている訳でもない。

 

 

気が付いた時は、フレミング大尉の《ヘルダイバー》は、既に巡洋艦の至近距離まで迫っていた。

 

その寸前、フレミングの目には敵艦乗員の仰天した顔がはっきりと見えた。

次の瞬間フレミングの機体は、450キロ爆弾を持ったまま、重巡《三隈》の艦橋に激突した。

 

 





《三隅》に被弾した米軍機が突入するのは、史実(ミッドウェー)。フレミング大尉も史実人物。その後《もがみん》こと《最上》と衝突します。その後《三隅》は沈没。《最上》は大破し、修理の際に航空巡洋艦に。

《三隈》「もがみんと衝突した時の傷、やっと治ったと思ったのに」(艦これ 中破時の台詞)

 艦これでは近日、《ソードフィッシュ》雷撃機の水上機版が追加されましたが、《彩雲》の水上機版が欲しいです。空母系が使えない戦場で作戦の幅が増えるので、ぜひ追加して欲しいなあ。

それと米英の優秀な航空機を追加してくれんかな。《フルマー》《スキュア艦爆》《デバステーター》……どれも駄作機だけを取り上げた本に、乗っていそうなやつばかり。


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第47話「遂にプリキュアも放映中断」

 とうとうプリキュアも放映中断に。再放映一周したらどうするんだろう。
個人的には日本昔ばなしか、アニメ日本史(時々ヒストリーチャンネルでやってる)をやってはどうかと思います。

 「キングダム」の代わりが「未来少年コナン」。いや第一期か第二期やれば良いのに。「未来少年コナン」には、あの人の子孫が出ます。(ガチ設定)ヒント「見ろ、人がゴミの様だ!」

ララ
「ヒントどころか、答えをばらしているも同然ルン」


 

 

重巡《三隈》艦橋に、フレミング大尉の《SB2Cヘルダイバー》が激突した瞬間、450キロ爆弾が爆発し、爆炎が艦橋内部を荒れ狂った。

艦長崎山大佐以下、艦橋にいた乗員は全員瞬時に消し飛んだ。更に後部艦橋にいた、副長も衝撃で転倒し頭部を打って気絶してしまった。

 

 《三隅》は操船の指示を出す者がいなくなり、最大戦速で戦場を疾走もとい暴走を始めた。艦隊は大混乱に陥り、他の船は一斉に回避命令を出した。

 

 

小型空母《千代田》は、左に転舵し《三隅》を回避しようとした。何とか回避できたかと乗員が安堵した瞬間、《千代田》の船体を立て続けに、凄まじい衝撃が襲った。

 

 

 

「魚雷2本被弾!」

《千歳》は追突を避ける為に、回避行動を取ったが、その結果先ほど《TBFアベンジャー》が発射装置故障で、捨てて行った航空魚雷の射線に、自ら突入してしまった。

 

 

「前部格納庫で火災発生!」

「モーター室浸水!」

「ガソリン庫からガソリンが漏れています!」

 

 

《千歳型》航空母艦は、水上機母艦を改造した排水量13000トンの小型空母であり、魚雷2本の命中は致命的だ。

岸良幸大佐(艦長)

「魚雷2本も喰らった以上、もう長くは持たんだろう。総員退艦せよ」

 

 

 

その混乱を目撃した、未だ魚雷や爆弾を持っていた米軍機は、一斉に攻撃を開始した。

 

 

 

 戦艦《霧島》

 

 

 

「直上! 急降下爆撃機!」

「左舷敵雷撃機10機! 距離1500!」

 

 

岩淵三次大佐(《霧島》艦長)

「取り舵一杯!」

 

 岩淵三次大佐は、雷撃を回避する為に取り舵(左転舵)を命ずる。

 

まず、4機の《ヘルダイバー》が急降下して来る。連装20ミリ10基が急降下して来る爆撃機に激しい銃撃を浴びせ、先頭の《ヘルダイバー》が機銃弾の破片で、操縦不能に陥って墜落した。

残り3機が500キロ爆弾を投下、1発目と2発目は至近弾となり、全弾回避できるかと思ったが、3発目が36センチ砲第四砲塔近くに命中した。

 

その混乱に乗じ雷撃機が、接近して来る。近くにいた《零戦》隊が、《アベンジャー》雷撃機数機を撃墜するも、残りは魚雷投下に成功し1本が艦首に命中した。

 

 

「応急隊は、第4砲塔付近の火災を消火せよ。別動隊は被雷個所の排水作業を急いでくれ」

 

 

 

 

 大西艦隊旗艦の装甲空母《大鳳》も、《ヘルダイバー》10機の攻撃を受けていた。 冷静さを取り戻した、《零戦》隊とプリキュアが救援に向かったが、惜しくも間に合わず3発が艦首付近に命中した。甲板で爆発は起きたが、爆炎が治まると飛行甲板に破壊された痕跡は見えなかった。

 

 

 米搭乗員は、3発命中したが装甲甲板を貫通出来なかった事に落胆した。

 

 

 

 

 

「新型装甲空母に爆弾3発命中を確認するも、損傷軽微と見られる」

 

 

 

 だが上からは確認できなかったようだが、ほぼ同じ場所に3発も爆弾が命中した事により、破壊される事は無かったが、ゆがみにより飛行甲板に亀裂が生じてしまっていた。

 

 

 

 

 

旗艦《大鳳》

 

 

 

 

「艦載機発艦不可能との事です。航行には支障は無いと」

 

「そうか、着艦が可能なら搭載機を他の空母に降ろさせずに済むな」

大西中将は、着艦は可能だと言う報告を受けて安堵する。

 

 

その直前、《千代田》の姉妹艦、《千歳》も急降下爆撃を受けたが、艦長の機敏な操艦で被弾を免れた。

 

 

 だが重巡《摩耶》(1)にその幸運は無かった。

最後に(と言っても、僅か数分の間の事だが)攻撃して来た、《アベンジャー》隊は、隊長がプリキュアが素早く混乱をから回復するのを見て、空母や《コンゴウ》級高速戦艦を狙うのは危険だと判断し、近くにいた巡洋艦に目標を変更した。

 

 

不運な《摩耶》は、魚雷4本を被雷した。命中個所は艦首錨鎖倉庫、一番砲塔、七番缶室、後部機械室に命中してからわずか15分で、沈没した。乗員800名の内、350名が戦死・又は不明となり艦長大江大佐も命を落とした。

 

 

 《三隈》は更に爆弾数発が命中し、火災の延焼で搭載していた酸素魚雷が誘爆し、これが致命傷となった。最初の敵機体当たりから40分後、意識を回復した副長が、総員退艦命令を出し艦は放棄された。

 

 

乗員達にとっては、この間数時間は経過している様に感じられた。しかし、実際は《三隈》に敵急降下爆撃機が体当たりしてからほんの5分ほどしか経過していない。

 

僅か数分の間に、重巡2、小型空母1を撃沈し、戦艦1隻を中破の戦果を挙げた米軍攻撃隊は、オレゴン州の方角(南東)を目指し追撃を受けながら逃げて行った。




1 火垂るの墓の主人公の父親が、《摩耶》の乗員という公式設定が有る。艦長だと言う話は都市伝説。史実では、昭和一九年十月に、パラワン水道で米潜水艦の雷撃で沈没。


敵雷撃機が、右から来たら右に転舵。左から来た時は左に転舵。
キョエ
「両方から来た時はどうするんだって? お祈りしろバカー」


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第48話 プリキュアVSオールドサラ前編


オールドサラ=空母《サラトガ》もう古いからそう呼ばれていた。一番古いのは《金剛》かなあ?

「金剛はおばあさんじゃありませーん!」


 

 

 攻撃隊から詳細情報が伝えられた時、ハルゼー艦隊はそれに取り合っている暇は無かった。

 

 

午後2時45分

 

 

 ハルゼー艦隊上空に到着した、攻撃隊は先ず一隻だけ速度が遅い、《ワスプ》に襲い掛かった。

 

《ワスプ》ぱ、1940年4月に完成した中型空母だ。排水量14500トン、全長219.5メートルと《ヨークタウン級》よりも小型で、なぜこんな中途半端な性能になったかと言うと、

 

 

米海軍の偉い人

「ワシントン軍縮条約の枠内で、《ヨークタウン級》3隻建造したら、ちょうど枠が14500トン残っているから、中型空母を建造する」

 

搭載機数は、日《飛龍》より多い76機(84機説も)だが速力は、やや低速の27ノットしか出ない。

 

 

 

 《ワスプ》は開戦直後、トーチ作戦の支援任務に従事していた。一度だけ仏領モロッコ奥地にある、ヴィシーフランス空軍の空襲を受けている。空襲と言っても旧式戦闘機10機と、年代物の爆撃機5機だけだったのだが。

 

 

無論仏攻撃隊はあっけなく全滅した。戦闘機により全機撃墜され、《ワスプ》対空砲は一発も射撃する必要は無かった。

敵機編隊も乱れていて、爆撃機もふらふら飛んでいた。仮に爆撃する所まで行けていても恐らく命中弾は皆無だっただろう。

 

 

 2月半ばまで、北アフリカで航空支援に従事し3月初めごろに本土に帰還し、補給と休養の後艦載機を新型機に交換し、パナマ運河を通り太平洋に向かった。

 

 

 

他の艦の乗員等から、敵搭乗員の優秀さやプリキュアの恐ろしさは聞いていたが、新型戦闘機《F6Fヘルキャット》が有ればプリキュアにも勝てるだろうと考えていた。しかし、襲撃してきた日本機はモロッコ沖で見た仏植民地空軍機とは違い、整然と編隊を組み向かって来るではないか。

 

 

 やがて敵編隊から戦闘機が分離し、迎撃に出た《ヘルキャット》との戦いに向かう。《ジーク》は《ヘルキャット》に比べ最大速力で30km/hほど劣るそうだが、フランス植民地空軍と違い一方的な戦いにはならなかった。

 

 

 戦闘機同士が戦っている間に、急降下爆撃機と雷撃機が迫って来る。

 

 

 ヴィシーフランス軍の爆撃機は、第一次世界大戦の頃の外見が残っている古めかしい機体だったが、帝国海軍の攻撃機は、非常に洗練した外見を持っていた。

 

 

 

 《彗星》と《天山》は、《ワスプ》に同時攻撃を仕掛けた。《ワスプ》や周囲の護衛艦の対空砲火で数機が撃墜がされたが、残りは動じることなく突入して、信じられない様な低高度で爆弾を投下した。自分の船が狙われていないのに、周囲の船の乗員の中には、思わず身を伏せる者もいた。

 

 

 一番機の爆弾は惜しくも外れ、巨大な水柱が《ワスプ》の姿を隠した。護衛艦乗員の多くが、その水柱の影でピカピカッと光る閃光を数度目撃した。

 

水柱が消えると、《ワスプ》艦上の複数個所から黒煙が上がっている。《彗星》が離脱するのと、ほぼ同時に《天山》隊が超低空から攻撃を開始。《天山》隊は、恐ろしいほど低空で突入して来る。

 

 

 

「連中、高度10メートルも無いぞ! クレージな奴らだぜ!」

《天山》隊、護衛艦の乗員がひやりとするほど至近距離から魚雷を発射した。命中した爆弾の爆発音も収まらぬ内に、《ワスプ》の右側に、3本の水柱が上がった。

 

 

 

 

 魚雷命中を示す水柱が収まる前に、《ワスプ》で新たな爆発が起き、右舷側に20度以上傾いた状態で停止してしまった。近くの駆逐艦艦長が、救助と消火支援を命じようとマイクを掴もうとした瞬間、誘爆が起きたのか空気を切り裂く大爆発が発生。

 

轟音が収束した時、《ワスプ》の船体はほぼ海に引きずり込まれた後で、煙突の先端等が僅かに見えただけだった。

「見ろよ、《ワスプ》が海底に旅立つぜ」

その光景を見た乗員の誰もがこう思った。《ワスプ》乗員でなくて良かったと……

 

 

 

 

 

空母《エセックス》

 

 

 

「敵急降下爆撃!」

 

 

「右舷より雷撃機接近! 10機以上です!」

 

 

 

ジョセフ・クラーク大佐(『エセックス』艦長)

 

「面舵一杯! 雷爆同時攻撃とは日本人めやりおる!」

 

 

27100トンの船体が右に回り始めるとのと同時に、5インチ両用砲及び多数配備された、40ミリボフォース対空機関砲が激しい弾幕を張った。

 

 

 

 

「敵機1機撃墜! 更にもう一機撃墜!」

 

 

 

 数機の《彗星》が、炎上し金属が破壊される音を響かせながら墜落していく。操縦手が射殺された機は炎上も、黒煙も出さずに原型のまま海面に突入した。

 

「被弾した 敵機が突入して来ます!」

炎上した一機が、死なば諸共とそのまま墜落して来る。

「突入を許すな! 撃って撃って撃ちまくれ!」

 

 

40ミリ機関砲が必死に、炎上しながら突入して来る《彗星》に銃弾を浴びせる。

 

 

 

「くそっ! ダメだ、全員伏せろ!」

 

機銃員や甲板員が、退避しようとした瞬間、突然操縦不能になったのか、《彗星》の針路が突如ずれて空母から15メートルの水面に墜落し、爆発した。

 

 

 

 

 「敵機爆弾投下!」

 

 

 大半は32.9ノットの高速を生かし回避したが、3発が命中した。2発は甲板に命中し内部で爆発した。1発は前部兵員室、飛行甲板後部に命中した1発は甲板を貫き、格納庫内で爆発し予備の《アベンジャー》数機が炎上。

 

 

3発目は、煙突を直撃し貫通後前部ボイラー室で爆発した。前部ボイラー室は破壊され、機関員は全員が死傷。更にボイラーの破壊で、機関出力が半減した為最大速力は大幅に低下。つまり、爆撃や雷撃を回避する事は困難となった事を意味している。

 

 

 

 

「雷撃機接近!」

 

 

「魚雷を発射していない機を狙え。魚雷を持っている機は炎上させても油断するな!」

クラーク大佐は、魚雷を発射済みの敵機は極力放置する様に指示。

 

《エセックス》と護衛艦は、健在な全対空砲で弾幕を張る。炎上した雷撃機も魚雷を投下していない機は墜落するか、粉々になるまで撃ちまくる。

 

 

数機の《天山》が炎や黒煙を吐き出しながら、海面に激突する。そのまま沈んで行く機もあれば、墜落の衝撃で

燃料タンク、魚雷が爆発したのか粉々に爆散して海面下に消える敵機もいる。

 

 

 

 

「魚雷命中します!」

 

「全員衝撃対応せよ!」

 

クラーク大佐が艦内マイクで命じた数秒後、魚雷二本が続けざまに命中した。激しい振動で艦橋でも、何人かの士官や乗員が転倒した。

 

 

 

「状況を報告せよ」

「前部兵員室浸水!」

「後部格納庫で火災発生!」

「応急隊消火作業を開始せよ!」

 

 

 

 米海軍の強さの一つに、優秀な応急修理能力が数えられる。史実では戦争後半、神風特別攻撃隊等の攻撃で、米海軍主力空母が大破した事は何度かあるが何れも、優秀なダメージコントロールで沈没は免れている。(尤も、それらの艦は損傷があまりに酷く、戦後早い時期に退役している)

 

 

応急隊だけではなく、手の空いている乗員も応援に駆け付け消火や、浸水阻止作業を開始した。しかし作業開始の報告は、見張り員の絶叫にかき消された。

 

 

 

「ら、雷撃機接近! 左舷距離900!」

 

 

 

 仰天して左舷側を確認すると、5、6機の《天山》が左舷から接近して来る。右舷側からの攻撃や、被弾への対応で乗員達が、気を取られている間に接近されたのだろう。

 

 

 

「時間差攻撃か!」

「取り舵一杯!」

 

 

 《エセックス》乗員が知る由も無かったが、数機の《天山》雷撃機が、これまた数機の《F6Fヘルキャット》戦闘機に迎撃された。米戦闘機の数は少数だったので、喪失機は出なかったが逃げている内に、米艦隊の艦列の上を通り過ぎてしまった。

ほどなく護衛機5機が援護に来たので、少数の米戦闘機隊は慌てて逃げ出した。

 

 

《天山》小隊の隊長は、あまり長時間重い航空魚雷を抱えて戦場に留まるのは危険だと判断し、再度米艦隊の右舷側に回る事はせずに、このまま左舷側から雷撃を行う事にした。

 

 

幸い米新型空母は、右舷側からの攻撃や被雷対応で左舷側の見張りが疎かになっているのか、接近しても左舷側の対空砲が全く撃って来ない。

 

 

 魚雷を投下した瞬間、ようやく左舷側の対空機関砲が射撃を開始したが、慌てて撃ってるのか銃弾は全て見当違いの方向に飛んで行った。《天山》隊数機が、《エセックス》の上を飛び越えた数秒後2本の命中を確認した。

 

「毎回こんな風に楽だと、良いのだがな。新型空母と言えども魚雷4本も命中したら海の藻屑だろう」

 

 

 

オマケ

 

《加賀改二》遂に艦これ実装(5月20日)

《加賀》だけ何故28ノットしか出ないの? 他の大型日本空母は30ノット出ます。

 

 

 実は《加賀》はスクラップになる予定でした。ワシントン軍縮会議で、主力艦の保有制限が決まり八八艦隊(戦艦8・巡洋戦艦8)は中止になりました。

しかし、建造中の天城型巡洋戦艦(41200トン 速力30ノット)の2隻《天城》《赤城》は、空母転用を認められました。

 

 だが、1923年9月1日の関東大震災で横須賀の造船所にいた《天城》は船体が修復不能の被害を受け廃艦。代わりに《加賀型戦艦》1番艦《加賀》の空母転用が認められて、空母に改造されました。しかし《加賀型戦艦》は、最大速力28ノットで30ノット出ないので、空母になっても他の大型空母より低速になってしまいましたとさ。

 

艦これの低速と高速の境界線は、27ノットらしいですよ。27ノットの《大和》が低速枠で、《加賀》が高速枠なので。

 





「大岩一課長」5月末で撮影分無くなるそうな。「麒麟がくる」が6月7日、「エール」は6月末まで。



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第49話 プリキュアVSオールドサラ後編



 28日からプリキュア放映再開との噂が出たのでこっちも再開します。

艦これサラトガ=シンドイーネさんだったか。

 「旧石黒版銀河英雄伝説」の戦闘シーンみたいに、血生臭いシーンがあるのでご注意ください。


 

 

 

 《サラトガ》に、攻撃を掛けて来た日本軍機は一機も無かった。しかし、《サラトガ》乗員に、それを喜ぶ者は誰もいない。何故なら日本機より遥かに恐ろしい敵が襲って来たからだ。

 

「プリキュア接近! 右舷20度、距離2000高度800! 」

「あれは、ジョンストン沖で見た奴らだ」

 

 およそ4か月半前に、ハルゼーとプリキュアは(アラモードチーム)およそ3000メートルほどの距離で遭遇した。その時は、幸運にも低く垂れこめた積乱雲が、ハルゼー隊の上空を隠し、プリキュアも帰りを急いでいたので、《サラトガ》や戦艦《ノースカロライナ》《ワシントン》等が気付かれる事は無かった。

 

 

 《サラトガ》も《レキシントン》同様に、元々は排水量43000トン、全長266.5メートル、速力35ノット、主砲16インチ砲8門を装備する巡洋戦艦として建造が開始された。(計画は6隻)しかし、1921年に開催されたワシントン軍縮会議で、計画は中止にされた。しかし《レキシントン》《サラトガ》は空母転用が認められ、1927年11月に完成した。

 

 

 

 最初に、艦橋の前後に4基配備されている、連装5インチ対空砲がプリキュアに向けられた。数年前までは、同じ位置に8インチ砲連装4基8門が装備されていた。《サラトガ》が完成した頃は、航空機や空母の運用については何処の国も試行錯誤

を繰り返していた頃で、航空機の歴史を人間に例えると、10歳くらいだろう。

当時は航空母艦も、巡洋艦と遭遇し砲撃戦を行う可能性も考えられていたので、重巡級の主砲が装備されていた。

 

 

 同時期に完成した《赤城》《加賀》も20センチ砲を装備している。《サラトガ》は43年の6月からサンディエゴに入渠し、8インチ砲の撤去と、対空砲・対空機銃の増設および、新型対空レーダーの搭載を行った。

 

 

 

 5インチ砲弾は、プリキュアにあっさりと回避され離れた場所で空しく爆発している。それを見た乗員達は嘆いた。

 

 

「ガッデム、狙いが付けられないぜ」

「動きが読めない上に速すぎる」

「新型の対空砲弾が完成していれば、あのうさ耳どもを叩き落としてやれるのに」

「新型の対空砲弾?」(1)

 

「噂では砲弾から、電波が放出されて敵機に命中しなくても、一定距離まで近づくと砲弾が爆発し

破片で敵機を破壊するそうだ」

「プリキュアは電波では捕捉できないんじゃ? 」

「お前ら、口じゃ無く手を動かすんだ」

 

 

 連装5インチ対空砲を指揮する、ジュリオ・デ・ジルバ大尉が第3射目を発射した直後、右舷側の駆逐艦《ニコルソン》より、急報が入った。

 

 

 

 

「《ニコルソン》より通信、右舷より新たなプリキュアが接近中との事です! 」

 

 

 

「桃色兎とは別の集団か? 数は何人だ? 」

ハルゼーは通信長に、新たなプリキュアの数について質問する。

「4人もしくは、5人との事です」

 

 

 

 ハルゼーやブローニング参謀長が右側の窓に駆け寄り、双眼鏡で確認すると高度200メートル位の低高度から、桃色兎チームとは違う集団のプリキュアが接近して来るのが見えた。しかし未だ距離が離れているので、顔や頭髪の色等は判別できない。

「桃色兎チームは陽動で、我々の注意を引き付けている間に、別にプリキュアが攻撃して来る算段かもしれません。」

 

 ハルゼーはブローニング大佐の発言にも一理あると感じ、桃色兎チームは囮で、新たなプリキュアが本命だと考えた。

 

「全艦に命令だ。第2のプリキュアに攻撃を集中させろ! 」

 

 

 米海軍は、知る由も無いが新たなプリキュアはスマイルプリキュアチームだ。

 

《サラトガ》と中型空母《インディペンデンス》及び護衛の巡洋艦と駆逐艦が、5インチ対空砲や20ミリ対空機関銃や、連装40ミリボフォ―ス機関砲を新たなプリキュアに(スマプリ)向け、「射撃開始! 」の命令が出されようとした瞬間だった。

 

 

 

 

 スマプリチームは、ふわりと100メートルほど舞い上がった。突然の事で護衛艦の対空砲や機関銃も全く、対応できない。仰天している彼らの頭上から、スマプリチームの攻撃が降って来た。

《グリーブランド》級巡洋艦《バーミングハム》は、キュアサニ―とキュアピースの攻撃を受けた。キュアサニ―の攻撃は、《バーミングハム》の右舷側中央部にある5インチ対空砲を破壊し、更に必殺技による炎が、周囲の対空機関銃を破壊した。

 

 

 もう一人の、黄色い髪の毛を持つプリキュア(キュアピース)は、突如雷を生み出したのだが、

 

「おい、あの黄色いの自分に雷を落としてから発射したぞ。悪魔かあれは」

キュアピースの攻撃は、豪胆なハルゼーですら絶句させた。

 

キュアピースの攻撃は、艦尾にあるカタパルトを破壊し、4機搭載している新型水上偵察機《SCシーホーク》を炎上させ、更に水上機の燃料にも延焼した。対空兵器の半数近くを破壊されたが、《バーミングハム》は健在な対空砲を発射しながら

回避行動を続けている。

 

残り3人は駆逐艦を攻撃したが、駆逐艦にとっては致命的な威力だったのか、《ド・ヘイヴン》《スタック》は激しく炎上しながら停止している。

 

 

 

 

 《サラトガ》の右舷方向を守っていた、対空砲火網に大穴が開いた直後に、それまで艦隊外縁を飛び回っていた、アラモードチームが再び速度を上げて《サラトガ》の方に向かって来る。

 

 

 

「第2のプリキュアに、護衛艦を攻撃させ対空火力を減殺させてから、桃色兎達が攻撃して来るって算段か」

「面舵一杯! 急げ!」

プリキュアの新戦術に気付いたハルゼーは唸り声をあげ、艦長は回避を命じる。

しかし、《サラトガ》も《レキシントン》同様の欠点を抱えている為に、舵の効きが悪い。最大速力は高速巡洋艦に匹敵するのだが。

 

 

 

「ビックサラ早く回りやがれ!」

ハルゼーは怒鳴り声をあげるが、35600トンの巨体は簡単には舵が効かない。

乗員達は自嘲の意味も込めて、《サラトガ》を『オールドサラ』や、『ビックサラ』と呼んでいる。

 

 漸く艦首が右に回り出した時アラモードチームは、既に至近距離に迫っている。

攻撃が行われるかと思った瞬間、プリキュア達が素早く二手に別れる。

 

 

 

「新しい攻撃か!」

アラモードチームは中学生4人と(内一人妖精)高校生2人に別れたのだが、米軍側は当然その事情は知らない。だが不運な事に、ハルゼーの発言だけは的中していた。直後、二手に分かれたアラモードチームから白い物体が2発発射され、乗員が瞬きをする間も無く、格納庫付近と右舷発電機室の真下に被弾した。

 

 

 

 

 《TBFアベンジャー》整備班のイーニアス ・ スミス上等兵曹は、格納庫に設置されたスピーカーが、プリキュアの攻撃と警告を伝えた瞬間に反射的に、近くの遮蔽物の陰に隠れ姿勢を低くする。

 

その直後激しい衝撃が《サラトガ》を揺るがし、格納庫内にあった《アベンジャー》と《ヘルダイバー》を吹き飛ばし搭載燃料や、爆弾を次々と誘爆させた。

 

爆弾や魚雷が爆発した際の閃光や、爆炎は遮蔽物の影に隠れているイーニアスもはっきりと感じ、数秒後隠れている個所の近くにも、金属片や焼け焦げた破片が降って来た。

 

 

 イーニアスが遮蔽物の影からでると、プリキュアの攻撃を喰らった付近に手の付けられない様な、大火災となっている。イーニアスが整備していた《アベンジャー》は、右にひっくり返り操縦席のガラスは割れている。更に、左主翼は途中から折れている。

 

 

機体の横に、部下のグレゴリー ・ コートニー二等兵が倒れている。

「グレゴリー、無事か? 」

イーニアスが話しかけるが、グレゴリーは肩から下が無かった。近くには、《アベンジャー》搭乗員が倒れている。背中に破片が突き刺さっていて、全く動かない。その時、後ろから誰かが叫んだ。

 

 

「危ないぞ!避難しろ!」

イーニアスは、弾かれた様に駆け出した。

 

 被弾の衝撃で艦橋内の全員は、床に放り出された。

 

 

 

「イテテテテ……被害を報告せよ! それと怪我人がいるから軍医を艦橋に呼んでくれ」

「格納庫で、大規模な誘爆が発生し延焼中! 更に右舷発電機室及び、機関室浸水により使用不能!」

艦長がハルゼーに被害状況を報告する。

「復旧は困難か? 」

 

「電力の50%を喪失している以上、消火も排水も困難です。後持って一時間でしょう」

 

 

 

「総員退艦だ!」

乗員が、非常事態を知らせるサイレンを鳴らし、艦長が総員退艦命令を即座にマイクで流す。

「総員退艦! 繰り返す、総員退艦! 全乗員は全員左舷上甲板に集合せよ」

 

 退艦命令が繰り返され、乗員達はそれぞれ上甲板に向け移動を開始した。艦橋要員

も移動を開始しようとしたが、ハルゼーは全く動こうとしない。

 

 

 

「俺はサラトガに残るぞ」

艦長や参謀長は、某不敗の魔術師の参謀長(2)みたいに、「困ったものだ」と思ったが、説得を開始した。

 

「提督にとってこの船が、思い出深い船なのは承知していますが……」

 

「確かに、船と共に沈むという責任の取り方も無いとは申しません。しかし、そうなさった場合プリキュアに勝ち逃げを許してしまいますが、それでも良いのでしょうか?」

 

 

 

「確かに貴官達の言う通りだ。プリキュアの小娘どもに負けたまま終わるってのは、俺らしくない。前言は撤回する」

乗員達は、安堵したような表情を浮かべる。しかし、ハルゼーはこう続けた。

 

 

「ただし、退艦は負傷者を優先せよ。これは命令だ」

「アイアイサー」

 







1 VT信管
2 声優は初代ジュラルキール・ミホーク(ワンピース)の人

 第二次世界大戦で登場したり、計画されたりした兵器の中でプリキュアに勝てそうな兵器は……何も無いかなあ。(核兵器とか、一部架空戦記に搭乗したレールガンの様なトンデモ兵器除く)……あ、一個だけあった。

 艦これ梅雨イベ……新艦娘10隻追加とな。枠が足りんよ。複数持ってる駆逐艦とか解体しよう。


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第50話「げえっ! 関羽!」


やっと艦これ梅雨イベ前段作戦クリアしたので、投稿します。(資源25%溶けた)


 

 

 30分後

 

 

 《サラトガ》の上甲板には、多数の乗員が集合し傾斜していない左舷側から、次々と脱出していた。海面に向け傾いている、右舷側から飛び込んだ方が簡単だと思うかも知れない。しかし、船が沈没した時に発生する強い渦潮に巻き込まれたら、命は無い。その為、必ず傾いていない方の甲板から、脱出する必要がある。

 

乗員達は救命ボートを降ろしたり、海面までハンモックの様な物を降ろして、それに掴まって下りて行く。ハルゼー達司令部要員も、無事脱出し救命ボートに無事乗る事が出来た。

 

 

「提督、《ノースカロライナ》がプリキュアの攻撃を受けています!」

戦艦《ノースカロライナ》に、複数の閃光が雷鳴の様に走り、数秒後にハルゼー達の所まで轟音が響いた。

「攻撃して来たのは、別のプリキュアです!」

ハルゼー

「くっそーあのピーーー(放送禁止)どもめ!」

 

 

「《ワシントン》に敵魚雷命中!」

 

《ノースカロライナ》は、艦橋と機関部が壊滅し艦長以下の、艦橋要員が全員戦死。後部指揮所にいた、副長が指揮を引き継ぎ、総員退艦命令を、既に出していた。

 

 

 

 一旦、対空砲火の射程外に離脱した、アラモードチームが再度今度は、艦隊左側から攻撃を再開して来た。その動きを見た、他の健在艦の艦長達はほっとしたような表情を浮かべ、巡洋空母《インディペンデンス》の艦長は天を呪った。

 

《インディペンデンス》級空母は、建造途中の《グリーブランド級》軽巡洋艦の設計を変更して建造された。《インディペンデンス》は、本来は軽巡洋艦《アムステルダム》として、完成する筈だった。

 

 

 艦長は、即座に「取り舵一杯!」を命じた。《インディペンデンス』》空母は、元が高速の巡洋艦設計を使用しているので、《レキシントン》級や《エセックス》級のような大型空母よりも素早く転舵できる。

 

《インディペンデンス》は対空砲は装備されておらず、《ボフォース40ミリ対空機関砲》26門を搭載している。艦長は、左舷側に発射可能な13門に射撃を命じた。

 

 

 

 「速過ぎて、狙いが定まらない!」

対空機関砲を発射していた、ジャクソン ・ ノードリー上等水兵は、驚きの声を上げながら、上官の命令で機関砲の向きを修正しようとしていた。が、修正を始めた直後プリキュアが、白い謎の攻撃を放って来た。

 

 

 

 謎の白い物体は、真っ直ぐ《インディペンデンス》船体の中央部に向けて飛んで来る。だが、その瞬間小さな偶然が起こった。近くの護衛艦が発射した対空砲弾が、白いクリームのような物体を掠め爆発した。無論その爆発が、白い物体を破壊したり、大きな亀裂を入れる事は無かった。が、それでも謎の白い物体の針路が少しだけ左にずれた。

 

 白い物体は、《インディペンデンス》飛行甲板中央より、やや左部に命中し甲板を貫通し、真下の部品倉庫で爆発した。爆発で、倉庫内で作業していた整備兵14名は全員戦死した。更に、爆風で隣のブロックとの間の隔壁も吹き飛び、対潜爆弾数発が誘爆した。

 

 

 艦長が応急隊に消火と負傷者の救助を命じた直後、右舷見張り員リカルド ・ モランディ上等水兵が、雷撃機の接近に気付いた。

 

「右舷《ジル》(1)6機接近! 高度30、距離2000!」

 

艦長

「面舵一杯!」

 

 

 急ぎ今度は右に旋回し、《天山》に向け右舷側の対空機関砲を連射する。しかし、敵雷撃機が高度30メートルの超低空で接近して来た上に、『インディペンデンス』被弾により、発生した黒煙が対空射撃を妨害した事が災いし、一機しか撃墜できなかった。

プリキュアの攻撃は、流れ弾に助けられ致命的な個所には命中しなかったが、魚雷を複数喰らったら間違いなく沈没だ。

 

 

 

 《天山》隊との距離が1500メートルに縮まった時、突如雷撃機隊の目の前に大きな水柱が複数上がった。

 

 

 

 

「おい、今のは何が起きた!」

「護衛の巡洋艦《セント・ポール》が雷撃機の鼻先に主砲弾をぶち込んだんですよ。水柱で雷撃機を巻き込んで、雷撃機を撃墜しようとしたんでしょう」

 

 

 この砲撃は《セント・ポール》ジム・アンダーソン大佐の、突然の思い付きで行った。無論こんな思い付きの方法が上手く行くはずも無く、この珍戦術で撃墜できたのは、運悪くまともに水柱に突っ込んでしまった1機だけだった。

 

 

「雷撃機魚雷投下!」

「また本艦まで1500メートルもあるぞ。一体どうしてしまったんだ? 」

 

 

 《天山》隊乗員は、通常の対空射撃に関しては回避方法や、注意点等を仲間内で議論したり、先輩搭乗員や教官に教わっていた。だが、

「巡洋艦の、主砲弾を雷撃機の目の前に撃ち込んで、水柱で巻き込んで撃墜する」

といった、前代未聞の珍戦術について教えてくれる教官も、教本も存在しなかった。

乗員達は、米軍の新戦術か新型の対空砲弾だと、勘違いし慌てて魚雷を投下してしまった。

 

 

 

「敵魚雷2本、艦首前方距離300……外れて行きます」

残りの魚雷2本も、艦の右後方に外れて行ったことが報告された。

「プリキュアはどうした?」

「離脱して行きます。日本機も離脱開始」

 

 

 プリキュアに続いて、日本機も離脱して行く。未だ散発的に、離脱して行く敵機に向け攻撃している艦もいて、最後に運に見放された不運な日本機が撃墜され、それを見ていた味方が歓声を上げる。

 

 

 

 リカルド

「流れ弾と、アンダーソン大佐の機転に助けられましたね」

 艦長

「大佐には、後日コニャックの一杯でもおごらなくてはならんな。リカルド、プリキュアの顔は見えたか? 彼女達は人間か?」

 リカルド

「人間には違いないと思いますが……」

 

 艦長

「どうしたんだ?」

 リカルド

「残念ですが、艦長の娘さんより美人でした」

その言葉を聞いた乗員達は、爆笑し艦長は深いため息をついた。

 

 

 

 ハルゼー達《サラトガ》の乗員の一部は、駆逐艦《クーパー》に無事救助されていた。

《クーパー》の甲板は、救助された乗員溢れていてもし、敵機が襲って来たら応戦する事も難しいだろう。

 

《サラトガ》は、被弾より70分後に炎に包まれながら転覆して沈んで行った。しかも、燃える船体からは焦げたケーキみたいな匂いが漂って来る。乗員の中には、その光景を見ながら悔し涙を流しているのも多い。

 

 

 《サラトガ》はハルゼーにとっては、非常に思い出深い船だ。ハルゼーは元は優秀な駆逐艦乗りで、30年前視察に訪れた当時海軍次官だった、フランクリン・ルーズベルト氏に見事な操艦を見せて、ルーズベルトの信頼を得た。

およそ15年後、ハルゼーは航空機の魅力に気付いた。今後は戦艦じゃ無く空母と航空機の時代だと。

 

 しかし当時空母の艦長になるには、航空機搭乗員出身者でなくてはならないという、非公式のルールがあった。ハルゼーは50歳を超えてから、飛行学校に入学し努力をして搭乗員の資格を取得し、1934年秋に念願叶い、《サラトガ》の艦長に

就任した。

 

 

 

 

 

 

「いいかお前ら、この光景を忘れるな! この悔しさを忘れるなよ! そして、今度はプリキュアを同じ目に遭わせてやろうぜ!」

それを見た、周囲の乗員が一斉に歓声を上げ拍手をする。やはりハルゼー親父はこうじゃなきゃ。落ち込んでいたりするのは、親父らしくないさ。

 

 

「提督、もしプリキュアが捕虜になったらどうなるんですか?」

「一応戦時捕虜として扱うらしい」

「子供ですからねえ」

 

「ま、し返しもするがな」

「し返し?」

 

 

 ハルゼー

「うさ耳付きで、全米を巡回するのさ」

「見世物ですか、一杯おひねりが貰えそうですね」

「おひねりもあるが、それを見た金持ちの旦那方やご婦人が、気前よく戦時国債を買ってくれるって寸法さ」

その光景を想像した、乗員達は再び大爆笑する。

 

 

 ??

「しかし、変身させたら逃げられてしまいますぞ」

ハルゼー

「確かにそうだな、桃色の頭髪用かつらとうさ耳が必要だな。俺の知人の業者に作成して貰おうかな」

再び爆笑が起きる。

 

 ??

「面白そうな話ですな。あたしも参加させてくださいな」

ハルゼー

「もちろんだぜ。でも、お前さん丸で女の子みたいな声……」

 

 

 直後ハルゼーは、赤壁から逃げて来て華容道で関羽と出会った時の横山版曹操、もしくは蜀軍を追撃して来たら、諸葛亮(本人は死亡していて実は木像)と遭遇した

横山版司馬懿みたいな表情になった。(2)

 

「げえっ!プリキュア!」

 

 

 

横山三国志、あれは良い物だ(マ・クベ)

横山三国志名シーン

 

 

曹操「董卓よ、お前も一度負けてみるが良い。負ける事で得るものがある事を初めて知った」

 

 対董卓連合軍が組まれていた頃、曹操は一人で調子こいて董卓を追撃したら、返り討ちに相危うく討ち取られそうに。部下の救援で、辛うじて生還する。

この悔しさをばねに、成長するぞと誓うシーン。でも曹操だと単なる負け惜しみに見えなくも無いw

 

曹操「君と余だ」

 

 劉備が、曹操に酒宴のお誘いうけて出かけた時、曹操が「天下の英雄は誰だろう、君の意見を聞きたい」と質問。

劉備は何人かの有力な当主の名前を挙げるが、いずれも曹操は気に入らない。「あいつは家柄が良いだけ」とか、「賢者を集めているだけで何もしない」とこき下ろす。呉国の孫策だけはやや興味を示すが……

劉備が、「曹操殿のお考えはどなたですか」と逆に問うと曹操は「君と余だ!」と答える。それを聞いた劉備は、曹操が自分を警戒している事に気付く。その直後雷が鳴り、劉備は雷を恐れる芝居をする。曹操はそれを見て、「買い被りだったか」と油断してしまう。

 

曹操「げえっ! 関羽!」

赤壁の戦いでぼろ負けして、敗走中の曹操。疲労困憊してもうここまで逃げれば大丈夫かなと安心していると、絶望の関羽登場。もうあかんと考えるが、

部下が、「関羽は昔曹操様に借りがあるので、何とか見逃してもらえないか頼んでみます」義に生きる関羽は、曹操を見逃します。

コーエーの三国志13だと、追加シナリオで「華容道の変」と言うシナリオが。「げえっ! 関羽」の衝撃が疲労困憊の肉体に止めを刺したのか、曹操が昇天。

その後曹家は息子たちが仲間割れをして、分裂してしまう設定。

 

 

「何がむむむだ!」

 三国志中盤、劉備と戦う馬超の元に、降伏を勧めに来た李恢(リカイ)将軍。降伏を迷う馬超に、「お前と劉備様が戦うのは、親兄弟の仇である曹操を利するだけだと気付かないのか」と叱責。その後馬超は劉備の家臣になり、劉備の黄金時代(短い)が来ます。

 

「孔明の罠に違いない」

 三国志の事は知らなくても、「孔明の罠」と言う単語は知っていると言う人もいる筈。(主にニコ動)戦況が有利でも、「これは孔明の罠では」と考え、勝機を逃してしまう。似た言葉に「ヤン・ウェンリーの罠」(銀河英雄伝説)等の応用も。

 

「わしを殺せるものがあるか?」

「ここにいるぞ!」

 

 孔明が病死した直後、魏延は魏(司馬懿軍)との戦闘継続を主張するが、他の将軍は反対し挙句魏延を置き去りにして、撤退してしまう。

激怒した魏延は、「ふざけんな、いっそのこと魏に亡命してしまうか」と考えます。すると、部下の馬岱(ばたい・馬超の親族)が、

「魏国に投降しても、冷遇されるかも知れません。過去の戦闘で恨まれているから殺されるかも。やるなら蜀で実権を握りましょう」

と助言し、魏延もそうしようと亡命は止める。その後後方へ後退すると、ライバルの楊義(ようぎ)将軍が待っている。

激怒して切りかかろうとする魏延。すると楊義将軍が、

「おぬしに降伏してもよい」

と言い出し、魏延は大喜び。だが一つ条件があるらしい。

「わしを殺せるものがあるか、と三回叫んでほしい)

と要求する。魏延は「何だそんな簡単な事で良いのか、何回でも叫んでやる」

 

「わしを殺せるものがあるか?」

「ここにいるぞ!」

「何っ!」

 魏延は、馬岱により呆気なく斬首された。全ては「計画通り」だった。

仕掛け人は無論孔明だ。自分が死んだら魏延が叛乱を起こすか、魏に亡命する事を恐れていた。その為に、ひそかに魏延抹殺計画を用意していた。

恐るべし孔明。その後、楊義も自分が宰相になれなかったことを恨み、「魏に亡命してやる」と酔って失言した事を密告されて、官位を剥奪されて庶民にされ

その後直ぐに自害。問題は多いけど優秀な人材二人を無為に失った蜀は、ますます窮地に。

 

「諸葛孔明……なんと恐ろしい男であっただろうか。あの世ではゆっくり教えを請いたいものだ」

司馬仲達最後のシーン。周瑜の最後とはえらい違い

 

劉禅「泰平に乾杯」

横山三国志ラストシーン

 

孔明死後30年後、264年に蜀は魏の侵略で降伏。劉備のバカ息子の劉禅は、魏国に連行されて一応は貴族として遇される。

数か月後劉禅達は、宴会に招かれる。

 

魏の重臣「劉禅殿、蜀の事を思い出す事はありますか」?

劉禅 「ここの生活は楽しくて思い出す事もありません」

重臣(こんなバカが後継者では、孔明が生きていても蜀の滅亡は避けられなかっただろう)

しかし徹底抗戦していたら、大量の犠牲者が出ていたのは疑いない。三国志正伝を書いた陳寿は蜀末期の人だから、三国志は生まれる事すら無かったかも。(3)






1 艦これでもおなじみ《天山》雷撃機
2 死せる孔明生ける仲達を走らす
3 横山三国志の原型となっている「三国志演義」は羅貫中(らかんちゅう)で、明の時代初期の頃の人。日本で言えば室町時代初期。決して吉川英二が原作者では無い。どんな人物が資料が乏しく、出身地すら確定されていないそうですよ。


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第51話【いちかVSハルゼー】(某アニメ考察付き)


 数日前に投降する予定でしたが夏バテで、延期しました。

 最近の一課長シリーズの方向性が変だ。事件現場からヤギの鳴き声はするし、アンパンが散乱し、更にシンデレラが逃走する。

大岩
「現場に落ちていたアンパン、2、3個荒らされていたそうだ」
山さん
「けしからんやつですね。捜査妨害で連行してやりますよ」
大福さん
「被疑者は判ってますが、逮捕は無理ですよ」
山さん
「犯人判ってるんなら、手配すりゃいいじゃないか」
大福さん
「犯人じゃ無く犯カラスだから無理ですって」
山さん
「えっ、近所の空腹なカラスが食べてしまったのか?」
大福さん
「野次馬の人数人が目撃していました。器用に袋破って食べたみたいです」
大岩
「カラスじゃ見逃すしかないな」
大福さん
「この一件、少し調べてみた方が良いのでは?」
山さん
「何だ、またお得意の勘か?」
大福さん
「カラスが空腹でも、3個も食べるでしょうか?3個それぞれ少しずつかじる程度だと思います。普通なら」
大岩
「山さん、大福の勘は特別だ」
山さん
「まっ、世界の片隅には記憶しておきますよ」
大福さん
「それ、映画のパクリ」


犯カラス
「アンパンはキョエが食った。美味しかった。ばかー!」


 

 

 キュアホイップ

「さあさあ、年貢の納め時ですぞ。俳句を唱える準備はよろしいですかな?」

ハルゼー達米国人は、意味が良く分からず首をかしげる。

 

 

 「小官は意味が判ります」

「何だ、お前日本に住んでいた事があるのかい?」

 

「イエス、提督。親の仕事の関係で14歳までヨコハマにいました」

その士官が、俳句(辞世の句)について説明する。

 

 

 

「つまり、貴人とかは死ぬときや処刑される時、無念の思いを歌で表現するのか」

 キュアホイップ

「貴方が提督さん?」

 ハルゼー

「おいおい、他人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るのが、マナーだぜ。日本の小学校とやらはそんなマナーも教えないのかい?」

 

 キュアホイップ

「宇佐美いちか、そしてキュアホイップ!」

 ハルゼー

「ウィリアム・フレデリック・ハルゼーだ。今日は暑いから皆で水泳をしていたところだ。俺達に止めを刺しに来たか?」

 キュアホイップ

「そんな事はしないよ。個人的に、『オーガスタ号事件』は日本軍のせいじゃないって、伝えに来たんだ。アメリカ合衆国の偉い人にそう伝えて下さい」

 

「日本政府は信用できないね」

 

「何ですと!」

 

「日本が、きちんと宣戦布告の後に戦争始めたのは、先の世界大戦位だぜ。友人のレイや、ニミッツ少将はアドミラル・トーゴーを非常に尊敬しているが、俺は尊敬していない。日清戦争の時に未だ開戦の手続きも終わっていない時に、トーゴー提督が艦長だった巡洋艦が戦闘を行っている。更に、今から12年前には謀略で、満州地方を制圧し満州国を勝手に作っている。政府は何も知らなくても、軍の強硬派が暴走した可能性はあるぜ。ま、そういうわけだからさっさと帰るんだなお嬢ちゃん」(1)

 

 

 いちかは、これ以上話しても無駄だと感じ帰ろうとしたのだが、

 

「待て、交換条件でどうだい?」

「交換条件?」

いちかは、ハルゼーの提案を聞いてみる事にした。

「メッセージは、お嬢ちゃんからの個人的なメッセージとして上に一応伝えてやるから、お嬢ちゃんもお仲間にこう伝えてくれ。次は、お前達プリキュア全員にたっぷりと海水浴を楽しませてやると」

 

 

 いちかは一瞬キレそうになったが、何とか理性で抑え込み、「ふんっ」と怒って、素早く飛んで行った。

 

 

 

 未だ海上では、沈没した艦の乗員救助作業が続いていた。太平洋艦隊は4カ月前の『マーシャル諸島及び、ジョンストン島沖航空戦』に続いて、またしても大きな犠牲を出してしまった。戦艦《ノースカロライナ》と空母《サラトガ》、《ワスプ》及び駆逐艦4隻が沈没。魚雷4本と爆弾3発が命中した《エセックス》は、予断を許さない状況で既に操艦と排水に必要な乗員以外は全て、離艦している。戦艦《ワシントン》は、爆弾3発に魚雷2本が命中し300名以上の乗員が死傷したが、機関部は無事で自力航行可能との報告に、艦隊司令部は安堵した。

 

 中型空母《インディペンデンス》は、プリキュアからの攻撃を受けるが、いくつかの偶然に助けられ中破程度の被害で生還した。

これに、合流前に潜水艦の魚雷でサンフランシスコに帰還した、《ヨークタウン》と《インディアナ》の被害も加わる。

 

 

 だが、味方も少なくない戦果を挙げていた。小型空母1、重巡2を撃沈し、《コンゴウ》型戦艦に魚雷1本命中。更に、大型空母1隻中破(これは残念ながら勘違い)

更に、別隊の大型空母1隻に爆弾3魚雷2本を命中させ、攻撃した指揮官からは「撃沈確実」との報告が届いた。

 

 

 「敵の第二次攻撃です!」

振り返ると、駆逐艦乗員が通信文を参謀長に手渡しているのが見えた。

「止めを刺しに来たか!」

「どうやら、目標は艦隊では無くオレゴン州北部や、ワシントン州東部の航空基地の様です」

 

 

 ハルゼーは、首を傾げた。艦隊の航空母艦と戦艦は全て喪失、もしくは大破戦闘不能である現在、日本艦隊が無事ワシントン州沖合いから

離脱するのに、最も危険な敵は陸上航空基地の航空隊だ。航空隊なら、時間差攻撃でも仕掛けてクリーンヒットを出せるかもしれない。

更に、急遽合衆国の中西部から増援の航空隊が来る可能性もある。それを防ぐ為に、オレゴン州やワシントン州の残存航空隊を叩くと同時に、増援の航空隊が、基地に着陸できない様にするのは極めて正しいやり方ではあるのだが、ハルゼーは何か違和感を感じた。

 

 

ここからおまけ

 

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?の結末考察

 

 

本編短めになったので、先週金曜日に放映された「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」の結末を考察します。なずなは最後海面に向かって泳いで行ったので、元の世界に戻った。典道は死亡説を強く推します。倍プッシュだ。

 

 死亡説自体は劇場公開当時からあります。死亡説を否定する意見がある事も承知しています。

 

 

1  クラスの担任が、死亡を知らないと言う事は考えられない。

2  本当に死亡していたら、クラスの雰囲気がもっと暗い筈だ。

3  典道の机に、花束くらい置くだろう。

 

他に、駆け落ち説やなずなの見送りに行くためにさぼり説も。

 

 確かにその通りだと思います。が、当方の「典道死亡説」はただの死亡では無く、「完全消滅説」です。

何故そうなったのか、「神様のような存在の怒りを買って、消滅させられた」です。時間を勝手に操るのは、クローン人間を作るのと同様に、神様に対する冒涜ではなかろうかと。

 

 一回目に時間遡行は意図せずにやってますから、まあセーフでしょう。二回目以降は完全にアウト。祐介なんかは「典道てめぇー」とか言いながら、灯台から突き落としています。もしこの時の時間遡行が無ければ、彼は殺人犯になったかも知れません。

典道はプリキュア的に言えば言えば、キュアフェリーチェみたいな存在により完全消滅させられたのではないか。それを示唆する存在として、花火師の老人が登場したのでは。当日に泥酔している花火師とかいるはずが無いです。老人は神仏のお使いか、もしくはドラクエ5のマスタードラゴンみたいに人間に変身している。

 

 典道は、完全消滅つまり、生まれて来たと言う事実も含め完全に消されたのではないでしょうか。無論戸籍も学校の在籍も消滅。無論同級生の記憶も消滅。但し、担任の女性教師だけは僅かに記憶の残滓が有った。霊感のような力が強いのかもしれません。

 

 病欠説や、なずなの見送りでさぼりなら同級生の誰かは発言する筈。

 

「風邪で休むって伝言頼まれました」

「なずなの見送りの為に、さぼりでーす」

とな感じで。

 

 

 しかし同級生達は謎の沈黙。恐らく("゚д゚)となっているのでしょう。先生何言ってるんだ見たいな感じで。もしくは視聴者に聞こえない音量でひそひそと。

「ノリミチって誰だ?」

「先生、変な夢でも見てるんじゃ?」

「島田って人は近所に住んでいるけど、子供はいないよ(もしくは、子供が出来ず数年前に離婚したよ)」

 

 

 

 なずなは無事引っ越したのでしょう。無論彼女も典道の記憶は完全に消える。なずなは典道が関ケ原後の吉川広家(2)みたいに、必死に懇願して消滅を免れたのでは。

なずなの家出は、自宅近所で連れ戻されて失敗。ラストシーンの空席は誰かほかの生徒が欠席。もしくは典道の存在が消滅すれば、必然的に誰か替わりの生徒がクラスに入っているのでは。そいつが病気で休んだのでしょう。

 








1 東郷平八郎は、日清戦争開戦時巡洋艦《浪速》艦長だった。詳しくは【豊島沖海戦】を検索しよう。ハルゼーは、東郷提督を尊敬していた説と、尊敬していなかった説の両方があるが、当小説では後者を採用しています。
2 帝国重工の財前部長のご先祖(下町ロケット)


艦これ梅雨イベ戦果


駆逐艦
タシュケント E-1戦力ボス 有明E-5 
海防艦
屋代 E-6
重巡
ヒューストン E-7
装甲空母
大鳳 E-7

後は貴重な潜水空母狙ってます。


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第52話【怪物はプリキュアのみにあらず】



 地震だー。昨日投稿しようとしていたら震度4の地震が起きて忘れた。
福井県で震度5を超えたのは、戦後3回目らしいです。

 2回目は、1960年代に若狭湾震源の地震。三回目は昨日の地震
阪神大震災と、能登地震の時は震度4。初回は、1948年6月の福井大震災で、この時初めて震度7が追加。福井大震災はもしかしたら少し作中に……


 

 

 

 

 カウアイ海峡北西沖  15:00(ハワイ時間)

 

 

 

 戦艦《ウェストバージニア》のハズバンド・キンメル太平洋艦隊司令部には、断片的に西海岸の戦況が無線で入っていた。

 

《サラトガ》《ワスプ》と高速戦艦《ノースカロライナ》が沈没し、《エセックス》も沈没の可能性が高い。シアトルもプリキュアと航空隊の空襲を受けて、港湾施設と在泊していた軍艦・輸送艦が多数破壊された。

更に、タコマ市のボーイ○グ社の主力工場が爆撃され多数の行員や技術者が死亡した。更に、オレゴン州やワシントン州東部の飛行場も爆撃を受けたらしい。

 

 

 だが、味方も敵に一矢を報いた。大型空母と小型空母各1隻を撃沈し、更に重巡2を撃沈高速戦艦1隻を中破させたとの報告を受けた、司令部要員は歓声を上げた。開戦以来コンバインド・フリートと、プリキュアの連合軍に負けっぱなしの味方にとって、初の敵主力艦撃沈という事になる。日米の国力差と、プリキュアを除いた戦力比は未だ合衆国が有利だ。(1)

 

 

 更に、「プリキュアは、ある日突然消えてしまうかも知れない」との説も一部で流れている。これは、根拠なき楽観論だけど、プリキュアが突然現れたのだとすると、突然消えてしまう可能性も皆無とは言えない。

 

 

 

 午後1時30分に、潜水艦《トートグ》から、

「戦艦6を含む艦隊が接近中!」

との通報が入った。位置はキンメル艦隊から北西に60キロだ。

 

キンメル提督は、スミス参謀長に敵の狙いについて意見を求めた。

「敵は艦砲射撃で、パールハーバーに止めを刺そうとしているのでしょう」

 

「一部研究者によると、陸上目標に対する破壊力は航空機の空襲より、戦艦の艦砲射撃の方が破壊力の面で上だという事だ」

更に再度の空襲と、プリキュアの攻撃もありえる。

 

 

 敵艦隊は、艦名不詳の45000トン級の新型高速戦艦2と、《長門》《陸奥》《日向》《伊勢》の4隻だ。中華民国との泥沼の戦争をせずに済んだ大日本帝国は、余力を使い陸軍の装備の近代化を行うと同時に、旧式戦艦の近代化改造を行っている。

 

 

 《長門》型戦艦は、新型機関に交換され、《サウダコタ》級戦艦と同程度の28ノットに性能が上昇しているとの情報が、情報部から届いている。更に、主砲も16インチ砲連装4基から、《サウスダコタ》級同様の3連装3基9門に変更された。

《伊勢》型戦艦も、同様の改造を受けている可能性が高い。

 

 

 合衆国側は、技術的・国力的に旧式戦艦を高速化改造したり、18インチ砲や20インチ砲搭載の巨大戦艦を建造する事は可能だ。だがそれらは、ペーパープランとしては存在したが実行はされなかった。コストや建造期間の面もあるが、最大の理由は

『パナマ運河』だろう。

 

 

 『パナマ運河』で一番狭い個所は、横幅が32.3メートルしかない。それを超えてしまうと、太平洋と大西洋の移動には、航海の難所として有名なホーン岬(アルゼンチン)を経由するしか無く、3週間は余計にかかり運用が困難になってしまう。

 

 

 《ウェストバージニア》《メリーランド》は、《コロラド》級戦艦の姉妹艦として1921年~23年にかけて完成した。

 

 最大速力以外は、《長門》級戦艦に匹敵する。《ネバダ》《オクラホマ》は、1916年と3月と5月に完成した。14インチ砲各12門は、未だに侮り難い威力を持っているが、既に完成して30年近い旧式艦で、老朽化による故障も多い。《伊勢》級戦艦と違い、最大速力も建造時と変わらない、21.5ノットのままだ。ただし4隻とも開戦前に、新型対空・対水上レーダーを搭載し、対空砲を増設

している。

 

 

「上層部に、高速戦艦と正規空母は全て太平洋に増援を要請したのだが」

 

 

 空母はキンメルの要請が通った。英国海軍は、正規空母は海戦翌日に南シナ海で沈んだ《インドミダブル》と、一昨年8月にマルタ島に向かう

輸送船団を護衛していた《アーガス》が、アイルランド沖で独潜水艦の雷撃を受けて沈没した以外は、全艦健在だ。大西洋等を往復する輸送船の護衛は、低速の護衛空母を派遣すれば十分だ。(2)

 

 

 戦艦は、《サウスダコタ》級4隻の内増援を認められたのは、《サウスダコタ》と《インディアナ》だけだった。しかも、前者は3月にカリブ海で移動しながら太平洋に移動していた途中、突如主砲暴発事故が起き現在も、大西洋岸のドッグで修理中だ。後者も10時間前に潜水艦の魚雷を被弾してサンフランシスコに引き返した。(3)

 

「《マサチューセッツ》と《アラバマ》の増援は認められませんでした」

「ワシントンの政治的な判断だよ、参謀長。今後戦争の主役は、戦艦から空母と航空機に移るだろう。悲しい事だがそれは避けられない。だが、港に寄港した時市民は空母よりも、戦艦の姿により大きい歓声を上げている」

「なるほど、新型戦艦を英国増援に多少なりとも派遣する事は、米英両国の絆と為には致し方ないという事ですか」

 

 

 参謀長が憮然とした表情でそう述べた時、警戒の駆逐艦から敵艦隊発見の急報が入った。キンメルは30分前にマウイ島の小型航空基地から発進した《TBFアベンジャー》の報告を無線で受けている。報告の途中で通信が途絶したが、その直前に妙な通信が入っていた。

「《ナガト》が巡洋艦に見える……どういう意味だ?」

 

 

 

 午後3時20分に、敵主力艦隊を肉眼で捕えた。軽巡洋艦を先払いにして、悠然と近づいて来る。キンメルは直ちに、敵一番艦……艦名不詳の新型戦艦を狙う様に、全艦に命令を出した。敵戦艦からは、弾着観測用の水上偵察機が発進して向かって来る。周囲には数機の護衛戦闘機が囲む様に飛行している。更に、やや離れた上空にはプリキュア数名を確認した。迎撃しようにももう米側には一機の戦闘機も無い。

 

 

15分後に、敵戦艦との距離が40キロに近付いた時、キンメルは敵戦艦の巨大さに気付いた。

 

「敵戦艦1番艦と、2番艦は5万トン……いや6万……7万トンあるかもしれない。全長は300メートルはありそうだ! 確かにあの艦と《ナガト》を並べてみたら、未熟な乗員には《ナガト》が巡洋艦に見えるかもしれない」

 

 

 新型戦艦は、合衆国新型戦艦同様に3連装主砲3基9門だという事が、確認できた。主砲がゆっくりと旋回しこっちに向いている。

「あの巨大戦艦の主砲が、16インチ砲であるとは思えません」

 

参謀長の言う通り、戦艦が巨大ならそれに正比例して搭載主砲も大口径になる。それを見た、司令部要員の誰かがこうつぶやいた。

「まるでギリシャ神話の、ティターンだ」

 

 

 

 

 「射程に入り次第、発射しろ」

艦隊の戦闘にいる戦艦《メリーランド》艦長、ルーサー ・ ヘイズ大佐は砲術長、ハーキュリーズ・ ヒューズ少佐に砲撃準備命令を出した。その時およそ35キロに接近した巨大戦艦が、砲撃を開始した。本来は、巨大戦艦こと《大和》型戦艦が搭載する45口径46センチ砲の最大射程は、40キロ以上ある。だが、最大射程で撃っても命中は困難なので、命中が狙える距離まで日本側は砲撃を我慢していた。

 

 

 30秒後巨大な水柱が、200メートルほど離れた地点に立つ。

「やはり敵戦艦の主砲は、18インチ砲以上です!」

ヒューズ少佐は、水柱の大きさから敵巨大戦艦の主砲が、18インチ砲以上だと判断した。ヒューズ少佐の目の前にある指示盤にある各主砲の緑ランプが全て、赤色になる。4つ全て変われば全砲塔準備良しという事になる。

 

 

 

 

「距離30キロです!」

「反撃だ! 発射せよ!」

ヘイズ大佐がヒューズ少佐には砲撃命令を出し、16インチ砲8門が反撃の砲弾を放つ。

 

 

 30秒後奇跡的にも、その中の一弾が《大和》の主砲塔に命中した。一瞬歓声が上がったが、直ぐに消えてしまった。砲弾は呆気なく650ミリの主砲装甲に弾き飛ばされて、近くの海中に消えた。

 

 

 《メリーランド》は、第2射を放った。如何に重装甲の戦艦と言えども、完全な不沈戦艦などありえない。命中弾を増やせば、何れは装甲を貫通する事も可能になる。

発射した砲弾が、着弾まで残り15秒となった時、《メリーランド》乗員達は異音に気付いた。

 

 それは奇跡的に故郷の土を生きて踏めた、数名の

乗員の証言によると、「長距離夜行特急や、長大編成の貨物列車が轟音を上げて、近付いて来る音」に似ていたらしい。そして、それらの音は《メリーランド》乗員の99.9%が人生で最後に聞いた音となった。

 

《大和》の46センチ砲弾は、《メリーランド》の第2主砲に命中し艦底まで貫通し爆発した。主砲弾薬庫が誘爆し第2主砲真下で、艦隊は二つに分断されそのまま海面下に消えた。

 

 

 離れた所でプリキュア達が、旧式とはいえ32600トン、全長190.2メートルの巨大な船が、一発の命中弾で轟沈してしまう光景を、茫然と眺めていた。

「はわわ、戦艦が一撃で沈んだ」

「《大和》って、本当に世界最強の戦艦だったんだ」

マナは動揺しながらだが、六花は冷静に《大和》型戦艦の力を評価している。

 

「《大和》は世界三大無用の長物等とバカにする人もいますが、その造船に使われた技術は、戦後の大型タンカー造船や回転するレストランの建設に、大いに役立ったのです」

ありすは、冷静に(?)豆知識を披露している。戦艦なんか見た事も無い、異世界の剣士プリキュアは言葉も出ない。(4)

 

 

 太平洋艦隊の将兵も、凄まじい戦艦の轟沈の光景を眺めている。30秒前まで主砲を撃っていた戦艦が、海に消えて行く。既に完成して20年近い旧式艦だが、乗員の手入れはよく行き届いており、新型高速戦艦の完成まで、15年以上『合衆国海軍の顔』として市民に親しまれた艦が、

呆気なく海の藻屑と化して行く……

 

 

誰かが呟いた。

「怪物はプリキュアだけでは無かったんだ」

 





1 国力差は1対30とも。ガンダムのジオン1対地球連邦30と言う比較は、この日米国力がモデルと言う説もあるそうな。
2 英海軍最古参空母 1918年(大正7年)完成 14450トン 全長172.5メートル 最大速力20.5ノット。搭載機数最大20 古すぎて低速なのでほぼ輸送船団の護衛にしか使えない。元はイタリアの客船
3 戦艦主砲が訓練中に事故って爆発は日本でも発生。(例《日向》)
4 世界三大無用の長物 一般的に言われるのは、《大和》以外はエジプトのピラミッドと、中国の万里の長城


 戦艦《大和》はロマン! 《大和》が存在しなかったら、戦後の造船大国日本も無かったかも。後「宇宙戦艦ヤマト」は確実に存在しなかったでしょう。
戦艦《大和》の隠蔽は徹底されていて、アメリカ側も開戦当初は自分達と同じ45000トンで、28ノット級の中速戦艦。主砲は16インチ砲(40.6センチ)程度と勘違い。

 呉市でも、造船所が見える海側の窓は開ける事が禁止だったそうです。呉線も、造船所が見える区間では、乗客に海側の鎧戸みたいなのを全て降ろさせました。

 映画「この世界の片隅で」でもそのシーンは描かれていました。流石に運転席と車掌室にはその鎧戸は無いみたい。
キョエちゃん
 「事故るわ! バカー」


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第53話

 サブタイトルが思いつかないのでw


「クソッ! 何としてもあの巨艦を仕留めるんだ!」

我を取り戻した、キンメルは怒鳴る様に砲撃指示を出す。既に距離も30キロを割り、

《長門》《陸奥》も、轟沈した《メリーランド》に代わり先頭に出た《ウェストバージニア》に16インチ砲を撃って来ている。

《伊勢》《日向》は、《オクラホマ》《ネヴァダ》に向け合計24門の

14インチ砲弾を発射している。

 

 

 《ウェストバージニア》の放った、砲弾が《武蔵》の対空砲に命中して黒煙が上がる。しかし、対空砲の真下にある装甲を貫通する事は出来ず、周囲に軽微な損害を与えただけだった。

 

 30秒後、反撃の18インチ砲弾が《ウェストバージニア》に殺到し、3発が命中した。一発は、甲板を貫き前部兵員室を破壊。

別の砲弾は、40ミリ対空機関砲に命中し周囲の機関砲を破壊。残り1弾は第一主砲付近に命中。破壊はならなかったが、衝撃で主砲塔の電路が破壊され、旋回不能になった。

 

 

 「まだだ! まだ終わらんぞ!」

キンメルが何処かの赤い彗星みたいな台詞を放った直後、《陸奥》の16インチ砲弾数発が、至近距離の海面に着水した。

キンメル達が安堵した瞬間、《ウェストバージニア》は海面下から、強力な突き上げを喰らって激しく振動した。

「どうした! 敵の魚雷か!」

 

「右舷タービン室浸水!」

 

 

 それはコンバインド・フリートの秘密兵器九一式徹甲弾だ(1)。至近距離の海面に一定の角度で、砲弾が着水した時

直ぐに海中に沈まないで、数秒間砲弾は魚雷の様に海中を突進する。

およそ20年前、ワシントン軍縮会議で廃棄処分になった、建造中の戦艦《土佐》と除籍処分となった《安芸》

を砲撃で沈めた際に、帝国海軍はこの水中弾の特性に気付いた。

合衆国海軍は1935年に同じ様に気付くが、水中弾の対応工事がなされたのは、それ以降に完成した新型戦艦だけだった。

 

 詳しい被害情報が入る暇も無く、今度は《武蔵》の主砲弾が艦尾を直撃し、舵を破壊した。戦闘中に舵が破壊される事は最悪の悪夢だ。舵が破壊された事で、《ウェストバージニア》は敵艦隊に向け直進する事しかできなくなった。

 

 

 「直ちに第5巡洋艦隊司令に繋げ」

キンメルは、重巡《ノーザンプトン》を旗艦とする、第5巡洋艦隊司令を無線で呼び出す様に命じた。

 

 第5巡洋艦隊司令は、冷静沈着な指揮で上層部の受けも良い、レイモンド・スプルーアンス少将だ。スプルーアンスは、1886年7月生まれで史実でミッドウェー海戦で戦った南雲忠一提督より、8カ月早く生まれている。

 

緒戦では、プリキュアと日本海軍機の攻撃で重巡《ソルト・レイク・シティー》が沈没し、旗艦《ノーザンプトン》も中破するが無事生還している。

 

 

 20年前、ある駆逐艦の艦長に就任するが、その時の上官がハルゼーだった。性格的には180度違う二人だったが意気投合し、親友となり家族ぐるみの交流が続いている。

 

 

 

 「旗艦は操舵不能に陥った。最早撃沈は免れまい。指揮権を委譲する。直ちに残存艦を率いて離脱するのだ。旗艦が殿を務める」

スプルーアンスは反論しようとしたが、キンメルが遮る。

「冷静な貴官なら判るはずだ。このまま最後まで戦って多少勇戦した所で、勝算は無い。敵には恐るべき新型戦艦に加え、プリキュアもいる。直ちに、戦場から離脱して再起を図るべきだ。これは、太平洋艦隊総司令官としての正式な命令である」

「アイアイサー」

 

「《ネヴァダ》《オクラホマ》は、離脱が不可能と判断した場合は、放置して構わん」

 

 

 スプールアンスは、直ちにキンメルから指揮権を委譲された事を全艦に伝達し、動ける艦は全て離脱する様に命じた。

「提督、どっちの方角に逃げます?」

《ノーザンプトン》艦長ラルフ ・ クロズリー大佐の言う通り、どっちでも良いから逃げれば良いという事は無い。

「敵艦隊やプリキュアがいる、北や北西は論外だ。敵艦隊がパールハーバーを目指している以上、そっちに逃げるのも危険だ。東しかない」

 

 幸い東には、大きな積乱雲がありその下まで逃げ延びれば、生還できる確率も高くなりそうだ。だが、

「あの不気味雲の下にはいって大丈夫ですかね? 何か嫌な予感もします」

「しかし、スコール(FF主人公名では無く、熱帯の雷雨)が降っているのは、そっちだけだ」

 

 

 亜熱帯のハワイ沖で、雷雨が発生するのは不自然では無い。海面近くの温度と、上空の気温差が大きくなる午後に発生する事が多い。

だが、通常なら積乱雲も、その下で起きている雷雨も時間経過と共に、風の影響で動いたり形が崩れたりするのが普通だ。だがその不気味な積乱雲は

全く動きもせず、形も変わらない。ちなみに、その奥の積乱雲は全て普通に風の影響で動いている。

 

「この現象は何処かで目にした記憶があるのだが……」

スプールアンスは、記憶を辿る様な無益な事はやらなかった。この危機を切り抜けてから、いくらでも考えればよい。

「手前の積乱雲まで3000メートルです」

「雷雨の下に潜り込むまで、戦艦と巡洋艦は砲撃で牽制! 駆逐艦は戦艦の周囲に煙幕を放出せよ

 

 

 

 旧式戦艦《ネヴァダ》《オクラホマ》を含む、残存艦が一斉に90度(東)に針路を変えたが、重巡《アストリア》だけは、敵艦隊に向かって行く。

「《アストリア》艦長より入電、機関部への被弾多数により、最大速力10ノットに低下、自由行動の許可を求める。以上であります」

スプルーアンスは一瞬絶句したが、冷静に許可すると伝えさせた。

 

 《アストリア》は、機関部だけでは無く敵巡洋艦隊の主砲弾で、艦後部の第三砲塔も破壊されていたが、射撃可能な前部6門の

8インチ砲を撃ちまくりながら、味方艦隊が逃げる時間を稼ぐ為に、敵巡洋艦隊に向け向かって行く。

 

 

 「向かって来る《アストリア》級重巡に砲撃を集中せよ」

第六戦隊司令五藤少将(2)の命令で、重巡《青葉》《古鷹》《衣笠》《加古》は、突進して来る《ミネアポリス》に向け、合計24門の20センチ砲の砲撃が開始された。

 

 しかし、初弾は4隻とも大きく外してしまう。米重巡が大幅に速度が低下している事を、計算に入れ忘れたのだ。現代的な表現を使えば、戦闘の興奮でアドレナリンが過剰に分泌されて、冷静さを失っていたのだ。

 

 第六戦隊が、敵に向け砲弾を放つのは今日が二回目だ。(対空戦闘は含まず)一回目は、開戦から二週間後の合衆国領ウェーク島占領作戦の時だった。

本来、参加する予定は無かった。

 

 キンメル大将率いる合衆国太平洋艦隊主力が、空母機動艦隊とプリキュアの連合軍に大敗を喫して、ハワイに逃げ帰った翌日、第四艦隊に所属する

ウェーク島占領隊が、到着した。戦力は梶岡定道少将率いる第六水雷戦隊で、旗艦は旧式軽巡洋艦《夕張》以下、軽巡2、駆逐艦6、上陸する陸戦隊は約700名。ウェーク島は空襲で、航空機も砲台も全て破壊されていると判断されていた。

 

 陸戦隊が上陸を開始しようとした瞬間、生き残っていた砲台が反撃を開始。4機残っていた戦闘機も、小型爆弾を搭載し艦隊を空爆。

駆逐艦《疾風》《如月》が、魚雷管に爆弾が直撃し全乗員諸共轟沈。輸送船1隻が、搭載していたガソリンに機銃を受けて炎上。他の艦も、損害を受けた。梶岡少将は仰天して、退却命令を出した。

 

 予想外の敗北に仰天した連合艦隊司令部は、次はガチでウェーク島占領を命じた。五藤少将の第六戦隊の他に、第八戦隊の重巡《利根》《筑摩》、山口少将の第三航空戦隊の空母《蒼龍》《飛龍》を、僅か六平方キロメートルしかない小島を占領する為に、派遣した。12月22日、ウェーク島への二次攻撃が実行され、抵抗はあっけなく粉砕され、上陸後3時間で守備隊は降伏した。

 

 

 回想終了

「何をやってるんだ。しっかり狙え!」

《青葉》艦長久宗米次郎大佐の怒号が飛び、砲術員は慌てて主砲の角度を調整する。

 

 

 

 60秒後に、全艦砲撃を再会する。今度は何発かが米重巡に直撃する。しかし、《ミネアポリス》は尚も、前部6門の8インチ砲を猛烈に撃ち返してくる。

「どうなっているんだ! 何故奴は沈まん!」

「艦長、味方の砲撃は命中は確実にしている。更に砲撃を続ければ必ず撃沈できる」

 

 米艦隊の主砲弾は、味方に命中しそうな砲弾はプリキュアが破壊していた。が……

「的が小さすぎるよ」

「魚雷や爆弾より速いから、狙いが付けるのが大変ですわ」

「味方艦に当たらない様に、注意しないと」

彼女達が嘆くように的が小さく、速度も速い中口径主砲砲弾を破壊するのは、プリキュアの能力を用いても骨の折れる作業だった。砲撃は、《ミネアポリス》だけでは無く、雲の下に逃げ込もうとしている、スプールアンス少将指揮下の

巡洋艦も、節分の豆まきみたいにバンバン砲弾を撃ち込んで来る。

 

 

 その時《青葉》に《ミネアポリス》の8インチ砲弾が、連続して3発命中した。一発は、魚雷発射管をぎりぎりで外れ夜戦用の探照灯を破壊し、破片が周囲の乗員を

殺傷した。一発は、海図室に命中するが炸裂はしなかった。だが、室内にいた全員が戦死した。最後の一弾は、艦橋下部に命中し乗員や、参謀数名が負傷した。

五藤少将も、足を壁にぶつけてしまい足首の骨を骨折してしまった。

「軍医は至急艦橋に、司令官負傷!」

 

 

 これ以上は危ないと感じた、プリキュア達は《アストリア》に向け攻撃を放った。だが、命中はしなかった。命中する直前に《アストリア》が、プリキュアに

止めを刺されるのを拒む様に、突如大爆発を起こし轟沈した。恐らくは被弾により発生した火災が遂に、弾薬庫に延焼したのだろう。

爆発により、軌道を逸らされた必殺技は米重巡がいた海面より、20メートルほど離れた海面に着弾した。

 

 《ネヴァダ》《オクラホマ》は、《日向》《伊勢》の2隻と交戦していた。既に、互いに何発か被弾している。《ネヴァダ》は、2番主砲が被弾により使用不能、《オクラホマ》は、対水上レーダーが破壊され、射撃精度が低下していた。

 

 《ネヴァダ》の14インチ砲弾が、プリキュアの迎撃を抜け《日向》艦首付近に命中。更に、一弾が士官食堂を破壊。3発目は煙突に命中し、黒煙がボイラー室に流れ込んだために、作業員は一時退避しなければならなかった。

 

 《伊勢》は、装甲を貫通した砲弾が重油庫に亀裂を生じ、海面に燃料の重油が漏れ出ていた。亀裂の拡大を防ぐ為に艦長は、減速指示を出していた。更に、後部にある第5砲塔に数発が着弾し破壊された。

 

 更に砲撃を行おうとした直前、プリキュアが味方を援護する為に、攻撃を放って来た。攻撃が2戦艦に到達する寸前に、偶然《ネヴァダ》《オクラホマ》

も主砲弾を敵に向け放った。必然的に米戦艦とプリキュアの攻撃は、至近距離で交差する事になる。

互いの攻撃が空中で衝突し14インチ砲弾は炸裂。プリキュアの攻撃も、その影響を受けたのだが、神仏はそれぞれ別の結果を用意していた。

 

 《オクラホマ》を狙った攻撃は、浮力を失い至近弾となって着水爆発した。不運な乗員数名が転落し、若干の浸水や水漏れが生じたが戦艦の強固な船体が、

それ以上の被害を防いだ。

 

《ネヴァダ》は、逆に本来なら船体の側面辺りに向けて放たれた筈が、14インチ砲弾と接触した事で軌道が変化して、第一砲塔を斜め上から直撃した。

攻撃は、406ミリの上面装甲を貫通し内部で爆発。

「《ネヴァダ》轟沈!」

 

 

オマケコーナー

 艦これに出ているアメリカ生まれの艦娘(アメリ艦娘)で、真珠湾組(昭和十六年十二月八日の真珠湾奇襲時に、真珠湾に停泊していたアメリカ艦娘)って、梅雨イベで新規追加の《ブルックリン》級軽巡《ヘレナ》で初めて追加。(作者入手できず)

 

 

駆逐艦

《フレッチャー》《ジョンストン》《サミュエル・B・ロバーツ》(護衛駆逐艦)

3隻とも未完成 《フレッチャー》以外の2隻は、工事すら開始されて無かったり。

重巡

《ヒューストン》

アジア艦隊旗艦として、フィリピンから豪州北部に移動中

対空巡洋艦

《アトランタ》

完成は真珠湾奇襲の半月後

護衛空母

《ガンビア・ベイ》

建造開始前

正規空母

《ホーネット》(《ヨークタウン級》)

完成直後なので、アメリカ東海岸沖で訓練中

《サラトガ》(《レキシントン》級)

サンディエゴで整備中

《イントレビッド》(《エセックス級》)

建造中

戦艦

《コロラド》(《メリーランド級》)

シアトルで整備中

《サウスダコタ》

完成は3か月後

《アイオワ》

建造中

 

 

 真珠湾組の戦艦は一隻も実装されて無い。これは運営の政治的な判断説。かの国では、未だにアメリカでは「原爆投下はパールハーバーの、正当な報復」

との意見があるので。

 

日本側は、潜水艦と補給用のタンカー以外の全艦が実装済み。ちなみに航空母艦《ヨークタウン》は、史実では海戦当日は米東部に停泊中だった。

アズールレーンや、少女艦隊R(3)

 

ちなみに、潜水艦はそもそも米英の潜水艦は未だ一隻も登場していないですよ。

キョエちゃん

「最初に、英海軍の《M級潜水艦》だとキョエは思う。バカー」

チコちゃん

「それ完全な欠陥品だって」

 






1 艦これにも登場
2 史実では「ワレアオバ」で少し有名
3 艦これパクリ」の中国製ゲーム。しかし、艦これにはないユニークな装備品や軍艦も多く、意外にファンは多いみたい。

《如月》の沈没は史実通り。


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第54話 【例の計画】



 少し場面転換 ルーズベルト大統領が会議の最後に言っていた、例の計画とは?


 

 

「お帰りなさい准将」

「向こうは暑くて叶わんね」

 レスリー・グローブス准将は、コートを脱ぎながら向こうとの寒暖差を思い出し、不快な表情を一瞬浮かべる。

准将は2日ほど、乾燥地帯のニューメキシコ州に出張に行っていた。ニューメキシコ州は25℃を超える熱さだったが、ワシントンは反対にこの日真冬並みの寒気が入り、准将を辟易させた。

 

 

 

 マンハッタン計画は、1939年8月に第三帝国の核兵器所有を恐れたユダヤ人科学者レオ・シラードが、相対性理論で有名なアインシュタイン博士の協力を得て、ルーズベルト大統領に核開発を促した事から始まった。程なく第二次世界大戦が始まり、第三帝国の快進撃を目にしたルーズベルト大統領は、核兵器開発計画を了承した。1941年9月にマンハッタン計画というコードネームも決まり、レズリー・グローブス准将が任命された。

 

 

 計画には民間企業や大学も参加し、研究施設も全米に分散していた。しかし、最終的な組み立て工場兼研究所は一か所に作る必要があった。更にその研究所は人目に付かない僻地である事が望ましい。

 

 

 検討の結果、ニューメキシコ州北部のロスアラモスに建設する事が決定。工事はおよそ2か月で完成した。

 

「最初の実験用原子爆弾の完成まで後8カ月ですか」

「早ければ年にも完成するらしい。実験は2月か3月だな」

グローブス准将はカレンダーを指さし説明する。既に実験場所も検討されている。

最初の核実験『トリニティ計画」。実験場所はニューメキシコ州ソコロ東44kmにある、アラゴモード砂漠のホワイトサンズ演習場が有力候補だ。

次回の視察では、実際に現地を訪れる予定だ。実験場所が人家よりどれくらい離れているか、実験施設に必要な資材運搬に必要な道路に問題は無いかなど色々実際に調べるつもりだ。

 

 

 原子爆弾計画は、元々は第三帝国に先んじて完成させる事を目標にして来たが、どうやら第三帝国の原爆開発はあまり進んでいない事が判明した。ヒトラ―総統自身もあまり乗り気では無いらしい。必要な重水工場が英国の特殊部隊に爆破されてしまい、完成は非常に困難となっている。(1)

 

 合衆国としても同じ白人に対し原爆を使用する事は迷いがあった。政府高官の中にもドイツ系移民は少なくない。

代わりに、浮上して来たのが日本帝国だ。プリキュアの戦闘能力を知ったルーズベルト大統領は、対プリキュア必殺兵器として使用する事も止む無しと考えている様だ。

 

 

 問題となるのは原子爆弾の重量だ。恐らく5トン程度にはなると考えられているので、空母艦載機や中型爆撃機への搭載は無理だ。

大型爆撃機に搭載し投下する事になるだろう。現状《B-29》に搭載可能だが、《B-29》を使用するには最低でも、マリアナ諸島の制圧が不可欠だ。(2)

 

 

 本命は昨年12月に初飛行に成功した、コ○ベア社の《XB-36ピースメーカー》だ。作戦距離は12000キロを予定しているので、アラスカから発進できる。

実戦投入は来年3月以降となっていたが、プリキュアの出現と戦況の悪化で早ければ来年年明けにも投入される予定だ。

 

 残念ながら、冬はアラスカの天候を考えると原爆搭載機を発進させるのはリスクが高いだろう。気象学者の意見を考慮し、

原爆搭載機の投入は3月以降すべきとの上申書を大統領に提出している。

 

 原子爆弾の輸送に関しては、西海岸までは貨物列車で極秘輸送し、その後は高速巡洋艦か中型空母に搭載し最大速力でアンカレッジに輸送する事が検討されている。

 

 

 

 

 

「後一年我慢すれば、我が国の勝利ですか。原爆は、敵艦隊とプリキュアの頭上に落としてやるのですか?」

 

 

「いや、プリキュアや連合艦隊が一か所に纏まっているか判らん。搭載機が彼女達に、撃墜される危険もあるから直接は使わんだろう。やはり、都市攻撃だな」

 

 

 

 

史実での太平洋戦争末期の年表

 

1945年(昭和20年)

3月24日 慶良間諸島沖で、重巡《インディアナポリス》神風特攻隊の攻撃により、艦尾損傷スクリュー破損により、第5艦隊旗艦任務解除。修理の為に本土に戻る 

4月1日   米軍沖縄本島に上陸開始

4月7日   坊の岬沖海戦で、《大和》沈没

4月16日 ソ連軍ベルリンに向け進撃開始

4月22日 ソ連軍部隊がベルリン市内に突入

4月30日 ヒトラー総統自決

 

5月2日  ベルリンソ連軍により占領

5月7日  ナチス第三帝国無条件降伏

 

6月14日 原爆投下目標が、広島 小倉 長崎 新潟に絞られる

6月23日 沖縄摩文仁で、第三二軍牛島司令官、長参謀長ら自決。組織的な戦闘終了

 

7月16日 ニューメキシコ州 アラゴモード砂漠で最初の核実験 同日原爆本体を、《インディアナポリス》搭載。

同船は、サンフランシスコより真珠湾経由でテニアン島に。

7月17日 ベルリン郊外のポツダムで、ポツダム会談始まる

7月23日 グローブス准将より「8月3日以降の晴天時に、広島・小倉・長崎・新潟に対し特殊爆弾での攻撃司令」が、テニアン島に

7月26日 トルーマン、チャーチル、蒋介石の連名で対日降伏勧告(ポツダム宣言)《インディアナポリス》テニアン島着(3)

7月28日 鈴木貫太郎首相 ポツダム宣言黙殺を発表(無視)《インディアナポリス》単独でレイテ島に向かう

7月30日 《インディアナポリス》 《伊-58》の攻撃を受け沈没。無線室破壊された為に、SOSが送れず。救助が大幅に遅れて、多数の乗員がサメの餌食に。(4)

 

8月6日  広島に原爆投下

8月9日  長崎に原爆投下 同日ソ連対日参戦

8月15日 玉音放送

8月30日 GHQ総司令官マッカーサー 厚木飛行場に到着

9月2日  日本側降伏文章に調印

 

 






1 原爆はユダヤ人的な研究で嫌いだったとの事
2 四川省辺りに基地を造る事も可能だけど、せいぜい北九州くらいしか爆撃できない。
3 日ソ中立条約が未だあったので、スターリンでは無く中華民国総統蒋介石の名前で発表。
4 有名な某映画が生まれる事に繋がります。「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の2015年では、シリーズ19作目が上映予定

科捜研の女に出てきた風船爆弾が、原爆計画を一日遅らせたそうです。高圧線に衝突し、変電所が停止し、原爆関連工場が停電になった。


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第55話 【キンメル提督終了のお知らせ】


 のどか(キュアグレース)がとんでもない事に

ちゆ
「のどかをひどい目に遭わせるなんて、許せないわ!」
ひなた
「今度会ったら倍返しだよ!」
あすみ
「……」
ちゆ
「あすみは、腹が立たないの?」
あすみ
「いいえ、私は今激怒しています。これが怒りという感情なのですね。『あなたは最低です!』と言ってダルイゼンを殴りたいくらいに激怒しています」
ひなた
「じゃああすみも倍返し賛成で」
あすみ
「何を言っているんですか、二人はのどかをあんなひどい目に遭わせたダルイゼンを、倍返し程度で許すつもりですか?」
ちゆ
「そのとおりね、ダルイゼン覚悟しなさい!」
3人
「やられたら、やり返す。倍返し……いいえ、三人合わせて1000倍返しだああああーーー!!」

「その後ダルイゼンを見た物は誰もいなかった」(半沢のナレーション)


 

 だが、主砲弾薬庫が誘爆する寸前に辛うじて海水が緊急注水され、《メリーランド》や史実の英巡洋戦艦《フッド》(1)みたいに轟沈する事態は避けられた。

「先の報告は誤り! 《ネヴァダ》健在!」

健在とはいえ、一撃で《ネヴァダ》は第1主砲大破、第2主砲も衝撃で砲撃不能に陥ってしまった。

「旧式とはいえ、一撃で戦艦の砲撃力を半減させるとは。プリキュアとやらの力は恐るべきだな」

騒然とする周囲の士官に比べ、冷静なスプルーアンスは落ち着いてプリキュアの力を分析している。

「間も無くスコールの下に入ります」

「スコールの下に、入った艦は砲撃を停止せよ」

 

 雷雨の下から撃っても、命中させるのは難しい。この当時の水上レーダーは、現代のイージス艦の様に高性能では無く

敵艦と島の区別が付かない、敵機や敵艦が固まっていると区別が付きにくい等の欠陥があった。

(日本側が合衆国より高性能な、対水上レーダーやレーダーと連動した射撃装置を持っているとは考えにくい。プリキュアの攻撃

を回避できれば生還の可能性は上がる)

プリキュアは、大技は流石に連射は出来ない様だ。つまり宇宙戦艦《ヤマト》の波動砲や、銀河英雄伝説に登場した、イゼルローン要塞の主砲

トールハンマーみたいに、発射してから次を発射するには一定の時間が必要になるようだ。

 

 

 《オクラホマ》乗員は、プリキュアの攻撃を回避して一安心する暇も無く、今度は《陸奥》の40センチ砲弾が、唸りをあげて飛んで来た。艦長三好輝彦大佐は、回避行動が不可能な《ウェストバージニア》よりも《オクラホマ》の方が危険度が高いと判断し、またマナ達プリキュアを援護する為に、砲撃目標を変更した。

 

 《オクラホマ》艦長が、砲撃目標を《陸奥》に変更するかどうか、迷っている内に《陸奥》の砲弾が艦橋を直撃し、艦長等を吹き飛ばした。

更に《伊勢》《日向》の36センチ砲弾数発が後部主砲を破壊、炎上させた。しかし両旧式戦艦とも機関部は無事な様で、速度が落ちる事無く

雷雨の下に姿を消した。

 

「砲撃止め! 無暗に撃ったらプリキュアの子達に当たるぞ」

敵艦隊が雷雨の下に隠れるのを確認した、三次大佐は直ちに砲撃中止命令を出した。

 

 

 

 マナ達は、スコールを迂回して残存艦隊を捜索するか、一旦引き上げるか少し迷ったが、しばらく追跡を継続しようという事になった。

「駆逐艦は未だしも、戦艦……旧式戦艦でも、修理されれば再び敵として向かって来ますわ」

「私達の世界では、真珠湾奇襲で被害を受けた米海軍の戦艦で、放棄されたのは2隻だけで残り5隻は、全てサルベージされて復帰しているわ」

 

 ありすと六花の言う通り、完全に海の藻屑にならなかった場合、修理され復帰する可能性は高い。復旧した米旧式戦艦は、1944年10月に発生したレイテ海戦の一つ、スリガオ海峡夜戦で、西村艦隊を壊滅させ復仇を遂げた。更に、翌年の硫黄島攻略戦や、沖縄上陸戦で陸上に向け艦砲射撃を行い、沖縄の軍人や民間人に犠牲を出している。(2)

 

 プリキュア達が、スコールを迂回しながら進みだすが……

「待ってください! 変な匂いがします!」

「ロゼッタ? どうしたの」

ありすに向け、真琴が声を掛ける。

 

 「温泉の様な匂いがします」

確かに僅かだが、温泉というか硫黄の様な匂いがする。

 「敵艦の火薬成分の匂いだよ」

 「ハート、敵艦じゃ無く硫黄の匂いは、海面と言うより海の中から来ているわ」

 

 確かに、六花の言う通り硫黄のような匂いは、海の中から来ている。マナが海面近くまで降りたら、匂いも少し強くなった。

しかも、その匂いはスコールの方角から来ている様だ。

 

 「皆! 避難しよう!」

他のプリキュア達は、一瞬驚いたが彼女達も危険を感じたのか、急いで西の方角に避難する。

 

 

 「おや、プリキュア達が慌てて戻って来るぞ。なにかあったのかな?」

 「米艦隊の増援部隊でもいたのでしょうか?」

近藤中将が、全速に戻って来るプリキュアを目視して、白石少将に何かあったのだろうかと、話しかけた。

 

 とりあえずことは式無線で、呼びかけてみる。

 「どうしたんだい、敵の別動隊とかが居たのかな?」

 「海底火山が噴火するかも知れません!」

 「えっ、海底火……」

 

 状況を質問しようとした、近藤中将の言葉は途中で途切れた。奇妙な雲の方角に、閃光を目撃した。その後数十秒経過した時、衝撃波が艦隊に達した。暴風雨の様に、《大和》の船体が大きく揺れる事は無かったが、装甲ガラスや雲の方角に向いていた対空機銃が、揺れ動いた。

 

 

 

 それより数分前、戦艦《メリーランド》の戦いも終わろうとしていた。

 「第4砲塔弾薬温度上昇中! 誘爆阻止の為に注水します!」

 「前部缶室停止!」

 「第3砲塔応答無し!」

 

 「《タイタン》には少なくとも、10発程度は命中させた筈だ! それなのに全く効果が無い!」

 《タイタン》(大和型戦艦)には、何発かは命中させている筈だが、何事も無い様に撃ち返して来る。直後、艦橋を掠めた一弾が、後部ボイラー室を吹き飛ばした。

 

 「後部ボイラー室大破! 航行不能です」

 「そうか、艦長総員退艦……」

 

 絶望的な報告を受けた、キンメルが艦の放棄命令を出そうとした瞬間、《タイタン》の主砲弾らしい飛来音が聞こえた。

キンメルは直観的に、その砲弾が《メリーランド》をそれも、この司令部艦橋を直撃すると感じた。

(悔いの残る戦いだったが、それでも戦艦乗りらしい最期を遂げる事が出来そうだ。謎の美少女集団にやられるより、コンバインド・フリート最強の戦艦主砲弾で戦死出来る事は幸いだ)

 

 その直後凄まじい衝撃を感じ、キンメルの意識は暗転した。





キンメル太平洋艦隊司令長官が終了しました。

1 戦艦《ビスマルク》の砲撃で轟沈。生存者は3名
2 真珠湾攻撃(史実)以降の米戦艦のその後

自力航行可能

【ペンシルベニア】【テネシー】【メリーランド】

大破転覆

【ネバダ】【カリフォルニア】【ウェストバージニア】

除籍

【アリゾナ】【オクラホマ】

下2隻以外は全てサルベージされ戦線復帰

ダルのど27話ショック
ビョーゲンズとの和解の可能性は消失したんじゃなかろうか?


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第56話【キンメル提督終了のお知らせ 完全版】


 キョエ
「週刊少年サンデーで連載中のトニカクカワイイ、アニメ第4話で、遂に禰豆子VSオヨルン遂に対峙。バカー」

オヨルン
「こんなところはお姉さまには相応しく無いルン! 一緒に帰るルン!」

禰豆子
「私は絶対に帰らない」

ひかる
「きらやばー」
えれな
(いや、確かに中の人は同じだけど)

竈門禰豆子=由崎司 鍵ノ寺千歳=オヨルン


 

 

同日午後9時30分

残存艦隊重巡《ノーザンプトン》

 

 

「何とか無事の様だな。被害状況は?」

「主砲8インチ砲、第2砲塔射撃不能、後部第3砲塔旋回不能です。5インチ対空砲及び、40ミリ対空機関砲も半数以上が使用不能です。人的被害は、死亡30名負傷者は40名以上で、うち15名以上は重傷です」

「機関砲の被害は、海底火山の影響を受けた後部の方が多いな」

 

 スプールアンス少将は、突発事態に対しても冷静に分析している。それを見ている乗員達は、完全に尊敬の眼差しでスプールアンスを見ていた。

「大規模な海底火山噴火ではなくて幸いでしたね。大規模噴火だったら艦隊は壊滅、いやコンバインド・フリートも壊滅していたでしょう」

戦隊参謀の、カール・ムーア中佐が報告を聞きながら答える。プリキュア同様こちらも、旗艦配属の地質学に詳しい士官が異変に気付き、全艦に艦内への退避命令を出せたことが幸いし、犠牲者を最小限にとどめたのだが、大規模噴火だったら、無意味だっただろう。

 

 

 「海底火山の噴火というよりは、ランクが下の水蒸気爆発だったのかも知れんな。ふむ、仮に大規模噴火だったらコンバインド・フリートとプリキュアも壊滅し

案外早く戦争終結になったかも知れない」

スプールアンスの冗談に、乗員達は皆驚いている。普段余りそういうジョークを口にする人では無いからだ。

「いや、もしかしたらあの爆発に巻き込まれて何名か、死亡している可能性もあります」

 

 確かにその通りだ。《オクラホマ》《ネヴァダ》の乗員は何か、目撃しているかも知れないので、その報告を待っている。幸い敵の追撃は無さそうだ。敵は雲というフィルターを通じて、海底爆発を目撃したので爆発規模をかなり大規模に過大評価しているのだろうと、スプールアンスは考えた。更に、下手に追撃して再び海底爆発が起き、味方に被害が出るのを恐れたのだろう。自分が帝国海軍提督でも同様の判断をするだろう。ハルゼーや、某知波単学園みたいな突撃バカで無い限りは。(1)

 

 「提督、たった今2戦艦から被害状況の報告です。良い知らせと悪い知らせ、どっちからお聞きになりますか?」

5分後、通信長ダグラス・エンダース少佐が2戦艦から届いた、報告電文を持って艦橋に現れる。

「では、良い方から頼む」

 

 

  「《オクラホマ》《ネヴァダ》共に航行可能です。速力は15ノットで航行可能との事です。戦艦の頑丈な船体が幸いしました。ただ、主砲は全て使用不能です。これは敵戦艦との砲撃戦の被害を含みます。対空砲や対空機関砲もかなりの被害を受けており死傷者も200名を超えています」

「悪い方は?」

「残念ですが、海底爆発直前にプリキュアも逃げて行ったのが目撃されてました」

乗員達が一斉にため息を吐いたり、軽く舌打ちをする。

 

 

 「このまま退避するしかあるまい」

スプールアンスは撤退せざるを得ない事を周囲に告げる。他の巡洋艦も同様の被害を受けている。更に海底爆発時に転倒したり、砲撃戦での被弾で装甲や船体に穴が開いて、海底爆発の時にその穴から熱水が入り火傷を負っている乗員もいる。

 

 「駆逐艦の被害はどうか?」

 「幸いにも、被害は軽微で対潜戦闘に支障は無さそうです」

エンダース少佐の報告受け、今度はスプールアンス達は安堵する。戦隊の前方にいた駆逐艦隊は大きな被害を受けずに済んだ。

 

 

 「提督、撤退はサンフランシスコでよろしいですか? それと、駆逐艦5隻ではやや対潜戦闘が不安です。西海岸基地に増援の駆逐艦を要請すべきだと思います」

「サンフランシスコには、恐らくハルゼー艦隊の損傷艦も、引き上げて来ているだろう。そこに我々も行くと混乱する可能性が高い。可能なら、サンディエゴに向かう。駆逐艦の増援要請は行うが、安全距離に離脱するまで無線は封鎖する。敵空母機の攻撃を受ける可能性もある。敵さんが、我々が海底爆発で大きな被害を受けたと誤解しているのなら、未だ半日程度はその誤解を続けて貰いたい」

「アイアイサー」

 

 15分後

 

「思い出したぞ」

「何をですか?」

艦長が驚いて、スプルーアンスに聞く。

「海底爆発が起きる直前に、上空に沸いて来た黒雲だ」

「何処かで、火山の噴火を目にした事がおありですか?」

 

 「いや、火山では無く1923年9月1日に発生した、関東大震災の時だ。もっとも、肉眼で見たのではなくその写真が半年後に、写真誌に掲載されたのを

目にしたのだ」

関東大震災は、10万人以上の犠牲者を出し、当時東京や横浜に運悪く滞在していた、海外のビジネスマンや観光客も被災している。

 

 8月に副大統領から昇格した、カルビン・クーリッジ大統領は国民に義援金を呼びかけ、更にアジアにいた米極東艦隊に救援隊の派遣を命令している。2011年3月の、トモダチ作戦と比較して旧トモダチ作戦と呼ぶ人もいる。(2)

 

 その写真は、地震発生の10分前に撮影されていた様だ。

「日本に滞在していた、合衆国のカメラマンが撮影したんですか?」

「いや、確か有名な日本人の写真家だ。確かヤマガタ県の北東部の人らしい。存命なら60歳くらいだろう」

 

 写真は、東京では無く少し北のサイタマ県……オオミヤかカワゴエで撮影されたらしい。撮影していると、写真家も揺れに襲われ転倒し数日間入院したらしい。

「私もその写真見た気がします」

「地震の発生する原因は不明だから、地震と関係があるかどうかは不明だ。今回の不気味な雲もあるいは単なる偶然かも知れない」

 

 

 (今回の突然の海底爆発は、何かの前兆かも知れんな)

スプールアンスの不吉な予感は、この先的中する事になるのだが智将と言えども、この時点ではそれを確信してはいない。

 

なお、単独で離脱して行った艦もいたが、明暗が分かれた。《ブルックリン》級軽巡《ナッシュビル》は、味方と逸れてしまい単独で離脱していた。(3)

午後11時過ぎに、潜水艦《伊-15》より魚雷で攻撃されるが、10kmからの遠距離雷撃だったので命中弾は無く、翌朝には残存艦隊に合流できた。

 

 反対に重巡《チェスター》は、魚雷攻撃を回避する為に針路を変えたが、不運にも《伊-26》の目の前に出てしまい、魚雷3本が命中し轟沈。

数日後、米潜水艦により10名が奇跡的に救助された。(4)

 

 

 

 誰かが私の名前を読んでいる。それも、一人では無く何人もの声がする。

(せっかく満足して死ねたのだ。邪魔をしないでほしいな)

だが、その声は次第に大きくなってくる。文句を言ってやろうと思った瞬間だった。

「キンメル長官、気が付かれましたか?」

 

 気が付くと、副官と艦長が心配そうにキンメルを覗いている。多少体が痛むが、生きている様だ。

「何故無事なのだ? 砲弾は不発だったのかね?」

だが、あの衝撃波を考えると不発という可能性無いな、とキンメルも思った。

 

 「運が良かったのです」

『タイタン』の主砲弾は、司令部艦橋を直撃したが、その瞬間に信管が作動し炸裂した様だ。戦車の砲弾も、戦艦の主砲弾も装甲を貫通し、内部で炸裂する事で最大限の効果を発揮する。何らかの偶然か、それとも主砲弾信管に不具合があったのだろう。

「全員無事だったかね?」

 

 艦長は首を振った。艦橋が完全破壊される事は無かったが、一部破壊は免れなく参謀長と航海長が死亡した。幸いにも通路がある側の出口は無事だったので、生存者は速やかに脱出できた。

「そうか……」

キンメルは深くため息を吐いた。

 

 

「しかし、最後に敵に一泡吹かせてやりました」

「どういう事だ」

「最後に発射された主砲弾が、敵巡洋艦を直撃し撃沈しました」

「本当か、プリキュアも反応できなかったのかね?」

「まさか、ホールインワンみたいに奇跡的に命中するとは、誰も考えなかったのでしょう」

 

 「我々は、止めは刺されなかったのか?」

「ブシノナサケというやつでしょうか? それとも単に砲弾の浪費を避けたのかもしれません」

「プリキュアもか?」

「総員退去後に、何名か近付いてはきましたが攻撃はして来ませんでした」

「せめて私くらいは攻撃して行けばよかったのにな」

 

 キンメルはゆっくりと立ち上がる。幸いにも骨折はしていない様だ。だが、立ち上がった時に階級章の星のマークが外れて落ちてしまう。副官から拾った階級章を受け取ると、それをキンメルは海に投げ捨ててしまう。副官や参謀達は、絶句して固まる。

 

 「もう間もなく不要になる。私がワシントンの上層部なら、こう命じるだろう。キンメルはクビだ……とね」

 

 

 予感は的中し、8日後海軍上層部はキンメル提督に対し、現職からの解任と少将への降格を命じる。程なく予備役への編入命令が出て、キンメルの海軍軍人生命に終止符が打たれる事になる。その後、1968年5月14日に、コネチカット州グロトンで死去するまで、栄光とは無縁の後半生を生きる事になる。

 

 30年後、家族の尽力により合衆国議会で名誉回復の議決が承認されるも、ビル・ク○ントン大統領は署名を拒否。更に、次のブッシ○・ジュニアも署名を拒否し、以後も名誉回復がなされる事は無かった。

 

 





生きていたキンメル提督 以後の運命は史実準拠です。完全に終了するので完全版

1 ガールズ&パンツァーに搭乗する戦車道高校
2 1923年8月2日に、ウォーレン・ハーティング大統領が遊説中のサンフランシスコで急死し、翌日未明に副大統領から昇進。
3 《ブルックリン》級軽巡4番艦 1938年6月6日完成
4 《ノーザンプトン級重巡》2番艦 1930年6月24日完成


ユニ
「トニカクカワイイには、ユニも出ているニャン」
キョエ
「ただし残念な美少女です。バカー」
ユニ
「ゲームは得意な設定ニャン」
キョエ
「学業に甚大な悪影響が出ているみたいなので、やっぱり残念な美少女です。バカー」

 残念な美少女 美人だけど残念な美人の事 典型的な例として「ちはやふる」の主人公綾瀬千早。

 大人のキャラクターだと、残念な美人と言われる。「トニカクカワイイ」と原作者が同じの「ハヤテのごとく」の、教師桂雪路(かつらゆきじ 桂ヒナギクの姉)
雪路さんは、相田マナと中の人が同じなので、当時の「ハヤテのごとく」で、生徒達に、「先生は声は可愛いんだよなあ。プリキュアみたいに」と言うオマージュが。
 その人も数年後キュアマーメイドになりましたがね。(ちなみに妹ヒナギク=シンドイーネ)


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第57話【映画を見る順番も大事。2013年には……】

 「ミラクルリープ」見ましたよ。映画前の注意も例年とは違いが。本来春映画の注意に出るはずが無い、追加プリキュアが出る事自体が異常な事態です。鬼滅の刃は20人近く他の客がいましたが、「ミラクルリープ」は他のお客さんはいませんでした。
 売店で販売しているのがドリンクだけでしたね。(観客100%の場合、ドリンクのみの販売。50%なら軽食も可能。来月から撤廃の予定)

 「鬼滅の刃」と他の映画(特にアニメ系)を同日に見る場合は、「鬼滅の刃」から見る事を推奨します。さもないと精神が……あんじゅ……
チコ
「ぼーっと映画のネタバレしようとしてんじゃねえよ」ピー


 

 

午後6時 旗艦《大和》

 

 

 

 近藤中将は、プリキュア達を労いその間に艦隊からの戦果報告を集計していた。

「本艦は、被弾10発右舷側副砲一基被弾。他に12センチ高角砲2基大破。対空機銃数基破壊! 機関部異常無し、戦闘可能です」

艦長森下信衛大佐が、旗艦の被弾状況を報告する。

 

 「《武蔵》被弾9発。水上機射出機大破。機関全力運転可能、戦闘可能」

《伊勢》《日向》は、かなりの被害を受けたらしい。特に《伊勢》は最大速力が24.5ノットから19ノットにまで低下している。

巡洋艦以下の艦は、第六戦隊の重巡《加古》が沈没。開戦以来《加古》は全くの無傷だったが、戦艦《ウェストバージニア》が最後に放った16インチ主砲弾が……

それもろくに狙いも付けずに発射した砲弾が、奇跡的に《加古》艦首に命中し、艦首が切断され航行不能になり放棄せざるを得なかった。

 

 ヤケクソに発射された砲弾が、まさか命中するとはプリキュア達も予測できなかった。更に、《青葉》は艦橋被弾により五藤少将重傷で、第六戦隊は当艦の久米艦長が

引き継いでいる。更に、軽巡《長良》が集中砲撃により沈没。駆逐艦は3隻沈没、3隻損傷。

 

 戦果は、戦艦《メリーランド》《ウェストバージニア》、重巡《ミネアポリス》撃沈。軽巡洋艦以下は未だ戦果不明だが、数隻撃沈したのは間違いない。

更に、被弾した米巡洋艦2隻前後が単独で東方に逃走して行った様だ。これらは潜水艦隊に追跡命令が出る筈なので、戦果の拡大も可能だ。

 

 

「東方に逃走して行った残存艦を追跡しますか?」

白石少将の提案に対し、

「いや、下手に追跡すると今度はこっちが米艦の二の舞になる可能性がある」

「確かに、今度は我々の真下で海底火山が噴火するかも知れませんな」

近藤は、海底火山が再度噴火する恐れが高いと考え、追跡は断念すると決断した。

 

 「最後尾にいた戦艦2隻は、流石に沈没は免れないのではないかな? 敵戦艦と戦って戦死するのは、海軍軍人の名誉とも言えるが、海底火山の噴火で死ぬのは無駄死にだろう」

近藤の判断に対し、異論は出なかった。艦隊は損傷艦の多い第四・第六戦隊は離脱させ、第一戦隊はこのまま真珠湾砲撃の為に、進撃する様に命令を出した。

 

 

 

 午後9時

 

 ホノルル市民は前日から、ポインデクスターハワイ準州知事(1)の命令で、郊外の丘陵地帯に避難を開始していた。本日の夕方までに市民の避難は完了していた。

ホノルル市警や、陸海軍も避難誘導に協力していた。日本艦隊攻撃から生還した搭乗員達も、命令を受け避難誘導や、交通整理に参加していた。

 

 

「戦艦だ!」

市民の一人が、パールハーバー軍港に接近して来る艦隊を発見した。ネットもSNSも無い時代だ。詳しい戦況は全く市民に走る手段は無かった。

「太平洋艦隊が勝ったんだ!」

「日本艦隊をぶちのめして、引き上げて来たのに違いない」

市民の間からは、太平洋艦隊の勝利を確信して歓声が上がる。

 

 

 「違う! あれは日本の戦艦だ!」

避難整理に参加していた、ホールマーク中尉は叫んだ。中尉は実際攻撃に参加していたので、遠くからでもそれが敵艦であると気付いた。

「馬鹿な事を言うな!」

周囲にいた市民達から、中尉に罵声が飛ぶ。中には殴りかかりそうな感じの男もいる。

 

 

 押し問答をしていると、突如軍港上空が明るくなる。上空には水上偵察機らしい機影が見えた。その水上機が再び照明弾を投下し、今度は飛行場が明るく照らされる。

「帝国海軍だ!」

中尉を糾弾していた数名の市民も、敵艦隊だと気付いた。

 

 敵戦艦の近くに、巨大な水柱が上がり再び市民から歓声が上がった。オアフ島は重要拠点なので、宮崎アニメに出そうな、要塞砲を配置されている。

特に1921年に完成した、ウィルソン要塞砲は16インチ砲で、これはワシントン軍縮条約で建造中止になった、旧《サウスダコタ》級戦艦主砲を転用した。

WW1の頃は、戦艦は絶対に陸上の要塞砲と戦ってはならないとされていた。陸上の要塞砲は、戦艦と違い沈む事が無いからだ。

 

 だが、第2射を発射するより早く突如空中から、謎の光が要塞群を襲った。16インチ砲台は流石に一撃で、完全破壊はされなかったが、砲撃不能に陥り他の要塞も沈黙した。

 

 「こっちに来るぞ!」

 「空を飛んでいるぞ」

ホールマークが、騒ぐ市民達が指差す方角を見ると、プリキュアが数名市民達が避難している丘陵地帯に近づいて来る。しかし、遠くからこちらを確認しただけで別の方角に飛び去った。非戦闘員を攻撃するつもりは無論皆無だろうが、迂闊に近付けば市民がパニックを起こして死傷者が出るのを避けたのだろう。

 

 

 続いて、パールハーバーに配備されていた魚雷艇部隊が攻撃を行った。だが敵艦隊は駆逐艦や巡洋艦だけでは無く、戦艦主砲までぶっ放して来た。魚雷艇は、半数以上が撃沈もしくは転覆し、残った僅かの魚雷艇は慌てて魚雷を発射し逃走した。無論命中した魚雷は一本も無かった。

 

 抵抗を実力で排除した敵艦隊の巨大戦艦が砲撃を開始するのが見える。砲弾は軍港内の倉庫を直撃し、その破片が飛び散る。もう一隻の巨大戦艦は、飛行場を狙っているようで飛行場内の滑走路付近に着弾し、大穴を開ける。砲弾が着弾する度に、ドックが、軍用車両が、クレーンが、航空機格納庫が破壊されていく。

 

 

 市民達の中には、泣き崩れる人や攻撃を止めてくれと哀願する市民もいるが、敵艦隊が艦砲射撃を止める事は無い。

「畜生!! ジャップめ……プリキュアめ、この恨みは百倍にして返してやるぞ!」

ホールマークは悔しさのあまり、唇をかみしめ血が滲む。しかし、その痛みを感じる事は無かった。

 

 

 プリキュア達は、少し離れた地点に退避していた。

「あのタンク、やっぱり偽物だったんだね」

マナの言うタンクとは、艦船用重油タンクの事で、容量はおよそ450万バレルだ。タンクは軍港に隣接しているが、このタンクは果たして本物がどうか、参謀や搭乗員の間で議論になっていた。(2)

 

フェイク(偽物)派は、あからさま過ぎるので偽タンクだろう。本物は地中にあるのではないかと主張しているた。六花は、山口多門中将や源田大佐から、重油タンクが本物かどうか尋ねられた。だが、全国模試1位の英才菱川六花といえども、重油タンクの真偽に関する知識は無かった。

 

 

 《大和》の46センチ砲弾が、重油タンク群を直撃し火災が発生したが、その規模は非常に小さく重油が大量に漏れだしている様子も無い。重油はガソリンほど気化しにくく、爆発の危険は少ないとはいえ、重油タンクが満タンならもっと大規模な火災になっていないとおかしい。

 

 マナ

「でも、これで良かったんだと思う。重油が大量に流れ出たら、かなり有害なガスが出るんじゃないかな」

 真琴

「硫化水素ってやつ?刑事ドラマでもたまに出るわ」

 ありす

「硫化水素は出ませんわ。と思いますが」

 

 六花

「でも、広範囲に有害な気体が流れて特に子供や、気管支に病気がある人には重大な悪影響が出るわ。全住民が他の島か、本土に避難する事になってしまったと思うわ」

 ありす

「ハワイ諸島は、海だけじゃ無く自然も美しいのです。真珠湾が重油漬けになったら、オアフ島の自然環境は、回復不可能なほどのダメージを受けていた可能性が高いですわ」

 

 

 あの重油タンクが空だというのは間違いないだろう。でも、そうなると本物は何処にあるんだろうか?

 真琴

 「やっぱり、地下タンクかな?」

 マナ

 「でも、狭いオアフ島の地下にタンク建造できるかなあ? 住宅や商業地区の下はダメだろうし」

ありす

「ハワイ諸島は、元は火山噴火で形成された島です。硬い溶岩岩盤の地下にこの当時の技術でタンクが作れるでしょうか」

六花

「世界Bには無い技術や、発明が有ってもおかしくは無いわよ。この世界では乾電池はアメリカ人が最初に発明したと聞いたわ」(3)

 

 地下タンクの場所も判らないのに、やたらと攻撃するわけにもいかない。程なくプリキュアは艦隊に合流すべく飛び去った。

 





1 ハワイ準州が正式に州に昇格したのは、1959年。 アメリカ合衆国では大統領選挙本選に投票できるのは50州。自治領のグアムや、プエルトリコには投票権無し。
2 史実でも真珠湾の重油タンクが、本物かフェイクか議論が起きた。最終的に真珠湾奇襲では、重油タンクへの攻撃は実施されず。重油タンクの謎は後日。
3 史実では日本人

2013年の事とは、「劇場版 魔法少女まどか マギカ」と同日公開の『映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』。見る順番を間違えた親子多数を襲った悲劇。

ひかる
「映画館は、お客さんが0人だったら上映するのかな」
まどか
「大都市の映画館ならともかく、地方都市の映画館なら起こりそうですね」
えれな
「深夜帯や、上映終了間近の映画でも起こりそうね」
ユニ
「アブラハム監督に聞いてみるニャン」
監督
「映画館によって違うが、大体上映開始から30分以内に誰も来ない場合は、上映中止になる所が多いみたいだよ」


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第58話【まだターンは終わらない」その1

 図書館で半沢シリーズ最新刊を予約。しかし、読めるのは来年4月頃(ほかの予約者が何十人も)
半沢第一期の半年前が舞台。つまり浅野支店長も出ます。




 

 4月22日 午前3時

 ワシントン

 

 

 「1944年4月21日は、合衆国史上最悪の日と呼ばれるだろう」

小声で自嘲気味に呟くルーズベルト大統領に対し、会議室に集まっていた閣僚やハリー・ホプキンス等の側近はだれも異論を唱えない。誰がどう考えても、合衆国建国史上これほどの国難に直面した事は無い。

 

 第一次世界大戦では、本土が直接戦場になる事は無かった。むしろ、多数の軍需物資を輸出しぼろ儲けし、空前の好景気で一気に国民の生活は向上した。参戦し欧州にも派兵したので、戦士と戦病死を合計すると、11万6516人が犠牲になっている。一見多そうに見えるが、フランス112万、大英帝国62万、ドイツ帝国179万、オスマン帝国77万と比較すると非常に少ない。(1)

 

 先の世界大戦では、合衆国にとって戦争は対岸の火事だったのだが、米英戦争以来130年ぶりに本土が攻撃された。史実でも、昭和17年の2月と6月に潜水艦が、合衆国西海岸の軍事基地や製油所を砲撃している。更に搭載してある小型機で

空襲にも成功している。(2)

 

 しかし、実際の米側の被害は非常に軽微で、犠牲者もほぼ0だった。それでも、西海岸3州の市民の間でデマが広がり、例えば対空砲台が米軍機を誤射で撃墜する等の混乱が発生した。

 

 「キンメル提督の太平洋艦隊は、戦艦《メリーランド》《ウェストバージニア》と、護衛空母全艦を喪失」

ノックス海軍長官の絶望的な報告を受け、十数秒の間沈黙が続く。

「他の艦はどうなったんだね?」

「《オクラホマ》《ネヴァダ》の2隻と、離脱可能な艦は離脱開始したのですが、その直後詳細は不明ですが何らかの海底噴火に巻き込まれて、通信が途絶しています」

更に、オアフ島の陸軍機と海兵隊機も甚大な被害を受け残存機はハワイ島などに避難した。(3)

 

 海軍長官の報告を聞いた、他の閣僚からは自然まで敵に回るかとのぼやきが出た。

「ハワイ方面の戦果は?」

「巡洋艦2隻と、駆逐艦数隻を撃沈し、旧式戦艦2隻に中破程度の被害を与えたとの事です。更に航空戦で対空巡洋艦と駆逐艦各1隻を撃沈。中型空母1隻を撃破しました」

 

 戦果を聞いても誰一人として、喜びの表情を浮かべる者はいない。野球の試合なら15-1くらいの大敗だろう。既にワシントン州沖航空戦の悲報は数時間前に入って来ている。空母《ワスプ》《サラトガ》と戦艦《ノースカロライナ》が撃沈され、

ピュージェット・サウンド海軍工廠や、燃料タンクのみならず航空機工場や、ワシント・オレゴン両州の航空基地も大きな被害を受けた。更に、多くの市民がプリキュアを目撃したので存在を隠し続ける事ももう無理だろう。

 

 「ワシントン・オレゴン全域と、カリフォルニア州北部に民間機飛行禁止命令を出しました。場合によっては非常事態宣言を出す事も検討してください」

フランシス・ビドル司法長官の意見にルーズベルトも同意する。ちなみにアメリカ同時多発テロの時は、全ての国境が閉鎖され航空機も全便飛行禁止となった。(4)

 

 その時、秘書官が入室してノックス長官に何か伝言を伝える。どうやら海軍省から電話があったらしく。廊下にある電話の所に向かった。その後5分ほどして、ノックス長官が戻って来る。長官の表情が僅かに明るくなっているのを見た閣僚達が、不審そうな視線を送る。

 

 「ハルゼー中将の航空機動艦隊の戦果詳細が入りました。小型空母1及び重巡洋艦2撃沈確実。更に、敵戦艦1に魚雷命中。更に最終確認は未だですが、新型の正規空母1隻を撃沈の可能性大」

その報告を聞いた、閣僚達はおおとか、やったぞと歓声を上げる。被害は甚大だが、ただではやられなかったという事だ。彼我の造船能力を考えると、大型空母1隻撃沈は大戦果だ。

 

 前日午前中に、戦う前から《ヨークタウン》《インディアナ》の2隻が敵潜水艦の雷撃で損傷し、撤退したと聞いた時はショックだったが、これも見方を変えれば

貴重な正規空母と高速戦艦を、日本機やプリキュアの魔手から逃れさせ戦力の温存ができたと喜ぶべきだろう。

 

 「大統領閣下、少しお休みになられてはどうでしょうか?」

「そうさせて貰おう。詳細は朝になれば入るだろう。いったん解散し午前9時に閣議を開こう」

閣僚達も退出し、大統領も仮眠を取る為に寝室に向かった。

 





1 イタリア王国65万 ルーマニア王国25万 ロシア帝国220万
 オーストリア・ハンガリー2重帝国110万 日本は450人(万じゃないよ)
尤も、援軍と一緒にスペイン風邪も運んで来た。

 アメリカの参戦が無ければ、中央同盟側(ドイツ帝国・オーストリア・ハンガリー・トルコ帝国)の勝利で終わったかも。
スペイン風邪は多分アメリカの中だけで流行かな。WW1で英仏が負けたら→オスマントルコ残存→英仏が中東で好き勝手出来ない→なんか平和な世界になりそうなw
ヒットラーは多分、そこそこ有名な画家もしくは、故郷の中学校辺りで美術教師になってそう。うん、間違いなく平和だw

2 山火事を狙い爆弾を投下するも、前日季節外れの大雨が降っていて火事にならず。戦後搭乗員と地元学生の間で交流に発展。アンビリで放映してた。
3 残存艦隊は無事だけど、無線封鎖をしています。
4 9・11の時飛行してた飛行機は即、最寄りの空港に着陸。


 次回は艦これイベント前段作戦合間に。今回は英国の《タウン級》軽巡が追加されるそうな。《タウン》級の由来は艦名が英国の町の名前だから。ドイツ軽巡や、フランス重巡の追加もありそうな予感。

キョエちゃん
「キョエはスペイン戦艦の追加を期待。バカー」
チコ
「スペイン内戦で全部沈んだから、多分無いよ。チコはアイテムでチャーハンおにぎりの追加を希望」


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第59話【まだターンは終わらない】その2


 鬼滅の刃完結お疲れ様でした。作者は今年9月頃までは鬼滅知識皆無(ジャンプは今はワンピースだけ読んでる)で、フジテレビの総集編を見ました。一話を見て衝撃を……主人公の家族みなごろしやんけ……えれなやほまれなら気絶するレベル。
 次週の那田蜘蛛山編で、しのぶさんが拷問しますとかいうけど、かなりはーちゃんボイス気味だったので、恐ろしさ倍増。みらリコが見たら恐怖で震え出すんじゃなかろうか。


 

 

 4月22日 午前2時 ニューメキシコ州

 

 

 「高級軍人って人種には、民間人に対し上から目線で威張り散らしたりするやつも多いが」

「大佐は、穏やかで余り軍人には見えませんね。海軍作戦本部付の参謀らしいですが、参謀では無く主計課で兵士の給料計算でもしている方が似合っていそうな感じですね」

「能ある鷹は爪を隠すってやつだな」

「機長がどや顔してもダメでしょ」

「そもそも軍人じゃ無く、歴史研究家か書店の店主の方が似合いそうだ」

「本屋さんですか」

「自宅の近くにあった本屋さんの店主が、あんな穏やかな人だった」

 

 旅客機《DC-4》機の機長トニーノ ・ ルチオと、副操縦士のフランキー・オースティンが、乗客をネタにして好き勝手に言っている。

本来なら次の仕事まで、数日はロスでのんびり出来るはずだったのだが、急遽チャーターされて東海岸に戻る事になってしまった。その原因となった客をネタにして、会話を楽しむくらいは許されるだろう。

 

 昨日カリフォルニア州は直接被害は受けなかったが、本土空襲のニュースでカリフォルニア州も大混乱に陥った。ロスやメキシコ国境に近いサンディエゴではそれほど大きな混乱は無かった。が、サンフランシスコや州北部では、対空砲台が味方機を日本機と誤認して撃墜してしまったり、慌てて内陸部へ避難を開始した市民により、大渋滞や交通事故を引き起こしている。

 

 今は飛行禁止措置が出ているのは、サンフランシスコより北だが、明日以降州全域に広がるかもしれない。その噂を聞いたのか海軍作戦本部の大佐達が、慌ててチャーター機を頼みに来たのだろうと、二人は考えた。偶然同じことを考えたらしい、農業視察に来た議員や穀物メジャーの経営者の一行が、大佐たちと遭遇しチャーター料金を双方で折半という事になった様だ。まあ、どちらの出す金も税金なんだが……

 

 

 午後11時にロス郊外のロングビーチ飛行場を飛び立ち、現在ニューメキシコ州西部のギャラップ市より、北東50キロ上空を飛行している。天候は晴れで、雲はほとんど無く飛行は順調だ。操縦席の窓から下を見ても砂漠や山岳地帯が多い州なので、人家の灯りは見えない。

「大佐さん達は、確か途中の空港で降りるんでしたね。でも、海軍作戦本部のエリートさんが、田舎に何の用なんですかね」

フランキー副操縦士が、疑問を述べる。ロスに来たのは、海軍軍事施設の視察か会議にでも来たのだろうが。

「海軍機のテスト飛行か、新兵器の実験(例 新型対空レーダー)じゃないかな」

「オクラホマのような田舎より、東海岸でやった方が準備とか楽なんじゃないですかね」

「東海岸や大都市の近くだと、市民に目撃されてあっという間に噂になってしまうぞ。人口も多いからな」

「なるほど、田舎の方が機密は守り易いですねえ」

 

 

 二人の話題は、大佐に同行している二人の美女に移っていた。両手に花とは実にけしからん。

「まず、マリア少尉……恐らく秘書だと思います。名前からするとロシア系ですね」

「ロシア系には違いないんだろうが、革命の後に亡命してきた連中じゃ無くて、恐らくアラスカ出身だな」

機長の知り合いにアラスカ生まれの女性がいたらしいが、発音が似ているとの事。

 

 ロシア系アメリカ人で多いのは、やはりロシア革命と内戦の頃に亡命して来た人達だろう。ソビエトが成立し、粛清される側になった人達だ。

貴族、高級軍人、富豪、大地主、それと正教徒の司祭等だ。財産を奪われ身一つで逃げて来た人も少なくない。

それとは別に、アラスカに移民したロシア人の子孫も存在する。

 

 アラスカは元はロシア帝国の領土で、1799年にロシア領土であると宣言しそれ以降、開拓の為に移民が行われた。最盛期には人口4万に達し、病院や正教徒の教会も建設された。

 

 1867年に、ツァーリアレクサンデル2世は、720万USドルで合衆国にアラスカを売却した。

「当時のアラスカは氷ばっかりで、産業は毛皮と漁業くらいしか無いプルンス。史上最大の無駄遣いと批判されたプルンス。でも、20世紀になって金に石油に天然ガスが次々と見つかって、その評価は一転し最高の買い物をしたと絶賛されたプルンス」 BY駄女神たちに振り回される宇宙生物(1)

 

「もう一人は名前からすると、インド系アメリカ人ですかね。少し冷たそうな美女ですが」

「でも頭は良さそうだぞ。数学の起源はインドだって説があるそうだから、学者出身かもな」

「そうですか、学者よりは女将軍みたいな感じですよ。前世は、古代インドの女王だったりして」

「薙ぎ払え!」

 

 

「お前は聞いているか?」

機長は、今度は声を低くして話しかける。

「何ですか?」

「マーシャルで海軍が大敗した相手は、日本軍だけじゃないらしいぞ。何でも謎の女の子戦闘集団にやられたらしい。これは機密だから他では言うなよ」

「聞いた事はありますね。プリキュアとかいうそうです」

 

 情報を統制しても、人の口に戸は立てられぬという通り完全に遮断する事は不可能で、情報通の人はプリキュアの存在を漏れ聞いている。

「かなりの美人らしいぞ」

「そうなんですか? それなら一度見てみたいですね。あの金髪の子みたいに可愛いんですかね」

フランキーが、コクピットの外を箒で飛んでいる美少女を指さす。

「そうそう、あんな感じで」

トニーノ機長も、外を飛んでいる黒髪の美少女を指さ……

 

「どうやら俺達のフライトは、ここが終点らしい」

「俺、もうすぐ子供産まれるのに」

「諦めろい。チンピラにやられるより100倍マシだろうよ」

「じゃあ、せめて誰にやられるか決めさせて貰わないと。こっちにはその権利がある筈ですよ」

「その通りだ、やられる側に決める自由があってしかるべきだ.。ここは自由の国だ」

 

 二人が「誰に止めを刺してもらうか」という、非生産的な議論をしていると、プリキュアが近づいて来る。その手には厚い紙みたいな紙を持っている。

 そこには英語で「ここは危険です。数時間後大爆発します。早く退避してください」と書かれている。二人が反射的に頷くと、プリキュア達は可愛く手を振って、東に去って行った。

 

30分後 ワシントングローヴス准将のオフィス

 

 准将は帰宅する事も出来たのだが、徹夜で事務仕事をしていた。時計は午前6時20分だがサマータイム期間なので、実際は午前5時20分だ。准将は流石に仕事を終え仮眠を取ろうとしていたが、内線電話のベルがけたたましく鳴り響いた。(2)

「どうしたんだ? 何か緊急事態かね?」

「プリキュアが、再び現れました!」

「今度はニューヨークにでも現れたかね」

「ニューメキシコ州上空です。北西から州都フェニックス方面に飛行して行ったそうです。民間機からの通報です」

 

 他にも西海岸に増援として飛行していた、偵察機からも同様の通報があったらしい。

「ニューメキシコ州だと、何かの間違いだろう。ニューメキシコには重要な目標は……」

真っ青になったグローブス准将は電話を切ると、急いで交換台を呼び出した。

「交換台、大至急ホワイトハウスに繋いでくれ! 緊急事態だ!」

 

 恐らく既に手遅れだと、有能な准将は気付いていた。

(なぜ極秘の研究所の所在が知られているのだ?)

後日その原因は、検証委員会に類する機関が設置されて解明が行われるだろう。だが、彼がその検証委員会のメンバーになる可能性は無い。何故なら彼のキャリアは、今日が終着点になってしまうからだ。

 

 

 ルーズベルト大統領は夢を見ている。誰かが大声で寝室のドアを叩き起こそうとしている。夢だと思ったが、声と音はどんどん大きくなって来た。

早朝から、大統領を叩き起こそうとしているバカを飛ばすのに、相応しい僻地は何処だろうと考えていると、目が覚めてしまった。

「何事だ! 早朝から、合衆国大統領を叩き起こすような緊急事態だとでも言うのか!」

「その通りです」

ルーズベルトは絶句してしまう。

「プリキュアがニューメキシコ州に現れたそうです。民間機からの、通報で数は5~10前後との事です」

 

 ルーズベルトの顔は怒りで赤くなった。ニューメキシコ州はロサンゼルスと、ニューオーリンズ方面やメキシコとの交通の要衝で、トウモロコシや、牧畜、小麦、綿花などの一次産業の他に、金銀、石油、石炭、天然ガスの天然資源も豊富だ。

 

 しかし、軍事上の重要拠点は乏しい。配備されている軍用機も大半が旧式機だ。戦力上の重要拠点は一か所しか……

 

「ジャップの、いやプリキュアの真の攻撃目標は、ロスアラモスの原爆研究所だ!!」

老練な政治家である、フランクリン・ルーズベルトは一瞬で真の目標に気付いた。パールハーバーも、シアトルも陽動でしか無く真の攻撃目標は、ロスアラモスの原爆研究所だという事に。





1 購入した当時は「巨大な冷凍庫を買った」と非難された。アラスカとオレゴン州の北部にロシア人が居住。
2 現在は、3月の第2日曜日から、秋真っ只中の11月の第1日曜日までの間
  日本も1948年から4年間だけ導入。

ニューメキシコ州は、名前の通り黒船来航より15年程前までは、メキシコの領土です。戦争に負けてアメリに奪われた。


艦これ前段イベント最終ゲージが割れない。肝心な時に反航戦ばかり引く。今年は新型コロナ次第では、突如イベント打ち切りもあるかもしれないので焦っています。


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第60話【ロスアラモス】


ひかる
「もう直ぐ、再放映中の太平記で反足利軍との戦いが終わるけど、その後はどうなるんだろう」
チコちゃん
「内ゲバ」
ひかる
「えっ?」
チコ
「ずーっと内ゲバ」
ひかる
「きらやばー」
チコ
「主に早よやれぇぇ!、こわっぱぁ!のせいで」
えれな
(チコちゃん逆だよ)


 

 

「危険すぎる! 何とか考え直してくれないか」

「空母艦載機も、ニューメキシコ州まで往復可能な機体は無い。君達だけで行くのは危険だ」

「でも、アメリカが原子爆弾を完成させてしまったら、数十万人の犠牲者が出てしまいます」

 

 先ほどから、プリキュアが原爆工場への攻撃を主張し、海軍側が君達だけでは危険だと説得を試みるという流れを繰り返している。

「君達の世界では、実際に原子爆弾が広島と、長崎に投下され30万人近い、犠牲者が出たという事だったね」

山本五十六海軍軍令部総長の発言に、一同静まり返る。

 

「間違いありません。長崎に投下された6日後に日本は無条件降伏し、終戦となったのですが、実は3発目の投下計画があったとの説もあります」

実際、プルトニウム以外の原子爆弾の部品は、テニアン島にあったので、ロスアラモス原爆研究所からプルトニウムを鉄道と、《B-29》で空輸すれば最短8月20日以降には、原子爆弾を投下可能だった可能性が高いとされる。その目標都市は諸説あり、小倉の他に重要都市だが空襲を受けていない、新潟等とされる。

 

 新潟市は、広島原爆投下の断片的な情報を基にして、次は新潟に投下される可能性大と判断した県知事が、市民に対する避難命令を発令し8月18日頃まで、新潟市中心部は無人となった。

 六花

「3発目は、京都に投下する計画だったという説があるんです」

小沢連合艦隊司令長官

「君達の世界で、何か文章とかでも出たのかな?」

 ゆかり

「終戦の前日に、愛知県東部に模擬原爆が7発投下されたのですが、爆撃機は全て投下の前に京都上空を通過していた事が判明したそうです」

出席者は、京都に投下された場合の被害を想像し青くなった。

 

 福留連合艦隊参謀長

「彼女達は、ニューメキシコ州中部のロスアラモスに、原爆研究所が在ると言っていますが」

 小沢大将

「予備的な段階なら、例えば大学や民間企業や研究所に、実験を依頼する事も考えられるだろうが、最終的な組み立て工場は人目に付きにくい僻地に、建てる可能性が高い。ニューメキシコ州はその条件を満たしているんじゃないかね。後はユタ州とか、アリゾナ州等も候補に上がるかもしれないね」

 

 その時海軍軍令部第一課長の、富岡大佐が入室し山本に資料らしきものを渡した。山本は、数分間それを見ていたが咳ばらいをして、静かにさせた。

 山本

「どうやら、ニューメキシコ州ロスアラモスでビンゴかも知れんぞ」

山本は全員に資料を回読させた。

 

 中立国メキシコ……(この世界では未だ中立らしい)(1)の日本大使館に勤務している、陸海軍の駐在武官は、メキシコを舞台に情報収集を行っていたが、ニューメキシコ州と、メキシコ国間で貿易の仕事をしている人物から奇妙な情報を得た。

ロスアラモスという辺境に、いつの間にか大きな施設が出来た。周囲の道路には検問所が出来て、出入りを厳しく取り締まっている。ニューメキシコ州では噂話だが、軍の薬品研究(対毒ガス)所だとか、弾薬庫では無いか等の噂が流れているらしい。

 

 ここ最近、別のメキシコ人から入手した情報によると施設に向かう、大型のトレーラーが何台か、研究所に向かう道で検問に止めらているのを目撃した。

検問は以前よりも厳しくなっているとの事。更に情報収集を進めて同様の情報を得た。

 富岡

「更に、別の砂漠で測量調査をしていたとの事です。その砂漠も近く出入りが制限されるとか」

 山本

「その砂漠は何処かね?」

 

 富岡大佐は、地図を開きこの砂漠ですと指差した。

 れいか

「原子爆弾の実験は、そのアラゴモード砂漠で行われたんです! 広島に投下される20日前です」

 小沢

「原爆研究はもう最終段階に入っているのかもしれませんな。かなりまずい」

 

 世界Bで原爆投下に使用された、《B-29》既に完成している様だが、マリアナ諸島を占領されない限り原爆投下は困難だろう。だが、2月の末に駐ドイツ大使館及び、複数の中立国を経由してアメリカが《B-29》を凌駕する、超大型爆撃機の試験飛行に成功したという驚くべき情報がもたらされた。

「樋端君、1月に仮に試験飛行に成功したとすると、君の予測ではどれくらいで実戦投入できるか?」

 

 連合艦隊航空参謀の樋端大佐は(2)、20秒ほど鉛筆をぐるぐると回転させて考えた。

「そうですねえ、《B-29》を超えるとなると恐らく6発機でしょう。かなり長くかかるでしょう。不具合も出るでしょうから、それを直しながら試験飛行を繰り返します。一年半……急いでも一年はかかるでしょうよ。並行して基地や燃料などの準備をして、乗員の訓練も……訓練は2か月は必要かな。実戦投入はどんなに急いでも、来年2月位でしょう」

 

 

 出席者が口々に、あと10カ月かとか来年の春には、敗戦の可能性かなどの声が上がる。

「米国はこの超重爆撃機に原子爆弾を搭載し、都市攻撃か艦隊泊地攻撃に出るとして、何処を発進基地にして来るかを議論して貰いたい。プリキュアの皆も、意見が有ったらどんどん発言して欲しい」

山本軍令部総長の提案で、超重爆の発進基地を想定する議論が始まった。

 

 まず参謀の一人が、オアフ島はどうですかと発言する。

 六花

「オアフ島は、軍事施設が密集していて多数の民間人が居住しています。万一暴発事故でも起きたら、大惨事になってしまいます」

六花の意見に、複数の参加者が賛成する。今度は別の参加者が、ではハワイ島はどうでしょうか? 面積は広いので、基地を置く事も可能ですと発言する。

それに対し、面積は広いがハワイ諸島では、2番目に人口が多い。それより火山噴火の、被害を受けるリスクがあるんじゃないか。と異論が出る。

 

 超重爆の発信拠点候補と、その場所のリスク

 

1 オアフ島      軍事施設が密集・ホノルル市に隣接、ハリケーンのリスク

2 ハワイ島      人口は諸島内で2番目に多い。キラウェア山とハリケーンのリスク。

3 豪州北部     距離的に可能だが、インドネシアや、パラオ等の日本側支配地域の上空を、長時間飛行するリスク。 原子爆弾運搬に時間が掛る。

4 インド       発進して、攻撃目標に到達するまで陸地上空を長時間飛行するリスク。日本軍や民間人に、目撃され通報されるリスク大。インドは政情不安で、英印軍の反乱発生の可能性があり、現在治安も悪化中。

5 中国       日華中立条約 国民党と共産党の間で内戦発生。基地の設置は不適当。原爆運搬は著しく困難

6 ソ連シベリア  日ソ中立条約 原爆や、基地資材及び補給物資の運搬に時間が掛る。スターリン首相は人格的に信用は難しく、原子爆弾や超重爆を没収される危険も皆無では無い。

 

 可能性があるとすれば、ワシントン州かオレゴン州もしくは、アラスカではないかという結論に至った。ただし西海岸から重い原子爆弾を搭載して、日本本土まで往復は困難だろう。可能性が高いのは、やはりアラスカだろう。ただし、豪州北部からパラオやトラック等の、連合艦隊泊地を狙って来る可能性もありと判断された。

 

 福留少将

「仮に原爆が完成しても、搭載機を撃墜すれば阻止できるのでは無いかな」

「それは無理ですよ」

樋端大佐に否定され、福留が睨みつける。

「参謀長、どうやってどの超重爆に、原爆が搭載されているか判別するんです?」

「そ……それはだな」

 

 福留少将は口ごもってしまう。更に樋端は続ける。

「原爆投下に来る時、敵は単機で来る可能性が高いです。ええと、れいかちゃんだっけ君達の世界で、原子爆弾が投下されて爆発まで時間は明らかになっているかい?」

「確か43秒だったと記憶しています」

「43秒……タイムラグを入れると原爆投下後の回避行動に使える時間は、40秒しか無い。超重爆じゃ40秒では退避は無理かな、いや原爆減速用パラシュートを大型化するか、重くすれば可能か。90秒くらいに調整しても、編隊では退避は無理だ」

 

 ゆかり

「単機もしくは2機、多くても3機かしら」

 樋端

「超重爆100機投入されたとして、防空隊とプリキュアで99機撃墜しても、残り1機に原爆が搭載されていたらそれで敗北です」

 

 次は原子爆弾を何処に投下して来るか、その可能性を議論した。まず、名古屋や大阪の様な大都市が狙われるのではとの意見が多く出た。

一部からは、大都市への仕様は多数の非戦闘員の犠牲が出るから、米国内でも反対意見が出るのではないかとの意見が出た。だが、米国人は日本人に対する相当な人種差別的偏見を持っているので、躊躇せずに大都市に使用する可能性もあるとの意見が出た。

 

 山本は、逆に大都市は避けて来るという意見を述べた。

「それは、君達の存在があるからだ」

山本は、六花達に視線を向ける。

「大都市を攻撃目標にした場合、プリキュアの迎撃を受けて失敗する可能性が高いという事さ。それを避ける為に中小都市か、人口数千人の町をあえて攻撃目標にする

判断を下す事もあり得る」

 

 米国側が、中小都市を目標にした場合東日本に限定しても多い。まして人口数千人の町以下となると無数にある。プリキュアが人類を救える様な力があっても、攻撃の日時と目標地点を決める権利は米国側が持っているので、全てを守る事はまず無理だろう。

 

 山本は目を閉じ瞑想する様に、数分間沈黙しやがて口を開いた。

「判った……やろうじゃないか。責任は全て本職が負おう」

出席者の間に、ざわめきが起きる。

「原爆が完成間近なら、放置は出来ん。民間人が一瞬で大量に犠牲が出て、その後長く放射線で苦しめられるのを見過ごす事は出来ない。ただし、これは約束して欲しい。必ず無事に帰って来るという事をだ。ロスアラモスが悪天候で捜索が困難な場合、現地に工場が見つからない場合、工場はあっても罠の可能性が高い場合は、作戦を打ち切り速やかに帰還するのだ」

 






1 史実では昭和17年5月22日に参戦 
2 史実では、山本提督と共にブーゲンビル島上空で戦死

漸く艦これ秋イベ後段作戦に入るも、最終ボスで詰まる。



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第61話「マリアさんと、しのぶさんに迫る危機」(中の人ネタ)

キョエ
「作者が、鬼滅の刃初心者がやりそうなことを思いつく限り纏めてみた。バカー」

1 アニメ第一話を見て、ごっそりと精神値を削られる。先代と、先々代の黄色キュアが見たら卒倒するレベル。
2 主人公の名前を「たんじろう」では無く、「すみじろう」と読んでしまう。
3 柱が多すぎて、名前が覚えられない。読み方も解らない。なぜか富岡さんだけ、割と日本に多そうな名字。

 他の柱8人合計しても、多分日本全国で3桁行かないんでは? やはり富岡さんは浮いているw
4 伊之助を本物の猪と勘違い。鬼に猪に変えられてしまった人間。もしくは、猪と人間のハーフと勘違い。
5 しかもかなりの美形で驚く
6 アルミン、なんで鬼滅にいるの?あっ、善逸か。
7 人気投票59位に、約ネバのクローネがいるのを見てイミフ。
8 鬼舞辻無惨……「おにまいつじむざん」がラスボスか。
9 無惨パワハラ会議……半沢や、池井戸氏原作ドラマ的なのを想像してしまう。実態は、ただの粛清や! スターリンかお前は。いや、ソ連の粛清は一応裁判はあった。(ほぼ茶番裁判でしか無いが)
10 「無限列車」を見ながら……(死ぬな、杏寿郎さん! ラナルータは無いんか!)涙 
11 しのぶさんを、拷問マニアの怖い人と勘違い
12 コルネリウス・ルッツ提督と、アウグスト・ザムエル・ワーレン提督の区別がつかない

ラビリン(真菰)
「最後だけ鬼滅の刃と関係無いラビ!」(銀河英雄伝説 石黒版ネタ)


 

 

ニューメキシコ州は合衆国南西にある州で、北はコロラド州、東はオクラホマ及びテキサス州、西はアリゾナ州、南はメキシコ国境とテキサス州と隣接している。面積は5番目に広いが人口だと36番目(2010年)と少ない方に入る。気候は乾燥していて、340日は晴れている。

 

 もともとはイスパニアの植民地で、州都サンタフェが建設されたのは、江戸幕府が出来た2年前で、現存する合衆国の都市として2番目の古さらしい。スペイン人が植民したので、街並みは今でもスペイン風が残り、その美しさから、「アメリカの宝石」と称されている。(1)

 

 名前からも判る様に、元はイスパニアから独立したメキシコの領土で、1845年から2年ほど継続した米墨戦争の講和条約によって、アリゾナ、ユタ、カリフォルニア州と、オレゴン州南部共に合衆国領土になった。数年後カリフォルニアの川で、大量の砂金が発見されゴールドラッシュが起き、大量の移民が西海岸に殺到する事で様々な産業が発展し、西海岸は大きく発展する事となる。メキシコが逃がした魚は大きかった。(2)

 

 ロスアラモスは、サンタフェから北西50キロのニューメキシコ州北西に位置している。メサの呼ばれる高台の上にあり、標高は2200メートルで、川や湖は無い。

これまで、マンハッタン計画の予備的な実験などは、ジョージア州のオークリッジや大学の研究所等全米各地で行われていたが、最終的な研究や、原子爆弾本体の組み立てや、開発は僻地が好ましいと判断され、ニューメキシコ州が選ばれた。(3)

 

 施設内はともかく、外部との通信や人の出入りは厳しく管理されている。が、所長ともなれば気晴らしに外をドライブする程度は許される。護衛の兵士付ではあるが。

その日も、ロバート・オッペンハイマー博士は週一回の夜明け前ドライブを楽しんでいた。いつもはもっと空が白み始める時間にドライブし朝日を眺めていたのだが、

今日は数時間早く目が覚めてしまった。数日後最初の核実験場が建設される場所を見学するので、気持ちが高揚しているのだろうと考えた。

 

 原子爆弾投下はやむを得ないにしても、都市では無く日本近海の海上への投下でまず警告し、降伏勧告を行いそれでも応じない場合は、人口の少ない小都市に投下すべきだと博士は考えている。実際同様の考えの学者もいて、連名で大統領に上申書を出す事を検討している。

 

 その時、助手席に座っている兵士の前にある無線機が、警告音を発した。一瞬博士は不快そうな表情を浮かべたが、護衛の兵士に出るように促す。

「どうした、スー族でも襲って来たのかな?」

「プリキュアが、ニューメキシコ州上空で目撃されたそうです!」

「何だと! ここに向かっているのか?」

 

 博士は車を、岩陰に滑り込ませライトを切る。後続の軍用車両も岩陰に隠れ、身を低くして隠れる。ほどなく、真上を影が高速で通過して行った。幸い夜だったので、タイヤ痕などは見つからなかったらしい。

「何という事だ! ロスアラモスはほぼ無防備なんだぞ!」

 

 研究所は、戦車連隊や陸軍航空隊の基地は無い。飛行場を作る計画はあるが、完成は3年後の予定だ。無防備なのは、計画が露見していないだろうという油断もあるが、位置的に空母艦載機の攻撃範囲外だと判断されていたのも原因の一つだ。更に、施設付近に警備の為の大部隊や、航空隊を配備すれば市民の注目を浴び、最終的に

マンハッタン計画が、漏洩する恐れがあると判断されていた。

 

 開戦直後、プリキュアの存在を知った高官の一部から警備の強化又は、施設の移転案も出たが、前者は機密維持が困難になると、反対され後者も、移設するとなれば場所の選定から開始せねばならず、費用面と、計画の年単位での遅延が予想されて却下された。

 

 無論警備の兵士は配備されている。ライフル、機関銃、マシンガン等を所持していた。しかし、突然の警報サイレンに慌てている所を、プリキュアに呆気無くKOされてしまった。科学者や技術者も全員捕まり、研究所内のシェルターに軟禁された。大規模な爆発事故に備えて全員避難できる地下シェルターがあり、数週間分の酸素と水と食料も備蓄されていた。その後素早く、施設内にはーちゃん式時限式魔法爆弾を装着した。

 

 プリキュア達は、科学者に残留放射能の危険性を記載した書類を渡した。広島や長崎では後日救援の為に現地に入った兵士等を中心に、相当数の二次被爆者を出している。プリキュア世界で、自由研究で原子爆弾の被害を調べた子がいて、その記憶を基に英文で文章を作成し、更に日本の物理学者数名が加筆修正した。

 

 

 陸軍参謀本部は、直ちに州内の陸軍部隊や陸軍航空隊にプリキュア追跡命令を出した。だが運悪くこの日マーシャル参謀総長は、戦略会議の為にロンドンに滞在し

欧州派遣軍総司令官アイゼンハワー大将と共に、英国首相ウィンストン・チャーチル首相や、英国陸軍参謀総長アイアンサイド将軍と、共に7月に予定されているシチリア島攻略作戦や、来るべき仏本土上陸作戦を討議していた。(4)アーノルド大将も、英本土に配備されていた米重爆撃機隊を視察していた。両トップが本土に不在だった事と、プリキュアの逃走方向等の情報が入らなかった為に、対応が後手に回りほとんどの戦闘機隊は空振りに終わった。しかも、夜間なので離陸時の事故や誤射で10機前後が撃墜された。ロスアラモスという地名が、一般的に知られていなかったので、逃走経路を絞り込めなかったのだ。

 

 

 イリノイ州シカゴに拠点がある、第26航空軍指揮下の第236戦闘機の一部は、前日にシアトルに増援部隊として、派遣命令が出た。テレンス・グレン少佐は、ベル・エアクラフト社の《P-39エアラコブラ》戦闘機12機と、リパ○リック社の重戦闘機《P47サンダーボルト》12機を率いて、西海岸に向かった。同日午後7時にモンタナ州ヘレナの基地に着陸した。ワシントン州の航空基地の多くが空襲を受け、滑走路等が破壊されたので滑走路の修理状況が確認されるまで、待機する事になった。

 

 が、翌日未明午前4時50分に、プリキュア数名がニューメキシコ州の米軍基地を攻撃し逃走中! 離脱を阻止し捕捉撃滅せよとの緊急命令が出た。グレン少佐は直ちに、全機に発進を命じた。プリキュアは、恐らくワシントン州沖の敵高速機動艦隊に帰るつもりだろう。問題は何処を通るかだ。少佐は、プリキュアはモンタナ州上空で針路を南東に転じ、ロッキー山脈に沿ってニューメキシコ州に侵入したと考えた。プリキュアは恐るべき敵だと聞いている。だが、敵地で夜間往復1000キロ以上となると安全を考え、往路と同じ経路で帰るのではないかと考えた。

 

 5時に離陸した直後、プリキュア発見の通信が入った。偶然テスト飛行をしていた、夜間重戦闘機がワイオミング州北西を通過したプリキュア6名を発見した。夜戦機は未だテスト飛行だったので、無武装だった。少佐は、自分の予測が的中した事を知り、モンタナ州とアイダホ州境界付近で攻撃する事にした。

 

 攻撃は一旦東に迂回して、行う事にした。夜明けが近いので後方からの接近の方が気付かれにくいと判断した。通常戦闘機は、機種と操縦席の間にエンジンがある。しかし、《エアラコブラ》は操縦席の後ろにエンジンがあるという、独特の設計だった。エンジンが後ろにあるので、大口径の機関砲を配備できる利点があった。《エアラコブラ》は、機種に37ミリ機関砲を装備している。

 

 これは小型の対戦車砲に匹敵する。《エアラコブラ》は操縦性が悪く、戦闘機には不適格の烙印を押され、大半がソ連に押し付けられた。だが、そこで対地攻撃機として大活躍している。特に37ミリ機関砲で、多くの独戦車を破壊している。(5)

 

(プリキュアといえども、疲労が一切無いという事は無いだろう。上手く行けば全滅させられるかもしれん)

まず37ミリ機関砲で、攻撃する。的が小さいので、命中は難しいかもしれない。(直撃すれば、重装甲の爆撃機でも一撃で撃墜できるレベル)だが、敵を混乱させる事は出来るだろう。

直後、《サンダーボルト》隊が12.7ミリ機銃弾で攻撃する。各機6丁のブローニング機銃弾の雨は上手く行けば、第三帝国の新鋭機でも撃墜できる力がある。無論可能なら、《エアラコブラ》、37ミリ機関砲で再攻撃する。

 

 5時16分

 

 少佐の《エアラコブラ》は、前方にプリキュアを発見した。位置は州都ヘレナより、北西200キロの小都市ミズーラ南西20キロの山間部だ。標高1000メートルの高地にあり、林業と製紙産業が主産業だ。

「プリキュア発見! 距離4000高度1500、速度時速500キロだ。数は3人、いや前方400メートルに新たに3人発見」

プリキュアはこちらには、気付いていない様だ。長距離作戦で疲労しているのか、油断しているのか、それとも戦闘機が夜明けの東側から接近したので、背後の朝日で視認が困難になっているからか。

(考えるのは、プリキュアを蜂の巣にした後で良い。唯一つ確実なのは、これが絶好の好機だという事だ)

 

「A隊は、手前のプリキュアを狙え! B隊は前方のプリキュアだ!」

《エアラコブラ》と《サンダーボルト》を各半数ずつ、プリキュアに向かわせた。

 

 グレン少佐は、800メートルで射撃する事にした。発見し難いとはいえ近付き過ぎると流石に、エンジン音でばれる。B隊が、前方のプリキュアに近付くのを確認した、少佐は攻撃命令を出した。凄い反動と共に、37ミリ機関砲弾が発射された。

 

「え!」

「攻撃?」

 

 やはり、直撃弾は出なかった。37ミリ機関砲弾は、ミラクルや、キュアホワイトを掠めて行ったが直撃はしなかった。戦闘機や爆撃機に大口径の機関砲や、野砲を装備した事はあるが、共通して重過ぎて弾数が少なく、命中させるのが難しく、発射間隔も遅いという欠陥があった。だが、至近距離を通過した時の飛翔音と外れた砲弾が、近くの岩や樹木に命中し破片を派手にばら撒き、混乱したプリキュア達は、陣形が乱れてしまった。

 

(やった!)

ピンクと金髪のプリキュアが、他と大きく離れてしまっている。少佐は命中が難しい《エアラコブラ》の37ミリ機関砲弾は、最初から囮として使うつもりだった。本命は《サンダーボルト》の12.7ミリ機銃だった。

《サンダーボルト》N型は最高時速720キロで、第三帝国の新鋭戦闘機に匹敵する。ジェット戦闘機《Me-262》を奇襲で、撃墜した事も少なくない。

 

 陣形がバラバラになったプリキュアに、《サンダーボルト》が近づいて来る。

「はーちゃん!」

「ルミナス!」

特に、大きく離れてしまったフェリーチェと、ルミナスは複数の《サンダーボルト》の射線の前に飛び出してしまった。一瞬敵搭乗員がにやりと笑うのが見えた気がした。

 

「さよならだ、お嬢ちゃん」





タイトルは危機に陥ったプリキュアの声優ネタ
マリア=ハヤテのごとくのメイドさん(年齢17歳 ここ大事)
しのぶ=鬼滅の刃の胡蝶しのぶさん


1  一番古いのはフロリダ州 セント・オーガスティンで1565年建設(信長が美濃占領する頃)
2 ジョン万次郎も、日本への帰国費用を稼ぐ為に、半年ほど金堀りのバイトをしてます。
3 「紺碧の艦隊」だと研究所は、深い渓谷の間にあるけど実際は、高原の上にあります。それを知ったのはつい最近。
4 ノルマンディー上陸作戦 史実では1944年6月6日
5 英国政府からは受領を拒否されたorz

 ラナルータは、ドラクエ5などで登場する昼夜逆転魔法です。昼と夜では開いているお店が違ったり、夜しか聞けない情報が有ります。ただし夜は強いモンスターが出ます。あの頃のドラクは楽しかった(遠い目)

本年の投稿はこれが最後です。ありがとうございます。良いお年を


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第62話「ルーズベルト死亡?」

 福井県が舞台の男子バレーアニメが始まった。


 

 だが、次の瞬間吹っ飛んだのはプリキュアでは無く、《エアラコブラ》と《サンダーボルト》だった。

「救援に来ましたぞ」

勝利を確信した者が、逆撃を受けると脆い。南イタリアや、フランスでは重装甲と1トン近い爆弾搭載力で、多数の戦闘機や、戦車を破壊して独伊軍兵士から、「ヤーボ」とよばれ、管理局の白い悪魔の如く恐れられている《サンダーボルト》

も、プリキュアの前では鴨がネギを背負って、鍋に入ろうとしているも同然で、我先に逃げ出すしか無かった。

 

 「十分な戦闘経験が有った、精鋭部隊ならまた結果は違ったかもしれません。精鋭部隊なら横やりを入れられても躊躇せずに、当初のプリキュアに

攻撃を継続していたでしょう。そうすれば数名は討ち取れたかもしれません。しかし、合衆国本土しかも中西部に配備されている部隊は、実戦経験が皆無

の搭乗員が大半を占めていました。彼らは、妨害を受けた際に新たな敵機との戦闘に向かってしまいました」

 1995年〇HKスペシャル 戦史研究家ヒュー・シンクレア氏

 

 

 いちか達プリキュアは、《零戦》では撃墜が困難な《サンダーボルト》に向かい、《零戦》は容易に撃墜できる《エアラコブラ》隊を攻撃して来た。

数分後、グレン少佐が気付くと《エアラコブラ》隊は、撃墜されたか退避したのか少佐機だけになっていた。

「これ以上は無理か。離脱しよう」

少佐が離脱を考えた瞬間、一人のプリキュアが左前方から右方向に移動しているのに気付いた。未だ少佐機には気付いていない。

 

(せめて一人は始末してやる!)

37ミリ砲の残弾を確認し、機首をプリキュアの方角に向ける。だが、その直前にプリキュアは気付いたのか針路を変更してしまった。

 

 追跡しようとして、操縦桿を動かそうとしたが全く動かない。前を見ると、プロペラは回転しているのに機体は全く動いていない。

(時間が止まっているのか。何故だ)

 

 気付くと、操縦席の真上に二人のプリキュアが居るのに気付いた。

「よくもはーちゃんを撃とうとしたわね」

「よくも私達の娘を撃とうとしたわね」

 

「何か様子がおかしいですぞ!」

キュアホイップのうさ耳が何かただならぬ闘気を感じ、ピコッと反応した。

「オヤシロ様の怒りを思い知るが良いのです」

「誅魔忍の秘儀、その身に刻め」(1)

 

「怒りのあまり、何かおかしなものを呼び込んでいるわね」

「危ないから、一時退避して!」

マカロンは面白そうに観察するだけで、何もしないのでショコラがプリキュアや味方機に退避を呼びかけた。危険を感じた、プリキュアと《零戦》

は慌てて逃げ出し、未だ生存していた米軍機も我先にと東方に退避して行った。

 

 数秒後、身動き一つ出来ないグレン少佐機は二人の必殺技を喰らって、空中分解し少佐も空中に放り出された。意識を失う寸前、少佐は直前に聞いたキュアマジカルの言葉の意味を考えた。

(娘ってどういう……事だ? お前ら、二人とも女の子…だろ……)

 

 みらリコの闘気から、敵味方慌てて退避した為に、残存していた米軍機は追撃を受けずに戦場から離脱出来た。生存性が高い《サンダーボルト》は半数の6機、《エアラコブラ》も2機が生還した。

 

 プリキュア達も、離脱を開始した。ぐずぐずしていると、新手の米軍機が来る可能性が高い。いちか達は未だしも、みらリコと初代チームはかなり披露している筈なので、早く帰還して休ませてあげなくてはならない。

 

 

 数分後、プリキュアはアイダホ州北部上空に入った。アイダホ州は北部がワシントン州とモンタナ州の間に挟まれている。ここを抜けると程なくワシントン州に入る。

地図によると付近には銀や銅鉱山はあるが、大きな都市は無い様だ。

 

(殺気!!)

 

 プリキュアが気配を感じ散会した数秒後に、真下から砲弾が飛来して炸裂した。見てみると、岩陰に多数の高射砲が隠れている。

 リコ

「新型の高射砲? ここの鉱山を、空爆から守る為の部隊? この鉱山は金かダイヤモンドでも、掘っているのかしら?」

 あおい

「いや、原爆用のウランでも採掘してんじゃ?」

 ひまり

「原子爆弾のウランは、アフリカのコンゴか南アフリカのウランが使用されたと、何処かで見た記憶が」

 

 彼女達の予想は、外れていた。下に見える鉱山は大規模な銅鉱山だが、対空砲多数配備するほどの価値は無い。

西海岸に、大規模な攻撃が近く行われる可能性大という事で、ワシントン州への増援部隊として派遣される途中の高射砲中隊が、偶然この辺りを通過していただけだ。しかも、最新型ではなく、第一次世界大戦末期に開発された老朽旧式高射砲だった。未だ航空機が未発達の頃なので、1万メートルの様な成層圏までは攻撃できず、せいぜい6千メートルが限界だった。それでも、直撃すれば敵機を粉砕する事は出来る。主要国でも同年代の旧式高射砲は、未だかなりの数が現役で活躍している。

 

 《零戦》の一機が、高射砲弾を回避した直後に、別の高射砲弾が直撃し真っ逆さまに落ちて行く。直後《零戦》とプリキュアの反撃が開始される。ww2の高射砲は現代のイージス駆逐艦の対空砲みたいに、連射は出来ない。弾の装填も当然完全な人力だ。

「おっ、隊長が一台早速破壊したか」

 堺 次郎曹長の視線の先で、小隊長笹山少佐が一台の高射砲を機銃掃射で破壊するのが見えた。小隊は昨日は母艦上空で防空戦闘に従事し、堺曹長は、米戦闘機と雷撃機を各1機撃墜していた。ふと一台の高射砲を目に留める。

「あの高射砲は、今仲間を撃墜した奴じゃないかな? 生かしちゃおかねえ」

 

 堺機は、M3 3インチ対空砲に向け降下を開始する。敵が次弾を装填しているのが見えた。

「俺とアメ公どっちが速いか勝負だ!」

目標上空50メートルで、20ミリ機銃を発射する。その直後操縦桿を引き起こして高射砲の真上を通過した。数秒後に一瞬視線を向け確認すると、高射砲を操作していた、兵士が倒れているのが見えた。更に高射砲も台座が破壊されて、ひっくり返り、その衝撃で装填されていた砲弾が発射された。

 

 砲弾は、上空では無く前方に向け発射されて一台の装甲車らしい車両に命中した。

(あの装甲車、通信用の大きなアンテナ棒があったな。もしかすると、指揮官用車両の可能性が高いな。これも俺の手柄になるのかな? 後で隊長に聞いてみるか)

周囲を確認すると、高射砲はほぼ破壊された様だ。高射砲を放置して走って逃げだした兵員も何人か見える。

 

 プリキュア達も戦闘を終え集まって来た。

「いちかちゃん達、怪我とかしてないかい?」

堺が、キュアホイップに話しかける。プリキュア達とは割と年も近いので、彼女達と話す事も多くなっていた。

「私達は無事ですぞ。あっ、今何か南の方の空で何か見えました。戦闘機かも!」

 

 堺がホイップが示した、南東の空を見ると確かに数個の小さな黒い点が見えた。幸いまだこちらには気付いていないが、別の基地から発進した新手の米軍戦闘機だろう。

「助かったぜ。ありがとな!」

堺は即座に笹山少佐に、敵機接近を報告。笹山少佐は直ちに離脱命令を出した。疲労が大きいまほプリ、初代プリを守りながら、西に向け移動を再会した。1分後キュアホイップが、再度敵機の動きを確認すると、新手の米戦闘機もこちらに気付いたのが追跡して来る。

 

 戦闘態勢を取りつつ退却するが、敵機との距離は全く縮まらない。30秒もしない内に無駄だと悟ったのか、15機ほどの米軍機は追跡をあきらめた。周囲を再度見るが、今度は敵機は他にはいない。ホイップが、視線を西に戻そうとした瞬間、南南東の方角に閃光の様な光が見えた。

 

ゆかり

「今の光は、対空砲の閃光かしら?」

みらい

「あんな遠くから、対空砲で攻撃しても命中しないよ。違うんじゃないです?」

対空砲撃なら、砲弾の飛翔音や空中で爆発した時の音や、黒煙が見える筈だが何も見えない。

 

ことは

「砲弾を撃とうとした瞬間に、ドカーンと爆発したのかも」

シエル

「高射砲の暴発なら、砲弾の飛翔音や炸裂の痕跡が無い事の説明が付くわね」

あきら

「でも仮にそうだとしても、高射砲が一台暴発してもあんな閃光が見えるような爆発は、しないと思うよ」

 

いちか

(雷かな? でも南東の方向に積乱雲とか無かったな)

 

 

「追跡中止だ。追いつけない」

 アイダホ州ボイジー基地から発進した、《P-40キティホーク》F型16機を率いる、アンデル ・ ラレナ少佐は追跡中止命令を出した。小隊は、午前5時にボイジー基地を離陸し一旦東へ向かうも、プリキュアを発見できなかった。直後テスト飛行中の夜戦重戦闘機より、プリキュア発見の通信を傍受し、針路を北西に転じモンタナ州北部に向かった。

(やれやれ、無駄な犠牲を出さずに済んだか。530キロしか出ない機体で、あんな化物美少女軍団と戦えだと、正気じゃないな)

「長居してもしょうがないから、引き上げる……」

 

 ラレナ少佐が、部下に帰還命令を出しかけた時、その瞬間南の空で閃光が走った。少佐は無線で部下に呼びかけたが、全機無事だと判明した。

「少佐、無線を打ったテスト機がプリキュアにやられたのではないでしょうか?」

副隊長のレックス・ ディズリー中尉が、無線を傍受したプリキュアか援軍の日本海軍機が、報復の為にテスト機を撃墜したのではないかと主張する。

「いや、仮にそうだとしてもあのような閃光が見える爆発は無いだろう」

落雷かとも考えたが、積乱雲が見えないのでその可能性も無いだろう。

 

「軍需工場か、軍需物資を運搬していた貨物列車が爆発事故でも起こしたのではないか?」

「貨物列車では無いと思います」

ラレナ少佐の意見を否定したのは、ジャクソン・ ガウアー軍曹だ。

「何故そう考える?」

「この時間、アイダホ州方面では東行きと西行きどちらも、貨物列車の運行はありません」

 

 少佐は、ガウアー軍曹が舞台内では有名な鉄道マニア、特に貨物列車マニアだという事を思い出した。

「臨時便という可能性はどうだ? 西海岸に再度の攻撃がある可能性もあるから、臨時に増援が送られる可能性はあるのではないか?」

「確かに十分にあり得ますね」

 

 少佐は、ボイジー基地を無線で呼び出しプリキュアに逃げられた事と、謎の閃光を目撃した事を伝えた。

「閃光は、当方でも目撃した。南の方角だ。ニューメキシコ州だと思う」

基地司令エヴァンス少将によると、閃光はさらに南の方角で目撃されたとの事だ。

「モンタナ州で、工場か貨物列車が爆発したりした訳では無さそうですね」

「いや、その様な大規模な事故は起きてはいないだろう。貴隊は直ちに帰還……」

 

 その時、突如無線が繋がらなくなった。雑音が酷く何も聴き取れなくなった。アイダホ州だけでは無く、ユタ州やニューメキシコ州の基地を呼び出すが、

やはり繋がらない。更に、同方面のラジオ電波も受信できなくなった。逆に、周囲の味方機とは問題なく通信できた。更に、オレゴン州やワシントン州等の軍の無線や、ラジオは受信できた。ラレナ少佐も、ニューメキシコ州でとんでもない事が起きた事を悟った。

 

 「隊長どうしますか?」

ディズリー少尉が、ラレナ少佐に帰還すべきか指示を求めて来た。

「すぐに戻るのは危険だ。無線が繋がらないと味方の誤射を受ける危険も高い。一旦ヘレナ基地に着陸して状況を確認しよう」

少佐は即座に、ヘレナ基地に状況を説明し着陸の許可を求めた。

 

 数分後ヘレナ基地から着陸許可が出た。

「貴隊の着陸を許可する。着陸後、直ちに指揮官は司令部に出頭し詳細な状況を報告せよ」

「了解しました。おい、ヘレナ基地から許可が出たぞ」

少佐率いる《ウォーホーク》F型16機は、直ちにヘレナ基地がある東に向け針路を変えた。少佐が航空時計を確認すると、時刻は午前5時35分だった。

 

 

同時刻 ニューメキシコ州都 サンタフェ

 

「旦那さんおはよう!」

「おう今日もごくろうさん」

サンタフェ市の西の郊外で、牧場を営むピオ ・ ラホイはいつも通り、顔見知りの新聞配達見習いから新聞を受け取った。

玄関扉が閉まり、新聞の見出しを読もうとした瞬間、背後で今まで見た事が無い閃光を感じる。

「旦那さん!」

同時に、玄関の呼び鈴が激しく鳴らされる。

 

「どうしたマイク、トイレか? 遠慮せずに……」

「違うよ! 外!外!」

「なんだあ? 雷くらいで大げさに……」

ピオは、未だ眠気が残っていた為に閃光をでかい雷だと思っていた。しかし、

 

「何だ、あの……でかいキノコみたいな雲は?」

二人が数千メートル上空にまで達した、きのこ雲を目撃した直後異常を感じた、牧場の牛たちが一斉に鳴きだした。

 

 

 閃光と、きのこ雲はニューメキシコ州の全域、アリゾナ州の東部の大半、コロラド州の南部、テキサス州の西武から北西部にかけてで目撃された。

更に、ユタ州の南東部の一部、オクラホマ州の北西部、カンザス州の南西部からも目撃された。

 

 隣接するメキシコ北部の州でも目撃され、閃光だけならさらに離れた州からでも見えた。

 

 

 

 

同日夕刻  ワシントン ホワイトハウス

 

「大統領閣下、我々のマンハッタン計画は重大な危機に直面しました」

「報告は先ほど受けた。私も重大な事態だと認識している。技術者が無事だったのは幸いだ」

「はい、依って再開は直ちに可能です。しかし、2年程度の遅延は避けられないでしょう」

「止むを得ないだろう」

 

ルーズベルトは受話器を置き、デスクを拳で叩く。

 

「ジャップめ、プリキュアめ!今に見ておれこの借りは、必ず返す! 倍返し、いや一千倍にして奴らに叩き返して……グハッ!」

 

「だ、大統領!」

その日、第32代アメリカ合衆国大統領、フランクリン・デラノ・ルーズベルトは恐ろしい表情をを凍りつかせて、死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか、大統領」

「少し頭痛がしただけだ。もう大丈夫だ」

「解りました」

この日以降、ルーズベルト大統領の健康状態は徐々に悪化して行く。

 

 

ルーズベルト大統領のHP60→45

 

 

外務省より報告

 

 

アメリカ合衆国において近日

 

 

ニューメキシコ州で謎の大爆発

      が

発生したとの事です。

 

 

 

 

 

チコットおまけ

 

 

歴代のアメリカ合衆国大統領の中で、任期途中で暗殺もしくは病死してしまった大統領

(パパブッシュみたいに、再選できずに一期のみで終わったのは省きます。)

 

 

第16代大統領 エイブラハム・リンカーン 1809年2月12日ケンタッキー州 ラルー郡  共和党

1861年3月4日~1865年4月15日

1865年4月14日 ワシントンのフォード劇場で夫人らと観劇中に、役者ジョン・ウィルクス・ブースに銃撃され、翌朝死亡。ブースは逃亡するが、25日に逃亡先で射殺される。

 

第20代大統領 ジェームズ・ガーフィルド 1831年11月19日 オハイオ州 モアランド・ヒルズ 共和党

1881年3月4日~1881年9月14日

7月2日にワシントンの駅で、チャールズ・J・ギトーに銃撃される。その後9月19日に死亡。医者が藪医者だったのが良くなかった。ギトーは翌年6月末に絞首刑。

 

第25代大統領 ウィリアム・マッキンリー 1843年1月29日 オハイオ州 ナイルズ 共和党 

20世紀最初のアメリカ大統領 更に南北戦争に従軍していた最後の大統領でもある。

1897年3月4日~1901年9月14日

 

マッキンリー大統領は、ニューヨーク州バッファローで開催されていた、博覧会に出席する。極左のレオン・チョルゴッシュに銃撃され、回復の兆しもあったが8日後に死亡。この事件の後公式に、シークレットサービスが大統領の警護を担当する事になる。チョルゴッシュは、10月29日に電気椅子で処刑。

 

第35代大統領 ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ 1917年5月29日  マサチューセッツ州ブルックライン 民主党

1961年1月20日~1963年11月22日 

遊説中に、テキサス州ダラスで狙撃されて死亡。犯人はハーヴェイ・オズワルドの単独犯とされている。

 

 オズワルドの経歴は、極めて怪しい人物で一度ソ連に亡命しながら、数年後にはアメリカに帰国している。逮捕された2日後にダラス警察署から、拘置所に移送の為に地下に出た所、ナイトクラブ経営者ジャック・ルビーに射殺される。

ジャックも死刑判決を受けて3年後に病死。CIA関与説や、キューバ黒幕説など複数の陰謀論がある。大統領の長女は、キャロライン・ケネディ前駐日アメリカ合衆国大使。

 

後レーガン大統領が、就任直後に銃撃され一時重体に。(三週間後には公務復帰した)

 

病死

 

第9代大統領 ウィリアム・ハリソン 1773年2月9日 現在のバージニア州チャールストン郡出身 ホイッグ党(後の共和党)

1841年3月4日~4月4日

大統領就任演説の際に、寒風吹きすさぶ中コートも着用せずに、2時間もの演説を行い体調を悪化させる。3月26日に風邪をひき、肺炎を併発し4月4日に死亡。歴代合衆国大統領として最短期間。大英帝国の植民地時代に生まれた、最後の大統領。

 

 68歳での就任は当時最高齢。(後にレーガンとトランプに抜かれる)ジョー・バイデン次期大統領は79歳なので、同様の危険性が指摘されている。

 

 

第12代大統領 ザカリー・テイラー 1784年11月24日 バージニア州 オレンジ郡

1849年3月4日~1850年7月9日

猛暑の日に、キュウリと牛乳を飲み過ぎて消化不良により死去。

長らく砒素による暗殺説もあったが、1991年に「コレラで死亡」説が有力となった。

 

第29代大統領 ウォレン・G・ハーティング 1865年11月2日 オハイオ州コルシカ

1921年3月4日~1923年8月2日

スキャンダル塗れの大統領。大統領としてアラスカ州を初訪問した。その帰路に重体に陥り、サンフランシスコのホテルで急死した。

 

 

辞任

 

 

第37代大統領 リチャード・ニクソン 1913年 1月29日 カリフォルニア州 共和党

1969年1月20日~1974年8月9日

 

大統領選挙中に発生した、違法盗聴事件「ウォーターゲート事件」により、辞任に追い込まれた。副大統領から昇格した、ジェラルド・フォード大統領により恩赦された為に、罪には問われなかった。1994年4月にニューヨークで死去。

 

ちなみに日本は……

 

暗殺(現職のまま暗殺された首相)

 

原敬 犬養毅(五・一五事件) 病死 加藤 高明 (大正15年1月)大平 正芳(おおひら まさよし 昭和55年6月) 小渕恵三(平成12年5月)

 




1 ひぐらしのなく頃にと、ゆらぎ荘の幽奈さんより

 最後のシーンは紺碧の艦隊のパク……オマージュです。 紺碧では本当に死にます。

ヒュー・シンクレア 銀河英雄伝説に出ている歴史家(作中で放映されている、歴史番組の司会者)名前を間違えていそうな気も。

今年もよろしくお願いします。


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第63話【エビが食べたい】前編

 ヒーリングっど♥プリキュア コロナ渦の中放映中断もありましたが良い最終回でした。

キョエ「未だ終わって無いよバカー!」







 

 

4月27日  アリューシャン列島 アダック島 500キロ南方洋上

 

 

アダック島空襲から戻って来た航空隊が空母に着艦し、甲板付下士官や整備員が駆け寄って行く。機数は発進した時と比べても、一機も欠けておらず、機体に損傷痕がある機体も無い。本来なら、米海軍の基地があるダッチハーバー(ウラナスカ島)

を空襲する予定だったが、偵察機を飛ばした所現地は深い霧で、島が全く視認できない状態なので、攻撃を一日延ばし米海軍が航空基地を建設している、アダック島を空襲する事になった。

 

「アダック島上空に敵影無し。我奇襲に成功

「攻撃成功。建設中の滑走路及び、宿舎、港湾施設を爆撃。効果甚大。敵の抵抗は皆無で、急遽島を放棄して撤退したものと推測される」

 

と言う無線が入っていたので、この結果を予測はしていた。

 

「アメリカ軍が島を放棄したのは間違い無さそうか?」

「敵兵らしき姿は一切無く、対空砲撃もありませんでした。建設中の滑走路も爆破する時間も無かったのでしょう。紙一重の差で急遽島を放棄したのだと推測します」

「撤退して行ったのは、恐らく昨日の午後以降だろう。いやもしかするとほんの3.4時間前かも」

 

攻撃隊指揮官によると、一隻だけ中型輸送船が残っていた。この船も機関が故障でもしたのか、乗員だけ他の船に収容して放棄されたのだろう。

 

ふと見るとプリキュア達は、全員の表情を浮かべている。

「彼女達は俺達が戦果を挙げた事よりも、全員無事に帰還した事を喜んでくれている」

「口やかましい、幼馴染の許嫁と交換したいよ」

「本当なら、彼女達が戦わずに済むのが最善なのだが……」

 

山口中将の言う通り、本来なら彼女達が戦わなくても良い様にするべきなのだろう。しかし悲しいかな、日本とアメリカと間には、国力や天然資源保有量で、圧倒的な

差がある。プリキュアの協力が有ってどうにか辛うじて戦場での優勢を保っているに過ぎない。

山口は、本当は君達が戦わずに済む様にするべきだと思っていると、言ってみた事もあるのだが……

 

あきら

「お気持ちは大変ありがたいのですが……ソ連では、私達と同じ年代の子達が、パルチザンに加わったり、戦闘機で侵略者と戦っていると聞きます」

と言われてしまうと、沈黙せざるを得ない。

 

確かに、ソ連では残虐な侵略者……第三帝国軍との戦闘には、多くの女性や子供までが加わっている。ゲリラ部隊だけでは無く、戦車の搭乗員にも女性がいた。

空軍も女性だけの部隊を編成している。モスクワの日本大使館からの情報で、帝国海軍もそれらの事実は知っている。

戦闘機に載っている兵士は、戦う武器があるだけマシかもしれない。ゲリラ部隊に加わっている子供は、まともな武器も持たされておらず、ドラクエの初期装備

みたいな武器で戦っているのではないだろうか。(子供でも簡単に使えるライフル《AK-47》が完成するのは戦後)

 

あおい

「山上さん無事だと良いけどなぁ」

山上中尉の機体は、ハルゼー隊を爆撃した際に、敵戦闘機を2機撃墜したが、敵の反撃で燃料タンクに被弾して帰還途中に、燃料が足りなくなり止む無く海上に不時着していたと帰還後に聞いた。

ゆかり

「不時着した搭乗員救助の為に、何隻かの潜水艦が配備されている筈だから、救助されている可能性もあるわ」

ひまり

「あゆみさんに、無事かもしれないって勝手に手紙とかで知らせる訳にも行かないです」

あゆみというのは、山上中尉の奥さんで年齢は今年で19歳らしい。

「それはダメだぞ」

「びっくりしましたぞ」

 

いちか達の話に割り込んできたのは、堺だ。

「糠喜びさせちゃだめだ」

「海面に不時着できても、命を落としてしまう事も多いんですか?」

「少なくは無いよ。海面へ不時着するのは、想像以上に難しいんだ。上手く行ったと思っても、着水した瞬間に高い波が来て機体がひっくり返ったり、

衝撃で頭をぶつけて、気絶したらそのまま溺れてしまう」

堺によると、開戦前に訓練中にそういう事故を目撃した事があるらしい。それを聞いていたいちか達は更に落ち込む。

「救助用の潜水艦に救助されているかもしれないから、そう落ち込むなよ」

 

「潜水艦に救助された人は、そのまま潜水艦で日本に帰るのかしら?」

シエルが、潜水艦に救助されたパイロットの復帰する方法を質問する。

「そうなるな。潜水艦の速度では艦隊には追いつけない。搭乗員が原隊に復帰するのは、一か月くらいは先だなあ。負傷していたり、衰弱していると

入院が必要だから、さらに時間が掛る」(1)

 

「まあ、便りが無いのは無事の証って言うだろ」

いちか達を元気づける為に、堺はわざと大声で励まして去って行く。後日、10名以上の搭乗員が潜水艦に救助されていた事が判明し、大半は数か月以内に復帰し

怪我が酷い何人かは、後方勤務に転属になったり、軍を除隊する事になるのだが、そのいずれにも山上中尉は含まれていなかった。

 

 

数日後 広島県 呉軍港

 

「おーい、面白い写真が手に入ったぞ」

移動距離が短い、ハワイ攻撃艦隊は数日早く本土に帰還していた。

「ん、何の写真ですか?」

マナ達プリキュアが、周囲に集まって来る。

「第三帝国軍が、新兵器を開発したらしい」

 

「秘密兵器……まさか原子爆弾!」

「毒ガスとか……」

第三帝国の新兵器と聞いて、マナ達がざわつく。ヒトラ―に核兵器を持たせるのは、どう考えても某○ランプに核のボタンを持たせるよりも、1万倍危険だろう。

「あ、いやそんな物騒なものじゃないんだ。新兵器と言うよりも珍兵器だな。試作偵察機らしい」

(本当に原爆でも開発成功したのなら、日本に教えてくれる筈も無いわね。確かヒトラー総統の著作『我が闘争』の中にも、日本人をバカにした部分があるはず)

と六花は思ったが、マナと違い口にはしなかった。(2)

 

「試験飛行成功直後の写真らしい」

マナが写真を見ると、そこには中型偵察機らしき機体が映っているのだが……

「普通の偵察機……左右対称じゃない!」

中型爆撃機なら、左右に1基ずつエンジンが有り、中央の胴体部に操縦席がある。だが写真の飛行機は操縦席の左にしかエンジンが無い。

コナン劇場版第一作の真犯人、森谷帝二がこの写真を見たら卒倒するか、怒りのあまり憤死する事疑いないw 半世紀後数ある珍兵器の中でも、代表の一つになってしまう

その機体は、《BV141》。左右非対称機ばかり構想する、変人リヒャルト・フォークト博士渾身の大作だ?w

「これ、本当に飛べるんですか?」

と真琴が聞くが、大半の人が同じ感想を抱くだろう。

 

「何と問題無く飛んだらしい。競合機よりも速力が速く、安定性も問題なかったそうだよ」

「何でこんな変な姿になったんですか?」

「機種にあるプロペラが、偵察機からの前方の視界を遮らない様にするように要求が有ったらしいよ」

「では、これが採用されたんですね」

何故かありすが嬉しそうな表情で、《Bv-141》を見ている。ジコチューをお持ち帰りしてペットにしようとした、奇人であるありすとは何か相通じるものが……

 

「いや、どうも不採用にされたみたいだ」

「やっぱり見た目が変だからかしら」

マナの指摘を聞いたありすは逆に落ち込んでいる。原因についてはエンジンに不具合があったそうだ。それとライバル企業の方が、ナチ政権上層部と親しいので、

それも原因だろうとの事だ。

 

「あ、そういえばある噂を聞いたんですが?」

 

 

 4月28日 正午 サンフランシスコ

 

 

「ここを出港した時は、まさかこんな姿で帰還するとは思いもしなかったなあ」

「三本目、四本目の魚雷を喰らった時はこれで終わりだと思ったよ」

「入港するまで未だ時間がかかる。それまで油断してはならん。サンフランシスコ湾内に潜水艦か、イタリア海軍のような小型潜水艇が潜んでいるかもしれんぞ」

1941年(昭和16年)12月19日に、イタリア潜水艦から、発進した小型潜水艇がエジプトのアレクサンドリア軍港に潜入し、潜水隊員が停泊していた、戦艦《クィーンエリザベス》《ヴァリアント》の艦底部に爆弾を仕掛けた。両艦は大爆発し大破着底し復帰に1年半以上費やした。

 

《エセックス》艦長クラーク大佐に喝を入れられた乗員達は、慌てて見張りに戻る。

(ま、乗員達の感想は正しい。私も3本目と4本目の魚雷を喰らった時は、沈没は免れないと思ったからな)

もし、最初の2本と同じ側に命中していたら、打たれ強さと優れたダメコンチームをアメリカ空母でも、沈没は免れなかっただろう。

幸か不幸か、残り2本は艦の左舷側……ほぼ最初の二本が命中した、正反対側に命中した。その為に、右に傾いていた傾斜が復元した。

乗員総出で、復旧作業を行い何とか10ノットで航行可能となった。(3)

 

 後方から、飛行機のエンジンが聞こえほどなく上空を一機の大型爆撃機が通り過ぎていく。恐らく対潜哨戒任務に向かうのだろう。《エセックス》や他の艦

の帰還を支援する為に、海軍と陸軍航空隊は総力を挙げて潜水艦狩りを行った。その結果3隻は撃沈が確認された。他にも、撃沈は免れたが任務を断念して逃走した潜水艦

もいるだろう。

 

「運が悪くなければ、4隻目を私達が沈める筈だったんですがね」

昨日午後に拾ったお客人……《TBFアベンジャー》雷撃機の機長 ジャービス中尉だ。中尉達は、《エセックス》上空で機体を放棄して、見事なパラシュート降下で着艦し、乗員の拍手喝采を受けた。

 

 

 中尉の報告によると、飛行中に敵潜水艦を発見したが、そ奴は潜航しようとしない。どうやら損傷を受けて、潜航不能の様だ。爆弾を投下してやろうと近付いたら、生意気にも対空機銃で反撃して来た。2発ほど機体を掠めたがダメージは無さそうだ。が、爆弾を投下しよとしてレバーを何度引いても、爆弾が投下されない。

 

 どうも、機体を掠めた時に機体と爆弾を繋ぐ電気回路が故障したのだろう。何度か投下を試みるが投下できず、潜水艦は積乱雲の下に逃げてしまった。

基地への着陸は爆弾が爆発する危険性が高いので、途中遭遇した《エセックス》上空で機体を放棄した。

(運が悪かったのは確かだが、無事生還できたのだし敵潜水艦の対空機銃弾が、対潜爆弾に命中していたら跡形も無かっただろう。逆に幸運だったのでは?)

クラーク大佐はそう思ったのだが、そっとして置く事にした。

 

甲板

「この船修理して貰えるんだろうか?」

「これだけの被害だと、修理には1年……いやもっとかかるかもしれない。他の船の修理が優先されたら、このまま予備艦送りで、乗員の大半は他の船に転属とか……」

「そんな事は無い!!」

上官に気付いた、二人は慌てて敬礼する。

「修理は必ず行われる。だから安心するんだ! しかし、まあお前たちが言うような事態も、絶対に無いとは、その……言えないなあ」

 

発言の出だしは某300億の火柱みたいに勇ましかったが、後半はまるで自信喪失状態の某水柱みたいに、ぼそぼそとしている。

「しかし戦いが続く以上、時間はかかっても修理はされるだろう。尤も、かなり時間がかかるだろうからそれまでに、乗員の何割かは他に転属になるだろう。

もし、そうなっても気落ちせずに任務に従事して欲しい」

「無論です」

 

「仮に、プリキュアが存在せず、合衆国が圧倒的に有利な状況で同じ被害を受けていたら、予備艦送りになっていたでしょうか?」

「そうだな、仮にプリキュアが存在せず日本近海まで攻めている状況で、悪天候とかのアクシデントで奇襲を許し、同じ様な被害を受けたら

本土に引き上げた後、修理せずの判断になり数年後ひっそりと除籍……になったかもしれん。科学者は平行世界なるものがあると言うやつもある。もしかすると、

プリキュアが居ない日本軍と戦う異世界もあり、そこで《エセックス》は同じ様な被害を受けて……戯言だ、忘れてくれ」

 

 史実でも、太平洋戦争後半……特に最後の1年間で、アメリカの大型空母の中に喪失艦は皆無だ。しかし、硫黄島や沖縄近海で爆撃を受けて《エセックス級》の《フランクリン》と《バンカーヒル》は、危うく爆沈しかねない大損害を受けた。他の姉妹船は、近代化されて朝鮮戦争やベトナム戦争に参加し一部は昭和50年代まで、現役に留まった。しかし、上記の2艦は二度と現役に戻る事は無く、戦後程なく退役している。

 

 

 数時間後、潜水艦や小型潜水艇の襲撃を受ける事も無く入港を果たした。

「あっ、《ヨークタウン》だ」

乗員達が、近くの修理工廠で修理を受けている《ヨークタウン》に気付いた。途端に、周囲からは《ヨークタウン》に向けてブーイングが起きる。

潜水艦の魚雷を喰らって、操艦に異常が出ている船が戦場に居ても漁礁が一つ増えただけだろう。無論全員その事は理解はしているだけど、怒りや無念を向ける相手が必要だった。

 

 

 流石に上官達がブーイングを制止しようとした時、《ヨークタウン》からの信号に気付いた。

「信号! 負傷者収容作業への支援参加との事です」

その事に更に、一部から反発の声が上がろうとしたが……

 

 準備している《ヨークタウン》の乗員達の中に、少なくない負傷者がいるのに気付いた。頭に包帯を巻いている負傷者までも、救助作業に志願している様だ。

数秒後一転して、乗員からは歓声が起きる。

 

「《ヨークタウン》に返信、救助作業支援参加に謹んで感謝すると」





タイトルの意味の回収は後編で。エビを食べたいのはプリキュアでは無く……(無論キョエちゃんでも無いw)







1 アメリカ潜水艦も大戦終盤になると、日本近海で不時着した《B-29》や空母艦載機乗員救助任務が付け加えられた。
2 日本語版では削除されているらしい。
3 シブヤン海で沈んだ戦艦《武蔵》は魚雷20本以上が命中。米軍機が両側から攻撃したので、かなり時間がかかった。《大和》は、命中魚雷12本。《武蔵》撃沈時の戦訓から、「徹底して片側だけを攻撃せよ」という命令が出たから。

BV-143は実在する珍兵器 艦これには出ません(出ても役に立たないw)
噂については後日明らかに。

《ヨークタウン》と《エセックス》の乗員達の間には友情が生まれたみたいです。


今、太閤立志伝5PSP版と「エヴァリースサガ」(ロマサガフリーゲーム)にはまったため終わるまで休むかも…… 光秀で秀吉に1000倍返しを

あと3回で「太平記」の再放映終わる。次は1983年の「徳川家康」か78年の「黄金の日々」のどちらかを期待


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第64話 【エビが食べたい】中編


太閤立志伝5と、フリゲともうすぐサ終する大航海ゲームのシナリオ回想で、進まない。(1)

「太平記」再放映最終回の結びは、フエィクニュース。孫の足利義満の頃は守護大名の粛清と内覧続きで、平和とは程遠い。

4月から「黄金の日々」開始! やったぜ。大河ドラマの中でも史上最高傑作らしい。


 

5月中旬

ワシントンDC 海軍作戦本部

 

「プリキュアの存在を、組織的に隠ぺいか? 高まる非難」

「我が軍の兵器、全く通用せず。驚愕の姿多くのシアトル市民が目撃」

大敗した事への、批判記事がひと段落すると次は、異能集団プリキュアの存在を隠していた事が明らかになり、それに対する批判が殺到した。彼は、ため息をつくと他のページを広げた。

 

 

 その記事を見た彼は、再び不快な表情を浮かべ新聞を車の座席に放り捨てた。そのページには、彼自身の事が描かれていた。一瞬その光景がわずかに目に入った運転手は、驚いた。そこに書かれていたのは批判記事では無く、称賛の記事だ。某台湾沖航空戦の如くな戦果捏造ならともかくそこの記事は、運転手が聞いた話では真実の筈だ。

 

 太平洋艦隊主力は、完膚なきまでに大敗した。護衛空母は文字通り全滅、戦艦は《ウェストバージニア》《メリーランド》を喪失。残存部隊は、次席指揮官の冷静な指揮と、海底火山の噴火と言う、偶発的なアクシデントにより辛うじて脱出に成功した。逆に戦果は、戦艦や空母と言った大型艦は一隻も沈められなかった。

海戦で数隻に中程度の被害を与え、中型空母一隻に陸軍機が爆弾1発を命中させ中破させただけだ。それ以外には駆逐艦数隻と、重巡及び中型防空巡洋艦を各1隻沈めただけだった。その上に艦砲射撃で、真珠湾一帯は壊滅状態だ。

 

 逆に、今新聞を座席に放り捨てた彼……即ち、ウィリアム・フレデリック・ハルゼー中将は圧倒的に不利な状況だったが、勇戦したと言えるだろう。被弾したフレミング大尉機が、敵重巡艦橋に突入自爆による大混乱により、重巡2、中型空母1を撃沈。更に《コンゴウ型》高速戦艦に、魚雷1本を命中させた。

 

 更に同時刻、敵新型大型空母一隻を撃沈した。米側は、空母《サラトガ》《ワスプ》戦艦《ノースカロライナ》を喪失したが、戦闘前に日潜水艦の魚雷攻撃で空母《ヨークタウン》高速戦艦《インディアナ》が、離脱したという極めて不利な状況を考えると、勇戦したのは間違いない。いやむしろ敵潜水艦のおかげで《ヨークタウン》《インディアナ》を、敵空母艦載機やプリキュアの魔手から守り、戦力の保全に成功した言う見方もできる。ちなみにフレミング大尉達は二階級特進と、最上級の勲章が授与される事が大々的に報道された。

 

 最新の世論調査で、政権支持率は60%から45%まで低下した。4割を切らなかったのは、地中海方面では優勢に戦いを進めているという点が大きい。

 

モロッコとアルジェリアは、数週間で占領された。その後チュニジアのカセリーヌ峠で、名称エルヴィン・ロンメル元帥のアフリカ軍団の反撃を受けて、未だ戦い慣れていなかったアメリカ軍は、183台の戦車及び900両の軍用車両を破壊されて、一時後退する敗北をした。しかし、

 

みゆき

「ロンメル将軍って死んでしまったの?」

あかね

「殺したらあかんて、皮膚病が重くなって入院しなきゃいかないくらい、悪くなったから帰国命令が出たんやて」

れいか

「元帥が連合軍の捕虜になるのを防ぐ為ではないでしょうか」(2)

 

 米英軍は増援部隊を投入し、更にアルジェリアに進出した航空隊に激しい空爆を行わせ防衛線を突破させた。チュニジアの首都チュニスと、港湾都市ビゼルトは4月7日に陥落し、7日後に、ハンス・フォン・アルニム大将はチュニス北東の岬で降伏した。近くシチリア島上陸作戦が行われるだろう。それが成功した場合、相次ぐ失態で支持が激減している、イタリアのアンチョビ……ではなく、イタリア首相べニート・ムッソリーニは辞任もしくは逮捕され、イタリアが枢軸国から脱落する可能性が高い。

 

 更に太平洋でも一大痛快事が起きた。極東アメリカ軍司令官ダグラス・マッカーサー大将の脱出である。マッカーサーは、当時最年少で陸軍参謀総長に就任したエリートで、1935年に退任した後アメリカ植民地フィリピンの軍事顧問に就任した。当地は父親の時代より縁があり、かなりの利権を持っている。日米開戦数か月前に、大将に昇進した。

 

 マッカーサーは、開戦数日で制空権を喪失した為に、首都マニラの防衛を断念。素早くコレヒドール要塞と、バターン半島に退却しそこに防衛線を構築した。

本間将軍の第一五軍は、かなり苦戦しつつも防衛ラインを突破していた。こちらでも重砲の砲撃で、偶然要塞の弾薬庫が爆発する幸運が有り戦局は日本側優勢に傾ていた。更に米軍やフィリピン軍では物資が不足しつつあり、当面増援部隊も来ない以上このままでは、陥落は時間の問題となった。

 

 マッカーサーは二月にはルーズベルト大統領より、「豪州に脱出せよ」と言う命令を受けていたが、三月までは迷っていた。だがその間に本国の知人から、プリキュアの能力を知りこれ以上脱出を遅らせれば、マニラ湾封鎖にプリキュアの一部まで加わるかもしれない。そうなったらもう逃げる術は無い。

「しかし、プリキュアとは何処から現れたんだ。日本通(本人談)の私でも聞いた事も無い。まさか未来からでは? 万一その通りだと迂闊に脱出するのも危険だ。

戦史に私の脱出方法が記されているかもしれない」

貴族階級的直観(本人談)でその危険を感じた、マッカーサーは一計を立てる。

 

 

三月初旬

 

 プリキュア一の優秀さを誇る、れいかと六花は偶然戦史本で見たマッカーサー将軍の脱出方法を説明していた。

「なるほど高速を出せる魚雷艇での脱出は、かなりあり得るだろう」

「潜水艦と言う可能性もあるが、潜水艦はかなり狭い。マッカーサー将軍は未だしも家族は耐え難いだろう。水中では極めて遅く、攻撃を受けたら撃沈の可能性も高いな」(3)

昔の潜水艦は極めて艦内が狭く、ありとあらゆる余剰空間には食料が積まれている。現代の原子力潜水艦では多少は余裕もあるみたいだが。しかも水中では速い自転車くらいの速度しか出ず、36時間以内には必ず浮上して、酸素を入れ替えなくてはならない。

 

 魚雷艇は、40ノットの高速が出せる上に船体も小さく夜陰に乗じれば、中々撃沈は難しい。陸軍参謀達は、海軍と共に魚雷艇に注意するように命令を出した。

 

 

 3月23日午前10時 3隻の魚雷艇がコレヒドール要塞より出港した。明らかに目立ち過ぎていたので、これは陽動だろうと判断し放置した。翌日午後11時

再び魚雷艇3隻が発進した。これが本命に違いない。数時間後駆逐艦や巡洋艦に包囲されて、魚雷艇は艦尾を砲撃されて航行不能になり拿捕された。

マッカーサーらしき人も捕虜になった。が、朝になって尋問を始めた所どうも偽者らしい。尋問に当たった士官が映像ニュースで、マッカーサー本人を見た事あったので気付いた。じゃあ本物は何処だ。そこでようやく気付いた。2日前の朝に白昼堂々と出港して行った3隻こそが本命だったのだ。

 

 そのころ密かに某島の秘密飛行場から、《B-17》爆撃機で豪州北部ダーウィンに向かっていたマッカーサーは、無事目的地に到着。

「我々は見事敵を欺いた。(中略)必ずフィリピン奪還のために私は戻る! アイシャル・リターン!」

 

この一大痛快事に米国民は熱狂した。更に5月以降は「もしかすると、プリキュアも出し抜いての脱出だったのでは」

との噂が広がり、更に拍手喝さいを受けた。

 

 

 ハルゼーは、海軍作戦本部に呼び出されていた。彼は軍人たるもの、艦船勤務を志願してこそ海軍軍人だと考えている。無論軍組織の中には、兵士の給料を計算したり、兵器を調達する裏方が必要であり、ハルゼーもそれは十分に理解している。別に嫌いだとかいうわけではない。事故や病気で艦船勤務が出来なくなり、後方勤務に回されたような事例も多い。ハルゼー自身も今後そうならないとも限らない。

 

 嫌いではないにしろ、本国のエリートの中には自分たち現場の人間を見下して来る、嫌な奴もいる事も事実だ。

(しかし、この大佐は全くそんな感じはしない。噂通り軍人と言うよりは、学校の教師か中堅どころの歴史学者……軍人にならなかったら、本当にその道に進んでいたかも)

 

 ハルゼーは案内され、小会議室に一つに入った。

 

「閣下、今からある写真を確認してしてください」

ハルゼーは頷く。

「ただしこれの出どころについては、一切機密にてお答えできません」

「判ったから早く見せてくれ」

 

最初の写真を見る

「この子は何処かで見た……この写真はトラック島辺りに、潜水艦でコマンド部隊でも……」(4)

「閣下」

「すまん質問は無しだったな。……これはキュアホイップ!」

「間違いありませんか」

「間違いない。キュアホイップで宇佐美いちかだと名乗った。最初のは変身前のか。これは驚いたかなり雰囲気が変わるのか」

 

「ご協力感謝します。それと一つ残念な知らせが」

「?」

「敵大型新型空母の撃沈は、どうやら間違いだったことが判明しました」

「戦果誤認か! なんてこった」

「いや、爆弾3発と魚雷1本の命中は事実でした。修理には最低でも3か月以上はかかるでしょう。無意味ではありません」

どうやら命中させた魚雷の本数の報告に、誤認が有ったらしい。

 

 

ハルゼーがさらに意気消沈した表情で、玄関まで来ると記者たちが騒いでいる。

「何かあったのか?」

副官のアッシュフォード大尉を呼び止めて聞いてみる。

「入院中のノックス海軍長官が、急死したとの事です」

「何だと! 」

 

 

外務省より報告

 

 

アメリカ合衆国

  において

 

政府高官の死亡

   が

 

発生したとの事です。






1 サービス終了の事
2 スターリングラードで第6軍司令官パウルス元帥が降伏して、ソ連軍の捕虜になっているので。スターリングラードはソ連崩壊後に、ヴォルゴグラードに改名。
3 ジーン夫人も同行していた。
4 一部の旧式潜水艦を改造して、日本占領下のフィリピン等に残留したスパイ(捕虜にならなかった米軍人等)に暗号帳等を届けたりする任務に、従事している。


ハルゼーの「プリキュア許さねえ」リストにまた一つ理由が増えた。ノックス海軍長官は史実では、44年(昭和19年)4月28日に急死。


何と「銀河英雄伝説外伝螺旋迷宮」に、イタミン……伊丹刑事の人が、声優として出演。銀河帝国軍ヴィルヘルム・フォン・ミュッケンベルガー中将。出番は1分ほどで戦死します。宇宙歴745年(西暦換算3545年)仇は息子さんでは無くベジータ様が、半世紀後に間接的に討ってくれます。


 その事は何年か前から知っていたのですが。何と同じ回に中園参事官も出ていた。
まじかいな。帝国軍シュタイエルマルク艦隊参謀長の役。生還するも、アホそうな発言が多かったので、戦後左遷されていそうw(上司の提督は名将です)


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第65話【エビが食べたい】後編+α


 巻末で、週刊少年サンデーで連載中の「トニカクカワイイ」の考察をやってますが、単行本未収録のネタバレ満載のなので、単行本波は気を付けて下さい。
 出ているのはスタプリと某5歳児とカラスです。


ちなみに、公式のぜんねずより、ぎゆねず推し


 

 

1944年5月25日

ハワイ真珠湾

 

 

「よし、全員午前の作業を終了する。午後1時まで各自昼食を採れ」

 

 戦闘から既に30日が経過した、真珠湾基地では復旧作業が本格的に始まっていた。軍港では転覆していた駆逐艦がサルベージされ、別の駆逐艦が沖合に曳航して行く。

やがて、大きな爆発音が聞こえその駆逐艦は波間に消えた。浮揚したが損傷が酷い為に、沖まで曳航し爆破処理されたのだ。陸上でも多くの重機が投入され、破壊された建造物の残骸が運び出されていく。飛行場の滑走路も、10日前に修理が完了した。

 

 

「新司令官は、戦争が無ければそろそろ定年だったんじゃないかな?」

「そうらしいね。前の職は海軍航海局長だった筈だ」

航海局は海軍の人事を扱う部署で、新司令長官は数年間航海局長を務めていた。彼は公正な人事査定で大統領も高く評価していた。もし、戦争が無ければ航海局長を最後に定年になっていただろう。だが太平洋戦争と真珠湾壊滅で、前任者のキンメル大将が更迭された為に、太平洋艦隊総司令長官の就任を打診された。

 

 5月10日に家族を伴い真珠湾に到着し、通例なら戦艦艦上で行う就任式典も、多くの戦艦が海の底か修理工廠だった為に、潜水艦の上で行われた。(1)

さらに同日付けで、中将を飛ばして大将に昇進している。

 

「司令官は、何処で人事鑑定眼みたいな能力を身に着けたんでしょう?」

「故郷のテキサス州で、家族がホテルを経営しているそうだ。学校が長期休みの時とかに、ホテルの仕事を手伝っていたらしい」

「つまりその経験が生かされているんですね」

「ホテルってテキサスの何処です? サンアントニオ? ヒューストン? ダラス? ニューオリンズ?」

「いや、そんな大都市では無いらしい。そもそも、ニューオリンズはルイジアナ州だぞ。テキサス州の中部の方だったと思う」(2)

 

「そういえば、新司令官が海軍に入隊したのは、海軍だと新鮮な海老がいつでも食べられるからと、思ったかららしいね」

「テキサス州なら海に……内陸北部だと海の海老は直ぐには無理か。でも、川や沼にも淡水の海老や蟹がいるんじゃ?」

「それはいかんぞ」

「ど、毒でもあるんですか?」

「君らはハワイ州生まれだったな。では食べる機会は無かったかもしれんなあ。いいか、川や沼の海老や蟹は絶対に生で食べてはならんぞ。寄生虫がいるからな」(3)

「では、必ず火を通してから食べないとダメなんですね」

「何匹か纏めてフライにしたり、茹でたのをスープの具にしたりだな」

「とれたての新鮮な海老と言う事になると、川の海老では無理ですね」

 

 実際の所、本当は陸軍士官になりたかった。しかしウェストポイント陸軍士官学校の試験を受けるには、地元議員の推薦が必要で、その年の推薦枠

はすべて埋まっていた。しかし、海軍ならまだ枠があると言われアナポリスの海軍学校の試験を受けて合格した。

 

 

 彼らのチームは、破壊された標的艦《ユタ》の解体作業に従事している。標的艦は、演習や新兵器の実験の時に標的として利用され、最終的に実験などで沈められることもある。

「しかし、プリキュアはこの船を戦艦と勘違いして攻撃して行ったが、意外にまぬけなのか?」

「日本人は近眼だと言う噂は、案外正しいのかも」

 

「いや、彼女達が勘違いしたのも当然かもしれんぞ」

「誰だおま……け、敬礼!」

 

「《ユタ》は元は戦艦だったのだから、勘違いしてもおかしくは無いだろう」

 

 戦艦から標的艦に改造された際に、主砲はすべて撤去されたが船体の全長は、戦艦時と変わらない為に勘違いしても、おかしくは無い。むしろ、《ユタ》が攻撃されたことで他への攻撃が多少減ったという見方も出来る。新司令長官は、副官や参謀達と共に去って行った。

「それと、淡水の海老や蟹を使った名物料理は多い。君達も機会が有ったら食べてみてくれ」

 

 

「参謀長、例の海底火山の活動は沈静化しているとみてよさそうだね」

「あの爆発の4日後と、更に10日後に更に小規模の爆発が発生しましたが、それ以降は沈静化しています。被害は直接的にはありません」

海底火山の爆発に巻き込まれた、魚の残骸が一部漂着し、風評被害で魚の売れ行きが多少減っただけですと、新太平洋艦隊参謀長レイモンド・スプールアンス少将が海底火山の状況を報告した。

 

 スプールアンスは、残存艦艇をサンディエゴに退避させた後そのまま残務処理に従事していたが、5月15日にパールハーバーの司令部に来るように命令文が来た。

彼は、軍服を新品の物と交換し飛行艇に搭乗しハワイに向かった。彼は軍法会議と予備役行きを覚悟していたのだが……

 

「君には、太平洋艦隊参謀長に就任してサポートして欲しい」

「私は敗軍の将ですが」

「君は冷静な判断で、残存艦の大半を無事に避難させた。その冷静な判断力が必要だ。既にキング作戦部長と大統領の内諾は得ている」

こうして、スプールアンスは太平洋艦隊参謀長に栄転した。

 

 次に新しい重油タンク群の視察に訪れた。タンクは既に完成して、後は重油を入れるだけだ。

 

 同日日本 海軍軍令部

 

マナ「やっぱり、あの重油タンクは偽物だったんですか?」

参謀「君達や、他の搭乗員の目撃情報から考えると、そう結論付けざるを得ない」

六花「でも、私達が攻撃した際に小規模な爆発は起きていました」

ありす「それに、確かに重油のようなにおいもありました」

 

参謀「いや、ダミーのタンクでも全く放置していたら怪しまれる。ハワイには領事館員や商社員もいるからね。だから、

少量の重油を出し入れして、ごまかしていたのだとだろう」

真琴「本物の重油タンクは、地下にあると言う説は正しかったのですね」

 

 

再び真珠湾

 

「プリキュアや帝国海軍も、騙されているかもしれないですね」

「別に騙したわけではないのだがね。そもそもその時は私は未だ航海局長だった」

確かにマナ達が攻撃した時には、重油タンクは空に近い状態だった。しかし、タンク自体は本物だった。重油を運び出したのは前任者のキンメル元大将だ。

何故そうしたか……それについては、キンメルの前任者、つまり新司令長官の二代前の太平洋艦隊司令長官に原因があった。

 

 

1939年6月……第三帝国がポーランドに侵攻する3か月前、ジェームズ・オットー・リチャードソン少将は航海局長から、太平洋艦隊司令長官に栄転した。

同時に大将に昇進している。その時未だ太平洋艦隊の司令部は、パールハーバーでは無く西海岸のサンディエゴに有った。

翌年5月に、ハワイ沖で大規模な演習を行ったのだが、その際にルーズベルト大統領は、リチャードソン大将に「この機会に司令部を真珠湾に移せ」と命令した。

しかし、

 

1 真珠湾は、合衆国艦隊の主力を駐留させるには施設・防御力が貧弱である

2 米本土から2000マイル以上も離れた洋上の孤島で、補給が困難

3 艦隊をこれだけ進出させると日本を刺激して米日戦争の引き金となる

4 本土から遠く離れている為に、兵員の士気が下がる

5 地下などに重油タンクを建造する事が難しく、攻撃されて壊滅した場合大量の重油が漏れて長期間に渡り、基地が使用不可能になる危険が大きい

 

と反対意見を述べて抵抗した。結局折り合いが付かず、翌年1月末に大統領によりリチャードン大将は解任され、少将に降格となった。その後後任のキンメル大将

のより7月までに、司令部は真珠湾に移動している。(4)

 

 キンメルは、日本側が攻撃の兆候を見せた直後前任者の意見を思い出した。反対意見も多かったが、強引にタンカーに移してハワイ島方面に避退させた。最後のタンカーが安全圏に出たのは、

最初の戦闘が始まる僅か3時間前だった。

 

 重油タンクは、ほぼ空に近くなったがタンクの底にはわずかに重油が残っていた。それがマナ達の攻撃を受けた時に炎上した。僅かな重油でも、後日除去する際に作業員等から、何人かの健康被害者が出た。

風下の住民からは、

「重油の匂いが酷い」

「洗濯物が外に干せない」

との苦情も来た。

 

 

 数日前に、

「もし450万バレルの重油が、プリキュアの攻撃で全部炎上していた場合」を想定した、被害予測レポートが提出された。

大量の重油が、真珠湾軍港に流れ込み軍港は重油漬けになって機能は完全喪失。重油の除去には最低でも数年は必要で、太平洋艦隊司令部は、本土への撤退を余儀なくされただろう。更に、オアフ島の住民全員の本土への避難が必要となり、オアフ島の自然環境は回復不可能となった可能性が高い」

 

このレポートを見た参謀達は、「現実にならなくて良かった」と一応に胸をなでおろした。流石に、新しいタンクは軍港より少し離れた場所に建造されている。

 

 

 翌日

「ミッドウェーからの撤退は、完全に成功だな」

「被害皆無です。やはりバーク大佐は将来の合衆国海軍を担う逸材でしょう」

ミッドウェー島は、オアフ島より2000キロ以上離れている。太平洋艦隊は当面の間真珠湾の復旧に全力を傾ける必要があり、ミッドウェー島への補給は大きな負担となるので、一時的に放棄する事になった。

場合によっては、勢いに乗る連合艦隊が占領を計画するかもしれない。

 

 速度の遅い輸送船では、最悪の事態となったら間に合わないかもしれないので、駆逐艦と旧式駆逐艦を改造した高速輸送船を用意し、夜間に乗じてミッドウェー島に入港。兵員のみを収容して撤収する事になった。

空母機動艦隊や、プリキュアの攻撃は無かったが潜水艦の攻撃は有った。しかし、バーク大佐は被害を0に抑えたばかりか、逆に潜水艦3隻撃沈・2隻撃破の戦果を挙げた。

 

「大佐には、いずれ主力艦隊の参謀長等の職務を経験させるべきだろう」

 

「ミッドウェーに日本軍が進駐した場合、航空隊によりオアフ島が空襲される危険があるのでは」

と言う懸念があった。ミッドウェーとオアフ島との距離は片道2100キロ。《一式陸上攻撃機》の初期型なら、往復できるのだが……

「だが、護衛戦闘機の同行は無理だ。流石に護衛無しで爆撃機だけを飛ばすほど無謀では無いだろう」

「しかし、プリキュアは敵爆撃機の護衛に付く可能性も指摘されていますが」

スプールアンス少将の様な懸念を述べて、ミッドウェー島一時放棄に慎重な意見も少なくなかった。

「確かに、その危険性は皆無では無い。確かに先月プリキュア達は、ワシントン州沖からロッキー山脈を迂回し、山沿いに長躯してニューメキシコ州の原爆工場を攻撃した。しかし、陸上は山や川などを目印にできる」

それに、途中で地上に降りて休息する事も可能だ。新司令官の言う通りみらい達は、途中数回地上に降りて休息していた。

「それに、内陸部の州は夜間の住宅等の灯火が、そのままになっていました」

「だが、ミッドウェーとハワイの間は目印は何も無い。海しかない」

「プリキュアは敵の戦闘記よりは速いですが、ミッドウェーとオアフ島を往復となると、戦闘を含めて2時間はかかるでしょう。流石にそんな無理はさせないとは考えます」

 

「先月の攻撃でも、ロスアラモスを攻撃したプリキュア達は、どうやらかなり長時間飛行の疲れで、かなり警戒力が落ちていたそうじゃないか」

「接近して来る戦闘機に、攻撃されるまで気付かなかったようです。あと数分攻撃が早ければ大金星でした」

残念ながら、その寸前に空母から発進した《零戦》隊と、いちか達アラモードチームが救援に来たので、中隊長は大金星では無く天空の星になった。

 

 

 新司令官は潜水艦の知識も豊富なので、もしミッドウェーが占領されたら、潜水艦を投入し補給の輸送船を沈めて兵糧攻めにする計画だ。

 

 

 数時間後新司令官は、視察を終え太平洋艦隊総司令部に戻る。直ぐに視察に出ていた数時間の間に分析された、情報が報告された。参謀やスタッフの表情は一か月前に、建国して以来最悪の敗北を喫したとは思えないほど、活気に満ちていた。いや、2週間前最初に参謀達が招集された時は、まるでお通夜のような状態だった。参謀達の目は死んだ魚みたいで、「左遷」「更迭」といった囁きが聞こえた。キンメル前長官に対する厳罰は、新聞などで大きく報じられていた。参謀達は自分達も大敗の責任を取らされ、左遷や更迭もしくは軍法会議に掛けられるのではないかと恐れていた。

 

「私は諸君たちを誰一人として、処罰するつもりは無い」

参謀達は、あっけにとられ誰も何も言わない。

「無論私だけの考えでは無く、上層部の許可は得ている。誰が司令官でも、同じ結果になった可能性は高い。私がキンメル前長官のお立場でもそうなった可能性は高い。君達は、身近でプリキュアとの戦闘を目撃した。その体験を生かしてほしい。レイトン大佐君は、巡洋艦か空母の艦長へ転属し、前線に出る事を望んでいる様だね」

 

 確かに作戦主任参謀のレイトン大佐は、自発的に巡洋艦か空母の艦長に転属し、最前線に身を投じたいと考えていた。

「責任を取りたい気持ちは理解できる。しかし、君のプリキュアに対する分析は的確だ。君が前線の空母の艦長に転属するより、現職に留まる方が遥かに国益をもたらすと考えるが……」

「転属願いは取り下げます」(5)

 

「さて、私は噂では聞いているだろうが釣りをするのが趣味の一つだ。釣りで獲物が釣れない時はどうするべきだと思うか?」

「釣る場所を変えます」

「餌を変えてみます」

「なるほど、確かにそれらは有効だ。だが、最も大事な事がある。それは、……くよくよせずに気持ちを切り替える事だ。我々は、前向きに気持ちを切り替えて、勝利という極上の獲物を釣り上げよう」

 

 その時、既に最初のお通夜の雰囲気は消え、全員の目に光が宿っていた。レイトン大佐が立ち上がり、全員がそれに続く。

「新司令長官、チェスター・ニミッツ大将閣下に敬礼!」

 

 

    外務省より報告

 

  アメリカ合衆国のイベント

 

太平洋艦隊司令長官の後任

      において

 

 

航海局長の、ニミッツ少将が適任だ

        を

選択したとの事です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルンス

「ここからおまけプルンス。予告通りネタバレ満載なのでコミックス派は、気を付けるでプルンス」

 

 

 

チコ

「コンチコワー。今日はとある少年サンデー連載中の、「トニカクカワイイ」ヒロイン。可愛いお嫁さん司を考察してみます」

ひかる・まどか

「こんばんわ―」

ララ

「こんばんわルン」

ユニ

「こんばんわニャン」

 

チコ

「とうとう司の正体が明らかになってまいりました。かなり驚いた読者も多いのじゃないかしら」

まどか

「元は普通の人間だったと言うのは、予想していませんでした」

ララ

「月に帰らなかった輝夜姫じゃ無かったルン」(6)

チコ

「まあ考察しているサイトでは、その線が一番多かったわね」

ひかる

「後、神話とかの女神様という説もあったよ」

ユニ

「私は異星人じゃないかと思ったニャン」

チコ

「キュアフォーチュン……ララ・サタリン・デビルークや、キュアマジカル……ハィ=リューン・イェアソムール・ジェダとかね」(7)

キョエ

「その本名じゃわかりにくい。バカー」

 

ひかる

「司ちゃんと、輝夜姫とは全く面識が無かったんだね」

まどか

「それも驚きました。友人関係だと思っていました」

チコ

「面識無しでございます。都で騒動が起きている間も、薬師の娘である司は薬草を煎じ薬を作ってました」

ララ

「近所の少年から、輝夜姫の噂はいろいろ聞いてはいたみたいルン」

 

チコ

「竹取物語では、輝夜姫が月きの都に帰った後……」

ララ

「帝はたいへん悲しんで、水の底にある別の都に……」

ひかる

「それは平家物語だよ。平家一門滅亡だよ」

チコ

「帝は、不老不死になれる薬もを貰っていたんだけど、もう二度と輝夜姫に会えないのに、こんな薬要らないよと言ったのね」

まどか

「せめて月に一番近い山……一番高い山で……」

キョエ

「蓬莱の薬を不法投棄する様に、薬師の岩笠に命じました。バカー」

ユニ

「不法投棄じゃ無いニャン。燃やさせたのよ」

ララ

「まあ、どちらも同じようなものルン」

まどか

「帝は家臣に、何処の山が良いかお尋ねになったみたいです」

ララ

「エベレストルン」

ひかる

「いや、確かに一番お月様に近いけど」

チコ

「当時ネパールまで行くのは無理です。駿河の国の山が一番高いと言う事になり、岩笠にその山の頂で薬を燃やさせたのね。そうしたらいつまでもその煙が消えず、

その山不死の山と言われ、のちに富士山となったそうな」

ひかる

「当時富士山は何度か噴火しているから、その事を暗示しているらしいよ」

 

チコ

「岩笠は瀕死の娘司に、蓬莱の薬を飲ませて助けました」

まどか

「どうやってその薬を手に入れたのでしょう?」

チコ

「平和的、もしくは非平和的の二通りがあり得ます」

ララ

「司は、薬師として多くの人を助けていたから、その噂が帝の耳に達していたルン。だから帝が可哀想だから、蓬莱の薬で娘さんを助けなさいと、薬を渡したルン」

ユニ

「反対に、燃やすように言われた蓬莱の薬を奪うか、偽者とすり替えて奪った可能性があるニャン」

 

 

チコ

「最新号では、まだ不明です。しかし、過去編冒頭で返り血を浴びた司が、剣を持って立っているシーンがありますので、後者である可能性が極めて高いかと」(8)

 

 

チコ

「元は普通の人間である事が判明した司。あれっ誰か似たような境遇で、不老不死になった平安時代のがいましたね」

まどか

「桂ヒナギクさんですね」

キョエ

「違います。バカー」

ユニ

「髪の色と、外見は確かに似ているニャン」

チコ

「元は普通の人間だった、鬼の始祖……鬼滅の刃のラスボス鬼舞辻無惨……司と無惨その共通点を探って……今気づいたけど、そっち一人足りないじゃなーい」

ララ

「鬼滅の刃と聞いたえれなは、最初から逃げたルン」

キョエ

「越前国金ヶ崎で、浅井長政と朝倉義景に挟み撃ちにされそうになって、逃げだした織田信長みたいな速度で逃げて行きました。人間とは思えない速度……もしかして、キョエのお母さん?」

ひかる

「違うよ」

 

 

チコ

「無惨も、もともとは普通の人間だったけど、医者が変な薬を飲ませたら、鬼になりました」

まどか

「無惨も病弱だった……彼は生まれつきですが、司さんは健康だったけど、突然重病になったところは違いますね」(9)

ひかる

「二人とも、自分から望んで謎の薬や、蓬莱の薬を飲んだわけではないよ」

チコ

「その通り、あくまでも受け身だったわね。ちなみに司が飲まされた蓬莱の薬は、その直後かなり苦しかったみたい。その記憶だけ一時的に飛んだから、相当苦しんだみたい。えれなが、コンビニでサンデーを手に取り、そのページを開いたら間違いなく床に落とします」

ユニ

「二人は、どっちが年長?」

ララ

「無惨は1000年程生きている筈ルン」

ひかる

「司ちゃんは、1400歳と言ってるよ」

チコ

「16歳を、1400回繰り返しただけだと言ってます」

まどか

「司さんの方が年長ですね」

 

 

ララ

「どっちも不死身ルン。どっちの回復力が凄いルン?」

ユニ

「司は大型トラックと激突したけど、大きなけがも無く出血もすぐに完治していたニャン」

チコ

「最新号見ると回復速度は、無惨に匹敵すると思われます」(10)

まどか

「無惨の血を与えられた鬼は、強くなるんでしたっけ。(耐えられない鬼は死ぬ)」

チコ

「司も血を与えて、相手を活性化できます……」

全員

「これ拙い予感が……」

チコ

「まあ何も起きてないので大丈夫でしょう」

ひかる

「キョエちゃんも、司ちゃんに血を貰ったら強くなれるよ多分」

キョエ

「キョエは美女の血よりも、そこらの生ごみの方が良いです。カラスなので! バカー」

 

 

ひかる

「攻撃能力はどうだろう」

まどか

「それは無惨の方が圧倒的に上だと思います」

ララ

「行動力は、司の方が上ルン。無惨は昼間は動けないルン」

チコ

「無惨は昼間は焦げます」

ひかる

「いやいや即死だよ」

 

 

ユニ

「でも二人ともかなり孤独ニャン」

チコ

「無惨も孤独だけど、司も孤独よねー。アニメのオープニング見ると一目瞭然よ」

まどか

「でも、司さんは歴史上有名な人物とか知人は多そうですね」

ララ

「聖徳太子とか徳川吉宗と面識があったような、事を言っていたルン」

ひかる

「単行本のおまけに、もう一度食べたい料理はありますか? と言う質問に、細川君のウナギ料理って書いてあったけど」

ユニ

「ウナギ食べたいニャン」

チコ

「残念ですが無理なの。その細川君って芸術家や美食家としても当代随一だった、細川藤孝の事だから無理」

まどか

「麒麟がくるの最終回で、怪しげな動きをしていた人ですね」

ララ

「子供はヤンデレらしいルン」

チコ

「息子の細川越中守忠興は、珍しい男のヤンデレでございます」(11)

 

 

趣味とか有るの?

ひかる

「司ちゃんは、映画やゲームやアニメとかに詳しいみたい」

まどか

「逆に歴史遺産とかは興味が無いみたいですね」

チコ

「まあ生で関ケ原とか本能寺とか見てそうだし」(12)

 

 

ユニ

「無惨は趣味はあるのかしら?」

ひかる

「特に描写は無かったと思うよ」

キョエ

「趣味殺戮」

ララ

「怖い話止めるルン!」

チコ

「実は井伊直弼みたいな多彩な趣味が有ってもおかしく無さそうな」

 

お金はどうしていた?

 

ひかる

「生活に必要なお金はどうやって確保していたのかな?」

チコ

「そこらは未だトニカワでは明らかにはされていません」

まどか

「無惨は、お金持ちを殺害してすり替わっていたと、ファンブックに書いてありました」

ララ

「お駒さん(麒麟がくる)みたいに薬を作って売っていたルン」

ユニ

「基本はそのあたりだと思うニャン」

 

1 ユニ方式 謎の怪盗として悪党や悪徳商人からお金を盗み、困っている人を助ける

2 伊呂波太夫(麒麟がくる)方式 朝廷や公家の保護を受ける。その代わりに地方などに赴き情報収集

3 竈門禰豆子方式 不老不死なら食べなくても問題ないんじゃない。で、彼女みたいに年単位で眠る。

4 墜姫方式

 

チコ

「お駒さん、+2番じゃないかしらね。4は洒落にならないって」

 

 

ユニ

「司は最後人間に戻れるのかしら」

ひかる

「きっと戻れるよ」

まどか

「でもその為には、月に行って輝夜姫に会う必要があるとか原作で」

ララ

「今の司には、ありすみたいな助けてくれる大富豪はい無さそうだから、無理かもしれないルン」

ひかる

「輝夜姫もいなかったルン」

 

チコ

「まあ戻れるか、結局戻る事は出来ず姿を消す。で、ついでに周囲の人の自分への記憶や婚姻届けなどは何らかの力で消去して去る、のどちらかと思うわね」

キョエ

「第三の可能性」

ララ

「オヨー」

キョエ

「司は、実は自己回復機能を持ったアンドロイド説」

まどか

「過去の記憶はどうなるんですか?」

キョエ

「人工的に作られたに過ぎない」

ユニ

「ストップニャン」

キョエ

「と言う怖い可能性を適当に述べてみたー。バカー」

チコ

「どうやら冗談みたいね」

ひかる

「漫画家さんの作品にそんな怖い人いないよー」

チコ

(いや、前作「ハヤテのごとく!」まで含めるといるよいるよ。マッドサイエンテイストとか、金で協力しそうな歴史教師とか、悪の大金持ちの爺さんとか)(13)

 

 

最後に

 

キョエ

「キョエも毎回トロピカル〜ジュ!プリキュアに出ています」

ひかる

「きらやばー?」

キョエ

「本編が終わった後、勝手にまなつ達の町の上を飛んでます。探してくださいバカー」

 

チコ

「キョエちゃんの冗談なので、探さないでください」

 

 

 

 

 






1 史実でも潜水艦【グレイリング】の艦上で行われた。同艦は、1943年9月にフィリピン方面で喪失。
2 フレデリックスバーグと言う小都市。ご実家のホテルは日本で言うと民宿レベルらしい。ちなみに、ご先祖はドイツのザクセン地方の男爵だったけど、没落してお金も浪費で亡くなったので、アメリカに移住。
3 美味しんぼと翔太の寿司より 
4 真珠湾陰謀論の一つ 大日本帝国を挑発する為に、太平洋艦隊司令部を本土からハワイに移動させた。
5 レイトン大佐は最近リメイクされたミッドウェー海戦の映画でも大活躍。


6 輝夜姫ぽい人物は他に出ている。
7 羽入の本当の名前の筈
8 やっぱり後者でした。
9 急激に死にかけていたので、天然痘ではないかと思います。後弓を命中させた兵士は、炭次郎に斬られるべき(中の人的に)
10 無惨よりも上かも知れない(最新号)
11 妻(細川ガラシャ)と目が有った庭師を即斬殺。
12 むしろ本能寺は彼女が黒幕でも驚かないw
13 後者は中の人はキュアハート。妹はシンドイーネ

キョエちゃんの冗談は、去年麒麟がくるに出ている発言より


チコ
「彼女が無惨の立場だったら、鬼殺隊に勝ち目は無さそうな気がするわねー」
キョエ
「無惨みたいにバカじゃないから、粛清とか無暗にやらない。400億の男煉獄さんを討ち取った猗窩座にはご褒美をあげます。炭次郎の妹の声を完コピ出来るので、
炭次郎に勝ち目はない。バカー」
チコ
「でもうざい玉壺と童磨は、司にたびたびお仕置きされていそう」
キョエ
「二人とも喜んでお仕置きされてます多分。バカー」

 最新号を読んだ感想
 司ちゃん完全に暗黒面に墜ちてる。鬼になる寸前の狛治(後のあかざっち)みたいな目になってる。

来週辺り……
某剣士
「私はこの女を倒す為に、生まれて来たのだとわかった」てな事にならないと良いのですが。
  


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第66話【アンチョビ終了のお知らせ】


艦これ春イベ前段作戦が終了したので、投稿します。

レア艦は、潜水母艦《迅鯨》のみゲット。E-3で新娘《巻波》(《夕雲型》)が出るようですが、E-1で出る《フレッチャー》の方が貴重なので、そっちを狙って周回中。
E-2で、新潜水艦も出るようです。が、別に不要なのでスルー。


1944年(昭和19年) 6月20日

東京

 

 

「火山が噴火した? じゃあ逃げないと」

「ちょっと待ちなさい!」

火山が噴火したと聞いたヒメルダは、某北条家の遺児みたいな速度で逃げ出そうとしたが、速いおなに捕まって

部屋の中に戻された。

「でも火山が噴火したら危ないんじゃないの? アルマゲドンだよ」

「日本の火山じゃ無くて、カムチャッカ半島東側の火山らしいわ」

ゆうこが、めぐみに日本の火山では無いと伝える。

「アルマゲドンは、隕石映画だよ」

とヒメルダは、どや顔で突っ込み、いおなに軽くにらまれる。

 

「大きな被害が出てないと良いんだけど」

「大丈夫よ」

「何で断言できるのかしら?」

「元から人がほとんど住んで居ない所だよ」

「あ。うん」

現地人の事を心配した、イオナの憂慮はゆうこにより即論破された。カムチャッカ地方は面積は日本より広いが、人口は35万ほどしかおらず、

その大半は南西部にある、軍港都市ペトロパブロフスク・カムチャツキー市に集中している。(1)

 

「でも、別の異変が起きているみたいよ」

「ほえ?」

 

 

3日前

キスカ島北沖

 

 

「応急修理は間もなく終わります」

「終了したら、一旦潜航しよう」

中型潜水艦《呂-44》艦長橋本少佐は、修理が終わり次第確認の為に、潜航する事を指示した。《呂-44》は、昨年9月に完成してまだ10カ月しか経過していない。

 

 

 同艦は、ベーリング海の偵察任務を命じられ1週間前に、カムチャッカ半島東沖から潜入した。合衆国は、アラスカなどを経由して流氷が無い夏の間だけ、ベーリング海を経由して軍需物資をソ連に輸送している。

 

輸送船団には、ソ連の輸送船も混じっている上にベーリング海には、ソ連の小型哨戒艦もいるので、間違えて攻撃したら大変な事になる。少佐には、自衛上止むを得ない場合以外の、敵艦への攻撃は禁止されていた。(2)

 

 

 この日ベーリング海は、濃い濃霧に覆われていた。《呂ー44》は、艦内の空気を入れ替える為に浮上していた。濃霧なので敵艦や哨戒機に発見される可能性は、低いと判断した。が油断大敵突如霧の中から、突如米海軍の小型哨戒艇が現れた。橋本少佐は、急ぎ甲板の8センチ砲で砲撃を命じた。米艦も想定外の遭遇だったのか、慌てて小型主砲で応戦して来た。四発目の8センチ砲が、米哨戒艦の艦橋をぶち抜き爆発。敵艦は転覆して沈んでいった。

 

 だが、運悪く敵哨戒艦が最期に放った至近弾の破片が潜水艦の船体に当たり、電気系統の故障が発生し潜水できなくなってしまう。幸い数時間の応急修理で回復できることが判明し、修理作業を行っていた。

 

 

 修理が終わる頃には、かなり天候も回復していた。回復が早かったら危なかったかもしれない。西の空を見ると、太陽はもう水平線近くに沈んでいた。この辺りは緯度が高いので、この時期は太陽が完全に沈む事は無い。いわゆる白夜だ。(3)

「あの太陽妙じゃないかな?」

「どうかされましたか?」

「いつもより夕焼けが鮮やかじゃないかな」

士官が見てみると確かに、いつもよりかなり鮮やかな色をしている。

「高緯度で起きる天気ではないのですか?」

「まあ、偶然かも知れん。よし、潜航準……」

「後方! 大型機発見! 高度200以下!」

「急速潜航!!!」

 

 艦長が潜航命令を出そうとした瞬間、積雲の陰から大型の対潜哨戒機が向かって来るのが見えた。高度は恐らく200メートルも無い。

最近大西洋などでは、大型の対潜哨戒機が超低空から攻撃して来ると言う情報を、駐独大使館経由で入手していた。敵は優秀な対潜レーダーを装備しているらしく、夜間は更に危険で、かなりの数の独潜水艦が撃沈されていた。幸いアリューシャン列島や、アラスカに配備された大型哨戒機は未だそこまでの高性能レーダーは、搭載されていない。

先月、北東太平洋で味方潜水艦が事故で墜落した米軍搭乗員を、偶然救助し尋問で判明した。(無論捕虜収容所行き)

 

 数年前まで、独潜水艦は昼間は発見されるのを避ける為に潜航し、夜間に浮上して換気作業をしていた。しかし、近頃は夜間は奇襲攻撃を避ける為に潜航し隠れ、晴れていれば視界が効く日中に浮上しているという逆転現象が起きているそうだ。

 

「待て、様子がおかしい!」

士官が、驚いて敵機を見ると《B-24》らしい大型機は、4つあるエンジンのうち2つから激しい炎を出しているのが見えた。そのまま《呂-44》の後方1000メートル当たりで、左主翼から海面に突っ込み、そのまま半回転して海中に消えた。数十秒後、水圧で対潜爆弾が爆発したのか、衝撃波で《呂―44》の船体が揺れた。

 

「助かりましたね」

「あの機は、我々を攻撃しようとしていたのでは無いだろう」

「おそらく何とか海面に不時着しようとしていたのでしょうね」

再度潜航命令を出そうとした瞬間、

「後方に別の小型機発見! 向かって来ます」

「急速潜航! 深度80!」

 

 

 外にいた乗員達は、全員艦内に飛び込みハッチが閉められる。

「深度50 攻撃はありません!」

(おかしいな? まさか気付いていなかったのかなあの小型機は?)

「深度80」

(訓練飛行をしていた戦闘機だったのだろうか? 対潜爆弾は装備していなかったのだろう)

「着水音探知。前方800」

更に1分後、ドーンという衝撃音が聞こえ船体が軽く揺れる。今度も搭載されていた爆弾の爆発だろう。

「下手糞なやつですね」

「いや、アリューシャン列島やアラスカの様な僻地だから、多少は腕が落ちる搭乗員が配属されても、おかしくは無いが1000メートルも、外すのは流石にあり得ないだろう」

「確かにそうですねえ。機体の電気回線が故障して爆弾投下のタイミングがずれたのかも」

 

「君はどう思うか? 気付いた事が有れば言って欲しい」

橋本中佐は、ソナー員の一人に声を掛ける。

「先ほどの着水音は、爆弾が海面に落とされた音では無く、搭載機そのものが海面に落ちた音だと考えます」

「つまり墜落……と言う事か? 何か理由はあるか?」

 

「あの時、聞こえた音とほぼ同じでした。そう、昨年10月半ば過ぎの事です」

 

《呂-44》は、昨年9月23日に岡山県玉野造船所で完成し、その後訓練航海に出た。10月19日は、高知県南方沖で潜航訓練を行っていた。

つまり、プリキュアがこの世界に来るおよそ半月前と言う事になる。その頃大型空母や基地航空隊の《九九式艦上爆撃機》は、多くが《彗星》に更新されつつあった。

余剰になった、《九九式艦爆》は何らかのテストに使用されたり、搭乗員の訓練用に転用されていた。一部は、対潜部隊に移動していた。旧式の低速爆撃機でも、潜水艦にとっては厄介な敵だからだ。

 

 

 愛媛県松山飛行場から、哨戒飛行に出た《九九式艦爆》が、エンジンの故障で海上に不時着。偶然近くで潜航訓練していた《呂―44》のソナー員が、その着水する音に気付いたために、2名の搭乗員は無事救助された。このソナー員は元音楽家志望だったので、艦長もその能力を高く評価していた。

「念のために、30分……いや1時間後に敵影が無ければ浮上してみよう」

 

 

「それで、一時間後に浮上したら二人のパイロットが漂流していたので、救助と言うか捕虜にしたそうなの」

ゆうこによると、冷たい海水の影響で疲労していたパイロットは質問された事に、全て話してしまったらしい。

 

 二人は《SBDドーントレス》艦爆のパイロットで、アッツ島の飛行場から対潜哨戒飛行に向かった。だが一時間ほど経過したころ、操縦席内に、卵が腐ったような臭いが立ち込めた。その後突然エンジンが故障して、機体は急降下、その後辛うじて水面に不時着に成功した。

 

「うーん、そんな幸運が続けて起こるのは変だよ」

「ただの偶然じゃない?」

めぐみは、そんな幸運が続くのはおかしいと主張するも、ヒメルダはただの偶然だろうと言う。

「実は、その2機だけじゃないの。ベーリング海の周辺では数日間で他に何機も消息不明になっているんだって」

 

 

 ゆうこが伝えられた話によると、件の《ドーントレス》搭乗員が長い休暇に入る直前、ベーリング海やアリューシャン列島北沖では、大型対潜哨戒と、《TBFアベンジャー雷撃機》と、《P-38ライトニング》戦闘機各1機が、消息不明になり、飛行艇一機が海上に不時着し搭乗員は全員救助された。

 

「飛行艇が最初に事故を起こしたんだけど、飛行艇は海に着水できるから助かったんだって。その搭乗員も突然卵が腐った匂いが機内に広がり、その後エンジンが故障したみたいなの。その後何機も消息不明になり、基地では日本軍の新兵器だとか、私達……つまりプリキュアの仕業じゃないかとか……」

「そんな北のはずれまで、私達の悪名が」

「めぐみ! せめて勇名とか武名とか言ってよ」

いおなが、怒るのも無理はない。

 それで、海軍でも何か異常事態が発生しているのだろうと言う判断になったが、それでは原因は何だろうと言う事になった。そこで、プリキュア達にも

「何か思い当たる事はないかな?」と、問い合わせがあった。

 

「多分火山灰のせいだと思う」

「何か根拠があるの?」

いおなが、ヒメルダを問い詰める。

「番組の改変期に、よくやっているじゃん。衝撃映像なんとかかんとか」

「ああ、クイズとかもあって2問間違えると、テレビ局を永久出禁になるやつね」

「ゆうこ、テレビ局じゃ無くてその衝撃番組を永久出禁よ」

 

「その番組で時々、航空機事故とかを取り上げるんだけど、1980年ぐらいの事故で、ロンドンからシドニーに向かっていた旅客機が、インドネシア上空で

機内に突如卵が腐った臭いが充満して、その後エンジンが停止して急降下。その後3000メートルくらいまで落ちた時に、何とかエンジンが再起動して、

ジャカルタ国際空港に着陸。その後エンジンを調べたら、大量の火山灰が。ジャワ島で火山が連日大噴火していたのが原因だって」(4)

 

 

数日後 海軍軍令部

 

「なるほど、カムチャッカ半島で噴火してる火山の灰が原因か。ありがとう」

軍令部総長山本五十六大将は、プリキュアに感謝の言葉を掛ける。

「実は、昨日北千島から偵察飛行に出た、陸軍の偵察機がエンジン不調で引き返した。着陸後エンジンを調べたら少量の火山灰が見つかってね」

「実はソ連軍の中型爆撃機や、ソ連海軍の飛行艇も数機消息不明や不時着しているみたいで、墜落する直前の通信を傍受したんだけど、卵が腐ったような臭い

とパイロットが通信して、そのしばらく後に通信が断絶」

 

 

 アリューシャン列島沖は火山灰が充満し、かなり危険な状態に陥っている様だ。陸軍と海軍は北千島のすべての航空機の飛行を、一週間程度禁止し様子を見る事にした。

 

「艦長が目撃した、鮮やかな夕日と言うのも火山の噴火の影響だよ」

山本大将の言葉を聞いても、プリキュア達はぴんと来ない。

「今から130年前、インドネシアのタンボラ山が大噴火して、大量の火山灰が放出されて、気温が急降下。6月にカナダやアメリカ北東部では、激しい吹雪が襲い大勢の犠牲者が出たそうだよ。

この火山の噴火を100キロ以内で目撃した人はいない、と言う話もあるから富士山や浅間山の噴火とは比較にならない大噴火だったのだろう」(火山から100キロ以内の人は全員死に絶えた)

「聞いた事があります。ニューヨークでは海が完全に凍結して、犬ぞりで対岸に渡れたそうです」

「西欧では、噴火の後数年は夕焼けが鮮やかだったそうだ」

 

 

「何処かでその絵画を見た記憶があります」

いおなは、元の世界の美術館でその当時の異様な夕日を描いた絵画を見た記憶を思い出した。(5)

 

 

7月5日 

第三帝国 ベルリン

 

「ツィタデル作戦は、中止する。残念だが、ここまで敵の防備が厚いと勝利しても、こちらも大損害を出してしまう」

ヒトラー総統は、ウクライナのクルスク付近でソ連軍の突出している前線に、南北から総攻撃を加えて殲滅する事を命じていた。

が、天候とか戦車の不足などで最初は5月10日の予定が、5月末になり6月10日になり、ようやく7月5日と決まった。

しかしそれを察知したソ連軍は、大量の戦車と重砲を用意し、クルスク近辺を巨大真田丸のごとき城砦に変えた。更に万一前線が総崩れになった場合に備え、

同数の戦車や重砲や航空機を戦場後方に配備した。

「どうかしたのかね? 君達は作戦に反対していたではないか? それとも、賛成に転向かね? それなら作戦を実行しようかね? ん?」

「いや、少し疲労が……直ぐに中止命令及び、後退作戦の開始を通達します」

 

7月5日午前3時 

 

 突出部の南北のドイツ軍は、一斉に重砲とロケット砲での砲撃を開始。ソ連軍も直ちに警戒態勢に入ると同時に、重砲やカチューシャロケット(あざとイエローの中の人では無く、ソ連軍の兵士が撃ってますw)

での反撃を開始した。2時間ほどで砲撃は停止され、ソ連軍はドイツ戦車部隊の侵攻に備えた。

 

 が、数時間経っても散発的な砲撃や空襲は有っても、敵が来ない。結局昼になって、ようやくドイツ軍が一斉に後退を……クルスク周辺だけでは無く、全ての戦線で一斉に後退を開始した事にようやく気付いた。

 

東京

 

「それでソ連軍は、慌てて追撃を開始したみたいなんだけど……」

マナが言う通り、ソ連軍は5日の午後から慌てて追撃を介していた。が、どうやらドイツ軍の巧妙な反撃にあって、かなりの損害を出している様だ。

「まるで駅での駆け込み乗車みたいね。そんなに慌てるからダメなんじゃない」

「う、うん……確かにその通りね」

真琴の指摘に対し、何故か六花はあいまいに返答する。

 

「でも、それは仕方のない事なんです」

「怒られるの?」

ありすは、某極東の島国のとある山で、妹を人間に戻す為に奮闘している少年に対し、妹さん? それはかわいそうですねと同情するように見せて、笑顔で

「苦しまない様に、優しい毒で殺してあげましょうね」

とのたまった、はーちゃんと同じ様に笑顔でこう答えた。

「やる気が無いソ連兵は、後ろから味方に撃たれてしまうんです。重機関銃で」

 

 

 ソ連軍には督戦隊と言う組織が有り、勝手に逃げようとした兵士は容赦なく重機関銃で撃ち殺している。これは映画「スターリングラード」冒頭でも描かれている。

 

「他にも、独ソ戦が開始された直後ソ連軍は総崩れになったんですが、前線司令官が敗北の責任を取らされて死刑になったそうです」

 

独ソ戦序盤の敗北の責任を押し付けられ、ソ連西部方面司令官パブロフ大将と、参謀数名が死刑に処された。

「これが恐ろしア」(7)

「今はソ連だけどね」

 

 

急ぎ過ぎた一部のソ連戦車は、味方の地雷原に入ってしまったり、戦車用の落とし穴に落ちる醜態を演じた。ドイツ軍は防衛線が得意な、ヴァルター・モーデル大将や、エーリッヒ・フォン・マンシュタイン大将が

交代しながら、巧みな反撃を行いソ連軍の追撃の速度はそれほど早くなかった。ドイツ軍の反撃に、浮足立ったソ連軍が体勢を立て直し追撃を再開した時には、ドイツ軍は既に逃げた後。

空からも、《スツゥーカー》爆撃機に乗って、ソ連戦車を葬る為に生を受けた男等の活躍で、かなりの戦車が破壊された。(7)

 

40日後、ドニエプル川まで到達したソ連軍は愕然とした。対岸はいつの間にか、旅順要塞の様な防御陣地に作り替えられていた。

 

 

 

7月10日 シチリア島占領作戦(ハスキー作戦)開始

 

 連合軍は、イタリア本土占領作戦の前座としてシチリア島占領作戦を開始。島南東のシラクーザに英第8軍(バーナード・ロウ・モントゴメリー大将)が上陸し、北東のメッシーナに向け侵攻を開始。

同日、南西部ジェーラの海岸に米第7軍(ジョージ・パットン大将)が上陸し、北西部の都市パレルモを目指した。

 

 

 独伊軍は山岳地帯を巧みに使い勇戦するが、米英軍はチュニジア・アルジェリアに配備された航空隊を投入し、独伊軍に爆弾の雨を降らせた。更に《サウスダコタ》級戦艦《インディアナ》《マサチューセッツ》等米英戦艦6隻が艦砲射撃を実施。島の西部を防衛していた、イタリア軍が7月24日に降伏。残存部隊は東部に退却し、戦闘を継続するも8月11日に、独陸軍のケッセルリンク元帥は島の放棄を決め、10万人以上が島を脱出した。

 

 

7月中旬 東京 海軍軍令部

 

「やはりムッソリーニ首相は、逮捕が近いか」

マナ達は、山本大将に恐らくあと半月以内にイタリア王国で政変が起きる可能性が、高い事を伝えた。ムッソリーニ氏は、ヒトラーほどの極悪人とまでは思えず、

「イタリアで時刻表通りに鉄道が動いていたのは、ムッソリーニが首相の時だけだったと言う都市伝説があるわ。それにかなり治安を回復させ凶悪事件を減らしたそうよ」

六花の話を聞いたプリキュア達は、ムッソリーニ首相を助けてあげる事にした。(尤も犯罪組織が、弾圧の恨みからハスキー作戦の際に大量にアメリカ軍に協力している)

 

 山本は、ムッソリーニ逮捕が近いと聞いても驚かなかった。

「イタリア軍は、負けてばかりだからねえ」

 イタリア軍は、1940年10月末に占領中にアルバニアから16万の舞台がギリシャに侵攻を開始。しかし、程なくギリシャ軍の反撃受け、死者13775、不明3755、負傷者50784捕虜21153人の大損害を受け逃げ出した。

 

 同じく1940年9月に、イタリア領リビアからイタリア・リビア軍25万名が、英国の属国であるエジプトに侵攻を開始。エジプトの英国軍は僅か3万5千名しかおらず、楽に占領できると考えられた。しかし、燃料が不足していた為に侵攻は進まずエジプト西部を少し占領できただけだった。

 

 12月8日に英国軍は反撃を開始、イタリア軍はエジプトから叩きだされ、死者1万5千名捕虜11万5千名の大敗北。それどころかリビアに攻め込まれ、リビア全土の失陥も時間の問題となり、ムッソリーニはヒトラー総統に泣き付き、ロンメル大将率いる「ドイツ・アフリカ軍団」が派遣される事になる。

 

海戦も、《ザラ》級重巡3隻を一挙に喪失した、マタパン岬沖海戦を筆頭に連戦連敗。ムッソリーニ首相の求心力は暴落。

 

 

 突如始まるチココーナーw

 

チコ

「ねえねえまどか、イタリア海軍が洋上で最後に勝利した海戦って知ってる」

まどか

「流石にわかりません」

チコ

「答えは、レパントの海戦」

まどか

「第一次世界大戦の戦いですか?」

チコ

「ううん、1571年の10月ね。今から440年前。敵はオスマン帝国と海賊の連合軍」

まどか

「……」

チコ

「ちょうど今、再放映している大河ドラマ『黄金の日々』がこの辺りね。イタリア(ヴェネツィア海軍)だけじゃ無く、イスパニア海軍も(スペイン)参加していて、

そっちが活躍しているから、イタリア海軍の勝利とは言い難いかも」

(諸説あります)

 

 

 山本大将は、外務省と協議し在イタリア大使館に警告を伝えた。

 

 

「イタリア王国のチアーノ外務大臣の奥方は、ムッソリーニ首相の娘さんだからこれで、何とか政変は阻止できるだろうから、安心してくれ」

 

の……筈が……

 

7月25日

 

 

外務省より報告

 

  イタリア王国のイベント

 

   イタリアの政変

     において

 

  国王が、ドゥーチェを解任した

       を

  選択したとの事です

 

哀れムッソリーニは、ヴィットリオ・エマニュエル国王により解任されイタリア中部の山岳地帯、グラン・サッソの山荘に軟禁された。

「何でこんなことになったの?」

 

警告はチアーノ外相に握りつぶされた。実は外相も既にムッソリーニを見捨てていた。ナンテコッタイ

後任の首相には、元陸軍軍人のピエトロ・バドリオ元帥が就任。

 

 

 その後リスボンや、シチリア島で停戦交渉が行われ、9月8日午後6時30分に、欧州派遣軍総司令官ドワイト・D・アイゼンハワー大将がラジオで、イタリアの無条件降伏を公表。

 

 

が、イタリアの降伏が近いと察していたドイツは……

 

   外務省より報告

   ドイツのイベント

 

  イタリアの無条件降伏

     において

 

 直ちにアシェ作戦を実行し、ローマ以北を占領するのだ。

       を

   選択したとの事です。

 

 

 イタリア軍は、ほとんどが降伏の事を知らなかったので、ドイツ軍はローマ以北を容易に占領する事に成功。

バドリオ内閣と、王室は南東部に退避してしまう。更に、マルタ島の英国艦隊に投降しようとしていた、戦艦《イタリア》《ローマ》

が、独誘導爆弾《フリッツX》の攻撃を受け、《イタリア》は沈没は免れたが、《ローマ》は3発命中し轟沈。ペルがルミニ提督、艦長デル・チーマ大佐以下大半の乗員が海の藻屑となった。

 

 

王室が国民を見捨てて、逃げだしたことで国民の怒りを買い、戦後の国民投票で王政の廃止が選択される事になるが、それはまだ数年先の話である。

 





1 カムチャッカ半島は火山が多い。「カムチャツカの火山群」で、1996年に世界遺産・自然遺産登録
2 史実でも1隻ソ連潜水艦を間違えて爆沈させて大問題に。
3 逆に冬至時を含む数か月、全く太陽が昇らない現象は「極夜」と呼ばれる。
4 ブリティッシュ・エアウェイズ9便エンジン故障事故 1982年6月
  ひめは勘違いしているけど、最終目的地はニュージーランド。
5 近年では、1990年代にフィリピンで大噴火したピナトゥボ火山噴火でも、同じ現象が。WIKIの「夏の無い年」に香港の鮮やかな夕日写真。
6 主にプー○ン大統領の政敵や、批判的な報道人が謎の死を遂げる事に使われる。
 他には、真冬のシベリアの様な過酷な自然環境を示す言葉などにも。
7 アンサイクロペディアの記事に、一切嘘が描かれていない事で有名な人。
 シモ・ヘイヘ・船坂弘と共に、「WW2三大人外」呼ばれる事も。チートや、魔法みたいなインチキを一切せずに、プリキュアを倒せそうな実在人物を10人上げろ
と言われたら、リストの上3つに間違いなく入るw

遂に艦これ独誘導爆弾が登場(ランカー用)陸上型深海ボスに効果大みたいです。
しかし、母機の独中型爆撃機とセットなので航続距離が4しか無く、陸偵で延ばさないと使えないのが難点。

遂に枢軸国の一つイタリア王国が脱落。ツィタデル作戦が中止され、必然的に世界最大の戦車戦「プロホロフカの戦い」も無くなり、某秋山殿涙目w

どうやら、史実では起きていない天変地異が起き始めているようです。


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第67話【ボランティアでは無いので、給料は支払われます】



 念願のフレッチャーを入手(艦これ春イベ)他の新規レア艦……そんなものありましたっけ? 《宗谷》は何に使うんだろう? タロとジロを救出する(昭和基地から)任務でも増えるんですかな。


 

テキサス州南西部

 

「後始末も、これで完了だな。おーい最後にお茶でも飲んでいってくれ」

この家の家長の、ジェイク ・ ディルクに呼び止められた、パーティの参加していた、ご近所の人たちが集まって来た。この日、ジェイクの息子の生還記念昼食会が開かれ、近所の知人達が参加した。次男のトーマスは、北アフリカの戦場で負傷し、

入院していた。

 

 一命は無事取り留めたが、怪我の程度から

「戦闘の可能性が高い、最前線の軍務は困難」

と軍医から判断され、来月からは隣の町にある飛行場の警備をしている部隊に転属となった。飛行場は、新兵の訓練用に建設された大規模な飛行場で、

一応「安全の為」陸軍の連隊が配備されていた。

 

 

「うちの息子は無事帰って来たが、皆の所は無事か?」

「おれの所は、モロッコの確か……カサブランカって都市の警備部隊だ」

「フロリダの警備部隊だ」

「長男は、戦闘機のパイロットで確かチュニジアの基地に、転属に決まっていたんだが、ほら4月にジャップとプリキュアが西海岸を襲ったよな。

それで、部隊は急遽モンタナ州に配備が変更されたと手紙が。あっちの守りもバカにできないらしいって事だ」

 

ご近所さん達の子供は、最前線には一人もいない様だ。

 

 「じゃそろそろ帰るよ」

数分後お茶を飲み終えた、知人達が挨拶をして帰ろうとした。

「おう、また今度な……」

その時、ジェイクはテーブルがかすかに揺れている。

「誰だい。テーブルを揺らすなよ」

「いや誰もやって無いぞ」

 

その時、壁と床が激しく揺れ出した。

「外に逃げろ!」

誰かが叫び、全員は慌てて外に飛び出した。揺れは20秒ほど続き、最後の一人が飛び出したころには徐々に落ち着いていった。

 

「近くに、訓練中の爆撃機でも墜落したのか?」

「貨物列車が脱線事故でも起こしたのかな?」

「いや、これは地震と言うやつでは無いのか?」

 

 日本と違い、大きな地震とは縁が無い住民達なので、直ぐには地震と気付かなかったのは致し方ない。しかし、地震と言う存在は知っていた。

1906年に、発生したサンフランシスコ大地震は学校で習ったし、隣接するメキシコは地震が多い国なので、仕事などで入国するメキシコ人から、地震の事は聞いていたりする。しかし、これほどの激しい揺れは全員初めての経験だった。

 

 

 ジェイクは、一度家の中に戻ってみた。幸いガラスが割れ足り家具が転覆していたりと言う被害は無かった。しかし、さっきまでいたリビングではカップが全て

床の上に落ちて割れていた。その後再び玄関から外に出た時、どおおおおと言う音が響き、それが収まった時50メートルほど離れた場所にあった、民家が倒壊していた。

「直ぐに助けなければ」

何人かが、慌てて救助に向かおうとする。

「おいおい、あそこはもう20年も空き家だぞ」

「ああ、そうだった」

倒壊した民家は、もう20年以上放置されていてかなり壁がボロボロになっていた。役場によると所有者と連絡が付かないので、放置せざるを得ないらしい。

 

 

 全員で近所を一回りしてみたが、他に倒壊している家は無かった。しかし、屏やフェンスや門扉が傾いたり、亀裂が入っていた家は数件見つかった。

「爺さんが、地震で転んでけがをしたから医者を呼んでくる」

「隣の集落で、水道管が破裂して水浸しだ」

「あっちの水道管はかなり古くなっていたからな。俺達の集落は先月交換しておいて幸運だったな」

「この地震の震源地は何処なんだ」

「そりゃメキシコじゃないのか?」

「メキシコの北東部辺りで大地震が起きて、その揺れがこっちにまで来たのでは」

「なるほど」

 

「パパ、それは違うわよ」

「違うって何がだ?」

ジェイクの娘エイミーは、異論を唱える。

「地震が起きた時、まず家の東側から揺れ始めたわよ。メキシコが震源地なら、家の南か南西の方から揺れると思うわ」

「家の東の方が揺れが、大きかった気もするなあ」

ジェイクが感心していると、

「地震が発生する10秒ほど前に、庭の木から鳥が一斉に飛び立ったわ」

「鳥が、うるさく鳴いていたけどそれが原因だったか」

「ジェイクよ、お前の家の庭木だけでは無いぞ」

 

「爺さんか、怪我は無かったかい」

「ソンムの戦いに比べれば、地震なんかたいした事は無い。ドイツ帝国軍の砲撃に比べればそよ風じゃな」

「まあ、そりゃそうだ……おいおい、ソンムの戦いにアメリカ人がいる筈も無いじゃないか」

 

 ソンムの戦いは、1916年7月から11月中旬にかけて、フランス北西部で発生した激戦だ。合衆国が参戦し、部隊とスペイン風邪のウィルスがフランスに到着したのが18年の春だ。戦争の後にアメリカに移民した人を除けば、アメリカ人がいる筈も無い。

ちなみに、英国153万、フランス144万、ドイツ帝国150万が参戦し、犠牲者は英国456000、フランス20万、ドイツ最大50万

秦国に、長平の戦いの恨みを千倍返ししてやるマンとして有名な、万極将軍ですら唖然とするような犠牲者が出た。

 

 爺さんは、フランスには出兵しているが、後方の警部部隊に配属だったので、ドイツ軍と戦った事は無いらしい。

 

「お前さんの家だけじゃ無く、町中の木から鳥が西に向け飛び立った。一本の木から一斉に飛んでいく程度なら、見た事はあるがな。町中から一斉に飛び立つ光景は初めて見た」

鳥や獣は、人間には無い能力があると言う。渡り鳥とか、鳩が正確に目的地に来るのはそういった能力らしい。

 

その時、上から鳥の鳴き声が聞こえた。上を見ると数羽の鳥が家の屋根を飛び越え、庭の木に降りた。空を見ると数羽ずつ鳥が、宿り木に降りてきている。

 

 

 

 翌日午前9時

ワシントンDC ホワイトハウス

 

「テキサス州で、かなり強い地震が発生したが幸い甚大な被害は無かった。と言う事だな?」

「はい、震度は4程度だったのが幸いしました」

ルーズベルト大統領に対し、側近のハリー・ホプキンスが昨日の地震の被害を報告している。

「現状、犠牲者は0人です。入院している一部重傷者の症状が悪化して、今後出る可能性もありますが。何分地震に対する備えなど、全く存在しない地域ですので」

犠牲者はいないが現在106名の負傷者が出ている。その内24名は重傷だ。階段から転落したり、家具が倒れて巻き添えになって、搬送されている重傷者が複数居た。

屋外でも、道路に亀裂が生じ不運にも走行していた車のタイヤが、亀裂に嵌り横転し運転手が負傷と言う事故も起きていた。

 

「やはりメキシコが震源地では無いのだな?」

「駐メキシコ合衆国大使館に確認しましたが、メキシコで大地震は起きていません。メキシコ北東部の一部では、テキサスからの地震で多少揺れたそうですな」

 

 

 実はテキサスでも、一度だけ大きな地震が起きた事がある。1931年8月16日に、テキサス州西部の町バレンタインにM6.7の地震が発生した。

バレンタインの町では、家の壁に亀裂が入ったり、教会の壁が崩れるなどの被害が出た。しかし、この地震死者どころか負傷者すらも0人だったので、

バレンタインの町以外の住民は、数年もせぬうちに地震の事を忘れてしまっていた。

 

「大地震の前に、本震より弱い地震が起きる場合もあると聞く。念の為にいつでも救援物資を送れるように準備させておくのだ」

 

 

数時間後

 

「おや、今僅かに揺れなかったか?」

「いや、風では」

大統領が窓の外を見ると、確かに風が吹いて木が揺れていた。が、大統領が食後の珈琲を飲み終えた直後……

「大統領、アラスカ北西のジュノーで強い地震が。かなり被害が出ているとの事です」

「テキサスに続いて、アラスカで大地震か。異常な事態だ」

「落ち着いてください。アラスカでは今回のような地震は過去に何回も起きています」

「ああ、そうだったな。直ぐに救援隊と救援物資の手配をせねば。隣接するカナダ政府にも要請しよう」

 

 

強い地震と言っても、アラスカもまた面積は広くても人口密度は低い。しかし、ジュノー空港の軍用機が格納庫の爆発事故で、20機以上鉄とアルミニウムの化合物

になってしまい、大統領の胃にダメージを追加した。

 

 

 

8月25日

 

東京 陸軍参謀本部

 

 

「君達がいた世界では、戦時中にテキサスで今回の様な強い地震は起きていないのか」

「メキシコでは、大地震が起きた事は聞いた事はありますが、テキサス州で強い地震が起きたと言う話は聞いた事が……」

「そうか、未知の地震と言う事になるなあ。幸か不幸か大きな被害は無かった様だ」

 

 地震発生数時間後、中立国メキシコの駐日大使館は「テキサス州で大地震が起きてかなりの被害が出た」と言うニュースを聞いた。

そこで駐在武官をメキシコ北東部の町に派遣して、情報収集をさせた。が、その結果多少の負傷者が出ただけだと言う事が判明した。

仕事でテキサスに行っていた、メキシコ人が噂に尾ひれを付けまくって、メキシコ国内で騒いだのが原因だった。

 

 しかし、内陸部で震度4程度といえども地震が起きるのは極めて稀なので、石原参謀総長はマナ達を招請して、世界Bで同様の地震が起きていないか

聞く事にした。

 

「私達の世界では、地震の事を隠蔽していて実際は怒っていたんじゃ?」

真琴は、実は世界Bでも地震は起きていたが世論の動揺を防ぐ為に、隠していた可能性を主張するも……

「関東大震災のような大きな被害が出ていたら、隠すかもしれないけど。民主国家なんだから隠すのは無理よ」

六花は、民主主義のアメリカで大地震の隠蔽は無理だと答えた。ちなみに、近くでそれを聞いていた、参謀本部勤務の瀬島少佐は、遠回しに非民主国家である大日本帝国を非難されたような気がして、微妙な表情を浮かべた。

 

 

「実は今日来てもらったのは、もう一つ確認したい事があるのだよ。一昨日オーストラリアでかなり強い地震が起きた様なのだ」

「場所は、何処ですか?」

「オーストラリア南東部の、ニューサウスウェールズ州にある、ニューカッスルです。位置は、シドニーから150キロほど北東……ここです」

瀬島は豪州の地図を広げ、場所を指し示す。

 

 

 無血占領した、オランダ領インドネシア東部にあるスラウェシ島南部の都市、マカッサルに陸軍は無線傍受局に一つを置いていたのだが、一昨日、オーストラリアのラジオ放送の中で、オーストラリアでかなり強い地震が起きたと言う事が判明した。

 

 同国で震度5の地震は全く前例が無く、更にオーストラリアに近いラバウルで、1月以降大規模な火山活動が続いているが、火山学者の中に、「ラバウルの火山活動は、日本での大規模地震の前兆現象の可能性あり」と主張している、人がいたので

それを知っていた石原は、急いでマナ達を招請して、プリキュア世界で同様の地震が発生していないか質問する事にした。

 

「私達の世界でも、その地震は起きています。30年前……じゃ無かった、今から40年後の、1989年の12月の終わり頃……確か午前10時半頃だと聞いています」

「何と」

それを聞いた、石原大将と瀬島少佐はかなり驚いた様だ。

「実は、ラジオ放送によると地震の発生は午前10時半頃との事だ。日付は違うが時刻は全く同じと言う事になるなあ」

 

「マナはよくその地震知ってたわね」

「私の実家の洋食屋の常連さんの一人に、オーストラリア出身の人がいて、日本人の男性と国際結婚したんだけど、5歳の頃にその地震に遭遇したんだって」

その地震が起きた直後は、誰も地震だとは判らず「ガス爆発事故」ではと勘違いしたそうな。

 

「死者の数は判りますか?大まかな数字で構いません」

「ええと、確か15人ほどだと……」

「こちらの地震は、死者及び不明者30人以上との事ですね」

「40年以上経過したら、住宅などの強度も違うだろう。その差が出たんだろう」

 

 

30分後

 

「何かの前兆なのでしょうか?」

「それは判らないわ。あのラバウルの火山噴火も私達の世界では、確か50年も後の事件だわ」

ラバウルは、某妖怪を主人公にしたアニメの作者が戦時中、出征していた場所なので割と知名度はある。

 

 

「考えても仕方ないわね」

「そういう時は体でも動かそう」

 

「8月でも、私達の時代よりは涼しいのは助かりますわ」

「逆に冬は少ししんどいけどね」

 

温暖化や、ヒートアイランド現象が無い上に、太陽光線を跳ね返す舗装道路や鉄筋コンクリートの高層ビル群も無いので、

70年後の夏よりは遥かに楽だった。逆に冬は温暖化が進んで無い分、気温が低くて体調不良になったプリキュアも数人いた。

 

 

「現代とは比較にならないくらい、緑が多いですね。生活や産業のためとはいえ、人類は傲慢な事をやって来たのでしょうか?」

「と言ってるけど、ありすの実家もそれに加担……」

「四葉財閥は最大限環境に配慮しています」

 

「ひまりちゃんが、マフティ―何とかが、テロを起こしたくなったのが少しだけ理解できました。って言ってた」

「ひまり、マフティ―の正体はハ……」

とゆかりがネタ晴らしをしようとしたが、あきらにより回避されたw

 

「そういえばいちかちゃん達は、北海道で訓練(自主的)とか?」

「ゆかりさんが、一番涼しい所で訓練したいとか言ったみたい」

 

 

 

 

 

8月28日

 

イングランド中部 航空基地(ロンドンより北に約50キロ)

 

 

「体調に異変を感じた人は、直ぐに近くの警備兵に申し出るようにしてください」

今日は滑走路周辺の草地の、定期的な草むしりが行われていた。定期的に除草しないと、例えば風が強く乾燥している日に、オーバーラン事故でも起きれば、あっという間に火が基地全体に燃え広がる危険があった。

 

 

 

 およそ50人以上が作業に参加しているが、3分の2は、委託した民間業者と、基地の施設保全隊に配属された軍人だ。残りの25%は、一般の兵士達だ。何か不祥事でも起こしても懲罰では無く、戦闘で(ドイツ本土への爆撃任務)負傷した兵士のリハビリを兼ねている。中には、爆撃任務から生還し生還祝いにパブ(酒場)に飲みに行ったら、運悪く酔っ払い運転のトラックが店に突入して負傷……等の運が無いのも混じっている。某五輪のボランティアとは違い、きっちりと給料は支払われている。

 

 

「そろそろ終了か」

「お疲れさん。基地司令からの差し入れだ。全員分有るから配ってくれ」

「ありがとうございます」

 

作業員達に、甘い飲み物が配られる。

「ぷはー、生き返ったぜ」

 

 

「おい、今日の夕日も妙に鮮やかだぜ」

「いや、昨日よりも鮮やかな気がするな」

「同感だ。また騒ぎになるな」

 

 一週間ほど前、アイスランド東岸の火山がおよそ130年ぶりに噴火した。風向きは西から東だったので、アイスランド島には被害は少なかった。

「何という、火山だったかな? 確か発音が面倒な名前だった筈だ」

リハビリ兵の一人ジミー・フォスター少尉が、同じリハビリ中の下士官に火山の名前を聞いた。

「エイヤ……なんとかかんとかです」

 

 

 まずはスコットランドの方から、この妙な夕日の話が聞こえて来た。その日はイングランドはあいにくの雨で、夕日を見る事は出来なかった。

そして、低気圧が北海に去り天候が回復した昨日、ロンドンの辺りでも鮮やかな夕日が目撃された。

 

 今まで誰も見た事が無い現象だったので、内陸部では「山火事が起きている」、海沿い(英国西岸)では、「洋上で船が燃えているように見える。独軍の攻撃では」

と夕日を火事と錯覚した、通報が相次いだ。子の基地でも、東側に住んで居る住民が

「基地で火事が起きている」と勘違いして消防に通報していた。

 

 

 

 やがて、その日のドイツ本土爆撃から帰還して来た爆撃機の姿が、何機かずつ東の空から近付いてきた。

(今日はいつもより帰還機が多いな)

「未だドイツ本土は雨天らしいですよ。だから上手く迎撃戦闘機が発進できなかったんだと思います。少尉殿」

どうやら、声に出ていた様だ。一等兵の階級章の警備兵が教えてくれた。

(しかし、こちらも爆撃目標を識別できなかったんじゃないかな?)

 

戦車工場を爆撃する筈が、大きく目標を外れ郊外のジャガイモ畑を耕していた。と言う事になっている気がした。

 

 

 

やがて最後の一機が近付いて来たが、エンジンから煙が出ている。

「爆発の危険アリ! 基地の外にいる兵士は、直ぐに安全地帯や防空壕に避難せよ!」

退避を命じる放送と同時に、サイレンが鳴り響いた。

 

エンジンから黒煙が出ていた《B-17》爆撃機は何とか無事に着陸し、直後乗員達が飛び出して来た。ジミーも彼らとともに、防空壕に逃げ込む。最後の一人が避難を終え、防空壕の扉が閉められた数秒後に爆発音が響き、防空壕が激しく揺れた。その後、金属製の部品とかが地面に落ちる音が何度か聞こえ、直ぐに消防車のサイレンにとってかわられた。

 

5分以上経過して、そっと扉を開けてみる。予想通り《B-17》は激しく炎上していた。

「草を取っておいてよかったなあ」

ジミーが安堵していると、

「おっ、ジミーじゃないか? もう退院できたのか?」

「今月の5日に退院できました。ラル大尉。今はリハビリ中です」

「無事でよかったよ。こっちは危うく蒸し焼きになる所だった」

「あっ、爆発した機体はラル大尉の機体でしたか」

 

 

大尉によると、やはり雨のせいで戦闘機の迎撃はかなり少なかった。ラル大尉の機体も、対空砲の至近弾で操縦席のガラスと、

エンジンに僅かな損傷を受けただけだった。大尉の機体の爆撃成果?

 

「雨で目標が識別できなくて、やむなく勘で投下した。雲の隙間から一瞬見えたが、どうやらライ麦畑の一角を穴だらけにした様だ」

 

その後、帰還していた時徐々に機内に卵が腐った臭いが広がり出した。そして、英本土まで戻って来た所で突如エンジンから黒煙が噴出した。

 

 

 

10日後

 

 

 事故が有った次の朝までに炎上した機体の残骸は撤去され、爆発で損傷した滑走路の修復工事も、空が白み始めるころには完了した。ラル大尉の機体から回収された、

エンジンの残骸から、大量の火山灰が検出された。他の帰還機からも数機エンジン不調の申告があり、エンジンを分解したところ火山灰が採集された。

 

 

 同じ日、イングランド北東部に示威(恫喝)飛行を兼ねているのか、一機の新型ジェット爆撃機が飛来した。中型機だが、最大速力は760キロに達し、

そ奴はとある飛行場を写真撮影すると、《スピッファイヤー》(時速715Km)を悠々と振り切り、離脱すべく進路を東に取った。が、海岸線に近付いた時

突如エンジンが爆発した。独搭乗員は直ちに生き残る為に、機体を放棄して脱出した。独新型機は海岸部に墜落し、搭乗員は拘束され捕虜収容所に送られた。

 

 

 このパイロットも従来通りの供述をした。突如機内に、変な臭いが立ち込めてその後エンジンが爆発したと。

ジェットエンジンだったので、従来のプロペラ機よりも遥かに速い速度で、火山灰を吸い込みエンジンが爆発したのだろう。

 

 チャーチル首相と、ヒトラー総統は偶然ほぼ同じ時間に火山活動が終息するまで、北海やノルウェー海方面への飛行を全面停止させた。

独本土爆撃や、少数での英本土への夜間爆撃も停止され、2週間ほどではあるが英独の市民は空襲に怯えずに済む日々を過ごした。後年「火山による休戦」として歴史に残る事となる。

 

 

 

「雨止まないな」

 ふと、足に痛みが走りジミーがモップ掛けの手を止める。

(雨が降ると古傷が痛むって本当だったな。後で軍医にも聞いてみるか)

爆撃が停止され、飛行場は静かだ。独軍機が火山灰を無視して爆撃を強行する可能性もあるので、戦闘機隊は何時でも発進可能な態勢を取っている。

イタリア方面は火山灰の被害は無い為に、通常任務だ。本土の基地から戦闘機隊の一部はイタリア戦線に増援に送られた。

 

「もうあの日から3カ月たったのか」

 

雨は次第に強く降ってきていた。

 





アイスランドの火山噴火の元ネタは、数年前に発生した噴火で、10日ほど欧州の国際線が全て運休に。直前に飛行機事故で死亡したポーランド首相の葬儀に、日本国とか多数の国がこの影響で参列できませんでした。


ひかる
「あれっ、確かイギリスにもニューカッスルって無かった?」
チコ
「良い質問です。と池○さんみたいに言ってみました。オーストラリアは、イギリスの植民地と言うか流刑地だったので、本土の町と似ている名前の都市が有ります」
ユニ
「他にもあるニャン?」
チコ
「スペインとかも、本国と植民地だった南米やメキシコで、同じ名前の町とかあります」
まどか
「昔、アメリカの家族が休暇でオーストラリアのシドニーに行こうとしたけど、航空会社の手違いで、カナダの人口数万のシドニーに到着するトラブルが有ったそうです。荷物だけは、本来のシドニーに到着していたそうですが」
オヨ
「悲劇ルン」

チコ
「ニューカッスル地震は、プリキュアの放映が開始された頃までは、番組改変季節の特番や、『世界丸○えテレビ特捜部」とかで放映される事もあったけど、最近は全然見ないわね」
えれな
「そんなこと知ってるのは、やっぱりチコちゃんは本当は5歳児では無いんじゃ」
チコ
「……」ササッ
プルンス
「あっ、逃げたでプルンス」


上に出ている独軍爆撃機(テスト中)は、《AR-234》艦これには出てません。
次回は久々に戦闘シーンが。


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第68話【独本土上空戦】前編


 こんばんわ 読んだ頂いている方ありがとうございます。甲子園最後までやれるんだろうか。来週木曜日まで雨予報。


20日から艦これ夏イベ

追加が確実視されているのは

英装甲空母《ヴィクトリアス》(作中で沈んだ《インドミダブル》の姉妹艦)
イタリア戦艦《コンテ・ディ・カブール》級2番艦《ジュリオ・チェザーレ》(改になると、低速から高速になる予感。艦名はジュリアス・シーザー すなわちユリウス・カエサルの事 戦後はロシアに賠償艦として引渡し)


1944年5月1日

 

 

イングランド南部航空基地

 

 

「エンジンの修理は、間もなく終了します」

「お疲れさん」

 

 搭乗員達が、整備兵に一斉に敬礼をする。その視線の先では、彼らの《B-17》爆撃機のエンジン交換作業が行われていた。本来なら、今日行われる筈の西部ドイツ工業都市ドルトムント爆撃に参加する筈だったのだが、直前の点検でエンジンの一つに重大な不具合が発見され、参加は急きょ取りやめになった。

 

 

 

「数か月前に比べ、3つの環境が変化したな」

《B-17》尾部機銃員ジミー・フォスター少尉は炭酸飲料を飲みながら回想した。

 

 

 まず、海が遠くなった。3月まで彼は、英国南西部コーンワル半島のプリマス近くの航空基地に配属されていた。プリマスは港町なので、海へは直ぐに行くことが出来た。他の兵士と釣りに行った事もある。しかし今度の基地は、ロンドンの真北なので、海からは遠くなった。

 

 第二に、搭乗機が中型爆撃機《B-25ミッチェル》から、大型爆撃機《B-17》に配属替えとなった。

 

 第三に、裏方の部隊から、戦闘部隊に転属した。以前いた部隊は、英本土南西やアイリッシュ海の対潜哨戒部隊だった。他には、不時着した味方搭乗員や、潜水艦に撃沈された船舶の捜索任務もやっていた。洋上で漂流者を発見したら、無線で連絡を行い、救助用の船や飛行艇が救助に向かう。

 

 

(潮風を感じなくなったのも変化の一つだな)

 

 

 

 

「間もなく味方機が帰還する。消防隊や救急隊以外は滑走路付近より避難せよ」

アナウンスを聞いたジミー達は、急いで滑走路付近から離れた。

 

 

 程なく、東の空から帰還機と思われるエンジンの音が響いて来た。その音は何処か弱く感じる。東を見ると、整然と空爆に向け発信して行った編隊が、1機ずつばらばらに帰還して来る。更に機影も大きく減っている。

 

 

 最初に降りて来た《B-17》の音がおかしいと思ってよく見ると、エンジンの1機が損傷している。独軍戦闘機の銃撃のせいだろう。プロペラの回転もおかしい。その為に音が変だったのだろう。

 

他の搭乗員や、消防隊が不安の視線で見守る中、機長は巧みに操縦し無事に着陸した。それを見ていた兵士たちが拍手したり歓声を上げる。しかし、後続する爆撃機の姿を見るとすぐにしぼんでしまった。

胴体部に、機銃弾の命中した跡が複数あるのは未だ良い方で、エンジンの外側にあるカバーが吹き飛んでいたり、機銃座が丸ごと消失している機体もあった。無論その機銃座にいた乗員が、どうなったかは容易に想像できる。

 

 

 やがて、最後の爆撃機が着陸態勢に入る。その爆撃機も、多くの傷跡が見え更にエンジンの一基からは黒煙も引きずっている。ジミー達が固唾を吞んで、見守る中ふらつきながらもなんとか着陸……

 

接地した瞬間、左主翼下の脚(下にタイヤが)が折れて、機体が沈み込み主翼先端部が滑走路に接触し火花が散った。それを見た瞬間全員物陰に飛び込むか、身を伏せた。が、20秒経過しても爆発音や破壊音は聞こえてこない。後で知ったのだが、その機体の機長が万一に備え、最低限の燃料を残して残りを海上で投棄させていた。その為にガソリンに引火して爆発する事態は避けられた。

 

消防車が、火花が散った辺りに消火液を吹きかけ、その間に担架を持った救助隊が機体から乗員を助け出している。

 

 

結局ドルトムント爆撃に参加した22機の内、12機が生還し10機が未帰還となった。生還機の内2機は、損傷が酷く海岸に近いイングランド東部にある飛行場に着陸した。生還機の中2機は損傷が酷く、修理不可能とされた。

 

戦死者は107名。《B-17》の乗員数は10名なので、未帰還機以外に生還した機体の中からも、6名の戦死者が出た事になる。無論他の基地から出た爆撃機や、護衛戦闘機の被害を入れると被害はその何倍にもなる。

 

(数か月に一度の被害ならまだしも……)

 

 

数か月ぶりの損害なら、戦争である以上時には大きな損害が出るのはやむを得ないと、諦める事も出来る。が、独本土への爆撃の度に毎回このような大きな犠牲を出している。

 

 

 

 数年前、第三帝国は今までの理論を一新させる墳進式戦闘機、すなわちジェット戦闘機の開発に成功した。最高速度は時速850キロに達する。

米英でも、同様の新型機を開発していたが、どちらも最高速度は650キロ~700キロ程度で、一部の従来機よりも遅い速度しか出ず、実験機か練習機にしか使えない代物だった。

 

ところが、ここで独裁国家の弊害がもろに出てしまう。ヒトラー総統が、せっかくの高速戦闘機を「爆撃機として運用せよ」と命令してしまった。この頃連合軍は《P-51マスタング》《P-47サンダーボルト》(米)《スピットファイヤ―17》(英)等の登場で、従来の爆撃機では、迎撃戦闘機の突破は難しく。その為には高速の爆撃機が必要だと考えた。

 

 

 空軍上層部は仰天し、何とか撤回をお願いするが総統の意思は固く、何とか製造ライン20の内、1ラインを戦闘機仕様の製造を認めさせたに留まる。これを知った英空軍上層部は狂喜した。

 

 

 しかし、

「爆弾を投下する際に、かなり減速しないとならないのか。その時に攻撃されたら簡単に撃墜されるかも知れない。やはり戦闘機として運用すべきかもしれぬ」

と、総統が判断した為に爆撃機転用は直ぐに中止となった。

 

生産ライン20の内、16が戦闘機仕様、残り1ラインが爆撃機仕様、3が夜間戦闘機仕様となった。残りも戦闘機仕様の《ME-262)にしたかったんだけど、

「全て爆撃機として、運用せよという考えは間違いだった。しかし、将来的に爆撃機も恐らくほとんどがジェット機になるだろう。ジェット機を使用した

爆撃機のテストや、一部訓練を行いジェット機を使用した、爆撃の問題点の洗い出しも必要であると考える」

 

 ヒトラー総統の発言は正論なので、空軍関係者もまあ受け入れた。将来は、総統の意見通り爆撃機も多くがジェット機になるだろう。自前で開発も出来ず、他国から買うのも難しい貧しい国以外は……(1)

 

 

 《Me-262》の夜間戦闘機開発も、反対は出なかった。当時昼は米陸軍の《B-17》が、夜間は英空軍の《ランカスター》重爆撃機が爆撃をしていた。

ドイツ軍の夜間戦闘機は、《He-219ウーフー》が活躍していたが、まだ数はそれほど多くなく、大半が重戦闘機や、中型爆撃機の改造機だった。活躍もしていたのだが、いかんせん元が大型機なので、重くて小回りが利かないという欠点があった。それに速度も600キロに達していなかった。夜間戦闘機部隊からは、速力と機動力に富んだ新型の夜間戦闘機を求める意見も多かった。

 

 

 ヒトラーの朝令暮改(独裁国家の利点が働いたともいえるが)は、プラスに作用して、米英爆撃機搭乗員の損失は増大した。

 

 

5月11日 午前8時

 

 

前日の夕方に爆撃参加の名簿が発表され、参加者は翌朝朝食後に集合した。基地司令より爆撃任務の詳細が発表される。

 

(いよいよ、ドイツ本土への爆撃参加か。サンドノメノショウジキというやつか)

ジミーは、東アジアにそういう格言があると言う話を、知人から聞いた事が有った。日本か中国かは知らない。(2)

(ギャンブルの勝ち過ぎを戒める格言かな?)

 

 今までの2回は幸運だったのも確かだ。1回目は4月の半ばで、フランス北西部ブルターニュ半島の港湾都市、ブレストの爆撃だ。独軍占領の後、港にはUボート補給基地が建造され、潜水艦を収容しているブンカ―と呼ばれる格納庫と、周囲の港湾施設が目標だった。

 

迎撃に出てきたドイツ軍機は旧型の戦闘機で数も多くは無かった。ジミーの《B-17》には敵戦闘機は向かってこなかったので、味方機を追い詰めていた独軍戦闘機を銃撃して

撃墜した。しかし、独軍のブンカ―は1トン爆弾にも耐えられる設計だったので、破壊する事は出来ず、周囲の港湾施設に若干の損害を与えただけに終わった。

 

 

2回目は、4月下旬で奇しくもプリキュアが、米本土上空で戦っていた日だ。この日は、同じく独軍占領下の港湾都市オランダ領ロッテルダムの爆撃で、ラル大尉の小隊は貨物駅の爆撃を命じられた。当日はドイツ本土は雨天だったので、敵の迎撃戦闘機は少ないだろう。

 

 しかし、離陸直後に入電した気象情報によると、予想より早く天候が悪化し、オランダ上空も分厚い雲に覆われていると判明した。攻撃目標が全く見えないとなると、爆撃任務も中止になるかもしれない。中止命令も出ないまま、オランダ上空に到達したが、周囲は既に雲に覆われていて降雨も始まっていた。爆撃を断念し、爆弾を投棄して引き上げる小隊も出る中、ラル大尉は一瞬の可能性に掛けた。

 

 偶然僅かな雲の切れ間から、ラル隊は目標の貨物駅を発見し爆弾を投下し、全機無事に引き上げた。後日反独レジスタンスから入った情報によると、貨物駅に大きな被害を与え、更に、偶然ドイツ本国からロッテルダム守備隊に増援されてきた歩兵部隊が、列車ごと吹き飛ばされ甚大な被害が出た上に、運ばれてきた武器弾薬等も消し炭になった。貨物駅空爆に参加した小隊には、金一封とビールが特別配給された。

 

 

 

「攻撃目標 デュッセルドルフ」

 基地司令官が、ボードに攻撃目標を記入する。攻撃目標は、ルール工業地帯に近い(南西)工業都市だ。ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州の州都で、

人口はおよそ50万人。おもな産業は鉄鋼業、自動車生産、電気機械で、更に化学産業も豊富で、大きな精油場(石油精製)がある。

 

ラル大尉の小隊は、自動車工場の爆撃を命じられる。自動車会社も、戦時中は戦闘機や戦車……もしくはそれらのエンジンなどを生産しているので、重要な目標になる。(3)

 

 

 今回の爆撃機には《B-17》180機に、護衛戦闘機200機が同行する。が、本日のドイツ上空は好天との事、激烈な反撃を受けるのは避けられないだろう。

ドイツ空軍が、続々と新型機を投入して来るので、爆撃目標は、占領下のフランス北部や、ベルギーオランダを除いたドイツ本国では、ルール工業地帯や、中西部のフランクフルト海に面している、ハンブルクやブレーメンなどに限られ、敵の迎撃を長時間受ける、30年前までバイエルン王国の首都だったドイツ南東部のミュンヘン、東部の首都ベルリンや、工業都市ライプチヒ、シュテッチンや、ナチ党の聖地ニュルンベルク等はこの数か月以上爆撃を受けていない。

 

 

 

「敵ジェット戦闘機に、大砲までついていると言うのは本当ですか?」

「事実の様だ」

《Me-262》の爆撃機転用が中止になった際に、ヒトラー総統は「思い付きによる指示」を出した。

ヒトラ―は、ロンメル元帥やマンシュタイン元帥と違い、軍の士官学校は出ておらずまともな軍事教育は受けていない。

 

 第一次世界大戦は、下士官で伝令兵として活躍し、勲章も授与された。毒ガスの攻撃で目を負傷し入院している。その後戦後に、黎明期の国家社会主義労働者党の調査を命じられ、逆にその思想に深く共鳴し、「ミイラ取りがミイラになる」

の結果、政治家への道を歩む事になる。

 

ヒトラーは

「機種に、5センチ対戦車砲でも搭載して、爆撃機にぶち込んでみたら面白いのではないかな」

と言ってみた。言われた空軍長官のヘルマン・ゲーリング国家元帥は内心、大丈夫かなあと不安になったが、やらないわけにもいかないので、メーカーに伝えておいた。

 

 

 数か月後、取りあえずテストが開始されたのだが、不運にも実戦テストの生贄にされた《サンダーボルト》戦闘機は、文字通り木っ端微塵に粉砕され(地上に落ちた破片を探すのも困難なレベル)、頑丈さで知られる《B-17》も一撃で主翼が分断されて落ちて行った。

 

 

 そのニュースを思い出した、搭乗員達が不安そうな表情を浮かべる。

「この対戦車砲らしき、大砲を積んだ戦闘機は、まだ少数の運用に留まっている様だ」

それを聞いたジミ―達はやや安堵するが……

「でかい獲物だから、装弾数は1機当たり10発に満たないだろう。撃った時の反動も大きいと判断する。命中率もそれほど高くはあるまい。

まあ、当たらなければどうと言う事は無い」

基地司令は、某ロリコン仮面みたいなことを言うが……(4)

(10発の内、一発でも命中したら死ぬぞ)

 

 

「他に質問はあるか?」

「ドイツの援軍に、プリキュアが参加する可能性はありますか?」

誰も質問しなかったので、ジミーが思い切って質問した。

「確かにナチと日本は、同盟国だ。何人かが援軍に来る可能性は皆無では無い。しかし、現時点でその兆候は無い。ドイツ上空での目撃も無い。日本側の占領区域の最西端から、ドイツ側の支配地域まで数千キロはある。そこまで無着陸で来るのは流石に無理なのだろう。それに、知っているだろうが半月ほど前の、ハワイや本土での大規模戦闘に、プリキュアも多数参加したらしい。流石に今は休息中だろう」

「安心しました」

「まあ運悪く遭遇したら、ナチ野郎にやられるよりは10倍マシだと思うしかないな。何しろプリキュアは全員かなりの美少女らしいからな」

「ワッハッハ、確かに司令の言う通りですな。まあ美しさでは妻にはかなわんでしょうけどな」

ラル大尉の愛妻家なのは、部隊内でも有名だ。釣られて全員爆笑してしまい、出撃前の緊張は程よくほぐれた。

 

 

 

数時間後

 

 発進した、爆撃隊は北海に出た所で他の基地から出た《B-17》や護衛戦闘機隊と合流する。今回の作戦では、ある欺瞞情報が事前にドイツ側に流された。

英国側に寝返った二重スパイや、逮捕せずに泳がせている内通者に、

「爆撃目標は、ハンブルク及びドイツ占領下にある、コペンハーゲンの独軍飛行場」

という偽情報を流した。更に、少数の《B-17》と一部の護衛戦闘機がデンマーク本土近くまで飛行して、敵を牽制する。

 

しかし、多くの搭乗員は本当に敵が引っ掛かるか疑問を感じていた。

 

 

「確かに敵のジェット戦闘機は、速度も速く恐ろしい敵だ」

出撃前、登場する直前に機長兼主操縦士のラル大尉は、クルーを集めて訓示を行った。

「しかし、新技術にありがちな故障も少なくない。実際飛行中にエンジンの片方が故障して、速度が急激に低下した所を爆撃機の機銃に撃たれて、撃墜した事もある」

副操縦士で、下士官からの叩き上げのベテランクランプ少尉が、《ME-262》の欠点を説明する。更に、新型機と言えども

離陸や着陸時を狙われると弱く、戦闘を終えて油断したジェット機が、着陸しようとした瞬間を《マスタング》戦闘機に狙われて、あっけなくやられた事例も説明する。

「むしろ一番警戒しなければならないのは、《Fw-190》戦闘機だ」

 

《Fw-190》戦闘機は、時速640キロで、20ミリ機銃と、12ミリ機銃を各2丁装備している。主に、独本土やイタリア戦線で大活躍し、一部の機体は

500キロ爆弾や、対地ロケットを装備して爆撃機としても活動している。だが、最近どうもエンジンを新型に換装し、最高速度は700キロに到達している。

エンジンを換装した際に、全長が1メートル延びたために、将兵達は『長鼻ドーラ』と呼んで忌み嫌っている。

 

 

 太平洋の戦いなら、空母や陸上基地を離陸してしばらくは、気を休める時間はある(敵にプリキュアがいる時は別かも)。しかし、ドイツへの爆撃は

最低でも、海上に出た段階で独本土や占領地のオランダ、ベルギー、フランス北部に張り巡らされたレーダー網に探知され、大量の迎撃機が発進して来る。

 

 

 爆撃隊は、オランダの北沖を迂回して東進する。 ドイツ北西部の北で、牽制の為に一部ユトランド半島沖まで向かう少数陽動部隊と別れ、南下する。

「後50キロで、敵本土だ。念の為に機銃を試射しろ」

幸い北海上空には、敵戦闘機は出張っていなかった。この間にラル大尉は小隊の《B-17》に機銃の試射をさせる。ジミーも、発射しすぎないように加減してトリガーを引く。機銃は異常なく発射された。数秒後もう一度試す。

「尾部機銃異常ありません」

「上部機銃異常なし」

「前部機銃問題ありません」

 

「前方に島を視認! 東フリースラント諸島です!」

 航法士兼爆撃手のコズン曹長が、報告した。ドイツには島は無いと思う人も多いだろうが、いくつかの有人島が存在する。

ドイツ・オランダの国境線沿いから東に、本土海岸線に平行する形で、いくつかの島がある。北と東のフリースラント諸島はドイツ領で、西フリースラントはオランダに属する。

ジミーも島を見ようと一瞬思うが、最後尾の機銃座からは、島の上空に到達するまでは見えない。

 

「暗号無線を傍受しました!」

 無線手兼上部機銃員のタチ少尉が、急報する。有人島には当然レーダー施設もある。いくつかは事前に爆撃して破壊した筈だが、当然肉眼でも爆撃機は見える。

 

島には飛行場は無い様で、島の近くを通る際に旧式の対空砲が散発的に撃って来ただけだった。

 

「間もなく敵本土だ! 全員気合を入れろ!」

爆撃隊は、オランダ国境に近い小都市エムデンの東から侵入する。

「本土視認……」

コズン曹長が報告しようとした瞬間、無線から急報が入る。

「敵戦闘機発見! 数……20いや30……50機以上!」

 

「機種は判るか?」

「ジエット機では無い様です。《Fw-190》と《Bf-109》の混成部隊です」

ジミー達の爆撃機がいる、後方の集団には護衛戦闘機をすり抜けた《Bf‐109》が10機ほど向かって来た。

一瞬旧型機である事にジミー達は安堵するが……

「油断するんじゃない! 恐らく新型だ!」

クランプ少尉が厳しく叱責する。確かに《Bf‐109》は、初飛行は1935年2月で、初期生産型がスペイン内戦に投入されたのは、もう7年も前の1937年2月だ。

その後のポーランド侵攻作戦を皮切りに、序盤の主力戦闘機として大いに活躍した。しかし、40年7月から9月にかけての英本土上空戦では、欠点の航続距離不足によりロンドン上空には10分しか留まれず、爆撃機の護衛に失敗し、独軍敗北の大きな原因になった。

 

 

 やがて主力戦闘機の座は《Fw-190⦆に譲る事になるが、エンジン改良は続けられ最新のK型では、最高時速710キロで、30ミリ機関砲2問を装備している。

「後方より1機接近!」

ジミ―は急ぎ機銃を向ける。《Bf‐109》の方が先に撃って来る。が、何れも爆撃に到達する前に失速して落ちて行く。

(あいつは俺と同じで新兵だな)

爆撃機の大きさに惑わされ、未だ射程内に入っていないのに撃っているのだ。程なくしてそれに気付いたのか一旦射撃が止まる。

 

 今度はジミーの方が機先を制し、12.7ミリ機銃を発射。エンジンの辺りに命中したのか、煙が出ている。その後《Bf‐109》は、射撃不能になったのか

慌てて避難して行く。

「敵一機撃破!」

ジミーの報告に、一瞬歓声が起きるが……

「5番機被弾!」

慌てて5番機の方を見ると、マッテオ・リッテラ中尉が機長を務める《B-17》がエンジンの1基から激しい炎を上げている。エンジンには自動消火装置があるのだが、30ミリ機関砲弾で破壊されたのか、全く火が消える気配が無い。やがて速度が急激に落ちて後方に脱落していく。

「諦めるな! 最後まで踏ん張れ!」

タチ少尉や、他の機の無線手が無線で呼びかけるが応答は全く無い。消火されない事で、火は機体の右主翼全体に及んでいる。程なく負荷に耐えられなくなったのか、右主翼がぽっきりと折れて、リッテラ中尉の《B-17》は、垂直に落ちて行く。

脱出する乗員はいない。垂直降下する爆撃機から奪取する術は皆無だ。

 

 

他の中隊でも、被撃墜機が相次いでいる。爆弾個の爆弾に機銃弾が命中誘爆し一瞬で爆散する機体もあれば、エンジンが被弾して高度が下がったところに《Bf‐109》戦闘機が群がり、袋叩きにされて

落ちて行く機体もある。空中は黒煙と炎と、機体を放棄して脱出した搭乗員のパラシュートの花が多数浮かんでいる。

「護衛戦闘機隊は何をやっていやがる!」

コズン曹長が悪態をつくが、彼らもこの瞬間味方を守る為か、自分自身を守る為に死闘を繰り広げていた。

 

 

「間もなくデュッセルドルフだ! 爆撃用意!」

前方を見ると、南北に流れるライン川の東岸に、多数の工場や住宅街が見える。最初の集落が作られたのは、日本では飛鳥時代に当たる7世紀とされる。

「迎撃に出て来た、敵のジェット機の数は少ない様です」

「ふむ、欺瞞作戦が上手く成功したのだろう」

 

 通信を傍受していた、タチ少尉の報告を受けたラル大尉は、上層部作戦が久しぶりに成功したのだと判断した。

 

 

が、実は危なかった。確かにジェット戦闘機を集中配備していた、精鋭部隊は一旦は陽動作戦に引っ掛かり、ハンブルク方面に移動した。が、

「陽動作戦の可能性が高い」

と司令官が判断し、3分の2はドイツ西部の基地に引き返した。やがて予測通り多数の爆撃機が、対空レーダーで確認された。当時のジェット戦闘機は、とても燃費が悪い為急ぎ燃料補給が行われた。

 

しかし、5機目の《Me-262》が滑走路上でエンジン故障。後続機も身動きが取れなくなった。どうにもならない為、出撃どころか急ぎ機体を地下格納庫に収容せざるを得なくなった。この部隊には、例の《対戦車砲装備した奴》も数機配備されていたので、トラブルが無かったら甚大な被害が出ていただろう。

 

 

「攻撃目標発見! 前方5キロ! 針路このまま」

 爆撃手のコズン曹長が、目標の自動車工場を発見する。

市街地に近付いた時、突如敵戦闘機の攻撃が止まる。味方爆撃隊を追尾していた、迎撃戦闘機は急ぎ爆撃隊との距離を取るように離れる。安堵する暇も無く、市街地に大量に配備された88ミリ重対空砲の攻撃が始まった。ドイツ戦闘機は味方の誤射を避ける為に、一旦離脱したのだ。更に、戦闘機の機銃の流れ弾が市民を殺傷する危険性もあるので、市街地上空での戦闘は原則禁止されていた。

 

 

 ジミーの尾部機銃も、対空砲弾の炸裂で振動し周囲は無数の黒煙でおおわれる。

(運を天に任せるしかないなあ)

航空機の攻撃なら、機銃で対抗できる。しかし対空砲の弾を、機銃で迎撃は出来ない。ライフルでハエを撃つようなものだからだ。

(手柄欲しさに、誤射の危険を考えずに突入して来るドイツ野郎がいるかもしれないから、注意しないと)

 

 

「攻撃目標まで残り60秒」

「爆弾庫開け」

コズン曹長は、座席横にある開閉レバーを操作し爆弾庫を開ける。今からが最も危険な時間かもしれない。もしここに対空砲弾が直撃した場合、爆弾が誘爆して一瞬で全乗員が消し飛ぶ。その恐怖を感じた乗員の何人かが生唾を飲み込んだ瞬間、空中に閃光が走った。

 

 戦車工場を爆撃する別の小隊の、《B-17》の爆弾庫に、高射砲弾が命中。閃光が収まった後、他の機の乗員が目にしたのは僅かな残骸だけだった。

機体の最後尾にいるジミーからは、爆発は見えなかったが閃光は感じた。

(自分達の機隊でなくて良かった。いや、10秒後には同じ目にあうかもしれないな)

 

「コズン、針路はどうだ?」

「大尉、今の衝撃波で多少ずれましたが許容範囲です」

多少は工場の中心線からずれてしまったが、やり直す余裕はない。

「投下!」

 

 コズンが投下スイッチを押し、搭載して来た16発の250キロ爆弾が、自動車工場に投下された。直接見る事は出来ないが、投下時の振動と合計4トンの重量物が切り離された事で、機体が軽くなって少し浮き上がる感触を感じた。

 

恐らく30秒ほどで爆弾は地上に到達し爆発する。ジミーの座席からも直接見る事は出来ない。距離が離れれば黒煙は見えるかもしれないが……

 

(今の爆弾で、犠牲者は出たのだろうか?例えば、逃げ遅れた行員や避難誘導をしてた人……いや、工場には専用の防空壕があるだろう。工場の外に爆弾落ちて、民間人にも犠牲が出てしまっているのだろうか)

 

 その時、数日前基地に視察に来た参司令部付参謀、名前はカーティスなんだっけ? 1906年生まれだから38歳で大佐とは凄い出世だ。見た目は、軍人やって無かったらマフィアか、もしくは映画の悪役が似合いそうな感じの人だ。その大佐が爆撃隊員を集めて訓示を行った。

 

「君が爆弾を投下し、そのことで何かの思いに責め苛まれたとしよう。そんなときはきっと、何トンもの瓦礫がベッドに眠る子供の上に崩れてきたとか、身体中を炎に包まれ『ママ、ママ』と泣き叫ぶ三歳の少女の悲しい視線を、一瞬思い浮かべてしまっているに違いない。正気を保ち、国家が君に希望する任務を全うしたいのなら、そんなものは忘れることだ」 

 

 

(この殺人狂め、何なら代わってやろうか)

とその時は思った。しかしその後そのカーティス何とか大佐は、参謀であるにも拘らず、「爆撃の問題点を洗い出す」

為に、周囲の反対を押し切り爆撃に参加したらしい。

 

 更に、大佐に昇進し英国に赴任する前は、本国で新型爆撃機のテストパイロットをしていたらしい。新型機のテストパイロットは、名誉な仕事ではある。しかし、テスト中に

墜落したり、空中分解事故を起こす事も少なくない。《零戦》と《B-29》どちらも試験飛行中に、墜落事故や空中分解事故を起こしている。(5)

(相手国の民間人の生命を、路ばたの石くらいにしか思わない冷血漢……だが、臆病や怠惰とは無縁の人なのだろう)

 

「爆弾投下完了!」

「爆弾庫閉鎖」

 

「2番機より報告です。目標向上及び周辺の工場に着弾多数との事です」

「よし針路を北西に変更、ずらかるぞ」

 

 爆弾投下後、針路を北西に変更しオランダ東部から北海に抜け、針路を西に変更し帰還する。

 

「もう直ぐ市街地を抜ける。戦闘機の攻撃が再開されるぞ」

機体が市街地の外れに差し掛かり、対空砲の攻撃が散発的になって来る。

 

「ジミー、敵機は来ているか?」

「見えません大尉……」

その時背後から機関砲の発射音が聞こえ……

「4番機被弾墜落します!」

アルビン・ノーサム少尉が機長の4番機が、爆発しつつ墜落して行く。

 

「敵近。速度900……950キロ……彗星みたいに速い!」

 

「ジミー、敵はまさかプリキュアか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







チコ
「お金ない国どうするかって。まず練習機を購入します。それに機関砲や爆弾を装備します。それを攻撃機だと主張します」
もしくは、ロシア空軍の中古のミグ戦闘機か、《Fー5フリーダムファイター》の様な安いジェット機を輸入するか。

2 三度目の正直
3 例 ゼネラルモーターズ社は、《アベンジャー》雷撃機を生産
4 シスコンとマザコンも兼ねる
5 後者は、食品加工工場に墜落し全乗員12名+工場従業員20名の大惨事を引き起こした。

ひかる
「あれっ、プリキュアは?」
チコ
「作者は戦闘シーンがあるとしか言ってませんw」

後編20日まで完成するかなあ? 

ちなみに、《Me-262》艦載型が艦これに搭乗し、装甲空母になった《グラーフツェッペリン》に搭載する日を今か今かと待っています。


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第69話【独本土上空戦】

艦これ夏イベ前半終了

《バラクーダ》は駄作だから要らないよ。《ボーファイター》(中型爆撃機 魚雷も装備可能)か、《モスキート》(万能機)よこせー。

キョエちゃん
「最近ワクチン接種予約代行詐欺ってのが、時々あるらしいよ」
ひかる
「他に、優先して接種できます詐欺も増えているらしいね」
山本五十六
「山本です。どんな時代にも悪い連中がいるもんですなあ」
まどか
「作者は新型コロナで、特殊詐欺は……犯行グループが感染を恐れ、減少すると思っていたそうです」
えれな
「数年前、とある詐欺電話に母親が『息子はプリキュアの大ファンだから、息子ならプリキュアの名前を全員言え』と言って、詐欺を阻止したらしいよ」
山本、
「それは良かった。でももし犯人もプリキュアの大ファンだったら、拙かったかもしれない」
まどか
「噂では、この電話の際に息子さんも家にいて、最初から詐欺だと確信していたそうです」
ユニ
「この全員に、キュアエコー、本名坂上あゆみもちゃんと含まれているニャン?」
山本
「坂上あゆみ? その名前は彼女達から聞いていませんが(本編登場中のプリキュア)」
オヨ
「ひかるは知っているルン?」
ひかる
「もちろん知っているよ。 いっぺん、死んでみる? が口癖で、突然カンテレを片手に妙な語り始める人だよ」
キョエ
「どっちも違います。バカー! でも中の人は同じ」


オヨルン
「80年位前に、水から石油を取り出す機械を売り付けに来た人がいて、ある軍人さんが騙されそうになったとAIが言っているルン!」
まどか
「水から石油が精製できる筈もありません。完全に詐欺ですよ」
ひかる
「そんな話を信じそうになるなんて、きらやばーだね」
山本
「顔を見てみたいですねえ」
キョエ
「お前だお前、バカー!」

嘘のような本当の話w 


 

 

 

「違います! 噂のロケット戦闘機かも知れません!」

 

 

同日  東京

 

 

なお

「ロケット戦闘機、そんなのもあるんだ」

やよい

「《Me-163コメート》戦闘機。ドイツ語で彗星の意味だよ」

あかね

「ロケット戦闘機……なんか爆発事故でも起こしそうな」

みゆき

「ジェット機って、自衛隊とかで活躍しているけど、ロケット戦闘機は聞いた事も無いよ」

れいか

「でもやよいさんはよくご存じでしたね」

 

やよい

「ロボットアニメとか、ロボットが出るマンガとか大好きなんだけど、作品によってだけどそれ以外の普通の兵器も出る作品もあるの」

なお

「○オン軍の、主砲部だけ分離して飛んでいく戦車は、ビックリドッキリメカだね」

あかね

「知らない人がいきなり見たら、腰抜かすで」

みゆき

「全周囲に、レーザー砲撃っていた宇宙戦艦もあるね。連邦軍のレビル将軍を撃ち取った後、アムロって人が体当たりして、最後は『やらせはせん、やらせはせんぞぉ―』とマシンガン撃ってた人が戦死しちゃうんだよね」

やよい

「いろいろ間違っているよそれ」(1)

なお

「あの、ごつい人だね。あの人の娘さんが出るアニメもあるんだけど、全然似てないんだよね。お父さんのDNAは何処に行ったんだよって」

やよい

「お母さんの遺伝子だよ。ちなみにオリジン版は、某あんこうチームの通信手の人と中の人が同じだよ」

れいか

「ちなみに、みゆきさんが今言った兵器は、モビルアーマーという種類で、船ではありません。宇宙戦艦は確か、連邦軍はええと……《コロンブス級》じゃなかったですか」

 

 

やよい

「それで少し兵器にも興味があるんだ。第一世界中が大きな戦いが無い、鎖国していた江戸時代みたいに平和だったら、兵器も生まれずロボットアニメも存在しなかったと思うよ」

あかね

「確かにそうかも」

やよい

「それで市立図書館で兵器の本を借りた事もあるよ」

れいか

「昔の軍艦のイラストと解説が乗った名鑑でしょうか?」

みゆき

「戦車や、航空機の名鑑もありそうだね」

あかね

「完成しなかった兵器だけをまとめた図鑑ってのもありそうやな」

なお

「何にでも使える万能な航空機を、載せた本っても有り……かも」

 

やよい

「最悪な兵器を集めた本と、駄作機を乗せた本だよ」

あかね

「そ、そんな本需要有るんかいな?」

やよい

「駄作機のシリーズは確か10冊ほど出てたよ」

なお

「かなり売れてるんだね」

 

やよいによると、駄作機(失敗機)と言えども、そこそこ活躍した機もあるらしい。無論戦場では全く使い物にならなかった兵器や、テスト飛行だけで終わった駄作機の方が遥かに多いとの事。

無論それらを設計した人達は、大恥をかいたのだが……

やよい

「ソ連は、酷い失敗作を設計した人は消息不明に……」

「ソ連怖い!!」

 

 

 

《Me-163の弱点》

 

1  敵味方の速度差が大きすぎて、射撃のタイミングが難しい

れいか

「速度差が、時速400キロ以上あったら確かに難しいですね。誘導ミサイル……ってこの時代にそんなもの無いと思います」

第三帝国は、大型爆撃機から発射する対艦誘導爆弾は完成させていたが、戦闘機から発射する誘導対空ミサイルは未だ所持していなかった。一部の新型戦闘機は、対空ロケット弾を装備していたが、誘導機能は無く発射はパイロットの勘頼みだ。史実でも一部戦争末期に使用されたが、目標の爆撃機から外れたロケット弾が、地上に命中して犠牲者が出ている。

 

2 車輪は離陸直後に切り離し 着陸時はグライダーのように滑空し、機体の下に装備されたソリの様な物で着陸。滑空中は一切の回避行動不可能。

なお

「それじゃ着陸する時に簡単撃墜されるよ」

あかね

「着陸できても、自分で動かれへんのやったら簡単に戦闘機に撃たれて爆発やね」

 

無事着陸しても、けん引するトレーラーを待っている間に、米軍戦闘機の銃撃でお陀仏の事例も。

 

3 ロケット燃料はとても危険な物質で、漏れ出したら搭乗員は文字通り溶ける。また、銃撃でロケット燃料が引火して爆発の恐れも。

れいか

「ババロアやゼリーが食べられなくなりそうな話ですね」

 

離陸する時に、ものすごい炎を噴射する。普通の滑走路では耐えられない。特別なコンクリートでの加工を要する。

みゆき

「費用がかかりそうだね」

作戦可能時間はわずか8分

やよい

「これが一番駄目だね。一回攻撃したらもう危険な着陸に入らないとならないし」

 

 

なお

「こんな欠陥機じゃ、まともな戦果上がらないんじゃないかな?」

やよい

「ええと、10機……12機ほどは撃墜したと言う説もあるみたいだど、実は全く皆無だった可能性もあるって書いてあったよ」

みゆき

「その《コメート》戦闘機が配備された空港迂回されたら、どうにもならないね」

 

 

 

 再びデュッセルドルフ上空

 

 

 1月頃、《コメート戦闘機》が出現し、10日ほどの間に12機の爆撃機が撃墜され、一度はかなり焦らされた。が、程なく多すぎる欠点が判明し、星空みゆきが言う様に、配備基地を迂回させる指示を出したらそれ以降ピタリと被害は途絶えた。

 

が、4月以降敵は早くも改良型を投入して来た。第一に専用の車輪が装備され、サーカスの曲芸のような危険な着陸をする必要が無くなった。

燃費効率が上昇したか、新しいロケット燃料が開発されたのか、30~35分程度の作戦が可能になった。これにより、《コメート》による被撃墜機が増えてきている。相変わらず、射撃のタイミングが難しい様で相手が下手な搭乗員なら、生還できる可能性も多少はある様だ。更に、燃料の暴発危険性は相変わらずあるみたいで、突然空中爆発して消し飛んだのを搭乗員が目撃していた。

 

 

 

「敵のロケット戦闘機は何機見える!?」

「4機確認! うちの小隊には半数が向かって来ます!」

無論視界の外で別のロケット戦闘機が、味方と戦っている可能性もある。

 

「カルロス少尉機撃墜されました」

 

スペイン系アメリカ人のカルロス少尉は、歌が上手くて基地で演奏会を開いていた。更に集まったお金は全てイギリスの戦災孤児救済基金に寄付していた。

この前、長女が生まれたと喜んでいた……(2)

 

「敵機反転します。カルロス少尉機搭乗員は脱出」

《コメート》は、燃料か弾丸が不足したのか、反転して去って行った。幸い、当たり所が良かったのか(?)カルロス少尉機は、多少の猶予があったのか次々と搭乗員が脱出する。尤も次に彼の歌を聞けるのは戦後、捕虜収容所から解放された跡という事に……

 

(はぁ……)

だが、それも「生還できて、戦後まで生存したら」である。もしかしたら、5分後に撃墜され一週間後に、ドイツの捕虜収容所で再会する……可能性もある。

 

「別の新型機が来ます! 距離2000」

 

報告している間にも、急速に距離を詰めて来る。1機の護衛戦闘機が、割って入ろうとしたが呆気なく撃墜される。

(奴は、かなりのベテランだ)

速度差があり過ぎると、射撃のタイミングが難しい事は何度か書いた。図体がでかい大型爆撃機にも難しいのに、目標が小さい小型戦闘機を数秒にも満たない射撃で

撃墜できるのは、相当のベテランでも難しい。恐らく米英もしくは、ソ連のパイロット……おそらく数十人以上が、人生を中断させられたのは疑いない。

 

 

 ロケット戦闘機が、発砲して来る。が、幸い初撃は命中しなかった。無論ジミーが撃った12.7ミリ弾はかすりもしない。

 

 

「助かったのか?」

だが、《コメート」は巧みに機体を操り、手足の如く動かし再び後ろに付けて来る。

(あいつは俺達をなぶり殺しにしようとしている。戦闘をゲームのように楽しんでやがる。終わりだ)

ジミーは無意識の内に機銃弾の引き金を引いた。

 

 

それから10秒ほどの間にいろんな事が起きた。まず目の前が一瞬明るくなった。左足に激痛が走り、数秒後2度の爆発を感じた。

「ぐあっ!! 痛い!」

やられた、戦死したんだ! 

(……何故痛いんだ? おかしいぞ)

なぜ生きているんだ? もし、30ミリ機関砲をまともに喰らっていたら即死以外はあり得ない。

 

 気付くと、冷気を感じる。左を見ると機銃座の風防ガラスに小さなひびが入り、そこから冷気が入ってきている。

(敵の機関砲弾が、機銃座を掠めガラス片が足に当たったのだ)

ジミーは何とか、脇にあった救急用キットで止血する。気付くと《コメート》は消え去っていた。

「おい、ジミー無事か!」

「何とか生きてます。敵機は何処かに行ってしまいました。あと2度の爆発を……」

「無理にしゃべらん方が良い。敵のロケット戦闘機は消し飛んだ。多分暴発だろう」

恐らくは燃料か、機関砲弾が暴発して消し飛んだのだろう。

 

 

ベテランが呆気無く自滅するのを目にした、他の独軍戦闘機搭乗員は浮足立ったのか、戦闘を中断し離脱を開始した様だ。

 

 

 

「間もなくアムステルダム北沖です」

 

 1時間後《B-17》隊は、散発的な独軍戦闘機隊や、対空砲の攻撃の攻撃を掻い潜り、エムデンし上空から北海に抜け、西に針路を転じた。

「ジミーもうここまで来たら敵機は来ない! あと少しだぞ」

「機長、本土に付いたら、最寄りの基地に緊急着陸すべきです」

「無論そのつもりだ。ジミーを一刻も早く病院に搬送しないと」

クランプ少尉の意見に、ラル大尉は即座に同意した。

「じゃあ、グレート・ヤーマスですかい?」

「いや、ヤーマスは漁業中心の田舎町だ。それほど大きな病院は無い可能性が高い」

コズン曹長は、最東端のヤーマスに着陸する案を主張したが、タチ少尉はヤーマスには大きな病院が無い可能性を考え、反論する。

「ノリッジにしよう。少し内陸だがあそこは交通の要所だ。人口もヤーマスの3倍以上あった筈だ。大きい病院もあるだろう」

ラル大尉の判断で、人口が多いノリッジの基地を目指す事にした。

 

 

「前方より戦闘機接近! 10機前後です!」

コズン曹長が、前方から接近する戦闘機を発見する。

「敵か?」

「いえ、《マスタング》6機に、《P4Oウォーホーク》6機。味方機です」

弾切れや燃料切れで、早い内に帰還した護衛隊が補給を受け再出撃したのだろう。《ウォーホーク》は英空軍所属を示す、蛇の目と呼ばれる識別標を付けていた。

イングランド東部の英軍飛行場が、同盟国爆撃隊の支援の為に派遣してくれたのだろう。

 

「左舷より戦闘機接近! 敵機と思われます」

確認すると、10機前後の戦闘機が接近して来る。オランダの方角から来ているので、敵機に違いない。

「《BF-109》か……K型じゃ無く一つ前のG型か」

《BF-109G型》は、大戦中期に、北アフリカや、東部戦線で活躍した。速度は時速610キロで、武装は20ミリ及び、12.7ミリ機銃各2丁だ。

《ウォーホーク》よりは性能的に上だが、《マスタングD》には劣る。

 

 

「機銃手は、味方戦闘機を撃たんように注意しながら……」

ラル大尉は、アムステルダムの方角から、さらに3機の戦闘機が接近して来るのが見えた。

「《フォッケウルフD》か、全員注意しろ!」

しかし、

「大尉!……微妙に機体の形状が違う様に見えます」

 

クランプ少尉の指摘通り、微妙に機体の形状が違う。

 

 

 数か月前、2月頃の話だがある噂が流れた。発端は2機の《マスタングD型》がドイツ辺境を偵察飛行していた時、一機の新型戦闘機を目撃した。早速撃墜してやろうと襲い掛かるも、気付いた新型機は急加速して、楽々と《マスタング》を引き離し飛び去った。

「敵新型機は時速750キロは出ていた」

と、その《マスタング》搭乗員は報告した。しかし上層部はその報告を信じなかった。2機の内一機は、近くにあった対空機関砲の銃撃を受け、カメラのレンズを破損。もう一機は、撮影はしたがシャッターチャンスが外れ、空しか映っていなかった。

 

 

 それ以降謎の新型機の目撃情報も無く、

「搭乗員の勘違い」

「大げさに報告しただけ」

等という噂が流れた。

 

「仮に時速750キロ出る新型戦闘機が仮に存在するとする。その様な恐るべき新型戦闘機の情報をなるべく連合軍に知られるのを、遅くしたいと考えるのが普通だ。

《マスタングD型》を容易に振り切る性能なら、簡単に撃墜して口封じ出来る。しかし、敵は攻撃はしてこなかった。戦闘機では無く高速偵察機なのではないかな?

日本海軍が、空母搭載可能な高速偵察機を開発しているという情報がある。ナチも同様な高速偵察機を開発しても、不思議では無い」

 

上官達の多くは、その様に判断していた。訓辞に来たまだ30代の参謀だけは、油断せず情報収集を強化すべきだと反対していたのだが。(3)

 

 

「敵機速度……720……740……750キロ以上だ! クソッ現実に存在してやがった!」

尾部機銃のジミーからも、急速に接近して来る戦闘機が見えた。《Bf‐109G》を、味方戦闘機隊に牽制させ、新型戦闘機は《B-17》に迫って来る。

その敵機は《Taー152H型》、《Fw‐190D》を発展させた、本格的高高度戦闘機で、最高速度は高度12500メートルで、時速755キロに達し、

正に「究極のレシプロ戦闘機」と呼ばれるのに相応しい性能を持つ。武装も30ミリ機関砲1門、20ミリ機銃2丁と強力だ。

 

 

 尾部機銃は弾詰まりでも起こしたのか、全く反応しない。3機の新型戦闘機の一機が、ジミー達の機の後方にいたサンダース少尉機を銃撃。少尉機はエンジンから火を噴きながら雲の中に落ちて行った。続いて隊長機なのか、先頭の敵機が近付いて来る。

 

 

(一時間ほど死ぬのが延びただけだったなあ)

敵機の距離が400メートルほどに縮まる。無論この距離からは敵の顔は見えない。が、ジミーにはにやりと笑いながら、機関砲の安全装置を外す独軍パイロットの顔が見えた気がした。

 

 

 

 

「ヤンキーめ、幼馴染の仇撃ちだ」

 そう呟きながら《Ta-152H》を操縦するのは、ドイツ空軍のフォン・リューネブルク少佐だ。彼は昨年まで、北アフリカ戦線で有名なハンス・マルセイユ

と共に米英軍戦闘機隊と戦い114機を撃墜したベテランパイロットだ。(4)

「砂漠の狐」と称される、エルヴィン・ロンメル元帥から直接称賛されたことも何度かある。ロンメルが、持病の治療の為に本国に帰還したのと同時期に、本国の実験飛行機部隊に転属となり、新型戦闘機のテストパイロットに従事していた。

 

一昨日朝、いよいよ実戦テストの為に、バイエルン州の基地から9機が、アムステルダム飛行場に移動する手筈になっていた。まずリューネブルク少佐が3機で、移動し

翌日6機が移動する。だが、悪天候で残りの6機の移動は延期となった。

 

 

 

リューネブルク少佐は、3機だけでも実戦テストを行う事を求め、上層部の許可を受けた。当初は米軍爆撃隊往路の、最後尾の集団を狙う予定だった。だが、アクシデントで3機だけになったので、爆撃隊の帰路を狙う事にした。帰路の方が戦闘機の援護も少なく、敵も危機を脱して油断しているだろう。

 

 

少佐は、10機の《Bf-109G》に、敵戦闘機隊を牽制させ、自分は部下2人を引き連れ、《B-17》を狙う。部下のヘルソン中尉が、最後尾の《B-17》を手も無く撃墜する。

 

(ヘルソン、やるな。次は俺の番だ。さてどいつから始末してやるかな?」

リューネブルクは、ある《B-17》の尾部機銃が、全く撃って来ない事に気付く。

「弾切れか、機銃員が戦死たんだろう。あのアメリカ野郎を始末して、幼馴染にヴァルハラで詫びさせてやる」

 

幼馴染は、病気がちだったので徴兵はされなかった。彼は、10日ほど前のドルトムント爆撃で、市民の避難誘導に従事していた。しかし、そこに運悪く爆弾が投下され死亡した。

 

実は、目の前の爆撃機はエンジン故障で、爆撃に参加していない。だがそんな事を知る筈も無いし、仮に知っていても攻撃を回避する事は無かっただろう。

 

 その時、一機の《マスタング》が味方を救おうとしたのか、こちらを攻撃しようとした。だが、横合いから《Bf‐109》の攻撃を受け炎上するのが見えた。

(側面への警戒も出来ない無能パイロットの分際で、味方を助けようとするからだ)

そして、ジミーの乗る《B-17》に機首を向け、にやりと笑いながら……

 

その時僅かな殺気を感じ、右上空を一瞬見る。炎を纏った飛行機の形状をした物体が彼の視界全体を覆った。

「!!」

絶叫を上げようとした刹那、リューネブルク少佐の《Ta-152》に、《マスタングD》の機隊が激突した。

瞬時に操縦席が押し潰され、半瞬だけ激痛を感じ少佐の意識は永遠に暗転し、一塊の焔となり2機の機体の残骸は、北海に落ちて行った。

 

 

 

 ジミーはその後の事はよく覚えていない。朦朧とする中敵機が撃って来ないので、

(なんで撃って来ないんだ。そういえば炎みたいなのが見えたから、味方が撃墜したのかな)

と思っていた。銃撃の音も聞こえない。戦闘も終わった様だ。その後何度か機長が、ジミーを励ます声が聞こえた気がした。

 

 

 ジミーが意識を回復したのは、翌日の夜だった。ノリッジ飛行場に着陸後即座に軍病院に搬送され、一命をとりとめた。

「後数ミリずれていたら助からなかったぞ」

とは、軍医の先生の言葉だ。だが、全治3か月の重傷で、退院後も1月以上リハビリの必要ありとの事だ。

 

 

「大尉、最後何が有ったんですか? 何かが爆発した気配は感じたんですが」

「やはり覚えていないか。エマーソン少尉……《マスタング》の乗員だが、敵の戦闘機により、被弾炎上した直後、俺達を助ける為に敵新型機の小隊長機に突入したんだ」

「そうだったんですか。他の敵新型機は恐怖を感じて逃げたんでしょうか?」

「そうかもしれんし、2機が空中衝突した時かなり派手に破片が飛び散ったそうだから、燃料タンクに亀裂でも入ったのかも知れんな」

「機会が有ったら、エマーソン少尉の墓参りをしたいですね」

「そうだな、そうすべきだろう。少尉の故郷は……」

「それ同じ州ですよ。いや隣の郡です。バスで片道30分です。昔何度か行った事がありますよ」

「そうなのか、いや世の中広い様で狭いなあ。じゃ代表して墓参りはお前に任せるよ」

 

 

翌日

 

 

 病院の廊下の方から、男女の声が聞こえる。

(一人はコズン曹長と、もう一人は看護師のマリーさんだ。

「差し入れですか? 念の為に確認します」

「酒瓶なんか隠してないって」

「時々そういうことをする人がいるんですよ。けが人にはダメです。あっ、これお酒入りチョコレートじゃないですか」

「これに入っている程度なら問題ないって、軍医の先生が言ってたぜ」

「まあそうですが、でもこれ凄い高級品ですよ」

「基地司令からの差し入れ。少尉さんは連合軍で初めて敵の新兵器を撃墜したんだ。勲章の一枚くらい授与されるかも」

「ええっ、そうなんですか」

 

 

 敵の新型ロケット戦闘機は、自爆では無く自分が撃った弾が偶然敵機を掠め、それで火花が散って爆発した様だ。その現場を別の爆撃機機長が目撃していた。それで敵機撃墜と認定されたとの事だ。

 

 

「少尉さんも、俺達も悪運が強いなあ」

「そうですね。あのロケット戦闘機が即座に大爆発していたら、巻き添えでやられたと思いますし」

「ちなみに北海上空で敵の新型戦闘機に撃墜された、サンダース少尉機だけど全員無事だったですぜ」

「本当ですか、それは良かったです」

「何とか無事に海面に不時着して、近くにいた英海軍の潜水艦に救助されたそうですぜ。数日は全員入院の必要ありとの事ですが」

 

「それと。入院のお見舞いと言えばやはりこれが定番」

コズンは、テーブルに果物の盛り合わせを載せる。

「これはラル大尉からですか?」

「そのつもりだったんだが、先にゴードン大尉が名乗りを上げた」

「何故ゴードン大尉が?」

ゴードン大尉は、別の小隊長だ。

「少尉さんが、撃墜したドイツ野郎は、ヴァルハラに行くとき別のドイツ野郎のお供が居たんですよ」

同じ時間、ゴードン大尉の《B-17》を下から別の独軍ジェット戦闘機が、攻撃をしようとしていた。

「少尉さんが、銃撃して炎上したロケット戦闘機が、そのドイツ野郎の至近距離で大爆発。そのドイツ野郎巻き添えで、ゴードン大尉は命拾い。命の恩人って事ですぜ」

「確かに」

「美人の娘さんを紹介してくれるかも」

「はははまさか」

「実家は軍人一家って聞きましたが、もしかして既に婚約者が?」

「いやあ、未だそういう人は」

ジミーの言えば所謂名家の一つで、代々何人かの軍人や政治家を輩出している。父親も陸軍次官まで栄達していた。

 

 

翌日

 

 

 また廊下が騒がしい。今度は複数の声が聞こえて来た。どうやら新聞やラジオ記者を病院関係者が押し止めている様だ。

「マリーさん、何かあったんですか」

「何だと思います」

マリーさんは笑顔で、質問返しして来た。

「あの人達は取材に来ているんですよね?」

「大正解」

「病院で事件と言えば、ミステリー小説のど定番! 殺人もしくは不審死ですね」

それを聞いたマリーはおもわずよろめいた。

「怖いこと言わないでよ、怒るわよ!……去年起きたんだけどね」

(あったんですか)

「記者さん達は、貴方を取材に来たのよ」

「はい?」

ジミーは、某特命係の変人警部みたいに返してしまう。

 

 

「少尉さんは英雄になってしまったの。少尉さんが撃墜した戦闘機のパイロットは、ソ連との戦闘で200機以上を撃墜した凄い相手だったそうよ」

 

 まさかそれほど凄い相手だったとは。いやかなりのベテランだとは思っていたが……マリーさんによると、ジミーの状態が良くなるまでは未だ取材は控えて欲しいと説明しているとの事。

「そういえば、間接的にもう一機撃墜したんでしょ?」

「はい」

「それも個人戦果の中に、入れて貰えるの?」

「いや、流石にそっちは認められないと思います」

 

 

 8月に入り、ジミーが退院した直後に勲章の授与及び、一階級昇進及び、9月末付で、本国の陸軍参謀本部広報部付けの辞令を受けた。

 

「ま。英雄を迂闊に死なせたら困る人達がいるって事さ」

とラル大尉。確かにそういう事もあるかもしれない。

「ヒトラー総統は、大量の兵員を一度に運べる大型客船の撃沈に懸賞金を付けたそうですよ。逆にソ連は戦車を破壊しまくっているドイツパイロットの首に、多額の賞金

を付けたそうです」

タチ少尉は、こちらをからかって楽しんでいる様だ。

「リハビリが終了しても、最前線に戻れるかどうかは診断を受ける必要もある。気に止む必要はないよ」

とはクランプ少尉だ。

「となればお祝いの飲み会ですぜ」

とはコズン曹長だ。飲み会は無事開かれ、退院したジミーは久しぶりにお酒を口にした。

 

 

 

 

長い回想が終わり再び9月

 

 

 

ぴかっと雷鳴が見え、数秒後に地震のような揺れを感じた。

(約2キロくらいか)

ジミーは稲光と、その後の雷鳴の時間差から落雷した場所との距離を導き出す。

この日、ジミー達手の空いている物は清掃作業をしていた。雨と未だ続く名前が長いアイスランドの火山灰の影響で、搭乗員は暇なので運動代わりに基地司令が提案した。

 

 

あの爆撃で、出撃した180機の内32機が未帰還となった。更に5機が帰還後修理不能とされ廃棄された。生還した機体からも何人かの死傷者が出た。

入院している間に、生還した人の中からも新たな犠牲者が出た。差し入れを頂いたゴードン大尉も、7月末にドイツ西部上空で消息不明となり、戦死と判断され

中佐に特進した。

 

 

(雨の日は古傷が痛むって本当だったな)

 

(ん、古傷って4カ月しか経過していないが、古傷と呼ぶのは正しいのか? 映画とかだと10年前の古傷がどうとか言うが……)

「そうだな、最低でも2年位昔でないと、適切では無いかもしれんなあ」

「ホワッ」

同じく掃除をしていたラル大尉が、ニヤニヤ笑いながら話しかけて来た。どうやら声に出ていた様だ。

「そろそろ12時か、昼飯の時間だなあ」

直後午前の作業終了の放送が有り、兵士たちは作業を終え食堂に向かう。

 

 

食堂で昼食を食べていると、他のラル機メンバー達も食堂にやって来た。そういえば彼らが食堂に入る前後から、

「またやられたのか?」

「海軍さんもだらしないなあ」

「どうしたんだ。英海軍がドイツ潜水艦にでもやられたのか?」

 

「いいえ、やられたのは米海軍の様です。大尉殿」

「大西洋じゃ無く、太平洋の話みたいです」

ジミーの補充員として、尾部機銃員に配属されたバーニィ兵曹と、クランプ小尉が説明する。

「またハワイか本土がやられたのか?」

「それが、何処か判りませんが北クリル諸島だそうです」

 

「ふむ」

ラル大尉は、メモ用紙の簡単な地図を描く。

「北海道……これは日本本土だ。その北東にあるソ連のでかい半島がカムチャツカ半島だ。その間にある諸島がロシア語でクリル諸島。かなり前からすべてが日本領の筈だ。名前は確かチシマ列島。で、そこで何が有ったんだ」

「海軍の……巡洋艦艦隊が、プリキュアに痛い目に遭わされたそうです」

 

 

 

 

 

 

 




1 死んだ人 レビル→ティアンム 特攻した人 アムロ→スレッガー 宇宙戦艦では無く、MA(モビルアーマー)コロンブス級は補給艦で戦闘能力は皆無。マゼランかサラミス級が主力軍艦。
2 えれなのお父さんではありません。
3 この時、操縦していたドイツ人は設計主任の、クルト・タンク博士。自分は軍人では無いので、敵兵の殺傷はしないと言う考えで、攻撃しなかった。
4 ストライクウィッチーズのハンナ・ユスティーナ・マルセイユの名前の由来

ジミーが乗っていた《B-17》の搭乗員の多くは、元ネタが機動戦士ガンダムのランバ・ラル隊から。今後も出ます。


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第70話【第2次まやかし戦争】


70話に到達 読者の方々ありがとうございます。

長年、ルパン三世の次元大介役で知られる小林清志さんが、次元役を卒業されました。お疲れ様でした。
チコ
「と言う事で、小林清志さんの名台詞を載せてみました」
第一巻
「さて、誰が勝ち残るかな。帝国か、同盟か、地球か……それともおれか……」
いったい誰が勝者となるかと言う心の声。この時の表情はまさに大胆不敵。地球とは地球の復権を目指すカルト教団の事です(テロ集団です)

第3巻


「人間の心理と行動はチェスの駒よりはるかに複雑だ。それを自分の思いどおりにするには、より単純化させればよい」

「相手をある状況に追いこみ、行動の自由をうばい、選択肢をすくなくするのだ」
叛逆しそうもない人を、叛逆に追い詰める事は十分可能だと言う台詞

「現在の同盟の権力者どもにふさわしいやりかただな。口に民主主義をとなえながら、事実上、法律や規則を無視し、空洞化させてゆく。姑息で、しかも危険なやりかただ」

「権力者自らが法を尊重しないのだから、社会全体の規範がゆるむ。末期症状だ」

某なんとか家や、何とか庁に言ってやりたい台詞です(怒)


第4巻

「お前は私に悪いところが似すぎたな。もうすこし覇気と欲がすくなかったら、いずれ私の地位や権力を譲られんこともなかったろう」

「お前は何でも知っていたが、ただ、時機を待つということだけを知らなかったな」
銀河帝国軍がフェザーン占領しに来た際に、自分を殺しに来た実の息子を返り討ち(正当防衛)にした時の台詞
その後、学者でも志してくれれば、いくらでも金銭的援助をしてやったのに、とも言っています。


第7巻

「どうだ、ドミニク、ひとつ私の子供を産んでみないか」
愛人のドミニクさん(作者は六時間前まで、中の人は先代の峰不二子の人と勘違いしてた)
「貴方に殺させるために? ごめんこうむるわ」
ドミニクさん部屋を出て行く。その後閉められた扉に向け、
「……そうではない、ドミニク。私を殺させるためにさ」

まどか
「チコちゃん、次元さんの台詞が何も無いですよ」
チコ
「まどか、最初をよく読んで。次元じゃ無く小林さんの名台詞って書いてあるでしょ。これは銀河英雄伝説の重要人物……フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーの名台詞集です。中の人は同じでございます。次元以上の大胆不敵な感じでチコのお気に入りキャラなの」



 

 

 

「敵船団針路に変更なし。護衛艦隊駆逐艦8 位置ウシシル・アイランドより南東30浬。巡洋艦以上の大型艦確認できず。針路40度輸送本隊は、その後方15浬 輸送船4タンカー2。護衛艦、小型駆逐艦4海防艦4商船改造の水上機母艦2」

「敵船団の目的地はやはり、北クリル諸島北端のシムシュ及びパラムシル島だな」

第8巡洋艦隊司令、カールトン・ライト少将は、旗艦《バルチモア》級重巡《ロサンゼルス》艦長チャールズ・E・ローゼンダール大佐の報告を受けた。情報は、哨戒中の潜水艦《スコーピオン》からの情報だ。

 

 

 宇志知島は千島列島中部にある火山島で、北緯47度31分、東経152度48分にある小さな火山島だ。面積は僅かなので、居住者はいない。

敵輸送船団は千島列島北端の、パラムシル島とシムシュ島への物資輸送に従事しているのだろう。二つの島は、ソ連領に一番近くアメリカからの対ソ援助船団や、ソ連側を監視牽制するには最適の場所だ。二つの島には、海軍の小艦隊基地及び航空隊と海軍陸戦隊(一個連隊)があり、陸軍は第九一師団と、第一一戦車連隊(戦車60台)併せて2万3千名が配備されている。可能性は低いが、アメリカ側が千島列島経由で、北海道に侵攻する可能性と。万一ソ連が中立条約を破って侵攻してきた場合に備えていた。(1)

 

 

(大統領は局地的な勝利でも良いから、華々しい勝利を求めている)

 合衆国最悪の日と称された4月末、ルーズベルト大統領に対する支持率は、本土への攻撃と海戦での大敗で支持率は40%まで暴落した。

更に、プリキュアにニューメキシコ州にまで侵入された事で、国民の間に動揺が走った。西部3州は、子供達を内陸部に疎開させる動きも出た。

ロスアラモスの科学者は「適切に救助され」放射能被爆者は出なかったのだが、近くにいた多くの野生動物が、急性放射能障害で人家の近くなどで多数が死んだために、露見してしまった。知識人を中心に、非人道的兵器反対運動も起きたが、それ以上に多かったのが、「原子爆弾を完成後、輸送中に爆発事故でも起きたら多数の犠牲者が出ただろう」

と言う怒りのコメントが多く新聞社に届いた。ワシントンやニューヨークでは、一部ルーズベルト大統領の辞任を求めるデモも発生し、共和党の政治家トーマス・デューイ(ニューヨーク州州知事)は、

「合衆国史上最悪の大統領」

とラジオや新聞で非難している。

 

 

 その後ハルゼー提督の勇戦や、イタリアの枢軸国からの脱落で支持率は多少は持ち直すも、支持率は40%台を上下している。

 

 

トラック島

 

 

 

ありす

「最近何処からも戦闘のニュースが入って来ませんね」

マナ

「平和が一番! でも、アメリカもまだ反攻を諦めるとも思えないし」

真琴

「外国の……英国やアメリカの新聞が、今の何も戦いが無い(アジア・太平洋)状況を、第2次ファーニ―ウォーって書いているって聞いたけど、どういう意味かしら?」

六花

「まやかし戦争って意味よ。39年の9月末に、ポーランドがナチスに降伏してから、翌40年5月にドイツ軍が、オランダ、ルクセンブルク、ベルギーに侵攻を開始するまで、大規模な陸上戦闘は起きていないから、まやかし戦争やインチキ戦争と呼ばれていたのよ」

真琴

「ああだから、今のは第2次って付くわけね」

マナ

「39年の年末に、ソ連がムーミンもといフィンランドと戦っていたんじゃ?」

ありす

「シモ・ヘイヘと言う凄腕の狙撃手が活躍されましたわ」(2)

六花

「両国は、その時は第二次世界大戦自体にはまだ未参戦なのでノーカウントよ」

真琴

「そのヘイヘさん、戦ったら私達がプリキュアになっていてもやられそうね」

 

幸か不幸か、フィンランドは枢軸入りしていて、ドイツに味方をしてソ連とも戦っている。第一次のまやかし戦争では、独本土が英空軍の中型爆撃機の小規模な爆撃を受けている。これは39年の9月4日で、英仏が対独宣戦布告した直後の事だ。その後も小規模な爆撃は何度かあった。しかし太平洋では、日本本土所か重要拠点のトラック島にすら、敵機は一機も来ない。タイ北西部と英領ビルマ南東部の間で、互いに相手を爆撃したり、オーストラリア北部のダーウィンから、散発的に日本軍の基地がある、インドネシア南東部のティモール島や、スラウェシ島南部のマカッサルに《B-24リベレーター》が爆撃して来る程度だ。しかも、高度6000からの爆撃なので、命中弾は少なく被害は小さい。

 

 マナ達は、トレーニングを兼ねてトラック島周囲のパトロールをしているが、プリキュアでも充電中の浮上した潜水艦ならともかく、海中に潜む潜水艦を探知する術は無い。

 

 

 

この世界の帝国海軍は、史実よりは対潜水艦に対し対策を講じている。史実より早くから、工期が短くて済む海防艦を大量に建造したり、資源輸送最重要海域の、南シナ海やジャワ海と外洋の間にある海峡に、機雷を設置して米潜水艦の侵入を阻んでいる。

 

ありす

「やっぱり中華民国と戦争になっていないのが、大きいですわ。戦争で一番必要なのは、お金です。軍艦を作るのにも、石油や天然ゴムを輸送するのにも、新兵器を開発するのにも、まず資金が必要です」

真琴

「プリキュアの敵は、超常的な力でそういうの解決してそうだけど、世の中やはりお金か」

六花

「それと、私達の世界より開戦が2年遅れたのも幸いだったのかも」

陸海軍とも、中国での戦いが無くなった事で、本来生じる筈だった莫大な戦費が浮き、それを有効に使う事に成功していた。

 

 

マナ

「それと、元の世界でちらっと本か何かで、『アメリカの魚雷は中盤まで不発が多かった』ってあったけど、本当の事だったね」

 

 3日前、トラック島に一隻のタンカー《第三図南丸》が入港して来たのだが、その船体には10本の不発魚雷が突き刺さったままだった。12本命中し、爆発したのは2本だけで残り10本は爆発せずカンザシみたいに船体に刺さっていた。

 

この光景には、あまり驚いたりしないマナも、目が点になっていた。

 

ちなみにまだ魚雷は刺さったまま、タンカーは放置されている。修理するにはまず、刺さっている10本の魚雷を始末しないと修理作業も出来ないかららしい。

 

 

 

 しかし、8月18日に土佐沖で訓練航海中だった、軽空母《龍驤》が、米潜水艦の雷撃を受け魚雷2本が命中し沈没。その一週間後に、パラオへの輸送船団を護衛していた軽巡洋艦《夕張》が、パラオ近海で米潜水艦《ブルーギル》の魚雷が命中し沈没していた。

 

六花

「直ぐに魚雷の信管を改良したのね、侮れないわね」

 

 実は、不良品の信管を改良するのではなく、逆に第一次世界大戦の頃の、起爆システムに戻していたのだが……(故障は少なく信頼性は高い)

 

 

 

 

 

 ライト少将は、ラハイナ泊地の仮司令部で、ニミッツ大将から北海道から、北千島に向かう輸送艦隊を撃滅する様に命じられた。

しかし、ニミッツ太平洋艦隊総司令官の発案では無く、大本は焦るルーズベルト大統領の指示のようだ。

 

潜水艦が日本海軍の中型空母1隻を藻屑にしたのは、大手柄だが潜水艦の戦果は、それほど国民の心には響かない様だ。敵の輸送船を沈めても地味なので大きく報道される事も少ない。

「とにかく敵の艦隊を沈めろ、巡洋艦や駆逐艦でも良い」

 

 それを伝えられた、ニミッツは不快な気分になったが、無視するわけにもいかず、参謀達と共に作戦を考えた。

 

妥協の産物として、日本本土から北千島に向かう補給船団への攻撃が決定した。アラスカから、アリューシャン列島を経由して千島列島、そして北海道へと侵攻する案は検討された事はあるが、年間を通して天候に恵まれなく、航空機の行動が難しいと判断され断念された。

 

 逆に、米巡洋艦隊が敵哨戒機に発見される危険性も低く、北千島に向かう輸送船団にプリキュアを護衛に付ける可能性は低いと判断された。

 

しかし、輸送艦隊に戦艦が同行していた場合や、空母を含む有力な艦隊が北西太平洋(北海道沖)に出現した場合は、直ちに作戦を中断し帰還する様に命じた。

 

 

9月3日午前1時30分

 

「敵駆逐艦隊発見 位置当艦隊右舷70度 距離2万」

先頭を行く《グリーブランド》級軽巡《ミズーラ》の、対水上レーダー(SGレーダー)が、接近してくる駆逐艦を探知した。

「全艦右砲撃戦用意!」

先頭艦《ミズーラ》に続き、重巡《ロサンゼルス》(旗艦)《セント・ポール》(《ボルティモア級》)軽巡《セント・ルイス》 《ナッシュビル》(ブルックリン級)

駆逐艦《フレッチャー》以下6隻が続く。

 

 

 艦隊には、正確には先頭の《ミズーラ》と、旗艦の《ロサンゼルス》には秘密兵器が搭載されていた。射撃管制用装置《MK37 砲射撃指揮装置》で、

(艦これに、GFCS MK.37して登場)水上レーダーと連動して、自動的に主砲の向きや角度を調整する。よほどの悪天候でない限り、雨が降っていようが、夜だろうが、霧が出ていようが正確な砲撃が出来る……事になっている。

 

現在付近はかなりの濃い霧に覆われている。むしろ、新兵器の実戦テストに最適の環境だ。

 

 

「艦長、どうやら霧の谷間があるようです。この先このままだと敵艦隊10キロ手前で、霧が薄くなりそうです」

「そうか、濃い濃霧の中から一方的にレーダー管制射撃をやれたら、最適だったのだがな。まあ自然相手では仕方あるまい」

先頭を行く軽巡《ミズーラ》艦長カール・オリヴァー中佐は、航海長レネー・ ネルソン大尉の報告を受けた。

 

(新戦術のテスト結果は、やはり直接肉眼で確認したいものだ)

という思いもある。

 

「射撃目標、敵先頭艦! セオリー通りに行くぞ」

「了解!」

まずは教科書通り、艦隊は敵駆逐艦隊の先頭艦を全力で叩き、その後残りの船を各個に撃沈する。

 

 

「間もなく霧が薄くなります」

数分前まで、後続する《ロサンゼルス》の船体は全く見えなかった。しかし、今は船体の前半部は何とか視認できるまでに視界が回復している。

「敵艦隊、針路速度変わらず!」

「主砲レーダー連動完了! 射撃準備完了」

報告を聞いたオリヴァー中佐は軽く頷き、

「よろしい。砲撃開……」

中佐が砲撃開始命令を出そうとした瞬間、至近距離に水柱(義勇さんでは無いよw)が立ち、衝撃で艦が振動し艦橋にいた士官達が、よろめく。

「敵駆逐艦の砲撃か?」

「いいえ、敵艦隊は未だ砲撃をしていません」

確かに、敵駆逐艦は未だ撃っていない。しかも、今の水柱は駆逐艦の砲撃では考えられないほど大きい。

「よもや、護衛に戦艦が同行していたのか? レーダー室、反応は無いか!」

「駆逐艦以外の反応はありません」

島でも至近距離にあるのなら、島影から砲撃している可能性もあるが……(黎明期のレーダーは、島と船の区別は困難だった)

 

「右舷30度、鳥らしきものがいます……数5!」

「こんな深夜にか? 馬鹿な……ま、まさか!」

「ソナーより、艦橋へ! モーター音多数確認! 魚雷が来ます!」

 

 

 

なぜこんなことになったか……

 

 

 およそ2日前東北から、北海道に向け飛行しながら自主的に訓練していた、キラプリチームは遂に北海道の北東部の根室まで到達した。

いちか達は、根室町(5)にある海軍の基地を訪れた。敵に知られるのを防ぐ為に、ラジオや新聞の天気予報は開戦の翌日から中止されている。

気象状況などを知る必要があった。

 

 

「遠いところ大変だねえ」

司令官の山谷義行少将は、山本大将の海軍兵学校時代の同期生らしい。去年まで広島県江田島の兵学校で教官をしていて、戦争が無ければ恐らくそれを最後に退役すると当人も考えていた。が、開戦により北海道北東部を管轄する、海軍根拠地隊の司令官に就任する事になった。

 

 

「ちょうど午後3時か、お茶でも飲んでいきなさい」

「ありがとうございます」

 

 

いちか

「北海道の東部はやっぱり涼しいですね」

ひまりん

「少し霧も出ていました」

ヒートアイランド現象が進んだ、現代の日本から昭和18年の東京に来てしまった、いちか達にとっては初めてのまなつ……もとい真夏だが、

まるで9月の中盤以降の暑さだった。北海道東部は更に涼しく感じる。

 

 

現代でも、釧路や根室は夏でも最高気温が10度台前半の日も珍しくも無く、住民は家にもよるが年中こたつやストーブが出ている家もある。(某ケンミンショーより)

 

「ああ、今日の気温は平年並みなんだけど、昨日までの一週間は妙に暑くてねえ」

山谷によると、数年に一度は物の弾みで(?)最高気温が20℃を超える事も稀にあるそうだ。しかし、それが一週間も続くのは異常で、その期間の内2日は夏日、すなわち最高気温が25℃を超えたらしい。

 

 軍人なら訓練で体を鍛えているから未だしも、暑さに慣れていない地元住民が、かなりの数熱射病で病院に搬送された。

 

 

ゆかり

「明日からまた2.3日また気温が高くなるそうよ」

あおい

「いちか、もう少し北の方まで行ってみる?」

いちか

「じゃあ、千島列島の真ん中あたりまで」

 

 

 一日休養して、英気を養ったいちか達は更に北東に向け飛び立った。歯舞群島と、色丹島を右手に眺めながら、国後島を飛び越え北方4島の中で最も広い、択捉島上空に差し掛かった。

 

 

シエル

「工事をしているわ……飛行場の滑走路ね」

択捉島の中央部で、滑走路の工事をしている。見たところほぼ完成に近い

あきら

「天寧と言う大きな村の近くに、滑走路を作って海軍の哨戒機を配備するみたいだよ」

万一北太平洋経由で、アメリカ軍が侵攻して来た場合への備えらしい。

 

 

工事と言っても、アメリカと違いかなりの部分は人海戦術の様だ。しかし、ブルトーザーも何台か動いている。

ひまりん

「開戦前に、ドイツから輸入していたみたいです。後は、占領したフランスやオランダから取り上げた車両も輸入しているそうです」

シエル

「インドネシアや、マレーシアで回収した英軍の車両も、再利用しているそうよ」

あおい

「陸軍さんは、旧式の戦車を改造して重機として再利用しているんだって」

いちか

「あっ、あれかな?……あの少し小さいやつ」

 

 

数時間後 

 

 

いちか

「あれが、一番北の島に物資を運ぶ輸送船団かな?」

いちか達が近付くと、それに気付いた船員たちが一斉に手を振って来る。海軍は新聞やラジオでは公表していないが、噂は広がっていた。

 

 

輸送船団を超えると、ほどなく7,8隻ほどの駆逐艦が見えて来た。

 

 

 

護衛隊旗艦《長波》(《夕雲型》4番艦)

 

 

「あれが、連絡のあったプリキュア……確かアラモードチームだったかな?」

「確かその筈です」

 駆逐隊司令田中頼三少将の問いに、《長波》駆逐艦長隈部中佐が答える。帝国海軍では、駆逐艦は巡洋艦以上の船より低く見られ、艦長も、「駆逐艦長」と呼ばれ、巡洋艦以上の船が、艦首に装着している菊の御紋章も無い。

 

 しかし、逆に乗員同士の連帯感は強く、戦艦や空母では艦長は畏れられている存在だが、駆逐艦では乗員達は、艦長を「うちの親父殿」と呼んだりしている。

 

 

「しかしこんな北の果てまで、鍛錬に来るとは感心じゃないか。うちの若いやつにも見習ってほしいねえ」

田中少将は感心しているが実は、いちか達は……とくにゆかりが

「北海道の方が涼しそうだから」

というやや邪な動機で来ている事は知らない。

ゆかり

「温暖化が進んで居なくても、夏はやはり暑いのよ」

 

《長波》の乗員達も、いちか達に気付き手を振ったり声援を送っている。

「こらっ! 見張りを怠るんじゃない。時々この付近にも敵潜水艦が出没しているんだぞ」

 艦長が乗員達を注意した直後

「《高波》から緊急通信! 敵みゆ右舷70度! 先頭艦は重巡級」

先頭の《高波》から敵発見の通報が入る。一気に緊張感の増した艦橋では、田中少将たちが双眼鏡で急ぎ右側を見る。

 

 

夜間で濃い霧の中、敵を発見できたのは、帝国海軍の秘密兵器「熟練見張り員」の功績だ。

エラー娘「ドヤァーー」

下手なレーダーより、優秀な見張り能力を持つ彼らの視力は3.0あったとか。昼間は赤い照明の狭い部屋で待機していたとか、ビタミンAが視力保持に良いとされ、ニンジンやヤツメウナギの蒲焼を食べていたとか。(6)

 

史実の第一次ソロモン海戦で、一方的に勝てたのは《鳥海》の見張り員が9000メートルの距離で、米艦隊を発見できたからとされる。

 

 

「右舷魚雷専用意! プリキュア達にも敵発見知らせるんだ」

 

 

しかし、同時にいちか達も霧の中から現れた艦影に気付いていた。同時にいちかのウサミミがピコッと反応して、敵の方を向く。

いちか

「おおきいですぞ。先頭艦は1万トンはありそうな」

ひまりん

「あの船の主砲は、4門……」

あきら

「間違いなく敵艦だ」

シエル

「ハワイ辺りから、わざわざ来たのかしら」

ゆかり

「2番艦は、主砲3基……」

 

 聯合艦隊の重巡洋艦は、《青葉》《古鷹》《衣笠》は現在修理や対空砲の増設工事をやっている筈なので、ここにいる筈も無い。

《妙高型》《高尾型》《最上型》はいずれも、20.3センチ砲連装5基10門で、帝国海軍に主砲4基の船はいない。

(《利根型》は、主砲は全て艦の前部にあり、識別は簡単なので計算外)

 

 

 

 

数分後 重巡《ロサンゼルス》

 

 

「《ミズーラ》より緊急通信! プリキュア見ゆ! 魚雷多数接近!」

「《ミズーラ》に敵魚雷2本命中、プリキュアの攻撃らしきものも被弾! 航行不能です」

二つの報告は相前後して入った。

 

「待ち伏せか!」

「作戦中止、全艦取舵一杯! 霧に逃げ込め!」

ライト少将は直ちに、作戦中止と退避命令を出した。生還する一つだけの道は、《ミズーラ》が袋叩きにされている間に、今出てきた深い霧の中に逃げ込むしかない。

 

 

しかし、艦が転舵を完了した直後海面を青白い影が、艦首に吸い込まれるのが見え、直後今度は白い光が艦の後部に向かって来た。

「艦首に被雷!」

「プリキュアの攻撃で、第3砲塔大破!」

「提督が負傷した。軍医を艦橋に!」

しかし、船は辛うじて霧の中に逃げ込んで行く。

重巡《セント・ポール》は、後部に被雷し機械室浸水、更に破損した燃料タンクから漏れた重油に引火して火災も発生し、一時は艦の放棄も検討されたが、

辛うじて消火に成功し、喪失を免れた。

 

軽巡《ナッシュビル》も、艦首にいちか達の攻撃が命中し、艦首が丸ごと消失したが、霧のお陰でそれ以上の被害を免れた。

 

 

いちかは追撃しようとしていたが、

 

なお

「あの霧……ほとんど視界は、利かなそうだからダメだって」

ひまり

「流石に至近距離から、主砲で撃たれたら死んじゃいます」

 

 

 

《長波》

「敵艦航行不能……敵艦より信号! 敵艦長の名で、降伏を申し出ています」

「了承したと返信してくれ。敵潜水艦に警戒しつつ敵兵を救助せよ」

 

プリキュアも支援に駆けつけ《ミズーラ》は、戦死者58名以外は無事救助された。

 

 

 

 

 大破した《ロサンゼルス》《セント・ポール》《ナッシュヴィル》は辛うじて、ダッチハーバーに逃げ帰った。

《ナッシュヴィル》は修理に3か月、《セント・ポール》は4カ月(戦死125名)《ロサンゼルス》は、さらにひどい被害で修理が完了するのは翌年春以降と判断された。(戦死者150名以上)ライト少将は、戦闘中に負傷して入院したが、

負傷を理由に陸上勤務に左遷され、二度と前線に戻る事は無く退役する。(1970年6月病死)

 

 

 

9月25日 午前4時30分

 

 

択捉島北端から南東に100浬の洋上

 

 

 

 

「敵艦隊発見! 例の警備艦隊だと判断します」

「敵の編成は?」

「重巡らしきもの2、軽巡3 駆逐艦6ないし7」

「全艦戦闘用意!」

(戦力は互角だ。プリキュアは確認されていないから勝てるだろう)

TF-16(第16任務部隊)指揮官チャールズ・マクモリス少将は、攻撃準備を命じた。

 

 

 

 先日の敗戦に、激怒したルーズベルト大統領は、海軍に「復讐戦」を厳命して来た。

 

 先日の敗北から24時間後、ハワイからジョンストン島に向け航行していた、輸送船団が潜水艦の波状攻撃を受け、輸送船2、タンカー2隻を喪失、更に護衛の旧式水上機母艦と駆逐艦1隻が沈没した。

 

 更にその1時間後、オアフ島島北東200浬の洋上で、本土からハワイへの輸送船団が襲撃され、輸送船3隻が撃沈された。更に艦隊旗艦の旧式巡洋艦《ローリー》と、護衛空母《ビスマークシー》と《ホワイトプレーンズ》も魚雷が命中した。

 

《ホワイトプレーンズ》は、乗員の必至の消火作業と排水で、辛うじてラハイナに入港したが、《ビスマークシー》は、多数の乗員と共に沈没。旗艦《ローリー》は、魚雷が誘爆して、船団司令のフレミング少将以下、全乗員の生存は絶望視されている。

これにより大統領の怒りは更にマシマシになった。

 

再びニミッツ大将は困り果てたが、合衆国軍最高指揮官の指示をやはり無視するわけにもいかず、再び出撃を命じた。今度は、念を入れてプリキュアが北海道…東部や千島列島にいないか、潜水艦に念入りに監視させた。

 

 

 プリキュアの奇襲を受けた事から、一時

「日本側に暗号を解読されているのでは」

と言う意見も出たが、

「皆無と断定はできませんが、その可能性は低いでしょう」

太平洋艦隊司令部情報部長、レイトン大佐は可能性は低いと述べた。

「仮に本当に、暗号が解読されていたとしたら、遭遇した敵戦力は中途半端です。プリキュアも他の2チームくらいは増援に出していないのはおかしいでしょう。

敵艦も駆逐艦だけでしたし、解読して待ち伏せるなら戦艦とは言いませんが、最低でも重巡の2、3隻くらいは派遣した筈です」

 

程なくアメリカ側も

「プリキュアに遭遇したのは、不運な偶然」

との結論に達した。

 

 

 今回は、北東太平洋艦隊司令官のマクモリス少将自らが陣頭指揮を執る事になった。戦力は4カ月前に完成した、新型重巡《ソルトレークシティー2》に、先日の闘いで奇跡的に無傷で生還した、軽巡《セントルイス》、駆逐艦6。本当はハワイから一隻増援に巡洋艦を回す筈だったのだが、訓練中にハワイ近海で座礁事故を起こし

修理の為に中止となった。

 

 

 日本側は、再び米艦隊の襲来の可能性に備え、細萱中将の第5艦隊に、千島沖の訓練も兼ねたパトロールを命じた。こちらは、重巡《那智》(旗艦)《足柄》(本来は《摩耶》が配属されていたが、4月に米本土沖航空戦で撃沈された為に、南方艦隊から《足柄》が増援に廻された)更に、軽巡《阿武隈》《多摩》《木曽》駆逐艦5が加わる。

 

 

 

旗艦《ソルトレークシティー2》

「大変です! 対空及び水上レーダーが突然故障しました!」

「本当か! 直ちに光学照準に切り替えろ」

マクモリス少将は、直ちにレーダー搭乗前の方法、すなわち人間の目視観測の頃に使用された方法に切り替えさせた。「《セントルイス》より信号! 我突如レーダー故障。原因不明との事です」

他の艦からも続々と、レーダー故障の急報が入る。

(全ての艦のレーダーが同時に故障した点を考慮すると、ヒューマンエラーでは無く何らかの自然現象だろうか?)

 

 その直後、第五艦隊が攻撃を開始。第五艦隊も《那智》《足柄》に装備されたレーダーが同時に故障したが、幸か不幸か、今回も優秀な見張り員が同時に米艦隊を発見していた。

 

日本側のレーダーは、米英のに比べ性能が劣っていたた為、レーダーに半信半疑な士官や下士官は多く、細萱中将も、そういった考えの提督の一人だった。そのせいか、レーダー故障といった事態に却って冷静な判断が出来た。

 

 

 TF-16は、一時間にわたり退避行動を続けたが遂に午前6時に、旗艦の第三砲塔に被弾した。更に同時に、何らかの故障で機関出力が急激に低下し、ほぼ停止してしまった。

「各艦は、旗艦に構わず退避せよ。士気は駆逐隊のラムステッド大佐が……」

そこまで命じた時、違和感を感じた。今まで激しく撃ってきた敵艦の砲撃が、突然散発的になった。しかも、距離を開き後退しようとしている。

 

「どうしたんだ敵は? 奴らは勝っていたではないか」

「数分前に、敵旗艦に一発命中弾が有りました。何か不測の事態が起きたのかも」

「不測の事態か……」

「こちら機関室、間もなく機関出力回復します」

「どうしますか、敵が逃げ腰なら攻撃を再開しますか」

マクモリスは数秒考え決断を下そうとしたが、その刹那艦内電話のベルが鳴った。

「潜水艦からの急報です。ネムロ南東40浬に、敵空母発見。敵は空母2及び巡洋艦1隻を含む。更に艦隊上空にプリキュアらしきもの。数5ないし6! 敵空母より艦載機発艦中!」

 

 

「作戦中止! 直ちに退避するぞ! 針路90度!……水平線付近には雲が固まっている。あの下に退避せよ」

真東の水平線上には、大きな雲が複数連なっている。上手く潜り込めれば攻撃を免れる事が出来るかもしれない。

 

 

 結局正午に、戦闘配置は解除されレーダーは日没頃に相次いで復旧した。暑い雲に阻まれ、敵機はTF-16の発見に失敗した。と、思われた。

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「またジャップに敗北したのか!」

「敗北では無く引き分けです。被害はほとんどありません」

ルーズベルト大統領が、海軍の不甲斐なさに腹を立て、フォレスタル海軍長官が必死に宥めている。確かに、TF-16の被害は、《ソルトレークシティー2》が、戦死者7名。他に駆逐艦2隻が至近弾で軽微な被害を受けただけだった。

「しかし、逃げ帰ったのは事実だ」

「空母から艦載機発進中の急報と、プリキュア発見ですから退却は妥当です」

 

 

 大統領は、深いため息をつくとグラスの水を飲み干す。

「まあ、プリキュア相手では退却はやむを得ないか。マクモリス少将も被害は出さなかったんだから、処罰するわけにもいかんな。レーダーの故障も、全艦一斉に故障となると、人為的ミスでは無さそうだ。しかし、ジャップはなぜ突然攻撃を止めて後退したんだ? このまま突撃していたら完勝出来たのではないか?」

「敵旗艦に一発命中弾が有りました」

「もしや、その砲撃が敵旗艦の艦橋でも直撃して、敵の司令官が戦死でもしたのかな?」

「優勢だった敵が突如攻撃を止めたという点から、十分に考えられる可能性ではあります」

「としたら、この戦いは引き分けでは無く大勝利だよ。海軍長官! 敵の司令官を一人葬ったのだからな。大々的に報道し、マクモリス少将には勲章を授与したまえ」

 

 

「国防総省発表、9月24日未明(時差)択捉島北東沖で、マクモリス少将の巡洋艦隊が、日本側の巡洋艦と交戦。止む無く撤退の無念に至るも、敵艦隊は突如攻撃を中止、流れ弾が敵旗艦に命中し、敵の提督が、戦死もしくは重態に陥った可能性大と判断される。この海戦は南クリル海戦と命名する」

 

 

 

 

数日後東京 

 

 

つぼみ

「じゃあ、細萱って提督さん解任されちゃったの」

ゆり

「なにがあったのかしら?」

えりか

「うーんとね、確か戦艦とかの主砲弾には、敵の装甲を貫通して、中で爆発して敵艦を破壊するのと、他には三式弾って、対空砲弾ってのがあるんだけど、これはみんな説明受けたから知ってるよねえ。

それと、敵艦に命中した時に爆発する弾があるんだよね」

つぼみ

「敵の乗員や、対空機関銃とかを破片で攻撃するんだよね」

いつき

「でも、えりかはこの世界に来る前から、妙に詳しかった気がするんだけど」

つぼみ

「艦これってゲームあるよね」

ゆり

「あれは18歳以下は禁止の筈よ」

 

つぼみ

「ほああああああ! え、エリ……えりか破廉恥ですっ! ダメです」

ゆり

「あ、そういうゲームでは無い筈よ。厳格な年齢確認があるはずでは無いから、こっそりとやっている高校生とかもいるかもね」

つぼみ

「本編はやってないよ。でも、アニメとか動画とかは制限無いし、その中に艦娘の音声だけを収録した動画とかがあるんだけど、3隻ほどお姉ちゃんにそっくりな声の船がいるんだ。それでいろいろ調べたら、攻略サイトに船とか兵器のかなり詳しい解説が書いてあったんだ」(7)

 

 

つぼみ

「ええと、対艦徹甲弾が残り少ないと報告したら、細萱提督が残弾無しと勘違いして、攻撃を中断してしまった」

いつき

「再確認すればすぐに、勘違いに気付いたんだろうけど」

 

 提督の資質に著しく欠けると判断され、海戦の数日後に更迭され予備役送りになった。細萱中将の『海軍軍人生命』を終わらせ、ある意味討ち死にさせた事から、ルーズベルト大統領の喜びは糠喜びでは無く、半分は正解だった。

 

 実は潜水艦が発見した空母は、正規空母では無く完成したばかりの択捉島天寧飛行場に、資材や航空機用ガソリンを運んでいた、輸送艦隊の護衛空母を勘違いしただけで、

「艦載機発進」

は、夜が明けたので対潜哨戒用の《九七式艦上攻撃機》を潜水艦対策に、発進させただけだった。米海軍がそれを知るのは戦後……数年先の事になる。

しかも、「プリキュア」は海鳥の群れを誤認しただけに過ぎなかった。(こちらの方は合衆国側が知る事は今日に至るまで無い)

 

そこまで話した時、玄関の外の道路から何人かの中年女性の声が聞こえて来た。

 

 

「明日から、学童疎開が始まるんだねえ。この辺りも寂しくなるね。この辺りの子は何処に疎開するんだっけ?」

「回覧板見てないのかい、確か山梨県だよ」

 

 

 

 合衆国が、既に完成している《B-29》より一回り以上も巨大な爆撃機を開発していると言う断片的な情報は、プリキュアが来るよりも前から、ベルリンや、ローマや他に中立国のメキシコやスペインや、トルコ、スゥェーデンの駐日大使館を経由して入っていた。

 

 

 昭和19年の年明けと共に、その巨人爆撃機が試験飛行に成功したと言う情報が届いた。春になると、断続的に正式採用を目指し、試験飛行が行われていると言う情報に接した。

 

 小型機なら、合衆国市民に気付かれずにテストをする事も可能だが、全長49.4メートル、(30.18メートル)全幅70メートル(43.04メートル)重量73.017トン(32.43トン)

()内は、《B-29》

の巨人機の試験を市民の目から隠す事は不可能で、多くの市民がその存在を知っていた。独伊系の合衆国民は、ある程度はFBIに監視されていたり、一部は収容されていたが、大半が野放しだった。数百万いる独伊系市民の中には、ドイツのスパイも居て、独自に情報収集を行っていた。更に一部だがナチスの思想に共鳴するアメリカ人や、金目当てで情報や撮影してきた写真を売る市民も少数だがいる。

 

 

巨人爆撃機は、来年春には実戦配備に付き、アラスカ辺りに配備され、爆撃が開始される可能性が高いと判断し、東京、中京、関西の児童を地方に疎開させる事が8月上旬に決定した。9月中旬には板橋区の児童200名が第一陣として、群馬県に向け出発。

 

 

プリキュア達も交代で、近くの児童の学童疎開で品川駅までの引率のお手伝いをしていた。横断歩道で「児童横断中 止まってください」と書かれた旗を持っている人がいるが、あんな感じ。

手伝いと言っても、民間の車も含めてアメリカとは比べ物にならないほど少ないので、まあ別に手伝う必要は別になかったんのだがW(まてコラ)

 

 

えりか

「そういえば、里美ちゃんは何時頃疎開するんだっけ?」

いつき

「えりか説明を聞いていなかったの?」

ゆり

「その日は、えりかは風邪気味で寝ていた筈よ」

えりか

「フンッ」

いつき

「ごめんごめん」

 

つぼみ

「今は学童疎開で、バタバタしているからひと段落付いた、11月の終わり頃になるって言ってました」

いつき

「山形県の北部ってかなり寒いんじゃないかな? 大丈夫なのか?」

ゆり

「彼女寒いのはそれほど苦手でも無いみたいね」

えりか

「おじいさんの代まで、北海道の小樽に住んで居たと聞いた気が」

つぼみ

「ええと、遺伝と言うやつですか? あっ、この場合は隔世遺伝ってやつですね」

 

ゆり

「しかし、疎開先のご家族の写真見た時は驚いたわね」

 

 

 疎開先は、最初にいちか達を不審者として拘束してしまった、憲兵隊長の親戚の家で、その家が本家で、当主は村長を務めているそうだ。(8)

村長さんとそのご家族には、ある程度プリキュアの秘密とかを話したのだが、陸軍の人がその村長さんの家族写真を見せてくれた。村長さんの奥さんは数年前に病死し、子供は全員女子で姉たちは既に隣接する新庄町や、南にある村山町の人と結婚し家を出ているそうだ。現在は一番末の娘さんが

家事をやって父親を支えている。その娘さんの写真を見た瞬間……

 

「あ、あゆみちゃん!!!」

と、彼女と面識があるプリキュア達は大騒ぎに。

いつき

「でもこのあゆみちゃん、僕たちより年長に見えるけど」

なんでも今年19歳で、来年1月には20歳になるらしい。

つぼみ

「そ、それは……多分私達より、何年も昔にタイムスリップしてしまったんですよ!」

ゆり

「もしかすると、年齢も巻き戻って村長さんご夫妻が、見つけて養子にしたのかも」

仰天した陸軍が、現地に調べに行ったのだが。

 

ゆり

「じゃあその山上あゆみさんは、村長さんの実子に間違いないと言う事なのね」

つぼみ

「他人の空似なんでしょうか? お母さんの写真にかなり似ていましたから」

村長さんの娘は全員母親似の美人だと言う事と、何処からか突然現れたりはしていない事が判明した。

「姉二人は、村から転居したので今は別の資産家の一人娘と共に、村の二大美人娘として有名らしいです。もう一人の方は、正に深窓の御令嬢と言う感じですよ。ああこの二人は親友らしいです」

と言う全く意味の無い余計な情報も付いていた。

 

 

六花

「見た目は坂上あゆみちゃんそっくりだけど、性格はマナみたいな人らしいわ」

ありす

「勝ち気で、坂本乙女みたいな人なのでしょうか?」

坂本乙女とは、坂本龍馬の姉で内向的な龍馬に学問や、剣術を最初に教えたりしている。(漫画龍馬が往くや、コー〇ーの幕末維新志士伝では)

真琴

「でもこの人、ご主人はあの戦いで戦死(4月末米本土沖)……状況から見て、生存している可能性もあるけど」

 

一応女性が戸主になる事も可能だが、田舎だとなかなか難しい。(世間体)だから子供が女子だけの場合は、結婚し婿養子を取る必要があった。(もしくは親戚か、嫁いだ姉二人のどちらかから次男以下の男子を、村長の養子として貰い受けるか)

ありす

「陸軍の方の話によると、わんわん号泣した後「泣いたらすっきりした」と言ったそうですわ」

真琴

「マナ王子がもう一人……あゆみ王子ね」

 

村の男性にとってはあこがれの存在なのだが、やはりマナや剣城あきら同様同性にもモテまくっているらしい。

ありす

「ここにもそのあゆみさんに墜ちかかっている人がいますわ」

六花が熱に浮かされた表情で、北の空を見ている。

 

 

数時間後 

 

 

「うひゃあ」

帰ろうとしていた時、強い風が吹いて国民に節約を求めるポスターが剥がれて、つぼみの頭を掠めてどこかへ飛んで行った。

 

 

いつき

「朝から風が強いけど、フィリピンの辺りに発生した台風の影響かな?」

戦時中は、天気予報は軍事機密とされ報道されなかった。が、流石に台風となると簡単な発表は有った。(史実)

史実では、ラジオや新聞では詳細は公表されなかったが、この世界は戦況は史実よりかなり有利なので、大本営も心に余裕があったのか、台風や大雨などの大きな被害が出る危険がある場合は、ラジオや新聞での報道が許可されている。

 

 

つぼみ

「フィリピンの東岸って2000キロくらい離れているから、関係は無いと思いますよう」

 

午後6時のラジオニュース(チコちゃん「テレビ……戦前にある訳ないじゃん。ぼーっと生きてんじゃないわよ)で、この台風の事は報じられた。

 

 

「フィリピン東岸に発生した台風は、この後台湾の南で針路を西に転じ、大陸に向かい本土へ直撃する可能性は少ない。ただし、台湾南部は今夜半より、大雨暴風の危険アリ台湾や八重山諸島は、高い波にも注意されたし」

 

 

 

 

10月18日

 

 

 

 ミッドウェー島は、真珠湾が甚大な被害を受けた後、再建を最優先にする為に戦闘部隊と航空隊は5月に撤収している。が、気象観測の場所として不可欠だったのか、

ごく少数の気象観測班(数十名)は、島に残留している様だ。水は海水から塩分を取り除く機械を使用して真水にする装置を修復し使い、食料と医薬品は10日に一度ほど、退役した旧式駆逐艦を改造した、高速輸送艦で夜間に運び込んでいるらしい。

 

 

 聯合艦隊は、一週間に一度ほど潜水艦や、クェゼリンか父島から飛行艇で偵察飛行をして、ミッドウェー島を監視していた。少数の気象観測班を攻撃するのは、大人げないとか武士道に悖る(?)ので、直接攻撃はしないが、何もしないのもあれなので

「避難訓練代行」とか、「安眠妨害」と称して、ミッドウェー島の近くに小型爆弾を投下したり、潜水艦の備砲で2、3発威嚇射撃をするのが通例になっていた。

 

 

 

 当時の潜水艦は、何処の国も甲板の上に12センチ程度の砲一門と、対空機関砲1~2門ほどを装備している。魚雷は一発1万円(現代の価格にすると1億円 ロシア製の巡航ミサイル1本分くらい)の高価な兵器なので、敵商船を攻撃する際には安全な時などは、浮上して砲で攻撃する事もあった。

 

 

 潜水艦《伊―17》はミッドウェー偵察を命じられ、夜間浮上して確認後いつもの如く、「安眠妨害」砲撃を行い、3発ほど適当に撃ってから島を離れた。同艦は、それより前二週間ほどオーストラリアとハワイ間の輸送船攻撃を行い、タンカー1隻を撃沈している。その後帰還途中に、ミッドウェー島監視を命じられていた。

 

 

 嫌がらせ砲撃の後、補給と休養のためにクェゼリン環礁に向かったのだが、ミッドウェー南西100浬に発達中の熱帯低気圧を目撃。艦長はその旨を、司令部に打電した。

 

 

 

 48時間後、クェゼリンから確認に向かった《九七式飛行艇》が、熱帯低気圧が更に発達して台風になり、南西へ向かっているのが確認された。海軍当局は、マーシャル諸島やサイパン島等に警報を出した。しかし台風はマーシャル諸島には向かわず、10月23日にウェーキ島を直撃、その後速度を落として1日ほど停滞した後、針路を北西に転じ26日に南鳥島(マーカス島)付近を通過した。しかし翌日になって台風は、今度は北東に針路を変えまるで元のミッドウェー方面に戻る様な針路を取り、数日後に東経180度辺りで消滅した。

 

 

 

えりか

「変なルートを辿ってるね。頭混乱しそう」

つぼみ

「他にもこんなルートをたどった台風があるって、Yさんが言ってました」

いつき

「去年迷走した台風が、あった筈だよ」

 

ここで言う去年とは、1943年では無く2016年の事だ。

 

ゆり「リオ五輪の頃の台風ね確か……10号だったかしら」(9)

 

 

 本州南岸や、九州南東沖で長時間迷走した後に北上し、岩手県に上陸した。岩手県や北海道で甚大な被害が出て、ジャガイモなどの農産物の被害も大きかった。

 

つぼみ

「この時に、迷走台風の事例がいくつか紹介されていたけど、今度みたいな道筋を辿った台風も紹介されてました」

 

 ちなみに、日付変更線の東側で発生した台風が、変更線を超えて西側に来た場合は台風となり番号が付けられる。多くは日本本土まで来る前に針路を変えるか、消えるので本土に大きな被害が出る事は少ない。これらを越境台風と言う。(11)

 

 

 今度の迷走台風も、本土への被害は皆無だったが直撃されたウェーキと南鳥島ではかなりの被害が出ていた。島に配備されていた、戦闘機や対潜哨戒機、水上偵察機などは事前にクェゼリンや、小笠原に退避して無事だったが、ガソリンタンクや食料、医薬品などを収蔵していた倉庫などが、暴風や高波で浸水破壊されて、多くが失われた。島に配備されていた部隊も、高波にさらわれたり、飛来物で負傷者が出ていて至急救援を送る必要があった。

 

 両島に向かう補給船団は、度々潜水艦の襲撃を受け被害も出ていて、食料や医薬品は台風の直撃を受けるより以前から、やや不足している。速度の遅い輸送船では、時間がかかり過ぎる為に、駆逐艦での緊急輸送が行われる事になった。

 

 聯合艦隊司令部は駆逐艦の予備魚雷を降ろし、空いたスペースにドラム缶に、食料や医薬品を詰め込み可能な限り搭載した。他に負傷者や犠牲者の穴埋めの補充兵も乗船している。ウェーキ島にはトラック島から、南鳥島には横須賀基地から向かう事になった。

 

 

 慌ただしく慌ただしく準備が行われ、30日の早朝に輸送隊は同じ時刻に横須賀とトラック島を出港した。プリキュア達が、この救援艦隊の事を知ったのは出港して半日後の事だ。

 

 

 

数日後

 

 

つぼみ

「救援艦隊が帰って来ました」

えりか

「あれっ予想していたより早い」

いつき

「ちょっと待って、確か4隻で向かったって聞いたよ!」

だが、戻ってきた駆逐艦隊は……いや、一隻しか見えないので既に、艦隊と呼べる代物で無くなっていたが。その頃トラック島でも同じ光景が発生していた。

 

両艦隊は、米駆逐艦隊の「レーダー射撃」による完璧な奇襲攻撃を受けて、壊滅していたのであった。

 

 

 遂にあゆみちゃんぽい人が重要役で登場。本家ではハブられていて可哀想な彼女に救いの手を。声と外見がそっくりですが、性格は本家とは逆。

 

 彼女はプリキュアではありません。つぼみみたいに祖母やご先祖がプリキュアでもありません。プリキュアではありません。大事な事なので2回言いました。

 それと村長さんの実子です。

 

戦闘初戦は、日本が完勝したルンガ沖夜戦。2戦目は引き分けのアッツ島沖海戦が元ネタ。(細萱中将が更迭されたのは史実)

 

第2章は残り2話で終了の予定。





1 史実では日本帝国最後の戦いシムシュ島の戦いで、ソ連軍と激戦。
2 WW2人外4人衆(プリキュアにインチキ無しで勝てそうな)
1 シモ・ヘイヘ 冬戦争で活躍したフィンランドの狙撃手
2 ヴァシリー・ザイチェフ スターリングラード攻防戦で活躍した、
  ソ連の狙撃手。映画「スターリングラード」では主役。
3 船坂弘 アンガウル島の戦いで活躍。
4 ハンス・ウルリヒ・ルーデル 世界で最も戦車を破壊した男。新米なのに一撃でソ連戦艦を大破着底させたり、30回撃墜されるもその都度生還したりと、嘘のような真実のエピソードがだらけ。5人目に英国のジャック・チャーチルを入れても良いかも。
「長弓」でドイツ兵を狙撃していたらしい。 
5 市になるのは昭和32年。
6 科学的根拠は無いらしい
7 姉に声がそっくりな艦娘 米空母《サラトガ》(2016年秋イベ最終面突破報酬)2 《神風型駆逐艦》2番艦《朝風》同じイベントのドロップ。3 《神風型》4番艦《松風》2017年冬イベント(2月11日)E2クリア報酬
8 昭和29年12月に最上川北側の村と合併し、町に昇格。
9 N〇Kの朝ドラにも登場している。
10 平成9年台風19号は、越境台風としては、珍しい本土上陸をし、かなりの被害が出ている。ハリケーンだったのはわずか数時間との事。


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第71話【成功すると、親戚と友人が増える】

図書館に行く(CVカネオ君)
地元の作者さんの作品コーナー(福井県)
「ん、この素晴らしい世界に祝福を作者さんって、越前市の人やったんか。ちょっと借りてみよー」
パラパラ
「面白い作品やなー。主人公が他の異世界転生ものにありがちなチートじゃないのが、新鮮で面白いなー。仲間が個性的なのもええで」

だが鹿士
カネオ君(涙目のバージョン)
「短編で、半日だけ日本に帰る話をあるんやけど、そこは秋葉原じゃ無く作者の故郷越前市か、福井市にして欲しかったなあ」

本作品はライトスタッフルール2015に準拠しております。


タイトルは元ネタは、銀英伝外伝「螺旋迷宮」で、英雄になってしまったヤン・ウェンリー少佐の独白より。




 

 

 

 

 横須賀から、南鳥島へ向かった輸送部隊と、トラックからウェーキへ向かった救援艦隊は、11月3日に日付が変わった直後、およそ40分の時間差で攻撃を受けた。何れも、朝には目的地に入港できる筈だった。

 

 

 

南鳥島救援艦隊

 

輸送隊《荻風》《嵐》(《陽炎型》)《江風》(《白露型》駆逐艦)

警戒隊 《時雨》(《白露型》)

 

 

ウェーキ救援艦隊

 

輸送隊

《天霧》《夕霧》(《吹雪型》駆逐艦)《卯月》(《睦月型》駆逐艦)

警戒隊

《大波》《巻波》(《夕雲型》駆逐艦)

 

 

 両方の艦隊は、完全な奇襲攻撃を受けた。(フレデリック・ムースブラッガー中佐及び、アーレイ・バ―ク大佐)《時雨》が、敵艦隊に気付いたのは、

前方を行く《荻風》《嵐》《江風》に、次々と米駆逐艦が発射した魚雷が命中した瞬間だった。《時雨》は最後尾にいた為に、運良く魚雷が命中しなかった。

 

《江風》は轟沈、《萩風》と《嵐》は航行不能に陥った。《時雨》は慌てて魚雷を討ちながら退避したが、一発も命中しなかった。30分後に魚雷を再装填し戻って来た所、既に米駆逐艦隊は立ち去った後で、《萩風》《嵐》も止めをされていた。《時雨》は、生存者を救助した後、作戦続行不可能と判断し撤退した。

 

 

《萩風》戦死者170名以上。《江風》艦長柳瀬中佐以下169名死亡 《嵐》艦長杉岡中佐以下178名死亡 

 

 

 ウェーキに向かっていた部隊も、魚雷が命中するまで全く気付かなかった。《大波》が轟沈、《夕霧》《巻波》が沈没。《卯月》(魚雷命中するも爆発せず)と旗艦の《天霧》は、辛うじて生還しトラック島に帰還した。

 

 

《夕霧》艦長尾辻中佐以下多数死亡 《巻波》艦長以下ほとんどの乗員が戦死。生存者は30名以下。《大波》生存者無し

 

《天霧》が発射した魚雷が、辛うじて駆逐艦《コンウェイ》に命中したが、無情にも不発魚雷だった。しかし爆発しなくても、被弾した駆逐艦は揺れる。この時機銃等に配属されていた、10名の兵士が海に投げ出された。

彼らは必死に泳ぎ、自艦のスクリューで粉砕されるのを免れた。しかし、船から大きく離れてしまい、戦闘中なので味方も彼らを救助しようとはしなかった。

 

 このとき一人の若い中尉が、必死に下士官や水兵を励まし、撃沈した日本側の駆逐艦から流れた浮遊物に捕まり、奇跡を信じて耐えた。およそ16時間後の夕方、10名は奇跡的に米潜水艦に全員救助された。若い中尉はリーダーシップを高く称賛され、戦後政治家になり16年後共和党の候補、リチャード・ニクソンを破り当時歳少年の合衆国大統領になる。(1)

 

 

 

 

 海軍は再び救援船団を派遣するつもりだったのだが、

「この際ウェーキ島は、放棄して守備隊は撤収させるべきだと思う。補給の負担や潜水艦の攻撃での、船舶や護衛艦の犠牲は少なくない」

山本大将は、復旧はせず放棄すべきだと主張し、一部反対意見も出たが、面積が狭く少数の航空機しか配備できず、(ゲームとは違うんです)大規模な艦隊が寄港できる入り江も無い。小笠原に近い、南鳥島は復旧させる事になったが、ウェーキ放棄は正式に認可された。

 

今度は重巡と航空母艦数隻を護衛に付け、ウェーキ島撤収艦隊には《金剛》と《榛名》も万一に備え同行させた。

 

 

 最初はプリキュアまでは、参加しなくても大丈夫かなと山本大将は考えていたのだ が、

 

 

「今度も米艦隊が攻撃して来る可能性があります。敵も空母を出して来る可能性を考慮すべきです」

「最初の救援艦隊を壊滅させたのは、主力艦隊を誘き出して叩くための罠とも考えられます」

と一部参謀が主張した。確かに焦るアメリカが政権維持の為に考えそうな話ではある。

 

 

 未だ迷いながらも山本大将は、プリキュアに打診してみたのだが、

「参加しまーす」

元々困っている人をほおっては置けないのがプリキュアなので、参加はあっさり決まってしまった。マナ王子パワーに押されたのが原因だがw

 

全チーム参加したかったが、くじ引きによりウェーキ島へはドキプリチームが、南鳥島にはアラモードチームが向かう事になった。

 

救援艦隊は11月12日に、両部隊とも横須賀から浦賀水道を抜け出撃して行った。

 

 

 

 

18日早朝 ウェーキ島

 

 

ありす

「今度は無事に到着できてよかったです」

真琴

「油断しちゃだめよ。帰りを攻撃して来る可能性もあるわ。途中何回か、潜水艦らしい無線も傍受してたみたいだから」

 

艦隊は攻撃を受ける事無く無事にウェーキ島に到着し、現在は救助隊の駆逐艦に守備隊員の収容作業を行っている。

《金剛》や空母などの護衛部隊は、環礁の外で米艦隊の出現に備え待機している。収容作業は正午までは終わる予定だ。

 

ありすと真琴は、ウェーキ島上空で空母から発進した戦闘機と共に待機して警戒している。マナと六花は地上で、負傷者の収容作業を手伝っている。

 

 

六花

「米海軍はなぜ攻撃してこなかったのかしら?」

マナ

「アメリカにも三度目の正直みたいな格言があるんじゃないの? もしくは潜水艦の潜望鏡から私達が見えたから、上の人……太平洋艦隊の偉い人が報告を聞いて、

危険だから攻撃はしないって事になったんじゃないの」

六花

「まあその可能性もありそうだけど」

マナ

「もしかして気分でも悪い?」

六花

「それは大丈夫。……なんかこの作戦に同行してから、どうも時々誰かに監視されている様な気がして」

マナ

「何と! 六花を狙う悪い虫が!」

マナは驚いて周囲を見るが、本土に生きて帰れそうなので、喜んでいる兵士や、マナ達に笑顔で手を振って来る人が良さそうな士官……しかいない。

上空を見ても、飛んでいるのはプリキュア以外では、上空警戒用の味方戦闘機や、対潜哨戒任務中の偵察機だけだ。

 

 

 

 

「えっ、大型の台風?」

マリアナ沖北西洋上で、発生した台風がこの時期にしては大型に発達し、小笠原方面に向かっているとの事。

「艦隊を直接日本本土に向かわせると、この台風に突っ込んでしまうから、艦隊は一旦マリアナ諸島方面に迂回するんだってさ」

 

容態が深刻な、重傷者や重病人は海軍が9月に実戦配備した、大型輸送用飛行艇から、旧式の飛行艇までをかき集めて重病人は、台風が来る前に横須賀へ急送。

中程度の患者や負傷者で入院が必要な人は、一旦サイパン島の病院に入院させる事が決定した。

 

マナ達プリキュアも、休息の為にサイパン島に向かうように指示が来た。艦隊が日本近海を離れてから、いつ米海軍の攻撃があるかと、緊張を緩める時間も無かった。

攻撃は一度も無かったが、何度か潜水艦のレーダー波や、無線をキャッチしていた。

 

 

マリアナ諸島への航路も、運良く潜水艦の攻撃も無く無事到着し、マナやいちか達は一週間ほど滞在し、完全回復した。

 

彼女達が、本土に戻る際海軍は、味方の誤射を避ける為に、暗号で本土に通知を事前に出した。数人規模以上で長距離を移動する際は、対空砲などでの誤射を避ける為に、事前に海軍が通知する事になっていた。

 

 

 

ここで時系列は二月ほど遡る。

 

 

9月15日 英国南部航空基地

 

 

 ジミーは、自分一人だけが叙勲や昇進したことに不公平だと考え、何とか仲間達にも昇進や勲章が授与されるように、実家にお手紙を書こうとした矢先、何と上の方が先に動いた。

欧州軍派遣軍総司令官、アイゼンハワー大将が叙勲の見直しを提案し、それによりラル機残り全員(ジミーの補充に入った搭乗員以外)も、昇進と叙勲が決定した。

更にラル機乗員達は、本国の実験航空隊への異動が内示された。実験航空隊は、主に新型機のテストを行う。

 

その日、ラル機はドイツ北部の港湾都市ブレーメンへの爆撃から無事生還した後でその通知を受けた。本来はテストパイロット部隊への異動は、別の機長に出される筈だったのだが、内示が出る直前に、ドイツへの爆撃任務で戦闘中消息不明になってしまい、次点候補だったラル大尉が繰り上げされた。

 

 

 

翌日夜 基地司令主催の送別会が開かれた。

 

「コズン昇進おめでとう」

「今度2人目が生まれるから、仕送りが増えるのは助かるね」

「テストするのは、噂の超重爆じゃないかな?」

「《B-29》より一回り以上でかいらしいから、翼の上でバーベキューが出来そうだぜ」

テストパイロットに選ばれるのは、優秀な登場だ。だから、選出されたと言う事は一流のクルーと認められる事なので、仲間達も喜んでいる。

 

ラル大尉(昇進は来月1日)は、

「本土へ帰還したら、全員に10日ほど休暇も出るらしい。コズンも生まれた二人目の顔を見たいだろうし、俺も含めて全員家族サービスの一つもしないとな。それに、本土勤務だからクリスマスもあいつらを家族の元に

返してやれるかもしれん。そういえば、ジミーは恋人の一人はいるのか?」

「うーん残念ながら……」

「ま、そのうち良い出会いもあるぞ」

 

 

「昇進おめでとう」

相手を見たジミーは慌てて敬礼した。その人物はあのカーチス・ルメイ参謀だったからだ。

「君に対しつまらん陰口を叩く輩もいるが、気にしちゃいかんぞ」

確かにジミーに対し、

「新米が偶々幸運に恵まれただけ」

と言う悪口もあるが、ジミー自身も「多分に幸運に恵まれた」と考えていたので、別に怒りは無かった。

「こんなご時世だ、実力も必要だが運も多少は無いと長生きは出来ない。どんな優秀な戦闘機搭乗員も、運悪くドイツの新米パイロットが適当に撃った流れ弾をまともに2、3発喰らったら墜落だ。ラッキーだったとしても、敵の撃墜王を仕留め多くの仲間の仇を打った事実は変わらんから、堂々としていろ」

「ありがとうございます」

「広報の仕事は、前線の兵士の活躍を国民に知らせる重要な仕事だから頑張ってくれ。まあ、帰国した直後から最前線が懐かしく思えるかもしれんがね」

最後は意味深な笑みを浮かべて、今度はラル大尉に話しかけている。

 

「大尉のチームの様な優秀なチームが抜けるのは、大変に惜しい事だと思う」

リップサービスでは無く、どうやら本当に惜しんでいるように聞こえる。

「また機会が有れば、何処かの最前線でお会いしましょう」

 

 18日に、ジミーとラル機乗員一行は基地を離れ、鉄道で港があるリバプールへ向かった。20日にジミーは大型客船で、他の一行は翌日に出る軍用輸送機で米本土へと向かう。

ジミーだけ大型客船なのは例の不思議な忖度で、20〇1年流行語大賞にノミネートしなかった、『何とかパワー』の様な、謎の力では無い。手違いでジミーだけ輸送機の枠から、漏れてしまったからだ。

 

この当時大型客船で一隻で、1万人以上の兵員を運べるので軒並み海軍に徴用されていた。ジミーが乗る客船は、速力が28ノットと新鋭戦艦並みの高速が出せるらしい。

 

 18日の夜最後に、仲間だけで食事会をして別れ翌日の昼に、客船に乗り込んだ。他にもジミー同様転属で本土に帰る兵士や、負傷して除隊する人や、戦地を訪問していた慰問団の歌手達、それに新聞記者等が多数乗船していた。

 

「えっ、単独で航行するんですか?」

「高速が出るからその方が安全なんです。他のタンカーとかは半分くらいの速力ですからね。むしろ一緒に航海する方が危険なんですよ」

乗員の説明によると、高速が出る客船は原則単独航海なのだそうだ。ちなみに航海中は何が有っても船を止めるなと言う厳命が出ているそうだ。

「一番辛いのは、他の船団が潜水艦の攻撃を受けて、救助を求める通信を傍受した時ですね。味方を助ける事も禁止されていますので」(2)

この船から、誰かが海に転落しても見殺し確定だ。だから風の強い日などは注意して欲しいとの事だ。

 

 

 20日早朝客船は、埠頭を離れた。

「港の近くでは、護衛も付くのですか」

「港に出入りする時や、近海じゃ最高速度で突っ走る訳にも行きませんしね。他の船も一杯いますから、広い海域に出るまでは英海軍や、アメリカさんの護衛が付きます」

なるほど、リバブール近海のアイリッシュ海は狭い上に、米英間の輸送ルートの重要航路だ。他の輸送艦やタンカーの他に、それらの護衛艦が何隻も見える。

他にも、民間の漁船やマン島や、アイルランドを結ぶフェリーらしき船も一隻確認できた。

 

 

「戦争が始まった最初の頃は、未だ護衛艦などの数が足りなくて、この近海でも何隻もの輸送船がナチのUボートにやられたんですぜ」

説明したくれた大男の船員も、開戦数か月後に英国近海で、乗っていた輸送船を沈められ、九死に一生を得たのだそうだ。

 

 2時間後、アイルランドと英西岸を分かつセントジョージ海峡を通過し、昼過ぎには十分に広い海面に出た。

 

「間もなく、3分後に当船は全速航行に移ります。乗船者の方が万一海に転落しても、一切停船する事はありませんので、ご注意ください。繰り返します……」

3分後、ぼぉおおおーと言う汽笛が響き直後、後ろから押されたような感触を感じた。船の速度が急上昇したのだろう。

 

再び汽笛が鳴り響くが、これは恐らくリバプールから外海入り口まで、護衛してくれた英海軍の哨戒艇に対する感謝の挨拶だろう。

 

 

周囲を見ると、船員や他の乗客たちも哨戒艦に手を振ったり、敬礼して別れの挨拶をしている。ジミーも彼らを見倣い、敬礼をする。

(1年ぶりの本土帰還か、また可能なら最前線に戻りたいな)

 

 

 午後、広報としての最初の仕事として新聞記者のインタビュー受けた。かなり有名な記者だったので、緊張したが何とか終える事が出来た。

 

 

 翌日晴れていたので、甲板に出てみる。ちなみに万一に備え救命胴衣は携帯している。北の方を見ると、一機の大型機が東から西に向け飛行しているのが見えた。

(爆撃機か、輸送機かは距離が有って判別できないけど、輸送機なら大尉達が乗っているかも)

と思い手を振っていると、

 

「突然船が針路を変える事があるから、気を付けた方が良いよ」

昨日取材を受けた、記者が話しかけて来た。

「あっ、昨日はどうも」

「いやこちらこそ、良い記事が書けそうだよ。おっと船の事だけど、潜水艦の待ち伏せを防ぐ為に、船は不定期に針路を変えるんだ」

「確かに直進だけでは危険ですね」

針路を変えるのも、パターンを読まれると危険なので、不定期に針路を変えるらしい。

「針路を変える直前には汽笛や、船内放送で知らせてくれるけど、緊急時には突然針路を変える事もあるから」

「落ちたら終わりですから気を付けます」

 

今日は晴れているので、外気温は12度くらいはあるかもしれないが、恐らく海水の温度は5度くらいしかないのではと思う。

この船は客が落ちても止まる事は無い。偶然近くに英米海軍の潜水艦が居て、潜望鏡で人が落ちるのを目撃していたとか、上空を飛んでいた飛行艇(海面に着水できる)が人が落ちるのを目撃していた等の奇跡が起きない限り、恐らく30分でアウトだろう。

 

 

「しかし、この船が針路を変える正にその瞬間こそが、一番危険かもしれんぞ」

「どういう意味ですか?」

「君が山道をドライブしていたとしよう。カーブではブレーキを踏むだろう?」

「ああなるほど」

カーブを曲がる時、飲酒運転や自殺志願者か銭型のとっつあんから逃げている、ルパン3世でも無い限り、ブレーキを踏んで減速するだろう。この大型客船も、針路を変える際には減速する必要がある。

もしその時、偶然近くにUボートが居て優秀な艦長が指揮を執っていたら……

 

 

そんな話を聞いたせいで、船が針路を変える度に、びくっと震えてしまった。

 

 

 結局一度も、魚雷が来ることも潜水艦の潜望鏡が発見される事も無く、客船は4日目の夜8時にニューヨーク港に到着した。本来は日没前の午後4時入港予定だったが、不運にも、港の外で大型貨物船が火災事故を起こし、消火が終わるまで入港できなかったのだ。

 

大勢の乗客と共にフェリーターミナルに入って行くと、大勢の新聞記者とその相棒らしいカメラマンが何人も並んでいるのが見えた。

(同じ船に、戦地の慰問団も乗っていて有名な歌手やコメディアンもいた筈だ)

慰問団は英本土に展開する、合衆国陸軍航空隊の基地を廻り、歌やショーで兵士たちの士気を高めている。確かに記者の半分ほどは、

慰問団の歌手などの方に集まっていて、歌手等も笑顔で取材を受けている。が、残り半分ほどのカメラマンなどは動かず、誰かを探している様だ。程なくその中の一人が、こちらに気付き……

「ジミー・フォスターさんだ」

その声に気付いた、他の記者たちも一斉に同じセリフを口走りながら、こちらに走って来る。

(どうやら同じ船に、同姓同名の有名人の人が乗っていたらしい。誰だろう? 歌手かコメディアン……有名な従軍画家……

ジョセフ・ケネディ前駐英大使の次男みたいに、有力者の子息だけど、軍に志願して前線に向かった人だろうか?)

もし、同姓同名のジミーがそういう勇敢な人で、後に大統領選挙に出たら必ずその人に投票するぞとか考えていると、記者たちは、ジミーのそばに集まり写真を撮影しだした。

 

(もしかして俺目当てですかー!!)

 

この時、送別会でのルメイ参謀が別れ際に言った台詞を思い出した。ジミーは即回れ右をして、英国の最前線に戻りたくなって来た。

(どこかに英国行きの客船はないかな?)

 

だがそんな事が許される筈も無く、

(納税者である合衆国市民への義務だと思って諦めよう)

 

 

そ の数日後から、ジミーは疾風怒濤の戦場に放り込まれた。枢軸国の銃弾の代わりに、カメラのシャッターの閃光や空虚な美麗字句が飛んでくる、異質な戦場に。

祝勝会、戦没者慰霊式典、ウェストポイント士官学校に招待されてのスピーチ、パーティー(出席者に気持ちよく戦時国債を買って頂く為の)、それらの合間の、取材取材……

 

 

(成功者には、大量の親戚と友人が生まれる事になる……とはよく言ったものだ)

 

「私は君が幼少の時から、君が名を成すような人物に育つと確信していたんだ」

(この人親戚らしいけど、会った記憶も無いなあ……いや一度くらい会った気もする)

他にもほとんど私的な会話も無かった同級生が、親友だと言っていたりもした。

 

無論本物の親友や兄や父親が

「お帰り」

とか

「良く生きて無事に帰って来てくれた」

と言った時は素直に喜んだ。

 

 

 9月の末に改めて、医師の診断を受け数日後に……

「前線勤務に戻って差し支え無し」

という診断結果が出た。それを基に陸軍人事部長キーツ中将と談判した結果、

「年末までは広報部で、PR活動を行う」

と言う事を許可して貰った。その後は希望すれば前線勤務も可能と言う事になった。

(とは言え戦死の危険が高い、独本土やイタリアを爆撃している部隊への異動は、なまじ有名になってしまったから認めて貰えない可能性も高そうだなあ)

 

 

戦死の危険が低い、モロッコやハワイ辺りの部隊に栄転と言うあたりが上層部の考えている、シナリオではないかとも思う。

 

 

 10月も半ばに入り、ようやく一段落なりジミーは、2週間の休暇が与えられ故郷ニューハンプシャー州へ帰郷した。

とはいえその内の半分ほどは、地元でのパーティー(こちらも戦時国債を買わせる為の)や、州知事や故郷の市長に対する表敬訪問や、卒業した学校での講演会

等の仕事が入っていて、休めたのは一週間程度だ。

 

その後、ラル少佐と約束した通りゴードン中佐(戦死による2階級特進)の実家の墓参りに向かった。ジミーにとってはこの近辺は庭の様な物なので、報道関係者の目を

誤魔化す事は容易だった。

 

 

 

 11月7日合衆国大統領選挙が行われ、史上初の4選を狙う現職のフランクリン・ローズベルト(民主党)と、トーマス・デューイ候補(共和党)

で争われた。プリキュアが存在しなければ、現職の圧倒的大差での再選だっただろう、しかし太平洋戦線での大苦境や、オアフ島軍事施設の壊滅等で大接戦となった。

デューイ候補は、日本とはこれ以上の犠牲を出さない為にも、名誉ある停戦も検討すべきだと主張し、一時はローズベルト再選危うしという見方もあったが、

枢軸国の一角イタリアが脱落した事が評価され、選挙人獲得数300対231で、再選となった。

 

しかし、ローズベルトは選挙戦終盤、激戦州に連日テコ入れに行かねばならなくなり、著しく健康を害する事となる。

ローズベルト大統領のHP45→25(3)

 

外務省より報告

 

アメリカ合衆国のイベント

 

アメリカ大統領選挙(1944年)の結果において

 

フランクリン・ローズベルト(民主党)

      を

選択したとの事です

 

 

12月10日 夜8時 上野駅

 

 

里美

「ええーっ、ありすおねえちゃんも私みたいに、病弱だったの?」

彼女の大声に、周囲にいた駅員や客が驚いて立ち止まった。

ありす

「本当です。幼いころは病気がちで家の中にずっといました。6歳の頃チョウチョを追いかけて、お屋敷に迷い込んだマナちゃんと出会い、六花ちゃん

と外で遊ぶようになって、健康になったのですわ」

 

健康になった後、武道等も学び「武神ありす」と呼ばれるほどに強くなった。里美もプリキュア達と、一緒に過ごしている内に健康状態はかなり改善された。

むしろ北海道民の血を引き、寒さへの耐性がある彼女に比べ、一部の現代日本の暖冬に慣れたもやしプリキュアの方が、この世界に来た直後は風邪を引いたりしていたほどだ。

 

いちか

「でも、ここ数日日本全国……北海道を除いて、異様に暖かいって聞いたよ。最高気温10度越えだって」

ひまりん

「まるで温暖化が進んで21世紀みたいです。東北じゃ平地の雪が全部溶けてしまったそうです」

マナ

「雪合戦とかはしばらく無理そうだね」

 

 10日ほど前に、北日本や北陸ではまとまった雪が降り、山形や新庄では一時20センチにまで達したが、この異様な高温や、雨で山間部を除いて溶けてしまっていた。

「おはよう今日も妙に暖かいねえ」

「おはようございます。まるで3月位の気温ですよ」

と言う挨拶を交わすのが、雪が降っている北海道や年中温暖な、小笠原、南九州、高知、沖縄、日本領台湾以外の日本本土でのここ一週間ほどの通例になっていた。

 

 

「ばかー」

「バカっていう方がバカなんだぞ」

ふと見ると、一家で地方に避難するのか裕福そうな一家がいて、幼い兄弟が言い争いをしている様に見えた。マナが即止めに行こうとしたが、ありすが止めた。

よく見ると、ケンカでは無く兄弟でちょっと遊んでいるだけの様だ。

 

ひまり

「いちかちゃんどうしたんですか?」

いちか

「もう一年前の事になるけど、南方から東京に帰ってきた直後に見た、変なカラス……皆は疲れていて変な夢を見たっていうけど、あれはやっぱり現実だった様な気がしますぞ」

里美

「いちかおねえちゃん、カラスは喋れないよ。それにお姉ちゃんをバカにするカラスなんて許せないよ」(4)

うれしくなってハグしてあげるいちか。

「でも私も変な夢を見たの」

マナ

「どんな夢?」

里美

「いちかおねえちゃんと、ひまりおねえちゃんが、海沿いの見た事も無い凄い建物のホールで、外国のダンスを踊っていたの。他に一緒に3人踊ってたよ」

ありす

「外国のダンスと言うと、フラダンスとか? ちなみに二人は経験はあるんですか」

いちか

「無いよー」

ひまり

「ありません」(5)

マナが何か言おうとした時、帝国海軍の山谷少佐(海軍軍令部参謀)が、やって来た。

 

「夕食用のお弁当を用意しました。お茶とミカンもどうぞ」

ちなみに史実同様、「贅沢過ぎる」と言う理由で、6月末に一等車や食堂車は廃止された。

一同

「ありがとうございます」

「念の為に、田中少尉と小沢曹長が同行します」

 

 山谷少佐は、声のトーンを落としさりげなく少佐の右斜め後ろを指さす。そこには、国民服を着た3人ほどの男性が、

本を読んだり、新聞を読んでいたりしている。

「万一……危険は少ないですが、私服の護衛を同行させます。顔と名前はここで暗記して行ってください」

山谷は裏面に、名前が記載された写真を見せた。マナ達は、そこまでして貰う事に少し罪悪感を覚える。

 

「あ、いや皆さんの安全を守る事も仕事ですから。それに現地の安全確認も命じられてます」

ひまり

「安全確認?」

山谷少佐によると、田舎は国道や主要県道級の道はともかく、小さい道などは橋が古い木造と言う事も多いので、それらの橋が傷んでいないかとかや、

悪用されると困る空き家などがあるかなどを調べるらしい。刺客等は非現実的だが、性犯罪者とか全国を移動する、空き巣などが空き家を悪用する危険はある。

 

 いちかとひまりは、明日夜に新庄を出る上野行き夜行急行で帰るが、マナとありすは数日間川方村に滞在する事になった。その後は、プリキュアの子が数日から一週間交代で、数人は村に滞在する事になっている。

 

 川方村は、奥州街道(福島→米沢→山形→新庄→久保田 国道13号線のルート。久保田は現在の秋田市)と、陸羽街道(仙台→古川→鳴子→川方→余目・酒田 現国道47号線)が分岐する要所で、最上川の船便の積出港もあった、宿場町もあり何軒かは江戸自体から続く旅館が有るので、そこに宿泊する事になっている。

 

「あっ、彼ら私服軍人とは、緊急時以外は他人の振りでお願いします」

 

田中少尉

「後10分で出発時間です。汽車に向かいましょうか」

 

 

 

 

12月9日午後6時(米東部標準時) ワシントンDC 某ホテル

 

 

 ジミ―は昨日、ラジオ番組にゲストの一人として出演した。番組は何人かの専門家や軍人が出演し、今後の戦争の流れを予測し討論した。

(何とか無事に終わったか。最初の頃に比べるとだいぶ慣れてきてしまったなあ)

一応広報の仕事は年末までで、その後新年の休暇の後次の辞令が出る筈だ。昨日ラジオ局での収録の後、近くのホテルに宿泊した。ランクとしては中の上で軍人や報道関係者の利用も多いそうだ。

 

  

 朝食を食べる為に、一回のレストランに向かって歩いていると、一人の客が小走りで彼を追い抜き、カウンターでチェックアウトをして、慌ててホテルの外に出て行く。

(?)

 

 レストランに入り、ボーイの案内で席に着く。注文しようとすると、レストランにある電話に外から呼び出しが有った様だ。店員の言葉から新聞記者の様で、隣の席の客が電話機に向かい、

30秒ほど……おそらく新聞社と通話していた。通話を終えるとその人は、手付かずの朝食をそのままにして、清算し店を出て行った。

「ジミー君じゃないか。奇遇だね」

「おはようございます」

以前取材を受けた例の記者だ。どうやら仕事で同じホテルに宿泊していたらしい。

「何かあったんですか? 記者の方が何人も急いで生産して出て行かれましたが?」

「大事件だよ。まだ正式な発表は無いが、国家元首が急死したらしい」

「もしや、ローズベルト大統領?」

大統領選挙はかなり激戦で、連日応援に回っていた大統領はかなり疲労している筈だ。急病死してもおかしくは無い。

(確か、100年程前に当選の直後に急死した大統領が居た筈だ)

「ああ、誤解させてしまったかな。急死したのはソ連のスターリン首相だよ」

「本当ですか! 何時の事です?」

「昨日の昼……現地時間での事だが」

「ドイツ側の暗殺もしくは、空襲に巻き込まれたのでしょうか?」

「詳しい事はまだ判らんよ。では急いでいるの失礼する」

彼も朝食の大半を残し、会計を済ませると、即座に出て行ってしまった。

 

 

 

 再び上野駅

 

 

 山谷少佐は、ホームで夜行が発射するのを見送り、改札を抜けて駅舎に戻る。

(軍令部に戻って夜食に茶漬けでも食うか)

駅前に待たせている、車に乗る為に入口へ向かっていると……

 

「少佐!」

「どうした? 宮武中尉ではないか」

「外務省から、海軍省に緊急連絡がありまして、少佐にも至急軍令部にお戻り願います。ところで、青森行きの夜行は今出た所ですか?」

「おう、つい5分ほど前だ。汽笛が聞こえなかったか?」

「ああ、先ほど聞こえたのがそうでしたか」

「緊急連絡とは何だ? 他のプリキュアの子に何かあったのか?……いやそれは違うな」

他のメンバーに、急病人でも出たのなら、外務省から海軍に連絡が来ると言った可能性は無い。

 

「少し向こうで、ここは人が多いですから」

宮武は、コンコースの隅の方に行く。

「昨日の昼、スターリンが急死したそうです。未だソ連政府の正式な発表はありませんが、佐藤尚武駐ソ大使が知人のソ連政府高官筋から伝えられたそうです」

「何だとそりゃ本当か。ドイツ軍の攻撃か? いや不満分子がテロでも起こしたか」

「詳細はまだ不明との事です」

 

 スターリンは、近代ソ連軍の父と呼ばれたミハエル・トゥハチェスキー元帥や、政敵のレフ・トロッキー等を多数粛清・暗殺している。トロッキーはソ連を追われた後、わざわざ亡命先のメキシコに暗殺者を送り込んで暗殺している。

粛清の犠牲者は一般市民にまで及び、その犠牲者総数は少なくとも数百万に及ぶとも。(6)

 

そんな訳で、独ソ戦開始後ドイツ軍に協力するソ連市民も少なくなく、捕虜にしたソ連兵の一部から志願者を募り、「ロシア解放軍」を編成し、捕虜にしたソ連将軍ウラソフ中将なるものを司令官に任じ、占領地区の後方警備や治安維持任務に従事させているそうだ。

 

 

「取りあえず軍令部に戻って、状況を確認しよう」

どうやら夜食を食べている時間は無さそうだった。

 

 

 

では皆さん良いお年を―。真恋姫呉国編と、魏国編が終わったら次回投稿します。

ローズベルト大統領の残機が遂に3割を切る。史実でもこの頃かなり健康を害していた。

 

デューイ候補が当選していたら、停戦の可能性もあったんだが・…・

 





1 ジョン・F・ケネディの事 魚雷艇艇長として、ソロモン海で行動中駆逐艦《天霧》と衝突し、漂流し無人島に漂着。ヤシの実の内側に救助要請を掘って放流。その後拾った人が軍に、届け解け無事救助。

2 1942年10月アイリッシュ海で、英軽巡《キュラソー》と衝突した時も、停船せずにとんずら。《キュラソー》は轟沈し、7割の乗員が死亡。戦後船会社に賠償金が払われた。

3 史実では大勝利

4 ご本人……いや本カラスによると「バカー」は大好きだよと言う意味らしい。

5 映画「フラ・フラダンス」にいちかとひまりんの中の人が。他にもことはと、ユニも登場。



6 先日もウクライナから、ソ連に処刑された民間人200人ほどの遺骨が発見された。


越前市で建設されていた北陸新幹線の新駅、外観はほぼ完成。水田の中にあります

駅名は『越前たけふ駅』国道8号線からよく見えます。反対側は山が有り、接近不可能。


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第72話【やっとE-3(難易度甲)最終ゲージ割りました。(副題知り過ぎた男は大抵死ぬ)

この作品は、らいとすたっふルール2015に基づいています。



チコ
「ねえねえ、まどか。軍用機生産機数ランキングと、戦車生産台数ランキングで一位の国は何処? ちなみに同じ国です」
まどか
「それは種類ごとって事です?」
チコ
「そうです、《Ⅳ号戦車》とか、《銀河》とか」
まどか
「やっぱりアメリカ合衆国では」
チコ
「なるほど、それが答えちっ、つま……ぼーっと生きてんじゃねえよ!」スピー
まどか
「ええっちがうんですか!」
チコ
「どっちもカチューシャの出身地です」(ガルパン)
ユニ
「ソ連人では無いニャン」

戦車の生産数
《T-55》     ソビエト 10万両
《T-34》     ソビエト   6万4千両(T-34/85含む)
《M4シャーマン》 アメリカ合衆国 50000両
《T-72》 ソビエト 2万5千両
《T-62》 ソビエト 2万両
《M-60パットン》 アメリカ合衆国 1万5千両
《M-48パットン》 アメリカ合衆国 1万2千両
《T-26》 ソビエト 1万1000両
《M-1 エイブラムス》 アメリカ合衆国 1万両
1 4 5 6 7 8は戦後(某軍事サイト調べ)

ひかる「半分以上がソ連の戦車だ」
1 4 5 6 7 8は戦後
チコ
「軍用機も、1位はソ連の対戦車攻撃機《シュトルモビック》次はドイツの《Bf‐109》戦闘機、英空軍の《スピットファイヤ》戦闘機と続きまして、
アメリカは6位の《B-24》爆撃機が一番多い。ちなみに日本で一番多いのは、《零戦》です」(Wikiより引用 セスナや練習機は除外)

エレナ
(それよりもタイトルが、完全に作者の愚痴だね)
オヨルン
(装甲破砕完了後、5連続道中大破撤退したらしいルン)
空襲マス1 潜水艦マス1 Rマス(重巡の雷撃で大破)4







 

今日は番外編もあります

 

 

 

1944年 12月1日

 

ソ連首都モスクワ クレムリン宮殿

 

「以上が本日のご予定でございます」

 ソ連首相スターリンの秘書室長50代後半のコンドラトヴィチ・クラコフは、予定表の綴りを閉じ退室しようとした。が、スターリンが片手を上げたので1歩ドアの方に、動いた所で足を止めた。その仕草は「待て」と言う意味だからだ。

「お前が私に仕えてもう何年になる?」

「あと半月で18年になります」

 

 クラコフはスターリンの身の回りの世話や、秘書業務を務める部署のトップで、側近の一人とされていた。他に薬剤師としての資格が有り、薬を調合する事もある。他にはスターリンの夜食や幹部会議の時に出す軽食を調理するのも、仕事の一つだ。前任者が引退した時、スターリンが試しにクラコフに作らせたら、予想外に美味だったので彼の業務になった。

 

「もうそんなになるか。ところで数日前、ミンスクで反ナチゲリラ部隊が襲撃され、ほとんどが殲滅された。捕まった者もことごとく銃殺されたそうだ。知っておるか?」」

「はい、処刑された同士人民の中には、10代の少年少女も含まれていたとか。許しがたい蛮行です」

「うむクラコフお前は、ソ連邦とソ連人民に対する忠誠心は持っているか?」

「無論です」

「うむ、では明日にでも最前線に向かうのだ。君は薬剤師の資格もあるから、軍医の補佐が出来る。最前線で同士を救うのだ」

スターリンやにやりと笑い、無慈悲にそう告げる。

 

(来た! 忠誠心テストだ)

 スターリンは、時折このように部下の忠誠心をテストする。この時躊躇したり、不満を見せたりすれば、即座に処刑やシベリアで木を数えたり、金鉱山での重労働が待っている。

「首相閣下が命じるのであれば、即座に最前線に赴きます」

 

 無論そんな気は全く無い。何故安全なモスクワからこの年になって最前線などに行かねばならないんだ。

クラコフは、10月革命や王党派との内戦時には、下士官として参加し、彼自身も最前線で戦った。

 

 その後、引退しとある軍人の元で秘書を務めていたが、その軍人が亡くなる際にスターリンへの紹介状を書いて頂き、その後スターリンの元で長年秘書をやっている。

 

クラコフは自分自身を、凡人だと見做している。三国志演義に出る魏延の様な危険な野心は無いし、キングダムの呂不韋の様な才能も無い。無論、クトゥ―ゾフ将軍のような軍事的才能も無い。(1)

 

だが、スターリンに長らく使えているので、スターリンが今何を望んでいるかは正確に判断できる。

 

 

 ソ連においては、才能が有る事が幸福とは限らない。この10年でいったいどれほどの人間が、ドイツや日本のスパイの容疑で処刑されたり、シベリア送りにされただろうか。その数は10万20万では到底足りない。恐らく数百万を超えるだろう。

 

 

 近代ソ連軍の父と称された、ミハイル・トゥハチェスキー元帥も処刑され、大佐以上の高級軍人は実に6割が処刑された。ソ連軍はぼろぼろになり、1939年末の冬戦争でフィンランド軍に大苦戦したり、独ソ戦序盤で大敗北を期した大きな原因となった。だが最も逆に多くの上官が粛清されたので、結果的にその下にいた、名将ゲオルギー・ジューコフの様な優秀な軍人にチャンスが巡って来た。(2)

 

粛清は、作家や、植物学者、経済専門家に及んだ。戦後ソ連のロケット開発の第一人者になる、セルゲイ・コロリョフは同僚の嘘の密告で8年の間シベリアに流刑にされた。

 

 

 スターリンは家族でも容赦しない。スターリンの最初の妻は日露戦争の頃に病死し、1919年にナジェージダ・アリルーエワ(19歳)と再婚した。彼女の父親はスターリンの友人だった。

 

彼女は、1932年の11月に粛清やソ連の飢饉の事で夫と激しく口論の挙句、ピストルで自殺した。クラコフはその日は非番で不在だったのだが、個人的にはスターリンが不倫を知られたので殺したのではと疑っている。

 

 

 先妻との間に生まれたヤーコフ・ジュガシヴィリとの関係も非常に険悪だった。ヤーコフは電気技師から、士官学校に入り30歳の時にソ連軍人になる。独ソ戦が開始されると容赦なく最前線に送られた結果、2週間後にベラルーシで捕虜になった。

第三帝国は、中立国を介しスターリングラードで力尽き捕虜にされた、フリードリヒ・パウルス元帥との捕虜交換を提案するが……

 

 

六花先生

「スターリンは即座に拒絶したそうよ。『何処の世界に、元帥と中尉を交換するバカが居るのかね』と言って拒否したわ」

真琴

「いくらなんでも冷たすぎるわね」

六花

「ヤーコフは自暴自棄になって、脱走を試み射殺されたとWi〇iに書いてあったわ」

真琴

「哀れね。死に場所を探したのだと思うわ」

 

 

スターリンはその事を知り流石にショックを受けたされているが……

クラコフや、スターリンの側近たちはほぼ嘘だと思っている。

 

「君はここで私に仕え続けるのは、望まないのか」

「いいえ、無論閣下をお支え続ける事が第一の望みです。だが、最前線に赴き人民同志と共に苦楽を共にし、彼らの手助けをしたいと言う熱い想いもあります」

後半は真っ赤な嘘だ。ソ連だけにw 

「私を見捨てないでくれ。君の忠誠心を疑った事は一度も無い」

(どうやら今回も生き延びた様だ)

 

 

 スターリンの様な独裁者の下では、野心家は長生きできないがかといって、清廉な人もかえって猜疑心を持たれて粛清される。凡人や小悪党や小心者の方が生き残れる。

クラコフも、親族や友人に頼まれて安全な仕事を斡旋したり、それらの家の子供が最前線では無く、安全な後方勤務に着けるように手を回して、その見返りに金銭などを受け取っている。

(恩を売っておかないと、セルゲイ・コロリョフみたいに、嘘の密告で逮捕される危険もあった)

 

 

 

数時間後

 

「実は末娘のクラーラが風邪をひいたと連絡があってな」

「本当ですか? 心配ですね」

クラーラはスターリンが若い愛人に産ませた女子で、今年7歳になる。性格はスターリンの事は思えないほど優しい子なので、今言った、心配ですねとの発言は真実だ。

スターリンも太閤秀吉が晩年に淀君に産ませた、お拾(後の豊臣秀頼)を溺愛したように、クラーラを溺愛していた。1941年9月以降は安全の為に、モスクワより北東に850キロの位置にあるクィビシェフに疎開している。一部の政府機関や軍需工場も、モスクワより東のウラル地方に疎開していた。

 

「いや、重症では無いみたいなんだが……念のために、まあ一週間ほど様子を見てきてくれ」

「了解しました。早速準備します」

 

 往復はシベリア鉄道の夜行を使うので、うまくいけば10日程度はスターリンと顔を会わせずに済む。内心飛び上がらんばかりに喜んだ。まず、荷造りと共に代理のカーメネフに、指示書を渡しておく。それにはスターリン首相の食事の好みや、酒量や出すべき薬の量等が細かく書かれていた。

 

 

カーメネフは、モスクワの大学にある医学部を好成績で卒業した俊英だったので、大丈夫だろうと思っていたのだが……

 

 

 

 12月7日の昼過ぎになっても、スターリンが起きて来ないので、警備兵が室内に入ると、スターリンは寝室で昏睡状態に陥っていた。

警備兵は、スターリンの叱責が怖く昼になるまで、室内に入るのを躊躇ったのが致命的だったとされる。意識が回復する事は無く、およそ10時間後の午後10時に死亡が確認された。

 

 

 クラコフは同日夜に、直ぐにモスクワに戻るように言われ、夜行列車に乗った。死亡の事を知ったのは翌日の昼だった。

 

死因は前日の深酒の他に、カーメネフが薬の量を間違えた事が原因と判明した。クラコフは事前に細かい指示書を渡しておいた上に、その指示書のコピーも念の為に作成しておいたのが功を奏し、責任は全てカーメネフと警備担当者の責任とされた。

 

 

 警備兵数名は、即座に最前線送りになり2週間後に戦死した。彼らの上司は、中部シベリアの捕虜収容所の警備責任者に左遷された。(命があるだけまし 10年後帰還)

 

カーメネフは、シベリアの金鉱山送りにされたのだが、彼の末路は不明だ。

 

モスクワ市街の東にあるヤロスラブリ駅で、護送車から引きずり出され、シベリア方面行の囚人列車に乗せられた所までは、目撃されている。泣きわめいて助命を請うていた様だ。

 

 入れ違いに、シベリア方面から戻ってきていたアメリカ人の新聞記者が、見張りの目を盗んで隠し撮りし、数年後写真はアメリカの新聞に公開された。

その後は、途中で射殺されたとも、金鉱山で他の囚人に殺されたとも、辛うじて脱走するも、リアルサーバルちゃん……はロシアにはいないので、シベリア虎の晩御飯にされたとも……(3)

 

 

スターリン死亡の発表は、日本国内では10日の午後6時のニュースで発表された。

 

 

真琴

「六花、スターリンは戦争終わる前に死んでしまったの?」

六花先生再び

「違う筈よ……戦後の筈だけど……確か朝鮮戦争の、休戦協定が締結されたのが、1953年の7月(昭和28年)だけど数か月前に、スターリン首相が病死して、ソ連からの支援が難しくなって、北朝鮮の後ろ盾で義勇軍を派遣していた、中華人民共和国の毛沢東主席が休戦に合意した事で、一気に休戦に向かって行ったのよ」

真琴

「じゃ史実では昭和27年の年末から、28年の冬頃に死亡したのね。ちなみに次の首相はなんていう人なの?」(4)

六花

「史実ではフルシチョフだけど……」

 

 

 

フルシチョフは、軍のお目付け役である政治委員で、スターリングラードでは、自身も兵士と共に何度も戦闘に参加しており、スターリンからの評価も高かった。

が、1944年の時点ではまだ時期尚早と判断された。結局後継者は、古くからの同志で、人民委員会議議長(首相)、外務人民委員、外務大臣(外相)等を歴任した

ヴャチェスラフ・モロトフが選出された。

 

クラコフは当面の間、現職に留まる事が決まり安堵した。

(後継者が見つかり次第退職して、後はのんびりと年金暮らしだ)

 

外務省より報告

 

ソ連のイベント

 

スターリンの後任

   において

外相のモロトフ辺りが適任では

  を選択したとの事です

 

12月16日

 

ノースカロライナ州南東

 

 合衆国が参戦した直後、アメリカ東海岸沿岸でも一時かなりの輸送船などが、独潜水艦の攻撃を受けて沈められた。開戦直後は、夜も沿岸部の町などの照明が制限されず、沿岸部を行く船舶も通常通りの明かりを点けていたので、独潜水艦からすると、良い目印となった。流石に数か月後には、灯火管制が出て夜間照明は厳しく制限され、沿岸パトロール部隊やレーダー基地等が建設された。

 

 

「うん? レーダー基地にいつもより多くの人がいるぞ」

知人に修理が完了した、車を届けた帰り道自動車修理業者のドニス・ブルダンは、通常より多くの車や人がレーダー基地兼通信施設にいる事に気付いた。

「あれは警察車両じゃないか? 何か基地で事件でも起きたのか?」

警察の車両が数台、基地の正面前の道路に停車して、

 

「車を止めるな!」

「通行中の人は、立ち止まらないで!」

野次馬や、車を止めて見物しようとしている人を追い払っていた。これが現代の中〇なら、道路は完全封鎖され周辺住民は外出禁止になっていただろう。

 

 ドニスは最初基地内で殺人事件か、レーダー塔が倒れるような事故でも起きたのかと思った。が、事件なら救急車が居るかもしれないが、見えなかった。

レーダー施設も無事の様だ。それに一瞬ちらっと見えただけだが、基地の中の駐車場に停車した車両から、何人かの軍人が降りたのだが、その中に海軍の軍服を着用した人が何人かいたのだ。ここは陸軍の施設なので、海軍軍人が居る事は奇妙だ。

 

「何かの実験かな?」

この基地のレーダーが、敵機を探知した事は恐らく一度も無いだろう。

(レーダーに映らない飛行機でも発明したのだろうか)

 

 彼の自宅は、レーダー基地から車で7、8分の場所にある。

 

ドニスは、家族に今見てきたことを話しながら、昼食を食べ始めた。

「大きい飛行機だよ!」

「飛行機?」

「大きな爆撃機が南の方から飛んで来たよ」

 

 ドニス達一家は、ベランダに出て南の空を見る。すると高度6千メートル辺りを1機の大型爆撃機が南東の方から、接近して来るのが見えた。

「何だ《B-17》じゃないか」

《B-17》は、訓練飛行や、英本土へ向け空輸する為に飛んでいるのを、既に多くの国民が目にしているし、新聞や軍事雑誌で活躍も知っている。ドニス自身も何度も直接見ている。ドニスは室内に戻ろうとしたが、

「あら? 後ろからもっと大きな爆撃機が来たわ」

「本当かい?」

ドニスは妻の言葉に驚き、再びベランダに出て南の空に目を向けた。

 

 《B-17》の後方1キロの辺りを、二周りは巨大な6発爆撃機が後続して近付いて来る。周囲を見ると近所の住人も、外に出たり庭やベランダに飛び出し、呆然とした表情で、空を見上げている。

「あれが噂のテスト中の超大型爆撃か。実際に見るのは初めてだ」

小型戦闘機のテスト飛行なら、国民の目から隠す事も可能だが、超大型爆撃機の試験飛行を隠す事は無理で、多くの市民がその存在を知って居たり、

目撃している。

 

「パパ! エンジンが翼の後ろ側にあるよ。変な飛行機だね」

超大型爆撃機はその巨大な姿もさながら、エンジンの配置が特異なので簡単に見分けられそうだなと、ドニスは思った。

ほとんどの飛行機のエンジンは、主翼の前側にある。しかし、あの大型爆撃機は翼の後ろ側にエンジンがある。

 

「ライト兄弟の飛行機もエンジンは後ろ側にあったんだぞ。20年前位の飛行艇や、水上機もエンジンが後ろ側の飛行機が有ったなあ」(5)

「冒険飛行家が活躍していた頃?」

「有名な、ドゥリットル氏とかが活躍していた頃だ」

 

 アドリア海で豚さんが活躍していた頃の話だ。ちなみに豚さんの機体は完全架空だが、カーチスの機は実在機がモデルだ。カーチスのモデルは、一説にはレーガン元大統領(映画俳優から大統領に)と上記のドゥリットル氏(有名な冒険飛行家)らしい。

カーチスが使用していた実際の機体で、飛行機レースで優勝している。

 

 更に後方1キロに、もう一機同型の超大型爆撃機が見えた。数分後自宅近くの頭上を飛び去った大型機は、レーダー基地上空に差し掛かった。

「光ったよ」

2機の大型爆機の下側で、白い光が何度が見えた。

「あれはカメラのフラッシュだろう。爆撃の後で成功したかどうか撮影する為に、搭載しているんだろう。そうか、このテストを地上から見物する為に、基地に軍人さんが集合していたんだな!」

「ふうーん」

3機の爆撃機は北の方に向かって行ったので、一家は昼食を再開した。

 

昼食が終わりかけた頃……

「また戻って来たよ」

今度は北側の窓から空を見上げると、《B-17》を先頭に2機の超大型爆撃機が今度は南に向け戻って来るのが見えた。

基地上空を飛行し、ドニス家の上空を飛び去ったが今度は光の様な物は見えなかった。3機の爆撃機は南東に針路を変えやがて視界から消えた。

 

「フロリダ当たりの基地から来たのかしら?」

「おそらく針路から見てそうだろう」

「あんな大きい爆撃機が有れば、ナチスもプリキュアもひとたまりも無いね」

「そうだぞ! 合衆国に栄光あれだ」

 

 

 

 

12月20日

 

バージニア州ノーフォーク軍港

 

 

「本当に巨大な航空母艦だなあ。新型の高速戦艦と同じくらいの大きさだぞ」

招待されたジミ―や、他の客もその大きさに驚いた。

 

 

 

CV-41《キティーホーク》

 

 完成したのは、1944年10月25日で、通常なら直後に大規模な記念式典が開かれた筈だが、その直後カリブ海東部の合衆国自治領プエル・トリコや、自由フランスの統治下にある、仏領マルティニーク等が大型ハリケーンの直撃を喰らい、大きな被害が出た。

 

 自由フランスや周囲の島から、合衆国に救援要請が出た為に、式典を延期し《キティフォーク》も艦内に搭載できるだけの、医薬品や食料品を搭載し訓練航海を兼ねて、現地に救援に向かう事になった。

 

 その後も訓練航海は継続され、補給の為に寄港したタイミングで、完成記念式典を行う事となった。

 

 

基準排水量45000トン 全長295m 全幅49.68m 最大速力33ノット

ちなみに《エセックス級》は……

基準排水量28000トン 全長265m 全幅45メートル 速力は同じ

 

《キティフォーク》は排水量は、《大和》や《アイオワ》に負けるが、全長は《大和》よりも長い。

(英国近海で見た護衛空母なんかこれと比べたら、公園のボートだな)

 

「マリアこの船の艦名だけど、最初は《ミッドウェイ》と名付ける予定だったそうだな?」

「そう聞いています。諸事情でそれは出来なくなってしまいましたが」

 

(あの人は……海軍作戦部長のアーネスト・キング大将だ。マスコミ嫌いと言う噂だけど、今回は参加しないわけにもいかないだろうなあ)

キング大将は、数名の随行員も伴っていた。

(随行員の中で一番階級が高いのは……大佐だな。キング提督の参謀長かも知れない)

 

 その時、ジミーは随行員の中に2名の若い女性が居る事に気付いた。その二人は軍服を着用しているので、民間人では無いだろと思われる。

(キング提督の秘書だろうか? 正規の軍人では無く恐らく軍属だろう)(6)

マリアと呼ばれた金髪の美女は、名前から推測するとロシア系かも知れない。ロシア革命の後、貴族、大地主、富豪、聖職者(ロシア正教)等が迫害や虐殺を恐れ、かなりの数が東欧や満州を経由して、アメリカに移住している。

(マリアと言うあの女性も、幼い頃命辛々、ロシアから脱出して来たのかも知れないな)

 

 もしくは、未だアラスカがロシア帝国の植民地だった時代に、ロシア本国からアラスカに移住・植民して来た人の子孫かもしれない。海軍兵学校時代の同期生に、アラスカの奴がいたが、彼と肌の色や髪の色が酷似している。その同期生も100年前に、先祖がロシア本国から移住したと言っていたな確か。

 

 もう一人の女性は美人だが、少し怖い感じもする。

(秘書では無く将軍みたいな感じだな。敵には容赦せず『焼き払え!』とか言いそうだな。名前はよく聞き取れなかったが、恐らくインド系アメリカ人だろう)

 

 

 

 

米海軍では航空母艦の艦名は、正規空母は主に18世紀の独立戦争の古戦場名を用い、小型の護衛空母は、主に第二次世界大戦の戦場名を使う予定だったのだが……

 

 

 

 

「艦名に使える候補が足りない」!(主に太平洋方面)

 

止む無く護衛空母の艦名には、足りない分は、ソロモン諸島の島や入り江の名前を適当に採用する事になってしまった。

流石に大型空母の艦名を適当に決める訳にも行かなかった。ミッドウェー島は、史実では戦争の流れを一変させた、『ミッドウェー海戦』が行われたが、

流石にこの世界では、空襲が一度有っただけだったので憚られた。(躊躇する)そこで代わりに候補を検討したのだが、

 

あのライト兄弟が、人類初のエンジン動力飛行に成功した場所名を、採用する事に決定した。(ノースカロライナ州北東)

 

 

 

 従来の航空母艦の甲板は木製だったが、《キティホーク》は英海軍の《イラストリアス級》を参考にして、飛行甲板に9センチ装甲が施され、

側面も巡洋艦の8インチ砲の砲撃に耐えられる装甲が施された。搭載機数も、これまでの空母の5割増しの140機を搭載可能だ。

 

 

(この新型空母は対プリキュアの切り札になるに違いない!)

海軍航空隊も、損失が多い《TBFアベンジャー》に代わる、新型の艦上爆撃機が既に完成し、既にテスト飛行を開始しているそうだ。

戦闘機並の最大速力と多数の機銃を装備し、爆弾と魚雷を1トン以上装備できるらしい。更にこの機体は一人乗りなので、プリキュアに3機撃墜された場合、

《アベンジャー》だと、最大9人の犠牲が出るが、噂の新型機だと3名の犠牲で済む。

 

 

ここでまた、例の美女達の会話が聞こえて来た。マリアさんもジミー同様新型空母にかなり期待している様だ。が、

 

 

「しかしだな、マリア……この空母は巨大新型空母だけど、ただの空母だろ? レ……光線砲や、熱線砲みたいな科学小説に出てくる様な、超兵器が搭載されているわけでもない」

「……」

マリアさんとやらは沈黙してしまった。憤慨しているのではなく図星を衝かれて沈黙した様だ。

 

 

(確かにその通りだなあ。外見も今までの空母より大型なだけで、全く同じだからなあ)

甲板に見える兵器も、5インチ両用砲と対空機関砲だけで、他に兵器らしいものは見えない。

「それにパナマ運河を通過で……」

その時、『海軍大佐』が咳払いをして、美女二人は会話を止めた。大佐さんはやれやれと言った表情だ。

(もしかすると、この大佐の部下なのか?)

 

 が、インド系美女が最期に言っていた事は正しく、新型空母は『合衆国海軍史上初の、パナマ運河を通過できない軍艦』との事。

式典の後、補給としばしの休養の後、恐らく南米南端のホーン岬をぐるりと一周して、西海岸に向かう事になるのだろう。

恐らく3週間近くかかるだろうが、乗員にとっては良い訓練になる。ついでにアルゼンチンなどの親ドイツ国家を威嚇できる。

 

(2番艦と3番艦は未だ建造中で、完成は来年夏ごろとの噂だ。訓練と回航を考えると3隻が勢ぞろいするのは、早くて一年先になる。1隻だけだと、海軍上層部は最前線への投入を躊躇うかもしれないね)

 

 

その時、軍楽隊が国歌の演奏を始めたので、ジミー達も全員起立した。

 

(陸軍軍人が軍務で乗艦する機会があるとも思えないが、無事の航海を祈ろう)

 

 

 

 ジミー達が再び着席した頃、モスクワクレムリン宮殿近くの路上で、初老の男性が遺体で発見された。遺体を検視した結果、クラコフである事が判明した。どうやら、近くの階段から転落死した事が判明した。

「突如の強風に煽られて転落死」

と言うのが当局の公式記録だ。だが、後世の歴史の多くは謀殺説を支持している。何せソ連の裏事情を多く知っているのだ。『知り過ぎた男』として殺害された可能性は極めて高い。

 

 が、57年後にソ連は崩壊し、ボリス・エリツィンを大統領とするロシア共和国と、いくつかの国に分裂するのだが、その前後に多くの機密文書が公開されたのだが、その時も、クラコフ転落死に関する情報は公開されなかった。その後現代に至るまで、何らかの謀殺を裏付ける証拠は見つかっていない。

 

 実は当日は、夕方から雪が強まり吹雪いていた。転落したとみられる時間突如モスクワ近辺に強風が吹き荒れた事は事実で、他にも警備兵を乗せたトラックが風に煽られて転倒したりで、他にも十数名の死傷者が出ている点から、

 

「本当に不運な事故死だった説」

を支持する研究者も一部にはいるそうな。

 

 

 

本編ここまで

 

 

 

小心的処せ術 BY王翦(おう せん)

 

 

チコ

「第2部も終了と言う事で、特別篇。題して『大将軍は大変だよ』をお送りします」

ひかる

「きらやばー」

チコ

「ねえねえ、キングダムってマンガしってる?」

まどか

「秦帝国が未だ中華を統一していない頃を描いた漫画ですよね?」

えれな

「確かアニメや実写映画にもなったわね」

オヨルン

「登場人物が多すぎて覚えられないルン!」

ユニ

「ほとんどの人物が史実人物らしいニャン。……あぐリ……と声がそっくりな軍師さん以外は」

 

 

チコ

「チコもこんな長い連載になるとは。完結まで後15年かかるそうです」

ひかる

「やっぱりチコちゃんは5歳では無い……?」

チコ

「さらっとスルーして本題に。王翦将軍って知ってる?」

オヨルン

「主人公のライバルルン」

まどか

「それは息子さんでは」

ユニ

「怪しげな仮面をつけている人ニャン」

 

チコ

「捕虜……取りあえずみんな殺しておけばいいんじゃね? 的な同僚の桓齮のおっさんと違い、捕虜や降伏した兵士や将軍にも、有能そうな人には

『おまえも鬼にな……ではなく、おまえも秦帝国に仕えないか(ただし私に忠誠を尽くしてね)とか言って勧誘している人です」

 

 

キングダムでは、これより先次々と征服して行くのだが(現時点ではまだ一か国も征服していない)

 

 

韓(BC230)→趙(BC228 リーボ〇クもとい李〇が処刑された3か月後)→魏(BC225 曹操の魏国とは別物)

 

チコ

「秦に次ぐ大国楚に対し、○○将軍が20万の兵で侵攻します)

エレナ

「何故伏字になってるの?」

チコ

「キングダム的超重大ネタバレ(仮)だからなの」

ひかる

「王翦将軍じゃないんだ?」

チコ

「老齢と言う事で現役を退いておりました。が、上の○将軍が、楚の大将軍項燕大将軍の奇襲で大敗します」

まどか

「そうだったんですか……あれ、何処かで聞いた記憶が」

えれな

「その人の一族の一人が、『項羽と劉邦』で有名な項羽らしいわ」

チコ

「そこで王翦将軍が現役に復帰に復帰し、今度は60万の大軍で侵攻します」

オヨルン

「前の3倍ルン!」

ユニ

「万一、謀反でも起こされたら大変な事になるニャン」

チコ

「秦帝国のほぼ全軍だから、疑われたら拙いわね。始皇帝も晩年は儒学者を大量に生き埋めにして書物を焼き払ったりしてるのね。さてではどうやって疑われずに済んだか答えてね」

ひかる

「がんばったら、ご褒美下さいってお願いしたんじゃないかな?」

えれな

「お手伝いの、ご褒美を求める子供じゃないんだし」

 

 

チコ

「ちっ、つまんねんやつだなあ」

オヨルン

「あっ、正解ルン」

チコ

「まあ一回じゃ無く、何度もしつこく確認したらしいわね」

まどか

「小心者と思わせる事で、警戒心を解いたんですね」

チコ

「今度は大勝利して、その後項燕は自害して、楚と燕と斉を征服して中華統一。王翦は始皇帝死後に一族族滅された、○○将軍(女性読者の人気が凄い)。と違い天寿を全うします。ちなみに大敗したダメ将軍wも許されて復帰し、その後も活躍します。子孫は唐の時代の大詩人なのね」

ひかる

「連環の刑(三国志で、董卓と呂布を仲違いさせた計略)の王允(おういん)って人は子孫なの?」

チコ

「その可能性もありそうね。後個人的には銀英伝のヤン提督と、ガルパンの西住みほは、桓騎大将軍の子孫じゃないかと思ってるのね」

まどか

(本当に子孫だったら、それを知ったみほさんはショックで卒倒しそうですね)

 

 

 

 

 






1 1812年のナポレオンのロシア遠征を防いだ英雄の一人
2 モスクワに迫ってきた第三帝国軍を撃退
3 このくだりは、横山信義氏の架空戦記「砂塵燃ゆ」3の、クーデター起こされて粛清されたスターリンの末路のパク……オマージュ
4 史実の命日は1953年3月5日 警備兵の怠慢は史実通り ちなみにクラーラは架空の人物です。実際の娘は後にアメリカに亡命。
5 マンマユート団(豚さんの敵)の飛行艇はエンジンの両側にプロペラが。
6 軍に出向などで来ている民間人


第2章もこれでようやく終了です。ありがとうございました。艦これ冬イベ後段作戦と、真恋姫蒼天の覇王をクリアしたら、ぼちぼちと(一回解説回入れます)

ソ連の闇を書いていたらプーチンの暴挙が。ガールズ&パンツァー最終章お蔵入りではとの意見も、SNSなどにちらほらと。



冬イベE-3 Rマスには陸攻4機出しましょう。あそこが最大の鬼門です。
閉幕雷撃で、高確率で大破します。道中支援も必須。


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解説回(追加しました)


 お久しぶりです。艦これ春イベも完走したので制作しました。
春イベというよりは梅雨イベ? 史上初の6月の梅雨明けでしたが、梅雨明けの後の方が雨の量が多い。



読者の皆さんありがとうございます。解説回に抜けていた兵器の追加と、艦これ攻略メモと、今年のプリキュアの考察を追加します。



爆撃機

九六式陸上攻撃機

水上機

九四式水上偵察機 九七式飛行艇

戦艦

扶桑型

空母

雲龍型

潜水艦3種

民間船

第三図南丸



戦闘機

P-12 

民間機

DC-4、B-707、B-747

爆撃機

A-20

潜水艦

P級潜水艦 T級潜水艦

駆逐艦

ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦 《アレン・M・サムナー級》 ベンハム級 グリッドレイ級

空母

サンガモン級 

巡洋艦

ウィチタ級

イタリア

巡洋艦

ザラ級

戦艦

ヴィットリオ・ヴェネト級 

フランス

リシュリュー級

フランス

戦艦

リシュリュー級

英国
空母

アーガス級

潜水艦

M級潜水艦(キョエちゃんの戯言w)

もう古過ぎて戦闘部隊にいない船達(おそらくもう出ないので現状省略)

神風型駆逐艦 睦月型駆逐艦→旧式なので、船団護衛部隊に転属
空母鳳翔→老朽化なので、練習空母に(史実でも、ミッドウェー以降は練習空母に) 


キョエちゃん

「作中に出る兵器の解説。バカー」

プルンス

「ゲームの項目は、兵器擬人化ゲームに登場しているかでプルンス。艦これ、戦艦少女、とアズールレーンの3種プルンス」

チコ

「作者は艦これしかやって無いみたいね」

 

 航空機は、生産開始時期と生産機数を記載。日本機は史実よりは生産機数は多そう。(書いてある数字は史実での数)

 

《零式艦上戦闘機》設計は風立ちぬの堀越二郎 昭和15年7月 1万430機

 

 帝国海軍を代表する戦闘機で、生産数は唯一、一万機を超える。

漫画や映画など様々なメディアに登場しているので、歴史が苦手な人でも何となく名前は知っている。

徹底した軽量化に拘り、戦争序盤は卓越した機動力で米英戦闘機を圧倒した。

 

 しかし、中盤以降2千馬力級の強力なエンジンを搭載した、米陸海軍戦新型戦闘機が投入されると、急速に被害が増大した。史実では、後継新型艦上戦闘機の開発が間に合わず、終盤まで使用され最後は特攻隊として多くが散って行った。

 

 

 本作に出ている《64型》はエンジンを1560馬力の新型エンジンに換装した機体で、米戦闘機には劣るが一定程度の防弾装備も搭載されている。史実とは違い日中戦争での出番は無く、太平洋戦争が初陣となる。

 

艦これ 戦闘機型(二一型4 三二型2 五二型8)爆撃機型3 対潜特化型1 水上戦闘機2

 

戦艦少女 戦闘機型2 爆撃機(爆戦)型1 

 

アズールレーン 戦闘機型3 水上機型1(《二式水上戦闘機》零戦三一型を水上機に改造した)

 

 

 ゲームなどにもたくさん登場します。多過ぎて混乱しそう。戦略ゲームだと、《類まれな格闘戦能力》は、ゲーム上反映されていないので戦争序盤のシナリオでも、普通に撃墜されますorz

 

教えてチコ先生1「爆戦って何ですか」

 

 

まどか

「爆戦って何の事ですか」

チコ

「マリアナ沖海戦の頃になると、帝国海軍は爆撃機の数が足りないので、《零戦》に250キロ爆弾一発を搭載できるようにしました」

えれな

「現代の戦闘機って、空中戦も爆撃も同じ機体で出来るらしいけど、それの走り(始まり)みたいな感じなのかな? この機体は活躍できたのチコちゃん?」

チコ

「アメリカ新型戦闘機の半分しかない馬力のエンジンなのに、更に重い爆弾を搭載したのでますます速度が落ちて、ほとんど撃墜されて戦果はほとんど無いのね。そんな訳で艦これでは、能力値は非常に低めにされてるのね」

 

艦上爆撃機

 

《彗星》昭和18年7月 2、253機

 

 

《九九式艦上爆撃機》に代わる新型爆撃機。《零戦》の最高速力を超えるスピードを誇り、五〇〇キロ爆弾を搭載可能なので、

攻撃力も倍増している。しかし、ドイツ製エンジンを国産化したエンジンは整備が難しく、故障も多かった。

戦争後半になると、せっかくの高速爆撃機も既に多くの熟練搭乗員も制空権も失っていて、活躍の場は少なかった。

 

 名前の由来はほうき星の彗星。赤い仮面を付けた、マザコン(シスコンとロリコンの疑惑もあるw)とは何の関係も無い。

 

本作では、まだ多くのベテラン搭乗員が健在(それとプリキュアの活躍の恩恵)なので、史実以上に大活躍している。

 

 

艦これ 8

戦艦少女 2

アズールレーン 2

 

史実で検討されていた、20ミリ機銃2丁を搭載した夜戦型は登場しない。残念!(今後登場する可能性はありそう)

 

 

艦上雷撃機

 

《天山》昭和18年7月 1、266機

 

 1943年2月に生産が開始された、新型の艦上雷撃機。《九七式艦上雷撃機》に替わり、主力空母に採用されたが、米艦隊の対空砲火と

戦闘機の迎撃で、戦果はほぼ無く甚大な被害を出した。機体が重すぎて空母からの離陸には、使い捨てのロケット加速器が必要。

 

《天山》の由来は、佐賀県の筑紫山地の山で標高標高1、046メートル。

 

 

本作でも、プリキュアが現れた頃には、既に主力空母の雷撃機は全て《天山》に置き換わっている。《彗星》同様、大活躍している。

 

艦これ 8

戦艦少女1

アズールレーン1

 

《九七式艦上雷撃機》昭和12年末 1550機前後

 

 1937年に制式採用され、真珠湾奇襲などの戦争序盤の頃に大活躍したが、《天山》が採用されると、前線からは引き上げ対潜哨戒機等として運用された。同年代の米英の艦上雷撃機より高性能。

 

 本作でもプリキュアが来た頃には、正規空母からは引き上げられ、練習機や対潜哨戒機として運用されている。《天山》が運用不可能な小型空母や、低速護衛空母に

未だ配備されている。

 

 

艦これ 8

戦艦少女1

アズールレーン2

 

《九六式陸攻》昭和10年 1、048機 設計主任の人は『風立ちぬ』にも登場。(主人公の友人 中の人は実写キングダムのココココw)

日中戦争の頃から、太平洋戦争の序盤に掛けて活躍した中型爆撃機。長崎県大村から重慶への長距離爆撃に使用され、英米にも影響を与えた。

防御力が非常に低い機体で、戦争中盤以降は前線から姿を消したが、一部は本土近海で対潜哨戒機として運用され撃沈戦果もある。艦これでは陸上機として登場。上位機体が揃って来ると倉庫のお荷物になりますw

 

 

 

《一式陸上攻撃機》昭和14年10月 2、435機

 

 長大な航続距離を誇る中型爆撃機。史実では1941年12月10日に、『史上初の洋上における、航空機の攻撃による戦艦撃沈』を成し遂げた。

しかし、主翼の内部に燃料を搭載する構造が災いし、敵戦闘機の攻撃に極めて弱かった。(ワンショット・ライター、つまり一撃で燃えるライターと嘲笑された)

次第に、作戦も難しくなり最期は人間爆弾《桜花》の母機に使われたが、戦果はほとんどなかった。

 

 4型は、燃料タンクに防弾措置を行ったタイプ。その代わり航続距離は短くなっている。最近の架空戦記では、「撃墜されると、7人も犠牲が出るので計画中止」

されてしまう事も。

艦これに4種登場 

 

 

偵察機

 

《九四式水上偵察機》530機

昭和10年ごろから運用開始した、水上偵察機。太平洋戦争時には旧式化していたが、多くが後方での対潜哨戒や、連絡任務に使用されていて一部は沖縄戦で、特攻機としても使用された。

 

 

 

艦上偵察機《彩雲》昭和18年9月 400機前後

 

 世界でも類を見ない『偵察専用機』。最高速度は609キロに達し、米側の《F6Fヘルキャット戦闘機》の迎撃を見事に回避した事もある。

戦後米軍仕様の、ハイオクガソリンを入れてテストした所、何と694キロを記録した。高性能だったので、夜間戦闘機型や、雷撃機への転用も計画された。

 

艦これ3(偵察機型のみ)

戦艦少女2(偵察機型と、雷撃機型)

アズールレーン1(雷撃機型のみ)

 

艦これでは、T字不利回避のために必要な装備品。3機程度は確保しよう。

 

 

《二式艦上偵察機》昭和17年前半

 

《彗星》の前身の艦上偵察機 ミッドウェー海戦で2機が《蒼龍》に配備された。

艦これでは、T字不利を防げないので利用価値は低い。

戦艦少女にも登場。

 

《九七式飛行艇》昭和13年 178機 優美な外見

 

 戦中、戦後にかけ飛行艇メーカーとして有名になった川〇の、その基礎になった大型飛行艇。

 長大な航続距離を生かして、対潜哨戒や偵察機として使用されたが、防御が貧弱で戦闘機の攻撃などでほとんどが撃墜された。戦後数機残存していて、離島等に医薬品や食料を運搬している。

 

 戦前は、日本領だったサイパン島やパラオへの旅客機としても使用された。

本作でも、前線での対潜哨戒などは《二式飛行艇》へと譲り、後方での対潜哨戒や、輸送任務に従事している。

 

《二式飛行艇》昭和17年2月 167機

 

 当時世界でも最高水準の性能を誇る大型飛行艇。20ミリ機銃多数を装備し、遭遇した米軍戦闘機や重爆撃機を返り討ちにした事も。その高性能は、戦後開発された海上自衛隊の飛行艇に受け継がれている。2004年まで海の科学館に有った機体は、現在鹿児島県海上自衛隊鹿屋航空基地史料館に保管。(野外展示)

 

 艦これに登場するも、陸上基地航空隊の行動範囲を3延ばす以外に使えない為に、ユーザーからは不満も出てます。

 《晴空》(せいくう)という輸送機型も存在し、プリキュアが長距離移動に使う事も。(史実では輸送型の生産数は25機前後)

 

米海軍空母艦載機

 

 

《F4Fワイルドキャット》戦闘機 1940年12月 7885機

 

 戦争初期の米海軍主力艦上戦闘機 格闘戦では《零戦》に劣ったが、急降下速度では勝っていた。集団戦法等で数の優位などを生かして、粘り強く戦った。43年以降、正規空母からは姿を消したが、低速の護衛空母からは《F6F》などの運用は不可能だったので、終戦まで活躍した。

 

 60キロ爆弾を搭載して、対潜哨戒に使用された事も。(戦争末期になると、日本側は航空機もガソリンも底を付き、戦闘機の仕事が激減したから)英海軍でも空母艦載機として使用された。

 

 本作では、米海軍の失策で開戦までに《F6F》戦闘機の配備が間に合わず、序盤を止む無く《F4F》で戦わざるを得なくなり、《零戦》とプリキュアにより、

甚大な被害を出してしまった。

 

 

艦これ 2

戦艦少女1

アズールレーン1

 

能力値はどのゲームでも控えめ

 

 

《F6Fヘルキャット》戦闘機 昭和17年夏(史実、本作では昭和19年2月)1、2275機

 

 43年以降の、米空母の主力艦上戦闘機。頑丈な機体は味方から『鉄工所』と呼ばれた。高速性を生かした一撃離脱戦術で、多数の日本機を撃墜した。

しかし、格闘戦だけは《零戦》に劣り、油断した新米搭乗員がうっかり格闘戦に入ってしまい、古参の《零戦》搭乗員に撃墜される例も少なくなかったとか。

 

機体の発展の余地が乏しかったので、戦後は急速にジェット戦闘機に取って代わられ退役した。

 

 本作では、史実でのミッドウェーや、ガダルカナルでの大量のパイロットの死亡(日本側の)が起きていない(さらにプリキュア様の参戦)ので、かなりの犠牲を出している。

 

艦これ4(昼間用2 夜戦2)

 

 

戦艦少女1

 

アズールレーン1

艦これでは、普通の《零戦》と互角の能力だけど、先方は上位機種やネームドがたくさん出るのに、《F6F》は少ないのが不満。

 

 

《F4Uコルセア》1942年12月 (陸上運用、空母投入は1944年末)

12,571機

 

 開発は《F6F》より早い。テスト飛行で、時速650キロを記録し海軍当局は狂喜して採用を決めるも、空母への着艦時に失速して墜落する危険性が判明した。

そこで止む無く当面、陸上基地での未運用される事になった。改修が終わり空母での運用が始まったのは、1944年末まで遅れた。

 

 その後は、戦闘のみならず大量の爆弾や、対地ロケットを搭載し日本本土攻撃で猛威を振るった。《F6F》と違い、朝鮮戦争でも戦闘爆撃機として活躍した。

 

英海軍でも、一部空母艦載機として使用された。(艦これで英空母《ヴィクトリアス改》の初期装備に持ってくるのは、その名残)

 

本作でも、未だ改修途中なので空母では運用不可能。

 

艦これ 3(戦闘機型2 爆撃型1)

戦艦少女5(戦闘機型4 爆撃型1)

アズールレーン 戦闘機型のみ

 

 艦これでは、2017年にまず爆撃型が登場するも、史実での活躍に比べ対空+7と非常に低く、「過小評価過ぎる」という不満が出ていた。

 しかし、2021年夏イベで英空母《ヴィクトリアス》が登場すると同時に、戦闘機型(ノーマルと上位機種)が登場し、(上位機種で、対空+11 米英空母はボーナスあり)不満も解消されました。

 

 

 

艦上爆撃機

 

 

《SBDドーントレス》1940年末 5、936機

 

 『最高の艦上爆撃機』とも言われているとか。《九九式艦上爆撃機》に負けているのは、機動力くらいで後は全部勝っている。一番有名なエピソードは、1942年6月のミッドウェー海戦で、数分の間に《赤城》《加賀》《蒼龍》の3空母を炎上させた事だろう。(戦場に大きく遅刻して来たら、たまたま絶妙の時間差攻撃になっただけなのは秘密w もし戦果が無かったら、部隊指揮官は軍法会議だったと思われ)

 

 後継機《ヘルダイバー》が採用されたら、前線から退く予定だったが、《SB2C》が、故障や墜落事故が多く改良に時間が必要だったので、予定よりも長く前線に留まった。

 

 本作では開戦直後のマーシャル諸島空爆で、プリキュアにより壊滅的被害を喫して、前線から姿を消した。

 

艦これ3

戦艦少女5

アズールレーン2

艦これに登場する《SBD-5》はなかなかの高性能。

 

《SB2Cヘルダイバー》1943年11月 7、140機

 

 中盤以降の主力艦爆。しかし故障などの不具合が多くパイロットから評価は低かった。それでも7500機も製造され、マリアナやレイテ、沖縄戦では大活躍した。

 

 

艦これ1

アズールレーン1

 

艦上雷撃機

 

《TBFアベンジャー》1941年12月 9、839機

 

 米海軍の主力艦上雷撃機。ミッドウェー海戦では出撃機数6機の中、一機を除いて全滅するもその後は、多数の主力軍艦や輸送船を撃沈し大活躍した。

それ以外にも護衛空母に搭載され、対潜哨戒機としても活躍している。英海軍にも供与され、《ターポン》の名前で使用された。(一番高性能な艦上雷撃機が、外国製ってどうなのよ英海軍)ちなみに、パパブッシュ(元アメリカ大統領)が戦時中搭乗し、2回撃墜されてる。

 同僚の中には、捕虜になったのちに虐殺された人もいて、その影響からパパブッシュは、反日になったとの事。(父島事件)黎明期の海上自衛隊にも対潜哨戒機として供与された。

 

 

本作では、重すぎる機体が災いして、《零戦》やプリキュアの迎撃で大損害を出しているが、米海軍搭乗員の執念で戦果を挙げている。(アメリカ版大本営発表

プリキュアの護衛が無かった戦場後方の、対潜哨戒護衛空母が偶々狙われたりとか、電気系統の故障で誤って発射された魚雷の針路に、偶然軽空母がいたとか)

前線部隊からは、生存率が高い新型雷撃機の早急な配備を求める声が大きい。

 

 艦これでは、通常型の他に貴重な夜間攻撃型と、対潜哨戒型が登場する。対潜哨戒型は、米空母と華満らんもとい空母加賀改二護)に強力なボーナス値が付く。

 

 

 

艦これ3

戦艦少女5(パパブッシュネームド機含む)

アズールレーン2

 

 

《謎の新型雷撃機》史実では1945年3月に初飛行し、翌年運用開始。

3,180機

 

 現在量産開始に向け、試験飛行中。来年(昭和20年)5月頃までには大型空母に配備される予定)。爆弾は現状1トン搭載できるが、最終的には3トン搭載する予定(戦後なので3トン搭載できる改良型は、作中には出ません)

最大速力560キロと、《零戦》に匹敵する最大速力。武装も20ミリ機関銃4丁と強力。(でもプリキュアと戦ったら負ける)雷撃と急降下爆撃どちらも可能。一人乗りなので、3機撃墜されても犠牲者は、《TBF》の三分の一に抑えられる。

 

 太平洋戦争には間に合わなかったので、知名度は低い。朝鮮戦争や、ベトナム戦争で爆撃機として活躍。ベトナム戦争では、北ベトナム人民空軍の《ミグ17》(無論ジェット戦闘機)を3機も返り討ちにしたとか。

 

艦これには出ないが戦艦少女には登場している。羨ましいなあ。

 

 

 

陸軍戦闘機

 

《P-12》586機

 

1929年から30年代半ばまで、米陸海軍で使用された戦闘機。

 

《P-36ホーク》1938年 1、115機

 

 

 1935年に初飛行した、旧式戦闘機。降伏前のフランスや、ノルウェーなど多くの国に輸出された。凡庸な性能だけど、独軍のフランス侵攻の時には勇戦して、独軍機を200機以上撃墜した。フィリピンや、オランダ領インドネシアにも配備され、一部の機体は日本軍に捕獲されて、羽田飛行場で展示された。

 

《P-40ウォーホーク》1939年 13、738機

 

 上の奴の後継機 史実では中華民国に派遣された米軍義勇航空隊に配備され、《零戦》と戦っている。機体が重く格闘戦は苦手だが、故障が少なく整備も容易だった。

英ソにも多数の機体が供与されている。

 

 本作は、中華民国と日本は不可侵協定を締結しているので、フィリピン空襲が初遭遇。

 

 

《P-39エアラコブラ》1940年 9、588機

 

 エンジンが、操縦席の後ろにある独特の設計。機種に大口径の37ミリ機関砲を装備している。試作機が初飛行した時は、最大速力628キロを出したので、大喜びで採用するも、防弾版とか機関砲を付けたら速度が大幅ダウン。特に高度6千メートル以上の高空での戦闘がダメだった。

 

 これはダメだと判定され、英国に回されるも受け取り拒否。仕方なくソ連に供与したら、対戦車攻撃機としてよもやの大活躍。独空軍は、アメリカの様な高高度爆撃機は持っていなかったので、高高度戦闘の必要も無く、低空なら戦闘機として十分活躍できた。

 

戦艦少女で登場 空母搭載可能

 

《P-38ライトニング》1941年9月 10、037機

 

 双発の重戦闘機。格闘戦は小型戦闘機に劣るも、高速を生かした一撃離脱戦法で対抗した。1943年4月18日に、前線視察中の、山本五十六連合艦隊司令長官

の搭乗機を、ブーゲンビル島上空で撃墜したのも本機。北アフリカでは、爆弾を搭載し対地攻撃でも活躍している。

後期生産型では、1.5トンまで搭載可能。ちなみに日本陸軍の重爆撃機(草)は、800キロほどしか搭載出来ない。

 

艦これの陸上戦闘爆撃機に是非欲しいが、便利過ぎて実装してくれないだろうなあ。

 

《P51マスタング》1942年 16,766機

 

 WW2最高傑作とも言われる戦闘機。メーカーに対し「お宅の会社でも《P-40戦闘機》を製造してください」と要請したら、

社長は「120日以内に新型戦闘機を開発します」と逆提案し、受け入れられた。

無事期限内に初飛行に成功し、採用された。初期型は、《Pー40》と同じエンジンが搭載されていた。

 

 最初は写真撮影(偵察飛行)や、北アフリカで爆撃機として運用されたが、ある日思い付きで「英国製のマーリンエンジンを搭載してみよう」

という事になり、やったところ最高速度が急上昇。以後ドイツ本土への戦略爆撃機の護衛任務で大活躍。日本軍とは主にビルマ(ミャンマー)で戦った。

 

 現在でも飛行可能な機体は多い。外見が独空軍の《BF-109》に似ていたので、誤って味方に攻撃される事も少なくなかったとか。

しかし、そのおかげか戦後のアメリカ戦争映画に出て来る独軍戦闘機は、《P-51》か、《P-47》に、独軍のマークを付けて撮影したのが多い。

 

艦これに出たら、《零戦》や《隼》(陸軍戦闘機)の出番無くなるw

戦艦少女に登場している。

 

《Pー47サンダーボルト》1943年7月 15660機

 重い機体に、強力なエンジンを搭載して飛ばす正にアメリカンな戦闘機。被弾にはとても強く、《P-47》こそが最優秀戦闘機と言った搭乗員も多い。爆弾やロケットを多く搭載出来たので、戦闘爆撃機として大活躍。

 

 

爆撃機

 

《A-20ハボック》故障の少ない傑作爆撃機

 

アメリカ、ブラジル、豪州、英国に加えソ連でも多数使用された中型爆撃機。

 

 

《B-25ミッチェル》1941年 9、816機

 

 信頼性の高い中型爆撃機。爆撃以外にも、偵察機としても運用された。一応魚雷も搭載可能らしい。1943年には、ニューギニアのダンピール海峡で、超低空

からのスキップボミングで、日本側輸送船団を全滅させた。英国やオーストラリアに、中華民国やソ連にも供与された。

 

 本作では、ハワイ沖で大損害を出しながらも、中型空母に爆弾一発を命中させ中破させる戦果を挙げた。

 

 戦艦少女では、空母に搭載できる(史実準拠だけど、どうやって着艦させるんだろう。絶対無理だと思うんだがw)

艦これでは最新のイベントで、前段作戦の報酬として登場(陸上用、2機確保可能)上記のスキップボミングを行う。通常とはエフェクトが全く違うので直ぐ判別できます。

 

 

《B-26マローダー》1941年 5、228機

 

 《B-25》よりやや大きい中型爆撃機。故障や、事故が多く兵士には嫌われた。不具合は、数年後には解消され

そこそこ活躍している。魚雷も搭載可能で、ミッドウェー海戦時は魚雷を搭載し出撃している。

 

《B-17》1938年7月 1、2731機

 

 『空飛ぶ要塞』の異名を持つ大型爆撃機。「20ミリ機銃を数発命中させても、平然と飛んでいる」(フィリピンで戦った《零戦》搭乗員)ドイツへの戦略爆撃で大活躍した。

 

プリキュアや独軍のジェット戦闘機には勝てない。

 

 運用開始したのは、世界大戦開戦1年半前。当初米陸軍は、コストが安い中型爆撃機を採用したので、メーカーは倒産寸前に陥ってしまう。しかし戦争の機運が急速に高まり、大量の発注を受け息を吹き返した。

 

 

チコ

「魔〇の宅急便は、世界大戦起きてない設定の筈だから、B社倒産してそう」

キョエ

「じゃ、その世界の民間機のシェアは? バカー」

チコ

「そりゃA社の天下でしょ」

 

《B-24》1941年 18、431機

 

 尾翼の形が特徴的な、大型爆撃機。欧州と太平洋双方で活躍した。爆弾搭載量と航続距離は、《B-17》に勝る。米海軍も、対潜哨戒機や偵察機として使用している。

 

 

《B-29》1944年5月 3、970機(本作では大幅に減らされて200機前後。生産は再開されない可能性大)

 

 日本人にとって、東京大空襲や原爆投下など、負のイメージが強い。日本本土空襲は楽な任務だと思われてきたが、近年実はかなりの死傷者を出していた事が明らかに。東京上空では、逃げ延びてもサイパン島に戻れず海に墜落したり、爆撃の後の火災旋風が原因の上昇気流の直撃を受けて、墜落したりとかなり危険な任務だった。

 

 架空戦記でも、ボス的な存在として登場する事も多いが、日独の新型戦闘機にやられてしまう展開も多い。

 本作では、44年4月のタコマ・シアトル空襲で、防空壕にいた技術者が大量に死亡したので、生産が困難な状況に。更に、日本本土空襲の為には、マリアナ諸島占領が必須となり、現状とても困難なので生産数も大幅に減らされてしまっている。

生産した機体も、多くは輸送機や対潜哨戒機に改造されて細々と使用されている。

艦これでは、深海海軍の爆撃機として登場(銀色の奴)

 

 

《B-36》史実では1948年 384機(本作では、43年12月に初飛行成功。最低でも600機以上)

 

 《B-29》を遥かに超える大型爆撃機。欧州全域がドイツに占領された場合、アイスランドかカナダ辺りから独本土を空襲する構想が有った。

史実では一度も実戦投入される事も無く、10年程で引退した。戦意高揚の為の映画には何度か出ているそうな。

 

 後継機の《B-52》は70年経過したがまだ現役w 2040年ごろまでは運用されるそうなw 祖父息子孫と三代続けて、搭乗している人もいると言う噂。

多分後に生産された、《B-1》や《B-2》爆撃機の方が先に姿を消すw

 

 試験飛行も順調に進み、既に量産機の生産が開始されている。45年(昭和20年)初春にも、実戦投入される可能性が高い。(大きな機体なので、テスト飛行を隠す事は出来ない)同盟国や中立国などを経由して、情報を入手した日本は44年(昭和19年)秋から史実通り学童疎開を開始している。

 

 

民間機

 

《DC-3》《零式輸送機》(左の機体のライセンス生産)1936年ごろ

 

 米国製の傑作中型旅客機。非常に信頼背が高く、世界各国で使用された。軍用機(輸送用)を含めると生産機数は1万機を超える。現在でも100機前後は未だ稼働状態にあり、カナダの某民間航空会社では6機が旅客輸送を行っている。(新型機を買えよw)

 

 

《DC-4》民間用74機+軍用1、134機

 

 1942年に完成した中型輸送機で、戦時下だったので多くが軍用に改造された。ルーズベルト大統領の専用機にも使用され、車いすの乗降用リフトが装備された。

 

《B-707》元祖ジャンボジェット機 1959年運用開始 1017機

 

 ボーイ〇グ社の、旅客機メーカーとしての地位を固めさせた大型旅客機。世界中で運用され、当然日本の航空会社でも運用された。

民間機としては2019年に運用終了したが、軍事用に改造された機体は未だ使用中。

 

《B-747》

 世界中で運用された、大型旅客機。1540機生産され、1969年から運用開始。(日本はその翌年)

 

 最初は空席も多く、集客の為に多くの航空機会社が値下げを行い、結果的に多くの人が海外旅行に気軽に行ける様になった。

現在は、燃費の向上や新型コロナウィルスにより、旅客輸送は中型機が中心になって来たが、まだ多くの航空会社が運用中。

 

 

偵察機

 

《PBYカタリナ》1936年 3、305機

 

 海軍の飛行艇 飛んでいる姿はベネチアのゴンドラみたいで優雅。偵察や対潜哨戒の他に、海上に不時着した搭乗員の救助任務に使用された。一番の大金星は、ミッドウェー海戦の前日午後に日本艦隊を発見した事。日本側の慢心や暗号の解読が有っても、悪天候などで発見できなかったらすべてが水の泡。

 

アズレンと艦これに登場 艦これでは昨年搭乗員を救助する能力が加わった。艦これ初のアメリカ製航空機(2016年5月)

 

 

 

 

お船

 

 

《第三図南丸》

 

 元は昭和13年に完成した、捕鯨母艦。和16年11月に海軍に徴発されて、輸送船としてボルネオ島占領作戦に参加。昭和18年3月に給油艦に変更され、7月にトラック島への輸送中に、魚雷12本命中するも2本以外は不発で、無事入港した。

不発魚雷が刺さったままの姿は、花魁のかんざしみたいだったので、《花魁船》と呼ばれた。

 

 本作では一年遅れて、同じ現象が起きてマナ達を仰天させた。史実では44年2月のトラック島大空襲で喪失。

 

 

潜水艦

 

《伊十五型潜水艦》(巡潜乙型)

 

 帝国海軍の大型潜水艦、昭和16から19年にかけて20隻建造され、水上偵察機も一機搭載可能。

《伊―19》が《ワスプ》を沈めたり、《伊―17》《伊ー25》が米本土を砲撃している。史実では昭和18年8月に、南太平洋で喪失。

 

 本作では、昭和19年10月に、《伊―17》がミッドウェー島気象観測員への嫌がらせ砲撃の後、迷走台風を発見して報告電を打った。

 

 《伊-19》は、昭和19年4月下旬にカリフォルニア北西沖で、空母《ヨークタウン》を雷撃し、中破させる戦果を挙げた。この時、《ヨークタウン》に命中しなかった魚雷が、10キロ先を航行していた別動隊に到達し、戦艦と駆逐艦に命中し戦艦《インディアナ》は、艦首に大穴が開いて退却

し駆逐艦は沈没。これは史実の《ワスプ》撃沈時と同じ状況が起きた。(史実でも米海軍は戦後まで、複数の潜水艦の攻撃を受けたと勘違いしている)

史実では、昭和19年2月にギルバート諸島のマキン島西方沖で沈没している。

 

 《伊-26》は、昭和19年4月にハワイ沖で単独で退却していた、米重巡《チェスター》に雷撃を敢行し撃沈。

 

艦これは《伊―19》、アズレンは《伊―19》、《伊-25》、《伊-26》の3隻が実装済み。

 

《伊百六十五型》潜水艦(海大5型)

 昭和7年に3隻が建造された。帝国海軍の潜水艦で初めて、対空砲と対空機関砲が装備されている。《伊-67》は開戦前年の昭和15年に、事故で沈没。残り2隻は戦争で失われた。《伊―165》は、開戦直後にマレー半島東岸で、北上するイギリス戦艦を確認し通報。翌日の2戦艦撃沈に繋がる。更に同船は、商船8隻を沈め

日本潜水艦では第5位の記録。

 

 本作では、《伊―165》は昭和19年2月にハワイから北東に向かっていた、米空母艦隊を目撃している。

 

 

《呂三十五型潜水艦》

 

 昭和18年から翌年に掛けて、18隻が建造された中型潜水艦。初陣で撃沈されたりと、短期間で沈められた艦も多い。一隻だけ戦後まで残存した。

 

 本作では昭和19年6月中旬に《呂―44》がベーリング海で、米軍機の異変を知る事になった。史実では昭和19年6月16日に中部太平洋で喪失。

 

駆逐艦

 

《特型駆逐艦》(《吹雪型》10隻《綾波型》10隻《暁型》4隻)

 

ワシントン軍縮会議の枠内で、限度一杯の重武装を施した駆逐艦。ソロモン諸島の激戦等で多くが沈み、終戦時に残存していたのは、《潮》《響》(戦後ソ連に引渡)のみ

 

艦これ未実装 《東雲》(しののめ)《白雲》 (《吹雪型》)

       《朝霧》《夕霧》(《綾波型》)

 

戦艦少女 登場艦 《吹雪》《白雪》《初雪》《深雪》《響》《潮》

 

アズールレーン登場 《吹雪》《白雪》《浦波》《綾波》《暁》4隻

 

《初春型駆逐艦》(6隻)

 

 ロンドン軍縮会議で、駆逐艦にも制限が出来たので、《特型》より200トン軽い船体に、《特型》と同程度の重武装を満載した。

その為に非常にバランスが悪くなり、のちに大事件(友鶴事件)を引き起こし改修工事が行われた。

 

終戦時《初霜》のみが舞鶴港で残存(大破座礁)

 

 

艦これ未実装《夕暮》

 

アズールレーン 《子日》(ねのひ)以外登場

 

 

《白露型駆逐艦》

 

 不具合が生じた《初春型》の設計を全面見直して再設計された。戦時中に全艦戦没している。

 

 艦これには10隻全て登場済み。

戦艦少女《白露》から4番艦《夕立》まで

アズールレーン《春雨》《村雨》《夕立》《五月雨》《海風》が未登場

 

《朝潮型駆逐艦》10隻

 

 ロンドン軍縮条約失効後に建造された最初の駆逐艦。戦時中に全艦戦没。が、設計は戦後初の護衛艦(海上自衛隊)《はるかぜ型》の基になった。

 

艦これ

《夏雲》以外登場済み

 

アズールレーン

《朝潮》《大潮》《満潮》《荒潮》《霞》が登場済み

 

《陽炎型駆逐艦》19隻

 

 帝国海軍の正に集大成と言える駆逐艦。同型艦19隻は、戦時急増型の《松型》を除けは2番目に多い。(ちなみにアメリカは《フレッチャー級》だけで175……)

改良型の《夕雲型》(19隻)と共に、常に激戦地に送り込まれ終戦時、航行可能だったのは《雪風》のみ。

 

 艦これ 《夏潮》だけまだ未実装 《早潮》(はやしお)は、2022年春イベのE-3突破報酬として追加。

戦艦少女 登場済みなのは《陽炎》、《不知火》、《黒潮》、《雪風(中華民国に引き渡された後の《丹陽》も実装済み)、《野分》、《天津風》《嵐》

アズールレーン《陽炎》《不知火》《黒潮》《親潮》《雪風》《浦風》《磯風》《浜風》《谷風》《野分》(のわけ)

 

《夕雲型》19隻

 

《陽炎型》の改良型として、19隻完成した。終戦時残存艦無し。完成後1年以内に沈んだ船も多い。

 

艦これ

《大波》《清波》以外は実装済み

戦艦少女 無し

アズールレーン《風雲》《清波》《長波》《巻波》が実装済み

 

《秋月型》13隻

 

 連装10センチ対空砲6門を搭載した防空駆逐艦 魚雷も搭載している。米海軍も警戒し、《秋月型》に航空隊に迂闊に近づくなと指示していた。……

とされるが、日本の対空砲は対空レーダーと連動しておらず、射手の経験と勘だけが頼りなので、命中率は低く都市伝説の類だろう。

 

 

 艦これでは、対空カットイン攻撃が強力なので入手したら優先的に育成すべきです。(米国製の電探でも問題無し、というかそっちの方が高性能)

《秋月》《初月》《照月》《涼月》(すずつき)《冬月》が実装済み(《秋月》以外は中の人がプリキュア)

戦艦少女

《秋月》《初月》《冬月》《涼月》《宵月》

アズールレーン

《涼月》《新月》《宵月》《春月》《花月》

 

 

軽巡

 

《球磨型》クマー

 1920年から翌年に掛けて5隻建造された。太平洋戦争時にはかなり旧式化している。《北上》《大井》は、重雷装艦に改造された。(《木曽》は艦これオリジナル改造で、史実では無い)

 

艦これでは、重雷装艦3隻最優先で育成すべき。

戦艦少女《多摩》《北上》《大井》が実装済みクマを出すクマーw

アズールレーン 無しorz

《長良型》

 《球磨型》とほぼ同じ設計の軽巡。1922年から25までの間に、6隻建造。《長良》は、真珠湾奇襲時の水雷戦隊の旗艦を務めた。

 

 艦これでは、《五十鈴》(対潜)《阿武隈》(甲標的で先制雷撃+大発(揚陸艦))由良(甲標的で先制雷撃と、水上戦闘機装備可能)の3隻は優先的に育成すべし。

 

戦艦少女 《五十鈴》のみ未実装済み。

アズールレーン

《名取》以外は実装済み

 

 

《川内型》夜戦、夜戦!!

 1924年から翌年に掛けて3隻建造された。

煙突が3本から4本に増えている。ソロモン諸島で、米艦隊と死闘を繰り広げた。以後《阿賀野型》まで軽巡の建造は無かった。

 

 艦これでは、夜戦に強いので切り札として育てるべし。でも那珂ちゃんはうるさいw 改二するのに、改装設計図等も不要なのが特徴。

 

那 珂ちゃんが本当にデビューしただとw? キョエちゃんみたいに

アズレンも戦艦少女も全員登場。

 

《夕張》メロンクマー(夕張のゆるキャラ)

 同型艦は無し。天才平賀譲(ひらが・ゆずる)の、渾身の『作品』「3000トン級の駆逐艦よりやや大きめの船体に、5500トンの軽巡と同程度の武装を搭載し、速度も同じレベル」というかなり無茶な設計で建造された。完成直後は世界中の海軍関係者を驚かせたが、開戦の頃にはかなり旧式化し、船内の居住性も悪かったので(狭すぎ)乗員の評価は高くなかった。

 本作では既に第一線部隊を離れ、船団護衛の旗艦を務めていたが、史実通り米潜水艦の雷撃で沈没。

 

 艦これでは改二になると先制雷撃と、大発が搭載可能となる。ただし速力が低速に変更されてしまう。

 

 

 

アズレンには登場しない。

 

 

《阿賀野型対空巡洋艦》4隻

 《川内型》よりおよそ20年ぶりに、新規建造した軽巡洋艦。主砲は50口径四一式15.2cm連装砲 3基6門で、米の新鋭軽巡の半分でしか無かった。

敵と砲撃戦を戦う機会も無く、潜水艦の雷撃や空母艦載機の爆撃で沈没している。《酒匂》のみ生き残り原爆実験で《長門》と共に沈んだ。

 

 本作では、対空巡洋艦に変更され完成した。(主砲は長10センチ対空砲10門で、《秋月型》と同じ)

 

艦これで4隻の中では、一番優先して育成すべきは《矢矧》かと。

 

戦艦少女《阿賀野》のみ実装済。

アズレン《阿賀野》《能代》が実装済み

 

《防空巡洋艦》

 《アトランタ級》と同程度の、防空巡洋艦。排水量7千トンほどで、主砲は長10センチ対空砲12門 本作オリジナルでは無く、一応計画は存在したがコストの面から断念し、代わりに2千トン級の対空駆逐艦を建造する事となった。後の《秋月型》となる。

 

 

重巡洋艦

 

《古鷹型》《青葉型》

 

 8700トン級重巡洋艦。当初は偵察任務を行う軽巡洋艦として計画されたが、ワシントン軍縮条約によって重巡洋艦に変更された。設計者は平賀譲。《青葉型》は小改良型(高度な間違い探しレベル)。

 

開戦時にはやや旧式化していたが、第一次ソロモン海戦で大勝利を収めた。

 

艦これでは、割と楽に建造などで入手できる(性能もやや低いんだが)。改二にできるレベルも低く、アイテムは必要としない。

戦艦少女、アズールレーンともに全艦実装済み

 

《妙高型》

 

 1928年から翌年に掛けて、4隻完成した帝国海軍初の本格的重巡洋艦。主砲は20センチ連装砲5基10門。設計はやはり平賀譲。ある時、親善訪問をした英海軍の士官がこう評価した。

「我々は、初めて軍艦に乗った。我々が乗っていたのはホテルシップ(客船)だった」帝国海軍は素直に称賛されたと思ったみたいだけど……

(お前ら、よくこんな居住性の悪い軍艦に乗っていられるな。俺達は、客船並みの居住性の巡洋艦に乗っているんだぜ。バカー)

日本の重巡は、艦隊決戦の為に重武装。イギリスは広大な植民地をパトロールする為に、居住性も考慮する必要があった。

 

艦これでは、やはり4隻全て改二にするのにアイテム等は不要。

 

戦艦少女《妙高》《羽黒》が実装済み。

アズールレーン《羽黒》以外は実装済み

 

《高雄型》

 1932年に4隻が完成した。主砲は《妙高型》と同じ。艦橋がやたらと大きい。カバみたいだと一部からは不評だった。しかし、現在駆逐艦の艦橋は大型化しており(特にイージス艦は)ある意味未来を先取りしていたのかも?

 

《高雄》は、シンガポールで終戦時残存(航行不能)

 本作では《摩耶》が、シアトル沖で米雷撃機の魚雷が命中して戦没している。決して艦これで毎回罵倒されて、(中破させて修理時)、頭に来ているからでは無い。

 

 艦これでは、《摩耶》は改二なると強力な防空巡洋艦になる。《摩耶》は改二はアイテムは不要だが、《鳥海》は設計図が必要になる。

 

戦艦少女、アズールレーンともに全艦実装済み。

《最上型》

 

 1935年から38年にかけて4隻完成した。当初はロンドン海軍軍縮条約の枠内で、15.5センチ3連装5基15門を搭載した、軽巡洋艦として設計された。

これに対抗すべく、英海軍は《サザンプトン級》米海軍は《ブルックリン級》を建造する。だが、帝国海軍はロンドン軍縮会議が失効次第、直ちに主砲を20.3センチ10門に交換し、重巡洋艦に変更する事を当初から計画していた。元の15センチ砲は、その後《大和型戦艦》の副砲に転用された。

 

 《最上》はミッドウェー海戦後、混乱の最中《三隅》と衝突し大破してしまう。(《三隅》は、その後米空母艦載機の空襲で喪失)

その後、後部主砲を撤去し航空巡洋艦に改造される。

 

 艦これでは、4隻全て航空巡洋艦に改造可能。《最上》は先制雷撃と大発が装備可能に。《熊野》《鈴谷》は軽空母に改造できるが、元に戻せないので《鈴谷》《熊野》は、2隻所持する提督も多い。

 

 

戦艦少女

4隻全て実装済み

アズールレーン

《鈴谷》《熊野》が実装済み

 

《利根型》

 

 こちらも当初は軽巡洋艦として工事が開始された。後部に主砲を置かず水上機発射機(カタパルト)2基装備し、水上偵察機6機搭載している。

 《利根》は終戦直前まで生き残り、昭和20年7月の呉軍港空襲で、大破着底した。その後戦後に解体されるが、いくつかの備品が博物館に展示されている。

 

 艦これでは、《最上型》同様航空巡洋艦に改造可能。

戦艦少女 登場せず

アズールレーン《筑摩》のみ実装済み。

 

護衛空母

 

 客船などをを改造した。低速の対潜哨戒用空母。史実では5隻建造された。(客船から改造された、3隻は戦時には空母改造を前提にして設計され、資金も大半は海軍が負担した)空母用のカタパルトを発明できず、運用は困難で4隻は倒すべき潜水艦の雷撃で戦没している。(残り1隻は、終戦間際に空襲で大破着底)

 

ちなみに米海軍の護衛空母の数は、帝国海軍の20倍……

 

艦これでは《冲鷹》(ちゅうよう)《海鷹》 (かいよう)以外の3隻が登場済み。入手時は非常に弱いが、育てると強力な対潜哨戒空母として活躍可能。強力な対潜哨戒機を持って来る事も。

 

戦艦少女 《神鷹》のみ実装済み

アズールレーン無し

 

《瑞穂》(水上機母艦)

 

 昭和14年2月に完成した水上機母艦。戦争の際は、特殊潜航艇《甲標的》の発進用にも使える様に設計されていた。昭和17年5月1日に、横須賀から呉へ輸送任務中に、米潜水艦の雷撃を受けて御前崎南西沖で喪失。これは、帝国海軍軍艦の(軽巡洋艦以上)中で最初の喪失艦となった。

 

 本作では、ジョンストン島沖でコックリル隊の《TBF》の魚雷攻撃により喪失。史実通り太平洋戦争での最初の《帝国海軍における喪失した軍艦》となった。

 

(駆逐艦以下の小型艦や潜水艦は、軍艦としては扱われない)

 

《千歳型》

 

 当初は水上機母艦として、(12機搭載。昭和13年に完成した。昭和17年6月のミッドウェー海戦で、主力空母4隻を喪失した為、穴埋めとして軽空母(30機搭載)に改造された。

 

 艦これでは5段階改造w 途中で軽空母に変更されるが、水上機母艦に戻せないので、予備にもう一隻残している提督も多い。アズールレーンでは最初から軽空母として登場

戦艦少女ではまだ未実装。

 

 

《瑞鳳》

 

 最初は高速給油艦として建造が開始され、途中で潜水母艦に変更になり、更に軽空母に変更され昭和15年年末に完成した。

その後は南太平洋海戦などに参加し、昭和19年10月にフィリピンで沈んだ。

 

 艦これでは最終的に、強力な対潜空母になる。(装備品は持って来てくれませんw)改造に設計図などは不要なのは助かります。

戦艦少女には登場するが、アズールレーンには登場しない。

 

《祥鳳》(しょうほう)

 

 昭和14年1月に、潜水母艦として完成しその後軽空母への改装工事により、真珠湾攻撃の半月後に完了した。翌年5月の珊瑚海海戦で撃沈され、

航空母艦喪失第一号となった。

 

艦これでは、アニメで激しく炎上していたシーンが有名(その後一切出番なし。ナレ死?)ゲームではまだ、改二は出ていない(令和4年6月末現在)

戦艦少女やアズレンも実装済み。

 

《龍驤》(りゅうじょう)

 

 艦名が変換困難な空母。昭和8年に完成し日中戦争にも参加している。艦橋は無いのではなく飛行甲板の先端部の下にある。

昭和18年8月の第二次ソロモン海戦で喪失。

 

 艦これで関西弁を喋るのは、造船所が関西だから。アイテム無しで改二にできる。

他の2ゲームにも登場済み。

 

正規空母

 

《赤城》艦これで大食いのイメージが(実際大量の資材が必要)

 

 ワシントン海軍条約で廃棄処分になるはずだった、《天城型巡洋戦艦》2番艦《赤城》を航空母艦に改造する事になり、(米海軍も同様に、廃棄予定の巡洋戦艦を空母に改造した)

昭和2年に完成した。直後は飛行甲板が三段式になっており、当時の写真はウィキペディアで見る事が可能。真珠湾奇襲攻撃の際は南雲艦隊旗艦を務め、無事帰還した。半年後のミッドウェー海戦で喪失。

 

 艦これでは、開始直後に一隻任務で入手できる。最終的には夜戦空母に進化可能。(カタパルトが必要だが)

戦艦少女とアズレンにも登場済み。

 

《加賀》はにゃー空母

 本来《天城型》(速力33ノット)一番艦《天城》が航空母艦に改造される筈だったが、関東大震災で完全に破壊されてしまい、代わりに《土佐型戦艦》(28ノット)2番艦《加賀》が航空母艦に改造される事になり、昭和3年に完成した。こちらも完成直後は飛行甲板が三段式。昭和17年6が月ミッドウェーで喪失した。

 

 他の大型空母より、速力が遅く30ノット未満なのは、上の件が理由。ゲームなどでは味方の行動を阻害する事も。

 

艦これでは、五航戦(《翔鶴》《瑞鶴》)に厳しいというイメージがw 改造で最大98機搭載できるが、米空母《イントレビッド》に次ぐ2位。夜戦空母や、対潜強化型にも改造できる。

 

戦艦少女とアズレンにも登場済み。

 

 

《蒼龍》《飛龍》(そうりゅうと、ひりゅう)ユニ空母(中の人的に)多門丸―(山口多門中将の事 艦これのボイスより)

 

 最初から航空母艦として建造され、昭和13年と14年に完成した。両艦は艦橋の場所が左右逆になっている。《飛龍》はミッドウェー海戦で、1隻被弾を免れ反撃で、《ヨークタウン》を大破(翌日潜水艦の雷撃で沈没)させるも、夕刻に爆撃を受けて沈没する。

 

 艦これでは、赤城や加賀と違い改二にするのにアイテムは不要。

戦艦少女(以下略)

 

《翔鶴型》(しょうかく)

 

 帝国海軍の航空母艦の集大成。完成は真珠湾奇襲の数か月前だった。ミッドウェー海戦後は航空母艦の中枢として戦い、

《翔鶴》はマリアナで、《瑞鶴》はフィリピンで沈んだ。

 

 本作では開戦冒頭、《翔鶴》《瑞鶴》は英艦隊に対処する為に、台湾で待機していたが史実でも、完成が真珠湾攻撃の数か月前で、

乗員の練度が不安視され、2隻は真珠湾では無くフィリピン攻撃を担当した第三艦隊に派遣し、飛行場攻撃の支援をさせてはどうかとの案もあった。

 

 艦これでは、初の装甲空母(カタパルトなど必要)に改造可能。《瑞鶴》は史実補正で運が高い。

戦艦少女(以下略)w

 

《隼鷹型》艦これの2大泥酔娘

 

 建造中の大型高速客船を海軍が買収し、空母として昭和17年に完成した。高速客船を改造したので、最大速力は他の改造空母より速い25ノットで、

最大53機と、正規空母に準ずる空母となり、ソロモン海などで活躍した。

 

 コー〇ー等のゲームでは正規空母だが、艦これでは軽空母枠に入る。《隼鷹》は(じゅんよう 飲酒空母w)改二があるが、アイテム等は不要。

 

《大鳳型》

 

 帝国海軍期待の装甲空母で、500キロ爆弾に耐えれるとされた。しかし、建造からわずか4か月後のマリアナ沖海戦で、装甲空母の欠点(気密)が原因で、僅か1本の魚雷で沈没した。6隻以上が計画されたが、一隻だけ完成した。

 

本作では、2番艦の《白鳳》(某元横綱と無関係。2番艦の艦名は史実でも決まっていた)までで中止され、より短期間で建造できる空母を建造する事に決定した。

 

 艦これでは、史実逆補正で運が非常に低い。レベル40で《大鳳改》にでき(アイテム不要)、しかも強力な艦載機を持って来る。

戦艦少女では、《大鳳》と更に史実で計画だけあった改良型も登場。

 

 

《雲龍型》雲竜だと相撲用語になってしまう。

 

 《飛龍》の設計を基本に、ミッドウェー海戦等の経験を基に建造された大型空母。14隻が計画されたが、完成したのは《天城》《雲龍》《葛城》のみで、その頃になるともうまともな航空隊も無く、フィリピンへの輸送任務に使用され、《天城》《雲龍》は潜水艦の攻撃で喪失し、《葛城》は終戦まで残存。本作では、史実よりやや早く完成した。

 

 艦これでは、3隻とも初期状態では対空砲・対空機関銃しか初期装備が無いが、これは史実を反映したらしい。3隻とも建造では入手できない。

戦艦少女は未実装で、アズレンは《雲龍》のみ実装。

 

 

 艦これでは、建造度六十%から八十%で中止になった《笠置》《阿蘇》《生駒》の3隻が今後実装の可能性もあるかも。

 

 

戦艦

 

《金剛型》帰国子女の金剛デース

 

 明治44年から、大正4年にかけて4隻建造された。《金剛》のみ英本土の造船所で建造され、残りは日本で建造された。30ノットを超える快速を持ち、空母艦隊に同行し活躍した。

 

艦これでは、《金剛》《比叡》は、改二するのにアイテムが必要で、《榛名》《霧島》は不要。

戦艦少女……以下略w

 

 

《伊勢型》

 《山城型》の設計を改良して、《伊勢》が大正6年、《日向》が大正7年に完成した。ミッドウェー海戦後、後部5番、6番主砲を撤去し、格納庫と飛行甲板を配置し

航空戦艦となった。(水上偵察機22機搭載可能)しかし、既に制空権を喪失しており、搭載する水上機も無かった。むしろ改造の際に追加した対空砲が、末期の対空戦闘で活躍している。

 

 本作では、戦艦のままだがボイラーを新型に換装し、速力を24ノットから27.5ノットに増速している。

 

 ゲーム等で、航空戦艦に改造可能だが、いずれも中途半端であまり役には立たなかったのだが……

 

 艦これでは、改二になれば水上機以外に、戦闘機と艦上爆撃機と《彩雲》などを装備可能になる。イベント戦闘では「空母投入禁止」の場合もあり、大いに活躍できる。《日向改二》は、対潜能力強化タイプで任務をクリアすすると、強力な対潜哨戒機を持って来る。

戦艦少女でも航空戦艦に改造可能。

 

《長門型》

 

 初の41センチ砲を搭載し、《長門》は大正9年、《陸奥》は翌年に完成した。《大和》の完成まで20年以上、交代で連合艦隊旗艦を務めた。《大和型》の存在は軍事機密だったので、一般の国民にとって《長門》《陸奥》は帝国海軍の象徴的存在であり続けた。

 

 《陸奥》は昭和18年6月に謎の爆発で轟沈。《長門》は生き残り翌年原爆実験で沈んだ。

 

 艦これでは改二になると、強力な特殊攻撃が可能になる。(アイテム必要で、弾薬と鉄鋼が9000ほど必要)

 

 

《大和型》ワンピースのヤマトは若く見えるけど28歳ですw

 

 史上唯一、46センチ砲を搭載したド級戦艦。《大和》は昭和16年12月《武蔵》は翌年8月に完成した。艦隊決戦の機会も無く、航空攻撃で撃沈された。

 

いろんな作品に登場。大型空母として完成されたり、計画中止にされる場合も。

 

本作は《信濃》《111号艦》(艦名は《紀伊》を計画していたとも)は計画中止。(航空母艦の建造に回された)

 

 艦これでは、凄い破壊力を誇るが物資も凄い量が必要。(レベル150で大破させたら……)イベントと一部任務以外では、出動させない方が。

《信濃》は未だ無い。どうも本来サービス開始後半年後には出す予定だったみたいだけど、超人気ゲームになってしまったので出せなくなってしまった様だ。

空母として登場する可能性も高い。

 

 

 戦艦少女とアズレンには登場しない(ガチ)《信濃》は空母として登場。後の二つは中華人民共和国運営なのが原因だと思われ。

 

 

アメリカ

 

駆逐艦

 

《ジョン・C・バトラー》級護衛駆逐艦

 

 1944年頃から就役を開始した、低速の(24ノット)護衛駆逐艦。293隻が発注されたが、戦争の終わりが見えたので4隻工事中止、206隻がキャンセルされ

83隻が完成した。一応魚雷も搭載されていて、レイテでは《大和》《長門》等の主力艦に向け魚雷を撃っている。艦これには《サミュエル・E・ロバーツ》が実装されている(速度は低速)戦艦少女も、《サミュエル・E・ロバーツ》が実装

 

《ベンハム級》駆逐艦

 

 38年から、翌年に掛けて10隻建造された。それ以前の駆逐艦とほぼ同じ設計。(高度な間違い探しレベル)本作では、《スタック》が44年4月にシアトル南西沖で、プリキュアの攻撃を受けて大半炎上し、味方艦の魚雷で処分された。戦艦少女は、《スタレット》が実装されている。

 

 

 

《シムス級》駆逐艦

 

 合衆国参戦前の1939年から翌年に掛けて完成した。太平洋戦争開戦後は全艦が、太平洋に移動し対日戦に参加している。

《ハムマン》が、史実と似た形で撃沈されている。(空母への魚雷攻撃の巻き添え)

戦艦少女には《ハムマン》と一番艦《シムス》が登場する。

 

 

《グリーブス級》

1941年から43年にかけて66隻完成。戦闘で8隻、事故で2隻を喪失。戦後2隻が海上自衛隊に貸与された。ゲーム等では《リヴァモア級》と表示されている事も。

 

《フレッチャー級》

 

 米海軍の主力駆逐艦 同型艦はなんと175隻ww プリキュアより3倍も多い。さらに改良型156隻も加えると、帝国海軍が建造した駆逐艦は全部合計しても292隻を大きく超える。

更に1930年以降に建造した駆逐艦169隻が加わる。多分低速の護衛駆逐艦を加えると、更に300隻くらいは増える。

 

 戦後1959年に「ヘイウッド・L・エドワーズ」「リチャード・P・リアリー」が海上自衛隊に貸与され、《ありあけ》《ゆうぐれ》として15年ほど在籍した。

 

 艦これでは《フレッチャー》《ジョンストン》が登場。改二になれば任務で強力な対潜兵器が……

戦艦少女21隻登場

アズールレーン19隻登場

 

 

 

潜水艦

 

《P級潜水艦》(ポーパス級)

 

 1935年から、37年にかけて10隻が建造された。日本との戦争を考慮して建造された最初のアメリカ潜水艦。やや旧式だが、開戦後も第一線で使用され続けたが、新型潜水艦の大量建造により、44年末までには前線から撤収した。本作でも、新鋭艦の大量投入でほぼ前線から退いている。3ゲームとも実装している艦は無い。

 

《T級(タンパー級)潜水艦》

 

 1939年から、40年にかけて12隻建造された。このクラスから魚雷の門数が4から6に増えた。《ガトー級》の大量就役で、次第に最前線を離れ最期の一隻が前線を去ったのは45年1月。本作で、《トートグ》がハワイ沖で連合艦隊主力艦隊を発見し通報。史実では26隻を沈めたが、これは米潜水艦1位の撃沈記録。

 

 

 

《ガトー級》ソロモンの悪夢では無い

 

 太平洋戦争時の、主力潜水艦。性能はナチのUボートや、帝国海軍の潜水艦に比べ特段優れている訳では無いが、「戦いは、数だよ兄貴!」

の台詞通り大量に建造され、交通線遮断に投入されて多大な戦果を挙げた。が、20隻が撃沈されている。

戦後《ミンゴ》が、海上自衛隊に貸与され《くろしお》として在籍した。

 

艦これには《スキャンプ》が実装された。《アルバコア》辺りを予想していたユーザーを驚かせた。

 

戦艦少女は2隻、アズールレーンには5隻実装済み。

 

 

軽巡洋艦

 

《オマハ級》

 

 7千トン級巡洋艦として、1923年から25年にかけて7隻完成した。開戦時には旧式化していたので、辺境の警備や輸送船団の護衛に従事している。

 

戦艦少女《オマハ》《デトロイト》が登場

アズールレーン6隻登場

 

 

 

《ブルックリン級》と改良型の《セントルイス級》

 

 《最上型》に対抗し、1937年から39年にかけて9隻完成した。3連装7インチ砲5基15門の砲撃力は、重巡に匹敵した。戦争後半になると、新鋭の《グリーブランド級》が多数配備されたので、空母部隊の護衛からは外れて裏方に回った。

 

艦これでは《ヘレナ》《ホノルル》が実装済み。

戦艦少女《ブルックリン》《フィラデルフィア》《サバンナ》《フェニックス》《セントルイス》《ヘレナ》が実装済み。

アズールレーン《セントルイス》《サヴァンナ》《ナッシュヴィル》が未実装。

 

《アトランタ級》

 多数の対空砲を装備した対空巡洋艦。1941年から45年にかけて8隻が建造された。更に戦後3隻が建造されている。初期型4隻は魚雷も搭載されていたが、

過重装備だったので、戦争後半にすべて撤去された。ガダルカナル島攻防戦にも参加し、2隻が撃沈された。

 

 艦これでは《アトランタ》が使用可能。強力な対空攻撃が出来るので、イベント戦闘のお札を考えると2隻は欲しい。戦艦少女5隻実装済み

アズールレーン6隻

 

《グリーブランド級》

 

 1942年から27隻が建造された。主砲は3連装7インチ砲4基12門で、下手な重巡より強い。《アトランタ級》は戦後数年で退役したが、こちらは一部の船は

対艦・対空ミサイルを搭載し、1970年代まで在籍した。

艦これ0

戦艦少女5隻

アズールレーン7隻

 

 

 

 

 

重巡

 

《ペンサコラ級》

 米海軍が最初に建造した重巡。1929年から翌年に2隻建造された。ソロモン海やアリューシャン列島の開戦に参加し、史実では2隻とも大戦を生き延びている。

米海軍の巡洋艦では珍しく魚雷を搭載していた。

 

艦これは未だいないが、他の2ゲームは2隻とも登場済み。

 

《ノーザンプトン級》

 

 1930年から翌年に掛けて6隻が建造。艦橋の形状がカメラの三脚みたいな構造になっている。(アメリカの旧式戦艦なども) 

《ヒューストン》がバタビア沖海戦で、《シカゴ》《ノーザンプトン》はソロモン海で戦没した。

 

 本作では6番艦《オーガスタ》が、43年10月に米国領だったフィリピンのマニラを親善訪問し、(同艦は、33年11月から40年11月まで、米アジア艦隊旗艦を務めていて

親善訪問自体は不自然では無い。史実ではその後大西洋艦隊に配備され、終戦まで太平洋方面に投入される事は無く、1959年に除籍・解体された)

 

 シンガポールに向け出港した直後、魚雷が命中して沈没した。偶然出港直後の写真を撮影していた、カメラマンにより『命中の瞬間』や、命中直前『くっきりと航跡を引きながら、巡洋艦に向かって行く魚雷』が撮影され、新聞に掲載された事で世論は憤慨して、一気に参戦に向け突き進んでいく。が、本当に日本の仕業だとすると映っていてはならない物まで……

 

 艦これは《ノーザンプトン》《ヒューストン》が実装済み。

戦艦少女 上記の2隻と《オーガスタ》が実装済み。

アズールレーン 艦これの2隻に加え、《シカゴ》が実装済み。

 

《ポートランド級》

 

 1932年から33年に2隻が建造された。アメリカの重巡洋艦で排水量が初めて1万トンを超えている。真珠湾攻撃の際は、2隻とも演習の為ジョンストン島に滞在していて難を逃れている。

 《インディアナポリス》は戦争末期の45年7月に、サンフランシスコからテニアン島に原子爆弾を輸送し、その後レイテ島に向け航海中に、グアム島西方沖で《伊-58》の魚雷攻撃で喪失し、その際、無線室が破壊されSOSを送れず、救助が遅れてしまう。生存者の内多数がサメの犠牲になり、後にその事実を基にあの有名な『サメの映画』が制作された。

この沈没は、第二次世界大戦における最後の大型軍艦沈没となる。

 

 戦艦少女には、2隻とも出ているが装備品に『謎の物資』が搭載されている。

アズレンにも2隻とも登場済み。

艦これは未だ出ていない。《ポートランド》は未だしも、《インディアナポリス》の実装は不可能だろう。(原爆輸送の件)

 

 

《ニューオーリンズ級》

 1934年から、37年にかけて7隻が建造され一隻を除く全艦が、日本との戦闘に参加した。1942年8月の第一次ソロモン海戦で3隻を一晩の内に喪失した。

艦これは0

戦艦少女4隻登場

アズールレーン6隻登場

 

 

 

《ウィチタ》(同型艦無し)

 

《ブルックリン級》の船体に、8インチ砲9門を搭載した重巡。完成は1939年2月 42年まで地中海や、対ソ連向け船団護衛として行動した。43年以降太平洋戦線に移動。戦艦少女には登場済み。

 

 

《ボルチモア級》

 

 日米開戦後に建造された新型重巡洋艦。14隻が建造されるが、第二次世界大戦へ参加する機会が無かった艦も。一部の艦は、対空ミサイルを装備して70年代まで現役だった。

 《ボルチモア》がジョンストン島沖で、プリキュアの攻撃を受け大破。

 

戦艦少女4

アズールレーン3

 

護衛空母

 

《ロングアイランド》

 

 貨物船を改造した小型空母 1941年の6月に完成している。ミッドウェーや、ガダルカナル島へ航空機輸送に従事していた。

戦後は客船に再改造され、1960年代末まで活躍した。

本作では、ブレーマートン海軍工廠で整備中に空爆を受けて破壊された。

 

《ボーグ級》

 

 最初に量産された護衛空母。45隻のうち34隻は、『レンドリース法』で英海軍に貸与された。

 

戦艦少女・アズレン共に《ボーグ》が実装済み。

 

《サンガモン級》

 

 1942年に、タンカーを改造して建造された。同型艦は4隻で、地中海方面で活動した後に、太平洋に派遣された。他の護衛空母より、飛行甲板が長く《F6F》戦闘機を運用可能だった。2隻がレイテで特攻機の攻撃で炎上するも、喪失艦は無かった。《サンガモン》は戦後再度タンカーに改造され、59年まで使用された。

本作では、《サンガモン》が44年4月頃に増援として、南太平洋のサモアに派遣された。

 

戦艦少女に《サンティ―》が実装済み。

 

 

《カサブランカ級》

 

 タンカーの設計を使用して、建造された護衛空母。ほぼ一年の間に50隻が完成したので、『週刊空母』と呼ばれた。(一隻の建造期間はおよそ4カ月)

 レイテ沖海戦で《大和》以下第一戦隊の砲撃を受けると、装甲が紙だったので砲弾が艦内で爆発せず、反対側から海の中に落ちてから爆発したので、

一隻しか沈まなかった。(他に特攻隊の攻撃で一隻沈没)

 

 艦これに《ガンビア・ベイ》が登場。マーク2にできるが、貴重なカタパルトが必要。

戦艦少女《ガンビア・ベイ》と《ガダルカナル》

アズールレーン 《カサブランカ》

史実では運用できなかった、新型機も普通に装備可能。

 

《インディペンデンス級》

 

 建造中の《グリーブランド級》巡洋艦の設計を変更して建造された中型空母。搭載機は45~50機で日本の小型空母より多い。

《プリンストン》以外は戦後まで生き延びている。

 

アズールレーンは3隻、戦艦少女は2隻実装済み。

 

水上機母艦

 《ラングレー》アメリカ最初の空母

 元は1911年に完成した、石炭補給艦《ジュピター》(《ジュピター》時代に、太平洋からカリブ海にパナマ運河を抜けた一番船)で、20年から22に掛けて航空母艦に改造された。(搭載機30機)1937年2月に、水上機母艦に改造され8月にアジア艦隊に配属された。

 開戦後の42年2月に、インドネシアに戦闘機を輸送していた際にバリ島南沖で、《一式陸上攻撃機》の攻撃を受けて戦没した。

 

 本作では、開戦前にマニラから、豪州北端ダーウィンに退避。その後大噴火が迫るニューブリテン島から民間人の避難任務に参加した。その後サモアで、潜水艦の雷撃を受けて沈没した。

 

戦艦少女とアズールレーンには登場済み

 

正規空母

 

《レキシントン級》

 

 ワシントン海軍条約で廃艦が決まった、建造中の《レキシントン級》巡洋戦艦6隻の内、2隻を航空母艦に改造する事になり、1927年に完成している。速度は速く、搭載機も《赤城》《加賀》と同様だったが、設計が古く被弾時に爆風を外に逃がせない構造になっていたりと、不備もあった。

 

《レキシントン》は42年5月の珊瑚海海戦で喪失するも、《サラトガ》は度々の被害を受けながらも、終戦まで活躍した。

 

 本作では、《レキシントン》は開戦直後のジョンストン島沖で、《サラトガ》は翌年4月にシアトル沖で戦没。

 

 艦これは、《サラトガ》は4番目の装甲空母。夜戦空母にも変更可能なので優先的に育成を。

戦艦少女、アズレンも実装済み 3ゲームとも初期装備で、ポンコツ雷撃機《デバステーター》を持って来るw

戦艦少女は、建造中止になった《レキシントン級》巡洋戦艦《コンステレーション》も実装済み。

低速戦艦も多い、艦これでも実装しないかなあ?

 

 

《ワスプ》ハープーン菊池

 

 空母の建造枠が14500トンほど残っていたので、小型空母を一隻建造する事に。完成は1940年5月で、サイズ的に《ヨークタウン級》よりやや小型。

当初は、大西洋艦隊に配備されマルタ島に航空機を輸送したりしていた。42年8月に太平洋艦隊に移動し、ガダルカナル島占領作戦に参加するも、翌月《伊―19》の

雷撃により沈没。

 

本作でも大西洋艦隊より、増援に派遣されるが44年4月シアトル沖で轟沈する。(生存者無し)

 

戦艦少女とアズールレーンには実装済み。

ハープーン菊池は「ジパング」のネタ

 

 

《ヨークタウン級》《エンタープライズ》は何度も撃沈されてます(大本営発表)

 

 37年から、41年10月にかけて3隻建造された。本当はもっと作る予定だったけど、軍縮条約が消失し、建造枠が無くなったので以降は新型空母の建造に変更された。姉妹艦3隻が真珠湾に集結していたのは、ミッドウェー海戦直前のわずか10日ほどでしかない。

 

《ヨークタウン》は42年6月のミッドウェー海戦で、《ホーネット》は10月の南太平洋海戦で沈没した。《エンタープライズ》はその後、新型空母の数が揃うまで孤軍奮闘し、不沈空母と称された。

《エンタープライズ》は何度も、大本営発表でw撃沈された事になっていて、その回数は9回に及ぶ。

スタートレックの宇宙船とか、ファイナルファンタジーの飛行船の名前等度々使用されています。

 

 艦これには《ホーネット》が登場 残り2ゲームは3隻全て登場。(戦艦少女の《エンタープライズ》は、史実補正で運が60ある)

《F2Fバッファロー》戦闘機とか、《デバステーター》雷撃機の様な貴重なポンコツ機を持参してくれますw。(開発不可能機体だから、処分も出来ない)

 

 

《エセックス級》艦名の由来は、マサチューセッツ州エセックス郡。決してR-18では無いw

 

 1942年以降、大量に建造された大型空母で、最大搭載機数は100機。神風特攻隊の攻撃などで、3隻沈没寸前の被害を受けるが、優秀なダメコン部隊の活躍で喪失艦は0隻。戦後も、大破してしまった船以外はジェット機対応工事を受けて現役に復帰して、朝鮮戦争やベトナム戦争に参加している。映画に出演したり、宇宙から帰還した宇宙飛行士の回収任務なども参加している。

 

 艦これは3番艦《イントレピッド》が登場。航空機を多数搭載可能。

アズールレーンは5隻、戦艦少女は7隻実装済み。

 

 

《キティーホーク級》(史実の《ミッドウェイ級》)

 

 1940年代後半に建造された大型空母、6隻計画されたが半数は中止になった。以前の空母と違い飛行甲板が装甲甲板となっている。1970年代から、20年ほど

米海軍横須賀基地を母港としていたので、日本人にも知名度が高い。建造直後と、退役寸前の頃ではかなり外観が違っている。

 

 本作では、史実より2年近く早く完成した。『この空母大きすぎて、凄く目立つからプリキュアの集中攻撃を受けるのでは』という事に気付き、海軍当局はどうしたものかと悩んでいる。

2番艦、3番艦が艦隊に配備されるのは早くても10か月後。(残り3隻は史実通り、予算が米議会に否決され中止)それまでは、議会や世論へのアリバイ工作の為に、航空機輸送任務でもさせておくというような案も出ている。

 

 

戦艦

 

《戦艦メイン》同型艦は無し

 

 1895年に完成した装甲巡洋艦で、後に戦艦に変更された。史実では、1898年1月末にキューバのハバナにアメリカの権益を守る為に派遣された。2月15日午後9時40分に突城代爆発を起こし、轟沈。

374名のうち266名が死亡した。この船にはコック等として7名の日本人も勤務していて、5名が死亡した。沈没の原因は不明だが、アメリカでは右派新聞等がスペイン帝国の陰謀だと、世論を煽りまくり開戦の大きな原因となる。

 

本作では、スペイン帝国が財政破綻寸前になり海外植民地を売却したので、《メイン》も何事も起きなかった。1902年に新型戦艦に、名前を譲る為に艦名を変更。

第一次世界大戦の終戦と同時に、退役しその後は新兵の訓練艦として15年ほど使用されて解体。

 

《ペンシルベニア級》

 

 1917に《ペンシルベニア》と《アリゾナ》の2隻が建造された。《ペンシルベニア》は史実では、太平洋戦争時の太平洋艦隊旗艦。

《アリゾナ》は、《九七式艦上雷撃機》から投下された800キロ爆弾(《長門》用の主砲弾を改造)により大爆発を起こして轟沈。

現在は、《アリゾナメモリアル》となっている。2016年に安倍元総理と、オバマ元大統領が献花を行っている。

残骸からは未だに重油が漏れ出ていて、環境保護団体などからは残骸の完全撤去を求める意見も。

 

本作でも《アリゾナ》は轟沈してしまった。

 

戦艦少女《ペンシルベニア》が実装済み アズレンは両方出てる。

 

《ネバダ級》

 

 1916年に、《ネバダ》《オクラホマ》の2隻が建造された。第一次世界大戦には輸送船団の護衛任務で参加している。

真珠湾奇襲時、第一次空襲時《ネバダ》は損傷軽微だったので外洋に退避しようとしたが、第二次空襲で6発の爆弾を被弾して大破、危うく狭い海峡で

沈没しかけるが、何とか陸地に座礁した(狭い海峡で横転していた場合、10カ月程度は真珠湾軍港は使用不能になったとも)《オクラホマ》は沈没し、42年にサルベージするも損傷が酷く廃艦になった。

 

 本作では、2隻ともジョンストン沖やハワイ沖で、空襲や《大和》とか、プリキュアの魔手wから生還している。ハワイ沖海戦では、《伊勢》《日向》に中破程度の打撃を与えている。

(その後、キンメル提督の命令で退避中に海底火山の噴火に巻き込まれて、被害を出している)現在は、修理と同時に対空砲やレーダーの搭載工事を受けている。

 

戦艦少女、アズレンは2隻とも実装済み

 

《テネシー級》

 1920年から、翌年に掛けて《テネシー》《カリフォルニア》の2隻が建造された。《カリフォルニア》は真珠湾奇襲攻撃で、大破着底し、サルベージ御大規模な改修工事の末に2年後に

戦線復帰。《テネシー》は被害軽微だったので、直ぐに戦線復帰しミッドウェー海戦にも出動している。

 

 本作では、ジョンストン沖海戦で航空隊と、プリキュアの攻撃により2隻とも沈められた。

 

 

《コロラド級》

 米海軍初の16インチ砲搭載戦艦。1921年から、23年にかけて3隻建造された。真珠湾奇襲攻撃で、《ウェストバージニア》は魚雷多数の命中で大破着底、

《メリーランド》は真珠湾にいた戦艦の中で、最も被害が少なかった。《コロラド》は、当時サンディエゴで整備中だったので難を逃れた。3隻ともレイテ攻撃や、沖縄戦に参加している。

 

 本作で、《メリーランド》《ウェストバージニア》は、ジョンストン沖では生還するも、4月のハワイ沖海戦で喪失した。《コロラド》は史実通り、開戦時はサンディエゴで整備中だったので、序盤の喪失を免れる。その後44年2月に真珠湾へ向かうも、途中《伊-6》潜水艦の雷撃で魚雷2本被弾してしまい、大破してしまい命辛々逃げ帰る。しかし、修理の為4月のハワイ沖海戦への参加を免れ、《大和》やプリキュアと戦う危機から逃れた。修理はあと一か月はかかる見込み。姉妹艦が全て失われて、一隻だけになってしまったので、その後は英国との『政治的取引』により、英国に派遣され、イギリス海軍の指揮下に入る事が決まった。

 

 艦これでは《コロラド》《メリーランド》が登場済み(後者は最新イベント最終面突破報酬)特殊砲撃を使用可能。

残りのゲームは3隻出てます。

 

 

《ノースカロライナ級》

 

 新型の機関を搭載した高速戦艦。1941年に2隻完成。当初は14インチ砲搭載戦艦として、計画されたが日本の軍縮条約撤退の可能性が高まり、16インチ砲9門に変更された。第三次ソロモン海海戦で、《霧島》《比叡》と戦い撃沈した。

 

本作では《ノースカロライナ》はプリキュアの攻撃で沈没。

 

艦これでは、2020年の秋イベで《ワシントン》が実装。

戦艦少女とアズレンは両方とも登場済み。

 

《サウスダコタ級》

 

 建造時から16インチ砲搭載戦艦として4隻が建造された。第三次ソロモン海海戦では《サウスダコタ》《ワシントン》と共に戦うが、《サウスダコタ》は《比叡》《霧島》の砲弾多数が命中し大破。

 

 本作では《サウスダコタ》はカリブ海で訓練中に、主砲暴発事故で修理のため不在。《インディアナ》は、《ヨークタウン》を外れた魚雷が艦首に命中し、帰還して修理。残り2隻は、シチリア島上陸作戦の支援と未だプリキュアとは戦っていない。

 

 

 

 

艦これ《サウスダコタ》が実装済み。

戦艦少女《アラバマ》以外の3隻。

アズールレーン 《インディアナ》以外の3隻

 

英海軍

 

 

 

 

 

艦上雷撃機

 

《バラクーダ》1943年 2、607機

 

 1942年ごろから英海軍の空母で使用された艦上雷撃機。《天山》、《TBF》と比較すると非常に低性能。それでもノルウェーのフィヨルドに隠れた、独戦艦《ティルピッツ》に魚雷を命中させ大破させたりとか、1945年ごろに東南アジアで、日本の輸送船を撃沈したりと多少は活躍した。

 

 

 本作では戦争冒頭、台湾沖で五航艦と史上初の空母決戦を挑むが、壊滅した。

 

 艦これでは、英空母だとボーナスが付くけど、それ込みでも《天山》《流星》の上位機種や、ネームドに劣るので通常は使う事は無い。しかし対潜値が高いので、対潜水艦戦の時は搭載する価値はありそう。

 

戦闘機

 

《スピットファイヤ》1938年7月 20、351機

 

 大英帝国の誇る名戦闘機。1940年の『バトル・オブ・ブリテン』では、ドイツ空軍の空襲から本土を守り切った。初期型は7.7ミリ機銃を搭載していたが、中期以降は20ミリ機銃を搭載している。戦争後半の改良型は時速700キロを超えている。インド方面や、オーストラリアにも配備され、《零戦》《隼》とも戦っている。近年飛行可能な機体が、映画『ダンケルク』の撮影に参加している。

 

海軍も、着艦可能に改造された《シーファイア》戦闘機を空母に搭載している。

 

 艦これ 陸上型3、艦載機1 陸上型は作戦範囲は4と低い。

戦艦少女4

 

爆撃機

 

《ランカスター》重爆撃機 1942年 7,377機

 

 英空軍ご自慢の重爆撃機、主にドイツ本土への夜間爆撃を担当した。速力や防弾はアメリカの大型爆撃より劣る。ダムを破壊する特殊爆弾や、地下貫通する10トン爆弾、5トン爆弾(独戦艦《ティルピッツ》に投下)等の特殊爆弾も運用した。

10トン爆弾は、関門海峡の海面に投下して関門トンネル(山陽本線)を破壊する計画が進んでいたが、実行前に終戦になったので中止された。

 

飛行艇

 

《サンダーランド》1938年 750機

英 海軍の大型飛行艇。対潜哨戒や搭乗員の救助任務で活躍した。戦後岩国に駐留していた、イギリス軍日本占領部隊に対し、家族からの手紙等を定期的に輸送していた。

 

 

《デリー級》軽巡

 

 第一次世界大戦終了直後に10隻建造された。頭文字が全てDなので《D級軽巡洋艦》と呼ばれる事も。一部の艦は、主砲を対空砲に換装し防空巡洋艦になった。

 

戦艦少女《デリー》が実装済み

 

《ダイドー》級対空巡洋艦

 

 1938年から40年にかけて11隻が建造された。対空巡洋艦だけど、魚雷も搭載されている。地中海等で戦い4隻戦没し、一隻が廃艦となった。残りの艦は1960年代まで英海軍に在籍した。

 

戦艦少女3隻実装済み。

アズールレーン5隻実装済み。

 

 

空母

 

 

《アーガス》世界最初の空母

 

 イタリアの客船を工事中に購入し、1917年に空母として完成した。第二次世界大戦では、完全に旧式化していたがマルタ島への輸送艦隊の、護衛任務に使用された。

戦争中の44年末に退役し、訓練用の宿泊艦(新兵が寝泊まりします)にされ46年に解体された。ネルソン提督の旗艦は保存されているのに、世界初の空母だから記念艦として残せなかったのだろうか?

 

本作では、アイルランド南西沖で独潜水艦の雷撃で沈没。

戦艦少女には登場済み。

 

 

《アークロイヤル》

 

 均衡の取れた中型空母。1938年に完成し同型艦はない。

序盤の多くの戦闘に参加したが、一番の功績は1941年4月の戦艦《ビスマルク》追撃戦だろう。独軍の航空機支援が受けられる、フランス沿岸に向け逃走していた

《ビスマルク》の操舵室を破壊して、左旋回しかできなくしてしまい、追撃して来た戦艦により沈められた。41年11月、西地中海で独潜水艦の魚雷攻撃により喪失。

 

 

 本作では、その攻撃を回避し2年後に極東艦隊に派遣された。五航艦の航空攻撃を受けるが、スコールの下に逃げ込み離脱に成功した。

 

 艦これに登場 まずまずの性能だが装備品として、英国面溢れる《スクア》艦上爆撃機や、《フルマー》艦上戦闘機の欠陥機を持参して、ユーザーの装備品保有枠に打撃を与えて来ます。

 

他の二ゲームにも登場するが、やはり欠陥機を持参する。

 

《イラストリアス級》

 

 英国海軍御自慢の装甲空母(250キロ爆弾に耐えられる)で、40年から翌年に掛けて4隻建造された。装甲により被弾には強かったが、反面搭載機数は38から50機と少ない。後に装甲を減らし、70機まで搭載可能な改良型が2隻建造されている。

 

《ヴィクトリアス》が艦これに実装済み。ジェット機の使用も可能。

戦艦少女アズレン共に、全艦登場済み

 

 

戦艦

 

《フッド》

 

 1920年5月に完成した巡洋戦艦。4隻計画されたがワシントン軍縮会議により、3隻は中止された。美しい外見から、イギリス海軍の象徴的存在として国民から愛された。

第二次世界大戦が開戦してから1年は地中海での作戦に参加、1941年5月の《ライン演習作戦》で、《プリンス・オブ・ウェールズ》と共に、ドイツ戦艦《ビスマルク》と戦うも弾薬庫が誘爆し轟沈。1420名の内救助されたのは僅か3名だった。

 

 戦艦少女《フッド》と中止になった《アンソン》が実装済み。史実逆補正で運は5しかない。アズールレーンは、《フッド》が実装済み。

 

《レナウン級》

 

 1916年に2隻が完成し他巡洋戦艦、第一次世界大戦も参戦。32ノットの高速を出せるが、その分装甲は脆い。

《レナウン》は大戦を生き延びるも、《レパルス》は開戦直後にマレー沖で沈んだ。

本作でも、《レパルス》は史実同様航空攻撃で、撃沈されてしまう。(場所は違うが)

 

戦艦少女……以下略w

 

 

《キングジョージ5世級》

 世界でも珍しい4連装主砲を採用した新型戦艦。1940年から42年にかけて5隻が建造された。主砲は時々故障して兵士の失笑を買ったが、ドイツ海軍の戦艦《ビスマルク》や巡洋戦艦《シャルンホルスト》と、砲撃戦を行ったりと日本の戦艦より遥かに活躍した。 《プリンス・オブ・ウェールズ》以外は、対戦を生き延びたが財政難により、1950年代末までに全艦が退役している。

 

《プリンス・オブ・ウェールズ》は、本作で台湾沖海戦で航空攻撃受け、かなりの被害を受けるも、スコールの下に逃げ込み生還した。現在は本国で修理中。

 

 戦艦少女 3隻が実装済み。アズールレーンは4隻実装済み。艦これは未だ0w

 

 

第三帝国

 

戦艦

 

《ビスマルク》

 

 ドイツ海軍の新型戦艦。38センチ砲8門搭載だが、速力は30.8ノットと高速 だった。1941年4月に、『ライン演習作戦』(大西洋での輸送船撃沈)

の為出撃する。デンマーク海峡で英国巡洋戦艦《フッド》を一撃で轟沈、《プリンス・オブ・ウェールズ》を中破させたが、反撃で重油が漏れ出し追跡が容易になってしまい、多数の戦艦の追跡を受けて沈没する。(チャーチル首相は、最悪戦艦が燃料切れになっても追跡を続けろと厳命)

 

艦これでは貴重な本物の高速戦艦。しかし最終状態にするので3段階真価が必要で、勲章8個が必要。

戦艦少女・アズールレーンは《ティルピッツ》も実装済み。

 

《Uボート》(潜水艦)

 

 ドイツ海軍の主力部隊。地中海や大西洋で多数の英ソ向け船団の輸送船や、タンカーを撃沈し英国を追い詰めた。が、中盤以降多数の護衛駆逐艦や護衛空母に、

長距離対潜哨戒機の投入で、次第に追い詰められていった。

 

艦これは未だ2隻だけ。(改造を進めると日本艦になってしまう)

戦艦少女13隻、アズールレーン12隻と多数登場。

 

 

戦闘機

 

《Bf-109》3万機の生産数は戦闘機として世界一 1937年 33,984機

 

 独軍の主力戦闘機。スペイン内戦の頃から終戦まで第一線で活躍した。英本土上空戦では、航続距離が短く爆撃機の護衛が十分にできず、敗北の大きな原因となる。

戦争終盤には、30ミリ機関砲2門を搭載した最終型が投入され活躍した。

 

 艦これでは艦載型が、空母《グラーフ・ツェッペリン》の初期装備として登場。性能はそこそこ。

戦艦少女2 ネームドの方は高性能

アズレンにも登場

 

《FW-190》1941年8月 2万機以上

 

 戦争後半での主力戦闘機 性能面で《BF-109》より上。こちらも2万機以上が生産された。

 

 初期型はA型、エンジンを交換した新型はD型、A形に爆弾や対地ロケットを搭載した戦闘爆撃機が、F・G型

 

ゲームや架空戦記では強力な敵として登場する事も。

 

 艦これには、空母搭載型と陸上型が登場。高性能だが陸上型は航続距離が3しか無く使いにくい。

戦艦少女には爆撃型が登場。アズールレーンには戦闘機型が登場。

 

 

《Ta-152》究極のレシプロ戦闘機 150機前後 

 

 高度1万メートルで、最高速度755キロという前人未到の高性能を出した。45年1月から3か月という短い間だったが、少数が戦闘に投入され

て僅かながら戦果も上げたようだ。

 

《Me-163コメート》妖精(艦これ)さんが溶けそう 400機前後(本作では500機以上)

 

 世界でも類を見ないロケット燃料の迎撃戦闘機。上昇力と速力は凄かったが、作中でやよいちゃんが言ってる様に、欠点が多すぎて役に立たなかった。

特に作戦時間が8分しかないのが致命的。一回攻撃を失敗したらもう着陸しないとならない。史実では13機程度は撃墜したとされているが、全くの0だったと言う説も。

 

 本作では、改良型が比較的短期間で投入できたので、連合軍爆撃隊にとっては厄介な敵に。架空戦記や、戦略ゲームでも燃費の悪さが災いし、活躍の場はほぼ皆無だった。

 

しかし遂に活躍の場が

 

そう 艦これであるw

 

 イベント戦闘では、スタート地点を出したり、ルートを短縮したり、ボスの装甲破砕をする際の条件に「基地空襲に対し、航空優勢を取る」(1回もしくは2回)

がある。近年のイベントでは『銀タコ焼き爆撃機』(《B-29》がモデル)が追加され、高高度なので普通の戦闘機では、迎撃が難しいので、高高度迎撃戦闘機《Me-163》や、《秋水》(しゅうすい)が必要になる。故障して爆散したり(そういう仕様のゲームもある。故障が多い機体が勝手に墜落)、妖精さんが溶けたりしないのでご安心を。ただし、作戦距離は最低の1。迎撃戦闘以外には出番は無い。

 

某艦これ動画では、本機の凄まじい上昇速度を見れます。

 

チコ

「ドイツ軍は、《BA-349》っていうもっと危ないロケット戦闘機も開発してました。興味のある人は見てみてね」

 

《Me-262》フォルムがイケテル 1943年末(史実では44年夏)1、500機

 先進的なジェット戦闘機。850キロ近い速度を出すも、ヒトラー総統により爆撃機として運用される事が決まってしまう。命令が撤回された時には、すでに手遅れとなっていて、戦局を覆す事はもはや不可能だった。

 

 本作でも、危うくそうなりかけたが、総統が誤りに気付き直ぐに撤回したので、大事には至らず多数が迎撃戦闘に投入され、大きな戦果を挙げ続けている。夜間戦闘機型等も計画している。

 

 艦これには登場していないが、作者は《グラーフツェペリンツヴァイ》が実装された時に、《Me-262》艦載型が登場する事を期待しています。

 

爆撃機

 

《Ar-234》1944年4月 史実では200機前後生産

 

 世界初のジエット爆撃機。完全な爆撃専用だった。史実では、少数が偵察機として運用された。

 本作では44年5月に、テスト飛行も兼ねて英本土上空に飛来。戦闘機の迎撃を悠々と振り切り、英国軍を唖然とさせたが

噴火していていたアイスランドの火山の噴煙を、諸に吸い込んでエンジンが故障し不時着した。(搭乗員は捕虜)

 

 

 

その他

 

《BV-141》森谷帝二教授(コナン劇場版の登場人物)には決して見せてはならないw 試作のみ

 

 

 左右非対称の珍兵器w こんなのが飛ぶのかと思うかもしれないけど、問題なく飛行した。エンジンの油圧に問題があり不採用になった。メーカーの政治力の差が影響したと言う意見も。

 

フランス・イタリア

 

《ザラ級》重巡洋艦

 

 フランスの新鋭重巡に対抗して4隻が建造された。3番艦の《ゴリツィア》以外の3隻は、1941年3月29にのマタパン岬沖海戦(ギリシャ南部)で、一度に3隻を喪失。艦これでは、《ザラ》《ポーラ》が実装済み。主砲射程が長距離になっている。《ザラ》は改にするのに、アイテムが必要。改造後は水上戦闘機を搭載できる。

《ポーラ》は常に泥酔しているw

 

アズレンでも艦これと同じ2隻が実装済み。戦艦少女は《ザラ》だけ。

 

《ヴィットリオ・ヴェネト》級戦艦

 イタリア海軍の高速戦艦。性能は悪くなかったが、乗員の練度などの問題により大きな戦果を挙げる事は無かった。一番の欠点は地中海以外の使用を想定していなかったのか、航続距離が短すぎる事。仮にムッソリーニが史実より何年も前に……1938年頃に病死か暗殺され、独裁体制が崩壊し民主化されて、イタリアが連合国として参戦していても、太平洋方面へ、増援として派遣する事は困難だったと思われる。

 

 本作では、《ローマ》は史実通りの最期を迎えている。

 

 艦これでは《イタリア》《ローマ》が実装済み。アズレンは《イタリア》・《ヴィットリオ・ヴェネト》が実装済み。戦艦少女《インペロ》以外の3隻が実装済み。

 

《リシュリュー級》戦艦

 

 フランス海軍が最期に完成させた戦艦。第一次世界大戦の頃の設計を踏襲している、《ビスマルク級》よりも近代的な設計だったそうな。《ネルソン級》同様に主砲は艦の前部に集中配備されている。

 フランスが第三帝国に敗北した為に、アフリカに逃げ出しその後今度はかつての味方だった、米英海軍と戦う羽目になった。《リシュリュー》はその後、アメリカで改造工事を受け自由フランス海軍に参加。が、インドネシアで一度だけ港を砲撃しただけで、終戦を迎えた。

 

 本作に名前だけ出た、《ジャン・パール》はフランス領セネガルのダカールで、米戦艦と戦うが大破着底し、サルベージされ完成したのは戦後。

他の2隻は工事中止。

 

 艦これは《リシュリュー》が実装済み。貴重な高速戦艦なので活躍させてあげよう。

戦艦少女は、《ガスコーニュ》アズレンは《クレマンソー》以外の3隻は実装済み。

 

 

 

オマケ

 

《M級潜水艦》(英国面)

 

おまけでキョエちゃんの台詞で登場。潜水艦なのに30センチ砲を搭載している。1918年頃に4隻建造されるが、一隻は工事中止で2隻は事故で沈没。主砲は完成して数年後には撤去された。

 

《グラーフツェッペリン》

 ドイツ海軍の未完成空母 設計には空母《赤城》が参考にされた。1938年に建造が開始されるも、完成せずに戦後自沈した。

 

《赤城》と船体の大きさは同レベルだが、やたらと重装甲重武装なので、搭載機数はわずか42機。

 

 

 艦これでは、初の『未完成の軍艦』として登場(2018年の秋イベント)したので、ユーザーを驚かせた。

しかも突破報酬では無くドロップ限定という鬼仕様。(E-4)作者は30周くらい出たけど、これは未だかなり幸運な方で300周しても出ない提督もいたようで、イベントを途中であきらめた人も多いそうな。

作者は改二実装の為に、カタパルト2つは《グラーフツェッペリン》の為に確保してます。

 

 2番艦の方はまだ未実装。戦艦少女とアズレンは2番艦も登場。戦艦少女は 改になると装甲空母になるので艦これもそうなるかも。

 

 

《Ju-87スツゥーカー》6、500機以上

 急降下爆撃機の代表的機体。1937年のスペイン内戦から戦闘に投入され、末期まで使用された。故障などが少ない名機だけど、中盤以降は制空権の損害で大きな犠牲を出した。初期の頃は、急降下の時に機体下部に装備したサイレンが鳴り響いた(敵兵に恐怖を与える為、のちに敵に気付かれるので撤去)。

1.4トンの大型爆弾や、魚雷も装備できるので戦略ゲームでは役に立つ。あの『魔王ルーデル』の愛機としても有名。

 

 

 艦これでは、通常版の他に対潜能力を強化してたタイプが2種類出る。護衛空母に装備すると対潜にボーナスが。

 

教えてチコ先生

「急降下爆撃は、垂直降下するの?」(90度)

 

チコ

「大体50度から60度くらいです」

まどか

「90度では無いんですね」

チコ

「そんな垂直降下なんかしたら、地面か海面とキスさせられて、木っ端微塵よ」

えれな

「でも噂では90度で急降下爆撃して、しかもブレーキ無しで急降下していた人がいるとか?」

チコ

「ドイツ空軍の、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル氏の事ね。あの『嘘しか書いてないアンサイクロペディア』にすら、真実しか書けなかった伝説の人なのね。ちょっとみんな検索してみてみて」

ひかる

「きらやばーな人だよ」

ユニ

「天才は模倣の対象にならないと言うニャン」

チコ

「確かに、ルーデルさんだからこそ生き残れたとしか思えないわねえ。という訳でもう一人模倣できないと言うか、してはならない天才をお呼びしました」

 

めぐみん

「我が名はめぐみん! 紅魔族一の天才魔法少女! そう私の様な、天才を真似する事は誰にもできない」

ひかる

「可愛い魔女っ娘さんだ」

ララ

「可愛いあだ名ルン! 本名をおしえてルン」

めぐみん

「これが本名ですが、文句があるのなら受けて立ちますよ。紅魔族は売られたケンカは必ず買う民族。さあ戦いましょう……って、杖が有りません!」

チコ

「念のために杖はキョエちゃんに預かって貰ってます」

まどか

「めぐみんちゃんは何か告知でも?」

めぐみん

「フフッ、よくぞ聞いてくれました。2023年の大河ドラマは、福井県越前市が舞台で私が主人公です!」

チコ

「ちょっとそんな訳無いでしょ! ぼーっと嘘告知してんじゃないわよ。確かにこのすばの原作者は越前市出身ですが、主人公は紫式部で、「花子とアン」の主人公の人ですよ。

確かに越前市は舞台の一つになるかも」

ユニ

「ニャンと!」

チコ

「親の仕事の影響で一年ほど越前市に滞在していたそうで、市内には紫式部公園もあります」(越前国のお役所は越前市(平成の大合併前は、武生市)に在った。福井城ができるのは

江戸時代初期に、家康次男の結城秀康が越前藩主に任じられてから)という訳で今回はここまで。またねー」

 

 

 

 

艦これ攻略メモ

 

カタパルト使用の優先は?

 

 瑞鶴+翔鶴→サラトガ→赤城・加賀→伊勢・日向の順番で使用しました。

関連任務で強力な装備品も入手できます。が、超難関5-5のクリアが必要な場合も。伊勢・日向は両方改二にしてしまうと、一部装備品で明石工場が使用出来なくなるので、拾った伊勢か日向を《伊勢改》辺りまで育成した方が良いです。

 

 ゴトランド・ガンビアベイ・護衛空母の優先度は低いです。

 

 

 軽巡、駆逐艦の改造(設計図が必要な奴)

 

 先制雷撃が可能になる船(夕張、阿武隈、由良、矢矧)と、大発等を装備可能な船を優先に。

 

戦闘詳報(船や武装の改造に必要)の入手方法

 

駆逐艦長波を拾い75まで育成して、改二にします。高波、朝霜、沖波のうち一隻を改まで育成。

精鋭「三一駆」、鉄底海域に突入せよ!(年4回可能 5-4S勝利2回)をクリア

報酬で選択。

 

単発クエストでも、選択報酬で入手できますが他の選択肢が非常に良い装備品なので、上記の季節任務で入手が良いです。

 

 

デパプリ考察w

 

 会長(もしかしたら家族も)は、半世紀ほど昔の世界から来てしまっている説w

 

会長やブンドル団は、過去の世界から来たかブンドル団に拉致されてしまった説。

 

1 ブンドル団の怪盗のイメージは、何十年も昔の(三丁目の夕日や、こち亀の両さん少年編等)子供向け番組に出ていそうなイメージ。

2 パーラーって、最近はあまり聞かない言葉。老舗の喫茶店等では今でも使用されているみたい。

3 あまね会長の外見を最初に見たとき思ったのが、ひぐらしの「古手梨花」ちゃんみたいな服だなーと。(中の人はルールー)

ひぐらしは、昭和53年から58年が舞台。

 

 未来からタイムスリップは有ったので、過去からあっても良さそうな。

ゆいここらんが、作中で万一過去に行ってもご先祖に「スポーツ年鑑」を渡す事はお勧めできませんw(某有名映画ネタ)

 

 

 






記入漏れが有れば後日追加するかも。話が進んで新しい兵器が出たらと追加します。


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